衆議院

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第25号 平成21年6月17日(水曜日)

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平成二十一年六月十七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 望月 義夫君

   理事 奥野 信亮君 理事 菅原 一秀君

   理事 中山 泰秀君 理事 山本 公一君

   理事 川内 博史君 理事 後藤  斎君

   理事 上田  勇君

      赤池 誠章君    泉原 保二君

      稲葉 大和君    浮島 敏男君

      江崎 鐵磨君    遠藤 宣彦君

      小里 泰弘君    大塚 高司君

      太田 誠一君    岡部 英明君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    七条  明君

      島村 宜伸君    杉田 元司君

      徳田  毅君    長崎幸太郎君

      西銘恒三郎君    原田 憲治君

      藤井 勇治君    松本 文明君

      盛山 正仁君   吉田六左エ門君

      若宮 健嗣君    石関 貴史君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      階   猛君    田名部匡代君

      高木 義明君    長安  豊君

      三日月大造君    森本 哲生君

      高木 陽介君    谷口 和史君

      穀田 恵二君    糸川 正晃君

    …………………………………

   国土交通大臣       金子 一義君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   国土交通大臣政務官    谷口 和史君

   国土交通大臣政務官    西銘恒三郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田 稔久君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            私市 光生君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   大森 雅夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    佐藤 憲雄君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  本村 裕三君

   政府参考人

   (水産庁増殖推進部長)  成子 隆英君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  伊藤  茂君

   政府参考人

   (運輸安全委員会事務局長)            柚木 浩一君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 岸本 邦夫君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         尾見 博武君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十七日

 辞任         補欠選任

  島村 宜伸君     徳田  毅君

  長島 忠美君     浮島 敏男君

  石川 知裕君     石関 貴史君

  長安  豊君     田名部匡代君

  鷲尾英一郎君     階   猛君

  亀井 静香君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     長島 忠美君

  徳田  毅君     島村 宜伸君

  石関 貴史君     石川 知裕君

  階   猛君     鷲尾英一郎君

  田名部匡代君     長安  豊君

  糸川 正晃君     亀井 静香君

    ―――――――――――――

六月十七日

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)

同月十五日

 気象事業の整備拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三二〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第三三二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三二二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三二三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三二四号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三二六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三三二七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三三二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件(内閣提出、承認第二号)


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     ――――◇―――――

望月委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事尾見博武君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長和泉洋人君、海事局長伊藤茂君、運輸安全委員会事務局長柚木浩一君、海上保安庁長官岩崎貞二君、内閣官房内閣審議官高田稔久君、内閣府規制改革推進室長私市光生君、内閣府政策統括官大森雅夫君、外務省大臣官房審議官廣木重之君、水産庁漁政部長佐藤憲雄君、水産庁資源管理部長本村裕三君、水産庁増殖推進部長成子隆英君及び防衛省大臣官房審議官岸本邦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

望月委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小里泰弘君。

小里委員 おはようございます。自民党の小里泰弘でございます。

 本日の議題は、港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案でございます。本法案の目指すところは、船舶交通の安全性を向上させ、海難の防止を図るものであると理解をしております。国民の安全、安心の向上のためにも、ぜひとも推進をしていくべきとの前提に立ちまして、質問をさせていただきます。

 まず、道路での自動車の事故と違いまして、船舶の海上におけるいわゆる海難というものは、実感を持って思い浮かべることがなかなか難しい面があると思います。そこで、法案についてお伺いをする前に、我が国における海難の発生状況がどうなっているか、お聞かせをいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 海難の発生件数でございますけれども、この十年をとってみますと、大体年間二千六百隻前後、ほぼ横ばいで推移をしております。

 それから、海上における死者・行方不明でございますが、これは、海難で亡くなられる方と、海中転落といいまして船からおっこちて亡くなられる方、これを合計した数字でございますけれども、これも死者・行方不明数を合わせまして年間二百人から三百人程度と、やや減少傾向でありますが、横ばい的に進んでおります。

 船種別で見ますと、やはり数が多いこともありまして、漁船とプレジャーボートが圧倒的に多くて七割程度を占めるというような状況になっております。

小里委員 年間約二千六百隻ということでございました。横ばいであるということでございました。その中でも、船の種類や発生をしている地域など、いろいろな種類の海難があると思いますが、本法案で主としてターゲットとしてとらえておられる海難はどういったものか、お伺いをいたします。

岩崎政府参考人 今回は、海上交通安全法と港則法の改正を提案させていただいておりますが、この海上交通安全法、港則法、船は一般の交通ルールとして海上衝突予防法というのがありまして、これは太平洋とかも全海域含めて共通運用しておりますけれども、港でありますとか、これは港則法ということで特別のルールを定めております。それから、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、こういうところについては、ふくそうする海域で、航路を指定いたしまして、ここの安全対策をやっているのが海上交通安全法でございます。

 今回の法案は、そういう意味で、ふくそうする海域、港でありますとか東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の航路、こうしたもの中心の海難を減少させようというものでございます。数で申しますと、先ほど二千六百前後と申し上げましたけれども、そのうち約四割がこうしたふくそうする海域での事故となっております。

 こうした海域の事故、もちろん人命の問題もございますけれども、ふくそうする海域でございますので、一たん大きな事故が起こりますと、航路が閉じちゃうといったことになれば経済活動への影響もありますし、それから、油が流れ出ましても、沿岸ですので大きな被害を与えることになります。こうしたものをぜひ防いでいくためにこの法案を少しでも役立てたい、このように思っているところでございます。

小里委員 確かに、東京湾、瀬戸内海といった船舶の往来が激しい、経済の大動脈ともなっております海域での大型の船舶による海難が発生をいたしますと、単に事故を起こした船舶の人命や財産が失われるだけではなく、お話にありましたように、環境や経済にも重大な影響を与えかねないわけであります。

 このため、いわゆるふくそう海域での貨物船やタンカーによる事故の未然防止を図っていこうという意義は大きなものがあると理解をいたします。

 他方で、漁船やプレジャーボートといったような小型の船舶による海難は、そもそも在籍している船舶の数が多いわけでありますが、多いとはいえ、海難の隻数でいえば全体の約六割、七割を占めているわけであります。

 このような漁船やプレジャーボートについても何らかの対策が必要ではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。

岩崎政府参考人 御指摘のとおり、七割を占める漁船やプレジャーボートの海難、これを減少させるというのも我々の重要な仕事の一つだと思っております。

 こうした漁船やプレジャーボートの事故を分析してみますと、特にプレジャーボートなんかが中心でございますけれども、漁船でも大部分がそうですが、割合沿岸から近いところで、救命胴衣もつけないで、ライフジャケットもつけないで事故を起こされているという例が後を絶ちません。

 そういう意味で、我々海上保安庁といたしましては、何とかライフジャケットをつけてもらいたい。それをつけていただいて、それから、遭難している場所がわかれば我々はすぐ駆けつけられますので、そういう場所をちゃんとわかるようにしてもらう、これがやはり一番重要なことだろうと思っております。

 関係省庁と協力しながら、ライフジャケットをぜひつけてくださいという運動をしたり、今、携帯電話でも沿岸ですとかなり通じますので、防水型の携帯電話で、遭難したら一一八番、海上保安庁の遭難緊急電話ですけれども、そこにすぐ連絡してください、こんなことを中心に、あと海難防止講習会なんかを開催しながら、ぜひやはり漁船の方、プレジャーボートの方、安全に気をつけてもらうように、意識改革を含めて取り組んでいるところでございます。

 今後とも、そうしたこともぜひ頑張っていきたい、このように思っております。

小里委員 海難が発生をしますと、油による環境や漁業への被害、確かに重要なものがあります。何よりも、海難を起こした本人の人命や財産の損失につながるものでありまして、そういった意味で、操船者一人一人の安全意識の向上を図っていくことが重要というのはそのとおりだと思います。小型船舶の安全対策につきましても、海上保安庁における一層の取り組みを期待したいと思います。

 それでは、法案の具体的な内容に入ります。

 本法案では、船舶交通の危険を防止する観点から、海上保安庁が情報提供や勧告を行うこととなっておりますが、情報提供や勧告をすることで船舶交通の危険防止につながるのか、実効が上がるのか。航空管制の場合はその辺がまた一味違ってくるわけでありますが、そういったことも踏まえながら、必要な場合には操船上の指示を行うべきではないかと思っておりますが、見解をお伺いいたします。

岩崎政府参考人 私どもの方も、こうしたふくそうする海域の周辺には海上交通センターというのを、陸上でございますけれども、例えば、明石海峡のところでありますと、淡路島にこうした海上交通センターというのを置きまして、そこで、レーダーを見ながらその航路を行く船を監視し、情報提供を行う等々、安全上の情報提供等をやっているわけでございます。

 現在、そうやっておりますけれども、これらの船に対して聴取義務を課していないものですから、必ずしも有効に活用されていないということがございます。せっかく我々がレーダーで見て、いろいろな安全に対するアドバイスができる立場でございますので、こうしたことをぜひ聞いてもらいたいということで、今回、法案の中に、情報の聴取義務というのを盛り込ませていただいておるところでございます。

 それから、私どもの方で、航路を今外れているよとか、前に浅瀬があって乗り上げるよといったことがわかった場合、勧告をしたいと思っております。そうした勧告をすることによって、安全な操船をやっていただけるといいかな、このように思っております。

 先生御質問の、指示までやったらいいんじゃないかということでございますが、これも我々も考えたのではありますが、航空の管制というのは、すべての航空機を原則把握していまして、レーダーで、左に行け、右に行け、どの高度で、こう指示をいたしますけれども、海の場合は、レーダーもなかなか、小さな船が非常に映りにくい、波と間違っちゃうとかがありまして、レーダーで見ている限りですべての船の動きが必ずしもよくわかっているわけではございません。一定の限界がございますので、我々は、左に曲がった方がいいかな、こういうことがあっても、そこに我々の目に見えない、レーダーで見えない小型船がいて、そちらには曲がれないといったことがあることも考えられますので、そこまでの強制的な指示というのは適切ではないのではないか、このように思っております。

 いずれにしろ、今回盛り込ませていただきました、情報の聴取義務を課す、それから、我々も積極的に安全の情報を提供していく、必要な場合は勧告をしていくということで、こうしたふくそう海域での安全対策を向上させていきたい、このように思っております。

小里委員 海上であるがゆえの難しさがある、限界があるという話、理解はいたしました。ぜひ実効が上がるように運用を図っていただきたいな、そんなふうに思います。

 次に、港における安全対策についてお伺いをいたします。

 私どもの鹿児島県内にも多くの港がありまして、港則法の対象となる港が二十五港あるようでございます。こうした港は、県の経済を支える物流拠点となっているだけでなく、県内に数多くある離島のライフラインとなっている船舶交通のためにも欠かせないインフラであります。その意味でも、港における安全対策は極めて重要であると考えております。

 他方で、鹿児島県は、御承知のとおり台風の常襲地帯でありまして、港の安全対策がおろそかになりますと、仮に、台風の影響で船舶が沈没し、港をふさぐようなことになりますれば、経済に大変大きな打撃を与える、それだけでなく、離島のライフラインが途絶えることにもなってしまいかねないわけであります。

 そこで、お伺いをいたしますが、台風などによりまして港の中でどのような海難が発生をしているのか、その状況を教えてください。

岩崎政府参考人 台風その他異常気象下における港の中の海難の発生件数でございますけれども、二十トン未満の小型船によるものを除きまして、少し大きな船の対象でデータがございますが、それですと平年では年間五隻前後でございますが、多いときは、やはり台風が多発したといった、平成十六年が最近では多発した年でございますけれども、このときは四十隻を超えるという状況になっております。

 また、三年ほど前になりますけれども、平成十八年の十月に、鹿島港、その周辺海域で、かなり新聞にも報道されましたけれども、三隻連続して、これは台風ではなくて、異常な低気圧の急速な発達という現象でございましたが、走錨、いかりは打っていましたけれども走ってしまった、あるいは乗り上げてしまった、衝突してしまったといった海難が発生をしております。

小里委員 そういった港での海難に対しまして、この法案の中でどのような措置を講じているのか、お伺いします。

岩崎政府参考人 私どもも、従来、こうした台風とか異常気象の場合に、港にある船舶に対して、例えば大型船舶なんかは逆に港の外に出ていってもらった方が安全でございますけれども、そうした大型船舶の港外への退去でありますとか、停泊場所もここにしてくださいといった停泊場所の指定とか、こうしたものを行政指導ベースではやっておりました。

 ただ、なかなか、行政指導ベースでいきますと、言うことを聞いてくれる船もおりますけれども、趣旨が徹底しないということもございまして、やはりきっちりした制度にしていくということが必要だと思っております。

 港内でこうした異常事態が起こった場合に、適切な措置をとれ、危険防止を円滑に実施するための、例えば、繰り返しになりますけれども、港外への退去でありますとか、あるいは荷役を中止しろでありますとか、そうしたいろいろな措置を勧告するといった制度を盛り込ませていただいておるところでございます。

小里委員 港における海難を防ぐ観点から、新たな措置を法律に基づいて海上保安庁が実施できるようになるということは望ましいものと考えております。

 他方で、例えば港の中で荷役作業を行っている船舶からしてみれば、作業中の荷役を中止するということは経済的な損失につながりかねないものであります。そういった意味で重要になってくるのが、本制度の運用であると思います。

 命令や勧告を適切に発動していくという観点からどんなお考えか、お伺いいたします。

岩崎政府参考人 こうした勧告なんかを発動するときに、どういうふうな基準で、どういうやり方でやっていくかということについては、やはり地元の海事関係者による十分な理解がないといけないと思っております。各港、港の状況も違うと思いますので、これは各現場で海事関係者と一緒になって基準をつくっていく、やり方を考えていくということが重要だろうと思っております。

 幾つかの港では、もう既にそうした委員会を組織しておりますので、そうした組織を活用しながら、先生御指摘の過剰な規制にはならない、しかし、皆さん納得した上で、こうしたことが必要だという基準をよく話し合った上でルールを決めていきたい、このように思っております。

小里委員 関係者とよく調整しながら運用を図っていくという御答弁でございました。新たに制度化をされる措置でありますから、適切に運用をしていただきますように、効果的に港の中での安全対策を講じていただきたい、そんなふうに改めてお願いをしたいと思います。

 先ほど、港が離島にとっての重要なインフラであると申し上げました。こうした港を使って運航される船舶交通は、まさに離島のライフラインであります。そこで、この法案とは直接には関係いたしませんが、離島航路の関係について若干お伺いをしたいと思います。

 私の地元の鹿児島、長島と獅子島とを結ぶ、あるいは、長島と熊本県の牛深を結ぶ離島航路があります。マイカーを持たないお年寄りなどの交通弱者あるいは観光客にとりまして、離島航路はかけがえのない交通手段であります。まさしく生命線とも言えるものであると認識をいたします。

