衆議院

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第11号 平成28年4月27日(水曜日)

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平成二十八年四月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 谷  公一君

   理事 秋元  司君 理事 秋本 真利君

   理事 金子 恭之君 理事 小島 敏文君

   理事 鈴木 憲和君 理事 津村 啓介君

   理事 水戸 将史君 理事 樋口 尚也君

      今村 雅弘君    岩田 和親君

      大塚 高司君    大西 英男君

      加藤 鮎子君    門  博文君

      神谷  昇君    木内  均君

      工藤 彰三君    今野 智博君

      佐田玄一郎君    斎藤 洋明君

      武部  新君    津島  淳君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      丹羽 秀樹君    西村 明宏君

      堀井  学君    前川  恵君

      前田 一男君    宮内 秀樹君

      宮澤 博行君    山本 公一君

      荒井  聰君    北神 圭朗君

      黒岩 宇洋君    小宮山泰子君

      中島 克仁君    横山 博幸君

      岡本 三成君    北側 一雄君

      中川 康洋君    吉田 宣弘君

      畠山 和也君    本村 伸子君

      井上 英孝君    椎木  保君

      野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      山本 順三君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   国土交通大臣政務官    宮内 秀樹君

   国土交通大臣政務官    津島  淳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官付参事官)           林  俊行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 矢野 康治君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         谷脇  暁君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  由木 文彦君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     中谷 真一君

  小池百合子君     前川  恵君

  佐田玄一郎君     武部  新君

  望月 義夫君     丹羽 秀樹君

  神山 洋介君     中島 克仁君

  中川 康洋君     吉田 宣弘君

  穀田 恵二君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     佐田玄一郎君

  中谷 真一君     大塚 高司君

  丹羽 秀樹君     望月 義夫君

  前川  恵君     小池百合子君

  中島 克仁君     神山 洋介君

  吉田 宣弘君     中川 康洋君

  畠山 和也君     穀田 恵二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 宅地建物取引業法の一部を改正する法律案(内閣提出第三四号)


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     ――――◇―――――

谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、宅地建物取引業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省土地・建設産業局長谷脇暁君、住宅局長由木文彦君、内閣府政策統括官付参事官林俊行君及び財務省大臣官房審議官矢野康治君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏文君。

小島委員 皆様、おはようございます。自民党の小島敏文でございます。

 まず初めに、この機会をいただきまして、ありがとうございます。

 また、申しおくれました、今回の熊本、大分の地震、被災された方々に対しまして、心からお悔やみとまたお見舞いを申し上げたいと思う次第でございます。一日も早い復興を心から願っているところでございます。

 私は、昨年の三月の国交委員会におきまして、空き家対策について質問を行いました。

 平成二十六年七月、総務省が公表しました二〇一三年住宅・土地統計調査によりますと、日本全体に八百二十万戸の空き家があり、全住宅に占める空き家割合は一三・五%、二〇三五年には三二%ということでございまして、三軒に一軒が空き家、実に一千万戸があくということでございます。今後を考えますと、本当にそら恐ろしいような数字も出ておるわけでございます。

 適切な管理が行われないで周囲に悪影響を及ぼす空き家が増加していることを踏まえまして、議員立法によって空き家対策特別措置法が制定をされました。市町村が固定資産税情報などをもとに所有者を特定しまして、指導や代執行などができるようになったわけでございます。一方で、税制改正を行ったり、法律と税制面から措置ができるようになったわけでございます。

 そういう中で、今後、世帯数がだんだんと減少していく中で、こうしたことが追いつくのかということで不安を持つわけでございますけれども、私は、空き家対策というのは、空き家をふやさないための対策と、もう一つ、流通を促進するための方策も必要であるということを申し上げました。

 時の北川イッセイ副大臣の答弁で、「中古住宅の建物検査、それから性能表示の普及、定着を図ることにより、中古住宅を買う場合にも適切な判断基準を得ることができる、そういうような取り組みを進めておる」「引き続き、中古住宅の質への不安を取り除き、安心して取引できるよう、積極的に取り組んでまいりたい」という答弁があったわけでございます。

 もちろん、今回の法律は空き家対策だけではないわけで、広く一般のことでございますけれども、こうした流れの中でのこのたびの宅建法の一部改正であろうというふうに考えております。

 そこで、質問をしたいと思います。

 まず、石井大臣にお伺いいたしますが、インスペクション、建物状況調査を既存住宅取引の一環として定着させる、既存住宅流通市場の活性化を図ることが今回の改正の目的であると考えていますけれども、インスペクションを実施することの意義についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

石井国務大臣 我が国が本格的な人口減少、少子高齢化を迎える中、既存住宅流通市場の活性化は、住宅ストックの有効活用、市場拡大による経済効果の発現、ライフステージに応じた住みかえの円滑化による豊かな住生活の実現等の観点から重要な政策課題であります。

 しかし、我が国の既存住宅の流通シェアは、二〇一三年で一四・七%と、欧米諸国と比べて極めて低い状況であります。この背景には、既存の住宅が個人間で売買されることが多く、買い主が住宅の質に対する不安を抱えている一方で、売り主に広く情報提供や瑕疵担保の責任を負わせることが困難であるといった課題がございます。

 このため、不動産取引のプロである宅建業者が、専門家による建物状況調査、インスペクションの活用を促すことで住宅の品質に関する正確な情報を消費者に提供し、既存住宅取引の不安を解消することが効果的であります。

 こうしたことから、今般、宅地建物取引業法を改正いたしまして、宅建業者に対し、建物状況調査の結果について買い主への説明を義務づけることなどによりまして、建物状況調査の普及を図るとともに、その結果を活用した瑕疵担保保険への加入を促進してまいりたい、このように考えております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 それでは、順次質問をしてまいります。

 まず、既存住宅の取引におきまして、インスペクション実施の数、それから既存住宅売買瑕疵保険加入者の数は現在どうか、お伺いいたします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるインスペクションにつきましては、実施主体あるいは内容等が多種多様なものがございますので、その全体像を正確に把握しているわけではございませんが、民間の調査会社がことしの二月に実施いたしましたインターネットアンケートによりますと、建物検査を利用したというふうに回答した者は、売却を経験した者の一五・三%、購入を経験した者の七・二%という結果が出ております。

 この調査結果では、売却経験者と購入経験者の重複関係が必ずしも明らかではございませんけれども、この重複関係が一切ないというふうに仮定をいたしました場合には、既存住宅流通戸数の二二・五%の住宅が建物検査を利用したということになりまして、現在インスペクションは約三万八千件程度利用されているというふうに推計されることになります。

 次に、既存住宅売買瑕疵保険につきましては、同保険の引き受けを行っております保険法人五法人の実績によりますと、平成二十七年は約九千件という実績になっているところでございます。

 以上でございます。

小島委員 まだまだ少ないような気もしますけれども。

 続きまして、既存住宅の流通が進まない理由といたしまして、特に日本では、購入者に、質に対する不安が非常にあるんじゃなかろうかと思うわけです。

 例えば、ヨーロッパなんかは非常に家を大事にしていまして、統計にもありますけれども、石を組み合わせた古い家を大事にしておりますけれども、アメリカは八三・一%、中古住宅をリフォームして使っているとか、イギリスが八七%、フランスが六八%ということでございます。同時に、リフォームについても、イギリスが五五・七%、フランスは五三%、ドイツが七三%ということで、日本はわずか二八・五%。

 それから今度は、既存住宅のシェアですけれども、日本は一四・七パーということで、世界に比べて日本の場合は、日本建築ですから、二十年、三十年しますと、だんだん価値が下がってくるというのが日本人の当たり前の常識なんですね。これをどのように変えていくかということであろうと私は思うんです。

 この日本人の質に対する不安ということと、それ以外に何があるのか。同時に、それに対してどのような取り組みを考えておるか、お伺いいたします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度に住宅市場動向調査を行っております。これによりますと、まさに委員御指摘のとおり、既存住宅を選ばなかった理由といたしましては、耐震性や断熱性の品質の問題やふぐあいの問題、いわゆる質に対する不安が大きく挙げられているところでございます。

 一方、昨年、これは民間でございますけれども、広告代理店が行いましたアンケート調査によりますと、こうした質の問題に加えまして、いわゆる中古ということからくるイメージや見た目からの不安があるというようなデータも出ているところでございます。

 特に、まず前段、委員も申されました住宅の質に対する不安に対しましては、やはりまず質を高めるという観点からリフォーム等を適切に行いまして、耐震化、省エネ性能の質の向上、確保を図るということが大切かと思っております。そうした点につきましては、これまでも、長寿命化あるいは耐震化、省エネ性能の向上を図るリフォームに対しまして、補助あるいは税制等で支援をしてまいっているところでございます。

 またさらに、そうした質が適切に評価をされているだろうかという点についての不安に対しても応える必要があるというふうに考えております。これにつきましては、宅建業者や不動産鑑定士の適正な評価手法の普及、定着を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 またさらに、国民の皆様が安心して取引できるような環境を整備するという観点からも、例えば、既存住宅の性能表示制度の普及でございますとか、あるいは今回御審議を賜っておりますこの法律案によりまして、インスペクションの活用により情報提供の充実等を図るということが大変有効になってくるのではないかというふうに考えております。

 一方で、民間のシンクタンクがやりました調査によります、いわゆるイメージの悪さ等についてでございます。やはり、こうした不安感もぜひ払拭をしてまいりたいというふうに思っておりますので、本年度予算におきまして、質だけでなくて、商品としても魅力的な住宅が資産として評価をされるように、既存住宅流通の先進的な取り組みを支援いたします新しい補助制度を創設いたしました。

 こうした補助制度等を実施することによりまして、既存住宅流通の促進を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

小島委員 ちょっと時間の関係で、順番を変えます。

 不動産取引によって損害をこうむった消費者を確実に救済するために、営業保証金、弁済業務保証金による弁済の対象者から宅地建物取引業者を除外するよう、公益社団法人全国宅地建物取引業協会並びに公益社団法人全日本不動産協会からの要望があったわけでございます。

 私は、これを聞きまして、非常に協会の方々に対して敬意を表したいと思うんですね。確かに業界の方々も、瑕疵といいますか、もし購入者が、消費者が買って損があった場合に、同時に業者の方々も損があるわけですから、それをみずから除外してくれとおっしゃった。私は、これは業界の方々に対して改めて敬意を表したいというふうに思う次第でございます。

 そこで、質問いたしますけれども、営業保証金制度及び弁済業務保証金制度はどのくらい利用されているのか。また、弁済の権利を有する者から宅建業者を除くことによって、消費者がどの程度弁済を受けることができるようになるのか、まずお伺いをいたします。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 宅建業者のうち、営業保証金を供託している事業者が約四千業者でございます。保証協会に弁済業務保証金分担金を納付している事業者が約十一万九千業者というふうになってございます。

 還付の実績は、年によってかなり開きがございますけれども、平成二十六年度の実績で申し上げますと、営業保証金の還付金額が約千九百万円、また、弁済業務保証金の還付金額が約四億七千三百万円というふうになってございます。このうち、宅建業者が還付を受けた実績は、弁済業務保証金の還付金額の約一割に当たります四千七百万円というふうになってございます。

 したがいまして、今般の改正によりまして、こうした宅建業者に還付を行っていた金額に相当する金額分、これが一般消費者などの宅建業者以外の方に還付が可能な額というふうになっていくのであろうというふうに思っているところでございます。

小島委員 冒頭申し上げたように、空き家もあり、また、いわゆる中古住宅が流通するために業界の方々の役割というのは大変大きいと思うんですよ。そういう中で、こうしてみずから身を切って取り組んでいただけるということに対して、本当に私はいいことだなというふうに思っておるところでございます。

 そこで、関連しまして、宅地建物取引保証協会から一般社団法人に助成することができるようになるわけでございます。なぜ宅地建物保証協会から一般社団法人に助成をするのか、ここらをちょっと、仕組みの説明をお願いします。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 一昨年の宅地建物取引業法の改正によりまして、宅地建物取引主任者が取引士に改正をされまして、知識、能力の維持向上と、宅建業者による従業者教育の規定が盛り込まれたところでございます。

 これを受けまして、業界全体のレベルアップを図っていく必要があるわけでございますけれども、宅建業者、全国に約十二万業者存在いたしまして、中小の事業者も非常に多いというところから、個々の宅建業者の取り組みを促すだけではなかなか限界があるというところでございます。

 このために、従業者の資質の向上を図るには、宅建業者の団体が、その組織力を生かしまして、従業者に対して実効性のある研修を行うことが有効だというふうに考えております。

 このような宅建業者の団体の取り組みを促進し、従業者に対する研修の充実を図るために、保証協会が宅建業者の団体に対する費用の助成を行うことができる旨の規定を設けて、そういうような取り組みを促進していきたいということでございます。

小島委員 ありがとうございました。

 確かに、そういう業界の今までの仕組みがあるでしょう。そういう中で、具体的に聞きたいんですが、宅地建物保証協会から一般社団法人にどの程度研修費用が助成されるのか、このことを御質問します。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 具体的な助成費用の額は、制度ができました後に各保証協会において検討されるということになるわけでございますけれども、制度といたしましてちょっと説明をさせていただきますと、研修費用の助成は弁済業務保証金制度の運用に支障がない範囲で行う、そういう考え方になってございます。

 したがいまして、助成のための支出は、保証協会が、納付された保証金の利息等を積み立てております準備金の毎年の増加分から支出するということが想定されております。この二十六年度の増加分でございますけれども、不動産保証協会が約一億円、宅建の方の保証協会が約三億円というふうになってございます。

 具体的な額は、今申し上げましたように今後保証協会で検討されるわけですけれども、いずれにいたしましても、今申し上げました金額の内数として支出をするということになるわけでございます。

 なお、ここ三年間、宅地建物取引業の団体、研修を現に行っているわけでございますけれども、その実績の平均額については、全日本不動産協会が約六百八十万円、全国宅地建物取引業協会の連合会が約四千七百万円というようなことになってございます。

小島委員 消費者の方々が大分ここで助かるかなという感じがいたします。

 そこで、話はちょっとまた戻りますけれども、既存住宅の流通活性化でありますから、現在は新築住宅の購入につきましては税制など優遇措置があるわけですよね。しかし、既存の住宅の流通を活性化させるためには、今回の法案の、インスペクションの普及だけではなくて、私はもう一歩も二歩も踏み込んだことが要るんだろうというふうに思うんです。税制面あるいは金融面での優遇措置を手厚くしていく必要があるというふうに思うわけでございますけれども、このお考えを聞きまして、時間が来ましたから終わります。よろしくお願いします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 既存住宅流通の活性化に向けまして、既存住宅の取得に対しましても税制や融資の支援を行ってまいっております。

 まず、住宅ローン減税やフラット35などの税制、融資の制度につきましては、新築住宅と同様に、対象額や税率は一部異なる部分がございますけれども、既存住宅の取得もその対象といたしているところでございます。

 また、既存住宅に特別の制度といたしまして、昨年度から、住宅購入者が既存住宅の購入と同時に行うリフォームに係る資金もフラット35による融資の対象に追加しております。

 また、既存住宅流通を促進するために、平成二十六年度から、住宅を宅地建物取引業者から買い取ってリフォームをいたしまして、それを再販する買い取り再販事業における流通税の軽減も措置しているところでございます。

