衆議院

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第21号 平成19年5月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 後藤 茂之君 理事 中野 正志君

   理事 西銘恒三郎君 理事 葉梨 康弘君

   理事 山本 公一君 理事 伴野  豊君

   理事 三日月大造君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    石田 真敏君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    鍵田忠兵衛君

      梶山 弘志君    亀岡 偉民君

      北村 茂男君    坂本 剛二君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      鈴木 淳司君    薗浦健太郎君

      徳田  毅君    長島 忠美君

      原田 憲治君    松本 文明君

      盛山 正仁君   吉田六左エ門君

      若宮 健嗣君    泉  健太君

      黄川田 徹君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    下条 みつ君

      土肥 隆一君    長安  豊君

      鷲尾英一郎君    赤羽 一嘉君

      伊藤  渉君    穀田 恵二君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    梶山 弘志君

   国土交通大臣政務官   吉田六左エ門君

   参考人

   (社団法人住宅生産団体連合会会長)        和田  勇君

   参考人

   (弁護士・日本弁護士連合会住宅紛争処理機関検討委員会委員長)       金子 光邦君

   参考人

   (慶應義塾大学理工学部教授)           村上 周三君

   参考人

   (社団法人日本損害保険協会常務理事)       吉田 浩二君

   国土交通委員会専門員   亀井 為幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  糸川 正晃君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案(内閣提出第六七号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、社団法人住宅生産団体連合会会長和田勇君、弁護士・日本弁護士連合会住宅紛争処理機関検討委員会委員長金子光邦君、慶應義塾大学理工学部教授村上周三君及び社団法人日本損害保険協会常務理事吉田浩二君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、和田参考人、金子参考人、村上参考人、吉田参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず和田参考人にお願いいたします。

和田参考人 ただいま御紹介いただきました社団法人住宅生産団体連合会の会長の和田勇でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、発言の場を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 私が会長を務めています住宅生産団体連合会は、略して住団連と呼ばれております。その名のとおり、住宅生産にかかわる団体の連合会でありまして、プレハブ建築協会、日本木造住宅産業協会、日本ツーバイフォー建築協会、全国中小建築工事業団体連合会など十の団体で構成されております。一戸建て住宅が中心ですが、集合住宅や設備、建材類などを手がけている会員なども幅広く集まり、住宅関連事業全般にわたる分野から参加しております。

 主要な業務は、住生活の向上に向けた住宅産業界共通の取り組みの推進や、住宅行政全般にわたって政策的な提言や要望などを行っています。昨年制定されました住生活基本法も、こうした要望も酌み取っていただけたものと感謝しております。

 私は、この団体の会長を務める一方、ハウスメーカーである積水ハウスの社長であり、企業経営に携わっておりますので、本日は、その経験も踏まえてお話ししたいと思っております。

 まず、本法案についての総論といたしまして、私ども住宅生産者は、お客様に対する瑕疵担保責任という問題について、こうした事業者の資力確保措置によって、より確実に担保できるものと考えております。ただし、政令、省令などの細部は今後整ってくるものと思いますが、その際には、住宅生産の現場の実情を踏まえて、十分に配慮いただきたいと思っております。

 本法制定の暁には、さきに改正された建築基準法、宅建業法、建設業法、建築士法などと相まって、建築確認の制度や建築士の能力、お客様の利益の保護に関する諸課題がクリアになり、一層安心、安全な住宅供給が促進されることが期待できます。

 当初は、保険の義務化がいわゆるモラルハザードを引き起こすのではないかと危惧いたしました。モラルハザードと申しますのは、保険というものが、他の人が汗水垂らして働いて得た対価を使ってみずからが引き起こした瑕疵修補の支払いがなされることにより、瑕疵を防止することへの努力が軽んじられるということで、これにより自社責任の原則が徐々に薄れていくのではないかと懸念いたしました。これは、悪質な経営者だけでなく、住宅事業の現場の技術者、技能者の方々にもその影響が及ぶことをも恐れたわけです。もちろん、常にお客様と向き合っている多くの住宅生産者にとって、こんなことはあり得ないと信じておりますが、心ない一部の事業者によって本制度が悪用されることのないように十分注意していただきたいと思っております。

 また、住宅事業の現場の技術者、技能者の方々にかかわることですが、施工に当たって必ずしも十分な注意を払わなくても、何かあったときに保険で対応できるからという潜在的な意識が徐々に技量の低下をもたらさないかと心配いたしました。

 この二点について、悪貨が良貨を駆逐することのないよう、保険制度の運用に当たっては十分注意を要する問題であろうと思います。

 一方、供託方式が加えられ、いろいろなタイプの事業者を抱える住宅産業界としては、事業者に選択の余地ができたことは大変望ましいことだと思っております。

 供託方式は、私どもは、会社の資本力、経営方針、品質管理体制などを信頼する方式として、保険という第三者機関を使う方式とともに位置づけられるものと理解しております。当然、供託方式を採用する会社は、保険を使うとき以上にみずからきちんと品質管理をしていく必要がありますし、住宅購入者に対し、住宅の性能について積極的に情報提供を行うことも大切だと考えております。

 住生活基本法においても、事業者の責務が規定され、住宅の安全性等の品質、性能の確保と、適切な情報提供に努めることとされております。住団連といたしましても、基本法の理念を尊重し、昨年春、倫理憲章を策定しました。この憲章では、事業者の社会的責任の遂行、環境への配慮、人材の育成などを盛り込み、住団連の構成団体とその会員企業に自主的に実践することを申し合わせました。また、こういう考え方から、安全性の確保や情報提供を積極的に推進していくため、住宅性能表示への積極的な取り組みなども進めており、例えば、私ども積水ハウスでは、第三者検査のもと、高品質なものを供給するという観点から、お客様には基本的に性能表示制度の活用をお勧めしております。

 そういう観点でいうと、現在、供託額は戸数に応じて一律に定められておりますが、将来的には、運用実績の充実などを待って、例えば、性能表示を行っているなど品質確保体制がしっかりしているものについては供託の必要額を引き下げるなど、実態を踏まえた見直しがなされることが、品質向上などにまじめに取り組む人々を応援するという観点からも望まれます。保険の場合についても同様、事故のない業者は保険料が軽減され、事故の多い業者は保険料が高くなるといったように、努力した事業者が報われるように、また住宅購入者からもわかるようにしていくことが大切でございます。

 さて、現実に保険方式を選ぶか供託方式を選ぶかについては、事業者の経営の考え方や事業規模などにもよるので、一概に言えないものと思います。今後、詳細を見て、おのおの判断されるものと考えます。

 建築基準法、建築士法、宅建業法、建設業法など一連の法改正がなされたことにより、建築確認検査の厳密化、建築士の資質・能力の向上、情報開示の徹底が図れますから、一層安心、安全な住宅供給が促進されるようになると思います。加えて、この法制化は、住宅の瑕疵が起きたときに、どんな場合でもお客様に迷惑をおかけしないということで、事業者の資力確保を行うものとなっておりますが、何よりも大切なことは、まず、私たち住宅事業者が瑕疵をいかに発生させないか、仮に発生してもきちんと対応するということが第一だと思います。業界を挙げて切磋琢磨し、住宅事業者としての責務を全うしていきたいと思います。

 最後に、住宅は単なる生活の器ではございません。人は住宅で人生の大半を過ごしますし、家族のきずなを強める場所であり、また自己実現を図る場所でもあります。団らんの場になり、あすへの英気を養う場にもなります。住宅は基本的には個人的資産でありますが、さきに成立した住生活基本法によって、孫子の代に継承できる社会的資産であるという位置づけもより明確になりつつあります。言いかえれば、社会的資産にふさわしい住宅づくりは私たちの責務であり、現実と理想、現代と未来、さまざまな課題が存在しますが、本法案の施行により、我が国の住宅供給事業者の底上げがなされ、結果として、高品質で安全な住宅が供給されるようになることを念願しております。

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、金子参考人にお願いいたします。

金子参考人 私は、先ほど御紹介いただきました日本弁護士連合会で住宅紛争処理機関検討委員会の委員長を務めております。

 今ここで審議されております履行確保法、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律でございますが、この法律の母法といいますか、前提となっている品確法に基づきまして、弁護士会において住宅紛争審査会の運営にかかわっているところでございます。

 そういう関係で、今回のこの法律の立法過程にあっては、昨年来、いろいろ国土交通省からも相談にあずかってきました。そういう立場から、この法案の趣旨には弁護士会としても積極的に賛成する立場で協力してきましたけれども、今こうしてでき上がった法案を拝見しまして、何点か、国会の先生方に留意してほしい、あるいは検討してほしい点を申し上げてみたいと思います。

 まず、我々がこの法案に賛成する一番の理由は、品確法における住宅供給業者の十年間の瑕疵担保責任を実効あらしめるために、その資金的裏づけをさせる法律であるからであります。

 一体に、法律は、こういう事故を起こしたときにはこういう責任が発生するということが決めてあるだけでありまして、その責任のある者が責任を資金的に果たせないとき、金がない、倒産してしまったときはどうなるかについて無関心でありました。わずかに、身近なところで自動車損害賠償保障法がございまして、事故を起こした運転者に資力がなくても、強制的に保険がつけられていますから、人身事故の被害者が補償を受けられないということはまずありません。

 自動車と同じように、我々の生活にとって基本的なインフラである住宅に対し、供給責任の履行確保法が制定されるということは画期的なことでありまして、遅きに失したと言ってもよいくらいであります。この法律がもっと早く成立していたら、少なくとも品確法と同時に成立していたら、今回の姉歯・ヒューザー事件などの被害者はどんなに救済されていたことでありましょうか。

 そういう観点から、法案の中身を幾つか検討してみますと、まず、責任の履行確保の方式として、供託方式と保険方式の二つが用意されています。この二方式は、責任のとり方として妥当なものと考えます。立法段階ではこれ以外の方式も検討されたと聞いていますが、今ここでは触れないことにいたします。

 次に、補償の限度額が問題になります。供託、保険とも二千万円を基準額としていますけれども、一戸当たり二千万円で十分でしょうか。今回の事件のように、マンションごと建てかえをしなければならないような悪質な欠陥があった場合には、一戸当たり二千万円では到底被害回復に十分でないことは明白であります。

 この点について、国交省の説明では、保険を引き受けるに当たっては、ただ保険契約を締結するだけではない、それまでには、品確法上の評価住宅と同じように、建築工事中に二回も三回も中間検査をする、あるいは竣工検査もするから、今回のような悪質な事件は起こり得ないと言っています。

 確かに、保険会社としても、欠陥住宅について保険を引き受けていたら、幾ら保険料を高くしても採算が合わないでしょうから、制度の発足時としては、まずこの程度の金額で様子を見るというのも一つかもしれません。

 ただ、供託の場合は、業者側が、うちにはこれだけのお金が積んでありますから大丈夫ですよということで、第三者による中間検査を予定していません。その上、供託金額の逓減方式が採用されていて、法案三十七ページ以下の別表によりますと、戸数に応じて一戸当たりの金額が極端に減少しております。例えば、一度に十戸の住宅に欠陥が生じたとすると、一戸当たり三百八十万円になってしまいます。

 先ほどの第三者機関による中間検査が予定されていないこととあわせて、気になるところではありますが、ただ、供託した金額が将来取られることを前提として建築する業者はあり得ない、つまり、モラルハザードの問題は起こり得ないわけですから、この点も将来の課題ということでいいのかもしれません。

 三番目に、今回の事件のような、故意、重過失の場合であります。この点が今回の制度設計に当たって最重要課題となった点であります。

 供託の場合は、供託金額から当然補てんされますから問題は起きませんが、保険の場合は、モラルハザードに抵触する、保険制度と相入れないということで、当初はこの場合の手当てがなされていませんでした。しかし、それでは何のための法律かということで、我々弁護士会挙げて対処を求めた次第でございます。

 その結果、保険契約者全員が拠出する救済基金の設定となったわけでございますが、この点は法律には明文をもってしては書いてございません。多分、指定保険法人の規定である十九条の六号、保険業務以外の附帯業務ということで、今回の制度の中に当然組み込まれているものと理解しています。しかし、その具体的内容はすべて政令、省令にゆだねられているわけであります。

