衆議院

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第6号 平成22年3月16日(火曜日)

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平成二十二年三月十六日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿久津幸彦君 理事 小泉 俊明君

   理事 田中 康夫君 理事 橋本 清仁君

   理事 村井 宗明君 理事 岸田 文雄君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 竹内  譲君

      阿知波吉信君    石井  章君

      磯谷香代子君    加藤  学君

      勝又恒一郎君    神山 洋介君

      川島智太郎君    川村秀三郎君

      菊池長右ェ門君    熊田 篤嗣君

      黒岩 宇洋君    小林 正枝君

      中川  治君    中島 正純君

      長安  豊君    萩原  仁君

      畑  浩治君    早川久美子君

      馬淵 澄夫君    三日月大造君

      三村 和也君    向山 好一君

      谷田川 元君    山崎  誠君

      若井 康彦君    赤澤 亮正君

      小渕 優子君    金子 一義君

      金子 恭之君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    徳田  毅君

      林  幹雄君    斉藤 鉄夫君

      穀田 恵二君    塩川 鉄也君

      中島 隆利君    柿澤 未途君

    …………………………………

   国土交通副大臣      馬淵 澄夫君

   国土交通大臣政務官    長安  豊君

   国土交通大臣政務官    三日月大造君

   参考人

   (川原湯温泉旅館組合長) 豊田 明美君

   参考人

   (水源開発問題全国連絡会共同代表)        嶋津 暉之君

   参考人

   (東京大学名誉教授)

   (法政大学客員教授)   虫明 功臣君

   参考人

   (東洋大学国際地域学部教授)           松浦 茂樹君

   参考人

   (京都大学名誉教授)   奥西 一夫君

   国土交通委員会専門員   石澤 和範君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  石井  章君     磯谷香代子君

  神山 洋介君     山崎  誠君

  早川久美子君     萩原  仁君

  野田 聖子君     小渕 優子君

  穀田 恵二君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     石井  章君

  萩原  仁君     早川久美子君

  山崎  誠君     神山 洋介君

  小渕 優子君     野田 聖子君

  塩川 鉄也君     穀田 恵二君

    ―――――――――――――

三月九日

 国の直轄事業に係る都道府県等の維持管理負担金の廃止等のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国土交通行政の基本施策に関する件(八ッ場ダム問題等)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に八ツ場ダム問題等について調査を進めます。

 本日は、参考人として、川原湯温泉旅館組合長豊田明美君、水源開発問題全国連絡会共同代表嶋津暉之君、東京大学名誉教授・法政大学客員教授虫明功臣君、東洋大学国際地域学部教授松浦茂樹君及び京都大学名誉教授奥西一夫君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、豊田参考人、嶋津参考人、虫明参考人、松浦参考人、奥西参考人の順で、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようにお願いを申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず豊田参考人にお願いいたします。

豊田参考人 皆さん、こんにちは。私は、群馬県の八ツ場ダムの水没地にございます川原湯温泉の旅館組合長をしております豊田と申します。よろしくお願い申し上げます。

 少しでも地元の声を国に届けたいと思いまして、本日参りました。ふなれなものですから、失礼がありましたらお許しをいただきたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。

 さて、昨年の九月に政権が交代をして以来、今日までの経過は皆様の御承知のことと思いますので、私は、江戸時代から続く温泉街の現状となぜこのような事態になってしまったのかということを、そして最後に生活再建についてお話をさせていただきます。

 まず、川原湯温泉の現状でございますが、平成十年とその十年後の平成二十年の十年間の変化についてお話をさせていただきます。

 平成十年の旅館の軒数は十八軒、飲食店は十一軒、川原湯温泉の人口は百八十四世帯五百三十五人が生活をしておりました。年間の観光客は二十二万人でございました。しかし、十年後の平成二十年には、旅館の軒数は七軒、飲食店の軒数は二軒となり、川原湯の人口は五十三世帯百七十四人まで急減をしてしまいました。観光客の入り込み数は十一万人と半減しております。

 ダムの工事が進むにつれて、観光地の魅力も減少をしていきました。それは、不動の滝の閉鎖や、萩の小道や吾妻渓谷の遊歩道、御存じの方もいらっしゃると思いますが、それらの道路のつけかえや通行どめなど、お客様に楽しんでいただくための観光名所が一つ、また一つと失われていくからでございます。それでも、あと数年の辛抱と気持ちを切りかえて、仕事の合間を縫って、日々再建計画を二十年以上もの間積み上げてきたわけでございます。

 しかし、前述のように、温泉街の魅力も失われ、我々の生活再建も見えぬまま、いわばゴールのないダム建設の長期化は、今月にも新緑を前にして一軒の旅館を閉鎖に追い込んでしまいました。現在では、営業している旅館は六軒でございます。しかし、この六軒も昨今の騒動で心身ともに疲れ果て、気力で店をあけているといった状態でございます。我々地元の事業者に再建の時間的猶予はもうないのです。どうか、生活再建が完了するまでの予測可能な時間軸を我々にぜひ示してほしいと切にお願い申し上げます。

 以上のように、一刻も早く再建をしなければならない、こういった環境の中で、なぜこのような状況になってしまったんだろうということについてお話をさせていただきます。

 私どもは、平成二十年八月十八日、当時の民主党の鳩山幹事長、現総理が視察に訪れまして、ダム中止という方向性が大きくうたわれました。そのとき、長野原町では、ダムの完成と住民生活の早期再建を要望させていただいております。また、同年十一月二十六日ですが、旅館組合、私どもでも、当時の民主党の小沢先生に、ダムをとめては困るという内容の手紙を出させていただいております。

 この時点で、すなわち八ツ場ダム中止をマニフェストに掲載する前に、なぜ地元と協議をしていただけなかったのでしょうか。昨年の選挙のときになぜ群馬五区に住民の窓口をつくらず、一方的にダムを中止されたのでしょうか。我々地元住民は、ダム中止の理由や中止した後の再建の行方すら聞く機会を得られず、完全にシャットアウト状態の中で一方的に中止の方向へ持っていかれてしまいました。

 つまり、住民不在の中でのトップダウンの独裁的な進め方により国と地方の信頼関係が失われ、その結果、お互いの距離がますます広がり、今日の膠着状態となってしまったと思われます。その渦中の中で、我々の生活は、現状、置き去り状態となってしまっております。

 次に、このような状況を踏まえ、ダムの今後と生活再建についてお話をさせていただきます。

 我々の生活再建は、一言で申しますと、もう待っていられないのです。我々が望むのは、ダムに影響されない生活再建です。もうこれ以上ダムに翻弄されたくないというのが地元の切実な思いでございます。ダムが中止になりますと、また再建をゼロベースで考え直さなければなりません。我々には、そのような時間もなければ、経済的に余裕も、精神的にゆとりも、もう持っていないわけでございます。

 現在の地元の惨状については、失礼ながら、中止の方向性を打ち出された方々にも大きな責任があると感じております。すなわち、ダム建設では、建設の是非とそれにかかわる生活再建案は常にセットであるべきと考えております。今でしたら、ダム完成に準じる生活再建案で、継続して考えていくことが早期再建に最良と考えております。しかし、ダム中止と言われても、それに準じた地元住民同意の上での生活再建案が全くありません。

 それどころか、湖面一号橋につきましては、必要ないという声まで上がっておるわけでございます。私たちにしてみれば、湖面一号橋は命の橋です。ダムで人口が減少した現地の人々が、村社会の枠を超えて、川原畑という隣の地区がございますが、その地区と一体となりまして地元を支えていく、本当に命の橋でございます。

 現に、川原湯と川原畑の両地区では、消防団の統合や子供育成会の合同の活動とか、その他さまざま、既に一緒に行っている事業がたくさんございます。さらに、高齢者の多いこの地域では、将来お年寄りの交流も一号橋なしには考えられません。先んじて、この一号橋は、将来の利便性の向上により、ダムで失われたこの地域の生活者の人口増加の可能性を大いに今後引き出してくれるものと期待をしております。このように、地元の我々には一号橋は必要な橋なのです。

 皆さんの中では、なぜダムが必要なのか、すなわち観光地が水没することをそんなに容認するのかとおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、ここまで進んでしまった工事環境の中で、その質問は余りにも地元住民の気持ちがわかっていない質問なのです。

 私たちは、下流の住民の皆さんの水害や渇水をニュースで聞くたびに、ダムの受け入れを決心してまいりました。さらに、二十年以上の間まちづくりに費やしてきた時間を無駄にしたくはないのです。皆さんから見れば、不十分な生活再建だと笑われるかもしれません。しかし、ダム湖観光のよい部分は伸ばしていただき、悪い、いや、心配される部分は修正していけば、我々のダムに費やした時間も無駄にせず、生きてくるのではないでしょうか。

 この八ツ場の再建は、政府主導による地域再生の成功事例として今後やっていくよい機会にすべきではありませんか。地元住民合意の上の国策として実行に移せるよいチャンスではありませんか。地方の理想の将来像を形にするという作業は、地方分権、地域主権、ひいては将来の国益にもつながると思います。本問題は、ダム問題としてとらえるのではなく、国が地方の民意を取り入れて、二十二世紀の地方をいかに再生し、活気づけていくかという、今後の日本のモデル地区の創出としてのとらえ方をしていただけるとありがたいと思っております。

 私たちは、ダム建設の中で、また河川法の制限された中で、施設の改装もできず、我慢をし、国の言う計画を信じて、五十七年も新しい施設の再建を夢見て今日まで協力をしてまいりましたことを、最後に御理解いただきますようよろしくお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

川内委員長 豊田参考人、ありがとうございました。

 次に、嶋津参考人にお願いいたします。

嶋津参考人 水源開発問題全国連絡会の嶋津と申します。きょうは、意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。

 私の方からは、利水と治水の両面から見た八ツ場ダムに関する意見を述べさせていただきます。

 お手元の資料でこういうものが、これに沿ってお話を進めますので、この資料をごらんいただきたいと思います。

 まず、利水の方から話を進めます。

 首都圏の水事情、水需給の状況は、数十年前とはもうさま変わりしております。かつては、水需要は増加して、水不足という時代があったわけでありますが、現在は、水需要は減る一方で、水余りの時代になっております。

 資料の二ページ目をごらんください。これは首都圏の水道用水の動向を見たものですが、首都圏の水道用水は、一九九〇年代後半から減少の一途をたどっております。

 この首都圏のうちの東京都を見たのが次の三ページ目でございます。東京といいますと、最近は人口はふえております。年間約十万人ぐらいということで、結構ふえているんですが、水道給水量は全く別であります。東京都の水道給水量は、九二年から坂を転がり落ちるように減ってきております。

 一方、利根川、荒川では、ダム等のたくさんの水源開発が行われてきました。その結果として、東京都水道もたくさんの水源を持つようになりました。東京都の水道で今の保有水源と一日最大給水量の差は、一日約二百万トンにもなっております。これは、人口に換算しますと四百万人相当です。それだけの余裕水源を東京都は持っているわけであります。ほかの県もやはり余裕水源をたくさん抱えておりまして、今、首都圏全体としては、大変な水余りの時代になっているということであります。

 なぜこのように水需要は減ってきたかということですけれども、次の四ページ目をごらんください。水需要が減ってきた要因は幾つかありますけれども、その最も大きな要因は、節水型機器の普及であります。最近、水使用機器は、節水型であることが重要なセールスポイントでありまして、より節水型のものが開発されてきております。

 この図は、あるトイレメーカーのトイレの一回当たりの使用水量、これが販売年によってどう変わってきたかを見たものですけれども、かつてこのメーカーが出したものは、一回流すと十六リッターの水が流れておりました。今や四リッターから五リッターということで、三分の一以下まで減っているわけですね。このような節水型機器が普及してきたということ、それから、この節水型機器はこれからも普及していくということです。

 一方、人口はどうかということで、五ページ目をごらんください。首都圏の人口は今はふえておりますが、間もなく、二〇一五年以降は減るという予測を国立社会保障・人口問題研究所が出しております。ということで、首都圏の人口も近い将来は減っていくということ。

 次の六ページ目ですけれども、そういう今の二つのことを踏まえると、今後首都圏の水道用水はどうなっていくかというと、九〇年代後半から減ってきているということは申し上げました。今後は、節水型機器のさらなる普及と、それから人口の減少によって、首都圏の水道はこれからますます減っていく、水余りの状況がますます顕著になっていく。そういう時代でありますから、八ツ場ダム等の新たな水源開発は基本的にもう必要がなくなっていることは明白だということであります。

 ただ、八ツ場ダムに関しては、暫定水利権という問題があります。次の七ページ目をごらんください。この暫定水利権のほとんどは、埼玉県水道、群馬県水道等の農業用水転用水利権であります。農業用水を転用した水利権だということで、非かんがい期、冬場の分が権利がないということで、冬場の権利を得るために埼玉県水道等は八ツ場ダムに参加して冬期の水利権を得ようとしているわけです。八ツ場ダムができるまでは、暫定水利権という扱いを受けているものであります。

 次に、八ページ目をごらんください。ところが、冬場、暫定水利権とはいえ、実際には埼玉県の水道等は、冬場もこの農業用水転用水利権によってずっと長い間使い続けております。古いものは三十七年間も取水実績があります。今まで、冬場の取水で支障を来したことはほとんどありません。

 なぜこの権利が安定水利権でないにもかかわらず取水することができるかという理由ですけれども、次の九ページ目をごらんください。冬場といいますと、かんがい用水の取水量がぐっと減る結果、取水量全体が大きく落ち込みます。夏場に比べれば三割ぐらいまで落ちてしまうということで、冬場というのは水利用の面では十分に余裕がある。だから、埼玉県水道等の農業用水転用水利権による冬期の取水が可能だということであります。

 ということを踏まえますと、次の十ページですけれども、農業用水転用水利権、冬場の取水は暫定水利権という扱いを受けておりますが、実際には、八ツ場ダムがなくても何ら取水に支障を来すことなく、安定水利権に変わらないものですね。ということは、実態に合わせて安定水利権に変えれば解消されることであって、これは国土交通省の水利権許可制度の問題です。その許可制度を変えれば、この問題は一挙に解消されるということであります。

 あと、八ツ場ダムがないと、大渇水が来たらどうするのかという話がよく出ます。しかし、八ツ場ダムというのはそれほど大きなダムではありません。次の十一ページ目をごらんください。夏場、渇水が来るのはほとんど夏場ですけれども、これはちょうど洪水調節期に当たりますので、八ツ場ダムは水位をぐんと落として、夏場の利水容量が二千五百万立方メートルしかありません。

 次の十二ページをごらんください。利根川水系においては、国の関係で十一のダムがあります。その夏期の利水容量を合計しますと、約四億四千万トン強あります。ですから、仮に八ツ場ダムができても、夏期の利水容量は全体でどれくらいふえるかというと、約五%ふえるだけなんですね。ということで、八ツ場ダムがあろうがなかろうが、渇水に対する利根川水系ダムの状況はさほど変わらないということです。

 以上のように、利水面で八ツ場ダムの必要性はもうなくなっているということであります。

 では、治水の方ではどうでしょうか。治水についても、八ツ場ダムは利根川の治水対策上非常に重要な役割を果たすんだということがよく言われておりますが、実際はそうではありません。八ツ場ダムの治水効果は小さなものであります。

 十三ページ目をごらんください。利根川治水計画のベースになっているのは、昭和二十二年のカスリーン台風洪水であります。このカスリーン台風洪水のときにもし八ツ場ダムがあればどれくらい効果があったのかということを、国土交通省みずから計算をしております。その結果は、何とゼロであります。利根川に対する効果はゼロだということです。カスリーン台風のときは、八ツ場ダムの予定地上流域は雨が少なく、それから降雨の時間帯がずれたということで、利根川に対する治水効果はゼロなんですけれども、これは別にカスリーン台風だけの特異現象ではなくて、八ツ場ダムの治水効果は小さいものだということです。

 具体的な例をお話しします。十四ページ目をごらんください。最近五十年間で最大の洪水は、平成十年九月洪水であります。そのときにもし八ツ場ダムがあったらどれくらい効果があるのか、利根川に対してどれくらい効果を発揮するのかということを、国交省の開示資料に基づいて計算をしてみました。その結果、八斗島、これは群馬県の伊勢崎市、ここが利根川の治水基準点ですけれども、そこでの効果は、最大で見て十三センチメートルの水位低下であります。

 これが大きいか小さいかということですけれども、このときの最高水位は、堤防の一番てっぺんから四メーター以上下を流れておりました。ということで、仮に十三センチの水位低下効果があったとしても、それは利根川の治水対策上何の意味もなかったということです。

 十五ページをごらんいただきたいんですが、国交省の利根川の治水計画でも、八ツ場ダムの効果は小さいものです。計画上出ている数字は、八斗島地点で毎秒六百トンの削減だと。これは、水位に換算しますと、八斗島地点で十数センチです。国交省の計画でもその程度にとどまっているということです。

 さらに重要なことは、十六ページをごらんください。今お話ししたのは八斗島地点の話です。それより下流に対して八ツ場ダムはどれくらいの効果を発揮するかというと、下流に行くほど八ツ場ダムの効果、ダムの効果というのは小さくなってきます。この十六ページは国交省の計算結果ですけれども、八斗島地点で削減効果を一〇〇%とした場合、江戸川と利根川下流においてはその二〇から四〇%まで落ち込んでしまうということです。ですから、八斗島地点での効果は小さいということは先ほど申し上げました。下流に行くとその効果がさらに小さくなっていくということで、八ツ場ダムの利根川に対する治水効果は非常にわずかなものだということであります。

 では、一方、利根川の洪水に対する河道の状況はどうなっているかということですけれども、十七ページをごらんください。利根川は、カスリーン台風の後、河川改修、河道整備が長年行われてきました。これは国交省、建設省の努力の成果ですけれども、大きな洪水が来ても十分な余裕を持って流下できるようになっております。この図は、先ほど申し上げた平成十年九月洪水の最高水位を、利根川中流部右岸について例にとって見たものですけれども、堤防のてっぺんから四メーター以上下を流れております。利根川の堤防の余裕高として必要なのは二メーターですから、十分に余裕があるわけですね。

