衆議院

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第15号 平成24年8月21日(火曜日)

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平成二十四年八月二十一日(火曜日)

    午後零時三十二分開議

 出席委員

   委員長 伴野  豊君

   理事 阿知波吉信君 理事 川村秀三郎君

   理事 辻元 清美君 理事 若井 康彦君

   理事 金子 恭之君 理事 山本 公一君

   理事 畑  浩治君 理事 富田 茂之君

      磯谷香代子君    奥田  建君

      梶原 康弘君    沓掛 哲男君

      熊田 篤嗣君    小泉 俊明君

      古賀 一成君    坂口 岳洋君

      高木 義明君    高橋 英行君

      津島 恭一君    筒井 信隆君

      橋本 清仁君    初鹿 明博君

      福田 昭夫君    宮崎 岳志君

      向山 好一君    谷田川 元君

      柳田 和己君    吉田おさむ君

      赤澤 亮正君    小渕 優子君

      北村 茂男君    佐田玄一郎君

      菅原 一秀君    徳田  毅君

      二階 俊博君    林  幹雄君

      福井  照君    望月 義夫君

      小宮山泰子君    古賀 敬章君

      中野渡詔子君    福嶋健一郎君

      穀田 恵二君    中島 隆利君

      柿澤 未途君    中島 正純君

      中島 政希君

    …………………………………

   国土交通大臣       羽田雄一郎君

   国土交通副大臣      奥田  建君

   国土交通副大臣      吉田おさむ君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   国土交通大臣政務官    津島 恭一君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 神田 裕二君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  久保 成人君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  長田  太君

   参考人

   (一般財団法人航空保安研究センター代表理事)   大西  賢君

   参考人

   (嘉悦大学ビジネス創造学部准教授)        小野 展克君

   参考人

   (早稲田大学アジア研究機構教授)         戸崎  肇君

   参考人

   (株式会社企業再生支援機構企業再生支援委員会委員長)           瀬戸 英雄君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十一日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     磯谷香代子君

  中川  治君     梶原 康弘君

  初鹿 明博君     宮崎 岳志君

  徳田  毅君     菅原 一秀君

  小宮山泰子君     中野渡詔子君

  古賀 敬章君     福嶋健一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     熊田 篤嗣君

  梶原 康弘君     中川  治君

  宮崎 岳志君     初鹿 明博君

  菅原 一秀君     徳田  毅君

  中野渡詔子君     小宮山泰子君

  福嶋健一郎君     古賀 敬章君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件(航空問題等)


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     ――――◇―――――

伴野委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件、特に航空問題等について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、参考人として一般財団法人航空保安研究センター代表理事大西賢君、嘉悦大学ビジネス創造学部准教授小野展克君、早稲田大学アジア研究機構教授戸崎肇君及び株式会社企業再生支援機構企業再生支援委員会委員長瀬戸英雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省鉄道局長久保成人君、航空局長長田太君及び内閣府大臣官房審議官神田裕二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、大西参考人、小野参考人、戸崎参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず大西参考人にお願いいたします。

大西参考人 一般財団法人航空保安研究センター代表理事の大西賢でございます。

 私は、当センターの代表理事のほかに、日本航空株式会社会長を務めさせていただいております。

 本日は、我が国の航空産業における企業のあり方について、企業再生途上でございます日本航空の当事者としてお話をさせていただきたいと思います。

 本日はお話をさせていただく前に、日本航空の再生という手段を選択いただくに当たって多くの議論をいただいた国会議員の先生方、そして最終的に御決断をいただいた政府、新しい会社更生の取り組みを行っていただいた裁判所、多額の債権放棄をいただいた多くの債権者の皆様、一〇〇%減資という形で御負担をおかけしました株主の皆様、具体的な再建計画を立案いただいた企業再生支援機構、そして何よりも、日本航空を御愛顧いただいておりますお客様を含む全ての国民の皆様に、この場をおかりしまして、改めて心からのおわびと感謝を申し上げたいと思います。

 皆様御存じのとおり、日本航空は二〇一〇年一月十九日に、東京地方裁判所での会社更生手続の開始決定と、管財人となる企業再生支援機構による支援決定をいただき、その後、更生計画の着手と、そして再生の道を歩ませていただくことになりました。お認めいただいた公的支援の期間は三年間、このようにされておりました。

 更生計画申請後、連日のように、再建は何をやっても無理であり、日本航空の二次破綻、つまり清算は必至、このようなお声も当時いただいた記憶がございます。事実、過去に会社更生法を申請した企業のうち、再生に成功したのはごくわずかで、再上場にまでこぎつけたのはさらに少数であった、これも認識しておりました。

 また、当時は、日本航空の再建計画はつくったものの、それを実現するのは不可能だ、こういうお声もいただいておりました。実際にも、再建に当たっては、大幅な路線の縮小、人員削減、年金制度の改革など人件費を中心としたコスト削減を徹底しましたため、大幅な路線縮小により、売り上げは二〇〇八年度対比で約四〇%、額にしますと約七千三百億円も減る見込みとなっておりましたし、破綻によるイメージ悪化で大量のお客様が離れていってしまう、このようにも予想しておりました。

 加えて、その再生計画自体が甘いもので、破綻直前には二千億円ほどの赤字が見込まれていた会社が、短期間で更生計画に示されたような利益を出せるわけがない、路線をさらに縮小し、社員ももっと減らすべきだ、このような御批判も受ける中、社員自身も現場で苦労しておりました。

 私は、二〇一〇年二月一日付で、身の引き締まる思いで社長に就任いたしまして、当時、何とかして二次破綻を避け、この会社を着実に、そして早く再生しなければならないと強い決意で臨みました。

 社長就任当時、振り返って、なぜ日本航空がこのような状況に陥ってしまったのかについて考えましたのは、やはり大きいのは採算性意識の欠如、そして競争環境変化に対する柔軟性の欠如であった、このように思っています。

 採算性意識の欠如は、我々は一民間企業であるという意識の欠如と同じでございました。数年にわたり赤字を出した会社であれば、通常、社内は蜂の巣をつついたような必死の努力がなされておるはずですが、今思いますと、当時の日本航空は平然としていたような気がします。株式会社であるにもかかわらず、株主に対して無配当を続けて平然としてもおりました。業績が悪いのはなぜかという議論があっても、自分のせいではなく、あの部門がだめだからだと非難合戦をしておったような記憶がございます。これは全て、会社の収益状態はどうなっているのかということに目を向けず、誰かがいずれは助けてくれるので倒産はしない、このような民間企業としての危機意識のなさを象徴しているような気がいたします。

 次に、競争環境変化に対する柔軟性の欠如についてでございますが、過去、御存じのとおり、国際線一社体制の、競争のない中で育ってきた日本航空にとって、競争環境は今ほど厳しいものではなく、その体質になれ切っていたことは確かだ、このように考えます。その結果、例えば、環境の変化の大きなターニングポイントであるアライアンスへの参加の決断がおくれ、今や世界は個社の競争ではなくアライアンス間の競争になっていることから見ても明らかなように、グローバル市場での競争参加に出おくれました。テロやSARSなどたび重なるリスクイベントが発生したときにも、その対応へのスピード感の欠如から、打ち手をとるのがおくれたことも事実でございます。

 そこで、私どもは、国民の皆様から与えられた貴重な機会を生かすために、安全運航を堅持する、この大前提のもと、収益構造の変革と社員の意識改革、この二つの改革を進めていくことに決めました。

 まず収益構造の変革でございますが、これは一言で言うと、収益性を維持できる規模にダウンサイジングするとともに、無駄を削減してコスト構造を見直し、収益力を回復するということで、立てた更生計画、再建計画を着実に実行していくしか解はございませんでした。

 実行あるのみとして取り組んだことは、まず、一部機種の完全退役による機種数の削減、不採算路線からの撤退、事業規模相応の人員体制の構築、年金の引き下げ、給与引き下げを含めた人件費、人事賃金制度の改定、関連会社の売却、再編による航空事業への経営資源集中などを断行し、再生計画初年度の二〇一〇年度は予想以上の営業利益を計上させていただくことができました。

 次に社員の意識改革ですが、これは、社員一人一人の採算意識を徹底し、安全運航を堅持しながら、よりよいサービスの提供とコストの削減に努めることでございました。

 最初のうちは採算というものに無頓着な者もおりました。航空会社の仕事は飛行機を飛ばすことと言ってはばからない者もおりましたが、飛ばすためには何が必要かということをみんなで考え、よりよいサービスを、より低いコストレベルでというように徐々に社員全体の意識が変わり始め、個々人が工夫をしていくようになりました。例えば、小さい話ではございますが、整備工場などでは、わざわざ購入しておりました雑巾の類いを、古くなったTシャツで代用できるのではと、着なくなった子供の肌着を集めたりするなどの行動をとるようになりました。

 これらにあわせて、企業としての根幹をなす企業理念の再構築、共通の価値観であるJALフィロソフィの制定と徹底、部門別採算制度の導入などを行い、二〇一一年度には予定以上の営業利益を計上させていただくことになりました。また、採算性だけでなく、破綻前と比較しますと、安全性あるいは定時性をあらわす指標も改善するという結果になってきております。

 日本航空といたしましては、これらは全て、数多くの関係の皆様、そして国民の皆様の御理解に立って初めてできるもの、こういう意識で、改めて感謝を申し上げ、早期にかつ着実に再生を果たすことで国民の皆様にお返しできるよう、きょうまで社員一人一人が日々努めてまいりました。決められた期限の中で、ようやくここに来て、御出資いただいた三千五百億円をお返しできるところまで来た、このように考えております。

 私どもはいまだ再生途上でございます。これまでに改善した収益性を維持し、さらに向上させるために、さらに全社一丸となって必死に取り組んでまいる必要があるものと考えております。例えば、お客様へのサービスなど改善する余地は無限にある、このように考えております。公的支援をお返しできた後も、今後想定される大きな環境変化を乗り越え、世界での競争に勝ち抜き、国民の皆様に安全かつよりよいサービスを提供するため、次の二点に重点的に取り組んでまいる所存でございます。

 まず一点目でございます。

 二度と同じ過ちを繰り返さないよう、安全運航を堅持し、収益性とコスト意識の徹底に絶えず努め、競合他社とともに切磋琢磨し、国民の皆様によりよいサービスを提供すべく努め、業界全体の活性化に寄与していきたい、このように考えております。

 二つ目でございます。

 国民の皆様に貴重なチャンスをいただいたという御恩を決して忘れず、将来にもその機会が無駄となることのないよう、健全な民間企業として、一般社会、株主、お客様、市場など全ての関係者の皆様から再び信頼を得られる会社となることができるよう、間断のない努力を積み重ねてまいります。

 以上をもちまして、参考人としての意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、小野参考人にお願いいたします。

小野参考人 嘉悦大学ビジネス創造学部で准教授をやっております小野と申します。よろしくお願いします。

 最近、航空業界の関係者の方と話していますと、笑えない冗談みたいな話が結構深刻に語られていまして、何なのかといいますと、近いうちにJALがANAを買収しちゃうんじゃないかと。

 何でそんなことが語られるのかといいますと、今、LCCが大変に、これから本格参入してきますね。さらに、中東勢を含めて海外のエアラインが物すごく力を増強してきています。そういう中で、国際競争はますます激化していきます。

 さらに、二〇〇〇年以降を見ても、例えばリーマン・ショックだとか九・一一のテロだとか、イベントリスクがたくさん発生しているわけですね。そういったものが発生するたびにエアラインの経営というのは大きく揺さぶられてきています。実際、JALが破綻した直接の要因というのはリーマン・ショックだったのではないかというふうに私は考えております。

 そういうふうなことが今後起こらないということは絶対に言えないわけですね。競争環境も非常に激化していく。そういう中で、日本勢の競争力が低下してきたときに先に倒れるのはANAなんじゃないか、JALの方がむしろ、今回の公的支援、会社更生法の適用でバランスシートが大変改善していますから、残るのがJALで、ANAの方が買収されてしまうんじゃないか、こんなようなことが真剣な顔で語られている。これはやはり、私はおかしいのではないかというふうに思っております。

 そういうようなことを踏まえて、私の方からは三点ほどお話をさせていただきたいと思っております。一つは競争歪曲の問題、二つ目が国際競争の問題、三つ目が支援機構のガバナンスの問題です。

 一点目なんですが、競争歪曲を起こさないためにはどうしたらよかったのかというと、実は答えはそんなに難しくなくて、支援機構の持っている保有株を競争入札にかければよかったわけです。全日空を含む競合他社あるいは投資家、ファンド、そういったようなプレーヤーに対して買収の機会を与えればよかったのではないかと思っています。

 実際、支援機構と似た機能を持った産業再生機構というものがかつてあったわけなんですが、産業再生機構では、例えばダイエーとかカネボウとか、そういったような大型案件を再生する場合には、必ず保有株を市場で公開で競争入札しているわけです。それは、なぜそういうことをしたのかというと、政府が関与する形で債務の調整あるいは競争力の強化策というようなことを打っていくと、非常に強い企業になって復活してきて、競争環境をゆがめるようなプレーヤーになる可能性があるということを踏まえて、政府の保有株、産業再生機構が持っている株を競争入札にかけた、こういうことだというふうに理解しております。

 そういったような前例があるにもかかわらず、支援機構の保有株はなぜ競争入札にかけられなかったのか。この点が一番大きな問題ではないかというふうに私は考えております。支援機構の方たちは、IPOというのが有力な選択肢だというふうに更生計画上も書き記されているのでそれを誠実に実行した、こういうふうに説明されているようですが、更生計画というのはもともと債務を返済するための計画ですから、エグジットの問題とは別なことではないかというふうに私は考えています。

 それから、この競争歪曲の問題なんですけれども、そもそも国土交通省も支援機構も、あるいはほかの航空関係者も含めて、事前に十分に認識できたことだったのではないかというふうに思っています。それに対して、EUのガイドライン的なものも含めて、なぜ事前にきちんと整備されていなかったのかというところに課題があると思います。

 今ここに至って、国土交通省さんの方がJALの経営を監視するということを表明されています。あと、今後、例えば羽田空港で供給される新しい発着枠の調整なんかで、ANAにそれを傾斜配分することでこの競争歪曲を緩和させるのがいいのではないか、こんなことも巷間語られているわけなんですけれども、そうしたことをする場合に、必ず公正、透明なルールで実行されなければいけないのではないか、こういうふうに考えております。

 なぜならば、JALがこういった形で経営破綻したという背景には、やはり行政や政治が経営に介入したということがあるのではないかと思うんですね。今回は、国が再生に関与したことによって競争歪曲が生まれたわけですから、出口についても国が一定の関与をするのは仕方がないことだというふうに思っています。ただ、それが実施される上においては、公正性、透明性、きちんとしたルールに基づいて、オープンな手続で行われなければならないだろうというふうに考えております。

 それから、実はこうした企業支援の問題というのは、JALの問題にかかわらず、これからたくさん起こってくるだろうと思っています。つまり、グローバル競争が激しくなる中で、日本の企業もどんどん再編が進んでいます。再編がどんどん進んでいきますと、プレーヤーがどんどん大きくなっていきます。そういったプレーヤーが倒れた場合、つまり敗者が巨大化した場合に、政府は果たして支援をするのかしないのか、もし仮にする場合にはどんなルールとか手続が必要なのかというふうなことについて、しっかりと今後のことを踏まえて議論し、施策をつくっておく必要があるのではないかと思っています。JALの件は、そのことについての非常にいい教科書なのではないかというふうに私は考えています。

 それから二点目の国際競争の問題なんですが、実は、今、JALとANAの競争にちょっと目を奪われているわけなんですけれども、日本発着の日本勢のシェアというのは、二〇〇〇年の段階では大体四三%ぐらいあったというふうに推定されています。ところが、二〇一〇年の段階、十年後に、二七%程度まで落ちているのではないかというふうに言われています。これは、JALが不採算路線から撤退したことによってシェアが落ちたんだという説明もなされているんですけれども、十年間で一六ポイント、そんなに大きく低下するというのは、やはり日本勢が海外勢に対して競争力が低下しているんだと見ざるを得ないのではないかというふうに私は考えております。

 国際アライアンス、JALの場合でしたらワンワールドに入っているわけなんですけれども、そういった国際連合に入っているから、JALもANAも経営が安泰なんじゃないか、こういう見方もよくあるわけなんですけれども、実は今、アライアンスの中での競争になっているわけですね。そのアライアンスの中での競争に勝てないと、グローバルを担えるような航空会社としては残れない。

 つまり、例えばキャセイ・パシフィックだとか、大韓航空だとか、中国国際航空だとか、そういうところが主にヨーロッパとかアメリカへの人の流れを担って、日本勢はせっせとキャセイや大韓航空に人を運んでいくようなエアラインになってしまうかもしれないということです。そうなった場合には、エアラインだけじゃなくて、空港の方もローカル化してしまう可能性があります。つまり、成田と羽田が東アジアのローカル空港に転落してしまうリスクがあるということです。その点を十分に踏まえておく必要があるのではないかというふうに考えています。

 つまり、ANAとても、このまま放置しておけば競争に勝ち残れるかどうかわかりません。なので、国際競争力をにらんだ施策が必要なのではないかというふうに考えています。

 三点目なんですが、JALの再生を担った企業再生支援機構のガバナンスの問題です。

 支援委員長でいらっしゃる瀬戸委員長が、なぜJALの管財人とか社外役員として行かなければいけなかったのかというところがよく理解できません。これはつまり、企業の再生には極めて専門的な知識が必要なので、企業再生の弁護士でいらっしゃる瀬戸さんの力が必要だった、こういう説明もなされているようですけれども、実際には、中村さんという再生のプロが専務として企業再生機構にはいて、JALの役員を兼務されていました。なので、瀬戸さんがいる必要はなかったのではないかというふうに考えています。

 実際、JALの支援決定を含めて、重要な意思決定の際に、委員会から瀬戸さんが外れられているという状態が恒常化しているのは、私は余り好ましい状態ではなかったのではないかというふうに考えています。

 私の方からの意見陳述は以上です。ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、戸崎参考人にお願いいたします。

戸崎参考人 早稲田大学の戸崎でございます。きょうは、どうかよろしくお願いいたします。

 日本経済はずっと低迷を続けておりますけれども、そうはいえ、航空業界に限らず、技術力あるいはブランドなど、まだまだ世界できちんと戦える企業は多いと思います。そのような企業再生こそがこれからの日本経済の復活のためには極めて必要ではないか。航空だけではなくて、広くそういった視野を持って考えてみた場合、もし経営不振の企業をそのまま再生させなければ、さらに破綻する企業がふえてしまって、これからそちらの方が、結局は、技術の流出、そして失業者の増大、そうしたことに結びつき、最終的には、日本企業あるいは日本経済に対して非常に大きな打撃を与えるのではないかというふうに考えております。

