衆議院

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第15号 平成25年5月29日(水曜日)

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平成二十五年五月二十九日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 金子 恭之君

   理事 大塚 高司君 理事 土井  亨君

   理事 西村 明宏君 理事 松本 文明君

   理事 望月 義夫君 理事 三日月大造君

   理事 井上 英孝君 理事 高木 陽介君

      赤澤 亮正君    秋本 真利君

      井林 辰憲君    岩田 和親君

      小田原 潔君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      後藤田正純君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      桜井  宏君    白須賀貴樹君

      田所 嘉徳君    武部  新君

      中村 裕之君    長坂 康正君

      原田 憲治君    平口  洋君

      ふくだ峰之君    前田 一男君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      務台 俊介君    若宮 健嗣君

      泉  健太君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    寺島 義幸君

      若井 康彦君    坂元 大輔君

      中丸  啓君    西岡  新君

      三宅  博君    佐藤 茂樹君

      樋口 尚也君    杉本かずみ君

      林  宙紀君    赤嶺 政賢君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   国土交通副大臣      梶山 弘志君

   外務大臣政務官      城内  実君

   国土交通大臣政務官    赤澤 亮正君

   国土交通大臣政務官    坂井  学君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  長田  太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       芝田 政之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 五嶋 賢二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相星 孝一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       岡村 善文君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  森  雅人君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    北村 隆志君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   鎌田 昭良君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  黒江 哲郎君

   国土交通委員会専門員   宮部  光君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     田所 嘉徳君

  大西 英男君     加藤 寛治君

  後藤田正純君     勝沼 栄明君

  林  幹雄君     武部  新君

  泉  健太君     後藤 祐一君

  大畠 章宏君     玉木雄一郎君

  上野ひろし君     中丸  啓君

  柿沢 未途君     林  宙紀君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     小田原 潔君

  勝沼 栄明君     後藤田正純君

  田所 嘉徳君     岩田 和親君

  武部  新君     林  幹雄君

  後藤 祐一君     泉  健太君

  玉木雄一郎君     大畠 章宏君

  中丸  啓君     上野ひろし君

  林  宙紀君     柿沢 未途君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     三ッ林裕巳君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林裕巳君     大西 英男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法案(内閣提出第四八号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

金子委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省海事局長森雅人君、海上保安庁長官北村隆志君、内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣官房内閣審議官長田太君、外務省大臣官房国際文化交流審議官芝田政之君、外務省大臣官房審議官五嶋賢二君、外務省大臣官房参事官山崎和之君、外務省大臣官房参事官相星孝一君、外務省中東アフリカ局アフリカ部長岡村善文君、防衛省大臣官房長鎌田昭良君及び防衛省運用企画局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金子委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村裕之君。

中村(裕)委員 自民党の中村裕之でございます。

 質疑の機会を与えていただいたことに心から感謝を申し上げます。

 また、太田大臣におかれましては、技術的知見はもちろんでありますけれども、しっかりとした理念を持って、国土づくり、そして交通の確保に取り組んでおられることに心から敬意を表し、太田大臣に質疑をさせていただくことを光栄に存ずる次第でございます。

 さて、日本国内で暮らしていますと、海賊といいましても、人気アニメですとか、売れ筋の小説ですとか、そうしたことしか頭に浮かばないわけでありますけれども、グローバルな視点に立つと、まさに目の前の危機であります。

 そこで、まず大臣の認識をお伺いしたいと思いますけれども、本法案で指定を予定しているハイリスクエリアは、国際海事機関において定義された海域、すなわち北インド洋とアラビア海海域とされておりますが、本海域の我が国における重要性をどのように認識されているのか、伺います。

太田国務大臣 海に囲まれて、かつ、主要な資源の大部分を輸入している我が国です。そういう意味では、この輸入ということについて、また資源ということについて、我が国の経済社会及び国民生活にとりまして、海上を航行する船舶の安全性というのは極めて重要でございます。

 この法律案で対象とする予定であります北部インド洋、アラビア海の海域につきましては、我が国が輸入する原油の約九割を輸送する船舶が通航する海域でございます。それゆえ大事なんですけれども、この海域におきまして、二〇一一年以降、ホルムズ海峡にも海賊が拡大をしました。ここは日本籍の原油タンカーが通航するルートでありまして、オイルタンカーの安全確保というものが極めて重要です。

 このため、この海域内を航行する原油タンカー等の海賊被害を防止することは、我が国の経済社会と国民生活にとりまして極めて重要であるという観点から、この法律案を出させていただき、また、この海域を定めさせていただいたというところでございます。

中村(裕)委員 我が国の経済と国民生活に重大な海域であるという認識を伺ったわけでありますけれども、かつて我が国は、石油資源がないために、それを得るために、危機感からさきの大戦に突入をいたしましたし、また、石油の補給を途絶えさせられたことが敗戦の大きな要因になったというふうに私は認識をしております。

 我が国は、もとより四%しかエネルギー自給力がない国でありますから、その中で、戦後、経済成長の時期を迎え、一家にテレビ、冷蔵庫が一台あるように、車もあるように国民生活も向上した中で、原油輸入量も大幅に増大をしていった。そういう中で、二度のオイルショックに見舞われた結果、原子力政策にかじを切らざるを得なかったんだろうというふうに私は認識をしております。

 その原子力も、二〇一一年三月十一日の福島第一発電所の事故によってほぼ全面的に停止をしている中で、二〇一二年の原油総輸入量は十三億バレルということでありまして、大臣から約九割というお話がありましたけれども、八三%が中東の依存でありまして、LNGにおいても、二九%のLNGが中東に依存しているという状況にあるわけであります。まさに、我が国経済や国民生活を支えていく海域であるということは、その認識のとおりというふうに思います。

 そこで伺いますけれども、海上輸送の安全確保にとって重大な脅威となる海賊事案について、二〇一二年で二百九十七件発生していると大臣は述べられております。そのうち、本法案が指定を予定している海域での海賊事案の発生はどの程度あるのか。また、その被害はどのような状況であるのか。お伺いいたします。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一二年の海賊等の事案は、ただいま大臣から御答弁ございましたように、二百九十七件、世界で生じているというふうに認識しております。うち、ソマリア沖・アデン海での海賊等の事案の発生件数は七十五件でございます。七十五件の内訳は、銃撃もなく未遂に終わった事案が三十九件、銃撃を受けたけれども船舶に乗り込まれなかった事案が二十件、海賊に乗り込まれた事案が二件、海賊に乗っ取られた事案が十四件でございます。

 また、本年につきましては、おととい五月二十七日現在の数字でございますけれども、ソマリア海賊によって拘束されている人質が七十一名いるというふうに認識しております。

中村(裕)委員 二百九十七件のうち七十五件と聞くと、意外に、もっと多いのかなというのが印象でしたけれども、ソマリア海賊というものの恐ろしさというのは人質をとるとかそういったところにあるんだというふうに思いますが、このソマリア海賊の実態をどのように把握していらっしゃるのか、お伺いいたします。

山崎政府参考人 ソマリア海賊の実態でございますけれども、母船から小型船をおろして商船を襲撃し、乗員を人質にとって身の代金を要求するという行動が一般的であるというふうに認識しております。その際、AK47と言われる小銃や、RPG―7と言われる対戦車砲で襲撃をする場合もございます。その結果、乗員が殺傷されたり、船舶自体が損傷するだけではなく、船舶から流れた油で環境被害が生じるということもございます。

 ソマリア海賊は、奪取した漁船や、ダウ船と呼ばれる中東で使われている木製の帆船でございますが、奪取したこれらの船を母船にしており、近年は、行動海域がアラビア海、インド洋西部全体に拡大しているということが指摘されております。

中村(裕)委員 ソマリア海賊は、武装している、小銃やバズーカ砲のようなもので船を襲う、そしてまた人質をとるということでありますから、船員の皆様の恐ろしさというのははかり知れないんだろう。そういう中で、日本の経済、国民生活が成り立っているということを改めて感じるわけであります。

 法案の内容の確認でありますけれども、本法案で規定する日本船舶とは、日本船籍の船舶という解釈でよろしいのか、確認をいたします。

 また、日本船舶を含む、日本に関連する船舶の海賊被害はこれまでどのような状況だったのか、お伺いしたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の日本船舶とは、委員御指摘のとおり、日本に船籍を置く船舶であります。

 ソマリア海賊による被害がふえ始めました二〇〇八年以降、いわゆる日本関係船舶、すなわち、日本籍船及び我が国船社が運航する外国籍船のソマリア海賊による被害は、全体で五十三件となっております。そのうち、日本籍船の被害は、原油タンカーに対する銃撃事案、これは二〇〇八年の四月に発生しておりますけれども、これ一件でございます。

 我が国経済安全保障の確立を図る観点から、安定的な海上輸送の中核を担う日本籍船の増加のために、国土交通省といたしましては、トン数標準税制の導入、拡充等の施策を推進しているところでありますけれども、日本籍船の航行の安全の確保は、そういった観点から、従来以上に重要な課題であるというふうに認識しております。

中村(裕)委員 五十三件ということでありますけれども、日本籍船の導入を推進しているという考え方の中で、これは日本籍船を守ることは重要だということが述べられました。私も同意見でございます。

 そこで、直接的被害だけではないんだろうというふうに私は感じています。海賊の多発によって、例えば日本船舶等の保険料が高くなるだとか、そういうような間接的な影響も少なくないのではというふうに危惧をしているところであります。

 そういった間接的な被害の影響の状況をどのように把握していらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

森政府参考人 委員御質問のありました保険の件でございますけれども、戦争とか海賊等による損害は、通常の海上保険では免責とされておりまして、これらのリスクをヘッジするための船舶戦争保険、これに海運会社が入ることによって、そういった損害をカバーしております。

 船舶戦争保険の保険料でございますけれども、ソマリア海賊が多発している海域では、通常の海域よりも大幅に割高になっているというふうに承知しております。

 海運会社にとってさらに深刻なのは、当該海域では、海賊によるリスクを回避するため、船のスピードを最大限に上げるとともに、例えばインド等、海上保安能力が比較的高い沿岸国の陸地に沿って、大回りするといいますか、迂回することによって、燃料油が相当余分にかかっております。日本船主協会の資料によりますと、日本関係船舶全船で年間約百四十億円の燃料費が余分にかかっているというふうに承知をしております。

 また、海賊の被害を低減するために海運会社がいろいろな自衛措置をとっておりますけれども、例えばシタデルと呼ばれます避難区域、あるいはレーザーワイヤと呼ばれます特殊な有刺鉄線等を備えております。このための費用としまして、日本船主協会の資料によりますと、年間約五十億円の負担がかかっておるというふうに承知をしております。

 なお、アメリカの民間調査団体でありますオーシャン・ビヨンド・パイラシー・プロジェクトというのが二〇〇八年以降、毎年発表しているレポートによりますと、全世界で海運業界が海賊対策に要している費用は約五十億ドルに達すると報告されております。

中村(裕)委員 燃料代や自衛のための費用で、日本国内だけでも百四十億円とか五十億円、二百億円を上回ることになるんだろうというふうに思います。

 こうした大変な間接的な影響も発生をしているところでありまして、海賊対策、二〇〇九年から海賊対処法が施行されて、自衛隊と海上保安庁が連携して取り組んできたと承知をしております。

 日本船舶がまさに海賊行為に直面しているような緊迫した状況において、自衛官、海上保安官はどこまでの武器使用をできるのかお伺いします。また、本法案で規定する民間警備員は、自衛官や海上保安官と同様の武器使用をすることが許されるのか、その点についてもお伺いしたいと思います。

黒江政府参考人 海賊対処法に基づきます自衛隊によります武器使用についてのお尋ねでございますが、この種の活動といいますのは、いわゆる警察活動でございますので、その武器使用につきましては、海賊対処法によりまして、警察官職務執行法第七条の規定が準用されてございます。

 したがいまして、自己もしくは他人に対する防護または公務執行に対する抵抗の抑止ということのために必要であると認められる場合に、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用するということが許されてございます。

 また、海賊行為、すなわち、海賊船舶が民間船等に接近しておる、そういう段階に未然に被害の発生を防止するということのために、接近をさせないための武器使用といったことが、先ほど申し上げました警職法の第七条を補完するものとして、追加的に、海賊対処法の第六条におきまして認められておる、そういう関係になってございます。

北村政府参考人 護衛艦に乗艦しております海上保安官の武器使用についてお答え申し上げます。

 武器使用の範囲、根拠につきましては、先ほど防衛省からのお答えにあった自衛官の場合と全く同様でございます。

 また、民間武装警備員がこの法律に基づきまして、海賊船の接近を防止するために例えば警告射撃を行うだとか、自己または乗船者の生命身体を防護するために海賊に対し武器を使用することができる、これは海上保安官などと同様でございます。

 しかしながら、民間の武装警備員は、海上保安官などとは異なりまして、犯人の逮捕ですとか逃走の防止などのために武器を使用する、こういうことはできません。それが違いでございます。

中村(裕)委員 逮捕等には武器が使用できないとしても、海賊事案の発生を未然に防ぐという意味では、民間警備員の活用も非常に効果があるんだろうというふうに受けとめさせていただきます。

 二〇〇九年から自衛隊と海上保安庁が連携して警備をしてきているというおかげで、日本船の実質の人質事案ですとかそういったことは起こっていないわけでありますけれども、この法案が早期に成立して、これからこうした民間警備員が乗船することによって、先ほどおっしゃっていた油代だとかそういった費用が低減されることを強く望むわけであります。

 現在、パナマを初め多くの国々が自国船舶の民間武装警備員の乗船を認め、当該海域で民間警備サービスを活用しているというふうには伺っております。その民間警備サービス、各国が利用している民間警備サービスとはどのようなものなのか、概要を伺いたいと思います。

森政府参考人 我が国商船隊も九五%が外国籍船でございまして、そういった我が国船社が運航する外国籍船も含めて、全世界的に、主に英国の警備会社による民間武装警備が現在活用されております。

 一般的に、これらの警備会社におきましては、四名程度の警備員がチームを構成しまして、例えば、紅海を通って日本に向かうルートであればサウジアラビア沖、それからホルムズ海峡を通るルートであればオマーン沖の公海で警備員が乗船をし、スリランカ沖の公海で下船をして、その間、小銃を所持して警備を行っているというふうに承知しております。

中村(裕)委員 スリランカ沖の公海で四名のチームが下船をするということでありますが、これが次の質問に大きくかかわるのでありますけれども、民間武装警備員は、小銃等の火器を所持し、日本船舶に乗り込んで警備をしますが、本会議での質疑の中で太田大臣は、武器が日本に持ち込まれることはないというふうに答弁をされております。

 小銃等の武器の積みおろしは具体的にどのような手順で行われるのか。また、日本寄港時に、その特定日本船舶内に小銃等が存在をしないということをどのように確認する考えなのか。お伺いします。

北村政府参考人 この法律案におきましては、小銃等の所持や使用は、先ほど来議論になっていますハイリスクエリア、いわゆる海賊の多発海域においてのみ認めることとしておりますが、この小銃等の積みおろしは、公海上となる海賊多発海域におきましては、専ら小銃なり民間武装警備員を輸送する交通船を使用して行われることになります。

 この場合、船長が立ち会いのもとでその積みおろしの状況を確認いたしますとともに、その結果を記録簿に記載するということとしております。

 さらに、小銃などによる警備が終了した船舶につきましては、最初にその船が我が国の港に入る際には、船内に小銃などが残っていないかどうかを海上保安官が必ず立ち入ってその状況を確認するということとしております。

 これらの措置により、小銃などが我が国に流入することはないというふうに考えております。

中村(裕)委員 よくわかりました。そうした心配は杞憂であるということであります。

 海賊が多発をするという根本原因は、ソマリアが事実上無政府状態であることから、海上保安活動が適切に行われていないものによるものと考えるわけであります。海賊事案を一掃するためには、周辺諸国も含めて、当該海域の海上保安活動が充実されるように、我が国として支援を拡充すべきと考えますが、その取り組みについて所見を伺います。

山崎政府参考人 ソマリア周辺国等の海上保安活動の充実を図るための支援についてでございますが、先生御指摘のとおり、ソマリアは昨年、二十一年ぶりに統一政府が樹立されておりますけれども、現時点におきまして、国内治安情勢は極めて不安定であり、ソマリア政府自身が海賊行為の摘発、防止、撲滅等の対策を十分に遂行できない状況にあると認識しております。

 そういう状況の中で、ソマリア自身への支援のみならず周辺国の海上保安能力の向上も重要であるというふうに認識しております。

 具体的に、我が国は、国際海事機関及び国際連合に設置されましたソマリア海賊対策に係る信託基金に、それぞれ千四百六十万ドルと三百五十万ドルの資金を拠出しております。この基金を通じて、周辺の関係国に海賊情報の共有センターや海賊対策のための訓練センターの設置を進めております。

 また、ソマリア周辺国の海上保安機関の関係者を日本に招待し、研修を実施しております。

 また、今後ともこれらの国々への効果的な海賊対策を支援したいと考えておりまして、本年からは、隣国のジブチにおいて沿岸警備隊の能力拡充のための技術協力を開始したところでございます。

 このような努力を今後とも継続していきたいと思います。

 また、この六月一日から横浜におきまして、第五回アフリカ開発会議、TICAD5が開催されます。その際、首脳級のソマリア特別会合を開催し、海賊問題の根本的解決のためにも、ソマリアの社会経済開発を通じたソマリアの民生の安定が不可欠との観点から、議論を日本がリードしたいというふうに考えております。

中村(裕)委員 充実をしてきているということでありますし、六月一日の横浜で開催されるTICAD5でも、このソマリア対策についてきちんと会合を持って日本からも強く発信をしていくということでありますので、そうした取り組みに期待をしたいというふうに思います。

 次に、日本船舶の所有者は、特定警備の実施計画を定めて、その都度、あらかじめ国土交通大臣に届け出をすることと法案ではされているわけであります。

 船舶所有者と民間警備会社との契約が続行していても、航海の都度届け出が必要だという条項には若干違和感を私は感じるわけでありますが、その点についてどのようにお考えか、所見を伺います。

森政府参考人 特定警備実施計画につきましては、例えば、どの警備員を具体的に乗せるのか、小銃、実包の数量、あるいは、どの船にどの期間乗せるのか、こういったことを航海の都度、事前に届け出を行っていただくことにしております。

 その目的でございますけれども、実際に日本船舶に乗船する警備員が、あらかじめ国土交通大臣による知識、技能等の確認を受けた者であることを確認する理由、それから、国として、この法律は銃刀法の特例を設けるものでございますので、日本籍船内に持ち込まれる小銃、実包の数量を把握するほか、緊急時に対応するために、船名や実施期間等を把握しておく必要がございますので、そういった観点から、事前に届け出を行っていただくこととしております。

 なお、船舶所有者の負担とならないように、届け出の方法については十分検討をしてまいりたいと考えております。

中村(裕)委員 その都度の、航海ごとの事前の届け出が必要だという事情はよくわかりました。

 あとは、届け出の手法ですけれども、あくまでも書面審査となるわけでありましょうから、メール等で簡易な届け出がしっかりとできるような対応をしていただくことをお願い申し上げる次第でございます。

 るるいろいろと質疑をしてまいりましたけれども、先ほど、太田大臣の方から、本海域の我が国にとっての重要性の認識が示されました。私も、本法案は、我が国経済や国民生活の安定的な発展に欠かすことのできない法案であって、むしろ、もっと早くにこうした法案を成立させておくべきだったなというふうに考えるわけでありますけれども、質問の最後に、太田大臣に本法案にかける決意をお伺いしたいというふうに思います。

太田国務大臣 この海域が非常に危ないということで、先ほど、中村先生の御質問の中でも指摘がありましたように、通常ルートより百四十マイルも余分に迂回をしている、百四十億円にも上る燃料費がかかっている、あるいは、特殊な有刺鉄線等をやることによって年間約五十億円の負担がかかっている、相当苦労してやっているという状況にございます。

 二〇〇九年に海賊対処法ができまして、世界は協力して護衛活動を展開する。ふえているんですが、それをやることによって相当おさまってきている。そして、民間の武装ガードというのを世界は入れてきている。それによってこれが抑止されているということは明確である。そして、海賊の海域が広がってきている。そこで、日本の一番大事なホルムズ海峡のところが非常に危ないということになってきている。

 こういうことからいきますと、まさに、日本の資源、そして原油等を輸入するという一番大事な海域でありますから、そこで何とか安全ということで航行できるようにという措置を国を挙げてやることが大事なことだというふうに私は思っておりますし、また、国が前面に出てやるというだけではなくて、民間の武装ガードがあればという強い要求があるということからいきまして、国としてこれを支援するということが必要不可欠であるというふうに思っているところでございます。

 海賊行為の危険を排除して、これらの船舶の安全と資源の輸入ということの確保を図ることは喫緊の課題であると私は思っておりまして、本法律案の早期成立について改めてお願いをしたいと思うところでございます。

中村(裕)委員 ありがとうございます。

 太田大臣から、本法案の重要性、また国として喫緊の課題解決のための本当に重要な法案であるということが今示されたわけであります。私も、まさに大臣がおっしゃるとおりだというふうに思います。

