衆議院

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第6号 平成13年10月15日(月曜日)

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平成十三年十月十五日(月曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 加藤 紘一君

   理事 亀井 善之君 理事 河村 建夫君

   理事 久間 章生君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 岡田 克也君

   理事 田端 正広君 理事 山岡 賢次君

      逢沢 一郎君    赤城 徳彦君

      石川 要三君    石破  茂君

      衛藤征士郎君    大野 松茂君

      坂本 剛二君    実川 幸夫君

      下地 幹郎君    下村 博文君

      田村 憲久君    西川 京子君

      浜田 靖一君    原田 義昭君

      松宮  勲君    宮澤 洋一君

      米田 建三君    伊藤 英成君

      鹿野 道彦君    桑原  豊君

      玄葉光一郎君    古賀 一成君

      島   聡君    首藤 信彦君

      末松 義規君    中野 寛成君

      横路 孝弘君    渡辺  周君

      上田  勇君    河合 正智君

      白保 台一君    達増 拓也君

      中塚 一宏君    木島日出夫君

      矢島 恒夫君    山口 富男君

      今川 正美君    辻元 清美君

      東門美津子君    井上 喜一君

      近藤 基彦君

    …………………………………

   議員           東  祥三君

   議員           中塚 一宏君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   国土交通大臣       扇  千景君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)

   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   内閣府大臣政務官     阪上 善秀君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   国土交通大臣政務官    木村 隆秀君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    海老原 紳君

   衆議院調査局国際テロリズ

   ムの防止及び我が国の協力

   支援活動等に関する特別調

   査室長          鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十五日

 辞任         補欠選任

  末松 義規君     首藤 信彦君

  河合 正智君     白保 台一君

  中塚 一宏君     達増 拓也君

  山口 富男君     矢島 恒夫君

  辻元 清美君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     末松 義規君

  白保 台一君     河合 正智君

  達増 拓也君     中塚 一宏君

  矢島 恒夫君     山口 富男君

  東門美津子君     辻元 清美君

    ―――――――――――――

十月十五日

 テロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案反対に関する請願(東門美津子君紹介)(第四四号)

 同(植田至紀君紹介)(第五五号)

 同(辻元清美君紹介)(第五六号)

 同(土井たか子君紹介)(第五七号)

 同(保坂展人君紹介)(第五八号)

 テロの根絶を願い、報復戦争と自衛隊派遣新法反対に関する請願(大森猛君紹介)(第四五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四六号)

 同(松本善明君紹介)(第四七号)

 同(山口富男君紹介)(第四八号)

 テロ対策特別措置法制定反対等に関する請願(辻元清美君紹介)(第七一号)

 同(保坂展人君紹介)(第七二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第一号)

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出第三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)




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     ――――◇―――――

加藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 まず、東祥三君外一名提出、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案について議事を進めます。

 提出者から趣旨の説明を求めます。東祥三君。

    ―――――――――――――

 国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

東(祥)議員 提案者を代表しまして、ただいま委員長から御報告ありました国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案について、提案理由を説明させていただきます。

 米国における同時多発テロは、自由主義、民主主義の否定であり、このようなテロリズムとは断固闘わなければなりません。国際社会に対する挑戦であるテロという最も卑劣な行為に対しては、国連加盟国が一致協力して闘っていくための活動には我が国も積極的に協力することが必要であります。しかし、そうではなくて、米国が行う個別的自衛権の行使に対して日本が軍事的に支援しようとするのであれば、これは、政府が許されないとしてきた集団的自衛権の行使に当たるものであります。

 自衛隊という軍事組織を動かすことは、政治における極めて重要な判断であるにもかかわらず、政府は、憲法に基づく基本的な考え方、原則を国民に明確に説明することなく、自衛隊を海外に派遣しようとしています。

 政府提出の特別措置法案は、日本国憲法のこれまでの解釈を変えないといいながら、実際は、巧妙にごまかしながら、場当たり的に、なし崩し的に、そしてまた、諸外国には全く理解できない方法で憲法解釈を変更しております。このような政治手法は、日本国と日本国民の将来を危うくするものであると考えます。

 以上の見地から、自由党は、本法案を政府提出の特別措置法案に係る対案として国会に提出したものであります。

 以下、法案の概要を御説明申し上げます。

 第一に、この法律は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つとともに、国際社会の一員として国際連合を中心とする国際の平和及び安全の維持のための努力に積極的に寄与することを目的といたしております。

 第二に、国の防衛に関する施策及び措置と、自衛隊による国際の平和及び安全の維持に関する国際協力に関する理念を規定いたしております。

 第三に、自衛権の発動としての武力の行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限ることとしており、そのための防衛努力と日米協力について規定いたしております。

 第四に、国際の平和及び安全の維持または回復を図るための活動等に積極的に協力することといたしております。

 第五に、必要な関係法令の制定または改正を行うことといたしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行するものとしております。

 委員各位の御賛同の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 次に、ただいま議題となっております各案について議事を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として外務省条約局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本剛二君。

坂本委員 海上保安庁法の改正について、今まで一度も質問が出てきていません。そこで、幾つか取り上げてみたいと思います。

 今回の海上保安庁法の改正は、平成十一年三月に起こりました能登半島沖不審船事件、あれを教訓とし、反省として生まれてきたものと思いますが、不審船を確実に停船させるために銃を発射できるということが今回可能になったものと理解をいたしております。

 二度と再び能登半島不審船事件のようなことが起こらないためにも、ぜひ、この次に不審船があらわれた場合には、海上保安庁は、必ず停船をさせて、立入検査をし、不審船が一体何をしていたのか、何をしようとしているのか、それらを確認して、犯罪が発覚した場合には徹底した捜査を行いまして事態の究明を行わなければならないと思っております。そのため、海上保安庁では、このたび、新しく高速巡視船を配備し、法改正をしようとしているのでありましょうが、実際に不審船に対して射撃をし、撃ってとめなければ意味がないのですね。

 そこで、私は、この法律が使い物にならない法律になんかならないように、これから二、三御質問させていただきたいと思います。

 官僚組織は、いざというときには事なかれ主義と申しましょうか、何事においても消極的になりがちだ、こう言われております。私は、この点、非常に懸念をいたしております。例えれば幾つもあるわけでございますが、時間がありませんので省きますけれども。

 そこで、国土交通大臣にお伺いいたします。

 今回の法改正後、不審船に対して、現場の海上保安官が船体に向けて撃つべきか否か、肝心なときに決断できなかったり、あるいは逡巡して結果として取り逃がしてしまう、こんなようなことがないのかどうか、現場の船長や保安官の心構えはできているのか、教育訓練は行われているのか等々についてお伺いしたいと思います。

扇国務大臣 おはようございます。貴重な御質問をいただいてありがとうございます。

 今までのるる残念だった事件、泣きながら、あるいはただ見ただけの、そういう大事な、日本としての、国としてのあり方の基本を問われることが多々ございましたので、今回、海上保安庁法の改正をお願いしたわけでございます。

 今、不審船の船体に向けて射撃ができるのかどうかというお尋ねでございますけれども、これは、御存じのとおり、海上保安庁法の第二十条第二項によりまして、我々は、この武器使用に当たりまして、同項各号の四つの要件に当てはまれば、これは少なくともそういう事態であるかどうか、その四つの事態に該当するかどうかということを、海上保安庁長官が個別の具体例を判断しながら、責任を持って対処するというふうに今回はできましたし、長官の判断によって命令を下すことができると明記をさせていただきました。

 四つのことというのは、先生も御存じのとおり、一つは、外国船舶が我が国の領海内で国際法に反する航行をしているということ、二つ目には、この一が繰り返し行われるもの、三には、重大凶悪犯罪の準備の疑いがあるもの、そして四つ目には、立入検査しなければ重大な凶悪犯罪を防止できないと判定するもの、そういう四つの事項に対して、海上保安庁長官が判断をして、責任を持ってこれを遂行するということにきちんとさせていただきました。

 なお、今おっしゃいましたように、停船させるということが目的でありまして、極力、人に危害を与えないような注意を、細心の注意を払いながら行動するということは言うまでもございません。

 重ねて、訓練についてのお尋ねがございましたけれども、これは、不審船に対します射撃のこの要件に該当する事項かどうかという判断で海上保安庁長官が責任を持って判断した場合には、これは詳細なマニュアルをふだんつくっておきまして、そのマニュアルの作成と、周知徹底を図るという意味で適切な教育及び訓練をしていきたいと思っております。また、現にいたしております。

 そういう意味では、今後皆さん方に、かつての経験のあのまずさというものを繰り返さないためにも、海上保安庁としては、職務執行能力を身につけるという大事な教育と訓練を重ねて、生かしていただきたいと思っております。

 また、今おっしゃいましたような、あの平成十一年の能登半島におきます不審船の事案を踏まえまして、自衛隊と共同の訓練または本年配置されました高速特殊警備船を活用した射撃訓練等を行って、物はつくったけれども自分たちの技術が伴わないということのないように訓練をさせていただいております。

坂本委員 今回の海上保安庁法の改正規定は自衛隊法においても準用するということになっておりまして、海上警備行動が下命された折には、自衛官も同様の武器使用が可能となると私は理解いたしております。

 そこで、防衛庁長官にお伺いいたしますが、ただいま申し上げましたように、不審船に対して現場の自衛官が船体に向けて射撃するか否かという瞬時の判断ですね、そういったようなものを誤りなく行えるのか。結果として取り逃がすようなことがあっては何にもならないわけでありまして、その辺の実戦経験のない隊員の心構え等々についてひとつお聞かせいただきたいと思います。

中谷国務大臣 海上自衛隊におきましては、日ごろから、我が国周辺海域におきまして、海上警備行動等に対して、不審船の侵入に対して対処する訓練を続けてきておりますが、特に平成十一年三月の能登半島の不審船の教訓、反省を踏まえまして、今回、不審船に対する武器使用権限を新設されました。私としては、これを機に不審船に対して適切に対処し得るよう、お尋ねの点は心構えでございますけれども、心構えの面におきましても断固たる姿勢で臨む気持ちは隊員に至るまで間違いがないと確信をいたしている次第でございます。全力を挙げたいというふうに思っております。

坂本委員 断固たる決意を伺って安心いたしました。

 アメリカのFBIとかCIAの訓練風景がよくテレビで見られます。もう瞬時にして善玉か悪党かを判断して果敢に対応をとる、こういう訓練がありますが、我が自衛官はどのような臨場感あふるる訓練をやっておるのか、これは防衛副大臣にお伺いしたいと思います。

萩山副長官 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘のとおり、隊員においては、果敢に行動する気構えを常日ごろ訓練で鍛えておりまして、重要なかなめの一点に据えております。また、精神面においては、使命の自覚、責任の遂行、機密の厳守等を基本にして、日常業務のあらゆる機会を生かして訓練を行っております。

 また、隊員が自信を持って行動するためには、特に実践を通じて教育が必要であろうかと存じます。このためにも、海上自衛隊は、廃棄処分となった船を遠くは房総半島数十キロの沖合に浮かべながら、実戦さながらの訓練を、瞬時にして戦える教育を実践いたしております。たとえ不審船に逡巡なく対応するためにも、これが重要な課題であろうというふうに私は考えております。

 今後とも、精神面、技量面での教育訓練を着実に実施することによって、各種の事態に有効に対応できるような隊員の育成を強力に進めていきたいと存じます。

 以上であります。

    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕

坂本委員 国土交通省にまた戻りますが、今回の法改正によると、相手もさるものでありますから、よく研究をなさって、必ずその裏をかいた方法をやってくるのではないかと思っております。

 いろいろな偽装工作をしてくるのではないかな、こんなふうに思っておりますが、例えば、不審船を発見、巡視艇が急行、とまれと言う。その途端に、子供を十人か二十人ぐらい甲板に引き上げて日の丸を振らせる、そして一気に逃げの態勢に入っていく、こんなようなことがあるいはあるかもしれませんが、そのときに現場の船長なり保安官が撃てるのかどうかということですね。人間を盾に使って、防御、逃げを図ろうとする、いろいろなことをやるのではないかと思います。

 しかし私は、この法律で、四項目の要件すべてに当てはまるということで海上保安庁長官が認定し、攻撃せよという命令を一たん下したならば、これはどんなことがあってもそれをやれ、そして、そのかわり全責任は、長官、おれが負うぞということがなければ現場は動かぬですね、これ。事なかれ主義がはびこっている官僚の世界ですから、現場は動かない。

 大臣、一言でいいんです。責任を負いますということ、時間がありませんのでそれだけ一言おっしゃってください。

扇国務大臣 私は、せっかく過去の経験を生かして万全を期するというその行動をとっているものですから、船だけ速くなればそれで捕まえられるというものではありませんので、すべて、精神と訓練と、そして長官の賢明な判断によって、二度と再び以前のようなことを起こさないという決意のもとにやってまいりたいと思っています。

坂本委員 最後に一つ、テロに関連したことをお伺いしますが、日本もテロがいよいよ危なくなってくるという、いろいろな動きもあるようでございます。いや、全世界が危ない、ターゲットになっているのだと思いますけれども。しかし、果たして次のテロが、また民間機のハイジャックテロが行われるかどうかということには疑問もありまして、新たな手を至るところでやるのじゃないかな。

 そこで考えますに、日本の場合、原子力発電所とかあるいは飛行場とか、重要施設がいっぱいございます。海上から自爆テロを敢行された場合、一体どうするのだ。例えば、原子力発電所の冷却用水の取水口、あれを爆破されたらば冷却水が入らない。原子炉はパンクですね。

 こういうようなことも考えたときに、今度の海上保安庁法の改正は、これは能登半島沖を教訓にしてやっていることはよくわかりますけれども、一連のテロ対応として、この海上保安庁法の改正案がどう適用されていくのかな、そんなことを一つお聞きしたいと思います。

扇国務大臣 私たちは、今回の貴重な経験を、生まれて初めてという、世界じゅうも初めてという経験の中で、海上保安庁がいかに体制をとっていけるか。今先生が御指摘のとおり、私は、沿岸部にあります米軍の施設、あるいは海上保安庁ができ得ることは何かということで、マニュアルをつくらせていただきまして、そして、全国の原子力発電所十七につきましても、少なくとも巡視船艇を二十四時間配置して、これを行うことにいたしております。御存じのとおり、海上保安庁は、巡視船が百二十四、巡視艇が二百三十二、合計で三百五十六でございます。そしてもっと、飛行機は二十九機、回転翼の航空機が四十六機、計七十五機というもので海空両面でこの警護に当たっていく。

 また、もしも原子力発電所について破壊され、原子炉に被害が生じたような場合には、放射性物質の放出等による被害が懸念されますので、そのために、先ほど私が申しました全国の十七カ所のすべてにおいて事業者との間での緊急連絡体制を確立して、そのマニュアルを完成しましたので、ぜひその対処に万全を期していきたいと思っております。

坂本委員 ぜひ万全を期していただきたいと思います。

 委員長、これで終わります。

亀井(善)委員長代理 これにて坂本君の質疑は終了いたしました。

 次に、米田建三君。

米田委員 今回の特措法は時限的な特別立法であります。私は、この種の事案が今後も発生し得ることを想定いたしまして、可及的速やかに恒久法を制定すべきだという立場から、今回法案の中に含まれる幾つかの課題について質問をしたいと思います。

 まず、テロ対策特措法のうち、自衛隊の武器使用につきましてお尋ねをいたします。

 国際慣習法では、その国の同意を得て外国に存在する軍隊は、侵略の意図を有しない限り、妨害排除のための行動を含めた自己防衛権を認められております。国際慣習法です。また、国連においても、PKO活動に際しまして、妨害排除行動を含む任務遂行のための武器使用を認めております。以上が国際基準であります。

 ところが、今回の特措法では、あくまでも自然権的な防護権を前提としております。そのレベルの武器使用権をもってテロリスト及びそのシンパが潜在する他国の領土を活動地域とする結果、次のような事態が予想されるのではないかというふうに私は考えます。

 何点か列挙をいたしますが、まず、米軍等の他国の軍隊の防護共同行動はできない。一たんテロリストに反撃したとしても、その追撃はできない。すなわち、何度でも繰り返し同じテロリストが襲ってくる可能性を残すわけであります。また、相手が武器を使用せずに我が方を包囲するような場合、実力をもって排除できません。輸送の妨害排除もできない。避難民の誘導作業も、この場合できないわけであります。また、同僚が拘束された場合、その救出作戦は不可能であります。危なくなったら退避するんだということになっておりますが、実は退却戦ほど難しいものはないわけでありまして、しんがりを務める部隊はむしろ相手を激しく攻撃しながら退却するというのが、古来からの軍事上の常識であります。しかし、それもできないわけであります。

 以上のこういう懸念、課題について、防衛庁長官のお考えを伺います。

中谷国務大臣 我が国が海外へ派遣をする際に許されることは、武力行使をしないというのが前提でございまして、受け入れ国が同意したとしても、武力行使をするということは許されないわけでございます。

 そういう観点で、今回、武器使用の点で、この法律に基づいて設けられた事項におきましては、自己とともにその現場に所在し、その職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者ということで、武器使用の規定が設けられておりますが、これは自己保存のための自然権的権利でございまして、いろいろと自衛隊が活動するに伴いまして多くの外国人との接触等がございますけれども、そういう場合におきまして、我々の安全を確保しつつ業務も適切に行えるということでこの規定を設けたものでございます。

米田委員 答えになっていないと思いますが、時間がないので前に進みます。

 二番目の質問でありますが、この新法による活動は、停戦の合意はなく、また米軍等を支援しながら被災民救援を行えば中立性についても疑義があるという、いわば危険な状態で実施することが現実には予想されるわけであります。このような中で自衛隊員が安全かつ適切に任務を遂行するためには、自然権に基づく自己保存のための武器使用では、私はもはや限界であると思います。任務の遂行を実力で妨害する企てに対して抵抗するための武器使用ないしは我が国部隊に対する攻撃への対処のための自衛権の行使も視野に入れた、すなわち国際基準の武器使用権限を、今後恒久法を制定する際には盛り込むべきであるというふうに考えております。

 憲法でもうたわれているように、国際協調はまさに我が国是であります。この国際社会での責任を果たすための行動が他国に比べて著しく制約があるという事態を、国家として放置してはなりません。そのためにも、個別的自衛権の海外での行使にかかわる制約、集団的自衛権の行使を禁ずる政府の憲法解釈を見直す時期がいよいよ私は来ているというふうに考えております。

 現在の国際社会では、集団的自衛が安全保障の基本となっております。自国のみで国の安全を図ることは困難な時代であります。政府解釈では、集団的自衛権の行使は憲法で許される必要最小限度の自衛の範囲を超えるとしておりますが、私は、この論理は飛躍があるというふうに考えております。

 必要最小限度とは、言葉の上での一律的な憲法解釈の問題ではなく、その時々の状況や、あるいは実際に自衛を貫徹できるのか、または国際責任を果たせるのかという、必要性に応じて決定されるべき政策判断であるべきでありまして、言葉の上で、金科玉条のように、必要最小限度をそれは超えるんだというふうにいわば決めつけられてきたこれまでの政府解釈の枠を超えるときが来たというふうに私は考えております。

 憲法が禁ずる武力行使は侵略戦争のことでありまして、今回のような国際社会が連帯して対応することが必要とされるケースにおいては、集団的自衛権の行使は当然かつ常識であるというふうに考えますが、官房長官の見解を伺います。

福田国務大臣 二つ言っておられましたので、最初のことを簡単に申し上げます。

 今回のテロ対策、お諮りいたしておりますこの法律案につきましては、これは、あくまでも自衛隊が実施する活動、それは武力行使はしない、こういう前提に立っておるわけであります。ですから、米軍などの武力の行使と一体化するものではなくて、集団的自衛権には当たらない、そういう範囲のもとでもって必要最小限の武器使用権限を規定いたしております。

 また、自衛隊の武器を防護するための武器使用を規定した自衛隊法第九十五条、これも適用することになっておりますので、自衛隊員及び活動の安全は、そういう範囲の中においては十分に確保されている、こういうふうに考えております。

 そしてもう一つ、集団的自衛権の話でございますけれども、これは、我が国は、国際法上は集団的自衛権は保有しているということはもう御案内のとおりでございます。けれども、憲法九条のもとで、自衛権を行使するのは必要最小限度ということも御案内のとおりでございます。

 また、そういうふうな前提に立ちましていろいろな議論がなされてまいりまして、憲法の許す範囲の中において、過去五十年間にわたりましてさまざまな議論がされてきたわけでございます。そういうような議論の積み重ねというものは、これはやはり尊重すべきであろうと思いますので、慎重に対応すべきだというふうに思っております。

 また、憲法に関する問題、今後どういうふうにするか、これは当然これからの議論になるわけでありますけれども、世の中の変化もございますし、また、幅広い議論が行われるということは当然のことでございます。

 また、集団的自衛権の問題につきまして、いろいろな角度から議論をされるということも、これは当然あってしかるべきことだろうというように思っております。

米田委員 先を急ぎますので、三番目の質問に移ります。

 新法とPKO法による、これは我が国の現状のPKO法でありますが、この武器使用権限を比較いたしますと、「職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」及び武器等防護が広がっているわけであります。

 そこで、私は、PKO法についても新法との整合性を図り、かつ少しでも国際基準に近づけるためには、臨時国会におきまして、PKF本体業務凍結解除を行う際に、今回の新法で広げられた権限について、警護任務及び同任務の付与に伴って必要となる武器使用権限とあわせて認めるように、整合性を図る上でも速やかに措置すべきであると考えますが、官房長官の見解を伺います。

 と申しますのも、東ティモールにおいてPKOのニーズが発生する可能性が十分ある、あるいは、今回の事案が終結をした後、アフガニスタン方面でそのニーズが発生する可能性が十分にある、これらを踏まえてのことであります。見解を伺います。

福田国務大臣 PKO、国際平和協力活動、これは、我が国は今非常に人数が少ないのですね。世界全体では恐らく四万人以上今出動していると思います。そのうち、日本で、では何人従事しているかといいますと、四、五十人、こういうことであろうかと思います。〇・一%、こんなことで、これが現実でございます。それは日本がサボっているということではなくて、いろいろケースを考えて、日本が出られるところということを考えますと、そういう少ない人数になってしまう。日本の国際的な活動というのは、現状の法律においては制限をされている。ですから、何とかその活動の幅を広げて、そして世界の平和に貢献したい、こういう気持ちを現在はかなえることはできないというのが現状でございます。

 そういう意味におきまして、これからの国会議論等を踏まえてお決めいただかなければいけないと思いますが、このPKFという問題について、私どもは、やはり日本らしい貢献ができる、そういう範囲の中においてこのPKFもやらせていただきたい、こういうふうには思っております。

 しかし、これも国会で、これからのどのような議論がなされるかということとの関係がございますので、私どもは十分注目してまいる所存でございますけれども、その場合における武器の使用ということについては、これは、それにふさわしいものである必要があるというように考えております。

    〔亀井(善)委員長代理退席、河村(建)委員長代理着席〕

米田委員 最後にお尋ねをいたしますが、自衛隊法改正案のうちの警護出動規定の新設につきましてお尋ねいたします。

 これまでの我が国の治安にかかわる枠組みでは、自衛隊が治安の任務に当たるのは、治安出動を規定した自衛隊法七十八条にあるとおり、「一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合」とされてきました。すなわち、第一義的には警察が治安の任に当たることになっておるわけであります。その意味で私は、この今回の警護出動規定の新設は、ある意味では革命的なことであろうと思います。

 つまり、治安出動を下令する事態ではないが、警察に任せるだけでなく、第一義的にも自衛隊が警護の任に当たるべき状況や施設があるということを政府は認識をしたという画期的なことなんだろうと私は思っております。それは極めて正しいことでありまして、特に、テロやゲリラのような少数でも強力な攻撃力を持つ、そういうグループの攻撃を受けた場合、警察が対処できないことが判明してから自衛隊が出動というのでは、早い話が手おくれになるわけであります。

 だから、私は極めて正しい政策の大きな転換だろうと思いますが、しからば、なぜ警護対象を自衛隊の施設と米軍の施設に限定をするのか。重要な施設はほかにもたくさんあるわけであります。また、警護対象を特定することによりまして攻撃容易な目標を暗示することにもなるわけであります。特に、なぜ国民生活に直接関係する原子力発電所等の重要施設をまず防護しようとしないのか。原子力発電所等がテロの対象となった場合の被害の大きさを考えれば、これらを対象としない本法案は本末転倒であると考えます。

 今回はともあれ、今後さらにまた大いに検討を加える必要があると思いますが、防衛庁長官の見解を伺います。

    〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 今回設けた警護出動というのは、委員のおっしゃるような趣旨で設けられたわけでございますが、どのような範囲にするかという点につきまして、法案の提出過程でいろいろと御議論があったところでありますが、防衛関連施設に限ったわけでございます。

 これは、やはり防衛施設であるという性質上、米軍基地に対しては自衛隊による警護が適切でもありますし、また、我が国の防衛の基盤となる施設であるという点でありまして、さまざまな意見も踏まえまして、立法上、政策上の判断の結果、このような防衛関連施設を対象とするということになったわけでございます。

米田委員 終わります。

加藤委員長 これにて米田君の質疑は終了いたしました。

 次に、白保台一君。

白保委員 質問に入る前に、防衛庁と外務省に確認と、対応について伺いたいと思いますが、実は十一日に、米軍のヘリコプターが沖縄県国頭郡国頭村の安田というところに不時着をいたしました。これは、県の乳用牛を飼育するセンターの広い庭に不時着しまして、村議会が直ちに緊急の議会を開いて抗議決議をやっております。在韓米軍の陸軍のMH47というヘリコプターですが、まずこの辺の確認と、外務省、防衛庁の対応について伺いたいと思います。

杉浦副大臣 お答えいたします。

 本件事故は、十一日午後八時ごろ、通常訓練に参加中の在韓米軍のヘリコプターが国頭村の牧草地に予防着陸した、計器の一部部品にふぐあいが生じたと。事故と申しますか、緊急着陸のようでございました。人身、財産には被害がなかったということでございます。同機は、十二日午後四時ごろ、所要の修理を終えて出発いたしまして、嘉手納飛行場に戻っております。

 この事故につきましては、外務省沖縄事務所が沖縄県警と米軍に十二日の夜半に確認をいたしました。そして、その通報を受けまして、外務省から在京米大使館に対しまして原因究明及び再発の防止を申し入れております。政府としては、米軍が訓練等の活動を行うに当たっては、我が国の公共の安全に当然のことながら妥当な配慮を行うように米側に対して累次の申し入れをしてきているところですが、本件についてもそのような申し入れを行っておるところでございます。

中谷国務大臣 委員御指摘のとおり、北部訓練場の近くの国頭村の牧草地に予防着陸したというのは事実でございます。直ちに那覇防衛施設局の職員が現地に参りまして、この牧場の所有者等におわびかたがた状況説明に参っておりますが、この着陸に伴う人身、財産に対する被害はなかったということでございます。今後、地元の皆様方に誠意を持って対応したいというふうに思っております。

白保委員 基地内の作業というのは、地位協定三条三項で安全に考慮して行わなきゃならないというのは決められておりますし、もう常々言われてきたことなんです。ところが、事件や事故がたび重なる、そのたびに再発防止だとか事故原因の究明だとかそんなことで大体話が進んでしまいますが、最近みんなが言っていることは、同種の、同じような訓練は、原因究明が明確になるまでは、先ほど故障があったようですが、訓練をしないというきちっとしたものを持っていかないと、県民は、周辺の住民は安心して基地提供はできない。ですから、その辺のことは、単に米軍に申し入れたからいいという話じゃなくて、きちっとしたけじめをつけてもらわなければ非常に困るな、こう思いますし、ぜひそういった方向でやっていただきたいと思います。

 実は、官房長官、地元の新聞で、沖縄地元の新聞で、五十三市町村長、首長に、テロ対策法それから自衛隊法の改正案、これに対してアンケートをとりました。そして、きのう集計して載っているんです。

 そうしましたら、テロ対策法案は六三%が、五十三人中四十九人の回答ですけれども、六三%は賛成。自衛隊法の改正も賛成の方が多数ですが、何と二三%というか、三三%ですか、こういう半分ぐらいのことなんですね。要するに、テロ対策は毅然としてやっていかなきゃならない、だからぜひ進めるべきだ。これが大勢です、六三%。ところが、自衛隊法に関しては、やはり県民性が出ておるという感じで、自衛隊の動きに対しては非常に敏感な地域ですから、この半分しか賛成がいないというような状況の結果が出ました。

 非常に示唆に富む結果じゃないかな、こういうふうに思うわけです。そこで、基地警備についてお伺いしたいと思いますけれども、在日米軍基地については、どうしても警察ではだめで自衛隊でなければいけないのか、こういうことです。

 むしろ、テロ対策ですから、治安維持をしっかりとする意味では、やはりこれは警察の仕事じゃないのか。国対国の戦争とかそういったことであるならば、国家間のものであるならば、これは自衛隊の基地警備ということもあるかもしれませんが、やはりテロ対策という以上は、これは私は、第一義的には警察の仕事じゃないのか、その方が納得いきやすいんじゃないのか、こういう素朴な疑問ですけれども、官房長官、国家公安委員長、この辺のことをお答えいただきたいと思います。

村井国務大臣 私ども警察の立場から申し上げさせていただきますと、治安の維持、テロ対策等々も含めまして、治安の維持というのは第一義的に警察の任務だと私ども考えております。さればこそ、現在まで、自衛隊の基地あるいは米軍の基地等も含めまして、警察が外周、主として外周でございますけれども、警備に当たってきた。

 そして、今度のテロ事案に関連いたしましても、沖縄につきましては、特に米軍基地が多数あるというようなことも考慮いたしまして、管区の機動隊を四百五十人ほどでございますが、増派をいたしまして、警察としての警備力の強化に努めているというのが現在の状況でございまして、私は、基本的には警察が任に当たるという委員の御指摘は、そのとおりだと思っております。

 ただ、いろいろな議論のプロセスで、やはり自衛隊が、自衛隊ももう一つの警察と並ぶ日本における実力集団でございますから、この実力集団がみずからの基地を守ることができないという状態は、一定の状況を想定しました場合には、やはりこれは考えた方がいいのではなかろうかということで、自衛隊がそのような実力集団であるということに着目いたしまして、あわせて、ともに日本の防衛に当たっている米軍基地も守れるような制度をつくろう、これが現在自衛隊法の改正案として御提案を申し上げている案の意味するところである。しかし、その余のことは警察が責任を持つことだと思っております。

福田国務大臣 沖縄の方々が、このテロ対策新法に賛意を示してくださる方が多いということは大変心強いことだと思いまして、心からありがたく思っております。

 今、公安委員長から御説明がございましたけれども、私は、それともう一つは、やはりそういう攻撃があるような場合に自衛隊が出動できるということは、これは攻撃に対する抑止力になるんじゃないかな、こんなふうにも思っております。この効果というものは極めて大きなものではないか。これは、起こったら守るというのでなくて、起こらないようにするということがやはり大事なことだろうというふうに思います。そのことは、ひいては沖縄県民の方々の安全にもつながる、このようにも思いますので、ぜひこのことについて御理解を賜りたいと思っております。

白保委員 非常に感情というものは複雑なものですから、そこら辺の体制については慎重を期してやっていかなきゃいけないのじゃないのかな、こういうふうに思っております。

 次に、実は官房長官、十二日に、この委員会で憲法解釈をめぐって総理が、いろいろと法解釈あるけれども、いまだに自衛隊は戦力を持っていないのか、いやいや私は戦力はある、こういうふうに答弁をされ、これは常識論だろう、こういうふうなことを答弁されたようでございますが、これは非常に政府見解を一歩踏み込んだような解釈ではないのか。

 そうしますと、私どもは、早くこの問題を、テロ対策はしっかりさせなきゃいけないと思いつつも、こういう踏み込んだ発言になりますと、ちょっと違うんじゃないのかなというふうに思うわけですね。

 したがいまして、これは交通整理をしていかなきゃいけないわけですが、この我々が持つ疑問に対して明確な答弁をいただきたいと思いますし、これを明確にしていかないと前に進めないんじゃないかな、こんなような思いがありますので、官房長官と法制局長官に答弁いただきたいと思います。

津野政府特別補佐人 お答えいたします。

 御承知のように、憲法九条は、いわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しておりますが、これによりまして、我が国が主権国として持っております固有の自衛権までも否定しているものではなくて、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持するということは、もとより同条が禁じているところではないわけでございます。

 そうして、自衛隊は我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つための不可欠の機関でありまして、ただいま申し上げた限度内の実力組織でございますので、違憲のものではない、これはたびたび政府が従来から言っているところでございます。

 ところで、総理の御答弁は、自衛隊は戦力だと言う人もいるというような、いろいろなお話を当時されておりまして、そういうような方も世の中にはいるんだというようなことをおっしゃられたというふうに私もこの席で聞いておりまして、そういうふうに伺っておりますので、政府の見解と矛盾するというようなことではなかろうというふうに考えております。

福田国務大臣 今、法制局長官からもお話ございましたけれども、総理があのとき申されたのは、戦力は、確かに自衛隊は持っているわけですね。ですから、そういう意味で、ごく一般的な意味で戦力というように言ったわけでございまして、日本が認められている必要最小限の自衛権という範囲の中における戦力、これはもう当然のことでございます。

 ただ、一般的に戦力というようなことを言っても別に誤りではないだろうと思うし、ちょっとそれが強く聞こえたということがあるのであれば、それは適当でなかったかもしれぬけれども、しかし、前後の文脈から考えて、私が今申しましたような、日本の、我が国が持てるあの範囲における戦力、そういう意味だと思います。

白保委員 時間が余りありませんので、お聞きしたいと思いますが、この事態に入って、政府は緊急対応措置ということで七項目発表いたしました。報道なんかによりますと、NBCテロ対策に重点を置いて各省庁が具体策をまとめたということが報道されております。

 そういうことで、緊急対応措置を着々ととっておられるようでありますが、申し上げれば、実は私ども地元の銀行が試算をいたしますと、私どもの経済、六百四十一億円生産減になるんじゃないかということで、これは一〇%観光客が減りますと県経済は六百四十一億円生産減。これは何も沖縄に限らず、全国が今そういった状況になりつつあることは間違いありません。それで、失業率が九・二%という非常に高い失業率の中で、今後、六千八百十六人減少する、一・二%上昇するだろうという試算がきのうの新聞でも出ておりました。

 そういうことで、私どもは、これを何とか食いとめていかなければならない、こういう状況であろう、こう思いますが、一番大事なことは、対応策の中で七番目に、国民に対し必要な情報を迅速かつ的確に提供すると。こういうことが明確に迅速的確に提供されていれば、風評被害的な形にはなり得ないだろうと思うんです。

 ところが、飛行機に乗るときでも、国土交通省航空局、一生懸命頑張って安全対策を一生懸命講じています。講じている以上は、これは、だから安全に今航行しているわけでありまして、そういったことに対して、安全だ、こういうことを明確に言わない。ただ厳しいだけ厳しくやっている。その結果として、迅速に的確な情報が提供されていないために、危ないんじゃないかとか、あのあたりはちょっと行けないぞとか、こういうふうにみんなの心の中で思って、不安があってそういう形になる。

 尾身大臣は、この間、いたずらに重大だとか騒いではいかぬというようなことを言っておられましたけれども、しかし、みんなが騒ぐというのは的確な情報が与えられていない、だからそういうふうな形になるわけでありまして、国土交通大臣としても、こういうふうにきちっとやっているんだから大丈夫だというような話を、しっかりと国民にメッセージを出さなければいけないんじゃないか。また、それぞれの機関がそれをやることによってこの七項目めが生きてくるのであって、この七項目めは生きてこないですよ。だから風評的なものが多く出ているというふうに思います。

 そういう意味で、国土交通大臣には、時間もありませんが、国土交通省として、何といっても乗り物でみんな移動するわけですから、この辺のことをきっちりとメッセージを発してもらいたいと思いますし、それから尾身大臣は、今県経済に対しても非常に対応策を打たれました。しかし、これを見る限りでは、これからだんだんまた進んできそうな気配です。一層の対策を講ずる必要が出てくるんではないか、こう思いますので、お二人の御答弁をいただきたいと思います。

扇国務大臣 今白保先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもは万全の体制を期したということを、私記者会見でも申し上げまして、なおこれが徹底するように、十月十二日に私発表させていただきました。

 そして、御存じのとおり、航空では、アメリカ、いわゆる米国への旅客というものが一挙に前年比で五四%減をしております。そして、観光客、海外旅行は既に三十六万人の減をしておりまして、沖縄に対しても大変な被害が出ているということで、私は、きょう十二時から沖縄の観光振興に関しての会議を開いて、沖縄に対しても安全宣言をして、沖縄に行ってくださるようにということも、きょう十二時から開くつもりでおりますし、何よりも国民の皆さんにでき得る限りの万全の体制を期しておりますけれども、個々についてもやはりお互いに警戒する、そして万全を期す、その体制だけは皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っております。

尾身国務大臣 私ども、先日来からテロ対策には万全を期しているところでございますが、事柄の性格上、どの地域が危険でどの地域が安全だというようなことは言えないわけでございまして、沖縄だけが特に危ない、こういうことはないというふうに考えておりますし、今国土交通大臣からのお話にありましたように、情報等につきましては十分周知徹底を図るようにしていきたいと考えております。

 観光業等が観光客の減少によりまして影響を受けるという点に関しましては、沖縄振興開発金融公庫に相談窓口を設けてこの対応をいたしますのと同時に、この九・二%という日本で最高の失業率を示している沖縄の経済に対しましても、私どもこれからも万全の対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

 私の出身は群馬県でございますが、群馬県の尾身幸次後援会も沖縄に旅行するように今計画をしておりまして、ぜひ委員の皆様におかれましても、沖縄はいいところでございますので、ぜひそのように前向きに対応していただきますようにお願い申し上げます。

白保委員 終わります。

加藤委員長 これにて白保君の質疑は終了いたしました。

 次に、近藤基彦君。

近藤(基)委員 21世紀クラブの近藤基彦でございます。

 まず初めに、米国における同時多発テロで犠牲になられた方々、そして負傷なされた方々、そしてその御遺族、御家族にお悔やみとお見舞いをまず申し上げるものであります。

 私の持ち時間は大変短いので、基本的なことを中心にお尋ねをいたしたいと思います。

 今回の特別措置法案をつくるに当たって、政府としてどういうことを根拠に、あるいは何を基礎としてこの法案を組み立てたのか、まず官房長官にお尋ねしたいと思います。

福田国務大臣 今回は米国に対するテロ攻撃ということでございました。米国側は、当然のことながら自衛権を発動する、こういうことになったわけであります。そして、その自衛権に基づきましてNATOが集団的自衛権を発動する、こういう決定をしたわけでございます。そういう国々の考え方、そして行動というものに合わせて、我が国も我が国なりに考えて、そういう行動に協力をしよう、それも我が国ができる範囲で協力をしていこう、こういうことを決めたわけでございます。

 今回のことにつきましては、もうくどくど申し上げる必要はないかと思いますけれども、ニューヨークにおけるあの惨劇というのは、何もこれは米国だけに対する攻撃ではないんだろう。あの地域は本当に国際社会のるつぼと申しますか、国際社会そのものだというように思います。

 そして、もう一つ申し上げなければいけないのは、あの地域には国際経済の心臓部があるということですね。あのすぐそばにはウォールストリートがあるということでありまして、そういうところを攻撃するということは、まさに今の自由主義経済を破壊しよう、そういう魂胆もあったのではないかというようにも考えるわけでございます。あのワールドセンタービルの中には、大きな証券会社も二社ほど入っているというようにも聞いております。証券市場も、一週間活動を停止したということもございました。これは本当に自由主義経済を破壊する行為だ、要するに今の文明に対する挑戦だというような感じもします。

 ですから、そういうこともあわせ考えますと、これは米国の問題ではない、我が国も本当に真剣に考えなければいけない、また対応しなければいけない問題である、こういうふうな観点からでき得る限りの協力をしていこう、こういう観点からこの特措法もお願いを申し上げているところでございます。

