衆議院

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第3号 平成14年4月11日(木曜日)

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平成十四年四月十一日(木曜日)
    午後二時十四分開議
 出席小委員
   小委員長 高市 早苗君
      伊藤 達也君    奥野 誠亮君
      谷垣 禎一君    中曽根康弘君
      中山 正暉君    島   聡君
      仙谷 由人君    伴野  豊君
      松沢 成文君    斉藤 鉄夫君
      藤島 正之君    山口 富男君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
    …………………………………
   憲法調査会会長      中山 太郎君
   憲法調査会会長代理    中野 寛成君
   参考人
   (京都大学教授)     大石  眞君
   衆議院憲法調査会事務局長 坂本 一洋君
    ―――――――――――――
四月十一日
 小委員伊藤達也君及び土井たか子君三月十九日委員辞任につき、その補欠として伊藤達也君及び金子哲夫君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
 小委員井上喜一君三月二十八日委員辞任につき、その補欠として井上喜一君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
 小委員金子哲夫君同日小委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政治の基本機構のあり方に関する件


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     ――――◇―――――
高市小委員長 これより会議を開きます。
 政治の基本機構のあり方に関する件について調査を進めます。
 本小委員会では、二月、三月は、国会と内閣の関係について議論を進めてまいりました。今回、四月は、政党及び選挙制度等について議論を進めたいと思います。そして、来月、五月、今国会最終回になりますが、司法制度について議論を進めたいと思いますので、委員の先生方におかれましては、御研究、御準備のほどよろしくお願いいたします。
 本日は、参考人として京都大学教授大石眞先生に御出席をいただいております。
 この際、大石先生に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいお体でございますのに、遠く京都からお出かけをいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、私ども調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の順序につきまして申し上げます。
 最初に参考人の方から御意見を四十分以内でお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 御発言は着席のままでお願いいたします。
 それでは、大石参考人、お願いいたします。
大石参考人 御紹介いただきました大石でございます。
 この政治の基本機構のあり方に関する小委員会にお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
 お手元に二枚の簡単なレジュメを用意しておりますので、ほぼそれに基づいて私の意見を申し上げ、御参考に供したいと思います。
 なお、時間に限りがございますので、多少はしょったりするところがございますが、どうぞ御海容いただきたいと思います。
 政治の基本機構のあり方というテーマのうち、「両院制と選挙制度のあり方」について意見を述べるということになりますが、以下では、選挙法というものが、立法その他の国政上の重要な権限を持つ機関の組織のあり方を定めるという意味で、憲法そのものである、つまり実質的な意味での憲法であるという視点から、両議院選挙制度の技術論といいますか、または個々の制度の当否の問題ではなくて、両院制の趣旨から見た場合の両議院組織法のあり方に関するいわば憲法論の要点を中心に述べたいというふうに思います。
 そこで、レジュメにありますように、まず、既に御承知のことかとは思うんですが、「基本的な考え方」を述べ、それから「日本国憲法と両院制のあり方」について話を申し上げ、最後に「両院組織法をめぐる問題」というふうにありまして、若干の感想を述べさせていただくというのが「おわりに」というところでございます。途中で、第四の項目の最後のところで項目を改めればよかったんですが、参議院のあり方についても多少意見を述べさせていただくということで、多分そこでは憲法改正の問題という点にも、若干項目を改めて立ち入るということになることと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 第二の「基本的な考え方」というところでございますが、既に御承知おきのことと思いますが、復習を兼ねて、基本的な点だけをまず押さえておきたいと思います。
 現在は、両院制あるいは二院制と言われる制度を採用しているわけですが、この現行の日本国憲法を改めて一院制の国会にするということも議論されないではありません。しかしながら、どのような選挙制度をとるにしても、日本のように人口の多い、有権者の多様な意思を一院で集約できるかといいますと、かなり疑問でありまして、私自身は、両院制を維持することが妥当であるという前提に立ちます。
 こういうふうに両院制を前提といたしますと、両院はそれぞれ独自の機能を果たすことが望ましいわけでありまして、そのためには、その議員の選挙法といいますか、両院組織法という言葉を使いますが、それもできるだけ異なった原理に基づくものであるということが肝要であろうと思います。
 この両議院の関係につきましては、両院制の趣旨に照らして、各議院の組織、権限、手続という三点の問題を有機的に関連させて考える必要があろうかと思います。選挙制度のあり方も、衆参両院それぞれの問題としてではなく、両議院の権限関係というものを踏まえ、しかも、現行憲法の採用する両院制をより意義あるものにするという観点から、再検討すべきであろうと思います。
 この両院制のあり方にはいろいろな類型を考えることができますが、普通言われるところは、各議院議員の選挙方法に着目をした場合の類型、組織上の類型ということと、それから、各議院が法律、予算等について議決する、その効力に着目をした類型がある、これが権限類型といいますか、権限上の類型だという分け方をいたします。
 この権限上の類型としては、今言いました立法または予算議決などの面から両院が対等であるというタイプと、下院が優越するというタイプ、これを人によっては一院制型両院制という言い方をするわけですが、そういう二つのものに分けられる。この下院優越型あるいは一院制型両院制というのは、二十世紀の初めにイギリスの議会で成立したものでありまして、各国憲法にその後採用されるということになりました。これがいわば現代型の両院制と言うことができましょう。
 他方、その組織上の類型、選ばれ方ということなんですが、それにつきましては、多数代表制あるいは比例代表制といったような代表法の違いというものはもちろんありますけれども、一般に、その下院議員の選挙、下院議員というのは全部交代制をとり、直接選挙制とするという点は各国議会で共通するという面があります。
 そこで、両院制の組織類型といった場合には、結局のところ、上院組織法の違いということに帰着するわけでありまして、この上院組織法の違いということになりますと、アメリカのような連邦制型を除けば、いわば貴族院のタイプと公選制をとる公選型とに大別されるということになりますが、この公選型の場合にはさらに細かく分かれるわけでありまして、いわば間接選挙型及び直接選挙型というように分けることができます。
 言葉としては、直接選挙、間接選挙というふうに分けますけれども、何が異なるかといいますと、下院といいますか、日本でいう衆議院と同じであるなら意味がないわけですから、どこかを違えなきゃいけない。どこで違いを加えるかといいますと、間接選挙型というのは選挙人団の組織原理を変えるという考え方なんですね。これに対して、直接選挙ということになりますと、結局、衆議院、下院と同じようなことになりますので、違いをどこに見出すかということになりますと、代表原理を下院の場合と違えるというところにポイントを置くということになるわけであります。
 こういう一般的な、基本的な考え方を前提にしまして、以下、日本国憲法のもとでの両院制のあり方、及び、そこに問題があるとすれば、憲法についてどのような反省を加えればいいかということをお話し申し上げることになります。
 そこで、三の項目、「日本国憲法と両院制のあり方」というところに進むことになりますが、幾つかポイントをレジュメにお書きしております。その順序で参ります。
 日本国憲法は、今申し上げました権限上の類型としては、法律制定、予算の議決あるいは条約締結の承認、さらには総理大臣の指名というような重要な点において、いわゆる衆議院の優越というのを認めているわけでありまして、一院制型両院制を採用しているというわけです。
 ただ、立法のあり方について言いますと、三分の二以上の議員による特別多数決によって再議決するのでない限りは、衆議院の議決は最終的なもの、ファイナルなものにならないという点において、イギリス型の一院制型両院制とは大きく異なっているということになります。また、この点から、衆参両院について、いろいろな法律を通す場合を見越していろいろな駆け引きがあるというのは、私ども外から観察しているところでございます。
 さて、現行憲法は、これに対して、両議院の組織法、組織の問題につきましては、両院議員の任期、さらに衆議院の全部入れかえ制及び参議院の半数改選制というものを定めているわけですが、このほかには特に定めるところがございません。むしろ、いわば選挙制度法定主義あるいは選挙事項法定主義というべき規定を多く設けております。
 このことは諸外国の場合と対比して見るとよくわかるわけでございまして、諸外国の場合に、一般に両議院の議員定数、それから、場合によっては比例代表法、さらに議席配分の方法といったものを定めますし、さらに、普通選挙、平等選挙、直接選挙、自由選挙といったいわば近代選挙法の公理というものを憲法原理として明文化しているものが多いわけでございます。そういう例と比べますと、日本国憲法は、憲法の明文で直接に定めるところが少ないという意味で、選挙制度法定主義ということを語ることができるわけでございます。
 そこで、その両議院の選挙制度のあり方は、原則的に国会の裁量によって、立法裁量によって決定し得るというふうに考えられるわけですが、他方、国会議員の選挙制度につきましては、有権者である国民との関係で、投票価値、いわゆる一票の格差の問題であるとか、全国民の代表でなくてはならないといったような問題があります。
 両院の選挙制度につきましては、そういう点を踏まえて、最高裁の判例の言葉をかりれば、「国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映される」、つまり、公正かつ効果的な代表という仕組みを考える必要があるということになろうかと思います。
 今申し上げた選挙制度法定主義という考え方から、どういう選挙制度にするか。例えば、個人本位のものにするかあるいは政党本位のものにするか、多数代表制をとるかあるいは比例代表制をとるか、小選挙区制にするか大選挙区制にするかといったような問題のほかに、投票の方法について単記制をとるかあるいは連記制をとるかというようなもろもろの決定すべき問題がありますけれども、これらについてはすべて国会の裁量が広く認められるということになります。
 しかしながら、ここで注意すべきことは、立法によっても変更できない憲法原理というものと、法律によって変更できるもの、すなわち法律事項というのは、やはりしっかりと区別する必要があるということでありまして、特に、直接選挙制かあるいは間接選挙制なのか、いずれをとるのか、また、平等選挙の原則などとの関係をどう考えるかというのは、両議院の組織法にとって非常に重要な問題であろうというふうに思うわけでございます。
 そこで、両院組織法をめぐる具体的な問題というのを以下扱いまして、憲法改正問題にも及びたいと思います。
 「両院組織法をめぐる問題」の第一は、現在の制度ということで、特に説明する必要もないかと思うんですが、衆議院議員選挙につきましては、直接選挙制によることを前提として、小選挙区制とブロック別比例代表制との組み合わせを持っている。参議院につきましては、これも直接選挙制という前提に立って、都道府県別大選挙区制、選挙区の選挙と全国比例代表制との組み合わせというものを採用している。
 しかも、参議院の場合は、都道府県別の大選挙区といっても、現在でいいますと、全部で二十七県だと思いますが、二十七の県に上る二人区の県がございますから、これは、半数改選制ですと、通常選挙というのは小選挙区になるわけでありまして、結果的に両議院ともかなり似通った選挙制度になっているということは否めない事実であろうと思います。
 この点につきましては、しばしば、小選挙区制あるいは選挙区選挙における議員定数の格差がいわゆる一票の格差として問題となるわけでありますが、さらに加えて、政党本位の選挙制度になり過ぎているのではないかといったような批判があることは御承知のとおりでございます。
 しかしながら、私が思いますに、むしろ問題なのは、そういうふうに非常に類似したものになっている両議院組織法というものが果たして両院制の趣旨を損なうことになっていないのかどうか、あるいは、その両院制というものを意義あるものとするゆえんであるかどうかということでございまして、特に参議院につきましては、いわゆる議員定数格差の問題よりもその方がはるかに深刻な問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。
 そこで、衆参両院について申し上げますと、まず衆議院の組織法ということでございますが、一院制型の両院制がとられるわけで、衆議院の場合、議員任期が短い、しかも解散制度がある、予算先議権を持つといった諸点を考えますと、諸外国におけるいわゆる下院の地位に相当するものでございます。
 先ほど申し上げたように、選挙制度について、日本国憲法はほとんど述べるところがありません。したがって、選挙制度法定主義ということを主張することができるわけですけれども、しかし、たとえ憲法上の明文がないとしても、下院の地位に相当するということになれば、直接選挙である、あるいは平等選挙を貫かなくてはならぬというのは憲法上の当然の原理あるいは要請であるというふうに考えられるわけでして、これと異なる選挙制度を法定するということになりますと、憲法違反というそしりを免れないというふうに考えられます。
