衆議院

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第9号 平成13年11月1日(木曜日)

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平成十三年十一月一日(木曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 加藤 紘一君

   理事 亀井 善之君 理事 河村 建夫君

   理事 久間 章生君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 伊藤 英成君

   理事 田端 正広君 理事 東  祥三君

      逢沢 一郎君    赤城 徳彦君

      石川 要三君    石破  茂君

      衛藤征士郎君    小此木八郎君

      大野 松茂君    坂本 剛二君

      実川 幸夫君    下地 幹郎君

      下村 博文君    田村 憲久君

      西川 京子君    浜田 靖一君

      原田 義昭君    松宮  勲君

      宮澤 洋一君    米田 建三君

      奥田  建君    鹿野 道彦君

      桑原  豊君    玄葉光一郎君

      古賀 一成君    島   聡君

      末松 義規君    永田 寿康君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      渡辺  周君    上田  勇君

      河合 正智君    中塚 一宏君

      木島日出夫君    山口 富男君

      今川 正美君    辻元 清美君

      井上 喜一君    近藤 基彦君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   外務大臣         田中眞紀子君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当大臣) 福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当大臣)     村井  仁君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   内閣官房副長官      安倍 晋三君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   国土交通副大臣      泉  信也君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      中島 忠能君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  阪田 雅裕君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長

   )            藤原 恒夫君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   但木 敬一君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林  景一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住

   部長)          小野 正昭君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君

   衆議院調査局国際テロリズ

   ムの防止及び我が国の協力

   支援活動等に関する特別調

   査室長          鈴木 正直君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月一日

 辞任         補欠選任

  浜田 靖一君     小此木八郎君

  中野 寛成君     平岡 秀夫君

  横路 孝弘君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     浜田 靖一君

  平岡 秀夫君     中野 寛成君

  松野 頼久君     奥田  建君

同日

 辞任         補欠選任

  奥田  建君     横路 孝弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第二〇号)




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     ――――◇―――――

加藤委員長 これより会議を開きます。

 テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件及びテロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長阪田雅裕君、人事院事務総局人材局長藤原恒夫君、防衛庁防衛局長首藤新悟君、法務省大臣官房長但木敬一君、入国管理局長中尾巧君、外務省大臣官房審議官林景一君、大臣官房領事移住部長小野正昭君、北米局長藤崎一郎君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、テロ対策特別委員会での審議でございますけれども、条約それから関係する法案の審議を行うことになるわけですけれども、現在、国際的にも、このテロの問題についてどのように対応していくのか、あるいはどのような対策を講じていくのか、こうしたことが非常に注目を浴びているわけでありまして、我々としても、ぜひ日本の政府においても頑張ってもらいたいというふうに思っているわけであります。とりわけこの問題については、やはり外務大臣の役割というのは非常に大きいものがあるというふうに思っているわけであります。

 そうした中で、最近ちょっといろいろな報道で見られます、外務大臣が人事権の問題に関連して、いろいろな問題が新聞でも報道されているということを非常に危惧しているわけであります。

 外務大臣には、外交面でしっかりと働いていただきたい。さもないと、我々の国益を損なうことにもなりますし、そして我々も、公党としてしっかりと外交政策について論議をしたいのに外交政策の論議ができないといったようなことにもなってしまっているというわけであります。

 そう考えますと、やはり外務大臣が外交に専念できるためには、それを支える外務省の職員の方々が外務大臣から信任を得ているという状況が必要であるというふうに私は思っております。

 そう考えますと、昨日の報道で、大臣が手製の辞令をつくって齋木人事課長さんを官房付とするというような発令をなされたということが報道されていますけれども、それは事実でしょうか。

田中国務大臣 お答え申し上げます。

 私は、手製の辞令などを発令したことはございませんで、辞令が私の手元には今現在も官房長からは届いておりません。

 事のてんまつを正確に申し上げないと、メディア的なものだけが先行するといけませんので簡略に申し上げさせていただきますけれども、要するに、緊急援助隊が参加した日ですから、十月二十九日であったというふうに思いますけれども、その夕刻に、私は、プール金の問題とか外務省の不祥事の問題がいろいろございますし、この内閣が発足いたしましてから、外務省改革をやっていてもまだ完全になかなか終わり切らないということがありまして、そして、前の人事体制のころから、やはり人の刷新ということも大事ではなかろうかということを申しております。

 特に、人事とか会計とかいうところは非常にかなめのポイントでありまして、そのことについて、私が辞令を作成してくれるようにということを官房長、それから人事課に申しました。

 そうしましたら、任用班のところからある女性が、できたものをわかりましたと言って持ってきてくだすったんですが、私は、この日は緊急援助隊の参加者を激励といいますか、感謝の夕べがございまして、別のフロアに動いておりました。帰ってきましたらば、その書類は秘書官の手から官房長の手に渡ってしまっていて、辞令は私の手にそれ以来届いておりません。

 その後、官房長や皆さんに、ぜひ辞令を、書式がありますからその正式なものと申しましたけれども、いろいろ手間取って来ないものですから、夕刻でもあり、私は人事課に行ってお願いしますと申しましたら、もう普通の事務の方しかおりませんで、そしてそこで、パソコンでもってすぐ簡単に打ち出せるということだったんですが、パスワードがわからないとか担当者がいないとか、一時間半ぐらい時間がかかりまして、結果的にはそこでは物はつくれませんでした。ずっと待っておりました。

 それで、結果的には、大臣室の秘書官の部屋で、紙は白い紙で、判こを押したものは人事課にあるんですけれども、その紙で秘書官室でもって、日ごろ私も何度も辞令交付いたしておりますから、その書式で打ってもらいました。

 しかし、それがまたおかしいというようなことになるといけませんから、それは私は三部とも自分で持っております。それはどこにも手渡してございません。ところが、その後何かそれのコピーがどこかでつくられたらしくて、そのコピーの紙を事務次官が持って官邸に行った云々という話がその後報道されておりますけれども。

 したがいまして、私はずっと、とにかく辞令というものについては大臣がしっかり交付をしたいということを申しておりますので、毎日、とにかく辞令をしっかりとつくってほしいということを申しております。

 また、関連してちょっと申しますが、何かほかの課長さんたちとか同じレベルの方の異動をしたいと言って、きょうもお昼ごろですか、事務次官がいらっしゃって、何でそういう辺がかわって、この人はよくてこれがだめか、理由がはっきりしないので、やはり皆さんが納得のいくような人事をしなければならないという話をいたしましたけれども、次官は、人事課長だけはだめだだめだとおっしゃって、理由がわからずにおります。

平岡委員 今のお話、大変経緯を踏まえてお話ししていただいてありがたかったんですけれども、結論的に言うと、外務大臣としては、この齋木人事課長を配置がえしたいという意思を持っておられるんですか、それともおられないんですか。

田中国務大臣 個人、その方がどうこうという名前の問題よりも、やはり会計とか人事というものが組織のかなめであることは間違いがありませんし、もう不祥事があれで完全に終わってしまったというのならよろしいんですけれども、現在も進行形であります。

 そうした中で、それから今までの過去の経緯の中でも極めて大きなキーパーソンでありますし、ですからそういうところは、もっとほかにもその方に適したポストもあるでしょうし、人がかわるということは、やはり組織の空気も変わりますし、体制が変わることですから、私はそういう意味でもって重要であるというふうに思っております。

平岡委員 先ほどの外務大臣の御答弁の中に、正式な辞令であったとかなかったとかといった言葉があったわけでありますけれども、そこで、人事院の方にちょっと質問をしたいんですけれども、各省の職員の任命権、いわゆる人事権というのは、一体だれが持っているんでしょうか。

中島政府特別補佐人 国家公務員法五十五条に基づいて各省大臣が持っております。

平岡委員 同じ条文の第二項に人事権の委任の規定がありますけれども、外務大臣が外務省の課長に対する人事を発令するに当たって、外務大臣からだれかに委任をされていますか、その権限は。

中島政府特別補佐人 委任をなさった場合には、五十五条第二項で人事院に提示がございます。現在、提示がございませんから委任をされてないというふうに思います。

 ただ、その委任以外に専決、代決という手法があることは、もう先生よく御存じのとおりでございますので、ひとつ念頭に置いていただきたいと思います。

平岡委員 今の答弁にもありましたように、外務大臣が外務省の課長に対する任命権を発動するに当たっては、委任がされてないということなんです。

 それで、さらに、先ほど辞令という言葉がありました。辞令というのは、人事院規則を見ますと、人事異動通知書というそういう位置づけになっているんですけれども、この人事の発令には、この人事異動通知書の交付が発効要件となっていますか、人事院総裁。

中島政府特別補佐人 少し御説明申し上げますと、私たち仕事をしておりまして、苦情の処理とか不服申し立てというのがございますが、そういうものから人事の有効性といいますかあり方について私なりに頭を整理いたしますと、一つは、どういう状況下でそういう意思が決定されたか。まあ酒の席では困るとか、日比谷公園に散歩中では困るとか、そういう議論があるんでしょう、きっと。それが第一番目でございます。第二番目は、どういう内容の異動内容であったか。第三番目は、それが確定的なものであるかどうか。思いつきでは困りますから、確定的なものであったかどうかということ。この三つというものを確認するために、私たちの方では人事異動通知書というものを定めて、それに従って人事異動をしてくださいと各省にお願い申し上げております。

 したがいまして、ごく通常の場合では、その人事異動通知書というものを本人に交付する、あるいは本人に交付できない場合には、公の場でそれを公示するといいますか、第三者がだれでも見得るような状態に置くということが通常の人事異動の手法だと思います。

平岡委員 今の人事院の総裁の答弁でもわかるように、別に人事異動というのは辞令を出さなくたっていいんです。確かに、どういう状況のもとで、どういう内容のもので、それが確定的かというそれを証明するためには、はっきりとしたことが示されていなければいけないということはあるんですけれども、それがはっきりしていれば、別に人事異動通知書なんかなくても、その人事異動については効力を発生するということになるわけであります。

 もう一つ確認のために聞きますけれども、よく人事異動するときには内示行為という、内示というのが行われていますけれども、この内示というのはやはり人事を発令するに当たって発効要件になるんでしょうか、人事院総裁。

中島政府特別補佐人 通常の場合は本人が、例えて言いますと、東京から地方に転勤するような場合、その準備等がございますので、内示というのが行われている。これは官庁の人事ではごく通常の、一般的な方法だと思います。

平岡委員 今の答弁でもわかるように、一般的にそうしているというだけであって、それが人事の効力を発生させる要件には全くなっていないということなわけであります。

 そう考えると、本来の人事の発令というのは、人事権を持っている各省大臣、今回のケースでいうと外務大臣が、その発令の意思を持ってそれを明らかにする。酒の席じゃいけないとかという言葉がありましたから、酒を飲んでいる席じゃいけないだろうし、何か日比谷公園でもいけないというから、日比谷公園じゃなくて大臣室でも、まあある意味じゃここでもいいのかもしれませんけれども、公のところで、はっきりとした場で自分の意思を明確に示してやれば、それでその人事の発令は効力を発生する。これが国家公務員法に定めている人事の問題なわけです。

 そういうふうに考えますと、大臣、本当にあなたが今の外務省の課長の人たちの人事が適当でないと思うならば、自分がその意思をしっかりと持って、そしてそれを公の場であなたが発言をすれば、それでその人事の効力は発生するというふうになっているわけです。人事院総裁、それでよろしいですね。

中島政府特別補佐人 私たちはそういう人事異動のやり方を勧めておりません。やはり、人事異動をした後の正式の書類というのは保存しておりまして、後々の人事上の記録として非常に大切なものでございますから、やはり私たちが定めた書式に従う通知書というものを出していただきたいというふうに思います。

平岡委員 今、人事院総裁のお言葉の中に、正式の書類という言葉がありました。正式の書類というのは一体何ですか。

中島政府特別補佐人 私たちが定めております人事異動通知書そのものでございます。

平岡委員 人事院規則の中に、人事異動通知書の様式は人事院規則で定めるというふうに書いてありますけれども、その様式のことですか。

中島政府特別補佐人 その様式によっていただきたいと思います。

平岡委員 人事院規則に定める人事異動通知書の様式というのは、これはコピーですけれども、こういうものなんですよね。ここに書かなければいけないことは何か書いてあるんですけれども、別にこれの枠に入っていなければ効力は発生しないとか、そんなことはないんですよ。全くないんですよ。ここに書かなければいけない必要なことが書いてあれば、それで人事異動通知書としての要件は満たしている。

 先ほど言いましたように、別に人事異動通知書がなくたって、人事の発令の要件というのは満たしているのです。だけれども、後で問題にならないようにこういう書類を残しておきましょう。こんな書類というのは、別に正式なものといったって、大したことは全くないんですよ。必要なら、外務大臣、後で差し上げますから。記録のためにこれを残しておいていただいて、そして自分が望みたい人事をやっていただきたい。

 そうして、本当の外交政策についての論議を外務大臣とできるようにしたい。そうしないと、外務大臣がいるのかいないのか全くわからない世界の中で、我々、外交論議についてここでやろうとしたって、いや、私知りません、レクチャーを受けていません、私は動けません、事務方がやっていますというんじゃ、全く話ができないんです。外務大臣、いかがでしょう。

田中国務大臣 私は、外交も着任以来六カ月で、国会での、つい最近は、直近はテロ特措法ももちろんございましたし、それから靖国問題、そのほかいろいろな、ミサイルディフェンス問題から始まりましていろいろな懸案について最善を尽くして答弁もさせていただき、勉強もしてきておりますし、五回にわたって国際会議等にも出張もさせていただいておりますので、外交が滞っているとか、顔が見えないというのはどういうことかわかりませんけれども、仕事は一生懸命誠心誠意させていただいておりますので、歴代の外務大臣に比べてどうにもならない、顔が全然見えないというふうな状態ではないのではないかなと自分ではいたしておりますが、力不足でもございますから、今後また一段と御指導いただきたいと思います。

 ただ、人事について、私も複数の人を言っているので、たまたま今回そういうことがクローズアップされていますが、次官たちも、突然持ってきて、さっとこの人をかえるというようなことも、やはり透明性を持って、なるほどねという理由がないと、ある程度人事のルールがきちんとないと、突然、この人をかえますからいいですねと言って、わあっと立ち話でいくということは決してあってはならないことだと思います。

 したがって、私がずっと申し上げているのも、大臣室できちんとした形で、副大臣、政務官がおられる席でお話ししたこともありますし、面と向かってきちんと申し上げていることでございますので、これは慣例上いろいろなことがあるということを今人事院総裁のお話等も聞きましたけれども、やはりまことに遺憾な事態であるというふうに思っております。

平岡委員 この問題については、私は、外務大臣が本当に自分の仕事をしていく上に当たって必要な人事が必要であると思うのなら、ぜひそれを断行して、そうして本当に外務大臣としての役割を果たしてほしいというふうには思うんです。

 ただ、逆に、もう一つ、この人事問題に関して報道されているのを見ますと、何かえたいの知れないと言うと言葉が悪いのかもしれませんけれども、存在の理由なり根拠なりがはっきりしない人が外務省の秘書官のような形で仕事をしているというような報道がなされておりますけれども、これは外務大臣、事実ですか。

田中国務大臣 初めは、夏までは、私は公設の、公設といいますか外務省の政務秘書官というものは置いておりませんでした、基本的に。そして、今現在、九月になりましてから、だんだん本格的に忙しくなるというふうに思いましたものですから、第一秘書で届け出てはおります者、公設秘書ですけれども、それともう一つ主人の方の公設秘書でございますけれども、その人にも来てもらって、時々手伝ってもらっております。

 それから、議員会館の普通の一般の私設秘書さんも来ておりまして、仕事が会館がかなり忙しいものですから、いわゆる会館との連絡でありますとか、それから雑務というと怒られちゃいますけれども、いわゆる政務の日程調整でありますとか陳情でありますとか、どの議員さんももちろんそうでいらっしゃると思いますけれども、ほかの方から、菊花展があるから何か署名を書いてほしいとか、何かの弔電、祝電が欲しいとか、きのうも政務官の方が、自分の団体に、来るから会ってほしいというふうなことがあるときには結構さばき切れませんので、会館と行き来をしながら、ローテーションでやってもらっておりまして、決してえたいの怪しいような人なんか全然来ておりませんので、余り新聞に翻弄されませんようにお願いいたします。

平岡委員 今の発言の中に、御主人の公設秘書であるとか、議員会館の秘書であるとか、そういう方が来て仕事を手伝っておられると言われましたけれども、その仕事の中身というのは、外務大臣の国会議員としての仕事をお手伝いされているんですか、それとも外務大臣としての仕事をお手伝いされているんですか。

田中国務大臣 常時同じ人がべったりいるわけじゃありませんで、ローテーションで行ったり来たりしておりますけれども、基本的には政務でございます。

 ただし、外務大臣として、例えば、今申しましたように、菊花展があるとか、何かの表彰で外務省からもらってほしいとか、こういうふうなことを聞いてほしいとかいう問い合わせが結構議員さんの関係からもたくさんございますので、そういうことは私が一々事務の方とやっておられませんから、そういうものが会館に来るとき、そういうときにはじかに役所に持ってきて、そして取り次ぎをするという意味におきましては、外務省との橋渡しということもいたしております。

 これは、ほかの大臣も多分そう違っていらっしゃらないのではないか、役所のことですよ、役所と会館とのことということは。そのために大臣のところには政務の秘書さんの枠というのがあるのではないかというふうに考えております。

平岡委員 これは私、今回ちょっと呼んではいないんですけれども、衆議院の事務局の方に問い合わせをしたら、これは公設についてということになりますけれども、国会議員の秘書が大臣の秘書官的な仕事をするということについては、官吏服務紀律に反するということなのでこれは許されないというふうに聞いています。そういう意味では、仮に公設の秘書であったとしても、それが大臣の仕事を手伝う形の仕事をすることは、この官吏服務紀律に反しているということになるわけです。その境目がどこにあるかというのは非常にわかりにくいというふうに思います。

 それで、議員の私設秘書の方が来ることについてはどのように考えるかという問題があろうかと思います。

 その点でちょっと人事院に聞いてみますけれども、各省でよく国家公務員でない人が勤務をしているという実態が見られますけれども、この人たちについて言いますと、どういう形でこの人たちは勤務をしているんでしょうか。

中島政府特別補佐人 私たちの役所で申し上げますと、自動車の運転業務とかあるいは庁舎の警備業務等につきまして外部の会社に委託しております。したがって、そういうところから派遣された職員が運転業務をする、あるいは守衛業務をやるということで、公務員でない方が官庁の中でそれぞれ契約で定められた仕事をするという実態がございます。