 我が国の輸入原油の八三%を依存する海域が危険にさらされているということは、本当に国民にとって安心して生活のできない状況になるわけでありますし、これから日本籍船をふやしていこう、そういう政策にある中で、こういった危険な状況であれば、船がふえない、また船員も日本人船員がふえない、そんな状況になるんだろうというふうに思います。

 本法案を早期に成立していただいて、モンスーンが去った後の航海時期にしっかりと適用できるように、執行できるように、皆さんの協力をお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 まことにありがとうございます。

金子委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、国土交通委員会でこの特別措置法案に対する質疑の時間をいただきまして、感謝を申し上げる次第でございます。

 日本は、四方を海に囲まれた海洋国家でございまして、輸出入物資の九九・七%が海上輸送を通じて入ってくるわけでございます。また、出ていくわけでございます。特に、資源エネルギーの九割以上、さらには食料の六割を海外からの輸入に頼っているということから考えましても、船舶の航行の安全確保というのは我が国の経済並びに国民生活にとって極めて重要な課題でございます。

 特に、この法案でも対象となっております、中でも日本から約一万二千キロメートル離れたアデン湾というのは、スエズ運河を経由してアジアとヨーロッパを結ぶ極めて重要な海上交通路となっているわけでございます。このことから、この海域における船舶の安全確保は我が国における喫緊の重要課題の一つでございます。

 新しい委員の方も、また役所の方も新しくなられたので、あえて御報告しておきますと、四年前にこの海域に海賊対処行動を日本として行うことになりました。そのときに、与党PTというのがまずつくられまして、私、佐藤茂樹が公明党の責任者、自民党の責任者が中谷元先生で、与党でまず案を取りまとめたわけでございます。

 今、自衛隊また海上保安官がその活動に取り組んでいただいておりますけれども、最初、八十二条で海上警備行動で自衛隊を出し、そして海賊対処法をつくり、今、もう四年になりますけれども、活動していただいているわけでございます。

 当時、海上保安庁長官また海事局長初め国交省の幹部の皆さんに議論に熱心に加わっていただいたことに対して、改めてお礼を申し上げたいと思います。十省庁ぐらいの局長クラスの皆さんに連日集まっていただいて、とにかく緊急を要するということで、私と中谷先生のもとで取りまとめをさせていただいたところでございます。

 当時、麻生政権の最後でございましたけれども、国会に提出して成立をしたわけですが、当時は自民党、公明党だけが賛成をして、当時の野党の民主党さんは残念ながら反対されたんです。しかし、今回は、政権も経験されたので、ぜひ、この特別措置法案については、野党の皆さんの御理解も得て早急に成立を図っていかなければならない法案である、そのように最初に申し上げておきたいと思います。

 それで、四年たって、その後、さまざまに事態も変化してきております。きょうは、そういうことも確認をしながら御質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、ソマリア海賊事案の発生件数でございます。

 きょうは外務省に来ていただいておりますので、確認の意味でお聞きしたいんですが、二〇〇八年ごろから急激に増加して、この海域では、二〇〇七年の四十四件から、二〇〇八年に百十一件に海賊事案がふえました。二〇〇九年には二百十八件となり、二〇一〇年には二百十九件、二〇一一年には二百三十七件と増加をしたわけでございます。しかし、二〇一二年、昨年は七十五件まで減少いたしました。そして、ことしも第一・四半期では五件と減少してきているわけでございます。

 このソマリア沖の海賊事案の発生件数が、一昨年まで急激にふえながら、昨年そしてことしと急激に減少している理由を政府はどのように考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾における海賊事案の件数の減少でございますが、先生御指摘のとおり、二〇一二年は一年間で七十五件ということで、前年の二〇一一年の約三分の一に減少しております。また、御指摘ございましたように、本年につきましては、五月二十七日現在で、同地域の海域の海賊事案等の発生件数は七件というふうに承知しております。

 減少をいたしております理由としましては、三つ考えられるというふうに認識しております。

 第一に、商船側における海賊被害防止等のためのマニュアル、ベストマネジメントプラクティスと呼ばれておりますが、こういうマニュアルが作成されております。このマニュアルを用いて自衛措置等が各商船において実施されているというのが減少の第一の理由ではないかと考えております。

 第二の理由といたしましては、危険海域における商船への武装警備員の乗船があるというふうに認識しております。

 第三の要因といたしまして、我が国の海上自衛隊を含む諸外国の海軍による海賊対処の現地における活動が挙げられるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 今、大きく三つの理由を挙げていただきました。特に、二つは日本の船舶でも今対応しているんですね。一つは、BMP、ベストマネジメントプラクティスに基づく自衛措置の実施、三つ目におっしゃいました自衛隊を含む各国海軍による海賊対処活動、こういうことは行われているんですが、二つ目の危険海域における商船への武装警備員の乗船、これができていないんですね。

 それで、早速次の質問に入らせていただきたいと思うんですが、今回の法案の第一条の「趣旨」のところにも、「日本船舶の航行に危険が生じていることに鑑み、」そういうように書いてあります。全体としては発生件数が減ってきているんだけれども、事日本船舶に限っては極めて危険な状況にあるんだ、そういうことをこの趣旨としては言っているわけでございます。

 それはなぜかというと、要するに、二〇一〇年以降、ソマリア海賊の発生海域については、オマーン沖、アラビア海にまで拡大して、二〇一一年以降、主要海運各国の船舶においては民間武装警備員の乗船が増加してきております。それがさっき言いました二つ目の理由で、この発生件数の減少に貢献してきているということなんですが、しかしながら、一方、主要海運国でいまだに民間武装員の乗船を認める制度がない、そういう国が結局日本とギリシャだけになってしまった、そういう状況なんですね。

 私も、四年前から取り組んでいるときに、やはりソマリア海賊というのは極めて、毎日毎日情報を得て知恵を働かせている、これは現地にも何回か行って物すごく勉強になりました。ですから、ソマリア海賊というのは情報もとっていて、どの船舶が狙いやすいのか、また、どの海域が狙いやすいのかということを考えております。

 今、日本とギリシャだけが民間武装警備員を乗せていないということは、もうほぼ、相手方、ソマリア沖の海賊の連中には入っていると思うんですね。ですから、丸腰の状態の日本船舶が海賊行為の標的となる、そういう危険性が相対的に高まっているわけでございまして、日本籍船が狙い撃ちにされるリスクというのが毎日毎日あるということでございます。

 ですから、私は、海上輸送の中核をなす、特に日本船籍の船というのが海賊の狙い撃ちに遭うことのないように、この法律を早期に成立させることが、まず、船に乗っておられる船員の皆さんの人命と国益を守ることになる、そのように考えますが、国土交通大臣の認識と、早期成立への決意を伺いたいと思います。

太田国務大臣 二〇〇九年のときに、海賊対処法、佐藤先生には本当に主導的な役割を果たしていただきまして、私も国会に議席を置いておりましたものですから、大変感謝を申し上げたいと思います。

 その後、当時は本当に一番急にはね上がった件数のときでありましたが、これが今何とか減り始めるというところまでやっと来たという中で、まさに狙い撃ちという表現をされましたけれども、三つの柱を、ベストマネジメントプラクティスと、そして、日本でいえば自衛官のような安全保障ということと、今世界がやって日本がやっていないから狙い撃ち、ギリシャと日本だけということで、民間武装ガードがあれば、ないとしたら本当に狙い撃ちに遭いかねない、そういう意味では、これを世界の全部の国がしっかりできるというようにしていくことが一番大事だというふうに思いますので、何としてもこの法律を成立させて、非常に大事な輸入の経路でありますので、それが安心して仕事ができるようにしたいということを強く願っているところでございます。

佐藤(茂)委員 今、大臣からもおっしゃっていただきましたが、これはもうスピード感を持って成立させることが何よりも大事なんです。国交省の中での各局の力関係もあったんでしょうけれども、この法律が主要な法律の最後に回されるということ自体、私は、余り世界が見えておられないな、そういう懸念を持つわけでございます。

 というのは、私が二〇〇九年に取り組んだときに、日本船主協会という会社の皆さんも、何としても一刻も早く、これは船と国益と、そして乗組員の命がかかっているから、そういうことで私のところに直接要望に来られました。

 全日本海員組合という船員の組合の皆さんがもっと必死でございまして、毎日毎日、我々の仲間の命が危険にさらされているんだ、何としても立法府として動いてもらいたい、国として動いてもらいたい、そういう切実な要望をその当時寄せられて、私を突き動かしたわけでございまして、そういう切迫感をやはり立法府も持つべきだ、そのように私は考えるわけでございます。

 それに関連して、もう終わったことでございますが、あえて確認をさせていただきたいのは、なぜこの法案提出にここまで時間がかかったのかということでございます。

 各国が二〇一一年以降、つまり約二年前から民間武装警備員の乗船を認めてきたわけでございます。我が国の日本船主協会からも、二〇一一年の、私の知る限り八月二十三日に一回目の要望を時の民主党政権に出され、その後数回にわたって、この武装ガードの乗船に関する要望というものを出されております。

 また、日本経済団体連合会からも提言が出されたにもかかわらず、なぜそのとき、その時点でスピード感を持って法整備がされずに、二年近くもたって、政権交代後のこの通常国会に法案提出となってしまったのか。結果として、主要国の中で、日本とギリシャのみが各国の中で後塵を拝してしまうことになってしまう、そういう結果を招いたわけでございます。

 その理由について伺いたい。それは、ただ感情的な話じゃなくて、何が議論や調整のネック、ハードル、障害になってこれほどの時間を要することになったのかも、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

森政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、二〇一一年の八月に日本船主協会からの要望をいただきました。要望の柱は三つございまして、一つは護衛艦または補給艦の追加派遣、二つ目が日本籍船への公的な武装ガード、これが不可能な場合には民間武装ガードの乗船、三つ目の柱としてソマリアの安定に向けた支援等国際的な取り組みの強化、この三本柱で要望をいただきました。

 この要望を受けまして、内閣官房の総合海洋政策本部が中心になりまして、関係省庁、警察、法務、外務、国土交通、海上保安庁、防衛省、関係局が全て集まりまして、公的警備と民間武装警備員の活用の両面について慎重に検討を進めてまいりました。

 民間武装警備員については、御存じのとおり、我が国では銃刀法に基づいて大変厳しい銃規制が行われているということを勘案しまして、主要海運国あるいは国際機関の動向を見きわめて検討してまいりましたけれども、二〇一一年の下期以降、主要海運国で民間武装警備員の乗船を認める国が増加をいたしまして、その効果として顕著に海賊被害の件数が減少いたしました。

 国際海事機関がございますけれども、国際海事機関は、これまで民間武装警備員の導入に関しては慎重な姿勢をとっておったんですけれども、こういった動向を踏まえまして、二〇一二年の五月に、民間武装警備会社に関する暫定ガイダンスと言われます国際的なガイダンスとなるものを定めました。

 こういった状況を踏まえて、我が国としては直ちに民間警備員の活用により対応することを決定して、今国会において法案を提出した次第でございます。

佐藤(茂)委員 結局、もう終わった政権のことだからあえて言いませんが、政治家が絡んでいないというのがやはり一番のポイントだったと思うんですね。この程度の法律は、この程度と言ったら怒られるかもわかりませんが、このぐらいの条文の内容だったら、一カ月もあれば、私の携わった経験からいうと、ぱっと取りまとめられる、その程度のものだと思うんです。

 ですから、本当に、いろいろ議論されたのかもわかりませんが、やはりそこは反省していただきたいなと常に思うんですね。それは、申しわけないけれども、最初に海賊対策をやるかどうかのところの議論についても、我々は一カ月で議論を出しましたよ。そういうことからいうと、私は、猛反省していただきたいな、そのように思います。

 その上で、最初の日本船主協会からの要望では公的武装がどうなっていたかというと、二〇一一年八月の要望では、日本籍船への公的武装ガードの乗船、これは自衛隊員とか海上保安官等でございますが、これが不可能な場合は、民間武装ガードの乗船を可能とする措置ということが明記されていたわけでございます。

 何ゆえ、我が国としては、イタリアやオランダやフランス等の国のような公的武装ガードではなくて、民間武装ガード、すなわち民間武装警備員を乗船させることにしたのか、その理由を御答弁いただきたいと思います。

長田政府参考人 今先生御指摘のとおり、二十三年八月に最初の船主協会あるいは経団連等からの要望の中には、公的武装ガードの乗船も含めて要望をいただいたところでございます。これを受けまして、海事局長からの答弁にございましたが、政府の中でさまざまな検討をしたわけでございます。

 民間の船に海上保安官や自衛官を乗せるということについては、先生御指摘のように、そういう制度をとっている国もございますが、日本の場合は、主にアデン湾につきまして部隊で展開をしているわけでございまして、特に私的な商業活動を行う個々の民間船舶の乗船警備、これは基本的に民間で行うべきことだろう。

 一方で、アデン湾の警備でありますとか尖閣等々で、海上保安庁あるいは海上自衛隊の要員、武装が厳しいという状況の中では、個々の船に全てそういう保安官とか自衛官を乗せるということは勢力面では厳しいだろう、そういう検討もありまして、そういう中で、先ほどこれも海事局長から答弁ございましたように、IMOにおきましても民間の武装警備員の乗船のためのガイドラインができてきた。

 こういう全体の情勢を踏まえまして、今回、民間の武装警備員の乗船を早期に実現するための法制化を進めるということにしたわけでございます。

佐藤(茂)委員 それで、法案の内容に入っていきたいと思うんですが、特定日本船舶の定義について、まず、法律をつくるときなので、確認の意味でお聞きをしたいと思うんです。

 第二条に定義がされております。「原油その他の国民生活に不可欠であり、かつ、輸入に依存する物資として政令で定めるものの輸送の用に供する日本船舶であって、当該船舶の速力、船舷の高さその他の当該船舶に関する事項が海賊行為の対象となるおそれが大きいものとして国土交通省令で定める要件に適合し、かつ、」ちょっと飛ばしますが、「その他の国土交通省令で定める海賊行為による被害を低減するために必要な措置を講じているものをいう。」というように定義しているわけでございます。

 時間が大分迫ってきているのでまとめてお聞きをしたいと思うんですが、この「原油その他の国民生活に不可欠であり、かつ、輸入に依存する物資として政令で定めるものの輸送の用に供する日本船舶」という、この日本船舶の運べるものというのは、原油、それ以外の政令で定めるどういう物資を輸送する船舶なのかということが一つ。船舶の速力、船舷の高さ、これをどのように考えておられるのかということが二つ目。あえて「海賊行為による被害を低減するために必要な措置」と入れられた理由というのはどういうことなのかということが三つ目。そういうことから、最終的にこの特定日本船舶というのは具体的にどのような日本船舶のことを対象として、現時点で隻数というのは何隻ぐらいであると見込んでおられるのか、あわせて海事局長に御答弁いただきたいと思います。

森政府参考人 本法案の第二条に定めます特定日本船舶の定義に関する御質問でございますけれども、本法案は銃刀法の特例として定める法律でございますので、必要最小限のものにとどめるということを基本的な考えにしております。

 海賊の発生状況でありますとか日本籍の船舶の航行状況を踏まえて、政令等で指定をしていきたいと考えておりますけれども、現状においては、具体的には、政令で定める物資としては原油を予定しております。

 原油を運びますタンカーというのは非常に速力が遅く、それから甲板等から海面までの高さが低いものでございますから、海賊の餌食になりやすいということでございます。

 省令で定める設備の基準でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、この銃刀法の特例というのは、いわば最終手段、これは先ほど申し上げましたIMOの暫定ガイドラインでも、ほかの使えるすべを全て使った上で民間武装警備員を乗せなさい、こういうガイドラインがございますけれども、そういった考え方に基づきまして、海賊行為による被害を低減するために、先ほどお話がありましたBMP、これに沿った措置がなされているかどうかということで、具体的には、乗組員等が避難をするためのシタデルと言われる区画を設けていること、それから、乗り込み防止のためのレーザーワイヤと呼ばれます特殊な有刺鉄線を有していること、こういったことを設備の基準として掲げていきたいというふうに考えております。

 これらの結果、具体的には、我が国の船会社が中東地域との間で運航している大型原油タンカーを本法案の対象としたいというふうに考えております。日本籍の原油タンカーについては、二〇一二年時点で十七隻存在しております。

佐藤(茂)委員 ですから、結局、今のところ、現時点では十七隻を今回の特別措置法で具体的には対象にする、そういう形になるという答弁でございました。

 法案の中身について、次に、第十一条、第十二条関係をちょっと確認しておきたいと思うんですが、第十二条には「確認特定警備従事者は、特定警備実施要領に従って特定警備を行わなければならない。」というようにしておりますし、第十一条の三項では「認定船舶所有者は、確認特定警備従事者が、特定警備実施要領に従って特定警備を行うことを確保するために必要な措置を講じなければならない。」そのように規定をしております。

 そこで、まず一番目に、この十二条で確認特定警備従事者が、この対象者として現実に想定されるのは、私は、外国の会社も多いし、外国の警備員が結構多くなると思うんですが、そういう方々に、この法律や特定警備実施要領を理解し、それに従って特定警備をすることをどのように担保していくのか、これが一つ大事になってくると思うんです。

 そして二番目に、十一条三項で言われている認定船舶所有者が確認特定警備従事者に「特定警備実施要領に従って特定警備を行うことを確保するために必要な措置を講じなければならない。」となっているんですが、具体的にどのような措置を講じるべきだと考えておられるのか、政府の考え方を確認しておきたいと思います。

森政府参考人 現在、日本船社は、英国の警備会社を用いて、外国籍船で民間武装警備員、武装ガードを実施しておりますので、当然、この法案の中でも、外国の警備会社に対してきちっと実施要領の理解をしていただくということが非常に重要だというふうに考えております。

 この法案の中では、実施要領に定められた小銃の使用等について、特定警備計画を船舶所有者に立てていただきまして、それをきちっと守っていただく。この法律の中では、警備会社は教育訓練プログラムをきちっと持つことを要求しておりますので、それを通じて、小銃の使用等について、実施要領の中身についてきちっと理解をしていただく。それだけではなくて、それぞれの警備従事者について実施要領の理解がきちっとなされているかどうかということを国土交通大臣が直接確認させていただくという形で、特定警備実施要領がきちっと守られることを担保していきたいというふうに考えております。

 なお、三項の措置として定めております具体的にどういう措置をとるのかということでございますけれども、船舶所有者の特定警備従事者に対する措置として、実施要領を特定警備事業者を通じてきちっと十分周知していただくということを想定しております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、ここの徹底をうまくやっていただきたいと思うんですね。

 特に、きょうは時間もないので触れませんが、第十五条には、項目としては小銃等の所持の態様についてということになっていますが、八項にわたって、武器使用のあり方が条文としてあります。

 しかし、武器使用基準というのは実は各国で微妙に違うわけでありまして、そこをやはり日本船舶に従事するからには、日本国内の法令にしっかり従っていただくことをいかに外国の会社であり、また外国の警備員であろうとも徹底するかということがポイントになってこようかと思いますので、ぜひ運用面で、国交省として、そこには気を配っていただきたいと思うわけであります。

 先ほどの中村委員も御質問されましたけれども、ソマリア沖海賊の問題の根本的解決に向けた我が国の取り組みについて、外務省からお聞きをしたいと思います。

 根本的解決に向けては、私は、少なくとも二つのことはやらなければいけないだろう。一つは、ソマリア国内の情勢の安定化に向けた支援、二つ目には、沿岸国の海上保安能力の向上への支援でございます。

 昨年後半に、ソマリアにおいて、二十一年ぶりに統一政府が樹立をされました。この新政府を支えるべく、国際社会も支援を強化する方向でございます。

 しかし、私の記憶が正しければ、新政府が樹立されるまでの、昨年八月までの暫定連邦政府、TFGと略称は言っておりましたけれども、その時代には、日本政府はソマリアの暫定連邦政府を正式政府として承認されていなかった、そんなふうに私は認識しております。

 昨年樹立された統一政府を正式に政府として承認されたのか、されるのかも含めて、今言いました一つ目のソマリア国内の情勢の安定化への支援、二つ目の沿岸国の海上保安能力の向上の支援について、我が国のこれまでの取り組みとこれからの取り組みについて、外務省の見解を伺いたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、昨年、二十一年ぶりに樹立されましたソマリアの新政権につきましては、昨年十一月に日本政府として政府承認をしております。

 先生御指摘のソマリアの海賊問題に関する我が国の取り組みでございますが、大きく分けまして、ソマリア自体の情勢の安定化、それからソマリアの周辺国の海上保安能力の強化に取り組んでおります。

 ソマリア情勢の安定化につきましては、我が国は、二〇〇七年以降、治安強化、人道支援、インフラ整備の分野で総額二億九千三百九十万米ドルの支援を行っております。

 また、ソマリアの周辺国の海上保安能力強化につきましては、国際海事機関及び国連に設置されました信託基金に資金を拠出し、また、ソマリア周辺国の海上保安機関関係者を日本に呼び、研修等を行っております。

 今後も、ソマリアの安定化のために、現地の治安状況やニーズを踏まえ、ソマリアの社会経済開発を通じた民生の安定、ソマリア情勢の安定化に向けて最大限の努力をしてまいる所存でございます。

