衆議院

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第8号 平成28年4月19日(火曜日)

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平成二十八年四月十九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 谷  公一君

   理事 秋元  司君 理事 秋本 真利君

   理事 金子 恭之君 理事 小島 敏文君

   理事 鈴木 憲和君 理事 津村 啓介君

   理事 水戸 将史君 理事 樋口 尚也君

      青山 周平君    今村 雅弘君

      岩田 和親君    大串 正樹君

      大塚 高司君    大西 英男君

      加藤 鮎子君    門  博文君

      神谷  昇君    木内  均君

      工藤 彰三君    小池百合子君

      小林 鷹之君    今野 智博君

      佐藤ゆかり君    斎藤 洋明君

      新谷 正義君    田畑 裕明君

      武村 展英君    津島  淳君

      中村 裕之君    西村 明宏君

      根本 幸典君    橋本 英教君

      細田 健一君    宮内 秀樹君

      宮澤 博行君    望月 義夫君

      簗  和生君    山本 公一君

      荒井  聰君    神山 洋介君

      黒岩 宇洋君    小宮山泰子君

      重徳 和彦君    福田 昭夫君

      横山 博幸君    岡本 三成君

      北側 一雄君    中川 康洋君

      大平 喜信君    本村 伸子君

      井上 英孝君    椎木  保君

      野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      土井  亨君

   国土交通副大臣      山本 順三君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   国土交通大臣政務官    宮内 秀樹君

   国土交通大臣政務官    江島  潔君

   国土交通大臣政務官    津島  淳君

   会計検査院事務総局第三局長            須藤  晋君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官付参事官)           中村裕一郎君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    井上 剛志君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           福田 祐典君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房物流審議官)         羽尾 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         谷脇  暁君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  栗田 卓也君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        金尾 健司君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  森  昌文君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  由木 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤田 耕三君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  坂下 広朗君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  佐藤 善信君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 亀澤 玲治君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構副理事長)       花岡 洋文君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     新谷 正義君

  佐田玄一郎君     橋本 英教君

  中村 裕之君     根本 幸典君

  堀井  学君     武村 展英君

  前田 一男君     細田 健一君

  荒井  聰君     福田 昭夫君

  神山 洋介君     重徳 和彦君

  穀田 恵二君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     大塚 高司君

  武村 展英君     簗  和生君

  根本 幸典君     中村 裕之君

  橋本 英教君     佐田玄一郎君

  細田 健一君     小林 鷹之君

  重徳 和彦君     神山 洋介君

  福田 昭夫君     荒井  聰君

  大平 喜信君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     田畑 裕明君

  簗  和生君     佐藤ゆかり君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     青山 周平君

  田畑 裕明君     大串 正樹君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     堀井  学君

  大串 正樹君     前田 一男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房物流審議官羽尾一郎君、都市局長栗田卓也君、自動車局長藤井直樹君、海事局長坂下広朗君、内閣府政策統括官付参事官中村裕一郎君及び警察庁交通局長井上剛志君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津村啓介君。

津村委員 日本の物流政策について質問します。

 冒頭、このたびの熊本、大分での地震におきまして被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

 質問に入ります。

 物流の高コスト体質は日本経済において大変大きなウイークポイントとなってまいりました。今回の物効法の改正は、十年前に施行されました法律の認定対象を拡大することでトラックドライバーの皆さんの不足を解消して、またモーダルシフトの加速を促す大変重要な法案であるというふうに考えております。

 その上で、本日の質疑では三つの切り口で質問してまいりたいと思います。

 一つは、過去十年のこの法律の成果を定量的に確認していくということ。二つ目は、今回の改正案が新たに設定するモーダルシフトの目標について、その数値の妥当性を確認するということ。そして最後に、物流効率化のもう一つの重要なテーマであります端末物流につきまして、警察庁の所管する道路交通法の課題にも光を当てながら、次なる物流政策のテーマとして問題提起をしたいというふうに思っております。

 私は、今回の物効法の改正が非常に重要な意義を持つと同時に、引き続き課題を残したものだというふうに考えておりまして、地方の中小都市におきましては小型貨物車、小型のトラックの駐車場政策の失敗が中心市街地のドーナツ現象、空洞化をもたらしたのではないか、また、逆に言えば、国土交通省と警察庁が小型トラックの駐車場政策に正面から取り組んでいくことが地方創生にとって大変重要な意義を持つのではないか、そういった問題提起をさせていただきたいというふうに思っております。

 具体的な質問に入ってまいります。

 物流効率化法の第一条には、法律制定の目的として、流通業務の効率化、そして物資の流通に伴う環境への負荷の低減を掲げております。

 先般、もう十年前になりますけれども、この法律が制定された第百六十二国会では、政府参考人から、「本法に基づく認定というのは先ほども年間で百件から百五十件期待できるのではないかという推計をしておりますが、単純に一件当たり三百五十トンということで年間の排出量の削減がどのぐらいになるかということを試算いたしますと、約五万トンというようなオーダーになろうかというふうに思っております。」というふうな御答弁がございます。

 既に十年を経ておりますので、そのペースでいきますと、認定実績は千件から千五百件、CO2削減の効果は約五十万トンというオーダーになったはずでございます。

 皆さんにお配りいたしました資料を手にとっていただきたいと思うんですが、一枚目、図表1、図表2が、この十年間の物流効率化法の認定実績及びCO2削減実績でございます。

 上の表をごらんいただきますと、これまで、一昨年度、二十六年度までで二百五十七件の認定実績がございます。昨年度までですと二百八十九でしたでしょうか、実績がございますけれども、当初の答弁、予測されていた千件から千五百件というのと比べますとかなり数は限られている。そして、CO2削減効果に至っては、当初は年間約五万トン、十年間でいいますと五十万トンというオーダーだったはずが、図表2、右下の数字を見ていただきますと、十四万八千トンでございます。ざっくりと申し上げて、約三割の効果にとどまっているわけであります。

 先般、神山委員の方から、この認定件数が伸び悩んだ理由についての質問がありました。そのときの大臣の御答弁は、既存施設での活用が思ったより少なかった、新規の、新増設の倉庫の棟数からすればそこそこだったという趣旨の御説明がありましたけれども、図表1は新増設の倉庫の棟数と、その中での認定件数の推移でございます。十年間で新増設の倉庫は千八百十二、この棒を全部足し上げていただきますと千八百十二になりますが、そのうち二百五十七件、一四・二%の認定しかされていないということでありまして、先般の御説明である既存施設とは関係ない新増設のところでこれだけ認定が伸び悩んでいるということでありますが、大臣、これはどういうことでございますか。

石井国務大臣 御答弁させていただく前に、まず、熊本地震について一言申し上げます。

 平成二十八年熊本地震により、多数の方が亡くなられ、負傷されております。お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災された方に心よりお見舞いを申し上げたいと存じます。

 ただいまの御質問でございますが、御指摘いただいたとおり、法制定時は、新増設の物流施設を活用する取り組みのほか、既存の物流施設を活用した輸送網の集約の取り組みの進展も含め、年間百件から百五十件の認定を想定しておりました。しかし、実際には、物流施設に輸送網を集約する取り組みは、施設の新増設を契機として取り組まれることが多く、既存の物流施設を活用した認定事例は少ない結果となっております。

 また、新増設された倉庫の中で、一、二割程度しか認定されていないではないかという御指摘でございますが、この法律の特定流通業務施設につきましては、要件を定めておりまして、新増設される倉庫の全てが認定対象としての要件を満たすものとはなっておりません。

 具体的に要件を申し上げますと、一定規模以上、普通倉庫で三千平米以上、多階層では六千平米以上、冷蔵倉庫では六千平米以上の倉庫であること、荷さばきの合理化を図るための機械設備を導入すること、一般的な倉庫の機能である保管に加えて、流通加工を庫内で行うこと、そういった高度な機能を求めていたということから、新増設された倉庫のうち一、二割程度しか認定をされていないところでございます。

 ちなみに、今般の法改正では、物流施設を伴わない取り組みも、いわゆる倉庫をつくらなくても支援対象としておりまして……。失礼しました、先ほどの冷蔵倉庫は六千平米ではなくて六千立米でございました。失礼いたしました。

 今般の法改正では物流施設を伴わない取り組みも支援対象としておりまして、今後は、関係事業者への周知等を通じ、流通業務の効率化の取り組みの一層の拡大を図ってまいりたいと存じます。

津村委員 都道府県別の認定実績について、図表3をごらんください。一枚おめくりいただければと思います。

 物流は経済効率が大変重要なファクターでございますので、単純に四十七都道府県平等にということにはならないということは理解するわけでありますけれども、昨年度末まで、この三月末までの認定実績二百八十九件の都道府県別の認定件数がこちらでございます。

 一位は愛知県、断トツで五十八件、二位が大阪で二十七件、三位は福岡の二十二件、静岡二十一、埼玉、神奈川二十、そして兵庫が十九、岡山十一、この辺が二桁の認定件数でございます。一方で、岩手、福島、島根、鳥取、香川、徳島、高知、長崎、大分、宮崎、鹿児島、この十一県が認定ゼロでございまして、うち九県は西日本に偏っているという状況でございます。中国、四国、九州に集中しているということでございます。

 さらに一枚おめくりいただきますと、資本金規模別の認定実績でございます。

 いずれも、二週間半ほど前に質問通告をさせていただきまして、委員会が延びたものですから、その間に数字を、国交省の皆さんに御協力いただいて出したものでございますけれども、認定件数二百八十九件のうち複数社のものもございますので認定実績の会社数は三百三十一となっております。三億円以上が七十八件で、倉庫事業者が三億円以上の資本金のものが四百七十九ありますので、百社当たりの認定数は十六・二八。三億円以下は全部足し上げますと二百五十三社、倉庫事業者数は五千三百四十三社ありますので、百社当たりの認定数は四・三五。認定数に四倍の格差がございます。

 実は、十年前にこの物効法の施行、法律ができたときに、それ以前は中小企業にターゲットを絞った物流効率化の法律があって、その法律を廃止して、いわば対象を拡大する形でこの法律を制定したという経緯があります。当時の共産党の穀田さん、自民党の松野博一さんが、中小企業に向けた法律を廃止してより大きな法律をつくるのは結構だけれども、中小企業の方が手薄になることはありませんか、大企業に偏ることはありませんかという御質問をされた際に、当時の春田さんという政府参考人が、「従来の中小企業流通業務効率化促進法と比べまして、いろいろ、中小企業組合形式に限定していた特例の要件を緩和したり、先ほど申しましたように、食品流通関係の支援を新たに加えるというような措置を設けるというようなことをこの法律の中で規定している」というふうに述べられて、中小企業もしっかりやりますよという御答弁をなさいました。

 もう一枚おめくりいただきますと、中小企業に対する支援措置を活用した認定件数、図表5でございます。

 平成十七年以降、つまりこの法律が制定された十年前からの認定件数は、それ以前に合わせて二十二件あったものが、ゼロであります。また、食品流通、食品製造業者に対する支援措置を活用した認定件数、この制度を、さっきの春田答弁で、十年前にちゃんとやっているよということが、この十年間、実績ゼロであります。

 穀田さんや松野さんが懸念されたとおり、中小企業に対する支援は滞っているというふうにも読めるわけでございますが、大臣、今後、今回の法律改正において、それはどう措置されてどのように御対応になるのか、御答弁お願いします。

石井国務大臣 今、幅広く、まとめて御指摘をいただきました。

 まず、県でかなり認定実績が異なっているのではないかということですが、一定の地域的偏りがございます。これは、物流施設は一般的に、製造業等の貨物の需要に応じて設置されること、あるいは高速道路のインターチェンジや港湾の整備状況に応じて、物流の集約拠点としての利便性を勘案し設置されること等の事情によるものと考えております。

 また、中小企業がどうかということがございますが、委員から今御提示いただいた図表4を見ましても、平成二十七年度末までに認定した事業者、それから開発許可を受けた事業者は、両者とも全体の約七五%が資本金三億円以下でありますし、また資本金一千万円以下の事業者も見られまして、中小企業にも一定程度活用されてきたというふうに思っております。

 ただ、御指摘ありましたように、大企業に比べて中小企業の割合が少ないじゃないかということはございます。

 これは、特定流通業務施設の要件として、多額の投資を要する自動搬送装置等の荷さばきの合理化のための機械設備を求めてきたことも原因であるというふうに考えております。

 そのため、今般の改正におきましては、荷さばきの合理化のための機械設備の導入は必須要件といたしませんで、十分な荷さばきスペースの確保、動線や庫内レイアウトの改善等によって対応することも許容することとしております。

 この要件の見直しによりまして、これまで以上に中小企業者に活用されるというふうに考えております。

 また、図表5で、中小企業者に対する支援措置がないじゃないかということでございます。

 この中小企業者に対する支援措置としては、信用保証協会による債務保証に関する特例等がございました。これは、特定流通業務施設を中核とした計画の策定が前提でございまして、施設や土地を担保とした資金調達が可能な事業者には、この債務保証という制度活用のニーズが少なかったものと考えております。

 また、同じ図表5には、食品製造業者に対する支援措置としての食品流通構造改善促進機構による債務保証等がございますが、この実績はございません。これは、食品生産業者等に倉庫や上屋を整備するニーズが少なかったため、制度を活用し得る事業者がいなかったものというふうに考えております。

 法改正後は、特定流通業務施設を伴わない取り組みも支援対象としておりますので、十分な担保がない中小企業者や、あるいは共同配送等に取り組む食品生産業者等による支援措置の活用が期待をされます。

 したがいまして、法改正により支援対象となる取り組みの幅が広がったことについて、多くの関係事業者に十分な周知を図り、支援措置の活用を促したいと考えております。

津村委員 過去十年の振り返りをさせていただきました。

 もう一度まとめますと、一つは、認定数とCO2削減については当初の目標の約三〇%の成果であるということ、そして、中小企業支援策を約束されていましたが実績がゼロだということ、企業規模別の認定状況にも明らかな偏りがございます。

 また、地域的な偏在につきましては、これは物流というものの性質上、先ほども申し上げましたように、四十七都道府県を均等にという類いのものではございませんが、物流審議官部局におかれましては、マクロ的な分析をぜひしっかりやっていただきたいと思います。今回も、数字をお願いしてから少し時間がかかった部分、御苦労をかけたわけですけれども、逆に言えば、日ごろからごらんになってはいないんだなということを感じたところでございます。いらっしゃいますけれども、審議官初め、ぜひよろしくお願いいたします。

 こうしたこれまで十年間の反省を生かした上で、今回の改正案というものをより実効的なものにしていかなければいけない。今後、省令等をどういうふうにしていくかということもこれからの課題だというふうに思うんですが、今回の改正案の主眼は、第一条の目的にトラックドライバーの不足について対応するということを明記したこと、これが今回の改正案の肝なんだというふうに思います。「流通業務に必要な労働力の確保」という言葉が明示的に加わった。

 前回、十年前も、CO2の削減目標について、省令で各認定のたびにしっかり数字を出せということがあったために、先ほどの十四万八千という数字が出てくるわけでありますけれども、今後、この法改正後の省令作成に当たっては、ぜひ雇用環境の改善について定量的な目標を明記するべきだというふうに思います。

 私の方で勝手に試算をさせていただきました。

 今回、二〇二〇年度までに本法案によって貨物鉄道、内航海運で三十四億トンキロ分を転換するということでございます。これは御説明にもあったところでございますけれども。

 では、この十一年間でどれだけ成果が上がったのかということでいいますと、図表2の一番下に書いていますとおり、八億五千五百万トンキロ、十一年間で八億五千五百万トンキロを二百八十九件の認定によってCO2削減をした。CO2削減といいますか効率化したということであります。

 これから二〇二〇年度まであと四年しかないわけですけれども、一六年度を合わせて五年間しかないわけですけれども、半分以下の期間で八億五千五百万トンキロの四倍、三十四億トンキロの成果を上げる、つまり、ここから八倍認定していくんだということであります。

 にわかには信じがたいといいますか、相当頑張って認定をしていただかないと八倍の成果を四年間で上げることは難しいと思いますけれども、これはおっしゃっているわけですからぜひやっていただくとして、では、それはどれだけのトラックドライバーの不足解消に役立つのかといいますと、今、一年間のトラックドライバーの輸送トンキロが二千百億八百万トンキロだというふうに統計上ございます。これを三十四億トンキロ削減するとなれば、割り算しますと一・六二%。一・六二%の物流効率化、トラックドライバーの不足解消をこの四年間、五年間でやるということをおっしゃっているわけです。

 トラックドライバーの方の人数というのは、二年前ですか、八十万人というふうに統計上出ております。八十万掛ける一・六二%は、約一万三千人でございます。一万三千人のトラックドライバーの不足解消ということを、この五年、二〇二〇年度までにやるという数字になっているわけです。

 まあ、数字は私が計算して今いきなり申し上げていますので、数字についてのコメントをいただくわけじゃないんですが、大臣、通告させていただいております質問で、多分この件に関する最後の質問なんですけれども、今回の法改正後に、流通業務総合効率化事業の定量的な評価として、どのくらいの雇用削減といいますか、トラックドライバーの不足解消にどれだけの効果があったか。前回CO2についてお尋ねになったのと同じように、人数ベースで省令でしっかりと尋ねていくべきだと思いますが、今後の省令作成に当たって、人数についてきっちりフォーカスされていく、そういう御決意はございますか。

石井国務大臣 この法案による改正後の流通業務総合効率化事業は、二つの定量的な評価を行います。一つは、環境への負荷をどの程度低減するか。二つ目には、どの程度の省力化が図れるか。この二点でございます。

 環境負荷の低減につきましては、これまで、高機能な物流拠点整備に伴い集約されるトラックの輸送距離の短縮等により削減されるCO2排出量を評価してまいりました。今後も、配送共同化、モーダルシフト等、輸送の合理化に伴い削減されるCO2排出量を定量的に評価してまいります。

 次に、省力化の点につきましては、本法案によりまして、法の目的に労働力不足への対応の観点が加わることに伴いまして、新たに評価を行うこととするものであります。具体的には、手待ち時間の削減等、労働投入量の削減の度合いをはかる評価指標を基本方針の中で定めて、定量的に評価をしてまいりたいと存じます。

津村委員 きょうは、羽尾審議官以下担当の方も来ていただいておりますけれども、省令が非常に肝だと思います。法律改正だけではなくて、省令も含めた、運用も含めた御対応が、トラックドライバーの不足解消、バスの事故もございました、今、運転手の方々の雇用の不足、マンパワーの不足というのは大変重要な社会問題だと思いますので、ここは国交省さんにぜひ部局を超えて連携をしていただきまして、御対応いただきたいというふうに思います。

 今回の法改正に伴って、新しく貨物鉄道、内航海運などもターゲットに広がっていくわけですけれども、お話を聞く中で、通運業界の方からは、この法律も非常に重要だけれども、ことしが最終年度、五年目となるグリーン物流推進事業支援助成制度、三十一フィート級のコンテナの導入補助ということですけれども、こういったことを引き続き継続するであるとか、あるいは、今まさに熊本でそういう状況が起きているんだと思いますけれども、災害時などの特殊車両の通行許可の迅速化、こういったことも非常に重要だというような御要望もいただきました。あわせて言及しておきたいというふうに思います。

 続きまして、きょうは三つの角度からお話をさせていただくと申し上げました。この十年間の振り返り、そして今回の改正案のPDCA、どういう定量的な目標を持っているか、先ほど申し上げたように、雇用のことについてはしっかり数字を決めていただきたいと思います。三点目は、今回の改正案で積み残されてしまっている、まだ皆さんが対応されていないテーマについて、ぜひこれからの課題として問題提起させていただきたいというふうに思います。

 それは、端末物流の問題でございます。

 今回の物流センターの認定というのは、地域と地域のかなり長距離の輸送、物流、地域間物流のことにかなりフォーカスされたものでございますが、それは大型トラック、長距離トラックでございます。それが地域のトラックターミナルに来た後、その都市の中で今度は小型トラックに積みかえて、都市内の物流があるわけですけれども、そこにつきましては物流効率化法だけではカバーできない、むしろ道路交通法の世界が広がっているわけです。

 しかし、道路交通法の目的というのは交通安全であって、物流の効率化ではないために、残念ながら、渋滞の緩和ですとか、あるいは日本経済にとってのプラスマイナスということは、道路交通法は考えていないわけですね。そこをしっかり国土交通省さんと警察庁さんが歴史的な経緯を乗り越えて連携をしていただかないと、せっかく地域間での長距離トラックの物流が効率化されても、都市内で渋滞してしまっては効果は半減されてしまう、そういうことを申し上げたいわけであります。

 図表6をごらんいただければと思います。

 これが我が国の駐車場政策の変遷でございます。今では車は当たり前ですけれども、日本人が車というものに乗るようになったのは、多くの方は昭和三十年代からということでございます。駐車場法というのは昭和三十二年に制定をされました。これは、主として、自家用車、それから貨物を運ばない営業車を対象としたものであります。つまり、トラックには関係ない法律です。

 その二年後の昭和三十四年に自動車ターミナル法という法律ができました。これは、バスだとか大型貨物車、大型トラックの駐車スペースを、まさにトラックターミナルですね、都市のど真ん中から少し離れたところにそうしたトラックターミナルをたくさんつくって、そこから中には大型トラックは入らなくていいように、郊外に大型トラックを、言うなれば、外に出すためにつくった自動車ターミナル法でございます。

 そして、昭和三十五年に道路交通法が制定をされました。駐車は路外にというのが日本の駐車場政策の大方針、哲学だと伺っています。路外というのは、道路には駐車しない、道路の外にちゃんと駐車場を確保する、そういう哲学であります。ただし書きとして、貨物の積みおろしのための五分間の駐車は除くという例外条項がございます。

 つまり、当時はまだ普通の乗用車よりもトラックの方が世の中に多かったという時代でありまして、今からはなかなか想像できないんですけれども、車を持っている方の方が少なかった時代ですので、乗用車については、車庫証明で自分の家の駐車場はしっかり持ってください、そして、都市の中心部については駐車場法で一定の確保はしていますよと。そして、大型トラックについては、都心部から少し離れたトラックターミナルまでで、それ以上中に入らないでください。でも、小型トラックについては、当時は高度経済成長期の真っただ中ですから、まあ目をつぶりましょうというのがこの法律なんです。

 五分間の積みおろしは路上駐車を問わない、五分間でできるだけ早くやってくれれば、まあそこはいいよ、経済成長のために駐車場の確保ということは言っていられないよというのが当時の日本の国策であったというふうに読み取ることができます。

 しかし、その後、この三十八万平方キロメートルの、非常に稠密な人口密度を誇るといいますか、人口密度の高い日本において大変なモータリゼーションが進みまして、そのことは経済成長の果実でもあります、すばらしいことですけれども、結果として都市の渋滞は大変深刻になっているわけです。

 この五分間の小型トラックのお目こぼしが今の時代にそぐわないのではないかというのが私の問題意識でありまして、これは国交省さんだけでは閉じない、道路交通法にもかかわることですので、きょうは交通局長にも来ていただいているということであります。

 国交省さんも何もしていなかったわけではございませんで、平成六年には標準駐車場条例というものを改正されて、図表6の真ん中ら辺に書いていますけれども、おおむね一千平方メートル以上の建物に荷さばき駐車施設の附置を義務づけ、つまり、一千平方メートル以上の建物には必ず小型トラックの荷さばき用の駐車場をつけないと建築として許しませんよという義務づけがされたということであります。

 しかし、これは標準駐車場条例でありまして、条例の標準、こんな条例をつくったらいいんじゃないのということを各市町村に向けて言うなればアドバイスしたものなんですが、残念ながら、それからもう二十年たって、皆さん、図表7をごらんください、都道府県別に、その小型トラック向けの駐車場の条例を制定したのは、名前が書いてある百九十八都市のうちシャドーがかかっている八十九都市だけです。そして、この八十九都市の中には東京二十三区と東京の二十六の市が入っていますので、東京を除く四十六道府県では四十都市のみ。京都、大阪、兵庫、岡山、広島もですけれども、西日本の主要都市はどこもこの駐車場条例を実際には制定していない。国土交通省さんは笛を吹いたのかもしれませんが、誰も踊っていないという状況でございます。

 結局、五十年以上前の昭和三十年代の駐車場問題、その当時はまだトラックというのは特別なもので、トラックを優遇する余裕があった、あるいは、路上駐車でもいいから、まずは経済成長を追い求めていた時代ですけれども、今では都市内のこの優遇措置がかえって物流自体にとってマイナスになっている。時代が大きく変わって、物流優遇のつもりだったものが日本経済にとっては逆にマイナス要因になってしまっているということがこの図表6の歴史であります。

 そこで、御質問させていただきたいというふうに思いますけれども、交通局長にお伺いしたいというふうに思います。

 この路上駐車禁止の例外規定である五分ルール、例えば東京海洋大学さんが平成二十一年に行った研究報告では、これは国土交通省さんにいただいたんですけれども、小型貨物車の路上駐車時の平均時間は六・五分だそうでございます。分析対象となった四十八台中二十五台が五分以上の駐車をしていた。つまり、五分間ではそもそも足りないということも含めて、二重三重にこのルールが現状とそぐわないというふうに私は思うんですけれども、今後の道路交通法の改正でこの五分間ルールの見直しを対象にされるお考えはございますか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 道路交通法におきまして、貨物の積みおろしのための停止で五分を超えない時間のものを駐車から除外をいたしまして停車といたしておりますのは、このような短時間の停止による円滑な道路交通への悪影響とこうした貨物の積みおろしによる社会生活上の便益を比較考量いたしまして、駐車のみを禁止している場所におきましてはこうした短時間の停止を認めるべきであると考えておるからでございます。

