衆議院

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第5号 平成20年2月27日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十年二月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹本 直一君

   理事 河本 三郎君 理事 西村 康稔君

   理事 西銘恒三郎君 理事 望月 義夫君

   理事 山本 公一君 理事 川内 博史君

   理事 後藤  斎君 理事 高木 陽介君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      遠藤 宣彦君    小里 泰弘君

      大塚 高司君    岡部 英明君

      鍵田忠兵衛君    金子善次郎君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    佐藤  錬君

      柴山 昌彦君    島村 宜伸君

      菅原 一秀君    杉田 元司君

      谷  公一君    徳田  毅君

      長島 忠美君    葉梨 康弘君

      萩生田光一君    林  幹雄君

      原田 憲治君    松本 文明君

      盛山 正仁君    若宮 健嗣君

      石川 知裕君    逢坂 誠二君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      三日月大造君    森本 哲生君

      鷲尾英一郎君    赤羽 一嘉君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    金子善次郎君

   国土交通大臣政務官    谷  公一君

   参考人

   (大分県知事)      広瀬 勝貞君

   参考人

   (都市交通分析モデル開発者)           松下 文洋君

   参考人

   (専修大学商学部教授)  太田 和博君

   参考人

   (奈良自治体問題研究所事務局長)         小井 修一君

   国土交通委員会専門員   亀井 爲幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     佐藤  錬君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     柴山 昌彦君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     萩生田光一君

同日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     稲田 朋美君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     鈴木 淳司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)


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     ――――◇―――――

竹本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、大分県知事広瀬勝貞君、都市交通分析モデル開発者松下文洋君、専修大学商学部教授太田和博君及び奈良自治体問題研究所事務局長小井修一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、広瀬参考人、松下参考人、太田参考人、小井参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いを申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。

 なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際には着席のままで結構でございます。

 それでは、まず広瀬参考人にお願いいたします。

広瀬参考人 大分県知事の広瀬でございます。

 きょうは、国土交通委員会でこういう意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私の方からは、地方にとって道路の問題はどんな問題かということについてお話をさせていただきたいというふうに存じます。

 初めに、地方にとってあるいは大分県にとって道路整備というのはどんな意味を持っているかということについてお話をさせていただきます。

 幾つか道路の整備についての項目があるわけですけれども、一つは、地方の場合には、市の中心部とそれから周辺部を結ぶ道路の整備というところが非常に大きなウエートを占めております。

 大分県の場合には、五十八ありました市町村が、合併をいたしまして今十八の市町村になっております。その旧市の中心部と、合併の成った旧町村部との間を結ぶ道路というのが大変大きな意味を持っておりまして、この道路によって旧町村部の皆さんが通勤通学そしてまた緊急時の救急医療等に活用させていただいているわけでございます。その道路整備が一つでございます。

 もう一つは、やはり交通安全上の対策ということで道路の整備をやっております。

 市街地の歩道の整備だとかあるいは学校周辺部の歩道の整備といったようなものも大変大きな課題になっているところでございます。歩道の整備をやってくれという要望がよく地方から出るわけでございますけれども、全部にやるわけにいきませんので、特に市街地の歩道だとか学校周辺部というのに限りながらやらせていただいているところでございます。

 三番目が、災害復旧とか防災対策の道路ということでございます。

 大分県の場合には、大変に中山間地域が多い地域でございまして、台風、集中豪雨のたびに被害が出ております。例えば、十九年度に発生しました県の管理道路の災害被害というのが八十四カ所ぐらいになっておりまして、その復旧と、再び起こらないようにということで、防災も兼ねて工事をやるというのが大変多うございます。

 地方に行きますと中心部と周辺部を結ぶ道路が一本しかないところがたくさんあるわけでございまして、そういう場合に、この道が災害で被害を受けますと村落が孤立するというようなことが多うございまして、この災害復旧、防災対策というのは大変重要な課題になっております。

 それからもう一つは、今、渋滞対策というのが大変お金を使っているところでございます。

 大変恥ずかしいお話でございますが、県都の大分市は、今、鉄道、JRによりまして南北に本当に分断をされている状況でございまして、これを連続立体、高架にしようという工事を今やっております。これによりまして、十三カ所ある踏切を除去して、渋滞解消を一気に図っていこうというようなことでやっているところでございます。

 それから、最後でございますけれども、高速交通網の整備ということでございまして、東九州自動車道やあるいは中九州横断道路といったような道路の整備を行ってもらっているわけでございますけれども、それに対する負担金だとか、あるいはその道路にアクセスする道路の整備といったようなことをやっているわけでございます。

 それに加えまして、これまである道路の維持管理、これもやはり全体の一割以上を費やしてやっているところでございます。

 いずれの道路にいたしましても、地方にとりましては、住民の生活を守る道路でもあります。また、緊急時には命をつなぐ道路でもあります。そしてまた、将来の発展を保障する、活力を創造する道路。道路があるから企業誘致ができる、道路がないから企業誘致が断られるということが多うございまして、そういう将来の活力創造の道路でもあるということでございます。こういう道路に我々の貴重な資金を使わせていただいているというところでございます。

 次に、では、その道路の予算はどういうふうになっているのかということでございますが、平成十九年度の例をとってみますと、例の道路関係の諸税によりまして、地方分があります。その地方分で回される分が大分県の場合には百五十億円あります。それに貴重な県の一般財源を二百億円投入いたしまして三百五十億円できるわけでございますけれども、実は、この三百五十億円で、これまでの道路造成に使いました公債費の支払いをしております。これが二百八十億円の支払いをしておりますから、残りが七十億円ということになります。

 この七十億円を種にして、実は三百億円の新しい県債を発行させていただいております。この三百七十億円で、国の補助金を百八十億円受け入れております。さらにまた、ようやく最近国の直轄事業をやってもらうようになりまして、この直轄事業が二百億円ぐらいありますけれども、この直轄事業の負担金も受け入れているというようなことでやらせていただいているわけでございます。

 暫定税率廃止というような議論がありますけれども、仮に暫定税率が廃止になりますと、ちょうど最初の百五十億円、二百億円つくって三百五十億円、二百八十億円を返して七十億円という、この七十億円の種のこの部分がなくなるということになるわけでございまして、そうなりますと、その後の事業展開、県債を発行して国からの交付金、補助金を受け入れてという事業展開ができなくなるということでございまして、私ども、暫定税率の行方を大変に心配をしている。したがって、ぜひとも暫定税率の維持をお願いしたい、道路財源の維持をお願いしたいというふうに考えているところでございます。大変貴重な道路事業展開の種金になっているものでございます。

 次に、そうはいっても、道路についてはいろいろ無駄があるではないかというお話でございます。この道路の無駄については、もちろんあってはならないことでございまして、無駄を省く努力はやっていかなきゃいかぬということでございます。

 実は、私ども、これだけ道路の不足があり、道路の需要があるわけですけれども、毎年シーリングを設けて削減をしております。国連動の事業については三%、地方の単独事業については一〇%のシーリングを設けて、できるだけ削減をしているところでございます。その結果、大分県の場合には、十年前に千四百億円ありました事業費が今八百三十億円まで減少しているということでございまして、こういうふうに予算を限りながら大事に使っているというのが現状でございます。

 どんな工夫をしているかということでございますけれども、さっき申し上げました周辺部と中心部を結ぶ道路等でございますけれども、二車線というのが普通でございますけれども、二車線つくる財力はとてもありませんので、一・五車線、通常は一車線で、ところどころに二車線で離合ができるような工夫をしております。

 それから、先ほどちょっと申し上げましたけれども、歩道を整備するということは大変強い要望になっておりますけれども、全部につくるわけにいきません。特に山間部に歩道なんかつくる必要もありませんので、市の中心部だとか、あるいは学校の周辺といったようなことに歩道の整備を限らせていただいている。

 それから、地域の高規格道路の整備等をやっておりますけれども、これにつきましても、既存の道路をできるだけ活用しながら、そこにつなげていくというような努力もしているところでございます。

 それから、最近は国が事業を積極的に公開して、いついつまでにどれだけの整備をするということになったものですから、それならば、ここのところは県道の要望が強いんだけれども、ここのところはもうやらなくて、国の方の事業を待つことにしようじゃないか、負担金を払って。自分でやるよりも大分軽くなりますから。負担金を払って、国の事業に乗っかって、そして道路整備をさせてもらおうというような地域があったり、あるいは、農道とか林道の整備、これもよく道路との錯綜があったわけですけれども、これについても、もう一本でやるというようなことをやっているところでございまして、そういう無駄をできるだけ省くというようなことをやっております。

 こういう中で、もう一つ、それはわかったけれども、道路財源について一般財源化をしたらどうだというお話もよくございますけれども、これにつきましても私どもは大変心配しているところでございまして、先ほど申し上げましたが、地方に来る道路関係が百五十億円、それに私ども二百億円の一般財源をむしろ継ぎ足して、そして道路の事業の種金にしているところでございます。

 したがって、一般財源化をするということにされましても、ではその部分をほかに使えるかといいますと、むしろ、今一般財源を継ぎ足しているほどでございますから、総額の確保の方こそ大事なことでありまして、少なくとも今の段階で一般財源化されても、どうにも、余りメリットはないなというふうに考えているところでございます。

 あわせて、私ども心配しておるのは、一般財源ということになりますと、その配分方法について随分気になるところがあります。

 一般財源の典型は地方交付税でございますけれども、あれは人口だとかあるいは面積だとか、道路についていいますと既に整備されている道路の面積だとか延長だとか、そういうことを勘案しながら配分するということになりまして、これから道路をつくる、そのためにお金をくださいという地域にとりましては、この配分では、またばらまきになって、集中的に道路の整備をするということにはならないんじゃないかというような心配もしているところであります。

 最後になりますけれども、そうはいいましても、先ほど申し上げましたけれども、国の直轄事業は大変にありがたい、我々こう思っておりますけれども、直轄事業がふえてくれば負担金もふえてくるわけでございまして、そういった意味で、負担金を減らす、そのための、地方への配分をふやす、道路の関係の予算に余りがあるということであれば、そういうことも考えていただければ大変ありがたいというふうに思っているところでございます。

 以上、私の方からまず陳述をさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

竹本委員長 ありがとうございました。

 次に、松下参考人にお願いいたします。

松下参考人 この会に参加させていただきまして、大変光栄に思っております。

 私は十五年前から、英国のケンブリッジ大学、マーシャル・エシュニック教授と一緒に、お金を半分ずつ出し合って、都市交通分析モデルを開発しております。また、それを使って東京湾のアクアライン、常磐新線、京浜臨海線などの交通予測や建設の影響評価を行っておるものでございます。

 英国の都市計画や費用対効果分析、また交通需要予測をつぶさに研究すると同時に、やはりそれが使われる背景として、国民が合意形成をする公聴会であるとか、そこで一生懸命国民に向かって計画の必要性を訴えるリーダー、英国の交通省の環境評価部長ミーキングさん、あるいは、そこで一生懸命説明しても合意が得られない場合に、日本はすぐ裁判所に行きますけれども、そこを、計画審査官という制度がありまして、昔はボランティアで行っていたそうですが、今は計画審査庁に格上げされて裁判所にかわるジャッジをしている、そういうところのドット部長、七賢人と言われるような方といろいろおつき合いができました。

 私は、費用対効果分析ですから、マネーですべて決しようという考え方で研究しておりますけれども、研究すればするほど、お金ではなくて、お金にかわるいろいろなもの、社会的望ましさとか環境とかCO2とか、そういうものの重要性というのが出てきている。しかし、それがなかなか研究が進んでいない、あいまいもことした中で国民に説明しなきゃいけない、そういうところで非常に皆さんが苦労して研究している。また、それをどう発表して説明していったらいいかというのが非常に難しい問題だ、そういう問題を研究の過程で認識してまいりました。

 ですから、そういう視点からでもきょうはお話しさせていただきたいと思っております。合意形成制度ということであります。それを早く日本も導入して、今の課題になっております諸外国に比べて非常に高い建設費、私の試算では、いろいろな事例を集めて比較してみますと、もう十倍から三十倍高いというようなことがわかってきました。

 並びに、そういう無駄な道路が、道路自体は必要性があります、それをつくらないというのではありません。しかし、むちゃくちゃに高い建設費とか、本当に必要性の低い道路に対して多額なお金を使っていく、しかも、建設初期は山の中とかフクロウが鳴くような山奥の方から、大きなトンネルが掘られたり橋が架けられたり。十年、二十年たって、あと一割ぐらい残った市街地に入ってきたり、環境の美しいところを壊すような工事になったときに国民の目について反対運動が起きて、そこで長い頓挫をしてしまう。

 その間も工事の人たちは張りついていますから、多額な建設費がふえてきてしまう。そういうふうなことの温床になっているということで、私は、ガソリン税の暫定税率の継続というのはそういうものの温床だから、一回きれいにしてスタートしなきゃいけない、そういう面も含めて廃止すべきだと考えております。

 もう一つ大きな問題は、地方にとって確かに高速道路は大事なんでしょうけれども、そういう高速道路がただで引けるよという甘い言葉で、中央政府の統制というものががんじがらめにかけられていく、そういう現実をいっぱい聞いておりますので、地方自治が確立できないんだという弊害、そういう弊害が大きいということも、ガソリン税率を下げる、二兆七千億に余る税金を一回解消して、元に戻して出直すべきだと考えております。

 もう一つの論点は、減税の経済効果ということであります。

 政府は、減税しても効果は少ないよと言いますけれども、本当なんでしょうか。我が国は、超低金利を十二年間も続け、また、莫大な借金を抱えた中で、唯一とれる政策というのは減税なのではないでしょうか。今しもサブプライム問題でアメリカの不動産は暴落しております。株も暴落しております。この余波が日本に来ないとは絶対言えません。半年後にやってくるかもしれません。そういうときに、では、日本の経済運営として何ができるのかといったときに、もう減税以外とれないんですよ。それは皆さんももう十分認識されていると思います。

 では、この効果がどういうふうになるかといいますと、政府は減収になります。しかし、家計は二兆七千億の増収になります。このお金が小売業やサービス業、そういう広い産業に渡って、GDPを、ケインズの乗数効果を使えば、数倍の規模で有効需要を押し上げる効果が出るということであります。

 また、二十五円ガソリン価格が下がる、あるいはディーゼルエンジンとかそういうものに使う軽油や漁船のエンジンの燃料の値段が下がるということは、輸送コストの低減に大きく寄与します。そして、そのことは、広い産業の輸送コスト、生産コストを低減していくということで、日本の産業にとっては非常に好ましいものだということであります。

 また、最近は物価の上昇が激しい。小麦粉とかガソリン以外にもいろいろ上がっております。公共料金もこれからどんどん上がるんじゃないかという懸念が国民の中に広がっております。そういうものの防止効果があるというふうに見ております。

 ですから、お金に換算できない効果というのが非常に広くわたっていくということで、ぜひこれはやるべきじゃないかと思っております。その逆を考えると恐ろしいくらいですよね。このまま物価がどんどん上がり、ガソリンも高どまりして、経済に悪影響を及ぼしていくということを考えると、ぜひ減税をしていくべきだと考えております。

 もう一つは、こういう減税をすると、二十五円下げるとCO2が年間八百万トン増加するという予測が政府から出されております。この裏打ちは国立環境研究所の報告にあると言われておりますけれども、この報告書をつぶさに見ると、需要の弾力性が一リットル百五十五円から二十五円下げたときに〇・一から〇・四に増大すると言っております。

 それが前提でこういう結果を出しているわけですが、これはもう、皆さんが通常考えていただければあり得ない前提であります。こういうものを使って数値を出していく、また、それを政策に使っていくということは、国民を欺くことになりますので、絶対にいけないのではないかと思っております。

