衆議院

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第15号 平成19年5月8日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月八日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 後藤 茂之君 理事 中野 正志君

   理事 西銘恒三郎君 理事 葉梨 康弘君

   理事 山本 公一君 理事 伴野  豊君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    赤澤 亮正君

      石田 真敏君    遠藤 宣彦君

      小里 泰弘君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    梶山 弘志君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      桜井 郁三君    島村 宜伸君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      鈴木 淳司君    徳田  毅君

      長島 忠美君    原田 憲治君

      松本 文明君    宮澤 洋一君

      盛山 正仁君   吉田六左エ門君

      若宮 健嗣君    泉  健太君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      田村 謙治君    土肥 隆一君

      長安  豊君    鷲尾英一郎君

      赤羽 一嘉君    伊藤  渉君

      穀田 恵二君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   参考人

   (一橋大学大学院商学研究科長・商学部長)     山内 弘隆君

   参考人

   (社団法人全国乗用自動車連合会経営委員長)    三浦 宏喜君

   参考人

   (全国自動車交通労働組合連合会書記長)      待鳥 康博君

   参考人

   (慶應義塾大学商学部教授)            井手 秀樹君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     鈴木 馨祐君

  長崎幸太郎君     赤澤 亮正君

  鷲尾英一郎君     田村 謙治君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     長崎幸太郎君

  鈴木 馨祐君     薗浦健太郎君

  田村 謙治君     鷲尾英一郎君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 タクシー業務適正化特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、タクシー業務適正化特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一橋大学大学院商学研究科長・商学部長山内弘隆君、社団法人全国乗用自動車連合会経営委員長三浦宏喜君、全国自動車交通労働組合連合会書記長待鳥康博君及び慶應義塾大学商学部教授井手秀樹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山内参考人、三浦参考人、待鳥参考人、井手参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず山内参考人にお願いいたします。

山内参考人 それでは、タクシー業務適正化特別措置法の改正につきまして陳述をさせていただきます。

 私は、今から三十年ほど前に大学の卒業論文でタクシーの問題を取り上げて以来、三十年間にわたりましてタクシーのことを研究してまいりました。タクシーの政策につきまして若干私自身がかかわらせていただいたこともございまして、今回の法案について陳述をさせていただきます。

 まず、タクシー事業の業態でございますけれども、御承知のように需給調整規制が廃止されまして、タクシー事業につきましても参入あるいは増車というものがかつてよりもかなり自由化されました。その結果、お手元の資料にございますように、新規参入あるいは増車が増加した、こういう実態がございます。

 一方で、もともとこの需給調整規制の廃止の目的でございましたけれども、新しいサービスをどのように導入していくかとか、あるいは多様化する消費者のニーズにどのようにこたえていくか、こういった、ある意味では業界の革新でございますが、こういったことが若干なりとも進んできたというふうに認識をしております。特に、私は、何人かの経営者の方々といろいろ勉強をする機会等がございますけれども、経営者の方々の意識の向上というものも著しいものがあるというふうに思っております。

 このように成果が上がっておるわけでありますが、一方で、若干の問題点もあるということ。この問題点、若干という言葉は不適切かと思いますけれども、そこにありますように、最大の問題は、恐らく安全性が若干低下しているということだろうと思います。事故率等の統計で、平成十八年につきましては若干改善が見られたところでございますけれども、一般的に安全性が低下しているという問題があります。

 それから、利用者の指摘から、サービスの低下という問題がございます。これは、大都市におきましては特に地理知識等の不十分性を指摘していること、それから接客態度の問題もあるということであります。

 それから、何よりもこの業界に働く皆さん、特にこの業界は運転者の方々が中心でございますので、その運転者の方々の賃金の減少ということがございます。御承知のようにタクシー業界は歩合制の賃金でございますので、一日の営収、営業収入が減るに従いまして運転者の賃金が減少する、こういう問題が出ているということであります。

 こういったタクシーについての規制の基本的な考え方はどのようなものであるかということで、二番目のところに私の考え方を若干述べさせていただいております。

 交通政策審議会の中にタクシービジョンの小委員会というのを一昨年度設けて、答申を出させていただきました。これは私が主導させていただきましたけれども、その中で市場の失敗という言葉を使わせていただきました。経済学者はよく使う言葉でございますが、いわゆる市場機構がうまく自律的に機能しないことがある、こういうことでございます。

 いろいろな要因があるわけでございますけれども、特にタクシーの場合には、情報の非対称性といいますか、利用者が十分な情報を持っていないということ、それから、特に大都市におきましては選択の可能性が低い、要するによい商品を選ぶといったことがなかなかできにくいという意味で、市場がうまく機能しないという面はございます。

 こういったことを考えて、市場の失敗をいかに克服していくかということが重要なポイントだと思います。

 ただ、私ども、経済学者として市場の失敗という言葉を使わせていただきますが、市場が失敗したから市場は全くだめだ、こういう意味ではございません。市場の失敗があるとすれば、それをいかに取り除いていくか、このようなところで、政策や、場合によっては規制というものの意義があるということでございます。

 そのためにどういう方向を目指していくべきかということで、公共交通の要件ということで三つございます。

 これも先ほど申し上げましたタクシービジョンの小委員会の方で指摘させていただきましたけれども、まずは何といっても、安全、安心、高品質なサービスを確保すること。それから一方では、非常に価値観が多様化しておりますのでニーズも高度化しておりますが、こういったものにいかに対応していくか、こういうことが重要な問題。それから三番目は、これは外部不経済でございますが、環境とかあるいは渋滞の問題にどのように対応していくか。こういうことを政策の基本として置いていかなければならないということであります。

 ただ、先ほど言いましたように、市場の失敗があるから市場が、マーケットがだめだというのではなく、その市場の失敗の要因となるものを取り除いたところで、マーケットメカニズムをいかに使って、十分な、良質なサービスを確保していくか、これが私は政策の基本であるというふうに考えております。

 そこで、ビジョン小委員会の方でいろいろ議論させていただきました結果、どのような方向がいいのかということで、三番目に、タクシー事業の活性化のための方策についてということでまとめさせていただいております。

 タクシー事業は昭和四十年代にピーク、これはバス事業も同じでありますけれども、いわゆる道路の自動車運送と言われるものは、マイカーが普及して、公共交通、特に鉄道系の公共交通が発展するに従って衰退してまいりました。この中でバスやタクシーをどのように活性化させるかというときに、かつてのような画一的なサービス、単一のサービスで、この複雑化した世の中でそれを維持していく、あるいは活性化していくというのは難しいということであります。

 そこで、タクシーにつきましても、そこにありますように、総合生活移動産業、こういった言葉を考えました。要するにタクシーの輸送事業、これをコアといたしまして、その周辺の事業と有機的にそれを結びつけることによって新しい分野、新しい業態、新しいマーケット、新しいビジネスモデルをつくり出していく、こういったことが必要ではないかということであります。

 そのために何が必要か。これはよく言われることで、今国の方でも言われておりますけれども、イノベーションであります。イノベーションをいかに招来するか、事業を革新していくかということであります。

 タクシーの場合には、先端技術、科学技術でイノベーションをするのではなくて、いわゆるローテクであります。それから、生活に密着した非常に具体的な産業であります。こういった事業を革新することによって、そこにありますような総合生活移動産業を実現していく、こういうことを考えたわけであります。それによりまして、要するに、業態を超えたサービスが提供され、業界が流動化し、新陳代謝が促進される、新しい革新性を持った事業者、あるいは新しい革新性を持った経営者がそれをリードしていく、こういう業態をつくり出していけるのではないか、こういうふうに考えたわけであります。

 このようなことで、先ほど申しましたように、市場の失敗を克服しながらマーケットメカニズムをいかに優先していくか、こういうことを考えたわけでありますけれども、ただ、それには大前提があるということであります。

 先ほど申し上げましたように、タクシーの基本的な方針としましては、安全、安心、良質なサービス、あるいは、多様化、高度化するニーズへの対応、外部環境、渋滞、環境問題への対応、こういった問題があります。そういったときに、これまでのいわゆるタクシー業務適正化特別措置法では十分ではないのではないか、こういうことに考えが至ったわけであります。

 四番のところに、新業態推進のための基礎条件の整備ということがございます。

 何といいましても、交通運輸の場合には、輸送の安全、運転者の質の確保、向上、こういったものが最低限必要である、あるいは、こういったものを前提としなければ先ほどのマーケットメカニズムはうまく機能しないということであります。

 そのためには、運転者の皆さんに、もう少し、どのような方に働いていただくかとか、あるいはどのように働いていただくかということについて要件を見直しまして、こういったことをある意味では政策として打ち出していくということだと思います。

 それからもう一つは、運転者登録制度の導入ということであります。

 これは、既に指定地域で行われているものでありますけれども、こういった接客業、特に個室で個別の顧客と相対する、こういった業態におきまして、運転者の皆さんのスキルといいますか、そういったものが非常に重要であります。それと同時に、安全性を含めた意味での質の確保ということで、運転者の皆さんの登録制度を今まで以外の地域でも導入したらどうか、こういう考えに至ったということであります。

 今回、改正法では、指定地域を拡大すること、それから、運転者の登録要件等についても見直すこと、そしてまた、特別指定地域というものを設けてこれまでの方針をさらに強化する、こういうことでございますので、我々が考えました、マーケットを生かした上での望ましいサービスのあり方、あるいは必要な要件の確保ということについては、今回の法案が極めて重要な、あるいは必要なことを方針として打ち出しているというふうに考えているところでございます。

 それから、先ほど述べましたタクシーのビジョン小委員会の方で議論いたしましたときに、市場の失敗を回避する一つの方法は、利用者が選択できる環境の整備、こういうことだったというふうに思っております。そのために、今回の法律でも先ほど申しましたような改正等を加えて、そういった監視体制を強くしていくということが寄与するのではないかというふうに考えております。

 このように、新しい法律によって市場の基礎的な条件を変えていく、こういったことがタクシーの今後の運営に対して非常に重要な意味を持っていると思っております。

 冒頭に述べましたように、需給調整規制を廃止いたしまして、新規参入、増車の増加ということがございました。それによって、巷間言われておりますように、過剰な供給、過剰な台数の存在、こういったことが一方で指摘されるわけであります。

 ただ、かつてのように、需給調整規制を戻して、要するに、供給を何らかの行政的な形で縛るというようなことが望ましいかと言われれば、それは否でございまして、先ほどから申しておりますように、マーケットを通じてより望ましい、新しい業態をつくり出していく、こういったイノベーション、革新をしていくためには、インセンティブといいますか、やはり市場メカニズムが重要だということでありますが、その基礎条件を設定し直すことによって、よりよい方向に向かわなければならないというふうに思っております。

 かつて、こういった直接的な業界への規制については、経済的な規制と、それから、クオリティー、質的な規制を分けて、経済的な規制については自由化をする、そして質的な規制については強化をする、こういうことが言われました。今回の方針も恐らくそういう方向だろうというふうに思っております。

 ただ、質的な規制を変えることは、恐らく、経済的な側面、例えば需給の条件やあるいは供給の形態、こういったものに影響を与えないかと言われれば、そんなことはないのでありまして、今回の法案もそういった効果は持つというふうに思っております。

 そのことは、先ほど申しましたように、例えば、需給調整を廃止することによって過剰になったタクシー供給、こういったものをある意味では適正な方向に向かわせるということが言えるのではないかと思っております。そのことは、例えば運転者の皆さんの賃金の減少という問題につきましても、こういったタクシードライバーの方々の資格要件をしっかりし、それによってサービスを高い水準に維持することによって、一方でそれに見合った対価というものがタクシーの運転者の方々にももたらされる、こういうようなことだと思います。

 そこのレジュメにありますように、サービスの質の確保と需給関係というものは必ずしもばらばらではなく、こういったものを通じて、よりよいマーケットの均衡点、こういったものが実現するのではないかというふうに思っておりますし、適切な労働分配率の確保も実現するのではないかというふうに思っている次第であります。

 以上のように、今回のタクシー業務適正化特別措置法の改正でございますが、需給調整以降いろいろな問題点が出てきた、これを適切に修正する方向の法案であるというふうに思っております。私は、そういった意味で、今回の改正について支持をしたいというふうに考えております。

 私の陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、三浦参考人にお願いいたします。

三浦参考人 ただいま御紹介いただきました三浦と申します。

 私は、現在、全国乗用自動車連合会の経営委員会及び規制緩和対応特別委員会の委員長を務めております。また、東京ではタクシー事業を経営しております。

 本日は、タクシー業務適正化特別措置法の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、参考人としての意見を求められました。私は、日ごろからタクシー事業の経営に携わっております。また、今回の法案の方向性を検討する交通政策審議会の小委員会にも委員として参画させていただきました。また、全国団体の役員の立場もあります。それらを総合いたしまして、意見を述べさせていただきます。

 まず、その前に、社団法人全国乗用自動車連合会について申し述べたいと思います。

 全国の法人タクシーの業界団体として社団法人の認可を受けたのが昭和三十七年でございまして、以来四十五年間、法人タクシー事業者の全国団体として業界の発展のため活動を行っております。

 法人タクシー事業者は、平成十八年三月末で一万四百四十五社、車両数二十二万七千二百五十二台、個人タクシーを含めますと二十七万三千百八十一台となっており、その九九%は資本金一億円以下の中小事業者となっております。

 輸送人員は、マイカーの増加、鉄道路線、特に地下鉄等の拡充により、昭和四十五年度の四十二億九千万人をピークに減少に転じ、近年においては、景気の低迷を受けた需要減により、平成十七年度には二十二億二千万人とおおむね半減しており、大変厳しい経営が続いております。

 しかし、タクシー事業を含む公共交通機関は、人命を輸送するという最も重い責任を負っており、安全、安心、快適というサービスを提供することが最大の使命であると認識し、日ごろ経営に当たっております。

 先生方御承知のとおり、タクシー事業においても、平成十四年二月に道路運送法の一部改正が施行されました。需給調整が撤廃され、タクシー事業への参入が容易になりました。この結果、この五年間に事業者は全国で約六百社ふえております。また、タクシー車両は全国で約二万台増加しております。例えば大阪、仙台といった地域において、著しい増車により激しい競争が生じております。