 現状におきましても、こうした短時間の貨物の積みおろしの需要があるということを踏まえますれば、そのような場合の停止を全て禁止することについては慎重に検討すべきものであると考えておるところでございます。

 御指摘の調査の内容、詳細については承知をいたしておりませんが、五分以内の貨物の積みおろしのための停止が円滑な道路交通に相当の悪影響を与えているという実態がある場合には、各都道府県公安委員会におきまして、当該場所を駐車禁止ではなく駐停車禁止とする交通規制を行うなどの対策を検討していくこととなるものと考えているところでございます。

 また、先ほど道路交通法の目的について、交通の安全が目的ではないかという御指摘がございましたが、確かにおっしゃるとおり、道路交通の安全というのが最大の主眼でございますけれども、道路交通法の第一条におきましては、交通の安全と交通の円滑、さらには交通妨害等の交通に起因する障害の防止も道路交通法の目的とされておるところでございまして、私どもが行っております交通規制、さらにパーキングメーター、パーキングチケット発給設備の設置等のさまざまな道路交通法に基づく活動は、交通の安全のみではなく、交通の円滑化、さらには交通に起因する障害の防止も含めて総合的に判断してさまざまな施策を展開しておるものであるということについては、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。

津村委員 国土交通委員の皆さん、お配りした図表6の次に参考資料というのをつけました。「わかる 身につく交通教本」。これは、自動車学校とかで皆さんがお目にされたものだと思います。

 これを、表紙もつけましたけれども、おめくりいただきますと、「駐車と停車」「駐車と停車の意味」というのが左下のところにあります。ここには、「駐車とは、車が継続的に停止することや運転者が車から離れていてすぐに運転できない状態で停止することをいいます。人の乗り降りや、五分以内の荷物の積卸しのための停止の場合は駐車になりません。」と書いてありまして、いつの間にか、貨物の積みおろしが荷物の積みおろしにかわっています。

 貨物と荷物は語感としても全く違いますし、当時の昭和三十五年、一九六〇年の道交法制定時の社会実態、当時は荷物の積みおろしをする一般の方というのは余りいなくて、貨物の積みおろしをする小型トラックの問題がフォーカスされていたわけですけれども、いつの間にか荷物の積みおろしまでオーケーになって、一般の方の五分間の駐停車も事実上取り締まれなくなってしまっている。私、今荷物をおろしていたんですと言ったら、これで五分間誰でもとめられる状態になってしまっているわけです。

 この交通教本は法律上正しくない交通教本だと私は思います、なぜなら法律は貨物としか書いていないわけですから。こうしたなし崩し的な拡大解釈によって、駐車場問題、警察庁さんが放置といいますか、むしろこの交通教本の罪は重いと思うんです。

 道路交通法というのは非常に柔軟にこれまでも改正されていまして、数年に一度見直しをされていると思うんですが、次回の道交法改正に当たっては、ぜひ物流審議官部局ともしっかりと連携をしていただいて、この問題について一定の方向性、見解を示していただきたいというふうに御要望申し上げます。

 そして、大臣にお尋ねしていきたいと思うんです。先ほども図表7をごらんいただきました。せっかく二十年以上前に、まだ当時は、国土交通省さんの前、建設省さん、運輸省さんの時代ですけれども、こうした標準駐車場条例をつくって、荷さばき駐車場をつくろうということを全国の自治体に宣言されたわけだと思うんですが、残念ながら、まだまだ八十九自治体にとどまっている、しかも東京を除くと四十都市にとどまっているという現状について、大臣、これからどのように対応されますか。

石井国務大臣 今御指摘いただいたとおり、荷さばき車両の路上駐車対策の一環として、平成六年に標準駐車場条例を改正し、荷さばきのための駐車施設に関する条項を盛り込んでおります。

 これを受けて、各地方公共団体においては、地域の実情を踏まえ、必要に応じて、附置義務条例を改正し、荷さばきのための駐車施設に関する条項を盛り込んできております。

 一方、都市内物流をより一層効率化させていくためには、荷さばき駐車施設の整備をさらに加速化させていくことも有効な手段であるというふうに考えております。

 今後は、路上駐車対策としてだけではなく、物流効率化の観点からも、地方公共団体に対して附置義務条例の改正を働きかけるなど、地域の実情を踏まえた荷さばき駐車スペースの確保のための取り組みを推進していきたいと思っております。

津村委員 ありがとうございます。

 四十五分という短い時間の中でるる申し上げましたので、最後に改めて御提言を差し上げます。

 小型トラックの都市内の駐車場問題というのは、今後の物流政策において大変重要な肝だというふうに思います。今回の物効法改正で積み残された重要な宿題だというふうに思います。

 四点、提言をさせていただきます。

 一つは、平成六年に標準駐車場条例に記載された荷さばきスペースの附置義務を各自治体にしっかりと徹底する、よりしっかりとお伝えをしていくということが一点。

 二点目は、今、池袋等で新しい取り組みがございますけれども、ポケットローディング等の新しい仕組みをしっかりと支援していくこと。

 三点目は、短時間駐車の無料化。これは、有料駐車場はたくさんあるわけですけれども、短時間の駐車を、例えば十分、十五分無料化することで、そこにちょっととめることができる。ついでだから、もうちょっととめていようかということも含めて、経済効果も上がるそうでございます。こうした短時間駐車の無料化によって、路外の駐車場の利用率を上げること。

 そして四点目は、これは警察庁さんに申し上げたいんですけれども、こうした路外駐車場のキャパシティーを上げるという施策を十分にした上でのことでございますが、やはり今民間の駐車監視員制度に頼っている放置駐車の取り締まりについて、これは間接的な路上駐車禁止の取り締まりという格好になっているわけですけれども、やはりここは正面から五分間ルールの見直し等の関係法規の見直しを行って、より実態に即した形で効果的かつ現実的な取り締まりを行っていただきたいというふうに思います。

 先般、TPP特委の関係で、私、質問を二分間差し上げたところで終わりましたけれども、その二分間で申し上げたのは、国交省さんの物流審議官部局が大変ここまで御努力をされてきた、それまでは運輸省で、鉄道局であったり、自動車局であったり、海事局であったり、物流の問題を横断的に見る部局がなかなかなかったところを、物流審議官部局をたしか三年前ですか、平成二十五年につくられて部局横断的に物流政策をされてきた、その成果が今回の改正法だというふうに思うんですけれども、ぜひ、国土交通省の中での横断ではなくて、次は警察庁さん、省庁横断的に、この物流政策について、より日本の国益にかなう見直しを行っていただきたいな、縦割りをぜひ打破していただきたいなというふうに思っております。

 最後に、一点だけ確認をさせていただきます。

 トラックドライバーの不足解消というのが今回の法改正の主眼でございますけれども、既に、道路交通法、さきの改正におきまして、準中型免許というものが決められて、高卒の方を中心にトラックドライバーになりやすくなる、そういう法改正だと思うんですが、まだ施行時期が明確にされていない。来年の四月という観測報道がなされていますけれども、既に一年を切っている状態ですので、これは自動車教習所さんの対応ですとか、あるいは物流関連企業に就職したいと考えている高校生から見ると、早く結論を出してほしい、いつ施行されるんだということが大変気になっていると思うんですけれども、交通局長、この施行時期というのは来年の四月ということでよろしいですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、昨年の改正道路交通法につきましては、公布の日、すなわち平成二十七年六月十七日から二年以内に施行することとされております。

 現在、施行日の検討を含めまして、下位法令の制定等、施行に向けた準備を鋭意進めているところでございます。下位法令の制定に当たりましては、意見公募の手続等も行う予定でございますので、いましばらく御猶予を頂戴いたしたいと考えているところでございます。

津村委員 交通局長さんのお立場ですから、こういったことはお決めになられると思うんですけれども、できるだけ早く決めていただきたいというふうに思います。

 終わります。

谷委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。

 まず、熊本県そして大分県初め九州地方の地震で甚大な被害がございました。この国土交通委員会でも黙祷をさせていただきましたけれども、亡くなられたお一人お一人に心からの哀悼の意を表したいと思います。そして、被害に遭われた全ての皆様に心からのお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 日本共産党も対策本部をすぐに開きまして、現地に田村貴昭衆議院議員や真島省三衆議院議員、そして仁比聡平参議院議員が駆けつけまして、地元の党組織、地方議員団、支部、後援会の皆さんと救援活動そして救援募金に全力を挙げているところでございます。

 物流にかかわりまして、この問題で少しお話を伺いたいというふうに思います。

 自主避難の方については数をまだ把握していないということですけれども、二十万人避難をされているという報道もございます。現地から、土曜日も日曜日も、とにかく水が足りないんだ、すぐに水を送ってほしい、食料品も日用品も足りないんだ、送ってほしい、そういう現地のお声がございました。

 個別にいざ送ろうと思いましても、日本郵政では、熊本行きの荷物はそのとき受け付けが中止されておりました。私も名古屋で日本郵政の窓口に行きましたけれども、熊本行きの荷物の受け付けが中止になっておりました。調べてみますと、佐川急便さんもヤマト運輸さんも日本通運さんも受け付け中止となっておりました。日本郵政さんは、きょうの九時から一定再開をしたということですけれども、しかし、一定の地域です。一部の地域。上益城郡や阿蘇市や阿蘇郡、こういうところの荷物は受け付けが停止をされているという状況でございます。

 なぜこういうことになっているのかという点、そして現状はどうなっているのかという点、お示しをいただきたいというふうに思います。

羽尾政府参考人 お答えを申し上げます。

 宅配事業者による熊本県発着の輸送につきましては、発災日の四月十四日以降、全部または一部が停止しているところでございます。なお、御指摘のとおり、一部宅配事業者におきましては、順次一部ずつ解除し、再開をされているという状況にございます。

 このような状況は、宅配事業者が現地において、国、自治体の緊急支援物資輸送を最優先として対応していくこと等のためと聞いております。

 政府といたしましては、引き続き宅配事業者を含めた物流事業者と密接に連携し、まずは被災された方々への緊急支援物資の輸送に全力を挙げてまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 私どもも、日本共産党福岡県委員会から現地の皆さんが自分たちで物資を運んでおりますけれども、高速が通じているところまで高速で行きまして、その後に地道で被災地に入り、支援物資をお届けすることができました。自分たちで行くことは難しくても、全国の皆さん、支援したいと思っておられるというふうに思います。

 益城町の避難所では一食分がパンかおにぎりだけだ、一日二食だ、こういう状況になっております。何とか早く水、食料、日用品が被災者の皆さんに、現地に届くように、国土交通省としても早急な対策を打ってほしいというふうに思いますけれども、大臣の答弁をお願いしたいと思います。

石井国務大臣 国土交通省といたしましては、できることは全てやるという政府の方針を踏まえまして、水や食料等の緊急支援物資を必要とされている被災者の方々の手元へ一刻も早く行き渡るよう、内閣府等の関係機関と連携し、物流事業者も参画をさせまして、一体となって取り組んでいるところでございます。

 具体的には、まず、幹線の物流につきましては、大手物流事業者の参画のもとに、支援物資をトラック、鉄道、内航海運を利用して輸送する体制を確保するとともに、現地の近傍、佐賀県とか福岡県に支援物資を搬入する拠点を確保しているところでございます。

 次に、その拠点から市町村が指定する場所への支援物資の輸送につきましては、熊本県、物流事業者、自衛隊と連携して、その確保に努めております。

 また、人的な支援として、物流事業者から専門家を政府の非常対策本部、また熊本県庁等に派遣するよう指示をしております。

 これらの取り組みを進めまして、緊急支援物資を必要とされている被災者の方々へ一刻も早くお届けできるように、関係機関と連携をし、取り組んでまいりたいと存じます。

本村(伸)委員 被災者の皆さんの支援のために、物流を支える皆さんに対して財政的な支援も含めて、支援物資が被災地に届くようにということで対策をぜひ打っていただきたいというふうに思います。

 熊本県内の被災地では、指定の避難所に入ることができない人たちが車などで自主的に避難をされておりますけれども、行政による支援がないために水や食料の確保が困難になっているという状況がございます。

 指定された避難所だけではなく、車の中でお過ごしの方やあるいは臨時の避難所で過ごしてみえる方、福祉施設などでお過ごしの方、そういう方々にも物資がちゃんと届くようにしていただきたいんですけれども、この点については内閣府さんにお伺いをしたいと思います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災の教訓を踏まえまして、平成二十五年に災害対策基本法の改正がされました際、市町村が避難所を指定するとともに、避難所における被災者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう規定されたところでございます。

 これを受けまして、市町村における取り組みを進めるため、平成二十五年八月に、避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針というものを定めております。この中で、指定避難所として指定していない施設を避難所として使用した場合も、災害救助法に基づく国庫負担の対象となることを明記いたしまして、災害対策基本法に定めております生活環境を確保すべきことといたしております。

 この生活環境には、お尋ねの食料や物資の配布といったことも含まれておりまして、こうした取り組み指針について、このたびの地震を受け、改めて関係自治体に周知をしておりますので、今後ともその趣旨が徹底され、物資の支給を含め生活環境が確保されるよう、技術的な支援ですとか助言等を行ってまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 ぜひ徹底をしていただきたいというふうに思います。

 そして、人員が足りないというお声も聞きますので、人員の応援体制についても強化をしていただきたいと思います。

 熊本県では、災害時に国などから救援物資が来たときに受け入れる広域防災活動拠点ということで、三つの施設を事前に決めていたそうですけれども、今回の地震で全てその施設が被害を受けて、物資の受け入れができなくなったということも報道されております。

 本来は、パークドーム熊本、グランメッセ熊本、熊本県消防学校の三カ所で災害時には国やほかの都道府県などからの救援物資を集めて、各避難所にお届けをするということになっておりましたけれども、この三つの施設が全て被災をしまして、壁が崩れたり屋根が壊れたり、救援物資を受け入れることができないという状況となりました。

 熊本県では、急遽、県庁を救援の物資を受け入れるところということに決めましたけれども、広域防災活動拠点が災害時に使えないということにならないように、全国の広域防災活動拠点の総点検を要望しておきたいというふうに思います。

 また、国土交通省としても土日もなく昼夜頑張ってみえると思いますけれども、救援ですとか復旧復興、生活再建のために、ぜひ、職員の配置をふやすことも含めて、引き続き強化をしていただきたいということも要望をさせていただきたいというふうに思います。

 次に、今回の物流総合効率化法について伺いたいと思います。

 この法律は、そもそも経営基盤や資金調達力の弱い中小企業の支援に限定をされていた中小企業流通業務効率化促進法を廃止して、二〇〇五年に制定をされました。

 この物流総合効率化法は、分散立地されている従来型の倉庫ですとかあるいは流通加工工場などを一体化させた特定流通業務施設ということで、特定規模以上の大型の倉庫の建設を促進して流通業務の総合化、効率化を図るというものです。

 この総合効率化事業の計画を立て、認定を受けると、税制優遇ですとかあるいは立地規制の緩和など優遇措置を受けることができることとなります。

 そこで伺いますけれども、施行時から十年間、二〇〇五年から二〇一五年に税制の特別優遇の措置の減税効果はどうなっているのか、大企業そして中小企業、小規模事業者でそれぞれお示しいただきたいというふうに思います。

羽尾政府参考人 お答え申し上げます。

 認定総合効率化計画に記載されました特定流通業務施設に対しまして、国税につきましては法人税等の割り増し償却が、地方税につきましては固定資産税等の課税標準の特例が措置されております。

 小規模事業者を従業員数二十名以下の事業者、中小事業者を従業員数三百名以下または資本金三億円以下の事業者、そして大規模事業者を中小事業者以外の事業者といたしますと、平成十七年、二〇〇五年の十月の物流総合効率化法の施行から平成二十六年度、二〇一四年度末までの十年間におきまして、国税につきましては、大規模事業者の場合、約三億八千万円、中小事業者の場合、約二億一千万円、小規模事業者の場合、約三千二百万円、地方税につきましては、大規模事業者の場合、約三十八億九千万円、中小事業者の場合、約二十五億八千万円、小規模事業者の場合、約一億九千万円の減税があったものと推計いたしております。

本村(伸)委員 今答弁がございましたように、そのお示しいただいた数字を見てみましても、やはり大手物流会社とか大手荷主子会社に支援を広げたものだということがよくわかるというふうに思います。

 大企業は内部留保もふえておりますし、もともと、大企業が収益を上げるために経営や事業の効率化をするのは、やはり大企業みずからの責任で行うべきものだと私どもは考えております。

 今回の改定案では、支援の対象となる流通業務総合効率化事業について、二以上の者が連携して行うことを前提に、多様な取り組みへと対象を拡大し、効率化を図るというふうにしております。しかし、七〇%以上を占める小規模事業者は、帰りの荷物の確保もみずからの力では限界があり、元請や二次、三次の下請、あるいは水屋と言われる手配する利用運送事業者などに頼らざるを得ないというのが現状だというふうに思います。小規模事業者が主体的に二以上の者の連携を行うということは現実的には困難であるというのが現場の皆さんの声です。

 むしろ、そういう事業者の方から心配をされておりますのは、重層下請化が進む中で、大手運送会社や大手荷主による運賃の低下やコスト削減など、効率化のツケが回されるのではないかということが心配をされております。

 今やるべきことは、荷主や元請、大手企業による買いたたき、こういう物流業界ではびこっている不公正な取引を緊急に是正すること、そしてコスト削減の圧力の犠牲にさらされている小規模事業者にこそ手厚い支援を行うことが必要だと思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

石井国務大臣 これまでの物流総合効率化法では、大規模で高機能な物流施設である特定流通業務施設を中核とした輸送網の集約等の取り組みを支援の対象としてまいりました。

 今回の改正では、特定流通業務施設を中核としない地域内の共同配送等の取り組みも支援の対象とすることから、中小事業者や取扱貨物の規模が小さい地方の事業者も認定を受けやすい枠組みとなっております。

 また、従来からの中小企業を対象とした支援策である信用保証協会による債務保証の拡充や中小企業投資育成株式会社による増資の引き受けの充実の措置については、今後も継続することとしております。

 さらに、今回の改正では、例えば、小規模な共同配送に対応できるように、新たに貨物軽自動車運送事業に係る手続を行政手続のワンストップ化の対象としているところでございます。

 また、財政的な支援といたしましても、今回の改正に合わせ、平成二十八年度予算において計画策定経費の補助を創設しております。

 これらによりまして、本法案による新たな支援スキームについて、中小事業者にも積極的に活用していただくことを期待しております。

 国土交通省といたしましては、こうした支援策の活用を促すとともに、モデル事例の情報提供なども通じながら、中小・小規模事業者の取り組みを応援してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 後で重層下請問題ですとか小規模事業者の問題については質問をさせていただきますけれども、今回の法改定では、物流業務の効率化、省力化ということで労働力不足に対応するというふうにしておりますけれども、そもそも、どうして労働力不足が生まれたのか、どうして三K職場と言われるような職場が生まれる事態に至ったのか。

 私は、その大もとには物流事業の規制緩和があるというふうに考えております。そのことについては、二〇一五年十二月二十五日の「今後の物流政策の基本的な方向性等について」という答申でも語られております。この答申では、規制緩和について、プラスに作用しなかったと書いてありますけれども、その点、お示しいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の平成二年の規制緩和の効果につきましては、平成二十七年十二月の社会資本整備審議会・交通政策審議会答申「今後の物流政策の基本的な方向性等について」に、以下申し述べるとおり整理をされているところでございます。

 まず、この規制緩和は、競争促進によりサービスの多様化等が進み、市場の活性化という観点からは一定の成果があったと考えられるという整理がされております。

 その一方で、事業者数の増加による競争の激化、元請、下請関係の多層化の進行等により、事業者の経営環境が悪化しているということが述べられております。

 その結果、必ずしも法令遵守が徹底されず、社会保険の未加入事業者の顕在化等、市場の健全化に必ずしもプラスに作用しなかった面があるという整理がなされているところでございます。

本村(伸)委員 今御指摘がありましたように、規制緩和によって法令遵守が徹底されずという状況が横行をしているわけでございます。そういう中で、山陽道トンネルの事故のような、過労運転を生み、運転手が事故を起こしてしまうような状況になっているということだと思います。そして、社会保険などにも未加入、そういう運送原価を引き下げる事業者が顕在化している、福利厚生費も削るような、そういう職場を生み出してきたという分析だというふうに思います。

 やはり、先ほど申し上げましたように、規制緩和路線を見直すべきだということを強調させていただきたいというふうに思います。

 二〇一五年九月に実施をしましたトラック輸送状況の実態調査の結果が出ておりますけれども、労働者不足のことをどのように分析されているのか、お示しをいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年九月に実施しましたトラック輸送状況の実態調査によりますと、調査対象となりましたトラック運送事業者のうち約七割の事業者が運転者が不足していると回答しております。

 なお、ドライバーが不足している場合の対応としては、七八・四%の事業者が下請あるいは傭車で対応するとした一方で、四七・七%の事業者は対応できず輸送を断る場合があると回答しております。

 この調査結果に見られるとおり、トラック業界の労働力不足は深刻であり、輸送の確保にも一部影響が出ているものと認識をしているところでございます。

本村(伸)委員 今答弁いただきましたように、七割弱の事業者でドライバーは不足している。不足していてどう対応するかというと、結局、下請や傭車、繁忙期に台数が足りなくなったときだけ依頼するような、そういう対応でなされているということでございます。

 今答弁いただいたのは資料の一ですけれども、資料の二枚目をごらんいただきたいんですけれども、トラック業界の営業利益率の推移ということで載せております。この全日本トラック協会の資料では、営業利益率がどんどん下がっているわけですけれども、なぜそうなっているのか、お示しをいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 トラック運送事業は、本来の事業活動では平成十九年度から平成二十五年度まで赤字基調が継続をしております。

 この間、燃料価格の高騰等による輸送コストの増加を運賃に十分転嫁できなかったことが、トラック業界の営業利益率低下の主たる要因となっていると考えているところでございます。

本村(伸)委員 こういう状況では、労働条件が上がる見通しが立たない、人手不足が解消する見通しが立たないということになりますし、やはりこういう震災のときに人がいないということにもつながってまいります。

 二〇一五年十一月三十日の社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会、交通政策審議会交通体系分科会物流部会合同会議の中で、全日本交通運輸産業労働組合協議会の議長さんがこういう分析をされておられます。

 規制緩和後のトラック業界の現状ということで、一九九〇年十二月、参入の規制緩和、運賃の規制緩和。二〇〇三年四月、参入の規制の一層の緩和、営業区域制の廃止、保有台数の緩和、運賃のさらなる緩和。これによって道路貨物輸送業の現金給与総額の減少につながったんだと。全産業より総労働時間は二割多く、年収は二割五分から三割低い状況が続いている、規制緩和によってこういう状況になっている。改善基準告示違反や社会保険未加入など、そういう負の部分があるんだということをしっかり検証してほしいということで発言をされておられます。

 資料の三を見ていただきたいんですけれども、二〇一四年の年間総実労働時間ですけれども、全産業男子が年間二千百七十二時間なのに対し、トラックの運転手の皆さん方は二千五百八十六時間ということで、全産業男子と比べても四百十四時間も総実労働時間が長くなっている。一方で、年間の所得は右肩下がりの傾向で、全産業男子で五百三十六万円なのに対して、トラックの労働者は四百三万円だ、全産業に比べて百三十三万円も低くなっております。

 国交省さんの資料ですけれども、道路貨物運送業の中小型、小口配送をやられている方だというふうに思われますけれども、そういうところだと年間所得額というのは三百七十五万円、もっと低くなるわけでございます。

 資料四を見ていただきたいんですけれども、過労死も全産業の中で一番多い。これでは、やはり若い人が入ってこようということにはならないというふうに思います。

 こういう労働条件の抜本的な引き上げをしなければ、人手不足は深刻化するばかりだと思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

石井国務大臣 御指摘のように、トラックドライバーの確保に向けては、賃金や労働時間等のドライバーの労働条件の改善が重要であります。

 このため、国土交通省におきましては、厚生労働省と共同いたしまして、荷主も構成員に含めましたトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会を平成二十七年度に中央及び全都道府県に設置をいたしまして、長時間労働の抑制等に向けた議論を進めております。

 平成二十八年度からは、この協議会の枠組みの中で、トラック運送事業者と荷主との協働による待機時間の削減など長時間労働改善のためのパイロット事業を実施し、ベストプラクティスの創出とその普及促進を図ることとしております。

 また、去る二月十九日に開催をいたしました第三回の中央協議会におきまして、適正運賃の収受に向けた議論も開始したところであります。

 今後も、トラック運転者の労働条件の改善に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

本村(伸)委員 今、国交省の方で、中小企業庁とも連携をしまして、下請等中小企業の取引実態の把握ということで調査をされておられます。その中で、国交省がトラック運送業を調査されて、今ウエブ調査の七百三十五社の分が公表をされております。私は、この結果を見て、本当に愕然といたしました。

 その結果は、適正運賃・料金の収受ができていない、これが七〇%。荷主都合による荷待ち待機をさせられたが費用の支払いがない、七一%。燃料高騰分の費用を収受できていない、七九%。検品や商品の仕分け等の附帯作業をさせられたのに費用の支払いがない、五九%。高速道路利用を前提とした時間指定がされているのに高速道路料金の支払いがない、これが四三%。運送契約の書面化ができていない、七四%。本当にひどい実態だというふうに思います。これを改善しなければ、やはり人手不足というのは改善できないというふうに思います。

 今、先ほども大臣が答弁されましたけれども、トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会というふうなのをやっていると言いますけれども、その中身を見てみましても、とても実効ある対策がなされる、そういう展望が私にはなかなか見えてこない中身だというふうに思います。

