衆議院

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第7号 平成13年10月16日(火曜日)

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平成十三年十月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 加藤 紘一君

   理事 亀井 善之君 理事 河村 建夫君

   理事 久間 章生君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 岡田 克也君

   理事 田端 正広君 理事 山岡 賢次君

      逢沢 一郎君    赤城 徳彦君

      石川 要三君    石破  茂君

      衛藤征士郎君    大野 松茂君

      坂本 剛二君    実川 幸夫君

      下地 幹郎君    下村 博文君

      田村 憲久君    西川 京子君

      浜田 靖一君    原田 義昭君

      松宮  勲君    宮澤 洋一君

      米田 建三君    伊藤 英成君

      枝野 幸男君    鹿野 道彦君

      桑原  豊君    玄葉光一郎君

      古賀 一成君    島   聡君

      末松 義規君    中野 寛成君

      三井 辨雄君    横路 孝弘君

      渡辺  周君    上田  勇君

      河合 正智君    東  祥三君

      中塚 一宏君    赤嶺 政賢君

      木島日出夫君    山口 富男君

      今川 正美君    辻元 清美君

      中川 智子君    井上 喜一君

      近藤 基彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   国土交通大臣       扇  千景君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当大

   臣)

   (科学技術政策担当大臣) 尾身 幸次君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   衆議院調査局国際テロリズ

   ムの防止及び我が国の協力

   支援活動等に関する特別調

   査室長          鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十六日

 辞任         補欠選任

  横路 孝弘君     枝野 幸男君

  中塚 一宏君     東  祥三君

  山口 富男君     赤嶺 政賢君

  辻元 清美君     中川 智子君

同日

 辞任         補欠選任

  枝野 幸男君     三井 辨雄君

  東  祥三君     中塚 一宏君

  赤嶺 政賢君     山口 富男君

  中川 智子君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  三井 辨雄君     横路 孝弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案(内閣提出第三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

 国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案(東祥三君外一名提出、衆法第一号)






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     ――――◇―――――

加藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、国の防衛及び自衛隊による国際協力に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対し、久間章生君外六名から、自由民主党、公明党、保守党の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。久間章生君。

    ―――――――――――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

久間委員 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表し、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対する修正案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この修正案は、これまで行われてきた法律案についての審議を踏まえ、政府原案の基本的な考え方と枠組みはこれを維持しつつ、その上で、この法律案に対する一層広範な国民の理解と支持を得ていくとの趣旨から、国会の承認と外国の領域における武器の輸送について修正を加えようとするものであります。

 次に、本修正案の内容の概要を御説明申し上げます。

 第一に、内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動については、これらの対応措置を開始した日から二十日以内に国会に付議して、これらの対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならないこととするとともに、政府は、不承認の議決があったときは、速やかに、当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を終了させなければならないこととするものであります。

 第二に、協力支援活動として行う自衛隊による役務の提供のうち、物品の輸送には、外国の領域における武器弾薬の陸上輸送を含まないこととするものであります。

 以上が、この修正案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより各案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。

河村(建)委員 おはようございます。自由民主党の河村建夫でございます。

 ただいま自由民主党、与党、保守党また公明党も含めての対案も出てきたところでございますが、このテロ特別措置法、今大詰めに来ておるわけでございます。けさの新聞、与野党協議決裂、党首会談決裂、こういう見出しが躍っておるわけでございまして、この法案については、国際協調の中でテロを根絶していこう、私は、大方のコンセンサスが根底にあった、議論の中であった、こう思っておりますから合意できるものだと思っておりましただけに、残念に思いますし、いわば日本の国際協調のあり方が問われている世界注視の法案でもある、こういうことを考えますと、与野党一致した形で合意すべき案件ではなかったか、こう思うだけに、残念に思っているわけであります。

 ただ、与党側が、一連の協議の中で、決裂はしたけれども修正をしていく、この姿勢を貫かれた、そのことを私は高く評価したいと思います。閣法では報告事項だけであった。しかし、国会がこの法案にどのように関与し、また国会の機能をどのように発揮するかという意味で、この修正をするということは非常に大きな意義があるというふうに私は思っておるわけであります。

 官房長官、修正協議、与野党の協議を見守っておられたと思うのでありますが、このような事態になっておりますが、総理としても、どのような形でいくか、いろいろ御心労されたことと思いますが、このたびのこういうような結果についてどのような御感想をお持ちか伺いたいと思います。

福田国務大臣 昨晩遅くまでいろいろと野党の方々と協議をいたしたのでございますけれども、残念ながら合意に至らなかったのであります。与党としても、野党の御希望を極力取り入れたい、そういう気持ちを持って臨んだのでありますけれども、また総理も、清水の舞台から飛びおりた気持ちで修正をして、御理解いただきたい、こういうことも述べられたほどであったのでありますけれども、そういうことにならなかった、まことに残念でございます。

 もともと政府提出の法案は、先般のテロ攻撃の対応に目的を限定した特別措置法でございまして、対応措置の必要がなくなれば廃止するということが前提となっております。また、自衛隊の派遣も含めた基本計画の内容及びその変更についても国会に報告をするということになっております。このために、法案をお認めいただければ対応措置の実施についても御同意いただいたとみなし得ると考えておりましたことは、これはもう何度も御答弁申し上げております。

 与党三党間の協議で、ただいま与党の方から示されました合意された修正案、法案の、自衛隊の部隊等による協力支援活動等の実施については国会の事後承認を要する枠組み、これも担保されていると承知をいたしております。

 政府といたしましては、今般の修正案を誠実に受けとめ、これが国会において可決成立すれば、本法案に基づく対応に万全を期してまいりたいと考えておりますので、より幅広い国民の理解、賛同を得られることを期待いたしているところでございます。

河村(建)委員 それでは、修正の趣旨説明をされました久間委員に一、二点お尋ねいたします。

 先ほどの、国会の承認に関する事項で、「これらの対応措置を開始された日から二十日以内」こうなっておりますが、この「対応措置を開始した日」、これはどのような時点なのかについて説明をいただきたいということと、お立ちになりますから、ついでにもう一点、いわゆる閣議を経て、そして開始をされて、そして部隊が出ていく、その後において大幅な変更が起きるということ、例えば急遽行き先を変えなければいけないようなことがあった場合、これは事後承認になりますから、このようなケースについての国会としての承認のあり方。また、これは報告だけで済む問題とは思われないわけでありますが、その辺についての考えもあわせてお聞きしたいと思います。

久間委員 開始した日というのは、この第五条にも書いてありますように、基本計画に定められましたいわゆる諸活動、協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動につきまして、「これらの対応措置を開始した日」というのは、そこに括弧書きで書いておりますように、防衛庁長官がこの六条あるいは七条それから八条の規定によってこれらの対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日のうちの一番早い日、これが提出するまでの二十日数える、カウントする日になります。

 それから、基本計画との関係でございますけれども、これはほかの法律もそうでございますが、基本計画を閣議決定して国会に承認を求めるとか国会の方に報告するとかいうことがございますけれども、基本計画の同一性が変わってしまうといいますか、そういうような事態になった場合には改めてそこで承認を得るというのが当然政府のとるべき態度だ、私はそう理解してこの修正案を出しております。

河村(建)委員 わかりました。大幅な変更の場合には改めて承認をとるということでありますから、それを了といたしたいと思います。

 もう一点、趣旨説明にあったと思うわけでありますが、この修正協議というのは決裂したわけでありますから、我が党内にも、政府がお出しになったベストと思われるこの法案に戻すべきではないか、こういう議論もあったわけでありますが、あえてそういう道をとらずに、修正協議を経て、その結果も踏まえながら修正案をお出しになった、その辺のことについてお聞きをしたいと思います。

久間委員 この問題につきましては、この国会における、当委員会における審議の過程におきましても、そのような国会の関与のあり方についてかなり議論が出てまいりました。

 それを受けまして、国民の広い支持といいますか理解を得るためには、やはり国会が何らかの形でこのように関与することが適切であろう。また、武器の輸送につきましても、これまで陸上の輸送については、実績も、特に他国での武器の輸送の実績もないわけでございますから、そういうことも考慮しながら、それに対する反対の意見等も非常にたくさん出ておりましたので、この際は、それを外すことの方が国民の理解をより広範に得ることができるんじゃないかということで、修正をした方がいい、そう判断した次第であります。

河村(建)委員 今回の法案は、テロに対する極めて時限的な、限定した法案であるということを考えますと、まず、派遣をするかしないかということが問われているわけでありますから、そのことをこの法案によって決定して、そして、事後承認を得られるということは、それによって国会がいわば拒否権を持つという形になるわけでありますから、私はこれで十分ではないか、こう思うわけであります。

 次に、国土交通大臣にお尋ねをしたいと思うわけでありますが、海上保安庁法改正案、昨日も同僚坂本議員からもいろいろ御指摘があったところでありますが、私がお伺いしたいのは、今回のこの法案を提出されたということ、これが成立することによって、あの二年半前の、忌まわしい思い出になりますが、能登半島の不審船事件、不審船を取り逃がしたということになりましたが、これにきちっと対応できるかという点でございます。

 今回の海上保安庁法の改正によると、新たな武器使用が可能となる要件は、外国船舶が我が国領海内で国際法に反する航行をした、そして、これが繰り返されるおそれがある、そして三番目に、重大凶悪な犯罪の準備の疑いがある、そして四番目に、立入検査をしなければ重大犯罪を予防できない、この四つがあるわけでありますが、これにすべて当てはまるような事件が再び起きたときに、これを確実に停船させ、そして検査をしてこれをきちっと処置できる、そのことが期待をされているわけでございますが、その点いかがでございましょうか。

扇国務大臣 今河村先生がおっしゃいました、この法案が通った後は四つの要件を満たせばというお話でございまして、例えば、二年半前のあの能登半島の不審船に当てはめてみますれば、今先生が言ってくださいました第一に該当するものというのは、いわゆる日本の漁船を偽装した船舶が領海内で徘回する、そして海上保安庁の立入検査を拒んで逃走したというのが一の要件に当てはまります。

 二つ目には、異常な高速で航行するなどの特徴から、工作活動を目的とした船と判断されるというのが二の該当でございます。

 また、三つ目には、船舶の外観上の特徴として、少なくとも情報収集でありますとか拉致等の重大凶悪犯罪の準備のためという疑いも否定できない、これが三つ目。

 四つ目に該当しますのは、我が国の管轄の及ばない他国領海へ向けて高速で逃走し続けた。

 これが四つの要件に当てはまるということから、この法案を通していただきますと、今後は、能登半島沖の不審船事件のようなこと、事態が再び起こった場合には、法律成立後、少なくとも海上保安庁法の第二十条第二項に基づいて射撃が可能となって、今度は確実に停船させることができる、そういうふうにさせていただけると思って提出させていただきました。

河村(建)委員 ありがとうございます。

 あのようなことが再び起きないと自信を持って御答弁をいただいたわけでございますし、警察との連携等も非常に密にしていただいて、あのような事件に対してきちっとした対応ができるように、ぜひこの法案の成立を待って、特にその体制整備を確実なものにしていただきたいとお願いをしておきます。

 最後に官房長官にもう一度。

 これは特に通告を私はしていなかったのでありますが、けさのニュースを見ますと、イギリスにおいてはブレア首相のもとで、テロ対策の総括といいますか統括法案といいますか、総体的な、全体の危機管理に対する法案が出ているというようなニュースがございました。

 きのうの御答弁でも、恒久的ないわゆる危機管理体制を考えていく必要があろうというお話でございましたが、特にアメリカのああした炭疽菌のことを見ても、この不安というのは今国民の間にも非常に高まっておりまして、いろいろな流言飛語が飛び交っておりまして、日本にも、十一日にあったから次は二十二日の日が危ないとか、そんなことが飛び交っており、私のところへ夜中に電話をかけてくる人たちもおるわけでございますが、こういうことに対してもやはり政府はきちっとした方向を打ち出す必要がある、このように感じておりまして、改めて官房長官の、政府としてのお考えをただしたいと思います。

福田国務大臣 今回のようなテロ、これは、特徴を申しますと、極めて国際性の高い、そういう事件であったわけでございます。今までも、テロ対策とかそういう緊急危機管理、緊急的な対応そしてまた危機管理についていろいろ政府としても取り組んでまいりましたけれども、今回のような規模の大きい、国際性のあるテロというものが認識されるという事態に至ったこの段階において我々として、政府として取り組むべきことは、これは今までの取り組み以上のものが求められているのかもしれない、こういう観点から、ただいま、政府全体の機能をいかに活用していくかということを中心に、いろいろな対応の仕方を考えている最中でございます。

 御指摘のとおり、これは大変大事な課題であるというふうに考えまして、有事の立法の問題もございますけれども、そういうものも含めて対応を考えていきたいと思います。

河村(建)委員 政府としてもきちっとした方向を打ち出していただいて、国民の生命財産はきちっと国で守るという姿勢を強く打ち出していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

加藤委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。

 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 おはようございます。

 法案が国会に提出されて以来、この委員会でも、総理の御出席もいただきまして精力的な審議が行われてまいりました。そうした委員会での審議や、また各政党間でのいろいろな協議を踏まえた上で、先ほど修正案も提出をされ、これから詰めの議論が行われることであろうかというふうに思います。早期成立を目指してこの委員会を運営してきたわけでありますので、運営に当たられました委員長初め、また提出者の方々の御努力に大変敬意を表するものでございます。

 きょうは、まず最初に、この委員会でもうたびたび提起されていることでありますけれども、アフガニスタンにおける今の行動が終わった後の平和の回復、国の再建の問題についてお伺いしたいというふうに思います。

 これまで、官房長官また関係大臣の皆さんからも、日本としても積極的な貢献をしていくというお話がございまして、それは我が国としてもぜひやっていただきたいことであるというふうに思っております。

 国連のアナン事務総長は、タリバン政権崩壊後のアフガニスタンの再建に国連が一定の関与を行っていく、役割を果たしていくというようなことをおっしゃっているわけでありますけれども、そうすると、これは国連PKOの派遣等が想定されるわけでございます。

 一つは、こうした国連のPKOの派遣が想定されたときに、我が国としてはどのように対応されるお考えなのかということをまず一つお伺いしたいのと、もう一つ、あわせてお伺いいたしますが、昨日の委員会でも田中外相の方から、このアフガンの再建支援に当たって、地雷除去などの作業、そういったことにも触れながら、法律改正の必要性について言及をされております。

 PKO法の改正などが念頭にあるのではないかというふうに思うんですけれども、地雷の除去というのは、今のPKO法を初め、現行の法制ではできないのではないのかなというふうに私は理解をしているんですけれども、そういう法改正、もし視野にあるものがあるのであれば、具体的に御披露いただければというふうに思います。

福田国務大臣 まず、アフガニスタンの今後に対して日本がいかなる貢献ができるか、こういう御質問がございましたので、そのことについてお答えいたしますが、アフガニスタンがこれからどういうふうになるか、これは今後の推移を見ていかなければわからないのでありますけれども、いずれにしましても、アフガニスタンが永続的に平和であるような国になる、こういうことが一番大事なことだと思います。

 そういう意味においては、まず、アフガンの国民各層の支持を得られるような政権が樹立されるということでありまして、そういう意味においては、そういう環境づくりに我が国ができることがあればお手伝いをさせていただかなければいけないと思っております。

 また、PKOの問題でございますが、アフガンにおいてPKO活動ができるような環境が整えば、これはもう我が国として率先してやらせていただかなければいけない国際活動であろうか、こう思っております。

 また、地雷のことにつきましては、これは、アフガニスタンにおいては大変な地雷が埋設されている。一説によりますと、ソ連の侵攻時に一千万個以上の地雷が埋設され、それがいまだに残っている、こういうようなことも聞いておるのでありますけれども、大変深刻な問題だというように考えております。

 ですから、この地雷除去に関して、我が国として何かお手伝いすることができるのかどうかということになるわけでございまして、この点については、御指摘のとおり、PKOの枠内ではできない、結局、PKFにしないと、PKOの役割拡大をしないとこれは我が国としてはできないということであります。また、他の法令等においてもそのような役割は決まっていないということでありますので、アフガニスタンに平和が確立されたら、PKFの活動の中で地雷除去というものが、これができれば、日本の技術も相当すぐれたものもございますので、アフガニスタンの再興に本当に貢献できるのではないか。カンボジアのPKOのときにも、カンボジアの地雷除去については我が国は貢献できなかった、そういうこともございました。

 そういうことを考えながらも、PKFまでできるように法的な整備をすべきではないのかな、こんなふうにも考えておるところでございます。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 次に、今度の法案の中では、自衛隊が避難民の支援を行うという内容が活動として含まれております。まだ事態の推移がどういうような展開を示すかわからない中で、どういうような具体的な協力になるかというのはわからない段階でありますけれども、これまでも自衛隊は、避難民支援という意味ではいろいろな活動をしてきているんですが、その中でも、ルワンダにおいては、PKO活動の一環としてそういう難民支援を行った経験があるというふうに承知しております。

 支援の内容、成果、また、それが非常に高い評価も受けたというふうにも聞いておりますので、ちょっと時間の関係もありますので、その辺、簡潔に御説明いただければというふうに思います。

中谷国務大臣 自衛隊は、平成六年の九月から十二月までの間にルワンダ難民支援を行いました。内容は、医療、防疫、給水、空輸という面です。

 具体的には、ゴマのゴマ病院において延べ二千百名の外来患者の診察、手術、それから衛生試験場においてマラリアの原虫及び便の検査、それからキャンプにおいてはトイレ等の消毒、防疫、それから七万トンの給水活動、延べ三千四百人の、うちNGOの要員の方が九百名いますけれども、人員の輸送、五百十トンの貨物の輸送などを実施いたしました。また、伝染病とか細菌の知識を現地の人に教えるなど、そういう貢献をいたしまして、悲惨な状況の改善に寄与することができました。

 評価につきましては、国連のガリ事務総長からも、河野外務大臣に対して非常に高く評価している旨の発言や、緒方貞子国連難民高等弁務官から村山総理に対して、派遣に対する感謝の電話があったなど、非常に国際社会からも高く評価をいただきました。

 以上です。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 今御説明がありまして、これまでそういう意味では難民支援の経験も積んできたわけでありますが、今回の事態が必ずしも同じような事態というふうには言えないので、どういうような形での協力ができるかわかりませんけれども、そうした経験を生かせる機会があるのではないかというふうにも思っておりますので、またぜひ積極的に取り組んでいただければというふうにお願いをいたします。

 そして、きょう法務大臣にも御出席をいただいているんですが、最後に御質問いたしますけれども、今いわゆるテロリスト、アルカイーダの関係者の金融取引の監視というのが、組織犯罪対策法に基づいて、麻薬取引容疑を根拠にいろいろと、その法律の、疑わしい取引の届け出ということを根拠として行っているというふうに承知をしております。

 今回のケースでは、これまでの国連決議等で、テロリスト、このアルカイーダが麻薬取引容疑が十分に濃厚であるということでこれが対応できているんだというふうに思いますけれども、この法律自体にはいわゆるテロ行為というのは入っていないわけでございます。

 そうすると、今後のことを考えると、この対象犯罪に、これだけテロが世界じゅういろいろなところで起きる可能性が出、非常にその危険性がふえてきているので、例えばこういう組織犯罪対策の対象犯罪の拡大など、そういったテロのいろいろ監視のための法整備が必要ではないかというふうに思いますが、法務大臣、御見解をお伺いいたします。

森山国務大臣 組織的犯罪に対処するための法律といたしましては、組織的犯罪処罰法や通信傍受法がございます。

 そのうちの組織的犯罪処罰法におきましては、いわゆるマネーロンダリングの処罰規定や疑わしい取引の届け出制度などを規定しておりまして、本来、このマネーロンダリングの規制は、犯罪行為により得られた資金や特定の犯罪行為のために提供された資金、それを仮装、隠匿等の手段によって正当な資金のように装う行為を規制するということを目的としております。犯罪行為のために資金を提供する行為自体を直接規制はいたしておりませんので、おっしゃいますような問題を解決するためには別途考える必要があるというふうに思っております。

 テロ資金の規制のために、組織的犯罪処罰法の枠組みにこだわらないで必要な法整備のあり方について検討する必要があるというふうに考えておりまして、関係省庁とも協力しつつ、テロ資金供与防止条約の批准に向けた所要の作業を進める中で、鋭意検討したいと考えております。

上田(勇)委員 終わります。

加藤委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上喜一君。

井上(喜)委員 テロ対策特別措置法の今日までの審議をお聞きしておりますと、私は、この法律の中で法律事項として問題になっております主たるものは、国会をいかにこれにかかわらしめていくかという問題と、それからもう一つは武器弾薬の輸送、この二点だったと思うんですね。

 確かに、前者につきましては、迅速性が必要であると同時に、また、何らかの形で国会が関与していくということも必要だと思うのでありまして、このたびのこの修正案、私もその提案者の一人になっておりますけれども、事後承認という形で国会をかかわらしめていく、そういうことにいたしておりますし、そういう意味では大変適切な改正内容だと私は思います。

 また、武器弾薬の輸送につきましても、いろいろな議論がありましたけれども、最終的には陸送を除外するということでありまして、これまた議論の経緯を踏まえた修正内容だと私は思います。

 そういう意味で、委員の皆さん方の御賛同をぜひお願いいたしたいと思います。

 そこで、きょうお伺いいたしたいと思いますのは、武器の使用といいますか、使用武器のことであります。

 この武器の使用そのものにつきましては、憲法上何ら問題はないということでありますし、また、武器使用が憲法上許されると解されるばかりでなしに、人道的見地からも必要なんだ、こういう政府の見解がございます。私もそのとおりだと思うんでありますが、ただ、このたびの法律は、自衛隊あるいは自衛隊と一緒に行動する隊員のみならず、管理下に入りました人を守るために武器の使用もできるようになっておりまして、これが従来のPKO法でありますとか周辺事態法とちょっと違うんですね。

 そういうことで、つまり守る範囲が拡大したということに関連いたしまして、これまでの法律の使用される武器と、このたび予想されますといいますか想定されます使用される武器、どんな違いがあるのか、防衛庁長官にお伺いをいたします。

中谷国務大臣 これまで行った五回の国際平和協力活動における武器は、けん銃とか小銃とか機関銃でございました。これは、いずれも、想定される不測の事態に対処し得る必要最小限のものでございました。

 この法律に基づく活動をする場合に、実際直面する危険として考えられることは、戦闘行為に至らないテロ活動、こういう不測の事態が想定されますので、実際に携行する武器については、そのような想定をされるテロ活動等に対して適切に対処し得る必要最小限のものになるというふうに思っておりますが、具体的な種類等につきましては、実際に派遣する場合に、それぞれの具体的な活動内容、現地の状況を総合的に勘案して決めたいというふうに思っております。

井上(喜)委員 もう時間でありますので、終わります。

加藤委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 次に、中野寛成君。

中野(寛)委員 外交防衛論争は水際まで、国内における論争は、みずからの主張を展開し合いながら激しく争っても、事国益を考え、国際社会の平和を考えながら、いかにして心を一つにして国際に貢献をしていくかということが、私たちのとるべき道だと思っております。

 そういう意味で、我々も、党内いろいろな議論がありましたけれども、長時間議論を重ねながら、党内の意見をできるだけ集約しつつ、そして、政府・与党との協議に臨み、お互いに譲れるところは譲り、かつよりよい内容のものをまとめていきたいという気持ちを持って臨んでまいりました。

 しかし、昨夜の経緯をお聞きいたしますと、正直言って、さすがの私も沸々とした怒りを覚えるものであります。しかし、事は大変ハードなテーマであります。そして、怒りを覚えるときほど冷静でなければならないだろうと思います。あえて感情を押し殺しながらというのはオーバーですけれども、冷静な話を、質問をしていきたいと思います。

 一つ申し上げたいことは、それなりの前向きの修正案が与党三党から提出をされました。事前に調整をされ、そして、野党のといいますか民主党の主張も、形の上である程度歩み寄ったかのように見せられております。しかしながら、その中で、例えば武器弾薬の陸上輸送を含まないということなどは、先ほど提案者の久間君から答弁もされましたけれども、初めてのことであり、なれていないことでもあるというようなことを言われました。

 事ほどさように、この法律ができても、実際にそこで果たす自衛隊の役割というのは、TPOに応じて限界を設けなければなりません。また、具体的な施行の内容を、実施する内容を国民に明示し、そして国民の納得の上で自衛隊の皆さんに出かけていただくということでなければ、自衛隊の皆さんとても大変不安であろうと思うのであります。

 よって、我々は、国会の原則事前承認ということに大変こだわっております。それは、決して、単に国会が監視しようというだけではなくて、派遣される自衛隊の諸君の皆さんに対しても、国会もともに責任を負う形で、自衛隊の皆さんに使命感を持って、誇りを持ってその作業に臨んでいただきたいと思うからであります。それが、感情や、まして党利党略があろうはずはないと思いますけれども、しかし冷静な判断の中で、そして、国会もあわせてみんなで、全国民が心を一つにして、この危険をも伴う活動にあえて参加をしていただくときにお願いをする姿勢として、国会の事前承認というのはせめてもの我々の心遣いでもあるのではないか、このように思うわけであります。(発言する者あり)

 よって、今不規則発言が横からございますけれども、法案が通ればというのは、これは個別の対策の法案だからと、たびたび政府答弁もそういう答弁がなされております。しかし、法律というのは、小泉総理の答弁からいいますと、武力の行使以外は何でもしたいと。そして、法律はでき上がってしまうとひとり歩きするのです。とするならば、この日本が初めてやろうとする行為、そしてこの重要な事態に当たって大変大きなリスクをも覚悟しなければならない行為というときには、やはり国会もともに責任を負う姿勢が私は必要なのではないかと。

 我々は、後ろ向きの考えというよりも、むしろ国会もともに責任を負うという前向きの姿勢を持ちながら、この問題については、ぜひとも政府が、そして与党が御理解をしていただきたいと思ったのでありますが、残念ながらそこまでまいりませんでした。

 お聞きをいたしますと、きのう、党首会談が行われました。言うならば、イギリス風に言えば、首相と野党第一党の党首との会談であります。しかし、イギリスに比べて日本はそこまで国会は成熟していないという政府・与党の御判断なのでしょうか、党首同士の一対一の協議ではなくて、きのう小泉総理は、同席された両党の役員同士の議論に耳を傾けていただけで、最後に、ひとつここまで来たのだからよろしくとおっしゃった程度の発言しかなされなかったと聞いております。何のための党首会談だったのだろうか、それを聞きながら、私は疑問を持たざるを得ないのであります。

 いずれにいたしましても、この法案の提出者として、また総理の補佐役としての官房長官の御見識を問いたいと思います。

福田国務大臣 ただいま、昨晩のことにつきまして、合意に至らなかった、委員のおっしゃられるのは、小泉総理の考え方がよくわからなかった、こういう趣旨であったかもしれません。

 与党内の協議はございました。そして、これも大変真摯な議論をしてきた、真剣な議論をしてこられたわけでございまして、その結果を踏まえて、また、小泉総理とそして与党の幹部とよく協議をされた結果、昨晩の両党の党首会談、あわせて幹部の方々にお集まりいただいた会合を開いたわけでございます。そこの席でいろいろ議論がございました。両党間でさまざまな議論がございましたけれども、しかし、結果として合意に至らなかったということでございます。

 小泉総理も、かなり与党間協議を踏まえて、そしてぎりぎりのお考えも、判断も示されたと私は感じております。しかし、それが結果的に合意にならなかったということは極めて残念だというように思っております。

 しかし、それはそれとして、この法案後、さらに御審議いただいて、そしてその上で成立させていただいた上は、先般起こりましたこのテロの絶滅、テロによってもたらされた脅威を除去する、このことに全力を挙げて取り組ませていただきたい、そのように思っておりますので、どうか御理解を賜りたいと思っております。

中野(寛)委員 私は、総理が折に触れて、野党、とりわけせめて民主党の、野党第一党の同意だけは得たいものだとおっしゃっておられた。結局、大変皮肉な言い方をして恐縮だけれども、最初の言い出しは大変派手なパフォーマンス、しかし結局は、すべて小泉総理言うところの抵抗勢力等の抵抗に遭って腰砕けになってしまっている。今回も、果たして総理が日ごろ思っておられたとおりにゆうべは運んだのか、それとも、総理は最初からその気はなくて、うそをついておられたのか。いずれにいたしましても、私は、総理のその政治姿勢とリーダーシップに改めて疑問を感じざるを得ませんでした。

 この問題についてはまた改めて、これからいろいろな機会に、また、きょうの後の審議等の中でも、なおそれぞれ触れてまいることになろうかと思います。

 さて、質問の本来の筋に戻りたいと思いますが、国際テロに対しましては、国際社会が一致結束して、テロは絶対に許されないという強い姿勢で取り組むことが重要であります。私は、端的に、イギリスのブレア首相が表現した言葉に感銘を受けました。今月二日のイギリス労働党大会での演説において、彼はこう申しております。行動を起こさない危険の方が行動に伴う危険よりはるかに大きいと。まさに至言だと思うのであります。

 ややもすると、力による報復は新たな報復を生む、いわゆる報復の繰り返しになるから避けるべきだという意見もあります。それはそれで一つの見解かもしれません。江戸時代にかたき討ち禁止令が出ました。かたき討ちがかたき討ちを呼ぶ。しかし、それが守られるのは、幕府という一つの権力構造があって、一つの規則をつくるから守られるわけでありまして、国際社会には、これ以上の権力というのはないわけであります。言うならば、国連がその調整役の役割をやっと果たし得るか否かという。

 しかし、その国連にも限界がある。いざというときに個別的自衛権を行使してもよろしいと国連は認めている。そして、それは暫定的な措置だと言われる。しかし、その後国連がちゃんとやりますからという前提で国連憲章の条文はできているけれども、あと国連がやれるという国連軍の創設は、残念ながらできていない。言うならば、これは国家間の力関係によって国際社会というものは保たれていることを、残念ながら思わざるを得ない。

 しかし、あきらめずに、国連を積極的に活用していく、国連を受け身にとらえるのではなくて、国連を我々日本も利用できる場所なのだという意識、国連に従うのではなくて、国連を通じて日本の主張をいかに実現していくかという積極的な努力こそ望まれると私は思います。

 いずれにいたしましても、そのような国際社会のシステムと力関係と、そしてテロに対する意識、これらのことの中から、日本政府はやはりこの米英両国による武力行使を中心とする、そして日本もまたそれに支援をしようとする、その哲学、理念というものが、本当はきょうではなくて最初に本会議で総理からきちっと説明されるべきだったと思いますが、私はそれがまだ欠落をしていると思うのであります。

 改めて、官房長官にその政府の認識をまとめてお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 今回のテロの行為、これは米国のみならず人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であり、毅然とした対応なくしてはテロの一層の助長を招きかねない、こういうことは総理も何度も繰り返して発言をされていらっしゃいますし、あわせて、この国際テロリズムとの闘いに対し、世界の国々と一致団結し、我が国自身の問題として主体的に取り組むことが必要であるということも申し述べております。

 その他、今回のテロリズムに対応する日本のあり方というものにつきましては、再三いろいろな場面で申し述べておられると思いますので、私は、国民の方々にもそのような総理の考え方というものはかなり理解が進んでいるのではないかというように思っております。そういうようなことによって、私は、この法案に対する御理解もだんだんと進んできているというように理解をいたしております。

中野(寛)委員 実は、総理に聞きたいと思ってこの質問は用意したのですが、これはもうこれ以上深くお聞きしても、官房長官としては今誠心誠意お答えになられたんだと思いますから、これ以上問いません。

 さて、今回このテロ対策措置法が上程をされておるわけであります。そこには、今官房長官も言われたような趣旨で目的も述べられております。

 そこで、特色としては、国際協調の立場から主体的に今回の問題に対処しよう、この主体的にという言葉が総理の口からもたびたび述べられて強調されておりますが、中身はというと、米国を初めとする外国の軍隊等に対する支援、これは外国の軍隊が動かないとその支援活動はないわけであります。国連等の要請に基づく人道的援助、国連からの要請がなければやらぬのかということになるわけであります。主体的にと言う割には何か主体的に人の後ろについて歩くという、実に矛盾した感情を私は持つわけでありますが。

 さてそこで、テロ根絶のためには、テロ組織やテロ支援国家を武力によって攻撃するだけではなくて、そのテロ組織などの資金源を断つなど、より包括的な対応が必要であります。ブレア首相の演説でも、タリバンの資金源となっている麻薬取引の壊滅や資金洗浄の取り締まりにも言及をいたしております。

 軍事的貢献に限界がある我が国としては、むしろそういう意味で、これら国際的な麻薬取引や資金洗浄への対策など、包括的なテロ撲滅のための方策についてどのように積極的、主体的に対応するつもりかということをお伺いしたいわけであります。

 これは、例を麻薬と資金洗浄で挙げましたけれども、いろいろなテロ防止の手段、法則、研究というのはあると思うんですね。それらのことについて、先ほど同僚議員の質問でもありましたが、今回はこのアメリカにおける同時多発テロ対策ですが、この機会に、テロ全体の撲滅のための方策について、日本の国内法の整備も必要でしょうし、国際社会の申し合わせも必要でしょうし、国連の決議も必要でしょう。むしろ国連の方が一歩進んでいるようにも思いますが、これらについてどうお考えでしょうか。

福田国務大臣 今回のテロというのは、これは国際性が極めて強い性格のものであるということであります。

 前回、六年前にサリン事件が起こりました。これはもう国内の問題で済んだわけであります。一部その宗教団体が、海外にも活動家がいるとかいうようなことで、若干のそういう部分もございましたけれども、しかし今回とはもう全然比べ物にならないようなことで、主に国内だと。大体、我が国が想定していたものは今までは国内が多かった。しかし、このように世界が国際化ということでもって国と国の関係が本当に緊密になってくるというような状況の中では、今後はまた新しい取り組みが必要だということを思い知らされたのが、これが今回のテロ事件だった、こう思っております。

 そういう観点から、政府としてもいろいろな角度から検討いたしております。危機管理という問題もございますし、また国際的な情報網の活用とかいうようなこともありますし、今まで我々に、政府に要求されていなかったようなことが今回新たな任務として生じたのだ、こういう分野もございます。そういうことを総合的に考えていくということになりますと、これは今までの態勢で果たしてよかったのかどうかというような反省も踏まえまして、これからこの態勢整備に取り組んでまいりたい。

 しかし、今までもこういうようなことについての予想を全くしてなかったわけでない。そういうことの関連において準備も相当進んできているということはございます。例えば、国際間の情報の交換というようなこともかなり進んでおりますので、そういう機能をもっと強化していくということにこれから全力を挙げたいと思っておるところです。

中野(寛)委員 例えば自衛隊法の問題にしても、今回自衛隊法の改正、出ていますね。自衛隊法というのは基本的に有事法制ですよね。外敵から日本の国、国民の生命財産を守る。有事のときの法体系になっている。体系と言えるほどのものはないんだけれども。そして、百条に雑則的に追加で、災害出動だとか、いろいろな平時の活動を列挙してありますね。よくよく見ると、結局、今回のような緊急事態に対応する部分というのが実は欠落しているんです。いろいろ治安出動とかなんとかありますよ、いろいろな複雑な手続を経て。

 しかし、自衛隊法、あれだけの強大な組織を持っているわけです。これが当然有事に対応するのは当たり前、それが本来の目的でしょうから。しかし、自衛隊という組織は、そのほかに緊急事態と平時とそれぞれの役割があるんですね。それを自衛隊法の体系として、改めてきちっと整理してつくり直す。何か昔、警察予備隊から始まって、何となく逃げ腰だったり何か網の目をくぐったりしながらここまで発展させてきたという不幸な歴史があるんだけれども、そろそろここらで自衛隊法の本来あるべき姿というもの、これは他の緊急事態法、もしくは有事法制もと言ってもいいでしょうか、あわせて検討し直さなければいけないというふうに思うんです。

 今回、自衛隊の守る対象を自衛隊の基地と米軍の基地に絞られている。それで、多くの国民の皆さんは、それをやるぐらいならなぜ国民を守ってくれないという素朴な疑問を持っている。しかし、私は逆に、その米軍、自衛隊の基地以外のところに、自衛隊が全国的に主要施設というところにうわっと配置されたとしたら、何か日本は軍国主義国家になったんじゃないかという錯覚を起こすかもしれません。

 ですから、私は、ここは慎重でありたいと思うのです。警察は国内を守り、外敵に対しては自衛隊員が当たるぞという大原則は壊してはならないと思うのですが、例外的には、やはりその力というものを、平和のためにどうしてもやむを得ないときは活用せざるを得ない、その法体系の整備が必要だと思うのですが、どうお考えでしょうか。これは防衛庁長官なり官房長官、どちらでも。

福田国務大臣 いわゆる有事のときにどう対応すべきかということについて有事法制というものがございます。この整備を我が国としても進めていかなければいけない。今の、私先ほど申しました危機管理、テロ対策とかそういうようなものも、有事法制とどういうかかわりになってくるか、こういうことも検討対象になろうかと思います。

 いずれにしても、日本は、有事のときにどうしたらいいかということについての法体系、法整備というものは、国内法の関係において十分なされていない、こういう欠陥があるということはもう昔から指摘をされているところでございまして、このことについて、政府として今後真剣な検討をしていかなければいけない。これは、小泉総理もこの間の所信表明にも申し述べておりますとおり、有事法制整備ということについては、平時において備えなければいけない大事なテーマである、そういう意味におきまして、なるべく早く国会で御審議をいただきたい、そのための法案もこれから考えていきたいということを申し述べておりました。

 ただいま内閣官房の中に十五人チームの組織をつくりまして、そこで鋭意検討を進めている、そういうような状況にございます。

中野(寛)委員 きょうは、村井国家公安委員長にもお越しいただいておりますが、先般、私も警察庁から資料をいただきました。例えば原子力発電所とかについては、それぞれ各国がその守るための措置をいろいろ段階を追って講じているわけですね。施設内の警備は、米国、ドイツ、スイスが警備員または職員による武装警備、これはけん銃とかライフルなどを持っているそうですが、外は当然警察ということになりましょう。そして、フランス、スウェーデン、ベルギーで警察または国家憲兵隊による武装警備、こういうふうになっているんですね。