 私たちの役所ではそういうことなんですが、それ以外によく聞く話では、コンピューターの保守管理なんかを外部の専門家に委託して、そういう方が役所の中で保守管理をしているという話が伝わってきます。したがいまして、そういうような実態があるということを御報告申し上げておきます。

平岡委員 国家公務員でない人が、業務委託とかあるいは人材派遣といったような形で役所の中に入って仕事をしている実態があるということでありますけれども、そういう人たちも、役所の中にいますといろいろな秘密に接することもあろうかと思うんです。そういう人たちに対しては、秘密を守ることについてはどのように担保されているんでしょうか。

中島政府特別補佐人 それぞれの業務の委託契約というのを官庁の責任者と受託会社の責任者が結んでおります。その中で必ず秘密の担保についての条がございますので、現在それで行っております。

 ただ、そういう業務が徐々にふえてくるという方向でしょうから、今御指摘になりましたように、秘密の保持についてどのようなシステムをつくっていくかということについて検討を始めたいというふうに考えております。

平岡委員 検討を進めたいということであるので、今のところ十分ではないということなんだろうと思いますけれども、そうはいっても契約の中で秘密を守るための義務を課せるというようなことが行われているということでありますけれども、外務大臣、先ほど答弁の中にありました議員会館の秘書、これは公設の方も私設の方もおられるんだろうと思いますけれども、私設の秘書の方については、秘密を守るということについてはどのように担保されておられますか。

田中国務大臣 まず、来る時間が本当に一分、二分ぐらいでして、いただき物があった、生ものがあったといって、私が夜パーティーがあったりするものですから、それを持って、若い、本当に学生さんですけれども、車なりあるいは走って外務省まで飛んできましたり、それから雑誌の原稿のゲラ直しなんかがありますと、それを本当に宅急便のように走ってきて、持ってきてぽいと渡します。

 役所の中に場所も席もいすもその人たちにはありませんけれども、よくやってくれていまして、原稿の直しが、かわりの人が要るときに、役所の方はお願いしていません。役所の方は優秀な方が三人もおられますから、もうそれは完璧でございますし、ガードがかたいですから、時々歪曲してだれかが流すことはあっても、彼らがそんなことを漏らすことなんか一切していません、場所も全然別ですから。

 ですから、そういうことでもって私設が宅急便のように来ることはありますけれども、彼らが知り得るようなことはなくて、むしろ、公設秘書でちゃんといて、場所にいる方がすべての情報が見えて聞こえるのではないかと思いますし、私はそういうことは余りいいと思っておりませんので、このような形でルーチンワークのようにしておりました。でも、きょう、何かいろいろとあることないことごちゃまぜになってもう煩わしいので、一人をけさ届け出を手続いたしました。

 以上です。

平岡委員 今最後に、届け出を出しましたということの意味がちょっとはっきりしなかった。それは、正式の秘書官とするために総理大臣に発令をするようにという申し出をしたという意味ですか。

田中国務大臣 はい、そのとおりです。そして、そのことも官房長に朝お話しして、次官もその方がいいですねということで、そのようにいたしました。

平岡委員 官房長にそういう話をされたということのようでありますけれども、官房長官、この申し出というのは既に内閣総理大臣に伝わっているんでしょうか。

福田国務大臣 この件は、各省大臣秘書官任免については、主任の大臣の申し出により内閣総理大臣が行う、こういうことになっております。

 それで、外務大臣秘書官につきましては、私はちょっと確認しておりませんけれども、連絡ございまして、先ほど外務大臣から申し出が出てきたということでございます。本日中に発令の手続を行う、こういうことになっております。

平岡委員 ちょっと長々と時間をとってしまいましたけれども、要は、やはり外務大臣が本当に日本の国の外交の顔として仕事をしていくためには、それを支えるための外務省のスタッフというのはきちっと外務大臣の信頼の置ける人にしなければならないんですけれども、だけれども、やはりその人事についてはルールを守ってやっていただかなければ、多くの人が非常に迷惑していると言うと言葉は悪いかもしれませんけれども、困っているというふうな状況にある。

 ルールを守って、まず自分の周りをしっかりと固めて、そして我々が本当の外交論議がここでできるような、そういう活躍をしてほしいというふうに思います。外務大臣、いかがでしょうか。

田中国務大臣 いろいろ先ほど、コピーをとったものが官邸へ持ち込まれた話もいたしましたけれども、いろいろなことがどういうことで起こるのか、私にもわかりかねることが突然起こって、それが報道になったりして、こういう国会質問になって時間をとらせることはまことに遺憾であると思いますが、私も含めまして、省庁みんなでもってやはり気をつけていこう、こういうことを確認しなければならないというふうに感じております。

平岡委員 それでは、条約関係、法案関係の話に入りますけれども、テロ対策の問題、まず条約、法律の前提となっているこのテロの問題、テロの撲滅に向けて我々としてはあらゆる努力をしていかなければいけないということになるんですけれども、今、世界でどのようなテロが発生しておって、それに対して、我が国との関係はどんな関係、つまり、そのテロというのは我が国に対してどのような理由で、あるいは我が国に対して向けられているテロというのはどのようなものがあるか、そうしたことについてちょっと概略を御報告いただければと思います。

田中国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、日本の国民の方たちが海外で巻き込まれたというふうなケースを例えば具体的に申し上げるといたしますと、ペルーでの日本大使の公邸占拠事件というのが九六年の十二月にございました。それから、ルクソールにおける観光客の襲撃事件、九七年十一月です。それから、キルギスにおける邦人技師の誘拐事件、九九年の八月。本年四月、トルコにおける武装勢力によるホテル占拠事件などがございましたけれども、いずれにいたしましても、邦人の安全確認には万全を期するようにさらに一層努力したいというふうに思っております。

平岡委員 今外務大臣が言われた日本人に向けてのテロ、これはどういう理由で行われているんでしょうか。

田中国務大臣 例えば、今、この四つの国で起こったケースは、それぞれ事情が、背景が違っているというふうに思っておりますけれども、そういう中で、偶然それが、日本大使館とか日本人が標的になってしまったということもあると思います。

 例えば、ルクソールの観光客なんかでございましたら、ほかの国の方も多分被害に遭ったようなこともあると思いますし、日本人でなければならなかったというような必然性があるところも場合によってはあるかというふうに思います。それは、金銭的なものであるとかあるいは政治的なこととか、いろいろなものがあると思いますが、一概にこれはこれというふうに確定的に今断じて申し上げることは、ちょっと難しいかというふうに思います。

平岡委員 世界で発生しているテロというのは、我が国との関係でいうと、いろいろな関係があるのかもしれませんけれども、今回の米国で起こった多発テロのような、ある意味では非常に根深い、あるいは非常に何か政治的あるいは宗教的、民族的、いろいろなことを背景にして起こっているテロというものが、我が国との関係では、ほかの国に比べると余り多くはないんじゃないかというふうにも私は個人的には思っておるんですけれども、もっと深い分析があるかもしれません。

 ということはどういうことかというと、我が国はやはり、国際的に発生しているテロの問題については、もっと積極的に我々は平和的な国家であるということを前面に出して、積極的にテロ撲滅に向けて努力をしていくことのできる数少ない国の一つではないかというふうにも思っているわけです。

 そういうふうに考えると、我が国の外交方針として、テロ撲滅に向けての方針、どのような方針を持って今取り組んでおられるか、外務大臣にお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 今申し上げたような、邦人が巻き込まれてしまったというケースもございますけれども、日本が外交政策で、委員も既に御指摘だと思いますけれども、例えばODAとか、あらゆることでその根源を絶っていくというふうなこともあると思いますが、まず、国際的なテロということを考えてみますと、やはり金融面の措置、これは財務省関係だと存じますけれども、それからテロ関連の条約の締結を速やかにする、これは我が外務省のことでございますが、あるいは法制度のほかのいろいろな問題、入国管理体制、これは法務省だと思います。それから、航空保安の強化でございますとか、国土交通省だと思いますが、そういうところで、国内であらゆる手段を講じてテロというものの撲滅に努めていかなければならないと思いますし、国際的な協力といいますか、そうした努力も不可欠であるというふうに存じます。

平岡委員 今外務大臣が言われたのは、テロ防止といったような形のものもたくさん入っていたように思うんですけれども、テロ防止というのは、どっちかというと受け身的な、自分のところでテロが起こらないようにというそういう視点が相当あるんだろうと思うんですけれども、むしろ、テロが世界じゅうでどこでも起こらないようにという視点での活動をやはり我が国政府としてしていかなければならないというふうに思っているんです。先ほど条約面とかあるいはODAとかと言われましたけれども、そうした努力を我が国政府としてもしっかりとやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、一つは、やはり今日本の国内に住んでおられる方々も、米国で起こりました同時多発テロの問題、あるいは現在その首謀者がどういう人であるかはっきりとはしていない炭疽菌の問題、こうしたことで、我が国にも何らかのテロが発生するんではないかというような危惧を持っておられる方もいると思うんですけれども、国あるいは政府としてしなければならないことというのは、やはり日本国民の生命と財産の安全を確保するということが極めて大切なことであろうと思うんです。

 そこで、日本国内におけるテロの発生防止策としてどのようなことを今日本政府として取り組んでいるのか、説明していただきたいと思うんです。この問題については、まず法務大臣、それから国土交通大臣、そして国家公安委員長にそれぞれお聞きしたいと思います。

 時間がないので、特に国土交通大臣については、一番問題となっております航空機テロの問題についてのあり方、航空機テロの対策についてさまざまなことが要望されています。例えば、航空保安体制の国の責任を強化してほしい、あるいは地上検査体制を強化してほしい、あるいは航空機をハイジャックされないように改修していくために支援をしてほしい、こういった要望が関係者から上げられているわけでありますけれども、それぞれの大臣に、日本国内における、あるいは航空機内におけるテロの発生防止策についてどのように取り組んでおられるか、国民の皆さんが安心できるように御説明いただきたいと思います。

森山国務大臣 法務省といたしましては、九月十一日の事件が発生しました直後に、全国の入国管理局に対しまして、厳格な出入国審査の徹底を指示いたしております。

 具体的に要点を申し上げますと、要注意外国人に関するいわゆるブラックリストに基づく確実な出入国審査を実施するとともに、特にテロリスト等は偽変造旅券を行使する可能性が高いと考えられますので、偽変造文書の確実な発見に一層強力に取り組むように指示いたしております。

 法務省といたしましては、今後とも、テロリスト等の入国を阻止し、テロ行為の発生を未然に防ぐべく、関係機関との緊密な連携を図りながら出入国管理の強化を推進していく考えでございます。

村井国務大臣 警察の立場につきまして申し上げたいと存じます。

 テロにつきまして、申し上げるまでもないことでございますけれども、これを未然に防ぐということが一番大事なことでございます。そのために、ただいま法務大臣からもお答えございましたけれども、例えば外国人でございましたら、テロリストを国内に入れないようにする、それから、国内で拠点をつくらせないようにする、さらには、何らかのテロ行為というものを起こさせないようにするというような、この三点が重要であろうと思っております。

 そのためには、何と申しましても、各国の治安機関との情報交換、これが非常に重要でございまして、また、国内でもさまざまの機関で持っております、あるいは集めております情報をできるだけ有機的に内閣に統合いたしまして、これまた警察でもさまざまな機関を通じましてこれらの情報を収集し、またさらに、その裏をとると申しますか確認をしていく、そういうような努力を地道にしていく、さらには、不審な者の動向の監視、これも非常に重要だと思っております。

 それから、先ほど航空機の関係がございました。国土交通副大臣からお話があろうかと存じますけれども、ハイジャックを防止するための空港等の重要施設の警護、これも私どもは非常に重要な課題だと心得ておりまして、特に九月の十一日以後でございますけれども、特段重点を置いた警戒警備に努めている、こういうことでございます。

 私ども、いずれにいたしましても、今般の事案にかんがみまして、体制を整備し、それから装備資機材等につきましてもさらなる充実に努めまして、テロ事案の未然防止のために全力を尽くしているところでございます。

泉副大臣 陸海空の交通輸送を担当いたしております国土交通省といたしましては、お客様を初め皆様方の安全確保にもろもろの施策を展開しておるところでございます。

 特に、先生御指摘ございました航空につきましては、具体的には、九月十一日のテロ発生のときに、直ちに航空会社に対しまして、空港警備体制を最もレベルの高いフェーズEという指示をいたしたところでございます。そしてまた、米国等のタリバン等への攻撃が始まりました十月八日にも、同じく、航空会社等に対しまして、また空港管理者に対しまして、これらの措置の徹底を図ったところでございます。

 具体的に申し上げますと、飛行中の旅客機あるいは個人の小型機を一斉におろす、あるいは日本の圏域に入らないようにするというような、そうしたマニュアルを整備いたしまして、具体的に訓練をして、このたびのような事故がないように、事件が起きないように対応をとっておるところでございます。

 また、従来から、航空会社に対しまして検査機器の整備等に対する強化を図ってきたところでございますが、今回のテロに関しまして、国内の主要空港における受託手荷物の検査の全数検査ができるように、補正予算を待たないで国土交通省の予算の中で取り組む、あるいは新型の爆発物探知器の追加配置、こうしたことを行うべく今進めておるところでございます。

 さらに、航空保安対策の強化におきまして、いわゆるパイロットの部屋を厳重に守るという意味で、暫定的ではございますが、既に客室と操縦室の隔壁を、施錠を厳重にするというようなことにも取り組ませていただきました。

 これらのことは、一日本国内だけで厳重にやりましても、海外の航空機との関係もございますので、先日、日本が積極的に提案をいたしまして、国際民間航空機関、ICAOの総会におきまして、これからの国際的基準の見直しそれから監視監査計画の確立、こういうことを早急に行うべきであるという提案をいたしました。できますならば年内に閣僚レベルの会合を持ちたいということで、今取り組ませていただいておるところでございます。

平岡委員 今回の条約の批准あるいは法律の制定というのも、一つテロの発生の防止ということにも寄与するということなんだろうと思います。

 そういう意味で、時間がなくなってしまったので、この条約、法律案の中身についてちょっと聞いてみたいのですけれども、今回の法律でいきますと、いろいろなことが規定してあるのですけれども、仮に今日本で、米国で発生しているような炭疽菌の関連事案というものが発生した場合、現行法上ではどのような対応が可能なのでしょうか。

森山国務大臣 具体的なケースについてはなかなかお答えしにくいのでございますけれども、一般論として申し上げますと、炭疽菌を郵便物に入れた上、これを開封した者がその炭疽菌を吸い込むということになって、それによって死亡したり病気になるということを意図いたしましてこのような郵便物を送りつける行為は、現行法上は、事案に応じて刑法上の殺人罪やその未遂、傷害罪、傷害致死罪などに当たり得ると考えられます。

平岡委員 現行法では対応できない部分が今回の法律改正で対応できるようになるということであるので、これはこれで一つの進捗だろうというふうに思いますけれども、実は、ちょっと話をかえまして、私の地元に在日米軍基地があるわけでありますけれども、テロが起こったときにかなり警備が厳しくなってしまったために周辺の国道で大きな渋滞を来してしまったというような問題がございました。

 時間がないので警備の状況はさておいて、今回の自衛隊改正法で、警備出動が在日米軍施設に対して行うことができるというふうになったのですけれども、どうも地元でいますと、あそこは米軍の司令官もいるし、今回防衛庁長官も関係するし、都道府県知事も関係するし、警察も関係するし、一体どういうメカニズムで迅速な行動ができるのだろうかというふうに、非常に悩ましい状況にあるような気がするのですけれども、防衛庁長官に、在日米軍基地の近くに住んでいる人たちが安心できるように、このようにして警備出動が行われるんだというそのメカニズムをちょっと御説明していただきたいと思います。

中谷国務大臣 現時点において具体的な施設を挙げてお答えするのは適切ではないと思いますが、基本的な、一般の場合、日米間で、合同委員会などにおいて、自衛隊の警護出動が行われる場合の当該施設・区域における自衛隊部隊の展開の可否等について調整が行われるとともに、警護対象となる施設に所在する米軍部隊と、警護出動を命ぜられることが予想される自衛隊の部隊の間で、あらかじめ警護出動が命ぜられた場合の警護要領等について事務的な調整が行われるということになります。

 一般的な手順といたしましては、総理大臣が情報を入手いたしまして、自衛隊及び在日米軍施設等に対する大規模なテロ攻撃が行われるかどうかという判断をいたします。その後、国家公安委員長と防衛庁長官の間で、自衛隊による警護出動が必要かどうか、また期間はどの程度かについて協議をして、都道府県知事の御意見を聴取いたしまして、そして、内閣官房を含む関係機関が密接に連絡を調整した後、内閣総理大臣がこの警護出動の必要性について判断をいたしまして、その施設等を指定して、自衛隊に対して警護出動を命じるというふうに、手順的には考えております。

平岡委員 今長々と説明されて、本当に今言った警護出動というのがスムーズにいくのかどうか、ちょっと、常日ごろの連携というものがなければそう簡単にはいかないんじゃないかなというような印象を受けた次第であります。その米軍施設が所在している地域の人たちのいろいろな心配ということもありますので、その辺は、円滑な出動ができるような、そういう体制を常に日ごろからとっていただきたいというふうに考えております。

 それから、条約の問題についてちょっと入らせていただきますと、今回の条約の規定を見てみますと、いろいろな国に裁判権が付与される、設定されるというような条約になっているわけでありますけれども、かつて、一九八八年にパンナムがスコットランド上空で爆破事件があったときに、これはリビアの工作員のしわざであったというふうに言われておりましたけれども、犯人をどこで裁判をしていくかというようなことについて、かなり国際的にもいろいろな意見が出てきたために、なかなかその裁判権の管轄が決まらなかったというようなことがあったわけであります。今回の条約では、そうした問題についてはどのような対応になっていますでしょうか。

田中国務大臣 細部にわたってのお尋ねになりましたらば事務方がお答えいたしますけれども、現在のこの条約の中では、複数の国の裁判権が競合する場合、今まさしく委員がおっしゃったところですけれども、この解決方法につきましてはあらかじめ条約の中において規定されているわけではございませんで、裁判権の競合が生じる場合には、当事国間の話し合いによって、ケース・バイ・ケースで処理されるというふうになっております。

 なお、細部は事務方から御説明申し上げます。

林政府参考人 お答えいたします。

 条約の規定としては今大臣がお話しになったとおりでございますけれども、これは条約の趣旨として、テロについての国際協力というものをどうするかということを進めるに当たりまして、やはりできるだけ広く裁判権を設定するようにする、そのことによって、その犯罪を犯した人が世界じゅうのどこでも訴追ないし処罰されぬということがないようにしたいというのが、このテロの国際条約の基本的な趣旨でございます。