 今お示しをしました取引の実態調査の結果を踏まえて、この実態を早急に改善させる実効ある施策を行うことを、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 先ほども御答弁申し上げたとおり、厚労省と共同してやっておりますトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会を最大限に活用いたしまして、トラック運転者の労働条件の改善に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

本村(伸)委員 実効ある対策について御紹介をしたいというふうに思うんですけれども、トラック産業の健全化・活性化に向けた有識者懇談会の第二回のときに、全日本トラック協会の常務理事の方が出された資料が大変重要だと感じております。

 資料の五にお示ししておりますけれども、運賃の流れをイメージとして資料で出されておりますけれども、十万円の運賃をもらうとすると、まず各社が一万円の手数料を取るという想定で、一次の受託者が十万円、二次は九万円、三次は八万円、四次は七万円。七次受託者、中小運送業者、零細運送業者の段階ともなると、こういう中間で吸い取られてしまって四万円になってしまうと。

 先ほどの答申でも、元請、下請関係の重層化が進行しているということで問題視されておりますけれども、この全日本トラック協会の常務理事の方が、トラック産業の健全化、活性化のためということで幾つか提言をされておられます。その一つは、新規参入の規制の強化をやるべきだということ。そして、建設業界にはある元請事業者への責任の強化、あるいは一括下請負、丸投げの原則禁止、こういうこともやるべきだと。そして、韓国では直接運送義務制度というものがありまして、運送事業者の下請可能割合を五〇%までということで法制化したということも示しながら、下請比率を五〇%以下にして、せめて三次下請までにするということも提言をされておられます。

 これとはちょっと別に労働者の立場から、建交労さんは、実運送を一次下請までというふうにするべきだということも提言をされております。私もそのとおりだというふうに思いますけれども、こういう提言も出されている。

 改善基準告示というのは荷主の理解が得られないと遵守することが難しいという御指摘や、あるいは、荷主は、運賃のほかにも燃料サーチャージ代や有料道路の利用料金ですとか附帯業務料ですとか車両留置料ですとか、そういう書面化ガイドラインに示されているような利用料や料金、実費を、下請、実運送の事業者にそのまま払うことということを提言されております。当たり前のことだと思いますけれども、それができていない現状の中でこういうふうな提言もされております。

 こうしたことをやれば、従業員の待遇改善につながり、人手不足の解消につながるというふうに書かれております。この改革の提案というのは非常に私は大事な提言だと思いますけれども、この提言について国交省として真剣に検討をされたんでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の点、何点かございましたけれども、まず新規参入の強化につきましては、そういった御要望も踏まえまして、平成二十七年六月から新規参入時のチェック体制の強化を図ったところでございます。具体的には、運輸開始前に許可条件遵守状況のチェックの厳格化、さらには運輸開始後は早期に適正化実施機関が現地確認を行う、こういった改善を行っているところでございます。

 引き続き関係者の皆様の御意見をしっかり伺いながら、トラック業界の適正化に努めてまいりたいと思っているところでございます。

 さらには、下請の関係でございます。これにつきましても、この構造自体が労働環境の悪化等を招いているのではないかということが私どもの審議会の分析の中でもうたわれているところでございまして、これについての取り組みについては非常に重要なことであろうかというふうに思っておるところでございます。

 これにつきましては、先ほど大臣が申し上げました、厚労省とともに行っております協議会の中におきまして、さらには、官邸主導で下請等中小企業の取引条件の改善に関する関係府省等連絡会議が設置をされて、政府全体となって下請の改善ということについて議論を進められているところでございますけれども、この中で、トラック事業につきましては、荷主と元請、さらには下請間の取引について、契約の書面化、適正な運賃の支払い等の実態を把握して、必要な対策を検討してまいりたいと考えているところでございます。

本村(伸)委員 建交労全国トラック部会の皆さんも重層的な下請構造による弊害というのを指摘されておりまして、トラック運送業界では重層的な下請構造がまかり通っているんだと。下請はさらに下請、孫請へ、そしてさらに下請、ひ孫請へと回されていくのが常態化しているということを指摘されておりまして、当然、元請は荷主から受けた運賃をそのまま下請へ払うのではなく、一〇%から二〇%の事務手数料、マージンを差し引いて下請へと回す。下請が孫請へ回す際にも同様なんだと。当初荷主から支払われるはずの運賃が最下請へ回るころには六〇%程度にまで減額をされてしまっているということを指摘されておりまして、この重層的な下請構造というのは、重層的な収奪構造にほかならないというふうに指摘をされております。

 これに、近年増加をしております大手製造会社などを親会社とした、自社車両は少ないか、もしくは、ない物流子会社が絡むと、さらにこの収奪構造は厳しくなる。契約解除をちらつかせながら、運賃の引き下げを強要するということにとどまらず、配車ですとか運行管理まで支配力を及ぼしてくるというふうに言われております。この重層下請構造、重層的な収奪構造を可能にしているのが、貨物利用運送事業法であり、貨物自動車運送事業法だということで、こういう重層下請構造を許してはならないというふうに思います。

 伺いたいのは、この重層的な下請構造を改善させるために、自社でトラックを持たず貨物情報をあっせんする、下請に流す利用運送業者や、あるいは、大手製造会社などを親会社としている、自社車両は少ない、もしくは、ないという物流子会社の実態を国交省は把握しているのかという点、そして、この重層的な下請構造を改善させるためにも、利用運送業者や物流子会社の実態を国交省は把握して、一定の自社運行比率を義務づけるなど法的な規制を強化するべきだと思いますけれども、大臣、お答えいただきたいと思います。

羽尾政府参考人 委員御指摘の、利用運送事業や大手製造会社等の物流子会社からトラック事業者への下請の実態調査につきましてでございます。

 私ども国土交通省では平成二十六年に、トラック輸送における適正な取引や輸送の安全確保を図るため、貨物利用運送事業者とトラック運送事業者の取引関係や輸送の安全確保に関する実態調査を実施いたしました。

 この調査結果によれば、一部の貨物利用運送事業者において、トラック運送事業に関連する法令等の理解が不十分であることが示されていました。

 また、本年二月には、官邸主導の下請等中小企業の取引条件の改善に関する関係府省等連絡会議における取り組みの一環としまして、トラック運送事業者間の取引関係の実態調査を実施したところです。なお、この調査は、御指摘の利用運送事業や大手製造会社等の物流子会社からトラック事業者への下請に限定したものではございません。

 ただ、この調査結果によれば、トラック事業者の七〇%が適正運賃・料金の収受ができていない、あるいは、二七%が原価を考慮せずに一方的に運賃を決定されたなどと回答いたしております。

 私どもとしましても、この調査結果を受けまして、利用運送事業者に対して、トラック運送事業に関する講習会への参加の要請、監査の強化充実、各地方運輸局、運輸支局の適正取引相談窓口の周知などを行うことによりまして、関係法令の理解の促進、不当な行為の防止を図っております。

 本年度も、引き続き、トラック運送事業に関する講習会への参加要請を行うとともに、昨年度、各地方運輸局、運輸支局の適正取引相談窓口に相談のあった貨物利用運送事業者に対する重点的な監査を行うことにより、トラック運送事業の取引環境の改善、輸送の安全確保に一層努めてまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 物流業界ではびこる不公正な取引を緊急に是正していただきたいと思います。そのためにも、大臣が、物流業界を所管する大臣として、重層的な下請構造の解消や運賃の引き上げ、賃上げ要請など、荷主も含めて物流業界に直接要請をしていただきたいということを最後に要請いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 それでは、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案ということで、会派として最後になりましたけれども、三十分間質疑をさせていただきます。

 まずは、質疑に入る前に、熊本県を中心に地震が発生をいたしまして、本当に、お亡くなりになられた方には心からお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われた方々には心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。そういった気持ちも踏まえた上で質疑をさせていただきたいと思います。

 まずは、モーダルシフトについてお伺いいたします。

 モーダルシフトは、CO2排出削減効果が高く、また労働力不足対策にも資するということで、平成二年の運輸政策審議会の答申からだというふうに思いますが、当時の運輸省が約二十五年前から進めてきていると承知をしております。しかし、これまでに大きな進捗が見られているというふうには言えないのではないかなというふうに思います。

 昨年十二月に出されました社会資本整備審議会と交通政策審議会の答申におきましても、モーダルシフトについてはさまざまな施策が講じられてきたが、鉄道、内航海運全体の分担率というのはほぼ横ばい、変わらないということであります。一方、モーダルシフトが可能な長距離貨物で見れば、内航海運に効果の発現というのが見られておりますけれども、鉄道については十分な効果を発現しているというふうにはこれまた言えないという状況であると思います。

 その中で、まず鉄道へのモーダルシフトについて質問をさせていただきますけれども、鉄道へのモーダルシフトが進まない原因として、災害時などに輸送障害のおそれがあり、輸送の安定性を欠くといった理由が多く挙げられているというふうに聞いております。

 鉄道ではトラブル発生時に旅客を優先する運用が行われており、それが維持される限り、貨物鉄道への信頼性というのはなかなか向上しないんではないかなというふうに考えます。

 また、国際海上輸送で標準化されている四十フィートコンテナを鉄道に搭載するとトンネルの高さにひっかかってしまう。主に西日本では鉄道輸送ができないといった問題があるというふうにも伺っております。こうした問題点がクリアされないと、鉄道へのモーダルシフトと唱えてみても、絵に描いた餅とはっきり言わざるを得ないと考えます。

 これらの点に関し、改善の方向性と具体策について大臣にお聞きさせていただきます。

石井国務大臣 モーダルシフトを推進する上では、今御指摘いただいたように、万一輸送障害が発生した場合にも、適切な代替輸送を実施すること等によりまして安定的な貨物鉄道サービスを提供することを通じまして、輸送障害に対する荷主の不安を解消することが必要であります。

 このため、JR貨物、鉄道利用運送事業者、荷主等を含めた検討の場を活用いたしまして、関係者が連携し、輸送障害時の運用の改善を加速することとしております。

 具体的には、機関車、荷役機械の整備やトラック等を活用した代替輸送体制の拡充、荷主の立場に立った情報共有体制の整備等を関係者が連携して進めております。

 また、トンネルの高さの制約によりまして背高海上コンテナの鉄道輸送が行えない区間が存在することにつきましても、既存インフラの有効活用の観点から改善を図ることが必要であります。

 このため、背高海上コンテナの輸送制約区間の解消を目的といたしまして、昨年度から二年間で、三十センチ高さが低い新たな低床貨車の開発支援を環境省と連携して行っております。

 これらの対策を関係者が着実に行うことによりまして、荷主のモーダルシフトに対する不安や解消可能な施設面での制約を解消いたしまして、荷主等への働きかけとあわせて、貨物鉄道へのモーダルシフトを一層推進していく必要があると認識をしております。

井上(英)委員 大臣に答弁をいただきまして、もちろん、輸送障害で、荷主が圧倒的に強い業界といいますか、全てになりますので、ただ、これはもう仕方がないことなんですけれども、輸送障害が起きたらトラックで代替輸送というのを考えるということなんですけれども、根本的にトラック輸送の今の現状を変えるためにモーダルシフトを考えているわけですから、モーダルシフトの代替でまたトラック輸送という議論になってくると本末転倒になってくるかと思います。

 ただ、輸送するということから考えると、実質的にはそういった本当に具体的なことを考えていかないと今の現状の鉄道だけの話でいくと限界があるのも事実でありますので、早く環境改善といいますか、整備をやっていただけたらというふうに思いますし、物理的な、トンネルにひっかかってしまうというようなことではやはりだめですし、それがどうしても西日本に多いというのが非常に気になりますので、またその点もよろしくお願いしたいと思います。

 次に、船、内航海運についてのモーダルシフトについてお伺いしますけれども、内航海運についてもモーダルシフトの主力の担い手として大きな期待を持って見ているところでありますけれども、しかしながら、船員の高齢化というのが進んでおります。また、若者の船員養成にも尽力いただいているものの、道半ばというところであります。

 船舶についても老朽化というのが非常に進んでいるもので、更新がなかなか図られていないというのがあります。やはり、内航海運の業界全体が疲弊しているというような印象を持っております。船員を志望する若者がふえていくような、やはり魅力的な職種とするような環境づくりというのが求められると考えます。

 また、そもそも、内航海運は輸送速度や運賃の面から輸送に適した貨物が限られる。それから、発着する港湾から物流拠点へのトラック輸送が必要になる。これは横持ちと言うんですけれども、必要になるということがデメリットであるというふうに言われております。内航海運の速達性が向上すれば、輸送網の充実とコスト低減につながり、地方のすぐれた港湾施設の利用が促進されるというふうに考えており、海運、港湾両面からの取り組みというのが求められると考えます。

 こうしたことを通じて内航海運全体がやはり元気になって、その担い手であるモーダルシフトが大きく飛躍していくということが期待できるんじゃないかと思いますけれども、国交省としてどのように取り組もうとしているのか、政務官、お答えいただけますでしょうか。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 内航海運へのモーダルシフトの推進については重要な政策課題だというふうに考えておりまして、陸上輸送から海上輸送への転換に当たりましては、荷主のニーズに合致した発着時間の設定やトラックを荷役作業なく積み込めるフェリーの活用などによりまして、荷主のリードタイムに対応する工夫がなされているところでございます。

 また、港湾においては、フェリーやローロー船に対応した岸壁や、背後圏との交通の円滑化を図るための臨港道路などの整備を積極的に行っているところでございます。

 加えまして、モーダルシフトを一層推進するための海上輸送への転換に貢献する荷主や物流事業者を官民連携で大々的にPRするとともに、今般御審議いただいております物流総合効率化法の枠組みの中で、海上輸送にも積極的な活用を促してまいりたいというふうに思っております。

 また、委員御指摘の、建造制度や税制の特例措置によりまして船舶の代替建造とか大型化を支援するということや、あるいは新人の船員をふやすための海上技術学校、短大定員拡大などの取り組み等も行って、内航海運全体の活性化を図ってまいりたいと考えております。

井上(英)委員 政務官、ありがとうございます。

 本当に、だんだん若い方が、ドライバーも高齢化しているというのが今回のモーダルシフトを促進していくという理由の大きい一つだと思うんですけれども、結果的には船員も含めて高齢化しているというのが現状であります。

 それから、業界がやはり元気じゃないので、新しい船をつくっていませんので、今、船舶なんかも船齢が法定耐用年数十四年なんですけれども、それを超える老齢船と言われるのが全体の七割を超えているというような現状もあります。ぜひとも、まずは業界が元気になるようにしていただきたいと思います。

 船舶、船員の高齢化というのも一点あるんですけれども、国内輸送をやっていく上において、恐らく業界なんかはカボタージュ制度を堅持してくれというような議論も一方ではあるのかなというふうに思います。

 カボタージュ制度というのは、規制なんですけれども、国内輸送を自国の業者に限定するか、他国業者に開放するのか、今は限定しているという規制なんですね。もちろん国際的な市場開放と競争優先というこの大きな流れの中で、その規制を続けていくのか否かというのは非常に慎重な議論が必要じゃないかというふうに私は思っています。

 また、そういう中で、規制ですから、かけるとメリットがありデメリットがあるし、規制をなくすとまたメリット、デメリットがあるというのが当然であります。

 よく言われるのは、利用者からすれば、例えば、海運コストというのが非常に安くなるというようなメリットがありますし、クルーズ、これもまた後ほど出てくるかと思います港湾法なんかでも触れられることかと思いますけれども、クルーズ料金なんかも非常に安くなったりするというメリットをよく訴えられる一面がある反面、国内物流、内航海運というのはトンキロベースで国内の貨物輸送の約四割というのを担っています。特に、鉄鋼、セメント、石油といった産業基礎物資に限れば、比率は八割というふうにも言われています。そういった非常に基幹的な輸送を外国船籍、また外国人船員に委ねなければならなくなるというような心配といいますか、そういった一面もあります。

 さらには、今回、熊本で地震もありましたけれども、東日本大震災も先般ありました。そのときには、放射能汚染を恐れて、欧州船が東京への寄港というのを回避した。それによって、神戸に着けて、荷物を含めて非常に大混乱したというような経過もあります。そのときに、福島沖、そのような現状下でも被災地の港に燃料とか物資を結局輸送したのは、日本人の船員が乗り込んでいる内航船だったという経過もたしかあるかと思います。

 そういうこともいろいろ踏まえて考えると、慎重にしっかりと議論をしていただいて、業界の要望も含めて御理解をいただいて、施策に反映していただけたらというふうに思います。

 次に、モーダルシフトの実現というのは、本当に、国みずから行うのではなくて、事業者の取り組みを誘引するための取り組みであるというふうに思います。当然、一朝一夕に進まないということは理解しておりますけれども、四半世紀かけてなかなか進捗していないというのも、これまた問題ではないかなと思います。

 国交省においては、荷主企業及び物流事業者等、または物流にかかわる関係者によって構成される協議会が実施するモーダルシフト等推進事業に対し支援を行ってきたというのは十分承知をしておりますが、モーダルシフトに関する取り組みを開始してから、先ほども申し上げたようにもう四半世紀たっております。そろそろ何らかのブレークスルー、抜本的な打開策というのが必要ではないかというふうに思います。

 そこで、国交省の関係部局だけではなく、他省庁も含めた政府全体としてモーダルシフトを強力に進めていく必要があると思いますけれども、大臣、改めて決意をよろしくお願いいたします。

石井国務大臣 トラック輸送から鉄道や内航船舶による輸送へのモーダルシフトは、物流の省力化とさらなる効率化による生産性の向上はもとより、地球温暖化対策にも大きく寄与するものであります。

 近年では、荷主企業の環境意識の高まりやトラックドライバー不足を背景といたしまして、モーダルシフトを強化していく機運が高まっていく状況にあります。

 このため、今回の法案におきましては、対象となる事業といたしまして、モーダルシフトによって効率性の高い輸送手段を選択する取り組みを新たに位置づけまして、物流事業者や荷主が連携したモーダルシフトの取り組みを支援することといたしました。

 これによりまして、本法案を共管し荷主を所管する経済産業省、農林水産省とも一体となって基本方針を定めまして、さらに強力に運用を進めることができるものと考えております。また、支援の一部につきましては環境省と連携して行うこととしております。

 私は、本年、生産性革命元年というふうに位置づけまして、国土交通省を挙げて生産性の向上に向けた取り組みを進めておりますが、物流分野におきましても、モーダルシフトを初めとした物流生産性革命を実現することが重要でありまして、関係省庁と密接に連携し、本法案を最大限活用して実を上げてまいりたいと思っております。

井上(英)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 やはり、モーダルシフトというのは難しいと思うんですね。それは、先ほどの委員も申し上げているように、トラック運転手、ドライバーさんの高齢化というのがあるというのが大きい要因だと言われているんですけれども、結果的にはトラックでどこにでも運べるという利便性が高いがゆえに、そのシフトを変えていくということは非常に大変なことであるというふうに思うんですね。

 ですから、船で運んだ方が、先ほども申し上げているように速達性も含めて便利だ、それから費用対効果も含めて有効性がある、そういう目に見えた効果がないと、なかなかそういうシフトチェンジというのはできないんじゃないかなと思っていますので、かなり力強い政策誘導をしなければならないと思いますので、くれぐれもよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、地域内配送共同化についてお伺いをいたします。

 この地域内配送共同化は、物流の効率化、トラックドライバー不足対策の視点から非常に有効であり、過疎地域等における物流ネットワークの確保の観点からも促進すべきだと考えていますが、その実現は、企業間の連携というのが要諦となり、コスト面でのメリットがあるか、システムを統合する手間とリスクの存在、事故があった場合の責任分担、それから利用者の利便性が低下しないかといった点をクリアできないと簡単にはいかないというふうに考えております。さらに、現在のままだと、仮に実現できたとしても、大都市の諸条件が整った地域に限られたものにとどまってしまうということも危惧をされますので、これらを踏まえて質問をさせていただきます。

 そもそも、物流事業者が配送共同化を行ったとしても、環境負荷の低減以外に、荷主、消費者、地域等にとってどのようなメリットをもたらすかということがしっかりと示されなければ、こうした取り組みへの理解は得にくいというふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 過疎地等における配送共同化等の関係者へのメリット、こういったものについての御質問についてお答え申し上げます。

 過疎地域等では、人口の減少の進展を背景といたしまして物流の効率化が低下いたしております。

 一方で、車を運転しない方々の増加、食料品店の減少を背景といたしまして、日用品の宅配や買い物支援などの生活支援サービスへのニーズが高まっているところでございます。

 このような地域におきましては、宅配便の集配の共同化、買い物支援サービスなどの地域の物流機能を複合化した配送共同化を行うことによりまして、環境負荷の低減以外にも、物流ネットワークの維持効率化や生活支援サービスの維持向上が図られ、物流事業者のみならず、地域住民、消費者の利便が向上することとなります。

 また、過疎地域などと都市部の物流ネットワークが維持されることによりまして、安価な、安い利用料で地域特産品を都市部へ出荷することができ、生産者などの荷主の便益にもつながるとともに、地域経済の活性化にも貢献いたします。

 このように、地域におきます配送共同化を行うことによりまして、物流事業者、荷主、消費者、地域にとっての大きなメリットが生まれると考えており、国土交通省といたしましても、さまざまな取り組み事例を収集、分析し、先進事例やそれによるメリットを全国に発信してまいりたいと考えております。

井上(英)委員 そのとおりだと思うんですね。

 共同化ができるのであるなら、それにこしたことはないですし、またさらに、本省ではコンパクトシティーというものもどんどん推進していただいているかと思いますけれども、そういう意味でも、やはり一つの単位で、大きい単位、どれぐらいの単位かはまた別にしても、そこに全てを集中させるという考え方は非常に大事かなと。

 ただ一方で、中山間地、そういったところをやはり守っていくという考え方もゼロではありませんので、そこの兼ね合いというのは非常に難しいかとは思いますけれども、これからの人口減少社会をにらんでいくと、ある程度集まったところに物流で物を運んでいくという考え方は非常に大事な視点ではないかなと思うので、ぜひお願いしたいと思います。

 配送共同化の裾野を特に地方部へ拡大していくためには、企業間の連携に委ねるのでは十分ではない、行政や地域のサポートというのが不可欠であり、事業遂行に当たってのリスクを明確化し、国、自治体、住民等を含めて、それを分担するということが必要だと考えます。

 具体的には、法律には明記されていないものの、予算措置、つまり補助金の交付対象として協議会の設置が望ましいというふうにお聞きをしておりますけれども、この協議会を事業者だけのおざなりの組織ではなくて、自治体なども巻き込んだ、こうした本格的な議論を進める場とすべきではないかというふうに思います。そのために、国や自治体が議論を牽引して率先して身を切る必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

羽尾政府参考人 ただいま、配送共同化の実現に向けました協議会の設置などについてお尋ねをいただきました。

 過疎地等におきまして配送共同化の検討を行う際、物流事業者のスタンスの違い、地域内の既存サービスとの役割分担、既存サービスのレベルの維持などの課題がございます。物流事業者などだけでは意見の集約をすることは必ずしも容易ではございません。

 このため、昨年十二月に取りまとめられました交通政策審議会等の答申「今後の物流政策の基本的な方向性等について」においても、一つ目、望ましい物流サービスのあり方の合意形成、二つ目、自治体の積極的な関与、三つ目に、国、地方運輸局等の広域的な視点での支援などが求められております。

 こうしたことから、過疎地等におきまして配送共同化の検討を行う際、物流事業者のみならず、関係住民、自治体、生活支援サービス提供者など、幅広い地域の関係者の意見を集約し、円滑に合意形成するため、協議会を設置することは重要でございます。

 国土交通省といたしましても、中立的な立場である地方運輸局等が全国の先進事例の紹介、物流事業者との橋渡しなどを行うことによりまして関与していくことを通じて、関係者の合意形成が図られ、過疎地等における物流の維持確保が適切に行われるよう努力してまいりたいと考えております。

井上(英)委員 国の関与も含めて、自治体にも積極的に、参加しているだけではなくて主体的にやってもらえるように、ぜひお願いをしたいと思います。

 次に、貨客の混載についてお伺いをいたします。

 貨客混載は、中山間地のバスなどで実証的な取り組みが進んでいるというふうに聞いております。一方で、都市部でトラックのかわりに都市鉄道等の旅客鉄道を貨物輸送に利用することで、CO2排出量の削減、トラックドライバー不足対策等を実現する。鉄道における貨客混載の取り組みはこれからであり、今回の法改正を前提に税制措置での後押しというのも予定されているということでありますが、昔の行商列車以上のイメージというのが非常に湧きにくいというのが正直なところであります。

 このような取り組みが進むならば非常に歓迎したいと思いますが、都市部の旅客専用の鉄道車両が貨物専用で使用されるというのは、利用者の利便性や安全性の面で本当に大丈夫なのかという印象も持つところであります。

 この点についての見解と、具体的事例の今後の見通しについてお教えいただけますでしょうか。

羽尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ドライバー不足が深刻化している中で、余力のある既存インフラであります旅客鉄道を活用し効率的な貨物輸送を行うことは、都市部における慢性的な渋滞の発生、地方部における非効率的な配送体制の解消を図り、CO2排出削減やトラックドライバー不足の解消に寄与するものです。

 この場合、当然のことながら、旅客の利便性、安全性の確保は大前提であることは言うまでもございません。

 本事業は、既に京都の京福電鉄嵐山線において宅配事業者との連携により実施されているところでありますが、今後とも、関係事業者に対しまして、関係法令を遵守し、旅客の利便性、安全性を十分に確保することについて徹底を図ってまいります。