 また、それ以外に、それだけでは守り切れないということになったときの軍隊の出動要請について、それぞれの国がいろいろな工夫をされています。例えば、アメリカでは司法長官の指揮下に入るとか、ヨーロッパのある国では警察庁長官の指揮下に軍隊が入るとか。具体的な活動の現場の指揮は、それはその国の軍隊の、その現場の上司がやることにはなっていますけれども。

 これらのことは当然研究もされていると思いますが、これは当然、こういう事態がいろいろ発生してまいりますと、いわゆる大型のデモ対策とかなんとかというのではなくて、テロとかゲリラ対策というのは、やはりしっかりと考えて、そういう整備をしておかなければいけないのではないかという気がするのですが、これは公安委員長と防衛庁長官にその心組みをお聞かせいただきたいと思います。

村井国務大臣 一般論として申し上げさせていただきたいと存じますが、いずれも実力集団でございます、自衛隊を軍と言ってよろしいかどうか、その辺のところはいろいろ定義の問題があるんだと思いますけれども、日本の場合自衛隊、よその国でございましたら軍と、それからそれぞれ国内の治安の維持に任じております警察との間の関係というものは、確かに、警察の力をある程度超えるというような状態が想定されました場合に、どのような形で、一般論として申しますと、軍が出ていくかということにつきましては、それぞれの国にそれぞれの制度がございます。今、中野委員確かに御指摘のように、よその国では、警察を掌握している行政機関の長、例えば法務大臣、司法大臣のもとで軍隊がその治安の維持に任ずる、警察もそれと共同してやるというような体系もございます。あるいは武器の使用、武器の所持が一般に認められているかどうかによりましても、これまたいろいろな態様があるわけでございまして、先ほど例に引かれました、原子力発電所の警備に民間人が当たっている場合でも武器を携帯しているというような、これはアメリカの例などはそういうケースがあるようでございますが、そんな例もございます。

 それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、このあたり非常に複雑なものでございまして、日本の場合は、これは現在の法制では自衛隊法の治安出動という形で整理がされていると私どもは承知しているところでございます。

 なお、警察につきましては、警察の体系というのは、いわゆる地方の自治警察、地方自治警察と申しましょうか、各都道府県単位の警察が基本の実力を持つ部隊というのが日本の制度でございますから、これを、警察法七十一条によりまして、場合によっては全国一本で、あるいは特定の混乱が起きました地域につきまして、内閣総理大臣、さらに警察庁長官のもとで直接、地方公安委員会を全く外しました形で統制して運用するというようなことを認める、いわゆる緊急事態の布告という制度が警察法七十一条に規定されておりまして、これも国会の承認を得てやるというような手続になっているわけでございますが、これは、自衛隊法の運用の場合とはちょっと形が異なったものになっているかと思います。

 いずれにいたしましても、各国、それぞれ制度は区々でございますけれども、日本の場合はそんなような形になっているということを私の立場から申し上げさせていただきます。

中谷国務大臣 御指摘のとおり、各国いろいろな制度があります。フランスは内務大臣のもとに軍隊が指揮下で活動する例もあれば、ドイツなんかは、緊急事態に際して軍隊と警察は共同して対処するけれども、指揮系統は別であるという例もありまして、各国それぞれございます。

 治安出動に際しましては、その発動要件に、「一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合」というふうになっておりまして、現在、警察と治安出動に関する協定の締結をいたしておりまして、連携の確保に努めておりますが、その際は、それぞれの指揮系統のもとで、適切に役割分担をして連携して事態に対処するという体系になっております。

 今回、新たに警護出動というものを設けたわけでございますが、これは防衛関連施設に限っておりまして、この施設は自衛隊による警護が適当であるという考えに基づいて、テロのおそれがある場合に、特別な必要の場合に警備されるということでございますが、今中野委員の言われた点、長年安全保障や防衛問題にエキスパートとして取り組んでおられて、きちんとした体系にまとめなさいという非常に示唆に富んだ御意見でございますので、今後さらに検討してまいりたいというふうに思っております。

中野(寛)委員 緊急事態とか、この環境というのは幾つかありますね。いわゆる不穏な情勢が続いて、そしてそういう動きがあって何かが起こるだろうという予測ができるときと、それから行動が、テロならテロで起こされて、それがだんだんエスカレートして発展をしていくというときと、そういうものも一切なしで、例えば今回のアメリカのように突然ぼうんと来る場合と、こういういろいろなレベルがあるわけです。

 日本の場合には、残念ながら、何かそういう環境が生まれて、そして、さあ構えなきゃいけないぞ、準備しなきゃという余裕があるときのことしか決められていないと言っても過言ではない。そして情勢が、だんだん深刻になっていって発展していく、これなんかは別に何日もかけて発展していく話じゃないですね。

 そういうことなどを考えますと、先ほど村井さんせっかく御丁寧な御説明をいただいたけれども、その手順を踏んでいる暇があるのかなという気がするわけです。言うならば、こういうテロのような状況が起こったときに考えることは、速戦即決でいけるくらいの態勢を決めておかなきゃいけないということだろうと思うんですね。それが緊急事態。

 日本の場合は、その緊急事態が、内外ともに緊急事態に対するそういう法律なり制度なり構えがないというところが、私は大変おっとりした日本の国のなせるわざかなと思っているんですが、一言ずつ、そういうお気持ちがあるかどうかをお聞かせいただきたい。

村井国務大臣 確かに、今、中野委員御指摘のように、そういうときに緊急にどのような態勢がとれる仕組みになっているかということをおっしゃられますと、それは警察につきましても、制度としておっしゃるとおりだろうと思います。

 ただ、私どもとしましては、その限界の中でどのようにこういう緊急事態に対しまして十分な対応ができるか、日々いろいろ工夫をしているところでございまして、今般の九月十一日のアメリカの中枢を襲いましたテロに際しましても、全国の警察がアラートの状態になりまして、大体の配備が終わりましたのは、当日の、日本時間で午前五時にはほぼ重点施設につきましては私どもにしますと大変重い警備態勢をとることはできた、このように思っておりまして、現在の許されました制度の中ではそれなりの努力をしているつもりではございます。

 ただ、御指摘の点は、これは重く受けとめなければならない非常に重要な問題意識だと思います。

中谷国務大臣 中野委員のおっしゃったように、国民の安全を守るために、そのおそれがある場合に自衛隊の対処を可能にするという趣旨に基づいて、今回、自衛隊の警護出動の法律改正をするわけでございますが、その対象地域等につきましては、中野委員もおっしゃったように非常に、総理の権限、また国民の意見、そして警察当局との調整事項、さらに武器の使用の範囲など、まだまだ検討研究すべき点が多うございます。

 しかし、目的は国民の安全を守るという観点でございますので、今後さらに検討を続けてまいりたいというふうに思っております。どうもありがとうございます。

中野(寛)委員 自衛隊法の改正、今回は極めて限られた範囲の中における分野について適用しようということでありますが、大変何かパッチワークみたいで、にわか仕込みで、そして、今申し上げたような理念とか哲学とかがきちっとあって、その中の一環として今回のような改正が行われるということであれば、むしろ内容的には当然のことだろうというふうに思うのですが、その前提が大変あいまいであるところが私は極めて残念だなというふうに思っております。

 今、党内で賛否を問う議論がなされておりますので、私はここでそれ以上の答え的なことは申し上げません。

 さて、次に外務大臣にお聞きをしたいと思います。

 このテロリストは、今回の米英両国による軍事行動をイスラム社会に対する攻撃であるとする論理のすりかえを行って、タリバンの指導者もイスラムの聖戦を宣言したりしております。パキスタンやアラブ諸国、インドネシアなどイスラム教徒が多数を占める国においても、それに影響を受けて反米デモが活発化をしているということでありますが、このような論理のすりかえを許したり、テロとの闘いを文明間の衝突にすりかえるということは、絶対に避けなければならぬと思います。

 ちょっといただいた資料で見ますと、世界の宗教地図によりますと、人口でいうとキリスト教の信者が三一%、イスラム教が一八%、合わせると四九%、世界の宗教者の半分をこの二つの宗教で占めていることになるんですね。何か日本で、我々のような仏教徒は仏教が一番多いのかなと錯覚してしまいますが、世界でいうと仏教徒というのはわずか六%。こういうことを考えますと、何とも、このキリスト教とイスラム教の争いにしたのでは、これは世界大戦争みたいなものだ、世界大戦みたいなものだというふうに思うわけですね。

 そこで、テロリストに文明間の争いだとか宗教間の争いだとかという口実を与えないように、その芽を摘んでいくということが大変必要なわけで、そのために、パレスチナ問題というのは、言うならば一番大きな根っこの部分になっているわけですね。例えばキリスト教、イスラム教という名前を挙げるのはいいかどうかわかりませんが、どちらの宗教圏、どちらも信者は日本にもたくさんいらっしゃるわけですけれども、しかし、宗教的に中立と言われる日本の果たす役割というのは大変大きい。

 以前、中東和平をなし遂げたのがノルウェーの研究機関と言われたことがありましたが、そういうふうに、いろいろなところがいろいろな工夫をすることによって、強大な戦力を持たないところが大きな役割を果たすということ、当然あり得るわけですね。例えばヨーロッパではイギリス労働党とか、十何カ国がいわゆる社会主義インター加盟の政党が政権をとっているわけですが、その社会主義インターという組織が平和への役割を果たしたりもします。

 いろいろなところがいろいろなみずからの立場を活用してそういう役割を果たしていくわけですが、日本の積極的な外交というのが、残念ながらまだ目に見えるとは言われない。どのようにお考えでしょうか。

 ちょっと時間がないので、あわせてお聞きをいたしますが、既に、アフガニスタンにおけるタリバン政権崩壊後のアフガニスタン新政権のあり方をめぐって、いろいろなところが動いていますね。トルクメニスタンだけは中立宣言をして動きませんが、ほかの国々は、パキスタン、インド、中央アジア諸国、ロシア、中国、東南アジア、いろいろなところがいろいろな形で動いている。

 そういう中で、日本が果たしてどういう役割を果たせるかというのは、今から考えて準備をしておくことも必要ですし、そういういろいろな国際協議の交渉事の中にやはり日本は参加しておくことも大事だと思うんですね。こういう新しい平和に向けての日本の役割について、どうお考えでしょうか。

田中国務大臣 先ほど来、中野委員が、防衛庁関連の法案についての御意見も伺いながら、それから今もおっしゃったアドバイスを伺っておりましても、本当に平和のために、いろいろな工夫という言葉を使われましたけれども、確かに知恵を出すことによって大きな役割を果たすことができる、そういうことを日本がもっと積極的に前もってやるべきではないか、外交努力ということを。そういうお気持ちでおっしゃったというふうに理解いたしておりますし、まさしくそういうことが求められているというふうに私も認識をいたしております。

 そして、最初のお尋ねでございますけれども、これはもう今までの議論の中で中野委員は全部よくわかっていらっしゃると思いますけれども、日本は、もちろん国連の場もありますけれども、まず国内の法の整備をするということもありますし、それから国際社会の中でもって、二国間、あるいは多くの、マルチの場でも、どのようにして日本がこの問題に対応できるかということを取り組んできてもおりますし、さらに今後もやらなければいけないと思っております。

 具体的には、ハイレベルでの対談でありますとか書簡の交換、あるいは私なんかも電話をするとか、そういうこともやってはおりますけれども、やはり一番求められていることは、この後の二つ目のお尋ねに関連すると思いますけれども、どのようにしてアフガニスタンによい、いい政権をつくっていくかということ、それからその前に、キーポイントとしてやはり中東問題があると思います。

 そのことについては、私も、ペレス大臣あるいはシャース長官とも何度も電話でお話をしてきておりますけれども、これも今までいろいろな経緯はありますけれども、やはりお互いが感情を乗り越えて、本当に真の国民のために、世界の平和につながる大きな問題であるということのために少しずつ譲歩をし合うというような努力、これがないと、いつまでたっても委員おっしゃるとおりの文明の衝突になってしまうので、それを回避しなければいけないと思います。

 そこで、二つ目のお尋ねの、アフガニスタンの今後どのような政権をつくるかということは、これは私たちも大変大きな関心を払っておりますので、答えとすれば、アフガニスタンの国民の皆さん、その方たちから支持を得られるような、最大公約数の方たちがなるほどねと思うような政権を樹立するために、国際社会もみんなで知恵と力を出し合って協力をしていくんだということを私たちが先取りをする、そのための外交努力を具体的にしていきたい、かように考えます。

 またいろいろと御指導いただきたく思います。

中野(寛)委員 今の御答弁が、この国会におけるこの場限りのお言葉にならないことを祈念いたしております。積極そして具体的に、やはり行動を起こすことが大事だというふうに思っております。

 時間が余りありませんので、次に行かざるを得ませんけれども、そこで、今お話をした延長線上でもあるわけですが、きょう未明、インドとパキスタンの間において武力衝突があったというニュースが流れました。

 私は、正直言って、このパキスタンに対して、今回日本は、制裁措置、経済制裁下ではありますけれども、四十七億円の緊急経済支援を行うことを決定したわけですね。これは核実験に対する制裁措置をしているわけでありますが、核を持っているというパキスタン、そのパキスタンが今大変、外務省の御答弁では一応治安は保たれていることに表面上はなっていますけれども、しかし、パキスタンに万一のことがあって、そしてテロ集団にその核兵器や核施設を握られたときにどうなるかと考えると、これは本当にそら恐ろしいんですね。

 パキスタンに対して、きょうもアメリカの国務長官行っているようですが、パキスタンの政権を維持するためには、相当のてこ入れというものが今必要なのではないかという気がする。と同時に、今紛争を起こさないでくれとインドにも頼まないといけないのではないか。この重要な時期に印パ紛争が、この機を利用してやっているのかもしれませんけれども、ならばなおさらのこと、これは説得してでもこれをやめさせなければいけない。

 こういうことについてどうお考えでしょうか。パキスタンの核兵器、核施設、これらのことは、決して我々はおろそかに考えてはいけない、こう思いますが、いかがでしょうか。

田中国務大臣 パキスタンの貿易大臣及びインドの貿易大臣と、この週末のWTOの会合で親しくお話をする機会がありまして、私は、個別にいすをそばへ持っていって、まさしくその核の話、それからこのアフガニスタンに、まあ、乗じとは思いませんけれども、今の紛争に絡んでどのような対応をするのか、その後はどうかということをまさしく直接意見を聞く機会がございました。

 その中で、パキスタンは、もちろん今の国境の警備が大変であるということ、一番欲しいのは国境の警備であり現金でありというようなことも言っておられました。でも、情勢は流動的で変わっておりますけれども、あの週末の段階では、一応アンダーコントロールとは言っておりましたけれども、しかし、やはり緊張感はあるということを非常に、日曜日のあれは午後、話をしますときに思いました。

 そして、インドもやはり、インドのマランという貿易大臣ですけれども、この方も、自分たちもイスラム教徒はいるけれども、とにかく自分たちもアメリカとは、領空通過は認めているし、施設の利用も情報交換もしているからということは言っておりましたけれども、パキスタンとインドは話をしておりませんでした。

 したがって、今、核のことをおっしゃいましたけれども、中野委員おっしゃるように、まさしくその核を持っているという一つ、パキスタンが、この国が反対にタリバンの方に行ったら大変なことになるわけで、きょう、アメリカのコリン・パウエルさんがパキスタンに行っておられるわけですから、そうしたことをすべて頭に入れておられると思いますけれども、今のことで、ウサマ・ビンラーデン云々ということももちろんありますが、トータルでもって、このパキスタン、それからインドもそうですね、それらをしっかりと、これは国際全体に協力をしながら、安全のために、平和のために彼らも本当にエネルギーを出せるようにするということに努力をしなければいけないし、常にアラートでありたいというふうに思っていますし、アラートでいるということを御報告申し上げます。

中野(寛)委員 インドの貿易大臣とちょっと別のところで会ったので話をしましたということを、別にそれだけのことだとはおっしゃらないんだけれども、その程度のことを例に例えなければいけないぐらいに日本の外交がまだ貧弱なのかなと。その例をお出しになられただけに、私はむしろ大変残念に思います。もっとスケールの大きい、そして首脳外交を含めてお考えになられるべきではないかと。

 今、外務大臣が言われたようなことも大事です。それは決してむだとは申しません。しかし、そのレベルのことで、やったということでは困るのです。もっと大きく、大所高所に立っての判断というものが日本外交としてなければ、日本の外交が目に見えたということにならぬのです。

 この前、ショー・ザ・フラッグか何かといういろいろ話が話題になりまして、それが旗を見せろとか旗幟鮮明にしろとか、解釈の問題で議論しておりましたけれども、私、あの話が出たときに、自衛隊を出すよりも総理が世界を回れと。総理が世界を回れば日本の国旗はよく見えるよと。アメリカへ総理が行って、そしてブッシュ大統領と共同記者会見をやっているときに、星条旗と日の丸の何と後ろにたくさん並んでいたことか。

 言うならば、旗幟鮮明にし、日本の姿勢を明確にするということはそういうことなんではないでしょうかねということを考え、あと、いろいろと質問を予定いたしておりましたけれども、中途半端になってもいけません。ただ、ひとつ扇大臣、提案者として御同席なんですが、保安庁の役割については、私どもとしては積極的に取り組んでいきたいし、また御支援も申し上げたいなと思っておりますので、あえてお世話になっているのに質問申し上げませんでしたが、省略させていただきます。

加藤委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。

 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。中野委員の時間を四十分いただきまして質問させていただきます。

 きのう、急遽きょうの質問に立てということでございまして、楽しみにしておりましたので、この際、この四日間にわたります論議、おおむね、何といいますか、解釈論、そして私は、不十分な説明というか、まあ、ここは逃げているなというようなことを感じながらこの委員会に参加させていただきました。

 そこで、恐らく終局に近いこの委員会でございますので、今後この問題は大変な、いろいろな展開をしていくだろう、予想だにしなかったという事態も当然あり得るというもとで、政府の考え方、あるいは経緯というものを、国会としてあるいは一国会議員として確認しておかなければならぬと思う点に絞りまして質問をさせていただきたいと思います。

 それで、質問通告もいろいろしておりますが、順番が全く逆になりますけれども、国家公安委員長に一つお聞きしたいのです。

 来年、ワールドカップがございます。来年の夏でございます。私が今から質問をいたしますいろいろな、先ほど言いましたような視点からの質問、これに一つ具体的なイメージを挙げるために、必ずこのテロ関連で日本政府なり日本国民が大変な騒ぎというか、心配といいますか、それに巻き込まれるだろうと思われるのが、私は来年のワールドカップだと思うのです。

 御承知のとおり、ワールドカップ、来年は初めての二国共催という異例の開催形式でございますし、御承知のとおり、ワールドカップというのはスポーツの中でも一番フィーバーするスポーツである。そして、今度のテロがあって、キリスト教徒もイスラム人も、本当に全世界から各種人種、各宗教を信ずる人たちが来て、あのエキサイトするスポーツに観客として参加する、こういうことなんですね。

 私は三年前に、委員会派遣でヨーロッパへ行ったのです。そのときにパリで、いわゆる例のフランス・ワールドカップの、その後始末というか、とりわけフーリガン対策を聞いたのです。いやあ、大変だなと思ったのですね。スコットランドヤードから、フーリガンの経歴それから顔写真を全部情報を入れて、パリ警察がもらってそれをコンピューターに入れて、警察官を現場に配置して、あれっ、あいつはおかしいという者を全部調べて照合しながらという、実はてんやわんやの対策だったようでございます。

 私は、フーリガンだけでも大変だと思うところへもって、今度の大紛争が起こっておるわけでございます。アラブ人も来ます、キリスト教徒も来る。そして、それが相戦うかもしれない。そうしたときに、恐らく来年の夏に、今審議をしておりますこの問題というのは安定した状況に立ち至っているとは絶対思えないのですね。ビンラディンさんが逮捕されているというようなことはあるかもしれないけれども、イスラム原理主義によるテロの不穏な動きというものは、私は、払拭されていない、間違いなく払拭されていないと思うのですね。

 そういうことから見ますと、そういう面でも、そういう将来の事態にも次々に連鎖してかかわっていく重要な問題と私は認識しておりまして、だからこそ、この問題は湾岸戦争よりも百倍ぐらいやばくて怖い、不透明だ、こう私は思っておるのですね。

 そういう面でこのワールドカップの問題を出したわけでありますけれども、これについて政府は、今度のニューヨーク同時テロ、アメリカ同時テロというものを踏まえて、どこまで真剣にこの危機感を持っておられるのか。そして、今後どうこの対策を進めようとしておられるのか。まずは国家公安委員長にお聞きをしたいと思います。

村井国務大臣 ただいま古賀委員御指摘のとおり、来年のワールドカップサッカー大会でございますけれども、これは本当になかなか大変な、警察としては大変関心を抱いているイベントでございます。

 前回のフランス大会、今委員御指摘のように大変な暴動事件が起きた。これを引き起こしたフーリガンと呼ばれる連中でございますが、これが来日する可能性、これは十分念頭に置いて対応しなければならない。

 そういうことで、国内の関係省庁とも十分連携を保ちながら、また、当然のことでございますが、今御指摘のような手法でヨーロッパでもやっていたわけでございますけれども、海外の治安機関との連携、これも今からもう既に十分に連携を保ちながら推進してきているというのが、とりあえず今ワールドカップに対しましてやっておる私どもの努力でございます。

 そこへもちまして、今まさに御指摘のように今度のテロ事件が起きたわけでございまして、これの複合というのは確かに非常に難しい問題でございます。そういう意味では、ワールドカップサッカーにおける最大の脅威というものは、私は、フーリガンとテロ、これのある意味では複合ということではないか、このような認識を持っていることはもう委員御指摘のとおりでございまして、さような意味で、これからも国内関係官庁といろいろ連携を保ちつつ、また、当然のことでございますが、いろいろな情報に非常に注意深く、テロ組織の動きなどもフォローしながら、水際対策の強化、これが一つでございます。

 それから、ハイジャック防止対策の徹底、それから競技場の上空の飛行規制の検討でございますとか、あるいはBC、バイオロジカルあるいはケミカルのテロ対策の強化、そういったような警備諸対策を総合的に推進していくということで、この事案の未然防止を図るということに精いっぱいの努力をしていかなきゃいけないということで、これはある意味では私ども警備警察の一番大きな主題だ、このように思っているところでございます。

 ひとつ、いろいろまた御指導をいただきたいと存じます。

古賀(一)委員 私は、これまでの本法の審議を聞きながら、とりわけ総理のいろいろな勇ましい御答弁もございました。どっちかというと、同時テロといっても、やはりターゲットはアメリカだろう、遠いアフガンの地の問題だろうという一つの雰囲気もあったと思うのですけれども、これは、このワールドカップだけではなしに、セキュリティーという面で最悪の事態まで常に考えていくのが政府の役割であるし、それを指摘するのが国会の役目だと私は思うのです。

 本当にこのワールドカップを一つのいい例に、これを我が身の問題として、降りかかってくる、日本のアクションが必ず報復として来るかもしれないという緊張感のもとに考えるべき事柄であるということを私ははっきりと申し上げておきたいと思うのです。

 総理は幾度となく、きょうは総理は御出席ではございませんが、やれることはすべてやると何度も私は聞きました。ところが、やれることは何でもやると言っても、日本政府というのは、もちろん憲法の問題もある、もちろん国家を統治する責任者としての立場もある、私は、限られていると思うのですよ、当然のことながら。ところが、相手は、あのニューヨークの貿易センタービルに突っ込んだというのは、私は、極論すれば、先ほど中野委員からお話がございましたけれども、核兵器を手に入れれば核でも使うというメッセージがあのニューヨークに突っ込んだ飛行機のさまだったと思うのですよね。

 だから、相手は本当に何でもやるのです。炭疽菌の問題があります。新聞にも書いてありました。切手とベビーパウダーがあればテロを起こせると。それはもう全世界、どんどんベビーパウダーを入れて、日本政府であろうがどこであろうがどんどん送りつければ、もう一種のパニックですよ。

 そういう、あっちは何でもやるという証明をしたようなものでありまして、そういうところで日本政府が求められるのは、まさにやれることはすべてやるという発想でない。むしろ、やってはならないこと、平和的に、これが一番タリバン勢力あるいはイスラム原理主義者を大義の面において追い込んでいくことという、その知性といいますか知恵、そういう部分が日本に一番求められているわけでありますが、実際この同時テロに発した中で自衛隊を出す。この話はもう、きょうのこの法案審議もそうでありますけれども、出てまいりましたけれども、ほとんどそういった知恵の部分というか外交政策的な部分はまだ発信を私はされていないと思うのですね。それが、私はこの法案審議を通じて感じた最大の問題でございます。

 そこで、まず、原点に戻りましてお聞きしたいわけですが、国際テロ対策の新法が三本用意されました。私もかつて役人として法律をつくる立場におったこともあるわけでありますが、どうもこの法律というものはわからないのですね。これはどういうプロジェクトチーム、タスクフォースがまず原案を立案されたのか、これはひとつ内閣官房長官に、事務的な説明で恐縮でございますけれども、確認をさせていただきたいと思います。

福田国務大臣 この問題、事件が起こりましてから我が国は外交努力もいろいろとやってまいりました。外交がないということはないのでありまして、戦争に至るまでは外交だということであるならば、我が国は、武力行使をしない、憲法の範囲内でやるこの行為も外交の部分であるかもしれぬというように考えてもよろしいのじゃないか、こう思っております。そういうような観点から、関係する省庁、政府機能をすべて動員いたしまして、この原案を作成するというものに参画をしてもらったわけでございます。

 内閣官房が主体となりました。九月十一日の真夜中にこの事件が起こりまして、十二日からは、そのチームをつくりましてこの対応策の作成に当たってきた、こういうことでございます。外務省、防衛庁はもとより、その他の必要な省庁すべて御参集いただくというようなことで対応してきたものでございます。

古賀(一)委員 私は、内閣官房といっても、内閣官房プロパーの人というのはほとんどいずに、各省からの出向だと思うんですね。今の官房長官のお話で、外務省、防衛庁からの出向組が中心となってやったというふうに受けとめましたけれども。

 私は、この法案を読みながら、あるいは答弁を聞きながら、内閣官房の部屋で、野党対策というか、どうやったら国会とのかかわりを薄くして、総理が言うように、国会に縛られず、できるだけ早く出すために、どういう文章を書いたらいいか、それを内閣法制局に持っていった。もちろん、てにをはもやります。つまり、いわゆる現場における、アフガンの実態、戦争というものがどういうふうに展開していくか、自衛隊の皆さん方の心、そういった一連の、本当のダイナミズムといいますか、そういう面というのはほとんどこれは配慮の外にあったんじゃないかと思いながら、この条文を何度も読んで、質疑も聞いておったわけであります。

 そこで、まさに自衛隊制服組でありました中谷大臣、隊員の気持ちは痛いほどわかると思うのですが、例えば、内閣法制局とかは別にして、この問題が出たときに、長官として、自衛隊のいわゆる現場のみんなの気持ちとか、派遣されるであろう皆さん方の実務上の問題とか、そういったものはしっかりと、要望、意見というものは聞かれましたでしょうか。

福田国務大臣 内閣官房でやるから現場の気持ちを酌まない、こういうことはないのでありまして、各省庁、組織でやっておりますから、また実際問題、このチームの中にはそういう現場の経験を踏んだ方も大勢参加しておりますので、そういう懸念は当たらないということでございます。

中谷国務大臣 官房長官がおっしゃったとおり、自衛隊の支援活動における安全確保、また、どういう活動が効果的で評価をされるのか、こういう点も、実際、官房の中で防衛庁の人間が意見を申し上げて討議をした結果この法案になったわけでございます。

古賀(一)委員 答弁としてはそういうことになるだろうと思いますが、私は、やはりもっと、恐らくやったんだとおっしゃると思うんですけれども、ここで私なりに指摘をしたいのは、国会なり政治家、とりわけ総理に求められる資質というのはたくさんあると思うんですね。決断力、総合調整力、あるいは答弁のうまさ、さわやかさもあるでしょう。ただ、本件に関して言えば、私は、一番求められるのは決断力でも何でもないと思うんですね。私は想像力だと思うんです。想像力というのは、クリエーティブじゃなくてイマジネーション。

 本当に、国家を預からず、国民も持たず、国土も持たない、そういうテロ組織、ネットワークが相手でありますから、私は、そういう面で、先ほどそういう現場の声をどれだけ聞いたかというのもそういう趣旨で聞いたわけでありますが、これ以上申し上げませんけれども。

 私は、今後の、本法の運用、あるいはいろいろ展開したときに新規立法にもなるかもしれない、そうしたときに求められるのは、次にどういう事態が起こっていくかというのは、やはり先を、いろいろなパターンを読んでいくという政府の真剣なる姿だろうと思うんですね。それについて、私は、野党の民主党の立場からいえば、あるいは私個人、古賀一成の目から見れば、今回、決して十分なものではなかったと私は言わざるを得ません。

 時間がどんどん迫ってくるので焦っておりますが、次なる疑問点について聞かせていただきたいと思います。

 今までの説明の中で、いわゆるアメリカの要請という話も多々ございました。一方で、それよりも多く答弁があったのは、いわゆる日本の自主的判断、主体的貢献という言葉もたくさんあったわけでありますが、そこで、主体的という言葉を一方でよく聞きながら、今度のビンラーディンが犯人であるという例の特定の問題でありますけれども、あのペーパーを読ませていただきましたけれども、大半がいわゆる新聞報道であった。そうしますと、本当にアメリカとの意思疎通、この委員会で聞く限り、本当にアメリカとも密に、自衛隊派遣をいつまでにやってくれ、こういう規模だという、生きたそういう日米間の要請、あるいは意見交換、協議というものが私自身は感じられないんですね。

 そこで、私はもう一度この点だけははっきり確認したいんですけれども、日米間の協議というものは、抽象的には聞きました、何度もやったんだと。例えばパウエル国務長官との関係においてはどういうやりとりが実際あったのか、ぜひお聞かせを願いたいと思います。

福田国務大臣 日米間は、特に今回の事件につきましては米国で起こったということもございますし、また過去のいろいろな情報の蓄積等もございますので、それは米国とのやりとりが一番多かったというように思います。

 そういう中で、日米間、これはもういろいろなレベルでいろいろな接触というのはなされております。その一つ一つを、これを表に出すということは極めて困難なことでございます。また、相手との信頼関係ということもございますので、これは申し上げてはおりませんし、また、本来出るべきものでないものがたくさんあるということで御理解はいただかなければいけない、こう思っております。

 そういう中で、パウエル国務長官との連絡というものも、これも何回かあったと思います。そういう中で、いわゆる証拠というようなものに類する情報というものも伝わってきておると思いますし、またこちらからも、こちらの持つ情報というものは開示している、こういうことでございます。いろいろな角度でやっておるということを御理解いただきたいと思います。

古賀(一)委員 まあ、たくさんあるんでしょう。それを言っていただきたいと言っても、前回もそういう回答にならなかったし、それは、じゃ、御説明はわかりました。

 じゃ、一点だけ具体的な話をしたいと思うんですね。

 これは十月四日、各紙に載っておりましたけれども、パウエル国務長官が日本への期待というようなコンテクストで発言されたことが新聞に載っておりました。つまりパウエルさんの発言ということで、かぎ括弧つきで、「すべてのアフガニスタン国民を代表する政府が誕生すれば、日本はその支援のための重要な立場に立つ」「国を安定させ、国民に希望を与え、彼らが平和に安全に暮らすことを手助けする。このことこそ日本ができる最大の貢献ではないか」、こういうパウエルさんの発言が、彼の言葉として引用されておったわけであります。私は、これは大変重要なメッセージだと思うんですよ。

 もちろん、全体のパウエル発言は、私は知る由もありません。しかしこれは、各紙がかぎ括弧つきで彼の発言として発信しているわけでありますから、これについて外交当局として、この真意を――見方によってはですよ、これを極めて強調されたということであるならば、自衛隊派遣じゃないんですから、日本はむしろそういうことよりも、この新しい政権後の平和的な、そういう民生に日本が手助けすることこそと書いてあるんですね。日本ができる最大の貢献ではないかというメッセージ。私は、逆に言うと、今日本の、我々の委員会で、ここでしてきた議論よりももっと重要なことをアメリカが期待しているやにもとれるメッセージだと思う。したがって、非常に重要だと思うんですが、この点については、外交ルートでその真意というかそういうものを確認されたんでしょうか。外務大臣、お願いします。

田中国務大臣 パウエル長官も含めましてアメリカ側は、今、我が国が立法の途中にある、そのプロセスにあるということをよく承知しておりますので、具体的に指示とか相談事は私は聞いておりませんけれども、ただ、今委員がおっしゃったパウエル長官の発言というのは、十月の三日に外国の通信社に対して言われたものであるというふうに思います。

 その真意を私は直接長官から聞いたわけではございませんけれども、まさしくおっしゃっていることは、やはりアフガンの地域に平和をもたらすためにどのような努力を日本もするか、ちゃんとしっかり心構えを持って取り組め、取り組んでほしいという思いをおっしゃったと思いますし、まさしくそれは、今私たちのこの小泉内閣が一丸となって法案の成立をお願いして、その後に目指しているもの、すなわち、あの地域に復興そして平和、安定、そういうものが確立されることを祈念することは私たちと同じでございますから、具体的に総合力を持ってこれに取り組んでいかなければならないというふうに思っております。

 ただ、残念ながら、そうしたパウエルさんの心遣いとか息遣いとか思いとか、そうしたものを今回、今度APECがありまして、そこで集まってAPECの話ももちろんする、WTOもそうですが、実際にじかに会うことによっていろいろなことを聞けますので、そういうことができなくなってしまったということは大変残念だなとは思っておりますけれども、トータルでは、全体、申し上げたことでございます。

古賀(一)委員 いや、私は、本当は冒頭に外務省の情報収集の実態というものを聞きたかったんですけれども、時間もあって聞かなかったんですけれども、私はこれなんか、もちろんパウエルさん忙しいでしょうから、もちろん田中大臣も日本からそのためにだけで行くことはできないでしょうけれども、外交というのは、こういう発言があったときに直ちに柳井大使に公電を打って、部下でもいい、そして、国務省の者にあの発言の真意というものをやはり確認するぐらいのことは臨機応変にしょっちゅうやっていかなければ、私は外交にならないと思うんですね。

 私は、ついでだから聞きますけれども、情報に関して聞きますならば、この前、田中大臣、たしか民主党の鹿野委員の質問に対して、パキスタンの情勢を聞いたときに、平穏です、四十人ぐらいのデモ隊のパレードがありましたけれども、平穏ですと。それを、きょう御出席の杉浦副大臣が、その背後にあるもっと危険性をはらむ状況というものも吐露された。私は、閣内不一致どころか、省内で何かニュアンスの違う状況分析が出るということにちょっと驚いたのでありますけれども。

 そもそも、この戦時下において、もう戦時と言ってもいいと思うんですが、アフガン、パキスタン、この両国の情勢分析はどういう体制で強化しておられるんですか。今までの、十年前あるいは三年前の、一年前の、例の大使館のあのやり方で全然変更ない、そういう状況じゃないかと私は危惧するものですけれども。

 情報は極めて重要であります。アフガン及びパキスタンの現地の情勢について、大使館というのは、どういう体制で、体制を強化してやっておられるか、パウエル発言の調査に関連して、この際、もう一回聞かせていただきたいと思います。

田中国務大臣 主にパキスタン並びにアフガニスタンなどの情報につきましては、現在、在外公館は当然のことですけれども、在外といいましてもパキスタンですけれども、それから近隣諸国でありますとか国連関係とか、あらゆるルートを通じて情報は鋭意収集はいたしております。そして、アフガニスタンは現在我が国とは、大使館はありませんけれども、周辺諸国においてタリバンとか北部同盟等の関係者に直接接触もしておりますから、関係国との情報交換をするに等しいような情勢を掌握するようにいたしております。

 これは、ちょっと時間の関係もありますが、細かい具体例も申し上げた方がよろしければ幾つかございまして、アフガニスタン情勢につきましては、北部同盟が在外公館を有する国、例えばロシアとかトルコとか国連代表部において我が方の大使館員が接触をするとか、あるいは駐イタリア大使が、ザヒルという元国王ですけれども、そういう方にお会いをするとか、そういうこともしております。

 パキスタン情勢につきましては、パキスタンの大使館及びカラチ総領事館の館員から聞くこともありますし、それから、この間杉浦副大臣も行ってこられましたし、私もWTOのときに、貿易大臣でけしからぬという御発言がさっきありましたが、でも貿易大臣もパキスタンの方ですから、その方からじかに意見を聞くとかいうことも、パキスタンに関してはいたしました。ただ、流動的になっているという印象は持っております。

 ですから、引き続き外務省といたしまして、この小泉内閣、トータルでですけれども、今後の情勢の推移につきましては、極めて注意深く、注意深く分析もしておりますし、あらゆる手を使って、できることを使って、直接飛び込まなくても、あらゆる状況を勘案して、あらゆるツールを使いながら情報を集め、分析はしているということは御報告いたします。

古賀(一)委員 これ以上言いませんけれども、本当に日本外交の転換期にある世界の国際情勢、また転換期にある外交だと私は思うんですね。その前提は情報であります。しっかりと、まさに機密費なんというのはこういうためにあるようなものなんです。しっかりと、この際、外務省の情報に関するバージョンアップといいますか、それを図る好機と思って省内を督励して、ひとつ、アフガンだけじゃないです。今後いろいろな問題が起こります。私は、外務省の情報収集体制、システム、そういうものをしっかり考える好機にしてほしいと要望をいたしたいと思います。

 それで、あと残り少なくなってきたわけで、次に、私が申し上げたい一番の問題を申し上げたいと思います。それは、先ほど中野寛成委員も指摘をいたしましたいわゆる日本の総合的な外交政策のあり方であります。

 私は、実は若いころ外務省に二年ぐらい出向いたしまして、大変勉強させてもらいました。そのときに私が担当しておったのは国連局でございましたけれども、そのときに、今から思えば、いやあ、あのときは、やはり各国はこういう形で外交的仕掛けを打ってくるものだなと。当時はよくわかりませんでした。後からはたと気がつくことがたくさんございます。そのうちの一つに、例えばこういうプロジェクトもあったんです。

 イスラエルという国があります。イスラエルがしょっちゅういわゆる国際的な水会議を招集するんですよ。ウオーターですね、水。水会議を招聘して、日本にも、技術者来てください、招待します、飛行機代も出します、宿代も出すというんですよ。昭和四十年代の後半でございましたけれども。へえ、日本という、そのときもまあまあ経済大国ではありますよ、この日本に、あご足つきでイスラエルまで招待する、水会議だと。

