衆議院

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第1号 平成15年2月13日(木曜日)

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本小委員会は平成十五年一月三十日(木曜日)憲法調査会において、設置することに決した。
一月三十日
 本小委員は会長の指名で、次のとおり選任された。
      伊藤 公介君    川崎 二郎君
      佐藤  勉君    杉浦 正健君
      谷川 和穗君    額賀福志郎君
      福井  照君    島   聡君
      末松 義規君    中川 正春君
      古川 元久君    斉藤 鉄夫君
      武山百合子君    山口 富男君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
一月三十日
 杉浦正健君が会長の指名で、小委員長に選任された。
平成十五年二月十三日(木曜日)
    午前九時開議
 出席小委員
   小委員長 杉浦 正健君
      伊藤 公介君    佐藤  勉君
      谷川 和穗君    額賀福志郎君
      福井  照君    島   聡君
      末松 義規君    中川 正春君
      古川 元久君    斉藤 鉄夫君
      武山百合子君    山口 富男君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
    …………………………………
   憲法調査会会長      中山 太郎君
   憲法調査会会長代理    仙谷 由人君
   参考人
   (岩手県知事)      増田 寛也君
   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君
    ―――――――――――――
二月十三日
 小委員井上喜一君同月六日委員辞任につき、その補欠として井上喜一君が会長の指名で小委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 統治機構のあり方に関する件(地方自治)


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     ――――◇―――――
杉浦小委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 先般、小委員長に選任されました杉浦正健でございます。
 小委員の皆様方の御協力をいただきまして、円満公正な委員会運営に努めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 統治機構のあり方に関する件、特に地方自治について調査を進めます。
 本日は、参考人として岩手県知事増田寛也君に御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、極めて御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 本日の議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人から地方自治、特に道州制、都道府県合併について御意見を四十分以内でお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと思います。
 御発言は着席のままでお願いいたします。
 それでは、増田参考人、よろしくお願いいたします。
増田参考人 おはようございます。岩手県知事の増田でございます。
 きょうは、この憲法調査会におきまして発言をいたします機会をいただきまして、光栄でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 お手元にレジュメをお配りいたしておりますので、順次、その順番に従いまして話を進めていきたいと思います。
 北東北三県、青森県、秋田県、岩手県で、最近かなり多くの広域的な連携事業を進めているところでございます。こうした事業でございますけれども、実は、この北東北三県というのは、人口や経済力などがかなり似通っているというところにまた連携が進んでいく素地があるのではないか、このようなことも考えております。
 例えば人口でございますが、青森県が今百四十七万人ほど、それから岩手県が百四十一万、秋田県が百二十万弱でございます。それから、県内総生産で見ますと、これは岩手県が四兆九千億ほど、それから青森県が四兆七千億ほど、秋田県が三兆九千億弱でございます。平成十二年の数値でございます。ということで、かなり三県が似通った人口や経済力がある。これでどこかの県が突出して大きいでこぼこがございますと、なかなか組み合わせとしても難しいところがあるかもしれませんが、三県かなり似通った経済力あるいは人口などがございます。
 しかし、そうはいいましても、従来は、これは全国どこの県もそうだと思いますが、やはり県の行政というのは東京の中央省庁ばかり見て行政をしておりましたので、余り、隣の県だということではございますが、隣県と協力して行政を行っていくというような、そういうことはございませんでした。
 実は、最近進めております連携事業も、平成九年に、三県の知事が集まりまして知事サミットを開催したわけでございます。テーマは観光ということで、第一回目の知事サミットを開催いたしました。観光事業については、三県で共通して取り組む課題が多いのではないかということで、この観光をテーマにサミットを開催したわけでございますが、これを皮切りにさまざまな連携事業が進んでいったというような状況でございます。
 実は、ちょうどそのころでございますが、岩手県で、福岡の方にいわゆる物産販売のアンテナショップをつくろうということを計画してございました。また、あわせて、福岡を中心とした九州の方からもっと観光客を誘致したいということで、その誘客も含めたいわゆる県外事務所を福岡の博多に設置しようということで計画をしておりましたけれども、岩手県の財政状況を考えると、年間大体五千万ぐらいは出せるだろう、それから職員も二人は現地に派遣できるだろうということで、物件を探したんです。そうしますと、裏通りの方のビルの七階か八階ぐらいにしか場所が借りられないということがございました。
 青森県さんが、ちょっと前に、もう既に同じような、少し裏の方でございましたが、事務所を設置しておりました。それから秋田県は、これからやはりそういうことを考えてもいいというような状況でございましたので、私も、両県の知事さんに話を持ちかけまして、ぜひここは三県で共同で設置をしましょうということを持ちかけたわけでございますが、三県の方でもすぐに快く引き受けていただいて、おかげさまで、博多の天神の一等地の、目抜き通りの一階のところに大変いい場所を借りることができました。三県の物産、特産品をすべてそろえておりますので、行きますと、私が見ましても大変迫力のあるアンテナショップになってございます。
 それから、九州あたりから北東北の方に観光で来られるお客さんは、岩手だけに来られるという方は非常に少なくて、やはりかなり旅行商品お金がかかりますので、せっかく岩手に来るのであれば青森の十和田湖の方もあわせて見ようとか、幾つかの県、複数県を連ねてお帰りになる方が多いわけでございますので、旅行会社にそうしたツアーのパッケージ商品を随分つくってもらいまして、それを向こうの方で発売しましたところ、お客さんにも大変好評でございます。
 これは、例えば仙台から観光客を北東北三県が誘致をする、あるいは東京から誘致をするというときは、やはりお互いの県が競争し合って、それでお客さんを誘致するんですが、九州、大変遠いところからというときには、むしろ協力した方が全体のパイが広がるのではないか、そんなことも基本的には考えていたわけでございます。そんなことで、三県やってみて、大変これはよかったなということが実感でございました。
 先ほど言いましたように、平成九年の知事サミットと申し上げましたが、このサミットのときに、サミットの成果として、福岡の事務所は三県統合してつくろうということをサミットの結論にして、実際にオープンしたのは、少し準備期間がございましたので、平成十一年の二月の初めにオープンをいたしたわけでございますが、これで私ども、三県で協力して行うことのよさというものを大変実感したわけでございます。その後、サミットのテーマを環境ですとか教育ですとか、いろいろ変えて毎年実施をしているわけでございますが、おかげさまで、随分三県の連携事業が進んできております。
 例えば、先ほど言いましたような事務所の関係でございますと、北海道にやはり三県で個別に事務所を出しておりましたが、昨年の四月にこれは一緒にいたしました。ことしの四月からは、大阪事務所、名古屋事務所も全部三県で一緒にしようということになっております。それから、大阪にはまた同じようなアンテナショップを三県共同で出して、関西方面に大々的なセールスをしようと思っております。
 それから、昨年の秋にソウルに海外事務所をつくりまして、韓国からの観光客を大幅に誘致したいと思っておりますが、これは北海道も入っていただいて、四道県でつくりまして大変好評でございます。北海道も入ったことでさらに迫力が増しまして、ソウルでオープンのときに、我々、現地に四道県の知事が行きまして、金大中大統領などにもお目にかかりまして随分宣伝をしたんですが、随分注目をされました。ことしの四月には、シンガポールの事務所もそういうことで四道県ということになっております。
 そのほか、科学技術、これは青少年の科学セミナーを三県で開催してございます。
 環境分野では、例えば小学校五年生に配付する環境副読本を三県共通で作成して配付しておりますし、子供環境サミットも三県持ち回りで毎年やっております。
 情報発信の分野では、みちのく夢ネットというもので物産情報、産業情報などを共同で提供してございます。
 観光分野は、今言いましたようなことがございますし、そのほか外国人観光客の誘致とか、受け入れ体制の整備などを三県共同で今考えております。
 農林水産分野では食農フォーラムを持ち回りで開催したり、あと、伝統文化の分野では、子供伝統芸能の、やはり三県で持ち回りでの開催をやったり、スポーツでは、剣道を初めとする武道などの一流選手、なかなか各県単位だと呼べないんですが、一流選手を三県で共同してお呼びして、子供たちに集まってもらっていろいろけいこをつけてもらったりということで、平成九年のサミットを皮切りとしたさまざまな成果が、レジュメに「二十事業以上」というふうに書いてございますけれども、大変広がっているということでございます。
 特に、最後のところで「産業廃棄物税」と書いてございますが、これは、昨年の十二月の三県の議会でそれぞれ全く同様の内容の産業廃棄物税の成立をお認めいただきました。それから、県外から廃棄物が持ち込まれるときの事前協議制と、それから経済的な負荷をかけて協力金をいただくという制度をあわせて組み入れてございますが、これも三県全く同じ条例で、議会の方でお認めをいただいて成立させていただいたところでございます。
 ここに「意義」というふうに書いてございますが、初めはそういうことで、スケールメリットの追求からこうした連携事業を始めたわけでございます。ちょうどそのときに五全総の方でも地域連携軸の展開を地域づくり戦略の一つにする、こんなようなことがあって、こうしたことも踏まえながら連携事業を始めたわけでございますが、なかなか経済状況も厳しい中で資源をもっと有効に生かしていく必要があるという問題意識もございましたし、そういうスケールメリットを生かして、地域の経済的、文化的な自立性を確保したい、各県がばらばらに対応していたのでは地域戦略が描きにくいところを共通の意識で切り開いていこう、こんなことでございます。
 そして、それを、後ほど申し上げますが、ただ単にスケールメリットだけではなくて、最近では、うまく三県で機能分担をしてそれでもっと全体を向上させていこう、そんな意識のところまで今進んできているところでございます。
 「実績積上げ重視」というふうに書いてございますが、余り難しいテーマに挑戦をしますと、やはり意見が食い違うこともありますし、今までお互いに県同士が協力するというのは余りないわけでございますので、できるだけ成功体験を積み上げていって、そして物事を考えていこうではないかと。やはり県民の皆さんとこうしたことを議論するにしても、実践の具体例がないとなかなか抽象的な話になりますので、そういう実績を積み上げていこうと。こんなことで始めているわけでございますが、住民の皆さんにメリットとかデメリットをお示ししながらというふうに思っていますが、やはり具体例で積み上げていきますと、議会などの議論でもいろいろわかりやすい議論ができるだろうというふうに思っております。
 それから、「今後の方向性」というところでございますが、ぜひこれからは、「地方のグランドデザイン」と書いてございますけれども、北東北三県の共通のグランドデザインをやはりつくるというところに進めていきたい。せっかくここまで個別の分野で連携事業が積み重なってきていますので、地方のグランドデザインをつくってみたい、こんなことを思っております。
 これは、実は今までほとんどなされていない作業でございまして、一昨年だったと思いますが、建設省と運輸省が一緒になって国土交通省になったので、その直後、三月だったと思います、扇大臣が仙台に来られまして、東北六県の知事が集まって、これからの社会インフラの整備の方向性について話をしたんです。
 そのときに、運輸省系統の港湾ですとか空港、鉄道、それからあと建設省の道路など全体を一枚の図面にいたしまして、しかもなお、東北全体のところに落として、十年前がこうだった、それから現在がこう、それから十年後はこうだという図面を出して、それをもとに議論したことがあるんです。いろいろ関係する人たちに聞くと、東北全体のそういうことを一枚の図面に落としてつくったというのは、実はそれが初めてだということでございまして、いかにそれまで東北全体でそういうことを議論するということがなされていなかったかということだと思います。
 全総など、いろいろ計画をつくるにしても、個別の県と中央省庁は、いろいろ中央省庁からまた御指導いただくわけでございますが、隣の県同士が、同じブロックであっても、お互いの機能を見ながら調整をするなどということは全く今まで実は行われていなかったわけでございまして、ぜひこうした地方のグランドデザインをかくところをやってみたいと思っております。
 そのほか、今計画しているもの、いろいろございます。
 これから資金調達も大変難しい段階に入ってまいりますが、そうした中で、地方債の共同発行をして共通の財源というものをこれから見出していくべきではないか。あるいは、電子入札への取り組みなどもこれから三県共同でやったらどうか。
 それから、これは機能分担の例だと思いますが、高度医療の分野で、秋田は脳血管の分野を県立病院が大変得意としてございますし、岩手の場合には循環器関係が大変得意な分野でございます。そういったことを機能分担してもいいんではないか、わざわざ東京まで来ていろいろ診療を受けるよりは、近いところでそういったことで機能分担すべきではないか。
 あるいは、行政のすべてのベースとなるような統計システムデータを統合したらどうか、また、職員も共通の意識を醸成するために共同研修したらどうか、そんなことまで出てきてございます。
 それから、できればそういったことを通じて、地域エゴに最もつながりやすい分野ではございますが、社会資本の機能分担、特に大規模な社会資本の機能分担や共同利用についてもこれからテーマとして検討していければなと思っております。
 また、国体など大規模イベントの共同開催も資源の有効活用に効果的ではないかなということを考えております。
 そんなことを三県でこれから進めていければと。
 後ほど申し上げますが、各県の領域というのは、実は明治二十三年以来、四十七の単位、ユニットでそのままずっと来ているわけでございますが、確かにいろいろな行政分野で手詰まり感のようなものを感ずる場合が多いわけでございます。知事の意識も大分最近変わってきているというのもここらにあるんではないかと思うわけでございますが、北海道東北知事会議でも、今、共通の行政テーマについて共通で取り組もうということで話を進めてございますので、北東北三県だけでなくて、北東北全体というところまで進んでいければなということも思っております。
 一番のところは現在の実践面でございますので、少し細かく詳しく申し上げましたが、要は、国で全国一律に取り組むというよりも、やはり地域の特色を出すべき分野というのが大変多いわけでございます。しかし、それにしても、各県単位ではどうも小さ過ぎて、数県共同でやるべきような行政課題がある。冒頭申し上げましたような観光などは、我々のところであれば、北国であって、冷涼な気候で、雪、温泉とか紅葉とか雄大な大自然というところが共通項でございますから、それを数県共同でアピールすれば大変大きなアピール効果がある。
