衆議院

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第4号 平成23年11月29日(火曜日)

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平成二十三年十一月二十九日(火曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 伴野  豊君

   理事 小泉 俊明君 理事 小宮山泰子君

   理事 古賀 敬章君 理事 辻元 清美君

   理事 松崎 哲久君 理事 金子 恭之君

   理事 山本 公一君 理事 富田 茂之君

      阿知波吉信君    青木  愛君

      石井  章君    石田 三示君

      石原洋三郎君    打越あかし君

      奥田  建君    奥野総一郎君

      金子 健一君    川村秀三郎君

      沓掛 哲男君    熊田 篤嗣君

      黒田  雄君    古賀 一成君

      坂口 岳洋君    杉本かずみ君

      高木 義明君    津島 恭一君

      辻   惠君    中川  治君

      橋本 清仁君    畑  浩治君

      松原  仁君    向山 好一君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      若井 康彦君    赤澤 亮正君

      小渕 優子君    北村 茂男君

      佐田玄一郎君    佐藤  勉君

      谷  公一君    徳田  毅君

      二階 俊博君    林  幹雄君

      福井  照君    望月 義夫君

      竹内  譲君    穀田 恵二君

      中島 隆利君    柿澤 未途君

      下地 幹郎君    田中 康夫君

      中島 正純君

    …………………………………

   国土交通大臣       前田 武志君

   内閣府副大臣       後藤  斎君

   国土交通副大臣      奥田  建君

   国土交通副大臣      松原  仁君

   内閣府大臣政務官     郡  和子君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   国土交通大臣政務官    津島 恭一君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           佐々木克樹君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            中島 正弘君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         内田  要君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  加藤 利男君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        関  克己君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  川本正一郎君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  長田  太君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十九日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     打越あかし君

  川村秀三郎君     杉本かずみ君

  黒田  雄君     金子 健一君

  辻   惠君     青木  愛君

  橋本 清仁君     石原洋三郎君

  若井 康彦君     奥野総一郎君

  徳田  毅君     谷  公一君

  望月 義夫君     佐藤  勉君

  亀井 静香君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青木  愛君     辻   惠君

  石原洋三郎君     石田 三示君

  打越あかし君     阿知波吉信君

  奥野総一郎君     若井 康彦君

  金子 健一君     黒田  雄君

  杉本かずみ君     川村秀三郎君

  佐藤  勉君     望月 義夫君

  谷  公一君     徳田  毅君

  下地 幹郎君     亀井 静香君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     橋本 清仁君

    ―――――――――――――

十一月二十九日

 尖閣諸島を初め我が領土領海を守ることに関する請願(松浪健太君紹介)(第二〇一号)

 同(山口俊一君紹介)(第二〇二号)

 同(鴨下一郎君紹介)(第二〇六号)

 同(高邑勉君紹介)(第二〇七号)

 同(長尾敬君紹介)(第二一九号)

 同(長尾敬君紹介)(第二二六号)

 同(西野あきら君紹介)(第二六三号)

 同(吉野正芳君紹介)(第二六四号)

 同(大島理森君紹介)(第三〇〇号)

 同(木内孝胤君紹介)(第三〇一号)

 同(町村信孝君紹介)(第三〇二号)

 同(西村康稔君紹介)(第三三四号)

 同(浜田靖一君紹介)(第三三五号)

 同(金田勝年君紹介)(第三三六号)

 同(谷畑孝君紹介)(第三三七号)

 同(谷川弥一君紹介)(第三五六号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第三六一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 津波防災地域づくりに関する法律案(内閣提出第六号)

 津波防災地域づくりに関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

伴野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、津波防災地域づくりに関する法律案及び津波防災地域づくりに関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長中島正弘君、土地・建設産業局長内田要君、都市局長加藤利男君、水管理・国土保全局長関克己君、住宅局長川本正一郎君、航空局長長田太君及び消防庁国民保護・防災部長佐々木克樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷田川元君。

谷田川委員 民主党の谷田川元でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 私の選挙区は千葉県十区というところでございまして、西は成田市、東は銚子市、五市四町からございます。

 千葉県といいますと、今回の震災でそんなに被害を受けなかったんじゃないかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はかなりの甚大な被害を受けております。東北三県、岩手県、宮城県、福島県と比べますと、それはまだまだ比べ物にならないぐらい小さいかもしれませんが……(発言する者あり)茨城もそうです。そして、私の選挙区の旭市で、津波で十三名の方が亡くなり、二人の方が行方不明なんです。ですから、いかに大変な被害だったか。

 特に旭市の場合、旭市の旧飯岡町なんですけれども、震源地から見て、直接海岸線が面していないんですね。日本地図を思い浮かべていただければわかりますけれども、銚子があって、犬吠埼という、こうとんがっているんですよ。それがあるから、震源地から見て、犬吠埼のあのあたりがちゃんと防波堤になってくれればいいはずなのが、何と迂回して飯岡の方に津波が来てしまった。この辺の物理的解明もぜひ進めていただきたいなというふうに思います。

 きょうは津波防災地域づくりに関する法律案の審議ということで、若干このことをお伺いしたいと思います。

 まず最初に、この法律案の第三条で、「国土交通大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣、総務大臣及び農林水産大臣に協議するとともに、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。」そう規定されております。この基本指針はできるだけ早く定める必要があると思われますが、社会資本整備審議会の意見をいつ聞き、そしていつごろ基本指針を定めるのか、全体的なスケジュールについてお伺いしたいと存じます。

前田国務大臣 谷田川議員にお答えいたします。

 房総半島をバックとして、先生におかれましても、本法律案については随分と御研究していただいていると思います。

 実は、おじ上の山村新治郎先生には、かつて随分とお世話になったことがあります。男山村新治郎先生でございました。

 基本指針は、津波防災地域づくりに関する法律案に基づくさまざまな措置を活用する前提となるものであることから、被災地の復興及び今後の地震、津波が想定される地域における津波防災地域づくりの推進に資するよう、早急の策定が必要であると考えております。

 ということで、基本指針の策定の後、パブリックコメントであったり、関係省庁との今御指摘のような協議であったり、あるいは社会資本整備審議会への意見聴取であったりということになるわけですけれども、これらの作業をできるだけ並行してやっていこうと考えております。

 ということで、この法案が成立し次第、なるべく早く基本指針を策定すると同時に、並行して今言ったような作業も行うこととして、なるだけ早くこれを完結させたい、こういうふうに考えておるところでございます。

谷田川委員 今、大臣から山村新治郎代議士のことを取り上げていただきまして、ありがとうございます。

 実を言いますと、私のおじじゃなくて、いとこなんです。山村新治郎代議士は昭和八年生まれ、私は昭和三十八年生まれ、同じいとこでも三十の年の開きがありますので、おじとか、おいとか言われますけれども、いとこでございます。

 それはともかくとしまして、この法案では、都道府県が津波災害特別警戒区域を指定し、開発行為と建築の制限を行うことができると規定しております。この規定は、国民にとっては過度な規制ではないかという意見もございますが、国交省としてこの辺どのようにお考えになっているか、お答えいただきたいと存じます。

津島大臣政務官 お答えを申し上げます。

 津波防災地域づくりのための予算といたしましては、今回の被災地につきましては、三次補正予算で措置しました復興交付金を活用することとしております。(谷田川委員「ちょっと質問と違うと思います、答弁が」と呼ぶ)失礼しました。

 まず、津波防災地域づくり法案は、地方公共団体が地域ごとの現状、特性を踏まえて、地域の選択により、ハード、ソフトの施策を組み合わせて、津波による災害を防止、軽減する効果の高い安全な地域づくりを進めることを基本に制度を組み立てたものであります。

 津波災害特別警戒区域は、このような地域の選択による津波防災地域づくりの一環として本法案に盛り込んだものであり、具体的な内容については以下になります。

 津波災害特別警戒区域は、津波による人的災害を防止するため、津波から逃げることが困難である、特に防災上の配慮を要する者が利用する一定の社会福祉施設、学校、医療施設につきまして、建築物の建築及びそのための開発行為に関して、津波に対して安全なものとし、津波が来襲した場合であっても倒壊等を防ぐとともに、用途ごとに定める居室の床面の高さが水準以上であることを求めることにより、何としても人命は守るため、都道府県知事が、地域の選択として指定することができる区域であります。

谷田川委員 次に質問するのが先ほどの答弁でございます。最初にお聞きしたかったので、済みません。

 津波防災のためには、こういった法制度の整備というのは非常に重要だと思いますが、避難ビル建設あるいは高台への避難道路整備等の国からの助成措置がより重要だと私は思います。仏つくって魂入れずという言葉がありますが、まさに仏に魂を入れるのが国からの予算措置だと思うんですが、この辺の予算措置はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。

津島大臣政務官 大変失礼をいたしました。

 津波防災地域づくりのための予算といたしましては、今回の被災地につきましては、第三次補正予算で措置した復興交付金を活用することとしております。

 具体的には、本法案によりまして創設されます一団地の津波防災拠点市街地形成施設に関する都市計画制度を適用し、復興の拠点となる市街地を用地買収方式で緊急に整備する事業に対して支援を行うこととしております。

 また、復興交付金は、高台移転や土地区画整理事業、避難施設等の整備等にも活用することができます。

 さらには、被災地以外におきましては、第三次補正予算において、東海、東南海、南海地震等に備えるための堤防のかさ上げ、水門の遠隔操作の自動化など、全国防災に係る予算を計上するとともに、平成二十四年度予算要求におきましても、全国で災害に強い社会基盤整備を緊急に進めるための予算措置を重点的に盛り込んでおります。

 また、社会資本整備総合交付金など既存の予算制度の活用にも努め、避難施設や避難路の整備に対する支援も含めて、被災地のみならず、全国におきまして津波防災地域づくりを推進してまいります。

 失礼いたしました。

谷田川委員 政府の地震調査研究推進本部の発表では、三十年以内に三〇%の確率で、三陸沖から房総沖にマグニチュード九クラスの地震が発生すると想定しています。私は、これにできるだけ早く対応する必要があろうかと思います。

 中央防災会議のもとに東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会というものが置かれまして、五月二十八日から十二回にわたり会議が行われまして、九月二十八日に最終報告が公表されました。これに基づいて、近々国の防災基本計画の見直しが行われると聞いておりますが、その内容の骨格を教えていただきたいと存じます。

後藤副大臣 お答えしたいと思います。

 先生御指摘のとおり、東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会の最終報告が九月二十八日に提出をされたところであります。それを踏まえて、現在、中央防災会議のもとで防災対策推進検討会議、昨日二回目の検討会議が行われたわけでありますが、特に、大震災も踏まえて地震、津波対策を強化するという観点から、一つ目に、今まで津波災害対策というのが編を設けてございませんでしたが、津波災害に対する対策を体系的に強化して記述するということが一点。二つ目には、最大クラスの津波に対する住民避難を軸とした総合的な対策の構築など、東日本大震災を踏まえた地震、津波対策の抜本的強化というのが二点目。三点目は、その他風水害など直近の災害を踏まえた防災対策の見直しの反映ということを予定しており、昨日が先ほどお話ししたように二回目の検討会議でありますが、順次この検討会議を開催し、年内にも中央防災会議において防災基本計画の見直しを行うことというふうに考えております。

谷田川委員 時間が余りありませんので、最後に質問を一つしたいと思うんです。

 今回の法律案では、一団地の津波防災拠点市街地形成施設の規定がございます。つまり、津波で甚大な被害を受けたところを全面買い取り方式、全面買収方式で整備することもできる、それに対して国が大幅な助成措置を行うという規定なんです。

 実は、私の地元の香取市、旧佐原市役所があるところ、前田国交大臣は以前に佐原にいらしたと聞きましたので、地の利が大体わかると思いますが、今、香取市役所があるところが昔の佐原市役所のところなんですが、あの付近が液状化ですごい被害を受けたんです。

 今回の三次補正でかなり、液状化の防止という観点から国もいろいろな助成措置をやっていただきましたが、ただ、この液状化というのはある意味で、日本国ができてからこんな被害を受けたのは初めてのことなんですね。今、まさに暗中模索で、いろいろ国交省も御尽力いただいていると私は思います。

 費用対効果の面で一番確実なのは、液状化している部分に薬剤を投入してそこを固めるのが、BバイCではいいのかと言われておりますが、しかし、一番安心できるのは、かたい地盤まで、かたい岩盤までくいを打つことなんですね。くいを打てば、もう液状化はこれからどんなことがあろうと心配ないと言われております。ですから、抜本的な液状化対策というのは、やはり全面買い取りということも必要だと思うんですよ。

 これは津波のための法律ですから、場合によっては、液状化で被害を受けた自治体に対してもやってもいいよというふうにはならないかもしらぬけれども、新たな法整備も必要じゃないかと私は思うんですが、その辺、前田大臣、どうお考えでしょうか。

前田国務大臣 今の御指摘について、直ちに買い取るというようなスキームを想定しているわけではないんですけれども、高台移転であったり、集団移転であったり、あるいは区画整理であったり、いろいろな手法を組み合わせて、なるべく地元の負担を軽減するような施策というものは今の制度であっても可能かな、このように思います。さらに、その方向の検討も今後課題になるかと思います。

谷田川委員 とにかく液状化をどのように復旧させるか、これはもう香取市のみならず、この間は、茨城県、それから神奈川県、埼玉県の首長さんが連絡協議会をつくって、十月三十一日に野田総理のところにも液状化の対策について陳情をしております。ですから、これはもう全国的な課題でございますので、ひとつ地元の首長さんの意見等をしっかり聞いて、液状化の対策、万全を期していただきたいと思います。そのことを切にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、林幹雄君。

林委員 自由民主党の林幹雄でございます。

 質問に入る前に、まず、去る三月十一日に発生いたしました未曾有の大震災におきましてお亡くなりになりました方々に深く哀悼の意を表しますとともに、今なお御不自由な生活をされておられます被災者の皆様に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。

 私は、我が党が提案しました、本年六月に成立した津波対策の推進に関する法律と、津波防災地域づくり関連二法案に関して質問をいたします。

 東日本大震災では、津波による被害で一万五千人以上の方が犠牲になられ、なお三千人以上の方が行方不明となっています。この数字を見るにつけ、私は、残念で残念でなりません。といいますのも、我が党は昨年六月十一日に、津波被害に特化した基本的な法律であります津波対策の推進に関する法律案を公明党と共同で提出いたしましたが、一度も審議されることなく、三月十一日の例の震災が発生し、大きな被害が発生してしまったからであります。

 そもそも我が党が津波対策についての法律の必要性を感じたのは、昨年二月二十七日に発生したチリ沖地震による津波が我が国の太平洋沿岸を襲ったことによります。沿岸地域を対象に百六十八万人もの住民に避難指示、避難勧告を出されましたけれども、実際に避難した人は、わずか三・八%の六万四千人にすぎなかったわけであります。我が党の二階俊博先生は、この事実に驚きまして、もしも大きな津波が発生したら大変なことになるという思いから、昨年三月、自民党津波対策議員連盟を立ち上げたわけでございます。

 津波については、一度発生すると国民の生命や財産に甚大な被害を及ぼすおそれがありますけれども、迅速な行動をとれば相当程度被害を軽減することができる災害であると以前より指摘されておりました。しかしながら、津波対策については、災害対策基本法等において他の災害と一体的に規定されているにすぎませんでした。そこで、我々は、津波災害の特性に対応した法整備の必要性を痛感したわけであります。