 どういう意図があるんだろうと思ったけれども、それは今からいえば見え見えでありまして、結局、イスラム諸国から見れば、アラブ諸国から見れば、水というものは石油よりも大切。そのイスラエルは、自分の地に世界各国の水の専門家を集めて、水に関しては我々がリーダーシップを、イスラエルがとっているんだという形をまさに見せるという一つの外交であったように思うんですね。それは、二十五年前よりもっと前です。もう四半世紀以上前の話でありますけれども、それも一つの私の体験したものであります。

 まさに今、この国際テロ対策、それからアフガン対策、求められているのは、私は、したたかなというか、知恵あるというか、そういう部分の外交政策そのものだと思うんですよ。

 日本という国は、御承知のとおり、イスラム諸国に手を染めたことのない数少ない先進国でございます。

 私は、今度の事件が起こったときに、映画「アラビアのロレンス」、私は高校生のときに見て、あれはどういう映画だったかなと思ってビデオ屋から借りて見ました。「アラビアのロレンス」、結局あれは、私なりの評価ですからどう言ってもいいと思うんですけれども、アラビアのロレンスというのは二重人格者ですよね、二重人格者です。イギリスではロレンスと呼ばれる。しかし、アラブ人を救い、アラブの自主独立の精神に加担し、アラブの衣服を着るんですね。そしてドイツと戦う。アラブ人を、ドイツがトルコを使い、アラブ人の各部族がばらばらであるところを見据えたイギリスが、結局けんかさせて、イギリスに、戦争に参画させようというわけなんですけれども。

 結局、アメリカ以前にイギリスは、既に第二次世界大戦以前にもう手を染めたわけですよね。だから、私は、今度ブレアさんが真っ先に言ったというその歴史的背景はあると思う。日本にはそれがないんです。

 私は、このテロ問題というのは、本当にやはり、報復が報復を呼ぶと思うんですよ。そう思っておった方がいいと思うんです、なければこれにこしたことはないけれども。そうしたときに、そういうテロ組織を追い詰めていくのは、生ぬるいかもしれないけれども、やはり世界各国、私は、大義だと思うんですね。

 それを私は、この法案とともに自衛隊を海外へ送るというその前に、遅くとも同時に、日本は決して自衛隊を、けん銃を持って戦いに出すわけではないと。それは、法律ではそうなっているんですよ。でも、現地の人はわかりませんよ。迷彩服を着て、見たことのない日本人がけん銃を持ってあの混乱の地に来たと。そこに、扇動するテロもいるかもしれない。そういう状況に送り込むわけでありますから、私は、この際しっかりと、日本は、本当の日本の真意というものはアフガン復興である、あるいは、国際テロ撲滅のためにこういう平和的なスキーム、人道的スキームを持っているということを強烈に発信することが欠かせないと思うんですね。

 そして、現地に行く自衛隊の諸君のためにも、私は、そういう、まさに後方支援ですよ。自衛隊の人たちが行くアフガンの、あるいはパキスタンの人たちは新聞を読んでいないかもしれないですよ。日本人は何しに来たんだと。一部、小泉総理の名前を書いたプラカードがテレビで映りましたよ。もちろん、ブッシュと並んでおりますから、けしからぬという意味のプラカードがね。そういう雰囲気の中に自衛隊の皆さんが行くということを思ったときに、外交的に必ず、この派遣の裏にはこういう平和的な思いがあるという、人道スキームか、人道的な分野ですね、あるいはアフガンあるいはパキスタンの経済復興か、あるいは国際テロ撲滅の平和的手段か、これについて強烈な日本の政策の発信をする義務があると私は思うんですね。

 そういう面について、私はぜひこれは強烈に指摘をしたいわけでありますけれども、内閣官房長官、そしてあわせて、これは外交マターでありますから、田中外務大臣の私に対する御意見というものをぜひとも伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

福田国務大臣 委員のおっしゃられることは私も同感であります。

 日本は、戦後一貫して平和外交というものを継続して、国際社会に平和を維持するために、また平和を築くために貢献する、そういう外交姿勢をアピールしてきたというように思っております。これは、今後もその考え方は同じでなければいけないと思いますし、また日本が生きていくために、そしてまた世界が安定するためには、やはり平和ということは一番大きなキーテーマだというように思っております。そういう方向でこれからも努力をしていくのが日本の姿であり、それを国際社会も認めてくだすっているのではないかというふうに思っております。

田中国務大臣 情報を収集すること、正確な情報をいかにたくさん収集するかということの重要性が外交に一番求められているということは、もう委員がおっしゃるとおりですが、問題は、それを有効に生かせないで、ただ押さえているということであってはならないわけで、そうした体質を私は本当に変えていかないとならない。それを有効に活用することによって、世界の平和とかすべてに貢献する。ましてや、このアフガニスタンの問題、この後の問題が大きいわけですから、それを見据えてどのように活用するか。

 まさしく今、委員がおっしゃったので、あれっと思ったんですが、私は、小町官房長をけさ呼びまして、こういうときのために機密費があるんですよ、使わせてもらいなさいということをけさ申しましたことも申し上げておきます。

古賀(一)委員 いや、私は、今の提案で、こういう分野についていつごろまでに日本の外交、発信をする、政策発信をするという答えが欲しかったんですが、一般論の答弁であったように思います。

 ところが、きのうですか、田中外務大臣の口から、アフガニスタン和平復興会議というものについても、何というか、アクションを起こしているような御答弁があったと私は思うんですが、これは具体的にどういうことでございましょうか。ぜひ私は、こういう具体的なスキームをもう早く開始してほしいんですよ。それじゃないと、自衛隊の人も大変。そして来年のワールドカップ、そういう日本の意思というものが発信されずにワールドカップに突入したときに、私はとんでもないことになると思うんですね。

 その点、具体的な話として、和平復興会議というものをきのう大臣の言葉から聞きましたけれども、具体的なものがあるなら、ぜひひとつこの際御紹介をいただきたいと思います。

田中国務大臣 アフガン和平復興会合の開催につきましては、これを東京でやりたいという旨のことを、国連の場で、たしか小和田大使のときだったと思うんですけれども、そういうことを発言したことがございまして、そしてこの今の情勢を分析して、推移を見きわめながら、そういったことが現実に実行できるように、実現するように努力をいたします。

古賀(一)委員 これで終わりますけれども、今それを一歩も二歩も進める最大の、絶好の機でありまして、外交の失地回復もそこにあると私は思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

加藤委員長 これにて古賀君の質疑は終了いたしました。

 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 けさ与党三党が提案をされました修正案のことについてまず伺いたいんですが、修正案の提出者の方に御答弁をいただきたいと思います。

 政府が提案をした法律に与党の方から修正をかけるということで、調べたわけではありませんが、珍しいなというか、与党から、与党で内閣を構成しているわけですので、何でかなというふうに思うわけですけれども、提案理由で「これまで行われてきた法律案についての審議を踏まえ、」ということが書いてありましたが、国会承認と、あともう一つ武器輸送の件について修正をおかけになる、もうちょっと突っ込んだ理由というか経緯というのを御説明いただけませんでしょうか。

久間委員 当委員会でもいろいろな質疑が交わされましたけれども、その中で、やはり国会が、このような外国に行くことについてもう少し関与することが必要じゃないか、政府が決定してそれだけでいいのかというような御意見等がございました。そういう意味では、この法律の幅広い国民の御理解を得るためには、やはりそういうような関与のあり方について考えたらいいのじゃないかということでいろいろ議論してきたわけであります。

 民主党の方とも、事前承認だという御意見を非常に強く持っておられましたので、その点についても議論を聞かせていただきました。しかしながら、やはり迅速に対応しなければならないという問題と、そのような、国会が関与する余地を残すべきであるということの中から、自衛隊法の中に治安出動の場合の国会の関与の仕方を規定しているのがありますから、それを例にして、やはり最低このぐらいのことはすべきではないかということで意見を統一したところであります。

中塚委員 武器の輸送の件についてはいかがでございましょうか。

久間委員 武器の輸送につきましても、当委員会の質疑の中では、これは憲法九条に触れるのじゃないか、戦闘行為と一体になるのじゃないかというような御意見までありましたけれども、私どもはそういうことはないと思っておりますけれども。

 ただ、外国の地で、特に陸上でそういうことが二年間と限られた限時法の中であるのかどうか、またそういう要請が外国から来るのかどうか、そして来た場合に、自衛隊が本当に派遣先国で、幾ら派遣先国の同意を得たとはいうものの、やれるのかどうか。

 そういうことをいろいろ考えましたときに、そういう、期間も短く限られていて、目的地も非常に限定されてくるという中から、ポートからポート、空港から空港、これはあるかもしれないし、行った先での空港業務あるいは港湾業務、これはあるかもしれないけれども、専ら武器弾薬を陸路にて輸送するということは、現実問題としてこの二年間で起こってくる可能性は少ないのじゃないか。そういう意味では、国民の幅広い理解を得るためにはこういう修正をした方がいいのじゃないか、そういう判断に立ちましてこのような修正案を出させていただいた次第であります。

中塚委員 ありがとうございます。

 私どもといたしましては、武器の輸送云々ということにこだわっているわけではなくて、そもそもそれは武力行使と一体であるというか、自衛隊を海外に派兵すること自体が、派遣すること自体が武力行使だと思っておりますので、武器を輸送する、しないということについて、そのことだけについてこだわっているわけではないのです。

 そこで、官房長官と防衛庁長官にお伺いをしたいのですけれども、総理が、先週でしたか、この委員会で、これは武器ですか、何ですかなんて聞いていたら、自衛隊帰ってくれと言われちゃうでしょうというふうにおっしゃっていたと思うのですけれども、今回の修正で陸路は武器が運べなくなるということなんですけれども、そういう修正はかかってもよろしいのでしょうか。官房長官、いかがでしょうか。

福田国務大臣 今回の修正案と直接関係はないように思いますね、総理の発言されたことは。

 ちょっと私も、総理がどういうふうに発言したかよく覚えていないので答えにくいのでありますけれども、今の御質問ですと、これ、くっつけて考える必要はないんじゃないか、多少関係あるかもしれませんけれどもね、というように思っております。

久間委員 修正を出した立場から言わせていただきますと、修正案を出すときもそういう協議はいたしました。

 総理が言われたのは、荷物を運ぶときに、武器と武器でないものとが一緒になって運ばなければならない、そういうときに、これは武器である、これは武器でないと一々分けて煩雑さが出てくるのではないか、そういうこと、あるいはまた、武器だけ別にすると船が例えば二そう要るとか、そういう話をされたわけであります。

 そういう意味では、武器弾薬を運ぶ場合の、船については従来どおりの、あるいは飛行機については従来どおりの枠組みをつくっておりますから、そういう問題は発生しないわけでありまして、一緒に運べるわけであります。

 しかしながら、陸路においては、武器弾薬というのはやはり別々にきちっとトラックの場合は運ぶのが普通でございますから、その中に武器が含まれておったらそれは運ばないということにしたわけでございますから、それは運べないということになるわけであります。

 ただ、そのときに、傷病兵を例えば搬送する場合に、傷病兵が例えばピストルを持って、あるいは弾薬を持って一緒に倒れておる、それを救急として、医療行為として運ぶ場合に、それが武器弾薬を運んだことになるのかという議論はありました。

 しかし、それは専ら医療患者の搬送であり、傷病兵の搬送であり、武器や弾薬の輸送という概念にはそれは当たらないんじゃないか、だから、それまで含めて武器弾薬の輸送と言う必要はない。だから、排除された武器弾薬の輸送にはそれは含まれないから、倒れている人をそのまま医療行為として搬送する場合はこの法律に決して触れるものではない、そういうふうに理解して踏み切ったわけであります。

中塚委員 その傷病兵のお話はともかく、要は、ずっと、どこからどこまで運ぶのかわかりませんが、海路、陸路、空路というふうに移っていく場合に、やはり陸路だけ武器が運べないということになると、自衛隊の任務遂行上支障を来すのではないかな、私は総理の答弁はそういうことだというふうに思っていたのですが、これは防衛庁長官、どうなんでしょうか。

中谷国務大臣 このように、陸上において武器弾薬は運ばないという決定がなされましたので、各国によくこのことを説明して、理解をしてもらって、そういう業務は日本はできませんという点を御理解していただいて行動するというふうに思っております。

中塚委員 恐らくそういうことになるんでしょうね、現実問題としては。だから、やはり派遣をするならするで、武力行使と一体化するとかしないとか、そういったことではなくて、する以上は、どんなことでもやるんだというふうに決めることが必要じゃないのかなというふうに思っていたわけですね。

 だから、そういう意味では、総理が言っておられたことというのは私は正しいと思っているんですよ。これは武器ですか何ですかというふうに聞くと、帰ってくれと言われるのは、それはそうだろうなと思っていまして、だから、それをなぜ与党の立場から修正されるのかなというふうに思ったわけです。

 次に、今回のこの特別措置法が成立をいたしますと、私は、今まで凍結されているPKF、それをもう一歩も二歩も踏み越えてしまうのではないのかなというふうに思うわけです。そういった意味において、今後のPKFの扱い、これはどのようにお考えになっているのか、官房長官、お伺いしたいと思います。

福田国務大臣 PKFは、御案内のとおりであろうかと思いますけれども、国際平和協力業務という中の業務でございますけれども、要するに、その国際平和業務をやるための条件というものがございますので、ですから、そういう条件が整う、環境が整えばこれは実施することができるということになります。

 我が国の場合には、そういう状況の中においてもしてはならない、今現在の規則ではそういうことになっておりますので、本当の意味で我が国が平和的な活動が国際的にできる、そういうためには、そういう業務もできるようにするということになれば、我が国の活動範囲というのは本当に広がってくるんだろう、そして、そのことが世界の平和のために貢献することなんだ、そういう意味における国際活動というふうに私は思っておりますので、これはいずれ、国会の御議論をしていただいた上で成立、そういうものができるようにしていただければ大変よいことではないかというように思っております。

中塚委員 順序というか、そういったことからいくと、やはりPKFの凍結解除の方が先だったんじゃないかなというふうにも思いますし、また、PKFの凍結解除ということも、以前の自自公連立なんか、政権合意の中に入っていたわけですね。

 同じ質問ですが、防衛庁長官、PKFの凍結解除についてはいかがでしょうか。

中谷国務大臣 やはり、PKO活動自体が、国連が実行する、国際社会から認められた、人類のため、また各国の平和の構築のために行うかけがえのないことでありまして、私に関しましては、PKO活動に関しては一つでも多く我が国としては実施すべきだと思っておりまして、PKF凍結解除をする、それによって地雷の撤去とかさまざまなことが可能になっておりまして、平和のための貢献がふえるというふうに思っております。

中塚委員 それで、今回この法案が成立をしますと、今まで政府のお立場で御答弁をされてきたわけですけれども、やはり今以上に踏み込んでアメリカに対して協力をしていくことになるんだろうというふうに思うのですね。

 もちろん、日本の今までの政府の答弁なりなんなりということとは別に、あと海外からどういうふうに見られるかということもあると思います。これは、集団的自衛権は日本は憲法で禁じられて行使できないとはいうものの、やはり海外から見ると、集団的自衛権の行使なんじゃないのというふうに思われるようなこともあるのではないかなというふうに思うわけですね。

 そういう意味では、やはり今後、日米同盟関係に新しい影響を与えていくことになるんだろうというふうに考えるわけですけれども、これは官房長官、いかがお考えでしょうか。

福田国務大臣 今度のこの法案に盛られております活動というのは、これはあくまでも九月十一日に起こったテロに対する対応措置、こういうことになるわけであります。

 ですから、このテロによってもたらされるであろうという、もたらされている脅威、この脅威を取り除く、除去するということが終了すれば、この活動というのはそこで終了すると考えてよろしいというふうに思っておりますけれども、このことが日米関係にどういう影響があるかということになりますが、日米安保条約との関連で、周辺事態安全確保法というのが成立しました。これでもって日米間の協力関係はかなり具体的に規定されてきたということでありますが、今回のものにつきましては、もちろん米国が中心ということになりますけれども、ほかの国々に対する協力というようなこともございますので、これは単に米国だけというように規定することはないんだろうというふうに思っております。

 また、日米関係において新しい協力関係が生じたというように言われれば、そういうふうに言っても差し支えないだろうというように思いますけれども、本来日本が持っている、持てる、憲法の枠とかいろいろな制約状況の中で、本来できる、今までもできたはずなんですね、湾岸戦争のときももしかしたらできたのかもしれぬ、そういう部分がもっとあったのかもしれぬというところを、自衛隊を海外に派兵しない、派遣しない、そういう考え方というものが当時は一般的であったというか主流だったというようなことから、非常に我々の行動も限られたものになってしまった。

 しかし、例のPKO法が通り、また考え方もだんだんと変わってきた。もっとできるのではないか、そしてまた、海外における日本のそういう自衛隊の活動に対する信頼度、これも増してきたということは、これは私は認めてよろしいことではないか。

 ですから、そういう前提において、今後も自衛隊が平和的な分野において活動する、また、こういうふうなことにおいて国際協力をするというのは大変意義のあることだと思っております。

中塚委員 今回の法案によって自衛隊が海外へ出ていくということは、世界の平和に貢献をして日本に対する信頼度が増すというふうに考えるのか、あるいは、原理原則なしになし崩しにやっていってしまうことになるんじゃないのかというところですごく考え方が分かれるんだろうと思うんですね。

 今、他の国々への影響ということもおっしゃいましたが、実際、米国等ですからアメリカだけではないわけですよね。そうすると、もう全くもって、そういう意味では、やはり新しい次元に突入をしていくことにもなっていくんだろうと私自身は思っております。

 今回のテロ事件に限った話だというふうにお話しになりますけれども、もしかしたらアメリカが、頼めば日本はこういうこともやってくれるんだという話になったときに、今の片務的と言われている日米安全保障条約について改定をしてくれないか、幾分かでも、幾ばくかでも双務的にはしていただけないかというふうなお話があった場合には、官房長官、どのように御判断されますか。

福田国務大臣 私は、日米安保条約、これは決して片務的ではない、相互補完的というように考えるべきであろうというふうに思っております。お互いに協力できる範囲で協力し合うという形において、お互いの利益でもあり、そしてまた、この地域の安定ということもあるというようないろいろな意味合いがあると思いますので、ただ単に守ってもらっているんだというような感覚で取り上げる必要はないんだろうと思います。

 それからもう一つは、やはり日本というのは一つの大きな枠組みがあるわけですね。一番大きな枠組みはやはり憲法だというように思いますけれども。そういう意味で、その枠組みの中で今回テロが起こった。こういうテロが起こって、この事件に対応するという枠組みの中の新しい任務なんですね。こういう新しい任務は今後も生ずる可能性はあるんだろうと思います。

 今まで気がつかなかったようなこともあるかもしれぬし、また、想定されるけれども、しかしそれを、そこまでというようなこともあったかもしれぬ。今回の分ももしかしたらそういうものであったかもしれぬ。それを、言ってみればそういうことはまだ起こらぬだろうと思っているからやっていなかったというようなこともあるのかもしれぬし、そういう意味におきまして、憲法の枠を守りながら、その中で新しい任務を日本が果たしていく、役割を果たしていくということが必要なんだろうというふうに思っています。

中塚委員 自衛隊の海外派遣というのが、今回この法律によって自衛隊が海外へ派遣されるわけですが、先ほど、ひょっとしたら昔だってできたかもしれないというふうな御答弁があった。じゃ、一体何が変わったんだということについていまいち私どもとしては納得できない部分がありまして、やはりそういった、以前もできたかもわからないけれども今回できるようになったというところが、その部分がなし崩しなんではないかなというふうに思っているわけです。

 では、外務大臣、今官房長官にお伺いをしました質問なんですけれども、もしアメリカが、こういったことを今回自衛隊が協力してくれるというのであれば、将来的に日米安保条約の改定、今よりも一層の双務化というのを求められるというふうな事態も考えられると思うんですが、御所見をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 日米安保条約というものは相互補完的であって、これは決して片務的ではなく双務的なものであるというふうに認識しておりますので、その認識の上に立って中塚委員にお答えするとすれば、やはりこれは、他の防衛条約と安保というものは違っているということは、内容が違うということは御存じだと思いますけれども、日本はアメリカに対して、これはもうよく御存じのことですけれども、極東の平和とそれから安全のために我が国の施設・区域などの使用を認めております。そのことによって、条約全体を通じて双方が義務のバランスをとっているわけでございますので、より一層その信頼性が向上するように努めていくというところでございます。

中塚委員 終わります。

加藤委員長 これにて中塚君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、限られた時間でありますので、昨日の我が党山口議員への中谷防衛庁長官の答弁その他について、お伺いしたいと思います。

 中谷防衛庁長官の答弁は、人を殺傷し物を破壊する行為が行われていないアメリカ艦船からのミサイル発射は戦闘行為ではない、したがって、アメリカ艦船への給油を初め支援活動はアメリカの武力行使と一体化しないという一点張りでした。

 この答弁を聞きながら、私は、あなた方政府が、嘉手納基地から出撃した米軍の戦闘機が各地で戦闘行動に参加しても、直接戦場に向かったかどうか確認できないので事前協議の対象にはならないと言って逃げ回っていたことを思い出しました。

 そこで、確認したいわけですが、アラビア海に作戦展開しているアメリカの空母艦隊並びにトマホーク艦は、どういう任務を持って行ったと考えているのか、まず伺いたいと思います。防衛庁長官。

中谷国務大臣 今回のテロ、国際社会においてテロを撲滅し、その根絶を図るという一連の行動に基づいた行動でありまして、米国の場合は、個別的自衛権に基づく行動だというふうに思っております。

赤嶺委員 個別的自衛権に基づく軍事行動を展開する、その目的を担ってあのアラビア海に艦隊を配置しているということになるわけですね。これは間違いありませんね、長官。

中谷国務大臣 もう一度確認いたしますが、今回の米軍の行動について、アフガニスタンにおいて防空施設及び航空機からの脅威を取り除くこと、タリバンの指導者及びその支持者にテロリストをかばうことは許されないことを明確にすること、アルカイダとタリバンに対する将来の作戦を円滑にするための情報を得ること、タリバンに反対するアフガン勢力と連携すること、テロリストにアフガニスタンを基地として使用することを困難にさせること、困難な状況に置かれているアフガン人に対して人道的援助を与えることというのが、米政府の今般の軍事行動の目的だというふうに思っております。

赤嶺委員 そうすると、戦闘作戦行動をアラビア海でやっている、これは目的も非常にはっきりしているわけですね。

 そうなると、そのことと自衛隊の支援活動が武力行使と一体となるかどうかの問題なんですが、昭和三十四年の三月十九日の参議院の予算委員会で、当時の林法制局長官は、米軍と一体をなすような行動をして補給業務を行うことは憲法上違反である、このように述べています。

 アラビア海で武力行使の目的を持って作戦展開している米軍に支援活動を行うことは、明らかに米軍の武力行使と一体のものであり、そして、政府が言う憲法違反の行為のものではありませんか。皆さんが、戦闘行為が行われていない地域だから、物を破壊したり人を殺したりする地域ではないからという政府の、本当に政府しか通用しないような理屈でこれが武力行使と一体でないと言っても、納得できないのではありませんか。

 まさに国民がわかる常識的な判断をすれば、これは武力行使と一体となったものである、過去に政府の答弁がそのことを明確にしている、そう思われませんか。

中谷国務大臣 今回の、米側が空母を含め軍事展開に関することについては、一切言及をいたしておりませんので、我が国として米軍等の軍事作戦面について述べることは適当でないというふうに思っております。

 それから、昨日の私の答弁でありますけれども、あれは、具体的にアラビア海とかディエゴガルシアとか、その地域においてどうこうということについて答弁したわけではなくて、一般論として、飛行機が飛んだりミサイルが発射されるということをとらえて戦闘行為ということではなくて、ただ単に飛行機で飛んでいくというようなことをもって一概に戦闘行為が行われている地点だというふうには言えないという意味で、ミサイルの場合も、一概にすべてのミサイルについて、それが発射されることのみをもって直ちに戦闘行為に該当するわけではないという趣旨を述べた一般的な話でございます。

赤嶺委員 防衛庁長官、あなたはきのうの答弁の中で、戦闘作戦行動とは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動である、このように述べているんですよ。それで、これは過去の政府の答弁と一致しているんです。過去の政府の答弁はどういう時期にこういうことをやっているかといいますと、沖縄から米軍の戦闘機が出撃をしていったときに、出撃したその戦闘機が途中で給油するかもしれない、途中どこかを経由するかもしれない、だから、直接戦闘に従事することを目的として飛び立ったわけではないのだから、これは事前協議の対象ではない、こういう流れの中で皆さん、おっしゃっていたんですよ。

 今度、アラビア海に艦艇がいる、その軍事作戦の中身は、皆さん、国民に知らせることはできません、こういう言い方をする。ところが、トマホーク艦から発射するあのトマホークというのは、どこも立ち寄らないですよ。どこも経由しないですよ。真っすぐアフガニスタンを爆撃しているじゃないですか。そんなのはだれが考えても常識じゃないですか。そういう戦闘目的、そういう戦闘行動、直接戦闘に従事することを目的として向こうに艦艇を配置する、ここに自衛隊が支援活動を展開するというのは、武力行使と一体となった、まさに憲法違反の行動ではないですか。どんな言い逃れができるというんですか。

中谷国務大臣 ですから、アラビア海における米軍の行動については、我々、その作戦の概要を知る由もないわけですから、わからないわけでありまして、きのうの答弁にいたしましても、現実にアラビア海というような話をしたわけではなくて、一般論としてこの法律の基本原則を説明いたした、その範囲でございます。

 それから、ミサイルにも、いろいろな種類もあれば、いろいろな状況もありまして、一概にすべてだめだということではないという意味も含まれているわけであります。

赤嶺委員 あなた方、本当にむちゃくちゃですね。アラビア海から戦闘行動が開始されていることは、世界じゅうがわかるじゃないですか。もしわからないというのであれば、日本の政府だけですよ。

 何でそんなむちゃくちゃなことを言うかといえば、それが憲法に違反する行動だからです。憲法に違反する行動を憲法の枠内の行動だと言い張ろうとするために、こういうむちゃくちゃな話をこんな大事な国会の審議の場で持ち出してくる、こういうことは本当に絶対に国民は納得できないと思います。

 皆さん、前の政府の見解に照らしても、あなた方がアラビア海でやっていることを知らないと言って前の見解に立ち入ることを避けようとしているけれども、まさにこれまでの政府の見解からいっても、今アラビア海での米軍の艦艇に自衛隊が支援活動を行うのは憲法違反である、絶対に許されないということを指摘して、ちょっと時間がありませんので、次に自衛隊法の改正案の問題に移っていきたいと思います。

 この改正案の幾つか質問をしたいのですが、まず防衛秘密の問題について伺います。

 防衛庁長官は、沖縄県の那覇市の情報公開裁判というのをよく御存じだと思います。それは、防衛庁が那覇市を訴えたわけですね。その訴えた中身というのは、自衛隊の那覇基地の対潜水艦作戦センターの建築資料を情報公開条例に基づいて市民が公開請求をしたら、それを那覇市が公開をした、そのことがけしからぬといって皆さんは那覇市を訴えたわけですね。(発言する者あり)

 当然だという声がありましたけれども、ところが、この建築資料は、皆さんの、防衛庁の秘密指定もされてなかったわけですよ。秘密指定もされてなかったものを情報公開に基づいて公開をしたら、これがけしからぬといって、防衛秘密を公開したといって那覇市を裁判に提訴した。十三年かかりました。最高裁判所では、この皆さんの言い分が間違っているというはっきりした確定判決を出しました。

 司法というのは、防衛秘密についてこれだけ非常に厳しく、皆さんが秘密指定もしてないのに秘密だといって一自治体を訴える、そういうやり方は許されないという結論を出しているわけです。

 ところが、今回の自衛隊法改正案の中に、新たに防衛秘密というものを設けました。そして、本当にそういうものを見ると、あの那覇市の情報公開裁判から政府は何を学んだのか、こう言いたくなります。

 今回の防衛秘密の内容というのは、一九八五年の、自民党が提案し、そして国民の猛反対の中で廃案となった国家秘密法案の内容が、その中から防衛秘密に関してそのまま盛り込まれたものになっています。何で、テロ対策法案、こういう関連の中で、わざわざテロ対策とは何の関係もない、一九八五年に廃案になった機密法案の内容を今度の自衛隊法改正案に盛り込んだ理由は何でしょうか。

中谷国務大臣 この改正の原因といたしましては、数年前に起こりました幹部自衛官による秘密漏えい事件がございましたけれども、それが発端となっております。

 冷戦が終わりまして、非常に各国の武官同士の接触の機会もふえていますし、各国のそういう情報交換の場もふえてきておりまして、やはり我が国といたしましては、国の安全を害しかねないような秘密について、これは罰則を強化して秘密の漏えいを未然に防ぐことが必要だというふうに認識をいたしておりますし、また、米国等との、各国との情報共有を推進していく上でも、秘密の保持に万全を期すことが必要だというふうに考えているわけであります。

 現行では、この罰則が国家公務員の規定と同じ一年以下の懲役または三万円以下の罰金にすぎませんが、やはりこういった重要な秘密を漏えいした者は、従前に比して重い刑罰、具体的には五年以下の懲役で罰するということが適当ではないかというふうにしたわけであります。

 また、その対象者等もやみくもにふやすということではございません。国家公務員とそれから秘密を取り扱う者に限定をいたした改正になっておりまして、数年前の国家機密法のような国民全体の権利を侵すようなそういう内容になっていないということを御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 私は、防衛秘密に国民を近づけないような仕組みがこの法案に盛り込まれていると考えています。何を防衛秘密にするかというのは、防衛庁長官、あなたが決めていくわけですよね。そして、そういうあなたが秘密に指定したものについて国民は近づけない。ですから、今度の法案の中身というのは、あなたがおっしゃった、一自衛官の機密漏えい事件を教訓にして法律をつくるというものではないんです。防衛秘密だと決める権限をあなた一人で持つ。国会も近づけない、マスコミも近づけない、防衛秘密について。だから、三権分立をも無視するような結果になるわけです。

 何で、那覇市で情報公開請求が起きたかといいますと、基地のそばで基地の被害を受けている国民は、基地の中身を知りたいのですよ、基地被害から自分たちを守るために。だけれども、今度の法案ができたら、そういう基地被害を受けている国民が基地の中身を知るすべも失ってしまいます。

 やみくもに広げたわけじゃないと言うけれども、機密を漏えいしたのは一自衛官、しかし今度の処罰の対象は民間人にまで広げているという、まさに国民の目、耳、口をふさぐ法案だ、このように考えますけれども、本当に情報公開という時の流れに逆行した秘密法案というぐあいに考えますけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 この内容については、別表に書いて十項目公表しておりますけれども、自衛隊の運用に関する件とか電波情報に関する件とか、我が国の防衛上、これは外部に漏れた場合に、国を侵略しようとする意図を持った者にとっては、これを知り得ると我が国の防衛に支障が出るということで、内容はそう指定をいたしております。

 実質秘性についても、これは司法審査に服するものでありまして、防衛庁だけでこれを判断するんじゃなくて、きちんとした司法の場でやるということになっております。

 それから、民間人はという御指摘でありますが、民間人を指定する場合も、「防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造若しくは役務の提供を業とする者」ということで、従来からこれは民事契約でそれに対して契約をしておりましたけれども、今回はその人以外に拡大するつもりもございませんし、また教唆とか共謀につきましても従来からございまして、それを引き継いだわけでありまして、現在において秘密を取り扱う業者というふうに言われている者から拡大するということはございません。この点、御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 私は、あなた方の姿勢、つまり、秘密指定もない文書を自治体が公開しても、それが決着つくまでには裁判所で十三年間もかかっている。防衛秘密についてこういうような姿勢しか持ち合わせないあなた方が、その裁判に対する反省もなしに、しかも今度の法案というのはテロとは全く関係ないわけですよ、テロと全く関係ないものをテロ対策のどさくさに紛れて持ち込んできている。しかも、それは年来のアメリカの側からの要求でもあった、それは長官も認めました。

 まさに、国民の必要に基づいてそういう法律がつくり上げられたというよりは、アメリカの要請に基づいて、しかも、防衛秘密から、防衛情報から国民を遠ざける、マスコミを遠ざける、あるいは国会を遠ざける、こういうねらいを持った法案だということを指摘しまして、質問を終わります。

加藤委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 きょうは、アメリカのアフガニスタン攻撃が開始されてからの刻々と変わる情勢への認識について、まず防衛庁長官や外務大臣を中心に質問をしたいと思います。

 一番最初に、このアメリカのアフガニスタン攻撃の実態をどのように把握されているかということを中心に、防衛庁長官にお伺いします。

 先日、パキスタン政府は、このアメリカの攻撃の内容、どのような攻撃をかけているかということに対して一つの懸念を表明しました。それは、特にクラスター爆弾などの使用について、これは非人道的であるというような指摘をしておりますが、中谷防衛庁長官にお伺いしますが、アメリカの攻撃の実態、特にこのクラスター爆弾を使用しているかどうかということを日本政府は把握しているでしょうか。いかがですか。

中谷国務大臣 米軍の作戦行動に関する情報は、一切承知をいたしておりません。

辻元委員 特に湾岸戦争のときも劣化ウラン弾の問題が随分議論されたこと、後で批判を浴びたこと、非難されたことは、防衛庁長官も御存じのとおりだと思います。

 このクラスター爆弾というのはどういう爆弾と防衛庁長官は認識されていますか。

中谷国務大臣 地中深くまで、三十メートルぐらいでしょうか、入って、そこで爆発をして地域を破壊する爆弾だというふうに思っております。

辻元委員 それは別の爆弾ですね。防衛庁長官、しっかりしてくださいよ。

 クラスター爆弾というのは、これが一番住民に被害を及ぼす可能性がある爆弾ということで、要するに、一個の大きな爆弾の中に球状とか缶の形をした数百個の小さな爆弾が入っていて、それが空中で炸裂してあたり一面焼夷弾で焼き尽くしたように攻撃をかけるという爆弾だと私は承知しているんですが、防衛庁長官、大丈夫ですか。

 なぜかといいますと、これは今回、ピンポイントで攻撃すると言っておりますけれども、かなり一般の住民への被害も広がっているという情報、これは防衛庁長官も御承知のとおりだと思うんですね。この爆弾の使用については、パキスタンも、非人道的である、即刻やめたらどうかというような厳しい意見も出ているわけです。

 日本政府は今、多少の被害はしようがないという姿勢のようでした。これは総理がそのようにお答えになったんですが、官房長官にそれではお聞きします。

 この多少の被害の多少ですね、その中身が問題なんですよ。机上の空論をしているわけではありませんので、実態に即して、日本政府としては、多少の被害の多少というのは、どういうような状況までを多少というようにお考えなのか、いかがでしょうか。

福田国務大臣 このテロを、何度も話が出てきますので繰り返すことはないんですけれども、いかにひどい惨害をもたらしたか、もう想像を絶するような犯行であった、これはお認めになりますよね。そういうことを起こした国際的な、組織的なテロ集団、これを何とか絶滅させよう、もしくはこのテロ行為を絶滅させよう、除去しよう、こういうような趣旨でもって始まったことでございますので、それはその目的を達するために何をしてもいいんだということではないと思います。

 それはそれなりの、十分なる配慮をしながらやるわけでありまして、そして、では多少が幾つかとかいうようなことを申すべきではないと私は思います。

 要は、テロによってもたらされる害悪を除去するということが目標なんだ、これが一番大事なところだと思っております。

辻元委員 今、官房長官は、何をしてもいいわけではないという、重要な御発言だと思うんです。私もそのとおりだと思います。それは、先ほどクラスター爆弾の一例を挙げましたが、コソボの爆撃についても、一面で、その後環境破壊という大きな問題に直面しておりまして、その点からの武力行使に対するリスクということも考えなければいけないという議論をヨーロッパではされていることは、皆さん御承知のとおりだと思うんですね。私は、こういうクラスター爆弾のようなものは、非人道的で、使うべきではないと考えています。

 さてそこで、防衛庁長官、このアフガンの被害の実態について日本政府は、それでは今までのところ、攻撃が始まりまして、どのように把握されているのか、お伺いしたいと思います。

 これは、報道でも幾つか実態については一般の方々のところにも情報が届いておりますが、今一番焦点となっているのが、コラム村誤爆事件というのが焦点になっているかと思います。この村を誤爆して二百名程度の一般住民が死亡したということについて、アメリカは否定しているのか、日本政府はこれをどのように認識されているのか、いかがでしょうか。これは、今国際的にも焦点になっておりますので、政府の見解をお伺いします。では、外務大臣で結構ですよ。

田中国務大臣 十五日にアメリカのラムズフェルド国防長官は、アフガン東部の村民二百名が死亡したというタリバーンの主張は事実無根であると否定をしております。

辻元委員 私は、これは日本の主体的な活動という議論をずっと続けてきましたので、どうもアメリカの情報、外務省がこの間御答弁され、アメリカはこう言っているという話が多いんですね。今もそうです、アメリカの報道はこうである、報道官がこうしゃべったということをここで発表されるんですが、先ほどからアフガンの復興支援の話も出ておりますけれども、私は、日本政府が主体的な取り組みとして今回のテロ根絶に向けて動くというならば、例えばアメリカの攻撃の実態は今一体どうなっているのか。

 何をやってもいいというわけではないと官房長官がおっしゃったわけですから、その中身についてきちっと把握する、把握する努力をする、そして、それぞれアフガンでの被害の状況についても日本政府独自にきちっとやはり知る、そういうことが必要だと私は思っているんですね。(発言する者あり)

 そして、今、ジャーナリストなんかもアフガンの中にも入っています。日本のジャーナリストも入っています。今、どうやって知るんだというような、やじとも言えない御発言がありましたが、では、全く知らずに、アメリカは何を、どういう攻撃するかもわかりません、その攻撃によってアフガニスタンの国内でどういう被害が起こっているかもどうやって知るんだ、そんなこと知れないだろう、でも日本は対米支援しますでいいと思いますか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 防衛庁の中には情報本部がありまして、米軍等の攻撃の様相につきましては、マスコミの情報や外務省の情報、また現地のパキスタンに武官も行っておりますし、周辺諸国からの情報等を総合して米軍の行動等については把握をいたしておりますし、また、被害の状況等も数字的に把握をする体制にはなっております。