 この点は、憲法上の明文がないとしてもそう考えるべきだということでございまして、先ほどの、憲法問題、憲法事項と法律事項を分けるべきだということの一つのあらわれでございます。
 他方、参議院の方を考えますと、いわば諸国の議会でいえば上院に相当するということになりますが、先ほど述べましたように、上院の組織のあり方につきましては、各国共通の原理というものを考えることはできない、共通のものはなかなか見出しがたいということになります。
 そうすると、日本国憲法も、先ほど申し上げた貴族院型と公選院型ということですが、公選院型のいずれにするか。つまり、間接選挙にして選挙人団、有権者団の組織原理を異なるものとするか、あるいは直接選挙にするか、つまり、そうすることによって代表の性格を変えるということにするかというのは、憲法上は直接に特定されていないというふうに考えることができます。
 そこで、参議院につきましては、両院制における上院の憲法上の役割というものを再考し、その上院としての性格を選挙制度のあり方にどう反映させるかということが重要な問題になろうかと思います。
 なお、先ほど申し上げた、公選院型とは違う貴族院型という可能性も残されるということに一応はなりますが、しかしながら、御承知のように、憲法制定過程の論議がございます。さらに、全国民代表という要請を前提といたしますと、貴族院型のものが果たして現行憲法上認められるかというと、これはかなり難しい、むしろ、はっきり言って認められないであろうというふうに考えられるわけでございます。
 この参議院の組織法の問題についてしばしば裁判になるわけでございますが、最高裁判所は、御承知のように、基本的な立場を明らかにしております。
 すなわち、その最高裁によれば、参議院議員に対して、衆議院議員とは異なった代表の実質的な内容ないし機能に独特の要素を持たせようという試みも立法裁量の問題として憲法上認められる、したがって、衆議院議員選挙のような人口比例主義を最も重要かつ基本的な基準とする選挙制度と比較すれば、一定の譲歩を免れないという考え方を明らかにしております。
 ある意味では、これは消極的な反論でございまして、しかも、現在の公職選挙法に基づく選挙制度を前提とした上での、さらに平等選挙の原則との関係というものを説いたものにすぎないわけです。今言いましたように、したがって、参議院組織法に関する正面からの憲法論というものではないというふうに考えられる。
 それならどういうふうに考えていったらいいかというのが次の項目でございまして、そもそも論になりますが、繰り返しになりますけれども、ほぼどの国でも、下院議員の選挙というのは全部交代制、全員が選挙の対象になって、場合によっては大きく入れかわることがあるというわけでして、下院は、一度の総選挙で院内の政治勢力が大きく変化し得るという組織上の特性を備えていると言うことができます。
 これに対して上院というものは、解散制度がない、半数入れかえあるいは一部入れかえ、二分の一あるいは三分の一というところがございますが、そういう入れかえ制によって、下院とは異なりまして、一度の選挙で院内勢力が劇的に変化することがないという特徴を持っております。これに加えて、上院議員の任期は一般的に長い。しかも、年齢の資格も下院議員のそれよりも高いということなどを考え合わせますと、結局のところ、上院というものは、下院が一回の選挙で大きく政治勢力を変えるという意味で非常にダイナミックな動きをするわけですね、そういうダイナミズムを緩和するという役割を期待されているというふうに考えられる。その意味において、ちょっと言葉に語弊があるかもしれませんが、保守性あるいは漸進性を持つというふうに考えることができるのではないか。
 両院制につきましては、一方の院が他のハウスを牽制する、権力分立の一つであるというようなことがしばしば言われます。しかし、上院の組織のあり方を見ますと、もう少し具体的な内容を持っているわけでありまして、その具体的な内容を見た場合に、先ほどのように、さまざまな特徴を持っているわけですから、全体として下院が持っているダイナミズムを緩和するという役割を期待されているというふうに考えるのが妥当であろうと思いまして、この理屈は参議院についても当てはまるのではないか。したがって、参議院組織法の問題は、こういう観点から出発すべきであろうというふうに思います。
 そこで、憲法論としてどういうふうにまとめたらいいかということになりますが、憲法論としては、参議院議員選挙については、間接選挙制とすることも可能だという議論がありますし、さらに、直接選挙は直接選挙で要求されるけれども、しかし平等選挙の原則というのはそこに要求されないという説、あるいはそういう議論が有力に唱えられることになります。
 私も基本的にこういう立場に賛成でございまして、前者によれば、すなわち、間接選挙とすることも可能だという立場に立てば、例えば、市町村代表を有権者とするフランス上院型の選挙制度も日本国の憲法上可能であって、さらに、後者、すなわち、直接選挙制は要求されるけれども平等選挙制は要求されないということになれば、例えば、都道府県一律三人の参議院議員を選挙するという制度も現行憲法のもとで十分可能であろうというふうに思います。
 もちろん、学説の中には、直接選挙が要求され、かつ平等選挙制が要求されるという議論がございます。しかし、そうしますと、衆議院組織法、これは先ほど申し上げたように憲法上明文はありませんけれども、各議会法の共通の原理として、憲法原理として考えざるを得ない。その点と全く同じ組織原理をとるものでありましたら、そもそも両院制の趣旨を損なうことになるわけでして、憲法が予定している両院制をむしろないがしろにする議論ではないかというふうに私自身は考えております。
 ここまでが両院組織法をめぐる問題ということでございまして、レジュメの(8)のところは、あるいは章を改めてといいますか項目を改めて、憲法改正問題というふうに立てた方がよかったかもしれません。おわびを申し上げます。いわば4aという形で5との間に挟みたいと思いますが、参議院の役割を再考するという意味では、さらに立法手続における参議院の議決権をどう考えるか、あるいはどう見直すか、さらに、総理大臣の指名権というものもこれに関連しますが、参議院がそれを現行憲法上持っていることをどう見るかというような根本的な問題がございます。
 今言いました立法手続における参議院の議決権という問題は、実は先ほど申し上げた一院制型両院制というもののあり方に関係をします。さらに、総理大臣指名権を参議院が持つということは、議院内閣制のあり方にも密接な関連を持つものであります。
 しかしこの点は、言うまでもなく、憲法改正を要する問題でありますから、これまで述べた現行憲法を前提とした組織法というようなことではありませんで、より包括的な議論が必要だというのは当然のことでございます。
 この点についてどう考えるかということでございますが、幾つかのところで、この点について私は考え方を明らかにしておりますし、さらに、一部の方には大変おしかりを受けたんですが、参議院の斎藤前議長のときに私的諮問機関がつくられて、そのメンバーとして一応の意見を述べたことがございますので、あるいは御承知おきかもしれませんけれども、結論だけをとりあえず述べることにいたします。
 立法手続における参議院の議決権という問題についてまず言いますと、衆議院による法案再議決要件というものを、現在は三分の二の特別多数決ということでございまして、相当高いハードルだという気がいたしますが、これはもちろん通常多数決に改める。したがって、二度目に通常多数決の要件を備えれば、それで法律として成立するというタイプにすべきではないかということになります。
 ただし、その場合、言葉として適切かどうかわかりませんが、一定の冷却期間といいますか、イギリスのような二会期連続してという要件をつけるということもまた大事なことでありまして、そういう意味で、一定の期間は衆議院は再議決権を行使できないというような形をとるべきではないかと思います。
 これと同時に、いわゆる会期制度の問題がございまして、この点についてもいろいろなところで意見を申し上げておりますけれども、この会期制度、あるいはこれに伴うと言われておりますいわゆる会期不継続の原則というものを改めて、普通の議会のように、いわゆる立法期、人によっては議会期という言葉を使いますが、そういう制度を採用することが必要であろうと思います。
 事実上の通年国会制を実現すれば何も問題はないという意見もありましょうけれども、要するに、一回の選挙から次の総選挙のときまでは衆議院の院内勢力というのは基本的に変わらないわけでありますから、その単位を前提とした議院運営、議会運営というものを基本にすべきであろうと思います。常にその全体の立法期をさらに細分化した会期というものを前提とし、それを単位として、いわばアジェンダの設定で手続的な議論が盛んに行われるというのは余り好ましいことではないというふうに思っております。書生論議かもしれませんが、私なりの考え方でございます。
 もう一点は、総理大臣の指名権ということでございました。
 衆議院と参議院でございますが、衆議院というのは、議院内閣制という原則でありますれば、政権を形成し、あるいは維持するその基盤となるということは当然のことでありまして、これに対して参議院は、さきにも述べましたように、政権との間に一定の距離を置くという意味で両院制の趣旨を発揮できるというところがございます。
 したがって、現行憲法のように参議院が総理大臣指名権を持つというのではなくて、専ら衆議院のみが総理大臣指名権を持つというように改めるべきであろうというふうに感じております。
 議会制度のあり方につきましてはそのほかにも多少の意見を持っておりますけれども、ここでは、必要な範囲で憲法改正の問題というものについて触れさせていただきました。
 終わりに、二点ほど申し上げたいと思います。
 それは、レジュメではごく簡単に申し上げましたけれども、一つは選挙制度のあり方について平素思っていることでございまして、もう一つは、この憲法調査会の活動についての勝手な注文といいますか、言葉は適当ではないかもしれませんが、要望を述べて終わりにしたいと思います。
 一つは、いろいろなところで問題になっておりますが、選挙権の年齢を満十八歳にするように選挙法を早く改めるべきであるということを強調したいと思います。
 これは、大きな流れの問題と、いわば一種の原理的な問題がございまして、一つ、流れということでいえば、主要な欧米諸国は既に十八歳選挙権を実現している。一九七〇年代から既にそうであります。そういう時代的な流れに沿うという意味もありますけれども、現実的な点で申し上げますと、幾ら大学進学率が高くなったといっても、高卒で就職し、納税者として国民の義務を果たしているという者はたくさんいるわけです。しかしながら、二十歳になるまでは選挙権のない国民がいるということはやはり大きな問題でございまして、代表なければ課税なしとかなり昔に言われたことがありますが、そのことをあわせて考えるべきであろうと思います。いろいろな法案の形でも既に出てきているところでございますけれども、ぜひお願いしたいと思います。
 もう一点は、僣越でございますが、この憲法調査会の活動のあり方についてということでございます。
 五月号の「国会月報」にも若干冒頭のところで書きましたけれども、両院の憲法調査会はこれまで全く別個に調査を進めてこられました。それはそれで十分成果を上げているように思いますけれども、しかしながら、衆参両院議員選挙制度と密接に関係する両院制のあり方といったような問題などは、単なる議院の内部運営の問題とは違うわけでして、両院の枠を超えた両議院の組織法そのものを問うものだというふうに考えられるわけであります。
 したがって、こういう問題につきましては、合同審査会として議論する方がむしろ望ましいのではないか。衆参両院それぞれの委員が忌憚なく意見を述べることによって、とかく忘れられがちな両院制のあり方をどうすべきかという議論をおやりになるのが望ましいのではないかということでありまして、しかしそのためには、現在、合同審査会のための規定がございませんから、両院調査会による合同審査会を開くことができるように調査会の規程をお改めになってはいかがでしょうかということを、大変書生論議で申しわけございませんけれども、先生方を前にして意見を述べる機会をいただきましたので、せっかくの機会ですから申し上げることになりました。
 以上、多少早口で大変お聞き苦しかったかと思うんですが、私の大まかな考えを述べまして、私の参考人の意見といたします。
 以上でございます。(拍手)
高市小委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
高市小委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑応答込みで十分間でございますので、時間厳守のほどよろしくお願いいたします。
 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
奥野小委員 自由民主党の奥野誠亮でございます。ただいまは、わざわざお出かけいただきまして、貴重な御意見を承りましたことを厚く御礼申し上げておきたいと思います。
 今小委員長からお話ありましたように、私は、十分ということでございますので、むしろお尋ねしたい二点を先に申し上げまして、あと、お答えに時間を使っていただきたいなと思います。
 一つは、今もおっしゃいましたように、両院制度をとっている以上は、それぞれの院、衆議院と参議院、構成その他において違っていなければ両院制をとった意味がない、私もそのように思っているわけでございますけれども、今はどちらも政党対決みたいな姿になってしまっておりまして、大きな欠陥だなと思っております。
 当時を振り返りますと、占領軍が憲法原案を日本に渡した、そのときは一院制でございました。それに対しまして二院制を求めたら、あっさりこの点は了承したわけでございますけれども、国会は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」こう書かれたものでございましたから、これは全国区制以外にはもう選択肢がないな、こう思ったようでございました。私も、それは当時としてはそうだろうなと思います。
 その後の経過を見ていますと、全国区につきましては、名前の売れたタレントが大量得票する、また、そういう有名でない人でも、力ある人でありましても、全国を回って、大変な労働でございまして、全国区は残酷区だ、こう言ったものでございました。同時にまた、そういう政党などの利害にとらわれないで、大局からひとつ国政を判断していきたいというようなことで緑風会という組織も生まれました。しかし、やはり選挙ということになりますと政党の力が勝つものでございますから、いずれ消えていったわけでございました。