 こうした離島航路は、本土を上回る高齢化の進行や過疎化といった長期的、構造的な要因に加えまして、国、地方の公共事業削減の要因が加わりまして、輸送量の減少に歯どめをかけることができない状態である、そんなふうに認識をしております。

 さらに、近年の燃料高騰によりまして、各航路で欠損額が激増いたしました。国庫補助離島航路、非国庫補助離島航路ともに、おおむね、それぞれ百億円、合計で二百億円の経営欠損が生じたとも言われている状態でございます。こうした事態から、運賃・料金の数次に及ぶ値上げ、航海速度の低減、減便、さらには休廃止に追い込まれる航路も多数存在をしております。これでは安心して離島に住むことはできない、離島住民の不安と不満が募っていると認識をいたします。

 こうした事態に対応するために、国交省では離島航路補助制度改善検討会を設置されまして、本年三月に最終報告がなされたところであります。その中で、拡充をされることとなりました離島航路補助制度等の補助金交付要綱の改正が現在進められているところであります。その進捗状況、改正の概要についてお伺いをいたします。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、離島につきましては、離島の人口減少や高齢化が進展しておりまして、輸送量の減少がございます。また、昨年は、燃油高騰ということで航路収支が大幅に悪化した。長年かかって欠損の増大が確かに進んでおります。私ども、こういった背景から、航路の将来にわたっての安定的な維持に懸念が生じかねない、深刻な事態であるという認識をしております。

 昨年一月に、私ども海事局の中に離島航路補助制度改善検討会を設置いたしまして、八月に中間の取りまとめをいたしました。本年三月には最終報告をまとめてございます。

 関連する予算でございますけれども、この昨年の中間取りまとめを踏まえまして、平成二十一年度予算要求におきましては補助制度の改革、すなわち、これまでの欠損補助に加えまして、構造改革を進めるための支援に必要な額を要求させていただきました。前年度比で大幅な増額をお認めいただきまして、四十八億円という予算になっております。また、平成二十一年度の補正でございますけれども、この申し上げました構造改革の加速を図るために、さらに四十億円を計上させていただいております。

 この改革の中身でございますけれども、幾つかございますが、例を申し上げます。

 一つは、国、地方公共団体、航路事業者その他地元の関係者から成ります航路改善協議会を設置していただきまして、そこで航路改善計画を策定していただく。また、地方公共団体等が航路事業者から船舶の買い取りあるいは代替建造を行って、事業者の皆様の資本費負担を軽減した上で航路事業者に運航委託する、いわゆる公設民営でございますが、これへの支援。また、省エネ等の、省エネ船に代替建造するというものに対する支援。また、従来はありませんでしたけれども、経営努力で欠損を削減した場合に、メリットとして、その削減した割合の五割をインセンティブ補助金として還元する、こういう中身がございます。

 このほかに、欠損補助対象外の離島航路につきましても、この中間報告の中で、地域が主体となって行う運航サービスの向上、航路の再編、設備、施設の更新等を図るための、これを支援するための地域公共交通活性化・再生総合事業の活用を図るなど、支援制度全体の拡充にも努めてきております。

 今後、この補助制度の要綱の改正等、具体的な運用の規則の整備、航路改善協議会の設置準備、こういったものを進めまして、また、政府内では関係省庁との調整を経て、また、地方とは、関係地方公共団体あるいは事業者の周知を図りまして、実効性のある離島航路の維持改善に努めてまいりたいと考えております。

小里委員 離島航路は、離島住民の生活に不可欠な交通手段、産業物資の輸送手段として、陸上であれば道路に相当する機能を果たしております。道路なしでは人は暮らしていけず、経済も成り立ちません。

 申し上げました私の地元の長島や獅子島をめぐる航路の中で、獅子島から水俣の航路につきましては、鹿児島県の努力や国の調整によりまして、平成二十年度から県からの補助が出るようになっております。

 一方で、国の補助となりますと、離島航路整備法に基づく国庫補助制度がありますが、他に交通手段がないなどの厳しい条件がありまして、長島や獅子島は補助航路となることができません。地方が疲弊する中で、こうした補助対象外の離島航路についても、国として何らかの支援が必要と考えます。

 例えば、今、若干お触れになりましたけれども、国の省エネ改造の支援によりまして、隠岐汽船の場合は料金引き下げと経営の安定化が図られた、あるいは、佐渡汽船の場合も国の交付金により同様の効果が得られた、そんな話も聞いております。また、従来の道路財源が衣がえをいたしました地域活力基盤創造交付金の活用も進められているところでございます。

 こういったことも踏まえながら、長島や獅子島のような補助対象外の離島航路への支援について、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 離島航路をどういうふうに支えていくのか、その厳しさは、今既に小里委員が御指摘になられたとおりでありますけれども、何とか支える方法をいろいろ考えていきたいということで、海事局長から説明させていただきましたように、離島航路の改善検討会で今、まとめさせていただいております。

 御指摘の鹿児島県の長島町、特に獅子島航路につきまして、地域における航路の課題、あるいは今後の航路のあり方、支援策、具体的にどういうふうに支援していく方法があるのかということを十分に御議論していただく必要があると思いますけれども、国としても、現状をよくお伺いした上で、補正予算の活用も含めまして、どのような支援策であれば一番効率的なのか、あるいは効果的なのか、対応策を検討してまいりたいと思っています。

小里委員 ありがとうございました。ぜひよろしく御指導をお願いしたいと思います。

 法案の施行までの間に、関係者にさらに周知徹底を図ることが重要であります。特に外国の船舶にとりましては、日本の交通ルールが、なかなか情報が伝わりにくいといった面もあります。その辺の周知方、よろしくお願いをしたいと思います。

 最後に、国民の安全、安心を向上させていくという観点から、法案の着実な実施を含めまして、海上交通の安全確保に向けた大臣の抱負をお伺いしたいと思います。

金子国務大臣 海上の安全の確保というものは、社会経済を円滑に行うための極めて大事な課題であります。

 今般の法案を通させていただきまして、船舶が航行する水域の確保、船舶の構造や設備における安全性の向上、運航者による安全管理の徹底、海難分析等を踏まえました海上交通ルールの設定、航路標識の高度化、いろいろ盛り込まれましたけれども、こういったようなことが今度の法案を通じて、ある意味、できるようになってまいりました。

 そういう意味では、この法案を通じまして、海上交通のさらなる安全の確保に向けて、今後とも万全を尽くしてまいりたいと思っております。

小里委員 以上で終わります。ありがとうございました。

望月委員長 次に、上田勇君。

上田委員 きょうは、法案に関する質問を何点かさせていただきました上で、残りの時間で、都市再生機構等にも来ていただいておりますので、賃貸住宅への定期借家契約の導入にかかわる問題につきまして何点か御質問させていただきたいと考えております。

 まず、法案の方に質問させていただきます。

 四方を海に囲まれた海洋国家であります我が国におきましては、海上交通の安全確保というのは極めて重要な課題であるというふうに認識をしております。近年、海難事故隻数というのは年間二千五百程度、また、死者・行方不明者も年間百名を超える程度で、横ばいの状態が続いております。また、船舶が近年、大型化、高速化をしている、また外国船や外国船員の増加、プレジャーボートの増加等、潜在的な海難リスクが高まっているというようなことも指摘をされております。

 海上交通の安全性に関する現状認識、それから本法案の提出の意義につきまして、まず最初に、大臣の御見解を伺いたいと思います。

金子国務大臣 過去十年間、海難の発生隻数、事故件数というのが、決して減ることなく推移しております。特に、船舶交通が混雑する、あるいはふくそうする東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、関門海峡においては、重大な海難が続いておりました。

 特に、我が国の潮の流れというような海域特有の特性を熟知しない外国人船員、船舶の増加を背景としまして、こういう事故が一方で発生している。もう一つは、船舶の大型化によりまして、海難が起こった場合の被害が非常に拡大するというおそれが高まってきております。

 そして、一方で、リアルタイムで発信をしてくれる、船の名前、針路の把握が可能になります船舶の自動識別装置、AISというのでありますけれども、これが、条約を批准したわけでありますが、世界的に、去年、二十年七月に、ある一定以上の大きさの船に対しては搭載義務が完了いたしまして、これによりまして、今度は海上交通センターのコントロールというものが相当できるようになりました。

 ここで具体的に、船舶がふくそうする海峡あるいは船の航路、これに対しまして、航路出入り口の海域における経路、どこどこを通って進入してくださいというような経路の指定ですとか、追い越しの禁止ですとか、海域の特性に応じた航路というものを指示する、限定するというようなことができるようになってまいりました。

 そういう、海上保安庁が船舶に対して危険の情報を伝える、それから同時に、伝わった情報を船舶側もちゃんと聞かなければいけないという義務を今度課すわけでありますけれども、こういうことによりまして、海上保安庁の勧告と、それを今度は義務化して受けてもらって危険を回避するということ、これが大きなポイントであります。

 まだまだほかにも、台風が来たときは港から出てくださいとか、その他いろいろなことが含まれておりますけれども、大きなポイントは、そういう海上保安庁、海上交通センターの発信と、船舶がそれを受けて安全に航行してもらえるというのが今回の趣旨であります。

上田委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと何点か、内容についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今、大臣の答弁にもございましたけれども、この法案では、海上交通法それから港則法を改正いたしまして、航法の遵守及び危険の防止のために勧告が行えるというような規定が新設をされます。しかし、資料を見てみますと、現状では、海上交通センターが危険を感じて注意喚起したケースで、結果的に衝突または乗り上げを起こした船舶のうち、約半数からは注意喚起に対する応答がなかったということが言われております。

 今回、勧告という制度を新設したとしても、その勧告を聞いていない船舶があるんじゃないかということも懸念されるわけでありますが、そういう現状についてはどういう対応をお考えでしょうか。

岩崎政府参考人 海上交通センターから船への勧告というのは、手段として国際VHFという周波数での無線で行うことを予定しております。これを聞いてもらわないといけないものですから、今先生おっしゃったように、残念ながら、我々の今の制度では、こうした情報提供をしても応答がなかったといったケースはそれなりの量でございます。そのために、今回の法案でも、ちゃんと聞いてくださいという、船舶側に対して情報提供の聴取義務を課すこととしております。

 また、あわせまして、こうして義務を課すだけではなくて、本当に聞いているかどうかという確認もできる限りやっていきたいと思っております。必ずしもすべての航路でできるわけではありませんけれども、あるいは、すべての時間帯でできるわけではありませんが、航路に入る前に、その船に対して通信設定をいたしまして、ちゃんと機械が作動しているか、通信の聴取をしているかといった確認を行うことでありますとか、あるいは、そうした通信設定をしていないといった船がありましたら、私ども、航路周辺には原則三百六十五日、二十四時間、巡視船を配備しておりますので、そうした船からマイクで呼びかけるとか、いろいろなことをしていきたいと思います。

 また、あわせまして、海事関係団体とかそうしたものに対して、こうした制度になっている、ちゃんと聞いてくれといったことをよく周知していきたい、このように思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、先ほど金子大臣の答弁の中にもあったんですが、船舶自動識別装置、AISについてであります。

 このAIS、先ほど大臣からもお話があったとおり、安全の確保、運航能率の向上、海難の未然防止、非常に有効な対策の一つであるというふうに考えております。

 今、条約とか国内法で、一定条件に該当する船舶に対しては搭載が義務づけられております。海上交通安全法の海域を航行する船舶について、このAISがどの程度搭載をされているのか、そういう現状についてまずお伺いしたい。

 そして、その上で、やはりこれは海難防止等のために非常に有効な対策でありますので、搭載が条約や法律で義務づけられている以外の船舶についてもこれから搭載を促進していく、そういう対策が必要かというふうに考えますけれども、お考えを伺いたいと思います。

岩崎政府参考人 私の方から、前半の御質問のAISの搭載状況について御説明させていただきます。

 AISは、すべての船舶ではございませんで、国内は五百トン以上の船、国際航海は三百トン以上の船で義務づけてございますので、すべてではございません。

 海上交通安全法の航路を航行した船舶のAISの搭載率でございますが、東京湾浦賀水道が約六〇%でございます。伊勢湾の伊良湖水道が五八%、大阪湾の明石海峡が少々低くて約三九%、来島海峡では五五%となっております。

伊藤政府参考人 AISの搭載が義務づけられていない船舶に対しましても搭載を推進していくべきではないかという御質問でございます。

 御存じのとおり、AISは衝突等の海難防止に大変有効な手段であるということで、国土交通省といたしましても、海上保安庁等関係部局と連携をしまして、AISの普及促進に向けて取り組んでいるところでございます。

 具体的には、実はパンフレットを作成して配付しております。そのパンフレットの中に、今まで御議論いただいた、いわゆるふくそう海域では海上交通センターなどからの航行支援が受けられるということ、あるいは、船同士でも、AISを設置している他船の探知が容易になって、しかも、ほかの船の針路変更等がリアルタイムに把握できるとか、あるいは逆に、自分の情報が相手に提供できる、こういったAISの設置のメリットというものを説明したパンフレットを作成いたしまして、業界団体、地方運輸局を通じて船舶所有者等の関係者に配付をし、普及促進に取り組んでおります。

上田委員 非常に重要なことだと思いますので、ひとつよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 冒頭、大臣からもお話がありましたけれども、海上交通の安全を確保していく、また海上交通の能率化を図っていく、我が国は海上輸送に大変依存をしているわけでありますので、非常に重要な施策だというふうに思っております。ぜひ、この法案の施行その他も含めまして、対策についてさらに力を入れて取り組んでいっていただきたいということを御要望させていただきます。

 それで、きょうの法案とは直接関係ないんですが、ちょっとこのお時間をおかりいたしまして、都市再生機構の賃貸住宅にかかわる定期借家契約の導入にかかわる件について、何点か御質問させていただきたいというふうに思います。

 URの賃貸住宅三十二団地について、定期借家契約を導入する計画があるというふうに聞いております。いろいろな類型の団地がありますけれども、それらの中には昭和四十年代に建設されたような比較的古い団地、例えば東京都江東区の大島団地、町田市の藤の台団地、また私の地元でもあります横浜市のくぬぎ台団地とか、幾つかそういう比較的古い、建築後年数がたっている住宅も含まれております。

 定期借家制度というのは、平成十一年に議員提案によりまして、良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法という法律で創設をされた制度であります。その目的としているところというのは、通常の普通借家契約においては家賃改定に硬直性がある、あるいは立ち退き料など将来発生する負担に対する不確実性がある、そういった問題があるので、なかなか良質な賃貸住宅の供給が進まないという問題意識から出発をしております。