辻元委員 先ほどの御答弁とちょっと今食い違っていると思います。先ほどは、アメリカの作戦行動については把握しないというようにおっしゃったと思うんですね。そうなってくると、日本政府は何を基準にして、先ほどやっていいことと悪いことがあるというような御答弁がありましたが、するんでしょうか。私は、机上の空論でこの対米支援を議論したくないと思っているんです。実態に即して日本政府が一体どういうふうに動こうとしているのかという点をきちっと詰めて問うていきたいと思っているわけです。

 さてそこで、もう一点お聞きしたいことがあります。これは外務大臣にお聞きしたいと思います。

 なぜ、そういうことを申し上げるかといいますと、これはアフガニスタンにアメリカが攻撃をかけて、そしてテロの首謀者を捕まえるんだということでアメリカは行動していますが、それ以外にも世界にいろいろな波紋を投げかけていますね。あちこちでデモなども起こっています。

 さてそこで、ブッシュ大統領は一番最初、この武力攻撃を開始する前に、アメリカ側につくのかテロリスト側につくのかはっきりしてほしいという演説をしたのは御承知のとおりです。ですから、結局、敵か味方かということで、日本はアメリカ側について対米支援をするというように決めたと思うんです。ところが、私は、この二項対立だけで今回の問題を解決できるのかというところに非常に大きな疑念と不安とそれから懸念を持っています。

 そこで、外務大臣にお伺いしますが、外務大臣も、ブッシュ大統領がアメリカ側につくのかテロリスト側につくのか、世界はそのどちらかを選択すべきだということで、日本はアメリカ側を選択し、世界じゅうにそういう呼びかけをして、この二項対立で……(発言する者あり)今、テロか反テロという話がありましたね、それで解決できると思われますか。

田中国務大臣 立場の違いかもしれませんけれども、辻元委員は、何かもう日本はアメリカからしか情報がとれない、すべてアメリカの言うことしか聞かないんだ、聞けないような状態であるというような、呪文のようなものに呪縛されているんではないかと思っていつも発言を伺っていますが、そんなことはございません。ブッシュ大統領がおっしゃっていることも、あれはアメリカでもってアタックを受けたんですよね、ワールド・トレード・センター等。そのときに言われたのがアメリカかテロかと言われたのであって、私たちは国際社会と一緒にテロリストに対して闘っているのであります。そこのところを、根本を、やはり原点にもう一回立ち返って考えていただかなきゃならないというふうに思います。

 それから先ほど来――ちょっと待ってください。アフガニスタンもそうですし、パキスタンもそうですけれども、情報をアメリカしかとっていないんではないかとさっきおっしゃいましたけれども、そんなことありませんよ。北部同盟とも、先ほど前の方の質問も、あなた、おられなかったんでよく聞いていた方がいいと思うんですが、答弁同じことを繰り返すことになりますけれども、北部同盟との接触とか、そういうことは、ロシアもトルコも国連とかあらゆるところからとっているんですよ。それから林大使も、ザーヒル・シャーという前の国王ですけれども、とも接触をするとかあらゆる形で、じかにぴょんぴょん飛んでいくのだけが外交じゃないんです。それも大事ですけれども、あらゆるところでしっかり情報をとっているんです。

 問題は、とった情報をどれだけ有効に今後のために使うかじゃないんですか。そのために一生懸命精力を挙げているんですから、何でもかんでもアメリカの言うとおりにやっているんじゃないかとか、そういうふうな思い込みはやめた方が今後のためによろしいと思います。

辻元委員 思い込みで申し上げているわけではなくて、先ほどアフガニスタンの被害の実態について私が問うたときに、田中外務大臣が、アメリカからはこういう情報をいただいていますとおっしゃったので、アフガニスタンの被害の状況について日本政府は何を把握しているのかと。今、北部同盟からも情報をとっているとおっしゃいましたけれども、アフガニスタンの被害の実態について、ではどのように情報をおとりになっているんでしょうか、その実態をどのように把握されていますか、それについて私は問うたわけです。そこは非常に大事な点なんです。今回のこの審議の中で、そこは焦点になっていますよ。実際に、米軍の行動とアフガニスタンの被害の実態を日本政府は主体的にどのように情報をおとりなのか、どういう実態と、攻撃が始まってからあなたは理解しているのか、いかがですか。

 外務大臣です。外務大臣で結構です。外務大臣、どうぞ。

田中国務大臣 外務省もこの事件が起こってからオペレーションルームというものを立ち上げて、一度御視察くだすっても結構ですけれども、あらゆるところから昼夜を分かたず情報をとっております。北部同盟だけじゃありません。全部が全部あなた様に開示できるものばかりじゃありません。

 それから、パキスタンの問題につきましても多分お尋ねでしょうから、先に申し上げておきますけれども、これも、パウエル長官がこれからムシャラフ大統領と会い、そしてインドにも行かれるわけですから、そういうことによって多分、もちろん御関心おありでしょう、パキスタンもそれからインドも核の問題もありますし、そういう中でもって、どうやって、難民の方が出ないようにこの問題を安定的に片づけて、そして総合的に、このアフガンの地域に平和と安定とをもたらすかというために総合的にやっておりますので、日本対アメリカということだけでもって考えるのではない、総合的に力をみんなが出し合って、いいエネルギーを出してこのテロリズムに対抗していこうという努力をしている今プロセスにあるということを申し上げておりますので、御理解ください。

加藤委員長 官房長官。

辻元委員 官房長官、もう結構です、時間がありませんので。

 先ほどから外務大臣の御答弁を聞いておりますと、昼夜を分かたず頑張っているとか、総合的にやっているという抽象的な話なんですよ。この議論は抽象的に余りすべきではないと思っているんです。アフガンで被害が民間人にどれだけ出ているというふうに日本政府は主体的に考えているのか。ここは非常に国際的にも注目しているところです。各国それぞれ言っていますよ。

 それでは、お聞きしましょう。次に、私は懸念しているのが、先ほど反米デモの話でパキスタンの話が出てきましたが、田中眞紀子外務大臣に引き続きお伺いします。

 数日前にナイジェリアでデモがあったという話は、御承知のとおりです。これも国際的に大きく報道もされております。そこで、アフガニスタン攻撃に反対するデモで二百人の死者が出た。特に、これはどういう原因かといえば、結局、イスラム教徒のデモが、イスラム教徒、キリスト教徒が衝突する暴動に発展したと言われているわけです。

 今回、パキスタンでの反米デモがありましたが、ナイジェリアでこういう大きなことが起こったということは、一つの新しい局面に問題が複雑化している例だと思いますが、日本政府として、外務大臣、これは事実関係をどのように把握されていますか。いかがですか。二百名の死者が出たということは事実でしょうか。どのように把握されているでしょうか。(田中国務大臣「ナイジェリアの件で言っておられるのですか。ナイジェリア」と呼ぶ)ナイジェリアです。

田中国務大臣 ナイジェリアにおきまして十月十二日に発生した反米デモで、十四日までに十三人が死亡、百人前後が負傷という報道が、十月十五日にあったことは承知いたしております。

辻元委員 これも報道なんですよ。

 結局、私たちが今直面していることは、アフガニスタンでどういうことが起こっているか、それで、米軍はどういうアタックをかけているか、そして、飛び火して世界が複雑化していく。今、これはイスラム教徒対キリスト教徒の暴動と言われているわけですが、そういうことは食いとめなきゃいけないという立場が日本政府の立場じゃないでしょうか。

 今、田中外務大臣は報道でとおっしゃいましたけれども、日本政府としては、大使館もあるはずですよ、何の情報も独自に得ていないんですか。いかがでしょうか。いかがですか。昼夜を分かたず情報を得ていらっしゃるということですから。これは非常に大きな点ですよ。この二週間ぐらいの間の一つの大きな転機になるかもしれない。いかがですか。大使館もあるはずですよ。いかがでしょうか。

田中国務大臣 今、情報については、正確に確認をいたしております。

辻元委員 今ごろ確認しているようでは遅いですね。最初に言いましたけれども、今刻々と状況が変わっていることを的確に判断しながら、その中で私たちは法案審議しているわけです。私は別に外務省の関係者でもなく、それでも情報をいろいろ得ますよ。昼夜を分かたず情報を得ているとおっしゃるから、私は伺ったわけですよ。

 今からナイジェリアに、では確認されるということですね、大使館の方にどうなっているんやと。そういうことですか。そうとしかとれないじゃないですか。

 というのは、なぜかといいますと、私は、今回、自衛隊を送ろう、対米支援しようということをずっと議論しておりますけれども、やはり実態をどう把握しているのかということが抜け落ちていると思うんです。その中で、例えばこれはナイジェリアで起こった。インドネシアはどうでしょうか。

 では、田中外務大臣にお伺いしましょう。インドネシアはアメリカの空爆に対して態度を変化させてきていると思いますが、どのように御理解されていますか。ここ数日で大きくインドネシアは方針転換しようとしていると思いますが、いかがですか。

田中国務大臣 これは、突然一つ一つ国別に、あれどうだ、これどうだとあなたがおっしゃることに一個一個答えられるほど全部は用意はしてございませんけれども、オペレーションルームでしっかりと情勢も掌握しておりますので、必要でございましたら、もう一回後ほど正確な数字を申し上げますし、もしあなたが御存じだったらどうぞ御開陳ください。

辻元委員 このインドネシアの変化も、非常に今回の件では大きなこの数日間の動きだと思います。かなり大きなデモが起こっていますね。フィリピンのミンダナオ島でも起こるかもしれないという状況なんです。それで、インドネシアは、政府として、空爆に対して懸念を表明、または反対というような方向に姿勢を変えてきています。

 ですから、私は、最後に申し上げたいと思いますけれども、余りにも空理空論的に、実態を、アフガニスタンの情勢もアメリカの作戦も、そして私たちの身近なアジアの状況も把握しない中で法案を通そうとしているということに、私は、大きな懸念と、今の日本政府のあり方そのものが問われかねない危機的な状況だということを申し上げて、質問を終わります。

加藤委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対し、枝野幸男君外一名から、民主党提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。玄葉光一郎君。

    ―――――――――――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

玄葉委員 ただいま議題となりました民主党提案に係る修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 本年九月十一日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な行為であり、安全で民主的な社会を希求する私たち人類への挑戦であると考えます。よって、私たちの平和と安全にとってこれまでにない全く新しい形の脅威ととらえ、新たな対応措置が必要であるとの認識を持っていることをまず申し上げたいと思います。

 与党は、テロ対策特別措置法案に定める基本計画に関して、国会報告事項から、防衛庁長官が対応措置の実施を自衛隊等に命じた日から二十日以内に国会の事後承認事項とする旨の修正をされました。原案では国会に対して一片の報告としていたことからすると、一歩前進したと言えなくはないでしょうが、民主党は、シビリアンコントロールを徹底させるとともに、自衛隊の派遣に対して国会も責任を負うべきであり、また、周辺事態法等との整合性を図る見地から、国会の原則事前承認を義務づける以下の修正案を提案いたします。

 案文はお手元に配付しておりますので、朗読は省略をさせていただきます。

 本修正案では、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動については、内閣総理大臣は、これらの対応措置の実施前に、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を得なければならないこととしております。

 ただし、緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を実施することができ、国会の承認を得ないで対応措置を実施した場合には、内閣総理大臣は、速やかに、これらの対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならないこととしております。

 政府は、国会で不承認の議決があったときは、速やかに、当該協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動を終了させなければならないこととしております。

 以上が、この修正案の概要であります。

 委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

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加藤委員長 これより各案並びに久間章生君外六名提出の修正案及び枝野幸男君外一名提出の両修正案を議題とし、質疑を行います。

 鈴木宗男君。

鈴木(宗)委員 総理大臣、きのうは韓国訪問、そしてまたきょうは国会審議ということで、大変御苦労さまであります。ただ、おかげさまで各党の協力も得まして、この特別委員会もきょうは大詰めで、これからは締めくくり総括質問ということで総理にお越しをいただいているわけであります。

 このテロ特措法、さらには自衛隊法の一部改正、また海上保安庁法の一部改正、私は、広い意味でのこれは人道支援だ、支援法案だという認識を持って審議に参加していました。この委員会での審議の中でも、武力行使はいけないとか、米国支援法だとかという質問もありました。しからば、私はそういった人たちに聞きたいんです、どうしたらテロを根絶できるのかということを、どうしたらテロをなくせるのかと。

 あの九月十一日の極めて残虐な忌まわしい同時多発テロ事件、世界貿易センタービル、あそこには四十四カ国・一地域の人が被害に遭われております。ニューヨーク市の発表ですと、死亡者が四百四十二名、今なお行方不明者が四千七百七十六名であります。まさにこの数字は、国の数からいきましても、これは人類への挑戦であります。断じてあってはならないことであります。同時に、日本人も二十余名犠牲になっているわけであります。日本自身がターゲットにされたと言われても仕方ない、深刻に受けとめるべき今回の事態だ、私はこう思っているのであります。そのためにも日本は、やはり国際社会、とりわけ同盟国と協調してテロに向けて闘い抜かなければいけない、こんなふうに思っております。

 十三日、土曜日でありましたけれども、この特別委員会は六年ぶりに土曜日審議となりました。そのとき、富士銀行の人事部長さん、木川さんが参考人として出席されて、同僚を失ってしまったという話をしたときに、声を詰まらせておりました。私自身も本当に胸の痛む思いでありました。

 また、アメリカの報道等を見ますと、消防の関係のお母さんを亡くした娘さんは、ひつぎから離れなかったという、あの光景も見ました。また、警察官のお父さんを失った子供は、パパ、帰ってきてという叫びもテレビで聞こえてきました。私は、ああいう光景を見るときに、幸せな家庭を恐怖に追い込んだこのテロ、さらにはテロリスト、絶対許せない、そのために日本は堂々と立ち上がるべきだ、こう思っております。

 そういった意味におきまして、小泉総理、改めて、テロ根絶に向けての日本の明確な姿勢と、さらに、テロリストはいけない、テロリズムはいけないんだということを明確にしながらも、そして同時に、悪いのはテロリスト、テロリズムであって、アラブだとかイスラムではないということも明確にしていくべきだ、私はこう思うのでありますが、改めて総理の決意をお伺いしたい、こう思います。

小泉内閣総理大臣 お話しのとおり、このテロに対する対応措置、これについて、日本としても、アメリカに対する攻撃のみならず、人類全体に対する卑劣な攻撃である、また、自由、平和、民主主義に対する攻撃であるというふうに受けとめまして、これは人ごとではない、今お話しのように全世界が結束してこのテロに立ち向かわなきゃならないという観点から、日本としても積極的に、また主体的にアメリカ初め各国と協力していこうという考え方からこの新法を国会で今御審議いただいているわけでございます。

 無実の、全く無関係な市民を巻き込んで平然としているこのテロリストの存在というものは、まさに現代の市民にとって、また現在社会に生きる我々にとって、どうしたらこのテロを根絶できるか、またテロを防止できるかということについて真剣に考えていかなきゃならない。考えるだけでなくて、これに立ち上がろうとしている国々、人々と協力して、できる限りの支援協力態勢をつくることが、そういうテロとの闘いに正面から向き合ってテロを撲滅させようという国の責任のあり方ではないかと思っております。

 そういう意味において、いろいろ御意見をいただきながら、政府としても、日本の国力に応じて、また、日本の事情に応じて、できるだけの支援態勢をつくっていきたいと思います。

鈴木(宗)委員 総理、私は、今回のこの自衛隊法の改正案なりテロ特措法ですね、あるいは海上保安庁法の一部改正もそうですけれども、こういったすぐ目に見えた形でやるという行為は必要ですね。特に、先般、パキスタンに自衛隊機が人道支援で行かれた。あの日の丸をつけた飛行機、さらには日の丸が入った物資を見て、私はやはり感激いたしました。非常にタイムリーで、速やかに実行できたな、こんなふうに思っているのです。

 同時に、こういった自衛隊の貢献も大事ですけれども、また、日本が今テロ撲滅に向けて貢献できる分野で、人、物、金の分野で私は貢献できると思っているのです。

 人といえば何かといえば、情報であります。これからのテロ対策なんというのは、私は情報戦だと思っているのです。いろいろな国でそれなりの諜報機関や特務機関を持っておりますけれども、日本も相当な、レベルの高い専門家がおりますから、それの活用もこれからは大事だと思うのです。同時に、外務省には国際情報局があります。防衛庁には情報本部もあります。内閣には内調、調査室もありますね。さらには警察もある、あるいは公安調査庁等もありますね。この組織をやはり垣根をなくして、何となくまだセクショナリズム的なところもありますから、この点もっと、持っているハイレベルの情報を同じく共有して、さらに関係各国へ、あるいは同盟国に伝えることも大事だと私は思うのですね。

 そういった意味で、総理、私は、この情報関係の体制の整備、強化というのも、テロだとかサイバーを考えた上では、これからは極めて大事なこれは日本の貢献にもなると思いますが、いかがでありましょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、今回のテロ事件のみならず、情報を収集してこれをしかるべきところにきちんと伝達する、そしてその情報が正しいかどうかを分析する、そういう面において、各関係省庁の協力あるいは人間的な関係強化、大変重要なことだと思っております。

 セクショナリズムを排してしっかりとした情報管理体制をつくっていくことが、とりもなおさず危機管理対策につながっていくわけでありますので、その点十分配慮しながら、情報収集能力の向上に向けて努力しなければいかぬと思っております。

鈴木(宗)委員 あと、私は、物の分野では、例えばアフガニスタンでは世界の七割の麻薬をつくっているという話も聞いておりますから、こういったやはり物の移動に対するチェック、あるいは危険なものの輸出入管理のチェック、ここら辺も日本はできる、こう思うのですね。

 さらには、お金の面では、この際のお金という面では、マネーロンダリングですね。不正資金。やはりあれだけのことを起こすためには相当なお金が必要ですね。私は、こういった面での協力は相当日本もできる、こう思うのですね。

 そこで、これは官房長官がよろしいのですかね、例えばマネーロンダリングなんかの場合、各省庁やはり関係しますね。どこかできちっとまとめなければうまく動かないのかなという感じもするのですけれども、この点、事務当局でも結構ですけれども、日本のマネーロンダリングの体制、仕組み。財務省だとか、これは外務省なり、あるいは金融監督庁等も関係するのかと思いますけれども、しっかりこれはハンドリングができるのかどうか、お知らせをいただきたいと思いますね。

田中国務大臣 委員御指摘の資金に関すること、管理、これは大変大事でございまして、マネーロンダリング対策ですけれども、これは関係省庁、先ほどおっしゃったように、あらゆる情報も、縦割りはやめて、有機的につなぎつけて、効率的にその情報を生かしていくという努力もいたしております。

 マネーロンダリングについていいますと、これは一つだけ国際的な国連の施設がございまして、これはまず薬物に関して申しますと、UNDCP、国連薬物統制計画というのがございます。そこにも拠出をいたしておりまして、あらゆる情報をとっております。

 それから、マネーロンダリングに関しましては、金融活動作業部会、FATFという国際的なフォーラムがございますので、それに積極的に参画もいたしておりまして、この会合が十月末、本月末、ワシントンで開催することになっております。

福田国務大臣 今外務省からの説明がございましたけれども、この問題は多省庁にまたがった問題でございます。省庁名を申し上げれば、財務省、それから金融庁、外務省はもちろんでございますし、多省庁にまたがる。それで、それを内閣官房で集約をいたしまして、各関係省庁にお集まりをいただき、対策チームを発足させております。これは、この事件が起こりまして直ちにとった措置でございます。

鈴木(宗)委員 官房長官、例えばアメリカなんかは、大統領令が出されれば、個人のプライバシーも何も関係なくすぐ情報が開示されて、オープンになって摘出ができるようになっていますね。日本の場合、どうしても捜査情報と行政情報の垣根がありますね。同時に、それはまたいい面ですけれども、個人保護という意味ではいいことなんですけれども、しかし、それをやっておったら時間がかかって、みすみすまた敵を逃がしてしまうような話にもなってしまうのですね。そういった意味でも、一元化なり、今対策本部がつくられていると言いますけれども、機能しているかどうかということが私は若干懸念だったものですからあえて言ったのですけれども。

 これからもこれはついて回る話であります。今回だけのことではなくて、テロの撲滅に関しては、この話は、このマネーロンダリングの話はこれからもやはりついて回る話でありますから、ぜひとも、さらにこの一元化に向けて、さらにこの情報は共有しながらやっていっていただきたいな、こんなふうにお願いします。

 さて、私は、武力行使が始まった、この武力行使も正義の武力行使であるし、同時にアフガン和平に向けての大きな一石だ、こう思っているのです。

 そこで私は、アフガニスタンの和平についても日本がもっと具体的に行動を起こすべきだ、こんなふうに考えているのです。一部報道等また国会の審議でも、アフガン和平に向けての東京会議等も考えておられるということでありますけれども、私はもっと具体的に、総理、例えば総理の特命大使といいますか、アフガン担当の特使みたいな方を置いた方がいいと思うのです。同時に、そのもとにチームをつくって、きちっと日本はこうしてやりますよというメッセージを世界に向けてやった方がいいと思うのですね。

 例えば、この十月三日には、国連のアナン事務総長は、ブラヒミさんを再度国連事務総長特使に任命しました。この方は、最初やはりアフガンをやった国連の事務次長ですよね。しからば、それに呼応するようにタイムリーに、総理特使あるいはアフガン担当大使というふうに持っていった方がいい。私なんかは、例として、元の国連事務次長だった明石さんあたりを総理特命大使なんかにして、そのもとにチームをつくり上げていけば、目に見えた形になって、私はアフガンに対するいいメッセージあるいは世界に向けての発信になると思うのですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今回のアフガンに対するテロリスト拠点攻撃、これは、テロリストの、またテロリスト拠点、テロリスト支援グループに対する攻撃で、アフガニスタン国民を相手にするものではないということがはっきりしております。そういうことを考えますと、今のお話のように、今後アフガンに対して、平和的な国家として、また民主主義国家として発展してもらいたいという声は、これまた国際社会かなり共通しているのではないか、その中で日本がどういう役割を果たすことができるか、やはり今から考えておくべきことだと思います。

 今お話しの点も含めまして、日本が今後、むしろテロを発生させている根本原因といいますか、貧困とかそういう社会の不安に対する除去にどのような役割を果たせるかという、そういう観点から大事な御指摘だと思いまして、日本としても今後、テロ撲滅のための一つの環境を国際的にどう整備すべきか、その中で日本がいかなる役割を果たすことができるかということを積極的に考える中で検討していきたいと思っております。

鈴木(宗)委員 総理、テロ撲滅に向けての日本のやるべき形、あわせて、アフガンの和平がまたリンクしているわけでありますから、そのアフガン和平についても、私が言った、総理が特命の大使なり特使を設ける、あるいは平和、和平に向けてのプロセス達成のための日本としての何か組織もつくって貢献していくという認識でよろしいでしょうか。

小泉内閣総理大臣 具体的に特使とか基金とか額とか、そういうことはまだ明らかにすべき段階ではないと思いますが、いろいろな御意見を参考にしながら、日本としてどう対応すべきかという点を考えていくべき問題だと思います。

鈴木(宗)委員 今この「タリバン」という本が何か売れているそうです。タリバン研究にはこの本しかないそうなんですね。この本をあけますと、こう書いていますね。初めの前書きで、「アフガニスタンで最もよく知られている日本人外交官は高橋ヒロシ氏で、かれはアフガン諸語を話し、アフガニスタン駐在国連代表部に数年間勤務、世界有数のアフガニスタン専門家とみられている。」私は、この評価は外務省の中でもひとしく価値観を同じくするものだ、こう思っています。

 私も、この高橋さん、よく、もう二十五年ぐらい前から知っていますから、彼の人柄等もわかっているのですけれども、ブラヒミさんが事務総長の特使になった、かつてブラヒミさんの下で働いたのがこの高橋博史さんであります。私は、そういった縁からも、先ほど、例えばの名前で明石さんを上げましたけれども、明石さんとブラヒミさんもこれは懇意であるということ。

 やはり外交は人間関係が大事でありますから、そういった心の通じ合った人できちっと話をしていけば、相当私は日本は貢献できる、こう思いますので、あえて今、明石さんの名前も出したわけであるし、また、その中に、当然、ブラヒミさんも高橋さんを使いたいということを、既にニューヨークの我が方の国連大使館の方にも話があったと私は聞いておりますし、国連から私にも、タジクに行っていい仕事をしてもらいました、同時に、タジクの支援ありがとうございますという電報も来ておりまして、さらにまた、ブラヒミさん自身が、今週ニューヨークに入って協議もしたいという電報もいただいておりますから、ぜひとも総理、こういったことを考えて、私はタイムリーにやっていただきたい。

 私は、さっき言った、テロ撲滅にも人、物、金であるけれども、アフガン復興に向けての和平も人、物、金だと思うのです。その高橋さん初め外務省には相当な人材がおりますから、田中大臣、十分信頼してもらって結構ですから、専門家をきちっと使って、あるいはスタッフをうまく使って、日本の顔というものを十分打ち出していただきたい、こう思うのです。

 同時に私は、和平への復興へ向けての物、金の面で言うならば、やはりアフガニスタン初め周辺国への人道支援等、速やかにやることがたくさんあると思っているのです。タジクの二百万ドル、これは非常に早く決まったものですから、総理初め閣僚の皆さん方にも感謝申し上げますけれども、さらにこれからもアフガンからの難民の流出は想定されますから、ウズベキスタンだとかトルクメニスタン、さらにはタジキスタン等に対する配慮をよりお願いしたいと思います。

 同時に、この委員会での質問で、一部の議員の皆さん方から、難民をつくってはいかぬ、こういう話がよく出ました。これ、勘違いしてもらっては困るのです。タリバンのおかげによって今でも難民は五百三十万いるのです。この武力行使が始まっても、アフガニスタンから出るさらなる難民は七十万ぐらいしか想定されないのです。もう既に五百三十万の難民がいるということを私はぜひとも頭に入れて質問してもらいたいし、議論してもらいたい。

 空爆をしたから難民が出たのではない。タリバンがいて難民がいる。その数は五百三十万。空爆後の最悪の事態でもわずか七十万しかふえないという、国連アピールではそれが出ているわけでありますから、こういったことも踏まえて、私はしっかりしたデータに基づく議論が欲しいな、こう思うのでありますけれども、総理、この周辺国に対するさらなる支援についての日本の姿勢をお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 このテロに対する闘いにどう立ち向かっていくかという中で、それぞれ各国役割があると思いますが、日本としては、武力行使をしないという中で、このテロに立ち向かっていく国々と協力して何ができるかという中で考えられることだと思います。

 日本としては、いわば人道的支援あるいは難民支援あるいはその国の復興支援、いろいろ今までもやってきたところでありますし、今後も、このようなテロに立ち向かう国々に日本として何ができるかという観点からも考えていきたいと思っております。

鈴木(宗)委員 ぜひとも私は、中央アジア、日本はまっさらな感じでつき合いもできますし、同時にユーラシア外交、シルクロード外交がこれまた国の政策として流れてきているわけでありますから、その一環としても、あのウズベキスタンあるいはタジキスタン、さらにパキスタン、アフガニスタンというのは一体のものでありますから、よろしく配慮方お願いしたい、こう思っております。

 同時に、総理、ただアフガンだけ見てマスコミ等も報道しておりますけれども、私は、あのアフガンを見るときやはり大事なのは、アメリカとロシアの関係も見なければいけないと思っているんです。ロシアの影響力が強い、しからばロシアがどう考えているか、同時にロシアとどう組んでいけばいいか。

 この点、日本もジョイント役といいますか潤滑油役になれる立場にあるんですね。日本とアメリカは同盟国であります。同時に、今や日本とロシアも、これは近くて近い関係でありますから、そういった意味では、何の負い目もなくある程度日本は自由に話ができるような立場にありますから、戦略として、戦術としても、ロシアをどう土俵にのせてやっていくか。同時に、アメリカと同じ価値観を共有してやっていくかということも大事だと思いますので、ロシアに対するアプローチも私は忘れないでほしい。

 特にタジキスタンなんかはロシアと一体なものですから、逆にアメリカにも空港も全部貸せる、あるいは領空もすべて通過していいですよという思い切った判断ができた、私はこう読んでいるんですね。この点も頭に入れて、ぜひとも中央アジアというものに対する支援をお願いしたい、こう思っております。

 防衛庁長官、土曜日の参考人質疑で、自衛隊のパキスタンへの派遣は非常に迷惑な話だという参考人がおりました。新聞でありましたね。有害はあっても役に立たない、無益だ、有害無益という話でありました。私は、実態を知っているのかなという感じがしました。NGOで医療活動に当たっている、私はそのことは評価もするし立派なことだ、こう思っているんです。ただ、自分たちの世界だけで、自分たちのエリアだけで考えているのであれば、テロも撲滅できなければ国際貢献もないわけなんです。

 同時に、今私がこうして話をしながらも、あの中東のゴランでは、ここから八千キロ離れたあのゴラン高原では自衛隊の人が働いているんです、日の丸を背にして。私は極めて失礼な話だったと思っているんです。同時に、カンボジアにしてもあのルワンダ難民にしても、あるいは今のゴランにしても、自衛隊はさまざまなところで活躍しておりますね。それは国際的評価も高い。そういった意味で、あの非常に失礼な話について大臣はどう思うか。

 特に、私は、今自衛隊に必要なのは勇気と誇りを与えることなんです。自衛隊というのは実力部隊ですから、言われたらどこでも行くんです。(発言する者あり)今、ゴラン高原とはわけが違うと言ったけれども、ゴマでのルワンダ難民なんかはいい例です。あそこは非常に危ない。五十万の難民のところへ行ったんですから。今伊藤さんが言ったと思うけれども、実態がわからぬから。私は、PKOがあるところは全部歩いていますから。ですから、ゴマの場合は非常に厳しくてもちゃんと自衛隊は任務を果たしましたね。そういった意味では、私は自衛隊は信頼に足る実力部隊だ、そう思っておりますから、つまらぬ主張には明確に反撃した方がいいと思っているんです。(発言する者あり)

 同時に、大臣は最高の指揮官でありますから、士気を鼓舞するためにも正直な話をした方がいい、こう思いますので、大臣の見解を伺いたいと思っております。

中谷国務大臣 私も鈴木委員とともにモザンビークのPKO、参りましたけれども、非常に国際的社会の中で自衛隊が活躍している姿を確認させていただきました。

 自衛隊には、日ごろから訓練された人的、物的財産がありますし、危機管理のノウハウ、また、自然の中で、野外の中で活動できるという能力も持っていますし、使命感も責任感も旺盛でありますし、また柔軟性、的確性がございます。それは今委員もおっしゃったとおり、ザイールの難民支援、またホンジュラスの災害派遣において、医療活動、防疫活動、給水活動を立派にして、国連からも高い評価をいただいていますし、また、これから行くところにおきましても、言葉の研修とか現地の社会情勢を十二分に把握した上で派遣をするわけでございまして、こういった今までのノウハウを生かせば必ず現地の方にもNGOの方にも喜んでもらう活動ができると私は確信を持って派遣をいたしたいと思っておりますので、ぜひ自衛隊にそのような任務を与えていただいたら、彼らも責任を持って果たせるというふうに思っております。

鈴木(宗)委員 今の私の質問に不規則発言の人がおりましたけれども、私は何もこの不規則発言した人を相手にしなくていいんです。自衛隊の皆さん方が体を張って頑張っている、その人たちに我々政治家はいかに誇りや勇気を与えることが大事かということだけをわかってもらえれば、私はいいと思っております。口先だけで平和は到来しません。やはり体を張ることも大事でありますし、同時に、正当な評価をしてやることが一番大事ではないかな、私はこう思っております。

 あと総理、私は、このアフガン和平で大事なことは、中国の名前が余り出てきません。韓国の名前も出てこない。これはやはり日本から積極的に働きかけるべきです。

 例えば、パキスタンとインドが、やはりなかなかこれは機微な関係です。では、パキスタンと中国はとてもいい関係なんです。パキスタンに三百数十名の邦人がいます。もし何かあった場合、インド経由で逃げるなんという、脱出を図るなんという話もありますけれども、これは無理ですね。私は、逆に陸路で中国に出た方がより効果的だし、また安全だと思います。しからば、中国との関係なんかも、こういった面で信頼関係をつくるにはいいのではないか、私はこう思っております。

 同時に、難民なんかではノートや文房具が欲しいというとき、やはり韓国なんかのものを生かすことも私は必要だと思うんです。なぜかというと、飛行機の便は韓国が一番多いんですね、中央アジアに行く場合では。そういったものを使うのも日韓関係でとても大事ではないか、私はこう思いますので、中国あるいは韓国との関係、官房長官、ぜひともこのアフガン和平でも活用すべきかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりだと思います。日本は、パキスタンとかアフガニスタンというだけでない、より効果的な外交を進める上においては、また外交をさらに効果的にするためには、そういう周辺諸国、また、特に関係の深い国々が方々あるわけでございます。そういういろいろな関係をうまく活用して、そしてこの地域の安定というものを果たさなければいけないと思っております。

 中国、韓国につきましては、総理もそういうことも頭の中に入れながら、昨日とこの間、一週間前ですか、訪問したということもございます。そういうことも視野に入れてやらなければいけないと思います。

鈴木(宗)委員 総理、この法律がきょうこの委員会で採決されますから、また参議院でもしっかり議論をしてもらいたい、こう思いますけれども、早くやはり目に見えた姿形の国際貢献と、そして二十一世紀、世界に責任を持つ日本だという姿を示す意味でもこの法案は大事でありますから、私は、総理大臣に敬意を表しながら、さらにまたこの委員会でスムーズに審議が進んだことに感謝申し上げて、質問を終わらせていただきます。

加藤委員長 これにて鈴木宗男君の質疑は終了いたしました。

 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 総理並びに各大臣におかれましては、大変に御苦労さまでございます。

 九月十一日に同時多発テロ事件が起こりました。そして、それを受けるような形で、九月の二十七日から臨時国会が始まりました。本日で二十日経過したわけでありますが、その間、この国会において、この問題に対して集中的に議論が重ねられ、今日いよいよ大詰めを迎えたということであります。本来ならば、この国会は、雇用対策とか経済政策問題とかあるいは特殊法人改革とか、そういったことがもっと早く議論されるべきだと思いますが、今日までこのテロ事件問題に対しての集中審議的な形に今なっているわけであります。

 それで、昨日も、総理におかれては党首会談等いろいろお骨折りいただいたわけでありますが、私は、テロ対策特別措置法においては「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」ということが明確に規定されているわけでありまして、そういう範囲の中で日本がどういうことができるかという意味において議論を重ねてきた結果、大詰めのところで大きく二点に今絞られつつあるのだろう、そして、それがまさしく党首会談のテーマでもあったのではないかと思います。

 そういう意味で、武器弾薬の輸送についてまずお尋ねいたします。

 先般、私、本会議で、この武器弾薬の輸送については、他国の領域まで行くわけですから、より慎重にすべきだということを申し上げまして、それに対して総理の方から、慎重に対応すべきとの指摘は同感だ、ただ、輸送を行えるようにしておくことは適当と考えるとお答えがありました。実際にこういうニーズが、アメリカの方からそういう打診が今あったのかどうか、ありそうなのかどうか、そういう点をまずお伺いしたいと思います。

 そして、この問題については、他国の領域までということでありますが、非戦闘地域ということ、それから相手国の受け入れの同意がある、こういう歯どめといいますか、かかっているわけでありますから、そういう意味で陸上の輸送というのは大変に難しいものがあるなというふうに私も思っておりました。

 今回、与党の修正案の中で、武器弾薬の陸上輸送は除かれるということを提案させていただいたわけでありますが、これはつまり、私は、海にしろ空にしろ、ポート・ツー・ポート、港まで、こういう考え方が常識ではないかなと思っておりますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 御指摘の武器弾薬の輸送につきましては、本法案の衆議院での御審議などを踏まえまして与党三党間で協議をして合意されました修正案におきまして、外国の領域における武器弾薬の陸上輸送は行わない、こういうふうになったわけでございます。

 政府も、今回の修正案を誠実に受けとめまして、この法律が成立した暁には万全を期して対応してまいりたい、こういうように思っております。

田端委員 それでは、総理には後でまとめてお伺いします。

 次に、国会の関与の問題でありますが、この法案の審議、そしてまた成立自体が、自衛隊が海外で活動することを了承する、そういう意味があるわけでありまして、そういう意味ではそれでも十分だとは思いますが、しかしなお、自衛隊の海外への派遣ということについて国会が関与していくということで、承認をする、そういう手順は大変大事だということで、今回、与党の方においても修正案という形で、自衛隊法七十八条第二項の、治安出動に対して二十日以内に国会承認を求めなければならないというこの規定を援用した形でこの修正案がなされたわけであります。

 私は、自衛隊の派遣というのは、即応性といいますか、緊急性あるいは機動性といいますか、そういうことを考えると原案であっても十分であったと思いますが、しかし、そこをなお慎重を期して、国民にも理解をしていただくという意味でこういうことに我々としても考えたわけでありますが、この点について官房長官の御所見をお伺いしたいと思います。

福田国務大臣 修正案で国会の関与というものが規定されたわけでございます。

 委員の御指摘のとおり、国会において、国民に理解をさらに求めるという趣旨を踏まえてこの条項を入れたわけでございまして、私どもとしては、これはそれなりに評価されるものであろうというように思っております。

 こういう枠組みができましたので、できるだけ国民に理解をしてもらえるような努力を我々としても迫られているというか、必要とされているんだろうというように理解いたしまして、今後そのような方向で努力をさせていただきたいと思います。

田端委員 総理に、御所見といいますか、この二つの問題についてきのうもお骨折りいただきました。しかし、残念ながら、国会の承認ということについては民主党とは意見の一致を見なかったわけでありますが、与党として私たちは、これが一番いい案だ、こういう考えを持っておりますが、総理はその辺のところ、どういうふうなまた御所見であり御決意であられるのか、お伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私どもとしては、原案で十分慎重な対応ができるのではないかと思っておりましたが、いろいろな御意見を取り入れまして、より心配をなくしていこうという対応で、そういう考え方も一つの考え方ではないかということで、それでは政府案を修正しようかなというところに落ちついたわけでございまして、より多くの御意見を参考にしながら、また、今までの審議を生かしていこうということで修正に応じたということを御理解いただきたいと思います。