 それから、産業廃棄物などを考えますと、現在は全国どこでも広域移動が原則でございますが、本来は、発生場所にできるだけ近いところで処理するのが理想なんです。しかし一方で、リサイクル産業が成立するためには、どうも各県ごとの規模でこの処理を考えていると、どうしてもうまくリサイクル産業が育たない。ですから、東北全体ぐらいの単位の中で処理を完結できるようなことを考えていけば不法投棄につながらないような処理ができるんではないか、こんなこともあって、行政規模、行政課題が大分変わってきているということを前提に、やはり我々の方も柔軟に考えていくべきというふうに思っております。
 二番からは簡潔に、地方自治についての基本的な考え方を申し上げたいと思うんです。
 私は、地方自治の考え方は、みずからのことはみずからが決める、自己決定、自己責任の原則にあるというふうに思っております。もちろん、制度がいろいろ整備されても、住民の自己決定、自己責任が貫徹されないと幾らいい制度をつくってもだめなわけでございまして、ここの点が大変重要である。
 それにしても、今、現在の制度は余りにも中央集権が強過ぎて、縦割りの弊害が各分野にいろいろ起こっている。「補完性の原理」というふうに書いてございますが、やはり基礎的自治体である市町村を中心として、身近な自治体から行政を構築していく。市町村でできるだけ多くのことを行って、できないことは県レベルで、そしてさらには国、こういうような考え方で制度を構築していく、これが原則であろうというふうに思うわけでございます。
 その際に重要なことは、「参加」「協働」「自立」というふうに書いてございますが、参加、住民の参加、最近、パブリックインボルブメントの制度など、住民参加のための手段も随分でき上がってきましたし、それから、NPO団体と行政との協働ということが意識されるようになってきました。こうしたことはこれからも大変必要なことでありまして、もっと大いに進めていくべきと思います。
 それから、大事なことは、受益と負担の制度が今非常に見えにくくなっておりまして、これがある種むだ遣いにもつながるということがございますので、現在の補助金システムなどは完全にこうした弊害を持っております。受益と負担ができるだけわかりやすいような形、先ほどの補完性の原理に戻るわけでございますが、そうしたことが大変大事である、キーワードであろうと思います。
 それから、「経済的自立が重要」というふうに書いてございますが、今、多くの行政の財源、県、市町村においては補助金や交付税に依存しているわけでございますが、これではやはり自前での主体的な判断ができません。できるだけそうした国からの補助金や交付税に頼らない制度をつくっていく。そのためには、自治体として経済的に自立している姿が本来の姿でございまして、自前の税収でできるだけ行政需要を賄っていくということ、そのために、経済が成り立ち得るような行政の範囲というものをできるだけやはり考えていくべきではないかと思います。
 少し話がそれますが、今考えられている国の経済特区制度などもぜひ中央省庁に柔軟に考えていただいて、これも自治体が経済活動を自立させていくための非常に欠かせないものでございまして、我が県が提案しているどぶろく特区も大分苦戦してございますが、そんなことをぜひ考えていただいて、できるだけ経済的自立を図るような、そういう単位で自治体も考えていかなければならない。もちろん最低限の調整は必要でございますので、水平的調整は必要でございます。そんなことを思っております。
 こういうことを考えますと、やはり国と地方、それから、地方の中でも県と市町村の役割分担を抜本的に見直す必要があるなというふうに思っておりまして、この際、上からいろいろ仕事を切り分けるのではなくて、下からの積み上げで整理をしていくということ。中央省庁、みずからの生き残りを図るためにいろいろな権限を温存するようなことがあるわけでございますが、ぜひ、こういう下から補完性の原理で積み上げていくということの観点で、まさしく住民の視線で抜本的見直しをすべきでありますし、そうした上で市町村中心の地域経営をしていくべきというふうに思っております。
 権限を市町村に移す、それから、必要なそれに見合った財源を移すということは大事だと思いますが、さらに私は人の問題も大事だと思っておりまして、岩手県では今、県の人材を大分市町村の方に出して、それで市町村の行政を行っております。以前、私どもの方で県の行政を外部のNPO団体とともに調べたところ、県の仕事の大体五〇%は今市町村に移してもいいのではないか、住民サービスがもっと向上するのではないかという結論も出てございまして、やはり市町村にできるだけ移していきたいというふうに思っております。
 そうした上で都道府県の役割というものを考えますと、ここに書いてございますように、一つは、そうした中でもまだ小規模として残るような小規模自治体の業務をどのように補完するのか、支援するのかという機能が残ると思いますし、それから、ここには書いてございませんが、もし仮に県がなくなって国と市町村ということになりますと、国と市町村が直結ではやはり、国の前では市町村というのはかなり充実強化されてもまだひ弱でございますので、中央支配が逆に強まるようなおそれがございますから、国と市町村の間での連絡調整機能というのはまだ必要であろうというふうに思います。
 一方で、やはりこれからもっともっと拡大しなければいけないのは広域的な課題への対応ということで、むしろここの部分が大変重要視されてくるだろうというふうに思うわけでございます。
 「近年における知事の意識の変化」というふうに書いてございます。
 最近、PHP研究所ですとか朝日新聞などの方で道州制や都道府県合併についての知事の意識を調査したアンケート調査がございますが、PHPの方を見てみますと、四十県のうちの十九県がこうした道州制なり合併について肯定的に考えておりますし、朝日新聞のアンケートを見ましても、四十七の都道府県のうち十三県が肯定的にとらえております。
 以前は、都道府県の合併とか道州制ということについては知事が大変抵抗感を示していたような時期があって、これは、道州制の内容が中央支配を強めるような内容の話もございましたので、それに対する抵抗ということもあったかもしれませんけれども、それにしても、こうした知事の意識の変化というのは現場から大変重要なシグナルが発せられているのではないかというふうにも思っております。
 「広域自治体に求められるもの」というふうに次に書いてございますが、こうして今社会情勢が変わってまいりますと、自治体が大きく広域的な課題への対応を迫られているということでございます。
 少し整理して申し上げますと、その背景にあるのは、ここに書いてございますように、少子高齢化、二〇〇七年からですか、人口が国全体として急激に減少していく、もう既に我々のような地域では人口減少が始まっているわけでございます。こうしたことがございますし、低経済成長、海外にどんどん企業が出ていっておりまして空洞化が生じてございます。もう既に海外との完全な分業体制で産業構造ができ上がっておりますし、国際化、情報化、それから日常生活圏の拡大、東北六県はすべての県が新幹線で結ばれるようなことになりました。それから、財政も大変破綻をしてきておりますので、公共サービスの一層の効率化ということが求められる。
 それから、「中央政府の劣化」とちょっと失礼な書き方をしてございますが、中央政府が余り頼りにならないと言うとおしかりをいただきますけれども、やはり地域主権を確立して、我々でしっかりとした行政をやっていく。経済外交のような分野については我々自身がもっといろいろ立ち振る舞いをすべきではないか、そんな意識もございます。こんなことが自治体が広域化を進めていっているような背景にあるというふうにも思っております。
 その中で、先ほども申し上げましたけれども、必要なことは、経済的な自立をしっかりと図るような、その中でできるだけ自己完結できるような、そういう自治体を目指すということでございます。
 実は、北東北三県でも、先ほど申し上げました県内総生産を足し合わせますとフィンランド並みぐらいの経済力がございますし、東北六県ですと、人口や面積からいうとオーストラリアぐらいでございますが、経済力ではそれよりも、一・七倍ぐらいだったかと思いますが、多い実力を持ってございます。そんなこともございますので、アメリカの州知事などもよく我が国に投資の促進プロモーションで参りますけれども、やはり日本のそれぞれの地域がもっともっと経済的な自立を果たすような、そういう単位というものを考えて、それで行政を展開していくということが大事ではないかと思います。
 それからもう一つは、「大胆な機能分担」ということでございまして、従来は、お互い隣同士の県が競争し合って、それで国全体としての力を伸ばしていくということでよかったのかもしれませんが、今はむしろ、産業の状況を見ましても、本当の競争相手は、中国にいたり、韓国にいたり、東南アジアにいたりするわけですから、隣県との関係で、協力をして、それで力をそうしたところと比べていく、中国などと比べていく時代だろうと私は思います。
 大学などの高等教育機関や各県で持っております試験研究機関、いろいろございますが、こうしたものなどももっとお互いに大胆な機能分担を行って、そしてその効力が発揮できるようにしていくべきではないか、こんなふうにも思います。
 それから、「財政の水平的調整はブロック単位で」というふうに書いてございます。それにしても、最終的な水平的調整機能というのは自治体間で残さなければいけないんですが、私は、四十七の県に分けて、それで今交付税で非常に事細かな調整をしていますが、これはちょっとやはり技術的にも非常に難しいし、透明性に欠けると。大まかな、大ぐくりのブロック単位であればそういった調整もかなり明快な基準で可能でありますから、しかも、そういった調整のときにお互いのブロック間同士のルールででき上がる、国の影響もできるだけ排除できるような、わかりやすい仕組みを構築できるんではないか。ですから、そういう水平調整の面でもブロック単位の方がはるかにやりやすいんではないかと思います。
 また、「国の仕事の大幅な移譲」と書いてございますけれども、やはり広域自治体としてこれから構築していくためにはこれが大前提でございまして、先ほど言いましたように、下から上に仕事の内容をいろいろ構築していくという観点で国の仕事を大幅に地方の方に移していく。課税自主権も含めた大胆な移譲を地方に行いまして、そして地域主権を確立していく。単なるスケールメリットの追求だけではなくて、やはりこうした大きな見直しを行った上で広域自治体というものを構成していくべきというふうに思います。
 「県単位でのフルセット主義」というふうに書いてございますが、どうしても、公選で選ばれる首長というのは、選んでいただいた人たちの福祉の向上のために最大限尽くす、そういう役割がございますので、フルセット志向というその考え方が実は経済社会のニーズに合致していないというようなことでございます。そういう場合が大変今多くなってきているわけでございますので、逆に言えば、フルセットが最低限成立するような有効な単位というのは何かという視点で、もう一度そのあたりの単位というのは考え直してもいいんではないか、こんな気がしているところでございます。
 最後に、「広域自治体の制度」ということでございまして、私も、学者の先生方ではございませんので、余りきちっとしたことを申し上げづらいんでございますが、ただ、言えることは、制度構築は、これは先ほど申し上げましたように、国、県、市町村の仕事を大幅に見直すということでございまして、根幹から見直すような仕事で、国家的な課題であろうというふうに思うんです。
 今、二〇〇五年を目標に市町村合併が進められておりますが、こうした都道府県のあり方については、そうした市町村の合併のすぐ後にまた出てくる問題でございますので、ぜひ早急な取り組みが必要であろうというふうに思います。その際には、全国一律の制度ということではなくて、いわゆる一国多制度のような発想で、柔軟な制度で考えてよろしいんではないか。今、北海道などはまさしく、もう既に道州制のはしりのようなことが制度としてもできる素地がございますが、一国多制度のような発想で考えていっていいんではないか。
 「住民との協働による制度設計」ということを書いてございますけれども、大変大きな制度改革につながることでございますから、ぜひ住民との協働というような、下から積み上げていくようなそういう視点を忘れずにやはりこれは考えていくべきではないか。
 憲法九十二条「地方自治の本旨」との関係で考えますと、多分、連邦制などは、もうこれは改憲の議論になりますから大変時間もかかりますし、また大きな話でございますが、九十二条の範囲の中でもでき上がることはいろいろあるわけでございます。特に、広域化することによって住民自治との関係がどうなるかという問題も一方でございますが、行政の性質によっては旧県単位の自治組織のようなもの、独立行政委員会などは、内部組織として、内部団体としてはそんなものを残す、そういう知恵の出し方もあるんではないかというふうに思います。いずれにしても、住民の視点に立った制度設計、そういう視点が大変大事ではないかと思います。
 それから、「連携、共同事業の実施による意識の醸成」ということで、今までの道州制や都道府県合併などの議論を見ますと、学問的に大変難しい議論でございまして、実は、先ほど言いましたように、県同士の連携の事業というのが現実にはほとんど行われておりましたので、どうも県民の皆さん方にもいまいちぴんとこないような議論でございました。全く共同意識のないところにはどうも有益な議論が生じませんので、そういった意味もあって、今まで私どもも実績をできるだけ積み上げるということで事業を進めてきたわけでございます。
 やはり大事なことは、知事同士でそういうことを積み上げてくるということも大事でございますが、それだけで走っても物事は成就しませんので、住民の皆さん方といろいろ議論をしていくということでございまして、連携事業を醸成することによってそういうことが少しでも有益な議論につながっていければというふうに思っております。
 最後に、今まで申し上げましたようなことをまとめて申し上げますと、現場で行政を執行している我々知事のいわば皮膚感覚のようなものとして、道州制あるいは都道府県合併など、現在の都道府県制のあり方について、知事の関心がやはり急激に高まっている。先ほどのアンケート調査の結果でもわかりますように、こうした道州制などの制度に肯定的な意見が非常にふえてきているというのは、これは現場から重要なシグナルが出ているんではないか、こんなふうに思われるわけでございます。
 これに対して多様な選択肢を用意すべきではないか。その上で、地域がそういった多様な選択肢を見て主体的に選べるような、そういう制度になれば大変いいなというふうに思います。憲法改正をせずに、九十二条の「地方自治の本旨」の中で手段を用意できる余地も大いにあるような気がいたしているところでございまして、ぜひこの点を制度構築の際にもお考えいただければと思うんです。
 もう一度、そういう道州制なり合併等、広域行政を導入するときの前提を少し整理してみますと、五点ほどございます。
 一つは、以前の道州制、最初に唱えられたときは中央集権の強化につながるような、国の出先機関の再編のような、そういう制度の考え方もございました。これには反対でございまして、基礎的自治体、市町村から仕事を積み上げていくような、そういう方向で考えていくべきではないか。
 二点目は、現在の国、県、市町村の役割を大幅にやはり見直す必要があるというふうに思います。
 三点目は、全国一律ではなくて、先ほど言いましたように、多様な選択肢の中から選べる、一国多制度につながるような中で、時間的にも、ある地域は先行してそういうものを選択している、またある地域は従来の中で行政を行っている、こういうことがあってもいいんではないかというふうに思います。
 それから四点目は、仕事の性格によって何らかの内部団体、独立行政委員会などのようなものについては、場合によっては旧県単位の自治組織を残すことを考える、そういう知恵も必要ではないかと思いますし、使いやすい、フレキシブルな制度をぜひ望みたいと思います。
 これからの議論にも、そうした意味で現場の声などを反映していただいて、さまざまな行政分野の実態を踏まえて、そしてまた、将来のこれからの国の姿、どうしたらそうした周辺諸国と経済的地域が自立を図っていけるのか、そんな観点で将来の行政の領域というものを決めていただければ、このように申し上げたいと思います。
 以上で私の方の意見の陳述は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
杉浦小委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
杉浦小委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。谷川和穗君。
谷川小委員 増田参考人にまずお礼を申し上げます。何かお聞きしますと、あしたから県議会が始まる、何と大変な日にお越しいただきました。しかも、きょうは朝の九時からという大変早い時間帯に、まことに恐縮でございます。