 定期借家契約を結ぶことによって家主の事業収益性や将来の安定性も改善をする、そのことによって、良質で、したがって比較的家賃の高いような賃貸住宅、これは家族向けのものが多くなるんだというふうに思いますけれども、それの供給が促進されるということが期待をされたというふうに理解をしております。

 また、そのような物件については、どうしても家賃や敷金なども高く設定をされがちでありますので、この定期借家制度で将来の不確実性がなくなることによって、そういう敷金や家賃の軽減にもつながって、借りる側にとっても大きなメリットがあるということが当初期待をされたわけであります。

 そういう立法趣旨を考えますと、UR住宅についても、例えば東京の都心部に比較的近いような、比較的新しくて結果的に家賃も高いような住宅、そういうようなところに同制度を導入するということはある程度理解できるところではあるんですけれども、先ほど申し上げましたような昭和四十年代につくられたような古い住宅、そこに住んでいる方は結構高齢の方も多くなってきているわけであります。そういう団地への導入というのは、そもそもこの立法の目的から見て不適切ではないかというふうに考えますけれども、そのあたりの御見解を伺いたいと思います。

和泉政府参考人 今委員御紹介の定期借家導入の経緯は、委員の御指摘のとおりだと思います。

 まさに、一番典型的になじむのはどういう団地かということであれば、委員御指摘のように都心部の、家賃も高く新しく、そもそも回転の速い住宅ということかと思いますが、一方で、住宅セーフティーネットたる公的賃貸住宅のなるべく公平かつ効率的な活用というようなことを考えますと、古い団地であっても定期借家導入の検討をすることはやはり必要なのかな、こう思っております。

 もともとURにおきましては、建てかえ団地等を中心に定期借家の導入をやってまいりましたが、御案内の規制改革推進のための三カ年計画、これはことしの三月三十一日に閣議決定されておりますが、その中で、平成二十一年度におきまして、代表的な団地を試行的に選定して導入し、その上で機構の全賃貸住宅ストックの約二割の住宅を対象に定期借家契約を締結することとされたわけでございます。

 そういった計画を踏まえまして、現在、開始年代あるいは立地条件、家賃等を踏まえて、ある意味では網羅的に三十二団地選定しまして、まさにこれから試行的に定期借家の導入を検討しよう、こういった状況でございます。当然、そういった中で、機構の賃貸住宅に対するニーズの変化とか総合的な居住環境等に対する影響、こういうものを十分踏まえまして、今後の本格的な導入を検討してまいりたいと考えております。

 いずれにしましても、委員御案内のとおり、既存の居住者の借家契約には法律上この定期借家は導入されませんので、そういった意味で、既存の居住者の方々の居住の安定に対して直接影響を与えることはないと思っておりますが、いずれにしても十分慎重に検討してまいりたい、こう考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 私も平成十一年のときの立法に携わった者の一人でありますけれども、そのときに、やはりその論議の過程では、本当に居住の安定性に対する懸念というのが、これは実は、立法を推進した議員の方からも随分とそういう懸念が示されてきたところであります。

 ただ、一方で、今局長がおっしゃったとおり、なかなか良質な賃貸住宅の供給が進まない。その原因の一つが、普通借家契約の中の、将来の非常に不確実な面が多いので事業として成り立ちにくい、そういうものが大きな要因であるということも各方面から言われていまして、そういう中でこの定期借家制度が創設をされたわけであります。

 ですから、今回のUR住宅の中で、その辺、試行ということでありますけれども、本当に趣旨に沿った形での試行が必要なのではないのかなというのが、今率直に感じているところであります。

 今、住宅局長から答弁がありましたけれども、規制改革推進のための三カ年計画、きょうは規制改革推進本部にも来ていただいておりますのでお伺いをしたいんですが、この三カ年計画で、URにおける定期借家制度の幅広い導入を実施するということを求めております。

 ただ、先ほど申し上げましたような比較的古い団地を対象とすることに、今私がいろいろとお話をさせていただいたことを踏まえて、どういう意味があってこういうふうに対象とすることを提案されているのか。また、当然のことながら、それを提案するということは相応のメリットがある、そういう前提なんだというふうに思うんですけれども、この場合には、特にそういう古い団地などについては、借家人あるいは都市再生機構、それぞれにどういうメリットがあるというふうにお考えになってこの導入を求められているのか、ひとつわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

私市政府参考人 お答えいたします。

 対象等につきましては先ほど答弁があったとおりでございますが、このような制度を導入するメリットといたしましては、規制改革会議といたしまして、一つとしては、普通借家契約と異なりまして定期借家契約であれば、期間満了時の家賃改定、退去の要請など柔軟に対応が可能であり、貸し主である機構の業務の整理合理化に資する契約形態であること。二つとしては、裁判など法的措置を伴う家賃改定等をめぐるさまざまなトラブルについても、期間の定めある定期借家契約であれば多くの問題は解消し、紛争処理コストも大幅に下がることから、管理コストの削減に資するとともに、住民の負担軽減にも資するものである。

 この二つのことから、定期借家契約の幅広い導入は、家賃を支払って居住する皆様が安心して居住できる環境整備の促進という面を含めて、都市再生機構、借家人の両者にとってメリットがあるものと考えており、国土交通省及び機構において、閣議決定に基づく取り組みが着実に実行されるものと考えているところでございます。

上田委員 今、非常に一般論で御説明をいただいたんですが、例えば先ほど私が事例として挙げましたような住宅に例をとってみますと、今の御説明というのは全然メリットが当てはまらないと思うんですね。ほとんど、随分と年数がたっているところで家賃の設定なども安定してきている、なおかつ、高齢の方で長年そこに住んでいる方が多いわけでありますから、いろいろな形での支援制度なども導入をされているわけでありますから、仮にここで定期借家制度を導入したとしても、まずURには何のメリットもないのではないかというふうに思います。

 では、今度は借りる側からするとどうなのかというと、実は、定期借家制度というのは、家賃が高いあるいは敷金が高い、それが将来の不確実性を事業主に対してなくすことを通じて軽減される、それがメリットなんだというふうに思うんですけれども、それもほとんど働かないですよね。

 今、こういう比較的郊外型の、年数のたっている住宅について、どういうメリットがあるのかという質問をさせていただいたんですけれども、もう一度、ちょっと具体的にお答えいただきたいと思います。

私市政府参考人 具体的なところということでございますけれども、今御紹介いたしましたのは規制改革会議としての議論の結果でございますけれども、細かい議論については、今のところ、ちょっとまだ整理をされていないというふうに認識しております。

上田委員 わかりました。

 特に積極的な理由がないということなのかもしれませんけれども、これは、実際に適用を開始しようとするときでありますから、提案をされるときには、やはりもうちょっと実際に応じた検証をして、あるいは調査をしていただいて、規制改革会議としても御提案をいただく責任があるんじゃないかというふうに思います。

 私も、規制改革を進めていくことは必要であるというふうに思っております。これまでの規制改革に一律に反対するというような論調も今一部にありますけれども、それはやはり間違っているんだろうと。ただ、規制改革を行うことというのは、それに伴ってメリットがあるものじゃなければやはり意味がないわけでありますし、かえってデメリットだけが多くなってしまうようなことがあってはならない。そういう意味では、本件について、もうちょっとよく御検討していただかなければならないんだろうというふうに今感じました。

 次に、本当はもうちょっとこの辺のお話をさせていただきたいところなんですけれども、きょうは都市再生機構からも来ていただいております。ちょっとまとめてお答えいただければというふうに思うんです。

 定期借家制度というのは、契約満了時に再契約は可能でありますけれども、契約更新という制度は法律上ありません。URでは五年を予定しているというふうに聞いておりますけれども、契約満了時に再契約に応じるかどうか。また、その際、家賃等の条件などの変更について行うことになるんだと思うんですけれども、その際にはやはり居住の安定性を最優先で対応していっていただきたい、そういう運用をお願いしたい、これが一点でございます。

 もう一点、定期借家契約というのは、法律上は、借家人の方からは、転勤、療養、親族介護など、やむを得ない事情以外では契約の途中解約ができないという本来の制度であります。UR住宅については、やはり借家人の権利が侵されることがないような運用が必要というふうに考えておりますけれども、こういった運用の面、今、二点お伺いをさせていただきましたけれども、都市再生機構の方から御答弁いただきたいと思います。

尾見参考人 二点お尋ねがございましたので、お答え申し上げます。

 まず最初の第一点は、定期借家制度については更新の制度がないわけでありますが、ただ、再契約が可能だということになっているのは先生御指摘のとおりでございます。

 私どもといたしましては、もう既に定期借家について一部導入しておりますが、定期借家の導入に伴いまして、その入居者の方々に対しては、期間満了の一年前から六カ月前に行うこととなっております期間満了の通知を行う際に、機構が再契約することが可能だと判断する場合には、契約者の方々に対して再契約の御案内をするというふうに予定をしております。そういうことを通じて可能な限り居住の安定の確保を図るという考えでございます。

 では、どういう場合に再契約が可能かということでございますが、建物の状態でありますとか契約の履行状況とか、個別にその時々の事情を総合的に勘案する必要があるというふうに考えておりますが、例えば居住者の方々が高齢者であることなども、その際に考慮すべき重要な要素であるというふうに思っておるところでございます。

 それから、二点目の御質問は、借家人の方に転勤とか療養とかいわば特別な事情がないと途中解約ができない、こういう制度になっているがどうかというお尋ねでございます。

 機構の方では、今申し上げましたように、建てかえを計画している団地等で既に導入しておりますが、契約者の方からお申し出があれば、今申し上げました理由があってもなくても解約できるというようにしております。そういう運用をしておりますので、そういうことで対応していきたいと思っております。

 以上でございます。

上田委員 ありがとうございます。

 居住の安定に相当配慮して既に運用していただいているし、またこれからも運用していただくということだろうというふうに思います。

 UR住宅、私が事例として出したような住宅でいえば、それはもう、そうやっていただかなければ、そこに居住している方というのは長年住んでいる人、また特に御高齢の方も非常に多くなっているわけでありますから、当然のことであるんですけれども、そうなると、今度は逆に、本当に定期借家契約ということがどういう意味を持つのかというのが全くわからなくなってくるんですね。

 そういう意味で、ちょっと、質疑の時間が終了しましたので、今までのやりとりを踏まえて、最後、大臣からひとつお考えを伺えればというふうに思います。

金子国務大臣 せっかく定期借家契約について立法されたその趣旨が、どうも本来の趣旨と違うようになったのではないかという御議論で、もう少し御議論を私も聞いてみたい。特に、規制改革推進室長の答弁、ちょっとまだ整理されていないという答弁があったんですけれども、何で整理されていないのか、私もよくわからないんですけれども、議論を政府側でもう少し詰めてもらった方がいいんだろうと思います。

 中身をもう少し私も伺いたいと思いますけれども、本年三月には閣議決定されて、そして二割を対象に選定するという方向も出ております。これを尊重はしますけれども、試行的な導入というものを十分見きわめながら、どのような形で都市再生機構賃貸住宅に定期借家契約を導入するのが適切なのか、十分に検討してまいりたいと思っております。

上田委員 終わります。

奥野委員長代理 次に、高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木義明です。

 本日は、港則法並びに海上交通安全法について若干のお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、海上保安庁が出しております平成二十年の「海難の現況と対策について」によりますと、平成二十年には全体で二千四百十四隻の船舶が海難に遭遇をした。そして、船舶事故で百二十四名の方が命を亡くされた。その内訳については、プレジャーボートが最も多く、九百一隻、死亡者が十七名。その次が漁船、七百三十二隻、九十六名の方が亡くなっておられる。三番目は貨物船で、三百五十一隻、六名の方が亡くなっておられる。こういう状況でございます。

 このようなことで、今回の法改正については、最近の海難の事故発生状況あるいは海上交通の環境の変化等によって、航行の安全を確保するための法的な措置を講ずるものでありますから、これは当然のことであって、むしろ私は、遅きに失したものだ、このように思っております。

 そういう中でもありますが、まずは、船舶自動識別装置、AISについて初めにお尋ねをしておきます。

 このAISは、海上人命安全条約、いわゆるSOLAS条約に基づいて、国際航海に従事する三百総トン以上のすべての船舶、国際航海に従事しない五百総トン以上のすべての船舶等に義務づけられていることであります。しかし、それはそれで結構なんですが、義務づけられていない、先ほど私が紹介いたしました海難の発生状況から見ても、漁船を初めとする小型船舶の普及に向けた支援策等が今後の大きな課題になると私は思っております。

 そういう意味で、漁船のような小型船には搭載をされていない今の状況の中で、簡易AISというものが今普及をされようとしておりますが、これでも三分の一から五分の一という価格になっております。この簡易AISの普及、実用化が今後の課題になると私は思っておりますが、その対策についてどのようにお考えであるか、まずはお尋ねしたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、今のAISは、私どもの調査では百二、三十万となっておりますが、かなり高価なものでございます。

 簡易型AISになりますと三十万円ぐらいではないか、このように見込んでおります。それでも一定の値段はするわけでございますが、今よりは相当安く、小型ということで、これが普及されるのを期待しております。総務省の方で、そのための技術要件を定める省令も定めていただきました。今後、この簡易型AISについて普及を図るということを我々も一生懸命やっていきたいと思っております。

 具体的には、この簡易型AIS、これから商品化されるわけでございますけれども、できるだけ使い勝手のいいものにしてもらいたいと思っておりますし、また、簡易型であってもAISを積むことのいろいろなメリット、こうしたものを、私ども、関係の海事局等々とも一緒になり、あるいは水産庁とも一緒になって働きかけていって、この普及をまずやっていくのが第一の課題かなと思っております。

高木(義)委員 今言われましたように、普通、大体百五十万から二百五十万と言われておりますが、これではとてもじゃないけれども普及することは無理であろう。そのために簡易AISというのが今開発をされて、既にそれも出回っておる状況ですが、やはり特別な支援策がないと、本当の意味の海上交通の安全、この港則法等の改正の効果が出ないのではないかと私は思っておりますので、いま一度、ひとつその支援策、今回の補正予算の中でも当然こういうことこそ優先をして普及に努めるべきだと私は思っておりましたけれども、そういうことにはなっていないようです。

 その点についてぜひひとつ十分な配慮をしていくことが必要ではないか、この点についてお尋ねしたいのと、もう一つはプレジャーボート、この対策が非常に難しいものがありますが、この点についてはいかがお考えになっておられるのか、あわせて、その方向性についてお伺いしておきます。

岩崎政府参考人 簡易型AISを含めた財政支援でございますけれども、海上保安庁だけでできるかどうかわかりませんが、海事局あるいは水産庁とも、先生にきょう御指摘いただいたことを課題として受けとめさせていただきたいと思いますが、まずは、とりあえず物をつくってその普及を図るということでやらせていただきたいと思っております。