 このように、河川改修の努力の成果として、利根川は大きな洪水に対して十分対応できる、そういう能力を既に有しているということであります。ということで、八ツ場ダムのわずかな治水効果は、今は意味を持たなくなっているということです。

 では、この利根川の治水対策、これでもういいのかというと、決してそうではありません。次の十八ページをごらんください。堤防の安全性の問題が残されております。

 堤防といいますのは、何度もかさ上げが行われておりまして、脆弱なところが各所にあります。この図は、同じく利根川中流右岸堤防について、洪水のときに水位が上がった場合、破堤の危険性がどれくらいあるかを国交省が調べたものを整理したものです。安全度一以上であればいいんですけれども、一を下回っていると、基準に不適合ということで、破堤の危険性があるということです。そういう場所が各所にあることがわかります。ほかの区間も同様であります。この堤防の強化対策を急いで進めなければなりません。

 十九ページをごらんください。この堤防の安全性の問題は、実際に堤防の漏水という問題を引き起こしております。この点を六都県知事の八ツ場ダムに関する共同声明でも問題視しております。漏水の発生していることは、これはすぐにでも対策を講じなきゃならぬ非常に重要な問題であります。しかしながら、この堤防の漏水防止対策を八ツ場ダムに求めるのは全く筋違いであります。これは堤防の強化によってしか防ぐことはできません。

 では、この堤防の強化対策はどうなっているかということですけれども、二十ページです。これは利根川水系での河川予算の使い方を見たものです。左側の図ですね。八ツ場ダム等のダム建設費がどんどんふえておりますが、一方で、堤防の強化対策等の河川改修の予算が急速に減っております。要するに、ダム予算に巨額の金をつぎ込んだ結果として、そのしわ寄せを受けて、本来優先して進めなきゃならない堤防の強化対策がなおざりにされているということです。

 そういう状況にありますので、今ここで利根川の河川行政を根本から変える必要があります。効果が希薄な、そういうダム建設にお金をつぎ込むんじゃなくて、流域の住民の安全を守る上で非常に切実な堤防の強化、ここに河川予算をつぎ込む、そのように利根川の河川行政を変えることが求められ、今急がれているわけであります。

 以上で私の陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

川内委員長 嶋津参考人、ありがとうございました。

 次に、虫明参考人にお願いいたします。

虫明参考人 虫明です。発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 私は、このカラーコピーをもって説明いたします。

 私は、ここ十数年、社会資本整備審議会とか国土審議会で、現在の利根川の基本方針あるいは利根荒プランにかかわってきた者でして、そういう立場からきょうはお話しいたしますけれども、前に断っておかなきゃいかぬと思うのは、私はダム推進派でも反対派でもありません。八ツ場ダムに限って、利根川における八ツ場ダムの治水と利水の効果について、科学技術的な立場からお話ししたいと思います。

 一枚はぐっていただきまして、話の内容ですが、まず、利根川流域の治水における八ツ場ダムの意義と効果、次に、首都圏の水供給における八ツ場ダムの役割、それらをまとめたものとしてやりたいと思います。

 最初に、治水上の効果について、これはやはり利根川治水の難しさ、これは人工河川でして、今まで大変な改造が行われ、治水に努力が行われてきたという背景を御理解いただかなきゃいかぬと思いますので、その辺からお話しいたします。

 五、六となっていますところをはぐっていただきますと、江戸時代以前の利根川というのが五ページに出ておりますけれども、これを簡略化してみると、下の六ページの図のようになります。

 利根川は、江戸時代以前は渡良瀬川とともに東京湾へ直接流下していた。鬼怒川、小貝川、さらに小河川で常陸川というのが銚子の方へ流れていたということがあります。それを、徳川家康が江戸幕府を構えてすぐにやった大事業、六十年間にわたった大事業ですけれども、これを東へ東へ移して銚子へつなぐと同時に、江戸川も開削して現在のような形ができたんです。

 これは何のためかというと、諸説がありますけれども、今最も有力な説と考えられているのが、幕府の交通運輸体系の確立、特に、東北の米を江戸へ運ぶのに房総半島の沖から東京湾へ入るというのは非常に難所だったので、内陸にそれを持ってきた。さらに、関東地方の米を集めるということで、八番のスライドにありますような形をつくったわけです。

 河川は、明治に入っても実はこの交通体系としての整備が中心でして、例えば、利根川では明治二十三年には利根運河というのをつくって、江戸川と利根川を短絡するということをやられておりました。

 当時どのような治水体系をとっていたかというのが九ページでございますけれども、洪水は流域の各所で散って流れている。重要なところを守るために、輪中、あるいは堤防から垂直に出るような堤防、横堤、控え堤といいますが、そういうものをつくっていたわけです。

 ここでは中条堤というのに着目してほしいんですが、当時、埼玉平野を守るために、埼玉平野の上流部、妻沼とか深谷というところ、最上流部に中条堤というのをつくって、そこへ遊水させて下流を守るという、重点的な守るところを守るために地先堤防をつくるというようなことがやられていたわけです。十ページの写真が、これは現在でも中条堤というのは残っておりまして、こういう形であるんです。

 これは、十一ページの図で見ていただくように、面積は、今の渡良瀬遊水地が約二十三平方キロなんですが、それよりも倍以上の面積を持っていて、人工的に下流に狭窄部をつくって、そこを閉めて、洪水が出ると水位を上げて上流ではんらんさせるということがやられていたわけです。

 そういう前提で、明治になって新田開発も江戸時代から随分進んで、開発が進んで水害が顕在化してくるという中で、明治二十九年に治水工事をやることを目的とした高水工事へと移るわけです。

 その後、明治に最初に河川改修計画が立てられたのは、明治三十三年、これは栗橋という地点、江戸川が分派する少し上流ですが、そこを基準点として計画が立てられ、なおかつ、計画対象となっている洪水は二、三年に一度起こるような中小洪水だったわけです。つまり、この時点では、先ほど申しました中条堤上流のはんらんを許容する形での治水計画が立てられていたわけです。

 そういうことで進んでいたわけですが、十三ページに移ります。これは、全国的に大きな被害が出た明治四十三年洪水というのがあるんですが、このときに、この中条堤が、遊水した水が、そこが破堤して、東京まで達するような大水害が起こります。このときに、この中条堤という堤防を強化するのか、あるいは廃止するのかという議論が起こりますが、結局、遊水地上流の人たちの反対の要望が受け入れられて、ここは締め切ると。つまり、この時点で、遊水を許さないような連続堤防で治水をやるということになったわけです。

 それが十四ページの明治四十四年の改修計画ですけれども、そのときに、基準点を栗橋から八斗島へ、上流の埼玉平野の出口に移しますと同時に、明治四十三年の洪水というのは一万トン級の洪水だったんですけれども、それを対象にはできなくて、その半分ぐらいな流量で計画し、それでも、なおかつ、渡良瀬遊水地という平地で水をはんらんさせることが必要だという計画です。

 このように見てきますと、利根川治水を最も難しくしているのは、今のような東遷事業によって、低平地を流れる河道が江戸川、利根川下流も含めて大変な距離を持ったということです。そこに、なおかつ、川を一本化し、渡良瀬川、鬼怒川、小貝川、さらに利根川上流のような支川をいっぱい集めて洪水を集中させるということをやったというのが、これが利根川治水を難しくしている条件であります。

 十六ページを見ていただきたいんですが、全国の川で見て、大河川で、それぞれの地域で特有な治水方式をとっているわけです。北上川というのは、北上川放水路というのを掘って、仙台平野を守るということができます。放水路が決め手になる。信濃川は、大河津分水というのを掘って、これは信濃平野、新潟平野を守ると言うことができます。木曽川については、木曽三川。あるいは、淀川については、琵琶湖、これは非常に大きな貯留能力を持っておりますし、それと下流の大阪を迂回する新淀川という放水路という決め手があるんですけれども、利根川は、低平地の長い堤防を強化、整備すると同時に、それだけではもたないので、中下流部の遊水地、さらに上流のダム群調節という、決め手がない中で三つを適切に組み合わせた治水が必要だということでございます。

 時間がありませんので治水の経過を簡単にお話ししますけれども、利根川では、その後も洪水、水害を受けてから流量を改定するという経過が進むわけです。明治四十三年の改修計画後に、昭和十年、十三年、十三年は六月と八月にあるんですが、水害を受けて、また計画を改定します。そのときには、一応、明治四十三年洪水の一万トンというのを八斗島地点での計画流量にし、渡良瀬遊水地に加えて、下流部で、菅生遊水地、田中遊水地という遊水地をさらに加えます。

 それでも、下流は、今まで非常に小さな洪水しか流せないような川だったものですから、佐原とか銚子とかという下流部は守れないというので、放水路というのを計画します。これは実はまだ実現しておりませんけれども、こういう計画をせざるを得ないというところがあります。

 十九ページに参りますが、カスリーン台風を迎えて大被害を受けるわけですが、この辺は御存じのとおりなので。

 二十二ページ、カスリーン台風のときに、初めて上流ダム群による洪水調節を導入したわけです。これも申しましたように、平地での調節が非常に難しいというので、これで八ツ場ダムも位置づけられるわけです。

 次の二十三ページに参りますけれども、それが、カスリーン台風後の計画の後で三十年を経過して、流域も変化し、なお、一番重要なのは、このカスリーン台風から三十年後に、関東平野に人口と資産が大変集中したということもあって、計画の見直しが行われるわけです。そのときに、流量が一万七千から二万二千に大幅に増加されます。これは、河川局の説明では、上流の河川整備、流出形態変化となっておりますけれども、私はこれは、利根川の人口、資産がふえたことに対して安全度を上げるという意図があったと推定しております。と同時に、当時、水資源開発が非常に重要になってきた中で、多目的ダムとして治水も乗って、上流での調節力をふやそうという意図があったと思います。

 二十五ページに参りますけれども、利根川の最も重要なことは、下流に非常に資産と人口が集積しておって、治水担当者、私も含めてですけれども、二度と利根川を、東京がつかるようなはんらんをさせないというのが非常に強い意図としてあるということを御認識いただきたいと思います。

 二十六ページですが、整備計画で見直しが行われます。ここでもほぼ五十五年計画を踏襲しておりますけれども、上流ダム群については、これからダムが余りできるような状況ではないということで少し低下させていると同時に、既設ダムを有効に使う、あるいは、かさ上げとか再編ですけれども、容量を変えるというようなことで対応するということで、新規のダム計画は少なくともこのときには議論になっていません。

 これに対しては、計画が過大だという批判があります。これは後で議論になると思いますけれども、私はやはり、利根川については、基本高水を下げて治水計画を縮小するというのではなくて、重要な首都圏を控えているのですから、むしろ一万年に一回あるいは千年に一回ぐらいな計画を立てて、これはダムで対処するということではありませんけれども、そういう目標のもとに治水計画を進めるべきだと思っております。

 ちょっと時間がありませんので、堤防について先ほどお話がありましたが、三十一ページです。堤防というのは土でできておって、特に利根川は、そこに地盤が出ておりますけれども、いろいろな旧河道とか堆積物でできたところへつくるというわけで、それに、古い堤防に盛り上げてつくるというので、洪水が来なければ弱点がわからないという事情があります。先ほど嶋津先生のお話にもあったように、水防活動の中で行われているわけです。

 三十三ページです。やはりダムは、全川にわたって水位を下げるということが非常に重要な役割を持っているわけで、できれば、全川にわたって効果があるということ。

 三十四ページですけれども、上流のダム群によって洪水調節するというのは、利根川にとっては重要だというお話は先ほどしましたけれども、利根川の上流では、その地図にありますように、大きく分ければ、奥利根、吾妻流域、それから、烏、神流という、ほぼ同じような流域が三つあるわけですけれども、奥利根については矢木沢初め幾つかのダム群があります。それから、烏、神流川については下久保ダムというダムがあります。実は、吾妻川にはこれがない。

 カスリーンのときにここに雨が降らなかったからというお話がありましたけれども、台風というのはどこをヒットするかわかりません。八斗島をホームベースとして見ますと、ライトには奥利根、それからレフトには下久保がありますが、センターに守備がないわけです。ここにダムをつくるということは非常に治水上重要でありますし、先ほど効果がないというお話ですけれども、実は、この八ツ場ダムの流域に大きな洪水があれば、数十センチ、三十センチから四十センチの水位を下げることができます。

 ちょっと利水についてお話しする時間がほとんどなくなりましたので、簡単にざっと見ます。

 三十六ページを見ていただきたいと思いますけれども、やはり高度成長、急激な都市集中によって、特に身近な地下水を利用するということが行われて、地盤沈下が起こるわけです。東京の地盤沈下はある程度鎮静化しておりますけれども、まだ埼玉では地盤沈下が進行中であります。今度の水資源計画でも、そのあたりの埼玉の地下水を用水に転用するというのが含まれております。

 三十九ページを見ていただきたいと思いますが、水資源開発促進法に基づいて、数年おきに、利根荒、全国の主要水系のフルプラン、いわゆる基本計画が改定されるわけですけれども、直近の改定というのは平成二十年七月に行われました。これは、平成二十七年度を目途として、それまでは平成十二年度を目途として計画されているものでしたけれども、それをかなり大幅に下方修正しております。これは、一都五県の水道利用者の需要見込みをまとめたものを、国土省の水資源部で、それを別の方法でチェックして積み上げたものですけれども、とにかく下方修正をしてきた。

 このフルプランができれば、四十ページにあるグラフのように、一応、先ほどお話しの不安定取水も解消されて、水需給がバランスするという見通しでやられているわけです。

 四十二ページから、北関東ではいまだに地盤沈下が進んでいるというその経過を示してありますけれども、四十七ページを見てください。四十七ページに、埼玉県の観測点での地盤沈下の進行状況ですけれども、栗橋あるいは越谷というところでは、いまだに地盤沈下が進行している。累積で一メートル四十以上ということで、いまだに一センチ以上の地盤沈下が進行しているところがあります。これは非常に治水上にも好ましくない影響を及ぼしているということ。

 あとは、もう時間がありませんので飛ばしますが、首都圏の水余りということがありましたけれども、実際に取水制限を三、四年に一回は行われているというようなこと、五十ページですね。それから、たまたま大雨が降って大渇水を逃れたというのが平成六年、平成八年ですけれども、五十一ページのような状況。決して首都圏の水は安定した状態にあるとは言えないと私は思っています。五十二ページにありますように、首都圏の利根川の水の安全度は五年に一回、あるいは三年に一回というようなことで、他の水系に比べても安全度は非常に低い状態にある。その中で、首都圏の水がそういう不安定な状態でいいのかということでございます。

 最後、まとめに参ります。

 五十五ページですが、一般論として、都市用水の需要が減少した現在は、多目的ダム計画は当然見直すべきだというふうに私も考えています。現に、水需要が減ったために多目的ダムをやめた例は幾つもあるわけです。

 それから、八ツ場ダムそのものの必要性については、治水上も利水上も、一都五県の議会で議決されて、その手続によって行われているということ。

 それから、発案から五十七年着工できなかったというのは、これはいろいろないきさつがあって、非常に地元には申しわけないことだと思いますけれども、やはり水没地の生活再建をどうするかという合意を得ることが時間がかかったということだと思います。

 その合意も一応得られたという段階で、都市の需要もあり、洪水の調節の効果もあり、水没地域の合意が得られたというような条件の中では、八ツ場ダムはやめる理由が見当たらないのではないかというふうに私は思っています。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

川内委員長 虫明参考人、ありがとうございました。

 次に、松浦参考人にお願いいたします。

松浦参考人 東洋大学におります松浦でございます。まず、本日、このような意見を述べる場をいただきましたことを深く感謝いたします。

 私の資料に基づいて述べてまいります。ちょっと講学的な話になるかもしれませんけれども、ひとつよろしくお願いいたします。

 まず最初、一ページ目、ここに、私の八ツ場ダムに対します基本的な考え方を述べております。

 どんなことかといいますと、八ツ場ダムの治水効果、さらに現在の利根川治水計画、現在の河川整備基本方針ですけれども、これに対しましては、少なからず疑問を持っております。一方、利水には八ツ場ダムは間違いなく効果を持ちます。それゆえ、利水安全度の向上、そして二十一世紀の新たな水利用として各地域の環境用水の確保を目的に、利水専用ダムにすべきだというぐあいに考えています。これが私の意見でございます。

 続きまして、では、どうしてそういうぐあいに考えているのかということにつきまして、説明をしていきたいと思います。

 まず、二ページ目を開いていただきたいと思います。二ページ目ですけれども、これは、図が六つほどございますけれども、利根川の近代治水計画を述べております。

 最初は、一九〇〇年、明治三十三年から事業がございました。それから今日に至るまで、五回ほど改定がございました。このうち、明治四十三年の改修計画、それから昭和十四年の改修計画、それから昭和二十四年の改修計画改定は、大出水により大水害を受けた後に改定されたものでございます。そして、昭和二十四年の改修計画で八ツ場ダムというのが登場してまいりました。すなわち、一九四九年の改修において初めて上流ダム群による治水計画というのが登場してきた、そういう経緯がございます。

 続きまして、一九八〇年でございます。昭和五十五年の改修計画改定がございました。これは、実はそれまでとは全く異なっております。どういうことかといいましたら、大出水による大水害というのはございませんでした。では、どうして変えたかということでございますけれども、それまでの治水計画の考え方に変更があった、変更といいますか、計画手法に大きな変化がございました。それに基づいて、新たな計画がつくられています。私は、これは高度経済成長時代の発想、高度経済成長時代の治水計画の考え方である、そういうぐあいに考えております。

 まずそれを言いまして、あとはこの資料に基づいて、ちょっと簡単に説明していきます。

 三ページ目に、先ほど言いましたけれども、その辺のところの経緯が書いてございます。

 それから、3でございますけれども、築堤による治水と上流山間部のダムによる治水との違いといいますか、実は、これは根本的に違いがございます。どんなことかといいますと、ダムなんですけれども、ダム地点で洪水調節をしても、実際に下流にどれほど効果があるのかというのは、実は洪水ごとに異なっております。極端な話、ダム上流で降雨がなくて他の流域で大豪雨があったら、そのダムというのは全く役に立ちません。流域のどの地点にダムを設置するのかが非常に大事です。そういう意味で、ダムは築堤より不確実な施設、そういうぐあいに考えております。