 また、今は、まさに実績積み上げ方式というのでしょうか、体験的な、体で実際に、みずから実験しながらというような感じでこの広域連携の実を着々と上げておられるというお話を聞いて、大変に感服もさせていただいたようなことでございます。
 ところで、私は、時間の関係もありますが、最後のところでちょっと触れられた、道州制それから都道府県の合併の問題について、ちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。
 私自身は自由民主党に所属しておる委員でございますけれども、自由民主党の中に道州制を実現する会というのがもう既につくられておりまして、実を申しますと、きょう小委員長をなすっておられまする杉浦正健先生が幹事長をやっておられて、そして、地方活性化についてという報告をまとめられております。その報告の中では、都道府県合併が進めば、重複行政、行政がいろいろ重なり合っていますが、重複行政の解消へつながる、これは究極の行政改革だというような述べ方になっておるのです。
 参考人に特にお尋ねしたいことは、統治機構を中心とした地方自治のあり方について、いただいたレジュメの中で、三番目の「広域自治体に求められるもの」として、広域化の背景には、日本が直面している、直接にぶつかり合っている国際化、情報化の問題がある、これによって国と地方のあり方が随分変わってきたんじゃないかという、この広域化の背景の中にちょっとこう指摘されている箇所があるのです。
 市場経済のボーダーレス化というものが始まって、それまで一国の、一つの国の中の、資本主義というのでしょうか、経済と簡単に言えばいいのか、国家というものはそういうものの言うならば守り主、守る、そういう機能を持っていたのが、ここへ来て、それを国民国家と呼んでいいのかもしれませんけれども、さらにその国家の上の、もう一つ上位の、国際的な、国家を超えた機能へ統合され始めてきた。EUの誕生などはまさにそれをあらわしていると思うのですが、そうした背景の中で、ヨーロッパの自治憲章が合意されている、これは一九八五年。
 ですから、一九八〇年代ぐらいからこっちへこうなって、世界全体がそういう方向になったために、明治以来、集権的行政システムあるいは縦割り行政の弊害打破といった、日本に特有の政策課題が地方分権、こういう形で議論しておった、これは事実そのとおりだと思うのです。しかし、地方分権という政策課題は、よくよく考えてみると、何も日本国内だけの話じゃなくて、一九八〇年代から今日は、グローバル化の進展とともに、先進諸国においては世界同時的に生じている課題だと思うのです。
 そこで、知事として、先ほどからのお話を聞きながら、現場を直接担当しておられる、リードしておられる知事さん方の会合の中で、特に北東三県のこの広域連携の中で、やはり、例えば地方財政一つ考えてみても、地域住民にかわってコントロールしてきたのは今まで国の中央政府だった、この中央政府のあり方について、国の関与のあり方、これは統治機構のあり方の問題として議論されてしかるべきだと、さっき一番最後にちょっとそのことについて触れられましたけれども。この三県で、二〇一〇年ですか、あるいは二〇一五年ぐらいまで、合体する、統合しちゃうんだというような話し合いがサミットでもなされたというようなこともお聞きしました。
 私は、特に最後のところでお尋ねしたいのは、先ほど知事は私がお尋ねしようとすることと違った角度の御発言をなさいましたが、憲法九十二条以下九十五条に至る第八章の「地方自治」のあの条項、現行の憲法のあの条項だけではどうもこういう時代的要請にこたえ切れないのじゃないだろうかというような議論が三知事のサミット協議の間のときにも出たのかどうか。あるいは、さっきちょっとお触れになったように、憲法のことはそのままにして、現在のいろいろな地方自治法その他の用意されている一つ一つの法律をそれぞれうまく使っていけば、これから先も道州制だとかあるいは合併という問題には余り問題なく進めるような形になるのか。どっちの方を中心に物を考えられたのか。それをお尋ねいたしたい、こう思います。
増田参考人 知事同士の話の中で、具体的な法律論議までは特にしてございませんが、恐らく、私の考え方ということで申し上げますと、具体的な、今の地方自治の本旨を規定してございます九十二条以下九十五条までの四条は、非常に抽象的な概念で書いてございます。これを読みこなすのはなかなか難しいのでございますが、ただ、地方自治についてそこで位置づけられている、現行憲法下でこうした位置づけがきちっとなされているというのは大変意味のあることだろうと思うのですけれども。
 その中で、私どもは、やれるものからいろいろ築き上げていくということは、やはり地方自治の本旨の枠の中でも随分やれることが多々あって、そして現実に、今お話がございましたとおり、特に経済的な面において県が果たしていく。相手国が、例えば中国の旧満州地域、東北地域といろいろな今、経済的な活動がございます。そういうところで民間活動をいろいろと支援する、後押しできるような余地が随分あるのではないか。ですから、それを今の仕組みの中でも最大限、我々は行政の立場から民間経済活動を支援していこう、それは現在の憲法下の中で十分にやれる範囲があるのではないか。
 恐らく、それをもっと個性を出していろいろと突き詰めていこうとなると、多分、連邦制のような形で、それぞれの地域がもっといろいろな権能を持って、それで相手の地域と交渉するといったようなことがあると思うのですが、ここは、実態から積み上げると、またそこまでの権限を持つということが理想かもしれませんが、恐らく制度論的には九十二条の範囲を超えるような、九十二条の考え方だけでなくて、憲法全体の中でいろいろと議論をすべき問題に行き着くので、そうすると、これは我々の方の感覚からすると、やはり非常に時間がかかる問題であろう、改憲に至る話でございますので。
 そういう思いがございまして、私どもの今の実力の中では、現行制度あるいは現行の憲法の枠内で、最大限使いやすい制度をぜひこの場で提示していただくなり提供していただくなりということがお願いでございます。一方で、今のそういったような、連邦制にもつながるような改憲のあり方というのは、これからもしそこまでいろいろなされるのであれば、大変私どもまた注目して拝見をしていきたいという気がいたしております。
 これは、三県の知事の中で余りそこまでの具体的な議論をしておりませんので、私の考えということにはなるかと思うのでございますけれども、申し上げさせていただきたいと思います。
谷川小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、中川正春君。
中川(正)小委員 民主党の中川正春でございます。
 きょうは、知事、お忙しい中ありがとうございました。広域連携について、非常に興味深く拝聴させていただきました。一度また温泉にでもゆっくりお邪魔をさせていただきたいというふうな気持ちになりました。
 民主党でも、具体的に地方分権のプロセスを政策として打ち出しておりまして、五年間で税財源を移譲していく、特に所得税中心に七%ぐらい移譲しながら、新しい再分配の機構というのをつくっていこうということ、あるいは、十年ぐらいで道州制に向けて集結していこうというような提案をさせていただいておりますが、その中で、先ほどの知事のイメージをもう少しはっきりとお尋ねさせていただきたいんです。
 道州制に持っていくというのは、いわゆる地方分権も含めて、国と基礎自治体あるいは道州、県というものに対する分権の流れというのは、非常に大きなコンセンサスに今なってきているんだろうと思います。ところが、具体的に、その中で道州とそれから基礎自治体の関係、このイメージがもう一つでき上がっていないんですね。
 先ほどの知事の御発言の中でも、市町村中心の地域経営、これは基礎自治体ということですが、ここを中心に持っていって、道州というのはどちらかというとそれの調整機能、いわゆる財政的な調整もありますし、それぞれの持っている地域の連携という中で調整をしていく、その程度の中間自治体、道州でいいじゃないかという考え方が一つ。
 もう一方で、逆に、連携していくだけじゃなくて、本来は国の持っている今の機構、権能、これを地域へ向いて移譲していくわけですから、その受け皿として、本来は道州というのが国のしているほとんどのことというのをやっていくという想定なんじゃないか。そうなると、基礎自治体よりも道州の方が一つの大きな権限と役割というのを果たしていく、こういうイメージがもう一つありますね。知事は、どちらを前提にしながら、この議論を今展開していただいていますか。
増田参考人 今、実績の積み上げで動いてきて、その中で試行錯誤をやっているような段階でございますので、すっきりと制度的になかなか整理できないところがございますが、考え方は、基礎的自治体からいろいろな仕事を積み上げていくということで、それで基礎的自治体が、できればできるだけ多くの仕事をそこでこなす。それが、先ほど言いましたようないわゆる経済的な自立ということを真に図るためには、その範囲ではやはり難しいところがあって、そういったもっと大きな規模で、現在の県を超えるような大きな規模でやることが一番効果的なものをそこの県の規模を超えるところに配置して、そして最後に国がやるべき、国でしかなし得ないようなことをやるということからいうと、やはり私らの考え方というのは、基礎的自治体に大変重きがある、それからの積み上げででき上がってくる制度ということだろうと思います。
 結果として、国の仕事をそういった道州のところに移すということも大変大事な視点ではございますが、考え方の方向性を下から積み上げておりますので、やはり私自身は、基礎的自治体を大変大事にしながら、まずそこの充実強化を図るということが議論の大前提ではないか、こんなように思っております。
中川(正)小委員 なるほど、ありがとうございました。
 もう一つお尋ねしたいのが、そうなると、先ほどもお話がありましたが、一国多制度といいますか、恐らく基礎的自治体も相当差が、差がというより多様性が出てくる。人口が三百万、四百万ぐらいの中核的な都市を抱える自治体と、どれだけ広域的にくっついても四、五万ぐらいにしかならないような基礎自治体とというふうなことだと思うのですね。その多様性の中でどのように権限というのを整理しながらやっていくか、今そんなイメージだと思うのですが。
 その中で、私も感じているのは、特に道州で知事の権限、あるいは市町村でいうと市長、首長の権限が非常に大きいですね。普通これは大統領制で、憲法の立場でいくと九十三条の2というところで、団体の長というのは住民が直接これを選挙する、そういう規定の中でなされているということでありますので、大統領制。
 しかし、考えようによっては、この多様性の中で、もっとさまざまな統治機構というのを考えていってもいいんじゃないか。ヨーロッパやアメリカ、先進国を見ていると、地方分権が進んでいる、あるいは連邦制というのをとっているところはさまざまにあるんですよね、その統治形態が、カウンシル制度だとかあるいはシティーマネジャーを導入するとか。議会のあり方も含めてそういう多様性があってもいいんじゃないかな、画一的にやっていくということ自体が、そういう意味ではまた金太郎あめみたいなものをつくっていくんじゃないかな、何かそんな気持ちが今しているんですけれども、知事は現場でこれはどういうふうに受けとめておられますか。
増田参考人 首長の権限というのは、やはり大変強いものがあるというふうに思っております。これに対して大変重要なことは、やはり議会がそれに抗するだけのしっかりとした機能を発揮していくということと、それからもう一つは、さまざまな独立の行政委員会がございますけれども、それがかなり今形骸化してございますので、そうした独立行政委員会が本来の機能を発揮できるように、やはりこのあり方も十分考えていかなければならない。
 先ほど少し申し上げたんですが、実はこういった道州制を考えていくときに、例えば独立行政委員会のようなものは、住民の視点に立って、住民と大変身近な感覚で執行機関を監視していくという、この緊張関係をやはり築いていく必要がございます。
 そういう大きな自治体の制度を構築していく上でも、やはり今言ったような機能を持っている、そういう組織のところは、これは大きな、例えば道州のような制度とは別に、今の例えば旧県単位といいますか、もとの県単位で公安委員会なり教育委員会等が組織されておりますが、それで住民との密接な関係を築き上げているわけですが、そういう執行機関を監視して緊張関係をその中で植えつけていくようなものは、例えば旧単位のままの組織を別に仕組むとか、まさしく今委員がお話しになったようなかなり柔軟な仕組みにして、そして首長のそうした強くなる権限を一方で抑制する、牽制をしていく、こんな柔軟な組織のあり方というのは考えていく必要があるというふうに思っております。
中川(正)小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)小委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 きょうは大変ありがとうございました。早速質問に入らせていただきます。
 まず最初に、このレジュメ3の最後の黒ポツの御説明で「県単位でのフルセットからの脱却」というところで、公選で選ばれた首長として住民の皆さんの福祉を考えなければならないけれども、必ずしもそれが経済合理性に合致しないというお話がございました。
 この点についてもう少しお話を伺いたいということと、これに関連して、そうしますと、そのフルセットが合理的に完結する最小単位、これが道州になるべきだ、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。まず、その点をお伺いいたします。
増田参考人 実は、これは一つの例でございますが、東北には空港が大変多うございまして、青森も二つ、秋田も二つ、山形も二つございます。一番大きな空港は仙台空港でございますが、あと青森空港、それから福島空港も今三千メーターの滑走路を持って、大変大きな空港でございます。
 私は、こういった東北地域で考えますと、これは一つの例でございますが、やはり各県とも大変県民の皆さんから空港に対しての要望、どうしても遠隔地でございますので、高速交通機関へのアクセスということを大変要望されますので、ぜひすばらしい空港をそれぞれ選んでいただいた県民のために整備したいというふうに思って、それぞれが空港整備に大変力を挙げているわけでございます。
 しかし、全体的に考えますと、一つの大変大きな基幹空港と、それから各地域の中核的な空港と、もう少し、空港財源も大変今厳しい中で、それぞれのあり方を考えて、私は、最低限は二千五百メーターの滑走路を最低そろえればいいと思うんです。それ以上のものはできるだけ集中して、そして遠距離についてはそこにできるだけ発着の便数を多くして、あとは利用される方のアクセスをできるだけよくして、広範囲からお客を調える、そんなあり方をこれから真剣に考えていく。お隣の韓国や中国あたりはそれぞれの県から行けばいいと思うんです。そんなことをできるだけ考えていくことが、東北全体としての経済的な自立を図っていく上での大変重要な戦略ではないか。
 ですから、どうしてもフルセット、それぞれの知事はやはり要求されるんです。そしてまたそれに全力を挙げるというのがやはり一番大事な役割だと思うんですが、なかなかそこを、公選で選ばれている首長というのはやはり抜けがたいところがございまして、自分の空港よりも向こうの方をよくするということのインセンティブがなかなか働かないので、むしろそういった現在の経済合理性を考えたそういう単位ということ、これは、独立した自治体ということを考える上で、やはり経済的な自立というのは大変重要な要素でございますので、そういった意味で、経済的自立が図られるようなそういう行政の単位というものをぜひ考えて、そして行政体を構成していくということが大変大事ではないか。明治二十三年以来の同じようなくくりでずっと来てございますので、それをここでもう一度考え直す必要があるのではないか、そんなふうに思っております。
斉藤(鉄)小委員 次に教育ということなんですけれども、昨年末も義務教育の国庫負担について大変な議論がございました。その議論の本質は、全国一律、ある一定以上の質の教育を受ける権利は日本国民としてだれもが持っているんだ、それを国として保障すべきだという議論と、欧米に見られるように、教育はもう基礎自治体なりもう少し大きな自治体に任せよう、アメリカ等はもうタウンシップに全部任されているわけですけれども、こういう議論がございました。
 道州制の議論の中で教育をどうするか、一番大きな議論のポイントになるかと思うんですが、この点についての知事のお考えをお聞かせください。
増田参考人 教育の分野につきましては、大変それぞれの地方の特色をもっと取り上げて、そして実施をすべき分野だというふうに私も思います。ここには経済的な合理性といったようなことよりも、やはり地域の特色をうんと生かしていく、そういう分野だと思いまして、先ほど申し上げましたように、これは、今教育委員会が教育については深くかかわっているわけでございますが、そうした教育委員会のあり方、有効な機能の発揮ということがまた別の課題としてはございますが、それはそれとしても、こうした教育委員会のような独立行政委員会のあり方については、私は少し、こうした自治体のくくりとは別に考える余地があるんではないか。