 また、この買い取り再販事業者につきましては、必要な資金を民間金融機関から受けられますように、昨年度から、住宅金融支援機構の住宅融資保険事業による支援も実施しているところでございます。

 こうした税制、融資の面においても既存住宅の流通の活性化について支援を続けてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

小島委員 終わります。ありがとうございました。

谷委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 日本の住宅市場について議論をします。

 建設、不動産業界は、日本経済を量的、ボリュームの面で支えると同時に、国民生活の質、クオリティーの向上に直結をする大変重要な業界でございます。

 資料を配付させていただきました。1番をごらんいただきたいというふうに思います。

 我が国のGDPと住宅投資の推移ということでございますが、青い棒グラフがGDP、そのうちの赤い棒グラフの部分が住宅投資の推移でございます。

 GDPは、この六十年間で十二倍に拡大をいたしました。黒い折れ線グラフはGDPに占める住宅投資の割合でございます。ピークで九・八%。私が二十数年前に日本銀行に入行いたしまして、当時の調査統計局の景気分析をしていたときには、大変優秀な同期が住宅投資の担当をしておりましたけれども、当時は六%内外でありました。しかし、現在では、この折れ線グラフ、一番右を見ていただきますと、二・七%と住宅投資のGDPに占めるシェアは大変落ちてきているわけであります。

 今、安倍政権は、二〇二〇年のGDPの目標として六百兆円ということをうたっておりまして、このグラフからごらんいただきますと、ここからあと五年で六百兆円というのは大変高い目標だということになるわけですが、これを達成していくためには、住宅投資のマーケットの規模を、後ほど述べますように、拡大していくというのはなかなか難しい目標でございます。少なくともしっかりと維持していかなければいけないということが、アベノミクスのGDPの目標を達成するために必要な条件の一つだと思うわけですけれども、以下述べますように、今回の法改正が住宅市場の拡大という面においてマイナス要因になるのではないかということを議論させていただきたいというふうに思います。

 おめくりいただきまして、配付資料の2番、左上の2の1が住宅需要の推計の考え方でございます。

 住宅需要の推計につきましては、利子率であるとか人口であるとかさまざまなマクロ的な要因を、いわゆる計量分析といいますか、マクロ的に推計する方法もありますが、こちらはボトムアップ型といいますか、要因に分けて、一つ一つの要因がどうこれから推移していくかを分析したものであります。

 住宅需要というのは、前の時期、前期の住宅数は、いろいろ古くなっていくものですから、残存の住宅数は減っていく。それに加えて増加要因としては三つのものがあると思います。

 一つは、世帯数がふえていく、人口がふえたり、あるいは若い方が実家を離れて独立をして新たに世帯を構える、この世帯増の要因が一つ。もう一つは、建物の経年劣化によって新たに建てかえをするという需要。そして三つ目は、その他要因、ミスマッチ要因とも言いますけれども、例えば、引っ越しをして、建てかえではないんだけれども新たに住宅を構える必要がある、あるいは、趣味とは言いませんけれども、まだ十分に住める家に住んでいるにもかかわらず、新しい家の方がいいということで、みずから進んで新しい家を購入するようなケースもあるかもしれません。

 この三つの要因に分析して考えていきますと、それぞれ、これから拡大していくのはなかなか厳しいということが見えてきます。

 2の2、二ページ目の右上のグラフをごらんいただきますと、世帯数の見通し、これはかなり正確な人口の見通しですので、かなり正確に推移すると思いますけれども、二〇一八年から二〇一九年を境に減少しています。既に日本の人口は減少局面に差しかかっておりますけれども、例えば、先ほど申し上げましたように、地方から大学に進学するとか、そういった独立をするという若い方はまだまだいらっしゃいますので、まだ世帯数自体は増加を続けておりますが、人口減少の圧力で、間もなく、数年のうちに世帯数は減っていくだろう。

 そして、下の二つのグラフは、住宅の長寿命化をあらわしたものでございます。六〇年代、七〇年代に建てられた建築に比べて、八〇年代、九〇年代、そして恐らくは、二十一世紀になってから建てられた建築はより長寿命化しているということであります。

 そう考えますと、先ほど私が申し上げた三つの住宅需要の増加要因、世帯増、建てかえ、そしてその他のミスマッチ要因。そのうちの世帯増は、もう間もなく見込めない。建てかえ需要も、住宅の長寿命化によってこれから減っていくであろう。残りはミスマッチ要因だけでありますけれども、今回の中古住宅の流通を拡大していくという政策が、新規の住宅着工にとってはマイナスの要因である。つまり、新しい家を買おうか中古の家を買おうかというときに、中古の住宅を拡大していくわけですから、新規住宅着工にはマイナスになるのではないか。

 中古の住宅を買っても、一部リフォームのための経費を除けば、経済成長にプラスにはなりません。しかし、新規住宅着工は、先ほど申し上げたように、GDPの重要なファクターです。今回、中古市場を拡大することは、これは国民生活という面では大変意義深いことだと思うので、GDPが全てではないと思うわけですけれども、安倍政権はGDPというのを最も重要な成果目標として掲げているという中で、今回の政策はそれに逆行するのではないかというのが私の指摘でございます。

 一枚めくっていただきますと3、これが住宅着工の予測でございます。

 これは民間の予測でありますから、さまざまな分析が可能かと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、青い棒グラフ、基礎的な需要、世帯増と建てかえ要因から推計した基礎的な需要は、これからますます減っていきます。この推計は、ミスマッチ要因をかなり大きく見積もってこの数字でありますけれども、私が先ほど申し上げましたように、今回の国交省さんのKPI、成果目標としては、平成二十五年に四兆円規模の中古住宅の流通市場を平成三十七年には倍の八兆円にするという成果目標を掲げているわけで、現在の年間十六万八千五百、十七万戸の中古住宅の販売数を倍にするというふうに仮定すれば、新規着工戸数は現在九十万前後ですけれども、これがさらに十七万戸減少するということになります。

 4番のグラフがそれをあらわしておりますけれども、新規住宅着工、水色の棒グラフはずっと右肩下がりのトレンド、先ほどは予測でしたけれども、これは現実の数字ですが、右肩下がりになっておりまして、二〇一三年は消費税の前の駆け込み需要ですけれども、基本的には九十万前後でございます。

 この九十万戸をさらに十七万戸、中古市場にシフトすれば、GDPには相当なマイナスインパクトになると思いますが、内閣府をお呼びしております、今回のこの宅建業法の改正によって一体どの程度のGDPのマイナスが見込まれるのか、お答えください。

高木大臣政務官 お答えいたします。

 委員の問題意識は、GDPにおける住宅投資には中古住宅が含まれないため、中古住宅の流通を促進することで、新設着工戸数、ひいてはGDPにマイナスの影響があるのではないかということだと思います。

 GDP統計における住宅投資は、建築物着工統計における居住用建築物の金額を用いて計算しているため、新設着工戸数が減少した場合の仮定計算を厳密に行うことは困難でありますが、その上で、委員が挙げられている数字を用いて機械的に計算すれば、新設着工戸数の減少率二割弱、十七万戸を九十万戸で割った数でありますが、それに二〇一五年のGDPの住宅投資約十四兆円を掛ければ約二・六兆円、GDP比では〇・五%程度のマイナスという結果が導かれるところでございます。

津村委員 ありがとうございます。具体的な数字を挙げていただきました。

 私は、この政策が仮にGDPにマイナス寄与せずに何とか目標を両立していくには、一つしか方法はないというふうに思います。

 先ほど申し上げたミスマッチ要因、その他要因の中で、私はあえて趣味でというふうな言い方をさせていただきましたが、まだまだ住める家に住んでいる、そして引っ越しをする必要もない、けれども、時々車では、新車に乗りたいということで、まだ二、三年で、新しいモデルが出たから新車にかえたい、乗りたいという方がいらっしゃいますけれども、ああいった形で、新しい家に二年か三年で住みかえて住み続けたいという方がどれだけこの日本にいるのか、これからふやせるのか、そういったことにかかってくると思います。

 一枚おめくりいただきまして、5番でございますが、既存の住宅の流通量の中で、新築と既存の割合でありますけれども、毎年九十から百万戸の新築住宅がある、そして十七万戸ぐらいの中古住宅の流通があるということは、やや乱暴でありますけれども、これを割り戻すと、一つの住宅当たり一体何世帯が、その住宅が新しく建てられて、最後除却されるまでの住宅の寿命、日本では約三十年から四十年と言われていますけれども、その間に何世帯の人がそこに住むのかということをトレンドとして割り戻したものです。

 日本では、大体一世帯、一・二世帯。多くの家は、一世帯が住んだだけで、ほかの方は住まずに終わる。二割ぐらい二世帯というのがある。一方で、アメリカ、イギリスは一つの建物に六世帯あるいは八世帯が住むということで、全く住宅文化というか、みんなで使うものというのが欧米の考え方。日本では、自分たちの個人の人生に一つの家、自分の家だということであります。

 ここを変えていかなければいけないということになるわけですけれども、今回の宅建業法の改正によって、国土交通省としては、ここの回転率をどういう形で上げていこうとされているのか、お答えください。

石井国務大臣 今委員御指摘のように、新築の住宅着工を引き下げることなく既存住宅の流通を拡大するためには、一戸の住宅がより多くの世帯に住み継がれていくようにすることが必要であります。

 そのためには、まず、住宅が長く使われるように質の向上を図ることが必要です。そのため、長寿命化や耐震化、省エネ性能の向上などを図るリフォームに対しまして、補助、税制で支援をしてまいります。

 また、住みかえを促進するために、住んでいた住宅が資産として評価をされ、適正な価格で売却できるようにすることが必要でございます。現状では、二十年から二十五年たつと上物の評価がほぼゼロになるという状況でありますが、これを適正な価格で売却できるようにすることが必要であります。そのため、宅建業者や不動産鑑定士の適正な評価手法の普及、定着を進め、建物の性能やリフォームの状況が評価に適切に反映されるよう取り組んでまいります。

 さらに、国民の皆さんが住宅を安心して取引できる環境を整備することが重要であります。そのために、既存住宅の性能表示制度の普及を図るとともに、宅建業者間の物件探索システムであるレインズの利用ルールや機能の改善を行ったところでありまして、さらに、今回の法改正によりまして、インスペクションの活用による情報提供の充実等を図ってまいりたい、このように考えております。

 以上のような取り組みを通じまして、既存住宅の流通を促進していきたい、このように考えております。

津村委員 今おっしゃった施策の実現可能性といいますか、以下、るる検証させていただきますけれども、私は、今回の宅建業法の改正というものが、GDPという尺度ではかった場合には、日本経済にとってマイナスの方向に向かった法案であるというふうに考えますし、また、私はGDPが全てだとは思いません、国民生活の選択肢を広げるという意味でこの法案が意義を持っているとすれば、それはGDPのみをもってアベノミクスの成果とすることの無理、限界ということをあらわしているというふうに思いますので、今回の宅建業法の改正というのは、アベノミクスの矛盾あるいは限界、無理といったことを象徴した法改正だというふうに考えております。

 それでは、一つ一つ具体的な施策について、その意味合い、一体どの程度の意味があるのかということについて検証させていただきます。

 今回の法案の一番の柱は、建物状況調査、インスペクションの普及促進ということにあると思いますけれども、まず、その前提として、現在どの程度インスペクションというものが行われているのか、国交省は正確に把握されていますか。

石井国務大臣 いわゆるインスペクションにつきましては、実施主体や内容等に多種多様なものがございまして、その全体像を正確に把握しているわけではございませんが、民間の調査会社が本年二月に実施をいたしましたインターネットアンケートによりますと、建物検査を利用したと回答した方は、売却経験者の一五・三%、購入経験者の七・二%との結果が公表されております。

 この調査結果では、売却経験者と購入経験者の重複関係が明らかではございませんが、仮にその重複関係が一切ないものと仮定をいたしますと、既存住宅流通戸数の二二・五%の住宅が建物検査を利用したことになります。現在、流通戸数が約十七万戸でございますので、十七万戸の二二・五%ということになりますと、インスペクションは約三・八万件利用されていることとなるわけであります。

 潜在的なニーズをお聞きになりましたか。(津村委員「はい」と呼ぶ)潜在的なニーズにつきましては、この同じ調査によりまして購入予定者に建物検査の利用意向を聞いておりまして、建物検査を利用すると思うと回答した方は、先ほどの利用したという方、二二・五%を含めまして五七・五%となっております。

 仮にこの回答者の全てがインスペクションのニーズの対象と仮定をいたしますと、潜在的なニーズを含めたインスペクションのニーズは、現在の流通戸数十七万戸の五七・五%でございますので、約九・八万件となるわけでございます。

津村委員 皆さん、今の調査、大臣が紹介いただいたものが、実はこの配付資料の7番と8番でございます。

 こちら、今大臣がお答えになった数字は、全てこのクロス・マーケティングモニターさんが実施したインターネット調査から来ているんですけれども、サンプル数が、8番の方をごらんいただきますと、一番下にサンプル合計がございますが、全国で三百あるいは七百五十といったサンプルであります。

 選挙をされている方は、小選挙区の世論調査、御経験あると思いますけれども、サンプル三百とか五百というと、高い業者、安い業者あると思いますが、五十万とか百万とか、高くても百数十万というぐらいの経費でやっている調査だというふうに思います。

 そして、このサンプルを見ますと、そもそもインターネット調査ですから、インターネットを余り使わない方々というのはこの調査で捕捉できないわけで、田舎の中古住宅を売りたい方、高齢者の方、この調査でどれだけカバーできているのかなということを見ますと、この回答数、都道府県別、左側の数字を見ていただきますと、三百の回答数が全国的にどう散らばっているか。

 衆議院議員の皆さんですのでおわかりになると思うんですが、三百という数字は小選挙区の数と同じです。つまり、小選挙区が、今、都道府県でどういう形で一票の格差も含めて分布しているかということでこれを見ていただきますと、ゼロの県がたくさんあったり、一つしかない県がたくさんあったり、一方で、東京は七十、神奈川は四十一、大阪は三十三、小選挙区の数の何倍かですよね。

 明らかに首都圏あるいは都市圏のインターネットを使われる一部の方に偏った、しかも、たった三百の、百万円程度しかかけていないリサーチによって現在のインスペクションの現状を把握しているというのは、国としてちょっとお粗末過ぎませんか、大臣。

山本副大臣 このアンケート調査でありますけれども、民間の調査会社であるクロス・マーケティング社が、ことしの二月に、同社のマーケティングモニター三千四百五十人に対して実施をしたものでございます。

 まず、世代でありますけれども、住宅売却経験者は五十代が三五・三%と最も多く、中古住宅購入経験者及び中古住宅購入予定者では四十代が、それぞれ三六・四%及び三五・三%と最も多くなっております。住宅売却経験者の年齢層の方が高いですけれども、一度住宅を取得した上で一定の年数経過後に売却するものであると考えれば、データとしては特に不自然なものではないというふうには考えられます。

 次に、地域分布でありますけれども、津村委員がおっしゃるとおりでありまして、首都圏、一都三県の割合が約四〇%から五〇%程度と高い一方で、住宅売却経験者や中古住宅購入経験者では回答数ゼロの都道府県が散見され、地域間のマーケティングモニター数にかなり偏りが見られるというところでございます。