 続きまして、四ページ目でございます。では、現在の考え方といいますか、利根川治水計画の考え方は一体どんなものか、それについて説明していきます。四ページの5です。

 実は、上流山間部のダム築造が完成しないうちに、先ほども言ったんですけれども、計画が変更されました。昭和五十五年計画でございます。さらに、それに基づきまして、二〇〇六年にわずかに変更され、現在の計画となってございます。その背景には、先ほども言ったんですけれども、治水計画の考え方、手法に大きな変更がございました。

 それが具体的にどういうことかといいますと、それまでは、実際に生じた洪水をベースに計画が定められてまいりました。これは、我々は既往最大主義というぐあいに呼んでおりますが、新たな計画手法は超過確率洪水といいまして、確率的に、長い期間を見たら平均的にという意味ですけれども、二百年とか百五十年とかに一回生じる可能性のある洪水を対象に計画しようというものでございます。実はこの方法は、昭和四十六年、一九七一年に改定されました淀川から始まっております。昭和四十六年で象徴されますように、まさに高度経済成長時代の考え方というぐあいに評価してよいと思います。

 では、淀川ではどういうことになったのか。基準地点枚方で、それまで五三年に生じた毎秒八千六百五十トンを基本高水流量としておりましたが、それを、確率的に二百年に一回生じる洪水として、それまでの約二倍に当たる毎秒一万七千トンというのが対象になりました。この新計画に基づきまして、大規模プロジェクト、琵琶湖総合開発などが行われました。

 そして、昨年、地元知事の反対によって建設が凍結となりました大戸川ダムも、実はこの計画で登場したものでございます。

 そういう意味で、治水計画では、高度経済成長時代に大きな飛躍があったというのが今後の治水計画を考える場合非常に重要なことだ、そういうぐあいに考えております。

 では、具体的に超過確率洪水はどうやって求めるのか。五ページから六ページに書いていってございます。

 例えば、二百年超過確率洪水で見ますと、日本には、二百年にわたり観測された流量とか雨量の資料はございません。長くても百年ぐらいの雨量があるのみです。これを、統計数学的手法により、二百年に一回生じる総降雨量を求めます。これを、降雨から流量に転換する流出モデル、この流出モデルというのは数式でつくられておりますけれども、この流出モデルで計算して求めていきます。

 これには、実はいろいろな問題がございます。例えば、統計数学的に求めた総降雨量が正しいかどうか、それから、流出モデルが適当かどうか、代表降雨パターンが気象学的に妥当かどうかなどの、そういうような基本的な問題がございます。

 利根川も、確率的に二百年に一回生じるような洪水を求め、それでもって計画を策定しております。それはどんなことかといいますと、キャサリン台風時の降雨に基づいて流出モデルで計算した流量を基本高水流量というぐあいにしております。これをベースにしまして、このうち毎秒一万六千トンを河道で負担する計画高水流量、残りの毎秒六千トンを上流山間部でダムで調節しようとする、そういう計画ができました。これが五十五年計画ですけれども、現在の整備基本方針では、基本高水流量は同様に毎秒二万二千トン、しかし、計画高水流量は毎秒一万六千五百トンとなっております。

 では、ここで非常に大きな問題がございます。キャサリン台風の直後で毎秒一万七千トンと評価されながら、なぜ五十五年計画で二万二千トンと約三割も増大したのかという問題でございます。

 一般的な話でいいますと、洪水をある地点で観測したとしましても、その上流ではんらんしましたら、はんらんしない場合に比べて流量は小さく観測されます。その後の河川改修ではんらんしなくなったら、当然、下流にそのまま流れてきますから、洪水のピーク流量というものは大きくなります。

 だが、利根川なんですけれども、キャサリン台風時に観測された地点より上流を見ましても、平地部はそんなに広くない、それほどはんらんしていないというぐあいに考えております。なぜ三割もふえたのか、私は非常に疑問を持っております。

 こんなに大きくなったのは、実は、流出モデルに問題があったのではないかというぐあいに考えております。適用した流出モデルは、キャサリン台風時の洪水、これに基づいて作成されたものではございません。このときの洪水に比べましたら、かなり小さい洪水を対象にしてつくられたものでございます。小さな洪水に基づき作成された流出モデルに大降雨を与えますと、実際よりも大きくなる可能性は十分ございます。

 そういうことから、高度経済成長時代の計画手法から脱却して、やはり治水計画では実際に生じた洪水をベースに考えるべきだ、そういうぐあいに判断していってございます。昭和二十二年洪水をベースに、八斗島で毎秒一万七千トンの計画で行うべきだ、そういうぐあいに考えております。

 としましたら、今の計画で河道が負担する計画高水流量を、毎秒一万六千五百トンでございますから、現在完成しているダムのみで残りの毎秒五百トンの洪水調節は十分行える、そういうぐあいに判断しております。

 それから、実は、ことしは二〇一〇年でございます。その百年前、これは一九一〇年ですけれども、関東平野は、利根川、荒川の大出水によって席巻され、大きな被害を受けております。明治四十三年大水害ですけれども、近世以来の三大出水の一つと評価しております。このときの総降雨量は、キャサリン台風のときよりも大きい。ただし、一週間にわたる大豪雨であったため、八斗島地点でのピーク流量はさほど大きくないと思われます。しかし、洪水の継続時間は非常に長かった。そういうふうな洪水であったというふうに考えております。としますと、現在の利根川堤防はこれに耐えられるかどうか、非常に実は心配しております。

 次に、利水面からの評価でございます。ダムによる利水効果とは、ダム貯水池にため込んで水を渇水時に流し、渇水時の流量を増大することでございます。先ほどの治水と違いまして、貯水池に水をため込んでおりますから、絶対効果があります。それはもうちゃんと保険として水をため込んでおります。そういう意味で、治水に対しての効果とは基本的に違ってございます。

 では、利水計画によってどれほどの規模の渇水を対象にするのかが非常に重要でございます。原則的に十年に一回生じる渇水を対象として計画が行われてきております。ところが、残念ながら、水需給が逼迫してきた河川では、実質的に五年に一回の渇水を対象として計画が行われてきたという現実がございます。

 済みません、今、利水のところに来ました。ちょっと時間がなくて慌てていきまして、ページのことを申すのをうっかりしておりました。十ページから十一ページ、十二ページあたりを述べております。

 原則的に十年に一回の渇水で行ってきたんですけれども、利根川水系では、高度経済成長時代、急激な水需要の増大に対応するため、確率的に五年に一回発生する渇水を対象に利水計画を作成し、水利権を与えてきたというぐあいに聞いております。それ以前、最初の利水計画が昭和十年ごろ策定されましたが、そのときにも、実は五年に一回の渇水を対象としております。利水の安全度でございますけれども、どれほどがよいのかというのはなかなか判断が難しいんですけれども、私はやはり、安全度として十年に一回の渇水を対象にするとの方針は妥当だ、そういうぐあいに考えております。

 今日でございます、明らかに高度経済成長時代の水需給計画が過大であったということは間違いございません。現在、水需給を的確に評価した上で、余裕となった貯水量で利水の安全度を上げるべき、そういうぐあいに考えております。それに加え、埼玉平野などでの環境用水の確保によって、河川環境向上にこの八ツ場ダムを役立たせるべきだというのが私の意見でございます。

 もう一回整理しますと、効果が期待できない治水、効果が期待できないといいますか、はっきり期待できるかどうかわからない治水よりも、間違いなく効果のある利水専用ダムとすべきだ、そういうぐあいに考えております。

 非常に雑駁でしたけれども、以上で私の陳述を終えます。ありがとうございました。(拍手)

川内委員長 松浦参考人、ありがとうございました。

 次に、奥西参考人にお願いいたします。

奥西参考人 奥西です。私は、ダム湛水域の地すべりの危険度に特化して意見を述べたいと思います。

 私は、このダムの建設差しとめに関する訴訟で、地すべり問題に関する鑑定意見書というのを提出しておりますけれども、おおむねそれに基づきまして、また、その後の資料をつけ加えた形で意見を述べたいと思います。

 私のプリントの第一ページの第一図に、湛水域の地図が示されておりますが、その中で薄い赤で示されたのが予備的な調査ともいうべきところで、検討すべき地すべりの可能性のある斜面というのを挙げてあります。結果的にこの部分の多くは地すべり地であることは間違いないと思うわけですが、対策工事が計画されておりますのは、そのうちの、上から矢印を示しておりますけれども、地点で四つ、地域で三つ、そのうち一番左端の小倉地すべりに関しては県施行でありまして、事業者の施行のは三カ所にとどまっております。ここから主要な問題が生じるわけです。

 なお、この図には、太い破線で二つの箇所を示しておりますけれども、これは過去に実質的な地すべりが起こったと考えておるものです。そのうち、川原湯地区についてはだれが見ても間違いないと思いますが、林地区については、実際にこういう破線に沿って過去に地すべりが起こったかどうか、私も完全に確信が持てないところがあります。

 マスコミの取材に応じまして、私は、この地域は地すべりのデパートのようなものだというぐあいに申し上げましたが、その意味するところは、いろいろな種類の地すべりがあって、また、数が多いということです。

 その第一原因は地質にありまして、三の地質概要にありますが、いろいろな時期の火山活動の影響を受けているために、場所によっていろいろな地すべりの態様があらわれているということです。きょうは時間が限られておりますので、主な類型の地すべりについて、それぞれから一つずつ選んで述べたいと思います。

 二ページ目の第二図は、二社平地区の地すべりの地質断面図を示したものです。ここの地すべりは小規模なものではありますけれども、地すべりが起こりますと大きな岩塊がダム湖に転落する、そのために貯水池で津波が起こるという心配がありますので、非常に重要視されているものです。

 この図でピンク色の部分がこれまで地すべりとされてきたものであるけれども、ちょっとわかりにくいですが、真ん中や左側に青色で直線の斜線が示されておりますが、そこまで含めて考えるべきだというのが平成十九年度の調査による結果です。実際に対策が検討されているのは、ピンク色の中のまた多少限られた部分にすぎません。この調査の報告書では、この青い線で区切られた部分を絶対に対策しないといけないとまでは言っておりません。

 次に、その下の第三図、林地区の地すべり危険度です。対策が予定されておりますのは、この図で赤で示した範囲、これは地すべりのすべり面の深さをあらわす線ですけれども、それに限られておりますが、平成十九年度の調査で、この青い線で示された部分も検討の対象にすべきだと言っております。

 その根拠の一つは、次のページに、長野原町で出されております資料で、過去に地すべりが起こったところの滑落崖が生じているというわけです。ですから、もうここは地すべり地であるということは間違いないわけですね。しかし、いろいろ理由をつけて対策工事の対象にしなかった。この報告書では、この時点において、これから調査をする必要があるというぐあいに述べております。この時点ではダムの着工が既に決まっておって、もう着々と工事が進められていた段階のことなんですね。

 次に、三ページ目の下の白岩地区の地すべり危険度ですが、初期のころの調査でこのような地質模式図がつくられております。不動岩という大きな岩壁があるんですが、この図ではその高さが正確に示されておりませんが、その岩壁が崩れて、この下の平たんなところにたまっております。この平たんなところの下の岩盤が、この不動岩が盛り上がってくるときの力学的な作用、それから地熱による風化作用を受けて脆弱化しておりまして、もたなくなっている。そういう状況が初期のころから報告されております。

 次のページに移りまして、上の写真が、そういう岩壁が崩れてできた岩塊がつくる小山の例です。左端に人物が写っておりますので、大体の大きさがわかると思います。左側の図に、そういう小山の分布が示されて、ちょっとわかりにくいんですけれども、青で区切った部分は地すべり地の疑いがあるというぐあいに報告書で書かれています。

 ところが、その報告書の中を見ますと、そのページの下の図のような地質断面図が示されておりまして、各所で地すべりの変位が既に生じているというデータが出ております。また、地表でも道路が変形しているとかの報告がありまして、間違いなくこれはもう既に地すべりが起こっておるわけです。まだ実害が生じる程度の変位にはなっておりませんけれども、間違いなく地すべりであるにもかかわらず、報告書では、地すべりである可能性があるから、そういう観点に立って調査をする必要があるという、非常に煮え切らない表現になっております。

 五ページ目の七番、横壁地区の小倉地すべり。これは非常に小さいものですが、かつて地すべりを起こした履歴のないところで起こっております。これは非常に重要視すべきだと思われます。というのは、ダムをつくった場合に、これまで検討されたことのない斜面で地すべりが起こる可能性があるんだということを示唆しているものですが、そういう観点に立った調査がここでは行われていないということが問題です。

 それについて、次のところにちょっと書いておりますけれども、国交省は、こういうタイプ、初生地すべりというぐあいに言いますが、これについては予測が難しいので予測並びに対策を行わないんだというぐあいに言っております。また、別のダム、これは奈良県の大滝ダムというところですが、実際に試験湛水をして地すべりが起こって補償問題が起こっておりますけれども、これについて国交省は、初生地すべりは予見できないのだから補償する義務が生じないということを主張しておられます。

 そうしますと、ダムをつくるときにもし初生地すべりが起こったらだれの責任なのか。それは、結局、被害者自身がかぶらざるを得ない。そういう構造をダムそのものが持っているということに、そういう解釈をせざるを得ないようになります。

 あとのことをまとめますが、先ほど、地すべりが現実に起こっている、あるいは地すべりの危険度がはっきりしているにもかかわらず、これから調査しなければいけないというような書き方をされているのはなぜか。これは多分に憶測の問題でありますけれども、地すべりの科学技術的な調査というのは、ダムをつくろうというサイドの人の依頼によってなされるものですから、調査した結果、ダムはつくれませんという結論を出せるのか、非常に疑わしい。私の憶測するところ、そういう技術者の苦悩がこういう煮え切らない表現になってあらわれているんではなかろうかというぐあいに考えております。

 それから、ちょっとはしょりますが、初生地すべりに限らず、地すべり、あるいはもっと一般的に自然災害というのは、人知を超えたところがあります。したがって、すべての災害、すべての地すべりについて完璧な調査をやってからダムをつくるということは、もともと不可能であろうというぐあいに思われます。

 ですから、仕方がない、つくってしまえという議論もあるわけですが、やはりダム事業者は結果責任をとるべきであろうというぐあいに考えます。不確定なことがたくさんあるわけですが、不確定なことに対してどう考えるかという問題を突き詰めないと、被害者に責任をとらせるというようなことは適当ではないというぐあいに思います。

 以上です。(拍手)

川内委員長 奥西参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中康夫君。

田中(康)委員 民主党・無所属クラブの一員であります新党日本の田中康夫でございます。

 五名の参考人の方々、どうもありがとうございました。今お話をお聞きしていて、改めて、この計画というものが長い年月がかかる中で、地域の方々が翻弄され続けた、とりわけ豊田参考人のお話を聞いて、私も、ダムによらない治水ということを知事時代に行ってきた人間として、非常に深い思いを抱きました。

 中国最古の王朝の夏の始祖である禹は、黄河治水の祖と呼ばれ、治水こそまさに政治の要諦であるというふうに言ったわけでございます。今、河川というものはだれのものかというと、河川管理者の独占物ではございませんし、あるいは特定の住民の占有物でもない。地元といっても上流、水源地域と中下流地域で異なりますし、また、農業者、漁業者と業によっても異なりますし、流域住民はさらに広範囲でございますので、まさにこの問題というのは国家的視点からの判断が不可欠であり、ゆえに治水は政治の要諦と呼ばれている、このように私は考えておりますし、また、この点は五名の参考人の方々にも一様に御同意いただけるところではなかろうかというふうに思います。

 とりわけ、きょう「八ッ場ダム」という鈴木郁子さんという方がお書きになった本を私は持ってまいりました。「計画に振り回された五十七年」と書いてございますが、五十七年どころか、もう六十年たっていらっしゃる。まさに、あの地域の皆様が最初、ダムをつくられるといったときに、町長を初めとして反対をされる。そしてその中で、中曽根康弘さん派に皆さんが集団入党される形でダムに反対をされる。しかし、その後ダム推進派の町長が二十年続かれて、そしてその後、反対派の方々が擁立をした町長が十六年続く。しかしながら、その中で、時間と力とお金という中で皆さんが疲弊をしていかれた。それは、ダムの建設を一日も早くと望まれている豊田参考人、あるいはその周囲の方々とて同様の翻弄された日々だったのではなかろうかと思います。

 虫明参考人に御質問をいたしたいと思います。

 先ほど嶋津参考人からもお話がありましたし、これは客観的データとして示されておりますが、平成十年の九月の八斗島における水量というものは、洪水量が計画よりも非常に少なかったという形でございます。これに関してどのように思われるか、またなぜ少なかったのかということに関して、社会資本整備審議会の委員も御歴任されました水文学の第一人者にまずお聞きしたいと思います。

虫明参考人 平成十年洪水というのは、八斗島で一万トンに少し低いんですが、これは頻度でいえば十年に一回程度の洪水だと思っています。というのは、嶋津先生は五十年に一回というような主張をされていますが、一万トン級の洪水というのは、ちょっと今手元に資料はありませんけれども、カスリーン台風後、七、八回あります。その中で大きい部類に当たるんですけれども、そういう意味では、計画対象よりもかなり小さい洪水であって、それに対して四メートル低いというのはもちろん当然のことだと思います。

 それから、水位について、そのときに八ツ場ダムが十三センチとおっしゃいましたけれども、それはその雨に対してそうでしょうけれども、実は利根川というのは、本当に難しいのは、支川が幾つもある。そのときに、八ツ場ダムに大雨が降ったときには、これは三十センチ、四十センチの水位低下があり、なおかつ下流ではもっときくところがあります。というのは、八斗島というのは千メートルと川幅が広いんですね。下流へ行くと六百五十メートルぐらいの川俣というところがありますけれども、そのあたりに来ると水位低減効果はもっと高いわけです。