 先ほど申し上げましたのは、例えば公安委員会などもそうかもしれません。それから、教育委員会あるいは監査の関係ですとか、こうしたものについては、やはり行政の質が少しほかとは違いますので、違う取り扱いを可能なような仕組みとして、それでそれをうまく地域が例えば選択できるような、そんな仕組みもうまく考えていくことが肝要ではないかというふうに思っております。
斉藤(鉄)小委員 最後に、ちょっと本旨から外れるかもしれませんが、私は、私の選挙区は比例区でございまして、具体的には中国ブロック比例区なんですけれども、小選挙区で出ておりませんので、中国五県を歩いております。
 そうしますと、各県をまたぐ大きな課題にも直面をして、もう少し大きな自治体、道州制というものの必要性も感じたりしているんです。ある意味で、今のブロックというのが、現実には衆議院の比例区の区割りに利用されているということぐらいしかないわけですけれども、この衆議院の比例ブロックと道州制ということについて、ちょっと突拍子もない質問かもしれませんけれども、そういう議員の活用も含めて、どのように感じていらっしゃるか、最後にお伺いしたいと思います。
増田参考人 私ども行政を展開しているときには、先ほど申し上げましたように、地域の住民の皆さんとのいろいろな積み上げがございますので、やはり地域だけにどうしても目が偏りがちでございます。比例の選挙区から出ておられる各議員の先生方は、やはり大局的な観点から全体を眺め渡して、それでどこか全体にバランスが欠けることがないのかどうかといったようなことを目配りするような立場におられるわけでございますので、まさしくそうした広域的な観点から我々も行政ができればいいんですが、むしろそういった我々の足りない、不足しているところを議会の立場からいろいろ補っていただく、あるいは厳しく見ていただくというようなことでいきますと、やはり行政も展開も大変いい方向に行くのではないか、こんなふうに思います。
 やはりこういった行政の方の立場で私もいろいろ申し上げていますので、それを、執行監督する議会の方の環境をこれからどうするかというまた別の大変大きな問題もあるかと思いますので、余りそこはまだ深く考えてございませんが、ぜひまた議会のお立場で、それに沿った、機能の充実した、また議会制のあり方などについてもいろいろお考えいただければ、こんなふうに思います。
斉藤(鉄)小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、武山百合子君。
武山小委員 自由党の武山百合子です。きょうはどうもありがとうございます。
 まず最初に、明治以来の制度にやはり踏み込まなければいけないんじゃないかということですけれども、いわゆる地方自治の中で、今まで皆さん、日本国民が、今のままではだめだということを意識としてはわかっておるわけですけれども、なぜ中央省庁ばかり見て、中央集権国家としてこのように来たのか、反省も込めて、その辺のお考えを聞きたいと思います。
増田参考人 やはり一番大きな原因は、財政的に国に握られている、この部分が大変大きかったと思います。
 御承知のとおり、三割自治というふうに呼ばれているわけでございますが、金をできるだけ多く工面して、そしていい行政をやりたい、こういう考え方で戦後ずっと来ておりましたものですから、私どもも、それから県庁の職員も、少しでも地域に有利な事業、制度を持ってくる、導入して、そして現実に我々の地域でそうした事業を実施していく、それがまさしく県民の利益にもつながる、こんな意識でずっと来たわけでございます。
 実は、補助金の制度などがそういう仕組みででき上がっていたわけでございますが、これには錯覚がありまして、結局それは我々の税金から全部出ているわけでございますので、本来はもっと自由に我々が使えるような、そういう制度であればもっと使い道を真剣に考えたのかもしれませんけれども、やや、ほかの県との競争ということもあって、地域に導入するには無理なような制度になっていたとしても、むしろ地域の実情を制度の方に合わせてでも財源確保に走っていった、その繰り返しで、それがまた首長などの評価にもつながるといった面もございましたものですから。
 反省も込めてのお話ということで御質問ございましたのですが、我々の至らなさも十分あるのでございますけれども、地域住民から期待されていた、そういう役割を最大限果たすことが我々にとっての課せられた使命であろうということで、やはり財源を多く国に握られたことが今言ったような結果につながってきたのではないか、こんなふうに思っております。
武山小委員 それから、先ほど斉藤議員の方からもお話がありましたけれども、教育についてちょっとお聞きしたいと思います。
 県が教員を採用していますよね。それで、実際に教育長は首長が任命しておりますよね。その場合、各市町村が任命するという教員の、すなわち自分の地域にどんな教員が欲しいかという地域の特性をとらえた歴史、伝統文化のもとにやはり地域というのは成り立っておると思うんですよね。そういう意味で、地域が教員を採用するということに対しての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
増田参考人 今お話ございましたとおり、教員の採用、県の方でこれをやっているわけでございますが、本来、教育というのは地域に大変密接したものでございますので、制度をこれから大胆にもし変えていくということであれば、まずそうした教育を地域にあってどういうふうに行っていくのか、そういう確固たる方針を備えたまず校長先生、ここが大変大事かと思います。
 校長先生がどういう教育方針を持っているのか、そして地域で、その学校でどういう教育をしていくのかということを、しっかりした考え方を地域に開陳して、それによって校長先生が選ばれていく。その校長先生が多くの権限を持って、自分の考え方に沿った教員をチームとして自分で集めていくだけの、本来はそういう権能を校長先生に与えて、それを全体で地域の皆さん方が監視していくぐらいの、そういう仕組みをつくり上げて、そして本当に地域に根差した教育をしていくということがこれからの制度のあり方としては考えられるんではないか。
 もちろんそのときに、義務教育ですから、やはり教育内容についてのいろいろな統一といいましょうか、そういったことも水準を確保するということも大変大事なことでございますが、今はそうした校長先生の権限というのも大変不確かなところもございますし、もっと教員の採用の抜本的な考え方を変えるということ、どこまで踏み込むかということがございますが、今言ったようなところまで踏み込めれば、制度として、地域にオープンにしていく必要があると思いますけれども、そうすれば大変地域に責任のある教育チームができ上がって、そして地域に根差した教育ができるんではないか、こんなふうに思います。
武山小委員 私は、中選挙区時代、十年前ですけれども、初めて選挙に出たときに、百二十六万という中選挙区だったんですね。秋田が百二十万ということで、私の中選挙区くらいの広さなわけですね。私、埼玉出身なものですから、埼玉県は七百万以上いるわけなんですね。ですから、物すごい格差ですよね、県によっても。
 先ほど、県の仕事の半分は市町村に移すことができるということで、市町村に移すことができるような主な仕事をちょっと幾つか列挙していただきたいと思います。
増田参考人 民間のNPO団体といろいろ県の仕事を精査してやったのでございますが、例えば、これは岩手の特異な事情かもしれませんが、よく有害駆除で、ツキノワグマがいろいろ里に出てきまして、それを人命に危害が生ずるので撃ち殺してもいいかどうかという許可などは、今、制度上は県がこれを判断することになっております。そんなような、かなり身近な行政でございますが、一方で、自然保護との関係で、市町村ごとではなくて全県的な観点から見る必要があるということで、県自身で判断することになっているんですけれども、そういったものはできるだけむしろもう市町村の方に移して、市町村の現場で判断できる部分があるんではないかとか、今やっております身近なそうした環境行政の分野、それから保健、医療、福祉などの分野でも、県で今行っておりますような仕事の中にはかなり市町村に移せるものが多いと思います。
 それから、これは今大変深刻な問題でございますが、青森県境との間に日本一の産業廃棄物の不法投棄の問題がございます。これは東北各県でも大変ふえている分野でございますが、これも産業廃棄物行政というのは県が行うことになってございますが、監視をするような業務、それから、処理場にいろいろ立ち入りをして、そして本当に適正に処理が行われているかどうかというのは県が二十四時間見るのはなかなか大変でございますので、身近な市町村の方にできるだけ移した方がいいんではないかというふうに思っておりますが、実は、なかなか制度的にはやりにくい部分がございまして、各県工夫して市町村職員と併任の身分なんかにしております。
 ことしの四月から、私どもの県では、いろいろ法律論はあるんですけれども、自治法の特例を使って思い切って県の仕事を市町村の方に移す、ただし県にもそうした権限を留保するような、ちょっと綱渡り的なことをやって、市町村の方にもそうした仕事に携わっていただくということにしてございます。
 今申し上げましたような分野の仕事などはもっと市町村にも役割を担っていただいて、そして仕事を構成していった方がはるかに実効性が上がるんではないか、こんなふうに思っております。
武山小委員 もう一つ、最後になるかと思いますけれども、先ほど、経済的な自立ということで、どんなことを、わかりやすく、幾つか列挙していただけたらと思います。
増田参考人 例えば、私どもの方では、農産物それから海産物、一次産業が大変重要な県でございますが、そうしたものをどこにセールスするかというのが大変重要でございます。
 今は中国から大変安い野菜それからワカメなどを初めとする海産物が入ってきておりまして、生産農家、漁家ともども大変苦労しているわけでございますが、ワカメなどは、実は我々の栽培技術を学んで三陸産のワカメを向こうで栽培しておりますので、品質は非常に向こうと似通っている。ただ、労働コストが安いので、大変向こうの方が安価だということがございます。衛生上の問題などがございますので、そこでは差別化できるのでございますが、それにしても大変我々苦労しているんです。
 一方で、中国の内陸奥地の方も大分改革・開放で所得が上がってまいりました。そちらの方はワカメを例えば食べるという食習慣、食生活がまだほとんどないのでございますが、今そちらの方にだんだんにそうした食生活が浸透しつつあるやに聞いております。それから、あと、大連を初めとする中国沿岸の河口の人たちも、あちらもまた一つの大きなマーケットとして開拓をしていこうという気になってございます。
 ですから、我々も、中国から来るものについて防御線を張り、一方的に受け身の態勢になるだけではなくて、やはりこの労働コストの差というのはなかなか解消できませんが、内陸奥地も大分所得水準が上がってきておるものですから、そちらの方に対して一大セールスプロモーションをこれからかけていって、そして、我々の地域でやはりそういった一次産業がきちっと成り立つような、そういう仕組みづくりをしたい。そのときには、岩手県だけというよりも、やはり、そういった同じようなものをいろいろつくっております青森とか宮城とか、そういうところと共同して、それで向こうへの輸出戦略などをしっかりと立てていく、それがまさしく経済的な一つの地域の外交のあり方ではないかというふうに思っております。
 向こうの方にセールスに行きましても、岩手だけでやっても非常に力が弱いわけでございますが、各県共同でセールスをする、あるいは拠点をつくるということは大変有効でございますし、もっとそういう地域が経済的にも自立する上でのまとまりというものを広範囲に広げていく必要があるんではないかというふうに思います。
武山小委員 終わります。どうもありがとうございます。
杉浦小委員長 次に、山口富男君。
山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。
 私は、きょうのお話を地方政治のあり方をめぐる具体的取り組み、提案、そして現場からのシグナルとして受けとめました。やはり、三県の広域連携の問題でも、それから広域自治体の制度設計の問題でも、基本は憲法が定めた地方自治の本旨にのっとって現状を改革することだと思うんです。その点は、増田参考人がおっしゃった九十二条の地方自治の本旨が大事になるということだと思うんです。
 初めにお尋ねしたいのは、増田参考人は、知事になられる前は建設省にお勤めだったわけですけれども、その時代に考えていました地方自治をめぐる問題、それから、知事になられて行政に携わっていく中で考えられた地方自治の問題、そこに何か変化や発展があるのか。例えば、知事になる前はこんなことが起きているとは思わなかったとか、この点は認識を改めたとか、そういう話があればちょっとお聞かせ願いたいんです。
増田参考人 知事になりまして、現場を知る機会が格段にふえました。現場を見てそこで物事を考えるという機会が大変ふえました。やはり、現場というのは刻々変わっているものでございまして、私が知事になりまして八年経過をしたわけでございますが、この八年間においても産業の盛衰というのは大変激しいものがございます。
 ですから、中央省庁で物事を考えますと、どうしても全国、全体を見て、また公平な立場で行政を展開しなければならない。また、制度をつくるには、そういったアンバランスがないようにということで、大分時間をかけて、いわば精緻にというか、我々から見ると使い勝手の悪いというような仕組みをどうしてもつくるものですから、やはり現場の我々から見ると、どうしてこれがこの制度の中で通らないんだろうという思いもあるのと同時に、どうせ言ったってなかなかそういうことは通らないんであれば、むしろ現場の姿を少しでもそっちに合わせるように曲げていってしまおう、むしろそのくらいのことも考えるぐらいになってしまっていくものでございます。
 それは、やはり現場に来て初めてわかる感覚のようなものでございまして、実は私も、今お話ございましたように、建設省に長くおりましたので、その間に別の地方自治体にも長い間出ていたときがございますが、そのときもその分野についてはそんなことを感じたこともございます。
 しかし、知事になりましてからは、余計、全部がやはりそういう形で、中央省庁の規制が隅々まで行き渡っていると同時に、それを裏打ちするような財源的な面がどうしても縛られるものですから、そういうこともありまして、県の立場にある知事としては、我々自身が市町村に対して同じような過ちを繰り返してはいけないなと思って、今、岩手県で市町村への補助金などはできるだけ統合いたしまして、総合補助金という形で、これも補助制度がいいかどうか議論は別にあるにしても、総合補助金ということで、使途を特定しないような形で、市町村の発意でお使いいただけるような補助金制度をつくって使っていただいているわけでございます。
 何かやはりそういうようなことをしないと、せっかく、金では解決できないような市町村の熱意だとか、それから意欲ですとか工夫なども押し殺してしまうようなことになるんではないか、こんなことを心配してございまして、やはりそういったことが大変私は大事かなということを実感しているところでございます。
山口(富)小委員 今のお話を聞きまして、私は、あるテレビドラマで、事件は現場で起きているという場面を思わず思い出しました。
 それで、関連して二つお尋ねしたいんです。
 一つは、広域連携にかかわる問題なんですけれども、昨年の八月に、知事、御存じだと思いますが、一関で生後八カ月に満たないお子さんが小児科医にかかれずに亡くなるという痛ましい事故、事件がありました。私、昨日、御両親と一緒に厚生労働省に小児救急医療の問題で改善を図るように申し入れに行ったんですけれども、先ほど、今後の方向性の問題として、高度医療の問題については三県での役割分担を考えてみたいというお話がありました。この小児医療、救急医療の問題では、県の責任やそれから国との連携の問題、こういうところはどんな構想をお持ちなんですか。
増田参考人 昨年の八月の事件、大変痛ましい事件でございましたけれども、こうした医療体制、特に小児、産婦人科は、大変お医者さんが今不足をしてございますので、また、制度的にもいろいろ見直していただかなければならないところがあると思います。
 国との関係で申し上げますと、やはり小児科医の先生方が本当に安心して働けるような診療報酬から何から、すべての面において充実した制度にしていただかないと、これからのそうした少子化時代の医療体制の充実確保というのは大変難しくなってくる部分があるんではないかというふうに思いますし、それから、あと、地域での医療の関係で申し上げますと、こうした小児医療の中で現実にお医者さんが大変不足しているようなところを、地域全体のネットワークでできるだけそこを補っていくということが大事だろうと思います。
