衆議院

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第2号 平成16年3月11日(木曜日)

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平成十六年三月十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席小委員

   小委員長 木下  厚君

      岩永 峯一君    衛藤征士郎君

      杉浦 正健君    永岡 洋治君

      二田 孝治君    古屋 圭司君

      森山 眞弓君    鹿野 道彦君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      辻   惠君    福島  豊君

      山口 富男君    阿部 知子君

    …………………………………

   憲法調査会会長      中山 太郎君

   憲法調査会会長代理    仙谷 由人君

   参考人

   (東海大学政治経済学部教授)           宇都宮深志君

   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君

    ―――――――――――――

三月十一日

 小委員土井たか子君同日委員辞任につき、その補欠として阿部知子君が会長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員斉藤鉄夫君同日小委員辞任につき、その補欠として福島豊君が会長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員阿部知子君同日委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員福島豊君同日小委員辞任につき、その補欠として斉藤鉄夫君が会長の指名で小委員に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 統治機構のあり方に関する件(人権擁護委員会その他の準司法機関・オンブズマン制度)


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     ――――◇―――――

木下小委員長 これより会議を開きます。

 統治機構のあり方に関する件、特に、人権擁護委員会その他の準司法機関・オンブズマン制度について調査を進めます。

 本日は、参考人として東海大学政治経済学部教授宇都宮深志君に御出席をいただいております。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、宇都宮参考人から人権擁護委員会その他の準司法機関・オンブズマン制度について御意見を四十分以内でお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、宇都宮参考人、お願いいたします。

宇都宮参考人 東海大学の宇都宮でございます。

 本日は、衆議院憲法調査会にお招きいただきまして、非常に光栄でございます。

 早速でございますけれども、お手元にありますレジュメに沿いまして、順次お話をさせていただきたいというように思います。

 私が書きました本の中から論文がそちらに配付されておると思います。第一章の第四ページをあけていただきますと、「世界のオンブズマンの設置状況」というのが載っていると思いますが、それをまず参照していただきながら、第一項目の世界へのオンブズマンの普及と進展というところから、順次話をさせていただきたいというように思います。

 この「世界のオンブズマンの設置状況」を見ていただきますと、まず、御承知のことと思いますけれども、スウェーデンで、制度が一八〇九年にできて、一八一〇年にオンブズマンが任命されたというのが世界で最初のことでありまして、この表から見ていただきますと、一九五〇年代それから六〇年代、七〇年代、八〇年代に、このオンブズマン制度は西欧諸国を中心としてほとんどの国で導入されたというのが一つ注目すべきところだと思います。

 一九五〇年以前には、スウェーデンとフィンランドだけにオンブズマン制度は限られていた。といいますのは、スウェーデンというのは、独特の行政組織機構を持っている。実際の行政執行は政府各省ではなくて独立行政機関、一般的に行政機関と言われていますけれども、それが存在しておりまして、政府各省は政策の形成、立案、それから立法の準備などをやりまして、大臣がそこに責任を持って立法の準備とかそういうことをやっているということで、実際の行政執行というのは独立行政機関というのがやっております。数年前にスウェーデンのオンブズマンにお会いしまして、独立行政機関というのは一体どのくらいあるんだということを質問しましたら、数百ぐらいはあるということで、ABC順にずらりと一覧表が出ているんですが、これがオンブズマンの調査の対象になると。

 したがって、スウェーデンの場合は、大臣の行為はオンブズマンの調査ができないことになっているんですね。これは国会に憲法委員会というのがありまして、憲法委員会が大臣の行為を監視するといいますか、憲法委員会がやる、こういう形になっております。したがって、そういう独特の組織を持っているものですから、これはもう他の国にはちょっと適用できないということで、ほとんど関心を持たれなくて、そのままスウェーデン、フィンランドに限られていた。それが世界的に注目されるようになったのは、この設置状況から見ますと、五五年にデンマークがオンブズマン制度を導入した、これが世界に発展する契機になった。

 デンマークは大臣責任制をとっておりまして、議院内閣制をとっている。議院内閣制でオンブズマンが適用できるんであれば、これはもうほかの国、西欧諸国全体に適用できるんだ、こういう形で一つのきっかけになったということで、デンマークの場合は大臣の行為がオンブズマンの調査の対象になっております。これはもうイギリスもほかの国も大臣の行為はオンブズマンが調査できるというようになっております。それからデンマークを越えて、スカンディナビアを越えて西欧諸国に、アングロサクソン系の諸国に導入をされていった。

 それからもう一つ注目すべき点は、一九六二年にニュージーランドがオンブズマンを導入した。これが、ニュージーランドは世界のオンブズマンだと言われて、この一つのニュージーランド・モデルがカナダとかオーストラリア、それからイギリス、アメリカ、そういうところにモデルとして導入をされていったという契機があります。

 六〇年代には、ニュージーランドを皮切りに、ノルウェーとかタンザニアとかイギリス、十一の制度が誕生しまして、七〇年代には、そこを数えていただきますと、十年間で六十二の制度が誕生した。それから八〇年代、九〇年代と発展をしてまいりまして、九〇年代におきましては、東ヨーロッパとかアジアとかアフリカ、それから中南米。アジアにおきましては、この近辺の韓国とか台湾、フィリピン、それからタイとかそういうところでオンブズマンが導入をされてきております。

 それから欧州議会、EUにおきまして、マーストリヒト条約百三十八e条に、欧州議会は一人のオンブズマンを任命しなければならないという規定が設けられまして、九五年に一人のオンブズマンが任命されまして、今二代目が就任をして、大体年間三千件ぐらいの苦情を受け付けて、また行政監視を行っております。こういうように、世界に急ピッチに導入をされてきております。