 そういう意味で、平成十年にきかなかったからといって、きかないという議論は余りにも乱暴だろうと思っております。

田中(康)委員 百年確率、二百年確率という話をしているところに対して、虫明参考人からは一万年確率という大変に気宇壮大な御発言が先ほど陳述でもございました。

 しかし、二月八日に、今後の治水対策のあり方に関する有識者会議という、これは国土交通省の専門職員も推挙をして選ばれた鈴木雅一東京大学大学院教授、同じく水文学の権威でございますが、この方が、今先生がお話しになった五十四流域、そのすべてが一次流出率が〇・五というのは大き過ぎないか、そして、逆に飽和雨量が四十八ミリであるということは小さ過ぎないかということを申しております。この点に関して御見解を。

虫明参考人 私、それは資料で見て、それから、先ほども申しましたけれども、松浦先生も言われましたけれども、かなり過大であるというのは、私自身もそう思っています。

 そのときに、今、流出の係数として過大にしているというのはあの記事で初めて、鈴木雅一さんの御発表で初めて知ったんですけれども、ここに、私が申し上げましたのは、カスリーン台風から三十年たって、当時よりもはるかに人口、資産が集中したところで、安全度を上げようという治水計画者の意図があったのではないか、これは私は全然関与していませんから、そう考えられるのと、もう一つは、水需要がふえていく中で、やはり治水担当者というのは安全度をできるだけ上げたいという意図を持っているのは事実でして、水資源に乗って多目的ダムとして、だから六千というような、恐らく、悪く言えば多少鉛筆をなめて高くしたという意図はあるかもわかりません。

 私が安全度を上げると言ったのは、そこはちゃんと科学的に見直すべきだと思います。ですけれども、それを安全度を下げるとか流量を下げて計画を下げるというのではまずいので、一万年、千年と言いましたのは、ちょっと時間がなくて言えなかったんですが、オランダの高潮計画は一万年です。私は、オランダの高潮害を受ける二十数%の国土の資産の集中度と、恐らく首都圏の資産の集中度の方がはるかに高いと思っています。だから、目標はそういうところに置いて、まさにあふれても安全な治水を考えるという意味では、基本高水を下げるという発想は好ましくないというふうに思っているということでございます。

田中(康)委員 今、水文学の権威の虫明参考人からも過大であるという御認識をいただきました。ダムありきでもなければ、ダムなしありきでもないという点においては、私も同じであります。

 しかし、委員の方々に御説明すると、一次流出率というのは、降った雨がすぐに川に流れる割合でございます。これが五十四流域すべてで計算をして〇・五だというふうに現在なっているわけです。これに対して、飽和雨量というのは、土壌にためる能力でございまして、これが四十八ミリというのは少な過ぎるのではないかということが先日の有識者会議で出たことでございます。

 といたしますと、これはもう一回デューデリジェンスをする必要がある、再計算をする必要がある。今、参考人も、これだから基本高水がすぐにということではないけれども、この点に関してはお認めいただけるということでよろしゅうございますね。(虫明参考人「はい」と呼ぶ)

 ちなみに、〇・五というのは、裸地、つまり木も何も生えていない、そういうような土地の一次流出率が〇・五、これと同様の計算をしております。ところが、一方で、裸地においても一次流出率は大体〇・四と言われておりまして、山地、日本の山は大変に荒れておりますが、ここでも〇・三、林地、林であるところになりますと〇・二。数字が低くなる方が流れる割合が低くなるということですから、この〇・五というものは極めて異常な、まさに先生がおっしゃった、鉛筆をなめる。しかし、科学において、鉛筆をなめるような予算であったり数字のつくり方ということは、税金を用いる以上、そして人の生命と財産を守る以上、行ってはならないことである、このように私は思っております。

 ところで、先ほど幾人かの方からも堤防のお話が出ました。

 嶋津参考人にもお聞きをいたしたいと思いますが、日本の堤防というのはすべて土でございます。しかしながら、中は皆液状化をしている。私は、かねてから、堤防の端だけではなく、きちんと堤防の中に鋼矢板を入れるということが必要なのではなかろうかと。もっと言えば、日本においては、かつては土砂であっても粘土というものを用いていたというところがございます。これも鋼土という言い方でございました。

 嶋津参考人から、このあたりの堤防の補強のこと、また、それを行うことによってどのような効果があるか、御見解をお聞かせください。

嶋津参考人 お答えいたします。

 堤防の強化対策、いろいろな方法がございます。今おっしゃった鋼矢板、矢板を打つというのも一つの方法です。それをもっと本格的に、連続地中壁といって、堤防の中に垂直の壁をつくるという方法もあります。そのほかに、ブロックで堤防の上を押さえるとか、あるいは水が漏れてもそれをちゃんと排出できるようにドレーン部を設けるとか、いろいろな対策で堤防の強化というのが必要なわけです。

 これを特に求めたのが、一昨年四月の淀川水系流域委員会の意見書であります。これは、堤防の強化を、さらに進んで、いかなる洪水が来ても堤防が直ちに決壊しないように強化対策を講じなさい、そうすればダムなどは全く不要である、そして、それによって流域住民の安全を守ることができるんだという方向に治水行政を根本から変えなさいという提言をしたわけです。

 そういうふうに、堤防の強化、先ほど私がお話ししたのは、水位が上がった場合の、それに対する強化というところの範囲の話をしましたが、実は、さらに進んで、水位がさらに上昇して堤防を越えることがあっても決壊しない、そのように堤防の強化対策を講じていくことがこれからの治水対策のかなめになると私は考えております。

田中(康)委員 ありがとうございます。まさに、液状化をしている堤防を、かつても鋼土という鉄分の多い粘土を使っていた、その形が今すぐできる治水なのではなかろうかというふうに思います。

 ところで、奥西参考人にお聞きをいたしたいと思います。

 先ほどの、利根川水系において一次流出率が極めて高過ぎる、そして飽和雨量が小さ過ぎるということがございました。地すべりのお話をされましたが、実は、私が知事を務めていた県で、このたび国土交通省が補助金をつけるというような発言を大臣がしている浅川という場所がございますが、ここも飽和雨量が五十で小さく、他の長野県の河川は皆なべて九十から百十という形にしていたわけでございます、国土交通省が。浅川に関しては鉛筆のなめぐあいが少なかったのかどうなのか。

 そしてまた、地すべりという点に関して言いますと、そのほかの、国のダムではなく補助ダムという中には現在多くのそういう危険地域というものがあり、この補助ダムに関しては、現在、国土交通省は予算措置をするという旨の大臣会見をしておりますが、この点に関して御意見があればお聞かせください。

奥西参考人 浅川ダムの問題に関しても地すべりの問題がありまして、地すべりに対する安全度は確保されていないというぐあいに考えております。

 また、国土問題研究会で治水計画に関しても調査を行っておりますけれども、質問の御趣旨に関しまして申し上げますと、現在の我々の知識はかなりの不確定性があります。現在使われておりますダムの設計に係る水文学的なシミュレーションは、主に直接流出と言われる、雨が降ってすぐに川へ出てくるようなものを中心にしておりまして、必ずしも完璧でないということが言えます。もう一つ、私が最近思いますのは、山岳地域の降水量が必ずしも正確に把握されていなくて、源流域の雨量を小さく見積もっているのではないか。そういうデータに基づいてシミュレーションを行いますので、どうしても不確定性が大きくなる。

 先ほど鉛筆をなめたということがありましたが、それにはいろいろな要素があると思うんです。技術的には、そういう不確定性のもとで安全を確保するためには、少し安全のマージンを大きくとらないといけないということもあるのではないかというぐあいに考えますが、それについては環境あるいは利水との兼ね合いもありますので、それだけを絶対視することはできないと私は考えております。

田中(康)委員 ありがとうございます。

 今、奥西参考人から御説明があった浅川のダムというのは、千曲川の河川改修が進まず、内水はんらんがあるので、このダムをつくっても下流域の洪水は防げないということを、当の国土交通省も旧建設省時代から認めているという摩訶不思議なダムなのでございます。

 実は、きょう、これは八ツ場の問題だけではなく、私は、治水というのは国がきちんとした方針を、ダムをつくるつくらないではなくて、治水のあり方を示さねばならないと思っております。しかしながら、まだ政権交代から半年という中で、残念ながら治水のあり方が示されていないところが多くの方々の疑心暗鬼を呼んでいるのではなかろうか。

 他方で、今回国が補助金をつけるということを大臣会見で述べている内海ダムというのが小豆島にございますが、全長三キロの川でございます。ここは、現在の首相であります鳩山由紀夫氏が野党時代に行って、このダムはつくってはいけないと言ったダムでございますが、残念ながら、大臣会見ではこの予算がつくということになっております。

 あるいは、路木ダムというのがございます。ここに一つの質問主意書がございます。これは天草のダムなんでございますが、「路木集落は路木川と山で隔てられているため、路木川の氾濫による路木集落の水害は起こりえないことは一目瞭然である。ところが、熊本県が作成した路木川の氾濫想定区域には、この「地形上ありえない」」山の向こう側の路木集落が入っている。これは補助金適正化法違反ではないかという質問主意書を出された方がおります、現在の国土交通大臣なんでございますが。

 ところが、この同じ国土交通大臣は、河川法第六十二条と補助金適正化法第六条を根拠に、各県ともに負担金交付への期待値が高まっているから、国が金を出さないということになれば、裁量権の逸脱となり、負担義務違反を問われる、つまり自分たちの瑕疵が問われるので、補助金を出さざるを得ないと述べておりますが、この点に関して、もし嶋津参考人の方から御意見があれば。国のダムに関しては代替案を示さないままやめるという一方で、こうした補助ダムに関しては本体着工がまだ始まっておりません。しかし、これに関しては出すと言っている点に関して、御意見があればお聞かせください。

嶋津参考人 今のお話がありましたように、路木ダムとか浅川ダムとか、それから内海、新内海ダムでそういう動きがあって、新聞報道されております。

 ただ、補助ダムといいますのは、確かに事業主体は県であります。しかしながら、そのお金の半分は国庫補助金、さらに地方交付税措置がとられて二二・五%、合わせて七二・五%は国の金なんですね。そんなに国がお金を出すわけですから、その補助ダムを進めるべきかどうかについては、国の意向も当然反映されるべきだと私は思います。

 今回、その三つのダム、これは実は駆け込みの着工をしようとしているわけです。大臣筋としてはちょっと待ってくれと言ったにもかかわらず、知事サイドではそのように動いたわけですね。これはやはり大変問題でありまして、先ほど申し上げたように七二・五%も国が金を出すわけですから、補助ダムのあり方について、本当は国が早く方針を示すべきなんです。方針を示して、そして本当にダムが必要かどうかということの検証を急いで進めなきゃならないと思いますし、今回のことに関しては、駆け込みでありますから、これは、私の意見としては、来年度の本体工事にかかわる補助金はカットすべきだと考えております。

田中(康)委員 私も本体工事の契約をしているダム、浅川ダムを契約を解除したわけでございますが、結果としてこれは何ら法的な問われはなかったわけでございますから、ぜひ、やはり八ツ場に関して、豊田さんたちも安心されるような治水のあり方、河川のあり方、地域振興のあり方を示すとともに、こうしたものを、地方自治体に七二・五%も国がお金を出しているのに、地方自治体から訴えられたらどうしようというようなことでは、政治の覚悟が問われるかと思います。

 ところで、最後に虫明参考人にでございますが、虫明参考人はさまざまな御著書の中で、必要性が高いと認められているダム計画に対して、代替案を示すこともなく、ダム本体着工前の計画を中止するのは行政としていかがかということをおっしゃっております。

 この点に関して言いますと、必要性が高いと認められているダム計画が、この場合、六十年も長年にわたって建設が、完成どころか着工もしておりません。すると、ではその間の代替案はどうなのか。まさに、大外科手術が必要だと言われてICU室に運ばれたのに、医療崩壊の現場で医師がなかなか来ない。しかし、その場合でも点滴やマッサージはするわけでございまして、それが、先ほど来お聞きをしている、きちんとした、スーパー堤防などというまやかしではなく、鋼矢板を入れたような堤防をすること。しゅんせつであったり遊水地であったり森林整備、それが、先ほどの治水の数値に関しても、一次流出率が小さくなるということになろうかと思います。

 なぜ、社会資本整備審議会の委員でもあられた虫明さんが、六十年近くダムがつくられることなく放置され続けたこの八ツ場の利根川流域に関して、委員の一員として、それまでの間、仮にダムが必要であるとしても、今すぐ行うべき人々の生命財産のための措置というものの予算、こうしたものを弾力的に行うということができなかったのか、あるいはそういう御提言はなさらなかったのかを最後にお聞きしたいと思います。

虫明参考人 私も、地元がどういう推移を国とか県の間でしたかというのは、最近調べております。少なくとも、社会資本整備審議会のようなところでは、申しわけありませんが、そういう具体的な議論は一切やりませんでした。

 その経過を見ると、本当に対応がまずかった。必要性はあるというのは、依然として私は変わっていないと思います。ダムで六千トンカットできないにしても、八ツ場ダムは利根川治水上、先ほどから申しておりますように、上流での流水抑制というのは利根川では非常に重要な手段でございますので。だけれども、地元の調整に非常に時間がかかった。これは、やはり対応が非常にまずかったのだろうということを考えております。それから、治水上も利水上も意義がなくなったわけではないというふうに思っています。

 よろしいですか。

田中(康)委員 しかし、その六十年間に、目に見える形での治水の代替案というものが示されないまま来たということは、これは結果として、ダムを望んでおられる方々に対しても大変失礼なことであったのではないかと私は思っています。

 また、現在、財政上の理由でということで、ダムによらないというようなことが語られておりますが、これは私が出した脱ダム宣言の中で、「縦しんば、河川改修費用がダム建設より多額になろうとも、百年、二百年先の我々の子孫に残す資産としての河川・湖沼の価値を重視したい。長期的な視点に立てば、日本の背骨に位置し、数多の水源を擁する長野県に於いては出来得る限り、コンクリートのダムを造るべきではない。」と述べたわけでございまして、まさに、新しい政権というものが、ダムをつくるつくらないというモグラたたきではなく、新しい治水のあり方、まさに新しい公共のあり方というものを示せるように、きょうの参考人の皆様の御意見を積極的に活用できるようにいたしたい、このように願っております。

 どうもありがとうございます。

川内委員長 田中康夫君の質疑を終了いたしました。

 次に、徳田毅君。

徳田委員 自由民主党の徳田毅でございます。

 二十分と時間も限られておりますので、早速質問に入ってまいりたいと思いますが、八ツ場ダムの事業継続の是非につきましては、やはり利水面、治水面、そして地元の生活再建案と、さまざまな観点から議論を行っていかなければならないということを思っています。そこで、まず最初に、利水面から少しお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 先ほど、嶋津参考人の説明では、節水機器の普及や人口減少により首都圏では水が余っているということを主張されております。しかし、近年発生している事例に基づいて少し質問させていただきたいと思いますが、実際にこの首都圏の水需要の大部分を依存している利根川水系では、平成に入って六回の渇水に見舞われている。中でも平成八年は、夏、冬合わせて百十七日もの長期の取水制限が実施されて、社会的に大きな影響を与えております。

 この取水制限の実情というのは、先生の主張とは大きく矛盾されているように思えますが、いかがでしょうか。

嶋津参考人 私の方の資料はお手元にございますでしょうか。二十一ページをごらんいただきたいと思いますが、利根川水系の取水制限というのは、今お話のあった平成八年、これはやや日数も長うございました。しかし、その後、利根川水系の取水制限というのは、平成十三年の実質わずか五日間の取水制限のみでありまして、ここ十数年、渇水らしい渇水は来ておりません。

 さらに、平成八年の取水制限がどういうものだったかというと、確かに取水制限は行われましたけれども、給水制限というのは、これは段階がございまして、給水圧の調整にとどまっております。これは、毎日の生活への影響は余り大きくない。断水は大きな影響が出ます。要するに、蛇口をひねれば水が出る、ただ出方が悪いということですから、その給水圧の調整にとどまっております。ですから、期間はあったんですけれども、実際に、この平成八年の影響は余り大きくはなかった。

 さらに、先ほど申し上げたように、最近は水余りの状況が反映して、ここ十数年、渇水らしい渇水は来ておりません。

 ということで、渇水が来るから八ツ場ダムが必要だという話は、今はもう違っているということであります。

徳田委員 この二十一ページの補足資料を拝見させていただいても、この十数年ということでありました。ダム建設については、治水面でいえば、百年、二百年、または千年というリスクを考えて、想定して計画を立てていかなければなりませんが、渇水についても、やはり百年、二百年という大きなスパンで考えていかなければならないんだということを思います。

 実際、そもそも、東京の一年間に一人当たり使える水の量は、全国平均が五千立方メートルに対して、関東では千三百立方メートル、たった二六%であります。今の気象リスクを考えると、やはり首都圏の水の供給には十分な余裕を持つべきだと思いますし、水源もできるだけ多様化すべきなんだということを思います。

 もし近い将来、首都圏で天候等の理由で水が大きく不足した場合、利水という意味では八ツ場ダムは有効ではないでしょうか。八ツ場ダムが有効でなければ、それではどのような代替案があるでしょうか、お伺いしたいと思います。

嶋津参考人 まず、百年に一回とかそういう渇水を考える必要がどこまであるか。渇水というのは、五年、数年、そういう渇水が頻繁に訪れるものでありまして、今まで百年に一回とかそういう渇水というのは実際に経験していないと思うんですね。利根川水系の場合、前の東京オリンピック、それ以降、本当に生活への影響のあった取水制限というのはないんですよ。そういう状況であります。

 最近は、先ほどお話ししたように水余りの状況です。お手元の資料の三ページをごらんいただきますとわかりますように、東京都水道の水需給の状況を見ると、もう今は水がだぶだぶに余っている。九〇年代のころと違って今は水余り、たっぷり余裕水源を抱えている状況にあるわけですから、同じようなそういう渇水が起きても、それに対する状況は著しく変わっているということ、この状況を重視すべきだということです。