 そういうことのために、割合、犯罪の行為地でございますとか、あるいはその犯罪を犯した容疑者の国籍国であるとかいうところで裁判権の設定が義務づけられておるものですから、どうしても裁判権の競合が起こってしまいます。それは、裁判権を広く設定しようということからくる、いわば帰結みたいなものなのでございます。

 これをどう整理するかということについては、あらかじめ一律に優先順位を決めておくとかいった形のことが先生の念頭に置いておられることかもしれませんけれども、実際にはなかなか、国際間で、証拠の収集をどうするかとかいったこと、あるいは証人の証言をどういうふうにするか、これは国際犯罪にまたがりますと、なかなか実際上こちらの方がいい、行為地の方がいい、あるいはその犯人の国籍国がいいということをあらかじめ決めるということがなかなか難しいのではないかなというのが実態上の問題としてございまして、立法論としては、そういう競合をどうするかということについての御指摘はごもっともだと思いますけれども、やはり実態の問題としては、ここはむしろ柔軟に置いておくということになっているというのが今の仕組みでございます。

平岡委員 今回の条約の批准も、かなり当初の署名から時間がかかっているようでありますし、この条約の中身を見ても、必ずしも新しいタイプのテロに対応できるというものではなくて、今まであったものについての後追い的な内容になっているということであろうかと思います。

 現在、聞くところによりますと、インドの提案で、いろいろなタイプのテロにも対応できるような条約を考えていこうということで、国連でも検討が進められているというふうに聞いておりますけれども、ぜひ日本も、先ほど言いましたように、テロ撲滅に向けて主体的な役割を、積極的な役割を果たしていける数少ない国の一つだろうと思うんです。最後に外務大臣、そうした日本の立場を踏まえて、テロ撲滅に対してこれから日本として取り組んでいく、外務大臣としての気持ちをここでお話しいただきたいと思います。

田中国務大臣 最後に委員がお触れになりましたのは、多分包括テロ防止条約というふうなことを念頭に置いて御発言をなさったと思いますが、まさしくそうしたことも大変重要でございまして、そして、やはり世界が一つになってテロリズムと闘うために、それぞれの国が法整備でありますとか、あるいは情報の交換ですとか、そうしたことをできるように、有機的につながるように、そのために日本が主体的に参画をしていくという姿勢、あらゆる制度が必要だろう、かように考えております。

平岡委員 ありがとうございました。

 終わります。

加藤委員長 これにて平岡君の質疑は終了いたしました。

 次に、永田寿康君。

永田委員 この歴史と伝統ある第一委員室で初めて質問に立たせていただきます。本当にちょっと緊張しておりますが、ぜひ関係者の方々には御協力をいただきたいと思います。平岡委員の質問に関連いたしまして、質問を始めたいと思います。

 さて、やはりけさの読売新聞にも大変看過できない記事が社説として載っておりました。題名からして「機能回復には外相更迭しかない」。その論調も極めて手厳しいものです。「外交の機能喪失状態がこれ以上、続いてはならない。任命権者として、小泉首相は、田中外相を更迭すべきだ。」「相も変わらず非常識な言動を重ねていることに、あきれるほかない。」「欧米各国の外相らが活発な外交を展開している時、日本の外相の姿が見えないのは、異様な光景である。」「日本のみが司令塔不在で、外交が機能せず、著しく国益を損なっている。」大変厳しい口調です。

 私は、ただ、このような論調の記事が大変たくさんマスコミに流れていること、大変悲しく思っています。というのは、やはり一国の外務大臣が、本当に日本を出れば、日本を代表する日本の顔として仕事をしていかなければならないこの外務大臣が、もう更迭すべきだなどということが読売新聞という大きなマスメディアの社説に堂々と載るということは、これは外向けにも大変格好悪いことです。

 やはり、私たちが外交をするときに、例えば、アメリカとは言いません、どこかの国の外交担当の閣僚がもう更迭すべきだなどということが国内の新聞で堂々と書かれている、そんな人相手にまともに外交を展開しようと思うかというと、なかなかそういう気持ちになれないというのが相手の国の気持ちではないかと思います。

 ですから、外務大臣におかれましては、先ほど来、いろいろなマスコミの論調には、はっきり言って不公平な書き方もされているのではないかというような気持ちがにじみ出ている感じでいらっしゃったので、ぜひこの公開の場でその疑いを晴らしていただきたいなという気持ちで、きょうは質問をいたしますので、ぜひ改めて信頼が回復できるように、そしてあしたからマスメディアの論調がぐるっと変わってしまうような、そんな議論をしていただきたいと思います。

 さて、先ほどの平岡委員の質問で、ちょっと一個気になったのは、一番気になったのが、まず、人事課長の更迭に関する外務大臣のおつくりになった、あるいは職員につくらせた、この人事通知書というのか辞令が果たして有効なものなのかどうかというのが、いまだにはっきりしなかったような気がいたします。

 外務大臣は、これは有効だったというふうにお考えですか。

田中国務大臣 有効であったかないかではなくて、こういうことばかりが報道されて、政策の質問をどんどんしていただけないことが本当に残念だと思いますけれども、有効であるないとかという以前に、本来は、先ほど人事院総裁が言われたように基本というものはあると思います。しかし、慣習といいますか、そうしたものもやはり大事にしなければいけないと思います。

 したがって、最初に私が人事課にお願いして、委員も大蔵省にいらしたのでよくおわかりと思いますけれども、フォームというものはやはり大事だと思いますね。それをちゃんとパソコンですぐに打ち出して持ってきてくれたものを秘書官が受け取って、私が公務中にそれを官房長に返し、どっかへやっちゃうと。そういうふうなことが、子供じみたというか、信じられないナンセンスなことが起こっているわけですから、質問に直接お答えにならないかもしれませんけれども。やはり正式なものはすぐにパソコンでぱっと出てくるわけですね。ですからそれを早くやってくださいと言うと、今度は先ほど言ったようなことの繰り返し。もうばかばかしくて言いたくありませんけれども、ばかばかしくないんですよ、これは大事なことなんですね。そういうものをきちっとつくって、そして今までずっとやってきたのと同じようにちゃんと辞令を交付したい。

 一人の人を私は攻撃しているわけじゃなくて、突然ばらばらばらばら官房長や次官が来て、この六カ月間、この人かえます、この人残します、もう七年も八年もいる人もこのまま置いておきます。何でですか、だから問題が起こっているんでしょう、前の大臣もその前も言っていたじゃないですかと。いや、そうなんですと。これは、一体あれは何じゃらほいと私思いますよ。

 ですから、やはりフォームも大事ですから、それをコピーして、ぺらぺらの紙を官邸に持っていって官房長官だか総理に見せるとか、そういう次官はもう漫画みたいですから、そういうことはしないで、きちっとやはり国会の権威、それから外務省の将来のためにも、今回の二〇〇一年のこの機密費に絡んだことがなければ、もっともっと政策ばかりどんどんやって、私もこんなこと言わずに、頭も使わずに済みますので、ぜひこういうことは早く片づけて、このときの外務省改革がやはり霞が関全体のお手本になった、外務省はやはり立派だったと言われるように、やはり省内の人も関係者の方も国会議員の皆様もぜひ応援をしていただきたいし、実行をしなければ、幾らこんなことばかり言っても切りがないじゃないですか。

 ありがとうございます。

永田委員 全く大臣のおっしゃるとおりで、この問題はできるだけ早く片づけなければなりません。私たち国会議員も、そしてここに並んでいらっしゃるマスコミのカメラもきっと協力をしてくれることでしょう。ぜひ真実をできるだけ早く、今この場で明らかにしていただいて、そして問題を片づけましょう。

 ところで、ちょうどそこにお座りになっているので、申しわけないんですが、官房副長官、この今お聞きになった辞令は、これは有効なんでしょうか。済みません、ちょっと教えてください、もしもよろしければ。通告の話と違うんで大変恐縮ですけれども。

安倍内閣官房副長官 いきなりの御指名でございますが、御指摘のような事案については、外務省内部の手続に従いまして、大臣が事務当局ともよく相談しつつ冷静に対応すべきものでございまして、公に議論する性質ではないのではないか、このように考えております。

 いずれにいたしましても、外務省が外交に専念できる体制を一日も早く構築していただきまして、山積する外交課題に取り組んでいただきたい、このように思っております。

永田委員 全く、協力をしようと思っても、協力のしようがないんですね。私が、外務大臣、これは有効だったと思いますかと言ったら、いや、有効無効の問題ではない、質問に答えていないかもしれないというふうに言われ、また副長官も、今回の問題とは全く関係なく、これからは外交をちゃんとできるような体制をつくっていただきたい、冷静に事務当局と調整をしていただきたい、こういうことをおっしゃって、これ、事件を解決しようと思ってもなかなかできないわけですね。大変困っているんですけれども。

 では、大臣は先ほど来、フォームが整っていなかったということが一つの問題にもなっていたと。まあ余り大きな問題じゃないかもしれない、だけれども、ちゃんとした手続のフォーマットになっていなかったということも問題になっていたというお話です。

 外務大臣の意思は、しかしながら、人事課長を官房付に異動したいという意思が当時あったということは、これは否定しがたい事実だと思います。今後もその意思はお持ちになって、そして異動をしたいというような手続は今後もとられるんでしょうか。

田中国務大臣 人事課長一人が今非常に焦点が当たっていますが、ほかにも複数ありますし、人事というのは公正でルールがきちんとなければいけないわけですが、それがなされていなくて突然、今までも前の体制のとき、前といいますのは前の次官、官房長の体制もそうですが、突然、そしてその処分なんかも御自分たちで、私がいないときにもぱっとマスコミに発表をするとか、こういうことは、じゃ任命権者である国務大臣は必要ないということになるわけですね。

 私は、基本にこの役所にあることは、やはり残念ながらずっと松尾事件以来、前の内閣のときも、これでもって数千万で終わりである、個人の犯罪だと言ってふたを閉めた。そのとき、私、予算委員会で座っていました、メンバーで。本当にそうだろうかと思っていました。そのままふたを閉めている人がずっとつながって外務大臣でいればよかった、よかったというかもめごともなく、外務省も幸せだったのかもしれません。しかし、松尾事件も数千万だと、四億円じゃないですか。次の浅川事件は五億円じゃないですか。そして、まだあるかもしれないし。それで、まだプール金の問題も出てきているわけです。解決していません。

 ですから、私はやはり国民、有権者、納税者の皆様の視点で、これは残念ながらこういうときに私は不幸にして外務大臣にさせてもらったわけですから、これはこれで外交問題もやりながら、しっかりと解決していくということを、私は、有権者の皆様、国民の皆様も願っておられると思いますし、怒りもあると思うんです。

 ですから、そのために非常に手間取っておりますので、では、逆に百八十度違う立場で、もうこれは全然関係ありません、外務省の事件なんか全然関係ないという人が来ることが外交が機能するというふうなことであるのかどうか、私はそうは思っていないということを申し上げたいんです。

永田委員 今の答弁、私の質問に対する部分だけ要約をいたしますと、人事課長だけに焦点が当たっているけれども、人事の問題は、その人に限らず複数ある。それがまさに、今まで問題を起こしてきた、松尾事件以来、問題を起こしてきた人が残っている。そのことを根本的に解決したいんだということであるならば、私の質問にどう答えたかということを要約すれば、恐らく人事課長を含む数名の方々の異動は、これは外務大臣の外務省改革の仕事として必要なことだと認識なさっている、そのようなことでよろしいですね。うなずいていらっしゃるので、それでよろしいというふうに理解をいたします。

 それでもう一つ、人事課長の更迭、更迭というか官房付への異動の意思をお持ちになった、この理由として新聞なんかには、本日行われました園遊会に出席する人をどのようにして選ぶか、これは外務大臣に相談がなかったというようなことが一つの遠因にもなった、きっとそれだけではないんでしょう。しかし、そういうようなことにもなったというふうに聞いていますが、そのことはやはり理由の一つとしては含まれているんでしょうか。

田中国務大臣 まず一つは、私たちが外務省改革をこの六カ月間、新しい内閣でやってきていても、全然改革がきちんと、もちろん制度もできています、部局会計の一元化でありますとか監察制度とかできていますし、立派な方も来られていますが、まだまだ不祥事が続いているということは、やはり体制の中に問題があるということです。それが一つ。

 それから、もう一つの園遊会の問題につきましては、十四人も外務省に枠があって、その招待客が、現在の報道官でありますとか、きょうはウイークデーですね、それを御夫婦で行く。十四人の枠があって、二十八人全部、もとの大使とか次官経験者とかですよ。なぜもっと、NGOでありますとか災害救援でありますとか、そのほか外務省のために一生懸命働いている人がいるはずじゃないですか。なぜそういうところにも枠を広げないで、自分たちの人事、官房だけで、そこにリストを持っておられるのかもしれませんけれども、元大使とかそういう内向きなことで決めるのか。ノンキャリアの方だって行ったっていいじゃないですか。なぜ皇居へ行けないんですか。次官とか大使にならなかったら行けないというのはおかしいと思いますよ。そういうことの相談をなぜしないかと私は怒っております。

永田委員 そういう話であれば恐らく、園遊会に出席する人をどのような人にするか、これを、外務大臣の今のすばらしいお考え、これが反映されないような形で外務省の職員が、ある意味、大臣に相談もせずに決めてしまったということ、このことも問題であったという答弁に今の話はなると思います。つまり、それも問題であり、その問題も含めて人事課長の異動というものを御検討なさった、このように考えてもよろしいと思います。

 しかし、私が思いますに、確かに、松尾事件以来、たくさんの問題が発生しました。この不祥事に対して私たち国民は大変厳しい目で見ておりますから、それに対して人事上の厳しい手続をとらなければならないのは私も理解をしているところです。しかし一方で、園遊会のことをそんなに大きく目くじらを立てなければならない、人事課長を更迭するということまで広げなければならないことなのかなというと、人事課長の仕事というのはもちろんそれだけでもないわけですし、ちょっと問題の大きさというものを誤って見ておられるんではないのかなというような印象がありますが、大臣、反論がありましたらどうぞ。

田中国務大臣 それはきっかけの一つでありまして、なかなか言葉が足りなくてよく理解していただけないようですけれども、この不祥事の中でずっと一年以上も座り続けておられて、一年半ですか何ですか、私どもがこの内閣に着任してまだ六カ月ですけれども、その中でもって一番ポイントとなるようなことについて一番よく知悉していて、そういう人の異動につきましても、機密費の問題だけじゃありませんけれども、そのほかの人事のあらゆるものというのは、やはり組織というものはお金と人だと思いますよ。会計は、何だかんだ言っていろいろと司直の手も入っていますし、明らかになってきます。それは期待できると思います。

 しかし、人事というのは非常に不透明で、理由がわからない。ですから、きょうも次官が突然、この人とこの人を国連へやりたい、これをこれへやってと急に言うわけですよ、何カ月もいるし、何年もいるしと。なぜこうなのか、なぜ理由がはっきりしないのか、ルールをつくらないのか、そこのところを言っているんです。これは、在外公館というのがある外務省の特性なのかもしれません。

永田委員 重ね重ね本当に、園遊会というのは政策の話でもないですし、確かにNGOの方、一生懸命外交関係に努力をなさった方、こういう方々が皇居に行って皇族の方にもごあいさつができるというのは、これはすばらしい機会だと思いますので、そういうことに、NGOの方々の名誉のために使いたいというのもわかりますけれども、さすがに、改めて人事課長を更迭するということの一つの理由にするには、正直、余りに小さ過ぎるのかなという印象を受けます。

 さて、もう一つ、任用班の女性の方に辞令をつくっていただいたというお話も聞いております。任用班の女性職員に、外務大臣が人事課長の異動の辞令をつくってほしいとお願いした、このようなことを報道にも書いてあるんですが、これは事実ですか、改めて。

田中国務大臣 あの月曜日の日は、夕刻に、五時半からだと思いますが、災害救援隊の皆様に感謝をする集いが外務省の七階ホールでありまして、その前の段階に、私はこういうことがあって、そして、とにかく辞令を持ってきてもらってくださいと。ところが、なかなかだめだだめだと言っていましたので、その五時半に――だからおくれたという報道もあっちこっち週刊誌なんかあるようですけれども。とにかく公務があるのだし、上で自衛隊の方やNGOが待っておられるのだから、そして副大臣も一生懸命やってくださっているから、早くしましょうと言っているんですけれども、大丈夫ですよ、どんどんどんどんおくれれば、マスコミがいて、田中眞紀子がまたすっぽかした、田中眞紀子がおくれたと言われて困るのは大臣なんだからといって、役人は知らんぷりなんですよ。ですから、相当、三十分ぐらい待っていましたね。

 ですけれども、私は、それじゃもう持ってきてくださいとじかに電話をかけて、工藤さんという女性が出られて、そうしたら私から直接だからびっくりなさって、今お届けしますと言ったので、私の大臣室の事務方の方に渡しておいてくださいと言って、来たらば私に下さいねと言ったら、秘書官はわかりましたと言われたので、私は七階のホールでスピーチをやり、表彰状を渡し、戻ってきたらそれがなかった。どうしたと言ったら、ちゃんと秘書官が官房長のところへもう返してしまったということですから。そういうてんまつでございます。

永田委員 二、三の質問をいたしますので一遍にお答えいただきたいと思いますが、まず、この女性の職員というのは、一つは、工藤さんという名前が挙がったので特定されているんだと思いますけれども、この方は、いわゆるアルバイトの職員ではなくて正規の職員ということですね。――わかりました。それから、かぎをかけて、その内側にその女性と、まあほかにもいたのかもしれませんが、おられたということですが、このかぎをかけたというのは事実かどうかと、あと、だれがかけたのか。そしてさらに、この方、ショックを受けて欠勤なさっているということを聞いていますが、果たしてこれは復帰されたんでしょうか。

田中国務大臣 その後、その紙が取り上げられてしまったというので、やむを得ず、救援隊のことが終わって――またその後もう一回、私は救援隊に戻って一緒にカクテルを飲むというかビールを飲みに、雑談をしに、写真を撮りに戻るんですけれども、その中間で一度また言いましたけれどもだめで、そして七階に上がって、またおりてきて、そしてそこで、自分で人事課へ行きました。そうしたらば、人事課長もその工藤さんなる人も、いたはずの人たちが――工藤さんとは会ったことがあります、そのほかだれもいませんで、若い方しかいませんでした。

 そして、任用班ですか、そこのところに紙がありますよと言って、名前は、今ここにはありません、帰って役所のノートでも見なきゃわかりませんが、若い方々と年輩の女性もおられました。その方とか警護官も中に入って、そして、すぐ打ってくださいと言ったらば、私のパソコンじゃないからパスワードがわからないとか、どこか出かけたから電話かけて聞いてみましょうとか、何だらかんだら言って時間がかかっていました。