 詳細な分析を行う上では制約はありますけれども、インスペクションの実施状況や潜在的なニーズを把握する上では一定程度参考になるというふうに思っております。

津村委員 委員長、大変恐縮ですが、定足数が足りていないのではないかと思うのですが、速記をとめていただけますか。

谷委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

谷委員長 速記を起こしてください。

 津村委員。

津村委員 質問を続けます。

 今るるお答えがありましたが、やはりサンプルとして相当少ないというのはもう明らかでありますし、先ほど大臣は、売却経験者の一五・三%あるいは購入者の七・二%を足し上げていらっしゃいましたけれども、建物検査をしたということであれば両側から見ている可能性もあるので、そういう意味ではもっと数は少ないというふうにも読めると思います。

 この解釈はこれ以上立ち入りませんけれども、少なくとも今後は、大臣、業界団体さんの御協力もしっかり得ながらということになると思いますが、建物状況調査、インスペクションがこれからどれだけ普及していくのか、しっかりと月次ないしは年次で数字を押さえていく必要があると思いますが、そうした調査統計をしっかりとつくられていく、そういうお考えはございますか。

石井国務大臣 今回の法改正では、建物状況調査、インスペクションの活用を促していくことによりまして、既存住宅流通市場の拡大を図っていくこととしておりますので、この法改正による効果を評価するために建物状況調査の活用状況の数字を押さえていくことは非常に重要であると考えております。

 現在、全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会などの業界団体におきましても、会員事業者におけるインスペクションの活用の促進に向けて、インスペクション業者などとの業務提携が進められております。

 国土交通省といたしましても、こうした業界団体としっかり連携をしながら、インスペクションの活用の実態の把握や、さらなる活用の促進に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

 なお、業界団体に対しては、毎年度の実施報告を求めることを想定しております。

津村委員 毎年度の実施報告を求めるということで、年次の統計をつくられるということを今お聞きしたことになります。

 少し駆け足で参りたいと思いますけれども、9番の資料をごらんいただきますと、最近、既存住宅売買瑕疵保険への需要が高まっている、そういう意味では、今回のインスペクションの普及促進ということと方向感は一致しているというふうに思うんです。

 先ほどから数字のことを私はこだわって伺っていますけれども、やはり先ほど申し上げたように、ともすれば日本経済にマイナスになるかもしれない、しかし国民生活のクオリティーの向上には重要だ、そういう大切な法律だとすれば、しっかりと数字に即した、いわゆるPDCAサイクルと言いますけれども、政策評価をしっかりやっていくという姿勢が欠かせないと思いますし、そういう意味で、先ほど申し上げたように、たった三百の、しかも偏ったサンプルで政策をつくっていくというのはかなりアバウトな姿勢と言わざるを得ないので、少なくとも今後については、しっかりと目標を精緻に積み上げて、先ほど大臣が約束していただいた、毎年統計をつくってそれを確認していく、そういう堅実な行政を進めていただきたいというふうに思います。

 今後のインスペクションと売買瑕疵保険の需要の増加について、現在と、そしてKPIの目標年数であります平成三十七年時点での数字をどの程度と予測されているのか、お答えください。

石井国務大臣 現状につきましては、先ほど答弁いたしましたとおり、さまざまな仮定のもとではありますけれども、現在の利用は約三万八千件、ニーズは九万八千件程度あるのではないかということが一つの試算としてございます。

 平成三十七年には、既存住宅流通の市場規模を倍増させる成果目標を立てております。今、年間十七万戸でございますから、その倍増というと三十四万戸ということになるわけですが、仮に価格水準が同一で既存住宅の流通戸数が倍増するものとすると、先ほどニーズが九万八千件あると申し上げましたが、ニーズの半数が調査を実施した場合で約十万件、全てが実施した場合で約二十万件にインスペクションの件数がなるというふうに想定をしております。

 次に、既存住宅の売買瑕疵保険につきましては、今保険の引き受けを行っている保険法人五法人の実績によりますと、平成二十七年は約九千件でございます。これは流通戸数十七万戸に占める割合が五%でございます。

 平成三十七年には、この既存住宅売買保険に加入した住宅の既存住宅流通量に占める割合を二〇%という成果目標を設定しておりますので、割合からすると四倍にするということであります。そういたしますと、平成三十七年における既存住宅売買瑕疵保険の加入件数といたしましては、既存住宅売買件数自体を二倍にするわけでございますので、割合が四倍、全体の流通量が二倍となると現在の約八倍になるということで、七万件に相当するのではないかということで想定をしているところでございます。

津村委員 ぜひ、目標と期日をしっかりと管理していただいて、実のある法改正にしていただきたいというふうに思っております。

 時間が押してまいりましたので、最後の質問とさせていただきます。

 10番、配付資料の最後の資料をごらんいただきますと、宅地建物取引業者の団体による研修の例ということでございます。

 今回の法改正は、その経緯を見ますと、もともとは議員立法という流れがあって、しかし、経緯があって今回、内閣提出の閣法ということになりました。もともとの経緯からしますと、この業界団体の研修をしっかり助成していこうというのが一つの流れだったというふうに思いまして、インスペクションの普及も大切ですし、この研修の助成ということも大切だというふうに思うわけです。

 現状、全日本不動産協会さんは、全日ステップアップトレーニングというものを地域ブロックごとに実施されて、昨年度は、開催回数が二十三回、受講者数は千六百三十三名ということであります。

 他方、全国宅地建物取引業協会連合会さん、全宅連さんは、不動産キャリアパーソンというタイトルの研修を実施されておりまして、こちらは通信教育ですけれども、受講者数は六千四百三十四名ということでございます。

 今回の法改正で、保証協会からこうした業界団体さんへの助成ということができるようになると思うわけですが、その支援の規模、助成額の規模というのは大体どのくらいを見込んでいらっしゃいますでしょうか。

石井国務大臣 今委員から御紹介いただいたように、業界団体では、不動産取引全体を体系的に学習するための研修を実施しておりまして、平成二十七年度の実績では、全日本不動産協会では延べ一千六百三十三名、全国宅地建物取引業協会連合会では延べ六千四百三十四名が受講しております。

 今般、このような業界団体の取り組みを促進し、従業者に対する研修の充実を図るため、宅地建物取引業保証協会が業界団体に対する研修の費用の助成を行う旨の規定を設けております。

 この研修費用の助成は弁済業務保証金制度の運用に支障がない範囲で行う必要があります。

 助成のための支出は、保証協会が納付された保証金の利息等を積み立てております準備金の毎年の増加分から支出することが想定をされまして、平成二十六年度の増加分は、不動産保証協会は約一億円、全国宅地建物取引業保証協会が約三億円となっております。これがいわゆる原資の方の上限といいますか、原資が大体その程度であろうと。

 今度は、どれぐらいニーズがあるかということでございますけれども、ここ三年間のこの団体による研修費の平均額で申し上げますと、全日本不動産協会が約六百八十万円、全国宅地建物取引業協会連合会が約四千七百万円となってございます。

 具体的な助成の費用は今後各保証協会において検討されるものでありますけれども、これらの金額の内数として支出することになるというふうに考えております。

 国土交通省といたしましても、事業計画書の確認等によりまして、弁済業務保証金制度の運用や研修費用の助成といった保証協会の業務が適切に行われるよう指導してまいりたいと存じます。

津村委員 結びに大臣を激励させていただきたいんですけれども、ぜひ、日本経済の量的な拡大と、そして国民生活の質的な向上、ともすれば二律背反しかねないところをしっかりと数字を積み上げて、目標と期限を管理しながら堅実に進めていただきたいというふうに思います。

 時間の関係で十分触れられませんでしたけれども、配付資料の6にございますように、マンションと戸建て、それぞれの数字をしっかり見ていく必要があると思うわけですけれども、事務方の皆さんと事前にレクの中でお話をする中で、今回、中古住宅の流通市場を倍にするのはマンションなのか戸建てなのか、どっちでふやしていくのか、特に区分けしていませんということでもありました。やはりトレンドをしっかり見ながら、それぞれきめ細かい施策を打っていくべきだと思います。

 先ほどサンプルが三百しかないというインターネット調査の話をしましたが、売り主の方がインスペクションを活用していくだろうというような言及もございましたけれども、インスペクションについて先行しているアメリカでは買い主の方が積極的に活用しているということでもあります。これから売ろうという人がお金をさらにかけて、コストをかけて、つまり、販売価格を引き上げていくということにどれだけのインセンティブを持っているか、こういったことも、取引実態に即した判断をしていかなきゃいけないと思いますので、相当よく数字をごらんになりながら、丁寧にこれを進めていただきたいということを御期待申し上げて、私の質問を終わります。

谷委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 民進党の小宮山泰子でございます。

 まず最初に、冒頭に、熊本地震、熊本、大分を中心とした大規模な災害に遭われ、お亡くなりになられた皆様にお悔やみと、そして被害に遭われた皆様へのお見舞いを申し上げ、また、この点に関しましては、党派を超え、国会におきましてもしっかりと対応をしていかなければならないと思っております。

 さて、今回の災害は、極めて大きな地震が複数回起こっているという点で、これまでの災害と異なっている点が指摘されており、いまだ相当規模の余震が続いております。雨の影響もあり、救助活動、支援活動、復旧活動がしばしば中断されるなど、今後もかなりの期間を要することとなると想定されます。

 十四日の地震に続いて、翌日の夜間の本震で多くの建物が崩壊し、お亡くなりになられた方がたくさんいらっしゃるということ、この点に関しましては、後にしっかりとした検証、また対策へとつないでいかなければならないと思います。

 特に、大規模災害、耐震化というものでは、複数回の震動に対しての耐震ということで検討されてこなかったというふうにも多くは伺っております。今までにない事例でもございますので、しっかりとこの経験を次に生かしていかなければならないというふうに思っております。

 また、このような状況のもと、一日でも早くよりよい住環境のもとに被災者の方が移っていかれるようになること、これにも努めていくことが急務だと考えております。

 ここでは、さきの東日本大震災後に相当数の建設が行われた木造仮設住宅について、より積極的に導入することが望ましいと私は考えておりますので、この点についてお伺いいたします。

 応急仮設木造住宅協議会というのが震災後につくられました。また、お住まいの方からもさまざまなヒアリングもされて、報告なども私も聞かせていただきました。

 木造仮設住宅は、お住まいになられた被災者の方々からも、結露が少ない、また快適であるという高評価も得ていらっしゃいます。また、二番目には、建設費用及び後の撤去費用も大手プレハブ業者による仮設住宅と遜色がない。周辺工事も含めていくと、施工に要する日数、完成時期というのも遜色がないのではないかと考えられます。また、被災地の地元の工務店や建設技能者などへ仕事を発注することによって、このことは地域経済の再建に大きく寄与するものと考えております。

 このような特性があるという意味においても、木造仮設住宅の可能性というのは大きくあるかと思います。

 また、この点に関しましては、本来であるならば知事の指令等さまざまありますが、また対応できる業者等、団体等もありますけれども、緊急の場合の災害対策、そういったところでなかなか要望が出しづらいということも聞こえてまいります。

 そこで、木造仮設住宅を積極的に導入すべく、国土交通省は仮設住宅を所管する内閣府とともに適切な連携を行うべきと考えておりますが、御見解をお聞かせいただければと思います。

石井国務大臣 応急仮設住宅を木造とするかどうかにつきましては、災害救助法の実施主体である都道府県等におきまして、発災後に迅速に一定戸数の提供が可能なのか、あるいはコスト面の見合いがどうか等の観点も含め地域の実情に応じて検討いただきまして、適切に御判断いただくものと考えております。

 東日本大震災におきましても、木造の仮設住宅は約一万五千戸、これは全体の三割弱でありますが供給をされまして、このうち地域の工務店等によるものは約九千戸が供給をされました。

 国土交通省では、このような取り組みに対しまして、東日本大震災における地域工務店等による木造仮設住宅の事例を集めた資料集を作成いたしまして、災害救助法を所管する内閣府と協力しつつ、発注者となる地方公共団体に情報提供し、その普及に努めているところであります。

 熊本県におきましては、平成二十四年の九州豪雨災害において、熊本県優良住宅協会が四十八戸の木造仮設住宅の実績があり、今般の震災においても、既に熊本県は同協会と協議を開始しているところであります。

 今後とも、引き続き、関係機関と連携を図りながら、被災者と地域のニーズに即した仮設住宅の整備を支援してまいりたいと存じます。

小宮山委員 また、東日本大震災では、都市再生機構の賃貸住宅や公営賃貸住宅の空き部屋の活用とともに、仮設住宅の建設に時間がかかってしまうのを回避するためという側面もあり、民間アパートを用いたみなし仮設も活用されました。また、プレハブ仮設住宅においても、二段重ねにするなどとした仮設住宅も一部に取り入れられたと承知しております。

 国交委員会におきましては、空き家の問題等、長年やっておりますけれども、民間空きアパートにおいて震災被害を生じていない安全な建物については直ちに活用ができるものとして、各地方自治体とも協力の上で柔軟に活用を進めていくべきだと考えております。これは、今はかなり進んでいるかと思います。実は、埼玉で竜巻が起こった後は、なかなかみなし住宅というものが認められづらいという状況がございました。

 なぜみなし住宅を被災された方が望んだかといえば、やはり家が半壊、全壊をしている中において、さまざま、窃盗等あります。また、近くにいたいという思いもあるんですが、公営賃貸住宅など、移るとなると近くにないということになって、遠くの地域に住まなくてはならなくなります。そういう意味においては、みなし仮設という方法がとれるならば、近くにおいて、被災した住宅の再建に向けてのさまざまな取り組みというのも早期に着手できるという意味においても大きな意味があるんだと思っております。

 本日の法案審査の結果によって、宅地建物取引業法改正でありますけれども、民間アパートのあき、並びにその安全性の確保などにおいては、宅建業者の方々との連携によって今後さらに可能になることが期待されるという一面もあるかと思っております。

 そこで、二階建てなど敷地を有効に利用できるアパート形式の仮設住宅建設や、既存の空きアパートを活用するみなし仮設など、多様な手段、手法を用意するべきと考えておりますが、国交省として内閣府また災害対策本部とも適正な連携を行うべきと考えますけれども、御見解をお聞かせいただければと思います。

石井国務大臣 被災者の応急的な住まいの確保につきましては、都道府県等が被災者と地域のニーズに応じた方法により、応急仮設住宅の建設や、既存の民間賃貸住宅の空き室の借り上げ、いわゆるみなし仮設等の対応を進めていくことが重要であります。

 東日本大震災におきましては、今委員が御指摘されたような二階建て等の仮設住宅は、福島県郡山市や宮城県女川町で建設の実績がございます。民間賃貸住宅の借り上げにつきましても、六万八千戸を超える供給が行われたところであります。

 これまでも、こうした仮設住宅の建設や民間賃貸住宅の借り上げ等につきまして、関係省庁と連携の上、地方公共団体への支援を行ってきております。

 具体的には、二階建て等の仮設住宅の建設事例につきまして、参考事例として取りまとめ、内閣府と協力しつつ、発注者となる地方公共団体に情報提供し、その周知に努めております。また、民間賃貸住宅の借り上げに関しましては、不動産業界団体が実務上の留意事項を取りまとめた地方公共団体向けのガイドブックを作成するに際しまして、内閣府とともに内容についてのアドバイスを行っているところでございます。