 このような考えに基づきまして、津波対策議連の二階会長、当初は参議院議員泉信也会長でありましたけれども、その二階会長、私は幹事長として、そして谷公一議員が実質的な事務局長、こういうメンバーが中心になって有識者からのヒアリングを重ねてまいりました。と同時に、和歌山県の稲むらの火の館の視察などをいたしまして、法制化の作業を進めてまいったわけでございます。

 六月十一日に自民、公明の共同で法案を提出したわけでありますが、先ほど申し上げましたように、法案は一度も審議されることなく、たなざらしにされ、三月十一日の震災に伴う津波により、多大な人命や財産が失われたわけであります。我々の提案した法案が成立しておれば、そしてさらに、それに基づいてハザードマップの見直しや避難経路の確認などが実行されておれば、多くのとうとい人命を救い、被害を未然に軽減できたのではないかと思うと、まさに法案成立のおくれは痛恨のきわみであり、まことに残念でなりません。

 しかしながら、大震災を契機に、各党の御理解をいただき、提出から一年と六日後の本年六月十七日に、津波対策推進法は衆参ともに全会一致で成立したわけでございます。

 法案の一日でも早い成立を期すため、ことし四月二十一日、与党民主党の部門会議及び津波ワーキングチームの合同会議に、我が党の提出者二階議員、谷議員、長島議員、私、そして公明党の提出者の石田議員、賛同者の竹内議員が出席いたしまして、津波対策推進法の説明をいたしました。その際に、そんなに急がないで、東日本大震災の検証が済んでからでいいではないかとの発言がありました。名前は申し上げませんけれども、現政務三役の一人であります。

 くどいようですけれども、我々が提出したのは昨年の六月なんです。コンクリートから人へと声高に叫んでおられました与党の皆さんの判断の過ちを今さら責める気はありませんけれども、このような過程を踏まえて成立した議員立法、津波対策推進法に対して大臣はどのようにお考えか、所見をお聞かせいただければと思います。

前田国務大臣 今、林委員の経緯というものをお聞きしながら、私自身も、政党政治のあり方について、正直申し上げてその未熟さというものにじくじたるものは感じております。今申された林委員、谷委員あるいは二階先生初め、特に林委員は防災担当を何度かやられて、その危機感というものはひときわ大きかったと思うんですね。

 紆余曲折を経ました。しかし、ここにいよいよ、津波対策の推進に関する法律という、言ってみれば津波対策に対する基本法といいますか、理念をしっかり述べて、そしてその基本法的な性格があると思いますが、それを受けて津波防災地域づくりに関する法律案というものをつくったわけでございまして、ソフト、ハードの施策を総動員することで今後の津波防災地域づくりを全国において積極的に推進してまいりたい、このように思います。

林委員 大臣の理解ある発言で安心いたしました。よろしくお願いいたします。

 この法律の第十五条で、十一月五日を津波防災の日と定めております。その目的は、国民の間に広く津波対策について理解と関心を深める、そのためであります。

 津波防災の日を十一月五日とした由来でありますけれども、安政元年十一月五日に発生した安政の大地震の際に津波から村人を救った稲むらの火にちなんだものでございます。

 稲むらの火とは、十一月五日に発生した安政の大地震の際に、和歌山県広村、今の広川町でありますけれども、この庄屋の浜口梧陵氏が、自分の田にあった刈り取った稲に火をつけまして、高台への避難路を示す明かりとして速やかに村人を誘導することができ、結果として一人の死者もなく村人を救ったというものでありまして、小学校五年生の国語の教科書にも掲載されております。ことしからですけれども、これでございます。これはまさに、迅速な行動をとれば相当程度被害を軽減することができるという教訓でもございます。

 余談ですが、というよりも、これからが本当の物語が始まるんですけれども、広村では、漁船は、津波で流されたり壊れたりして使えません。田畑も、塩水が入って作付ができない状態。村人たちの中には、希望を失って村を捨てようとする者が出始めてきた。これを見て浜口梧陵は、このままでは村がつぶれるというふうに思い、いろいろ考えに考えた末、思いついたのが、大津波が来ても村を守れる大堤防をつくろう、工事にはできるだけ多くの村人に参加してもらおう、賃金は自分が払うということを思いつき、これを実行するわけでありまして、約四年にわたって工事が完了します。高さ四・五メーター、長さ六百メーターの広村堤防が完成するわけですけれども、完成から八十八年後、一九四六年、昭和二十一年でありますけれども、和歌山沖でマグニチュード八・〇の大地震が発生しました。広村には高さ四メーターの津波が押し寄せてきました。しかし、この堤防によって村の大部分が浸水の被害から救われたわけでございます。この事実もこの小学校五年の教科書に載っております。

 何か今回の大震災を物語っているような感じでありますけれども、ちなみに、この浜口梧陵さんは、私の地元であります千葉県銚子のヤマサ醤油の七代目当主でございまして、当時は、一年のうちの半分は和歌山で、半分は銚子、江戸で生活をしておったということでございます。

 そこで、津波防災の日は、ただ定めるだけでは何の意味もありません。これをきっかけに、その目的であります、国民の津波に対する理解と認識を一層高める取り組みをすることが重要であります。ことしの十一月五日には、各地で津波防災の日に関連したシンポジウムや避難訓練などさまざまなイベントが行われたわけであります。

 例えば、新聞報道でありますけれども、先ほども話が出ましたけれども、私どもの千葉県の旭市では、死者、行方不明者を十五人出しましたけれども、家屋の倒壊が約四百戸、こういうところで、津波防災の日には、約千人の人方が参加して津波避難訓練を実施した、津波への心構えを新たにした、こういうふうに出ています。また、和歌山県の広川町では、知事らがいろいろと植樹をしたと。その上、梧陵が震災後に築いた広村堤防では、地元小中学生約百人が盛り土を行ったというふうなことが出ています。三重県の鳥羽市の離島では、通信手段が途絶える事態に備え、中学校の校庭にSOSを石灰で描き、上空からヘリで確認する訓練をした、こういうふうに出ているわけでございます。

 そういう意味合いでは、やはり、全国でどのぐらいの市町村がこういったような避難訓練やらイベントを行っているのか、ちょっとお聞きしたいんですね。全国で海岸のある市町村は六百三十九市町村あると言われていますけれども、どのぐらいの市町村でこういうイベントをしているのか、理解を進めているのか、ちょっとお聞かせ願いたいと存じます。

後藤副大臣 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、この間、もっと早く法体系を仕組んでいれば、今のような形でなく、違ったもう少しいい形でという先ほどの御指摘には、私全く同感であります。

 今の防災避難訓練、例えば津波避難訓練を行っている地域、内閣府の調査、昨年の三月というちょっと古い数字で大変恐縮ですが、全沿岸市町村の約五〇%というふうなことであります。

 また、津波に特化した普及啓発事業というのは、まだデータの集積が実はございません。震災対策等、少し広げた普及啓発のための講習会、研修会というのが、消防庁の調査によれば、昨年の四月、二十二年の四月時点で、全市町村の二三%という水準になっております。

林委員 鉄は熱いうちにということもありますし、のど元過ぎれば熱さ忘れるということもあります。そういう意味では、今、やはり意識があるときに、こういうイベントを展開するよう各県、各市町村にどんどん呼びかける、あるいはその取り組みを要請するというような考えをすべきだと思いますけれども、そういう考えはございますか。

後藤副大臣 先生御指摘のとおり、できるだけ国が自治体と連携をして普及啓発を促進するということについては、私も全く同感であります。

 先ほど先生が触れられました、ことしの六月に通過をした津波対策の推進に関する法律、これについても、国及び地方公共団体が、津波について防災上必要な教育及び訓練、防災思想の普及等に努めることが規定をされております。

 先ほどお話ししたように、実際、津波の避難訓練であるとか講習、研修会というものが、まだ必ずしも高い水準になっておりません。そういう意味では、今後、先ほども防災基本計画の中でお答えをしましたように、やはり今回の東日本大震災の経験を踏まえ、最大クラスの津波、そしてその到達時間に備えた具体的かつ実践的な避難訓練を実施すること、そして、住んでいる地域の特徴や地震、津波に対する危険性、並びに過去の被害状況や教訓などについて、継続的かつ充実した防災教育を全国的に行うことが必要であるというふうに考えております。

 このような観点から、先ほども、現在、中央防災会議で議論しておりますが、年内に国の防災基本計画を見直す中でも、地方公共団体においても、地域防災計画の改定などを通じてこうした取り組みをさらに充実するように、国としても地方公共団体にお願い、要請をしていきたいというふうに考えております。

林委員 国も、ことしは何か津波防災の日のシンポジウムを東京で開かれたというふうに聞いておりますけれども、具体的にはテレビなどで放映されなかった、報道されなかったものですから、よくわからないということもありました。経費の件もあるかもしれませんけれども、もっと大規模な、また効果的なイベントをすべきだと。経費のこともかかわるかもしれませんけれども、この機会でありますから、もうちょっと大がかりにというか、テレビ放映というかニュースで取り上げてくれるような、そういったイベントを考えてはどうかと思うんですが、いかがですか。

後藤副大臣 先生お話をいただいたように、国としても、先ほど先生が御説明をされていた稲むらの火を踏まえて、その必要性も含めて、実は、昨日の中央防災会議の防災対策推進検討会議のメンバーであります平野啓子さんに、十一月五日、津波防災の日に、冒頭、この稲むらの火というのはどういうことなのかと、いわゆる語り部の観点から対応していただきましたが、集まった人数は百五十人程度だというふうに聞いております。そして、テレビ中継がなかなかできなかった分、インターネット中継はしたんですが、二万五千人の方がごらんになっていただいたというふうに聞いております。

 先生おっしゃるように、全国の皆さん方が十一月五日の日をやはりもっときちっと理解し、そして津波推進法に基づく対応がこれからもさらに充実がなされるように、必ずしも予算が十分確保できるかどうかというのは別としても、できるだけ、既存予算の中でも、十一月五日を全国民の皆さん方が津波というふうに認知をし、そして津波教育、啓発事業の大切さというのも、私たちの思いも含めてきちっと政府の中でバックアップをし、また、地方公共団体の皆さんとも連携をし、ことしは、和歌山、名古屋、先ほど先生御出身でもある千葉という、津波の日の各地域のイベントも必ずしも全地域でやったということではないようでありますので、地方自治体とも連携をして、さらに充実した対応ができるように努めてまいりたいというふうに考えております。

林委員 副大臣が前向きにいろいろととらえていてくれることは大変ありがたく思いますけれども、これは口だけでは先に進みませんので、やはり今言われたように、地方のイベントも大いに盛り上げてもらうということも大事だし、また、中央から、地方との連携をとりながらいろいろなイベントを模索していくということも大事だと思いますので、ぜひ前向きにとらえて、一回こっきりで終わらないようにお願いしておきたいと思います。

 今、我が党では、大震災を受けまして、国民が安心、安全、快適に暮らせる国土をつくるために、国土強靱化総合調査会を新設いたしまして、あらゆる英知を結集して強靱な国土づくりを進めようとしているところでございます。

 その中で、強靱な国土をつくるための土台として、強靱な人づくりが重要な課題ではないかというふうに感じているわけでございます。その強靱な人づくりを行うためには、まず、子供のころから、教育、すなわち意識づけが最も効果的だろうというふうに私は思います。

 今回も、津波で、実は、石巻市の大川小学校では、七十四人の児童が死亡、行方不明になったわけですね。これはなぜかといいますと、地震発生から津波到来まで約五十分あったが、避難できなかった。学校側は、児童七十八人が校庭に整列して、裏山に逃げなかった理由について、道もなく危険で、地割れや倒木のおそれもあった、学校まで津波に襲われるとは想定していなかったなどと説明しているわけですけれども、一方、石巻の教育委員会は、学校側は、危機管理マニュアルで学校が被災する場合の二次避難先を選定するよう指示したけれども、選定していなかったということが明らかになった、こういうふうに出ています。

 一方、岩手県宮古市の鍬ケ崎小学校では、「今月三日の避難訓練通り、児童らは第二避難場所の校舎裏山にある熊野神社に避難した。数分後、家や車をのみ込んだ大津波がグラウンドを襲った。泣き出す児童もいたがけが人はいなかった。」

 この鍬ケ崎小学校は、学習時間に津波防災マップをつくるというようなことをして、大変防災学習に力を入れてきた。特に、津波防災かるたなどの取り組みで、二〇〇七年、ぼうさい甲子園で優秀賞にも輝いているということが言われているんですね。

 ですから、やはり小中学校で、こういった訓練とか、あるいは津波の映像を視聴させるということは、非常に大事じゃないかというふうに思うんです。映像も、我々、津波対策推進法の中で、ハザードマップの作成とか、こういった津波の映像だとか、そういったものの作成に対しては、国からの補助というか援助も考えようではないかということにしてあるわけでありますから、積極的にこの辺は進めていただきたいな、こういうふうに思うんです。

 そこで、文科省、来ていますか。まず、小中学校の子供たちに避難訓練やら津波の映像の視聴などを積極的に行うよう各教育委員会に指導すべきだと思うけれども、どうでしょうか。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 ただいま、議員からも多くの工夫と知恵をちょうだいしたと思っております。

 これまでにも、防災教育については、児童生徒等に、災害時にみずから危険を予測し、安全な行動ができる判断力などを身につけさせるという観点で、ここは重点を置いて取り組むべき課題だということでさせていただいておりますし、また、地域防災と連携して取り組むことも重要であるというふうに思っております。

 せんだっても、防災教育を見直すための有識者会議を設置して、その中間取りまとめでも、児童生徒等がみずから命を守り抜く、主体的に行動する態度を育成する防災教育の推進等の必要性も御指摘をいただいているところでございます。また、今回の大震災の教訓からも、地震、津波が発生した場合の具体的な対応について示したマニュアルを今年度中に作成、配布する予定としております。

 そうしたところで取り組みを進めておりますが、先ほどいただいた御提案でありますとか、あるいは有識者中間取りまとめ等も踏まえまして、防災教育の充実に一層努めてまいりたいと思います。今後もまた知恵と工夫をいただければありがたいと存じます。

林委員 各都道府県なり、あるいはまた市町村の教育委員会に周知徹底して、やれるところから始めていただきたいというふうに思いますので、ぜひその辺はよろしくお願いいたします。

 続いて、津波被害を防止したり軽減するためには、その予測が非常に大事だと思うんですね。それをいち早く、あるいは迅速に正確に適切に知らせるということになればなおいいわけでありまして、その予測をするのにいろいろ研究が必要なんだろうと思っております。

 そういう意味で、大学の研究機関と例えば気象庁が連携をとって、その予測のための学術研究、調査研究をどんどん進めていくということがされればなおいいんじゃないかというふうに思うのでありますけれども、そういったことの考えがあるかどうか、ちょっとお尋ねします。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘をいただきました省庁間の連携、また官学の連携は、大変重要だというふうに考えております。

 これまでには、政府の地震調査研究を一元的に推進しております地震調査研究推進本部においては、東北地方太平洋沖地震を踏まえて、本年九月に、来年度の概算要求において、海底の観測システムから得られた津波波形データを用いた、より迅速で精度の高い津波情報を発表するための研究開発を促進すべきというふうにいたしております。

 これを受けまして、文部科学省におきましては、東北地方太平洋沖地震及び東南海、南海地震の想定震源域においてリアルタイムで地震、津波を検知できる海底観測網を充実強化することといたしております。