 したがって、制度上組み込まれていることを前提として議論しているんですけれども、そこで万一、故意、重過失による事故が発生した場合、故意、重過失による被害だからといって、通常の供託、保険の場合と比べて救済の内容に差異があってはなりません。被害者にとっては、それが供給者側の単なる過失によるものか、故意、重過失によるものかは関知しないところからであります。

 次に、救済基金の総額についても、参議院の審議において議論があったと聞いています。一戸当たり保険料とともに五百円を徴収して、年間保険加入戸数八十万戸とすると一年間に四億円、十年間ですから、十年たてば四十億円の基金がプールされるという計算のようですが、今回の姉歯・ヒューザー事件のように、マンション数十棟、戸数にすると数百戸の建てかえということになりますと、四億円でも四十億円でも足りないことは目に見えています。

 しかし、この点も、国交省の説明によれば、建築基準法も改正して厳格化した、建築士法も改正した、中間検査、竣工検査もするのであり得ないということですし、参議院における冬柴大臣の答弁を読んでみますと、足りないときは幾らでも国庫補助をするということですので、ひとまず了解することにいたします。

 その他、被害補償の範囲はどこまでか。現在の住宅保証機構の制度では、補修の工事費は当然として、建てかえの場合は除却解体費と建てかえ費用のみでありますけれども、新制度では、移転・仮住まい費用、調査費用なども加える方向で検討していると伺っております。弁護士会の方では、それは当然として、さらに悪質な場合には慰謝料、弁護士費用なども加えるべきだという意見が多数ございます。また、免責金額、補てん割合についても、被害者に過大な負担が生じないように検討をお願いします。

 次に、住宅の直接の買い主、注文者が補償されるのは当然でございますが、住宅は、先ほど来お話がございますように、国民の共有財産として流通転々するものですから、初めの所有者から住宅を購入した転得者も保護されるように制度設計するべきだという意見もあることを紹介しておきます。

 その他、まだいろいろあるんですけれども、ひとまずこの程度にしまして、次に、我々が関与する、保険事故、供託事故が発生した場合の紛争解決システムの課題について申し上げます。

 まず、これまでの品確法の住宅紛争審査会は評価住宅のみが対象でしたから、現在までの普及率はだんだん上がってきて、現在は、年間百三十万戸の着工戸数とすると、その二割弱が加入して、年間約二十万戸、そのうち弁護士会に上がってきた事件は、十二年の制度発足以来、これまで全国で百件弱でした。それが、百三十万戸について、保険、供託、どちらかに全部ということですから、幾ら中間検査等を厳格にするといっても、国交省の試算で、年間千件から二千件の事件が起こるだろうということでございます。

 そうしますと、これまで全国五十二の単位会のうち事件を扱っていたのは半数程度、しかも、そのうち一、二件という会が大多数だったのですが、これが全国の弁護士会に相当数の事件が上がってくることは必定でございます。これに対して、受け入れる側の、大都市の弁護士会では少々の事件は受け入れる人的・物的体制は準備されていますが、地方の少人数の弁護士会では十分受け入れられるだろうかという心配をしております。

 また、事件を受け入れるには、住宅紛争というのはそれなりの専門的知識、経験を必要としますから、事件が来るまでに、弁護士会としても、事務局体制はもとよりですが、紛争処理に当たる弁護士、建築士に対して十分な研修教育をしなければなりません。

 この点について、これまでも住宅紛争支援センターの全面的なバックアップを受けてきました。しかし、新制度発足に当たっては、これまで以上に技術的な情報提供や財政的な支援をお願いしなければなりません。支援センターのバックアップは、制度が軌道に乗るまでは国庫の支援ということになるのでしょうから、弁護士会に対する支援とともに、支援センターに対する予算措置についても十分な御配慮をお願いしておきます。この点は、参議院における附帯決議にも、技術的に適正な判断・助言ができる第三者機関の設置の検討として触れられているところであります。

 また、同じ附帯決議において、本法が政省令に委任している事項、すなわち、さきに述べた適正な保険金額、供託金額の設定のほか、被害者からの保険法人に対する直接請求の場合の要件を含む相当期間の問題など住宅購入者の保護、さらに住宅紛争審査会に対するあっせん、調停の申請について、認証紛争解決手続によると同様の時効中断の効力付与を求める立法措置なども要望しておりますけれども、これらの点については私としても全く同感であります。

 最後に、以上、今回の立法制定に当たって、弁護士会としてかかわってきた立場から、住宅購入者の保護が十分となるように、そして万一、被害が発生したときは、紛争が簡易迅速に解決されるシステムを用意しておきたいという思いを込めて、幾つかの要望を先生方にお願いいたしました。

 どうか、この法律が一日も早く成立して、国民が安心して一生の買い物である住宅をリスクなく購入し、精神的、経済的に豊かな生活が送れる制度的な基盤を用意してくださるよう祈念して、私の意見陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、村上参考人にお願いいたします。

村上参考人 御紹介いただきました慶應義塾大学の村上でございます。現在、日本建築学会の会長を務めております。きょうは発言の機会を与えていただきましてありがとうございました。

 私は、現在、国土交通省の社会資本整備審議会の建築分科会の会長として、また、その下の基本制度部会の部会長として、耐震偽装問題でいろいろ明らかになりました課題に対応するため、審議会の答申を取りまとめる作業に参加する機会を得ました。そのときの経験や建築学会の活動を踏まえまして御意見を申し述べます。

 まず、問題の緊急性と審議の経過ということでございます。

 昨年の今ごろを思い出しますと、状況は非常に厳しかったわけでございます。建築界に対する国民の信頼は失墜しておりまして、問題解決の必要性、緊急性は非常に高かったということでございまして、審議会でもたびたび委員会を開催しまして、早目に答申をまとめることに鋭意努力したわけでございます。

 また、そういう状況を受けて、昨年の三月の中間報告、それから八月の答申が出されまして、その内容はいずれも緊急性の高い政策課題だったわけでございます。

 その内容を反映する形で、昨年の通常国会と臨時国会で建築基準法やその士法などの改革がなされまして、また現在、瑕疵担保責任に関するこの法律の審議がなされているということでございまして、こういう状況は、一連の不祥事で失墜した建築界に対する信頼あるいは建築の法律に対する信頼、そういうものを回復する上で大変大切なことであると思います。

 これは、当初、昨年の審議会の段階では予想していないスピードでございまして、この点に関しましては、国会の皆様あるいは行政府の皆様の、関係者の御尽力に感謝と敬意を表するものでございます。

 この法律が完成しますと、当初の一連の緊急課題は一段落するわけでございます。そうしますと、不祥事の再発防止とかあるいは被害者の救済という意味で、国民の皆様に安心していただけるシステムが提供できるものと期待しております。

 次に、安心、安全な建築を国民にいかにして提供するか、そういうことに関して一言申し上げます。これは建築学会でさんざん議論してきた内容でございます。原則は三つございます。

 第一の原則は、まず、建築関係者がよい建築をつくるために自助努力をする。第二は、不良建築を排除するための法令の規制でございます。第三が、それでもやはり不良建築が発生する可能性はある、だから消費者保護と被害者の救済。その三つが機能して初めて、国民に安心して建築を利用していただける社会システムが構築できる、そういうふうに考えております。

 それで、問題は、この三つは独立しておりませんで、互いに関係して、連携して進めなければならないというふうに思います。

 まず第一の、よい建築をつくるための建築関係者の自助努力、これは民間が当然主になって進めるべきものでございます。二番目の法令規制、これは官が中心になって進めるべきものでございます。三番目の被害者の救済、これは官が枠組みをつくって官と民とが協力して進める、そういうものであろうと思います。

 先ほど、三者の連携が大事だと申し上げましたけれども、なぜかと申しますと、第一原則で、建築関係者がまずよい建築をつくるための自助努力、第二原則で、法令規制で不良建築を排除する、そういう前提があって初めて第三の瑕疵担保システムが円滑に運用されるからでございます。

 不良建築が頻発するようでは、先ほど和田参考人の発言にもございましたけれども、保険制度を構築する前提が存在しないということになります。こういう状況のもとでは、被害査定のコストとか手間が膨大となりまして、保険料が上昇して健全な保険制度の運営は困難であると考えられます。

 ということでございまして、昨年来の一連の建築基準法や建築士法の改正、あるいは業界団体や学術団体が行ってきたよい建築をつくるための自主的な取り組み、こういうものは今回の瑕疵担保責任にかかわる法律の基盤をつくったものと言えます。したがって、昨年来の法律の改正や制定の順番は妥当なものと考えております。

 次に、審議会における意見集約に関して申し上げます。

 昨年の審議会は大変活発でございまして、さまざまな意見が提供されました。いろいろ私、審議会に出させていただいておりますけれども、極めて活発な審議会であったと思います。

 例えば一例を申し上げますと、当初、建築基準法や建築士法による規制強化の全体像がはっきりしない中で、保険の一律義務化というようなイメージというかうわさが流れたわけでございます。そういう段階では、当初、住宅業界からは慎重な検討を求める意見が出されました。また損保業界からは、保険の引き受けに当たっては、検査の充実というものが非常に大事なんだ、そういう意見も出されました。

 当時、部会長の気持ちとしては、これは関係者で全員が合意できる内容をまとめるのは大変なことだ、容易ではないという印象を強く抱いたのが率直な感想でございます。

 しかしながら、この国民の間に広まっています建築に対する非常な不信感、こういうものを回復するにはどうするかということで、大いに審議を重ねまして、最終的に、保険、供託とか、あるいは故意、重過失への対応とかを含めて、その資力確保を住宅の売り主に義務づけるということで、委員全員の合意を得てその答申を取りまとめたわけでございます。

 これを踏まえて、現在、その具体的な制度のあり方が検討されて法案が提案されましたことに対して、関係者皆様の御努力に部会長として感謝申し上げたいと思います。

 現在の法案に対する見解を二、三申し上げます。

 日本の住宅の供給市場は、年間数千、数万戸を提供する業者から一人棟梁のような工務店まで、大変多様でございます。そういう中では、今回の法案は、そういう大変複雑な供給形態に対応し得る実効性のある内容で、全体として大変バランスがとれた法案であると思います。私、昨年度の審議会の経緯で、こういう全員が合意できる枠組みをつくるのは大変だなという印象を持っておりましたけれども、こういう案をつくっていただきましたことは、第一にこの面での成果を評価してよいと考えます。

 二つ目は、この法案のユニークさでございます。

 供託と保険を二本柱にするということは、これは私の聞いているところでは海外でも例がないということでございます。これは、先ほどから申しています多様な供給形態に対応できるということで、業者の方には選択肢がふえて結構なことであると思います。

 それから、先ほど金子参考人からも御発言がございましたが、故意、重過失、これに関しましても、非常に困難な問題に対応できるようにしていただけるということを聞いておりまして、これは国民の皆様に大変大きな安心を与えるものでございますので、これも高く評価すべきでございます。

 最後に、今後に対する要望について幾つか申し上げます。

 まず、これからの制度設計に対する要望でございますけれども、今回の法案の内容は、私の感じでは大枠だけを決めたものだ、そういうふうに理解しております。今後の検討にゆだねる部分が非常に多いと思います。特に供託にかかわる部分に関しましては、今まで余り前例がないものでございますから、関係方面の意見を十分に酌み上げて、実効性の高いものにしていただきたいとお願いしたいと思います。

 次は、優遇措置でございます。

 先ほど、和田参考人からもございましたけれども、住宅供給業者はよい建築を提供するために鋭意努力しているわけでございます。ですから、その努力が報われるような保険の運用システムを構築していただきたい。これは、いわゆる優良ドライバーに対する保険料率の優遇システムと同じような仕組みだと思います。これは、裏を返せば不良業者を排除する仕組みにつながります。でございますから、今回の法律の運用が、結果として優良建築業者の育成につながることになれば、法律制定の意義は一層大きいものになると言えます。このことは、供託においても同じように優遇措置はぜひ御検討いただきたいと思います。