 同時に、海上保安能力の強化につきましても、周辺国への効果的な海賊対策を支援する方針で、本年からジブチにおいて沿岸警備隊の能力拡充のための技術協力を開始しておりますが、今後とも努力を続けていきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 最後になりましたけれども、二〇〇九年以来、どうしても自衛隊だけが目立つんですが、海上保安官も、自衛隊の護衛艦に計八名それぞれ分乗して、司法警察行動に備えて任務についていただいているわけでございます。

 ぜひ、国会が終わったどこかのいいタイミングで、太田国土交通大臣にもジブチまでタイミングよく行っていただいて、過酷な環境の中で任務についている海上保安官の激励をしていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金子委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 この法案は、大変重要な法案だというふうに我が党も当然認識をしておりますし、賛成をする方向で今審議をさせていただいておりますが、先ほどの質疑は多少残念な当てつけがございまして、残念だなという気持ちであります。

 とはいえ、佐藤委員の質問に続けて、少し大臣にまず最初に答弁をいただきたいのは、せっかくあそこまで御質問されましたから、ジブチには行かれるお考えはございますか。

太田国務大臣 海上保安官については、この間、八名が帰ってきまして状況も聞きましたし、本当に苦労してやっているということについては重々よくわかっておりまして、激励をしなくてはならないというふうに思っています。

 ただ、行くかどうかということについては今後のことで、きょう断言するという状況にはないと思いますが、激励は、本当に大変苦労しているということについて私は承知しているつもりでございます。

泉委員 後ろにおられる副大臣、政務官も含めて、ぜひ現地に行かれたいという方もおられるように見受けられますので、ぜひ頑張っていただきたいなというふうに思います。

 先ほどの質疑で少し気になりましたのが、私も実は同じ質問をさせていただこうと思ったんですね。なぜ法案の提案に時間がかかったのか、法整備に時間を要したのかというようなこともお伺いしたかったと思っていたんです。

 私が事前に質問のレクの中でお話しいただいている中では、やはり先ほど御答弁にもありましたけれども、特に銃については我が国は非常に厳格であるというような前提の中でこの法案については議論をされてきた、各省が一生懸命議論してきたということでありますし、きょうお越しいただいている海事局長も、まさに海事新聞の中ではお答えになられているわけですね。法制局のハードルを乗り越えるのが非常に大変だということをお答えになられている。

 私も、短いながら政権を担当させていただいたときに、やはり内閣法制局を乗り越えるというのは本当に大変なことでありまして、それを一カ月そこらで、政治の力だということだけで、果たして銃の問題を、またこれを乗り越えるべきなのかといえば、それは平和を訴える党であるならば、あるいは、国内犯罪はなくすべきだということであれば、そこはやはり慎重に、法制局で真摯な議論がされてきたのであろうというふうに思います。ですから、これは別に政権がおくらせたわけでも何でもない法案であるというふうには、きっと大臣も認識されているのではないのかなというふうに思います。

 そこの認識だけは改めて共通にしながら、あとは、民間ガードというのが、先ほどもお話にありましたように、各国が取り入れてから、比較的、予想以上に効果を上げたというふうに言ってもよいかもしれません。そういう急展開の中で、他国が先駆けて我が国よりも法整備をした。結果的に我が国は、私も遅いと思っておりますが、時間はかかったということではないかと思います。

 改めてですが、検討開始がいつからで、そして、ここまで時間がかかった理由について、改めて御答弁をいただきたいというふうに思います。

森政府参考人 先ほどの繰り返しになりますけれども、本格的な検討を始めたのは、二〇一一年八月の、日本船主協会からの要望を受けた後でございます。この時点では、先ほどの海洋政策本部からの御答弁にもありましたように、公的警備と民間武装警備員の両面で検討してまいりました。

 今、委員が御指摘になられましたように、銃規制の厳しい我が国が民間武装警備員の活用に踏み切るためには、やはり主要海運国の動向というのは非常に重要だというふうに考えておりまして、その動向をずっと見きわめておりましたけれども、二〇一一年の下期以降、ノルウェー、英国等のいわゆる欧州の先進海運国がまず口火を切りまして、その効果として海賊被害が非常に減少しました。

 当初は、民間武装警備員の導入がかえって海賊の過激化を招くのではないか、こういう懸念もあったんですが、実際に導入してみますと、武装警備員が乗っているというだけで海賊は逃げていってしまうということで、非常に顕著な効果があったわけでございます。

 そういったことを見きわめて、二〇一二年五月、従来慎重であった国際海事機関においても、民間武装警備員の活用に踏み切ろうということで、五月にハイレベルの会合というのが開催されました。その当時の吉田国交副大臣にも出席をしていただきまして、その議論の結果として、先ほど申し上げました民間武装警備会社に関する暫定ガイダンスというのが合意されたわけであります。

 この暫定ガイダンスが合意されたことが契機になりまして、その後、シンガポール、ドイツ、イタリア、ベルギー、スウェーデンといったいわゆる先進海運国が、私どもと同じように法案を準備いたしまして、議会で法案が通過をいたしまして、最近もドイツ、ベルギー、スウェーデンといったような国が、我々よりも先に法案を通してしまいました。結果としてギリシャと日本が残された形になってしまいましたけれども、私どもとしては、そういった国際動向も踏まえて迅速に法案化に踏み切ったというふうに考えております。

泉委員 きょう、これは傍聴をされている多くの関係団体の方々もありますので、そこは共通の認識として、ぜひ押さえていただきたいというふうに思います。

 一方で、船主協会の皆さんが、まさに二〇一一年十月十七日に要望を出された際には、公的武装ガードの乗船ということについて、やはり希望は持たれているということはあると思います。これをなぜ採用しなかったのかという御質問をさせていただきたいと思うんですね。

 この船主協会からは、特に各国も公的武装ガードの乗船を容認する方向に方針を転換していますということが書かれております。

 そういった意味で、これはちょっと通告にはありませんが、資料の中で、現時点で公的ガードを容認しているというか、採用されている国がわかるようであれば教えていただきたいと思いますし、我が国はなぜこれを採用しなかったのかということの御説明をいただければと思います。

長田政府参考人 今、先生の御質問にございましたように、確かに、当初、船主協会等からは、公的武装警備員の乗船ということもございました。

 主要国の中で、自国籍船に公的武装警備を導入している国としては、例えばフランス、オランダ、イタリアという国がございます。ただ、多くの国は公的武装ガードではなくて、民間の武装警備員を乗船させているということでございます。

 そういう中で、やはり我が国の特徴として、海上保安官なり自衛官が個々の民間の船に乗ってその船を警備するというのは、日本のそういう部隊の活動にもありませんし、基本的には民間のやるべきことであろうということと、数多くの船に、全部の船に海上保安官なり自衛官を乗せるということになりますと、相当の要員あるいは装備というものも必要になってまいります。

 一方で、海事局長からも答弁していただいておりますように、IMOのガイドラインもできまして、多くの主要国では、むしろ民間武装警備員乗船というふうな流れになってまいりましたので、私どもとしてはそういうふうにさせていただいたということでございます。

泉委員 ありがとうございます。

 これは、今後の海賊の動静もあるかもしれませんし、まさに国際的な流れもあるかもしれません。しかし、その可能性ということについては、引き続きいろいろと検討はしていかなければいけないのではないのかなと思います。

 まさに、民間ガードを採用するに当たってもこれだけ時間がかかったということであれば、当然ながら、公的警備を検討することそのものも、恐らく時間を要する論点もいろいろあると思います。そういったことは、現時点で採用云々ということではないかもしれませんが、しかし、一方では、それを容認する国々が出てきているという事実もありますので、ぜひ、そういった局面から初めて検討を始めるということではなしに、あらかじめでき得る限りの検討はしていただきたいというふうに思います。

 さて、続いてですけれども、先ほども質問がございました海賊の発生状況、これを見ますと、我々も分布図を見させていただいておりますけれども、特に二〇一二年にソマリア沖・アデン湾は激減をしている。これは、先ほどおっしゃられたように、三つの理由があるということでありました。もちろん、自衛隊を初め各国艦船が活動することによって、随分と治安が回復したということが言えると思います。そして、民間ガードというお話もありました。

 そういうことで、要因は説明はいただいたわけですけれども、一つ気になりましたのが、ちょうど紅海側、ですからアデン湾よりももっとスエズ運河側、こちらの方の発生件数は、二〇一二年の分布図を見ると、それなりに集中しているようにも見えます。そういった意味では、東の方に護衛艦の随行エリアというのが二百キロメートル延長されるというような措置はとられているようですけれども、この発生分布を見ると、アデン湾のみならず、エリトリアの沖ですとかジブチ沖あたり、この辺もかなり発生があるというふうに見てとれます。

 そういった意味で、紅海側への警備エリアの延長というものが考え得るのかどうか、これについて御答弁いただきたいというふうに思います。

黒江政府参考人 自衛隊によります警備エリアの関係の御質問でございますけれども、現在、自衛隊といたしましては、アデン湾が極めて重要な海上交通路であるということ、それから海賊による脅威が非常に高いということ、さらには海運業界からの御要望、部隊運用の現実性といったようなことを考えまして、アデン湾にあります国際推奨航路、それと、非モンスーン期、モンスーンでない時期におきましては、今御指摘ございましたけれども、その東側に約二百キロ延長して船舶護衛を行っておるところでございます。

 他方、アデン湾の西の方、紅海の方面でございますが、紅海の入り口のバブ・エル・マンデブ海峡のあたりというのは非常に領海が近接しておるということがございまして、自衛隊が活動するに当たって非常に活動が困難な地理的な条件があるということを踏まえまして、活動海域をそちらの方に拡大するということは現在考えておりません。

泉委員 これも、もちろん現場からの希望というものが一番だと思いますが、激減したとはいえ、発生件数がいまだ多いという状況が続いているということでありますので、いろいろと、公海か否か、領海か公海かということの関係もあろうと思いますけれども、ぜひ、なるべく広範な地域において、こういった警備が行われるということが今やはり求められているのではないかというふうに思います。

 そういった中で、これもちょっと質問の中には予定はしていなかったんですが、これも答えられる範囲で結構ですが、船主協会の皆さんからは、もう一つ重要な指摘というか要望として、派遣規模の拡大というのがあるわけです。

 ずっと水上部隊そして航空部隊の派遣を見ておりますと、基本的には船でいえば二艦という形でありますけれども、この派遣規模の拡大ということは現在考えられているのかどうか。これは、海上保安庁の方もそういったことをもしかしたら考えられているのかどうかということも含めて、自衛隊と海上保安庁、両方お答えいただければと思います。

黒江政府参考人 派遣規模についてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、防衛省・自衛隊も平成二十一年の三月から、護衛艦二隻、さらにはP3C二機という形で派遣を行っておるところでございます。他方、最近におきます海賊の発生件数の推移、あるいは、我々の護衛艦等の運用の余裕といいますか、そういったことを、オペレーショナルテンポといったようなことも勘案しまして、こういった派遣規模というものを決めておるところでございます。

 そういう意味では、現在のところ、これを拡大するといったことは検討はいたしておりません。

北村政府参考人 派遣規模の拡大でございますが、海上保安庁は、今、護衛艦に海上保安官を八名乗船させて司法警察活動に当たっておりますが、この拡大等については、今の海上保安庁の業務実態からするとなかなか難しいと思います。

 具体的には、やはり我々は今、日々、尖閣の領海警備がまず急務でございます。きょう自体も中国の公船が今も三隻来ておりますが、これに対応するために、今、全国規模で船を動員して対応に当たっておりますので、今の現状からしますと、今おっしゃられましたせっかくのお話でございますけれども、規模の拡大ということについてはなかなか難しいと考えております。

泉委員 ありがとうございます。

 確かに、これはまず、民間ガードが我が国船舶にも採用されることによって、一層海賊行為が下火になっていくということが期待されますので、その推移も見ながらということであろうと思いますし、民間ガードそのものも、熟練をしてくれば、さらなる自衛のレベルも上がってくるのではないかというふうに思います。

 そういったものはしっかり見ていきながら、しかし、それだけ船主協会の皆さんからは要望があるというのは、守っていただいているところはありますけれども、やはり非常に危険、また不安の多い海域であるということがそこからも見てとれるということでありますので、そういったところのサポートをきめ細やかにする必要があるのではないかというふうに思います。

 その意味で、私はきょう、まさに我が国政府と民間の事業者の皆さんがどれくらい連携がとれているのか、政府の側からの支援ができているのかというところを、これから少し意見交換させていただきたいというふうに思います。

 その前に、特に自衛隊の皆さん、海上保安庁も八名おられるということでありまして、その皆さんも同じですけれども、自衛隊の派遣部隊の皆さんには心から敬意を表させていただきたいというふうに思います。

 ジブチというのは大変な気温の地域でもありますし、また危険な業務ということもあります。ちょうど、それこそ我が政権の時期でありますけれども、ジブチの拠点も、例えば航空機については、外に駐機をしていた、とても気温が暑くて運用上も大変過酷な状況だったというところについて、駐機場地区を設定して、そこで新しい施設が開所をして、随分と、とはいえ、まだまだ厳しい環境ですが、以前よりかは環境が改善されたということも伺っております。

 そういったことで、改めて、防衛省の方にですけれども、今ちょうど「すずなみ」「きりさめ」と「あけぼの」「はまぎり」が交代をされる時期なのかなというふうに思っておりますが、その皆さんが最近どのような状況かということ、あるいは現地の治安状況などは心配がないかどうか、このことについてお答えいただきたいと思います。

黒江政府参考人 ただいまお尋ねのジブチの状況でございますが、これは先生御指摘のとおり、平成二十三年の六月からジブチで活動拠点を運用し始めたわけでございますが、現地の治安状況について申し上げますと、これは安定しておるという報告を受けております。

 また、現地に今行っております航空隊の隊員でございますが、P3Cによります監視飛行、任務飛行については当然こなしておるということでございます。そういう意味で、海賊対処行動についてはきちんと実施をしておるわけでございます。

 それに加えて、ジブチにおける活動拠点を安定的に運用するということを考えまして、常日ごろからジブチ政府あるいは地元社会の理解を得る、良好な関係を維持するという観点から、スポーツの交流でありますとか地元の小学校との間の文化交流といったようなことを通じまして、周辺住民との交流を深めるといったこともあわせて実施をしておるところでございます。

泉委員 特に航空部隊についても、ちょうど我が政権の間も、少しずつではありますが、現地で活動していただく人員の数を充実させて、一貫して数を増加させながらここまで来ております。

 そういった意味では、これからも着実な部隊運用が行われるように、また、疲労ですとかさまざまな疾病も含めて、健康状態に問題がないように環境の改善ということは引き続き行っていただきたいと思いますし、ジブチは大変治安が、それでも安定をしているというふうには言われておりますけれども、しかし、近隣は大変危険な地域でありますので、万全を期していただきたいというふうに思います。

 そこで、先ほどお話をした我が国政府と民間事業者の連携ということでありますけれども、いつも大変詳しい記事で役立っております日本海事新聞を少し引用させていただきますと、日本郵船の海務グループ、テロ・海賊対策チームの神谷さんという方がことしの三月八日、この海事新聞で記事を出されておりまして、「EU海軍における安全航行アドバイス」ということが載っております。

 そこでは、イギリスのロンドン郊外にEU海軍の基地があって、そこに船長資格を持つ日本人海技者を定期的に派遣している。そこで情報交換ですとかさまざまなアドバイス、このアドバイスというのは、一方的に軍の方から民間事業者に対するアドバイスではなくて、まさにその海域で何が起こっているのかとか、あるいは、船がどういう形で運航されているのかということの逆のアドバイスも軍の方にされているというようなことが載っております。

 一方では、我が国のどこの機関ということでいっても、そういう意見交換、情報交換をされているような節が余り見られないというふうにも伺っておりまして、その辺のことが果たしてどうなっているのかなというふうに感じているところであります。

 そういった意味で、例えばですが、現地の海賊の発生状況を情報収集、把握しているのはどちらなのか。御答弁いただくところが恐らくその組織であると思うんですが、お手を挙げていただいたところにお任せをしたいと思いますが、どこなのか、御答弁いただければと思います。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 ソマリア海賊に関する情報収集につきましては、これはまさに外務省ですとか防衛省、国土交通省と関係省庁、これらが適切に行っておりまして、我々内閣官房におきましては、関係省庁を集めまして関係省庁連絡会というものを定期的に開催いたしまして、そして、関係省庁間でそういう情報の共有を行っているところでございます。

森政府参考人 今の御答弁にもありましたように、我が国でも関係省庁間で情報を確実に共有するとともに、私ども、海運会社を所管しておりますので、日本の海運会社からの情報を踏まえて、海賊多発地域に関しての注意喚起をしたりとか、あるいはベストマネジメントプラクティス、これは別に役所から言われたからやるというものではございません。官民一体となってベストマネジメントプラクティスの徹底をやったりとか、そういった形で協力をしてやっております。

 また、いわゆる警護以外の支援としまして、目立った行動としてやっておりますのは、これはどちらかというと海上保安庁長官からお答えいただいた方がいいのかもしれませんけれども、ソマリア沖・アデン湾の海域を利用する事業者に対する支援としまして、インド近海における日本関係船舶の安全確保を図るべく、インドと日本の間で、周辺海域で海賊脅威にさらされた日本関係船舶からの救助要請窓口を明確に設定しまして、インドと日本との連携強化を図っていただいているところであります。これは大変効果が高くて、昨今、このインド近海における被害というのは非常に減少しているというふうに聞いております。

 そういったことも踏まえまして、先ほどちょっと冒頭の中村先生の御質問にもお答えしましたけれども、インド近海を走るときは、日本の海運会社の船というのは、できるだけ沿岸に沿った形で運航するようにしております。そうすることによって、いざというときにインドのコーストガードの支援が得られるということで、これは大変効果をあらわしているというふうに考えております。

泉委員 先ほど、連絡会を開かれているということでありましたが、こういう連絡会的なものというのは定期的に開かれるものでありまして、個別具体の話を一個一個されているものではないんだろうなというふうに推察はするわけですね。かつ、この海賊の事案であれば緊急を要することが現場では情報としては求められるということで、最近は何件ございましたとか、そういうような話だけではなくて、まさに日々の情報収集というものが我が国もおくれをとらずされているのかどうかというところがまず気になるところであります。

 かつ、先ほどの神谷氏の記事によりますと、EU海軍で学んできた方々がEU軍民連絡調整官というふうに呼ばれていて、司令部と危険海域を航行する船長との橋渡し役にもなっているということで、どういうことをしているかというと、主な任務は、EU海軍中央司令部と民間船社や危険海域を航行する船長の橋渡し役になり、商船に乗り込む船長らと日々交信し、航行リスクを回避するための具体的なアドバイスを行うこと、こういうような取り組みもされている。

 今、例えば自衛隊の艦船、護衛艦と民間商船で、こういった意味での日々交信というようなことはされているという考えでよろしいでしょうか。

黒江政府参考人 現地で活動いたしております自衛隊と民間の船舶との間の情報のやりとりということについてのお尋ねだと思います。

 これにつきましては、護衛艦二隻、さらに運用しておりますP3C哨戒機で得られました情報について、これは周囲を航行しております民間船舶に対しても情報の提供を行う、さらに民間船舶から当方に対して求めがあれば、これに対して、当該船舶の周囲が安全なのかどうかといったようなことを確認して、それを応答するといったような形で、できる限りきめ細やかな対応をとるということに努めておるところでございます。

 具体的には、P3Cが飛行中に怪しい船舶といったものを発見しますと、周囲を航行しております船舶に対して、国際VHF通信によりまして、いわば放送するような形で注意喚起を実施するといったようなことを現場において行っておる、そういう実態でございます。

泉委員 それは、確認ですけれども、IRTCの範囲内なんでしょうか。それとも、割かし広い、ハイリスクエリア全体で通信が可能というか、情報交換ができるということになるんでしょうか。

黒江政府参考人 基本的に、先ほど私の方から申し上げましたように、国際推奨航路における直接の護衛といったものが自衛隊の任務でございますので、もちろんそこだけに限られるわけではございませんけれども、基本的にはそこと、あと、その周辺でP3Cが飛行しておる際に得られた情報ということでございます。

泉委員 やはり分布図を見ると、推奨航路、ここをまず押さえるということは、これは全く否定をする必要はないというふうに思いますが、一方では、かなり広範な海域に海賊の発生が見られるということもありますので、やはりハイリスクエリア全体の情報を適時適切に民間の方々にお流しいただくようなことを我が国もぜひ取り組んでいただきたい、積極的にやっていただきたい。国際的な枠組みがあるのであれば、そこにも積極的に参画をするというような、そういう姿勢も持っていただけないであろうかなというふうに思うところであります。

 もう一つは、これもいろいろと制約があると思うんですけれども、やはり民間の事業者に対して、民間の武装ガードの事業者であったり、あるいは、我が国ではなく、海外のこういった海軍組織であったりというところが実際の自衛のアドバイスをしているということになるわけですが、我が国政府、自衛隊なのか国交省であるのかですが、こういった事業者に対して、自衛策の指導ということについてはどのような機会が設けられているのか、お答えください。