近藤(基)委員 私自身も全く同感であります。私自身も、今回の非常に卑劣なテロ行為に対して憤り以外感ずるものではありません。テロリスト並びにそれを支援する者に対してこれを排除しなければならないということは、恐らく皆さん方共通の認識だろうと思っております。

 また、九月十一日の米国同時多発テロにおいて被害を受けた人は六千人に上ると言われております。そして、その国籍でありますが、私が知る限り、米国を含めて八十一カ国の方々に上る。もちろん日本も含めてであります、これは国務省の発表でありますけれども。しかも、その中に我々の同胞である日本人が、二十四人もの方々が犠牲になった。この方々の御家族の心中は、本当に察するに余りあるものがあります。

 今回のテロは、米国を直接ねらうことが目的だったかもしれませんけれども、結果としてこのように多数の国の方々が犠牲になるということは十分予想ができたことだということを考えれば、世界に対する挑戦だろうと思われて当然だろうと思います。そのことを考えると、第二、第三の大規模テロが起こらないよう、犯人並びにその組織が判明しているわけでありますから、あらゆる手段を使ってそれを速やかに除去しなければならないということは言うまでもないことだろうと思います。

 そして、我々日本人二十四人の犠牲になった方々を考えると、日本としても、自国がテロに遭ったと思わざるを得ない、日本の基本法である憲法の範囲内で最大限の努力をすべきだと私自身考えますが、官房長官に政府の御決意を改めてお聞きしたいと思います。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、私どもも、この問題に対しては本当に真剣に取り組んでいかなければいけない、そしてそういう真剣な取り組みの中から、今後こういうことが起こらないような、そういう抑止力を発揮させなければいけない、そのことを世界じゅうにわかってもらえるようにしなければいけないと思っております。

近藤(基)委員 私が改めてしつこくこういう基本的なことをお聞きしたのは、今度の法案の三つの柱、後方支援、被災民救済、捜索救助活動というこの柱がしっかり立つには、こういった基礎が強固なものでなければ、そして皆さんから支持されるものでなければ、この柱も揺らぎかねないということだと考えております。しっかりその基礎を持って対応措置に当たっていただきたいと思いますが、一つ防衛庁長官にお尋ねを申し上げます。

 実施地域のことでありますけれども、現在戦闘が行われていない、そしてその活動期間中戦闘行為が行われることがないと認められる地域という形になっておりますが、国会承認になるか、あるいは報告になるかわかりませんけれども、この地域決定に関してはきちっとした理由が必要だろうと思います。そういった理由を説明なされるべきだと思うんですが、どうお考えでしょうか。

中谷国務大臣 これは、大前提が武力行使にならないということでありまして、ここで定めている地域においての、戦闘行為にならない地域ということでありますけれども、この戦闘行為という意味は、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」ということでありまして、その行為がいかなる行為かという点につきましては、国連とか国際機関、また諸外国の御意見、また我が国としての判断をあわせまして、総合的に分析、検討をして、合理的に判断をしてまいりたいというふうに思っております。

近藤(基)委員 戦闘行為が将来も行われないという地域、これはよほど慎重に考えざるを得ないと思いますが、特に諸外国の軍隊と軍事作戦的なものをも含めて検討せざるを得ないと思うのですけれども、その中には軍事機密等がもしかすると多数含まれているかもしれない、まあこれは仮定の話ですから。ただ、私が希望するのは、最大限、国民のあるいは世界のみんなが納得をしていくような説明をできるだけしていただきたいことを要望いたしておきます。

 時間もないので最後になりますけれども、私自身の選挙区に世界最大の原子力発電所を抱えております。ふだんの地震あるいは自然災害においても、大変不安に思う日々を過ごしている地域の人々であります。特にこのテロに関しては、速やかに終結をしてもらえればいいなと思うのは、皆さんも当然でありますけれども、やはり直接身近に原子力発電所を見ている地域の人々の直接の不安であります。

 ですから、私自身、政府に御要望しておきますが、今回の特措法、時限立法でありますけれども、ぜひ恒久的なテロ対策法あるいは有事立法、有事法制を速やかに決めていただく、あるいは危機管理法をもっともっと拡充していただいて、そういった地域の人々あるいは日本の国民の不安を少しでも取り除くように、可及的速やかにそういった法案の整備をぜひお願いして、質問を終わらせていただきます。

加藤委員長 これにて近藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊藤英成君。

伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。

 この九月十一日の同時多発テロのニュースを、夜の十時ぐらいだったでしょうか、見ていながら、私は本当に思ったのですが、実は私自身、衆議院議員になる直前までニューヨーク・メトロポリタンの地域で会社の駐在員として向こうで仕事をしておりました。そして、あのワールド・トレード・センタービルにも何度も行ったりしていたわけであります。そんなことも思いながら、あのニュースを見ていたときに、まさに慄然とするという感じですね。

 もちろん、もしも当時起これば、ひょっとしたら私自身がどうなっていただろうかというようなことも個人的には思いながら、あのテロの問題について、本当に世界から根絶しなきゃならぬということを、文字どおりみずからの問題として、あるいは日本自身の問題として考えなきゃならぬ、こういう思いであります。そんなことを思いながら、先般も衆議院の本会議で代表質問として私はやらせていただいたりしたわけであります。

 今回のこの法律、そしてまた法律をもとにしながら日本が具体的にどういうふうに対応するかというようなことは、実は私は、本当に日本の将来について、あるいは日本の生きざまといいましょうか、そういうことにかかわる問題だと思っているのです。

 それは、一つは、日本が世界の中でどういう国として生きようとするのだろうかということですね。その点について言えば、まさに日本は、特に戦後の経緯を考えてみても、本当に世界の平和を愛し、世界の平和を築くために努力をする国として位置づけられるべきだと私は思っているのです。

 もう一つは、自衛隊のような実力部隊を動かそうとしたりするときに、いわば民主主義の政治の原点として、議会はどういうふうに関与するのか、あるいはシビリアンコントロールはいかに機能するのか、させるべきなのかということだと私は思っているんです。

 今回のこの問題については、そういう視点でずっと私自身は取り組んできたと思っております。そんな意味で、ぜひ政府としてもよろしく対応をお願いしたい、こんなふうに思います。

 具体的にこの問題について伺います。

 まず最初に、基本的な考え方だけちょっと伺うんですが、先ほど来ちょっとお話があるんですが、今回のこの法案はあくまで九月十一日に起こったテロについての時限立法であるわけですね。そういうことなんでありますが、しかし、そもそもこれは、今回は時限なんですが、今後どうしていこうかといったときに、まさに恒久的な、いわばテロ包括法といいましょうか、そういうことを考えなくていいのかということですよね。

 実は、民主党としては、まさに平時のときにいわば有事のことといいましょうか、緊急事態のことについて考えなきゃならぬということで、昨年来プロジェクトチームをつくって、そしていわゆる緊急事態法制のあり方ということについて鋭意取り組んできているつもりなんです。

 そういう意味で、今後こうした包括的なテロ対策法案というような問題についてどのように政府としては取り組まれるのか、伺います。

福田国務大臣 今回、このような思いがけぬことが起こりまして、我々も、事態の深刻さというか、想像上のことが現実に起こるという世の中を考えて、これからどういうことを考えていかなければいけないのかということを今一生懸命考えておるところでございます。国際的な、また組織的なテロと本格的に闘う、こういうためには国内法の整備が必要、こういう認識は持っております。

 今回、この問題が発生しまして、テロに関する各分野に分かれております法律を、関係する法律をいろいろと拾い上げてみました。その法律等々を見ますと、関係省庁間の連絡がいいのかどうか、また、すき間がないかどうかとかいったような問題が多々あるように思われます。

 そういうこともございますので、ここはやはり、今後のことを考えますと、その辺の整備というものは必要なのではないかというふうには思っておりますけれども、これは総合的にこれから検討をさせていただきたいと思っております。

伊藤(英)委員 それから、先週もこの委員会で小泉総理から、いわゆる犯人の特定の問題について、ビンラーディンが今回のテロ事件の主要な容疑者として特定された報告が、その根拠の報告がありました。しかし、それを聞いていますと、すべてがいわば傍証という感じだと私は思うんです。

 そういう意味で、改めて伺うんですが、アメリカから直接的な証拠となる情報を伝達されていると思うんですが、そういう証拠となる情報をしっかりと政府としてはちゃんと伝達されているのかどうか、その辺はいかがですか。

福田国務大臣 これは、先般来総理からも御説明申し上げたわけでございますけれども、日米間では、事件発生以来、事件の背景とか、ウサマ・ビンラディンの関与なども含めまして、先般の首脳会談、日米首脳会談でありますけれども、この会談におきましてもそうでございますが、ずうっと緊密なる連絡を取り合ってきております。また、十月一日にも、米国務省から在米日本大使館に対しまして本件に関する説明があったところでございます。

 内容につきましては、これはなかなか核心に迫れば迫るほど申し上げにくい、こういう事情もございますので、そのことについては控えさせていただきますけれども、当然のことながら、そういうことを総合的に日本政府として判断しておるということでございます。

伊藤(英)委員 この間、民主党の岡田委員の方から、では総理はちゃんと責任をとるんですねというお話をされたときに、私の感じでは、もう一つ言葉がはっきりしないなという感じを持ったんです。きょうは総理はいらっしゃいませんが、官房長官として、これはまさに政府として、もちろんそれについて十分に責任を持ってやるということですね。

福田国務大臣 先般総理がお話をされたときには、政府としての責任を持つということを言われたというように私は理解しておったのでありますけれども、そういうことであると私も思っております。

伊藤(英)委員 ところで、日本の国内に、いわばビンラーディンの支持者あるいはアルカーイダ関係者というのはいるんですか。どういうふうに把握をされていますか。

村井国務大臣 警察といたしまして、テロ防止を図るためにいろいろ関連情報の収集に努めているということは、これは当然のことでございますが、日本国内にオサマ・ビンラーディンの支援者あるいはアルカーイダ関係者を把握しているかどうかというような点につきましては、情報活動の性格から申しまして、これは大変申しわけございませんが、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、テロリスト関係者のいろいろな状況につきまして、鋭意、私どもとしましては把握に努める努力をしているということだけは明確に申し上げておきたいと存じます。

伊藤(英)委員 いると認識しているかいないかということも言えないということですか。

村井国務大臣 このようなたぐいのいわゆる情報関係の話でございますが、これにつきましては、私どもが仮にどのような言い方をいたしましても、情報ソースとの関係などもございまして非常に微妙なことになりますので、先ほど申し上げましたように、やはり答弁を控えさせていただくのが一番適当だろうと存じます。

 ただ、私どもとしまして、警察としてなすべきことは精いっぱいやらせていただいておる、また関係機関との連携も密にさせていただいておるということを申し上げておきたいと存じます。

伊藤(英)委員 今アメリカで、炭疽菌感染者の話が大変大きな問題になっております。もちろん、日本でも大きく報道されたりしているんですね。新聞報道によりますと、日本にも保管している場所が三カ所あるというようなことがアメリカの方から出たりしているんですが、もちろんこの同時多発テロと関係があるかどうかというようなことは定かでありませんけれども、この問題に対して、政府としてどういうふうに認識をして、どういうふうに対策を講じているのか、あるいは講じようとしているのか、その辺、伺います。

坂口国務大臣 炭疽菌についてでございますが、このアメリカにおきますテロ事件が起こります前から、厚生労働省として、NBCテロ対策として検討してきたところでございますが、今回の事件を受けまして厚生労働省の緊急テロ対策本部を設けまして、その中で取り上げているところでございます。

 炭疽菌あるいは天然痘、ペストそれからボツリヌス菌毒素といったようなものがその対象になるということでございますけれども、中でもこの炭疽菌につきましては、一度これにかかってしまいますと、特に肺から吸いましたものにつきましてはなかなか回復が難しい、非常に死亡率が高いということがございまして、これに対する対策をとっていかなければならないというふうに思っております。非常に早い時期に薬を飲みますと、抗生物質を飲みますと、かなり効くということだそうでございますが、しかし、これはかなり早い時期でなければならないわけでございまして、そうした意味で、一度罹患をいたしますと非常に重篤なことになってしまう。

 そこで、まず一つは、早く情報を把握するということが一番大事でございまして、全国の医師会初め医療機関の皆さん方に対しまして、感冒様の症状が出たときには早くその情報を上げてもらいたいというお願いをいたしております。都道府県に対しましてもそういうお願いをいたしております。

 そして、それに対します今度は治療薬の方につきましても相当量の確保をいたしておりますが、先ほど申しましたように、一度この病状が進んでしまいますといかんともしがたいということがございますので、早く情報を上げていただくということが一つでございます。そういう、何か疑わしいことがあれば、これもあわせて収集をするようにいたしておりますけれども、そうしたことで現在対応をいたしております。

 病気のことでございますので、医療機関も非常に多いわけでございますから、それぞれの医療機関で感冒等と見間違われる面もあるわけでございますから、そういう疑わしいときには、疑わしい段階で結構ですので、早くひとつその症状の情報をいただきたいということを今徹底しているところでございます。

伊藤(英)委員 それから、今アメリカのFBIが新たなテロ攻撃の可能性について警告を出しているようなんですが、日本は米国からちゃんとその情報を得ていると思いますが、そうなっているでしょうね。そして、それに対してどういうふうに対応をとっているのか伺います。

田中国務大臣 米国で報じられていますさらなるテロ攻撃の可能性でございますけれども、日本時間の十二日の早朝に、FBIが、今後数日のうちに合衆国において及び海外における米国権益を標的としているさらなるテロ攻撃の可能性があるとして警戒を呼びかけました。

 これを受けまして、外務省は、関連する情報収集を一層強化いたしておりまして、また、海外の安全相談センター情報を発出して邦人に注意を喚起するということをいたしております。

村井国務大臣 いわゆるFBI等々を含めます機関との連携というのは私どもも密にとっているところでございまして、私どもの認識といたしましては、必要な情報は十分にお互いに交換をしていくものだと理解しております。

伊藤(英)委員 それで日本の国内での対応はしっかりされていると考えていいんですか。

村井国務大臣 現在、警察庁におきましては、次長をヘッドといたします警備対策本部を立ち上げておりまして、これは九月の十一日以来ずっと継続的にやっているわけでございますが、これを通じまして所要の情報の提供などを各管区警察本部、警察局あるいは各県警本部等々にきちんと伝達をし対応させているところでございます。

伊藤(英)委員 この法案の方の協力支援活動についての武器弾薬の輸送問題について伺います。

 本件については、もう何度も我が党委員からも申し上げております。それから、今回のケースについて言いますと、文字どおり周辺事態法とは異なるわけでありまして、インド洋の方まで行くことも想定もしたりしているわけであります。しかも、公海上のみならず第三国においても活動することを視野に置いて成り立っているわけでありまして、そしてまた、これがいわば武力行使の一体化の問題とも非常に抵触してくる懸念大ということでもありますし、さらには、日本のいわば中東外交あるいはイスラム諸国との関係等々いろいろなことを考えてみても、この輸送、補給の問題については武器弾薬を含めないことを私たちは主張している、そのことは御承知のとおりであります。

 改めて聞きますが、武器弾薬の輸送をしてほしいということについて、米国から要請はもちろんありませんですよね。

中谷国務大臣 そのような要請は現在のところありません。

 ただ、ガイドライン法案に武器弾薬の項目が盛り込まれておりますけれども、これにつきましては、当時、米国からそのようなニーズが将来生じるという可能性があってその法律に盛り込んだ事実はございます。

伊藤(英)委員 今回は、周辺事態法の想定しているような話と全く違うわけですね。したがって、今の話は、私の感覚からすればほとんど関係ない話だと思っています。

 それから、現在のパキスタンの国内情勢について改めて伺います。

田中国務大臣 パキスタンにつきましては二つ申し上げられると思いますが、私は、昨日までWTOでシンガポールに行っておりまして、そして、パキスタンの大臣が来ていらっしゃったものですから貿易大臣からも伺いましたけれども、報道はすごくされていて、いろいろと、もちろん中でもってデモ等もあるけれども、報道ほどの状態ではなくて、アンダーコントロールであるということをきのう伺ってきました。

 ところが、けさまた沼田大使に、外務省から私はまだ直接ではございませんでしたけれども、けさ朝八時ごろでしたでしょうか、電話で聞いてもらいましたところ、現在、カラチ、クエッタ、ペシャワール等の各地で抗議集会やデモが行われております、十四日、クエッタ南方のジャコババードで行われたデモでは数人が死亡した模様であります、国全体として見れば、状況は、しかしコントロールされているという状態であるというのが一番直近の情報でございます。

伊藤(英)委員 私は、テレビの報道を見てみましても、けさは新聞はありませんが、きのうの夜のニュースにしても、あるいはインターネットで見たりもいたしましたけれども、今おっしゃるように、反米デモで死者も出たりしている。そして、報道によりますと、国際機関も嫌がらせを受けたり、あるいは施設が壊されたりというようなことがいわゆる国連の機関でも起こったりしているわけですよね。

 しかもあそこの、パキスタンのいわば民族といいましょうか、人種の構成等々から見てみても、とてもとてもそんなに安心できる状況ではない。そもそも、現在のパキスタンの政権すら非常に不安定なんだと私は思うんですよ。そういうことは十分に認識しなきゃいけないんだと思います。

 それからもう一つ、実は、一昨日もここで参考人の方に来ていただいて委員会が開かれました。そこでもいろいろ聞いたんですが、お医者さんをやっている参考人の中村さんも言っておられましたけれども、アフガニスタンもそうですが、パキスタンの人たちの対日感情がどんなにいいか。そういうときに、日本の自衛隊が主権国家として頑張っているパキスタンに行って活動するということは、一昨日のお話ですと、まさに有害無益な話だろうという話もされていました。そもそも、今難民がたくさん出たりしているんですが、難民を出さないようにすることこそ重要であって、そしてもう一つは、実際に出ている難民をいかに救うか。そのときは、実は今や食糧が一番問題なんですよ、自衛隊云々じゃないんですという話もされたりしていました。

 そういう意味では、しっかり現地の状況を踏まえて、そして、そもそも日本はどういうことをしていくことが世界にとっていいんだろうかということを考えることだと私は思うんです。どうですか。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、我が国ができ得る協力をするということだと思います。いろいろ我が国は制約条件がございます。ですから、そういう制約条件の範囲ででき得ることすべてやっていきたい、そのぐらいの気持ちでございます。そのことが場合によっては被災民の役に立つということもあろうかと思いますし、いろいろなこのオペレーション全体に対してよい影響を与えるということがあれば、それは我が国として本当に誇り得べき仕事になるだろうというように思っております。

 確かに、自衛隊が行くということについていろいろな意見があることはわかっておりますけれども、一方で、例えば、この間のこの委員会でも紹介がございましたけれども、UNHCRにおられた緒方貞子さんが、自分たちの活動のそばに軍隊がいる、そして自分たちの身を守ってくれるということはどんなにか力強いことであったのか、こんなふうなこともおっしゃっておられた。

 私は、いろいろな見方があるんだろうと思います。ですから、日本はそのいい方のことができればこれはもうすばらしいなというふうな、そういう感じをいたしております。

伊藤(英)委員 この武器弾薬の輸送の問題について、先週もいろいろと議論されました。そのときに、実は私が本会議で質問したときの小泉総理の答弁もそうでしたけれども、先週のお話も、先週の答弁も、そもそも武器弾薬を輸送することの必要性云々というようなことは、私はほとんどなかったんだと思う。あったのは何かというと、こん包するときに、うまくこん包しにくいんじゃないかと。そのときに出た話が、例えばヘルメットとか防弾チョッキはどうするんだとかというような、いわば瑣末の話です。本論の話じゃなくて横っちょの話をずっとされていたと思うんですよ。

 私の理解では、自衛隊法に言う武器弾薬、もちろん弾薬なんかは明確に分かれていますね。武器についても当然分かれている、明確になっている。もちろん、通常ですと、ヘルメットや防弾チョッキは別ですよ。私の理解では、現実に現場で行われている話は、これは明確に分かれている。

 したがって、武器弾薬を運ばないということになれば、それは何の難しいこともない。それから、米軍にとっても、もしも武器弾薬を送ろうという話があったとしたとしても、そういうのが紛れて云々という話はあり得ない。逆に言いますと、もう一回言いますと、武器弾薬を日本側は輸送しないというふうにしたときに、実務上何の問題もない。私はこう思いますが、どうですか。

福田国務大臣 このことも何度か御説明をしたと思うのでありますけれども、実務的な話だったので、一つ例を申し上げたいと思うのであります。

 例えばコンテナが百個ある、そのうち武器が入っているコンテナは十個あります。そのときに、百個を一隻の船で運んでくれ、もしくは一機の飛行機で運んでくれと。こういうときに、武器弾薬を運べないということになると、この十個のコンテナは置いていかなきゃいけない、もしくは、それを運ぶためにもう一機雇わなければいけない、そういうことになりますね。もう一機かもう一隻か。

 そういうようなことがあったときに、ほかの国に頼めば全部一括して一遍で運んでくれる、しかし日本の場合にはそうはいかないよ、こんなようなことになるわけで、実際問題言って、どういうオペレーションになるかわからないので、また、どういうニーズが発生するかわかりません、今の段階において。だけれども、そういったようなこともあるんだろうということを考えまして、まあ現実にあるという話は聞いておりますけれども、そういうことを考えますと、やはりこの辺は弾力的な運用をさせていただくと。何も武器だけを専門に運ぶとかいう話じゃないのでありますので、その辺はもう少し弾力的なお考えをいただきたいというように思っております。

伊藤(英)委員 今の説明も、いわば武器弾薬本体を運んだ方がいい、あるいは運んだ方がいいかもしれないというお話じゃなくて、こん包上の、あるいは輸送上の手間といいましょうか云々という話ですよね。これは、そういう意味の効率といいましょうか、今の話はそういう話ですよね。

 そういう側面はあるかもしれませんが、たとえ百歩譲ってそういうふうなものがあるとしてみても、しかし、我が日本がどういう国であるかということを、そういうイメージを世界に与えるためにも、私の感覚からすれば、そんな手間は、私が言った、日本はどういう国かという視点と比べれば雲泥の差だと思っているんです。

 何を優先しなきゃならぬか。だから私は、日本がどういう国として世界の中で生きようとしているんですかと。これから、後から申し上げようと思っていますが、例えばアフガンの復興の問題とかあるいは中東やイスラムの問題についてどういうふうに日本はやろうとするんですかと。そういうこれからの日本の生きざまからすれば、今のこん包の仕方がどうのこうの云々なんて話は、私からすれば全然次元が違うというふうに思うんですよ。

 恐らく、防衛庁長官なんかは現場の実態をよく御存じかと思います。いざやろうとしますと、どこから本当に運ぶんだろうか。日本からだったら、日本の弾薬庫の、例えば広島のどこから運ぶんだとかあるいは那覇のどこだとかいうようなことも想定されているんだと私は思うんですよ、これは。あるいは、ほかのこともあるのかもしれません。しかし、現実に今の武器弾薬をどうやってやるんだろうかという話からすれば、いわば実務的といいましょうか、どうやって処理をするかということからいえば全然問題はないと私は思います。どうですか。

中谷国務大臣 実際に作業する側から申し上げますと、この法律に武器弾薬がだめだというふうに書かれますと、それが入っているかどうか、税関のチェックではありませんけれども、一つ一つ確認をする作業が必要になります。そうなりますと、こん包を開くという労力が非常にかかるという点と、もう一点は、人員輸送する際に、例えばけがをした外国人兵士がいたときに、武器を持っていたら、武器は運べませんからそれをあなた置いていってくださいとか、そういうふうな、実際に現地へ行って問題となったり障害となることがたくさんございますので、法文に武器弾薬はだめであると明記されると作業に支障が出てくる点が多うございます。

伊藤(英)委員 私は、まさに自衛隊法の言う武器――弾薬は全然問題ありませんよね。武器云々と考えたときに、例えば、米側はこれを運んでほしいという話のときに、何かチェックしないとわからない、そんな日米の関係なんでしょうかね。もしも日本が、これはやらない、送らないと言ったら、そのときやるんじゃありませんか、アメリカは。もしも、それを破って、アメリカがそれを何かに紛れて送ろうなんてしたら、一遍に日米関係はおかしくなるんでしょう。私は、そんないいかげんな日米関係じゃないと思っているんですよ。そんなことを許すような日本じゃないと思っている。わかりますか。

福田国務大臣 相手は、この活動に参加している、米国はもちろんですけれども、米国以外ということもありますね、ほかの国々ということもあるわけであります。

 そもそも我が国は、今回の法律で行う活動というのは、あくまでも我が国の憲法の範囲内、こういうことでございますので、そういう範囲内において行うことだということで、前提的にそのことはほかの国も当然理解していただいておるだろうと思いますので、それが実際に戦闘に参加するとかいったようなことでないということは、世界じゅうの認知しているところだろうと思っております。そういう意味において私は、日本がそういう国でないんだということの理解は、これは御心配ないものではなかろうかなと。

 それから、もう一つ申し上げれば、ほかにいろいろな物資を運びます。この物資は、武器弾薬と同じように、場合によってはそれ以上に大事な活動の材料だというように思いますので、そういうことも考え合わせて、私は、この辺は、オペレーションの弾力性ということをあわせ考えて弾力的な運用が必要だというふうに思っております。

伊藤(英)委員 日本はそういう国だというようなことについて官房長官は言われましたけれども、自爆テロを、自爆テロをする立場に立ったときにどうかなあと私は思うんです。

 そういう側面からしてもそうだし、それから、多分、先ほどもちょっと申し上げたように、日本はどういう国かというイメージといいましょうか、というようなことにおいても、もちろんこのテロの問題については日本としては断固取り組まなきゃならない。そして、まさに世界で、世界の枠組みでそういうことについて取り組まなきゃならない。そのために日本が本当に先頭になってやる話は極めて重要だし、そうしなきゃいけない。

 しかし、このいわば軍事的な側面といいましょうか、そこにおいて、武器弾薬を運ぶという話と、水や医療等々他の物品を運ぶのとは私はやはり意味が違うと思うのですよ。もちろん、広義に解釈すればいろいろ議論はあるところなんですが、しかしやはりそれは違うなと私は思うんです。だから、そういう意味で、これから日本はどういう生き方をするかというような側面から見ても、この問題については本当に真剣に取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。

 次に、実は今回、例えば協力支援の問題、その中でも、私は本会議場でも、実際、例えば捜索救助というのは一体どこでやるんですか、例えばパキスタンでやるんですか、あるいは海なのかどこなのかというような話もしたりいたしました。きょうはそれぞれについて伺いませんが、わかりませんよね、実際、今までの答弁だって。

 私は、例えば捜索救助というようなことが陸の上でそう簡単にあるとは思えない。アフガンでやるんだろうか、そんなことはしませんよね。もしもアフガンでのこういう軍事作戦を考えた場合に、アフガンでということはあり得ませんよね。ではパキスタンでやるんだろうか、パキスタンでどういうときにそういうことが本当に想定されるんだろうかというようなことを考えると、そういうことは極めて考えにくい話です。

 そもそも、こういう条文が要るんだろうかということさえ私なんかは思っているんですよね。実際に例えば医療の支援の話でも、もしも米軍の支援の話だとしてみる。米軍の医療、米軍の傷病兵に対して日本のお医者さんが云々とかいうようなことが本当にあるんだろうか。こんなのは多分ほとんど米軍が自分でやるんじゃないかという気さえ私はするんですよ、この部分について言えば。という気がしたりする。

 それから、活動地域だってどうするんだろうか。本当にやるところはどうなんだろうか。実際に、戦闘行為というのは何だということについての、戦闘行為の定義はどうだという話もしたりいたしました。そのときに、例えばテロも一応は含まれるよと。しかし、こういう場合は含まれる、こういう場合は含まれないというようなことについての若干の話もあったりした。

 今回は、これは総理も何度も言うように、いわゆる国と国との戦いじゃなくて、テロなんだよと。いつどこで起こるかわからないんだよということを何度も言っていますよね。いつ何どきどこで起こるかわからない。いつどこで起こるかわからないという状況は、例えば、その戦闘行為が起こっていないとき、あるいはその活動期間中起こらないといったときだと言うんだけれども、どうやって本当にそれができるかなと。

 もっと言うと、活動していたとしましょう。ぱっと何か起こった。テロが起こった。そして、そのテロが戦闘行為に該当するかどうか、だれが判断するのか。そうしたときに、退却なんかしますよね。退却するときに、もしも自分の管理下にあった人たちをどうするんだ、そのときにどういうやり方をするか。閣議で決定して基本計画を直すんでしょう、というようなことをやりますね。どれだけの時間的な余裕があるんだろうか。一体、これは本当にそんなことができるんでしょうかねと。例えば、パキスタンが現在ああいうような、治安の状況等々いろいろなことが起こっている。そんなときに本当にそういうことができるかなということさえ思ったりするんですよ。

 時間が余りないから、そこで伺うんだけれども、私たちが、国会承認ということについて、原則事前の国会承認をということを主張しております。私からすれば、今回のこの問題を考えるときに、いかに国会が関与するかという話はまさに重大問題ですね、重大問題。

 さっきいろいろなことを私は申し上げました。今こういうことについて、この法律は、いわばやろうと思えばここまでできるという法律といいましょうか、大枠を決めた法律。具体的にどうするかという話はまさにこれからですよね、この法律ができても。ということを考えれば、国会としてそれについていいかどうかと事前にチェックするということは、私からすれば当然の話だという気がするんです。いかがですか。

福田国務大臣 いろいろ御指摘をいただきました。捜索救助活動から始まりましたけれども、時間の関係がおありだというので、国会承認のところだけお答えをさせていただきます。

 今回の法案そのものが、九月十一日に起こったテロリズムに対するもの、こういうように特定をされているということであります。ですから、これがどのような地域でどんなような形で行われるかというのは、今までの一カ月の経過を見ると薄々想像がつくような、そういう状況にあると。薄々というのはちょっと言葉がよくないので、もう少し明確に状況はわかってきたというようなこともあろうかと思います。この法案が通りますれば、直ちに基本計画をつくって推進、施行していかなければいけない、そういうように思っております。

 要するに、私どもが申し上げたいのは、機動的に対応したいということがございますので、そういう意味におきまして、この法案が通って、また基本計画等につきまして国会承認を得なきゃいけないということになりますと、その機動性が失われるのではないかということを懸念いたしております。

 そういうことで、ぜひこの法案どおりお認めいただくということができれば大変ありがたいというように思っておるところでございます。

伊藤(英)委員 機動性の必要な話は私も理解できるんですよ。だからといって、国会という機能を、不十分な形といいましょうか、機能を十分に働かせなくてやっていいという話にはならないなと。そしてまた、それは、もっともっと大きな、日本のいろいろな、いわば統治の機能といいましょうか、そういうものをないがしろにしていくことになるんだろうと私は思うんです。だから、そういう意味でこれは十分に考えなきゃいけないと私は思っています。

 同時に、例えば自衛隊の方が現地の方に派遣されるといたしましょう。そのときに、何となく、国会も承認しないような形で行くのと、行った場合は、もう一つ納得といいましょうか自信といいましょうか、そういうのは自信じゃないですかね、まあ納得なんでしょうかね、私は、もう一つ形だと思うんです。いわば国会が承認をして、そして行くというふうな形になった方がどんなにか自衛隊の人たちにとってもいいんだろうと。私は、いろいろな面を考えてみても、それは、国会の原則事前承認という話がどんなにか意味があるかと。私からすれば、そんなことは当然ですよ。

 それから、冒頭もお話をいたしましたけれども、あるいはこれから緊急事態のときにどうするんだろうか、あるいはこれからいわゆる有事法制をどうするんだという話がいろいろ出てきますよね。そのときのそれぞれいろいろなやり方はこれから考えるといたしましても、自衛隊を動かすときに国会がどういうふうに機能させるかという話は、これはもう本当に極めて重大。私なんかもこうやって政治家をやっていて、本当に日本がこれからどうするか、どういうやり方をするのかということについての非常に重要な点だと私は思うんですよ。

 だから、そういう意味で、この点はぜひ、この国会承認ということの重大さを十分に認識をしていただいて、そして、機動性云々という話もありましたけれども、それはそれで、お互いにできるだけ早くした方がいいことはいいんでしょうから、しっかりと議論をして早く決めればいいという話だと私は思うんですよ。どうですか。

福田国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、この国会で、特定の対応について御審議をいただき、そしてそれが認められ成立すれば、そのことが国会で承認していただいたことだ、このように理解をしているところでございます。

 また、この基本計画は、この承認後に、国会でお認めいただいて成立後に基本計画を作成いたします。そして、それは閣議決定をするという、非常に重い決定でございます。

 なお、その後にいろいろな状況の変化によりまして対応していかなければいけない。場合によっては、その計画を変更するということもあろうかと思いますし、また、中止とかまた活動の中断ですね、一時休止、避難、いろいろな取り決めもあるわけでございまして、そういうことでもって適切にその後も対応できるというように考えておるところでございます。

伊藤(英)委員 これは今までのいろいろな御答弁でもしかり、それから、これは防衛庁長官の答弁でもしかりなんですよね。

 例えば、どこでどういうふうにやるんですか。要するに、今は決まっていない、わからない、情勢の推移もある、だからという形ですよね。だから、総括的な、抽象的な話はいっぱいされますが、具体的にどこでどうするかという話についてはみんな答弁されておりませんですよね。

 だから、具体的にどうするかというときに、じゃ、それはいいかどうかということを国会で決めなきゃならぬということだと思うんです。だから、そういう意味で、ぜひこれは国会の原則事前承認という形に直していただきたいと思います。

 次に、今アフガン地域でいろいろやったりしているんですが、これから極めて重要な話は、いわばポスト・タリバン、アフガニスタンの復興をどうするかということになるわけですね。

 それで、まず最初に伺いますが、今、日本政府としてはどういうふうにこの問題については取り組んでいらっしゃいますか。

田中国務大臣 和平後の復興の支援につきましては、日本は、かねてより、アフガン紛争の各派の間で和平に向けた真剣な対話の機運が生まれてくればよいと思いまして、関係機関とも協力をして、東京でアフガン和平復興会談、会合といいますか、それを開催する用意があるという旨を表明してきております。そして、今後のアフガニスタン情勢の推移も見きわめて、アフガン和平復興会合の開催も含めまして、アフガン和平及び復興について貢献をするよう検討いたしてきております。

伊藤(英)委員 では、ちょっと伺いますが、実際に例えば現在のアフガンの状況を見ても、北部同盟もある、タリバンもある。もちろん、この問題についていえば、アフガンのみならずパキスタンの話やらあるいはインドとの関係等々いろいろあるんですね。どういうふうにその体制をしたいと思っていらっしゃいますか。

田中国務大臣 基本的には、平静を取り戻したときには、アフガニスタンの国民の方たちの合意を得て、アフガニスタンの国民の方たち各層から支持を得た政権をつくる、政府をつくるということが基本になるべきだと思います。そのことが永続的な和平につながるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、国連等の和平の努力を支援して、補完する形でアフガン和平に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 では、その和平の復興会議といいましょうか、そういうものを考えるときに、日本が主催したいと思っていますか。国連と共催でやりたいと思っていますか。国連が主催するのを日本としては助けるといいましょうか、そういう形でやろうと思っていますか。

田中国務大臣 今、情勢が流動的ではございますけれども、いろいろ情報をよく収集して考えてまいりたく存じます。

伊藤(英)委員 では、国連ないしはアメリカに対して、日本として提案ないし相談なんかをしたりしていますか。

田中国務大臣 そうしたことも踏まえながら、いろいろと考えてやっていきたいというふうに思います。

伊藤(英)委員 私が伺ったのは、既にこれは国連の方からも、あるいはブレア・イギリス首相も、いろいろ話もしたりしています。多分アメリカも、きょうはパウエル国務長官はパキスタンじゃないかと私は思いますが、いろいろなことも発信なんかしたりしているんですよね。だから私は伺っているんです、既に日本は動いているんですかと。いや、これからやろうと思っていますという話がありましたけれども、国連とかいうところに日本として提案ないし考え方を言っていますかと。

田中国務大臣 意見交換は大使館を通じてなりあらゆるルートを通じてやっておりますけれども、やはりアフガンの安定のために、一生懸命ほかの国と一緒に、主体性を持って取り組んでいきたいというふうに考えます。

伊藤(英)委員 これからいろいろ考えてやっていきたいという意味だと私は思うんですが、実は小泉政権になってから外交という問題について極めて私は心配しています。心配しているんですよ。いいですか。

 今回、この事件が起こった。例えば、国連決議ももうちょっとわかりやすい国連決議にした方がいい、武力行使なら武力行使をやることを容認する決議もあった方がいい、多分、多くの人がそう思っていると思うんですね。思っている。

 じゃ、日本は本当に国連外交をやってきているんですかと言いたいんですよ。現実に、この政権ができてから、例えば国連の安保理の常任理事国入りについてどう思うか。小泉総理は極めて消極的な言い方だったと私は思うんです。私は外務委員会で、外務大臣にたしか二回か三回この問題について申し上げました。でも、積極的に、日本の国連外交をどういうふうにしたいからこういうふうにしたいという話は、私はついぞ聞けなかったですよね。

 そして今、よく私たちがいわば自国中心主義云々という話もしたりして、アメリカに対して言ったりしてきていますよね。だから、京都議定書の問題でもそうだし、もっと国際的な国にならなきゃという思いでアメリカにも私は対してきたんだと思うんですよ。いいですか、そういうふうにやってきたりしている。

 アメリカはしかし、ずっとそうじゃなかった。でも、この問題が起こって、多分私は、いわゆる国際主義といいましょうか、まさにアメリカは世界に外交をちゃんとやらなければ何もできない、何もできないといいましょうか、こうした問題についてできないと思ったから、今回の猛烈な、世界をまたにかけた外交を展開しているんだと思うんですよ。そうですよね。

 もう一つ言いましょう。

 じゃ、今回、日本が自衛隊を例えばインド洋に派遣するというようなことを考えたときに、この間も中国に総理が行かれたときに、自衛隊の派遣というようなことについていえば、十分にアジアの人のことを考えてくださいという趣旨のことを言われたと私は思うんです。私は当然だと思うんですね。日本が例えば自衛隊を海外というか、例えばインド洋まで行って、しかも、ひょっとしたらパキスタンとかあるいはそういうところにまでというふうに展開しようとしたときに、さらに、さっきのように、例えば武器弾薬のたぐいも運んでいこうなんという話をしていたら、何といったって、アジアのことを考えれば、私からすれば中国、韓国との理解を十分に得なきゃならぬ。でも、八月の十三日の靖国神社参拝以来、日中関係はストップしていたんでしょう。外交はストップしていたんでしょう。

 この問題については、官房長官には、この一カ月ぐらい前だったでしょうか、私は申し上げたりもいたしました。本当に日本はどうやってアジアと生きていくんですかと。その辺のお互いの、アジアの国々との信頼関係もなくて、日本が自衛隊を本当にどこまで、武器弾薬を積んで動くんですか、だから私は、これは、日本がどういう外交を本当に展開しようとするのか、どういう生きざまで日本はやっていこうとするのかということが問われている問題ですよと。ということで私は申し上げているんです。

 だから、復興の問題もどんなにか重大。日本は、だからこそ、さっき申し上げたような文脈で、日本がこのアフガンの復興の問題についても、これはアジアの安定のためにも、あるいは中央アジアということを考えたら、アフガニスタンが安定しなければ大変なんでしょう。昨年も私は、あのウズベキスタンのカリモフ大統領に会いましたよ。彼がどんなにか、大国が、国際社会がアフガンのことについて取り組んでいないかということを言っておられました。

 要するに、このアフガンの復興問題がどんなにか本当に重大か。そのときに日本が、国連と一緒に僕はやればいいと思うんですが、さっきのように東京で会議を開くこともある、本当に彼らとどういうふうにやっていこうか、その中で日本がイニシアチブというか役割を果たしていくかということを本気に考えてほしい、それは日本のこれからの生きる道だとさえ私は思うんです。どうでしょうかね。