 そんないろいろな問題もございまして、私も自由民主党の選挙制度調査会長などをやりまして、非拘束の比例代表制をとろうと思ったことがございました。名簿に個人の名前を非拘束で登載する、たくさんとった人が当選していく、自由民主党の議席は総得票数で案分していくということでございましたけれども、全国区から出てこられた方々は、それは今までの残酷区と一つも変わらないじゃないかというお話でございました。
 そのうちに私がかわりまして、鈴木内閣におきまして拘束名簿式の比例代表制度、これが成立したわけでございました。そうしますと、各党が当選の順位を決めていくわけでございますから、その順位の決め方につきましても、自由民主党の中では、党員をたくさん集めたとか、あるいは後援会員をたくさん確保したとか、選挙応援でどういう活動をしてきたとか、いろいろなことで決めるということになったものでございますから、これならやはり奥野さんの言うた方がよかったよというようなこともあったりしたわけでございまして、昨年の選挙からは個人名を書く、あるいは政党名を書いてもいいというようなことになったわけでございますけれども、党の中はややいろいろありましたけれども、多くのところは党名は書いたけれども、個人名を書いたところは非常に少なかったようでございました。
 党は離合集散ありますけれども、個人は、その生活を見ていますと大体能力とか人格とかいうことはわかるわけでございますから、投票してもらう場合は、私は、個人の方がいいんじゃないかな、今でもこう思っているわけでございます。
 そういうことで、やはり選挙の方法というのは非常に大事だと思いますし、今も先生がおっしゃったのは、間接選挙で選挙団をつくってどうこうとか、あるいは市町村の代表とか府県の代表とかいろいろございましたけれども、それでは間接選挙で私の期待するような候補者を選んでいけるだろうかどうだろうか。むしろ、やはり憲法改正の機会に、「選挙された」という言葉を改めて、推薦制その他の方法も考えられるような仕組みを講ずべきじゃないかな、こう思ったりしているわけでございまして、そういう意味で、もし間接選挙でより希望を達成されるような方法があるなら、ひとつ御教示をいただいておきたいな、これが一点でございます。
 もう一つは、衆議院の方でございまして、長い間、個人本位の中選挙区制をとってきたわけでございます。結果的には、同士打ちになったり、金がかかり過ぎたりするわけでございますし、また、野党の皆さん方は、この制度がなかなか政権交代を困難にしているのだということもございました。そして、結果として小選挙区比例代表並立制ということになったわけでございました。
 その結果生まれてきたのは、前々回の選挙でございますけれども、ある県では、一位は当選するのは当たり前ですけれども、二位はもちろん落選ですね、しかし、三位と四位とは比例代表で救われて、一、三、四が当選して二が落ちる。これはどうしても有権者の感情には合わない、納得がいかない。これはやはり何とかしなきゃならないということで、前回の選挙では、たしか供託金没収の人が重複名簿で、比例区で当選してもそれは認められないというようなことに変わったように思うんですけれども、それだけじゃやはり納得しない。やはり選挙制度というものはみんなが納得する制度でなけりゃ、だんだん政治に対する信頼まで損なわれていくんじゃないかなと私は心配しているわけでございます。
 そういう意味で、これはまだ最高裁の議論にはなっていないんだろうと思いますし、また、選挙は法律で決めるということになっているものですから、私は、定数以外は最高裁も立法府に余り干渉的なことはしないつもりでいるんじゃないかなと思うんですけれども、何かこれについてのいいお考えがありましたら、御高見を伺っておきたいなと思います。よろしくお願いいたします。
大石参考人 冒頭から大変難しい問題を投げかけられまして緊張しているんでございますが、前半の問題は、要するに参議院組織法をどうするかということで、後半は、特に衆議院の現行制度というお話でございます。
 参議院のあり方というのは、選挙制度を考える場合に、政党本位か個人本位かという視点は当然入ってくるんだろうと思いますね。それで、もし、先ほど申し上げたように、衆議院の方が政党を単位として政権を支えるということに主眼があるとすれば、参議院はそれと違った役割を期待されるであろうということになりますので、考え方としては、個人本位という考え方を前面に押し出すということは十分可能であろうと思うんですね。
 間接選挙というのは、フランス型のものを、市町村の代表とか、要するに選挙人団の範囲を随分違えて、それで選挙人を選んで、そこが上院議員を選ぶというようなシステムのことを考えているわけでございます。
 ただ、いずれにしましても、これも意見の中で申し上げましたけれども、衆議院の法律議決権に対してかなりの制約できる権限を参議院が持っているということになりますと、組織のあり方に政党や団体が非常に強い関心を持ち、同じような行動をとろうというふうになることは自然の勢いでございまして、組織法を考える場合に、その権限の中身といいますか、それを同時に検討しないとなかなかうまくいかないのではないかというふうに感じております。
 御承知のように、さっきもお話がございましたように、全国民の代表、選挙された議員でということを憲法四十三条ではうたってございまして、ある意味ではその点がネックになるところはございますけれども、通常は、全国民の代表というのは下院議員の地位について言うものでございまして、上院については直接は関係しないという理解の方が一般的だろうと思うんですね。だから、そこは拡大解釈をして、憲法四十三条からいって、両院議員とも直接に全国民から公選されるという要求があるのだというふうに考えるのは、やや窮屈に過ぎるのではないかというふうに思っております。
 二点目の衆議院の問題ですが、現在、小選挙区と比例代表の組み合わせになっておりまして、重複立候補が認められて、今先生がおっしゃったような事態が生ずるということは見られたわけですが、大変いろいろな議論がございまして、これが幾分改められましたので、その点はよろしいのではないかと思います。
 むしろ問題は、衆議院の場合、小選挙区にするならそれで徹底すればいいんですけれども、その小選挙区制の、長所も短所もありますが、いいところが生かされない部分が出てくる。比例代表制も、組み合わせですから、ある意味でそのいい部分が生かされないということで、組み合わせをすることによって、それぞれが持っているよさをなくしている部分があるのではないかという点が再考を要する点ではないかというふうに考えております。
 ごく一般的なお話で申しわけないのでございますが、その程度で御勘弁願いたいと思います。
高市小委員長 奥野誠亮君の質疑時間は終了いたしました。
 次に、松沢成文君。
松沢小委員 民主党の松沢成文でございます。よろしくお願いいたします。
 二院制の意義ということで、先生は、日本もこれだけ人口が多くて、民意を集約していくプロセスとしてやはり二院制があった方がより好ましい、こんな御説明もありましたけれども、諸外国で二院制になっている国はたくさんありますが、非常に歴史的な背景があったと思うんですね。
 例えば、アメリカの場合は、植民地が州として独立して、州の権限が非常に強かった。その上で、連邦国家をつくる上で、この州の代表としてしっかり物を言わせてほしい、これが上院の起源だと思うんですね。人口比例の下院と州代表の上院という形の歴史的背景を持った二院制。また、イギリスの場合も、長い間国王と貴族の対立が中世からあって、その中で、庶民院に対して貴族院というのができ上がった。この貴族院の方も、今ブレア政権のもとで、世襲貴族はだめだとか、終身貴族だけにしようとか、さまざま改革がなされているようですが、イギリスの中世からの歴史のもとに二院制が成り立っているわけです。
 そこで、日本なんですけれども、明治憲法でも、たしか貴族院と庶民院ですか、こういう形になったと思うんですが、果たして、日本において二院制を積極的に位置づける歴史的背景というのがあったかどうか、私はちょっと疑わしいんですけれども、その辺は、先生はどのように御考察されていますでしょうか。
大石参考人 おっしゃいましたように、両院制をとる場合に、アメリカのような連邦型上院タイプとイギリスのようなタイプがございます。それぞれの沿革はそれぞれ意味のあるところでございまして、したがって、その沿革の背景にある理由がなくなればそれは変わるものだろうと思うんです。
 ただ、私が基本的に両院制だと申し上げたのは、一億二千万というのは、ヨーロッパでいうと三つぐらい国ができてもおかしくない人口でございまして、そういうところを、例えば衆議院なら衆議院の一院で、基本的には直接選挙であり、しかも平等選挙制を非常に強く要求されるということになりますと、そこでいわば代表される者にすべてが、我々の多様な意思とか考え方が集約され得るんだろうかと非常に疑問がございまして、例えば小選挙区をとる場合でも、ヨーロッパでは人口十万人に一人というのが常識でございますけれども、その定石を当てはめると、日本の場合には膨大な数の衆議院議員が誕生するということになるわけですね。
 ですから、一般的に思いますのは、衆議院の組織法というのはきちっとはっきりしていますのでそれに従うとして、それとは異なる質の代表、つまり単なる数の問題なのかというとそうではなくて、やはりある種の質といいますか、別の質、数に基づいて成り立つところの質というのは非常にいいものもございますけれども、それとは違った利益あるいは代表、利害というものを反映させる仕組みをあわせて設けるということが大事なのではないか。
 ですから、沿革的な理由があって、それがないと一切採用できないということに当然なるかというと、そうではなくて、別の現代的な理由づけというのも十分あり得るのではないかというのが趣旨でございます。
松沢小委員 日本の憲法には両院の選挙制度については大まかなことしか書いてなくて、細かい選挙制度については、選挙制度法定主義、法律で決めなさいということですね。
 ただ、私は、前のこの小委員会でも指摘させていただいたんですが、選挙権、参政権、人権として基本的な部分は、やはり憲法に書いておかないとさまざまな混乱を及ぼす。その最も象徴的なテーマが、一票の格差の問題だと思うんですね。これは、選挙区選挙において一票の格差が、今衆議院においても、今度選挙区割りをやり直しても二倍を超えちゃっているんですね。参議院は、ちょっと比べるのはあれだと思いますが、平等選挙がうたわれていますけれども、しっかりとした中身が書いてないもので、最高裁の判例も、違憲状態だが有効とか、全くわからないような判例が幾つも出ちゃって、では、どこが基準なんだということすらわかりにくくなっていると思うんですね。
 それで、この一票の格差が、開きが大きいということは平等選挙が実現されません。それは、立法府に対する参政権だけでなくて、下院ですから、その選ばれた議員が間接選挙で総理大臣を選ぶわけですから、行政府に対する参政権もひずんでくるんですね。ですから、私は、憲法の中に、選挙区選挙においては例えば二倍を超えてはならないというようなことが明記されていないと、この日本の民主政治における根本部分の混乱が永遠に続くと思われるんです。
 憲法に書くべきだと思うんですが、その点についていかがということと、もう一点、選挙制度は、議員に議論させますと、みんな党利党略で、自分が当選しやすい選挙制度はどうなのかと考えちゃうんですね、人間ですから。ですから、私は、選挙制度を法律で決めるんですから、議員がやらなきゃ究極的にはいけないと思うんですが、選挙制度だけは極めて公的な第三者機関をつくって、そこで決めて、それで決まったものを国会で承認するという形をとらないと、公正な選挙制度というのは永遠に実現できないんじゃないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
大石参考人 一番最後の部分は皆様の前でなかなか発言しにくい部分でございまして、弱っているんですが、私も一番最後の部分を除いて全く同意見でございまして、参政権というのは非常に重要な権利であります。
 したがって、大体諸外国の憲法は、選挙制度の非常に重要な事項であるとか、国民の参政権にかかわる事柄については憲法典で明記して、はっきりこれを守るべきだということをうたうわけですね。その点において、日本国憲法はやはり足りないところがあるというのは率直な印象でございます。
 ただ、書く場合に、例えばアメリカ合衆国憲法のように、具体的な議席配分方法までを憲法に書き入れるか、そうではなくて、もう少しやわらかい形で、平等選挙、秘密選挙、自由選挙というものは原則とする、あるいは議員定数等も憲法に書き込むとかいうようなことがあるんですが、現在は、ベルギー憲法を含めて、割合具体的な議席配分のあり方を憲法自身に明記し、立法府の、ちょっと言葉は悪いんですが、その時々のカプリスといいますか、気まぐれで変えないようにということを十分注意しているわけでございまして、私も、基本的にはその方向が妥当であろうと思います。
 最高裁が、今おっしゃったように、違憲状態であるということを、衆議院の場合、基準を一対三程度までという判断を打ち出しておりまして、しかし、違憲状態ではあるけれども憲法違反そのものにはならないというのは、やはりそこに、立法府に対する、皆様方に対するある種の期待というのはあるわけでございまして、合理的な期間内にこれをきちっと是正するということの条件つきでございますよね。ですから、それを超えたら初めていろいろな問題が出てくる、明確な違憲判断が出てくるということでございまして、そこはむしろ、ネガティブにお受け取りにならないで、合理的な期間内にやるということを最高裁自身も期待しているのだというふうに御理解いただいたらいいのではないかというふうに思います。
 ですから、先ほど冒頭に申し上げましたとおり、憲法事項というものをきっちり我々としても確定をいたしまして、できるだけそれを憲法に明記する、権利充実するという方向で憲法改正がもし行われるなら、それは最も望ましいことだと思います。
 選挙制度につきまして、第三者機関といいますか公的な機関というふうにおっしゃいましたけれども、正直言って、私は否定的でございます。
 なぜかと申しますと、そういう重要問題は、やはりそれは国会議員に考えていただくのがいいんではないか。それを党利党略とおっしゃいましたけれども、私は部外者ですからよくわかりません。わかりませんけれども、非常に重要な政治的な問題を部外者に任せるというのは、ある意味で、立法府の方々の責任の問題にも発展してくるのではないかと思うんですね。ですから、お気持ちはよくわかります。わかりますけれども、そういう大事なところこそ、こういう場で、皆さん方の間で、いろいろな形になるにせよ、大いに議論をやっていただきたいという気持ちを持っております。
松沢小委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
高市小委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)小委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。きょうは、本当にありがとうございました。
