衆議院

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第16号 平成24年8月22日(水曜日)

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平成二十四年八月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伴野  豊君

   理事 阿知波吉信君 理事 川村秀三郎君

   理事 辻元 清美君 理事 若井 康彦君

   理事 金子 恭之君 理事 山本 公一君

   理事 畑  浩治君 理事 富田 茂之君

      大西 健介君    奥田  建君

      金森  正君    沓掛 哲男君

      熊田 篤嗣君    小泉 俊明君

      古賀 一成君    坂口 岳洋君

      高木 義明君    高橋 英行君

      筒井 信隆君    道休誠一郎君

      仁木 博文君    橋本 清仁君

      橋本 博明君    初鹿 明博君

      福田 昭夫君    藤田 大助君

      向山 好一君    柳田 和己君

      吉田おさむ君    赤澤 亮正君

      小渕 優子君    北村 茂男君

      徳田  毅君    二階 俊博君

      林  幹雄君    福井  照君

      望月 義夫君    加藤  学君

      小宮山泰子君    古賀 敬章君

      高木美智代君    穀田 恵二君

      中島 隆利君    柿澤 未途君

      中島 正純君    中島 政希君

    …………………………………

   国土交通副大臣      奥田  建君

   国土交通副大臣      吉田おさむ君

   参考人

   (新潟県三条市長)    國定 勇人君

   参考人

   (公益社団法人日本バス協会会長)         高橋  幹君

   参考人

   (都市交通評論家)    亘理  章君

   参考人

   (立命館大学経営学部特任教授)          土居 靖範君

   国土交通委員会専門員   関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十二日

 辞任         補欠選任

  坂口 岳洋君     藤田 大助君

  高橋 英行君     仁木 博文君

  津島 恭一君     道休誠一郎君

  谷田川 元君     大西 健介君

  古賀 敬章君     加藤  学君

  竹内  譲君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     橋本 博明君

  道休誠一郎君     金森  正君

  仁木 博文君     高橋 英行君

  藤田 大助君     坂口 岳洋君

  加藤  学君     古賀 敬章君

  高木美智代君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     津島 恭一君

  橋本 博明君     谷田川 元君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 交通基本法案(内閣提出、第百七十七回国会閣法第三三号)


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     ――――◇―――――

伴野委員長 これより会議を開きます。

 第百七十七回国会、内閣提出、交通基本法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、新潟県三条市長國定勇人君、公益社団法人日本バス協会会長高橋幹君、都市交通評論家亘理章君及び立命館大学経営学部特任教授土居靖範君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、大変御多用中のところ本委員会にお出ましいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、國定参考人、高橋参考人、亘理参考人、土居参考人の順で、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず國定参考人にお願いいたします。

國定参考人 皆さん、改めましておはようございます。新潟県の三条市長をしております國定と申します。

 まずもって、委員の皆様方におかれましては、三条市を含みます全ての市町村の国土交通行政全般につきまして、本当に適宜的確に政策を打っていただいておりますことに心から感謝を申し上げたいと思います。そしてまた、この交通基本法案の質疑の過程の中で、私どもの取り組みにつきましても御紹介をさせていただく機会を得ましたことに心から感謝を申し上げる次第でございます。

 時間も限られておりますので、早速中身に入りたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 委員の皆様方には、あらかじめお手元に、「三条市におけるデマンド交通の取組」というパワーポイントの冊子をお配りさせていただいているかと思います。これに基づきまして御説明を申し上げていきたいと思っております。

 まず、一枚おめくりをいただきたいと思います。三条市の位置でございます。

 本来であれば、三条市の産業等々の御紹介を皆様方にたっぷりとお話をするのが筋かと思いますが、時間もございますので、今回のデマンド交通を中心とした私どもの取り組みにつきまして、特に地理的な特性について、このページで御紹介をさせていただきたいと思います。

 一ページ右側に三条市のエリアが大きく出ていると思います。三条市、面積が四百三十二平方キロメートル、人口が十万三千人、高齢者の割合が二六・二%ということであります。

 ちょっと字が小さくて恐縮でございますが、燕三条駅という大きな緑枠の中にある新幹線の駅と、在来線で東三条、三条、北三条というのが燕三条駅の下のところに書いてあるかと思います。実は、大ざっぱに申し上げますと、このエリア一帯で十万三千人余の人口のうち八万人近くの人口が住んでいるという、非常に偏った人口バランスになっているところでございます。逆に申し上げますと、その南東部、大きく三条市と書かれている一帯は中山間地域でございまして、ここに約一万人ぐらいの人口が点在して、そして南西部、平野部になりますけれども、田園地帯のところにも同じく一万人ぐらいの人口が点在しているというような状況になっているところでございます。

 こういうような中で、日常生活をどうやって高齢者の方々が維持していくのか、あるいは、中山間地域に住まわれている方々が病院への通院等々を、過度な負担を持つことなくどのようにスムーズにできるかということが、これまでもずっと課題として残されてきたところでございます。

 そういうようなことをかいつまんで列挙させていただきましたのが、次のページ、二ページにあります「三条市の公共交通が抱える課題」ということでございます。これは、三条市のみならず、恐らくほぼ全ての地方中小都市において顕在化している課題であろうかというふうに思っておりますし、今般、この国土交通委員会さんの方で御審議をいただいております交通基本法案そのものの目的が、まさにここに全て詰まっているのかなというふうにも個人的には考えているところでございます。

 マイカー依存が拡大をしている中、他方で高齢化が進んでいる中で、これから先、マイカーに依存したくても逆にできないような方々がふえていく中で、いかに公共交通、要するに地域の皆様方の足を確保する中で、生活環境の維持あるいは楽しみ事をふやしていくかということが喫緊の課題になっているということでございます。

 この交通基本法案を今御審議いただく以前から御審議そして制定をいただいております地域公共交通活性化再生法があったわけでございますが、私どもは、この活性化再生法を活用させていただき、平成十九年八月十日には地域公共交通総合連携計画の策定調査事業に着手をいたしまして、おかげさまで全国で初めて認定をしていただき、これに基づいて、今、私どもが本格運行しておりますデマンド交通を緒につけたところでございます。

 この地域公共交通活性化再生総合事業の経緯につきましては、三ページに記載のとおりでございますけれども、時間も限られておりますので、省略をさせていただきたいと思います。

 次の四ページをごらんいただきたいと思います。

 この事業、基本的には社会実験を通じてさまざまなことをしてきたわけでありますけれども、この四ページでは、その中でさまざまな工夫をさせていただいたことについて申し述べさせていただき、この工夫をする場につきましては後ほど少し触れさせていただきたいと思います。

 まず、その工夫をする場におけるさまざまな議論、あるいは実際の社会実験をさまざまな形でトライアル・アンド・エラーさせていただく中で、私どもとして取り組んできたことの幾つかの御紹介をさせていただきたいと思います。

 ニーズにマッチした社会実験を、結果的には三回カスタマイズをするような形で、その都度、市民の皆様方に周知をしなければいけないという苦労があったわけでございますけれども、結果といたしましては、要するに、大体三百メーター範囲に少なくとも一カ所は停留所を設けていくというような形にさせていただくほか、このようにマップを全戸配布させていただきました。

 ただ、このマップを配布するだけでは、特に御高齢の方々にしっかりとその趣旨、利用方法等といったものを周知することがなかなかできませんので、私どもとして一番力を入れたのが、その下にあります、地域への説明会あるいは懇談会でありました。

 説明会二十六回、四百七十名の参加、懇談会二十一回、三百七十三名の参加ということで、実際、集会所には一人か二人しか来ないということもありましたけれども、それでも何度でも何度でも回数を重ねて周知をし、そうして参加をしていただいた方々からの口コミによる効果ということもあわせて狙ったところでございます。

 また、運行形態に見合った料金設定ということで、路線バスより高く、タクシー料金より安くということで、基本的には、一人乗車の場合にはタクシーに限りなく近い距離制を設けさせていただき、距離区分ごとに三百円から三千円の利用設定、そして複数乗車におきましては、三条市エリアを幾つかのエリアに分けることによって三百円ないしは六百円という、この二段構えでの運行形態をさせていただいているところでございます。

 また、こういうようなさまざまな工夫をさせていただいたところでございますが、もう一つ力を入れたのが、済みません、ページが飛んで申しわけございませんが、六ページをお開きいただきたいと思います。

 つまり、工夫を重ねていくときに一番大切になるのは、その工夫をしていく、あるいは利害調整をしていくための場の設定でございました。

 三条市には、わずか十万人の都市でありますけれども、市内のタクシー業者だけで五社ございます。あるいは、既存のバス路線を設定しているバス事業者さんが二社ございます。そういうような中で新しいデマンド交通の取り組みをするということは、口で言うほど生易しいものではなくて、さまざまな利害関係の調整が必要になるということで、協議会の場を設定させていただき、まさに事業者の合意を図りながら見直しを実施し、積極的な提案も依頼を申し上げたところでございます。

 結果といたしましては、私どものデマンド交通は、タクシー事業者さん一本に特化した形でのデマンド交通になっておりますけれども、それに至るまでは、もちろんバス事業者さんとの調整も大変重要でございまして、バス事業者さんに、私どもがお示しをした提案以上のものを提案してくださいということを言ってもなかなかいいアイデアが出てこなかったということで、最後はバス事業者さんに涙をのんでいただく形で、タクシー事業者さん一本でのデマンド交通の展開というふうにさせていただいたところでございます。

 結果でございますけれども、七ページをごらんいただきたいと思います。

 三回のカスタマイズと申し上げましたが、第一期実験、第二期実験、第三期実験という社会実験を経て、本格運行を今進めているところでございまして、直近では一日四百余名の平均利用者数ということで、かなり定着しつつある感があるかなというふうに思っております。これは社会実験を始めてからのグラフの異動でございますので、後ほど総括して御説明を申し上げていきたいと思います。

 その総括でございますが、九ページをごらんいただきたいと思います。

 これが、見直し前、つまりデマンド交通そのものを導入する以前の、いわゆる循環バスであったり定期バスであったりというもののみに依存していた状況と、デマンド交通を組み合わせる形での状況の変化でございます。

 何といっても、利用者数が一三〇%の増を見るに至った。他方で行政負担額につきましては、六一%の増で済んでいる。ここでは、補助金が、三条市を経由している金額ということで、これは既存のバス路線に対する補助金額ということでほぼ平行状態ではありますけれども、これとは別に、タクシー事業者さんに対しまして国土交通省さんの方から直接補助を出されているのが、昨年度で約一千二百万円計上されているということを御留意いただきたいと思います。結果といたしまして、利用者一人当たりの行政負担額の低廉化もかなり図りながら、なおかつ利用者増につながっているということが、私どものささやかな誇りでございます。

 また、十ページ、十一ページ、主な成果ということでございます。特に十ページでありますが、やはり利用目的が通院に偏っているということ、六十歳以上の方々が利用者の八四%も占めているということ、私どもとしてはありがたいことですけれども、もう少しここを伸ばしていかなければいけないと思っておりますのが、利用により日常生活で変わったと感じている点で、外出する機会がふえたというのがまだまだ一三%にとどまっているということで、ここをいかに伸ばしていくのかということが私どもとしての今の課題だろうというふうに思っているところでございます。

 次の十一ページをごらんいただきたいと思います。

 このデマンド交通がなかったときの移動手段ということで、徒歩、自転車、マイカーというところがあるわけでございますけれども、ここももう少しふえていくといいかなと思っております。

 右側が、これは必ずしも検証がしっかりとなされていない、十分な数字ではありませんけれども、事実関係として触れさせていただきたいと思いますが、デマンド交通を開始した直後から、因果関係の有無はともかくとして、高齢者関連の事故の数が同じように減ってきているということでございます。

 最後に十二ページでございますけれども、乗り合い率の向上、運行管理の徹底、まちづくりとの連携というようなところを記載しておりますが、交通基本法案との関係で私どもが大いに期待をしているのは、地方公共団体において、まず経済的、社会的、地理的な情勢に応じてさせていただくということを明文化していただいているということを大変ありがたく思っていると同時に、まだまだデマンド交通に対する国の安定的な補助制度というものが確立されていないというのが実感でございます。今回の交通基本法の制定によりまして、法制上あるいは財政上の措置を講じなければいけないという条文がしっかりと盛り込まれているということは、私ども市町村にとっては大変ありがたいことだというふうに思っております。

 以上で私からの意見陳述とさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 私は、公益社団法人日本バス協会の会長をしております高橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、このような機会を設けていただきまして、本当にありがとうございます。

 早速でございますが、交通基本法の実現というのは、私どもバス業界にとりまして、長い間の悲願ともいうべき目標でございました。ここに、その早期成立に賛成の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。

 なお、私どもバス協会のみならず、バス産業に働く労働組合の方々ともこの方向性は一致しておりますことを申し添えたいと思います。

 皆様御承知のとおり、我が国が戦後、復興から高度経済成長期を経て今日に至るまでの六十余年の中で、バス事業も大きな変化を遂げてまいりました。自家用車が本格的に普及する前の昭和四十年前後、このころにはバスの利用者は約百億人を超えておったわけでございますが、それが、直近の平成二十二年度には約四十二億人と、最盛期と比較して約六割の減少ということになっております。

 東京など大都市部や地方の中枢都市は、ここ数年、その減少も緩くなってきました。自家用車の普及、さらに、だんだんと地方の経済の衰退が進みまして、人口が大都市に集中してくる、そういう状況の中で、地方部の老舗と言われるようなバス会社ですら破綻が相次いだ昨今でございます。

 もちろん、経営の多角化が裏目に出て破綻した会社もありますけれども、根本的な問題といたしまして、特に地方部の生活路線においては、継続的な利用者数の減少によりまして、バス事業が採算には乗らなくなっていることが原因であると考えられるわけでございます。