 こういう傾向から、私は、以下の四点が注目されるんではないかなと。

 まず一つは、世界に広まったオンブズマン制度というのは、廃止されたものがなくて、国民及び行政からなくてはならない信頼される制度として発展、定着をしてきている。例えばイギリスを見てみますと、御承知のように、七九年から九五年、イギリス保守党政権があったんですが、この保守党政権においては非常にラジカルな行政改革が行われました。ニュージーランドでも、非常に過激といいますか、大きな行政改革が行われましたけれども、このオンブズマン制度は全く行政改革の対象にならなくて、ますます重要なものとして位置づけられて拡充をされてきているということで、一つはそういうように信頼される制度として世界に定着、発展をしてきているということであります。

 それから第二点は、世界に普及しているオンブズマンの多くは、議会に置く立法オンブズマンである。これを国会オンブズマンとか議会オンブズマンとか言いますけれども、議会が任命したオンブズマンを私は本当の意味でのオンブズマンなんだと。行政府から独立して中立的立場で調査を行う権限が与えられているということであります。これを国会オンブズマンとか議会オンブズマンとか言うわけです。

 オンブズマンのタイプにつきましては、資料がありますけれども、衆憲資料四十二号の七ページを参照していただきますと、どういうタイプのオンブズマンがあるかということを、ここに東北学院大学の佐藤教授がまとめられた類型を参考にさせていただきたいと思います。

 まず、公的オンブズマンというのは、国政オンブズマンとそれから地方オンブズマンと国際オンブズマンというように分けられる。国政オンブズマンは、議会型オンブズマン、議会が任命するオンブズマンと、行政府型オンブズマン、行政がみずから監察し、みずから統制していこうというのが行政府型オンブズマン。地方オンブズマンは、同様に議会型オンブズマンと行政府型オンブズマン。それから国際オンブズマンというのは、例えばEUの欧州議会が任命するようなものを国際オンブズマンと言うと。

 その下に私的オンブズマンとして市民オンブズマンというのが類型化されておりますけれども、私は、この市民オンブズマンというのはオンブズマンに類型化すべきではないという意見を持っております。世界的に一般的には、公的オンブズマンと民間オンブズマンと言う場合は、その民間オンブズマンには、例えばイギリスの場合は住宅オンブズマンとか銀行オンブズマンとかそういうものを言いますし、ニュージーランドでは銀行オンブズマンとかいうように、そういうのを民間オンブズマンと言っているということで、日本で言われるいわゆる市民オンブズマンは私はオンブズマンのカテゴリーに入れるべきではないというように思っております。

 それから、同じ文献の次のページに「管轄対象による分類」ということで、これは、例えば議会オンブズマンは行政全般に対して調査をするわけでございますけれども、特殊オンブズマンとか、私は特別オンブズマンと言っておりますけれども、ノルウェーの子どもオンブズマンとか、あるいはスウェーデンに、報道オンブズマンとか消費者オンブズマンとか男女差別の撤廃に関するオンブズマンとか、さまざまなオンブズマンができております。日本の地方自治体におきましても、人権オンブズマンとかあるいは福祉オンブズマンとか、こういうのが管轄対象別のオンブズマンであるということであります。それが第二点でございます。

 第三点は、憲法によりオンブズマン制度を設ける場合と法律によりオンブズマン制度を設ける場合がある。スウェーデンとかフィンランドとかデンマークは憲法によりオンブズマン制度を規定しておりまして、最近では、南アフリカとかエルサルバドルとかメキシコ、パラグアイ、コロンビアなどが憲法に基づいてオンブズマン制度が設けられております。

 私の意見といたしましては、憲法にオンブズマンの設置を規定することは、オンブズマン制度を憲法に位置づけることにより高い地位を与え独立性を保障しようとするものである、この意味で、憲法によりオンブズマン制度の設置を明記することは非常に重要である、しかしながら、憲法に定めないとオンブズマン制度を設けられないことを意味するものではなく、法律によりオンブズマン制度を設けることが可能なのは言うまでもない、こういう意見を持っております。

 第四点といたしまして、五〇年代に入ってオンブズマン制度が世界に注目され導入されてきたんでありますけれども、なぜ五〇年代に世界がオンブズマン制度を必要としたのか、ここをよく考えてみなきゃいけないんではないかなと思います。

 私は、三つの理由があると。

 第一点は、一九二九年の世界恐慌以来見られるようになったビッグガバメント、大きな政府、まあ福祉国家とか行政国家と言いますけれども、大きな政府現象を挙げなければいけない。統治機構の中でも国会とか議会とか内閣のもとでのビューロクラシー、官僚機構があるんですが、福祉国家の中においてビューロクラシーというのが巨大な力を持つようになってきた。これはもう、行政組織にいたしましても公務員の数にいたしましても、あるいは財政支出とかさまざまな分野で、国民の生活の隅々まで政府がサービスを供給するようになってきた。これは福祉国家現象と言われておりますけれども、各国は、この福祉国家に合わせるために、オンブズマン制度と、もう一つは情報公開制度を導入してきたということが一つ注目すべき点ではないかなというように思います。

 第二点は、第一とも関連をしますけれども、十九世紀型の政治システムにおける伝統的行政統制装置は、福祉国家の時代における大規模な行政組織を統制するには限界がある。要するに、十九世紀型の伝統的な行政統制、もう御承知のことだと思いますけれども、立法部門が意図した法律とかそういったものを行政部門が実際に実行しているかどうかということを立法部門が監視、統制する、司法部は実施の結果を司法審査するというのが伝統的な行政装置だと思いますけれども、一方の官僚機構が巨大な力を持つようになってきたということで、相対的に国会とか議会の統制装置というのが低下してきているんではないかなというように私は思います。そういうような必要性から、世界各国で五〇年代に導入をされていった。