田端委員 そういうことで、国民の皆さんにもできるだけ理解をしていただける、深めていただける形は整った、こう確信するわけであります。

 次に、武器の携行、携行武器の考え方といいますか基準といいますか、そのことについて防衛庁長官にお尋ねしたいと思います。

 これは基本計画の中で具体的なことは明記されることになるんだろうと思います。つまり、難民の支援活動とはいえ、それなりにやはりテロの攻撃というものに備えなければならない、そういうことからいきますと、自己の管理下に入った者の身体の防護という、今までになかった一つの大きな理念というものが入ってきたわけでありますが、そういう中で、持っていく武器、携行する武器というものに対しては、何か一定のお考えなり慎重な配慮というもの、それは何か見解みたいなものをお持ちなんでしょうか。あるいは、今の時点でこういう武器を考えている、こういうようなことは言えるんでしょうか。その辺をよろしくお願いします。

中谷国務大臣 持っていく武器の種類等につきましては、これまでは小銃、けん銃、機関銃ということでPKO活動をやっておりましたけれども、今後いかなる地域に派遣をされるのか、そして、その現場の状況等を勘案いたしまして武器の種類を決定し、また基本計画等で定められた武器を携行するということになろうかというふうに思っております。

 いずれにしても、使用する場合は、緊急事態に際しまして正当防衛、緊急避難に限られておりますし、またその際の使用におきましても、ROEという武器使用のルールを決めまして抑制をされ、かつまた、隊員の安全にかかる点におきましてきちんとしたルールをつくって実施をさせたいというふうに思っております。

田端委員 国民の中で誤解があってはいけないのでお尋ねしたわけでありますが、ぜひ慎重に御配慮をお願いしたいと思います。

 生物兵器テロ対策について坂口大臣にお尋ねいたします。

 ニューヨーク等で、あるいはネバダ州、フロリダ州等で炭疽菌の感染者が合計十二名、一人が亡くなったという、そういった意味で生物兵器テロに対しての不安が大きく広がっております。アメリカの方はこの問題に対して、連邦政府、州政府それぞれにおいて、国民に向けて手引書とかインターネットを通したりとかいろいろな形で配布物をしたり情報の提供に努めているわけでありますけれども、しかし、そういう事件が起こってきますと、大きな混乱にもなっているかと思うわけであります。

 炭疽菌あるいは天然痘、そういったことには抗生物質あるいはワクチンということになるわけでありますが、アメリカではそれぞれ千二百万人分とかあるいは四千万人分の目標を定めて確保に当たるという方針を持っておられるようであります。我が国でもこういったことは今後やはり考えていかなきゃならないし、こういう事態に対してどうすれば早期発見できるのか、あるいは万一何かなったときにはどういう対応をすればいいのか、そういう情報を明確に国民に発信していただくことが大事かと思いますし、同時に、それらの医薬品についての確保は国としてどういう形で今進められているのか、お願いしたいと思います。

 それから、この問題について防衛庁長官に、派遣される自衛官も生物兵器テロ対策というものに万全を期して行かないといけないのではないかというふうに思っておりますので、防衛庁長官の方からもお願いしたいと思います。

坂口国務大臣 生物兵器につきましてはいろいろの言い方がございますけれども、その中で、今お挙げになりました炭疽菌でありますとかあるいは天然痘といったものがやはり主なものになるのではないかというふうに思っております。そのほかペストでありますとかボツリヌス菌毒素といったものもございますけれども、やはり一番中心になりますのは炭疽菌と天然痘ではないかというふうに思います。

 天然痘の場合には二次感染ということもあるわけでございますので、そうした面で非常に重要だと思っています。炭疽菌の方は、これは二次感染というのは考えにくいわけでございますが、しかし、炭疽菌につきましては、一度なってしまいますと死亡率がかなり高いということがございますので、非常に重要な問題だというふうに思っています。

 いずれにいたしましても、早く情報を上げていただくということが一番大事でございますので、医療機関、とりわけ救急救命センターでありますとか、あるいはまた重立った医療機関に対しまして、疑わしき症状がある人を見つけたときには早急にひとつ連絡をしていただく、そして、国立の感染病研究所にその情報を提供していただくということをお願いしているところでございます。ホームページでございますとか、あるいはまたパンフレット等もつくって、そこはひとつ明確にしていきたいというふうに思っております。ホームページ等には、もう既に活用しているところでございます。

 もう一つは、それに対応する薬等の問題でございますが、炭疽菌につきましては相応の薬品というものも用意をいたしております。だから、早く情報が上がりましたら対応でき得るというふうに思っている次第でございます。

 天然痘の方は、もう安全宣言をずっといたしまして、そして、日本を含めますアジアの方にももうほとんどその病気は存在しないというような状況になっていたわけでございますので、小さなお子さん等に対します種痘等は現在行われていないかと思います。しかし、今後そうしたことがあるということを予測いたしますと、やはりワクチンの用意といったものもしなければならないというふうに考えておりまして、用意万端、滞りないようにしていきたいとも考えているところでございます。

中谷国務大臣 防衛庁といたしましても、生物化学剤の対処については重要な問題だと認識いたしまして、衛生担当参事官から全国の医官に対して、この炭疽菌に関する対処、医療面での対応について現在通知を発出して、その態勢整備を図っております。

 派遣される隊員につきましては、十分に事前の教育を行い、この炭疽菌の対処として有効な抗生物質を持っていかせるなど必要な準備をいたしたいと思っております。

 また、現地で散布された場合の処置といたしまして、早期に診断を実施し、抗生物質による治療及び除染活動を行うことによって感染の拡大防止に努めるということが必要でございまして、この初期症状の対応等についても十分に教育を徹底させたいというふうに思っております。

田端委員 今回の事件は、我々が挑戦すべき相手はウサマ・ビンラディン率いるテロ集団だと思うわけでありますが、この国際テロというのは、いつ、どこに、どういう形で来るかというのは非常に予測しがたいという意味では、非常に不安な面もあります。

 そういう中で、日本がこれから国際社会の中でどういうことをしていくかという点についてはさまざまなことが考えられますが、外務大臣にお尋ねしたいと思います。

 そういう意味で、例えばテロ撲滅のための世界会議を、平和憲法を持つ日本として日本で開催するとか、あるいは、薬物根絶国際会議というものを積極的に日本がリーダーシップを発揮するとか、あるいは、国際刑事裁判所の設置に対してもこの日本がそういう主導権をとっていくとか、こういったいろいろなことがあるのではないかと思うわけでありますが、これからの新しい日本の国際貢献の一つの大きな枠組みとしてこういうことも積極的に考えていってはどうか、こう思います。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 テロ対策として、国際社会が一致団結していろいろ取り組むということは基本でございまして、今委員御指摘になりました、例えば薬物根絶のための、資金源を、あるいはあらゆるテロの資金になるものを根絶するような方策を、会議をするとか、それを東京でやるかどうかは別ですけれども、そういうことについても、今までももちろん、先ほど言いましたUNDCPというところを通じて努力をしたりいろいろいたしておりますけれども。

 さらに加えて、司法裁判所のこともおっしゃいました。国際刑事裁判所の設立、これもなかなか、いろいろ問題がありますけれども、しかし、やはりこれも、まず国内の裁判所における処罰をはっきりしなければいけないとか、ルールがありますので、そうしたものの整備を急ぎたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、やはりトータルで日本もできること、それから、トータルでほかの国と協力しながらできることがありますので、可及的速やかに、あらゆる面でもう一回もとからできることを決めて、そして早くに、総合的に取り組みたいというふうに考えております。

田端委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

加藤委員長 これにて田端君の質疑は終了いたします。

 続いて、井上喜一君。

井上(喜)委員 きょうは、テロ防止対策特別措置法等の締めくくり総括ということになりました。私は、締めくくり総括といいますのは、これまでの議論を総括して論点を整理するとか、あるいは確認をするとか、そういうことを議論する場だと思います。そういうことで、私は総理と防衛庁長官にお伺いをしたいと思うのです。

 特に問題になりましたのは、テロ防止対策特別措置法なんですね。この法律は、九月十一日にアメリカで起きましたテロ、この原因、いかに除去していくのか、撲滅していくのか、これに対する日本政府の対応、とりわけ自衛隊が何をすべきか、そういうことを中身にした法律だったと思います。そういうことで、議論そのものは大変個別具体的で、論点も非常によく整理をされていたと私は思います。

 その中で、私は、どっちかといいますと、議論自身も法律の運用面の議論が多かったと思うんですね。法律を改正してどうのこうのというような議論は意外と少なくて、まさにそれに関連する議論としては二つあったと思うのです。一つは、国会をいかに関与させていくのかということと、それから武器弾薬の輸送、この二つだったというふうに思います。

 国会の関与につきましては、私も提案者の一人にさせていただいておりますけれども、事後ではありますが、国会に拒否権を与えたということですね。これは事前承認と実質的に同じでありまして、非常に大きな修正だというふうに私は思います。それから、武器弾薬の陸上での輸送も、これまた質的な大きな改正だと思うんですよね。

 それで、参考人招致のときも、野党推薦の先生が、事後承認でいいじゃないか、そういうこともあるから考えてみてはどうかというような意見もありまして、非常に示唆に富んだ意見だと思いましたけれども、そういうようなことをそれぞれ勘案しながら修正案を出させていただいたのであります。

 私は、政府の立場としましては、政府原案どおりに可決されるということが一番望ましいことであると思うのでありますが、考えようによっては、この修正は、ある意味で政府原案をもう少しよくした中身の改正じゃないかなと私は思うんですね。これについて総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 物事はいろいろな考え方の方がおりますから、私どもとしては、政府案に対して各党どういう考え方があるか、また各議員がどういう考えを持っているかということを、この審議を通じていろいろ伺ってまいりました。

 私としては、できるだけ多くの方々の理解を得られるような形で自衛隊の派遣も行いたいなと考えていたところでありますので、政府案は政府案として多くの皆さんが、武器の輸送にしてもあるいは国会の関与にしても、今与党が提案されている形を受け入れた方が多くの国民の理解を得られるのではないか、また、反対されている政党も、議員もより協力をしてくれるのではないかというような御意見もありまして、多くの方の理解が得られるならということで合意したわけでありまして、これが成立した暁にも、国会の審議の状況を踏まえながら誤りない対応をしていきたいと思っております。

井上(喜)委員 どうもありがとうございました。

 次に、防衛庁長官にお伺いをいたします。

 私は、今回のこのテロ防止対策の特別措置法といい、自衛隊法の改正案といい、自衛隊に対する任務が大きくなり、期待も非常に大きくなってきていると思うんですよね。したがいまして、自衛隊の役割ますます大なるものがあるということだと思うのでありますが、そういう大きな任務、大きな役割にこたえられるような自衛隊になっているのかどうかということですね。

 発足当初あるいは今までの自衛隊と、我々が考えているこれからの自衛隊というのは非常に落差があると思うんですよね。果たして自衛隊の現状はどうなっているのか、まずこの点について長官のお考えをお伺いいたしたいと思います。

中谷国務大臣 これまでの自衛隊の経緯につきましては、それぞれの国民の皆様方の御理解と御期待によって、一歩一歩国民のために有意な組織になってきたところでございます。

 最近の自衛隊の基本となるというのが、平成七年につくられました防衛計画の大綱でございますが、この中に防衛力の役割が明示されておりまして、防衛力の役割として、自衛隊の主たる任務である我が国の防衛に加え、大規模災害等各種事態への対応と、より安定した安全保障環境の構築への貢献というところから中期防整備計画ができております。最近は、日本の国のみならず国際社会の平和と安定の維持増進にいかに我が国は貢献できるかという観点で、人的貢献も含めて、自衛隊としてもこれらの大綱に基づいて現在活動をしている状況でございます。

井上(喜)委員 そこで、私は、やはり自衛隊員個々の責任の自覚といいますか、あるいは、隊全体としましては士気をいかに高めていくかというようなことがますます必要になってきていると思うんですね。私どもは、そういうようなこともありまして、今の防衛庁を防衛省なり国防省なりに格上げをしたらどうかというようなことを考えているんですが、そういう自衛隊員の責任の自覚あるいは士気の高揚ということで、長官自身としてはどんなことをお考えですか。

中谷国務大臣 これは、総理もおっしゃっておられますけれども、やはり国を守る自衛官が命をかけて行動している際に、やはり国民の皆さんから御理解をいただき、そして誇りと名誉を持って活動できる、そういう環境をつくるというのが一番重要なわけでありますし、また、自衛隊自身も、そういった国民の皆様方の期待を裏切らないように、シビリアンコントロールに徹して、与えられた法律の枠内で与えられた任務を的確に務めていくということが必要ではないかというふうに思っております。

 その一つとして、やはり国会においていかに自衛隊、防衛庁を位置づけるかということは、これはまさにシビリアンコントロールの世界でありますけれども、この国会において、さきの百五十一通常国会におきまして防衛省設置法案が提出されまして継続審議となっておりますけれども、この点におきましても、やはり安全保障、危機管理に取り組む国の位置づけ、体制をいかなる地位に示すのかということによりまして、隊員の自覚並びに旺盛な士気の高揚の面で非常に大きな効果があるのではないかというふうに思っております。

 また、法律的な面からいいましても、防衛庁長官名で閣議を求めることができずに、予算の要求や執行を財務大臣に求めることができない状況であっておりまして、こういう状況を改善するためにも、一日も早く防衛省の設置法案が成立するということをお願いいたしたいというふうに思っております。

井上(喜)委員 ありがとうございました。

 終わります。

加藤委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょうは、主として総理にお尋ねをしたいと思います。

 まず、総理、昨日の我が党の鳩山代表との一時間以上にわたる会見、私も同席をさせていただいて拝見をさせていただきましたが、大変御苦労さまでございました。ただ、その会見を拝聴しておりましていろいろ疑問に思ったこともございますので、私の方で幾つかお聞きをさせていただきたいと思います。

 まず、総理が民主党の提案する修正案に対してこれに賛成をされなかった理由を明確に述べていただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 我々としても、できるだけ多くの方々の理解を得られ、協力していただけるような法案を作成したいと思っておりました。できれば野党第一党の民主党にも賛成していただければなと、この法案を作成する前から考えておりました。そういう中で話し合いが進んでいきまして、それぞれがそれぞれの立場で主張し合い、譲るべきは譲り、入れるべきは入れるという形で、かなり煮詰まったと思っておりました。

 ところが、それぞれ最後残った二点について考え方を述べ合ってきたわけでございますが、私としては、かなり民主党の御意見も取り入れて修正に応じてきたわけでありますので、これで御理解が得られるのではないかと思っておりました。立場を変えれば、もっと要求をのめという立場もわかります。もっともっとというのと、まあこの辺でというところで、折り合いがつかなかった。

 しかし、それぞれ、国民のできるだけの理解が得られるようにという努力は評価されてしかるべきではないかと思っております。

岡田委員 今、かなり歩み寄りがあったということでありますが、私どもの主張の中で国会の事前承認ということは、これは一番重要な主張であるということは、私もいろいろな場で申し上げてまいりましたし、我が党の鳩山代表もいろいろな場で、例えばマスコミに対してもそういう主張をしておりました。

 したがいまして、この点がどうなるかということが、まさしく与野党協議、意見が一致できるかどうか、我々が法案に賛成できるかどうかの最大のポイントであったわけですけれども、そのことは当然総理は御存じだったと思います。御存じの上で、できたら民主党の賛成も得てということも言われていたと思いますが、じゃ、なぜそういうことをおっしゃりながら最後にやはり反対をされたのか、非常に私はよくわからないという感じがいたします。何か別の理由があるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私も、なぜ民主党が反対されたのかわからないんです。基本的に新法に賛成だ、自衛隊を派遣するということに対しても反対しない、テロと対決するのもこれは当然だ、国際協調も当然だという考え方のもとに立って議論をしてきたわけでございますので。しかも、時限立法。

 これは、事前承認、事後承認、いろいろありましたけれども、国会を関与させるということで我々も意見を取り入れて修正に応じたわけでありますので、私は十分民主党の考え方も取り入れることができたのではないかということでございます。

岡田委員 私の質問にお答えいただいていないと思うんですけれども、我々は、明確に事前承認が必要であるということを申し上げてまいりました。そして、そのことを御存じの上で、総理は、民主党の協力も得てということも言われました、賛同も得てということも言われました。にもかかわらず、最終的にこれを受け入れられなかった理由はどこにあるんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 突き詰めて言えば、政府を信頼するか信頼しないかということだと思いますね。時限立法、選挙で選ばれている、二年、この事件に限り、この法案を認めるということが私は既にもう事前承認、国会承認、しかも時限立法ですから、それは突き詰めていけば、政府を信頼できるか信頼できないかということだと思います。

岡田委員 今の御発言には私は全く異論があるわけですけれども、政府が信用できるというのなら、議会は要らないわけですね。それは、やはり基本的に、政府が間違いをすることがあるかもしれないという前提に立って議会があるというのが民主主義の基本だと私は思いますので、政府が信頼できないかというのは当たり前であります。私は、それが民主主義の基本的な考え方だ。ここは基本的考え方が違いますから、これ以上議論しても仕方がないと思います。

 それじゃ、中身に入る前に、もう一つ二つお聞きしたいと思いますが、昨日の鳩山党首との会談の際に、総理はほとんど御発言になりませんでした。もし総理の思いがあるのであれば、もっと明確に述べることもできたはずでありますが、それはなぜなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私が発言すべきことをすべて、山崎幹事長を初め、政府・与党側の方が発言したからでございます。

岡田委員 その中で総理は、民主党の賛成もなるべく得られるようにということで与党三党でつくった案なので、これを賛成してほしいというふうにおっしゃって頭を下げられたわけであります。しかし、そうであれば、我々が与党三党のつくった案を丸のみするということであれば、ああいったトップ会談も必要なかったと思うのですね。何のためにあの会談をやられたんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 我々としては、民主党の主張を大幅に取り入れて、これで十分御理解、御協力が得られるのではないかという見通しを持って党首会談に臨んだわけであります。

岡田委員 民主党の意見を大幅に取り入れてとおっしゃるが、では、具体的にどこを取り入れたんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、理事同士で協議を継続して努力された経緯も伺っております。それで、何項目かの点では合意が見られ、最後に残った武器の輸送とこの国会関与も、一方では武器の輸送を民主党の主張も取り入れ、国会関与の面においては事後承認ということで認めて、一〇〇%ではありませんが、それはかなり大幅に我々としては受け入れることができた、これで民主党も最終的には協力いただけるのではないか、そういう見通しを持って臨んだわけでございます。

岡田委員 我々は、六点ないし七点の論点についていろいろ議論をいたしました。しかし、それは、法案の修正にわたるものは、実は二点であります。ですから、大幅に民主党の意見を取り入れたというのを私なりに理解をすると、武器弾薬の輸送のところ、相手国の陸上をやめたというその一点に尽きるわけでありますが、その一点が大幅に譲歩をしたということの中身だ、こういうことでございますか。

小泉内閣総理大臣 かなり御意見を取り入れたと思っております。

岡田委員 何となく、これ以上議論する気がなくなるわけですが、我々は、武器弾薬の輸送は認めないという主張をしていたわけですね。ですから、大いに歩み寄ったのは我々の方であってほとんど与党の方は、歩み寄り、まあ最終的にあの項目だけとれば私はいいところかなという感じはしますけれども、しかし、それは全体の中で考えたときの話であって、ほかには具体的に大幅に譲歩したということはないわけでありますから、そこは、多分、総理の御認識は、私は違うというふうに思っております。

 それじゃ、こういう議論があるんですね。国会の事前承認にするとそのために時間がかかる、今国会の日程は大変立て込んでいるので、私はそんなに立て込んでいないと思いますが、立て込むような理由がこれから出てくるのかもしれませんけれども、ですから、国会の事前の承認については認められない、こういう主張がございます。

 私は、きのうの会談の中でもそういう話は出ていたと思いますが、この意見についてどう思われますか。

小泉内閣総理大臣 我々としては、もとから事前承認も事後承認も必要ないと思って提案しておりました。そういうことから考えて、国会関与させた方がいいということで、事後承認を認めるということで理解が得られると思っておりました。

岡田委員 質問にお答えいただいていないんですけれども、もう一度言いますが、国会全体の日程が立て込むことが予想されている中で、もし国会の事前承認ということにすると、その日程はさらに立て込む、そういう理由で事前承認は避けた、こういう説明が今まで私に対してなされたこともありますし、昨日の議論の場でも、総理ではありませんが、そういう意見があったように私は記憶しております。

 今、総理は、山崎幹事長初めその他の与党側の皆さんの意見が自分の意見と同じだったので自分は発言しなかったのだとおっしゃいましたが、ということは、そういう今の私が申し上げた発言についても総理は同意をしたということでございますか。

小泉内閣総理大臣 言葉の端々はわかりませんが、私としては、この新法によって事前承認も事後承認も必要ないと思っておりましたので、迅速に対応するためには政府案でいいのではないかと思っておりましたので、事前承認は必要ないと思っておりました。

岡田委員 もう一つ、こういう議論もありますね。今の与党三党の体制を維持するために、つまり、伝えられるところによると、自民党よりむしろ他の二党が事前承認に反対をした、理由はいろいろあるんだろうと思いますけれども、そのために、与党三党体制を維持していくためにこの民主党の修正については受けられなかった、こういう話もありますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いろいろな話が飛び交っておりますが、私としては政府原案でいいと思っておりましたから。しかしながら、いろいろな方々の意見を聞いて、修正した方がいいと。多くの方の理解を得るならそういう考え方もあるのかなということで、与党の修正案、これも一つの考え方だろう、あとは民主党がどういう協力をしてくれるかと思っておりましたので、その与党の考え方でいいのではないかと思いました。

 今飛び交っているようなうわさはどこから出ているのか知りませんが、それとは直接関係ございません。

岡田委員 与党の中でいろいろな議論があるので、できるだけ多くの人の理解を得るために自分としてはそれを受け入れた、こういうことでよろしいですか。

小泉内閣総理大臣 何回も繰り返しますが、私は政府原案でいいと思っておりました。しかし、より理解できる方策として、与党が考えた修正案も、まあそれは一つの考え方だろうなということで受け入れました。

岡田委員 私は総理の、総理に就任されたときの本会議における所信表明演説を思い出すわけでありますが、あのときに総理は、いろいろ派閥とか党とかあるけれども、そんなことは関係ないんだ、自分のリーダーシップで自分の思うところをやっていくんだということを言われて、そして国民がそのことを信じたからこれだけ高い支持を総理に与えていると思うんですね。

 今のお言葉は、そうすると、これから小泉改革もいよいよ本番を迎える、そしてもう既に与党の中でいろいろな議論が出ている、そういう問題についても、いろいろ議論をお聞きして、与党がおっしゃるから、自分の考えとは違うけれどもそれを受け入れていく、こういうことにつながるんじゃないですか。

 私は総理、一面、総理に対して期待を持つ一人であります。立場は違いますけれども、小泉総理ならこの日本の改革というものを、すべて同じではありませんけれども、しかしこの日本を変えるために御努力いただける方だ、そういうふうに思うときもあります。しかし、今の姿を見ておりますと、結局今までと同じ、ただの総理大臣になってしまったんじゃないか。与党の言うことを聞いて、そしてみずからの信念を捨てて、そして、改革という看板はかかったけれども現実には何も進まないということになるんじゃないか。そういう懸念を持ちながら、実はきのう、我が党の鳩山代表との会談を見ておりました。

 私の受けた印象が杞憂であればいいと思いますけれども、今回のことは特別で、これからみずからの信念を持っておやりになる、そういうことなんでしょうか。いかがでしょう。

小泉内閣総理大臣 いろいろな考え方はあると思います。政治家であるならば、一つのA案に賛成だけれどもB案に反対だ、午前中はお互い反対しても午後では賛成できる案件がたくさんあると思います。

 総理として、できるだけ多くの方の意見も聞き、国民のために一番いいということを念頭に置いて判断しているんであって、私としては政府原案でいいと思っておりましたけれども、独断専行を排することも必要だなと。それぞれの意見を伺いまして、これが現下の情勢で一番妥当な案であろうと思ってやったわけでありまして、物事の案件によりましてはケース・バイ・ケースで考えるしかないと思います。

岡田委員 少し具体的中身について、一、二お聞きしたいと思います。

 今までの御説明の中で、なぜ事前に国会承認が要らないかということに関して、この法案自身が九月十一日にアメリカ合衆国において発生をしたテロ事件に関するものであるので、もう既にこの法案を通すこと自身が国会承認の意味を持っているんだ、こういう御説明が何度もありました。

 そのことに関して我々が申し上げていることは、そうはいっても、じゃ基本計画の中身が今決まっているかというと、ほとんど何も決まっていないじゃないかと。どこへ行くのか、どういう期間行くのか、何が行くのか、どういう装備で行くのか、何を聞いても具体的なお答えはない。そういう状況の中で……(発言する者あり)それはできないんです、今できないんですね。そういう中で、この法案について、具体的な法案であるから、法案を通すこと自身が基本計画を認めることと同じことだから必要ないんだという理屈は通らないと私は思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 そのような漠としたものを考えているわけじゃないんですね。この法案の趣旨、目的、これはもうはっきりしているわけでございますし、そんな長期間にわたっていろいろやろうということでもないということもあります。極めて限定された目的を持った、また同時に活動範囲もかなり限定されているんじゃないか、こんなふうに思いますので、私、それよりも、この法案が成立しましたら機動的に対応できるような態勢を持っている方がいいのではないかな、こう思っておるところです。

岡田委員 私は今の説明に納得できませんが、この法案の趣旨、目的ははっきりしている、具体的にどういうことですか。

福田国務大臣 これはもうこの法案の冒頭に書いてございますように、九月十一日に発生しましたテロによってもたらされます脅威の除去ですね、これが目的でございます。

岡田委員 私、前回申し上げましたように、この法案は大きく二つの中身を持っているんですね。そのうちの一つは、九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロの攻撃によってもたらされている脅威の除去に努める。これはかなり具体化されている、これ自身はですね。ということで百歩譲っていったとしても、もう一つの人道支援の方は、これは、このアメリカのテロじゃなくてテロ一般に対する協力の話なんですね。だから、全然特定されていないじゃないですか。

 では、もし今福田さんのおっしゃったことを論理的に追求していくんであれば、この人道的精神に基づいて実施する措置の方は少なくとも事前承認が要るということになりませんか。

福田国務大臣 この人道支援も、やはり九月十一日のテロによってもたらされた、その結果生じた被災民に対する人道支援、こういうように考えてよろしいんじゃないかと思います。

岡田委員 本当にそれでよろしいんですか。私の理解では、ここの人道支援というのは、もっと広く、テロ一般によってもたらされた被災民その他に対する措置であって、今回のこのテロ事件によって直接発生したものに限らないというふうに私は考えておりますが、今の福田長官の答弁だと法律の読み方を間違っていると思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 これは被災民ということでありますけれども、この法案に定めます被災民とは、先般のテロ攻撃に関連して発生する紛争によって被害を受けまたは受けるおそれがある住民その他の者を指している、こういうことなんでありますけれども、実際問題として、もともと難民がいるわけですね、そういう人もこの中に入っている可能性があるわけで、これを区別することはできない、こういうことであります。

岡田委員 非常にわかりにくい御説明なんですけれども、私は、いずれにしても、先ほど総理にお聞きしたことにも関係しますけれども、全体の国会日程が立て込んでいるから事前承認は時間がないとか、そういう理由で事前承認をやめるというのはとんでもないことだと思うんですね。

 我々、事前承認を求めているのは、まず、より慎重な手続をすべきだということであります。そして同時に、国会全体が自衛隊を海外に派遣するということについてきちんとオーソライズをするというところに意味がある、こう考えているからであります。

 これは、行かれる自衛隊の方も、場合によっては事故に巻き込まれたり、あるいは不幸なことに命をなくされる方もいらっしゃるかもしれない。もし国会の日程が詰まるからというそういう理由で事前承認をやめたとしたら、そういう人に対してどういう責任をおとりになりますか。

福田国務大臣 再三申される国会の日程というのは、一つの例えとしてどなたかがそういう話をされたかもしれません。きのう、ちょっとそのようなことを私も耳にしております。それは政府側の答弁にあったのか、もしくは質問者の委員の方からの発言にあったのか、ちょっと私、記憶にございませんが、私、それは副次的なことであって、現実的な問題はあるかもしれぬけれども副次的なことでありまして、要は、やはり私今申しましたように、機動的な対応をとれるように、特に多様性とか複雑性、流動性、こういうような性格のものであるということから考えて、極力機動的に対応できるようにしていただきたいというふうに申し上げているわけでございます。

岡田委員 納得できないということだけ申し上げておきまして、次に参りたいと思います。

 犯人の特定の問題であります。

 ここは私、前回質問のときに総理にお聞きしたところですのでもう一度重ねてお聞きをしたいと思っておりますが、総理の方からこの委員会の場において、なぜウサマ・ビンラーディンとアルカイーダがこの事件に関与しているかということについての資料の説明がありました。総理はこれで十分だとおっしゃるんですが、私はそうではないと思います。

 これは一般的な公表された資料を中心にしたものでありまして、それに加えて、ここにも少し述べられてはおりますけれども、総理が米国政府から直接お聞きになった、つまり一般には公表できない根拠、証拠をもとにして、確かにアルカイーダやビンラーディンが犯人である、こういうことを総理自身が判断されたということを、国民がそれを信じて、この法律について認めているんだ、こういうことだと思うんですね。

 したがいまして、前回の繰り返しになりますが、私は、総理の責任は非常に重いというふうに思うわけです。そのことについて、やはりこういう国会の場で、総理御自身の自覚といいますか、非常に重い責任を負っているんだということについて、もっと説得力を持って明快に言われるべきじゃないか。少なくとも私が総理のお立場ならそういうふうにするだろう、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 先日説明したことで、私は十分説得力のあるものと判断しております。

岡田委員 総理はみずからの責任について、非常にお述べになることを避けておられるように私は印象を受けるわけですね。そういう姿を見ておりますと、本当に総理は、アメリカ政府、合衆国政府から一般に公開できないような資料を見せられて、そしてそれに納得をされたのかどうか、そのことについて私はやや疑問を持たざるを得ないわけでありますが、きちんと、一般に公表できない資料を見、そして自分なりに確信を持ったということは、少なくともおっしゃっていただくべきじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 総理大臣として常に重い責任を担っております。常に自信を持って説明しているわけでありますので、これも自信を持って説得力のあるものだとお示ししているわけであります。

岡田委員 ちょっと趣旨が違うんですね。

 今おっしゃったのは、委員会の場で示された資料について自信を持って説明しているということなんですが、私がお聞きしたのはそういうことではなくて、一般に、総理が犯人を特定するに当たって、同盟国として合衆国政府から一般の我々には目にできないだけの根拠、証拠を示されて、それを御自身御確認されて、そしてその上でおっしゃっているんだ、こういうふうに思うわけですが、そういうことは当然あるんでしょうねということを申し上げているわけです。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 当然のことを聞かれているのであって、常にアメリカと情報交換をし、関係各国と意見交換をして、そして総合的に判断して国会に報告をしたわけであります。責任があるし、自信があるから説明、報告をしたわけであります。

岡田委員 ちょっとよくわからないのです。報告というのはこのことをおっしゃっているんですね。それ以外にあるんじゃないかというふうに聞いているわけです。

小泉内閣総理大臣 出せるものと出せないものがありますし、責任があり自信があるからこそ、国会に報告したわけであります。それが信用できないと言われるなら、それはどの点を出せば信用ができるかという点で、これこれこの報告で信用していただきたい、十分説得力があるということで報告したわけでございます。

岡田委員 どうも私の言っていることがうまく伝わっていないのかもしれませんが、私は総理を疑っているわけじゃないですよ。総理が信用できないと言っているわけじゃないんです。

 それから、私が申し上げているのは、アメリカ合衆国から示された資料を私に見せろとか、この場で公開しろと言っているわけでももちろんありません。そうじゃなくて、我々が一般に目にすることができない資料があって、そしてそれを総理はごらんになって、確かに犯人はここに書かれたビンラーディンとアルカイーダだということを確信を持たれましたね、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 何回も繰り返し答弁しております。自信を持って、責任を持って報告しているということを何回も繰り返し説明しております。総合的判断に基づいた上で説明を申し上げました。

岡田委員 総理は一度もお答えいただきません。資料をみずからごらんになって、そしてみずから確信をされましたねということを私は聞いているわけで、そのことに対してどうしてお答えいただけないんですか。

小泉内閣総理大臣 当然のことですと言っているでしょう、答えで。当然のことだと、それは。資料も見て、じかに話を聞いて、証拠も見て、総合的判断の上に説明申し上げていると何回も言っております。

岡田委員 いやいや、私が聞いているのは、我々が見れない資料をごらんになりましたね、イエス、ノーでお答えくださいと言ってもお答えにならないから言っているわけですよ。

小泉内閣総理大臣 何回も言っているでしょう。じかに意見交換をし、証拠を見て、自信を持って、責任を持って説明している。何回言わせるんですか。

岡田委員 私は今初めてお答えいただいたと思いますよ。後で議事録を見たらわかりますが、初めてですよ。

 それで、外務大臣。私は外務大臣にも要求出していましたから。外務大臣どうされました。

 ちょっと速記とめてください。

加藤委員長 はい、ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

加藤委員長 それじゃ、速記を起こしてください。

 岡田君。

岡田委員 今の総理と私のやりとりを聞いておられなかったのがちょっと残念だと思いますが、大臣は、このビンラーディンとアルカイーダが犯人であると確信を持つに当たって、一般には公表されていない資料を、合衆国政府から直接説明を受けられましたか。

田中国務大臣 証拠のことでございますけれども、いわゆる説得力のある、理解できる証拠というものにつきましては、細かい中身については差しさわりがありますから申し上げられませんけれども、今まで、総理が前回おっしゃった範囲のことは私も聞いておりますし、それから、前回と申しましたのは、何日でしたか、総理が読み上げなさった日にちがございますね。それからあと、その後十月に、テロが起こった後に、あれはだれでしたか、飛行機によるアタックというふうなことについて声明を出しているところがあります、ビンラーデン本人ではもちろんございませんけれども。そうしたことをすべて統計的に見ましても、それは説得力のトータルとしてあるものであるというふうに思っております。

岡田委員 また同じことを繰り返さなきゃいけないのは、私、非常に不本意です。出席要求していたわけですから、なぜおられなかったのか、私はわかりませんが。(田中国務大臣「質問要求はなかったです」と呼ぶ)私はきょうは質問項目は一つも出しておりません、きのうのきょうですから。出席要求はしておりましたから。

 私が申し上げたのは、この公表資料じゃなくて、それ以外で、一般に国民の目に触れることができない、我々が知ることのできない資料があって、それで大臣も犯人の特定をされたはずだけれども、そういうことについて、きちんと御自身確認をし、納得されましたねということを確認しているだけです。

田中国務大臣 総理が今まで御説明なさったとおりでございますけれども、例えば十月一日の在米大使館員からの電報がございます。

岡田委員 在米大使館員からの一本の電報で納得されたというのは私はやや驚きですが、いずれにしましても、ここ、本当に大事なところだし、私は、政治家として国民に対して、公表資料だけで犯人を特定することを、それは、私、相当疑問を持っている人もいると思うんですね。これだけのことをやるんですから、武力攻撃しているわけですから、アメリカは。

 そのことについて、自分を信用してほしいと。自分ははっきり、米国政府その他から示された、皆さんには見せられないけれども、その資料をもって自分は確信を持った。もしそれが間違いだったら責任とる。そういうことをおっしゃるのが、私、政治家だと思うんですね。それが総理からも外務大臣からも明快には述べられない、何回か言った上で最終的に総理が少し言われたということでありますので、私は大変残念なことだというふうに申し上げておきたいと思います。

 それでは次に、パキスタンの件、もう一度確認しておきたいと思いますが、これは前回も議論いたしましたが、副大臣の方はパキスタンに行かれて、かなりいろいろな意味で、具体的表現はもう言いませんが、心配もされていると。それに対して田中大臣は、いや、パキスタン情勢は今平穏であります、こういうことであります。

 しかし、テレビその他を通じて得られる情報は、パキスタン情勢はかなり緊迫の度を加えつつあるということだと私は思います。今の時点で自衛隊をこの新しい法律に基づいてパキスタンに出す、そういうことは可能だとお考えですか。出すべきだとお考えですか。そういう状況にパキスタンはあるというふうにお考えですか、外務大臣。

田中国務大臣 事態は非常に流動的で、副大臣が行かれたころから、また随分状況が変わってきています。それはメディア等も通じて委員も御存じでいらっしゃると思いますけれども。

 いずれにいたしましても、この法律をよく御審議いただいて、そして成案を得てから、またそれにつきましても見解を述べさせていただかなければならないと思います。なぜかというと、また状態も流動的になると思います。

岡田委員 私は、与党の中からも今のパキスタンじゃとても出せないという声はよく聞きますし、それが一般的な常識だと思うんですね。現状ならどうですかということをお聞きしているわけです。

中谷国務大臣 この法律に書かれておりますけれども、実際に派遣する場合も関係該当政府の同意が必要でありまして、その同意を得るには、当然、その政府と綿密な協議をしなければなりません。

 ですから、派遣するかしないかという判断はその協議を経た後でありまして、ましてや現時点においてまだ法律もできておりませんので、現時点の判断は控えたいというふうに思っております。

岡田委員 私は政府委員の答弁を求めているんじゃないんです、悪いですけれども。

 私が聞いているのは、それは同意を求める手続はわかりますよ。そういうのは法律に書いてある。しかし、同意を求めるのであれば、まず日本としてパキスタンに自衛隊を派遣すべきだという政治的な判断があった上で、同意の手続に入るわけでしょう。だから、そこをどうかと聞いているんですよ。外務大臣はパキスタンの状況をどう思っておられるんですか。

田中国務大臣 一日一回から二回、沼田大使と連絡を緊密にとっておりますけれども、引き続き注意深く情勢を分析しなければならないという報告を受けております。

岡田委員 まともなお答えがないわけですけれども、総理、いかがでしょうか。

 私はやはり、もちろん将来、ずっとこの二年間、縛るつもりはありません。そのことをまず申し上げておきます。その時々の判断というのは、それはそれで一般論としてはわかります。