 それから、プレジャーボートでございますが、プレジャーボートの事故の特徴は、割合、沿岸域が多い、近場で事故が多い。それから、ライフジャケットをつけていない人が多くて、そういう事故が多い。それから、やはりプロの人ではございませんので、例えば気象の状況でありますとか海の地理の状況でありますとか、十分認識していない。そうしたことによる事故が結構多いと我々分析をしております。

 ライフジャケットの普及を図る。それから、どこで事故が起こったかというのを我々海上保安庁の方に知らせてもらうために、防水型の携帯電話をつけてもらう。それから、海図とか気象条件とか、こうしたものが私どもの管区本部、現場でインターネットなんかでわかるようなシステムを導入しつつありますので、こうしたものを見ていただいて安全な航海に努めてもらうというのが重要だろうと思っております。いろいろな角度から総合的な対策を講じてまいりたいと思っております。

高木(義)委員 AISの搭載が義務づけられておる船舶でも、それをつけていない、いわゆる未搭載船についてはどのようにするのか。また、AISのスイッチを入れていないとか、忘れておった、意図的に入れていないということも十分想定されるわけですが、こういったものに対してどう対応し、そうでないものについての罰則規定はあるのかないのか。これがないと海上交通センターと船舶側の重要なやりとりが交わせないということになりまして、これは法の精神からいうと逸脱するものではないかと思っておりますので、その点についてどうでしょう。

伊藤政府参考人 先生から二点、お尋ねがございました。本来義務づけられているにもかかわらずそれを搭載していない、あるいは、搭載していても、適切にスイッチを入れて使用していないというものに対する対応でございます。

 まず、設置義務から御説明申し上げます。

 日本船舶に搭載すべき設備というのは、船舶安全法という法律がございまして、この法令に基づきまして、設置の義務と基準というものが定められております。船舶所有者というのは、この法律に基づきまして定期的に船舶の検査を受けることが義務づけられて、また、結果として検査証書というものが発給されるわけでございます。

 したがいまして、受検をしたときにもし設備が搭載されていませんと検査に合格いたしませんので、一般的に申し上げますと、その時点で搭載をするわけでございますが、大変不見識な方で、例えば、無理やりそれを使って貨物の運送の用に供するようなことが仮にございました場合には、船舶安全法の法律に基づきまして、いわゆる有効な船舶検査証書を持たずに運航したということになりまして、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金という罰則がございます。

 また、例えば途中で意図的におろしてしまうとか、めったにないとは思いますが、そういった場合であっても、管海官庁はそういうものを見つけた場合には、その船舶の航行停止その他の処分を行うことができるようになっております。

 また、せっかく持っていても使わなければ意味がないわけでございますが、それにつきましては、特にAISの搭載が義務づけられている船舶の船長さんは、船員法の施行規則に基づきまして、船舶の航行中は、船舶自動識別装置、AISを常時作動しておかなければならないという規定がございます。

 この義務の違反につきましては、まずは、船員労務官が船員法に基づきましてその義務の遵守につき注意を喚起するとか勧告するという権限がございますし、さらに、国土交通大臣は船員法に基づきまして違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができるといったことがございまして、さらに航行停止の発出あるいは航行の差しとめというところまでできるようになっております。

 そういったことを通じまして、設置の義務あるいは作動というのがしっかりと確保できると考えております。

高木(義)委員 改正港則法の三十七条を見ますと、いわゆる航路外での待機指示あるいは異常気象・海象時における港内からの退去命令、こういったものには罰則規定があるんですが、海上交通安全法の第六条にかかわる追い越し禁止、ふくそう航路の場合は大変追い越しというのは危険な行為なんですが、これには罰則が設けられていないようですが、これで本当に是正措置となるんでしょうか。この点についてどうでしょう。

岩崎政府参考人 追い越し禁止に罰則を設けるかどうかというのは、私どもも法制的にも検討をいたしました。

 その状態が追い越しの関係にあるかどうか、一直線でずっと走っていますと非常にわかりやすくて、これは追い越しだということになりますが、航路は一定の幅がございますので、少し斜め後方から接近する場合とか、並行して走っていない、しかし前の船を追い越していく、こうしたものは、横切りなのか追い越しなのか、なかなか、少し難しい状況があるのではないかということで、そうした少しわかりにくいものについて直ちに罰則を設けるのはいかがか、こういうことで罰則は設けなかったわけでございます。

 ただ、今回、そうした状況に遭うというのは海上交通センターの方で見ておりますので、そうした状況になるよということをちゃんと勧告する。それから、実際にそうした状況で事故を起こすといった場合、海難審判でありますとか、私どもで言う刑事裁判とかがございますけれども、より責任を問われるということになります。そうしたことを含めて周知を図っていきたいと思っております。

高木(義)委員 私は、海上の安全のためには、小さいことでありますが、ライフジャケットの着用というのが極めて重要です。

 これは、平成十九年の十二月に金華山沖で発生した漁船の場合でも、七人の乗組員のうち三名が救助されまして、二名が遺体で発見され、二名が不明となっておる海難でした。救助された三名はライフジャケットを着用していた。残る四名は着用していなかった。このことから見ても、ライフジャケットの一部義務化がされておりますが、この点についての徹底と、それから、例えば位置を知らせる音波探知装置があるライフジャケットというものの普及、改良も私は必要であろうと思っております。この点についていかがお考えであるのか、お聞かせいただきたい。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、ライフジャケットの着用推進というのは非常に有効だと思っております。我々、いろいろな機会に、船がパトロールするときでありますとか、あるいは海難防止講習会なんかをやりますけれども、そうしたときにも指導しております。

 最近の事例でございますが、東北の宮城県で始まったことでございますが、ライフガードレディースという、漁協の女性の職員の方が乗組員の方にぜひつけてください、こういう運動をされますと、これはもう非常に効果があると聞いております。そのほかにもお孫さんが呼びかけるとか、お子さんが呼びかけるとか、そうしたいろいろな幅広い取り組みも始まっております。

 私どもも、できるだけいい事例を集めて、それを地域に普及していく、こういうことをやっていきたいと思っております。

 それから、遭難した場所が直ちにわかるといったシステム、これは、先生おっしゃるとおり、重要でございます。私どもも、ライフジャケットを着用していただいて、三十分とか一時間以内ですと、海水の温度にもよりますけれども、かなり生存率が高うございますので、それを教えていただくことは非常に重要なことでございます。先ほども答弁させていただきましたが、携帯の防水のものなんかでGPSがついているものがございますので、そうしたものをつけていただくと直ちにわかりますので、こうしたことの普及もあわせてPRしていきたいと思っております。

高木(義)委員 法律についてはこの辺にしまして、次に、実は海難事故の一例として、去る四月十四日、長崎県の平戸市沖で発生した第十一大栄丸沈没事故についてお尋ねしてまいりたいと思います。

 今、二十二名の乗組員のうち、いまだに十二名が行方不明、御家族の皆さん方は、船内に取り残された乗務員を早く救出してほしい、こういう強い要望があっております。

 五月一日に大栄水産は家族に引き揚げの断念を伝えたと言われております。

 まずこの点について、この海域は、過去にも同様の事故が起きておるんです。平成五年二月には、同じまき網漁船の第七蛭子丸が沈没。乗組員二十名中一名が救助、十九名が行方不明。平成十一年一月には、外国の貨物船が航行中に転覆、沈没。乗組員十三名が救助されたものの、六名が死亡した。

 今回、大体同じような海域でこの事故が起こった。今後、事故究明が徹底的に行われなきゃなりませんが、海上保安庁として、このような事故が起こるこの海域の状況、そして、今回起きたこの事故に対してどのような見方をされておりますか。

岩崎政府参考人 先生からの御指摘にございましたとおり、ことしの春の事故だけではなくて、平成五年の二月に十九名の死亡・行方不明者が出るといった事故等もこの海域で起こっております。まき網漁船の事故が多いと承知をしております。

 平成五年のこの事故を契機に、私ども、関係の人にも集まっていただきまして、まき網漁船の安全運航マニュアル作成検討専門委員会を設置いたしまして、官民一体となった検討を行って、安全運航マニュアルのモデルが取りまとめられたところでございます。

 今回、改めて、こうした運航マニュアルがちゃんと守られれば、あるいは事故を防げた可能性もありますので、そうしたことをさらに徹底していくとともに、これから、今回の第十一大栄丸でどんな教訓があるのか、再発防止のために何をしなきゃいけないのか、関係の方々と話し合いをしながら、再発防止を考えていきたいと思っております。

高木(義)委員 同じ海域でこのような事故が起こるということは、特別な安全対策が必要になってくるだろうと私は思っております。

 そこで、運輸安全委員会が現地に四名の派遣をされております。調査がこれからという五月十一日の参議院決算委員会の我が民主党の大久保潔重議員の質問に対して、きょう、事務局長さんおいででありますか、柚木浩一事務局長は、今回の沈没船の引き揚げを必要と考えていない、このような答弁をしておりますが、この真偽についてお尋ねします。

    〔奥野委員長代理退席、中山(泰)委員長代理着席〕

柚木政府参考人 お答えいたします。

 先生からございましたように、事故が四月に起こっておりまして、約二カ月たったところでございます。この間、私どもは現地に、今先生からもございましたように、四名の調査官を三回にわたって派遣いたしておりまして、病院から退院された、救助された乗組員の方からのお話を伺う、あるいは目撃した僚船の乗組員の方からお話を伺う、あるいはその他のデータ各種を今収集しているという状況でございます。

 引き続き、これらの情報収集を進めますとともに、入手しましたデータというものの解析を進めていくという状況に現在ございます。

 では、引き揚げの必要性の有無という点でございますけれども、今申しましたように、結構、この事件につきましては、近場の僚船から実際の事故の様子を見ておられた方が複数おられたこと、それから、その船に乗っていて、転覆のときの様子についての情報がかなり得られていること、あるいは気象、海象条件も、比較的沿岸に近いということもございまして、相当程度のデータが得られているというようなことを含めて、今から一カ月前もそうだったんですけれども、その後の調査を進めましても、事故原因の究明を行うために必要な情報がかなり得られているということを考えて、このような状況を見る限り、船体の引き揚げが必要というふうには今考えていないということを御答弁申し上げたわけでございますが、現時点においても、その点については変わっておりません。

 いずれにいたしましても、関係者の方々が安心して漁業に従事できますように、徹底した事故原因の究明に努め、再発防止につなげてまいりたいというふうに存じております。

高木(義)委員 海上保安庁にお伺いしますが、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律、前回の改正は平成十九年でしたが、この改正でも、油、有害液体物質または危険物の排出のおそれがある場合等において、海上保安庁長官が船舶所有者に対し、所要の措置を講ずべきことを命ずることができるというのが加わっております。

 しかし、海上保安庁が過去に船主に撤去命令を出したケースは、二年間で、東北の座礁船の撤去に関するもの一件しかないんです。よほどのことがない限り、引き揚げるということではないんでしょうか。この点についてどうでしょう。

 なお、これまでの沈没船の引き揚げの事例は、国内において、一九八八年、昭和六十三年、これは海洋調査船「へりおす」、水深二百三十メートル、費用一億円以上で引き揚げております。また、漁業練習船のえひめ丸、これは二〇〇二年、平成十四年、水深六百十メートル、費用六千万ドルで引き揚げられております。そして御案内のとおり、北朝鮮の工作船については、二〇〇二年、平成十四年に水深九十メートル、費用五十八億八千万円と言われておりますが、これも引き揚げられております。

 しかし、一方で、引き揚げない背景を考えてみますと、やはり船舶保険の限度額、こういうものが大きく作用しておるのではないかと思っておりますし、通常水深が五十メートル程度、引き揚げ能力が二千トンから三千トンの起重機でつり上げる、こういう経過もございますし、水深二十メートル以内の浅い部分では、航行の安全のためにこれは引き揚げる。多くの場合は放置をされる場合が多いんですね。ただ、軍事、環境保全、いわゆる人道目的、こういった特殊な事例のときは引き揚げておると言われております。今回の水深は約八十メートルという状況ですが、やはり引き揚げることを追求すべきではないか、私はこのように思っておりますよ。

 そこで、大栄丸の所有者である船主、これは大栄水産です。大栄水産は、株式会社日本サルヴェージに調査を依頼し、その結果を行方不明者の家族に説明されたと言われておりますが、日本サルヴェージ社の報告書についてはお持ちですか。この点についてどうでしょう。

岩崎政府参考人 民事のことなので、詳細に承知をしておりません。

高木(義)委員 技術的にどうなんでしょう、あるいは費用面でどうなんでしょう。そういうことについて検討されましたか。

岩崎政府参考人 私どもも、それなりの知見を持っております。ただ、私どもの持っておる知見も少々ございますけれども、実際にその船が引き揚げられるかどうか、どれぐらいのコストがかかるのかということにつきましては、その船の状況、海の状況等々が異なってまいりますので、十分な知識を持ち合わせているわけではございません。今先生がおっしゃった、やはりサルベージ会社、こうしたものが一番知識を持っておるところでございます。

 一般的に申しますと、水深が七、八十メーターだったと思いますけれども、ございますので、一定のかなりのコストをかければ、それは引き揚げるということは技術的には必ずしも不可能ではないと一般的には承知をしておりますけれども、このケースについて具体的、個別に細かく我々は分析したわけではございません。

高木(義)委員 事故調査の運輸安全委員会は、昨年の通常国会でこの設置法が改正されました。船舶事故について新たに原因究明の調査をすること。そして、事故が発生した場合には、被害の軽減のための講ずべき施策、措置について国土交通大臣または原因関係者に対し勧告すること。こういうことになっておりますが、今、この調査の原因究明、これは何といっても再発防止のための原因究明ですから、これについてどのようになっていますか。そして、その見通しはどうでしょう。

柚木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、事故が起きてから、実はまだ二カ月余りでございます。現在、一生懸命調査を進め、原因の究明、そして今先生おっしゃったように、それが再発防止に少しでも近づけるようにということで努力してまいりたいというふうに思っております。具体的なこれからの原因究明は一生懸命進めていくということで御理解いただきたいと思います。

高木(義)委員 事故の究明調査の中で、主には聞き取り調査ですね。しかし、やはり真相は、船体を引き揚げずして何の原因究明になるんでしょうか。初めから引き揚げることを考えずに、何の原因究明なんでしょうか。もちろん、いろいろな方々の、関係者の事情聴取も大切です。友船のこと、あるいは生存者のこと、それは大事な情報でしょう。しかし、やはり船を引き揚げること、そして、あんなに行方不明の家族の方々が、早く引き揚げてほしい、こういう声もあるんですよ。

 だから、原因究明の立場からも、あるいは人道的な立場からも、今できないことを言うんじゃなくて、どうしたらできるかということを、海上保安庁も水産庁も来ていますね。水産庁、どうですか。