森政府参考人 我が国商船隊が実施しているノウハウだけを集約してもやはり限りがあるものですから、先ほど来出ておりますように、国際的な海運団体が共同をいたしまして、ベストマネジメントプラクティス、いわゆるグッドプラクティス集のようなものでございますけれども、これをその都度改正しまして、それを周知しております。私どもは、先ほど申し上げましたけれども、それをきちっと徹底するようにということで、船協さんと私どもと連携をとりまして、日本商船隊に対してのベストマネジメントプラクティスの徹底を図っているところでございます。

 こういった取り組みが功を奏しまして、民間武装警備員の乗船、それから公的武装の連携、こういった三つが効果を出しまして、現実にソマリア沖の海賊が顕著な減少が見られているというふうに考えております。

泉委員 今回対象となるのは十七隻程度という日本船舶になるわけですけれども、レーザーワイヤですとかシタデルですとか、そういったものをやはり指導しながら設置を要求していくということであろうと思いますが、現段階において、この想定される十七隻については、例えばレーザーワイヤですとかシタデルというのは標準的に全て装備をされているというふうに考えてよいのか。もっと言えば、監視カメラですとか放水設備、こういったものも全て搭載されているということでよろしいでしょうか。

森政府参考人 今回の法案の対象としております日本籍の原油タンカーにおきましては、全船舶においてレーザーワイヤ、放水設備、それからシタデル等の自衛措置を設置しております。

 私も実は袖ケ浦のオイルタンカーバースに実際に船を見に行きましたけれども、それぞれの船の特徴がございますので、それぞれの船の構造を生かしてさまざまな工夫をしております。したがって、レディーメード、オーダーメードというよりも、それぞれの船がそれぞれの創意工夫でいろいろやっている面もあるんですけれども、今申し上げたレーザーワイヤ、放水設備、シタデルについては全船装備をしております。

 引き続き、私どもとしましては、こういった自衛対策の徹底を図っていきたいというふうに考えております。

泉委員 ありがとうございます。

 実際に民間ガードが今後つくということになった場合においても、過去の事例でもあるように、スキフが接近してくるということはあり得るわけですね。そこで警備中の民間ガードが発見できれば、場合によっては諦めるというケースもあるかもしれませんし、それが試射をすれば、あるいは銃を掲げれば逃げていくというケースもあるかもしれない。しかし、もしかすればそれは襲撃をしてくるケースもあるかもしれないしということであります。

 ちなみに、現時点で、海外の事例も含めてですが、民間ガードがついていても船体に襲撃をされたケース、あるいは乗り込みを許したケース、そして乗っ取りまで至ったケースというのがあるのかないのか、これをお答えください。

森政府参考人 海賊の発生状況に関しては、国際商業会議所の下部組織である国際海事局というのがございます。IMBと呼んでおりますが、ここで統計をまとめております。

 主要海運国で民間武装警備員の乗船が行われるようになりました二〇一一年以降、二〇一一年と二〇一二年の統計を見てみますと、船体への銃撃事案を含めて、武装警備員乗船中に海賊に遭遇した事案は百二十二件ございます。したがって、武装警備員を乗せていても海賊には遭遇する。

 ただ、いずれの事案においても、武装警備員がいるとか、あるいは銃を見せるとか、あるいは警告射撃をすることによって海賊は退散をしておりまして、乗り込まれたケースとか乗っ取りに至ったケースはありません。

泉委員 やはり非常に成果が出ているということが、ここから見てもわかるということになります。

 一方で、そうなってくると起こりやすい議論としてということで、あえてお話をさせていただきますと、それだけ民間ガードの成果、効果が顕著であれば、自衛隊がこの海域を警護し続けるということの意味合いが大分薄れてくるのではないかというような指摘もなされる可能性もあると思います。

 そういった意味で、今後、仮にですが、海賊の発生件数が減っていく、民間ガードがこういった商船には標準に活用されるようになってくるということにおいて、自衛隊が現地から撤収されるということが考え方としてあるのかどうか、いや、そうではなくて、やはり国際的な役割があるというような話なのか、その辺のことを防衛省から御説明いただければと思います。

左藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、先生言われたようなことも十分鑑みなきゃなりませんけれども、やはりソマリア沖・アデン湾というのは極めて重要な海域であることは変わりございませんし、海外の行動をしているそれぞれの部隊と連携をしなきゃなりません。この海域における自衛隊の海賊対処行動は確実に実施する必要がまだあると思っておりますし、その状況を見ながら、また判断をさせていただきたいと思っております。

泉委員 ありがとうございます。

 そして、アジアの海域においては、まさに海保が巡視船を出されたり、ファルコンを出されたりということで活動をされている。そして、日本では「しきしま」級と言われるような大型の巡視船も、今回また「あきつしま」という巡視船ができるということでありますけれども、そういったものが今後どう活用されていくのかということも大変注目をもって見られているんじゃないかなというふうに思います。

 改めてでありますが、大変危険な海域であるということ、そして、我が国のライフラインを支える多くの商船が、その危険な中、活動をしていただいているということを含めて、ぜひ今回の法案というのは成立させなければいけないというふうに思っております。改めて、国土交通大臣に、最後、御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

太田国務大臣 ソマリア・アデン湾におきまして、人類共通の敵であります海賊行為によって日本船舶の航行に危険が生じて、資源輸送が脅かされている。しかも、世界各国が協力をし、また、民間も民間武装ガード等を入れてこれを防御しているという状況にございます。この海賊行為の危険を排除して、船舶の安全と資源輸送の確保を図ることは喫緊の課題だというふうに思っております。

 冒頭からちょっと失礼な話をしたようでありますけれども、私は、ここまで来るということの中には、私は国会におりませんでしたけれども、それぞれのさまざまな隘路があって、それを一つ一つ、私も先ほどは、これを一番最初に審議しろということでお叱りをいただいたわけでありますけれども、一刻も早く、一番困っていらっしゃる、船を扱っている方たちに対して、また現場でそうした苦難に遭っている方たちに対して、対応をしっかりしていくということが極めて重要だというふうに認識をしております。

 よろしくお願い申し上げます。

泉委員 終わります。ありがとうございました。

金子委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 ふだんは海賊・テロ特別委員会に属しておりますけれども、きょうは国土交通委員会で質問の機会をいただきまして、委員長初め与野党の理事の皆さんには感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、お伺いしたいのは、先ほど泉議員の最後の質問にありましたけれども、自衛隊の関係であります。

 この間、海賊対処行動によりまして、我が国及び外国の船舶を守るという観点から、自衛隊の皆様の本当に献身的な御尽力にまず敬意を表したいと思います。

 先ほど質問にもありましたけれども、この法律が成立をし、そして民間のガードがある程度行き渡ったときに、いろいろ状況を見ながら、当面は自衛隊の護衛艦等々の引き揚げはないということでありましたけれども、この点について改めて確認させていただきたいのと、極めて重要な役割をというのは、国際的な観点から果たしているという認識が大事だと思っております。

 というのは、我が国の日本船舶だけではなくて、その他の外国の船舶についても、我が国の自衛隊が警護において重要な役割を果たしているという観点があると思いますので、仮に、日本船舶の警護がこの民間のガードによって十分になったとしても、それ以外のある種役割、法目的といったものが海賊対処活動についてはあると思います。

 改めて確認したいんですけれども、自衛隊による海賊対処行動の継続について考えをお聞かせいただきたいと思います。

黒江政府参考人 本法案成立後の自衛隊の活動に対する考え方ということでございます。

 先ほどの泉先生からの御質問に対して、当方の左藤政務官からもお答えを申し上げました。その内容の繰り返しになりますけれども、この法案が成立した後においても、引き続きまして、ソマリア沖・アデン湾といったこの海域というのが我が国にとって極めて重要な海域であるといったことについては、これはいささかも変わりはございません。

 また、まさに委員御指摘のように、この海賊対処行動といいますものは、ひとり我が国のみが行っておるわけではございませんで、諸外国の部隊と共同して、国際社会と連携しながら実施してきておる、そういうものでございます。

 また、そういった国際社会の連携のもとで行われておる活動であるがゆえに、その成果として、近年、海賊行為自体が徐々に減ってきておる、そういう成果につながってきておる、そういうことでございますので、そういったことを勘案しますと、本法案成立後、直ちに自衛隊の部隊をこの海域から引くといったようなことは、現在のところ考えてはございません。むしろ、この海域における自衛隊の海賊対処行動といったものを今後も確実に実施していく必要があるというふうに考えてございます。

玉木委員 ぜひこれは継続すべきだと私も考えております。

 船だけではなくて、哨戒機からの哨戒活動によって得られた情報が、我が国の関係機関だけではなくて、外国の機関にも提供されておって、空からの貢献も実は極めて大きいということでありますので、自衛隊は現地で大変な御苦労をされていると思いますけれども、この本法成立後もぜひ継続をしていただきたいというふうに思っております。

 その上で、当面、そういった自衛隊の活動とともに、今審議が行われております民間の警備員によるガードが導入されたときに、その両者の役割分担、デマケといいますか、こういったものがどうなっていくのかといったことについての、公的な武装ガードと民間武装ガードの併存した場合の役割分担についてお聞かせいただければと思います。

太田国務大臣 自衛隊による護衛は、海賊の最も多発するアデン湾を対象にしておりまして、アデン湾における引き続き護衛活動が必要だと思っておりますし、今御指摘のありましたように、これは安保理決議もありまして、世界共通してやっているという共同作業でありますから、大事だというふうに思っておりますが、この法律案によって特定警備従事者の乗船は、護衛活動が実施されているアデン湾の区間の外側を含む、ハイリスクエリア全体そしてスリランカ沖を対象にする予定になっています。

 このため、アデン湾航行時に特定警備従事者が乗船している船舶が、自衛隊による護衛を受けるという場合もございます。

 本法律案は、官による警備が困難である状況を踏まえて、日本船舶における自主警備を認めるということで、したがって、官による警備が行われているアデン湾において、特定日本船舶が護衛を受けている間については、小銃の携帯、使用は認めない、あるいは船長がそれを保管するということにしておりまして、一つ一つについて、官と民の役割分担というのを明確にしていかなくてはならないというふうに思っているところではあります。

玉木委員 大臣、ありがとうございます。

 今大変重要な答弁をされたのは、まさに今護衛艦が出ているエリア、約九百キロ、プラス二百キロぐらいですか、千キロぐらいの、まさにアデン湾においては、一義的には公的なガードがある種優先する。そのことが機能している間においては、今大臣が明確にお答えになったように、例えば、弾薬とかライフル銃については船長に預けておいて使えなくするというのが原則だという答弁がありました。

 これはまさに公的な権力が及ぶ範囲においては、まさに国内法がそうですけれども、国内においての警察権の行使と同じだと思いますけれども、これが原則なんですが、あえて申し上げたいのは、例えば護衛艦に守られているエリアに入ってくる瞬間、出ていく瞬間、そのつなぎ目があります。つまり、民間のガードが前に出ていかなきゃいけないところと、公的なガードが前に出なくちゃいけない、むしろ民間は引かなきゃいけないという、その境目の端境のところがあって、そこにおける手続がいかに円滑にできるかというところが、つけ入るすきを与えないという意味でも大事だと思っているんですね。その意味では、そういった手続的なことについてはしっかりと定めておくことが大事だというふうに思っております。

 その意味では、警備の詳細については、特定警備実施要領ということで大臣が定めるということになっておるんですけれども、こういった中身については、今、国会で審議が行われておりますけれども、決まっているものについては、わかる範囲でできるだけ具体的に御提示いただくのがいいと私は思っているんです。

 というのは、本来、これは外国において国内法の適用が及ぶ範囲において初めて民間人が武器の所持と使用が認められるという、ある種画期的な法律になっております。その意味では、そのための段階的な手続あるいは要件といったことを事前に明らかにしておくことが大事だと思っておりますので、この実施要領について、その中身について、今わかる範囲で中身を教えていただければと思います。

赤澤大臣政務官 特定警備実施要領は、法の三条に定めがございまして、定めるべき事項もその二項に書いてございます。小銃の使用などに関する遵守事項を国が定めることにより、特定警備従事者による警備が適正に実施されることを確保するために策定するものでございます。

 今委員御指摘のとおり、これは、法律の施行が公布後三カ月以内に政令で定める日、その日までに実施要領ということなので、まだ確定をしておりませんが、少しでもイメージを持っていただこうということで、こういったようなことという、あくまでイメージという前提で具体的にお話しさせていただきます。まだ確定しているものではございません。

 四つほどちょっと挙げさせていただきますが、まず、小銃の使用方法について言えば、いわゆる武器の使用に関する比例原則といったようなことをかなり具体的に書こうということで、海賊の接近度合いに応じた小銃の使用方法等、段階的対処ということで、まず音声で警告しろとか、その後、小銃があることを示せとか、その後、射撃についても段階を踏んで、警告射撃、船体射撃、最後に、本当に乗り込まれたり異常に接近されたときに、向こうが何か撃ってくるというようなときの危害射撃といったような、そういった段階を踏めということをかなり具体的に書こうということが一つございます。

 それから、二点目に、小銃の管理でございますけれども、小銃と実包の積みおろし時に船長がきちっと立ち会う。それから、海賊対応時以外の船長による船内保管設備への施錠保管でありますとか、さらには、先ほど大臣からお話をいたしました、公的に護衛がされているような場合には小銃は船長の方で保管をするというようなことも実施要領には書き込もうということにしております。それ以外にも、小銃等の管理について船長が記録を残す義務といったようなことも書こうかというのが小銃の管理についてでございます。

 それから、三番目に、緊急時の連絡といったことで、これは、実際、助けを求めるということと、こういうことが起きたというのを国に連絡するというようなことがありますので、緊急時において沿岸国の海上警察機関などへ連絡することとあわせて、国交省、海上保安庁にどうやって連絡を入れるのか、これは当然、前後があり得ますけれども、緊急時の連絡についての事項ということも定めます。

 四番目に、装備、小銃の基準といったようなことも定めようかと考えております。

 あくまで、ちょっと今の時点でイメージでございますけれども、申し上げました。

玉木委員 政務官、ありがとうございました。

 私は、この法律に書いている二号の特定警備の具体的内容と手順、三号の管理に関する事項は特に大事だと思っています。

 今、政務官からもお答えいただいたように、武器の使用は抑制的、段階的、最後の手段であるということは原則だと思います。ただ、一方で、余りにもがちがちに縛って、実際、海賊からの急襲に遭ったときに、にわかに対応できないようなものになっていてはいけないと思うんですね。

 今回、国内の銃刀法の準用がかなりあると思うんですが、銃刀法は、例えば、猟銃で鹿を撃ったり、いろいろ動物を撃ったりするときのことを前提につくられているようなところもあるので、それを、実際、海賊の危害があったときに対応することにそのまま準用しては、かえって機動性を失わせてしまうようなこともあるんじゃないのかと思う。

 例えば、銃と実包を別に分けて保管しなさい。これを分けるのはいいんですけれども、同じ船橋の別の階に、違うところに置けということになると、いざ取り出してきて階段を上っていって弾とライフルを合わせるようなことをしていると間に合いませんから、そういったことの、もちろん抑制的にやるけれども、実際のいざというときの警備に支障が生じないような形でぜひ定めていただきたいなというふうに思っております。

 これに関してもう一点お伺いしたいのは、先般、アルジェリアのイナメナスで大変痛ましい事件が起きました。これはいろいろ原因究明がさらに進んでいると思います。

 あってはならないんですけれども、民間の警備会社、多分これは外国の警備会社を使うことが多いというふうに聞いておりますけれども、その中に、例えば、テロ組織の内通者がいるとか、あるいは過去犯罪経歴のある者が紛れ込んでいるとか、そういったことがあったときには、守るどころか、むしろそういった海賊に対して情報を漏らしてしまうというような、実はそういう人員になってしまうという可能性も排除し切れません。

 その意味で、特定警備従事者が一体いかなる者であるのか、そういった確認を厳格に行う必要があるというふうに思っておるんですけれども、いかにこれを確認するのか。

 また、それは警備会社の情報に頼る、船舶所有者の情報に頼るだけではなくて、例えば、我が国あるいは外国の捜査機関、あるいは諜報機関、そういったところとの情報の連携もしながら、素性については我が国独自できちんと調べていくといったようなことも可能な限り行うべきだと考えますけれども、こうした特定警備従事者の確認について、適正性の確認についての方針についてお伺いしたいと思います。

太田国務大臣 そうした事態というのは十分想定をして対応しなくてはいけないというふうに思っています。

 外国の警備会社でありましても、役員の犯歴や、訓練体制、個々の特定警備従事者の犯歴や技能等について、国交大臣による審査を経て、特定警備を実施することとしておりますものですから、そこはしっかり中身を、犯歴等の欠格要件に該当しないこと、小銃の取り扱いに関する知識や技能を有していること、さまざまな意味で厳格に実施しなくてはいけないというふうに思っております。

 特に犯歴等のチェックということは大事な要件だと思いますので、国内外の関係機関への照会等も行うことにより、万全を期してまいりたいと思っております。

玉木委員 ありがとうございます。

 大臣、その点、ぜひ厳格なチェックを国交省においても行っていただきたいというふうに思っております。

 最後に、海賊に関して一点お聞きをしたいんですが、シーシェパードについてであります。

 これは、我が国の調査捕鯨についての妨害行為を累次にわたって繰り返してきて、これまでの国会審議でも、海賊・テロの特別委員会でも、内閣委員会でも、あるいは農水委員会でも、いろいろなところで取り上げられてきておりますけれども、どうもこれが海賊には当たらないので、なかなか動きにくいという答弁が累次繰り返されてきております。

 しかし、実際には、この妨害行為というのは、今お手元に資料をお配りさせていただいておりますけれども、船体を、日新丸という調査捕鯨船でありますけれども、それにぶつけてきたり、右の下の方に絵がありますけれども、どくろマークをつけて、まさに海賊っぽい外形上の形態をみずから示しているわけであります。また、実際に、酪酸の瓶を投げて、それが目に入って、目の洗浄を行ったとか、あるいは大変船体が傷つくといったような具体的な物理的な危害を加えられております。

 また、いわゆる著しく接近をしたり、まさにこのとおりですが、あるいは、つきまとい、進行を妨げるといった行為を行っておりまして、まさにこれは海賊行為ではないかというふうに思われます。

 今回の法律の対象外、特措法の対象外ではありますけれども、まさに海における我が国国民、つまり日本国民と我が国の船舶の安全を守るためには、こういった調査捕鯨に対するシーシェパードの行為も海賊行為とみなし、また、必要であれば、今回議論されているようなそういった調査捕鯨船にも一定の武装した民間の警備員の乗船を認めるような制度整備をあわせてこれからしていくべきだと考えますけれども、政府の考えをお聞かせいただきたいと思います。

長田政府参考人 先生御指摘のシーシェパードの問題でございます。

 現在ソマリア・アデン湾等で行われております海賊行為につきましては、自動小銃でありますとかロケットランチャーで武装した海賊が民間の船を襲って船から金品を奪う、あるいは人質をとって身の代金を要求するなど、いわば海上強盗という典型的な海賊の犯罪類型でございまして、このために、日本だけではなく世界各国がその防止のための部隊を派遣しているところでございます。

 一方、シーシェパードにつきましては、調査捕鯨に対する妨害行為でありまして、その行為の態様とか目的に鑑みますと、これらの行為が、海賊対処法あるいは今回の法律に定義する私的目的による船舶や財物の強取、身の代金目的の人質の略取などの海賊行為には該当しないというふうに考えております。

 ただし、先生御指摘のとおり、シーシェパードの妨害行為は、我が国の調査船団の乗組員の生命と財産、あるいは航行の安全を脅かす極めて不法な行為であるというふうに認識をしておりまして、我々は、こうしたシーシェパードの船籍国であります旗国を初め関係国に対して、実質的なそういう海上の安全を確保するための措置を講じるように、外務省等々と引き続き働きかけをしていくことが重要であるというふうに考えております。

 また、毎年この調査船団が出航するに当たりましては、水産庁、海上保安庁等々と協議をいたしまして、安全の確保をするための対策を事前に講じているところではございますが、結果として先生御指摘の事態が生じておりまして、安全対策について、どういう対策が効果があるのかということにつきまして引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。(発言する者あり)

玉木委員 手ぬるいという声が出ましたけれども、お配りしている資料、平成二十一年の当時の中曽根外務大臣と河村官房長官の答弁の議事録を載せております。

 この中で、右側ですけれども、中曽根当時外務大臣は、海賊・テロ特別委員会で、条約上の海賊行為に該当する可能性は排除しないというふうにお答えになっておりますし、河村官房長官も、左側でありますけれども、今回のこれは海賊対処法の対象ではないけれども、しかし、それに類する考え方だということで、海洋本部の事務局が中心となって、今、成案を得るべく、関係府省との連携協力の中で今進めておるところでございますと、今お答えになったような答弁を当時もお答えになっておられるんですね。

 私は、これはもう海賊の定義に当たるかどうかと一生懸命考えるんじゃなくて、現に我が国の調査捕鯨の本当に厳しい状況の中で危害を加えられておるわけですから、地域を問わず、世界の海域における我が国の船舶と乗務員の安全を確保することがまさに国家としての責務でありますから、そのことについては、このシーシェパードの妨害行為についてもそろそろしっかりとした政府としての対応を決めて、毅然とした態度で国内法整備の法改正も含めて対応していく時期に来ていると思いますので、今回の審議にあわせてこのことを強く要請申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 終わります。