 日本の企業再生のための法的な制度というのは、既に世界的な標準になっております。これを使って、銀行業界も既に、繰越欠損金を利用して、世界とも闘える金融機関に生まれ変わってきております。今後とも、企業再生のために、さらに運用しやすい企業再生の仕組みを構築していくことが国益にかなっているのではないかというふうに考えております。

 正直申しまして、破綻以前の日本航空がよかったとは到底思えません。やはり評価できなかったことは多いと思います。赤字路線が多かったですし、投資、為替予約の破綻、そして安全問題あるいは内紛問題、このような非常に多くの問題を抱えた点はやはり認めざるを得ないと思います。ゆえに、日本航空の再生は最も困難な課題だと言われ、従来の再生の仕組みでは多分無理だろうというふうに言われてきました。

 ただ、その後の経営改革の中で多くの方々が本当に苦労されて、予想以上の成績をおさめた。こういった状況の中で、今度は逆に、こういった好成績は結果的に甘過ぎた政策のおかげではないかというふうな議論が出てまいりましたけれども、やはりちょっと、この点については再考すべきではないかというふうに思っております。

 いわゆる不公平論というのも確かにありますけれども、それ自体、新たな雇用を生み出すことではありませんし、競争環境を制限するようなことがあれば、経済活性化をするものではないのではないかというふうに思っております。

 もし今回の支援のあり方に対する批判というものが受け入れられていくならば、企業再生を予想以上に成功させるということが残念ながら否定されることになってしまうかもしれない。そうすると、想定内の成功しかだめだということになれば、やはり企業は本気で企業再生に取り組まなくなる、そうした危険性があるのではないかと思います。そうすると、そういった企業家もいなくなって、これから本当に日本経済に必要な企業再生の機運というのは残念ながら弱まっていく、そうしたことも考えられるのではないかというふうに考えております。

 現実には、航空業界に限らず、大手電機メーカーなど、これから再生予備軍となりそうな企業が多くあります。そのような企業が今後再生されやすいような仕組みを構築していくことこそが、まさに今の日本の政治として非常に必要なことではないか、僣越ながらそのように思う次第であります。強い企業が再生することで競争が促進され、経済活性化に役立つ、そうしたサイクルをぜひともおつくりいただきたいというふうに思っております。

 それにもかかわらず、今回の話題ですけれども、JAL再生の成功の結果、逆に従来の企業再生のあり方というのを縛るような、見直そうというマイナスの方向にもし行ったならば、これは、JALの成功が逆に今後の日本経済の復活を縛ることになってしまう。それは今後の日本経済にとって大きな禍根を残すことになるのではないかというふうに思う次第であります。

 競合相手の全日空さんがどうかということに関しては、本当にしっかりした経営をされています。報道されていますように、実際に最高益も達成されておりますし、再生した日本航空と今頑張っておられる全日空さんが本当に切磋琢磨されて、我々が最終的に消費者便益としてそういった果実にありつくことができれば、これはまさに国民の利便につながり、日本経済の再生に大きなプラスと言えるというふうに考えております。

 我々はやはり、成功し過ぎるところを見ると、どうしてもちょっとうらやましいというふうに思っちゃいますが、そういった成功者への過剰とも言えるようなやっかみみたいなものはぜひとも是正しなければいけない。やはり成功は素直に認めて、そこから学ぶべき点は学んでいかなきゃいけない。

 先ほどもおっしゃいましたけれども、日本国内という狭い市場の中だけで足の引っ張り合いをするようなことがあってしまえば、何度も申し上げますが、日本経済再生への活力が生まれないばかりか、日本が今持っている本当にすばらしい技術というものが、多くの企業が破綻することによって消滅してしまい、グローバル市場競争から日本が取り残されてしまうという懸念を強く持つ次第であります。

 日本経済復活のためには、新たに起業するということも非常に大事だと思います。しかしながら、同時に、既存の大企業を再活性化するということの方が即効性が高い。やはり今の経済は、いかに素早く事態に対応するかということでありまして、今後、日本経済を復活させるためには、このような形で国が出資する企業再生支援機構のようなファンドが一定の役割を果たしてくる機会は多くなると思います。

 改めて申し上げますが、いろいろな批判はありますけれども、やはり政府系ファンドの役割というのは非常に大きく、今回のようにファンドの資金投入を契機として企業が立ち直り企業再生に成功した事例をもって我々は評価すべきであり、不公平な支援があったというよりも、むしろ今後の活動を縛らないような方向にぜひ議論を進めていただきたいというふうに考える次第です。

 以上をもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷田川元君。

谷田川委員 民主党の谷田川元でございます。

 きょうは、三人の参考人の方においでいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、早速質問させていただきます。

 先ほど大西参考人も述べられましたが、私は二年前のことを思い出すんですね。二年前の八月に、日航が裁判所に更生計画を提出されました。当初は六月に提出すると。それが二カ月おくれた。この二カ月が疑心暗鬼を生んだんですね。

 その九月の十日に国交委員会が開かれました。私もその場に立たせていただきました。その議事録を精査しまして、当時の発言を幾つか紹介したいんですけれども、再上場はとてもできない、三千五百億円の回収はとても困難だと断言された議員もいらっしゃいました。それから、財務省の極秘資料があって、その中で二次破綻のおそれが高いと指摘している、そういうことを取り上げた議員もいらっしゃいました。

 しかし、今ではどうでしょうか。企業再生支援機構の出資三千五百億円があれば再建は当たり前だ、会社更生法の適用と公的支援の併用は過剰支援ではないか、そんな議論がなされております。

 まず初めに、批判の当事者である日本航空の考えをお伺いし、破綻に至った経営責任についてどう考えているか、お尋ねしたいと思います。

大西参考人 まず、先ほど冒頭で御挨拶させていただきましたけれども、我々が今ここにおりますのも、債権者の皆様、株主の皆様、御利用のお客様、それから多くの国民の皆様に本当に多くの厚い御支援をいただいてようやくここに立っている、このように心から思っております。

 そんな中で我々が考えましたことは、公的な御支援を毀損することなくお返しする、これを最優先に、与えられた条件のもと、経営陣の退陣を初め、各種リストラ、先ほど述べさせていただいたようなリストラの断行を進めてまいりました。

 今後は、これまでお受けした御支援に対して感謝の気持ちを込めて、安全運航を最前提に、広く社会への貢献に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

谷田川委員 先ほど戸崎参考人から、成功は素直に認めて学ぶべきだという非常に前向きなお話がございました。

 戸崎参考人にお伺いしたいんですが、JALがもし破綻していた場合、これはもう国民の利便性が損なわれて、国民の生活や我が国経済に大きな影響があったと思います。

 もしそうなったらどういうふうになったか、どういう御見解をお持ちか、お尋ねしたいと思います。

戸崎参考人 本当に先生の御指摘のとおりだと思います。

 やはり二つの企業がきちんと競争して、サービスの向上ないしはネットワークの拡大、あるいは効率的ネットワークの構築ということに励んで、我々の選択というのも生きてまいります。

 ですから、もし一社だけになってしまえば、やはり努力しても独占の弊害はどうしても生じてくるでしょうし、もし一社だけになった場合に、このような非常に変転激しい国際経済の中で、全日空さんだけがそういった荒波に耐えていかなけりゃいけない。もしそれがなくなってしまうと本邦航空会社が一個もなくなってしまうということですから、そうした二社体制で臨むようにしていただいたというのは、本当に我々国民の足を守る上でも重要ではなかったかというふうに考える次第です。

 以上です。

谷田川委員 日本航空の更生計画では二〇一一年度は七百五十七億円の営業利益を見込んでいたのが、ふたをあけますと、もう三倍近い二千四十九億円という営業利益になりました。この決算発表以降、まさに先ほどのねたみかもしれませんが、過剰支援だったというような議論が起こっているわけでございます。

 この更生計画を超える営業利益を実現できた要因は何なのか、日本航空の大西会長にお尋ねしたいと思います。

大西参考人 まず、やはり最初は、お客様に多く御利用いただいて感謝しているというところでございます。

 今先生御指摘の二〇一一年度の営業利益は二千四十九億円、これも御指摘のとおり、二〇一一年度の更生計画での営業利益は七百五十七億。

 これを上回りました要因を分析させていただきますと、収入サイドでは百八十一億円ほど未達でございます。これは恐らく震災の影響が大きく出ている、このように考えております。

 一方、コストは千四百七十三億円下回る、こういう数字になりました。これを大きく分けてみますと、経営改革によるコスト削減と、もう一つは、航燃税を減免いただきましたが、このようないわゆる外部環境の変化によるコスト減少。この二つの大きな要素で千四百億円のコスト削減を達成させていただいた、このように考えております。

 以上でございます。

谷田川委員 私は、今、大西会長は御指摘にならなかったけれども、やはり、前原国交大臣が三顧の礼を尽くして、稲盛さんというある意味で経営の神様とも言える方を日本航空の会長として迎え入れたというのが大きな要因の一つじゃないかと思っているんですが、その点についてはいかがでしょうか。

大西参考人 大変失礼いたしました。

 稲盛会長については、本当に強烈なリーダーシップ、確固たる経営哲学、そして五十余年にわたる、経営者として、あるいは経営者を指導する立場のお方として蓄積されたノウハウを、我々日本航空に対して、粉骨砕身、惜しみなく注いでいただきました。社員の意識改革、そして採算性に対する感度が向上しましたのも御影響の全てだ、このように思っております。卓越した経営手腕というものには、私として素直に感服をしているところでございます。

谷田川委員 次に、最近、日本航空を再生した大きな理由というのは路線のネットワークを守るためだ、そうであるならば不採算路線を削るのはやはりおかしいんじゃないか、そういった指摘がなされております。この辺のことについて、特に生活に不可欠な離島路線などが一体どうなったのか。

 それと、赤字だから飛ばせないというのはもちろんそうなんですけれども、しかし、機材を小型化するとか、あるいはコスト構造を見直して、収益性を確保することを前提に、復便できるところはやはり復活させるべきだと私は思うんですよ。その辺の努力も日本航空はすべきだと思うんですが、大西会長、いかがでしょうか。

大西参考人 まず最初に、当社が実施しました不採算路線からの撤退ということで多くの皆様に御不便をおかけしていることについて、この場で改めておわびを申し上げます。

 当社が撤退した路線、基本的にはおおむね代替手段が担保されている、このように理解しておりますけれども、離島路線については削減することなく、現在でも二十六路線を維持させていただいているところでございます。

 今後、我々としては、収益性と公共性のバランスをとりながら、しっかりした利便性の高いネットワークを張っていきたい、このように考えておるところでございます。

谷田川委員 日本航空が無事に再上場を果たすことによって、企業再生支援機構が出資した三千五百億円は、国民負担が生じることなく、一説によると、この売却金額が七千億円前後になるんじゃないかという説もあります。そうすると、倍近い額ですよね。これは今、財政状況厳しい折、財政再建にとってもプラスになります。

 そういう中で、公的支援の額については幾つかの数字が飛び交っています。一部には一兆を超える支援ではないかという話も出ていますが、事実関係はどうなのか、日本航空の大西会長にお伺いしたいと存じます。

大西参考人 御指摘のとおり、実際、公的支援をいただいております。

 二〇〇九年の十一月以降、これはつなぎ融資という形で、企業再生支援機構及び日本政策投資銀行から合計三千六百億円を融資いただきました。その後、二〇一〇年十二月に企業再生支援機構から三千五百億円の出資をいただきました。このお金を使いまして、先ほど申しました三千六百億円のつなぎ融資は返済をさせていただいております。

 出資金の三千五百億円については、先生御指摘のとおり、我々今、最大の努力をして、できるだけ早く、できるだけ多くお返しする、こういう努力をしているところでございます。

 以上でございます。

谷田川委員 国交委員会でいつも、公的支援を投入した場合、競争相手が不利な競争状態に置かれる、競争関係がゆがめられるという指摘があります。それを防ぐためにEUのガイドラインがあるということが再三指摘されているわけでございますが、戸崎参考人は、ダイヤモンド・オンラインの中で、JALのケースはEUガイドラインに照らしても条件をクリアしているというふうに述べられておりますが、もうちょっと具体的にその根拠を示していただければありがたく存じます。

戸崎参考人 EUのガイドラインでは、主に、供給量を抑制する、不当廉売を禁止する、政府の関与を低下させる、つまり追加支援をしない、そして権益優遇措置を廃止する等の制限がございます。実際に再建過程で供給量も抑制されておりますし、脅威になるようなケースは見受けられません。

 したがって、私としては、EUのルールには全く抵触していないというふうに考えております。

 以上です。

谷田川委員 明快にお答えいただきました。

 国交省の方では、JALが今後どういうような経営をするかについては十分監視するということでございますので、ぜひそのことについては留意していただきたいと思います。

 そこで、先ほど小野参考人から非常におもしろい指摘があったと私は思います。アライアンスの中での競争が激しくなっていくと。そうした場合に、小野参考人の考えとしては、日本はやはり国際線一社に絞り込むべきだという考えにお立ちになっているのか。その場合、今の状況だと今度はJALがANAをのみ込んじゃうんじゃないかという指摘がありましたけれども、では将来的にどういう形で一社体制にすべきか、どういうビジョンをお持ちなのか、ちょっとそれをお聞かせいただきたいと思います。

小野参考人 今先生御指摘のとおり、私は、これからの国際競争に耐え得るような力を日本の航空業界も持つべきであろうというふうに考えております。もちろん、それをどういうふうにするかというのは各企業の経営判断であって、なるべくそこに政府も政治も関与せずに、民間の自主的な努力で新しい強力な経営体制ができるべきであるというふうに考えております。

 今回の場合はどうだったのかというと、勝者がある意味でANAだったわけですから、ANAが国際線を一本化して運営していくというのも一つの考え方ではあろうと思います。もちろん、これは民間企業が経営判断をして競争してやっていくべきことでありますから、それに従えばいいということなんだとは思いますが、そういうことだろうというふうに考えております。

 以上です。

谷田川委員 戸崎参考人は、二社体制を堅持すべきだというお考えだと思います。ですから、今の小野参考人の発言に対して反論があれば承りたいと思います。

戸崎参考人 小野先生のおっしゃることも確かだと思いますが、やはり今、アライアンス間競争の中でも、各地域を代表する航空会社が分散し、そしてアライアンスの中で競争が行われることが我々のためにも必要だというふうに考えます。特にこのように非常に国際経済が変転する中、やはり一つの企業だけで国際線を持つということは国の政策としても危険ではありますし、何しろ我々にとっては、二つの企業が選択肢として残り、その間で消費者便益が高まるような競争環境を保持していくことが望ましいというふうに私は考えております。

 以上です。

谷田川委員 先ほど小野参考人が、このままいったら成田空港も羽田空港もローカル空港になってしまうと、非常にショッキングな発言をされたんです。私の地元は成田空港があるところなんですけれども、私は、この際、やはり成田空港と羽田空港を一体的に運用しないとこの競争には勝てない、そういう考えでおるのです。

 今後の日本の航空行政において一社体制を目指すべきだということはわかりましたが、それ以外にこういうことをしないとだめだということが何かありましたら、小野参考人からお伺いしたいと思います。

小野参考人 基本的には民間の活力を生かしていくというのが第一だと思いますので、政府、政治の関与はできるだけ最小限にしていくということが大切であろうというふうには一応思っています。

 ただ、空港の整備等については、もちろんこれは政府が行っていくことですから、ほかの空港との競争条件等を含めて、これから十分に成長戦略を考えていくべきなのではないかというふうに思います。先生御指摘の成田と羽田を一体的に運用していくというのも、一つの重要な御指摘ではないかというふうに考えております。

谷田川委員 もう余り時間がありませんので、最後にまとめたいと思うんですが、八月十五日の読売新聞に堺屋太一さんが寄稿をされておられまして、今回のJALの再生について非常に好意的な文章を寄せられております。これは国民の利益になるということと、それとともに、やはり今、非常に閉塞感漂う日本において、最近は、きのうも銀座でオリンピックのメダリストたちがパレードをやって五十万人が集まったという明るい話題でございますが、そういった中にあって、日本航空の再生というのは、ある意味で日本にとって非常に明るい話題だと私は思っています。

 成田空港の便も大分削られました。それはやむを得ないと思いますが、ただ、名実ともに世界のウイングとして、鶴のマークも復活されましたが、日本を象徴するJALが今後とも発展していただきたい。そして、ジェットスター・ジャパンというLCCにも出資されましたけれども、日本の航空業界を背負っていくんだ、そして今回、国民からこれだけ世話になったんだ、国民にしっかり恩返しするんだ、そういう気持ちをぜひ持ち続けていただいて頑張っていただくことを心から期待いたしまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 きょうは航空問題に関しての参考人質疑、お三方の参考人の皆様には大変御煩多のところお運びいただきまして、まことにありがとうございます。また、あわせまして、内閣府そして企業再生機構並びに公正取引委員会、それぞれ大変お忙しいところありがとうございます。

 二年前の四月、私は、国土交通委員会の集中審議でこのJAL問題の質問をいたしました。一兆円の債務超過で会社更生法の適用、こうした状況から二年四カ月、よもやこんなに早くこの場でこうした質疑をするとはある意味思ってもおりませんでした。

 JALの企業再生に関しましては、その当時、政治決断で、先ほどもお話がありましたように、公的資金の投入三千五百億円、そして会社更生法の適用によって税制上のさまざまなインセンティブや優遇措置を受けて、こうしたことは世界でも例がない、もちろん日本では初の事例であるわけでありまして、こうした状況で今日まで進められてきていることは御案内のとおりであります。

 先ほどもお話があったように、この問題は、政治が入り口を決めたわけでありますから、当然、出口も政治決断という責任が国会に課されているんだろう、私はこのように思っております。例えば第三者割り当ての問題、あるいは法人税の免除の問題、公平性の問題。これらの課題は、今後、我が国で公的資金を投入する民間企業への救済のあり方に大きく影響を与えて、言ってみれば、政治決断でやったことが我が国の証券市場や債券市場に大きな影響を及ぼすのではないか、こういう懸念を私は持っておりまして、だからこそ、この場で十分な国会審議が必要なんだ、このように改めて思うわけであります。