 今から我が国も水産資源をもっと大事にして、若い人たちに船乗りさんになってもらって、漁業の振興というのは農林水産省の一つの大きなテーマでしょう。こんな原因がわからなくて、しかも、過去にもこういう事例があって、これの何の究明もなければ、船乗りになれと言ったってなるはずがないんですよ。だからその点について、何とかこういう沈没船の引き揚げについて、現状どうですか。何かいい方法はないんですか。この点についてどうでしょう。

本村政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から、大栄丸の沈没事故に関しまして、水産庁として、今後の漁業経営の維持なり、地域の活性化に向けた観点からの引き揚げについての検討をすべきではないかという御指摘がございました。

 委員御承知のとおり、六月三日に、長崎県知事及び長崎県議会から石破農林水産大臣に対しまして、漁業経営の維持に対する支援のほか、行方不明の乗組員が早く家族のもとに帰ることができるようにするための支援などについて御要請があったところでございます。

 まず、漁業経営に対する支援につきましては、会社の御意向それから地域の実情をお聞きしながら、漁船保険の早期支払い、また融資制度の活用、雇用就労対策など、漁業経営の維持や地域経済の活性化が図られるようにきめ細かな対応をしてまいりたいというふうに考えております。

 また、行方不明乗組員の捜索等に対する支援につきましては、行方不明者の乗組員が早く家族のもとに帰ることができるようにしてほしいという思いは十分に理解できるわけでございますけれども、まず、技術的に乗組員の捜索や引き揚げが可能かという問題のほかに、技術的に捜索や引き揚げが可能としても、その費用をだれが負担するのかという問題があるというふうに承知をしております。

高木(義)委員 農林水産大臣は、具体的に何ができるのか今後検討する、こういう姿勢を明らかにしております。今の漁業保険の制度設計について、私は考え直すべきじゃないかと思っております。このようなことが解決できない保険制度というのは一体何なんだろう、これは真剣に考えてくださいよ。

 きょうは時間もありませんので、この程度にいたしますが、もう一度その辺の決意を、水産庁、それから事故調査の運輸安全委員会、どうぞひとつ、今後の徹底した事故究明の決意をここで明らかにしてください。

佐藤政府参考人 今、御指摘ございました漁業保険の関係でございますけれども、現行の制度の中では、沈没しました漁船の引き揚げ費用につきましては、漁船の船主責任保険によりまして、船主が船体の引き揚げ等の責任を負担した場合に、その費用を契約保険金額の範囲内で補償するというものでございます。

 この責任保険におきましては、無動力漁船及び百トン未満の動力漁船につきましては十億円を限度、それから、百トン以上千トン未満の動力漁船については二十億円を保険金額の上限としておりまして、その範囲内で漁業者の方々が任意に保険金額を設定して加入するというものでございます。

 委員御指摘のございました、現行のこの保険制度ではカバーできない沈没漁船の引き揚げに対応した保険の設計でございますけれども、現状を見ますと、沈没船舶の引き揚げに当たりましては、技術的に困難な問題があるということもございます。また、その一方で、引き揚げに要します費用が、海域とかあるいは水深によりましてさまざまなものがございます。また、保険設計を行うために必要となります具体的な事例が非常に少ないということなど、解決すべき難しい課題があるわけでございますけれども、今後、関係機関ともよく連携をとりながら、こういった保険設計に必要なデータの収集を含めまして、保険設計が可能かどうか、きちんと検討していきたいというふうに考えております。

高木(義)委員 いわゆる漁業の振興あるいは海上交通安全の確保という重要な政策テーマなんですよ。したがって、私が言うのは、民間の努力、民間の活力も非常に大事ですが、この点についても、公的な支援策をいわゆるこの保険制度について考えるべきだ。抜本的に考え直してください。

 最後に、国土交通大臣にお伺いします。貴重な時間ですから、残された時間。

 今回のこの問題も含めて、きょうは港則法と海上交通安全法の審議でしたから、私が申し上げたいのは、ことしも海賊対策法案の審議もございました。これまで以上に、私は、国民にとって海洋の案件が重要であるということ、これが広まりつつあるということは非常に喜ばしいことだと思っております。既に海洋基本法ができましたし、その海洋基本計画に基づいて個々の法整備がされるのが今からです。海洋政策担当大臣という立場においても極めて重要であろうと私は思っております。

 また、道路の一般財源化をめぐっていろいろ議論がありましたが、やはり離島航路などの、海は道路だ、こういう考え方も大切にしなきゃなりませんし、また、先ほどの水産資源の海洋権益、これも大切でしょう。それから、いわゆる海上物流の効率化、モーダルシフト、高速道路の料金の引き下げによってフェリーや旅客船の方々が悲鳴を上げておる、こういったことについても私は手だてをしなきゃならぬと思っておりますし、そして何よりも、やはり船を扱う船乗り、日本人船員の育成と確保、これも重要な課題なんです。また同時に、国民こぞって海洋の資源に目を向け、そして、海とともに生きる我が国の国家の将来像のあり方についても、徹底的な教育も私は大事だと思っております。

 この点について、最後になりましたが、担当大臣としての決意を聞かせていただいて、私の質問を終わります。

金子国務大臣 全般的な話としての海洋の重要性あるいは海上航行の安全の確保というものは、今回の法案を通じて、また一段とさらに国民に広く理解をしてもらえるようにしてまいりたいと思っております。

 それから、今御議論のありましたこの第十一大栄丸の件について、ちょっと私、個別案件でありますので、今お答えする立場に必ずしもありませんが、きょう、この委員会で委員からこういう問題提起があったことを石破農林大臣には伝えさせていただき、議論を進めてもらいたいと思っております。

高木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

中山(泰)委員長代理 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いします。

 港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案について、質疑をさせていただきます。

 本日は、時間も大変限られておりますので、AIS、船舶自動識別装置を中心に、早速、質問に入らせていただきます。

 本法案の提案理由の一つとして、AISについて、SOLAS条約に基づく船舶への搭載及びこれに対応した海上保安庁における陸上施設の整備が昨年度中に完了して、AISを活用した海上交通の安全に係る施策の充実が求められているとされております。

 AISは、二〇〇二年以降、順次搭載の義務化が進められて、我が国では、二〇〇四年には、国際航海に従事する三百総トン以上のすべての船舶へのAIS搭載が義務化されまして、二〇〇六年度には、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海といったふくそう海域におけるAISの陸上施設の整備が完了した。これは、先般、この春、私ども民主党の方も、こうした海上交通センター、東京の方を見学させていただいて、海上保安庁とともにいろいろ勉強をさせていただいたところであります。

 そうしたことの中で、これまで実施したAISを活用した海上交通の安全に対する施策にはどのようなものがあるのかということを、まず冒頭お聞きいたします。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、AISは船の方も順次つけておりますし、私どもの海上交通センターでも、AISの電波を受信できるという装置を順次つけてまいりました。

 順次つけてまいりましたので、それを生かしながら、実効上、海上交通センターから航路を走る船に対して、今までですと、その船の名前がよくわからないものですから的確な呼びかけができなかったことはございますが、船名もわかる、針路もわかるということですから、その船を具体的に呼びかけて、いろいろな安全に対する情報提供をしていくといったことに取り組んでまいりました。

 今回は、これをきっちり制度化していきたいという趣旨で提案させていただいているものでございます。

森本委員 これはまだ、搭載後、日が浅いわけでありますが、海難事故はそれ以降はデータ的には減少したのでしょうか。お伺いします。

岩崎政府参考人 先ほど御説明させていただきましたように、事故の大部分はプレジャーボートと漁船でございますので、このAISの搭載は大型の一定以上の貨物船等々商船でございますので、直ちにこれで事故が減っているといったことについて、まだ具体的な統計データがあるわけではございません。

 ただ、私ども、関係の方、水先人でありますとかの方にお話を聞いてまいりますと、やはり、AISがあったことによって、事故が未然に防げる、あるいは、ヒヤリ・ハットするといったことはなくなったというようなこともいろいろ聞いておりますので、効果はあろうかと思っております。

 先生今御指摘のとおり、まだ搭載の義務化がされて一年もたっておりませんので、今後、少し、一定のデータがそろいましたら、こうしたAIS搭載船での事故の傾向に何か変化があったのか、効果があったのかというのは、課題として勉強していくことは検討していきたいと思っております。

森本委員 今のところ、目立った効果としては顕著な例はあらわれていないが、今後これは大いに役立ってくるだろうということで、長官、そのような期待を持ってということでよろしいんですね。水先人の方の御意見も今伺いましたし、このことについては、質問をしていくと、時間が限られておりますので、きょうは省きます。

 ところで、一つ、私自身がこのデータを見せていただいておって、外国人の死亡が、近年、平成十三年から十六年はかなり高かったんですけれども、そこから二、三年ぐっと落ち込んで、またこの平成二十年に当時のような四十九人という、十九年から比較しますと、十九人から四十九人まで、またびゅっとデータが上がっておるんですが、この原因というのは、どこに原因がおありなんですか。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、平成十九年は外国船舶の海難の死亡・行方不明者が十九人だったのですが、二十年は四十九人と、三十人ほどぼんとふえております。もともと母数が少ないものですから、一度に多くの方が亡くなられる、あるいは行方不明になられるという海難が発生しますと、数字がぶれるという傾向がございます。

 具体的に申しますと、昨年は、四月十一日でございますが、東シナ海で、これは中国の漁船でございますけれども、十六人が一挙に亡くなられた。それから、十二月に北海道の積丹沖で、これはロシアの冷凍運搬船でございますが、これの行方不明海難というのがありまして、十二人の方が亡くなられたといった、一度に大きな数の方が亡くなられるということが発生したことが原因であると考えております。

森本委員 今、長官のお話があったように、今後のAIS利用によって安全性が向上していくと。五百総トンに近い船舶に装備をされているAISが必ずしも有効に機能していないケースや、入力情報の間違いなどが散見されているということが委員の皆さんからも、これは交通政策審議会等で指摘されておるわけであります。せっかく最新機械であっても、正常に機能しなければ、また情報が正しくなければ、かえって安全性が阻害されるということになるのではないか。

 そこで、今後ますます有用性が高まると思われるAIS機器についての性能向上、そして正しい使用方法の周知徹底について、国としてはどのように取り組んでいかれるのか、お伺いします。

岩崎政府参考人 AISの性能向上でございますが、これにつきましては、私どもも十分知見を有しているわけではございませんけれども、具体的に、AISのふぐあいはどんなところに起こっているのかというような情報を我々が入手しましたら、それを的確に関係の部局あるいは関係のメーカー等に伝えるといったことで向上を図っていきたいと思っております。

 それから、AISのデータでございますけれども、船の名前でありますとか、船の長さでありますとか、そうしたものは固定的な情報で、一度入るとその情報はちゃんと継続いたします。それから、船の位置なんかはGPSなんかが自動的に入力されるということでございますが、混乱が多いのは、船の目的地でありますとか、その都度その都度人がデータを入れるという情報について、必ずしも適切ではない例がございます。また、そのルールもはっきりしていないところがございまして、例えば、目的地を日本と入れているところもあれば、横浜港と入れるものもいれば、あるいは何とかバースと入れてくれている人もいますし、非常にまちまちな状況が見られることは事実でございます。

 今回の改正に当たりましては、特に、AISの目的地の情報が正確に入力されていますと、その船の針路がどうなるかというのは非常に予測がつきやすいものですから、しっかり入れてもらおうと思っておりまして、省令あるいは告示などでそのルールを決めていくということにしていきたいと思っております。

伊藤政府参考人 使い方につきましても、どのように周知を図っていくかと御質問があったと理解しておりますが、私ども船員行政をしている立場から、ちょっと補足の御説明を申し上げます。

 まず、海技免許が船員さんは必要でございますので、船員になろうとする方は船員の教育機関で学ぶわけでございますが、その中で学生さんに、今現在は、座学、さらに言いますと乗船実習等の中で、AISの使い方についてしっかりと周知あるいは技能向上を図っております。

 また、既に海技免許を保有している方も、更新がございますので、その際にしっかりと講習を通じて技能向上を図っている次第でございます。

森本委員 長官、先ほどのAISの目的地情報の入力方法について、何も決まっておらないというような話をお伺いしたんですが、例えばこの十六回の議事録、二十年六月ですよね。十八回のこれでも、二十一年一月、これは五カ月ぐらい前なんですが、ここでもよく似た指摘がされておりながら、十六回になるとちょうど一年ですよね。

 こうしたことの中で、例えばAISというのは、先ほどおっしゃられましたように、位置とか針路、それから速力、目的地、これをきっちりしていくことによって、私どもが見せていただいた、一時間後にこの海域でどのような状況になっておるかシミュレーションができる。すばらしいというようなことで私どもは視察を終えて帰ってきたんですが、どうもここへ来ると、この機能のほとんどが、目的のところがはっきり入力方法が決まっておらないというのであれば、全く機能というものが、ここのバランスが非常に悪い状況で今運航されておるのかなということを私は心配するんですが、そのことについていかがですか。

岩崎政府参考人 私もすべてを承知しているわけじゃございませんけれども、大部分の船は、それなりに合理的に、日本に行くといったような目的地を入れているわけではなくて、横浜港に行きますとか、リーズナブルなことを入れていただいていると思っておりますが、一部に不適切な入力事例があるというのは事実でございます。

 先生おっしゃっていただいておりますとおり、これがきっちり入っていかないと、本当に重要な機能が発揮できませんので、繰り返しになりますが、省令、告示等を含めて、ちゃんとルール化していくというのを早急にやっていきたいと思っております。

森本委員 通告しておる質問が飛び飛びになってしまうんですけれども、そうなると、長官、平成十三年から十八年に、海上交通センターの管制官が危険を感じて注意喚起を行ったにもかかわらず、衝突または乗り上げを起こした船舶のうち、約半数が応答がなかったというようなことも実際ございますよね。

 そうしたら、この質問に関連して、応答がない理由をどのように分析されておるんですか。

岩崎政府参考人 無線を聞いていないというのが一つの理由かと思います。それから、無線は聞いておられても、無線の場所と自分の、今非常に少人数化されておりまして、ブリッジなんかに余り多くの人が当直で入っていないケースもございますので、別の作業をしている、あるいは無線から遠いので応答がなかった、こんなケースもあろうかと思っております。

 それから、これはAIS船に限るわけでございますけれども、今までですと、我々が呼びかけをしましても、何丸ということを呼びかけることができませんでしたので、これはだれのことを言っているんだということで、すっと聞き流しているといったケースもあろうかと思います。今回、特にAISの船につきましては、具体的に、何丸、こうしてください、何丸、今危ないですよ、乗り上げしますといったことが呼びかけられますので、より具体的になろうかと思います。