 私は、お聞きしたい点を四点羅列をいたしまして、残りの時間で先生にお答えいただければと思います。
 まず第一点目は、選挙制度のあり方は、原則的には国会の裁量により決定し得る、けれども、立法によっても変更できない憲法原理はこれから区別する必要がある、このようなお言葉でございましたが、では、その裁量で決められる範囲と憲法原理で決めるべき範囲、その線はどこら辺に引かれるのだろうかというのが第一点目の質問でございます。
 それから二点目ですけれども、選挙の機能というのは、民意を反映するということと、及び多様な意見を最終的にできるだけ数個の束ねた形にする民意の集約ということがあるかと思いますけれども、今、衆議院、参議院それぞれその機能を持たせた選挙制度だと思いますけれども、それに対しての、現在の選挙制度の評価、民意の反映、集約という観点から見た評価をしていただければと思います。
 三番目は、ちょっと個別的な質問になるんですが、私、前から、参議院の選挙制度につきまして、選挙区選挙は、定数が一のところ、二のところ、三のところ、四のところ、ございます。片一方では比例区選挙で、これは原理原則がはっきりしているのですが、選挙区選挙は一人区があったり四人区があったりというのは、ある意味で、原理原則がそこにはないような気がいたしまして、この点について私は前から個人的に不思議だなと思っておりましたが、この点についての御意見をお伺いできればと思います。
 それから最後なんですが、我が党、衆議院の選挙制度につきまして、三掛け百五十の中選挙区制を提案しております。マスコミ等では大変評判が悪いんですけれども、定数削減と一票の格差是正ということ、両方達成するためにもいいんではないかと我々提案しておりますが、この三掛け百五十、中選挙区制に対する評価もいただければと思います。
 以上です。
大石参考人 またまた、最後の点はなかなか、正直言って申し上げにくい点でございますが、順番に申し上げましょう。
 法律事項と憲法事項との線引きということなんですが、言葉で言うほど簡単かというと、実はそうではないんです。要するに、原則的に選挙制度については法律で定めるという、その原理原則を立てれば、例外的に憲法事項があるという思考になりますね。そういう考え方をとるか、あるいは、重要な事柄だから基本的に全部憲法事項と考えて、それ以外の部分についてのみ法律で定め得るんだという考え方をとることができましょう。
 ただ、一般的に、諸外国の現代の憲法典と比べますと、日本国憲法がやや古い時代の憲法でありますから、憲法典に重要な事項をできるだけ盛り込むという精神はあるんですけれども、選挙制度についての、先ほど申し上げたようなさまざま論点がございますけれども、それを特定する形で憲法に書いてないということは確かなんですね。
 したがって、そこの書いてない部分を、我々としては、両院制のあり方その他の問題から、いわばいろいろ議論を積み重ねて、これは憲法には書いてないけれどもやはり憲法事項で特定されていると考えるべきだという議論をするわけでございまして、その点が多分一番わかりにくいと思うんです。その点をはっきりさせるためには、大きな組織法、直接選挙か間接選挙かというような大きな問題につきましてはある程度結論が出ますけれども、個々具体的な問題になりますと、憲法で明記すべき事項であったら、やはり憲法改正をするなどしてはっきりさせた方がいいんだろうと思います。
 参考になるのは、現代憲法のいろいろな、衆議院の憲法調査会におかれましてもいろいろな資料をおつくりになっているようでございまして、そこで、普通の憲法典は一体選挙制度について何を定めているかということを通観してみると、いわば経験的には、これが憲法マターだということはおわかりになろうかと思うんです。ちょっと長くなりました。
 それから第二点ですが、現行選挙制度をどう見るかということですが、先生おっしゃいましたように、多様な民意を反映するという部分が非常に大事だということと同時に、やはり大きな権力をつくるという要素がございますので、民意を集約し、意見を統合していくという作用、働きを選挙制度というのは本来持っているものでございます。
 そういう観点からいきますと、現行選挙制度について、いろいろな部分がございますけれども、私などが常々思っているのは、一回限りですべて選挙が終わるものですから、その点を少し考え直して、今回、フランスで大統領選挙がございますけれども、ほかの選挙でも、フランスなどでは二回投票式をやっております。最初の投票ですと、どういう民意があるかというのはわかりますね。しかし、二回目では、二週間後に行われる選挙では、ある程度候補を絞って、その中で選択をする。
 単に我々の多様な民意があるということがそのまま議会に出るということは統合にならないものですから、そこを何とか集約しなきゃいけないということでありますと、多様な民意があるということを踏まえつつ、しかし、いざ権力をつくるというファイナルな選挙のときには、そこを何とか近いものは近くなっていただく、大きな体制の選択を迫るといいますか、昔のような米ソという対立ではなくて、どういう政権が望ましいかという意味での体制選択でございますけれども、それを有権者に迫るということも大事なことではないかと思います。
 そこに緊張感があることによって、民意を反映し、同時に意見を集約といいますか統合という機能を持ち得るのではないかということを、一つのアイデアとしては持っております。そういうアイデアから見ますと、現行選挙制度は、日本の伝統でございますが、選挙はすべて一回きりでやるということでございまして、そこについても、もし検討する余地があるとすれば、私は大いに材料となるのではないかと思います。
 それから第三点でございますが、参議院の選挙区制あるいはその組織原理でございますけれども、基本的に、通常選挙のときには二人区は一人になりますけれども、各県最低二名というのを原則としておりますから、とりあえず、人口が少なくとも最低それは確保される。ですから、その意味で、都道府県という意味での地域代表ということをある程度原則としては取り入れている。
 しかし、その後の、四人、六人、八人というふうにふえていくというのは、やはり衆議院議員の選挙と同じような、ある種の人口比例的な要素が入っている。ですから、地域代表的な性格、そういう組織原理を取り入れるということと同時に、人口比例的な原理も取り入れているということで、考え方としては混合型であろうと思うんですね。
 ですから、そこを本当にそれで徹底すると、実は人口比例ということでいいますと、衆議院の選挙組織法といいますか原理に近づいてくるので、余りその点を強調しない方がいいのではないかと思っております。
 ただ、その点を強調しないということになりますと、人口の格差、正確に言えば有権者数との対比と言った方がいいと思うんですけれども、その問題が生じてまいりまして、そこの合理性をいろいろ説明したいというのが最高裁のような論理でありまして、現行制度を前提とすると、例えば衆議院の場合には一対三まで限度とするけれども、参議院の場合にはもっと離れていてもいいという、いわば常に守る側の論理になるので余り好ましくないというふうに思っております。
 最後の論点は、私どもは報道によって知っている限りでありますけれども、私自身は、いわゆる中選挙区制というのは否定的な考え方でございます。
 もう一点大事なポイントは、衆議院議員の数をそれほど削減されることが果たして望ましいことなのかどうかということに大きな疑いを持っておりまして、ほかの国と比べても、日本の議員の数は、人口数、有権者数から比べて、むしろ少ない部類に属するわけです。その点をさらに削減しようというのは、基本的な方向としても私は賛成できないという意見でございます。
高市小委員長 斉藤鉄夫君の質疑時間は終了いたしました。
 次に、藤島正之君。
藤島小委員 自由党の藤島正之でございます。
 私は、二点についてお伺いしたいと思います。
 第一点は、両院のあり方の問題なんです。
 参議院は衆議院のダイナミズムを緩和する役割ということだろうと思うんですけれども、これもやはり選挙制度と非常に密接に絡みがあるわけでありまして、現在の制度でいきますと、衆議院は、御承知のように、小選挙区とブロックの比例、参議院は各県に一名ずつの選挙区選挙と全国の比例区ということなんですが、これは、国民も正確に理解している人はどれぐらいいるかとなると、非常に疑問がある。
 ただし、国民の民意を非常に反映しているという意味では同じわけでありまして、こういう選挙制度からくると、衆参両議院の権能にそれほど差をつけるのはいかがかなという感じがするんです。そう思いますと、やはり逆に、衆参両議院にどういう機能を持たせるのかということから始まって、そうした場合にどういう選挙制度がそれにマッチするのかということなんです。
 現在はこういう制度ですので、内閣との関係でも、総理大臣の指名にしましても、法律にしましても、予算にしましても、若干の差はついていますけれども、基本的にはほとんど同じような権限を持たせておるということなんです。これが実際、かつての時代のような、世の中の移り変わりが非常にゆっくりしていた時代はいいんでしょうけれども、大変変化のスピードが速い、こういう時代にあって、同じことを二度審査をするような形になっているわけですね。
 予算にしましても、衆議院で約一カ月かけて審査をし、その後、同様なほぼ似たような質疑が行われるわけですが、また一カ月ぐらい行われるということで、本当にダブって二重になっている。ある意味では、衆議院が民意をきちっと反映しているんなら、参議院でやるのは本当に時間のむだみたいな面があるわけですね。
 したがって、私は、もっと機能に差をつけて、本来衆議院が基本的にやるものを、参議院が先ほどのような、先生がおっしゃるようなダイナミズムを緩和する役割ということで、格段の差をつけてしかるべきじゃないかなというふうに思うわけですが、その辺、先生もほぼ同じような御意見のような気はするんですが、もう少しお伺いしたいと思います。
大石参考人 私が、両院制のあり方で、下院のダイナミズムを上院といいますか参議院が緩和する役割を期待されていると申し上げましたのは、現在の選挙制度を前提としたものではございませんで、あくまで憲法上特定されている組織のあり方から見てこういうことではないかということです。そういう点を、いずれも似た選挙制度になっている現在のシステムを前提にすると、それが生かされているかというとどうもミスマッチだろうというのは、私も全く同じ意見を持っております。
 いろいろな御意見の中には、要するに、参議院議員も直接選挙で選ばれている、なぜ憲法上権限が違うか、おかしいではないかというふうにある場面で詰め寄られたことがあるんですが、しかし憲法論としてはどうも逆転しているわけですね。現行制度というのは法律でもって定められた制度で、立法政策的に決められる。しかし、憲法上の権限関係というのは、それを前提にすると特定されているわけです。ですから、その権限関係に応じた組織を考えるという方がやはり筋道がいいわけでして、現在のシステムを前提にして、憲法上特定されているのに権限がないのはおかしいという議論は、やはりどこかに誤解があるんだろうというふうに思っております。
 おっしゃるように、両院の機能をしっかりと区別して、それぞれの役割を明確化させるためには、やはりある程度、憲法改正というものを考えなくてはいけないのではないかという印象は持っております。
藤島小委員 もう一点は、民主主義のこういう議会制度になってきますと、現実には政党政治にならざるを得ない。今、我が国の場合、政党がかなり信任を失ってきつつあるわけですが、さればとてほかにかわりようのないものだろうという感じがするので、きょうは、先生のお話の中には政党との関係は触れていられていないんですが、残りあと五分の範囲内で、政党政治のあり方についての御意見をいただければと思います。
大石参考人 ここでのお話の御依頼を受けましたときに、政党というのも実は入っておりまして、私の都合で大きな表題としてはカットさせていただいたんですが、おっしゃいましたとおり、政党のあり方が両議院組織法にも大きく影響しますし、議会運営にも非常に大きな影響を与えるということでございます。
 その場合に、基本的な方向としては、政党の位置づけを憲法上はっきりさせるというのが私自身は好ましいと思っています。政党というものを憲法で明文化することについていろいろな議論があるということは承知しておりますけれども、民主主義におけるその役割、あるいは民意統合という積極的な部分、あるいはそれに伴う責務、こういうものをはっきりさせることによって、政党の姿勢といいますか襟を正すという部分もやはりないわけではないだろうと思いますね。
 ただ、政党法として、つくるとすれば、具体的にどういう内容を盛り込むかにつきましては、これはさまざまな議論がございますし、ドイツやオーストリアのように一つの法律をつくってそこに全部盛り込むという方式をとるのか、あるいは現在日本であるように、政党助成法や政治資金規正法や公職選挙法といったもろもろの規定のところに、全体としては整ったものを個別に配置していくかという問題はございましょうけれども、その点を含めて、やはり検討すべき時期に来ているのではないかと思っております。
 もう一点は、政党のあり方につきましても、要するに、会派と政党というものとの区別が一般国民には非常にわかりにくい。議院運営の単位というのは会派でございますから、会派と政党というものをある程度分けられるような仕組み、具体的に申しますと、政党というのは、現在、いろいろな法律によって、政党というものがおよそどういうものであるかという点についてはいろいろな議論があるにしても、とりあえず、政治資金規正法だったらその規正法の枠内での一応の定義が行われて、それにのっとった運営が行われている。これに対して、会派につきましては、特にその要件といったものは、あるいは議会の中における地位というものは定められていない。すべて議院先例に任されるということでございます。
 これを、例えばドイツやフランスなどの議院規則などと比べてみますと、かの地では、会派というものについてある程度成文化して、それが公的な機能を果たすわけですから、政党でしたらプライベートな部分がありますけれども、会派は明らかな公的な存在ですね。公的な存在であるなら公的な機能を果たす。それなら、その地位について、内容についてある程度成文法的な規律を設けて、それに従って議会運営に協力していただくという方向をとることはやはり大事だろうと思うんです。
 ですから、ちょっと期待されたお答えと違うかもしれませんけれども、大体そういうことを考えております。
高市小委員長 よろしいですか。
藤島小委員 はい。
高市小委員長 藤島正之君の質疑は終了いたしました。
 次に、山口富男君。
山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。