 これらによりまして、発生した地震、津波に関する警報の早さや精度の向上が期待されるところでありますけれども、文部科学省といたしましても、そうしたものを通じながら、また、大学等の研究機関の知見を生かしつつ、また、気象庁等関係機関ともしっかり連携をして、地震、津波被害の軽減に努めてまいりたいというふうに存じます。

林委員 それでは次に、津波防災地域づくりに関する法律案についてお尋ねいたします。

 この法律案は、この大震災の被災地だけでなく、全国で津波被害に強い地域づくりを進めるために提案されたものであるというふうに聞いています。

 そこで、首都直下地震、あるいは東海、東南海、南海地震など、今後発生が予想されております大規模地震に備えて国はどのような防災対策を考えておられるのか、ちょっとお尋ねします。

後藤副大臣 お答えをします。

 先生の御指摘のように、これからいろいろな地震が想定をされて、今、大きく分けて二つ、今般の東日本大震災を踏まえてということで検討をしております。

 一点目は、東海、東南海、南海地震であります。

 これにつきましては、南海トラフの巨大地震モデル検討会というものを設置し、想定すべき最大のクラスの地震像について現在検討し、まず、今年の十二月、来月を目途に、想定すべき地震や津波を起こす領域の設定の考え方についての中間取りまとめをし、そして来年の春、三月から四月をめどに、最大クラスの地震、津波の高さ等の推計結果についての最終的な取りまとめを行い、その上で、人的、物的な被害想定を行うこととしております。

 さらに、これと並行して、具体的な対策についても、東日本大震災から得られた教訓の整理などを進めながら、再来年、平成二十五年の春には、災害想定を反映した対策を取りまとめることにしております。

 また、首都直下型地震につきましては、現在はマグニチュード七クラスの首都直下型の地震というものを想定して対策を講じておりますが、さらに、相模トラフ沿いで発生するマグニチュード八クラスの、いわゆる関東大震災クラスの地震の想定をし、現在、想定の見直し作業を進めておりますが、まだ具体的にまとまった形になっておりません。あわせて、この首都直下型につきましては、首都中枢機能の確保のあり方、帰宅困難者の対策等につきまして並行的に検討を進めておるところであります。

 いずれにしましても、先生が繰り返し御発言をなさっているように、一どきにすべての被害対策が講じられるわけではありませんが、できるだけ早目にというスピード感と、そして内容を最大クラスという、想定外という言葉を二度と使わないように、二つの側面から、できるものから確実にやっていくということも踏まえて、今後想定される大規模災害に備えた防災対策の充実強化を図るために、先ほど来御報告しているように、防災対策推進検討会議、中央防災会議のもとでありますが、議論を踏まえながら、今回の教訓を踏まえた具体的対策の確立に総合的な力を発揮して対応してまいりたいというふうに考えております。

林委員 質問通告していないんですけれども、副大臣、例えば首都直下型地震ですけれども、これに関して東京都と国とはどういう連携といいますか協議などを進めておられるのか。国だけやっておってもこれは仕方がないんじゃないかと思うのでありまして、やはり東京なり、あるいは首都はもうちょっと広いですから、神奈川も千葉も埼玉も入るかもしれませんけれども、そういった地方自治体との協議、連携、そういったものはどのぐらい進んでいるのか、教えてください。

後藤副大臣 まず、首都直下型地震に係る首都機能確保の検討会でありますが、これは現在まで、十月二十日、十一月十日、十一月三十日、あしたですか、予定されています。

 ここでは、先生が御指摘のとおり、国や学者だけではなく、東京都の方々や首都圏の茨城、埼玉、千葉、神奈川の副知事や、新宿区長、八王子市長にも協議会の構成員として……済みません、これは帰宅困難者の協議会であります。

 まず、帰宅困難者の部分では、関係地方自治体の首長さんも含めて協議をしており、現在まで二回、帰宅困難者の対策協議会については議論を進めております。これは、六百五十万人の帰宅困難者が発生するという大きな想定の中で議論を進めて、来年の夏ぐらいまでには最終的な取りまとめを行うという前提で、中間取りまとめは来年の春にはしていきたいということです。

 首都直下型の首都中枢機能確保検討会については、先生御指摘の部分でいえば、東京都の総務局企画調整担当部長にも御参加をいただき、議論を進めているところでございます。

 いずれにしても、国だけという協議会のあり方ではなく、関係地方公共団体並びに民間の有識者の方も含めて議論を進め、できるだけ具体的な対策が講じられるように、最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

林委員 次に、この法律案では、従来のハード整備だけじゃなくて、避難体制の整備などソフト施策と組み合わせることにより、津波防災地域づくりを総合的に推進することを目的としているわけでありまして、津波対策推進法に沿ってさまざまな施策を用意していることにつきましては高く評価するところでございます。しかし、それが津波対策として有効に機能しなければ、これからも国民の安心、安全は保障されません。

 そこで、実効性を担保する方策についてお尋ねいたします。

 まず、国民の皆さんにとって最大の関心事は、自分が住んでいる場所が津波被害の危険にどれくらいさらされているかということではないでしょうか。今回の大震災でも、想定外という言葉は使いたくありませんけれども、予想以上の高さに津波が襲い、逃げおくれた方も多いとのことであります。

 この法律で都道府県知事が決めるとされている津波浸水想定がどのようにして設定されるのか、それがまず重要ではないのかなというふうに感じます。具体的に、津波浸水想定がどのような地震を前提にして、どんな方法で設定されるのか、お尋ねします。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の、津波浸水想定につきましてどのように設定していくのかということでございます。

 まず、津波浸水想定につきましては、国土交通大臣が、全体に関する基本指針、この中では、津波浸水想定の設定に関する指針、こういったものも定めることとしてございます。そして、これに基づきまして、地域の実情をよく知っている都道府県においてこれを具体的に設定する、こういう役割分担としているところでございます。

 その具体的な設定方法といたしましては、まず、津波について、どのような地震を対象とするかということでございまして、これは、最大クラスの津波が最悪の条件下で来襲するということを想定してございます。

 これにつきましては、基本的には、内閣府あるいは地震調査研究推進本部などの調査検討も踏まえまして、国において最大クラスの津波を設定するということを考え、その最大クラスの津波に基づきまして、地震の原因、津波の原因となります断層の動き、これは波源域と呼んでございますが、こういったものを設定しまして、さらには、詳細な地形データに基づきまして具体的に津波の再現あるいは予測のシミュレーションを行い、こういったことを進めるというふうにしてございます。

 なお、このときに、基礎調査については、国が示します基本指針に基づきまして国と都道府県が連携して行う、こういった組み立てで進めるということを考えているところでございます。

林委員 時間がなくなってきましたので最後になるかもしれませんが、避難体制の整備についてお尋ねをいたします。

 津波は、先ほど述べましたように、稲むらの火の教訓からもわかるように、いち早く逃げるということでありまして、そのために、やはり教育や訓練を確実に実施すること、くどく申し上げたのはそのことでありました。

 そういう中で、首都直下地震や東海、東南海、南海地震のいわゆる三連動地震の切迫性が高まる中で、既に各市町村によって避難施設や避難路の指定が進められているわけでありますが、今なお十分であるとは言えないわけでありまして、さらにスピードアップしなければならない状況であります。

 この避難体制について、津波災害警戒区域において、警戒避難体制を特に整備すべき区域として位置づけられておりますけれども、国として、避難施設や避難路などの整備に向けてどのような支援措置を考えておられるのか。そしてまた、津波に関する予報や警報、避難の勧告や指示が的確かつ迅速に伝達されるための体制の整備について国としてどのように取り組んでおられるのか。特に夜間などは停電になってより困難になるおそれがありますので、その辺もあわせてちょっとお尋ねいたします。

中島政府参考人 避難施設や避難路の整備でございますが、まず、今回の被災地におきましては、三次補正予算で措置いたしました復興交付金を活用いただけるかと思います。それから、全国におきましては、これまで社会資本整備総合交付金を活用して避難施設や避難路の整備を支援してまいりましたので、今後ともこの予算を充実してまいりたい。来年度、二十四年度の予算要求におきましても、新たに、市町村が指定する一定の避難ビルの整備の支援を盛り込んでいるところでございます。

 夜間のお話がございました。

 確かに、夜間に避難施設、避難路をどう表示するかというのは大変重要な問題であると思います。中央防災会議の専門調査会でもこの点指摘がございまして、夜間対策を講じるべきであると。さまざまな素材があるようでございまして、蓄光石というようでありますが、光を吸収して夜に光るようなセラミックであるとか、あるいは蓄電型のライトでありますとか、そのようなものの活用が指摘されております。

 このような知見も得まして、国交省としましても、避難施設の自家発電施設の整備や、夜間の避難に資する蓄電型の防災灯の整備など、今後とも支援をしてまいりたいと思います。

林委員 時間が参りましたので同僚の谷議員に譲りますけれども、国民の皆さんの津波への意識向上がどんどん図られて、津波災害による被害の大きな軽減が達成されることを念願して、質問を終わります。

伴野委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今回の津波防災地域づくりに関する法律案、先ほど林委員の方からも話がございましたが、津波対策推進法を受けた、いわば現行の法律名で津波と名乗っているのは津波対策推進法ただ一つでございますが、それに次ぐ二つ目の津波という法律の題名で、新たな防災に強い地域づくりをしていこう、そういう政府の取り組みについては敬意と感謝を申し上げたいと思います。その上で、より津波対策を実効性あるものにするために、具体的な取り組み、そして政府の覚悟を、以下、限られた時間ではございますけれども、お尋ねしたいと思います。

 古賀委員長もおられますけれども、私は震災復興特別委員会の理事をさせていただいておりまして、きょうの本会議で復興特区法案も通ったわけであります。その関係をも含めてお尋ねをしたいと思います。

 まず、今回の法案は、基本的なことからでございますけれども、六月二十五日の復興構想会議、五百旗頭議長の提言に次のようなものがあります。「津波災害に強い地域づくりを推進するにあたっての基本となる新たな一般的な制度を創設し、」という提言があります。それを受けた一般的な制度、そういう法律かどうかということをまず確認いたします。

前田国務大臣 まずは、今、谷委員が御指摘のとおり、復興構想会議の提言に掲げられた、津波災害に強い地域づくりを推進するに当たっての新たな一般的な制度ということを受けて制定しておりますが、先ほどの御議論の中でも出ておったように、もともと、津波対策基本法の理念といったものをベースにして、一般法という形で制定させていただいたところであります。

谷委員 一般法、今大臣の言われる津波対策の推進に関する法律、いわゆる津波対策推進法、あるいは津波対策基本法でもよろしいですけれども、それを受けたということであれば、私は、法律の中にそのことをしっかり書いていただきたかったと思います。何か、津波対策は議員立法だから政府の出す閣法は引用しなくてもいいのではないかと、やや、斜めに見るわけではないんですけれども、これは何も特別なことを私は言っているわけではございませんよ。きょう衆議院本会議を通った特区法案、あれも法律の中の一条にはっきり書いてあります、復興基本法に基づいてこの法律をつくったということを。ですから、そのことを、隣に二階先生もおられますけれども、津波対策基本法の提出者として、そういう思いがあるということだけお伝えをさせていただきたいと思います。

 さて、きょう後藤内閣府副大臣が来られていますけれども、一般法ということであれば、なぜ国交省がこの法律を出すのか。国交省が出して悪いというのではないのですよ。一般法であるならば、国土交通省所管の法律なり事業だけではなくて、農地法があり、森林法があり、津波対策を効果的に推進するためには、国土交通省の所管事業といいますか法律といいますか、それがメーンであることは認めますけれども、それ以外に、やはり現実的には、災害に強いまちづくりをしようと思えば、農地転用の問題とか森林の開発許可の問題とか、さまざまなことが出てくると思うんです。現に復興特区法案はそうでした。そして、一元的にそういう要望を、要望といいますか、許認可ができるようなシステムも特区法案の中では書いています。

 今回はそういったものが全くありません。なぜ国土交通省所管ということで政府部内でまとまったのですか。お尋ねします。

 でき得れば、内閣府としてもっとリーダーシップをとって、メーンは国土交通省だけれども、全体としては、それこそ災害対策の総元締めじゃないですか、内閣府。個別のことは国土交通省が頑張ってちょうだい、それでは何か、国の災害対策の司令塔という割には寂しいと思いますけれども、所見をお伺いいたします。

後藤副大臣 先ほど谷先生御本人がおっしゃられたように、先ほどの津波対策の推進に関する法律、いわゆる津波対策基本法は、本当に谷先生、二階先生、林先生が中心になって御尽力をしていただいて、大震災という大きな節目はありましたが、それに基づいて、基本法から具体的な個別法に移るというふうなことで、今回の津波防災地域づくり法案が提出をされているというふうに承知をしております。

 当然のことながら、津波対策の推進に関する法律につきましては、言うまでもなく、津波対策を総合的に推進すべしという大きな枠組みをお決めいただき、それに基づいて、今回、国交省というよりも政府として、国交省が所管する法律が非常にたくさんあるし、特に施設整備や建築基準、都市計画の具体的な施策を組み合わせるということで、津波災害に強い地域づくりを全国で推進するというふうなことであると承知しております。

 先ほど来私も御報告をしているように、現在、中央防災会議のもとでいろいろな議論がされており、津波対策基本法や今回の津波防災地域づくりに関する法案についても、中央防災会議の防災基本計画の中に、その要点というものはこれから整理をしながら、十二月中にまとめていきたいというふうに思っておりますし、谷先生が御指摘をいただいたように、内閣府としても、予算自体をたくさん所管している省庁ではありませんが、総合調整能力を発揮して、まず、具体的に市町村や国の機関にそれぞれ共通項として対応ができる防災基本計画を抜本的に見直す中で、リーダーシップをとりながら、政府全体、そして国と地方公共団体の橋渡しとして、津波対策も含めた災害対策の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

谷委員 せっかくの後藤副大臣のお答えでしたけれども、意味がよくわかりませんでした。答えていないんですよ、私の質問に。まあ、この場はもうこれ以上は……。笑わないでください。何も納得していないですよ。そうでなければ、要は、まじめな話、内閣府の存在意義がなくなるからですよ。だって、基本法は政府がつくったんじゃないんですよ。我々がつくったんです、議員が。それを、所管がたまたま内閣府にあるだけですよ。そして、個別法は国土交通省というのはちょっと寂しい、そういう思いです。

 視点を変えて、前田大臣にお尋ねをいたします。

 そうしたら、今回の法案で、津波対策のために、和歌山でも千葉でも静岡でもよろしいですよ、高台移転も含めて、本当に津波に強いまちづくりをしようと思えば、省庁間の垣根を越えた土地利用再編ということになっていますか。住宅地と農地が混在する地域において、この法案でうまくいきますか。農地法の特例は一般法になりますよ。所見をお伺いしたいと思います。

前田国務大臣 この法案は、これだけの甚大な津波、津波の甚大性だとか、それから広範性といいますか、そういったことを含めて、将来の津波災害の予防を図るために全国的に必要とされる措置を定めるわけでございますから、そういう意味で私も先ほど一般法というふうに申し上げたわけなんです。

 そのほかの土地利用との調整という御指摘でございましたが、予防といいますか、大きな津波というものを想定してやる場合、施設的には確かに、まずは第一にやっておかなければならないのは、我々国土交通省管内のものが非常に大きいわけです。