 それから、モラルハザードの問題でございます。

 これは必ず出てくる問題でございますけれども、今申し上げましたこういう保険料率の優遇措置をうまく運用すれば、ある程度解決されることになると私は信じております。ただ、いずれにしても、このモラルハザード防止は大変厄介でございますから、これが十分に防げるように優遇措置を実施して、それが実施されれば、それが優良業者のラベリングになるわけでございます。ですから、モラルハザード防止が十分に機能するような、よい品質に向けての努力を引き出すような仕組みづくりをぜひつくっていただきたいとお願いしたいと思います。

 それから、瑕疵の内容でございます。

 現在、これは、いわゆる品確法で規定をしております構造耐力にかかわる部分と雨漏りにかかわるその二つでございます。瑕疵はいっぱいあるわけでございまして、これにどこまで官が、国がかかわるかというのは別途大きな問題がございますけれども、今度新たに保険法人が創設されましたら、そういう枠組みの中でいろいろな瑕疵へ対応し得る保険商品を開発することをぜひ検討していただきたいと思います。

 それから、十年保証の問題でございます。

 これも十年たつといろいろ、瑕疵は十年経過後もいろいろ出てくるわけでございます。これも保険法人の発足とともに商品設計を御検討いただきたいと思います。

 最後に、規制強化の問題で一言お話しして、これで終わらせていただきます。

 この耐震偽装事件を受けて進められた一連の法律改正といいますものは、例えば昨年の建築基準法における確認検査の厳格化などを初めとして、いずれも規制強化の方向にございます。これは、昨今の規制緩和の風潮から見ると大変異例なことでございます。これは、一連の不祥事が大変大きな不安と混乱を国民に与えたということで、ある程度の規制強化はやむを得ないということで、社会的な合意は得られていると思います。

 しかし、これを実行に移す段階では、当然、官民のさまざまな分野で新たな費用負担が発生します。その費用は結果的に建物を建てる国民の負担につながってくることになります。でございますから、この法律が成立いたしましたら、その後の政省令の具体的な設計に入るものと思われますけれども、その際、なるべく簡素にして用が足りるような制度設計をしていただいて、国民の負担がなるべく少なくなるよう配慮していただければありがたいと考える次第であります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 次に、吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 ただいま御紹介いただきました社団法人日本損害保険協会の常務理事を務めております吉田浩二でございます。このたびは、このような意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 まずは、関係各位の御尽力で特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案が取りまとまったことに感謝と敬意を表したいと思います。損保業界といたしまして、必要な協力をさせていただく所存でございます。

 昨年、国土交通省が設置した住宅瑕疵担保責任研究会及び社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会に委員として出席いたしまして、損保業界の立場から意見を申し述べさせていただきました。今般、法案で示された消費者保護の仕組みの基本的な方向性については、これまでの損保業界の主張を踏まえていただいていると認識をしております。

 法案では、国土交通省が新たに指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が、住宅の検査とあわせて保険の引き受けを行うことになっております。保険法人については、現在の保証機関等が新たに指定されることになると思いますが、住宅の検査について高い専門性を有する保証機関等が保険法人として前面に立って住宅瑕疵のリスクを引き受けることにつきましては、これまでの損保業界の主張に沿ったものであり、評価をしております。

 今後、損保業界が保険法人をバックアップする補完的な役割を担うのであれば、この仕組みが十分に機能するために、保険法人による現場検査体制を一層充実させていくことが重要な課題であると考えております。保険引き受けのための住宅の検査が保険法人によって適切に行われることが、この制度を生かす前提として重要と考えております。つきましては、国土交通省には、保険法人の検査体制が十分なものとなるよう、指定時及び指定後の適切な監督をお願いしたいというふうに考えております。

 改めて本件の経緯を振り返ってみますと、次のとおりでございます。

 欠陥住宅問題に対応するため、新築住宅の売り主または請負人は、住宅の品質確保の促進に関する法律に基づき、住宅の基本構造部分の瑕疵については十年間の瑕疵担保責任を負うこととされております。しかしながら、二〇〇五年の構造計算書偽装問題を契機といたしまして、新築住宅の売り主等が十分な資力を有さず瑕疵担保責任が十分に履行されない場合、住宅の購入者が極めて不安定な状態に置かれることが改めて認識されました。

 そこで、このようなケースに対応するため、社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会などで論議が行われ、本法案制定の動きにつながったものと認識をしております。本件は社会的に解決を求められている問題であり、損保業界といたしましては、従来から問題の解決の実現に向けて必要な協力はするというスタンスをとってまいりました。今後もその姿勢が変わることはございません。

 ここで、損保会社が従来から販売をしていた保険商品について若干触れさせていただきたいと思います。次のとおりでございます。

 従来から、損保は、住宅建築に関連する保険といたしまして、一、住宅の設計にかかわる保険、二、施工中の事故を補償する保険、そして三番目に、引き渡し後の事故を補償する保険を販売してまいりました。

 従来商品のうち、例えば、新築住宅の施工業者や販売業者を対象として瑕疵保証責任を補償する住宅瑕疵保証責任保険では、瑕疵発見の専門的知識、ノウハウを有する住宅保証機構などの保証機関の十分な確認検査が行われることが保険引き受けの前提となっており、引き受けしている住宅のほとんどが戸建て住宅であるため、損保会社としても比較的引き受けがしやすい仕組みとなっておりました。

 一部、前述の内容と重複する部分はございますが、本法律案に至るまでの損保業界の主張は次のとおりでございます。

 総じて申し上げれば、損保がバックアップすることについて、どのような条件であっても反対だと主張してきたわけではなく、むしろ、消費者利益の保護を確保するために損保として協力できる環境を整えたいとの思いから、制度上解決しなければならない課題をピックアップして、その解決方法を御議論いただきたいという主張をしてまいりました。

 新築住宅の売り主等に対して履行確保策を義務づける手段として保険を活用する場合は、現在保険に加入していない業者も含めて、保険付保を選択した新築住宅の売り主等のすべてが保険に加入することになります。これによって、加入者の適切な選択が難しくなるので、現在、各損保会社が取り扱っております住宅瑕疵に関する任意加入の保険商品とは全く性質が異なることから、従来の延長線上で議論することができないという点を主張してまいりました。

 先ほど申し上げましたとおり、保険付保を選択した新築住宅の売り主等のすべてが保険に加入し、それを損保会社が引き受けることとなれば、保険会社としては加入者の適切な選択が難しくなるため、極めてリスクの高い事業となります。また、この場合、住宅瑕疵については十年間という長期のリスクを保証しなければならないこと、タワーマンションのなどの場合は巨大なリスクを保証しなければならないこと、損保業界の外の再保険マーケットにいわゆる再保険を出再してリスクを分散することができないことという面も不安定要因でございまして、これらの課題が解決されれば、損保としても協力できるような環境が整うと主張してまいったわけでございます。

 住宅の検査について高い専門性を有する保証機関等が前面に立って住宅瑕疵のリスクを引き受けることが適切であるというふうに考えております。損保業界としては、これをバックアップする補完的な役割を担うこととしたいというふうに考えております。また、この仕組みが十分に機能するために、引き受け主体の現場検査体制を充実させてほしいというふうにも考えております。

 このように、極めてリスクの高い事業を制度上引き受ける場合には、他保険で引き受けている一般契約者に影響が及ぶことのないように、適切な制度運営が不可欠でございます。

 損保会社がバックアップする場合、保険料率などの具体的水準については、制度の枠組みが明確になった時点で、検査体制の整備状況や加入者数等を見込んだ上で検討することが必要と考えております。

 繰り返しになりますが、損保業界の主張を踏まえ、こうした課題を一つ一つクリアして今回の法律案が取りまとまったことに感謝の意を表する次第でございます。

 今後、住宅の検査について高い専門性を有する保証機関等がリスクの引き受け主体として国土交通省から保険法人の指定を受けることになると思われますが、指定の要件を適正に定めていただきまして、また、監督を行っていただくことが重要であるというふうに考えております。

 また、保険法人の検査体制を充実させ、適正確実な検査が履行されることで、保険制度が長期にわたり健全かつ安定的に運営されるための措置が確保されるようにお願いしたいと思います。

 これによりまして、保険法人と損保会社が協力し合って、本制度が円滑に運営されることに寄与できれば幸いと思っております。

 新築住宅の売り主等による瑕疵担保責任の履行が確保され、住宅購入者等の利益の保護が図られることを業界としても望んでおります。また、損保業界として必要な協力をさせていただく所存でございます。

 以上でございます。(拍手)

塩谷委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 きょうは、参考人の四人の先生方には、大変お忙しい中お出ましをいただきまして、また、貴重な御意見をお伺いできましたことに、まずは御礼を申し上げます。きょうは本当にありがとうございました。

 私の選挙区が実は市川市というところでございまして、あの耐震偽装問題のいわゆる震源地でございます。私の選挙区の中にも実は物件がありまして、まだ大変困っていらっしゃる方が多いんですけれども、要は、消費者の側にしてみればとんでもないものをつかまされたということで、建てかえとか補修の際に一番問題になるのはやはり資金の問題でございます。実際に、今回のスキームで果たしてそれがうまくいくのかどうか。

 というのは、一つには、補修をするだけであっても一千万、二千万のお金がかかりますし、建てかえということになればもっと多額のお金がかかることになります。これがスキームとして果たして、機能しなければこれをつくった意味がないんですけれども、機能するや否や。消費者の保護に本当にきちんとつながるのかどうかということの御見解を四人の参考人の方それぞれに最初にお伺いをしたいというふうに思います。

和田参考人 今先生からお話しの件でございますが、今まで、どちらかというと、良質な生産者というのは自己責任でいろいろちゃんとやっているわけです。例えば今回の場合でも、倒産とかそういう資力がなくなったことが一つの大きなポイントだというふうに思われます。だから、今回、供託制度とか保険制度をきちっとやることによって、私はこれは十分機能するんじゃないかと思っております。

 以上でございます。

金子参考人 今の質問の二千万ということが妥当かどうかということは、十分検討していただきたいんですけれども、先ほども申し上げましたように、今までのように、つくって売りっ放し、建てっ放しということじゃなくて、そこに至るまでには今まで以上の厳格な検査をする。家というのは、できちゃうと外からは中が見えないんですね。しかし、みんな見てくれで外観のいいものを消費者は買う傾向にあるんですけれども、一番大事なのは基本構造部分、はり、柱、基礎だと僕は思うんです。

 そこのところをきちっとするということですので、二千万でいいのか、それから、供託金額になると、別表によってどんどん金額が減っていきますから若干心配はあるんですけれども、制度の初めとしてはこれでやることに十分意義がある、大丈夫なんだろう、また運用によって見直していただくということでよろしいのかなというふうに今は考えております。

村上参考人 お答えします。

 機能するかどうかという御質問でございますが、現段階は大枠を示されたわけでございまして、私はこれで大丈夫だと思っておりまして、さらに今後、政省令の細部の設計に入るわけでございますけれども、その際に、例えば保険料率とか供託金とか、何としても機能するように制度設計をしていただきたい、そういうふうにお願いする次第でございます。

吉田参考人 私どもの意見としましては、今回の法律案で大枠が決まったということでございまして、具体的な補償の内容云々に関しまして最終的な形になっていないわけでございます。ですから、今後どういうふうになるのかということで、先生方の御意見を伺って、妥当な水準で決めていくということが重要なのではないかなというふうに考えております。

 また、それ以上に、検査体制等がしっかりしていけば、大きな事故の発生は防げる可能性が高いのではないか。そうした検査体制の充実にも力を入れていただければ、システム全体としては機能するというふうに考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 今のお話をお伺いいたしておりますと、今回のこの法案はあくまで大枠を決めたものであって、これからのいわゆる詳細設計が大変重要になってくるということが本当に私よく理解をできました。

 今回の姉歯事件に関しましても、大多数の建築業者の方々はまじめにやっておる。しかしながら、一部のああいった業者があらわれた結果として、住宅全般に対する信頼というものが失われてしまった。

 これは和田参考人にお伺いをしたいんです。

 最初は業者の方にきちんとつくっていただく、その歯どめとして法律があって、あくまでこの保険制度というのはその次だというふうに理解をしておるんですけれども、このモラルハザードをいかに防ぐかというための取り組み、それから今後の方針について、業界団体として何かお考えになっていることがあればお教えをいただきたいと思います。