 タクシー事業におきましても、この激しい競争の中で高度化する利用者のニーズに積極的に対応するため、GPS―AVMシステムの導入による無線配車の効率化、アイドリングストップによる地球環境への配慮、乗り合いタクシーの積極的参入、ケア輸送、子育てタクシーなど地域の足の確保、禁煙タクシーの導入など、自主的な取り組みを積極的に行ってまいりました。

 このような努力の結果、規制緩和後の評価として、利用者の方は待たなくてもいつでもタクシーが利用できるなど、一定の評価をいただいていると認識しております。

 しかしながら、このような取り組みの一方で、タクシー業界においては、運賃収入の減収、運転者の賃金低下と高齢化、交通事故の高どまりなど、多くの問題が生じております。また、タクシー運転者の賃金は全産業男子労働者の五五%まで低下し、長時間労働、客待ちタクシーによる道路混雑など、規制緩和の影の部分が浮き彫りになってきております。どうかタクシー業界の厳しい状況に御理解、御支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 このような中、LPG等の燃料の高騰に加え、運転者の待遇改善を行う必要があり、全国九十の地域のうち五十地域で約十年ぶりの運賃改定の申請が行われております。長野県、大分県では既に四月二十七日に認可を受けて実施しておりますが、全国における運賃改定につきましても御理解、御支援をいただくよう、よろしくお願い申し上げます。

 さて、本題であるタクシー業務適正化特別措置法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から意見を申し上げます。

 この法案の内容については、私も委員として参画させていただいた交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会タクシーサービスの将来ビジョン小委員会の中で議論され、運転者登録制度の導入として取りまとめられました。私を初め参加した他のタクシー事業者の委員も、登録制度の地域拡大などについては、タクシー事業のサービス改善に役立つものとして基本的に賛成をいたしました。この報告書の内容に沿って今回の法律案が作成されているものと考えており、この法案についても賛成いたします。

 以下、事業者の立場から意見の陳述とお願いをさせていただきたいと思います。

 運転者の登録制度は、昭和四十五年に本法が施行され、東京、大阪に導入されました。以来、財団法人であるタクシー近代化センター、現タクシーセンターが登録制度を運営し、運転者教育についても、個々の会社教育に加え、公正中立な第三者機関としてその一端を担ってきました。これらの対策により、現在、東京では八万二千百三十六人、大阪では三万二千九百九十一人の運転者の登録がなされ、タクシーのサービス水準の改善、向上に効果を発揮し、利用者の利便確保に貢献してきたものとして評価しております。

 今回の法律改正におきましては、利用者の利便確保に加え、輸送の安全の確保が法目的に追加され、さらに、指定地域を現在の東京、大阪以外の主な政令指定都市及びその周辺都市に拡大することとされております。

 タクシーの評価は運転者の資質により決定すると言っても過言ではありません。私ども事業者としては、日ごろ従業員教育に最大限心を砕いておりますが、タクシーの場合、特に流し営業が多いと、ほとんどの営業行為がタクシー運転者にゆだねられることとなります。運転者には大変優秀な人も大勢おりますが、中には問題のある人もいて、事業者として幾ら努力しても、地理不案内、乱暴運転などの苦情がなかなかなくならないのが現状であります。

 今回の法案では、流し営業が中心となっている政令指定都市等において登録制を導入して、問題のある運転者を排除する仕組みが整備されることとなります。登録制度の地域拡大と全国ネットによる管理で、タクシー運転者としてふさわしくない人を排除し、良質な運転者を雇用することができれば、事業者としてサービスレベルの向上が図られるばかりではなく、タクシー業界全体の資質向上が図られることから、望ましいものと考えております。

 また、登録制度の導入が予定されている指定都市等については、協会傘下会員を対象に既に任意の登録制度を実施してきております。しかしながら、任意の制度では、悪質な運転者の排除まではできないこと、それから、会員外の事業者については対象にできないという限界がありました。

 今回の法案が施行されれば、これまでの取り組みをより有効に行うことが可能となります。法律改正により、会員以外を含めすべての事業者を対象として登録制度が実施され、かつ、オンラインによる全国ネットとすることにより悪質運転者が周辺地域に移動して運転者を続けることが排除されることにより、登録制度の効果が十分発揮されるものとして期待いたしております。

 なお、登録実施機関として業務を行うためには国土交通大臣に登録する必要がありますが、登録事務等を行うために必要な設備を有していること、専任の管理者を置くことなどが求められております。

 登録機関の候補と考えられる道府県のタクシー協会における現時点での任意の登録制度では、登録データの差があるなど大きな地域差があります。どうぞこのような地域の実態を十分御認識いただいた上で、制度の実施に当たっては各地域の実情に応じた柔軟な対応をお願い申し上げるとともに、国における最大限の支援、なるべくコスト負担の少ないシステムの構築をお願い申し上げます。

 以上で法律改正案に対する賛成意見と要望の陳述を終わりたいと思いますが、最後に重ねてお願い申し上げます。

 最初にも触れましたとおり、平成十四年二月の規制緩和により、タクシー業界は新規参入が続き、競争が激化する中で、供給過剰地域が相次ぎ、業界は非常に疲弊しております。我々業界としても、利用者ニーズに的確に対応し、安全、安心、快適なタクシーを維持するべく日夜懸命に頑張っておりますが、業界の努力だけでは限界があります。

 規制緩和自体の評価についてはメリット、デメリットの両方があると思いますが、どうか規制緩和の影の部分についても御認識をいただき、その改善方を切にお願いして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、待鳥参考人にお願いいたします。

待鳥参考人 タクシー運転者の労働組合の全国組織で役員をしております待鳥です。

 法案に触れます前に、現状について若干述べさせていただきたいと思います。

 タクシー事業が規制緩和されてちょうど五年三カ月がたちました。この五年間にタクシー業界にもたらされた状況を一言で言えば、まともな経営、良識的な経営は立ち行かない、働いている私たちの仲間は最低限の生活の維持さえもままならない、そしてまた一番大事な交通事故の件数については十年前と比べて六割もふえた、こういう現実であります。タクシー運転者の年収は、規制緩和以降に、前と比べますとちょうど百万円低下をいたしておりまして、現在、全国平均で約三百万円という現実でありますけれども、全国的に見れば二百五十万円前後という地域が多数存在をしております。まさにタクシー運転者の状況というのは格差社会の象徴的なものだというふうに指摘をされるまでになってしまったわけでありまして、こうした実情を直視すれば、タクシーの規制緩和のあり方ということについては、間違っていた、失敗であったと断言せざるを得ないだろうというふうに私たちは考えております。

 そうした中で、しかし、今回の特別措置法の改正による運転者登録制度の導入、拡大については、本来は規制緩和する前にこうした措置を講じておくべきであったというふうに思っていますし、遅きに失しているという感は否めませんけれども、しかしながら、十分ではないにしても、今述べましたような事態を改善する方策の一つとして、私たちも積極的にこれは評価をしたいというふうに考えているわけであります。

 さて、規制緩和から五年間のうちに、タクシー台数は、先ほども出ておりましたが、法人だけで約二万台ふえました。輸送人員が年々減少している中での増加でありますから、供給過剰が大変深刻化しておりまして、過当競争が一段と熾烈化いたしております。行き場のなくなったタクシーが町にあふれて、交通の妨げになったり、環境問題として批判を受けているということについては、御承知のとおりであります。

 需要が減っている、利用者が減っている中で、なぜタクシーの台数が一方的にふえていくのかということについて、これは業界外の方々には非常に理解できにくいところではないかなというふうに思います。

 タクシーについては、コストの七五%が人件費という典型的な労働集約産業でありまして、しかも、運転者の賃金が歩合給で構成をされています。したがって、経営側からいえば、供給過剰や価格競争に陥って台当たりの営業収入が落ち込んだ場合には、その分を台数をふやして補おうとする。それでもまた台当たり営収が落ち込んでいくと、さらにまた増車をする。こういう悪循環に陥って、一方的にふえているのが今の現状なわけであります。ですが、台当たりあるいは運転者一人当たりの営業収入が落ち込んだ分については、その大部分が歩合給によって、賃金の減額として運転者にしわ寄せをされていますし、賃金が減額をされますから、経営者についてはほとんどリスクを負わない、こういう仕組みが今、雇用関係の中であるということであります。

 こういう構造をそのままにして規制緩和してしまったところに今噴き出しているタクシー問題の根幹があるんだということをぜひ御理解いただいておきたいというふうに思っているわけであります。

 今回の特別措置法の改正による運転者登録制の拡充については、タクシー産業が疲弊して、輸送の安全が脅かされている現状をこれ以上ひどくさせないという意味において、私たちはその果たす役割について期待をしているところであります。

 そういいますのは、規制緩和以降の事業者の姿勢を見ていますと、事業者の方々の中には、一部ではありますけれども、人の命を預かる公共交通を営んでいるんだという自覚と社会的な責任を全く欠落したと言わざるを得ないような方々もふえているわけであります。そういう事業者の方々は、とにかく台数をふやしたい、規模を拡大したいがために、運転者としての質を問わずに雇い入れている、雇っているという実情が存在をいたします。

 失業率が高どまりをしている状況にあっても、タクシーにはなかなか若い人たちが入ってまいりません。運転者の平均年齢は五十五歳に達しています。大変な高齢職場になっています。年齢構成を見ますと、五十歳代が四九・三%、六十歳代が三〇・三%、実に五十歳以上で八割を占める、そういう構成になっているわけであります。年収も、先ほど申し上げましたが、三百万そこそこ、それも年間二千五百時間もの深夜を含む長時間労働によってやっと得られている収入だということであります。

 つまり、きつい割に報われないがために人が来ない、それでも台数をふやす、そして稼働率を維持するためにだれでもいいから雇い入れる方向に走っているというのが現状であるわけであります。したがって、私たちは、この法律について、そういった過剰状態を抑制していく一つの方策として受けとめたいというふうに思っています。

 次に、法律が予定している制度について述べさせていただきたいと思います。

 一点目には、タクシー運転者の登録の要件についてであります。

 今申し上げましたような状況については、良質なタクシーサービスの提供や輸送の安全確保という観点から見逃せないというふうに思います。サービスも安全もひとえに運転者の状態と資質にかかっているということでありまして、したがって、運転者の登録制度がタクシーサービスの向上や輸送の安全確保、そして働いている運転者の社会的な地位の向上につながるものとして、実効ある制度として具体化されることを私たちは望んでいるところです。

 登録の要件として、法令、接遇、地理、安全等に関する一定の講習を修了していることというふうに法律案ではなっていますけれども、この講習のレベルについては、相当に高度なものにしなければ利用者の要請にはこたえられないのではないかというふうに思っているところであります。

 現在、東京と大阪のタクシーセンターにおいて地理試験が実施をされて、登録制度が既に実施をされておりますが、その地理試験をくぐってきた人たちが地理に不案内であるという不評を買っている現実があるわけであります。やはり十分に機能をしていないという側面があります。

 したがって、講習の修了ということについては、何をもって修了と見きわめるのか。居眠りをしていても講習の時間さえ過ごせば修了になるようではいけないのじゃないか、やはり実質的なテスト的な方法を取り入れることが不可欠ではないかというふうに考えているところです。

 また、講習についても自社研修の道が開かれておりますが、これではせっかくの制度がざるになるおそれが強いのではないかと思います。何の実績もない企業が、ただ自社研修のプログラムを整えたからといって、本当にそれが実際に実行されるというふうに信用できるでしょうか。私たちは大いに疑問を持っているところです。台数をふやしたい事業者に任せるということについては、制度の空洞化を招くのではないだろうかというふうに思います。

 二点目には、登録の水準についてであります。

 重大事故や重大違反行為など問題があった運転者に対しては、登録の取り消しで臨む、つまり排除をする仕組みがとられるわけでありますけれども、人の命を預かっているタクシーにとって、交通事故などの問題が起こってからでは遅い。やはり入り口を広げて、だれでも通すような、そういう緩やかな制度で不適切な運転者を採用しておいて、後から問題があったら罰則で排除をするということについては、これはやはり万全ではないのじゃないかなというふうに思っています。入り口で、登録の時点で絞り込んで、高い質を確保できる制度とすることがやはり肝要ではないかなというふうに考えるところです。

 三点目に、登録の取り消しに当たっての問題点を指摘しておきたいと思っています。

 登録の実施機関としては、恐らく地域のタクシー協会等、事業者団体でありますけれども、それが想定をされているようでありますが、この制度の公正さと公平さを確保するためには、やはりそこに運転者の労働組合代表が制度運営に参画することが不可欠だというふうに思いますし、登録諮問委員会において制度の運営が適正かどうかチェックすることも当然でありますし、また、登録の取り消しになれば運転者は生活の道を奪われるわけでありますから、運輸局による登録の取り消し処分の前に運転者の代表も入った公正な審査の手続を踏む、そういう手続を踏むことが必要ではないかというふうに思っています。そして、何よりも、登録の取り消しに関する客観的な基準が設定されて、公表されておくことが必要ではないかというふうに思っています。

 四点目に、この登録制度では、運転者の側にだけ責任をとらせる偏ったものであるというふうな感じが否めないと思います。

 問題のある運転者を雇用した側の責任、雇用責任、あるいはそうした運転者を日常指導する指導責任がもっと厳しく問われてしかるべきではないだろうかというふうに思うところです。それがこの制度ではすっぽりと抜け落ちているということを指摘しなければいけないだろうと思っています。やはり問題のある運転者を多く雇用してしまったそうした事業者については、道路運送法上でのペナルティーを与えるべきではないでしょうかというふうに私たちは思っているわけであります。

 以上、何点か申し上げましたけれども、この登録制度がタクシー規制緩和の弊害を取り除いていく一つの方策として、特に供給過剰の状態を抑制する方策として期待をしたいというふうに思っています。また将来的には、実際にハンドルを握って、そしてお客さんと接する運転者が主役となる、運転者資格の創設につながるものとして期待をしまして、意見表明としたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、井手参考人にお願いいたします。