 ちょっときつい言葉になりますけれども、甘い費用対効果にしてもそうですが、そういうものを、みんなが直観で、国民が直観で、これはおかしいんじゃないかな、この道路というのは無駄ではないのかな、環境に大きな影響がある、あるいは景観を壊す、いろいろなことを考えても、こういう報告書で押し切られてしまう。当局の計画を強引に進めてしまうことに利用されてきた、今までずっとそういう形で続けられてきたわけです。ここを直さなきゃいけない。このようなことで、物言わぬ自然の生態系が破壊され、景観を傷つけ、ずっと来たわけです。これは改めないといけないんじゃないかなと言っているわけであります。

 それから、費用対効果分析については、やはり国民の実感に合った数値というものを使うべきだと思っております。

 時間価値にしても、勤務時間内の移動については、英国では千二百ペンス、約二千五百円程度を一時間当たりの価値として考えますが、日本は四千円くらいとか高い数値を使っております。また、皆さんもわかると思いますが、通勤であるいはビジネスで車で移動するときにはそういう高い価値を使ってもよろしいですが、帰宅のときとか買い物、レジャー、そういうときには、そんなに急ぐわけじゃありませんから、英国では三百九十ペンス、約六百九十円ぐらいの価値を使っております。

 そういうふうに三分の一とか五分の一に下げて使う方が、費用対効果分析の数値というものが国民に信頼される、納得できる数値になるのではないか、それに改めるべきではないかというふうに考えております。

 もう一つは、私はコンピューターモデルを開発して、その応用研究をしておりますけれども、そういう分析のときに一番大事なのはODデータ、オリジン・デスティネーションといいますけれども、起点終点分析といいまして、日本ではパーソントリップとか言われています。どこからどこへ、どういう目的で、通勤とか買い物とか、それから、どういう交通手段、鉄道を使う、自動車を使う、バスを使う、自転車を使う、そういうような形、モードといいますけれども。それから、どういう時間帯にどのぐらいのコストをかけて移動しているのかというような基礎データがあります。関東圏では一日八千万の移動が起きていると言われる、その内訳が詳しく出たデータですけれども、こういうデータが、私たちが十五年前にモデルを開発したときに、当局へこのデータを貸してください、見せてくださいと言ったときに、ノーと言われました。

 こういうことが続いている限り、我々の都市の研究、交通の研究というのは進みません。全然進みません。それから、国民や野党の方がいろいろ追及していく、質問をしていくというような場合でも、こういうきちんとしたデータがないと、それは抽象論、わいわいがやがやの議論になってしまう。こういうところをやはり我々研究者としては、ぜひ開放して、オープンにして、オープン・フェアネス・インパーシャリティーという言葉が英国ではありますけれども、そういう精神にのっとって公開していく、みんなに見せて研究を進めてもらう。日本が技術立国として世界に信頼される国になるためには、そういう基礎データのオープンというのが非常に重要だと考えております。この辺も、ぜひこの席でお願いしておきたいと思います。

 それからもう一つは、たかが道路と言いますけれども、コストや必要性だけの問題ではなくて、やはり日本の外交問題に連関する非常に重要な問題だと思っております。英国やオランダなんかはそういう位置づけでございます。

 というのは、CO2をたくさん出す、発生させる自動車、年間二百二十億トンのCO2が出ているといいますけれども、そのうち生活や工場から出るのが約半分、あとの半分は輸送関係で出ております。輸送関係のうち、詳細に分析すると、自家用車が約五五%ぐらい、トラックが三〇%ぐらい。ほとんどトラックと乗用車でガソリン消費が、CO2の発生量というのが決まるわけですが、みんな使いたいですけれども、これを野放しにしていいのかということが今問われているわけです、地球環境の保護ということで。

 ですから、先進国、特にオランダや英国では、そういうところに先進的に取り組んで地球環境を保護するということをやっているわけなんですが、これは単にCO2を減らすということもありますが、やはり世界のリーダーになる、戦力を持たないオランダやイギリスが、大きな戦力を持たない国が外交面でトップにつく、そういうためには、先進的な国土交通利用、都市計画、交通政策に取り組んでやっていくことが外交的なプレゼンスを上げる非常に重要な要素なんだと。

 そういうところからもこれは切り込んでいかないと、単に道路が欲しい、足りない、渋滞を解消するためにどんどんつくろうつくろうで来たら、日本はそれでいいかもしれないけれども、海外から見たら軽蔑される国であるということを認識して議論を進めていただきたいなと思うわけでございます。(拍手)

竹本委員長 ありがとうございました。

 次に、太田参考人にお願いいたします。

太田参考人 おはようございます。専修大学の太田でございます。

 本日は、このような機会をお与えいただき、ありがとうございます。

 私は、交通経済学の視点から、道路財源特例法の改正案について意見を述べさせていただきます。お手元にお配りいたしましたメモを見ていただければ幸いでございます。

 きょうは、まず一番初めに、道路特定財源の一般財源化の論点を整理させていただきます。続きまして、暫定税率の存廃問題につきまして、私なりの考えを述べさせていただきます。最後に、中期計画及び道路財源特例法の改正案について私の意見を申し述べたいと思います。

 まず、一般財源化の根拠として挙げられているもの、これは既にかなり広く言われているものでありますが、大体六つぐらいだというふうに思っております。

 一つは、ノンアフェクタシオンの原則というものでありまして、予算の硬直化を避けるために自由に使えるようにすべきだということであります。これは非常によく言われていることであります。

 二つ目に、自動車ユーザーは担税力があるという議論であります。

 三つ目と四つ目は、特別会計に関する話でありますが、道路財源は余っているじゃないか、年間五千億円程度の余剰金があったはずだということであります。四番目は、母屋はおかゆであるが離れはすき焼きを食べておるという発言がありまして、それは広く知られております。特会自体は非常に運営に対する制限がきかないということで、放漫経営じゃないかという視点であります。

 それから五番目は、これは先ほど松下先生の方からも御指摘がありましたけれども、無駄な道路がつくられているんじゃないか。無駄と定義するかどうかはまた後ほど議論があると思いますが、あるいは無駄遣い、目的外使用があるんじゃないか。恐らく、あるんだと思います。これに対する批判は非常に強いものがあります。

 最後は、一般財源化は小泉改革の一環であるというふうに言われているということであります。

 私は、これらの六つの理由というのはかなり根拠が弱いものであるというふうに思っております。一つ一つ私なりの考えを申し述べさせていただきます。

 まず、ノンアフェクタシオンの原則、これは一般会計についてはそのとおりでありまして、一般会計に入ってきたものを縛るというのは問題があるというふうに思います。しかし、一般会計というのは、歳入と歳出の関係がないからこそ、歳出を自由に使うべきだという議論でありますので、歳入側につきましては課税の原則をきっちりと議論しなければならぬというふうに思います。

 一般会計の方の歳入と申しますのは、所得にかけるか、保有している資産にかけるか、消費にかけるかという、三つの税源に対してバランスよくかけるというのが基本であります。きょうは道路特定財源ということでありますが、いろいろ複雑でいろいろな種類がありますので、ちょっと保有の話は横に置いておきまして、特に消費の話、ガソリン税、揮発油税に絞ってお話をさせていただきます。

 消費に対する課税というものは、消費税を導入したときに一律五%でかけるということが決められました。逆進的であるけれども、一律みんなに平等に負担してもらうという公平性の原理で五%というふうに、初めは三%でありましたが、決まっているわけであります。もし道路整備というものを一般会計で行うのであれば、私は、課税の原則からいって、本則税率も含めてすべて撤廃して消費税に一本化すべきだ、それが本来の課税の議論であるというふうに思っております。そうしますれば、道路の基本法でありますところの道路法に書いてあります道路無料開放の原則というものに合致する、それに近づいていくということになります。

 ただし、当然、道路を整備するのに費用はかかるわけでありますから、その費用をどう負担するかという話になります。一般財源で負担する、一般の税源で負担するということになりますと、一般納税者の負担ということになります。しかしながら、道路の場合は、受益者、利用者というのが割と特定しやすい。特定しやすい人にやはり負担していただきましょうという考え方の方が合理的と思います。そういう意味では、受益者負担の原則があるからこそ、消費税とは別に道路特定財源というものが存在しているということになります。

 そこで、一つの実例で一般財源化の議論を私なりに解釈してみたいと思います。

 平成十九年度には千八百億円が一般財源化されました。この税源がどうかというのはいろいろありますが、今仮に、揮発油税の収入からこの千八百億円を一般会計の方に持っていった、一般財源化されたといたしましょう。ガソリンの消費量というのは年間六百億リットル弱であります。ということは、一リットル当たり三円ということになります。ガソリンの価格が百五十円であるとすると、これは二%に当たります。つまり、平成十九年度は、ガソリンの消費税は七%であったということであります。ほかのすべてのものの税金は五%のところを、ガソリンだけは七%取っていたということになります。これは課税の公平性の理念に反していると私は思っております。この問題は非常に大きな問題であると私は解釈をしています。

 続きまして、特定財源の話でありますが、これはもう先生方よく御存じだと思いますけれども、道路財源が余っているのは、シーリングをかけているから余っているだけであって、道路に対するニーズがなくなったわけではありません。また、すき焼きとおかゆの話で言えば、一般会計の方が毎年毎年三十兆円借金しながらやっているわけですから、どっちかというと一般会計の方が放漫経営をしておる。一方、道路特会の方は、先ほど申し上げましたように、むしろ余剰金を出しているわけであります。母屋の方がシーリングをかけて、おまえは使うなと、自分の方は毎年毎年借金しながら支出をふやしている、そういうような状況でありますので、この四つ目の論拠もないということになります。

 次に、無駄の問題です。これは非常に大きな問題でありますし、これは当然改善されなければならぬというふうに思います。これにつきましては、本日議論されているような話、特会か一般会計かとか、特定財源か一般財源かという問題とは別の問題としてきっちりと措置をしなければいけない問題であり、直接今回の法案には関係ないというふうに思っております。

 最後に私が強調したい点は、小泉改革の基本というのは意思決定の分権化であります。その意味で、具体的には規制緩和、民営化、市場化、あるいは地方分権、減税というのが小泉改革の本質でありますが、この一般財源化はそれに対して逆行しているということになります。一内閣の道路政策としては、有料道路の方は民営化します、だけれども一般道路の方は集権化しますということで、道路政策としては矛盾していたというふうに私は判断をしております。

 一ページ目の下のところに書かせていただきましたが、結論としては、特定財源制度は、うまく使うのであれば有効に機能する、一般会計よりすぐれているというふうに私は考えております。しかしながら、無駄遣いの問題とか談合の問題とかいろいろな問題がありますので、かなり批判が高まっている、それはそのとおりだというふうに考えております。

 そこでどうするかということでありまして、二つの方向がある。一つは特定財源制度の中で改革を進める、もう一つは枠組み自体を変えるということであります。私は前者の方がよいと考えております。なぜならば、対象が小さいので議論しやすい。しかしながら、世間の流れが一般財源化ということであるのであれば、その方向の中で最善のもの、セカンドベストを選んでいく必要があるかなと考えております。

 二ページ目の方にお願いいたします。二ページ目の図は、政府・与党及び野党の提案を私なりに解釈したものです。特定財源であれば、高整備・高負担、あるいは低整備・低負担という割と単純な選択が可能です。しかしながら、一般会計ということになりますと、歳入と歳出は関係ないのが基本でありますから、高負担・低整備、低負担・高整備というものが可能になります。そうしてもよいということになります。

 なお、この図では、高い、低いと書いてありますが、これは二重線で結んだもの同士の間の相対的な問題であって、高負担・高整備だと書いてあったとして、これが五十九兆円だとしても、五十九兆円が高い負担なのか高い整備なのかということを示しているものではありません。相対的なものとお考えください。

 さて、先ほど申し上げましたように、福祉や国債、国の借金の返済のために道路関係諸税を充当するというのは、高負担・低整備となります。これは、先ほど申し上げましたように、道路利用者を税において差別するということになります。今般、平成二十年度で提案されているもの、あるいは今回の法律に関して申し上げれば、結果としてこのような課税の差別を回避するように措置しているというふうに私は考えております。

 実際、平成二十年度の予算におきましては、一般財源化の枠は千九百億円余りということですが、これは自動車関係に支出されるということになっております。純粋に一般財源化されて、自動車利用が、ある意味においては不当に増税されたという状況が平成二十年度は改善されているというふうに考えております。

 一方、一般会計の原則に従いまして本則税率を廃止する、あるいは、ちょっと根拠は定かではありませんが、暫定税率のみを廃止するということになりますと、低整備・高負担ということになります。この場合は、一般財源、一般の税金によって道路整備を行うことになります。これは国土交通委員会としては非常に大きな問題があるというふうに考えております。

 と申しますのも、これは、鉄道、航空等から見るとダンピングだということになります。モーダルシフトを進めなきゃいけない、あるいは環境に優しく自動車利用を抑制しなきゃならぬという話の中で、このような措置を行うことはかなり大きな問題ではなかろうかと思っております。

 時間の関係で、ちょっと三は飛ばさせていただきます。

 結論部分でありますが、私は、道路財源特例法は、国民の支持が高い一般財源化というものを実現しつつ、受益者負担の原則を維持する工夫がなされているというふうに考えております。

 この法改正によりまして、実は、やろうと思えば純粋な一般財源化も可能になっております。したがいまして、将来の内閣がみずからの意思によって福祉等他のものに利用することも可能は可能になりました。このような場合は、確かに課税における差別はありますが、国会における予算審議を通じるということでありますので、結果として民意が反映されるのであろうというふうに思っております。

 中期計画につきましては、事業量ばかりが注目されて、この額は何だということが議論されております。しかし、私は、これまでにないほど画期的なものだと思っております。

 それは、先ほど松下先生からも話がありましたけれども、選択と集中という言葉で、効果の高いものからやるということが実は宣言されております。これまでは公共事業の評価というのは、BバイCが一あるかどうかが重要で、一を超えていたら採択可能リスト、採択候補になっていたわけですね。その中から、BバイCが一をちょっとだけ超えたものでもいいということになっていましたので、より効果の大きいものを押しのけてでも効果の低いものが実は実行されていた、あるいは実行される可能性があったと言えます。しかし、今回の中期計画はそれはやらないということを宣言しているというふうに私は考えております。これは、実際そのように運用されるかどうかはきちんと監視しなければなりません。

 そこで、暫定税率の話になりますが、効果が高いものから実施すると言っております。もし中期計画の事業量が五十九兆円の半分の三十兆円を大幅に下回るというものであればいろいろ話は変わるわけですが、そうでないとすると、五年後の見直し規定があるわけですから、今からの五年間は効果の高いものから順番にやっていくわけです。道路の事業量が三十兆円必要だとするならば、五年間は暫定税率を維持し、それを道路整備に充てることによって整備を進める、そして五年後に、やはり適切な水準は五十兆円だったねということになれば、その時点で残りの二十兆円分を、五年間ということであれば一年ごとに四兆円ということになりますが、縮減すればよいというふうに考えております。

 以上のような理由によりまして、今回提出されております道路財源特例法の改正案は適切なものだというふうに私は判断をいたしております。

 以上です。(拍手)

竹本委員長 ありがとうございました。

 次に、小井参考人にお願いいたします。

小井参考人 私は、建設省に四十二年間勤務をして、奈良を通っております京奈和自動車道の建設にも、京都府内ですけれども、従事をしてきました。一九九八年に定年退職をしまして、もう十年です。その間、地方自治に関する学習、研究に携わりまして、地方自治についての理解を深めました。現在、奈良自治体問題研究所の事務局長をしております。