 この問題については、今一関という地域で起きた問題でございますけれども、その地域の中だけでお医者さんをどうしても探すという、そのことでやはり現実には間に合わなかったわけでございますが、今はもう隣県、隣の県域なりあるいは場合によっては盛岡まで、そういったときはすぐに子供さんを、患者さんを運んできて、そして小児科医の先生の診察を受けるような、できるだけ隣同士の県域とのつながりを大事にしていくですとか、それから、でき得れば、お医者さんの小児輪番制のようなものも構築するとか、そういった充実した制度が必要だろうというふうに思っております。
 岩手県内においては輪番制が構築できるところも極めて限られているという問題もございまして、そこは、例えば一関地域は宮城県北と極めて隣接しているところでございまして、その宮城県北ですとかそういった県境を越えての救急医療のあり方、そういったことをもっとスムーズにしよう、これは防災なども同じでございますが、スムーズにしようということで今いろいろ話し合いが行われております。
 できるだけ自県域から隣県まで広げたネットワークをつくることによって、そういった現実のお医者さんの不足を補っていく、そういう方向性で今物事を考えているところでございます。
山口(富)小委員 時間が限られていますので、最後にまとめて二点お尋ねしたいんです。
 一つは、参考人が強調されました財源の問題なんですね。いわゆる仕事に応じた財源の大幅移譲がどうしても必要になるわけですけれども、岩手県のホームページを見ましたら、県の財政状況というのは、今自主財源が三四・二で、これに対して依存財源が六五・八なんですね。この問題で、先ほど課税自主権のお話をされましたけれども、財源の大幅移譲の問題で、どういう展望や道筋を描いているのかを一点お尋ねしたいんです。
 それからもう一点は、今の市町村合併をめぐる問題なんですけれども、きょうは下からの積み上げというものが非常に大事なんだというお話があって、私もそうだと思うんです、地方政治の場合は。これに対して、今、この二月にも全国町村の大会が開かれるようですけれども、特に西尾私案などに対しては非常に批判の声が強い。二月七日に全国町村長会議が開かれたんですけれども、それを見ますと、町村の自己決定権を踏みにじり住民自治を否定する以外の何物でもないという批判が起きているんですね。それから、安原会長のあいさつによると、この西尾私案への反対や批判の意見書を採択した町村議会が約千二百あるというんです。
 こういう問題、地方自治をめぐる一つの対立になっているわけですけれども、これについてはどういうふうにごらんになるのか。
 この二点、済みません、時間がありませんが、よろしくお願いいたします。
増田参考人 財源の関係でございますが、私は、当面の目標を、国とそれから地方を、先ほどの、うちでいいますと三五%弱でございますが、そういった自主財源を、ぜひ一対一、五〇%までは第一目標として高める、それに沿った形での制度設計をぜひお願いしたいなというふうに思っております。
 国の財源をどういうふうに振りかえるのか、それから、それに伴って補助金はどういうふうに下げていくのかといったような問題はございますけれども、やはりまずは、ステップとしては一対一を目標にして、ぜひもっと我々の自主性が発揮できるような制度にしていただければと思います。
 それから、二点目の市町村の合併に伴うあの西尾私案でございますが、人口でこういうふうに一律に切るというのはなかなかどうかなというふうに私は思っておりまして、一番大事なことは、確かに今市町村の財政も大変厳しいわけでございますが、深刻なのはむしろ人材といいましょうか、市町村も今一人何役で役場の人たちが仕事をしてございますので、ITの専門家ですとか男女共同参画の分野ですとか環境分野などは大変人が足りません。これをもっと実際には有為な人材をもって、それで行政をしていただきたいわけで、そのためにはやはりそれなりの規模の市町村でなければ、そういう人材、専門家は確保できませんので、そういった面で市町村の皆さん方にも一つの合併の道筋というのは大事かというふうに思って、県でもいろいろ支援してございますが、それでも限度がありますので、そんなことを思っているわけでございます。
 ただ、小さな市町村でも自立に向けて随分努力しているところもございますし、人口で一万人以下とか八千人以下とか、余りそういう形で切るのではなくて、もっとその市町村の努力なども見ながら、結局はどういう形で住民の皆さんが割り切るかという問題でもあろうかと思いますので、今言ったような人材の確保などについて市町村は大分心配な部分がございますので、そういったことをもっと充実するための何か手だて、今財政的なあめばかりが強調されているのでございますが、そうでない部分をもっと国でも考えるべきではないかというふうに思います。
山口(富)小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 増田参考人、お休みをとらなくてよろしゅうございますか。
増田参考人 私は結構でございます。
杉浦小委員長 そうですか。
 次に、金子哲夫君。
金子(哲)小委員 社会民主党・市民連合の金子です。きょうは、増田参考人の貴重な御意見、ありがとうございました。
 憲法の中に地方自治が、四条でありますけれども、明確に位置づけられていることについての意味ということも含めてお話しになりましたけれども、その点については、これから、地方分権ということが盛んに言われている時代にあって、地方自治というものの重要性というのがより増しているのではないかというふうに思っております。
 きょうお聞きをしたいのは町村合併にかかわる問題なんです。
 知事は、最初の時間随分長く、今三県での広域連携への取り組みということで、さまざまな例をお話しいただきまして、随分といろいろな協議会、そして具体的な事業を進めておられるというふうなことを今お聞きしたんですけれども、現実の町村合併の場合には、それからまた、下からの上への積み上げということもお話しになったんですけれども、そういうケースもありますけれども、今、どうも中央の指導が強く、財源問題も含めて、実はここでも財源問題が、特例公債が発行できるとか、そういう形での合併論議が進んでいる。
 それで、広島県も割合合併論議は進んでいる方なんですけれども、実は、この地域は早く合併論議が進むのではないかというふうに思っていたところが、なかなかうまく進んでいないのは、基本的には、やはり従来からそういう広域的な論議がほとんどされていなかった。それから、今、財源の問題だけで論議がされて、住民に対して、メリット、デメリットも含めて、住民の中での論議ということが余り進んでいない。結局、具体的なことがわかり出すと、どうもおかしいんじゃないかということで、住民の側からいろいろ意見が出て反対が起こってくる。
 そうしてまいりますと、都道府県の広域の問題もそうですけれども、やはり日常的な広域の中での連携というものがないと、合併論議を進めていくというのは、今の合併論議というのは、結局同じ轍をまた踏んでいるのではないかというふうな思いを持っているんですけれども、参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
    〔小委員長退席、伊藤(公)小委員長代理着席〕
増田参考人 我々ができるだけ実績を今積み上げていこうとしておりますのは、やはり住民の皆さん方とのこうした問題についての論議が大変重要なんでございますが、抽象論にどうしても陥ってしまうと、ある種学問的なといいましょうか、学者の先生方がずっと昔からやられているような議論になってしまって大変難しくなりますし、メリット、デメリットも大変見にくいところがある。私は、県レベルにしても市町村レベルにしても、従来、何のつながりもなかったところで、ある日突然一緒になったらどうかとかいうことは、やはり難しいと思いますね。
 やはり従来からいろいろな実績があって初めてそうした機運というのもだんだん醸成をされてくるわけでございますので、今都道府県のあり方を考えるとき、我々も住民の皆さんといろいろこれからまた腹蔵なく議論をしていかなければならないというふうに思いますが、まだそこの部分は非常に足りないというふうに私自身思っております。それはやはり、今はいろいろな分野で実績を見て、そのいろいろな分野で実施をするについては、十分地元の人たちといろいろな議論をしながら、議会で予算を認めていただきながら実績を積み上げてきているわけですが、それをやはりいろいろするのは、まず大変大事な時期。
 そうしたことを踏まえた上で、これからどういう制度をそれに合った形でつくっていったらいいかということは、これからやはり考えていく次のステップだ、こんな思いで今まで実績をいろいろと積み上げてきたところでございます。
金子(哲)小委員 先ほど財源の問題が出てまいりましたけれども、私も実は、今の広域合併の市町村合併を見ますと、先ほど参考人のお話にもありましたように、一方で、背景として、少子化、高齢化という人口減少ということが指摘をされておりますけれども、現実、多くのところで広域合併をするけれども、そもそも過疎化が進み過ぎて人口はそんなにふえないという問題が実際にはあると思うんですね。
 ところが実際、一方で、広域化をすることによって面積的には広域になる、そういうところに限って地域の面積も広くなるというようなことが現実の問題としてあると思うんです。そして、しかも財政上の問題も、高齢化が進めば、例えば所得税の問題だってそうでありますけれども、財源そのものが本当に、そういうところに限って、自主財源、今一対一のお話もありましたけれども、財源が本当に確保できるのだろうか。むしろ、そういう福祉面から考えれば支出は多くなるけれども。
 そういった財源について、我々も考えなきゃいけないことですけれども、知事自身が、今、県の自主財源が一対一になるようにというお話がありましたが、例えば市町村レベルでもそのようにしようとしたときに、現実的に多くのところの自治体が過疎とか高齢化が進んでいる中での自主財源というものを見出すとしても、非常に限られてきているのではないか。その辺について、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
    〔伊藤(公)小委員長代理退席、小委員長着席〕
増田参考人 岩手県も、昭和三十年の合併のときに行われた結果、一つ一つの自治体の面積が大変広大になってきているところがございます。そういうところがございまして、それをさらにまた、今回、合併に向かってきた。なかなか日常生活圏が広がってきているとはいえ、身近な行政を市町村が担っているものですから、一方で大変抵抗感もあるわけでございます。
 しかし、その中で、財源ということを言いますと、市町村の場合には固定資産税というかなり安定的な財源を持っているということがございまして、まだまだ市町村も十分な財源を持っていないわけでございますが、我々の都道府県などは、やはり財源の主たる部分を例えば非常に不安定な法人事業税などに頼っているものですから、こういう景況の波に大変左右されやすい。
 今度、一部でございますけれども外形標準課税のような形が導入されるとすれば、そのあたりの安定度が増すわけでございますし、そのほか、国税と都道府県税との入れかえを多少行いますともっと安定感が増しますので、こういう不況期も有効な経済対策が打てるのではないかというふうにも思うわけでございます。
 制度設計はいろいろあると思いますけれども、国全体で、国と地方の財源の取り分が、今実際の仕事とウエートが逆転をしてございますが、それを一対一にするというのが一つの目標だと思います。
 県の場合には特にそうでございますが、不安定な財源でございますので一対一。それから、市町村は、固定資産税のようなもの、安定的な財源を持っておりますが、最近は評価がえのときにやはり大分目減りをしてくるといったようなこともございますので、そこはどの程度のものを第一ステップとして目標にするかというのは議論があるかと思いますけれども、できるだけ安定的な財源を確保して、そして、やはりこれから都道府県に大いに仕事をしていただかなければいけない。身近な行政を基本的な自治体が積み上げていくという上では、やはり一番大事な基礎になってございますので、そこの税収基盤がうんと安定するような努力。
 それから、あと大事なことは、自主的な税収増のための努力が全体の歳入に結びつくような、今、いろいろ汗をかこうとしても、今度は逆に一方でそのことによって交付税が減らされるような、そういう仕組みになっておりまして、交付税との連携も考えなければいけないんですが、そのあたりもお考えをいただいて、やはりそれぞれの自治体の税収確保策なり歳入確保策なりがそのままストレートにあらわれてくるような、そんな制度にしていただかなければいけないというふうに思います。
金子(哲)小委員 最後に、時間も短いので、あと簡単に質問したいと思います。
 憲法では、九十五条で、国が特別法を定めたときに住民投票を行うということを定めておりますが、今、このこととは別にして、重要な案件について住民投票で行おう、また、住民投票条例をつくろうというような自治体がふえておりますけれども、参考人御自身の住民投票に対する考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
増田参考人 どういう内容かによるということだろうと思います。
 議会制との関係もございますので、そこでの審議が基本だろうと思いますが、内容によって住民投票というのは考え得る分野はあると思いますのと、それからあとは、それをどういう形で使うのかということをはっきりとやはり住民に明示することと、この二点が大変大事かなというふうに思っております。
金子(哲)小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)小委員 保守新党の井上喜一でございます。きょうは、増田参考人、本当に御苦労さまでございます。
 私は、統治機構のあり方ということでありますから、そういったことに関連して御質問をいたしたいと思うんです。まず私の考え方を先に申し上げますので、そういう考え方につきまして御意見を賜りたいと思うんです。
 私は、都道府県制というのはもう廃止をして、新しい統治機構をつくる時期に来ていると思うんです。若干の時間はかかりましても、もうその時期に来たと思います。それからもう一つは、私はやはり統治機構の基礎は基礎的自治体にあると思います。そういったことで、町村合併を積極的に進めまして、今よりもっと大きい基礎的自治体にできるだけしまして、行財政権限を大幅に移譲していく、これが必要だと思います。この二つが私の前提であります。
 これについて若干御説明申し上げますと、もう御説明をするまでもないのでありますけれども、大体、今の日本の都道府県制といいますのは明治二十年ごろまでにでき上がった制度だと思うんですね。ということで、社会基盤とか通信の基盤とか経済の状況とか、あるいは生活圏とかすべてのものが変わったと思うんですね。
 私は兵庫県の出身でありますけれども、裏日本の但馬の方から神戸まで来るのに、恐らく二日間ぐらいかかったんじゃないかと思うんですよね。そういう時代でありますけれども、今は大体三時間ぐらいで来られるようになっていると私は思うんです。もう根本的に変わってしまったというふうに思います。もっと日本の国全体としては変わろうとしているのでありますけれども、自治体についてはそういうことであります。
 それからもう一つは、二番目の理由は、私はやはり権力構造というのはできるだけ多層じゃなしに数が少ない方がいいと思うんですよね。今は国と都道府県と自治体でありますけれども、これを二つにしていく方がよりいいと思うんです。
 私も県へ出向したことがありますけれども、それを見ておりまして、いかに県という権力が細かいはしの上げ下げまで言っているかということがよくわかるんですよね。特に、県庁の総務部を中心にした、あるいはもっと広くは知事部局と言ってもいいかと思うのでありますけれども、市町村に対して物すごい締めつけですよ、岩手県は違うと思いますけれども。それから、人民に対して非常な締めつけであります。財政課のごときは、本当に何のためにあるのかというくらいのことをやっておりましたよ。私はそんな印象を持っております。
 それから、今、岩手県は違うと思いますけれども、知事がどこかへ行きますと、殿様ですよ。県会議員を初め、市町村長を初め、それはもう全く何も言わないで、殿様ですよね。
 これはなぜかといいますと、私の意見は、知事は全県的に選挙で選ばれますけれども、県会議員は小さなブロックですよ。だから、断然知事の方が住民の信任を得ているということですから、知事には歯が立たないんですよ。だから、県会議員だって、もっと厳しく知事を追及すべきなのに、大体持ち上げておりますよ。それから、皆お願いしているんですよね。何でもお願いです。市町村長もそうですよ。市町村の場合は、市町村会議員と市町村長というのは同じ選挙区でありますから、これは大体対等にやっていますね。非常に激しくやりますね。だけれども、県の場合は私はそう思っていないんですよね。