福田国務大臣 伊藤先生のおっしゃることは大変もっともなことばかりでございまして、先般来、中国、韓国との関係についても大変御心配をいただいて、また、アドバイスも受けたわけでございます。

 日本は、もとより日米安全保障条約というものがございます。価値観も似ているというか、同じ価値観を持ち、そして安全保障上の取り決めもしているというこの日米関係は、これはやはり何といっても日本の外交政策の基軸、間違いないところでございますけれども、それとあわせて考えなければいけないことは、やはりアジアの諸国と日本がどういう連携を持っていくかということであります。

 アジアとの連携のない日本は、恐らく、日米安保を結んでいる米国としても魅力のない日本というように映るのではなかろうか、こんなふうに思いますので、この関係、アジア諸国との関係については、今後、これまで以上の取り組みをしていく。これまでも相当重点的な取り組みをしてまいりましたけれども、さらに関係強化に努めなければいけない。

 ただ、日本は割合にやっていることはやっているんですね。例えば今渦中のアフガニスタンにしましても、タリバンとそれから非タリバンの方々、幹部を日本に招いて、そして意見交換をするなどということは、ほかの国々がしないようなこともやっているということもございますし、また、ウズベキスタンという国名を挙げられましたけれども、ウズベキスタンの日本に対する思いは大変大きなものがございます。それなりのことは日本もしているということはございますので、手抜かりは今後ないようにしっかり外交政策を展開していかなければいけない、これはまた総理大臣としての了解でもあるというふうに思っております。

伊藤(英)委員 時間が余りないので、最後に、自衛隊法の改正の問題について一つだけ伺います。

 実は、この法律案は本当はいろいろな側面があるんですが、一つだけ私は今は申し上げたいんですが、今回、いわゆる警護出動という新たな制度をつくる、そして、そこでいわば警護するのが自衛隊の基地と米軍の基地のみということですよね。一般国民からすれば、まさに、私たちからしてもそうなんですが、本当に国民の生活を守らなきゃいけない、そのときに、ここだけなんだろうか、自衛隊が守るのはというような印象さえ受けるんです。

 私は、だから、どうもこの法律はちょっと本当は枠組みとして不十分じゃないかという気が非常にいたします。警護出動なる新しいものをつくり上げるとしたときに本当にこうなのか、これは、先週の金曜日にも枝野議員からその辺のことについていろいろ申し上げたりいたしました。

 それで、私は、警察関係の御努力やらあるいは能力もそれは結構あるんだろうと思うんですが、しかし、本当に日本のこれからを考えたときに、重要施設を守ろうとしたときに、警察関係の機能あるいは能力と自衛隊の能力をうまくかみ合わせてやるということはやっぱり必要なんだろうと。どうしても、私は、ある意味のすき間というのは今あると思うんですよ。それを埋めてうまく機能させるということを本当に日本としては考えなきゃいかぬと私は思うんです。

 そういう意味で、本来この法律は、もしもこの法律だけを考えたら、こんなもの、本当は時限の話でしょう、一時期必要かもしれない。しかし、本格的には今後どうするかということについて、本当に今こそ鋭意検討すべきではないかと私は思うんですが、いかがですか。

村井国務大臣 私は、あくまで一般的な治安の維持というのは警察の任務だ、このように考えているわけでございますが、今、伊藤委員御指摘のように、確かに、自衛隊という一つの実力集団があり、それから一方で警察という実力集団がある。この二つがともに治安維持のために働くメカニズムといたしましては、現行法でも治安出動という形態があるわけでございまして、これにつきましては、既にそれなりの制度というのは一通りできているという前提がございます。

 ただ、今度、今御提案を申し上げておりますのは、治安出動に至らない状態である。しかしながら、いろいろな諸般の事情を考えまして、テロが起こる蓋然性が高いとかいろいろの特殊な事情がありまして、警察というよりは、自衛隊が現在の制度ですと警察によって守られているという状態は少しいかがなものかというような議論から、自衛隊と、そして、ともに日本を守っております米軍基地、これにつきましては自衛隊が警護ができる、そういう体系をつくろうということで自衛隊法に新しくこういう制度をつくった。私は、これは、法的整備のあり方としては一つの適切な割り切りだろうと考えております。

 私、今の委員の御指摘に関連いたしまして、ぜひ御考慮をいただきたいと存じますのは、これは枝野議員の御質疑の際にも一言申し上げた点でございますけれども、自衛隊が出てくるということの意味合いは、一つは、その持っている武器が警察の持っておりますものよりもはるかに重いということが一つのポイントだろうと思いますけれども、それがどのような状況で果たして使用できるのか、このあたりのところはよく検討してみる必要があるんだろうと思っております。

 そういう意味で考えますと、私は、現段階では、やはり警察の防護力というのを強め、現在のテロ等に対応していくという今御提案を申し上げている法律上の立て方というのは現状にも適しておるし、また、法的な仕組みといたしましても適切なものだろう、こんなふうに考えているところでございます。

伊藤(英)委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

加藤委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、島聡君。

島委員 民主党の島聡でございます。

 飛行機をハイジャックして、そしてそれを高層ビルに突っ込ませる、そんな小説のような出来事が起きたわけでございます。今、小説のようなというふうに申し上げましたが、これが、この画面見えるでしょうか、「合衆国崩壊」という小説であります。飛行機がキャピトルヒルに突っ込んでいる図に描かれています。

 これは五年前に発売された小説でありました。私、五年前に、全四巻なので買ったんですが、一巻目読んで、ちょっと荒唐無稽だとそのときは思いました、正直申し上げて。したがって、一巻だけ読んで、置いておいたんです。ところが、今回このような、まさにこのような事件が起きてしまったわけです。

 このようなテロ対策、非対称性を持ったテロに対する攻撃、これを防止しようと思ったら、いろいろな構想力が要ります。

 この「合衆国崩壊」の第二幕、このような大規模なテロをする者は第二幕も考えていて、この小説によると、第二幕は生物化学兵器テロでありました。まさに、その第二幕そのものが起きているというのが今の状況であります。

 小説にこだわるつもりはございませんけれども、構想力という意味で言っておきますと、アメリカが弱体化し、そしていろいろな形で極東に空白が起きたことによってミリタリーバランスが崩れて、この極東地域も緊張状況に置かれるというのがこのシナリオでありました。あるいは、この同じ作家は今サイバーテロについての危険性も警告をしております。

 その観点から質問をしていきたいと思いますが、中国の兵法家呉子という人がいますけれども、その呉子が言っておるのが、国和せずんばもって軍を出すべからずと言っています。

 孫子は、皆さん御存じのとおりでありますが、その上策は謀を伐つ、つまり、何考えているかと伐つ。中策は、交わりを絶つ。要するに、今回、ビンラーデンとタリバンという交わりを絶てばよかったのかもしれない。下策というのは実際の行動だと言っていますが、その下策を今のところ残念ながらとらざるを得なくなっているというのが状況だと思います。

 国和せずんばもって軍を出すべからず。私たちも、野党第一党、政権公党になる政党としていろいろな議論を繰り返しています。そしてまた、国民の皆さんも注目をしていると思っています。国民が、そしてその国民の多くを代表する野党第一党の民主党が主張していること、それをきちんと聞いて、きちんと対応していくことが、これが国を和すことだと思いますので、そういう意味で幾つか聞いていきます。

 今、国民の皆さんが最も知りたいと思っていることは二点あると思います。一点目、本当に、あえて戦いという言葉を使いますが、ニューウオー、いつまで続くのか。それからもう一つ、本当に犯人はウサマ・ビンラーデンなのか。その二点について、まずお聞きしていきたいと思います。

 今回のテロ対策特別措置法案の附則三「この法律は、施行の日から起算して二年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その日より前に、対応措置を実施する必要がないと認められるに至ったときは、速やかに廃止する」とあります。「対応措置を実施する必要がないと認められるに至ったとき」、これは要するに終わりを意味するわけであります。一体この「必要がないと認められるに至ったとき」というのはどういうときなのか、官房長官、お聞きします。

福田国務大臣 「対応措置を実施する必要がないと認められる」、こういう条文上のことにつきましては、要するに、九月十一日に起こったテロ、このテロ攻撃によってもたらされているという脅威が除去されるということなどによって、もうこの法案におきます対応措置を実施する必要がないと認められる、こういうことなんですね。要するに、脅威が除去されるということですね。

島委員 何もおっしゃっていないわけでありますけれども。

 ブッシュ大統領の言葉、これは小泉総理が冒頭発言で使われた言葉でありますが、「我々がこれまでに集めた証拠のすべてが、アルカーイダとして知られている漠然と連携しているテロリスト組織の集団の関与を指し示している」。「漠然と連携しているテロリスト組織の集団」。ラムズフェルド国防長官の方は、「アルカーイダ・ネットワークが関与していたことは、全く疑いがない」と言っています。つまり、ネットワークなんです。

 外務大臣、ちょっとお聞きしますけれども、多分この情報は入っていらっしゃる、後で国家公安委員長にも聞きますけれども、ネットワークなんです、今回、おっしゃっているように。テロリスト組織集団、ネットワークなんですよ。このテロリスト組織集団というのは、前はよかった。つまり、きちんとした組織になったときには、トップだけを捕まえればそれで終わったんです。だけれども、今のネットワークというのは、まさにブッシュ大統領が、アルカイーダとして知られている漠然として連携しているテロリスト組織の集団、そしてまた、ラムズフェルドさんが、相手は国家でなくネットワークだと言っています。

 これを、今官房長官がおっしゃったように、脅威の除去が完全にできる状況というのは、外務大臣として、情勢判断として、どういうときが脅威が除去したというふうにお考えになりますか。国家公安委員長は、国家公安委員長としていろいろな情報を集めておられると思いますが、どういう形になったらこのネットワークというのを粉砕できたというふうにお考えになりますか。お願いします。

田中国務大臣 アルカイーダを中心としている組織、ネットワークを弱体化できているという証左を得たときだと思いますけれども、今の段階では、もちろん委員も御存じのとおり、アメリカを中心としてあらゆるところから情報も収集しておりますけれども、今現在の段階で、こうであるという確定的なことは申し上げかねると思います。

村井国務大臣 当然のことでございますけれども、私どももいろいろな形で情報収集もいたしておりますが、これはやはり何と申しましても捜査上のいろいろな問題にも関連することでございますので、具体的にどのようにやっておるかというようなことは、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、いずれにしましても、今委員の御指摘の点でいえば、こういう連中がやっているのであろうということを認識して、そしてそれを最終的に何らかの形で機能不全に陥れる、あるいは捕らえるというような状態ができ上がれば、それが終わりということなんだろうとは思います。

島委員 つまり、わからないのですよ。わからないときに、一体だれが判断するかということなんです。いつやめるか、極めてこれは政治的な判断が要求されることなんです。極めて政治的な判断が要求されるというときに、一体だれがするか、まずそれが大きなことなんです。

 第十条に、内閣総理大臣は、「基本計画の決定又は変更があったときは、その内容」「基本計画に定める対応措置が終了したときは、その結果」を報告するというふうにあります。ありますよね。いろいろな動きがあって、これは非常に重要な問題。基本計画の決定または変更がある、例えばだけれども、今想定されている地域よりも別のところへ行かなくちゃいけないときもあるかもしれない、そういうことですね。そういうことですね、官房長官。今想定されている地域よりもほかのところへ行かなくちゃいけないときもある、そういうことですよね。想定が難しいか。はいどうぞ。

福田国務大臣 この脅威がなくなるか、なくならないかということについては、これはその時期になって判断することであるということはもう納得されていることだと思います。

 実際問題言って、今はビンラーディンが出てくることを望んでおりますけれども、まだ出てこない。それじゃ、これは抹殺しようといったようなことをもしかして考えることがあったとしても、ある日突然、私が悪かったですというようなことであらわれてくるということもないわけではないということですね。それから、アルカイダが、これは今は反抗的であるけれども、しかしそれもそうでなくなるときもあるかもしれぬということも考えますと、それはそのときに全体の状況を総合的に判断して決めるしかない。これは国際社会で決めることでもあろうかと思います。

 ですから、我が国としても、そういう国際社会の判断等を勘案して、この活動、テロ行為絶滅のための活動にできるだけの協力をしていく、こういうことになるわけですね。もちろん廃止ということになれば、これはもう政府が判断し、その責任者は総理大臣でありますから、最終的には総理大臣の責任において行うということになると思います。

島委員 今のお話でわかるように、終わりがいつになるかわからない、それは総理の判断で行われる。そこまで総理に全部託すわけですね、この法律の仕組みは。(福田国務大臣「政府の判断」と呼ぶ)政府の判断、内閣というか、その判断ですね。そこまで託す。本当に、その時点において、皆さん国会承認しなくて全部託していいんですか。それをまず第一点問いかけます。本当にいいのかどうか、まず問いかけます。

 次、外務省にお聞きします。外務大臣にお聞きします。

 先日、テロ防止特委で小泉内閣総理大臣が、ウサマ・ビンラーデン率いるアルカイーダの関係について説明をされました。そのときの説明というのは、ここで私も一生懸命聞いていましたけれども、聞いていたのは、要するに、ブッシュ大統領がこう言った、それからブレア首相がこう言ったという伝聞情報だけでありました。

 外務大臣、私、メールマガジンというのを出しているんですよ。外務大臣御就任のころに、ちょっと失礼だけれども、こういう書き方をしたのです。田中眞紀子外務大臣は、外務省改革大臣としてはすばらしいかもしれないけれども、外務大臣としては非常に不安だと書いたら、私のファンの、メールマガジンをとっている人から、五通ぐらいけしからぬというメールが来ましたよ、とんでもないと。ところが、同じ人からこのところ、島さんの言ったことわかるような気がするというふうに書いてきました。

 そういう意味でちょっとお尋ねしますが、今同じことを事前に聞いてみましたら、外務省から本当にすごい、返ってきたのですよ。「外務省は、米国をはじめとする各国政府等と連携し、今回の米国での同時多発テロに関する情報収集を行っていますが、内容の詳細については、事柄の性質上また他国との信頼関係の観点からお答えを差し控えます。」というような答弁がもしあるとすると、これは聞いても仕方がないのですが、ここで外務大臣に申し上げるのですけれども、今日本の外交・安全保障政策が新しい段階に入ったとしたら、こういう国会審議も変えなくてはいけないと私は思っています。

 これは高坂正堯さんという先生の文章なんですが、今の日本の外交政策というのは、外務官僚の中の誤った玄人意識があると。国民に余り説明をしようとしない、職業的外交にいわば逃避していると。これは随分前の文章なんですが、国会の外交委員会において、問題点をあいまいにし、相手をはぐらかすような答弁が多いと。国会の外交委員会が政策決定に実権を持ち、そのために彼らの職業的外交が乱されるのを嫌っているのである、それは間違った玄人意識であると。

 今最初に、国和せずんばもって軍を出すべからずというふうに話しました。今まさに、田中外務大臣はきちんと国民に語りかけなきゃいけない、どうして必要なのか。国民が一番知りたがっているのは、本当に、アメリカから聞いた、ブッシュがこう言っている、ブレアがこう言っているではなくて、外務大臣の言葉で委員会で、もちろん全部は言えない、それはわかる、だけれども、ここまでは私の責任で言う、だから国民の皆さんわかってください、そういうことがないとだめです。それがあってこそ日本の外交というのは推進力を持つのですよ。

 今まさに、国際政治、日本の安全保障政策、外交政策が転換するときだったら、全部言えとは言わない。だけれども、今のままでは国民は納得しない。

 今まで国民に語りかけてきた田中外務大臣、同じような、今回の詳細については事柄の性質上、また他国との信頼関係の観点からお答えを差し控えますなんて言うのじゃなくて、外務大臣の言葉で、こういうことだから私はこう判断しているとお答えください。

田中国務大臣 いろいろなことをたくさんおっしゃったように思いますけれども、全部にお答えできているかどうかわかりませんが、高坂正堯先生のこともお引きになっておっしゃいましたけれども、まず、外交全体について私が、まだ六カ月になりませんけれども、この中で感じていますのは、私がこれになる以前に、薬害エイズの問題とかそのほか、今回の狂牛病もあるかもしれませんし、そのほかずっと過去を見ていまして、幹部公務員、これは外務省だけじゃありません、幹部公務員のところに情報がまず行く、よしあしは別として。

 ですから、そうしたものを、幹部公務員の報告義務づけという議員立法を民主党の先生方にも御協力をいただきながらやっているわけですね。そうしないと幾ら、この法案はでき上がったのですが、でき上がってやる段階になって私がこういうポストについたものですからとまってしまっていまして、同僚の議員にも私はお願いしていますし、石原先生にもこれはやった方がいいですよと閣内で言っているのに動かないので、ぜひ島先生にもお力添えをいただきたいのですけれども……(発言する者あり)やじには答えませんから。とにかく幹部公務員のやはり報告義務、これは、報告しなかったらもう有権者、納税者、閣僚も侮っていることになるわけですから、こういうものはぜひ一緒にやりたいと思います。

 それから、同じようなことを、今外務省から来たペーパーと同じことを言うなとおっしゃいますが、もちろん、十二日に総理がおっしゃっておられる、極めて説得力のある説明を受けたのである、そして総合的にあらゆる情報を勘案して判断しているとおっしゃったのですが、私自身はそれはもちろん伺っておりますが、そのほかに、これも日本じゅう、世界のメディアに載っているじゃないですか。

 例えば、これは十月の十日でございましたか、米国は飛行機のあらしが静まらないことを知るべきであるというような声明を、これはアルカイーダが出していますね。さらなるテロの予告をしているということがありますね。

 ですから、そういうことをすべてやはり勘案してみても、自分の方からこういうことを言っているわけですから、世界じゅうに報道されております。

 したがって、こうしたことの以前にも、前に幾つかの条約も六本通ったわけですね、今回の一三六八と一三七三まで行きますけれども。そういうことの経緯、プロットをたどっていくと、やはりそこにたどり着くということは、外務省も私たちもそういうふうに理解をいたしております。

島委員 という報道ぐらいは私たちも見ていますけれども、そういうことで、外務大臣もそういう情勢判断をして、間違っていたら責任をとる、それでよろしいですね。

田中国務大臣 私なり小泉総理なりだけではなくて、そういうことで、テロ撲滅で国際社会が、新しいこの事態に対応しようとしている世界全体が連帯しているということを、連帯してテロリズムを撲滅したいと思ってアクションを起こそうとしているということを御理解いただきたいと思います。

島委員 答えていません。責任をとるのかどうかだけ聞いているのです、その情勢判断に対して。

田中国務大臣 確たる信念を持って、国際社会とともに今は行動いたしております。

島委員 いつまで聞いても同じふうになると思いますので、全然、こういうときに限っては勇ましい、すぱっと言えない方だということがよくわかりました。

 それでは、次へ行きます。

 基本計画についてお尋ねをします。

 基本計画、いわゆる対テロ特措法の「基本計画」の第四条二項でございますが、二項の二のハに「当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項」というのがあります。これがかなり重要になっていくと私は思います。つまり、「戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」というところがこの「区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項」だということでありますが、私の記憶によると、例えばPKO法だったら、例えばだけれども、パキスタンとか一つの国みたいな大きな枠組みだと、これは余り意味をなさないような気がするわけであります。

 この当該区域の範囲というのは、一体どの程度まで範囲として指定し、基本計画に書くおつもりなのか。これは官房長官だと思いますが、お願いします。

福田国務大臣 今の状態は御案内のとおりでありますけれども、これからどういうことが起こってくるか、その辺のことをよく見ていかなければいけない、そして、基本計画を策定するときにはそのときの情勢を冷静につかんで、そして適切な判断をするというようなことになろうかと思いますけれども、そういう意味で、今の状況において当該地域の実施する活動の種類とか今申しました情勢、そういうものがまだ明確でないということもありまして、一概に申し上げるのはちょっと難しい段階にございます。

 しかし、可能な限り明確に基本計画に記載して国会に報告すべきであると思っております。

島委員 可能な限り明確というのは、例えば一国というのではなくて、もうちょっと部分をきちんとする、そういうことでいいですか。

福田国務大臣 これも現段階において明確に申し上げられないのでありますけれども、情勢次第でそういうような指定もすることがあるかもしれません。

島委員 情勢次第で。さっきは、大分時間がたってきたので、大分わかってきたという答弁をされましたので、もう大分わかってきたということでこれを聞いたのですが、細かいことは余り矛盾をついてもいけないのであれですが、でも、できる限り戦闘の行われていない地域ということで、きちんと慎重に区域を指定して国会に報告するという形で、それで理解してよろしいですか。確認です。

福田国務大臣 何が目標かとかいったような、そういうようなことについてはかなり明確にはなってきておりますけれども、今後のオペレーションがどのようなものになるかということはわからないものですから、その辺はよく見きわめていかなければいけないということを申し上げたわけです。

島委員 防衛庁長官にお聞きします。

 国会で基本計画が決まって実施区域が成る。「防衛庁長官は、」前項の実施要項をつくって、そして「実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。」とあります。これは、「防衛庁長官は、」となっています。結構大変な決断だと思います。

 今まさに、具体的に言うと、戦闘が行われていない地域なんだから、戦闘が起きそうになったということですよね。そういうときには条件に当てはまらなくなるんだから、それは、速やかにその指定を変更し、そして実際に活動の中断をきちんと命じなくちゃならないというふうにあります。それは防衛庁長官としては非常にきつい決断になると思いますが、そのときはどのような判断で、どのようにやっていかれるかということを改めてお聞きします。

中谷国務大臣 その点につきましては、実施要項を作成する際に、戦闘が行われていない地域に加えまして、現に、安全に退避、撤収が可能である、また、その危険を回避することが可能であるという点を十分考えまして地域を指定したいというふうに思います。

島委員 この法律で、中谷防衛庁長官がたしか、要するに国会承認が必要かどうかというときに、総理といわゆる国会をどう考えるかだとか、そういう話をされた。まさにそのとおりなんですよ、ここ。

 今回の法律は、第二条の四で「内閣総理大臣は、対応措置の実施に当たり、」「基本計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。」とあります。「内閣を代表して」とあるんですね。

 内閣法はそうじゃないんですよね。内閣を代表してじゃなくて、内閣法の場合は、もちろん憲法は、内閣総理大臣は内閣の首長と規定しています。ところが、内閣法においては、実は内閣を代表してという言葉はありません。

 そして、国家行政組織法上では、あくまで内閣総理大臣というのはほかの閣僚と同輩になっています。憲法上は内閣の首長になっていて、そして内閣法になるとまあ議長ぐらいになっていて、国家行政組織法というのは同輩になっているというのが今日本の法律の立て方であります。

 このように、「内閣を代表して行政各部を指揮監督する。」という言葉を使っているのは、周辺事態法はそういう言葉を使っています、代表してと。つまり、内閣総理大臣がかなりの権限を持つということを、代表して指揮監督するんですから、そういう法律の立て方になったんです。だから、周辺事態法は国会承認をかませているんです。

 今回も、内閣を代表してやるという総理大臣の権限を強化しているわけでありますから、これは、周辺事態法と同じように、国会承認というものをきちんとかませるべきだと思いますが、官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 行政各部を指揮する、これは対応措置を行うに当たり、防衛庁のみならずほかの省庁にも協力を求めなければいけない、こういうことがございます。ですから、そういう意味において、「内閣を代表して行政各部を指揮監督する。」これは当然のことだというように思っております。内閣法第六条、この趣旨と同じというように解釈しております。

中谷国務大臣 総理大臣の指揮監督に関しましては、日本国憲法の第七十二条に、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務、外交について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督するというふうに書かれておりまして、これに基づくものだと思いますし、ガイドラインのときの国会承認につきましては、ガイドラインの場合は周辺事態でありますので、非常にさまざまなケースが考えられて、こういうミッションだということが現時点では想像できないので、国会承認というふうになったのではないかと。今回の場合は、ある程度テロに対するミッションであるという前提で、いかに総理にお墨つきを与えてその範囲内で行動させるかという観点の違いがあるのではないかというふうに思います。

島委員 今の話はよく知っていますが、今、もう一度言いますと、憲法第七十二条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して」とある。しかし、内閣法六条は、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」とある。ここには、代表してという言葉がない。だから、同じだとおっしゃるならば、今の答弁は大事で、内閣法の解釈変更ですから、極めて大事です。

 つまり、私は、内閣法六条を、内閣総理大臣は、内閣を代表して、その基本方針に基づき行政各部を指揮監督すると改正した方がいいという提言を出したんですから、今、同じ解釈だと言うのなら、非常に重要な解釈変更だということで私は理解します。

 ともかく、何はともあれ今もう一度、これは主張ですから平行線かもしれませんが、内閣を代表してという、つまり、今までの内閣法の解釈とは違うと私は思いますから、そうなった場合には国会承認をきちんとかませないと、本当に今の議院内閣制下、今までの流れからすると違ってくると思いますので、何としても国会承認をかませるべきだということをこれは主張していきたいと思います。今の官房長官の答弁は、極めて重要な答弁であると私は思います。

 時間が過ぎていきますので、次に行きます。集団的自衛権の話をお聞きします。

 よく、民主党は何か安全保障政策がどうのこうのとか言われますが、改めて、民主党安全保障基本政策というのがございます。これは一九九九年六月にまとめたものでありまして、ここには、テロリズムやゲリラ的活動にきちんとしろとかいうことも書いてありますし、あえて憲法九条などについても書いてございます。

 あえて申し上げますと、憲法制定以後、憲法九条の解釈については国会、学界における論争においてさまざまな考え方が示された、しかし国会の議論の結果、外国から違法な侵害を受けた場合の個別的自衛権の行使まで放棄したものではない、現在の自衛隊は憲法違反の存在ではない、この二点については国民の大多数の間に定着した憲法認識となっているということは、我々の安全保障政策できちんと書いてあります。

 さらに、集団的自衛権につきましても、政府は、憲法第九条が認める自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどまるものである、集団的自衛権の行使はその範囲を超えるものであり、憲法上許されないとの立場に立っています。集団的自衛権の行使の定義をきちんとしているんです。「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を行使すること」というふうに我が党は定義しています。

 この定義でいけば、武力の行使がない場合には集団的自衛権の行使はないという定義になるわけですが、すごく気になっていますのは、ここは小泉総理が、解釈変更たくさんあるでしょうとかいろいろ言うわけですよ。いろいろな解釈があるでしょうと言うわけですね。いろいろ調べてみました。それで、言ってきた意味がだんだんわかってきました。

 昭和三十五年ですから、私、三十三年生まれ、まだ生まれていらっしゃらないような委員もいらっしゃるかもしれませんが、そのころにこんな岸総理との、いろいろな答弁がございます。事前にお配りしていると思いますが、集団的自衛権について、岸総理がいろいろお答えになり、内閣法制局がこんなふうに答えています。

 林修三当時の内閣法制局長官が、「米国と他の国、米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなことを集団的自衛権というような言葉で理解すれば、こういうものを私は日本の憲法は否定しておるものとは考えません。」

 次、これは岸信介さんの言葉です。「他国に基地を貸して、そして日本が他国から武力攻撃を受けた場合に協同して日本を守るというようなことは、その内容の一つであると思います。」集団的自衛権の内容の一つであると思いますと。

 もちろん、政府の見解が、一九七〇年、八〇年ぐらいの法制局の見解によってかなり限定された、中核的な概念であるということになっていることは承知をいたしておりますが、他国に基地を貸して、そして日本が他国から武力攻撃を受けた場合に協同して日本を守るということはその内容の一つであると思いますと。集団的自衛権。今の集団的自衛権の政府の定義であるならばそれでいいわけでありますけれども、昔はそういう定義もあったということであります。

 問題は、そういう議論もあったわけでありますから、国際的に見た場合に、今回のいろいろな活動が集団的自衛権の発動であると見られても仕方がないというような判断もあると思います。

 外務大臣にお聞きします。

 そうでないという説明をきちんと外国にしなくてはいけないと思いますが、今の岸信介さんの発言について、これはこういうふうだとどのように説明されますか。

田中国務大臣 これは六〇年安保のころのことを通告なさっていると思いますのですけれども、間違いがあるといけませんので、短いところですが、ちょっと、棒読みだとおっしゃるかもしれませんが、正確を期するために読ませていただきます。

 この岸内閣当時の集団的自衛権に関する解釈、今、林修三当時の法制局長官のことをおっしゃったわけですけれども、これにつきましては、日本国憲法上、我が国が外国に出て他国を防衛することは憲法が禁止しているところであって、そのような意味で我が国は集団的自衛権を行使できない、他方、それ以外の意味での集団的自衛権の行使があり得るか否かについては学説が一致しているとは思わないとの趣旨を述べたものであると理解いたしております。

 政府の考え方は、従来から説明してきたとおりでございまして、集団的自衛権の概念は、その成立の経緯から見て、実力の行使に係る概念、集団的自衛権は実力の行使に係る概念であることは疑いがなく、また、我が国の憲法上禁止されている集団的自衛権の行使は我が国による実力の行使を意味します。

 ですから、武力の行使に当たらない活動は国際法上の問題を生じることもなく、憲法上も禁じられてはいないのです。御指摘の答弁もこのような趣旨を述べたものですから、政府見解というものには基本的に変更がないというふうに思います。

島委員 政府見解に変更がないということに対しては疑義がございますが、きょうはそれをする委員会ではありませんから、この辺にしておきますけれども。

 恐らく、集団的自衛権の、総理が解釈いろいろあるでしょうと、学説だというふうに今おっしゃいましたけれども、それは学説というよりも、たしか安倍晋三現官房副長官が前の委員会、要するに多分ガイドライン法案の委員会だったと思いますが、そのときには、総理の見解として岸さんが言っているという話もありましたので、恐らく集団的自衛権の解釈というのは、今終始一貫と言うのはちょっと無理があるんじゃないかなというふうに私は思っています。それは、きょうはその議論じゃありませんので、また次の機会にしたいと思っております。

 それで、私どもの考え方は先ほど申し上げたとおりでございますが、問題は、先ほど申し上げたように、集団的自衛権を行使しているというふうにテロ行為者から見られていった場合に、この法律が制定されて、通過して本当に動いていったら、日本がある意味で対象国になる可能性が極めて高くなってくるということであります。それで、テロ対策特別措置委員会でありますから、それに対する対策をきちんと議論しなくちゃいけない、国民の生命と財産をどうやって守っていくかということを極めて議論しなくちゃいけないことだと思っています。

 具体的にお聞きします。生物化学兵器テロ、炭疽菌というのがあります。炭疽菌も、あるいは天然痘というのもあります。これは、アメリカ軍の方が二大テロの兵器だというふうに言われているものでありますが、なかなか難しいのは、化学兵器と違って、生物兵器の場合は潜伏期間がある。炭疽菌ですと五日ぐらいだそうです。天然痘だと十二日ぐらいだそうでありますが、その間に感染した人が歩き回りますからどんどん広がるという大変なことがあるということだと思います。

 いろいろな準備をしておられるということは聞いておりますが、防衛庁長官と国家公安委員長にお聞きします。

 防衛庁長官が、たしか一〇一化学防護隊というのがあって、化学兵器につきましては、それが防衛庁長官直轄だと思っておりますが、今の状況でどのような対策を打ち、そしてまた今何が足らないということを率直に感じておられるか、それをお聞きしたいと思います。

 及び国家公安委員長、警視庁と大阪府警にNBC捜索部隊があるということは聞いております。だけれども、今準備もいろいろされていることも知っておりますが、今何を一番問題意識としてお考えか、率直にお答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 生物兵器の対応につきましては、ことしの四月に研究を取りまとめ、五月に体制をスタートしたばかりでございます。従来から対処の研究は進めておりましたけれども、お尋ねの天然痘のウイルスにつきましても、空気マスク等の装着とか事前のワクチンの接種など、支援を行う隊員の二次被害を防止した上で対応する必要もありますし、また、患者の搬送とか消毒、医療活動を実施するに当たっては非常に慎重な対応を要するものでありまして、現在、このワクチンの確保に努めております。

 それから、炭疽菌につきましても、これも二次被害を防止する措置をして活動する必要がございますが、炭疽菌のワクチン自体もまだ国内にないという状況でありますので、早期に整備をする必要があるのではないかというふうに思っています。

村井国務大臣 いわゆるNBCテロと言われる中で、とりわけてBCにつきましての御指摘があったわけでございますけれども、委員もう既に御案内のとおり、警視庁及び大阪府警におきまして非常に今強力な体制は一応整えておりますけれども、一つの問題点は、特にBでございますね、生物兵器テロでございます。

 これにつきましては、先ほど厚生労働大臣からもお答えがあったところでございますけれども、どうやって認知するか、それをどうやって認識するか、判断するか、これが一番重要な課題であろうかと思っておりまして、さような意味でも、各省庁間の連携を密にしてまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、Cの方につきましては、一方で、オウムのサリンの事件のような経験もございまして、洗浄でございますとか、防護服の準備でございますとか、いろいろな意味での体制の充実は図っている次第でございまして、また、Cにつきましても、これは検出の能力につきましても、私ども相当な水準のものを維持していると考えております。

島委員 これは本当に現実の問題ですから。炭疽菌として打たれた場合、どうしていくか。風邪のような症状が出て、そして、それの症状が激しくなったときに抗生物質をやれば、何とか相当の部分助かるというような話があります。果たしてこの抗生物質の備蓄、厚生労働大臣なんでしょうけれども、それをやらなくちゃいけませんし、天然痘の場合は、一九八一年にWHOが撲滅宣言を出していますから、若い人は、私たちと違ってワクチンを打っていないんですよね。そうなりますと、若い人、子供さんというのが非常に大きな問題がありまして、何かアメリカの方は二千万人分ぐらい用意するという話を聞いております。厚生労働省も何かそういうことをやるようなことを聞いておりますが、それを早急にやらないと、これ、テロ対策特別措置委員会としてきちんと要請をしていきたいと思います。

 済みません、ちょっと中谷さん、自衛隊法について質問をするのを、もう一点ございますので、お願いいたします。

 自衛隊法の九十六条及び百二十二条に、「防衛秘密」という項がございます。確かに、先ほど小説を取り上げたので、スパイ小説の話をすると、日本は何かスパイ天国なんて言われるというふうな、世界の三大マーケットは東京、ベルリン、ベイルートとやゆされたときもあると言われております。先ほど申し上げたテロネットワークの情報交換の拠点になってはいけないという意味では、この防衛秘密に関しては非常に重視すべき点であると思います。しかし、それと同時に、これは非常に慎重にしなくちゃいけない点もある。

 一部報道でありましたけれども、この問題が今さっと通ってしまうと、いろいろな言論の自由などが侵されることもあると。法律というのは、立法は性悪説に立たなくちゃいけない、そしてまた運用は性善説に立たなくちゃいけない、そういうことはよくわかっていますけれども、そういうおそれも私はあると思います。

 今まできちんと日本は、スパイの天国だという反面、言論の自由が保障されていたといういい面もあるわけでありまして、これのトレードオフというか、最も重視しなくちゃいけないそういう自由というものに対して、どのように考えて運用されるおつもりなのか、お尋ねします。

中谷国務大臣 今回の改正につきましては、対象にしても内容にしても限定をいたしております。

 その内容の限定につきましては、特に防衛を必要とする事項に限定をしておりますし、対象とする人も、防衛庁の職員、並びに国の行政機関の職員のうち防衛に関する職務に従事する者、及び防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造もしくは役務の提供を業とする者を、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者として罰則の対象者というふうに限っておりまして、これは、例えば防衛庁の職員は、現在、守秘義務があります。また、他の行政職員も、公務員の場合は守秘義務があります。ここで言う、防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る者ということでありますが、これも、現在において、契約に秘密保全に関する特約条項が設けられておりまして、民事的には義務を負う者でありまして、これまでも秘密保全の責任を有していた者に限っておりまして、国民全部を対象に新たに国民の権利を著しく制限するというような内容ではなくて、限定をした内容にいたしております。

島委員 先ほど生物化学兵器テロについてお聞きしましたが、今度はサイバーテロについてお尋ねをします。

 よく中谷防衛庁長官が、自衛隊法の説明のときに、いざ出動をしようとするときに自衛隊の基地が麻痺していたらだめになるからという話をよく説明されました。

 今RMAがどこまで進んでいるか私は知りませんが、要するに、いろいろなコンピューターネットワークシステム、コンピューターシステムの中で軍事力なりそういう革命が進んでいるというのが今の世界の趨勢であります。

 つい最近、ニムダなんというのがありましたけれども、あんなものはかわいいものでありまして、もしも非対称性におけるテロ攻撃を行おうと思ったら、最初にやることは、コンピューターシステムをまず破壊する、ハッカーがコンピューターシステムを破壊する、そして相手を無力化させておいて、それからやってくるという話だと思います。時間がありませんが、サイバー犯罪、つまり国内の者がやっておるんだからいいだろう、だけれども、その後ろに何か国家があって、一種のサイバー戦、本当に侵略の意図を持ってやってくるというときがある可能性もあります。

 お尋ねしますが、これは官房長官なんでしょうか。コンピューターウイルスとかあるいはロジックボムというものを最初に出すんですが、これは憲法九条に言う武力の行使の兵器に当たるのか。あるいは、そういうことを意図してやる、意図している集団があることを認知、最初に察知して、こちらからコンピューターウイルスとかそういうものを送っていって、その向こうのコンピューターを破壊するということが、これが相手方の武器を使えないようにするという意味で憲法九条の言う武力の行使に当たるのか。それについてお尋ねをしたいと思います。

福田国務大臣 サイバーテロというのは、これは、これから本当に我が国としても真剣に考えて取り組まなければいけない分野だと思っております。そういう意味で、我が国も、IT戦略本部というものがございます、そこでもやっておりますし、また内閣官房でも対応をいろいろ考えている、そういう状況でございます。

 このサイバーテロが、個人的なものか、もしくはある団体のものか、もしくはもっと突き詰めれば国家的なというようなことも将来あるのかもしれません。それはわかりませんけれども、しかし現在は、国際法上は、これは戦闘行為とかというような、そういうような定説にはなっていない状況でございます。

 しかしながら、サイバー攻撃から国民の生命財産を守るということは、これはもうまことに大事なことでございますから、そういうような観点から、とりあえず国を挙げて取り組んでいかなければいけない、このように思っております。

島委員 今、国際法上はなっていないという話ですから、ということは、我が国がそういうふうにされそうになったときに、情報を察知した場合に、相手方のコンピューターにウイルスを送ったりして、電子メールウイルスとかいうのを送ればできるんですよ、コンピューターのハッキング技術を使って。そういうことは武力の行使には当たらない、そういうふうに考えていいんですか。

津野政府特別補佐人 憲法九条第一項の武力の行使といいますのは、これはもう政府のかつて定義がございまして、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為を言うというのが、まず我が国の武力の行使に関する定義でございます。したがいまして、武力の行使という概念に一般的には当たらないだろうというふうに考えられます。

 それからもう一つ、武力の行使が問題になりますのは、先生がおっしゃっておられるのは、外国からの日本に対する武力の行使というような趣旨でおっしゃっておられるのではないかと思いますけれども、それはまた基本的に、外国からの武力の行使ということで、概念的には同様な概念であろうかと思います。

島委員 時間がありませんのでこれで終えておきますが、これは非常に大きな議論になってくると思いますので、当然、先ほどどなたかおっしゃっていましたように、憲法をつくったときになかった概念ですから、こういう意味でも、憲法論議も含めてきちんとやっていかなくちゃいけないというふうに思っておる次第でございます。

 最後に、官房長官にお聞きします。

 今、最初に、国和せずんばもって軍を出すべからずという話を申し上げました。我々民主党も、先ほど申し上げましたように、安全保障基本政策についてはきちんと出しております。野党のなすべきことは何なのかということを私ども、真剣に考えております、私自身も。