 まず冒頭、第三者割り当て増資の問題について内閣府にお尋ねをいたします。

 JALの更生手続が終了する直前、平成二十三年三月十五日に百二十七億円の第三者割り当て増資がされたわけでありますが、この株は、上場企業ではありませんからインサイダーではない、しかし国民からすれば、あるいは投資家からすれば、ややもすればインサイダーではないかととられるような構造も見てとれる。この点、私は、JALそのものの企業価値を毀損しかねない重要な問題である、こういうふうに思っております。

 そこで、内閣府にお尋ねをしたいのは、国有化企業である以上、本来は、この第三者割り当て増資はとめるべきだったんじゃないか、こう思うんですが、内閣府、どうでしょうか。

神田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の第三者割り当て増資についてでございますが、会社更生計画上、イベントリスク等に対応するため、機構の三千五百億の出資に加えて、追加的に資本増強等を検討するということにされておりました。また、裁判所の許可を得て、さらに株式を発行することができるということも更生計画に定められておりました。したがいまして、更生計画で必要があるとされた内容について、更生計画に定められた手続に従いまして、三月十四日に裁判所の許可を得て管財人において実施をされたものというふうに承知をいたしております。

 それから、二十三年の三月にリファイナンスを実施いたしておりますが、管財人たる機構としましては、金融機関の理解を得てリファイナンスを実施して早期に更生手続を終結させるためにも、更生計画に定められている内容を誠実に実行する必要があったというふうに考えております。

菅原委員 先日の八月七日の当委員会で、この第三者割り当て増資に関して、自民党の方から企業再生支援委員会の議事録の提出を求めたんですが、これがいまだに出ていないんですね、大臣。そういう意味では、公的資金による実質国有化ということは、より高い透明性が当然求められるわけなんです。

 あわせて、その七日の日に、企業再生機構の瀬戸委員長が、最大三千五百億を出資しよう、そこが公的資金を入れる最大リスクと説明をされています。金融機関から不安があって、追加増資を求める要請があったから増資をしたんだ、こういう答弁をされているんですね。だったら、公的支援をもっと少なくできる事業規模に縮小するとか、あるいは第三者割り当て増資を、当然、三千五百億はあるわけですから、そこで回避できたはずなんですよ。これをしないで、あたかもその第二ラウンドのように、第三者割り当て増資が当たり前かのごとくの流れでロジックを構築していらっしゃる。これはやはりおかしいと思うんですね。

 当初の更生計画では、いわゆるJALの資産超過の部分が二百四十八億円というふうに見込まれていたんです。ところが、御案内のとおり、二〇一〇年度末の時点では二千百八十二億の資産超過になっておりまして、当初から上場も有力な選択肢の一つとしている以上、更生期間中の増資は、公的資金を扱う者としては、透明性あるいは公平性に欠けるということは言うまでもないわけでありまして、私は、当然回避すべきではないか、このことを指摘を申し上げておきたい。

 あわせまして、このような事案というのは、先ほどるるお話、説明がありましたけれども、今後新たな事案、例えば、あえて企業名は申しませんが、メーカーが今非常に大変な状況で、数十万という、あるいは関連企業を含めると四百万という影響があるような企業さえ今後ある中で、こうした部分において、政府やいわゆる政府系機関の再生機構がきちっとグリップをして、とめさせる勇気もきちっと持たなければいけない、やめさせる勇気も持たなければいけない。私は、このことを冒頭申し上げておきたいと思っています。

 次に、大西参考人にお伺いをいたします。

 記者会見や、六月二十八日のテレビ東京の「カンブリア宮殿」、私もこれはたまに見るんですが、稲盛名誉会長が、昨年度の営業利益二千四十九億のうち、四分の一が公的支援、四分の三が自助努力というふうな説明をされていらっしゃるんですね。四分の三が本当に自助努力と言えるんでしょうかね。例えば為替だとか燃費の乱高下等々、外的要因というものもあるのではないか。この点、どうでしょうか。

大西参考人 ただいまの数字の御理解については、四分の一、いわゆる財産評定等の更生計画の手続を経た結果、効果が出ているものとそれ以外のものということで御説明をさせていただいたのではないか、このように思います。

菅原委員 更生手続に基づくものというよりも、これはどう見たって、具体的に見ていけば、当然自助努力よりも、ずばり言うと、ここで戸崎参考人にもあわせてお伺いをしたいと思うんですけれども、ダイヤモンド・オンライン、先ほど来お話が出ていますように、戸崎参考人も同様の趣旨で、財産評定影響額四百六十億以外を「JALの地道な経営改革によるもの」、こういうふうに評しているんです。

 ところが、三千五百億投入をする、そしてまた、本来であれば、事業規模の縮小や人員削減やOBの退職金の減額、機材の小型化等、こういったことが自助努力ではないとは言いません、ないとは言わないけれども、しかし、この前提としては公的資金と会社更生法の力、言ってみれば、先ほどの説明にもありましたけれども、組合交渉なんかを行った管財人が一定の努力をしているんだと思うんです。これは、公的資金や法律の力なくして自助努力と言えませんよね。こうしたスキームの中でできた結果であるわけであります。

 同時に、金融機関によって五千二百十五億円のいわゆる借金の棒引き、債権放棄、あるいは三十万人以上の株主の犠牲、こうしたものの上に成り立っているからこそ、一万六千人の人員削減だとか、あるいはOBの退職金、企業年金の減額、本当に今泣いていますよ、皆さん。四分の三の自助努力ではなくて、こうした方々の犠牲に立ったればこそ、そういう部分があってこそと思うんですね。

 その点、大西参考人と戸崎参考人、それぞれ端的にお示しください。

大西参考人 先生御指摘のとおりに、さまざまな方々の御支援によってこの利益をたたき出している、こういうことだと思います。本当に、御支援、いろいろな方の御理解のもとにこの利益が出ている、このように再度繰り返して言わせていただきます。

 以上でございます。

戸崎参考人 お答えします。

 先生のおっしゃるとおり、それには非常に多くの要因が絡んでおって、自主努力の中には株主の方々の犠牲が非常に大きい。同じダイヤモンド・オンラインの中にも、そうしたことに対してはきちんと反省をし、今後、絶対そういったことに関して社会的に還元をしなければいけないというふうに書いております。

 ただ、その一方で、費用が大きく削減され、御指摘のとおり、リストラで非常に多くの日本航空の社員自身が傷を負っているという点についてもやはり評価をすべきではないかというふうに考えております。

 以上です。

菅原委員 今お二人の参考人の御答弁からすると、冒頭の、四分の三は自助努力というのが、そうではなくて、そうした犠牲が大きなウエートを占めているというふうにも私には聞こえてなりません。事実、そうだと思うんです。これはやはり履き違えをしちゃいかぬのではないかな、私はこのことは指摘をしておきたい、こう思っています。

 JALは、事業規模を縮小して人員削減や大型機の売却等ができなかったことが要因で破綻をした、こういう事実ですね。結果、税金と法的な力で事業規模の縮小等の経営課題に対応できたのであれば、JALみずからが、四分の三が自助努力とは言えないわけでありまして、国交省は、こうした収益改善の要因を正確にチェックして、分析して、指導助言すべきである。そういう意味では国交省の責任も極めて大きい。当然、そこをチェックする私ども国会の役割も一定の責任を負わなければいけない、こういうふうに思っています。

 そこで、小野参考人と公取の竹島委員長にお尋ねをしたいと思います。

 JALは、二〇一二年の三月期、ことしの春の決算で、二千四十九億円の営業利益、千八百六十六億円の純利益を計上いたしております。一方のANAの方は、営業利益がJALの半分、純利益に至っては二百八十億円、六倍ぐらいの差をつけられているんですね。

 純利益ベースで見ますと、減価償却費の削減による効果が約四百六十億円、法人税等の免除効果が大体四百八十億円、金利負担の減額された分が五十億円、トータル九百九十億円。言ってみれば、これだけ巨大なお金がその純利益を底上げしているといいましょうか、本来であれば、これはほかの一般企業にはとても考えられないような優遇措置であって、メリットであるんですね。しかも、これを去年、ことし、そして今後七年間、継続的にやっていくんだと。

 これは、私は、これだけ黒字化して純利益が上がってくれば、先ほど小野参考人でしたか、ANAを抱き込むとか買収するなんという話ではなくて、まずはきちっと税金払えよという話ですよね。これは当然のことですよ。こういうことをせずに、言ってみれば、ANAの方は翼におもりをたくさんつけたかどうかわかりませんが、あたかも完全に公平性がゆがんでいる。考えてみれば、ANAにとって、こうした状況、JALに対してこうした支援が行われて、法的な力が働いて、だから踏ん張ったんだと思うんですよ、だから、本来の力よりもANAも頑張って、今日、当社においては最高の純利益を出したということですけれども、それでも、余りにもこのインセンティブの違いによって大変な窮地に至っていることは言うまでもないわけなんです。

 そこで、この資金力や投資力は、それこそ自助努力をしている企業との公正な競争環境をゆがめる一因である、こういうふうに思いますが、小野参考人並びに竹島公取委員長の御見解をお示しいただきたいと思います。

小野参考人 財産評定等については、これはルールに定められたものなので、まあそうなのだろうなというふうに思うんですけれども、JALの再生は会社更生法と公的な支援がセットでなされるという、かつてないスキームで実現されているという点は留意しておくべきだろうと思いますね。

 先ほどもちょっとお話ししましたように、JALの例は、ひょっとしたら最初の例で、これからこんなようなことが日本の産業界でたくさん起こってくるかもしれません。そんなようなことも踏まえて、これは、税収をきちんと確保するという観点、もしくは公正な競争を確保するんだというような観点から、いろいろな法的な措置、あるいはガイドラインの設定というようなものがやはり必要なのではないかというふうに考えます。

 以上です。

竹島政府特別補佐人 お答えいたします。

 会社更生法と公的支援によって、言ってみると関係者が予想した以上の、うれしい誤算といいますか結果が出てきたということだと思いますけれども、その結果として競争にどういう影響があったのか。

 どの程度という金額で申し上げることはできませんけれども、明らかに、ANAとの関係で競争の条件に大きな影響が出ていると私は思っております。

菅原委員 先般、私はこの質問に立つに当たって、海外の主要航空会社の過去四年間の最終利益、直近の利益を調べてみたんですね。すると、事もあろうにといいましょうか、大変喜ばしいことではあるんですが、我が国のJALだけが一五%以上の最終利益率で突出しているんです。シンガポール航空でさえ、去年、利益率でいうとわずか三%。過去に大変経営が潤滑なシンガポール航空は、最高のとき、二〇〇八年で一〇%なんです。それを上回って一五%の利益率ということは、これが全世界のアライアンスの中でどれだけ大きなものかということは推して知るべしというか、そのとおりの数字が示されていると思うんです。

 航空業界というのは、例えば航空機だとか空港の施設にかかわる経費だとか投資の割合が大きいわけですね。したがって、その資金力や投資余力そのものが競争力に大きく影響を及ぼしてくる。

 公的資金によって再建中のJALは、ことし二月に出された中期の経営計画では、新型のボーイング787を十機ふやして四十五機購入、その規模は四千七百八十億円と言われています。債権放棄してもらった五千二百十二億円にほぼ匹敵するくらいの新たな新機種を購入できているわけです。

 あるいは営業の値引き合戦、かなり率先してやっています。例えばテレビのCMなんかも、ANAの方は見たこともない小学生が出てくるんですけれども、JALの方は「嵐」が出てきて、これはもう歴然たる差で、どっちが支援機構に支えられているのか、税金投入されたのか、テレビを見たら、諸外国から見たらびっくりしますよ。

 こんな状況であったり、そういうような資金力だとか投資力の差ということを私はなぜ問題にするかというと、これからなんですよ。ここ二年四カ月、足跡を積んできた、そしてJALも一定の体力を持ち直してきた。その一方でANAも、インセンティブも補助も何もない中で、自分の力以上の浮力をしっかりと担保できつつある。まさにそういう意味では、どちらかがどちらかをのみ込むなんて話じゃなくて、きちっと競争力を高めていくことこそが我が国の国益だ、私はこういうふうに捉えております。

 そこで、そういう中においても、倒産して身軽になった会社が、自力でやっている会社よりも毎年一千億円、先ほどの九百九十億円ですよ、法人税を免れる。法人税法上、確かに合法です。合法だけれども、こんなことは、いわゆる競争政策上の問題としては、極めて是正すべき問題であると思うんです。この点、通告していませんが、大臣、どう思いますか。

羽田国務大臣 国土交通省としては、自民党さんからも御指摘がありまして、二〇一六年までしっかりと監視を続けていく。こういうことで、しっかりとした二社の競争体制、これについては監視をしていきたいというふうに思っておりますし、公平公正な競争というものを重要視していきたい。そして、何といっても安心と安全、こういうものが最重要だというふうに考えております。

菅原委員 きょうは参考人質疑なので多くは聞きません。

 ただ、やはり二〇一六年までということは余りにもちょっとインターバルがあり過ぎます。ここは、こうした国民の血税、しかも消費増税をしなければいけない、こういう状況の中にあって、その増税分とは言いませんけれども、大変大きな額の公的資金、血税が一企業に注がれていることを考えれば、私はそんなに猶予はないと思います。

 そこで、公的資金によります救済事業、あるいは路線の明示なき不公正、この問題について戸崎参考人にお伺いをいたします。

 八月二日配信のインターネット、ダイヤモンド・オンラインで、参考人が、「政治が無分別に地方空港を作り、かつては政治家と癒着していたJALが、政治家の票集めのために飛ばされており、破綻の一因となったことは事実だ。」こう明記されているんですね。

 それでは、ちょっとお尋ねしたいんですが、過去二十年間に国内で開港した空港が十一あるんです。このうち、JALが就航している空港は幾つか、どこだか御存じですか。

戸崎参考人 正確な数は今申し上げることはできませんが、静岡並びに幾つかの空港には就航していると思います。(菅原委員「静岡並びにどこ」と呼ぶ)静岡並びに、正確なところはちょっと今はわかりません。ですから、その点に関してはおわび申し上げます。

菅原委員 事前通告というのは参考人さんにはないもので、ストレートボールを放りましたけれども、今現在、JALが就航しているのは但馬だけなんですよ。直近の二十年間で十一開港して、当初、福島、佐賀、静岡、神戸、そして但馬があったのが、その四港は全部フェードアウトしている、撤退しているんですよ、JALは。

 ということは、オンラインで書かれた、新しくつくった空港に無理やりJALを飛ばさせて、そうしたことが今日のこの状況に行き至った。それでは、JALが今回撤退した国内線、四十三路線ありますよ。参考人がおっしゃる、いわゆる政治家が無理やり飛ばさせた路線というのはどこのことをおっしゃっていますか。

戸崎参考人 確かに、新設空港に関しては先生のおっしゃるようにフェードアウトさせた部分があります。ただ、入ったことに対しての初期投資が非常に大きいところがありますし、過去、おっしゃったような福島空港あたり、あるいは過去の空整の中でずっと拡大路線で進められてきた空港に就航し、そして、その不採算性の中で経営が圧迫されたという事実をもちまして、私はその中でそのような表現をさせていただきました。

 少し政治ということに対して不穏当な発言をしたことについては、おわび申し上げます。

菅原委員 こういう時代ですからインターネットでも残りますので、今の正直な捉え方は大変重要だなと思っています。

 大西参考人にお尋ねをしたいと思います。

 今お話があったように、政治家が圧力をかけたのではなくて、私は、私ども自民党政権時代も含めての反省もきちっとしなければいけないと思います。ただ、そうした中で、国交省の航空局の責任も当然、極めて大きい。あわせて、民間企業であるJALが高コスト体質、まあ放漫経営とまでは言いませんけれども、赤字の原因であったのではないか。特に、JALとJAS、あの統合をした後に路線を整理、見直しをしなかったことがやはり私は原因の一つだと思います。

 ぜひ、地方路線の撤退や移管等の努力、この点についてJALとしてはどういう努力をされたのか、大西参考人からお聞きをしたいと思います。

大西参考人 高コスト体質についてお答えしたいと思います。

 その手前に、我々は採算性意識というものが非常に希薄であった、これがさまざまなところに敷衍をしていって、一つは高コスト体質、あるいは古い機材、大型機材を大量に保有している、あるいは基本的に拡大主義に走る、そういうようないろいろなところにつながっていっている、このように思います。

 今後、我々としても、収益性、採算性をしっかり踏まえながら、皆様の利便性の高いネットワークを構築していく、こういうことに尽力したい、このように思っております。

 以上でございます。

菅原委員 重ねて戸崎参考人にお尋ねしたいんです。

 この委員会でも先般も議論がございましたが、民間企業に公的資金を投入することが正当化される場合に、大きく三つの見方があるんだと思います。例えば金融機関のような、いわゆるシステミックリスクの場合。あるいは、議論で出ていましたけれども、アメリカのGMのように社会的なインパクトが非常に大きい場合。そして、今現在、自由化が完全に進んでいない中での電力会社、こうした代替がきかない企業の場合。大きくこの三つだと思うんです。

 先般、羽田大臣が、JALの救済理由を「公益性が高く、インパクトが大きい」、こういうふうに答弁をされているんですね。調べてみたら、GMは、アメリカにおいては最大手の一つで、従業員数、関連企業を含めると二十五万からそれ以上の従業員がいる。翻ってJALは、当時五万人、今は三万人ぐらいになったんだと思いますけれども、インパクトの大きさという意味ではとても比べ物にならないような状況があるんだと思います。とするならば、私は、今回の場合は、この三つの正当化される要件の中では唯一、代替性のない路線を救済するということにあるのではないかな、こう思うんですね。

 自民党は、税金を使ってでもJALを救済する目的として、生活路線の維持ということを考えてきました。また、戸崎参考人が先ほどのダイヤモンド・オンラインの中にも書いているとおり、一社独占あるいは寡占状態でどうしても料金が高くなって、その結果サービスが低下をする、だからこそJALの存続が必要だ、こういうふうに解説をされていますが、この点も私は一定の理解ができるんです。それならば、なぜ、国内線の四十三路線のうち二十九路線の単独路線が撤退できるんでしょうか。その点の整合性がとれていないと思うんですが、戸崎さん、お願いします。

戸崎参考人 先生御指摘のとおり、公共性の維持というのが非常に重要なJALの救済手段であるということは確かだと思います。ただ、もう一方で、路線の経営というのは、現在の体制では民間の私企業が担わされているところがやはり一つの大きな問題だと思います。ですから、その点に関しては、国土交通政策の中でも、今回、交通基本法という別枠の中で公共路線をどのように支えていくのかということが議論されております。