 各事業者では、人件費の抑制、設備投資の抑制、それから、不採算路線を内部補助によって補う、あるいは、公的補助をいただいて、それら経営の合理化の推進によりまして生活路線を何とか維持している、そういうような状況でございますけれども、その結果、バス事業の現場で働く運転手などの給料、これはかつてに比べて大変大きく減っております。全事業の労働者平均をかなり下回る水準というところまで下がってしまっているわけでございます。これは、バス事業に働く人材の確保、特にドライバーでございますけれども、その採用の面で既に問題が顕在化しているという状況にございます。

 このように、過疎地はもちろん、地方の都市ですら路線バス網は大きく衰退するなど、まさに公共交通は確実に危機的状況に近づいております。

 国も、こうした事態を受けて、地域住民の交通を確保するため、地方公共団体と連携して、赤字の生活バス路線の維持確保、さらに近年では、地方交通の活性化という視点から助成措置の充実を図っていただいております。

 しかしながら、これまでは、その助成措置のあり方も、行政におきましては、やはり民間企業であるバス事業者への補助という考え方が強く、地域の交通を時代の要請に応じて維持確保、さらには活性化するという点につきまして、これが行政あるいは政治の役割であると位置づけるところまでは行っていないのが現状ではないかと思います。

 これからは、国及び地方公共団体が明確な交通のデザインを示していただきまして、地域住民の支持を受けてバスなどの公共交通をネットワークとして活用していただくような方向性が強く求められているのではないかと思います。このような考えのもとでは、例えば、赤字バス路線を運営するバス会社に奨励的に補助金を出すという手法ではなくて、行政がバス会社に委託金を出して運営させて地域の公共交通を確保する、そういう考え方に転換することが必要ではないかと考えております。

 欧米におきましては、鉄道にせよバスにせよ、公共交通機関の経営において、民間会社が主体的に独立採算で経営を維持しているケースは極めて少ないと聞いております。まさしく、公共交通手段の計画、運営は行政の役割であるとの市民の理解のもとに、制度面、財政面でも充実が図られているようでございます。

 これからの我が国の将来を考えてまいりますと、大都市部を含めて人口の減少、高齢化の進む中で、自家用車あるいは自動車運転免許を持たない方々の移動、交通手段の確保は大きな社会的な課題であると考えております。

 さらに、環境対策やバリアフリー対策、ユニバーサルデザイン、IT化といった時代の要請を取り入れて、まちづくりとも一体となって、道路整備、交通信号制御などのバスの走行環境を改善し、効率的で利用しやすい公共交通ネットワークをつくっていく必要があるのではないかと思っております。

 しかし、このような計画をつくり、実行していくには、民間企業のみでは到底できることではございません。国、自治体、警察等関係機関とともに協議体を形成し、推進していく体制が必要であろうかと思います。バス会社は、バス事業運営のプロとして、こういった協議体での交通計画策定に積極的に参加してまいりたいと考えております。

 以上のような公共交通ネットワークを体系的あるいは効率的に実現していくには、まず、しっかりとした交通基本法と、これに基づく交通基本計画を実現していただくことが何よりも肝要かと考えております。そして、これを支える、税制を含む財政措置の大幅な拡充、これをぜひお願いしたいと思います。全国的な計画だけでなくて、地方の計画も含めて、国の方からも地方公共団体に強く要請をお願いしたいと思います。

 特に、市民生活の日常の交通を支える地方路線バスの維持、確保については、自治体が行財政上の取り組みをしていただくことが不可欠でございます。このような面では、はっきり申し上げて、私どもバス会社側から見ますと、しっかりとした取り組みをいただいている自治体もございます。また一方で、なかなかそういう取り組みに温度差があって、取り組んでいただけないというところもあるのが現状でございます。

 国からの地方への交付税措置といった財政面の支援とあわせまして、自治体の地域交通行政体制の充実をあわせてお願いしたいと思います。こうした行財政基盤が確保されてこそ、地域主権の考え方を交通行政分野に当てはめることが可能となってくるのではないかと思っております。

 さらに、かつてバス会社が大きな収益源としていた貸し切りバス分野での供給過剰による過当競争がもたらす値下げ合戦、あるいは高速ツアーバス問題といった今後の健全なバス事業全体の発展を阻害する課題がございました。これらは、約十年前に行われた規制緩和措置の弊害が背景にあるのではないかと思っておりますけれども、バス協会として再三改善方を行政側にお願いいたしました。一昨年十二月より国土交通省に検討委員会が設けられまして、去る四月に報告書が取りまとめられたところでございます。

 まさにその直後に、四月二十九日の関越自動車道藤岡ジャンクションでの高速ツアーバスの大事故が発生をいたしました。また、直近の八月二日未明にも、東北自動車道において、やはり高速ツアーバスがトラックに追突し多数のけが人を生じる事故が発生しております。既に緊急対策として安全確保のためのいろいろな措置が講じられて、さらに高速ツアーバスは今後一年間で高速乗り合いバスに移行させるという措置が始められました。解決に向けて一歩を踏み出したところでございます。

 いずれにいたしましても、四月二十九日の事故に関しまして、当委員会において過日参考人質疑が行われたところでございますけれども、改めて、バス業界として多数の死傷者を出しました事故は痛恨のきわみであり、深くおわび申し上げますとともに、また、亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様に哀悼の意を表したいと思います。

 交通基本法は、こうした個別交通産業の課題に直接応えるものではありません。しかしながら、基本理念として、利用者、国民が安全で信頼できる交通ネットワークの計画的な維持発展を必要とするのであれば、また、自由競争原理万能ではなくて、交通市場が安全確保を大前提とした管理された中での競争であることを直視すれば、交通基本法の理念が、交通関係の個別法、諸制度について、今日にふさわしい見直しをも要請しているのではないかと思います。

 また、昨年三月十一日の東日本大震災では、災害対策と日ごろの訓練の重要性を事業者が大きな教訓として学ぶとともに、災害不通となっていた新幹線等の鉄道にかわり、高速バスが大きく活躍をいたしました。そして、地域のバスも、みずから被災を受けながら、市民の足を確保するための運行回復に尽力し、原子力発電所事故周辺の緊急避難やボランティア輸送等にも貸し切りバスが貢献をしたものと自負しております。

 バス事業は、まさに社会の重要なインフラの一つでございます。こうした大災害に備える面でも、地域におけるバス事業の維持というのは重要な課題と言えるのではないかと考えております。

 以上の諸見地から、本法律案の早期成立をお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 なお、バス事業の現状について記しました資料をお手元に配付させていただいておりますので、ごらんいただきまして、御質問があればお答えしたいと思います。

 本日はありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、亘理参考人にお願いいたします。

亘理参考人 都市交通評論家の亘理章です。

 私は、主に欧州各国の移動、交通への取り組み状況を紹介しながら、議題となっている交通基本法案に関する意見を述べたいと思います。

 私は、本交通基本法案は日本の将来にとって何としても必要なものであり、賛成する立場で意見を述べさせていただきます。

 ただし、法案には不十分な項目があるため、国会議員の皆さんが協議の上で一部修正して成立させていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。

 欧州の都市交通政策の特徴の一つは、市民の移動の保障を通じて、社会参加、すなわち自立支援する社会システムを構築していることにあります。移動できないことは自立生活ができないことと同じ意味を持つものです。したがって、さまざまなモビリティー手段の提供による移動の保障は、国や地方自治体の自立支援政策や社会福祉政策の一つとも言われております。

 欧州の移動、交通に対する思考は古代ローマ時代から見られます。国家や町の発展のためには、人や物の移動を保障する道路のネットワークが重要との認識です。紀元前三一二年に着工された旧アッピア街道には、幅員約七メートルの道路の両サイドに一メートルの歩道が敷設されています。古代ローマ時代から、人と物の移動、そしてその移動に伴って動く情報が重視されてきたと言えます。

 近年になって、市民の移動の保障のテーマが本格的に議論されたのは一九八〇年代の前半からです。きっかけの一つが一九八二年に制定されたフランスの国内交通基本法でありまして、フランス以外のほかの国も追随し、八〇年代後半から九〇年代初めにかけて法律を制定してきました。フランス以外の国は、もともとあった障害者自立支援法の改正という形で法整備をしてきました。こうした法整備により、市民の社会参加の保障はもとより、町の活性化、そして市民の健康維持管理という三つのテーマを同時に実現してきました。これに、九〇年代後半から地球環境問題の解決が加わってきました。

 こうした四つのテーマを実現するためには、人間が移動することを前提としたまちづくりに取り組み、都市計画と交通計画を一体的に捉える中で、総合的な都市交通政策を展開しなければなりません。そのために、フランスにはこれを義務づけている法律があります。

 欧州各都市の交通管理センターを視察するとわかりますが、市役所の交通政策担当者、道路管理者、交通管理者等が連携して活動するのは当たり前のことで、都市によっては、これに消防、救急等の緊急事態に対処する担当者も加わって問題に取り組むなど、関係行政組織が一体化しているのが欧州各都市の実情です。

 欧州の各都市では、どのようにすれば市民が安全に安心して動くことができるようになるか、まちづくりの法規は市民のニーズに合致しているか、適切な交通機関と交通ルールは何か、邪魔なインフラ、建物はないか、生活圏空間の施設が確保できるか等々について常に考え、検討しています。そのために市民のニーズや評価を酌み取る仕組みが必要で、都市計画や交通計画の構想、企画段階から市民参加することを法律で規定している国が多いのが実情です。

 車社会の欧州では、地域のコミュニティーを分断させずに、また市民の移動の妨げにならないような形で、人と車の共存をどのように実現するか、限定的な都市や道路空間をどのように利活用するかなどが大きな課題となりました。

 その解決の一つが、車の速度規制と生活エリアへの流入規制を柱としたモビリティーマネジメントでありました。そして、そのモビリティーマネジメントを実効あるものにするための道路空間の再配分、つまり、車線を減らし、歩行者、自転車、そしてバスや軽量の路面軌道電車、いわゆるLRT等の公共交通の空間へと再配分することでありました。今や、欧州の普遍的な交通政策として展開されているゾーン30、すなわち、一定の区域内で車の速度を三十キロに規制し、歩行者と車を共存させるための政策ですが、これは今まで述べてきた流れの中で生まれてきたものであります。

 欧州の主要都市では、総合的な都市交通計画を展開しています。その中では、全ての交通手段の利便性を高め、ストレスのない移動を目指していますが、自転車とバス、または都市によってはLRTが戦略的に位置づけられています。自転車は短距離を、車にかわる有効な交通手段の一つとして、公共交通は、子供、高齢者または通勤通学のための足として活用するというものですが、このためにダイナミックな道路空間の再配分が行われています。

 まず自転車レーンの整備です。人口二十万から三十万人の中都市でさえ、数百キロの自転車レーンのネットワーク整備計画を持っています。公共交通ではLRTが意欲的に進められています。特に最近導入されたものは、路面に芝を敷設して、都市景観への配慮と騒音対策が同時にとられています。

 一方、LRTよりコスト面で有利なバスを活用する都市も多く見られます。その際には道路空間をバスのために優先配分し、バスレーンの車線幅をこれまでの三・二メートルから三・八メートルへと広げる都市がふえています。これは、バスレーンの中で自転車を安全に走らせるための方策で、バスと自転車の共用レーンとして運用しています。これも欧州の普遍的な交通政策の一つとなっています。

 フランスのパリでは、昨年、バスレーンの技術基準を変更し、三・八メートルから四・五メートルへと拡大しました。バスと自転車が、追い越す際の安全性を確保するためです。これにより、車用の車線がさらに削られることとなり、パリ市内の幹線道路の一部は、バスだけは双方向の通行ですが、車は一方通行へと運用の変更を余儀なくされています。

 このように、歩行者、自転車そして公共交通のために道路空間の再配分が行われていますが、この底流に交通の優先権という思考があり、社会に定着しています。原則として、道路空間の交通優先権は、第一位が歩行者、そして自転車、公共交通、最後に車という順番です。人が優先、交通弱者の生命及び安全の確保という理念が重要だということであります。

 欧州では、バスやLRTの前方を自転車が悠然と走る光景が見られますが、自転車が優先される道路では公共交通機関といえども追い抜いてはいけないからです。その際、大事なことは、道路を利用する人に対して、その優先権を目に見えるようにしていくことが重要です。その結果、交通秩序が整序され、交通安全に資するとともに、交通手段間の責任と義務の関係が明確になってきます。

 欧州の都市を歩くと、あるいは自転車に乗りますと、この道路は歩行者優先だ、この道路はどちらかというと車を優先しているといったことがわかります。また、この都市の都市計画の狙いは何かということも理解できます。最初に交通計画を立案し、この路線・エリア内にどの程度の人口を住まわせ、どのように歩いてもらい、自然環境や都市景観をどのように確保し、商業圏をどこに、どのように設置するか、すなわち、交通計画の立案後に都市計画を策定している様子をうかがうことができます。ということは、総合的な都市交通計画を目標どおり実現させるために、都市計画そのものも全面的に見直されているということであります。

 次に、議題となっている交通基本法案に関する私の意見を述べたいと思います。四点あります。

 第一は、交通の優先権の問題です。日本でとりわけ問題になるのが、生活道路における都市や道路構造の欠陥です。

 例えば、道路構造令では、六メートルの道路幅員に四メートルの車道を設置することになっています。両側に一メートルの路肩が設置されることになるのですが、その真ん中に電柱があるというのが実態です。歩行者は安心して歩くことができません。交通安全対策基本法第二十九条二項では、「国は、陸上交通の安全に関し、住宅地、商店街等について前項に規定する措置を講ずるに当たつては、特に歩行者の保護が図られるように配慮するものとする。」とありますが、生活道路においても車優先というのが日本の実情です。

 交通の優先権を道路の性格別に国が運用基準を策定し、地方自治体が交通の優先権がわかるようにインフラ整備を行い、国民がそれを遵守するといった形式が望ましいと思います。そのために、交通の優先権というコンセプトを規定していただきたいと思います。

 第二は、交通は都市間、市町村間のネットワークが重要となります。したがって、一つの都市あるいは一つの市町村だけの交通計画では不十分です。複数の市町村が共同して協議体を持ち、そこで広域の交通計画を策定するように義務づけていただきたいと思います。