 しかし、今のパキスタンの現状を見たら、こういうところにはやはり出せない、そういうふうにおっしゃるべきじゃないですか。でないと、我々、どのぐらいの基準でこれから判断されるのか、これは法案の審議に当たって、そのぐらいの感覚はわかっていないと審議もできないわけですよね。今のパキスタンの状況ならこれはとても出せない状況であるということを、まず明確に述べられるべきじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 まだ法案も成立しておりませんし、政府として、また総理として、特定の国を今挙げられて、次々、ここは行くべきか、ここは行くべきでないかという問いに答えるべきではないと思っております。

岡田委員 先ほど、この法案は具体的な法案であるということをおっしゃいました。

 そして、今、では実際にどこかの国に派遣をする、そういう対象は、英領であるディエゴガルシアという非常に限られた地区を除けば、やはりパキスタンなんですね、一番可能性があると言われているのは。もちろん、将来、中央アジアとかいろいろなところに可能性が出てくるかもしれませんが、具体的に今国の名前として挙がっているのはパキスタン、そのパキスタンについて総理の現状認識を問うているわけですが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今もお話ししましたとおり、特定の国を挙げて、今の時点で、ここは行く、ここは行かないという御質問に対しては、お答えを差し控えたいと思っております。

岡田委員 私が非常に懸念するのは、今の映像を見ておりますと、パキスタンであちこちで非常に強い反米行動というのが起こっている、そういう中で、そういうところにもし自衛隊が出ていった場合に、どういうことが起こるんだろうかということなんですね。

 やはり、我々、出す以上は、きちんと仕事がしてもらえる状況の中で出すべきだ。多少の危険は、総理もおっしゃるようにあるかもしれません。しかし、それは、もともと予想されるようなそういう危険の中にしゃにむに出していくということじゃなくて、結果的にそういうことになることはあるかもしれませんけれども、今の映像を見る限り、これはとても出せないというのが普通の見方じゃないでしょうか。いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 その時々の情勢を判断して、どこに出すべきか、またどこに出すべきでないか、判断したいと思います。

岡田委員 何か議論をしていることが非常にむなしくなってまいりますので、もう少し、今国民がこの国会を注目しているわけでありますから、もう少し気持ちを込めてお話しいただきたい。何かどこかの紙を読んでいるだけみたいな、そういうことでは大変残念だということを申し上げなきゃいけないというふうに思っております。

 それでは、あと幾つか追加的に聞いていきたいと思います。ちょっと離れますが、集団的自衛権の問題が随分議論されております。少し議論の整理を最後にしておきたいと思うんです。

 今回のこの法案に関して、いやいや、集団的自衛権を認めればそういう必要はないんだ、こういう議論がなされているわけですね。私は、集団的自衛権を認めればそういう議論はなくなるということが、実は必ずしもよくわからないわけであります。

 つまり、NATOの場合には、条約の第五条において、NATO加盟国に対して一方に対する攻撃を自分への攻撃とみなして集団的自衛権を行使できる、そういう規定が明文で置かれていますね。日米間で日米安保条約があります。日米安保条約の中には、集団的自衛権を認めるという規定はありますが、具体的に、じゃアメリカに対する攻撃を日本に対する攻撃とみなして日本がそれに対して反撃できる、こういう規定はないわけですけれども、そういう状況下においても、集団的自衛権の行使が今回のような場面でできるというふうにお考えでしょうか。

福田国務大臣 この法律による自衛隊の活動というのは、これはあくまでも武力行使をしないということなんですね。戦闘地域にも行かない、こういうことでございまして、そういう意味で、戦闘行為をしない、武力を使わないという意味において、この集団的自衛権という範疇に入らない活動なんですね。そこのところが根本的な問題としてあるわけでございますので、その上で、我々がどういうことができるか、これは集団的自衛権でもない、それから個別自衛権でもない、要するに、そういう米国の個別自衛権、そしてまたそれに賛同したNATOの集団的自衛権、そういう先進諸国の、またそれ以外の国々の社会的な、国際的な活動の枠組みの中で我が国もでき得る限りの協力をしよう、そういう発想で出てきた法案であるということであります。

岡田委員 そのことは当然前提にしながら、ここに書かれた行為は、もちろん武力行使ではありません。そのことは前提にした上で、仮に武力行使にわたるようなことを日本がするという前提に立って、それは日米安保条約に基づいて集団的自衛権の行使ということで可能なんでしょうか、今回のこのテロ事件に関して。そのことを申し上げているわけです。

津野政府特別補佐人 お答えいたします。

 日米安保条約の第五条に「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が」と書いてございますので、日本国の施政下に、施政のもとにある領域、そこにおける攻撃ということでございますから、その関係では、日本が集団的自衛権とかそういうのを行使することには全くなっておりません。ただ、アメリカの方は、日本を助けて、いわゆる日本に対する侵略に対しまして集団的自衛権を行使して日本の防衛に当たってくれるという関係になっているわけでございます。

岡田委員 私が申し上げたのはまさしくそういうことで、集団的自衛権の行使というのを憲法解釈の変更をして認めれば、即こういう場合に対応できるという誤った議論が横行しているように私は思うのですね。そのためには条約が必要です。つまり、日米安保条約を変えて、もっと広いものにしなければいけないというのが一つであります。

 そして、もう一つ申し上げたいことは、今まで集団的自衛権の行使が必要だと言っておられた方の中で、私は、その多くが、例えば日本の周りにいる米軍が攻撃を受けたときに、日本自身は攻撃を受けていない、しかし日本はその攻撃を受けている米軍に対してそれを何もできないのか、それは不都合だから集団的自衛権を認めるべきだという議論であって、アメリカ本国が攻撃を受けたときに、あるいはアメリカが、ヨーロッパにいる米軍が攻撃を受けたときに、それをわざわざ日本が行ってその米軍を助けるというような、非常に幅広い意味での集団的自衛権の行使まで認めるべきだという議論は、私は今まで余りなかったと思うのですね。それは、もちろんそういう条約をつくればできるのですが、今までの議論はそこまでを言っていたのではない、多くの議論は、というふうに思うのです。

 ところが、テレビやその他でいろいろな方の話を聞いておりますと、いやいや、今回の事件でアメリカが攻撃を受けたんだから、集団的自衛権の行使でそのアメリカを助けるべきだという、非常に幅広い意味での集団的自衛権の議論に一足飛びに飛んでしまっているんじゃないか。そういう議論の振れが、私は、もう少し冷静に、慎重に考えて議論していくべきじゃないか、そういうふうに感想を持っているところでございます。

 総理、お聞きいただいて、もし今のことについて何か御感想があればおっしゃっていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 いろいろな方がいろいろな憲法解釈の過程で言われているようでありますが、今回の法案は、武力行使しないんですから、集団的自衛権には当たらないということを、もう再三再四私は答弁しているつもりでございます。

岡田委員 そのことは別にしてということで議論を今していたんですが、もうちょっとそれ以上お聞きをしようという気がなくなりましたので、お聞きしません。

 最後に官房長官、武器使用に関して、今回武器の使用についてやや範囲を一見拡大するかのような規定がある。そのことについて、どういう考え方で憲法の禁ずる武力行使に当たらないものであるかということを確認したいということで、先般来、理事会を通じていろいろ申し上げさせていただいております。

 理事会に、政府の提案ということで紙が提出をされました。私はそのことを評価いたしますが、議事録に残すという意味でも、これは非常に長いものですから全部をお読みいただく必要はないと私は思いますが、今回の法案に関する部分、理事会に提出されたペーパーでいえば四、五の部分がそうなると思いますが、そこについて、議事録で残すという意味で少し御説明をいただけませんでしょうか。

福田国務大臣 これは、法案を読ませていただきます。

 本法案十一条の規定と同じ考え方に基づくものである。すなわち、本法案が規定する協力支援活動、捜索救助活動及び被災民救援活動においては、例えば、傷病兵や被災民の治療、人員……。ごめんなさい、読み方を間違えましたね。

 ちょっと最初から読み上げますから、もう一度読ませていただきます。

 本法案第十一条は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律第二十四条、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律第十一条、自衛隊法第百条の八及び周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律第六条の規定と同じ考え方に基づくものであるということになっております。

 もう少し――いいですか。

岡田委員 私は、ここの四と五をお読みいただければいいのじゃないかと思いますが。少し長いですが。

福田国務大臣 それでは、続けてください、先ほどのものに。

 すなわち、本法案が規定する協力支援活動、捜索救助活動及び被災民救援活動においては、例えば、傷病兵や被災民の治療、人員の輸送、国際機関や他国の軍隊との連絡調整など、活動の実施を命ぜられた自衛官がその職務を行うに伴い、幅広い場面で自衛隊員以外の者と共に活動することが想定されるところ、このような者のうち、自衛隊の宿営地、診療所、車両内といった自衛隊が秩序維持・安全管理を行っている場に所在するもの、あるいは、通訳、連絡員等として自衛官に同行しているものなど、不測の攻撃を受けて自衛官と共通の危険にさらされたときに、その現場において、その生命又は身体の安全確保について自衛官の指示に従うことが期待される者を防護の対象としようとするものであり、このような関係にある者を「自己と共に現場に所在する……その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」と表現しているものである。

  したがって、本法案第十一条に基づく武器の使用は、「自己と共に現場に所在する……その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」の生命又は身体を防護する部分を含めて、その全体が「いわば自己保存のための自然権的権利というべきもの」と言うことができ、憲法第九条で禁止された「武力の行使」には当たらないと考える。

  人の生命・身体は、かけがえのないものであり、その身を守る手段を十分に有さず、自衛官と共に在って、いわば自らの身の安全を自衛官に委ねているに等しいこのような者の生命又は身体を防護するための武器使用が憲法上許されると解することは、人道的見地からみても妥当なものと考える。

以上でございます。

岡田委員 終わります。

加藤委員長 以上で岡田君の質疑は終わりました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。与えられた時間の中で引き続き質問をさせていただきます。

 まず最初に、先ほど岡田委員の方から話がございましたが、今回のこのテロを受けまして私ども民主党も大変な党内議論を重ねてまいりました。そして、昨日あのような結果になったわけでございますが、我々としては、いろいろ御指摘があるような、いわゆる党内のいろいろな意見がある。

 それはそうでありまして、これだけ大きな出来事がありまして、そして日本がテロの撲滅のために何ができるかということを議論して、かつて、日本の領域で自衛隊が個別的自衛権を発動し、そして、それから周辺事態、そして今度は、ある意味では後方支援という名のもとで、極東を超えて自衛隊の艦船が派遣をされる、こういうことが現実に突きつけられたときに、当然、党内ではいろいろな議論をいたしました。だからこそ、我々は大変真剣に、今回の法案に対しても修正案をつくって、そして議論を何度も重ねながら党内のコンセンサスを得てきたわけでございます。

 そういう意味では、昨日の総理の発言の中に、民主党の内部事情ではないかというようなことがコメントの中にございましたけれども、これは我々としては、そのいろいろな内部事情をあえて一任を受けた形で党の幹部が交渉に臨んだわけでございます。そのいきさつについては余り長く話しする時間はありませんけれども、その点につきまして、総理大臣並びに民主党提案者に御質問をするわけでございます。

 この修正協議の最大のネックでありました事前承認、この部分について、民主党が事前承認にこだわったわけ、そしてなぜ事前承認では政府はのめなかったか、その点につきまして、ぜひ民主党それから総理にお尋ねをしたい。まず冒頭、その質問をさせていただきたいと思います。

玄葉委員 なぜ民主党が事前承認にこだわったか、こういう御質問でありますけれども、民主党としては、再々質疑でも明らかにしておりましたとおり、一つは、シビリアンコントロールをより徹底させたいということがあります。さらには、自衛隊の派遣に対しては国会もともに責任を負うべきだ、こういう観点もあるわけでございます。自衛隊を海外に出すときは、国民の代表である国会が承認をしてから出してあげる、こういう観点もあるわけでございます。さらには周辺事態法等との整合性というものもございます。

 先ほど質疑の中でもございましたですが、残念ながら、政府は、この特定の法案、特定の事態における法案ゆえに国会の承認は要らないのだということでありますけれども、まだ法が承認されていませんから、おっしゃるとおり基本計画をつくれないのかもしれません。だから、なかなか具体的な活動の中身については、具体的な対応措置については明らかにされないわけでございます。

 しかし、例えば周辺事態法などでは、まさに具体的な対応措置について、実施の前に国会で議論することができるようになっているわけでございます。さらに付加すれば、PKFの本体業務などにおいても、いわば武器の収集とか停戦監視、こういった話でも国会は事前承認を求めているということからしても、この案件については事前承認であるべきだ、こういうことでございます。

小泉内閣総理大臣 政府としては、事前承認も事後承認もなくて、新法自体が国会で承認をいただければ、時限立法ですので、それで国民の理解と支持が得られるような自衛隊派遣が行われるであろうという、そういうことから事前承認も事後承認も当初は必要ないと言っていたわけでありますが、審議を通じていろいろな方々が、より国民から理解を得られるためには事後承認を受けるのもいいのではないかということで、その意見を受け入れたわけでありまして、事前承認までは必要ないのではないかということで、昨日、民主党と話し合いが行われましたけれども、最終的には、その事前承認をめぐって合意を見ることができなかったという状況でございます。

渡辺(周)委員 今の総理大臣の御答弁、それから先ほど岡田委員への答弁の中に、機動性あるいは柔軟性あるいは緊急性ということにおいて、それを担保するからだということで、そのような意図もあるというようなこともございました。

 その中で、今総理は、より国民の理解を得るということにおいては、我々はやはり国会で国民の代表者たる、特に、当初この法案の成立については、与党のみならず野党、できれば民主党も含めて、民主党も成立にぜひ賛成をしてほしいということがありました。

 それは、正直申し上げて、安全保障という問題であります。あるいは外交という問題については、それぞれの政党の主義主張があったり、あるいはもっと言えば、支持団体が違う中で例えば選ばれてきても、この日本の国ということの安全、それから世界の一員としての今後の日本の活動について、やはりこれは思いを一つにするべきであろうということで、これは我々も同じ思いを共有しているからこそ議論をしてきたわけであります。

 だからこそ、大勢の国民の代表である我々国会が、ここで必ず関与をする、そして行き過ぎた点については必ずや歯どめをかけられる。そしてまた、その先に、もし万が一、そのときの政策決定が万が一当初予期せぬ形になった場合には、我々政治家がひとしく責任を負うべきであろう、そのようなまさに意気込みであったわけでございます。

 そこで、もう一度民主党にお尋ねをするわけでありますけれども、もし事前承認であるとするならば、この基本計画の速やかなる意思決定というものがおくれるのかどうなのかという点については、いろいろ政府側から言われるわけでありますから、先ほど岡田委員の質問でもありました、とにかく、もし万が一緊急事態になったときに、国会議員が二日も三日も国会に集まらないようなことがあるわけがない、私もそう思うわけでありますが、その点について、事前承認であって何かデメリットがあるのかどうか、その点だけお尋ねをしておきたいと思います。

    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕

玄葉委員 我々の修正案では、どうしても緊急だという場合は事後承認も認めているわけでありますから、緊急な事態に対応できないという批判は当たらないというふうに思います。ですから、原則事前承認、緊急の場合は事後承認ということで、何ゆえ政府が受け入れないのか私には理解しかねる、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 まさにそのとおりのことでありますが、もうこの点については、残念ながら、昨日の党首会談で相入れないということでございました。しかし、私どもは、国会が関与することによって、こうした国家的な大きな問題のときには、ひとしくやはり私ども国民の代表者たる国会議員が責任を負うということをとにかく我々は求めたわけであります。

 結果は、これ以上、もう昨日の党首会談で結果が出ておりますので、この点については我々のその思いを最後にお伝えして、次の質問に移らせていただきたいと思うわけであります。

 これまでの、今日までの質問を聞いておりますと、大勢の方から、今回の法案の審議それから基本計画のこれからのイメージの中で、必ず聞かれることがございました。これは、ここにいらっしゃる大勢の議員の方皆さんそうかと思いますけれども、とにかくこの闘いは、一体いつ、どのような形で終わるのか、あるいは終えることができるのか。

 桃井さんという、防衛大学だったでしょうか、ある教授の方の本を読んだときに、桃井真さんという方の著書の中で、戦争というのは始まりよりも終わりが難しいんだ、戦争、戦いを終わりにさせるということが実は世界のどこでもまだ確立されていない、これが一番難しいんだというようなことがございました。

 今回は特に対テロと、非対称的な戦いでございますから、宣戦布告、特にノルマンディー上陸もなければミズーリ号での調印式もないというようなことがアメリカの雑誌に載っておりましたけれども、とにかく、いつが始まりでいつが終わりなのかわからない。しかも今回の、テロでありますから、昨日まで平穏だったところが、突如、これは戦闘地域にある意味ではなる、危険地帯になるということでございました。

 その中で、日本の政府が主体的に今回のテロ撲滅、テロ掃討に対して判断をするというのであれば、どの時点でテロの脅威が去ったかということについては、日本は主体的に判断をすることができるのかどうなのか。この点について、総理大臣の御見解を聞いておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 国際協調のもとに、日本もこのテロ根絶のために毅然たる対応をとるということでありますので、どういう状況でテロが根絶されたかというのは、各国との情報交換、意見交換、状況を見きわめながら日本として主体的に判断したいと思います。

渡辺(周)委員 例えばアメリカのブッシュ大統領は、今月十一日に国防総省で行われたテロによる犠牲者追悼式典の演説の中で、米国と自由の完全勝利の瞬間まで我々はあらゆる手段を使ってテロを撲滅するというふうに言ったわけであります。あるいはイギリスの参謀総長ボイスさんという方は、今回のアフガンへの攻撃について、最も早くても、最も短くても来年の夏までは続くと考えた方がよいというような発言がされているわけであります。つまり、今、米英の考えの中には、大変長い戦になるであろうということ、もうこれは我々が理解をしているとおりでありますけれども。

 この点、結果として、例えばどこの時点においてテロの脅威が去ったかということであります。それは、アルカイーダが壊滅をしたからなのか、あるいはビンラーディンがこの世から消失したときなのか。

 しかし、そのテロが続く限り、例えばアメリカの大統領が脅威はまだ世界から去っていないと言い続ける限りは延々とこれは世界にテロの脅威があるというふうに考えた場合に、日本は主体的にどこかで、もっと言えばアメリカが手を上げ続ける限りは、日本は、ここで自分たちはもういいんじゃないかという途中下車のようなことが、あるいは私たちの日本の感覚では、判断では、テロの脅威が去ったんだということが果たして判断でき得るのかどうか。その点についてもう一度御確認をしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本は主体的に取り組むと。世界がこのテロに対して立ち上がっているさなかに、このテロに対する対応も各国と違います。アメリカは、個別自衛権でこのテロと対決すると言っている。イギリスを初めNATOは、集団自衛権をもってこのテロと対決すると言っている。日本は、個別自衛権でもない、集団自衛権でもない。アメリカ、イギリスは武力行使をするけれども、日本は武力行使をしません。主体的に対応しているんですよ。

 どういう状況か、アメリカが判断し、世界がどのように判断するか、その状況を見きわめて日本は主体的に判断したいと思います。

渡辺(周)委員 アメリカが判断し、世界が判断して、そして日本が主体的に判断をするということは、さらに議論を深めれば、アメリカと世界の状況を見ながら主体的に判断するというのは、非常に言葉の矛盾を感じるわけであります。

 しかし、一番大勢の方が思っているのは、このテロというのは、まさに、いつ、どこで、停戦もなければ終戦もない可能性が極めて高い中で、日本は、どこまで一体永遠のテロ撲滅に実際かかわらなければいけないんですか。つまり、その覚悟を持って日本という国が、あるいは日本の国民が、今回はこれに踏み切らなきゃならないということでございまして、その点については、日本の国は、これは大変なことを決断するということであります。その点については、大勢の国民が不安に思っているのは、いつ脅威が去るかということなんであります。

 その点については、我々は本当に主体的に判断をしなきゃならないということを、とにかくこれは、総理初め政府それから我々政治家が全員判断をできるような、ぜひともこの情報は共有をしておきたいというふうに思うわけでございます。

 時間の関係もございますので次の質問に行くわけでありますが、先ほど、現地の事情ということで、アフガニスタン周辺国の状況がございました。これから、今後、パキスタンあるいはその周辺国を考えていきますと、あるいはCISの、今アメリカがどちらかというと主力部隊を移動していると言われるタジキスタンでありますとか、そうしたCISの国々のこともございますけれども、この現地の状況をどのようにこれから具体的に把握していかなきゃならないのかということをまずお尋ねしたいと思うわけです。

 といいますのは、先般、イスラマバードまで物資の輸送で航空自衛隊の飛行機が小牧基地から行きました。そして物資を届けましたが、その前の九月の三十日だったでしょうか、航空自衛隊の幹部の方々がパキスタンに行かれまして、先遣隊として事情調査に行かれたということであります。ということは、当然、これから日本が基本計画のさまざま中身を詰めるに当たりまして、周辺各国の、アフガニスタンの周辺国、言えばパキスタンですけれども、あるいはパキスタン以外の国も含めて、何らかの形でこれから現地の状況を把握するために行かなければならない。当然そのときには、現地の国あるいは既にもう行っている国と何らかの連携行動をとらなきゃいけないと思うわけでありますけれども、そのことにつきまして現状をどのように今考えているのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

中谷国務大臣 この法律が成立した後、より実効性のある協力を行うためには、当然のことながら、我が国が支援する相手国のニーズ、これを的確に把握するとともに、実際に支援するに際しまして、いろいろな調整、いつ、どこで、何をというような事項に対して綿密な連携を確保することが必要でございます。

 したがいまして、関係諸国とあらゆるレベルでの重層的な意見交換を実施することが必要だというふうに考えておりますし、この意見交換につきましては、調整の場をどうするかということについて、いろいろな国といろいろなパイプを通じて綿密に実施をしていきたいというふうに思っております。

 なお、マニュアル等を作成すべきかどうかということも大事なわけでございますが、これも、新法成立後に、具体的なニーズを踏まえつつ今後検討してまいりたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 今、長官からそのような答弁がございました。現実問題として、これはちょっと報道機関のニュースにあったのですが、国連アフガニスタン特別ミッション、UNSMAというところの政務官の方が、イスラマバードから戻ってきたときに、日本は現地の事情もよく知らないで、情報もなくて人脈もない、そうした中で、例えば自衛隊を送ってどういう形で役に立てるんだろうかというようなことが載っておりましたけれども、実際問題として、中央アジアというのでしょうか、南アジアと呼びましょうか、この国の情報というのは、極めて日本の中でも非常に遠い国というイメージがあります。また、現地の状況も非常に入りづらいという中で、今後、実際問題としてどのような形で連携をしていくのか。

 それから、いつをめどにこれからやっていくのかということにつきまして、この法案が当然もう通るということで、もう当然組み立てをしていらっしゃると思いますので、その点につきまして、外務大臣もしくは防衛庁長官から答弁ありましたらどうぞ。

田中国務大臣 トータルにはこれは内閣官房長官の方で取り仕切られるわけでございますけれども、外務省といたしましても、パキスタンの情勢ですとか、あるいは今委員おっしゃったようなウズベキスタン、タジキスタン等のあの地域のこともそうですけれども、国連その他の国際機関からの情報でありますとか、それから、当該地域で中心的な活動をしている外国部隊からの情報ですとか、それから、我が国みずから情報を収集しているものもございます。大使館等もあります。先ほど来言っていますように、沼田大使としょっちゅう緊密に電話をかけたりしていますし、大使自身も、もっとまたいろいろな方から、現場から情報を吸い上げております。

 ですから、あらゆる形でもって情報を吸い上げておりまして、それらを、内閣はもちろん、防衛庁とも連絡を緊密にとりながら、適切な対応を迅速にとれるようにいたしております。

渡辺(周)委員 もう一度防衛庁長官にお尋ねするわけでありますが、例えば基本計画策定ということに実際どのような形で、これは法案の中にありませんから、当然基本計画の中で盛り込まれていくわけでありますけれども、例えば連絡調整システムとでもいいましょうか、当然のことながら、アメリカとの連携をこれから深めていかなければならないわけでございます。

 例えば、現地の状況をどのように把握するか。当然のことながら、例えば自衛官の方をアメリカ軍に何らかの形で派遣をするとか、そうした意味においては具体的な調整メカニズムをつくらなきゃいけないと思うわけですけれども、その点についてのこれからの仕組みはどのような形で今後考えていくのか。その点についてだけ、お答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 この法案の実施に対するメカニズムの構築ということにつきましては、現時点においては存在をしておりませんが、平素から米国とはあらゆるレベルで意見交換並びに戦略的対話を行っております。それは、大統領と首相、また外務大臣、国務長官、防衛庁長官、国防長官等、いわゆる2プラス2のレベルもありますし、その下の局長級や審議官級のレベル等もございます。

 いわゆるガイドライン法案においては、包括的メカニズムと調整メカニズムというものが設けられまして、綿密に計画づくりで調整をしてきておりますが、それはあくまでもガイドラインの話でありまして、この法律の実施に際していかに米国との調整を行っていくかということにつきましては、この法案の成立の後、米国等の具体的なニーズを踏まえつつ今後検討してまいりたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 そういう意味では、いずれにしてもこれは米英と、憲法の範囲内で何ができるのかということについての、今ここでは答えられませんでしょうけれども、具体的な組み立てを当然もうされているものだろうと思います。

 それで、先般、先週の土曜日、十三日の日に行われた参考人質疑の中で、中村さんというお医者さんに、私どもは参考人として御推薦をし、そしていろいろと意見の開陳をいただきました。

 その中で、特に医療という面で、私があの日、たしか北部方面隊ですか、今いわゆる医療班の組織化を急いでいるということで、医師であるとかその他歯医者さんであるとか、そういう方々を送り出すべく今準備をしているということでお尋ねをしたら、中村参考人は、来ても、とにかく言葉はわからないし、全く慣習もわからなければ、全く環境がわからないだろう、実際そういう方々が千三百人ほど失職しているというふうに言っておりました。

 つまり、みんな世界じゅうから一生懸命来たけれども、結局いろいろな独特の習慣やあるいは気候の中で活動できなくなって音を上げてしまった人もいる。もっと言いますと、ここに来て、例えば我々が聞いているのは、いろいろな伝染病のような疫病を持っているたくさんの難民の方々もいるんだという中で、例えば、これから何らかの形で医療支援となった場合に、現在の日本の自衛隊でどれぐらいのことができるのか。実際、装備はどれぐらいあるのかとか、あるいは、そういうことが例えばどれだけ、ウルドゥー語なり、あるいはもう一つ何でしたか、向こうの方々の言葉を理解できるだけの通訳が確保できるのか、実際こういう問題もあるわけでありまして、その点について何らかのシミュレートをしているのかどうか。

 それは、もちろん参考人の意見については、先般の質疑の議事録等を見ていらっしゃるでしょうから詳しくは申しませんが、そのようなことを現実どのように考えられているのかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 海外において自衛隊がどれほどお役に立つのかというお話でありますが、現実にこれまでカンボジア、モザンビーク、ルワンダ、ティモール、ホンジュラス、トルコ等に実際に行きまして活動をして、現地の皆さんに喜んでいただいて、国際連合からも大変高い評価をいただいているわけでございます。

 現実にこの地域においてどういうことができるかといいますと、例えばルワンダのときに、アフリカ地域に参りましたけれども、国立のゴマ病院において医療活動を行いまして、外来患者延べ二千百名、手術は七十件実施をいたしました。また、州立衛生試験場において、マラリア原虫の検査や、現地スタッフに対して医療技術等を指導いたしております。また、難民キャンプの消毒等も実施をして、シラミの駆除、マラリア予防の普及教育、それからキャンプへのシラミ駆除薬剤の輸送、またNGOの方々の病院用トイレの防疫活動、それから排水溝の整備、また道路工事等もいたしましたし、また現実にNGOの方の危機に際しては、NGOの皆さんの輸送もやりました。また、現地の人が穴に落ちて瀕死の重傷を負ったときに、緊急に駆けつけて、その穴の中から地元の方を救い出して応急治療をしたり、いろいろなことでお役に立っております。

 今回、派遣される地域、まだ決定をいたしておりませんし、どこの部隊が行くということも、まだ一つも決めた事実はございませんが、実施が可能な地域において、重々に言葉とか習慣また国情等を勉強いたしまして、現地に合った活動ができるように努力をしてまいりたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 まさにそれは当然のことでありまして、ただ、そこに行けるかどうかは、さまざまな、治安状況でありますとか、戦闘地域でないということを大前提に行っていただくわけですけれども、今後いつになるのか、これは当然、そのときまたどのような状況になるか、またその点について例えば安全保障委員会等で何らかの議論ができるのかと思いますが、ぜひその点については、とにかく格好だけじゃないですよね、格好だけ日の丸を見せるんじゃなくて、実質を伴った部分について、これはもうぜひやるべきであろう。

 その点については、我々だって当然のことながら人道的な支援ということについては本気で議論をしてまいりました。我々もその点についての一定の理解は持っているわけでございます。今後検討を進めるに当たりまして、我々もまたその点についての意見を審議の中で開陳していきたいなと思うわけであります。

 ちょっともう時間がなくなりましたけれども、おしまいに一つ、これは厚生労働大臣それから国家公安委員長にお尋ねをするわけであります。

 今、アメリカで第二のテロが起きた。九月十一日のテロはまさに、言葉は悪いんですが、映画を見ているかのような、まさに特撮映像を見ているような衝撃的なテロでありました。しかし、今度は忍び寄るテロでありまして、オフィスや家庭に、オフィスに届いた、あるいは個人あてに届いた手紙をあけてからこのテロが始まるわけであります。全く、それこそあのワールド・トレード・センターに激突をした、スーサイドアタック、まさに自殺攻撃。そして、今回はまさに、本当にオフィスの机の上で起きるテロであるという意味では、これは大変に新しいテロの脅威でありますが、この点について、今、日本の取り組みの現状についてどうお考えか。

 もう何か、きょうの新聞あたりを見ますと、福島県のどこかの郵便局では、白い粉があって、検査をして、今どうこうとありましたけれども、その後のことは知りませんが、そんなようなことがあって、これはいつ何どき日本でどうなるかわからない。

 もう既にイギリスの方では、一般開業医三万五千人以上が警戒態勢に入っているというふうに言われているわけでありますが、日本の国として、この今アメリカで起きていることを踏まえて、今どのような形で医療機関なりに態勢を指示しているか。

 あるいは、これは村井大臣でありますけれども、実際そういうものがあったとき、第一義的に出動する日本の警察にどれぐらいの装備があって、実際、いつまでにこの装備を拡充することができるのかということについて、ちょっと時間がありませんので、続けてお答えをいただきたいなと思います。

村井国務大臣 ただいま委員御指摘の生物テロといいましょうか、こういう問題につきましては、私どもサリンの事件で大変痛い思いをしたということがございまして、それ以後いろいろな形で、いわゆるNBCテロ対策ということで充実を図ってきたわけでございまして、現在、警察といたしましては、特に警視庁、それから大阪府警におきまして、NBCテロの専門部隊というものを設置いたしまして、化学防護服ですとかガス検知器ですとか除染機、こんなようなものをいろいろ取りそろえまして現場対処能力をふやしているというところでございます。

 ただ、この生物兵器というのは、これはあらわれ方が病気としてあらわれるという点で非常に難しい問題がございまして、ただいま御指摘のございました福島県で起こりました件につきましても、第一義的には、まず炭疽菌ではどうもないようだというところまでは確認ができましたけれども、それ以上により正確を期しまして、現在検査をしているところでございますが、この結論はまだ出ていないということでございます。そのように私ども聞いております。

 ただ、いずれにいたしましても、大切なことは、厚生労働大臣の御対処と存じますけれども、第一線のお医者様におかれて、その症状を的確に判断して、そしてそれが特定の集団で発症したというようなことがありました場合に、その特異性に着目してしかるべき判断をしていただく、こういうことがどうしても必要でございまして、相互の連携が大切だ、このように認識をしておる次第でございます。

坂口国務大臣 御指摘をいただきました炭疽菌についてでございますが、一番大事なことはやはり情報を早く集めるということだろうというふうに思っています。厚生労働省の中には、厚生労働省緊急テロ対策本部をつくりまして、そして、そこに情報をできるだけ早く集めなければならないというので、医療機関等にその旨、インターネットでありますとか、あるいはいろいろの手段を使いましてお願いをしているところでございます。

 そこで集めたことと、それからもう一つは、各省庁の連携を密にしなければならない。今もお話がございましたけれども、そうした警察等との連携も密にしていかなければならないと考えております。

 そして、我々の方は、炭疽菌なら炭疽菌の場合に、それに必要な緊急のやはり医薬品として何があるかということも確保しなければならないわけでございまして、こちらの方は相応の医薬品が確保できるというふうに思っております。

 そうした対応をつくっておりますが、しかし、対応がおくれますとこれはもう人命にかかわる問題になりますので、早く手を打たなければならないということでございますから、その点を一番重視をしているところでございます。

 そして、福島県の件につきましては、今お話のありましたようなことでございまして、我々も、精密検査の結果がきょうの夕刻ということでございますので、それを、対応を待っているところでございます。

渡辺(周)委員 これがもちろんそうであるのか、何らかの便乗犯なのか、何かの間違いなのか、全く我々もわからないわけでありますが、ただ、もう事がいかにも簡単にテロということができる、飛行機を乗っ取って、まさに高度な飛行技術でもってあのようなビルに激突するなどというあの手を使わなくても社会を恐怖と混乱に陥れることができるというのは、今回でまた新たに一つ思い知らされたわけであります。

 この点については、ぜひ、もう実際に今被害が起こっているアメリカに対しても、情報収集なり連携を、各省庁、警察庁が具体的な対応策についての、まさに我々としての危機管理を早急に確立していただきたいと思うわけであります。

 もう時間がなくなりましたけれども、最後に、今回のテロ事件においては、アメリカでは共和党、民主党両党、両院の外交委員会や軍事委員会のメンバーも政権側から機密情報を受け取るということで今合意をしている。そして、これは限られた両党の幹部、合計で八名というふうになっているわけでありますが、まさにこういう国家的な危機に、もしまた日本が直接被害を受けることになった場合には、これは与党と野党がやはり情報を共有することが、我々は、まさにアメリカの両院に倣って、必要ではないかというふうに思うわけであります。また、それを主張していくわけであります。

 最後に、総理大臣、今回の第二のテロ事件を受けまして、国内のテロ対策ということについて、そしてまた、今後国を挙げてとにかく国民の生命と財産を守るんだということについて、我々はまさにその点についても協力を惜しまないわけでありますので、その点につきましての総理の御見解を伺いまして、質問を終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 国家の安全保障については、特に党派を超えて協力できる体制ができればいいなと思っております。

渡辺(周)委員 終わります。

亀井(善)委員長代理 次に、東祥三君。

東(祥)委員 総理大臣、自由党の東祥三でございます。

 昨日、総理が訪韓されているときに、この委員会で自由党の、自衛隊という日本で唯一の軍事組織でありますこれをどのように動かすのかという原則に従った考え方、そしてまた、それを法案にしたものを趣旨説明させていただき、そして、ある方からは質問も受けました。残念ながら総理はいなかったので、この自衛隊を動かすという、政治のある意味で究極の判断を迫られるものでありますが、ぜひ聞いていていただきたかったなというふうに思います。

 今回の法案、特別措置法案を見させていただきまして、ある意味で何のための法案なのかとさっぱりわからなくなってきておりますし、また多くの方々は、東さん、この法案って一体何なんだと、そういう質問が最近とみにふえてきていると思います。

 本日の朝の同僚議員の修正案、与党側から出されている修正案に対して、とりわけ武器弾薬の陸上輸送というのは何でこれを入れないんですか、そういう質問に対して、久間委員の方から、これはひょっとして要請がないかもしれない、その可能性が高い、こういう御答弁がありました。それは、ただ単に武器弾薬のみならず、この骨格で、総理は自信を持って提出されているみたいですけれども、中に書かれていること何一つ役に立たなくなるのではないかというふうに私は思っております。

 そういう視点から、一つ一つ、きょうは質問する側でありますので、明快に答えていただきたいというふうに思うんですけれども。

 今回の法案、百字以上に上ります法案名という、日本で最も長い法案だというふうにも聞いております。そこには国連決議だとか、あるいはまた国際人道支援という装飾品が飾られておりますけれども、この法案の目的というのは一体何なのかということなんだろうと思います。中身を見れば、これは対米支援法案以外の何物でもないのかと思うんですけれども。

 総理に質問させていただきたいんですけれども、法案に引用してある国連決議の中に、武力行使を容認したものが一つでもまずあるのかどうなのか、この点について御回答いただきたいと思うんですが。――いや、総理に聞いている。総理に質問通告を出している。

福田国務大臣 そもそもこの法案は、いわゆる集団的自衛権というものに関係しない、そういう範囲の自衛隊の活動、こういうことでございますから、当然ながら武力の行使、こういうものには、こういう活動は含まれないということであります。

東(祥)委員 米国に支援を表明している国の中に国連協力を理由にしている国がありますか。

 繰り返します。米国に支援を表明している国の中で、国連協力を前提にしているものはありますか。

田中国務大臣 お尋ねの、対米支援を表明している国が具体的にどういう理由に基づいているかということにつきましては、必ずしもすべて承知しておりません。なぜかといいますと、約三十数カ国ございます。NATO、日本もオーストラリアも韓国もございますので、すべてについて知っているわけではございません。

    〔亀井(善)委員長代理退席、鈴木(宗)委員長代理着席〕

東(祥)委員 私の質問は、米国に支援を表明している国の中で、国連協力を理由にしている国があるのかと。一カ国もないと思います。

 さらにまた、集団的自衛権の行使を認めていない国で米国への軍事的支援を表明している国はありますか、外務大臣。

田中国務大臣 東議員は多分スイス等を念頭に置いておっしゃっているというふうに考えますけれども、スイスの場合は、永世中立国として、政策上は自国の軍隊を派遣しないこととしております。したがって、集団的自衛権の行使は想定していないというふうに思われます。

東(祥)委員 僕は別に、スイスに住んでいたことはありますけれども、スイスを想定しているのではなくて、集団的自衛権の行使を認めていない国で米国への支援を表明している国はありますかと聞いたんです。答えは、ないということなんだろうと思いますが。

田中国務大臣 日本以外で集団的自衛権を行使しない国はスイスぐらいだというふうに思っていますけれども、スイスの、米国の軍事行動に対しての立場というものはどんなであるかは承知いたしておりません。