 きょうのテーマですが、私は、都会ではなく地方における高速道路の役割と問題点について述べ、いわゆる暫定税率をやめて高速道路建設をストップすることが地方における生活道路の改善につながることの理解を願うものです。

 一つ目ですが、現在、全国で高規格幹線道路の計画一万四千キロのうち約九千三百キロが完成をしています。高規格幹線道路の建設は、有料制を先行したため、交通量の多い採算性のよい路線から施工され、今日残っている約四千七百キロの路線は、ほとんどは交通量の少ない地方の路線です。

 資料の一ページを見ていただければと思います。未施工は地方の分がほとんどです。必要と思われる交通量の多いところはもう完成をしているわけです。

 地方の高規格幹線道路は交通量が少なく、道路公団施工ではありませんで、採算がとれないから、直轄、直営での施工が中心であります。法律による地方負担金とアクセス道路等の施工を入れますと、約三割の地元負担になります。

 奈良県では、京奈和自動車道の奈良県内約四十七キロで事業費は約八千億円と巨額です。その約三割負担として二千億円以上の地元負担になります。奈良県民約百四十万人、県民一人当たりの負担額は約十四万円、一家四人とすれば五十万円を超える負担になります。現在、もう十六キロが供用開始をされているわけです。

 この二千億円負担のしわ寄せで、県道の維持管理費用など、いわゆる生活道路に費用が回りません。奈良県の県民一人当たりの道路の維持補修費は、全国平均二千五百四十三円ですが、奈良県は約半分の千四百十七円です。

 この状況ですから、中山間部の土砂崩壊の危険箇所、二千百十六カ所もありますけれども、工事をされておりません、ほったらかしです。二〇〇七年一月三十日、国道百六十九号線の上北山村で土砂崩れが起きて三人が死亡しました。しかも、八十日間も復旧できず、この間、上北山村が孤立をいたしました。二千億円負担のしわ寄せはこれからもずっと続きます。新しい道路をつくっているからです。

 二つ目です。高規格幹線道路のこれからの建設は交通量の少ない地方の建設とさきに触れましたが、二ページを見ていただきたいと思います。これは京都、和歌山を結ぶ京奈和自動車道百二十キロのうち、奈良、和歌山両県の平成十七年度の道路交通センサスです。

 国道二十四号が至るところで交通渋滞しているので京奈和自動車道を計画したと国交省、奈良県が言っております。奈良市内と大和郡山市内は、上の方ですけれども、これは四車線道路です。ですから、かなり、六万台というところもあります。それ以外は二車線道路です。これも満杯です。信号があればいわゆる渋滞をいたします。しかし、信号による渋滞のために、わずか二万台の交通量なのに渋滞解消といって高速道路が必要でしょうか。バイパスの検討や交差点の立体化などを含む改良を行えば、全く必要がないと思っております。高速道路を必要とする交通量はこの表から見ることはできないと思います。

 奈良市内での最高交通量は六万五千台です。杏町というところです。奈良市及び大和郡山市内は、先ほど言いましたように四車線道路です。この奈良市内が慢性的な渋滞だから、これを緩和するために自動車専用道路の大和北道路が必要だと国交省がビラなどでの宣伝をいたしました。

 私はいつもこの道路を利用しておりますから、そんな渋滞はないはずだということで、私がチーフになって、主要な交差点三カ所の渋滞調査を二〇〇五年に、朝夕の通勤時間、一番込んでいると思われる二時間の実態調査を行いました。ほとんど、九九%の車が信号一回でクリアをしております。一、二台は二回ということもありますけれども。渋滞は通勤時の朝夕でもなかったんです。ないんです、今でも。

 平成十七年度道路交通センサスの中で、今の表の中ほどにありますけれども、田原本町というところがあります。一日の交通量は二万九千台です。ここにはもう京奈和自動車道の一部が完成をしておりまして、高架部で四車線の供用が開始されております。さらに平地部で四車線の道路が工事中です。現道二車線を入れますと十車線になります。実に八車線もふえるわけです。二万九千台の交通量でこんなに道路が必要なんでしょうか。全く必要ありません。二車線つくるなら十分です。

 三つ目です。京奈和自動車道のうち、奈良市内を通過する大和北道路は十二・四キロで四車線、地下トンネル四・五キロを含みます、ダブルで。事業費は三千百億円と準備書で計画されて公表されています。一メーター当たり二千五百万円です。トンネルが高くつきます。余りの巨額に国交省は、事務所ですけれども、工事の完了は約二十年先と公表をしています。

 御存じのように、国立社会保障・人口問題研究所が二〇〇六年十二月に発表した新しい将来人口推計は、五十年後の合計特殊出生率が一・二六にとどまり、総人口は八千万人台に落ち込み、六十五歳以上の人口比率は四〇・五%になると推計しています。奈良の合計特殊出生率は、東京、京都とトップを争っております。まさに少子化県です。したがって、奈良県内の二十年先は、少子化と高齢化によって自動車交通は三分の一以上が減るのではないかと私は推測しています。

 問題は、現道の国道二十四号が部分的にやはり停滞をしています。土日の買い物、停滞をしております。交差点の改善やその他の改良が、恐らく新しい道路をつくるということで何ら手を打たれない、そのまま放置をされるということです。そして、いざ二十年後に京奈和自動車道ができ上がれば、開通時は自動車の減少でがらがらの状況になるということがもう予想されています。三千百億円の巨額の投資が無駄になるということが、まだ都市計画決定、十二・四キロされておりませんが、最初から予想されているわけです。

 四つ目です。京奈和自動車道大和北道路の建設は国道二十四号の渋滞解消と周辺道路の交通事故の減少を解決するためにつくると、国連のユネスコ世界遺産委員会にも報告をしているわけです。

 二十四号の渋滞解消については、奈良市内を通過する自動車が約三割あります、これが新設の大和北道路、高速道路に入ります、したがって現道二十四号の渋滞解消になるというのが理由です。これが大和北道路の新設の根拠でした。ところが、一方で、新設道路の誘発、誘引作用によって約三割の交通量が増加すると見込んでおられます。三割減って三割ふえれば差し引きゼロではないか。現状の二十四号の交通の渋滞解消やその他、何ら変わらないわけであります。

 また、高速道路の建設によって自動車による観光客がふえると期待されておりますが、残念ながら奈良市内に駐車場を増設する計画はありません。現在でも、土日は朝の九時半ぐらいから、十時を過ぎたらもうほとんどとめるところはありません。車による観光というのは、一週間のうちに土日が中心です。あとの五日間はほとんど来ないんです。採算がとれませんから、民間の駐車場をつくるということはないんです。

 資料の三ページを見ていただきたいと思います。上の方です。京奈和自動車道は広域ネットワークを形成する関西大環状道路の一部であると奈良県が位置づけて、当然国交省もそうでありますが、何と奈良県にとっては通過道路でしかなかったんです。一体だれがこの環状道路を利用するのでしょうか。恐らくほとんどおられないと思います。和歌山、奈良、京都から何しに淡路島へ渡るのか。目的がないと思います。

 五つ目です。次に資料の四ページを見ていただきたいと思いますけれども、奈良は、世界遺産都市、奈良です。日本人のふるさと、日本人のアイデンティティーの地だと言う人もおられます。私もそう思っております。その真ん中に高速道路がどうしても必要でしょうか。

 ルートの選択肢の幾つかの中に西側ルートというのがありました。この西側ルートは、現在のルート計画三千百億円の半額の建設費で可能であると大和北道路有識者委員会が明らかにしています。

 現在、世界遺産平城宮のわずか六百メーター東側に地下トンネル二つが計画されています。地下トンネル建設中に地下水位がもし低下をしますと、地下五十メーターの深さでは対処できないでしょう、対策ができないわけです。地下トンネルは、景観を守るために千五百億円もの巨額のお金を追加して計画されたわけですけれども、これが地下水位を低下させ、地下水で守られている平城宮址の木簡などの地下埋蔵文化財を消失させてしまいますと、地下水に守られているわけですから、世界遺産、古都奈良の文化財が危機になるわけです。まさに日本の品格が世界に問われることになります。

 最後になりますけれども、これは完成している橋脚写真の資料であります。この部分でありますけれども、立っているのは、もう完成をしています高架橋の橋脚です。雨ざらしになっています。手前にさらに十基ほどまだあります。この橋脚の手前、南側ですけれども、高架部は完成しておるわけです。大和北道路につなぐ京奈和自動車道、大和御所道路の大和区間として供用を開始されております。

 三ページの下段の地図を見ていただければ、左右に西名阪が通っておりますので、そこでジャンクションの計画がされております。大和北高速道路は国道二十四号のほぼ真上を高架部が通っていく計画ですので、現道二十四号から完成した京奈和自動車道に入っていくために、将来は切り回ししなければいけませんので、先行してこの橋脚が完成をしているわけです。

 当然、都市計画決定は終わっております、施工命令も出ています、違法ではありません。しかし、西名阪道路から北側へ超える大和北道路は、まだ都市計画決定前です。もし大和北道路をつくらないことに決定されたら、この橋脚はどうなるんでしょうか。設計も明らかでないんです。見込み設計で恐らくつくられていると思います。そんなことが許されるんでしょうか。私は許されないと思うのですが、どうでしょうか。

 以上、六点にわたって述べましたけれども、その原因、根源はいずれも、道路にだけ使うという道路特定財源の仕組みにあるのではないでしょうか。住民は高速道路を望んでいません。渋滞のない幹線道路を望んでおります。高規格の新設道路を要求しているわけではないんです。渋滞解消と安全を要求しているわけです。

 結論ですが、道路特定財源を一般財源にすることで、交通量の少ない地方に必要な生活道路中心の改良や新設など、地方自治体が判断できるシステムの突破口になるのではないかということ。それから、高規格幹線道路の建設費で二車線の一般道路を地べたにつくりますと四本も五本もできます。その裁量もまた地方自治体ができるのではないか、その突破口になるのではないかと考えます。

 これが私の結論であります。以上からお考えをいただきたいというふうに思っております。

 以上です。(拍手)

竹本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉田元司君。

杉田委員 自由民主党の杉田元司です。

 ただいま、四人の参考人の方々から、忌憚のない御意見を拝聴させていただきました。限られた時間でありますけれども、私から幾つかの質問を行わせていただきたいと思います。

 まず初めに、広瀬参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 広瀬参考人は、大分県の知事として、就任以来、太平洋の新国土軸の凍結あるいは産業廃棄物税の導入や環境税の導入等々、数々の県政に勇敢な立ち向かいをされたというようにお聞きをしております。

 昨年七月でしたか、全国の知事会でアンケート調査をされましたら、実に何か支持率が七八%、全国の知事会では東国原知事に次いで二番目の高支持率だというように伺っております。そうした広瀬知事から、参考人として先ほど、道路に対する必要性、緊急医療あるいは歩道整備、わけても市街地、学校周辺、さらにまた災害や、東九州自動車道あるいは中九州等々、道路は命をつなぐ、あるいは活力を生み出す必要なものだ、こうした陳述をお伺いいたしました。

 そこで、冒頭お伺いをさせていただきますが、国が進めようとしている道路の中期計画につきまして、参考人として、地方分を含めたお考えをお聞かせいただきたいと思います。

広瀬参考人 実は、中期計画につきましては、我々の九州の地方知事会の方で、せっかくこういう議論があるときだから、ぜひ、九州としてどういう道路の整備が必要だろうか、そこのところをよく勉強して、そして国の方にも話を持っていこうじゃないかということで議論をいたしました。

 その中で、高速道路や高規格道路あるいは国道、県道等をあわせまして、こういう道路がぜひほしいなというような話をしながら、実は、六兆円規模の九州なりの計画をまとめて、それを、十八年の五月だったと思いますけれども、国土交通省にもあるいはまた議会の関係の方にもお示しをして、九州としては中期計画の中にこういうところを盛り込んでもらいたいと思っていますということをお願いした経過があります。

 その中で、何でもかんでもというわけにはもちろんいきませんので、大変長い間大分県でも議論をされておりました太平洋国土軸の方の橋とかそういうものはとにかく一応落としまして、一応絞って、六兆円の計画をつくって、こういうところを九州としてはお願いしたいということを申し上げました。私も、それが反映されているというふうに考えております。

杉田委員 ありがとうございました。

 続いて、また広瀬参考人にお尋ねをしたいんですが、先ほど来、暫定税率、また一般財源化のことにつきましても、百五十億の地方分、あるいは二百億を一般財源から繰り出しをしなきゃいけない、合わせて三百五十億等とお話を承りました。

 そこで、これらの予算、財源、今民主党が主張するような暫定税率が廃止された場合、地方の道路整備への影響について、大分県の場合どのぐらいの具体的な影響が出てくるのか、教育や福祉も含めた観点から御説明をいただきたいと思います。

広瀬参考人 恐れ入ります。

 大変残念なことですけれども、仮に暫定税率廃止ということになりますと、大分県の場合には、道路の関係、これまで県債を発行してまいりました。その県債の支払い、これはやらざるを得ませんから、県債の支払いをやっていく。そうしますと、残ったお金で、これまでつくった道路の維持管理も十分にできないというぐらいでございまして、新たに道路を起こす、事業を起こすということはほとんどできなくなるのではないかというふうに危惧をしております。

 と申しますのは、先ほど申し上げましたけれども、暫定税率も含めまして、地方の道路関係税で私どもに来るのは百五十億でございます。それに二百億を一般会計から投入して三百五十億円。そのうち二百八十億円で県債を返しているわけですから、残りは七十億円。暫定税率が廃止になりますと、この七十億円がなくなるということになりますから、そうしますと、本当に、借金を返した後の事業を起こす種になるお金がなくなるということになるわけです。

 すべてを公債で、県債を発行してやったらいいじゃないかというようなことになれば別でございますけれども、とても負担のすべてを次世代の方に回すようなことはできませんので、そういうことになりますと、やはり事業をストップせざるを得ないことになるというふうに危惧しております。

杉田委員 ありがとうございます。

 続いて、同様の質問を太田参考人にお尋ねさせていただきます。

 先ほど来から、一般財源化、暫定等々、資料をもって御説明いただきました。私も、大いに賛同する者の一人であります。また、中期計画につきましても御説明をいただきましたけれども、さらに、効率の高い事業から実施する姿勢がある、この部分について、中期計画についての評価を承りながら、詳しくお話を承りたいと思います。

太田参考人 どこまで詳しくかという話はいろいろあると思いますが、私自身は経済学者なものですから、BバイCは重要だと思っています。しかし、その一方で、BバイCが一以下のものをやってはいけないというのは、むしろちょっとおかしいと考えています。

 例えば、駅のバリアフリー化、これは一応民間がやっているものですから、公共事業ではないのでBバイCの話は余りしないんですけれども、バリアフリー化をしてBバイCが一を上回るというのはなかなか難しい。しかし、それはある社会的な考え方からやらなければいけないものである、そういうことですね。

 そこで、今回の中期計画に関しましては、国際競争力の観点から、あるいは生活道路の観点から、安全、安心の観点から、それはいろいろ分かれていますが、おのおのにおいて基準を決めて、効果の高いものから順番にやりますということを提示しているところは非常に重要だと思います。

 ただ、議論としては、ちょっと高規格幹線道路系の話が多いんじゃないか、安全、安心の部分が少ないんじゃないか等々の、バランスの割り振りの問題は、やはりかなり議論はあると思います。しかし、それに関しては、各年度の予算でチェックをされて修正されていくものだと思っておりますので、昔のような、特に事業評価が導入される一九九八年より前のようなおかしなことは、今回の計画がきっちりと実行されればなくて、昔に比べると随分、納税者が払ったお金は有効に使われるようになるというふうに私は考えています。