 したがって、先生のおっしゃるとおり、こういった代替性のきかない路線を本来は担っていかなきゃいけない。ただ、それが本当に日本航空に課されるべきなのか。あるいは、追っていくと、これは全日空さんにも全く同じことがかかってまいります。

 やはり採算性というのが民間企業である場合に重要である、そういうことを鑑みながら、同時に、こういった事例をもとにして、今後、そういった不採算性がありながらも公共性が高い路線をどのように支えていくのかというスキームに関しては、今、国会でも論じられているような交通基本法などの別枠のスキームで考えていくべきではないかというふうに思っております。

 以上です。

菅原委員 当然、今後それを一本化といいましょうか、整合性をとるには、新たなスキームが必要になってくるんだと思うんですね。

 そこで重ねて、先般、竹島公取委員長さんが、国家補助をすれば、その程度はともかく、競争環境はゆがむと。先ほども御答弁をいただきました。ゆがみを最小限にする措置の必要性ということでおっしゃっているんだと思うんですね。とするならば、そのゆがみを最小限にするには、国民の税金を使ってでも救済する事業、路線というものを国民に向かってきちっと明確にする責務があるんだと思うんです。

 この場合、基本的に民間企業でありますJALを税金で救済する大義というのは、競争が働かず、サービスが低下して、ANAなどの寡占にしない路線を特定することであって、需要が大きくて複数社の飛んでいる路線は民間に任せられる路線であって、それは極力減らして再生をさせなければ、そのゆがみは是正されないのではないかな、こういうふうに私は捉えています。

 つまり、JALがやりたい路線と、国とか国交省が救済すべき路線は異なっているんです。もしJALがやりたいのであれば、私は、支援の完了後にやるべきであって、完全に支援なり自助努力なりが完成しない中で飛び立つということは、やはり安全な航行はできないのではないかな、こんなふうに思っております。言ってみれば、世界に類を見ない三千五百億円という規模で、かつまた、競争環境のゆがみを最小限にするスタンスあるいはその措置がないために、結果的にこの問題を大きくしてしまっているのではないかな、私はこのように思っております。

 それでは、竹島委員長と小野参考人にお伺いをしたいと思います。

 公的資金を投入する事業の明確化がなく、企業再生支援機構法で定めた支援基準の適合に関するデータも出ていないという状態に今回なっています。ところが、その一方で、二〇一〇年一月に経営破綻をした三カ月後の四月、ちょうど私が二年四カ月前に質問をしたときに、羽田から国際線の新規路線、羽田―サンフランシスコ、パリ、ホノルル、バンコク、台北、シンガポールを発表して、その年の十一月末の更生計画の裁判所認可前に、その六路線が就航しているんです。これは、不公平な競争環境のゆがみを最小限にするという竹島委員長のお考え、あるいは公取のお考えからすると、逆に不公平性を助長しているんだ、こういう捉え方も私はできると思うんです。これについてどのようにお考えでいらっしゃるか。

 あわせまして、去年の八月にジェットスター・ジャパンへの出資を発表して、ことしの四月には成田―ボストン線を開設したわけなんですけれども、今後はさらに、成田―ヘルシンキ、サンディエゴの開設を予定しているんです。

 国としてはとてもいいことなんだと私は思います。つまり、国の一つのエアラインとして、日本を世界にしっかり、大きく、そのレーゾンデートルを確たるものにしていくという意味では非常にいいことなんですけれども、順序が逆じゃないかな、果たして国民がそれで納得するんだろうか、こういう思いがするんですが、この点について小野参考人、竹島公取委員長の御見解をお示しいただきたいと思います。

小野参考人 先生御指摘のとおり、この間の新たな路線の就航というのは、まさに競争上の不公正を生んでいるのではないかというふうに考えます。

 特に、先ほどから私が申し上げております国際競争の観点で考えた場合にも、JALとANAが同じような路線に、同じような時間帯に飛行機を飛ばして、国内で消耗戦を繰り広げてしまっているという現実があると思います。それは、先ほどの国際競争を考えた場合に、国内で消耗戦をやっている場合ではないというふうに考えますので、その点でもマイナスであったのではないかと考えます。

 なので、EUのガイドラインのようなもの、生産量だとかシェアだとか、航空機の更新あるいは新規路線、そういったようなものに対しては一定の歯どめをかけるような基準が必要だったのではないかというふうに考えております。

 以上です。

竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 今の参考人の方からもございましたけれども、EUの場合には、こういう場合に競争に対するひずみをできるだけ小さくするという観点から、具体的には、輸送能力が市場の成長以上に拡張してはならない、要するに、座席とキロではかるような輸送能力が市場の成長を上回って、この場合はJALですが、伸びてはいけない。それから、再生期間中に他の航空会社の株式を取得してはいけない。それから、発着枠の割り当て、航空施設の利用等について優遇されてはいけない。そういった条件が課されているわけです。

 今御指摘の、特定の時期に国際線を増便したというようなお話もございまして、それはどうかというようなお尋ねもあったかと思うんですけれども、全体として見れば、JALは、国際線は四割、国内線はたしか三割と記憶しておりますが、それだけの大幅なリストラをしておる。その中で、不採算部分の撤退だけでは再生ができない、十分ではない、したがってもうかる路線を開くということ、そのプラスマイナスがあって全体でそれだけ減っているということは、私はこれは判断の問題としてあり得るだろうと思います。一切だめと言っていたのではこれは再生にならないでしょうから、そういうことはあると思います。

 申し上げたいのは、これだけの大規模な支援を行ったときに、競争に対する影響が具体的にどのように検討されたかというようなことについて、事前には公正取引委員会は関与しておりません。このようにいろいろと御議論になってから勉強しているわけでございますけれども、今現在、私のところには、EUでガイドラインなり、具体的にアリタリアならアリタリアのときに示した条件に見合って、日本においてどういう議論がなされたのかということについては、私にはそれは余りなされていないんじゃないかという材料しかないということでございます。

 したがって、今から振り返ってこれはどう、あれはどうということを議論いたしましても生産的じゃない。むしろ、現状をどういうふうに認識して、競争に対する影響があったのかないのか、あったとすれば、具体的に、何をこれからどうすればいいのか、こういう議論をしなければ答えは出てこないと思います。

菅原委員 今お二人から大変重要な御答弁をいただきました。特に竹島委員長のお話の、これはある意味では世界が注視をしている事案でもあります。

 そこで、それぞれからお話が出たEUのガイドライン、これは実は二年四カ月前の集中審議の際に、私は当時の前原大臣に、これをやるべきだ、EUのガイドラインのようなものを確立して、生産量の制限、シェアの削減、機材更新等の制限をすべきだと質問したんです。そうしたら、前原大臣は、何らかの措置を考えなければいけない、こういうふうに明確に答弁をしているんですね。

 そこで、航空局長にお尋ねをしたいんです。

 この二年四カ月、何をやってきたんですか。航空局長はこの前、複数の国家で形成されるEUで定めたガイドラインは、単一国家の日本にそのまま適用することは難しい、こうおっしゃっているんです。ところが、先ほどもお話があった竹島委員長は、国家補助は個別企業にしてはいけないのが常識、その程度はともかくとして、競争環境をゆがめることは当然、日本においてもEUのガイドラインのようなものがということなんでしょう、各省庁の政策判断、決定において取り入れられてしかるべき、こういうふうにこの前発言をされておられます。ところが、この二年四カ月、国の方としては何もしてきておりません。

 時間がないので、あわせてお尋ねをしたいんですが、先般、自民党の方から、JALの再上場に関する申し入れ書を出しました。八月十日の羽田大臣の定例会見で、「日本航空の企業再生への対応について」という文書が出されまして、そこには、日本航空の投資や路線開設で競争環境が不適切にゆがめられないか報告を求め、状況を監視する、こういうふうにあるんですね。

 ところが、六日後の八月十六日に、国際線のボーイング777の十三機のシートを一新するとあって、しかも、きのうは、日本航空グループのJTAが那覇の整備施設を拡張してLCCからの請負を狙う、こういう報道があったんです。これは、支援も補助も再生機構の援助も、何も受けていないならば大変喜ばしいことなんですけれども、こうした状況がある中で、国民がその点をどう見ているのか。

 以上二点、航空局長、答弁をお願いします。

長田政府参考人 先生御指摘の公的支援の関係でございます。

 国土交通省としては、大臣が十日に発表させていただきましたが、公的支援によって航空会社間の競争環境が不適切にゆがめられることがあってはならないということを認識しております。

 そのために、まず、先ほどEUのガイドラインの話もございましたけれども、このメーンは運賃あるいは供給力、こういった問題でございまして、運賃につきましては、日本航空の運賃がいたずらな値下げを行わないような通達を出しまして、監視を行ってきたところでございます。

 また、先生の二十二年四月の質問の後でございますが、この更生計画の策定あるいは認可の中で、何度も申し上げておりますが、いわゆる羽田の路線の増便も含めて、トータルとして国際線で四割、国内線で三割の大幅な事業縮小を行いまして、航空機材についても三割削減をしてきたところでございます。その後、これらの施策がきちっと実施をされているかどうかということについて我々は引き続き監視をしてまいったところでございますし、また、先般発表させていただいた方針の中では、EUのガイドラインについても、今後、関係省庁と協議をしながら、具体策について議論してまいりたいというふうに考えております。

 そういう中で、先生が今御指摘の、JALの777の件でございますが、これにつきましては、777そのものがかなり古い機材でございまして、約十年から十六年の間、機材の更新をしていなかったものについて新しい座席に改修するというふうなことで、これ自身、むしろ供給座席量を削減するものでございますので、たちまちにこれが競争環境を不適切にゆがめるというふうなことは考えておりません。

 また、那覇のJTAの整備施設の関係でございますが、これは、JTAそのものが現在、機材、人員の効率化を進めておりまして、その結果、人員の余剰が生じます。その余剰の人員の方々を何とか活用したいという観点で、現在、整備施設の拡張ができないかということを検討しているところだと聞いておりますが、現在、まだ具体的に計画が決定されているというものではないというふうに考えております。

 ただ、いずれにしろ、こういった事態につきましては、それらがまさにJALの再生の趣旨に適したものであるかどうか、そういったものについてきっちりと報告を求め、必要に応じて指導助言をしてまいりたいと考えております。

菅原委員 言われるような監視体制、機能が、なかなかできていないと思いますね。これは、やはりJALの再上場、九月十九日の前に、こうした競争環境のゆがみというのを最小限にすることは当然のことだと思います。

 最後に、小野参考人、きょうの議論を聞いて何かあればお教えください。

小野参考人 私、冒頭で申し上げましたように、本来であれば、保有株は競争入札にかけるべきだっただろうというふうに考えております。今は再上場というスキームで進んでいるわけなんですけれども、本来であれば、再上場よりも、統合効果が見込まれるストラテジックバイヤー、いわゆる競合他社の方が高い価格を提示することができるわけですね。公的資金の最大回収という観点から考えても、ストラテジックバイヤーに買収の機会を提起するというのが大事なことだったのではないかというふうに考えております。

 あともう一つ、これは、実際の正式な売買価格の決定等はこれからになるわけなんですけれども、これから投資家等のブックビルディングなどが行われるわけなんですけれども、実際、幾らの価格になるかはまだわかりません、巷間、六千億、七千億というふうに言われていますけれども。

 もし仮にこの株が売れ残ってしまった場合、これは公的資金の回収という点でも課題を抱えるだけでなくて、ひょっとすると、国が株を保有したままの航空会社と純粋の民間会社とが両方並立してしまうというふうな、また不公正な状況が継続してしまうということにもなりかねないので、多くの課題を抱えているのではないかというふうに私は考えます。

 以上です。

菅原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 次に、中野渡詔子君。

中野渡委員 国民の生活が第一、中野渡詔子と申します。

 参考人の皆様、お忙しい中、ありがとうございます。限られた時間ではございますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。

 日本航空さんが実質の経営破綻から、更生計画に基づいて、さまざまな努力をされて再建されてきたということは認識をしております。計画に基づいているから問題ないんだということでいえば、ある意味そのとおりだという面もあるとは思うんですけれども、会社更生法の適用だけではなくて公的資金、国民の血税を投入しているという、最も重い支援策をとられた企業であることを考えれば、再上場ということは国民の皆様がすんなり納得されるものではないと受けとめております。再上場自体が悪いということではなくて、再上場するのであれば、公共交通を担う企業としての責任また義務というものを果たすべきではないかという国民の多くのお声をもとに御質問をしていきたいと思います。

 まず大西会長にお伺いしたいです。

 平成二十二年の二月一日に、稲盛会長が就任の会見で、日本航空、全日空、両航空会社が切磋琢磨しながら、日本国内また日本と世界を結ぶ交通インフラの担い手として、日本経済、世界経済の発展にともに貢献してまいりたい、そういうことをおっしゃっていらっしゃいます。

 この稲盛会長の会見を受けて、今回の二〇一一年度の決算の結果も見て、今、全日空さんと対等な立場にあるんだ、フェアな環境にお互いに立っているんだということを御認識されていらっしゃるんでしょうか。

大西参考人 現在の我々はまだ再生途上の会社である、このように認識しております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 一部では、日本航空さんがとにかく再上場できてしまえば、再上場の際に、初値を目いっぱい上げて高値で売り抜いてしまえば、あとはもう知らないということではないんですけれども、とにかく経営を維持できればそれでいいという考え方しか持っていないというふうに意見する人もいるんです。この点についてどのようにお考えでしょうか。

大西参考人 その点に関して私が今感じていることをお話しさせていただきます。

 同じく二〇一〇年二月一日に、稲盛会長が、なぜ日本航空の経営の重さをわざわざ担うようになったかという中で、私には三点ある、こういうふうに御説明されました。

 一つは、これから事業規模を縮小するに当たり、日本航空から去っていただく者は出てくるだろうけれども、それでも多くの者が残る、その雇用を守っていくということが一つである。それから、日本航空が二次破綻すると日本経済に大きな悪影響を及ぼすのではないか、ここで踏ん張らせるべきだ。三点目が、本邦の航空会社が競争環境にあるべきだ。こういうふうにおっしゃって就任をされています。

 私も全くそのとおり、当時稲盛会長が言われたこの三点というのが、我々がしっかりと守っていく観点である、このように認識してこれまでやってきたつもりでございます。

中野渡委員 ありがとうございます。

 ちょっと意地悪な質問ばかりで申しわけないんですけれども、結局、再上場で株を売却した場合に、株主が支援機構から投資家にかわるだけで、日本航空さんは実際には痛みを伴わないんだ、そういう意見もあるんですよね。済みません、これに関しても御意見をいただければなと思うんですけれども。

大西参考人 私どもとしては、我々はサービス業でございます。航空運送事業という観点もございますけれども、今、リーダーシップをとっている人間も社員一人一人も、どういう認識で我々が立っているか。我々はサービス業そのものだというふうに思っています。

 そういう意味でいえば、できるだけ多くの方に株主になっていただいて、いろいろな御意見を聞きながら、我々は切磋琢磨しながら、よりよいサービスを提供していきたい、このように考えているところでございます。

中野渡委員 ありがとうございます。

 今、小野先生の方から、支援機構の保有株というのは競争入札をすべきだったんじゃないかという御意見がありましたけれども、それに関しては会長はどのように思われますか。

大西参考人 これは全く個人的な意見ということになるかと思います。会社の中で議論したものではございません。

 競争入札という環境が機能するのは、恐らく、それなりの競合が存在している、多数存在している中での競合が持ち合うという部分である、このように認識しております。

 我々の業態にはなかなか当たらないのではないか、このように思います。

中野渡委員 ありがとうございます。

 それでは、小野先生にお伺いしたいんです。

 去年の十一月ごろの時点で、既に先生の方では、公的資金の投入と再建計画などに対して当初から懸念を持っていらして、民主党の参院選の惨敗なんかを受けて、実際、政府の方では、もう日航問題に触れたくないというのが当時の政権の本音であったりとか、また、政治空白というのが実際にそれで生まれてしまって無責任状態に突入しているということを御指摘されていたんですけれども、今この現状において、結果的に、決算を見れば、非常にすばらしい実績を上げられたJALさんの状況、また今現在の政府に対して思われること、御認識をお聞かせいただきたいんです。よろしくお願いいたします。

小野参考人 これまでも申し上げてきましたけれども、やはり競争上の不公正というのが発生しているのではないかというふうに思います。

 本来であれば、政府、政治の民間企業に対する関与というのは最小限であるべきだというふうに考えているわけなんですけれども、今回の場合は、こういった形で公的支援、会社更生法の適用というのがなされたわけですから、出口においても政府として一定の関与が必要だったのではないか。

 そういう意味では、やはり何らかの是正措置、先ほどから議論になっておりますような、EUのガイドラインと似たようなガイドラインが、事前にきちんと議論されて導入されておくべきだったのではないかというふうに考えております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 今、政治介入は最小限にすべきだったと何度もお聞きしたんですけれども、そうすると、民間企業に対して政府の支援、政治介入をする場合に、まず、その業界に対して余りにも大きな影響を及ぼすから、その一つの企業に支援をする、あるいは、社会的インパクトが余りに大き過ぎて潰せない、だから支援をする、その二つが考えられると思うんです。

 今回の日本航空さんの支援というのはどちらに該当すると思われますか。

小野参考人 今回、JALに公的支援がなされた、これが正当性があるかどうかという意味でいいますと、私は正当性はあったのではないかというふうに思っています。

 それは、一つには、国際的な人の流れを支える非常に重要なインフラであったということと、五万人を超える従業員の方がいらっしゃって、非常に大きなインパクトがある、マクロ経済に対する打撃もあったのではないかというふうに考えますので、そういった意味では、公的支援自体がおかしかったということはないのではないかというふうに考えております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 それでは、増資の面で、第三者割り当ての増資は、結果として日本航空さんの業績の回復傾向が見られ始めたころに実施をされていたので、この第三者増資というのは実際は行われなくてもよかったんじゃないかという意見もあると思うんですけれども、先生はこの点についてどのように思われますか。

小野参考人 確かに、破綻時には、会社更生法が申請された二〇一〇年の一月の段階では二次破綻なんかの懸念もあって、支援機構が支援できる三千五百億円では資金規模が足らないのではないか、資本増強がもうちょっと潤沢になされるべきではないかというのが金融機関等からありました。それについては私も承知しております。