井手参考人 私、エネルギーあるいは交通、それから通信、郵便、こういったものの競争政策あるいは規制のあり方ということを研究しておりまして、その観点からタクシーについて今回意見を述べさせていただきます。

 基本的には、今回の法律改正案について、方向性としては賛成であります。その上で、二点について述べさせていただきます。

 その二点というのは、まず、需給調整条項を緩和したときの、その後のタクシー事業について、それから、今後あるべきタクシー事業のあり方、規制のあり方、この二つの観点から意見を述べさせていただきます。

 まず一つは、需給調整条項というものを廃止して、鉄道とかではなかなか競争が起こっていないわけですけれども、タクシーは、先ほどの意見陳述からありましたように、一定の競争というのが起こって、評価はできる。しかしながら、一方で、需要の低迷等があって非常に経営が苦しいという意見もございました。

 私の意見としましては、本来であれば規制緩和というのは市場原理が働くわけで、そこで退出していくべき事業者というのは本来退出をする、これが市場原理であります。それがうまく働かない。タクシー事業においては、逆に、増車をして、総収入を確保するためにいろいろな過重な労働を課している。これが私には全く理解ができない。本来であれば市場原理が働いてということになります。

 そういう意味では、この問題というのは、やはりタクシー事業のビジネスモデル、経営者のビジネスモデルそのものが問題ではないか。だから、規制緩和そのものが間違ったというよりも、ビジネスモデルというものをやはり事業者が検討しなければいけない。そのために行政がどういう役割を果たすかというと、行政としては、環境の整備というものを図る、あるいは公正な競争を図るということが行政の役割だろうというふうに私は思う。そういう意味では、経営者あるいは供給者が考えるべきビジネスモデルというのをやはり再考する必要があるんだろう。

 供給過剰というふうに言われておりますけれども、本当に供給が増加したことによってどういう影響が出てきているのか、こういう分析というのが余りされておりません。これは我々経済学者の責任でもあるわけですけれども、タクシー業界について、いろいろな経済分析というのはなかなかないんですね。

 例えば、タクシーの価格の需要の弾力性というのは小さいというふうに想定されています。すなわち、価格を上げても、一時的には需要は減るかもしれませんけれども、すぐにもとに戻る、こういう特質性が多分あるんだと思います。

 それから、規制緩和するときに、諸外国の状況を踏まえてというのがいろいろな産業で見られるわけですけれども、タクシーに関してはなかなかそういう分析というのもない。よくよく調べてみますと、例えばアメリカでは、タクシーの自由化、余りされておりませんけれども、実証分析というのがあります。タクシー事業の規制緩和については、サービスの低下とそれから運転手の実質賃金の低下というものが実証分析で出されております。その後どういうふうな規制の見直しをやったかという、ここまでは触れておりませんけれども、実証分析ではそういう結果が出ております。

 それから、ほかの産業もそうですけれども、市場原理を導入すると、いわゆるモラルハザード、これは日本語にすると倫理の欠如というふうに言われておりますけれども、こういうモラルハザードというのはたまさか起こるものではなくて頻繁に起こるものだという認識をやはり持たないといけない。これに対してどういうふうに対処するかということが非常に重要だろうと思います。

 それから、これは後半の部分の観点にも入るわけですけれども、EUでいろいろな産業というのが自由化が推進されております。その中で問題になっているのは、新規参入者というものは、既存の企業も当然いろいろな形で合理化をやります、それから人件費も削ります、さらにそこに新規参入者が入ってくると何が起こるかというと、やはり人件費を削減するというのがもう究極の経営者の目標になってしまう。そういう意味では、低労働条件というものがEUの中では非常に問題になってきております。それが自由化を推進するときにやはり問題ではないかという指摘も最近ではされております。

 それから、先ほど冒頭に述べましたけれども、タクシー業界においてどうも市場原理がうまく働いていない。これはお配りしたペーパーにも書かれておりますけれども、通常は価格というのが需給調整の仲介役を果たします。タクシー料金というのはそういう意味では、私からすると、コストの問題というのは、供給者のコスト条件だけを考慮して需要側のことというのは余り考えていない。つまり、コスト積み上げで実績原価主義だというところで、この価格というのが適正に機能していないということが多分問題だろう。では、需給調整の役割を果たしているのが何かというと、多分実車率だと思う。実車率が低下しているということは、これが価格にかわるバロメーターとして役割を果たしているというふうに理解ができる。

 それからもう一点、過去の重大事故と車両数というのをいろいろ見てみますと、かつての傾向としては、車両数と重大事故の関係というのは逆相関がある。つまり、車両数がふえると事故は減る、こういう傾向があった。ところが、近年の傾向を見ると、車両数はふえているけれども事故もふえている。そういう意味では、車両数のコントロールというものによって必ずしも安全性というのが確保されないということがこれまでの状況から読み取れるというふうに思われます。

 そういう状況を踏まえて、では、今後のタクシー事業をどういうふうに規制あるいは競争政策を考えていくかという点について意見を述べさせていただきます。

 先ほど冒頭にも述べましたけれども、規制緩和というものが逆戻りするというのはなかなか難しいわけで、そういう意味では、市場原理がうまく働いていない、ここのところの原因は何なのかというところをやはりきちんと検討していく必要があるだろう。

 私は、先ほど指摘しましたけれども、経営者のビジネスモデルというものをきちんと経営者側が考えていくということが必要ではないか。そういう意味では、市場原理が働くようなメカニズムというのを行政が考えていくというのは一つ必要だろう。

 それから二番目として、タクシーというのは公共交通機関だという位置づけだとすると、やはりその地域地域によって、その地域の交通政策と密接に関係しているわけで、そういう意味では、タクシー事業というのがどういう分野というものを補完すべきものなのか、そして公共の交通機関としてどういうふうに位置づけたらいいのか、ここのところの大前提をまずきちんと議論していく必要があるだろう。その上で、総合的な交通システムの中でそのあり方というものを考えていく。

 先ほどからの指摘もありましたけれども、タクシーが健全に発展するためには、適正な台数、それから適正な価格、そして運転者の質というものが当然その発展のための要素である、この三つが適正に発展する要件だろうと思います。

 あえて極論すると、安全規制だけで十分だ、社会規制と言われている安全規制を行政側がきちんと規制することによって、タクシー業界に対する規制というのは十分だろうと私は思います。安全規制の徹底を図り、そして監視体制を確立するということがこの業界に求められていることではないのだろうか。

 それから、前回の法律改正のときに、緊急調整措置という、これは附帯決議だと思いますけれども、とられておりますけれども、これはいろいろな産業で戦後からとられてきた生産調整であります。生産調整というのが必ずしもうまくいかないというのはもう歴史が教えるところでありまして、行政の介入するということは、やはり基準を明確にしないと、こういう措置というのは有効には機能しない。しかも、こういう行政の介入というのは、私は極力避けるべきだというふうに思っております。

 その点で、競争を導入してそれを効果あるものにするという観点からすれば、行政が果たす役割というのは、先ほど述べましたように、いわゆる環境整備をやる、そして何らかの公正な競争というのが守られていないとすれば、事後的に対処する、こういうことが基本であろうということであります。

 その点で、今回の法律改正で台数というのを規制する、これは規制の逆戻りでありますから難しい。そうなりますと、私の観点からすると、間接的に台数を絞り込むというようなことを考えたときに、それによって一定のサービスの質を確保するという点で、今回の法律改正ということで運転者の資格というものを絞り込む、こういった登録制度あるいは講習制度の創設、こういったものは必要だろう。先ほどありましたけれども、そういった講習が形だけに終わらないような仕組みを考えていく必要があると思います。

 それとともに、やはりコンプライアンス、法律遵守というのがこの業界にとっても必要ではないか。その点で、今回の法律改正については、冒頭に述べましたけれども、基本的に、方向性としては全く異論はありません。

 それから、労働者の賃金の問題。こういう低賃金だということですけれども、これもある意味では、いや、歩合制を固定制にすればいいとかいろいろな議論は多分出てくると思いますけれども、それは私どもが、あるいは労働条件ということですから、これは経営者が考える問題だろう。そういう意味で、やはり国、それから経営者、利用者、いろいろな形で多分改善の余地はあるんだろうと思いますけれども、経営者側、供給サイドの側の改善の余地というのは非常に大きいのではないだろうかと思います。

 その上で、ここに最後に書かせていただきましたけれども、低料金、あるいはタクシーの持つ機動性とプライベートな移動空間というものを生かして、利用者に対する質の高いサービス、単に輸送手段にとどまらない広範囲で高レベルなサービスの提供というのがタクシー業界に求められていることだろうと私は理解しております。

 以上でございます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀岡偉民君。

亀岡委員 参考人の皆様方からすばらしい意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 基本的には、皆さん今回の法案には賛成という立場でお話をしていただきました。

 特に、山内先生は、タクシーサービスの将来ビジョン小委員会の委員長としてかなり活躍をされておられまして、詳しくお話をしていただいたわけですが、市場の失敗というお話もされておりました。また、多様化、高度化するニーズへの対応というお話もされておりましたが、特に、最後の方で運転者のスキルという問題も出ていました。

 やはりタクシーというのは、先ほどから皆さんお話しされているように、どうして市場が失敗しているのか、市場原理が導入されないかということもありましたけれども、まさに利用者が安心して利用できるという環境も非常に大事であるというお話が皆さんから出ておりました。

 そして、三浦さんからもやはり同じような話、それから待鳥さんからもみずからそういう運転者側の問題もさんざん指摘されていました。そして、井手先生からも同じように運転者の質というものが一番大事だということも出ておりました。

 私は、これはぜひ皆さんに、単純な質問で申しわけないんですが、この法案が出されるいきさつとなった、特に最近、物すごい過労運転に起因する重大事故が発生したり、またお客さんからの苦情がたくさんふえている、これがこの法案の最初の原点になったんだと思うんですが、どういう状況でこんなことが起こってしまったのか。もう少し具体的に、思い当たる点とかもし研究された中身がありましたら、ここについてちょっとお聞きしたいと思いますし、もしその原因をしっかりと突き詰めておられれば、今回の法案がこれに対してどんな効果があるのかということがわかれば、ちょっとお話をいただければと思います。

 それぞれ参考人の皆さんから一言ずついただければと思うので、よろしくお願いします。

山内参考人 先生御指摘の、安全性の問題とそれから接遇等を含めたサービスの質の問題ということだと思います。

 まず、根本的なことから言いますと、先ほど言いましたように、タクシーは、マーケット、市場が失敗する。なぜ市場が失敗するかというと、特に大都市におきましては、個人が、利用者がどのタクシーということを選べない、ここから来ているというふうに思っています。要するに、何かサービスの質が悪いとかあるいは安全性に劣るということであれば、我々はその事業者との取引をやめる、退出すればよろしいんですが、それがなかなかできないということが根本であります。

 そこで、もともとタクシーにつきましては、利用者の安全を守るために、安全性の規制やサービスの質についての規制、特に大都市におきましては地理試験等を課して、そういったスキルの一定レベルを確保する、こういったことをやってきたわけでありますけれども、先ほど申しましたように、需給調整規制を廃止いたしまして、それによって新規の事業者が出てくる。新規の事業者が出てくるということは、新しいスキルや新しいノウハウ、新しい考え方を持った革新的な事業者が出てくるという一面いいところがあるのではございますけれども、先ほど申しましたような、もともとマーケットが失敗するところの弱さ、これについて十分に担保する措置ができたかというと、今までの法律ではできなかった、こういうことだと思います。

 そのことによりまして、事故がふえる、重大事故がふえる、それから接遇等のサービスの質の低下がある、こういうことだと思いますけれども、これはある意味では、先ほど井手参考人の陳述の中にもありましたけれども、台数がふえて走行距離が出ると、それによって事故がふえるという側面もあるということだと思います。

 ただ、先ほど申しましたように、従来のレギュレーション、従来の質的な規制では十分ではなく、そういったことを担保できない状態になってきたというのが真実であって、今回、この法律によって、完全とは申しませんけれども、それに対する一つの対策がとられるのではないかというふうに思っております。

三浦参考人 ただいま先生御指摘の件でございますが、私どもタクシー事業者も、やはり安全の確保と利用者利便の確保というのがこの事業の根幹であろうということで、常日ごろ、会社として乗務員教育等に取り組んでいるところでございます。

 各事業者においても、私どもと同じような考え方でそれぞれやっておられると思いますが、ただ、御承知のとおり、先ほど申し上げましたとおり、非常にこの五年間で、東京の例をとりますと、新規参入が八十社余り、四千台ぐらい増車されている。今現在、法人タクシーが三万三千台、そのほかに個人タクシーが一万八千台、五万台以上あるというような状況でございます。

 そうしますと、どうしても、先ほども申し上げたとおり、景気その他により需要が減少しておりますから、ドライバーとしては、運転をするに当たって非常に焦りが出る。何とか収入を確保しようというようなことで事故が発生したり、また、こういう新規参入事業者もどんどんふえてきているようなことから、非常にドライバーの移動も激しくなり、サービスの低下も一部見られるところでございます。

 ただ、私ども事業者としては、昨年十月に運輸安全マネジメント制度の導入ということがなされておりますし、また現在、三十九台に一人の運行管理者の配置ということも、今回の法律の改正で決められております。それに基づいて、日ごろ、明け番研修会等、安全面それから利用者サービス面について教育を行っておりますし、また補助的に、先生方も御承知のとおり、最近ドライブレコーダーというものが出てきておりますが、ドライブレコーダーも東京の場合ですともう七割以上装着されているということでございますので、こういうものを教育に活用して事故防止に努めていかなければならない。

 要は、我々事業者としては、安全の確保と利用者利便の確保ということを常に頭に入れて、今後とも頑張っていきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 以上です。

待鳥参考人 先ほど市場の失敗という言葉が出ておりますけれども、まさしくそれは数字で証明されているんじゃないかなというふうに思っています。運転者一人当たりの営業収入というのは、一九九五年には六百四十四万円ありました。ところが、二〇〇四年には四百九十一万円まで大幅に低下をしています。これでは本当に、規制緩和をして効率化して生産性が上がるというその目的に全く逆行しているんじゃないか、だから規制緩和は失敗したんだというふうに先ほど指摘をしました。