 野党第一党がなすべきことは反対することであると言ったのは、当時イギリスの野党党首であったディズレリーという人で、これは一八六八年、明治時代の維新のころなんです。その後、一九二七年に、バジョットの「英国の国家構造」というもの、それに、保守党党首だったバルフォアがイギリスの政治に対して出しているのですけれども、内閣の帝国防衛委員会においてはある意味できちんと審議をしていった。そして同時に、我が国の互いの交代する内閣は相異なる政党に属しているが、社会の根本問題については意見が違ったことは決してないという話をしているわけであります。そういう形の中でこういう問題は進めていかなくちゃいけないと私は思っています。

 その意味で、国会承認をもう一度申し上げると同時に、今イギリスでは、非常に外交の機密、例えばビンラーデンがどうだ、皆さんがおっしゃっているのは、私たちはきちんとした説明を受けているという話なんです。国民は納得しませんよ。申しわけないけれども、このところのいろいろな不祥事、外務省の不祥事もあるし、いろいろな不祥事があって、信用しろと言ったって、何言ってんだというのが今の国民の感情ですよ。

 イギリスはどうするか。首相が、メーンオポジションパーティー、野党の党首に対して説明するんですよ。そして、首相と野党第一党党首が責任持って、これについてはそうかというふうに納得をするというのが成熟した政治の姿だと思うわけでありますが、そういう意味で、官房長官、野党第一党の党首に対して、私どもの党首に対してきちんと説明をするというようなことはお考えになったらいかがでしょうか。

福田国務大臣 政治がその知り得ることについて可能な限り国民に情報を伝えるということは、当然のことだと思っております。そういう意味におきまして、できる限りの情報を、先般のいわゆる証拠について情報を提供したというように考えておるところでありますけれども、しかしそれは、そのことについて納得がいかないというのであれば、なお納得いただけるような努力はしなければいけないだろう、こう思います。

 いずれにしても、やはり成熟した政治がそういう場合には必要だというように思っております。

島委員 今おっしゃったように、成熟した政治をつくって、そして新しい外交・安全保障政策の段階に進んでいきたいと思っております。

 質問を終わります。ありがとうございました。

加藤委員長 これにて島君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 これまで民主党の、特に党内の意見集約に当たられてきた方々が、大体十時間ぐらい、特に民主党としての論陣を張ってくださったというふうに思っています。私は少し自由に話をさせていただきたい、そう考えております。

 私は、かなり早い段階で、新法が必要だというふうに党内で声を上げた一人でございます。それは、まずテロというのが、いかなる理由があれ、悪だ。そして、これまでも議論がございましたけれども、テロの温床となる根本原因の除去がとても大切であることは言うまでもありませんけれども、残念ながら、妥協が通じる相手でないことも冷厳な事実として押さえなくてはいけないだろう。テロ行為を行ったことが損だったと思わせないといけないということであります。

 その上で、一つは、日本も二十四名の犠牲者を出しているわけですから、当事者として行動しなきゃいけないだろう。二つ目には、国連初め国際的な協調が生まれてきているだろう。三つ目には、日米安保体制という存在もあるだろう。同盟国というのはやはり特別に大事な国だ、そういう観点から、軍事面での一定のサポートも必要だろう、そう考えたわけであります。

 そこで、改めてお伺いをしたいと思いますけれども、官房長官、新法が必要と思われるに至った思いのプロセスというか、それをぜひ吐露していただきたい、そう思っております。

福田国務大臣 今委員が御指摘をされた点は、全く私の思いと同じでございます。

 この事件は、私どもが予想する予想の範囲を超えた事件だと思っております。そしてまた、その犯行を行う手段というものが、我々が想像を絶する手段、すなわちジャンボ旅客機、これを使って、ひとりで自爆するのはいいですが、同乗している乗客すべての命をかけて、そして自爆行為に及んだということは極めて特異な、私は、飛行機に乗るときにはやはり運命共同体だ、こういったような思いを持って飛行機に乗ることがあるんですけれども、みんなお互いを信じて乗るわけですね、飛行機には。そのぐらい上空で飛んでいる飛行機の不確かさというか、実際の事故率というのは極めて少ないんですけれども、ほかの交通手段に比べてもはるかに小さな事故率だということは言えるんだけれども、しかし、本当にそういう意味では、お互いを信じて乗った、その飛行機にまさか自爆することをよしとするような人が乗っているということは、これはなかなか信じがたいことだし、小説を書いたとしても随分特異な小説だな、こういうふうに思わざるを得ないような、そういうことであったと思います。

 私は、そういう意味で、あそこで、あのオフィスの中で被害に遭われた方、これも絶対安全だと思っていた、そういうように思っているその方々のことも考え、なおかつこの飛行機に同乗していた人たちのことも考え、まことに、お一人お一人の気持ちになれば、これはもう本当にいたたまれないような気持ちになる、そういう残虐行為だったと思います。

 この残虐性は、世界じゅうのどこにでもその気になれば当てはめることができる、こういう性質のものである。そういうような人たちがいる、また、そういうことを企画する人がいるんだということは、まことに恐ろしいことであります。そういう人はめったにいるものじゃないけれども、しかし、いれば、そういう人たちを、これを何とか抑え込まなければいけないという思いを持つのは当然のことだというふうに思いますので。

 そういうことを考えて、我が国として、もちろん同盟国たる米国が攻撃を受けたんだということもありますけれども、それも当然でありますけれども、しかしこれは、そういう人たちをこの世の中で許すことはできない。そういう人がいれば、核兵器だって核爆弾だって平気でボタンを押すでしょう。そういうことを考えて、やはりこの際何とかしてこれを食いとめなければいけない、そういう思いを強く持っておるわけです。

 これは私の個人的な思いでございますので、お許しをいただいて申し上げたわけでございます。

玄葉委員 この法律を読みますと、法律の構成は、たまたま米国である意味では発生したテロに対応する法律になっているのではないかというふうに思うんですね。

 逆に、お伺いをしたいなと思っていたのは、例えば、今回のアメリカ同時多発テロと同じようなテロがイギリスで、あるいはロシアで発生していたとしたら、この新しい法律をつくろうとされたかどうか。特定の国を例示するのが不適切だとしたら、日本あるいは米国以外で同じようなテロが発生していたとしたら、このような法律を必要と考えたかどうかというのをお伺いしたい、そう思います。

福田国務大臣 これは、今回、米国で起こった。しかし、それが仮に日本で起こったらどうなるか、そしてまたほかの国々で起こったらどうなるか。これはまさに仮定の話、仮想上の話でございますので、それは、そういうことが起こったときにどういう対応をするか、その国、また状況、規模、いろいろなことを考えて決定しなければいけない問題だというように思っております。

 ですから、これにお答えするのはなかなか難しいということは言えるわけでありますけれども、しかし、そういう中でも、やはり日米安保、そういう同盟関係にある、そしてまた我が国に一朝何かあった場合には米国が日本を守ってくれることに協力してくれる国なんだということを考えれば、それはほかの国とはおのずから違った分があるのではないかというように思っております。

 しかし、同種の脅威、これを排除する、除去に努めるという意味におきましては、やはりその状況いかんではそれ相応のことを考えなきゃいけないということもないわけではないというように思っております。

玄葉委員 私、この委員会のメンバーにさせていただいて八割方議論を聞いていたんですけれども、先ほど私が申し上げましたように、私がこの新法が必要だと思った理由は三つなんですね。主体的に国際テロ撲滅のために日本も行動しよう、もう一つは国際協調だ、三つ目に日米安保だ、私は三つあります。でも、政府側から、総理の答弁も含めて、ほとんど日米安保体制との関連というのは出てこなかった、説明として出てこなかった。私は、非常に不自然というか違和感を感じておりました。

 改めて、法律の構成はそうなっていませんけれども、この法律と日米安保体制の関係をどのように整理されるか。これはたしか外務大臣にも通告をしておいたはずでありますけれども、どのように整理をされるのかというのをお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 日米安保条約とそれから新法との関係ということをはっきりさせた方がよろしいという御質問だと思いますけれども、日米安保の目的というのは、我が国及び極東の平和と安全の維持というところにあるというふうに思いますし、新法は、もう何度もこの場で繰り返されておりますけれども、対テロということで、テロに対して国際的取り組みに積極的に寄与することを目的として新たに立法されようとしていることでございます。

 目的が異なりますから直接はどうかということですけれども、もっとより詳しく申しますと、この新しい法案は、関連の国連安保理決議を踏まえまして、国際的なテロの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに日本として積極的かつ主体的に寄与することを目的としているものでございまして、日米安保体制とは直接は関係するものではございません。

 国際社会のかかる取り組みに対しまして日本として適切に対応していくに当たりまして、この法案の目的に合致した活動を行う米軍に対して協力を行うということは、当然想定されております。

 ですから、先月の十九日ですか、総理が七項目というものを出しまして、ブッシュ大統領も直ちにこれを評価するということをプレスリリースで発出されておられまして、そして謝意も表明されております。

 お尋ねの関心の件ですけれども、もう一つ先へ踏み込めば、ですから、今申し上げたように直接関連はないかもしれませんけれども、私は、結果としては日米安保の強化といいますか、その枠組みが強くなるということはあり得るというふうに考えております。

福田国務大臣 先ほど玄葉委員が、総理が日米安保ということに言及していないのではないかというふうにおっしゃっていましたけれども、これはそんなことはありません。それはもう大変色濃く総理の発言の前後に表現されておりまして、そのことがなくてこの法律云々ということを言っては絶対にございませんから。

 その他は、今外務大臣が答弁したとおりでございます。

玄葉委員 外務大臣が、直接は関係しないけれども、結果として日米安保体制の枠組みが強化されることもあり得るんだというお話でございます。

 私は、ここは少しニュアンスが違うというか、つまり、こういう法律をこの事態にあってつくるということは、当然、日米安保の将来をこうしたいと展望を描く中で出てきたのかなというふうに思ったんですね。同盟としてのマネジメントもそうでしょう。トータルとしての負担のバランスというのも考えたかもしれません。私自身はそうです。

 私自身は、自分なりの日米安保体制の将来像というのがあって、それも重要な一つの要素となって新しい法律をつくらざるを得ないな、周辺事態法の適用は、これは日米安保六条との関係で無理ですから、はっきりいって無理だから新しい法律をつくらざるを得ないだろう、そう考えたわけですけれども、認識、違いますか、外務大臣。官房長官でも結構ですけれども。

福田国務大臣 委員から、日米安保条約の将来、もしくは同盟関係の将来、こういうような御質問でございましたけれども、これは、このテロ事件が起こらなければ起こらなかったことなんですね。我々、計画してこういうようなテロを起こしたわけじゃない、起こってもらったわけじゃない、全く偶発的なことだったわけですよ。

 ですから、そこで当然考えられることは、日米、特に米国が被害を受けたという意味において、そして自衛権の発動という措置をとられた、そういう米国に対して、そしてまた、世界の共通の脅威というものを除去する、こういう大目標はあるということから、自衛権を発動する、その行動は、米国はいずれにしても中心になるわけでございますから、米国と同様の歩調、もしくは同じ方向を目指した、そして、なおかつ日本が協力できる分野において協力する、そういう手段において協力をしていこう、こういう意味合いでございますから、必ずしも今回、将来のことを展望してといったようなことではない。

 しかし、同盟国であるという意味において、それは、そういうことを今後考えていくのにいきやすいということはあったかもしれません。ほかの国であれば、先ほど申しましたように、それは色合いが当然違ってくるだろうというふうに思います。

玄葉委員 私は、日米安保というのは、将来、責任も目的も情報も政策決定過程も、もう一段二段ぐらい共有するべきものだろう。だからといって、軍事的に完全に双務的であれということを申し上げているわけでは決してありませんけれども、負担のバランスを勘案しながら進んでいかなきゃいけないだろう。

 例えば、圧倒的な超大国米国との同盟関係でありますから、私は、アメリカが一極主義的な衝動というか行動に駆られる可能性というのもあると思うのですね。そういうときに、きちっと注文をつけられる同盟国でありたいと思うのです。

 今回のケースだったら、場合によっては過剰報復に至る可能性だってなくはない、可能性としては。そういうことを考えると、きちっとやるべきことをやって注文をつける日本、同盟国でありたい、そういうことまで含めて考えて、今回の新しい法律は必要かな、そう考えたわけです。

 日米安保をやや大げさに言うと、もう一度これから、こういう事案を経て改めて定義をし直すみたいな話というのが私は考えられなくもないなというふうに思っているのですが、その点はいかがですか。どちらでも結構です。

福田国務大臣 同盟関係というものはどうあるべきか、それはおのおのの、同盟関係にある両国がどういうことができるかできないか、そういうことにも関係してくると思いますけれども、我が国は我が国としてできる範囲でそれを実施するということなんだろうと思いますが、そういう中において、やはり同盟関係にある相手の国が、我々の行動を理解し、そして納得してくれるか、そして時には満足をしてくれるのかどうか、そういうことも当然同盟関係にはあるだろうというように思います。

 そういう意味において、同盟関係というだけでいえばいろいろなことをしなければいかぬけれども、しかし、我が国は我が国の憲法というまたいろいろと制約があるということを考えますと、それは米国と同じようにできるわけじゃないんだし、できる範囲でもってやらなければいけないということがあると思います、まず。

 それからもう一つは、そのお互いの同盟関係の中においてお互いに注文をつけ合うことができるかどうか、こういうことでありますけれども、それはやはり、本当の意味の同盟関係というのであれば、やらなければいけないことはやらなければいけない、言いにくいことも言わなければいけないということではないかと思います。

 それは、お互いにお互いの価値観とか国情とか、また法制度とかいうものを尊重し合いながら行うことであるということだと思いますけれども、私は、よい同盟関係を築くために、これから日本はさらに努力をし、また、そういうふうな考え方を米国に対しても申し上げていかなければいけないというように思っております。

 玄葉委員のお考えもそうだと思いますが、そういうことに全く同意でございます。

玄葉委員 私は、この法律をつくるに当たって、日米安保という道具、いわば同盟という道具をどう活用するのかということもしっかりと説明していかないといけないのではないか。それもバックグラウンドの重要な一つだということをきちっと説明していく必要が私はあるというふうに思っています。

 そこで、新法は必要だ、問題は中身だということなんでありますけれども、一番気になっている点は、武器使用の問題と活動の範囲との関係でございます。

 やや逆説的な問いをいたしますけれども、防衛庁長官、今回の新法で、ある意味では防護の対象を傷病兵とか難民にまで広げているわけでありますけれども、これで、活動するに当たって必要にして十分な武器使用の緩和ということなんでしょうか。

中谷国務大臣 本法案において実施する協力支援活動等を行う上におきまして、自衛隊員の安全確保を考えますと、今回の対応で十分だというふうに考えております。

玄葉委員 よく言われているケースですけれども、例えば近くの外国の部隊に危害が加えられたとか、あるいは、この法律の文言をおかりすれば、近くまで難民が来ていて、だけれども、自分たちの管理下に入っているとはとてもまだ言えないかなと思われるようなケースであるとか、あるいは被災民の物資援助が奪取された、そういうようなケースとか、いろいろ考えられるケースがあるわけですけれども、そういうケースは今回の法律で対応できるのかできないのか、あるいは、仮に対応できないとしたら、私はできないだろうと思いますけれども、それでも必要にして十分だというふうに言えるのかどうか、お伺いします。

中谷国務大臣 基本的には、今回は、自己と自己とともに所在して、その職務を行うに伴って自己の管理のもとに入った者を防護対象にしておりますし、いわゆる隊法九十五条の武器防護も認めております。

 いろいろなケースが考えられ得るというふうに思っておりますが、ある程度、自衛隊が活動する地域において、安全を確保する面において、そこで勤務している自衛官が指示ができる対象者を防護対象というふうにいたしておりますので、その基本をもとに判断をしていくというふうに思っております。

玄葉委員 下手をすると、お荷物になりかねない可能性があると思うんですね。下手をすると。隊員の安全も危ないですね。

 余り時間がないんですが、端的に答えていただければいいんですけれども、参考までに、国連のaタイプ、bタイプの武器使用基準ということがよく言われますけれども、これらは小泉内閣では憲法違反、こういう判断ですか。

中谷国務大臣 今回の武器使用を考える上においては、やはり自衛隊がいかなる武器使用権限を持つかということと、どこの地域において何をするかという観点で考慮しておりまして、どこの地域かといいますと、戦闘行為が行われていない地域に限定しておりますし、仮にそのような事態においては中断をしたり、避難をしたりするわけでございます。そういう点を考慮した上で、今回、自己の管理のもとに入った者を対象として、ある程度自然権的な見地でいわゆる対象者をふやしたという観点でございますので、従来からの考え方と同様でございます。

 したがいまして、bタイプの武器使用等について、そこまで使用権限を広げたものではございません。

津野政府特別補佐人 お尋ねの武器使用の国際基準でございますけれども、これは、いろいろ明確な、どういうものを御指摘になっているのか必ずしもわかりませんけれども、一般に、国連の平和維持隊におきましては、要員の生命等の防護のための武器使用と、それから、任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用とが認められているわけであります。

 それで、他方、本法案とかあるいは国連平和協力法に基づきます我が国の自衛官の武器使用は、これは従来からしばしば申し述べておりますが、いわば自己保存のための自然権的権利として、自己の生命、身体を防護するために必要やむを得ない場合に限られておる。これは憲法九条が禁止する武力行使に至ることを避けるためにほかならないわけでありまして、御指摘の国連の平和維持隊に許されております武器使用のすべて、特にいわゆるbタイプの、これは任務遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用でありますが、それを我が国自衛官に認めることは、憲法九条との関係で問題があるという考え方でございます。

玄葉委員 そういうことであれば、つまり小泉内閣としても従来どおりの憲法解釈を踏襲するということなんだと思います、お二人の説明を聞くと。

 ということであれば、つまり、仮に危険なところまで行ってもらうということであれば、国際的なPKOの武器使用基準まで武器使用を緩和することと、十分な訓練と十分なコミュニケーション能力と十分な練度、これがないと、本当に大丈夫なのかということではないだろうかというふうに私は思っています。

 逆に言えば、今回、そこまで武器使用の緩和をしていない。さらに言えば、果たして十分な訓練ができているのか、コミュニケーション能力はあるのかということを考えれば、特に具体的に言えば、パキスタンでの活動というのは極めて限定的に行う必要があるし、むしろ行わないというふうにおっしゃった方がいいのじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがですか。

中谷国務大臣 現時点において、パキスタンの国内で実施するかどうかということは決めておりませんが、仮に実施する場合におきましても、現地政府と綿密によく協議をして、現地の治安情勢、また実施する上においての安全確保の問題、これを十分に現地政府と協議をして、そして現地政府から同意を得た上で実施するわけでございますし、その活動をしている途中で戦闘行為が行われたといたしましても、直ちに一時休止、避難、そして実施区域の変更、活動の中断をして危険を回避するという枠組みを使っております。そういう範囲内で活動するというふうに御認識をいただきたいと思います。

玄葉委員 一たん出て、途中で撤退というのは、現実にはほとんど考えられないですね。それはまさにお荷物になる可能性というのがあるんだろうというふうに思います。

 パキスタンで、これから質問される首藤さんが行かれてきたので後でお話があろうかと思いますけれども、アメリカでさえ相当ちゅうちょするはずですね、実際には。国連の枠組みで例えば難民キャンプの運営を自衛隊が行うということならまだしも、自衛隊単独でパキスタンでそれを行うことができるとは私はとても思えない。

 もしパキスタンでクーデターがあったらどうしますか。あり得ない話じゃないと思うんですよ。

中谷国務大臣 そういう事態では、直ちに中断をして撤退することも十分考えますけれども、その前提は、パキスタン政府と十分に協議をして、この地域で、この範囲でやるという確約をとって実施をいたしておりますので、その政府自身がクーデター等で崩壊をしたという点については、新たな事態の発生だというふうに認識をいたします。

玄葉委員 戦場近くに初めて自衛隊が出るわけです。私は、今回は、トータルとして考えたときに、そんなに背伸びをする必要はないだろうというふうに思っているんですね。

 佐世保と鶴見ですか、米軍の燃料施設がございます。海上輸送中心でいいんじゃないですか、ディエゴガルシアとか。我々の同僚議員からポート・ツー・ポートという話もありましたけれども、医薬品とか燃料とか食糧とか、それを運ぶ。海上輸送を中心で今回は軍事面でのサポートというのはよいのではないでしょうか。

福田国務大臣 これはもう何度も御答弁申し上げていることなのでありますけれども、要するに日本は限度があるんですね、やることに。行動する内容というのは限度があるんですね。また、その地域も、これもその関係で限定されているわけですよ。

 それだから、では、そういう仕事はしないでいいのかと。というよりかは、我々が持っている法律、規則等の許す範囲の中でできるだけのことをしたい、できることはやっていきたいということで考えてこの法律案もつくっておるわけでございますので、そういう趣旨なんです。背伸びでもそれは何でもない。できることをしましょうということを言っているだけでありまして、先ほど来防衛庁長官が答弁しているとおりに、できないことはしないんですよ。そして、できない状況ができれば、それは、中断、撤退とかいろいろなことを考えていかなければいけないということであります。

 例えば、具体的なことになると切りがないので申し上げませんけれども、そういう日本の気持ちというか考え方、これがまず頭にあるものですから、その上で諸活動が規定されているというようにお考えいただきたいと思います。

玄葉委員 本当に出すんだったら、法律をよく整備しなきゃいけないと思うんですね。私はやや未整備だと思うし、この法律の武器使用原則と活動の範囲との関係でいえば、これは中途半端というか、非常に心もとないというふうに思っています。後でこれは首藤さんからお話があろうかと思います。もう一つ、二つ、三つぐらい本当はあるんですが。

 ラムズフェルドさんが演説した内容がニューヨーク・タイムズ九月二十七日付に出ていました。この戦争、「ア・ニュー・カインド・オブ・ウオー」という見出しで出ていましたけれども、この戦争は湾岸戦争とは全く違う。これは何と訳すのかよくわかりませんけれども、フローティング・コアリションズだと。浮いた連合だ、ふわふわした連合、変動連合というのか、だというわけですね。それぞれの国がそれぞれのやり方でそれぞれの貢献をするんだということを最初から言っているわけですね。ですから、さっき申し上げたようなことも私はあえて言っているわけです。例えばC130で、国連、UNHCRから要請を受けて物資援助をした、それはそれでいいと思いますよ。いろいろなやり方がきっとあるんだろうというふうに思うんです。

 そういう意味で、一つ、この委員会で余り議論にならないで見逃せないのがタリバーン後の話でありまして、先ほど私たちの同僚議員の伊藤先生からもお話がございましたけれども、タリバーン後を見据えてのアフガン、あるいは中央アジア、あるいはイスラム諸国をどうするのかということに対して、日本は積極的にかかわるつもりかどうかということであります。

 イギリスとアメリカあるいはロシアというのは、今回の件もあって、あるいはロシアは過去の件もあって、率直に言ってかかわりにくいと思います。そういう意味では、日本人というのはあるいは日本というのは、今回も、軍事面でのサポートを仮に行うにしても、あくまで協力、支援だということがある。あるいは、実際にアーミテージ国務副長官からの要請もあったというふうに報道では言われている。

 また、先ほど御説明ございましたように、独自外交の歴史もある、率直に言ってとんざしていますけれども。確かに、去年、タリバーンあるいは非タリバーンが来ているんですよね、東京に。私もそれは知っていました。来ていました。だけれども、むなしい結果に終わっているわけですが、今後、アフガンのタリバーン後、あるいは、もっと言えば中央アジア、イスラム諸国を含めた戦後復興、こういうものに積極的にかかわるつもりがあるかないか、今まで何をしてきたか、おっしゃっていただけますか。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 従来より、きょう午前中の議論の中でもこうしたお尋ねがあったのでちょっと重複するところもあるかと思いますけれども、アフガン和平には日本なりに取り組んできておりまして、そして今も玄葉委員おっしゃったように、アフガン紛争の各派を東京に呼んで会合を持ったりとか、そういうことの努力もしてまいりました。そして、テロが今回発生する以前だけでも四千五百万ドル以上に上る経済的な支援もしてきておりますけれども、本来、実際に求められて今後行くことは、やはり地雷の除去、これは法改正等もしなければなりませんでしょうけれども、インフラの整備とか、そういうことも戦後のことで念頭に置きながら取り組んでいかなければならないと思います。

 いずれにいたしましても、アフガニスタンの中に、本当にアフガニスタンの人々から非常に幅広く支持されていて、そして国際社会とも友好的にいい関係を樹立できるような政権が誕生できるように、そして永続的な平和がこの地に確立できるように私たちもバックアップをしていかなければならない、かように考えております。

玄葉委員 この分野は積極的にかかわっていいと思うんですよ。ぜひ、アーミテージに言われたからとかというレベルを超えて、日本外交の力量が問われる分野だというふうに自覚をしてかかわっていったらいいと思うんです。何から何までというのは、それは我々だって財政事情があるわけですから、最も効果的かつ効率的な方法を、優先順位を決めて、今からきちっと整理をして働きかけをした方がいいと思うんですよ。グランドデザインを描けるのが一番いいけれども、どうもそういう動きが見えなくて心配をしているんです。もう余り聞きませんけれども、ぜひ積極的にかかわってほしいと思っています。

 かつて、第二次世界大戦の後の戦後構想というのも数カ月前からつくられましたよね。ですから、ある意味では、もちろん勝つか負けるかわかりませんけれども、勝つ側というのは戦後構想を今から準備をしておく必要があると思います。それに日本がかかわっていくということだと思います。

 あと二、三あるんですが、最後に、国会承認の問題だけ、私も御多分に漏れず聞いて終わりたいと思っているんです。つまり、今まで何度も何度も民主党の同僚議員から国会の原則事前承認が必要だろうということを言われてきましたけれども、そろそろ観念されたらどうかというふうに思うんです。

 戦争権限法というのがございますよね。これは、もう御承知のとおりで、大統領制であっても、民主的統制のために、一定期間内に議会の承認が得られなければ撤退する、こういうふうにしている。あのマイケル・グリーンさんだって必要じゃないかと言っていますよ。周辺事態法のときも言っていましたよ、実際に。

 うちは武力行使をしないからいいんだ、こういうことかもしれませんけれども、例えば、PKO法と比較したらどうですか。PKOだって国会承認、正確に言えばPKFですね、国会承認だということです。この事案は特定の事案だからと何回も何回もおっしゃるんですけれども、周辺事態法だって、法律ができて、基本計画ができて、対応措置をとることに、それを対象に国会承認というものを定めているわけですよね。そうしたら、次元の違う話ですね。そろそろ私は観念をされたらどうかと思いますが、官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 何度も同じことを答弁して恐縮でございますけれども、この法案は、ここで御審議をしていただいて成立する、そうするとまた基本計画を審議するということになるというのは、いかにも機動性が失われることではないのかなと。

 そしてまた、この法案が、一つの目的に集中しているわけですね。目標は一つであるということであります。今申しました機動性ということもありますけれども、この法案による対応措置の多様性、複雑性、流動性の観点から、具体的な措置は行政府の責任において迅速にさせていただきたい、その方が実効性が上がるというように考えていること。

 また、基本方針を盛り込んだ基本計画、これは、決定がなされる、また変更があるというときには国会報告するということになっております。

 また、もう一つ申し上げなきゃいかぬのは、防衛庁とかほかの関係行政機関が既存の法令に従って対応措置を迅速に実施するということは、これはあわせ必要なことなんでありますけれども、このような措置についてまで結果として国会の承認を必要とする、そういうことになるおそれがあるということでございます。

玄葉委員 そうしたら、周辺事態のときはどうするんでしょうか、周辺事態法のときは。だって、周辺事態法は、対応措置をきちっと決めて、それをするかどうかというのを承認事項にしているわけでしょう。そうでしょう。だから、法を承認することと対応措置を承認することというのは、次元が違う話として周辺事態法は定めたんですよね。今回だけはいいんだというのはおかしいんじゃないですか。

福田国務大臣 周辺事態法では、確かに国会承認は原則として事前承認ということになっておりますけれども、それは各活動の実施について事前承認を必要とするということでありまして、基本計画の内容等については、これは遅滞なく報告する、こういうことになっております。

玄葉委員 いや、それはわかっているんですけれども、それを踏まえて、だから次元の違う話だと思うんですね。

 法を承認することと対応措置を承認することというのは、周辺事態法で次元が違う話としてきちっと定めたわけですから、今回それが違うという話になるのはいかにも私は法律上おかしい、法のバランス上おかしいと思います。最後にこう申し上げて、終わりたいと思います。

加藤委員長 これにて玄葉君の質疑は終了いたしました。

 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 民主党は、何よりもファクトというか現実、そして事実を重視する政党であります。ともかく、この事実は余りにもよくわからない。犯人もだれかが本当はよくわからない、証拠を出せ、証拠を出せと言っていてもよくわからないというようなこの今回の同時多発テロの現実に対して、私たちも、何よりも、事実は一体何であるか、それをしっかり見きわめないと今後の対策もできないんではないか、そういうふうに考えています。

 その意味で、民主党は私を派遣しまして、私も一泊四日の旅でイスラマバードに入って、現地を見てまいりました。その内容は民主党のホームページでも見ていただくなり、また後で私も触れたいと思いますが、今回は、この特別委員会における質疑において民主党の最後のバッターでありますから、いろいろ不明な部分をぜひ官房長官に……(発言する者あり)きょうはです。きょうは最後のバッターでありますから、官房長官にぜひ細かい点をいろいろお聞きしたいと思っているんですよ。

 私は、長年、危機管理問題を研究してまいりましたけれども、政治の分野はまだなかなかうまく勉強し切れないところがあります。その点、官房長官は、ずっと長い政治家としての経験を持ち、また、お父さんもずっと長い経験を持っておられる。私なんかではもう比べ物にならないぐらい経験を積んでおられると思うんですけれども、今回の特別措置法、これは、類似したものは過去にどんな実例がございますか。私などが勉強したら、ああこれは参考になるよというような例はどんなものがありますか。ぜひお伝え願いたい。

福田国務大臣 やはり、自衛隊が海外において活動するという、そういう意味においては国連平和維持法ですね、あれは大変参考になる前例だというふうに思います。

 しかし、あれでも、PKFができないといったような、かなり制約された範囲の中で行っている。それがために、我が国のPKO活動もしくはPKF活動というのは非常に限定されて、国際的な活動はできない。非常に寂しい状況になっているということであります。

首藤委員 確かに、いろいろな問題があるということはわかりますけれども、PKO法は、別に時限でもなければ、そう特別な、これだけをというものではないと思うんですよね。

 そういう意味では、これだけ、このケースだけ、この事件だけということでつくって、しかも時限を限っているような法律としては過去にどのような実例がございますでしょうか。(福田国務大臣「時限立法」と呼ぶ)いや、二つの要件ということです。長い経験をお持ちの官房長官に。

福田国務大臣 長い経験、乏しい知力と、こういうことですか。ちょっと私思いつかないんで、済みません。

首藤委員 なかなか類似したものがないということで、そうすると、これは何か非常に新しい、もう本邦最初の法律であるんじゃないかな、そういうふうに思うんですよね。それだったら、もっと徹底的に審議して、細かいところも不明なところも全部きっちり討議しなかったらできないじゃないですか。

 過去に例があるなら、それをまねて、それを修正して、過去の失敗を新たにして、そしてできるけれども、長い経験をお持ちの官房長官が経験、記憶にないというような法律だったら新しい法律ですから、長い時間をかけて審議するのが当然だと思いますが、ともかく、まず幾つかお聞きしたいと思います。

 まず、第一条の一項でございますが、「外国の軍隊その他これに類する組織」とあります。この「これに類する組織」というのは一体何でしょうか、官房長官。

福田国務大臣 時限立法はあるんですよ。それは聞いたことがある。しかし、その事例が思い出せないということでありまして、何も初めて今回やるという話じゃないんですよね。やはりその事態の性質にのっとって、即して時限にしたということであろうかと思います。

 また、こういう国際性のある大規模なテロというのは初めて起こったというように考えれば、それは、そういうものに特定して対応措置をする、そしてまた、ゆっくりいって一年かけてやるわけにいかないだろうというようなことにかんがみ、こういうような提案をさせていただいておるわけでございますから、それはそれで御理解をいただきたいというように思います。

 それから、「諸外国の軍隊等」の「等」のことでしたね。(首藤委員「違います。一条の一項です。その他の諸国の軍隊その他これに類する組織です」と呼ぶ)わかりました。その他の組織、これは、この法案では、例えば国境警備隊とか沿岸警備隊というような国の組織、これを想定しております。

首藤委員 それでは、これに武装勢力あるいは民兵は含まれるでしょうか、官房長官。

福田国務大臣 民兵は、この民兵の解釈というのがありまして、これが具体的でない、この定義がはっきりしてないということもございますけれども、国の組織でないものの活動に対する支援というまでは対象とはしておりません。

首藤委員 いや、それは非常に問題のところなんですよね。ですから、民兵やその他の武装組織に協力したり武器を渡したということが世界各地での紛争を長引かせているわけでありまして、アフガニスタンにおいても同様な問題が、次の紛争、次の紛争という形で引き続いて起こっているわけですね。ですから、この意味で、この新しい新法が、そうした新たな将来における紛争をつくらないように、この点も実は本格的に吟味しなければいけない点ではないかな、そういうふうに思っております。ですから、第一条の一項の「外国の軍隊その他これに類する組織」、この部分から大変な疑義があると私は思っています。

 では、第二条についてお聞きいたします。

 第二条、武力による威嚇または武力の行使に当たらないと書いておられますが、捜索救助、被災民救助などで武器を使用する場合が今回の場合は考えられると思うのですが、それは武力における威嚇あるいは武力の行使に当たらないとお考えでしょうか、官房長官。

加藤委員長 官房長官。(首藤委員「委員長、委員長。これは余り時間がないので、早く進めてください」と呼ぶ)

 内閣法制局長官。

津野政府特別補佐人 先ほどからお答えしておりますが、この法律におきまして、「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということでありますけれども、これにつきましては、今回は、まずこの法案の中では、武力行使をすることはまずない、それから武力行使と一体となるようなこともしないように枠組みを決めておる、そういうことでございますので、いろいろな、例えば捜索救助活動とか協力支援活動とか、そういうものがそういったものに当たるということはございません。

首藤委員 では、第二条の三項に移ります。

 この点はもうかなり今まで論議があったところなんですが、もう一度読みます。戦闘行為が行われず、また、そこで実施される活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということですけれども、これもまた多くの方が言われているように、果たしてテロで、あるいは地域紛争でそんなものがあるんだろうかと私は不思議に思いますよね。

 私はパキスタンから帰ってきましたけれども、パキスタンはもう一触即発寸前、火薬庫の上にいるようなものだったですよね。それから、イランだってそうですね。ウズベキスタンは御存じのとおり、ブッシュ大統領が名指しでウズベキスタンの特定のグループを攻撃しなきゃいけない、それぐらいウズベキスタンの事態が危ないわけですね。このウズベキスタンの勢力こそが、最近起こった日本のJICAの技術者の誘拐にかかわってきたということも、そういうふうに言われていますよね。それから、隣のタジキスタンはどうでしょうか。御存じのとおり、私たちの同僚だった秋野豊さん、ここで射殺されましたよね。本当に危ないところだと思うんですよね。それから、今問題となっているようなインドネシア。アメリカ系のファストフードの店なんかが焼き討ちされている。いろいろな紛争地帯を抱えて、もう本当に大変だ。それから、けさのニュースでごらんになりましたように、ナイジェリアのカノの暴動によって二百人が死亡。そうしたテロに関係するような戦闘行為が行われていないと認められる地域というのは、一体どこにあるかということですよね。

 今の中央アジア、この地域にすれば、今起こりつつあるのは中央アジア・ビッグバンではないかと専門家が言うようになり始めた。要するに、中央アジア全体が大きく動くんじゃないか。そこには、どこも戦闘が行われない、あるいは戦闘行為が行われることがずっとないというようなところはないと言うんですけれども、一体どういうような地域を予定してこの項、号は書いてあるんでしょうかね。

福田国務大臣 いろいろ国の名前を挙げましたけれども、それはそれぞれ国の事情、情勢が違うわけでございますから、それはそのケース・バイ・ケースということであろうかと思いますが、その活動をするときの状況、これを決定するときの状況に従って冷静に判断をするということ以外にないわけですね。そして、我が国として主体的に判断をしていくということだと思います。

首藤委員 いや、それは非常に漠然とした話なんですけれども、もう何度も何度もやっていて、これからいよいよ法案もどうするのかというところまで来ているわけですよね。そのときに具体的な名前を、ここならいいですよ、ここならいいですよ、ここならいいですよ、ここなら可能性があるんだということをぜひ挙げていただかないと、我々も先へ進めない。いつまでもブラックボックスのままでこの法案を審議するわけにいかないじゃないですか。いかがですか、官房長官。

福田国務大臣 そういう意味ではこの法案を一日も早く成立させていただきたいということでありまして、この法案の成立のめどが立てば、それはそういうことを具体的に考えていかなきゃいけないわけですね。しかし、それはそのときの情勢次第ということもあるわけでございますから、今そういう情勢を推定して云々ということはできる状況ではないということを申し上げたいと思います。

首藤委員 この問題だけでも大きな問題があって、要するに架空の地域、架空の条件の中で法律というのはつくれるものかどうか。幾らこれから基本方針をつくるといっても、どこにもないようなところを対象としてやっているというのはおかしな法案じゃないですか。

 しかし、この点だけ言ってくると、ここだけでもう三時間ぐらいかかってしまうので次に進めますが、同じように第三条の一に「諸外国の軍隊等」というのがあります。「等」とは一体何が入りますか。民兵、武装勢力、テロリスト、これらも入りますか。

加藤委員長 法制局長官。

 手短にお願いします。

津野政府特別補佐人 この「諸外国の軍隊等」といいますのは、これは第一条の第一号に規定してございますが、アメリカ合衆国その他の外国の軍隊その他これに準ずる組織、これは先ほどお尋ねになった組織等でありますけれども、「以下「諸外国の軍隊等」」ということで定義してあります。

首藤委員 大変結構です。要するに、どんな勢力にも物品、便益を提供する可能性があるということですよ。これこそまさに、ずっと今起こっている地域紛争で、地域紛争が続いているその最大の背景じゃないですか。それは、アメリカがこういうことをやったために地域紛争がずっとあって、アフガニスタンでもこういう状況になっているわけでしょう。何もそれを私たちが加担するようなやり方ではないと思うんですけれども。

 次に、第三条の一の三、「被災民」とあります。今まで小泉首相が、日本で、日本がどうやって貢献するかということで幾つか例示されておられましたけれども、その中では避難民となっておりました。避難民ということと被災民ということとどこが違いますか。官房長官、いかがですか。これは官房長官にお答え願いたい。

福田国務大臣 ここでもって被災民というように申しておりますのは、先般の、今回のテロ攻撃、これに関連して発生する紛争によって被害を受けた、または受けるおそれがある住民その他の者、こういうことであります。

 避難民、まあ言葉の定義の問題……

首藤委員 テロによって起こったんではなくて、テロに対する報復によって発生するかもしれない避難民のことでしょう。その辺確認していただきたいんですが。

福田国務大臣 被災というわけですから、そのようなことかもしれません。しかし、根源は、原点はこのテロ攻撃にあるということだけは、これは申し上げておかなければいけないと思います。

首藤委員 そうすると、やはり基本的な考え方というのは、言葉の問題があり、小泉首相のおっしゃっていた避難民とはということだと思いますけれども、避難民に対して我々がいろいろ貢献する、そんなふうに解釈してよろしゅうございますでしょうか。

福田国務大臣 これ、被災民と避難民と分けることができるかどうかということはありますよね。ですから、もともとの避難民もあるだろうし、ある意味においては、今までの政権の非常な対応の悪さというものによって被災した人もいるかもしれぬし、そういうものが一緒になっているんだろうというふうに思いますので、これは厳密に分けることはできないということですね。

首藤委員 そうすると、アメリカ軍が報復行為、イギリス軍も加担しておりますけれども、そうした報復行為によって、攻撃によって難民、避難民が出てくる。そういう人に対して我が国の自衛隊がさまざまな活動をして助ける、支援する、このように解釈してよろしゅうございますでしょうか、官房長官。