 ただ、実際に、十一月の時点ではかなり回復傾向が鮮明になっておりましたので、第三者割り当て増資自体はその段階では必要がなかったのではないかというふうに思っております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 今回の会社更生法の適用によって、結局、九年間法人税を日本航空さんは払わなくてもいいということになり、推計になりますけれども、四千億円ぐらいになるんじゃないか。そうすると、一般の民間の企業さんが同じように経営努力をして売り上げを伸ばしていく中で、この九年間の税制での免除というのは非常にありがたい、メリットの大きいものだと思うんです。

 公的資金を投入された企業というものが一般の民間と同じ土俵にいて、同じメリットを受けるということはふさわしいのだろうかと思うんですが、先生、どのようにお考えになりますか。

小野参考人 それは先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、実は、会社更生法とこのような支援機構による公的資金の注入というのがセットでなされたというのは初めての事例だったので、その初めての事例に即して、税制上、どうやって税金を最大回収していくのかというようなこととか、あるいは、競争上の公平性の確保とかいうようなものを意識したガイドライン等はやはり必要だったのではないかというふうに考えております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 大臣にお伺いをしたいんですけれども、さまざまな要因で日本航空さんが実質の経営破綻に陥って、今回のような支援策がなされた。では、これによって全日空さんの方が経営破綻をしてしまったら、同じことを政府はするのでしょうか。お答えをお願いします。

羽田国務大臣 そうならないように、しっかりと、公平公正な競争をしていただけるように、日本航空に対する公的支援によって航空会社間の競争環境が不適切にゆがめられることがあってはならないということをしっかりと肝に銘じながら監視をしていきたい、こういうふうに考えております。

中野渡委員 ありがとうございます。

 最後に、参考人の皆様それぞれにお聞きをしたいんです。

 日本航空さんの会社更生法の適用であったり、また公的資金を投入されることになったときから、日本の政府においては航空再編等々のビジョンというのが示されていないという指摘が、いろいろな有識者の方たちからなされてきました。これは政府が示さなければいけないビジョンではあるんですけれども、これから、日本の航空再編に向けてどうあるべきかという御意見をそれぞれに承りたいと思います。大西会長からよろしくお願いいたします。

大西参考人 私どもも一緒に議論に参加させていただいて、将来のそのビジョンというのを少しでも形づくっていくということにさせていただきたい、このように思います。

小野参考人 本来、航空産業がどのようにやるかということは、これは政府が決めることではなくて、ビジョンを描くことではなくて、民間企業同士が競争して、その結果としてどうなっていくのか、言ってみるとマーケットが決めるものであろうというふうに考えております。

 ただ、航空産業というのは、空港のこととかを含めて、これはどう考えても国家が関与している部分も大きいので、そういう意味で、国際競争を視野に入れた競争力強化策というのは考えられていてしかるべきだと思いますし、そういったものが余り今回見られなかったというようなことは言っていいんじゃないかと思っております。

 以上です。

戸崎参考人 政府のしかれてきた政策というのは明確だと思います。

 一つは、オープンスカイ政策というのをきちんととられていますし、その中で、いかに国際競争力がある市場環境あるいは競争環境をつくるかということ。そのためにも、安全を配慮した上での規制緩和を進めたり、そういったことをされています。空港のあり方についても、あり方委員会を結成し、そして同じように、競争の中で空港というもののあり方を見直していかなきゃいけない。

 ですから、私としては、政府のビジョンというのは明確であり、それに対して企業がどのように、そのしかれた土壌の中で、あるいはしかれた環境の中で切磋琢磨していくのかということが重要であるというふうに考えております。

 以上です。

中野渡委員 ありがとうございます。

 大臣に一言だけ。採算性を求めるために、結果として地方路線が切り捨てられていって、国民の空の足がだめになっていくということが繰り返し行われていくようであれば、それは、国の政策、根本が間違っているとも思います。地方路線また離島路線に対する支援というものもしっかりと政策として考えていただきたいとお願いを申し上げまして、自分の質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

伴野委員長 次に、福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 国民の生活が第一の福嶋健一郎でございます。

 本日は、参考人の皆さん、お忙しいところをありがとうございます。

 冒頭、質疑に入ります前に、せっかくこういう機会をいただきましたので、今から二十七年前でございますが、昭和六十年八月十二日の夕刻、多くのとうといみたまが犠牲になった、このみたまに対して安らかならんことを心よりお祈り申し上げますとともに、二度とこういうことを起こしてはならないということで、航空行政をつかさどる政府、国交省、そして、きょうは大西参考人がお越しですけれども、航空会社の皆さん、くれぐれも、まずは安全性だというところを改めてこの場でお願いをしたいというふうに思っているところでございます。

 まず、JALの再生には、安全性の強化、財務体質の強化、そして何よりも公共交通機関としての使命貫徹、この三つがあると私は思っております。きょうは十五分しか時間がございませんので、安全面については先ほど申し上げたことでかえさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 再三お話に出ていますとおり、このJALの再生については、会社更生手続の開始決定が平成二十二年の一月、手続終結が二十三年の三月、この秋口にも再上場が展望されるということで、早い復活というか再生ではありますけれども、一方で、この再生には、先ほどからお話にもございますとおり、三千五百億円のいわゆる公的支援、そして金融機関の債権放棄、これは金利を免除する、事実上金利負担がなくなるのが五千二百億円超。何よりも、やはりそういったいろいろなオペレーションの上に実現したものであって、これはまた大西参考人もよく御案内のことだと思いますけれども、やはり身を切る改革をされてきた、グループ企業で約一万八千人を削減された、そういう重い決断の中で今日に至っているわけであろうかというふうに思っております。

 このJAL問題について、今までも質疑でよく出てきましたけれども、繰越欠損金制度の問題というものが取り沙汰されています。

 再度、事実確認だけ国交省にお伺いしたいんですけれども、平成二十二年度におけるJALの繰越欠損金の合計額、そして直近の決算、平成二十三年度におけるいわゆる繰越欠損金の相殺額について伺いたいと思います。

長田政府参考人 日本航空の二〇一〇年度末時点におきます繰越欠損金の額でございますが、これは、会社更生手続開始以前に発生したものが三千五百九十五億円、それから会社更生手続に伴い発生したものが八千九百九十四億円でございまして、合計で一兆二千五百八十九億円でございます。

 二〇一一年度におきましては、当該年度の課税所得を、会社更生手続開始以前から抱えておりました繰越欠損金で相殺をしております。税務上のもととなります相殺金額は約千二百億円ということでございます。

福嶋(健)委員 今御答弁ありましたように、現状では会社更生手続前の繰越欠損について処理をしているというふうなお話だったんですけれども、私にとってみれば、私の意見なんですけれども、どっちでもよくて、JALに対してこの繰越欠損金の制度が特別な制度であるということであれば、それはそれで考えないといけませんけれども、この繰越欠損金を使った制度、JALさんでいうと直近の決算では法人税が多分三百五、六十億円ぐらいの効果だと思いますが、これは今、制度を使っている以上は、制度がある以上は、これをいかに使っていって、そしてそこから出るキャッシュフローを、例えば先ほどの安全面にどう使っていくのか、あるいは公共交通機関の使命にどうやって使っていくのか、また財務体質の強化にどう資していくのかという方が問題であって、この制度自体がけしからぬということであれば、それはまた別のところで議論すべき話であるというふうに私は思っております。

 もちろん、先ほど参考人の皆さんから出ております、これを導入するときにいろいろなことを考えなければいけなかったのではないかという御指摘は多分あると思いますけれども、今ある制度、これは航空会社だけではなくて大手銀行等も使っている制度でございますので、これを何に生かしていくのかというのが大事なのかなというふうに私は思っているところでございます。

 今述べましたように、更生手続が早いということで、これは企業再生支援機構の支援があるわけですけれども、もともとJAL自体に経営破綻をしたという問題があって、支援機構が入って支援をして、一応エグジット、出ていくというふうなストラクチャーの中で、そもそもJALが経営破綻をしたときに抱えていた問題について、企業再生支援機構の支援の中でどのようにクリアされたのか。ここがクリアされていないと、一瞬バランスシートがきれいになっても、また同じ轍を踏むということがあると思うんですね。

 これは内閣府にお伺いしたいんですが、支援の中でどのようにクリアされたのか、具体的に教えていただきたいと思います。

神田政府参考人 お答えさせていただきます。

 日本航空が破綻に至った原因につきましては、ハード面では、大型の機材の大量保有ですとか不採算路線の維持など、事業構造の硬直化の問題がございました。また、ソフト面では、人員余剰、組織の硬直化、意思決定の遅滞など、組織体制の硬直化といった問題を抱える中で、需要変動の大きい国際線比率が高かったことから、リーマン・ショックや新型インフルエンザによる需要低迷に適時適切に対応できなかったことにあるというふうに考えております。

 この点につきましては、具体的には、ハード面の事業構造に関しましては、ボーイング747などの非効率な機材を退役させ機材を減らすということ、不採算路線からは撤退するなどということを進めたということでございます。それからソフト面につきましては、組織体制に関して、グループの人員の約三分の一の削減、子会社の売却、それから部門別採算制の導入などを進めてきたところでございます。こうしたことから、二十二年度、二十三年度でいずれも更生計画を上回る営業黒字を計上するに至っているというふうに考えてございます。

 機構の支援といたしましても、当初行いました資金繰りのための融資ですとか保証については、出資の段階で弁済を終了しております。それからまた、この六月には機構からの役員派遣も終了しておりまして、現在、出資を除く支援は全て終了しているという状況でございまして、九月中旬の再上場に向けて、今、手続を進めているという状況でございます。

福嶋(健)委員 八月十日に国土交通省航空局が出された「日本航空の企業再生への対応について」というリリースがございます。これには、いわゆるJALの平成二十八年までの中期計画について報告を求め、状況を監視し、必要に応じて指導助言を行うという、一定の政府の関与というか、指導というのがある。ここの出口を出た後の数年間、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、後戻りしないように、やはりJALさんはJALさんできちっと中計にのっとって業務を遂行し、それを国土交通省がモニタリングして、国土交通省は本当にきちっと監視をしているのかということを我々がモニタリングしていくということで、ここの部分については引き続き我々もやっていかなきゃいかぬというふうに思っているところでございます。

 同じ八月十日付のペーパーにも実は出ていることなので、またこれは国交省さんに再確認したいんですけれども、先ほどから出ていますとおり、再生をしてバランスシート上はきれいになって収益体質もついたというJALと他社との公平公正な競争をどう担保すべきと考えるのか、これについて国交省さんから意見をいただきたいと思っております。

長田政府参考人 先生御指摘のとおり、私ども国土交通省としましては、日本航空が航空ネットワークの維持発展に貢献する企業として再生を果たすことが大事だというふうなことを考えております。また、公的支援が航空会社間の競争関係を不適切にゆがめることがあってはならない、そういう考え方で八月十日のペーパーを出させていただきました。

 安全な運航の確保というのは当然の前提でございます。そういう観点から、今後、日本航空の利益がまさに再生の目的に照らして適正な方法で使われるように、二〇一六年度までの間、日本航空の再生の進捗状況をしっかりと私どもはモニタリングして、必要に応じて指導助言も行ってまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。

福嶋(健)委員 今のお話にもありましたけれども、公平公正な競争環境というのは、同業他社はもちろんのこと、やはりお客様にとって公平であり公正である競争を各航空会社さんでやるべきだ。お客様あっての民間企業だと私は思っておりますので、そういった視点からの取り組みもぜひ国交省さんの指導のもとにやっていただきたいというふうに思っております。

 先ほど申し上げた八月十日付のリリースにおいても、「公的支援が競争環境を不適切に歪めることのないよう、」「ガイドラインの策定について検討を行う。」と。「策定について検討を行う。」という言葉の意味はどうかわかりませんけれども、とにかくこういったものについては早期にきちっと決めて、決めたルールの中で各社がお客様のために切磋琢磨していくというのが私は本当の姿であると思います。

 最後に大西参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほど私、三つの問題を申し上げた、最後の公共交通機関としての使命のお話です。

 これについては、やはり安全面はもちろんのことですけれども、財務面、収益、そういったものを求める余り、いわゆるドラスチックな、例えばネットワークの削減とかそういったことで、では、それが公共交通機関としての使命に合致するのかというふうな御指摘、御批判もございます。こういった意味で、一方で収益を上げながら、片や公共交通機関としての使命を全うしていく、この二つについてどのようにお考えかというのを最後に伺いたいと思います。

大西参考人 まさしく先生が言われたとおりだと思います。我々は、しっかりした財務体質を構築する、これによって利便性の高いネットワークを再度構築していくということは可能だ、このように思っております。

福嶋(健)委員 ありがとうございました。

 最後にまとめとしてというわけではないんですけれども、私は熊本の国会議員でございますので、毎週末飛行機に乗っております。JALさんに乗るときでもANAさんに乗るときでも、やはり現場の従業員の皆さんは本当に努力をされているんですね、両社とも。もちろんほかの航空会社もそうなんですけれども。こういった最前線で働く従業員の皆さんのお声を聞いていただいて、そして何よりもお客様のお声を聞いていただいて、ただバランスシートがよくなっただけじゃなくて、その次のステップに行くためには、やはり、そういったいろいろな皆さんの声を聞いて健全な経営に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 三人の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。後ほど順次御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 大西参考人は成田の整備関係のお勤めが長かったというふうに伺っておりますが、実は私、千葉県習志野市に住んでおりまして、二十五年前に京成線沿線の四百五十世帯ぐらいの戸建て住宅の団地に引っ越したんですね。京成の駅から歩いて五分ぐらいですから、当時、千葉で弁護士を開業していまして、この駅から京成線で千葉まで通っていたんですけれども、私の家の斜め前のお宅がJALの方でした。朝起きると、黒塗りのハイヤーが少し先にとまっているんですね。時間になるとすうっと玄関に来て、お住まいの方を乗せて、多分、成田なり羽田にお連れしていたのではないかな。

 四百五十世帯の中にJALやANAの社員の方は大勢いらっしゃいまして、私は弁護士をやっているけれども、でかいかばんを持って駅まで歩いていた。JALというのは本当にもうかっている会社なんだなと当時思いましたけれども、まあ、こんなことをやっていたらきっと破綻するだろうなと思ったら、そのとおりになりました。先ほど採算性の意識の欠如ということを言われていたので、本当にそこは、反省されて今努力されていることに対しては、敬意を表したいというふうに思います。

 今、福嶋委員の方から、国交省が八月十日付でリリースされた「日本航空の企業再生への対応について」というペーパーについて、ちょっと国交省にまず御質問をしたいというふうに思います。

 八月七日にこの委員会で、航空問題についての集中的な一般質疑をさせていただきました。その際に質問できなかった部分もあるんですが、質問通告していた部分を何か全部網羅して回答していただいたようなペーパーになっていまして、国交省、航空局にしては素早い対応をされたなと。まあ、自民党の皆さんからは、航空局は要らないんじゃないかみたいなかなり厳しい御指摘もありますけれども。

 そういった意味では、大臣もあのとき答弁されていましたけれども、きちんと検討していただいて、こういうことをこれからやっていくんだという意味では、この「対応について」というペーパーはなかなかいいものだなというふうに思います。

 ただこれは、中身に実効性が伴うかどうかが問題だと思います。特に、七日の委員会でも、またきょうも随分質問が出ていましたけれども、EUに倣った日本版のガイドライン、これはやはり必要なんじゃないか、公的資金を投入された後、同じように公平な競争をしていくためにやはり政府の方できちんと対応してガイドラインを設けておくべきだった、この二年間何をしていたんだという意見は七日の委員会でもありましたけれども、今後これに基づいてやるんだということは、私はいいことだと思うんですね。

 ただ、ここの各論の1を見ますと、航空局は、「交通政策審議会における審議の一環として、公的支援が競争環境を不適切に歪めることのないよう、今後の航空分野における企業再生と公的支援に関するガイドラインの策定について検討を行う。」と書いてあるんですね。

 「検討を行う。」って、検討して何も決めませんでしたとなるんだったら全く意味がないので、このガイドラインについて、どういうふうに検討して、いつごろまでに策定するんだというような見通しはあるんでしょうか。その点、ちょっと大臣にお伺いしたいんです。

羽田国務大臣 ガイドラインについては、先般の議論の中でも、検討させていただくと私の方からお答えをさせていただきました。今言われたように、実効性の伴うものにならなければならない、こういうふうに考えているところでございます。

 日本航空の再生に係る国の関与や公的支援の内容については、今後、交通政策審議会において、これまでの一連の経過について報告し、議論をいただきたいというふうに考えております。その一環として、航空分野における企業再生と公的支援に関するガイドラインの策定についても検討を行っていきたいと考えているところでございます。

 ガイドラインについては、他の産業分野への影響など、関係府省と調整を行う必要もございます。できるだけ早く結論が得られるようにしたいというふうに考えておりまして、現在、関係者と調整を行っているところでございます。

富田委員 できるだけ先延ばししないで。羽田大臣になってからは、委員会の質問に対してきちんと答弁していただいて、URも見に行っていただいたというのを参議院の方の審議で聞きましたので、ぜひ委員会の質疑を政策実行に生かしていっていただきたいというふうに思います。

 また、この「対応について」の各論の2で、「新規投資・路線開設について」ということが書かれています。この中で、例えば公的支援によって競争環境が不適切にゆがめられたというふうに認められるような場合、あるいは判断されるような場合に、新規投資とか路線計画に対して国土交通省として何らかの対応がとれるんでしょうか。どのような対応をとられるおつもりで、こういうふうな2の「新規投資・路線開設について」というペーパーをまとめられたんでしょうか。御答弁いただきたいと思います。

長田政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣がたびたび申し上げておりますとおり、国交省としては、公的支援によって航空会社間の競争が不適切にゆがめられることがあってはならない、こういう原則でございます。

 一方、民間会社の投資や路線計画につきまして、国が法的な根拠なしに制約を課すということはできないわけでございますが、私どもとしては、今回、日本航空につきましては、公的支援を受けて現在再生の過程にあるということを踏まえまして、二〇一六年度までの間、日本航空に対して、まず、投資あるいは路線計画について定期的あるいは逐次報告を求めて、具体的な投資が競争環境をゆがめるような投資にならないように確認をしてまいりたいというふうに思っています。

 その上で、例えば極端な例で言いますと、もう既に供給過剰な状態の路線についてJALさんが投資をされて、さらに運賃をいたずらに下げて、お互いの健全な競争が阻害されるというような事態が発生したような場合には、我々としては、それは必ずしも適正じゃないんじゃないかという問題意識を日本航空にお伝えして、適正な判断を行っていただけるよう期待をしているところでございます。

