衆議院

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第9号 平成19年3月28日(水曜日)

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平成十九年三月二十八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 後藤 茂之君 理事 中野 正志君

   理事 西銘恒三郎君 理事 葉梨 康弘君

   理事 山本 公一君 理事 伴野  豊君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      梶山 弘志君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    桜井 郁三君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      徳田  毅君    長崎幸太郎君

      長島 忠美君    原田 憲治君

      松本 文明君    御法川信英君

      宮澤 洋一君    盛山 正仁君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      泉  健太君    岡本 充功君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      下条 みつ君    土肥 隆一君

      長安  豊君    横山 北斗君

      鷲尾英一郎君    赤羽 一嘉君

      伊藤  渉君    穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   政府参考人

   (国土交通省航空局技術部長)           谷  寧久君

   参考人

   (東京大学大学院工学系研究科教授)        河内 啓二君

   参考人

   (社団法人日本航空技術協会会長)         久保 哲也君

   参考人

   (定期航空協会理事長)  辻村 邦康君

   参考人

   (航空アナリスト)    杉浦 一機君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     御法川信英君

  泉  健太君     岡本 充功君

  黄川田 徹君     横山 北斗君

同日

 辞任         補欠選任

  御法川信英君     梶山 弘志君

  岡本 充功君     泉  健太君

  横山 北斗君     黄川田 徹君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案(内閣提出第四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件(航空の安全・安心)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に航空の安全・安心について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、東京大学大学院工学系研究科教授河内啓二君、社団法人日本航空技術協会会長久保哲也君、定期航空協会理事長辻村邦康君及び航空アナリスト杉浦一機君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、国土交通省から報告を聴取した後、河内参考人、久保参考人、辻村参考人、杉浦参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省航空局技術部長谷寧久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 それでは、政府より報告を求めます。国土交通省航空局技術部長谷寧久君。

谷政府参考人 おはようございます。

 ボンバルディア機のトラブルにつきまして御報告させていただきます。

 ボンバルディア社製DHC8―400型機、これは現在我が国で二十二機運航されておりますけれども、平成十五年に導入以来、これまでに、先日の高知空港で起きました航空事故、さらに、平成十六年に同じ高知空港で滑走路逸脱という重大インシデントを一件経験しております。また、それ以外に、機材トラブル等によります出発空港への引き返しですとか、あるいは緊急着陸等のいわゆるイレギュラー運航、これを七十七件経験しております。

 例えば、脚関係のトラブル、脚が上がらなかったり、あるいは脚がおりなかったり、あるいは上昇中に客室内に白い煙が出てきたり、これはエンジンの内部部品の破損により、エンジン潤滑油、オイルが霧状になってエアコンに紛れ込んで客室内に入ってきたものでございますけれども、こういったようなトラブルを経験しております。

 そんな中で、先日の三月十三日、高知空港において起きました事故の概要について御説明いたします。

 これは、全日空の子会社でございますエアーセントラルという会社が運航する便でございましたが、大阪発高知空港行きの便で、高知空港に進入中に、通常操作により脚下げを行ったんですけれども、前脚がおりないということで、もう一つ、非常用でございます手動の脚下げ装置、これの操作を試みたんですけれども、やはり前脚がおりないということで、そのままの状態で高知空港にいわゆる胴体着陸をしたという事故でございます。乗客が五十六名、乗員が四名、六十名搭乗されておりましたけれども、負傷等の被害はございませんでした。

 これにつきまして、前脚の格納扉、これをロックする機構があるわけでございますが、そのロック機構で、リンクとリンクをとめておりますボルト、これが脱落をしておりまして、そのボルトの周辺にございます、ボルト穴に圧入してございますブッシングと称する金属の円筒でございますけれども、これが抜け出ておりまして、これが周辺の構造部材に当たって、そこで動きが拘束をされてドアが開かなかったということが明らかになっております。ただ、そういうボルトが脱落し、あるいはブッシングが抜け出ていた原因については、ただいま私どもの航空・鉄道事故調査委員会で原因を調査中でございます。

 この事故を受けまして、私ども航空局といたしましては直ちに、そのボンバルディア・ダッシュ8、これはダッシュ400だけでございませんで、ダッシュ100、200、300を運航する国内の事業者すべてに対して、前脚の手動操作系統に関する緊急点検、これは一斉点検を指示いたしました。結果は、特に異常ございませんでした。

 その後、さらに十六日、三日後でございますけれども、前脚ドア機構の詳細点検、通常は四千飛行時間ごとに行われるC整備の機会に詳細点検をすることになっているんですけれども、これを十分の一の四百時間ごとに行われますA整備の機会に実施するようにということで、短縮をするように指示いたしました。これもすべての国内の運航会社に対してでございます。

 さらに、十九日でございますけれども、国内のダッシュ8、これは100、200、300、400、すべての運航会社を招集いたしまして、安全対策会議というものを開催しております。ここでは、それまでの判明しております事故の状況ですとか、あるいは航空局からの点検等の指示の再確認、さらには今後の対策等についての検討をしていくことを確認いたしまして、第一回目の会議は終了しております。

 その後、三月二十日でございますけれども、熊本空港におきまして、天草エアライン、ここは、ちょっと形は違いますけれども、一機だけ同じボンバルディア社製のDHC8―100型機を運航しておりまして、この天草エアラインのダッシュ8機が熊本空港に進入中に、やはり脚下げ操作を行ったんですけれども全脚がおりない、すべての脚がおりないということで、また手動の操作系統を用いまして脚出しを試みたところ、今回は三脚ともすべておりたということで、そのまま通常に着陸をいたしまして、事故には至らなかったというような事例がございました。乗客十五名、乗員三名、計十八名が搭乗しておられましたけれども、今回も負傷者等ございませんでした。

 この件につきましては、その後、私どもも検査官を現地に派遣するなどして確認いたしましたところ、脚の上げ下げ操作をするレバーがコックピットにございますけれども、そこからの信号を油圧系統、実際の脚出しは通常操作では油圧によって操作されるわけですけれども、その油圧系統に伝達する電気回路の一部、これは途中に一つスイッチがあるんですけれども、そのスイッチの端末の、電線をとめるターミナルのねじが緩んでいたということで接触不良がございまして、通常操作により脚がおりなかったということが判明しております。

 これに対しましても、当日、その運航者に対しましては、当該部を修理し、作動点検、さらに念のため翌日飛行テストをして機能を確認した上で、運航を再開しております。

 また、他の運航者に対しましても、この情報を提供いたしますとともに、当該部の目視点検をするように指示いたしております。

 ボンバルディア機に対しましては、一昨年、昨年の初めぐらいまでいろいろトラブルが多発をしたということもございまして、実は昨年の四月に、私ども航空局の担当官を、カナダ・トロントにボンバルディア社の本社がございますけれども、こちらに派遣いたしまして、ボンバルディア社、それからボンバルディア社を管轄いたしますカナダの航空当局、さらに日本の運航者も含めまして四者で会談、会議を持ちまして、この際に、ボンバルディア社に対しましては、トラブルの原因究明と再発防止策の徹底、あるいは設計の改善等について強く申し入れを行ったところでございます。また、カナダの航空当局に対しましても、ボンバルディア社への一層の指導監督の要請を行ったということでございます。

 その後、ボンバルディア社からは、それまでトラブルのあった部品につきまして、その設計改善ですとか、あるいは製造品質を向上するというような取り組み等の是正対策を約束し、また実際に、幾つか改良された部品が提供されたり、あるいは製造工程が改善されたりというような対策が講じられてきております。

 あと、国内でボンバルディア社のDHC8型機を運航しております運航者を招集しまして、今回、高知の事故直後、三月十九日に一度、安全対策会議を開催しておりますが、その後また、一週間後の二十六日、これは天草のトラブルがあったことも受けまして、二回目の、再度、安全対策会議を開催しております。

 それまでの事実関係の情報の共有、あるいは今後の対応等について検討したところでございますけれども、運航者の中では、全日空あるいは日本航空におきましては、第一回目の会議を受けまして、さらに自主的な点検というのをゴールデンウイーク前までに全機にわたって行うというようなことを発表しておりまして、これについても情報の共有を行っております。

 最後に、まだ、高知の事故につきましては、現在、事故調査委員会が原因を調査中でございますので、その状況を今後も逐一モニターしながら、あわせて、ボンバルディア社に対して再発防止あるいは原因究明等へのさらなる協力を要請するとともに、カナダ航空当局に対しても連携をとりながら、ボンバルディア機の安全向上あるいは安全の維持につきまして努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

塩谷委員長 以上で政府の報告は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 次に、参考人各位から意見を聴取いたします。

 それでは、河内参考人にお願いいたします。

河内参考人 河内でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、大学で航空宇宙工学の研究と教育に携わっております。本日は、そのような立場から意見を述べさせていただきます。

 まず、航空機の安全システムについてお話しいたします。

 現在の航空機の安全システムは、多くの失敗の歴史の積み重ねによってでき上がっております。その考え方は、まずトラブルは生じるものだと考え、その発生を念頭に置いて、たとえあるトラブルが発生しても、その多くは別のシステムによってカバーして、全体として安全を保障するようにしています。その視点から最近のボンバルディア機の一連のトラブルを眺めると、一応このシステムは何とかうまく機能して、死傷事故に至ることを食いとめています。

 そのうち、最も厳しかったのは高知空港のトラブルですが、この場合は、システムのほとんどは破れてしまって、最後の緊急着陸の操作で何とか死傷者を出さずに済んだということになります。あのとき、もしパイロットがこのような事態の手順を熟知せず、ふだんからそれに対する訓練を積んでいなかったら、あるいは燃料をほとんど使い尽くしてから着陸するという正しい手順を踏まなかったら、また、滑走路わきに消防隊が待機して、着陸後すぐに放水できる態勢をとっていなかったらと考えると、過去の経験に学んで日ごろから多くの準備がされていたことに思い至るのです。

 しかし、この高知空港の事故では、私には気がかりな点が一つあります。それは、心配していた機体の心配していた箇所でトラブルが起きたという点です。我が国や欧米における最近の事故やインシデントは、思いもかけない機種の思いもかけない箇所に発生したトラブルに起因することが多いのです。技術の進歩や経験の体系化によって、心配している機種の心配している箇所はほぼ安全であると思っていた私には、この点が気になります。

 次に、現在までに報道されている情報から、一連のトラブルについて私が気づいた点を幾つかお話しします。

 まず、機種の急激な交代という現象があります。

 航空機の乗客は、私を含めてかなりわがままなもので、多くのものを輸送システムに望みます。その中で、より便利な、より運賃の安いという要望から、現在、世界的に機体の小型化が起こっています。ある一定の数の乗客を二点間で運ぶとき、大型機で少ない回数を運ぶより小型機で多くの回数運ぶ方が、乗客にとってはいつでも乗れるという点で便利であります。また、大型機より小型機の方が機体の価格を安くできます。

 さらに、ジェットエンジンとターボプロップエンジンを比較すると、ターボプロップエンジンの方がエンジン効率が高く、同じ重量を同じ距離運ぶための燃料代が安く済みます。特に、大阪と高知間のように、ジェット旅客機が燃料効率のよい高度を十分に使えない近距離飛行では、ターボプロップ機の優位性が増します。最近の航空燃料の高騰により、この燃料代の問題は航空会社にとって重要性を増しております。

 以上のような理由で、数十人から七十人程度の乗客を乗せるターボプロップ機が急速に使われるようになってきました。

 このような機体は、主にボンバルディア社でつくられています。ボンバルディア社は、歴史のある、世界に広く知られた航空機製造会社です。しかし、その歴史の多くの部分は、三十人乗り程度以下の小さな機体の製造の歴史で、七十人乗り程度の機体の製造は、ボーイング社やエアバス社と比較するとかなり短いのです。

 次に、トラブルの起こった車輪の設計の難しさについてお話しします。

 航空機の車輪の設計は、一般に思われているよりもはるかに難しいのです。我々の大学では、学部の学生に航空機全体の設計の課題を与えますが、学生は車輪の設計に苦労することが多いのです。車輪は、離着陸時に機体の総重量と同程度の集中荷重を支えなければならない上に、離陸した後は胴体内に引き込まなければならない。その結果、大きな力を支える車軸は、力を胴体の主要構造部材に分散してうまく伝えなければならないけれども、胴体に引き込むときは、この主要構造部材に接触することなく、予定した空間におさめなければならない等、数多くの難しい条件があります。

 以上の背景をまとめると、ボンバルディア社の機体に幾つかの設計、製造上の改善点が見出されたり車輪のトラブルがあった背景には、この難しい課題に対して設計、製造、運航にわたる経験の不足が考えられると思います。

 したがって、今後、同機のトラブルが、通常の初期故障のように、経験を積むことによる技術の成熟とともに減少していくか、あるいは機体固有の問題点として起こり続けるかの見きわめが重要であると考えます。

 以上で私のお話を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、久保参考人にお願いいたします。

久保参考人 日本航空技術協会会長の久保でございます。よろしくお願いいたします。

 私、もう実務からリタイアしておりますので、ボンバルディアの機体についてとか個々のトラブルについての情報というのは新聞とかホームページに出ている程度の情報しかございませんけれども、これらの情報と私の長年の航空業界での経験から、一般論的に考えていることを申し述べさせていただきたいと思います。

 三月十三日ですけれども、高知空港の事故機に搭乗されていたお客様はもとより、テレビ等で詳細を見られた方々が、もうこんな飛行機には乗りたくないというふうに考えられたのは当然のことだと思います。ただ、私は、同時にまた、非常に厳しい状況の中での、操縦士それから客室乗務員、これらの対応は見事であったなというふうに感じました。

 我が国の航空安全の状況というものについて考えてみますと、一九八五年以降二十一年、一九八五年というのは御巣鷹の事故があった年ですけれども、これ以降二十一年以上にわたって人命にかかわる事故が発生しておりません。これは、データ上から見ると、世界トップクラスの安全レベルというふうに言えると思います。