 第三は、交通安全の問題です。法案では、「交通の安全の確保に関する施策については、交通安全対策基本法その他の関係法律で定めるところによる。」とありまして、関係各省庁が協力して総合的な施策を推進することから外されています。

 最近、通学路での車と学童との交通事故や自転車による人身事故が増加しています。道路交通法による取り締まりだけでは不十分で、歩道、自転車レーンの設置等のインフラ整備、あるいは車の速度規制、通行規制、車がスピードを出せない道路構造の整備、生活道路等では一定以上の速度を出せない車の商品開発等、人とインフラと車の三位一体でこのテーマに取り組まなければならず、まさに、関係省庁が協力して総合的な施策を推進することが必要となっています。

 この一事をもってしても、交通安全も交通基本法の対象としなければなりません。本来ならば、第一条の表現と第七条は削除されるべきだと考えます。しかしながら、それが困難であれば、交通基本法が交通の理念法という位置づけである以上、人の安全が優先することをもっと明確に規定すべきだと考えます。

 第四は、交通基本計画にかかわる省庁は、内閣総理大臣、経済産業大臣、国土交通大臣のみとなっています。交通管理者たる警察庁も当然かかわるべきではないかと考えます。また、移動そのものが国民の生活の基本であり、自立支援や健康維持増進等に貢献するものであります。その観点からの厚生労働大臣や、必要ならば農林水産大臣、文部科学大臣等なども環境大臣と同様の扱いに入れるべきではないかと考えます。

 最後に、人間は移動なくして生きてはいけません。生命を維持発展させる手段でもあります。移動は市民生活の基本であり、市民が自立した生活を営むための権利と言えます。

 そうした視点からも交通基本法は必要なもので、ぜひとも成立させていただきたいと思います。最初は完全なものではなくても、何回かの改正を得て、本来のあるべき法律に仕上げていただければと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 次に、土居参考人にお願いいたします。

土居参考人 立命館大学の土居と申します。

 意見陳述の要旨をお手元に三枚配っておりますので、御参照いただきたいと思います。

 主な課題は四点です。

 まず、基本スタンスとして、交通基本法が掲げる理念が極めて重要になると思います。

 基本法ですから、日本国憲法に依拠するということは当然です。

 今後の日本社会あるいは地域社会の変容に十分対応した交通のあるべき姿を、漸進的に実現するものであることだと思います。二十年後ないし三十年後に、地域、地域の交通をどういうふうに実現していったらいいか、それを支援するような基本法であるべきではないかと思います。従来の国の産業政策とか道路政策、交通政策等を大きく転換して、今後は、まちづくり、地域づくりと交通権保障との両輪で、誰もが安全で安心して移動できる豊かな社会を実現することが切に望まれると思います。

 こういうことの背景として、やはり環境問題もありますけれども、我が国に特有な高齢化問題ですね。今後、六十五歳以上の人が四分の一を占めてくる、非常な高齢化社会が到来するわけですから、そういったことを踏まえて、全ての人と環境に優しい公共交通を今後実現していくことが重要ではないかと考えているわけです。そのための交通基本法として位置づけていただきたいと考えています。

 今、全国的に、買い物難民問題といいますか、地元の商店街が崩壊していることもありますけれども、非常にたくさんの人が日常的な買い物にも行けない、こういった形で、その地域に住み続けられないといった事態があります。交通の役割は、単に移動ということもありますけれども、各自治体がやっていますさまざまな施策、例えば医療、教育、福祉、あるいは観光とか産業、それぞれの地域はさまざまな施策を打ち出していますけれども、その施策自体が、公共交通とか交通が不便なことによって十分に効果が出てこない。こういったことがあるわけですから、ぜひ、土台としての交通基本法の中で、そうした位置づけを踏まえて推進していくべきではないかと思います。

 具体的な課題としまして、第二条の方に交通権保障の条文を入れるべきではないかと考えています。例えば、条文としましては、国及び地方公共団体は、国民が自由に、安心・安全に移動できる権利を基本的人権として保障する責務を負うという明確な文章を入れていただきたいと思います。これは既に、御承知のように、二〇〇三年の民主党、社民党の議員提案としての交通基本法では第二条の方に入っています。

 次のページに行きたいと思います。

 これまで移動という問題は、マイカーに任せっ切り、あるいは交通事業者に任せっ切りで確保されてきたと思います。それが今、現実には、全国で移動が困難になる状況が急速に高まってきています。これは、一つは高齢者がマイカー運転ができなくなる。高齢者の交通事故の発生も非常に多いですし、高速道路の逆走とかさまざまな問題も出てきていますように、高齢者の運転というのが困難になってきている状態があります。他方、公共交通、バスとか地方鉄道の未整備、廃止もあって、高齢者を中心に移動困難者が今後も一層増加していくだろうということです。先ほどの買い物難民は一つの例示ですけれども、それが一つの象徴だと思います。

 今後、交通権保障の問題は、我が国の交通政策の大きな柱になるべきではないかと考えています。高齢者を初め、移動制約者の人が交通を利用することについての要望が極めて高くなってきている状況です。日本国憲法に保障された基本的人権を実質的に保障するものとして、交通権保障をこの交通基本法で位置づけることが今後の社会発展や住み続けられる地域づくり、地域発展から望まれると思います。

 次の具体的な権利の内容は、交通権学会からの引用です。交通権とは国民の移動する権利であり、日本国憲法の第二十二条、第二十五条、第十三条などの基本的人権を実現する具体的権利であるということが一つの定義として出ています。

 その次に、もし、そういう交通権を保障するという形でこの交通基本法に高らかにうたわれた場合、これは世界的にも、フランスの国内交通基本法は一九八二年制定ですけれども、これが世界的に交通権を認めた法律として出てきていますけれども、これは二十世紀ですね、一九八二年です。ヨーロッパは、このフランスの交通基本法を参考にしていろいろ総合交通法とかをつくっていますけれども、明確に交通権ということを保障するといった条文を入れているところはありません。ですから、もし今回、我が国でこの交通権保障の条項をうたった交通基本法が制定された場合、世界で二番目の交通基本法になるわけですし、二十一世紀に入って初めての交通基本法としての意義があると思います。

 第三番目の論点ですけれども、お手元の下の方です。第二十八条のところに、この条項は「地方公共団体の施策」ですけれども、こういった案文を入れていただければと思っています。

 地域交通に関する権限と財源を地方公共団体に全面的に移管する。地方公共団体に地域交通計画の策定を義務づける。国は、策定された各地方公共団体の地域交通計画実施の自主財源を保障し、実施の権限を付与する。

 こういう案文です。これは、各地域の公共交通が全ての施策の土台という形の位置づけをしましたけれども、生活交通の再生の重要性ということから、ぜひ、地方公共団体に自主財源と権限を付与するといった形の位置づけをお願いしたいと思っています。地域公共交通の整備は、住民の生活に最も密接な関係を持ち、最終的な責任を負うべき地方自治体にとって必要不可欠な行政サービスと位置づけるべきではないかと思います。

 高齢化対応と環境保全とを最重点にして、全国の自治体は、全ての人と環境に優しい地域生活交通システムの導入や拡充を急ぐ必要があると思います。豊かさのグレードアップも狙いで、住み続けられる地域づくり、まちづくりの視点で、住民参加のもと、交通改造を具体的に早急に展開する。こう言っても十年後、二十年後になるでしょうけれども、今からそれを準備していく。当然、国もそうした視点で全面的な支援をするべきで、その枠組みの構築が急がれると思います。

 ここで言う住民の参加は、行政とともに協働することにとどまらず、住民が自治体の政策を判断し、政策提言をすることも含まれます。

 地方自治体への財政配分は、各地方自治体の自主的な優先事項を尊重し、特定事業を指定することのないようにしなければなりません。また、規則的かつ持続的な配分が重要と言えます。

 最後に、四の「その他」です。

 こうした交通基本法が狙う理念、目標を達成するために、個別の交通関係法の制定を図るとともに、並行して、これまでの既存の交通関係法の全面的、抜本的な再編も図るべきではないかと考えます。

 抜本的な改正が必要なのは、例えば、大正十三年一月一日から施行されています軌道法なんですけれども、この軌道法が、今、全国的な都市への普及が望まれていますLRT、新型路面電車の普及を大きく拒んでいるということが指摘されています。

 もう一つは安全との絡みなんです。この法案では、交通基本法は「交通安全対策基本法と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進」するということで、交通安全対策基本法のことが並行して出てきておりますけれども、この安全基本法の方は昭和四十五年に策定されていまして、対策的な意味が非常に色濃くなっています。そういう意味で、今国民が一番望んでいます交通の安全、安心の問題を十分に実現するものとしてはまだ不十分ではないかと考えているわけです。

 そういう意味では、この交通基本法に従来の交通安全対策基本法も統合して組み込むということが非常に大事になってくるのではないかということで、もう一度、交通安全対策基本法の位置づけを、最終的にはこの交通基本法に吸収するということをぜひ考えていただきたいと思います。

 以上で私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

伴野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伴野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊田篤嗣君。

熊田委員 ありがとうございます。民主党の熊田篤嗣です。

 参考人の皆様、きょうは本当にすばらしい御意見をありがとうございました。

 また、この交通基本法、私自身も初当選以来ずっと携わらせていただいて、ようやくこの場でこういったお話ができるようになったことは大変うれしく思っております。

 基本法というだけに、多岐にわたる質問をしたいところはあるんですが、限られた時間ですので、根幹にもかかわる部分から早速入らせていただきたいと思います。

 先ほど土居先生のお話の中でも、交通権というもののお話がございました。私も、この交通基本法の論議に携わりながら、国民の移動する権利、私は移動権という言い方をしていましたけれども、これについていろいろとお話をしてきました。しかし、今回の交通基本法の策定段階では、先ほど先生のお話にもありましたように、本文あるいは前文に盛り込むか国会決議などで反映すべき、こういった思いもありましたけれども、残念ながら、全体の合意形成が図られないままに、不十分な形になったのではないかと感じています。こういった中で、二条、三条、十六条、十七条、十八条にそうした趣旨が反映されている部分があるとは思われますが、今申し上げましたように、不十分ではないかと。

 そういったところを踏まえて、法案成立後、交通が、国民の自立した日常生活及び社会生活の確保、あるいは国民生活の安定向上のためにその機能が十分発揮されるようにするためには、本来であれば私も交通権というものを入れるのがいいと思うんですが、入れていない以上、こういったものを実効性あるものとするためにはどういった施策を講じていくようなことができるのか。フランス、あるいは交通権というものが入っていない欧州の国の交通基本法もあると思いますが、そういったところはどういった形で行っているのか、その事例などを教えていただきたいなということ。

 及び、移動権、交通権という言い方をすると、どうしても人流ばかりで物流が抜けてしまうような気はするんですが、輸送権とでもいうんでしょうか、そういった物流というものに対して、欧州ではどういった捉え方、これまで成立したところではどういった捉え方をしているのかというところを教えていただけないかと思います。土居先生、お願いいたします。

土居参考人 フランスの方は交通権というのを高らかにうたっているわけですけれども、スウェーデンとかイギリスとか、ほかの欧州諸国では、交通権保障という言葉はうたっていませんけれども、基本的にはEU各国同じような精神で、法律ではなくてチャーター、憲章ですね、あるいは地方自治体への権限移譲という形で、実質は地方公共団体がそれを保障できるようなシステムを組んでいるというふうに聞いております。

 勉強不足で、それ以上はちょっとお答えできません。

 それから、物流に関しても、この交通基本法でどう扱うか、非常に重要なところですけれども、フランスの場合は、一応そういう形で物流に関するものも入れていまして、それは、情報に全ての人がアクセスできるとか、そういうことで利用できるようなアクセス権というのも保障しておりますから、この物流に関しては、どういうふうに扱うかということが一つやはり議論になると思います。

 以上です。

熊田委員 ありがとうございます。

 本当に、まさしく基本法ですので、こういった移動権、あるいは物流というものも含めて、総合的にどう扱うかというところは大変重要なところだと私も認識しておりますので、今いただきました資料なども踏まえて、またしっかりと考えていきたいと思います。

 あわせて、私は、移動権という権利だけではなく、こういった基本法の精神を実現していくために、もう一点重要なものがあると思います。それは、当然、何をやるにしても財政上の措置というものが必要になる。これは必要不可欠なものだと思います。十三条の中で、必要な財政上の措置を講じなければならないとはありますが、正直、極めて抽象的かつ消極的だと私は感じています。

 今後、関係法律などでどのような形で担保していくのか、こういったことが問われると思うんですが、例えば、先ほどあったフランス国内交通基本法には、VTというんですか、事業所交通税というのがあると聞いています。こういったもので、インフラ整備だけではなく、運営上の赤字も含めて補っていけるというように私は認識をしておりますが、財源的なものをしっかりと明文化して確保していくというのが大変重要な点になるんだと思います。

 このあたりのところで、たしかフランスは、国からの補助よりもVTの方が地方財政においては中心的な役割を担っていたと思いますが、そういったあたりの現状も踏まえながら、今後、我が国においてはどういった形での財源確保を考えていくべきなのか、あるいは今のフランスの現状をもう少し詳しく教えていただけたらということ。そしてまた、自治体の立場から、こういった財源的措置に関して、より具体的にどういった御要望があるのかということを教えていただけたらと思います。

 自治体の立場ということで國定市長と、そして亘理先生から、今のヨーロッパの現状なども含めて教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

亘理参考人 お答えします。

 基本的に、交通基本法たるもので理念をうたって、実際の運用は地方自治体に任せているというのがヨーロッパの実情でございまして、公共交通の赤字に対しての補填は、私が先ほど御説明しましたように、いわゆる共助という考え方でして、国や地方自治体からの補助は当たり前でございます。その上に立って、フランスでは熊田先生が言われたような交通税がありますし、ほかの国も、エネルギー関係諸税等々からそういう公共交通等への財政補助がなされるような仕組みができているのが実情です。