和田参考人 今のお話でございますけれども、基本的には、住宅の生産者というのはみずから責任を持って事業をするというのがまず第一義的な問題なんですね。

 それで、先ほど私、意見陳述のときにも申し上げましたけれども、保険があるから何をやってもいいよというようなことになってしまうのが一番怖いわけです。技術者もそういうことになる可能性だってあるわけです。

 それを、まず根本は、住宅生産者の方が、いわゆる売り主の方が責任を持って、そういうことを自己責任で徹底的にやる。保険で補うんじゃなしに、まずそれが基本なんです。それでだめなときは、保険制度を使っているときは保険でやってもらっていいんですけれども、逆に、会社が倒産しない場合は、供託金で云々じゃなしに、そこを徹底的に、その会社がやはり追及されるべき問題じゃないかなと思うんです。

 だから、今回の姉歯事件というのは、恐らく資力がなかったためにこういう問題が生じているわけでございますから、当社の積水ハウスサイドの問題としても、いろいろ起こったことはやはり自己責任で全部直しているわけです。一番怖いのは、やはりお客さんからの評判が横へつながってまいりますので、我々としても、お客さんからの紹介というのは約四〇%で商売している会社でございますから、そういう各生産者が責任を持つということがまず根本の問題じゃないかなと思います。

薗浦委員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおりで、要は、きちんとしたものができれば保険も供託も実は要らない、一〇〇%きちんとしたものができると確かにこういうものは要らないんです。

 いわゆる最終の手段として供託、保険という制度設計をこの法律でやるわけなんですけれども、これがいわゆる保険事業として果たして成り立つのかという部分に対する懸念というのがあると思うんです。

 というのは、今回の事件でもやはり莫大なお金が補修、建てかえにかかるわけでございまして、一方で、保険料率が余り高いと業者さんの側に多大な負担になってしまう。一方で、消費者保護ということを考えれば、保険できちんと全額支払われるような制度ができなきゃならぬということで、そもそもこれが保険として成り立つのか。

 また、成り立つ条件として、先ほども幾つか保険法人の話をおっしゃっていましたけれども、幾つか運用上気をつけなければならない点というのがあろうかと思うんですけれども、吉田参考人にその点についてお伺いをしたいと思います。

吉田参考人 一番重要な部分というのは、やはり悪質な業者をいかにこの保険のシステムから排除できるかということだろうと思っております。

 したがいまして、きちっとした検査によって、もちろん施工上の瑕疵等もあるわけですから、きちっとそうした中間検査等も含めまして、検査を十分やって排除していくということだろうと思います。

 それから一点、故意、重過失の点でございますけれども、これに関しましても、建築基準法あるいは建築士法等の改革によりまして、それ以前のような状況は今後発生しないのではないかというふうに思っております。

 したがいまして、こうした確認作業あるいは検査の充実が、この保険のシステムを実効あるものとして、かつ継続性のあるものとして保っていくためには極めて必要であるというふうに考えております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 それで、実は保険でもう一点お伺いをしたいのが、今回の場合も、いまだに耐震性の足りない建物に住み続けざるを得ない方が多数いらっしゃっているわけでございまして、迅速さというものもある程度問題になろうかと思うんですけれども、検査はもちろんきちんとやっている前提、しかしながらモラルハザードが起こったという場合に、果たして迅速な保険料の支払いというのが可能なのかどうなのか。

 また、それが紛争に当然つながる、裁判につながることもあろうかと思うんですけれども、その場合の制度設計についてはいかにお考えかということをお教えいただきたいと思います。

吉田参考人 私ども損保業界としましては、全体のシステムの中で補完的な役割を果たしていくということでございまして、基本的な保険法人のいわゆる補償内容等、こういったものに関しましては、今のところ関与はできないという状況でございます。

 それが具体的に設計されまして、その部分、いわゆる再保険という形で私どもがお引き受けするということになろうかと思いますけれども、そうした基本的な部分は、これから保険法人の立場として設計していただくことになるというふうに思います。

 ただ、おっしゃるとおり、紛争等も出てくるだろうということでございまして、これは、専門家あるいは第三者の紛争処理機関等、この辺をきちっと制度上組み込んでいただくということによって、迅速な保険金の支払いも可能になってくるというふうに考えております。

 また、重大な過失かあるいは故意か、その辺で紛争等の可能性があるとの指摘もございますが、今のところ、いわゆる保険法人が特に故意、重過失を排除するような引き受けを行わないということであれば、そのあたりの紛争はなくなる。その後、再保険を出す、あるいは重過失、故意に関しましてはいわゆる基金等を使っててん補するというお話になるんだと思いますけれども、その辺の詳細な設計は、今その設計の段階にあるというふうに了解をしております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 今、紛争それから迅速さというお話が出たんですけれども、今の話で、実際の住宅紛争の処理の現場というものがこの保険ができた場合にどう変わっていくのか、果たして本当に迅速な支払いができるのかという、制度設計をする場合の注意点を金子参考人にお伺いできればと思うんですけれども、いかがなものでございましょうか。

金子参考人 それがこれからの一番の課題でございまして、事故が起きたときの査定基準、自動車事故の場合にはもうほぼ完成してでき上がっているわけですね。この程度の事故で傷害、死亡であったら幾ら出すというのは決まっているわけでございますが、住宅の場合には、まだそれだけのものが、経験が蓄積されていない、判例も十分できているわけではないということで、これからその査定基準あるいは紛争が起きたときの紛争処理基準、こういう欠陥があった場合にはどれだけの業者の責任を認めてお金を払うか、それについてこれからつくっていこうということで、法律施行までまだ一年ぐらいあると思いますので、詰めていく予定でございます。

 ただ、評価住宅が二割程度普及してきたということを先ほど言いましたけれども、そこでの経験がございますから、技術関連資料集等々も住宅支援センターの方でつくっていただいて、それを参考にしながらやっていっていますので、土台はできていますので、そんなに難しいことじゃない。あるいは、やりながら運用を変えていくということで、次第にいいものができていくんじゃないかというふうに我々は期待しているし、努力するつもりでございます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 同じ話を和田参考人にもお伺いをしたいと思うんです。

 業者の側から見て、先ほどもありましたけれども、もちろんきちんとしたものをつくるというのが大前提ですけれども、逆に、保険があるということでモラルハザードにもつながりかねぬというところで、業界、いわゆる業者の側にとっての保険のあり方というものはどういうものじゃなきゃならないのかというのがまず大前提としてあろうかと思うんです。それに対する御意見をお伺いしたいと思います。

和田参考人 私が感じますのに、保険というのは、そもそも何か紛争が起きたときにそういうものがあればそれはいいんですけれども、根本問題は、やはり技術者がそういうものに対して、逆に、今度は法律がいろいろ規制をしていただきましたが、こういうものがきちっと備わることによって、それをきちっと守ることによっていいものができるはずですから、そこら辺のところを追求することがやはり一番大事なことじゃないかと我々は思っているわけです。

 それで、保険というのは、要するにトラブルが起こってしまったときの解決だけが主体になっています。我々も、業界としては戸建て住宅が大半を占めているわけです。戸建て住宅とマンションとは少し性格が違ってくると思うんです、マンションがイコールみたいな話で今お話しされておりますけれども。だから、そういう面からすると、保険制度というのは、私は、きちっと厳格にやっていけば、モラルハザードが起こらないようなことを何かきちっと決めていただきますと、うまく運用できるんじゃないかなと思うんです。

 先ほども申し上げましたように、技術者が何でもいいから保険でということにならないように、保険の方が安くつくようなケースがあるんです。自前でいろいろ解決するよりも保険の方が安くつく方法があるわけです。というのは、やはりお客さんの無理難題も聞かなきゃいけない場合があるんです。だから、逆にそういうことをもうちょっと各事業者に対して指導を徹底していくと、これは法律がきちっとなりましたから、そういうことを補完できるんじゃないかなと思うんです。

薗浦委員 ありがとうございました。

 とにかくきちんとしたものができればというところが最大の課題かと思うんですけれども、今回のこの法案で、建築基準法が改正をされ、建築士法が改正をされ、いわゆる建築行政それから建築士制度それから消費者保護という三つの観点からの一連の法改正がこれで終わるわけなんですけれども、役所の審議会の方でかかわってこられた村上先生にこれはぜひお伺いをしたいんです。

 一連のこの三法に対する評価と、もう一つは、果たしてこれで十分なんですかという部分がまだまだありましょうし、現実、いまだ苦しんでいる人もいらっしゃる、その今後の課題という点も含めて、一連の三法の改正に対する評価それから今後の課題、この二点をお聞かせ願えればと思います。

村上参考人 お答えします。

 基準法等の改正、それから士法の改正、それで今回の瑕疵担保責任の法律、この三者で、私は、相当部分、いわゆる事故の再発防止とそれから被害者救済は、その対応が完成したというふうに考えております。

 それから、一つやはり問題は、そういう不良業者にすきを与えないことでございます、そういう二つの法律、基準法を厳しくするとか士法を改正するとかいうことで。もう一つは、設計段階で住宅性能表示制度等を全部受けてもらう、そういうような制度を併用すればますますすきがなくなる、そう思います。

 それから、最後でございますけれども、やはり規制改革と申しますのは、先ほども申しましたけれども、最終的に負担はユーザーに行くわけでございますから、そういう厳格化は守りながらも、なるべくユーザーの負担が少ないような簡素化を考えていただきたい。何が何でもがんじがらめにすると、確かに事故は一切防げるかもしれないけれども、それに見合う社会的コストが高くなり過ぎる、そういうことにならないように御配慮願いたいと思います。

薗浦委員 大変ありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。

塩谷委員長 穀田恵二君。

穀田委員 穀田恵二です。

 四人の参考人には貴重な御意見を本当にありがとうございました。法の今後も含めて、我々がどういう点を注意すべきかということも含めて御示唆をいただきまして、ありがとうございます。

 では、座らせていただいて質問させていただきます。

 まず、村上周三参考人と金子光邦参考人にお尋ねします。

 耐震偽装の被害者は、深刻な状況に追い込まれています。言うまでもなく、二重ローンの負担であります。瑕疵担保責任の制度をつくろうというとき、建物を担保に住宅ローンを組んだ金融機関にも一枚かんでもらおうというのは、私なんかにすれば非常に当然だと思うんですが、その点についてお聞きしたい。

 住宅瑕疵担保責任研究会報告書では、銀行保証について、結論的に、履行確保措置の選択肢について慎重な検討が必要と考えられるとしています。最終報告を出す上でどんな検討をされたのか、これは村上周三参考人にお聞きしたいと思います。

 そして、金子参考人には、消費者保護に対する責任という観点から、可能性はこれはないのか、また、銀行も一定のリスクを負うべきじゃないのかと思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。

村上参考人 金融機関がどこまで責任を持つかということは、これはいろいろな議論がございますが、審議会では、金融機関の責任を問うかどうか、そういうことは一切審議がなかったと思います。

 それで、一般の金融商品で、取引の後に、それは金融機関とその借り主との合意に基づくものでございまして、その先の責任を金融機関に問えるかどうか、私、そういう法律的な部分は余り詳しくございませんけれども、少なくとも私が今まで関係方面から聞いているところでは、それは難しいのではないか、そういうふうに聞いております。

金子参考人 私もそういう考え方があるということは十分承知しておりますし、そういう制度として、外国には専門用語でノンリコースローンというんですか、担保の評価の限りで責任を果たすというのもあるようですけれども、日本ではそれは採用されていない、契約段階でそういうふうになっていないわけですね。

 だから、事故が起きてから銀行も責任を負えと。銀行とすれば、私、別に銀行の代弁をするわけじゃないですけれども、貸し主としては、住宅融資をするについては、それなりの検査、建築確認はもちろんのこと、あるいは住宅保証制度をとっているかというような行政に対する信頼というか、それができている建物だという前提で、自分で検査しているんじゃないんだと思うんです。

 ですので、何とかその辺をできる考え方はないのかということを考えないわけじゃないんですが、現時点では、現制度上は難しいというふうに残念ですが言わざるを得ない。

穀田委員 では、和田勇参考人と吉田浩二参考人にお尋ねします。

 村上参考人も、供託問題を初めとした形態をとったのは多様な供給形態に対応しているということを言うておりましたけれども、瑕疵担保責任履行のための資力確保の義務づけの際、資力確保の方法として供託がなぜ入れられたのかという点をお二人にお聞きしたいと思うんです。