 こういう世界のトップクラスの安全レベルというのが、たまたま運がよかったからそうなってきたんだというふうには私は思いません。私は、我が国には世界トップクラスの航空安全を支えているシステムがあるからだというふうに考えています。

 そのシステムというのは何かといえば、国土交通省航空局に代表されます官の仕組みとか各エアラインの社内の航空安全体制、それからやはり操縦士、客室乗務員、整備士、技術スタッフといった方々の技能レベル、こういったものが一体となって安全のシステムを構成しているというふうに考えております。

 過去においても今回のような事故やトラブルに悩まされたことというのは実際何度もあるわけですけれども、その都度、この総合的なシステムの中で大事に至る前に適切な対応がとられて、その結果として高い安全レベルが維持されてきたというふうに考えております。

 過去の安全実績が将来の安全を保証するものではないということは言うまでもないわけですけれども、それにしても、国民の皆様には、余りに過剰な心配をされることがないようにお願いを申し上げたいなというふうに思います。

 ボンバルディア社ですけれども、これは、以前からあった中堅の航空機メーカーをどんどん買収しまして、リージョナル航空機とかビジネス機の最大手になった会社です。ただ、今回問題になっていますDHC8系列を担当している部門というのは、戦前からの航空機メーカーのデハビランド・カナダということだと思います。このデハビランド・カナダは、一時、米国のボーイング社が保有していましたけれども、一九九二年にボンバルディア社が買収しました。ボーイング社が買う前はカナダの国有企業みたいな形だったと思います。

 そして、DHC8―100型という最初の機体は一九八四年に運用を始めておりまして、これは三十七席程度の原型バージョン、小さな飛行機。その飛行機の、ダッシュ100のエンジンを出力向上型に換装したものがダッシュ200型というものです。さらに一九八九年に、ダッシュ200の胴体を延長しまして五十六席程度にしたものがダッシュ300型ということになります。

 これと違いまして、ダッシュ400型というのは、ダッシュ300をベースにはしているんですけれども、実質的には多くのシステムが最新のものに入れかえられております。いわゆるハイテク機のイメージに近い、最新のバージョンというふうに思います。

 二〇〇〇年から運用が始められました。胴体はさらに延長して七十四席程度になっておりますけれども、それだけではなくて、新型のエンジン、新型のプロペラ、新型の空調装置、新型のデジタル操縦室、それから新設計の客室振動軽減装置等々、多くの分野の最新技術を取り入れて、大幅な設計変更がなされています。今回問題になっています脚関係は、ダッシュ300と似たような設計のようですけれども、サプライヤーが変更されています。それから、ダッシュ400につきましては、機体構造を中心に、我が国の三菱重工業がリスクシェアパートナーとして開発に参加しているというふうに聞いております。

 仕様書を見てみましたけれども、高速性能、低燃費、客室の居住性、空港騒音、運航コストの低減といったいろいろな面で、以前のダッシュ300に比べると、そういうものに全くなかった、非常にいろいろな特徴のあるプロペラ式のリージョナル旅客機であるなというふうに思っております。

 ただ、問題なのは、航空局のホームページを見せていただきましたけれども、そこにイレギュラー運航の一覧表が出ておりまして、見ますと、ダッシュ400のトラブルが大変多いことが出ています。ダッシュ300以下もあるんですけれども、やはりダッシュ400のトラブルが多い。トラブルの内容を見ますと、非常に多岐にわたっていますけれども、やはり脚に関係したトラブルが二年間に十六件ということで、数えてみましたら全体の二五%を占めています。トラブルの数も多いんですけれども、脚のトラブルだけでその中の二五%を占めているというのは異常だなというふうに言っても過言ではないと思います。

 このような状況の中で三月十三日の高知での事故が発生したということなんですけれども、原因についてはまだ調査中ということです。ただ、新聞等で今まで明らかにされた状況から考えますと、前脚操作系統のボルトが抜け落ちた、もしくは初めからなかったかというようなことで、今までイレギュラーにつながっているトラブルとはちょっと違う原因によるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、この問題については、既に、ボルトの健全性、それから抜け落ち防止用のコッターピンの状況等、全機点検して健全性が確認されていますので、この原因ですぐ事故が起こることは考えられないというふうに思います。

 それから、イレギュラー運航のリストを見ますと、脚関係が多いんですが、それだけではなくて、ステアリングシステムとかプロペラ制御システムとか空調装置、その他にも、ちょっと目立った、いろいろなシステムで繰り返しトラブルが発生しているということが見てとれます。私は、全体的な状況から見まして、ダッシュ400機については、まだ初期トラブルが技術的に十分解決されていない状況ではないかなというふうに判断しております。

 と申しますのは、どんな飛行機でも、運航を開始して当分の間はいろいろな初期トラブルが発生するというのは普通のことだと思います。

 私の経験でいえば、例えば、国産初の旅客機のYS11を開発した日本航空機製造という会社に最初私は入社したんですけれども、最初からYS11をずっと見ておりましたけれども、やはり引き渡しを開始した直後からトラブル、トラブルで、もう大変な状況でした。これをエアラインの技術者とメーカーの技術者で連携して一つ一つ技術対策を実施したわけなんですけれども、そういったものが大体落ちついた運航ができるようになるには、YSの場合は七、八年はかかったんじゃないかというふうに思っています。

 このとき有効だったのは、YSを運航している国内の全エアラインとメーカーの技術者が参加して作業部会的な活動を、これは官のサポートも得まして活発に行いました。そして、技術的に一つ一つ問題をつぶしていったということが結果としていい状況につながっていった。

 それから、全日空の経験ですけれども、ロッキードトライスターを導入したときにもエンジンを筆頭にトラブルが相次いだわけなんですが、このときもエンジンメーカーと協力して特別な対応体制をとりまして、一つ一つ問題を解決していきました。落ちつくまでには五、六年はかかったように思います。それから、その後のハイテク機の先駆けであるボーイング767、これについても、少しよかったんですが、三、四年はかかったように記憶しております。

 では、なぜ初期トラブルが安定するのに五年も六年もかかるのかということでございますけれども、やはり初期トラブルへの対応策として一番有効なのは技術対策、要は技術的な対策で改修をするということだと思います。

 今回の脚みたいに、何か問題が発生した場合、まずエアラインの技術者が原因は何かということをいろいろ調べまして、メーカーの技術者と情報交換をして、メーカーに改善を要求します。メーカー側は、サプライヤーも含めて、独自の立場から技術検討を行います。問題によっては、試作品をつくったりテストをしたりします。解決策がまとまったら、またエアラインとそれでいいかどうかといったような調整をして、メーカーとして決定を行います。

 今度は、監督官庁とメーカーで調整して、官の試験への立ち会いだとか報告書の提出等を行って、この改修は安全上問題がないという官からの技術認証を受けなきゃいけません。それと並行して、サービスブレティン、改修指示書みたいなものですけれども、これをメーカーが用意して、官の認証が得られた後、部品の製作等を行って、キット組みなども行います。エアラインはそのサービスブレティンを受け取ると、今度は作業手順書に書き直して、部品の手配や確認を行います。

 さらに、飛行機は毎日飛んでいますので、運航に支障が出ないよう工事の時期等を計画いたします。機数が多くて改修内容が多いというような場合には、全機に改修を施そうということになると、何年もかかる場合が出てくるわけです。非常に重要な問題で優先的に検討を進めたとしましても、全機の改修が終わるまでには一年程度はかかるのが普通だと思います。対策がもたつくと、すぐに二、三年はたってしまうことになります。

 しかも、初期トラブルといいましても、一度にまとまってどっと出るわけじゃなくて、運航していると次から次へと初期トラブルが出てくるということで、それに対して一つ一つ今言ったような対応をしなければいけないということになりますと、五、六年もかかってしまうという結果になります。大型機の場合、私の経験では、初期トラブルの対応として数百件を超える技術改修を行うということは全然珍しいことではありません。

 そういう初期トラブルが発生していても、この間、安全を確保していかなければいけませんが、これについては、トラブルに応じて、例えば点検を頻繁に行うとか、部品を早目に交換するとか、使い方の手順を工夫するとか、注意喚起の情報を出すとか、こういった対応を行うことが必要です。

 DHC8―400型機が、二〇〇〇年から運用を開始されていますので、七年もたっているのに、もう解決していいんじゃないかと思われるのに、いまだに初期トラブルが継続しているという理由は、私は二つのことがあると考えております。

 一つは、ダッシュ400を運航しているリージョナルエアライン、これは専業のエアラインもありますし、大手エアラインの子会社もありますけれども、やはりいずれも規模が比較的小さいところが多いわけですね、大手ほどの技術力を持っていない。したがって、問題が発生しても、すぐに原因を的確に把握して、メーカーに情報と、圧力をかけてメーカーに適切な技術対策を開発させる力がどうしても弱いということが一つあるのではないかというふうに思います。

 それから二つには、リージョナル機は、やはり世界的に見ても比較的ローカルな路線を中心に運用されることが多いので、競争も幹線ほど激しくはないということで、エアラインにしてもメーカーにしても、多少ディレーがあったりイレギュラー運航があっても、まあしようがないかなと、やや鈍感といいますか、大型機を運航している大手の会社ほどの危機感といいますか、そういったものが若干弱いのではないかなというようなことが原因として考えられると思います。

 私は、このダッシュ400の初期トラブルを解決して、信頼性、安全性を高めるためには、我が国として今申しました二つの要因に切り込むことが重要だというふうに考えております。

 一点目につきましては、初期トラブルが安定化するまでの間、JACだとかANKの親会社でありますJALそしてANA、これらの技術陣がグループ会社の技術者と協力して、それからまたグループを超えた協力体制を構築して、ボンバルディア社の技術者と一緒になって技術対策の早期開発を推進する、こういった取り組みが必要ではないかなというふうに思います。

 それから二点目についてですけれども、やはりJALとANAのハイヤーレベルの責任者の方や航空局の方々が、機会を見て、ボンバルディア社のハイヤーレベルもしくはカナダの監督当局に問題意識を持ってもらうように働きかけることが有効ではないかなというふうに考えております。

 以上、ダッシュ400のトラブルが多いものですから、ダッシュ400に焦点を当てて考えたわけですけれども、ダッシュ300以下の機体につきましても、ダッシュ400よりはトラブルは少ないように見えますけれども、何か似たような状況が長引いているようにも思われます。したがって、今申し上げたようなダッシュ400への取り組みがなされれば、ダッシュ300以下についても波及的な効果があるのではないかというふうに考えております。

 漏れ伺うところでは、既にそのような取り組みは一部始まっているようでありますし、そのような努力を関係各社、官を含めましてますます強めていただいて、できる限り早く有効な技術対策、技術対策が重要だと思います、技術対策によって初期トラブルの問題を安定化させていただきたいというふうに願っている次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、辻村参考人にお願いいたします。

辻村参考人 定期航空協会の辻村でございます。

 このたびは、航空の安全、安心について、関係者の皆様に御迷惑、御心配をおかけしていることを、航空運送事業者の団体である定期航空協会を代表しておわび申し上げます。

 私ども航空業界にとって、運航上の安全確保は経営の基盤であり、社会への責務であることを十分に認識しつつ、今後とも、日々の安全運航の堅持と信頼の回復のため、業界団体としても役割を果たしてまいる所存でございます。

 それでは、早速ですが、本日は、定期航空協会が行っております航空の安全、安心に関する活動状況を御報告させていただきます。

 まず、当協会の概要について御説明申し上げます。

 当協会は、一九九一年、平成三年十二月に設立された、年間の旅客輸送実績が百万人以上、または客席数が百席ないしは最大離陸重量が五十トンを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦事業者の団体でございます。現在の会員は、事業会社十六社及び持ち株会社一社の計十七社が加入しております。

 定期航空協会の設立目的は、航空運送事業に関する諸般の調査研究等を行い、我が国航空運送事業の健全なる発展を促進することであります。

 主な事業活動といたしましては、一、航空運送事業に関する調査研究、二、政府、国会、政党等に対する陳情、要望、三、航空利用者への広報活動、四、法務関係諸問題に関する事項、五、その他本会の目的を達成するために必要な事項を行っております。

 次に、定期航空協会の安全に関する取り組みについて御報告いたします。

 安全かつ安定的な輸送サービスの提供は、航空事業者として最も重要な社会的責務と考えており、従来より業界共通の安全に係る課題に積極的に取り組んでまいりました。

 二〇〇五年六月には、国土交通大臣の御指導もあり、会員各社における安全対策や安全意識の向上に関する取り組みに対して、当協会は、航空業界の横断的視点から寄与し、業界全体として安全に関する知見を広げ、会員各社の安全対策の充実につなげることを目的に、会員各社の社長を委員とする安全委員会を新設いたしました。

 これまで合計十三回、委員会を開催してまいりましたが、会員間での安全に関する取り組みについて情報共有を行ったり、国等の各機関や先進的な航空会社の安全部門責任者等の外部有識者から、安全管理体制の構築、運用事例にかかわる情報収集、知見の共有を行うなど、定期的に安全対策をテーマにした論議を行い、より安全性を向上させるためのトップの役割、特に、いかに各社の安全管理体制にトップとして魂を込めるかといった観点を中心に、認識の共有化及び深化を図ってきている次第でございます。

 また、昨年十月の改正航空法の施行に際しては、安全管理体制や安全に関する情報公表、報告制度の円滑な導入のために、当協会は積極的に行政との調整や会員各社のサポートを行ってまいりました。

 今般の高知空港におけるANAグループ機のボンバルディア機、通称Q400の緊急着陸事案につきましては、安全に関するトラブルが各社の努力や業界団体の取り組みによって鎮静化しつつあった中で、改めて航空に対する不安感を募らせる結果となり、大変遺憾に思っております。