 第三点は、福祉国家において伝統的な苦情処理制度が機能しなくなってきた。過去においては裁判所というのが市民の権利を守るとりでだったんですが、この裁判所も弾力性を失い、手続が非常に厄介である、また非常に時間がかかる、お金もかかるということで、なかなか市民が行政に対して被害を受けても、これを迅速に解決するということができない、そういう限界があるということで、この三点で世界に導入をされていったということであります。

 それから、レジュメに沿ってお話をしてまいりたいと思いますけれども、次に、日本の取り組みについて簡単にお話をしておきたいと思います。この四十二号の十二ページを見ていただきますと、「我が国におけるオンブズマン制度導入に向けた動き」ということで、簡潔にまとめられておりますので、参照させていただきたいと思います。

 我が国でオンブズマン制度が論議をされ始めたのは一九七七年のロッキード事件だということで、ほぼ世界で七〇年代にどんどん導入されたわけですから、日本で議論し始めたのもそんなにおくれて議論されたわけではないと、研究はその前から始まっておりますので。このロッキード関連で七九年に内閣総理大臣の私的諮問機関というのができておりまして、航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会という、その提言の中で、我が国の風土に合ったオンブズマン制度のあり方について、長期的課題として検討する必要があるという意見があったというように明示をされております。

 それが最初のきっかけだと思いますが、八〇年には旧行政管理庁でオンブズマン制度研究会というのができた。臨調の最終答申で、八三年の三月のことでありますけれども、オンブズマン制度のあり方について、権威ある機関とする必要がある、それから、既存の制度では十分に果たし得ない役割を担当する必要があるということで、オンブズマン的な機能を持った機関を設けることを検討すべきだというのが臨調の最終答申になっております。

 その後、八六年にオンブズマン制度研究会が報告書をまとめておりますが、政府におきましては、その後本格的なオンブズマン制度の導入は行われていない。国会におきましては、九七年に衆議院の決算委員会が決算行政監視委員会、参議院の常任委員会の再編により行政監視委員会というのが設けられたということであります。

 よく議論されることでありますけれども、我が国においては、行政相談委員制度というのがある、これは類似制度でございますけれども。これは日本型オンブズマンである。全国に五千人、四千八百、その正確な数字は今ここにありませんけれども、五千人に近い行政相談委員が任命されていますよね。それは、国民の足元で行政に対する苦情を受け付けて相談しているということは、世界の中でも非常にユニークな制度で、非常に効果が上がっているということは私は見ておりますが、この日本型オンブズマンがあるということで、本当の意味での、例えば国会オンブズマンがこれに代置できるかというと、それは代置できない。両方とも連携しながら、国民の苦情とか行政に対する不満とかそういうものに対応していく、これは両方とも私は必要なんだろうと思うんですよ。だから、日本型オンブズマンがあるから国会オンブズマンとか行政府型オンブズマンが要らないということにはならないというような意見を持っております。

 それから、自治体につきましては、この四十二号の十七ページに自治体の状況、それから私の書きました論文の九章にずっと細かいことが出ておりますので、参照していただきたいと思います。

 自治体におきましては、九〇年に本格的なオンブズマンの導入が始まったということで、神奈川県の川崎市、私も関係して、日本の現行地方自治制度の中でどういうものができるかということで、相当知恵を絞ってつくり上げたんですが、市民オンブズマンが任命をされたというのが本格的なオンブズマンが日本に導入された最初だと思います。

 その後は、沖縄県とか北海道とか札幌市とか導入をされてきておりますが、大体、数えますと、現在四十に近い制度が地方自治体の中でつくられております。それは特別オンブズマン、介護関係のオンブズマンとか福祉オンブズマンとか人権オンブズマンとか、そういったものを含めて四十に近いオンブズマン制度ができているのではないかなと思っています。

 しかしながら、日本の場合、日本の自治体で今つくっているオンブズマンは、行政府型オンブズマンである。地方自治法をいろいろ検討しまして、どうも議会に置くのはなかなか現行制度では難しいのではないかなということで、市長が任命する附属機関としてのオンブズマンをつくろうということで、日本の地方自治体のオンブズマンは行政府型のオンブズマンであります。

 次に、レジュメの第二のオンブズマン制度の特色と機能というところに移ってまいりたいと思います。

 特色といたしましては、私は、五つあるのではないかなと。特にスウェーデン型のオンブズマンについてこれからお話をしたいと思いますけれども、これは本物のオンブズマンと私は見ておりますので。五つの特色がある。

 一つは、オンブズマンは執行部ではなくて立法部の公職者である。パブリックオフィシャルである。立法部に任命され、いつでも議会とか国会にレポートをすることができる。重大な事案については説明する年次報告書を立法部に提出するということが第一点であります。

 第二点は、公平な調査官である。政治的にも立法部から独立をしている。スウェーデンの場合、デンマークとか、憲法により規定され、その調査を開始すれば、立法者は干渉しない。それから、伝統的には、すべての有力な政党というのは、ほぼ彼の任命に対して同意するということでありまして、党派的な影響で任命されれば中立的なことが維持できませんので、超党派で任命に同意をする。

 第三点は、裁判所と違って、決定を取り消したり破棄する権限もなく、また、裁判所や行政に対して直接、実施を強制する権限はないということで、勧告権限のみが与えられている。これは、私はいろいろな各国のオンブズマンを見ておりますと、非常に勧告権限というのが意味がある。ほとんどの勧告された行政機関というのはそれに従っている。従わなかったのはまれなケースですね。ほとんど従ってやっているということであります。