 例えば、甚大性ということで、この前の東北震災のあの津波のときに、例の仙台東道路というようなものが結果的には随分と大きな効果を発揮しただとか、そういったことも含めて考えていきますと、一般的には、まずは国土交通省内で対応できるものをここに入れておるわけでございまして、多分、復興特区法案等においてはそういう調整をワンストップでできるというような対応もしているわけでございますが、今回のこれは、広範囲の、全国的に、一般的にという意味で、それは個別の法律、土地利用制度との調整ということにゆだねているわけでございます。緊急性というか、目の前の緊急性ということに視点を置いているわけでは余りないのかなという感じがいたします。

谷委員 今大臣御答弁ありましたように、まずは国土交通省という法案なんです、これは。それはそれで意味がないとかいうことじゃないんですよ、冒頭お話ししましたように。国土交通省に津波防災のプロの方がたくさんいるということも私も十分承知しています。各省庁の中で一番ノウハウがある省庁かもわかりません。ただ、それにしても、せっかく特区法案で省庁横断的に内閣府がまとめてやったわけですから。

 ですから、今回の法律にある集団移転促進事業あるいは土地区画整理事業、農地を抜きにして考えられないでしょう、実際問題。考えられないですよ、実際のところ。何も東北の特性でも何でもないですよ。全国でこういう防災に強いまちづくり、集団移転をやろうと思えば、どうしても農地法とか森林法がひっかかるんですよ。ひっかかるからこそ、特区法案ではそれらの特例も定めた。そういう取り組みをぜひしてほしかったということを指摘させていただきます。

 予算措置の話に移ります。

 本会議の特区法案でも私は前田大臣にお尋ねしました。被災地については、先ほど来話がありますように、復興交付金で相当充実しています。それは率直に私も認めます。認めますけれども、では、被災地以外はこの法律によってどんな予算措置があるのか。東海、東南海、南海地域のエリアの方々に、せっかく津波対策基本法が成立して、今回、この津波防災地域づくりに関する法律が仮にできたとしましょう、さて、これに基づいてしっかりとしたまちづくりをやろうかなと思っても、どれだけの予算措置がありますか。補助率の特例がありますか。補助の裏についている交付税措置が従来の制度よりも充実していますか。お尋ねします。

前田国務大臣 被災地以外についてのお尋ねだと思うんですが、第三次補正予算において、東海、東南海、南海地震等に備えるための堤防のかさ上げ、水門の遠隔操作の自動化等、全国防災に係る予算を計上しております。とともに、平成二十四年度予算要求においても、全国で災害に強い社会基盤整備を緊急に進めるための予算措置を重点的に盛り込んでいるところであります。

 加えて、本法案によって創設される一団地の津波防災拠点市街地形成施設に関する都市計画制度を適用すれば復興の拠点となる市街地を用地買収方式で緊急に整備する事業に対して支援ができるだとか、制度的な拡充が図られるということで、かなり幅も広がった、このように思っております。

谷委員 少し大臣の認識と私の認識とは違います。

 現行の制度で予想される、林委員は先ほど三連発と言われましたけれども、そういうエリアの自治体が整備を図ろうと思っても、一番ネックはお金なんです。二分の一の補助、裏はそこそこの交付税措置という、従来のスキームではとても対応できないと思います。

 だからこそ東日本の被災地でも、大変高い特例的な補助率を、補助率というか交付金をつくり、その裏も、交付税を特例的にふやして手当てをした。だから被災地は動いたんです。今回も、相当思い切ってこの津波防災まちづくり法案を進めるための予算措置がぜひ必要かと思います。今、ないことは確かです。これから、来年度、あるいは今後、場合によっては我々立法府が、財特法といいますか、この津波防災をしっかり行うための財政上の特例措置の法案も政府の動きによっては検討せざるを得ないとも思いますけれども、大臣としての覚悟をお尋ねします。

前田国務大臣 確かに、率直に申し上げまして、今の東日本のあの被災地における対応、ここは、地元負担をなるべく軽くといいますか、なきようにというぐらいのかなりの対応を、委員初め国会において相当の御議論をしていただいて今対応されているわけですが、そのスキームを直ちに全国に、これから起こるであろう、心配される地域全体に適用するというのは、いささかまだ無理があると思います。

 この面について、しかし、この法案が成立した暁に、ぜひ委員を初め先生方の御支援をいただいてなるべくスムーズに進むようにしてまいりたい、このように思います。

谷委員 私は何も、被災地以外にも今回の被災地と同じような特例を設けてくださいとは言っていないんですよ。ただ、現行の補助率にとどまる限り、地元は動きませんよ。幾ら立派な法律をつくっても、自治体がやらなければ意味がないでしょう。そのことを指摘しているわけです。そのためには特例的に、二分の一の補助であれば三分の二にするとか、あるいは四分の三にするとか、そういう思い切った対応がないと、地元は動きたくても動けませんよ。そのことだけを指摘させていただきます。

 ちょっと時間が参りましたので、最後に。

 先ほど林委員の質問で、関水管理・国土保全局長が被害想定のことを言われていました。どれぐらいの浸水想定をしているのか。最大クラス、最悪の条件と、やや抽象的な答弁でした。

 一つだけお尋ねいたします。

 そうしたら、これからつくる被害想定は、東日本大震災以上の被害想定をつくるというのが基本だ、そういう理解でよろしいですか。局長でもいいですし、大臣でもいいです。基本的な、要はわかりやすい言葉で言うてください。どれぐらいの被害想定なんですか。東日本大震災以上ですか。そういう理解でよろしいですか。

関政府参考人 東日本、東北におきましては、今回の津波クラスを対象とした浸水想定をつくっていくということで考えてございます。

谷委員 時間が参りました。ぜひ今後とも積極的に、国土交通省も頑張っていただきたいですし、内閣府、後藤副大臣、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 津波防災地域づくりに関する法律案並びにその整備法案について質疑をさせていただきます。

 この法案の立法の背景ということで、東日本大震災により甚大な被害を受けた地域の復興に当たっては、将来を見据えた津波災害に強い地域づくりを推進する必要がある、また、将来起こり得る津波災害の防止、軽減のため、全国で活用可能な一般的な制度を創設する必要があるという御説明でした。これに反対する政党はないと思います。

 国土交通大臣の方で基本指針を定めて、都道府県知事が基本指針に基づいて津波浸水想定を設定して公表する。市町村は、その基本指針に基づいて、かつ津波浸水想定を踏まえて、津波防災地域づくりを総合的に推進するための計画、いわゆる推進計画を作成することができるということで、幾つか新しい政策が取り入れられています。

 こういうハード、ソフトの施策を組み合わせた法案をつくっていただいて、これは本当に御苦労をおかけしたというふうに思いますが、これまでも、今回の震災になる前も、実は、内閣府と農水省と国交省の共管で、平成十六年の三月に津波・高潮ハザードマップマニュアルというのが作成されています。国交省の方から資料をいただきまして、百三十ページぐらいあるんですが、これを全部読ませていただきましたけれども、ここでも同じようなことはもう言っていたんですね、ハードとソフトをあわせて津波災害に対してきちんと対応していこうということで。

 これは各市町村が基本的にはやられていたと思うんですが、この十六年三月に策定された津波ハザードマップマニュアルを今回の法案の中ではどんなふうに取り入れようとされているのか、ちょっと関係性がよくわかりません。このあたりは国交省の方はどんな認識でいられるんでしょうか、教えていただければと思います。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、平成十六年三月に、内閣府、農林水産省、国土交通省の作成により、津波・高潮ハザードマップマニュアルというのを策定してございます。

 今回、現在法案を御審議いただいているわけですが、今後、津波浸水想定の設定も含めまして、ハザードマップを具体的に作成していくという過程に入るわけでございますが、当時、全国のハザードマップ作成担当者を支援するという目的で策定したこのハザードマップマニュアルにつきましては、本法案についても、具体的に策定するに当たっては、参考としてこのマニュアルが活用されるものというふうに考えております。

 またさらに、近年の新たな知見を踏まえまして、平成二十三年の東北地方太平洋沖地震による津波対策のためのシミュレーションモデルをベースにしたシミュレーションの手引というものも通知しておりまして、こういったマニュアル、手引等を参考に、都道府県においてより現地に即した形で津波浸水想定が設定されるよう進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 今のはいいですけれども、実はこのハザードマップマニュアルで、市町村と都道府県と国の役割分担というのが決められています。

 このハザードマップマニュアルの二十七ページに表が載っているんですが、この役割分担の考え方によりますと、市町村が津波・高潮ハザードマップを作成する、その際に、住民参加による地域の創意工夫、自衛意識の向上、周知の徹底等を図るというふうに書かれています。では、都道府県は何をするんだというときに、複数の市町村にまたがる場合や単独市町村で実施困難な場合の検討の実施と津波・高潮ハザードマップ作成支援、あと、外力・浸水予想区域の設定や被害想定等というのが都道府県の役割にされています。では、国はその上で何をするのかというと、複数の都道府県にまたがる場合や単独都道府県で実施困難な場合の検討の実施と都道府県、市町村への技術支援、あるいは、行政手法の開発、強化。このあたりが今局長が言われた新しいところだと思うんです。

 このハザードマップマニュアルの中で言われている国、都道府県、市町村の役割と、今回の法案の、基本指針を大臣が決めて、想定を都道府県知事がやって、実際には計画は市町村がやるというのは、ちょっとずれているように思うんですが、そうではないんですか。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の平成十六年につくられましたマニュアルに、先生御指摘のように、市町村、都道府県、国の役割分担が書かれてございます。本法におきましても、国は広域的な検討や技術支援、そして都道府県が津波浸水想定を策定し、それを具体的に市町村がハザードマップを作成するという、基本的には同様の役割分担で行っていくということを考えているところでございます。

富田委員 この法案の構成はちょっとそういうふうになっていないと思うんですけれども、もともと、ではこのマニュアルに従ってやるという前提はそのままでいいということですか。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 ハザードマップマニュアルにおいては、具体的な形での役割分担を実際に現地で進める場合の一つの指針として示されているということでございます。こういった基本的な考え方は、本法律に基づいて今後浸水想定を設定し、また現地でハザードマップを策定していく、そういう基本的な役割分担については同じ考え方で進めていくということを考えているということでございます。

富田委員 今の局長の答弁を前提にすると、このハザードマップマニュアルの方では、浸水予測区域の外側に、バッファーゾーン、予測上は浸水しないけれども、予測の不確実性を考慮すると浸水のおそれがある区域というふうに規定されていますが、バッファーゾーンを設けて、浸水予測区域とバッファーゾーンとをあわせて要避難区域として示す工夫が必要だというふうな指摘が書かれていました。

 都道府県知事の方で浸水想定を設定する際に、こういうバッファーゾーンも含めてきちんと設定して市町村の方に示していくようになるんでしょうか。そこはどうですか。

関政府参考人 御指摘につきまして、ハザードマップを策定していくに当たりまして、バッファーゾーンというものは、予測の不確実性を考慮して、一応計算で出てくる範囲よりもさらに広くなる、そういったリスクをどこで踏まえてハザードマップを策定していくかということでございます。

 今後、本法案に基づきまして具体的にハザードマップを策定していくに当たりましても、こういったバッファーゾーンの考え方というものを、現地で要避難区域としてあわせて設定していくということが必要であろうというふうに考えております。また、本法案については、先ほども御説明させていただいておりますが、いわゆる最大クラスの津波を想定するということではございますが、基本的には、こういったバッファーゾーンの考え方というのは引き続き必要であるというふうに考えております。

 いずれにしましても、こういった考え方を踏まえ、地域の特性を踏まえまして、より的確なハザードマップが作成できるよう市町村を支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 バッファーゾーンも考慮するということですけれども、委員の皆さんのお手元に資料一をカラーで配らせていただいていますが、ちょっとごらんいただきたいんです。

 これは「津波ハザードマップの予測浸水深と今回の浸水実績の比較」ということで、釜石市の大槌湾のところの地図であります。釜石市の方でつくった地図をちょっとコピーさせてもらったんですが、これを見ていただくとわかるんですが、一番外側の水色の太い線のところまで今回浸水しています。ハザードマップは、もっとずっと湾に近い方だけが色がついています。それぞれの、昔の明治の三陸地震津波の来た位置、あるいは昭和三陸津波で来た位置も、ちょっと見にくいですけれども、線でかいてあります。今回、そこをはるかに超えて来た。

 今回の津波を基準にして今後考えるというふうに先ほど答弁がありましたので、それでいいと思うんですが、実は、予算委員会で視察したときに、ここの釜石のことを国交省の地元の整備局長に御説明いただいたんですけれども、ここに、真ん中あたりに釜石東中学校と鵜住居小学校と赤で書いてあります。そして、鵜住居小学校に注釈がついていまして、「三階建て校舎の三階まで浸水」というふうに書いてあります。

 そのとき整備局長に伺った話では、釜石東中学校で、二時四十六分、地震が発生した。グラウンドでサッカー部の生徒がサッカーの練習を始めようとしていた。物すごい地震なので、それまで釜石では各学年でいろいろ防災教育をしていましたので、これは津波が来るということで、サッカー部の生徒がいきなり、この地図でいうと、ございしょの里と下に書いてありますが、ここが避難場所に指定されていた、ここに向けて中学生が走り出した。

 横に鵜住居小学校、三階建てと書いてありますが、鵜住居小学校では、危ないということで地震発生直後に先生方が児童を全部三階に上げた。ところが、三階に上がった子供たちが、隣の中学校のお兄ちゃんたちが走り出したので、これは津波が来るということで、先生の指導じゃなくて、自分たちで三階からおりて中学生を追いかけて、最終的にございしょの里に中学生と小学生が全部向かったんですね。

 ございしょの里は避難場所ですから、ここで大丈夫だとなったら、裏山に亀裂が入っているのに中学生が気がついて、ここも危ないということで、一番左下の方にちょっと小さな赤字で石材店と書いてありますが、ここまで逃げた。ちょうど一キロです。石材店に行って大槌湾の方を見ますと、津波が小学校にずっとかぶってくるところが見えた。

 ここから、実は、先ほども大臣の方から縦貫道のお話がありましたが、三陸縦貫道の釜石山田線が五日前に、この石材店のちょうど上に完成して、鵜住居小学校の子供さんたちがその完成式典に呼ばれて、そこから風船を上げていた。ここが一番高いところだと子供たちがわかっていたんですね。中学生も含めて、近くの保育園の子たちもここに合流したようですが、全部が高速道路の上に上がって、最終的には、そこを通りかかったダンプの運転手さんがいろいろ声をかけて、もっと安全な場所に全部連れていってくれた。

 こういうハザードマップをつくってバッファーゾーンも入れても、そこを超えてくる可能性があるものをどういうふうにしていくのか。私が文部科学委員会で防災教育をやるべきだと言ったら、文科省の方で今度、先生たちがそういうふうな教育をしてくれるようですが、浸水想定をする際も、バッファーゾーン、プラス、今回こういうことがあったんだということを具体的にそれぞれの地域から情報を集めて、国交省の方が中心になって、都道府県知事に対して、大臣が基本指針を決めますけれども、具体的な、こういうこともあるんだということを情報提供していくべきだと思うんですが、大臣、その点はどうでしょうか。

前田国務大臣 富田委員の今の御指摘というのは、非常に示唆に富んでいると思います。単に指針を示して都道府県知事に津波浸水想定をやってもらうというだけにとどまらず、そういった今回の体験というのを踏まえた、歴史を記憶にとどめるといった視点が非常に重要かと伺っておりました。ぜひそういったことも検討したい、このように思います。