 ANAグループでは、事故発生後、直ちに全機のQ400及び類似機種であるQ300の運航を停止させ、国土交通省の指示である耐空性改善通報に基づく緊急点検に加え、さらにANA独自の追加点検を実施した上で運航を再開し、その後も、さらに健全性を確保するために、着陸装置や操縦装置に係る重要装備品に対する特別点検や部品交換を重ねて実施していると聞いております。

 また、同型機を保有する他の会員各社においても、御当局及び航空機メーカー等との情報共有を図りながら、同様に対策強化を実施しているとも聞いております。

 当協会といたしましては、当該事故に関する航空・鉄道事故調査委員会の詳細な事故原因の究明を踏まえた各社の対応や、同型機を保有する各社が講じる当該運航機材のより高い安全性の確保に向けた取り組みに関して、適宜、業界内の横断的な情報の共有等を行っていく考えであります。

 先ほども申し上げましたとおり、当協会は、これまで約二年間にわたって航空各社トップによる安全委員会を定期的に開催し、安全に関する航空法改正を踏まえた各社の安全管理体制の確立を初めとする安全性向上の取り組みに資する活動を協会として行ってまいりました。

 これらの活動は、地道な活動ながら業界の安全性向上に少なからず寄与しているものと認識しておりますが、安全に関する取り組みにはこれで十分ということはなく、今後とも、会員各社の安全管理体制の確実な運用及び充実や、情報、知見の共有等のために、業界団体として行うべき役割を果たしてまいる所存でございます。

 以上で私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、杉浦参考人にお願いいたします。

杉浦参考人 航空アナリストの杉浦一機でございます。

 私の専門分野としましては、輸送、サービス、安全性等を主にやっておりますが、利用者の立場に立った論評を心がけております。

 きょうの発言内容につきましては、事故の背景、対応の問題点、今後の対応について発言をさせていただきたいと思います。

 まず、事故原因ですが、まだ十分な情報がそろっているわけではございませんが、私は、製造過程におけるミスという可能性が強いのではないかというふうに推察をいたします。

 まず一点は、先ほどからいろいろ時期については議論も出ているところでありますが、初期不良の時期としてはかなり長いのではないか。といいますのは、ダッシュ300が八七年に就航いたしまして、ダッシュ400の就航が二〇〇〇年、JAL、ANAが導入いたしましたのが〇三年ということからしますと、かなり、この時期は既に経過をしているのではないかというふうに思います。それから、導入の決定時点で、世界的に事故とかトラブルの多発など悪い評というのは特になかったように思います。四番目に、不良の発生箇所はこの時点での点検の対象外であるというようなことを考え合わせますと、かなり製造過程における問題があったのではないかというふうに思います。

 まず、今回の事故後の国内の対応についてですが、一点は、国交省の対応は大変に早かったというふうに評価をしております。それは、事故調の現地調査入りが早かったというだけではなくて、途中結果をすぐに公表されたという点はよかったのではないかというふうに思います。

 ただ、運航再開時期というのはやはり問題が残ったのではないかというふうに思います。当初は部品が開閉装置にひっかかったという場所の特定だけで終わっていたわけですが、翌日になってボルトが脱落をしていたという症状が判明をしたということを考えますと、やはりこの時点で運航再開を決定すべきだったのではないかというふうに思いますので、今後の検討課題としては、重大トラブル後の運航再開への手順を明確化すべきではないか、こういうふうに申し上げたいと思います。

 三番目に、ボンバルディア社についてですが、歴史的には、今まで御紹介があったとおりではありますが、一九三七年にスノーモービル等を主とした輸送機器メーカーとして創業をしております。航空機に乗り出しましたのは、八六年にカナディア社というカナダの法人を買収いたしまして航空機の製造に乗り出しております。その後、八九年にイギリスのショート・ブラザースを買収、九〇年にリアジェットを買収、九二年にデハビランド・カナダを買収というような形で航空機部門の概要をつくってまいりました。同時に、営業スタッフもほかのメーカーで大変優秀なスタッフをまとめてスカウトするというような形で展開をしてきたというふうに聞いております。

 その結果、大変優秀な機体を開発、販売するに至っているわけですが、やはりこの企業としての特徴も幾つか目立っているところがあるのではないかと思います。

 まず第一点は、外部リソースの活用とかMアンドAを多用するなどベンチャー企業的な体質を持っているということ。二つ目には、経営面では、スカウトしたキーパーソンを大変重用いたしまして、マネジメント力の強化に非常に積極的な企業である。製造面では、ジャスト・イン・タイムを導入したり、エンジニアの製品に対する責任強化等新しい手法をかなり積極的に導入しております。その結果、かなり独創的な機体を開発するという結果が出ているということは御承知のとおりです。

 一方、この小型機部門は大変経営的に厳しい状況が続いておりまして、歴史のあるフォッカー、ドルニエ、サーブなどの競合メーカーが経営破綻をしております。そういう点では、このボンバルディア社が非常に重要なメーカーになってきております。近年の商戦では、ジェット機のCRJシリーズというものをかなり中心に売っておりますが、この機体はエンブラエルに比べまして機体が少々重いという評価がありまして、エンブラエルが一時的に優勢を占めているということのようでございます。

 今回注目される点は、この事故機が製造された前後にかなりこのボンバルディア社自体の経営が芳しくない時期があったようでございます。その経営を改善するためにかなり大規模な改革を実施しております。

 まず、事実としましては、〇三年から〇五年に経営不振で赤字決算がかさんでいる。具体的には、これは米ドルですが、〇三年に三億九千三百万ドルの赤字、〇四年に八千五百万ドル、〇五年に同じく八千五百万ドルの赤字を出しております。〇六年は回復になりまして、二千三百万ドルの黒字ということになっております。

 いろいろ現場から伝わってくる情報によりますと、〇三年当時は製造現場の士気がかなり下がっていた、それから〇四年、〇五年の大幅な合理化で現場が多少混乱していたという情報があります。ちなみに、今回の事故機は〇五年の六月に納入されたものであります。

 かつ、注目すべきは、この再建のために大変大胆な合理化を導入している。生産力を三倍にすると同時に、検査員の数を、従業員の比率ですが、一五%から七%に削減をしている。こういう思い切った手法をとりながら生産性を高め、同社ではQCも、品質管理も改善したというふうには言っておりますが、この辺に少し無理があったのではないかということも推察できるかと思います。

 問題としましては、残念ながら、今まで日本はカナダの工業界との関連が非常に薄かったということがあるのではないかというふうに思います。日本でのトラブル多発について、消費者から見ますと、やはり真剣に対応してこなかったという印象が強いのも事実であります。先ほど国土交通省の方から御紹介がありましたように、カナダの運輸当局とボンバルディア社と協議をしたということなのではありますが、残念ながらトラブルを根絶するには至っておりません。

 このボンバルディア社の対応で推測できますのは、やはり日本への販売数がまだ少ない、最初から二十機、三十機まとめて買っていれば別だったかもしれませんが、数機ずつ購入をしてきたということで、日本のユーザーへの力の入れ方が薄いということが問題ではないか。それから、トラブルへの認識が薄い。具体的に言えば、安全に対する考え方が大きく違うのではないか、安全文化が違うことが大きく作用しているのではないか、こういうふうに思います。

 ここで課題は、開発、製造段階のふぐあいの究明と具体的な対策をカナダ側に実行させるということだと思います。

 四番目に、今回のDHC―Q400について少々コメントをさせていただきたいと思います。

 一つは、このクラスの機種として利点が多いということは事実であります。

 具体的には、エンジンのパワーが大変大きく、二つのエンジン、双発ながら七十二席の人員を収容できるという経済性、低燃費である、それから、機体内外とも静かであるという静粛性がある、さらに、プロペラが六枚で非常に高速で飛行できる、飛行時間一時間程度の距離ではジェット機とほとんど変わらない所要時間で到達することができるというようなことから、性能面でエアラインに大変好評であるということは事実であります。

 同時に、乗客からもこの乗り心地、静粛性はかなり評価されております。競合する機種が現在世界にはほとんど存在をしないということも事実であります。九〇年代には、世界的に、世界のエアラインでジェット化の流れが進みましたけれども、二〇〇〇年代に再び受注がこのプロペラ機にも増加をしております。

 五番目に、この機体の日本への導入の問題です。

 九〇年代の日本では、プロペラ機は離島路線用で都市間はジェット機というふうに考えておりました。ところが、航空自由化で都市間コミューター路線がふえ、プロペラ機が多く就航しております。特に、飛行時間の短い路線では、プロペラ機の方が運航コストが安いということでありまして、特にこのQ400は、同レベルのジェット機の約半額、三十億円で購入できるということも魅力になっております。国内では、離島路線でダッシュ100、200が使われておりました。

 400が国内で大幅にふえたのは、伊丹空港のプロペラ枠の厳守ということが〇四年にありまして、ここから急激にふえたわけであります。具体的に言いますと、それまで仮措置としてジェット機に認められていた五十枠をプロペラ枠に戻したことによりまして、日本の大手エアラインはここにこのQ400を多用して、近距離にたくさん導入をしたということがこの機体の増加につながっております。

 最後に、今後の対応ですが、一つは、この機体は日本の耐空証明を取得はしておりますけれども、他国の基準あるいは物づくりの哲学で製造される輸入機である、これを前提に対応策を検討しなければならないのではないかというふうに思います。

 二つ目には、日本の利用者の安全意識、これは必ずしも世界共通ではなくて、欧米に比べますと、やはり安全プラス安心感を日本の消費者は非常に要望している、この意識に合致させるにはどうしたらいいかということが検討課題にあるというふうに考えます。

 具体的には、時間的に考えますと、短期的な部分、中期的な部分、長期的な部分、三つの対応があるかと思います。

 まず、短期的な部分ですが、これは既に業界、国土交通省でやられておりますように、点検サイクルの短縮化ということは申すまでもありません。

 さらに、ボンバルディア社と協力して、事故、トラブルを根絶する。今回の重大トラブルといいますか事故によりまして、ボンバルディア社はようやく真剣になったような印象があります。

 さらに三番目には、ボンバルディア社とカナダの行政当局を含めまして交流を深める必要がある。これまでの薄い関係をこれを機に深めて、両者で真剣な話し合いをする中で経過を確実にフォローする必要があるのではないか、こういうふうに思います。

 それから四番目には、国内では、先ほども御指摘がありましたけれども、各メーカーの壁を越えて、この緊急事態に対応する体制を早く構築していただきたい。具体的には、YSのときには運航各社によります航空技術安全協力委員会というものが設立されたようでありますけれども、それの例も踏まえながら、やはり各社の協力が必要だ、こういうふうに思います。

 二つ目の中期的な対応ですが、現在この機体に対する利用者の不安というものがかなり強いものがあることは事実であります。事実、高知県議会、南国市などが別機種の就航を要請しております。ただ、使用機種の変更ということは大変難しい問題をはらんでおります。

 一つには、コストの増加をどのように吸収するかという問題もあります。同じプロペラ機で代替するにいたしましても、輸送力の減少をどうカバーするのか、運賃の増加をどういうふうに考えるかということがあります。

 これまでのトラブル等を見ましても、事故直後には安全意識が高まりますが、やはり日本では運賃と利便性というものが選択の重要な要素になっております。そういう点で、安全が確立をされているからといって、ここの部分だけ特別高い運賃ということでは、利用者としては納得がいかないということになるかと思います。

 一つの考え方としては、既に退役いたしましたYSをもう一度買い戻すという案もあるようでありますけれども、これは既に各地に散っておりますし、いろいろなエアラインの手に渡っておりますので、十分な信頼性が保証されないという問題があると思います。

 現実的には、やはり現在使っているジェット機の中からここへ切りかえるという案が現実案だとは思いますが、これには先ほど申し上げました伊丹空港のプロペラ枠の変更という問題があります。これは国が進めております空港政策のかなり大きな問題にも影響いたしますので、この部分はかなり大きな問題になるのではないかと思います。

 同時に、空港周辺の方々にも、かなりジェット機に対する誤解がございまして、一九六〇年代に導入した初期のジェット機と同じような印象で、ジェット化に対して敬遠をされている方がまだたくさんおりますので、その辺の誤解を解く必要もあるのではないかというふうに思います。

 さらに、中型のジェット機を導入するということになりますと、採算がとれない可能性があって、路線の存続にかかわるのではないか。今回の高知―大阪線も、プロペラ機にかえて便数がふえたことによってやはり乗客がふえておりますので、ジェット機を入れて便数を減らすことが地元の方にとっての利便性を損なうということにもなりかねないと思います。

 そして最後に、長期的な部分ですが、これはやはり日本独自の安全文化に基づく国産機の開発ということがよいのではないかというふうに私は思います。

 具体的には、日本と欧米との間で安全文化というものが明確に違っております。

 欧米においては、機械物にトラブルはつきものだ、あるいは確率の問題だというような形で、対応をすぐにとらないというケースもたくさんあります。あるいは、原因のわかっているトラブルはそれほど重視しないということがございまして、この辺は、前回、NHKのテレビ番組でもかなり具体的に取り上げておりました。

 一方、日本では、事故だけではなくてトラブルさえ根絶しようとするということで、欧米から見ますと、少し神経質だというふうに見られておりますが、やはり安全プラス安心という部分を日本の消費者が重視しているということでございます。

 現在、国産ジェット旅客機は設計がほぼ完了して、事業化判断の手前にありますが、ビジネス上のリスクを恐れて停留しているというのが実態であります。

 一方、近いところでは、中国が国家主導型で開発を進め、来年に初飛行、〇九年にエアラインに就航予定ということになっておりますが、中国がこの事業化に成功すれば、世界で日本の参入余地はないという見方が強いわけでございます。