杉田委員 引き続いて、もう一問お聞かせをいただきたいと思います。

 先ほど、ガソリン税、一般財源化の場合には、消費税化に見合わせた場合には七%相当に匹敵する、このような御意見を承りましたが、仮に民主党が主張するような暫定税率廃止、一般財源化といった場合のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

太田参考人 実は、私自身の基本的な考え方は、受益を得た者がそれを支払うべきだというふうに考えています。そういう意味では、道路利用に関して言うと、税という名前がついていますけれども、これは道路利用料金なわけです。したがいまして、それはやはり、入ってきたものと出たものをこうやって均衡させなきゃいかぬということですね。

 これは、こういうことです。道路公団を民営化するときにいろいろな議論があって、補助金をカットしたわけですね。補助金をカットしたというのはどういうことかというと、入ってくるのと出てくるものを受益者負担で完全に一致させなさい、そういう話だったわけです。補助金をカットしたということは、受益と負担を一致させるということでありますので、今般の民主党さんの提案だと、補助金を出すという話と同じですね。一般道路に対して補助金を出しますという話になりますので、民主党の御主張が、道路公団の民営化、あれはよかったと思っていらっしゃるか悪かったと思っていらっしゃるかわかりませんが、政策としては恐らくこれは一貫性がないというふうに思います。

杉田委員 大変ありがとうございました。

 続きまして、松下参考人にお尋ねをしたいと思っております。

 先ほどは、イギリスやオランダとの比較、あるいはケンブリッジ等の研究の発表をなされました。費用対効果、あるいは無駄が多いとか、CO2が二百二十億トンなどなど、あるいはまた基礎データが必要である。最後、ちょっと私は気になった言葉があったんですが、たかが道路という発言もなされました。それらについて、今からお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほどのイギリスとの比較の中で、今回の中期計画(素案)の五十九兆円、これは大変無駄だと。松下参考人がいろいろと雑誌等々でも述べておられるように、これは、アメリカやドイツあるいは英国を含めた三カ国の十年分の道路建設費に匹敵するのではないか、過大過ぎるのではないか、こういうようなことを発言なされておられますけれども、そのあたりの根拠というものをお示しいただきたいと思います。

松下参考人 重要な質問であると思います。

 端的に言いまして、イギリスの道路にかける国家予算は年間八千億円程度でございます。日本は、今、世界銀行などの統計を見ますと、公共投資が数年前までは約五十兆円、その中の道路の予算は十二、三兆円ございました。現在はシーリングなどで減らされて、公共投資に回すお金が四十三兆円程度でしょうか、減ってきております。道路はしかし余り減らないで、十一兆円前後ではないかと思います。こういう巨額なお金を使っているわけです。

 ですから、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、この国の道路予算を合わせた金額を日本は今でも使っているということでございます。

杉田委員 アメリカ一国だけでも道路予算というのは十七兆円ほど投資をされている。それは、今の参考人の、米英独の三カ国の十年分に我が国の五十九兆円は匹敵する、こういうことでありますが、このあたりの根拠、十七兆円をアメリカのみで使っているという、そのあたりをお示しいただきたい。

松下参考人 アメリカは、私が調べたところでは十二兆円と聞いております。年間十二兆円。ですから、アメリカを入れてはまずいと思いますね。アメリカを外した先進五カ国ということでございます。

杉田委員 米英独じゃなしにして、先進五カ国、それはどこでございますか。

松下参考人 そうです。イタリアまでの先進国ですね。

杉田委員 では、雑誌の記事内容とは若干違ったところがあるということですね。(発言する者あり)

竹本委員長 お静かにしてください。

 では、杉田元司君、もう一度。

杉田委員 わかりました。

 では次に、引き続いて松下参考人、お伺いをさせていただきます。

 先ほど、減税分二・六兆、こういう御意見がありました。二・七兆とおっしゃられましたけれども、二・六兆であろうと思っております。

 その二・六兆のことについてお伺いをしたいのですが、ここも雑誌等でもお触れになっておられますけれども、二兆円の経済効果を生むと。先ほどは、輸送あるいは農業分野も含めて、製造業も含めて三・五兆円の波及効果がある、こういう御意見を賜りましたが、その三・五兆円の根拠というものはどのあたりにございますか。お伺いをいたします。

松下参考人 経済効果は、イギリスの報告書なんかを見てみますと、単に産業への影響だけではなくて、ドライバーが受けるユーザーベネフィットだとか、税収への影響とか、被害を受ける産業、特に建設業ですね、それから信号機や道路標識などをつくっている関連産業、こういうものが工事が減ることによるダメージというものを、ケインズの乗数効果等を考慮しながら考えていく、そういう広い視野での経済分析、日本ではまだまだ余りやっていないようですが、そういう分析が必要。また、経済効果といいましても、もう少し所得階層別に、四階級ぐらいに分けてその影響を見ていかなきゃいけないということで分析しているようであります。

 その点で、三・七兆円というのは、税収が二兆七千減りますけれども、家計所得が二兆七千ふえる。それが小売業やサービス産業に配分されていくわけですが、その過程でケインズの乗数効果、これが消費性向をどの程度に見ていくかということは御議論あるでしょうし、専門家の太田先生なんかは詳しいと思われますけれども、仮に乗数効果が二倍程度出るというふうに見ると、二兆七千の減税が、GDPの押し上げ効果、五兆四千ぐらい出る。それに対して、先ほど言った建設業及び信号機などをつくっている関連産業がマイナスの一兆五千とか一兆二千とか出ると思いますので、その差し引きが三兆七千ぐらいになるということでございます。

杉田委員 時間の関係で、またございましたら、後ほど伺わせていただきたいと思います。

 戻りまして、広瀬参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 石油が高騰しておりますこのさなかでありますけれども、暫定税率を廃止してガソリンの価格を引き下げる、こういった対応が今出ておりますが、こういった対応については、参考人はどのようなお考えをお持ちでございますか。

広瀬参考人 ガソリンの価格が日本の国策でいろいろ決められるものであるならば、この議論は一つの議論だろう、こう思っているんですけれども、ほとんどが海外からの輸入、そして、その値段は産油国とそれから投機筋の議論で、需給の中で決まっていく、世界の需給の中で決まっていくというものでございますから、そういうものについて、一時的に今、値段が高いからといって税金を抑えて値段を下げるということが、この石油価格の高騰対策に果たしてなるだろうかということを、むしろ私は危惧をいたします。政策として妥当なものではないんじゃないか。

 今、石油の値段が大変高騰した、こう言っていますけれども、もう数十年前に日本は石油危機を経験いたしました。そのときは日本のエネルギーの七七%を石油に頼っていたんだけれども、それからいろいろ努力して五〇%まで石油依存度を下げてきた。そういう中でエネルギー効率も上げてきた。エネルギー効率だって、きっとアメリカの二倍ぐらいあります。中国の九倍ぐらいあると思います。

 そういう中で、さらにまた円の価格も、値段も上がってきた。当時は二百七十円ぐらいしていたと思いますけれども、今は百十円前後になっていますよね。それだけの購買力もついてきたというようなことで、そういう省エネルギー努力や、あるいは産業努力、経済努力等によりまして、何とか今これだけの値上げがしのげてきているところがあると思う。ほかの国に比べて、この石油の値上がりのショックというのは、今回は日本は随分少ないという気がするわけでございます。

 そういうことをやっていくことが大事なので、大変我々にとっては石油の値段が上がってきたというのはつろうございますけれども、特に地方は大変につらいんですけれども、公共交通機関がありませんから自動車に頼るところがあって非常につらいんですけれども、しかし、だからといって、石油の税金を下げて値段を下げるということが、長い目で見て、この問題に対抗する処置としては適当なものかどうかということについては、私はむしろ疑問に思っております。

杉田委員 引き続きまして、広瀬参考人にお願いいたします。

 先ほど、シーリングの話がございました。国が三%、大分県は一〇%というようなお話でございます。シーリングですね、一〇%。先ほどは、無駄を省くために農道や林道もあわせた、そうした事業見直しを図っておられる、こういうような御説明をいただきました。

 そこで、大分県の道路予算というのは、道路特定財源だけでは足りない、これはお話しのとおり。一般財源を充当しておるのもお話しのとおりでありますけれども、その状況を踏まえた場合に、地方の道路特定財源の一般財源化というのは、例えば中期計画は五年という中で、今現在、これから五年を見通した場合、この一般財源化というのは実質的に意味があるものなのかどうか、そこをお聞かせいただきたいと思います。

広瀬参考人 無駄を省くという意味で、県の予算を組むときに、国の補助金等と連動してやっているものについては三%削減、これは国が三%削減しておりますから三%削減。しかし、できるだけ交付金、補助金を入れようというふうに思っています。地方単独の分は一〇%減というようなことでシーリングを設けて、年々削ってきているというのが現状でございます。

 そういう中で、地方にとっての一般財源化というお話でございましたけれども、私どもは、先ほど申し上げましたけれども、むしろ地方に来る道路特定財源、百五十億円ありますが、これに加えて、それ以上、二百億円の一般財源を、これは何にでも使える一般財源です、これを道路にということで投入をして、その元金をつくっているわけでございますから、地方に来ている道路特定財源のところを一般財源化する、こう言われても、特にそれはありがたいという感じはないわけでございます。むしろ、総額をどうやって維持するかということに頭がいっぱいでございます。

 加えて、心配なのは、先ほど太田参考人のお話にもございましたけれども、受益に対して負担をしているということでございますから、道路の整備のために配られるということで今やられているわけですけれども、一般財源化して何にでも使ってもいいよということになりますと、結局その配分方法については、面積や人口やというようなことで、そういうやり方で配分されるに違いないわけですね。

 そうなりますと、これから道路をつくってもらいたい、道路需要の高いところにたくさん配分すべきじゃないか、こう言っている我々にとってみますと、この一般財源化で、また地方交付税、一般の交付税と同じようにばらまきでやられて、そして地域間の税の偏在が議論になるというようなことになっていくんじゃないかというところを、配分を受益と負担でやるからこそ、そこのところは道路のために配分されるというところが大変重要なことで、配分方法を間違えますと、どうでもいいことではなくて、むしろ大変弊害のある制度になるということも心配をしております。

 ちなみに、私ども地方の場合には、道路も整備されておりませんけれども、公共交通機関もありませんから、一世帯当たりの道路関係諸税の負担は、東京の一世帯当たりに比べますと三倍ぐらいになっておりまして、年間九万円ぐらいになっております。しかし、彼らがやはり払ってくれているのは、将来は、もうすぐ道路が来るからだということでやっているわけで、それを配分方法もわけのわからない形で一般財源化と言われても大変に困るのではないかというふうに心配をしております。

杉田委員 実は私も、愛知県といえども、名古屋と、全く一番遠い山間地を抱えた、大分県事情と似通った部分のある出身でありますので、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 時間が限られてまいりましたけれども、太田参考人にお伺いをいたします。

 端的に、今民主党が主張されている直轄の負担金の廃止、それから一括交付金について、時間が限られてまいりましたけれども、御意見が伺えればと。

太田参考人 今、端的にということですけれども、端的にお答えするのは非常に難しい問題です。これは本当に、恐らく一週間、二週間の審議で解けるような問題ではないと思います。地方の独自性も重要ですが、モラルハザードを起こしてはいけないという部分もあります。

 そういう意味では、制度をいきなりここで激変するというのは、非常にいろいろな効果、影響、悪影響もありますし、そういう意味では、この問題につきましては、五年後に見直しをするということですから、その間にきっちりと議論していただいて、どのような影響が地方に及ぶのか。それから、今、広瀬知事の方からもございましたけれども、交付税の場合、どういうふうに配分されていくのだろうか。これは地方の皆さんはかなり死活問題だと思うんですね。そういう意味では、そうそう軽々に答えられるものではないというふうに考えております。

 とりあえず、やはり激変をせずにスタートして、五年間じっくり検討するべきだというふうに考えております。

杉田委員 大変貴重な御意見を承り、ありがとうございました。

 以上で終わります。

竹本委員長 これにて杉田君の質疑は終わりました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 四人の参考人の皆さん、お忙しい中、ありがとうございます。

 冒頭、広瀬参考人にお伺いをしたいと思います。

 私も地方出身ですから、広瀬参考人がおっしゃるように、必要な道路というものは当然これからも整備をしていかないとという観点から、今までの、きょうの御発言だけではなく、知事会の前の御提言のものも含めて、お話をお聞かせいただきたいと思います。

 以前から、知事会も含めた地方六団体から、今回のこの法律の中に入っていますいわゆる国直轄事業の負担の廃止というものを要望されております。仮に今回、この法案がこのまま通ってしまうということになると、従来から六団体として御要望なされていた国直轄事業負担金の廃止というものはまたさらに遠のくのかなというふうに思うのですが、その点については、広瀬参考人の御意見、どのようなお考えでしょうか。

広瀬参考人 後藤先生おっしゃるように、これまで地方六団体では、国の直轄事業負担金を廃止してくれということを言ってまいりました。これは、もう御承知のとおりでございますけれども、国の直轄事業をやめてくれということではないんですね。直轄事業を前提にして、その負担金を廃止してくれということでございまして、やはり直轄事業についての必要性というのは、我々、むしろ認めているところでございます。

 ただ、負担金については、それなりに我々、ぜひこの直轄事業をやってくれ、こう言ってきて、実際自分でやるよりも相当楽になりますから、それはそれでいいんですけれども、それでもやはり負担金というのは大変重いものがありますから、できるだけそれを廃止して全部直轄でやってくれないかということが一つと、もしも負担をするという場合にも、かくかくしかじかでこれだけのコストがかかって、こういうふうになってという算定根拠みたいなものをもう少し明かしながら、したがって、これだけを負担しろというようなことでやってくれればありがたいというようなことで、むしろその負担の額を減らす、あるいはその負担の仕方についてもう少し透明性を確保してくれというようなことで言っておったところでございます。

 直轄事業そのものは我々はぜひ続けてもらいたい、こう思っております。

後藤(斎)委員 広瀬参考人にもう一点。

 今のようなお答えかなとも思っておるんですが、一つ言えるのは、知事は、もちろん、それぞれの県の中のトップリーダーとして、最終的にいろいろな行政判断をしていくというお立場に当然あります。

 その中で、先ほど、仮にこの道路特定財源を一般財源化してしまうと、むしろ交付税のようにばらまき的になってしまうというお話もございました。しかしながら、一方で、現在でも地方道の整備、県道、市町村道を含めて、約六割の一般会計、自主財源とセットにして道路整備をしているのが現状であります。

 仮に一般財源にきちっとした形になっても、知事がきちっとした住民の方からの要望、そして、これからの県道ネットワークをどうしていくのか。先ほど安全の問題や産業活性化の問題も含めてお話をされましたが、そういう部分からいえば、むしろ、一般財源化にきちっとして、それを知事の御判断で道路整備していくということの方が、これからの地方分権、地域主権の中ではるかに正しい判断だと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

広瀬参考人 後藤委員の御指摘のように、地方の財源を一般財源にする、そして、それを今度は地方自治の原則のもとで地方が自主的に使っていくということが非常に大事だということは、私どももかねてから申し上げているとおりでございます。

 そういう中で、この道路の問題についても一般財源化という御議論をいただいているというふうに承知しておりますけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、一般財源化をしたときに、本当に一般財源としての財源が確保できるんだろうかというのが、まず一つあります。暫定税率の維持もしないということになりますと、本当に財源があるのかどうかというところが心配でございます。

 それからもう一つは、そのときの配分方法について、ばらまきにならないようにどうやって道路の需要に応じた配分をやるんだろうかというところに知恵を出さなきゃいかぬかなと思っているところです。