 そして、加えて、今御説明のあった、まさしくあの釜石の例というのは、よく児童生徒が助かってくれたなと本当に思います。先ほど、林委員だったでしょうか、石巻の大川小学校の例も指摘されておりましたが、本当に、ふだんの訓練が教育の中でなされておるかどうかでこんなに大きな違いがあるかということを、お話を聞きながらまざまざ感じておったところでございます。

    〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕

富田委員 ぜひ大臣の方で指針を示す際も今のように御配慮いただきたいと思いますし、津波浸水想定を都道府県知事が公表するに当たって、ここまで危ないんだというのを住民の皆さんにどういうふうに徹底していくのかというのが大事になると思うんですね。

 周知方法をどう考えるか、あるいは住民の皆さんにどう理解していただくかというのも、都道府県知事が浸水想定を策定して公表するに当たって考えるべきだと思うんですが、そのあたりは国交省としてはどんなふうに考えているんでしょうか。

前田国務大臣 都道府県知事は、法案第八条に基づき津波浸水想定を設定したときは、速やかに公表しなければならない、こうなっておりますが、都道府県の公報への掲載に加えて、印刷物の配布やインターネット等による周知を図るとともに、防災訓練における活用、ハザードマップの整備に反映させ、その活用を図るというようなこと、きめ細かくしっかりと周知を図っていくことが必要であると考えております。

 その中に、先ほど富田委員の御指摘のような、歴史の経験、歴史の体験を、これだけの悲劇でありましたが、それをちゃんと記憶にとどめるような周知徹底ということができないか、その辺のところも検討させていただきたい、こう思います。

富田委員 あわせて、これに関連するんですが、実は法案の第五十五条に、住民に対する周知のための措置という規定をわざわざ設けていただいています。これは、「警戒区域をその区域に含む市町村の長は、市町村地域防災計画に基づき、国土交通省令で定めるところにより、人的災害を生ずるおそれがある津波に関する情報の伝達方法、避難施設その他の避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項その他警戒区域における円滑な警戒避難を確保する上で必要な事項を住民等に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布その他の必要な措置を講じなければならない。」

 今大臣ちょっと触れていただきましたけれども、今度は市町村がこういうこともやるべきだということも法案に規定していただいています。これは具体的にどんなことを想定してこの条文をつくられたのか。局長の方でも結構ですので。

関政府参考人 ただいま、五十五条の規定に関しまして先生の方から御指摘がございました。

 具体的にどんなことを想定していたのかということでございますが、実際にハザードマップを整備、配布し、住民の方々に御理解いただいて、実際の避難行動にいかに役立てていくかということが重要でございます。

 そういう意味では、ハザードマップを住民の皆様に配布する、配らせていただくということはもちろん大事でございますが、さらには、さかのぼりまして、実際にハザードマップの作成段階にも地域の皆様に加わっていただきまして、地域の学習会、あるいは防災訓練、避難訓練、こういった中でもしっかりとハザードマップについて知っていただき、そして実際の避難行動に移していただく、こういった取り組みも必要だと考えておりまして、そういったことも想定しながら進めてきているところでございます。

富田委員 ぜひ今局長が言われたのを実行に移していただきたいと思いますし、釜石の奇跡を生んだのは、群馬大の片田先生がずっと地域の方たちを巻き込んで、まず児童生徒の父兄を巻き込み、地域の方を巻き込んで一緒にハザードマップをつくり、つくった上で、それ以上の災害があるんだという認識をしてそこから避難訓練をした、そういう積み重ねがありますので、ぜひ今の局長の言われるとおりやっていただきたいんです。

 資料の二―1から二―3まで三枚、「市報いしのまき」という石巻市の広報のコピーを配付させていただきました。

 先ほど林先生が、津波の法案をどうしてつくられたのかということを言っておりましたけれども、チリ地震津波で避難される方が非常に少なかった、そこから法案を考えたんだという御指摘でした。実は、この石巻の広報も、資料の二―2を見ていただきますと、「災害は忘れたころにやってくる!」という、これは三月一日に出ている広報なんですよね。「チリ地震津波から一年が経過しました。」ということで、注意しましょう、こういう広報をわざわざ石巻は配布されて、資料の二―3、最後の四枚目を見ていただきたいんですが、これは非常にいいことが書いてあるんですよ。「津波から逃れるために」「日ごろからの備えを!」「自らの命は自らが守る」、こういうふうに書いてあるんです。

 大川小学校の件は林先生が指摘されたようですが、石巻では、実際広報がこういうふうに出ているのに、現場ではこのとおりできていなかった。避難場所の特定もされない。私も大川小学校に行ってきましたけれども、あれで裏山に逃げても多分大変だったろうなと。最終的には一番高台というところに向かわれて、結局そこに津波が両方向から来て子供たちが犠牲になったわけですけれども、こういう広報を出していて、現場に届かなかった。

 石巻の教育委員会の方からもお話を聞いたんですが、訓練はやっていましたと言っていました。だから、訓練をやっていたという報告が多分教育委員会に上がっていただけで、大川小学校では実際にはできていなかったというふうに被災後お母さんが調査に答えていらっしゃる例もあります。

 せっかくこういういい広報を出していても、それが現場につながらないということがありますので、この法案でここまで書き込まれたわけですから、都道府県知事が想定を策定して公表する際も、市町村の方で警戒区域の指定とかをされる際も、もう少し具体的に、避難経路を含めて、現場の地域の皆さんがきちんと逃げ切れるんだ、そういったものも法案を実行に移していく際に国交省の方で配慮をいただければなと思うんですが、その点はどうでしょうか。

関政府参考人 御指摘のように、津波想定、あるいはハザードマップを策定し実際に避難に結びつけていただくために、国土交通省としては基本指針を策定いたしますが、さらにそれに基づいて具体的に自治体で進めていただくに当たっての、より具体的に実効ある体制がつくれ、また実効ある避難活動に結びつけるよう、具体的な事例も含めて地域を復興支援させていただき、進めてまいりたいというふうに考えております。

富田委員 ぜひよろしくお願いします。

 次に、時間もありませんので、津波避難ビルの容積率規制の緩和についてお尋ねします。

 規制緩和の目的がどうなんだというのが一点と、実は、平成十七年の六月に、内閣府の方で津波避難ビル等に係るガイドライン検討会というのを設けまして、そこでガイドラインを、こんな分厚いガイドラインなので多分読んだことがある人はほとんどいないと思うんですが、かなり詳細につくられています。全部読ませてもらいましたけれども、本当によくここまで考えているなというのをやられているんです。

 実は、このガイドラインの中にアンケート調査がありました。沿岸地域を持っている市町村に、津波避難ビルを指定していますかというふうに尋ねているんですが、指定していないという回答が六七・六%、高台のみ指定しているけれども原則的には指定していない、一八・九%。せっかくこういうガイドラインをつくったのに、余りにもやっていない。

 これは内閣府の方で平成二十二年にもう一度調査したようですが、六百五十三の沿岸市町村があるようですけれども、そのうちの四百八十、七四%の市町村が指定を行っていないというふうに出ています。

 先ほど来、谷田川先生と林先生の方から旭市の話がありましたが、旭も避難ビルの指定をしていないんですね。やりたいけれどもそういうものがないから、今後どうするかという計画の中で、国の支援をもらいたい、もし指定ができない場合は国や県からお金をもらって避難タワーをつくりたいというふうに市の方では考えているようです。

 こういう、指定がされていないという今のアンケートの結果をどういうふうに考えますか。今回の規制緩和の目的と、現実問題として指定しているところがこれだけ少ないんだという点を、国交省としてはどんなふうに考えているんでしょうか。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、平成十七年に内閣府が行いましたアンケート調査結果におきましては、多くの沿岸市町村で津波避難ビルの指定が行われていないという実態が明らかになっております。当時のアンケート調査の結果では、被災の経験がなく、津波浸水想定もしていないということ、さらに、指定に当たっては民間ビルを指定することが多くなるわけですけれども、必ずしもメリットがないというようなことが回答として挙げられております。

 これに対しまして、今回の東日本大震災の被害を踏まえまして、恐らく市町村も津波対策についての意識が大きく上昇しておるというふうに考えておりまして、実は、本年六月と十月に内閣府と共同でもう一度避難ビルの実態調査を行っておりまして、今、取りまとめ作業を行っているさなかでございます。

 その中で、まだ途中経過ではございますが、今申し上げましたように、意識はかなり変わってきているというふうに考えておりまして、今後、避難ビルの指定を促進するために、この法案において、今御指摘がございました、例えば援助ということでは、避難ビルについての固定資産税の減免措置というものを設けておりますし、それから、先ほど御指摘ございました、容積率を緩和するというような規制緩和、さらに、社会資本総合整備交付金を使いました助成といったようなものも用意いたしておりまして、規制面、それから税、財政といった面から津波避難ビルの整備、確保というものを支援していきたい、このように考えております。

富田委員 ぜひ、市町村の実態を掌握していただいて、国交省の方にバックアップをしていただきたいというふうに思います。

 その津波避難ビルを選定する際、カバーエリアというのを考えるわけですね、この地域はこのビルに避難してもらえば大丈夫だと。このガイドラインを見ましたけれども、なかなか難しいなと。現実に避難していくに当たって、今、何もないときに避難はできるけれども、では、実際にそういう震災があったり津波のおそれがあるときに同じように避難できるのかというところを考えると、このカバーエリアをどう考えていくかというのが非常に大事になるんだと思うんですね。

 このあたりはどんなふうに国交省は考えているんでしょうか。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 避難ビルを今後設定していくというときに、やはり実際に、先生御指摘のカバーエリア、どのぐらいの範囲の皆さんがその避難施設に避難をするかという意味でのカバーエリアの設定は非常に重要なポイントになるというふうに思っております。

 特に、先ほど御指摘のガイドラインが平成十七年にできてございますが、ここでは、実際に津波が来たときにどの程度浸水してしまうのか、あるいは、道路等の避難施設が地震でどの程度被災し、通行が可能かあるいは不可能か、こういったことも十分想定した上で、どの範囲の住民の皆さんが避難できるか、こういったことを具体的に現地の状況に即しながら進めていくということが基本であり、今申し上げました留意点についても、実際に現地でも十分踏まえた上で取り組んでいけるよう支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 ぜひよろしくお願いします。

 ちょっと一点、これは通告できなかったんですが、昨日の読売新聞に、岩手県の方で今回の津波に関して浸水地域のデータを作成したけれども、これを情報公開請求に対して開示しないというふうにしたというような記事が出ていました。理由としては、策定中の都市計画に影響を与えて、浸水地域外の土地投機を招く可能性がある。

 こういう可能性はないとは言い切れないと思うんですが、ただ、都道府県の方が浸水データをきちんととって、今後、これは市町村がここを利用していろいろやっていくんでしょうけれども、情報公開しないやり方というのは、今回、地域を巻き込んできちんと避難計画等をつくっていくというその方向性が決まっているのに、ちょっと逆行しているというふうに思うんですが、どうですか。

関政府参考人 御指摘の県の方での情報の公開については、申しわけございませんが、ちょっと詳細について私の方では現時点で把握をしてございませんが、浸水想定の策定あるいはハザードマップという観点からいけば、情報をしっかり公開させていただいて、地域の皆さんに、まさに避難行動、あるいは実際に具体的にどうルートを考えていくか、そういったことに生かしていただくということが基本であろうというふうに考えているところでございます。

富田委員 ぜひそういう指導をしていただきたいと思うんですね。県の方は、市町村にデータを渡してあるんだから、市町村が開示するのはその市町村の判断だと言われているけれども、それではちょっと一体性が保てないと思いますので、住民の皆さんにきちんと広くデータを提供して一緒に考えていくという姿勢をぜひ国交省の方でも持っていただきたいというふうに思います。

 もう時間が来ましたので、最後に一点。

 先日の大臣所信に対する質疑の中で、羽田の再拡張に伴う騒音問題について質問をさせていただきました。その際に、南風好天時に千葉市上空の交差する点を少しでも山林側に移せないか、何か騒音を軽減する工夫をしてもらえないかというふうにお願いしまして、大臣も長田局長の方も、何とか考えていきたい、来年春、またそういうふうな状況になるわけですから、検討したいというふうに答弁をいただきました。

 先日、千葉県と関係する二十五市町村で構成しています羽田再拡張事業に関する県・市町村連絡協議会に国交省の方から軽減策を提案していただいて、きょうの三時に県あるいは千葉市が公表するということで、三時まではだめだと言われていましたけれども、三時を過ぎたから質問していいんじゃないかと思うんですが、この点は、どんなふうな形でとりあえずの決着、まだ、できれば高度の点も考えてもらいたいというような要望が千葉市からありましたけれども、国交省から聞きましたら、外国の会社もあるので、すぐに高度をどうこういじるとか、なかなか困難だというようなお話、それはそれとしてある意味納得できるなと思いますが、今回のその協議会にどういう提案をされて、県や市がそれをどのように受け入れられたのか、差し支えない範囲で御答弁いただければと思います。

長田政府参考人 今先生の御質問でございます、御指摘の連絡協議会、今月十六日に開催をされました。騒音の影響が特に顕著な経路の交差点部分につきまして、安全性に十分配慮した上で、可能な限り市街地上空を回避する経路に変更しました。

 ということで、関係自治体でございます千葉市から了解が得られましたので、経路の精査を進めまして、経路を確定し、本日、その連絡協議会の事務局である千葉県に対してお知らせをしたところでございます。

 今後のスケジュールとしましては、航空会社への周知を経まして、来年の二月九日からこの新しい経路に変更してまいりたいというふうに考えております。

 また、千葉市等からは、さらに、今先生御指摘のような分散化の問題でありますとか、あるいは高度の問題、いろいろな御指摘をいただいております。安全性を確保しながら分散化を図るということはなかなか困難な問題があるわけでございますが、引き続き長期的課題として検討してまいりたいと思います。

富田委員 迅速に対応していただいて感謝を申し上げます。今後とも御配慮いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小宮山(泰)委員長代理 次に、穀田恵二君。

穀田委員 今回の法案について質問します。

 東日本大震災での甚大な津波被害を考えれば、被災地の復旧復興はもちろんのこと、今後の地震に備え、津波災害の防止、軽減対策と安全な地域づくりを早急に実施すべきであることは言うまでもありません。

 これまで、津波対策でいえば、海岸堤防等の整備などハード的な対策が中心でした。これを改善し、津波の浸水深を加味したハザードマップの作成、迅速、安全な避難、情報伝達など、ソフト施策を組み合わせた多重防御による施策に切りかえる、こういうことが中心ですね。また、線的な防御から面的なまちづくりの視点の対策へ切りかえる、こういう発想が必要だと私も考えます。したがって、本法案がこれまでの発想を変え、多重防御による面的なまちづくりなどを津波防災の考え方としていることは評価できます。

 そこで、まず大臣に確認したいんです。

 津波被害からの復旧復興において大事なのは、特に住民の生活となりわいの再建を基礎にすること、その生活基盤を生かして地域の再生、活性化を図るまちづくり、こうした考え方が必要だと思うんですが、原理原則について伺っておきたいと思います。

前田国務大臣 三・一一のあの悲劇の後の救援、復旧、そして復興の過程で、一つ大きな反省といいますか、それとともに日本人の持っているすばらしさ、それは何かというと、やはりきずなを大切にして、ああいう大変な、身内を失う悲劇の中でも互いに支え合って乗り越えてきたという、そこが大きな、今回の災害の中で見出した日本人のすばらしさであるし、まちづくりの基本として、きずな、つながりということになってくると、コミュニティーということになってくるかなと思います。そのコミュニティーの再生というものを大切にした復興計画でなければならないなというふうに感じております。