 お尋ねの本事業の今後の見通しにつきましては、現在、複数の鉄道事業者と物流事業者との間で具体的な検討が進みつつあると聞いております。

 国といたしましては、本法案の枠組みを活用し、旅客鉄道による貨物輸送の実現を後押しするとともに、他の事業者への波及効果も生み出していきたいと考えております。

井上(英)委員 ぜひ何とかうまくいくようにお願いをしたいというふうに思います。

 次に、支援措置についてお伺いをしたいと思います。

 主務大臣の認定を受けた流通業務総合効率化事業の実施に際しては、さまざまな支援措置が用意されておりまして、その一つに、これは法制定時から設けられているメニューになりますけれども、市街化調整区域の開発許可の配慮というのがあります。主に特定流通業務施設の整備の際に活用されるものではないかというふうに思いますが、物流総合効率化法第十六条では、都道府県知事等は、「認定総合効率化事業の用に供する特定流通業務施設の整備が円滑に行われるよう適切な配慮をするものとする。」とされております。

 開発許可は自治体の権限であることは承知しておりますが、一方で、開発許可の手続に時間がかかるため、時宜に応じた投資が行えないとの声も事業者から聞いており、法律に定められている開発許可に関する配慮規定の実効性というのにも疑問を持っております。

 その中で、物流業務の総合化及び効率化に資する特定流通業務施設の整備を円滑に行うためにも、開発許可の迅速化というのに向け、国としてさらに突っ込んだ取り組みができないかというふうに思うんですけれども、自治体の権限に任せておくとなかなか手続が進まないという現状があります。そうした動きの遅さをしっかり監督するのも国の役目だというふうに考えますが、いかがでしょうか。

栗田政府参考人 お答えいたします。

 市街化調整区域における特定流通業務施設の開発許可に関するお尋ねでございます。

 開発許可の仕組みといたしまして、今委員お触れいただきましたけれども、許可権限を有する地方公共団体から第三者機関である開発審査会における審査を経て開発許可を受けていただく、こういう仕組みでございます。

 民間投資、あるいは民間活動、民間の経済活動の活性化の観点から、必要な開発の許可が迅速に行われるということは大事だというように考えております。

 その際、二点ポイントがあるのかなというように考えております。一つは、地方公共団体の開発許可に関する判断をスムーズに行うということでございます。もう一つは、関与が必要な開発審査会の開催が柔軟に行われる、こういった点が大事なのかなというように思っております。

 調整区域の開発につきましては、地方公共団体に対する技術的な助言としまして、国から運用指針をお示ししております。その中では原則として許可して差し支えないものを例示しておりまして、特定流通業務施設はその中に位置づけております。これが一点目、地方公共団体の判断をスムーズに行っていただくための措置というように考えております。

 二点目、開発審査会に関してでございます。これも運用指針の中で、例えば二カ月に一回とか定例の開催ということでなくて、経済活動の実態に応じて、必要に応じて随時開催する、そういった弾力的な運用を求めておるところでございます。

 これを受けまして、地方公共団体におきまして、開発審査会の運用の見直しは相当進んできておるというように認識しております。

 引き続きまして、各地方公共団体で特定流通業務施設の開発許可の円滑化、迅速化が図られますように、運用実態の把握、運用指針の徹底に努めてまいりたいと考えております。

井上(英)委員 ありがとうございました。

 いずれにしても、法を改正しますので、有効な手だてとなるように期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

谷委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村(伸)委員 私は、日本共産党を代表して、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 日本共産党は、もともと二〇〇五年、物流総合効率化法が制定された際、中小企業のみを対象とした流通業務効率化促進法を廃止し、大手物流業にも支援対象を拡大する大企業優遇策だと反対しました。

 実際に、総合効率化計画認定にかかわる減税も、大企業が十年間に国税、地方税合わせて四十二億七千百万円減税され、中小企業を上回っています。七〇%以上を占める小規模事業者に至っては、十年間でわずか二億二千九十万円しか減税はありませんでした。資金力のある大企業は、みずからの責任で効率化や省力化の取り組みを行うべきです。

 本改正案は、支援の対象となる事業について、二以上の者が連携して、多様な取り組みへと対象を拡大し、効率化を図るとしています。

 しかし、トラック運送事業の小規模事業者は、帰りの荷物の確保もみずからの力では限界があり、元請や二次、三次下請、あるいは手配をする水屋と呼ばれる利用運送事業者などに頼らざるを得ない現状があります。経営基盤も資金調達力も脆弱な小規模事業者が主体的に効率化事業を行うことは、現実的には困難だというのが現場からの声です。

 今やるべきは、重層下請構造を解消し、荷主や元請大手企業による買いたたきなど物流業界にはびこる不公正取引を是正することです。

 また、改正案は、労働力不足に対応するとしていますが、労働者を確保し、育成するようなものではありません。労働者がいなくても済むように、効率化し、省力化するものであります。これでは、人員削減や長時間過密労働など、労働条件の悪化を助長するケースも生じかねません。

 よって、本改正案には賛成できないことを表明し、反対の討論とさせていただきます。(拍手)

谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

谷委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

谷委員長 次に、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事長上西郁夫君及び独立行政法人都市再生機構副理事長花岡洋文君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として国土交通省大臣官房物流審議官羽尾一郎君、土地・建設産業局長谷脇暁君、都市局長栗田卓也君、水管理・国土保全局長金尾健司君、道路局長森昌文君、住宅局長由木文彦君、鉄道局長藤田耕三君、自動車局長藤井直樹君、航空局長佐藤善信君、観光庁長官田村明比古君、内閣府政策統括官付参事官中村裕一郎君、厚生労働省生活衛生・食品安全部長福田祐典君及び環境省大臣官房審議官亀澤玲治君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第三局長須藤晋君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木憲和君。

鈴木(憲)委員 自民党山形二区の鈴木憲和です。

 本日は、質問の機会をどうもありがとうございます。

 まずは、今回の熊本、大分の地震でお亡くなりになられた一人一人の皆さんの御冥福をお祈りすると同時に、現在も余震の続く中で避難されている皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 東日本大震災があった東北地方の人間として、本当に人ごとではないような感じがしています。週末も、地元に帰った際に、みんな一人一人が、お世話になった九州の皆さんのために何ができるのかということを、御意見もいただきました。

 私の地元からも、自衛隊が十六日から千五十名体制で災害派遣をされています。そして、国交省におかれても、東日本大震災の対応に当たった職員の皆様を派遣しているということも伺っています。

 大臣初め政府、自治体の皆さんは最大限の対応をしているというふうに思いますが、きょう、これは通告はしておりませんが、まず冒頭に、大臣から、現状への対応についての御報告と、そして復旧に向けた御決意を伺いたいというふうに思います。

石井国務大臣 平成二十八年熊本地震によりお亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災された方に心よりお見舞いを申し上げます。

 被害状況でございますが、インフラ関連では、九州新幹線は依然として運休中でありますが、昨日、脱線した車両の撤去作業が開始をされました。

 一方、新幹線以外の鉄道につきましては、昨日、JR九州鹿児島線荒尾駅―熊本駅間が運転を再開いたしまして、博多から熊本の在来線がつながる等、順次復旧が進んでおります。現在、運休している路線は四事業者七路線となっております。

 また、高速道路におきましては、ピーク時に七路線五百九十九キロメートルありました通行どめの解除がかなり進みまして、現在、九州自動車道、大分自動車道、九州中央自動車道の三路線八十五キロメートルが通行どめとなっております。このうち九州自動車道につきましては、本日、植木インターチェンジから益城熊本空港インターチェンジまで緊急車両が通行可能となりました。これによりまして被災地への緊急物資の迅速な輸送などが期待をされます。

 熊本空港につきましては、昨日まで旅客便が全便欠航となっておりましたが、本日から一部の旅客便について運航再開をしております。

 このほか、山間部における土砂災害や、国道、県道、市町村道においても多数の被害が発生をしております。

 地震による被害が広範多岐にわたる中、国土交通省では、被災された方々の視点に立ちまして、二次的避難場所や応急的な住まいの確保、緊急物資輸送への支援、道路、鉄道、空港など交通の確保、土砂災害への対応、この四点について特に重点的に取り組むことといたしております。関係機関との調整や復旧等に全力を挙げております。

 このほか、本日現在、被災自治体において情報収集や支援ニーズの把握を積極的に行う連絡員、リエゾン四十七名を二県十三市町村等に派遣するとともに、専門技術力を生かして被害状況調査や応急復旧等を行う緊急災害対策派遣隊、TEC―FORCE等、三百四十七名派遣をいたしまして、全力で被災自治体の支援に取り組んでいるところであります。

 今後も、国土交通省といたしまして、被災状況の把握、救命救難、被災地の復旧に全力で取り組んでまいります。

鈴木(憲)委員 どうもありがとうございました。

 本当に、インフラが復旧しなければ物資も届かないというふうに思いますので、ぜひ大臣におかれては、余震が続く中で本当に現場で不安を抱える避難されている皆さんに寄り添った対応を、これからもよろしくお願いいたしたいと思います。

 きょうは、たまたまなんですが、私はきょう、防災・減災の観点から、航空行政の今後のあり方について幾つかお伺いをしたいというふうに思っております。

 先週月曜日に、宮城県の石巻市そして女川町に伺ってまいりました。防潮堤の建設が進み、かさ上げ工事が進み、そして新しい産業を誘致しようという動きもあります。

 そういう中で、改めて私が東日本大震災から学んだことは、日々、日常時からやはり行政の中で防災・減災の観点をしっかりと持って進めていくということが非常に大切であるということを認識しております。

 このことを踏まえて、本日は、航空行政について、地方空港の役割の重要性や今後の活用について幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず一点目は、羽田空港のあり方についてです。

 内閣府の調査によると、今後マグニチュード七クラスの地震が、三十年以内に七〇%程度の確率で首都直下地震が起こる、そういうデータがあります。また同様に、南海トラフ地震についても発生確率が高まっている昨今、日本の玄関口である羽田空港、この機能の安全性の確保と同時に、災害時にバックアップ機能をどのようにほかの空港で果たしていくのか。これは国家の機能を維持していくという意味で大変大切な課題であるというふうに私は感じています。

 また、二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックがありますが、将来、訪日外国人旅行客三千万人目標に向けても、日本のインフラとして、空港の機能、そして航空産業の活性化は重要な課題です。

 そこで、国交省にお伺いをいたしますが、今、大手民間航空会社のさまざまな機能が、事実上、羽田空港、その周辺に集中をしているというふうに考えられますが、現状どのようなものが羽田空港周辺に集中をしているというふうに認識しているか、伺います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の羽田空港やその周辺に置かれている航空会社の機能につきましては、例えば、全日本空輸や日本航空といった大手航空会社では、航空機の運航を管理する施設、航空機の整備の業務を管理する施設、機体の大規模な整備を行うための格納庫、航空機の部品を保管する部品庫、運航乗務員、パイロットでございますけれども、運航乗務員や客室乗務員等の訓練施設といった機能が羽田空港やその周辺に置かれていると承知しております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 今局長からの答弁の中で、さまざまな、しかもこれは民間の大手航空会社の機能が羽田に集中しているということをお伺いしました。

 例えば東日本大震災の際に、仙台空港が津波で被災をして、一部再開できたのが三月の十六日、そして民間機がようやく運航再開できたのが一月後の四月十三日です。その際、代替空港として、私の地元にある山形空港、そして岩手にある花巻空港の果たした役割は大変大きいものがありました。山形空港では、警察、消防のヘリ、これに加えて、米軍機の物資輸送の拠点として活用されて、三月十一日以来、四月七日まで二十四時間体制で運用して、被災地の復旧に大変貢献をしたというような実績があります。

 先ほど局長からの答弁の中でいただいたさまざまな機能の中で、航空機を安定的に運航させていくためには、パイロットを初めとした乗員訓練を定期的に行ってパイロットの技量を確保していく、このことが大切だというふうに思います。

 現在、国内で、パイロットの訓練に当たっては、実際の機体を用いての訓練というのはほとんど行われていません。どのようにして行うかというと、高性能のフライトシミュレーター、機材を用いて、これを使うことによって、実機では行うことのできない危険度の高い緊急時の訓練や気象条件が厳しい条件下を想定した訓練なども可能になっています。国から、パイロットの皆さんへの審査、これについても、一部のものを除いてこのシミュレーターを使うということが承認されていて、このフライトシミュレーターの果たす役割というのは大変大きいものがあるというふうに思っています。

 ただ、先ほど局長からの答弁にありましたが、現状では、このフライトシミュレーター、国内の航空会社が保有しているもののうち大体九〇%、これが羽田空港周辺に集中して存在をしています。このような状況が、今後首都直下型地震が予想される中で、果たしてそれがずっとそのままでいいのかどうかというのは、私は、今後、航空行政を考えたときに、一考の余地があるのではないかなというふうに思うわけです。

 一例として、今例えばシミュレーターの話をさせていただきましたが、そもそも、航空行政において災害時の対応を平時から考えていくことは大変大切であるというふうに思います。災害時において航空交通をしっかりと維持できていくために、防災・減災の観点から、いかにふだんからリスク分散をしておくことができるかというのが大変大切です。もちろん、これは国交省だけではなくて民間航空会社の取り組みが必要になってくるわけですが、ぜひ、今後しっかりと防災・減災の観点からの対策を検討していくということについて、大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

石井国務大臣 空港につきましては、過去の災害時におきまして救急救命活動や緊急物資輸送の拠点等として機能いたしましたことから、防災拠点としての重要性を十分に認識しております。

 このため、空港の地震対策につきましては、平成十九年の四月に「地震に強い空港のあり方」を取りまとめまして、これに基づき、航空機の安全運航に必要な機能が確保されるよう、滑走路や管制塔などの耐震化を進めているところであります。

 また、津波対策につきましては、平成二十三年十月に空港の津波対策の方針を取りまとめ、これに基づきまして、津波リスクの高い空港において津波避難計画及び津波早期復旧計画を策定しております。

 さらに、航空管制につきましては、万が一災害により管制機能が損なわれたといたしましてもバックアップできるよう、非常用管制塔及びレーダー装置を全国に分散配置するなどの対策を講じております。

 委員御指摘のとおり、リスク分散という観点も含めまして、国土交通省といたしましては、航空行政において、防災・減災の観点から、今後とも関係機関と連携をとりつつ、積極的に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、国の機能だけではなくて、民間の航空会社ともよく連携をとって、防災・減災の観点から、リスク分散、今後の航空行政をしっかりと進めていただきたいというふうに思います。ぜひ大臣には頑張っていただきたいというふうに思っています。

 それでは、最後の質問に移ります。

 これは観光に関することでありますが、先日、山形県の旅館組合青年部の皆さんと意見交換をさせていただきました。なるほどと思う意見をいただいたので、少し紹介をさせていただきます。

 この方は、加藤鮎子議員の御地元の鶴岡市の湯野浜温泉、そこのある旅館の若旦那なんですが、今後の訪日外国人旅行者にはぜひ地方を周遊してほしいという話です。その際に、例えば、今は皆さん、東京に入られて、その後に地方に行くという旅行行程をとるわけですが、これからは、例えば、東北の温泉に泊まって、朝、飛行機で東京に来て、東京を観光して、またどこか地方の温泉に泊まる、こういったような旅行スタイルが提案できないのかというようなお話をいただきました。

 そこで、海外の事例を調べてみると、例えばニューヨークにたくさん日本人の観光客は行っていますが、一番人気のあるプランというのは、片道二時間かけてナイアガラの滝に観光に行って日帰りでニューヨークに戻ってくる、こういうプランが大変人気があるということでした。

 そう考えると、日本国内でも、例えば首都圏の空港から片道二時間以内で行ける空港というのはたくさんあるわけです。

 ただ、そこで問題になってくるのは、国内で使いやすい便利で安い航空パスというのがあるのかどうか。そして、これがしっかりとあれば地方にとってより可能性が広がってくるのではないかという話です。

 そこで、これもまた調べますと、例えばエアアジア、これにはASEANパスというパスがありまして、三十日間で何と一万八千円で十カ国、最大で七回ほど搭乗をすることができるというパスもあります。もちろん安いので予約がとれないとか、そういう課題もあります。そして、このパスがすばらしいのは、同じ路線の往復はできないので、自動的に地方を、ふだん行くことのなかった都市を転々と周遊するということになります。

 実は、日本でも外国人旅行客向けのパスについては、JRのパスはありますけれども、航空パスもあるわけです。ただ、皆さんほとんどの方が御存じないということです。

 JALもよく頑張ってくださっていて、ワンワールドで来日した方に、これは被災地の応援ということでありますが、東北地方の空港に行く際には片道五千四百円でビジット東北フェアというのもやっていますが、ただ、問題なのは、海外の空港を出発する前にこれを購入しないと使えないということなんです。

 そこで、今後、地方空港を活性化させて観光活性化につなげるためには、外国人観光客向けの利用しやすい航空パスがより必要になってくるというふうに考えます。

 そこで、現在、日本国内で販売されている航空パスについては、まだまだ外国人向けの周知が足りないのではないかというふうに私は認識をしていますが、ぜひ観光庁として、さらなる周知について御見解をいただきたいというふうに思います。

田村政府参考人 御指摘のとおり、インバウンドの効果を地方に波及させるという観点から、地方空港を活用した観光活性化というのは非常に重要でございますし、今先生から御紹介いただきましたようなそういう旅行のスタイルというのは、これからどんどんと普及させていく必要があると思います。

 現在、各航空会社におきましては、外国人旅行者向けの割引運賃というのを導入しておりまして、一区間一万円でどこでも行けるみたいなものがございます。これを設定して宣伝をしているところでございますけれども、これについては、日本政府観光局におきましても、ウエブサイトや、それから海外の旅行会社を対象としたセミナー等を通じまして、外国人旅行者が利用しやすい航空運賃について海外への情報発信というのを行っているところでございます。

 今後のことでございますけれども、先月取りまとめられました明日の日本を支える観光ビジョンにおきまして、ゴールデンルートに集中する観光需要というのを地方に分散させる観点から、地方空港の活性化というのをさらに図っていくということがその柱として盛り込まれているところでございます。観光庁としましても、これまで以上に効果的な情報発信に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ぜひしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 そして、まずは震災対応をしっかりとやってください。どうかよろしくお願いします。

 終わります。ありがとうございました。

谷委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 皆様、公明党の岡本三成でございます。

 質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず冒頭に、今回の熊本、大分の地震におかれましてとうとい命を亡くされた皆様に対して心からお悔やみを申し上げます。また、被災をされた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 私、現在は埼玉に住んでおりますが、生まれ育ちましたのは九州の佐賀県鳥栖市であります。したがいまして、熊本にもたくさん友人がおりまして、地震の後さまざまにコミュニケーションをとって現状を確認させていただいております。

 熊本の中で被災された方も、また佐賀の中でも避難をされている方がいらっしゃるんですけれども、おおむね多くの皆様は、当然被災されていらっしゃいますので現状に関しては大変な御苦労を背負っていらっしゃるわけですけれども、政府や自治体の対応におきましては、よくやってくれているというふうにおっしゃっている方が多いように私は思っています。

 最前線で特に活躍をしていただいております警察、消防、自衛隊、そして海保の方、公務員の方、ボランティアの方、本当に心より感謝を申し上げたいと思います。

 私、やはり今回の適切な、そして迅速な対応におきましては、安倍総理を中心といたしまして、政府の方々の迅速な対応というのが大きな功を奏しているというふうに思っておるんですけれども、加えまして、これまでの震災の経験、阪神・淡路、中越、東日本、こういう経験を通して、各自治体や役所にさまざまな経験が積まれたことによってその準備がうまくできていたのではないかなというふうに思います。

 とりわけ感じますのは、横の連携ですね。例えば、国交省と自治体、総務省であったり、警察と自衛隊であったり、さまざまなこれまでの経験がうまく生かされたことによって現状対応していただいているのではないかなと思っています。

 我が公明党も、最も大きな被害を受けた熊本県の益城町を中心といたしまして、熊本、九州のほとんどの自治体に地方議員を有しておりまして、今回におきましても、熊本の中の議員は当然ですが、物品の輸送、例えば宮崎の議員団が陸路でさまざまな支援物資を現地に輸送したりというようなこともやっておりますし、今後も被災者の方々のよりよい生活環境を確保できるように全力で取り組んでいきたいというふうに決意をしております。

 私、きょう何の質問をさせていただくかすごく悩んだんですね。本来であれば、今回の震災に関する質問を全力で細かいところまでお伺いをして、被災地の方々に十分安心をしていただけるような政府のコミットを明らかにしたいというふうに思ったんですけれども、余り細かい質問をしてしまうと、例えば、状況を確認するために国土交通省の方が現地に何か問い合わせをして、現地の最前線で復旧復興のために働いていらっしゃる方々の手を煩わせるようなことがあってはいけないし、また国土交通省の中で、その陣頭指揮をとっていらっしゃるような大臣を中心とした方々の時間をとってしまうようなことがあってはいけないというふうに思って、すごく悩みました。

 けれども、やはり大きなメッセージとして、被災地の方々に安心していただけるような政府のコミットを示していただくようなこと、また、今回のこの熊本を中心とした震災の結果、他の地域で同じようなことが起きたときにどういう準備をしておくべきかということの教訓であったりということをしっかりと政府としても共有することが大切だというふうに思いましたので、きょうは今回の震災の件につきまして質問させていただきます。

 ただ、昨日質問を通告させていただく際に、細かい、何か確認をしなければ、さらに人の手をかけなければいけないようなところは、必要であっても御答弁いただく必要ありません、大きな枠でコミットメント、メッセージをいただければ十分ですというふうに申し上げておりますので、その意味でざっくりしたお答えで全く構いませんので、よろしくお願いいたします。

 まず一問目は、先ほど鈴木委員からも御質問をいただきましたけれども、現在、熊本を中心といたしまして、インフラ、まだ十分な復旧ができておりません。

 ただ、震災の初日と比べますと、高速道路も初めは五百キロ以上の長区間にわたってとまっていたんですね。今は多分もう百キロ以下になっているんじゃないかと思います。鉄道に関しましても、昨日、鹿児島本線荒尾から熊本駅まで開通していただきましたし、先ほど大臣の答弁にもありましたように、空港は、これはターミナルがちょっと壊れてしまっているので、保安上、そこから飛んでほかの地域に行く方のチェックができないので、到着便だけ受けるようなことになっていますけれども、ここまでの対応に関しましては物すごいスピードで復旧していただいたことはわかっています。

 今後、なかなか読みにくいと思うんです。まだ余震も続いていますけれども、要は、大体これぐらいをめどに、それぞれのインフラ復旧をこれぐらいの日程をめどに取り組んでいますというようなことを被災地の皆さんにお伝えできるところがあれば、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

石井国務大臣 今回の熊本地震では、新幹線を初めとした鉄道、熊本空港、高速道路を初めとした道路などの重要インフラで運休、不通などが生じたところであります。

 高速道路につきましては、それぞれの被災箇所について不通区間の早期解消に向けて復旧工事が進められております。

 ピーク時に七路線五百九十九キロメートルありました通行どめの解除が進み、現在、九州自動車道、大分自動車道、九州中央自動車道の三路線八十五キロまでとなっております。なお、通行どめとなっております九州自動車道の植木インターチェンジから益城熊本空港インターチェンジ間につきましては、熊本インターチェンジ付近の応急復旧作業が終了したことから、本日、緊急車両の通行が可能となっております。

 また、その他の道路につきましても、自治体と連携、役割分担を図りながら、早期復旧に向けて、TEC―FORCEによる調査や工事などに全面的に取り組んでいるところでございます。

 鉄道につきましては、九州新幹線におきまして脱線した車両の撤去作業が開始されたほか、在来線につきましては、JR九州鹿児島線の荒尾駅から熊本駅間が運転を再開いたしまして、熊本から博多方面への鉄道がつながるなど、運転再開区間が拡大をしてきております。現在、運休している路線は四事業者七路線となっております。

 熊本空港におきましては、旅客ターミナルビルが被災をしたものの、滑走路、無線施設等は運用上の問題がなかったことから、これまでも自衛隊などの救援用の航空機のために二十四時間運用してきたところであります。また、昨日まで全便欠航となっていた旅客便につきましても、本日から一部の運航を再開しております。

 これまでも、各インフラの管理者におきまして、被災状況の迅速な確認、点検、応急復旧等が行われ、順次開通や運行再開区間が拡大をしているところでございます。

 なかなか今後のめどを言うのは難しい状況ではございますけれども、国土交通省としましては、引き続き、全力で重要インフラの復旧に努め、被災者を支援してまいりたいと思います。

岡本(三)委員 これまでも大変なスピードで復旧に取り組んでいただいておりますが、今大臣に力強いコミットをいただきましたように、早急に全面回復をお願いいたしたいと思います。

 続きまして、今回、大変甚大な被害が及んでおりますので、政府といたしまして、被災者生活支援チームを結成して、全面的に支援をしていくというふうなことを発表していらっしゃいます。

 発災をいたしましてもう既に五日過ぎているわけですので、そろそろ具体的に、いつからどのような規模で、どういうスケジュール感でやっていくかということを、内容を含めて明らかにしていただければと思いますけれども、内閣官房の方、いかがでしょうか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 今般の熊本地震の甚大な被害を受けまして、政府として、今御質問にありましたように、被災者生活支援チームを立ち上げました。十七日に立ち上げております。

 このチームは、総理からの、食料や水、紙おむつなど生活必需品に加え、トイレの確保、医療や医薬品の提供、さらには住宅や宿泊施設の確保など、被災者の皆さんの多様なニーズを的確に把握しながら迅速に対応し、被災者の皆さんの生活を全力で支援するとの指示を踏まえまして、各府省庁事務次官級により構成された全府省庁一体となった組織です。