 オンブズマンのパワーというのはどこにあるんだろうかというと、まず事実を調査し、事実をつかむ権限が与えられているということで、広範囲な調査権限が与えられております。スウェーデンのオンブズマンの場合は、まず、これはスウェーデン独特で、裁判所も調査の範囲に入っているんですね。裁判にも出席できますし、行政機関のいろいろな会議にも出席をすることができる。これは出席権を持っている。

 それから、視察権ですね。調査対象になっているどこの行政機関にも視察をすることができる。大体、スウェーデンの場合は、四十日か五十日、年に視察に行っていると言って、私がオンブズマンにお会いしたときに話がありましたけれども、出かけていって、ずっと、刑務所とかいろいろなところを見ながら、そこで服役者と話をしながら、そこで苦情が訴えられるとか、そういう形で視察権が与えられている。

 それから、調査権ですね。資料提出権、閲覧権が与えられておりまして、日本で川崎で導入する場合にいろいろありまして、プライバシーに関する、カルテとかそういったものもオンブズマンが見ることができるかどうかという議論がありまして、私は、オンブズマンは、ニュートラルであるために客観的に調査するには、あらゆる情報が見られるようにしなければ客観的に調査はできないわけだから当然であるということを言っておりますけれども、そういうように、資料を閲覧し、資料を要求する権利が与えられております。そういう意味で、客観的な調査ができるということであります。

 それから、影響はどういうところにあるかというと、調査の客観性、能力、卓越した知識、それからオンブズマンの威信、こういうものに基づいている。調査結果が、勧告をして、それでも従わない場合には、最終的には立法部と報道機関、そういうものに、立法部に報告をし、報道機関にパブリシティーをやる。パブリシティーまでやれば従わない行政機関はないわけですが、そういうように、公表するというのが有力な手段になっております。

 第四点といたしましては、自分のイニシアチブで調査する権限を持っている。これは職権調査と言っておりますけれども、スウェーデンの場合、一八一〇年から生まれまして、大体、一八〇〇年代というのはほとんど苦情はないんですね。年間七十件ぐらいだったと言っています。したがって、オンブズマンが視察に出かけていって、刑務所とかそういうところに行って、それでちょっときな臭いなと思えば職権調査で調べて、それを取り上げていってやる、そういうことが行われていたんですが、これは行政統制に非常に有効に働くということで、我が国のほとんどの地方自治体でも職権調査というのを、川崎でも私は入れるようにいたしましたけれども、これは非常に重要なことだと思います。

 第五点といたしましては、苦情の処理に当たっては、裁判所とは異なりまして、非常に直接的でインフォーマルで、しかも迅速で無料であるというところが裁判と違う点だろうと思いますね。したがって、無料ですから、私はハワイへ調査しに行ってきましたけれども、ハワイはハワイ島とかいろいろありますけれども、ハワイの州民は、直接コレクトコールでオンブズマン事務所に電話して、電話で受け付けて処理をするということで、非常に簡易、迅速に解決をするというのが第五の特色であります。

 それから、オンブズマンの機能と役割でございますけれども、今までお話ししたところをまとめますと、オンブズマンには、一つは、行政をコントロールする役割、機能がある。行政監視、行政統制というのが一つ重要な役割だと思いますね。第二点は、国民からの苦情を受理してそれを迅速に処理するという苦情処理機能というのがある。第三点は、行政手続の欠陥や法令、規則に問題があれば、それらの改善を勧告する機能がある。

 では、行政改革とオンブズマンの改善機能というのはどこが違うんだという点でありますけれども、オンブズマンの場合は、あらゆる行政改革について勧告したり提言するのではなくて、調査した結果、そこに欠陥があって、それを続けていけばまた国民が被害をこうむるおそれがある、そういった場合には、規則とか手続の改善を求める、勧告をする、意見表明をする、こういうような意味での行政改善の役割であります。

 以上がオンブズマン制度の特色と機能でありますけれども、最後に、オンブズマン制度導入の必要性と課題というところを、私の論文の第九章に書いております。

 二百九十八ページから三百一ページ、私の論文の方を見ていただきますと、我が国のオンブズマン制度導入には、先ほど申し上げましたように、本格的なオンブズマン制度は我が国で現在導入をされていない、国のレベルでですね。西欧におきましては、六〇年代、七〇年代でほとんどのところが導入をされたということでありますから、率直に申し上げまして、非常に立ちおくれている。

 情報公開制度も、アメリカで情報自由法ができたのは一九六六年ですから、日本で、国でできたのは、九九年に可決、成立したのですが、これも三十何年間おくれているということで、オンブズマン制度も、西欧で六〇年代、七〇年代に必要とした、ビッグガバメントに対する対応、行政統制に対する拡充、それから苦情処理制度、この三つの必要性というのは、日本でも六〇年代に生じていた。したがって、現在においては必要性がますます増大をしているという意見を私は持っております。

 そこの私の、必要性の理由の第三のところに、行政事件訴訟とか行政不服審査、苦情相談、行政監察、現行の行政救済制度には幾つかの制約があるということを書いております。オンブズマン制度研究会も既存の制度を評価、検討しておりまして、行政事件訴訟制度については、「国民の権利救済の手段として重要な役割を果たし、国民からみていわば権利救済の最後のとりでともいうべき存在となっている」、こういうように評価しておりますが、この制度には、訴えを提起するに当たっての厳格なスタンディング、原告適格、訴状による訴え、出訴期間などについては処分または採決があったことを知った日から三カ月以内に提起しなければならないなど、それから審理期間の長期化などの課題がある、こういう指摘がされております。