穀田委員 まちづくりの方に重点を置いた話をされているんですけれども、私はこの間一貫して、復興特さらには本会議で質問してきましたけれども、復興や復旧ということを考える場合に今一番大切なのは、基礎とすべきなのは、やはり生活再建、なりわいの再建ということを重点に置かなければだめなんだということなんですよね。それは御同意いただけると。いいですね。

前田国務大臣 全く同感でございまして、だから、まちづくりの中にも医職住と言っているんです。イは医療、福祉等の医ですね。ショクというのは、農業を六次産業といいますが、それも含めて、それ以上にジョブですね、雇用機会。そして住まい、まちづくり。これが一体となったまちづくりということを通じて、継続しての雇用、そういったものが確保されるのではないかと期待しております。

穀田委員 なぜこういうことを言っているかというと、もちろん、きずなも大事ですし、あるんですけれども、それを否定しているわけではなくて、やはり生活となりわいというものがあってこそ町があるわけです。町があってあるわけではないという意味なんですね。

 そういう意味でいいますと、その観点から本法案においても国の津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針を策定する必要があるわけですが、基本指針にはそういう観点が盛り込まれているのかどうか、その内容について簡潔に言っていただきたいと思います。

中島政府参考人 基本指針に定める事項の概要を御説明いたします。

 基本指針の内容でございますが、津波防災地域づくりの推進に関する基本的事項、これはいろいろな基本的な考え方、先生おっしゃったようなこともここには書けると思います。さらに、基礎調査、津波浸水想定についての指針となるようなこと、推進計画の策定についての指針、記載内容、関係者の調整その他でございます。そのほか区域設定がありますが、津波災害警戒区域や特別警戒区域の指定についての指針。

 以上のようなことが指針の内容でございます。

穀田委員 だから、今のそういう観点が盛り込まれているか。中身は大体だれでも知っているんですよ。問題は、その哲学がどう入っているのかということを聞いているわけです。どうも、肝心な考え方の基本というものをどう貫かれているかが余りない。ないと言っているのは、その答弁がね。だから、個別の概要はお互いに知っているわけだから、そういう精神はどう生かされているかということを聞いているわけです。

 そこで、私は、本法案を施行するに当たって、具体的な提案をしたいんです。

 法案にある津波防災住宅等建設区や拠点市街地形成施設、さらには話題になっている集団移転促進事業など、復興まちづくり事業というのは相当大規模な工事になるということは言うまでもないでしょう。したがって、この工事は大手のディベロッパーやゼネコンなど建設業者にも発注することになるでありましょう。その際に、被災地の地域経済、被災者の生活再建につながるように配慮した発注を心がけなければならないと考えます。

 そこで、法案にある、国が策定する津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針、もしくは別途国交省として発注の契約に関する指針を策定し、地元雇用の考慮、労働者の賃金について規定することを提案したいと思っているんです。

 例えば、瓦れき処理に関しては環境省が契約の内容に関する指針を策定しています。それによりますと、瓦れき処理事業を請け負う業者と契約を結ぶ内容として、処理事業の適切な実施に関すること、つまり、労働者の賃金については「国土交通省において公表している労務単価・諸経費を採用する等により適正な金額が支払われるよう努めること。また、下請事業者が実際に支払った賃金・報酬を元請事業者が確認する等により、業務に従事する全ての労働者・下請事業者に対し適切な賃金・報酬が支払われるよう努めること。」と書いています。

 さらに、事業の発注方法等についてということで、「業務の発注」の項では、「一方で、可能な限り地元雇用を考慮することも必要であり、」とし、災害廃棄物の処理指針でも「可能な限り地元雇用を考慮した処理とすることを基本」と定めています。

 これらを参考にして、先ほど大臣もわざわざ職の問題について触れられましたけれども、そういう角度が必要じゃないかと思うんですが、大臣の考え方を伺っておきたいと思います。

前田国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 今般の大震災に伴う当面の復旧事業については、被災者雇用の観点から、地域の建設企業の受注の確保を推進するように、地方公共団体に対してそういう取り組みをするようにというふうに求めております。

穀田委員 私が言ったのは、そういう意味でいいますと、それらのところにきちんと書き込んで、先ほど言いましたように、例えば瓦れきの処理に当たっては環境省の文書では書かれている。先ほど大臣からもお話があったように、この復旧復興に当たって極めて大事な、地域の再建には欠かせないという問題としての提起をしたつもりですし、前向きな御答弁があったので、具体的な実行に期待しておきたいと思います。

 そこで、次は、被災地の復旧復興をいかに進めるかについて幾つかの事例を挙げて議論していきたいと思います。

 被災地の復旧復興を進める上でとても大事なのは、先ほど述べたように、被災者が生活やなりわいを再建、再開ができるようにすることが肝心です。そのための支援に国や自治体が全力を挙げるかどうかが問われています。この間、市町村レベルでの財政負担については、復興交付金なども創設されて、国が財政支援することになります。しかし、被災者個人に対する生活再建への支援はどうも弱いというのが私の率直な感想です。

 例えば、被災者個人が住宅を再建する際にかかる費用、自己負担はどれだけ必要か。特に集団移転促進事業について見ると、家を失った被災者が新たに移転する先の土地の部分は自治体が買収、造成などして整備します。その費用は国がほぼ負担します。被災者個人は、土地や建物の費用は自己負担しなければなりません。

 東京新聞で報道されていますけれども、例えば仙台市が試算したものでは、土地と建物の購入など、三千六百万円程度かかると言われています。津波で流された住宅の宅地を売却しても三千万ほどの負担が生じる。これでは移転にちゅうちょするのは当たり前です。自治体が復興計画を決めるのにも、住民の合意形成ができない事態にもつながっています。

 したがって、まず最初に、津波で被災した土地の買い取りについて聞きたいと思います。

 被災地の地価が下落し、現在価格で買い取れば二割から三割にしかならないと言われています。

 石巻市は十二月議会で震災復興基本計画を決めようとしています。基本計画案には、津波被害を踏まえた新たな土地の利用計画も盛り込まれています。堤防機能を持った高盛り土より海側の地域は非可住、すなわち、住むことができない地域とされて集団移転することになります。住民への説明会が行われていますが、買い取り価格がどうなるか、えらい問題になっています。

 市当局は、国交省が基準を決めてくれないから示せないと言っているそうです。国交省としてはどういう基準で対処していますか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今のお尋ねでございますが、防災集団移転促進事業によりまして、被災いたしました移転元の土地を取得する場合におきましては、一般の公共事業用地を取得する場合の考え方に準じて、契約締結時におきます正常な取引価格で取得することとし、事業主体でございます地方公共団体が、適切な不動産鑑定評価などを参考に評価、決定することとしております。

 その際、災害の発生するおそれですとか、災害危険区域に指定されますので、その制限の内容及び程度を勘案するとともに、被災自治体の復興計画等によります土地の効用の回復の見通し等にも留意して、その評価をするということになるわけでございます。

 こうした考え方自体は、防災集団移転だけではございませんで、さきに申し上げました、正常な取引価格を算定する際の一般的な考え方であるというふうに考えております。

 なお、復興計画等によります土地の効用の回復の見通しをどう考えるかということになるわけでございますが、これは、被災自治体によって復旧に要します期間に差がございます。期間に差があること。また、復興計画に基づいて実施される事業の内容もいろいろまちまちで差があります。したがいまして、実際の買い取りに当たりましては、公共団体において、そうした状況をよく勘案した上で個別具体に評価、決定していただくということになるものと考えております。

    〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 話はいろいろあるみたいに言っているけれども、要するに、一つは、用地買収というのは契約締結時と、いわゆる閣議決定に基づいてやっている。二つ目は、そうはいっても将来という見通しが、現実に被災しているわけだから、将来的な価格についても復興との関係で考える必要がある。三つ目は、したがって自治体がやるべきだ、こういうことですよね。

 だとしたら、今私が言っている、市当局としては国交省が基準を決めてくれないから示せないと言っていることについて言えば、それはやはり、国交省としては既に基準は三つぐらい示していますということになるわけですわな。しかし、それでは何の基準も示したことにならぬ。つまり簡単に言えば、結論からいえば、決めなさいと言っているだけなんやから。

 しかも、私、これは大事だなと思うのは、大臣も多分これを次に言おうと思ってはると思うんです。私も調べました。十一月十四日に、大臣はこの問題を含めて答弁してはります。その中で言っているのは、要するに奥尻の話で、八割程度の買い取りをしましたということを言ってはりますわね。多分そういうことを含めて、二つ合わせるとそんなものだというのが一つの基準なのかなと言えぬことはないと思うんです。

 問題は、将来、復旧し整備したときの価格を見込んで買い取りができるというけれども、それは現行制度でやっているということなんですね。そこなんですよ。やっているということなんだ。そうすると、大震災を踏まえた新たな特別な制度でも何でもないということなんですね。それが結論なんですよ。

 そうすると、先ほども局長から答弁ありましたけれども、将来復旧した場合を見込んでというわけだけれども、それぞれの地域によって区分けもあるからと言っていましたけれども、問題はそこなんですよ。

 その場合、復興計画などでどういう用途にするか。線引きすることに当然なりますよね、なるんですよ。そうすると、市街地にするのか、防風林等の地域にするのか、線引きの仕方によってその価値が当然違ってきます。被災前は同じ用途地域で同程度の価格だったのに、線引きによってその価格が違ってくることも出てきます。そうなりますと、不公平感を生むことになるわけですね。ですから、そのことについて、また報道がありますように、防風林などの地域に設定された場合は従前の四割程度という報道もあるわけです。

 そこで、本法案では、都道府県が津波災害警戒区域や特別警戒区域を設定することになっています。設定することは私どもも必要なことだと考えているんですよ。ここは確認し、私もそう思っているんです。その区域に設定されれば、その地域の土地に利用規制がかかるわけで、当然地価は下がる、そうなると思われるわけですね。そうすると、従前の地価に比べて影響は避けられないと思うがどうかということと、もう一つ、では、被災地ではいつごろその区域が設定されるのか、その二つについて聞いておきたいと思うんです。

関政府参考人 まず、津波災害警戒区域、それから特別警戒区域の指定の時期ということでお尋ねでございますが、これにつきましては、本法案が成立して以降、順次地域において設定されていくというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、まず津波災害警戒区域につきましては、地域の避難計画等を策定する、土地利用とは直接リンクしてございませんが、そういった避難計画を策定するために都道府県知事が指定する。それから、この指定に当たりましては、関係市町村の長の意見等を聞いた上で進めていく。それから津波災害特別警戒区域につきましては、地域住民の方々への縦覧あるいは意見書の提出手続、こういった手続を踏まえて進めることとしてございまして、こういったことを踏まえながら、地域としての選択がなされたところから順次指定がなされていくというふうに考えているところでございます。

 それから、地価への影響ということで御指摘ございましたが、それぞれの地域の地価につきましては、一般的に申し上げまして、その場所の区域の安全性あるいは危険性というものを考慮して価格設定がなされている、そういったものであるというふうに受けとめているところでございます。

穀田委員 警戒区域に設定されれば地価が下がるのは、だれが考えたってわかるじゃないですか、そんなこと。上がることは絶対ないですよ、危険な地域なんだから。

 それで、今もありましたように、成立して以後順次と言っているわけだから、非常に時間がかかるということになりますわな。結局、住民にしてみれば、買収してもらえる価格が下がり、移転費用の負担がふえる。結果として、一体幾らかかるのかさえも算定が難しいということになります。そうすると、自治体が急いで集団移転などを含めた復興計画を策定しようにも、住民合意の形成ができないじゃないですか。

 被災者の負担軽減を第一に考えれば、少なくとも被災前の価格で買い取ることを基準にすべきだと思うんですけれども、それは大臣、どうですか。

前田国務大臣 スキームとして、穀田委員が言われるようなスキームがあればいいわけなんですが、なかなか今の体制ではできません。

 ただ、不動産鑑定士が、被災地が将来、ある制限のもとにではありますが、土地利用がなされた場合は恐らく公共建物を、今まで農地であったり調整区域であったようなところが、計画的に公共施設が入ったりだとか、いろいろな土地利用がされた場合の将来の土地価格というものを設定して、それを現在価格に引き戻すわけでございます。

 これは不動産鑑定士等がいつもやっている手法でございますが、その平均を見て、この前言ったのは八割と言いましたが、平均すると六割から八割ぐらいじゃないかというふうに見通しております。

穀田委員 通常の場合というのは、そういうことでやっているというのはわかるんですよ。しかし、今回の場合には大震災の被害からの復旧復興という特別な事情なんですよ。

 もともと大臣や局長がおっしゃっているのは閣議決定なんですね。昭和三十年代につくって、四十年代に少しいじりましたよ。問題は、そこで私は言っているんですよ、いかにして被災者の生活再建を図るかということが基準であって、不動産鑑定士だとか閣議決定だとかといって、平野復興担当大臣なんかは、そういうことになったら、公共的な施設をつくるためにはどうすればいいかと。そんな話をしていたら何をか言わんやなんですわ。

 だから問題は、要するに、制度の根幹にかかわるというふうなことを彼は言うわけですね、もうお一方の復興担当大臣は。制度の根幹にかかわるというよりも、逆に言えば、その閣議決定を変えさえすれば、それはできるわけなんですよ。そういう制度にすればいいわけで、だから、そのぐらいのものだということを私は言っておきたいと思うんです。したがって、今の買い取り価格というのは被災者の負担を軽減することを第一に考えるべきだと思いますし、改めて私は検討を要求しておきたいと思います。

 その上で、仮に、従前価格での買い取りができなかったときに、従前価格との差額について地方自治体が補てんする制度を設けた場合、復興交付金を活用できますか。

郡大臣政務官 穀田委員にお答えをさせていただきます。

 今のお話は、復興交付金とあわせた効果促進事業というふうなことでも賄えるのか、そういう問いだというふうに受けとめさせていただいております。

 この効果促進事業につきましては、基幹事業が実施されることを前提にして、それと関連する復興のための事業であれば、従来、地方単独事業として行われていた、地方の特性に即して自主的かつ主体的に実施する事業に幅広く対応させていただきたい旨は、これまでも答弁をさせていただいているところです。

 他方、今御指摘の防災集団移転促進事業につきまして、これは別途国交省において個人負担の軽減については一定の措置がなされているもの、そういうふうに承知しております。そのため、それを超えて効果促進事業で対応するということにつきましては、国が実施する施策との整合性という観点から慎重な検討が必要であるという立場でございます。

 なお、個別の事業が復興地域づくりの一環として位置づけられるのかどうかにつきましては、公共性や公益性の観点などを踏まえつつ、各地域の具体的な計画や御要望について御相談していく中で検討してまいりたいというふうに思っているところです。

穀田委員 私は、それを質問登録したときに鳥取県の例を言って、復興交付金制度には効果促進事業がある、これを活用できるかという話の答えなんですよ。それはそれでもええねんけど、要するに、二つ一緒に言って郡さんは答えているんです。ちゃんと聞いておいてくれな困るねんけど、それは構へんけども、要するに慎重ということだということなんですな、簡単に言えば。だから、だめだということではないことだけはわかった。