 ということで、私はどうも県ということがあることによって、何か規制をさらに強化するようなことに結果的になっていると思うんですよ。今、新しい知事さんが出てきましていろいろなことを言われますけれども、権力の本質というのは変わっていないんじゃないかと思います。
 よく選挙を見ているとわかりますよ。自治省の天下りの人が、増田さんの場合は違いますよ、選挙をやる場合は、本当に県を中心にやっていると思いますよ、事実上。そんな実態ですよ。あるいは、再選とか三選される場合はもちろんですね。ですから、ともかく権力というのは、いいことをすることもあるけれども、できるだけ層としての権力の数は少ない方がいい、私はそんなふうに考えるんです。
 ということで、まず第一番の質問は、この県の制度を廃止して新しい統治機構をつくるということについての御意見をお伺いしたいんです。
増田参考人 今いろいろお話があって、実は私どもも、財政課をことしの四月からなくして、予算権限を全部各部局長に完全に移譲いたしまして、そこの責任で、結果責任をとっていくという、いわゆる予算主義から決算主義に全部大きく方向を変換する。ただし、成果だけはきちっと評価して、それでそれぞれの部局の責任は問いますよと。こんな方向に変えることになって、四月から財政課という課もなくなるわけでございますが、今お話がございましたようなところに県の一つの病巣のようなものがございまして、そこはやはり変えていかなければならない部分が大いにあるのではないかという思いで今聞いておりました。
 県という組織をどういうふうに考えるかということでございますが、一つは、道州のような形でそれが変わっていくという中で、今お話あったように、基礎的自治体というものが一つ大事なものがあるわけでございますけれども、それと国が直接やると、非常に国の立場が強くなるというふうに思いますので、そこを、各市町村との調整をするような役割も、そういった間に入る組織にはあるのではないかという気も一方でいたします。
 それからあと、広域的に物事を見ていくときに、今の県単位で物事を考えていかなければいけない分野というのもあるような気がしておりまして、先ほどちょっとお話がございましたが、独立行政委員会のようなものはむしろ県単位で、かなり地域に密着したようなものを考えていかなければならないのではないかというところもあるので、制度については、きちっとした制度よりも、いろいろな柔軟性のある、地域の実情に応じて取り入れやすいような制度があって、それを各地域が選択していく。結果としては少し国全体がモザイク的な形になるわけでございますが、そんなような制度が私自身はやはり望ましくて、そういうことによって、それぞれの地域のまた主体性とか知恵とかいうものがもっと出しやすくなるのではないか、こんなふうに思っております。
井上(喜)小委員 私は、確かに警察とか教育委員会というのは、ちょっとこれは何か別に考えなければいけないのではないか、どういう組織がいいのかまだ具体的によくわかりませんけれども、そう思うのでありますが、どうも知事部局の仕事というのは先ほど申し上げたようなことなんです。
 そこで、知事さんのお考えで、どうしても県に残した方がいいと思われる事項を、これは幾つかずうっと列挙していただけませんか。どういう事項かということですね。もちろん具体的に、単なる例示じゃなしに、もうちょっと網羅的に教えていただきたいのが一つです。
 それから、もう時間がありませんのであわせてお聞きしたいんですが、今、憲法では第八章「地方自治」とありますね。これを仮に改正するとなるという前提でお話しいただきたいんですが、地方自治についてはこの規定でもう十分なのか、あるいは、こういうところは変えた方がいいというような御意見がありましたら、その点をお聞かせいただきたいんです。
増田参考人 産業の自立をいろいろ考えていく上で、私は、産業政策の部分はかなり、県よりももっと超えた、道州のようなレベルで、単位で物事を展開していくというのが大事だというふうに思うんです。
 それを下支えする社会資本、社会資本には大分レベルに差がありまして、私は、大きなものについてはそういった、例えば東北なら東北ブロックの中でお互いに思い切った役割分担をしていくということが大事だと思うんですが、どうしても社会資本の中でもいろいろとレベルの差がございますので、まだ整理がきちっとされておりませんけれども、道州のような形に変わっていけば、県という存在を知事部局の中であえて残すようなものは余りないとは思いますけれども。そういった一連の移行の過程の中で、社会資本などにも随分大きさ、機能によって差がございますから、そういうものを整備したり、それから、特に後の維持管理をするときに、余り細かな市町村ごとで長いものを維持管理するよりも、もう少し違う単位で考えるものはあるかもしれません。このあたりはもう少し精査してみなければいけないなということを思います。
 それからあと、憲法の規定でございますけれども、私は、今の規定が大変漠としてございますので、これは非常に、逆に言うと解釈のしようが大変広いのではないかというふうに思いますけれども、大変大事な規定でございますし、地方自治の本旨ということ、中には多分恐らく住民自治を基本として、また、その団体が国からも余り侵食されないという団体自治の考え方もあると思うんですが、こういったものを基本に据えて、いろいろもっと我々の使いやすい制度構築がなされれば大変いいなと。むしろ、もちろんそれを超えた、改憲につながるような大きな、地方自治の進展につながるような考え方も、一方でいろいろお考えいただければなというふうに思います。
井上(喜)小委員 どうもありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、佐藤勉君。
佐藤(勉)小委員 自由民主党の佐藤勉でございます。
 参考人は大変お忙しいところ、ありがとうございます。
 先ほど来からお話を聞かせていただきまして、北東北三県の連携に当たって、制度論よりも協力の実績を積み上げというお話をいただきました。そういうことを重視してこられたというのも理解をさせていただいたわけでございますが、現在、三県の一体化、さらに道州制というお話も出てきたわけでありますけれども、移行を視野に入れて動き出しているということではないかなというふうに思います。
 そこで、参考人に、今後さらに連携を強めていくに当たって、合併等が必要不可欠であると考えていらっしゃるのか、また、合併ではなく、従来の延長線での協力を続け、さらに連携を深めていこうというふうに考えているのか、まずお伺いをしたいと思います。
増田参考人 現行の制度で県と市町村の役割分担などが変わらずに一緒になるということですと、一つのスケールメリットの追求だけに終わってしまうようなことになりますので、制度がどういうふうにでき上がっていくかに大いにかかってくるんだろうと思います。
 先ほど幾つか前提条件を申し上げましたが、県と市町村、それからあわせて国もでございますが、そこの役割が大幅に変わって、それぞれの行政分野で、一方でスケールメリットも追求でき、それから機能分担もいろいろと考え得るような、そういう仕組みを我々が選択できるということになれば、これは三県が、あるいはもう少し広い六県、東北六県としてそういう制度に移っていった方が大変メリットは大きいのではないかと。
 今は、実はまだ知事同士の議論だけにとどまっておりまして、住民の皆さん方との有益な議論は、もう少し実績を積み上げないとなかなかできないだろうということで、今までできるだけ実績を積み上げてきたのですが、そうした中で、わかりやすい実績の積み上げ、それに伴う議論ということが、これから制度の輪郭が見えてきて可能になれば、やはり大いにそういった議論を進めていって、スケールメリットプラスそれ以上の大いなるメリットを住民の皆さんにお示しして、合意形成をしていければなというふうに思っております。
佐藤(勉)小委員 そこで、これまでの広域連合を実施してきた中で、広域連合や一部事務組合、特に岩手なんかですと競馬の一部事務組合があって、私も県会当時に随分拝見をさせていただいて、すばらしい制度だなというふうに思ったこともございまして、広域行政を行う仕組みについて参考人はどのような考えをお持ちか、特に現行制度では不十分であると感じている点があればお伺いをしたいと思います。
増田参考人 広域連合の制度で、市町村だけでなくて、県も広域連合で共同して、県同士で共同して事務処理ができるような形になっておりますので、都道府県が合併という最終的な選択肢を選ぶ前の段階として、そういう形で共同して事務を処理するということも一つのやり方かと思います。これは行政分野によってでございますが。
 ただ、その場合に、基礎的自治体を中心にして仕事を構成していくということよりも、むしろ広域連合のような制度を使うのは、現状のその仕組み、県なり市町村が行う仕事を前提にしながら、より仕事を共同処理して合理性、効率性を発揮しよう、こういう制度にとどまりますので、むしろ広域連合のような制度を、選択肢を一つ自治法の改正で与えてもらったことも大変重要なことではございますが、それ以上のものとして、やはりこういった道州なり都道府県合併、都道府県合併も現行の中では大分特別法であり、また住民投票の手続なりかなり規定としては難しい規定にもなっています。時間もかかるようなものになっていますので、そのあたりをお考えいただいて、我々の選択のしやすいいろいろなメニューをそろえておいていただく。その上で、住民の皆さん方との議論で日本全国のそれぞれの地域がいろいろな多様な選択ができるような、そういう仕組みをお考えいただくと大変ありがたいというふうに思います。
佐藤(勉)小委員 またダブる話で大変恐縮なんですが、私自身は栃木の選出でございまして、栃木県は四十九市町村になっているんです。三十年当時に国の言うとおりにかなりの合併を推進して、四十年たってやっと一体感が持てるというふうな歴史的な話があるんだと思います。
 そこで、知事さんが考えていらっしゃる北東三県のあり方について、市町村合併がどのように進展していくべきなのか、先ほどもお聞かせをいただきましたが、その辺の基本的な考え方をお伺いさせていただければありがたいと思います。
増田参考人 今、国の方では、大分財政的な面を強調して合併を旗振りしております。それから、それに伴うあめも、特例公債もかなりハード事業に偏っているわけでございますが、これはこれで過去のいろいろやりたかったことをその時点で清算するには有効かと思いますけれども、余り将来に向かって長い効果が続くものとは思えませんで、やはりもっと、先ほど私が強調いたしましたような基本的な、市町村で住民に身近な有効な行政を展開しようというときの人材などが大変足りないといった深刻な問題がございます。
 職員の人たちは一度採用されると三十年ぐらいは少なくとも役場にいるわけでございますが、その中で、これからの新しい行政課題に十分に対応できるような職員がどうもなかなか育たない。全体の数が大変少なく今定員管理がなされておりますので、その中で一人何役もやっているとどうしてもそうなるわけでございます。
 そうしたところを後押しするようなことを、また、合併を促進する際に、そういう現実に一番大事な点に着目をしていただいた支援策などを考えていただくようなことが大事であろうと思いますし、市町村の皆様方にも、余り実は財政的な面を強調しての合併を促進するということを私どもの県もやっていなくて、大分市町村ごとに面積が広くなりましたものですから、実は全国の中でも岩手県は今のところ合併についての議論が大変少ないところの一つの県にはなってございますけれども、市町村の自立を図るということは大変大事なので、できるだけ市町村の皆様方には、本当にこの今の人材、役場の職員の人たちの体制だけで行政ができますかというような話、持ちかけ方をして、合併できるところはできるだけ合併していただくような、そんな私どもの働きかけを今しているところでございます。
佐藤(勉)小委員 ありがとうございました。
杉浦小委員長 次に、古川元久君。
古川小委員 民主党の古川元久でございます。本日は、増田参考人にはお忙しい中、長時間にわたりましてありがとうございます。
 私からは、参考人に、府県の広域的な合併、そして道州制への進展というのが、単にこれは地域、地方を活性化するだけではなくて、実は私は、日本の中央政府が抱える大きな問題を解決して、本来中央政府が求められている役割を果たしていくためにも必要じゃないかなというふうに思っておりまして、その点から少し私の意見を述べさせていただいて、参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
 私は、今日本が抱えている、特に中央政府が抱えている行財政改革という非常に大きなテーマ、これがなかなか進まない原因は、この日本の中央政府というものの規模が、ある意味で一つの行政体としてガバナンスするには余りにも大きくなり過ぎてしまった、適正規模をやはり超えてしまっているんじゃないかと。人口規模でも一億を超え、GNPでは五百兆というこれだけの経済規模、そういう大きな規模のところを、今までのような明治のとき以来の中央集権の、中央政府がコントロールしていくような体制では、これはもうマネジメントできる規模を超えてしまってきたんじゃないか、そんなふうに考えております。
 現実に諸外国で行財政改革が成功した国というのを見てみますと明らかにやはり規模が小さくて、例えばニュージーランドだとかスウェーデンだとかの行財政改革が成功した国の例を日本で取り入れたらという話に対しては、そもそも人口や経済規模も全然違って、そういうところの例を日本に持ってくるということは無理があるということをよく言われたりするんですが、これは逆の見方をすれば、それくらいの規模にむしろこの日本の行政としての主体を分けていって、それぞれのところで行財政改革というものを行っていけば、実はそうした諸外国で成功したような思い切った行財政改革というものもできるんじゃないかということ等も考えられるんじゃないかと思うんですね。
 そういう意味では、私は、道州制の導入というのは、行政府の規模を適正規模にして、そして思い切った改革を可能にする、そういう突破口になるんじゃないかというふうに思っているわけなんです。
 ただ、今の制度ですと、それこそ、先ほど来からよく財源の話が出ていますけれども、やはり財政的な自立ができていない。そのために、先日二審でも東京都の敗訴の判決が出ましたけれども、銀行税というような、いろいろその課税のあり方には問題があるかもしれませんけれども、地方自治体が独自の立場で自主的な課税を行っていこうとした試み、そうした試み自体は私は評価すべきだと思います。ただ、そういう試みが今の制度の中では、法律の中では、司法のところに行けば否定をされてしまう、そういう現状があるわけでありまして、やはりこれを変えていくということが非常に大事なことになってくる。
 先ほど来からの話になっています、申し上げていますように、道州制を導入して、それぞれの地域が事実上の主権を持つような形でそれぞれが競い合っていく、いわば日本という国の中でそれぞれの道州がゲームをするように競い合っていく、そこに国民も、そしてまた世界の企業や人も参加していくような形ができれば、これは私は、非常に国全体の活力を高めていくのにもつながるんじゃないかと。
 そういう形で中央政府の役割というものをそぎ落としていきますと、本来中央政府が国のヘッドクオーターとして期待されている外交とか防衛、そういう部分にきちんと特化した仕事ができるんじゃないか。また、私たち国会議員も、地方の陳情を国に持ってくるとかそういう話じゃなくて、本当にこの国がどうあるべきなのか、世界の中でどういう役割を果たしていくべきなのかという、国益という観点から国家が進むべきあり方を考える、そういう場に国会もなっていくんじゃないか。そういう意味でも、これは国、地方、双方にとって非常に大きな有益な結果をもたらす、私は道州制というものは突破口になっていくというふうに考えているわけなんです。
 増田参考人も、私もかつて霞が関におりましたけれども、霞が関におられて、中央政府の中で行財政改革とかいろいろなことに取り組んでこられて、その限界も見られたと思います。今は知事というお立場で、地方の方から中央政府の現状を見ている。それをごらんになられて、今私が申し上げたような考え方について知事としてはどのようにお考えになられるか、御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
増田参考人 今、いわゆる地方分権ということで随分中央政府の方でも取り組みがなされているわけですが、地方分権ということについて、中央政府がおぜん立てした地方分権というのはやはり本来の姿じゃないわけでございまして、我々自身がもっと主体的にいろいろな提案をしていかなければならないんですが、それにしても、今、中央政府のそうした取り組みがある中で一番欠けているところは、やはり肥大化した中央政府、今お話ございましたが、その中で人をどういうふうにこれから考えていくのかということの視点がどうも欠けているんではないか。