 今後とも、こうした多様な手法を活用しながら、地域の実情に合った応急的な住まいの確保が迅速かつ適切に行われるよう、地方公共団体の取り組みに対し、引き続き内閣府等の関係省庁と連携をして支援をしてまいります。

小宮山委員 建物といえばやはり国交省だと思いますので、この点に関しましては、適切なまた有効な情報提供も含めまして、連携を引き続き御努力いただきますことを私からもお願いしたいと思います。

 それでは、本日議題となっております宅地建物取引業法の一部を改正する法律案の審議として、質問に入らせていただきたいと思います。

 建物状況調査、インスペクションの内容は、建物の構造耐力上主要な部分となる基礎、壁、柱等、また雨水の浸入を防止する部分となる屋根、外壁、開口部等について、専門知識を有する者が調査に当たるとはいえ、目視及び水平器による傾きの計測、クラックスケールによる基礎のひび割れ幅の計測など、比較的簡易な検査が想定されているようであります。

 国土交通省より平成二十五年六月に公表されている既存住宅インスペクション・ガイドラインに基づいて、「インスペクションとは」との見出しのもとに作成された今回の法改正案関係の説明資料の最下段には小さな文字で、調査結果に係る留意点として、瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものではない、調査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものではない、建築基準関係法令等への適合性を判定するものではないといった記述がなされております。

 ここで、インスペクションの内容、調査結果の効力や意義について現在想定している内容で十分と考えているのか、この点に関しまして御見解をお聞かせください。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、今回の改正法で位置づけております建物状況調査、インスペクションでございますけれども、建物の非常に重要な部分といたしまして、構造耐力上の主要な部分、今お話ございました基礎、壁、柱等、さらに雨水の浸入を防止する部分として屋根、外壁、開口部、こういう非常に重要な部分につきまして、さまざまな機器等を使いまして、傾きでございますとかひび割れでございますとか、そういったようなことをしっかりと調査するという内容になってございます。

 しっかりとした調査をいたしますけれども、それによりまして一〇〇%瑕疵がないということまで、必ずしもそこまでできるというほど保証するわけではない、念のためのちょっと記述をさせていただいているということでございまして、調べること自体は、建物の非常に主要な部分についてしっかりと調査をさせていただくということでございます。基本的かつ重要な情報が提供されるものというふうに考えておるところでございます。

 この結果を宅建業法上の重要事項として買い主も説明を受けるということでございますので、既存住宅の状況をより正確に把握した上での取引が可能になるというふうに考えております。

 この建物状況調査、インスペクションの活用促進によりまして、既存住宅の流通促進に寄与するものと考えているところでございます。

小宮山委員 そのインスペクションが、確かに完璧なものではないでしょうけれども、これを信用し、これを判断基準の重要な項目として購入する方々にとっては、完璧であってほしいということは当然かと思います。また、後ほどこの点に関しましては関連で質問いたします。

 「経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者」としては、建築士一級、二級、木造のうち、一定の講習などを受講した者を考えられているとされています。講習としては、中古住宅の瑕疵担保保険契約と連携している既存住宅現況検査技術者の講習などが参考例とされております。

 公布後二年以内の施行と定められていることから、二年以内に国土交通省令で定める資格要件や受講してもらう講習の内容、講習の実施主体などについても定めることとなり、施行後に実際のインスペクションを行うことができる者の人数も相当程度確保しておく必要があると考えております。この内容のいかん。

 そして、これによって信頼というものが築かれるその講習内容でありますが、その内容、実施主体について現状どのようにお考えになっているのか。法施行時点で何人程度のインスペクションを行える者の養成、確保を予定されているのか、見込まれているのか。そして、現実には、必要とされている人数はどの程度だと想定されているのか。また、あわせて、建築士以外の資格者、例えば建築施工管理技士、宅地建物取引士などへの対象拡大についてもお伺いをしたいと思います。

 以上三点、よろしくお願いいたします。

由木政府参考人 まず私から、インスペクションの講習についてお答えを申し上げたいと思います。

 建物状況調査を実施いたします者は、建築士で、かつ一定の講習を修了した者ということを想定いたしております。また、調査そのものの内容といたしましては、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準レベルの調査を想定しているところでございます。したがいまして、建物状況調査の講習の内容といたしましても、この既存住宅売買瑕疵保険の検査基準を前提として考えたいというふうに考えております。

 例えば、公正な業務のために遵守すべき事項として、関係法令の基礎知識やコンプライアンスに関する講習を行うこと、また、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止するために必要な事項に関しまして、どういったふぐあいが発生するのかという具体的事例やその判断基準に関する講習、また、目視や計測機器を用いて調査をいたしますので、その具体的な調査方法や、あるいは、基礎、柱、外壁等の対象部分ごとにどういった点に留意をすればいいか、そういった事項に関する講習、こういった内容を今想定しているところでございます。

 次に、実施主体についてお答え申し上げます。

 現在、既存住宅売買瑕疵保険を提供いたします保険法人五法人によりまして設立されました民間団体でございます、住宅瑕疵担保責任保険協会がございます。

 この協会が実施いたします講習を修了した建築士が既存住宅の調査を行った場合には、既存住宅売買瑕疵保険の加入に当たって必須となっております手続、保険法人の現場検査を省略することができるということになっております。

 したがいまして、この協会が実施いたします講習は、本法律案における建物状況調査で想定をしております講習と同等レベルのものというふうに考えられることから、この主体は実施主体の有力な候補の一つになるものというふうに考えているところでございます。

谷脇政府参考人 続きまして、人数でございます。

 現在の既存住宅売買瑕疵保険の加入の際に必要な建物調査が実施できる、建築士であって一定の講習を修了した者が約一万人おります。

 円滑な施行に向けましては、まず、この一万人が法律に基づきます調査を実施できる者として人員が確保できるように、新たな講習制度の創設等の準備を進めていきたいというふうに考えております。

 さらに、将来的に必要になる人数につきまして想定をしてみますと、新築の住宅瑕疵保険における検査員のニーズが参考になると考えております。

 新築の保険の際に、年間約五十万件の保険の加入、検査に対して、検査員が延べ約一・六万人で対応しております。

 既存住宅市場の拡大によりまして、先ほど大臣から答弁ございましたように、三十七年の建物状況調査の需要が、大きく見積もりまして二十万件というふうに想定をした場合におきましても、建物状況調査を行う者は一万人程度いれば対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。

 さらに、三点目でございますけれども、建築士以外の建築施工管理技士あるいは宅地建物取引士等についてどうなのかということでございます。

 今回、建物状況調査を実施する者の詳細につきましては国土交通省令で規定するということになってございますが、調査が適正に実施されることを担保するためには三つの要件が必要と考えております。一点目は、建物の設計、調査に関する専門知識を有していること、二つ目は、適正な業務遂行を担保するための指導監督などの仕組みが制度上確保されていること、三つ目といたしまして、円滑に調査が行われるために、今申し上げました必要な人員が確保されること。

 これら三つの要件を満たす者として、現時点では、国家資格である建築士であって一定の講習を修了した者ということを想定しているところでございます。

 御指摘がございました建築士以外の者につきましては、こういう要件に該当するかどうか慎重に検討いたしたいというふうに考えているところでございます。

小宮山委員 宅地建物取引業者は建物の売り主に対して、インスペクション事業者のあっせんに関して記載した書面を交付することとなります。同一の宅地建物取引業者とインスペクション事業者との間でのあっせんや、実際のインスペクション実施が繰り返されていくことによって、業者間の依存の構造、さらには癒着の構造が生じることも懸念されるのではないでしょうか。

 例えば、比較的年数の新しい建物で、わざわざ出向いて調査せずとも書面だけで整えてしまうとか、より一層簡素な調査だけで実施したことにしてしまうといったような不正が起こりかねないと危惧をしております。

 宅地建物取引業者自身あるいは関係の深い者が建築業、建設業を営んでいる例も少なくなく、宅地建物取引業者みずから、あるいは関係の深い者がインスペクションを行うこととなる可能性もあるのではないでしょうか。

 昨今では、やはりリフォーム詐欺などさまざまな問題がございます。また、先ほど津村委員が最後に指摘もしておりましたけれども、日本の場合、この制度自体、アメリカで進んでいる事例でいえば、買い手がしっかりと調べるという形になります。それによって独立したインスペクションができる、そしてきちんと建物の調査ができることになるかと考えます。

 そこで、インスペクションの実施上の不正、調査結果を示す書類上の不正、関係の深い者が実施することでの第三者性、公平性の懸念に対して、どのように担保されるのか。あわせて、インスペクションの実施上の不正、調査結果を示す書類上の不正に対して罰則規定は盛り込まれていない理由について伺いたいと思います。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 先ほども若干、インスペクションを行う者の要件のところで申し上げましたけれども、インスペクションの実施、これが適正に実施されることを担保するためには、やはり適正な業務を遂行するための指導監督等の仕組みが制度上確保されているということが重要であるというふうに考えておるところでございます。

 これは、法令に基づきそういうことが担保できるということが効果的であるというふうに考えておるところでございまして、例えば、具体的にちょっと申し上げますと、建物状況調査を実施する者、これは建築士を想定しているとお話しいたしましたけれども、例えば、ふぐあいの事象を発見したにもかかわらず、ふぐあい事象がない旨の報告を行ったというような場合には、建築士法に基づく処分等の対象になるということでございます。

 さらに、宅建業者があっせんをするわけでございますけれども、例えば不適切な調査を行っている業者であることを知りながらあっせんをしたような場合、こういうような場合には宅建業法上の処分等の対象になるということでございます。

 建築士法あるいは宅建業法上の現在いろいろな規制、監督、罰則という規定がございますので、そういう規定の中で今回のいろいろな行為についてもしっかりと適正な行為が行われるように担保できるというふうに考えておりまして、今回、罰則規定の追加等の規定は盛り込んでいないところでございます。

小宮山委員 法第三十五条にて宅地建物取引業者から重要事項として説明すべき内容として、建物状況調査を実施しているか否か、実施している場合はその結果を追加しています。

 インスペクションについて、同条の六の二において「実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。」と定められているが、これはインスペクションの有効期限のような意味ともとれるんですけれども、国土交通省令で定める期間はどのように想定しているのか、予定しているのか、お聞かせください。

谷脇政府参考人 建物状況調査は、先ほど申し上げましたように、建物の状況を調べるものでございます。

 したがいまして、建物状況調査が相当程度過去に実施されたものである場合には、現状と乖離している可能性があるということで、そうしますと、買い主に誤った情報を提供してしまうという懸念もあるということでございまして、そこで、今御指摘がございました、重要事項説明の対象とする建物状況調査は、調査から一年以内のものとするということを想定しているところでございます。

小宮山委員 それでは、有効な期間内のインスペクション結果であっても、仮にその期間内に、当該建物の建っている地域に建物に被害を及ぼしかねない規模の災害があったり、また自動車などがぶつかってきた交通事故というんでしょうか、影響があった場合、やはりインスペクションの結果の有効性が確実なものとならないのではないかということも考えられます。この点の御見解をお聞かせください。

谷脇政府参考人 建物状況調査が実施されました後に自然災害などが発生した場合には、建物に被害などが生じている可能性がございます。当該建物の購入者に対し、自然災害等の発生状況に関する情報を提供していくということは重要であるというふうに考えております。

 今申し上げましたように、建物状況調査の有効期間は一年とすることを想定しておりますけれども、自然災害などの発生によりまして建物状況調査の結果が住宅の現況に合わない事態が生じた場合において、住宅の現況に関し、どのように消費者に情報提供を行うかというような点につきまして、非常に重要な点でございますので、消費者保護の観点も踏まえて今後検討していきたいというふうに考えております。

小宮山委員 実は、先日、インスペクションを受けた、既存住宅売買瑕疵保険のためのインスペクション、これができる資格をお持ちの方と数日前にお話しする機会がありました。

 若い方で、これからこの分野は伸びると確信して受講されたそうなんですけれども、なかなかそちらの方の仕事は現実には回ってこないというお話もされておりました。そういう意味においては、一部の方々がおやりになっているかもしれませんし、まだまだ市場として規模が小さい、この制度自体も知られていないということも実際にはあるのかと思います。

 現実に、平成二十六年度で五%、これを三十七年度までに二〇%にこの保険の加入を上げる。そして、既存住宅流通の市場規模は、平成二十五年度で四兆円を三十七年度においては八兆円、倍額にふやすということを目標に掲げて、この法案は国交省から出されたと思っております。

 比較的簡易なインスペクションでも実施率が上昇すれば、中古住宅や建物流通の信頼性向上や活性化に大きくつながっていくと考えております。この点の大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

石井国務大臣 既存住宅の取引の際に、買い主は住宅の質に対する不安を抱いている一方で、既存住宅は個人間で売買されることが多く、一般消費者である売り主に広く情報提供や瑕疵担保の責任を負わせることが困難であるといった課題がございます。

 このため、今回の法改正では、建物の基礎、外壁等について建物状況調査の実施を促進することで、消費者がこうした建物の重要な部位に関する状況を把握することが可能となり、既存住宅取引における不安の解消に貢献するものと考えております。

 また、建物状況調査とあわせまして既存住宅売買瑕疵保険にも加入することで、引き渡し後に瑕疵が発見された場合の保証が受けられることになります。

 このような措置を通じて、より安心して既存住宅を取引できる市場環境が整備をされ、市場の活性化が図られるものと考えております。

小宮山委員 日本での住宅需要は極端に新築に偏っていることは、旧来から指摘されております。今回の法改正により、インスペクションに対する認知度、さらには信頼感が高まり、インスペクションを受けている中古住宅、既存住宅の流通によい効果を生じることで、意識の変化とともに住宅市場の構造が変化していき、ひいては、よい住宅にリフォームなどで手が加えられながら、長く使っていける、環境負荷の低い循環型の成長産業へと脱皮していくことにつながることを心から期待し、あわせて、冒頭の質問で触れさせていただきました、熊本を中心とする被災地で避難生活をされている皆様方が安心して過ごせる状況に少しでも早く移行できることを願って、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民進党の荒井聰でございます。

 きょうは、宅建業法の改正について。

 私は、ずっと不動産業あるいは中古住宅について関心を持っておりまして、私が大臣時代にも、中古住宅の流通の促進策というのはもっと工夫の余地があるだろうということで、政府内で検討したことがございました。

 今ここに来て、やっと宅建業法の改正、その中の一つの大きな要素であるインスペクションについて国交省が一歩踏み出したな、そういう感じがありますけれども、まだまだ不動産業界が抱えている多くの課題を抜本的に解決するところまでは至っていないのではないかなというふうに思います。

 皆さんのお手元に、宅地建物取引業者のこの十年間の推移の表をお渡ししました。

 大臣免許と知事免許に分けてありますけれども、大臣免許の方はふえているところが多いんですけれども、ただ、十件が二十件になったとか、二十件が三十件になった、そういう意味であって、知事免許という、地方を支えている不動産業者の数は激減しているんですね。この十年間で二〇%以上減っているところはたくさんあるというのが、この表でわかると思います。知事免許のところでふえているのが東京と沖縄ぐらいなもので、あとほとんどの地域が激減しているという状況であります。