金子委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 日本維新の会の坂元大輔でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうの委員会におきまして、この海賊多発海域における日本船舶の警備、民間の武装警備員を乗船させる許可を出すという特別措置法案に関して、過去の経緯について、さまざまな議論がございました。

 私たち日本維新の会は新しい政党でございます。私も、昨年十二月の選挙において初当選をした議員でございます。過去の経緯に関して、この国会での現場での議論というものに直接かかわってはおりませんが、私は、大切なのは今からではないかというふうに考えております。日本の海上における国益を守るということに関しては、与野党関係なく、一日でも早い本法案の成立をすべきだというふうに私は考えておりますし、その姿勢で本日の質問に臨ませていただきます。

 質問が若干、これまでの質問と重複する部分もあるかもしれませんが、そこは御容赦いただきたいと思います。

 最初に私も、二〇一一年に船主協会から要望が出されているにもかかわらず、どうして今国会まで法案提出がおくれたのかという質問をさせていただこうと思ったんですけれども、何度もこの質問は出ておりますし、その理由については理解ができましたので、この質問は飛ばさせていただきます。

 続いて、今回の法案について、いわゆる特定日本船舶の所有者と民間警備会社という、つまり民間同士の契約がなされるわけでありますが、国土交通省として、どのようにその契約の内容を把握して、そして監督をしていかれるのでしょうか。具体的にお答えを願いたいと思います。

森政府参考人 質問の御趣旨は、恐らく、特定日本船舶の所有者と警備会社が民間同士で結ぶ契約と、私どもが、国土交通大臣が定めます例えば実施要領、これとがそごがないようにどうやって担保するのか、そういう御趣旨だと思います。

 特定日本船舶の所有者と特定警備事業者の契約内容につきましては、船舶所有者から特定警備計画を出して、それを認定するのでございますけれども、その申請の際に、契約書の写しの提出を求めるということを考えております。

 すなわち、申請の際に出していただいた契約書の写しが、国土交通大臣が定めます実施要領に照らして適切かどうかということをきちっと審査いたしまして、そういったそごが生じないように担保をしたいというふうに考えております。

 また、実際に特定警備が特定警備計画や実施要領に従ってきちっと行われたか否かということをきちっと適切に監督していくことも重要だと思っております。

 具体的には、小銃を使用した場合の記録でございますとか、船舶所有者または船長に対する報告徴収、必要に応じての立入検査、質問聴取、さらに、特定警備の適正な実施に支障を生じるおそれがあるときには特定警備の停止などの措置命令、こういったいろいろな手段を駆使しまして、特定警備が特定警備計画や実施要領どおり適切に行われるよう、監督に万全を期してまいりたいと思っております。

坂元委員 詳細な説明をありがとうございます。

 先ほど玉木委員からもありましたように、民間の警備会社に武器の使用を認めるというところ、銃器の使用を認めるという、ある意味、画期的な法案となっておりますので、そこのチェックの部分、しっかりとお願いしたいというふうに考えております。

 その民間の警備会社に関してでありますが、会社要件や警備員の規定、海賊に対しての警告や武器使用による防御の方法など、国際的にはどのような取り決めが存在するのか、お答えをお願いいたします。

森政府参考人 先ほどは、法案がおくれた理由について答弁を御容赦いただきまして、ありがとうございます。

 実は、先ほどから累々、私の方から御答弁させていただいているように、二〇一二年五月に、国際海事機関におきまして、民間武装警備会社に関する暫定ガイダンス、これが合意をされました。これは、国際的にそういうガイダンスができたというのは非常に画期的でございまして、日本のみならず欧州の主要海運国もこのガイダンスができたことを契機として、民間武装警備員を乗船させる国内法制化に踏み切ったというふうに我々は理解をしております。日本も全く同じでございます。

 そういった意味で、国際的な取り決めという意味では、この暫定ガイダンス、これが大きな目安になるというふうに考えております。

坂元委員 今回の措置法に基づく対応において、その暫定ガイダンスというものを日本としては基本的に踏襲をするということでよろしいんでしょうか。それとも、ここが違うという部分があれば、具体例があればお答えをお願いいたします。

森政府参考人 御指摘のとおり、本法律案におきましては、IMOで定められました暫定ガイダンスを踏まえまして、警備会社の訓練とか、あるいは第三者損害賠償保険の加入だとか、あるいは警備員の適格性の確認とか、まさにこのガイドラインに沿って法案を整備しております。

 また、小銃の使用、これは今回の法案の肝でございますけれども、これにつきましても、当該ガイダンスにおきまして、抑制的な使用だとか、あるいは段階的な対処だとか、そういったものが盛り込まれておりますので、このガイドラインの考え方をまさに踏襲しまして、今回の法案あるいはその実施要領の策定をいたしたいというふうに考えております。

坂元委員 具体的に違う点というのは特にはないという認識でよろしいんでしょうか。

森政府参考人 基本的には同じだというふうに考えていただいて結構です。

 もちろん、手続とか我が国で独自に定めるものはございますけれども、考え方についてはまさにこのガイドラインを踏襲しているというふうに考えていただいて結構かと思います。

坂元委員 ありがとうございます。続いての質問に移りたいと思います。

 これも先ほど来、何回か出ているわけでありますが、モンスーン時は九百キロということなんですけれども、ソマリア沖のアデン湾の千百キロメートルについては、自衛隊が海上警備行動を行っておりまして、数字的にも絶大な効果が発揮されております。自衛隊員の皆さんには本当に敬意を表したいなというふうに私も思っております。

 実は、ゴールデンウイーク中なんですけれども、隣にいる中丸代議士と、地元が広島でございまして、呉の海上自衛隊に視察に行ってまいりまして、実際、隊員の皆様から、海上警備行動の厳しさですとか環境の過酷さというものを直接いろいろと伺ってまいりました。そういう中で、本当に日夜、日本の海の国益のために従事していらっしゃる自衛隊員の皆さんには、本当に私も心から敬意を表したいというふうに思います。

 自衛隊員の皆さんが海上警備行動を行っていただいておりますこの千百キロメートルの区間に関して、民間警備会社の乗組員に関しては、これはもう一切の警備活動をさせないという認識でよろしいのでしょうか。その区間の民間警備会社の方々の処遇というのは、どのような形になりますでしょうか。お願いいたします。

森政府参考人 先ほど太田大臣からも御答弁させていただきましたけれども、自衛隊による護衛というのは、まさに海賊が最も多発するアデン湾を対象としまして、このアデン湾において引き続き護衛活動が必要だというふうに考えております。

 一方で、本法律案による特定警備従事者の乗船というのは、いわゆる護衛活動をしていないエリアに海賊が非常に拡大してきたということを踏まえまして、その護衛活動が実施されているアデン湾の区間の外側を含むハイリスクエリア全体及びスリランカ沖を対象とする予定でございます。

 このため、アデン湾航行時に特定警備従事者が乗船している船舶が自衛隊による護衛を受けるケースというのは当然あるんですけれども、本法律案は、まさに官による警備が困難である状況を踏まえて、日本船舶による武器を使った自主警備を認めるものでございますので、官による警備が行われているアデン湾においては、特定日本船舶が護衛を受けている間、小銃の携帯、使用は認めず、船長が保管をするということにさせていただきたいと思っております。

 先ほど、保管をしている間に別々に管理をして大丈夫かという御質問がありましたけれども、念のため、ちょっと御説明をしておきますと、これは保管中の暴発等を防ぐための措置でございまして、小銃と、いわゆるカートリッジ、これを外して保管をしておきなさいということでございまして、遠く離れた別々のところに保管をしろという趣旨ではございません。

 したがって、先ほどちょっと御指摘ございましたけれども、ちょうどエスコートのエリアの端境のところで思わぬ事態が生じないように、実施要領等については、御指摘も踏まえて、きちっと書かせていただきたいというふうに考えております。

坂元委員 まさにお聞きしようと思っていた部分を的確にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 そのあたりの規定というのは、文章としてはどこに書かれるという形になりますでしょうか。

森政府参考人 済みません、確認をさせていただきたいのは、保管の方法とかですか。あるいは、エスコートを受けている間はちゃんと武器を保管しなさいということでございますか。

 実施要領等に定めたいというふうに考えております。国土交通大臣が警備実施要領というのを定めて、これに沿って船舶所有者が警備計画をちゃんと立てているかどうかということをチェックさせていただくことになっておりますけれども、実施要領の中にそういった事項についてはきちっと明確に記述をしたいというふうに思っております。

坂元委員 再度確認ですが、先ほどの銃の保管のことに関しても、その実施要領に記されるということでよろしいでしょうか。

森政府参考人 今御質問のあった点については、省令の方に定めたいというふうに思っております。

坂元委員 ありがとうございました。

 では、続いてのテーマに移りたいと思います。

 先ほど、実は玉木委員からも御指摘がありましたが、海賊の定義と、日本の海上における国益を著しく害しているというふうに私も断言せざるを得ないシーシェパードに関してでございます。

 船の金品の強奪や人質をとっての身の代金の要求などが目的ではないということであっても、暴行もしくは脅迫を用い、またはその他の方法により船舶の安全な運航を妨げる行為という今回の法案の規定にのっとれば、これまでたびたび日本の調査捕鯨活動を妨害してきたシーシェパードが行っていることは間違いなく海賊行為であり、シーシェパードを海賊として扱ってよいというふうに私は考えます。

 実際、ことし二月二十五日、アメリカ連邦高裁におきまして、そのような、つまり、シーシェパードが海賊だという判決も出ておりますが、日本政府として、現在の認識をまずお伺いしたいと思います。

長田政府参考人 先生御指摘の判決でございますが、これはもともと二〇一一年の十二月に、調査捕鯨を行います日本鯨類研究所と共同船舶がシーシェパードに対して妨害行為の差しとめの申し立てを行ったものでございまして、実は第一審は、地方裁判所は申し立てを却下したわけでございますが、日本側がそれに対して控訴をいたしまして、その結果、先生御指摘のように、本年二月二十五日には第一審の判決を取り消して、裁判そのものは一審に差し戻して、現在、裁判が続いているというふうなことでございます。

 したがいまして、先生御指摘の海賊行為に当たるかどうかという、その私的目的というのをどういうふうに捉えるかということでございますが、私どもは、現在シーシェパードが行っております行為の目的とか手段等を考えますと、これを直ちに海賊行為と断定するということは困難というふうに考えておりまして、これはまさに、国際海洋法条約の海賊行為の定義にございます私的目的ということについての国際法上の議論が加盟国によりましていろいろ分かれている、そういうことを踏まえて、なかなか、それを直ちに海賊行為であるというふうに断定することは困難だというふうに従来から考えてきております。

 いずれにしろ、ただ一方で、シーシェパードの行為そのものが非常に危険な行為であって、不法な行為であるということは間違いございませんので、当該船を管轄する旗国、こういった国を初め関係国に対しまして、実効的な措置がとられるように、外務省等々と引き続き働きかけを続けてまいりたいと考えております。

坂元委員 海賊の定義というところで、今御答弁の中にありました旗国が密接に関係しているというか、旗国も責任を持てませんというものが海賊の定義の中に必要というか含まれるというふうに事前のお話では伺ったんですけれども、そのあたりについて、もう少し詳細に答弁をお願いいたします。

長田政府参考人 海洋法条約で、海賊ということを認定いたしますと、これは本来、公海上で、旗国が当該船舶については監督権を有するわけでございますが、それ以外の国についても、そういう船に対してさまざまな規制行為ができるということでございます。

 ただ、そういう旗国も含めて、世界の国々が、海洋法条約に基づく海賊の定義について、私的目的ということについての解釈が分かれておりますので、日本だけが例えば仮に海賊だというふうに認定をして、そういう船に対して一方的に警察活動を行うということについては国際法上さまざまな問題がございますので、現在、そこの点については、従来から慎重な立場を日本側としてはとっているということでございます。

坂元委員 さまざまな判断があるという他国に関して、つまり、具体的にはシーシェパードの旗国でありますオーストラリアとオランダに対して、では具体的にこの問題をどう解決していくのかというところで、政府としてどのような働きかけを現在行っておられるのでしょうか。また、現状改善について具体的な進展があるのかないのか、お答えいただきたいと思います。

五嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政府から、オーストラリア政府、それからオランダ政府に対しまして、船籍の剥奪や捜査当局による取り締まりなどを含めて、シーシェパードによる不法な妨害行為を防止するための実効的な措置がとられるよう、累次にわたって働きかけを行ってきております。

 それを受けまして、まずオランダ政府でございますが、シーシェパードの船籍剥奪を可能とする内容を含む国内法の成立の準備を進めているほか、シーシェパード・オランダ支部に対しまして注意喚起を継続していると承知をしております。

 また、オーストラリア政府におきましては、港湾における船舶検査、それから連邦警察による犯罪捜査が進展中であると承知をしております。

 いずれにいたしましても、シーシェパードによる妨害行為は海上の安全を脅かす危険な不法行為でございまして、これは断じて許されないものであります。今後とも引き続き関係国に働きかけていく考えでございます。

坂元委員 ぜひ、さらなる力を入れての働きかけをお願いしたいというふうに思います。

 そして、つまり、海賊とみなすかどうかというところも確かに論点ではありますけれども、具体的に、日本の船舶が、そして日本の海上の国益が著しく被害を受けているというところに関して、本日通しての私の質疑を受けて、日本船舶及び乗組員を守るということに対して、最後に大臣の御見解と思いを伺いたいというふうに思います。

太田国務大臣 この法律は、海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法案というように、海賊の定義とは何かというところから始まっているだけでなくて、海域ということも含めて、そして銃刀法の例外規定ということを慎重にしてやるという中に、この法案が構成されております。

 シーシェパードについては厳しい態度で臨んでいくということが基本的な態度で、これからどうするかということについては改めて政府全体で考えたいと思っているところです。

 この法案の件につきましては、さまざまな意味で、日本にとって大事な原油を輸入するということを初めとして、極めて重要である上に、世界の流れで、民間武装警備員というのを入れるということが具体的に展開されてきて、それが効果を上げてきているということの中で、私は、これが実施されていって、安心して輸入の航行ができるということができればというふうに強く願っているところでございます。

 さらに一層、この法律成立の後、きょう御指摘等々の問題について、しっかりと要領等も含めて検討し、具体化していきたいというふうに思っているところです。

坂元委員 ありがとうございます。

 私も、その海域という点、つまり、IMOが指定しているハイリスクエリアにおいて日本船舶の安全な航行を保障するという今回の法案の趣旨はよく理解しておりますし、民間の警備会社に武器の使用を認める、銃の使用を認めるという、繰り返しになりますが、画期的な法案である。つまり、慎重に扱わないといけないという点も十分理解しております。

 とはいえ、本当に日本の海の国益というものをしっかりと守っていくために、私たちも、一日でも早くこの法案を成立させるために、引き続き御協力をしていきたいということをお伝えさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金子委員長 次に、中丸啓君。

中丸委員 日本維新の会、中丸啓でございます。

 私は、海賊・テロ特別委員会の方に所属しておりまして、きょうは上野委員の差しかえで質問をさせていただきます。このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 まず、非常に基本的なことなんですけれども、この法案は、申請のあったところに対して認定を行うということだと思うんですけれども、そこから始まる。その認定の最高責任者は国土交通大臣であるのは、法案の条文どおりのことだと思います。

 一つ質問をさせていただきます。

 大臣は、民間の武装警備会社というのをごらんになったことがございますか。

太田国務大臣 直接、会社を訪問したことはございません。

中丸委員 普通はそうだと思います。

 ちなみに私は、実際に、民間武装会社の、現場で、第一線でやっている人たちが警備をしているところで彼らと会話をしたことがあります。場所は海の上ではなく、イラクのバグダッドですけれども、そういった中で彼らがどのような感じで仕事をしているかというのは、自分の目と耳で見た経験がある者として質問をさせていただきます。

 この認定を行うに当たって、最終的に日本語の書類で出てくると思うんですけれども、それを認定する人、もしくは機関でも構いませんが、そのスキルというのは何を担保に考えられているんでしょうか。

北村政府参考人 計画の認定に関しては、さまざまな事柄がございます。今、先生御質問の点、特に警備会社の点をおっしゃいましたので、特に武器の関係ですとか、いわゆる民間武装警備員が本当にそれだけのスキルを持っているのかとか、武器の使い方は日本でいろいろ決めるけれども、本当にそんなことは守られるのかとか、小銃と言っているけれども、そんな武器で本当に大丈夫なのかとか、いろいろなことをお考えではないかと思いますが、我々は、これは国土交通大臣の方で認定をするということで、実際には、事務方としては私ども海上保安庁と海事局、船のいろいろな構造的なことは海事局の方で認定を、手続をしますが、今先生おっしゃったスキルに関しては我々の方でチェックをして認定することになると思います。

 我々海上保安庁も、まさしく司法警察職員の一員として武器を所持しております。現に武器を使用したこともあります。日夜、そういうことを訓練している職員もいます。そういう意味では、実際にいろいろスキルをチェックするときにも、例えば、武器をどう撃っているか、そのときの構えであるとか、撃った後の姿勢であるとか、そういうことを、いわゆるプロが見ればそれなりの判断はできると思っておりまして、我々としても、その点については、我々の今まで培ってきたスキル、それを踏まえて十分対応できるように努力をしたい、頑張りたいと思っております。

 以上です。

中丸委員 ありがとうございます。プロが見るというふうにお約束をいただきましたので、そこは一つ安心をいたしました。

 その中で、今、構えを見る、そういう撃った後の状況を見るとおっしゃったんですけれども、それはいつですか。

北村政府参考人 これについては、実際に、特定警備従事者、いわゆる民間武装警備員になられる人を確認するわけですが、それはもちろん、日本の人を排除はしておりません。したがって、日本の方でも十分可能性はあるわけですが、現実問題としては、イギリスの警備会社におられる方がその任に当たられるだろう。そういう方については、我々としては、実際にはビデオを撮っていただく。ビデオを撮っていただいて、そしてそのビデオを見て総チェックをする。それからあとは、実際に知識がどの程度あるかというのは、テレビ電話などを通じてチェックをする。それからもちろん、その方のいろいろな今までの経歴等、いろいろな履歴等は当然いろいろ調べましたり、本人から出していただくことをベースにし、我々なりにも全部調べますので、そういうことをもとに総合的に判断をさせていただくことになると思います。

中丸委員 ありがとうございます。

 警備会社、イギリスというのもありましたけれども、フランスとか、特にヨーロッパかいわいにはたくさんありまして、例えば、イギリスの警備会社だからイギリスの退役軍人がやっているとは限らないですよね、御存じだと思います。質問のレクのときもお話しさせていただきましたけれども、実際は東南アジアから出稼ぎに来ている人が非常に多数を占めているのがこういう武装警備会社の実態であるということを、ぜひ大臣にも覚えておいていただきたいと思います。

 そういう中で、ちょっと質問をかえまして、認定を受けた会社の警備員が実際に乗船されて船を守るということをやるわけですけれども、そういった中で、実際、所有される武器、もちろん日本の自衛隊の武器を持っているはずもなく、大体、例えばAKとか、こういったものを使われるのではないかというふうな予測をされているということだったんですけれども、そういった場合の、特にライフルという言い方をされていますが、その有効射程距離と、実際の業務に当たって抑止としても必要な口径について、何かお考えがあれば教えてください。

北村政府参考人 特定警備に用いられる小銃は、今先生おっしゃいましたように、いわばライフル銃でございます。両手で保持し、肩づけして照準、発射できる形態のライフル銃を考えております。

 小銃の射程距離につきましては、正確に命中させることができるとされています有効射程距離が五百メーター前後ですので、そういうものだと認識しております。

 また、口径は七・六二ミリでございます。

 済みません、正確には七・六二ミリ以下でございました。失礼しました。

中丸委員 ありがとうございます。

 威嚇射撃等と、最悪、エンジンを撃つというところまで考えると、そのぐらいの射程は最低必要だろうと思いますけれども、もちろんライフルにも連射機能のあるものという設定もあると思うんですけれども、実際に、多少数が多い状態で、何隻かで囲まれて一気に乗ってきた場合、しかも近距離で多数を制圧する場合に、ライフルというのは実戦には余り向かないと私は思います。逆に、短い距離で瞬時に制圧ができるMP5みたいな形の方がいいと思うんですけれども、そういったものも要請があれば許可される予定ですか。

北村政府参考人 今、MP5のお尋ねがございましたが、MP5は短機関銃でございますが、これにつきましては、我々は、先ほど申しましたように、この海賊行為の防止のためには、比較的長距離の有効距離と正確な射撃性能がまず非常に有益だろう、こう考えておりますので、そういう意味で、先ほど小銃を申しました。

 今先生おっしゃいましたMP5のような短機関銃につきましては、拳銃弾を使用しておりますことから、有効射程は小銃よりも短い約二百メーターでございます。また、銃身が短いことから、小銃に比べて命中精度も劣るということで、我々としては、今回の民間武装警備に使用する武器としては適さないというふうに考えております。