福田国務大臣 人道的な見地からあの地域におられる方を助ける、救援するということであります。

首藤委員 大変ありがとうございました。それで非常に明確になりました。

 ということは、自衛隊がアフガニスタンに入って、そこの避難民を人道的に救援するということを意味しますね。

福田国務大臣 アフガニスタンには、これはこの法律では無理だと思います。

首藤委員 これは、私もこの分野で長くやっていますけれども、基本的に、紛争が起こって被害が出ると、人たちを二つのカテゴリーに分けます。それは、難民と避難民ということです。難民というのは、国境を越えた人たちを定義してリフュジーといいます。避難民は、IDPと略されますけれども、国内にとどまって逃げ惑っている人たちを対象としております。

 したがって、問題の、質問の内容上、これはアフガニスタンで報復行為が行われているわけですから、アフガニスタン内で逃げ惑っている人たちを避難民というというふうに解しており、そのように質問しました。それに対して官房長官は、それを対象としているとおっしゃっているんであって、そうすると、この避難民という考え方はおよそ定義されないものだと思いますけれども、いかがですか。

福田国務大臣 委員のその定義を先に教えていただければよかったと思います。

首藤委員 これは常識の問題ですよね。これは常識の問題ですよ。こんなのは大学生でも知っている定義だと思いますよ。

 次……(発言する者あり)委員長、何かいろいろなことを言っておられますけれども、私はここで質問しておりますけれども、御理解でしょうか。

 次に、三条の二に、協力支援活動がどうして自衛隊なのかということをお聞きしておきたいと思いますけれども、どうして自衛隊なんでしょうか。文民警察とか機動隊とか、さまざまな人たちが当然そこに関係しているんだと思うんですけれども……(発言する者あり)

加藤委員長 お静かにお願いします。(発言する者あり)

首藤委員 本件とケニアの件とは全く関係ございません。(発言する者あり)委員長、委員長、これは何ですか、これは。

加藤委員長 不規則発言は、御静粛にお願いいたします。(発言する者あり)

首藤委員 うその質問というのはどういうことですか。委員長。

加藤委員長 自分の質疑を進めてください。

首藤委員 第二条三項に「外国の領域」「当該外国の同意」というのがございます。この外国の同意というのが果たしてどれだけ得られるかということが、やはりこの法律の実現性にかかってくると思うんですね。

 要するに、全く合意が得られないということであれば、これはやはり、もうこの法律自体が架空の法律である。そういうことを考えると、当該外国の同意というものがどの地域で得られるというふうにお考えでしょうか、官房長官。

福田国務大臣 それは、合意が得られないというように断定的に言われることもないと思うんですね。やはり合意が得られないというのは、それだけ難しい状況にあるということですから、それは日本がもしかしたら行けない地域かもしれない。やはり合意は前提として、我々の活動はしなければいけないと思います。

首藤委員 次に、第三条の三、捜索救援活動とあります。

 これは、「自衛隊の部隊等」とありますが、この「等」とは何でしょうか。

中谷国務大臣 自衛隊の病院とか学校とか関連の機関ということです。

首藤委員 それは自衛隊・防衛庁の内部にある組織ということでしょうか。確認をお願いします。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

首藤委員 それは、いわゆるかつての軍属、今でいう民間企業を含むことはございませんね。御確認をお願いします。

中谷国務大臣 ございません。

首藤委員 現実のPKO活動というのは、いろいろな機材の関係で多くの民間企業が結局は行くことになるというふうに聞いておりますけれども、このことに関してはこの法案の趣旨でないということで、先に進ませていただきます。

 自衛隊による被災民の救援活動の実施というのが、自衛隊というふうになっていますけれども、自衛隊以外にもいろいろな活動があると思いますけれども、なぜここは自衛隊だけが対象となっているのか、第七条に関して官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 被災民の救援活動を自衛隊がしてはいけないという理由はないと思います。できる限りのことをしようというのが趣旨でございます。

首藤委員 第十一条、武器使用の点についてお聞きしたいと思います。

 武器使用、これもまた多くの方が指摘されておりますが、「自己の管理の下」とはどこまでを意味するのかということをお聞きしたいと思います。それは、なぜそれをお聞きするかというと、この点こそまさにPKO法案で今問題となりつつあるものだということでございます。

 御存じのとおり、PKOそのものに対して、国連PKOに関してさまざまな論議がございまして、これを変えようということで、現在、ブラヒミ・リポート、ブラヒミ報告と言われるように、新しい国連のPKOを目指しての報告書が出されて検討が進められ、日本でもその検討が進められていると思っております。

 それは何かというと、スレブレニッツァの悲劇というのがございます。これはボスニア紛争の末期に起こった事件で、そして、このスレブレニッツァにおいてイスラム勢力が降伏するわけですね。降伏するイスラム勢力をセルビア勢力が取り囲んで、本来ならば、国連がそれを守らなければいけなかった。降伏したイスラム勢力を、スレブレニッツァのイスラム勢力を国連のPKOが守らなければいけなかった。しかし、それが守れなかったために、周囲のセルビア側の物すごい憎悪の中に取り残されて、結局一人一人引きずり出されて殺されていくという事態があったんですね。

 そこで、今度のブラヒミ・リポートでは、まさにこの管理下にある者に対してこれを守らなきゃいけない、そのためには武器を思い切って使用しようというのがブラヒミ・リポートなんですね。まさにそのラインでこの法案はできているんでしょうか。いかがですか。

    〔委員長退席、久間委員長代理着席〕

中谷国務大臣 この法律で言う武器使用については、「自己の管理の下に入った者」ということで、いろんな方と接触をするわけでありますけれども、その現場にいまして自衛官と共通の危険にさらされたときに、その生命、身体の安全確保について、その自衛官の指示に従うことが期待されている人を防護するという範囲でございます。

首藤委員 防衛長官、恐らく現場に行かれたことはないと思いますけれども、現場はどういうものか。現場は、紛争が終わっても憎しみ合いの、殺し合いの、その精神が残っているんですよ。

 私が何を言わんとしているかというと、紛争が一応終わる、しかし、そこにおいても、例えばパシュトゥン、タジク、ウズベク、ハザラ、この人たちは、つい最近までもう血で血を洗う殺し合いをして、捕まえた人間を、降伏した人間を、皮をはいで去勢して建物の上につるしていく、子供も含めて首をずっと切って並べておく、これをずっと続けてきた人たちなんですよ。

 ですから、こういう人たちが庇護下に入るというPKO、こういう人たちを管理下に置かなきゃいけないこの法律のもとで、武器使用というのは思い切って緩和しなきゃいけない。ですから、こんな恐ろしいことをどういうふうにしてこの法律の中でやっていこう、憲法の範囲の中で、今までの論議の中でやろうとしているんですか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 その現場にいる人で、その自衛官と同じ危険にさらされた場合に、その自衛官の指示に従うというふうに期待をされた者を守る程度でございます。

首藤委員 これはもう本当、長官、そんなことで自衛官を現場に行かせますか、行かせられますか。日本の若者をそんないいかげんな条件の中で送れますか。本当に撃つときは、水平に構えてドーンと撃つような状況というのは本当にあるんですよ、現場というのは。そして、アフガニスタンやパキスタンというのはまさにそうなんですよ。インドネシアでも、何で何十人も死者が出るか。暴動というのは、そこに銃を水平に構えて撃たないととまらないから撃つんですよ。ですから、我々は、インドネシアで暴動でひどいな、何十人も死んでと思いますけれども、まさにそういう状況なんですよね。

 ですから、そういう状況がこの法律のものでは可能になってしまうわけですよ。そういう状況を考えて、この法律をどう考えますか。できないじゃないですか、こんな法律では。そんな条件の中では、長官として責任を持って若者をこの地域に送れないじゃないですか。いかがですか、長官。

中谷国務大臣 実施をする前に実施要項を定めますけれども、あくまでも前提は、戦闘行為が行われてないし、また、将来もその期間を通じて行われることが認められない地域でありますし、そういう状況になった場合は休止もし、避難もし、実施区域の変更をするわけでありまして、そのような非常に危険の高い場所では実施をしない、行かせないということでございます。

首藤委員 だから、いろいろ事前に案をつくって、本当に危ないところは行かせないとか、いろいろやらなきゃいけないということですよね。ですから、本当にその計画というものがすごく重要となる。

 それから、一番最初にお聞きしたように、これは本当に、時限で、変わった特殊なものなんですね、今までは余り経験がないような法律なんです。ですから、私は、この法律というものは、時限もあり、時間も限られていますから、この中に限りなく固有名詞が盛られていなければいけない。事実、九月十一日にアメリカで起こった同時多発テロと、固有名詞がきっちり書いてあるわけですよ。そうならば、当然のことながら、この中に、どこまで物資を運ぶか、ディエゴガルシアとかカラチ港とか、どこに人を派遣するか、パキスタンであるとかウズベキスタンであるとか、そういうものが入ってしかるべきじゃないですか。

 そうでなければ、当然のことながら、基本計画の事前承認がぴっしりあるか、あるいはこの特別法の中にきちんと固有名詞が入っているか、二つに一つしかないじゃないですか。官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 今の時点で、どういうニーズが発生するのか、それも、きょうということじゃなくて、きょう基本計画をつくって実施するような、そういう計画を細部を詰めるというのであればきょうの情勢で判断するしかないですけれども、しかし、実際はまだ先になるわけですね、その辺は。ですから、今現在、差し当たって米国及び英国等が活動しているあの地域でどういうニーズが発生しているかということも、これも日本ができることというのは極めて限られているだろうというふうに思いますし、これからこの状況はどういうような展開をするか、それによって判断しても遅くはないというように思っております。

首藤委員 私は、基本計画の事前承認が、国会での承認が本当に欠くべからざるものだと思いますよ。そうでないなら、この法律の中に固有名詞を入れて、歯どめをつくってください。なぜか。それは、地域が限定されていないわけですよね。パキスタンとか、そういうことが書いてない。

 今、アメリカで言われているのは何ですか、イラク。冗談じゃないですよね。イラクまで拡大する。しかし、さらに報道されているのはどこか、インドネシアですよ。もう冗談ではないですよ。もう日本まで近づいてきた。

 もっと言いましょうか。私は、テロの研究者としてずっとやっていました。どこをみんなねらっているか、言うまでもなくフィリピンですよ。アブ・サヤフですよ。アブ・サヤフこそがオサマ・ビンラーデンの本当の直系の弟子であって、アブ・サヤフこそがさまざまな、太平洋やアメリカについての中継点になっている。まさにここをつぶそうということでねらっているのですよ。現実に、多くの外国人が誘拐され、二人のアメリカ人が最近ここで殺されました。これに対して、当然報復も考えているのです。だれも言わないことこそ、アメリカの政策当局者が真剣に考えていることなんですよ。

 では、官房長官、この基本計画の国会承認もなく、そして固有名詞が、国の固有名詞、地域の固有名詞、やることの固有名詞が書いてないこの法律で、どうして、アメリカが次はフィリピンだと言ったときに、それは無理ですと言うことができますか。官房長官、いかがですか。

福田国務大臣 これからどういう事態になるかわかりませんけれども、ある種のイメージというものはあるのだろうというように思っております。それは、今まで示された証拠等に基づいて、また開示されない証拠等も含めて、そういうものがあるのだろうと思います。

 これから、では、今おっしゃられたような国名を具体的に挙げてということは、私は差し控えさせていただきたいと思います。しかし、我が国として我が国の持つ制約の範囲の中で、武力を行使しない、そういう前提の中で何ができるか、そしてその目的である、目標であるテロを絶滅するというために何ができるかということを中心に考えれば、おのずから答えは出てくるだろうというように思っております。

首藤委員 地域は特別設置しない、確かにそれは美しい言葉です。しかし、私たちは、これは日本の危機管理の問題だと。そして、本当に今までの、戦後五十数年間の安全保障論議を一歩踏み越えようとしているわけですよね。本当に慎重の上にも慎重でなきゃいけない。

 いろいろな目に見えないリスクを、危機管理というのは目に見えるリスクじゃないですよ、見えないリスクを察知し、それを予防し、そして起こったときに緊急な行動をとるのが危機管理なんですよ。はっきりわかっている安全保障の脅威だったら、今までの安全保障の論議で十分じゃないですか、脅威があって、仮想敵国があって。そうじゃないでしょう。どこに落とし穴があるかわからない、どこに潜在的なリスクがあるかわからないというのが危機管理じゃないのですか。

 今、地域は特定しないとおっしゃいましたね。イラク、それは違うかもしれない。インドネシア、違うかもしれない。フィリピン、違うかもしれない。危機管理の立場からすると、こういう状況の中で語られない場所というのは私は非常に気になるわけですよ。

 例えばどこか、北欧ですよ。北欧なんというのは全然関係ないように思われます。しかし、今まで、中東和平にしても、いろいろな形で北欧が関係してくる。多くの人が、今日本やアメリカに、あるいはアフガニスタンにみんな目が奪われているときに、本当は世界の主要な国が北欧に集まって会議をしているかもしれない。我が国の外交が本当に、そうすると、置いてきぼりにされているかもしれないんですよね。我々の外交にとっても、大変な問題があります。

 さらに、このテロの観点で、しょっちゅううわさになって、しかも言われない国があります。例えば、北朝鮮です。全然関係ないですよね。どこの記事をクロス検索しても、アフガニスタンと北朝鮮、結びつきませんよ。しかし、こういうところにこそ危機管理の目を開いて見ていなきゃいけないということがあるんですよ。

 ですから、地域地域を限定しない、大変いい、そういうことを考えるのはあれかもしれない、しかし、それだけでは危機管理にならない。やはり、この個別法の中へ、地域をきちっと入っていくか、あるいは基本計画をきちっと決める、それを国会で承認する、それがいかに重要かというのがおわかりになったと思うのですね。

 官房長官、私は、この七日にパキスタンに入って、カラチにようやく着きました。着いた途端に、その深夜でしたけれども、空爆が始まったというニュースが流れました。そうすると、そのテロップをみんな見に、わあっとたくさんのビジネスマンが集まってきました。テレビの画面を見ています。ブッシュ大統領の演説が始まります。そして、ブッシュ大統領がこう言うのですね。

 我々はタリバンにたくさんメッセージを送った。早くオサマ・ビンラーデンを渡せ、早くアルカイダを解消させろ、キャンプをつぶせ、こういうことを言ったけれども、タリバンは全然それに反応しなかった。さあ、今やその報いを受けるべきだとブッシュさんが言ったわけですよ。

 それを見ていたパキスタンのビジネスマンが一斉に首を振って、舌打ちして、顔を背けたのです、その画面から。そのように、別に過激派じゃない、一般の空港にその時間にいる、要するに商人ばかりですよね。そういう人たちも本当にそうした感情を持っている。そのパキスタン、ここで果たして本当に活動なんかできるんですか。

 実は、私も外務省に行って話を聞きました。パキスタンの外務省次官補の人がいて、その方に私は、これからアメリカ軍が来て、さらに日本がもしかしたら地上の輸送をするかもしれません、パキスタンはどう考えますかと言ったら、その次官補の方が、何を言っているんだ、我が国はアメリカ軍の上陸すら許さない、日本の話なんてずっと先のことで、アメリカ軍の上陸すら絶対許さない、外国の軍隊にこの主権国家であるパキスタンの地を踏ませない、このように言っているわけですよ。

 ですから、そういうことを考えると、最初からこの法律の予定していたことは架空の法律じゃないですか。一体どういう可能性を持ってこの法律をつくろうとしているのですか。いかがですか、官房長官。

福田国務大臣 危機管理のことをおっしゃっておられましたけれども、まさに危機管理というのは、危機がどこにあるかわからない、そういうものに対して日ごろ備えなければいけない、こういうことはもうおっしゃるとおりでございます。

 今回のことにつきましては、これはもう全く世間というか世界じゅう信じがたいというほど、まあ突発的というか、思わざる事故だったわけであります。そういうことになりますれば、やはり我々もそれに対して防御しなきゃいけないという、そういう必要が生ずる。

 我が国は、サリン事件もございました。これは、ほかの国ではなかった、そういう意味においては、大規模なテロ活動というものが日本で初めて起こったと言っても過言ではない、言い過ぎじゃないというふうに思いますけれども、そういうような事件によりまして、我が国としても必要な措置は今まで各省庁で対応してきたわけでございます。

 今回のことについても、そういう意味では、この種の、サリン事件と違って国際性のあるという意味においてまた特異な事件でございますけれども、このことについて万全の備えを将来に向かってしていかなければいけない、そういうことであろうかと思います。

 パキスタンが、今いろいろと御事情を説明していただきました。私も、委員のそういう実際に見てこられたその事実というものは、これは大変、事実として評価しなければいけないことだろうというように思います。またこの委員会後でも、詳しく教えていただければ幸いだというように思っております。そういうような情報、御意見等を参考にしながら、冷静に最終的に判断するということでございます。

首藤委員 官房長官、これはもう本当に日本の安全保障が大きく転換しようとするところだと思うんですよ。ですから、この委員会はまさにそうした歴史的な意義を持っている。そこに記録が残されるわけですから、ぜひ官房長官としては、提出者として、なぜこの法律が本当に必要かということを、もっときっちり国民にわかりやすい形で述べるように御努力をいただきたい、そういうふうに思っています。

 今回の特別措置法の最大の問題は、この起こった、発生したテロが、国際社会への挑戦であるとか、アメリカへの攻撃であるとか、テロリズムであり戦争でないというような、いろいろな特殊な観点があります。その意味において、イラクという主権国家がクウェートに侵攻したのとは違うということはわかるんですよね。そのことに関して、これも何度も問題となっていますが、決議の一三六八、これが果たして十分なのかどうかというのがあります。

 この点に関しては、アナン国連事務総長が、最初はこれが不十分だというような見解、さらに十分だという見解、それから、最初はタリバン攻撃はだめだという見解、やがてはタリバンもいいというような、そういうような、どんどん変わっていくのですけれども、果たして、この決議の一三六八でアメリカが報復するのに十分であるかというのは、一体だれが決めるのでしょうか、外務大臣。

久間委員長代理 条約局長。(首藤委員「外務大臣、外務大臣」と呼ぶ)いやいや、条約局長を指名しましたから。参考人で呼ばれています、きょうは。

海老原政府参考人 委員長の御指名でございますので、私から事実関係を御説明させていただきます。

 今回の米国等の行動は、これは国連憲章五十一条に基づきます自衛権の行使でございまして、これは簡単に申せば、その後に米国及び英国が国連憲章五十一条に基づきまして安保理に報告を行っております。

 それで、その報告を受けまして、安保理の非公式協議が行われておりますけれども、そこでこの自衛権の行使というものに対して異議は出なかったというふうに聞いておりますし、実際、その後に行われました安保理議長の記者会見におきましても、安保理としてはこのようなアメリカとイギリスの報告を評価する、あるいは歓迎する、英語でアプリシエーティブという言葉を使っておりますけれども、このように述べておりますので、国際社会の認識といたしましても、これは正当な自衛権の行使であるというふうに認められていると考えております。

首藤委員 個別的自衛権を行使する原因となったのは、一つは属地主義的な問題、すなわちニューヨークという場所と、そしてまた属人主義的な問題、アメリカ人が被害に遭っているという問題があると思いますけれども、イギリスやNATO諸国というものが集団的自衛権を行使してアメリカの報復行動に参加と表明しておりますけれども、今回、国民がテロに遭いながら集団的自衛権の表明をしない国はどこがあるでしょうか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 個別的自衛権の発動を表明している国はほかにありません。

首藤委員 いや、そうではなくて、集団的自衛権の表明をしていない国はどこかということです。

海老原政府参考人 申しわけありません。

 事実関係だけ御説明いたしますと、たしかワールド・トレード・センターのあの侵害におきましては、八十カ国以上の国民が犠牲になったというふうに承知しております。その中で、例えばNATOの諸国につきまして、あるいはオーストラリアなどにつきましては、実際にそういうふうに行使したかどうかは別として、これは集団的自衛権の行使に当たり得るということは言っておりますけれども、あと、それに当たらない国で八十カ国の中にどういう国があるかというのは、私は承知しておりません。

首藤委員 知らないということを延々とこの時間を使って言っていただくのは本当に困るんですよね。それが官僚としての技術なのかもしれませんけれども、国民にとっては本当に迷惑な話だと言わざるを得ない。こういうような委員会を続けていたら、国民がだんだんだんだんと政治や行政に対してやはり批判が強まり、それに対する関心を失っていくのは当然じゃないですか。

 今問題になっているのは、アメリカが被害に遭った、そちらに対して個別的な自衛権をアメリカが使う。この個別的自衛権、集団的自衛権、非常にわかりにくいんですよね。アメリカが軍事行動の根拠としている個別的自衛権ですけれども、それは国連憲章のどこにあるか、それをちょっと読んでいただきたいのですが、外務大臣。

久間委員長代理 外務大臣に読ませるんですか。

 外務大臣。読むだけだから。

田中国務大臣 国連憲章の五十一条に書いてございます。五十一条全部読むんでしょうか。ここに基づく個別的及び集団的自衛権の行使として安保理に報告がなされておりますと。

首藤委員 個別的自衛権のところを、では英語で読んでいただけませんでしょうか。

海老原政府参考人 五十一条全部お読みいたしましょうか。

久間委員長代理 全部読んでください。

海老原政府参考人 それでは、読み上げます。(首藤委員「最初の三行でいいですから」と呼ぶ)最初の三行でございますか。

 それでは、ナッシング イン ザ プレゼント チャーター シャル インペア ジ インヒアレント ライト オブ インディビジュアル オア コレクティブ セルフディフェンス。これでよろしいでしょうか。

首藤委員 ここは日本だから日本語でやれという話がありましたけれども、フランス語で読んでいただけませんでしょうか、条約局長。同じ二行です。

久間委員長代理 フランス語、読めますか、だれか、政府参考人で。

 じゃ、結構です。この件については後で理事会で協議します。

首藤委員 これは私の質問の、きょうの一時間二十分の中の最も重要なところです。なぜフランス語で読む必要があるのか。日本語とおっしゃいましたね。日本語は国連語ですか。国連公式語ですか。五カ国の言葉の中に日本語は入っていますか。

 個別的自衛権も集団的自衛権も、何か我々はわからないままずっとやってきた。しかし、その根拠はどこにあるのか。英語ではインヒアレント、固有のというのがついています。フランス語ではどうですか。その当時の、この国連憲章ができた当時はフランス語というものが国際法において非常に重きを置かれていた。そのフランス語ではどうなっているか、委員長、重要でしょう。

久間委員長代理 じゃ、そういうことを説明しなさい。(首藤委員「じゃ私が読みますよ」と呼ぶ)それでいいんだよ。(首藤委員「それはないじゃないですか、質問をしているんだから。質問の順番で言っているんだから」と呼ぶ)質疑を続けなさい。質疑を続けなさい。

首藤委員 あなたは、中間的な中心的な立場なんだから、中立的にやっていただかなければいけませんよ、それは。それはやはり中立的にやっていかなきゃいけないですよ。私は質問の順番に従ってやっているんです。

 それは、レジテームデファンスとなっているんですよ。レジテームデファンスとは何か、正当防衛です。英語と日本語とフランス語と微妙に違うんですよ。正当防衛。

 では、法律の専門家の法制局長官に聞きましょう。例えば、暗やみで暴漢が襲ってきた。それに対してぼんとはね返した。法制局長官、これは正当防衛でしょうか。(発言する者あり)

久間委員長代理 静かにしてください。

津野政府特別補佐人 正当防衛の定義でございますけれども、急迫不正の侵害がありまして、自己または他人の権利を防衛するためにやむを得ないでした行為はこれを罰しないというのが刑法上の正当防衛の概念でございます。

首藤委員 では、その襲ってきた暴漢をがんとパンチを食らえてやっつけてやった。逃げ出した。どんどん追いかけていって、スラムまで追いかけていった。スラムの中へ入っていった。スラムの中の汚い安いアパート、二階まで階段を上っていった。そうしたら、その男がいました。部屋にどかどかと土足のまま入ってパンチをやった。そうしたら、そこにいた子供が驚いて階段から転げ落ちて死んでしまった。こうした行為を正当防衛というでしょうか。長官、どうですか。

津野政府特別補佐人 御質問の趣旨が必ずしも判然としないので、何とも答えにちょっと窮しているわけですが、追っかけていって落ちたということ、落ちて亡くなったということでございますか。

首藤委員 結構です。

 私が言おうとしたのは、確かにニューヨークに攻め込んだ人に対してそれを反撃する、それはいいでしょう。しかし、ずっとアフガニスタンまで追いかけていって、その行為によってたくさんの人が死んでいく、そういうところまで果たしてこの国連憲章五十一条、果たして是認しているんでしょうか。私はそうではないと思っているんです。

 ですから、我々が個別的自衛権、集団的自衛権、ごく当たり前のようにやっていても、その内容はもっと精査してやらなければいけないということをこの場では言っておきたいと思います。日本とNATOは違う、だから、日本においてはこういう問題ももっと真剣に考えてほしいと思っております。

 さて、このテロを行った犯人が二十名近くおると言われていますが、外務大臣、犯人の中にアフガニスタン国籍の者は何人おりますでしょうか。

田中国務大臣 今の段階では、詳細はわかっておりません。

首藤委員 アフガニスタン人である、あるいは犯人そのものが、この十九名のうち本当の犯人がだれかということは、現実ではまだ答えられない段階だ、そういうふうに解しています。まして、今攻撃の対象となっているタリバンに関しても、実はこの問題とどういうふうに関係があるのかというのはなかなかわからないところもあるんです。

 タリバンというのはもともとは難民キャンプから出てきた。これから日本がもしかしたらパキスタンの難民キャンプで人道的支援をするということになっていますけれども、まさにタリバンというのはその難民キャンプから出てきたわけであります。将来の展望のない若者を教育して何か国の再建に資そうということで、言うなれば昔の明治維新のころの塾のようなものだというふうに考えられるんですけれども、そして、そのテログループとしてのアルカイダをかくまっているタリバンが悪いということになっていますけれども、タリバン、これはある意味でパキスタンが、そしてアメリカが育てたというふうに言われているんですね。

 日本がタリバンに対して、タリバンを育てようとしたことはかつてあったでしょうか。彼らにお金を渡そうとしたことはあったでしょうか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 今までは日本は中立的な立場でおりました。

首藤委員 うれしそうですね。意味はわからないですけれども、時間がだんだん迫っているので、私も自分で勝手に進まないといけない苦しい立場ですが、アフガニスタン、タリバン、タリバン、本当に悪いやつだなという気がします。こういうタリバンにお金を渡そうとしたことが、現金を渡そうとしたことがあったでしょうか。いかがですか、外務大臣。

久間委員長代理 外務大臣、わからないならばわからないでいいですから、答えてください。わからないならわからないでいいですから、答えてください。お金を渡そうとしたことがあるかどうかの質問ですから。

田中国務大臣 お金を渡そうとしたかどうかはわかりませんが、おわかりだったらお教えください。

首藤委員 この三月八日の公明新聞に、アフガニスタンの石仏破壊の件ですが、日本政府として現金五億円準備して同政権との交渉に臨む、公明新聞の三月八日付のですが、そこに書いてありますよ。これは一体、機密費から出されたんですか、それとも内閣官房費から出されたんですか。

田中国務大臣 今までもそういうことがあったかどうかはわからないということを今申し上げましたけれども、さらに加えまして、報道の一つ一つについてはコメントすることはできません。

首藤委員 これは、今私これだけは言っておきます、私もその場に立ち会ったんじゃないので。

 もう一度確認しておきますよ。三月八日付の新聞です。日本政府として現金五億円を準備したというふうに書いてあります。この件に関してぜひ調べておいていただきたい、そういうふうに思います。

 さて、もう時間もだんだんなくなってきましたので、実際に自衛隊が出たときにどういうような対応が必要となるか、その準備ができているのかということをお聞きしたいと思います。

 まず一つは、長官にお聞きしたいんですが、十月八日にイスラマバードに到着したC130六機ですけれども、これに関して一体どれだけの費用がかかったか、教えていただきたいと思います。

中谷国務大臣 今回の派遣にかかる費用につきまして、国際協力業務に従事した者一人一日四千円の手当が支給される、その総額につきましては三百万円でございます。そして、総経費につきましては、現在集計中でありますけれども、現在わかっている限りにおいては、おおむね二億円程度を要するというふうに聞いております。

首藤委員 これは今まで問題になった点でありますけれども、やはりこういうのは、自衛隊機を飛ばすのも結構ですが、それ以上に、やはりそれを効率的にやって国民の財産を減らさないということが重要だと思っています。

 この法律のもとでは、ともかく自衛隊に焦点が当たって、自衛隊が出ることを最優先しております。それはそれで、そうした政府のお考えだということで、実際、では出られるのか。先ほどの地域の問題もそうですけれども、実際どの程度この法律というものは現実に即したものであるかということを、自衛隊の装備、訓練の面からお聞きしたいと思っています。例えば、お持ちの、恐らく持っていかれる六四式歩兵銃ですけれども、これは七・六二ミリですか、これはAK47と銃弾の互換性はございますか。いかがですか。

中谷国務大臣 小銃の件ですね。五・五六ミリ小銃につきましては、口径はNATOの第二標準である五・五六ミリを採用いたしております。したがいまして、NATOとの互換性はあるというふうに思います。

首藤委員 それは新式銃の方を持っていかれるということですね。

 私は、PKO部隊がどの程度の武装を持っているかということに非常に関心を持っていて、実際に本当に活動するときには本当に役に立つのかなと思うことがあるんですね。ゴラン高原のPKOを拝見いたしました。ゴラン高原にはどれぐらい弾があるのかなと聞きましたら、約一万発ございます。隊員を五十名としますと、もし何か紛争になって撃たなければいけないときに、一万発の弾丸を五十人の隊員で連続発射したとき、何分撃てるとお思いですか。いかがですか。

中谷国務大臣 今すぐ計算はできませんが、この八九式の小銃につきましては、発射速度が最大一分間に八百五十発であります。ただし、それを連続して撃ちますと非常に銃身が過熱をいたしておりまして、おのずと連続して発射できる時間は限られております。

    〔久間委員長代理退席、亀井(善)委員長代理着席〕

首藤委員 なぜこんな細かいことを聞いたかというと、装備が現実にはPKO活動に合っていないわけですよ。ですから、こういう問題でもほとんど準備ができていないということをぜひ御自覚いただきたいと思うんですね。

 銃に関しても、私たちは銃を撃つものだと思っていますけれども、長官、現場に行かれればわかるように、銃は押し戻すものであり、銃は殴るものですよ。銃は着剣して刺すものですよ。そうした訓練を本当に自衛隊がしているのかどうかということを考えると、大変、これからもしかしたらパキスタンやその周辺に行くかもしれない私たちの若者、これに対して、長官、本当に真剣にこの装備にしろ訓練にしろ考えていただきたいと思うんですね。

 今度、自衛隊の中には、医療関係で行くということが考えられております。医療関係も技術革新が目覚ましくて、昨年行われたものに、相模原の補給廠で行われたMEDEX二〇〇〇がございます。長官、あれをごらんになって、どのようにお考えになりましたか。MEDEX二〇〇〇です。

中谷国務大臣 それは米軍の訓練でありまして、私は直接見ておりません。

首藤委員 確かにそうかもしれません、立場上難しいのかもしれません。しかし、日本の政治家の中で専門知識を持っている方としては、ぜひそういうものを日ごろから研究していただきたい、そういうふうに思っています。

 そこで、私は、非常に驚いたのは、そのMEDEXの中で、訓練の多くの部分が心理作戦に使われている。要するに、戦場では、肉体的に傷つくと同時に、精神的な患者が多くなるということですね。そういった精神的な対処がされているわけですが、それがどれだけ日本の中で行われているか、今の現状を説明していただきたいと思います。

中谷国務大臣 医療に関する研究とか、また風土病というか各国の伝染病とか、そういう病気に関する研究等は衛生部隊等で行っておりますし、また、医療災害の派遣等につきましても、各部隊でそれぞれ災害派遣訓練等で日ごろから演練をいたしております。

首藤委員 なぜそういうことをしつこく聞いているかというと、現実に自衛隊を派遣するときには大変な、いろいろなことをやっておかなければいけない、ほとんどの部分が実は空白だということなんです。

 恐らく現場の経験をお持ちでないのでおわかりにならないと思いますが、もしこのケースで、この事例で周辺地域に医療部隊を送り出すとなると大変な問題があるし、もしアメリカ軍と一緒になってアメリカ軍の分の医療活動も見ないといけないと、いろいろな問題がある。

 例えば、自衛隊の中に従軍牧師は何名おられますか、いかがですか。

中谷国務大臣 従軍牧師はおりません。

 それから、訓練していないのじゃないかと言われますが、九六年のときに、ルワンダの難民等につきましては、半年程度ゴマに行って、地域の病院を開設して、医療の支援、それからキャンプでの消毒、また水の浄化、それぞれ実施をいたしておりまして、そういう実績につきましては、自衛隊は能力的に持っているというふうに思っております。

首藤委員 いろいろ、実際の、現実の自衛隊が全然準備ができていないということを立証しようとして質問しようとしているのですけれども、そういうアバウトな話ばかり幾ら聞かされていても質問する意味がないというような気がするのです。

 それでは、最後に、法務省関係のことで一つお聞きしたいと思います。

 十月三日に、ハザラ族で日本に来られている、さまざまな理由で日本に来ている方が難民申請をされていたわけですが、その難民申請をされているハザラ族の認定申請者が逮捕されて十条で収監されるというような事態に陥っております。ハザラ人が八名、タジク人が一名ということですね。これは新聞でも報道されたので、法務大臣よく御存じだと思います。

 このハザラ人というのは、皆さん余り御存じないかもしれませんが、バーミヤンを守っていた人たちなんですね。バーミヤンを守っていたから、バーミヤンの石仏は破壊されずに済んだ。このハザラ人というのは、チンギスカンの流れをくむというモンゴル系の人で、シーア派なんですね。その人たちが石仏を守っていたために、あのイスラム圏においても石仏は破壊を免れていた。そして、タリバンがこのハザラ人を大虐殺してバーミヤンを乗っ取って、そこで破壊するわけですね。そして、ハザラ人の人たちは各地へ難民として逃げていく。その一部は日本にも流れてきています。

 こういう方を今十条で収監しているわけですが、この点に関しては幾つかの問題があります。

 時間がないのでまとめてお聞きしたいと思いますけれども、まず一つは、驚くべきことですが、この難民申請で来られた方は船で来られているということですね。よく私たちも、今度こういう事件があったらたくさんのアフガン難民が日本に押し寄せてくるかもしれないと言うと、いや、飛行場でチェックされます、飛行機に乗る前に日本のビザがあるかないかでチェックされるから日本には来ません、こういう意見をされていました。しかし、何と船で来られる。そう考えると、日本の入管体制、それはどうなっているのかということをまず第一点、お聞きしたい。いかがですか。

森山国務大臣 船でおいでになる方の場合も、当然入国されるときは入国審査が行われます。この方々がどのようなルートで来られたか、今調査中でございますのでよくわかりませんが、船の場合はいわゆる密航船みたいな可能性もあるわけでございまして、そのようなときは、残念ながら入国審査の場を通らないまま入国してしまわれるという方もございます。

首藤委員 それは大変恐ろしいことですね。今でも、九月十一日から空爆が始まる間でも、現地の方にいろいろ聞きますと、もちろん国境は閉鎖されていますけれども、大体一万五千人ぐらいが間道を伝って国外に逃れているのだと言われています。

 そして、これも法務大臣よく御存じのとおり、今、難民というのは世界で一つのビジネスになっている。したがって、国境を越えたところでブローカーがいて、その人間を、ある人はスウェーデン、ある人はドイツ、ある人はラオス、ある人はタイ、ある人は韓国、そしてある人は日本、こういうふうにルートを勝手に決めて、パスポートを配って送っているということですよね。

 ですから、こういう状況の中で、今まで考えていた入管体制というものが難民の大量発生に対して果たしてきくのかどうか。法務大臣、いかがですか。

森山国務大臣 海上から入ってこられる可能性もおっしゃるようにあるわけでございますので、そのような場合に備えまして、海上保安庁など関係機関と連絡を密にいたしまして、そのような不法入国者の取り締まりの強化を図るべく一生懸命に努力いたしております。

首藤委員 こういうハザラ人の方が、日本へ来て申請をするわけですね。今回そういうふうに不法滞在だといって収監されている人は、その中でも本当に善良といいますか、みずから申告して難民のステータスを得たいという人ですよね。だから、多くの人は、船で着いたまま、歌舞伎町とかいろいろなところへ入り込んでいる可能性があるということで、今までの難民の大量発生に対して、やはり入管体制というものをきちっとしていかなければいけないと思います。

 このハザラ人という方は、パシュトゥン族であるタリバンに非常な被害を受けて、ようやく日本までたどり着いたと仮定します。仮定したというか、現実そうですね。この人たちの難民申請に関しても、当然日本語ができるわけじゃないですから、通訳が来ます。この人たちの通訳は一体何語で話されますか。

森山国務大臣 その方々がお話ししていらっしゃる、通用する言葉を通訳として使わなければいけないと思いますが、残念ながら、その数も限られておりますし、現在のところ、メディアその他で非常にその需要が大きいものですから、入国管理その他のところで通訳を十分敏速に手配するということは非常に難しいんですが、懸命に努力しているところでございます。

首藤委員 この法律はいろいろ問題があります。しかし、非常に一歩進んだというのは、こうした問題に対して人道、人権面で非常にやっていかなきゃいけない、この姿勢を私は非常に高く評価するものです。その意味で、同じように、難民が出てくる、これを日本側でもやはり人道、人権の見地からしっかりやらなきゃいけないな、そういうふうに思うんですよね。

 何が問題かというと、私たちはアフガニスタンというと、ああ、アフガニスタンか、アフガニスタン語をしゃべっているのか、こういうふうに思いますよね。しかし、そうじゃないわけです。ハザラ人の人は、強いて言えばペルシャ語をしゃべる、ペルシャ語系の言葉をしゃべるわけですよ。実際に通訳する方はパシュトゥン語の通訳の方らしいんですよね。そうすると、今まで私たちはパシュトゥン人から追われて逃げてきましたなんというのを、ちゃんとこう通訳してくれないわけですよ。申告書にもそう書いてくれないわけですよ。ですから私たちは、こういう難民を受け入れるに当たっても、抑圧されてきた人たちの意見を聞くのに抑圧してきた側の言語で聞いていたら、絶対意味がないわけです。こういうところまで考えないと、本当の人道面での対応はできないんじゃないかと思っています。この辺はぜひ御尽力いただきたいと思います。

 もう一つ、このハザラ人というものは、結局石仏を守っていた人たちなんですね。ですから、守っていたがゆえにタリバンから追われて、迫害されて、逃げ惑っている。どうしてこういう人たちを真っ先に収監していくのか。どうしてこの人たちをもっといい待遇にできないのか。それは、だから、アフガニスタンというのはみんなタリバンで、怪しげなやつで、テロをするかもしれないということで逮捕しているのかもしれませんけれども、それは全くの事実誤認だと思うんですね。

 こうしたきめ細かさが、これからのこういう問題を解決するのに日本にとって重要なんじゃないかと思いますけれども、御意見いかがでしょうか。

森山国務大臣 難民として認定するということは、難民の地位に関する条約に決められている条件が当たっているかどうか、つまり、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるかどうかということを確定しなければいけないわけでございます。

 そのためには、今いろいろ先生の方が御説明くださいましたような難しい条件がございまして時間がかかるわけでございますが、一方において、入国するときに、これまた先生がおっしゃいましたような偽造旅券その他でもって入ってきていらっしゃるとすれば、そちらの方はまた別の審査あるいは調査、そして場合によっては帰っていただくという措置もしなければならない。