 きょう、大石参考人から、二つの院がそれぞれ独自の機能を果たすことが望ましくて、ですから、できるだけ異なった原理という話があったんですけれども、私は、憲法での二院制の問題というのは、やはり、国権の最高機関である国会に、主権者国民の意思を反映するあり方の問題ですので、それがきちんと反映されているかということですとか、審議内容がどうだとか、それから行政への監督権が一体どうなっているのかとか、そういう具体的な問題として現状を見て改めていくことが肝要だというふうに思うんです。
 それで、幾つかお尋ねしたいんですが、きょう、いろいろ歴史的経過もあるというお話もあったんですけれども、確かに、おっしゃられましたように、憲法に選挙制度等の詳しい中身がないというのはそのとおりだと思うんです。
 同時に、考えてみますと、あのころ、憲法制定を前にして、衆議院の選挙法が改正されて、女性への参政権の問題ですとか、例の制限部分が外されて、二十歳以上の普通選挙権になっていったわけですね。そういうことを前提にした憲法制定過程に入っていたというのが一つの大事な点じゃなかったかと思うのです。
 その上で憲法を読んでみますと、十四条と十五条に普通選挙権や秘密投票の問題がきちんと書かれていて、そこには法のもとでの平等も書かれているわけですけれども、その上で、四十四条にもう一回、選挙の問題で平等性が非常に求められるという規定があるわけですね。
 こうやって見ますと、日本の憲法の場合、憲法の原理として、普通選挙、秘密投票、また平等主義、こういう問題が厳密に規定されている憲法原理だというふうに私は見ているんですけれども、この点、参考人はどういうお考えに立っていらっしゃいますか。
大石参考人 おっしゃったとおりでございまして、普通選挙、平等選挙あるいは秘密選挙、憲法に直接はございませんけれども、自由選挙というような諸原則は、解釈上認められるということに間違いはないと思います。
 私が申し上げた憲法上明記すべきだという趣旨は、例えば日本国憲法の十四条、十五条の場合には、憲法制定段階の最終段階で突然入ったというような経緯もございまして、必ずしも整った形で書かれていない。
 諸外国の憲法の場合でありますと、選挙について述べる場合には、まず冒頭に、例えば、衆議院議員選挙についてはこれこれが原則であるということをはっきりうたう。ですから、方向性を非常にきちっと示すんですね。
 日本の憲法の場合には、その点があいまいなところがあって、おっしゃったように、十四条と四十四条との関係とか、細かいところをつついていきますと、要するに、普通選挙の原理というものをどこで書こうとしているのかというのがちょっとはっきりしない点がございますね。
 その点を、選挙の原理とはこういうものである、それは国民の権利という参政権の充実ということから見た場合の強調のポイントですね。それと同時に、衆参両院の選挙法というものはこういう原則に基づくべきであるという、直接に国民の権利そのものとは言えませんけれども、組織のポイントとして大事なことは憲法マターとして、当然、表にあらわれている方が大事だと思うんです。
 解釈上、私どもがいろいろな操作をして導き出すということはございますけれども、必ずしもそれは、先ほど先生がおっしゃいましたように、主権者国民の意思を反映するということからいうと、国民にできるだけわかりやすい形で書くということが大事だと思うんですね。そういう原理原則をみんなに目に見えるような形で書くという方向が、やはり憲法の場合には必要であろうというふうに思っております。
山口(富)小委員 そうしますと、平等主義の問題が今出たんですけれども、先ほど最高裁の判例の問題で、一票の格差の問題が立法府への仕事として期待されているというお話ありましたけれども、憲法の原理から見た場合に、現状、一番新しい国勢調査では二・五を超えておりますから、これについては参考人自身はどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
大石参考人 平等選挙という場合には、一人一票という原則を前提にして、投票価値ができるだけ等しくあるべきだという要請をいうわけですけれども、その場合の、等しくあるべきだということの中身でございます。
 機械的に一対一でなければ憲法上等しいという価値が達成されないのか、そうではなくて、もう少し別の要素を入れて、単なる人口だけの問題ではない要素も入れた形で等しいということを考えるかというのは、かなり大きな議論の分かれ目でございます。
 そこの前提として、人口比例ということが要するに等しいということのポイントなのだという前提に立ちますと、それは限りなく格差が小さい方が望ましい。ただ、その場合に、言われますように、しばしば取り上げられるのは、鳥取とか島根とかいうところと千葉、神奈川と対比するというようなことでございますけれども、そういう最大格差の観点という議論が割合多いんですけれども、本当にそれでいいのか、むしろ、全国平均というものをとって、それからの偏差ということで議論するのも筋ではないかということが考えられる。
 いずれにしましても、最大格差という問題でいきますと、学説としては一対二が限度であって、最高裁としては一対三ぐらいまでは考えているんだということをしばしば言われますが、この数字そのものが、原理的に考えてみますと、本当に妥当するのかどうか。一般的な要請としては私もわかります。しかし、機械的な一対一というものを前提にした議論が本来成り立ち得るものかということは、むしろ、私はその点を最近反省しておりまして、もし機械的な一対一を達成しようと思えば、現在のような市町村を単位とした区画を全部取っ払うということしかないと思うんですね。
 各県あるいは各市町村それぞれ歴史がありますから、一応そういう行政区画というものを前提にした区割りをしております。そうすると、やはりでこぼこはできてくる。そこを、一対一が望ましいという形で、飛び越えて選挙区を設定するということが、果たして有権者の意思に沿うことになるのかというのは、もうちょっと慎重に考えた方がいいのではないかと思うんですね。
山口(富)小委員 私は、一般的な要請じゃなくて、憲法上の要請として、一対一に近づけるべきだというふうに考えます。
 それで、十八歳選挙権の問題なんですけれども、先ほど、大きな歴史の流れの問題と原理から見てその実現が必要だということを強調なさいましたけれども、原理といった場合に、これは二十未満十八歳以上の方は納税しておりますから、そういう点でいいますと、憲法上の要請からいっても十八歳選挙権の実現というものは求められるというふうに、参考人の考えをそういうふうにお聞きしてよろしいんでしょうか。
大石参考人 なかなか厳しいところをつかれて、非常に優秀なゼミの学生を相手にしているような感じなんですが。
 憲法十五条で「成年者による普通選挙を保障する。」というふうに書いてございますね。この成年者というものの理解で、実は、これを従来あった民法上の成年制度とドッキングさせて二十というふうに考えることもできるんですけれども、そこで言う成年者あるいは成年者による選挙というのは、ヨーロッパ的な枠組みでいいますと、市民法上の権利主体になるかどうかの問題とは別に、国民の一人として、まさしく市民として政治社会を担って、それなりの判断能力を持って投票行動をし、あるいはイニシアチブに参加し、あるいはレファレンダムに参加するということを考えているものですから、いわゆる民事成年という考え方とは異なって、選挙成年という考え方をとるんです。この考え方をとった場合に、当然に何歳でなくてはならぬということが言えない、機械的に何歳ということが出てこないんですね。
 ただし、今先生がおっしゃいましたように、要するに、働いている人たちがそれなりの政治への参加権を奪われているということは、そのほかの公職選挙法の規定、例えば選挙運動に一切かかわることができませんし、かかわりますと処罰の対象になるというのが現行法でございますね。そうすると、かなりの数の若い層、つまり十八から二十までの層を実は政治そのものから遠ざけているという様相がございまして、その点については、私は、法律制度として大いに反省すべきであろうと思います。
 ほかのものは一切憲法違反になるのかという意味で、憲法上の要請とおっしゃると、私はそこまで言えないように思いますが、しかし、原理原則という一般的な要請がございますので、それに従った、なるべく沿った形の制度の設計が望ましいというふうに思っております。
山口(富)小委員 ありがとうございました。
高市小委員長 山口富男君の質疑時間は終了いたしました。
 次に、金子哲夫君。
金子(哲)小委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 二、三御質問したいと思いますけれども、一つは、同日選挙の問題についてお伺いしたいと思います。
 これまで二度の同日選挙が行われておりますけれども、先ほど来お話がありますように、私は、二つの意味でちょっと問題があるんではないかという思いを持っております。
 一つは、民意の反映ということで選挙は非常に重要だということでありますけれども、その点でいいますと、同日で衆参が行うということになりますと、二つの院の性格からいっても、当然同じような意思が表明をされるということに結果としてなるという意味で、非常に問題があるんではないか。
 特に、最近の選挙制度は、先ほど先生のお話にもありましたように、比例選挙制度がどちらにも導入をされていて、その部分の人数がかなりのウエートを占めている。そうしますと、ほぼ同様な選挙結果が出てくるということは紛れもなくなってきているというふうに思うんですね。そうしてみますと、同日選挙を行うということは、その意味では、基本的に、憲法に書いてある、ないということではなくて、選挙を通じてしか民意が反映できない現状であれば、そのことは行うべきではないのではないか。
 ということと同時に、憲法の五十四条二項で、衆議院が解散されたとき、閉会をしますけれども、その際にも、内閣は、国の緊急の必要があるときには、参議院の緊急集会を求めることができるということが規定されていて、まさにその際半数がいないという状況で参議院が召集される、一体これで成立しているかという問題も出てくると思います。
 その二つの側面で、同日選挙というのはいろいろ論議があるところですけれども、憲法上も大きな問題があるんではないかというふうに考えておりますけれども、その点について御見解があればお聞かせいただきたいと思います。
大石参考人 同日選挙の問題ですが、おっしゃったように、かねてからこの点については議論がございまして、我々の方の専門雑誌ジュリストで特集を組んだこともございます。
 悩ましいところがありまして、参議院と衆議院とがそれぞれの役割を持ち、したがって、別の日に行って別の結果を出すということによって、やがて両院制としてのしかるべき運営ができるというのはおっしゃるとおりであろうと思います。
 ただ、実際的な問題として、例えば、衆議院選挙の場合には投票率が高いけれども、参議院の場合にそうではないということになりますと、参議院議員のある意味での地位の正当性にも響いてくる問題もございまして、同日選挙をやった場合には、参議院議員も含めて投票率が高くなるということの意味もやはり考えざるを得ないのかなという点があります。
 さらに困ったことに、私は、議会政治といいますか議院内閣制の安定の要素というのは、日本がなぜこういうふうになっているかといいますと、衆議院総選挙があって、次はまた参議院通常選挙がある、ほぼ一年六カ月ごとに選挙をやっているという状況で、しかも、その参議院の選挙の結果が総理の地位にも影響を及ぼすというような運営ですと、安定した政治が得られないのではないかと思っております。それは、もとをたどれば、参議院がある程度権力を持つということにも、一般的に言われるイギリス型のものよりもはるかに権力を持っているということと大いに関係していると思います。
 原理原則でいえば、組織のあり方は異なるべきだから同日選挙は望ましくないというのは、これはもうおっしゃるとおりで、私は異論ございません。ただ、現実の問題で、やはりそれだけでは割り切れないものが発生しているというのが制度の具体的な問題点であろうと思うんです。
 もう一つ、緊急集会の問題がございました。
 理論上純粋に考えれば、衆議院の場合には、例えば解散ということになりますと、もうそこで議員の任期は終わる、議員の地位はなくなるわけですけれども、理論的にはずっと六年間は地位を持つわけで、改選される、次の者が来るまでは前の者がいるという前提でございますので、単なる半数で物事を決めるということではないんだろうというふうに理解しております。
金子(哲)小委員 政権の安定性の問題でいいますと、これまでも参議院で与野党逆転している状況もあり、しかし、それはそれとしても、政治としては一定の役割を果たしてきたように思いますので、私は、衆参の役割等が違うということであれば、そのように考えるべき、政権の安定という側面だけから考えるのはちょっと難しいのではないかというふうに私自身の思いがあります。
 次にお伺いしたいのは、先ほどどなたかの委員からもお話がありましたように、最近は政治の課題が目まぐるしく変わっていくということがありますけれども、選挙の公約と、国政にかかわる重要な政策、選挙の際に重要な争点になっていなかったというようなことが任期中に新たに提起をされる。例えば、今この通常国会でも有事法制の問題がありますけれども、国の基本的な政策にかかわる問題が、全く国民の審判を受けないままに、争点にもならなかった前の選挙結果に基づいて決定をされていくということになりますと、これは、選挙を通じて国民の意思を問うというものに対しての、いわば国民の直接投票による判定がないわけですので、市町村と違って住民投票制度もないわけですから。
 そうなりますと、確かに目まぐるしく変わる世界情勢があるとはいえ、そういった重要な争点については、解散権そのものが内閣にあるということで、時の政府のやりようによって決まっていくということになりますけれども、それだけでいいのだろうか。それによって、これだけ重要な法案が選挙の議も経ずに決まっていくということでいいのかという今のシステムのありようを若干、特にそれから、一方で政治不信の大きな一つは、選挙の際に公約として掲げたものが選挙後に変わっていくとか、比例選挙で選ばれた当選者が、今度法律が変わりまして一応一定の制約をやって他党には移動できないということですが、離党はできる、これまたちょっと不思議な制度ということもあるわけで、その点で一番言いたいことは、重要な政策の問題、それらはやはり国民の信を問うべきだ。これは政治のありようの問題かもわかりませんけれども、制度的な問題でないかもわかりませんけれども、先生の御意見があればお伺いしたいと思います。
大石参考人 選挙の公約等が生かされていないといいますか、それと現実の議会運営がうまくリンクしていないという点につきましては、私は外部の者ですけれども、そういう印象を一般的に持っております。
 公約というのは非常に大事でございまして、だから、それをきっちりやっていただくということが大事だろうと思うんですが、日本の場合には、先生おっしゃいましたように、直接民主制的な制度、これについてはいろいろな評価がございます。ある意味でデマゴーグのばっこを許すとか衆愚政治になるおそれがあると言いますけれども、しかし、明治憲法を含めるのは妥当かという問題はありますけれども、半世紀以上も国民が選挙によってしかみずからの政治的意思を表明できないというのは、いわゆる代表民主制をとっている国でもかなり珍しい方だろうと思うんですね。