 それでは、小銃で本当に大丈夫なのかということだと思いますが、今回の海賊対策を考えると、守られるべき船は日本船籍のタンカー、これは大体大きさが三百メーター、ある意味ではこの国会議事堂よりも大きいような長さを持った船、幅が六十メーターぐらい、そういう意味では巨大船であります。その巨大船に対して、海賊はスキフ、小さな十メーターぐらいの船で来るわけでして、それに対して、彼らが近づいてくるときに、いろいろ、先ほど来出ています武器の比例原則に基づいてやるわけです。

 もちろん、一番考えなきゃいかぬのは、タンカーに油を積んで、満載して戻ってくる、そういうときは当然、船は油を満載していますから、深く沈むわけです。でも、その深く沈んだときでも、海面から舷まで大体八メーターないし九メーターはある。そういう意味では、それだけの高さを上に持っているわけですから、そしてそれを、近づいてくる海賊に対して、威嚇射撃から始めていくわけでございまして、そういう意味では、しかも、相手は海賊ですから、もちろんいろいろな武器を持っている可能性はありますけれども、初めに申しました、そういう巨大船ですから、こちらは揺れない、基本的にはそんなに揺れない。向こうはスキフですから、これは小舟、木の葉のように揺れるわけでして、その安定度は全く違うわけですから、十分我々としては対抗できますし、そのチームも一チーム四人ですから、その中で今おっしゃったようなことも対応できるというふうに考えております。

中丸委員 ありがとうございます。

 現状ではという、制約がつくんじゃないかということをちょっと申し伝えて、質問に入らせていただきます。

 彼ら海賊は、今、現状起きているのは、皆さん御存じのように、政治目的というよりは、ほとんど身の代金だったりとか金品略奪を目的としております。

 そして、今回我が国も、この法案、非常に大事な法案だと思うんですが、これがこういう舞台に上がるまで非常に長い年月がかかっているという中で、ギリシャと我が国以外はもう導入済みということで、武装の警備がつくことによって非常に海賊の数は減っている。ということは、では本当に減って、それでおとなしくするのか。

 そもそも、守るということを考えるときに、今まではこうだったからこれでいいじゃないかではなくて、仕事が減ってきて、狙う船が減ってきて、今まで一隻四人、五人で向かってきた海賊が、では十隻四十人で来ることというのは想定されていますか。

北村政府参考人 おっしゃいますように、今までの形態をベースにして、我々は今必要な警備をする、民間武装の方に警備をしていただくということを基本に考えております。

 ただ、先生おっしゃいましたように、これからいろいろな形態、おっしゃるように変わってくるのかもしれません。それは変わってくれば、今の法律の枠内で対応できるようなことをまた考えていくということが、やはり当然あってしかるべきだと思います。

中丸委員 ありがとうございます。

 一回この法律を通して、規定をつくって、ガイドラインをつくって、認定基準をつくって、それで全てがよかったよかったで終わるものではない、その先も延々とこういったものは続いていくんだという御認識をいただければ、質問させていただいたかいがあると思います。

 少し話をかえまして、海賊行為を行う者が、今回の認定を受けて武装した警備兵がいる船に対して一定の活動を行ってきて、警告、威嚇射撃にもかかわらず乗船を試みてきた、銃撃戦が行われた。その結果、正当防衛の範囲内で、恐らく発砲するということで相手を射殺した場合、当然正当防衛を立証しないといけないですから、その場合の刑事管轄というのはどちらになるんですか。教えてください。

北村政府参考人 今御質問の点につきましては、国連海洋法条約の第九十二条に基づきまして、船舶は公海におきましては、原則として旗国の排他的管轄権に服することとされております。

 したがいまして、特定警備従事者、いわゆる民間武装警備員が海賊を殺害してしまった場合の刑事裁判管轄権は、その民間武装警備員が乗船する船舶の船籍国、つまり日本に属することになります。

 この場合は、海上保安庁が、この民間武装警備員の行為がこの法律なり刑法に違反しているかどうかについて捜査を行うということになります。

中丸委員 海保の皆さんが捜査に行かれるということで、当然、外洋において起こる事件でございますから、非常に遠隔地での捜査になると思います。

 これまでも恐らく実績はあると思うんですけれども、実際に遠隔地で捜査をするに当たって、もちろん相手国に対しての申し入れも必要だと思いますが、そういうものも含めて、細かくなくていいです、概略でいいので、どういった捜査方法を想定されていますか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいましたように、日本に管轄権があるということで、それに対して異議があればもちろんその調整はやるんですが、具体的な捜査のやり方について特に御紹介したいと思います。

 一つの例としては、平成二十三年三月にグアナバラ事件、海賊の事件というのがございました。これは日本船籍の船ではございません。日本船社が運航するバハマ籍のタンカーで、それはグアナバラという名前のタンカーでございますが、そこで海賊事件が起こりました。

 その際には、実はその海賊の逮捕については、先ほど一回出ていました、アデン湾などに派遣されています、護衛艦に派遣されています海上保安官が、まず海賊四名の逮捕に行きます。そして、日本から海上保安庁の航空機を出して、それで応援派遣をいたします。そして、その応援派遣された海上保安官が二チームおるんですが、その二チームのうち一チームは逮捕された海賊四名を航空機に乗せて、直ちに日本、東京に護送して、送致する。もう一チームは現地に残って、必要な捜査、実況見分から始まって、そういうものを行って、後の対応に耐えられるように、対応できるようにするということを現にやっておりました。

 これから日本籍船で同じようなことが仮に起こったとすれば、我々はこういう例に倣って、その時々に対応することになると思いますが、必ずしもアデン湾にいる護衛艦が近くにいるかどうかもわかりませんし、日本から行った方が早い場合もありますし、それはもうケース・バイ・ケースで一番迅速な対応を考えたい、きちっとした対応を考えたいと思っております。

中丸委員 ありがとうございます。

 そういう中で、実際の捜査をし、これは当然、起訴をして裁判をすると思うんですけれども、日本の検察庁が起訴して、日本の裁判所で裁判を行うという認識でよろしいでしょうか。

北村政府参考人 まさしくそのとおりでございまして、先ほど申しましたグアナバラ事件は、東京地検に送致し、そして所要の手続をして裁判所、東京地裁で裁判をしておりまして、もう既に、ことしの四月までに四人とも判決が出ています。たしか、うち一人は懲役十一年、二人は懲役十年、残る一人が不定期刑ということで五年から九年の刑、そういうふうな例がございます。

中丸委員 今の懲役になったのは、要は相手側、被告側ということになると思うんですけれども、要は乗っている武装警備員の正当防衛を証明する場合、当然、裁判になれば、本人が出廷するなり、証言が必要になると思うんですけれども、外国籍の企業、イギリスにしろフランスにしろ、そういったところの企業で雇われている世界各国から集まった傭兵的警備員の人を特定し、もちろん報告書を出すでしょうから特定はすると思うんですけれども、捜査の上、日本の裁判所に出廷していただくという認識でよろしいですか。

北村政府参考人 おっしゃいますように、私が先ほど申し上げたグアナバラは、海賊をどう処分したかという例で申し上げました。

 今先生がおっしゃっておられるのは、海賊に対して民間の武装、例えばイギリスの方がそういう正当防衛等でやった、それが正しいかどうかということでございますから。

 ただ、基本は旗国である日本でやる。そのときに、英国の民間武装警備員であれば、当然イギリスとも調整します。そういう関係国とそれぞれ調整をした上で、日本でやるということを基本原則で我々は考えております。

中丸委員 今答弁をいただいたように、非常に多国間で複雑な裁判になることが予想されます。そういった意味でも、やはりあらゆるシミュレーションを実際の法の施行までにぜひともしていただきまして、そういう諸外国との調整をどうするのか。その場合、当然、言葉が話せない、通じないということもありますから、通訳も含めて、どういう状態が一番公正な裁判ができるのかということも踏まえて、お考えいただきたいと思います。

 今申し上げたように、船舶所有企業が日本の、我が国の企業であっても、そもそも実態は、船長を初めとして乗組員のほとんどが外国人ということが非常に多くあります。警備員はもちろんなんですけれども、船を動かしている乗組員、船長、そういう人が全て外国人の中で、今、日本で、我が国で決めようというガイドラインというのは、あくまで日本企業を窓口として認定をし、日本語で申請をしてもらい、日本語のガイドラインを渡す。これが果たして、海の上に浮かんでいる船の中できっちりと遵守できているというのは、もちろんしてもらわなければならないんですけれども、現実問題として私は非常に難しいと思うんですけれども、その遵守を徹底することについて妙案をお持ちであると思いますので、お聞かせいただきたいと思います。

梶山副大臣 本法案におきましては、小銃を用いた警備が適正に行われるために、船舶所有者に対して、船舶ごとに実施要領に従った適切な特定警備計画を策定し、認定を得ることを義務づけるとともに、警備会社の訓練体制や警備員の法令知識、技能などについて、先ほど申しましたように、審査、確認をすることといたしております。

 委員御指摘のように、今、日本の会社が所有する船舶であっても、外国人船長であったり、外国人乗組員であったりということが多数見受けられるわけでありますけれども、この法律が通る前も、本来、日本の関係法令につきましては熟知をしてもらう、そのことによって船会社の信用を高めるということで、そういうことを徹底しているわけであります。

 これらの措置につきましても、船長、乗組員、警備員が外国人である場合においても、厳格に今度の実施要領に基づいたものが適用されるように、外国人を含めて関係各位に趣旨を正しく理解してもらって、小銃を用いた警備が適正に実施されるように周知徹底を図っていくということであります。

 さらに、万が一、小銃の使用状況について違法性が認められる場合には、先ほど申しましたように、厳正に司法手続をすることによりまして、本法案が遵守されるように万全を期してまいりたいと思っております。

中丸委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったように、厳正にということなので、従来も日本船籍の船に関しては守られていると非常に力強い御答弁を頂戴しまして、それだけやはり自信を持っておっしゃられるということは、何かエビデンスというか、根拠がおありの上で、もしも何かあれば、一例でも御紹介いただければと思うんですけれども。

梶山副大臣 ポートステートコントロールということで、寄港地によって、その国によって、その船の検査をされることがあります。そして、それが重なれば当然ブラックリストに載ってくる、ということは船社の信用につながる、ということは顧客をとれないということにもつながってくるわけでありまして、そういったことを今、日本の船社各社は厳正に行っているということであります。

中丸委員 ありがとうございます。安心いたしました。

 外国の方が多くて、言葉の壁というのは非常に大きいと思いますし、宗教、生活習慣、そういった違いも非常にある中で、やはり日本のルールというのを理解していただくということは非常に大事なポイントだと思いますので、ぜひとも今後この遂行に当たっても、引き続き遵守していただき、徹底していただきたいというふうに思います。

 こういう場合、あれをしてはいけない、これをしてはいけないという非常にネガティブなリストが、どうしても法律というのは出がちなんですけれども、やはり実戦の場、実際撃ち合いが起これば、そこは一つの戦場でございますから、最終的には書類ということにはなると思うんですけれども、一定の配慮というのは、当然、捜査をしていただく中でも必要になってくることは今後出てくると思います。その都度、ぜひとも厳正に見ていただきたいということを申し伝えさせていただきます。

 そういう中で、最後なんですが、法の遵守という観点からも、今申し上げたように、非常に言葉の壁というのは難しいことがございます。そして、日本企業が払うということは、もともと日本の中にある金融、お金であるということを考えれば、今後、こういった企業を自衛隊OB、特に陸自のOBも含めて、日本企業を研修、育成して、警備会社の運営を我が国の中で、国産でできるということが望ましいと私は非常に思うんですが、もちろん壁はたくさんあると思います。そういう日本企業の方が、任せる方も安心して任せられるということもあると思うんですが、最後に国土交通大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

金子委員長 既に持ち時間が終了しておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

太田国務大臣 この法律案におきましては、警備を依頼できる会社を外国の会社に限定しておりませんので、日本籍船に武装警備サービスを提供することは、日本の警備会社も可能でございます。

中丸委員 ありがとうございました。終わります。

金子委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 みんなの党の林宙紀です。

 私も、海賊・テロ対策特別委員会の方に所属させていただいておりまして、今回、そちらの委員会とも大変関係の深い法案であるということで、初めてこちらの国土交通委員会で質問させていただくことになりました。

 いろいろとこれまでと重複する質問等々あるかもしれませんが、そちらは御容赦いただきまして、また、今、中丸議員のまさしくスナイパーのような質問の後では大変難しいなというところですが、頑張って質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、海賊ということで、私は、思い返すに、かつて、数年前なんですが、実はマレーシアの方に、数カ月なんですけれども、ちょっと仕事で滞在をしたことがございました。

 当時も、マレーシア国内では海賊というのが少しイシューになっておりまして、これは皆さんも御存じの方が多いのではないかなと思いますが、いわゆるマラッカ海峡といったところでの海賊行為というのが国際的にも広く認知をされていたのかなと思います。

 現地でいろいろ話を聞くと、マレーシアの方々は大体のんびりなものですから、余り気にされていないようなところもありましたけれども、当然現地国政府としては、ここにはいろいろと気を使っていかなきゃならないということで、そういった報道も日々見ていたわけなんです。

 マラッカ海峡で言う海賊は、一つ手口が、これは海賊なのかなとその当時は思ったんですけれども、大体が、泊まっている船から物を盗んでいく、運が悪いことに人と鉢合わせしてしまった場合には、少し強盗のような形で持っていくという手口が大半だったわけです。こういった形で、マラッカ海峡の場合は、こういったものが海賊の手口であったということなんです。

 一方で、この法案でも対象になっておりますソマリア海賊、これについては、日々ニュースあるいは報道などで触れる割には、一体どんな形で狙ってくるのかというところが実はいまいちわかっておりません。

 それについて、まずは、このソマリア海賊と呼ばれる人々の実態というか、そういった手口についてどの程度国の方で把握されているのかということを教えていただきたいなと思います。

山崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 ソマリア海賊は、先生御指摘の東南アジア地域で発生している海賊事案と異なりまして、非常に凶悪な手段をとるというふうに認識しております。

 海賊が母船からスキフと呼ばれます小型船をおろして商船を襲撃し、乗員を人質にとって身の代金を要求するというのが一般的な手口でございます。その際に、AK47等の小銃、RPG―7等の対戦車砲で襲撃をするため、乗員が殺傷されたり、船舶自体が損傷したりする、また、船舶からの油の流出等で環境被害も生じるということが起こっております。大変大きな脅威であると認識しております。

 また、ソマリア海賊は、奪取した漁船や、ダウ船と呼ばれます中東特有の帆船を母船としておりまして、それらを使って、近年は、活動海域がアラビア海、インド洋西部全体に拡大していっているというふうに認識しております。

    〔委員長退席、大塚(高)委員長代理着席〕

林(宙)委員 詳細までお伝えいただいて、ありがとうございます。

 母船というお話も出てきましたが、それすらも奪取した船だったりするということなので、大変、私が先ほど例に挙げたマラッカ海峡の例とは、もちろんマラッカ海峡でもそういった例はあるのかもしれませんが、やはり侮れないというか、これは万全に万全を期すべき海域なのであるということはよく理解させていただいたつもりです。

 そうしますと、今回、民間武装警備員というものが乗船をできるようにするという制度設計になるわけだと思うんですけれども、先ほど来、二〇一一年に船主協会から要望があって今回の法案提出というところまで来ているというわけなんですが、事前にいろいろとお話をお伺いした限りは、これは一回乗船していただくのに結構なコストがかかる。もちろん、これは国が持つものではなくて、それぞれの民間船会社がお支払いをするということになっているわけなんですけれども、大体五百万円程度なのかなというお話を聞きました。

 あの海域、百往復ぐらいするということなので、結構民間としては払わなければいけない、これは仕方がないことなんだけれども、それはそれでやはりコスト負担にはなるということなんですけれども、大体これは民間でどのぐらい利用されるようなイメージでいらっしゃるのか。いろいろ御関係もあると思うので、話せるところまででということで教えていただければと思います。利用見込みということですね。

森政府参考人 委員御指摘のとおり、先ほど外務省から御説明のあった、海賊の活動海域が非常に拡大したことを踏まえまして、二〇一一年の八月に日本船主協会から民間武装警備員の乗船を認める制度の要望がなされ、先ほど累々御説明したとおり、IMOでのガイドラインの策定を踏まえて今回の法案の整備となった次第でございます。

 本法律案の対象船舶として予定している日本籍の原油タンカーでございますけれども、二〇一二年時点で九社、十七隻ございます。これらのタンカーは、我が国と中東との間を年間大体六から七回程度往復をいたしますので、掛け算をいたしますと、大体百往復程度の航海が本法律案による武装警備員の乗船対象になるものというふうに考えております。

林(宙)委員 ということで、これだけのコストをかけても、やはり守るべきものは守っていかなければいけないということで、今回の法案の意義というのは大変あるんじゃないかなというふうに理解しております。

 そうしますと、今回、武器というもの、武器というか、武装の警備員が乗るわけですから、当然そこに伴って武器も船上にあるという状況になるわけで、先ほどもいろいろとそのあたりのお話はあったんじゃないかなと思うんですが、まず、日本国内に武器が流入する可能性があるというようなことを指摘する向きも当然あるわけなんですね。

 そこはもちろん万全の体制で本法案でも取り組まれていることだと思いますけれども、まず、流入しないようになっているんですよという、そこのシステムのお話と、それから、日本以外に既に民間武装警備員の乗船を整えている、認めている国々というのはたくさんあるわけで、そういった国々で、例えば武器が間違って国内に流入してしまったとか、そういった事件がこれまでに起きたことがあるのかどうか、もしおわかりでしたらお願いをいたします。

    〔大塚(高)委員長代理退席、委員長着席〕

北村政府参考人 武器の国内流入の件でございます。

 国内流入を防止するために、この法律案におきましては、小銃などの所持や使用は、ハイリスクエリア、いわゆる海賊多発海域においてのみ認めるという仕組みはもう御承知の点でございます。

 そういうことから、この小銃などを積みおろす際に船長によって立ち会いをし確認をする、船内で小銃等の使用、保管に係る事項を記録した記録簿を備えつける、そして記載を船主に義務づけるということにしております。

 またさらに、小銃などによる警備が終了した船舶につきましては、最初に我が国の港に入る際には、船内に小銃が残っていないことを我々海上保安官が必ず立ち入って確認をすることとしております。

 既に民間武装警備員の制度を導入した国に武器の国内流入がないのかどうかという実態については、申しわけありませんが、ちょっと我々、そういう実態はまだ承知しておりませんが、今申しましたような措置により、小銃が我が国に流入することはないというふうに考えております。

林(宙)委員 済みません、今の答弁、もう少し詳しくお伺いしたいなと思うんですけれども、海上保安官が日本の国内に帰ってきた船に対してそういった確認をされるんだということだったんですが、これは、結構厳しく、いろいろな隅々まで見られるという権限は付されているということでよろしいんですか。

北村政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

 おっしゃいましたように、まず、先ほど申し上げましたようなことをもちろん確認した上、さらに疑念があれば隅々までちゃんと確認をさせていただくというつもりでございます。

林(宙)委員 そこまでしっかりとシステムが整っているということであれば、そういった武器が流入するんじゃないかということも懸念としては払拭されるのかなというふうに思っております。

 ちなみに、先ほど御質問の中で、船上での保管方法、今の御答弁の中でも少し触れられましたが、基本的には、そういった持ち込んだ小銃等々が暴発等々しないように、あるいは、そう簡単には悪用ができないような形でということで、船長が保管するとかいろいろあったとは思うんですけれども、万が一、これはもう本当に万が一のことですけれども、間違ってそういったことが起こってしまって誰かがけがをする、あるいは死亡してしまうような事故ということがもしあった場合、そういった場合に、こういった形で対処しましょうという、そういった手続というのは既に想定はされているんでしょうか。

北村政府参考人 おっしゃいますように、我々、先ほど先生も既におっしゃられていますけれども、民間武装警備員については知識や技能の確認をするだとか、それから、積み込まれた武器は、海賊への対応を行うとき以外は、船長の責任によって保管設備に施錠の上保管させるだとか、そういうさまざまなチェックをしますが、そういうようなことをしても残念ながら事故が発生したような場合、そういう場合には、もちろん我々海上保安官をその船舶に派遣して必要な捜査を行います。そして、さらにそういう危害がそれ以後発生することを防止するために、必要に応じて船舶所有者に対する措置命令を出すだとか、さらに、この民間武装警備員の確認を取り消す、そういうことによって事故の再発は防げるものと考えております。

林(宙)委員 そうしますと、今の御答弁ですと、何かあったときには、多分、海上保安官の方がその船が航行しているところまで行かれるというようなイメージでよろしいんでしょうか。

北村政府参考人 先ほども御質問もございましたが、国内であればもちろん容易なことですし、仮に洋上であった場合には、その場合には、必要があれば日本から捜査員も派遣する、場合によっては、アデン湾にいる海上保安官もいますから、それが行った方が少し早くできる場合もあるのかもしれません。それはケース・バイ・ケースでございまして、いずれにしても、そういう対応を考えていきたいと思います。

林(宙)委員 済みません、今、御答弁の語尾が少し気になったんですけれども、揚げ足をとるつもりはありません。考えていきたいと思いますとおっしゃったので、そういう想定がもう既にできているのか、それとも、今回、これを機にしっかりとまた構築していくのかというのは結構な差だと思うんですけれども、それは考えられる予定があるということで理解をしておりますので、結構です。