 できることならば、国産ジェット旅客機で、日本人の安全文化を満たした飛行機を使うということが日本人としては望ましいなという気がいたします。

 以上でございます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 四人の参考人の方々、大変広範な御意見をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。

 それでは、まず久保参考人からお尋ねをしたいと思います。

 ボンバルディア社のDHC、ダッシュ400とほかのシリーズということで違いはあるんでございましょうけれども、続けまして、天草エアラインでも同じように脚の部分、主脚の部分にトラブルが発生をいたしました。トラブルがあって、よく整備、点検したはずである、そういうことであるにもかかわらず、同じような部分で、あるいは同じようなシリーズの機体で続けざまにこのような故障が起こる。やはりちょっとこれは問題があるんではないかなと思うわけなんですけれども、ボンバルディア社の飛行機について、そういう点で、どんなふうに専門家の立場としてごらんになっておられますでしょうか。

久保参考人 確かに天草のケースを見ましても、おっしゃるように、トラブルがあって、一生懸命緊張してやっているはずだと思うんですけれども、引き続きトラブルが出る。

 ただ、私なんかの整備を経験してきた立場からいいますと、脚が出ないというようなトラブルがあったときには、やはりその系統を中心に一生懸命点検をするわけです。その後、エンジン等のトラブルがその翌々日ですか、あって、欠航になったようなんですけれども、そういう場合は、脚のトラブルは一生懸命見ていても、エンジンのトラブルの方までは多分点検していなかったんではないかなというふうに思います。

 ただ、天草だけではなくて、古いタイプのダッシュ300でも脚関係のトラブルは結構多いわけなんです。これを、私の整備の経験からいきますと、点検で防ぐというのはなかなか現実的には難しい部分がある。

 というのは、それは、明らかにどこかが壊れていて脚がおりないというような状況であれば、見ればわかるんですけれども、繰り返し繰り返しいろいろなふぐあいが出ている状況でなかなか直らないというのは、例えば、脚を操作するリンクの中でいろいろ微妙なところで問題があって、きのうの夜、ジャッキアップして脚上げ下げのテストをして、オーケーだったということで、きょう飛ばしたら大丈夫かといえば、多分、そのテストをしたときとちょっと違う状況になったら、おりないとか上がらないということがあり得る。

 前のフライトで、前便はちゃんと上がってちゃんとおりたのに、次の便は何だかうまくおりない。多分どこか設計の細部のところで問題があって、それがきちっと対応されていないものですから、ちょっと悪い条件が微妙に重なると、おりないというようなことが出てくる、そういう事象ではないかなというふうに思うんですね。

 そういうときは、整備士が幾ら地上でしっかり見ても、なかなか目に見えるふぐあいというのはない。だけれども、実際にやったら、よかったり悪かったりする。これも、毎回だめならはっきりしているんですけれども、たまに起こるというような非常に嫌らしいタイプのトラブルが続いているんではないか。

 これに対しては、私は、やはり点検はもちろんできるだけやることは必要なんですけれども、技術対策でしっかり、何でそんなことが繰り返し起きるんだ、どこが弱点なんだと。私の経験でも、YS11も脚が出ないことのトラブルは結構ありましたけれども、やはり操作系統のメカニズムの細かいところの調整がちょっとずれちゃうとひっかかるとか、そういうような問題がいろいろありまして、そういうところにきちっと設計で、そういうずれが生じないような対策をやることで、先ほど言われましたようにYSの評価が結構高くなったわけですけれども、やはりそういう技術対策の結果でYSの評価が上がったということだというふうに思います。

 したがって、今のボンバルディアの機体に対しては、まだ技術対策が、ダッシュ300も含めて、不足しているんじゃないかというふうに考えております。

盛山委員 では、河内参考人にお伺いしたいと思います。

 今、久保参考人から、整備あるいは事後的な点検でカバーできる範囲には限界がある、そういう趣旨のお話かなと思うんですね。飛行機というのは、あれだけ重いものが空を飛ぶわけで、何万点なのか何百万点か知りませんけれども、数多くの部品が組み立てられて空を飛ぶ、そういう状態でありますから、それを全部うまく点検してというのは現実問題なかなか難しいのかなという感じもいたします。

 また、久保参考人がおっしゃられたように、いつもいつもトラブルであれば原因とその対策はとりやすいのでしょうけれども、たまに起こるといったようなものについては、余計に、どうしてそういうふうになるのかわかりにくいといったようなところもあるのかなと思うわけなんですけれども、そもそも航空機の設計というのは、最初に設計すればいいというものではなくて、引き続き長く使っていくものですから、整備、そして点検をする、メンテナンスをする、そういう前提で設計をしているものじゃないかなと思うわけなんです。

 航空機の設計に当たって、今、久保参考人がおっしゃったような、使っている間の、実際に運航している間の整備、その他の問題も含めての安全問題を機体の設計にどのように反映しておられるのでしょうか、お尋ねしたいと思います。

河内参考人 お答えします。

 おっしゃられるとおり、設計でカバーしなければいけない問題、整備でカバーしなければいけない、あるいは品質管理を改良しなければいけない、そういうそれぞれの問題があります。そのうち設計では、現場からの声を聞きながら、特に細部の設計を変えることが多くあります。例えば、想定以上にボルトに荷重がかかる場合にはボルトをちょっと太目にするとか、そういう細部の設計がいろいろ変わります。

 それから、安全問題を一般的に設計でどうするかというのは、先ほど申し上げましたように、必ずトラブルというものはあると思って、それをいかに別のシステムで食いとめるかということを考えます。ですから、コントロール系を二重系、三重系にしたり、あるいは油圧が壊れたときに脚は重力によって出やすい方向に設計するとか、トラブルを前提に置いて設計するというのが基本的な考え方です。

盛山委員 ありがとうございました。

 では次に、杉浦参考人にお伺いいたします。

 ボンバルディア機のメリット、デメリット、その他についても今伺ったところなんですけれども、伊丹のジェット、プロペラの発着枠のことなんかも大きな採用のインセンティブになったのではないかというお話もありました。ただ、ほかの機材に比べて、これまで死傷には至っていないわけなんでしょうけれども、トラブルが割合あったんじゃないのかなというふうに感じられるわけですね、特にダッシュ400についてということかもしれませんが。そうすると、どうしてエアラインがこの飛行機をよく使うということになっているのでありましょうか。

 つまり、先ほどから、フォッカーですとかエンブラエルですとかサーブですとか、ほかの機材との採算性の問題その他もございましたけれども、DHC、デハビランドという名前は昔からなじみがあるわけですけれども、ボンバルディアという名前になってからはまだ割合新しい。そして、ダッシュ400はDHCの中でも大きく内容を変えた新鋭のハイテク機ということになるわけなのでございましょうけれども、エアラインが飛行機の機材を選ぶに当たっては、採算性、それから旅客の定員ですとかあるいは整備の問題ですとか、もちろんいろいろあるのだろうと思うんですが、杉浦参考人の目からごらんになって、ボンバルディア機が、ほかの小型のジェット、あるいは、小型というのでしょうか、この規模ですと中型というのかもしれませんが、ターボプロップと比べてどこがメリットがあるのか、教えていただければと思います。

杉浦参考人 このトラブルというのは、やはり事前の問題では日本のエアラインも想定をしていなかったと思うんですが、性能、それから採算性、これはほかの機種に比べましてはるかに進んでいるというふうに思います。

 ちなみに、日本で日本エアコミューターさんが使っておりますサーブ340という飛行機は、双発で三十六人乗り、ほぼ半分であります。それから、日本が開発しましたYS11は六十四席が最大ですので、それに比べましてもかなり多いということで、現在、双発のエンジンで七十人以上乗せられるプロペラ機というのはほかに存在しないわけですね。

 そういう点からいいまして、やはり航空会社としては、経済性という点、運航コストを安くする、特にジェット機に対抗する、所要時間も余り変わらずに運航コストを安くできるという点からしますと、非常に魅力的な飛行機だというふうに考えます。

 それに比べまして、非常に静かである。これは空港の周りもそうですし、乗っている乗客にとっても非常に静かな飛行機であるという点からしますと、逆に、トラブルが多発しなければこの飛行機はかなり満足度の高い飛行機ではないかな、こういうふうに私は思います。

盛山委員 ありがとうございました。

 それでは、辻村参考人にお尋ねをいたします。

 エアライン、もちろん今航空各社を取り巻く環境は大変厳しいと思います。燃料代も上がっている、人件費をどういうふうにして抑えていくか。あるいは、航空各社だけではなく、新幹線その他の鉄道あるいは高速バス、距離にもよりますけれども、いろいろなところとの競争をしておられる。その中でどう経営状態をよくしていくかという大変厳しい環境だとは思うんです。

 ただ、何といっても公共交通機関でありますし、特に空を飛ぶ飛行機ということで、一たん何かあると、ほかの鉄道やバスと違っておっこちてしまいますので、安全問題について最重点課題としてこれまでにも力を入れてこられていると思うんですけれども、航空会社の経営の観点からいきまして、安全への投資の優先度というのでしょうか、いろいろなものに経費は必要なわけではありますけれども、安全への投資というのを全経営の中でどの程度重点を置いてやっておられるのか、そこら辺をお尋ねしたいと思います。

辻村参考人 安全につきましては、会員各社の経営の基盤でございますし、また社会に対する責務であると考えております。したがいまして、安全性の確保は何よりも優先されるべきものと考えております。

 その安全への投資額については、安全というくくりで投資額を一律に切り分けるということは難しいと思いますが、ともあれ、安全に対しては最優先で経営資源を配分する、そういう姿勢で各社対応がなされていると考えております。

盛山委員 ありがとうございました。

 当然といえば当然の答えではあるんですが、とにかく安全について、人件費ですとかほかの経費のように切り込むということはないようにくれぐれもお願いしたいと思います。

 さて、辻村参考人にまたお尋ねをしたいんです。

 先ほど杉浦参考人から、やはり経済的に見ても、いろいろなほかの機種と比べてもボンバルディアの飛行機がいいんじゃないかな、競争力があるんじゃないかな、こういうようなお話もありました。しかしながら、こうやって事故その他トラブルが起こってまいりますと、高知県のいろいろな御要望その他から見ても、あるいは実際にお乗りになるユーザー、乗客の皆様の今後の動きがどうなるか、それはわかりませんけれども、必ずしもボンバルディアの飛行機が経営上採算性がいいものであるかどうか、そういったことも今後わからなくなってくる可能性もあるんじゃないかなと思うわけなんです。

 それで、なかなかいいサイズの飛行機がないというお話をさっき杉浦参考人から伺ったところでございます。たしか以前は、小型のジェット機、百人前後、百人を切るぐらいのようなものもあったかとは思うんですけれども、ターボプロップの限界の八十、九十というところとちょうどオーバーラップするようなターゲットかなと思うんですね。

 需要との関係で、マーケットとの関係で、どういう機材を入れるのがいいのか、小型機にして便数をふやす方がどの程度いいのか、また採算性の問題ですとか、あるいは機材をふやすことについての整備、クルーの問題、いろいろな問題があると思うんです。

 そういう中でも、今の環境でボンバルディアの飛行機を今後ともお使いになっていくのかなと思うんですけれども、その辺のところ、ボンバルディア機を選んでいかれる、あるいは使っていかれるということであれば、その御判断はどういうことなのかをお尋ねしたいと思います。

辻村参考人 各航空会社は、公共交通機関という使命を持っております。今先生まさにおっしゃられたように、路線網について、やはりお客様の利便性、各空港の諸要件、旅行需要、そういったものを勘案して、どの機種を使っていくかを検討していると考えております。

 基本的にどのような機材を導入するかは、これは会員各社の高度な経営判断に属する事項ではないかと思いますけれども、そもそもの大前提として、今運航されている航空機というのは十分な安全性の確保が講じられていると認識しておりますし、安全性が担保されないような飛行機、航空機は運航しないという立場で、各社にて対応していると理解をしております。

盛山委員 ありがとうございました。

 エアラインは、一たんお持ちになった以上、それを使うということでは、今後の運航管理、整備、そういうことになるでしょうけれども、くれぐれもこれまで起こったようなトラブルが繰り返されずに済むように、ぜひ力を入れていただきたい、そういうふうに考えております。

 それでは、久保参考人にまたお尋ねをいたします。

 整備の点検の間隔を短くしていこうかというようなお話を先ほども伺いましたけれども、この飛行機が設計されたカナダで想定しているものと日本の国情の違いというのがあるんじゃないかなと私は思うわけなんです。例えば、高温多湿といったようなところ、あるいは砂ぼこりや潮風や、そういうこともあるでしょう。

 そして、何といっても大きな違いといいますのは、例えば大阪と高知というような本当に短い距離、これを頻繁に離発着するということであれば、飛行時間が四千時間ですかね、一定の時間ごとにという飛行時間でのチェックというのも、もちろん一つの目安としては大事なんでしょうけれども、離着陸、特に着陸のときに一番機体に、特に主脚、その他の骨格の部分に大きな衝撃、荷重がかかっていくんじゃないかと思うんですね。

 そうすると、点検の仕方というのをもう少し見直していく、つまり、飛行時間だけではなくて、その機材の運航の状況ですとか、そういうことにも勘案しながら、これからもっと点検の方法を改善していく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、そのあたり、いかがでございましょうか。

久保参考人 点検間隔というのはどういうふうに決まるかということをちょっと申し上げますと、これは、メーカーが勝手に決めているということではなくて、メーカーとエアラインとそれからカナダの御当局、設計の審査をする当局の方が参加したMRB、メンテナンス・レビュー・ボードというのがありまして、これは、必ず新しい飛行機を開発するときにはつくられる公的な委員会みたいなものですけれども、そこで設計の中身とか今の使われ方、どのぐらいのサイクルで使うのかとか、それから過去のそういう同じような部位での経験がどうだったとかいろいろなことを議論しまして、それで、最終的にはやはり御当局が判断して、これでいこうということで四千時間というのを決めているんだと思います。