富田委員 大西参考人にお尋ねしたいんですが、実は七日の委員会でも、ジェットスターへの投資が再生計画の最中に行われたということで、各党から、これはちょっと問題なんじゃないか、少なくとも、更生計画を進めていく中できちんと資本が安定して、更生計画が終了した上でこういう投資をするというならわかるけれども、計画中に新規投資というのは幾ら何でも国民の理解が得られないんじゃないかという質問がたくさんありました。

 このジェットスター・ジャパンへの投資について、大西参考人としてはどのように判断されてなされたんでしょうか。

大西参考人 お答えいたします。

 ジェットスター・ジャパンへの投資については、我々としては、企業価値の向上の一つの施策として投資をさせていただいた、このように認識をしております。

富田委員 企業価値の向上という意味ではそうなんでしょうけれども、実は、ちょっといろいろ調査室等で資料をいただいたら、大西さんがまだ社長時代、二〇一一年一月十一日、この年の新春インタビューに答えられて、全日空もLCCの設立に動いているけれどもJALはどうなんだ、更生計画の中でも検討すると書いてあるけれどもどうなんですかというふうに尋ねられて、大西参考人はこんなふうに答えているんですね。「LCCは新たなマーケットの創造に比重が置かれていると思う。勉強はしているが、現在、財務体質を強化していくなかで、積極果敢にLCCという薄利の分野に打って出る価値があるかどうかは疑問だ。」というふうに言われていて、このとおりだと思うんですね。

 ところが、実際には、この年の八月十六日に三社で共同発表して、九月からジェットスター・ジャパンを設立しますというふうに記者会見されましたよね。この記者会見の中で、実は大西さんは、LCC参入に向けてジェットスターと一年以上協議してきたというふうに正直に話されている。そうすると、一月の段階ではどうかと言っているのに、実はもうその半年近く前からずっとこういうのを計画していたと。

 一月にこういうのをきちんと発表しないというのは、計画に何か影響するとか、やはりそういったことを考えて言われたのかなと、後からこういうふうに見ると思うんですよね。これはやはり、きちんと計画が終了した後にやった方が透明性があってよかったなというふうに思うんですけれども、その点はどうですか。

大西参考人 回答申し上げます。

 私が薄利多売の事業に入っていかないと言ったのが二〇一一年の一月というふうに言われましたか、当時、私のイメージにあったのは、日本航空みずからがLCCの事業に出ていくということを選択することは我々としてはありません、我々としては、きっちりしたブランド、日本国ブランドというのをしっかり持っていきたい、こういうことでございましたので、そのときの私の発言が不十分だったということは反省しておりますけれども、当初から、我々が、日本航空みずからがLCCの形態の事業をやっていく、こういうことは考えにくいということをずっとお話はさせていただいておりました。

富田委員 投資の時期についていろいろ意見があるということはぜひやはりお知りおきいただきたいと思います、これ以上は質問しませんが。

 またもとの航空局の「対応について」に戻りますが、各論の3で、「航空局は、利用者利便の維持・向上を図るため、羽田等の混雑空港の発着枠の配分や、空港チェックインカウンター・ボーディングブリッジ等の施設利用の調整等を通じて、健全な競争環境の確保を図る。」というふうに書かれています。

 これは大事な視点だと思うんですが、この羽田等の混雑空港の発着枠について、JALさんへ公的資金をずっとやってきて、不公平だというふうに今言われているわけですから、ある意味、これからこの発着枠を配分するのであれば、ANAさんの方に少し優先的に配分するということがあってもいいと思うんですが、航空局はそこはどう考えているんでしょうか。

長田政府参考人 先生御指摘のいわゆる混雑空港の発着枠でございます。

 混雑空港の発着枠につきましては航空法に特例がございまして、その配分に当たっては、安全の確保、今議論になっています競争の促進、あるいは多様な輸送ネットワークの形成、こういった許可基準に従って配分をするということにされております。

 羽田の国内線二万回の配分を今後検討していくわけでございますが、これは最初にどの航空会社ありきということではなくて、今申し上げました航空法の規定に基づきまして、その中で、例えば、航空会社によって地方路線の維持充実に対してどういう取り組みをされてきたか、そういうことを重要な評価の視点としながら具体的な配分を検討してまいりたい、そういうふうに考えております。

 それから、チェックインカウンターにつきましても、航空会社間の公平な競争を確保するという観点から、今の配分が果たして適正なものになっているかどうかをまた引き続きチェックして、問題があればさらに配分をし直してまいりたい、そういうふうに考えております。

富田委員 戸崎参考人にお尋ねしたいんですが、ことしの八月四日付の読売新聞に、これはインタビューを受けられたんだと思うんですが、戸崎参考人の「羽田発着枠 全日空に配慮を」という記事がありました。この点についてどうお考えでしょうか。

戸崎参考人 先生御指摘のとおり、読売新聞さんからインタビューがありましたけれども、どうしてもマスコミさんというのは正確に意図が伝わらないところがございまして、あくまでも枠の配分については、今、航空局長がおっしゃられたように、公平に、これこそ本当に国の財産ですので、どういう観点でやるべきかということを慎重に、今、委員会でも進められていますし、その中で十分な議論がされるべきだというふうに考えております。

 以上です。

富田委員 何か否定されてしまいましたが、戸崎参考人はインタビューの記事ではこう締めくくられているんですね。「公的支援を受けずに自助努力してきた全日本空輸には一定の配慮をすべきだ。現在議論されている羽田空港の国内線発着枠の配分は、全日空に有利な形で行われるべきだ」。これはちょっとゆがめられたという御趣旨ですけれども、そのように理解をしておきます。

 もう一つ、この十日付の「対応について」の各論の6に「利益の社会的還元について」という項目を立てられまして、「航空局は、日本航空に対し、関係者の理解の下に公的資金の投入や債権放棄・減資等の協力が行われてきた経緯を踏まえ、社会に対する貢献方策についての検討を要請する。」というふうになっています。

 これは具体的にはどういったことが考えられるんでしょうか。

羽田国務大臣 国土交通省としては、日本航空の再生過程において、関係者の理解のもとに公的資金の投入や債権放棄、減資等が行われてきた経緯を踏まえ、日本航空に対し、社会に対する貢献方策について検討を要請しているところでございます。

 日本航空においても、上場承認時に、「最高のサービスをご提供し、企業価値を高め、様々な形で社会の進歩発展に貢献してまいります。」と表明をしていると承知しており、具体的な貢献方策については、日本航空において適切に検討されると期待をさせていただいているところであります。

富田委員 大西参考人、今の点はどんな考えですか。

大西参考人 今大臣がおっしゃいましたように、我々は、今後、利便性の向上という形をとって、広く社会への貢献、これまで御支援いただいた部分について貢献をしていきたい、このように考えているところでございます。

富田委員 できればもう少し具体的な答弁をいただけると、この問題についてこういう質疑をした成果があったなと思うんですが、ちょっとその点は残念です。

 次に、企業再生支援機構に対する主務官庁の監督責任についてという観点から何点かお尋ねをしたいと思います。

 内閣府の方から来ていただいていると思うんですが、七日の委員会、またきょうも問題になっていましたが、百二十七億の追加増資についてはやはり不透明な部分があったのではないかということが各党から問題視されてきました。

 企業再生支援機構の瀬戸委員長にも来ていただいていろいろお話を伺いましたし、内閣府の事務方からも、法律の手続にのっとってやったんだというふうな答弁はあるんですけれども、先ほども、中野渡委員でしたか、企業の業績が上向いているときにやったんじゃないかと。二〇一〇年末に債務超過はもう解消しているんですよね。解消した上で、翌年の二〇一一年三月十五日に、わざわざ特定の八社に百二十七億増資している。

 これは、主務官庁としては、もう不要だということでとめるべきだったのではないかというふうに思いますが、内閣府はどういうふうに考えているんでしょうか。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 今の論点、当委員会においてもるる議論をいただいております。

 前にも御報告申し上げましたが、機構との関係での国の関与のあり方は、機構が支援決定をする、あるいは出資を決定する、こういったときには主務大臣が意見を述べるという形になっているのが一つと、一方で、例えばJALのこの第三者割り当て増資等のようなことに関しては、出資金とか金額等に関して逐一関与する仕組みにはなっていない中で、今回の第三者割り当て増資、今先生からもお話がありましたように、会社更生計画上のイベントリスクへの対応ということで、機構の三千五百億円の出資とともに資本増強等を検討することとされていたという、この裁判所の許可を得て行われた枠組みの中で行われているものでございます。

 さらに、不透明な増資であったのか、不要な増資であったのかということでございますけれども、ここに、会社更生計画上、イベントリスク等に対応するため、こういうことも検討するとされていたことに加えて、当時、確かに二〇一〇年末に債務超過のレベルは脱していたとはいえ、さらに、東日本大震災からのリスクとか、あるいはLCCとの兼ね合いでのリスクとか、いろいろな事業のリスクというのがまだあったんだろうというふうに思います。

 そういった中で、早期に更生手続を終結させるために更生計画をできるだけ一生懸命実行していくという中でのことだったんだろう、私たちとしてはそのように考えています。

富田委員 報道ベースですので確認できないんですが、この三千五百億以外の増資については、二〇一〇年八月に日本政策投資銀行の方から、今政務官はイベントリスクと言われましたが、テロ対策なんかのためにもう少し増資してほしいというような要請があって管財人の方で動いたということなんでしょうけれども、ただ、増資が行われたのはその八カ月後なんですよね。二〇一〇年末に債務超過をもう越えている。二〇一一年三月十五日に増資をされて、三月二十八日に更生計画が終了しました。その終了したときの記者会見で稲盛さんは、今後の増資は要らないと言っているんですよ、もう十分だと。

 このときは、金融機関から、五百億増資してくれという話だったと思うんですね、三千五百億にプラスして五百億。そのうち百二十七億しか増資できなかった。それでも稲盛さんはもう要らないと言っているんだから、この百二十七億自体、もともと要らなかったんじゃないかというふうに一般の方が思うのは当然だと思うんです。

 政務官、役所の人が言うのはしようがないんだけれども、やはり政治家として、こういうときにこういう無駄な増資をとめるというのが政務三役の役目じゃないかと思うんですが、その点はどうですか。

大串大臣政務官 JALの再生でございますけれども、御案内のように、一兆円近い債務のある中で、それを、機構による出資、あとリファイナンス等、こういったものを含め、さらには、この第三者割り当て増資にもあるような民間からの出資も得た上で、とにかく二十三年の三月末までに更生計画を終えてエグジットしていくという、その目的に向けて動いてきたわけであります。

 ですので、例えばこれが過剰な出資であり、要らなかったのかと言われると、更生計画上、二十三年三月末までに更生計画を終えていくということをとにかく目標として行い、それを達成したわけでありまして、もちろんそこには利益の積み上げもあったわけですけれども、振り返ってみると、これは、一定の更生計画を終わらせるという方向に向けて行ってきた取り組みの一つではなかったかというふうに私たちとしては思っています。

富田委員 政務官、でも、三月十五日に百二十七億出資させて、三月二十八日に終了しているんですよ。この百二十七億、五百億を金融機関から要求されていたのに百二十七億しかできないのに、稲盛さんはもうこれで十分だと言っているんだから。

 稲盛さんの関与されている京セラは五十億出資して、九月十九日ですか、もし上場されたら、二千円で買ったのが三千七百九十円で売れるわけでしょう。丸もうけじゃないですか。

 大西参考人、これは、この八社の皆さんに安定株主になってもらうなら意味はあると思うんですよ。上場して、売り抜いて利益を得るというと、やはり不正があったんじゃないかというふうに思われると思うんですね。この八社の皆さんに安定株主として今後もJALを支えてもらいたいというようなお話はされているんでしょうか。

大西参考人 その前に、生の経営者として、当時、債務超過が消せたとしても、この会社が本当に生きていけるのかというのは、本当にびくびくしていたことは事実でございます。

 安定株主についてでございますけれども、当然、今後、我々が一般の上場の民間企業としてサポートしていただける、あるいはしっかり御意見をいただける安定株主が欲しいことはもちろんでございます。

 以上でございます。

富田委員 小野参考人にお尋ねしたいんですが、私は、今回の百二十七億は非常に不透明だと思っています。その原因は、先ほどもいらっしゃっていましたけれども、瀬戸さんが再生の監督サイドと執行サイドの実質的なトップになっていた、利益相反ではないかと言われるような立場にいたということが一番問題だと思うんですね。

 これは七日の委員会でも大分問題になりました。瀬戸さんは参考人としていらっしゃって、きちんと法的な手続にのっとってやって、自分は、JALの問題に関しては、再生委員会の方では決議にも加わらなかったから大丈夫なんだというふうにおっしゃるんだけれども、日本に三万二千人以上弁護士がいるんですよ。何で瀬戸さん一人にいろいろなことをやらせなきゃいけないんだというふうに思うんですけれども、小野参考人はその点どのようにお考えですか。

小野参考人 先生御指摘のとおり、支援機構の監督サイドと、実際その支援対象先であるJALの執行担当者が重なっているというのは、確かに利益相反の観点からも問題だったのではないかというふうに考えます。

 支援機構さんの方では、いわゆるJALの再生には非常に専門的な知識が必要だったというようなことで瀬戸さんの起用というのを正当化されていたようですが、先ほど私、お話ししましたとおり、中村専務という非常に事業再生に明るいプロフェッショナルの方がいらっしゃって、その方が実際にはJALの執行の方にもかかわっていらっしゃったので、瀬戸さんがいなければいけない正当性というのは特段なかったのではないかというふうに私も考えております。

 また、支援決定の際などに委員会の長でいらっしゃる瀬戸委員長が議決から外れるといったようなことも、ガバナンス上問題があったのではないかというふうに思います。実際、JALは支援機構の中では最大案件でしたから、そういったような形で外れられるのは異常事態だったのではないかというふうに考えております。

 以上です。

富田委員 大串政務官にちょっと最後にお尋ねします。

 今の小野参考人の御意見は本当に大事だと思うんですね。監督サイドと執行サイドの実質的トップを兼ねていたと。これだけじゃなくて、再生計画が終了した後、瀬戸さんはJALの取締役に就任しているんですね。ことしの六月に退任されたみたいですけれども、一年近く、支援機構の委員長をやりながら、社外取締役ですけれども、JALの取締役をやっている。

 これこそ私は利益相反じゃないかと思うんですが、こういうところをなぜ内閣府の方できちんと監督しなかったんですか。どうですか。

大串大臣政務官 瀬戸委員長においては、今お話にもありましたように、長く弁護士として企業再生を多数件手がけてこられた。このエキスパティーズに鑑みて、今回、裁判所の方で法人の管財人というのが決められたときに、職務執行者ということで決められたということだと思います。

 今、JALの取締役の話もございました。これはひとえに、機構がハンズオンで再生をアシスト、サポートしていくという立場、あるいはその機能を持っている、その中で、委員長の識見、経験をある意味活用させてもらう、そういう中での決定だったろうというふうに思います。結果として再生を果たしていくという方向に持っていくことが至上命題でございましたので、そういった中での決定だというふうに思います。

 先ほどの管財人の話で申し上げますと、スポンサーである機構が法人の管財人ということのほかに、職務執行の公正性を担保するという観点から、別途の管財人を立てて複数の管財人とするということもしておりまして、裁判所の監督のもと、利益の相反が考えられるような場合については、機構でない管財人が職務執行を行っておったというようなことも取りまぜながら公正性を担保してきたところでございます。

富田委員 政務官、複数の管財人を立てるのなら、瀬戸さんは要らないんですよ。せっかく複数立てるのなら別の弁護士さんを立てればいいので、こういう利益相反を疑われるようなことを国がバックアップしてやったということに対して、やはり国民はおかしいなと思っているし、各党の委員はそういう質問をしているので、ぜひ、やはり政治家として、こういうところに民主党政権として切り込んでくださいよ。そうじゃないんだったら、選挙が終わった後、我々がやりますから。この点はもうこれでいいです。

 あと二分ありますので、ちょっと別件で、大臣に通告していなかったんですが、この委員会で、都市再生機構の賃貸住宅の問題をずっと各党が取り上げてきました。お盆前に、八月九日にも、全国公団住宅自治協議会の皆さんが要請行動をされまして、今、穀田先生がいますが、私たちもその要請行動の集会に出て、賃貸住宅を守る、民主党の先生たちもみんな来て、守るぞと言っていたんですが、実は先週、八月十八日の日経新聞の夕刊に「高額住宅賃貸を分離」とどんと出たんですね。ちょっとびっくりしました。各党の先生に聞きましたら、土曜日の夕刊ですから、地方では配られていない地域もあって気がつかなかったと。やはり、国土交通省としてももう少しきちんと問題意識を持って取り組んでもらいたい。

 実は、この八月九日に、我が党は、内閣部会と国土交通部会で、この件を、内閣府の担当者に来ていただいて、調査会でどういう議論がされているのか伺ったんですね。まだ結論は出ていませんというのが我が党への報告でした。それが、お盆が明けたらいきなり日経新聞にどんと抜かれるというのは、内閣府自体も問題があると思います。

 ただ、こういうことをきちんと議員の方に伝えないで、内閣府の調査会のホームページを見ても何が議論されたか出てきていないんですね。住宅局の方で一生懸命やっていただいているのはわかるんですが、やはりこれは、この委員会でもきちんとこれから取り上げていきたいと思いますし、国交省としても重大な関心を払っていっていただきたいと思いますが、その点、最後に御意見をいただきたいと思います。

羽田国務大臣 しっかりと認識を持ちながら進めていきたいと思います。

 内閣府に置かれた有識者の調査会で検討が進められているということは承知しておりますが、この夕刊については、決定したとか、そういう話ではないというふうに思っています。

富田委員 終わります。

 三人の先生方、ありがとうございました。

伴野委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 三方の参考人、きょうは貴重な御意見をありがとうございました。

 私は、日航の真の再生というのは安全と公共性の確保が前提だ、しかもその中で、安全を現場で担う労働者の現状についてしっかりした対処をしなくてはならぬという立場から、せっかく来ていただいていますから、特に大西賢会長に聞きます。

 「会社更生手続き中の日本航空は二十八日、十二月三十一日付で実施する雇用契約を一方的に解消する「整理解雇」の対象者が、約百七十人に確定したと発表した。」これは、二〇一〇年十二月二十九日付の新聞報道です。このとき、当時の大西社長は、対象となった御本人、家族に対して、申しわけないという言葉では言い尽くせない気持ちでいっぱいだ、まさに断腸、身が引きちぎられるような思いだと会見で述べました。