 私もしばらくそこにいすで座っていましたから。そして警護官もおりましたので、とにかくもうこの状態じゃだめだと思って、そして、そのうち女性も、自分のパソコンで今すぐ向こう方で打ってきますと、向かいの部屋でしたが、出ていかれて、行ったけれども、そのままいなくなっちゃった。時間がかかりますねと言っていたらば、急に連絡がつかなくなった、携帯がわからない。そのうちに、もう一人がお手洗いに行くと言っていなくなってくる。私たちもばかばかしくなったので、これはだめだと思って、では大臣室の方でつくってくださいということだったのです。

永田委員 かぎをかけたのはだれかということと、それと、あれもあったので、復帰したのかどうかも心配なんですけれども、ここにももう一つ、読売新聞にけさ記事がありました。「勝手に民間人秘書登用」という話があります。このようなことが新聞に書かれていると、相変わらず外務大臣の権威というものが大変落ちて、外交に支障を来すようなことがあってはいけないので、このこともしっかりとお答えをいただきたいと思います。

 この記事によると、「秘書官室のデスク一つを“占拠”し、交代で常駐するようになった。」ということが書いてあるのですが、デスクはやはり、その秘書官室の中に当該民間人の秘書の方はデスクを占有しておられたのですか。

田中国務大臣 先ほどずっと申し上げたのですが、ほかの前の委員の方に。占拠というかそういうことよりかも、同じ人が来ておりまして、ずっと朝晩じゃないですよ、数時間とか数分のときもあるし、一日いることもあります、ローテーションをやっていますから。そのうちの代表の人の名前を役所の方がちゃんと電話にも入れてくだすって、テーブルもつくってくだすってというか、前からあるんですね、机、いすもあいていますから。一度御視察いただければわかりますが。そこに大体座っていたり、大臣室でメモをとったり原稿を直したり、用があるときには出たり入ったり、会館に行ったり、ちょろちょろしておりましたので、ここにいて、そこで盤踞してすべてを見張っていてと、それはもう本当の政策秘書さんがいた場合には、そういう方が全部いてウオッチングして、その方が序列が上なんじゃないですか、霞が関の順番でいきますと。それに政務秘書さんが行くのですが、うちはそんなことはしておりません。

永田委員 先ほど来、この当該机で仕事をしておった方は、外務大臣の国会議員としての公設秘書さんあるいは私設秘書さんも含まれていた、そして、外務大臣の御主人の方の公設秘書さんも時折そこに座っておられたということ、ローテーションを組んでということは聞いておりますが、ほかの議員の公設秘書さんが外務大臣のために、あるいは田中眞紀子という国会議員のために仕事をするということは、果たして正しいことだというふうに認識なさっていますでしょうか。

田中国務大臣 つい一カ月前ぐらいまでですか、うちの主人が農林政務次官を拝命しておりまして、そちらが忙しかったのですけれども、参議院で――済みません、副大臣。それで、少し参議院の方が手が暇になりましたけれども、私の方は、とにかく政務の方も講演依頼とか山ほどあって、一人じゃ手が回らないですね。

 そういうことがあって、主人の方も、主人が地方に行ったりとか用がないときとか委員会が長いことあるときにはちょろちょろっと手伝ってくれたということでありまして、それは副大臣だって政務官だって、全省庁で十八省庁ですから、中でもって大勢の方がおられると思いますので、外務省ばかりこれを言われていると、ますます外務省全体がシュリンクアップしてしまいますので、少し御配慮いただければと思います。

永田委員 政務の方も大変ですから、そちらの方も要するに手伝っていただいたという話なんですけれども、八月の終わりまで正式の政務秘書官は任命をなさっておられないわけですよね。まさに私は、けさの読売新聞を初めとする、朝日でも書いてあるのですが、外交が滞っているということ、このことは、政務のスタッフが足りなかったからではないかなというところも一因ではないかと思うのですよ。それを、本当に政務がお忙しいはずなのに政務秘書官をずっと置いてこられなかった。そして、その忙しいのを何とか緩和するために、正直言って、政令にのっとった手続をとらずに、自分のいわゆる気心の知れたスタッフをそこの机に座らせて時々お手伝いをさせていた。このようなことというのは、事務と政務という概念を分けて考えるならば、余り正常なことではないのではないかなという気がしています。

 一体、どういう人がそこの机に座って仕事をしていたのですか。

田中国務大臣 事務につきましては、本当に滞りなく、外務省のキャリアの方たちが三人ついてくだすって、そしてずっとやってくださっています。ですから、本当にいろいろな外交の問題、国内でのこうした国会での問題もございますし、外国での出張でありますとか、その他の会議につきましても、本当に滞りなく、前の大臣たちに比べて本当にすっかり中身が間違って狂ったというふうなこともなく、よくバックアップしてくだすっていると思います。

 それから、やはり政務というものは、会館でもやっていますけれども、私が会館に毎日毎日行くことができないんです、残念ながら。ですから、もうフル稼働して役所の仕事をさせていただいていますので、そういうことの用があれば来て連絡役をするということはやってもらわないと、それはもうたまっていって仕事ができなくなっちゃうんですね。そういうことです。

永田委員 それで、一人、正式の政務秘書官を任命なさったということですが、この人は、やはりローテーションを組まれていた中の一人だというふうに先ほどお伺いしていましたけれども、これはどういう方、つまり、大臣の国会議員としての公設秘書、政策秘書、あるいは私設秘書、いろいろな方々がいらっしゃったと思いますけれども、どの方を任命なさって、今後どういうような仕事をさせてお手伝いしていただくつもりなんですか。

田中国務大臣 もちろん、そのローテーションで短時間ずついた、長いこと、半日ぐらいいることももちろんありますけれども、そういう中の一人でございまして、何も怪しい人ではありません。

 それで、これからやるのもやはり同じような、国会議員でいらしたらおわかりじゃないでしょうか。やはりお仕事、地元との……(発言する者あり)野党というのはわからないんですか。私はそうは思わないんですが、結構あるんですよ。

 政務官とか副大臣の地元の方が、きのうも来られる、会ってほしい、そういうのは役所の方がやる仕事じゃないですよね、先生。やはり政務の人がいて御案内するとか、どこそこの婦人部が来て、私の選挙区なんかはほとんど来ていません、ゼロですよ。むしろ、外務省の関係の副大臣、政務官、それからほかの政務官の方が、外務省に行ってみたいから、田中大臣と撮ったってしようがないのに写真を撮ろうとか、どこそこを見せてほしいとか、それはやはり外務省の方がやることじゃないですから、うちの秘書が飛んできて、そういう方たちをお連れするとか、外務省の外でもって待ち合わせをして御案内するとか、そういう用が政治家というのは結構あると思うんですよ。ですから、外交のことなんかはわかりませんし、わかろうともしていませんし、よく働いてくれて私は感謝をしております。

永田委員 野党だからわからないんだという大変失礼な話がありましたが、私も役人をやっておりましたので、大臣がどういうような日常を送っておられるか、よく見ておりますので、その点は私はわかった上で質問しておるわけでございます。

 本当に長々とお話がありましたけれども、一つ最後に、これはもうアドバイスの世界ですけれども、人事の辞令を書くときは、すごく重要なものは自分でお書きになるとやはりいいというのはあるんです。例えば、私が役人を務めておったときに人事課長は、まあ秘書課長ですけれども、非常に重要な辞令は部下には書かせませんでした。自分でワープロを持ち込んでやっていました。当時ワープロを打てる秘書課長クラスというのは珍しかったんですけれども。

 やはりこれが機密の漏えいなんかに対応する場合にも非常に都合がいいものですから、それはやはり自分でなさると、フォーマットも整ったものが、多分アドバイスを受ければできますから、そういうようなこともあります。ぜひそのようなことをして、ちゃんとした人事を、大臣のお好きな人事をなさった上で仕事をしていただきたいなと思います。

 残余二、三分ありますので、本当に遅くなりましたけれども、この法案について、条約についてちょっと質問をしたいと思います。(発言する者あり)どんなに遅くなっても私の質問権ですから。

 今回の九月十一日のテロというのは、私が思いますに大変重要な事件でして、つまり、国家が武力を独占している時代はもう終わったんだ、国家でなくても、かつては国家しか行使し得なかったような武力というものを行使し得る時代になった。それは科学技術文明が発達したからなんですよ。そういうことを考えると、今後は民間人が巨大な武力を行使するというようなことにも対応する体制をつくらなければならない。それがまさにテロに対応するということで、今この案件になっている条約、法案でもあるわけですけれども、しかし一方で、世界のすべての国において国家が武力を独占しているという状態は、相変わらず望ましい姿ではあるはずなんですよ。その方が管理の面では簡便でありますから。

 ですから、ぜひ、ここで日本は改めて世界の中でリーダーシップをとって、世界的な枠組みをつくって、世界のすべての国は、国内にある軍事力あるいは武力、そして軍事力につながるような技術、物質、そういうものをしっかりと管理していくという体制を改めてつくるように最大限の努力をすべきではないかと思うのですが、そのような世界的な枠組みをつくるために、ぜひ日本はリーダーシップをとっていただきたい。田中眞紀子外務大臣にとっていただきたいと思うのですが、そのような意思はいかがでしょうか。

田中国務大臣 国際社会の中での脅威と言われるものが非常に多様化してきていますね。そういう中でもって今御指摘のようなことは大変重要なことだと思います。私が非力で、これだけぼこぼこやられている中で任にたえ得るかわかりませんけれども、やはり、今度の国連での総会の前にG8の会議もありますし、いろいろな方とまた意見交換、きょうもしていますし、今夜もまたいたしますので、いろいろな知恵を拝借しながら、先頭に立てるかどうかわかりませんけれども、委員のお気持ちを体して頑張りたいと思いますので、よろしく御指導ください。

永田委員 本当にこの世界で日本ができる最大限の国際貢献だと思います。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 本当に長々とお話をしてきましたが、この第一委員会室での私の初めての質問が、格調高い、実りある議論になったことを心よりお喜び申し上げまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。

加藤委員長 これにて永田君の質疑は終了いたしました。

 次に、東祥三君。

東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。

 与えられた時間が四十分でございます。三つの点に絞って質問させていただきたいと思います。まず第一の点が、爆弾テロ防止条約関連問題。二つ目が、我が国のテロ対策のあり方及び政府の取り組み姿勢について。そして三つ目は、もう既に衆参国会通過いたしましたテロ新法におけるまだ判然としていない問題、いわゆる憲法と集団的自衛権の問題について質問させていただきたいと思います。

 まず第一点目の問題でありますが、今回議題となっております爆弾テロ防止条約に基づいて取り締まりの対象となっているのは、爆発物その他の致死装置、すなわち毒性化学物質、生物剤、毒素、放射性物質などによるテロ行為であります。生物剤とはいわゆる細菌兵器であり、現在、米国において大きな問題となっている炭疽菌もこれに該当すると思います。細菌兵器によるバイオテロは、その危険性もさることながら、国民の生活に不安を与え、経済社会に大きな混乱を引き起こすところにより、大変重大な問題を投げかけているわけであります。

 日本においては、今のところ炭疽菌によるテロはまだ発生しておりませんけれども、いわゆる白い粉を郵送したり、ばらまいたりする行為が横行しております。このような行為は、米国での炭疽菌被害を考えるならば、もはやいたずらと言えるものではなくて、テロ行為に加担する行為であり、一定の意図を持って行った場合はテロ行為そのものなのではないのかと私自身は思うわけであります。実際に人が殺傷されなくても、経済社会に混乱を引き起こす点において、本当に細菌をばらまいた場合との違いはないのではないか。

 しかし、今回の爆弾テロ防止条約関連法律案では、実際に生物剤、毒素等を用いた場合でなければ処罰の対象にはなっておりません。警察は、威力業務妨害罪等で捜査するしかないと思います。最近の白い粉騒ぎにおいて、警察の捜査により逮捕者も出ておりますけれども、威力業務妨害罪では三年以下の懲役または五十万円以下の罰金と、軽い罰則となっている。警察当局は取り締まりをさらに強化すべきでありまして、また、事態の重大性を考えれば罰則の強化をも検討すべきと考えますが、まずこの点について政府の御見解を伺いたいと思います。

村井国務大臣 全く東委員の御指摘のとおりでありまして、私は、テロによってもたらされる一番怖い問題というのは、やはり社会が不安に陥り、そしていろいろな通常の社会生活の平穏な進行が害されるということだと思っておりますが、そういう意味では、いわゆる白い粉を郵送するごとき行為というのは、まさに御指摘のようにテロに加担する行為以外の何物でもない。警察といたしましても、これはもう厳重に取り締まるように努力をしているところであります。

 今委員御指摘の点の罰条の問題でございますけれども、懲役三年というのは、私の理解しているところでは、刑罰としては実は結構重い事犯になるわけでございまして、これにつきまして、問題は、私ども立法府におります立場、あるいは行政府の立場で余りこのあたりのところを申し上げてよろしいかどうかわかりませんが、現実に、立件いたしまして、これが裁判所で処理されますときに、果たしてどの程度の罰条の適用があるかというあたりの問題に属することが多いのではないか。

 私どもといたしましては、事案を解明いたしまして、しかるべく立件をしてまいる、その努力を警察を挙げてしてまいりたい、それを通じまして社会の安寧を維持したい、このように考えているところでございます。直ちに罰条を重くしなければならないというような問題意識は、必ずしも私ども持っておりません。

森山国務大臣 今国家公安委員長が御説明申し上げましたとおりでございます。

 具体的な事件ではなくて、一般論として申し上げますと、アメリカにおける炭疽菌事件が現に発生しまして、著しい社会不安を与えているという現在の特別な、特殊な状況に照らしまして、それに乗じて、炭疽菌が混入しているかのように装って白い粉を官公庁や企業に送りつけて意図的に混乱や不安を招く行為というのは、送りつけられた官公庁、企業等の業務や郵便等の配送業務を妨害するという点で、刑法上の業務妨害罪に当たることが考えられますし、また、個人に送りつけるような場合には、事案に応じて刑法上の脅迫罪も成立し得ると考えられます。

 検察当局においては、このような事案について、十分に捜査を尽くして適切に、厳正に対処していくべきものと考えておりますが、仮に現行の法令では十分対処し得ないという事態が想定されれば、新たな立法の要否も含めて対応を検討することになると思いますが、まずは現行の法令を活用して厳正に対処するべきではないかと思います。

東(祥)委員 国家公安委員長並びに法務大臣から、問題の本質を踏まえた上でこの問題に対処してくださっているという答弁をいただいております。その前提で、このようなことが起こらないように、また起こった場合、現行の法を的確に適用していただいて、なおかつそれでも不十分な場合、さらなる厳罰を加えるような新たな立法措置をぜひとっていただきたいと申し上げておきたいと思います。

 さて、政府は、十月の十二日、国内テロ対策等に関する関係省庁会議を行いました。私流にテロ対策という問題を考えたときに、三つのジャンルに分かれるのではないのかというふうに思います。

 一つは、情報収集という問題であります。もう一つは、国際条約としては作成されておりますが、まだ日本は締結していない、昨日ですか、未明に署名したと言われる、いわゆるテロリストに対しての資金供与、いわゆる資金の流れの問題であります。三つ目のジャンルというのが、テロリストが明確にわかったときに、それに対してどのような具体的、物理的な行動をとるのか、こういう問題なんだろうと思うのです。

 そこで、この国内テロ対策等に関する関係省庁会議において、国内テロ対策等における重点推進事項を取りまとめられております。その内容について、ぜひ御紹介をいただきたいと思ったわけですが、時間も限られておりますので、私の方から逆に質問をさせていただきたいと思うのですが、その一つの重要なポイントが、まさに情報収集という問題なんだろうと思います。

 重点推進事項においては、情報の一元的集約と迅速な分析対応も掲げられていて、内閣官房を中心とした情報集約・分析機能の強化を行うこととされております。しかし、我が国の情報収集能力については、非常にお粗末である、非常に疑問を感ぜざるを得ない。我が国のような、必要最小限の防衛力しか持たない、また貿易立国を国是として経済的にも世界市場に依存している国は、情報こそが生命線であるべきなのに、専門の情報機関すらないのが今日の現状であります。

 特に、海外関係の情報収集能力はほとんどないと言っても過言ではないのではないのか。情報収集力が弱くて、前世紀末に起こりましたペルーの大使館占拠事件も未然に察知できなかったし、また最近では、金正男と思われる人物の密入国に関する情報も、外国の情報機関からの情報提供によって初めて知ることができた。

 そしてまた、情報収集のための貴重な予算であるはずの外交機密費あるいはまた内閣官房機密費も、外務省あるいはまた内閣官房によって浪費されている始末であることは、私がここであえて言うまでもないと思います。

 米国では、情報関連活動費として、例えば一九九八年度では約三兆円弱、二・八兆円相当の金額が計上されておるわけであります。去る九月十一日の米国同時多発テロが起こったときに、すべての関係情報機関が一斉にアメリカで動いているあのさまを見たときに、事前に知っていたからだとか、いろいろなそういう怪情報はありますが、いずれにいたしましても、その情報収集能力に基づく適切な動きにはやはり圧倒されざるを得なかった。その前提には、これだけの極めて多額な情報収集のための予算が計上されている。

 そこで、改めて、今のこの関係省庁会議においても、情報収集を一点化させていくんだというふうに、いつも何か起こるとやるわけですけれども、その後すぐしりつぼみになってしまう。現状において、それからまた来年度の予算の中に、それぞれ外務省並びに内閣官房、そしてまた国家公安委員会、さらにまた法務省等、どのようにこの情報収集能力を高めていくための予算措置を考えられているのか、まず、この点について御質問させていただきたいと思います。

森山国務大臣 国際的なテロリストに関する情報等テロの対策に必要な情報につきましては、各国との間で要注意外国人に関する情報等の交換を行いまして、テロリストの入国やテロ行為の発生を未然に防止するべく、関係機関との密接な連携を図っているところでございます。

 そのような情報収集の一環といたしまして、諸外国の出入国管理担当者が参集する国際会議等に入国管理局の職員を派遣いたしまして、テロ対策に係る諸外国との情報交換を積極的に行っております。最近では、十月二十四日から二十六日の間、ソウルにおきまして環太平洋出入国管理情報担当者会議というのがございましたが、それにも参加いたしまして、広範な情報の交換を推進し、情報資料、情報誌ですね、これを発行することを決定したというようなことを私も聞いております。

 入管局の外国旅費の金額でございますが、十三年度予算における入国管理局の外国旅費は、国際会議への職員派遣旅費などとしまして約九百八十万円が予算措置されております。大変……(東(祥)委員「九百八十……」と呼ぶ)九百八十万円、はい。大変、アメリカの例をお引きになりましたが、それに比べますと本当に物の数ではないんですけれども、入管の今までの経験から申しますと、このところ毎年少しずつふやしていただいておりまして、ようやくここまでこぎつけたというところでございます。