 私は、日本という国をしっかり支えているのはやはり地域だと思うんです、地方だと思うんです。その地方を支えているある種のインフラのようなものがどんどん崩壊をしつつある。その一つが、この不動産業者の数が激減しているということ。このほかにも、電器店が激減しているとか、あるいは郵便局が減っているとか。かつて日本のよさというか、あるいは粘り強さというか、強さを支えていたものが少しずつ崩壊をしているという象徴が、この宅建業者の数が減っていることではないかなというふうに思います。

 それはどういうところに出てきているのかというと、一昨年、空き家法の議員立法を行いました。この法案は、当時、宮路さんという自民党の先生が必死になって議員立法として唱えて動き回ったわけです。ただ、議員立法ですから、全党一致でなければ、国会会期末、特にあれは解散の直前でしたので、会期末に委員長提案でなければ難しいという法案になりました。そこで、空き家法案というのは、ある意味では私権を制限する、本来、民法上の規定からいっても大変難しい法律であったわけですけれども、共産党さんを含む全ての政党がこの法案に賛成をしてくれて、成立をいたしました。

 ただ、どうしてこの空き家法案が必要になってきたのか、あるいは空き家という現象が出てきているのか、これははっきりしているんですね。

 日本にある住宅の数は六千万戸、世帯数は五千万弱だと思います。つまり、需給のギャップが生じているんですね。かつ、中古住宅がどんどんふえているにもかかわらず新規の住宅をどんどんつくっている、国交省は新規の住宅政策から転換できないでいるということから、明らかに空き家住宅というのは当然出てくるんです。この空き家住宅の発生は、特に地域で、地方で出てくるんだというふうに思います。

 せっかくの私の数字でありますから、国交省の政府参考人から、今の空き家法の施行以降、どんな動きが地方に出てきたのか、あるいは、これにかかわって、宅建業者が空き家対策についてどのような姿勢をとろうとしているのかというようなことをお聞かせ願いたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 今委員お話しいただきました、流通空き家等を除きます、いわゆるその他空き家というものは三百十八万戸あるというふうに推計されております。このうち、本当にどのぐらいが居住可能な空き家なのかという実態そのものを詳細に把握しているわけではございませんけれども、このうちの約七五%はやはり旧耐震のもとで建設をされておりまして、そのうちの約六割は耐震性がないのではないかというふうに推計しております。

 したがいまして、耐震の観点からも、安心して居住できる空き家というのは、やはり百五十万戸程度になってしまうんじゃないかというふうに思っております。

 こうした空き家については、利活用を図っていくやり方といたしまして、当然、住宅として賃貸をしたり売却するという方法がございます一方で、介護や福祉、あるいは子育て支援施設等の他用途へ転換をしていくというやり方で利用していくというやり方もあろうかというふうに思っております。

 こうした双方の取り組みを支援する仕組みといたしまして、委員御指摘いただきました空き家法が施行され、これに基づく空家等対策計画に基づいて、こうした取り組みを市町村が行っていくということができるようになったところでございます。現在、三月の末時点で申し上げますと、この法律に基づきます空家等対策計画は、群馬県の前橋市、あるいは富山県の立山町など六十三の市区町村で策定をされているところでございます。

 国交省といたしましては、この計画に沿って、空き家の活用などに関する市区町村の取り組みを支援いたしますために、今年度の予算におきまして、従来型の社会資本整備総合交付金を使いますやり方とは別枠で、空き家対策総合支援事業というものを創設させていただきました。この新しい事業に基づきまして、市区町村による空き家対策を積極的に支援してまいりたいと思っております。

 また、税制改正におきまして、空き家の発生を抑制する観点から、相続により生じた古い空き家を譲渡した場合の所得税等の特例制度を創設いたしております。

 特に宅建業者の方々からも、市町村に対しまして、空き家の利活用、有効活用を図っていくのに協力をしていきたいということで大変熱心な申し出があるというふうに聞いております。地元で、市町村を中心に協議会などもつくる制度もこの法律にございますので、そういった中にも入っていただいて、空き家計画に基づいて積極的に利活用を図っていただきたいというふうに思っております。

 特にこの税制改正のメニューは流通を促進するメニューでございますので、こういった宅建業者のお力も大いにおかりをしながら、有効利用が図られるものというふうに考えております。

 私どもといたしましても、こうした支援制度を通じまして、空き家の有効活用を促進してまいりたいというふうに考えております。

荒井委員 ぜひ地方の宅建業界の方々にも協力を得て空き家の活用というのを積極的に進めるように、そこが新築政策から中古住宅政策へ大きく切りかえられる一つの側面だ、切り口だというふうにも思います。

 大臣、日本は、この二十年、三十年ぐらいかな、今までずっと新築住宅で投資していた資産額が約五百兆円損失したというふうに言われています。それは、売却しようとしても土地の値段でしか査定はされないということがあって、せっかく二千万、三千万かけて建てた、あるいは買ったマンションの価値が二十年たつとほとんどなくなってしまう。

 普通、住宅というのは、消費財ではないですよ、本来は資産ですよ。ところが、日本の経済では、それが資産として評価されていないということから、そうですね、消費税がかかっていると今話がありましたけれども、そのとおりなんですよ。世界じゅうで住宅に消費税をかけているのは本当に少ないんですよね。

 私は、国交省はここをもっと頑張るべきだったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、この資産という側面をもっと国交省の政策の中で打ち出さないと、中古住宅市場の抜本改革あるいは住宅政策の抜本改革というのはできないのではないかと。常に新築の住宅、つまり、新築の住宅ということは、片一方で空き家をどんどんふやしているということです。そして空き家をふやしているということは、資産をどんどん償却しているということです。日本の経済にとって極めてマイナスな要因を国交省みずから行っているというふうに言われても仕方がないのではないかというふうに思います。

 そこで、中古住宅のマーケットの活性化なんですけれども、日本の経済のこれからの活力の源というのは外需ではなくて内需なんですよね。これはずっと言われ続けているんですけれども、輸出産業というのは日本全体のGDPの約二割ぐらいだと思います。あとは全部内需なんです。内需の一番大きな柱はやはり住宅なんですよ。その住宅市場に目を向けた内需政策、つまりリフォーム市場とか、そういうものを活性化することが一番大事だと思うんですけれども、この基本的な考え方について、大臣はどういうお考えですか。

石井国務大臣 既存住宅流通市場の活性化やリフォーム市場の拡大は、無理のない負担で住宅を取得できるようになること、持ち家の資産価値が向上すること等により新たな消費、投資の喚起につながり、経済全体の底上げに資するものであると認識をしております。

 特に、委員先ほど御指摘いただいたように、現状では、建築後二十年から二十五年程度で市場価値が上物についてはゼロになるわけですけれども、それが適切に評価されるということになりますと、特に高齢者にとっては資産がきちんと手元にあるということになりますので、ある意味で、老後のいろいろな経済的な不安というのがそこで一定程度緩和される可能性が出てくるということは、私は高齢者の方の非常に大きな消費、投資の拡大につながる可能性も導き出してくるのではないかな、こんなふうに考えております。

 既存住宅流通市場の活性化等のためには、まず住宅が長く使われるように質の向上を図ることが必要であります。そのため、長寿命化や耐震化、省エネ性能の向上などを図るリフォームに対して補助、税制での支援をしていきたいと思っております。

 また、適正な価格で売却できるようにするために、宅建業者や不動産鑑定士の適正な評価手法の普及、定着を進め、建物の性能やリフォームの状況が評価に適切に反映されるように取り組んでまいります。

 また、住宅を安心して取引できる環境を整備するために、既存住宅の性能表示制度の普及を図るとともに、宅建業者間の物件探索システムであるレインズの利用ルールや機能の改善を行いまして、また、今回の法改正によりまして、インスペクションの活用によって情報提供の充実等を図ってまいりたいと考えております。

 既存住宅流通リフォーム市場の活性化につきましては、先月閣議決定をいたしました住生活基本計画におきましても、今後十年の住宅政策の中心をなす目標として位置づけておりまして、より一層積極的に取り組んでまいりたいと存じます。

荒井委員 日本経済の活性化のために内需を拡大することが必要だ。その担い手は、むしろ資産をお持ちのお年寄りが積極的に日本の内需の中に参加をする、そういう仕組みをつくることが大事なんじゃないかと思うんですね。

 先ほど大臣おっしゃったように、資産価値がふえてくればお年寄りの安心というものは上回ってくるだろうというお話で、そのとおりだと思うんです。その安心があれば、旅行に行ったり、あるいは便利なものを買ったりという消費活動にもまた向いてくる、余裕が出てくるんだろうというふうに思います。

 大体お年寄りは、新築の住宅をつくろう、そこまでは進まないですよ。また二十年、二十五年のローンを組もうなどというふうには思わないですよ。でも、今住んでいるところをもっと快適な住宅にしたいよなと思うお年寄りはたくさんいると思うんです。それに応えるのが中古住宅市場の拡大ということだと思うんです。

 その意味では、お年寄りに老後の安心で快適な生活を保障する、提供するという意味からも、そしてそれが結果的には内需の拡大につながっていくということからも、ぜひ中古住宅については国交省として重点的に取り組んでほしいなというふうに思うんです。

 その際にネックになってくるのが、住宅関係の、不動産業界の古い体質、これは不動産業界だけではなくて、私は国交省関係の業界にそういう古い体質があちこちに残っているんじゃないかと。例えば、この間軽井沢で事故を起こしたバスの運行業者、バス業界では、下請ですとかあるいは強い立場を利用して価格を交渉していくといったようなことが何の不思議もなく横行しているというようなことが出ましたし、さらには、旭化成のくい打ち事件に見る多重下請の構造で、どこに責任者がいるのかわからないといったようなことも明らかになっていったわけですね。

 こういうようなことが不動産業界にもあるのではないか。よく言われているのが、これは自民党の鶴保議員が中心になって、不動産業界の業界体質、それを改善して少しでも中古住宅のマーケットを拡大しようという研究をなさった。私は、よくやられたな、与党の方としてよくあれだけのことをやられたなというふうに評価をするんですけれども、その中で言われていたのが、囲い込みあるいは両手取引という慣行であります。

 両手取引が多くの問題の根幹になっているのではないかと私は思うんですけれども、この両手取引というのは、買い手と売り手、双方のあっせんをして、双方から取引料というかあっせん料をもらう、そういう慣習であります。この慣習は、ある意味では利益相反性があるのではないかと弁護士などが指摘することが多いんですけれども、実際にアメリカなどでは、州によって違いますけれども、法律によってこの両手取引を禁止しているところがたくさんあるんですね、一般的と言っていいかもしれません。ところが、日本では両手取引が一般的であります。

 この両手取引のゆえに、囲い込みという現象が業界の中で、横行と言ったらおかしいんですけれども、そういう状況が出てきているのではないだろうかというふうに私は思うんですけれども、このあたり、不動産業界の透明性、公平性というものをもっと一段と進めていくためには、さらなる、国交省のこの業界に対する考え方、抜本的な対策というものが必要なのではないかと思うんですけれども、これはいかがですか、大臣。

石井国務大臣 消費者が安心して不動産取引を行える市場環境を整備していく上では、取引の透明性や公平性の担保を図ることは極めて重要であると考えております。

 まず、宅建業者が故意に物件の情報を隠すような、いわゆる囲い込み行為については、本年一月に宅建業者間の物件探索システムであるレインズの機能改善を行いまして、例えば、売り主がみずからの物件情報を確認できる、また買い主側の宅建業者が売り出し物件の探索、取引状況の確認を可能にする、こういった改善を行ったほか、今回の法案におきましても、媒介依頼者に対する取引状況の報告を義務づけることとしておりまして、取引の透明性の向上が図られるよう取り組んでいるところでございます。

 また、買い主が物件の質に関する十分な情報を得られるようにすることは、情報の非対称性を解消し、既存住宅の流通を活性化するために重要でありまして、このために、本法案に物件の質を明らかにするための建物状況調査を盛り込み、その活用を推進していくこと、このようにしております。

 取引の透明性や公平性を確保するとともに、不動産流通市場の活性化が図られるよう、今回の法改正を契機により一層積極的に取り組んでいきたいと思っております。

荒井委員 もう一つ、不動産業界の特色が情報の非対称性というふうに言われることなんですね。

 難しい言い方になりますけれども、結果的には、買い主がよく物件の全体像がつかめない、業者の言いなりになってしまわざるを得ない。それはそうですね、一生に一回買うかどうかぐらいの、そういうものでありますから、そういう状況に陥りがちだというのはよくわかりますよね。

 しかし、これで、結果的には囲い込みですとか、あるいは消費者に対する不利益をこうむるような状況が多々生まれてしまう。そういうことを宅建業者の方みずからも理解していて、今回の研修あるいは業界の体質改革に取り組もうという動きになったんだろうというふうに思うんです。

 情報の非対称性というのは極めて重たいこと、大きいことだというふうに思います。それは、情報が公開されていないからなんですね。

 私は、約三十年ほど前に北海道庁で知事室長をやっていたことがあったんですけれども、そのときにいろいろな業界からお話を聞かせてもらいましたけれども、その中で、不動産業界の中で優良な企業が集まったリスティング協会という協会がありました。

 リスティング協会というのは何なんだいといったら、リストするというんです。何をリストするんだいといったら、不動産の建物の売却の希望リストを並べて、誰でもが見られるようにするんだと。そういうことができる業者というのは少ないのかいといったら、少ないというんですね。

 つまり、売る優良な物件はみんな、さっきちょっと囲い込みと言いましたけれども、そういうことがあって、世の中に公開するような、そういう行為はまだまだ小さかったんです、三十年前ですけれども。それがやっとここへ来て、新聞紙上だとか、あるいは、きょうも私が、この囲い込みの話というのは私ぐらいしかやらないかもしれませんけれども、そういう話として出てきた。

 情報の非対称性についてもっと本格的な議論をするべきだというふうに私は思います。その際に、インスペクションの持っている意味というのはとても大きいと思います。

 それともう一つは、住宅金融公庫を廃止したのはすごく大きいですね、マイナスの意味で。住宅金融公庫があれば、あるいは、取引に公的な融資が付随するような仕掛けをつくっておけば、インスペクションをかなりの強制力でできたと私は思うんです。

 今のこれだと、インスペクションをやる業者、売り主、買い主、決して余り伸びないと思うんです。したがって、インスペクション、これは法律で義務化をするか、あるいは融資の際にこれを付随させる条件をつけるか、そういう仕掛けをつくらなければインスペクションというのは伸びていかない、結果的には情報の非対称性というのは解消しないと思うんですけれども、住宅局長、どうですか。

谷脇政府参考人 今御指摘ございました情報の非対称性を解消していくということは非常に重要な課題だというふうに考えておるところでございまして、先ほど大臣からも答弁ございましたように、囲い込みの防止を図るというような観点から、レインズの仕組みの改善を図りましたり、あるいはこの法案におきましても、その媒介の依頼者に申し込みがあったことをしっかり知らせるといったような取り組みを進めたり、さまざまな取り組みをしているところでございます。

 そういう中で、今回インスペクションの制度を法律上しっかりと位置づけるということで、これの普及を図るということで、非対称性の解消に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