 権限は地方分権一括法で地方の方に大分移ったのは事実でございますが、財源がまだ足りない。これは三位一体改革の中でことしの六月までに解決しましょう。実際に、それでは、今大変多くの人たちが国家公務員として中央で働いておられるわけで、これは一つの大変な財産でございますし、資源ですし、能力のある人たちが大勢おられるんですが、仕事を地方に移すということによってその人たちの身分も自由に地方に移すような、そういう大胆なことをやはり考えていかなければいけない。この点については、実はほとんどまだ現実には議論されていないんではないかという気がするわけです。
 岩手県では、市町村の方に今随分権限を移してございますが、それに伴って、先ほどちょっと申し上げましたように、県の職員も市町村の方に移しております。市町村長さんに聞きますと、いや、権限をもらっても大変だ、お金がない、では財源をつけますということなんですが、今度は、財源をつけますといっても、いや、実際にはそれをこなすだけの役場に人の手数が足りないということもございまして、それで、あわせて今幾つかの市町村に県の職員もつけて、三位一体の権限移譲というふうに我々呼んでいるんですが、人的移譲と呼んでいるんですが、そんなことまでしておりますから、ぜひ、今お話ありましたような中央政府の肥大化をとめるという意味で、人的な面についての考え方をやはり中央政府としても真剣に考えていただく必要があると思います。
 そうしたことを通じて、このレジュメにも書いてございますように、やはりこの道州制の問題というのは、国、県、市町村のあり方を本当に根底から考え直すようなものでございますので、「国家的課題」と書いてございますが、もちろん我々自身がいろいろな提案をしなければいけないわけで、現場から実績をつくり上げて、そこで感じたことをきょう申し上げているわけでございますが、やはり大きな国家的課題として、国、特に中央省庁の皆様方にも真剣に考えていただきたいな、こういうふうに思っております。
古川小委員 ありがとうございます。
 もう一点、今度は財政の面から一つ御質問したいんです。
 私、統治システムを考える上では、先ほど来からずっと議論になっていますように、やはりそれをマネジメントしていく財源面、そして財政面のあり方というのが非常に大事じゃないかと思うんですが、そのときに、私は、今の日本の、これは国、地方両方ともそうなんですが、予算編成のあり方、予算編成システムの改革というものも、これは実は統治機構の改革を考えていく際にはやはり非常に大事なことじゃないか。今までの単年度主義の大福帳みたいな形で、特に今広域的な行政ということで考えるのであれば、それぞれの県単位で単年度でやっていくようなそういうことで、本当に先ほど知事が言われたようなグランドデザインのビジョンを達成していくようなお金のつけ方や予算のつけ方ができているのか。
 この辺の、これから広域行政を進めていくに当たって、予算編成システムのあり方についてはいろいろこれから検討していくとかそういうようなお考えはあるのかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。
増田参考人 予算編成システムは、岩手県としては大幅に変えました。今までの予算主義から決算主義で、成果主義を主体にしよう、そして、非常に財源も貴重な財源でございますので、一番情報の集まる現場、各部局に主体的に編成してもらって、それで評価をしっかりとすることによって、そのことによって成果を出していこうという、県民の視点に立ったものということでございます。
 それからあと、また使い方の問題として見れば、今お話あったように、単年度主義というのはやはり現実にはなかなか難しいところもございます。これは、国の法律との関係もございますし、それから、議会でそういったものを御審議いただく、そのまた制度ともかかわってくることでございますが、幾つか予算の今まで我々が当たり前と思っておりました取り決め事のようなものがあるんですけれども、単年度で、そういう期間でいろいろ見ていかなければいけないものを、例えば二、三年の事業に合ったもので渡してその成果を見るということにしたりとか、それからあと、予算の内容をよく精査するときの公会計システムもまた一方でしっかりとしたものにして、特に公企業などは独特の会計をやっておりますので、そのあたりを通常の民間の企業のような形で見られるような制度に変えていくとか、やはりそういった工夫が必要になってくるかというふうに思います。
杉浦小委員長 次に、福井照君。
福井小委員 知事には本当に御苦労さまでございます。
 私も建設省で二十三年間勤めておりまして、県庁とか市役所にも出向させていただいた経験がございまして、そのたびに縦割り社会の中で大変窮屈な思いもさせていただきまして、まさに知事にあられましては、アンシャンレジームの打破ということでぜひ頑張っていただきたいと思います。
 まず、今までと全然違いますけれども、視点を変えまして、だけれども本質的で、この議論なしには本当は何の議論も始まらないんじゃないかと思いますのが、個の確立ということで、要するに、ガバメント、ガバナビリティーを議論する中で、個人というのは、夏目漱石じゃないですけれども、日本人の今私たち一人一人というのは一体どういう状況にあるのかというその時代認識、歴史認識を、この八年間の知事のお仕事の中でどういうふうに感じておられるかというのを少し御紹介いただきたいと思います。
 といいますのは、私もミニ集会を中心に活動させていただいているんですけれども、まず役所の悪口で大体その会議が終わりますとか、ほとんどすべて、自分の幸せ、自分の人生計画も役所に投げてしまっている、お上に任せてしまっているということだと思うんですね。今でも、ですから、庄屋さんに、網元さんに、江戸の小ばなしの長屋の大家様に、自分のすべてを、全人格というのをお任せしているということに我が国民は終始をしている部分が多い、あるいは人々が多いという状況にまだあるんじゃないかと思うんです。
 しかし、一方では芽があります。役所というのは小さな政府であるべきで、なおかつ限定された分野にあっていいんだ、しかし一方では、もっときめ細かく、もっと深く人生をサポートしてほしいというようなレベルに意識が高まってきているという芽はあるわけです。
 ちょうどきょうの知事のレジュメでも、「参加」「協働」「自立」「受益と負担」を認識するというようなことをキーワードにとか、あるいは「住民との協働による制度設計」とかいうことで、個人の確立という意味で今までどうか。問題、課題認識、そして、こういうことで、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで、何かあるビジョンである方向に役所の方も個人の方も一緒に育っていこう、進化していこうとしていらっしゃるのか。その辺について少しコメントをいただきたいというのが一つ。
 それから、まとめて申し上げますので、後でコメントいただきたいんですけれども、もう一つは、先ほど古川委員の方から出ましたまさに資源としての人材というか、もっと言えば知的レベルの高い人材といいましょうか、そういう者をいかに東北三県、あるいは高知県でもいいんですけれども、残しておくか、あるいは戻すかということだと思います。
 私は技術屋ですので、いわば中央省庁改革のときに東京から出ていけと言われた人間なんですね。つまり、予算の配分というのは霞が関には要らないんだ、地方支分部局にあればいいんだ、地方にあればいいんだということで、技術職、インハウスエンジニアというのはもう霞が関には全く用がないんだと言われて、非常に悲しい思いをしたんです。
 その部分の議論はきょうはいたしませんけれども、言いたいのは、自己重要性の説得性といいましょうか、県庁職員でも市役所に行っておけと言われたら少し悲しい部分もあると思うんですね。そういう意味で、国家公務員で国のために働いていると思っている人々が、地方に長年あるいは永久に行って自分の志を果たすということについての、その自己重要性の説得部分について、それぞれの人の人生計画について、例えば県庁の職員に市役所に行け、町村役場に行けとおっしゃるときに、どういうふうなことをおっしゃっているのかを、知的レベルの高い人材確保という面で、もうちょっとだけコメントをいただきたいというのが一つ。
 それから三問目で、そういう意味で、地方支分部局というものと道州制が確立されたときの位置関係、ファンクションの分担関係について、もしコメントがありましたらお聞かせいただきたい。そんなもの要らぬと言われればそれまでですけれども、例えば災害で、特定の分野で、何かそういう役割があるのか、あるいはないのか、もっと違う機能を果たすべきかどうか、国の機関としての地方支分部局というものについてのコメントがありましたらお聞かせをいただきたいということで、三点で、大変申しわけございませんけれども、お時間の許す限りよろしくお願いします。
増田参考人 まず、一点目の個の確立ということでございますが、昔は、先人の皆さん方にいろいろお話を聞きますと、岩手県でも本当に行政の方の体力が未熟でございましたので、今この時期の屋根の雪おろしから道路の雪かきから何から、すべてお互い隣組のような、結いのつながりという、結ぶという字を書いて結いと言いますけれども、ああいう組織があって、相互扶助で、自分たちの力でそういったものを全部こなすということがもうすべてであったわけでございますが、ある時期、やはり高度成長期の中で税収もかなり入ってまいりまして、財政にかなり余裕ができてきたといいましょうか、やはりそういうことを行政の方でいろいろと展開していくことがいいだろうということで、行政が随分除雪なりなんなり、そのほかのことも随分行ってきたわけでございますが、そのことが逆にお互いの、一人一人の独立心といいましょうか、そうしたものを逆に阻害してきた。
 これはもうそれだけではなくて、社会全体が都市化の影響で農村時代のお互いのつながりというものを断ち切ってきたこともあると思いますけれども、そういう中で、行政にどうしても多くのことを依存する、それが当たり前になるというような傾向がずっと増幅してきたということもあると思います。
 最近、一方でまた、地域によってNPOの団体が随分出てまいりました。こういう人たちが行政に成りかわって活躍をするという分野もございます。
 それから、我々の方では以前、いわゆるNPOなどと称する前も、いわゆる自然保護の関係の団体の皆さん方とか、いろいろこういう地域活動をしておられる方々、なかなか行政と対決することも多いので、どうも敵対関係が、ぎすぎすした関係があったのですが、むしろそういう皆さん方とともにいろいろな計画をつくっていく、事業をつくっていく。委員も大変御承知のとおり、そういうような形で公共事業も大分変わってきたりしてきましたので、ある種、これから私は、NPOの団体の皆さん方に行政のいろいろなところを検証していただく、あるいは監視をしていただく。先ほど言いましたような決算主義に変わってきたときに、その評価をそういう皆さん方にいろいろしていただいて客観性を増していくとか、そんなことで力をうんと発揮していただく場面がふえてくるのではないか。
 そういうことを通じてまた、一人一人の県民の皆さんも多くの情報、これは情報公開によって非常に多くの今情報を得る機会もございますし、冒頭お話ございました個の確立ということにうんとつながっていくんではないかというふうに思います。
 それからあと、私ども県の方で市町村の方に、権限、財源だけではなく人も派遣していると言っておりましたが、これは確かに、ずっと県の職員でいるつもりであった人間が市町村の方に行けということで、ある日急に変わるというのは、なかなか抵抗感がございますので、考え方は、何年かのローテーションで人自体はかえていこう、県の組織の中で、市町村への仕事を人的には面倒見ますと。ただ、個人自体はやはりその本人の事情に応じて入れかえて、それで、実際に仕事がスムーズに市町村で行えれば、結果としてはいいわけでございますので、そういうやり方で今やっておりまして、実はこれは今年度、昨年の四月から始めたばかりの制度でございますので、まだ人の入れかわりは行っておりませんけれども、そういう前提でこれからも進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 それから、最後に地方支分部局についてのお話がございましたのですけれども、できればそうした地方支分部局で行っている仕事も道州なり都道府県の方に移していただければ一番いいと思うんですが、分野によって、災害ですとか緊急時の対応とか、まだまだ必要な部分もあると思います。こういったことはこれからの制度の仕組み方でございますが、やはりそういった分野は残るにしても、住民との関係で、そういったところには特に議会のコントロールということはあり得ないわけですが、できるだけ仕事の内容が住民にわかりやすく、そしてまた住民の意見もできるだけそういう行政に反映できるような、そういう仕組み、制度構築が必要ではないかなというふうに考えております。
杉浦小委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 増田参考人におかれましては、大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼申し上げる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
杉浦小委員長 これより、本日の参考人質疑を踏まえまして、小委員間の自由討議を行いたいと存じます。
 一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小委員長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いをいたしたいと存じます。
 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをこのようにお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。
 小委員の発言時間の経過についてのお知らせでございますが、今までどおり、終了時間一分前にブザーを、そしてまた終了時にもブザーを、一分前と終了時にブザーを鳴らしてお知らせいたしたいと存じます。
 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。
伊藤(公)小委員 参考人がいてくださればむしろ聞いてみたいと思いましたが、八年間知事をやられたわけですから、皆さんのいろいろな御質疑の中にも財源の問題が一貫して、地方の地域づくりをしていくときに大変財源のあり方というものがテーマになってきたと思います。八年間の知事時代に自主財源が、先ほど御議論がありましたが、三五%弱と伺いましたけれども、八年間で自主財源が少しふえたのか、パーセントがふえたのかどうなのかですが、後で私もちょっと県に連絡して聞いてみたいと思います。
 もちろん、今の税制の中で限界があることは承知しているわけですが、私は、国も肥大化されたといって、今、国はさまざまな改革に取り組んでいます。例えば、道路四公団をどうするかということも大きな今テーマになっていますし、あるいは郵貯をどうするか、これも既に国は方針を決めてきていますし、あるいは、たしか百十四万ですか、国家公務員を十年間で二五%削減するという作業にも我々は既に取り組んでいるわけです。むしろ地方も肥大化しているのではないかということを私はずっと考えてきました。三百八十万前後と言われる地方の公務員はこのままでいいのか。あるいは、最近はそれでも市町村の議員の数の定数削減もそれぞれ行っているようですけれども、私はもっと大胆に、地方のスリム化も必要なときに来ている。そういう中で、国全体の、小さな政府といいますか、ということを我々も進めていく必要があるということを非常に痛感いたします。
 そんな中で、県よりははるかに小さい、私の本当に地元の、小さな小さなコミュニティーの話でありますが、人口四十万の町で、ことしはたしか二十億ぐらいの財源がマイナスになる。そこで市長がいろいろ考えて、いろいろなものを少し削らなきゃならない。旧五カ町村が合併した町でありますが、その旧五カ町村の単位で毎年やってきた運動会に、大体六十五万か七十万ずつ出していた。それを全額カットしようということの予算編成をした。それぞれの自治会長、町内会長が大変反発しまして、これでは運動会ができないと。
 私は新年会でその話を聞きまして、それなら運動会をやらなきゃいいじゃないか、運動会ではない違うことを考えた方がいい、どこの地域でも同じように運動会をやって、盆踊りをしているのも、もうそういう時代じゃないんじゃないかということを私は申し上げました。そういう中で、だんだんその輪が広がりまして、それじゃ、ことしは運動会をやめて野外コンサートをやろうとか、あるいは、若い人たちで何か違ったイベントをやろうということが今始まりました。
 私は、今国も地方も、これから恐らく、福祉問題が大きなテーマになっています、医療もそうです、ますます我々はこれから高齢化社会に向かって財源は厳しくなる。そのときに、もっと予算をと言うのではなくて、何かを削ろう、やめよう、やめてみよう、そしてそこから新しいものが始まっていく、私は、そういうときを迎えているのではないかという実感がございます。