 以上です。

國定参考人 私ども市町村から見た交通施策に対する財政措置ということでありますが、正直なところ、これまで、とりわけデマンド交通のような新しい地域公共交通に対する補助制度というものは、毎年毎年かなり制度設計が変わっているというのが実情でございまして、なかなか先の見通しが見えない状況が現状でございます。そういう意味では、今回の交通基本法の中で、少なくとも財政上の措置を講じなければならないという条項が明文化されているということは、私自身は高く評価をしているところでございます。

 その上で、こうした新しい地域公共交通施策を各市町村が展開しなければいけないことには、それぞれ市町村特有の事情がございますので、補助制度を運用していくに当たっては、余り全国画一的な厳しい制約条件を課すのではなくて、各市町村ごとに、それぞれある程度自由に制度設計を組みながら必要な財源を保障していただけるような、そんな制度設計をしていただくことを望みたいと思っております。

熊田委員 ありがとうございます。

 本当に、何を行うにしても、財政的なものというのがやはり一番基本、根本になってくると思いますので、そのところ、皆様からの、特に現場からの声というのは大変重要になってくると思いますし、継続性を持たせていくためにも、今後の対応として、私自身は、この交通基本法には一応、必要な財政上の措置とは書いてありますが、より具体的な形、今市長のお話にもありましたが、毎年変わるような形ではなく、ちゃんと計算できるというのか、見通しが立つような形にしていくべきではないかという思いは改めて強く感じさせていただきました。そういったことを踏まえながら対応を考えていくべきだというように思います。そういった点で、ぜひまた今後の国会審議に生かしていけたらと思います。

 あともう一点、この交通基本法の中で、少し観点が変わりますが、第四条、第二十条のところで、環境への負荷低減について触れられています。二〇〇一年以降、運輸部門からのCO2排出量は減少するなど効果は上がっていますが、総排出量に占める旅客交通の割合は増加し、中でも特に、車、マイカーからの排出量が多く増加しているとの国交省の調査結果もあります。

 徒歩、自転車、自動車、鉄道、船舶、航空、こういった交通手段の中で、いわゆる公共交通機関とされるバスなど、そして鉄道、船舶、航空機の優先利用、こういったものを進めていくべきではないか、こういった思いがあります。

 このような半強制的な形も含めてシフトしていくというやり方、あるいは、物流においてもモーダルシフトも含めて考えていかなければならないと思いますが、こういった施策のあり方について、既に交通基本法というものを成立させている国々ではどういった形で今行われているかということを、土居先生、亘理先生、教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど私の意見陳述で申し上げましたとおり、各主要都市ないしは広域的な協議体で中長期の総合交通計画というのを策定するようになっております。その中で、全てのモビリティー手段ごとの達成目標、五年後に何%、十年後に何%、あるいは長期で持っているのは、今だと二〇三〇年まで考えている都市がございますが、そういうもので段階的に車から公共交通へのシフトをしていく。もともとヨーロッパの都市で車の依存率が高いところは九割程度ございますので、通常は大体六割ぐらいまで車の依存度を下げて、その後、さらに次の十年後に五割以下にする、そういうソフトランディングさせていくという計画が大体中心でございます。

 そういう計画に基づいて、全ての財政的な措置やら市民への協力体制もお願いしていく、こういう手続になっていると理解しております。

土居参考人 交通をどういうふうに方向づけるか、そういう形でフランスでもいろいろ苦労されていて、この交通基本法も、基本的に、制定は一九八二年末ですけれども、さらにいろいろな事態ごとに条文を書き加えるといいますか修正する作業をかなり丁寧にされていまして、法律の後ろに何年修正とかそういうことが書かれていますから、問題があるごとにいろいろ修正されたと思います。

 物流の方では、ヨーロッパ全体が一つの国のようになっていまして、一国でトラックの規制をしても、フランスに入ってくる車は、例えばギリシャとかスペインとかルーマニアとか、そういうのがどっと入ってヨーロッパ全体を走り回りますから、そういう意味では、一国だけではおさまらないような総合的な物流政策といいますか、それは基本的には、いわゆるチャージを取るといいますか、公害を出すような車に対しては付加税を課すとか通行税を取っていくとか、そういうさまざまな施策をやっています。

 物流自体をコントロールするとか、そういう全体的にコントロールするという役割は非常に難しいと思いますけれども、それの調整機関として、今回の我が国の交通基本法でも、自治体がいろいろな施策を打ち出しても、隣の市町村にはどうやって行くかとか、またそれとの相互流通等がありますので、そういったいろいろな役割というのをどこが担うか、都道府県になるのか国が行うのか、そんなことの組織も必要ではないかと考えています。

 以上です。

熊田委員 ありがとうございました。

 交通基本法は、まさしく総合交通体系をつくっていくその基本となるものだと思います。基本だからこそ、どういった制度設計をしてどちらに方向づけをするのか、根本となるところだと思いますので、今いただきました御意見なども参考にしながら、よりしっかりとした議論へと進めてまいりたいと思います。

 質疑時間が終了しましたという紙が参りましたので、私からの質問はこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伴野委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 きょうは、四人の先生から大変貴重なお話を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。本当に参考になっております。

 限られた時間でありますが、四人の先生方にそれぞれお話を伺って、関心の湧いた点、疑問の湧いた点をお伺いしていきたいと思います。

 まず、國定市長にお話を伺います。

 大変財政も厳しい中、デマンド交通について非常に意欲的な取り組みをし、市民の意見も聞き、また、バス事業者ともいろいろ調整しながら大きな成果を上げておられることに心から敬意を払うものであります。半分は冗談ですけれども、これだけきちっと対応されていると交通基本法なしでもやっていけるんじゃないかというような話もちょっと一瞬思っちゃったりしたわけでありますけれども、ただ、具体的な要望をさらに掘り下げて伺っていきたいわけであります。

 個人的な経験を言うと、私の同期で衆議院議員を一期務めた武蔵野市長の土屋正忠さんと私は、旧運輸省当時にムーバスの実現に努めて、何とかこれを実現に持っていった。三百メートルごとに停留所という話は、高齢者の方たちの移動を実際に検証して、停留所がどれぐらいの間隔でないと歩くのが嫌になっちゃうかということも全部含めて検証して取り組んだ覚えがありまして、そういう意味では、何か、同志だなという感じを強く感じた次第です。

 きょうのお話で幾つか伺いたいのは、一つは、国の補助制度については、第十三条で財政上の措置を講じると書いてあるので評価するという話なんですが、同時に、今のところ毎年制度が変わって安定しておらない、こういうお話もありました。デマンド交通について、具体的にどんな要件を満たす補助制度があればいいのか、過去行われた中でこの制度がいいと思うというような具体的な御指摘がもしあれば、聞かせていただければと思います。

國定参考人 まず、今、大変ありがたいことに、デマンド交通に対する補助制度も充実の一途を図られているというふうに思っております。

 ただ、今、私ども三条市が進めていく中で、とりわけ大きな特徴として捉えているのが、市内五つのタクシー事業者による共同的な形でのデマンド交通体系なわけですけれども、現行の補助制度では交通事業者そのものに対する直接補助ということになってしまいますので、どうしてもタクシー事業者それぞれに対して国からお金が行ってしまうというような中で、本来的には、三条市全体が一つのデマンド交通というものに取り組もうとしたときには、やはり協議会という一つの全体的な運命共同体が財布を握るということが望ましいというふうに思っております。

 ただ、いずれにしましても、今ほど申し上げましたのはあくまで三条市の事例でございまして、デマンド交通を得意とするところもあれば、既存のバス路線を得意とする地域もあると思いますので、それぞれが自由に選択できるような、それぞれの求めに応じて必要不可欠な補助金がしっかりとおりてくるような、そんな自由度の高い交付金制度のようなものが恒常的に図られるということが地方自治体にとっては一番望ましい姿なのではないかなというふうに思っているところであります。

赤澤委員 私も、交通のような、日常生活に密着して毎日サービスを繰り返す類いのものは、本当に地域密着で、一番近いところでやったらいいと思いますので、その協議会が相当の権限なり財源の自由度を持ってというのは、全くそのとおりかなと思います。

 一方でまた、交通については、いざ災害が起きたときの輸送手段としては、どうしても国としても一定の水準を確保しておかないと国民の生命、身体、財産を守れないという点もあるので、その辺のあんばいが非常に難しいところかなと思っておりますけれども、大変貴重な御意見として伺いました。

 資料の十二ページに「今後の課題」ということで幾つか書いておられますが、これについては、この課題を実現する上で交通基本法に期待する部分というのがもしあれば御指摘いただければいいですし、さっと見ると、かなり、現在、市長のレベルで考えて悩むべきことについて書かれている気もしますのであれですけれども、この「今後の課題」の中で交通基本法に期待する部分があれば、手短に御説明いただければと思います。

國定参考人 とりわけこの十二ページのところで交通基本法の成立に寄せる期待というのは、一番下の「まちづくりとの連携」というところにあります。

 これは私ども行政内部のところもそうなんですけれども、交通関係は交通部門のセクションだけが特化して行ってしまうというような意識がどうしても働いてしまうわけですけれども、今回の交通基本法案の第一条の「目的」から始まって、全て共通的に理念あるいは地方公共団体の責務として掲げられている事項は、交通そのものに特化したものだけではなくて、広く市民の生活あるいは産業の活性化等々についても話が及んでいるということが、私どもからしてみると、心理的なバックボーンとしての位置づけというものは非常に大きなものになっていくと思っております。

 参考までに、お示しをさせていただきました資料の最後の十三ページにありますが、まさに高齢化に今到達している三条市におきましても、いかに車社会から脱却しながら日常生活を営むことができるのかということと交通とのマッチングというものは喫緊の課題となっているところでございますので、この交通基本法、とても大切だろうと思っております。

赤澤委員 今の市長のお言葉で、この基本法ができた後、さらにまちづくり関係でも法的な整備がいろいろ図られて、お役に立てるような方向で考えていくのが御希望に沿うのかなというふうに受けとめました。

 最後に一つ、聞きづらいというか、市長ももしかすると言いづらいのかもしれないのですが、資料の中にはありませんでしたバス会社への影響、これはバス会社に涙をのんでもらったということがありましたので、何か相当つらい目に遭っているんじゃないかとちょっと心配するわけですけれども、そちらの影響はいかがだったでしょうか。

國定参考人 確かに、利害関係の調整ですから、結果としては、見直し前と見直し後では、利益的には勝ったところもあれば負けたところもあります。ですから、そうしたことをしていくためにも、やはり協議会というものが、広く三条市全体の調整の場であって、しかも財源も握り続けるということがとても大切であります。

 これまでバス事業者さんに全て涙をのんでいただいたわけではなくて、しっかりとした既存のバス路線も残しておりますし、そうした中で、デマンド交通という新たなフィールドを開削していくときに、バス事業者さんに、どこまでお手伝いできるのかできないのかということを、社会実験を通してトライアル・アンド・エラーを重ねてきた中で、バス事業者さんからの御提案というのがなかなか利用者増に結びつかなかったということで、結局、それぞれが理解をした中で、うまく今の状況に落ちつくことができた。

 こういうことを考えますと、協議会の中で、広く利害関係者が一堂に集った中で、公開の場でしっかりと是々非々で物事を進めていかれるということが望ましい立場なんだろうというふうに思っております。

赤澤委員 これはまた別の機会にでも……。

 質問の趣旨は、実は、参加できなかったということもあるんですけれども、一方で、その後バス会社の経営にどういう影響が出ているか、収入が減ったり採算が悪くなったりというようなことがないかということなので、このあたりはちょっと、次の高橋会長にお話を伺おうと思います。また別の機会に教えていただければ大変ありがたく思います。

 高橋会長は神奈川中央交通の御出身でありまして、私は、旧運輸省時代、バリアフリーにちょっと命をかけていたところがあるんです、交通バリアフリー法のもとの原案を書かせていただいた人間でありますので。その当時から神奈川中央交通は、いろいろ、ステップが出たり、バスが圧縮空気で傾いて人が乗りやすくするとか、とにかくバリアフリーの取り組みは物すごく熱心で、私が最大級の敬意を払っていた会社でありますので、そのことを冒頭申し上げさせていただきます。

 その上で、きょうおっしゃったことの中で非常に大事な点が含まれていると思うのは、バス会社は民間会社なんだから、自分で稼いで赤字を出すなよ、補助金をもらうのは恥ずかしいじゃないかという物の言われ方をすごくすると思うんですね。多分、過去にそれと相当闘ってこられたからこそ出てくる話なのかなと。

 要するに、諸外国で生活交通について独立採算できちっとやっているような例はほとんどない。私も実はそのことは存じ上げていまして、運賃でコストの半分も賄えれば十分だ、むしろ都市の装置として、あるいは、貧しい方たちが移動できないとこれは本当に治安問題にも発展しかねないという欧米諸国で、一定割合の補助が入るのは当たり前という考えがあるのは私も承知をしているつもりです。

 そういう意味で、補助金より委託金でというおっしゃり方は、かなり大きな発想の転換をしてもらった上で、きちっと国民全体に、今はそういうものなんだ、理解をしてほしいという意味が含まれていると思うんですが、そういったところが、どうなんでしょう、交通基本法案に盛り込まれているのか、これができることで少しは変わってくるのか、その辺についてはどう考えておられますか。

高橋参考人 私ども、冒頭にお話し申し上げましたとおり、業界としては、初めてこういう法律ができるということで、期待するところが大であります。

 そういう中で、今、急激な変化というのはやはりなかなか難しいことだと思います。先ほど述べましたのも、一つのやり方といいますか、一つの手法として、基本的に、資料の中にもありますように、路線バスは、バス事業者の約七割近くが赤字という状況でございます。それらを、内部補填なり補助金をいただいたり、そういうことでやっているということで、何とか不採算路線を維持しようという努力をずっと続けておるわけでございます。