 それから、御質問のあった、八ツ場ダムがなければどうするかということで、八ツ場ダムそのものは、先ほどお話ししたように、渇水というのはほとんど夏場に来るわけですよ、そのときの、夏期の利水容量は二千五百万立方メートルしかないんですよ。利根川水系ダム、国の関係ダムで十一ダムありますけれども、その合計の夏期の利水容量は四億四千万トン強です。八ツ場ダムができても五%しかふえないということです。それほど今の利根川水系ダムの渇水に至る状況は変わるものではないということで、八ツ場ダムに対して過度の期待を持つことは間違いであって、それほど大きく役立つものではないということを御認識いただきたいと思います。

徳田委員 先生は、先ほど来、首都圏においては水がだぶだぶ余っているということでありますが、一九九〇年から見ても、幾ら減少し続けているとはいっても、一日に百万立方メートルぐらいなんです。これを大きく見るか小さく見るか、それは見解の相違があるかもしれません。しかしながら、やはり首都圏においては渇水リスク、これに対しての対策が何らか必要なんだ、それに対して、私は八ツ場ダムというのは有効であるというふうに考えています。

 それでは次に、治水面からお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 先ほどの話で、これも嶋津参考人の説明にありましたが、八ツ場ダムで治水の対策を行うのではなくて、利根川の堤防を強化することに予算を配分すべきだということでありました。しかし、利根川全域、先ほども指摘がありました、先生の資料の十八ページを拝見させていただきますと、安全度が一・〇〇に達しない危険な箇所がこれだけあるということであります。

 それでは、これらすべてを強化するのにどれだけの年月と、そして予算がかかるのか、それをお伺いしたいと思います。

嶋津参考人 その計算は直接はやっておりませんけれども、新潟大学の大熊先生がこの堤防の強化にどれぐらいかかるかということで、ちょっと数字はすぐ出てきませんけれども、全部で合わせて一千億、二千億、それくらいのオーダーだったと思います。

 それから、堤防の強化のやり方もあるわけです。大変お金をかけるやり方もあります。そうではなくて、先ほど申したように、連続地中壁を打ち込むとか、比較的低コストで堤防の強化をする対策があります。そういう安上がりの方法を講じれば、八ツ場ダムにお金をかけるよりもはるかに安い金額で、それからほかのダムもありますが、そちらにかける金よりもっと安い金額で堤防の強化ができるものと考えております。

徳田委員 その予算は一千億か二千億という試算であるということでありますが、本当にこれぐらいの予算ですべての強化ができるのか、私は大変疑問であります。

 それにまた、先ほど期間ということも申し上げました。八ツ場ダムはあと五年で完成する予定でありますが、この堤防をすべて整備するとしたらどれぐらいかかるのか、また、その間、安全の担保というのはどのように行っていくのか、お伺いしたいと思います。

嶋津参考人 まず、八ツ場ダムの効果がどれぐらいあるかを認識していただきたいですね。八ツ場ダムをつくればもう利根川の治水対策は万全だ、そのような話が今出ているわけですけれども、そうではないわけですよ。八ツ場ダムができても、その効果は極めて限られる、小さなものだということです。それによって利根川の洪水を防ぐことはできません。その認識がまず必要です。

 先ほど、八ツ場ダムがあと五年ぐらいでできるとおっしゃいましたけれども、実際には、あれは工事が大幅におくれておりまして、予定年度は二〇一五年度末でありますけれども、仮にダムをつくるという前提でこの事業を進めても、実際の完成はもっと延びることは間違いありません。

 だから、先ほど申し上げたように、それによって洪水時に利根川の安全が守れるか、そうではないんですよ。その効果は極めて限られたものだ。堤防強化は、これは十分に流域住民の安全を守ることができるものですから、どちらを選択するか。本当に安全を守ることができる治水対策に今転換しなきゃならぬということであります。

徳田委員 八ツ場ダムができることによってリスクをすべて回避できるとは私たちも思っていません。しかしながら、カスリーン台風と同様の被害に遭った場合、被害想定額は三十四兆にも達するという試算も出ているわけですから、この被害をどのように防ぐか、それに努力をしていかなければならないんだということを思います。

 そして、今お伺いしたのは、八ツ場ダムの事業がおくれているというのではないんです。嶋津参考人が主張されたようにすべての堤防を強化するにはどれぐらいの期間がかかって、その間の安全の担保はどのようにしていくのかということをお伺いしているわけです。もう一度お答えをいただきたいと思います。

嶋津参考人 堤防の整備は、恐らく二、三十年かかるでしょう。あるいは十年か二十年か、ちょっとそれは計算してみないとわかりません、工事の進め方によりますから。ですけれども、それによって利根川の安全を十分に保つことができる。一方で、八ツ場ダムにお金をつぎ込んでこれからやっても、その効果は極めて限られるし、それによっては利根川の治水の安全を確保することができないんですよ。実際にこの利根川流域に住んでいる人たちの安全をどうやったら守ることができるか、それを真剣に考えるべきだと思いますよ。

徳田委員 私はいまいち理解できないんですね。利根川水域の安全を確保するためにこの八ツ場ダムの計画が立てられて、そして一都五県が協力しながら、皆さんはこの計画を推進してきたのではありませんか。

 安全を担保するには、もちろん先生が言われるような堤防の強化、貯水池、そうした整備も必要だと思いますが、それと同じように、ダムをつくることによってそのリスクを低下させることにはつながるのではないでしょうか。

嶋津参考人 先ほど申し上げたように、八ツ場ダムの効果は、八斗島地点で最大で見て十三センチ。それは、最近で最大の、五十年間で最大の洪水でそんなものです。さっき、五十年に一回とか十年に一回とか、そうではなくて、私が申し上げたのは、最近五十年間で最大の洪水。実際に五十年間に一回の洪水というのはどれくらいになるか、これは統計計算で求められますけれども、カスリーン台風以降のデータを使いますと、大体一万トン強です。ですから、この平成十年九月洪水にプラスアルファしたものが五十年に一回の洪水になると思いますけれども、それが来ても利根川の堤防というのはもう既に十分余裕がある。

 八ツ場ダムの効果は、先ほど申し上げたように十数センチ、大きく見てですよ。それがもっと下流に行くと、どんどんその効果は小さくなっていく。そんな効果しかないものに何で巨額の金をつぎ込む必要があるか。もっとほかにこの利根川の治水の安全度を向上させる方法があるではないか、それが堤防の強化です。それにこそまず力を注ぐべきだということを何度も申し上げているわけであります。

徳田委員 今、八ツ場ダムによる効果はどれほどのものであるかということでありました。

 先ほどの先生のお話では、利根川治水基準点である八斗島で水位を十三センチしか下げる効果がないと。私もそれを知ったときは治水効果が小さいのかということを思ったんですが、この利根川は延長距離が三百二十二キロもあります。やはりこの三百二十二キロという日本で二番目に長い利根川のことを考えると、十三センチの水位の上昇というのは大変なエネルギーを生み、そして堤防に与える影響も多大なものではないかということを思います。

 これは虫明参考人にお伺いさせていただきたいと思いますが、この十三センチについて、これはどのように評価をされますか。

虫明参考人 先ほどから申し上げておりましたように、平成十年に十三センチというのは実績で、あの洪水に対してはそれだけというのは、恐らくそれに近い値であると思いますけれども、やはり利根川の計画というのは、その十年を対象にしているわけではございません。カスリーン台風規模の雨が降ったときの流量を対象にしている。

 そのときに、これは河川局が怠慢だと思っているんですが、平均で六百トンのカットと言っていますけれども、実は、吾妻川へ集中的な雨が降った場合には一万五千トンぐらいのカットができて、それだと三十センチとか四十センチということですから、それは雨の降り方によって違いますけれども、水位低下効果はある。

 これは本当に皆さんには非常に理解してもらいにくいんですが、五センチでも十センチでも水位を下げるというのは、洪水時には大変なことなんです。水防関係者とか河川管理者は水位が少しでも下がったら本当に安心するようなところがあって、水位が上がることによって堤防に障害が起きる、破堤が起きる可能性が非常に高くなるという意味で、水位を下げることは非常に重要なことです。

 質問以上に答えているかもわかりませんが、堤防を強化したりかさ上げしたりということと同時に、いろいろな附帯施設を改修しなきゃいかぬというようなことにも実はお金は非常にかかるわけで、堤防の強化というのは、単なる堤体の強化だけではおさまらない、橋梁とか樋門とか、いろいろなものに対することも考慮しなきゃいかぬということをちょっとつけ加えさせていただきます。

徳田委員 私も、五センチでも十センチでも、少しでも洪水水位を下げるということをやはり基本に置かなければならないんだということを思います。

 そして、やはり近年、平成十年、平成十三年、平成十四年、十九年と、これは虫明先生の資料でありますが、一万トン級の洪水が起きているということもあります。これについて、この被害をどのようにまた避けていくのか、そのために取り組んでいるわけですが、今の虫明先生の御意見に対して嶋津参考人はどのような意見をお持ちでしょうか。

嶋津参考人 五センチでも十センチでも水位を下げることが利根川の安全に必要だとおっしゃいますけれども、実際に今の利根川の堤防というのは十分に整備されております。

 それで、先ほど申し上げたように、最近五十年間の最大の洪水で、そのときの最高水位は、堤防の一番てっぺんから四メーター下を流れておりました。ほかの区間も同様でありまして、四メーターから五メーターの余裕があります。十分に余裕があるわけです。その状況で仮に五センチ下げたとして、それが何の意味があるかということです。

 今問題になるのは、水位は十分に低いんです、問題は堤防です。漏水が発生すると、それは水位が低くても堤防の決壊につながるかもしれない。それに対する対策を早く講じなきゃならない。それを今やらなきゃならないということを申し上げているわけです。

 そんな、八ツ場ダムのわずかな水位低下効果を期待すること自体が全く治水対策として意味がないということです。

徳田委員 堤防が決壊するリスクを避けるために取り組みを行わなければならないということでありますが、それをするのに二、三十年かかるというんです。二、三十年かかるというのでは、それは余りにも危険な状態を放置するということにはなりませんか。それを全部強化するというのに二、三十年かかると。しかし、現に今のでも決壊が起こっているわけですよ。それを少し考えていただきたいということを思います。

 せっかくきょうは豊田参考人もおいでいただいておりますので、最後に質問をさせていただきたいと思います。

 十一月の十二日に民主党県連の国会議員七人が前原誠司国土交通大臣に出した意見書について、地元の意向と異なる内容という抗議の声明を出されておりますが、この件について、どういう内容なのか、お伺いしたいと思います。

豊田参考人 御質問ありがとうございます。

 その内容は、民主党さんの方は、旅館、温泉街を現在地の、今の場所で再建することを希望するという内容でございまして、私ども旅館組合といたしましては、民主党さんが政権をとる前から、また、八ツ場ダムの中止問題が起きる前から一致して、代替地に移り住んで、旅館、温泉街の再興を図りたいというふうに訴えておりましたので、その辺が食い違ったため、文書を出させていただきました。

徳田委員 それでは、衆議院の選挙前から、マニフェストに載る前から、まず、民主党の議員の先生方は、川原湯温泉旅館組合の方と接触を図って意見聴取というのは行ってまいりましたか。

豊田参考人 私のお会いした方というのは、平成二十年の十一月二十六日に内容証明郵便で民主党の小沢先生に、ダムをとめては困るという手紙を出させていただきました。その数日後、十二月の上旬だったと思いますが、当時ネクスト国土交通大臣という肩書でいらっしゃいました長浜博行先生が私のところにいらっしゃいました。そのときに、私は、旅館組合のメンバーを集めまして、ダムをとめては困るんだ、ここまで工事が進んで、本当にみんな先行きが見えなくなってしまうというお話を切実に訴えたわけです。

 その後、何の音さたもなくと言っては失礼なんですが、一切、民主党の先生方とお会いしたことはございません。

徳田委員 それでは、最後に。

 長浜議員が来られてそういう意見交換をしましたと。しかしながら、この県選出の七人の国会議員すべての方とお会いしているわけではないということですね。

 それともう一つ。お伝えしたこととは全く違う内容、虚偽の内容の要望書を民主党は国土交通大臣に出されたということで間違いないでしょうか。

豊田参考人 まず、民主党さんの群馬県選出の国会議員の方にはだれ一人お会いをしておりません。

 それと、我々の立場といたしましては、ダム推進、ダム湖ありきの観光戦略を、再三申し上げておりますが、二十年以上考えておりますので、一致団結して上に上がって再生するという立場でございましたので、そのときは、民主党さんの群馬県連さんが独自にお出しをされた案だというふうな認識をしております。

徳田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

川内委員長 徳田毅君の質疑を終了いたします。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。五人の参考人の皆様、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。

 私ども日本共産党は、この八ツ場ダムにつきましては一貫して、無駄と環境破壊の計画ということで、住民団体の方とも協働し、国会でも地方議会でも中止を求めて取り組んでまいりました。ですから、鳩山政権のもとで八ツ場ダムの中止が表明されたのは当然の方向だと考えております。

 しかしながら、その表明というのが、中止の根拠や今後の対策について十分な具体的説明抜きに行われているために、住民の皆さんや下流都県の理解が得られない、反発を招く結果にもつながっていると思っております。

 ですから、私どもは、このような対応に対して、政府として住民の皆さんに真摯な姿勢で謝罪をすることと、住民の不安や要望に謙虚に耳を傾けると同時に、ダム中止の理由を丁寧に説明すること、また、生活再建、地域振興策を住民とともにつくり上げる、こういう住民の理解と合意を得る民主的なプロセスが必要だと国交省に申し入れ、対応してまいりました。

 そこで、最初に豊田参考人にお尋ねいたします。

 前原大臣が中止を表明された、その際の中止の理由について、できるだけダムに頼らない治水対策を行うんだ、こういうような形で、八ツ場ダムの中止の理由について、中止を表明する以上、利水面あるいは治水面、そういった八ツ場ダムのこれまで政府が述べてきた必要性についてその説明を転換することが必要であります。つまり、八ツ場ダム固有の中止の理由ということをしっかり述べてこそ、住民の皆さんのいわば話し合いの出発点にもなっていくものだと考えておりますが、この間の国土交通省、国の八ツ場ダム固有の中止理由の説明について、どのようなものだったのか、お感じのところをお聞かせいただけませんか。

豊田参考人 中止の理由として聞いておりますのは、まず、少子高齢化であるということと、人口が減少しているということ、それともう一つは、やはり国の借金が多いので節約をせねばならぬというこの三つの理由によって、八ツ場を中止にしなければならないというふうなことを言われておりました。

塩川委員 そういう点では、先ほど豊田参考人もおっしゃっておられましたように、下流の皆さんの治水上、利水上の必要性があるという話を聞くたびに、八ツ場ダムが必要だということをみずから納得させてきたということでお話がございました。

 私どもは中止の立場ではありますけれども、だからこそしっかりとした中止の理由について説明すべきだ、いわば先ほどのお話にあったような一般論ではなくて、一般論では絶対納得ができないというのは当然のことでありますので、私ども、その点でも理由について明確にする必要があると考えております。

 そこで、八ツ場ダムの中止の理由に関連して、治水対策について松浦参考人にお尋ねをいたします。

 先ほどのお話でもございましたが、治水対策についてのモデルの変更があったという話がございました。昭和五十五年、一九八〇年に、これまでの既往最大洪水主義にかえて超過確率洪水主義を採用したという話でございました。これが高度成長時代の考え方だという指摘をされておられますけれども、私は、基本高水ピーク流量が毎秒一万七千立米から二万二千立米へと増大したことが、この変更というのが過大なダム建設を容認するものとなってはいないのか、こういうことを思うところですが、松浦参考人のお考えをお聞かせください。

松浦参考人 先ほども私が申しましたのですけれども、高度経済成長時代に治水の手法の大きな転換がございました。それで、かなり実績の洪水よりも大きな洪水を対象にしていったという経緯がございます。

 そうしますと、やはりその中で、河道で負担ができる量というのを決めていく、では残りは一体どうするかといったら、それは、具体的なダムも挙げずに、上流ダム群で洪水調節をやっていくんだ、そういう方向になってきます。それが結果的にはダムをどんどんどんどんつくっていくということになっていったということは否定できないというぐあいに思います。

 以上です。

塩川委員 この点について虫明参考人にお尋ねいたします。

 八ツ場ダムは治水上必要ということでございますが、基本高水ピーク流量が毎秒一万七千が二万二千になったということが、結果として、過大な流量の設定ということでダムをつくり続けるものになったのではないのか、こういう御意見がございますが、その点についてのお考えをお聞かせください。

虫明参考人 質問にしか答えられないんですね。

川内委員長 説明の範囲であれば。

虫明参考人 わかりました。

 先ほどの二百年確率に移行したという話ですが、少し補足したいと思います。

 一つは、治水は、戦後、御存じのように大変な水害があって、そのときは治水族という政治家がおられたわけです。地元誘導型の陳情が多過ぎる、客観的な基準のもとに治水を進めていこうという趣旨があって、実は確率が導入されました。それは、実績主義をそのときに少し脱したというのはあるんですけれども、そういう背景があったのは事実でございます。

 ただいまの御質問ですが、五十五年改定、私自身も、あれは過大な流量、大きい流量になっていると思うんです。ただ、その解釈の仕方なんですが、私は、それは当時の時代背景として、首都圏の人口、資産の集中があり、水需要の伸びがある、それにこたえようという意図があったのは事実であると思います。

 それが今、世の中は変わってきています。人口、資産の集中度は同じなんですけれども、少なくとも、水需要の伸びは低下しています。だから、多目的ダムとしての計画は、現に縮小されているし、見直しが当然必要だ。ただ、八ツ場ダムの治水効果としては、六千トンなんて調節すると言っているけれども今それはもう三分の一以下、その計画に入っているわけですから、いまだに八ツ場ダムの治水効果は期待されているというふうに思っております。