 いずれにしろ、こうした応答のない、聞いていないというのは非常に困りますので、今回、情報の聴取義務をかけて、きっちりそうしたことをやっていきたいと思っております。

森本委員 私も、現場でやっておるともう少しわかると思うんですけれども、非常に難しいなと思うのは、「あたご」と清徳丸の事故から、漁船は二十七から四十メガヘルツの無線、大型船はVHF、これは国際VHF無線。これは連携はなかなかとれないんですよね。連携というか連絡はとれないし、AISも非常にいい機能であるけれども非常に今高いという話もありました。

 ですから、ここのところ、今長官、高木委員のときでしたか、金額のことを言われたと思うんですけれども、また戻りますが、AISは百五十万、百三十万とか言われましたよね。これは、私聞くところによると、二百五十万というような話も出てきまして、今から簡易にも入りますけれども、これも三十万と言われたんですけれども、大体二十万から六十万というような、余りにも、百万とか、簡易でも二十万から六十万とか、これはかなりの差です。私、どうなっているんだという感じがするんですけれども。

 そこで、質問を、飛び飛びになってしまったんですけれども、簡易型AISについて、高木委員も非常にここのところは厳しく、これを普及させていくためには、簡易のAISの開発に向けて国がしっかりやっていく必要があるんだということをおっしゃいましたが、ここのところをもう一度具体的に答弁ください。

岩崎政府参考人 AISもいろいろな機能が付加される場合がございますので、わかりやすく言うとカーナビなんかと一緒でございますが、基礎的な機能だけがあるものと、もう少し付加的ないろいろな機能があるものがございますので、値段の差がかなり出てくるわけでございます。いずれにしろ、簡易じゃない、いわゆる普通のAISは百万円以上いたしますし、簡易のものは、随分下がりますけれども、それでもやはり三十万、五十万といった値段でございます。

 ただ、安全にかかわることなので、やはり自主的に船舶所有者、船主さんがつけていただくというのが基本だろうと思っております。

 しかし、それでも、高いものですから、そう何にも働きかけをしないでそのままでつけていただけるといったものではないと認識しておりますので、繰り返しになりますけれども、これの機能でありますとかを含めて、我々は積極的に、関係省庁とも一緒になりながら、普及を図っていくことに、これまでも続けておりますが、より一層頑張ってやっていきたいと思っております。

森本委員 次の質問については大臣も少しお答えをいただきたいんですが、今、議論を聞かせていただいておって、我々は、海洋国日本としてやはりこれから世界に貢献していくような、そのような働き方をしていかなければならないときに、AISの力を最大限に海上交通の安全に役立てていくためには、また、海洋国家であって多数の商船隊を抱える我が国として、有用な入力基準を早急に定めて、世界に向けてむしろ提案していくような必要があるんじゃないかというふうに私は思います。

 今の状況では、いろいろな面でもう少し支援をして、簡易型を整備するなりAISを徹底して単価を下げる努力をするなりしないと、なかなかこれは機能が発揮をしていかないと思いますので、そこのところはしっかりと国の方が頑張っていただかなければならないというふうに思うわけであります。長官から答弁いただいた後、日本がイニシアチブをとってこれから海洋国としての誇りを持ってやっていく、その決意は大臣からもお答えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

岩崎政府参考人 AISの普及につきましては、繰り返しの答弁になりますけれども、引き続き、簡易型のAIS、これも量が出ると単価も安くなることがありますので、ぜひやはり量を拡大していくということに頑張っていきたいと思っております。

 それから、こうしたAISを使った運航監視をして情報提供をしていく、こういうシステム、日本だけではなくて、シンガポールでありますとか、重要な海域を抱える、ふくそう海域を抱えるところはやっております。私どもも、まだ世界をリードするという立場までは行っておりませんけれども、そうした国際的な情報交換などをやっていきまして、本当に、一日も早く世界をリードするような立場となるよう、気合いを入れて頑張っていきたいと思っております。

金子国務大臣 非常に積極的な御意見、御提案をいただきました。

 もとより、海上の安全を守っていくという意味で、我が国が先駆的に引っ張っていく役割というのは果たしていきたいと思っておりますし、事AISについて、少し技術的に私もまだわからないところがありますけれども、しかし、ことし六月に技術的な条件等を総務省が定めまして、これから、今、それの製品化をどんどん進めている渦中と伺っておりますものですから、簡易型についてさらにどう進めていけるのか、それをどう活用していくのかということも含めてお預かりをさせていただきたいと思います。

 ちょうど、高木委員からも先ほどいい御提案をいただいたと思っています。

森本委員 ありがとうございました。

 総務省ともぜひ連携をとって、しっかり頑張っていただくことをお願い申し上げて、終わります。ありがとうございました。

望月委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤でございます。

 大臣、全然質問通告をしていないんですが、一問だけちょっと、もし、政府部内の話でわかる範囲でお答えをいただければと思います。

 きょうの報道、この一両日中いろいろな、北朝鮮の問題はこの委員会でも、来週以降、多分、承認案件の質疑があると思うんですが、その前に、船舶検査特措法を制定するというお話がございます。

 実は私、正式に質問通告をしようと思って、きのう内閣府にもお尋ねをしたんですが、まだ政府部内ではほとんど議論はしていないというようなお話もあって、明確にしなかったんです。きょう、かなりいろいろな報道で、制定について、海保がやるとか海自もやるとか、いろいろな形で原案も出てきたというような報道がありますが、大臣、いわゆる船舶検査特措法について、政府部内で、今、検討状況がどのようになって、いつぐらいに例えば法案化するのかということも含めて、もしおわかりになれば、わかる範囲で結構ですから、お答えいただきたいと思います。

金子国務大臣 政府全体で調整中、特に官邸を中心として、今、調整中だと伺っております。できれば今週具体化をして、こういう国会の状況ですから、なるべく早く、野党の皆様方の御協力もいただいて、来週には提案を国会に出していければというペースで考えておられるんだと思います。まだ、細目、私のところにも来ておりません。

 政府全体で検討されまして、当該船舶検査、海上においてやるということになれば、岩崎長官とは、海上保安庁がある意味警察機関としてこれの任に当たるという整理をされれば、その役割を適切に果たしていきたいというふうに、今、海上保安庁との間では話しておる段階であります。まだ、全体の関係での議論はこれからであります。

後藤(斎)委員 今回の法案は、いわゆる海上交通ルールの三法の部分で、基本法的な海上衝突予防法の特別法としての海上交通安全法と港則法を改正するという趣旨だというふうに理解しています。

 確かに、先ほど来お話がありますように、AISの普及によって、また、非常に込み入ったところで特別なルールを設けるというのは、否定するものでは全くありませんが、これも、海上保安庁長官か海事局長かわかりませんが、なぜ、今回、基本法的な海上衝突予防法でなく交通安全法と港則法について改正をしたのかということについて、簡単で結構ですから、教えてください。

岩崎政府参考人 海上衝突予防法は国際的なルールで、世界共通のルールになっております。これは、改正するには条約等も含めた手続が必要になります。

 それから、今回やろうとしていますのは、主にAISを使ってもっと何かできないか、それから、具体的に日本の近海で起こっているふくそう海域の事故に対して何かできないかということで考えさせていただきました。

 そういう意味で、特別のルールであります海上交通安全法と港則法の改正を提案させていただいた次第でございます。

後藤(斎)委員 これはAISの導入だけではなく、海上保安庁の皆さん、そして船を運航されている皆さんも含めて、海難事故自体の件数は横ばいということでありますが、私、日本船舶と外国船舶の別に、原因別というのを見させていただいたときに、衝突というのは確かに多いんですが、あと、外国船舶では日本船舶に比べて、例えば機関故障とか、要すれば、海上安全ルールというよりも、多分、船舶安全法の方にかかわる事案もあるのかなというふうに思っています。

 いずれにしても、外国船舶、日本船舶問わず、海難事故をどう減少させていくのかということの一環で、もちろん今回の法改正に至っているわけでありますが、今までの重立った対策、そしてこれからの海難事故を減少させる対策について、AISの導入も含めた部分で簡潔に御説明をいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 事故を減らすには、やはり、海難を一つ一つ分析、原因究明をよくしていくということが大事だと思っております。

 それから、先生おっしゃったように、海難を減らすには、私ども海上保安庁が所掌しております交通ルールの方をきっちりしたものにしていくというのが重要でございます。また、これは海事局が所掌しておられますけれども、船自体の安全性、それから、操船をする人の、免許でやっておりますけれども、そうした技術の向上でありますとか、総合的な対策が必要になろうと思っております。また、水産庁で所管されております漁船の安全対策も重要でございます。

 こうしたことを、私ども海上保安庁だけではなくて、関係部局と連携をとりながら総合的に対策を推進していくというのが重要であろう、このように考えております。

後藤(斎)委員 これは長官か海事局長か、ちょっとわからないんですが、先ほど来、AISの導入について同僚議員からもお話があり、義務化をされているものについてはもう既にきちっと対応されていて、ただ、そうではない、小型船やプレジャーボートみたいなものも含めてですが、簡易型AISでこれから導入を図っていきたいというお話がありました。

 私は一点、これもちょっと通告がないのですが、関連でお聞きをしたいんです。例えば「あたご」のような事案で、海上交通センターが、AISを搭載している船との交信、船間の交信ができますけれども、例えば自衛隊の船、潜水艦とは、このAISの機能というのは、交信とかそういうものはできるんですか。

岩崎政府参考人 「あたご」の事故が起こった海域でございますけれども、あれは少し沿岸から離れておりましたので、私どもの海上交通センターで、「あたご」の船が今どう走っているか、あるいは清徳丸がどう走っているかというのを、仮にAISが積まれていても、そこに対する監視ができるというエリアからは外れておりました。

 それから、自衛隊の船については、AISの搭載義務というのは除外になっておりますので、法的な義務はございません。

後藤(斎)委員 大臣、これはお答えいただかなくて結構なんですが、今、長官がお答えいただいたように、自衛隊との連携というのは非常に安全保障上難しい問題が、もちろん僕もあると思います。ただし、海難という部分で自衛隊関係の部分がどういう対応をするのか。

 これは私、東京湾の海上交通センターを見させていただいても、多分、AISの導入だけではだめであって、それをモニターを通じて見る、多分分析する能力だと思いますけれども、あれなんか、四六時中見ていたら、多分パソコンを見ているよりもはるかに目が疲れて、本当に刻一刻動いている中で、管制官というか職員の方、よくやっているなというふうに私は感心をしたんです。

 そういう人的能力をどう高めていって、こういう人為的というか、AISみたいな機械を使ったものをプラスにして、海難事故の予防や未然防止という形に持っていくということがやはり必要なんで、私は、その人的な部分を含めた体制充実ということを、今回の法律がまた改正されれば、その点についてもぜひ対応方、よろしくお願いしたいと思います。

 もう一点、大臣の御地元も東海沖地震の関連の地域、一部岐阜県も入っているようでありますが、昨日、きょうの新聞も含めて、小中学校の耐震化率がなかなか、進んではいるものの、地域別の格差が大きいという記事がかなり載っていました。

 あわせて言えば、東海沖地震を中心としたいわゆる地震財特法が、平成二十一年度、来年の三月三十一日で失効するということになっています。過去五回延長されておりますが、私、暫定税率や一般財源化、この間の奄美もそうでしたけれども、いろいろな法案が期限切れを迎えるときに、どたばたでやっているというのが何か最近非常に多いような感じがして、仮に、地震財特法が必要性があり、そして効果もあって、これからも延長するのであれば、これは議員立法で制定された法律でありますけれども、やはりきちっと議論をした中で早目に意思決定をするということが、大臣、必要だと思うんですね。

 きょう、内閣府にも来ていただいておりますが、ぜひ私は、この効果がいろいろな部分で認められ、そして、これからも必要ということであれば、やはりかなり早い時期からその議論を始め、その延長に向けて努力をしていくべきだと。

 特に、私の地元の山梨でも、二十八市町村のうち二十六市町村が対象になり、この三十年間でかなりの金額を上乗せしていただいて、小中学校の耐震化も、昨日の文科省の耐震化率でもかなり上位にランクをさせていただいたように、個人的に見れば、身びいきではありませんが、プラスになっているような感じもあります。

 その点、内閣府の方で、きょう、統括官に来ていただいていますが、この法律の今までの効果と、これから政府としてどのようにこの延長問題について取り組んでいくのか、あわせて御説明をお願いしたいと思います。

大森政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の地震財特法でございますが、この法律は、東海地震対策の推進を図るため、公立小中学校の耐震化に関する国庫補助率のかさ上げなど、財政上の特別措置を定め、地震防災対策上、必要な施設整備を推進しているところでございます。先生今おっしゃられましたように、この法律は議員立法で制定されておりまして、過去、同じく議員立法で延長のための改正が行われて、今年度末で期限が切れるという状況になっているということでございます。

 いつ発生してもおかしくないと言われている東海地震については、我々としても、引き続き対策を着実に推進することが重要であると考えておりまして、地震財特法の延長に関しましても、関係省庁と連携しながら万全の措置を講じていくことが必要であると考えております。

後藤(斎)委員 統括官、これは統括官だけの御意思ではなくて、大臣もお聞きになっていると思いますけれども、ぜひ私は、政府の中全体で、できるだけ早い意思決定の中で、議員立法という法律の性格はありますけれども、やはり延長に向け努力をしていただきたい。

 あわせて、耐震基準が非常に強化をされたという中で、今、ハードがメーンのかさ上げになっていますけれども、やはりソフトの部分、耐震診断みたいなものもセットでやらないと、簡易だと二、三十万で、先ほどのAISじゃありませんけれども、本格診断だとその十倍、二、三百万かかるというお話も聞いておりますので、ぜひ大臣、積極的にやるという、最後に決意だけお述べいただければと思います。

金子国務大臣 積極的に取り組ませていただきたいと思います。

 東海沖地震だけじゃなくて、小中学校の耐震については、ほかの地域についても早目早目に対応していくということもやはり必要でありますし、今度御協力いただいた補正予算の中でも、特に小中学校の耐震基準についてはかなり自治体で取り組める部分というのは、道筋はできているんだと思いますので、さらにそれを積極的に推進していくような対応をとりたいと思います。

後藤(斎)委員 どうもありがとうございました。

望月委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 十五分しかございませんので、早速、質疑に入らせていただきます。

 海のことですから、まずソマリアの海賊対策について、現在までの状況について御報告をいただきたいんですが、対策開始以来、ソマリア沖を航行した日本籍船の船舶数、エスコート要請のあった日本籍船の船舶数、実際にエスコートすることのできた日本籍船の船舶数、さらには、海賊もしくは海賊ではないかと思われる船に対して、何回遭遇をし、どのような行動をとったのかについて教えてください。