 路線そのものを見ましても、これも全ての路線の七割近くが不採算であるというような状況の中で、これはもう一事業者としてはとてもそこまでの対応は難しいということから、これは基本的に国なり地方公共団体のお手伝いをきちんといただいた上で、その方針にのっとって仕事をしていくということに考え方を切りかえていかないといけないのではないかというふうなことでお話をさせていただきました。

赤澤委員 ちょっと時間の関係がありますので、手短にお答えいただければと思いますが、デマンド交通とかLRTが今出てきました。LRTについては、導入後、むしろバス事業の採算もよくなった例もあるやに私は承知しております。

 その辺、今、過疎の問題がいろいろある中で、財政も厳しい中で、デマンド交通、LRTといったものが出てくることについてバス業界としてどんなお考えかを簡潔にお答えいただきたいと思います。

高橋参考人 いろいろな手法が出てくるのは大変結構だと思っております。そういう中で、バス事業者としても積極的に取り組む姿勢でやっていきたいと考えております。

赤澤委員 亘理先生にお伺いをいたします。

 大変貴重なお話をいただいて、ありがとうございます。

 私は、先生のお話を聞いていて、自分が思っていたことと非常に響くところがあったので、その点に集中しちゃうんですが、やはり、まちづくりとか中心市街地の活性化も含めて、一つの鍵はマイカー規制ではないかなということを強く思っております。どこでも車で行けるようにしちゃうと、目的地との二点間しか動かなくて、車をとめてそぞろ歩きをしたりということが全然ないと、ああ、新しい店が町にできたなとか、そういうこともわからないまま、とにかく二点間だけ動く。これがやはり中心市街地が廃れてきたかなり大きな理由じゃないかなと。

 都市の中心部はそれなりの規制を行って、LRTとか徒歩とか自転車でというようなことじゃないかと思うんですが、その辺について、この法案に期待するところがあればお話をいただきたいと思います。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 ヨーロッパの思考の中には、マイカー規制というのは基本的にありません。全ての乗り物の選択の自由を保障しております。

 ただし、やはり、本来の車のスピードより、歩行者や自転車ときちっと共存できるようなスピードで車も走ってくださいと。すなわち二十キロの場合もありますし、極端な話、十五キロのスピード制限の道路もあります。通常、先ほど言ったようにゾーン30という三十キロ規制が多いんですが、そういう中で、そこの町がどういう選択をするか。例えば、端的な例で、中心市街地に車を入らないようにさせるというのは、そういう都市も幾つかありますが、その場合は、その地下に全部駐車場が用意されておりまして、とにかくどんな交通手段でも町の中心市街地に来られるように保障しているというのがヨーロッパの取り組みでございます。

赤澤委員 済みません、きちっと定義をしなかったので言葉の問題があったようで。まさに、中心市街地に入れずに、しかし、非常に大きな駐車場を利用して、あとは徒歩なり自転車なりLRTで入ってもらうということを私はマイカー規制と呼んでいたんです。そういう意味ではあるということなんだろうと思いますけれども、お話どうもありがとうございました。

 最後に、時間の関係で一問、土居先生にお話を伺います。

 地域交通計画について非常に大きな意義を置いておられました。全くそのとおりだと私も思うし、ほかの先生方もそれについての重要性は指摘されていたと思うんです。

 交通基本計画を国が定めるということをこの法案に位置づけてあるんですが、先生のお話を聞くと、やはり交通などというのはかなり地域密着で、国で計画を定めることには余り意味がないんじゃないかなという感じもちょっと受けたんですが、この法案で、国が交通基本計画を定めるということについてどういうふうにお考えになるか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。地域の計画と連携させろとかいうお話かもしれませんし、よろしくお願いいたします。

土居参考人 国は国でやはり役割がありますから、そういう意味で基本的な計画もつくるべきだと思いますけれども、おっしゃるように、地域地域の本当の住民の事情を知っているのは各地方自治体ですから、その地方自治体が、どんな形で実現できるかを含めて、住民の参画も得て考えていく。それは、五年でできないかもしれないし、十年かかるかもわかりませんけれども。

 そういう意味で、それぞれ各地域の計画もつくっていきながら国との整合性を図るとか、あと、都道府県の役割もどういう位置づけをするかですけれども、そういう意味で、やはり計画段階はいろいろありますけれども、基本的には、密着した各基礎自治体がそれを実現できるような計画をまず尊重していただきたいと思います。

 以上です。

赤澤委員 ありがとうございます。終わります。

伴野委員長 次に、加藤学君。

加藤(学)委員 国民の生活が第一の加藤学でございます。

 本日は、四人の参考人の方々、本当にお忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。

 それでは幾つか質問させていただきますが、まず最初に、この法律は、国民目線あるいは利用者目線でしっかりとした交通権あるいは移動権というものを確立していこうということがもともとの趣旨でございます。そこについて、今回の法律は、そういった利用者の目線、国民の目線だけではなくて、国際競争あるいは経済成長、こういった成長の視点も盛り込まれているわけでございます。

 この交通基本法のつくり方について、専門家でいらっしゃいます亘理さんにちょっとお聞きしたいんですが、こういった利用者の目線と国際競争力の目線というのが一緒くたになってこういう法律にくくるというのは、ヨーロッパでも同じようなものなのかどうなのか、あるいはこういった法律のつくり方というのがあるのかどうなのか、その辺のところをちょっとひとつ教えていただきたいと思います。

亘理参考人 私が知る限り、そういう産業政策、都市政策等と一緒になったつくりの法律は見受けられません。

 ただし、先ほど言いましたように、多くの国は、自立支援法を改正した中で交通、移動の保障をする、そういう扱いになっておりますが、一方では、都市計画とか国土交通計画とか、そういう大きなくくりと一緒になって政策を遂行する形になっておりますので、これが混在していることの問題は余り感じられないのが実態だと思います。

加藤(学)委員 その問題が感じられないということをまず確認できました。

 そして、次の質問にかわらせていただきますが、土居先生は、地方公共団体に地域の交通計画の策定を義務づけるべきだという主張をされております。一方で、交通権というものをちゃんと保障していくべきだという、これは私は国の役割だと思うんです。国が交通権を保障するという観点からすると、地域団体にこの計画を義務づけることと若干何か意味づけが変わってくるのかなというふうな気がするんですが、国の責任でやるのか、あるいは地域の責任でやるのか、この辺の区分けというか役割分担ということをどのようにお考えになっているか、この辺のことについて教えてください。

土居参考人 各地方によって本当に地形も違いますし、人口の配分も違いますから、それを国が一律にシビルミニマムとかナショナルミニマムで決めることはできないと思うんですね。ですから、やはり、各地域で自治体が中心となって、住民の参画を得ながら、この地域では例えばバスは一時間に一本でいいとか、バス停から十五分ぐらいはカバーしようとか、さまざまな合意のもとに具体的な交通権保障の内容を決めていくべきだと思っているんですよ。それは地域地域で違うと思うんです。

 そのときに、国の役割としてどういうことができるか。やはり一定の支援をしていかないかぬ。さまざまなそういう地域の状況も、ほかの地域ではこうしているとか、あるいはこういったことを使えるとか、そういった形で、地域の方を支援していくといいますか、そういうスタンスがかなり必要ではないかと思っています。

 以上です。

加藤(学)委員 今のことに関連して、國定市長にもお聞きしたいんです。

 地域というと基礎自治体を基本的に思い浮かべるわけですが、都道府県との役割分担の仕方、例えば地方の交通計画を立てる場合、あるいはいろいろな財源措置を考える場合を含めて、都道府県と市町村との役割分担、あるいはどちらに比重を置いてやっていったらいいのか、その辺のところの御意見について現場の目線から教えていただければと思います。

國定参考人 正直に申し上げまして、それこそ市町村のそれぞれの立ち位置によって随分違ってくるのではないかというふうに思っております。

 少なくとも三条市の場合には、新幹線の燕三条駅を中心として、新潟県の県央地域の中核都市でもございますので、どちらかというと私ども三条市単独で取り組んでいく方が望ましいというふうに思っております。新潟県との利害関係の調整を経るよりは、三条市単独で全ての地域公共交通を策定していく方が望ましいと思います。

 ただ、恐らくでございますけれども、三条市の周辺に、例えば加茂市であったり田上町といったように、中核のところよりもやや周辺地域の市町村もあるわけでございますけれども、恐らくそういうようなところの立場からすると、新潟県を介して、三条市が策定していく地域公共交通との連携というものを模索していきたいというふうに望むのではないかと察するところであります。

加藤(学)委員 今の都道府県あるいは市町村との話とも関連するんですが、亘理先生は、都市間ネットワークということで、こういった面も広域で協議体をつくることが必要だというふうにおっしゃっているわけでございますけれども、この広域というのをどのように考えるのか。一つの地方公共団体としてあるものを想像しているのか、あるいは、寄せ集めみたいな形で、その場での協議体みたいなものを考えているのか。そのときの権限や財源のあり方というものが非常に曖昧なくくりになってくるわけですが、この辺のイメージについて、広域の協議体というものは非常に重要だと思うんですが、もうちょっとイメージ的に、どのような権限やどういった仕組みを考えていらっしゃるのか、亘理先生に教えていただければと思っております。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど御説明しましたように、フランスでは法律で規定されております。特にヨーロッパは地方分権が進んでいますので、基本的にはそこの中でほとんど解決されていくということでございます。

 例えば、一例ですが、フランスにナントという中都市がございます。その都市自体は約二十七万人ぐらいの人口ですが、ナント協議体というのがございまして、そこをくくりますと約六十五万人の規模になる。その規模の中で交通計画を考える。そこの中で、先ほど説明しましたように、市役所、道路管理者、交通管理者、市民代表等が一緒に入った協議体がございます。そこでほとんど解決されていくというのが実情でございます。

 一つの市町村の大体二倍から三倍規模を一つの協議体として考えていかないと、やはりネットワークにならないということでございます。

加藤(学)委員 最後にもう一つお聞きしたいんです。

 土居先生と亘理先生は、交通基本法に交通安全の視点というものをもうちょっと入れ込むべきだ、あるいは統合して考えるべきだというような御意見があったわけでございますけれども、実際に交通基本法の中には、別建てとして交通安全対策基本法と両輪でやっていくということの位置づけがされております。この辺について、どういった文言、あるいはどういった形で交通安全の視点というものをこの交通基本法の中に入れ込んでいけばいいのかということを、もうちょっと具体的に土居先生と亘理先生に教えていただければと思います。

亘理参考人 私は、具体的には国会議員の先生方にお任せしたいと思いますが、やはり一番の問題は、私の最初の意見陳述でも述べたとおり、交通の優先権というのが全く不明確なことにより、多々いろいろなそごが生じている。

 例えば、ヨーロッパは混合交通というのはもう当たり前なんですね。全部の交通手段が一緒に走る。だけれども、交通の優先権が決まっているから、その際には歩行者が一番なわけです。歩行者、交通弱者が一番なんです。それが社会にもう定着していますし、教育もそういう教育をしていますし、家庭教育も、親もそういう教育をしている。そういうことを徹底していけば、余り文言は問題にならない。

 とにかく、人、交通弱者が優先だという文言をきちっと入れていかないと交通基本法たり得ないというふうに考えております。

土居参考人 交通安全対策基本法は、そういう意味では、やはり対策におさまっているといいますか、そういうのが問題と思っているわけです。

 今回、亀岡の方で無免許運転の車が通学路を暴走して貴重な人命が奪われていますけれども、そこも、亀岡市がそういう意味では警察とかあるいは道路管理者の協力を得られれば、時速二十キロ以下とか、もっとさまざまな規制ができたと思うんですけれども、やはり、警察自体が自動車交通を円滑化せないかぬとか、道路管理者は管理者で自分の権限もあるとか、なかなか十分な効果が発揮できなかったと思っているんですね。

 そういう意味で、交通安全の方も、国民の安全、地域住民の安全にかかわることですから、自治体が責任を持ってできるように、都市間とか広域では違っても、その地域ではやはり自治体ができるような形の施策がとれるように、交通基本法に吸収していただきたいというお願いです。

 以上です。

加藤(学)委員 今のお話を聞いて、交通安全の視点は今の時宜を得た非常に大きな指摘だと思っております。特に、交通の優先権の規定、あるいはこういった事故を受けた問題は、本当に一緒に考えていかなければならない問題だというふうに今強く認識したところでございます。そのことを踏まえて、よりよい交通基本法になるように、今後、国会の方でもしっかりと詰めていきたい、運用の方でもしっかりと実現していきたいというふうに考えている次第でございます。

 以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

伴野委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、御四方の参考人の皆様には貴重な御提言また御意見を賜り、心から感謝申し上げます。

 実は我が党におきまして、近年、自転車事故が増加しているという観点から、私が座長を務めておりますが、一昨年の十二月、自転車等の利用環境整備推進PTというプロジェクトチームを立ち上げまして、一年間、現在の交通法制、そしてまた現状につきましてさまざま勉強をさせていただきまして、昨年の十二月、緊急提言を発表したところでございます。

 今、自転車の世界でも新しい段階を迎えていると思っております。環境配慮であるとか、また経済的にも簡便な乗り物であること、また健康志向である、そういうところで焦点が当たっているわけですが、一方で、今、自転車政策は皆無に等しい、このこともよくわかりました。車両にかかわらず歩道走行を可としたという段階があり、そしてまた今度は、歩道はだめだ、車道に戻れ、このようなことがなされ、自転車の存在も大変曖昧なものになり、そのために、加害者になった場合の事故の補償等がなかなかなされない、それで苦しんでいらっしゃる方が多いとか、また反面、事故を起こさないための交通環境の整備が大変おくれているとか、こうした状況をつぶさに見させていただきました。

 そこで私自身に見えてきたものは、車優先社会から歩行者優先、人間優先、そして自転車優先、こうした交通体系の整備、徹底が急務ではないか、こうした結論でございます。

 今回の基本法の中にも、第三条におきましては、急速な少子高齢社会の進展、こうした変化に対応することであるとか、また第五条で、徒歩、自転車等々、一応全部列記されている条文もございます。ただ、先ほど来四人の参考人の方々がおっしゃっていらっしゃるように、私は、もう一つ、人を優先していく、生命尊重また生命の尊厳を守る、こういう基本的な視点をもっとはっきりとさせなければいけないのではないかと考えております。