 ただ、今御指摘ございましたように、一気にインスペクションを義務づけるという点につきましては、やはり流通しております住宅というのもさまざまなものがあるわけでございまして、非常に古いものもあれば新しいものもある、さまざまなものがございますので、一律に義務づけを行うということは、少し過剰な負担を強いるということにもなるのではないかというような意味で、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

 現状、インスペクションの実施率は非常に低いわけでございますので、まず、誘導的にインスペクションの実施の促進を図りながら、その後の取り扱いについて検討を行っていくということが現時点では効果的ではないかというふうに考えているところでございます。

荒井委員 第一段階だからこんなものなのかもしれませんけれども、もう一段どこかで大胆な取り組みをやらないと、ここのところは破れないように私には思えます。

 ところで、冒頭、宅建業者の数が地方の方でどんどん減っているというお話をさせてもらいましたけれども、この減っている原因は、もちろん人口が減になっていて、その地域の活力が少なくなってきているということも原因としてあるんですけれども、それ以上に大きいのは、今不動産の取引の手数料が三%プラス六万円という形で決められているんですね。これは、地域によって違うんじゃないか。東京の大規模な物件の場合にはそれで十分でしょうけれども、地方の方で一年に数件しか扱わないような、しかし、宅建業者というのは、その地域における社会インフラの一つだというふうに私は思いますから、そういう業界をしっかり存続させる、育てていくためにも、この三%という数字はもう無理が来ているんじゃないか、ここの改正というのは考えるべきなのではないかというふうに思うんですけれども、このあたり、大臣あるいは副大臣、どうでしょうか。

石井国務大臣 宅建業者が受けることのできる報酬、いわゆる仲介手数料に係る規制は、消費者の不動産取引に関する知識、経験が乏しいことに乗じて不当に高額な報酬を請求することがないよう、消費者保護及び取引の公正の確保を目的として設定をされております。

 一方、既存住宅市場の活性化のためには、新たな売買取引需要を創出することが重要でありますが、地方部においては、物件の調査など媒介の労力に見合った報酬が得られないという声もございます。

 しかしながら、手数料の料率の見直しは、消費者の負担に直結するものでもございますので、不動産取引全体に与える影響も大きいと考えられるため、慎重な検討が必要であると考えております。

 一方、地方部における不動産流通も含めた既存住宅市場の活性化のためには、住宅のストックの質を向上することに合わせて、取引において、個々の住宅の使用価値に応じて適正に評価される環境の整備も重要でございます。

 考え方としては、取引料率というよりも、不動産価格を適正に評価することによって同じ料率でも取引手数料が多く入る、そういう方向に促すことが重要なのではないかなと。

 こういった取り組みも含めまして、既存住宅が市場で流通しやすくなるよう取り組んでいきたいと考えております。

荒井委員 一方、古い業界体質に反旗を翻すように、いろいろな業界が参入しようとしております。私は、この業界の体質改革あるいは活性化のためには、そういう人たちが新規に参入してくるというのはむしろウエルカムなんじゃないかというふうにも思います。

 かつて、黒野さんという国交省の名事務次官がおられましたけれども、その方が、日本航空の体質改革をするためにいろいろなことをやったけれども、結局できなかった、最後に残ったのは、新しい業者を業界に参入させることだと言って、エア・ドゥとか、結果的にはだめになりましたけれども、第三者の航空会社を参入させる、そういう道を選んだんですね。私は、古い業界というのは、そういう形で新しく生まれ変わる側面というものがあるのではないかなというふうに思います。

 IT業界で、ITのクラウドの情報を使ったり、あるいは人工知能の情報とか技術を使ってこの業界に参入しようと虎視たんたんと狙っているというふうに言われております。私はこれを利用したらいい、活用したらいいというふうに思います。ここはどうですか。

谷脇政府参考人 宅地建物取引の世界にも、今御指摘ございましたように、いろいろな形態、従来なかったような形態での取引というものが生まれてきているところでございますので、今御指摘にございましたいろいろな形態、そういうものも踏まえながら、不動産業界がさらに活性化していくように、いろいろなことを考えていきたいというふうに思っております。

荒井委員 戦後、住宅政策について似たような政策をずっとやっていたのがドイツなんですよね。ドイツも住宅が爆撃によってやられて、戦後すぐ住宅が不足をしたということから、新規住宅の政策に特化した住宅政策を行っていったんですけれども、あるところで人口がそんなに伸びない、耐用年数の長い優良な住宅をつくっていけば、新規の住宅をつくるのには限度があるということを理解して、新規住宅政策から中古住宅政策に大胆に切りかえたんです、ドイツは。そういうことが日本ではできなかった。

 これだけ住宅問題について、需要がどのぐらいで、それに関与する業界の体質がこうでということが全て大体明らかになったにもかかわらず、私は一番変わらなきゃならないのは国交省だと思いますよ。新規住宅政策から大胆に中古住宅流通の政策に切りかわらなければならない。国交省が変わればこの業界は変わりますよ。変われば、内需拡大にもっと大きな、そして地方の宅建業界に活力をもたらす、そういうきっかけになると私は思います。

 最後に、大臣、私の今の見解について御感想をお述べいただければと思います。

石井国務大臣 新規の住宅のニーズはやはりございますので、そのニーズにしっかり応えるということは重要かと思いますが、国交省としては、新規住宅のみならず、中古住宅の流通政策もこれまで以上にしっかりと取り組んでいきたい、このように考えております。

荒井委員 終わります。ありがとうございました。

谷委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 まず、熊本、大分を中心とした九州地方の地震の問題で質問をさせていただきたいと思います。

 この地震で亡くなられた方々に心からの哀悼の意を表したいと思います。そして、被害に遭われた全ての皆様に心からのお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 ずっと余震が続いております。帰宅をしたいけれどもなかなかできない、不安だ、大丈夫なのかという声が聞こえてまいります。十四日の地震では何とかしのいだ家屋も、十六日未明の本震で倒壊や大きく損壊する状況が相次いでおります。被災者の方々の思いに応えていくためにも、早急に家屋の調査、そして支援をしていくことが欠かせないというふうに思います。

 そこで伺いますけれども、被災建築物の応急危険度判定の実施状況はどうなっているのか、そして、全体のどのくらいまでできているのかということをお答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、小島委員長代理着席〕

由木政府参考人 お答えいたします。

 余震などによります二次災害を防止いたしますとともに、被災した自宅を使用しても大丈夫かどうかという点を確認いたしますために、被災した住宅や建築物につきまして、倒壊の危険性や外壁、窓ガラスの落下などの危険性を判定いたします被災建築物応急危険度判定を実施いたしております。

 熊本県では、益城町と熊本市において、地震発生翌日の四月十五日から判定活動を開始いたしております。これまでに、宇土市、菊陽町、西原村、南阿蘇村、御船町、高森町、甲佐町、山都町、宇城市、美里町、嘉島町及び氷川町、今申し上げましたのを数えますと十四市町村になります、において判定活動を進めているところでございます。

 四月の二十六日までの数値でございますけれども、延べ三千二十人体制で判定を行っておりまして、申し上げました十四市町村において、合計で三万一千三十件について判定が行われているところでございます。

 判定の終了の状況でございますけれども、菊陽町が四月の二十三日に、益城町は四月の二十四日、宇土市及び山都町は四月の二十五日に、当初予定をしておりました予定分を完了いたしております。その他の市町村においても、地元の状況を踏まえつつ、できるだけ速やかに実施していくというふうに聞いております。

 全体の状況でございますけれども、まだこれから実施をしたいという市町村もございますのと、実施を当初予定で終了いたしました市町村でも追加で実施をしてほしいという要望もございます。したがいまして、全体で幾らぐらいになるのかというのは今時点でまだ把握することができませんが、いずれにいたしましても、地元の御要請にできるだけ丁寧に対応していただいて、かつ早急にこの判定を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

本村(伸)委員 余震によって被災をする二次災害を防ぐための制度が有効に機能するように、ぜひ全体を手のひらに乗せて対応をしていただきたいというふうに思います。

 次に、住宅被害調査についてお伺いをしたいと思います。

 自然災害により被害に遭った住宅について、内閣府が定めている災害の被害認定基準に基づいて、全壊、半壊等の被害の程度の認定をするわけですけれども、いつから実施し、誰がやるのか、答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 お答えをいたします。

 災害対策基本法上、住宅被害の認定調査、それから罹災証明書の発行につきましては、市町村の事務とされております。したがいまして、具体の調査は市町村の職員がやるということになります。

 また、現在被災した各市町村におきましては、住宅被害認定調査の計画、それから調査体制の構築を進めておりまして、この計画に基づきまして住宅被害認定調査を行っていくこととなります。

 既に一部の市町村ではこの住宅被害の調査、それから罹災証明の交付が行われていると承知しております。

本村(伸)委員 自治体がやるということなんですけれども、自治体の職員がそもそも足りないという問題がございます。

 そして、建築の専門家ではない職員の方が研修を少しやって調査、判定ができるようになるというふうに言いますけれども、その結果が罹災証明などにもかかわる、その後の支援の額にもかかわる、そういうことを左右するものになるわけですから、やはり信頼できるものでなければならないというふうに思います。

 この信頼性の確保について、答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 住宅被害の認定調査につきましては、市町村職員あるいはほかの地方公共団体から応援をいただいた職員の方に研修を受けていただいた上で実施をすることといたしております。

 内閣府におきましては、こうした建築の専門知識のない職員の方でも住家被害の認定調査を適切に実施していただけるように、調査フローあるいは判定基準をわかりやすくまとめたマニュアルを作成しておりまして、四月二十日には熊本県、その翌日には大分県の職員の皆さんに住宅被害調査の説明会を開催させていただいたところであります。

本村(伸)委員 これまでの災害の現場を見てみましても、これが半壊なのかとか、いろいろ疑義があるわけでございます。ぜひ信頼の置けるものにしていただきたいというふうに思います。

 応急危険度判定で危険と判定された住宅は、被害認定でも全壊になるのかという問題もございます。

 応急危険度判定で危険を示す赤紙が張られますと、イコール取り壊しになるのではないかという誤解も生じ、そのことが被災者の方々に大きな不安を与えている現状もあるというふうに思います。

 外観の目視の調査だけではやはり実態を正確に反映したものにはならないというふうに思いますけれども、やはり、全国から専門家を派遣して、迅速的確に信頼できる調査をするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

    〔小島委員長代理退席、委員長着席〕

林政府参考人 お答えをいたします。

 内閣府におきましては、住宅被害調査の計画策定や調査体制の構築につきまして、県を通じまして市町村に依頼をしておりますけれども、絶対的な職員数の不足ということもございまして、必要となる応援職員数の確認も行わせていただいております。

 必要となる応援職員数につきましては、九州地方知事会などの御協力もいただきながら、県で取りまとめていただいた後、国の職員も速やかに派遣をいたしますし、また、各自治体からの応援職員の追加派遣も行わせていただく予定にしております。

本村(伸)委員 さらに、被災者の方が、大規模半壊ですとか全壊ですとかになりますと被災者生活再建支援法による支援金が出ますけれども、新築、建てかえで最大三百万円しかないという状況がございます。

 被災者の方が住宅を再建するために、三百万円ではやはり住宅を建てかえることはできないという声が、被災地はどこでもそういう声が上がるわけです。私有財産、憲法上の問題があるということも言われておりますけれども、自然災害により財産的な被害を受けた被災者を国が支援することは憲法上何の矛盾もないんだということがちゃんと指摘をされているわけですから、被災者の方が住宅を再建するためにも、せめて五百万円に引き上げるべきだ、そういう改善を図るべきだというふうに思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 お答えをいたします。

 被災者生活再建支援法に基づきます支援金につきましては、住宅の再建等、被災者の生活再建に資するものでございますけれども、被災者の生活再建につきましては、保険や共済といった自助や共助を基本としながら、公助でそれを側面的に支援するということが適当であると考えております。

 被災者生活再建支援金につきましても、全都道府県の相互扶助で基金を造成いたしておりまして、また、これに国による財政支援を加えまして、議員御指摘のように、全壊などの場合には最大三百万円を支給するというものでございますが、いわゆる見舞金的な性格を有するものとして三百万円に増額をするときに整理をされております。

 本制度に基づきますこの支援金の額のあり方については、災害弔慰金など他の制度とのバランス、国、地方の財政負担などを勘案する必要がありまして、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

 引き続き、被災地方公共団体や各府省など関係機関とも連携しながら、被災者の生活再建に向けて対応してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 この支援金の増額を強く求めたいというふうに思います。

 次に、宅地建物取引業法の改定について伺いたいと思います。

 住宅は、人が生活する上で必要不可欠なものです。良好な居住環境の住まいを確保し、そして長く安心して住み続けたいというのは、多くの方々の共通の願いだというふうに思います。

 伺いたいんですけれども、現在、日本の既存住宅の取引戸数というのは十七万戸で、新築の着工というのは九十八万戸、全住宅の流通量に占める既存住宅の流通シェアというのは一四・七%で、先ほど来指摘がありましたように、欧米諸国と比べましてもやはり低い水準にあるというふうに思います。この日本の既存住宅の流通が進まなかったのはなぜか、これまでの住宅政策についてお聞かせをいただきたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度に行いました住宅市場動向調査によりますと、既存住宅を選択しなかった理由として、耐震性や断熱性などの品質に対する不信感、あるいは、ふぐあいがあるのではないかといった不信感、そうした回答が挙げられておりまして、住宅の取引に対しまして消費者がやはり不安を抱えているという実態が明らかになっております。

 こうした不安が生じます原因といたしましては、住宅の質そのものに関する課題と、住宅の取引環境、その質が、そのあり方がきちんと伝わっているかどうかという問題、それからもう一つは住宅の評価に関する問題、住宅の価格等がきちんと反映されたものになっているかどうかという問題があろうかというふうに思っております。やはり、それぞれこうした三つの課題がこれまであり、また、この三つの課題を今後解決していかなければならないということだというふうに思っております。

 そのためには、まず、質の面につきましては、住宅が長く使われるように質の向上を図るということが大切でございます。そのために、長寿命化や耐震化、省エネ性能の向上などを図るリフォームに対しまして、補助や税制で支援をしてまいってきているところでございます。

 また、住みかえを促進するためには、住んでいた住宅が資産として評価をされて、適正な価格で売却できるようにするということが必要でございます。

 そのためには、先ほど申しました評価の問題でございますけれども、宅建業者や不動産鑑定士の適正な評価手法の普及、定着を進めまして、住宅の性能やリフォームの状況が評価に適切に反映されるということに取り組んでまいっているところでございます。

 また、国民の皆様が住宅を安心して取引できる環境を整備するということが重要でございます。既存住宅の性能表示制度の普及、あるいは、リフォーム等の住宅履歴が蓄積されるような、そういう仕組みの整備とその普及、あるいは、本日御審議をいただいております、この法改正によりますインスペクションの活用による情報提供の充実、こうしたことを図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 既存住宅の流通やリフォーム市場の活性化につきましては、先月閣議決定いたしました住生活基本計画におきましても、今後十年の住宅政策の中心をなす目標と位置づけておりまして、より一層積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

本村(伸)委員 これまでの日本の住宅政策というのは、新築の方がやはりハウスメーカーなどがもうかるということで、スクラップ・アンド・ビルドという政策をとってきたというふうに思います。