 その上で、和田さんにはもう一点。

 参議院でも議論がこれはありまして、先ほど、努力している事業者と怠っている事業者との差別といいますか区別といいますか、そんなことを言うておりましたけれども、中小の工務店が、地域に密着して、家族も友人も兄弟も住んでいる、そういう努力をしているということを言うておりました。私は、その意味で、中小業者への優遇システムというのはどう考えるのかということについてお聞きしたいと思います。

 吉田浩二さんにはもう二点。

 供託という企業にとって利益を生まないやり方について、株主に対してどのような説明が必要と考えるか。

 それからもう一点は、供託した場合でも、住宅保証基金を支えるための拠出金の負担をすべきではないかという考えもありますが、その辺はいかがでございましょうか。

和田参考人 今先生のお話の、供託をどうして採用したかというお話でございますけれども、これは、どちらかというと、今まで保険とかそういうような制度がありましたけれども、今回の事件で、倒産してしまった場合、どこにも言っていくところがないから、それをやはり担保するのはそういうのがいいんじゃないかなと思って、我々としても国交省さんの意見には賛成をしているわけでございます。

 それから、中小の優良な工務店、これはやはり地元で何百年という仕事をやっておられる非常に優秀な工務店がたくさんいらっしゃいますから、先ほど私も意見陳述で申し上げましたけれども、優良なものをつくっているところには何か優遇措置をというのは、これは大小とか関係なしに、いいものをつくっている人にはやはりそういう優遇をやっていただくのが正しいんじゃないかなと思います。だから、それは大だとか中だとかあるいは小だとか、そんなのは関係ないというふうに思います。

吉田参考人 なぜ供託が採用されたかということですが、もちろん保険以外に資力を確保する手段というのはあるわけで、供託あるいは信託等も検討されたという事実がございます。

 その中で、最終、保険と供託ということになったわけでございますが、私どもの立場としては、保険ありきというのはやはり状況としておかしいのではないか、いわゆる建設業者さんあるいは販売者の方も、いろいろな選択肢がある中で同様の資力確保ができれば、それはそれで選択肢の多様化という観点からよいのではないかという主張もしてきたわけでございます。そういう意味でいえば、一応選択肢がふえたということは、我々の主張を入れていただいたというふうに感謝をしているところでございます。

 それから、供託は利益を生まない、これは現金を想定されていらっしゃるのかもしれませんが、そのほかにも債券等も差し入れられるということですから、そういう意味では全く利益を生まないということではなかろうというふうに思っておりますし、また、保険との選択ということでございますから、そのどちらかを選んだということについてその企業が合理性を主張すれば、株主から御非難をいただくということはないのではないかなというふうに思っております。

 それから、拠出金を供託を選んだ方もするべきではないかというお話でございますが、私どもとしては、その関係者ではございませんので、ちょっと妥当なのかどうか、その辺についての判断は控えさせていただきたいと思います。

穀田委員 では、金子参考人に、今の最後の供託した場合でもというのを含めて、ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、それが一点。

 あわせて、この間、例えば生保や損保において、保険金の不払いという事件が随分社会問題になりました。仮に、住宅瑕疵担保責任保険法人の払い渋りだとか、それから瑕疵の過小見積もりなどが生じる心配はないんだろうか。その意味で、吉田さんも先ほど言っておられましたけれども、保険法人の監視だとかそういったものをどう考えたらいいのかということを二つ目に聞きたいと思います。

金子参考人 供託の点ですけれども、要は、瑕疵担保責任の履行確保ということですね。ですから、一戸つくるごとに二千万円なんかとても供託することはできないよという会社は掛け捨ての保険を選んでもらう。うちは、そんな掛け捨ての保険なんかしなくたって十分お金があるんだよ、二千万でも、極端に言えば三千万でも十分、十年間、用意してあるよということで、私が聞いたのは、当初資産基準方式とかという名前で呼ばれていた、供託をしない、うちの会社の財務内容を見てください、別に供託しなくたって十分対応できるだけの資力は持っていますからという方式も考えられたというふうに聞いています。

 その三番目の方式がなくなったのは、本当に資産基準に適合する会社なのかどうか、これは財務内容を調べるというのは大変です。それでそれが消えたということを聞いていますので、それで供託になったわけですが、供託した会社、業者からすれば、うちは十分あるんだから何で、故意、重過失の場合の資金手当てのことを言っているんですよね、そこまで出さなくちゃならないのかと。それは、供託は全部、故意、重過失だろうと何だろうと責任を持つんだから、保険制度の方のお金を出す理由はないじゃないかということで、まあ、取ってもいいと思いますけれども、理論的な、合理的な根拠はちょっと薄いんじゃないかなというふうに言わざるを得ません。

 あと、保険法人の監督の点については、私の方は、もう国交省が厳格な、法律にも要件がいろいろ決まっている、公平公正、業界の人が偏っちゃいけないというようなことを聞いておりますので、払い渋り、今問題になっているようなことについては十分監督してくれる、たえられる第三者機関が指定されるものと考えております。

穀田委員 では、あと二つ、金子参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほど来、紛争処理機関での処理問題についてもるるありました。私も、各地の弁護士会に御了承をいただいたり、御協力いただかなくちゃならぬという点でも貴重な御意見だと思うんですが、今回の法案を受けて当然多くなるでありましょうし、紛争処理機関での紛争処理基準を初め、先ほど、研修やさらには支援センターの援助、財政支援などありましたけれども、私もとても大事だと思うんですね。したがって、業務体制などについての見直しが当然求められると思います。論文でも人的、物的な問題についていろいろ金子参考人は述べておられます。その辺を詳述していただければと思います。

 二つ目は、私は別に性善説をとっているわけでもないし、性悪説をとっているわけでもないんですが、実は、自助努力というお話が最初に和田さんからもありましたし、まともなものをつくればということを言うんですけれども、例えば、アーキテクチュアなどの報告や資料によりますと、コストダウンによるさまざまな圧力というのが建築士に随分加わっているということで、自分もそういうことがあったという方がそんなに少なくないんですね。

 私は、そういう意味で、建築基準法、建築士法と改正してきたわけですけれども、それらとの関係で、今、法が改めて三つ出されている、完成する一つの体系をつくったもとで、それぞれについて必要な改善やその他要望なり、私どもに示唆があればその点もお伺いしたいと思っています。

金子参考人 まず、弁護士会の住宅紛争審査会でございますけれども、先ほども申し上げましたように、十二年から発足してまだ百件足らずの事件しか起きていない。したがって、言い方は悪いかもしれませんが、地方の単位会ではまだ一、二件、全然ないという単位会が半分ございます。

 だから、いつ来るかわからない、お店は開いていつでも受けるようにはしてあるけれどもということでのんきに構えていたかと思うんですが、新法が施行されると、年間千件、二千件というぐらい起きるだろうというと、もう日常的に、どの弁護士会、五十二単位弁護士会すべてが受け入れられるようにしておかなくちゃいけないということですね。

 そうすると、事務局も審査会場もそれから紛争処理委員もそれだけの人数を確保しなくちゃならない、確保するだけじゃなくて教育しておかなきゃいけない、建築士さんにも頭を下げてお願いしなくちゃならないということで、これから大変な作業が始まるんだろうと思います。それについては住宅支援センターがバックアップしてくださると。

 品確法の評価住宅の紛争処理を引き受けるについては、条件と言うと言い過ぎかもしれませんが、司法の一翼を担う弁護士会がやってもらうのが一番いいんだということで引き受けた経緯がございますので、私たちもその期待にたがわないように最大限の努力をしていくつもりで、今、これから準備に入っているところでございます。

 もう一つは何でしたか。

穀田委員 耐震偽装事件を踏まえて、建築基準法が改正されたわけですね。そしてまた建築士法がされている。今度は瑕疵担保ということで、三つで全体を網羅するというシステムになっているわけですね。

 ただ、私どもは、さっき言いましたように、建築士法その他の改正に当たっても、性悪説、性善説、どっちをとっているわけじゃないんだけれども、実態は大変なことになっている、コストダウンに基づいてやられている実態が結構あると。それらを踏まえて、私ども、問題提起をさまざましました。

 この三つの法律を通して見て全体像が浮かび上がってくる中で、十分、不十分、いろいろあると思うんですね。既に二つはもう執行されているわけですから、それらを踏まえて、先生がいろいろな活動をされてきた紛争処理の問題を初めとして、そういう角度から見た場合、今改めて問題提起する必要がどんな点がありますかということです。

金子参考人 わかりました。

 この三法によって、先ほど来村上先生もおっしゃっていますように、かなり改善されて、国民の住宅に対する不安が払拭されたというふうに理解いたします。ですから、ここまで来るのにもっと早くできればよかったなというふうにも思うんですけれども、一つ、こういうふうにも考えているんです。

 建築というのは、国でいえば三権、立法、行政、司法みたいなところがございまして、建築士さんが図面をつくって立法をして、行政がそれを、工務店、メーカーが施工する、それを監視する司法、第三者的な機関として建築士、設計監理をする人がいる、こういうふうにも見られると思うんです。

 今までの一番の問題は、この三権、三つがどうも独立していたんだろうか、独立の機能を果たしていたんだろうか。ちょっと言っちゃ悪いですけれども、建築を頼むと、設計士さんはその同じ請負会社、ゼネコンの設計士さんが図面を引くんですね。設計監理もやるんですね。これじゃ、癒着と言っていいかどうか、言い過ぎかもしれませんが、どうしたって十分な、言いなりになっちゃう。まあ、姉歯がそうだったと思いますが、ゼネコンの言いなりになってああいう図面をかかざるを得なくなった。

 ですので、この三者を独立させる。建築士法の改正でかなり近づいたと思いますけれども、さらに独立的な検査官、アメリカで何かインスペクターとかといって全く業者とは関係のないところ、民間の建築確認機関というのもありましたけれども、必ずしも十分独立していない、機能していないということがございましたので、さらにそういう方向に進むことも考えていただけたらというふうにも思います。

 以上です。

穀田委員 ありがとうございました。

塩谷委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 引き続き、四人の先生方には、本日、貴重なお時間をいただきまして、大変にありがとうございます。

 耐震偽装以来さまざまな法改正を重ねてまいりまして、いよいよ最後の一つ、住宅に関するセーフティーネットとなる保険に関する法律、これに向けての国会の審議が今行われているわけでございますが、引き続き、貴重な御意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。座らせていただきます。

 まず初めに、住団連の和田会長にお伺いをしたいと思います。

 いろいろな法整備をしていく中で、最終的には、大半の人は一生に一度の買い物となる住宅でございますので、自己責任といいますか、買う人もやはり目を養っていって住宅の市場を成熟させていかなければならない、これは私は根本の課題だろうと思っています。しかし一方で、意見陳述の中で金子先生もおっしゃっていただいたように、なかなかやはり住宅、これはいいとか悪いとか、外観以外の基礎だとかはりだとか柱だとか、注文住宅ならまだしも、建ったものを買うなんということになると、普通の人にはほとんど判断ができないんだろう、そういうふうに思います。

 これは冒頭、非常に庶民的なことをお伺いしますけれども、今、住宅一つとっても、広告などもたくさん入る中で、一見同じように見える住宅でも非常に値段が違う。坪単価なんかで売りに出るわけですけれども、その辺、これは住団連会長というお立場もあり、積水ハウスの社長というお立場もありますので、ざっくばらんに、戸建て住宅というものの適正価格といいますか、会長、社長のお考えをぜひともお聞かせいただきたいと思います。

和田参考人 適正価格というのは非常に難しいのでございますけれども、私が考えまするに、ちょっとこれは住団連という立場じゃなくて積水ハウスの立場で言わせていただきますと、我々一番やかましく言っているのは、いわゆるスケルトンの部分、骨組みであって、基礎であって、外壁とか、そういうスケルトンの部分を大事にするということがやはり非常に大事です。