 そこで、私は、被災した土地の買い取りについて、従前価格はちょっとしんどいよと大臣はおっしゃっておられる。それで、差額補てんについては今、郡さんは言ってはれへんけども、今、自治体が独自に上乗せして、復興交付金制度の効果促進事業については慎重な検討が必要だと。これを言い出しますと、全部これ、後の方は慎重やけど前の方はちょっとしんどいなという話になると、これは、個人のそういう復興というのはなかなかしんどいということになると思うんですね。

 もう一つ違う角度から聞きたいと思うんですけれども、移転先の土地の部分については国の補助で自治体負担はないために、自治体が宅地を賃貸するなど柔軟に対応すれば一定の負担軽減が可能になります。しかし、家屋の建築費はどうなるか。支援があるが、どうかという問題なんですね。先ほど例を述べましたけれども、家屋の建築費というのは一千八百万程度が自己負担になる。これではなかなか住宅を建てかえようという決断はできないわけですね。したがって、住宅移転促進事業に絞って、新たに家屋を建てる場合は住宅の建設についての支援があるんですか。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 自力で住宅建設を行う場合についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、さきの第一次補正予算で、住宅金融支援機構による災害復興住宅融資の当初五年間の金利をゼロ%とするなどの措置を講じております。また、第三次補正予算においても、宅地の購入及び住宅建設を目的といたします有利子の借り入れに対し、利子相当額を補助する限度額を引き上げるといったような措置を講じているところでございます。

穀田委員 要するに、資金の利子補給があるという程度だということですな。そこは、被災者が新たに住宅を建てかえようとしても、国交省の所管の事業では補助はないわけですよね。

 住宅再建については、御承知のとおり、被災者生活再建支援法による支援があります。私はここで言っておきたいんですけれども、最高三百万までなのは御承知のとおりです。仙台の例で言うと、先ほど言いましたけれども、それでもまだ千五百万円かかるわけですね。せめて、この三百万円からの引き上げがどうしても私は必要だと思います。

 菅さんは、私が一番最初にこの問題について官邸に申し入れたときに、やはりそれは必要だよねと言ってはったんですね。これは公的にもそういう話を言ったこともございます。今になって、ちょっと総理大臣もかわったということもあって、何となくうやむやになっとんねんけども、やはりこの問題は大臣から、引き上げるように政府で提言してもらう必要があるんじゃないですか。いかがですか。

前田国務大臣 国交大臣としての立場を超えて、確かに、今回の場合、現在あるスキームではなかなか対応しづらいところがあるということについては十分承知をしておりますので、一政治家として、穀田委員の趣旨というのはよく受けとめて、申し上げるべきときには申し上げます。

穀田委員 ですから、私は最初に、今度の復旧復興というもので、この法律の関係で一番何が大事か。生活の再建となりわいの再建だ。

 生活再建はやはり住宅なんですよね。わざわざ大臣も医職住というようなことを言っておられて、住というのは二つあるというようなこととか、職というのもあるとか言っていました。だから、ここの問題がやはりネックになるわけですよ。この再建なくして地域の活性化なんてあり得ないですよ。そういった問題を含めて、今後とも私は述べていきたいと思います。

 終わります。

伴野委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利です。

 東日本大震災と阪神・淡路大震災との大きな相違点は津波被害にありました。東海、東南海、南海地震などの大規模地震を想定し、津波防災をできる限り進めていくことは賛成であります。その観点から何点か質問させていただきます。

 最初に、津波防災とは直接関係ありませんが、宮城県石巻市では、地盤沈下の影響で、大潮はもとより満潮時に川の水が逆流して市街地を冠水させていました。この冠水対策はどのように進められていますか。また、国はどのように支援を行ってきましたか。簡単に御答弁をいただきたいと思います。

奥田副大臣 中島委員にお答えいたします。

 今、石巻に限ってのことですけれども、潮が満ちてくるたびに浸水しているということが多く報道されておりました。

 今、石巻に限って言えば、まず河川の方ですけれども、大型土のうによる応急対策、これは北上川と旧北上川の河川堤防です、これを六月末までに応急対策を完了いたしました。そして、八月末までには従前と同様の高さのところまで、コンクリート擁壁という形での対策を完了しております。海岸堤防の方ですけれども、こちらは盛り土による締め切り、そして補強といった対策を九月末までに完了しております。

 そしていま一つ、どのような支援を行っているかということですけれども、まず、排水ポンプ車を周辺に重点配置させていただいております。そして、浸水リスクマップというものを作成した上で、市町村に対して情報提供させていただいております。そしていま一つ、浸水センサーというものを設置しておりまして、水位が上がってこのセンサーが感知することになりますと、市町村に対してメールとしての警報を発する、そしてまた希望者に対しても、個人に対してもメールでのセンサーの情報というものを発信しております。

 以上です。

中島(隆)委員 なぜこのような質問をするかといいますと、今回の東日本大震災では、宮城県の牡鹿半島では最大一・二メートル、そこから広範囲に、東日本全体ですけれども、太平洋沿岸、大規模な地盤沈下が起こっております。地盤沈下がもたらす冠水など、今対策はとられておりますが、石巻市は深刻な状況が見られます。復旧復興に大きな影響を与えているというふうに思います。

 確かに、地震をもたらす地殻変動をあらかじめ予測して対策を打つのは非常に難しいかもしれませんが、津波対策とあわせて、地盤沈下の対策が今回の法案の中にも当然必要ではないかと思うんですが、それについての御意見をお尋ねいたします。

前田国務大臣 委員も御承知のように、確かに、この地盤沈下というのだけは非常に予測が難しいと思います。特に地震の場合には、ああいうプレート型であったり、あるいは直下型の逆断層地震であったりだとかいうことによっても違いますし、これは私も阪神のときに経験をしているんですけれども、本当に、即地的には、ちょっと通りを隔てて全然違うだとかそういったことで、これを初めから予測をしてハードの施設等で対応していくというのには、ちょっと今の段階では無理があるのではないかと思います。

 そういう意味で、今回、ハードとソフトの組み合わせで、減災ということに一つの視点を入れているということであるかなと。したがって、この法案によって、そういう地盤沈下が起きた場合には被害を最小限にとどめるといった施策、そして、実際に起きた後の対応策ということにならざるを得ないところもあるのではないかというふうに思います。

 予防という意味においては、高台にあらかじめいて、要するに地盤のいいところに、大体は沖積層の非常に地盤の悪いところで沈下が起きるというのが普通でございます。もちろん、今度のプレート型のようなときには全体がどんと沈下するということになって、これは対応しづらいところがあるんですが。

 ということで、ちょっとこの法案に地盤沈下対策まで入れるというのはいささか無理があるということであります。

中島(隆)委員 今回の法案は津波が中心でありますけれども、先ほど来指摘があっていますように、ハザードマップでは地震の大きなそういうがけ崩れなり、あるいは地盤沈下なり、こういうのも想定をされるわけですので、ぜひそういう課題についても、今後必要ではないかという御指摘をしておきたいと思います。

 さて、津波防災地域づくりに関する法律案でございますが、今回の震災の被災地のみならず、津波の被害が予想される県や自治体で津波防災を進めるものと承知をいたしております。そうしますと、場合によっては、全国にわたるかなり大規模な事業になることが予想されます。

 国土交通省としては、津波防災のまちづくりを進めると思われる自治体、それから防災対策やまちづくりにかかわる総費用、あるいは国の財政負担をどの程度見込んでいるのでしょうか、その点についてお尋ねをいたします。また、法律案による津波防災対策は何年ぐらいのスパンで進められるというふうに考えておられるのか。その二点についてお尋ねいたします。

奥田副大臣 まず費用の方ですけれども、個別に幾らという形では提示しておりません。ハードだけで補い切れないものをソフトを組み合わせることによって、最大限の災害に対しても、減災という形で対応したいという形でこの法案が出されております。

 そして、ただ予算の方ですけれども、被災地の方は復興交付金が中心になりますけれども、三次補正においても、全国防災という事業のもとで予算を確保させていただいております。

 あと期間の方のお話もありましたけれども、短期的なといいますか一時的な取り組みではなくて、継続的な取り組みでいかなければならないという認識は十分に持っておりますし、また、事業としても大変膨大な事業量となってまいりますので、息長く継続的に進めていきたいというふうに思います。

中島(隆)委員 もちろん防災のための事業を否定するわけではありませんが、懸念されることは、防災に名をかりた不必要な事業なり、あるいは乱開発が進むのではないかという心配をするわけであります。

 この点、都道府県による津波浸水想定の設定や、市町村による推進計画の作成などの段階で国のチェックや規制が行われるのではないかと思うんですが、この点についてどのようなことか、お尋ねいたします。

奥田副大臣 委員御指摘の御懸念というものは当然あることだというふうに思います。

 ただ、法の方でも、条文として、都道府県やあるいは国のチェックと提言ということが盛り込まれております。この法案では、推進計画を作成する際に、都道府県や関係する事業の実施者に対して協議を求めること、そして推進計画の策定後、推進計画を送付していただくということ、そして国土交通大臣及び都道府県が必要な助言をできるということになっています。

 これらの規定を活用しながら、本法律案の適切な運用に努めてまいりたいというふうに思います。

中島(隆)委員 次に、地価の乱高下対策についてお尋ねいたします。

 国税庁が、被災地の地価の下落を路線価に反映させる調整率を発表いたしました。それによりますと、福島第一原発周辺を除く、岩手、宮城、福島の被災地は〇・二から〇・三の調整率となっています。すなわち、震災前の路線価格から七割から八割も地価が下がることになります。一方、浸水を免れた土地や防災集団移転促進事業で移転先と期待される高台は、早くも土地価格が上昇しているという報道もあります。

 被災者にとって、もとの土地価格は下がり、移転先の土地価格は上昇するとしたら、大変な負担になるわけであります。事業者の方々にすれば、再建を目指して、担保となる土地価格が下がり続ければ融資も先細りになりますし、今回の震災で被災した宅地あるいは農地の買い上げ価格については、価格の回復を見込んで算定するという先ほどの説明もございました。できれば震災前の価格で自治体が買い取るべきではないか、こういうふうに思っております。

 被災地の高台移転に伴う土地の問題はまた個別の機会にお伺いをしたいと思います。この法案の関係で懸念される点でありますが、津波防災のためのまちづくりを行う、そのために自治体が推進計画を定めた際には、やはり土地投機による地価の乱高下が予想されるのではないかという点であります。

 そこで、この地価の動きをどのように監視あるいは対処していくのか、この点について説明をお願いいたします。

奥田副大臣 まず、津波防災地域づくりの推進計画の区域内、こういうところで土地を求めることによって急激な地価の上昇がないのか、あるいは、そのことに対してどう対処しているのかという御質問かと思います。

 都道府県知事においては、国土利用計画法に基づいて、このように急激な地価の変動があるという予測、あるいは注意をする場所に対して監視指定ということが可能になっております。いろいろな指定の段階がありまして、注視区域という指定、あるいは監視区域という指定、さらに強い規制区域という指定がありますけれども、条文の中でも、この監視区域という指定によって、事前届け出義務、土地取引の事前届け出というものをしていただくということが可能になっております。

 こういった指定を使って土地を監視していただきたいですし、また、被災地に限って言いますれば、今現在でも、法務省の方と県の方とが連携して土地の異動情報というものを情報交換しているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

中島(隆)委員 今後の復興には、やはり居住、これを早急に万全な体制をとるということが一番必要であります。先ほど前段に申し上げましたように、土地の高騰も続きますし、あるいは従前の土地の価格が下がる、こういう中では復興は不可能でありますので、そういう監視、対処について十分な対応をとっていただきたいと思います。

 まちづくりの主人公はやはり住民でありますし、実施主体は自治体であるわけでありますが、国は、費用負担を含め、住民と自治体を支援していく役割があります。同時に、防災は国全体の問題ですから、基準づくり、技術面や知見については国が責任を負うべきだと思います。

 この点、津波防災の大前提となります津波浸水想定の基礎調査が、基本的には都道府県にゆだねられています。津波浸水想定の調査は極めて科学的で、知識を必要とする分野であります。都道府県ごとに異なった基準や物差しで実施するわけにはいきません。なぜ国が基礎調査を行わず、都道府県が担うのでしょうか。その点をお尋ねいたします。

関政府参考人 御指摘の、津波浸水想定を実施するに当たりましての基礎調査についてお答えを申し上げます。

 まず、この浸水想定を設定するに当たりましては国が基本指針を示し、これに基づきまして、最大クラスの津波、これは東日本大震災相当、こういった津波に対する浸水想定を都道府県において行うこととしてございます。

 この想定を行うための基礎調査でございますが、具体的には、津波による被害の発生のおそれがある沿岸の陸域及び海域に関する地形、こういったものの測量と申しますか、地形に関するもの、それから地質、土地利用の状況、その他必要な事項に関する調査ということとしてございます。

 この調査につきましては、地域の実情を把握している都道府県が行うこととしてございますが、御指摘のように、国と都道府県が役割分担を果たすということを考えてございます。特に、地形測量等は航空レーザー等により広域的な見地から行う必要がございますので、こういったものは国が行い、また、必要な技術的な助言あるいは情報提供についての支援を国が行うということで考えてございます。

 なお、都道府県が基礎調査を行うに当たりましての費用に関してでございますが、地域自主戦略交付金、こういったものを活用し、支援を行っていくということを考えているところでございます。

中島(隆)委員 時間も残り少ないわけで、七点をちょっと外しまして、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 今回は、水防法の改正で、目的規定に新たに津波を加えるとともに、水防団員の安全確保への配慮が盛り込まれました。

 これはいいわけでありますが、今回の震災で、住民の安全を守る最前線に立っていた消防団員の死者が二百五十四名を超えました。河川の水門を閉じる操作に従事していた水防団員が津波に巻き込まれて死亡したケースもあります。阪神・淡路震災の場合は、消防団の死者は一名でした。本当に、今回の大惨事で二百五十四名、こういう方が犠牲になったわけです。

 しかも、消防団員に、公的補償とは別に消防団員福祉共済制度がありますが、この補償でありますが、公務災害の場合は弔慰金が二千七百万支払われるはずであります。しかし、今回の震災では、準備金の不足を理由に弔慰金が一千百万しか払われていない。しかも、消防団の年間報酬は、交付税算定の目安が年間三万五千円となっておるにもかかわらず、自治体の財政が非常に厳しいということで二万五千円程度しか支払われていません。

 そこで、消防団員、水防団員の待遇改善が必要だと考えます。消防団、水防団の安全確保とともに、今後具体的にどのような施策を講じられるのか、お尋ねいたします。

前田国務大臣 議員御指摘のように、今回、消防団の方々が水防活動で大変な犠牲を払われたわけです。

 議員御指摘のように、今回の法律においては、この水防というものをきっちり位置づけをいたしました。そして、水防活動に従事する方々の安全を確保するというのは非常に重要でありますし、またその待遇といいますか、そういったことについてもしっかり対応をしていかなければなりません。

 そういった意味で、水防団の待遇改善については、一次的な責任を有する水防管理団体、これは市町村ですが、それからまた都道府県とも連携して対応策を検討してまいりたい、こう思っております。

中島(隆)委員 時間が参りましたが、三県の消防団を調査されたら、三〇%がやめたい、こういう調査の結果も出ているということであります。防災は、何といっても消防団の方々が第一義に対策をされるわけですので、万全な今後の対策をとっていただきたいと思います。