 これは両方、同時に並行して行うということは今までもやっていることでございまして、そのような事態がうかがわれますものですから、現在、不法入国の嫌疑で調べさせていただき、そのために収監させていただいているわけでございます。

首藤委員 不法入国していることは事実ですから、ぜひその辺をつまびらかにしていただいて、我が国としても人権面での対応をきちっとしていただきたい、そういうふうに考えております。

 私は、なぜそのことをわざわざこの質問の最後に取り上げたかというと、何かこうした問題は、決してアフガニスタンの中で起こる、パキスタンだけで起こる、その周辺だけで起こるという問題ではないわけです。我々の行為によっていろいろなものが出てくる。被災民という言葉がありました。被災民という言葉を通して、一言でも、いろいろな方が被災されていくわけですね、その行為によって。ですから、そうしたことに関しても、決してアフガニスタンやパキスタンだけではなくて、我が国においてもこうした問題に関しても、グローバル社会の今日ですから、そうしたことを我が国の中でもきっちりしていかなければいけないな、そういうふうに思っております。

 特に難民問題に関しては、今まで我々が難民難民と考えていたのは、それはどちらかというと他人がつくった難民でございました。例えば、これはクメールルージュ、ポル・ポト派が悪いんだ。あるいは、ベトナムで社会主義に合わない人が経済的利益を求めてボートピープルになって逃げ出していくんだ。要するに、原因は他人にあったわけです。そのことで日本が、ある意味においてその人たちを日本に受け入れていかなかった。ドイツにおいては十五万人ぐらいいるアフガン難民が、日本では本当に三十人、四十人しか受け入れられていない、そういう現実は確かにあると思います。

 ただ、今回は違うのは、この来るべき大きな難民の波に、つくり出した原因は我々にもあるということなんですよね。我々の行為が、ある意味でこの問題を生み出していることに関係しているわけです。ですから、今までとは違うレベルでこの難民対策というのを日本国内でもしっかりやっていかなければいけないと思うんですが、官房長官、いかがでしょうか、その御意見は。

福田国務大臣 今回の被災民のこともございますけれども、難民対策としては、やはり日本の人道的貢献、これは日本がなし得る道だと思いますので、懸命な努力をすべきだと思っています。

首藤委員 今、時間が終わりになりましたから、私の質問はここで終えますが、私が簡単に聞いたことでも、かように問題が多い。決してあらを探すわけじゃなくて、本質的な部分、大きな問題を抱えている法律だということがおわかりになったと思います。

 ですから、この法律は、日本の今までの安全保障論議を大きく一歩踏み出すものでありますから、慎重審議をして、特別法、時限法であれば、必ずこの中に個別の名称、固有の地域、固有の文化その他を入れて、きちんとした情報を組み込んで法律として提出していただきたい。それがだめならば、せめてその一つ一つに関して、現実の世界の展開に合わせて、事前の承認を国会で、国民の前で得るように努力していただきたい、そうした思いを持って、私の質問は終わります。

亀井(善)委員長代理 これにて首藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、達増拓也君。

達増委員 初めに、東祥三君外一名提出の国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案について質問をしたいと思います。

 この法案は、我が国の安全保障政策の一大構造改革になるような法案でありまして、今回のようなテロに対する我が国の取り組みを行うに当たっても、地に足のついた、腰の据わった、筋の通った対応を可能にする法律ということだと思いますけれども、まずは、この法案の提出の経緯について伺いたいと思います。

中塚議員 お答えいたします。

 国際社会の激しい競争の波の中にあって、資源が乏しく、また人口も過密な我が国にとって必要な条件というのは、やはり世界が平和であること、そして世界のあらゆる国と自由な交流と協力関係を維持することが必要であるというふうに私ども考えておりまして、そのためには、まず日本を守るためには、もちろん日米同盟は欠かすことができません。日本国防衛の第一線は、自衛隊プラス日米安保条約であるというふうに考えております。

 それに加えまして、日本の近くまたあるいは遠いところで世界平和を脅かすような状況が起きた場合、湾岸戦争の教訓を生かしつつ、国連の有力メンバーといたしまして日本はどのように対応をするべきかということを私どもずうっと考えておりまして、自由党はもとより、その前身である新進党のころより真剣に議論を重ねてきたわけでございます。この委員室におられます多くの議員各位も当時議論に参加をいただいたというふうに記憶をいたしております。

 まず第一に、日本は自衛権を放棄しておりません。ただ、そういった中でも、憲法九条のもとでは、基本的に、直接日本が攻撃を受けた場合のみに行使できる、個別的であれ集団的であれ、直接日本が攻撃を受けた場合、あるいはそのまま放置すればそういった事態に至る場合に限られるというふうに考えております。

 そして、いま一つは、日本が国際コミュニティーの責任あるメンバーとして、世界の平和が侵されそうになった場合に、あるいはそのおそれがある場合、何もできないということではなく、日本国憲法の理想が地球国家であり、そして世界の平和が、諸国民の共同作業によりこれを守っていく、そういった考え方に基づきまして、国際連合の総会または安全保障理事会によって武力行使容認決議等があった場合に、その活動には積極的に参加をしていこう、この二つのことを柱にしてこの法律の提案と立法というものを続けてきたわけであります。

 また、こういった考え方を実現するために、私どもは、平成十年、自自連立、または十一年の自自公連立におきまして、有事法制の整備やあるいは安全保障基本法の制定ということを政策合意に盛り込んだわけですが、それも今日まで実現をすることなく至っておるわけでございます。

 湾岸戦争の際、国連による武力行使容認決議があった、つまり、国際社会が一致結束して行動をしようということを決めたときでさえ、我が国は自衛隊を派遣することがなかったわけでありますが、今回、個別的自衛権を行使しているアメリカ、その協力のために自衛隊を派遣するということになりますと、同時多発テロは憎んで余りある行為ではありますが、これは、今までの日本の戦後の安全保障政策を全く根底から変えていくということにほかならないというふうに私ども考えておりまして、安全保障政策の原理原則を議論することなく、確立することなくそういったことを行うのは絶対に認めることができない。

 現時点で、私ども自由党の安全保障政策の基本的な考えを取りまとめ提出をした次第であります。

 以上です。

達増委員 この防衛国際協力基本法第六条について質問をいたします。

 この第六条は、国連の決議あるいは国連の関係機関の要請、これがあれば、国際の平和及び安全の維持もしくは回復を図るための活動、これは武力行使を伴う活動も含む、武力行使を含む、そういった活動に積極的に協力するものとする、あるいはまた、国際的な救援活動にも積極的に協力するものとするというふうに定められております。

 これは、要するに国連決議に基づいて行われる武力行使、国連決議に基づいて行われる武力行使であれば、憲法九条、武力行使は永久にこれを放棄すると定めている憲法九条に違反するものではないということなんでしょうか。

東(祥)議員 お答えします。

 達増議員の言われるとおりだと思います。

 御案内のとおり、この国際連合における武力行使容認決議、これは第七章四十二条から波及してくる問題であります。

 御案内のとおり、第一次世界大戦においてあの国際連盟が失敗していく。その後、御案内のとおり、一九二八年、ケロッグ・ブリアン条約、いわゆる不戦条約ができて、そして、この国際社会から戦争というものをしてはならないんだ、そういう条約ができ、日本はそれに加盟していたわけでありますが、第二次世界大戦のときに、結局その理想がもろくも破綻していく。そういう前提に立った上で、一九四五年、国際連盟の失敗を繰り返さないように国連憲章ができて、それに基づいて国際連合ができ上がったわけであります。

 御指摘の憲法第九条は、今日まで日本の政府は一貫して、第九条、つまり、自衛権の延長線上ですべての武力行使という問題を考えてきたんだろうと思います。

 しかし、今申し上げるとおり、国際社会が一致団結して、国際社会の平和と秩序を脅かすものが出てきたときに、国際連合、とりわけ国連安保理というのは世界の、国際の平和と安全を守る唯一の拘束機関ですから、国際社会が一致団結して、その平和と秩序あるいはその破壊者、これに対して制裁を加える、そのような決議をしたときに、国際社会の一員として日本がそれに積極的に参加協力していくことは当然のことであり、憲法第九条が禁止しているところの武力行使には当たらない、このように私たちは認識している次第であります。

達増委員 そうしますと、今回の九月十一日、米中枢テロに関して国連が、安全保障理事会が武力行使容認決議、湾岸戦争のときに出したような武力行使容認決議を出せば、この法案、防衛国際協力基本法のもとでは自衛隊の参加も可能ということになるわけでしょうか。

東(祥)議員 そのとおりであります。

 現在の政府案で議論されているもの、基本的には、国連決議における、武力行使容認決議がないにもかかわらず、あったかのようにいろいろと説明されておりますけれども、我々の視点からいうならば、国連決議があるならば、日本の唯一の武力組織であります自衛隊をいわゆる兵たん支援のために参加協力させる、それは当然のことであります。

達増委員 そうしますと、確認でありますが、この第六条、これは、従来の政府の憲法解釈、政府の行ってきた憲法解釈、すなわち、たとえ国連決議があっても武力行使を伴うような活動には自衛隊は参加できない、武力行使になるような活動に参加することは憲法違反である、そういう政府の解釈を変更するものと考えていいでしょうか。

東(祥)議員 先ほど御説明させていただいたとおり、国連安保理決議に基づく、武力行使容認決議が安保理でなされた場合、それは憲法第九条の延長線上におけるものとは異なりますので、その角度から論じれば、今までの政府が有しているところの憲法解釈とは異なった、新しい角度から新しい状況に適応する、そのような考え方を提示している、このように申し上げることができると思います。

達増委員 政府の憲法解釈というのも、要は、法制局による憲法解釈を、その時々の内閣が行政の執行の参考として、一種のガイドラインとして使ってきたということでありまして、その解釈が国民全体を縛るような性質を持っているものかは疑わしいと思います。

 今回のこの防衛国際協力基本法は、立法という手続によって、全国民を代表する国会議員が、国権の最高機関としての国会が、立法府としていわば新しい憲法解釈を立法措置として行うことになるわけでありまして、非常に民主的な手続の中で新しい時代にふさわしい憲法解釈をしていくことになると思います。

 他方、小泉総理大臣は、参議院の予算委員会で自由党の西岡武夫委員の質問に対し、解釈を変更するならすっきり憲法を変えた方がいい、ただ、憲法改正するエネルギーは今の政治状況で使っていいのか、政治家として判断しなければならない、そういうことを述べているわけでありますけれども、解釈変更をするなら憲法改正だ、そういう考え方については、提案者はどうお考えですか。

東(祥)議員 結論から申し上げれば、小泉総理は、憲法解釈を変更しない、憲法の枠内である、あるいはまた武力行使と一体化しない、このようなことを繰り返しているわけでありますけれども、実際的に、皆さん御案内のとおり、十年前、憲法の論議があれほどかまびすしく、かんかんがくがく議論した際、そしてサウジアラビアにも日本の自衛艦を派遣することができなかった、物資協力もできなかった、補給活動もできなかった。

 十年たった今日、そのときのその議論をさらに深めていくための種々の準備をさせていただいたにもかかわらず、何らそれに対しての具体的なものが出てこないで、突如として、この法律を出すことによって、物資協力もできる、補給業務もできる、あるいはまた自衛艦を派遣することができることとしている。これは、憲法解釈の変更をしないと言いながら、また、世界の諸国の皆さん方に全く理解できない方法で実質的な憲法改正を行っていることに匹敵するぐらいのことをしているのではないのか。なし崩し、また、その場しのぎの対応をしていく、このこと自体が、本当におかしなことをやっていると率直に思わざるを得ません。

達増委員 この防衛国際協力基本法第六条二項について質問いたします。

 ここでは、先ほどの一項、国連決議などがあれば武力行使を含む活動に積極的に協力するという、この項に規定する活動に対する協力は、「国際法規及び国際連合の定める基準その他確立された国際的な基準に従って行われるものとする。」と規定されております。

 そうしますと、いわゆる武器使用について、現在のPKO法でありますとか船舶検査法は、我が国独自の制約を武器使用に課しているわけですね。その結果、隣の方で活動している別の国の部隊、軍隊が攻撃を受けた場合にそれを助けに行くことができないでありますとか、船舶検査をしようとしてとまらない船を攻撃してとめることはできないといった、そういう我が国独自の制約が課されているわけでありますけれども、本法案、防衛国際協力基本法のもとでは、そうした我が国独自の制約ということは是正されることになるんでしょうか。

東(祥)議員 当然のことだと思います。

 先ほど、民主党の首藤議員がとてもいい話をされていたと思います。あくまでも国連決議に基づいて自衛隊を派遣する。それは、ただ単に日本だけが行う、自衛隊つまり武力組織を使った行動ではないわけであります。国際社会が一致団結して、それぞれの加盟国ができる範囲においてそれぞれの武力組織を送っていく。そのときに、武器の使用に関して日本だけが独自の制約を課しているとするならば、他の国々と共通のルールに基づいた動きができなくなるわけであります。

 先ほど首藤さんが言われていた視点というのは、政治家の究極の判断というのは何かといえば、それはシビリアンコントロールであります。自衛隊という武力組織を送っていく。送る以上、ちゃんと任務を遂行できる、その任務遂行の目的を明確にすると同時に、任務遂行に必要な権限を十分に付与しなければいけないわけであります。

 当然、その意味で、国連の決議に基づくPKO法あるいはまた船舶検査活動、そのときに日本だけ独自の武器使用ということになれば他の国々と共通の土壌で仕事ができなくなる、そういうことはあってはならない。その意味で、ちゃんとした是正をしなければならない、当然であります。

達増委員 国連の決議があって国連のもとで行われる活動には他の国連加盟国と同じような基準で参加する、いわゆる普通の国として諸外国とともに国際の平和と秩序を守ろうということだと思います。

 ただ、現実にそういう活動を展開する場合、考えてみますと、アメリカやイギリスの軍隊が持っている装備あるいは能力と、日本の自衛隊の装備や能力というのは決定的に違うわけでありまして、日本がそういうアメリカやイギリス並みのことをすることは非常に難しいのではないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

東(祥)議員 自衛隊のこれまでの経験、あるいはまた能力、それをにわかに私に判定させていただくのは難しいと思います。それは、防衛庁長官なりあるいはまた自衛隊の方々が一番よく知っていることだと思います。

 そういうことを踏まえた上で、当然国連決議に基づく、そして国際社会の平和と安定を再構築していくために、日本としてできることをそのとき選択していけばいいと。米国あるいは英国、そしてその他のNATOの一部の国々はそういう経験を踏まえてちゃんとやっているわけですから。自衛隊として経験がないところに行けということは、これまたシビリアンコントロールを大きく僕は逸脱する問題だと思います。

 そういう判断をちゃんと踏まえた上で、選択肢を選んだ上でできるものをやらせればいい、それが基本的な考え方であります。

達増委員 この防衛国際協力基本法の背景にあると思われる普通の国という考え方、この普通の国論についてはかなり誤解を受けているところもあると思っておりまして、軍国主義化ではないのか、アメリカ、イギリス並みのそういう装備、能力を身につけて世界のあらゆることに介入していく、そういう、日本が軍国主義化することにつながるのではないかという批判もあるわけですけれども、そうではないということが今確認できたと思います。

 さて、もう一つ、この第六条関係について伺いたいんですけれども、これは国連中心主義と呼ばれる理念が背景にあるものだと思います。しかし、この国連中心主義に対しては、今、拒否権というものがあって、安保理常任理事国の拒否権があってなかなか国連としての合意というのは難しい、そういう、国連を過大評価してはならない、国連中心主義には限界があるという批判もあるわけでありますが、この点はどう考えるでしょうか。

東(祥)議員 おっしゃる批判があるのはよく存じ上げております。しかし、それであるからこそ逆に、国連を中心とした国際社会の秩序づくり、それに積極的に貢献していくという日本の明確な意思を示す必要があるんだろうというふうに思います。

 大別して言えば、国連に対して神棚のようにとらえている方々もいらっしゃいます。あるいはまた、国連、それも結局、安保理メンバーである超大国によって支配されていってしまっていて、基本的に、いざというときに何も機能しないのではないのか、こういう意見もあります。また、等身大に国連をとらえている方々もたくさんいらっしゃいます。

 日本として、先ほど報告させていただいているとおり、日本が一九五六年、国連に加盟していくわけですけれども、そのときの思いを今改めて認識すると同時に、皆さん御案内のとおり、今年度におけるノーベル平和賞が、国連として初めてノーベル平和賞を与えられた。それは、世界がますます複雑化していくそういう状況の中で、国連がもっとイニシアチブを発揮して、そして国際の平和と安全のために闘ってくれという国際世論のある意味で反映であろうととらえられます。

 その意味で、日本として、国際連合の主要なメンバーとして、この国連を中心とする国際社会の秩序体制に積極的に努力していくことは極めて重要なことなんだろうというふうに思います。

達増委員 もう少し防衛国際協力基本法について質問を続けさせていただきたいと思います。

 第三条について伺います。

 ここは「自衛権の発動としての武力の行使」という題がついておりまして、「自衛権の発動としての武力の行使は、我が国に対して直接の武力攻撃があった場合及び我が国周辺の地域においてそのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態が生じた場合に限り、行うことができる。」と定めておりますが、ここで言う「自衛権」には、個別的自衛権のほか、集団的自衛権も含まれるのでしょうか。

東(祥)議員 結論から申し上げれば、当然であります。個別であろうが集団であろうが、その自衛権そのものに対しての大きな区別はないんだろう、私たちはそういうスタンスに立っております。

 ただ、その上で、十九世紀の戦争、また二十世紀の戦争を見たときに、すべて自衛権の名のもとに戦争というものが行われてきたのではないのか。日本の場合もそうでありました。第二次世界大戦のときに、自衛権の名のもとに大陸に進出し、そして結果として三百万人強に上る我が同胞たちがとうとい命を失っているわけであります。

 そうすると、自衛権の問題を余り積極的にとらえていくと、やはり昔の秩序の状況に戻っていってしまう。よく私たちが申し上げているとおり、自衛権、集団的自衛権も認めるけれども、しかしそれは抑制的に、自制的にとらえていかなくちゃいけない。

 一九六〇年代後半に起こりましたあのベトナム戦争、ベトナム戦争は、アメリカを初め、いわゆるANZACという自由主義連合に入る国々が積極的に関与していった問題であります。これも、自衛権の名のもとにベトナム戦争が行われました。国連の決議は、当時冷戦構造下で発布されなかった。その結果どういうふうになっているのか。

 私たちの視点は、集団的自衛権を認めるけれども、それを抑制的にとらえて、例えばベトナム戦争型の、国連加盟国の一部の国々が自衛権の名のもとに戦闘行動を起こしたときに、そのときにすぐさま私たちはそれに参加することはない、そういう明確な規制をしいていることを付言しておきたいと思います。

達増委員 そうしますと、二点、今のに関係して確認をさせていただきますと、まず、従来の政府の憲法解釈といいますのは、我が国は集団的自衛権を持ってはいるけれどもそれを行使することはできない、集団的自衛権は持っているけれども行使することはできないというのが伝統的な政府の憲法解釈だったわけですが、この第三条は、集団的自衛権の行使というものも認めている点で、かかる憲法解釈を変更するものと考えていいんでしょうか。

東(祥)議員 基本的に、おっしゃるとおりであります。

 できるというふうにしておいて、そしてそれを行使する段階になったときにどのように使うのか。私たちの基本政策というのは、集団的自衛権の行使を有し、また行使をすることができるけれども、あくまでも、日本が直接攻撃されない限り、あるいはまたその事態をそのまま放置しておけば直接攻撃されるようなおそれのある場合に限る、そういう抑制を置いているわけであります。

 この視点から政府提出法案を見ていくと、自衛権の行使も認めていない、にもかかわらず、唯一の武力組織であります自衛隊を何に基づいて動かそうとしているのか、これすらもはっきりしない。そこにまさに今日の、ある意味で悲劇といいますか、憲法解釈を変えない変えないと言っておきながらなし崩し的に変えていく実態、また、今日までずっと続いてきている日本の政治手法、それを散見というか十分にかいま見ることができるのではないのか、このように思います。

達増委員 政府提出のテロ特別措置法に関するコメントもいただきましたので、そちらの方に関連した質問をさせていただきたいと思います。

 実は、この政府案にも自由党案に劣らず野心的なところがありまして、従来の日本国の安全保障政策というものから大きく逸脱しているところがあると思いますけれども、一方で、何も変わらない、何も変わらない、何も変えない、何も変えないという説明もありまして、実際、大事なところで変わっていないところも多いと思います。

 そこで、まず外務大臣に伺います。

 今回のこの法案が目的のところで引用している安保理決議の一三六八でありますが、今回のアメリカ中枢テロの後に出た決議でありますけれども、湾岸戦争のときに最終的に出された武力行使容認決議と違いまして、湾岸戦争のときのものは、国連憲章第七章のもとに行動しと、第七章というのは国連の強制措置を規定しているわけでありますが、そういう強制措置のことを引用した上で、加盟国に対して、平和及び安全の回復のためにあらゆる必要な手段をとる権限を与えるという、これをもって武力行使容認決議と言われているわけです。そして、そのことを履行するためにとられる行動に対して、すべての国家に適切な支援を与えることを要請するという要請を安保理が行っている。こういう非常にかちっとした国連中心の対イラクの態勢が湾岸戦争のときにつくられたわけでありますが、それに比べると、今回のテロに対して出された安保理決議一三六八というのはまだ足りないと思うんですね。

 第五項のところに、「二千一年九月十一日のテロ攻撃に対応するため、」云々「あらゆる必要な手順をとる用意があることを表明する。」というふうに書いてあります。「あらゆる必要な手順」、これはステップという英語が使われておりますが、そういうステップをとる用意があることを表明する。これはあたかも、まだあらゆるステップを踏み終わってはいない、これからさらにステップを踏んでいかなければならない、経済制裁でありますとかさらなる武力行使を含む制裁、そういう国連憲章第七章にあるような強制措置を安保理としても決議して、各国に要請して対テロ包囲網をより高度なものにしていく、そういうことが求められるのではないかと思うんですけれども、そういうさらなる国連安保理決議が出るよう、我が国として努力していかないんでしょうか。

田中国務大臣 お答えする前に、今、国連中心主義の自由党さんがお考えになっていらっしゃるこの新しい法案の説明を伺いましたけれども、集団的自衛権の行使はできるというふうに認められていて、そしてその上でもって抑制的に使っていこうという御趣旨の法案かなというふうに理解をいたしました。初めて伺いましたので不十分かと思いますけれども。

 お尋ねの件でございますけれども、今回のテロに関しましては、今一三六八も絡めておっしゃいましたけれども、これは米国におけるテロ攻撃に対する非難決議であるわけです。九月十二日に採択されたこの決議は、「憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、」と述べておりまして、自衛権が国連憲章五十一条で、先ほどほかの議員さんのときには読みましたけれども、加盟国の固有の権利とされていることを確認いたしております。

 その後、米国やイギリスですけれども、両国による軍事行動は、国連憲章五十一条に基づく個別的及び集団的自衛権の行使であるとして安保理に報告をしてございます。これを受けまして開かれた安保理の非公式協議においては、米英による個別または集団的自衛権の行使に対して批判的な発言をする安保理理事国はいなかったというふうに承知をいたしております。要するに、米英の報告に対して反対する者はなかったという意味ですけれども。

 このように、安全保障理事会自体が国連憲章の第七章、先ほど委員が触れられたことですけれども、そこでの集団安全保障措置を求めるには至っていないという証左ではないかというふうに考えております。

    〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕

達増委員 湾岸戦争のときにも、最初、アメリカが砂漠の盾作戦ということでサウジアラビアに駐留したときには、サウジアラビアを守るんだと、集団的自衛権、自衛権で説明したわけですね。ところがその後、安保理決議が次々に重ねられていって、最終的に武力行使容認決議までいって、もうそうなると、多国籍軍で、自衛権だ、集団的自衛権だと言って行動する国はなくなったわけであります。ところが、今はまだそこまで至っていないので、アフガニスタンで軍事行動を行っている国々は自衛権、自衛権と言っている、それでいいのかということであります。

 日本は、資源、食糧、そういったものを海外に大きく依存をしている国でありまして、他のどんな国よりも世界全体の平和と安定に関心と責任を持たなければならない。例えばアメリカという国は、いざとなれば鎖国をしてでも生きていける国なんですね。アメリカは広大で、資源も豊富、食糧も豊富。ところが、日本はそうではない。

 ですから、例えばアメリカや他の国々が、これはそれほど国連の体制を高度化せずにやらなくても、伝統的な、もう十九世紀、そのころから使われている自衛権でやっていいと判断するかもしれませんが、日本政府としては、それ以上に踏み込んだ、国際的な体制を高度化してこのテロに臨んでいくという主導権をとっていいはずなんですね。なぜそういうことをしないんですか。これも外務大臣にお願いします。

田中国務大臣 お待たせしました。

 我が国も、国連を重視しているということにおきましては何ら違ってないというふうに思いますし、アメリカについて今達増委員のおっしゃったことも、私もそれは正しいと思っております。

 けれども、こうした安全保障理事会自体が、これ自体が国連憲章七章の、先ほども申しましたけれども、もとでの集団安全保障措置をとる考えはない中でもって、多国籍軍、いや、これは湾岸のときのことですけれども、それからまた、設立されてない国連軍、これは現実にはまだ出てきておりませんから、それによる対応も議論をするという必要性は今のところはちょっと考えられないのではないかというふうに考えます。

達増委員 日本は今残念ながら安保理のメンバーに入っていないわけでありますけれども、安保理のメンバーに対する働きかけというのはできるはずなんですね。

 それは、常任理事国の五カ国のみならず、例えばアジアからは今シンガポールとバングラデシュが安保理に入っています。シンガポールは我が国と自由貿易協定を結ぶ東アジア経済における盟友でありますし、バングラデシュに対しては我が国は経済援助を熱心に行っている。どちらの国も我が国の主張に対し聞く耳を持たないということはないはずでありますし、そもそも、国連において、アメリカを除けば我が国は世界で一番資金拠出をしているわけでありまして、そういう我が国が、たとえ今安保理のメンバーでないとしても、安保理の決定に関してはいろいろな関与ができるはずなんです。したがって、もっとそういうシンガポールやバングラデシュから安保理の中の事情を聞いたりとか、そして、日本としてはこうした方がいいと思っているというやりとりをまさに進めていかなければならないと思うんですね。

 特に、外務大臣はきのう、おととい、シンガポールに行ってこられたと思うんですが、まさにそういう対話をシンガポール側とするチャンスであったと思うんですが、シンガポールでのきのう、おとといの対話も含め、日本政府としての安保理メンバーへの働きかけというのは行ってないんでしょうか。

田中国務大臣 先ほどちょっと、関連するんですが、別のようですが、ほかの委員さんが、小泉総理は余り安保理入りに御熱心ではないんじゃないかというふうに思っておられるということがありましたし、以前もそのようなお尋ねもあったと思いますが、そんなことは決してないと思いますし、日本としても、このような安保理決議を踏まえて、そして安保理のメンバー国とも協議をしながら国際社会の取り組みに積極的に参加していきたいという考えはございます。

 それから、これはちょっとメモを書かなかったんですが、きのう、ジャヤクマールというシンガポールの外務大臣と、きのうといいますかけさ方といいますか、お会いすることがありまして、それでいろいろと話をしましたけれども、直接安保理のことは話をしませんでしたけれども、私どもがこういうふうな法案を今回のテロでつくろうとしている努力の問題、それから、シンガポール自体もどういうふうなスタンスで取り組もうとしておられるかということにつきましては話を伺いました。

 ただ、国連を私たちも本当に重視していかなければいけないんだということは考えておりますし、いろいろとまたアドバイスもいただければというふうに思っています。

達増委員 シンガポールも日本と同様、世界全体の平和と安定があって、かつそれに基づいた自由貿易システム、そういうグローバルな経済システムがあって初めて繁栄する国でありますし、また、テロが起こったときに単独で個別的自衛権で対応することができない国、日本と共通部分も持っていると思いますが、ジャヤクマール外相は、シンガポールとしてどういうふうに今回のテロ、特に国連決議について取り組むと具体的におっしゃっていたでしょうか。

田中国務大臣 細かく、一三六八につきましてとか一三七三についてというふうなことは話をしませんでしたけれども、基本的には私どもとスタンスが同じでありまして、そして、一二%、一五近くでしょうか、イスラム系もいるんだという中で、やはりそのイスラミックの方たちとテロリズムは完全に別であるから、それを分けて国際の枠の中でもって今回は行動するとおっしゃいましたから、結論からいいますと、今回の国連決議に従う、従うというか、それを認めるというお立場であるというふうに理解をしております。

達増委員 外務大臣にもう一つ確認したいのは、今の答弁の前の答弁の一番最後のところで、国連を中心とした体制、日本としても努力していきたいと。これは、アメリカよりもさらに前向きに国連中心に高度な体制をつくっていくことを否定しないと理解してよろしいでしょうか。言いかえますと、決してアメリカより前に出ない、そういうことではないなということを確認したいんですが。

田中国務大臣 毎回申し上げることになりますけれども、最終的には、自主的に国連に対する外交も日本は取り組んでいきたいということでございます。

達増委員 もう一度伺いますけれども、アメリカよりも前に出ることが絶対にないとは言わないと、これは確認してよろしいんでしょうか。つまり、常にアメリカの後塵を拝して国連での対応を行っていくというわけではないと確認してよろしいんでしょうか。

田中国務大臣 決してアメリカの後塵を拝していこうなんて申しておりませんので、やはり自主的に国際社会の中の国家として判断をしていく、当然のことだと思います。

達増委員 今のは非常に前向きな答弁で、世界に対しても非常にいい内容だったと思います。どうも今までの政府の対応を見ていますと、とにかく自衛隊を出しさえすればいい、自衛隊を出しさえすればすべてよしというような発想で、とにかく今のこの法律を通すことに専念し、それ以上に、この今起きている戦争全体をどういう方向に持っていこうかという視点が欠落していたと思うんですね。

 この戦争、アメリカ政府高官も、一年は続くであろうとか、それ以上続くかもしれないというようなことを言われておりますので、さらなる国連安保理決議を出していくタイミングというのは、この後出てくるはずであります。湾岸戦争のときも、最初は各国、自衛権ということで動いていたのが、途中から国連憲章七章の下での共同の行動ということになっていったわけであります。そうしたことは、単に観念的に、理想的にそうしなきゃならないというだけではなく、長期化するかもしれない今の戦争を、一人でも犠牲者をなくしていくためにも重要であります。

 なぜなら、アメリカがあくまで個別的自衛権の行使という、アメリカの戦争という図式で戦争を続けてしまいますと、どうしても、これをアメリカ対イスラムという図式にしてしまおう、そういうテロリスト側の宣伝が効果を発揮してしまう。本来、ビンラディン、その仲間たちも、アメリカの中枢に対してあれだけの攻撃をすればアメリカが報復することは予想していたはずであります。その報復攻撃をもってアメリカとイスラムの世界戦争が始まったと宣伝をして、世界じゅうのイスラム教徒、イスラム諸国民をアメリカとの戦争、既存の国際秩序の破壊に駆り立てるという、そういう意図をテロリスト側が持っているとすれば、決してそういう図式に持っていかない、国際社会全体対テロリズム、そういう枠組みの中に閉じ込めておかなければならないわけであります。

 ところが今、アメリカの戦争、自衛権の行使ということで戦争が推移してしまっているがゆえに、パキスタンの中でありますとか、あるいはインドネシアといった現場から離れた国においても、対米デモ、アメリカに反対する大衆運動というものが広がりつつあるのではないでしょうか。この辺の事実関係、外務大臣に伺いたいと思います。

田中国務大臣 いずれにしましても、ブッシュ大統領もおっしゃっていますように、これはテロリズムとの闘いであって、先ほど私も言いましたけれども、イスラムとの闘いではありません。

 したがいまして、日本も、今現在は韓国に行っておられますけれども、小泉総理の訪米ですとか、それから各国へいろいろな特使の先生方、ここに鈴木先生もおられますが、いろいろな方々に行っていただきまして外交努力をしていただいて、そういう機会を通じて、そういう私どもの気持ちというものは強調して世界に説明をしてきております。

 そしてまた、国連の場におきましても、今回のテロ行為を、国際の平和と、もう再三この場で繰り返されている言葉でございますけれども、平和及び安全に対する脅威として認める安保理決議、先ほど来言っている決議ですけれども、それが採択されておりますから、既にテロリズムに対抗する一致した意思というものが示されているというふうに認識いたしております。

達増委員 これはニュースで放映されていたのを見たのですけれども、インドネシアで、タリバンの味方をしよう、タリバンを助けに行こうという義勇軍を募ったところ、三百人集まったと。そういうことを一人でも少なくしていくことが、やはり主体的に、今回のこのテロとその後の状態に対する日本政府としての姿勢の基本になければならないと思います。

 政府の考え方であれば、国連の安保理決議が出たとしても、武力行使は憲法違反ということで、そういう意味で、国連の安保理決議は日本の自衛隊を出す出さないの問題には余り関係ないということかもしれませんけれども、そうではないので、自衛隊を出しさえすればいいという問題ではないので、この世界全体の動きをどういう方向に持っていくかという視点で臨んでいかなければならないと思うわけです。

 そういう意味で、自由党案は、まさに国連決議が出たときには、各国と足並みをそろえ、他の国連加盟国がやることと同様な活動を行うことができるという内容でありますから、この点は、この特別委員会の委員の皆さんに対して、その真剣な検討を注意喚起したいというふうに思います。

 今回の戦争、グローバリズム対テロリズムの闘いと言うこともできると思うのですね。グローバリズムというのは、世界を一つにしていこうという運動でありまして、もう技術的には、交通、通信、世界は一つ、経済活動でももう世界は一つ。しかし、その一つになる世界がアメリカ主導で、アメリカの価値観、アメリカ中心の経済システム、アメリカの軍事力によって支えられる、そういうグローバリズムになるのであれば、そんなグローバリズムには反対だということで、九九年のシアトルのWTO会議でも反グローバリズムのデモが激しく行われましたし、ことしのジェノバ・サミット、これは外務大臣も行かれたと思いますが、あそこでも反グローバリズムがしょうけつをきわめた、激しい過激行動が行われた。今回のビンラディンとその仲間たちのテロ攻撃も、そうしたグローバリズムへの攻撃と言えるかもしれません。

 確かにグローバリズム、今のグローバリズムというのはまだまだ不完全でありまして、改善すべき点は多々あるでしょう。しかし、今のグローバリズムは、改善の対象ではあるけれども破壊の対象ではない。したがって、グローバリズムそのものを破壊しようとするビンラディンの行動には何の理もないところであります。大量の無差別破壊・殺人である点で許されないのはもちろんですけれども、理念的にも理がないものであるということを我々は強調していかなければならないし、そのためには、我々自身がそういうグローバリズムをよりよいものにしていくという姿勢を常に示すべきだと思います。

 さて、外務大臣に伺いますけれども、この政府テロ特別措置法は、周辺事態安全確保法とPKO法の人道援助部分を切り張りしてつくったようなものでありまして、まず前半分の部分は、周辺事態法をそのままスライドさせたような内容になっております。ただ、その周辺事態法でありますけれども、これを日米の安全保障協力体制の中で確立するのには五年近い年月がかかっているわけであります。

 そもそも、平成七年の防衛大綱の改正で、防衛力の任務の中にそういう周辺という言葉を入れるところからスタートし、翌年、橋本総理とクリントン大統領の日米安全保障共同宣言によって、周辺事態に対応できるようガイドラインを見直さなければならない、そしてガイドラインの見直しの作業があって新ガイドラインが成立、そしてようやくこの周辺事態の国内法がつくられていったわけであります。

 そして、この周辺事態法ができるときには、いわゆるACSAと呼ばれております、日米の間で後方支援、そして物品や役務を提供する際の日米間の二国間の取り決めが結ばれた上で、国内的に周辺事態法をつくって、同時に協定の改定も成立をさせて、国内法的にも、二国間関係でも周辺事態に対応できる体制をかちっとつくってやったわけであります。

 しかも、その周辺事態に対しては、日米間の包括的なメカニズム、調整メカニズム、そういった手厚い体制がしかれているのでありまして、外務大臣、防衛庁長官、アメリカ側の外交担当大臣、防衛担当大臣、2プラス2の会議から始まって、次官級会議、局長級会議、そして現場の担当者会議、そういう中で、平素から密接な情報交換、計画を練る、そういう作業を平素からやった上で、さあ、周辺事態があったときには協力しましょうというシステムになっているわけですね。

 今回、国内法的には、そういう周辺事態法の枠組みをスライドさせて、インド洋ですとかパキスタンですとか、正確に言えば公海や他国の領土内でも、周辺事態法がやると言っているようなことをやれるような国内法にはなっているんですが、それに伴う二国間の協定はありません。そして、それに伴うメカニズムというものもきちんと動いていないんだと思います。

 こういった体制で、法律だけつくって果たして有効な日米の防衛協力というのができるんでしょうか。これは外務大臣に伺います。

田中国務大臣 包括的なメカニズムは余りできていないというふうに達増委員は思っていらっしゃるかもしれませんけれども、一九九〇年だと思いますが、2プラス2というのができておりますし、今までどれだけ機能していたかということについては、個人的な判断の差もあるかと思いますけれども、でも、やはり、結果的には重層的な協力体制というものは構築されてきているのではないかというふうに認識はしております、私は。

 それで、この法案につきましてですけれども、関連の、先ほど来ずっと言っております安保理の決議を踏まえまして、国際的なテロの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに我が国として積極的かつ主体的に、もう毎度総理が言っておられる主体的に寄与することを目的としているものでありますし、本法案の成立をお認めいただいた暁に、まず御審議いただいているわけですが、これが成立すれば、そのもとで米国等に対する協力支援活動等の実施が可能になります。

 ですから、本法案は日米安保体制と直接関係するものではありませんということは先ほどもお答えしました。でも、今般の米国の同時多発テロ発生以来、九月十一日、もうきのうのWTOでもどこでも九月十一、九月十一という言葉はすぐ合い言葉のように、すぐぴっと世界じゅうがわかるほどの一種の符牒みたいな言葉になっていましたけれども、あの日以来、日米間ではこれまで緊密に連絡協議を行ってきていますし、本法案に基づく日本の協力支援活動等の実施に関してアメリカ政府と行うべき調整のあり方については、今後、アメリカ方とさらに協力、協議をしていく必要はあるというふうに思っております。

達増委員 最後の結論部分は全くそのとおりでありまして、今後やっていく必要はある。既にやってなきゃおかしい話でしょう、これは。

 周辺事態法のときは、国内法ができるもう何年も前からそういう協議を重ねて、また平素からの協力もやると決めていたのに、今回は、ではまだ全然、この新法のもとでの日米共同作戦、後方支援とかそういうことについては何の協議もまだやっていないんですね。これは外務大臣に伺います。

田中国務大臣 今も発言の途中で申し上げましたけれども、今、この法律を御審議いただいているわけですから、ですからこれが成立すれば、そのできた暁には速やかにということでございます。

達増委員 この法案は、国連決議との関係で問題があるのと同時に、日米安保体制という観点からも非常に問題があるわけであります。

 つまり、日米安保条約というのはそもそも日本と極東の平和と安全のための枠組みでありまして、周辺事態が加わって、日本の固有の領域とその周辺、またアメリカの基地使用については極東、そういう地理的範囲あるいは事態が定められているんですが、それを超えてインド洋とかパキスタンとかということは、長い日米の安全保障協力の世界では全然想定されていないんですね。

 したがって、ガイドラインにもそういう話は出てきませんし、周辺事態法の「目的」のところにははっきり、安保条約の「効果的な運用に寄与し、」というふうに書いてありまして、あくまで安保条約の、世界の中での周辺事態法という位置づけがなされているんですが、このテロ特別措置法はそういう安保条約への言及が全くありません。

 先ほど、同僚委員の質問に対して、安全保障条約とは直接関係ないとおっしゃいましたけれども、日米安全保障条約の外の世界に、日米安保のもとで、そういう重層的なメカニズムの中でようやくやろうとしている日米の協力、作戦行動というものを日米安保の枠の外で果たしてできるのか、やっていいのか、これを外務大臣に伺いたいと思います。