 実は、三位一体改革というのがありました。これは、一般財源化の議論を一生懸命我々はやったわけでございます。そこで、四兆円に及ぶひもつきの補助金とかなんとかをカットした。そのかわり税源を移譲してもらおうじゃないかということで、税源移譲は三兆円にとどまった。その後、足らず前は地方交付税で見てくれるのかな、こう思ったら、地方交付税の方が五兆円切られたという苦い歴史があるものですから、なかなか一般財源化と言われてもということでございます。

後藤(斎)委員 広瀬参考人、これで最後にしますが、今、広瀬参考人がお話しになられたように、今のこの法案は、一般財源化、道路特定財源を維持するかどうかというのが基本の法案の質疑であります。

 暫定税率は少しおいておいて、仮に暫定税率部分の今までの税収が確保でき、なおかつ、今のお話ですと、今までの政府のやり方は余り信頼できないよなということはおいておいて、信頼ができるということの前提で、道路特定財源でなくても、一般財源にしても総額が今の水準で確保できるという前提であれば、一般財源化をしてもよろしいというお立場でしょうか。

広瀬参考人 私ども、そういう意味では、今でも一般財源を相当投入してやっているぐらいですから、一般財源化したら困るというようなことは、今のような前提があれば、特に議論するほどでもないんです。

 ただ、よくよくそのときにお願いをしておきたいのは、総額の確保が本当にできるのか。国の補助金や交付金や、あるいは直轄事業といったようなものも、大変に今有効に活用しています。むしろ、我々は、ぜひ直轄事業でやってくれ、あるいは高速道路をやってくれという陳情は毎年やっているぐらいでございますから、そこのところとあわせて財源がちゃんと確保されないと、やはりこれはおかしなことになるのではないかというのが一つ。それから、配分方法についての問題。それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり受益と負担というところの関係がしっかり言えるかどうかということだと思います。

 特に、先ほど太田参考人も言っておられましたけれども、消費税との関係とかなんとかを考えますと、やはり特定財源だから説明がつくところもあるというような気もしましたし、そのあたりが気になるところでございますけれども、そこはいろいろ議論のあるところだと思いますから。

後藤(斎)委員 ありがとうございます。

 松下参考人にお尋ねをいたします。

 松下参考人は、ケンブリッジ大学と連携をしながら、道路を中心とした費用対効果の分析をされております。今回、この法案は、道路特定財源を維持しながら、今後十年間、道路整備をしていこうというものでありますが、その前提になります事業量をどうするか。

 道路をどうつくっていくかというのは、いわゆる道路中期計画で、今その議論も並行的にやられておりますが、そのBバイCの国会の中の冬柴大臣の答弁でも、基本的にはBバイCが一・二以上ですよと。しかしながら、一・一になったら、一・〇以上になればいいなというような、いろいろな、まだきちっとした形での固まったものにはなっておりませんが、むしろその不透明さを私たちは指摘をさせていただいています。

 今までの松下参考人の御経験も含めて、今回の中期計画でのBバイCの問題点を、欧米のBバイCの観点も含めて、端的にお話をお聞かせいただきたいと思います。

松下参考人 BバイCというのは、わかりやすく言いますと、建設費を分母に置いて、経済効果を分子に置く、その比を出す、レシオを出すということで、いろいろな代替案も含めて、この計画が国民の税金を使ってやる価値があるのかどうか、高い価値があるのかどうかを判定するもので、比較法なんですね。ですから、絶対的な数字を、一だからいいとか、〇・一だからやらないとか、そういうことではない。〇・一でも、本当に国民が望めば、地域が望めばやるべきものなんです。

 ただ、問題としては、日本の場合には、一以上ならばやるのかやらないのかとか、あるいは、計画がもう決定されているのにその後から費用対効果分析が出てきて意見を聞くような、そういうふうな形が非常にアンフェアである。外国の経済学者とか環境、それから厚生経済と言いますけれども、こういう公共投資を検討するような専門の学者さんから見ると、日本のやり方というのは非常にアンフェアである。インパーシャリティーに欠けている、いわゆる中立性に欠けているというふうに判断されるわけですね。

 今のお尋ねは、具体的に、なぜ効果の低い道路まで一以上にすべてそろって出てくるのかということだと思いますが、これは、道路のケーススタディーをいろいろ海外の事例を訳して書いておりますけれども、英国では道路と橋の評価マニュアルというものがあります。アプレーザル・マニュアル・オブ・ロード・アンド・ブリッジというものですけれども、厚さが一メーターぐらいになります。費用対効果だけではなくて、環境評価、社会的な望ましさ、その三点から道路建設や橋を分析していこうというものです。

 そのとき使われる数値というのは、この前、ミーキングさんという運輸省の経済環境評価部長、こういうM25環状高速道路なんかをつくるときに国民に説明していく、そういうトップの方ですけれども、その方からアプレーザル・マニュアル・オブ・ロード・アンド・ブリッジのドラフト案として、一九九八年のドラフトですから実際に施行されたのは二〇〇〇年ぐらいの数値ですけれども、時間価値として乗用車のドライバーは一千二百ペンス。今、ポンドが二百十二円ですから、昨日、三菱銀行で確認しましたら二百十二円です。一ペンスは二・一円です。これを掛けると約二千五百円ぐらいですね、一時間当たり二千五百円。それはワーキング、労働時間内です。ノーワーキング、労働時間外の、買い物とかレジャーのときのドライバーの価値は三百十五ペンス。ですから、二・一円掛ければいいわけですから六百五、六十円です。こういうふうに差をつけて費用対効果の計算をしなきゃいけない、これでないと国民の実感に合わないというふうに規定しているわけです。

 ところが、日本は一律三千七百円とか、ちょっと前までは五千円とか八千円を使っていたわけですね。そういう数値を使っているがために、海外の費用対効果に比べて五倍から十倍ぐらいの非常に高い効果が出ちゃうわけです。これによって日本は、後で説明しますが、海外に比べて十倍、二十倍、三十倍という高い建設費をかけているにもかかわらず費用対効果比が一以上になってしまうというトリックがあるということです。

 これはやはり変えなければいけない、国民の実感に合わせた数値を使用しなければいけない。非常にアンフェアだというふうに思います。

    〔委員長退席、西銘委員長代理着席〕

後藤(斎)委員 ちょっと松下参考人には、後ほどまた幾つかまとめてお聞きします。

 太田参考人にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど、資料に基づきまして太田参考人の方から、「特定財源制度と一般財源化の是非」並びに「暫定税率の存廃とその含意」ということでお話をいただきました。

 二つほどお聞きをしたいんですが、この資料の中にも入っておりますが、「小泉改革の基本は、規制緩和、」云々から「一般財源化はこの基本に逆行している。」という御指摘がございます。これはちょっと具体的に、少なくとも私が承知している範囲では、小泉さんが総理の時代、政府・与党合意で、少なくとも一般財源化を前提として議論を加速度的に進めていたと思うんですが、その点も含めて、簡潔で結構ですから、この趣旨をお尋ねしたいと思います。

太田参考人 私は小泉内閣の一員でも何でもないので、どういう趣旨でそれがなされたかということはちょっと申し述べられませんが、道路政策について、それがどういうことを意味しているのかだけ、ちょっとお話をします。

 一般財源化がもし正しいとするならば、道路公団は国営化して、高速道路使用税を取って、高速道路使用税を一般財源化して福祉に使えばいい。なぜ道路公団は民営化して、こっちの方はこうするのか。もしそうであるならば、道路特定財源は例えば道路信託基金にし、道路局は旧郵政省みたいに道路公社か何かにし、むしろ、そっちの方が小泉改革の趣旨に沿っていると私は思うんですね。

 そういう意味では、ちょっと道路政策に関しては、やっていることが矛盾しているな、道路政策としてはですよ。もちろん、これはこういうことを申し上げるべきことではないのかもしれませんが、何か道路族というものがあり、その道路族に対して何かをしたいということでこういう提案が出てくるとするならば、それは道路政策とは関係ない話と私は思っております。

後藤(斎)委員 太田参考人、このペーパーにはないんですが、先ほどお話をお聞きした中では、受益と負担の原則を徹底的に追求していくと、太田参考人の御議論ですと、道路は基本的にはすべて有料道路であって、そこに対する対価として道路利用料、料金として、今の税負担を道路特定財源としているんだというお話を先ほどされたと思うんです。

 むしろ、日本も、高速道路が世界で一番高いというふうに言われながら、利用料で現在負担をしている高速道路以外は、基本的には無料の道路である。これは広瀬参考人からも先ほどもお話がありましたように、少なくとも生活をする、命を守る、そういう経済活動をするということであれば、受益と負担という、税との関係を除けば、基本的には道路というのは無料というものが原則であって、それに負荷をかけるというか、プラスの経済的な利益が得られる高速道路については、利用料という形で違う仕組みをつくっているというふうに私はずっと思っていたんですが、その点は、やはり道路はまず有料であるべきであり、ガソリン税等は道路の利用料金として支払うべきだということなんでしょうか。

太田参考人 どのような公共サービスが無料であるべきかということに関しては、いろいろ議論は難しいと思います。大学教育は無料であるべきだ、福祉はすべて無料であるべきだ、あるいは公共交通の利用はすべて無料であるべきだと。運輸というものは国民生活を支えているのであって、トラック輸送は全部無料であるべきだ、それをすべて一般財源で賄うべきだという議論もあり得ると思います。ちょっと社会主義的になってしまうかもしれませんが。

 したがいまして、それは、国民の合意の中の範囲内でどうあるべきかということは詰める必要があるかと思いますので、私は、道路に関しては、特にやはり鉄道、航空、JR貨物等々、その辺との関係があって、適切に負担してもらわないとそれはダンピングになってしまうので、それは非常によろしくないというふうに思っております。

 交通政策としては、費用負担はバランス論なので、したがいまして、道路を無料にするのであれば、これは鉄道も全部補助金を出して無料にして、航空機も無料にして、バランスをとらないと、交通政策としては非常にまずいと私は考えております。

後藤(斎)委員 そうなると、太田参考人、先ほど広瀬参考人にもお尋ねをしたんですが、現在でも地方道の整備については、道路特定財源以外の一般財源、一般会計から六割の負担をしながら地方道の整備をしているという部分については、今、太田参考人のお話を突き詰めていくと、バランスのとれていない仕組みだというふうなことで理解をしてもよろしいんでしょうか。

太田参考人 どのようにして費用負担が決まったのかということについて、昔の話に関しては今から見ると推測するしかありませんし、それが適切かどうかは今は判断は違うかもしれません。

 しかし、有料道路にしろ国道にしろ、それを一〇〇%に近く道路特定財源、ユーザーフィーでやっているというのは、これは通過交通であるということなんですね。通過交通であるから、その地域の人たちにとってみれば、逆に言うと迷惑がかかっている。迷惑がかかっているので、その地域の人たちにお金を払ってくださいというのはおかしいでしょう、なので、道路ユーザーが直接払いなさいと。

 一方、地方道に関しましては、これは先ほど歩道の話とかいろいろ出ておりますけれども、生活道路というのは、自転車も使えば歩行者も使う、あるいは、例えば下水道とかそういうものも道路の下に埋まっているわけですよね。

 したがいまして、考え方としては、国道系、幹線道路系については、道路ユーザーが全額払ってもらうのが受益者負担の考え方に合っているでしょう。地方道に関しましては、何で半分なのかよくわかりませんが、道路ユーザー半分、それから固定資産税か何かいろいろなものの一般財源半分で、それで受益というのはまずいいのかなというような判断で始まったと思うんです。それが今合致するかどうかはまた議論が必要かもしれません。

 ただ、非常に大きな問題は、県道と市町村道はどこが違うのかとか、国道でも直轄国道と一般国道はどう違うのか、一般国道と県道というのは余り変わらないよねとか、そういう道路種別の問題があります。これは長い間の経緯もありますし、当然、交通状況が変わってまいりますから、それに応じて、道路の格付問題というのは非常に大きな一つの議論だと思うんですね。

 これについても、やはりかなり時間をかけてきっちり整理しなきゃいけない。今、国土交通委員会では、飛行場の、空港の種別の変更の話が恐らく議論されていると思いますが、そのぐらい真剣に、道路種別の議論、種別ごとの費用負担のあり方については議論していただきたいというふうに思います。

後藤(斎)委員 太田参考人に最後にしますが、このペーパーの中で、「特定財源制度は、有効に機能するのであれば、一般会計よりも優れている。」という前提の中で、「一方で、長期間続いた制度であれば、多くの問題も発生する。問題解決の方法としては、」1、2ということで修正する、変革するということがありますが、太田参考人、簡潔で結構ですから、これは具体的にどのようなイメージでお考えになられているか、お示しをいただければと思います。

太田参考人 前者の方ということですか。(後藤(斎)委員「はい」と呼ぶ)それは、例えば、今度中期計画でああいう形で出しましたが、効果の高いものから必ずやれ、必ずそれについては報告しなさいというような形のものを強制するような仕組みをつくるというのも一つかもしれません。しかしながら、そもそもどうやって効果をはかるのかということに関してもきっちり詰めた上でやっていかなければいけないと思います。

 もう一つは、やはりコストの問題に関しては、一般競争入札をどういうふうにうまく機能させていくのかとか、実際、設計基準みたいなものがかなり厳密に決まっている中で、もう少しPFI型の総合競争入札をやるとか、いろいろなやらなければいけないことがあります。それは、実は、特定財源制度か一般財源制度かとか、特会かどうかという問題ではなくて、そもそもやらなきゃいけないことだ。

 ただ、私は、恐らく、ここは国土交通委員会なので申し上げますが、コントロールは小さい方がコントロールしやすいのであって、一般会計の中に入って、では農水省の林道とこっちの道路とを比べて、当然、一般会計というのは一緒に議論しなきゃいけないわけですよね。対象が小さいほどコントロールがしやすい。国鉄の分割・民営化もそうですし、道路公団も三つに分けたというのは、まさにコントロールしやすさという、サイズが恐らくあると思うんですよね。ただでさえ、地方費も含めて六兆とか、そのような大きなものをさらに七、八十兆のところの中に入れて全体でコントロールするというのは、かなり大変なことだというふうに思います。

後藤(斎)委員 四人の参考人の方にそれぞれ、本当に簡潔で結構ですから、最後にお尋ねをしたいんです。

 もちろん、社会資本、交通体系というのは、公共交通というのは、道路だけではなくて、バスも鉄道もというふうにございます。その中で、それぞれのお立場の中で御苦労なされているわけですが、やはり総合交通体系、社会資本の全体の中から道路というものを位置づけて、財源をどうし、事業をどうしということをやはり議論しなければいけないと思うんですが、広瀬参考人から、まずその点について、社会資本全体の交通体系の中でどのようなお考えを持たれているのか、道路というものを。

広瀬参考人 確かに、総合交通体系の中で位置づけていくというのは大変大事なことだと私も思います。ただし、現実の問題として考えてみますと、本当にそういう総合的に考えていける地方というのは少ないんじゃないかと思うんですね。

 少なくとも、大分県の場合には、やはり道路を中心に考えていかざるを得ないような状況なものですから、ですから私どもは、本当に暫定税率の維持と特定財源の維持ということをお願いしているわけでございます。

松下参考人 私は、英国やオランダの交通関係の本当にトップの方とお話しして、あるいは学者でも、ノーベル賞をじきとるだろうというようなエシュニック先生なんかとお話しさせていただく、そういう方とお話しすると、理論は道路に関しては要らない、一円でも安くつくることが国民の利益になるんだ、そういう考え方で徹底してやっております。民営化とかDBFOというのも、すべてその趣旨から起きていることであります。

 日本でも、道路が安くできれば、今回の問題でも税率だって下げられるし、完成したときの通行料も安くできます。それから、過大になっている借入金の増加も抑えられます。建設費というのが本当に安いんです。これを一円でも安くつくるということを皆さんが、議員さんもお役所の方も含めて、国民も含めて、一生懸命考えなきゃいけない時期に来ているんじゃないかと思うわけです。