 やはり地震の非常に多い国ですから、地震というものに対して非常に注意してそういうものをつくらないと、これは、今おっしゃるように、そういう地震対策を何もしないような家と、それからそういう設備、対策をした家と、外から見たらわかりませんね。だから、逆にそれはやはり生産者の良心によってやるものではないかなというように思いますし、そういうものがただ広告だけでうまく表現してごまかされるようなことになってくるとやはり非常に危険です。

 特に、やはり私は、逆にこれからの家というのは、今までのように二十六年とか三十年で壊すんじゃなくて、長期に住む家ということになると、今先生のおっしゃるように、適正な価格というのは、余り安いものをつくると非常に危険だというふうに思いますね。ある程度金額的なものを出していただいた家の方がやはり将来的にわたって、三十年で壊される家と五十年で壊される家、逆に坪単価を計算すると、やはりどうしても五十年の方が高くなりますし、そういうところを考えると、幾らが適正な価格というのは、中の仕様にもよりますし、非常に難しい。

 だから、一番大事なことは、スケルトン部分にそういうようなことで強化していくのが、国交省さんあたりも相当そういう指導をされていますから、そういうことを強化していくことが住宅のポイントだというふうに思います。

伊藤(渉)委員 なかなか難しいことを聞きまして申しわけございません。本当はざっくばらんに、大体私が考えるところ坪五十万ですなとか、そういう答えを期待したんですが、なかなかやはりそうは言っていただけないなと思いました。ありがとうございます。

 阪神大震災、平成七年ですか、あのときに私は大阪で仕事をしておりまして、当時たくさんの住宅が全壊、半壊する中で、積水ハウスが実は倒れなかったというところで非常にネームバリューが上がったという印象を持っているわけなんです。一方で、世間一般の感覚ですけれども、やはり若干お値段は張るかなというような印象を実は持っていて、いいものはやはりそれなりの値段だし、例えば値段が落ちてくれば、外観がそれなりであっても、やはりどこか、それは性能を含めて、いわば目に見えないところで若干コストダウンを図らざるを得ないというのが一般的な常識なのではないかなと私は考えております。

 その上で、さらに、価格以外という意味でもう一度これは和田会長と村上先生にぜひお聞きしてみたいんですが、住宅を買う上で、価格はそれぞれ各会社の取り組みというものもあるので一概には言えないということでしたけれども、では、ほかに目に見えるものとして、これだけ情報開示が進んできている世の中で、住宅を買うという消費者の立場からこういった点はぜひともやはり確認をしていきたい、市場を成熟させていくという観点から、アドバイスにも似た御意見をお伺いできればと思います。

和田参考人 今のお話で、まず、これから将来的に、国交省さんの品確法の性能表示というのをどんどん普及させていくのがやはり非常に大事なことだと思います。それから、中古になったときでも、それをきちっととったものが中古になった場合は、いわゆる家歴みたいなのがわかるわけですね。そういうものをやはりきちっとすることが今後の良質なストックを残す大きなポイントになるんじゃないかと思いますが、私は、みんなにわかりやすいのは品確法による性能表示だというふうに思っております。

村上参考人 お答えします。

 先ほどから問題になっていますことは、住宅の性能がなかなか素人には外から見て見えない、それをどう対応するかということの問題ではないかと思います。

 それで、今の和田参考人の御発言とも重複しますけれども、これは、第三者の専門家が性能を評価する、そういうシステムをもっと拡充すべきだ。今の性能表示制度というものはその一つでございます。そのほかにも、例えばCASBEEというような制度が今準備されつつございまして、そういういわゆる専門的には性能の可視化、傷じゃなくて、性能の見える化ということを設計段階でよく消費者に提供できるようなシステムを整備することが、先ほどからの三つ、基準法の改正と士法の改正とそれから被害者救済、その次に来るべきものだろうと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 続いて、今回、保険制度に関する法律ということで、住宅を供給する数多くの企業、やはりその大半は中小企業、町の工務店であったりということなんだろうと思います。そうしますと、ここまでも議論がありましたけれども、業者にとっても負担になることは間違いありません。そういう意味で、この保険料あるいは供託金というものが最終的には購入価格に上乗せをされてくるということも、私個人としては、これは許容せざるを得ないんだろうと考えておりますけれども、この点について、また引き続き和田会長と村上先生にお伺いをいたします。

和田参考人 今、コストにそれがはね返ってこないかというお話でございますね。そういうことは、これは各企業のやはり経営者としての判断ですから、住団連の会長という立場でいいますと、一概にこれは言えないというように思います。ただ、積水ハウスの社長という立場でいいますと、私はなるべく吸収していきたいなと思っております。

村上参考人 基本的に、不良建築が少なくなれば、そのための保険とか供託にかかる支出というのは限りなく減ってくるわけでございます。ですから、いかにして不良建築を出さないか、建築の安全、安心を高めるか、そういうシステムをセットで進めていけば、それほど消費者の負担にならないような制度設計をつくることが可能だと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 細かいことを幾つも聞いて恐縮なんですが、もう一度和田会長にお伺いをいたします。

 今回、供託という方法と保険という方法があり、この選択は各法人に任されるわけですけれども、各法人、どういった判断基準で双方を選択されていくのかなという、住宅を供給する側の考え方、発想というものをぜひとも理解をしていきたいと思いますので、その点について、これもやはり会長というか積水ハウスの社長というか、どちらからでも結構でございますので、考え方を少しお伺いしたいと思います。

和田参考人 それでは、二方の考え方で申し上げますけれども、いわゆる保険と供託というのはちょっと性格が違うと思うんですね。

 供託というのは、要するに、会社が倒産してしまったときに資力がなくなるから、それを供託しましょうと。供託するときには、基本的にはやはり自己の、生産者の自助努力というものが一番のポイントなんです。こういうことをやった上で、それでなおかつ不幸にして倒産した場合は供託をとるということですから。だから、本当は私は、どこの事業者もそういう供託で問題が起こらないような仕組みをつくってもらうのが一番望ましいことだというふうに思いますけれども、そこまでちょっと手が回らないよというようなところはこの保険制度を採用するというふうに思います。

 基本的にはこれは、どちらを採用するかというのは、大企業とか小企業とかそんなのは関係ないと思うんです。これは経営者の判断によるものだというふうに思っておりますので、業界としては、これは自分たちのそういう意思で。

 だけれども、基本的にはやはり、私は何回も申し上げるように、倫理憲章でもうたっているように、やはり事業者の責任というものをもっと明確にした上でどっちを選ぶかということにしないと、安易に保険だけに行ってしまうというのは非常に危険だというふうに思うんです。それでモラルハザードということを申し上げたんです。

 だから、そういうことで、基本的には判断基準というのは極めて難しいと思いますし、私どもの会社としてもまだ決めておりません。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 では続いて、本日の金子先生の意見陳述の中で、今回の保険の限度額といいますか二千万円、上限の下限がたしか二千万円以上だと私は理解しておりますけれども、そのお話の中で、最終的には、建物を建てるまでの間に保険会社の方で二回ないし三回検査をしながら、そもそもそういった故意の重過失が生じるような住宅が建たないようにするというようなことをおっしゃっていただいたと思います。

 金子先生、済みません、これは村上先生と吉田理事に聞きますので。恐縮です。

 そういったお話を受けた上で、建築基準法から建築士法、この一連の改正の中で、まず建築基準法では、いわゆる第三者機関によるチェックということでピアチェックということも施してきました。今回、この保険制度に当たっては、保険会社が住宅供給者の程度をチェックするといいますか建物をチェックするということで、保険会社がやはり独自でそういった検査もするということになるんだろうと思います。

 そもそも一番当初の議論として、そうした構造ですとか、そういうことが本当にわかっている建築士の方がまだまだ人数が足りないんだというような議論もここまでされてきたわけで、この検査はどうやってやるんだ、だれがやるんだというところが実はあるんじゃないかと私は考えています。

 この点について、村上先生と保険協会の吉田理事にお伺いをしたいと思います。

村上参考人 お答えします。

 建築基準法でやります検査と今度の保険でやる検査とは内容が違うと思います。特に、保険の方は財産保全とかそういう観点からなされるべきものだと思っております。

 ただ、そうは申しましても、何度も検査をするじゃないかという印象は確かにあるわけでございまして、法律上分かれておりますけれども、私、実際は、例えば現在でも住宅性能表示制度等でそのチェック、検査をしておりますけれども、一つの団体が重複してやることは可能ではないか、それは、財産保全の観点とかあるいは基準法の観点とか、そういう形で事務の簡素化を図ることが必要ではないか、そういうふうに思います。目的は違うんだろうと思います、同じ検査をやりましても。

吉田参考人 私どもの業界では、かねてより主張をしておりました。検査を厳格化して、悪いものが混入しないように常にチェックする、入り口の部分あるいは中間検査あるいは完工検査等々を厳格化してくる、これは非常に必要なことであるというふうに理解をしておりますし、そう主張をしてきたわけでございます。

 それから、保険法人の検査、これは、保険の内容といいますか、補償の内容がどういう形に決まっていくかということにもかかわってきますけれども、いわゆる財産保全上の検査、もう一つ、詳細な検査といいますか、そういったものも含まれるということになってくれば、それはそれで機能するというふうに理解をしております。

 また、個別の検査ということで、施工上の瑕疵といいますか、これも、発見する機会、あるいは発見した場合には指導する機会、是正する機会、こういったものがふえてくるということは、最終的に見れば、消費者が安心して建物を買えるというような状況になるのではないかというふうに思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 次は、金子先生にお伺いをいたします。

 意見陳述の中で、故意、重過失に対する救済基金のお話をしていただいていたと思います。それに関連するお話というか、和田会長からも、やはり当然、こういった重過失、故意の重過失なんということがあれば、それを行った法人、ここにまず責任追及をするのが当然の論理だと思います。その上で、消費者を保護するという観点から、最終的なネットワークとして保険あるいは供託金というものがあると思うんです。

 これは今回のこの法律から少し外れていってしまうことを聞くのかもしれませんが、日本の法体系で、例えば、ある法人がこういった重過失を仮に故意にやったとすれば、私は、例えばその法人の社長なり、要するに経営をつかさどっていた方については、個人資産も含めてやはりその過失を追及するというぐらいのものがあってもいいんじゃないかと思うんです。

 そうなっていればそうなっていますということなんですが、その辺、法律の体系というのは今はどうなっているのか。あくまで法人の責任で終わるのか、その法人の経営を任されていた個人にまで追及が及ぶものなのかどうか、ちょっと教えていただければと思います。

金子参考人 難しい質問なんですが、常識的には、法律の体系というのは、個人、自然人と、法人、会社というのは別の責任主体ということになっておりますから、法人の責任が直ちに社長、役員に及ぶということはないことだろうと思うんですね。

 しかし、株主代表訴訟なんというふうにございますように、会社の経営において不適切な故意、重過失があったというようなことであれば、会社の代表者責任を負うということも十分あり得るだろうと思います。

伊藤(渉)委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 時間が参りましたので、以上で私の質問を終わります。

塩谷委員長 下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、お忙しい時間に、貴重な御参考の意見ということで御参集いただきまして、本当にありがとうございました。

 ちょっと恐縮でございますが、座らせていただいて、御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 私も、実を申しますと、先ほど金子先生からあったように、この一連の事件に関連して、現場を見たり、そして、今までやってきた法改正の部分の問題点とか、それから相変わらずいろいろな方々がまだ苦しんでおられる状態を、つい先週も、現場の方々、そして建具をやっていたり、建築士の方々を含めた御意見を参集させていただきまして、きょう、この時間をいただいた範囲内でいろいろ御質問させていただきたいというふうに思っております。

 そこで、幾つかかぶる点はあると思うんですが、皆さんにまずお聞きしたいのは、今回の法案でこの保険制度が入ってきて、やはり一番は、保険があることによって、保険に依存して、そして劣悪な住宅がつくられるおそれがあるというところがまず大きな問題点だと私は思います。

 そういう意味では、一連の国交省さんの御努力、改正によって、一定の高さ以上の建築物の構造計算適合性判定の義務づけがあったり、それから一級建築士による構造設計の法適合チェックの義務づけがあったり、三階建て以上の共同住宅の中間検査の義務づけ等々がありますけれども、確かに国交省がおっしゃるとおり、瑕疵の発生率は抑えられるとは私は思います。ただ、一方で、保険制度による功罪も大分出てくるような気もいたしております。