 そうすると、先ほどちょっとマラッカ海峡のお話を少し触れましたが、実は、当時、マレーシアにいたときは、私、当時の趣味はスキューバダイビングというのをやっておりましたので、結構その周りの海はきれいなんですね。趣味で、いろいろ海に行こう、あそこに行こう、このポイントに行こうなんて考えていたんですが、ボルネオ島という、マレーシアの端っこ、ボルネオ島の端っこは、フィリピンと海を挟んで向かい合っているところがあるんですが、あの辺は物すごくきれいなポイントなんです。あそこに行こうと思ったら、当時はたしかフィリピンの近海でも海賊が出るということで、禁止をされているエリアでございました。

 ただ、スポットとしては大変有名なスポットでして、そこは、毎週毎週確認をして、いつ行けるかなというようなことを考えていたようなところもあるんですけれども、ちょっとそのあたりの情勢が今どうなっているか、私は事細かには把握はしていないんですが、今回、アデン湾のところにエリアを絞っているわけなんですが、ほかにこういった激しい海賊活動が起こり得るエリアというのは、今の段階で想定はされていないのかどうか。今回のエリアで十分なのかどうか。

 というのは、例えば、ほかのエリアでも同じようなことが起こったときに、今回の法律を少し変えること、変えるというか、それにアレンジすることですぐ対応できますよといったようなことができるのかどうかという意味でお伺いをしたいと思います。

森政府参考人 本法律案による特定警備の実施が認められる海賊多発海域につきましては、各海域における海賊行為の態様、発生状況、あるいは国際社会の対応ぶり、例えばハイリスクエリアをどう設定するかとか、そういったことを踏まえて定めることを想定しております。

 委員御指摘のあった東南アジアでございますけれども、実は、従来は非常に件数が多うございまして、二〇〇八年以降、ソマリア海域の海賊がふえるまでは非常に件数が多うございました。二〇〇九年から二〇一一年については、ソマリアの海域の海賊が非常にふえまして、世界の半数以上を占めるような状態になったんですけれども、二〇一二年は、先ほどから御説明があるとおり、ソマリアの海賊が大幅に減った結果として、二〇一二年の数字だけ申し上げますと、ソマリア海賊が七十五件に対して東南アジアは百四件ということで、件数だけで見ると、多くの海賊が発生しております。

 しかしながら、東南アジア地域で発生している海賊の態様は、委員御指摘のとおりでございまして、いわゆる財布を失敬するとか、貴重品を失敬するとか、あるいは船舶の備品を失敬するとか、かつ、そこに押し入る海賊も、いわゆるナイフだとか、大きなものも、少し大きななたとか、こういったものを使って、海賊というか強盗に入るという事案がほとんどでございます。

 そういったものに対して、いわゆる武装警備で警護するのが適当かということを考えますと、やはり比例原則という観点からいくと、やや行き過ぎかという感じがしますので、今回の法案の中でもソマリア海域を指定する予定でございますけれども、現状ではこの海域で十分かというふうに考えております。

 もちろん、今後、海賊の態様等が変わって、例えば、国際的なハイリスクエリア等の見直しが行われた場合には、それも踏まえて、本法案の海賊多発海域についても見直しを行いたいと思っております。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 そうすると、東南アジアの海域においては、そこまで緊急を要するような状態ではないんだなというのがわかりました。

 これまでの質問でも恐らくあったと思うんですが、今回の法案の提出というのがここまで遅くなってしまったということは、何名様かが理由を聞かれていたと思うんですね。

 今、そういった形で、今後何かが起こったときに対応できるようなことを考えているのかというようなことをお伺いしたのは、まさしくここに関係してきていて、二〇一一年に船主協会からそういった要望があって、ここまで数年かかってきてしまいました、その理由はわかりましたよと。

 しかしながら、いただいた資料なんかを見ていると、やはり今、ギリシャと日本だけが主要海運国の中では乗船が認められていない、そういう制度がないという中で、先ほど中丸委員は、例えば、今まで一隻四、五人で来ていたものが、今度、十隻六十人などで来られてしまったらどうするんだというようなお話をされていましたが、まさに、そんな形で、ある特定の海域で、ほかの国は警備をしっかりと整えているにもかかわらず、日本だけがおくれてしまったということがあると、それは当然、狙い撃ちをされてしまうという可能性は出てくるわけでして、今回、おくれたということはもう仕方がないと思うんですが、今後、こういう事案に対して素早く対応しようというようなことが今考えられているのかどうか、それについてちょっとお伺いをしたいなと思います。

太田国務大臣 二〇〇九年のときの海賊対処法でも、かなり大きな論議が行われました。

 それは、海外ということにおいて、銃刀法の特例、銃を使うということはどうなのかというのは、戦後極めて重要な政治の課題だったということが日本独自の問題としてあります。そして、世界では、銃を国内で持っているという国もありますから、先ほど御質問のところは、そういう国もあればそういう国もないというところが実は非常に大きな違いでございます。

 そこで、慎重ということが基本にある上に、場所を指定し、そして、この重要度ということと世界の趨勢と安保理決議というものを踏まえて、世界が協力してという体制の中で、法律ができて、そしてこの法律案が提出されているということは、日本にとっては、スピード感を持って慎重にしていかなくてはならないことだと私は思います。

 おくれをとらないようにということで、そこは十分考えていかなくてはならないというふうに思っておりまして、先ほどから、中丸さんの質問からもありますけれども、そういう意味では、海賊行為の態様が変化した場合、あるいは海域というものが変化した場合、あるいは海賊が集団となる場合、あるいはロケットランチャーを初めとする、より高度のものを持つという場合、いろいろなことが想定されます。

 しかし、そのために、今までの論議のさまざまな慎重さを踏まえた上で、私は、対象船舶の見直しとか、国民生活に不可欠な物資の輸入が安全で確実に行われるよう、ここはまた非常に大事なところなので、しっかり対応してまいりたい、このように思っているところでございます。

林(宙)委員 歴史的な背景等々も含めまして今御答弁をいただいて、確かに、私はそのとおりだと思います。慎重さをキープした上でスピード感を上げていくというのが、そのバランスはなかなか難しいところかもしれませんが、そういった意識を政府としてずっと持っていくということは非常に大事なことであって、物すごく私は理解させていただいております。

 もしかすると今のお話にも重なってしまうのかもしれないんですが、やはり、こういった案件というのは何より人命というのがかかってきているわけで、ほかの法案などのように、例えば、ちょっと打ってみた政策が余り効果がないので、こういうふうに変えてみようとか、そういうことが余り通用しない類いのものだと思っているんです。

 今回も、例えば、海賊行為によって一人でも犠牲になってしまったとか、重大なけがを負ったとか、あるいは、命や身体的な被害はなかったにしても、最終的にかなり巨額の賠償金を取られてしまったとか、そういったことが起こってからでは遅いということもあるような性格の事案だと思っております。

 そうすると、今回、現在の問題への対応という意味では、この法案で私は十分対応できているというふうに思うんですけれども、例えば、今回は、対象になる船の種類は原油タンカーだということでお聞きしました。

 それは先ほど、一番最初にソマリア海賊の手口というものをお伺いしまして、現実的に原油タンカー以外は海賊が乗り込めないような船なので大丈夫だというふうに理解はしているんですが、ただ、こういった案件というのは、いつ何どき、どんな手を使ってくるのかわからないといったところも、杞憂なのかもしれませんが、ある程度想定はしておいた方がいいんじゃないかなと思ったりしています。

 例えば、原油タンカーはちょっとはしごがかけやすいというお話だったんですけれども、ほかの船でも、今度、はしごじゃない、何か新手のものを持ってきて乗り移るようなことが考えられないとは言えないと思うんです。今回、対象船舶は原油タンカー限定ということなんですけれども、仮に、ほかの船にも何か乗り移れるような方法を彼らが編み出したというようなときに、では、それも守れるようにしましょう、すぐに対応できるようにという意味で、対象船舶を例えば限定せずに置いておくというのは、これは現実的ではないんでしょうか。そのあたりをお伺いします。

太田国務大臣 今、現状を聞いて聴取をしたところは、日本船舶の航行実態を踏まえる、そして速力を見る、速力というのは、スピードがあれば海賊は来られませんから。それから構造、今の高さの問題等もあります。それで原油タンカーを指定しているところで、現状は、私は、ここでいけるというふうに思います。

 しかし、今御指摘のような点は素早く対応しなくてはいけませんので、海賊の実態等については、船会社のほかに国際海事機関やほかの国とも連携をして、最新情報を継続的に収集するということに努めたい、このように考えています。

林(宙)委員 大変、すとんと落ちる答弁をいただいたと思います。ありがとうございます。

 やはり、何というか、これを対決と言ったら大変申しわけないのかもしれないんですけれども、何でも、ある程度思想的に先手を打っておくというのは私は非常に大事なことなんじゃないかなと思います、特に危機管理においては。想定外という部分ももちろん生じてはくるんですけれども、どこまでそれを常日ごろ描いておくかというのは結構大事なことなんじゃないかなと思っていて、今回の法案がベースとなって、今後も、とにかく対応として後手に回るということがないようにだけ、ぜひこれはお願いをしたいなというふうに思っております。

 今回のこういった海賊行為等々というのを、そもそも何で発生するんだろうかということを考えていけば、それは、結局のところ、やはりソマリアという国の抱える政治的なあるいは社会的ないろいろな情勢がかかわってきているんじゃないかなと思います。

 ちょっとそちらの方でもお伺いしたいなと思っているんですが、ソマリア、分裂国家などと言われていますけれども、ついこの間でしたか、このソマリアもついにまとまり始めていて、連邦制が始まって、いわゆる統一するという方向に進んだというふうに情報を受け取っております。

 まず、この政治的なプロセスの現状というのを改めてここでお伺いしたいんですが、よろしいでしょうか。

岡村政府参考人 委員から、ソマリアの政治プロセスの現状についての御質問をいただきました。

 ソマリアにおきましては、御指摘のとおり、一九九一年、当時の政権が崩壊いたしました。それ以降、全土を統一的に支配する政府が存在しないという状態が長く続いてまいりました。周辺諸国の仲介により、二〇〇五年に暫定連邦政府が成立いたしまして、約束によりまして、その暫定統治期間が終了しました昨年、新憲法が制定され、議員が選出され、そして、その議員による大統領の選出、こうした一連の政治プロセスが行われてまいりました。そうしたプロセスを経まして、二十一年ぶりに統一政府が樹立されたということでございます。

 現在、こうした前向きの政治的進展を不可逆なものにすべく、新政府は国際社会と協力しながら国づくりに取り組んでいるというのが現状でございます。

林(宙)委員 今、政治プロセスについて御答弁いただきました。

 その中で今ちょっと気になったのが、統一政府樹立という表現なんですけれども、実は先日の本会議での外務大臣の御答弁の中でも同じ表現があったわけです。昨年、ソマリアで統一政府が樹立されといったような、同じ表現がされたわけなんですね。ちょっとそのときに、あっ、統一されたんだというふうに思ったんですが、少し違和感があったんです。

 その後に、調べてみると、いわゆる分裂していたソマリアの地域の中で、ソマリランド共和国といったところがございました。このソマリランド共和国というのは、実はこの連邦政府には参加していないんだというような立場をとっているというふうに聞いておったわけなんです。

 それで、その統一政府という言い方が果たして的を射ているのかどうかというところにちょっとだけ疑問を持ったんですけれども、少し、この統一政府樹立という表現、外務大臣も含めて、そういう表現になられたというのはどういった理由があったのかというのをお聞かせいただけますでしょうか。

岡村政府参考人 先生御指摘のとおり、ソマリランドという部分がございます。このソマリランドの政府は、かつて、一九九一年に独立宣言というのを行っておりまして、このたび、先ほど御説明しました統一政府の動きについても、連邦への参加については不参加という立場をとりあえずとっております。

 一方、現時点で、このソマリランドという国を国家として承認したという国は確認できておりません。

 その一方で、国際社会は非常に強い後押しを行いまして統一政府というのが樹立されておりまして、この統一政府はソマリアを代表する唯一の正統な政府として国際社会から認められている、こういう状態でございます。

 我が国としても、国際社会と歩調を合わせまして、昨年樹立された新政府をソマリアにおける唯一の統一政府としてこれからも関係を強化し、その平和樹立に貢献していく所存でございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 そうすると、ソマリランド共和国というのは、ソマリアの統一政府の中には形としては入っているんですか。その上で、ソマリランドだけが、いや、私たちは違うんだというような状況なんでしょうか。それとも、そもそもその地域としてソマリランドが入っていないという理解でいいんですか。もしおわかりでしたらお願いします。

岡村政府参考人 今、ソマリアの政府は、これは統一政府と呼びましたが、連邦政府でございます。ソマリランドが連邦に参加するということになれば、ソマリアということになりますので、我々はソマリアの一部と考えております。

林(宙)委員 ちょっと聞いたところによると、何か、憲法上はソマリランドもその統一政府の憲法に従っているとか、何となくそんな話は聞いたことがあるんですが、それは誤情報でよろしいんですか。もしおわかりでしたらお願いします。

岡村政府参考人 先ほど私の方から御説明しました憲法の中には、ソマリランドもソマリアの一部とはっきり明記されております。

林(宙)委員 わかりました。ありがとうございます。

 そうすると、ソマリランドも一応ソマリアの中に入ってはいるんだけれども、彼ら自身が不参加だという主張をされているというようなことなんでしょうね、イメージとしては。はい、ありがとうございます。

 そうしますと、先ほども少し申し上げましたが、この海賊行為等々に及ぶ原因をもとから断とうではないかともし考えた場合には、ソマリアの、これは復興と言っていいのか、平和的な政情安定というんですか、そういったものが根本的な解決策になっていくのかな、日本としてはやはりそういったところにも心を砕いていった方がいいんじゃないかなというふうには思います。

 今後、そういう意味で、日本がソマリアの平和を回復する、あるいは、先ほどソマリランドは不参加だと主張されているということでしたが、本当の意味での統一とか、そういったところに貢献していくことができる要素があるんじゃないかなと思うんですが、これについては、例えばこれまでどのような貢献がなされていたかも含めて、現状、それから、ほかの先進国等々と共同で動いたり、これから動いていく予定があるのかどうか、そういったことについてぜひ教えてください。

岡村政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

 こうした海賊問題等を含め、根本的解決ということを考えていかなければいけない。そのためには、貧困の削減、そして治安の改善といったことを通じて、ソマリアがようやく政府をつくりまして、国づくりを始めている、その中で復興と安定を実現していくということが、これはまさに原因をもとから断つために非常に重要でございます。

 我が国は、二〇〇七年以降、約六千二百万ドルの治安強化及び二億三千二百万ドルの人道支援、インフラ整備等の合わせまして総額二億九千三百九十万ドルの支援を国際機関等を通じて実施してきております。委員御指摘のとおり、ほかの国と共同でやるべきではないかと、国際社会とこの問題については共同してやっております。

 のみならず、実は、まさにこの週末から始まりますけれども、横浜で第五回アフリカ開発会議を行います。アフリカの主要なというかほとんどの国から代表団が来て、そして、アフリカ及び国際社会の主要な関係者が一堂に会しまして、TICAD5、アフリカ開発会議を行います。

 実は、その前日、五月三十一日に、ソマリア政府、アフリカ連合委員会とともに共同いたしまして、ソマリア特別会合というものを開催いたします。この会合では、ソマリアの国づくりを後押しし、ソマリア情勢の安定化に不可欠な社会経済開発に焦点を当てた議論を日本が主導して行おうと考えておりますので、まさに委員のおっしゃるとおりやっていきたいと思っております。

 今後とも、現地の治安状況やニーズ等を踏まえつつ、アメリカ、イギリス、国際機関、国連機関、そうしたところと緊密に連携した上で、ソマリアの復興及び安定化に向けて支援を実施していきたいと考えております。

林(宙)委員 アフリカ開発会議の熱いアピールをどうもありがとうございました。大変重要なことであるというのが御答弁からも伝わってきたので、非常にこれは私たちも重視していかなければいけないことだと思うんです。

 済みません、そんな中で大変恐縮なんですが、今、ほぼ三億ドルに近い資金を国際機関を通じて提供された。具体的には、これはどういった分野に使われたかというのはおわかりになりますか。

相星政府参考人 お答えいたします。

 まず、治安の強化に向けた支援ということで六千二百万ドルございましたが、その内訳は、警察支援ということで三千六百五十万ドル、国境管理のための支援ということで五百五十万ドル、あるいは小型武器の回収、廃棄ということで八百八十万ドルといったような支援がございます。

 あるいは、あと、人道支援、インフラ整備のための支援ということで、食糧援助、保健、水、衛生、教育といった基礎インフラの整備のための支援ということでユニセフ等の国際機関に対して一億八千四百万ドル等の支援、さらには、若年層の職業訓練、雇用創出のためにUNDP等に対して三千六百七十万ドル等といった支援を実施してきております。

林(宙)委員 そうしますと、今までは国際機関を通じということだったんですが、今後はもしかすると、二国間での協力というのも一つ選択肢には入ってくるのかなと思います。

 今お伺いした限りは、警察とか国境警備とか武器回収といったものに割と大きなお金が割かれてきたような印象でしたが、例えば、やはり、日本というところの特性を生かすと、人材育成の支援とか、あるいは、将来的には留学生を受け入れて相互理解を深めていきましょうといったソフト面での支援というのも視野に入れていくべきだと思いますが、今後、こういったことを積極的に進めていく、そういったことはお考えなのかどうかというところをお聞きして、最後の質問にいたしたいと思います。

芝田政府参考人 ただいま、ソフト面での、特に人材育成での支援について御質問がございました。

 我が国は、国費留学生という制度を有しております。この国費留学生の受け入れは、日本と諸外国との友好親善、相互理解の促進、それから途上国の将来を担う人材育成への協力の観点から、大変重要な外交ツールだと考えております。

 外務省は、国費留学生の採用に当たりましては、外交ツールとして有効に活用するため、当該国の状況も踏まえまして、できるだけ学生の出身国の多様化に努めているところでございます。

 ソマリアにつきましては、現在のところ、国費留学生は受け入れておりませんけれども、今後、文部科学省とも連携して、現地の情勢を見きわめつつ、環境が整った段階で検討してまいりたいというふうに考えております。

林(宙)委員 では、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

金子委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私も海賊・テロ特別委員会に所属をしておりまして、この民間警備会社の導入の問題については、船主協会の参考人質疑等々からの経緯もありますので、きょうは国土交通委員会で質問に立たせていただくことになりました。心より感謝を申し上げます。

 そこで、法案について質問をいたしますが、今回の法案は、ソマリアの海賊事件が多発する海域で、日本船舶への民間武装警備員の乗船を認めるものであります。

 まず、法案提出に至った経緯について国土交通大臣に伺いますが、本会議の趣旨説明では、被害の発生件数が近年急激に増加し、発生海域もインド洋やアラビア海にまで拡大する傾向を見せている、このように述べておられます。

 ソマリアの海賊事件が急増した二〇〇八年ごろから、ソマリア沖・アデン湾に各国が軍隊を派遣してきました。政府も、二〇〇九年以降、自衛隊を派遣し、護衛艦による民間船舶の護衛とP3C哨戒機による警戒監視活動を継続してきました。しかし、海賊は、軍隊が活動していないインド洋、アラビア海の広大な海域に活動拠点を移し、事件が多発する状態が継続してきました。

 こうしたもとで、今回、広大な海域で海賊に対処する方策として、日本船舶への民間武装警備員の乗船を認めることにした、そういうことですね。

太田国務大臣 そのとおりでございます。

 それから、二〇〇八年から、特にソマリア沖・アデン湾で海賊事案が発生件数がふえた。それは、二〇〇八年は急にふえたわけですが、二〇〇九年、一〇年、一一年、そして一二年はかなり減ってきましたが、そうした多発的な状況があります。

 その上に、減ったということの因としましては、こうした自衛艦を、安保理決議というものもございました、そうしたことを派遣したということも一つ。ベストマネジメントプラクティスということが効果を及ぼしたというのが一つ。そして、世界的に民間武装ガードというものが採用されたということが一つ。これらの要因によって減ってきたという状況が二〇一二年にはあった。

 したがって、今回は我が国が、もうギリシャと我が国だけ残っておりますけれども、そこで、民間武装ガードを出すということを提起させていただいたところでございます。

赤嶺委員 いろいろな要素で二〇一二年は減った、こういうことでありましたが、海賊事件の発生場所が軍隊の活動していない海域に広域化した、これは否定できない事実であります。

 もう一点確認をいたしますが、今回の民間武装警備員の導入は、自衛隊による護衛活動もそうですが、小銃を所持した警備員を乗船させることによって、海賊の側に個々の船舶への襲撃を思いとどまらせるためのもので、海賊そのものの根絶を目的としたものではないと思いますけれども、それはそういうことでよろしいでしょうか。

森政府参考人 ソマリアの海賊根絶のためには、先ほどから外務省の方から御答弁をいただいておりますけれども、ソマリアの安定、民生の安定、そういったものがやはり根本的な解決として必要かと思います。

 そういった意味では、現在海賊対処法に基づいて派遣をしております護衛艦の派遣もそうですし、今回法案を提出させていただいております民間武装警備員の乗船、これもいわば対症療法的な措置だというふうに認識をしております。