 行政相談委員制度については、先ほど申し上げましたのでここでは繰り返しませんけれども、そういう必要性があるということ。

 それから、可能性については一体どうなんだろうか。これは、憲法に設けるのは、とにかく重要な制度でありますから、位置づけるということは非常に重要なことで、憲法に位置づけることには私は非常に賛成でありますけれども、それでは憲法の改正をしなきゃできないかというと、法律によってオンブズマン制度を私は日本で導入することができると。これは、デンマーク、イギリス、議院内閣制をとっている国でありますから、法律で制度を導入することができるということは言うまでもないことであります。

 導入の課題がどういうところにあるかといいますと、レジュメに一から九つまで書いておりますが、これを全部やっておりますと時間がとてもいけませんので、幾つかのところをかいつまんでお話をしておきたいと思います。

 重要な点は、議会型オンブズマン設置か行政府型オンブズマンの設置かということだろうと思います。

 議会型オンブズマンの場合は、国民の代表により構成される国会に責任を負い、国会に所属する公職者である。運用上においては、立法部から独立した中立的な地位を確保する。行政府型のオンブズマンは、行政の長、例えば、国の場合でいうと内閣総理大臣、都道府県とか市町村の場合でいうと都道府県知事とか市町村長が任命するとされる公職である。ということで、議会型オンブズマンも行政府型オンブズマンも、いずれも日本で設置することが可能である。

 国でつくる場合に、議会型と行政府型の利点とマイナスというのがある。両者を慎重に比較する必要があると思いますが、行政の長が任命する行政府型オンブズマンの制度は、これはあくまでも内部統制である。要するに、みずから自己コントロールしましょう、そこにオンブズマンを置いて行政を監視したり国民の苦情を受けるという、非常に内部統制である。行政府や政治的影響から独立した地位を確保することに問題があるのではないか。一方では、行政の長の権限に依拠することにより、多くの案件を迅速かつ簡易、安価に処理することができるなどの長所を持っている。

 一方、議会型の場合は、議会が任命する制度でございますから、これは外部統制である。行政府から独立した中立的な立場から行政監視機能を公正に実施することができるという長所があります。ここにも幾つか問題がありまして、オンブズマンの任命に当たって、政党や政治的影響をいかに排除するかという課題がある。あるいは、オンブズマン事務局の独立性を確保し、調査能力のあるスタッフ組織をどのように整備するかという問題がある。

 いずれにいたしましても、国のレベルでオンブズマン制度を導入する場合は、議会型オンブズマンも行政府型オンブズマンも、いずれも設置可能であるということであります。

 いずれが適切であるかということでありますけれども、私は、行政府型オンブズマンよりも議会型の方が行政監視の機能はより有効に働き、国会に置くオンブズマンを制度化することに賛成であります。現行憲法の改正をしなくても、現行憲法の中で国会に置くオンブズマン制度をつくることができるという意見を持っております。

 これにつきましては、いろいろこの資料の中にも出ておりますけれども、肯定的な意見と否定的な意見が学界などでも議論をされてきております。憲法を改正しなければオンブズマン制度はできないということは、苦情処理というのは内閣に付与されている行政権にかかわるものであるということで、改正しなければできないという意見を持っている学者の先生もいらっしゃいます。

 私は、国会には、自分たち国会が意図したものを内閣が実行しているかどうかを監視する任務があると。行政統制は、国民の代表から構成される国会の重要な任務の一つである。この国会による行政統制を強化する手段として、さらに、国民が行政機関からこうむった不利益を救済する護民官として機能する中立的な第三者機関である立法オンブズマンの方がより適している。

 国民は、国会請願権というのがある、憲法十六条にありますようにね。だから、この請願権に基づいて、憲法の十六条を実定法で具体化する意味でも、国会に設けられたオンブズマンが国民の苦情を受け付けて処理をするということは憲法にかなっているというように意見を持っております。だから、苦情処理は行政権に属するということじゃなくて、ちゃんと憲法の十六条に基づいて処理することができるんだということであります。

 したがいまして、内閣は行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負い、立法の意図に沿い内閣が実施しているか否かを監視することは国会の重要な役割であり、現行憲法のもとで、国会オンブズマンの制度化は可能であり支障はないというような意見を持っております。

 そのほかの課題といたしましては、制度の名称をどうするかとか任命の手続、資格要件とか人数をどうするかとかいろいろ細かい課題がございますけれども、時間が少し過ぎておりますので、私の陳述をこのぐらいで終わりにいたしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

木下小委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

木下小委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦小委員 自由民主党の杉浦でございます。

 宇都宮参考人、きょうは本当に御苦労さまでございました。大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 私、弁護士をしておりまして、昭和六十一年に国会へ出させていただいたんですが、その前、弁護士会にいるときに、このオンブズマン制度について、弁護士会の委員会で真剣に検討した時期がございました。この資料四十二号の十二ページを見ておりますと、ロッキード事件が起こって、行管にオンブズマン制度研究会を設置した昭和五十五年ころじゃないかと思います。そのころ全国各地の弁護士会で取り上げて検討したんじゃないかと思います、正確には覚えておりませんが。それで、そのときに、オンブズマンというへんてこりんな名前で、何だこれはというようなことから議論が始まったように覚えております。