 したがって、当然、四千時間というものを決めるときには、こういう飛行機はショートレンジで繰り返し使われるというようなことは想定の中に入っているというふうに一応思います。

 ただ、ちょっと私、手元に、一時間当たり何フライトと想定したかというデータは今持っておりませんけれども、多分これはかなり短く想定していると思うんです。したがって、日本で使う場合に、この飛行機の設計のときに想定した以上にうんと厳しい使い方になっているというふうには、それはないんじゃないかなと、これは感覚的な話で申しわけないんですけれども、思います。

 かつ、この四千というのは、新しい飛行機、ダッシュ400でしたら、二〇〇〇年に出したときに四千時間にしているんですけれども、実は、ダッシュ300は五千時間というふうになっているらしいんですね。それで、私がそれを見て思ったのは、やはり新しい飛行機は、普通、最初は少し控え目に、要は点検が少したくさんになるように、四千時間なら四千時間と決めて、飛行の実績を見ながら、問題がなければ五千に延ばそうというようなことを初めからイメージしているんじゃないかなというふうに思ったんですね。

 おっしゃるように、非常にトラブルが多いわけなので、そのメンテナンスが有効だという部分が見えていれば、当然、こういうトラブルが起きているという情報はメーカーに全部入っているわけですし、それはカナダの御当局にも報告されているはずなので、短縮しようというふうなこともないとは言えないし、当然そういうことは、メーカーもエアラインも御当局も頭に置いて、常に考えてはいると思います。

 ただ、今短縮したら本当に安全になるのかというところが必ずしもはっきりしない中で、ちょっとずるずる来ているのかな、そんなふうに思います。

盛山委員 ありがとうございました。

 それでは、河内参考人にお尋ねをいたします。

 今、久保参考人のお話でも、初期トラブルはどうしてもあるんだろう、あるいは、さっきのお話にもありましたけれども、機械のものですからやはり故障も当然である、そういう中での設計あるいは改善、こういうことになるんだろうと思うんです。

 ボンバルディア社の機体の設計というのは、河内参考人の目からごらんになって、ほかの、例えばさっき杉浦参考人からお話が出ましたYS11ですとか、もっと信頼性が高かったと言われるようなコミューター機、そういうような機材に比べてちょっと何か脆弱な感じを私は受けるんです。それは、導入してしばらくの初期トラブルがまだ続いている段階であって、これを越せばよくなるということなのかどうかちょっとわかりませんけれども、本当に大丈夫なのかな、ユーザーの目としては、一層の設計上の注意をボンバルディア社に払っていただく必要があるんじゃないかなと私は思うわけなんですけれども、河内参考人はどのようにごらんになっているか、お答えいただきたいと思います。

河内参考人 先ほどもお話ししましたように、これが単なる初期トラブルなのか、あるいはこの機体固有の問題なのかというのをまず見きわめることが必要で、非常に重要なことだと私は考えております。

 それから、YS11の時代と少し時代が違って、材料もかなり進歩しておりますし、強度も増しておりますので、見かけ上弱いから機体が弱いということにはならないと思いますが、こうトラブルが多いと、やはり設計を含めて見直す必要があると思います。

 その際に、やはりカナダというのは日本と余りなじみが従来ありませんので、そのカナダの当局、それから製造会社、そして日本のエアラインの連絡をどういうふうに密にするかというのが大事な問題だと思います。

盛山委員 ありがとうございました。

 それでは、航空局の技術部長に伺いたいと思います。

 今、河内参考人からもお話がありましたけれども、あるいは先ほどの技術部長のお話にもありましたが、カナダとの連絡を昨年来とっておられるというふうにも伺っております。しかしながら、これまでの話を伺っている限り、日本のマーケットをカナダのボンバルディア社が十分に重視してこなかった、だからこそこういうようなトラブルが起こっているのではないかという感じも否めないわけですね。

 航空当局間で、あるいはボンバルディア社との間で、これまでも話をしていただいているんだろうとは思うんですけれども、こういうようなトラブルあるいはインシデントが起こらないように、今回はたまたま、機長を初め関係者の皆さんのすばらしいチームプレーによって、死傷者ゼロということで胴体着陸がうまくできたわけでございますけれども、こういうトラブルが今後とも引き続くようですと、乗客としてはこの飛行機には乗りたくないなという感じにやはりなると思うんですね。

 やはりそういうことを考えていただいて、航空当局としてカナダの航空当局に密接な連絡をとっていただきたいと思いますし、それから、何といいましても、製造元のボンバルディア社、こちらへの指導監督、日本の国土交通省ができるのであればお願いしたいところでありますし、仮にそれができないということであればカナダの航空当局を通して強く御指導をいただきたい、そういうふうに思うわけですが、御回答をお願いしたいと思います。

谷政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、さまざまなトラブルがあるわけでございますけれども、その原因の中には、航空機の設計や製造過程での品質管理に起因すると考えられるものがございます。こうしたものにつきましては、製造者を直接監督いたします航空当局、今回の場合ですとカナダの航空当局でございますけれども、そこがしっかり製造者を指導監督していただく必要があるというふうに考えております。

 ボンバルディア機につきましては、先ほども御報告いたしましたけれども、昨年四月に私ども航空局の担当官をカナダに派遣いたしまして、直接カナダの航空当局にこういった要請をしてきているところでございます。その結果、ボンバルディア社からは、それまで発生しておりました各種のトラブルにつきまして、これを低減させるための部品の改良型の開発ですとかあるいは製造品質の向上というようなことについて逐次対策を進めてきておりまして、またさらに、日本の航空会社との間でも定期的に会合を開き、ボンバルディア社側での取り組み状況について、その進展状況を説明してきているというような状況にございます。

 今般の高知空港におきます事故につきましても、当日、早速、カナダの航空当局に対しまして、事故の概要とそれから今後の協力方をお願いいたしたところでございます。その結果、早速、その翌朝、カナダの航空当局から全面的に協力をしたいというような回答を得ております。また、ボンバルディア社におきましても、事故直後、二日置いてでございますけれども、十五日に担当の副社長を日本に派遣し、また必要な技術者を数名日本に派遣して、高知空港、現地に向かわせて技術的な検討、対応等をしているというような状況でございます。

 いずれにせよ、私どもといたしましては、事故直後から、トラブルの原因となりました前脚の格納ドアのロック機構の緊急一斉点検、さらに定期的な詳細点検の間隔を短縮する、さらには追加の安全対策といたしまして、前脚だけではなく主脚、メーンのギアにつきましても点検間隔を短縮するというような、現時点で必要と考えられるような対策を今講じてきているところでございます。

 今後も、事故調査の進展を踏まえながら、安全対策会議等の場で運航会社とともに情報の共有を図りまして、検討を進めてまいりたいというふうに考えておりますし、あわせて、カナダの航空局を初め関係各所との必要な連携のもと、本事故に対するさらなる是正対策について適宜適切に対応していきたいと考えているところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 とにかく、ユーザー、国民が安心して飛行機に乗れますように、関係の皆様の御努力を今後ともお願いいたしまして、質問を終了いたします。ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、長安豊君。

長安委員 民主党の長安豊でございます。

 まずは、参考人の皆様方、お忙しい中ではございますけれども、足をお運びいただき、また先ほどは御示唆に富んだお話をお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。今回、航空の安全、安心というものに関する参考人質疑でございますので、やはり先般からのボンバルディア機のトラブル、国民のそういったものに対する不安というものを解消する一助になればという思いで質疑をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、今回の事故に関しましては、報道等で多くの部分は解明されてきているのかなという認識がしております。要は、物理的にブッシングといいますかスリーブがひっかかって扉があかない、車輪が出ないという事態になってしまったわけであります。では、このボルトがどうしてなかったのか、初めからなかったのか、抜け落ちたのかというところはこれから解明されていくところかという状況ではありますけれども、今回のこの事故を考えたときに、果たして防ぐことができたのか、あるいは防ぐことが難しい事故だったという御認識なのか、それぞれの参考人の方々から御所見をお伺いしたいと思う次第でございます。

 それともう一点、今回、幸いに、あのようにチームプレーで、車輪が出ない中ではありましたけれども、胴体着陸という危険な行為ではありましたけれども、無事に死傷者が出ずに着陸できたということがございます。これはまさに不幸中の幸いであったわけでありますけれども、こういった不幸中の幸いになったラッキーだった部分、幸運だった部分というのはどういう点であったのかという点も、それぞれのお立場で御意見を賜れればと思う次第でございます。

河内参考人 防ぐことができたかどうかという問題については、どの時点でボルトが抜け落ちたか、あるいはそれを外から目視で見られたかどうかという問題がありますし、それから整備上の問題だったのか、あるいは製造工程上の問題だったのか、それによっても防ぐことができたかどうかというのは考え方は変わると思います。現状では、私は十分な情報を持ち合わせておりません。

 それから、ラッキーだった点というのは、比較的風が弱くて難しい状況になかった。あれは、非常に強い風が吹いていたりすると難しい問題が起こる。それからもう一つは、幸い脚の故障だけで、それにさらにエンジンの故障が加わるとかそういう二重の故障が重なっていなかったというのは、めったにそういうことはありませんが、不幸中の幸いだったということは言えると思います。

 ただ、胴体着陸というのは、我々の感じからいうと、余り褒められたことではありません。

久保参考人 防ぐことができたかどうかというのは、今本当に原因のところがクリアでないからちょっと申し上げにくいんですけれども、考え方としては、初めからなかった可能性があるわけですね。

 これは当然、メーカーの方できっちりボルトを入れて、ナットをかませて、そしてコッターピンでつける、本来、多分設計はそうなっているわけですね。そういうふうになっていれば、そんなに強度がかかったりするようなところではないわけですね。私なんかの感覚からいえば、ああいうところのリンクのボルトというのは、まず壊れるということを考えられないわけですね。多分、設計するときに、寿命としては二十年とか五万サイクルとか、そういうのを頭に置いて設計しているというふうに思うんですね。したがって、ああいうところが、まだ四千時間になっていないということは、多分四千サイクル以下ぐらいじゃないかと思うんです、三千サイクルとか。そこで壊れちゃうということは、本来、そういう設計というのはあり得ないことだと思うんですね。

 ですから、当然そういうことを考えて、メーカーの方は、毎日、あそこをデイリーで見るような形になっていなくて、何かカバーがかかっているというわけですね。ですから、基本的に、整備が毎日見るような形で安全をキープしようというのじゃなくて、壊れないということで安全をキープしようという設計だというふうに思います。その場合に、製造工程でそのボルトが入っていなかったというようなことであれば、これはもうそこで防いでもらうしかなかったんだろうというふうに思うんですね。

 それから、もし、これはよくわかりませんけれども、こっちへ飛行機が来て、運航している間にあそこに何らかの手を加えていたということも、今のところわかりませんけれども、どうなのかなと。もしそういうことがあったときには、そこをどうしたのかなということはちょっと気になるところではあります。

 ですけれども、これも後でカバーをしちゃうとどうしようもないわけなので、そのカバーをする前のところできちっと本来の品質を確保しなきゃいけない。それさえできていれば、ちゃんとボルトが入って、ナットがかかって、ピンが入っていれば、あそこが壊れるということは私はまず考える必要はないだろうというふうに思って、整備作業もそういう前提で組み立てているんじゃないかなというふうに思います。

 それから、胴着でうまくいってラッキーだったという点につきましては、これは、今言われましたように、やはり天候が非常によかったということですね。それから、ほかのふぐあいが重ならなかった。かつ、地上の消防態勢とかそういうものもしっかりしていたという中で、パイロットが非常に安心して、自信を持って着陸をやることができたということが大きいのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

辻村参考人 事故の原因につきましては調査中だということで、原因が特定できない現時点で、防ぐことができたか否かというのは判断することは難しいと思いますけれども、いずれにしても、原因が特定できた際には、再発防止を確実に講じていくということが必要だと思っております。

 また、どういった点が今回、幸運に事故を防げたかということに関しましては、ほかの参考人がおっしゃったことだと私も思いますけれども、報道によりますと、燃料を上空で使ってなるべく火災の可能性を少なくしていたとか、そういった関係の方々の判断がよかったのかなと思います。

杉浦参考人 結果的には、当該機の今回の事故は防げなかったのではないかと私は思います。現実に、製造過程だということであれば、今まで出ておりますように、ボルトがなかったのではないかということ以外にも、やはり当初予定していた部品以外のものを取りつけるという可能性もあるかと思いますし、あるいは取りつけ方の問題もあったかと思います。

 いずれにしましても、飛行機の整備というのはやはりメーカー主導型で進められるものでありまして、つまり、メーカーがここを整備しなさいというマニュアルに基づいてやっていくわけでございまして、この原則をひっくり返して、受け入れ側が独自にやるということは、これは大変な労力と同時に、逆な危険性も出てくるかと思いますので、ある程度このメーカーのマニュアルに基づいて整備するという体制はいたし方ないことだと思います。

 ただ、一連のトラブル多発についてのこの対応については、やはりもっと真剣に日本の当局の方も対応してほしかったなというふうに思います。

 先ほどから出ておりますように、このクラスに代替機がプロペラではないということからしますと、やはりこの機体に対する期待度というものが非常に大きいわけでありますので、何としてでもこれを安全に飛ばさなくてはいけないということだと思うんですね。一方、乗客の立場からしますと、今までの経緯からしますと、もうしばらく安全体制を確立するには時間がかかる、その間に乗客が自分の命を担保にして機体の安全度を高めていくというのは余り好ましいことではないといいますか、やはり乗客の方にしてみれば安心できない問題だというふうに思いますので、そういう点で、一昨年から既に新聞ではこの報道が始まっていたと思いますけれども、それに対する力の入れ方といいますか、対応の仕方という点では、少しまだ緩かったのではないかなというふうに私は思います。