 この思いは今も変わっていませんか。

大西参考人 変わっておりません。

穀田委員 となると、思いが変わっていないとするならば、再上場という、会社が軌道に乗った今、整理解雇して申しわけないことをした従業員を、苦労をかけたなといたわり、何をおいてもまず会社に戻すのが当然ではありませんか。

大西参考人 我々、リストラをやり遂げた後に事業計画を再度立て直すという中で、新たに人員計画を立て、新たにまた採用計画を立てている、こういうところでございます。

穀田委員 余りそれは言い分になりませんよ。

 つまり、断腸の思いで切った、申しわけない、普通そういうふうに言ったら、私ら何ぼも中小企業をいろいろ見てきましたよ、あなた方の大企業とは違うのかもしれぬけれども。人を切って、しかも、労働者に非があるわけじゃない問題で切っているわけじゃないですか。あなた方の都合で、いろいろな失敗をして人を切らざるを得ないようになった。それを断腸の思いだと言うのやったら、その人を戻すのが当たり前やないかというのが国民の普通の思いですよ。それとは全くかけ離れているなという感じがしますな。

 ですから、やはり普通、いろいろな事情でやめてもらった、それで業績がよくなった、そうしたら、まず、帰ってもらって、来てくれというのが人の道なんですよ。それは、経営だって当然の道なんですよ。したがって、私は、整理解雇を直ちに撤回すべきだと思います。

 次に、整理解雇実行後、機長、副操縦士の退職は二〇一一年四月以降どのようになっていますか。

大西参考人 LCCの台頭もあり、運航乗務員が他社に移っておられるという情報はつかんでおりますけれども、正確な数字というか、何%ぐらいという数字は今持っておりません。

穀田委員 これは、実は当委員会で私が質問したときに、国交省というのはなかなか出さないんですよ、それはそっちの話だといって。今後、そういうことについてきちんと……。

 国民の税金が投入されている。当時この問題について議論になったときに、官房長官、平野さんでしたが、国民に対する透明性、公開性、これが前提だと言ったんですね。さまざまな現状についての問題点や、何が起こっているかということを必ず公開すると約束したんですよ。それはさっぱりやっていないんだけれどもね。

 そっちが出さへんと言っているからそうなんだけれども、今、数字を持ち合わせていないと言うけれども、客室乗務員の流出状況、それからパイロットの流出状況、それは資料として出していただけるということですな。

大西参考人 毎度毎度ということはないと思いますけれども、適切なタイミングで出させていただけることがあれば出させていただきたい、このように思います。

穀田委員 適切だとか、いただければとか、余りそんな条件をつけたらあきまへんで。みんなが税金をつぎ込んでいるんだから、どうなってんねんという話を出さないなどということはあり得ないんですよ。

 そこで、私は、やめていること自体が問題だと。先ほど、LCCの台頭と。違うんですよ。そっちをやめざるを得ない人たちがLCCに行っているだけの話で、LCCに行きたくてやめているんじゃないんですよ。そこを勘違いしたらあきまへんで。

 それから、私、乗員組合などに聞きますと、副操縦士が六十二名、機長が二十六名流出している。子会社のジャルエクスプレスでは乗員の二割に当たる二十八名が退社と聞いています。これまで病気以外で退社した例というのはほとんどないと言われているわけですよね。これは会長も御存じだと思う。

 そして次に、客室乗務員八十四名を整理解雇して、裁判の判決が出た直後に新人採用を発表し、既に五百名を超える方が入社していると。報道ですが、その上、十月には百人以上の採用、来春には二百人の採用予定と言われており、総数おおよそ八百名の客室乗務員が必要となっていると。

 客室乗務員が大量に必要であるならば、もともと労働者に非があってやめさせているわけじゃないんですよ。今度の経営破綻というのは労働者に責任があるわけじゃないんですよ。その非のない人たちに整理解雇が強行された。八十四名の被解雇者を戻すのが先決ではないかと私は思うんですね。

 そこで、あなたは年末の会見でこうも言っているんですよね。当社のために汗水流して働いた社員だということもあり、人員規模の適正化のためとはいえ、やむを得ず切った、こう言っているんですね。よろしいか。汗水流して働いた社員だということもあって、人員規模の適正化のためとはいえ、やむを得ずやったという事情の説明なんですよ。

 だとすると、人員が不足したら、適正化のためでなくて事態が変化したんだから、道義的にもまずそこから戻すのが当たり前だと思いませんか。

大西参考人 現在でも我々のスタンスは全く変わっておりません。整理解雇の対象になって今係争中の皆様に対して、我々が当時感じている部分については、先ほどお答えしたとおりに、全く変わってございません。

 ただ、我々は、当時、この人員計画を事業規模の縮小の中で見直す、できるだけその事業計画にマッチした人員計画、人員構成にしていくという考えは今も変わっておりません。そういう意味で、ここ二年、採用を凍結しておりましたけれども、今後新たな日本航空を背負っていく、そういう人材を現在採用させていただいている、こういう状況でございます。

穀田委員 そんなことはないですよ。だって、四十歳の方も切っているんだから。十数年働けるわけだから、今後何ぼでも支えることはできますよ。そんなのは理屈が全く成り立たへん。大臣かてそう思いますやろ。まあ、聞いていて笑っておったけれども、そういうことですよ。そんなばかなことを言ってはあきまへんで、ほんまに。誰がそんなことを納得するか。

 それで、先ほども、前回の私の質疑の際も問題にしたんですが、日航の債務超過が解消されたのが二〇一〇年の十二月なんですね。三千五百億円を支援機構が出したから当然の話だ。しかも、営業利益は、更生決定後から九月までに千七百億円に上るということが確実だった。一万六千人の人員削減も達成していた。だから、先ほど、内心びくびくしていたとおっしゃいますけれども、客観的に見れば誰が見たって、それは、当事者が心配せぬというのはないでしょう。周りから見れば、会社が二次破綻するとか潰れるとかという認識はあろうはずがないんですよ。

 その実態を知っていたから、稲盛氏は、二〇一一年二月八日の日本記者クラブの講演で、整理解雇の百六十人を残すことが経営上不可能かといえば、そうでない、そのことは皆さんもおわかりになると思います、私もそう思いますと彼は言っているんですよね。

 大西会長、あなたも同じ認識だったのですか。

大西参考人 当時、我々、更生計画のもとで、この更生計画を達しながらさらに再生につないでいく、こういう観点から、まず、さまざまな方とお約束しているこの更生計画を達成することが第一、このように考えて運営をしておりました。

穀田委員 全然聞いていることに答えられへんね。

 ところで、整理解雇した百六十五人の人件費は年間幾らですか。

大西参考人 済みません、手元に数字がございません。今、ちょっとお時間をいただければ、概数はお出しできるかと思います。

穀田委員 裁判の中でもはっきりしていますやんか。十四億七千万円ですよ。そのぐらいのこと、人の首を切っていて、何人分の給料が何ぼだって、裁判でも問題になっているのに、そのことぐらい知らないで、あなた、そういう切った方々の、身が引きちぎられる思いだとか断腸だと本当に言うんだったら、少しぐらい覚えておいたらどうですか。

 そこで、二〇一〇年度の営業費用は一兆千七百三十億円で、被解雇者の人件費の占める割合はわずか〇・一三%。二〇一一年度は、営業費用九千九百九十九億円で、たったの〇・一五%。その意味で、稲盛さんが言っておられるように、経営上整理解雇の必要性など全くないということは明らかであります。

 そこで、今度は小野展克参考人に一つ聞きます。

 参考人は雑誌で、「JAL「整理解雇」の裏側」という小論を記しています。G2というんでしょうか、その文章の中に書いていまして、それは次のように述べています。

 「話し合えば、分かり合えるだろう。なんとかならないのか」稲盛の表情には、「行き場のないいら立ちと深い疲れが滲んでいた。」「それは無理です。相手は確信犯です。信念でやっている人たちを話し合いで説得しようとしても不可能です」「企業再生支援機構の幹部は、稲盛にずばりと切り込んだ。」このような文章を書いておられます。

 私は、どうもここに本質があるような気がします。整理解雇の目的は、組合幹部の狙い撃ち、または会社にとって不都合な人たちの狙い撃ちということがそこにあったのではないかということがこの文章を見ますと推察されるんですが、見解を問いたいと思います。

小野参考人 先生御指摘のとおり、私、ネット上でそういったような文章を書きました。私、信頼できるニュースソースから聞いてそれを書きましたので、確かに先生の御認識のようなことではないかというふうに思っております。

穀田委員 ですから、先ほど一番最初に私が言いましたように、当時社長である大西さんの話とは違って、実際はそういうことについて、新しい計画であろうが何であろうが、人員計画について変更があろうがなかろうが、たくさんの人の首を切っているという現状があって、その人たちに対して申しわけないという気持ちがあるんだったら、まずそこから雇ったって別に問題はないんですよ。しかも、その給与たるや、先ほど述べたように、営業費用の〇・一三%、〇・一五%というわずかなものだということからしましても、私はいかがなものかと思うんです。

 問題は、その人員削減、整理解雇によって職場の気力、モチベーションの低下が起こり、安全文化に影響が出ているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

大西参考人 現在、私は、代表取締役会長であるとともに、航空法で定めるところの安全統括管理者をやらせていただいています。当然ながら、安全に最後というものはございません。毎日毎日安全を積み重ねていく、これが我々の全てだ、このように思っております。日常をできるだけ把握しながら安全の層を厚くする、これが私の使命だ、このように思っています。

 以上でございます。

穀田委員 安全の層を厚くするというのは、日航に対する、柳田さんなどを初めとしたさまざまな外部からの意見の中にも書かれているものであります。

 そして、今お話あった安全統括管理者、これは航空法の百三条に書かれていることなので、その辺はよく御存じなんだろうと思うので、少し聞きます。

 「国土交通大臣は、安全統括管理者がその職務を怠つた場合であつて、」ということで、その責任を問えることが書いてあるのは御承知ですね。(大西参考人「知っております」と呼ぶ)

 そうすると、日航の職場では、植木社長が、二年間離職率がふえている、特に若い人がやめていると聞いているという、慰留を呼びかけるビデオメッセージが流されています。それは御承知かと思います。

 先ほど現会長は、安全の層を厚くしてなどと言っておられますが、稲盛氏は日経ビジネスの中で、利益なくして安全なしということを述べて、経営哲学として社内に徹底しています。こうした考え方で、コスト削減のために、例えば台風の中を突っ切るとか、骨折していた機長が操縦したなど、信じられないケースが生まれているのではないか。そういったことを誘導しているんじゃないかということについて、いかがお考えですか。

大西参考人 安全に関するスタンスについて、我々はこれまでいささかも変えたつもりはございませんし、それこそ、安全の層をより厚くするということが必要だ、このように思って日々取り組んでいるところでございます。

穀田委員 申しわけないんですけれども、こういう一連の問題について、私どもはこの国土交通委員会で、日本航空の安全問題や日本航空の再生のあり方の問題、先ほど皆さんからありました問題なども議論してまいりました。ですから、そういう議論については、ここに来るに当たって最低限ごらんになってきたかと思うんですね。

 私は、安全の層が薄くなっているという告発をしてきたんですよ。しかも、あなた方の、稲盛さんのそういう哲学のもとで、例えば先ほどフィロソフィーの話がありました。そこの中にあるようなところでいいますと、安全という文字が企業の理念から消えているという問題だとか、さらには、御巣鷹山の最大の教訓は何だったかというと、絶対安全という立場を明らかにしてきたことからいえば、明らかに後退しているという話を私は何度もしているんですよ。

 例えば、会長名で「特別安全キャンペーンの実施にあたり」というのを出していますよね。その中に、この二週間ほどの間に、イレギュラー運航や、運航、整備、客室、貨物の各領域においてヒューマンエラーによるふぐあい事例が発生しているということで、取り組まざるを得なかった内容を載せています。だから、人減らしをやった結果、こういう事態が本当に安全を脅かすようになるということが問題になっていると私は思っているんです。

 しかも、二〇一一年、大畠大臣は、当時の日航社長を国交省に呼び、人員削減で本来の保安業務に支障が出ていないかを確認するように求め、絶対安全という原点を忘れないようにしてほしいというふうに要請したことを覚えておいでですか。そのことはそのとおりやられていると自負されますか。

大西参考人 大畠大臣から調査を指示されまして、我々は当時、日本航空の安全の状態がどういう状況にあるかということをレポートさせていただきました。その際に、我々として、安全運航を堅持できていく、このようにお答えをさせていただき、ただ、安全は、先ほども申しましたけれども、そのとき、そのとき、そのとき、これをしっかり確認していくということが必要だと思っています。そういう意味で、日々モニタリングはしていく、このように思っています。

 四月に安全キャンペーンをやらせていただきました。それから、今、夏期安全キャンペーンということで引き続きやらせていただいております。安全については常に意識を高く持つということが非常に大切です。折々に触れ、安全についてしっかりと我々としては担保をしていきたい、このように考えております。

穀田委員 それでは聞きますが、管財人が、幹部社員を目の前にして、京セラのように一兆円の内部留保をしてから安全について物を言えといったことを教育しているのを御承知ですか。

大西参考人 私も、そのビデオ、DVDでございますが、見ました。全体を通してコンテクストとして見ると、安全を軽視しているというような発言とは決してとれない、このように思っております。

穀田委員 では、小野参考人に同様のことについてお聞きします。

 私はこの問題について指摘をしたわけですが、実は先ほど、大畠大臣が指導を行ったという話をしました。当時の国交省の立入検査では、各職員の労務内容の変化に起因すると考えられるトラブルも発生しているという指摘もしているんですよね。つまり、今の労務対策がこの事態をつくっているという国交省の立入検査の報告なんですね。すなわち、人員削減による労務環境の悪化で安全が脅かされているという実態を認めて、それで指摘をしたわけです。

 その上で、今、私が言ったのは、幹部職員を集めて、京セラのように一兆円ぐらい内部留保をするようになってから安全に対して物を言えと。それは片言隻語と言わんばかりの話でしたけれども、私もDVDを見ましたよ。しかし、そういう言葉は厳然としてあるんですよ。すなわち、もうかってから物を言えと、安全というのは。そういうことについて、小野さん、どう思いますか。

小野参考人 もちろん、エアラインの経営においては、安全というのが最大限重視されなければいけないというふうに私も認識しております。

 ただ、DVDについては、私は見ていないものですから、ちょっと軽々に何か物は言えないと思いますので、これでお答えにさせていただきます。

穀田委員 では、羽田大臣に一点お聞きします。

 ILOの結社の自由委員会から、日航の整理解雇問題で勧告が出されています。日本政府に対して、労働組合代表の役割の重要性を指摘していること、これが一つ。二つ目に、当事者間で十分かつ率直な協議を行うことの重要性、これを指摘しています。その上に立って、日本政府に協議を確実に保障することを求めています。

 大臣は、私の質問に対して、前田大臣の発言がありましたよね。やはり労使の「両者において円満に、とにかく会社において解決を図っていただきたいという立場で見守っていきたいし、指導もしていきたい、」この答弁を私は引きました。

 これに対して羽田大臣は、同じ気持ちだと答弁されました。であるならば、事態解決に向けた協議の場の設定に努力すべきではないでしょうか。見解を伺いたいと思います。

羽田国務大臣 御指摘のILO勧告においては、整理解雇に係る提訴等の結果に関する情報提供を求められているというふうに認識をしており、本件については、厚生労働省とも連携しながら、適切に対応したいというふうに考えております。

 なお、勧告において、従業員の削減過程において、労働組合と労働者の代表が役割を果たせるように、当事者間における協議の実施が確保されることを日本政府に要請するといった内容が含まれておりますが、これは日本航空に限らない一般的な指摘というふうに認識をさせていただいております。

 いずれにせよ、日本航空の整理解雇については、現在、司法の場で争われていることから、その推移を見守りたい、こういうふうに考えております。

穀田委員 それぞれ、一般的なというんじゃなくて、日本航空の問題について語っていることは事実なんです。そういうことはいろいろな場面で言っていることも事実です。

 だけれども、今私が述べているのは、大臣自身がそういう解決に向けての努力をする必要があるんじゃないかと。それは、ILOの勧告の中身について言えば、一般論であるかどうであるかは別として、日本航空の問題について書いておることは事実なんですよ。

 ですから、そういうのに従ってそういう手だてを打つべきであるということを主張して、参考人の皆さんに感謝を申し上げ、終わります。

伴野委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、JALの経営再建についての質疑で、JALの大西会長を初め三人の参考人の方々においでいただいております。そして貴重な御意見を賜っていることを、まず心からお礼を申し上げたいと思います。

 しかし、大変恐縮でございますが、最初に一問だけ、去る八月十五日の終戦記念日に、羽田大臣が靖国神社を参拝した件についてお尋ねをいたします。

 さて、閣僚の靖国参拝につきましては、憲法二十条の政教分離の原則に抵触しているのではないのかとの指摘がかねてからあります。さらに、一九七八年に靖国神社が太平洋戦争のA級戦犯を合祀したことにより、国会議員とりわけ閣僚の靖国参拝についてはアジア諸国からの厳しい批判が存在していることについては、十分に承知されていると思います。まず、大臣は、これらの指摘や批判をどのように受けとめておられるのか。

 また、戦後五十周年に際し、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対し多大の損害と苦痛を与えたとして痛切な反省の意をあらわし、おわびを表明した、いわゆる村山談話をどのように受けとめておられるのかをお尋ねしたいと思います。

羽田国務大臣 今御指摘をいただきました閣僚の公式参拝については、憲法二十条三項に違反するとの指摘がありますけれども、昭和六十年八月十四日の藤波内閣官房長官談話において、参拝の方式等について一定の配慮をすれば、公式参拝は憲法の禁止する宗教的活動には該当しないとの政府見解が示されたところであります。

 野田内閣においては、公式参拝は自粛するというふうにされておりまして、今回の私の靖国参拝、これは私的参拝であり、政教分離の原則には違反しないものと考えております。

 また、A級戦犯の合祀については、私は、それを別祀することによって、我が国のみならず世界の誰もがお参りをできるような形にする、参拝できる形にするというのが望ましいということは、常々言ってきたことでございます。

 また、私はもともと、近隣諸国等のいろいろな思いを配慮すべきということもずっと言ってきておりまして、総理、官房長官、そして外交をつかさどる外務大臣については配慮すべきではないかということも、一議員としてずっと言ってきたところでございます。

 また、村山談話については、私も重く受けとめ、そして踏襲をさせていただいております。

    〔委員長退席、辻元委員長代理着席〕

中島(隆)委員 大臣は今回の靖国神社参拝が私的なものであるとおっしゃっておりますが、閣僚が参拝することに公的も私的も存在しません。その意味で、今回の参拝については大変遺憾であると申し上げなければならないと思います。