 そうした中で、働いている運転者というのは非常にストレスがたまっています。忙しくて体がきついということについては辛抱できるけれども、どんなに走ってもお客に当たらない、どこへ行っていいかわからないといったようなストレスというのは物すごく蓄積をされております。そうしたへとへとになった、疲れ果てた状態が、やはり事故を多発させている、そういう原因だというふうに私たちは考えているわけです。

 労働時間にしても、今、表にあらわれないサービス残業というのが非常にふえています。そうしなければ生活が維持できないところまで売り上げが下がっている、供給過剰になっているという現実があるということです。

 その辺は、やはりゆとりを持って働くことができなければこのタクシーの問題というのは解決しない。タクシーの印象というのは、安全問題もそうですし、すべてこれは運転者の状態にかかっているわけですから、そこのところにやはり重きを置いてやっていただかなきゃいけないんじゃないかと思っています。

 以上です。

井手参考人 前者の質問については、私は専門ではございませんので、消費者の立場からすると、やはりタクシーというのは流しというのが中心ですから、それは逆に言うと、インフラを整備する、タクシーの待つそういうインフラを整備するということも多分事故の低下にはつながっていく方策だろうと思います。

 それとともに、後者の質問ですけれども、やはり台数を絞り込むというのは規制によってはなかなか難しいわけですから、運転手の資格というものを非常に厳しくしていく。これは、ロンドンの運転者の資格試験みたいな免許試験というのは非常に厳しい中でやられておる。そういう運転者に対して、いわゆるステータス、ある意味では誇りを持てるような職業として位置づける、これもやはり必要なことだろうと思う。そういう資格試験によって、だれでもやれるというようなものではないということによって、間接的に台数というのを絞り込んでいく、これによって今回の法律というのは一定の役割を果たすのではないだろうか、私はそういうふうに理解しております。

亀岡委員 ありがとうございました。

 それぞれから意見を聞かせていただきましたが、待鳥参考人にちょっとお聞きしたいんですが、先ほどストレスというお話、お客さんがいないとストレスがたまるというお話がありましたが、先ほどから講習の内容が問題であるということを言われていましたね。そして、高度なものが必要であると。先ほど、東京とか大阪の地理試験においても、それを通ってもなかなかそれが逆に生かされていないというお話がありましたが、高度な講習というのは具体的にどういうものをお考えですか。

待鳥参考人 タクシー事業を遂行していく上で、やはり道路運送法あるいは道路交通法等、自分の仕事にかかわる最低限の法律についてはきっちりと身につけるということと、それから、やはり輸送をやる上では、サービス業の一環でもあるわけですから、お客さんとの対応について、気持ちよく乗っていただくためのちゃんとした接遇についても必要だと思っています。

 それと、タクシーは人の命を預かって運ぶわけですから、二種免許を持っているわけですが、ただ運転技能だけではなしに、安全確保についてのきっちりとした知識を身につける必要があると思います。

 それから地理については、東京や大阪みたいな巨大都市については、相当高度な地理試験が必要だというふうに思います。しかし、地方に行けば、先生方、駅前でタクシーに乗っていただいて、家までと言えば連れていってくれるような、そういう関係もあるわけですから、そこは差があってしかるべきじゃないかというふうに思います。

 最低限必要な法律や接遇、安全知識、そして地理の習熟について、講習の場でしっかりと身につけさせる。その効果を確認した上で運転者証を与えるような制度とするということが、今回の登録制度において必要ではないかと思っています。

亀岡委員 今お話しいただきましたけれども、先ほど井手先生が言われておりましたけれども、まさにコンプライアンスも含めた、きちっとした誇りが持てる免許制度というようなお話がありました。

 これはちょっと三浦参考人にお聞きしたいんですが、今の講習の問題も含めて、質の高い、より高度な講習を、しっかりと身につけさせるという意味において、どう考えられますか。

三浦参考人 ただいま先生の御質問でございますが、私、東京でタクシーを営んでおりますから、当然、東京タクシーセンターの方に乗務員を登録させております。

 そのときに、会社としても、日ごろ乗務員教育というのは明け番研修会等で一時間ないし二時間かけて月一回必ずやるようにしておりますし、また、出庫のときにも、先ほど言いました、安全の確保の問題だとかそれから利用者利便の問題についてもいろいろと出庫点呼等でやっておるところでございます。

 その上で、またタクシーセンターにおいても、新任講習のときには、以前は、道路運送法が改正される前には教育期間が五日間でしたが、現在は十日間ということになっております。そのうち三日間をセンターの方に派遣いたしまして、専任の講師から接客サービスまた安全の問題その他いろいろと講習を受けさせております。一定の効果はあるというふうに私ども事業者としては認識しておるところでございます。

 以上でございます。

亀岡委員 ぜひ形骸化しないしっかりした体制というのをこの中でつくっていく必要があるんだろうと思います。

 時間がなくなったのであれなんですが、各参考人の皆様方に一つだけ最後に質問なんですが、日本の公共交通機関としてのタクシー、これから新しい制度によって、もしこれがきちんとされるとすれば一番どこを強調すべきか、または、もし足りなければ何が必要であるかというものを具体的にちょっと一言ずつお聞かせいただければと思うので、よろしくお願いいたします。

山内参考人 先ほど申し上げましたように、規制緩和後、需給調整規制撤廃後、いろいろな意味での、影の部分という言葉でしょうか、問題点が出ているということでありますので、今回の法案によりまして、タクシー事業の質の確保とそれからドライバーの質の確保、それから、先ほど最後に申し上げましたように、ドライバーの労働分配率といいますか、こういったものが高まるというふうに確信をしております。

 ただ、これで十分かと言われると、今後さらにマーケットあるいは市場の取引関係を十分に観察した上で、必要な措置を講じることが必要になるかもしれません。そういったことについて、私も一人の研究者として見守っていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

三浦参考人 タクシー業界におきましても、先ほどもちょっと意見陳述で述べさせていただきましたが、現在、非常に投資をし、GPSのAVMシステムというものを導入し、無線配車の効率、これは言ってみれば、従来は一回配車するのに大体七十二秒かかっているんですが、デジタルの無線機を入れた結果、二十七秒で一回配車できるということですから、倍以上はできるような形になったというようなことも積極的に導入しております。

 また、特に地球環境への問題ということで、アイドリングストップもやっております。

 また、乗り合いタクシーも、我々としては積極的にこれに参入したり、ケア輸送、特にこのケア輸送については、将来的に非常に大事な問題だということで、全乗連の各専門委員会の中に新しくケア輸送委員会というものを設置して、今後活動していこうということになっております。

 また、子育てタクシーなど、これもやはり地域によっては非常に、保育園等に通っておられるお子さんを安全に輸送するということでタクシーを頼られているということでございますので、この辺についても充実していきたい。

 また、最近問題になっております禁煙タクシーの導入につきましても、これはいろいろ利用者の方からも賛否両論あるんですが、平成十五年に健康増進法というものが施行されておりますので、それを踏まえて、やはり業界としても積極的に、また場合によっては専用乗り場をつくって、利用者利便を図って、利用者の方々にタクシーを安心して御利用いただける環境づくりをしていかなければならないと思っています。

 以上です。

待鳥参考人 これからのタクシーを考えるときに、どんなに安全規制や社会的規制を厳しくしようとしても、一人当たりの営業収入が四百万台、そして年間所得が二百万台という現状では、すぐれた乗務員、労働者、労働力というのは確保できないというふうに思います。何としてもそれを打開するためには、適正な台数や適正な運賃水準、そしてすぐれた資質を持った運転者の確保ということがなければいけないんじゃないかというふうに思っています。

 したがって、本当の生産性を確保できる、そういう環境づくりを政治でしていただくことが大事じゃないかと思います。

 以上です。

井手参考人 やはり運転者、運転手の質の向上を図るための施策、それから、タクシー事業というのは法人のタクシーというのも多いわけですから、そういう法人タクシーに対する評価システムというのですか、そういうものを通じて消費者にきちんと情報公開をしていく、こういった周知徹底をすることによって、それによって利用者の利便性というのも高まるのではないだろうか。

 それから、やるべきこととしては、行政としては、安全規制というものをやる。それから経営者としても、ビジネスモデルを考えるということも必要ですし、いわゆる社会的要請にこたえるサービスを提供する、あるいは料金というのを提示していく、これが大事なことだろうというふうに思っております。

亀岡委員 ありがとうございました。

 それぞれ参考人からすばらしい意見を聞かせていただきました。やはりエンドユーザーとしっかり信頼関係が結べれば、市場効果がより向上する。それは利用されるということにつながっていくと思いますので、またいろいろいい参考にさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 参考人の皆さんには、本当に貴重な御意見をありがとうございます。

 座って質問いたします。

 私は、お話を聞いていて、結局、今度の法案との関係もあるんですが、規制緩和というものをどうとらえるかということが事の分岐だと思うんですね。

 私どもは、御承知かと思うんですが、〇二年の規制緩和については反対をいたしました。当時、市場競争を促進し、利用者サービスの向上を図る、需要の拡大によって事業は拡大し、働く労働者の労働条件は向上するというのが道路運送法改正の目的であったはずであります。

 ところが、実態はと聞くと、先ほどるるいろいろな話がありましたが、サービス自由化のいろいろな点があったというのがありましたけれども、実態は、働く労働者の現場、並びに、先ほど影の部分というふうに事業者からもありましたように、私は逆の結果となっていると思うんです。

 国交省の関係でさまざまな意見が出されますけれども、市場の失敗という言葉が報告書に記載されたのは初めてではないかと私は思うんです。

 そこで、私は、タクシー市場というのと、それから産業構造の特殊性から見て、規制緩和はなじまないと思うんですね。少なくとも、立場はいろいろあるとしても、市場の失敗という要因についてどうお考えなのか、もう一度四氏からその問題について詳述していただきたいと思います。

山内参考人 先ほど私自身も市場の失敗という言葉を使わせていただきました。先生御指摘の点でございますが、市場の失敗という言葉をどのように用いるかということですけれども、マーケットが失敗するにはいろいろな要因があって、それをいかに取り除いていくか、こういう視点から先ほど意見を述べさせていただいたところでございます。

 御承知のように、マーケットのよさというのは何か。それは一つは、適切な人、適切な物、適切なお金が適切に使われる、こういった結果を出すこと、これが一つ。それから、ダイナミックに新しいサービスを供給する、新しいものが供給されていく、それを消費者が享受して社会的な満足度が高まる。大きく分けてこういう二つの要因があるというふうに思っております。

 一九九六年でありますけれども、今は国土交通省ですが、当時は運輸省が、運輸関係について需給調整規制を廃止する、こういう方針を出されました。恐らくそれは、今申し上げたように、マーケットのよさ、資源配分の効率、それからダイナミックな経済の実現、こういったことを目的とされていた。まさにそれは、先生がおっしゃったように、今回のタクシーの法案、道路運送法の法案の改正のときにも言われたことだったというふうに思っております。

 ただ、私自身は個人的に、タクシーを初めとする交通運輸のことを勉強してまいりました。その中で、マーケットの不完全性があるということは十分認識しておりましたし、私の書いた著書の中に、そういった不完全性があることは指摘をしておりました。ただ、先ほどから申し上げましたように、だからそのマーケットがすべてだめかと言われると、そういうことではなくて、マーケットをいかに機能させるか、いかに弊害をなくしていくか、こういったことの調整の中で、そういったマーケットが持っている利点を実現していくことが大切であるというふうに思っております。

 例えば、鉄道でありますれば、自然独占という形で独占が成立する可能性が高いとか、そういった要因がある。その中でも、革新を入れていくためにどうしたらいいか、こういったことを考えていくことが重要だというふうに思います。

 そこで、タクシーでございますけれども、先ほど御指摘のように、それではタクシーについてマーケットのメカニズムがなじむのかなじまないのか、こういうような御指摘だというふうに思っております。

 これは、タクシーというサービスをどのように見るかということに非常に大きくかかわっているというふうに思っております。もちろんタクシーというのは、顧客の要望に応じて、一車貸し切りで、そして移動サービスを提供する、こういうようなことでございます。こういった点で考えれば、タクシーの原点といいますか、サービスの内容はそれに尽きるということになるわけでございますけれども、では、そういったサービスだけで、この高度化された、あるいは非常にニーズが多様化する社会の中でサービスの提供がなされていくかというと、甚だ疑問と思わざるを得ない。

 先ほど申し上げましたように、昭和四十年代、まだここまで自家用車の普及率がなく、また鉄道を初めとする公共交通の展開がなかった中で、タクシーの最高の利用というものが実現しました。ところが、一方で、そういった環境の変化の中でタクシーの需要はずっと低下してきたわけですね。そういった構造的な問題はどこに起因しているかというと、それはタクシー自体の、要するに原点である輸送だけに限ればそうだということになるんだと思います。

 そこで、申し上げたいのは、恐らく、そういった輸送だけに限らないタクシーサービス、新しいタクシーサービスのあり方というものを出していかなきゃならない。そういったことで、業界もそれから消費者もともに利益を分かち合うような、こういった状況をつくらなければならない。このために、やはり信頼できる、あるいは頼りになるのはマーケットメカニズムではないかというふうに思っております。

 歩合給の賃金の中で、タクシーの営業収入が減ることによって、その中心であります労働者の方々の賃金が小さくなっていく、こういった大きな問題を抱えているのは承知しております。それに対していろいろな対策を講じなければならないということも、私もそのとおりだというふうに思っておりますけれども、ただ、その一方で、新しいサービスをどうするか、新しいサービスの供給形態をどうするか、こういうことを考えていかなきゃいけないということだと思います。

 例えば、先ほどもIT機器の導入等について事業者さんからの御意見もございましたけれども、東京以外の、流し営業が中心にならないようなところでは、配車に非常に高度なIT技術を駆使して、別の段階から労務管理をするというようなことで、歩合制賃金ということから少しでも脱却するような方向性というものも見えてきているわけであります。