東(祥)委員 法務大臣、これで十分だと思われますか。

 要するに、これからまたお聞きさせていただく方、現状どういうことをやっているかということは、それを聞いていると大変な時間がかかりますから、それはある程度わかりますので、幾ら計上されているのか、来年度幾ら計上しようとしているのか、そのことだけお答えしてくだされば結構でありまして、法務大臣、九百八十万円で本当に出入国管理のための、また、一説には十三人のテロリストが日本に入ったと。本当かどうかわかりません。その足跡を、跡を追うんだってこれは大変なことだろうと思います。本当にこれで足りるんですか。

森山国務大臣 残念ながら、これで十分とは言いかねるのが実情でございます。

 しかし、私の手元には九年度以来の予算額が書いてございますけれども、九年度は四百八十万、十年度は六百二十万、十一年度は六百四十万、十二年度は六百八十万、そして十三年度がさっき申し上げました九百八十万、そのベースでいうとかなり思い切ってふやしてくださったんだと思いますが、それを十分有効に活用して精いっぱい努力しなければならないと思っております。

東(祥)委員 僕から言わせると、お話にならないんじゃないかと。

 それはそれとして、国家公安委員長、いかがでしょう。

村井国務大臣 警察の関係におきましては、情報収集というのは犯罪捜査あるいは警備実施の諸活動の一環として行われるものでございまして、そのために、情報収集にかかわる活動経費というものを取り分けてお示しするというのは非常に難しゅうございます。

 そういう意味で、ちょっとこれはストレートなお答えになりませんが、いわゆる警察庁の予算の総額が本年度二千七百四十三億でございますが、その中で、活動経費というのが百九十四億、これは捜査費と旅費に分かれまして、捜査費が七十五億、旅費が百十九億、それから、それと別に装備・通信費というのがございまして、これが約四百八十二億ございます。こういった費用の中に情報収集に関する費用が含まれている、このように御理解いただきたいと存じます。

 ただ、委員今御指摘の点、確かに、いわゆるアメリカの情報ファミリーと呼ばれるあのグループの中で、日本円にしまして約三億円近いものが計上されているということは漠然と言われているわけでございますが……(東(祥)委員「三兆円」と呼ぶ)失礼、三兆円ということが言われているわけでございますが、これはまた、もう十分委員御案内のとおり、さまざまの機関がそれを分けて使っている。そして、その中身というのは、これはなかなか、この事柄の性格から、例えばCIAが幾ら使っている、FBIが幾ら使っているというようなことは表にたしか出していない、そういう性格のものではないかと思います。

 私どもといたしましては、いずれにいたしましても、先ほど委員御指摘のように、我々がそう主張しているというふうに御指摘になりましたけれども、内閣に情報をともかく統一いたしまして、そして評価をし、それに基づきましてそれぞれの機関がそれなりの対応をするということで、それなりの努力はしているわけでございますけれども、ただ残念ながら、いわゆる情報にかかわる経費というのは、一方でまた、例えば領収書をとれないとかいろいろな宿命もある性格の金でございまして、これをどういうふうに国として必要なものを用意していくか、これはやはり私ども政治家としても真剣に考えなければならない大きな問題ではないか、そういう問題意識は委員と共有しているつもりでございます。

東(祥)委員 外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 外務省の情報収集といいますと、やはりテロ対策というふうなことも含まれますけれども、大きく分けますと四つの部局に分かれておりまして、例えば平成十三年だけを申しますと、領事移住部の邦人特別対策室の予算といたして二・八億、国際情報局が十四・一億、在外公館警備室の予算が三十五・一億、そして報償費、機密費が五十五・七億でございますから、十三年度で今ざっと足しましても約百八億円という数字が上がっておりますが、平成十四年度になりますと、またこれを少し数を減らすことになっておりますので、規模がさらに小さくなるというふうに思っております。

東(祥)委員 外務大臣、私が申し上げているこの情報収集、情報収集のためにお金がかかる。日本の場合は情報収集能力がない。世界各国に在外の大使館がたくさんありながら、基本的に情報収集のためにお金がちゃんと使えるような形にますますなりにくくなりつつある。そうすればますます情報収集能力というのは減ってきてしまうのでありまして、この点について外務大臣はどのようにお考えですか。

 僕は、機密費というのはもっと上げていかなくちゃいけないんじゃないのか。外務大臣がちゃんと目配り、気配りしておけば、本来持てる能力を、潜在的に持っているものをさらに発揮させることができるんじゃないのか。コントロールする人がいないからおかしくなっちゃっているんですよ。その点についてはどのようにお考えですか。

田中国務大臣 今、巷間いろいろ悪い意味での、不祥事関係で機密費のことを言われていますが、本来の報償費というものは、シークレットファンドと言われているもので、あらゆる国できちんとした形でもって管理をされていて、それが非常に有効に機能をしているというのが特に先進国の姿であるというふうに思いますけれども。

 私はつくづく、ほんの六カ月ぐらいの経験でございますけれども、今振り返ってみましても、そういうものの重要性について政治が機動的に指導もしてこなかったし、それからまた外交官、特に在外もそうだと思うんですけれども、どういうことのために在外公館があるのかということについて、やはり原点に立ち返って、今回のあらゆることを転機として、この情報収集というものの重要性、特にこうしたテロが起こってみますと、イギリスにしてもアメリカにしても、ほかの国もそうです。この間、帝国ホテルでヨルダンの首相にお会いしました。やはりすごく情報収集に自信を持っておられました。

 やはり今回は折り返し点として、ちゃんとファンクショナルなものにする、そうすれば増額も可能になるというふうに考えています。

東(祥)委員 外務大臣がおっしゃられるとおり、外務大臣が、外交における情報収集能力を高めていくことが極めて重要だ、そのためにどういうことをしなくちゃいけないのかという基本原理を持っていれば、それはちゃんと生かせる体制になっていると僕は思います。

 しかし、それをどのように使うのかということを、ちゃんと外務大臣、トップなんですから、それが言わない限り、幾ら重要性を、私は今野党ですけれども、その立場で言っていたとしても、同じような立場で言ったとしても、問題は展開しない。何のために外務大臣がいるか、法務大臣がいるのか、国家公安委員長がいるのか。その方針を決めるためにいらっしゃるわけですよ。しかし、その人が決めなければだれも決めることができない。そこに本質的な問題があるというふうに指摘だけしておきたいと思います。

 先ほど外務大臣は、政策について質問してくれというふうに言われていたので、ちょっと質問します。

 我が国のテロ対策のあり方でありますけれども、今回のテロ事件は米国で発生して、日本国民も二十五名の多数の方が被害者となっており、我が国自身の問題としてとらえるべきであることに異論はありませんけれども、最大の被害者は米国であることも事実であります。そして、米国は我が国にとって最も大切な同盟国であり、小泉総理も、首相就任の際の所信表明演説において、日米同盟関係を最重要視する姿勢を示しております。

 しかし、日米関係を重視する余り、テロ対策として対米支援ばかりに偏るのは、我が国の持つ能力と国際的な役割という観点から見て、必ずしも最善のものとは言えないのではないのかと私は思います。テロ対策を行う真の目的は、世界からテロを撲滅することであります。

 では、今回の米国を中心とする軍事行動によってオサマ・ビンラーディンとアルカーイダを一掃すれば国際テロはなくなるのかといえば、そうとは言い切れないのではないのか。ますますその様相は高まってきている。なぜテロが起こるのか。宗教的対立なども確かに大きな要因でありますけれども、その根本を考えれば、貧困や経済格差の問題に突き当たります。

 二十数年前の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に対して、米国を中心とする西側社会は反ソ勢力を支援いたしました。しかし、冷戦構造の崩壊とともにアフガニスタンは世界から忘れ去られ、終わりなき国内戦争により国民は貧窮化し、数多くの難民が発生した。皆さん御案内のとおりであります。このような悲惨な状況がテロ組織を受け入れる土壌をつくってしまったとも言えないことはない。緒方貞子前国連難民高等弁務官も、国際社会が余りに惨めな生活をしているアフガニスタンの人々を見捨てたことが一因と指摘しておられます。

 現在、アフガニスタン以外でも、テロの温床となっている地域は、いずれも貧困や経済格差の問題を抱える地域であります。テロ根絶のためには、まず貧困や飢餓、経済格差を根絶しなければならない。そして、このような分野こそ、本来我が国が大きな貢献ができる分野であると言われ続けてきた。しかし現在も、その政策もちゃんと持っていない。ばたばたしていて、アメリカからアフガン復興が重要だと言われれば、はい、アフガン復興をやりましょうと。

 かつて別のところもありました。一貫した政策を持っていないんですよ、日本というのは。先ほどODAの政策というふうに言いましたけれども、ODAも、抜本的な政策転換、見直しが要求されて久しい歳月がたつじゃありませんか。

 外務大臣が大臣に就任されて、外務委員会で初めて僕が質問させていただいたときに、大臣に、日本の外務省が、外交政策におけるいわゆる優先順位というのは何ですか、このように申し上げたことがあります。残念ながら、外務大臣は私に答えてくれませんでした。いろいろなことを言っていた。まさに優先順位の高いところにこの問題というのはあるんじゃないのか。つまり、いわゆるODA政策であり、経済格差是正のために日本として、世界じゅう、今百九十カ国前後ありますが、そのうち大半が発展途上国ですよ、外務大臣。

 聞くところによると、外務大臣は発展途上国に行くのが嫌いだというふうに聞いています。僕は、国連のG8なんかへ行くよりも、アフリカの諸国に足しげく運んで、そして日本の外交政策を展開した方がよっぽど日本の国益になるというふうに思っています。G8の国々とちょうちょうはっしできるはずないんですから、日本は。外交政策を持っていないんですから。

 だから、そういう意味では、外務大臣、いかがお考えですか。あれから数カ月たつ。外務大臣としての優先順位、これに僕はかかっていると思うのですが、つくられましたか。いかがですか。

田中国務大臣 確かに、就任直後に東委員からお尋ねいただいたときからいろいろな経験も積ませていただきましたし、いろいろな方の意見を伺うことができて、自分なりに大変勉強はさせていただいたし、逆に言うと、本質的な問題の深さといいますか深刻さというものの深淵を見ているというふうな感じがいたします。

 それを申し上げる前に、私は、発展途上国に行くのが嫌いだなんてことを言ったことはございませんで、どこの国とは申しませんけれども、たまたまそういうチャンスがありませんが、これは別件ですけれども、私は、大学を卒業するときの卒論のテーマは、発展途上国に対する援助のあり方と、どのようにしていかに生活レベルを上げ、楽しく幸せに生きるかというのが早稲田大学の卒業の論文でありましたので、関心がないということは間違っておりますし、行くのが嫌だということはございませんので、またこの辺で間違った週刊誌の材料ができないようによろしくお願いします。

 それで、これがプライオリティーということよりも、一番思うことは、例えば、きのうはUNDPの総裁が来られました。そして、あらゆる人たちが、我々はこの世界の中で、きょうはアジズというパキスタンの外務大臣に朝お会いして一時間話をし、これからまたイランの外務大臣と話をしますが、皆さんが言うことは一つなんですね。やっぱり、一つの国が自分だけでもってどこかの国を全部サポートできるということは思い上がりであるし間違いである、みんながともに地球市民として自分ができることを相手に対してするということ、そのための情報公開をし、現実に行動を起こすということが大事だということを聞いています。

 したがって、ODAも予算の枠が縮減せざるを得ませんけれども、優先順位を持って、そして相手の国のニーズを聞きながらやるということもそうですが、これは大変大きな問題で、いただいた時間内では、多分いっぱいしゃべるなと言われると思いますので、一言では申し上げかねますけれども、貧困が一つのファクターである。

 例えばテロリズムもそうですが、しかし、きょうのパキスタンの大統領特使なんかと話をしていましても、今おっしゃったように、緒方貞子さんの記事も私も見ましたし、また、来週お目にかかることができることになっていますが、やはり、例えばタリバーンのことを言いましても、タリバーンは世界に捨てられたといううっくつした思いを持っているんだということを日本もアメリカも知っているだろうかということを、きょうはパキスタンの大統領特使が言われました。それと似たことは緒方さんがおっしゃっていることも私は認識をしております。

 したがって、私たちがプログラムを冷静に、いっときの感情ではなくて、プログラミングをつくって、世界じゅうの社会開発分野へのどういう支援があるか。環境保全でありますとかインフラの整備でありますとか、そのほかあります。そういうこととプラス貧困対策として、特にいわゆる紛争予防、これはG8の会議で、非常に私もなるほどねと思って聞いたことですけれども、こうしたことをやることによって、本当に、教育でありますとか福祉でありますとか、そういうことでもって自分のこととして、できることから優先順位をもって世界がターゲットを絞ってやっていくということによって、有効な、最初から委員が関心をお持ちになっていらっしゃる資金の使い方ということもありますし、そのための情報収集というものがなければいけない。

 今までの外交官の先輩、外務省の大臣たちも最善を尽くされたと思いますけれども、私は、やはり外交も折り返し点に立ってきているなという気持ちがいたしますので、より一層御指導もいただきながら、また答えがはっきりしないとおっしゃるかもしれませんが、一言でもって、一分や二分でぺらぺらとこれでございますと言っても、とてもじゃないけれども賛成していただけるとは思いません。

 いろいろな思いがありますけれども、これらを整理しながら、国連でいい演説をしたいし、演説だけではなくて、それが実効性が上がらなければいけないと今真剣に考えているところでございます。

東(祥)委員 外務大臣、ぜひ頑張ってください。

 外務大臣、十年前に物すごい、日本というのは、湾岸戦争で国際社会における日本の位置づけということでかんかんがくがく議論して、あのときも、いわゆる人道支援の問題だとか、かまびすしく議論されたんですよ。多くの人道機関、UNDPも含めた上で、国際協力の問題、難民支援策にしても、日本というのは一体どういう政策を持っているのか。これは人道支援策でもいいですよ。十年たっても何にもない。さらにまた、国際協力の政策についても何もない。わからないんですよ。

 今回、同時多発テロが起こって、国際政治、僕は釈迦に説法だと思いますが、今何が起こっているのか。例えば中国というのは、アメリカは中国の協力を得たい。まさに中国は、中国の国益に基づいていろいろな模索をしているわけですよ。ウイグルの問題、御存じですよね、新ウイグルの問題。テロリストと言っているじゃないですか。そういうことを言わせても、国際世論の反発がないようにアメリカに加担することによって彼らの国益を進まそうとしているわけですよ。ロシアを見てくださいよ。チェチェンに対して武装の圧力を加えようとしているじゃないですか。そのように、国益で動いているんですよ。

 日本は何をやっているのか。総理は、アメリカに行ってブッシュ大統領とお話をして、私たち、ここまでできるようになりましたと。しかし、他のヨーロッパ諸国と同じような形で、今回のテロ撲滅のために、自衛艦五艦、五隻進呈します、自由に使ってください、爆撃機何機提出します、自由に使ってくださいと言えないじゃないですか、そういうことすら。

 岡本行夫さんを、本日来ていただきたいというふうに思っていたんですが、このテロ特措法案が通過した後すぐ、さすがに総理はわかっているんですよ、このテロ特措法は余り役に立たないなと。本当にアメリカで要求されているのかどうかわからないと。これは僕の推論ですよ。岡本さん、行ってきてください、アメリカで関係者とお話をしてきてください、何が要請されるのか。

 福田官房長官も、そしてまた小泉総理も、特措法のときに、日本国は主体的に軍事的な支援を行うんです、憲法の枠内でやるんですと、主体的、主体的というふうに言っておいて、主体的に何もできないじゃないですか。いざ軍事的な支援をするときに、多分、艦船を幾つか出すんでしょう。輸送協力をするんでしょう。パキスタンに多分、自衛隊を派遣することはできないでしょう。しかし、それをやる前に、アメリカに行ってどういう要請があるのかということを聞かない限りできないじゃないですか。論理矛盾を起こしているじゃないですか。主体的にやるんだと言ったとしても、日本が主体的に何もできない、そういう状況ですよ。

 外務大臣、いかがですか。そう思いませんか。よく総理大臣が言われている常識の範囲で、めちゃくちゃな法案を通しちゃったんですよ。それを防衛庁長官と後煮詰めてやろうと思ったんですけれども、もう五時になっちゃいますからまた別の機会に譲ろうとするんですが、本当に僕は、日本の国というのは大変な状況に入りつつあると思いますよ。ごまかしながら、十年前は全くできなかったことを、今回テロ対策だといって、自衛隊という、世界から見れば軍隊ですよ、武力組織を国外社会に動かそうとする。その根本となっている憲法に対しての何の考え方も明示しない、基準も明確にしない、そういう形で、マスコミもどれ一つとして明確な形でもってこの問題点をえぐり出していない。

 官房長官お好きな、国際世論が変わった、時代が変わった。時代が変わってしまえば、自衛隊という唯一の武力組織を動かして構わないのか。その基準を一切国民に示さないままで今回やっちゃったんですよ。多分、それに賛同された方々は、個々人においては東の言うとおりだと思っている方がたくさんいらっしゃいますよ。しかし、現実には通しちゃった。

 今回の判断というのは、十年前、自衛隊を派遣することができなかった、今回はとにかく派遣せざるを得ない、それだけしか判断がなかったんじゃないのか。改めて官房長官、本当に虚心坦懐に、大変な法案を通しちゃったんだと思いますよ。いかがお考えですか。

福田国務大臣 前にも同趣旨の御質問をいただいたように記憶いたしておりますけれども、今回、この法案を通していただきまして、テロ攻撃の脅威の除去に努める米軍等に対し、自衛隊が協力を行うための法的根拠を憲法の範囲内で与えるものである、こういうことなんであります。原則なくしてなんて、そういうように私どもは全然考えていないことでございまして、十年前の湾岸戦争のときとよく比較をされますけれども、あのときと今回と基本的な考え方は全く変わっていないんですね。

 そういう中で、じゃ、どうしてこういうことができるのかと。それは、そういうふうにさせていただけるような、そういう環境が整ってきたということだと私は思います。そういう環境が整った結果、日本政府として新しい任務を遂行できる、そういう場を与えられたもの、こう思っております。十年前にもこのような環境があり、そしてこのような場面が出てきたとするならば、これは私は、可能だったんだろう、今回と同じようなものができたのではないか、こう思っております。

東(祥)委員 まだ二分あるみたいですから。

 今申し上げていた点ですけれども、具体的に言いますけれども、テロ対策特措法というのは、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与することを目的と定めておりまして、小泉総理や福田官房長官も、答弁において何度も我が国の主体的行動であることを訴えておりました。