 それから二番目の、ラッキーだった点につきましては、今まで参考人の方々が言われた御意見と私は異論ございませんので、省略をさせていただきたいと思います。

長安委員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおりで、製造過程でこのボルトがなかったということがあれば、カバーされていたということもございますし、また整備の時間内であった、定期点検の時間内であったということから考えると、やはり防ぐことは非常に難しかった、できなかった可能性が高いのかなと私は思っております。

 そういう中にあって、このように危険な胴体着陸、先ほど勧められたものではないという河内参考人の方からお話がございましたけれども、まさにそのとおりで、そういう中ではありましたけれども、陸上側の態勢が整っていたということもあったでしょうし、また天候が穏やかな、風も弱い日であったということもあるでしょう。

 さらには、高知空港という、さまざまな空港があるわけですけれども、この便自体は伊丹から出発したわけですけれども、住宅の密集地の中の空港に胴体着陸するというのと、そうではない、表現が正しいかどうかわかりませんけれども、だだっ広いところの空港に着陸するのとでは、当然パイロットの方の精神的な問題も違うでしょうし、そういう幸運な部分があったのかなと私も個人的には思っておるわけであります。そういう意味では、今、私お話し申し上げましたように、ラッキーが重なった結果、まあまあ不幸中の幸いであったと思うわけです。

 一方で、先ほど来、初期不良というものはあるものなんだという前提で皆さんお話しされておりました。私も若いころに、初めて車を買おうなんというときにいろいろな本を読みました。そのときに、やはり車でも同じように初期不良がよくあるんだ、そういう場合は、新車が発売されてもすぐに買わずに、ある程度初期不良がなくなってから買った方が安全なんだというようなことを書かれている専門家の方もいらっしゃった。そういう意味では、やはり日本の航空会社、エアラインも、今新たに導入しようとしている機体自身が初期不良を起こしている段階なのか、あるいは初期不良がもうほぼ解決されている状況なのかということを冷静に見きわめた状況で導入していくべきではないかなと私は個人的に思っております。

 それと、先ほどのお話に戻りますけれども、伊丹から高知へ飛んで、高知で胴体着陸したわけです。もしこの便が逆向きの、つまり、高知発伊丹行きで、伊丹で胴体着陸しなければならないというような状況であった場合は、これは危機管理の面で別の問題を惹起したのではないかと私は危惧するわけでございます。

 伊丹着でそのようなことがあった場合、逆に申し上げますと、今回と全く同じでいいというお話もあるかもしれませんけれども、それぞれのお立場でどのような対応が必要であったとお考えか、御意見を賜りたい。それぞれの参考人の方からお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

河内参考人 ああいう立場に、想定していた安全システムがことごとく破られてしまって、最後の手段に出る場合には、あれ以上、伊丹だから特にやることはありません。多分、同じ手順で同じことしか残っていなかったのではないかと思います。

 それから、先ほど私が余り望ましいことではないと申し上げたのは、要するに、ほかの安全システムがことごとく破られてしまった点を申し上げたのであって、パイロットの方は非常に冷静に着陸されたと思っています。

久保参考人 そのときの状況によると思うんですけれども、私がずっとエアラインにいた感覚からいいますと、やはり伊丹におりるかどうかというときには随分考えると思いますね。これは、最終的に決めるのは機長ということになりますけれども、当然、こういうときは会社も挙げて、整備だけではなくて、運航本部も運送本部も全部挙げた社内のバックアップ体制をすぐしかれて、今回もそうだったと思うんですけれども、それで、今の気象条件だとか空港の混雑状況だとか、それから空港周辺の状況だとか、いろいろなことをそのときの状況に合わせて検討して、機長の方に、もう伊丹がいいんじゃないかと言うか高知に戻りなさいと言うか、それとも、一例ですけれども、名古屋の小牧なら体制が整っているから小牧に行きなさいと言ったらどうですかとか、いろいろな形で組織を挙げてサポートして、そのとき考えられる一番安全なおり方ができる空港へ行くように、力を合わせて相談して決めるんじゃないかなというふうに思います。

 以上です。

辻村参考人 私も今の久保参考人とおおむね同じなんですけれども、一般論として、大きな空港であれば緊急時の救援体制というのはより充実していると思われますけれども、一方で、そういったところは住宅地や商工業地帯がより空港に近いということもございますので、万が一の際に被害がより大きくなる可能性がないとは言い切れないと思います。逆に、地方空港であればその逆となることも考えられます。

 そういうことで、一概にはどちらかとは言えないんですが、先ほど久保参考人がおっしゃったように、トラブルの状況に応じてケース・バイ・ケースで、これは航空管制官も含めました地上スタッフと、それから機長、そういった関係の方々が協力して、適切に判断をしていくしかないのではないかなと思います。

杉浦参考人 今までの通例ですと、私の知る限り、どちらかといいますと、基地のある大空港へ戻るというパターンがほとんどだったような気がいたします。それに対して、今回は高知で胴体着陸を決行したということは、やはり機長は、今までお話が出たようないろいろな条件をすべて勘案した上で、気象とかあるいは対応力それから安全設備、そういったものを判断して、高知で十分できるという自信を持たれたのではないかなという気がいたします。

 逆に、伊丹でやりました場合には、伊丹の場合、御存じのように管制区域が非常に錯綜しておりますので、これは関西空港と神戸空港を巻き込んだ形でかなり大きな一時的な影響が出て、西日本の航空を麻痺させた可能性があるのではないかなという気がいたします。

 そういう点からいいますと、今回のケースにのっとってみれば、やはり機長の判断から、一連の動作といいますか結果、それを考えてみますと、結果的には大変すばらしかったのではないかなというふうに私は思います。

長安委員 今それぞれからお話しいただきましたように、やはり安全におりる、胴体着陸であっても安全にするためには当然障害物がない方がいい、一方で大きい空港は設備が整っている、これは両立するわけであります。その中で、やはり周辺にいかに被害をもたらさないかということが重要になるのかなと私も感じるわけであります。

 今、杉浦参考人の方からもお話がございましたけれども、特に伊丹の場合、便の発着がかなり多い。そういう中にあって、込んでいる空港という表現の方が正しいかもしれませんけれども、込んでいる空港に胴体着陸しちゃうと、当然、ネットワークでつながっているわけですから、航空網全部を麻痺させてしまう事態にもなるのかなということが予想されるわけであります。

 一方で、私、地元には関西国際空港があるわけでございますけれども、おりられる方から、パイロットからされると、今、二期工事で四千メートル級の滑走路ができる、長い滑走路の方が当然安心しておりられるのかな。おまけに、関西国際空港を考えたときに、海の上につくっているわけですから、周辺への被害というのは基本的にはないのかなということも考えられるわけであります。

 そういう意味で、今回、高知空港への胴体着陸ということを考えたときに、機体の品質あるいは整備の問題が大きくクローズアップされております。まさに、車輪が出なかった、ボルトがなかったというところが大きくクローズアップされているわけであります。

 しかしながら、先ほど来お話がございますように、航空機の品質あるいは整備というものを一〇〇%の状態に引き上げる、引き上げて保っておくということは、これは理想ではありますけれども、基本的には一〇〇%というのは当然無理だと私は考えております。

 そういう中にあって、では、トラブルが生じたときにいかに被害を最小限に抑えるかということが当然求められてくる。そのときに、当然トラブルの中でも種類がさまざまあるかと思いますけれども、例えば今回の事故のような場合に、空港側でカバーできる安全の部分というものもあるのではないかと私は思います。例えば、空港側でできる設備であったり、また空港の立地という問題もそうかもしれません、また機能的な部分もあるかもしれません。そういった部分の充実が必要だと私は考えるわけでありますけれども、それぞれの参考人のお立場から御意見を短目にいただければと思います。

河内参考人 今回の事故は、幸いなことに、航空機の操縦に関しては一切トラブルがありません。車輪が壊れただけです。したがいまして、普通の飛行機が滑走路へ着陸するときに滑走路を外すということがめったにないように、ねらった空港へちゃんとおりられるということは問題はないわけです。しかし、車輪がないので、おりた後、非常にバランスが難しかったり風に弱かったり、いろいろ起こるわけです。

 そういう点では、私は、普通の飛行機がおりられる空港であれば、おりるところまでは今回の事故に関しては問題がなかったと思われますし、特に空港に必要な設備というのもなかったように思います。

 ただ、地上から適切な支援をするというのは、どの程度行われたか私は知りませんが、それは非常に大事なことだと思います。

久保参考人 やはりどうしても、うまく持ってきても、最後、滑走路と接触してどうなるかというのは、うまくおりていれば今回みたいなことで済むんですけれども、やはりこういう場合には火災が一番怖いなというふうに思いますので、火災というものに対して十分な対応体制、なかなか、どこに着いてどこで擱座してというようなことはそのときのいろいろな条件で変わりますので、少しそういうものがばらついてもきちっとカバーしていただけるような体制、大体今しっかり持っていただいているようには思うんですけれども、その辺は今後ともぜひ充実していただきたいなというふうに思います。

 以上です。

辻村参考人 先生の御指摘があったように、トラブルへの対応を含めた、そういった安全性の高い空港を整備するということは必要であると思います。ただ、現在でも、そのような観点から、適切な基準で空港のハード、ソフトは整備されているのではないかと私は認識しております。

 また、今も御指摘がありましたように、空港機能のみならず、どの空港においても、消防とか警察等の関係機関との十分な連携がとれる体制、そういったものが常日ごろより整備されているというふうに理解しております。

杉浦参考人 今の御質問からしますと、一つは、関西空港へ着陸をした方法もあったのではないかという御示唆のような気もいたしますけれども、逆に、このパイロットは、中日本エアラインの出身の方ということからしますと、関西空港への経験はほとんどないのではないかなと推測いたします。それからさらに、海上空港は御存じのように風が非常に強い、それから風向きによってはプロペラ機の場合には進入がかなり難しくなるとかという問題もあるかもしれません。そういうようなことからしますと、確かに周辺の状況からしますと関西空港という選択もあるのかもしれませんけれども、多分パイロットの方は、なじみのない空港よりも自分の熟知した空港でやった方がいいのではないかというふうに判断をされたんじゃないかと思います。

 それから、伊丹に戻った場合は、さらに事故が大きくなって例えば負傷者等が出た場合は、救援体制とかそういう点では整っていたかもしれませんけれども、そこまでいかない自信があられたのではないかなと。

 それから、報道によりますと、着陸の前に乗客を前と後ろに分けて、つまり、プロペラが破損して胴体を破った場合にプロペラのそばにいた人がけがをする危険性があるという経験を踏まえて、そういう対応力もされているということからしますと、余り騒がしい状況で着陸をやるのではなくて、自分のわかった空港で落ちついて着陸をするというのが、パイロットの方の一つの判断材料になったのではないかなというふうに推測をいたしますので、先ほど申し上げましたように、今回の対応については問題なかったのではないかなと私は思います。

長安委員 ありがとうございます。

 今回のは本当に不幸中の幸いであったと私も痛感しておるわけであります。

 一方で、先ほど参考人の意見陳述の中でもございましたが、やはり高知の地元にとってみると、こういった機種はもう変更してほしいというような県議会の要望も出ているという状況にあるわけであります。航空機の事故が一たび起こってしまうと、当然、被害が甚大になってしまう。そういう中で、先ほども私指摘させていただきましたけれども、空港整備というものが、果たしてこういったものに対応する安全性というものを、例えば機能的にもあるいは立地的にも、ハード、ソフト両面で考えていかなければならないのではないかと私は思っております。

 伊丹のプロペラ枠のお話も意見陳述の中でございました。伊丹に関しては、騒音という問題、また住宅密集地の上を飛ばないと離発着できないという問題、一方で、杉浦参考人は、利便性も重要だというお話もされておりました。ただ、空港という公共の施設の整備を考えるときに、やはり安全というものが第一義であって、私は、利便性はその次に来なければならないと。もちろん両立しなければならないわけでありますけれども、どちらかを犠牲にしなければならないという場合には、当然、利便性が犠牲にならざるを得ないという部分はあると考えております。

 先ほどお話がありましたように、伊丹で胴体着陸を試みるのかどうかということに関しては、空域の錯綜という問題も当然ある。関西という地域を見たときに、伊丹、神戸、関空という三つの空港をつくっているわけであります。この三つの空域が錯綜するという状況が、今後何か問題が起こったときに邪魔をしないように考えていかなければならないと私は考えております。

 そういう意味では、伊丹空港の問題というのは、今回の高知県議会の動きもそうですけれども、当初、周辺住民の方々は伊丹空港の騒音問題また危険性というものを指摘されて、反対運動まであれだけ激しくあったという現状を考えると、そういった観点から、これからの日本の空港の整備のあり方というもの、また位置づけというものを真剣に考えていかなければならない時期にもう当然来ているのかなと思っております。

 引き続き、この国土交通委員会におきましても、国土交通省としっかり議論をしながら、将来のあるべき姿を私も議論しながら取り組んでまいりたいと思いますことを最後に申し上げまして、私の御質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西銘委員長代理 高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日は、参考人の皆様方には、当委員会にお越しいただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。今回のボンバルディア社のDHC機の事故について、国民がさまざまな不安を抱いている。そういった中での当委員会の参考人質疑となっておりますので、先ほどからさまざまな御意見を述べていただきまして、重複する部分もあるかもしれませんけれども、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、今回の事故原因、これは事故調が今調べているさなかでございますけれども、先ほどの冒頭の意見陳述の中で、杉浦参考人が、製造過程におけるミスと推察できるというようなお話もございました。

 このことに関しまして、特に、今回の機種は高性能をセールスポイントにしている機体で、前輪の出し入れというのは安全の根幹にかかわると思うんですね。しかも、幾つかの手段が試みられたにもかかわらず、すべて効き目がなかった。今回の事故は極めて重大な問題をはらんでいると思うんです。