塩川委員 過大ではあるけれども、当然、安全度を考えたら八ツ場ダムは有効なのではないかというお話……(虫明参考人「現在でも」と呼ぶ)現在でも有効だというお話です。

 嶋津参考人に伺いますが、この間、基本高水の流量につきまして、一万七千が二万二千になると過大なのではないのかという指摘に対し、国土交通省側の説明として、もちろん首都圏の人口や資産の集中、水需要の話もあるでしょうけれども、あわせて、そもそも変えたのは、五千もふやしたのは、上流で河川整備が行われますよということを理由として挙げておられたわけですけれども、これは本当に妥当なのかどうか。

 その点について、実際、群馬県の上流部を見ても、この間、堤防の改修などが行われているという話は伺えない。そういう点で、結果として、この変更というのが過大なダムづくりの理由になっているんじゃないのか、そのように考えますが、嶋津参考人のお考えをお聞かせください。

嶋津参考人 昭和五十五年の改定によって、利根川の基本高水流量が一万七千トンから二万二千トンになったわけです。もともとカスリーン台風の再来ということで計算をしているわけですけれども、昭和二十二年の実績というのは公称値が一万七千トン毎秒、実際は、ちょっとこれは計算間違い、本当は一万五千なんです。

 それはともかくとしましても、この五十五年の改定で五千トンもふえてしまった。その理由は、今おっしゃったように、当時は上流ではんらんしていたからだ、今は群馬県の上流部の方では堤防は整備されて、はんらんしなくなってきているということで、これが二万二千になるという話なんですが、実際には上流部の堤防というのはそんなに変わっていないんですよ。あくまでこれは、机上のもので計算したら二万以上になった、それを使っているだけでありまして、実態に合わないものなんです。

 もう一つ気をつけなきゃいけないのは、二万二千という数字を踏襲する限り、八ツ場ダムだけでなくて、これから利根川水系ではたくさんのダムをつくらなきゃいけません。今のところ、河道で対応できるのは基本方針では一万六千五百、残り五千五百をダムということですが、そのうち既設のダムが千トン、八ツ場ダムで六百、残り三千九百あるのは手つかずなんです。この分をつくらなきゃいけないとなると、この二万二千トンという数字、大き過ぎる数字を踏襲する限り、これから十数基のダムをつくらないと利根川の治水計画は完結しないんですよ。この数字は明らかに過大であるということです。

 実際に、例えば多摩川なんかの場合ですと、やはり二百年に一回で八千七百トン、石原地点でそういう基本高水を設定しておりますけれども、実際に実施する河川整備計画はぐっと落として四千五百、これは「岸辺のアルバム」のドラマで知られる昭和四十九年洪水の実績に合わせているんですよ。利根川の場合もそういう、机上で求めた数字のままじゃなくて、実際にあった洪水、最近のですね、その数字を使って現実的な治水計画をつくるべきだということです。

 ただ、それを超えた場合どうするかということについては、これは先ほど申し上げた耐越水対策堤防を整備することによってより大きな洪水には対応する、こういう治水対策が現実的な意味のあるものだと私は考えております。

塩川委員 松浦参考人に改めてお尋ねします。

 今お聞きした点について、虫明参考人、嶋津参考人からお考えをいただきました。そのお考えについて思うところがございましたら、一言、松浦参考人からお願いいたします。

松浦参考人 私は、利根川の水害史といいますか、治水史というのを勉強してまいっております。それによりますと、では、その中で大きな洪水、大出水というのは一体どんなものがあるかということを調べてきました。その中で、いわゆる近世以来、徳川家康が入って以来、三大洪水というのがあります。寛保二年、天明六年、それから明治四十三年ですね。

 ですから、先ほども言ったんですけれども、百年前に起こった明治四十三年洪水というのは、非常に関東平野にとって大水害になった、そういう洪水です。その場合、降雨の継続時間が非常に長いんです。降雨の継続時間が非常に長いというのは、非常に長い洪水が、例えば一万トンぐらいの洪水が一週間も十日も続く。そういう洪水が来たとき、果たして現在の堤防は本当に大丈夫かな、そういうぐあいに考えております。やはり堤防強化というのは非常に必要じゃないか。

 そして、その場合に、明治四十三年は八ツ場ダム上流でも大豪雨がありました。ただ、あそこで水をためても、多分、下流にはそんなにかからないんじゃないか、そういうぐあいに考えております。

 それから、昭和二十二年の洪水ですね。やはりこれも、利根川水系でも一つの特異な洪水だったと思います。そして、それも非常に規模の大きかった洪水だったというぐあいに考えております。

 そういうぐあいに考えていきますと、明治四十三年洪水、それから昭和二十二年洪水に対応していったらかなりの安全度を持つんじゃないか、そういうぐあいに私自身は考えております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、地すべり問題について、奥西参考人にお尋ねをいたします。

 先ほど、八ツ場ダム、長野原町におきましての地すべり問題についての御指摘をいただきました。ダムの建設に当たりまして、やはり地すべりが問題となったのは各地にあるというふうに承知をしております。

 奥西参考人の方で、例えば、奈良の大滝ダムなどについても御見識をお持ちだと思います。過去、地すべり問題について、被害も生んだようなそういう事例について、ダム事業にかかわってございましたら、お話しいただけないでしょうか。

奥西参考人 ダム湛水域における地すべりの災害として過去にある一番大きいと言われているのは、イタリアのバイオントダムの災害でありまして、地すべりによって生じた津波が洪水を下流に起こして、二千人ほどの人が亡くなっているということがあります。したがって、地すべりの問題は、下手するとダムの存在意義さえも失いかねないような災害を引き起こす、そういう観点で非常に慎重に考慮されてくるのが普通でした。

 この八ツ場ダムについての経過を見ますと、どうも途中からダム建設というのが先に立ってしまって、それに合わせて、ダム建設ができる範囲で地すべりの問題を考慮しよう、そういう傾向になってきているのではないかという気がいたします。

 先ほど申しましたように、地すべりが起こりますと、湛水域に住んでいる長野原町の人たちも大きな被害を受けることになって、それはそれとして、非常に大問題であると思います。

塩川委員 現に、奈良の大滝ダムなどで、住民の皆さんが避難せざるを得なくなるという被害になったわけですが、これについては国土交通省が、事前にはわからなかった、だからその被害については責任がないんだという態度をとられているということも先ほどのお話でございました。

 これは余りにも無責任な姿勢ではないかと感じますが、そういったことについて、この八ツ場ダムの問題も想定しながら、問題点、お考えのところがありましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

奥西参考人 御指摘の点はまさにそのとおりだと思います。

 大滝ダムの場合は、たまたま有識者の委員会で、ダム湛水が原因となって地すべりが起こったというぐあいに判断されておりますが、地元からダム湛水が原因ではないかと訴えられている地すべりについて、ダム事業者が知らぬ顔をしているという事例は非常にたくさん報道されております。

 責任問題に関しては、多分に、ダム計画に当たった公務員の責任問題ということで、責任逃れのためにそういう主張がなされておって、そもそもダム計画というのはこういうものだという主張がされているわけではないと思うんですけれども、結果として非常に無責任なダム計画がまかり通っているということは、事実として認めなければいけないだろうというぐあいには思います。

塩川委員 豊田参考人にお尋ねいたします。

 今、ほかの参考人の方から、ダム中止の理由にかかわって、妥当か妥当でないか、それぞれの御意見も伺いました。今、実際にお感じになっておられるところで、利水上、治水上でどうしても必要だ、あるいは、地すべり被害の問題についてなどは地元の皆さんはどのように受けとめておられるのか、その点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

豊田参考人 私は、治水の専門家でも水行政の専門家でもありませんので、詳しいことというのははっきりわかりませんが、ただ、地元が水没して移転をするということは、やはり安全面ということは、移転代替の中にはもう織り込み済みで入っているというふうに思っております。

 ですから、安全でないよと言われてしまえば、これはもう全く我々としては、言葉は悪いんですが、詐欺に遭ったような、やはり我々は、先ほどごあいさつしたとおり、国を信じてやってきておりますので、今さっきお聞きしたことは、安全面はきちっとしていただけるものというふうに思っております。

塩川委員 最後に、嶋津参考人にお尋ねいたします。

 今、ダム中止に当たって、実際、中止を踏まえた住民の皆さんへの補償を行う法案ということを国交省、前原大臣が表明しておられます。これは、かつて野党時代の民主党がそのような法案を準備されておられたわけですけれども、この前、現状を質問でお聞きしましたら、個人への補償というところまで踏み込むという答弁はございませんでした。また、あくまでもダムに限定するということで、公共工事一般ということになっておりません。そういう点では、かつての野党時代の民主党の案と比較をしても、非常に小ぶりといいますか、限定されたものになっているんじゃないのかなと思うんです。

 全国のいろいろなダム問題に取り組んでこられた立場から見て、こういう現行で国交省が考えているダム補償法案の内容についてのお考え、御感想、御意見をお聞かせください。

嶋津参考人 八ツ場ダム予定地を初めダム予定地の人たちは、かつては反対であっても、今はダム計画を前提として将来の生活設計をされているわけですね。ですから、中止に当たっては、同じように、ダム中止後も生活再建ができるようにその補償をする必要があります。

 今おっしゃった個人補償も当然のことでありまして、今までそういう例がないというのはあるかもしれませんけれども、これは必須のことであります。ダムなしで地元の方々が生活再建の道を歩むことができるよう、また地域再生ができるように、それを裏づける制度はぜひとも必要です。

 ですから、今回、この国会でもその辺の必要性を強く主張していただきまして、来年度、もっと早くつくるべきだと思いますけれども、ダム中止後の生活再建支援法案というものが来年度、国会で出るということですけれども、その内容は、きちんと本当に生活再建ができるもの、地域再生ができるもの、個人補償も含めて、そういう内容のものをぜひ整備していただくようお願いしたいと思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

川内委員長 塩川鉄也君の質疑を終了いたしました。

 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、五人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまでございます。いろいろお話をお伺いさせていただいてまいりましたが、私は、まず、松浦参考人、そして嶋津参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 私の地元は東京の江東区なんでございますが、ゼロメートル地帯です。その隣で今、江戸川区のスーパー堤防という事業が行われています。何度かこのスーパー堤防事業について、この通常国会の質疑で私も取り上げさせていただいてまいりましたが、まさにカスリーン台風の、二百年に一度の洪水に備えて、スーパー堤防を江戸川の北小岩などの地区で計画している。

 これが現実的な計画なのかどうかということを、私は前原国土交通大臣等にお尋ねをさせていただいてまいりました。そのときの前原大臣の御答弁なんですけれども、利根川水系全体では、一九四七年のカスリーン台風が、計画高水として計算されているわけであります。私どもは、河川行政を預からせていただく立場として、やはりカスリーン台風のときの雨の降り方というのは尋常じゃない降り方でございます。例えば、過去六十年ぐらい、カスリーン台風を含めて、年間の降雨量というもの、それから集中的に三日間で降った水とを見ますと、あの台風はやはりとてつもない降水量でございまして、東京の下町に浅間山のふもとの死体が流れ着いて、それが無縁仏として祭られているところもあるやに聞いております。首都圏というものが洪水被害に遭った場合には、相当大きな影響が日本全体で起きる。経済、政治機能が集中をしているところでございますので、そういう意味から、かなり注視しながら河川整備はしていかなければならないと思っております。こういうお話でありました。

 これですと、先ほどいろいろと嶋津先生が、例えば、カスリーン台風と同規模の洪水によるはんらん拡大は机上の計算であるとか、あるいは、過大な基本高水流量が不要なダム計画を生み出しているとか、こういったことを御指摘いただいたわけですけれども、今まさに、八ツ場ダムをやはり中止すべきだという考えをお示しになられた前原国土交通大臣は、しかし、嶋津さんとは違う前提に立たれているかのようにも感じられるんです。

 要は、カスリーン台風の被害を前提にして、そこで大変な洪水被害が起きる可能性があるんだということで、河川整備も含めた計画を進めていかなければいけないということであるというふうに、今の御答弁を踏まえると認識できるように思うんですけれども、ここの部分の違いというのはどこから生じてくるのかなというふうに思いまして、お尋ねをしたいと思います。

嶋津参考人 前原大臣がどのようにお話ししたのか、私、その部分がわからないので、ちょっとどの程度違うのかわかりませんけれども、前原大臣がおっしゃっているのは私とそんなに差がないと。

 まず、この基本高水流量二万二千トン、これを前提とする限り、ダムを幾つもつくり続けなければならない、それは本当に現実的なことなのかということの疑問を呈されておられますね。それとあと、利根川の治水計画がどうあるべきかというのは、これから、今、有識者会議がつくられまして、ダムによらない治水のあり方が検討されております。その中で出てきた結果に基づいて、八ツ場ダムについても検証はされていくということでございまして、前原大臣との違いはそんなにないと私は思っております。

 有識者会議がこれからどういう結論を出すかわかりませんけれども、私も参考人として意見を述べた機会があったんです。そのときに、有識者会議の委員の大多数の方から同意をいただいたという感触を私は得ているんですけれども、その基本的な考え方というのは、基本高水流量、そういう大きなものはもうおいておいて、実際にあった洪水を目標流量として河川計画を進めていく。となると、八ツ場ダムは要らなくなるわけですね。

 ただ、実際にはどんな洪水が来るかもしれないわけですね。その対策として、耐越水対策堤防、仮に堤防を越流するような洪水が来ても、堤防が直ちに決壊しない、そういう堤防を整備すれば壊滅的な被害を受けることはありません。

 ということで、目標流量は現実的な洪水量に設定して、もっと大きな洪水が仮に来た場合は耐越水堤防対策で致命的な被害を避けるという、その二段構えということをこの前有識者会議でお話ししたんですけれども、その意見は多くの委員の方に同意をいただいております。恐らく、私の期待ですけれども、今度の有識者会議では、そういう方向でダムによらない治水のあり方がまとまっていくんじゃないかという期待を持っております。

柿澤委員 先ほど申し上げたように、私に対する答弁では、利根川水系全体では、一九四七年のカスリーン台風が、計画高水として計算されているわけであります、これは尋常じゃない降り方だった、これに対して備えをしなければ、都市機能が甚大な被害をこうむって、そして日本全体に影響を及ぼす、こういう立論をされておりましたので、あたかも、まさに過大で、一万七千、二万二千、ここの数値の細かな確認はしていませんけれども、しかし、いずれにしても、その想定を前提にした河川整備も含めた治水対策ということを進めるという意向であるかのように感じましたので、その部分、どうも食い違っているんじゃないかというふうに思えましたので、お尋ねをさせていただいたわけです。

 これは、松浦先生も基本的に、洪水被害の流量の前提ということについてはいささかの疑義をお持ちではないかというふうに思いますけれども、その点、今のお話をお聞きになられて、お考えになられるところがあればお尋ねをしたいと思います。

松浦参考人 やはり、キャサリン台風の洪水、実際に生じた洪水、それに対してはしっかりと防備をすることは必要であるというぐあいに考えております。つまり、一万七千トンです。

 実は、一万七千トンを決める場合に、やはりいろいろな議論がございました。最初は、一万五千トンじゃないかとか一万六千トンじゃないかとか、実際にそんな数字も出ておりました。しかし、そういう議論の中で、やはり一万七千トン。一万七千トンでしっかりとした治水事業をやっていこうじゃないかというのが決まったのが昭和二十四年でございます。ですから、まずそれは一万七千トンのものをしっかりと整備するのは絶対必要だというように考えております。

 それから、先ほど来私が言っておりますのは、もう一つ、明治四十三年という、本当に洪水の継続時間が非常に長い、そういう洪水が昔生じております。やはり、それもきちっと念頭に置いた整備、多分これは堤防強化が中心だと思いますけれども、それに対する事業もすべきじゃないか。

 この実際に起こった二つの洪水を対象にしてきっちりと整備していったら、かなり安全度は上がるだろう、そういうように考えています。

柿澤委員 今、まさに堤防の強化というお話をいただきました。

 冒頭申し上げましたとおり、堤防の強化という名目で進められております全国六河川のスーパー堤防の計画について、私は、事業規模もまた事業の計画のあり方も、非常に過大で非現実的なものになってしまっているのではないかということを、この通常国会の予算委員会で繰り返し指摘させていただいてまいりました。

 このスーパー堤防は、今申し上げた全国の六河川、利根川、江戸川、荒川、多摩川、そして関西の大和川と淀川、この六河川で今進められているものですけれども、要整備延長が八百七十二・六四キロメートル、そのうち、現在進捗をしているのが四十七・六五キロメートルで、昭和六十二年から平成二十一年までの二十三年間でわずか五・五%しか進捗をしていない。

 この五・五%にかけられた費用というのは六千七百九十億円に上っているわけで、これは単純計算すると、このペースで工事をすると、完成まで四百年かかって、総事業費は十二兆円になる、こういうことが言われてしまっているようなものであります。まちづくり事業なんかとセットで進められているものが多いんですけれども、このスーパー堤防、二百年に一度の洪水に備えるというものが、完成まで四百年かかる。

 そして、堤防は全部つながらなければ用はなさないわけでありますので、この事業規模ということが本当に、ある意味で、ダムによらない治水という場合、河川整備と堤防の強化が必要だということでありますので、それに代替してこれをやるということで、費用に対する効果、そして財政的なことを考えると、事業としての現実性ということで、本当にこんなことでいいのだろうかということも感じているわけでございます。

 埼玉県の上田清司知事がやはりこの点について、八ツ場ダムについて記者会見で、中止をすると言われるのであれば、じゃ、河川改修にどのぐらいの時間と費用をかけて安全を守るのかということでおっしゃられております。例えば、埼玉県でスーパー堤防を七キロつくるのに一千三百億円かかっている、羽生から栗橋までの強化堤防四十キロで二千億円計上されている、そういうことを考えれば、完成時期なんか全然明示をされていないこの堤防計画を代替案として、八ツ場ダムは中止をするんだということでは、県民の安心、安全は守れないよ、こういうことをおっしゃられている。