 また、村山談話の歴史的認識を踏襲するのであれば、やはり靖国参拝は自粛すべきであると思います。

 竹島や尖閣諸島をめぐり韓国や中国による違法な行動が顕著になり、政府としても主張すべきはする、毅然と対応すべきは対応することが求められている時期であります。であればこそ、私たちは正しい歴史認識に立った行動が必要ではないかと指摘しておきたいというふうに思います。

 それでは、次に、公的支援を受けた企業に対するガイドラインの策定について、JALの会長の大西参考人、小野参考人にお尋ねをいたします。

 JALの三月期決算で、過去最高の営業利益、純利益を上げました。これには、三千五百億の公的支援、五千二百億円の債務免除に加え、一万六千人に及ぶ大規模な人員削減や不採算路線からの撤退というリストラが大きく作用しているものと思います。V字回復で利益を上げながら、JALは今後も法人税の欠損金繰越控除を受けることになります。

 先日の委員会でも質問をいたしましたが、会社更生法の申請時の三千六百億円が今後も課税所得から控除されていくわけでありますが、このような公的な支援を受け、これからも税制の控除措置を受ける再建企業が、支援を受けない企業と公平な競争環境にあるのか。欧州のように何らかのガイドラインを設けるべきではないかという指摘があります。

 小野参考人はこれまでの御答弁の中で、EUのガイドライン制度等の整備がされていなかった、こういう御指摘をされております。どのようなガイドラインが必要であるのか、その点をお尋ねしたいと思います。大西参考人には、このことについてどう受けとめられているのか、両方お尋ねしたいと思います。

大西参考人 公平、不公平ということについて、その批判を受けている当事者として、お話し申し上げるということは控えさせていただきたいと思います。

小野参考人 今回のJALの再建については、会社更生法と、あと企業再生支援機構による公的資金の注入という二つのものがセットで行われるという、極めて異例な形で実施されているということですね。

 先ほどもちょっとお話ししましたけれども、今後の国際競争とそれに伴う業界の再編がいろいろなところで起こっていくということを考えると、実は、JALの問題というのはJALの固有の問題にとどまらなくて、いろいろな業界に波及していく可能性があるというふうに考えております。

 そういうことを視野に入れたときに、では、今回のようなことが起こったときに、税収をしっかり確保しなきゃいけないんじゃないかという観点と、あともう一つは競争の公正性を担保するというふうな二つの観点で、やはり何らかのガイドラインがあった方がいいのではないかというふうに考えております。

中島(隆)委員 関連して大西参考人にお尋ねをいたします。

 経営再建中にパイロット八十一人と客室乗務員八十四人が整理解雇され、裁判になりました。一審の判決では解雇は有効とされましたが、現在も係争中の案件であります。

 司法の判断に首を突っ込むことはいたしませんが、働く人にこれだけの負担をかけながら利益を上げてきた。しかも、JALは来春から客室乗務員の新卒者を復活させ、その数をさらに上乗せして募集を決められております。であれば、この整理解雇は何であったのかと疑問に思わざるを得ません。整理解雇された職員を職場復帰させることが検討されるべきではないかと思いますが、これについてお伺いしたいと思います。

大西参考人 当時この人員削減というのを行っているさなかでは、我々は、更生計画を達成していく、これが第一の眼目でございました。したがって、その結果として、特別早期退職それから希望退職、これらを何度も募りながら、我々が事業規模を縮小したタイミングで整理解雇せざるを得なかった、これが現状でございます。

 それ以降の話につきましては、現在係争中の案件でございますので、コメントは控えさせていただきたい、このように思います。

中島(隆)委員 先ほど穀田議員からも指摘をされましたが、整理解雇問題については、日航の稲盛会長は、経営上は解雇の必要がなかった、こういう証言もされております。新卒者の職員を大幅に採用する計画がされているわけでありますから、解雇された職員をまず早期に復職、復帰させる、こういうことが早急な全面解決の対策ではないか、私はそういうふうに思います。安全で明るいJALをつくるためには、ぜひ早期にこの裁判問題についての解決も進めていただきたいというふうに思っております。

 さて、次に、国土交通省では航空の規制緩和に向けた作業を続けております。六月二十日の本委員会でも質問いたしましたが、長田航空局長の答弁は、諸外国の状況を踏まえつつ、安全性の検証を十分行いながら議論しているところである、こういうふうに答弁をされています。

 しかし、折しも高速ツアーバスの大事故があり、規制緩和で安全が保たれるのか、大変疑問に思っているところであります。例えば、乗客が機内にいる間にも給油できる、いわゆるオンボード給油ですが、万が一の事故になった場合は、大惨事になることは容易に想定ができます。

 一つの機材で二十五分から三十分程度で折り返し運航しないといけないLCCにとっては、離陸までの時間短縮は至上命題だと思います。国交省は、国際民間航空機関、ICAOの基準に沿って、避難指示ができる要員の配置、あるいは燃料補給を監督する者と機内の間での無線連絡を確保できれば可能にするようですが、米国では、ICAOの基準に加え、消防車の配備など独自の基準をつくり、実質的にはオンボード給油できないようにしているとも聞きます。

 そのようなことを考えますと、安全面での規制緩和を進めることは疑問も感じているわけでありますが、戸崎参考人、小野参考人に、これらについての御意見をそれぞれお尋ねしたいと思います。

戸崎参考人 私も、その規制緩和の委員会の委員として参加しております。

 安全が第一であるというスタンスは全く動かしておりません。その上で、航空技術というのは非常に日進月歩なところがございます。さらには人間の条件というのも、衛生条件の向上によって、かなり人的な条件というのも変わってきております。そういったものを勘案して、安全を第一とはいいながら、一方で、やはり不要な規制というのは企業が自由に経営の工夫をするということの妨げになるかもしれない。ですから、そこは慎重に見直しながら、特に、科学的なデータをきちんと検証しながらやろうという委員会の方針がございます。

 そういったことを鑑みれば、規制緩和を行っているものが安全性を阻害しているという状況にはないというふうに私は考えております。

 以上です。

小野参考人 先生御指摘のとおり、規制緩和を行っていく際には、安全面がどうなっているのかというのをしっかり検証していくのは非常に大切な視点であるというふうに私も考えております。技術面等については、私は余り詳しくありませんのであれですけれども、きちんとした検証が必要であろうというふうに考えております。

中島(隆)委員 私は、安全面で規制緩和を進めることについてはやはり慎重であるべきだと考えます。

 競争力強化の観点に立つならば、他国と比べて割高になっている離着陸や空港施設利用料、あるいは燃料税などの公租公課を見直すことかと思いますが、この点について戸崎参考人、そして小野参考人に改めてお尋ねしたいと思います。

戸崎参考人 先生御指摘のとおりでございます。

 ただし、公租公課並びにそういった関連の問題に関しては、事、国土交通省だけの問題ではなく、財務省並びに所管庁の管轄の領域でもあります。ですから、日本の根本的な競争力を向上するためには、やはり国土交通省だけではなく、予算のあり方、全体的な財政収入のあり方を含めて広く議論をしていただく、これはもう我々としてもぜひお願いしたいところでございます。

 以上です。

小野参考人 公租公課の問題につきましては、航空会社にとっては言ってみると歴史的な課題で、ずっと、かねがね言われ続けてきたことだと思います。

 特に、私は先ほどから国際競争の問題について何度かお話しさせていただいているんですけれども、これから空港間競争を意識していかなければいけないというふうな観点に立ったときに、やはり公租公課をどのように考えていくのかというのは非常に重要な論点になってくると思います。なので、そういったものの引き下げも、日本の成長戦略の一つとして検討していくことが大切なのではないかというふうに考えております。

中島(隆)委員 時間が参りました。大変ありがとうございました。

辻元委員長代理 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 三人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまでございます。私がラストバッターでございますので、十五分間おつき合いをいただきたいと思います。

 JALの二〇一一年の最終利益一千八百六十六億円というのは、世界のエアラインの利益の三分の一か半分か、そんな割合を占めるものだそうであります。自力経営をしているANAは二百八十億円、六・六倍の差がある。

 五千億円の債権放棄で、有利子負債は二〇〇八年に一兆四千億円あったのが、二〇一一年には二千億円になって、自己資本比率は四〇%と、今や、世界のエアラインでもぴかぴかの健全経営をJALはしていることになる。このままいくと、二〇一二年度は実質的に無借金経営になるんじゃないか、こういうふうにも言われております。破綻企業が二年かそこらで、これはやはり異常なのではないかと思います。

 JALの売上高そのものは前年比マイナス一千五百七十四億円、売上高は減っているわけです。私は、問題はここだというふうに思っています。市場規模は決して成長しているわけではない。そして、成長しない市場規模の中で同じパイの食い合いをしているだけという状況の中で、ANAは沈み、JALは浮かんでいる、こういう状況なわけです。まあ、それは厳密には沈んでいないかもしれませんが、市場規模が拡大しないという状況を何とかする、そうした展望が見出せない限り、結局、二社同士のパイの食い合いが続いていくことになる。

 そういう中で、大西参考人はJALの経営トップとして、今後どういう未来を展望しているのか、お伺いしたいと思います。

大西参考人 私ども日本航空はまだ再生途上の会社である、このように思っております。

 収支については、いいときは出るようになった、これは私もそういうふうに思っておりますが、この業態は非常にボラティリティーの高い、変動の高い、一旦谷を迎えるとあっという間に収益は失い、赤字になり、ここで体力がなければ全く生きていけない、こういう状況になる。これは我々が何回も経験してきたところでございます。

 そういう意味で、私どもとしては、まだ再生途上、このように思っているところでございます。

 以上でございます。

柿澤委員 先ほど申し上げているとおり、今の日本の経済の状況を考えれば、今、市場の規模がどんどん成長しているという状況にはない。そういう中で、政府の支援を受けたJALがANAをはるかにしのぐ業績を上げている。上げた利益でボーイング787を四十五機買って、LCCのジェットスターに出資をして、国際線に新規路線を開設し、一方、航空ネットワークの維持がJAL救済の目的だ、こういうふうに前原大臣は当時おっしゃっていたわけですけれども、しかし、JALが単独で飛ばしている不採算の地方路線からは次々撤退をしている。

 こうなると、一体何のためのJALの救済だったのか、こういうことにもなると思うんですけれども、この点、戸崎さんはどのようにお考えでしょうか。

戸崎参考人 とにかく回復をしなきゃいけない、再建をしなきゃいけないということで、あらゆることをやってきたということは当然のことだと思います。

 地方路線の問題に関しては、先ほど申し上げましたが、一民間企業である限り、やはり採算性の問題というのは避けて通れない問題で、逆に言えば、地方空港の側も、これまで引きとめるためのどのような努力をしてきたのか、こういったことが問題になり、これが現在、地方空港のあり方という検討の中で、これからお互いが双方努力してやっていかなきゃいけないということになってまいりました。

 今先生のおっしゃることは当然ですが、ただ、やはり地方というのはまた別枠で維持していかなきゃいけない。ただ、現行までのあり方というのが、民間企業の、これは日本航空も全日空も全く同じで、同じように若干経営の重荷になってきた面がある。そういったくびきを取り払ってあげないと、これから国際競争の中では非常に厳しい状況にさらされるのではないか。国際競争に対等に臨んでいくためには、やはり従来の地方路線の維持のあり方そのものを変えていかなきゃいけないのではないかというふうに考えております。

 以上です。

柿澤委員 今、くびきを取り払わないと、こういう話がありましたが、世界じゅうのエアラインの中で、機材等々、大変大きな設備投資が必要な中で、無借金経営を行うことができるというのはほとんど例がない、こういうふうに思うんです。これは、くびきを取るというレベルの話ではないというふうにも思います。

 私が思うのは、そもそもJALの破綻当初、二〇〇九年の九月の段階で、最初の最初から国際線の二社体制を維持する、こういうことを結論としてフィックスして取り組みを進めてきた。そうしたことによって何が何でもJALを再生する、こういうことになって、公的資金と会社更生法の併用という前例のない破格の取り扱いをして、政府の支援を受けながら、また業務拡大投資ともとれるようなことをして、ANAのパイを食ってでも業績を上げる、こういうことになってしまったのではないかというふうに思うんです。

 ここまでやりとりをお聞きになられていて、しきりにうなずいておられるので、小野さんにぜひ御感想をお伺いしたいというふうに思います。

小野参考人 まず第一に、まさに先生御指摘のとおりだと思うんですけれども、やはり国際競争力の観点。

 これからどんどん空の自由化も進んでいきますから、成田にLCCも本格的に参入してくるでしょう。これは外資のものですね。中東勢も非常に力をつけてきています。そういったものと闘っていかなければいけないんだという前提をやはり忘れてはいけないというふうに思っています。

 これはJALとANAだけの闘いではないということで、もし日本の翼が外資に奪われてしまうというようなことになってしまうと、先ほど申し上げましたとおり、これは成田と羽田のローカル化にもつながるというふうに考えておりますので、きっちりとした、競争力のある経営というのを実施できるように、政府も最大限のサポートをしなければいけないのではないかというふうに考えております。

柿澤委員 追加で御質問を申し上げたいと思います。

 先ほど申し上げたように、最初の最初の段階で、とにかく国際線二社でいくんだということを前原大臣もおっしゃった、稲盛会長もおっしゃった。そうしたことで経営再生をしていこうというふうになったことが、このような、本当にあの手この手のふんだんな支援を用意して、そして、こういう形の再上場を演出した結果になったのではないか。それが本当に日本のエアラインの国際的な競争力の強化につながっていることなのかどうか。小野参考人の評価を聞かせてください。

小野参考人 最初から国内二社体制なんだということが前提として立てられていたのが僕はおかしいんじゃないかというふうに思っております。二社なのか三社なのか、はたまた一社なのかというのは、これは民間企業の経営判断であり、あとはマーケットが決めることなんですね。なので、最初から二社体制ありきでスキームが組まれていたという意味では、多々問題があったのではないかというふうに考えております。

 私は、先ほどから申し上げておりますとおり、そういったものを前提のない中で考えていくならば、初めから支援機構の保有株式を一般競争入札すればよかったのではないかというふうに考えております。

 以上です。

柿澤委員 現実に、JALとANAの競合による、ある種の消耗戦が行われているのではないかという点についてお伺いしたいと思います。

 企業再生支援機構の支援基準には、「事業再生計画の実施が過剰供給構造の解消を妨げるものでないこと。」こういう文言があります。つまりは、事業再生計画の実施によって、支援対象企業が自力経営している競争相手と過剰供給の消耗戦を繰り広げて共倒れする、こんなことがあってはならない、こういうことだと思います。

 JALとANAの関係でいうと、例えば、成田―ロサンゼルスは七社が運航している。ニューヨークは六社のはずですが、単価も下落をしているという状況の中で、JALは引き続きこの路線を飛ばして維持しているわけです。こういうことは、まさに過剰な消耗戦の一つと言えるのではないかというふうに思うんですけれども、こうしたスタンスをとっていることについて御見解をお伺いしたいと思います。

    〔辻元委員長代理退席、委員長着席〕

大西参考人 我々、ほぼ日々でございますけれども、路便について収支は見ております。この中で、我々が現在飛ばしている路線において、収支的に、供給過剰であるがゆえにだんだん収益性が悪くなっているという部分について見てとれるところはございません。

 我々が大きく事業規模を縮小した結果、JAL、ANAを合わせての供給量というのは、大変申しわけないですけれども、縮小という状態にある中で、どれだけ競争力をつけて復活をしていくか、こういう観点だ、論点はそこだと思います。

 以上でございます。

柿澤委員 路便の収支を日々見ている、こういう御発言があったんですけれども、我々はどっちかというと、路便の収支をぜひ出してほしいというふうに求めている立場でもあるので、そうしたことがあるのであれば、ぜひ情報共有をさせていただきたいなというふうにも思います。

 今、そうした供給過剰による消耗戦に陥っているという認識ではない、こういう御認識を語る一方で、しかし、JAL、ANAを含めて縮小傾向にあるという市場の動向についても語っておられました。

 そういう中で申し上げると、国土交通省は総合的な交通政策という点で何を目指しているのかということも、私は大変疑問に思うんです。

 先日、予算委員会で取り上げさせていただきましたけれども、民主党政権で凍結をした北海道新幹線の着工認可を先日おろしました。東京から札幌まで四、五時間。運賃をシミュレーションするサイトがあるんですけれども、今までの新幹線の運賃の計算によれば、大体二万一千二十円、計算上はこういう運賃になるんだそうです。LCCが、羽田―新千歳で一時間半、既に四千円台で飛ばしている状況の中、総工費一兆六千七百億円かけて、しかも完成は平成四十八年。JAL、ANA、またスカイマーク、こういう競争をさせて、なおかつ新幹線もつくる。これはどういうビジョンに基づいてやっておられるんですか、お伺いをしたいと思います。

羽田国務大臣 今回着工の三区間に係る需要予測では、既存の新幹線の運賃を参考に、例えば北海道新幹線の東京―札幌間では、先ほど言われたように二万一千円を設定させていただいております。

 実際の運賃設定は、開業に合わせて営業主体であるJRが行うことになりますけれども、工事実施計画の認可に当たり、JRから運行の同意をいただいており、航空路線との競争の状況も踏まえ、営業上、運行可能であるという鉄道事業者としての判断があったもの、こういうふうに認識しております。

 今、委員は東京―札幌のことを言われましたけれども、航空の場合は点と点を結ぶ、新幹線の場合は線で結ばれるわけで、そういう意味では、採算性が合うという鉄道事業者の判断があったというふうに思います。

柿澤委員 今の点についても小野参考人のコメントをいただいて、終わりにしたいと思います。

小野参考人 新幹線との競合というのは、今後、エアラインの国内競争を非常に激しくしていくものだというふうに言われています。

 私、先ほどの運賃の計算等はちょっと存じ上げておりませんのであれなんですが、特に新幹線の延伸等については、公共事業の適正な執行というふうな点でも非常に重要な問題だと思っておりますので、税金の適切な使用というふうな観点から、きちんとした監視が必要なんだろうなというふうに考えております。

柿澤委員 終わります。ありがとうございました。

伴野委員長 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

     ――――◇―――――

伴野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 第百七十七回国会、内閣提出、交通基本法案の審査のため、明二十二日水曜日午前九時、参考人として新潟県三条市長國定勇人君、公益社団法人日本バス協会会長高橋幹君、都市交通評論家亘理章君及び立命館大学経営学部特任教授土居靖範君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伴野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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