東(祥)委員 政府は、NATOが集団的自衛権の行使と説明しているということを、どうもこの法案名を見ると、国連協力や人道支援の名のもとで行おうとしているのではないのか、このように思えてならないんですが、国民を欺こうとしているんじゃないですか。

福田国務大臣 それは、日本国憲法というものがありまして、その枠の中でやるということでありますので、武力の行使を認められているわけではないのでありまして、武力の行使を認められているのは、自然権的な自衛権ですね、それに基づく限られた行使である、こういうことであります。

東(祥)委員 そうすると、この法案というのは、テロ対策のための対米支援法案なのか、テロ対策のための国際人道法なのか、それともテロ対策のための国際協力法なのか、何なんですか、一体。

福田国務大臣 国際協力法だと思います。

東(祥)委員 総理大臣、十年前、ちょうど私は十一年前ですが政治家になりました、そのとき湾岸戦争が起こったわけであります。あの湾岸戦争のときに初めて日本の国会で、ある意味で安全保障論議がかまびすしく、かんかんがくがくと議論されたんだろうと思います。実際にどのように自衛隊を送ったらいいのか、そういう現実の問題として、あのときの模様が想起されるわけであります。

 あのときは、国連決議、武力行使の容認決議があったにもかかわらず、現実に日本は自衛隊を送ることができなかった。集団安全保障体制、それも完璧な国連軍ではありませんでしたけれども、アメリカを中心とする多国籍軍を中心として、国連の安保理が十七、十八の決議を断続的に出して、そしてイラクを制裁する、そういう国連全体としての決議があったにもかかわらず、自衛隊の組織を出すことができませんでした。

 その後十一年間たっている。その後、PKO協力法だとか、これは直接武力容認決議に基づいて行われるというものではなくて、戦争が終わった後、いかに平和な状況を維持し、戦争に再びならないようにするかという、また別のカテゴリーであります。その後十一年たった今日、基本的に、十年前起こったことに対しての解決すら、日本の国内において、この国会において議論が深まらず、結論を出していないわけであります。

 今回、九月の十一日に起こりましたいわゆる同時多発テロの問題、これは、アメリカが明らかに明確に個別的自衛権を行使して、いわゆるテロリスト並びにネットワークを根絶するという、そういう戦いなわけです。そうしますと、日本がそれに対して軍事的な支援をする、自衛隊を派遣するということは、明確に、いわゆる対米支援、テロ対策の名のもとに戦争に参加するという大変な脈絡があるわけであります。

 それを今官房長官は、国際協力ですと。自衛隊を動かすことの根本原理も一切示すことなく、どうしてそういう言い方ができるんですか。なぜ十年前、国連決議があって、武力行使容認決議があったにもかかわらず、自衛隊を出すことができなかったんですよ。物資協力もできなかったんですよ。そしてまた、サウジアラビアにも赴くことができなかったんですよ。なぜ今回できるんですか。

 さらにまた、よく多くの方々が、周辺事態法の枠組みでありますと。周辺事態法の中で、日本の領土外、第三国の領土に行って何か行うなんということは書いてなかったじゃないですか。できないことになっていたじゃないですか。

 今度は、第三国の領土に行って軍事的な活動、つまり自衛隊が動くという、そのことまで盛られているじゃないですか。何に基づいて、どういう原理原則に基づいてそういうものがいつでき上がったんですか。それを今、官房長官、また――小泉総理、お休みになっているんでしょうか。(小泉内閣総理大臣「聞いています」と呼ぶ)何に基づいて自衛隊を動かす、行動、原理原則、それを説明してください、私が本会議場でも言いました。一切何も説明されていません。憲法の枠内です、武力行使一体化とは関係ありません、これは何なんですか、官房長官。

福田国務大臣 それは、この十年にいろいろと変わったんですね。変わったのは何か。それは、日本の世論も変わりました。政治家の考え方も変わりました。そして国際世論も変わってきたということではないかと思います。

 国際世論というのは、自衛隊が、日本の自衛隊が海外に出ていっても、それを、危険でない――昔の自衛隊派遣、昔というのは十年以上前のことでありますけれども、これはもう海外からも批判を受けた可能性がある。そういうぐらい世の中が変わってきている、こういうことではないかと思います。

 しかしそれは、結局、憲法は変わってないんですよ。憲法は変わってないんです。憲法の範囲の中でできることをやるという考え方は、昔も今も変わってないと思います。ただ、今申しましたように、考え方がまだ違っていたんだ、十年前と今とは考え方が、考え方というのは世論ですね、世論が変わってきた、こういうようなことでありまして、あくまでも、今でも憲法の枠の中ででき得ることは何かということを模索しながら、今度は、このテロが起こって、そして日本ができる役割があるなということを考えて、その上でこういう枠組みをつくったということであります。

東(祥)委員 日本の常識、世界の非常識とよく竹村健一さんが言われていました。まさに、官房長官の説明というのは全く説得力のないお話であります。国際社会に行って説明してもらいたいと思います。

 自衛隊という唯一の武力組織を動かす、それはちゃんと国際法に基づいて行かない限り動けないんですよ。だから、今回の同時多発テロに関して、米国が、私たちは個別的自衛権に基づいて動いているんですよというのを言うわけですよ。NATOも、集団的自衛権、NATO条約第五条に基づいてこれは発動するんですよ、そういうふうに言っているんですよ。同じように、第二次世界大戦後、こっぱみじんにやられたドイツ、集団的自衛権行使を認めると言った上で、日本がこの法案に盛られているようなことまで何にも挙げていませんよ。非戦闘員だけを挙げるということを明確にしているんですよ。

 憲法を変えていない、口をあければそういうことを言う。これから、いかに皆さん方が憲法解釈を変更しているかということもついていきます。

 時間がないので、まず防衛庁長官。防衛庁長官は、総理の次に、自衛隊のまさに生命財産を預からなければならない重要な立場にいらっしゃいます。そして、総理にもお聞きいたしますけれども、本当にこの法案で自衛隊を派遣したときに、彼らの命、これを守ることができるのか。先ほどのお話の中でも、防衛庁長官は、自衛隊に名誉を与えなくちゃいけない、生きがいをちゃんと与えなくちゃいけないと。ちゃんと任務遂行のための権限、それを十分与えているのかということを僕は問いたいのであります。

 まず第一に、この法案の中に盛られていることで考えていきますと、例えば、今度は、自分及び同僚隊員のみならず自己の管理下に入った被災民等も守ることができると言っているんですが、具体的に申し上げます。

 自衛隊員や被災民が、例えばですよ、拉致された場合に、先ほど言われていたROEに基づけば、捜索あるいは追跡、これ、するんですか。それとも、自衛隊あるいは同僚あるいは被災民がキッドナップされた、誘拐されちゃったとき、それを放置しておくんですか、どうなんですか。

中谷国務大臣 基本的な考え方としましては、武器の使用の権限と、どの地域でやるかという場所の問題が要素としてあると思いますけれども、この場所の問題に関しては、戦闘行為が行われていない地域でやるわけでありますし、またそういう事態が予測される場合は、中断をしたり避難をしたり撤収をしたりするわけでございます。ですから、そういう安全確保の面においても条件的に配慮をしておりますけれども、御質問のような万々が一という場合も考えられるわけでございます。

 そういう点におきましては、この法案に基づいた、自己の管理のもとに入った者の生命、身体の防護、及び自己に関しては、やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができるという権限を与えておりまして、これに基づいて、ROEというルールを定めますけれども、御質問のあった、遠くへ拉致された場合という点に関しましては、現地に治安当局、公安当局として派遣先の国の警察もあれば軍隊もあって、そういう点におきましては、その当局の協力を得て隊員の安全確保を図るというふうに考えております。

東(祥)委員 テロリストが自衛隊のキャンプの周辺に続々と集合して攻撃の準備をしているときに、攻撃が始まるまでじっとしているんですか。それとも、そこで攻撃するんですか。多分答えはみんな同じだから、次々に質問しますから。

 トラックに爆弾を積んで突っ込んできているテロリストがいたら、どうやって反撃するんですか。放置しておくんですか。セスナ機に爆弾を積んで突っ込んでくるテロリストがいたら、どうやって反撃するんですか。もしこれで反撃したなら集団的自衛権の行使ですよ。

 第三国に自衛隊が行って、唯一の武力組織ですよ、それがそこに行って、そしてそこで攻撃、まさに火器を使用する。皆さん御案内だと思いますが、日本のこの国に米軍基地がある。米軍基地があるということは、日本の了解を得て米軍基地を持っているわけです。だから、日本が攻撃されたときにアメリカは日本を守るんです。だから、集団的自衛権が発動されていくわけですよ。

 同じように、集団的自衛権の行使、この権利を持たないで第三国に自衛隊、軍隊が行って、そしてそこで何らかの形で火器を使用する。この場合、テロリストが来る、それに対して反撃する。その瞬間から集団的自衛権の行使が始まるわけですよ。

 どうぞ、防衛庁長官、どうするんですか。集団的自衛権の行使の問題はともかくとして、今僕が例示した面に関してどうするんですか。

中谷国務大臣 基本的に一言で言えば、自己保存のための自然的権利でありまして、これは自衛権とは違います。あくまでも、自分の身体を防護するための正当防衛並びに緊急避難ということで、やむを得ない場合に、人に時として危害を加える場合も認められた権限でございます。

 御指摘のような状況に際しましては、あくまでも客観的な判断をいたします。例えばトラックで突っ込んでくる場合等においても、それを放置していたら自分自身の身に本当に危険が及ぶ場合は、突っ込んできたのを放置しておけば大変な事態になるわけですから、事前において自分の身を守る範囲はどこかということを判断して武器を使用することになろうかと思います。

 そのほか、囲まれた場合とかいう事例がございましたけれども、それぞれの事態に応じて、合理的に必要と判断される限度で武器を使用することになろうと思います。

東(祥)委員 ということは、撃たれる前に反撃していいということですか。撃たれる前に反撃していいんですか。撃たれる前に攻撃していいんですか。イエスかノーかで言って、僕、十分しか与えられていないんだから。

中谷国務大臣 イエスかノーかといえば、イエスでございまして、相手による危害が切迫し、かつ相手による危害に備えなければ自己等の生命、身体を防護し得ないような場合には、まず、武器を構えたり威嚇射撃をするなどの形態で武器を使用することができるというふうに考えております。

東(祥)委員 今までそういう、こちらが撃たれない限り、それをだれが判断するんですか。危害が加えられる前の話ですよ、今。だれが判断するんですか。

中谷国務大臣 自己、または、現場に上官がいる場合にはその指揮官が判断をして統制をすることになっております。そして、急迫不正の侵害があると認められる場合にも、自己の身体等に具体的な被害が発生する以前でも、人に危害を与えることを含めて、その事態に必要と判断される限度で武器を使用することができるということであります。

東(祥)委員 それは、いつからそういうふうになったんですか、防衛庁長官。僕は、第三国の領土の話をしているんですよ。いつからそういうふうになったんですか。いつからそういうふうになったんですか。(発言する者あり)

鈴木(宗)委員長代理 委員以外の方は、御静粛にお願いします。

中谷国務大臣 この基本原理は、自己保存のための自然権に基づくことでありまして、今までと同じでございます。

東(祥)委員 これは、多分、重要な話をしているんですよ。いわゆる集団的自衛権の行使を前提にしないで、一つの自衛隊が第三国に行って、直接の危害が加えられなくて、そしてそこで火器を使用した。そのときに、いまだかつてないことを防衛庁長官は言われているんだと思います。これは、後からちゃんと精査して、小泉内閣が持っている――僕は別に内閣法制局長官に聞くつもりは全くありませんから。これは後から精査して、そして問題にしたいというふうに思います。

 時間がなくなってきているので、小泉総理、ぜひ教えていただきたいんですが、前回の本会議において私質問させていただきました。小泉総理並びに官房長官は、いわゆる憲法の枠内である、それから、憲法解釈の変更はしていない、このように何度となく繰り返しております。僕にぜひ教えていただきたいんですが、総理、湾岸戦争のときにできなかった自衛隊の輸送協力がなぜ今日できるようになったんですか。なぜできるようになったのか。憲法解釈上、教えてください。

小泉内閣総理大臣 これは、湾岸戦争と今回のテロとの闘いは、全く様相が違っているんですよ。湾岸戦争のときは国対国の戦い。今回、テロは国と国との戦いじゃないんですね。どこで起こるかわからない。はっきりとした対象もわからない。私はテロリストですよと言って攻撃は予告しても、姿をあらわさない。どこにいるかわからない。どこに起こるかわからない。そういう中でテロと対決しようというんですから、今回、アメリカとイギリスがアフガンに武力攻撃をしていますが、アフガンにしているんじゃないんですよ。アフガンにいるテロリスト、テロリストの拠点、テロリストを支援しているグループ。アフガニスタン国そのものじゃないんです。

 しかも、日本としては、武力行使をしない、戦闘行為に参加しない、戦場に出ない。今、自衛隊の議論が出ていますけれども、それも、どこに行くかもわかりませんけれども、自衛隊がいろいろな活動をしているときに、どこからテロリストが出るかわからない。そういう面であって、私は、現行の憲法の範囲内で、武力行使をしないんですから、国際協調しようという。

 憲法の前文で、国際社会の中で名誉ある地位を占めたい、いずれの国も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない、そういう中の、前文の憲法の趣旨と、憲法九条で武力行使はしない、そこでどうやってこのテロとの闘いに国際協調できるか。憲法の範囲内で、個別自衛権の発動でもない、集団自衛権の発動でもない、テロ撲滅の闘いのために何ができるかということで考えたのが今回の法案でありまして、御理解をいただけると思います。

東(祥)委員 巧みな話術にひっかかりそうになるんですが、総理、論点をすりかえないでください。対象がテロであれ、そしてまた国際社会の秩序を破壊した国であれ、ここの問題は何かといったら、唯一の武力組織であります自衛隊を動かすということなんですよ。自衛隊を動かすには、憲法によって規制されているんでしょう。憲法第九条に基づいて今日まで歴代の政府は解釈しているんですよ。それがテロであれ何であれ、自衛隊を動かすということに関しては全く変わりない、根拠があるはずですよ。それを、なぜ十年前にできなかったことが今回できているのか。

 また先日、先日といいますか、周辺事態法が通ったときに、日本領土外での自衛隊による補給や医療などの協力がなぜ今回急にできるようになったのか。前回できなかった物資協力が今回できる、どうしてころころ変わるのか。周辺事態法でできなかったことがどうして今回できるのか。どうしてごまかしながらそのように解釈というのを変えていってしまうのか。

 時間がなくなってきているので、先日、総理は、重要な発言をしたのを覚えていますか。先週の金曜日、我が同僚の山岡委員が総理に質問しました。そのときに総理は、図らずも、自衛隊というのは戦力であると認めましたね。自衛隊というのは戦力ですか。戦力ですと言ったのを覚えていますか。

    〔鈴木(宗)委員長代理退席、委員長着席〕

小泉内閣総理大臣 常識的に考えれば戦力でしょう。ところが、定義、法的定義によって戦力じゃないと定義しているんです、日本では。これが、世界の常識に合わせろというと、常識的でない面もあるんですよ、すべてじゃないといっても。そこが、憲法解釈に幅がある、すき間があると言っているゆえんなんですよ。

東(祥)委員 また、問題をすりかえないでください。総理大臣、総理大臣は内閣総理大臣ですよ。内閣総理大臣で、自衛隊は戦力だと言ったのは、これは政府の統一見解と違うじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 その議論をすると非常におもしろい議論になるんですよ。これは定義として、憲法九条の、戦力を保持しない、しかし、必要最小限度の戦力は戦力じゃないという解釈をしているんですよ、今の。しかし、常識的に考えれば、自衛隊は、ほとんどの国民が考えてみれば、戦力と思いますよね。そういう一般的な法律の定義とかは別にして、国民一般の常識ではなかなか理解できない面がある。そういう法解釈、憲法解釈、字句解釈というのは非常に難しい面があるんです。だから、解釈には幅がある。

 現に、今まで、自衛隊はいまだに憲法違反の存在であると言う政党もいるし、自衛隊は合憲であると言う政党もいるし、いろいろ解釈に幅、現行の憲法は変わらないけれども、解釈に幅があるんです。そういう中で、いかに時代に合わせて、日本は武力行使をしない、国際社会に貢献していきたいという中で考えてきている面がたくさんあるんですよ。

 自衛隊を出せば全部戦闘行為だと、そうじゃないですよ。PKO、自衛隊を出したって武力行使にはならない、戦闘行為にならないと理解している国際社会はたくさんあるじゃないですか。だから、憲法には解釈の幅がある、認めているんですよ。常識論でない議論をすると、これは切りがない。武器の定義にしてもそうです。

東(祥)委員 総理、僕は総理の憲法解釈論に、今までの、今日のいろいろな憲法解釈があるということを聞いているんじゃないんですよ。

 小泉内閣として、憲法解釈を変えるなら変えるでいいんですよ。それを変えているのか変えていないのかわからないような言い方をするのはやめてくださいということを言っているわけです。自衛隊が戦力なら戦力で、私たちは、私は、いろいろな解釈があるけれども、小泉内閣としては自衛隊を戦力とする、そういうふうに言えば、それはそれでいいんですよ。

 しかし、そういうことを言わないで、この戦力についてもいろいろな解釈の幅があるなんということを聞いたとしても、何を言っているかわからないじゃないですか。

 小泉内閣としては、戦力としてとらえていないんでしょう。いないにもかかわらず、総理は自衛隊を戦力であると言ったならば、それは憲法解釈の変更ではないですか、このように申し上げているんです。

 さらにまた、防衛庁長官は、昨日のこの委員会における、戦闘地域の意味というのは何ですか、こういうふうに聞かれたときに、防衛庁長官は、ドンパチやっているところですと、このように言われました。それで間違いありませんか。

中谷国務大臣 戦闘地域というのは、この法案に出てきておりませんが、あえて言うならば、戦闘行為が行われているという地域の意味でありまして、この戦闘行為というのは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為でありまして、私が申し上げます戦闘地域というなら、そういう意味でございます。

東(祥)委員 もう時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、つまり十年前、憲法解釈でできなかったというものが今回できるようになっている。あるいはまた、平成二年、これは工藤内閣法制局長官が言われている武力行使一体化論、これにまさに抵触してしまう発言、そうではないということを今度防衛庁長官が言われている。このように、憲法の枠内、憲法解釈を変更しないと言いつつ、一つ一つ詰めていったときに、これほどたくさんの憲法解釈の変更が国民をだましながら行われているということを申し上げて、時間が参りましたので、これでやめさせていただきます。どうもありがとうございました。

加藤委員長 これにて東君の質疑は終了いたしました。

 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 テロ対策特別措置法案は、現にアメリカがアフガニスタンに対して行っている武力攻撃に対して、自衛隊が戦後初めて外国の領土にまで出動して、いわゆる兵たんの形で参戦することを認める、憲法九条の平和原則にかかわる極めて重大な法案であります。

 このような重大な法案が、異例の土曜日三時間の参考人質疑を加えても五日間、合計わずかに三十二時間の委員会質疑で審議終結、採決されようとしております。PKO法の場合、十七日間、七十四時間四十四分、周辺事態法の場合、十二日間、九十四時間十一分の質疑時間と比較しても、拙速は明らかじゃないでしょうか。

 憲法との整合性についてたくさんの論点が指摘されてきましたが、どの論点一つとっても、政府から、小泉総理からも、まともな説明はなされてきておらないと私は思います。

 本日、質疑終結、採決しようとしていることに対して、私は最初に厳しく抗議をして、法案について、以下、質問をしたいと思います。

 私は、十日の衆議院本会議におきまして、本法案では、米軍の戦闘機が現にアフガニスタン本土攻撃のため発進しているペルシャ湾、アラビア海洋上にある米空母に武器弾薬を輸送できるんですか、こう質問をしました。総理からは明確な答弁はありませんでした。

 昨日の委員会で、中谷防衛庁長官は、我が党の山口富男委員の質問に答えて、基本的には、一概に言えないが、空母の所在する場所は人に対する殺傷が行われていない地域である、戦闘地域ではない、こういう趣旨の答弁をいたしまして、自衛隊がペルシャ湾、アラビア海洋上にある空母にまで武器弾薬を輸送できる旨、答弁をしたわけであります。

 長官、トマホークが発射される米艦船が所在する洋上が、場所が戦闘地域でなくて、着弾地点であるアフガニスタン本土だけが戦闘地域だとの答弁は、私は、到底納得できる答弁ではありません。国民だれも、こんな答弁、納得できないのじゃないのでしょうか。常識に反するのじゃないでしょうか。長官、昨日の答弁を撤回すべきではないですか。

中谷国務大臣 御指摘の答弁につきまして、私は、トマホークミサイルというようなことを言っておりません。しかも、一般論といたしまして、ミサイルの発射が戦闘行為かどうかという問いに対して、ミサイルにはその性能、構造、操作方法にさまざまなものがあるために、一概に、すべてのミサイルについて、それが発射されることのみもって直ちに戦闘行為に該当するわけではないという趣旨を述べたものでございます。

木島委員 本日のこの委員会の午前中の、我が党の赤嶺政賢委員の質問に対しても、長官は、一般論としてという言葉で逃げようといたしました。

 私は、具体的に聞きますよ。現に、アラビア海洋上、ペルシャ湾洋上にアメリカの艦船は停泊しています。その艦船からトマホークが発射されています。アフガン本土に着弾しています。たくさんの人が殺傷されています。建物が破壊されています。現に、こういう事実があります。当然、日本の防衛庁はつかんでいなきゃならぬ事実でしょう。知らぬとは言わせません。そのときに、発射する米艦船が戦闘地域でなくて、着弾しているアフガン本土だけが戦闘地域だ、そういう答弁されますか、それは否定しますか。

中谷国務大臣 具体的なその地域が戦闘地域に入るかどうかと、個別のことについては、私はお答えをいたしておりません。そのある地域が戦闘行為が行われているか否かについては、個別具体的に判断するものだと考えておりまして、その地域においてその行為が行われているかどうかというようなことでお答えをさせていただきたいと思います。

木島委員 そんな答弁には到底、納得、承服できません。

 というのは、現に、戦闘行為が米軍、英軍によって行われている。トマホークの発進地点はペルシャ湾だ、ペルシャ湾洋上の米艦船だ。着弾地点はアフガニスタンだ。現にある。これからも続くでしょう。この法案は、成立をすれば、その洋上の米艦船に弾薬武器、水その他を日本の自衛隊が補給できるかどうか、輸送できるかどうかがまさに問われているんですよ。

 政府は閣議で基本計画をつくり、具体的な地域について防衛庁長官は決めなきゃいかぬのですよ。迫られているのですよ。与党は、一刻も早く採決したい、この法律をつくりたいといって提出してきたのじゃないですか。だから、具体的に聞いているのですよ。現に、そういう状況がある。

 では、ペルシャ湾洋上のトマホークを発射している艦船は戦闘地域なのか否か、答えてください。

津野政府特別補佐人 これは戦闘地域についての一般的なお答えになろうかと思いますが、現に戦闘行為が行われている地域といいますのは、殺傷あるいは破壊の結果が発生した場所が入るのはもちろんでございますけれども、問題の所在が、その戦闘を行っている諸外国の軍隊等に対して行われる我が国の自衛隊の協力支援活動が当該戦闘行動と一体化するものとして評価されるかどうかというような点にあります以上は、この現に戦闘行為が行われている地域に該当するかどうかの判断に当たりましては、結果の発生地だけではなく、戦闘行為を総合的にとらえる必要があると考えられます。

 そこで、お尋ねのように、目標に向けて遠距離砲、弾道弾ミサイル、弾道弾あるいはミサイル等が発射されるときに、一般的な場合のこととして言えば、もはや戦闘行為が開始されている、ないしその戦闘行為の一部となるというふうに見るのが相当であろうと考えております。

 しかしながら、昨日来議論になっておりますのは、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘行為の行われることがないと認められる地域に該当する場合には当然その協力支援活動は行うことができるであろうというような趣旨で答弁しておりまして、防衛庁長官のおっしゃることは一般論として理解すべきものでありまして、その上で、個々具体的なケースに従って十分検討してまいるべき問題であろうというふうに理解しております。

木島委員 法制局長官の答弁、きのうの答弁と百八十度ひっくり返しましたね。一般論か否かというごまかしをつけながら、ひっくり返しましたよ。重大な答弁ですね。今の法制局長官の答弁は、トマホーク発射の艦船、着弾地点と距離が大分ある、そういう想定でしょう。そのとき、一般的には戦闘行為と見られるという答弁をいたしました。そうしたら、具体化しますよ、現にペルシャ湾洋上にある、トマホークを発進させている米艦船は戦闘地域であって、そこには自衛隊は武器弾薬を輸送できませんね。

津野政府特別補佐人 きのうからもお答えしておりますように、その地域におきまして現に戦闘行為が行われておらず、かつ、協力支援活動の期間中を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域、それに該当しておれば、そういう場合も当然あり得るわけでございますので、そういう場合には協力支援活動が行うことができる場合もあり得る、できることもあり得るということでございます。

木島委員 わけのわからない答弁やっていますでしょう。できるかできないか、わからなくなりましたよ、今の答弁。そんな法律でいいのですか、この法律。

 きのう防衛庁長官の答弁は、それは聞いている人、議事録を精査しても明らかですよ。ミサイル発射の米艦船には、それは殺傷が行われている地域でない、発進地域だ、アフガンと違うということを前提にして、戦闘地域でない、そういう論の組み立てをしました。だから自衛隊の武器弾薬の輸送はできるんだと答弁しました。だから、きょうのマスコミは一斉にこのような報道をしたわけでしょう。今の法制局長官の答弁は、ひっくり返しましたよ。ひっくり返しはしませんが、最初の答弁は、一般的には戦闘地域と見られると答弁しましたよ。二度目には、いろいろ理屈をつけて薄めようとしましたよ。

 私は、この法律で一番中核概念は何か。戦闘行為が行われている地域か否かなんです。なぜか。武装した実力部隊である自衛隊が行ける地域か行けない地域かが、まさに、この戦闘地域か否かで決められているからなんです。最も大事な中核概念ですよ、戦闘地域か否かというのは。

 私は、きのうのこの防衛庁長官の言い方は、そして、きのうの法制局長官の答弁は、根本的に間違っていると思います。その理屈を言います。

 それは、法案第二条「基本原則」の第三項に、戦闘行為の定義がきちっと書かれているのです。「対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域」、これがいわゆる戦闘地域です。そして、その基礎概念である戦闘行為について明確な定義があるんですよ。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」私は法律家です。概念、明確ですよ。「人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」これが戦闘行為です。そして、それが行われている地域を戦闘地域という上位概念でこの法律は組み立てられているんです。

 そこで、聞きますよ。トマホークを発射して武力攻撃が行われる場合、発射地点と着弾地点に距離がある場合、この法律で言う、今私が指摘をした戦闘行為はまさに発射行為しかないじゃないですか。トマホーク発射という武力行使の場合に、この法律で言う戦闘行為、「人を殺傷し又は物を破壊する行為」ですよ。場所じゃないですよ。発射行為しかないじゃないですか。認めますか、防衛庁長官。

中谷国務大臣 私は、トマホークについては一言も発言をしておりません。ミサイルについては、その性能も構造もいろいろな種類がありますが、トマホークのミサイルの発射に際しましては、我が国は持っておりませんが、一般論といたしまして、そのミサイルが発射後に人による誘導などの行為による作用を受けることなく、自動的に目標に正確に到達して爆発する構造になっている場合、当該ミサイルの発射が、人を殺傷し、または物を破壊する行為に当たるというふうには考えます。

 しかし、他方、仮にあるミサイルが発射した後、人の誘導などを受けて初めて目標に到達して爆発する構造になっている場合は、その当該ミサイル発射自体は、直ちに人を殺傷し、または物を破壊する行為には当たらないというふうに考えておりまして、トマホークミサイルについては、我が国はそれを保有しておらず、その性能、構造、操作方法の詳細を承知しているわけではないので、確たることは申し上げませんけれども、仮にトマホークミサイルがそのような構造を有している場合には、その発射は戦闘行為に当たると考えられますが、トマホーク自体も射程があって、距離の限界があるわけでございます。

 そういう点を考えますと、その地域が現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われないと認められたら、御指摘の洋上にある空母にしても護衛艦等にあっても、我が国による対応措置の実施は可能であるというふうに考えております。

木島委員 人の誘導が途中で行われないで、トマホークが発進されてそのまま着弾した場合は、そのトマホークの発進地点が戦闘地域で、自衛隊は行けない。たまたまそのトマホークに人の誘導装置がついていて誘導がされているような場合は、そのトマホークの発進地点はこの法律で言う戦闘地域でないから、自衛隊が行ける。そんな理屈でこの法律は成り立っているんですか。

 総理、わかりますか。そんないいからかげんな基準で、戦闘地域か戦闘地域でないか、非戦闘地域か戦闘地域かの区別がそんないいからかげんなことで分けられるということでこの法律は成り立っているんですか。全然常識的でも何でもないじゃないですか。総理、どう思います、今の答弁。

小泉内閣総理大臣 そこが変わっているんですよ、今。テロが、テロ行為が……(木島委員「テロ、関係ない」と呼ぶ)いや、関係あるんです。これはテロ対策ですから。

 というのは、テロははっきりとした軍事施設なり軍事攻撃拠点を見せない。そして、戦闘行為もどこで起こるかわからない。そして、それが継続的に起こるか散発で終わるかもわからないんです。ニューヨークがそうですね。一時期は、世界貿易センターは二機ぶつかったから継続とは言える。しかし、それが終わっちゃったらもう継続されていないんです。それと、これからどういうテロ行為が起こるか。テロリストたちは予告していますが、どこでどのような武器を使ってテロ行為を起こすかということは言っていない。

 だから、そういう意味において、戦闘行為が継続して行われているか、そこが戦場になっているかというのは判断できるんです。だから、そういうところには自衛隊は派遣しません。武力行使は自衛隊はしません。戦闘行為に参加しない、戦場になっているところに派遣しない、そういう中で、状況を見て物資を運ぶことは可能であるということを御理解いただきたい。

木島委員 今の総理の答弁は全くインチキ、でたらめです。

 戦闘行為の概念を私は聞いているんです。しかし、相手がテロだから、この法律は違うんだとおっしゃいました。とんでもありません。私は今ここに周辺事態法を持っております。周辺事態法の中核概念も戦闘行為です。読んでみますか。「戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)」ここに今、テロ特措法を持っています。中核概念、「戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)」全く同じ言葉じゃないですか。

 テロだから解釈が違うなんという、そんないいかげんな解釈が日本の法律解釈で許されるはずないでしょう。総理がこの法律をそんないいかげんな、相手がテロだから戦闘行為の概念が違うんだ、そんな説明が通るはずはありません。

 先ほど法制局長官や防衛庁長官がいろいろな理屈を述べましたが、本当にこの法律で戦闘行為が行われる地域と非戦闘地域を分ける基本的な物差しは何か、この法律で自衛隊が行動できる地域か否かを決める最も大事な基本概念ですから、わかりやすく、本当に国民が聞いてわかりやすく、戦闘地域と非戦闘地域を分かつ分水嶺、物差しを述べてください。

中谷国務大臣 この法律には戦闘地域という言葉は書かれておりません。あえて戦闘地域というふうに言いますと、戦闘行為が行われている地域というふうにいたしますと、我が国の活動実施は、我が国の領土及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域に限定をされておりまして、この戦闘行為というのは何かといいますと、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為でございます。

 その地域が該当するか否かという点については、国連その他の国際機関、当該地域で中心的な活動を行っている諸外国の部隊、外国の領域で実施する場合には当該外国からの情報と、我が国がみずから収集した情報等を合わせて総合的に分析することによって、我が国として主体的かつ合理的な判断を行うというふうにいたしております。

木島委員 全然聞いていてわかりませんね。全然説明になっていません。この法律で、トマホークを発射する米艦船の所在場所が戦闘地域でない、着弾地点であるアフガンが戦闘地域だ、その説明と同じ説明を私は求めているんですが、まともな答弁になっていない。

 では、ずばり聞きますよ、私の方から。きのうの防衛庁長官の答弁や法制局長官の答弁などを総合いたしますと、結局、敵と、この場合タリバン政権でしょう、アルカイダでしょう、敵と交戦状態にある地域か否かが戦闘地域と非戦闘地域を分ける基準ではないんでしょうか。もっと具体的に言います。米艦船からトマホークが発射されていきます。そのトマホークを発射する米艦船に対して、相手方、タリバン政権、アルカイダから反撃として、相手方、敵がミサイルなどを撃ち込む能力を持っている場合、トマホークを発射すれば、相手が持っていれば反撃してきて、トマホークが来る、爆撃機が来る、その場合は、米艦船の存在場所、ペルシャ湾洋上も戦闘地域になるが、そうでなければ非戦闘地域だということなんですか。そうなんじゃないんですか。

 もっと言います。

 敵からの反撃が基本的に想定されない、相手、敵はそんな能力がない、そういう地域は、幾らトマホークをぶち込んでも反撃されませんから平穏です。交戦が行われていない地域になる。そういう地域は、戦闘行為が行われている地域ではない、だから、自衛隊は輸送できる。結局、突き詰めて考えますと、そこに帰着するんじゃないか。法制局長官、どうですか、答弁してください。

津野政府特別補佐人 お答えいたします。

 これは、委員のおっしゃっておられるのは、向こうからの反撃がないと、そこはいわゆる交戦地域とかなんとかということにならないのではないかと言っておられますが、この法律上はそういう概念は使っておりませんで、要するに、我が国の対応措置ができるところ、こういうところは、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということになってございますから、非戦闘地域とか交戦地域とかそういう概念ではなくて、ここに書いてあります、きちっと法律で定義してあります地域において、いろいろ協力支援活動とかそういうものが行われる、そういうことであれば武力行使と一体化することもありませんし、そもそも武力行使をしているわけではございませんので、憲法との関係で問題があるということにはならないということであります。

木島委員 確かに、この法律には交戦状態という言葉は使われておりません。だけれども、私がさっきからずっと、共産党がこの法案で質問をずっと続けてきているんですが、大体、ペルシャ湾上の米艦船からトマホークが発射された場合に、その艦船がいわゆる戦闘地域か否か、まともな答弁、くるくる変わったり答弁できなかった。きのうは明確に戦闘地域ではないというような答弁も出てきて大問題になった。そういうのは結局は、突き詰めていくと、政府は、これまでの周辺事態法もそうでしたよ、実際にドンパチが行われている交戦地域か否かで線引きをしていると判断せざるを得ないんです。時間が迫っておりますから、指摘だけしておきます。

 昨日の朝日新聞には、「脅威見えぬ「最前線」」と書かれた見出しが出ております。米空母エンタープライズに同乗した記者の記事が出ております。「「ここは一番安全な場所の一つだ」と艦長は攻撃開始後、艦上の記者たちに語った。」とあります。また、同じ十四日の記事には、アメリカ・ブッシュ大統領は、「戦闘の第一段階の目標は達成された」、「タリバーンの軍事力は弱体化し、防空能力を破壊した」と説明しました。

 要するに、米軍による一方的な空爆が行われるだけで、敵方、タリバンからの反撃が全然想定されない、こういう地域では、結局今までの政府の答弁を総合いたしますと、戦闘行為が行われていない地域、私の言葉でいえば、交戦状態にない地域として、自衛隊が行ける地域というふうにならざるを得ない。そうなりますと、米軍の勢力が強くて相手の反撃能力が弱まるほど、戦闘行為が行われる地域は狭まって、自衛隊の活動領域が広くなる、敵陣近くまでが活動領域となる、そういう構造をこの概念は持っていると言わざるを得ません。

 このような自衛隊の米軍に対する兵たん支援が、米軍の交戦、武力行使と不可分一体であることはもう明々白々だ、まさに憲法の禁ずる武力行使を自衛隊がやるということになる、このような憲法に反する法律はきっぱりと廃案にすべきだと思います。

 最後に、九月十一日の卑劣なテロは絶対に許せません。私は、十日の本会議質問で、国連を中心とした国際政治の場で的確な告発と制裁という手段が尽くされないまま軍事行動と戦争になったことは重大だと指摘をいたしました。二つの危惧が、空爆が続く中で現実のものとなってきていると思います。

 一つは、罪なき市民の犠牲者の増大であります。

 空爆開始九日目でありますが、空爆によって数百人の死傷者が出ていると報道されています。本日の赤旗新聞には、ペシャワールにいる特派員からの報道が出ております。「ペシャワルから車で三時間の町アフガンのジャララバードから逃げてきたアブドラ・カディールさんは証言します。「逃げる途中にたくさんの死体や負傷者を見た。人口二百人のカルスク村(ジャララバード近郊)は空爆で廃虚になって住民の大部分が死んだ」」こういう報道もあります。

 もう一つの懸念、危惧は、明らかになっているのは、武力攻撃が、テロの容疑者、組織者、支援者を国際社会の中で追い詰め、居場所をなくすという点でも、大事な国際社会の団結に亀裂を生み始めているということだと思います。マレーシアのマハティール首相や、人口二億人、世界最大のイスラム教国インドネシアのメガワティ大統領、またイスラム民衆のこういう空爆に対する抗議が広がっております。国際世論の亀裂と分裂は、テロ勢力に破壊活動の条件を広げてしまうんじゃないでしょうか。テロ集団が跳梁ばっこする場所を温存させてしまうのではないかと思います。

 総理に質問しようとしましたが、もう時間がありませんから、そのような危惧を私は持っていると考えます。

 日本共産党は、一部の国の軍事力行使から国連中心の制裁と裁きへと道を切りかえる、国連としての容疑の確認、身柄引き渡しの要求、国連としての制裁、厳正な裁判がテロ根絶のために大事だ、そのためにも報復攻撃を中止することを改めて求めたいと思います。

 そして最後に、私は、ノーベル平和賞の受賞者、南アフリカのマンデラ前大統領、ツツ主教、デクラーク元大統領の三人が本年九月十九日連名で出した共同声明の中から、次の一文を紹介して、総理に聞いていただいて、質問を終えます。

  われわれは、この危機に覆われた時期にあって、賢明な指導者と優れた政治家を必要としている。とられる行動が、危機を深め、世界をさらに分裂させることがあってはならない。紛争と分裂がおこるそのような状況こそが、テロのはびこる肥沃な土壌となるからである。