 実際、私の地元の方でも、杉やヒノキの人工林が各地であるのに、林業が業として成り立たない。そこで、ある森林組合の組合長さんが、地元材を使ってほしいとハウスメーカーさんにお願いしたんですけれども、しかし、それでは日本の気候と風土に合ってしまうので、家が長くもってしまう。そうすると、新築する回転率が悪くなる、だから使えないと言われたというふうにおっしゃっておりました。

 かなりゆがんだ利益優先の姿になっているというふうにこのことからも痛感したわけですけれども、住宅においても、やはり大量生産、大量消費、大量廃棄、こういうあり方を変える必要があるというふうに思います。住宅を長く使い続ける取り組みにやはり政策的にも大きくシフトしていく必要があるというふうに思っております。

 既存住宅を長もちさせるために、国の支援策に長期優良住宅化リフォーム制度というものがあるわけですけれども、これは、リフォームなどによって既存住宅の長寿命化を図ることに対して国が費用の一部を補助する制度なんですけれども、では、この制度を国民の皆さんが知っているかというと、かなり疑問ですし、国民の皆さんにとって使いやすいものかということについてもかなり疑問だと思いますし、予算額も少ない。一都道府県当たり一億円もないような予算額でございます。

 やはりこうした支援制度をもっと拡充させるべきだと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の長期優良住宅化リフォーム事業の周知につきましては、住宅の取得、改修に対する補助制度や税制等の支援制度等を紹介いたしますリフォーム事業者など一般向けの説明会を、ことしに入りまして、全国で五十三回開催いたしているところでございます。実績といたしまして、一万一千名を超える方々の参加をいただいております。

 また、二十七年度事業におきましてどんな取り組みがなされたかという取り組み内容を紹介いたしますシンポジウムにつきましても、東京と大阪で三月に開催をしてきているところでございます。

 また、今年度の補助事業の実施に際しましては、五月に全国七都市において、リフォーム事業者等一般向けの説明会の開催を予定しているところでございます。

 また加えて、こうした事業者団体等への単なる周知にとどまりませず、長期優良住宅化リフォームの制度あるいは補助事業に関しまして、国土交通省で作成いたしましたテキストを利用した勉強会をさまざまな団体で実施をしていただき、こうした制度の周知、浸透を図っているところでございます。

 引き続き、こうした取り組みを進めてまいりたいと思います。

 また、御指摘の事業の内容でございますけれども、耐震性が確保され、長もちさせるための劣化対策が講じられました長寿命化に資する住宅のストックの形成をリフォームにより図ろうとする事業でございます。

 具体的には、劣化対策や耐震化、省エネルギー化、バリアフリー化などのためのリフォーム工事費に対しまして、補助率三分の一、補助上限額百万円、長期優良住宅の認定を受ける場合には二百万になりますといった支援になっておりまして、支援内容は充実したものとなっているというふうに考えております。

 また、既存住宅の質の向上を図るためには、耐震、バリアフリー、省エネ改修を行った場合に所得税や固定資産税を軽減するという措置がございます。こうした措置についてもあわせて講じているところでございます。

 今申し上げました補助制度や税制を積極的に活用することによりまして、住宅ストックの質の向上の取り組みを支援してまいりたいというふうに考えております。

本村(伸)委員 ぜひ拡充をお願いしたいというふうに思います。

 次に、建物状況調査、インスペクションについてお伺いをしたいと思います。

 建物状況調査は、調査をしてくれる業者などが、やはりこれも信頼できるものでなければ安心できないというふうに思います。住宅が安心、安全なのかを判断、判定するのに高い信頼性を確保するというのは不可欠な問題だというふうに思います。

 この建物状況調査を一体どんな調査内容で誰が担うのかという問題で、公務員の方や独法などのみなし公務員の方やあるいは建築士などの専門家、こういう方々、信頼が置けるものにしていく必要があると思いますけれども、国交省の見解を伺いたいと思います。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 今回、法律に位置づけようと思っております建物状況調査でございますけれども、一つは、構造耐力上主要な部分、基礎、壁、柱等、それと雨水の浸入を防止する部分、屋根、外壁、開口部、こういった建物の重要な部分につきまして、水平器等々の器具なども使いまして、傾きあるいはひび割れの状況等を調査するというものでございます。こういう重要な調査でございます。

 この調査を実施する者の詳細、法案の中では省令で具体的に規定をするということになってございますけれども、調査が適正に実施されることを担保するために、次の三つの要件が必要であるというふうに考えております。一点目は、建物の設計や調査に関する専門知識を有していること、二つ目は、適正な業務遂行を担保するための指導監督等の仕組みが制度上確保されていること、三つ目といたしまして、円滑に調査が行われるために必要な人員が確保されていること。

 この三つの要件を満たす者といたしまして、現時点では、委員から御指摘もございました、建築士法に基づく国家資格でございます建築士であって調査に関する一定の講習を修了した者とすることを想定しているところでございます。

 御指摘のございました公務員、独法職員につきましては、その職にあるということをもって建物状況調査を実施する者として規定することは想定をしておりません。

本村(伸)委員 ぜひ信頼性のある調査にすることを求めておきたいというふうに思います。

 この建物状況調査をした既存住宅について、調査結果が取引価格にどのように影響すると考えているかという点についてもお伺いをしたいと思います。また、影響するとすれば、宅建業者、不動産業者の方に有利な調査結果を示すことも考えられるというふうに思います。宅建業者と結託、癒着するようなおそれがないのか、建物状況調査業者の中立性をどう担保するかということをお伺いしたいと思います。

谷脇政府参考人 既存住宅の流通促進のためには、住宅の市場価値が現在経年で一律に減少するという評価のあり方から、個々の住宅の状態を反映して既存住宅がより適正に評価される必要があるというふうに考えているところでございます。

 今回の建物状況調査の実施によりまして、建物をしっかりと調査するということによりましてその住宅の状態をより正確に反映した取引価格が形成されることとなるわけでございまして、これが既存住宅の流通活性化のための重要な要素になるというふうに考えているところでございます。

 もう一点、御指摘のございました建物状況調査の中立性の確保、重要な事項であるというふうに考えておりまして、先ほども若干申し上げましたが、法令に基づく指導監督等の仕組みによってその中立性を担保するということを考えているところでございます。

 具体的には、この調査を実施する者、先ほど建築士法の建築士を想定しているというふうに申し上げたわけでございますけれども、例えば、建築士が調査をいたしまして、ふぐあい事象を発見したにもかかわらずふぐあい事象がない旨の報告を行ったというようなことがあった場合には、建築士法に基づく処分の対象になるということでございます。

 また、宅建業者の方につきましても、例えば、そういう不適切な調査を行っているという業者だということを知りながらあっせんをするというような場合には、宅建業法に基づく処分等の対象になるということでございまして、こういうような規定を使いまして担保をし、適正な建物状況調査が行われるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

本村(伸)委員 この建物状況調査の対象は、戸建て住宅だけではなくマンションも含まれるのかということ、そして、含まれるとしたら調査費用はどの程度と想定されるかということ、そしてまた、マンションの場合の建物状況調査の内容ですけれども、売買する予定のお部屋はもちろんのこと、マンションの共用部分や基礎やそういったところも調査の対象に入るかという点を確認したいと思います。

谷脇政府参考人 今回の法改正において規定をいたします建物状況調査は、マンションも対象としております。

 マンションの建物状況調査につきましては、具体的に申し上げますと、専有住戸内の床、内壁、天井などのほか、共用部分でございます外壁、バルコニー、基礎などについても、目視検査や非破壊検査機器を用いた検査等を実施するというふうに考えているところでございます。

 この費用でございますけれども、現在実施されております共同住宅のインスペクション、事業者によって値段等の幅がございますけれども、一戸当たりの検査料金は大体五万円程度ということでございます。

本村(伸)委員 長く安心して住み続けたいという願いに応える住宅政策の充実をお願いしたいというふうに思います。

 次に、バリアフリー住宅をめぐる問題について伺いたいと思います。

 三月二十三日、国土交通省の中部地方整備局が宅地建物取引業者に対する監督処分を行っておりますけれども、それはどういうものか、概要を御説明いただきたいと思います。

谷脇政府参考人 今御指摘ございましたように、平成二十八年三月二十三日付で、私どもの中部地方整備局が、株式会社サンヨーハウジング名古屋に対しまして、宅地建物取引業法に基づく監督処分を行っております。

 その内容を御説明させていただきます。

 同社が買い主と土地売買契約を建築条件つきで締結をいたしました際に、買い主との間で建物の建設工事の内容を十分に協議せず、当該工事の内容が十分に定まっていないにもかかわらず、同日付で建物の工事請負契約を締結した行為が対象になってございます。

 建築条件つきの土地売買契約は、一定期間内に建物の工事請負契約が成立することを条件に効力が生ずるものであるわけでございますので、建築工事請負契約を締結しないことが確定すれば、土地売買契約は白紙解約され、買い主に手付金等が返還される、そういう性質の契約でございます。

 しかしながら、この処分の対象になりましたように、工事の内容がしっかりと合意されていない状態で、同日付で二つの契約を締結した。こういうような場合には、契約後に買い主の希望する予算や間取りで建物が建築できないというようなことが判明した場合に、契約を解除しようとすると、手付金等を放棄しなければならないといったようなことが生ずる可能性があるわけでございまして、損害をこうむるという可能性も出てくるということでございます。

 このため、同社の行為は、業務に関し取引の公正を害する行為に該当する、取引の関係者に損害を与えるおそれがあるということで、宅地建物取引業法に基づき指示処分を行ったというところでございます。

本村(伸)委員 この被害を受けた方は、車椅子を利用されている障害者の方でございました。最初、サンヨーハウジング名古屋は、建築条件つき土地売買契約で自由設計だといって、バリアフリーにできます、専門家が斬新なアイデアを出してくれますといって、土地の契約と同時に建築工事の請負契約もさせたわけでございます。しかし、実際は、車椅子の方が暮らしていくこと、バリアフリーについて本当に理解があったのかと疑問に思わざるを得ない状況でございました。

 車椅子の方が安全に暮らしていくことができるバリアフリーを本当は理解していない、できない業者が、できますといって契約する。そして、営業マンがつくった手書きの設計図的なものを出してきて、本当に車椅子が回転できるのか、安全に動くことができるのかということも含めて、もっと中身を確認したい、設計士に相談したいと言うと、契約したら設計士と相談できます、契約しないとバリアフリーの詰めができないというわけでございます。そういう状況で、契約せざるを得ない状況に至ったというお話でございました。

 契約すると、最初に言っていた金額からどんどんとふえてくる。安心して暮らせるバリアフリーになってどんどん膨れ上がるんだけれども、バリアフリーになっていなくて、そして、玄関までのスロープも安全に公道に下がったり上がったりできるのか、家の中で車椅子の回転ができるのか、そういうスペースがあるのかということを御自身が検証して、できないというふうになった。

 これではだめだということで解約という話になったら、解約するんだったら三百二十万円以上の違約金が発生するということで、おどすようなことを言って、それで、国土交通省さんにも再度相談をした。そうしたら、今度は、これは言いがかりだといって、損害賠償を起こすようなことになるということを弁護士事務所から通知させる。

 障害を持った方が、障害年金や息子さんの給与など本当に少ない収入の中で、それでも、住宅が民間の賃貸とかではなかなか見つからないから、何とかつくろうということでこうやって努力をしてきたわけですけれども、しかし、こういうことをされて、首をくくらなければならないんじゃないかというような、せっぱ詰まって国交省に相談をされた。

 こういう障害を持った方々が追い詰められるようなやり方、こんなやり方が宅建業法で認められるのか。グレーとかそういうことではなくて、こういうやり方はだめだということを業界に対してはっきりと言っていただきたいと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

谷脇政府参考人 今回の事案、先ほども申しましたけれども、建築条件つきの土地売買契約ということでございまして、土地売買契約後に建物の工事請負契約が成立することを条件として土地の譲渡が行われる、そういう取引の形式でございました。

 この取引におきましては、消費者が、土地の売買契約と建物の工事請負契約という二つの契約の内容に加えまして、相互の関係まで理解をして契約するということが事故のトラブルを防ぐためにも重要だというふうに考えております。

 建築条件つきの土地売買契約を締結する宅建業者がバリアフリー仕様に関する専門的知識を有していなければならないというふうにはされておりませんけれども、片方で、宅建業者の責務として、その契約の特徴を消費者に適切に説明し、理解してもらう必要があるというふうに考えているところでございます。

 このため、宅建業法では、宅建業者に対しまして、土地取引の契約内容に係る重要事項説明におきまして、建物の工事請負契約の成立が土地の売買契約の成立条件である旨等々の必要な事項を説明することを義務づけているところでございます。

 さらに、建設工事の請負契約、これも締結するということでございます。これは建設業法の方になるわけでございますけれども、建設業法におきましては、建設工事の請負契約の締結に当たりまして、工事の内容を定めることとされております。バリアフリー仕様の住宅の建築であれば、その工事内容についての構造、仕様等を明確にして、具体的に定める必要があるというふうになっているところでございます。

本村(伸)委員 車椅子を利用する障害者の方がバリアフリー住宅を確保しようと思っても、実績のある設計士や専門業者も数少ないという中で、本当に困ってみえる現状がございます。車椅子の方が安全に暮らせる住宅、バリアフリー住宅のモデルなどを普及してほしいという要望もありますし、大学などの建築科にはぜひバリアフリーの講座、教育を進めていただきたいという要望や、あるいは、設計士や建築会社、現場の大工さんなどがバリアフリーの住宅の勉強会をもっと多くのところで設けるなど、そういう教育、研修についても徹底をしてほしいという要望があります。そして、障害者の方が家をつくったりリフォームのときに、少なくとも都道府県単位で、行政、専門家などを含めたバリアフリー住宅に関する無料の相談窓口、評価機関の設置が必要だと切望をされております。

 建物、設備をつくってから、これは使えなかったということが公的な施設でもよくあるわけですけれども、こういうことがないように、ぜひ、自力で暮らそうと思っている車椅子の方が安全を確保しながらバリアフリーの住宅にアクセスしやすくなるような、総合的な支援をお願いしたいと思います。

 今幾つか、教育の面や、あるいは専門業者の育成の件や、相談窓口、評価機関の設置など申し上げましたけれども、ぜひこういう総合的な支援策を進めていただきたいと思いますけれども、大臣の答弁をお願いしたいと思います。

石井国務大臣 障害者差別解消法に基づき、建築士についても、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮をするよう努力義務が課せられております。

 バリアフリーに関する建築士等への教育につきましては、全ての人に使いやすい建築物の設計に利用できるよう、国土交通省といたしまして、高齢者や障害者等に配慮した設計の具体的な考え方や手法を示したガイドラインを作成しておりまして、建築士等に周知をしているほか、建築士法に基づき建築士が三年ごとに受講する定期講習において、バリアフリーの意義や法令に関する知識の取得、向上を図っているところでございます。

 また、消費者を支援する環境整備について、住宅に関する相談窓口といたしましては、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、一級建築士が幅広い相談に電話で応じる住まいるダイヤルを設けておりますし、また、全国の弁護士会では、例えばリフォーム工事に関するトラブル等に弁護士と建築士が対面で相談に応じる専門家相談を開設しておりまして、バリアフリーを含め、住宅に関する幅広い相談に対応しているところでございます。