 英国は、年間八千億円の予算で、日本に匹敵する高速道路を持っております。その原因をちょっと考えれば、日本は税金を上げなくても、今の計画は十分できるわけです。

 それはどこが違うかといいますと、まず、具体的にちょっとお話しさせていただきますと……

西銘委員長代理 なるべく簡潔にお願いします。時間が終了しています。

松下参考人 はい。

 日本で今つくっている圏央道、首都圏四十キロを走る四車線の二百三十キロの環状高速道路、非常に重要だと言われています。四兆円の建設費です。しかし、現在の見積もりが、完成時には十兆円になるんじゃないかと。既に三十年経過して、まだ建設中である、完成のめどは立たない。設計速度は八十キロから百キロ、四車線、二百三十キロであります。すべて借金で行う。

 それに対して、安くつくる英国の考え方を端的に示したいと思いますが、M25という半径三十キロを走る環状高速道路です。これは一九八六年に完成しましたが、六から八車線です。百八十キロの全長であります。これが二千八百億円でできている。十年で完成している。一年が合意形成で、建設はわずか九年である。設計速度は百二十から百四十キロメートル、コンクリートが二メーターぐらい打たれた非常に頑丈な道路であります。それで、すべて税金で行う。

 これによって、こういう金額の差が出てくるわけです。これをまず認識していただいて、なぜこういうふうな差になってしまうのか、ここが一円でも下げられないかということが……

西銘委員長代理 質疑時間が終了していますので、簡潔にお願いします。

松下参考人 そうですか、はい。

 そういうことを我々はもっともっと議論していかなきゃいけない。そうしたら、増税をしなくても税金は十分有効に使えて、今、広瀬知事さんが提案されるようなこともどんどん実現できるわけです。

 その過程を、ちょっと時間がないので説明できませんが、我々の合意形成制度、計画前にしっかりと議論して、この道路がちゃんと必要なのか、そうでないのか、それを費用対効果や環境評価も含めて行う、そういう社会制度、そういうものをやはり我々はもう一回見直す必要がある。それさえできれば、安い建設コストというのが実現できますから、増税しなくてもいいということです。

 これは、自分たちの考え方を変えれば、仕組みを変えれば、あしたからでもできることです。ぜひそういう形で安い建設コストというのを皆さんと一緒に実現していきたいと思います。

太田参考人 社会資本は幾つかありますが、交通社会資本に絞って、しかも、ちょっと鉄道は別の枠組みとして話させていただきますと、空港と港湾はほぼめどがついた、重点投資しなきゃいけないところはありますが、めどはついたと思います。

 道路に関しては、まさに議論が分かれているところは、基礎インフラになってしまったのにもかかわらず、日本は真のモータリゼーションがなかった。つまり、馬車が走っている道がそもそもなかったので、用地がそもそもないところから始めなきゃいけなかったわけですね。そういう意味では、基礎インフラとしての道路というものはやはりまだまだ不足しているはずなので、それをきっちりつくる手当てが必要だということです。

 最後に一言だけ。一般財源化の問題は地方の方が有効かもしれませんが、インフラというのは将来に残すものですね。もし一般財源化されて何に使ってもいいよということになれば、恐らく首長さんは、福祉とか、すぐ反応するような、喜ぶようなものにお金をばらまく可能性はかなり高いだろうというふうに思っております。次の世代に基礎インフラを残すという意味においては、真剣に道路の問題は考える必要があると思います。

小井参考人 日本の道路は、ベルギーに次ぐ、いわゆる一キロ平方当たりの単位面積では世界で二番目に多い延長を持っているんですね。既設の道路は山ほどあるわけです。それに、例えば、一般国道五万キロほどしかないところに、地域高規格道路を入れますと約二万キロ、こういう新設の道路が必要なのかというところに目を向けて、徹底的にそこのところは議論をしてほしいな。既設の道路を少しやれば、人家密集地帯があるからそれは無理だ、こういう説が大勢なんですけれども、そうではないだろうと私は思います。昔のように家をちょっと、やり方によっては二メーターや三メーターは引き込むことが可能なんです、今の科学の力でやれば。

 そういった面で、基本的に不要な資産を将来の子や孫に残すということ自体が、一体、私たちの孫や子供たちはどうなるのと。五十年したら、人口が半分になることはないですけれども、先ほど言いましたようなことでいえば、必ず人口が減るということははっきりしているわけですね。五十年たったら車が半分になるんじゃないかという予想の中でそのことをきちっと考えていただければ答えが出るのではないかな、こういうふうに思っています。

後藤(斎)委員 ありがとうございました。

西銘委員長代理 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 本日、四人の参考人の方々には、貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 私の方からは、まず広瀬参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほどから一般財源化の問題がいろいろと議論となっていました。先ほど広瀬参考人のお話の中で、一世帯当たりの保有台数の比較から、東京の三倍納税をしている。特に自動車関係諸税ですね。そういった観点からいきますと、この一般財源化という言葉を聞くと、何となく改革なのかなみたいなイメージがかなり浸透はしていると思うんです、全体としては。

 しかしながら、納税者の理解を得なければいけないというのが原則だと思うんですね。特に公平感を持たなければいけない。先ほど、負担の公平でいきますと、東京と比べた場合に大分の場合には三倍の納税をしている。先日も予算委員会で我が党の井上副代表が質問をしたときに、これは国交省の資料を調べて参考にしたんですけれども、今最も一世帯当たりの車の保有台数の少ない自治体というのは東京の中野区、これが〇・二八八台。一番多いのは愛知県の飛島村というところですか、これは二・八八台。大体十倍ですね。

 そうなりますと、特に地方の方が道路がおくれているというふうに言われている中で、納税する県民の方々が多いわけですね。そこのところの公平感というふうなところから、広瀬参考人、どのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

広瀬参考人 今高木委員からお話があったとおりでございまして、やはり総合交通体系の問題がありましたけれども、地方の場合には、通勤通学、買い物、車に頼っている面が多うございます。そうしますと、一世帯が一台だけじゃなくて二台も三台も持っている。離島の方なんかは、毎日本島の方に来て仕事に行くものですから、島の方にも持っているし、こっちの方にも持っているというようなこともあるわけです。そんなことで保有台数も多い。したがって、ガソリンの使用量も多いということで、ちょっと申し上げましたけれども、一世帯当たりの負担は九万円ぐらいでございまして、東京の一世帯はたしか三万円ぐらいでございましたから、というようなことになるわけでございます。

 そこで、そういう中でもとにかく道路のために一生懸命負担をしてきた、そろそろ自分たちのところにも道が来るぞということでやっていたわけでございまして、そういう気持ちからすると、一般財源化してまたわけのわからない形で配分されるということになりますと、やはり住民の皆さんは大変に失望するだろうし、これまで何をやってきたのかという感じになってくるだろうというふうに思います。受益者負担というところをやはり徹底していただきたいというふうに思います。

高木(陽)委員 同じような形で、太田参考人にお伺いしたいと思います。

 太田参考人の最初の意見陳述の中でも、消費税の問題に触れられました。一般財源化と受益者負担をどう両立させるかというのが問題だと思うんですね。そういった観点から、重複する部分もあると思うんですが、もう一度御意見を伺いたいと思うんです。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

太田参考人 私の意見は先ほど申し上げたとおりなんですけれども、今広瀬知事の方からもお話がありましたが、地方部におきまして車利用が非常に必需的になっている。しかも、たばことかお酒とは違うので、たばことお酒につきましては消費税とは別な税金がかかっているわけですね、一般税収に入るために。違いますので、担税力があるからといってそれをもとに一般財源とするということは、消費税以上に逆進的だというふうに考えます。

 そういう意味では、これはここでの議論とは別なところでやらなければいけないと思うんですけれども、国の財政赤字を返すためには何とかせなければいかぬという話があった場合に、道路利用者から取る、より逆進的なものを使うというのは、公平性の議論に非常に大きな問題があると思います。

 そういう意味では、消費税の問題というのはすべての国民に影響しますので慎重に議論しなければいけないとは思うのですけれども、やはり負担は公平にしなければいけませんから、国債を償還するために何らかの負担を国民に求める場合に、まず所得の多い人からたくさん払ってもらいましょう、たくさん資産を持っている人からたくさん払ってもらいましょう、次は消費に対して平等に払っていただきましょう、そして最後に、どうしても、道路特定財源の方が少し潤沢ならお願いしますというのが恐らく順番だと思うんですね。それをいきなり頭から、担税力があるから払えというのは、これはかなり乱暴な議論だというふうに思っております。

高木(陽)委員 今の太田参考人からの御意見の中で、順番があるんじゃないかと。

 そんな中で今回も、この道路特定財源問題ということで法案が出てまいりまして、昨年の暮れそして一昨年の暮れに政府・与党で合意をして、特に一昨年の暮れは閣議決定までした。その中で、道路特定財源で、これはシーリングがかかりますからどうしても余る部分がある、その余剰部分を一般財源化しましょう、そういう考え方に立っているわけですね。そういった部分では、公平感をしっかりと保ちながら、受益者負担ということで特に地方の方々にもしっかりと還元できる、そういった観点からの今回の法案だと思うんですけれども、この点について太田参考人はどのようにお考えか。

太田参考人 直接お答えになるかどうかわかりませんが、まず一番初めにシーリングの話なんですけれども、シーリングをかけていること自体が、一般会計というのはお金をうまく配分できていないということだと思うんですよね。本来、シーリングがなくてもめり張りをつけられるんです。おまえのところはもう要らないんだからばんと減らせ、ここのところはふやせという話なので、シーリングがかかっているような一般会計は、私は余り信用していないということです。

 その中で幹線道路は、今後十年間で完成させないともう二度とできないので、やはりこれは必要だろう。その一方で、地方部の生活基盤としての生活道路をきっちり整備していかなければいけない。そういう意味では、この事業量というのはかなり私は適切なものだと思っております。それは、やはり道路利用者に負担してもらうのが筋で、地方部におきましては、先ほど申し上げましたように、二分の一なり三分の一なりを、一般道路ですけれども、地方部の財源で入れていただくというような形で、バランスのとれた形で、ある程度フレキシビリティーがある中で整備が進むんじゃないか。

 今回、重点化のことを非常にやっていますので、九八年より前のようなおかしなことは起こらないだろうと思います。ただ、それは監視していかなきゃいけませんので、今後五年間見て、やはり一般会計の方がすごく優秀だねというのであれば、一般会計の方でやりましょうという議論もしてもいいと思いますし、いや、特別会計の方が優秀だねということであれば、それでゆだねればいいと思います。

 つまり、これは世界じゅうで、一般会計でやっているところもあるし、特別会計でやっているところもあるので、それはまさに、本当に会計同士の競争として、よりよい政策をどっちが打てるか、そういうふうな視点で国民は見ているんだと思います。

高木(陽)委員 今回の道路特定財源問題で、政府・与党と野党の皆さん方と結構意見が食い違っている部分が多いんですけれども、特に民主党の皆さん方が、まずは暫定税率をなくす、そして一般財源化をする、さらには、必要な道路はしっかりつくって地方には迷惑をかけないという、こういった言われ方をしているんですが、現実問題、国の直轄関係の方は、これは減らざるを得ないというふうに民主党の皆さん方も結構主張されていて、そうなりますと、やはりこれは広瀬参考人にちょっとお伺いしたいんです。

 例えば、直轄事業が大幅に縮小されてしまう、地方は何とかしなきゃいけないんですけれども、大分県単独の、もし負担をかけないで、ここはしっかりやっていただくような形をとっても、いわゆる国の事業自体がずっと減ってくるわけですから、そのとき、特に幹線道路にかなり影響を、これは、新しいのをつくるだけじゃなくて、いわゆる補修だとか維持管理だとか、こういったことにも影響が出てくるように思うんです。そういった場合の例えば地元大分県としての影響、ここら辺はどのようにお考えか、伺いたいと思います。

広瀬参考人 大分県の場合には、なかなか財政が厳しいものですから、できるだけ国の資金を持ってこようという努力を、悲しいかな実はしているところでございまして、国の補助事業あるいは交付金をどうやって持ってこられるか。そしてまた、大変難しいところは、できるだけ直轄事業でやってもらおうというようなことでやっているのが現状でございます。

 つい昨年も、それまで県が管理をしておりました国道を、もう一度国の方に戻して、そして国の管理にしてもらって、そのかわり補修事業はそちらでやってくれというようなことでやっているというのが現状でございまして、そういうことからしますと、やはり直轄事業あるいは補助事業によっているところはかなり多いというのが現状でございます。

 特にまた、幹線道路、幹線のところは、県と県を結び、九州全体としてどうやって循環型道路をつくっていくかとか、そういうこととの関連もあるものですから、やはり直轄なり高速道路体系でやっていただくということが非常に大事なんじゃないかなというふうに考えております。

 したがって、一般財源化の議論がありますけれども、国の分、地方の分を合わせて、負担と受益の関係がちゃんと維持できるようなことを考えておいていただかないと、地方の分はもう全部面倒を見るからいいだろうと言われても、地方は決して喜べない現状にあるということをひとつ御理解願いたいと思います。

高木(陽)委員 今、広瀬参考人の方は、国と地方とのバランス、これをしっかりやってもらいたいということだと思うんですけれども。

 先日も、九州の東国原宮崎知事と民主党の菅代表代行が公開討論会をやられまして、あと福岡の麻生知事も出られて。そんな中で、終わった後のコメントというか、これは私はテレビのニュースで見たんですけれども、民主党は地方に迷惑をかけないと言っているけれどもそこは信用できないというニュアンスの言われ方をしておりました。

 だから、ここのところを、現場でやっておられる知事さん、または首長さん、この不安感というのはやはりあると思うんですね。そこら辺のところの、民主党の今の、対案とまでは言っていないんですけれども、主張に対する御見解を伺いたいと思うんです。

広瀬参考人 大変御熱心にいろいろ御議論をいただいているということについては、各党の皆さん方に大変敬意を表するわけでございますけれども、私どもやはり、冒頭申し上げましたように、総額としての財源を、道路関係の予算の財源をどう確保するか。そこのところは地方としてもう本当に四苦八苦しているものですから、そこの総額の財源が確保されるということが非常に大事だということ。それから、道路が本当に必要なところにちゃんと配分されるような仕組みが維持されるということが必要だ。それから、やはり納税者の納得が得られるような形がとられるということが必要だというふうに考えております。

 そういうことで考えてみますと、暫定税率を廃止するということになりますと、二兆六千億円の財源がなくなるということでございます。消費税一%分ということにもなるわけでございまして、その分を本当にどう捻出できるのかなというところを大変心配しております。

 それから、一般財源ということになったときの、今私が申し上げたような心配がちゃんとクリアできるのかどうかということについて、受益と負担との関係とか、配分方法とか財源の確保といったようなことについて、維持できるのかについてもやはり心配をしているというのが現状でございます。

高木(陽)委員 続きまして太田参考人にお伺いしたいんですが、先ほど民主党の後藤委員との話で、高速道路の話もちょっと出ておりました。この高速道路の料金、今回の法案の中でも、国の負担で下げる、債務をある意味では国が負担していく、こういう流れの中で利用者に対する負担をなるべく下げていこう、こういった考え方になっております。

 これについて、どのような御見解を持っておられるのか、伺えればと思います。

太田参考人 まず、恐らく二つの議論があって、現実はそうじゃないんですけれども、一種の補助金に近い形になる。機構に入れてという形で、リース料を下げるという形で料金を下げるんですが、補助金に近いんじゃないかという議論がまず一点。もう一点は、それが有効に使われるかどうかという話があると思います。