岸本政府参考人 まず、私ども自衛隊が、海上警備行動により、三月三十日より護衛活動を実施しておるところでございます。これまで二十七回の護衛を終了し、合計八十五隻の日本関係船舶を護衛いたしました。

 それから、全体でどれぐらいの日本関係船舶がアデン湾の海域を航行したかについてでございますが、まず、護衛の申請を国土交通省と調整した結果、護衛の申請があった船に対しては漏れなく護衛をしております。ただ、通航した船全体というのは、これは国土交通省が日本船主協会等への聞き取りで、去る五月末までの間、この海域を二百八十二隻の船が通航したというふうに説明しておられますので、そういう関係で申し上げますと、私どもの自衛隊が護衛できた船というのは、約三割弱、二六%ということになろうかと思います。

 それから、これまでの二カ月余りの護衛活動の中で、六回の海賊対処というようなことを行っております。いずれも保護対象外の船舶からの通報を受け、人道上の観点から、強制力の行使を伴わない行為として、いわゆるLRADというような装置を使った、ここに日本の自衛艦がいるよという呼びかけでございますとか、あるいは艦載ヘリを飛ばして状況確認をするなど、いわゆる強制力の行使を伴わない、できる限りの措置を講じたところでございます。

川内委員 それでは次に、六月十二日の、日本時間でいうと十三日の未明でございますけれども、国連の安全保障理事会で決議一八七四が全会一致で採択をされております。この中に、貨物検査として、すべての国が、国内権限、国際法に従い、自国領域内で、禁止物品の疑いのある貨物の検査を実施するよう要請する。さらには、全加盟国が、禁止物品の疑いのある貨物の検査のため、公海上での船舶検査(旗国の同意による)を実施することを要請するというようなことが出ております。

 新聞などを読んでおりますと、貨物の検査については、領海の中においては海上保安庁ができるのだということが書いてあったりするんですけれども、これは、海上保安庁が、本当に安保理決議一八七四の要請するところである貨物の検査について、領海内であればできるのか否か、根拠法は何か、そして、問題があるとすればどういうところに問題があるのかということを教えてください。

岩崎政府参考人 領海内の立入検査についてお話しさせていただきたいと思いますが、海上保安庁法、これは別に領海と限っているわけではございませんけれども、その職務を行うため必要があるときは云々云々ありまして立入検査をできるというのは、海上保安庁法の十七条にございます。

 領海での場合ですと、港に入る場合と、それから単に領海を通過していくという場合がございますが、港に入る場合、これについて、貨物につきましてはいろいろな通関での法令がございますし、そうしたものの適法性について、我々、税関なんかと一緒にやることが多うございますけれども、検査をしております。

 それから、領海内を港に寄らないで通過する船でございますが、こうしたものにつきましては、最終的に今詰めているところでございますけれども、一般的に立入検査はできるわけではございません。

 先国会で通していただきました、領海内で徘回をしているようなものについて立入検査をするとか、あるいは、所持自体がサリンなんかは禁止されておりますので、そうしたものも運んでいないかどうかといった一定の特別なケースについてはできると思いますけれども、その他のケースについて、今の法律、海上保安庁法の十七条ですべて一〇〇%できるかというのは、繰り返しになりますけれども、今、大慌てで最終的にチェックはしておりますけれども、なかなか難しいと思っております。

川内委員 外務省にお伺いしますというか、教えていただきたいんですけれども、安保理決議一八七四で、貨物の検査については、全加盟国が旗国の同意によって禁止物品の疑いのある貨物の検査をしてくださいねということを要請されているわけでございますけれども、諸外国の現行の法制度ではこういうことが可能なのかどうか。特に、六者協議のメンバーであるアメリカ、中国、韓国、ロシアについて教えていただきたいと思います。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 各国が公海上で船舶検査を行うためにいかなる法的枠組みを有しているかについては、外務省として網羅的に把握しているわけではありません。

 その上で申し上げれば、まず一般論として、公海上においては船舶は旗国の排他的管轄権に服することから、船舶検査対象が自国船籍の船舶である場合については、基本的には自国の法令が自国領域内と同様に適用されることになります。

 船舶検査対象が外国船籍の船舶の場合は、これは軍艦及び非商業目的の公船を除くわけでございますけれども、外国船籍の船舶の場合は、個々のケースごとに、旗国の同意に基づいて船舶検査を行うことが基本でございます。あらかじめ関係国との間で国際約束を締結することで、船舶検査を効率的に行うことを可能とする制度的枠組みの例も見られます。

 各国の具体的な制度について申し上げれば、例えば韓国政府の場合でございますけれども、南北海運航路を利用する北朝鮮の船舶に対しては、南北海運合意書などに基づいて検査を行うことになっているとの説明をしているというふうに聞いております。

 それから、米国政府でございますけれども、例えば、公海などにおいて立入検査を円滑に行うために、数カ国の便宜置籍国との間で乗船協定を締結してきており、これにより、一定時間内に旗国が同意を与えない場合は、旗国が同意を与えたものとみなして乗船検査を実施することが可能となっていると承知しております。

 ロシア、中国については、現時点において、いかなる法的枠組みにおいて対応しているかについては、必ずしも承知しておりません。

 以上でございます。

川内委員 要するに、よその国の船を検査するというのはなかなか難しいことなわけですけれども、基本的には旗国の同意がなければならないというわけです。

 では、その旗国の同意というのは、具体的にどのような手続、手順でもらうのかということを教えていただきたいと思います。

廣木政府参考人 お答え申し上げます。

 安保理決議第一八七四号で言及されている公海上での船舶の検査のための旗国の同意ということでございますが、これは、国連加盟国が本決議に基づき公海上での船舶の検査を実施する場合に、当該国が公海における船舶に対して排他的管轄権を有する旗国から同意を得る行為を指しているというふうに考えております。

 そのため、このような旗国の同意を取りつける手段については、一般国際法上の規則や慣行があるわけではございませんで、今回の安保理決議においても言及はございません。

 そうしましたことから、個別具体的な状況に応じて異なるということを言わざるを得ないと考えておりますが、現在、確定的なことを申し上げることは困難でございますけれども、例えば外交当局を通じた確認などにより、このような同意を得ることが考えられるのではないかと思います。

川内委員 ちょっと時間がないので、また詰めたいと思います。

 それでは、内閣官房に、決議一八七四を受けて、船舶検査についての法整備に向けて、検討の状況、また、アメリカ、中国、韓国、ロシアなどとも協議をしているのか、これから協議をされるのかについて端的に御説明をいただき、さらに、金子大臣に最後、海上保安庁はソマリアの海賊対策については極めて消極的であったわけですが、今回の一八七四に基づく検査については積極的に取り組む決意を持っていらっしゃるのか否か、大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

高田政府参考人 我が国といたしまして、今般採択をされました安保理決議第一八七四号を実効あらしめるよう適切な対応を早急にとっていくという観点から、現在、まさに立法措置の要否を含めまして、政府全体として鋭意検討を行っているところでございます。

 あえて申し上げますと、貨物検査については、例えば検査の主体をだれが行うのか、あるいはどういう手続で検査を行うのか、それから、検査の結果、対象となる物資、禁制物品を発見した場合の措置をどのように行うのか、そういった論点がございます。まさに多岐にわたって精査をする必要がございますので、現在、鋭意検討を行っているところでございます。個別の事柄について、今確たることをまだ申し上げられる段階にはございません。

 それから、先ほど外務省から答弁がございましたけれども、諸外国との協議といいますか、諸外国がどういうことをということにつきましては、もちろん、しかるべく情報は入手をしていきたいと思っております。

 いずれにしても、今、多岐にわたって内閣官房を中心に検討しているという段階でございます。

金子国務大臣 海上保安庁が実施することが適当であると内閣全体で整理されれば、その任に当たりたいと思っています。

川内委員 終わります。

望月委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、最初に、多重衝突事故の被害補償についてお聞きします。

 昨年三月五日、明石海峡で起きた、ゴールドリーダー、第五栄政丸、オーシャンフェニックス号の多重衝突事故に関連して聞きます。三隻が衝突し、一隻が沈没。三名死亡、うち一名行方不明。加えて、最盛期のイカナゴ漁やノリなど深刻な漁業被害をもたらしました。

 被害の概要とその対策、対応について水産庁にお聞きします。

成子政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨年三月に明石海峡沖で発生いたしました貨物船など三隻の衝突事故によりまして、周辺の漁業に大きな被害が発生いたしましたところでございます。

 具体的な被害額でございますが、兵庫県漁連から、ノリ養殖被害約三十八億六千万、イカナゴなど漁船漁業が出漁できなかったことによります被害約十一億円、防除、清掃の経費約二億九千万、合わせまして五十二億五千万に達したとの報告を受けているところでございます。

 水産庁といたしましては、このような被害を受けられた漁業者の方々が一刻も早く立ち直ることができますよう、速やかに関係機関に対しまして指導を行いまして、漁業共済金の早期支払い、農林漁業セーフティーネット資金の円滑な融資が実施されたところでございます。また、あわせまして、地域の御要望を踏まえまして、海底清掃などの活動に対しまして約三億円の御支援をさせていただいたところでございます。

穀田委員 わかりました。

 沈んだ貨物船から油が流出し、そして漁業被害が生じたわけであります。昨年、油被害抗議の漁業者の集会で二つの決議がありました。一つは、事故被害の発生源の除去を含む油どめの対策であります。

 これはめどは立ったのか、国はどのような支援をしているのか、お尋ねします。

伊藤政府参考人 先生御指摘の件は、明石海峡で三月に起きました三重衝突事故で、ゴールドリーダーが沈没をしている、そこから油が出ている、これに対する対策であると理解しております。

 一般的に申しますと、沈んだ船を引き揚げる、あるいはその船に残っている油の抜き取り作業というのは、本来、その船の船主さんが責任を持って行うべきものでございますが、この件につきましては、兵庫県漁連からの要望を受けまして、兵庫県、神戸市、明石市、淡路市、四者が共同して夏ごろから油抜き取り作業を行う予定というのを、ことしの、たしか四月に私ども伺いました。

 私どもは、実は平成十六年から外国船舶油等防除対策費補助金という制度を創設いたしました。海洋汚染防止法に基づきまして海上保安庁長官が要請した場合で、かつ地方自治体がこの作業を行い、また、その費用がその船舶の船舶所有者から徴収することが困難である場合につきましては、地方自治体に対して、この負担をした費用の二分の一を限度にして交付する仕組みでございます。

 今の沈没しているゴールドリーダーでございますけれども、この予定されております地方自治体が油抜き取り作業を実施した場合には、国土交通省といたしまして、この補助金の仕組みを活用して支援をしてまいる所存でございます。

穀田委員 今ありましたように、半分はそういう形でやる。問題は、自治体負担分につきましても、お聞きすると、何とかしたいということで努力されているようであります。総務省の特別交付税措置があり、さらに残りについては経済危機対策臨時交付金を充てるということだと思いますが、やはり漁業者に負担のかからないように万全を期すべきだと考えています。

 漁業者の集会では、もう一つ決議がありました。特定航路の事故対策としての基金創設であります。タンカーは被害補償の基金制度がありますが、貨物船にはありません。昨年、私は当委員会で要求しました。貨物船などの油流出被害に対する補償の制度化、基金創設について、この間どのような検討と取り組みを行っているか、報告をいただきたい。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 このゴールドリーダーを初めといたしまして、いわゆる海上物流を担う船舶は、公海自由でございますので、さまざまな国籍の船が各国の港に入る、あるいは沿海を航行するということで、世界の海域を対象にして活動しております。

 そういった観点から考えますと、この活動に伴う補償というのは、タンカーによる油濁損害と同様に、やはり国際的な取り組みが必要であるというふうに考えておりまして、実は、昨年我が国から、国際海事機関の法律委員会というのがございますので、そこで検討を行っていただきたいという提案をしております。

 具体的に申しますと、今回のケースもそうでございますけれども、船主責任に関する条約に定められた限度額では補償が不十分であった例、特に我が国の明石海峡で発生した事故の事例を御紹介申し上げまして、まずは、限度額を超えた損害の実態について、しっかりと世界的な調査をして実態把握をするという提案を行いました。この調査について検討が開始されているところでございます。

 まだIMOの議論は始まったばかりでございますけれども、我が国は、今後も引き続きましてこうした国際機関における議論をまずリードして、最終的には国際的な枠組みの構築に努めてまいりたいと考えております。

穀田委員 国際的な基金創設に向けて、今後も取り組みの強化を求めたいと思います。

 ただ、アメリカなどは、自分のところ独自に単独で補償する体制である油濁法というのが実はあるんですね。したがって、そういう基金を設けることなどもあわせて、国際的な取り組みもしかりですが、そういうことも含めて検討すべきではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

伊藤政府参考人 先生からアメリカの例をちょっとリファーいただきました。実は、アメリカは、先ほど御説明申し上げました船主責任制限条約、これの締約国ではございません。したがいまして、アメリカは独自にいわゆる資産証明等を求めることができますが、一方で、我が国はこの条約の締約国でございますので、締約国である以上、この条約の枠組みの中で活動するという国際的な義務を負っているわけでございます。

 したがいまして、まずはIMOの議論で推進をするということが大原則ではないかと思いますし、また、その後、なかなかそこが進まないとか実効が上がりそうにないというような状況になりましたら、改めて先生御指摘の我が国独自の工夫というのも検討する必要があると考えております。

穀田委員 そこで、先ほど水産庁の答弁もありましたが、五十二億円を超える被害からすれば、補償されたのはごく一部なんですね。船の側への賠償請求もされているとお聞きしますが、今お話があったように船主責任制限があり、十分な補償がされていないのではないか、そこはいかがですか。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 水産庁の方から約五十数億という損害額のお話がございました。一方で、今現在の船主責任条約で定める責任限度額、制限額でございますが、これは、今回の場合は油被害ということでございますので、分類で申しますと、人損ではなくて物損でございます。

 そうしますと、百万SDRということでございまして、これを日本円で現在のレートで換算をいたしますと一億七千万円でございますので、確かに大きな開きがあるのは事実でございます。

穀田委員 そこを言っているわけですよね。要するに、五十二億被害が出ている、船主責任制限があって一億七千万だ、こういうことはやはり見ていただきたいと思います。

 私は昨年も指摘したんです、被害を受けた漁業者には全く責任がないと。当時、岩崎さんでしたよね。この点について、当時の冬柴大臣も、「漁業者には全く責任はありません。」と答弁しました。

 そこで、私は思うんです。海上交通の安全対策が十分でなかったという国の責任がある。今回の法改正も、この事故を一つの教訓として行われたことは明らかなんですね。被害補償の制度が十分でない点について言えば、今やはり率直に申し上げて、国の責任だと私は思うんです。