 会員の中に、IBA、国際法曹協会、弁護士の国際組織ですね、その理事をやっておられる方がいて、大変熱心に、日本に導入すべきだ、先生御指摘のように、もう各国では導入しているんだから日本も導入する時期に来ておるというようなことを力説されておったわけですが、一般会員といいますかメンバーは冷ややかでして、今私は覚えておりませんが、司法も国民の苦情、行政に対するチェック、その一翼を担うんであって、我々はまず自分たちの持っている機能を点検して改革することから始めるのが必要だというような結論に落ちついたように思います、あのときは。

 それ以来、私もオンブズマンなる言葉からはほとんど無縁の仕事をし、国政に入ってもそうだったんですが、きょう改めて先生からお伺いして、世界的にも一九八〇年、昭和五十五年以来えらい広がりを見せたようですし、また我が国でも、先生が大変御努力なさって川崎につくるとか、地方にたくさんのオンブズマン的、的といいますか組織が立ち上がっているというお話を伺いまして、初めて知りまして、我が国にも根づき始めたのかなというふうに思いました。

 きのうからいろんな資料を拝見しておりまして、参考人がオンブズマン制度の普及に大変な御貢献をなさっておるということを知りまして、改めて参考人に敬意を表する次第でございます。

 私ども国会議員は与野党問わず国政調査権がございまして、党としても厳しく行政をチェックしておりますし、政策の立案から実行に至るまで、我々は責任政党ですから、自民党の各部会なんかでも相当厳しくやり合ったり、国会の場でもやるわけです。

 情報公開制度が非常に進みましたから、各役所とも、もう非常に情報公開を進めておる。インターネットにホームページなんか開いて、余り公開し過ぎるものだから、私どもが突き上げられるぐらい。もう市民は読んでいますから、インターネットにこんなことが載っているけれども知っておるかとか言われて、いや、知りませんなんて恥をかくこともあるんですけれども、国民の行政に対する情報その他のアクセスは、もう昔の比ではないぐらいあるんですね。

 私どもも権限を持っておる。個人の議員としても党としても実行しておりまして、果たしてこのオンブズマン制度が、国会に置くことが必要なのかどうかという気持ちがないわけじゃございません。ないわけじゃありません。ただ、拝見しておると、我が衆議院にも、決算行政監視委員会に改組されたということでございます、私も、決算委員会があったのは知っていますが、こんなふうに変わったのはちょっと知りませんでしたが、もし先生がおっしゃったようなオンブズマンを置くとすれば、この委員会と密接な関係において置くことがいいんじゃないかと思うんですね。

 この調査会には事務局があって、物すごく優秀です、資料作成そのほか。だから、あの決算委員会にも、事務局じゃなくて、委員部とそれから調査室というのがあると思うんですね。各委員会とも非常に優秀な人材を置いているんですが、本当に十分に活用しているかどうか疑わしい面があるんです、委員をやっていまして。そのあたりでうまく仕組んだらどうかという感じもするんですが。

 先生は国会型のオンブズマンがいいとおっしゃるんですけれども、そのオンブズマン的制度をこの決算委員会との関係でうまく仕組めないかどうか、先生の御意見をお伺いしたいと思います。

宇都宮参考人 今の御質問に対しまして、国会に、衆議院に決算行政監視委員会、参議院にも行政監視委員会が設けられていますですよね。国民から苦情を受け付けて、それから行政監視も行われているということで、一歩前進だと思うんですよ。でも、いろんな課題があるんではないかなと。

 では、国民がこういう委員会を十分周知しているかというと、なかなか、知らないというケースがあるんではないかなと。その委員会に議員の皆さん方が何十名と今参加されておりますけれども、専門的にそれをやっているわけではないですよね。

 だから、オンブズマンの非常に重要な点は、私が懇意にしているハワイのドイさんという日系のオンブズマンが十何年間も初代からやっておりまして、もう亡くなられましたけれども、そのドイさんが私に言われるのは、オンブズマンの重要性というのは、専門家として四六時中行政機関をウオッチして見ているんだ、そこが、行政機関の方が非常に緊張して仕事をするようになる、そこにミスがなくなるんだということを言われておりました。

 それから、やはり、オンブズマンが効果があるには、国民がよく知っている、周知しているということが必要だと思うんですね。スウェーデンのオンブズマンというのは、省略してJO、JOと言っていますけれども、四人いますが、国民はだれでも知っているんですね。したがって、刑務所の方へ行きましたら、JOが来たといったら、もうみんなすぐ何か言おうというようにして、国民から周知されているということで、気軽にオンブズマンに訴えられるということと、非常に可視的である。オンブズマンは可視的でなくちゃ。可視的というのはビジブルであるということなんですが。

 そういうようなことで、この委員会と国会に置くオンブズマンとは、連携しながらやっていけるんじゃないか。私は、特に国政調査権の関係でいきますと、六十二条の両院に設けられる国政調査権というのは、委員会の方ではそれを十分活用できると思いますし、オンブズマンの調査権と調整しながら国民の権利利益を救済することができるんではないかな、連携できるんではないかな、そういうように思います。

 以上です。

杉浦小委員 終わります。

木下小委員長 次に、鹿野道彦君。

鹿野小委員 きょうは、参考人、宇都宮先生からいろいろお話を賜りまして、ありがとうございました。

 それで、一つお聞きいたします。

 先生は、このオンブズマン制度というのは、憲法上規定をすることもいいし、法律として設置することもできる、こういうふうなお考えでございますけれども、私個人といたしましては、むしろ、オンブズマン制度というのは、やはり国民の目線というふうなものを非常に大事にしなきゃならぬ、その国民の目線に立った権威というものを保持するというふうなことからするならば、やっぱり憲法上きちっと根拠規定した方がいいのではないか、こういうふうな考え方に立つわけでございますけれども、先生からもう一度、憲法上規定するというふうなことに対してのメリットと、何かデメリットがあるのかというようなことについて、お話をお伺いさせていただきたいと思います。