 しかし、法律の内容における最大のポイントというのは、米軍等への自衛隊による支援であって、幾ら主体的といっても、どのような支援活動を行うかは、我が国が勝手に決められるものではないんじゃないですか。米軍と協議し、米軍の要請に基づいた支援を行わなければならないということになる。実際、自衛隊が現地に赴いた場合、我が国がみずからの意思だけで主体的に現場において行動することは不可能なんじゃないですか。米軍の指揮下に入るか、少なくとも米軍からの具体的な指示を得なければならないはずじゃないですか。これは、まさに米軍の行動と一体化した行動という以外に論理的な説明はできないんじゃないですか。

 そして、米軍の今回の行動の目的は、オサマ・ビンラーディンの拘束、テロ組織アルカイーダ及びそれを支援するタリバンのせん滅じゃないんですか。明白な戦闘行為、軍事行動でしょう。これに協力することが集団的自衛権行使に該当しないと言い張るのは、どう考えても論理的に破綻しているんじゃないですかということを申し上げているんですよ。

 この点についてもう一度聞きますよ。いかがですか。先ほど、官房長官は自信を持ってと言いましたけれども、本当に禍根を残すことになると思うんですが、いかがですか。論理的に矛盾しているでしょう。

福田国務大臣 今回のこの法律は、米国との協議なくしてと、こういうことを再三おっしゃっていますけれども、今回のこの法律は、米国など諸外国との協力をする、こういうことでございますから、相談しないでできる活動じゃないんですよ。相談をした上で、日本の役割はどういうものがあるかということを考えて、そして主体的に決めていこうと。

 その主体性の中はどういうことがあるかというと、やはり日本は憲法の枠の中でしか行動できないんだ、そのことが行動の限界になるというふうにも言えるわけでありますけれども、いずれにしても、そういういろいろな協議をして、そしてその中で我が国が活動できるものを探していきたい、こういうふうに考えておるところです。

東(祥)委員 時間が来ました。委員長、ありがとうございました。

 防衛庁長官、失礼しました。また機会があるときにやりますから、よろしく。

加藤委員長 これにて東君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。

 このテロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約なんですけれども、これは、国際社会が随分苦労してつくってまいりましたテロ防止の関連十二条約の一つです。

 そこで、外務大臣にまずお尋ねしたいんですけれども、これは、テロ犯罪と闘う上でどういう力を持つことになるんでしょうか。

    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕

田中国務大臣 お答えいたします。

 本条約は、締約国に対しまして、死または身体の重大な損害等を引き起こす意図を持って爆発物その他の致死装置を公共の用に供される場所等、これは趣旨に盛り込んでございましたのでもうお聞き及びかと思いますけれども、供される場所等に設置する行為などを犯罪とすることを義務づけております。そして、その容疑者が刑事手続を免れることのないように、容疑者を関係国に引き渡すか、あるいは訴追のための事件を自国の当局に付託するかのいずれかを行うことを義務づけているものでございまして、このような国際的な協力の枠組みを構築することによりまして、最終的にはいずれかの国で犯人を処罰し得ることとなるので、我が国がこの条約を締結することは、爆発物そのほかの致死装置による国際的なテロリズムの防止に資するとの見地から有意義であるというふうに考えております。それがお尋ねに対するお答えでございます。

山口(富)委員 今お話がありましたけれども、テロ犯罪者を、それがどこにいようがきちんと国際社会として裁いていく、そのことを確認した大事なものになると思うんです。

 それで、この十二条約というのは、犯罪行為のそれぞれに対応したものなんですけれども、全体として、このテロの犯罪をいろいろな分野で抑え込みにかかってきたというふうに思うんですね。日本としましては、こういう条約というものが関係分野で効果を上げるように、やはりいろいろな場で力を尽くす必要があると思いますが、この点だけ、田中外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

田中国務大臣 結論的に申しますと、委員がおっしゃるような、国際的な法的な枠組みというものが必要になってきますので、そのために努力をするということに尽きると思います。

山口(富)委員 今、国際的なそういう共同の法的枠組みが非常に大事だというお話がありました。

 さて、官房長官にお尋ねしたいんですけれども、テロ特措法の審議の中で、基本計画を定めるに当たって、アメリカ等も含めましていろいろな、先ほど相談という言葉がありましたけれども、要請を受けて、日本が主体的に検討するというお話がありました。そうしますと、私たちが、では要請というのはあったのかとお尋ねしましたら、ないというのがこの間のお答えだったと思うんですね。

 そうすると、この要請というのは、政府間のどういうレベルで、どういう形で行われるんでしょうか。そしてまた、それはだれの責任で受け取ることになるんでしょうか。

福田国務大臣 今までいろいろな相談というか、情報交換ですね、そういうことは各レベルで、それからいろいろな部署でやってまいりました。どんなような状況なのかという、その刻々やっているわけでありますけれども、この法律が成立いたしましてからは、実際に具体的な話し合いを始める、こういうことになるわけです。

 実はきょう、日米間の協議が行われております。東京で行われております。日米安全保障高級事務レベル協議の中で審議官レベル会合が行われております。この会合において、地域の安全保障問題などのほかに、テロ対策特措法のもとでの今後の協力の進め方、これについて意見交換を行っているところでございます。

山口(富)委員 そうしますと、官房長官、確認いたしますが、今出ました、本日行われている日米安全保障高級事務レベル協議、そのもとでの審議官の協議の中で、この間説明があったような相談なり要請というのは行われるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

福田国務大臣 これは、そういうことを前提として話し合いを行う、そういう会議であると承知しております。

山口(富)委員 では、続きまして中谷長官にお尋ねしますけれども、三十日の閣議が終わった後の記者会見で、質疑応答の中で、調整の枠組みをしっかりと構築していただきたいというふうに要望しておいたというふうにお述べになっていますけれども、この調整の枠組みというのは一体どのようなものなのですか。

中谷国務大臣 今後のこの法律に基づく基本計画の策定につきまして、米国を初めとする関係国との連絡協議は各レベルで進めていくべきだというふうに思っておりまして、今後いかなる枠組みで話をするかという点でお話ししたわけでございます。

山口(富)委員 私がお尋ねしておりますのは、それはどういうものとして構想されているのかお話ししていただきたいということなんですが。

中谷国務大臣 どのような形にするかということは、先ほど官房長官もお話しされましたけれども、日米の審議官級による協議、きょうミニSSCというものが行われておりますけれども、今後の協議の進め方、またその他の問題についてお話をされていると思いますけれども、この会議においてそういった話し合いの枠組みというものを話し合って決めたいというふうに思っております。

福田国務大臣 ちょっと私から補足いたしますけれども、今この会議には防衛庁・外務省審議官クラス、こういうお話をいたしましたけれども、そういう会議は内閣官房が最終的には統括する、こういうことになっております。内閣官房の安全保障担当の官房副長官補が中心になって全体的な取りまとめを行い、そして内閣官房副長官、そして私、官房長官が最終的な統括の責任者、こういうことになると思います。

山口(富)委員 そうしますと、官房長官、私が最初に質問いたしましたこの要請を受ける責任という問題は、内閣官房、官房長官のところで生まれるんだという理解でよろしいんでしょうか。

福田国務大臣 今現在、事務レベルでいろいろな情報交換をしている、こういう段階でございます。いずれそういうことになるのではないかと思っております。

山口(富)委員 今、官房長官と中谷防衛庁長官からそれぞれ、本日のSSC、これが協議、相談の場だというお話がありました。

 それで、中谷長官にお尋ねしますけれども、本年度の防衛白書で、このSSC、日米安全保障高級事務レベル協議、これはどういう法的根拠のもとでつくられた機関と書かれていますか。

中谷国務大臣 根拠は安保条約第四条でありまして、日米の相互にとって関心のある安全保障上の諸問題について意見交換ということで、高級事務レベルの要人において意見交換をするというふうにされております。

山口(富)委員 この安保条約の四条は、このように規定しております。「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」と。

 となりますと、この間私たちはテロ特措法の問題で、これまでの枠組みや、また、事柄の性格が違うということでこの新法の問題を随分論議してまいりました。皆さん方がおっしゃる、私どもはこのテロ特措法については反対の立場ですけれども、少なくともこの法の枠組みの中での性格づけというのはあったわけですね。それが、協議の場が、基本計画をつくる上での柱になるところが、何とその安保条約第四条に基づく協議機関で行われるというのはおかしな話じゃないですか。

中谷国務大臣 きょう行われている会議は、この問題のみではなくて、地域の安全保障の問題、また日米地位協定関連の問題等全般的に話をされていまして、この場で現実的な話をメーンに据えるのではなくて、先ほど官房長官もお話しされましたけれども、今後の問題につきましては、内閣官房、また外務省、防衛庁等関係の省庁がコミットした形の委員会なるものを立ち上げて、そこで調整等を行っていくというようなことになっております。

山口(富)委員 これは官房長官、大事なところですので幾つか整理していただきたいのですけれども、最初の話ですと、本日の協議が一つの相談の場になるというお話だったのですが、今の防衛庁長官のお話ですと、それは部分だということですね、どうも。いろいろな議論があって、その中の一部といいますか、だから今後何らかの委員会を立ち上げるという話までありましたけれども、これはどういう関係なんですか。

福田国務大臣 きょうSSC、ミニSSCというふうに呼んでいますけれども、ここで協議をしておりますのは、今防衛庁長官からも答弁をいたしましたけれども、そういうことと、今後この特措法をどうやって活用していくかということについての、協力の進め方をどうするか、そういう場合にだれが担当するかとか、どういう組織でやるかとかいったようなことも含めて協議をしていこう、こういうことできょう会って会合をしているというように私は承知しております。

山口(富)委員 そうしますと、テロ特措法との関係でいいますと、この協議というのは、テロ特措法のどの規定に根拠を置くことになるのですか。今は協議の場の問題で少しお話が進みましたけれども、この協議をするというのは、テロ特措法でいいますと、規定としてはどの部分に当たるのでしょうか。

福田国務大臣 要するに、基本計画を策定するという仕事があるわけですね。ですから、それを策定するための手続である。当然のことでありまして、当然そういうことがなきゃできないわけですから、計画が。そのためにこういう会合を開くわけでございまして、これはまあ、それ以上の説明はなかなかしにくいけれども、必要があるからやっているんだ、こういうことです。

山口(富)委員 アジア諸国というのは、今度の事態で、戦時の状態の中で自衛隊が出ていくということに対して大変不安と危惧の声を上げております。

 私は、官房長官は当然のことだとおっしゃいましたけれども、もともと、安保条約で設置されている機関でこういう問題を協議するということ、そのこと自体が、テロ特措法の問題でいいますと、これは、総理自身が地域的には無限定だというお話もされましたけれども、まさに安保条約の地球規模への拡大といいますか、そういう危惧さえ生みかねない危うい選択じゃないかと思うんですが、この点、いかがですか。

福田国務大臣 各官庁でもって一番知見を有する者がこの担当をするということが一番有効なことで、ましてや、行政組織を簡素化して、そして皆さんによく働いていただこうというようなことを考えますと、なおそういうことは言えるんだろうと思いますけれども、知らない人が担当するよりは、知っている人が担当するということの方が当然じゃないんでしょうか。そう思いませんか。

山口(富)委員 私はそうは思いません。これは、やはり政府としてもう一度、テロ特措法をつくった場合に一体どういう協議の性格になるのかということは吟味すべき問題だし、私たちは引き続きこの問題はよく検討していきたいというふうに思います。

 次に、先ほど三十日の中谷長官の記者会見のお話をしたんですけれども、この中で中谷長官はこういうふうにおっしゃっております。「イージス艦を含む護衛艦、補給艦等の派遣は検討をしているわけでございます」、このようにイージス艦の派遣を検討しているということを明らかにされたわけです。

 そこでお尋ねしたいんですが、このイージス艦の派遣あるいはその検討というのは、話は戻りますけれども、テロ特措法のどこに根拠を置いているのか、お尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 この発言の根拠につきましては、まず、情報収集のための自衛艦艇の派遣の時期、規模についてということで検討させていただいておりますけれども、これに基づいてイージス艦を派遣するという決定はまだ行っておりません。

 それから、新法に基づいても、いかなる自衛隊の部隊を派遣するかについても、関係省庁と相互に連携しつつ、関係国との調整も含めて今後検討をしていくものでございます。ですから、この新法に基づいて具体的なものを検討するということにいたしているわけでございます。

山口(富)委員 私は、中谷長官のおっしゃっていることをなかなかつかみかねているんですけれども、まず最初におっしゃったのは、情報収集のための派遣ですか、これにかかわった検討だというお話があったように思います。その上で、しかし具体的なところはまだ決まっていない、検討中だというお話だったと思うんですが、一番最後になりますと、新法に基づく派遣も検討し得るというお話が、今の答弁ですと結論になるんですか。私はちょっと真意をつかみかねましたので、もう一回お願いします。

中谷国務大臣 まだ具体的にイージス艦を派遣するということは決定をいたしておりませんけれども、その二つのケースをお話ししましたけれども、いかなる艦艇を派遣するかということについての検討を行っているのでございまして、その規模とか種類とか時期とかいうのをまだ決定はしておりませんが、検討しているということでございます。

山口(富)委員 その三十日の前日、二十九日なんですけれども、このテロ特措法が国会で成立した際に、中谷長官はNHKの番組に出て、そこでインタビューを受けていらっしゃいます。その中で、イージス艦についてこのように述べていらっしゃいます。

 イージス艦に関しては、情報収集能力と指揮能力があります、我が国が補給活動等を行う場合にはある程度の数の船舶が航行するわけでありますけれども、この船舶航行の安全性、また戦闘区域に入らないという前提で派遣するわけですから、この海域が戦闘区域であるか否かというところを調べるには、やはり我が国独自でこういった目と耳の機能を持って情報を収集して分析するという機能がどうしても必要であります、我が国がこの上で戦闘区域にかかわらないというようなもとで活動するわけでありますので、こういう情報収集活動というものは非常に重要な活動であると私どもは思っております、こういうふうに発言されています。

 これは、法律が通った日に、広い人々もごらんになっているテレビで明らかにされた中谷長官のお考えだと思うんですが、となりますと、ここで言っているような、非常に重要な活動であると言っているこの中身は、特措法の一体どの規定を根拠にしてこういうお話ができるんですか。

中谷国務大臣 そのテレビの報道の発言につきましては、その前段部分がございまして、現時点においてはいかなる艦艇を派遣するかということは決めておりませんがということをお断りをいたしました。イージス艦についての発言につきましても、イージス艦の特性、特徴等を述べたものにとどまっておりまして、現時点においても派遣をするということは決めておりません。

 この根拠はということでございますけれども、この法律の内容の範囲の中で許されている範囲でございますけれども、後方というか、協力支援活動、また人道的な救援活動もしくは捜索救難活動その他というふうになっておりますけれども、この項目に該当する項目でございます。

山口(富)委員 中谷長官、申しわけありません、どういうことなんですか。

 決めていないというのはわかります。それで、検討中なんだから、何らかの法的根拠を持って検討するわけですね。そうすると、今のお話ですと非常に漠とした話で、三つの活動のお話がここには定められておりますが、そういうものも踏まえてとにかく考えるんだという、そういうことなんですか。それはおかしなことじゃありませんか。

 といいますのも、中谷長官御自身が、情報収集能力と指揮能力で非常に重要な活動だというふうに言っているわけですけれども、そういうような艦艇を出せるという規定がこの法律のどこにあるんですか。

 どうも私、先ほどからお聞きしておりますと、このイージス艦の派遣については二つのケースがあるんだということで、情報収集の問題と、今度の新法に基づく問題が、あたかも二つあるかのような答弁があるんですけれども、そこの整理も含めて、もう一回お聞かせ願いたいと思います。

中谷国務大臣 この新法を運用していく上においては基本計画を策定しなければなりませんし、また、実際の実施をする際におきましては、安全性また確実性、効率性等の目的を達成することが必要でございまして、しっかりとした計画を立てて、しっかりとした活動ができるという点におきましては、いかなる部隊を派遣して、いかなる内容にするかということを十分に検討してまいらなければなりませんので、こういう現在の検討の一考え方を述べたまででございます。

山口(富)委員 だったらもう少し具体的にお聞きしますが、修正はされましたけれども、別表一、二というのがありますね。

 別表の中で、七種類の活動が定められているわけですけれども、一体、この情報収集能力とか指揮能力というのは、これのどれに当たるんですか。

中谷国務大臣 何をするにいたしましても、情報収集等の調査研究なくして物事はできないというふうに思っております。

 例えば、災害派遣をする際も、どこへ、いつ、何を、また安全に行うにはという観点におきましては、十二分に情報収集をして、意思決定をして行うわけでございますし、実際の活動等におきましても、安全の面で絶えず情報収集を行うことは必要でございまして、そういう意味で、自衛隊の持っている装備を活用することによって安全確保を図るという観点におきましても情報収集というものは常に必要ではないかなというふうに思っております。

山口(富)委員 今のお話ですと、特措法との関係でいいますと、法的な裏づけがどうもはっきりしなくて、一般的な情報収集の重要性の話に終始したように思います。

 そこで、重ねてお伺いしますけれども、結局こういうことになるんでしょうかね。特措法というのは国際テロに対応するものですね。そして、もう一つのケースとおっしゃられました防衛庁設置法にかかわる仕事というのは、国の平和と安全への対応、そういう性格を持つわけですけれども、こういう二つの違う性格を持った法律を両方使いながら自衛隊を出していく、基本計画をつくっていく、そういう発想で仕事をなさっていらっしゃるんですか。

中谷国務大臣 一つの根拠でございます。それは、設置法に書かれておりますけれども、防衛庁の所管事務にかかわる調査研究という観点で、防衛庁の所管事務を行っていくための情報収集でございます。

山口(富)委員 私、それは極めて危うい選択だと思うんです。といいますのは、ここ数日をとってみても、アジアの新聞は社説等で随分、日本の自衛隊の海外への派遣の問題に対して批判的論評を掲げております。

 例えばシンガポールの聯合早報というのがありますけれども、これの昨日の社説を見ますと、こういうふうに言っています。中国と韓国は日本の海外派兵に対して強烈に反対しており、疑念と懸念は避けられない、日本は不必要な誤解と恐れを招かぬよう、みずからの特殊な位置を重視し、過分な軍事領域での行動をしていると見られないようにすべきであると。これは、私は、いわばアジアから来る当然の警戒の見方だというふうに思うんです。

 その点で、本来性格の違う二つの法体系というものを動かしながら海外に自衛隊を派遣していくということは、やはりアジアとの関係でも、そして日本の憲法原則との関係でも大変おかしな選択だということは指摘しておきたいと思うんです。