本村(伸)委員 ぜひ総合的な支援をお願いしたいと思います。

 車椅子を利用されている方が住宅を探すというのは本当に困難を伴っております。例えばマンション、三千万で駅前で当たったとしても、トイレも二畳のスペースが必要だったり、車椅子が回転できるスペースをつくったりと、結局、車椅子用に全部つくりかえないといけない現状がありまして、費用がかさんでしまうということがございます。

 車椅子で暮らせる民間の賃貸住宅などはほとんどないわけで、車椅子を利用されているある方は、家を探して探して、今でも孤立しがちなのに、これまで住んでいたコミュニティーを離れて遠くまで引っ越さなければならず、さらに孤立をしてしまうというようなお話を伺いましたけれども、こういう現状を絶対になくしていかなければならないというふうに思います。

 車椅子の方が安全に、安心して暮らすためのバリアフリーの家の新築あるいは中古、リフォーム、バリアフリーにするためのそういう家の確保のために、財政的な支援、せめて通常の住宅並みの値段で建てられる助成制度をつくるべきだと思いますけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

石井国務大臣 高齢化が進む中で、バリアフリー化された住宅の流通やバリアフリー化のリフォームを促進することは重要であると考えておりまして、税制、融資、予算の各種支援措置を講じております。

 バリアフリー化された新築住宅や既存住宅の取得につきましては、住宅金融支援機構において、バリアフリー性能にすぐれた住宅に対して住宅ローンの金利を引き下げる支援策を行っております。

 また、バリアフリー化のリフォームを行った場合に、所得税額の控除及び固定資産税の軽減の特例措置を講じておりまして、平成二十八年度には、固定資産税の軽減措置について適用期限の延長を行ったところであります。

 さらに、住宅の長寿命化に資するリフォーム工事とあわせてバリアフリー化を行う場合に、その工事費の三分の一を限度に補助する支援も行っているところでございます。

 引き続き、こうした支援策を積極的に活用することによりまして、バリアフリー化された住宅の取得やリフォームを推進してまいります。

本村(伸)委員 ぜひ、車椅子の方が安心して住めるような住宅の確保のために、国交省としても全力を尽くしていただきたいということを求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 おおさか維新の会の椎木保です。

 初めに、平成二十三年三月十五日に閣議決定された住生活基本計画において、既存住宅をリフォーム等によって住宅ストックの品質や性能を高め、いわば新築市場主義を改めて、既存住宅の流通を促すような社会環境を整えるべく政策転換が図られてきました。

 さらには、本年三月十八日に閣議決定された新たな住生活基本計画においても、購入した住宅の維持管理やリフォームの適切な実施により、住宅の価値が低下せず、良質で魅力的な既存住宅として市場で評価され、流通することによって、資産として次の世代に承継されていく新たな住宅循環システムを創出することが目標に掲げられております。

 しかしながら、既存住宅の流通は思ったほど進んでいないのが現状ではないでしょうか。既存住宅の流通が進まない原因はどこにあるとお考えでしょうか。政府としては、既存住宅の流通・リフォーム市場の活性化に向けて、これまでどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。答弁を求めます。

由木政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度に行いました住宅市場動向調査によりますと、既存住宅を選ばなかった理由といたしまして、耐震性や断熱性などの品質に対する不安、あるいは、ふぐあいがあるのではないかという点についての不安などの回答が挙げられておりまして、住宅の取引に対しまして消費者が不安を抱えているという状況が明らかになっております。

 こうした不安を持ちます原因といたしましては三点あるのではないかというふうに考えております。

 一点は、住宅の質そのものに対する課題でございます。二点目は、その住宅の質が適正な評価に反映されているかどうかという問題でございます。三点目は、その質が適切に情報として開示をされているかどうかという取引環境に関する問題があろうかというふうに思っております。こうした三点の問題がございまして、なかなか既存住宅が選ばれないということが起こってきたというふうに考えております。

 こうした課題を解決するためには、まず第一点目の質に関する問題といたしまして、住宅が長く使われるように質の向上を図るということが必要でございます。そのため、これまでも、長寿命化や耐震化、省エネ性能の向上などを図るリフォームに対しまして、補助、税制等で支援をしてまいっております。

 また、住みかえを促進するために、住んでいた住宅が資産として評価をされ、適正な価格で売却できるようにすることが必要でございます。この点につきましては二点目の課題に対応するものでございますけれども、宅建業者や不動産鑑定士の適正な評価方法の普及、定着を進め、建物の性能やリフォームの状況が評価に適切に反映されるように取り組んでまいっております。

 また、三点目の課題に対してでございますけれども、国民の皆様が住宅を安心して取引できる環境を整備するということが重要でございます。既存住宅の性能表示制度の普及を図りますとともに、宅建業者間の物件の検索システムでございますレインズの利用ルールや機能の改善を行ってまいっております。また、本日御審議いただいておりますこの法律改正によりまして、インスペクションの活用による情報提供の充実、これは今後図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 委員御指摘いただきましたように、先月閣議決定いたしました住生活基本計画におきましても、今後十年の住宅政策の中心をなす目標の一つというふうに位置づけておりますので、より一層積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

椎木委員 今の答弁にもありましたけれども、やはり適正な評価方法、そして国民の皆様に安心していただける環境づくり、こういったものは、答弁いただきましたけれども、より一層進めていただきたいと思います。

 次に、既存住宅を購入しようとした場合、購入者の多くが住宅の質に対して不安を抱いているのが現状です。

 今回の法改正において、不動産取引のプロである宅建業者が専門家によるインスペクションの活用を促すことで、売り主、買い主が安心して取引のできる市場環境を整備するとなっております。

 そのためには、宅建業者が適切にインスペクションのあっせんやインスペクションの説明が行える環境を整える必要があると思いますが、政府としてどのような取り組みを考えているのか、答弁を求めます。

山本副大臣 今般の宅地建物取引業法の改正におきましては、宅建業者が依頼者の意向に応じて、建物状況調査を実施する者、いわゆるインスペクション業者のあっせんを行うとともに、重要事項として建物状況調査の結果の概要を説明することといたしております。

 こうした内容につきましては、消費者が理解しやすく、また宅建業者が適切に説明を行えるよう、国において、媒介契約書や重要事項説明書の標準書式、それと建物状況調査の報告書のひな形を作成することといたしております。

 また、インスペクション業者について、広く消費者や宅建業者が検索できるよう、ホームページ等において公表する仕組みを整備してまいります。

 業界団体におきましてもインスペクション業者との業務提携が進められており、国といたしましても、業界団体とも連携しながら、その環境整備に取り組んでまいりたいと思っております。

椎木委員 それでは、現在、既存住宅の取引に関して、このインスペクションがどの程度実施されているのか、答弁をお願いします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるインスペクションにつきましては、実施主体や内容等に多種多様なものがございまして、その全体像を正確に把握しているわけではございませんけれども、先般、本年二月に民間の調査機関が実施いたしましたインターネットのアンケートによりますと、建物検査を利用したと回答した者は、売却の経験者が一五・三%、購入の経験者が七・二%との結果が公表されております。

 本調査結果では、この二者の重複関係が必ずしも明らかではございませんが、仮にこの重複関係が一切ないものというふうに仮定をいたしまして、既存住宅流通戸数の二二・五%の住宅が建物検査を利用したというふうに仮定をいたしますと、現在インスペクションは約三万八千件利用されているという試算をいたしているところでございます。

椎木委員 私も、地方の行政で営繕関係の仕事をやっていまして、私の部下にも一級建築士がいて、取り組んできましたけれども、ちょっと気になっているのは、やはり調査が余りにも簡易過ぎるんじゃないかなというのは懸念しています。

 それで、インスペクションの資料を見て感じたのが、検査時間が二時間から三時間程度、それから、ちょっとこの辺が本来もっと時間があれば詳しく聞きたかったところなんですけれども、検査の料金も、四・五万から六万という資料をいただいているんですけれども、私がやっていた都道府県の一級建築士の標準単価、これもことしだと二万九千九百円ぐらいなんです。

 そういうものと比較しても、自分がやってきたこれまでの例えば特定建築物の定期調査、これなんかも私も自分で立ち会いながらやってきましたけれども、そういうものだと、きちっと検査が終わったら特定行政庁に報告をして、きちっと新たに今後是正報告をしていく。だから、そういう意味では、非常に検査内容も高度ですし、時間もかかるし、さらには費用的にも今回のこのインスペクションよりも安いんです。

 その辺がちょっと私も、この法案には賛成の立場なんですけれども、よくまだ理解していないところなんですけれども、その辺についてちょっと答弁がもらえればお願いします。

谷脇政府参考人 今回、法案の中に建物状況調査を位置づけるわけでございますけれども、法案の位置づけといたしましては、構造耐力上主要な部分として基礎、壁、柱、雨水の浸入を防止する部分として屋根、外壁、開口部、建物の非常に重要な部分につきまして器具等を使いまして検査をするということ。

 私も、やっております現場に行って見ておりますけれども、やはり、そういう資格を持ったプロの人がやるという中で、時間にすれば三時間ぐらいでございますけれども、雨漏りでございますとか基礎でございますとか、あるいは傾いていないかどうかというようなこと、その傾きなどにつきましても建物のいろいろな場所でしっかり検査をする、そういったことをやっていただくというふうに考えておりますので、その建物の主要な部分についてどういう状況なのかということが、私どもの想定している建物状況調査、インスペクションで、取引をされる一般消費者の方に情報がしっかり提供できるというふうになるものと考えているところでございます。

椎木委員 戸建て住宅の調査ですから、私がやってきた公共施設と違うのは十分理解はしているんですけれども、ちょっとその辺だけが若干自分の中で理解もできなかったものですから、今の答弁である程度理解はしましたので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 次に、この既存住宅売買瑕疵保険、これについてちょっとお聞きします。

 この既存住宅売買瑕疵保険への加入者の状況はどのような状況なのか、今後この既存住宅売買瑕疵保険の普及に向けてどのような取り組みを考えているのか、答弁をお願いします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 既存住宅売買瑕疵保険につきましては、同保険の引き受けを行っております保険法人、五法人ございますが、この実績によりますと、平成二十七年は約九千件というふうになっております。

 今後、この既存住宅売買瑕疵保険、普及をさせてまいりたいというふうに考えております。建物状況調査を活用したこの瑕疵保険のさらなる普及を図るために工夫を行ってまいりたいというふうに考えております。

 具体的には、建物状況調査においてふぐあい事象なしとなった場合には、保険法人による現場検査を省略いたしまして、簡易に保険加入手続を行える仕組みとするように関係者と今後調整してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 加えて、これまでも、既存住宅売買瑕疵保険につきましては、消費者が利用しやすい商品開発を促すことによりまして、保険期間や保険金額の多様化を図ってきてまいっております。その結果、例えば、保険期間が短い商品を開発していただく等々の工夫によりまして、保険加入数が増加してきているものというふうに認識をいたしているところでございます。

 今般の法改正を契機に、宅建業者との連携によりまして、保険商品自体の周知、認知度の向上も図れるものというふうに考えております。消費者が利用しやすい保険商品の開発を引き続き促すことによりまして、この保険の加入の一層の促進を図り、消費者が安心して取引できる市場環境の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

椎木委員 それでは、本法律案で規定されている建物状況調査の実施の適正化、これについてどのように担保していくおつもりなのか、答弁をお願いします。

山本副大臣 建物状況調査が適正に実施されることを担保するために、三点の要件が必要だと考えられております。

 第一点目が、建物の設計や調査に関する専門知識を有している者が実施をすること。二番目といたしまして、適正な業務遂行を担保するための指導監督等の仕組みが制度上確保されていること。三つ目は、円滑に調査が行われるために必要な人員が確保されること。

 以上でございますけれども、これらの要件を確保するための具体的な方策といたしまして、一点目の専門知識を有している者につきましては、国家資格である建築士であって住宅の劣化事象やふぐあいに関する知識、調査の具体的方法、建物状況調査の報告書の作成方法等の講習を修了した者を想定いたしております。加えて、知識、技術の維持向上を図るため、一定の年数ごとの更新制とすることも検討をいたしております。

 二点目の指導監督等に関しましては、不適正な調査が行われた場合には、講習団体による必要な指導、除名処分、講習団体のホームページ等における公表、建築士法に基づく懲戒処分等の対応を行うことも検討をいたしております。

 三点目の人員の確保については、既存住宅売買瑕疵保険の加入手続では既存住宅の調査が必要でありますが、その調査を実施することができる、建築士であって一定の講習をした者が約一万人おりますので、これらの者の活用を図ることを検討いたしております。

 いずれにいたしましても、建物状況調査が売り主、買い主双方に信頼されるものとなるよう、適正な調査を確保する仕組みを整備してまいりたいと思っております。

椎木委員 それでは、既存住宅の流通、これらを促進するためには、既存住宅市場における建物評価の適正化を図っていくべきではないかと思いますが、これについての見解をお願いします。

谷脇政府参考人 今御指摘ございましたように、既存住宅の流通促進のためには、住宅の市場価格が経年で一律に減少するという評価のあり方から、個々の住宅の使用価値を反映し、良質な既存住宅は適正に評価をされるというふうにすることが重要だと考えております。

 このため、国土交通省では、中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針というものを策定しておりまして、基礎、躯体は個々の住宅の性能に応じた耐用年数を設定する、もう一点は、適切な内外装、設備の補修等を行えば価値が回復、向上する、こういった評価の考え方を示しているところでございます。

 このような考え方が市場に定着するようにということで、昨年の七月には、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の留意点を取りまとめました。また、宅建業者の方につきましては、宅建業者が用いる価格査定マニュアルというものがございますけれども、これの改定を行っているところでございます。

 こういうような取り組みを通じまして、適正な評価の推進を図っていきたいと考えております。

椎木委員 次に、既存住宅の流通を活性化させるために、インスペクションの普及とあわせて、新築住宅を購入した際に受けることのできる優遇税制措置、これに準じた制度が必要ではないかと思いますけれども、これについて政府の見解をお聞きしたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 住宅税制につきましては、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化に向けて、これまでも、新築住宅のみならず、既存住宅についてもさまざまな税制上の支援措置を講じてきているところでございます。

 例えば、耐震性のある既存住宅を購入される方につきましては、住宅ローン減税、住宅取得のための贈与を行った場合の贈与税の特例、あるいは登録免許税や不動産取得税などの流通課税、こういった税目につきまして、新築住宅と同様、軽減措置の対象といたしております。それぞれの対象額や税率については、それぞれ性格に応じてやや異なるものがございますが、措置対象とはいたしているところでございます。

 また、既存住宅の流通特有の制度といたしまして、平成二十六年度から、宅地建物取引業者が既存住宅を買い取りまして、質を向上させるためのリフォームを行って、それを再販売いたしますいわゆる買い取り再販事業につきまして、流通課税を軽減する措置を講じているところでございます。

 引き続き、インスペクションや保険への加入促進に加えまして、こうした税制措置、さらには融資、補助等も含めて、既存住宅流通の活性化を支援してまいりたいと考えております。

椎木委員 時間が参りましたので終わりにしますけれども、本当に、今の最後の答弁のとおり、インスペクションの普及とあわせて、質問の趣旨に沿ってぜひ推進していただきたいと思います。

 以上で終わります。

谷委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

谷委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、宅地建物取引業法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

谷委員長 次回は、連休明け、来る五月十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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