宇都宮参考人 私の意見としては、オンブズマン制度というのは、今の御質問にありましたように、国民の目線でやるということが非常に大切でありますし、国民に可視的である、そこから、非常に威信というのが重要だというように思っておりますので、オンブズマン制度というのを憲法上根拠に置くということは賛成であります。

 それで、メリットとデメリットがあるか。メリットというのは、憲法上重要な制度を位置づけるという点は、それはやはり、重要な制度であるということで、非常にメリットが大きい。デメリットというのは、それほどないんではないかなと。

 憲法の根拠を受けて法律でちゃんとした細かい制度をつくっていくということがあるべき姿かなというように思いますけれども、そうかといって、憲法を改正しないとできないという意見ではなくて、現在の現行憲法の中で十分法律でオンブズマン制度をつくることができるという意見を持っております。

 以上でございます。

鹿野小委員 先生からいたしますと、もう憲法上規定しなければならないということならばいつになるかわからないから、そういう意味では法律としてもできるんだ、わかりやすく言えばそういうお考えだということを認識させていただきましたけれども、各国の例を見ますと、憲法上規定している国が多いというふうなことからいたしまして、この制度そのものは、やっぱり憲法上の規定というふうなことが望ましいんではないかな、こんな思いを改めて申し上げたいと思います。

 それからもう一点は、行政相談委員の人たちが長い間積み上げてこられて、先生のお話によりますと、日本型オンブズマン、こういうふうなことで役割を果たしてきておるわけでございますけれども、オンブズマン制度と行政相談制度というふうなものの、いわゆる役割というんでしょうか、行政相談委員の人たちでは果たし得ない役割というふうなものが果たしてどういうふうなところになってくるのかなと。いわゆる役割分担というふうなことになるんでしょうか。この辺について先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

宇都宮参考人 行政相談委員制度と例えば国会に置くオンブズマン制度との関係でございますけれども、行政相談委員というのは全国に五千人近く任命されて重要な役割を果たしていると私は思っていますが、国会に置くオンブズマン制度、行政苦情受け付けをやりますけれども、非常に専門的な能力のある組織になると思うんですね。イギリスあたりでは調査能力、イギリスのオンブズマン制度というのはロールスロイス的調査能力を持っている。最高級車ですけれども、最高級車と言えるぐらいの調査能力のある組織を持っているということで、専門的能力と知識を蓄えているということです。

 現代社会というのは、さまざまな行政組織がさまざまな行為をやっておるわけですけれども、非常に専門的な能力とか知識が必要になってきているということで、法の解釈とかそういう能力も必要でありますから、非常に困難な苦情とかそういったものはやはり国会オンブズマンが対応できるということで、両者は、屋上屋を架するということではなくて、連携しながらやれる。一方は、行政相談委員制度というのは内部統制でありますから、それは自己管理をやるということで、政府の方が、行政機関の方がじっくりやればいい。連携しながら、より拡充した国民の権利利益というのを守る制度ができ上がっていくのではないかな、こういうように思っております。

鹿野小委員 地方自治体は行政府型オンブズマン、こういうふうなことでございますけれども、先生から、議会型オンブズマンは今の現行法からは難しい、こういうようなお話でございましたけれども、実質的に議会に事務局を置くことができる、こういうふうなことになっておりまして、総務省の判断は、議会に事務局を置くことができるから事務局だけなんだ、こういうふうな解釈です。しかし、私は、もっと幅広く、議会にも置くことができるんじゃないか、こういうふうな解釈もできるんじゃないかと思うのでございますけれども、この辺のところ、先生、川崎市初め地方自治体に長い間御関係なされてきた先生として、お考えをお聞かせいただければと思います。

宇都宮参考人 川崎で制度をつくる場合に、いろいろな議論がありまして、現行法上は事務局を置くことができることになっているんだけれども、解釈上は議会にオンブズマンを置くこともできるのではないか、そういう解釈もとれるということで、私は置けるんじゃないかという意見を持っているんですが、ただ、早くその制度を立ち上げてやるということになると、やはり附属機関として立ち上げる方が無難ではないかなというオンブズマン制度研究会の意見が大半でありまして、そういう結果になったわけでございます。

 以上です。

鹿野小委員 簡潔に先生のお考えをお聞かせいただきたいと思いますが、日本の国に、国民性も含めて、オンブズマン制度というのはなじむんでしょうか、合うんでしょうか。この辺のところのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

宇都宮参考人 私は、日本の風土にオンブズマン制度というのは非常になじむと思います。

 といいますのは、川崎で初代オンブズマンをやられていました弁護士の先生がいらっしゃいますけれども、その弁護士の先生が私におっしゃるには、オンブズマンというのは日本の風土に非常に合っている、というのは、苦情を訴える人と面談をし、行政側とも面談をして、非常に、説得をしながら、対話をしながら解決をしていく、そういう意味では非常に日本の風土に合っているのではないかと。私はそういう意見に賛成でありまして、合っていると思っています。

鹿野小委員 ありがとうございました。

木下小委員長 次に、福島豊君。

福島小委員 宇都宮先生には、本日、貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 私は、個人的には、オンブズマン制度についてきちっと憲法の中で位置づけるという御意見には賛成であります。それはそれとしまして、今のこの日本の政治状況、そしてまた国のあり方についてどう考えるのか、このあたりのことを議論したいわけであります。

 日本の行政機構というのは、これはよく指摘されておりますのは、第二次大戦で日本は敗戦をしたわけですけれども、国のシステムとして、行政機構というのは戦前と同じままで残った唯一のものであるというふうに指摘をされているわけであります。