田中国務大臣 申し上げましたが、日米安保は、いみじくも今委員がおっしゃったように、日本及び極東の平和と安全の維持のためにでき上がったものであります。それはもう御案内のとおりです。

 ところが、今回の新法は対テロリズムで、国際的な枠組みがそれに対抗するということでもってでき上がっていますから、ですから、この二つの法律といいますか、日米安保と新しい新法、目的が異なるので直接の関係はないんです。ないけれども、結果として日米関係をやはり強化するといいますか、前進させるといいますか、そういうふうな結果になるという含みはあるというふうに思います。

達増委員 法律というのは、その目的だけを定めるものではなく、内容を定めるものでありまして、この政府の新法は、目的は安保条約と関係ないかもしれませんが、内容は、アメリカとはっきり名指しはしていませんが、これはもうアメリカという前提で議論していいと思いますけれども、アメリカとの安全保障協力、アメリカとの共同作戦について定めているわけですね。それは、周辺事態法をそのまま持ってきているわけですからそうなわけであります。

 ただ、周辺事態法はあくまで日米安保体制という枠の中で構築されてきた体系なんですけれども、それをいわば根なし草のように、日米安保体制の、これは、安保で何かあれば地位協定が出てくるとか関係のいろいろなメカニズムが働くとか、そういう中で行われるものと、この新法が想定している日米協力というのは全然違うんですね。そういう根なし草の中で、いわば日米安保と別の世界に新しい日米協力の内容をつくっていく、それはいいんですか。これはもう一度外務大臣に伺います。

    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕

田中国務大臣 日米安保条約と今の新法案、これとの違いははっきり申し上げましたけれども、決して別に日本はアメリカ追随だけでこれからもやっていこうということではなくて、主体的にと総理が何度もおっしゃっていると先ほど申しましたのもそこのところでございまして、やはり国際社会、NATOとか、もちろんアメリカも入りますが、アメリカだけではなくて、そういう米国以外のすべての国際社会、テロと対抗しようというところとの関係も強化をしていくという側面もございます。

達増委員 防衛庁長官にひとつ伺いたいんですけれども、例えばイギリス、今回アフガニスタンにどんどん軍を送って、万単位の軍を送って、また爆撃にも参加しているわけですけれども、イギリスの戦略防衛見直しという防衛政策の基本、その中にイギリス軍隊の任務というのが規定されているんです。

 これは、まず「平時の治安維持(テロ対処支援)」というので始まって、「海外領土の保全」、「防衛外交」とかいろいろあるんですが、「NATO域外の地域紛争・危機対処」とか、はなから世界を舞台に軍を派遣して、海外領土とかもあって、ディエゴガルシアももともとイギリス領土でありますし、そういう軍の任務がイギリスについては規定されている。

 翻って、平成七年に改定された我が国の新防衛大綱によりますと、我が国防衛力の役割は三つしか書いていないんです。一つは、「我が国の防衛」、これは当然。次に、「大規模災害等各種の事態への対応」と書いてあって、これは、前段は大災害が起きたときの活動、後段のところに「我が国周辺地域において」云々と、周辺事態についてここに入っているわけですね。三番目には、「より安定した安全保障環境の構築への貢献」ということで、PKO活動ですとか対話、交流、軍縮、軍備管理の促進というようなことが書いてあって、周辺事態法の中身のようなことを日本とその周辺から離れてやるなんということは自衛隊の任務に書いてないんですね。いいんですか、今回、そういうのを法律で定めて。

中谷国務大臣 その三本柱の一つで、より安定した国際環境の構築という部分に入ると思いますが、今回、その法律がないために、現在この法案を出して御審議をいただいております。

 この目的というのは、今回のテロ攻撃が国際の平和及び安全に対する脅威と認め、テロの実行者及び支援者の処罰及びテロ行為の防止のための国際社会の努力を求めることを内容とする国連安保理決議を踏まえて実施されるというものに限っておりまして、まさに今回のテロ行動に対して、国際社会の中で行動し、国際安全保障環境を整備する、それの一環だと私は思います。

達増委員 今回の政府新法の出てきた経緯を確認しますと、九月十九日の小泉総理の記者会見で七項目を発表した際、その中に、医療、輸送、補給等の支援活動の目的で自衛隊を派遣するための、米軍等に対し派遣するための所要の措置を講ずると。テロが十一日でありますから、そのほぼ一週間後に突然出てきた話なんですね。

 恐らくアメリカとの、周辺事態法をつくるときにやったような密な交渉もなく、日本政府部内、内閣の一部でとにかく急遽つくったものでありましょう。同時にできた項目で、情報収集のための自衛隊艦艇の派遣をするというのは、これは、すると十九日に決めましてそろそろ一カ月たちますが、まだこれは行われていない、ひょっとしたらやらないかもしれません。したがって、その九月十九日の時点で政府がやらなきゃならないと思っていたことは、やはりちょっとこれは見直した方がいいと思います。

 まだ、戦争状態、一年以上続くかもしれません。したがって、本当に日本は、日本だけのことを考えていては主体性は出ないのですね。自衛隊を出しさえすればいいという日本だけのことを考えるのではなく、世界をどうしていけばいいのか。世界を客体として初めて日本が主体となるのでありまして、日本がどうすればいいということだけを考えていたのでは、結局、日本は一〇〇%客体になって主体性を失ってしまう、その危惧を申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

亀井(善)委員長代理 これにて達増君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。

 今提出されております特別措置法案なんですが、これは、戦後初めて戦争支援のために自衛隊を海外に送り出す、こういう中身になっております。それだけに、憲法の平和原則にかかわる極めて深刻な内容や問題を持つと思うのですけれども、私は、きょうはこの法案の問題点について、政府側からいろいろ説明もしていただいて、ただしていきたいというふうに思っております。

 今度の法案なんですけれども、目的の第一条のところで、九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃、テロ攻撃、これによってもたらされている脅威の除去に努めている、こういう活動に対して我が国が必要な対応の措置をとれるというふうにしたものですけれども、これは、現在、アメリカとイギリスがアフガニスタンへの軍事攻撃を続けておりますけれども、これらへの対応措置の検討や実施というのは、この法案によってできるというふうに考えてよろしいのでしょうか。官房長官にお願いいたします。

福田国務大臣 一言で言えば、できると思います。

 我が国が、我が国の法制その他いろいろな諸条件の中でもってでき得る限りのことをする、できる範囲で行う、こういうことであります。もとより、武力の行使をするわけでございませんし、憲法に抵触するということでない、憲法の枠の中で行う日本の国際協力であるという観点からお考えいただきたいと思います。

山口(富)委員 きょうは、憲法の枠の中で行えるかどうかについて議論してまいりたいと思うのですけれども、中谷防衛庁長官にお聞きいたしますが、対応措置の中で、協力支援活動として別表に中身が書かれております。補給、輸送、修理及び整備、医療、通信、全部読み上げませんが、七つありますね。

 この備考の欄に二として、「物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。」こういうふうに記載されております。これは、なぜ、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備、これを含まないとされたのか、お尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 この法案の支援項目を作成する場合に、前の周辺事態法の、ガイドラインの法案の内容を参考とさせていただきました。そのガイドライン法案の中にも、御指摘のような、発進準備中の戦闘機に対する補給は行わないというふうに書いておりますが、なぜ書かれなかったかというと、当時のガイドラインの審議の中で、審議というか調整の中で、米軍からそのようなニーズがなかったという点で外しておりまして、今回も同様に、そのようなニーズがないのではないかということで外したわけでございます。

山口(富)委員 今、中谷防衛庁長官から答弁いただいたのですけれども、周辺事態法の問題でいいますと、あの法律が想定した事態と今度の事態というのは全く異質なものなわけですね。そのことをまず指摘しておきたいと思うのです。

 それで、重ねてお尋ねしますが、ニーズがないということなんですけれども、それは要請がないというふうに考えてよろしいのですか。

中谷国務大臣 要請がないというふうに考えております。

山口(富)委員 備考の中で、発進準備中の航空機への給油、整備はだめだというわけですけれども、そうしますと、発進準備中でない航空機への給油、整備というのはできるということに当然なるわけですね。当たり前のことですけれども、確認したいと思います。

中谷国務大臣 その活動が行われている場所が、戦闘行為が行われていない地域でありましたら可能であるというふうに思います。

山口(富)委員 戦闘行為であるかないかというのはもう一度議論したいと思うのですが、私がお尋ねしていますのは、今のお話ですと、発進準備中でない場合はできる。そうすると、先ほど、ニーズがないからということでこういうふうに書いてあるんだというお話があったのですけれども、今の御説明は、ニーズがあるかないかにかかわらない御説明ではないのでしょうか。

中谷国務大臣 基本的には、戦闘行為が行われていない地域における補給はできるわけでございまして、その航空機がどのような目的を持って行くか行かないかにかかわらず、戦闘行為が行われていない地域におきましては補給ができるということでございます。

山口(富)委員 そうしますと、それをもう少し広げますと、ここには航空機しか明記されておりませんけれども、艦艇や戦車などの場合は、ここに書かれているような戦闘作戦行動中のものに対しても給油や整備ができるということになるのでしょうか。

中谷国務大臣 艦艇等につきましては、非常に速度が遅くて、そのまま戦闘行為というものに参加することは考えられにくいので、戦闘機のようなことは考えておりません。

 それから、戦車等につきましても、特にそういう制約は課しておりません。

山口(富)委員 今のアフガニスタンの軍事攻撃の事態を見ましても、艦艇や戦車、今地上戦ということがもう言われておりますから、これへの、戦闘作戦行動中のものへの給油や整備というものはなかなか大きな問題になると思いますが、今のお話ですと、法律上、特段の制約はないというふうに理解してよろしいのでしょうか。ちょっと再確認のような話ですが、防衛庁長官。

中谷国務大臣 補給に関しましてはいかなるニーズがあるかどうか定かではありませんけれども、お尋ねの、発進準備中の戦車に対する給油及び整備については、米国を初め関係諸国の軍隊がいかなるオペレーションを想定しているのかということが明らかでないということでありますけれども、一般論として、戦車という運用構想にかんがみましたら、戦闘作戦行動のための発進準備中の戦車が、戦闘行為が行われている地域の外で給油や整備を受けるということは考えられにくいわけですね。したがいまして、自衛隊がかかる戦車に対して補給、整備を行うということは想定をいたしておりません。

山口(富)委員 きょう冒頭に申し上げましたように、自衛隊が海外に出ていくとなりますと、どういう事態の中でこの法律が定めようとしております支援の、そして協力の活動が行われるのか、問題になってきますね。今、中谷防衛庁長官がおっしゃったことというのは、この法案の中では一体どの部分に当たるんですか。そういうことは想定されていないという、その根拠はどういうところに法律上は求めたらよろしいんでしょうか。

中谷国務大臣 根拠は、委員御指摘の別表の第一、三条の第一ですね。「物品の提供には、武器の提供を含まない」及び「物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まない」ということが書かれております。これの根拠というのは、憲法で言います、武力行使をしないという範囲でございます。

山口(富)委員 防衛庁長官、繰り返して申しわけないんですけれども、ちょっとわかりにくい説明だったものですから。

 先ほどのお話ですと、備考の欄に航空機の問題をわざわざ記載したのは、ニーズがなかったからだというお話でしたね。今、私が艦艇の問題や戦車の問題を取り上げました際に、それもここの規定で考えていくんだ、そういう説明になるんですか。

中谷国務大臣 航空機の発進に関しましては、ニーズがなかったから外したわけでございます。艦艇とか戦車等につきましては、将来、そのようなニーズがあるかわかりませんが、特に戦車の場合は、戦闘地域でない地域においてそのような給油をしてそのまま戦場に、戦場というか戦闘行為が行われている場所に行くことはまず考えられないということで、想定はできないというふうに判断をいたしております。

山口(富)委員 この議論は、次に移りますけれども、まず考えられないという立場で法律をつくるのはやはりうまくないと思います。特に、今度の場合は目の前で戦闘行為がもう始まっているわけですからね。その点はよく考えていただきたいと思うんです。

 さて、もう一つお尋ねしたいんですが、繰り返し出されてまいりました戦闘作戦行動ですね、この戦闘作戦行動というのはどういう中身なんでしょうか。防衛庁長官、お願いいたします。

 別表の中に入っております備考の二の中で「戦闘作戦行動のために発進準備中の」というふうに定められておりますね。ここで言います戦闘作戦行動というのはどういう中身を持ったものですか。

中谷国務大臣 この用語の根拠になるのは、通常、事前協議の関連に出てくる言葉でございますけれども、戦闘作戦行動とは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであるということでございます。

山口(富)委員 今、中谷防衛庁長官の方から、戦闘作戦行動というのは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動だ、こういう説明がありました。

 そこで、重ねてお尋ねしますけれども、今、アメリカとイギリスがアフガニスタンに軍事攻撃を続けております。きょうも空爆が続いたということで、空母エンタープライズやカール・ビンソン、これなどの空母戦闘群から、F14戦闘機ですとかFA18戦闘・攻撃機などが昼夜を分かたず飛び立っているわけですね。となりますと、こういうアメリカの作戦というのは戦闘作戦行動ということに、今の説明ですと当然なってくると思うんです。といいますのも、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動という御説明でしたから。

 そうしますと、この法案というのは、そのような直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動、法案上これへの対応措置をとれる、そのように考えてよろしいですか。

中谷国務大臣 戦闘作戦行動、これは日米地位協定の言葉から来ていますけれども、これの例示としては、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等であるが、このほかについては、それぞれの行動、任務等を考慮して判断するよりほかないということになっております。

 基本的に、我々の基本認識といたしましては、戦闘行為が行われてない地域における補給等の活動につきましては、可能であるというふうに認識をいたしております。

山口(富)委員 今のお話ですと、私がお尋ねしているのは、現時点でのアフガニスタンへの軍事攻撃、これは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動、戦闘作戦行動であるという点は認識されているわけですよね。となりますと、この法案は、それを支援することが可能だという仕組みなんですか。このことをお尋ねしているんですが。

中谷国務大臣 まず、ここに記述されておりますのは、米側からニーズがないということで落としているわけでございます。

 いずれにいたしましても、戦闘行為が行われてない地域もしくは将来においても行われることが認められない地域における輸送並びに補給業務等につきましては、可能であるというふうに認識をいたしております。

山口(富)委員 今の答弁を聞きまして、私、これは二つ問題があるというふうに感じました。一つは、防衛庁長官がおっしゃいました、戦闘行為が行われているかいないかの地域の判断の問題と、それからもう一つは、補給や輸送というものが軍事上どういう意味を持つのか、この二つの問題があるというふうに思うんです。

 まず初めに、戦闘行為が行われているかいないかという問題を考えてみたいんですけれども、これは、この法案では第二条の三項に定められた内容を指しているわけですね。特に読み上げなくてもいいと思うんですが。そうしますと、この目で見た場合に、今のアフガニスタンへの攻撃あるいはその周辺諸国の混乱が起きているわけですけれども、一体どこが戦闘行為が行われているところなのか、それを示していただきたいと思います。

中谷国務大臣 ここで言っております地域につきましては、戦闘行為については、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」ということでありまして、そのことが行われているということであります。ですから、現実に人を殺傷し物を破壊されている、そういう現象が行われている地域でございます。

山口(富)委員 今の答弁、ちょっと確認いたしますけれども、行われているというのはどこに書いてありますか。繰り返しになりますが、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」これが戦闘行為ですね。ここにはそういう行為しか書いてありませんけれども。

中谷国務大臣 この法律の中には、活動する地域といたしまして、そのような戦闘行為が行われてない地域に限っております。

 ですから、その戦闘行為が行われてない地域ということでありますし、その戦闘行為が、先ほど御説明をしましたけれども、そのことが行われているかいないかということについては、国連とかその他の機関、また、当該地域で中心的な活動を行っている外国部隊、また、外国領域で実施する場合には、その当該国からの情報と我が国みずから収集した情報と合わせて総合的に分析することによって、我が国が主体的に合理的な判断を行うという考え方で指定をするわけでございます。

山口(富)委員 どうも繰り返しの説明をいただきまして、なかなかわかりにくいんですけれども。そうしますと、戦闘行為について言いますと、ここにありますような、人を殺傷しまたは物を破壊する行為である、これは確認できたと思うんです。

 それが行われているか行われていないのかというのは一つの状況の説明であって、それは反対に言いますと、あるAという地域は、いつでも戦闘が起こりあるいは終息するといいますか、それを繰り返すような、そういう状態が起こっているということになるんですか。

中谷国務大臣 まさにそこの地域で人を殺傷したり、また、物を破壊されている行為が行われている現場でございまして、それが入るか否かということにつきましては、先ほど御説明したとおり、国際社会とか我が国が状況を判断して指定をするということでございます。

山口(富)委員 そういう指定をするというのはわかりますけれども、どういう判断がし得るのか。特に今回の場合は、起こっている事態からいきまして、よく指摘されておりますように、周辺事態法のときに考えた事態と違いまして、戦闘地域が、ある同じ地点でも、戦闘が行われるときもあるし、それが行われていない状況が生まれることもあるわけですね。

 ですから、この第二条三項で言っているような、「戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」、そういう地域というのは、合理的な区分けというのはなかなか難しいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 そのとおりでありまして、それは、政府が慎重に調査をし、またそのときの情勢、また各国の判断、国連の状況等をトータルして総合的に分析することによって、我が国が主体的に判断するわけでございます。

山口(富)委員 難しいとお認めになりましたけれども、確かに難しいと思います。それだけに、法案の中で、それはいわば主体的に判断する、総合的に勘案するという言葉はありますけれども、本当にそれが判断し得るものなのかどうなのか、その点の吟味がやはり私は欠かせないと思うんです。

 それで、さらに具体的に聞きますけれども、例えば、現実に戦闘機が発進している空母があるわけですね。こういうところは戦闘地域には入らないという理解なんですか。

中谷国務大臣 一概に言えないと思いますが、通常は空母は入っていないと思いますが、要は、先ほどからお話をいたしております、戦闘行為が行われている地域であるか否かということでございます。

山口(富)委員 防衛庁長官は軍事に大変明るいと思うんですけれども、一概には言えないというのはどういうことなんでしょうか。空母自身が戦闘機を発進している、現実に作戦している、それは戦闘地域とみなされないのか。それは一概には言えないという答弁だったんですけれども、どういうことでしょう。

中谷国務大臣 一概に言えないというのは、発進をしている現象のことでありまして、それだけの行動をしているわけではございません。その地域がいかなる地域であるのか、例えば今、日本は国内においてはそういう危険性がないということでありますけれども、その現象がいかなる事態かということによって判断されるというふうに思います。

山口(富)委員 今、日本ではあらわれていないとおっしゃいましたが、それはまさか日本が戦闘地域かどうかという話ではないですね。(中谷国務大臣「はい」と呼ぶ)

 それで、一概に言えないということだったんですけれども、武力行使について考えますと、空母から戦闘・攻撃機なりが発進、出撃しますよね。そのことによって武力行使は始まるわけですね。そうしますと、そういう状態のもとにあるのに、先ほど、戦闘行為とは何かということでこの法案の第二条の三項を読み上げられましたように、「人を殺傷し又は物を破壊する行為」というわけですから、それがまさに始まる地点ですね。そうしますと、これはやはり戦闘行為が行われている地域というふうに見た方がよろしいんじゃないでしょうか。

中谷国務大臣 その空母からいつ何がどこへ行くかということにつきましては知り得ておりません。どこへ飛んでいく飛行機なのか現時点においては承知をいたしておりませんので、そういうふうな御指摘は当たらないというふうに思います。

山口(富)委員 そういうことが言葉として想定されてない、まだ十分わかっていないということですか。

 それで、とにかく私の指摘が成り立たないというお話だったんですが、それはやはりちょっとおかしな話だと思うのですね。私、防衛庁長官がそういう立場で物を見られているのかと思いまして、大変不安になりました。

 例えば、もう一つ例を挙げますと、今度の空爆で一つの攻撃の中心になったのが、トマホークの空爆でしたね。横須賀を母港としておりますミサイル駆逐艦オブライエン、これからもトマホークが発射されているということなんですけれども、トマホークを発射しているような艦船自体も、戦闘行為が行われている地域に入らないのですか。

    〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 空母とかいう事例を挙げられましたけれども、現実に空母がある地域において、戦闘行為とここに定義をしておりますけれども、国際紛争の一環として行われる人を殺傷し物を破壊する行為、その行為自体が行われてないわけでありましたら、そのことはできるというふうに思っております。空母自体があるところでそういうふうな行為が行われてないということであります。

山口(富)委員 今のは非常に重大な答弁だと思います。

 といいますのは、トマホーク自体は、この法案によっても、第二条の三項に言う「人を殺傷し又は物を破壊する行為」そのものじゃないんでしょうか。それをやっているところにも、日本の支援協力活動、これが可能だというのが防衛庁長官の御判断なんでしょうか。

中谷国務大臣 そこのベース自体ではそのようなことが行われてないというふうに思います。

山口(富)委員 繰り返しになって申しわけありません。わかりやすく私流に話しますと、そこではトマホークが飛び出そうとしても、それ自体はここに言われているような行為じゃないという、そういう判断なんですね。

 それは、私はごく普通に、今度のこの法案の審議の中でも随分常識という言葉が使われましたけれども、私どもがごく普通に考えまして、あれだけの殺傷の力を持つものが発射される地点、それに日本の支援協力活動が可能になるというのは、これは一体憲法上どうしてそういうことができるのでしょうか。私は、これはとても納得できないんですけれども、これは内閣法制局長官ですか、御説明願いたいと思います。

加藤委員長 まず先に、防衛庁長官。

中谷国務大臣 飛行機が飛んだり、ミサイルが発射されるということをとらえて戦闘行為ということはありません。

 もう一回言います。飛行機がただ単に飛んでいくということを見て、戦闘行為が行われている地点であるというようなことは言えないというふうに思います。

津野政府特別補佐人 御指摘のケースは、具体的にトマホークがどういうふうな状況で発射されているのかとか、それから、トマホーク自身の性能とかいろいろな問題があると思いますので、それは、一般論として、戦闘行為が行われているかいないかというようなことをお答えするのはどうかと思うんですが、ただ、この法案にあります定義の、第二条でございますけれども、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」ということが「行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域」と言っておりますから、全くできないわけではないと思いますので、例えば、現に発射していない、何も発射していない時間帯も十分ありますから、そういった現に戦闘行為が行われていない期間というのは、仮にこれが該当するとしても、十分いろいろなことをすることができる、基本的には、この法案の定義しております戦闘行為、これ自身には直接は該当しないであろうというふうに思います。

山口(富)委員 私、ちょっと聞く方を間違えたのかもしれないんですけれども、初めに説明に入られたときは、法制局長官は、一般論としては答えられないなと言いながら、結論のところは、一般論として敷衍されて、可能ではないかということなんですね。ちょっとひどいんじゃないですか。

 私は、この法案というのは、立場を超えまして、これは本当に重大な内容を持っておりますから、いろいろな角度から十分検討されることが必要だというふうに思うんです。単に自衛隊を出すか出さないかにとどまらず、やはり日本の憲法の問題としても、今のお話、とても理解できないんですが、もう少し私にもわかるように御説明願えないでしょうか。(発言する者あり)

加藤委員長 お静かにお願いします。

津野政府特別補佐人 まさに戦闘行為といいますのが、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」であるということでございますから、直接、その時点において、まだ人を殺傷したりあるいは物を破壊したりしていることはございませんから、そういう意味では、形式的な意味で、きちんとここに書いてあります法律の定義というのには、必ずしも直接当たるとは思いません。

山口(富)委員 ということは、この法律案は大変怖い法律案だということになりますね。

 日本が憲法の中で武力行使を禁じている、それは当然、ここに定められておりますような「人を殺傷し又は物を破壊する行為」、これは絶対許さないわけですし、この法律案の中でも、武力行使や武力による威嚇というものはやってはいけないというふうに定められているわけですけれども、実際には、そういう行為が行われ得るということが予測されるわけでしょう。それなのに、なぜそこへの支援が、輸送や補給というものが可能になるんですか。憲法との整合性はあるんでしょうか。

津野政府特別補佐人 先ほども申しましたように、このいろいろな協力支援活動と申しますのは、戦闘行為が現に行われていない、あるいは、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないというような地域を言っているわけでございますから、現に戦闘行為が行われておらず、それから、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に該当する場合が十分あり得るわけでありまして、そういう意味では、そこへいろいろ協力支援活動をするということは、何ら問題はそこはないはずでございます。

 それで、先ほど言いましたように、戦闘行為にこれは当たるかどうかというところで、定義としては直接当たらないとは思いますけれども、やはりその辺は慎重な検討は必要かと思います。

山口(富)委員 私、答弁をお聞きしておりまして、中谷防衛庁長官は、正直にこの問題はなかなか難しいんだというふうに先ほど御答弁なさいました。ところが、内閣法制局長官は、何ら問題はないと言い切るんです。私は、ここに今度の法律案をめぐって、本当に私たちが明らかにしなきゃいけない問題の一つがあるということを重ねて指摘しておきたいと思います。

 それで、次に参ります。この別表……

加藤委員長 法制局長官、答弁があるようですが。

山口(富)委員 いや、私結構ですから。時間が限られております。

 別表ですが、この別表第一の中に、第二にもありますけれども、医療という問題がございますね。それで、既に医官を出すということも話に出ておりますけれども、防衛庁長官にお尋ねしますが、仮に二十人程度の医官を派遣することを考えた場合に、当然、看護婦さんですとか、いろいろなスタッフがその数倍以上必要になると思いますけれども、仮に二十人の医官を出すというふうになった場合に、一体どの程度の部隊の規模になるのか、この点をお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 まず、二十人出すということは全く決めておりませんし、そのような報道があったということは、防衛庁としては事実ではございません。

 この法案においては、確かに医療の活動が含まれておりますけれども、これをいかなる形で実施するかということにつきましては、国際連合等からの要請、また自衛隊の保有する能力、現地の状況を総合的に勘案して決定をするつもりでありまして、今後、事態がどのように推移をして、いかなる所要が生じるか明らかでない段階で、確たることを申し上げるのは困難でございます。

 いずれにしましても、医官を二十人派遣するという方針を決めたという事実はございません。

山口(富)委員 私は、その事実があるかないかを尋ねたのではなくて、仮に二十人程度の医官を派遣するとなりますと、いろいろな経験をお持ちだと思うんですけれども、一体どの程度の規模の、何というんですか、これは医療活動の部隊になるんですか、どの程度のものが編成されるんでしょうかとお尋ねしております。

中谷国務大臣 それは、実際どの地域でやるかということにつきまして、その態勢というものをはじき出すということはできないんじゃないでしょうか。例えば、テントみたいなところでやるのか、キャンプの近くでやるのか、また病院のような施設があるところでやるのか、はたまた空港や港湾の近くでやるのか。それぞれの環境に基づいて計画されるものでありまして、一概に何人というようなことは現時点で申し上げることはできません。

山口(富)委員 確かに、そういういろいろなさまざまな条件を勘案して編成もされるんでしょうけれども、きょう私、防衛庁の運用課に尋ねましたら、一例としてホンジュラスの共和国に出された国際緊急援助活動の例示を受けました。これによりますと、当時、医官は七名派遣されておりますが、全体では約八十名になっております。そうしますと、条件の違いは考慮に値しますけれども、七名を二十に、すると大体三倍ですから、これは二百名を超える編成になるというふうに思うんです。

 そうしますと、二十人程度の、この程度の医官の派遣の病院になるというふうに考えた場合に、ベッド数というのは、例えばホンジュラスでも結構ですけれども、どのぐらいのものになっていくんでしょうか、どのぐらいの患者を抱えられるのでしょうか。

中谷国務大臣 ホンジュラスで実施したケースをかんがみますと、全体で、援助隊としては八十名であります。うち、治療班が二十三名、防疫班が十五名、そして本部隊ということで本部の通信とか管理とかいうのが二十七名、そして後方支援班が五名ということであります。

 基本的には、電気も水も整備されていないような野外において自分たちで自活をしながら医療活動を行っていくというようなことで、単なるお医者さんのみならず、そこで活動する支援隊というのはある程度必要ではないかというふうに思います。

山口(富)委員 もう一例挙げますと、同じく防衛庁の運用課にお尋ねしたのですけれども、幾つかの編成の仕方があるようなんですが、例えば甲と呼ばれる大きい編成の場合は大体百三十名から百四十名、小さい編成の場合は九十名前後だというのです。これが一つの目安になると思うのです。

 そうなりますと、そういう医療の場所で治療するアメリカ兵などは、この法案で言います第十一条のところにあります「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」、こういう人たちになるわけですね。

中谷国務大臣 医療援助隊甲ということについての説明をさせていただきますが、これは緊急援助隊で医療、防疫活動を行う部隊でありまして、約百三十名ですね。うち、医療班が五十名、医官がその中で十三名、防疫班が二十名、その他の支援要員が六十名から七十名ということですね。そういうのは、常時すぐに緊急援助隊の活動ができるように態勢を整備いたしております。

 それで、管理のもとというのはどういう意味ですか。

山口(富)委員 当然その施設でアメリカ兵などが治療されると思うのですけれども、その場合に、そのアメリカ兵というのは、この法案の第十一条に入っております、自衛隊員が「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」、これに当たるわけですね。そのことだけ確認したいのです。

中谷国務大臣 十一条に武器の使用等がございますが、外国人の武装員が入るかどうかという質問ですね。

山口(富)委員 いえ、違います。米兵はここに入っている自己の管理下に入った者に当たるのですね。その確認、一点だけです。

中谷国務大臣 これは、相当傷が深くて寝たきりで治療している人は当然管理に入ると思いますけれども、非常に元気で自分自身で勤務ができるというような、自国軍の指揮統制のもとにその生命とか身体の防護のために必要な行動をとると考えられる人物は該当しないということです。

山口(富)委員 条件は今お話しになったように、その方の状況に応じましていろいろあるようですけれども、いずれにしろ、「職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」ということは御確認されたと思うのです。

 今度の法案では、防護のために武器を使用し得るというふうになっているわけですけれども、具体的に考えてみますと、例えば、今アフガニスタンの隣のパキスタンで大変な政情不安が言われておりますね。ついこの間も、本委員会で外務の杉浦副大臣が、パキスタンの状況について、そこに行った後に、大変な騒乱状態が起こる可能性は否定できない、内情は複雑でございますので、正確に申せば、現状は平穏であるけれども、あすは何が起こるかわからないというのが正確なところだ、こういうお話をここで私も承りました。

 それで、実際、今パキスタンで起こっている問題を調べてみますと、例えば、広く報道されておりますように、ユニセフの事務所が襲撃されたり、それからUNHCRの事務所、難民高等弁務官の事務所が襲われたりしているんですね。それで、難民高等弁務官事務所のアフガニスタン情報によりますと、こういうふうに言われているんです。パキスタンで起こったこういう事態、これはUNHCR職員が経験した最も深刻な事件であった。大変な脅威を受けたというふうに思うんです。

 さて、十一日の本委員会で、中谷防衛庁長官は、テロリストからの襲撃の際の武器の使用の問題に言及されましたけれども、こういう状態の中で、現地住民の皆さんによる不測の事態というのが、仮に日本が出ていった場合に、その周辺で起こり得るということが想定されるんじゃないでしょうか。それが当たり前の見方だと思うのですが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 現実に、UNHCRの職員の方とか、また国連の方とかNGOの方が人道的支援の見地で活動をされているわけでございます。

 我々がいかなる地域で活動するかということにつきましては、基本計画に基づきまして、実施要項の中で、戦闘が行われていないという地域を指定して実施するわけでありますけれども、仮にその前提が崩れるような事態になったとしても、その活動を中断したり、また区域を変更したり、また現場の部隊の長がその一時休止をしたり避難をしたりして、その難を逃れるというふうにつくっておりまして、将来そういう事態に際して緊急的に避難をするという態勢は可能にいたしております。

 しかし、現実に、一般の方たちが何とか人道的に人助けをしようという見地でその場で活動されておられまして、そういう状況等も判断しながら、我が国としてもなし得る限りの救援活動は行っていくべきだというふうに思っております。

山口(富)委員 ここは大変大事な問題なのでお伺いしたいのですけれども、先ほど戦闘地域の指定の問題がありましたが、これは繰り返しになりますけれども、そう簡単に指定できるものじゃないということは申し上げておきたいのですが、今、難を逃れる仕組みをこの中でつくっているというお話がありました。

 私が重ねてお尋ねしたいのは、例えば、タリバンシンパの現地住民などが反米デモなどで医療施設などを取り巻く、襲撃するということが起こった場合、不測の事態と言っていいと思うのですけれども、その場合に、現地の住民を威嚇したり、この第十一条の条項によって発砲することが起こり得るのか、その点をお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 その暴動自体が一連の武力紛争に基づくものであるのか、その一環として行われるものであるのか、よくその国際性、組織性、計画性、継続性を判断しながら考えていかなければなりませんけれども、基本的に、そういう場合が、その発砲が行われた場合等においては、急迫不正の侵害が継続をしていると判断した場合には事態に応じて合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができ、その生命または身体を防衛するためにやむを得ない場合は人に危害を加えるということができるようにしております。

山口(富)委員 これは大変な答弁だと思います。

 日本から行った方々が現地の方に対して発砲し得る、武器の使用をし得るというのが今のお話でした。もしそんなことが起こったら、外国の領土内で現地住民への発砲、そういうことが起こりましたら、これはもう国際問題に発展する可能性があるんじゃないでしょうか。この点、官房長官にお尋ねします。

福田国務大臣 委員は、先ほど来伺っていますと、危ないところ、危ないところを想定して質問されているような感じがするのですけれども、私は、それはそれでよろしいのですけれども、要するに、今防衛庁長官も答弁しているように、武力行使をしない、そういう地域に行くということでありまして、そこのところがしっかり守られるかどうかということです。

 ただし、今お話がありました、例えばテロが起こるとか何かの衝突が起こるといったときどうするか、こういうことであります。

 それは、単発のテロとかそういうことはあるかもしれません。しかし、それが継続して行われるようなことがあれば、これはもう単なるテロというふうに言えないかもしれない。そういうときは、そういうことが起こる前に、いろいろな状況を、情報等を総合して、そしてその前に活動地域を変更するとか、そういう措置を行わなければいけないだろうと思うのですよ。

 ですから、先ほど来申しているように、現地の情報とか、それから外国のいろいろな情報も合わせ、判断の材料として、そういうことを避けるような地域を考えて派遣するということになると思います。それは、今ここで、あれがこうでこれがこうだということを申し上げることはできない。いろいろな情勢、状況があると思いますので、その辺は現地情報に詳しい人の意見などを参考にしながら決めていくことだろうと思います。

山口(富)委員 官房長官、私が危険なことばかりお話しじゃないかという指摘を受けましたけれども、しかし、総理自身が危険なところに行くんだということを言っているんですから、私たちがその問題を考えるというのは必要だと思うのです。(福田国務大臣「例え話」と呼ぶ)例え話であったとしても、やはりこの問題は本当に真剣に考えなきゃいけないというふうに思うのです。

 それで、今官房長官も、それから中谷防衛庁長官も同じことをおっしゃったんですけれども、国際性、組織性、そのことをよく判断しなきゃいけないんだというお話がありました。

 といいますのも、私がお話ししたのは、これは単発的なテロの話じゃなくて、現地住民を巻き込んだような問題が起こるからそれをどうするんだということを尋ねたわけで、それに対して、国際性、継続性、まあ組織性も含まれるんでしょうか、そういうことが、判断が大事だということだったんですけれども、となりますと、そういう重大な判断を一体だれがやるのかというのが次の大きな問題だと思うのです。

 それで、この法案の第十一条を読みますと、結局、現地の司令官といいますか現場にいる上官、この方の判断というのが一番のよりどころになるようなものなんですけれども、そうなりますと、現地の上官というのは、襲撃などを受けた際に、これが一体正当防衛なのか否か、それから武力行使になるかならないか、そういうことを緊迫した状況の中でやらざるを得ないという仕組みがこの法案じゃないんでしょうか。

福田国務大臣 そもそも、そういうことが起こらないような地域に出るということが前提なんでありますけれども、万が一そういうことがあった場合には、そのときのその現場の判断ということは当然あると思います。

山口(富)委員 現場の判断でなされますと、かつて、現在の内閣法制局長官の津野さんは、これは九五年四月の衆議院外務委員会ですけれども、現実の場面では、相手方がどんな主体であるのか、それを見きわめて指揮をするというのは極めて困難だ、こういう答弁をなさっています。それが私は正直なところだと思います。

 そして、今度の問題では、自衛官からもいろいろな心配が寄せられておりまして、これはいろいろなところで表明されていますけれども、正当防衛による発砲のはずが難民殺害で国際問題に発展するおそれさえある、そういう心配が出ております。この問題はやはりきちんと直視することが今大事なのじゃないでしょうか。――いや、お二人に。

中谷国務大臣 十一条に基づく武器の使用というのは、これは本当にいざというときの備えでありまして、全くルールなく、やみくもに武器を使うという話ではありません。きちんとして、ROEという武器使用のルールを定めて、極力必要最小限にするのは当然でありますけれども、きちんとしたルールに基づいて使用統制をするわけでありますし、また、基本的に上官の指示に従うということになっておりまして、無原則に武器を使うという話ではございません。

福田国務大臣 ですから、私が申し上げているのは、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域かどうかということなんですけれども、その地域が安全かどうかということについての情勢については、米軍等から提供される情報とか自衛隊及び外務省が収集する各種情報、そういうものを総合的に分析して判断するということですね。

 それから、もし万が一それでも、そういう地域においても万が一襲撃があったといったときには、自己保存のための自然権的権利というべきものに基づく武器使用に限るということなのでありまして、これは、武器使用といっても、認められている武器使用の範囲であるということであります。

山口(富)委員 まず一つは、戦闘地域の問題というのは、これを定めるのが、今度の事態の場合、大変な困難を伴っているということを、これは繰り返し申し上げることになりますが、指摘したいと思うんです。

 その上で、万が一の襲撃で、自己保存のための自然的権利というお話がありましたけれども、この法律案は、その現場での発砲によってそれが国際問題に発展し得るような、歯どめはそこにないんです。なぜなら、先ほど防衛庁長官が言いましたように、現地でいろいろな事態が起きたときに、現場の方が判断しなきゃいけないと。そのときに、一歩間違えば、やはり間違いで発砲するということが起こり得るわけですね。そういう危険性をはらんでいるというところに、この法案の一つの大きな問題があるというふうに私は思うんです。

 それで、この法案は第二条で、対応の実施は、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない、これは当たり前のことですね、このことを定めておりますけれども、しかし、現場の判断によっては、その武器の使用がこれを侵す危険性を常にはらんでいる。このところが、やはり今度の法律案の問題ではきちんと明らかにしておかなきゃならない重大な問題だというふうに思うんです。

 私、きょう、法律案の問題について幾つかの角度からただしてまいりましたが、ただすべき問題というのはまだまだたくさんあると思います。きょうは、残念ながら自衛隊法改正の問題についても触れられませんでした。この問題でも、私は今後の委員会で政府の立場を問うていきたいと思いますけれども、いずれにしましても、この法案が憲法の平和原則との関係で大きな矛盾を来すものである、このことを重ねて指摘いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

加藤委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。

 次に、今川正美君。

今川委員 私は、社会民主党・市民連合の今川正美です。

 最初にまず、このたび東祥三さん外自由党の皆さん方から提出されました法案に関しまして、一点だけ御質問をいたしたいと思います。

 率直に、我が党の基本的立場なり考え方からしますと、同法案には同意はしかねるんですが、ただし、このたび政府から提出されている新法から比べると、はるかに論旨はしっかりしていて、その点は評価できるじゃないかというふうに思います。

 そこで、国際平和の基本は、いわゆる米国中心ではなくて、国連による集団安全保障という考えに基づくものと思うんですが、その点に関して基本的なお考えを伺いたいと思います。