 費用を比べても、先ほど申し上げたように、全国六つの河川でやるだけで、四百年、十二兆円ということに机上の計算としてはなるわけですので、これは、二千百十億円が四千六百億円に事業費が上がってしまったという八ツ場ダムの事業費想定と比べても、もう比べ物にならないものなわけであります。

 今、国土交通省が進めようとしているこうした河川改修、こういうことでやっていくんだということでは、やはり八ツ場ダムの代替として、現実性もないし、また費用の面でも大変問題があるのではないかというふうに思いますが、嶋津先生、この点はどのようにお考えになられておりますでしょうか。

嶋津参考人 堤防の強化が喫緊の重要な課題である、急いでやらなきゃならない対策であります。しかし、それが、今おっしゃったように、堤防の強化をするという理由でスーパー堤防に化けたり、あるいは熊谷から栗橋までずっと行われる首都圏氾濫区域堤防強化対策事業ですか、そういう大きな事業に化けてしまうんですね。

 スーパー堤防について申し上げれば、これはいろいろ場所によって金額が変わりますけれども、大体一キロつくるのに五百億円、そのくらいかかるんですね。さっきおっしゃったように、点でしかできないですよ、お金がかかり過ぎるから。堤防というのは、連続して線にしなきゃいけないんですね。点にやったって意味がないんですよ、ほかのところができないわけですからね。そういう、お金がかかり過ぎるがゆえに点でしか整備ができない、そんなものがなぜ洪水対策になるのかということですね。

 それから、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業、これも、首都圏の利根川の右岸側をずっと江戸川も含めてやっていくんですけれども、すそ野をずっと広げたために一千戸以上の移転が必要なんですよ。これはもうお金もかかるし、いつ終わるかわからないわけですね。そんなことにお金を、堤防強化という名目でやるべきじゃないんです。

 堤防の強化といっても、連続地中壁を入れたりあるいはブロックで上を覆ったり、もっと安上がりでできる方法があります。その方法によって堤防の強化を進めていくべきだということで、これからの治水対策は堤防の強化こそかなめだと先ほど申し上げましたけれども、これはなるべく金のかからない堤防強化方法を講じることであって、お金がむちゃくちゃかかるスーパー堤防とか首都圏氾濫区域堤防強化対策事業は、お金もかかるし、一千戸近い移転を伴う、そういう事業ではないということですね。

 だから、堤防強化対策事業の内容をよく吟味する必要があると私は考えております。

柿澤委員 ありがとうございます。

 事業に過大なお金がかかるかのように見える、そして進捗についても、一体何百年かけたら完成するかわからない、こういう事業がある意味で平然と行われていることが、この治水の事業に対するさまざまなネガティブな国民の皆さんのとらえ方を生んでいるように思えてなりません。

 その点、虫明先生、非常に論理的に八ツ場ダムの事業の意義というものをるるおっしゃられているわけですけれども、ここの部分について、やはり税金の投入のされ方、そして事業の進められ方として何かおかしなことがあるんじゃないか、こういう国民の見方があることが、大変この八ツ場ダムの事業計画についても逆風をもたらしているというふうに思うんですが、虫明先生の立場で、この点についてどのように払拭をしていくのか、また、この点についてのお考えをお尋ねさせていただきたいと思います。

虫明参考人 まず、スーパー堤防についてですけれども、切れない堤防という、究極のものとして提案されたわけです。それから、なおかつ、これは都市計画と合体してやるという意味ですから、そういう意味では土地利用とも合体して強化するという、思想は、考え方はいいんですが、これを全河川でやるというのは、恐らく非常に難しいというか、できない。

 ただ、やり方は、例えば江戸川区なんかは、私、ちゃんと調べてはおりませんけれども、カスリーン台風のときも、内水というか、はんらん水が来た。あそこには高い避難地がない。実はスーパー堤防も、利根川でも、北川辺の方には、スーパー堤防というのは拠点をつくっています。というのは、右岸側を守っている。堤防が一メートル高いんですよ、右岸側が、東京側は。こちらはあふれないけれども、こちらはあふれる可能性が高いというので、実はスーパー堤防でもって避難地をつくっているんです。高台をつくって、そこへ皆避難できるという。

 そういう考え方で、全体には恐らく四百年かかるし、できないでしょうけれども、重点的に、避難地も含めて、危険箇所を切れないようにするということをやっているという意味では、これは全国計画を立てて何キロなんということを出すから恐らく不信感を持たれるので、一つの、堤防強化と土地利用とも一体化した堤防整備ということでやっていると見れば、これはある種の正当性を持つものだというふうに思っています。

 堤防強化ですが、実はそう簡単ではないというか、河川技術者もそれに自信がない。もちろん河川技術者も、安くて切れない堤防が本当にできれば、当然適用します。壁を入れるとか異物を入れると、土ですからなじみがなくて崩れてしまうとか、それから地盤が悪いところへ地震が来たら変形するとか、そういうことも考慮しながらやろうとすると、現状では切れない堤防ということを、技術的には恐らく自信がないから。私、堤防の専門家ではありませんけれども、そう思っています。

 堤防の強化は当然やるべき。やるべきですが、先ほどから再三申しておりますのは、堤防だけでは治水が、利根川のような有堤区間が長くて堤防だけではそれを守り切れないというところでは、上流でためて調整するというのも特に重要であるということを、実は余り言ってこなかった。それから、堤防が危ないと皆さん思っておられないんですね。堤防ができたら、もうすぐそばまで家が建つということがしょっちゅう起こっているわけです。そういう意味では、ちゃんとした情報を、河川局の人も、私、研究者も含めてかわかりませんが、ちゃんと皆さんに知らせていなかったということ。

 だから、実態を知らせながらちゃんとした議論をしていただければ、いろいろなことが信頼を得られるのではないか。そういう議論の場ができたという意味でも、ダムに頼らない治水という議論がちゃんと論理的にできるようになったことは、私はいいことだと思っています。ただ、やはりその辺はちゃんと、ダムというのは批判ばかり出て、その有効性についての話は余り出ていないので、そういうことができるような機会になればというふうには思っております。

柿澤委員 ありがとうございます。

 最後に、豊田参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 私も、去年十一月でしたか、八ツ場ダムの現地に伺わせていただいて、拝見をさせていただきました。川原湯温泉の移転先の代替地も拝見をしたんですけれども、まず真っ先に皆さんの御一族のお墓を移転して、ある意味ではそこをついの住みかにして、これから頑張っていくんだ、こういう決意があらわれていたように思います。

 場合によっては、本体工事が中止をされて、しかし生活再建ということで上に上がって生活をするということになると、人間というのは水辺の近くで生活するのが当たり前ですから、水辺から遠く離れた山の中腹で集落をつくって、しかも、ある種の観光地としてそこで御自身の事業を成功に導いていかなければいけない、これは大変なことだというふうに思います。

 また、いろいろ聞かせていただいたところ、例えば群馬県の方々なんかは、政権交代の直後、中止をしますということになって、それには反対だという声を上げたところ、民意に逆らうのかとか、いろいろな電話やメールが山のように来たというようなこともあったと聞いております。

 ここまでいろいろ御苦労があったと思いますけれども、本当にこうした形で本体工事が公約どおり中止をされた場合、やはり皆さんの生活というのは何だかんだいってなかなか立ち行かない、そういう状況になってしまうのではないかと思います。最後にその部分の思いを聞かせていただいて終わりとしたいと思いますが、いかがでしょうか。

豊田参考人 ダムができないというふうには私どもは考えておりませんで、やはり今までどおりの生活再建が、ぶれなく、滞りなくできるように考えております。

 一番心配しておりますのは、やはり、私も旅館をやっておりますが、旅館をやっている経営者が一番大変でございます。なぜかといいますと、旅館というのは装置産業でございまして、まず最初にお金がかかる、そしてそれを長期にわたって回収していくというたぐいの商売でございまして、将来的な先行きの展望が整わないと、全く設備投資をすることができません。

 したがいまして、できますれば、今までのまま生活再建事業推進というふうにしていただきますれば、私どもといたしましても観光展望というものができまして、すぐには旅館を建てることはできませんが、机上の中で設計士なり建築士、そういうものを頼んで、想定の中で再建をめぐらすことはできると思います。

 ですから、切に今お願い申し上げたいのは、時間が、我々としてはもう待っていられないということを心からお伝え申し上げまして、答えとさせていただきます。

柿澤委員 終わります。ありがとうございました。

川内委員長 柿澤君の質疑を終了いたします。

 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。きょうは、皆様、本当にありがとうございます。

 私ども公明党の立場は、八ツ場ダム問題はあくまでも予断なく検証すべきであるという立場でございまして、これは前原大臣の言葉どおりやっていただきたいと思っているわけでございます。ただ、残念ながらその当の大臣が、予断なくと言いながら、八ツ場ダムだけは予断なく中止するとおっしゃっているので、ここはちょっと矛盾があるんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、私ども公明党としては、初めに賛成ありきとか反対ありきということではなくて、あくまでも公明正大に、客観的、中立的に、万人の納得のいくような解決方法を求めていきたい、このように思っているわけでございます。

 その意味で、予断なき検証には私どもは三つの視点を考えておりまして、第一の視点は、ダムの意義と効果について科学的検証を行うべきであるということでございます。治水、利水、また環境などについて、科学的な検証を加えるべきである。第二の視点は、ダムの費用と便益について経済的検証を行うべきであるというものでございます。これは、短期的損得だけではなくて、長期的に経済合理性があるかどうかということが第二の考え方でございます。第三の視点は、事業の継続あるいは中止についての民主主義的な検証が必要であるというふうに思っているわけでございます。どちらの結論をとるにせよ、地元住民の皆様の合意、また下流域の自治体との合意について、民主主義的手続にのっとっているかどうかということが大事である。

 以上のような三つの視点で物を考えておるわけでございます。

 そこで、きょうは、まず最初に松浦先生にちょっとお聞きしたいのでございますが、この意見書を拝見させていただきまして、ユニークなアイデアだなと思ったんですが、治水効果については疑念がある、しかし、利水については効果があるという判断でございます。そういう意味で、先ほどちょっとお時間が少なかったので、利水の効果があるという理由について、わかりやすく、ちょっと説明していただけませんでしょうか。

松浦参考人 治水と利水の基本的に違うところは、ダムをつくりましても、治水というのは、雨が降らなかったら効果がありません。そういう非常に不確定的な要素があります。ところが、利水というのは、ダムに水をためておりますから、ですから、必要なときにそれから補給することができます。そういう意味で、非常に信頼できる施設です。そういうぐあいに考えております。

 それからもう一つ、これまでそんなに大きな渇水がなかったんじゃないか、そんな議論もあったんですけれども、平成六年に、非常に大きな渇水が関東地方にも襲いました。ところが、埼玉県では、私は当時、現在もそうですけれども、埼玉県に住んでおります。そんなに一般の人たちが渇水だという騒ぎをしなかったんです。

 それはどうしてかといったら、地下水をくみ上げたんですよ。そうしておいたら、では、それが一年後どうだったかといったら、非常に広い地域で地盤沈下が生じておりました。そういうぐあいにして、そのときは地下水を使って何とか飲み水を中心に対応していったんだけれども、それがあった一年後に、そういうような、公害といいますか、非常に広い意味の公害として出現した、そういう状況があります。

 ですから、とにかく、治水と違って利水は、ちゃんとそこに水がある、そして渇水のときにはちゃんとそこから補給できる、そういうものです。

 そういう意味でいったら、さっきも言ったんですけれども、どうやら、利根川の利水計画、最初の計画は昭和十年ぐらいにあります。そのときから五年に一回です。五年に一回の渇水を対象にしてやっております。しかし、それは、今の日本といいますか、今の現状において、やはり低過ぎるんじゃないか、そういうぐあいに考えております。

 としましたら、では、八ツ場をそういうぐあいに利水専用ダムにしていったら、その辺のところ、利水安全度という意味では非常に向上するだろう、間違いなく向上する、そういうぐあいに判断しております。

竹内委員 ありがとうございます。

 やはり、埼玉県を中心にして地盤沈下がかなりあったということは大きな問題だというふうに考えておりまして、地盤沈下が、今度は治水の方ですね、治水に及ぼす影響についてはどのようにお考えでしょうか。松浦先生、もう一回お願いします。

松浦参考人 地盤沈下と治水との関係でいったら、治水に対して、住んでいる低地が低くなるといったら、一回水がたまったら危険になります。それから、栗橋周辺といいますか、利根川に近いところで地盤沈下が生じましたら、堤防自体が相対的に低くなります。

 そういう意味で、築堤による治水ですけれども、それに対して非常に大きなマイナスが生じる、そういうぐあいに考えています。

竹内委員 松浦先生、この意見書の最後の方に、環境用水としていろいろ循環させていけばどうかというお話がございますが、この辺につきましてももう少し詳しく御説明いただけませんでしょうか。

松浦参考人 二十一世紀でございます。やはり、環境問題というのは非常に前面に出てきております。その中で、河川環境といったら、やはり水があるということが絶対に必要である、環境向上にとって非常に重要である、そういうぐあいに考えております。

 としましたら、ダムをつくるというのは、渇水のときに水を補給いたします。そういう意味で、利水安全度を上げる問題です。ですから、それをちゃんとといいますか、上流で水をためておいて、今度は多分、都市用水だけでいったら余裕が出てくるんじゃないか、そういうぐあいに考えております。としましたら、その貯水量を使って、埼玉平野等々の環境用水として消火栓に水を流すというぐあいに考えていったら、非常に環境向上になるだろう、そういうぐあいに考えています。

竹内委員 それで、先生のお考えの利水専用ダムというのは、現在の計画のダムと比べて、規模とかいろいろな金額とか、そういう意味でかなりの違いが出てくるのかどうか、その辺のお考えはいかがでしょうか。

松浦参考人 規模は、現在と全く同じものというぐあいに考えております。ただ、現在、洪水期、洪水調節容量というのがあります、六千五百万トンですか、それを全部利水容量にすべきだというぐあいに考えております。

 としますと、渇水のとき以外はずっとダム湖に水があります、常態として水があるという状況になっております。としますと、まずは、その周辺の環境整備にとって非常にプラスになるだろうというぐあいに考えております。

 そこに洪水調節というのが入りますと、やはりどうしても、夏期になったら、水位を十メーターか十五メーターですか、下げます。としますと、その周辺の景観は非常に悪くなります。それが全く、常にといいますか、基本的に水があるという状況になりますので、それはダム周辺にとっても非常に大きなプラスになるだろう、そういうぐあいに思います。

竹内委員 ありがとうございます。

 それと、松浦先生がもうちょっとおっしゃっているのは、浅間山の噴火ということを想定しなければいけないんじゃないか、浅間山大噴火に対する備えとしても位置づけるべきではないかという御意見がありまして、これはほかの先生方にない視点なんですが、この辺の現実性であるとか効果について、ちょっと教えていただけますか。

松浦参考人 家康が関東に入ってきて以降の利根川の出水を見ますと、天明六年に大出水が生じております。江戸を襲ってきた洪水で最も大きな洪水です。そして、この性格がよくわからないところがある。よくわからないんですね。そういう問題があります。

 どういうことかといったら、天明三年に浅間山が大噴火をやっています。そして、その大噴火によって、その流域に降った灰が一気に流れ込んできて、それで非常に特異な大出水になったのだろう、そういうぐあいに考えております。

 としますと、一七八三年、そういう大噴火があった、あの八ツ場ダムの上流の浅間山であったということでいったら、当然といいますか、それが生じた場合一体どうなるんだろうかということも、やはり計画の最中にきっちりと考えておくべきだろう、しかるべき対策はあるかどうかということを含めてしっかり考えておくべきだ、そういうぐあいに考えています。

竹内委員 ありがとうございます。

 先ほどからの議論では、基本高水流量とか合理性があるかとか、その辺のいろいろありましたけれども、やはり日本の首都圏を守るということは非常に大事だというふうに思います。

 もしも大出水とかで首都が水浸しとか、浅間山の噴火があるかもわかりませんけれども、そういうことで想定外のことが起きたときには、国際的信用にもかかわりますし、もちろん被害が三十四兆円ということもありましたけれども、そういう意味では、細かな数字の議論だけでもいけないんじゃないかな、大局的な物の考え方というのはやはり国家を預かる者としては持っておかなければいけないんじゃないかなという感じを今のところ持っております。

 それで、あともう少し確認をさせていただきたいんです。虫明先生にちょっとお聞きしたいんですが、今後の地球温暖化の影響について、この辺をどう盛り込むべきかということについてお考えはありますでしょうか。

虫明参考人 温暖化に対する適応策の議論も実は二〇〇七年から八年にかけてやって、これは水資源部でもあるいは河川局でも、河川局は答申ですけれども、水資源部については部の、総合水管理に向けてという答申を出しています。

 ぜひそれを見ていただきたいんですが、もちろん不確実性はあるんですけれども、強い雨、洪水を起こすような雨の頻度と強度がふえるということと、それから、一方では雨が降らない日数が長期化するという、一言で言えば荒々しい、非常に大雨も降れば渇水の危険性もあるという傾向が見られるというのを、日本近海での非常に解像度のいいモデルで現在のところ結果が出ています。それぞれ量的にも推定されていまして、日本で強い、例えば百年に一回とか二百年に一回というような豪雨、それも、大河川ですから二日間、三日間。一日雨量で見ると、東北で大体二割増し、関東では一割から二割増しとか、それぞれの地域で出ています。

 これがもし現実になれば、例えば今、利根川が二百年に一回と言っていますが、実力は、恐らく五十年に一回ぐらいの程度をこれから目標にしようというレベルなんですね。二百年なんというのは、それこそ本当は、計画は百年たってもできないような計画を立てているわけです。だから、できる計画をちゃんと立てるというのは、嶋津さんがおっしゃったように、当面の、既往のもので考えよう、それはそのとおりなんですが、今の五十年に一回の実力をこれから整備計画で三十年でつくったとしても、それが二十年に一回に落ちるというぐらいな頻度になる可能性があるわけです、今の見積もりでは。