 終わります。

伴野委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 津波防災地域づくり法案ということで、国交大臣の定める基本指針に基づき、都道府県が津波浸水想定を公表して、推進計画区域内での津波防災住宅等建設区、集団移転促進計画の作成や、全面買収方式での拠点市街地の整備ができるようにする。さらには、津波災害による被害の軽減のため、警戒区域、特別警戒区域のイエロー、オレンジ、レッドゾーンの網をかけて、都道府県知事は津波防護施設の整備、管理を行う、こういう中身であります。

 まず、津波防護施設についてお伺いをしたいというふうに思います。

 そもそも、どれだけの津波防護施設を、堤防、防波堤をつくればいいのか、それに関するコンセンサスが実はきちんとできていない、そういう中で、例えば被災地ではこの堤防、防波堤の整備の計画が進んでいる、こういうふうにも見受けられるように思います。

 宮城県は、整備する堤防の高さについて九月に方針を出していますが、気仙沼では、湾内最奥の一帯は六・二メーター、その前面が五・〇メートル、その外が七・二メーター、こういうふうになっていて、これは明治三陸津波を想定水位としたということであります。気仙沼大島というのがありますが、こちらは十二メーターの津波が襲いましたので、今回の宮城県の方針では、大島の突端部については十一・八メーターということで、大島は大体十一・八メーターから七メーターぐらいの堤防がぐるりと囲むというようなことになって、テレビで映像のシミュレーションをやっていましたけれども、まるでこれは刑務所の塀だということが言われています。

 漁業と観光で生きている、海と生きる気仙沼市としてはこんなに高い堤防は到底認められない、宮城県の計画に対してこういう反発をする声も上がっているということであります。

 一方、陸前高田市のように、岩手県から十二・五メーターというのを提示されたんですけれども、十三メーターから十七メーターぐらいの津波が来たんだからもっと高い方がいいということで、市は十五メーターの堤防の高さを求めている、こういうところも全く逆にあるわけです。

 この津波防護施設、今回の法案の中身には割合さらっと書いてあるんですけれども、しかし、この整備というのは非常に重要なポイントになるんだろうというふうにも思います。津波に備える堤防、防波堤のかさ上げは、津波被災地、今回の被災地に限らず、全国でこれから計画をされていくわけですけれども、地域によってこうしたさまざまな意見の相違があり、その一方で、人命をきちんと適切に守らなければいけないという命題もある。

 そういう中で、国は、この堤防、防波堤の高さ設定というものにどのように今後関与していくのか、このことをまずお伺いしたいというふうに思います。

前田国務大臣 詳しくはまた河川局長からも答弁させますけれども、委員御指摘の問題意識と私も似ているのかなと思うんですが、これは、その地域地域によって事情が異なります。

 特に、この津波防護施設というのは、直接の津波防波堤というよりも、今回の災害を教訓として、線で受けるのではなしに面的にも受けていこう。多重防御と申しますか、一つの例でいうと仙台東道路というのが、結果的には津波をあそこで食いとめたという実績があるわけですね。だから、ああいうところを頼りにして、そこに水門等を設置する、これが地域の自治体等が防護施設として指定するということになっていくのかな、そんなイメージですね。だからこそ、市町村が推進計画を定めることになっているということになります。

 だから、これは地域の事情に応じて多重防御的な施設を指定して、そこに防護施設を組み込んでいくというようなイメージになるか、こういうふうに思います。

柿澤委員 問題意識としては、私が申し上げたかったのは、今の多重防御の考え方はそれはそれで大変適切な方向性だというふうに思うんです。一方で今、ややもすると、高い堤防を立てて、それによって津波を防ごうというような考え方に基づいた案が提示をされているかのようにも見えるわけです。

 こうした中で、基本的に都道府県が整備計画を立てて、今、被災市町村にお示しをしているということでありますけれども、国はこの点についてどういう関与の仕方をしているのか、こういうことについてお伺いをしたいと思っております。河川局長、お手を挙げていただいていますので。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘の点につきましては、二つの概念があるというふうに考えております。

 まず、海岸に沿いまして、いわゆる海岸堤防の高さをどの程度に設定し、地域を守っていくかということ、そしてさらには、その海岸堤防を越える規模の津波が押し寄せた場合において、地域をどのように安全にしていくかということに関し、津波防護施設というものを設置することによって地域を守っていこう、この二つの概念がございます。

 そのうち、まず海岸堤防の高さについて、どのように国が関与しているかということでございます。

 まず、基本的には中央防災会議、これは専門調査会でございますが、ここで示されたことを基本的な考え方としておりまして、海岸堤防の高さは、今回のような巨大な津波ということではなく、比較的発生頻度の高い津波、東北でまいりますと、明治三陸あるいは昭和三陸、チリ地震、こういった津波を対象とし、これはおおむね数十年から百数十年に一度という規模の津波を対象とし、海岸堤防の高さを設定しようという基本的な考え方を受け、農林水産省、国土交通省とで設置しました委員会でこの高さの設定基準を考えたところでございます。これに沿いまして、岩手県、宮城県、福島県において具体的にこの十月の下旬までに、御指摘のような、各地域ごとに海岸堤防の高さを決めたということでございます。

 また、こういった数十年から百数十年を超える規模の津波に対しては、海岸堤防を越えて津波が地域に参ります。こういった場合においても、やはり地域の皆様方の生命を守るという観点から、避難の体制であるとか防護の体制というものを整備していくということが必要になるわけでございます。そういう意味で、津波防護施設につきましては、盛り土構造物、いわゆる二線堤、あるいは二線堤に必要な閘門、こういった施設を整備することによりまして、さらに規模の大きな津波に対して地域を守っていくということで、これにつきましては、まさに地域の推進計画の中で地域ごとに考えていただき、これを整備し推進していく。

 こういった国と地方の役割分担で考えているところでございます。

柿澤委員 地域が主体になって計画を立てて、そして海岸堤防及び津波防護施設をつくっていく。こういうことであるわけですけれども、しかし、規模の大きな津波に耐え得る、そうした施設をつくり、なおかつ多重防御の考え方で盛り土をして津波防護施設をつくる、こういうことをやっていくとすると、規模が大きいというか備えが万全であればあるほど、これは地元の自治体の乏しい財政力では負担し切れない、はるかにその財政力を上回るものになってしまう、こういうふうに思います。

 しからば、この津波防護施設について国の補助というのはどういう形で行われることになるのか、お伺いをしたいと思います。

関政府参考人 お答えを申し上げます。

 津波防護施設につきましては、先ほど申しましたように、地域の推進計画の中で位置づけ、整備をしていくということでございます。

 これに対します国の予算的な支援、補助につきましては、社会資本整備交付金を用いまして対応できるよう、現在検討を進めているところでございまして、具体的な要件を定め、今後支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

柿澤委員 先ほど来申し上げておりますけれども、私は、こうしたハード面の整備も大変重要だというふうに思いますけれども、いみじくも皆さんもおっしゃっているとおり、ハード偏重であってはいけないというふうにも思っております。

 先ほど、午前中に復興特の質疑をさせていただいたときに、私は、被災自治体の復興計画の策定支援の名のもとに、国交省が室長クラスの幹部職員らをチームで派遣をして、民間コンサルに委託もして、被害調査や復興パターンの分析等、こういうことをやっている。これについて取り上げさせていただきました。また、関係省庁の連絡調整会議の調査に当たっての事務局もつかさどっている。

 こういうことを見ますと、これに七十一億も一次補正で予算を計上して、国交省が主導権を持ってやっているわけですので、ややもすると、場合によっては、公共事業官庁である国土交通省が中心になってこうした計画を進めていくと、どうしてもハード偏重のものになっていってしまうのではないか、こういう懸念を大変持っているところであります。

 先日も、海の見えない漁村は本当に安全か、こういうタイトルの、建築家らによるシンポジウムがあったというふうに聞いたんですけれども、まさに津波防災地域づくりというのがどういう方向性で実質的に進められていくのか、ハードとソフトをしっかりあわせ持った、そうした施策として進んでいくのかということは大変多くの人々が注目をしていると思います。

 その点で、刑務所の壁のようだと先ほど申し上げましたけれども、そびえ立つ巨大堤防で命を一〇〇%守れるわけではありませんし、やはりハード事業には限界があるということをぜひ踏まえた上での御対処をお願いしたいというふうに思います。もしよかったら、大臣、御答弁をいただければ。

前田国務大臣 委員の御心配の向きはわかりますが、まさしく今回の法律の目指すところは委員が考えておられるような方向だと思います。

 津波防波堤にしても、必ずしも今回の津波の高さに対応するものではなく、平均的に、五十年に一度だとか八十年に一度だったか、その程度のものについての高さというようなことになっております。そして、ソフトの面で、減災という意味で対応をしていく。

 それは、ソフトでもありますし、また先ほど申しましたように面的にも受け持っていくということで津波防護施設、これは必ずしも防護施設として大々的なものをつくるということではありませんでして、先ほど一つの例を申し上げたように、この前の場合には仙台東道路ですね、そのほか鉄道であったり、あるいはこれから道路等の改修が進むわけですが、なるべく盛り土の道路にして、それが二番堤、三番堤、あるいは面的に受け持っていくというような機能が発揮できるように、そういう意味で委員が指摘されるような、ソフトを含めて柔軟な対応をしてまいりたい、このように思っているところであります。

柿澤委員 まちづくりに関して伺います。

 今回の津波被災地に関しては、建築基準法八十四条に基づく建築制限、今回、二カ月を特例的に八カ月に延長したわけですけれども、その八カ月も既に経過してしまいました。したがって、建築基準法に基づく建築制限は十一月十日をもって解除されることになった自治体が多いわけです。

 一方、この法案がまだ成立をしておりませんので、市町村が条例で定めた区域について、建築規制ができるような特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンの指定はまだ行われていないわけです。このため、私が思うに、これは建築制限に関するある種、法の空白というか、そういうものが生じてしまっているのではないかというふうに思います。

 この期間中に、仮に、特別警戒区域に当たるような場所、津波が発生した場合に浸水被害が大変高い確率で想定されるような場所に建築物の確認申請が届け出られて、例えば建築物が建っちゃった場合、後々、高台移転だ区画整理だといってもなかなか難しいことになってしまうのではないかと思いますが、こういう場合に行政庁はいかに対処すべきであるか、お伺いをしたいと思います。

川本政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の被災地につきましては、建築制限の特例法を御制定いただきまして、この四月から震災発生後八カ月、十一月十一日まで建築制限を行ってまいりました。

 この制限、今回の震災による被害が大変甚大であったということから、都市計画やまちづくりを進めるという意味で必要な範囲の中で、当面すぐには都市計画を決められないということで、建築基準法に定められました最大二カ月という期間では間に合わないということから延長をいただいたものでございます。

 今回の被災市街地におきます建築制限が行われました地域につきましては、この八カ月の間で大体まちづくりの計画ができ上がりまして、面積的にはおよそ七割の地域、大宗の地域につきましては、被災市街地復興特別措置法によります被災市街地復興推進地域の都市計画の決定がもう既に行われておりまして、この都市計画の観点からの建築制限が行われております。

 もちろん各自治体の方では、当初のこの八カ月間の制限の中で、その後、市街化の可能性が小さい、あるいは既存の地域づくりの範囲の中で対応できるということで制限を部分的に解除したところもございますし、また、御指摘ございました、このままでは災害の危険性が高いというふうなところにつきましては、基準法の災害危険区域の方へ切りかえをいたしまして建築制限を続けているところなどもございます。

 いずれにしましても、各自治体とも、まちづくりの対応等も含めまして、必要な制限というものを課して今後の対応を行っているという状況にございます。

柿澤委員 時間も参りましたので、高台移転に関する御質問はちょっと飛ばさせていただきまして、最後の質問だけさせていただきたいと思います。

 この数十年から百年の間に大津波をいまだ経験していない地域、例えば東海、南海、東南海の地震、津波の想定地域、こういうところでは、例えば土砂災害防止法に基づき指定される土砂災害の警戒区域と同じように、区域内の地価の下落を懸念するケースなども出てきて、地元が警戒区域の設定に難色を示すというケースも出てくるのではないかというふうに思います。この点、どういうふうにして指定を進めていくのかということをお伺いしたいと思います。

 また、さらには、大地震や大津波はいつやってくるかわからないわけですので、あすやってくるかもしれないということを踏まえると、いついつまでにはここまでやるという工程表やロードマップみたいなものが必要になってくるというふうにも思いますが、これについてお考えはないか、大臣にも最後にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。

関政府参考人 警戒区域の設定に関する御質問をいただきました。

 警戒区域の設定に当たりましては、基本的に、都道府県知事は、警戒避難体制の整備を行う津波災害警戒区域、あるいは一定の建築物の建築を制限する津波災害特別警戒区域について、地域の意向を十分把握した上で、なおかつ、地域の選択としてこれらを指定するというふうにしてございます。

 御指摘のように、土砂災害防止法に基づきます警戒区域の設定に当たりましても多くの課題を抱えているところでございます。例えば、地域の住民のより一層の理解を得る必要がある、あるいは先進事例の紹介が必要である、こういったことを私どもの経験として持っております。

 今後、この津波災害警戒区域の指定を全国で進めるためには、こういったことを地域と共有しまして、より多くの方に理解をしていただく等の支援を進める中で、この区域指定が全国的に進められるよう取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

前田国務大臣 この法案ができ次第、それを受けていろいろ、都道府県の知事等の照会であったり、あるいは社会資本整備審議会であったりという工程が出てくるわけなんですが、並行してなるべく詰めて、早くスピードアップして全体が整うようにしていきたい、このように思っております。

柿澤委員 具体的な期限設定が求められる部分もあると思いますので、ぜひ御検討をいただきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伴野委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、津波防災地域づくりに関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伴野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、津波防災地域づくりに関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伴野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 ただいま議決いたしました両法律案に対し、小泉俊明君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・新党日本の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。金子恭之君。

金子(恭)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    津波防災地域づくりに関する法律案及び津波防災地域づくりに関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一 本法の施行に当たっては、本年六月二十四日に施行された、津波対策に関する基本法ともいうべき「津波対策の推進に関する法律」に定められた施策が推進されるよう十分配慮すること。

 二 東日本大震災の被災地の復興及び東海・東南海・南海地震など津波による大規模な被害の発生が懸念される地域における津波防災地域づくりを促進するため、本法に基づく政省令、基本指針等を早急に制定するとともに、関係者及び国民に対して本法に基づく制度を周知徹底すること。

 三 本法に基づき、地域毎の特性を踏まえたハード・ソフトの施策を組み合わせた、津波防災地域づくりを推進する中で、海岸堤防の整備も着実に推進すること。

 四 津波浸水想定の設定に当たっては、国が責任を持って、都道府県に対し、情報の提供、技術的な助言その他必要な支援措置を積極的に講じること。

 五 津波災害特別警戒区域の指定に当たっては、地域住民の意向を十分に踏まえるとともに、地域の現況や将来像を十分に勘案すること。

 六 津波避難建築物の容積率規制の緩和を行った際には、要件とされている用途に利用されていることを随時確認するとともに、法律違反があれば、立入検査等を含めて適切に対応するよう、特定行政庁に対し、明確な運用基準を示すこと。

 七 津波による人的災害を防止・軽減するため、避難施設・避難路等の確保を積極的に支援するとともに、夜間における情報伝達体制や避難経路の確保に十分配慮すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伴野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伴野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣前田武志君。

前田国務大臣 津波防災地域づくりに関する法律案及び津波防災地域づくりに関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の質疑内容や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様、また委員の皆様の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表します。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伴野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十九分散会


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