 私は素人なので、ここら辺のところは専門家の先生方にもお伺いしたいと思う中で、河内参考人と久保参考人に改めてお伺いをしたいと思うのは、設計や構造に基本的な問題があったのではないか、素人としてはどうしてもそういうふうに考えてしまうんですけれども、この点についての御意見をお二方にまずお伺いしたいと思います。

河内参考人 航空機というものは、つくったとき、図面に基づいて、各国の当局がちゃんとサーベイをいたします。型式証明をとる前にそういう審査がかなり厳しくありますので、設計図どおりあるいは考えた構造どおりにできていれば問題はなかったのではないかと私は考えております。

 ただ、先ほど久保さんからお話がありましたように、実際運航を行っていろいろなトラブルが出てきた場合に、微小な修正を行うことはもちろん多々あります。

久保参考人 設計とか構造の問題かというふうに言われますと、今、世界は、カナダだろうとアメリカだろうと日本だろうと、基本的な設計の基準というのは、まず共通の基準で設計をされていて、それに基づいて、私が見ている限りでは、カナダは直接知りませんけれども、日本の場合もアメリカの場合も厳しい設計の審査がされますので、それをきちっとクリアしているということからして、設計とか構造の基本的な問題とは思いません。

 先ほども申しましたように、きちっとボルトが締まっていれば起こらない問題ですから、製造品質とかそっちの方はちょっとまだ原因はわかりませんけれども、設計、構造の問題というふうにはちょっと思えないと思います。

高木(陽)委員 設計の段階、これはまたさらに調べていかなければいけない問題だと思うんですけれども、あと、製造過程での品質管理上の問題、例えば製造ラインでのコストダウンだとか、または品質管理に及ぼしている影響、そういった可能性はないのかということについて、これは河内参考人、久保参考人、杉浦参考人にちょっとお伺いをしたいと思うんです。

河内参考人 コストダウンと品質管理の問題は相反する場合も多いんですが、私自身、ボンバルディアの会社の情報を持ち合わせておりませんので、ボンバルディア社においてコストダウンが品質管理にどう影響を及ぼしたかというのはちょっとお答えしかねます。

久保参考人 私も、自分で見たわけではないので、ボンバルディアについては何とも申し上げようがないんですけれども、一般論としましては、コストダウンをすると品質が下がるじゃないかということの御心配というのは一般的に非常にあるわけなんですけれども、やり方の工夫によって、コストダウンしつつ品質も上げるということを実現してきたケースもいろいろある。特に、自動車なんかの場合は非常に顕著だと思うんです。

 飛行機の場合も、実際に今やっている人たちは、同じやり方でただ人だけ減らしているということじゃなくて、やはりそこにいろいろ工夫をしながら人も減らしてやっているのではないかなというふうに思うんですけれども、ちょっと結果がよろしくないので、ボンバルディアについてはちょっと何とも申し上げられません。

 以上です。

杉浦参考人 やはり製造上の品質管理の問題というのは、日本の工業でも今問題になっているかと思うんですが、これは航空機工業に限らず、いろいろな機械工業全般に起こっている問題でありまして、非常によく内容のわかったベテランの方をリストラしてしまったりとかいうような問題も響いているというふうに聞いております。

 ボンバルディアに関しましては、先ほどちょっと御説明しましたように、〇三年から〇五年にかけて大変経営危機に陥りまして、この段階で製造現場の士気が下がっていたということと、それから大胆な改革をやった、これによって混乱があったという情報があります。その程度ですが、やはり生産量を三倍にするとか、あるいは検査員の数を大幅に減らして一五%から七%に削減をするということは大変な改革だと思うんですね。これが品質管理を伴ってできていればいいとは思うんですが、ちょっと現場は見ていませんけれども、こういう過程に無理があったんではないかと推測ができるのではないかなというふうに私は思います。

高木(陽)委員 久保参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど陳述の中で初期トラブルのお話をずっとされたんですけれども、これも、どうしても素人的に見ますと、航空局の技術部長が冒頭に、七十九件のトラブルがこれまである中で、数としてはこれぐらいが初期トラブルとして当たり前なのかどうか。どうしてもボンバルディア社の場合、減少しないでずっとそのまま来ているというような印象をぬぐえないんですね。そういった点の御認識をもう一度お伺いしたい。

 もう一つは、この初期トラブルで、YSのときはかなりそこで改善をしていった。ところが、一歩間違えれば、これはもう本当に初期トラブルの段階で大惨事になる可能性もあるわけですね。こういった点について、メーカーまたエアラインの整備の方と、さらに国交省等も含めて、いろいろと対応していかなければいけないんですけれども、今回の高知空港の例を見ても、もしあれが、胴体着陸が失敗をした場合、もう大変な事態になっていたでしょうし、そう考えると、初期トラブルだということだけで果たして解決できる問題なのかどうか、この点もお伺いをしたいと思うんです。

久保参考人 まず、初期トラブルという言葉の定義というかイメージなんですけれども、これは明確な定義があるというふうには思いません。ただ、私が申し上げている初期トラブルというのは、新しい型式が出てきたときにいろいろな問題がある。これは、このボンバルディアの飛行機だけじゃなくて、過去に私たちが使ってきたいろいろな飛行機、全部ですね。

 先ほど、初期トラブルがおさまってから使えばいいじゃないかという御指摘もありまして、そうすれば、それは結構なんですけれども、日本という世界第二の経済大国というようなことであれば、やはり最新の飛行機を、設計され、完成したらすぐ採用していく。今度の787なんかですと、ローンチして、最初に受け取るわけですね。そういうふうにやっていかなきゃいけないし、777とか、みんなそうやってきました。そうすると、ボーイングがつくった飛行機でも、最初はもう次から次へとトラブルがあるわけですね。

 ちょっとイメージ的に申し上げますと、例えばある新しい新型機が完成した。型式証明をとった。最初の年は二十機エアラインに引き渡したとしますね。ところが、その最初の二十機というのは、普通は設計の基本的な部分が問題ではなくて、いろいろな細部の詰めの部分で次から次へと問題が出てくる。そうすると、今回でいえば、脚の問題もそうですし、ステアリングだ空調だと出ていますけれども、同じように出てくるわけですね。そういうトラブルが、個数というよりは、私が申し上げているのは種類というか、百種類のトラブルというか、脚で二種類とか空調で二種類とか、そういうことで、最初に受け取った二十機については百種類のトラブルがあったとしますね。そのぐらいはすぐあるんですね、実際は。そうすると当然、エアラインはクレームで、こんなの何とかしろ、こう言うわけですね。そうすると、メーカーも当然、そんなのを使ってくれと言えないから、一生懸命取り組んで、細かいところのリファインメントというんでしょうか、設計の改善をやりまして、それで、例えば二年目にまた二十機引き渡すとしたときには、その二年目に引き渡す二十機にはその改善を織り込むわけですね。

 ただ、百種類のトラブルがあった場合に、一気に全部解決というのはなかなかできませんから、例えば五十種類は解決した。そうしますと、二年目に引き渡す二十機は、一年目は百種類あったトラブルが五十種類に限定されるわけですね、五十種類は解決した。そのときに、一年目の飛行機はそのままトラブル続きなのかといえば、普通はそうではなくて、二年目に渡した飛行機と同じ改修を、サービスブレティンとかそういう改修指示でもって、さかのぼってエアラインに実施しなさいよということで、エアラインは当然そういう改修をやるわけですね。そうすると、二年目には、一年目に受け取った二十機と二年目に受け取った二十機で四十機あるんですけれども、四十機の水準は五十種類のトラブルを抱えたオペレーションになるわけですね。

 今度、メーカーは、まだ五十種類あるというのでは大変ですから、さらにいろいろ努力して、少し難しい問題が先に延びたとして、三十種類は解決した。そうしますと、三年目には、今度は、二十種類の問題は残っているけれども、八十種類は解決した飛行機を二十機引き渡す。エアラインは、一年目に受け取ったもの、二年目に受け取ったものを改修しますと、三年目の六十機というのは二十種類のトラブルを抱えている。これを、メーカーが頑張って、とうとう全部解決して、四年目に引き渡した飛行機は、もうそういう初期トラブル的な設計の問題はなしの飛行機を引き渡した。一年目、二年目、三年目の飛行機にもその改修をやったというふうにしますと、四年目には、初期トラブルの問題がほぼ解決した、安定したフリートになる。こういうイメージを持っているわけですね。

 ただ、では四年目になって初期トラブルが全部解決したら故障は起こらないのか、ふぐあいは起こらないのかといったら、それはありません。やはり飛ばしているからにはいろいろなトラブルというのは出てくるんですが、それが初期トラブルみたいな、あるところに集中して何回も繰り返し出てくるというようなことではなくて、いろいろなものがぽつぽつ出てくる。こういうものに対応していくというのは、これはもう当然整備の役割ですからいいんですけれども、そういう意味で、やはり技術改修をしていかないと、それを古い飛行機にも及ぼさないと、四年たっても最初の年にデリバーしたのと同じ。これは新品の飛行機ですよね、新造機が出ている。新造機、新造機、新造機なんだけれども、設計が改善されなかったら、四年目に引き渡される飛行機も百種類のトラブルを抱えたものが出ちゃう。

 そういうことは、何となくこれを見ますと、もう六年、七年たっているにもかかわらず、今私が申したぐらいのペースで改善ができていればこんな問題はないと思うんですけれども、残念ながら、技術的な対策の改善のペースが遅いがために、相変わらず最初の年から発生していたような問題を六年、七年引きずっていて、それを改修して改良しようと思っても、そのサービスブレティンさえ出ていない。こういうことではないのかなというふうに思います。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

高木(陽)委員 あと、辻村参考人の方にもお伺いをしたいと思うんです。

 陳述の中で、航空業界全体の安全意識をより一層高めていくために会員各社の社長を委員とする安全委員会を新設している、そこでいろいろと情報の共有等々をやっていると言うんですが、もちろん経営のトップがそういう安全意識を持つということはもう本当に必要なことであると思うんです。ただ、やはり現実問題として、各エアラインの整備の段階での情報の共有、これは本当に重要ではないかなと思うんですね。その点において、特に今回こういう問題が起きましたからそこのところはやっていくと思うんですけれども、これまでの情報共有の点はどうだったのか。

 また、先ほどから出ている、例えばYSのときは、まさにそういう情報を共有しながら一つ一つ解決させていった、こういう歴史があるわけですけれども、今回も、安全対策の向上をするために、そういった情報を共有しながらやっていくシステムがボンバルディア社機の場合には必要なのではないかなと思うんです。その点はどのように対応されているのか、お伺いしたいと思います。

辻村参考人 ボンバルディア機を使用しておりますJALグループ、ANAグループの間におきまして、二年ほど前から、主要なふぐあいの情報につきまして、定例及びその都度の情報交換を行ってきております。それで、それが早期対応に役立っているというふうに聞いております。また、現業においても、作業経験等の情報交換を行っていると聞いております。

高木(陽)委員 この点については、今回問題が明らかになって、いろいろな報道をなされると、ある意味では風評被害な部分というのはかなりあると思うんですね。逆に言えば、定期航空協会を初め各エアラインがそういう点について情報発信をしていただきたいと思うんです。そうすることによって、逆に安心感というのは高まってくるのかなと思いますので、この点はよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、杉浦参考人にちょっとお伺いしたいんです。

 今のことにもちょっと関連するかもしれないんですけれども、日本の場合は、安全プラス安心というのが日本人の意識の中にある、欧米は、安全ということで一つクリアされて、さらに言えば、航空機を初めトラブルはあるものだ、こういう前提からスタートするというお話がありました。この点については、いろいろな方法があると思うんですけれども、先ほども陳述で少し述べられましたけれども、この点を日本の場合はどうしていったらいいのか。日本人に意識を変えろと言ってもそう変わりませんから、この点の対応策についてもう少し伺いたいと思います。

杉浦参考人 やはり欧米と日本の考え方が違うというところを皆さんにも理解していただきたいなというふうに思うんですね。ですから、一つには、今回のようなことが起こると、航空機メーカーは自分たちでも相当鉢巻きを締め直して本格的にやるのではないかというふうに思われるかと思うんですが、残念ながら現実にはそうではなくて、航空機メーカーはなかなか重い腰を上げてくれないというのが現実なわけですね。ですから、そういう点からいえば、今回はやはり日本が、エアラインと国土交通省の方も一緒になって、本格的にカナダに対して強い意見を言って圧力をかけていくというようなことがぜひとも必要ではないか、こういうふうに思います。

 もう一つは、日本人の考える安全品質というものについての内容を分析したときに、やはり航空会社の方も、事故がないから大丈夫ですと言うだけではなくて、もうちょっと周辺情報をPRするとか、そういう姿勢が当然必要になってくるのではないか。つまり、牛肉の輸入なんかが典型例だと思うんですけれども、アメリカサイドは大丈夫だ大丈夫だと言っているわけですが、日本の消費者の方はどうして大丈夫だと言えるのかというところを知りたい。同様に、今回の一連の事故等についての解析と、それから、とった安全対策がどういうことなのかということをもうちょっとつまびらかに国民に示していただきたいなというふうに思うんですね。

 先ほどちょっと御質問があった点なんですが、一つ最近の情報としてありますのは、ボーイングあたりは初期不良について相当積極的な対応をとっている。今まではメーカーとユーザーとの間の二者だけでやっていたわけですので、ほかのユーザーはその情報について知らないという状況だったわけですけれども、ボーイングは、現在就航しました777、トリプルセブンの就航の段階から、レディー・ツー・サービスといううたい文句を掲げまして、ユーザーに全部トラブル情報をボーイングのパソコンから見られるようにしているんですね。それによって、ほかのユーザーも、他社で起こった状況、それに対応する対応策、そういうものが全部わかるような、そういう仕組みを構築することによって初期トラブルを大幅に減らしたという実績もありますので、やり方によってはまだまだ初期トラブルというものを減らす方法というのはあるのではないかなというふうに私は思います。