 ですから、制度を変えるという前提で言いますと、一つにはイニシアチブの制度を導入するとか、あるいは重要な問題についてはレファレンダムの制度を整備するとか、ともに憲法改正を要するように思いますけれども、そういう制度をとるのが一つの方策かと思います。
 他方で、重要な政策についての国民の意思表明の場を与えるべきだという場合に、では、直ちにいわゆる解散制度ということに行くかといいますと、それは内閣のあるいは総理の専権事項という言い方をしますけれども、そういう側面もありますけれども、およそ下院議員の首を切る、その地位をなくすという非常に重大な行為でありますから、一方においてはそれは非常に慎重に扱うべきだ、むしろ解散権は制約する方向で議論すべきだということもまた一理ありまして、争点があったからといって、では解散制度の問題と直ちに結びつけるというのは、必ずしも私は賛成できないところがございます。
金子(哲)小委員 ありがとうございました。
高市小委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)小委員 保守党の井上喜一でございます。参考人、きょうは本当に御苦労さんでございます。
 まずお伺いしたいのは、参考人は二院制の賛成論者だということをおっしゃっておりますが、私は必ずしもそうじゃありません。どうも、現実の制度の運用を見ますと、衆議院、参議院、大体同じような議論をしておりまして、結果として審議がおくれるといいますか、法案でありましたら法案の成立がおくれるというようなことになっているんじゃないかと思うんですね。
 そこでお伺いしたいんでありますが、確かに二院制のいい点も観念的にはあろうと思うんでありますが、現実の制度の運営の中で、二院制であるがゆえにこの点は大変よかったというようなことがどの程度あったのか。日本とアメリカ、それからヨーロッパはフランスを例にとっていただきまして、具体的にそういったところのお話を伺いたいと思うんです。
大石参考人 私は、二院制、両院制についてポジティブな立場をとっているんですけれども、一方では、もちろん、おっしゃったように、法律の成立がおくれるということなどをお考えになってかなり厳しい意見を持っている方が多くいるということは承知しております。
 アメリカの場合と議院内閣制の場合とを同じように扱うのは若干問題はあろうかと思うんですけれども、アメリカの場合には、基本的に対等型でございますから、しかも基本的には議員が発議するというタイプのものですから、議員が発議したものはできるだけ成立するという方向に働くとすると、必ず両院協議会といいますか、それを開いてそこでかなりの修正をするということがございまして、その中でいろいろな、いい意味でのバーゲニングというのは行われるのかもしれません。非常に積極的に両院協議会は機能するという場面がございます。
 ヨーロッパの場合、議院内閣制ですから少し事情が異なりますけれども、いずれにしても、衆議院で可決したものがそのまま成立するということよりも、イギリス型の貴族院にせよ、むしろ上院段階でかなりのその点の検討が行われて、政府側もそれを受け入れる形で修正して成立する。二会期連続して衆議院で可決すればもちろん決まるんですけれども、そのためには、二会期連続といいますと最低約一年を置かなきゃいけないんですね。会期制といっても年会期制でありますから、その間置かなきゃいけないということがありますが、そこまで待てない場合には、早く妥協を成立させて成立させるという方向があります。
 フランスの場合でも、いろいろ審議をやりますけれども、最終的に通らない場合には、下院だけでも通常議決でファイナルに仕上げてしまうという制度がかなり多用されております。ただ、多用するにしても、余りに強引な政治運営は望ましくないというのは共通の理解でありますから、そこに上院によっていろいろな形の修正を加えた上で成立させるということがあろうかと思います。(井上(喜)小委員「日本の場合はいかがですか。どういう例がよかったですか」と呼ぶ)
高市小委員長 小委員長の許可をとって御発言ください。
井上(喜)小委員 はい、委員長。
大石参考人 日本の場合には、先ほど来申し上げているように、さまざまな形で修正案が出るというのは承知しておりますけれども、基本的に、例えば政府立法の場合に、その骨格はできるだけ崩したくない。参議院の力が非常に強いものですから、最初から参議院での審議あるいは院内勢力をにらんだ上での提出が行われる。したがって、その時期をめぐってもいろいろな駆け引きがあるということでございまして、最終的に、例えば衆議院が先議したものは、参議院、上院がどうであれ、とにかくどこかの時点で成立するというのがあれば、いわゆる法案のおくれというのもさほど心配しなくて済むんではないかというふうに、印象として持っているんですけれども。
井上(喜)小委員 次に、衆議院の選挙制度についてお伺いしたいんです。
 今は小選挙区比例代表並立制ということで、言ってみればこれは小選挙区制と言ってもいいと思いますし、あるいは単純な小選挙区制、典型的な小選挙区制だと思うんです。それからもう一つ、日本が経験をいたしました選挙制度としては中選挙区制があります。大選挙区制の時代もありましたが、原則的に中選挙区と小選挙区、こういう理解でいいかと思うんですが、私は、小選挙区というのは理論的には大変いい制度というか正しい制度のように思うんですね。しかし、なかなか、運用を見てみますと問題もある。
 小選挙区制というのは政党間の選挙ですから、それぞれの政党がチャンピオンを出して選挙を争うということだと思うんです。それから、それぞれの政党に複数の候補者がいる場合は、本選挙の前に予備選挙をしましてチャンピオンを決めていくというのが原則だろうと思うんですね。
 ところが、日本の場合は、そんなことをやりますと、予備選挙を戦ってチャンピオンになった反対側は、本選挙ではほかの党を応援することだってあり得るわけですね。あるいは、敗れた候補者は、ほかの政党で立候補する場合だってあるわけですね。現にあるんです。どうも自分の主義主張と同じ政党にいるかどうかということが疑わしいようなケースだって出てくると思うのでありまして、私は、そういう問題があるんではないかと思うんですよね。
 だから、日本の民意というのは、そこまで小選挙区をうまく実施するところにまで成長していないんじゃないかというような感じが一つあるんです。
 その点、中選挙区制というのは、確かに問題も多いのでありますが、世代交代といいますか、それなんかも案外スムーズにこれまで来たと思うんですね。
 ですが、私は、今これは本当にどっちがいいのか非常に迷うんでありますが、参考人としては、日本に合いました衆議院の選挙制度としては、どういうのが一番いいとお考えですか。
大石参考人 またまた難しい問題だと思いますが、先生がおっしゃったように、小選挙区制における別の問題点があろうかと思うんですけれども、私は、むしろ逆の問題点もあるというふうに思っております。
 それはどういうことかといいますと、先ほどちょっと申し上げたように、小選挙区制、議席配分への増幅効果が非常に大きいものですから、全部で得票しなくても政権交代は可能だという利点がありますけれども、それを目指したような候補者の立て方を現実の政党がやっているのかということが、やはり一つの問題点はあると思うんです。
 もう一つは、基本的には、人口十万人に一人程度で小選挙区制は運用するという方がやはり望ましくて、その中でトップをとった人が当選するという多数代表の原理をできるだけ多くしていくということなんですが、日本の場合には、比例代表との組み合わせでありますから、結果的に三百人で、三百人といいますと、一億二千万といいますと、人口四十万人に一人というかなり大きな規模の小選挙区でございます。そこでは、選挙活動のスタイルが大分違ってきまして、この選挙区の代表としてどの人を唯一選ぶかという場合に、余りにも規模が大きいと、そこに問題を生じるのではないかというふうに思っています。
 先ほどちょっと申し上げましたが、選挙制度を幾つか組み合わせるということについて、私は余り賛成できない立場でありまして、比例代表選挙というのも一つの手で、ある時期には有力に唱えられたこともあります。しかしやはり、いろいろな国の制度を見ていますと、非常にわかりにくい。つまり、国民の目からは、どういうふうに議席が配分されるのか全くわからない。結果としてこう出る。ドイツのような形というのは、我々が投票して選んだその選良であるということとの結びつきはなくなるということを考えますと、やはりそこはいろいろ御批判はあろうかと思うんです。
 小選挙区で、単純にそれで割り切って、いつでも政権がかわり得るという措置を残しておく方が、選挙制度としてはいいのかなというのが現在の考えでございます。
高市小委員長 井上喜一君の質疑時間は終了いたしました。
 次に、中山正暉君。
中山(正)小委員 もういいところは大分出てしまいましたので、大変お時間をいただいて、きょうは御苦労かけております。
 私、今現在、自民党の選挙制度調査会の会長をやっておりまして、初代が羽田孜、今は民主党の方へ行きましたが、彼が最初に説明に来たときに、二大政党をやるんだ、こう言ったんですね。あなたのところは、それは浅間山の煙を見ながら、馬子唄聞きながら、山の向こうが自民党、山のこっちが自民党で、二つに分けたら両方とも自民党が出てくるなんて考えてもいいかもしれぬけれども、私のところは、大阪城の見えるあたり、ど真ん中ですから。
 私が最初出たときには、民社党の西尾末広先生、それから社会党の井岡大治先生、公明党の浅井美幸先生、それから共産党の東中光雄先生、それで私、各党一人ずつ、政党のショーウインドーと言われたんですね。ですから、そんなこと、あなたのところじゃそれはいいかもしれぬけれども、私のところみたいな大都市は、そんなのんきなことを言っておられぬぞということを言ったわけです。
 それで結果的には、私は、地方議会二回選挙して、中選挙区で九回やりまして、小選挙区で二回やりました。今よくここへ残っているなと不思議に思うくらい、どうやら生き残ったのでございますが、三十三年間の間にそんな変化がありました。
 ですから、私は今、あしたの朝、三党協議をまたやるんですが、小選挙区というものは、これは昨年の十二月の十九日に審議会の答申が出まして、五増五減案というのが出ているんです。そうしたら、その五増五減の審議会のあれでいきますと、二倍の格差のところが九カ所ぐらい残りますものですから、自民党の中では三減二増というような案が出てきましたり、それから、これは選挙制度調査会でこういうことを言うといかぬかもわかりませんが、私は中選挙区論者なんですね。ですから、公明党さんの三人区百五十というのは、これはいいなと思っていますけれども、なかなかそこへいかないんですね。
 それで、今ちょっとこれは勘定してみましたら、もう二回の選挙制度で出てきた人が百九十七名、四百八十名のうち百九十七名になってしまっている。
 これは、小選挙区である限りは必ず微調整が要るんです。二千人動かしたために、十万人の選挙区が変わってしまう、そういう選挙区もありましたり。それから北海道なんかは六百キロとかいう、六百キロにもならないかもしれませんけれども、私のところなんかは、高速道路で行くと三分で通り抜けてしまえる選挙区なんですが、北海道になると、選挙が始まったら、済むまで帰ってこれないなんというところがありましたり。
 ですから、その辺のことを考えると、私は、この間の、これもややこしくてわかりにくいんですが、平成五年の八月九日に細川内閣が誕生しまして、九月十七日に細川内閣が政治改革関連四法案を国会に提出。十月五日、自民党、政治改革関連五法案を衆議院に提出。十一月十八日、衆議院本会議、自民党提出の政治改革関連五法案を否決。内閣提出の政治改革関連四法案を一部修正して議決。平成六年一月二十一日、参議院本会議、内閣提出政治改革関連四法案を否決。これは、委員会は通っているんですね。それから、一月二十六日、両院協議会を設置して、ここでは話がまとまらなかったんです。今度は、一月二十八日に細川総理と河野自民党総裁との会談で合意成立。一月二十九日、両院協議会の成案成立、衆参各院の本会議、両院協議会成案を可決、政治改革関連四法案成立。
 さっき、土井たか子当時の議長とぱたっと会ったものですから、聞いてみたら、自分のあっせん案と全く違ったと言うんですね。私は、そのころテレビで、非常に悲痛な顔をして、河野洋平それから細川護煕三者で会っていらっしゃる姿を見たんですが、土井議長の提案を受けて、同日の夜、細川首相と河野総裁との会談が開かれたが、両者の合意内容は土井議長あっせん案とは全く異なり、大幅に自由民主党に譲歩したものであった。
 これは、二回戻しているんですね。私は、あのときの法案の成立、ちょっと憲法違反じゃないかというような思いも、しかし、ああいうどさくさ紛れというのは怖いもので、一気呵成にいって、それで二大政党になったかといったら、十六の政党になりました。何だこれはという感じがするんです。
 そういう意味で、選挙制度というのは、ここでよっぽどよく考えないと、これからもう一回、次まで小選挙区だというと、今度は、四百八十のうちにどのぐらい新人がふえますかね。そうしたら、あしたの三党協議では、公明党さんの三人区百五十というのに、さあ、いこうということで協議しても、そのとき一体どんなになるのかな。これが、私の最大の今のところの悩みでございます。
 今度の京都の選挙を見ていますと、共産党との二大政党になるみたいな感じです。逆に、アメリカは共産党は非合法化されていますね。要するに、結社としての自由はありますけれども、共産党が国会議員になった場合は歳費を払っちゃいかぬというんですから、事実上ないわけですね。ですから、二大政党になります。だけれども、日本ではちゃんとした政党として共産党さんはおられますから。もう京都の知事なんかは、私は、官選知事じゃないかなという感じがするんですね。大変えげつないことを言って申しわけないんですけれども、こういう話はえげつなくしないと余り効果がないものですから、えげつなく申し上げますとそういうことになるんでございますが。
 そんな意味で、先生、全体の何かいい知恵はございませんかね。まだお尋ねしたいことはたくさんあるのでございますが、ひとつその辺で最初にお願いしたいと思います。
大石参考人 私はエレガントに申し上げますが、小選挙区制と二大政党制を、最初からそれが必然的にセットになるという前提がおかしいので、大まかな傾向としてそうなるかもしれないけれども、そこになることが目的でもないし、そのこと自体を意義あるものというふうに考えるのは私自身は余り納得できない。
 小選挙区制、完全小選挙区制というのはフランスでもイギリスでもとっています。けれども、アメリカはちょっと特殊な事情がございますけれども、その場合でも、必ず最低限有力な第三党というのは登場するわけですね。よく穏健な多党制という言い方をしますけれども、小選挙区だから二大政党制として必ず定着する、しかし、そのこと自身も必ずしもそうならないということをわきまえた上での選挙制度を考えるべきであります。