 そこで、そうした私自身の考えがございますもので、何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど来議論がありました、優先順位を明確にすることでございます。

 先ほど亘理参考人から、歩行者、自転車、公共交通、そして自動車、こういうことをはっきりさせるべきだというお話がありました。確かに、通学路の事故であるとか、また一方で、先ほど御紹介ありました、諸外国においてはバスと自転車の接触事故を防ぐためのバスレーンの拡幅がなされているとか、恐らく日本ではこういう施策はほとんど見られないような事態があります。

 そこで、先ほど来出ていましたLOTI、フランスの法制でございますけれども、このLOTIを私もずっと読みました。移動権というのは書いてありますけれども、優先順位がそこで規定されているかというと、そういう文言は見つかりませんでした。実は、私も交通基本法の中にこの理念をはっきりと入れさせたいという思いがありまして、修正でさまざま勉強もさせていただきましたが、見当たらなかったというのが現状でございます。

 そこで、恐らくこれにお詳しいのは亘理参考人と土居参考人かと思います。まずお二方にお伺いしたいのですが、これは理念としてあるものなのか、それとも、どこかの法制にここがはっきりと書かれているものなのかどうか。どこかの国にあれば、そのままこちらも、参考にして文言を入れるということも可能かとは思いますが、見当たらなかったというのが私自身の現状でございます。ぜひ教えていただきたいと思います。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 私の知る限り、法律で規定されている国はないと承知しております。

 ただし、そういう理念を各個別の法律で、例えば道路交通法とかそういうものできちっと規定しながら、実際の運用面でそれを保障していく、それが実態かと承知しております。

土居参考人 今の御意見のように、やはり交通基本法ですから、理念というのは非常に大事になると思いますね。

 その場合、私の方は公共交通といいますか、それは全ての人、環境にも優しい公共交通なんですけれども、その重要性をうたうべきだと考えていましたけれども、おっしゃるように、そういう意味で、やはり原点である歩行者とか自転車を含めた公共交通を、まず一つの政策目標としてうたうべきではないかと考えています。

 他のイギリスとかフランスに関してはちょっと不勉強で、そういう文言があったかどうかわかりません。

 以上です。

高木(美)委員 それでは、ただいまの優先順位を明確にすべきということにつきまして、國定参考人、また高橋参考人にも御所見を伺わせていただきたいと思います。

 そうした理念が何らかの形で、例えば今回の交通基本法なり、もしくは交通安全対策基本法なり、そこの理念としてはっきりうたわれた場合、それが交通のさまざまな、先ほど来出ています計画であるとか、そしてまた都市づくりであるとか、そうしたところにどのような影響を与えていくのか、こうしたことも含めまして御意見をいただければと思います。

國定参考人 私の方でお配りをさせていただきました「デマンド交通の取組」の最後の十三ページのところで、スマートウエルネス三条推進計画というものがございます。

 これは、先ほども少し触れさせていただきましたけれども、これから著しく進展していく長寿社会の場の中で、御高齢の方々が明るく、楽しく、元気よく、健康で、幸せに暮らし続けるためのまちづくりということをやはり模索していかなければいけない。私どものデマンド交通の取り組みというものは、実はそこの一翼を担っているというふうに最初から位置づけているところであります。

 具体的には、中心市街地の高齢化率がもう既に三七・五%を超えているというような状況の中で、まず、その中心市街地の中ではぜひとも歩行者優先の社会づくりをして、その周辺地域からは、このデマンド交通を使っていただく中で中心市街地にも訪れていただく、そんな町の構造に持っていきたいというふうに思っております。

 ただ、現実的には、中心市街地には既存のバス路線も走っておりますし、交通の要衝でもございますので、マイカーも含めて相当交通が錯綜しているという状況でございます。そういうさまざまな利害関係を、これから先、乗り越えていくという意味では、国全体の方向感として、やはり歩行者優先だ、自転車優先だという理念が何らかの形で示されるということは、私ども基礎自治体にとってみると施策の展開がしやすくなる、非常に力強い後押しをいただけるものになるというふうに考えております。

高橋参考人 私ども一バス事業者から見ますと、考え方としてはわかるんですけれども、歩行者にいたしましても自転車にしましても、行動が大変気ままです。ドライバーと一緒に、後ろに乗っていたりしましても、大変恐怖を感じることがあります。

 歩行者は何もない素手でございますし、車の方は鉄でできております。ですから、ちょっとした接触でも大変な事故につながるというのはもう御存じのとおりなんですけれども、そんなことで、先ほどの先生のお話にもありましたように、自転車が歩道から車道に出たときは、私どもは猛反対をしました。正直申し上げて、それだけの教育がまだなされていないと思うんですね。設備的にもそうです。

 そういったものがきちんとされた上で、そういった優先権がきちんと定まるということであれば、もろ手を挙げて賛成ではございますけれども、今のところ、正直なところ、ちょっと早いんじゃないかという気がいたします。

高木(美)委員 高橋参考人、優先順位が明確になりますと、それで、恐らく裁判がそこで有利であるとか不利であるとかというよりも、むしろ、それに基づいたまちづくりができる、バスも安心して走行できる、そういうふうになるのではないかな、私自身はそんな思いでおります。

 当然、今もありましたように、ルールを遵守するための教育であるとか、また自転車でのさまざまな徹底であるとか、構造も含めまして、研究も必要かと思います。また、これから高齢化に伴いまして小型モビリティーとかいろいろなものがどんどん出てくると思いますので、そこと共存していくには、道路の空間のシェアをどのようにしていくのかをはっきりと、優先順位に基づいた道路空間の再配分のあり方というお話が先ほど来ありまして、そこを徹底してやっていくということが大事ではないかと思いますが、そのような考えでは御賛同いただけますでしょうか。

高橋参考人 当然、そういう形になれば、理想的にはそれが望ましいわけですから、異論はございません。ぜひそういうふうに、設備も含めて、ハード面を含めて御指導いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

高木(美)委員 それで、先ほど来ありました、人優先ということを今回の交通基本法にどのように書いていくかということで、我が党もさまざま議論をいたしました。ただ、これは閣法でございまして、ここまで各省折り合いがついている中でどこまで修正ができるのかということで、今、辛うじて修正案を、とてもこれでは足りないとは思っておりますが、提起をさせていただいております。

 それは、第七条の「交通の安全の確保」。それまでは第二条から理念がずっと続いておりまして、第六条まであります。今回は、交通基本法と、安全については交通安全対策基本法を両方並び立たせて、そして双方で補い合って一つの大きな交通の流れをつくる、こういう考え方だそうでございます。したがいまして、ここのバランスが崩れますと、交通安全対策基本法の方は総理がトップであったり、担当の関連省庁が大変範囲が広かったり、自治体でも推進計画をつくるとか、実行上、そういう歴史のある内容になっております。

 したがいまして、今の段階ではそこをある程度こちらも守る形で考えた案が、第七条の第二項のところ、「交通に関する施策の推進に当たっては、前項に定めるところにより行われる」の後に「国民等の生命及び身体の安全の確保を図るための」という言葉を一つ入れまして、それが要するに交通の安全の確保、何のための交通の安全の確保か、こういうことで、本来の趣旨をこの中に辛うじて入れていく。

 これだけでも、私は、理念として交通の安全、本来であれば、今回の交通基本法の一番のベースを流れるものは国民の命と身体の安全を守る、これが本来の趣旨でなければならないわけですが、そこは交通安全対策基本法に譲る、そこと相まってという法律の構造になっておりますので、であれば、もう少しここを明確に書く、このような案を立てさせていただきました。

 時間も迫っておりますけれども、これにつきまして御意見をいただければと思います。まず亘理参考人、いかがでしょうか。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 私は、意見陳述で申し述べたとおり、本来ならば一条と七条をやはり修正すべきなんですが、それは先ほど高木先生が御説明されたとおりであれば、その案で賛成でございます。ぜひとも追加修正させていただければと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 あと、もし何か今のことで御意見があられる参考人がいらっしゃいましたら御提言をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

伴野委員長 どなたか。

高木(美)委員 では、よろしいということで。

 それで、同じく亘理参考人に最後に伺わせていただきます。

 私は、先ほどお話がありましたように、都市計画、交通計画、総合的に一緒に考えていかなければ、先ほど國定参考人からも貴重な御提言をいただきましたとおり、やはり今後のさまざまな変化にたえ得る社会であるとか、また今後のまちづくりであるとか、そうしたところがなかなかできないのではないかと思います。

 欧米にできて、なぜ日本にできないのか。ここのところは一番じくじたる思いがあるわけですが、そうした連携が、それぞれの市町村だけではなく、もう少し幅広く広域の連携、そしてまた、まちづくりもあわせて同時に、このように協議する形というのが望まれるのではないかと思いますが、御意見をお伺いします。

亘理参考人 昔から、日本の都市計画は、寝たきり老人を生む都市計画だと言われております。つまり、人間が移動することを考えてこないまちづくり、土地ありき、場所ありきの都市計画でございます。そこを、ヨーロッパも以前はそういう部分がありましたけれども、もう一回本来の移動、交通に目覚めまして、都市計画からつくり直していく、こういうことになってきました。

 したがって、都市計画と交通計画は一体的でございまして、それが機能していない町は現実に廃れていっているんです。こういう交通問題に取り組んでいない町は過疎化しているのが実情です。真剣に取り組んでいる町はどんどん人口が増加しています。これがヨーロッパの実情です。

高木(美)委員 大変にありがとうございました。

 時間になりました。以上で終わらせていただきます。

伴野委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 参考人の皆さん、貴重な御意見をきょうは本当にありがとうございました。

 私は、委員長の許可を得て、日本共産党としての交通基本法に対する修正案を配付させていただきました。

 まず、國定参考人と亘理参考人及び土居参考人にお聞きしたいと思うんです。

 お配りした修正案の中に、私どもの考え方、特に、交通基本法の必要性について次のように考えています。

 交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものですが、今日の交通を取り巻く社会経済情勢は、人口減少、高齢化の進展や地球環境問題の深刻化、地方の過疎化など大きく変化してきています。

 そのもとで、鉄道、バスなどの相次ぐ路線廃止などにより地方公共交通が衰退し、地域交通が衰退して、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される移動制約者が増大しています。また、これまでのモータリゼーション推進など自動車中心の交通施策によって、交通事故、道路公害の発生などさまざまな弊害も生まれています。さらに、高速ツアーバス事故を初め公共交通機関の事故も相次いでいます。

 こうした状況を踏まえて、本法案をより国民生活の安定向上に役立つものとするため、移動権の保障を盛り込み、交通の安全の確保を基本理念の第一に据えるなどの修正案を提案したところです。

 第二条として、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。」ものとすること等の規定を新設します。これに伴い、この法律が「移動に関する権利を明確にする」ものである旨を目的規定に明記しました。

 私たちの提案について、まず御所見を國定参考人と亘理参考人にお願いします。

 二〇一一年、交通政策審議会・社会資本整備審議会の交通基本検討小委員会の論点では、移動権の保障に関しての法制論、行政論、社会的実態論なる否定的意見がありますが、第二条に、先ほど来、陳述で交通権保障の条文を入れると論じられた点について、土居先生の見解をお聞きしたいと思います。

國定参考人 今ほど御質問者の御指摘の点についてお答えをさせていただきたいと思います。

 私の基本的な立場は、全く今、基本法制そのものが成っていない状況の中にあって、交通基本法案そのものがまず制定されるべきだというふうに考えている人間の一人であります。

 その上で、私自身は市長という立場でございますので、行政執行者でございます。そういうようなことを考えたときに、例えば三条市で、中山間地域の中でもかなり離れたところで、本来集落ではないようなところに、ある一軒の家が建てられた。その方が移動権を主張するがゆえに、行政が毎年毎年多大なる負担をしなければいけないというような事態はやはり基本的には避けるべきだ、こういうふうに思っております。そうした公共と個人のバランスというものはやはり慎重に見きわめていくべきではなかろうか、こういうふうに思っております。

 そういうことを鑑みますと、まず今回の交通基本法案原案で示されているところが、基礎自治体の私どものスタンスから申し上げますと、少なくとも、今の段階では十分な条文規定になっているのではないかなというふうに率直に考えているところでございます。

 これらにつきましては、交通基本法に盛り込まれている理念そのものにつきましては広く賛同する中で、どこまでそこを明文化していくのかということに尽きるというふうに思っておりますので、まさに議員各位の皆様方の慎重なる御審議の中で進められていくべき問題だろうというふうに思っております。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 私は、個人の移動する権利を保障することは現実には無理だろうと思っております。したがって、穀田先生の共産党の修正案は、本当に理想的な法律なんですが、実際は難しいだろう。

 したがいまして、交通基本法の理念にのっとり、国や地方自治体における、移動、交通に係る政策の基本的な方向性を定めるものとすべきである。その基本的な方向性のもとに展開される総合的な各種の政策を実践していくことによって、個人の移動する権利は合理的な形で実現、保障される、こういう姿にせざるを得ないんじゃないかと考えております。

土居参考人 私の方は、この文案を第二条に入れるべきだという形でさっき既に主張しております。

 ただ、おっしゃるように、フランスの場合でもそれは方向づけ法という形で、フランス国内の一つの目標について、漸進的にそれを実現していくんだという形で、多分に、この法律ができてもすぐには変わらないと思いますから、やはり方向づけとしてもこの修正の文を入れるべきだと考えています。

 そうでないと、先ほど言いましたように、世界的にも、二十一世紀初めての交通基本法になります。お隣の国の韓国は同じような案をつくっていますけれども、まだできていません。そういう意味で、やはり日本が二十一世紀の新しい社会を切り開くという意味でも、この交通基本法というのを高らかにうたって、それに向かって努力していくということが非常に重要ではないかと思います。