 それから、東京のような大都市においても、先ほどありましたように、デジタル化された無線等を使いまして配車の効率性を上げるとか、こういった形での高度化がなされている。こういったことというのは、技術革新が出てくるのはマーケットのメカニズムではないかというふうに思っております。

 繰り返しますけれども、マーケットのメカニズムの弊害を防ぎつつ、その利点を生かしていく、こういうことが必要ではないかというふうに考えています。

 以上でございます。

三浦参考人 先生の御指摘の件でございますが、先ほども申し上げましたが、規制緩和後、五年経過し、この間、全国では六百社近くの新規参入、また車両数も二万台近くふえているということで、地域地域によって非常に過剰状態に置かれている。結果的にそれが、運転者の焦り、また、ゆとりがなくなったというようなことで事故を誘発したり、また、サービスの低下により苦情が多くなってきているということが現実的に出てきているわけでございます。

 特に、流し地域におきましては、先ほど来お話がありましたとおり、利用者の方が、A社ならA社の車、Aグループの車ということで、十分も二十分も待って利用されない、来た車、来た車を利用する。我々でもアンケートをとったんですが、最大限待ってもせいぜい五分程度だというようなことですから、事業者としても、努力してもなかなか利用者にそれを選択されないタクシー事情というものがございます。

 そういう意味からして、先ほども申し上げましたとおり、結果的に、私どもとしては、法律改正後のこの五年間を見て、先ほど来問題になっている点が非常に多くなっているんじゃないかな、タクシーとして市場メカニズムだけではなかなか解決できないのではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

待鳥参考人 先生御質問の、市場の失敗を起こした要因についてでありますけれども、何点か指摘できると思います。

 一つは、いわゆる経営の側から見れば、新規参入するに当たって、非常に元手が要らない、極めて少ない資本で新規参入が可能であるということ。それからお客さんについても、これは営業努力しなくても、つまり、ほかの産業であれば製品開発に経営責任があるし、トラック貨物であれば荷主を探すのは経営者の責任である。しかし、タクシーにおいては、運転者がお客さんを営業努力で探してくるという営業の現場があります。それからもう一つは、営業を開始すればその日から日銭が入ってくる。こういう産業の特性があるということで、非常に参入が相次ぐし、台数増があるということがあります。

 それと何よりも、先ほども意見陳述の中で述べましたとおり、賃金が歩合制である。とりわけ営業収入によって歩合率が大きく変動する累進歩合がとられているということで、経営側は、どんなに増車をし、あるいは運賃をダンピングまでして安売り競争をやっても、一人当たりの営業収入が減ろうと経営側は痛くもかゆくもない、だから増車をするし、値下げをするという構造がある。ここがやはり市場の失敗の大きな要因じゃないか。それを無視して規制緩和したところが市場の失敗を招いた最大の要因だと思っています。

 数字的にも、東京の一日一台当たりの営業収入というのは、一九九七年から二〇〇四年の間に八千八百十六円減少をしております。その間に運送人件費は、運転者の人件費がほとんどですが、八千九百八円減少をしています。つまり、一日一台当たりの営業収入が下がった分、そっくり同じ額、賃金が削減をされている、減少しているわけです。

 つまり、すべてがそこでハンドルを持っている労働者や働いている人たちにかぶさっているということが、これは経営者の数字であります、経営者団体の数字としてあらわれているということも申し上げておきたいと思います。

井手参考人 市場の失敗というのは、教科書レベルでいくと、公共財、あるいは規模の経済性があるものとか、あるいは外部不経済があるものとか、あるいは情報の偏在、情報の不確実性がある、こういう四つぐらいに大きく分類できるわけです。

 タクシー事業に関して言えば、規模の経済性があるわけではなく、今参考人がおっしゃられたように、容易に参入というのができるし、車両費も比較的安くて増車も容易だということで、これは規模の経済性がない。

 公共財的な性格は、やはり公共交通機関としてバスや鉄道というものを補完するものとして位置づけるとすれば、多少タクシーというのはそういう位置づけができる。

 それから、やはり情報の不確実性というのが多分あるんだと思います。これは、先ほど意見陳述のときも申しましたけれども、価格競争というのがうまく機能しないという中に、いわゆる情報の不確実性、不完全性というもの、それからタクシーというのは待ち時間のコストというのがあるわけで、その観点からすると、価格競争がうまく働かない、情報の不完全性があるというのが、市場の失敗の多分一つの根拠、そこで政府が介入すべきだという根拠があるんだと思います。

 その点では、私は、価格競争がうまく働くようにというのは、制度的にどうすればいいかというのは今すぐには考えがないわけですけれども、本来であれば、市場がうまく機能すれば、台数がふえるということは多分需要が落ち込んでいるときにはないわけで、それが企業者としての行動にやはり通常の産業とは違う特性があるんだろう。通常の産業とどこが違うかというと、多分、労働集約的であって、あるいは需要が分散していて、その需要の分散している中に、その需要に個別のタクシー運転手が対応していく、こういう産業の特性があるんだと思います。

 日本の場合には、市場の失敗があるから、規制をする、規制緩和をするというときに、やはりいろいろな状況を考えていかなければいけない。諸外国でやっているからどうだという話ではなくて、やはり日本の場合には、失敗は許されない、壮大な実験というのは許されない。ある意味では、国民性として、規制緩和をやった後に何か問題が出てきたときに、それは政府の失敗だということで、なかなか国民としては受け入れられない国民性があるんだと思います。その点をやはり考えて、タクシー事業についても、規制緩和というのを、あるいは今後どうすべきかというのを考えていく必要があるんだろうと私は思います。

 以上です。

穀田委員 では、お一人お一人に聞きたいと思います。

 まず井手先生に、市場原理が働くビジネスモデルとは何かということを一つだけ。

 それから待鳥参考人に、タクシー運転免許の法制化の必要について意見を伺いたい。

 それから三浦参考人に、今お話がありましたけれども、歩合制ですね、累進歩合制というのが広くあるのかどうかを含めて、歩合制についての御意見をお伺いしたい。

 最後に山内参考人に、報告書で提起された内容で、法案化する上で不十分な点は何であったと思いますかという点をお聞きしたい。

井手参考人 市場原理がうまく働くためにはどうすればいいか。これは非常に重要な問題であるわけで、先ほども言いましたように、通常の産業であれば市場原理が働くはずであるわけですね、退出すべきものが退出していくという。そこがこのビジネスモデルでは、車両を逆にふやして、そして乗務員を、言い方は悪いですけれども、どういう人でもいいから雇用して、なおかつ自動車の稼働率を上げて、その結果として総収入を得る。こういう経営者側の判断というのがどうも市場原理をうまく機能させていない、私はそういう理解をしております。

 その点では、規制緩和というのが、うまく市場原理が働いていない。これは、やはり一つは、価格競争というのがうまく機能していないというあらわれでもあるわけですけれども、だからといって、価格について、利用者の利便性あるいは利用者の利益を保障するという意味では、価格規制というのはある程度必要だろうと思います。逆に、価格規制を緩めることによって、あるいは参入規制というものは、これは私は、本来の企業者の合理的な行動をすれば、今とは逆の動きをするべきものだと。それが逆の動きをしていないというところをやはりきちんと分析する必要がある。逃げるようですけれども、やはりそれは供給側の問題だろう、私はそういうふうに理解しております。

待鳥参考人 運転者免許という言葉はさておいて、私たちも、タクシー運転者として誇りの持てる資格、就労する資格が必要だというふうには考えています。しかし、その前に、いろいろ取りざたされているのは、法人タクシーでいくのか個人タクシー主体にするのかという、日本のタクシーの将来像をきっちりと議論しておく必要があるんじゃないか。それ抜きに運転者資格の問題は考えられないというふうに思っています。

 今、私たちは、いろいろ御指摘はあったとしても、この世界の中でも非常にすぐれた水準にある、誇り得るタクシーをつくり上げてきた。これは、戦後の法人タクシー主体のシステムの中で日本のタクシーはでき上がってきたというふうに思っています。これを安易に御破算にするということについては問題があるんじゃないかというふうに思っていますので、まず、法人主体か個人主体かの議論抜きには述べられないということ。

 もう一つは、いつでも、だれにでも、どこででもタクシーサービスを提供する、その公共性をきちっと確保していく上では、私たちは法人タクシーシステムの方がすぐれているというふうに考えています。

 そうした中で、運転者資格をどのように考えるのかという議論は私たちもぜひやっていただきたいなというふうに思っています。私たち自身もスキルアップして、誇り得る職業にしたいというふうに考えています。

三浦参考人 先生御指摘の件でございますが、私どもタクシー事業というのは、御承知のとおり、労働者は、朝八時に出庫しますと、夜中二時まで、帰ってくる間、ほとんど事業場外労働ということで、ある一定の歩合制にせざるを得ないという特性がございます。

 歩合制にも三つの種類がございまして、労働基準法上認められている定率歩合、要は、働きが少なくても働きが多くてもそう変わらない歩合制度。それから、働けば働くほど上がっていく累進歩合というもの。それから積算歩合、段階で上がっていく。労基法上は定率歩合については認められております。ただ、労基法上は積算歩合とか累進歩合というものは排除をするようにと言われておりますし、我々事業者も昔からこの累進歩合と積算歩合については取り入れないようにしておるところでございます。

 では、歩合制度というのがみんな悪なのかといいますと、少し申し上げますと、メリット、デメリットもあると思うんです、労働者にも経営者にも。

 まず、メリットの方ですけれども、需要が多く高い営業収入が得られた、バブルのころだと、大変申しわけございませんが、高い賃金が得られる。ただ、一方、デメリットの場合には、需要が低下し、収入が低下するということがございます。また経営側にとっても、需要が低かった場合、ある一定の、収入が落ちても歩合制度ということで助かっている部分もございます。また一方、デメリットは、需要が多いときにはどんどん賃金が出ていきますから、結果的に残り分が少なくなるといった逆の作用があるということでございますので、一概に歩合制度というものがこのタクシー業界で否定されますと、なかなか事業として成り立っていかないんじゃないかなと。

 それから、もう一つだけ先生にお話ししておきたいのは、今、タクシードライバーの年間の営業収入、大体年間で六百万から六百五十万なんです。そのうち、賃金を直接賃金で大体六十数%お支払いし、そのほかに法定福利費を入れると七〇%以上出ていくわけでございます。東京でいえば、五十五歳で四百万ということは確かに非常に低いわけでございますが、でも、全部上げても六百万とか、六百万ぐらいにならない、生産性の低い事業だということも御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

山内参考人 先生の御質問について直接的なお答えをするとすれば、この小委員会の中で議論している中で、特にドライバーの資格要件についてもう少し立ち入った議論があったというふうに思っております。それは具体的には、地理の知識について、もう少し、より広範囲な地域で地理の試験を課してはどうか、こういうような議論をした記憶がございます。

 それに対して、いろいろな事情があり、今回の法案では十分に反映されなかったのかなというふうに思っておりますが、その点について、先ほど申しましたように、これからいろいろな、今後のタクシーのマーケットを見ながら、場合によっては、それについて追加的な修正を加える必要があるのかなというふうに思っております。

 ただ、時間がないので一点だけ申し上げますけれども、今タクシーの運転者資格の件がございましたけれども、さっき待鳥参考人からありましたように、タクシーの業態、日本の場合は法人が中心ということになっておりますけれども、これがどうなのかというようなことであります。

 歴史的に見まして、法人でやっているタクシーというのは世界的にだんだん少なくなってきているというのが実態だと思います。個人に帰するところがある。要するに、リスクがドライバーの方に大きくシフトするというのが世界的な傾向であります。

 ただ、日本の法人のよさは、そういったリスクをドライバーとそれから法人という一つの組織体でシェアしながら成り立っている、こういったことだと思いますので、そういったことをもう少し議論する上でタクシーのドライバーの免許制度についても考えていくべきであるというふうに思っております。

 以上でございます。

穀田委員 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、各参考人におかれましては、大変御多忙の中、ありがとうございます。また、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。私も、数点でございますけれども、できるだけ多く質問をさせていただきたいと思っております。

 座って質問させていただきます。

 まず、全参考人にお尋ねをしたいと思っております。

 本法案におきまして、輸送の安全を確保する観点から、指定地域制度の見直し、それから運転者の登録制度の見直し、これを行うものでございますが、本法案に対して現在どのような評価をされていらっしゃるのか、そしてまた、この法案がタクシー事業が抱える諸問題を解決するものであるというふうに考えていらっしゃるかどうか、お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

山内参考人 御質問でございますけれども、安全性の確保というものは公共輸送機関にとっての第一の要件であるというふうに思料しておりますが、現行でも、指定地域を設けまして、こういった安全性の確保それからサービスの確保といったことをやってきたわけでございますが、先ほど申しましたように、規制緩和をして新たな事業者が入ってきたというところで、プラスの面もあるわけですが、デメリットもあるということでございまして、特に現在、そういった指定を受けていない地域における問題点が出ているということであります。

 その意味では、特に今回、指定地域を拡大し、また、従来の指定地域については特定指定地域という形をとりまして、安全性それからタクシーの質の確保というようなことについて対策を講じるわけでありますけれども、方向としては正しい方向であり、また非常に大きな効果があるというふうに考えております。

 ただ、先ほどから申し上げておりますように、必要に応じて今後もタクシーのマーケットはウオッチしていく必要があるというふうには考えております。

 以上でございます。

三浦参考人 現在、法律に基づいて東京と大阪にタクシーセンターがございますが、先ほども御説明いたしましたが、昭和四十年代、経済が発展し、一方タクシー料金というのを抑えられた結果、非常に需給のバランスが崩れ、乗車拒否とかいろいろな問題が発生したわけでございます。そういうことで、タクシー業務適正化臨時措置法ということで法律が成立し、タクシーセンターができました。それ以来、三十五年有余過ぎるわけですが、私どもとしては、このタクシーセンターの役割ということについては非常に評価をしております。