 さらに、そうなるためには、一、二回やった程度では、選挙の結果あるいは大きな選挙制度の仕組みといいますか、それこそ、冒頭に申し上げましたけれども、選挙法そのものが憲法だという感覚が私どもはありますので、そのために憲法をいじってくるくる変えるというのは、やはり総論的に申し上げますとよくないことだと思います。ある程度時期を待って、ある程度長続きさせて、その効果が出るかどうか、どういうメリット、デメリットがあるのかということを検証できるまでの期間は、やはりそのままの制度でやってきた方がいいんではないかというのが一般的な印象でございます。
 おっしゃいましたように、小選挙区制をとることによって、人口移動等がありますと、いわゆる中選挙区制度の場合には定数をいじることでよかったんですけれども、小選挙区制の場合には、そのたびに選挙区そのものを動かすということにもなりかねないので、確かにその点の問題は大きいんですけれども、大局的に見ますと、ある制度の長所、短所が見きわめがつくまでは、やはりその制度で運営するというのが、私は、憲法という考え方からいうと望ましいのではないかという印象を持っております。
中山(正)小委員 毎回これは微調整がつきまとうということでございますので、その意味で、一体これを続けていくことが日本の将来のためにどうなのか。特に、日本は六千八百五十二も島があります。それから、千百七十一の過疎市町村、太平洋ベルト地帯に人口が集中しているという特殊な国土形成になっておりますものですから、そこで広さとかそういうものを加味した選挙制度というようなものが、中国なんかは、これは議会制民主主義ではございませんで、人民民主主義でございますから、党の組織が、農村は百万人に一人の代表を選ぶ、都市は十万人に一人の代表を選ぶ、そういう広さを加味したんじゃないかなと思うような選挙区、ちょっと性質が違いますから、人民民主主義と議会制民主主義を一緒にしちゃいけませんけれども、議会制民主主義の国で、そういう国土の広さとか立地とか……
高市小委員長 質疑者に申し上げます。
 質疑時間は終了いたしております。
中山(正)小委員 はい。
 その辺をひとつお考えいただくようなことをまた御研究の中で、お答えいただかなくても結構でございますが、時間は委員長から厳しく、お顔は優しいんですが、大変厳しく委員会を運営されますので、この辺にしておきます。
高市小委員長 申しわけございません。
 中山正暉君の質疑時間は終了いたしました。
 次に、伴野豊君。
伴野小委員 本日は、大石先生におかれましては、遠方よりお越しいただきまして、本当にありがとうございます。お忙しいところありがとうございます。また、貴重なお話を賜りまして、ありがとうございます。その中で、幾つか時間の許す限り質問をさせていただければと思っております。
 まず一点目は、私も、どちらかというと、両院あることに対する疑問といいますか、今までは一院でもいいんではないかというぐらいの思いをしていたんですが、昨今、逆の立場をとっております。
 一院制であった方がいいという理由の中には、きょうも幾つか御指摘されていたように、スピーディーかつタイムリーな判断、あるいは激変の時代だからそういったものが望まれるということでございましたが、私は、逆に、何が起こるかわからないから、再現性ということを確保する意味で両院の意味があるのではないかなと。スピーディーかつタイムリーにやるということは審議のあり方を工夫すればいいわけでございまして、自然科学の上では、仮説を証明するときに、違う実験室で同じ前提条件で同じことが証明されるということが仮説を証明する一つの定義にもなっております。
 そういうことからすれば、結果として同じことをやってしまった審議であっても、意味がないというのは、私は、逆に、今こういう時期だからこそ、見直すことの重要性、チェックの重要性というのは非常に重要ではないかなと。そういう意味では、両院制を維持する立場であるんですが、そういう再現性の面から、先生はどんなことをお考えになっていらっしゃるか。
 それから、二点目ですが、先生も先ほど、上院としての性格を選挙制度にどう反映するかが肝要であるとおっしゃっておりましたが、今の先生のお考えの中で、望ましい参議院選挙とはどういうもので、その場合には衆議院をさわらなければいけないということにもなるのかもしれませんが、私見で結構でございますので、お話しいただければと。
 それから、三つ目は、内閣総理大臣の指名権の件にも触れていらっしゃいますが、今議論されている、あるいは話題になっている首相公選制については、先生はどんなお立場と御意見を持っていらっしゃるか。
 それから、四点目は、きょうも話題になりましたが、いわゆる選挙制度をしっかりしなければというお話の中で、私は、絶対二つのもののあり方を議論しなければ、健全な選挙制度というのは確立できないんじゃないかと思っているんです。
 その一つが、メディアのあり方。これは、報道のあり方で、どちらかというとスキャンダラスなものを報道したがるこの傾向。例えば、きょうの憲法調査会で行われているまじめな議論なんというのはほとんど俎上にはのらずに、きょうも多分スキャンダラスなことが報道されている。これは、まあ政治家がそういうスキャンダラスなことをやること自体が悪いのでしょうが、メディアのあり方をきちっと問わなければいけない。
 いま一つは、技術革新に合わせた選挙制度でなければいけない。多分、今の選挙制度というのは、これだけの技術革新を全く想定していないだろうと。日常的に使われている技術をきちっと導入するということが、間接から直接民主主義を確立する上でより重要ではないかな、そんなふうに思います。
 最後に、先ほど先生は、十八歳選挙権の実現というものをお話しされておりましたが、その兼ね合いで、被選挙権はどう考えていらっしゃるのか。
 その点について、時間の許す限りお答えをいただければありがたいと思います。
大石参考人 たくさんの御質問の中で、結論だけで申し述べたいと思います。
 まず第一の、再現性といいますか、やはりそれは大事なことでして、ただし、全く同じ流儀で、同じ審議のあり方でやることは望ましいと思っておりません。審議のあり方について工夫を加えることが必要だというのは、この間の議長の私的諮問機関のところでも指摘されておりました。
 それから、望ましい参議院選挙制度のあり方ということなんですが、さまざまな工夫をする必要があると思うんですね。少なくとも、類似した選挙制度は両院の機能を全く損なってしまうということからいいますと、同時に衆議院の選挙制度についてある一本化された筋のある選挙制度を採用し、それに対して参議院はこうだと。これがベストだと言いませんけれども、例えば衆議院を小選挙区制で徹底するとすれば、参議院は例えば地域代表の、先ほど都道府県一律三人と申し上げたのはそこだと思うんです。そういうやり方も思い切ってやってみたらどうかという気がいたします。
 参議院の総理の指名権ということですが、私自身、今、首相公選の例のあの懇談会のメンバーの一人でございまして、ここで申し上げるのがいいかどうか、ちょっと迷っているんですが、時間がないということで、次の話題にいたします。
 四番目は大きな問題ですが、メディア報道のあり方というのは、確かに、私は学生にはよく言うんですけれども、メディアというのは、要するにそういうスキャンダラスな面とかとっぴなところだけを取り上げがちで、何とかそういう傾向を反省していただきたいと。例えば、週刊誌の、新聞でもそうですが、見出しと記事が全然違う、あるいはテレビでもワイドショー的なところはそうですけれども。そういうのは、要するに、政治というものを国民あるいは若い人たちに正確に伝えるゆえんではないであろうという、その自覚は持っていただきたいと思います。
 技術革新をどう反映させるかというのは、確かにおっしゃるとおりでございまして、いろいろな面から、ホームページはどうだとかインターネットによる投票はどうだとか、いろいろな問題がありますが、それは、やはり時代の流れに合わせて、変えるべきところは変えたらいいというふうに思っております。
 最後、五番目、簡単にメモしたんですが、ちょっと確認できればよろしいんですが。最後の点は何でございましたか。
高市小委員長 被選挙権のことについて。
大石参考人 ごめんなさい、大事なことを忘れておりまして。
 被選挙権というのは、多分先生がおっしゃりたいのは、十八歳選挙権という関連からいうと、それは選挙人団の範囲を変える問題である、今度は逆に、その選ばれる方の、議員資格の問題をどうするかということとセットで考えるべきだという御議論でありましょうが、その場合に、最低限のことだけ申し上げさせていただきますと、少なくとも参議院の場合、衆議院については私は特に問題ないと思うんです、十八歳を除いては。参議院の場合に、被選挙権年齢が五歳ほど違うということが一体どれほどの意味を持つのか、組織原理ということからいうと、有意味な違いをもたらさないのではないかという印象を持っております。
伴野小委員 どうもありがとうございました。
 まだ時間がありますが、議事進行のために協力させていただきたいと思います。
高市小委員長 ありがとうございます。
 それでは、伊藤達也君。
伊藤(達)小委員 伊藤達也でございます。最後の質疑者になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今まででほとんど論点が出尽くしているところがあろうかと思いますが、あえて二つ、参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 一つは、今参考人からお答えにならなかった首相公選制の問題でありまして、この調査会においても、これから憲法を改正していくに当たって、やはり首相公選制をどうするのかというのは大きな論点になっております。首相公選制を万が一導入した場合に、両議院制度をどう考えていくのかというのは極めて重要な課題ではないかというふうに思っております。
 私は、これからの憲法のあり方、そしてその憲法を支える基本的な原理、基軸の中に、主権者である個人の自己変革というものをしっかり位置づけていくことが大変重要だというふうに思っています。自己変革の内容は自己統治と自己実現であり、これは表裏の関係であると思いますが、それぞれの個人が自己実現を国家及び社会全体として確保していくために、主権者たる個人は、主体的に社会の規範づくりに参加をして、それを守るための責任を負うという自己統治をやはり受容していかなければいけないというふうに考えております。
 こうした観点からすると、その自己実現と自己統治という基本的な価値をより増大させていくために、私は、首相公選制というものを前向きに受けとめて考えていくというのは重要じゃないかなというふうに思っているんです。
 先生は、この首相公選制というものを、議院内閣制という形を踏襲したままで首相を国民が選ぶことが統治原理上可能かどうか、まずその点もお伺いをしたいと思いますし、先ほどお伺いしたように、そうした中でもし導入できるとした場合に、両院制度を、今までの議論の中でさらに新しい視点を入れなければいけないとするならばどういう点があるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
 もう一つは、これも先ほどから議論が出ている政党の理想像とは何なのかなということを、ぜひ先生にお伺いをさせていただきたいと思います。
 私は、今のこの日本の政党政治というのは、ある意味では極めて日本的な、権力の構造を維持していくその装置としてのあり方ではないかなというふうに思っているんです。ただ、私は、日本の民主主義というものを充実していくためには、政党政治そのものもやはり進歩させていく、変革をしていかなければいけない。その場合に、先生は、今の政党政治そのものをどういうふうに評価をされ、そしてそれをどういう形で理想的なものに近づけていくべきというふうにお考えになられているのか、お答えをいただくことができれば幸いです。よろしくお願いします。
大石参考人 いずれもなかなか一言では申し上げにくい論点を含んでおりますが、まず第一の首相公選制の問題なんですが、私も委員でございまして、しかも、多分、メンバーの構成からいって、ドラフトそのものをやらざるを得ない立場であります。事前にこういうところでお話を申し上げるのは、他の委員に対しての問題もございますので、そのこと自身はちょっと答えにくいところがございます。
 先生のお立場は、いわば国民の自己責任、自己意識といいますか、自己変革のために、みずからが首相を選ぶということを積極的に唱えておられる、評価しておられるようですが、私自身は、そのことそのものは基本的に賛成でございます。
 ただ、民主主義というものを考える場合に、私が人を選ぶという側面と同時に、私自身が物事を決めるという側面がございますね。従来、日本では、民主主義といった場合に、特に議会制民主主義ということを強調されるものですから、要するに、物事そのものは決めない、決める人を選ぶという方向での議論、すなわち選挙制度の問題だけに議論が集中しております。そうではなくて、人を選ぶというのももちろんデモクラシーの大切な要素で、日常的に重要なことだと思うんですが、それ以外に、我々のことは我々で決めるという要素も取り入れることが大事ではないかと思っているんです。
 そういうふうに申し上げれば、直接民主制的な契機の導入といいますか、制度としては、イニシアチブの制度であるとか、あるいは先ほど申し上げたレファレンダムの制度というものがございまして、取り入れるためにはもちろん憲法改正が必要ですけれども、国民の意思を表明する場合に、選挙、人を選ぶということを通じて民意を表出させるという部分もございますが、それを原則としながらも、しかし、そこで立ち行かなくなる、あるいはどうもうまく我々の意思が伝わらないという場合に、我々みずからが立法のための素案を提供する、あるいは議会が決めたものについて我々が最終的に判断する、そういうイニシアチブやレファレンダムの制度を取り入れる形で、自己の責任といいますか、自己決定というものを拡充するという方向ももっと議論されていいのではないかと思っています。
 もちろん、先生がおっしゃいましたように、この両院制をどうするかというのは非常に重要な問題でございまして、私どもの首相公選制の懇談会でも、その点は大きな論点として議論をしております。特に、先ほど申し上げましたように、基本的に、今の制度でありますと、国民が選挙で衆議院議員を選ぶ、その衆議院の中から首相が誕生し政権を担うという構造になります。しかしながら、現実は、衆参両院を合わせますと、一年半ごとに選挙をやっていまして、絶えず首相の地位が参議院の選挙結果に影響されるという潜在的な要素を持っておりますと、政権の安定あるいは安定した政治の運営が確保されない。もちろん、選挙があればいろいろな意味での国民の意思を伝えることはできますけれども、それと同時に、安定した政治、政権というものも一方で大事なことでありますから、その点の根本的な再検討が必要であろうと思います。