 現場の声を速やかに国に伝えるということのために、速やかに職員を各被災市町村に派遣いたしまして、現場のニーズを的確に把握し、国との連絡役を果たすということといたしております。

 こうして把握いたしました現場のニーズを踏まえまして、各府省庁の持てる力を十分に発揮することで、被災者の皆さんの生活環境の改善に向けて、スピード感を持って全力で取り組んでまいります。

岡本(三)委員 スピード感を持って取り組んでいただいていると思うんですが、一日も早くスタートしていただけるように、よろしくお願いいたします。

 続きまして、テレビや新聞、マスコミの報道を見ておりますと、支援物資に関して、集積所までは届くけれども、これは空路も利用して物すごい勢いで届けていただいているわけですけれども、なかなかうまいマッチングができない、また、それぞれ避難をされている方の地域に適切に運んでいく人手が足らない等々が言われております。

 昨年水害が起きたときに、私は常総市にその日に行きましたけれども、全く同じ状況で、支援物資は市役所には大量にあるんだけれども、人が避難していらっしゃるような体育館には届くことがなかなかスピーディーにいかなかったというふうな場所に遭遇をいたしました。

 今回は、見てみますと、官だけで全部やるのが難しいようなこともあるので、例えば民間の物流会社や輸送会社と提携をしながらうまくやっていっているというふうな報道もなされる一方で、やはり現場ではなかなか物資が届かない、またはマッチングがうまくいっていない、情報が共有できていない等々が言われているような側面もあるんですね。

 今回の教訓を、他の地域で同じようなことが万々が一起こったときにいかにスムーズに対応できるかということに結びつけるために質問させていただきたいんですけれども、例えば、私のふるさとの佐賀県鳥栖市の物流会社に今回支援物資が行っています。ただ、そこから熊本の本当に厳しい被災地に発送するような手段がないので、そこにとまっている部分も多かったというふうにきのう聞いたんです。

 例えば、他の地域で、こういう官と民の事前の協定みたいなものというのは結ばれているんでしょうか、こういうことです。いろいろな状況が想定されますので、その状況に合わせるようなパターン化であったりシナリオ分析が必要なんだと思うんです。

 例えば、市役所にどんなに荷物が来ても、市役所から運ぶだけの車も人手もないこともあるわけですし、そこの地域の物流網を一番知っているのは民間の物流会社であったりすると思いますので、物流会社が荷さばきをするようなところで安全が確保されるところであれば、支援物資はいきなりそこに行くというふうな協定であったり、そこから民間の物流会社の方は支援の物資を事前に合意できているところに優先的に運ぶような約束がされていたり、もし仮にシナリオとして、物流会社の荷さばきをするようなところ、荷ほどきをするようなところが震災の対象になってしまったようなときには、ではその次は市役所で、その地域に集まっている民間の会社のトラックはその場所に集まるような、そういうシナリオに分けて、官と民が一体となって、いざというときの支援物資が適切に被災者の方に届くような体制になっているのかどうか、お伺いしたいと思います。

羽尾政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省におきましては、必要な物資が被災者に適時適切に届けられますよう、物流事業者、これはトラック事業者や倉庫事業者でございますが、それと地方自治体との間で協定を締結するように促進をしているところでございます。これまでのところ、輸送、保管あるいは物流専門家派遣に関します協定を全国で百四十二件締結いたしております。

 また、災害時に支援物資の受け入れ拠点として活用を想定いたします民間物資拠点の選定にも取り組んでおりまして、これまでのところ、全国で千二百五十四施設を選定いたしております。

 このように、官民での体制を整えて、災害時における円滑な支援物資輸送の確保に努めることが重要でございまして、引き続き取り組みを強化してまいりたいと考えております。

 なお、今般発生いたしました平成二十八年熊本地震におきましても、熊本県、佐賀県、福岡県及び大分県で支援物資の受け入れが可能な三十四カ所の営業倉庫等の民間物資拠点リストを先日熊本県へ提供し、これを活用していただいております。

 また、民間物流事業者の専門的ノウハウを活用すべく、熊本県庁などと民間物流事業者との間で調整が進められ、着実な物資輸送が確保されるよう取り組んでおるところでございます。

岡本(三)委員 自治体の数を考えたときに、受け入れ等の協定を百四十二件結んでいらっしゃるということは、多くの自治体の中でそういう協定が結ばれているということですので、そういう仕組みができていることは大変安心をいたしました。

 これからはそれが実際運用できるように、私は、いざというときに、人命救助やそういうものの指揮系統の拠点はそこの自治体の市役所にあってもいいと思うんですけれども、支援物資をどのように的確に輸送していくかという拠点は、民間の物流会社にすぐ拠点を移してもいいんじゃないかぐらいに思っているんですね。ですから、運用が適切に行われるようなさらなる工夫をお願いしたいと思います。

 最後に、地震に向けた耐震診断と耐震改修につきまして質問をさせてください。

 これは、目標としては、平成二十七年の時点で必要な物件に対しまして九〇%、平成三十二年までに九五%としているわけですけれども、現状では八〇%台にとどまっています。

 今回、テレビを見ていまして、余震が起こるときに、多くの方が避難をされている体育館等から外に出られます。どういう状況かと聞いたら、建物は安心かもしれないけれども、建物の中がみしみしいって、その音を聞くと、照明が落ちてくるんじゃないか、天井のパネルが落ちてくるんじゃないかといろいろな心配をして、自分の身を守るために余震が起きたら建物から外に出られるような方が多いみたいなんですね。

 建物自体の耐震化も、目標と比べますと、現状、余りにレベルが低いわけですから、その目標に対して実際に建物の所有者の方が行動を起こせるような、資金的な補助も含めて、しっかりとしたアクションプランをとっていただきたいというふうに思っているんです。

 加えまして、内装等も、特に避難所に指定されているところとか、民間の建物の中で多くの方が利用されるような例えばショッピングモールとか、そういうところに関しては、内装に関しましても、ある程度震災に耐えられるような状況をしっかりと指導しながら実現していただきたいというふうに思うんです。

 今回、このような状況が熊本を中心に起こりましたので、首都圏でも、首都直下に備えて、どういうふうに耐震に取り組んでいこうかというふうに思っていらっしゃるような自治体も多いように伺っています。ほかの地域も一緒だと思います。

 したがいまして、日本全国において、映像を見ていると、公的な建物もそうですし、住宅もそうなんですが、特に耐震補強がされているものとされていないものでは、被害の受け方というのは雲泥の差なんですね。

 個人の住宅においては、私の地元、佐賀県もそうだったんですけれども、こんな大きな地震が来るなんて思っていませんから、ほとんど耐震補強されていないところも多いです。

 一軒耐震補強すると大体百五十万円ぐらい個人の住宅ではかかるそうですけれども、そういう個人の住宅の耐震補強、そして、いざというときには避難場所に使われるようなところの耐震補強につきましても、政府として平成三十二年までに九五%と目標を出しているわけですから、現状から九五%に確実に達成できるような財政的な支援も含めたアクションプランが十分なのかどうなのか、不十分だと思っていらっしゃれば、今後どういう手を打とうと考えていらっしゃるのか、御答弁をいただければと思います。

石井国務大臣 今回の熊本において起きた地震の状況を見ましても、住宅・建築物の耐震化を一層促進することは大変重要であるというふうに考えております。

 しかしながら、平成二十五年時点の耐震化率は、多数の者が利用する建築物で八五%、住宅で八二%と、いずれも目標に比べて進捗がおくれている状況にあります。

 耐震化を進めるためには、所有者の方々に必要性を御理解いただくこと、コスト負担を軽減することが重要であると認識をしております。

 このため、地方公共団体と連携をして、耐震化の必要性についてパンフレット等を通じた周知を積極的に進めるとともに、コスト負担の軽減のための施策を推進しております。

 こうした耐震化の取り組みにつきましては、耐震改修促進計画等において防災拠点として位置づけられた庁舎等の建築物及び緊急輸送道路や避難路として位置づけられた道路沿いの建築物、ホテル、旅館等の不特定多数の者が利用する建築物や小学校、老人ホーム等の避難弱者の利用する建築物であって大規模なものに関し、優先して進める必要があると考えております。

 このため、こうした建築物につきましては、平成二十五年の耐震改修促進法の改正によりまして耐震診断の義務づけを行うとともに、改修工事に対する補助率引き上げ措置等によりまして重点的な支援を行っており、平成二十八年度予算におきまして、この措置の三年間の期限延長を行いました。

 さらに、生活の基盤となる住まいの安全性を確保するため、住宅の耐震化もあわせて進めていくべき重要な課題と考えております。防災・安全交付金による支援や固定資産税の軽減措置等を講じております。

 なお、内装について言及がございました。

 例えば、公立小中学校等の耐震化も進めてきておりますが、天井パネル等のいわゆる非構造部材につきましても、その耐震化を進めるということにしておりまして、そういった点についても重要というふうに考えております。

 今後とも、住宅・建築物の耐震化率のさらなる向上に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

岡本(三)委員 ありがとうございました。

 被災地の皆様の支援に日夜激務で対応していただいている国交省の役人の皆様に心から敬意を表しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十二分開議

谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横山博幸君。

横山委員 民進党の横山博幸です。

 どうぞよろしくお願いします。

 皆さん、本会議でお疲れでしょうけれども、一般的な質問をさせていただきたいと思います。

 初めに、先ほど黙祷もさせていただきましたけれども、熊本地方の地震で亡くなられた方に哀悼の意を表したいと思います。

 その上で、私の個人的な見解の域を超えませんけれども、私は、この委員会は副大臣もしっかりされており、政務官もしっかりされた方々がいらっしゃいますので、ぜひ大臣には現地に入っていただいて陣頭指揮をとっていただきたいというふうに考えておりますが、まず冒頭、大臣の見解を求めたいと思います。

石井国務大臣 委員会の運営については、委員会の場でお決めをいただければと存じます。

横山委員 それでは、災害の関連で一点だけ先に質問させていただきたいと思います。

 土砂災害防止法に基づく基礎調査の進捗状況について、災害の件もございましたので、現在どのように進んでおるのか、そして今後どのような対策をとっていかれるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。

金尾政府参考人 お答え申し上げます。

 改正土砂災害防止法が昨年一月に施行されましたが、法に基づく基本方針を踏まえ、全ての都道府県において平成三十一年度末までに基礎調査を完了させる目標が設定されたところでございます。

 平成二十七年度末時点の基礎調査の進捗状況ですが、土砂災害警戒区域については、昨年度、平成二十七年度でございますが、二十七年度中に約五万八千区域の調査を実施し、累計で約四十八万二千区域で基礎調査が完了となっております。

 今後の土砂災害対策につきましては、基礎調査の早期完了に向け、防災・安全交付金の活用等により都道府県を支援してまいります。

 また、ハード面につきましても、人命を守る効果が高い箇所等の砂防堰堤の整備等を重点的かつ計画的に進めてまいります。

 今後も、ハード、ソフト両面から土砂災害対策を進めてまいります。

横山委員 大変ありがとうございます。

 今回の災害を見ましても、かなり土砂災害の被害というのは大きいところがございます。事前に、予防医学的に素早く調査をしていただいて、このような災害がないようにぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 それでは、続きまして、ずっと懸案でありますURの関係について、何点か具体的にお聞かせをいただきたいと思います。

 まず、URは、今、千葉ニュータウンの件でいろいろな問題が起こり、そして、UR自体の社会的責任も含めて、事業の方向性について少し疑問を感ずるところもございますけれども、今現在、URは、どんな事業を行っており、特にこの震災については、東北大震災も含めて、そのような形でのいろいろな事業も展開されておると思いますけれども、この点についてまずお尋ねをしたいと思います。

上西参考人 御質問にお答えする前に、まことに恐縮ではございますけれども、URとして一言おわびを申し上げたいというふうに思います。

 千葉ニュータウン北環状線事業に関連いたしまして、当機構職員二名が、S社元総務担当者から、アルコールを含む飲食の提供を受けていたことが、本人からの申し出等により判明いたしました。こうした行動は、コンプライアンス上極めて不適切な行為でありますし、まことに遺憾なことと考えております。

 また、再三にわたって内部調査を行ってまいったわけですけれども、結果として重大な漏れがあり、組織の責任者として不明を恥じるとともに、痛切に責任を感じており、心よりおわび申し上げる次第でございます。

 当機構といたしましては、このような事態を重く受けとめまして、改めて第三者による調査を行うことといたしました。その結果を踏まえ、内規に基づき、厳正かつ適切に対処するとともに、こうした事態が二度と起こらないよう再発防止策をしっかりとることにより、信頼回復に全力で努めてまいりたいと思っております。

 国土交通大臣からも、調査等について適切に行うとともに、再発を防止するための措置を講じ、その内容を報告せよとの御指示をいただいており、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 それでは、御質問にお答えさせていただきます。

 当機構の役割についてのお尋ねでございますが、当機構といたしましては、従前から、賃貸住宅事業や都市再生事業に取り組んでおりまして、高齢者や障害のある方々などに対する住宅セーフティーネットとしての役割、あるいは大都市の競争力強化や地方都市の再生などに努めてまいりました。しかしながら、現在、当機構が果たすべき役割は、まず、東日本大震災からの復興業務だと考えております。

 これまでの経緯を申し上げますと、震災発生の当日に対策本部を設置するとともに、翌日には現地に調査団を派遣し、以来、事業の拡大に合わせて、逐次人員を増強してまいりました。現在では四百五十人の職員を現地に投入しておりまして、これは当機構の職員が三千二百人でございますので、七人に一人の割合で現地に送り込んでいるということでございます。

 これまで二十二の市町村と協定や覚書を結びまして、復興市街地の整備を約一千三百ヘクタール、災害公営住宅の建設を約六千戸請け負ってまいっております。山を削り、低地部をかさ上げいたしまして住宅地や中心市街地を形成するなど、被災地のまちづくりを行っているわけでございますけれども、プランニングから始まり、住民の方々の合意形成、設計、発注の支援、工事の監理、検収まで市町村と一体となって事業を進めているところでございます。

 これまでおおむね計画どおりの進展を見ており、ことし、来年が工事のピークになるものと見込んでおります。

 居住環境等、大変厳しい状況ではありますけれども、職員には大変頑張ってもらっていると認識しておりまして、今回の件はまことに痛恨のきわみと言わざるを得ません。

 以上でございます。

横山委員 先般の、接待を受けたというみなし公務員の対応というのはかなり問題があると思います。こういう問題を二度と起こさないように、今回の甘利事務所の秘書が絡んだ事件について何点か質問させていただきたいと思いますので、お答えを願いたいと思いますけれども、まさに我々のところには黒いペーパーしか来ておりませんので、情報がほとんどありません。ですから、私の想定の範囲内の質問になるかもしれませんけれども、真摯にお答えをいただきたいと思います。

 まず、当初に千六百万円の物件補償をされたということでございますけれども、この物件は今回の県道の計画道路の中の用地幅の中に存在していたのかどうか、お答え願いたいと思います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 従来、私どもといたしまして、三件の補償契約を結び、補償金を支払っております。一点目は御指摘の千六百万円の移転補償、それから二件目が約二億二千万円の移転補償、それから三件目が約五千百万円のこれは損失補償というものでございます。

 こういった補償契約の中身とかあるいは経緯等につきましては、従来、国会で可能な範囲でお答えをさせていただいたところでございますけれども、今般私どもが家宅捜索を受けまして、また新しい捜査が進んでいるといったような中で、捜査に支障を及ぼすおそれとか、あるいは具体的な内容につきましては、私どもとして、捜査のお邪魔をしない、捜査に最大限協力するという観点から、慎重に対応させていただく必要があると考えておりまして、詳細につきましては、まことに恐縮でございますけれども、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

横山委員 捜査中とはいえ、既に議論をされて公表された部分ですから、それは明確に答えていただかないと、議論になりません。お願いします。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 これまで、私どもといたしまして、国会におきまして、その時々で把握しております事実等に基づきまして真摯にお答えをさせていただいてきたところだと考えております。

 ただ、まさに先日、家宅捜索を受けたところでございまして、そのときとは状況が異なってきていると考えております。したがいまして、今回の補償に関する具体的な内容、やりとり等につきましては、繰り返しで恐縮でございますけれども、お答えを差し控えさせていただきたいといったふうに存じます。

 なお、私どもといたしましては、一般的な考え方とか、お答えができる範囲のものにつきましては最大限お答えさせていただきたいと思っておりますので、どうぞ御理解を賜りたいと存じます。

横山委員 最後に、一般的なことについての答えはしますと言って、私に判断できるはずがないじゃないですか。あなた方は、既に発表されて、秘書にも補償額まで話しているじゃないですか。そういうことを踏まえて論点整理をしないと、この問題は解決しませんよ。

 千六百万の補償をされたのは、もともと事業認定を受けた県道の中にあったのであれば、そこに建築確認をとれるはずがないじゃないですか。違法の物件に補償したということでしょう。お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 私どもとして行いました補償が適正なものであるかどうかといったことにつきましては、まさに捜査の具体的内容といったようなものにかかわってくる可能性があるものでございまして、現時点では、申しわけございませんけれども、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

横山委員 そうしたら、委員会で何の議論ができるんですか。捜査に入ったら一切議論できないんですか。今まで出してきたものまでも答えられないというのはおかしいじゃないですか。もう一回お願いします。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましては、補償交渉、契約を行うに当たりましては、一般的に申し上げまして、閣議決定されました損失補償基準、あるいは、それに基づきまして、用地対策連絡協議会等で決めております細則あるいは単価表といったものに基づきまして事業を行っているところでございます。

横山委員 単価表に基づいて算出した千六百万の建物は、ですから、冒頭言ったように、事業認定された県道の中にあったのですか、どうですかということを問いかけておるんですよ。先ほどから同じ質問ばかりで、同じ答弁をされていますから、これ以上同じ答弁をするんだったら、一回とめさせていただきます。お答え願います。

花岡参考人 お答えをさせていただきます。

 道路の区域の中に物がある場合には、道路をつくる場合に、当然、移転補償をすることが必要でございまして、そのために、そこにあるものが建物であれば建物、工作物、その他物件である場合には物件といったようなものに応じて、そういった補償基準に基づいて補償金をお支払いするという考え方でやっております。

横山委員 今の答弁から想定すると、その物件は県道の用地幅の中にあったということでして、事業認定を受けた道路の中に建築確認はとれませんので、この物件は建築確認がとれていない物件なんですね。お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと個別の物件についての御説明は差し控えさせていただきたいと存じますが、補償の方の実務の取り扱いといたしまして、公共事業の用地内に建築確認をとっていない建物がある場合に、補償をしないという取り扱いにはなっておりません。

 これは、その昔、ちょっと今手元に資料がないので、昭和三十年代の内閣法制局の見解が出ておりまして、日本国憲法で国民の財産権を保障している以上、そういった法的手続をとっていないものであっても補償すべしと。たしかこの例は河川の予定地の区域内にあった建物だと思いますけれども、そういったような判断が示されておりまして、それに基づきまして、私どもに限らず、公共事業の施行者の間では実務がとり行われているといったふうに承知をいたしております。

横山委員 算定基準に基づいて補償した、その補償金は恐らく払ったわけですけれども、払った後に、できるだけ速やかにその建物は移転されましたか、お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 私どもが移転補償金を支払う場合には、通常、契約した段階で前払い金を何割か、その後に、契約に基づきまして、移転を義務づけられているものの移転が終わった段階で残りの何割かをお支払いするということでございます。

 私どもの補償金が満額支払われているということであれば、それは、移転義務がかかっている分については、その他のものは別にいたしまして、移転義務がかかっているものについては建物の移転が終わっているという制度になっております。

横山委員 そうすると、その建物は、残金まで支払った後、どの程度の期間、いつ移転されましたか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 工事区域の中に建物等がある場合には、それぞれの工事の工程等に応じまして建物ごとに移転が必要な時期が定められるといったようなことが行われることになっておりまして、それぞれの建物によって期間は違うものということはよくあることでございます。

横山委員 聞いておられる方は何のことかわからないと思いますけれども、要は、その千六百万の物件移転補償をして、その後にさらに別の物件に対して一億八千万の補償を提示されておる、その間に移転されていますか、それ以前に。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 どの契約ということではなくて、それぞれの契約ごとに、それぞれの建物ごとに移転期限というのは定められる仕組みになっておりまして、その移転を確認した後に残金をお支払いする、そういう仕組みになっております。

横山委員 恐らくこれは議論にならないと思いますけれども、想定ですけれども、その一千六百万の物件補償をして、それが移転しない間に次の物件に対して補償したんじゃないですか。

 法的に違法であったとしても補償しなければならない、これはわかりますけれども、その物件が移転するために補償したわけですから、移転したという事実を確認しないといかぬでしょう。それが確認できていない間に次の話をしたんじゃないですかということを聞いているんです。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 同じ物件ということであれば、先生御指摘のとおりかと思います。ただ、いろいろな土地にいろいろな物件がある場合に並行して交渉するということはあり得ることかと存じます。

横山委員 そもそも、その敷地内には産業廃棄物が埋められている。これは、地権者もこの事業認定を受けた後に産廃を放り込んでおるわけですね。そこに、別の物件も同様、地下に産廃があるところには建築確認はとれませんよね。とれないものに対してさらに補償したということですから、なぜ第一回目のときの違法な分を移転させてからの話をしなかったのかということですよ。それは整合性ありますか。そういう姿勢でURというのは補償を各地で進めておられるわけですか。そんなのはあり得ないでしょう。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 くどいようで恐縮でございますけれども、同じ物件について移転を確認する前に次の補償金を支払う交渉をするということは、これはもう考え方としてあり得ないというふうに思っております。

 ただ、物件が別の場合にそういったような並行して交渉するということは十分あり得ることでございまして、それぞれの交渉ごとに交渉がまとまれば契約を結び、それぞれの契約の中で移転が義務づけられているものが移転できれば残金をお支払いする、こういった考え方でやっているところでございます。

 それから、産業廃棄物の上に建物が建つか建たないかということにつきましては、例えば建築基準法なんかにも、産業じゃないですね、廃棄物の上に建物が建つかどうかという規定がございますけれども、それにつきましては、安全上、衛生上、必要な対策を講ずれば建物は建つし、そうじゃない場合には建物は建たない、基準法の場合にはそういうふうにはっきり考え方が明記をされておりまして、そういったような考え方に基づきまして、個別の事例について、権限をお持ちの地方公共団体においてどういうふうに御判断をされるべきかという問題だと理解をいたしております。

横山委員 そうすると、千葉県の建築主事は、あそこに建築確認を出した事実はありますか。

花岡参考人 失礼いたしました。先ほど、ちょっと言葉足らずでございまして、個別の物件についてお話ししているわけではございませんで、今のは建築基準法の法律の条文の解釈を申し上げたものでございます。

 私が申し上げたかったことは、廃掃法という法律、環境省の御所管の法律でございますけれども、においても、廃棄物といいましてもいろいろな廃棄物がございます。

 例えば、木材のように腐れば陥没するおそれがあるようなものもあれば、あるいは、ビルを解体したときに出ますコンクリートの塊のように地下に埋まっておってもそんなに悪さをしないといったようなものがあろうかと思いますし、あるいは、建物といいましても、ごみの上を覆っております覆土、それの範囲内で表面を浅くいじるようなものから、覆土を全部取ってその下の廃棄物を何メーターも掘るといったような工事まで、建物の規模によって違うわけでございまして、それぞれの廃棄物と、それから工事の内容について、個別に技術的に判断されるべき問題だと考えております。

横山委員 これは答弁をかなりはぐらかしていますよ。

 私は一般論で話していないでしょう。千葉ニュータウンのその案件で話して、その敷地内のことについて話しておるわけですから。そこに現実に、電化製品やら瓦れきやら、違法な物件がかなり入っているじゃないですか。これは千葉県が認識していますよ。千葉県議会で何回も取り上げられておるじゃないですか。いいかげんな答弁をするな。おかしいでしょう。

 そうしたら、もう一点あわせて聞きますけれども、この違法物件に対する千六百万の補償をして、そして、その件に対して、移転もしていない案件について、甘利事務所の秘書はそのことは了解しておりましたか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮ですけれども、契約書に基づいて移転義務が発生しているものにつきまして、移転が終わっていないのに私どもが補償費の残金をお支払いするといったようなことはないものと考えております。

横山委員 この答弁は時間を費やすだけで、同じことを言っているだけなんですよ。

 一回とめてくださいよ、議論を。議論できません。

谷委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

谷委員長 速記を起こしてください。

 UR花岡副理事長。

花岡参考人 それでは、理事から御指摘もございましたので、可能な範囲でお答えをさせていただきたいと存じます。

 委員御指摘の一千六百万円の補償というものは、道路予定地上に存する物件に対する移転補償でございます。これは、道路工事を早く着工したいというために先行的にお支払いをしたものでございます。

 それから、二・二億円という物件が別途あるというふうに先ほど申し上げましたけれども、これは道路予定地の外、残地と申しておりますけれども、要は、もともとの土地の真ん中を道路が通りますので、その両側に土地が残るわけでございます。そこに建物なんかがあるわけでございますけれども、そういった物件について、従前機能の確保のために、前と同じように商売ができるために再配置が必要だろうということでお支払いをした物件の移転補償でございます。

 繰り返しになりますけれども、いずれも契約書に基づきまして、移転が義務づけられている範囲については、移転が完了していることを確認した上で残金をお支払いしているということでございます。

横山委員 先ほど、過去に発表したものについては問いかけていいということでございましたから、続けて質問させていただきますけれども、さっき、もう一つ質問させていただきました。一連の経緯を甘利事務所の秘書は知っていましたかということ。