 まず、補助金に関しましては、これはもちろん大きな判断でありますので、そういう判断があってもいいんだろうというふうに思いますが、私自身は、これは受益と負担の考え方に合っていると考えています。

 それは、もともと高速道路の上を走っている人もガソリン税を払っているわけですね。恐らくその額は、年間四千億円から五千億円ぐらいのガソリン税を払っているはずですよね。先ほどからいろいろなところで議論が出ていますけれども、有料道路料金を払って、それで道路も全部つくっている。だけれども、それプラスアルファ燃料関係の税金を払っているわけですね。その部分をお返しするというのがもともと昔の補助金の考え方で、受益と負担の考え方に合致していたんですね。それが突然、特殊法人改革で、全部補助金を一律やめるということですよね。それは一般会計から出ていた補助金じゃないし、受益と負担を合わせるための仕組みだったのが、何かいきなりなくなってしまったということであります。

 そういう意味では、適切に有料道路利用者に還元するというのはやるべきことだったと私は思っています。しかし、制度が変わっておりますので、このたびそういう形で入れる場合に、一律下げるのはやはり効果がないですねということなので、より効果的にやりましょうということです。

 小井参考人の方から先ほど議論が出ていましたけれども、いや、無料のいい道路が欲しいんだ、有料道路なんか要らないよというような部分では、有料道路の利用が非常に落ちてしまいますので、有料道路の料金を下げることによって下の道から上がってもらいましょう、その方が明らかに環境にも優しいというような形で対処する。

 それから、これは特に夜、高速道路を使わずに一般道をトラックが走る、周りの住民の方々が非常に迷惑している。そういうものに関しては、トラックの夜間の高速道路料金を割り引くことによって上に上がっていただく。制度上、そういうことに使うというふうにしているわけです。

 そういう意味では、昔のように一律公団にお金を入れてというような形ではなくなったものですから、より有効に使えるような仕組みに変えられたので、一たん、ちょっとおかしな形で補助金がなくなって受益と負担が乖離したんですけれども、改善されることになったというふうに考えています。

高木(陽)委員 あと高速道路で、特に今回の中期計画で、基幹ネットワークの整備二十三兆円というのが計上されていて、これについて、一万四千キロ必要なのか、必要じゃないのか。いろいろと委員会等々の答弁を聞きますと、一万四千キロというのをすべてつくるということではないんだ、こういった言われ方もしますし、また、今ある現道をしっかりと利用しながら、そこと接続しながら使っていく場面もある等々、そういう話が出てきております。

 今回のネットワーク、これは必要だと私自身は思っているんですけれども、このことについて、また済みません、太田参考人はどのように今回の中期計画のネットワークを考えているか、伺えればと思います。

太田参考人 一万四千キロまで必要か、必要じゃないかという議論は、恐らくきっちりとしなきゃいけないんだろうと思います。

 ただ、どの時点で必要かというのはいろいろ議論があって、この道路特定財源制度が始まった昭和三十年の時点で一万四千キロ、そんなものは、車がないんだから必要ありませんね。では、我々が最も高齢化が進んだだろうと思われている二〇二五年の段階でどのぐらい必要なのかという議論だと思うんですね。その場合、一万四千キロなのか二万キロなのか、いや、もっと一万四千キロより少なくてもいいのかということに関しては、慎重に議論しなきゃいけないと思っています。

 ただ、二つのことを申し上げたいんですけれども、まず一つは、この一万四千キロの計画をつくるときには、主要な町の中心から一時間で高速道路まで行けるということ、及びネットワークの構造でぶつ切れになるとおかしいですから、つくっているわけですね。ですから、もし一万四千キロを縮小するというのであれば、主要な町から幾つかの町を外して、おまえさんのところはもう一時間で着けなくてもいいんですよということを決めることが恐らく必要だろうというふうに思います。

 したがいまして、一万四千キロ自体の議論より、むしろ一万四千キロを決めたもとの基準の方についてやはりきっちりと議論をする。七千六百キロのときは二時間だったわけですね。それを一時間に短縮して一万四千キロになっているわけですから、縮小するのであれば、幾つかの町を切るか、もしくは一時間半でもいいよというふうに基準を緩和して縮小するべきだという話だと思います。

 もう一つは、これは私は政治の失敗だというふうに思っているんですけれども、整備が例えば三千キロしかされていないときには、一万四千キロつくりましょうという話になるわけです。それが八千キロ整備されると一万四千キロは要らないという話になるわけです。これは、先に自分でつくっておいてもらった方は、もうこれ以上要らないと言うわけですね。

 ですから、制度を一番初めにつくったときに、一万四千キロで全国のネットワークをつくりますよということをもし約束したのであれば、それを最も安いコストでつくるように制度設計をすべきだ。ただ、幾つかの理由によって、順番が違うよねとか規格が高過ぎるよねというようなことでおかしなことがあって非常に大きな批判になっているんですけれども、そこのところはよく考えなきゃいけない。

 例えば、静岡県の十八歳の免許取りたての少年が、もう東名は費用を全部払っているはずだからただにしろと言ったとしましょう。その一方で、まだ高速道路のない宮崎の十八歳の少年が高速道路が欲しいと言ったとしましょう。その場合は、静岡の十八歳の少年は、それは親が払っているかもしれないけれども、本人は全く負担していないわけですよね。

 そういう意味では、一万四千キロが決められたことの意味というのをやはり確認する必要がありますし、それが、やはりコストの問題がいろいろありましたし、一般国道との、幹線道路との関係もありますので、幾つかの部分はほかのもので代替できるものもあるでしょう。それは時代が変わってきましたから。その辺は精査しながら、本来の目的、高速交通体系に国民の多くがすべからく一時間でアクセスできるという目標を達成するためにどの方法が一番いいかを考えるべきで、それを否定するのであれば、きっちりと、先ほど申し上げたように、切る町、それから切る時間というものを議論する必要があると思います。

高木(陽)委員 残り時間も少なくなってまいりましたので、松下参考人に最後ちょっとお伺いしたいと思うんですが、先ほど杉田委員の質問のときに日本は道路予算約十一兆円じゃないかというふうなお話があったんですが、ことしの予算案もそうですし、昨年もそうなんですけれども、この十年間で、ピーク時の十五兆円から、国と地方合わせまして八兆円に今なっているということ、これを確認の意味でちょっと申し上げておきたいと思うんです。

 その上で、先ほどパネルを出されて、私ども委員にも資料を配っていただいたんですけれども、圏央道とM25ですか、イギリスの環状高速道を比較されました。私は地元が多摩地域、八王子のところの圏央道を通っているところなので、これまでも圏央道の建設促進についてはいろいろとこの委員会を通じて質問させていただきました。昨日も三環状道路について委員会で質問させていただいたんですが、ここに書かれている、既に三十年経過、まだ建設中、五十年後ということで、これは一九八五年からスタートしましたから、今二十七年たっている。

 ただ、これは昨年、中央高速までつながりまして、今は東名につなげる工事をしている。北側の方、いわゆる東北道、常磐道、さらには東関道につなげる道も今どんどん進捗しているんですけれども、今の計画だと、平成二十四年、二〇一二年にできる。ただ、五十年後というふうにここに、クエスチョンですけれども、これはどういう根拠で言われたのか伺いたいんですが。

松下参考人 今現在、二百三十キロの計画ですが、完成しているのは、わずか八王子インターから鶴ケ島インターまでの四十七キロですね。あとはまだ全然手つかずですね。(発言する者あり)

高木(陽)委員 今現在の進捗率はそのとおりだと思うんですね。実際問題、事業着手をして、工事着工しているところが各地でもうスタートしておりまして、それは、ある意味で言うと、事業着手、工事着工して進捗していますが、まだ完成していませんので、完成率からいくと、今言われた八王子―鶴ケ島間だと思うんです。

 ただ、その中で、それぞれ用地買収もしておりまして、そういう形からいきますと、この平成二十四年の全線開通はほぼ見通しが立ってきている。ここら辺のところを、こういう形の数字をぱっと出されますと、なかなか、えっという形になると思うので、ここら辺もよろしくお願い申し上げたいなと思います。

 その上で、環状道路について、私はいろいろな国のも調べさせていただいておりまして、日本はおくれておるなという感触があるんです。実は、このM25環状高速道は、イギリスで一九七三年から十三年かけて八六年に完成された。ただ、これは市街地の外縁というか、グリーンベルトを中心にかなりつくられたので、ある意味では家屋だとかまたは居住者、そういう用地の買収等々に関しては、圏央道の場合は例えば横浜、八王子そして筑波といった業務核都市のところも通りますので、そこら辺のところの比較を同じようにして、こちらは何年、こちらは何年。また、用地買収に関しても、金額も土地の値段も大分違いますから、そういう部分で一律に比較はし切れないんじゃないかなと思うんですが、どうでしょうか。

松下参考人 そのとおりです。

 ただ、私は、完成したときに、運輸省の方に一緒に乗ってもらってここをドライブしたんです。そうしましたら、女性の担当官でしたけれども、大体百五十キロぐらいで走りました、小さいシビックで。それから、コンクリートは二メーターで打っているから、戦車でも飛行機でもおりられる。片側四車線でした。八車線ということですね。

 それから、人家についてですけれども、私も、グリーンベルトを通っているので人家はないと思ったんです。ところが大間違いで、軒先すれすれまで走っておりました。たくさんそういうところを通っています。

高木(陽)委員 いずれにしても、国が違って、土地の値段も違う、そういった部分でなかなか一律に比較はできないんですが、松下参考人が言われた、やはりコストを下げていく、これはまさに必要なことだと思うんですね。そのためには何ができるのかということを、いろいろな国の事情も勘案しながら検討していかなければいけないと思うんです。

 まさに、これはこれからこの委員会で最後に法案の決着をつけなければいけないんですけれども、それで終わりじゃなくて、やはり、こういった問題については、国会として、または委員会としても絶えずチェックをしながらやっていきたいな、このようにも感じます。

 最後に一言。最近この道路問題がメディア等でもかなり取り上げられる中で、特に松下参考人がいろいろなところで御発言をされたり、テレビでコメントをされているのを私も何度か拝見させていただいて、そういった部分では、今までそういった経験を積まれてきた、それをもとにお話をされているんですが、できればこういう数字の部分は、きのうも委員会でそういう議論になったんですけれども、丁寧にというか、数字の扱い方をなるべく慎重にしていただきたいな、こういうことをお願い申し上げまして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

竹本委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございました。私は、日本共産党の穀田恵二です。

 小井参考人にお聞きします。

 国交省が行った世論調査によれば、道路についての国民の要望の一番は渋滞対策です。高速自動車道の建設は渋滞対策の切り札なのか、このことについてお聞きします。

小井参考人 奈良県における京奈和自動車道、特に大和北道路の建設については、大和北道路有識者委員会を組織されました。その中でのいわゆるPI協議会、PIの導入、パブリックインボルブメント、住民参加の導入があるんだということでのアンケートを住民がとりましたけれども、その中でも同様の質問が出されておる。

 例えば、質問の仕方が、国土交通省の有識者委員会の名前で出されているわけですが、幹線道路が必要かということを一つは尋ねられた。渋滞をしているから幹線道路が必要であると。南北に奈良県でも一本しかありませんから、これは八〇%の高率でそうだというふうになりました。

 もう一つは、現在、奈良県の道路で何が問題かという質問が同様にされたわけですけれども、その中で、渋滞その他いろいろ書いてありまして、もちろん渋滞が一番でありました。

 しかし、渋滞についての定義はいろいろあるんですけれども、大阪の人が奈良県に来たら、そんな込んでいないな、市内の人はそう言います。奈良県の山合いに、例えば、山添村には信号が一個しかないです。ここの人が奈良市に入ると、信号で一回とまったら、こんなのかなわぬ、大渋滞だ、こういうふうに言われているわけでありますけれども、そういう違いは別にしましても、質問の仕方が非常に意図的ではないのかという感じが僕はしています。

 なぜならば、幹線道路が必要だ、だから高規格幹線道路、ちゃんと後ろに幹線道路とついておるじゃないかということで、高速の道路をつくるということは住民は決して望んでいないということをやはりきちっとしませんと、全部目的が変なところに使われてきておるんではないかなというふうに思っています。

 渋滞問題というのは、既設道路の渋滞問題で私が考えておりますのは、まず、信号でありましたら交差点の改良であります。これは、現在の信号のコンピューター化、これは余りされておりません。御存じのように、警察の関係ですから予算がありません。これをもし国土交通省の管轄にしますと、いわゆるほうると言っては語弊がありますけれども、その財源でいとも簡単にできるはずであります。

 本線が込んでおるのに枝道ががらがらの交差点というのは山ほどあるんです。どこでもそうであります。それは、実績さえ入れてコンピューター化すれば、しかも時間帯によって入れれば簡単にできることです。まず、それが一つ。それから、右折、左折ラインの新設。そして、だめな場合は交差点の立体化ですね。

 さらに、現道の拡幅、車道の拡幅や歩道設置、登坂車線の設置などは今ほとんど予算が認められない。なぜか。高速道路中心にやはり予算がいきますので、そういったところに補助がつかないというふうに聞いておりますけれども、かなり真実性のある言葉ではないかなというふうに考えております。それでもだめならば、バイパス道路の新設あるいは局部改良、これは建設省時代からそういったマニュアルが当然にあるわけです。しかし、現実に補助がつかないわけですから、地方でやることができません。これさえやれば渋滞対策は十分できているんではないか。

 したがって、ずっと言っておりますように、既設の道路を中心として、どうにもならない、あるいは立体化してもだめだ、そこで初めて新設の高速道路なり、あるいは立体化されたいわゆる二階建ての道路を考えるべきでありまして、特に、それは地方において言っても言っても言い足りないほど重要なことではないのかな、こういうふうに考えております。

 そういう点で、渋滞対策で高速道路をつくるなどというのは、それは地方にとってはとんでもないことに、先ほど言いました、いわゆる将来の不良資産になるようなことが目に見えておるわけですから、今こそ、それは何としてでも法律で規制をしといいますか、いわゆる本来あるべき姿で現地の実情に合った道路政策というものをつくるべきではないか。

 それは、実態を知っているのはやはり地方自治体なんですね。国が先にありきということでぼんと出されますと、せっかくの補助ですから、高くても何としてもおつき合いをせないかぬ。札束でほっぺたをぺんぺんとたたかれますと、もったいなくてしようがない。おつき合いということにならざるを得ないのが今日の事情ではないかというふうに思います。

穀田委員 なかなか、おつき合いと現場のあれで、ありがとうございました。

 そこで、今お話がありましたけれども、高速道路中心ないしは重視の予算配分が、生活道路の整備や、さらには維持補修の費用を圧迫しているという向きの発言がありましたが、その辺も少し詳しくお話しいただければありがたいんですが。

小井参考人 先ほど意見の中で言いましたが、奈良県は中山間部です。すれ違いもできないような道路があります。したがって、奈良県の道路の改良率は、県道などでいきますと一番最下位を占めているわけです。お金がないからです。

 しかも、例えば渋滞対策ということですけれども、資料の三ページを見ていただければわかるんですが、大和北道路の下に大和区間ということで、現在十三・八キロが橿原から大和郡山市まで開通しております。四車線道路です。これはもともと橿原バイパスとして十五キロほどの都市計画決定がされている、その上にこの高規格幹線道路が乗ったわけです。そして、一九八七年六月三十日に閣議決定をされた第四全総、そのときまでに大方三分の一近くはもうできていたんです。鋭意それは橿原バイパスとして四車線道路計画でできていた。それが、いわゆる四全総閣議決定以後、ストップしちゃったんです。いわゆる高規格幹線道路をやろうということで、その二、三年後になりますけれども、予算が回らなくなっちゃったんですね、バイパスには。全部高規格に行っちゃったんです。