 そこで、この部分は、実を言うと、金子先生とかはもう専門でございますが、きょうは、せっかくですから、和田会長以下皆さんから、それぞれ一人一人、この功罪についてどういうふうにお考えなのかをお聞きしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

和田参考人 先ほどから何回も申し上げておりますように、保険制度というのは、やはりモラルハザードをいかにきちっとするかということが根本問題だというふうに思っております。だから、そういう制度をきちっと、まだこれからいろいろ詰めていただくわけでございますけれども、その辺のことは絶対起こらないような制度にしないと、安易に保険に行くというようなことは絶対ないようにしないと、何のために保険制度をつくったかということになりますから、私は、やはりその制度で監視する、きちっとした制度にすべきじゃないかなというふうに思っております。

金子参考人 保険制度は、そういう意味で必要悪ですね。ない方がいいんだけれども、どうしても、すべての人のモラルに頼るわけにいかないので、つくっていかなくちゃならない。

 ただ、それが、そこに頼って、保険があるからいいやということにならないような、インセンティブというのですか、ほかの参考人もそれぞれ申しておりましたけれども、いい住宅を供給して何年か無事故だったときにはどんどんどんどん保険料率を下げていく。それによって、それはみんなにさらに還元されるわけでございますので、そういうような制度的な仕組みというのを一緒につくっておくことが大事かなというふうに思います。

村上参考人 昨年からの社会的状況を考えますと、保険制度が必要か必要でないかと申しますと、やはり僕は、なしには済まされないと思います。

 それから、先ほどからの和田参考人、金子参考人と同様になりますけれども、これは運用の問題である。これは、努力した業者が報われるとともに、不良業者を排除するような仕組みをつくるべきだ。例えば、海外の事例で聞きましたけれども、建築士がトラブルを起こすと非常に保険金が上がって、事実上営業を続けられなくなる、そういう事例も聞いておりまして、やはり優良業者の支援と不良業者の排除、両方をセットにした運用のシステムをつくるべきであると思います。

吉田参考人 最終的には、被害者が出てくればこれを救済しなきゃいかぬという問題がございまして、その意味で、保険あるいは供託、こういったものが有効に働くということが期待されるわけです。それ以前に、そういった劣悪な建物をつくらないということに関しては、それはいろいろな検査を強化することによりまして相当防げるのではないかというふうに考えております。

 あと、優良な業者さんには安い保険料率、インセンティブというか、あるいはモチベーション、これをどうやってシステムの中につくっていくかに関しては、今後の検討によるというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 明日、大臣に向け、また国交省さんに向けて、直接、今いただいたいろいろな御意見をぶつけていきたいと思います。大変参考になりました。やはりインセンティブを持たないといけないということです。

 ただ、五年、十年やっていたすばらしい業者さんをどうやって選定していくかというのが問題だと思います。どこまでを、十年前きちっとやっていたかという判断は、鉄筋のコンクリートの中に入っている話ですし、何か災害がなければその判断はなかなかつきにくいというふうに思います。

 その辺、例えば過去の部分の実績等というものをどういうふうに、簡単に言えば、業者御自身の申告ベースで見ていくのか。たまたま、では水漏れがこの範囲内であったらいいぞとか、その辺の判断基準は、何かアドバイスがあれば吉田常務理事からいただければと思います。

吉田参考人 具体的な料率がどういうふうになるか、あるいは割引、割り増しがどういう基準で設定されるかということだろうと思いますけれども、確かにいろいろなデータが必要で、合理的に判断してそれはリスク的によろしいということであれば、一般的に認められる手法ということで、それは判断の一つの資料になると思います。もちろん客観的に示されるデータがあれば申し分ないわけでございますけれども、あるいは業者の方から今の申告ベースといいますか、これで判断されるということも全くないわけではないと思います。

 ただ、そういったいろいろな、アンダーライティング上の仕組みということになりますけれども、保険法人がどういうような形で保険引き受けを行っていくのか、その辺の細目の詰めによるところが多いというふうに考えております。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

下条委員 ありがとうございます。

 こういう言い方はすごく行政府には失礼なんですが、私も民間に二十年いましたので、例えば水が入っている分しか出すことはできないわけですね。例えば補てんをする部分が、保険の部分が追いつかなくなって基金等々になった場合は、ほかから引っ張ってきたりというふうには一般の民間はなかなかできない。そういう意味では、今回の法案については、ぜひ民間の中で損保の皆さんの意見を十分尊重しながら法案を進めていければというふうに思っております。貴重な意見でございました。ありがとうございました。

 もう一つ、十年で担保期間を切っているというのがあるんですが、これまた難しくて、私もヒューザー、姉歯さんの一連の物件を見に行きまして、まさに玄関口はつくって一カ月ぐらいでひび割れが入っていたりしますけれども、では、十年相当期間が過ぎてしまえば、逆に言えば、供託の場合は、その十年、お金を出したら戻ってくるということであれば、十年間だけ何とかカバーすればあとバイバイでいいぞというふうな、さっきのモラルの部分もあるんですが、この十年相当というのは、本当に網羅できるのかなという感じも僕はしています。

 それは、あしたが法案の質疑なものですから、きょうここでいろいろ貴重な意見を聞いたものを、僕らの方であした行政府の方々に申請していきたいと思うんですけれども、十年というのはどんな感じかなと思っておりますけれども、和田参考人以下の皆さんにそれぞれ御意見を聞ければというふうに思います。

和田参考人 十年というのは、風雪に何回も耐えて、それから日本ですと台風が来たりとか、地震はそこにあるかどうかわかりませんけれども、非常にそういうものに耐えているので、基本的には、十年過ぎたから十一年目から家が壊れるとか、そんなことは決してないというふうに思いますから、私は、十年もつというのは問題ないんじゃないかなと思います。

 企業としても、十年で仕事をやめてしまうわけじゃないんですよ。次また続けてやっていくものですから、どんどん次の供託金も積んでいかなきゃなりませんから、私は、やはり十年きちっとやれれば、そこで企業がもうやめて、さよならと言って廃業してしまうなら別ですよ、そうでない限り、そんな問題は起こらないと思います。

金子参考人 私もおっしゃるとおりの疑問を持ったわけですけれども、ちょっと文献を調べてみますと、今和田会長がおっしゃったことと重複するかもしれませんが、基本構造部分、先ほどスケルトンという言葉が出ましたけれども、その部分について、十年もった家は、十年大丈夫だった家は、二十年、三十年、長もちするんだよというような考え方が一つあるようでございます。

 今回、十年というのは、この法律の問題以前の、品確法上の問題として、十年というのが民法の特則として定められまして、それを前提に履行確保、保険、供託ということができておりますので、過去の住宅性能保証制度も十年の保証をやっておりますが、そういうところから十年では足りないと。もちろん、任意の制度、任意保険として十年以上の保証を、保険契約を結ぶということは可能なんですけれども、当面はこれでやむを得ないのかな、これで制度の初めとしてはよろしいのかなというのが私の感じでございます。

村上参考人 それにかかる費用とか手間を考えなければ、もっと長い方が理想的でございますけれども、一方で、私有財産に国がどこまでかかわるか、そういう問題があるかと思います。今回の瑕疵の対象は構造耐力と雨漏りでございますけれども、これは十年ぐらいでおおむねわかるのではないかということで、私は十年ぐらいが妥当なところかと思っております。

 もちろん、十年経過した後、雨漏りと構造耐力以外にもいろいろ瑕疵も発生するわけでございますけれども、そういったものは、保険法人等に協力いただいて、それ用の別途の商品設計をしていただければありがたいと思います。

吉田参考人 一応、今回の保険の仕組みというのは、品確法上の場合は十年ということで、それに対応する内容を補足していくんだろうというふうに考えているわけです。

 これが十分なのかどうかということ、足りないのではないか、この辺の判断は、私どもは技術者じゃないのでよくわかりません。そこは専門の方に聞いていただくということがよいのではないかと思います。

下条委員 それぞれの立場で意見をいただきまして、ありがとうございました。

 次に、新しい保険法の中で、保険制度の場合は、保険引き受けの適格性を判断するために、建築に関する専門知識を有する一定の資格者が検査をしていくということだと思いますけれども、今回の法案を含めて、構造的な専門知識を持つ人が完全に必要とされている。建築士法の改正があったり、構造設計一級建築士や建築基準法で創設された構造計算適合性判定機関の判定など、多々出ていらっしゃいますけれども、こういう状況の中で、保険法人の検査員の人材の確保というのが僕は非常に問題になってくると思います。

 つまり、保険法人の検査員がきちっとしていなければ、結局、足りなくなると、新規住宅がおくれたり、また足りなくなれば、言いにくいですけれども、手抜きになったり外郭に任せたり、責任を持たないような形になる可能性も出てくる。

 そこで、人材確保についてどのようなお考えがあるか、村上参考人と吉田参考人にちょっとお聞きしたいというふうに思います。

村上参考人 御指摘のとおりでございまして、私はそれを一番心配しているところでございます。

 これは、既に品確法等で民間の検査機関というのがスタートしております。私は、多分、官がこれをやることはとても無理だから、民の力を拡充して検査制度を整えるという以外に方法はないと考えております。

吉田参考人 現在、検査員が一万人ぐらいいらっしゃるんですか、ちょっとここに資料がないのであれですけれども、要は、今後、保険の引き受けが、今任意で引き受けられている瑕疵担保の保険の何倍になるかということでございます。

 供託と両方あるわけですから、保険を選ばれる業者さんがどれぐらいかということですけれども、少なくとも数倍ということになりますと、確かに検査員が現行で十分なのか、あるいはこれが施行されるときまでに十分育てられるかどうかということでございますけれども、それは国交省の御指導のもとに、検査員がきちっとそろっていくというふうに我々としては期待をさせていただいているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 要は、法律はいいけれども、チェックする部分が抜けていれば、そのままいく可能性があるということです。

 それでは、時間がちょっと迫っていまして、最後にもう一点だけ。

 私はいつも思うんですが、非常にいい法案ができている、それについて、だれが見ても、まあまあいいじゃないかと。ところが、法案をずっと続けていって、建築士の方では基準法改正とかいろいろやって、最終は何が目的になるかというと、建物を建てるということだと僕は思うんですね。私が一貫して言い続けている部分については、やはり現場の監理ということが僕は最終の一番の締めの部分だというふうに認識しております。

 私もこの委員会で、建物の構造体に対する中間検査を複数回実施してはどうかとか、施工段階で統括監理者を決め、そのもとに機能別に、設計、構造、設備の監理者を明確にしたら等々の提案をしてまいりました。つまり、法案はいい、いろいろなシステムをつくったと。実際は、その建物を建てる現場の部分のチェックが抜けていれば、言いにくいけれども、ずっと来て、最後にすぽんと抜けてしまうことになると思うんです。

 ちょっと時間が来てしまいましたので、申しわけございませんが、最後に、現場の工事監理について、四名の参考人の方から御意見をいただければというふうに思います。

和田参考人 今おっしゃるとおり、現場というのは、最後仕上げるものですから、大変大事なことでございますから、これをきちっとやることが大前提だというふうに思います。

金子参考人 私もそのとおりだと思います。私も家を建てた経験があるんですけれども、素人で、もちろん技術的なこと、理論的なことはわかりませんが、毎週日曜日になると現場に足を運んで、図面どおりできているんだろうかというようなチェックもしたような経験がございます。

 もちろん素人ですから限度がありますけれども、もっと慎重な人は専門家を連れていく、第三者の建築士さんなりなんなりを連れていって別の角度から見てもらうとか、そこのところで手抜きがあったら何にもならないわけですから、そこを、中間検査、第三者機関、さらに独立の検査官というようなことを考えないと、この欠陥問題というのは解決しないんじゃないかというふうに思っております。

村上参考人 先生の御指摘のとおりであると思います。

 それで、今回の基準法改正でも中間検査の厳格化というようなことは実施されております。しかしながら、幾ら監理を厳しくしても、結局、頼むところは現場の技術者のモラル、倫理でございます。ですから、僕は、もっと技術者の方のモラルを尊重して、彼らに十分やる気を起こさせるような、そういう仕組みを同時につくるということが必要だろうと思います。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