 以上です。

穀田委員 ありがとうございました。

 私どもは、余り理想というよりも、二〇〇三年には民主党と社民党が共同提案した案なんですね。それから、国交省も二〇一〇年の六月にはこういう案を考えていたんですね。ですから、さほど理想論というよりも、もともと提案していた内容について、政治の流れの中で、ほんのちょっと前に言っていたものを我々がやっているという程度なんですけれども、それはそれで御理解いただきたいと思います。

 それから次に、國定参考人、高橋参考人、土居参考人、お三方にお聞きしたいと思います。

 私たちの修正案、第三条として、「交通に関する施策の推進は、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するよう、交通の安全の確保が図られることを旨として行われなければならない。」ものとすること、これを基本理念として加えました。亘理参考人も先ほどこの問題については陳述され、よりよきものとしての修正提案の中で出されていましたし、それは合致するんじゃないかと思うんです。

 これによって、私どもは、国等の責務についても、交通の安全の確保を大前提にすることになります。ですから、交通の安全の確保ということについて、先ほど、高齢者の方々への施策を三条市において実行されることによって因果関係はどうかという話がありましたけれども、高齢者の被害が少なくなっているというお話がありました。私は、そういう関係からも、これについて國定さんにお答えいただきたい。これが一つです。

 それから私どもの修正案では、事業者の責務についても、その業務を適切に行うことの例示として、交通の安全を図ることを明記しました。

 なお、これは御承知のとおり、先ほど来、交通基本法と交通安全基本法というのが二つの両輪としてあるというふうな話もありましたが、交通安全基本法には、車両等の安全な運転を図るためには運転者等の労働条件の適正化等が重要であり、国として必要な措置を講ずることを規定しています。私は、交通運輸にかかわって安全を担う労働者の、働く条件が極めて大事だという立場に立っています。

 そして修正の第三点目は、地方路線の廃止や、公共交通機関の事故の原因、背景にあった規制緩和等、市場競争原理から脱却するために、公共交通の安全や公共性と相対立する「国際競争力の強化」を削除し、「振興」と改めることとしました。

 高橋さんは事業者でもありますし、行き過ぎた緩和の見直しということを論じておられますし、きょうも自由競争万能ではなくということも述べられ、バス運転手の所得についても言及されました。その点、私どもの考え方についての感想と御意見をお聞かせ願いたい。

 土居さんは、きょうも陳述の中で、運輸事業の労働者の労働諸条件の維持確保は極めて重要と述べられました。また、「自治体による生活交通再生の評価と課題」、これは調査室からいただいた資料ですが、その論文などでも規制緩和や安全問題を論じておられます。

 そういった立場から御意見をお三方に承りたいと思います。

國定参考人 交通の安全の確保につきましては、これは恐らく、誰も異論を唱えるところではないというふうに思っております。やはり交通施策を推進していくに当たっては、交通の安全の確保というものは大変重要なところだろうというふうに思っております。

 三条市におきましても、御高齢の方々が自転車に乗りながら随分車道を、それこそ欧州で言うところの一番優先順位の高いような状態の中で、ばっこしているという状態でございますけれども、そういうようなところがあって、全体として果たして本当に交通の安全の確保につながっているのかどうかということについては、やはり私どもとしてもしっかりと見届けていかなければいけないというふうに思っております。

 交通基本法案そのものの中でどのような規定がなされるのかというところにつきまして、私自身は全く知見を有しておりませんけれども、交通の安全の確保の重要性というものは私どもとしてはしっかり認識しているところでございますし、この交通基本法の中でも触れられておりますような形でまずはしっかりと取り組みがなされていく、まず、その道しるべを立てていくということが大事なのかなというふうに思っております。

高橋参考人 先ほどお話がありましたように、ドライバーの待遇が、大変今所得が低くなっているというお話をさせていただきましたけれども、規制緩和があった時点で、高速バス、貸し切りバス、これらの事業者、それから車両も含めて大幅にふえたわけです。当然そこで発生するのが、やはり単価にはね返って、仕事がとれるようにするには安く受けなきゃならないということもあります。そんなことでどんどんコストが下がっていったわけですね。ということで採算性が悪くなるために、そういったところを抑制しながら事業者としては進めていかなきゃいけないというのが現実でございます。

 そういう中で、もう一つ心配な点は、ドライバーが大変高齢化しております。資料によりましても、六十五歳以上の第二種免許を持っている方が四〇%を超えているというような現状でございます。それに合わせて受験生が減っております。資格を取ろうという人が今大幅に減っております。対前年でも七%近く減っているというふうに聞いております。この五年間でも、たしか八万人近い方が資格をなくしているといいますか、有資格者が減っているというような状況。これがこのまま進みますと、それぞれの路線の維持というのが大変難しくなってくるというような状況にございます。

 私どもの仕事は、安全が第一ということを主眼にしてやっております。そういう中で、そういった責任を負うドライバーの所得がこういう状況では甚だうまくないのではないかというふうに感じておりますので、安全に対してはいろいろな手法を用いながら、ドライバーをバックアップしながら事業者としてもやっていく所存ではございますけれども、そのような観点からも何か改善策、うまい手がないかということで、今模索しているところではございますけれども、その辺も、御指導のほど、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。

土居参考人 規制緩和で、そういう意味では参入規制とか経済的規制の緩和が非常に進んだわけですけれども、それと同じように、社会的な規制といいますか、安全に対する規制の緩和も進んできたような感じがします、さまざまな事故、高速道路の事故とかを見ますと。

 そういう意味で、やはり本来に返って、参入審査の強化とか、公正取引といいますか、下請関係的な取引の関係で物すごくピンはねが行われているとかいったことも知られてきました。事故対応の未整備への監査の強化、さまざまなことが必要ですけれども、これまで、やはり社会的規制というのが一定後退してきたわけですから、今回、この交通基本法の中で、そういった安全に対する具体的な施策もぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

 以上です。

穀田委員 ありがとうございました。

 きょうは各党の御意見を聞く機会もつくることができましたし、国民の生活が第一も、公明も、安全の方はどうも一致できることがありましたし、参考人の方々もそういう御意見でしたから、これは必ず実らせていきたいと思うということを述べまして、感謝の言葉とさせていただきます。おおきに。

伴野委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、四名の参考人の皆さん、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 まず最初に、亘理参考人、土居参考人に、移動の権利についてお尋ねをしたいと思います。

 これまでの御答弁で、お二人とも、交通権、いわゆる移動の権利の保障が重要であるということを述べられております。

 交通基本法は、社民党の前身である社会党時代の一九八九年に党内で法案をつくり、二〇〇二年と二〇〇六年にも民主党と法案を共同提出いたしました。

 交通は、生活に必要な衣食住をインフラとして支える極めて重要な要素であります。憲法に規定された健康で文化的な最低限度の生活を保障するため、極めて大切な条件だと考えております。その意味で、移動の権利が盛り込まれていれば法案はもっと豊富化されていたと考えますが、二〇一一年二月の交通政策審議会・社会資本整備審議会の報告書において、移動の権利を保障することは時期尚早とされ、法案に盛り込まれませんでした。先ほど来お話がございましたが、もう一度、この点についてどうお考えなのか、お二人にお尋ねをいたします。

 それからもう一点は、法案に移動の権利を盛り込まなかったものの、高齢化社会が進行し、車を運転できないお年寄りがますますふえてまいります。身体の不自由な方々の社会参加も進めていかなければならないわけであります。しかし、他方で、地方の公共交通は極めて厳しい経営環境に置かれています。利用者の目線に立っても、誰もが必要な交通にアクセスできる環境をつくることが必要であると考えます。

 移動の権利が法案には盛り込まれていませんが、その考え方を具体化していくために必要なことは何なのか、その点をお二人にお尋ねしたいと思います。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 移動の権利につきましては、先ほどもお答えさせていただきましたけれども、私は、個人の移動する権利を個々に保障することは無理だろうというふうな考えでおります。したがいまして、今回の交通基本法に盛り込まれた基本理念に基づいて、国や地方自治体が総合的な、基本的な政策の方向性を明確にしながら、その基本的な方向性のもとに展開される総合的な各種の政策を実践していく中で、必然的に、合理的に個人の移動する権利は保障されていくものだろうというふうに考えております。

 また、もう一つのテーマ、高齢者の移動の問題なんですが、実は、先生の御指摘の前に、高齢者がどんどん歩けなくなってきているというのが実態としてあります。特に七十五歳以上の高齢者は、五百メートルしか歩けないという人が約五割、半分でございます。こういう事態を、やはり若いうちからこういう事態に陥らないように何らかの手当てをしていかないといけないわけで、その一つに、いろいろなスポーツだとか体を動かすことが物すごく重要ですし、移動、交通することが物すごく重要になってきますので、そういう視点からの取り組みを始めていかないと、動けなくなった、バスがなくなったという問題以前の問題から取り組んでいかないといけない問題だと考えております。

土居参考人 私も、交通基本法の中には、やはり方向として交通権をうたうべきだと考えています。それ自体は方向性を打ち出すという形で、今後社会的に実現していく目標ということを示す必要があると思うわけですね。

 具体的には、やはりそれはすぐに与えられるものではありませんから、そういうまちづくりの中で、町の中のエレベーター、エスカレーターとしての新型の路面電車とか、そういう意味でまちづくりと絡めながら、その辺の移動権を具体的に保障する。それは、具体的には各基礎自治体の役割となると思うわけですね。各地方自治体でどういうことをやりたいか。

 そういう意味で、具体的な施策は地方自治体に任せて予算を配分する、実現するための権限も与える、できれば警察とか道路管理者も含めて、そういった協議を住民の参画のもとにやっていく。そういうことを具体的に地域地域が、さまざまなバリエーションがあると思いますけれども、それを実現するために、やはりこの法案に交通権をうたうべきではないかと思います。

中島(隆)委員 次に、これまでの交通政策の見直しについて高橋参考人にお尋ねしたいと思います。

 今回、交通基本法を定めることになりますが、例えば、二〇〇〇年代になって、地方におけるバス、鉄道事業からの撤退が急速に進んだこと、あるいは、さきの関越自動車道、さらに今月に起きた東北自動車道での高速ツアーバスの事故、先ほど述べられましたが、これまでの交通政策、とりわけ規制緩和の政策についての真剣な総括や評価が不可欠だと考えます。

 先ほどの高橋参考人のお話でも、十年前の規制緩和を経て、貸し切りバス事業者数あるいは車両数の大幅な増加、そういうことによる事故の多発が述べられました。今後の交通政策の見直しがどうあるべきかを含めて、この点についてお尋ねをしたいと思います。

高橋参考人 今、バス事業者の現状といたしましては、先生もおっしゃるように、規制緩和以後、業者が大変ふえたということは事実でございます。当然バスもふえたという中で、事業者とバスの保有台数を単純に割ってみますと、一社当たりのバスの台数というのが大幅に少なくなっております。ということは、そういった事業者ばかりではないと思いますけれども、安全に対する配慮がどうしても欠如する、それから、事業者の数も多いですから、監督する側でもきちんと監督が行き届かないというような点もあろうかと思います。

 そういう点で、今回の基本法をつくっていただくことによりまして、かなりの部分が改善をされていくのではないかというふうに私どもは捉えております。これから細部についていろいろ詰めていかれることと思いますけれども、いずれにしても安全があっての交通事業ですから、その辺をしっかり私どもも受けとめて、事業を推進してまいりたいというふうに考えております。

中島(隆)委員 次に、地方自治体との関係について土居参考人にお尋ねをいたします。

 地方における鉄道やバス事業の経営難、それに伴う鉄道やバス路線の廃止を考えるときに、公共交通の維持を事業者任せにすることはもはや困難であることは間違いありません。

 土居参考人は、住民の移動、交通に係る施策は、住民の生活に最も密接な関係にある地方自治体の本来的な行政サービスであると指摘をされました。地域交通の権限を、地域住民に最終的な責任を持つ市町村に移す枠組みが必要だと述べられました。実際、二〇一〇年に、福岡市が日本で初めて移動権の理念を盛り込んだ生活交通条例を制定したという例もありますが、自治体に交通権の権限を委ねていくために何が必要であるのかをお尋ねしたいと思います。

土居参考人 今、交通権条例という話がございました。

 福岡とか、それから石川の加賀市はそういうものをつくっていきたいという形で動いておりますけれども、一つは、住民の交通権を具体的に守るというのは、交通空白地域を解消していくといいますか、具体的には、鉄道とかバスの駅に歩いて五分ぐらいで行けるとか、そういうものを具体的な目標として、それを解消していくのが交通基本条例の制定の一つの目的です。

 おっしゃるように、やはり各地域の実際の事情を知っておるのは地方自治体ですから、そこで、五百メートルがいいのか、二百メートルがいいのか、はたまた一キロがいいのか、さまざまなレベルで、その地域の状況で一番実現の可能性のあるところを探っていくことが非常に大事になってくると思いますから、そういう意味で、今回、ぜひ地方自治体に権限と財源を与えていただきたいと思います。

 財源についてはどういう形でそれを確保するか、まだまだ議論の余地はありますけれども、一つは自由に使える自主財源といいますか、それと権限、できたら警察の権限、道路管理者の権限を、地方自治体の方に全体的に吸収できるような体制をお願いしたいと思っています。

 以上です。

中島(隆)委員 それでは次に、國定参考人にお尋ねをいたします。

 冒頭のお話にもありました、デマンド交通について先進的な取り組みをされているということで、三条市では二〇〇八年三月に地域公共交通総合連携計画を策定され、循環のバス、デマンド交通を実施され、実績を上げておられます。数年間で利用者が倍増していることからも、高齢者を初めとする移動困難者をしっかりと受けとめているものと評価いたしております。

 デマンド交通は、市とバス、タクシー事業者、そして住民の理解という三つの要素が必要であると考えますが、このようなデマンド交通をさらに発展させるために、国に求める施策があればというふうにお尋ねしたいと思うんです。先ほど赤澤議員の質問に対しても、国の支援は財政的な支援で、自由選択できる交付金制度の拡充が必要だ、こういうふうにも述べられました。これ以外に、国に対して、もっとこういう支援をやってほしいというものがあればお尋ねしたい。