この言葉をしっかりかみしめていただきたいということを重ねて総理に要望いたしまして、私の質問を終わります。

加藤委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。

 次に、今川正美君。

今川委員 社民党の今川正美です。

 中谷防衛庁長官に昨日お尋ねした点で、時間の関係でもう少し突っ込んで質問したかったところが抜けていましたので、御質問いたします。

 実は、今回の自衛隊法の一部改正にかかわって、私は、昨日もいわゆる防衛秘密のことに関して質問いたしました。

 実は、随分以前の話になるのですが、七二年の六月に、例の外務省の公電漏えい事件というのがございましたね。これは、当時日米間の沖縄返還交渉にかかわって密約問題ということが大きく問題となりまして、その中身は省きますが、最終的には、一九七八年の六月二日、最高裁で当時の新聞記者の有罪が確定をしました。そのときは、国家公務員法百十一条で裁かれたわけですね。いわゆる秘密漏えいを唆す罪というふうになっていたはずであります。

 そのときも、随分これは大きな、新聞各紙が報道しまして、いわゆる報道とか取材の自由にかかわる問題、ひいては憲法第二十一条の言論、表現の自由とのかかわり、国民の側からすると知る権利にかかわる大変大きな事件であり、裁判であったと記憶しています。

 実は、これとの関係で、今回政府から提出されていますこの法案の中で、第百二十二条「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者がその業務により知得した防衛秘密を漏らしたときは、五年以下の懲役に処する。」その中で、六項目ありまして、四項目めの「第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。」とあります。

 私が問題にしたいのは、今、冒頭に引用しました外務省公電漏えい事件とのかかわりで、百二十二条の四項、この教唆というところが、長官、いわゆる報道関係者の報道の自由であるとか取材の自由というところを侵害しはしないかというおそれがあると思うのですが、この点はいかがですか。

中谷国務大臣 お答えいたします。

 この件で、先ほどお話しされたのは一九七八年の西山事件の判例でございますが、報道機関者による教唆は、手段、方法が刑罰法令に触れる、例えば贈賄、脅迫といった犯罪行為を用いるような場合、また、当該防衛秘密を取り扱うことを業務とする者の個人としての人格の尊厳を著しくじゅうりんするなど、法秩序全体の精神に照らして社会観念上是認することができない形態、例えば情を通じるなどの行為、これを用いるような場合でなければ教唆に該当いたしません。この考え方は現行の自衛隊法や国家公務員法の守秘義務にかかる教唆と同じであり、いわゆる西山事件判決における考え方と同じものでございます。

 したがいまして、通常の取材活動が自衛隊法改正案百二十二条第四項に規定する教唆に該当することはなく、本法案が報道の自由を侵す危険を有するものであるということはありません。

今川委員 今の点、もう少し確認をしたいのですが、その七八年に最高裁で確定した、これは、一つは外務省にかかわる秘密漏えいということでもあったわけですね。

 私がお尋ねしているのは、例えば、今回出されたこの法案にかかわって、これは外務省の秘密ではなくて防衛秘密ですよね、そうした場合に、新聞記者の側は正当な取材を、例えば防衛庁関係者であるとか、あるいはそこに契約を結んでいる民間業者であるとか、この法案に説明をされているような防衛秘密に接触をしている人々に取材をした場合に、本人は合法的、正当な取材をしたつもりでも、これがケースによっては不当であるという形で、情報を漏らした側はもちろんこの法案が成立した場合には罰せられるわけですけれども、取材をした側も、先ほど申し上げました、例えば外務省の漏えい事件の場合には、国家公務員法の百十一条で、秘密を漏らした者だけじゃなくて、秘密漏えいを唆す、つまり教唆するという意味で、今回出された法案の場合にもそういう危険性があるのではないかということを今お尋ねしているわけです。その点、いかがですか。

中谷国務大臣 この判決の最高裁の部分を読ませていただきますが、報道機関といえども、取材に関し、他人の権利、自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないということは言うまでもなく、取材の手段、方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合はもちろん、その手段、方法が一般の刑罰法令に触れないものであっても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しくじゅうりんする等、法秩序全体の精神に照らし、社会観念上是認することのできない形態のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し、違法性を帯びるものと言わなければならないというふうになっておりまして、考え方はこれと同様でございます。

 今回の教唆というのは、この手段、方法が刑罰法令に触れる贈賄、脅迫といった犯罪行為を用いるような場合、また人格の尊厳を著しくじゅうりんするなどの場合でなければ教唆に該当いたしません。現行の自衛隊法、国家公務員法の守秘義務にかかる教唆と同じでございます。また、この判決と同じでございます。

今川委員 それでは、今回の法案は、一つの例として、報道機関関係のいわゆる報道とか取材の自由を侵害するような内容にはなっていないということを断定する、それを確認させてもらっていいんですね。

 昨日の長官のお答えでは、いわゆる処罰の対象者は大きく三点に限っておるということでありましたけれども、民事上の処罰といいますか、というふうにお答えになっていますが、今回は、国家公務員だけではなくてそこに関係する民間業者なども、民事上の責任というよりも、はっきりこの法案では刑事上の罰を与える、加えるというふうになっていますね。その点いかがですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございまして、今回の改正におきまして、対象者を、民事上を含め、従前から何らかの秘密保全上の責任を有していた防衛秘密を取り扱うことを業務とする者に限定をいたしております。

 具体的には、防衛庁の職員、また国家公務員、そして三番目に「防衛庁との契約に基づき防衛秘密に係る物件の製造若しくは役務の提供を業とする者」というふうになっておりまして、この防衛秘密を取り扱うことを業務とする者には、防衛庁との契約に基づいて防衛秘密に係る物件の製造もしくは役務の提供を業とする者、すなわち民間人、これは企業の工場などで防衛秘密を担当する従業員などが含まれますけれども、これは十分な秘密保全を図るには、反復継続して防衛秘密を取り扱うこれらの民間人も含めて、防衛秘密を取り扱うことを業務とする者が当該防衛秘密を漏えいする行為を厳正に防止をし、秘密漏えいをその根源において防止するという必要があるから、この者に限って設けたわけでございます。

今川委員 もう交代しなければなりませんが、最後に一点だけ。

 今回のこの自衛隊法の一部改正、この委員会で、むしろ一番最初のいわゆる特別措置法の方にかなり各党の質問が集中しておったわけですけれども、あの法案の場合には、それぞれ総理以下、これは緊急性を要する、テロ対策のために必要であるということを盛んにおっしゃり、だから時限立法であるということをおっしゃっていました。

 この自衛隊法の一部改正、昨日の長官の御答弁では、例えば、昨年九月の防衛庁に関する秘密漏えい事件などがあったから、その反省と教訓に立って出したんだとおっしゃるけれども、では、それは自衛隊員の犯した事件であって、ここに盛られているような民間は関係ないじゃないですか。なぜこんな形で、ちょっとあからさまに言えば、テロ対策ということに乗じた形で広く網を広げて罪を重くして、場合によっては報道機関まで含めて対象になり得るようなものを、なぜ出してきたのか。

 昨日も申し上げましたが、確かに、八五年に自民党などが提案された国家秘密法案の中は、防衛秘密だけではなくて外交秘密も含まれていましたが、この自衛隊法の一部改正案には外交秘密は当然入っていませんが、私は、国家秘密法案の少なくとも半分以上はこの中に盛り込まれているという認識をしているんだけれども、その点いかがですか、最後に。

中谷国務大臣 これはあくまでも自衛隊法の改正でありまして、その対象者も防衛にかかわる専門的な者とごく限られておりまして、一般国民全部を対象とした、またマスコミを対象としたものでないという点をぜひ御理解いただきたいと思います。

今川委員 終わります。

加藤委員長 これにて今川正美君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川智子君。

中川(智)委員 社会民主党の中川智子です。私は、小泉総理に伺います。

 小泉総理は、ハンセン病の控訴断念や阪神・淡路大震災のときの被災者支援、さまざまな人の命の重さをよくわかっていらっしゃる政治家だと、私は日ごろからそのように総理を見ておりますし、それに対して信じたいという思いがございます。

 今、空爆が始まって以来、アフガンで、あのやみの下で逃げ惑っている子供たちやさまざまな罪なき市民、その人たちに対して、そのことで逃げ惑いながら死んでいく命に対して、総理はどのようにお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 アフガンに対する空爆以前から、無関係な無実の方たちが何人テロリストによって殺されたか、これも考えなきゃ、このテロ根絶の闘いというのは結局テロリストの言うとおりせよというおどしに屈してしまうおそれがある。

 私は、ああいう空爆によって亡くなられる方、本当に痛ましい思いを持って見ています。しかし、それだからといって、それではテロによって犠牲者が、このまま放置して、もうなくなるか。そうじゃないですね。今まで、過去も何件犠牲者になった方がいるのか、テロによって。これにもう我慢ができないということで今世界が立ち上がっているんですから、私は、このテロリストとの闘いというのは大変難しい闘いでありますけれども、多くの無実の市民があのニューヨークのような悲惨な惨事に二度と巻き込まれないように、また、多くの無関係の市民が殺されないようにするために、日本も毅然としてこのテロに立ち向かわなきゃならないんだと思います。

中川(智)委員 私が質問したのは、テロ犯、そのグループ以外の罪なきアフガンの国民が逃げ惑っていて死んでいく状況に対してどうかと質問したわけですね。それに対しての質問の答弁にはなっていません。

小泉内閣総理大臣 今話の中で答弁したはずですよ、速記録を読んでいただければ。そういう悲惨な、犠牲になっている方に対しては胸痛む思いであるということを今までの答弁の中でちゃんと私は話しているんです。

 そういう話の中で、それでは、テロが無実の人を犠牲にしているということに対して我々はどうすればいいのかということを考えているのがこの法案なんです。

中川(智)委員 私は、テロに対しては憎んでいます。テロを二度と繰り返してはいけないと思っています。

 その報復行為がまた罪なき人々を殺している現状と、そしてまた今、日本国民の中には、この報復攻撃が始まって以来、新たな命の危険を感じている、やはり、自衛隊が海外に行く、このことがテロの根絶になるのではなく新たな命の危険を呼ぶということに対する国民の不安に対しては、どのようにお答えになりますか。

小泉内閣総理大臣 何もしなくても新たな脅威を生んでいるんですよ。そう思いませんか。

 それでは、何もしません、ニューヨーク、これはテロの言うとおり、アメリカが敵だ、アメリカを殺せとテロリストが堂々と宣言している、姿を見せませんけれども。しかし、今我々が何もしないでそういうテロの脅威におびえないで済むか。そうじゃないですね。もう以前から多くの国民が、市民がテロの脅威におびえているということは、今までの過去の事件が証明しています。

中川(智)委員 私は、何もしないということは言っていません。このテロ行為があった後、すぐにもう自衛隊海外に派兵、憲法を逸脱した、憲法違反のこのような法律を拙速にたった五日でやっていくということに対して、では総理、この新法をつくる前に、平和的に解決しようという努力を、どの時点で、どのように具体的にやったかを端的に答えてください。

小泉内閣総理大臣 かなり、日本も含めて国際社会はこのテロリストに対する対応はやっていますね。国連の安保理決議でも、ウサマ・ビンラーディン、今言われているテロリスト、身柄を引き渡しなさいと決議しているけれども、相手は言うことを聞かない。何回決議しても言うことを聞かない。言うことを聞かないどころじゃない、次々にテロを起こしている。法によって裁きなさい、出てきなさいと言っても、テロはなくならなかったわけです。これからも続けようとしているわけですね。

 だから、これに対して、もうこのまま放置しておくことはできないということで、できるだけの、テロ撲滅のための、国際社会が協力してやっていこうということで、今、世界各国が立ち上がっているわけでありますから、何もしていないわけじゃないんです。

 今までの対応ではなかなかテロリストが黙らなかった。それに対して、あのニューヨーク、ワシントンの同時多発テロを契機にして、もう黙っていられない、一国だけではこのテロ撲滅、抑止に効果が出ない、できるだけみんな参加して、協力してこのテロリストに立ち向かおうということでありますので、日本としては、武力行使はしませんが、戦闘行為には参加しませんが、できるだけの支援態勢はとっていきたいと考えております。

中川(智)委員 総理の答弁はいつもそのような形で、テロか戦争かというような二者択一で本当にはぐらかしていく。それがやはり私は、午前中に福田官房長官がおっしゃいました、何でもありではないと。本当の勇気というのは、このような形でテロに対して武力行使をするのではなく、もしも勇気があるならば、日本が、もしもアメリカの自衛権の行使が際限なく広がる場合、アメリカはそこまでやるべきではない、それはやり過ぎではないかということを総理はきっちり言う勇気というか、言う決意というのはおありなんですか。それがどのような時点かということを明確に教えてください。

 私は総理に聞いております。ずっと質問通告は総理にしておりますので、総理に。

福田国務大臣 私の名前を挙げられたので、私からまずお答えします。

 何でもありではない、こういうふうに申しましたのは、今日の国際法において、文民や民用物を無差別に攻撃することは原則として許されない、こういうことになっているんですね。

 個々の攻撃とか爆撃の、さっきそういう質問がございましたのであわせて答えますけれども、爆撃の法的な評価については具体的な事実に即して判断するのでありますけれども、パウエル米国務長官は、当面の軍事作戦においてはウサマ・ビンラディン及びアルカイダの基地を目標とする旨述べております、これは十月三日の記者会見でございますけれども。そういう範囲で米軍も攻撃をしているということです。

小泉内閣総理大臣 今、官房長官が答弁したとおりで、我々としては、このテロとの対決、たとえテロリストがアラブ人であってもイスラム教徒でもそうではないんだということをブッシュ大統領にも直接の会談の席でもお話ししましたし、そしてブッシュ大統領も、全くそのとおりだ、今回のアフガンに対する武力攻撃も、アフガニスタン国民に対する攻撃じゃないんだ、テロリスト並びにテロリストの拠点、テロリストを支援するグループに対する攻撃であって、アフガニスタンに対する攻撃ではないんだということで、極めて限定的に、冷静に、そして忍耐強く対応しなきゃならないということで我々は立ち向かっているわけでありますので、何でもありということじゃないです、これは。

 それは、今の時点においてのアメリカの武力攻撃は正当性があると思って我々は支持しているわけでありますので、何にも、今までどおりでいいというわけにはならぬでしょう。今まで言うことを聞いていないんですから、テロリストたちは。

中川(智)委員 私は、もう少し具体的に、この戦火がアフガン以外の国に広がってしまうおそれがある時点での日本の対応というのは、具体的には今総理はどのように考えていらっしゃいますか。

小泉内閣総理大臣 今回のテロとの闘いは、まず、国と国との対決ではない。テロリストが一人ではない、複数である。組織も一国にとどまらない、何カ国にわたっているかわからない。そして、はっきりとした拠点が目に見えない。今までの戦争と違うんですね。国と国との対決でもない。そういう時点において、その状況を見ないとわからない、テロがどこで起こるかわからない。その状況を見ないとわからないので、これから何をしていいか、何をしてはならないかというのは、状況を見て判断するしかないと思います。

中川(智)委員 状況を見るのはアメリカであって、その中での日本の独自性というのはどこにあるんですか。

小泉内閣総理大臣 ニューヨークでテロが発生しましたけれども、日本人も犠牲になっているんですね。日本に起こらないとは言えないんです。

 状況を見て日本は主体的に判断しているんです。主体的に、アメリカは個別自衛権で立ち向かっている、イギリスは集団的自衛権で立ち上がっている、NATOの諸国もそうでしょう。日本は、個別自衛権でもない、集団自衛権でもないけれども、このテロの撲滅のために、抑止のために、日本は主体的に、武力行使はしない、戦闘行為には参加しない、できるだけのことをやりましょうと。まさに主体的に、積極的に立ち向かおうとしているんです。

中川(智)委員 主体的にするんだったら、憲法の精神をしっかりと生かして、憲法九条のその精神で主体的に各国に働きかけていくべきでしょう。その平和貢献というのは一切せずに、もうすぐに戦争というか戦争協力ということで、たった五日間で、国民の意見もしっかり聞かずに、拙速にきょうこの場で採決しようとしている。それに対してはもう断固とした形で抗議するし、めちゃくちゃな答弁、この間繰り返されてきて、こんなことにはだまされないというのが私たちの思いです。

 そうしたら、人道的支援ということをこの法律の中ではうたっていますが、具体的に難民支援のことで伺います。

 先日、予算委員会で我が党の辻元さんの質問の中で、この十年間、アメリカが難民受け入れしたのは八万二千三百人、フランスが七万三千百人、ドイツが十五万六千七百人、日本は何と四十九人です。自衛隊機を飛ばすなら、アフガンの難民の人たち、その人たちを日本に受け入れる体制、法的なものというのはきっちり準備されていますか。

小泉内閣総理大臣 それは、難民の支援の方法は国によって違いますよ。難民が、近いところはたくさん出るでしょう。あるいは、難民の事情にもよるでしょう。受け入れるだけが難民支援じゃない。日本は、難民の支援に対して、ほかの国ができない、日本の国力に応じて、国情に応じてやっているわけですから、同じようにする必要はない。(発言する者あり)具体的に言えといって質問すれば答えますけれども、いろいろやっているじゃないですか。もう各地区に物資を供給したり、具体的に言えというんだったら、いろいろ具体的に知っている方に答弁していただきますけれども、いろいろやっていますよ。もう時間が十分や二十分じゃ足りないぐらいいろいろ具体的にやっていますけれども、難民の受け入れ体制というのは国によって違うんです。日本も難民を全部受け入れればいいかというと、ほかの国と同じようにはいかない面もあるし、あるいはほかの国にはできないこともやっているわけです。

中川(智)委員 一週間前にアフガニスタンの人が日本で難民申請をして、そして今、入管で強制的に収容されている。たった九人の人でもこのような状態。十年間で四十九人。国力に応じてと。どんどんどんどん自衛隊ではお金を使うくせに、外に行くくせに、どういう形で国力に応じてということを言うんですか。やり方というのは、具体的に難民を十年間で四十九人しか受け入れていないということに対してどう考えるのか、それに対して受け入れ体制をつくるのかどうかという質問です。総理、きっちり答えてください。

小泉内閣総理大臣 法的な面については説明員に答弁させますが、それは日本としては、不法入国者というものについて、非常に今いろいろ管理しなきゃならないという意見もあります。現に、かなりの数の不法入国者が日本に滞在しております。それと、正規の難民等の受け入れ等も、これからいろいろな事情もあるから考慮しなければなりませんが、そういう点についての技術的な点については、私は、法務省なりその専門官から、どういう事情があるのかということはお聞きいただければ答弁はすると思いますので、よろしくお尋ねいただきたいと思います。

中川(智)委員 総理、やはり、これは新しい事態だということでずっとこの法律つくってきたわけですね。新しい事態なのにもかかわらず、難民の受け入れだけは、今までのそういう手続で面倒くさくて、犯罪がふえるとかそういうことばかりで、自国のそういうわがままで難民受け入れをしない、これこそ恥ずかしい。今こそ世界に、日本は一万人なり五万人の難民受け入れをする、それが本当の意味での人道的な援助です。そのことをしっかり求めたいと思います。

 やはり、そのような希望を日本がつくっていくべき。それに対して受け入れシステムをつくるべき。何もないのに不法入国という形で収監してしまう、そのような排他的な、排外主義的な日本の人道的援助というのはまやかしです。難民受け入れをしっかり検討していただきたい。今の総理のお答えの最後で、くちゃくちゃくちゃとそのようなことは検討するということをおっしゃいました。それをしっかり受けとめて、そのような人道的な援助ということに対してぜひともお願いしておきます。

 それでは、最後に申し上げます。今、いろいろなミュージシャン、芸術家、市民の人たちがこの報復戦争に対してどんどんどんどん声を出しています。その中の一人のミュージシャンの坂本龍一さんの言葉を、きょう送られてきましたので聞いてください。

  二十一世紀の子供たちは、いつもテロと世界戦争の恐怖に、また制限された人権とプライバシーの下に、怯えながら暮らさなくてはならないのでしょうか?

  テロは武力で解決できません。戦争は答えではありません。テロの生み出す土壌は、世界にまんえんする富の分配の不平等と、人権の不平等です。これをなくさない限り、暴力の連鎖が続きます。その先には、核や生物化学兵器をも使った世界戦争による、世界の死滅です。そこには、勝者も敗者もありません。

これが彼のメッセージです。

 最後に、総理の答弁はいつも、介護保険のときでも、もう何十回と、やってみなくちゃわからない、やってみなくちゃわからないというのが、耳にたこができるぐらい聞いてきました。

 でも、今回のこの新法を成立させるということは、やったときにはもう遅いんです。取り返しがつかない。あなたは、改革の人として歴史に残るのではなく、二十一世紀最初の年に戦争を始めた、許すことのできない総理として歴史に名を刻まれてしまうのです。このことを本当に冷静に考えてください。社民党は、これらの戦争協力法を今すぐ廃案されるように強く求めて、終わります。

加藤委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして、ただいま議題となっております各案中、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案、自衛隊法の一部を改正する法律案及び海上保安庁法の一部を改正する法律案の各案並びに久間章生君外六名提出の修正案及び枝野幸男君外一名提出の修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより各案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。

河村(建)委員 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表して、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案及び同法案に対する与党修正案、自衛隊法の一部を改正する法律案並びに海上保安庁法の一部を改正する法律案の四法案につきまして、賛成の立場から討論いたします。

 まず、いわゆるテロ対策特措法案は、先般のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して我が国が実施する措置とともに、国連の決議または国連等が行う要請に基づき、我が国が人道的精神に基づいて実施する措置について定めることを内容とするものであります。

 かかるテロ攻撃は、命のとうとさを全く顧みない残虐非道な行為であり、アメリカ合衆国のみならず、人類全体に対する極めて卑劣かつ許しがたい攻撃であります。我が国としては、国際的なテロリズムに対して断固としてこれに立ち向かっていくとの決意を持って、このようなテロリズムとの闘いに対し、我が国自身の問題として主体的に取り組み、世界の国々と一致結束してテロリズム根絶のための努力を行わねばなりません。

 この法律案は、憲法の範囲内において、憲法の前文及び第九十八条の国際協調主義の精神に沿って、国際テロリズムの防止及び根絶のため、我が国として可能な限りの支援、協力について定めたものであり、我が国が民主主義社会の安全と発展のために主体的な役割を果たすことに当たって必要不可欠なものであります。

 本法案については、本日、与党三党による修正案が提出されたところであります。この修正案は、本法案についてのこれまでの審議を踏まえ、国会の承認に関する規定を設け、国会の責任を明らかにするとともに、外国の領域における武器の陸上輸送について修正を加えるものであります。この修正案は、政府原案の基本的な考え方と枠組みを維持しつつ、国民の一層広範な理解と支持を得ていくとの観点から必要なものであります。

 次に、自衛隊法の一部を改正する法律案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国で発生したテロリストによる攻撃等にかんがみ、本邦内にある自衛隊の施設並びに日米地位協定第二条第一項の施設及び区域の警護のための自衛隊の部隊等の出動を可能にするとともに、通常時からの自衛隊施設の警護のための権限を整備し、また、自衛隊が武装工作員等の事案や不審船の事案に効果的に対応するため、武器使用権限等を整備し、あわせて、我が国の安全が損なわれないよう、我が国の防衛上特に秘匿することが必要な秘密について、その保全と、仮にそれが漏えいした場合の罰則を整備することを内容とするものであります。この法律案は、我が国における同様のテロリストによる攻撃等への備え等に万全を期するためにぜひとも必要なものであります。

 最後に、海上保安庁法の一部を改正する法律案は、海上保安官が立入検査を的確に実施することができることとするため、海上保安庁長官が一定の要件に該当する事態であると認めたときにおいて、当該船舶の進行を停止させるために行う海上保安官または海上保安官補による武器の使用について、人に危害を与えたとしてもその違法性が阻却されることとすることを内容とするものであります。この法律案は、我が国の領域内において重大凶悪犯罪に関与している疑いを否定できない不審船による犯罪の発生を未然に防止するために不可欠なものであります。

 以上の理由から、これらの法律案に対する賛意を表する次第であります。

 なお、最後に、民主党提出の修正案につきましては、さきに述べました与党修正案の趣旨から賛成できないことを申し述べ、討論を終わります。(拍手)

加藤委員長 次に、桑原豊君。

桑原委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました内閣提出のいわゆるテロ対策特別措置法案並びに自由民主党、公明党及び保守党提出の修正案に反対、民主党提出の修正案に賛成、内閣提出の自衛隊法の一部改正案並びに海上保安庁法の一部改正案に賛成の立場で討論いたします。

 本年九月十一日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な犯罪行為であり、安全で民主的な社会を希求する私たち人類への許しがたき挑戦であります。

 民主党は、今回のテロを、私たちの平和と安全にとってこれまでにない全く新しい形の脅威ととらえ、テロ撲滅へのあらゆる外交努力による対応、国内外における徹底したテロ対策の措置とあわせて、国際協調の枠組みで、自衛隊の活用も含めた新たな対応措置が必要であると認識しております。その際には、日本国憲法の枠内で、周辺事態法での議論を踏まえ、しっかりとしたシビリアンコントロールのもとに行うべきとの考え方を示してまいりました。

 しかしながら、内閣提出のテロ対策特別措置法案並びに与党三党の修正案は、自衛隊を海外に派遣するに際しての国会の関与という点で、今回の委員会審議でも明らかになってきたように、看過できない重要な問題点を抱えております。

 以下、本法案に反対する理由を申し上げます。

 内閣提出案では、対応措置についての基本計画の決定、変更等を国会への報告事項としています。また、与党三党の修正案では、防衛庁長官がこれらの対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日から二十日以内に国会に付議して、これらの対応措置を実施することにつき国会の承認を求めなければならないとし、事後に承認を得ることとなっています。

 我が国の有事につながるおそれのある周辺事態への対応に当たってさえ、基本計画に定められた対応措置を実施する際には、原則、国会による事前の承認が必要とされています。

 この法案によって、自衛隊は、我が国の領域をはるかに超えて、公海上ばかりか外国領域内においても活動することが可能になります。PKO活動以外で戦後初めて自衛隊が海外で活動を実施するという歴史的な出来事となります。しかも、テロという新たな事態において、従来の後方地域という概念すらあいまいにした法体系のもとでの自衛隊の派遣については、極めて慎重に行うべきではないでしょうか。

 外交的には、現時点ではアフガニスタン及びパキスタンの対日感情はまだ良好であり、我が国は、米国等の他の諸国では難しいアフガニスタン和平や復興に向けて重要な役割を果たすことも可能と考えます。将来のアフガニスタンの和平と復興に向けて我が国が果たすべき役割を考えても、自衛隊の派遣には、海外の理解を十分に図る意味からも、国会の関与としての事前の承認が必要であります。

 この特別委員会での質疑を通じて、私たちは、想定される実施地域、対応措置の態様等について、再三再四政府にただしてまいりました。しかし、本法案が成立すれば、即座に基本計画が策定され、自衛隊が派遣されることが想定されるにもかかわらず、終始、今後事態がどのように推移するかわからないなどの理由で、具体的かつ適切な答弁は全く行われませんでした。

 内閣提出案の事後報告並びに与党修正案のような実施後二十日以内の事後承認では、自衛隊の海外展開が既に既成事実化している可能性も高く、対応措置の実施について、国会がシビリアンコントロールのもとにしっかりと歯どめをかけていくことは実質的に困難となります。自衛隊の海外における活動について、我が国の国益に基づき、法律の目的にかなった対応措置を実施できるように国会がしっかりと関与することは、第二次世界大戦において軍部の行動を国会が制御できなくなった反省に立っても極めて重要であります。

 民主党は、以上の点から、基本計画に定められた対応措置の実施等につき、原則、国会での事前承認事項とすることを内容とした修正案を提出いたしております。民主党の修正案への委員各位の賛同を改めて要請するものです。

 自衛隊法の一部改正案については、国民の生命財産の安全を確保する上で必要との政府案を理解し、賛成いたします。

 ただし、公共の安全と秩序の維持に関しては警察が一義的に責任を負うとの原則を踏まえ、本改正案で新たに規定された警護出動という、治安出動に至らない事態における重要施設警備などでの自衛隊の活用については、その対象、範囲、要件、警察との関係など、今後の国会審議を通じてさらにしっかりと検討していくべきと考えます。

 また、秘密保持への罰則のあり方については、国民の知る権利や報道の自由等の基本的人権を侵害しないよう運用すべきと考えます。

 海上保安庁法の一部改正案については、不審船に対する必要な対応措置と認識し、賛成いたします。

 最後に、国際協調の枠組みの中で、国民の生命と財産をしっかりと守っていくために、テロの防止に向けて、外交、内政ともに万全の対策をとっていくことを改めて確認し、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)

加藤委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりましたテロ対策特別措置法案並びに自衛隊法の一部を改正する法律案に反対、海上保安庁法の一部改正案に賛成、与党提出、民主党提出の修正案にそれぞれ反対の討論を行います。

 政府は、テロリズムとの闘いを我が国の安全確保の問題と認識して主体的に取り組むとしておりますが、我が国の安全確保、安全保障は、日本国憲法の運用、解釈にかかわるところであります。それにもかかわらず、この問題には全く触れず、何らの判断も示しておりません。

 そもそも政府は、集団的自衛権の行使を認めず、たとえ国連による武力行使容認決議があっても自衛隊は参加できないとしてきております。であるにもかかわらず、今回、その解釈を変えることなく、テロ対策という名のもとに自衛隊を派遣し、米国が行う戦争に参加しようとしているのであります。しかも政府は、国連安保理決議一三六八号のテロ非難決議を派遣の根拠としておりますが、この決議は武力行使を容認したものではありません。

 加えて、武力行使は行わないとしておりますが、自衛隊という軍事力を動かすこと自体が武力行使に該当するのは世界の常識であります。

 総理みずからが法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮するとしており、国民に対する全くのごまかしにほかなりません。このことを正当化するためには、日米安保条約の改定を含め、集団的自衛権の行使を認める以外にはないのであります。

 自衛隊という軍事力を動かすことは、政治の最も重い決断であります。そのような重大事を無原則、場当たり的、なし崩し的に行うことは、敗戦に至る昭和史の教訓を忘れたものであり、日本を再び誤らせることにほかならないと考えます。

 以上の理由によりまして、自由党は、政府提出の特別措置法案、自衛隊法の一部改正案に反対をいたします。

 また、海上保安庁法の一部を改正する法律案につきましては、唐突に提出された感は否めませんが、かつてよりの我々の主張とも合致をいたしますので、賛成をいたします。

 なお、与党提出の修正案、民主党提出の修正案ともに、政府案同様、根本的な考え方が異なりますため、反対であることを申し添え、私の討論を終わります。(拍手)

加藤委員長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 私は、日本共産党を代表して、テロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案に反対、海上保安庁法改正案に賛成の討論を行います。

 特措法案は、戦後初めて、現に起きている戦争に自衛隊が参加し、他国領土に出動するものであり、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めた憲法の平和原則に根本的に反するものです。

 米軍等への自衛隊の軍事協力は、地理的にも何らの限定がなく、また、米軍がいかなる戦闘作戦行動をとるかという面でも限定がありません。結果として、米軍等の軍事攻撃に自衛隊が白紙委任的に参加することになることは明白です。

 自衛隊の行う輸送、補給などの一連の支援協力活動や捜索救助活動は、米軍の武力行使と一体不可分であります。政府は、軍事攻撃を行っている空母や艦船に対する補給や武器弾薬の輸送を否定しませんでした。武力行使を直接行っている艦船に対する補給や武器弾薬の輸送が武力行使と一体でないなどという詭弁はおよそ成り立ちません。与党修正案は、陸上での武器弾薬の輸送を除外しましたが、そのこと自体、武力行使と一体とならざるを得ないことを示しているのであります。

 政府は、自衛隊の活動は戦闘行為がないところで行われると、しきりに答弁してきましたが、そうした地域が特定できないことも、この間の審議で明らかであります。

 武器の使用の拡大も重大です。政府は、不測の事態が起きた場合、現地住民への武器の威嚇や武器使用があり得ると認めました。これは、他国に派遣された自衛官の武器使用が武力行使を引き起こす危険性を示したものであります。

 また、米軍の戦争を支援している自衛隊が行う被災民支援は、難民を戦争に巻き込み、危険にさらすものにほかなりません。

 自衛隊の海外派兵を国会承認なしで行う政府案は、それ自体大問題でありますが、国会承認事項を入れたからといって、憲法違反の本質を変えるものではありません。

 このように、本法案は、世界の人々が平和のうちに生きる権利を確認し、国際紛争を解決する手段として、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を永久に放棄した憲法の原則に根本的に反するものです。

 また、自衛隊法改正案は、米軍基地への警護出動の新設や治安出動時などの武器使用権限の拡大、防衛秘密漏えい罪を新設し、防衛庁職員、自衛官初め民間人まで厳罰に処する規定を盛り込む極めて重大な基本的人権じゅうりんの内容を持つものです。自衛隊法改正をテロ対策に乗じて進めるなど、断じて許されません。

 このような重大な法案を、わずか五日の審議で、公聴会も開かず、しかも、短時日の審議を通じて憲法原則にかかわる大きな矛盾が露呈してきたにもかかわらず押し通すことは、憲法と議会制民主主義を真っ向から破壊するものであり、許されるものではありません。

 最後に、テロ犯罪者の処罰、テロ根絶のためには、世界の大同団結が何よりも大切です。国連を中心とする告発と制裁という手段を尽くさないまま一部の国が始めた軍事攻撃は直ちに中止し、国連を中心とする制裁と裁きの道に切りかえるべきです。そして、国連憲章による強制措置の発動を含め、国際社会の合意と団結によって問題の解決に当たるべきであります。

 以上、討論を終わります。(拍手)

加藤委員長 次に、今川正美君。

今川委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の三法案並びに民主党提出の修正案及び自民、公明及び保守提出の修正案、いずれにも反対する立場で討論を行います。

 この法案が成立すれば、自衛隊は、創設以来初めて他国の戦争に直接関与し、参戦するわけです。小泉総理の主観がどうであれ、政府がいかに言い繕ってみても、長い間積み上げてきた自衛隊に関する議論や最高規範たる憲法を踏みにじり、戦後半世紀にわたってせっかく築き上げてきたアジア諸国との友好関係や中東諸国との信頼関係を台なしにする政府提案の法案であると言わざるを得ません。

 今回の米国テロ事件は、その犠牲と衝撃の大きさにもかかわらず、事件の処理とテロ根絶対策は、道理に基づき国際法にのっとって裁く以外にないのです。そのための国際条約や国際法廷の実績もあります。

 十月八日に始まった米国などの軍事報復は、国際法に明白に違反するだけではなくて、敵のわなにまんまとはまっているように思います。テロ集団のねらいは、恐らく、米国の冷静さを奪い、過剰反撃によって国際世論の分裂を誘い、さらなる報復テロを準備するということではありませんか。現に、反米テロを支持あるいは正当化する人々を世界各地でつくり出し、パキスタンでは核配備を始めるなど、西アジアと中東諸国の政情を著しく不安定にさせています。

 ここはとにかく、軍事攻撃をやめさせ、今回事件の処理とテロ根絶対策を国連の場に移すべきです。冷戦時代にはかなわなかった国連機能を強化する絶好の機会ではありませんか。

 一方、小泉総理を初め日本の対応は出だしから間違っていました。湾岸戦争の間違った教訓から、何はさておき自衛隊派遣ありきから始まって、犠牲を覚悟で米軍支援と言いながら、戦闘地域には行かない、武力は使わないという自家撞着に陥ったのでありました。

 今月十三日の参考人質疑で、難民キャンプは軍隊が行くようなところではない、危険過ぎる、あるいは、自衛隊による医療、難民救援活動は有害無益であることが歴然としたではありませんか。アフガンのタリバン政権を攻撃する米軍を支援しながら、同時に、そのためにあふれ出る難民を救援するという人道援助など、全くのまやかしだと言わなければなりません。

 テロ根絶をまじめに考えるならば、その背景と根源を見きわめて、テロの温床である貧困とか飢餓、抑圧と差別をなくすことこそ肝心ではありませんか。特に、今回の米国テロの背景には、長年にわたる米国の偏った中東政策があることは歴然としています。しかし、中東和平に関するオスロ合意すら御存じない小泉総理や、米国依存症候群に冒された政府・与党に、米国に勇気を持って忠告するなど、しょせん無理な相談でしょう。

 小泉内閣は、テロ対策を口実にして、これまで長い間タブーとされてきた国家秘密法や有事法制を準備しつつあります。まさしく、火事場泥棒ともいうべきやり方ではありませんか。米国テロ事件で犠牲になられた多くの犠牲者を冒涜するものにほかなりません。

 PKO協力法では約一年間、周辺事態法でも約八カ月をかけた慎重な国会審議がありました。今回、緊急のテロ対策を大義名分にして、たった五日間でこの衆議院通過を図る政府・与党は断じて許せません。こんな重要な法案を、今月二十日の日米首脳会談への手土産にするために強行採決するなど、断じて許されません。

 我が社民党は、たとえ戦争を支持する人々からいかなるそしりを受けようとも、平和国家日本としての名誉にかけて、また、将来に禍根を残さないためにも、政府提出三法案の撤回を強く求めて、私の討論を終わります。(拍手)

加藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、枝野幸男君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、久間章生君外六名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、海上保安庁法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 この際、ただいま議決いたしました各案中、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対し、亀井善之君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、保守党及び21世紀クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。亀井善之君。

亀井(善)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明をいたします。

    平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一 テロ根絶に対する我が国の主体的な外交努力を一層進めるとともに国際的な枠組みの構築に努めること。

 二 国民のテロに対する不安を解消するために、国内外の邦人保護・安全対策及びテロ対策について万全を期すこと。

 三 国際テロリズムに対しては、国際社会が一致協力して取り組むことが極めて重要であり、我が国は国連を中心とした国際協調努力に積極的に参画すること。

 四 自衛隊の派遣については、派遣先の状況の推移を十分に踏まえ、実施すること。

 五 国会の承認の付議については、対応措置の実施を自衛隊の部隊等に命じた日から二十日以内であっても、可能な限り速やかに求めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。福田内閣官房長官。

福田国務大臣 ただいま御決議のありましたいわゆるテロ対策特別措置法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたし、努力してまいります。

    ―――――――――――――

加藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十八分散会




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