吉田参考人 現場検査というのがやはり一番重要と私どもも認識しております。

 現在、十分な質、量があるかという点に関しては、私どもとしては、まだわからない。足りないということであれば、きちっとレベルを質、量ともに上げていただく必要はあるというふうに理解しております。

下条委員 どうもありがとうございました。

 時間が参りましたので、きょうの質疑はこれで終わりにしますが、本当に貴重な意見でございまして、もうあと二十四時間後にはまた質疑で、皆さんの貴重な御意見を聞いた上での要請をさせていただきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

塩谷委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中お越しいただきまして、貴重な御意見、ありがとうございます。

 私も、二十分という持ち時間の中で質問させていただきます。座って質問させていただきます。

 まずは、和田参考人に、これは先ほど意見陳述の中で言及もされておりますけれども、私が最後の質疑者でございますので、確認の意味も含めまして質問させていただきます。

 住宅生産団体連合会、住団連、これは主に低層住宅を建設する十団体を中心とする社団法人でございます。正会員であります十団体それから企業は我が国の住宅産業界を代表する団体そして企業であるというふうに考えますが、団体として、今回の構造計算書の偽装問題を全体的にどのようにとらえていらっしゃるのかということ。

 それから、一部の不良不適格な企業それから個人が関与した、今回の偽装事件というのはそういうものでありました。この住団連やその所属会員には直接無関係であるというふうに考えていらっしゃるのか、あるいは、まさにこれは自分たちの問題だというふうに受けとめていらっしゃるのか、そういう反省の中で再発防止と信頼の回復のために努力をされていらっしゃるのか、この点をお聞きしたいというふうに思います。

和田参考人 今回の犠牲になられた方というのは大変気の毒なことでございますので、我々として深く同情するところでございます。

 それから、今、我々の団体の中で、この事件が起こってから、はっきり申し上げて、今まで想像もつかないようなことが起こったわけです、こういうことが起こるということが想定できないような範囲のことで起こりましたので、我々としても、どんなことでも、団体として、やはりもう一度襟を正そうということで、倫理憲章というのをつくりまして、それを徹底している。

 中には、幾らやってもそんな問題が出てくることはありますけれども、やはり徹底的に、大半の人たちは、九九%の人はそんな問題のない善意な人たちなんですよ、そういう人たちがさらに、逆に言うと、もうちょっと襟を正さなきゃいけないなというふうに思ったんじゃないかなというふうに思いますし、我々団体としてもそういう立場で今進めております。

 だから、こういうことが二度と起こらないように、我々としても一生懸命注意してやっていきたいというのが今の感想でございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう一問、和田参考人にお尋ねいたします。

 今回の構造計算書の偽装問題、これを受けて、団体としても反省をし、再発防止に傾注しているということでございますが、建築基準法、そして建築士法、そして今回の特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律、この三段階で大幅な法律の改正、制定というのが行われておるところでございます。

 一方で、これら制度的な対応と並行いたしまして、先ほどおっしゃられたように、住宅業界みずから襟を正して事件の再発防止それから信頼回復に努力していらっしゃるということでございますが、では、具体的にどういう取り組みをされていらっしゃるのか、もう少しお聞きできますでしょうか。

和田参考人 団体としては、こういうことをちゃんとやりましょうということですけれども、それと同時に、逆に、各会社がそういう意識、落とし込みをきちっとやることが最大のポイントじゃないかなというふうに思います。

 それで、今回、建築基準法あるいは建築士法、こういうものはきちっと、今まで以上に厳しくなりました。それと同時に、問題が起こったときの資力を確保する手段が今までなかったわけですね。どちらかというと、ほとんどの会社は自分のところの費用負担で今までそういう問題が起こったら解決しているわけですよ。さらにその分にプラスして保険とかあるいは供託というのは、量をたくさんやっておるところ、私どもの会社で言って申しわけないんですけれども、想定すると、大体十年間で五十億ぐらい積まなきゃいかぬような勘定になるんです、一社だけで。これは、自分のところでやりながら、しかもなおかつ、プラスで積まなきゃいけないことになりますので、だから、逆にみんな本当に厳しく受けとめるというふうに思うんですよ。

 だから、そういうことで、各会社、各生産者が本当の意味で重く受けとめる、大きな負担になるということは、問題を起こしてはいけないなということになると思いますから、私は、これは非常にいい作用になっていくんじゃないかなと思います。

糸川委員 今、非常に多額の金額がかかってくるからということでございましたが、業界の今回のこの法律案の受けとめ方として、これまた和田参考人にお伺いしますが、保険とそれから供託、このどちらを選択するのかなと。業者によって選択が分かれるはずでございますが、分かれるとすれば、どのような理由、要因でこの選択が分かれるというふうにお考えでしょうか。

和田参考人 この二つの問題は、先ほどもちょっと触れましたけれども、要するに、供託と保険をどういうふうに選ぶか、これはちょっと性格が違うと思うんですよ。

 保険というのは、会社が生きているときでもそういう補てんする費用としてやるんですけれども、供託というのは、会社が倒産した場合の資力を確保するためにやるわけですね。だけれども、基本的には、私は何回も申し上げているように、生産事業者がきちっとしたモラルを持ってそういうことをやることが大前提だと思うんですよ。だから、それは、どっちを選ぶかというのは、余りその基準はないというふうに思うんですよ。経営者がどういう考え方を持つかという、その考え方次第だと思うんです。だから、これは、大きな会社が供託を選んで小さい会社が保険を選ぶということは一概に言えないと思うんですよ。

 これは皆さん、どうも誤解されて受けとめていられるようなんですけれども、本当に多額の金を、十年間使えない金を積まなきゃいけないんですよ。だから、これはやはり経営としては大変な負担になりますから、保険でやる場合だってあり得るというふうに思いますから、この選択というのは、私ちょっとここで、自社でもまだ判断しかねておるということでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 私ももしかしたらその勘違いをしている一人なのかもしれませんが、やはり大企業は資金力があるので供託をし、中小の企業は掛け捨て型の保険の方を選択するのかなというふうに考えておりましたが、一概にそうではないということでございましたので、非常に参考になりました。ありがとうございます。

 次に、金子参考人に質問させていただきます。

 金子参考人、これも先ほど言及されておりましたけれども、日弁連において住宅紛争処理機関の検討委員会の委員長、こういう立場でいらっしゃいます。円滑な住宅紛争処理、ひいては良質な住宅の供給促進のために検討を重ねていらっしゃる、このように伺っております。

 そのお立場から、きょうずっとこの質疑を行ってきたわけでございますので、今回のこの法律案について、いろいろな御意見もあったと思うんですが、どのように評価されているのか、改めてお答えいただけますでしょうか。

金子参考人 ちょっとここに資料を持ってきたんですが、阪神・淡路大震災のとき、二十万棟の住宅が倒壊して、六千四百人の死者が出たというふうに報告をされているんですね。しかし、地震によって家屋が即倒壊したのではなくて、新しい建物であっても、手抜き工事、建築基準法の最低基準を守っていなかったことによる倒壊だという調査結果がある。そのほかは火災、これはまた別問題でございますね、火災によって被害を受けた。しかし、住宅金融公庫の融資を受けた公庫住宅あるいは再三話が出ている住宅保証機構に登録された住宅の被害は全くなかったという報告があるんです。

 つまり、十分な、手抜きせずに最低基準を守っていれば建物は壊れない。それだけの制度ができていたのに、それが守られていなかった。それを経験に品確法ができ、今回は、品確法ができてもお金のない人には責任追及できないから履行確保法をするんだということで、ステップを踏んでここまで来たわけですから、私は、これで十分とは言いませんけれども、かなりの程度、今回のような被害はなくなるんじゃないかというふうに、私たちの方で紛争処理機関を開店して用意しておりますけれども、お客さんが来ないように、事件が来ないようになることが理想でございます。

糸川委員 本当に開店休業状態の方が望ましいことであります。

 もう一問、金子参考人にお尋ねいたします。

 供給の対象となる住宅、これは指定紛争処理機関による紛争処理の対象にならないわけでございますね。例えば、指定住宅紛争処理機関には、今回の法律によって、新たな業務に、住宅瑕疵担保責任保険に係る新築住宅の契約に関する紛争のあっせん、それから調停及び仲裁、これが追加されることになっております。そういう中で、供給の対象となる、紛争の対象となる住宅というのは、指定紛争処理機関の紛争処理の対象とならないものがあるわけですね。ありませんか。

金子参考人 強制的に全部つけるわけですから、保険か供託をつけるわけですから、そこで事故が発生すれば、我々の方で引き受ける。

 ただ、これは業者の責任をとっているわけですから、個人的な売買、個人的な請負、それから建設業法でも建設業の許可をとっていない千五百万以下の住宅をつくっている業者、そういうようなところ、あるいは業者間取引という点については、今回これの適用はないというふうに理解しております。

糸川委員 そうしますと、こういう対象とならないものに関しては、弁護士会として何かお考えというのが、救済をしていこうという策を考えていらっしゃるのか。もしくは、もしそういうことは考えていませんよということであるならば、例えば国土交通省に対してどういうような対応というのを期待されていらっしゃるのか、お答えいただけますでしょうか。

金子参考人 対象にならない住宅というのは、今申し上げたような点で非常に数が少ない。それから、これは消費者保護ということでできている法律ですので、業者間取引の売買、請負にまで法律を用意する必要があるのかとかいろいろございますので、今の制度としては、これで初めとしてはいいんじゃないかということで、履行確保をカバーする範囲はカバーできているんじゃないかというふうに理解しております。

糸川委員 ありがとうございます。

 村上参考人にお尋ねさせていただきます。

 今回のこの法律案が成立いたしましたら、施行に向けて、国土交通省、それから住宅業界、消費者、これはそれぞれどういうような準備をして、そして体制整備をしていくべきだというふうにお考えでしょうか。

村上参考人 大枠は大変バランスのとれた法案であると思いますので、先ほどから皆さん申しています、優良業者を支援できるような運用の仕組み、それからモラルハザードをなるべく減らせるような仕組み、それから十年とか、あるいは構造耐力と雨漏り以外の瑕疵に対する民間の商品開発とか、そういう運用の細部について、消費者と業者と行政団体とが協議して細部を詰めるべきであるというふうに考えます。

糸川委員 どうもありがとうございます。

 もうほとんど時間がございませんので、吉田参考人にお尋ねいたします。

 これは吉田参考人も先ほど言及されていると思いますが、吉田参考人は国土交通省が設置いたしました住宅瑕疵担保責任研究会に参加されていらっしゃいます。保険制度に重点を置いた制度設計の検討において損害保険協会のお立場から積極的に議論に参加されていらっしゃるわけでございます。そこでは主にどのような主張をされて、それが今回の法律案の中にどのような形で反映されているのかというのを改めてお答えいただけますでしょうか。

吉田参考人 冒頭の意見陳述でも御説明したとおりでございますけれども、保険ありきというような形での制度設計といいますか、これは十分ではないのではないかということで、各種の検査をいかに強化していくかということを主体に主張させていただいたということで、建築基準法あるいは建築士法等々にそういった内容が織り込まれたというふうに理解をしております。

 それから、私どもとしましては、故意、重過失に関しては、保険でカバーされる事故ではないという立場でございます。これは偶然性というのはございませんので、発生確率等に関しても、私どもそういったデータを持ち得ないわけですから、その部分について幾らの料率を課したらいいか等々に関しても、私どもとしては、今の段階ではできないということで、故意、重過失に関しては保険制度にのせるのは都合が悪いということで、いわゆる基金によるところの共済制度の方がふさわしいのではないかというような主張をさせていただいたわけでございます。そういったものが織り込まれたというふうに理解をしております。

 ただ、これは法案上は明確には出てきていない、いわゆるこれから施行規則等々でその辺は解消されるというふうに伺っております。

糸川委員 ありがとうございました。

 もう時間が参りましたので、終わりますが、先ほど金子参考人がおっしゃられましたように、常に開店休業状態であるのが望ましいわけで、保険の適用がないということが望ましいことだろう。そういうふうにならないように、今後もチェックをしっかりとやっていきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。終わります。

塩谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


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