國定参考人 やはり足元を見ますと財政的な支援ということが一番でありますけれども、先ほども少しお答えさせていただきましたけれども、今回の交通基本法に寄せる私どもの期待というのは、交通に取り組んでいく、地域公共交通の新たなチャレンジをしていくということに対して、さまざまな形で懐疑的な物の見方をされる方がいらっしゃるのも事実でございます。そうした中で、私どもが取り組んでいくことそのものが、高齢者のみならず市民全体の生活の向上にもつながっていくんだ、あるいは、そうしたことを通じて地域経済の活性化にもつながっていくんだということが、逆に、この交通基本法そのものによって後押しをされるということは、大変ありがたいことだと思っております。

 交通基本法が制定された後に、国の方からそうした精神的な意味でのバックボーンを構築していただくことに対しては大きく期待を寄せているところでございます。

 とりわけ、中心市街地で、例えばマイカー規制を仮にかけるような状況になったときに、全く国のバックボーンがなければ、なかなかその利害関係の調整というのは難しいわけでありますけれども、全体の方向感として、高齢者の安心、安全の確保のためにある一定の制約条件を付して、その分、交通を充実させていくんだ、こういうような方向感を国の方からお示しをしていただければ、私どもとしても、中での利害関係の調整がしやすくなるというふうに思っております。

中島(隆)委員 それでは最後に、高橋参考人に財源問題についてお尋ねをいたします。

 地方のバス、鉄道の路線廃止の実績を見るにつけ、地方公共交通の維持を事業者だけに過度に委ねていくことは財政面から限界があると思います。

 二〇一一年度予算から、これまでの支援策を抜本的に見直して、地域公共交通確保維持改善事業が実施されました。二〇一一年に三百五億円、今年度は三百三十二億円の予算措置です。従来より額がふえてはいるんですが、地方公共交通を支えていくには十分ではないというふうに思います。

 この財源問題についてのお考えをお尋ねいたします。

高橋参考人 二十四年度の予算ということで、今先生がおっしゃるように大変な額を確保していただいたわけですけれども、その中で、私どもバス業界としては、約百十五億ぐらいがバス業界で利用させていただいた数字だと思います。これからもそれを利用しながらやっていくわけですけれども、いずれにしましても、私どもで一番やりにくいといいますか、問題としておる点は地方の過疎路線ですね。

 そういったところの空白地帯を、何とかして自分たちで維持していこうという意思は各事業者が持っているわけです。しかし、内部補填、それから今言った補助金等の手当てでも、なかなかもう難しいというのが現状ですから、そこのところを、逆に幾らあればどうのという計算は私は今つきませんけれども、その辺をもう少し手厚く補助していただければ大変ありがたいなというふうに思っております。

中島(隆)委員 時間が参りましたので、終わります。

 四人の参考人さん、大変御苦労さまでございました。

伴野委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 四人の皆さん、本当にお疲れさまでございます。きのうに引き続き私がラストバッターでございますので、あと十五分間おつき合いをいただければと思っております。

 交通基本法の成立を先取りする形で、今、社民党の中島委員からもお話がありましたが、地域公共交通確保維持改善事業、交通サバイバル戦略ということで、平成二十三年度三百五億、そして平成二十四年度三百三十二億が計上されております。過疎化や自家用車の普及に伴う乗客減少で赤字にあえぐ地方の公共交通を、廃止に追い込まれて住民の足が失われてしまうのを避けようということで、国の予算をふやして公共交通の経営を支えていこう、こういうものだと思います。

 そういう予算の中で、例えば、先ほど三条市さんのデマンド交通の取り組みの御紹介を市長さんにいただきましたけれども、こうした新しい取り組みも行われているわけです。

 今、過疎路線、生活路線を守るためには予算の確保がさらに必要だというお話を高橋参考人がされていましたけれども、問題は、公共交通を守るのに必要なのは予算の増額である、こういうことなのかどうかだと思うのであります。さまざまな取り組みを行っていく、そうした中に、もちろん予算の確保も必要でしょうけれども、やはり重層的、多角的な取り組みを行っていくことによって、なるべく自前でバス路線を維持できるようにしていく、こうしたことが一方で業界に求められているのではないかというふうに思います。

 その点、まず高橋参考人に御認識をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

高橋参考人 おっしゃるように、ただ単純に困ったから助けてくれというお話では決してないわけでして、従来から、先ほどもお話ししましたように、空白地帯をできるだけつくらないように、過疎路線を何とか維持していこうという努力を続けているわけでございます。

 そういう中で、いろいろな手法があるんでしょうけれども、いろいろ検討をして、ない知恵を絞りながら、努力しながらやっているというのが現状だと思います。今おっしゃったようなデマンドバス、当社でも検討しておりますけれども、やはり私どもは民間事業者ですから、どうしても採算というものを考えなければなりません。そういうところから、やはりいい知恵がなかなか浮かばないというのが現状でございます。

 しかし、とはいうものの、身を削りながら、そういった路線が少しでも長く維持できるような努力を進めておりますけれども、私どもは比較的恵まれた地域で事業をさせていただいていますけれども、地方へ行きますと、そんなことを言っている場合じゃないと。人そのものがはるかに少ないわけですね。そういった中で、努力はしますけれども、現実、なかなか難しいというのが現状でございます。

 そういう中で、先ほど環境問題のことも挙がっております。少しでもそういった害のある車を害のない車に乗りかえるというような予算をとっていただいておりますけれども、地方のバス業者としましては、バスそのものが買えないわけですね。そういった現状がございます。ですから、大都市におきましてはそういった環境に対する各取り組みも熱心にされております。しかし、そのパーセンテージを比較しますと、大変少ない率でしか買うことができない、そういう状況でもあるわけです。

 ということで、甘えていると言われてしまえばそれまででしょうけれども、決してそういうことはないつもりで日々努力をいたしております。

柿澤委員 今、非常に苦しいというか、厳しい状況の中で頑張っておられることを、私自身は評価をしていないわけではありません。

 路線バスでいえば、主要な乗り合いバス会社が大体百五十社ぐらいあるでしょうか。三十台以上の車両を持つ会社は全国で二百五十社。地方都市でいえば、八五%の会社が赤字経営、こういうふうに言われているわけです。民営バスの赤字が大体三百億、公営バスの赤字が三百億、大体この六百億が、国または自治体の公の財政負担によって賄われているわけです。

 三条市さんも、新潟交通さんと越後交通さんの路線バスを抱えておられると思います。こうした地方の生活路線を守るには、やはりこのような予算を今後も確保し、また拡充をしていかなければいけない、こういう認識であるかどうか、市長さんの御見解をお伺いしたいと思います。

國定参考人 私は既存の路線バスそのものを否定するものではございません。

 今、現実に、デマンド交通を始めてもなお残っている路線バスにつきましては、やはりそれなりのニーズがあって、採算性という意味では赤字路線かもしれませんけれども、まだまだ利用していかなければいけない路線だということで残しているところでございますので、それそのものを否定するわけではございませんけれども、それにあわせて、御高齢の方々を中心に、より地域の足として、みずからの足として公共交通を利用していくために、三条市の行政負担をさらに上回ることなく拡充していくことが非常に望まれるところでございます。

 今、私どもは、見直し前、年間六千六百七十万円行政負担をしておりましたけれども、デマンド交通という新たな事業を進めることによって、結果として、年間一億七百四十三万円という支出が出ております。私どもは、ここに見直しをかけていく中で、八千万円台に持っていきたいなというふうには思っているところでありますけれども、さはさりながら、この八千万円台というものを経常的に支払いをし続けていくためには、国からの一定の財政支援というものはやはり望むところだということも申し添えておきたいと思っております。

柿澤委員 路線バスの路線の維持は非常に重要だと思います。また同時に、運賃収入で運行コストを賄えるようにするのは非常に難しい。これは日本だけではなくて、先進国のどこでもそういうことになっているわけです。ですので、一定の財政負担を私は全く否定するものではありませんが、一方で、企業再生の手法の活用や広域的な経営統合と再編によって、なるべく公的な財政負担に依存しない経営を行うということはできるのではないかというふうに思います。

 この交通基本法の議論というのは足かけ三年にわたって国会で行われているものですけれども、そうした中で、私は、例の経営共創基盤の松本順マネージングディレクターのお話を聞く機会がありました。産業再生機構時代に熊本の九州産交の再生を手がけて、今は、岩手県北自動車、福島交通、茨城交通、最近では栃木県の関東自動車、これを束ねる持ち株会社のみちのりホールディングスというものを経営されておられる方です。

 松本さんがおっしゃるには、主要な乗り合いバスが大体百五十社体制ということは、一県当たり三つか四つぐらいのバス会社がある、こういうことなわけです。これは、昭和十七年から十九年ぐらいのちょうど戦時中に統合されたまま、七十年間、この業界の構造というのは変わっていない。ここを持ち株会社形式で広域統合して、そして経営戦略の立案や管理部門を一元化する、また、スケールメリットの出る旅行代理店事業や貸し切りバス事業、こういうものは県域をまたいでどんどん統合していく、また、一社では投資負担がなかなか賄い切れなかったICカードの導入やドライブレコーダー、こういう装備の高度化も目指すことができる。

 赤字補填のための税金投入を際限なくふやす前に、こうした、戦時統合以来変わっていない業界の広域統合による体質強化ということを、言ってしまえば国策みたいな形で進めていくことが同時に必要なのではないか、それを行うことによって守れることになる生活路線も出てくるのではないか、こういうふうに思います。

 今、もちろん高橋参考人の御見解をお伺いしたいと思ってお尋ねをしていたんですけれども、土居参考人にも、今お話をしていて何度かうなずかれる場面があったので、御見解をあわせてお尋ね申し上げたいと思います。

高橋参考人 先生のおっしゃることもよくわかるんですけれども、現実的な話といたしまして、バス会社それぞれが、ほとんど株式会社という形だと思います。公営の会社もございますけれども、そういったところをもっと集約して浮かせられる費用があるんじゃないかということも確かにございます。しかし現実問題としては、それぞれの会社に株主がいて、独立採算で行っているのが現状でございますから、方法としてはわかるんですけれども、現実論としてはなかなか厳しいところがあるのではないかと思います。

 確かに、先生がおっしゃるように、倒産なりなんなりした会社さんが再生する形でそういった手法をとるということはあろうかと思いますけれども、現状、何とか苦しくてもやっているという会社がすぐにそういう手法がとれるかというと、なかなか難しいのではないかというのが私の考え方です。

土居参考人 既存の事業者とのすみ分けといいますか、そういう意味では、今現実に地方自治体が、理想的と言ったらおかしいですけれども、住民のためにこういう交通手段を提供したいと思うときに、既存の路線業者の免許制度とか地域割が非常に問題になっているわけですね。それをいかに克服するかなんです。

 そういう意味で、京丹後市の上限二百円バスの教訓は、市町村合併によって非常に広域的になったんですけれども、そこに住んでいる人は、これまでの既存のバス業者だったら千七百六十円要るところを、新しく合併されたところも二百円で行けるようにやった。それはかなりの努力で、既存の事業者と協力しながら、どういう改善ができるか、努力されています。

 三条市の場合でも、デマンド交通で、事業の見直しは事業者と協議されて、毎月タクシー事業者と話し合いをされている。

 利用者の本当の声を聞かずに運行されている例も多いと思うんですね。そういう意味では、既存の事業者も大事にしていきながら、地域地域の一つの生きざまですから、それを大事にしていきながらどういうことができるか。それはやはり、地元の自治体と住民が考えていくのを国が援助していくといいますか、そういうシステムをぜひお願いしたいと思っているんです。

柿澤委員 ありがとうございます。

 百億人から四十億人に減ってしまった、大変厳しい状況だということではあるんですけれども、しかし一方で、今、土居参考人がおっしゃられたように、利用者のニーズを踏まえて路線やダイヤを柔軟に見直していくことによってお客さんをふやしているバス路線もあるわけです。

 私はみちのりホールディングスの回し者じゃありませんけれども、例えば岩手県北バスなんかは、仮設住宅を回る路線をこの震災後に開発して、何と乗客を二倍にふやしている、こういうケースもあるわけです。そうした取り組みが、ややもすると、地域の名士のオーナー企業で、ある意味では黙っていても経営が成り立ってきた、そういう時代が長く続いたことによって残念ながら見過ごされてきた、こういう面があったのではないかというふうにも思います。

 都市交通評論家というお立場でありますので、幅広い御見解がお伺いできると思いますので、この点、亘理参考人に御見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。

亘理参考人 お答えさせていただきます。

 私は、バスに対する期待は大きいんですが、一方では問題が多くて、課題が多くて大変な状況にあるのではないかと思っています。

 例えば、バスは乗客のニーズをどういう形で酌み取るのか。例えば、身障者、障害者はバスに乗りたくても乗れません。小さな子供を持っている、乳母車、例えば極端な話、双子用の乳母車、あれをどうやってバスに乗せますか。乗せられません。要するに、日本のバスは旧態依然として進歩がないんです。ノンステップバスだけですね。フルフラットにはなっていません。

 ところがヨーロッパは、その都市、需要、あるいは形態に応じてさまざまなバスがあります。それはロングボディーのバスもありますし、連節バス、二台分の連節あるいは一・五台分の連節。だけれども、乗降口は非常に広いんです。楽に双子用の乳母車が乗りおりできるような設計がなされています。

 そういう努力をしていかないと、やはりバスはもう一回つらい目に遭うと私は思っています。期待すると同時に、課題も物すごく多いと思っております。

 以上です。

柿澤委員 時間が終わりました。

 しかし、バス業界をもう一度再生、守り立てていくためには、国策的関与がやはり必要なのではないかな、こういうことを改めて感じさせていただきました。

 ありがとうございました。

伴野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十五分散会


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