 奈良県には、残念ながら道路に強い先生がおられませんでしたものですから、多分よそへ行っちゃったんだと思うんですけれども、以後十五年間、ほったらかしになりました。新しい道路が通る、京奈和自動車道が通るということで、そのままだったんです。したがって、旧二十四号線は大渋滞でありました。渋滞しているから、それを逆手にとられまして、この高規格幹線道路、京奈和自動車道をつくるんだ、つくったら渋滞解消するんだということで、ようやく去年開通しました。

 確かに、今まで一時間ぐらいかかっておったのが、十分そこそこで到着しているんです。大喜びです。しかし、それは端と端だけですので、まだ地上が全然できていませんので、相変わらず二十四号線は込んでいます。奈良と橿原の人は行き来は便利なんですよ。したがって、現在は四車線ですけれども、それこそがらがらです。通る人は知れているんです。

 そういうふうに、渋滞対策というのは、つくったとしても、助かる部分はありますけれども、二十四号線は依然としてやはり渋滞をしているんです。そういう面で、高規格幹線道路をつくることは、現道との関係をもう少しきちっとしていただいて、そして計画をしていただきたいなと。もっとやはり現道を中心にして、何回も言いますけれども、それから高規格幹線道路を考えていただくという発想でお願いしたいなと思っています。

穀田委員 実態はよくわかりました。

 そこで、道路中期計画は、実はその中心は高速自動車道の建設であることは明らかであります。そこで聞きますけれども、私、今ちょっと立ちどまって考える必要があるんじゃないかなと思っているんですよね。考え方、つまり高速道路が本当に必要かということと、二つ目に、では本当に必要な場合でも、施策の優先順位から考える必要がありやしないか。三つ目に、実際に工事に着手する場合でも、つくり方だとかコストだとか、それをよく考えてやるべきじゃないのかというふうに私は考えるんですけれども、小井参考人に、その辺の哲学なり考え方を、現場から見てどうなのか、お聞きしたいと思います。

小井参考人 そのとおりだと思うんですけれども、私はやはり高規格幹線道路を実際に三キロほど現場監督もしてまいったんですけれども、例えば、京都から、京都の中でいけば、城陽というところから奈良の県界まで、僕はその間の三キロを現場でつくってきたわけですけれども、京都の場合は現在二車線で供用開始しています。それでも、二十四号線は込んでいるからといってやりましたけれども、非常に、まあ言うたら、がらがらですね。二車線の対面交通です。しかも、それは六十キロです、京奈和自動車道でも。一方、奈良へ行きますと、四車線道路でありますし、そして、この地図にあります大和区間というところは百キロの構想なんですね、五條まで。

 そういったところがこの奈良に必要なのか。しかも、何回も申しますけれども、古都奈良、アイデンティティーの地奈良のど真ん中に必要なんでしょうか。回ってもいいのではないか。これは、やはり、最初に高速道路ありきということでやられているんじゃないかなと。

 こういった手法というのは、本当にもう地方にとって大変なことになります。ぜひ考えていただきたいのは、例えば、奈良は全部で二千億円というふうに言いましたけれども、これはすぐ増税するわけにはまいらぬのです。やはり縁故債か県債か発行しなきゃなりません。お金を借りるんです。これはやはり利子を払わなきゃなりません。だから、二千億円が二千億ではないんですね。三千億円にもなるんです。

 そういう面で、道路公団にすべて管理を任せる、あるいは建設を任せるというのは、これは、利用料金は全部商品に転嫁されますので、極端に言えば消費税と同じだ。ざっと見積もっても二%の消費税に換算することができる。それはやはり、今五%ですけれども、七%の消費税と同じことじゃないかというふうに僕は思っておりますけれども。

 地方で負担金を取るというのは、そのことと同じことになっていくんです。せっかく直轄、直営で、道路公団がやるよりも半分の予算で建設ができるのに、それをおいておいて、結局、負担金の分はやはり倍は返さないかぬというのは何としても考えなきゃならぬ。

 そういう面で、高速ではなしに、一般財源化をし地方の裁量に任せる、そういう時代ではないのか。まさに地方分権はそういったところにあるのではないかなというふうに考えております。

穀田委員 それでは、松下参考人と太田参考人にお聞きします。

 いただいたレジュメでは、きょうは時間の都合でなかったんですが、道路意思決定プロセスの透明化という話が述べられております。私も非常に大事なことだと思うんです。

 したがって、私は、道路建設の決定過程で住民参加の形式がとても大事だということを主張しているところです。大臣も、国幹会議に諮ることなく道路がつくられることについてはまずい、手続の透明化と、それと第三者機関に諮ると答弁しているわけですね。ですから、この辺の点について、お二方にお聞きしたいと思います。

松下参考人 私は、繰り返しますけれども、やはり日本の将来のためには、安いコストで早く道路をつくる、本当に必要な道路であれば、そういう形でつくらなきゃいけないと思っております。

 そのためにも、急がば回れという言葉がありますけれども、やはり工事を着工する前に、計画を進める前に、公聴会で十分に話し合いをして、費用対効果分析だけではなくて、環境評価とか、社会的望ましさ、例えば、中小の小さいトラック業者さんの方が、この道路が完成して高い料金で使えなくなっちゃわないかとか、そういうようなことも含めて十分検討する。やはり目線を国民といいますか、ある程度所得の低い人にも配慮しながら決定していく必要があるというふうに思っています。

 これを日本の場合にはきちっとやらないから、工法とかルートとか予算とか、場合によっては下請業者までもうお上が決めて地方に持ってくるわけでしょう。現実にそうなんですよね。ですから、みんなが怒っているわけです。市民が反発して土地収用ができない、それから、もめれば時間がかかる、結局高い道路になってくるということになっているわけです。

 ここを改めれば、できないできないじゃなくて、改めれば、あしたからでも半額で建設はできるんですよ、三分の一でもできるんですよ。道路はもっともっとつくりたいですよ、国民としては。だけれども、その仕組みを変えてほしいと言っているわけです。

 合意形成もそうだし、もう一つ大事なことは、やはり、インスペクターという制度が英国にはあります。国会主導で、おかしいな、何かむちゃくちゃ高いんじゃないか、談合があるんじゃないか、天下りがあるんじゃないか、そういう場合に厳しく監査するインスペクター制度、国会が管理して、強力な調査権と処罰権を持って、乗り込んでいって、びしっとやる、それで、法廷に出たときには、イエス・サー以外言わせないぐらいの厳しい権限で取り締まる、そういうような制度をつくっていかないと。

 国民には潔く税金を払えと言っておいて、自分たちのやっていることはもうぬるま湯につかって、あぐらをかいているような形では、国民は納得しないですよ。そういうところからやはりやっていかないと、この議論は、コストだ、理屈だ、経済学だ、そんなことを言ったって始まらないと思っているんです。

太田参考人 今の御質問は、幾つかの部分に分かれているような気がします。

 一つは、住民参加、パブリックインボルブメントの話。これにつきましては、やはり道路問題は随分たたかれたせいもありまして、割と公共事業の中で道路は進んできたのかなというふうに思ってはいます。

 ただ、アメリカが八〇年代ぐらいからこれに非常に取り組んでおりまして、その当時は当局が住民の前に行って卵を投げつけられたりというような、どちらかというと公共、道路をつくる施工側対住民、そういう対立の構図だったんですけれども、これではまずいということで、その後、少しずつ議論をうまくするように、合意形成を助けるような形にやはり高まってきていると思います。

 やはりそれがアメリカでも十年、二十年かかってきているわけで、日本についてもそういうものが取り入れられて定着していくことは非常に大切だと思っております。それがまず第一点、住民の話が第一点です。

 それから、工事の意思決定プロセスの話につきましては、やはりだれが見てもおかしいよねというものはおかしいので、それはなくすように仕組みができていなければおかしいということです。今、国の話、地方の話、あるいは道路会社、道路公社、いろいろなものがありますが、その間に関しては、共通の目的が設定されて、それに対してパートナーシップを組んで対処するという発想がやはり必要だと思うんですね。

 特に、京阪神ですと、もう有料道路会社だけで一体幾つあるんだというような非常に複雑な中で、一体どういう形で正しい交通流が流れるようにしていくかというようなものは、いろいろな工夫が恐らく必要であろうというふうに考えております。

 そこの部分に関しては、私はちょっとよくわからないんですけれども、国と地方が対立の構図なのか、それとも、それが制度のせいなのか、単に意識のせいなのか、そういうことはうまくやっていかなければいけないと思います。

 三点目に、おかしなことはおかしいから直す、これは簡単じゃないかもしれませんけれども、割と目標は明確なんですが、意見の分かれることをどう調整するかということに関しては、やはり日本はまだまだ議論が恐らく未熟なんだと思うんですね。意見が割れているということは、どっちかの案で得する人と損する人がいて、もう一つの案では得する人と損する人がいる。これをどういう形で合意させるのかというのは、まだまだ日本の場合はちょっと難しい形になっていると思います。

 そこの部分に関しては、意思決定プロセスをどういうふうに精緻化していくのか、目的に合致するようなものができるのかというものを含めてやはり議論しなければいけませんし、先ほど申し上げた一万四千キロの話でも、あの一万四千キロがいいのか悪いのか、それが何年度に向けての目標なのか。そういうことを議論すると、先ほど申し上げましたように、静岡に住んでいる人は、東名側に住んでいる人はもう終わりでいいよ、宮崎に住んでいる人はそういうわけにはいかぬよと。そういうふうに利害が対立したときにそれをどういうふうに落としていくのかということに関しては、やはりこれから真剣な議論が、仕組みも含めて必要だと思います。

穀田委員 では、広瀬参考人と小井参考人にお聞きします。

 今、意思決定のプロセスの透明化という関係でありましたが、PIというやり方について、実際に地方自治体としてつくる側、また現場でつくっておられた側ということで、お二人にその辺の見解をお聞きしたいと思います。

広瀬参考人 私どももなかなか固有の財源がないものですから、少しそういう工夫ができないだろうかな、民間の資金を導入してというようなことを考えた……(穀田委員「パブリックインボルブメントです、住民の意見を聞くということ」と呼ぶ)住民参加、住民の意見を聞きながらというものですね。わかりました。失礼しました。

 大賛成ですね。実は、先ほど冒頭申し上げましたけれども、市の中心地と周辺部を結ぶ道路を一・五車線とかいうようなことで工夫をしながらやっているんですけれども、そういう道路の形成に当たりまして、最近、できるだけ住民の意見を前広に聞いていこうということでやりました。

 そうしましたら、非常に早くから意見の交換ができまして、そこのところで話がつきますと、非常に用地の買収とかなんとかも足早に行われるということがありまして、私は、できるだけ早くから住民に参加してもらって話をしていくというのが大変有効だなと。非常に安くできたということもあります。そんなことは地方でもやっております。

 幹線道路、国道とかなんとかの整備に当たっても、かなり最近は国土交通省もそういうあたりは気を使っているような気がします。

小井参考人 奈良県の、先ほど言いました大和北道路有識者委員会、その委員会をつくるときに、PI協議でやるんだ。その委員会の規約がありました。十条ほどあったわけですが、その中に、国の政策を遂行する側に立つ人は入れたらいかぬと。ですから、それを見ただけでも、あ、これは非常に民主的だなという気がしたんですが、実は、その委員長になった人は、国交省の近畿整備局の運輸委員をやっておられる方でした。

 これは違反しておるんじゃないかと言いましたけれども、いやいや、これはもう独立の人でありますから、それでいいんだというふうなことで、しかも、その委員長が最初に言った言葉、私は、PIというのは初めてです、さっぱりわかりませんので、これからおいおい勉強してやりますという趣旨の発言をされて、第一回目をやられたんです。

 やられた中身は、先ほど言いましたけれども、アンケートでした。住民に直接向かってとるアンケート、そしてヒアリング、指名によるヒアリングです。私も指名をしていただきましたけれども。それから公聴会です。主にこの三つが中心でした。

 これは、僕はPI、パブリックインボルブメントというのはむしろ積極的な住民参加というふうにとらえておりますけれども、従来どおりのことではなかったのか、アンケート、公聴会までの話というのは。道路でなくても、通常の政策をやられるときにどこでもやられている手法であって、全くPIと言うには中身のなかったものだ。

 言われたのは、道路で日本で第二のPI導入だと。第一はどこか。東京外郭道路です。ここは、住民の皆さんの代表も入れて、現在も粛々とやられていると思いますが、月二回の会議を持って、国交省、都と協議会をやられて論議されていますけれども、それから比べたら、これは全く、形骸化されたというよりも、従来の手法と変わらないだろう。これを住民参加だということでやられている。非常に一つの、食わされたなと、俗な言葉で言えばですね。

 それが今、それぞれの中で進んできているというふうに言われましたけれども、大体、道路の反対の運動のあるところはすべて、やられた、うそばかりじゃないかということで、むしろ国交省に対して非常に大きな憤りが上がっているのが実態ではないかな、こういうふうに感じております。

 以上です。

穀田委員 広瀬参考人にお聞きします。

 私はきのう言ったんですけれども、総務省が集計した都道府県、つまり市町村などの自治体ですね、道路関係経費の公債費で、この十年間でいうと一・八倍になっている、九〇年代に湯水のごとく投資した公共事業、道路投資が今ツケとなって重くのしかかってきている現実がありますと。このことは大臣も認めているんですけれども。

 そうだとしますと、今後、高速道路建設を続ければ続けるほど、国直轄事業負担金や補助事業による歳出がふえて借金がふえる、こういう悪循環になっていくんじゃないかと思うんですね。そういう点の見解と、もう一つ、今、地方財政は危機になっていまして、先ほど参考人から交付税で五兆円減らされたとお話がありました。結局、大分県の場合には、それの中で、同じように交付税は幾ら減ったかということが二つ目。三つ目に、先ほど、一番最初の陳述で、歩道の整備や高速の負担金とありました。私は大変だと思うんですね。

 ですから、やはり地方自治の現場でなさっている方として、事実をお話しいただければありがたいんですが、歩道の整備費ないしは高速の負担金というのは大体どの程度あるのか、数字も含めてお教えいただいて、財政問題についての見解を明らかにしていただければ幸いです。

広瀬参考人 確かに九〇年代に、景気対策というようなこともあって、随分公共事業をやったと思います。そのときに、後から交付税で見るからというようなことで、県債も随分発行してやりました。そういうものの償還が今来ているし、これからもそういうことは続いていくだろうというふうに思います。先ほども申し上げましたけれども、三百五十億円、一般財源を投入してつくっている財源のうちの二百八十億円が今年度は県債の償還に充てられたわけでございますから、そういうことで大変なことになっている。そのために、新しい事業をやるのにまた県債を発行してということでやらざるを得ないというのも御指摘のとおりでございます。

 しかし、道路の建設はそれこそ、建設公債みたいなところがありますから、この世代だけではなくて次世代にも負担が行ってもいいぐらいのことはあるんじゃないかというようなことで考えておりまして、ある程度、そういう長期的なレンジで返還を考えながらやっていくということが大事なのかなというふうに思っております。

 したがって、大変財政は厳しいし、借金は続けていかなきゃいけない、償還も大変なんですけれども、それでもやはり今のうちに道路の建設をやって、それぞれの地域の生活の安全とそれから命を守ること、そして、いろいろな発展の基盤をつくっていくということがやはり大事なのかなというふうに思っております。現に私どもは、道路があるから企業が来た、雇用の機会がふえた、税収もふえたというようなところはたくさんありまして、そういった意味では、あるいは、ないからその機会を失ったというのもありますので、それはぜひやっていきたいというふうに思っております。

穀田委員 数字は出なかったですけれども、時間が来ましたので、終わります。

竹本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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