 そのようなことで、私もちょうど小委員会の方に参画させていただいたときに、今後のドライバーの登録制ということについて、将来的にやはりこれを拡大していくべきじゃないか。と申しますのは、東京の例で申し上げますと、東京で違反を起こした、利用者から苦情が来たり、いろいろな違反を起こして登録を取り消されたということになりますと、隣の市川市へ行ったり神奈川県へ行って運転できるんですね、タクシードライバーが。それで、またそこで悪いことをする。そういうことがあるので、今回、もっとそれを拡大してオンラインで結んで、やはりそういう人を排除していかないとタクシーのサービスレベルが上がらないんじゃないかということで意見を申し上げ、また今回賛成したところでございます。

 以上です。

待鳥参考人 今度の登録制の導入については、先ほども言いましたとおり、運転者の質を問わずに雇い入れて台数だけをふやそうとする、そういう無責任な経営姿勢に対する抑制、過剰台数の抑制ということについてやはり一定の役割を果たすんじゃないかということで、評価をしています。

 それと、指定地域については、当面、政令指定都市まで広げるということになっていますけれども、これはぜひ近い将来に県庁所在地、そして将来的には全国に広げていただくような展望を明確にしておいていただくことが必要じゃないか。それは、今三浦参考人からも出たとおり、こちらの地域で問題を起こした人がまた指定地域じゃないところで乗務するということであっては何の効果もないわけですから、やはりそういったことがないように、できるだけ広げていただくということでお願いをしておきたいと思います。

井手参考人 今回の改正法律案については、先ほど述べましたけれども、運転者の登録制度あるいは講習制度というものについて、これはやはり質を高めるという意味では一定の役割を果たす。

 これは、タクシー事業において、あるいはほかのいろいろな産業においてもそうですけれども、安心と安全というのが一つのキーワードになっている。規制緩和する中で、本当にセキュリティー、あるいは安心、安全というものをどうやって確保するかというのは非常に重要な課題になっております。これは自由化する中でいろいろな産業で出てきていることです。

 そういう意味では、ある意味では揺り戻しみたいな形ですけれども、徹底的に自由化をするという中で、何らかの検討すべき課題というのがあるだろうということで、今回のこういった資格制度の見直し等々については、私は、これが完全かと言われると、それを実質的に機能するような形できちんと運用していかなければまた新たな問題というのが発生する危険性もあるので、そういった運用上きちっとやっていくということが保障されれば、今回の法律改正というのは一定の役割を果たすというふうに思っております。

 以上でございます。

糸川委員 この運用に関しましては、やはりこれはしっかりとしていかないと、制度だけつくって、結局ざるになってしまっては意味がないわけですから、ここはしっかりと取り組みたいなと思います。

 次もまた、全参考人、四人の参考人にお伺いしたいと思いますが、タクシー事業におきます問題点、ここが、規制緩和等々いろいろありまして、タクシー運転者の方の長時間労働であったり、それから、なかなか賃金が上がらないということで低賃金の問題があるというふうに思いますが、これらの問題点の改善策として、実際どのようにしていったら、どのようなものが有効なのか、有効な手段というのはどういうものがあるというふうにお考えでしょうか。

山内参考人 いろいろな問題点が出て、今回の法案でそれに対する対処策を考えていくということだと思いますけれども、私は、先ほどから何度か申し上げましたけれども、根本的な解決策というのは、今のタクシーのサービスのあり方、これ自体を見直していくということが一番よい道ではないかというふうに考えているわけであります。

 利用者の方々のニーズが多様化して、そして必要なサービスというのも単なる移動だけではない、こういうことでございますので、例えばそれは、非常に付加価値を持ったサービスであったり、あるいは附帯的なサービスを持ったサービスであったり、あるいは場合によっては安価なサービスであったり、いろいろなことがあるんだと思いますけれども、そういったことを実現していく。こういったことで、要するに、今の経営者の方の本領といいますか能力が発揮されるような、こういう業態、あえて言えばビジネスモデル、そういったものが実現することであるというふうに思っております。そういったことがないと抜本的な解決策にはならないというふうに思っております。

 以上でございます。

三浦参考人 先ほども意見陳述また先生方の御質問でもお答えしたとおり、平成十四年の二月に規制緩和が実施された結果、タクシー事業の特性から、新規参入六百社、また増車等を合わせると全国で二万台というものがふえているわけでございます。結果的に本当に激しい競争が起きており、また働く労働者にとっても、一日の、日車当たりの収入が低下し、比例して賃金も低下している。

 こういうために、ドライバーの方は、やはり生活がありますから、一定の収入を確保しなければならないというような観点から、どうしてもゆとりのない無理な運転をしたりして事故を起こしたり、またサービスレベルの低下により苦情がふえてきているということについて、我々事業者としても非常に懸念を持っているところでございます。

 しかし、私ども事業者としても、やはりこういう環境下、先ほどもこれもお話ししましたが、いろいろなIT機器等を導入し、ドライバーの営業に寄与できるような形で、売り上げが伸びるようなものを考えて実施しているところでございます。先ほども申し上げましたが、カードで決済できる車載器を取りつけたり、また最近では、おサイフケータイと申しますか、携帯で決済できるようなものも、非常に費用がかかるんですが、これも、少しでもドライバーがこれによって新しいお客さんがふえて、それで売り上げが上がればということでやっております。

 我々としては、もう一つ、その上で、供給過剰地域が非常に各地で起きております。東京を初め、仙台、いろいろと出ておりますが、こういう地域における今の増車制度、新規参入もそうなんですけれども、新規参入についてもハードルをもう一回見直してもらう、それから増車についてもハードルを見直してもらって、やはり厳格な審査を行って、車がふえないということを実施していただくということが一番業界としては願っているところでございます。

 以上でございます。

待鳥参考人 いずれにしても、タクシーの生産性を上げないと、そこで生活している人にとっては非常に暮らしが成り立たないという現実がありますから、やはりあり余っている不要な、過剰なタクシーを減車させる、これは行政の指導も必要ですし、本来は業界全体できちっと節度を持って取り組んでいただかなきゃいけない課題じゃないかなというふうに思っています。

 それからもう一つは、行政側にとっては、運行管理も労務管理も放棄をして、ただ車だけ走らせればいい、めちゃくちゃな事業をやっている事業者をどうやって退出させるのか、その厳格な仕組みを再構築していただくことが必要だろうなというふうに思っています。

 さらには、台数の問題と運賃の水準の問題です。確かにタクシー運賃というのは、利用者からすれば安い方がそれは結構なことですけれども、しかし、一人の運転者がせいぜい二、三人の人を個別輸送として運ぶ、そういう役割のタクシーですから、そこにはきちっとしたコストがかかります。そのコストが賄われるような運賃水準をどうやって担保していくのか。今の運賃制度もかなり低きに流れればいいという仕組みになっていますので、それも改めていただかなければいけない問題だというふうに思っています。

 それから、需要の開拓の問題については、これはもう御指摘のとおり、需要開拓については非常に大切なことだというふうに思っていますし、これは当然労使で取り組んでいかなきゃいけないということで、今も進めています。

 やはりこれは、流しがもうきかなくなっている地域において、生活に密着した輸送を担っている地域のタクシーほど、地方のタクシーほど、福祉や介護タクシーあるいは育児タクシー、便利タクシーといったようなさまざまな新しい需要を開拓しているということもありますので、これはやはり全国的な見地から、今までに増してやっていかなきゃいけない課題だと思っています。

井手参考人 他の参考人の意見の重複というのを避ける意味で、私の感じたところで言うと、過重労働、これはやはりトラック運送業と似たところが、共通した問題点だろうと思います。これもトラック運送業においては多少解消されているというふうに理解しているんですけれども、それと低賃金であるという問題、これについては、多分運転手の賃金体系にメスを入れるということが必要になるんだろうと思いますね。

 そのときに、これは法案で何だという話ではないんですけれども、やはり最低賃金法というのがあるわけで、それを保障した上で、さらにそこに何らかの上乗せをするとか、そういったことも多分、企業サイドの中で解決すべき問題だろう。

 それにしても、先ほどの参考人の意見にありましたけれども、全部上げても六百万だという意見がございまして、しかしながら、一方で、タクシー運賃というのをいろいろな産業で比較するときに、内外価格差とよく言われた時期がございました。タクシー運賃というのは、やはり諸外国に比べて日本は非常に高いのではないだろうかという印象を持っているわけですが、なぜ日本の場合にタクシー運賃が高いか。これは、労働者、人件費が多くの割合を占めているということを考えるとやむを得ないのかなと思いますけれども、それにしても、諸外国に比べて内外価格差が存在しているという問題についても、これはタクシー事業について検討していく、そしてそこに内在する問題、要因を分析するというのはやはり必要なことだろうというふうに思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 では次に、三浦参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今回のこの法改正に当たりまして、運転者の登録制度が地域拡大されるわけでございますが、主な政令指定都市であったり、及びその周辺都市に拡大されるわけでございます。その登録機関としましても、タクシー協会が候補に挙げられておりますけれども、運用面での懸念というのがあるのか、その辺をお答えいただきたいと思います。

三浦参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 業界は、現在、運賃値上げをしているような状況でございまして、非常に厳しい状況に置かれている。今回、六大都市、またその周辺都市に登録制度を導入するということについては、事業者も、やはりドライバーの質の向上等を考えれば必要だろうということで認識しておりますが、何といっても、それなりの人員の配置をしたり、また設備もかかりますので、何とかコスト面でできる限り国の応援をしていただかないと、先ほど来言われている、せっかく導入してもそれが実にならないということもあります。

 我々も、事業者として、地域の事業者も必要性は十分認識しておりますので、それなりに前向きに検討をやっておられますが、今の任意でやっておられる費用と余り格差が出てきますと、その分、非常に過大な負担になるということでございますので、その辺よろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

糸川委員 もう時間がないので、最後に三浦参考人にもう一問御質問します。

 今、利用者の意識としまして、タクシー運賃ですとか接客態度、これは規制緩和前よりもややよくなっているのではないかなというふうに感じるんですが、一方、カーナビの普及ですとかいろいろあるのかもしれませんが、道の詳しさですとか運転技術については悪化しているように感じるわけでございます。

 業界として、地理の熟知ですとか運転者のマナー向上のためにどのような方法を講じられているのか、お答えいただきたいと思います。

三浦参考人 ただいまの御指摘の件でございますが、非常に利用者の方から地理の不案内というようなことで指摘を受けますし、またセンターの方にも一応苦情としていろいろ出ている事実もございます。

 ただ、先ほど来申し上げているとおり、東京と大阪につきましては、乗務員登録をする前提として、地理試験を合格しなければできません。東京の場合には一回で受かるのが大体三割程度という厳しい内容になっておりますので、従前から比べると、大分地理知識の問題については減ってきているんじゃないかな、減少しているんじゃないかなというふうに思っておりますが、その補足機器として、最近各社ともカーナビを導入されて、利用者の方に、本当にわからなかった場合にカーナビを利用してお送りするということで理解していただいているという状況でございます。

 以上でございます。

糸川委員 ありがとうございました。時間ですので終わります。

西銘委員長代理 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 引き続き、このタクシーの法律の改正について質問させていただきます。

 きょう、四人の先生方には、お忙しい中、お時間をちょうだいいたしまして大変にありがとうございます。以下、座って御質問させていただきます。

 まず初めに四人の参考人の皆さんにお伺いをいたします。

 これはタクシーという業態だけにかかわらない話だと思います。山内先生から配付をいただきました資料の中にもあります、二番で、タクシー規制の基本的な方針ということで、市場の失敗ということはさておき、公共交通の要件ということで、安全、安心、高品質なサービス、多様化、高度化するニーズへの対応、渋滞、環境問題への対応、これらをマーケットメカニズムに基礎を置いて提供していく、ここが非常に難しいことなんだろうと思います。

 マーケットメカニズムというのはさまざまございますけれども、一つはやはり、競争力を発揮してコストを削減していくというような力が働くのだろうと思います。利用する方から見れば、市場原理にゆだねられてコストが下がらないのであれば、余り実感としてのメリットを感じられないという問題もあると思います。

 一方で、事業を運営する事業主体からすると、例えば、この中にもある、一番大事なことは安全ということなんだろうと思います。利用される方も、市場原理にゆだねられて例えば価格が落ちたとしても、まさか価格が落ちることで安全まで損なわれているということは全く想定をしていないわけで、安全というものをきちっと担保するということが重要であり、今回の法改正もそこを、最低限の法律の改正ということだろうと思いますけれども、法律で担保していくというような流れなんだろうと私は思っております。

 その中で、まず四人の先生方にお聞きしてみたいのは、安全というものの価値ですね。安全というものを担保するには、私はもともと事業者おりましたので、お金がかかると認識をしています。しかし、果たしてそれを利用する人に、やはり安全というものには金がかかるんだという認識があるかどうかというところも実は気になっていますし、また、商売をする側にも、安全というものにはお金がかかるのであるから、安全を提供するためには、これは付加価値をつけるので価格に反映させていただきますということが現状できるのかどうか。つまり、安全というものの貨幣価値というのが現代の日本の市場で認められるのかどうかというところについて、ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。

山内参考人 今先生から安全についての御指摘でございますけれども、先ほど申しました、私、運輸交通関係を三十年ぐらい研究しておりますけれども、昨今、例えば食品の安全についてどうだったかということを考えますと、例えば、ある会社が食品の安全性についてのミスを犯す、あるいは犯罪的な行為と言ってもいいかもわかりませんが、そういったことがあるということになりますと、その会社が市場から退出しなければならない事態、例を引くまでもなくおわかりだと思います。

 そういった面でいうと、運輸の安全というのは何かということになりますと、例えば、大事故を起こした企業があって、仮に鉄道の場合にそういうことがあったとしたときに、その鉄道会社が食品会社のように退出するかというと必ずしもそうではない。その意味で、安全というものがいかにマーケットで確保できるかということについては疑問を持たざるを得ないところがあるということですね。例えば鉄道の場合ですと、ある意味ではマーケットの独占力というもの、こういったところに問題があるということだと思います。

 それから、タクシーの場合でいいますと、例えば東京の中でも、タクシーの中で安全性に劣る企業がある。あるいは、私自身も関係しておりますけれども、タクシーの質が悪い企業については、今ランク制度ということで、東京のタクシーは法人タクシーについてランクを設けて、A、AAとかそういった形の、いいタクシーを識別できるようになっておりますけれども、それにもかかわらず、そういった安全性に劣る企業が選別されて市場から退出されるかというと、必ずしもそのメカニズムはうまくいかないということです。