東(祥)議員 今川委員の御質問に答えさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、これまでの戦争というのは、大義はどうであれ、すべて自衛権に基づいて行われてきたと思います。その結果として、多くの世界の人々に塗炭の苦しみと犠牲を強いてきた、そのような歴史的な事実があると思います。

 多くの人々に理解され、そしてまた支持される日本国憲法の主要な原則であります平和主義あるいはまた国際協調主義というのは、今川委員も御承知のとおり、一九二八年の不戦条約及び一九四五年の国際連合のもとになっております国連憲章に基づいたものでありまして、日本国憲法の理想を達成しようとするならば、国際の平和と安全のために個々の国々が対処していく、つまり自衛権の行使ではなくて、国連を中心とした集団安全保障体制の強化に積極的に協力していくことに具現化されるのではないのかと私は思います。そのことにおいて、一国平和主義あるいはまた言葉だけでの国際協調主義から脱却して、本当の意味で主体的に日本が国際の平和と安定のために寄与することができる、このように思っております。

今川委員 それでは、政府提案の法案に関して質問を続けたいと思います。

 まず一つは、今回の自衛隊法の一部改正に関しまして、私は、去る十日の衆議院本会議で、中谷長官に防衛秘密の新設について実は質問をいたしました。ところが、中谷長官は、いわゆる罰則の対象に全国民がなっているわけじゃないというふうな答弁であったわけですけれども、これは私の質問の趣旨から外れていまして、そこでいま一度質問いたしたいと思います。

 同法案では、第九十六条の二で、その対象者を、業務に携わる民間業者などにも拡大していますね。それから、別表第四で防衛秘密の対象を十項目指定して、いわゆる百二十二条で罰則も当然強化をされています。これは、一九八五年、当時の自民党から提出されて廃案となった国家秘密法案と非常に共通点が多くて類似している。これは憲法で保障された表現の自由という観点からしても大問題ですし、実はこの件に関しては、昨日の民放テレビでも、報道規制になるのではないかという観点から議論になっていました。

 実は、この点については、私、非常に気がかりだったのは、昨年十月、いわゆる米国のアーミテージ・レポートが出されたときに、目を通していたら、その中に、日米の情報協力強化というふうな趣旨に基づいて秘密保護法の制定を促すようなくだりがありました。

 実際、今私がいる佐世保では、今回この米国テロ事件が起こってから、ちょくちょく米海軍の原子力潜水艦が入ってきますが、今月の一日にブレマートンが佐世保から出るときを皮切りにして、これまで原潜が入ったり出たりするときには少なくとも二十四時間前の事前通告がきちっと守られておりましたが、九月の十九日に、米海軍から米大使館を通して日本政府の方に、当分の間、対外公表を避けてほしいという要請がありましたね。これを受けた形で、同じく九月二十一日に、外務省の方から、佐世保や沖縄、神奈川の方に、当分対外的な公表を控えてほしいという要請がございました。また、一方では、厚木基地などでは、米軍機の夜間離発着訓練、いわゆるNLPも事前通告が一切なくなりました。

 そうした意味では、例えば佐世保の場合、民間の船舶が出入りするときに、これまで市役所を通して少なくとも二十四時間前に通報がありますので、航行の安全性というのもそれなりに保障されていたわけですけれども、これからたびたび原潜が入るたびに、一般の市民には一切知らされない、マスコミも報道のしようがない、こういう事態が既に既成事実として先行しております。

 また、市民団体などは、日々、原潜だけではなくて米艦船の出入港を監視している人たちもいるわけですけれども、これが今回提出をされているこの自衛隊法の一部改正にかかわってどのようなことになってくるのか大変懸念をしております。この点、中谷長官の御答弁を求めます。

中谷国務大臣 今般の自衛隊法改正においての防衛秘密の漏えい行為に係る罰則者の対象者、これは、民事上を含めて、従前から、何らかの秘密保全上の責任を有していた防衛秘密を取り扱うことを業務とする者に限定しておりまして、具体的には、防衛秘密を取り扱う防衛庁の職員、国の行政機関の職員のうち防衛に関連する職務に従事をする者、そして、防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造もしくは役務の提供を業とする者という三点に限っております。

 御指摘の民間人について言えば、その対象は、防衛庁との契約に基づいて防衛秘密に係る物件の製造もしくは役務の提供を業とする者に限られておりまして、これらの人たちは従来も、今までも契約上の秘密保全の義務を負う者でございました。

 このように、漏えい行為の正犯の対象者となる者を限定しておりまして、防衛秘密となる対象は現行の自衛隊法の守秘義務規定においても秘密とされるものであり、新たに秘密の対象がふえるものではないということでございます。

 なお、この罰則強化を行った理由は、昨年九月に発生しました幹部自衛官による秘密漏えい事件の反省、教訓を深めて、冷戦後の国際社会において各国の駐在武官等との接触機会の増加、また社会的変化といった秘密保全をめぐる環境の変化への対応、及び米国等関係国との情報共有を推進していく上でも秘密の保護に万全を期することが必要であるということから今回の改正に至ったわけでございます。

 以上です。

今川委員 私は、自衛官の守秘義務に関してあれこれ言っているんじゃないんですよね。

 今回、この法案を見る限り、これまでの現状で何が不足するのか。罰則が強化をされるという点が新しく出てきていますし、しかも、例えば、通信にかかわるNTTの職員、あるいは港の中で働いている港湾関係の従業員、あるいは佐世保の場合ですと造船会社SSKというのがありますが、そこで例えば自衛艦とか米艦船の修理などもしていますので、そこで働いている従業員、あるいは米軍基地の中で働いている日本人の従業員、日ごろ、いわゆる防衛秘密と言われるようなことに程度の差こそあれ接触をしている人たちが結構いるわけですね。そういったところを広く網をかぶせるという意味を持っているんじゃないですかということをお聞きしたんです。もう一度答弁をお願いします。

中谷国務大臣 基本的に、米国においても国家機密というのは非常に米国の存立がかかった重要なものであり、また、この前もアメリカ大統領が議会に対して、秘密を漏らした場合には兵士の命も危なくなるし国家の存立も危なくなるということで、議会に対して注意をしたようなこともありましたけれども、やはり国家防衛において秘とするものは私は必要であるというふうに思っております。

 ここで民間人を罰則の対象とする理由につきましては、十分な秘密の保全を図るためには、反復継続して防衛秘密を取り扱うこれらの民間人の方々を含めて、その防衛秘密を取り扱うことを業務とする者が当該防衛秘密を漏えいするという行為を厳格に防止をして、秘密の漏えいをその根本において防止する必要があるというふうに思っているからであります。

 そして、刑を重くしたという理由は、秘密に関する状況が変化をいたしまして、それぞれいろいろな、昨年九月に起こった事案も踏まえまして、現行の自衛隊法の秘密漏えいに係る罰則は、ほかの国家公務員の法律と規定が同じで、一年以下の懲役または三万円以下の罰金にすぎないということでございまして、やはりこの防衛秘密の重要性にかんがみまして、五年以下の懲役で処罰する規定を新設したものでございます。

 以上です。

今川委員 これは、ざっくばらんに言って、アーミテージ氏らの昨年十月のレポートの中にあるのは、日本という国はいろいろな情報がすぐ漏れやすい。だから米側が、いろいろなそういう軍事行動にかかわるような、防衛にかかわるような高度な情報をやりとりする対象ではないという認識を示しているわけですね。だから、こういうものにかかわって今回、ほとんどこの委員会の中でも主としてテロ対策の支援法の方に主眼が置かれていますけれども、言葉は悪いですが、いわばどさくさに紛れて、国家機密法そのものとは言いません、しかし、少なくとも十六年前の自民党が提出された法案と見比べてみますと、非常に類似点が多いという意味で私は問題にしているわけであります。

 そこで、時間の関係がありますので、もう一度。

 佐世保の市役所、市長に外務省からそういう、二十四時間前のを当分対外的に公表してくれるなということなんですが、私どもはすぐこれは申し入れをしまして、原潜が入ってきてマスコミが報道をして何が一体問題なのか、少なくともそこら辺は、米軍、軍事優先ではなくて、民間船舶の航行であれ、市民の生命と安全を優先するということがきちっとやはり確立されておかなければならないのではないか。なぜ事前通告をやめる必然性があるのかということをもう一度きちっと答弁ください。

中谷国務大臣 この辺は国家としての信用問題だと思います。非常に今米国に対してテロが攻撃をするなど、米国を取り巻く環境というものは極めて個人的に危険を伴う状況が多いわけでありまして、万が一そういう行動をオープンにした場合にかえって米国人を危機に陥れる可能性も否定できません。そういう見地において、米国側からそういう、米国人の安全のためにという依頼があれば、それを同盟国として守っていくということは重要なことではないかというふうに思っております。

今川委員 それでは二つ目に、難民キャンプでの医療活動なり被災民の救援に関してお尋ねをしたいと思うのですが、実は今月十三日の参考人質疑は非常に中身の濃ゆいいい場になったと思うのですが、もう少しく時間が欲しかったなというのが実感であります。

 その中で、各議員たちの一番注目を浴びたのは、現地の実情に詳しい中村医師だったと思うのですね。かなり質問も集中していました。

 彼は、その中で、軍隊による医療活動や難民救援は、一言で言うと有害無益とまで言い切ったんですね。恐らくそれは、例えば言葉だとか現地の文化だとか民族感情、ニーズ、いろいろなものに無知なまま派遣しても役に立たないではないかということをおっしゃったと思いますね。人道的救援というのなら、これ以上難民を出さない、そういう必要があるということもおっしゃいました。

 本来、そういった意味ではNGOを、これだけ頑張っている、日本だけではなくて、百四十団体ぐらいが今ペシャワールの周辺に来ているというわけですから、そこら辺をもっと積極的に支援することこそ必要じゃないかというふうに思います。

 いま一つは、同じく参考人でお見えになっていた東京国際大学の前田教授、この方はもうアフガンなどにも何度も足を運んでいる方でありますが、彼が言うには、一言で難民キャンプと言うけれども、そこは非常に政治的な場所であって、ゲリラなどにとって休息の場ですらあるんだよ、軍隊が入ることには余りにも危険過ぎるということを指摘しておられました。

 こういう幾つかの重要な指摘があるにもかかわらず、それでも何が何でもやはり軍隊を派遣するんだということになるんですか、御答弁ください。

中谷国務大臣 基本的には、自衛隊が行った場合に地元の難民の皆さんが喜んでもらえるような、その該当国が助かるようなところに派遣するというのは基本前提でございますが、現実的にも、これを派遣する場合に、UNHCRからの要請並びに該当国家からの同意というかお認め、要請があった上で行うわけでありまして、できるだけ効果的な地域に派遣をするべきだというふうに思っております。

 それで、何ができるかという点につきましては、やはり医療とか消毒とか給水活動とか、自衛隊が行けばプラスとなる活動があるというふうに思っておりますが、NGOの皆様方の御指摘のとおり、かえって治安が乱れるとかそういう要素もあろうかと思います。そういう点につきましては、よくそういうボランティアの皆様方の意見を聞いた上で実施をすべきだ、私もそう思っております。

今川委員 三点目に、実は、これからこの法案が仮に成立をしますと、派遣されるはずの自衛官なりその家族の不安や悩みの問題です。

 佐世保や横須賀では既に護衛艦や輸送艦派遣が内定しているというふうに伝えられていまして、その自衛官と家族の不安や悩みは尽きないんです。

 これは、かつて湾岸戦争の直後に掃海艇が佐世保からも出ていきましたけれども、そのときも、当時私は労働団体の役員をやっていましたが、かつて組合員だった女性たちが結構地元の自衛官と結婚していますので、ああ、こんなつもりじゃなかったという人たちが多かったんです。それくらいやはり心配があった。

 それから、PKOの議論があったときもそうなんです。当時の社会党に対して、もう少ししっかりしてくれ、頑張ってくれという趣旨の声が届いてきたんですね。しかし、それは、当時から比べると、今回のこの法案に盛られていること、これから政府がやろうとしていることのリスクの違いというのは歴然としていると思うんです。

 今回、私の地元の事務所には、匿名ですけれども随分相談も入っています。しかも、小泉総理が、言ってみれば、多少の犠牲は今回覚悟して米国を全面支援するという表明をなさったわけですから、現場の自衛官たちにとっては大変なプレッシャーにこれはなっています。

 数年前、台湾海峡危機ということが言われたときがありましたが、そのとき、いみじくも私は、佐世保の海上自衛隊の総監部のトップとちょっとやりとりをしてみますと、本当はあのとき米空母と一緒に行きたかったんじゃないねと聞いたんです。何と、正直に、そのとおりなんだ、後を追っかけて護衛艦を派遣したかったと正直な答えが返ってきた。つまり、今回の場合だって、血気にはやるその制服組のトップと、一般の隊員は不安におののいているというふうな構図が今ございます。

 振り返ってみると、自衛隊創設に係る一九五四年の参議院では、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議というのが採択をされているわけですね。非常にこの重みは大きいと思います。

 それと同時に、実際、現在の自衛官も、入隊するときには、専守防衛、国に一たん事あらば命を賭しても頑張るという誓約書をとらされているわけですね。

 したがって、そうした本来の自衛隊の原点を振り返るときに、自衛隊は、その装備から見ても、訓練あるいは隊員の心構えから見ても、あくまでも専守防衛の組織であるわけであって、海外出動向きにはなっていないと私は思います。

 ところが、PKOの派遣を皮切りにして、政治の側がこの国会決議だとか宣誓書を踏みにじったのじゃないでしょうか。自衛隊員にしてみれば、民間企業でいうと、これは明らかに雇用契約違反ですよ。いや、お笑いになるけれどもそうなんです。話が違うじゃないかと。

 以上、私が申し上げた点について、制服組OBでもあられる中谷長官のお答えを聞きたいと思います。

中谷国務大臣 現場の自衛官に対して大変温かいお言葉をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私も自衛官の方と話をしておりますが、彼らは非常に、シビリアンコントロールに対しても、重大だ、非常に意識も高いし、また、国を守ること、そして国際的な貢献をすることについても大変大きな使命感を持ちながら仕事をいたしております。

 自衛官にとって何が不安かといいますと、せっかくこういう行動を行うにおいても、反対だとか憲法違反だとか、そう言われる声を聞くというのが一番つらいことであって、やはり派遣する以上は、国民の皆さんの期待と理解に基づいて胸を張って行動したいというふうに思っているのが一番強い希望ではないでしょうか。

 そういう意味では、我々自身がもっともっと努力をして、今回の法案についても御理解をいただいて派遣をすべきだというふうに思っておりますが、こういう派遣をされる隊員の心情については、御指摘のように最大限配慮して、メンタルサポートを実施する。例えば、留守家族間のビデオレター等の交換をして、絶えず家族との連絡を密にするとか、極力、留守にしている家族の皆様方が心配をしないようにいたしたいと思いますし、また、財政的な補償措置におきましても充実をするべきだというふうに思っております。

 そして、お話のありました、自衛隊の入隊に対する宣言が契約違反じゃないかという点でありますが、この宣言は、自衛隊法五十三条に基づいて服務宣言を行いますけれども、日本国憲法及び法令を遵守し、専心職務の遂行に当たる旨を誓うという内容でありまして、この活動が法令によって自衛隊の職務とされる場合に、自衛隊員は、その使命を自覚し、国民の負託にこたえてくれるものだと確信をいたしております。

 いずれにしても、自衛隊員のうち自衛官については、命を受け自衛隊の隊務を行うということとされておりまして、これが法令に規定された自衛隊員の職務である以上は、整々とその職務に従事すべきだというふうに思っております。

 参考ですけれども、この服務の宣言というものは、新たに隊員となった者に対して、倫理的な観点から自覚をさせるために行うものでありまして、服務の宣言を行うことで服務上の義務を負うというものでもございませんし、実際に派遣する場合は、本人の意思を確認して、希望するかどうか確認をして、どうしても行きたくないという者まで派遣するというようなことにはいたしたくないというふうに思っております。

今川委員 今の中谷長官の最後のくだりなんですが、現実にはこういうことはないかもしれないけれども、行ってきなさいと言った場合に、全部が行きたくないと言ったらどうするんですか。そういう形では、私から言うのもおかしいけれども、軍事組織と言えないじゃないですか。

 そこで、もう一点、先ほど他党の議員からも質問があっていまして、私も非常にこれはおかしいなと思ったのは、今、パキスタンの沖合、アラビア海あたりに、例えば横須賀から空母キティーホークが、今月十二日ですか到着をしたようでありますが、これは今、空港にかなり限度があるので、空母キティーホークのフライト甲板から戦闘機などが攻撃をするために発進しているわけですね。長官のお話だと、アフガンの上空まで行って爆弾を落とす、そこは戦場だけれども、戦闘地域だけれども、発進する場所である空母は戦闘地域とは言えないといったような御答弁でしたね。おかしな話です。国際的に通用しませんよ。

 そこで、お聞きしたいのは、いわゆる戦時国際法における作戦地域、それから戦争地域という区分けがありますよね。これと、今回の法案にある戦闘地域、戦闘が行われていない地域、いわゆる戦闘地域というこの相違点は、どのように御認識がありますか。

田中国務大臣 委員がおっしゃっているのは、戦時国際法のもとでのことをおっしゃっておられるわけですよね。そうすると、作戦地域というのは地帯のことであって、あるいは戦争地域というのは戦争区域との間違いじゃございませんか、まず。合っていますか。いかがでしょうか。お待ちしていましょうか。よろしいですか。(今川委員「いいです。続けてください」と呼ぶ)では、それでよろしいですか。

 戦時国際法のもとで作戦地帯、戦争区域という概念があったことは承知いたしておりますけれども、これらと、本法案で言っている、毎度毎度繰り返されていることですけれども、戦闘行為が行われていなくて、おらず、なおかつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということをこの法案で私どもずっと言っておりますけれども、それは一切関係がございません。

今川委員 非常に現実とは、実態に合わない御答弁だと思うんですね。

 ただ、もう時間がございませんので最後に少し私の意見も申し上げたいと思うんですが、この間、この事件が起こってからフランスの外務大臣が、米国などのこの軍事報復は、悪魔のわなにまんまとはまっていはしないかという趣旨のことを発言されたんですね。私もそう思うんです。いわゆる、恐らくですよ、テロ集団のねらいは、超大国米国の冷静さをまず奪って、過剰反撃によって国際世論を分裂させて、そして報復テロを準備するというようなことじゃないかな。そういう意味合いにおいて、敵のわなにまんまとはまっているという気がしてならないわけです。

 現に、反米テロを支持したり、あるいはデモをしたり、正当化する人々を各地でつくり出して、しかも、これは産経新聞の今月十四日付なんですが、パキスタンがインドに近い東部国境地域に核弾頭ミサイルの配備に動いたという記事もありまして、このように、攻撃が始まってから、西アジアとか中東諸国の政情を著しく不安定にさせていると思うわけです。

 だからこそ、やはり軍事攻撃を一日も早くやめさせて、今回の事件の処理は、あくまでもやはり、テロの対策も含めて国連の場に引き戻す。せっかく、冷戦時代にはなかなか実現しなかった国連機能を強化する絶好の機会ではないかというふうに思うわけです。

 いずれにしても、交通標語じゃありませんが、狭い日本、そんなに急いでどこへ行く。このPKO協力法案の場合には約一年をかけて真摯な国会審議があったと記憶しています。それから、二年前の周辺事態法でも約八カ月かけて与野党間でかなり徹底した議論があったことを私も覚えています。

 ところが、今回は法案提出から、話によりますと、あしたにでも衆議院では採決に持ち込みたいという与党側の考えがあるということをお聞きするわけですけれども、とんでもない話です。こんな、これまでのPKO協力法とかあるいは周辺事態法もはるかに上回るような大変重要な法案を、たかだか法案提出から二週間もかけずに衆議院通過を図るなどというのはとんでもない。しかも、二十日に予定をされている上海での日米首脳会談への手土産にするためにスピードアップしたい、こんなでたらめな話はないと思うんです。

 こういう大事な法案は、もっとたっぷり時間をかけて、急ぐことはない、徹底して議論を尽くすべきだということを申し上げまして、私の質問を終わります。

加藤委員長 これにて今川君の質疑は終了いたしました。

 次に、東門美津子君。

東門委員 私は、九月十一日以降今日までの沖縄の状況について質問をしていきたいと思います。

 九月十一日以降、世界じゅうの目はアフガニスタンに、そしてアメリカの動きに向けられていると思いますが、そんな中で、日米安保体制に多大な貢献をしている沖縄、今、安全ですか、危険ですか、公安委員長にお聞きしたいと思います。

村井国務大臣 今委員御指摘のように、沖縄におきましては、たくさんの基地がございまして、いろいろ日本の防衛のために大変大きな役割を果たしていただいているということをよく私も承知しておりますが、沖縄の現在の状況ということを申しますれば、私どもの認識では安全である、このように考えております。

東門委員 その安全な沖縄に、今、応援に機動隊が出かけておりますよね。機動隊は、どの方面から何人ぐらい行っていますか。

村井国務大臣 私ども、余りこういう数字は申し上げたくないのでございますが、ある程度既に表に出てしまっていることでございますので。

 中部及び九州管区の機動隊を、合計しまして約四百五十名ほど増強をいたしておるというのが今の状況でございます。

東門委員 その機動隊の派遣については、米軍の方から要請があったのでしょうか。

村井国務大臣 政府に対して、一般的に、米軍の施設あるいは米国関連施設等に対してテロの危険があるというような情報が入りましたということは、これは累次政府の方からもいろいろな機会に申し上げていることでございますので委員十分御案内のことと存じますが、そういう状況の中で、警察独自の判断といたしまして、私どもといたしましてこのような措置をとったと御理解をいただきたいと存じます。

東門委員 警察独自の御判断ということですけれども、今委員長は、沖縄は安全です、日本全体が安全ですとおっしゃったと思うんですが、その中でも、沖縄のように、あれだけの広大な米軍基地が集中している、そこも安全だとおっしゃったわけですよね。そこになぜ派遣をされたのかということと、なぜ米軍基地を警備するのかということをお聞きしたいと思います。

村井国務大臣 先ほどお答え申しましたように、今般のテロ事件に関連いたしまして、米軍関連施設等に対してテロが行われるというような情報もあるというような一般的な話がまずございました。

 そういうことで、私どもといたしまして、私どもなりにその辺の情勢を判断いたしまして先ほど申し上げましたような措置をとったわけでございますが、これは私どもの認識といたしましては、しかし、そうはいいながら、基本的に、今の日本の状態、沖縄も含めて安全であるというふうに思っておりますけれども、やはりこれは総理の言われる備えあれば憂いなしということだと思っておりまして、さような意味で対応をしたということでございます。

東門委員 先ほどの委員長の御答弁の中で、中部あるいは九州管区から機動隊が応援に行っているということだったわけですが、では、少なくともその管轄地域よりは沖縄の方が危険だと警察庁が判断して、政府もそれを認めているということなのかということが一点。

 それから、アメリカの軍事報復によってさらなる報復の標的にされるかもわからない米軍基地、先ほどからお話にありますが、それが沖縄に集中してあるということが、私は、沖縄を他県に比べて大きな危機に巻き込んでいると思います。なるべくなら危険に近づきたくないと思うから、もう既に皆さんは御存じだと思いますが、観光客の足が遠のいております。当然のことだとも思います。テロ発生後のキャンセル、既に十万人を超えております。これは決して風評被害ではないと私は思います。

 今、沖縄に起きている地域経済への深刻な打撃、イメージダウン、それは、小さな一県に七五%もの在日米軍基地を置いている日米の安保政策による被害だと私は思います。それはいかがでしょうか。防衛庁長官、お願いします。

中谷国務大臣 非常に国民の皆さんが不安に思っていることは事実でありますが、これはハワイへの旅行も、それからカリフォルニアとかいうところの状況も同じで、一般的に飛行機に乗るということに対する不安感等があって、全世界的にこういうことは言えるのではないでしょうか。

東門委員 飛行機とおっしゃいましたけれども、同じ国内でも北海道にも飛行機で行くんですよ、修学旅行の皆さんは。そこは決して減っていないんですね、ある意味ではふえているというのが新聞報道に出ております。必ずしも飛行機ではないと私は言えると思います。

 国内のよその県に修学旅行、沖縄県に行くのをキャンセルしてそこに行った、それは風評被害かのようにも言われますけれども、これは決してそうではなくて、沖縄は米軍基地がある、そこはテロの標的に真っ先にされかねない、あれだけ大きなものがあるんだから、その危険な地域にはかわいい我が子を行かせたくない、親の気持ちで当然です。そういう意味から、学校側もやはり気をつけて、行かないようにしようということでのキャンセルだと思います。

 数だけではないんですよ。今、沖縄の経済は本当に大きなダメージを受けております。ですから、そういう意味で、私は、今の防衛庁長官の御答弁には納得しかねます。

 まず、私、尾身沖縄担当大臣にお願いしたいんですが、被害に対する緊急財政出動、雇用対策を求めたいと思います。被害の的確な把握を急いでいただきたい。

 そして、これは国会決議も行われております。それから閣議決定もされております。基地の整理縮小、早期の実現をお願いしたい、これは外務大臣にお願いしたいんですが。そうでなければ、地域経済の発展、健全な町づくりというのはできません。

 観光は沖縄の基幹産業です、そして平和産業です。平和に広大な米軍基地は似合いません。どんなに国際コンベンションが開催されても、平和で美しい島のイメージは、一遍に危険な基地の島へと変わってしまうんですよ。基地の整理縮小、そして緊急財政出動と雇用対策について、大臣からよろしくお願いいたします。

尾身国務大臣 今回のテロ事件によりまして、修学旅行など沖縄観光にキャンセルがある程度出ていることは事実でございます。

 私ども、先ほど来のお話のとおり、テロには万全を尽くしているところでございまして、このテロの性格から見まして、どの地域が危険でどの地域が安全かということは必ずしも言えないわけでございまして、沖縄だけが特に危ないということはないと考えております。

 在日沖縄米軍を代表しますグレグソン四軍調整官も、沖縄に具体的なテロの脅威があるわけではないと明言しているところでございまして、県議会でも、本日、沖縄の県民生活や経済活動に支障はなく、平常どおり行われているということを全国民にアピールしたいということを決議しているところでございまして、私ども、こういう中で過剰な反応をされないよう、関係方面にいつもいつも要請をしてきているところでございまして、ぜひこの点を御理解いただきたいと思います。

 テロの危険にさらされるという意味でいいますと、全世界がそういう危険にさらされているわけでございまして、こういう状況を一日も早く脱却するためには、全世界が一丸となって、日本もほかの国々と協力をして、テロの本体それからテロを支援している組織、国、そういうものを絶滅するという考え方でいかないと問題は解決できないと思っております。

 したがいまして、このテロ対策特別措置法を一日も早く通していただいて、テロを全世界から撲滅することによって沖縄の平和と安全、日本の平和と安全、あるいは世界の平和と安全が確立されるように心から願うものであります。

東門委員 外務大臣、今の御答弁の後で、基地の整理縮小、それは国会決議も行われておりますし、閣議でも決定されていると思います。ぜひその点で御答弁を。

田中国務大臣 在日米軍の七五%が沖縄に集中していて大変重い負担を担ってくださっている、大変大きな御負担をおかけしているということは、よくよくわかっております。そして、毎度またこのせりふかと思われるかもしれませんけれども、やはり沖縄の県民の皆様の負担を本当に軽減するために、SACOの最終報告の着実な実施、これに最大限努力をするということが大事であると思います。

 それから、一言付言させていただきますが、観光客が減っておられるとおっしゃいましたけれども、私は金曜日からシンガポールで、けさ帰ってきましたが、その前に、ハワイのカエタノという知事が、前のガバナー、アリヨシさんと一緒に来られて、もう二五%近くお客が減っている、世界じゅう大変だと。それから、このたび行ったシンガポールも、もう大変なお客さんが減っていて、WTOの会議があったからそのホテルは人がみんな泊まったけれども、本当にお客が来なくて大変だということを言っておりました。

 ですから、世界じゅうの観光地が、カリブ海でも、来ていました、ジャマイカからも。観光客がどっと来なくなったと言いました。世界じゅうこうなったんです。その原因は何ですか。テロリズムじゃないですか。ですから、それを完全に撲滅するために頑張らなきゃならないということなんです。

東門委員 すごい、お二人ともその件をおっしゃいましたけれども、後でその件にはまた触れていきたいと思います。

 大臣お二人とも御答弁をいただいたんですが、沖縄に行っておられないから、沖縄がどういう状況であるか御存じない。

 米軍基地のゲート、物々しい警戒態勢です。バリケードが二重三重に置かれているんですよ。その前で、一番前線に立っているのが日本の警官、いわゆる機動隊。防弾チョッキに盾を持っている。そして、その後ろにフェンスがあって、そこで憲兵が立っている。要するに、県民、国民からあたかも米軍を守るような姿勢であるということ。とても異様です。そういうのを見て……(発言する者あり)皆さん御存じないからそうおっしゃる。そういうのを見て、お年寄りが、子供たちが不安を覚えないはずはないんです。特に、あの悲惨な戦争を体験したお年寄りは、もう二度とあの思いはしたくないということをはっきりおっしゃっておられるんですよ。

 県民生活にも実際に影響を来しているんです。例えば、家族のだれかが亡くなった、お墓に行きたい、たまたまそのお墓が基地内にある、そこにも人数制限がある、あるいは入るにも六時間待たされる、そういう実態があるんです。それが実際に起こっているんですよ。ですから、そういう中でそれをテロだ、テロだ、テロだとおっしゃるのは、私はおかしいと思います。政府がもっと真剣に米軍基地対策をしていただきたいということを私は申し上げたいと思います。

 そもそも米軍は、日本の安全に寄与して、極東の平和を維持するために駐留しているのではないですか。そして、今は機動隊が前に立っております。しかし今度は、警察の警護さえ違和感が私たちにはあります、それなのに自衛隊法を改正して自衛隊が警護となると、さらにそれは県民感情として受け入れることはできません。沖縄では、過去のつらい経験があります。自衛隊に対しての感情も他県とは異なるということを、ぜひわかっていただきたいと思います。米軍基地の存在、その上自衛隊の警護出動は、沖縄県民にとっては許容できないということを申し上げたいのですが、防衛庁長官の御見解をお伺いします。

加藤委員長 答弁要求はどなたですか。(東門委員「防衛庁長官。自衛隊法との関係ですから」と呼ぶ)

 防衛庁長官。

中谷国務大臣 今般の警備出動におきましては、自衛隊の施設とか在日米軍の区域を対象といたしておりますけれども、これは、同じ日本を守るという防衛関連施設という見地で、この施設が被害を受けると、日本有事もそうですけれども、日本の安全を守るために、そのすべがなくなってしまうという観点で、今回、米軍基地においても自衛隊の警護が可能になるというふうにいたしたわけでございます。

 ただし、これはあくまでも、この施設の被害を未然に防止するという観点から行われるものでありまして、住民の不安を増大させるということは毛頭考えておりませんし、また、これを実施する上においては、県知事さんの意見を十分に聞きまして、沖縄県民の皆様方の意見がどの辺にあるのかという県民感情にも十分配慮をして、その上で総理が総合的かつ慎重に判断するものであるという点をぜひ御理解いただきたいと思います。

東門委員 テロが発生以来ですけれども、沖縄では、これまで見られないような米軍の行動があります。外務省は、在日米軍の兵士が民間地域で銃を持つ行為、それを軍隊の属性として認められる、地位協定何条の何項という明記はなくても、属性として持つことが前提であるという認識をお持ちなのでしょうか。外務大臣、お願いします。

田中国務大臣 その報道は承知いたしております。そして、御指摘の報道に関しまして、米側及び沖縄県警から説明を受けました。

 十月の三日、これはホワイトビーチ地区のことをおっしゃっておられるのですよね。これにおいては、施設と区域の境界のところから内部を観察している不審人物を米軍の軍事警察が発見し、施設・区域外に出て当該人物に質問をしたところ、同人物は報道関係者であることが判明したということです。

 こうした報道ぶりと比較いたしまして、事実関係についての関係者の見方は一定ではありません。しかし、テロに対する厳重な警戒警備が必要である一方で、警備活動において周辺住民の方々などに無用の不安感を与えてはならないという点については、米側としても当然配慮していくべきだと思います。

 それから、先ほどちょっとおっしゃっておられたことで、中谷長官もなさっておられましたけれども、このテロのことがあって以来、非常に子供さんたちも不安になるほど厳重に沖縄基地の周りが警備されているということをおっしゃいましたけれども、これは、テロが発生の九月十一日以降厳重になったとおっしゃったわけですよね。したがって、前に少なくとも、もっともっとSACOの問題、いろいろやらなければいけないことがありますけれども、わかっておりますけれども、少なくともその厳重な状態をもとに戻すためにはもとを絶たなければならない、それはテロリズムなんです。

東門委員 大臣は、私の質問にはお答えになっておられないのですよ。外務省の見解として、軍隊の属性として、私はこれは地位協定違反だということを申し上げたいわけですけれども、米軍の兵士が民間地域で銃を携行する、それは可能だ、それはやっても構わないという認識をお持ちなのですかとお聞きしたのです。それは私、通告してあります。

田中国務大臣 日米の地位協定に基づく米軍の施設・区域の警備について、日米地位協定の十七条第十項に関する合意議事録第一項では、専門的になって申しわけありませんが、米軍当局は、米軍施設・区域の近くにおいて、当該施設・区域の安全に対する罪または未遂の現行犯を逮捕できる旨が規定されておりまして、同規定の範囲内で米軍人等が行動し、その一環として不審人物に質問することは、地位協定上問題があるとは考えておりません。

東門委員 済みません。その件は、銃を携行し民間地域に出かけていくということも含まれているのでしょうか、その日米合同委員会の合意事項。(発言する者あり)いや、公園内ですよ。勝連町の平敷屋、ホワイトビーチの近くの。公園内です。民間地域です。

田中国務大臣 あくまで一般論として申し上げますけれども、米軍人等が武器を携行することが地位協定上問題ないかというお尋ねなわけですよね、この現実の事件と関係づけて。一般論として申し上げますれば、公務中の米軍人等が施設・区域外で銃を携行していることが直ちに地位協定上問題になるとは考えてはおりません。直ちに問題になるとは考えておりません。

東門委員 ちゃんと地位協定の中には、米軍兵士の軍事警察としての行動は、基地内、施設内となっているんです。施設外は入っていないんですよ。どういうことなんですか、それは。――大臣でお願いします。大臣の方で、地位協定の件ですから。大事なことですから、お願いします。

加藤委員長 条約上の話ですから、条約局長からの答弁でいけませんか。(東門委員「いや、理解しておられないと困ると思うのですよ」と呼ぶ)

 まず、とりあえず条約局長。手短に。

海老原政府参考人 それでは、私から事実関係だけ御説明いたします。

 先ほど大臣が言及されました日米地位協定の十七条十項でございますけれども、それの(b)項におきまして、「前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。」とあるわけでございます。これを受けまして、先ほどの合意議事録というのがございまして、「合衆国の軍当局は、施設又は区域の近傍において、当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。」とあるわけでございまして、ここで、許される限りにおきましては公務によりましてけん銃を携行することもあり得るという意味において、施設・区域の外において携行しているからといってそれが直ちに違反になるということではないということを大臣が御説明したわけでございます。

東門委員 公安委員長、今の外務省と同様の御認識ですか。民間地域、つまり基地の外でも米兵が銃を持って警備活動を行うことが許されていると理解しておられますか。

村井国務大臣 具体的な事案につきまして御通告をいただいておりませんでしたので、御答弁、若干いたしかねる問題ではございますが、ただ、今条約局長が答弁をしていたところを聞いております限りでは、現行犯についての逮捕権といいましょうか、そういうことで、米軍の側に武器を携行することが認められているという合意があるならば、それはあり得ることなのかもしれないという印象を持って聞いておりました。

東門委員 沖縄県警は、米軍に対して銃の携行は困るというふうに申し出ているんですよ。それはどういうふうに理解されますか。民間地域での銃の携行は困るということを申し出ているんですよ。どうですか。

村井国務大臣 これは、あくまで施設の警備に関連してということでありまして、そこで限度は一つあるんだろうと思っております。

東門委員 私は、明らかに地位協定十七条にも抵触する米兵の行動が許されているということになると思うんですが、アメリカで起きたテロの後、日本あるいは沖縄は有事態勢というふうになっているのでしょうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

尾身国務大臣 有事態勢ということでございますが、きょう、沖縄の県議会は全会一致で、県民生活や経済活動は支障なく平常どおり行われていることを全国民にアピールするとともに、政府に対して、沖縄の安全性に対する不安を払拭し、沖縄の観光産業振興のための諸施策の実行に全力を尽くしていただくことを訴えるという決議を、沖縄県議会全会一致でやっているわけでございます。そして「メンソーレおきなわ」、ようこそ沖縄の心を広く内外に訴えたい、こういうことを言っているわけでございまして、東門委員の地元におきましても、県議会挙げて沖縄の安全性をアピールしているという状況をぜひ御配慮いただきたいと思います。

東門委員 時間がなくて、何か慌ただしくて思うようにできないんですけれども。

 アメリカは、今回のテロの犯人が確定的証拠をもって特定されたと言い、その身柄を引き渡さないタリバン政権の軍事施設を一方的に空爆しています。日本もその行動を全面的に支持すると熱心に表明しているわけですが、せめて日米地位協定並みに、国際法廷の場に容疑者を起訴するまでは、身柄の引き渡しについてタリバンに猶予を与えてはどうでしょうか。日本が平和外交に徹し、日本国憲法の理念に基づいて武力によらない国際平和への道を模索するなら、アメリカ側に対しては法廷への証拠提出を急ぐように求め、タリバン側には速やかに容疑者を引き渡すよう説得するという中立的な役割を日本は担えるはずなのです。

 アメリカは、容疑者にも被害者と等しく人権を認める法治国家です。米兵が強姦事件を起こしても、放火事件を起こしても、日本の警察は取り調べ中に弁護士と接触させないから、起訴前の日本側への身柄引き渡しは米国民感情が許さないといって日本の司法制度を信用しないほどです。

 そういう人権感覚を持ったアメリカに対し、犯罪は証拠をもって法廷で裁くということを説明する余地は十分にあると思いますが、どうでしょうか。軍事報復の陰で、抵抗する余地もなくおびえている人々の命も、ニューヨークで亡くなった人々の命と同じく重いのですよ。

 日本は、一日も早く暴力の連鎖を断ち切るために何をすべきでしょうか。先ほどから、尾身大臣、外務大臣も、テロですよ、テロの根絶ですよとおっしゃっておりました。当然大切なことです。テロの根絶の方法なのです。武力による報復は連鎖しかもたらさないということは、何度もこの委員会でどの委員からもあったと思います。

 そういう意味で、やはり、私は最後にこれを読んで終わりたいと思いますけれども、これは地元紙に出た投稿の文章です。

  戦争に参加するということが、相手にも、自らにも、どれだけの惨禍をもたらすか。今、そのことを考える力があまりにも弱くなってはないか。「テロ根絶」という言葉を口にする前に、アメリカや日本が「自由と繁栄と平和」を謳歌するために、世界各地でどれだけの「抑圧と貧困と戦争」が生み出されているかを、私たちは考える必要がある。日本が今取るべき行動は、「テロ」と「戦争」の悪循環を断つことであり、戦争に参加することではない。

  九月十一日以降、沖縄の米軍基地は厳重な警戒態勢がとられている。

事実です。

 観光客も激減し、沖縄はやはり世界各地の戦争と直結した「軍事基地の島」であるという現実を、まざまざと見せつけている。それにしても、沖縄が危険だからと観光をやめた「本土」の人たちは、その「危険な島」で生活している沖縄県民のことをどれだけ考えているのだろうか。

私も全く同じ意見です。皆様にもぜひよく考えていただきたいとお願いをして、終わります。

加藤委員長 これにて東門君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十六日火曜日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時一分散会




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