 したがって、根本的な解決のためには、先ほど申し上げたようなソマリアの安定、あるいは沿岸国の海上保安能力の向上、こういったものと並行して取り組む必要があるというふうに認識しております。

赤嶺委員 ソマリアの海賊の問題は、これまでも海の問題ではなく陸の問題だと言われてまいりましたけれども、今の御答弁でも対症療法だとおっしゃっている。

 そういたしますと、自衛隊は一体いつまで活動を続けるのか。防衛大臣は本会議で、法案が成立した後においても自衛隊の対処行動は引き続き実施していくと説明しておりますが、撤収の基準をどう考えているのか、この点を説明していただけますか。

左藤大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御存じのとおり、今、確かに海賊の件数は減っておりますけれども、その中で、これがもし、やめることになったらどうなるのか、こういうことを踏まえながら検討しなきゃなりませんが、やはり周りの諸外国の部隊を含む国際社会と連携をして、当該海域における海賊対処行動を確実に実施していく必要があると我々は考えております。そういう面で、情勢を見ながら、鑑みたいと思っております。

赤嶺委員 今の左藤政務官の御答弁では、このままの状況で、自衛隊は事実上、恒久的にあの海域にとどまり、ひたすら護衛を続けるということにならざるを得ません。

 そこで、外務省に伺います。

 ソマリアの再建を本格的に進めない限り、この問題は解決いたしません。

 先ほども議論がありましたが、昨年十一月にはソマリアの統一政府が樹立され、日本政府も承認をいたしました。過去二十一年間で初めてのことであります。こうした動きを国民的な和解と経済社会の再建につなげていくことが極めて重要です。人々を海賊行為に走らせる発端となった外国漁船による違法操業や有毒廃棄物の不法投棄を取り締まるための取り組みも急務であります。

 こうした点で、日本政府がAUなどによる地域の努力をしっかり支援していくことが重要だと思いますが、この点、いかがでしょうか。

城内大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ソマリアにおきましては、一九九一年に当時のバレ政権が崩壊して以来、全土を統一的に支配する政府が存在しない状況にありました。

 他方で、昨年十一月に、二〇〇五年に周辺諸国の仲介により成立した暫定連邦政府の暫定統治期間が終了し、新憲法の制定、議員の選出、議員による大統領の選出など一連の政治プロセスを経まして、二十一年ぶりに、アブディ・ファラ・シルドン首相を首班とする統一政府がようやく成立されたところであります。この政治的進展を不可逆なものとすべく、現在、新政府は、国際社会の協力のもと、国づくりに取り組んでいるところでございます。

 また、有毒廃棄物の不法投棄などに対する国際社会の取り組み状況につきましては、ソマリア政府による指摘を受けまして、国連は二〇一一年に調査を実施しましたが、これまで、外国漁船の違法操業や有毒廃棄物の不法投棄を裏づける証拠は発見されなかったというふうに伺っております。

 いずれにしましても、我が国は二〇〇七年以降、治安強化及び人道支援、インフラ整備の分野で総額二億九千三百九十万米ドルの支援を行ってきておりますし、また、昨年のソマリア連邦政府の成立を受けまして、今後とも現地の治安状況やニーズ等を踏まえつつ、ソマリアの社会経済開発を通じた民生の安定等、ソマリア情勢の安定化に向けて最大限努力する考えであります。

赤嶺委員 国連の調査で、不法投棄の事実はその調査で見つからなかったということですが、これまでも国連は累次にわたって、不法投棄、違法操業について国際社会に警告を発してまいりました。

 それで次に、民間武装警備員の基本的な事実関係について外務省に伺いますが、そもそも、これまでに民間武装警備員を導入した国はどのくらいあるのか、導入船舶の隻数も含めて明らかにしていただけますか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 民間武装警備を導入している国でございますが、全ての国を網羅的に承知している状況ではございませんが、例えば、主要海運国の中で自国籍船に民間武装警備を導入している国は、シンガポール、マルタ、イギリス、ノルウェー、ドイツ、デンマーク、アメリカ、フィリピン、ベルギー、スペイン、スウェーデン、韓国などがございます。

 また、便宜置籍船国・地域の中で、自国ないしは自地域籍船に民間武装警備を導入している国・地域は、パナマ、リベリア、マーシャル諸島、香港、バハマ、キプロスがあるというふうに承知しております。

 民間武装警備員を乗船させている船舶の隻数につきましては、国際的に余りデータはございませんので、私どもも承知しておりません。

赤嶺委員 民間武装警備員の導入について国際的な海事機関がどのような立場をとっているかという点について伺いますが、国際海事機関、IMOでは、二〇一二年五月に、民間武装警備員の使用に関する暫定ガイダンスが合意をされました。しかし、それは、現に海賊事件が多発し、警備員を導入する国が急増するもとで、何らかの基準を設ける必要性からまとめられたものであって、IMOとしては民間武装警備員の使用そのものを推奨しているわけではないと思いますが、この点は確認できますね。

森政府参考人 委員御指摘のとおり、当初、IMOは、民間武装警備員の使用を推奨する立場にないという考え方をとっておりました。

 しかしながら、先ほどから御答弁申し上げているとおり、商船に民間武装警備員を乗船させる国あるいは割合が非常に多くなったということ、また、民間武装警備員が海賊行為の凶暴化を招くことなく非常に有効に機能している、こういう認識のもとに、先ほど委員御指摘のあったように、平成二十四年の五月に民間武装警備会社の暫定的なガイダンスを作成することにしたものであります。

 実は、このガイダンスの中でも、従来の立場と違い、IMOは、従来は民間武装警備員の使用を推奨する立場にないということが明記されておったんですけれども、このガイダンスにはそういった記述が一切ございません。そういった意味からいくと、IMOも、民間武装警備員の乗船についての考え方が変更になったというふうに理解をしております。

赤嶺委員 今の御答弁、二〇一二年五月に合意されたガイダンスには、船舶所有者や船長向けのガイダンス、それから旗国向けのガイダンス、警備会社向けのガイダンスなどがありますが、今説明されたのは警備会社向けのガイダンスであって、警備会社向けのガイダンスに、推奨しないなどという記載をするはずがありません。

 船舶所有者、船長向けのガイダンスの最初のパラグラフに、推奨しているわけではないということが明記されているのではありませんか。

森政府参考人 委員御指摘のとおり、従来定めたガイダンスにはそういった記述がございます。

 ただ、平成二十四年五月にガイダンスをまとめた際に、従来のガイダンスとの整合性を図る必要というのをIMOは認識しておりまして、今後の検討の中でそういった整合性を図るというふうに理解をしております。

赤嶺委員 つまり、従来というか、船舶の所有者や船長向けのガイダンスの最初のパラグラフに、推奨しているわけではないとあるわけですよね、そういうものはね。

森政府参考人 御指摘のとおりでございます。

 平成二十四年の五月の議論でも、ほかのガイダンスの改定まで十分な時間がないということで、その整合性については、今後、検討してきちっと見直しをしていくということがIMOの会議の方で合意をされております。

赤嶺委員 あるかないかを聞いたのであって、間に合わなかったから、これから整合性を整えるためにやっていくだろうという、こんな答弁じゃ困りますよ。現に、推奨するわけではないという立場。これは、ちゃんと事実として答えていただかないと、本当に困ります。

 なぜ推奨しないのか。武装警備員を導入するかどうかを判断するのは旗国の権限だということはもちろんありますが、その上で、IMOでは、暴力行為のさらなる激化を招きかねないことへの懸念が示されてきました。

 旗国向けのガイダンスのパラグラフ三においても、旗国が政策決定を行うに際して、武装警備員の乗船や武器の使用が暴力行為のさらなる激化を招くおそれがあることを十分に考慮すべきことを求めています。少なくともそういう懸念が今も持たれていると思いますが、いかがですか。

森政府参考人 御存じのとおり、IMOの事務局長は、初めての日本人の、関水という者が事務局長についております。

 関水事務局長は、就任後に日本に来日をいたしまして、当時の野田総理とも会見をいたしまして、私も同席をさせていただきました。

 IMOの認識としては、民間武装警備員の有効性を認めて、考え方をやはり改める必要があるということで、このガイダンスを作成する必要があるということを事務局長がおっしゃっておりました。

 そういった意味では、新しいガイダンスが、推奨しないという記述を落としているのは、そういったIMOのお考え方が反映されているものと思われます。

 委員御指摘のとおり、従来のガイダンスについて、その記述がまだ残っているというのは事実でございますけれども、そういう理解というふうに私は思っております。

 また、そのガイダンスの策定後に各主要海運国も民間武装警備員の導入にかじを切ったわけでございまして、その結果として、ギリシャと日本が今取り残されているという状況でございます。

赤嶺委員 IMOに推奨しないという文言が残っていることもはっきりしております。いろいろ皆さんの経過で、こう言っていたよ、ああ言っていたよという類いの話であります。

 ただ、私が聞いたのは、民間警備会社の導入によって、武装警備員の乗船や武器の使用が暴力行為のさらなる激化を招くおそれがあることを十分に考慮すべきだと思いますけれども、この点は全く考慮しなくてよろしいんでしょうか。

森政府参考人 民間武装警備員が普及する前にそういう懸念があったというのは事実だと思います。

 ただ、現実に民間武装警備員が非常に普及をしてまいりまして、先ほどからの御質疑の中にありますように、いわゆる民間武装警備員が銃を見せるとか、あるいは武装警備員が乗っているという事実だけで、海賊も命をとられたくないわけです。結局、船舶を乗っ取って、身の代金を奪取して、それで今後のいい生活を過ごしたいというのが海賊の目的でございますので、そういった意味で、現状の民間武装警備員の導入では、今委員の御指摘のような海賊の凶暴化という懸念は払拭されて、むしろ効果ということの方が現実に認識をされているのではないかというふうに理解をしております。

赤嶺委員 海賊にも生活がかかっているというのは、海賊対処法をつくったときの、当時の浜田防衛大臣の名答弁でありました。彼らも生活がかかっているから、彼らの方から、そういう暴力行為のさらなる激化を招く前に彼らは去るだろうと。

 それでは、民間武装警備会社というのはどういうところか、この懸念について質問をいたします。

 どのような民間武装警備員の導入を考えているのかという点ですが、本会議の答弁では、イギリスの民間警備会社を挙げています。警備会社というと、何か日本国内にもある警備会社のような印象を与えますが、実際には特殊部隊を初めとする軍の出身者で構成され、海賊問題を契機に海事系の民間警備会社が急増していると言われています。

 そうした警備会社の実態がどうなっているのか。イラクでは一般市民を虐殺した事件も報じられましたが、そうした警備員が海事系の警備会社に流れてきているのか。この点は、外務省はどのように把握しておりますか。

山崎政府参考人 先生から今御質問がございました、世界の海上の民間の武装警備会社及び警備員の出身地等については、事柄の性格上、各社ともデータ等は出しておりませんので、私どもとしまして正確な情報を得ているわけではございません。

 他方、民間警備会社の方でも暴力的な事態になることについては抑制をしているのではないかと思われますのは、民間武装警備員が海賊または海賊と誤認して漁民等を間違って撃ってしまった、死に至らしめたという事例は承知をしておりません。

赤嶺委員 恐らく警備会社も暴力的な激化をさせないであろうという、きちんと掌握できない中での御答弁であります。

 民間武装警備員による警備の実態について、どのような武器使用が行われているのか。交戦になり海賊を殺害した事例、先ほど漁船の事例がありましたが、この点、把握はどうですか。

北村政府参考人 民間武装警備員の武器使用でございますけれども、この法律におきましては、もう先生御承知のように、第十五条におきまして、武器使用について厳格に規定をしております。つまり、基本的には、人命や財産への被害などを考慮して、武器使用の比例原則に従って段階的に行わせるということでございます。

 したがいまして、先ほど来何回か議論が出ておりますけれども、接近してくる海賊船に対しては、まず武器以外の手段で警告をして、それでもだめだったら小銃を顕示し、構え、上空なり海面に警告射撃をする。それでもだめな場合、海賊行為を諦めずに接近するような場合には、自己または乗船者の生命身体を防護するために必要なときは、相手船に対して射撃を行う。さらに、自己または乗船者に対する急迫不正の侵害があるときは、海賊に危害射撃も行うことが可能ということでございます。

 そういう意味では、武器使用については、段階的使用ということで、今先生が非常に御懸念のようなことが起こらないような基準をきちっと決め、それを守らせるということで対応したいと思っております。

 民間武装の警備員が誤射したような事例というのは把握はしておりませんが、公的な武装で誤射した事例があるとは聞いておりますので、我々としては、そういうようなことがないように、今のような手順をきちっと確立し、それを遵守させることにより、適切な対応をしていきたいと思っております。

赤嶺委員 法律で手順を担保しているから大丈夫だ、しかし、民間武装警備員の国籍もわからない、それから、警備の実態についてもきちんと掌握していない中で、法律で手順を定めているというお話であります。

 ただ、報道では、アメリカの民間武装警備員が海賊を殺害または負傷させ、そのまま放置した事例も報じられています。

 二〇一二年五月八日付のブルームバーグの報道ですが、二〇一一年三月二十五日に、インド洋を航行中のアボセットという貨物船が海賊の襲撃に遭い、乗船していた四人の警備員が一斉に応戦をいたしました。警備員を雇用するトライデント・グループという警備会社の社長は、海賊の何人かは恐らく死亡したか負傷したと述べ、正確な事実関係を聞かれると、負傷者の数を数えるのが我々の仕事ではないなどと述べています。こういう事例があるわけですよ。

 こういう事例、国際的な海事機関に報告はされていないのではありませんか。

森政府参考人 海賊の報告は、先ほど申し上げたIMBというところが情報を集約しておりますけれども、IMBに対してそういう報告がなされたかどうかということについては、私、申しわけありませんけれども、承知をしておりません。

 その一方で、実は、日本の商船隊というのは九五%が外国籍船でございまして、既にその外国籍船では、英国の警備会社等、信用のあるところを使って、その実績を踏まえて、この日本籍船に、安心できる警備会社に武装警備を依頼するということになると理解をしております。

 そういった意味では、ちょっと言葉は悪いんですけれども、パナマ籍等のいわゆる日本商船隊の外国籍船で、既に十分な実績とトライアルがなされた上での日本籍船への導入ということでありまして、民間武装警備員の不適切な銃撃とか、そういった事態が起こることは余り想定はできないと思っております。

 ただ、いずれにしても、今回の法令の中で、そういったことが起こらないようにきちっと担保もしておりますので、その法律の適正な実施に努めてまいりたいというふうに思っております。

赤嶺委員 今の法律でどう担保しているかという問題と、民間警備会社というのはどういう実態になっていて、そして国際的にもそれを報告する体制があるのかというのを聞いているわけです。

 無差別に武器を使用したり、時には罪のない漁民を殺害したり、訓練されていない警備員がいることを先ほどの報道では報じておりますし、イラクやアフガンの戦闘に参加した軍人が雇用され、船舶所有者の中には、海賊をただ退散させるためだけでなく、退治することを求める者もいるなどと報じられております。

 警備会社を乗船させた船、あるいはさまざまな自衛体制をとっている船は狙われなくなったけれども、今度は海賊は、まさにたくさんの船の中で、武装していない漁船やそういう地域のいろいろな船などを狙っていく。結局、警備体制や物理的な体制をどんなに強化しても、海賊の問題というのは……

金子委員長 赤嶺君に申し上げます。時間が超過しておりますので、おまとめください。

赤嶺委員 ありがとうございます。

 ソマリアの国家の再建とあわせてやらなければいけないということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

金子委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金子委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、海賊多発海域船舶警備法案に反対の討論を行います。

 本法案は、ソマリア海賊事件が多発するインド洋、アラビア海の海域で、日本船舶への民間武装警備員の乗船を可能にするものです。

 しかし、軍隊の派遣や民間船舶の武装化では、海賊問題は解決できません。ソマリア沖・アデン湾で海賊事件が急増した二〇〇八年ごろから各国が軍隊を派遣し、政府も二〇〇九年から自衛隊を派遣してきましたが、海賊事件の発生場所を軍隊が活動していない海域に広域化させただけでした。

 今回、民間武装警備員の導入に踏み切らざるを得なかったこと自身が、こうした対応では問題を解決できないことの証左であります。

 しかも、警備を実施するのは、軍の出身者で構成される民間警備会社です。国の定める警備の内容や手順に沿った対応を確保するといいますが、過度の武器使用によって海賊や漁民を殺害するおそれも指摘されております。

 ほとんどの場合は警告射撃までの間に退散するといいますが、海賊行為の対象を非武装船舶に集中させ、海賊の側の対応をエスカレートさせることにもなりかねません。

 ソマリアは、欧米列強や隣国エチオピアに植民地分割支配され、独立後も、米ソによる援助競争、アメリカ主導の国連平和強制部隊による恣意的な介入など、外部勢力の介入に翻弄されてきた歴史を持つ国です。

 内戦下で、外国漁船による違法操業、有毒廃棄物の不法投棄が横行したことが、元漁民を海賊行為に走らせたと言われています。

 政府に対し、国際社会と連携して、違法操業と不法投棄を直ちに取り締まるための対策と、ソマリアの再建に向けた支援に本腰を入れて取り組むことを求め、討論を終わります。

金子委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金子委員長 これより採決に入ります。

 海賊多発海域における日本船舶の警備に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金子委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

金子委員長 次に、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、去る五月二十七日、国土交通行政に関する実情調査のため、宮城県に視察を行いましたので、参加委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 参加委員は、自由民主党の望月義夫君、西村明宏君、松本文明君、土井亨君、民主党・無所属クラブの三日月大造君、大畠章宏君、寺島義幸君、日本維新の会の坂元大輔君、公明党の佐藤茂樹君、みんなの党の杉本かずみ君、日本共産党の穀田恵二君、そして私、金子恭之の十二名でございます。

 本視察は、東日本大震災の発生から二年二カ月が経過し、その復興に国土交通行政が大きな役割を担っていることから、被災地の復旧復興の状況を調査するものであり、各会派の理事を中心として実施をいたしました。

 報告に先立ち、東日本大震災により、とうとい生命を失われた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災者の皆様に対し、衷心よりお見舞い申し上げます。

 それでは、視察の概要について御報告いたします。

 まず、昨年十二月に仮復旧として本格運行を開始したJR気仙沼線のバス高速輸送システム、いわゆるBRTを視察し、本吉駅から歌津駅まで乗車しました。車中において、JR東日本仙台支社から、当面の措置として公共交通を早期運行させる必要性、運行頻度を高めることにより利便性の向上が図られるなど、BRTのメリットについて説明がありました。

 また、途中下車した陸前小泉駅において、菅原気仙沼市長から、JR気仙沼線の鉄道による早期復旧と財政支援の必要性、小泉地区の復旧復興計画などについて説明がありました。

 次に、南三陸町において、佐藤南三陸町長から、被災状況及び高台移転など、まちづくりの取り組みについて説明を聴取いたしました。佐藤町長からは、内陸部に建設が進められている三陸沿岸道路のインターチェンジの完成後には、町の中心がインターチェンジ周辺に移り、沿岸部の市街地が廃れる懸念から、復旧復興をスピードアップさせたいとの意見がありました。また、仮設の商店街であります南三陸さんさん商店街に寄り昼食をとりましたが、商店街の皆さんの明るさ、活気に勇気づけられました。その後、同町内で事業中の登米志津川道路を視察するとともに、復興道路である三陸沿岸道路の概要及び進捗状況について、川滝東北地方整備局道路部長から説明を聴取いたしました。

 次に、仙台塩釜港の視察を行いました。震災直後に壊滅的な被害を受けた同港湾が、平成二十四年度には取扱貨物量が震災前の水準を上回るなど、一部の施設で復旧工事が続いているものの、着実に回復してきているとの説明が高田塩釜港湾・空港整備事務所長からありました。

 次に、仙台湾南部海岸の閖上北釜工区で海岸堤防の復旧事業を視察いたしました。桜田仙台河川国道事務所長からは、被災した海岸堤防約三十キロメートルについて、これまでの直轄区間に加え、その他の区間も権限代行として国が実施しており、平成二十七年度末までには復旧完了の予定との説明がありました。

 最後に、仙台湾南部海岸の南に位置する岩沼市が進めている防災集団移転促進事業について、玉浦西地区の造成工事現場を視察するとともに、井口岩沼市長から事業の概要について説明を聴取いたしました。

 なお、第二管区海上保安本部及び東北地方整備局において、東北地方の復旧復興に向けて日夜取り組まれている大久保本部長、徳山東北地方整備局長、長谷川東北運輸局長を初め職員の皆様方に対し、参加委員を代表して、私から激励をいたしました。

 以上が調査の概要でありますが、震災発生から今日まで、復旧復興が着実に進んでいる一方で、完全な復興までは道半ばにあり、課題もまだまだ残されていることを実感いたしました。

 一日も早く住民の方々が安心してもとの生活に戻れますよう、地域住民の方々、地方公共団体、国土交通省など関係者が一体となって復旧復興に取り組むことが重要と痛感し、委員会としても最大限の努力を行う決意を新たにしたところであります。

 最後に、今回の調査に御協力いただきました方々に心から御礼を申し上げまして、報告とさせていただきます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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