 我々は、そういう意味で、新しい角度から、国も地方も思い切って、もちろん根幹の制度を変えなければなりませんが、我々の考え方を変えていかなければならないときではないかというふうな感想を申し上げたいと思います。
金子(哲)小委員 金子です。
 今、伊藤委員からそういうお話がありましたので、きょうの増田参考人のお話の中で、確かに肥大化した財源の問題もありますけれども、きょうの論議でもっと考えなきゃいけないのは、中央と地方の財源のあり方の問題だったと思うんです。ですから、そこはやはり分けて討論しなければいけないんではないか。道州制の問題とかいろいろ提起をされておりますけれども、本来の地方自治の、憲法にうたわれている本旨も含めて、今までそういう財政上の問題、制約が多過ぎたとしたら、そこをやはり改善することによって地方自治の勢いといいますか活性化というものをつくっていくということの論議をやはり今しなければならないんではないか。
 むしろ、今までのそのシステムのありよう、地方分権ということが言われ、財源問題というのは随分長く言われておりますけれども、それが解決できないままで、今さまざまな障害が起きている。その点についてはやはり、きょうも話にありましたが、例えば県が、一対一の財源配分、自主財源を一対一にまで戻したい、できるようなシステムが欲しい、そういう制度というものをもう一度全体として考えながら、その中にあって、地方自治を進める中でどのような問題が出るかということに論議が行かなければ、私自身は、一番最初のところの分権のありようとか財源のありようというところが、実はまだそこまで進んでいないにもかかわらず、現状だけで論議するというのは少し尚早ではないか。
 ですから、もう少し、今問題になっている地方分権、何が権限移譲できるのか、また財源は何を、私は先ほど質問でも申し上げましたけれども、固定資産税のお話も聞きながら、今の過疎化、地価の評価の問題等々考えたときに、一方で自主財源と言いながら、本当にそういう市町村段階にあって一体どれだけの自主財源というものが確保できるようなシステムができるだろうか。また、そういうことを確保したときにこそ逆に、今伊藤委員が言われたような、地方自治体がその中にあって自主的なものをどれだけ自分たちのアイデアとして、そしてまた政策として打ち出せるかということになっていくと思うんです。
 私自身は、今回のこの論議の中では、やはり地方自治の本旨というものに沿いながら地方自治体の自主性というものをどう確保していくかということにぜひ論議を進めていく、またそういうところを政治としても、システムを進めていくことによって地方自治の活性化、地方自治の推進ということが進んでいくのではないか、このように思っております。
 伊藤委員が言われた肥大化の問題についても、もちろんメスを入れなければならない課題だと思いますけれども、その中でおのずと、例えば人的な問題、地方公務員の数の問題、それから制度の問題、福祉の制度の問題も、地方自治が直接やるべきことと、どこが、そうでなくて、例えば民間でできるかというような問題もそういう中で論議をしなければならないんではないかということを考えております。
谷川小委員 地方財政の危機といいますのは、よくよく調べてみると、日本独特の現象ですね、今やまさに。ヨーロッパの地方自治体で財政的な危機に陥っているというところはほとんどもうなくなってきておる。
 それは、何となく私ども、というのは我々日本人がという意味ですが、時代がどんどん、明治から今日まで、よく右肩上がりといいますが、必ず生まれた子供はことしは去年より多い。さらに、卒業して社会へ出てくる子供たちは去年の卒業生よりも多い。常に経済というのは右肩で伸びていかなきゃいかぬという形の中でつくり上げてきた中央政府というのでしょうか、集権的な政府ですべてこの国を動かしていくという時代ではもうなくなったにもかかわらず制度がそのまま残ってしまったために、何となく中央の仕事の出先機関が地方だという形で地方に覆いかぶさってきて、そこで、地方の財政というのが今やまさに、非交付団体であった東京都においてすら本当にすさまじい状態になってきている。
 ですから、先ほどから参考人までここへ来ていただいて御議論がいろいろと進んだわけですけれども、今やまさに、国のあり方全体、別の言葉で言えば統治システムそのものについて我々は議論しなければならないところへ来ているんではなかろうか、私はそんな感じを持ちます。
古川小委員 統治機構の話で先ほど来から委員の先生方からいろいろなお話が出ていますけれども、私は、パブリックといいますか、これまで官が担ってきた部分のパブリックを、本当にこれからのこの国の、我が国の憲法を初めとする法体系の中でずっと官が担い続ける必要があるのかどうか。国のあり方というものを考える際には、やはりパブリックというものの担い手がだれなのかということまで一度考え直してみないといけないところに来ているんじゃないかなというふうに思っています。
 私は、小さい政府にする、官が小さくなるのは大いに結構だと思います。しかし、だからといってパブリックが小さくなってはいけない。むしろ、もっとお互いに助け合いとか、損得勘定でなくて、この地域を担っている者、そして国で一緒に生活している者が助け合っていく、そういう仕組みというパブリックの部分はむしろ拡大をしていくような、そういう国に、社会にしていかなければいけないと思っています。
 そのためには、今余り法律上もきちんとした明記といいますか、その存在というものがされていなくて、ようやくNPO法人を認める法律とかができて少しずつ定着はしてきておりますけれども、官でもなくて、かといって営利企業でもない、まあ第三の主体といいますか、NPOだとかNGOだとか、そういうものをもう少し明確に、きちんとこの国の統治機構、統治とはちょっと違うかもしれませんけれども、私は主体としてやはり認めていく必要があるんじゃないかと。
 それから、今は、日本の法律上では民法三十四条において、いわばそういうことをやる官ではない組織というのは公益法人という形ですべて主務官庁のコントロール下に置かれるという原則がありまして、この点についてはもう既に議論が行われているところでありますけれども、まさにこれからの社会のあり方、国のあり方というものを考えていく上では、この民法三十四条の修正を初め、憲法上でどう規定するかどうかという問題はもっともっと議論していかなければいけない問題ではないかと思います。
 官ではないけれども公、パブリックの部分を担う主体というものを私たち日本国民の中でもっと育てていく、そしてそれを大きくしていくということを我々一人一人が自覚をして、それをいろいろな制度的な形で担保していくような仕組みというものをこの国の統治機構の中に、あるいは税制の中にそういう仕組みとしてビルトインをしていくということは必要ではないかなというふうに思っています。
 増田参考人のお話の中で、一国多制度というお話がありました。多様性のある地域をつくる、それで国をつくると。かつて私は小学校時代に、三全総だとか四全総だとか、いわゆる全国総合開発計画というのを学んだ記憶がありますけれども、まさにかつては、とにかく全国一律というのがこの国の進むべき基本的な方向だった。それが明らかに、そうした全国一律から、それぞれの地域の特色を生かした、そして多様性のある社会をつくっていこうという方向に転換をしている。それに合うような統治の機構、システムというもの、そして統治主体、あるいはその統治主体に、官にかわる、そうした地域においてのパブリック、公を担当する主体の育成というものができるような仕組みというものをやはり考えていかなければいけないのではないか、そんなふうに思います。
山口(富)小委員 私、きょうの増田参考人の話を聞きまして、二つのことを印象深く感じたんです。一つは、増田参考人が強調された地域の現場をよく見てほしい、地域からのシグナルを受けとめてほしいということは、やはり非常に切実な声として、今、北東北三県でやられている中身の具体的な紹介がありましたけれども、それをよく検討しなきゃいけないなというのは感じました。それからもう一点は、憲法が第八章で四条にわたって地方自治を定めているんですけれども、これについて、基本的な事柄を定めて、いわば法律事項にかなりもうゆだねておりますから、地方の実態に合わせて、その精神でやろうとするといろいろなことができるという指摘があったことも、私はよく受けとめる必要があるなというふうに感じました。
 さて、地方自治をめぐる問題なんですが、私感じますのは、一つは、地方分権一括法ができてかなり様相が変化しているわけですね。そのもとで、きょうも財源の問題も出ましたし、福祉をめぐる問題も出ましたけれども、国と地方の分担をどうするのかというのはやはりよく考えなきゃいけない問題だなと。先ほど私、小児救急医療の問題を取り上げましたけれども、実は、厚生労働省の基本的な立場というのは県の仕事になっているんですね、基本のその対応をつくるのは。それを国が援助するという仕組みなんですけれども、果たして、本当の暮らしの現場で命にかかわるような問題をそういう形の整理にとどめておくだけでいいのかという問題がやはり検討事項としてあると思うんです。
 それから二つ目に、財源の問題は、これはやはり知恵を集めて、どうやったら本来、知事は一対一に少なくともしてほしいというお話をされていましたけれども、仕事に見合う財源の保障というのをどうするかというのは、本当に党派を超えてよく議論すべき問題だなというふうに感じます。
 それから最後に、もう一点感じますのは、きょうはNPOとの関係ですとかいろいろ出ていましたけれども、やはり、住民の皆さんの参加をどういうふうにこの地方政治の中で道をつくっていくのかというのはとても大事だと思うんですね。住民投票でも、中身によるんだというお話がありましたけれども、そういう経験も各地でありますし、やはり、二十一世紀の日本の地方自治のあり方として、そういうようなことを少し考えながら憲法と地方自治とのかかわりというものを検討する必要があるなというのを感じました。
 以上です。
斉藤(鉄)小委員 私も、きょうの議論を通じて、私自身気づいていなかった点、また勉強不足だった点を痛感させられたわけですが、特に、国と基本的自治体、その間を結ぶものが必要なのか、また、もし必要であればどういう形態がいいのか、大変重要な問題だと、きょう私も勉強させていただきました。
 きょうの増田参考人のお話を聞いた段階では、少なくとも、この県という単位、その中間体としての県という単位は、かなり制度疲労を起こしてきているのではないかという感じを受け、将来、その担い手として道、州というものもこれから本当に考えていかなきゃいけない。また、そのときのその道、州のあり方、きょう増田参考人は調整役という言葉を使われておりましたけれども、この点について、多分憲法に規定すべき問題になるんだなということを痛感した次第です。
 以上です。
中山会長 私、きょうの参考人のお話を聞きながら、東北三県でもやはり経済規模というのが、三県の中だけでの移動だけではなしに、国境を越えて中国大陸まで及んでいっているという御指摘がございました。
 そういう問題を考えながら、中国がこれから十年以内にASEAN十カ国との自由貿易協定をつくるという申し入れを既に行っている。日本はシンガポールとの間に自由貿易協定を唯一結んでおりますが、日本は、韓国、中国、日本とASEAN十カ国との間の自由貿易協定をつくろう、こう言っている。そういうふうに、国際社会が国境を越えて、圏境を越えて、経済活動、あるいは資本の移動、技術の移転、こういうことが盛んに行われてきた。
 私の出身地の大阪でも、家電産業と繊維産業というものは、大阪の最大の財源であり、また、この商業活動の一番大手だった。それが、今日はもう火が消えたようになってきた。しかも、その移転先が、中国がほとんどになってきています、それから、アジアあるいはヨーロッパ、アメリカ。こういう中で、日本企業は海外へ出ている。現地法人化したものだけで、この間財務省の報告を聞くと、約一万九千社あると。こういう状況が私はもう世界じゅうに起こってきていると思います。
 だから、冷戦時代が終わって、失われた十年といいますけれども、十年の間に、カナダ、アメリカ、メキシコ、チリの間にはもう自由貿易協定ができてきた。恐らく、今年から来年にかけてラ米も一つの経済圏を形成していく。ヨーロッパはヨーロッパで、二年以内に新たに十カ国が十五カ国に加わってくる。
 こういった中で、国境線を全部海に囲まれている日本が、アジア地域との経済活動とか人的交流、情報の交流というものについて、国家として何を今考えておかなければならないか。私は、もうイデオロギーというものを超えて新しい時代がスタートしている、それに対する対応がおくれているのではないかと、日本は。ここに、国内問題だけ見ただけでも非常に大きなおくれが生じているわけですね。今の参考人のお話を聞いても、これは問題がある。しかし、地域全体から考えても、非常に大きなおくれがあると思うんですよ。これについての議論を国会の場でしておくことが、これから十年後に備えた日本のあり方をみんなが考える一つの大きなベースになるんじゃないか。
 こういうことを、私はきょうは参考人のお話を聞きながら、東北三県という枠を越えたオール・ジャパンの問題、また、九州あたりはもう朝鮮半島とつながったような感じの経済活動が盛んになってきていますから、そういう地域全体の中での、この国をどうしていくのか、府県のあり方をどう考えるかということ、こういった問題についても、先生方から機会を見てまた御議論いただければ大変ありがたい、そういうふうに感じております。
 以上です。
古川小委員 中山会長のお話、まことにごもっともだと思います。まさにそういう大所高所に立った議論を本来はこの国会の場、そして中央政府というものはやっていかなければいけない。そのためにも、やはり私は、中央政府の役割をもっとスリム化して地方に任せる、どんどん任せていかなければいけない。
 やはり私は、今の中央政府は、本来この国が国際社会の中でどういう方向に進むのか、そしてこの国のそれぞれの地域のために国として何をなすべきなのか、そういう議論や検討をするための時間が余りに少なくて、国内の、小さいこととは言いませんけれども、それぞれの地域の問題というか、そういうことに余りにやはりエネルギーを使い過ぎているというふうに思います。
 私自身もかつて役所に在職をしたことがありますけれども、大蔵省あたりでもやはりそういうところがあって、もっともっと、本来であれば、国益という観点から大所高所に立った研究やあるいは議論というものがなされなければいけない。そのためにも、やはり私は、もっともっと地方分権といいますか地域主権の形での、大きく国の構造を変えていかなければいけないんじゃないか。本当に、今会長のお話を聞いて、まことにそのとおりだというふうに思いました。
 あと二点、ちょっときょうの参考人のお話を踏まえて、これは問題提起という形でさせていただきたいんですが、一つは、これだけ道州制の議論が各地域から起きている、そして知事からも起きている段階で、ここ十年近く国会でも委員会をつくって検討をされてきている首都機能移転の問題も、やはり地域の、地方の行政主体、統治主体のあり方をどうするかという議論と本来はセットでやっていかなければいけないのではないかというふうに考えます。
 なかなかこの首都機能移転の議論が進展しない一つの背景には、一方で東京一極集中というのはいろいろな問題があるということは理解をしながら、しかし、じゃ道州制になってしまうんであれば首都というのはどういう意味を持つんだろうというもう一方の疑問が多分各議員の頭の中にあって、そういうこともやはり、この首都機能移転の議論がなかなか前に進まなくて堂々めぐりをしている一つの背景にあるのではないかなと思います。
 そういう意味では、やはりこの地方の自治のあり方、中央政府のあり方とセットで首都機能移転という問題についても議論をしていかなければいけないんじゃないかというふうに感じております。
 もう一つは、統治機構という場合に、ともすると私ども行政と立法のところばかり目が行くところがあるんですけれども、三権といえばやはり司法権もあるわけでありまして、もちろんこの司法は最終的に国として最高裁判所で統一されるということは必要なわけでありますけれども、やはり今の時代というものを考えていきますと、それぞれの地域でスピーディーに司法的な手続の中でいろいろな問題が処理される仕組みをつくっていくことも大事じゃないかなというふうに考えます。
 そういう意味では、地方分権やあるいは地域主権、そうした地域の主体性を考えるときには、極めて、行政、立法以上に中央集権的なこの司法権のあり方についても一度検討をする必要というのはあるのではないかということを感じております。
 そのことを問題提起としてお話しさせていただきたいと思います。
杉浦小委員長 他に発言はございませんか。
 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十四分散会


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