 これは、経緯を見ると、事業認定を受けた後に、今回の問題のあった建設会社が後から来ていますよ。後から来て、そこに、事業認定を受けた道路の中に、今おっしゃったように建物を建てた。さらに、廃棄物を投下しておるところに複数の建物を建てたんですよ。そういう事実をURはきちっと甘利事務所の秘書に説明して協議を受けましたか、そのことをお聞きしたいと思います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 甘利事務所の秘書の方とのやりとりにつきましては資料を公表させていただいているところでございますけれども、そういったものの中には、委員御指摘のように、この物件の昔の経緯とかそういったようなものはなかったものと承知をいたしております。(横山委員「ちょっとわからぬ、もう一回。最後のところ」と呼ぶ)そういったやりとりについては公表させていただいている応接録がございますけれども、そういったものの中にそういった建物の経緯といったようなものはなかったものと承知をいたしております。

横山委員 非常に不可思議なんですけれども。

 そうしたら、どなたかが質問に来られて、今回の件の補償についての議論をするのに、URは、その過去の経緯とかを説明せずに甘利事務所の秘書の話を聞かれたんですか、お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 補償交渉は、基本的には相手方の地権者と行うべきものでございまして、国会議員の秘書さんなどからお問い合わせをいただいた場合に簡単に状況等をお話しすることは、御報告して差し支えない範囲でお話しすることはありますが、国会議員の秘書の方と直接交渉するといったようなことは基本的にはないものと考えております。

横山委員 不可思議でしようがないんですよね。直接交渉することはないと言っておるのに、秘書に補償の算定額を知らせたんでしょう。矛盾していますよ。間違いなく、事情を話した上で強引な要求があったから、その補償額をお示しされたんでしょう。そうじゃないんですか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の件につきまして、他委員会で私どもの理事長がおわびを申し上げたといったことがございました。これは、既に直接の交渉の場で、相手方にその数字はお伝えをしてあった数字でございまして、実害があったということでは必ずしもないかもしれませんが、いずれにせよ、そういったものをそういう第三者の方にお話しするのは不適切だろうということで理事長がおわびを申し上げたものでございます。

 本人に聞きましたところ、秘書さんから聞かれた場合に、もう秘密の数字じゃないものですから、ついつい言ってしまったということでございますが、そういった秘密の数字でないにしても、不適切なものでございますので、しかるべく対処したいと考えております。

横山委員 甘利事務所の秘書は、事情がわからなきゃ交渉はできないんですから、その実態はお伝えになったのに、その上で強引な交渉に来られたんじゃないんですか。

 そうしたら、時間がもう余りないものですから、たくさん質問がありますけれども、もう一つ。

 当初、一億八千万のその他の案件、敷地内の案件、物件補償、移転配置をするための補償額一億八千万の積算根拠は、URの基準に基づいてされていると思いますけれども、通常、近年は、行政改革も踏まえて、コスト削減で、この積算については外注する場合が多いことがありますけれども、この積算は外注していますか、それとも内部で積算しておられますか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、最近、定員といったようなものも厳しい状況にございますので、この種の積算に当たっては、外部のコンサルタントに発注をし、それを私どもの職員がチェックをするという体制でやっております。

横山委員 今外部のコンサルに委託をして積算をされたと明確にお答えになりましたけれども、今までの報道によれば、一億八千万を提示した、その場で二千万円アップした、こういう報道がありましたけれども、これは正確なことですか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 個別のやりとりはちょっと別にいたしまして、私どもが補償金額を積算する場合には、きちんと裏打ちをとって補償するということでございます。交渉事でございますので、最初に少し低目の数字を申し上げて、後であらかじめ積算した金額まで戻すことといったようなことも、しょっちゅうというわけではございませんけれども、場合によってはあり得ることかと思いますし、あるいは、最初、物件調査を行った段階から年数が経過している場合には、新しい単価に置きかえて計算をやり直すといったようなこともあろうかと思います。

横山委員 今の答弁は大変失礼ですよね。地権者の方にとりましても、それから補償を受ける方々、とんでもないですよ、今の話を聞いたら。そんな駆け引きをされて補償しているのかといって、大変ですよ。

 私も多少補償コンサルの経験がありますけれども、木材の一本でも大変な問題になりますよ。高速道路の用地幅の中で木を数える、一本一本、杉かヒノキか、樹種まで数える、その中で、たった一本でも足りなかったら、そうしたら、地権者と大変な問題になるんですよ、これが。それが税金の根拠じゃないんですか。我々は、一円でも無駄なく税金を使っているのかどうかというチェックをさせていただいている。

 そういう中で、そういう不誠実な答弁は余りにもひどいし、二千万円のプラス根拠を、私の知る限りでは、もうこれはURの提出された資料ですけれども、秘書との面談状況、ほとんど二十分か三十分ですよ。中に二時間があります。二時間の交渉は居酒屋ですよ。そんなところで交渉されるはずもない。二十分か三十分の間で、二千万の積算根拠をどうやって出されたんですか。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 実際の補償というのは、先ほども申し上げましたように、相手の方、具体的に申し上げれば、S社の総務担当Iさんという方と相当交渉しているということかと思います。

 国会議員の秘書の方と具体的に金額を幾らにするかという交渉をするということは、一般的に考えてあり得ないことだと思います。

 それから、私が先ほど申し上げたこと、ちょっと言葉遣いが乱暴でございましたので誤解を招いたということで申しわけないと思いますけれども、一般的に、地権者の方から早い段階で概算額を示すようにといったようなことを言われることがございます。その場合には、まだ細かい積算が終わっていない段階でございますので、多少、安全サイドの数字を申し上げるということになろうかと思います。そうでない場合には、概算額といいましても、本当の端数を四捨五入したとか、そういったような数字でお話しするのが通常でございます。

横山委員 そういうことは実務上余りないと思いますよ。概算額を示して、違っていたらどうするんですか。受ける側は期待感がたくさんあります。そこから幾ら交渉するかという、いろいろな交渉の中で、そういった概算額を提示して具体的に詰めていくというような流れというのは、実務上では余りないと思います。なぜなら、URの積算基準に基づいて積算したものが変わるはずがないじゃないですか。

 この中に、二、三十分同席された方の中に積算のプロはいませんよ。総務部長、秘書、業務部リーダー、積算のわかる人がいないのに、なぜ二千万円の根拠をつくられたんですか、一瞬の間に。その後も、さらに電話で要請されて、さらに二千万円という、国税と千葉県のお金、それからURのお金、三種類の金を補償額として使われていると思いますけれども、これは国民に説明できますか、お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 これも繰り返しで恐縮ですけれども、そういった価格の交渉というのは、私どもの総務部の担当者が、本社の総務部の担当者が、国会議員の秘書さんと、その事務所でやるといったようなことにはなっておりませんで、それは別途、私どもの事業を担当するセクションで、地権者の方と直接ちょうちょうはっしの交渉を行っているものといったふうに考えております。

 いずれにいたしましても、そういった積算の根拠もなしに、補償額が一声で二千万上がる、また一声で二千万上がるといったような仕事ぶりはしている覚えはございません。

 先ほど安全サイドとか申し上げましたけれども、例えば一度、補償金額の積算をやっているものについて、時点修正をするような場合においては、全く何も手元に資料がないわけではなくて、もともとの積算結果がございますので、直近の物価の動向等を踏まえれば、およそこれぐらいまでは大丈夫だという水準が私どもの職員であれば申し上げることが可能かといったふうに思います。

 以上です。

横山委員 積算根拠については、当然、今、会計検査院がチェックされたと思いますけれども、この一連の経緯について秘書が必ず同席して話していますけれども、甘利事務所の秘書は、その経緯は全て御存じですか。それと、さっき、いきなり二千万というものを上げることはないと言いましたけれども、過去の報道ではその場で二千万円上がりましたという報道がされていますけれども、それは虚偽の報告ですか、相手方が。お答え願います。

花岡参考人 お答え申し上げます。

 国会議員の秘書の方とのやりとりは、私どもの本社の国会の担当、総務部でございますけれども、そちらの方でやりとりをしております。

 これは、お問い合わせをいただいた中身について、先ほど一点おわびした点を除けば、お話しできる可能な範囲のものをお話ししているということでございますけれども、実際の補償交渉は、私どもの現場の担当者と地権者の間で別途行われているものだということでございます。

 私が先ほどの答弁の中で申し上げたかったことは、いずれにせよ、根拠もなしに補償金額を上げるといったようなことはしていないというふうに申し上げたわけでございます。

横山委員 時間が参りましたので、ぜひまた質問させていただこうと思いますけれども、こういう答弁の仕方、恐らくURの幹部の方は黒塗りの車に乗っておられる。出てきたペーパーは黒塗り、答弁も黒塗りじゃないですか。こんな黒塗りの答弁対応でこの問題が解決するとは思えませんから、しっかりとそのことは真摯に対応を今後させていただきたいと我々も思いますけれども、そこで働く方々が本当にかわいそうですよ。しっかりと真実を語って、そして問題を早く解決するということが私はURの使命だと思いますので、そのことを皆さんにお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民進党の福田昭夫です。

 本日は、国交委員会で質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 現在、ダムの検証、見直しが行われておりますけれども、平成二十四年六月から中断していた思川開発事業の検証が、昨年十一月から再開されました。三月二十九日に開かれた第六回検討の場で、ダム事業継続案が有利だとの提案がなされたと聞き、大変びっくりいたしました。

 そこで、本日は、中止の提案をして石井大臣の決断を求めたいと思いますので、石井大臣、最後までよくお聞きいただければと思います。

 平成十六年十一月九日、無駄な八ツ場ダムを中止させようと考えた一都五県の住民は、八ツ場ダムの負担金の支出差しとめを求めて、各地裁に公金支出差しとめの住民訴訟を一斉提訴しました。栃木県については、県内で計画されていた思川開発事業及び湯西川ダムの負担金の差しとめを求めましたので、三ダム訴訟と呼ばれています。その東京高等裁判所の判決は驚くべきものでありました。

 参画判断の際に基礎とした事情に一部変更が生じていることや、水道用水供給事業としての今後の見通しなどに鑑みて、被控訴人、栃木県が思川開発事業から撤退するとの判断をすることも、政策的には選択肢の一つとして十分考え得るところではあるとまで言及しました。しかし、裁量権の範囲を逸脱または濫用した違法なものではないと判決を下しました。つまり、東京高裁は、栃木県の判断次第で思川開発事業から撤退するのは十分政策的にあり得るという判断をしたわけであります。

 この高等裁判所判決と水問題の専門家であります嶋津先生の考えを参考にしながら国交省の考えをただしてまいりますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず初めに、減り続ける水道用水、水余りの時代についてであります。

 一つ目から三つ目、まとめてお話をして、お答えをいただきたいと思います。

 資料の一をごらんいただきたいと思いますが、これは先ほど申し上げました嶋津氏が作成した資料であります。「減り続ける水道用水 水余りの時代へ」ということで、「六都県の水道用水は減少の一途」ということで、茨城、東京、千葉、埼玉、群馬、栃木の上水道の一日最大給水量は、一九九二年度から二〇一三年度までの二十一年間に二百三十二万立米も減りました。この減少量は思川開発事業の開発水量約二十六万立米の九倍にもなります。ところが、この表をごらんいただければわかりますように、国の第五次利根川・荒川フルプランの予測は実績の傾向とは逆方向に増加し続けるとしております。

 「利根川流域六都県の一人あたり水道用水の推移」がその下の表でありますが、六都県の一人一日最大給水量が年々減少しておりまして、最近二十年間で一人当たり給水量は、一九九二年度の四百九十一リットルから二〇一三年度の三百六十四リットルと二六%も減っております。

 そして、減っている理由として、その理由をこのように述べております。一つは、節水型機器の普及等による節水の進行、これが一人当たりの使用水量の減少をもたらした。そして二つ目として、漏水防止対策による漏水の減少、有収率の上昇。三点目として、一年を通しての生活様式の平準化で給水量の変動幅が縮小している、負荷率が上昇しているなどが挙げられております。

 今後も、節水型機器の開発と普及などにより、一日最大給水量の減少傾向は確実に続くものと見込まれております。

 そして、資料一の右の方、栃木県の水道用水の推移と「思川開発事業の開発水量」についてでありますが、栃木県の水道用水は、これまた同じように減り続けております。「栃木県上水道の給水量の推移」、平成十三年と平成二十五年で比較すると、十二年間で、一日に七万四千立米ですか、それだけ減少しております。一人当たりの給水量も、また同じように、平成六年から平成二十五年まで十九年間に九十一リットル減少している、そういう状況になっております。

 そして、「思川開発事業の開発水量」でありますが、下の表にありますように、栃木県が毎秒〇・四〇三立米、以下、鹿沼市、小山市、古河市、五霞町、埼玉県、北千葉広域水道企業団、合計で二・九八四立米、まあ、トンということでございますかね。

 その中で暫定水利権を二十五年度に取得しているところは小山市、古河市、五霞町、埼玉県で、合計〇・九〇一トンということですかね。ちなみに、国交省の資料によりますと、後ほど出てきますけれども、平成二十八年度では、これも少し減って、合計でコンマ七八四ということで、コンマ一一七トン、暫定水利権そのものも減少しているという状況になっております。

 大変気の毒なのは、古河市等は思川開発事業を前提とした暫定水利権が許可されておりますが、実際に取水に支障を来したことはほとんどありません。その古河市の暫定水利権は、これは一九七四年と書いてありますけれども、実際には一九七一年、昭和四十六年から、何とことしを入れると四十五年間、暫定水利権で水を使い続けている、小山市は平成七年から二十一年間、五霞町は平成八年から二十年間、暫定水利権でそれぞれの市や町の水道水を取水して供給しているという大変気の毒な状況にございます。

 前回の質問で、暫定水利権をこんなに長年認めているんだったら、ちゃんとした法定水利権を認めたらどうか、そんな提案もいたしましたけれども、これが実は現状であります。

 こうした現状を見て、こうしたダムの開発をして、新規用水を開発する必要があると大臣は思われますか、いかがですか。

金尾政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、思川開発事業、ダム検証中でございます。その中で、このダムに利水の水源開発を求めております各利水者につきまして、継続して参画の意思があるかどうかということについてお伺いをしてございます。その結果、各利水者から、引き続きこのダムの利水開発に参画したいというふうな意向が示されたところでございます。

福田(昭)委員 それは、余りにも表面的な調査しかしないから、そういうことになるのであって、これからそれを打ち消していきますから。

 それでは次に、水道計画が存在しなかった栃木県の思川開発事業の水利権についてであります。

 一つ目は、慌ててつくった栃木県水道ビジョン、平成二十七年の三月につくったわけでありますが、ダム事業の水源確保は巨額の費用を負担するものであり、その水源を実際に使う、厚生労働大臣の認可を受けた水道用水供給事業計画が存在していることが実はダム事業の参画継続の必須条件であると思っております。

 しかし、栃木県は、この検証の場の第三回の検討の場で、水道事業認可の状況について回答を求められ、満足な回答ができませんでした。それは、計画がなかったからであります。そして、検討の場は、先ほど、最初に申し上げましたように、三年半中断をされました。その間、平成二十七年三月に作成したものが栃木県の水道ビジョンであります。

 このような対応を国交省なりあるいは厚生労働省は認めているんですか、どうなんですか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 栃木県では、厚生労働省が策定いたしました新水道ビジョンを踏まえまして、今御指摘ございましたように、平成二十七年三月に栃木県水道ビジョンを策定いたしております。

 栃木県水道ビジョンでは、五十年先を視野に入れまして、持続、安全、強靱の視点から、水道事業の広域化や危機管理の徹底等に取り組むこととしております。

 その策定過程では、有識者からの意見聴取でございますとか、またビジョン案に対するパブリックコメントの募集などが行われておりまして、多面的な検討を経て取りまとめられたものであると認識をいたしているところでございます。

 以上でございます。

福田(昭)委員 私もここに栃木県の水道ビジョンを持っております。これを読んでみましたけれども、どこにも全く具体性はありません。五十年後を見通していると言うけれども、五十年後は人口がさらに減って、一人当たりの水の使用量もどんどん減っていくわけですね。

 二つ目の質問に入りますが、そうした中で、例えば県南の広域水道整備計画の策定及び県南の広域水道用水供給事業の実現性についてでありますけれども、これは全くありません。栃木市や下野市、野木町ですけれども、こうしたところが、もし県が、県営の県南広域水道用水供給事業をやると言っても、参加しますと言いませんよ。その辺まで確認していますか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 栃木県と同県県南地域の関係市、町は、平成十九年に、これらの関係市、町を対象といたしました広域的水道整備計画の策定に向けて協議等を行うため、県南広域的水道整備協議会を設立しているところでございます。

 この協議会では、現在、地下水を水源としております関係市、町の水道事業につきまして、河川を水源とするものに変更するため、広域的水道整備計画を策定し、水道用水供給事業を設ける旨の議論がなされておるところでございまして、本年一月には、水道用水供給事業の事業主体を県企業局とすることが決定をされております。

 引き続き、県南地域への給水実施に向けまして、広域的水道整備計画の策定の協議が進行されるものと認識をいたしてございます。

福田(昭)委員 会議は踊るという言葉がありますけれども、この協議会で幾ら議論しても、実際に計画はまとまりませんよ。現に、栃木市、鹿沼市、下野市の市議会では、それぞれこの県南広域水道計画について議会で質問が出て、それぞれの市長が何て答えているかというと、この計画に手を挙げたからといって、買えと言われているわけではありませんというところもある。できるだけ地下水が利用できるなら地下水の利用のままで終わらせたいという市長さんもいる。ですから、これは、幾ら県がやろうと言っても実際に手を挙げる自治体はありませんよ。

 私、申しわけないけれども、全部の市、町を歩いてきました。茨城県の古河市も五霞町も含めて、全部歩いてきました。そうしたら、担当者と会ってきましたけれども、担当者は、どうするんですかね、こんな感じですよ、みんな。ですから、これは全く実現いたしません。

 実際、私も実はこの見直しについては十三年前にかかわった経験がありますけれども、後でまた申し上げますが、これはあくまでも県が建設の負担金を納めてくれているから、ではとりあえず手を挙げておくか、その程度の問題です。本当に建設負担金も負担しろと言われたら、やめますと言いますよ。ですから、これは全く実現しない計画だということを申し上げておきます。

 三つ目ですけれども、使う当てのない水源確保のため巨額の公費が浪費されているということであります。

 平成二十一年二月に、独立行政法人水資源機構が行った「思川開発事業の水道事業に係る事業評価(再評価)」によりますと、栃木県が、先ほど申し上げた毎秒〇・四〇三トンの開発水を供給する水道用水供給事業を実施する場合には、先ほど、協議会ができたと言っていますが、その一連の水道施設の建設のため、水源負担金のほかに百九十二億円の追加投資が必要となると水機構が試算をいたしております。

 また、国庫補助金を除く栃木県の利水負担金は六十四億円掛ける六〇%で約三十八億円、思川開発事業が推進された場合は、栃木県は、その完成後にこの負担金に利息を加えて水機構に支払っていくことになります。

 そして、さらに、厚生労働省からは、国庫補助金、水道水源開発施設整備費補助金が水機構に支払われております。思川開発事業の栃木県分の国庫補助金は、総額で六十四億円掛ける今度は四割で約二十六億円にもなります。

 このように、使う当てのない水源に国費や県費が浪費されているという現状にあります。国土交通省は見直し中ということでありますが、今後とも、こうした考えを厚労省としては推進させようというんですか、いかがですか。

太田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど来、水需要の減少についてさまざまに言及がございましたが、私どもは、水源開発事業については、それぞれの地域の事情ごとに水需要の予測に基づいて計画をいたしております。

 思川開発事業については、委員御指摘のように、確かに水需要自体は横ばいではありますけれども、少し言及ございましたように、地下水から河川水への転換等について勘案すべきだということで、代替水源の確保という必要性から、今回の開発水量は栃木県にとって必要なものというふうに判断をいたしております。

 そして、補助金の件でございますけれども、私ども、この補助事業については、事業採択後一定期間を経過した後、事業評価を行っておりまして、思川の開発事業につきましても、平成二十五年度にこれを実施いたしました。

 その結果、先ほど述べたような事情によりまして、栃木県も含めた各水道事業者の水需要に対応できる水源が確保できるものというふうに判断をいたしまして、継続という結論に達したものでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも適切に事業評価を実施しながら、この事業を進めてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 ここでは長い議論ができませんけれども、なぜ地下水から表流水に変えなくちゃならないんですか。これはダムをつくるために無理やりつけた理由じゃないですか。今地震の災害で苦労されておりますけれども、熊本市などは、地下水を使って一〇〇%水道を供給して、私たちのお水はおいしいんですと一生懸命PRしているんですよ。この栃木市もそうですよ。地下水がおいしくて、わざわざ表流水に変える必要はありません。高い水になって、まずい水になっちゃう、こんなばかなことをやる必要は全くないというふうに思います。

 次に、喫緊の治水対策をおくらせる思川開発についてであります。

 一つ目は、南摩ダムの治水効果は微々たるものについてであります。それから、二つ目と三つ目とまとめて私の方から申し上げておきたいと思います。

 今回の第六回の検証の場でも、昨年九月の台風十八号による豪雨によって大変な被害をこうむった、だから、どうしても治水対策としても南摩ダムが必要だという宣伝をしておりますけれども、これは全くうそです。

 南摩ダムの効果はほとんどありません。南摩ダムの流域面積は十二・四平方キロと小さくて、南摩ダムの予定地の比率は、思川の乙女地点に対して一・六%、利根川栗橋地点に対して〇・一四%であります。思川や利根川の洪水に対する効果は微々たるものだと思います。利根川に対しては、思川最下流部にある巨大な渡良瀬遊水地、洪水調節容量約一億七千万トンがあって、その洪水調節作用が働くので南摩ダムの治水効果はゼロであります。

 そして、思川下流の今回の災害での水位異常上昇の原因は、河床の上昇であります。思川地域の河床が上昇したために今回大きく溢水をしたということで、そのことがしっかり、はっきりと平成二十七年九月の関東・東北豪雨出水報告会で示されております。

 そして、そうした思川開発事業をやるという前提になっておりまして、喫緊の治水対策が実はおくれているというのが現状であります。

 今回の台風十八号の被害は、私どもの日光市も鹿沼市も大変な被害を受けました。私も全ての小河川の地域を歩いてまいりましたが、そこで地元の人たちの意見は異口同音、みんな河床が上がっているという話でありました。

 そこで、日光土木事務所や鹿沼土木事務所の所長たちとも意見交換しましたけれども、そのとおりですと。残念ながら、お金がなくなってきちゃったので、河川の砂利等を除去する作業というのが今ほとんど進んでおりません。業者に売ろうと思っても、土まじりの砂利は経費がかかって要らないと言われちゃっているので、多少のお金を出して買ってもらっているというのが、河床の堀ざらいといいますか、そういう作業になっているというのが実は最近の現状であります。

 ですから、南摩ダムがあれば、治水効果が発揮できて、水害が防げるなんというのは全くのでたらめだということを申し上げておきたいと思います。

 次に、ダムの見直しの基本的な問題点については時間の関係で省略をして、五番目の、思川開発事業の目的と問題点の方に行きたいと思います。

 まず、思川開発事業の目的と目的別事業費負担額でありますけれども、思川開発事業の目的は、思川及び利根川中下流の洪水被害の減少となっておりますが、先ほど申し上げたように、これは全く効果が発揮できない。

 それから、流水の正常な機能の維持、異常渇水時の緊急水の補給、水道用水の供給、毎秒二・九八四トンとなっておりますが、既に申し上げましたとおり、治水効果は微々たるものであり、栃木県南の広域水道計画はいまだに具体的に策定されるめどもなく、栃木県が撤退するとの判断も選択肢となっておりますので、ダムの必要性が問われることになっております。

 そうしたダムに、残事業費千四十億円を参画者にこれからも負担させるということで進められているということであります。

 時間の関係で、先に行きます。

 そしてさらに、頻繁に貯水量が底をつく南摩ダムについてであります。

 先ほどの嶋津先生の御指摘ですと、国交省による南摩ダムの運用計算の結果も、たびたびダムが空になってもゴーサインが出る大変不可解なものだと指摘をしております。そして、このことは、裁判の中でもしっかりと指摘をされております。

 そして三つ目の、思川開発事業検討の場第六回の幹事会に提出された「総合的な評価(案)」についてであります。それは、ぜひ資料二の一と二の二をごらんください。

 これを見ると、四案ですかね、費用を比較して、総合的な評価をして、最も有利な案がダム案と結論されているわけでありますが、これを見ればおわかりのように、現状のダム案は残事業費千四十億円。その下の、三目的ダム案、単独案、多目的遊水地案は、それぞれ新規にやるわけですから当然費用が大きくなるわけでありまして、これを見せられれば、どこの県もダム案がいいという結論になってしまうということであります。ですから、ダムの見直しのシステムそのものが実は間違っているということであります。

 そこで、今度は、私の考え方をぜひ提示をしたいというふうに思います。

 括弧四に行きたいと思います。概略評価による新たな対策案の抽出、これは全てというわけにいきませんが、新たな対策案をぜひ見ていただきたいと思います。

 一つ目の、ダムの新規利水対策案の概要、資料の三を見ていただきますと、ケース四というのが国土交通省の案に出ておりまして、「ダム使用権等の振替+ダム再開発(湯西川ダムかさ上げ)」となっているんですね。