 それで、もう一点、イージス艦にかかわって、中谷長官は、航行船舶の、船舶といいますか、日本から行く船ですね、補給艦や輸送艦があるんでしょう、この安全性が問題なんだ、戦闘区域に入るか入らないかをきちんと調べなきゃいけないという話をされています。

 そうすると、もともと基本計画の中で、そして、その後の実施計画などの中で、ここがどういう区域かというのを明確にすべきはずなのに、実際には、行ってからもイージス艦等の力でそういう区分けをするという、そういうお考えなんですか。

中谷国務大臣 法案にも書かれておりますけれども、実施活動期間中においても、戦闘行為が行われるような場合におきましては中断をしたり計画変更をしたり避難をしたりするわけでございますので、絶えずこの状況については監視をして、情報収集をするということは必要だというふうに思っております。

山口(富)委員 そうしますと、基本計画の段階では、確信を持ったような、ここは戦闘区域、ここは戦闘区域でないというような区分けはできないというのが今の答弁に結局なると思うんです。

 それで、もう一つお尋ねしますけれども、イージス艦というのは、中谷長官も御存じのように、もともと空母の護衛を目的につくられたものですね。それだけに、今持っているのは日本とアメリカだけだと思いますけれども、艦艇へのミサイルや航空機の攻撃というものを監視しながら、その情報を空母に提供していくわけですけれども、そのためにデータリンクシステムを持っているわけですが、こういう艦艇が出かけていくと、当然、戦時態勢をとっている米艦船にデータリンクでデータが伝わるわけですから、それは武力行使と一体化の問題が当然起こってくるんじゃないでしょうか。

中谷国務大臣 まず最初の御質問でございますが、活動地域を設定する際におきましては、十分に調査をした上で、その区域が戦闘行為が行われることがない場所であるということを調査した上で設定をするというふうに考えております。

 後の御質問は、新法の議論の中でもお答えをさせていただいておりますし、過去の答弁にもございますけれども、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動によって得られた情報を一般的な情報交換の一環として米軍に提供することは憲法上問題がないものと考えておりまして、特に指揮命令等におきまして、直接、指揮命令を他国から受けることがないように、我が国が主体的に行動をするという観点において整理をしてまいりたいというふうに思っております。

山口(富)委員 指揮命令を他国から受けないなんというのは、当たり前の話ですよ。

 それで、最初の区域分けの問題でいいますと、それに自信がないからイージス艦等の情報能力を持った艦船も出したいということなんでしょう。きょうの答弁はそういう答弁の積み重ねだったと思うんです。

 そして、もう一つ私が言いたいのは、これは一般の話じゃないんですよね。アメリカが戦時態勢をとっているもとで、そこで情報の交換が行われていくわけですから、そこの中身を、これは一般だとか、これはどうのこうのという議論が成り立たないような緊迫の状態の中での作業になる。

 そういう点で、私は、与党の方からも、イージス艦がとった情報は米国にストレートに入る、武力行使と一体化することになる、これは野中議員の発言ですけれども、こういう危惧の声が出てくるのも当然だと思うんです。この際きっぱり、イージス艦については、その派遣もその検討もやめるべきだというふうに考えます。

 さて、もう一点、今度の、きょう審議しております条約にかかわって、アメリカが今アフガニスタンで行っております軍事攻撃について、世界で非常に危惧と憂慮の念が生まれている。そして、例えばマレーシア、インドネシアを初めとしてアジア各国の政府関係者から、軍事攻撃や空襲についてそれの中止を求める声が相次いでいるというふうに思います。

 最近、パキスタンのモイヌディン・ハイダー内相が空爆を非難し、そしてサウジアラビアのナエフ内相も空爆の停止を求めましたけれども、外務省はこれらの事実をきちんと確認しているんでしょうか、外務大臣。

田中国務大臣 最大限確認をしているつもりでおります。

 確かに、おっしゃるとおりに、パキスタンのハイダー内相それからサウジアラビアのナエフ内相はいろいろな発言をなさっていまして、特にハイダー内相は二十七日に、空爆を非難するような発言もなさっておられます。

 まず、パキスタンの方ですけれども、米国の対アフガン戦争の目的は達成されてはいないように見える、現在、パキスタンを含む国際社会は、最近アフガンで起きていることはよくないことであると考え始めている、イスラム教徒は市民に多数の被害が出ていることにろうばいしていると述べた旨、報道されているということだと思います。

 そしてまた、サウジの内務大臣ですけれども、二十九日の湾岸の協力理事会というのがございまして、その内相会議で、アラブ、イスラム諸国民は米国における連続テロを非難し、この事件はイスラムの倫理に反するものである、我々はこの種の行為を実行する者を決して支持はしないと述べております。とともに、また、同会議に出席する前に記者に対しまして、現在戦争が継続することを望んでいる者はいない、無実な人々が苦しめられているのだから、この戦いを終結させる効果的な方法を望むということを言っておられます。

山口(富)委員 今外務大臣から紹介していただきましたけれども、やはり私たち日本は、二十一世紀、これからの世紀をずっとアジアで生きていくわけですから、そういうアジアの国々の危惧の声をきちんと聞くということが非常に大事だと思うのです。

 そして、その方々が心配しているのは、一つは、一般の罪のない人々に被害が及んでいるということですね。それからもう一つは、今問題になっているのは、ラマダンというイスラム世界の問題で、その時期に軍事攻撃していいのかどうかということですね。

 それで、きょう遠山大臣に来ていただいたんですけれども、トルコの大使を三年間お務めになられて、最近、「トルコ 世紀のはざまで」という御本をお書きになりました。この中でもイスラム世界について随分お述べになっていらっしゃいますが、このラマダンというのは一体どういう意味を持つものなのでしょうか。

遠山国務大臣 拙著がお目にとまってまことに恐れ入っておりますけれども、私は、トルコに滞在いたしましたが、イスラム教の教義でありますとか、あるいはそこで行われる習俗について、こういう場で御説明するような立場ではございません。

 ラマダンというのは、イスラムの人たちの中で非常に重要な戒律を行うという一つであろうかとは思っておりますけれども、しかし、そのことの意味でありますとか、それはまさに専門家にお問い合わせいただければありがたいと思います。

山口(富)委員 いや、私は、大臣が文部科学をやられていらして、専門家のお一人、政治家のお一人だと思って質問したんですけれども。

 この著書の中では、イスラムのそういう考え方というのが生活の中に非常に広く根づいている、ですから、このラマダンの時期に日本大使館も多くの方がその生活に入るんだ、遠山大臣はその姿を見ながら大使としての生活を送ったということが大変詳しく書かれております。

 こういう時期に今軍事攻撃をやった場合に、一体これはイスラム世界にどういう衝撃を与えることになるのでしょうか。田中外務大臣、どうでしょうか。

田中国務大臣 ラマダンについてはもう少し文部大臣が詳しく、トルコ大使でいらっしゃったから、お話しくださると期待しておりましたが、私は、普通の人以上にそれについては詳しくは存じませんけれども、ラマダンは、イスラムの方にとって特別のときであるということはわかっております。

 ではありますが、やはり本質的に、なぜこういうことが始まったかという原点に立ち返って考えてみますと、このテロというもの、テロを根絶するためにはどうするか。それがもうできるだけ二度三度と繰り返されないように、ある程度そうしたものを徹底的に排除できるようなところまで持っていかなければならないというところに今回の苦しさがあるというふうに思っております。苦しい答弁ですが。

山口(富)委員 苦しい答弁だということですが、一般市民への被害が広がり、そして世界の人々が、イスラムの世界の大事な時期に軍事攻撃することに非常に憂慮の念を上げている。それに対して、日本としては、こういうテロが起きた原点に戻るということだけでなくて、やはり、きちんとした足場を持って、こういう選択が正しいのかどうかという問題を検討する必要があると思うんです。

 きょう、各紙に報道されていますが、アナン国連事務総長がこういうふうにきのう会見で述べたと。軍事作戦全体、特に航空軍事行動をできる限り早く終結してほしい、こういう発言を記者会見でされたそうです。

 私たち今、日本共産党としてパキスタンに現地の調査団を派遣しておりますが、その中でも、国連の各機関とやりとりしましても、やはり今のアフガンやその周辺諸国の現状からいって、一刻も早く空爆をやめるべきだというのが共通に語られているんです。

 今、世界の政治と世論は大きく動いていて、アメリカの軍事攻撃というものをどこで歯どめをかけ終結させるのかというところに、既に世界の政治の関心は向き始めている、また世論の関心も向いていると思うんです。そういう時期に日本で大問題になっているのは、自衛隊の派遣を一体このラマダンを前にやろうとするのかというところが問題になってしまっているわけですね。この落差について、田中外務大臣はどういうふうに見ていらっしゃいますか。

田中国務大臣 日本の自衛隊の派遣の問題との関連というのは、非常にデリケートな難しい問題であると思いますし、大きなトータルな情勢分析等は当然官房長官が一番なさっているはずでございますから、官房長官からお答えいただく方が適切かと存じますが。

 私はきょうも朝、一日で二つ三つの国の方々とお目にかかる機会がありまして、戦争を始めるのももちろん容易とは言いませんけれども、どうやって終結するかということについて、私も自分から、直接ラマダンに関係ありませんけれども、きょうもずっと……(発言する者あり)はい、短く言います。そういう話をしました。

 そして、結論的に皆さんが言うのは、やはりアフガニスタンの人々が幸せになること、それは、インフラの整備そのほかだけではなくて、トータルに、その地に生まれた人がその地に帰ってそこで定住できるようにするため、それには戦いは短い方がもちろんいいわけでございますし、被害が少ない方がいいわけで、防衛庁との関係につきましては、ぜひ、トータルで御存じの官房長官にお願いをしたいと思います。

山口(富)委員 時間がありませんので。

 私は、日本はテロ特措法の発動による戦争の支援ではなくて、これだけ世界が、戦争を終結させて国連を中心とした法と理性の裁きのもとに置きかえろという声を上げているわけですから、そういう方向で憲法九条に基づく平和の貢献をやるべきだ、このことを主張いたしまして、質問を終わります。

亀井(善)委員長代理 これにて山口君の質疑は終了いたしました。

 次に、今川正美君。

今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。

 まず最初に、提出されておりますいわゆる爆弾テロ防止条約に関してでありますが、本条約の第二条三項の(c)に関してお尋ねをしたいと思いますが、この(c)のところで、「共通の目的をもって行動する人の集団が」、途中省きますけれども、犯罪を実行することに対して「その他の方法で寄与する行為」というふうにありますが、これは具体的に何をどう意味するのか、少し具体的に御説明をお願いしたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 この「その他の方法で寄与する行為」と申しますのは、この二条三項(a)の「加担する行為」、これは犯罪の実行に直接協力する行為を中心とする概念だというふうに思っておりますけれども、及び(b)の組織ないし指示する行為以外の、何らかの方法で犯罪の実行を援助すること、例えば、ある集団が本条約に定められた犯罪行為を実行した場合に、事情を知りながら資金を渡すなどして当該集団による犯罪の実行を故意に援助する行為などを指すというふうに解しております。

 これは、(a)及び(b)と同様、この二条三項(c)につきましても、我が国の国内法の考え方からしますと、いわゆる共犯に該当する犯罪であるというふうに思っております。

今川委員 なお、この国際条約の締結に伴う関連法律の整備に関する法律案も提出をされているわけでありますが、私は、社民党として大きく三点だけ注文をいたしておきたいと思うのです。この国際条約なり関連する法律の運用に関しましては、一つは、国民の自由と権利を不当に制限することのないようにという点です。二点目に、情報公開、情報開示の制限や、あるいは国民の行政に対する監視活動が不当に制限されないようにという点が二点目です。三点目に、いわゆるテロ対策を理由にして正当な難民や無国籍者の地位が侵害されることのないように、十分に留意をして運用する必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

 さて二点目に、これは防衛庁にお尋ねをしたいと思いますが、いわゆるテロ対策支援法の米軍への支援協力活動に関してであります。

 まず最初に、今既に、先月の八日から米軍やイギリス軍はアフガンに対して空爆などを行っておりますが、報道等によりますと、米海軍の四個空母戦闘群が今アラビア海方面に展開中であるというふうになっておりますけれども、防衛庁として、この四個空母戦闘群の基本的な編成内容なりその作戦海域をどのように把握しておられるのか、お尋ねをいたします。

中谷国務大臣 米海軍の規模とか作戦海域につては、その詳細を明らかにしておりませんので正確には把握をいたしておりませんけれども、現在、アラビア海の周辺海域に、エンタープライズ、カール・ビンソン、セオドア・ルーズベルト、キティーホークの四そうの空母が展開をいたしておりますが、エンタープライズについては、周辺海域を離脱し、既にスエズ運河を通過したというふうに報じられております。

 一個空母戦闘群の構成には変更が頻繁に行われておりますけれども、基本的、典型的に言いますと、空母一隻、巡洋艦二隻、駆逐艦二隻、フリゲート艦一隻、潜水艦二隻、補給艦一隻の合計九隻から成っておりまして、これに一個両用戦闘群、揚陸艦三隻が付随しておりまして、合わせると十二隻程度になるというふうに承知いたしております。

今川委員 次、二点目に、産経新聞のきょう付の紙面なんですが、政府は、ディエゴガルシア島方面に護衛艦三、四隻と補給艦一隻の派遣を盛り込む方針を固めた、また、C130輸送機についても最大六機を同方面に派遣、運用するという報道がありまして、先ほど他党の委員からの質問にもありましたが、本日から始まっている審議官級の日米安保高級事務レベル協議、いわゆるSSCでこれらの方針を米側に提示する、さらに調整を行った上で基本計画を今月十六日に閣議決定するというふうにあるわけでありますが、これはイージス艦だけではなくて、その基本計画には、今私が申し上げた中身は間違いありませんか。

    〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 報道のお話がございましたけれども、私も、産経新聞をきょう見まして初めて知った事実が多くて、こういったことを防衛庁としては決めた事実もございませんし、この報道は「政府は」というふうになっておりまして、その真偽は私は存じ上げておりませんが、基本計画の速やかな策定作業をしているということはそのとおりでございますが、現時点でその具体的な内容が固まっているわけではございません。

 また、ミニSSCもきょうは行われておりますけれども、今後の話し合いの枠組みをつくって、そこで話し合いをするということでございまして、本格的な基本作業の内容につきましては今後の協議によるものだというふうに思っております。

今川委員 これはイージス艦とは限りませんけれども、いわゆる米軍支援に際して情報収集活動ということが盛んに言われておりますけれども、これは基本計画の中にどのような形で盛り込むんですか。いわゆる新法の中には具体的な事項が列記されてありますけれども、情報収集ということはございませんね。どういう形でこの基本計画の中に盛り込まれるのか、御説明ください。

中谷国務大臣 情報交換というものは、すべての基本になるものだというふうに思っております。支援活動の内容を確実に実施する上においても、また安全を確保する上においても、何よりも情報交換は必要なものでございまして、日本と他の国との情報交換を行っていくということは当然でございまして、一般的な情報交換の一環として他国へ情報を提供するということは実力行使に当たらず、憲法九条との関係で問題を生じるおそれはないというふうに思っております。

今川委員 いやいや、これは答弁になっていないですよ。いわゆるテロ対策新法では、別表を掲げて、その中に情報収集という項目はありませんねとお聞きしたんです。今長官がおっしゃったことは、いわゆる一般論として、平時の合同演習であれ、それはいろいろな情報収集活動があるでしょう。しかし、今回は少なくとも、日本が支援をする対象、米軍は、既に実際の戦闘行動に入っているわけですね。そうした場合に、今おっしゃるような、護衛艦であれ何であれ、海上自衛隊の艦船をしかるべきところに派遣する場合に安全であるかどうか、いわゆる見方の部分で、安全なところに派遣するために情報収集する場合もあれば、そうとは限らずに、いわゆる米軍がより円滑に戦闘行為が行えるように、そのための情報収集をする場合もあるわけですね。だから、一般論でおっしゃってもらっても困るわけです。

 ですから、いわゆる海上自衛隊の自衛艦が、艦船が行って情報収集活動をするといった場合に、その根拠となる法、このテロ対策新法の中にも、別表の中にもないわけですから、ここを根拠にして行くんだということをはっきりおっしゃっていただきたいんですよ。

中谷国務大臣 災害派遣などの自衛隊の活動を行う上においては、情報収集というのは第一でありまして、いつ、どこで、何をするかということを考え、また安全を確保する面においても、この情報収集活動なくして活動することは不可能であるというふうに思っております。

 そこで、その情報収集活動といいますと、御懸念もあるようでございますが、基本事項といたしまして、戦闘が行われている場所では行わないわけでございまして、いかなる艦船においても、戦闘が行われている地域では情報収集活動もやることはないというふうに私は考えております。

今川委員 中谷長官、戦闘地域に行く行かないという質問をしたんじゃないんですよ。この間の流れの中で、例えば、いわゆる一定の艦船部隊を派遣する前に、防衛庁設置法の中に、第五条に調査研究というのがあって、これを根拠にして派遣したらどうだろうということもございましたね。ところが、政府部内であるいは与党の中で、それはやはりちょっと無理があるんではないかといういきさつもあって、そうしますと、やはり基本的には、先ほど申し上げたテロ対策新法の中で、その基本計画の中の、その他の重要事項というところに盛り込む検討をしているんではないかという一部の報道もあるものですから、そこら辺をきっちりお聞きしたいという意味で質問しているんです。

中谷国務大臣 この根拠は、防衛庁設置法五条の十八でありまして、「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」ということでございます。

 なお、この項目は、これまでも、自衛隊の主要任務であります我が国の有事における防衛出動また災害派遣等に関しまして絶えず警戒監視を行っておりまして、そういう警戒監視もこの五条十八で行っております。

 新法が成立したことに伴いまして、防衛庁の所掌事務も、この新法に関連する事項につきましては新たな事項になっておりまして、新法を推進していく上において必要な調査研究を行うということも、この五条で行おうというふうに思っております。

今川委員 長官、もう釈迦に説法なんだけれども、防衛庁設置法というのは基本的に、防衛庁という組織の運用にかかわる基本的な法律ですよね。自衛隊という組織の運用にかかわっては、当然のことながら、自衛隊法というのが別にあるわけでしょう。今長官も申された防衛庁設置法の中の調査研究というものを根拠にするのは、やはり無理があるんですね。これはもう再答弁を求めませんが。

 ところで、先ほど申し上げた情報収集の場合も、政府の見解としては、特定国の武力行使を直接支援するための偵察行動を伴う情報収集、提供は武力行使と一体と判断される可能性があるというのが政府見解ですね。