 これはなぜかといいますと、独占の問題よりも、マーケットでタクシー会社が選べない、こういったある意味での市場の失敗があるからだというふうに思っています。その意味で、安全を確保するには、特に運輸の場合には、そういったマーケットメカニズムが働かない中で安全を確保しなきゃいけないということでありますから、こういった法的な措置あるいは規制ということが必要になるということだと思います。

 一方で、御指摘の、それに対するコスト、対価というものがどれだけ認識されているかについて、やはり必ずしも十分でない点はあるというふうに思っております。例えば、先日もジェットコースターの事故等ございましたけれども、こういった点検等をきちっとやっていくとか、あるいは機器の安全性を常に確保していく、こういったことになれば当然それなりのコストがかかり、そういったところのメカニズムを事業者が十分に理解しているかといえば必ずしもそうではない点があると思います。

 ただ、先ほどから申し上げましたように、タクシーの場合には、もともとマーケットで何か機能するというところにも不十分なところがある。一方で、安全に対する市場の選別というものが不十分なところもあるということでありますから、そこを、法的な措置といいますか、規制で何とかしなきゃいけないということだと思いますけれども、一方で、この規制をすることに対してのコストというものも存在するということだと思います。

 要するに、安全性を十分に確保していくためには、それなりの検査とか管理監督があるということだと思います。今回の法案は、その意味では、そういったところに一歩踏み込んだ、行政的なコストをかけつつ、一方で事業者の皆さんにもそういったコストを負担していただくことで安全を確保するという法案だというふうに思っています。

 消費者の方々がそれについてどこまで理解を得られるのかということになりますと、それに対しての十分性は必ずしも十分だとは言えないというふうに思っておりますけれども、こういった安全性の必要性についての普及活動とかそういった活動を通じて理解をしていただくしかないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

三浦参考人 先生の御質問でございますが、東京には、先ほども申したとおり、法人タクシーが三万三千台、八万人以上のドライバーがいて、また個人タクシーが一万八千台ぐらいございますが、一時は非常に個人タクシーが評判が悪くなった一つの大きな理由として、非常に高齢者のドライバーが多かった。七十、八十、八十過ぎても個人タクシーをやっているというようなことで、安心してこれに乗っていられないというようなことで、個人タクシーの評価が落ちたことがございます。

 そんなことで、個人タクシーのできる年齢も、前回の法律改正で七十五歳ということで定年制を設けております。また、法人タクシーにつきましても、これは現在六十歳とか六十二歳とか六十五歳ということで定年制を設けておりますし、やはり利用者の方は、タクシーを選択して御利用いただけるというのは、東京でいえば一日百二十万人ぐらい御利用いただいておりますが、安心、安全だということで利用いただいているわけでございますので、我々としても、今後とも、この安全ということはやはり事業の根幹だということでやっていかなければならないんじゃないか。

 もう一つ例を申し上げますと、昭和四十五年に非常に事故が、これも全体的なんですけれども多かった、タクシーも比例して多かった。そのときに、四十五年の運賃改定のときに時間距離併用メーターというものをつけたわけでございます。これは、タクシーがとまっていると自動的に距離が短縮されて時間が加算されるという制度なんですが、それによって一挙にタクシーの事故が大幅に減った。

 現在もそれなりに、こういう交通混雑、渋滞の中で、全然事故がないとは言えません、事故はあります。しかし、そういう時間距離併用メーターということについて、やはり利用者から見れば、とまっていて高くなるというのはおかしいじゃないかという理屈、理論は成り立つんですけれども、アドバイザー会議とか利用者懇談会等で、こういうことでこういうものを装着しているんですということになると、やはり安全は大事ですねということで御理解いただいているということで、利用者の方にとっても一番安全の問題が大事だというふうに認識しております。

 以上でございます。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

待鳥参考人 安全にはコストがかかるんだという御指摘については、本当に私たちも同感であります。ただ、利用者にどう理解をしていただくかということについて、私自身も、黙ってただ運びさえすればいいということでいいのかという自省をやはりしなきゃいけない問題だと思っています。

 利用者から見れば、本当に狭い車内での運転者とお客との関係しか見えないわけでありまして、そこで本当に安全輸送がきちっと担保されているということを理解していただくためには、その中での接遇あるいは運転の対応などについて、きっちりと私たち運ぶ側がしていかなければいけない。それによって高く感じたり低いと感じるかという境目になっていくんじゃないかなということは、痛切に感じているところです。

 ただ、タクシーの場合、航空や鉄道などで起こされる大事故と違って、一つ一つの事故は、確かに規制緩和前と比べて六割もふえたという大変重大な事態になっているわけでありますけれども、小さな事故が積み上がっていってそういった事態になっているということが、なかなか社会的には知られていないという部分があります。だから、事故の多い企業などについてしっかりとそれを情報公開していく、そういったところがこれからの課題になっているんじゃないかなと思っています。

 それと、高齢者の問題。先ほど、平均年齢五十五歳、そして五十歳以上が八割を占めているという御指摘をしましたけれども、やはり今非常に、定年後に年金をもらいながらタクシーに乗務をしている、そういう年金併用の運転者が急激にふえています。かなりの比率になっていますし、企業によっては、運転者の過半数を占めているという企業さえ存在をするわけであります。一概に高齢者が悪いというふうには申し上げませんけれども、やはり程度の問題だというふうに思っていますので、その辺のところも、安全の確保については、今後、将来的に考えていかないといけない問題になっているということは御理解いただきたいなと思います。

井手参考人 結論的に言いますと、安全というものを保障するためにコストがかかる、それを価格に反映させることが可能か、私は可能だと思います。それは、消費者は、高価格であっても、安全あるいは高品質のサービスが提供されるというふうに理解すればそのタクシー事業者を選ぶでしょうし、その意味では、どういうタクシー事業者が高品質でしかも安全なタクシーであるかということをきちんと消費者に情報公開していくということは、多分必要だろう。

 競争が進展していきますと、先ほど言いましたけれども、やはり安全というものに対する意識というのが、例えば事後的に、保険を掛けているとすると、その意識というのが、いわゆるモラルハザードが起きる可能性が非常に高くなるわけですけれども、電力とかそういう事業でもおわかりのように、自由化が進展してきますと設備投資を削減する、それが結果的に事故につながる、こういう結果を招いているわけです。そういう意味では、タクシーというのは大半が労働集約的な産業ということで、人件費が大きな割合を占めているわけで、その人件費のところにきちんと安全性を確保するためのコストをかけるということについては、私は、消費者の合意は得られるというふうに思います。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今、井手先生からモラルハザードということをまた改めてお聞きいたしました。きょうの最初の意見陳述の中で、市場原理の導入により、モラルハザードはたまさか起こるものではなく頻繁に起こるものということをコメントしていただきました。確かに、実態を見ていてそのとおりだなと思います。

 これは山内先生と井手先生にお伺いしたいんですが、では、市場原理とは何ぞや、市場とは何だと。つまり、市場とは、私の理解では、まさにタクシーであればユーザーであり、この方々が判断をする、要するに、一般の利用者そのものが市場なんだろうと思います。そうすると、利用者の方はいろいろな尺度をお持ちで、その大きな要素としてやはり価格というものがある。

 では、市場原理を導入することによってモラルハザードが起こるということは、つまり、利用する方にモラルがないということなのかと考えると、私は当然、そうじゃないんだと。利用する方が安い方がいいからといって例えば安いタクシーを利用する、そうした場合に、事業者がある一定の守らなければならない水準を割り込んで価格を抑えたときにモラルハザードになるというふうに私は理解している。つまり、サービスを提供する側の問題、これがモラルハザードだと私は認識をしております。

 では、使う方の人間は、例えば安いということで乗っていたとしても、まさか、その値段を担保するために安全が若干損なわれている、さっきも若干触れましたけれども、そんなことは全く想定をしていない。当然のごとく、安全でなおかつ安いんだ、こう思っているだろうと思います。

 よって、そういったサービスの質を提供しながら市場原理を導入していくということは、つまり、これもやはり、今、井手先生も若干お触れいただきましたけれども、情報の公開、まさに使う側がそうしたことを判断できる状況に今あるのかどうかということが大事で、それをさらに進めていかなければならないんだろうと私は考えております。

 よって、市場原理を導入するという方向性は間違っていませんし、ただ、それを導入する上で使う方が判断する情報を持てないと、これはいわゆる、少し経営者の方には申しわけない言い方かもしれませんが、事業者のモラルハザードを招くリスクがある、こういうふうに考えます。よって、情報公開というのをより進めていかなければならないのであろうと私は考えておりますけれども、山内先生と井手先生の御見解をお伺いいたします。

山内参考人 今おっしゃった、マーケットの不完全性を情報の公開によって補完していくという方向ですけれども、基本的にはおっしゃるとおりだというふうに考えております。

 タクシーの場合にどういう情報があるか。今、恐らく典型的な例として、安全性の問題、接遇の問題、サービス水準ということがあるのかと思いますけれども、いろいろな情報が、事業者側あるいは供給者側と利用者側の間で対比した場合に、供給者側に偏在しているといったところが事実だというふうに思っております。その偏在によって利用者側は正しい判断ができない。それをここで市場の失敗という言葉でくくっておるわけでありますけれども、その意味で、市場の失敗を是正するという一つの方向は情報公開であるというふうに思っています。

 おっしゃるとおりでございますが、幾つかの点を追加的に指摘したいわけでありますけれども、一つは、タクシーの場合、特に流し営業が中心のマーケットにあっては、情報の公開によって完全にマーケットのフェイリアといいますか失敗が是正されるかというと、必ずしもそうではないということが言えるかと思います。

 先ほどから申し上げていますように、選択ができる状況で情報を持っていれば正しいマーケットの結果が出るかもわかりませんが、選択の余地が不十分であるという中でいかに情報が公開されても、完全なマーケットの結論は出てこないということだというふうに思っております。その意味では、情報の公開だけではなく、ある意味では、これは、おっしゃったように、利用者の方のモラルハザードという考え方もあろうかと思いますけれども、何らかの制度的措置の中で安全性をかなりの程度確保するというような必要も出てくるのではないかというふうに思っております。

 ただ、東京についてだけ言わせていただきますと、私どももマーケットをいろいろ見せていただいて、あるいは、例えば、先ほど申し上げましたけれども、事業者にランクという形で一つのお墨つきを与えて、この事業者は安全である、あるいはサービスがよいというものとそうではないものを分けております。それも一つの情報公開、わかりやすい情報公開だと思っておりますけれども、そういったデータを見ていく中で、本当に問題のある事業者というのは、恐らく東京の中では二割ぐらいの事業者ではないかというふうに思っております。これは台数でいうともっと小さくなるんですけれども、二割ぐらいの事業者ではないかというふうに思っております。

 そういう面では、そういったところをいかに情報公開して利用者の方々にわかっていただくかという努力はいま一つ必要なのかなというふうに思っております。

 もう一つの指摘は、情報公開というのは二つあって、一つは、利用者がすぐに使える情報と、それからもう一つは、我々もそうですけれども、何らかの分析の中で情報を理解していく、あるいは、ある意味では高度な情報をどこまで出していくかという二つの側面があるかというふうに思っています。両方とも必要なんでありますけれども、タクシーの場合には特に、利用者がすぐに利用できるような形での情報の出し方、これが重要ではないかというふうに思っています。

 以上でございます。

井手参考人 ただいまの御質問で、モラルハザードというのは確かに提供する側、供給者側で起こるというのが、これはいろいろな産業の競争導入において見られる現象である。そういった中で、規制緩和をしながら一方でサービス水準の低下あるいは品質の低下、こういうものが当然起こってくるというのは諸外国の経験からも言えることで、そうしますと、やはり新たな規制というのが必要になってくる。

 これは社会的規制かもしれませんし、あるいは情報公開という形でいろいろな情報を消費者に提供するという形での新たな規制ということも考えられるわけですけれども、そういった、一方で規制緩和をしながら一方で消費者の利益を確保するという観点から、新たな規制というのは当然必要になってくるというふうに理解しております。

 御質問の点については、私、以上の見解を持っております。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間が来てしまいましたので以上で終わりますけれども、市場原理を導入していくという大きな方向はもちろんそのとおりだと思いますし、井手先生がおっしゃった、その競争させる土俵をどう整えていくのかということが我々の仕事であろうと思います。ですから、経営される方、また、そこで仕事をされる方に過度のしわ寄せがいかないように、こうした法律による競争の土俵をきちっと整えていくために、しっかり我々も努力していきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

塩谷委員長 次に、土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一です。

 きょうは、四人の参考人の方、長時間大変御苦労さまでございます。

 それでは、私から質問させていただきます。

 今回、法案が出されまして、タクシー業務の適正化、これはよくわからないですね、何が適正化か。ねらっている内容は後で法文を読めば大体わかるんですけれども、それが特別措置として出された。今四人の参考人の方から、おおむね、規制緩和の後いろいろな問題点が出てきたと。それで、いろいろ直さなきゃならないところがあるだろうということで特別措置ということになったと思います。

 端的に申し上げます。

 経営者側の御意見と、それから働いていらっしゃる労働者の側の御意見で、規制緩和する前は業界としてもうかっていたんですか。そして、待鳥参考人にもお聞きしたいんですけれども、そのころの給料は今よりもはるかによかったんでしょうか。その辺を端的にお答えいただいて、では、規制緩和になったことが何がよかったのか、あるいは何が悪かったのか、端的にお答えいただきたいと思います。

三浦参考人 先生の御質問にお答えしたいと思います。

 規制緩和以前、会社はもうかっていたのかというふうにお話がございましたが、ちょっと振り返ってみますと、昭和四十年代は、先ほどもちょっとお話しさせていただきましたが、非常に経済が発展しました。しかし、タクシー運賃は抑えられまして、結果的にタクシー事業者が昭和四十年代で百社以上倒産しております。