 しかし、実は、全部使用権の振りかえのみで本当に必要とする新規利水の水は確保されちゃうということを皆さんにも御理解いただきたいと思います。

 例えばでありますけれども、今、新規利水で本当に必要なところは、小山市、古河市、五霞町かなというふうに思っておりますが、それらは全て渡良瀬水系の下流にあります、思川水系の下流にもありますけれども。

 実際、こうしたその位置図をごらんいただいて、次に行きたいと思いますが、時間の関係で、六番の、思川開発事業、ダム中止の提案についてに行きたいと思います。

 まず一つ目、思川開発事業の検証に係るダムの開発量、許可水量について、そして二つ目、思川開発事業の水道用水の配分量等と中止対策案についてであります。

 資料の六と七をごらんいただきたいと思います。

 資料の六は、利根川水系全体で開発した水、毎秒の水のうち、実はここに差し引きで書いてありますが、鬼怒川水系川治ダム、湯西川ダムで毎秒一トンの都市用水、〇・三三トンの特定かんがい用水が実は余っております。それから、渡良瀬水系では毎秒一・〇六トンの都市用水が余っております。奈良俣ダム以降、利根川本流系では毎秒〇・二七三トンの水が余っております。利根川水系全体で毎秒二・三三トンの都市用水、そして毎秒〇・三三トンの特定かんがい用水が実は残っているということであります。開発した水のですね。

 その後ろ、資料の七をごらんください。

 思川開発事業、南摩ダムを中止した場合に、もしかして本当に必要だと思われるところに水が供給できなければ困るなということでまとめたのがこの対策案であります。

 ごらんいただきますと、まず、ダムを中止すれば毎秒二・九八四トンの水はなくなるということであります。

 そこで、栃木県が、毎秒〇・四〇三トン取水をしたいと言っている下野、壬生、栃木、野木町でありますが、現在、県南の広域水道計画はありません。今後、県の水道ビジョンに基づいて県南広域水道計画を策定するということでありますが、多分、策定するということになったら、みんな逃げちゃうと思います。実際、下野市、壬生町は思川に隣接しておりませんから、どこから導水していいかわからない。もし栃木県の企業局がやるとなったら、宇都宮の方から持っていく、あるいは鬼怒川から持っていく、そういうことでも考えないと、とてもとても費用がかかって、栃木県の企業局でもやれないと思います。位置的に非常に難しいと思います。

 鹿沼市でありますが、鹿沼市は市長さんができるだけ地下水でやりたいと言っておりますが、もし必要ならば、日光市または宇都宮市から水道水を購入するということも可能であります。

 さらに小山市でありますが、小山市は、平成七年から暫定水利権で取水している。別途、渡良瀬からもとっているという話でありますが、聞くところによりますと、ほとんど思川から取水をしているようであります。

 古河市でありますが、古河市は本当に気の毒に、昭和四十六年から暫定水利権で対応している。

 さらに五霞町は、思川に隣接しておりませんから、思川からとれずに利根川から取水をさせている。そういった意味では、既に使用権の振りかえで対応しているというのが五霞町ということになります。

 問題は小山市と古河市の水をどうするかということでありますが、先ほど申し上げましたように、渡良瀬水系で使用権が実際あるのに利用されていない水が、毎秒一・〇六トンの都市用水があります。これを振りかえるということで対応することが十分可能だと思っております。

 振りかえるに当たってはいろいろ方法があるかと思います。既に水利権を持っているところから買うということもあるでしょうし、それから導水の仕方も、思川から今まで四十五年も取水して全く影響がないんだから思川からそのまま取水をしてもらうということもあるでしょうし、あるいは、どうしてもそれじゃだめだ、国土交通省が豊水条件で暫定水利権を許可しているというものですから、もしそれがだめだというときには、渡良瀬川あるいは渡良瀬遊水地から小山市が上水を取水しているちょっと上に導水管を設けて導水をしてやれば、古河市はその下流で取水しておりますから、小山市と古河市の水は供給することは可能になるというふうに思います。

 埼玉県の非かんがい期の水でありますが、埼玉県は暫定水利権もだんだん減らしてきましたけれども、しかし、この埼玉県の非かんがい期の取水は、八ツ場ダムにも大変大きく参画しておりますし、八ツ場ダムが完成すれば、埼玉県の暫定水利権は多分要らなくなるのかなというふうに思っておりますし、さらには、利根川水系には、渡良瀬も含めて、たくさんのかんがい用水がありますので、非かんがい期にはとることは十分可能なのかなと思っております。

 また、北千葉広域水道企業団は暫定水利権で取水しておりません。千葉県も湯西川ダムに大きく参画をしておりますので、湯西川ダムからたくさんの水を取水することが可能になっておりますから、多分もうそろそろ千葉県も要らなくなっているのかなと思っておりますが、もし必要ならば、利根川水系への使用権等での振りかえも可能だ、このように思っております。

 こうしたことを考えると、もし最大限かかったとしても、渡良瀬川あるいは渡良瀬遊水地から小山市の取水している地点、ちょっと上に導水路を設けて水を供給してあげれば、小山市と古河市の水も十分確保できる。五霞町の水は利根川から取水をさせてあげるようにすれば、この思川開発事業、南摩ダムはやめることは十分可能だと思います。

 これができるのは、残念ながら、石井大臣、石井大臣しかおりません、役人たちはもうつくる方向でしか考えておりませんから。これは政治家が判断するほかありませんけれども、大臣、いかがでしょうか。

石井国務大臣 ダム検証に際しては、利水に関する全国共通のルールに沿いまして、いずれの利水参画者からも参画継続の意思表示があったこと、あわせて、他の代替案では対応できないとの回答があったこと、未利用水の所有者からは引き続き所有する等との回答があったことを確認しております。

 したがいまして、利根川水系の未利用水を転用すれば、思川開発事業を中止できるのではないかという御提案は、なかなか採用するのは難しいのではないかと推察をしております。

 いずれにいたしましても、ダム検証中でございますので、引き続き、予断なく検証を進めてまいります。

福田(昭)委員 大臣、先ほど申し上げたように、ダム見直しのシステムそのものが間違っているんです。ダムの原案と同じようなダム案を比較すれば、現状のダム案は残事業費なんだ。一番安いから、そうなってしまう。だから、ダム見直しのシステムそのものが間違っているということをまず御認識いただきたいと思います。

 そしてさらに、水道事業計画ができませんよ。一番最後の資料につけておきましたけれども、資料の八をごらんください。

 思川開発事業を中止するべき理由が、一番、水利用の面で有害無益、それから二つ目、水害対策の面で有害無益、三つ目、環境にとって有害ということで、これはムダなダムをストップさせる栃木の会、思川開発事業を考える流域の会、市民オンブズパーソン栃木が作成したものであります。

 ここにちょっとありますけれども、1の(7)番。「いつ使うか分からない水源を確保することは違法です。栃木市、下野市、鹿沼市は、思川開発に参画はしていますが、ダムの水をいつ使うかを決めておらず、このことは地方公営企業法第三条に違反します。」と書いてありますけれども、三条は何て書いてあるか。「経営の基本原則」、「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」。第五条、「地方公営企業に関する法令並びに条例、規則及びその他の規程は、すべて第三条に規定する基本原則に合致するものでなければならない。」

 先ほど来申し上げているように、ダムで水を開発しても使うところがない。栃木県は、事情が変わったんだから、やめるという選択肢もあると裁判所に指摘されているんですよ。もしこのまま強行して、本当に水道事業計画が実現できなかったら、住民訴訟に遭ったら、今度こそお金返せよですよ。

 実はこういうことが栃木県では別な件でありました。株式会社エコシティ宇都宮という、国庫補助金返還問題がありまして、つい先日、住民訴訟で宇都宮地裁が、栃木県が国に返した一億九千七百万、これは違法であるから、しかも、知事が管理監督責任を怠ったから、一億九千七百万、知事個人が県に返せという判決が出ました。知事は控訴しましたけれども、判決文を私は読んでみましたけれども、完全敗訴です。これは多分勝てないと思います。

 実際、もう一つの裁判があって、知事自身が宇都宮市長に返せと言っていた補助金については、ついこの間、最高裁から判断が出て、宇都宮市が勝ってしまって、宇都宮市から県に補助金が返還されることはないことになりました。

 これは、もう一度住民訴訟されたら今度は負けますよ。そのことをしっかり認識して、今までのシステムではだめだということを大臣、大臣しかこれは決断できないんですよ。改めて申し上げますが、いかがですか。

石井国務大臣 一般論としては、委員御指摘のように、未利用水を活用する観点も重要でありまして、未利用水の権利者への確認も丁寧に行っていくべきであると考えております。

 一方で、水資源開発には長い年月と大変な利害調整、多くの費用を要するものでありまして、各利水者は、そうした負担を負いながら、水源として使える安定的な水の権利の確保に努めてきたものと承知をしております。

 こうした水資源開発の経緯に鑑みれば、利水者が確保した水の権利そのものはもちろん、利水者の意向も尊重すべきものと考えております。

 いずれにいたしましても、本事業については現在検証中でありますので、引き続き、予断なく検証を進め、その結果に沿って適切に対応してまいりたいと思います。

福田(昭)委員 終わりますが、百年貸し出すということだってできるんですよ。それぐらいの長期的なスパンで考えるべきだということを申し上げて、終わります。

谷委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 まず冒頭、熊本地方を襲った大地震と、その後の相次ぐ余震によりお亡くなりになられた方、また御遺族の皆様に心からのお悔やみを申し上げます。また、被害に遭われた皆さんに心からのお見舞いも申し上げたいというふうに思います。

 避難されておられる方たちの一日も早い生活再建と避難環境の改善のために、私たち日本共産党も全力を尽くす決意を申し上げます。

 この間の相次ぐ激しい揺れの中で、熊本、大分両県では、土砂災害が多数発生し、各地で高速道路や鉄道が寸断をされ、水や食料、医薬品など、支援物資を届けるのも大変大きな困難に直面をしております。

 私は、改めて、大量の人の移動や物流の役割を担う鉄道の重要性、これを感じずにはおられません。一日も早く復旧され、開通することが求められるわけですが、同時に、そこに鉄道の路線があるということそのものの重要性も痛感するわけです。

 そこで、きょうは、中国地方を走る全長百八キロ、島根県江津市から広島県の三次市を結ぶJR三江線の問題について質問したいと思います。

 昨年十月十六日、JR西日本から、三江線にかかわる関係自治体の首長に対して、ニーズに合った持続可能な公共交通のあり方の協議に入りたいとの申し入れがあったことを受けて、地元マスコミなどが一斉に三江線廃止と大きく報道しました。

 三江線は、先ほど述べた江津市と三次市を含め、両県六つの市町をまたぐ路線であり、もしこれが全線廃止となりますと、大変広大な地域に大きな影響が及ぶことになります。

 私は、この間、島根県の美郷町、川本町、邑南町の町長、また江津の市長さんにもお会いをし、直接お話を伺いましたが、皆さん共通して存続させてほしいという御意見でした。

 ことしの一月には、関係市町の首長と議長でつくる三江線改良利用促進期成同盟会の皆さんが要望書を持って国会にも来られました。大臣も直接お受け取りになったと聞いておりますが、要望書には、JR西日本からの申し入れを受けて各市町で住民説明会を行った結果、住民から三江線存続の強い声があった、三江線存続に対する住民の切なる思いを受けとめていただきたいとつづられております。

 そこで、まずお伺いしますが、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律、いわゆるJR会社法が二〇〇一年に改正された際、JRがその事業を営むに際し配慮すべき事項に関する指針というものを国土交通省は定めております。その趣旨を説明していただけますか。

    〔委員長退席、小島委員長代理着席〕

藤田政府参考人 平成十三年のいわゆるJR会社法の改正に当たりましては、完全民営化後のJR本州三社が当分の間配慮すべき事項として、指針を定めることとされました。

 その趣旨につきましては指針の中に記載がございます。少し読み上げさせていただきます。「その営む鉄道事業に係る利用者の利便の確保及び適切な利用条件の維持並びにその事業を営む地域の経済及び社会の健全な発展の基盤の確保を図るためには、なお当分の間、国鉄改革の経緯を踏まえた事業運営が行われる必要がある。」こういう趣旨が書かれております。

大平委員 民営化されたからといっても、JRは、その歴史的経過を踏まえて、利用者の利便の確保、適切な利用条件の維持、地域経済及び社会の健全な発展の基盤の確保を今後も図る必要があるので、以下の配慮すべき事項を定めた、そういう御答弁だったと思います。

 つまり、JRは、他の民間鉄道会社よりも公共性が高い、そういう鉄道であるという趣旨だと読みました。こうした鉄道だからこそ、住民の皆さんはこれまで安心して利用されてこられました。

 私は、今回、関係自治体に伺う際に、実際に三江線に乗車をし、実際に使っておられる方にお話を伺いました。

 例えば、通勤で使っているという六十代の女性。廃止になってバスになったら運賃が上がるのが心配だ、今は片道二百四十円、バスだと幾らになるのか、町営のバスだと同じ距離で七百円、これじゃやっていけない、そんなお話でした。

 また、八十代と九十代の女性二人組。この日は、月に一回の楽しみで、お風呂とお昼御飯が食べられる施設に行ってきたその帰りだというお話でした。ひとり暮らしで車も持っていないので、医者に行くのも買い物に行くのもこの三江線を使っている、なくなったら大変だ、そんな声でした。

 こういう声にこそ真摯に耳を傾け、その思いに応えていく、そういう協議にしなければならないと私は感じました。

 そこで、JR西日本は三江線の利用者が大きく減少しているんだと説明をしておりますが、しかし、私は、住民のお話を伺いますと、その原因はJR西日本にもあるのではないかと言わざるを得ないんです。

 例えば、通学の足としての役割をこの三江線は果たしてきましたが、だんだんと利用しにくくなったとの声を聞きました。

 現在の三江線のダイヤで、島根中央高校の最寄り駅である石見川本駅、朝の到着時間は、上り下り、それぞれ何時何分でしょうか。局長、お答えください。

    〔小島委員長代理退席、委員長着席〕

藤田政府参考人 石見川本駅における朝の通勤通学時間帯の到着時刻でございますけれども、上り電車、これは江津方面行きでございます、これが七時四分と八時二十四分の二本でございます。下り電車、三次方面行きでございますが、これは七時七分の一本が停車いたします。

大平委員 七時四分、七時七分というお話でした。下りの列車の始発駅である江津駅、これは最も利用者が多い駅でありますが、これを出発するのが六時ちょうどなわけですね。つまり、通学に利用するには早過ぎるわけです。

 例えば二〇〇三年のころのダイヤを見ますと、それでも江津駅出発が六時三十二分で、石見川本駅の到着が七時二十四分。今よりも三十分遅く、それなりの利用があったわけですが、こうしたダイヤになってしまって使えなくなったと。下校時間も同様に利用しづらく、こういう状況の中で、保護者の方が自家用車で送り迎えをしないといけなくなった。その中で、スクールバスの要望が強まり、導入がされ、そのことでなお一層三江線を利用する学生が減っていったという、そんなお話でした。

 その一方、今でもなお、江津工業高校、ここでは少なくない学生が通学でこの三江線を使っております。同高校のホームページを見れば、登校時間という欄にわざわざ、「山陰線上下、三江線の時刻に合わせているので、八時五十分からホームルーム活動を開始しています。」と書いてあります。つまり、朝一番の便が江津駅に着くのが八時十五分なので、それに合わせて高校の開始時間を設定しているとのことでした。

 大臣に改めてお伺いしたいと思いますが、ニーズに合った公共交通のあり方の協議という場合に、JR西日本が言う、利用者が減り続けています、だから廃止ですということではなくて、こうした背景や経過などもしっかり踏まえることが大事だと考えますが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 JR三江線につきましては、輸送密度が平成二十六年度には五十人であるなど、利用状況が大変厳しい路線であります。

 これまで、JR西日本や沿線自治体におきましては、JR三江線の利用促進や活性化の取り組みを行ってきたところでありますが、引き続き厳しい利用状況を踏まえ、JR西日本は、昨年十月、沿線の六市町に、持続可能な地域の公共交通の構築に向けた検討を開始する方針を伝えております。

 それ以降、JR西日本におきましては、沿線自治体や住民との意見交換を行い、本年二月からは、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っていると承知をしております。

 国土交通省といたしましては、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論していただくことが重要と考えており、地域と丁寧な議論が行われるよう必要に応じて助言等を行ってまいります。

大平委員 地域と地域の住民の皆さんに丁寧な説明、その他答弁がありましたが、住民の皆さんにとっては、なかなか自分たちのこうした思いが聞いてもらえていないという、そんな思いを持っておるわけですね。ですから、ことしの一月、わざわざ関係自治体の首長、皆さんがそろって上京して、切なる思いを受けとめてほしい、こういう要望を大臣にも直接したわけであります。その思いを、その背景も含めて、ぜひとも受けとめていただいて、この協議への国交省としての助言というふうにありましたが、強めていただきたいというふうに思います。

 もう一点、大臣に伺いたいと思うんですが、首長さんたちが口をそろえておっしゃっていたもう一つの点は、三江線がなくなることによって地域がますます寂れてしまうんじゃないかという不安の声でした。住民の足という問題とともに、江の川沿いをゆっくりと走るこの三江線はその景観も大変魅力で、季節ごとに変わる風景を見に来るファンも少なくありません。地域の活性化のために、観光という面からも、地元の皆さんは三江線の存続を求めて懸命に努力をしてこられました。

 大臣にお伺いしますが、鉄道というのは、単に移動手段というだけではなくて、その町の文化であり、観光資源であり、その点からも地域の活性化に欠かせない一つの財産だと感じます。つまり、バスにも車にも取ってかわれない鉄道ならではの魅力があり、そこに人が集まり、それを沿線自治体は活用するんだと私は思うんですが、大臣の御認識はいかがでしょうか。

石井国務大臣 鉄道は、路線ごとにその具体的な役割は異なりますが、基本的には、国民生活や経済活動を支える輸送機関としての役割を果たしております。

 その上で、各地域における文化の形成や観光資源としての活用など、地域活性化という観点からも重要な役割を果たし得るものと考えております。

大平委員 私は、地元で有名な石見川本駅の改札に一年のうち三百三十日ぐらい立って、三江線からおりてくるお客さんたちに観光案内をしている川本町の観光協会の方のお話も伺いました。

 その方は、三江線がなくなることによって、鉄道地図の上から川本の名前が消えてしまう、田舎が否定されるようだ、それは決して看過するわけにはいかないとおっしゃっておりました。

 地域創生というお話もありますが、その観点からも、こうした意見にしっかりと耳を傾けた協議を行うよう強く求めておきたいというふうに思います。

 少し歴史も振り返りながら、さらに質問したいと思います。

 国鉄の分割・民営化問題が議論された当時の日本国有鉄道改革に関する特別委員会でも、私も議事録を拝見しましたが、当時の政府参考人あるいは橋本龍太郎運輸大臣は再三再四にわたって、赤字路線も含め切り捨てることは考えていない、生き残らせるため、生き返らせるための分割・民営化なんだという説明をしております。赤字路線を抱えても会社は十分に企業経営ができるとまで述べております。

 そうした議論があったことは間違いありませんね。確認です。

藤田政府参考人 国鉄改革に際しましては、JR各社がその時点での路線を適切に維持できる、そういう考え方で制度設計をしております。

大平委員 そこで、問題の三江線ですが、JR西日本は、赤字路線であり、採算がとれないんだという説明を繰り返し行っております。

 国交省にお伺いしますが、国鉄からJR西日本に変わった一九八七年当時の三江線の輸送密度、いわゆる一日平均の利用者数ですが、どのぐらいあったでしょうか。

藤田政府参考人 三江線の輸送密度は、JR発足時である昭和六十二年度におきまして、四百五十八人でございました。

大平委員 四百五十八人という輸送密度でした。

 当時の議論で、輸送密度が四千人未満かどうか、これが路線の存廃を判断する一つの基準だったというふうに伺いました。

 そのことを考えると、四百五十八人という数は、採算だけでいえば当然赤字の路線であったことは疑いないというふうに思います。つまり、JR発足当時から三江線は赤字であり、そのことを承知の上でJRに引き継いだ、それでも経営としてやっていけるからだ、そういうことだったというふうに思います。

 そこで伺いますが、JR西日本のここ三年間の営業損益と経常損益はどうなっているでしょうか。

藤田政府参考人 JR西日本の営業損益でございますけれども、平成二十四年度は一千二十三億円の黒字、二十五年度は一千十七億円の黒字、二十六年度は一千百二十億円の黒字でございました。

 それから、経常損益につきましては、平成二十四年度が七百七十五億円の黒字、二十五年度が七百九十九億円の黒字、二十六年度は九百二十一億円の黒字でございました。

大平委員 御答弁にあったとおり、ここ三年間、JR西日本は一千億円を超える営業利益を上げております。最新の数字である二〇一四年度の経常利益九百二十一億円は、分割・民営化以降、最高額である。初めから赤字路線であることをわかっており、それでも全体としては黒字になるし、むしろ生き返らせるんだ、そのために引き継ぐんだというのが当時の議論だったと思います。

 そして、今や過去最高の利益を上げる中、しかし、三江線は赤字路線で採算がとれないから廃止の検討を、この説明は、私は、JRの公共性を鑑みても、またこれまでの議論からしてみても、住民の納得が決して得られないのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

石井国務大臣 JR三江線については、JR西日本や沿線自治体において、その利用促進や活性化の取り組みを行ってきました。

 例えば春、夏、秋の各シーズンに団体列車を設定して、活性化に努める等の努力を行ってきたというふうに承知をしておりますが、残念ながら、国鉄民営化当時の昭和六十二年度輸送密度四百五十であったものが、直近では五十まで著しく減少しておりまして、引き続き厳しい利用状況にあるというところでございます。

 こうした状況を踏まえて、今現在、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っているものと承知をしております。

 国土交通省としては、先ほども申し上げましたが、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論をしていただくことが重要と考えております。

大平委員 先ほどの答弁の繰り返しだと思いました。なかなか答えていただけないなと思いましたが。

 少し角度を変えましてさらにお伺いしますが、国鉄からJRに分割・民営化される際に、四百五十八人という輸送密度であるにもかかわらず、廃止をされなかった理由は何だったでしょうか。

石井国務大臣 JR三江線は、当時、代替輸送道路が未整備であったことから、バス転換等の対象から除外され、廃止されなかったものと承知をしております。

 現在は、JR三江線に並行する国道三百七十五号線について、道路拡幅等の一定の整備がなされ、道路状況は改善されているものと認識をしております。

大平委員 一定の整備がされているという御答弁でした。

 私、実際、代替交通、道路の整備の状況というのも視察に伺いましたけれども、やはりこれはちょっと認識が全然違うなという実感です。大臣もぜひ行ってみられたらというふうに思いますけれども、特に美郷町や川本町などの沿線道路というのは本当に道が細くて、くねくね道で、バスがすれ違うというのがなかなかできない。たとえ小さな車両が通ってすれ違うとしても、お年寄りなどは乗り物酔いとか転倒とか、そういういろいろな不安が、代替交通と言われても、よぎるわけです。

 川本町長さん、美郷町長さんなども口をそろえて、代替道路の問題は決してまだ解決に至っていない、そのもとでの廃止は認められないということを共通した認識としておっしゃっていたということもはっきり申し上げておきたいというふうに思います。

 最後にお伺いしたいのは、冒頭にも取り上げたJR会社法改正の際の国土交通省が定めたJRに対する指針の内容についてです。

 ちょっと一問飛ばしますが、廃止について述べた指針の第2項ロには、鉄道事業者に対して、路線廃止の届け出をする際には関係自治体や住民にその事情を十分説明することを求め、そして鉄道事業法第二十八条の二では、国土交通大臣は関係自治体や住民の意見を聴取するというふうに定められております。

 大臣、皆様方が定めたこの規定からしても、そして公共性を持つJRの路線の存廃の判断は、きょう私がさまざま紹介もした住民の皆さんの声や願い、また関係自治体の意見をよく聞き、また、事業者は住民、関係者に十分に説明もして、合意や納得を得ながら進めていくということが大前提になると思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

石井国務大臣 JR西日本の路線につきましては、新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針に基づきまして、その廃止に際して、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向等の事情変化について地域に十分説明することが求められております。

 JR三江線につきましては、JR西日本から路線の廃止の意向が示されたものではなく、現在、沿線六市町、JR西日本、島根県及び広島県をメンバーとする検討会議において、持続可能な地域公共交通のあり方について検討を行っているものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、国土交通省としては、先ほどの答弁と重なりますが、地域公共交通のあり方について、地域の足の確保という観点から、沿線自治体、JR西日本等の関係者で十分に議論をしていただくことが重要と考えております。

大平委員 十分な議論をという御答弁でした。

 私の地元の地方紙でもある中国新聞にも、投稿欄には二日に一本くらいのペースで、三江線を残してほしい、そういう本当に切なる思いというのが掲載される。私もその思いを本当に受けとめて、きょうここに、質問に立たせていただいております。

 JR西日本は、きょう私が紹介をした住民の皆さんの切実な声や思いにしっかりと寄り添い、一緒に考えていくという姿勢を持つこと、そして、国土交通省は、JRが公共交通としての役割を今後とも十分に果たしていくようしっかり注視もし、意見もしっかり述べていただくということも求めて、きょうの私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、再び、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。

 午前中に続いて、熊本、大分を初めとした九州地方の地震の関連で質問をさせていただきます。

 改めてこの場でも、亡くなられたお一人お一人に哀悼の意を表したいというふうに思います。そして、被害に遭われた全ての皆様に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。