 一周年たった際に、地元の神戸新聞が次のように報道しています。「再びノリ漁が最盛期を迎える今、網をたたんだ漁業者たちは無念を募らせる。」ということを書いていまして、「市によると、昨季のノリ生産総額は約二十億円と前季の三分の一に。ノリ漁には多額の設備投資が必要で、前季の収入を充てられないこともあり休・廃業が続出。兵庫県漁業協同組合連合会(県漁連)によると、同市内で約五十人に上るという。」

 つまり、五十人の方々が廃業や休業をせざるを得なかったわけですよね。まさにこういうことになってくるわけで、私は、制限があって被害が十分補償し得ない、こういう点を本当に役立つように見直すべきと違うかということと、被害の補償や経営支援などについても今後取り組むべきだと思うがいかがか、この点、二つ答えてください。

伊藤政府参考人 私の方からは、国際的な枠組みの観点からまず御説明をしたいと思います。

 先ほどから申し上げております船主責任条約でございますが、これは、実は被害額が年々拡大しているということもございまして、改正をされております。

 直近は九六年の議定書という形でございまして、これは二〇〇四年五月十三日に発効をしているものでございます。それ以前は七六年の条約というのがございまして、それぞれ比較をしてみますと、人損で申しますと、トン数に応じて違うのでございますけれども、約二倍から二・五倍程度まで拡大をしています。物損につきましても、二・四から二・五倍という拡大が行われているということでございます。

 ただ、こういった見直しをする際に、実は責任制限額を改正するときの制約というのが条約で定められておりまして、代表的なものを申しますと、例えば、これをまず発効後五年間は改正できないということでございますが、これは二〇〇九年五月十三日以降であれば改正が可能でございますので、こういった働きかけはできるわけでございます。

 一方、拡大幅でございますけれども、九六年の議定書の当初の額の三倍を限度とするということでございますので、先ほどの格差を埋めるまではなかなかいかないにしても、私どものこういった事故の実態は、また、先ほどはいわゆる抜き取りの作業の費用でございましたけれども、今回のお話はどちらかというと被害補償というものもございますので、こういった点でもIMOでこの船主責任条約の改正ということを働きかけていく必要があると考えております。

穀田委員 被害の補償それから今後の経営支援というのは余り報告がなかったんですけれども、ちゃんとやれということは言っておきたいと思います。

 それで、大臣に少し聞きます。

 今述べた明石海峡事故、今回の法改正でこうした事故が防げるようになるのか、端的にお答えください。

金子国務大臣 狭い明石海峡に入っていくときのルール、どういう順番でどこを通ってということが、非常にシンプルに言えば、単純に言えば、これでAISを使って指示ができる、そういう意味では回避できるんだと思います。

穀田委員 そう単純ではないんですよね。それだったら、何か全部事故がなくなるみたいな話になるんだけれども、そうはならぬというところに、皆さんが言ってきた、AIS、つまり自動船舶識別装置が、では小さい船につくのか、プレジャーボートにつくのかという問題があるわけで、それはそうじゃないということだけは一言言っておきたいと思うんです。

 ただ、今お話ししたように、こういう議論を経て、六回にわたるこの問題についての議論を経てこれらが出たということは事実だと思います。そこは正確にしておかなあかんということは言っておきたいと思うんです。

 そこで、私が何を言いたいかというと、問題は、小さい漁船をこういう法律を改正しながらも救っていく、そういうことが、未然に防ぐのかということが大事なんだと思うんです。

 といいますのは、漁船の衝突事故は、例えば昨年、二〇〇八年の全国海難二千四百十四隻のうち、漁船が七百三十二、衝突事故は全体で八百十二ということで、海難全体の約三分の一を占めていて、うち漁船は二百六十四隻ということで、極めて大きな比率を占めているんですよね。そして、第五管区内でいいますと、二〇〇七年は三十四、二〇〇八年は二十四ということでやっている。こういう状態だからこそ、いよいよ、ここに一つの対応をしなくちゃならぬということが求められる。

 そこで、ことしの五月十一日にも、兵庫県の須磨沖で漁船と貨物船が衝突する事故が発生しました。漁船の船長は、霧のため視界が悪く、気づいたらすぐ近くまで船が迫っていた、全速で避けようとしたが、船尾のワイヤが接触して船体が持ち上がり、船内に水が押し寄せてきた、もうだめかと思ったということで、沈没も覚悟したと報道されています。偶然、近くの漁船が大型船にとまれの行動を起こしているうちに、幸運にもワイヤが切れ、九死に一生を得たと言われています。

 一方は七千トンを超える貨物、一方は四・九トンの漁船、ひとたまりもありません。船が後ろ半分沈みかけても、大型船は気づかない。大型船は、ペンキがはげて、すり傷だけだったということです。漁船は、網はやられ、自力で航行できず、仲間の船に曳航されて帰港した。さらに、その後一カ月は操業もできやしない、保険も全額ではなくて一定の割合しか出ない、こういう現実なんですね。

 漁船は、航路の中や周辺でも、魚影があれば操業します。ところが、特に外国籍の船は、漁船の操業などお構いなしで進む。漁船も、網を引いているので、簡単にはよけられない。船同士が衝突しなくても、網をひっかけることがある。こういうことは瀬戸内の各所で起きています。

 この明石の沖はふくそう海域であり、漁船が魚影を追って航路で網を引いて操業していることを十分理解しているパイロットは安全航行をしています。このような海峡の特徴を知って注意していれば、衝突事故は避けられるはずです。十分周知や安全確保をしているのかどうか、ここを端的にお答えいただきたい。

岩崎政府参考人 この海域は漁船とこうした大型船の衝突事故が多うございますので、やはりそれぞれが注意してやっていただくのが一番だろうと思います。

 ただし、先生御指摘のとおり、漁労中の船はなかなか動きにくいとか、網を引っ張っているものは特に操縦性能が悪いとか、そうしたことがございます。先生も御指摘になりました外国の船なんかにも、そういうことを周知しなきゃいけないと思っております。

 我々は、今後、日本語だけではなくて、英語でありますとか中国語でありますとか、そうしたパンフレットもつくろうと計画しておりますので、そうしたことも盛り込んだような形のものにするように検討していきたいと思っております。

穀田委員 明石海峡周辺でイカナゴ漁の船が多数出るときには、海上保安庁の船が周辺で待機し、操業が済むまで見守っています。

 今答弁がありました、それぞれが注意してということなんですけれども、確かに、お互いの安全確保に非常に重要なことだと思います。でも、三月の漁の最盛期には、海上保安庁だけでなくて漁協側も監視船を出して安全対策をとっています。

 お互いが譲り合ってというけれども、漁船にとっては、大型船が航行するので避けてくれと言われても、あそこは潮流が速いわけで、大変なことなんです。漁船のエンジンより潮流の方がはるかに強い場合もあります。魚群のいる漁場を一たん離れて、後でまた戻ることは不可能であります。しかも、一たん魚群から離れると、一匹も網にかからない。一網五十万円の最盛期の補償をしてくれるのか、これが漁業者の声であります。

 お互いにといいますけれども、漁民の生活がかかっています。魚のピークの時期や時間帯には他の船が少し待つとか譲るとか、配慮は当然じゃないですか。

 今、さまざまな注意を喚起するという話がありましたけれども、漁業の実情を知っている旅客船などは、航路が通れないときにはセンターに連絡して航路の外へよけて航行するとか、どうしても通れないときにはしばらく待っているという現実です。

 したがって、お互いに事情を述べ合って譲り合う、その意味で、海上保安庁も音頭をとって、そういう点でのイニシアチブをとり、安全確保のために相談するというのは当然してくれますね。

岩崎政府参考人 狭い航路の中で、本当は漁業とこういう交通とがうまく両立するというのが我々の一番目指すところでありますけれども、先生がおっしゃったとおり、狭い海域で、それぞれの事情がございますので、なかなか難しい面もありますけれども、海上保安庁は、そうした関係者といろいろ話し合って、お互い理解を深めてもらうということはやはり重要なことだと思っておりますので、これまでもやってきたつもりでございますけれども、さらに努力していきたいと思います。

穀田委員 大型船は海図やGPSに基づいて航行するので、漁船が航路の中で底びき漁などを操業していても、実際にはお構いなしというのが現実にあるわけです。漁業者に聞くと、天気のいい、見晴らしのきくときでも、どけと言わんばかりに汽笛を鳴らされるときもあり、あっちはどいてくれへんと。実際に航路を変えるのは漁船であり、自分たちも自衛のためにそうしているということを私ども聞いています。

 自動操舵についても問題になっていまして、特に漁船と大型船が行き交うような場合には、手動操作にするのが当然ではないかと私は考えます。安全第一の立場で、関係者が集まって相談し、海域の特性に応じたルールを決めること、例えば義務づけなどを含めた議論をする必要があるんじゃないだろうか。国交省としてどう臨むのか、お答えいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 自動操舵装置のお尋ねでございます。

 確かに、自動操舵装置は、船首方位を自動的に制御する、針路を安定させるということで、非常に多くの船舶に搭載されている航行支援機器でございます。したがいまして、これを適切に使うということを前提にいたしますと、安全性の確保であるとか、あるいは操船者の疲労低減、こういったものにも寄与するものだとは考えております。

 ただ、一方で、これを過信するということになりますと、逆に、注意がおろそかになって事故につながる、こういうこともございます。あるいは、うっかりして居眠りをしてしまうということもございます。

 そんなこともございまして、実は、国土交通省では、昨年の三月の明石海峡での三重衝突、先ほどから話題になっておりますが、この事故を契機にいたしまして、自動操舵装置の適正な利用のためのガイドラインというのを策定しようと検討を進めているところでございます。

 ほぼでき上がりつつあるわけでございますが、その際には、やはりこの自動操舵装置の特性あるいは限界というものも、しっかりと利用者の方に認識していただかなければいけない。ちょっと具体的な例を申しますと、潮流等の影響を受けますと、確かに針路は設定しておりますが、実際に想定している針路から外れる、気象、海象、特に潮流で外れてしまうというような自動操舵装置の特性もございますし、それから、自動操舵装置を使用中にうっかりして手動でかじをとったとしても、これは自動操舵が優先いたしますので手動操舵には切りかわらないとか、いろいろな留意点が実はございます。

 こういったことをまとめまして、今後でございますけれども、このガイドラインを使いまして、船員の教育機関、船員の海技資格を取得する教育機関であるとか、あるいは各社さんが自分たちで社内の安全教育をするというようなときにも活用していただけるように、この内容については関係各位に周知をし、利用を促進していただいて、海難事故の防止に努めていただくように私どもも努力してまいりたいと考えております。

穀田委員 過信してはならないということは、全くそのとおりなんですね。

 実は、自動操舵をやっているということの考え方は、そのことによって見張りもできるということも含めてあったわけですからね。ところが、時として、この間事故があった場合でいいますと、自動操舵しているから今度はメールを打っていた、そんなばかなことをやって事故が起きているということがあるわけですよね。そういう現実があるということで、よく見なくちゃならぬと。

 海難審判庁の海難レポート二〇〇八によりますと、衝突海難の八四%は見張り不十分なんですよ。ここが最大のポイントなんですよ。だから、そのために、見張りを行うということが大事だと。したがって、操舵員は適宜見張りに協力することでと、わざわざ見張り問題にしているわけですね。それを、この自動操舵をやっているということで安心しちゃならぬということが肝心だと思うんです。

 最後に海上保安庁長官に聞きますけれども、あなた方は、当時、事故があった後どう言っているかというと、同種海難の再発を防止するための応急の対策としてはということで通達を出しています。「船長が船橋にて自ら操船を指揮し、見張りを強化する等安全を確保する体制をとるとともに、自動操舵装置を使用せず、手動操舵により航行すること。」ということを、昨年の三月十四日には第五管区海上保安本部として出しているわけですよね。

 だから、こういうふくそうする区域においては、この事故があった後、こうしろと言っているわけだから、その点はしっかり見て取り扱いを、少なくとも緊急時にはすぐ手動に切りかえるようにするだとか、そういうことを初めとしたきっちりとした指導をするべきではないのかということを最後にお聞きしておきたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、見張りを十分にしないで自動操舵で漫然と運航している、これは非常にいけないことだと思っております。いろいろ、訪船指導をしたり、現場で見たり、あるいは海難の講習会なんかもやっておりますので、そういうことも含めて、そうした考え方をきっちり伝えていきたいと思っております。

穀田委員 今ガイドラインをいろいろつくっているということが先ほどありましたけれども、策定している最中と。やはりこの問題で、この漁船の事故以後議論をした委員会で、結論は確かに、どうすればいいかというのは出ていません。しかし、意見としては手動操舵にすべきだということもあったということははっきり書かれています。しかも、当時、その事故が起こった後については、海保はその問題についてわざわざ言っているわけやから、私は、やはりここは、こういうふくそう海域については何が大事かと。

 つまり、自動操舵だけでは見えない、しかも、さっきありましたように、潮流が速いわけだし、横ずれは把握できないというようなこともあるわけなんだよね、この自動装置というのは。だから、こういうところは手動でいこうじゃないかというあたりはよく検討し、私は、漁民を初めとした小さい船をどうしたら守ることができるかと。

 ですから、一番最初に戻るわけです。大きな船の話はしたけれども、小さい船はそういった点では残念ながらまだまだ対策は不十分だという立場からして、私はそういう提起をしておきたいと思います。

 終わります。

望月委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

望月委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

望月委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

望月委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

望月委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣金子一義君。

    ―――――――――――――

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

金子国務大臣 ただいま議題となりました特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件につきまして、提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国は、平成十八年十月九日の北朝鮮による核実験を実施した旨の発表を初めとする我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、本年四月十三日までの間、北朝鮮船籍のすべての船舶の入港を禁止する措置を実施してまいりました。しかし、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応や、六者会合、国際連合安全保障理事会等における国際社会の動き等その後の我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第三条第三項の規定による平成二十一年四月十日の閣議決定に基づき、引き続き北朝鮮船籍のすべての船舶の入港を禁止する措置を実施いたしました。これについて、同法第五条第一項の規定に基づいて国会の承認を求めるものであります。

 以上が、本件を提案する理由であります。

 次に、本件の内容について、その概要を御説明いたします。

 本件は、同法第三条第三項の規定による平成二十一年四月十日の閣議決定に基づき、平成十八年十月十四日より本年四月十三日までの期間にわたる北朝鮮船籍のすべての船舶の本邦の港への入港禁止の実施を決定した従前の閣議決定を変更し、平成二十二年四月十三日までの一年間にわたり、引き続き、北朝鮮船籍のすべての船舶の本邦の港への入港禁止を実施することについて、同法第五条第一項の規定に基づいて国会の承認を求めることを内容とするものであります。

 以上が、本件の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

 以上であります。

望月委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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