高木(陽)委員 時間が参りました。本当に貴重な意見をありがとうございました。きょうは航空局長も傍聴されておりまして、国交省の方もしっかりとこういった意見を参考にしながら対応していただきたいということを申し上げまして、質問を終了したいと思います。

 どうもありがとうございました。

塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田です。

 参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。座って質問させていただきます。

 私は、今回の胴体着陸についての認識を出発にしなくちゃならぬのじゃないかと思っているわけです。といいますのは、やはり危機一髪であって、大惨事寸前だったということが大事だと思うんですね。そういうことがあったらどうなっていただろうということについて、しっかり思いをいたしながら私どもは対応をしなくちゃならぬと思っています。

 そこで、最初に、国土交通省に一点だけ聞きたいと思うんです。

 高知県知事と県民は、ボンバルディア機に対して大変不安を抱いています。県議会さらには南国市議会は、国は事故原因の早急な究明を図り、代替機材の導入を含む万全な指導監督を求める意見書を採択しています。それをどう受けとめますか。

谷政府参考人 今回、このような事故が発生したということで、ボンバルディア機が就航しております地元の皆さん方が非常に当該機に対する安全性、信頼性に対して不安を感じておられるという点については、十分理解するところでございます。

 これにつきまして、今回まだ事故原因がはっきり確定したわけではございませんけれども、とりあえず、前脚が出なかったということの原因につきましては、一応問題部位が確定しておりますので、こういったところに対する点検等の対策は既に実施いたしまして、まず同様の、同種のトラブル、事故が発生するということはないのではないかというふうに考えております。

 また、これまで同機で発生しておりますトラブルにつきまして、一つ一つその状況と、それからその原因を究明いたしまして、対策あるいはその再発防止策を講ずるということについて、メーカーはもちろん、それから、国内で運航しておる運航者におきましても、そういった対策の徹底をしておるところでございますので、一応、そのダッシュ8―400型機の安全性につきましては、それなりのレベルを維持しているものというふうに考えております。

穀田委員 余り煮え切らぬ話ですけれども、参考人の河内さんと杉浦さん、今の国交省の発言についてどう思われますか。

河内参考人 機種を選定するというのはエアラインの経営者の判断でありまして、国交省がこの機種をやめろとかそういう指示をするのは、私はむしろ望ましいことではないと思います。

 最終的には、お客さんがみんな嫌がってその機体に乗らなくなれば、当然経営者は判断すると思いますので、安全というものを乗客がどう判断するか。例えば、高知空港から大阪へ行くのに、飛行機だけではありません、船もあれば汽車もあります。そういうふうに、もし乗客の方で決心をしてもう飛行機には乗らないんだと思えば、当然経営者の判断も変わると思いますが、私は、その辺はそういうバランスで決まるものだと思っていて、国が指示をするのが望ましいとは思いません。

杉浦参考人 私は、やはりこれだけ国民が不安を感じているわけですから、安全だというふうに納得させるというのはなかなか難しいのではないかなというふうに思います。ですから、当面、やはり中期的な伊丹の発着枠の問題を解決しないといけないと思うんですが、この問題は空港政策全体の問題なので、大変大きな問題だと思います。

 ただ、日本は、残念ながら、安全問題はその中だけで解決しようという意識が大変に強くて、これはなかなか本来の解決にならないのではないかというふうに思いますので、やはり今、国民の一人の命が大事だということを考えるのであれば、空港政策にも何らかの修正をするぐらいの踏み込んだ対応をやらないと、なかなか国民の理解というのは得られないのではないかなという気がいたしますので、やはり本来的には伊丹の発着枠の問題が安全の問題との中で解決をされていくといいますか、整合性をとった形で解決されていく方が望ましいのではないかというふうに私は思います。

穀田委員 河内参考人にお聞きします。

 陳述でも、この高知空港の事故では、心配していた機体の心配していた箇所でトラブルが起きたという点が気がかりだとおっしゃっていました。さらに、設計、製造、運航にわたる経験不足とのお話がありましたし、久保参考人もやはり同じように、大手ほどの技術力を持っていないということだ、こうおっしゃっています。

 河内参考人のその根拠といいますか、いわばどの点が、なぜ心配していたことがそのとおりになったのかという意味をもう少し詳しくお話しいただくのと、それから久保参考人にも、技術力の比較というのはどこで見るのか、そこをちょっと教えていただけますか。

河内参考人 私は報道による情報しか持っていませんので、航空局がボンバルディア社に対して異例の申し入れをするくらいやはり気になったという、既に航空界では気になっていた機種で、車輪は特に気になっていた問題であるという点です。

 それが起こるとなぜ私は気がかりかというと、事故を防止するというのは、どこを防止したら事故にならないかというのは非常に難しい問題で、ある一点を注意するとほかを見過ごしてしまうということもあり得るわけで、注意力をどこかに集中するとかえって危ないということもある。

 しかし、この問題は、今は逆に、ここに問題が起こりそうだから気をつけなさいと言っているのは比較的防止しやすい状況なんですが、にもかかわらず、するっと抜けてそこで事故が起こってしまったという点で気がかり、従来と違うという意味です。

久保参考人 技術力が弱いんじゃないかとさっき私が申し上げましたのは、ボンバルディアというよりはむしろ運航しているエアラインのサイドですね。全日空にしてもJALさんにしても、しっかりした技術陣を抱えてやっておられるわけですけれども、どうしても、グループ会社といってもそこに派遣されている人数は少ないとか、それから、世界的に見ますと、余り技術なんか置かないで運航しているリージョナルのエアラインも多いわけですね。そうすると、きちっとメーカーとやり合って改善を強く求めていくベースになる、何が悪いのというところがメーカーに伝わりにくい。

 ボンバルディアの技術力については私はちょっとよくわかりませんけれども、文化の違いというのを先ほど言われていますが、私がいろいろなメーカーとおつき合いした限りでは、そんなに安全を軽視しているといいますか、やむを得ないと割り切っているようにも思わないんです。例えば私の経験で、エアバス社というのはなかなか初めは話がかみ合わなかったんですけれども、やはりしっかり話し込んでいくとわかってそれなりに対応してくれるというのはその後経験しました。

 多分ボンバルディア社も、こちらがきちっと状況をよく把握しながら強く働きかけていけば、今出ているような問題は解決できない問題だというふうには基本的には思っておりません。

穀田委員 次に、辻村参考人にお聞きします。

 再三参考人は情報共有という話をしていました。一点だけ、このボンバル社はDHC8シリーズで胴体着陸が過去に七件あった、そういうことについて全日空の幹部はその記者会見を副社長が来て行ったとき初めて知ったというふうな事態なわけですけれども、ボンバル社のこういう姿勢についてどう思われますか。

辻村参考人 これは冒頭の御報告でも申し上げましたけれども、我々協会といたしまして、各社共通のそういった安全対策向上に努めております。それで、個別のどういった機種を採用するかというものは、やはり個々の航空会社の高度な経営判断であるということだと思っております。それで、私どもは、少なくとも航空各社が安全に運航できないようなものを飛ばすということはないというふうに思っております。

穀田委員 余りかみ合ってない感じがしますけれども、要するに、情報を共有するというのが事故をなくす上でも安全という問題でも決定的だということをお話ししたかったわけですね。そういう点をもう一度確認だけしておきたいと思うんです。

 では、杉浦参考人にお聞きします。

 実は先ほども、自分の命を担保にして安全を高めていくということについては私もどうかなと思うんですね。その前にもう一つは、対応について真剣さが欠けるということもお話がありまして、一つの飛行機で独占していて飛ばしているというときは、逆に言うと、安全に飛ばす、より安全にという努力が必要だという見解は、私、とても大事だと思ったんですね。

 そこで、聞いてみますと、例えばエアーニッポン、エアーセントラル、エアーニッポンネットワーク、エアーネクストの四乗員組合は、どうもこれは最初からおかしいということで、この飛行機に対してふぐあいを随分指摘していたみたいです。〇六年の春闘以来一貫して要求していたようですが、特に、あわせて整備体制についても言及しているんですね。

 ジェット機の場合は一フライトごとに整備士が行う、これは飛行間点検というんですか、これが実施されているが、この同型機は航空当局が安全が高いとして行われないことを承認している。ただ、そういう中で、十五カ所の飛行場のうち整備士が常駐しているのは五カ所に限られていて、点検は仕業前と最終便のみだということで、これは改善の必要性があるんじゃないかということを乗員の組合として随分要求していると思うんですね。

 私は、最低限こういったことについて今改善できる一つ一つの手だては打つべきじゃないかと思うんですが、その点の御見解はいかがでしょうか。

杉浦参考人 組合からそういう御指摘があったというのはちょっと私は知らなかったんですけれども、やはり安全基準というのはなかなか簡単に判断することは難しいんだと思うんですね。ですから、何をやれば万全かということの指標というのはなかなか難しい。

 それから、一般的には、コストを削減すると安全性に響くんじゃないかという御指摘も一部にあるんですが、私はやはりこれはエアラインの考えだというふうに思うんですね。

 といいますのは、世界で今、格安会社で大変大きくなっているサウスウエストとかライアンエアとかそういう会社は、人数もすごいんですけれども、安全性も確立をしている。今、サウスウエストは年間八千九百万人ぐらい運んでいますけれども、一九七三年以降、乗客は一人も亡くなっていない、墜落事故はゼロだというようなことがあります。片やバリュージェットのように、安く飛ばすために整備費も削って、それで事故を起こしたという会社もあります。

 そういう点からしますと、コストと安全性というのは、必ずしも密接な関係があるだけではなくて、ここに経営の考え方というものが大きく作用しているんだと思いますので、やはりその部分だけをしっかり考えた上でのコストの合理化とかあるいは経営ということをやっていただかないと困る業界だなというふうに思います。

 ですから、今の御質問で、具体的にどこの空港に整備士というのは、正直申し上げて、私はそれで安全性が一〇〇%になるかと問われましても、ちょっと私には大変大きな課題なので御勘弁いただきたいと思います。

穀田委員 おっしゃるとおりでして、個別の問題を聞いたのはちょっとあれでしたけれども、私の趣旨は、参考人からお話があったように、やはり安全に飛ばすという意味での最大限の努力、この点でまだ可能性がある、こういう点はまだできるというのは、すべからく努力をしてとことんやるべきだという考え方を私は持っているものですから。

 その上で、最後にもう一度、杉浦参考人に聞きますが、今出ましたコストと安全性という問題です。

 これは、私は当局を通じて杉浦参考人の著書も若干見せていただきました。その点で、規制緩和と安全性の問題、コストと安全性という問題はとても不可分の問題だと私は思っています。特に運輸分野における事故が多発していまして、JRの福知山脱線事故、それからJALのトラブル、それからトラック、バス、タクシーなど。

 参考人の著書では、「本来は運航の安全性に支障がない範囲で認められるキャリー・オーバー制度だが、危険を冒すケースにも用いられるようになったのは困ったものである。」こう書いていますし、航空自由化と予備機が消えた問題なども論じておられます。

 私は、JRのときにもJALのときにも質問しましたけれども、はっきり言って何が問題かといいますと、やはりもうけ第一と公然と言っているわけですよね、私は何度もJRのときにやりましたけれども。それから、こう言ってはなんですが、JALも一番最初にもうけ何億円体制ということをばんと掲げる、こういうのが一なんですね。二じゃないんですよ、一なんですよ、いつも。

 そういうところに、私ははっきり言って問題の所在が出てきてやしないかということを思いまして、今日の状況にも影響していないだろうかと規制緩和について疑念を抱くんですが、その辺の御所見を時間の範囲内で。

杉浦参考人 それについては、ちょっと一時間ぐらい本当はいただきたいんですけれども、一言でというのはなかなか難しいと思うんですが、自由化になるから安全性が損なわれるというのは、そういう側面もあるとは思いますが、やはり短絡的だというふうに思います。

 たしか、運輸省時代に国交省さんも、日本の航空自由化に反対する理由の一つにそれを掲げていたと記憶しておりますが、現実に世界の航空会社を私が調べたところ、これは本に書きましたけれども、アメリカでもヨーロッパでも、自由化をやった後、安全率はむしろ高まっているんですね。これは、自由化をやったから高まったのではなくて、自由化をやっても安全率は高まっているというようなことからしますと、航空自由化をやれば安全性が損なわれるというふうに結論を出すことは、ちょっと私は短絡的だというふうに考えているんです。

 でも、やはり今先生がおっしゃるような側面があることは事実でありますので、そういう点をきちっと踏まえながら自由化を進めていかなくてはいけない。ですから、安全規則と経済規則をはっきり分けて、経済規則を自由化しながら安全規則は確認をしていくという作業も必要だと思います。

 それからもう一点は、おしかりを受けるかもしれませんけれども、このままの日本の航空会社の体質ではやはり海外の航空会社とまともに闘っていけない。ですから、私は、自由化の中で波に洗われながら安全性を、体制を確立していかないと、日本の航空会社の将来はないというふうに思うんですね。

 海外の格安会社でも、成功したところは、ビジネスモデルとしての利益を出す方法と同時に、安いコストで安全性を確立するということを両立した会社だけが生き残って繁栄をしているということから考えますと、これはやはり日本の航空会社に与えられた、あるいは日本の利用者に与えられた課題だというふうに思いますので、このあたりはぜひ今後も議論を深めていただきたいなというふうに思います。

穀田委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 私、事故が起こったその日の昼にちょうど質問をしましたし、理事会ではボ社の参考人質疑を要求しましたけれども、今のお話があって、いよいよ来てもらって直接お伺いしたいなということを述べて、質問を終わります。

塩谷委員長 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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