 この熊本での地震の影響で、回送中の九州新幹線の列車が熊本市内で脱線をいたしました。回送の列車は、十四日の午後九時二十五分、JR熊本駅を発車して時速八十キロで走行をしていた。約一分後に激しい揺れを感知して、非常ブレーキがかかったそうですけれども、六両編成の車輪が脱線をいたしました。全て脱線をいたしました。

 九州新幹線では、地震に備えて複数の安全対策を行っていたといいますけれども、なぜ脱線を防ぐことができなかったのかということを確認したいと思います。脱線事故、そして九州新幹線の地震の被害の状況についてお示しをいただきたいと思います。

藤田政府参考人 九州新幹線の被害の状況でございますけれども、新大牟田―新水俣間百十二キロにおいて点検作業を実施しておりまして、それによって確認をされているところでございます。

 昨日まで実施された高架橋構造物等の目視点検の結果では、新玉名駅―新八代駅間で高架橋の柱の亀裂や防音壁の落下等、それから熊本駅で可動式ホーム柵やエスカレーターの損傷等、新八代駅でプラットホームの桁を支える柱の損傷等などが確認されております。

 それから、今御指摘の脱線の関係でございますけれども、熊本駅と熊本総合車両所間を走行していた回送列車が脱線いたしました。この脱線に伴う軌道の損傷等も確認されています。

 さらに、電気設備や信号通信設備等の被害状況につきまして、一昨日から点検作業が行われているところでございます。

本村(伸)委員 JR九州によりますと、運転士の方は揺れを感じて非常ブレーキをかけて、地震の揺れを検知して列車を自動で停止させるシステムも作動していた、先頭車両は、にもかかわらず進行方向左に大きくずれて、車両が左側のレールにまたがった状態でとまったということでございます。

 そこで、確認をしたいんですけれども、新幹線が本線上を走行中に脱線事故を起こしたことはこれまであったでしょうか。

藤田政府参考人 新幹線が本線を走行中に脱線した事例、これまで二件ございます。いずれも地震によるものでございます。

 具体的には、平成十六年十月二十三日の新潟県中越地震によりまして、上越新幹線の浦佐駅―長岡駅間を走行中の列車が脱線した事例がございます。もう一つは、平成二十三年三月十一日の東北地方太平洋沖地震により、東北新幹線の仙台駅構内を走行中の列車が脱線したという事例がございます。

本村(伸)委員 地震の揺れを検知して自動停止させるシステムは、JR東海が東海道新幹線で採用しているのと同じように、緊急地震速報を受信するか、あるいは沿線に設置をされた地震計が四十ガル以上の揺れを検知すると、新幹線への送電を自動的にとめて、列車を緊急に停止させる仕組みがあるということだというふうに思います。

 今回の地震では、脱線の現場近くの地震計で二百五十ガルという非常に大きな揺れが観測をされ、システム自体は正常に作動をしておりました。結果は、このシステムだけで脱線を防ぐことができなかったということだと思います。

 直下型の地震の場合、地震発生を検知し、列車停止を指令する時間よりも、地震の到達時間の方が早いというふうに言われております。早期地震警報システム、地震自動停止システムがあるからといって、地震発生時に安全に停止させる技術はまだ完成していないということだと思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

石井国務大臣 早期地震検知システムは、地震計が初期の小さな地震波を検知することによりまして、大きな地震波の到達が推定された場合等に、列車への送電を自動的に停止し、列車の非常ブレーキを動作させ、減速、停止させるシステムであります。

 大きな地震の際に、高速で走行している新幹線をできるだけ減速させることは、安全性を高める上で非常に有効なことだと考えております。このため、各新幹線には早期地震検知システムを設けております。

 ただ、その仕組み上、新幹線の走行速度や震源との距離によっては、大きな揺れの到達までに十分な減速に至らないケースもあります。

 したがって、新幹線の地震対策としては、早期地震検知システムだけではなく、構造物の耐震化や脱線・逸脱防止対策を組み合わせることが必要であり、国土交通省といたしましては、こうした総合的な対策を推進しているところであります。

本村(伸)委員 JR九州では、中越地震以降、脱線防止ガードを設置するなどの対策をとってきたというふうに思いますけれども、事故が起きた場所は設置されていなかったということでございます。

 九州新幹線では、二本のレールの内側に高さ二センチの壁を設けて車輪が乗り越えるのを防ぐ脱線防止ガードが導入されているそうですけれども、今回、脱線が起きた場所にガードそのものが設けられていなかった。なぜ脱線防止ガードをつけていなかったのかという点をお伺いしたいと思います。

藤田政府参考人 JR九州におきましては、大規模地震の際に列車の脱線、逸脱を防止するために、脱線防止ガードの設置を進めております。

 具体的には、新幹線と交差する活断層のうち、強い揺れが想定される活断層箇所に対する設置を優先的に進めているところでございまして、平成二十九年度までに約五十五キロメートルで設置される計画となっております。

 今回脱線した箇所については、この設置計画に含まれておりませんでした。

本村(伸)委員 それはなぜつけていなかったかということをお伺いしたんですけれども。

藤田政府参考人 JR九州におきましては、ただいま御答弁申し上げたとおり、新幹線と交差する活断層のうち、強い揺れが想定される活断層箇所をまず優先して整備を進めるという方針をとっております。

 今回の箇所は、その中に含まれていなかったということでございます。

本村(伸)委員 ちょっと確認をしたいんですけれども、自動停止システムも脱線防止ガードも東海道新幹線と同じタイプだというふうに思いますけれども、確認をしたいと思います。

藤田政府参考人 早期地震検知システムは、基本的には各新幹線とも同じシステムでございます。

 それから、JR九州で設置している脱線防止ガードにつきましては、レールの横に設置した金具によりまして車輪をレールと挟み込むことによって脱線を防止するものでございます。九州新幹線と東海道新幹線では新幹線の軌道構造が異なりますので一部変更しておりますけれども、基本的には同じ構造でございます。

本村(伸)委員 報道では、JR九州の新幹線部長が、地震対策は優先順位をつけて行ってきたが、今回の場所でのここまでの大きな地震は想定していなかったというふうに述べているということでございます。

 想定していなかった、想定外ということだというふうに思いますけれども、大地震が頻発する日本で想定外であったということでは、やはり安全運行を守るという公共交通機関としての認識としては甘いものがあったのではないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 こういう甘い認識を改めて、大地震、災害に備えた対策を緊急に実施させるべきだというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

石井国務大臣 脱線防止ガードの設置は、脱線や逸脱を防止し、安全性を高める上で効果的な対策であります。

 JR九州では、九州新幹線において、必要性の高い箇所から段階的に脱線防止ガードの整備を推進しているというふうに聞いております。

 必要性を踏まえて段階的に整備するという考え方自体は間違っていないと思いますけれども、国土交通省といたしましては、今般の脱線事故を踏まえまして、その詳細な状況の確認を行った上で、九州新幹線を含む新幹線の脱線・逸脱防止対策の進め方について検証を行ってまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 今回は回送の新幹線でしたけれども、もし人が乗っていたら本当に大惨事になるということでございますので、ぜひ対策を強化していただきたいと思います。

 あわせて、国交省が調査をして指摘をしております九州新幹線の地震の被害の写真を見ましたけれども、損傷は百三十カ所を超えるというふうに報道をされております。

 九州新幹線は、二〇〇四年三月十三日に新八代―鹿児島中央ということで開通をし、二〇一一年三月十二日に全て開通をしておりますけれども、脱線をした箇所というのは二〇一一年三月に開通したばかりのところで、まだ五年しかたっていない場所でございます。

 今回の事故は、いかに活断層が危険かというのを如実に示しているものだというふうに思います。東海道新幹線を初め、活断層を横断している全国の新幹線ルートの耐震、安全は大丈夫なのかということが心配の声として上がっております。再調査、念入りな点検等、対策が必要だというふうに思います。

 幾つも活断層を横断する、日本有数の活断層を横断するリニア中央新幹線も同様だというふうに思います。国交大臣として、リニア中央新幹線を含めて、新幹線で、活断層の評価、その活断層はどのくらいで動くと判断しているのか、こういう資料提出も含めて、活断層を通る地域を総点検し、改修など対策をとるべきだというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。

石井国務大臣 新幹線の耐震対策につきましては、一九九五年、平成七年の阪神・淡路大震災を受けまして、構造物に大きな損傷が生じないよう、一九九八年、平成十年に耐震基準を見直しました。すなわち、大規模地震、震度六強から七程度の際にも、早期に機能を回復させるため、構造物に大きな損傷を生じさせないというものでございます。その後整備された新幹線につきましては、この基準に基づき整備をされております。

 九州新幹線につきましても、この基準に基づいて整備されたため、今回の熊本地震におきましても、高架橋には倒壊につながるような大きな損傷は確認をされておりません。大地震ですから、全く損傷が生じないということはなかなか難しいのですが、大きな損傷は生じていないわけでございます。

 一方、阪神・淡路大震災以前に整備された新幹線につきましては、高架橋の柱に鉄板を巻きつける等の対策が行われておりまして、ほぼ完了しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、新幹線の地震対策が適切に行われるようJR各社を指導監督してまいります。

本村(伸)委員 ぜひ、今回の事故を受けて、もう一度総点検、改修をしていただきたいというふうに思います。

 そして、引き続き、被災者の皆さんの救援、生活再建、被災地の復旧復興に全力を挙げていただくということを強く求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 おおさか維新の会の椎木保です。

 質問に入る前に、熊本県を中心に発生した九州地方の地震によりお亡くなりになられました方々に対しまして、心からお悔やみを申し上げます。また、負傷された方々、さらには被災された方々に対しましても、心からお見舞いを申し上げます。

 それでは、質問に入ります。

 最初に、道路行政について質問いたします。

 高速道路等のミッシングリンク解消は、経済活動を活性化させる上で極めて重要なことであります。

 現在、大阪市を初めとする関係自治体や経済団体で構成する関西高速道路ネットワーク推進協議会では、関西創生のための高速道路ネットワーク充実強化のため、国に対して淀川左岸線延伸部の早期着工を要望しております。

 淀川左岸線延伸部実現に向けてのスケジュールとしては、都市計画及び環境影響評価の法手続を経て、今年度中の都市計画決定を目指しています。

 平成二十七年十月に都市計画案及び環境影響評価準備書の公告縦覧及び地元説明会を実施し、その際、地元住民からの大きな反対意見は出ていないと聞いております。

 淀川左岸線延伸部が近畿圏の他の高速道路ネットワークの形成からおくれることなく効果を発揮するためにも、国直轄事業と有料道路事業の合併施行方式の導入など、地元負担を軽減する事業スキームを構築し、早期の事業化を進めるべきと考えますが、政府の見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の淀川左岸線延伸部でございますが、これは、淀川のちょうど左岸の部分に関しまして、近畿自動車道、そしてまた互いにその近畿自動車道の環状道路になります阪和線を連絡いたします区間の一部を構成するものでございます。

 実際に、この淀川左岸線の延伸部につきましては、延長十キロということで、一部の区間が切れているばかりに、湾岸線、あるいは大和川線、そして近畿自動車道といったような車をしっかりと受けとめることができず、大阪都心部にかなりのひどい渋滞を招いているということでございまして、地元から強い要望を受けているところでございます。

 委員御指摘のように、関西地域全体の活力向上を図るためにも、ぜひとも必要な路線ということで私どもの方も認識しておりまして、現在、国、大阪府、大阪市で議論をいたした結果を、都市計画決定の手続を進めさせていただいているというところでございます。

 平成二十七年十月には環境影響評価の準備書を縦覧させていただいたということで、一歩一歩その手続を進めさせていただいているというところでございます。

 また、あわせまして、今委員御指摘のように、税金で行う事業、そしてまた有料道路制度を活用しながら行っていく事業ということの組み合わせをうまくしながら、適切にあるいはまた時間を有効に使いながら事業を進めてまいりたいというふうに思っている所存でございまして、現在、今年度中を目標に、関西エリアの有料道路制度をどのように見直していくのかという議論を進めさせていただいているところでございます。

 そういった結果も踏まえながら、委員御指摘のような淀川左岸線延伸部をいかに事業を進めていくのかという議論を進めまして、国また大阪府、大阪市さんともいろいろ御検討を重ねながら、事業に向けての議論を進めさせていただければというふうに思う所存でございます。

 以上でございます。

椎木委員 淀川左岸線延伸部が開通することによって、経済の活性化を初め、観光面ではユニバーサル・スタジオ・ジャパン、IR候補地の夢洲など、大阪ベイエリアの大規模観光拠点と国際観光都市である京都とが直結することになり、日本人旅行者はもとより、訪日外国人旅行者が移動する際の利便性の向上にもつながると思います。関西全体の観光振興に大きく貢献すると考えられます。さらに、観光先進国を目指すという国の政策にも合致するものではないかと思いますが、これらについても見解の方をお願いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 先ほどと少し重複するところではございますが、大阪都市圏の、今お話がございました湾岸エリアでの開発、そしてまたユニバーサルスタジオ等々を中心としました地域の活力を向上していくためのいろいろなさまざまなレクリエーション施設、それらを有機的に連携していく路線として、私どもも、その重要性、役割を認識しているところでございます。

 そういう意味合いからも、一日も早く地域のミッシングリンクの解消という御要請をしっかりと受けとめて対応させていただければというふうに思いますし、もともとこの路線を含めましての大阪の環状道路を形成していく、そういう役割を私どもとしても強く認識しているところでございますので、今委員御指摘の大阪湾岸エリアのさらなる一層の活力向上、そしてまた、それがひいては関西圏エリア全体の活力向上につながっていけるように、私どもとしても、ぜひ私どもの支援をさせていただければ幸いかなというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

椎木委員 若干重なる答弁をお願いしているようですけれども、本当に問題意識としては非常に重要だと思いますし、地元の国会議員としても非常に期待をしている事業で、延伸部でありますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 今度は、やはり関連してなんですけれども、大阪の副首都推進にかかわる内容で、淀川左岸線延伸部の質問とちょっと重ねさせていただきたいと思います。

 大阪の経済活性化にとって、阪神港を中心に、物流・港湾機能の拡充強化は重要である、臨海部へ通じる阪神高速東大阪線の交通渋滞が慢性化しているため、淀川左岸線延伸部と都市圏の外周とをつなぐ高速道路を整備することによって、大阪ベイエリアに集積する物流・港湾機能の確保を図っていくことも考えなければならないと思います。

 いずれにしても、先ほどから答弁いただいていますけれども、淀川左岸線延伸部の実現は関西地域の活性化に大いに貢献するとともに、大阪副首都推進にも有効であると考えます。大阪副首都を推進する我が党にとっては非常に大きな政策の一環でありますので、これについての政府の見解をお願いしたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございますが、少し数字を述べさせていただきますと、阪神高速の環状道路を使う車が、実は、東京自身が約六割に対しまして、通過交通が約七割を占めるという、都心に用事がない車がどんどん入ってきている、今そういう非常に厳しい環境にございます。その結果、阪神高速の東大阪線に関しましては、全国の都市高速でワースト六位、こういう渋滞状況を呈しているという状況にございます。

 そういった交通環境を改善することが、先ほど来お話をさせていただいておりますような、要は大阪都市圏の活性化につながるということでもございますし、大阪経済界、そしてまた大阪府、大阪市が提唱しておられます、今委員御指摘の副首都といったような、あるいは複眼構造を目指す大阪経済圏の一助につながるものというふうに強く確信をしているところでございますし、それらを支えるためにも重要な役割を果たすこの淀川左岸線の延伸部、そしてまた、今さまざまな方面から言われておりますような、大阪湾岸道路の西伸部といったところのネットワークのミッシングリンクをしっかり解消させながら、大阪都市圏の物流等々を支えてまいりたいというふうに思う次第でございます。

 以上でございます。

椎木委員 我が党のといいますか、大阪の思いをしっかりと受けとめていただいているとの答弁だと思います。本当にありがとうございます。引き続きよろしくお願い申し上げます。

 次に、観光政策についてお聞きしたいと思います。

 訪日外国人旅行者数二千万人の目標達成が視野に入ってきたことを踏まえ、次の時代の新たな目標を定めるとともに、必要な対応の検討を行うため、本年三月三十日、安倍総理を議長とする、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議が開催されました。

 観光先進国に向けて、二〇二〇年に二千万人というこれまでの目標に満足することなく、さらなる高みを目指す必要があるとし、新たに訪日外国人旅行者数を二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人を目指す、訪日外国人旅行消費額については、二〇二〇年に八兆円、二〇三〇年には十五兆円を目指すという目標値が示されております。

 二〇一五年時点での訪日外国人旅行者数は一千九百七十四万人、訪日外国人旅行者の消費額は三兆四千七百七十一億円となっており、当初予定を上回ったため、新たな目標値を示したということですが、多くの外国人が訪日することによって、日本のすばらしい自然や文化、歴史などが世界じゅうに広がっていくことは大変結構なことだと思います。

 訪日外国人旅行者の数がふえればいいという単純な話ではないような気もします。

 これらの目標値を定めた理由、そして根拠はどこにあるのでしょうか。お尋ねいたします。

石井国務大臣 観光は、地方創生の切り札であり、GDP六百兆円達成への成長戦略の柱であることから、国を挙げて、観光を我が国の基幹産業へと成長させ、観光先進国という新たな挑戦に踏み切ることが必要と考えております。

 このため、従来の政府目標を大幅に前倒しし、かつ質の高い観光交流を加速させるため、新たな目標を定め、広く関係者とともに共通の目標を目指して取り組むことといたしました。

 訪日外国人旅行者数につきましては、世界そしてアジアの旅行市場の動向、我が国の最近のインバウンド市場の趨勢等を踏まえ、さらなる政策的努力を上乗せし、一層の高みを目指すため、二〇二〇年には約二倍となる四千万人、二〇三〇年には約三倍となる六千万人を目標として設定したところでございます。

 また、数だけでなく質を高めることによりまして、地方創生、経済の活性化を図ることが重要であります。このため、訪日外国人旅行消費額につきましては、訪日外国人旅行者数の目標を前提にいたしまして、ビジョン施策の実施によりまして、一人当たりの単価、消費額をふやして、二〇二〇年には八兆円、二〇三〇年には十五兆円を目標として設定いたしました。

 さらに、これらに加え、地方部での外国人延べ宿泊者数、外国人リピーター数等につきましても新たな目標を設定したところでございます。

 今後は、世界が訪れたくなる日本を目指し、観光ビジョンに盛り込まれた施策を政府一丸となって着実に進めてまいりたいと考えております。

椎木委員 次に、安倍総理は、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議での議論を踏まえ、観光は我が国の成長戦略の大きな柱の一つだ、地方創生への切り札であり、GDP六百兆円に向けた成長エンジンである、国を挙げて観光を我が国の基幹産業へと成長させ、観光先進国という新たな挑戦に踏み切る覚悟が必要である、以上のように述べています。

 観光を国の基幹産業にし、観光先進国を目指すことは大変よいことだと思います。訪日外国人旅行者を受け入れるに当たっては、さらなるインフラ整備や規制緩和等も必要になります。

 例えば、主要空港の発着能力の拡大や、都市部でのホテル不足が大きな問題となっています。駐車場の未整備による観光バス等の迷惑駐車の問題も指摘されているところです。

 深刻なホテル不足を解消するために民泊の導入も検討されていますが、根本的な解決になるのかは全くこれは疑問です。

 今日、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪等をめぐる、いわゆるゴールデンルートと言われている国内の有名観光地に行けば、多くの外国人観光客や国内観光客であふれ返っており、観光気分は台なしという思いを抱くこともあるのではないでしょうか。

 また、入国審査の際の待ち時間についても課題があります。

 観光先進国を目指すに当たっては、その他のたくさんの課題が山積していると思われますが、これらの問題について、短期的あるいは中長期的にはそれぞれどのような対応を考えているのか、答弁をお願いします。

田村政府参考人 お答えいたします。

 訪日外国人旅行者数の急増に伴いまして、受け入れ体制の課題というのも生じているところでございます。

 このため、当面の対策といたしまして、宿泊施設については旅館等のインバウンド受け入れ体制の整備への支援、それから観光バスについては、安全の確保を前提とした営業区域の拡大による供給量の確保、あるいはショットガン方式と申しまして、繁華街に駐車させずに外で待機をさせて必要なときに迎えに来させるというような、そういう方式の実施など、駐車場スペースや待機場所の確保、それから空港、港湾のCIQ体制につきましては、当初予算での大幅増員に加えまして、昨年七月、十二月に緊急増員もやっているところでございますけれども、こういった取り組みを関係省庁、地方自治体と連携し、推進しているところでございます。

 また、先月三十日に安倍総理のもとで取りまとめられました明日の日本を支える観光ビジョンに基づきまして、訪日外国人旅行者の受け入れということを、二〇二〇年、それからさらにはその先を見据えて、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境整備ということで、受け入れ体制の施策について対応を加速化してまいりたいと考えております。

 具体的には、今、二〇二〇年まで首都圏空港の容量拡大ということに取り組んでおりますけれども、あわせまして、地方空港のさらなるゲートウエー機能強化やLCC就航促進、それから宿泊施設につきましては、宿泊施設の新規整備、宿泊施設への転用の促進、あるいは民泊サービスへの対応ということもございます。観光バスにつきましても、空き駐車場等の活用、それから民間都市開発におけるバス乗降場の一体的な整備、あるいは最先端のICT技術の活用等によります円滑かつ厳格な出入国審査、こういったことの実現を目指した施策がビジョンの中に盛り込まれているところでございます。

 いずれにいたしましても、世界が訪れたくなる日本を目指して、これらの観光ビジョンに盛り込まれた施策というものを政府一丸となって着実に実施してまいりたいと考えております。

椎木委員 ちょっと個別にお聞きしたいと思います。

 明日の日本を支える観光ビジョン、この十の改革の中の一つに、「「国立公園」を、世界水準の「ナショナルパーク」へ」とあります。二〇二〇年を目標に、全国五カ所の国立公園について、保護すべき区域と観光活用する区域を明確化し、充実した滞在アクティビティーなど、民間の力も生かして、体験・活用型の空間へと生まれ変わらせることとありますけれども、具体的にどのようなものを想定しているんでしょうか。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 明日の日本を支える観光ビジョンに基づきまして、環境省では、観光資源でもある自然景観や動植物が適切に保護されることを前提といたしまして、世界に通用する国立公園としてのブランド化を通じて、外国人旅行者を含めた来訪者の増加を図るため、国立公園満喫プロジェクトに取り組むこととしております。

 このプロジェクトの具体的な取り組みとしては、外国人も対象とした魅力的なツアーの開発やガイドの育成、環境省ビジターセンターへの民間ツアーデスクの設置、IT活用による観光、安全情報等の提供の充実、さらにはエリア内の景観デザインの統一などを念頭に置いております。

 一方で、日本の国立公園は、北米等の国立公園とは異なりまして、農林水産業や人々の暮らしが営まれている地域も含めて指定されております。そうした意味で、すぐれた自然のみならず、その自然に育まれた伝統文化や食など、地域特有の人の暮らしに触れられることが特徴となっております。

 このため、そうした日本の国立公園の魅力が外国人旅行者の方々にもより効果的に伝わるよう工夫するとともに、そのことを通じて快適に楽しんでいただくことができるよう、関係省庁や地域の方々と連携しながら具体的な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

椎木委員 時間が来ましたので、最後に簡潔に答弁していただきたいと思います。

 国立公園は、自然公園法によって、公園内の利用や商業施設建設などは規制がかかっていると思います。これはどのような対応を現在考えているのか、簡潔に答弁してください。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 国立公園では、すぐれた自然の風景地を保護するために、自然公園法に基づき一定の行為が規制をされております。国立公園の魅力である自然景観や動植物の保護が図られることが前提ですので、このプロジェクトの推進に当たっては、自然公園法に基づく行為規制は引き続き適切に運用してまいります。

 一方で、民間が経営するホテルなどにつきましては、環境大臣の認可を前提に、国立公園の利用を推進する上で必要な施設と位置づけております。今回のプロジェクトでは、このような認可施設としての民間ホテル等を念頭に、より質の高い施設とするための会議場等を併設する場合の認可の基準を明確化することを想定しております。

椎木委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

谷委員長 次に、内閣提出、港湾法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石井啓一君。

    ―――――――――――――

 港湾法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石井国務大臣 ただいま議題となりました港湾法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 近年、我が国港湾への外航クルーズ船の寄港回数が増加しており、クルーズ船の大型化との相乗効果により、クルーズ船による訪日外国人旅行者数が急増しております。訪日外国人旅行者によるインバウンド観光の経済効果を取り込み、地方創生に資するためには、旅客施設の整備や旅客の受け入れのための官民連携体制の構築等クルーズ船の寄港促進のための環境整備を通じた我が国港湾の国際競争力強化が急務となっております。

 また、我が国のエネルギー事情等に鑑み、再生可能エネルギーの最大限の導入が求められ、風力発電施設の立地環境として適した港湾において、洋上風力発電施設の設置需要が高まっている中、港湾区域内の水域等を有効に活用することが求められております。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案した次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、政府は、外航クルーズ船の受け入れ環境整備のため、民間事業者による旅客施設等の整備に対し、無利子貸し付けをできることとしております。

 第二に、官民連携による、港湾を中心としたにぎわいの創出を促進する体制として、港湾管理者と協力して港湾の管理等を適正かつ確実に行うことができる法人その他の団体を港湾協力団体として指定することができるようにするとともに、港湾の利用者に対し港湾の利用に関する情報を提供するための施設を新たに港湾施設に追加することとしております。

 第三に、港湾の機能を維持しつつ、港湾区域内の水域等の有効活用を図るため、長期にわたり使用される施設等の設置について、港湾区域内の水域等における占用の許可を申請することができる者を公募により決定する制度の創設を行うこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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