 その後、オイルショックのときに年に二度値上げをし、それをきっかけに、タクシーの需給をとるにはやはりある程度運賃改定をしていかなければならないだろうということで、当時、二年ローテーションとか三年ローテーションというようなことで来ましたので、経営的には、ただ、申し上げておきますけれども、そんなに他の産業みたいにぼろもうけできるような商売ではございません。

 というのは、運賃にしても、御承知のとおり、役所の方に申請をし、役所で厳しい査定がありますし、適正利潤というのも二%から三%で査定されますので、普通に事業を行って、その程度の利益しか出ない。仮に百台の会社で十五億あっても二、三千万だ、そのうちの半分は言ってみれば税金で持っていかれるというようなことでございますので、そんなにもうかっている事業じゃございませんということを申し上げておきたいと思います。

 以上です。

待鳥参考人 規制緩和以前と現在の対照だと思うんですが、現在の運賃というのは九五年から九六年にかけて改定をされています。そのときの状況を見ますと、乗務員の賃金が固定給中心の賃金をとっている。固定給をとっている企業については軒並み赤字に転落をしておりましたし、その時点で歩合給をとっている企業ではほとんどが黒字基調であったという事実がありました。

 したがって、運賃改定時に、四十八時間から四十六時間、四十四時間への時間短縮を理由として、原資を生み出すための運賃改定をしたという事実がありました。

 その後、いわゆるバブルの崩壊から規制緩和がもう避けられないという時点になって、固定給はほとんど解体をされてしまいまして、現在では大多数が歩合給中心になっています。

 したがって、地方で売り上げが一人当たり三十万いかないといったような地域では、やはり、どんなに経営努力をしても赤字という非常に苦しい経営実態にあるというふうに思いますけれども、東京や大都市部においては歩合給をとっている、今、とりわけ営業収入が下がれば下がるほど歩合率が下がる累進歩合をとっている、そういった企業では赤字には転落しない、黒字になっているということは間違いないところだと思っています。

 先ほど三浦参考人から一人当たり六百万の営業収入というお話がありましたけれども、これは東京の話でありまして、全国では市場というのは二兆一千億であります。二〇〇四年度で二兆一千億の規模しかない市場であります。これで五十万人近いいわゆるハイ・タクに従事する人たちが生活を、糊口をしのいでいるわけでありまして、一人当たり売り上げとすれば四百万円台にしかなりません。

 それをみんなでつつましく分け合っているという実態にありますから、基本的には今の実態は、労使間の中では本当に、抜本的な賃金、労働条件改善についてはいかんともしがたい状態に追い込まれてしまっているということは言えるだろうというふうに思っています。

 ただ、賃金体系によって赤字か黒字かは分かれてきます。

土肥委員 経営側もにっちもさっちもいかない、働く運転者の皆さんも低賃金、これをどうしろと。もう一遍規制に戻すのか、あるいは、規制を認めた上で、もっと新しい展開をすべきだと。二人の学者先生は未来にいろいろなことがあるじゃないかというふうにおっしゃるわけですけれども、今回の法改正は車両の総量規制はしません。しかし、今度は、運転手さんの方である種の規制、相当厳しい規制だと思うんですね、をかけて、制限をしようという法案だと私は理解しております。

 山内先生それから井手先生、この運転手の登録制だとか認定というようなもので今の業界が改善するとは思われないんですね。ですから、それはどうしたらいいのか。先生方も何かやはり抽象的に聞こえてしまうわけです。

 したがって、最後にもう一問、両先生に御質問いたしますけれども、ユーザーの側の意見は全く反映されないシステムですね。私がタクシーに乗っても、どんな運転手さんか全然わからないわけですし、物すごく地理の不案内な方もいらっしゃるわけです。それで、慌てて飛びおりるわけですね。

 そういう状況の中で、こういう業界にあって、運転者の資質を向上させるために講習をしたり地理試験をしたりしよう、これはある種の規制ではないのかというふうに思いますが、両先生のお答えをお願い申し上げます。

山内参考人 先ほど私の陳述の中でも申し上げましたように、これはある意味では社会的な規制の強化であるというふうには考えております。その意味では、先生御指摘のとおり、規制だということであります。

 先ほども申し上げましたように、社会的な規制と、経済的な規制といいますか直接的な規制に分けた場合に、私は、おっしゃるような形での、例えば台数の制限であるとか、そういった形の直接的な規制をとる方向はむしろ望ましくなく、ある意味でのマーケットメカニズムの有効性というものを信じているところがございます。

 ただし、何度も申し上げているように、そのための前提条件、環境整備といったものの必要性から今回の法改正になったんだというふうに思っております。

 タクシーの場合に資格要件をどうするかということは、御承知のように、また、これを典型的に行っている例はイギリス・ロンドンのタクシーでございますが、ロンドンのタクシーの場合には、大体フルタイムで二年間ぐらいロンドンの地理知識を積まないとタクシーの運転手になれない、こういうような状況であります。それをコスト換算しますと大変な額になるということでありますけれども、一方で、基本的には、私が申し上げましたように、タクシーの総量規制というものは、伝統的にロンドンの場合はしていないということであります。ただし、それであってもかなり良質なタクシーが提供されているということであります。

 今回の法律がロンドン型の規制を日本の中でどこまで取り入れられるかということについては、十分ではないかもしれませんが、方向的にはそのような方向で、質的な規制を取り入れつつマーケットを生かしていく、こういうことだというふうに思っております。

 以上です。

井手参考人 今回の資格要件等々については、土肥先生がおっしゃるとおり、規制の強化、これは社会的な規制ですから、規制の強化というふうに見るというのは正しいと思います。

 これは、先ほど言いましたように、サービスの質あるいは運転手の資質を高めるという意味では必要で、これが間接的に車両台数というものを制限する形になるかもしれません。これは、ある意味では、社会的規制をしながらそれが経済的規制の役割を果たすという側面を持っているかもしれませんけれども、私は、それは必要な方向性だろうと思います。

 ただ、いろいろな統計データを見てみますと、運転手というのは、傾向としては減ってきている、微減だと思いますけれども、減っているという中で、さらに増車をしていて、運転手が減っている中で、こういう資質を高めるために資格要件の見直しをするということでさらに運転手が減るという可能性もないわけではないので、その点のきちんとした慎重な検討というのは多分必要だろうというふうに私は思っています。

土肥委員 それでは、経営者側それから労働者側の御意見を聞きますけれども、新たな規制だと井手先生はおっしゃるわけです。これはコストがかかるわけですね。運転者を採用して、それから資格試験を受けて、下手すると、何回も地理試験なんか落ちる人がいるようでございますので、三十数%の合格率なんといったら、何年たったら受かるんだという話になります。

 経営側からいって、こういう運転手さんに対する登録制度、これは免許制までいっておりませんけれども、登録制度というものについて端的な御意見をお聞かせください。

三浦参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思います。

 先ほども申し上げましたが、私は、タクシーサービスの将来ビジョン小委員会の委員として出席させていただいておりましたが、東京、大阪のタクシーセンターのこれまでの役割、特に乗務員教育また指導、それから講習だとか登録制度について、それなりに一定の結果のレベルを保てたというふうに理解しておりますので、やはりこれを、規制緩和になったこういう時代だからこそ、逆にドライバーのこういう登録制を拡大していかなければ、利用者に最終的に安全の問題だとか利用者サービスの問題で迷惑をかけていくんじゃないかということで、コストは、今、任意でやられているところもございます。ですから、各県協会から私の方に来るのは、何とか今の任意でやっているような費用で賄ってもらえるように、いろいろそのシステムについて行政の方にも考えてもらえるように話してもらいたいというような意見も出ておりますので、その辺については、行政の方に申し上げていって、有効なシステムづくりを考えていけばいいというふうに判断しております。

 以上でございます。

待鳥参考人 新たな規制でハードルを設けるということですけれども、そのことによっていわば無駄な増車に歯どめがかかって、それで効率がよくなる、生産性が上がるということになれば、私たちも歓迎すべきことだというふうに思っています。

 二度も三度も受からない、そういう適性がない人については、タクシーに乗務していただくということについては問題があるんじゃないかというふうに思っていますので、やはりハードルはきちっと高くして絞り込んでいく必要があるというふうに思っています。

 利用者が減っているのにどんどん車をふやして、ふやして人が足りないからまた質を問わず雇い入れる、こういう悪循環をどこかで断ち切るためにもこの登録制度はやはり必要だと思っています。

 この規制緩和から五年間のうちに、タクシーの乗務員、運転者は、人が足りないと言われながら二万人ふえています、はっきり言って。それは、質を問わず入れているということも一方ではあるということのあかしだというふうに思っていますので、やはりこの登録制度が果たす役割ということについては大きな重みがある。

 費用の問題についてでありますけれども、東京、大阪で費用がかかっているというふうに言われているのは、いわゆる街頭指導などの適正化事業をやっている、そこでの人件費が大部分を占めて、かなり、一台当たり三万五千円とかという負担になっているということでありますから、登録制度だけであれば、工夫次第、やり方によって、企業あるいは乗務員に対する負担ということについては軽くて済むのではないかというふうに思っていますので、ぜひ全国に広げていただきたいと思います。

土肥委員 三浦参考人、参考人の意見を聞いていますと、行政行政とおっしゃるので、何か向こう側の方を向いて経営をしていらっしゃるような感じがしてならないのでございまして、というのは、やはり事業者側の努力が足りないんじゃないかということをあえて申し上げたいと思うのでございます。

 ビジョン小委員会で出されたこの分厚い資料を見まして、いろいろと提案なさっているのはいいんですが、総合生活移動産業になるんだと。待鳥さんも委員の一人だったわけですから、これについて議論なさったと思うんですけれども、これを見ますと、例えば、タクシーの運転者は専属コンシェルジェになるんだというふうに書いてあるんですね。私はこれを見て、何の議論をなさったのかと。ホテルでコンシェルジェといえば、相当高級の担当者だと思うんですね。思いは高くて結構なんですけれども、もう少し足場を見た小委員会の提案であっていただきたいなと思っております。

 その中でも、決してコンシェルジェにかみついているわけじゃございませんで、やはり地域密着型生活支援サービスなどというのが挙がっておりまして、それから一方で、ビジット・ジャパンに貢献しなさいというので、国土交通省は大喜びだと思いますけれども、私は、やはり地域密着型を、東京であれ大阪であれ、それを考えないでユーザーの拡大はあり得ないと思うんですね。便利で、どうしても利用しなきゃいけないから利用するのであって、タクシーを無駄に使おうなんという人はいないわけですね。

 そういうことからいうと、地域密着型ということで一言で言われておりますけれども、例えば、私の経験を申しますと、私は福祉施設をお世話しているんですけれども、そこに一社、タクシー会社が障害者の送迎に来てくれるわけですね。これは普通の料金を払っているんですよ。しかし、それだけでなくて、例えば、その施設で何かクリスマスパーティーをやるなんというと、そこの運転手さんがおいでになるんですよ。それで、一緒にクリスマスに参加していただく。障害者理解が非常に深まっているということであります。

 そういう意味では、子供の問題も、あるいは非常に治安の問題も悪い今日、ひょっとすると、学校に行くのに全部親が、東南アジアみたいに、インドネシアなんかに行ったら、運転手を一人雇わないと学校も通えないというようなことがありますけれども、そういう時代が来てもいいとは思いませんが、いろいろな多様なニーズがある。それに経営者は本当に取り組んでこられたのか。

 先ほど、ナビの活用だとか配車のスピードアップなんておっしゃいましたけれども、私は、もっとユーザーの意見を聞けば、我々の側の意見が反映され、タクシーへの理解が深まる。一言で言えば、ユーザーに全く情報公開がなくて、選択の余地がなくてこの業界を発展させようなんというのは無理な話だ、こういうふうに考えますが、待鳥参考人そして三浦参考人の御感想を聞きたいと思います。

待鳥参考人 少子高齢化社会の中で、私は、タクシーが果たす役割というのは新たに非常に高まっているというふうに思っています。

 冒頭の陳述の中で、地域の中で介護あるいは福祉あるいは育児支援といったようなタクシーが地域で広がっているということを申し上げましたけれども、今言われたように、学童保育への送迎なんかもまたふえてきているわけですね。そういった新たな需要、ニーズに対して、これを一番知っているのは、どこにニーズの素材があるかと知っているのはやはり私たちの仲間である運転者でありますから、これはどんどん経営者の皆さんにも提案を今してきて、一緒に取り組みを進めているところです。

 いずれにしても、タクシーというのは、個別輸送で、ドア・ツー・ドア、今でいえばベッド・ツー・ベッドということで、非常に地域の暮らしに密着した交通機関でありますから、やはりそこを見据えて私たちも対応していかなきゃいけないというふうに思っています。

 ただし、私たちも、組合が経営参加しているような企業で、これまでも福祉輸送あるいは福祉タクシーを手がけてきましたが、通常のタクシー以上にコストがかかります。そこの部分については、社会政策的な助成、支援がなければ、これはなかなかこれ以上広がっていくことは難しいという思いもありますので、ぜひそういった政策的な御支援もお願いをしたいなと思っています。

三浦参考人 先生の御指摘については、我々事業者としても十分参考にさせていただきたいと思います。

 ただ、福祉関係につきましては、全乗連といたしましても、全国福祉輸送サービス協会というのがございまして、そこと提携し、ケア輸送士の講習等もやっておりますし、もう既に全国で二千六百人以上のドライバーの方がこの研修を受けられております。また、東京では、この協会と東京のタクシー協会と協力いたしまして福祉の共同配車センターをつくり、少しでもそういう方の利便性を向上させるということで、昨年十月から実施して、非常に利用者からも喜んでいただいているというようなことでございます。

 また、少子高齢化ということで、非常に最近治安も悪くなってきているというようなことで、昨年タクシー業界では、こども一一〇番という制度をつくりまして、車両にこども一一〇番というステッカーを張って、お子さんが何か問題があって助けを求めた場合には速やかにドライバーが対応できるように教育をしたりして、少しでも地域に密着した形での施策を講じているということを申し上げまして、終わりたいと思います。

 以上です。

土肥委員 ありがとうございました。終わります。

塩谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 次回は、明九日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十三分散会


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