 だから、そういうことも念頭に置いて、そのときにやはり、堤防だけというのは非常に危険である、本当に切れない堤防ができればいいですけれども、山元でためることは利根川では重要です。そういう意味では、八ツ場ダムの機能もあるし、それから、先ほど申しました渇水が長期化するということも考えれば、温暖化に備えても八ツ場ダムは意義を持つものだというふうに考えています。

竹内委員 ありがとうございます。

 あと、最近、緑のダムという話もいろいろございますが、それについても虫明先生の御見解をお伺いしたいと思います。

虫明参考人 これは私が申すまでもなく、実は有識者会議でも、鈴木雅一さん、それから太田猛彦さんが参考人で出られたと思います。私は彼らとも一緒に仕事をしてまいりましたけれども、森林水文として、森林の水循環として、森林があることによって、緑のダムというのは、渇水期、雨が降らないときには水が出る、水害を起こすような洪水を貯留、調節するという機能があるというのが緑のダムの発想だと思いますが、それは全く科学的な根拠がないということは、一々、私、お配りした参考資料の最後の方につけていますけれども、これはデータをもとに、先ほど申し上げた森林水文学の方々が証明しています。

 ただ、私は、だから森林はどうでもいいという話じゃありません。私も福島大学にいて、特に奥只見のあたりの森林があるところの限界集落、やはりそれは、森林を保全し、あるいは林業経営ができるようにするということは重要で、そういう立場からの森林の保全というのは、ある意味で、流出土砂をとめるとか、細い木がいっぱいあるのを、風倒木で倒れたものが流出するというのは洪水にも関係があるので、そういう管理はすべきだけれども、これは緑のダムという定義の、雨が降らなくても水が出る、異常洪水もとめるということでは決してありませんので、その辺を分けて森林の問題を考えるべきだというふうに考えています。

竹内委員 それともう一点、せっかく豊田参考人にも来ていただきましたので。

 私どもも独自で、現場も何回も拝見をさせていただいておりまして、やはり相当の、鉄道の線路まで全部つけかえて、橋梁も全部つけかえて、学校も上へ上げて、そして保育園も全部かえて、道路も全部つけかえて、そういうところまで来て、あと一歩というところで、全部なしよ、こうなっているわけです。

 その辺の、我々、先ほども申し上げましたように、やはり最終的に民主的な手続がきちっとなされているかどうか、そこが大事だと思っておるんですけれども、繰り返しになるかもわかりませんけれども、今後の要望等、もし追加的につけ加えることがありましたら、おっしゃっていただければありがたいと思います。

豊田参考人 ありがとうございます。

 基本的に、要望というのは、私どもが考えてきました生活再建案を滞りなく完了していただきたいというのが要望でございます。

 ただ、やはりダムの検証をされるということについては一抹の不安がございまして、私どもといたしましては、もうこれ以上時間をかけたくないということと、実際の、事業主にしても現地の住民にしても、今代替地に上がっている方がもう十世帯ぐらいございます。ことしじゅうにまた上がる方が相当数、七、八世帯おりますので、やはり年度が終わるごろには現住民の半分以上が上で生活するような、そういう状況になってくると思います。

 ですから、やはり分断生活を強いられますと、日ごろの地元のお祭りにしてもそうですし、村の会議にしてもそうですし、ローカルな話ですけれども、住民が顔を合わせる機会というのが非常に少ないものですから、上がるのであれば本当にみんなで早く上がって、新しいコミュニティーを早くつくって、そこで、今までのダムに翻弄された長い月日を忘れて、次の、後世に残せる町をつくるためのスタートを早く切っていきたいというふうに思っております。

竹内委員 ありがとうございました。以上で終わります。

川内委員長 竹内君の質疑を終了いたしました。

 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社民党の中島でございます。先ほど来、五人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして、まず心からお礼を申し上げます。

 いろいろな視点で問題点があることを理解させていただきました。その中でも、このダムが五十数年、高度成長時期から、ダムをつくるために推進をされてきたということの御指摘もございました。そしてまた、治水、利水の目的が、余りにも計画が不十分ではなかったかということもわかりました。

 しかし、その中で、きょう地元から参加されています豊田さん、地元の皆さん方が、水没地域の皆さん方が、五十数年にわたって翻弄され、苦しんでおられる現状もわかりました。私も川辺川ダムという、地元の一人でもございますが、何をおいても、先ほど来申されている、もう待っていられない、一日も早く地域再建をしてほしい、こういう要望がございました。その面でも私は、ダムを中止する限り、地元再建、地元の意見を本当にとらえてこの計画を推進すべきではないか、ダム中止に向けての対策を集中すべきではないか、こういうふうに思っております。

 そういう視点で質問させていただきたいと思いますが、まずは嶋津参考人に、ダム事業の費用について。

 これについては、先ほど、治水、利水については問題点の指摘がございましたが、嶋津先生の参考文献を見ますと、当初の計画が二千百十億、そして現在四千六百億、しかも、関連事業を入れると九千億近くになるのではないかという御指摘もあっております。

 ダム事業がなぜこんなに事業が拡大するのか。私も国土交通委員会の中で指摘をして質問させていただきました。その理由として、国土交通省が、工事費、用地買収の増加、物価上昇、こういう理由を挙げておりますが、先生がこの事業費の増大の件をどのようにとらえておられるのか、もしこれを建設するとすれば、今後どういうふうに事業費がなるのか、その点、お話をいただければと思います。

嶋津参考人 ダム建設事業というのは、大体、最初の予算からどんどん膨れ上がっていくのはどこでも見られる現象ですね。八ツ場ダムの場合は、今のお話のように、当初の事業費二千百十億が、平成十五年、二〇〇三年に四千六百億に値上がりしたということですね。ほかのダムの場合はもっとふえ方がすさまじいわけでありまして、よく言われる、小さく産んで大きく育てるということですね、どんどん膨らませていくわけであります。

 なぜ上がったかというのは、最初の予定でわからなかった、そういう、地質の悪さがよくわからなかったとかもっと補償費が上がった、いろいろな理由は挙げておりますけれども、最初のその二千百十億を出すときに、なぜある程度の調査をしていなかったのか、どうも不思議でなりません。

 ということは、ある程度小さく抑えておいて、それで各都県の参加を求めておく。余り最初から大きな金額を出しますと、各利水予定者の足が、それはどうしても参加しにくくなりますので、参加しやすいようになるべく低目に抑えておく。それで、もう計画ができて、皆さんの参加が決まって計画ができてから折を見て上げていくということではないかと私は思うのです。ですから、ある意味で、最初を低く抑えて、どんどんふやしていくということではないかと思います。

 それで、これからもし事業を続けた場合、四千六百億で済むかということですね。恐らく済まないだろう。というのは、先ほど奥西先生がおっしゃった地すべり対策、ここはとにかく、国交省の調査でも、ダム貯水域の周辺で二十二カ所も地すべりの可能性があるところがあるわけです。実際に水をためたら、大滝ダムのように地すべりが各所で起きることは十分に予想されます。その対策工事が何百億円、あるいは一千億を超えるかもしれません。物すごくお金がかかります。

 そのほかに、今工事は大変おくれております。つけかえ国道、つけかえ鉄道、お金をつぎ込んだ割には進捗率が非常に低いんです。これを終わらせるためにはまだまだお金がかかります。本体工事は最初の予算よりももっとかかるでしょう。

 と考えますと、これから事業を続けた場合、ダム建設事業費だけで四千六百億になっておりますけれども、恐らくこれは一千億を超えるもっと大きな金額に膨れ上がっていくだろう、一千億プラスされるだろうということですね。そのほかに、関連事業として水特法の事業で約一千億円、それから基金事業が二百億円ぐらいありますから、それを合わせて今六千億、これが今後どうなるか、もっと膨れ上がっていくだろう。

 こういう事業費の支出は大体借金でやっていきますから、長期の借金ですから、その利息の支払いも国民の負担にかかってきます。それらも合わせますと、今は九千億円ぐらいなのが、これがもっと、一兆円を超えることも予想されるわけですね。こんな事業を続ければ、国民に多大な負担を強いるものだということを考えなきゃいけないと思います。

中島(隆)委員 今の費用の件は、非常に大変な額が今後もかかるだろうということは推察をされました。

 そこで、嶋津先生が指摘をされておりますが、先ほども申されました、ダムの建設費用に余りにもかかり過ぎて、治水対策の堤防の工事費が非常に削減をされたと。まず堤防の事業に集中するべきではないかという御指摘もございました。そうすれば、二十年、三十年はかかるだろう、しかし、安い堤防の改修ができる、それを具体的に進めるべきだという御指摘がございました。

 まず、ダムを中止した場合の堤防の改修事業、これをどういう点からどういうふうに推進したらいいのか。堤防改修となりますと、これは流域全体の事業計画ですから、当然流域全体の住民の、河川整備計画、こういう議論を経てやる必要があると思うのですが、その進め方についてお話をいただければと思います。

嶋津参考人 実際にどのように進めていくかというのは、これからつくられる利根川水系河川整備計画の方で、それが具体的な事業計画で盛り込まれていくと思います。

 ただ、堤防の整備というのは、これから堤防の強化が必要なんですが、それは移転を伴うようなものはなるべく避けるべきだということですね。現在の堤防を前提として、そこに補強をする、なるべく安い費用で補強できる、そういう対策を講じるべきでありますから、地元の方に、住んでいる方になるべくそういう迷惑が、迷惑といいますか、すぐ移転を伴うような、そういうものではないということです。

 具体的に、さっきちょっと触れましたけれども、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業というのが今熊谷から栗橋付近までの利根川右岸で行われようとしているわけですが、この場合は、堤防のすそ野をぐんと広げるがために、一千戸近い移転が必要なんですね。そういうものでやってはいけないと思います。もっと安上がりで、現状のままで堤防の強化を行う、そういう技術があるわけですから、それを適用して堤防の強化を進めていく。それならば、流域の住民の方の同意ももちろん得られると私は考えております。

中島(隆)委員 次に、松浦参考人にお尋ねをいたします。

 先ほどもお話がございました利根川水系の河川基本計画、当初の治水計画一万七千が二万二千になり、そしてダム完成後の三億五千万立方メートルの貯水量、こういう問題が指摘されておりますが、このような治水の計画、基本高水によって検討されていると思うのですが、この基本高水の問題についてどういうお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。

松浦参考人 先ほど来申しておりますけれども、基本高水流量の決定方式が、あるとき飛躍的に変わったということを言いました。それによって、いろいろな川、例えば吉野川でもそうです、非常に大きくなりました。それでどんな問題が生じたかといったら、第十堰の問題が生じております。淀川でも大戸川ダム問題等々が生じております。そのいわゆる新しい考え方に基づいて作成していったそういう計画が地域住民から非常に反発を受けている、私はそういうぐあいに考えております。

 そうしますと、やはり何といっても既往の実際の洪水を丹念に検討しておいて、それをベースにして決定していくべき、そういうぐあいに考えております。古文書なんかを使っていったら、結構古い時代のところまで、どういう出水が生じているのかというのはわかります。そういう実際に生じてきた洪水をベースにしながら計画を立てていくべきだ、私はそういうぐあいに考えています。

中島(隆)委員 基本高水そのものが指摘をされていますが、二百年に一度の洪水対策ということで、全く机上で計画されているということで、膨大なダム建設費になっているわけですが、今御指摘のとおり、やはり現状の実情に合った計画に直すということが必要ではないかなというふうに思います。

 それから、次に嶋津参考人に、利水の関係で先ほど来質問があり、答弁をされておりますが、この八ツ場ダムの利水効果は非常に疑問がなされておりますし、都市圏の水も余っているという御指摘もございました。特に、人口の動向、降雨量等が指摘をされましたが、この八ツ場ダムの利水効果の問題点で、本当にこの八ツ場ダムにかわる利水、どういう形で都市圏あるいは流域の人に、説得といいますか、理解を求めていったらいいか、その点を再度お尋ねしたいと思います。

嶋津参考人 とにかく、水の需要がこれから減り続けていくということですね。今も、九〇年代後半から、首都圏の水需要は減ってきております。東京の場合は、もっと早くから減ってきております。減り続けて、かなりのスピードで減ってきております。これからは、節水型機器がさらに普及し、さらに人口も近い将来には首都圏全体としては減少傾向に入っていく。となりますと、今の減少傾向にさらに拍車がかかっていくということです。

 ということは、東京の例を先ほどの資料の三ページに示しましたように、今既に東京では約二百万トン、一日当たりの水源に余裕を持っているんですけれども、それは今後も拡大していく、首都圏全体でもっと大きく拡大していくということですね。水余りが年々顕著になっていくわけですから、新たなダムをつくって水源を確保する必要がどこにあるかということです。

 では、渇水に対してはどうするかということの疑問があろうかと思いますけれども、渇水は、この水余りの状況を反映して、最近十年間、首都圏においては、利根川水系においては、渇水らしい渇水は来ていないんですよ。それは、水余りの状況を反映している。もっと厳しい渇水が来るかもしれないという御意見もあろうかと思います。しかし、それでも、今のこの水余りがますます顕著になっていくことを踏まえれば、新たな水源を確保する必要はないだろうということです。

 とにかく、水需要がますます縮小していく、そういう時代の状況をよく踏まえて、八ツ場ダムなどで水源開発をする必要がどこにあるかということを真剣に考える必要があると私は思います。

中島(隆)委員 それでは次に、奥西参考人にお尋ねいたします。

 ダム建設を中止した場合の補償問題ですが、奥西参考人の文献等では、まず、この補償問題は、損失補償、生活再建型の保障、地域開発保障の三本を柱にすべきだというふうに述べておられます。

 今後、これを具体的に、中止した場合のこういう補償のあり方、これについて再度お話をお聞きしたいと思います。

奥西参考人 私の所属しております国土問題研究会は、一九六〇年代からダム問題について検討を行っておりまして、その中に社会科学的な検討も行っております。

 その結果として、ダムというのはいろいろな形で社会的インパクトを持っておる。きょうは地すべりに限って意見陳述をいたしましたが、例えば、ダムによって水没する人の生活補償が十分なされていない、生活を再建できるだけの補償がされていない、あくまでも用地補償である。それから、用地補償の対象になっていない人はもっと惨めです。

 それから、社会全体に対するインパクト、先ほど豊田さんもおっしゃっていましたが、そういうのは、ダムをつくるつくらないが転々としますと地元は振り回されて大変迷惑ですが、それ以前に、もうダムを計画された時点で地域社会はすごい打撃をこうむっているんだ、そういうことを踏まえた検討が必要ではないか、ちょっと抽象論になりますが、そういうぐあいに思います。

中島(隆)委員 水没地域あるいはその地域全体の生活補償をどうするかが大きな課題だと思います。

 私の地元の川辺川ダムも、今、中止に向けて地元と国の協議が行われています。その中で指摘されているのは、やはりダムをつくることを前提にまちづくりが行われている、それを中止した場合の後の生活再建がどうあるべきか、これが今問われているわけです。川辺川ダムでも、もう移転がほぼ終わっているんですが、部落が二つに分かれて、それをつなぐ橋がまだできていない、あるいは農地の整備もできていないという状況にございます。

 八ツ場ダムも、先ほど豊田さんのお話で、まだ移転がここも完全に終わっていない、本当に先の将来が見通しがつかない、こういうことがたくさんございます。本当に生活補償というのが、単なる生活補償だけじゃなくて、これまでの、まちづくりに向けた前提でつくられつつあった計画そのものが見直される、やはりそれに対する手だて、これが必要であるということもわかりました。

 先ほど御指摘のとおり、損失補償はもちろん、生活再建あるいは地域開発を含めた対策が必要であるということと同時に、私が思うのは、やはり、水没地域の人も五十数年、悩んでこられましたけれども、しかし、ダムは流域全体がかかわるわけですね。ですから、その流域全体の地域振興あるいは地域再建、これをどう酌み上げて取り組んでいくのかというのが非常に重要ではないかなというふうに思います。

 そこで、時間も来ましたので、最後に地元の豊田さん、先ほど切々と訴えられまして、現状はわかりました。本当に一日も早く、もう待ったなしだ、早くどちらか決めて方針を出してほしい、こういうお訴えでございました。

 そこで、国は中止の方向で進んでいるわけでありますが、しかし、その地元の意向を踏まえると、当然、話し合いをしながらどういう解決策を見出すか、これがやはり必要だと思うんですが、今後、話し合いをされる場合に、国に対して本当にどういう点を訴え、そして一日も早く解決をしてほしいと願っておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。

豊田参考人 ありがとうございます。

 今後、我々といたしましては、先ほど申し上げましたように、ダムが中止というふうに今決まっているわけではございませんので、今の生活再建を粛々と行っていく、それによって、きょう、あした、あさってという形で日々変わっていく中で、新たな、どこの時点からスタートとなるかわかりませんけれども、行っていきたいということです。

 あと、国の方にお願いしたいのは、とにかく時間がないということと、村の現状は、やはりダムをつくって、そのダムに絡める生活再建というものが一番時間のかからない再建だというふうに地元では思っておりまして、そのことはぜひお含みをいただきまして再建を考えていただければありがたいというふうに思っております。

 以上です。

中島(隆)委員 時間が来ましたので、質問を終わらせていただきますが、ダムの問題については、今五人の方々の御指摘のとおり、やはり計画そのものが余りにも不十分であり、そして、それで犠牲になったのが地元の住民であるということもわかりました。

 しかし、それを解決するためには、何といっても、一番犠牲を強いられた地元の皆さんあるいは流域の皆さん、こういう方々の意向をいかにこの後の方策に生かすかということが必要だと思いますし、今後、八月に向けた検討の見直し指針も出ます。個別のダムの見直しが始まります。ぜひ、個々の地域の課題は違いますから、やはり、見直しの今後の過程の中で、住民の皆さんの意向を十分踏まえて見直していくということと同時に、今後の対策は、生活補償、地域再建、この新たな法律をつくって、万全な体制をとるべきではないかなというふうに思いました。

 以上、意見を申し上げて、終わりたいと思います。

川内委員長 中島君の質疑を終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げさせていただきます。

 次回は、明十七日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十八分散会


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