 もう一つの、政党の理想像というのは、なかなか難しい問題でございまして、単なる一憲法学者の私がお答えできる範囲かどうかわかりませんけれども、民意と、我々の方でよく言う言葉ですが、社会のレベルと国とのかけ橋になるのが政党のあり方ですね、ちょうど中間的な位置。
 したがって、社会における動きとしては、政党というものはプライベートな団体として生き生きとした活動をしてほしい。しかし、それは一たん議会内に入りますと、いわば公的な役割を果たすものですから、それにはそれに応じた責任を伴い、ある程度透明感のある運営をしていただきたいというのがありまして、しかもその中でお互いに緊張感のある、私どももそうなんですけれども、実務と学界とが時々離れているということが言われますけれども、批判ばかりではなくて、ある程度協力関係もあり、絶えず緊張感のある政党のやりとりをやっていただきたいということがございます。
 かつて、冷戦構造で非常に厳しい対立が見られたときには逆の意味でまとまっていたのが、たがが外れたので、求心力が働かないで遠心的な方向に向かっているというのが政党の全体の現状ではないかと思うのですけれども、先般来、この国の形の再構築ということが言われておりまして、その中では、やはり緊張感のある体制づくりを必要としていますので、そこに向かってのお互いのやりとりがあって、しかも、先ほどの御質問とも関連しますが、そういういい意味でのやりとり、いい意味でのバーゲニングがメディアを通して有権者の判断に役立てるような形で提供されることが望ましい。ですから、メディアはこの点で政党政治について無縁であり得ないという自覚を持っていただきたいというふうに思っておりまして、ちょっと先生の御質問の趣旨から外れておるかもしれませんけれども、一応そういうことを考えております。
伊藤(達)小委員 どうもありがとうございました。
高市小委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 大石先生におかれましては、大変長時間御一緒いただき、貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして、御礼の言葉といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
高市小委員長 これより、本日の参考人質疑を踏まえ、政治の基本機構のあり方について、小委員間の自由討議を行いたいと存じます。
 一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小委員長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いをいたしたいと存じます。
 小委員の発言時間の経過につきましてのお知らせでございますが、終了時間一分前にブザー、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせしたいと存じます。
 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、ネームプレートを戻していただくようにお願いいたします。
 それでは、ただいまから御発言を願います。
藤島小委員 自由党の藤島正之でございます。
 昨年の参議院の選挙で選挙制度を変えたわけですけれども、まさにあれは自民党の党利党略ということで、あれを見ますと、ゲリマンダリングよりまだ悪いんじゃないか、こう思うわけですが、自民党の重鎮でいらっしゃる中山会長に、猛省をしているのかどうか、お伺いしたいと思います。
中山会長 自民党の中山です。
 政党政治のことでございますから、政治におけるキャスチングボートを握っているよりも、むしろマジョリティーの方は、どうしても自分の方に有利な案というものを原則的に考えるんだと思います。これは、どの政党が主導権をとられてもそうだと思うのです。
 そこで、反省をしているかどうかということでございますが、私は、反省も、あるいはそれでよかったとも思っておりませんが、結果として国民の意識が十分反映されているかどうかということをもう少し精査してみる必要があるんじゃないかと思います。
 これは、藤島先生からのせっかくの御発言ですが、私は正直に申し上げて、小さな単位では大阪府会議員の選挙を四回やりました。参議院の地方区を一回やりました。そして、中選挙区で衆議院を三回やりました。小選挙区で二回やりました。比例区とかブロック制とかいろいろな組み合わせの中で、住民といかに密度を深くして接触できるかというところが一番政治の根底にあるんじゃないか、そういうことを自分の体験から絶えず感じているということを申し上げておきたいと思います。
藤島小委員 結果は歴史が評価するんだろうと思うんですけれども、前回の改正については、非常に動機が、国民の納得を得られないものだろうと思うんですね。今の新しい制度そのものは、やはり長い目で国民が評価するんだろうと思いますけれども、そのことだけを申し上げておきます。
山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。
 きょう、参考人から意見をお聞きしまして幾つか感じたことなんですけれども、一つは、時間切れでお尋ねできなかったんですが、結局、日本の両院制の場合、きょうの参考人の御意見でも幾つか要綱に分かれていましたが、一番最後に4のaというのがつきました。それ以前のところは、いわば現行憲法の、どうやって実際の両院制の機能として強めるかというお話だったんですが、4のaのところは、具体的なところになると憲法改正の問題に触れてくる、ですから、包括的な議論が必要だと、そういう区分けをされてお話しになったと思うんです。
 私は、その点でいいますと、日本の場合は、現状からいっても、憲法の規定がきちんと生きていないわけですから、4のaに行く前の問題、憲法のきちんとした規定どおりの姿をどうやって実現していくのかという問題の意識が非常に大事だということを、いない席で言うのはちょっといけないかもしれませんが、そのことをお尋ねしたかったんで、そこから先はやめておきますけれども。
 それから二点目に、大変おもしろかったのは、定数の問題でも、それから二つ目の院の、上院、下院という言い方がありますが、参議院のあり方の問題でも、諸外国に比べると、例えば定数でいいますと、今中山会長がおっしゃったように、国民代表機関という、密着という関係でいうと弱いんですと、ほかの国々の方がもう少し、人口とのかかわりでも議員は多いんですという指摘がありました。
 たしか、サミット参加諸国の中で、日本より人口比で議員数が少ないのはアメリカだけだと思うんです。それは、アメリカ自身が、形成の過程が日本とちょっと違いますので、そういうあり方になったと思うんです。そういう点ですとか、それからイギリスに比べても、参議院の権限というのはなかなかのものだというお話もあったんですね。
 そのあたり、私自身も、日本の日本的な民主主義のあり方としてきちんと今後に引き継いで生かしていかなきゃいけない問題、それから改善すべき問題、そういうものをよく見て進めていきたいなということを二点感じましたので、発言といたします。
金子(哲)小委員 社会民主党の金子です。
 私は、きょうのお話の、制度の問題とか選挙制度のありようとかが中心になりましたけれども、その前に考えるべきことがあるんではないかということは、一つは、投票率が非常に低いという問題についてです。私は、制度の問題を考える前に、何が一体原因なのかということをお互いが考えていかないと、確かにきょうの論議の中でも格差の問題とかがありましたけれども、それ以前に、投票率が五〇%いかない。つまり、幾ら選ばれても、過半数も代表しないというような、小選挙区制度にやってもいかないという問題が、まず政治のありようというところできっちりとした論議をしなければ、今の日本の政治の場合には、制度以前の問題として、基本的には考えなければならない課題ではないかというふうに思います。
 それから、参考人の、私も質問の中でお話をさせていただきましたけれども、いわば政策の問題についてどのように民意を問うかという問題が、私は投票率ともかかわってくると思いますけれども、非常に重要になるんではないか。
 参考人のお話ですと、一年半に一回は選挙をやっているというお話でありましたけれども、一年半という期間で考えますと、それにしては大事な争点が、必ずしも選挙の争点として、それはお互いに我々の各党の問題にもなるわけですけれども、提起をされてきただろうか。私が言った大事なところは、そういう選挙に問うべきだというお話をしましたが、もし仮に一年半で選挙が繰り返されておれば、かなりの部分は本来問われて、選挙を通じて政策の可否が問われてもいいと思うんですけれども、必ずしもそのように、これまでの選挙の結果なり、選挙で我々が争点で争った時点では見えなかったんではないかというふうに思います。
 制度の問題も、また、より民意を本当に生かしていくということが、もう一度これは今の憲法の中でもまず出発点として考えるべき課題だということを実は感じております。
 また、最後に苦言を呈するようで申しわけございませんけれども、先般も申し上げましたが、自由討論になりまして、これだけの委員のメンバーになって、八名の発言が保障されているんですが、小委員長を含めて八名という状況で委員会が運営されることについて、改めて今後の運営、少し検討する必要があるということを申し上げて、終わりたいと思います。
中野会長代理 選挙制度について、私は、完璧な選挙制度はないと思っております。
 基本的に申し上げると、選挙権の十八歳への年齢引き下げというのを私は早急にやるべきだというふうに思いますが、同時に被選挙権について、二十五歳と三十歳と二種類ありますが、三十歳の知事及び参議院議員についても、この際やはり二十五歳に引き下げていい話であって、先ほど参考人も言われましたが、五歳の年齢差を設けるということは、現在では余り意味のないことではないかというふうに思います。
 ただ、選挙制度で言えることは、私は、二十年とか十年とかの単位で選挙制度を変えればいい。制度疲労というのは必ず起こると思う。そういう意味では、周期を設けて選挙制度を変える。ただし、そのときに衆議院と参議院は全く違う選挙制度にしないと意味がないというふうに思います。現在は、余りにも似通い過ぎていて、まさに衆参二院制度の意味を逆に損ねているのではないか、こういう感じがいたします。
島小委員 民主党の島聡でございます。
 今、金子さんから八名のというのがありましたので、きちんと発言をさせていただこうと思って参りました。
 きょうは、両院制と選挙制度のあり方ということであります。前回の選挙制度改革は、政権交代ができるようにというような思いがあったと思います。ところが、参議院というのは、権能が立法状況においても非常に強うございます。イギリスなんかですと、要するに下院の選挙一回で政権交代がさっといくわけであります。もちろん、貴族院はありますけれども、ちょっと異質なものでございますから。日本の場合は、そういうことになっていないという状況であります。
 そういう意味で、きょう大石先生の、選挙法は実質的な意味で憲法に属するということもあるわけでありますから、国民の意思がきちんとあらわされるような参議院と衆議院のあり方というのをきちんと議論していくべきではないかなというふうに思っております。
 それから、統治機構の話でございますので、憲法九十六条について話したいと思うんです。
 憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成ということで、衆参両議院同等になっております。これもやはり議論をしていく必要があると思うのと同時に、国民投票法がきちんと制定されていないというのは、これは立法不作為に当たると私自身は思っておりますので、この問題についてもどう考えるかということは、これから議論していくべき問題であるというふうに思っております。
 以上です。
斉藤(鉄)小委員 私は、きょうの議論の感想を述べさせていただきます。
 きょうの大石先生のテーマが「両院制と選挙制度のあり方」ということだったんですが、議論が両院制についての議論だったり、選挙制度の議論だったり、それから両院制と選挙制度、つまり二つの院があって、その二つの院があるということと選挙制度の話、この三つのテーマが混在されて議論されたような気がいたします。今後、このことをもう少し整理して議論していかなきゃいけないのかな。きょうの主題は、院が二つあることに起因する選挙のあり方の違いというふうなところが本来のテーマだったのかな、このように思いますが、その点について今後もう少し議論を深めていかなきゃいけない。
 それから、私自身、大変勉強になりましたのは、現行憲法が選挙制度について定めていることがかなり限定的なものであるということが勉強になりました。今後、憲法を議論していく上で、憲法がもう少し、二院制との関連で、選挙制度について具体的に踏み込んだ内容まで述べる必要があるのではないかなというふうに、私自身はきょう議論をして感じました。
 この後は個人的な感想なんですが、先生のあれで、日本の場合、議員の数は決して多くないというのもそのとおりだなと思いました。
 私は、比例区の単独立候補、比例区単独ですので、中国五県が選挙区で、土日は中国五県を歩き回っているんですが、さすがに広過ぎる。まさに、土日に有権者の人と話し合って、その風を感じて、月曜から金曜まで国会で議論するということが理想的だと思いますが、さすがに今の選挙区は広過ぎる。もう少し地域に密着する選挙制度、ある意味では議員の数をもう少しふやしてもいいのではないかなというのを個人的には感じております。
 以上でございます。
中山会長 自民党の中山でございます。
 衆参両院の制度を見まして、国全体を選挙区に持っている人は、大体南から北まで走っていますから、日本の国というものの全国的な感覚を十分体につけていると思うのですね。ここが、ブロック制になったら、ブロックは、今斉藤先生がおっしゃったように、ブロックの中でも広過ぎるけれども、毎土曜回っている。やはり、日本全体を選挙区に構えた人は、全体的に、その選挙を通じて自分の国を意識しているんじゃないかと思う。そこに両院の違いの意味が一つあるんじゃないかと、私はきょうは感じました。
 だから、比例区で全国でやる人は残酷区だ、こう言われますけれども、それはそれなりに、国会議員としての一部の人たちは、全国を南から北まで全部一応、目で見、耳で聞いているというふうな人たちが国にいるということは、やはり大切なことじゃないかと思う、そういうふうに感じました。
高市小委員長 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。
 次回は、来る五月二十三日木曜日午前九時から小委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十分散会


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