 では、今米軍が既に空母などを初め戦闘行為を行っているわけですけれども、いわゆる補給艦とか護衛艦のための収集活動ではなくて、何らかの形で、戦闘行為中の米軍に対して情報を提供するというのは、平時における日米合同演習の行為とは全然質が違うわけですので、これは明らかに憲法に抵触するのではありませんか。そこの点をお答えください。

中谷国務大臣 この件につきましては、平素から日本と他国の間でも、軍事情報を含めて相互に必要な情報交換を行っていくというのは当然でありまして、このような一般的な情報交換の一環として他国へ情報を提供することは実力行使に当たらずに、憲法上問題を生ずるおそれはないと考えておりますが、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動によって得られた情報を一般的な情報交換の一環として他国に提供するというのは、憲法上問題がないと考えております。

 他方、例えば特定の国の武力行使を直接支援することのみを目的として、ある方向に南緯何度何分という形で撃てというような行為を行うことについては、憲法上問題を生じる可能性があるというふうには思っております。しかし、一般的な情報交換の範囲におきましては問題は生じないというふうに思っております。

今川委員 もう余り時間がないんですが、自衛隊の側から、支援協力する対象は米軍ですから、米軍に対して今おっしゃったように撃てとか、もちろん、そんなことにはならないでしょう。ではなくて、米軍が有効に、有効にというのか軍事作戦、戦闘行為をやるのに不可欠な情報を提供することは、護衛艦が直接ミサイルを撃ったり、武力行使をしなくとも、米軍の行う戦闘行為に不可欠の情報を与えたら、これはやはり憲法に抵触しますよ。

 もう時間がありません。最後に、あと一点だけお聞きします。

 これは外務省の方にお聞きしたいんですが、今回、横須賀を母港にしている米空母キティーホークもアラビア海方面に作戦行動に出かけました。これは御存じのように、日米安保条約の六条にかかわって、いわゆる岸・ハーター交換公文がございますね。この中では、いわゆる日本国内の基地、施設及び区域の使用は日本国政府との事前協議の主題とする、その中身が大きく三つありました。

 一つは、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更。二つ目に、同軍隊の装備における重要な変更。並びに、三番目が、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地の使用。今回は明らかに、米軍がアフガニスタンを攻撃するために、その一翼を担って横須賀から空母キティーホークは戦闘作戦行動に出かけたわけです。これは、今申し上げた事前協議の当然対象になると思うんですけれども、日本政府としてはどのように対処をされたのか、お伺いしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 空母キティーホークの行動についてのお尋ねでございました。

 安保条約の事前協議は、今、今川委員御指摘のとおり、岸・ハーター交換公文に定められているところでございます。私ども政府といたしましては、キティーホークの出港に関して、今御指摘のとおり、事前協議の申し入れが行われていない以上、我が国の施設・区域から条約上の戦闘作戦行動が行われたことはあり得ない、かように認識している次第でございます。

今川委員 もうこれで終わりますが、これまでの国会議論の中でも、例えば、米海軍の艦艇が出る場合には日本の領海を離れてから指令を受けるだとか、あるいは、三沢のF16が遠くイラク方面に飛んでいくときには日本の領空を離れたときに作戦指令を受けるとか、およそ信じられないような答弁であったわけですね。ですから、日米安保という一番大切なものの運用がこれほどずさんなことでは大変なことになると思います。もっとそこら辺は、日米安保の枠を超えてしまうような周辺事態法であるとか今回のテロ対策新法、全然日本の側の主体性がないではないかというふうに思うんです。

 もう時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。

加藤委員長 これにて今川君の質疑は終了しました。

 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約及び同条約締結に伴う関係法律の整備ということで、社民党同僚議員の今川議員の方から、個人との権利関係等、社民党の主張も申し述べさせていただきました。

 その上で、今回のこのテロ特措法をめぐりまして、及び、この委員会でこの間議論してきて、刻々と変わる状況に対応してさまざまな議員からの質問がなされました。その中で一点、私がどうしても中谷防衛庁長官の御答弁に納得できない点がありますので、その点からちょっと質疑させていただきたいと思います。

 それは、先ほど、他党の議員の方の質問に対しまして、私たちはこの特措法には反対をいたしましたが、基本計画を策定するに当たって、今、日米間のミニSSCという協議の中でという話がありました。これは、日米新ガイドライン関連法の議論の折にも、このSSCの性格とか、これに伴っての包括的メカニズム、調整メカニズムの議論は、大分時間をかけてやったと思います。私も委員で、中谷防衛庁長官も委員でいらっしゃいました。だれが出て、どういうルールで、日米新ガイドライン、要するに、安保条約に基づいた、根拠にしたこの新ガイドラインについての協議をしていくかというのをきちっと決めているわけですね。

 そうしますと、今回は日米安保条約を根拠にしないでアメリカを支援したいということで、先ほどからの御答弁ですと、やはり、よくわかっている者が話せばいいというような次元のことではないと思うんです。これは明らかに対米支援で、アメリカは今戦闘行動をやっております。そこに、後方支援というものも含めて、周辺事態法のときには後方地域支援と言われていましたが、この会議の性格をきちっとある意味で縛り、そして、ここで性格づけをしたはずなんです。

 ところが、今回、それを根拠にしていないのに、どこで一体話するんですか。先ほどから中谷長官、私はこの法案そのものも反対しましたが、通ってしまっていますけれども、根本的な矛盾と、今までの安全保障の議論から逸脱して出てきたことが、この基本計画策定に当たって、具体的行動に移そうとしたときの協議の場すら今までの安全保障の議論の場ではきちっと答えられない現実が出てきているんじゃないでしょうか。私は先ほどからの御答弁では納得できません。いかがですか。

中谷国務大臣 この協議の根拠は先ほども申し上げましたけれども、話し合いをされている事項は、世界情勢全般の話もいたしますし、また日米地位協定の話もいたします。

 今起こっているテロの行為等につきましても、これは日米共通の懸案の問題でありまして、今後、実質的な内容の話につきましては、先ほど官房長官もお話しいたしましたけれども、内閣官房を中心に、外務省、防衛庁も入った対米支援の新たな調整の枠組みをつくりまして、そこの調整委員会なるところで話をするわけでございます。ですから、実質的な話はその新たな枠組みで今後は話をすることになろうというふうに思っております。

辻元委員 今調整的とおっしゃいましたが、調整メカニズムのことかと思うんですけれども、それもきちっと規定されているわけですね。

 ですから、今の御答弁でもわかるように、やはり、今までのこの議論、非常に無理がある中で、ある意味でなし崩し的に行われてきたと言わざるを得ない。この基本計画策定に当たっての協議機関設置についても私はそのように感じざるを得ないし、そういうのが事実じゃないかと思います。

 さて――うんうんとおっしゃっていますけれども、防衛庁長官、いや、それはできないですよ。今までの積み重ねの議論をずっとしてきた中で、安全保障の体系の中から、どこで協議するかということを設置できませんよ。

 先ほどから官房長官も、いや、よく知っている者同士で話せばいいというような御答弁がありましたが、そんな話ではないと思います。日本は法治国家です。そして今、実戦部隊が出ているところへ自衛隊を出そうとしていることを、そういうような、よくわかっている者同士が話せばいいというようなことで決めていく。国家の根幹の問題だと私は指摘したいと思います。きょうはちょっと別の質問もありますので、これはまた安保委員会などで詰めていきたいと思いますが。

 基本計画策定に当たりまして、私は十月二十日からパキスタンの方に社民党調査団ということで行ってまいりました。

 私と、それから阿部知子議員、この方は医者をしておりました。そして、農業に詳しい、食糧支援などについても調査したいということで、北川れん子議員。そして私は、現地で活動している、アフガニスタンにもこの間まで活動していたNGOの人たちとのネットワークがありますので、専門的に調査したいということで、三名で行ってまいりました。

 イスラマバードからペシャワールまで陸路行きまして、アフガニスタンとの行けるところの国境近くまでということで行ってきました。非常に緊迫しておりました。治安は悪かったです。普通の平服というか、こういう服装では歩けない状況で、パキスタンの女性の民族衣装を身にまとって、目の部分だけあけて、そしてジープに乗って、NGOで現地でかなり熟知して活動されている方と一緒に参りました。今回は、外務省の方とはコンタクトはいたしませんでした。

 その中で、中谷防衛庁長官にお伺いしたいんですが、キャンプにも参りました。基本計画策定で、今回の法案では被災民支援ということを、私もその矛盾について議論させていただいてまいりましたが、今回、現地に行って、さらにやはり自衛隊が行くというのは無理やなというように実感を持っておりますが、基本計画策定に当たっては、まだこの被災民支援に自衛隊を出すということも想定されているんでしょうか。

中谷国務大臣 この点については、現時点においては辻元さんと認識は大体似たものを持っていると思いますが、現時点において、自衛隊がパキスタンにおいて活動できるような状況ではないんじゃないかなというふうに思っております。

辻元委員 それは、既にこの審議が始まった折からもやはり大きな矛盾点だったと思うんです。

 一つは、例えば国境地帯の間、ジャララバードという都市がありますが、そこの間、パキスタン側の国境地帯は今、部族支配地帯というのになっておりました。パキスタンの警察権もそこからはなかなか及びにくいということで、一定のところから入っていけないというような話も聞きましたし、それから、その辺に難民キャンプもたくさんありますので非常に緊迫しております。

 国連機関も、反米感情が高くなっておりまして、UNHCRなど青い旗ですから、UNという関係になりますと、国連イコールアメリカかというような、そういうような認識も広がっていまして、国連機関にもデモをかけられるとかアタックをかけられるというような緊迫した状況になっております。ですから、この難民キャンプへどのように支援をしていくかということも、今までと、この一カ月前と大分状況が変わってきています。

 その中で、日本から派遣されました、外務省で田中外務大臣に励まされて出発したNGOの方々、非常に頑張っておられました。そういう関係者の方々、例えばテントや毛布の支援も、テントも五千張りほど現地で調達してお送りになったという話も聞きました。

 そこで、中谷防衛庁長官、現場ではやはりまだ毛布やテントが足らぬと言っていましたけれども、日本から送りましたが、残念ながら数も少なく、私も指摘させていただきましたが、メード・イン・パキスタンのテントで、現地で買ってもらった方が、難民で苦しむパキスタンの人たちにも支援になるし、それからたくさん買えるので、ぜひそのようにしてほしいという声が圧倒的に多かったんですが、防衛庁長官、いかがですか。お考えは変わっていますか。

中谷国務大臣 この空輸についてはいろいろなやり方があると思いますが、私も、北川れん子さんのホームページを開きまして今回のレポートを読ませていただきました。

 彼女の御意見は別ですけれども、その中で、UNHCRの副所長さんの意見で、日本の存在を示すためには自衛隊機を国外に送り出すことは必要だと強調した、モロッコ空軍や韓国空軍もやってきたというふうに述べておられたところがありまして、北川れん子さんは別の意見を持っておられるわけでありますけれども、やはりそういうふうな見方をされている人もおりますし、ほかの国の軍隊も自分の国を代表して実際に輸送を行っておりますので、それぞれベストを尽くしながら協力、支援を行っていく。もちろんNGOの方も頑張っていただきたいと思いますし、政府としても頑張ってまいりたいというふうに思っております。

辻元委員 そのUNHCRの方は、日本人の方で、ちなみに自衛隊御出身の方でしたということは申し添えておきたいと思います。

 それで、今、パキスタン側の被災民の支援も、これからどのようにやっていくかということが国連機関も難しくなってきているという状況を生み出し、かつトライバル地域という、部族支配地域に行くNGOの車からも、やはり反米感情の高まりとともに、日本に対して、なぜアメリカを応援するのかと、私も直接そういう意見をたくさん聞きました。広島、長崎を経験したじゃないかということをおっしゃる方もいらっしゃる。タクシーの運転手さんや、それからジャララバードなどから空爆で被害を受けた方が運び込まれている病院のドクターからも聞きましたが、日本はやはり、アフガニスタンで今空爆のもとにいる人たちを助ける役割をぜひ担ってほしいという意見はたくさん聞きました。

 さてそこで、このアフガニスタンの中の状況なんです。冬を迎えまして、非常に厳しい状況です。

 田中外務大臣にお聞きしたいんですが、これはUNHCRの統計などにも出ていますけれども、IDPと言われる、インターナル・ディスプレースト・パーソン、これは、UNHCRでいろいろな国々に対していろいろな統計をとっておりますが、アフガニスタンについては、アフガニスタンの中で非常に困難に直面している人たちの数です。日本政府としては、どれぐらいと把握されていますでしょうか。

田中国務大臣 アフガニスタン国内のIDPは大体百十万人というふうに思っております。それだけでよろしいですか。

辻元委員 昨年から干ばつがありまして、水などで困っている人も含めると、五百万人程度が非常に困っているのじゃないかと。そして現地の、これはUNHCRの人たちも、アフガニスタンの中への支援が急務であるというのは、この百十万人のうちの一割の十万人が、この冬、もうかなり寒くなってきております、この三カ月ぐらいで餓死してしまう可能性があるということを非常に懸念されていました。これは、現地で活動していた国際的なNGO、日本のNGOも含めまして、三カ月に十万人が餓死する可能性があると。

 ここに対しての食糧支援をどうするかということですが、空爆が始まってから国境も封鎖されているところが多く、イランから一本、それからパキスタンが二本ぐらいのルートしかトラックが通っていけないというような状況で、それもパキスタン側からの食糧を入れるのが難しい。

 そして、空爆の対象に、先日も車が、一部アフガニスタン内で動いたというだけで攻撃の対象になったということを皆さん御承知のとおりだと思いますが、その中で、入れても中で配るのが難しいということで、現地では結局、今この冬を迎えるに当たって、六千人の人たちがニューヨークでテロで亡くなったというところから始まって、このまま国境の閉鎖を続け、空爆を続けていくということは、私たちは、十万人の人たちが三カ月以内に餓死するかもしれないという可能性、現実的な可能性の前に立っているという認識をした方がいいというように現場のUNHCRの人たちやNGOの人たちが強く主張していました。

 これに関して、先ほども出ましたが、きのう国連のアナン事務総長も、米英による軍事作戦すべてが、とりわけ空爆が可能な限り早い時期に中止され、アフガニスタンに食糧を搬入できるようにしてほしいと、アナン事務総長も初めて、かなり強い調子で昨日おっしゃったわけです。

 私も現場に参りまして、アフガニスタンの国内の方が大変な事態になっていると。これは、日本におりますと、空爆での被害が何人だ、村が誤爆されて何人死んだというような報道は漏れ伝えられてくるわけですが、この、餓死者が出るかもしれないということに対する注目度が低いのではないかと思うのです。

 ですから、私は、政府としましても、アフガンのこの後の復興、戦争が終わった後の復興というよりも、この冬を越すためのアフガンの人たちへの、アフガニスタン国内の人たちへの食糧支援。ところが、WFPも含めて、向こうに送っても、それを配布する手段がないという事態になっていますから、結局、アナン事務総長もおっしゃっているように、ラマダンもあります、空爆を停止するという選択肢も、私はそうずっと主張してまいりました。でないと、先ほども申し上げましたが、六千人の方が亡くなった、そして空爆を始めました、しかし私たちは、あと三カ月の間に十万人の人たちを見殺しにするかもしれないという局面に今立たされているという中での選択が迫られる。これは私が大げさに申し上げていることではありません。国連の中でも議論が始まってくると思います。

 田中外務大臣、いかがでしょうか。多少の被害ではもう済まされない事態に発展すると思います。

田中国務大臣 本当に、パキスタンまでいらして現場をよく見てきて、そしておっしゃっていることの説得力、わかりますし、またアナン事務総長の発言、それから、先ほど来繰り返しておりますけれども、今日本にいらしているパキスタンの政府代表、総理特使といいますか政府特使からのお話を聞きましても、事態が時々刻々と変わってきて推移していますので、それに合った対応をやはりしなければならない。

 国連機関を通じながら私たちがやるにしても、確実にヒットできるような援助をするべきで、それはやはり輸送のルート確保だと思うのですね。今おっしゃっている、アフガニスタン国内にいる人々に対して何をするか。これは、やはりルートの確保だと思うのですね、物事の、輸送の。

 それには、今難民の四分の三近い方たちがアフガンの北の方に寄ってきている。すなわち、どういうことかというと、トルクメニスタン等の中央アジア三国の国境に近い方に近づいて、集中しているという情報がございますから、そういう国境を接する中央アジア三カ国を通じた支援が重要になってくる。

 すなわち、空輸もありますけれども、やはりあらゆる方法でのアプローチするルート、アクセスロードといいますか、そういうものをかなり、いろいろ総合的に考えながら、具体的に、もちろん今ラマダンまでとかいろいろな考えがありまして、それは早い方が絶対いいですし、あらゆることをやはり検討していかなければいけない、人道的なことを、考慮を十二分にしなければいけないということはわかっております。

辻元委員 私は、実際にパキスタンやそれからアフガニスタンの中にも、ジャララバードまでとにかく小麦を届けたら、そこから何とか配るという人たちが長老のグループを中心にしてできつつあるということで、ジャララバードにも電話をしました。その日も二十八トン積んでトラックが七台、ジャララバードに向けて、これは命がけだとおっしゃっていましたが、ペシャワールから出ていきました。

 外務大臣として、ぜひきちっと情報を集めて、今おっしゃいましたように、今動かないと、私たちはある意味で、人類としてといいますか、とんでもない事態を迎えるかもしれないと私は思っています。ですから、本当はぜひ一緒に行きたかったです。ですから、現場に行っていただいて、本当に日本としてというか、人間として何ができるかということも考えなければいけないと思います。

 さて、最後になりますけれども、アメリカでも、サンフランシスコの東のバークリー市議会などでも、空爆停止のことを政府に呼びかけるという決議をしたりということで、今状況は変わってきていますし、イギリスの世論も真っ二つに割れているというような報道もなされています。

 私は一貫して、武力による解決はこの場所でも反対をしてきましたけれども、空爆はやはり、現場の難民キャンプの子供たちを見ましても、さらに憎悪を生み出していると思います。大きくなったらアメリカと戦うという子供たちがまた出てきている。ということで結局、武力行使の報復によってのテロ根絶というところから今回はスタートしているわけですが、報復の連鎖を生む可能性も高くなってきているし、そして、貧困ということがテロの根本にあると言われながらも、その貧困を目の前にして私たちは何をすべきなのか。今、方向性を間違ってはとんでもないことになると思いますので、最後に、やはり空爆の停止をアメリカ政府にも呼びかけていただきたいというように私は思います。

 そして、アフガニスタンの中へのきちっとした支援をするルートを一緒につくっていきたいということを最後に申し上げまして、きょうの質疑はとりあえず終わります。引き続きまた、安保委員会やそれから外務委員会で取り上げさせていただきます。

加藤委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして両案件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

加藤委員長 これより両案件を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

加藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十四分散会




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