 したがって、日本の行政機構というのは、国民主権のもとで国民に奉仕するというシステムではなくて、むしろ官僚機構が国民を統治するというような意識が、私は、官僚機構の中にも戦後しばらくあったというふうに思いますし、今でもその残滓が残っているのではないか、そんなような気もいたしております。ですから、行政相談委員制度というのは、ある意味では、みずからが管理するところの国民の苦情を聞いてあげるというような仕組みに近いのではないかなという印象もあるわけです。

 もう一つは、日本の特異的なところは、三権分立でありますが、行政府と立法府というものが判然としないというところに一つの特徴がある。先生の先ほどの御指摘は、行政機構は非常に肥大化をした、その中で、立法府は、行政機構というもの、行政府を十分監視することができないので、一定のそういうオンブズマンのような制度というものが立法府をむしろ助けるものとして必要なんだ、出てきたんだという指摘であったと思います。しかしながら、日本では、確かに行政機構は肥大化したわけですけれども、一体化しておりますから、そうした必要性を感じなかったということもあるのではないかというふうに思うわけであります。

 例えば今、年金の話で問題になっておりますのは、積立金でグリーンピアをつくった、国会で大変追及されておる。与党におきましても、この積立金の問題というのをどうするのかということで昨日一定の方向を示しました。グリーンピアをつくった当時というのは、なぜこういうものができたのかというのは法律にも書いてありませんし、いつの間にかするするとできてしまった、こんな話のようですね、聞くところによりますと。ですから、そういうことを考えますと、立法府が行政府を監視するという仕組みとして当然要請されたんだと思います。しかしながら、そういうふうにはならなかったので、グリーンピアのような問題も起こったんだというふうに率直に言った方がいいんじゃないかというふうに私は思っております。

 こうした日本の国の政治のあり方、その歴史、そういうことを踏まえて、オンブズマン制度というものは日本に果たして受け入れられるかどうか、これは批判的な意味合いで言っているわけですけれども、先生はどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

宇都宮参考人 一体化とかいろいろ問題を指摘されましたけれども、そういう問題があるからこそ、私は、独立した権限を持っているオンブズマン制、オンブズマンが客観的に調査をしていくという意味で非常に効果があるのではないかなというように思います。

福島小委員 私は、議会型のオンブズマンというのがいいんだろうというふうに思うんですね。思うんですが、実際には、先ほども、党派性というものをどう超越して中立的なものをつくるのか、これはなかなか難しい、こういう御指摘だったと思います。私もそうだろうなと。現実問題として、そういうものをつくると、これは与野党の闘いの政争の具になってしまうんではないかというような気が痛切にいたしますが、先生はどのようにお考えでしょうか。

宇都宮参考人 これは日本だけではないと思いますけれども、議院内閣制を採用しているデンマークとかイギリスにおいても、イギリスは女王が任命しておりますが、やはり政治的影響力というのを任命に当たっては排除するということが基本だと思うんですね、超党派で任命するということですから。

 例えば、オンブズマンになる資格というのは、一体どういう人が適任なのかという問題も含めまして、一般的には、人物高潔で行政に通じている人、あるいはスウェーデンとかデンマークにおきましては、デンマークは法学の教育を受けているとかいろいろ資格の要件があるんですが、そういう意味では、やはり国民によく知られていて、人物的にも高潔である。スウェーデンあたりは最高裁判事と同等の人たちが任命されておりますけれども、そういう人がオンブズマンの候補に挙がってくれば、国会においても超党派で任命をされていくんではないかな、そういうように期待をしております。

福島小委員 最高裁の方がそれだけ信頼を得られるかどうかというのも、よくわからぬところが個人的にはありますけれども……。

 前提として、オンブズマン制度がうまく国において機能するというのは、私は、国民のセルフガバナンスの意識というのは非常に大切だと。自分自身が自分の国を治める、国民主権というのは、せんじ詰めて言えばそういうことだと私は思うんですけれども、日本の国民の意識は果たして、これは、こんなことを言ったら国民に対して非常に失礼な話になってしまうわけでございますけれども、どうなんだろうかと。

 この点については、先生、いかがお考えですか。

宇都宮参考人 国民の意識につきましては、私は、主権者としての意識というのは非常に高まってきているというように思います。

 といいますのは、西欧でも議論されておりますけれども、イギリスにおいては、ロンドン大学で、ギデンズというブレアのブレーンの一人なんですが、最近は、よく議論しているのは、民主主義の深化ということを言っているんですね。民主主義の民主主義と言われておりますけれども、そういう意味で、今後、我が国においては市民社会の成熟化という問題もありまして、その中において国民なり市民がどういうような役割を果たしていくのか。そういう動きの中で、さまざまな活動が芽生えてきておりまして、それはやはり意識といいますか、政治というのは、みずから政治に参加して、あるいは行政が担っている点も市民が担っていくんだ、こういうような意識が高まってきておりますので、民主主義の発展にとって非常に、そういう意味では、積極的に市民の意識というのは高まっている、こういうように考えております。

福島小委員 これからの十年ぐらいというのは、私は国民にとっても大変だと思うんですね。例えば、財政再建をしようと思えば増税が必要でありますし、社会保障制度の改革というものも極めて厳しいものとなるかもしれない。そういう中で、国民にとって、政府が信頼されて改革を行うためにも、こういったオンブズマンのようなものが同時に存在した方がむしろ私はいいんだろうというふうに思っていますけれども、この点について、最後に先生に御意見をお聞きしたいと思います。

宇都宮参考人 私も同様に、やはりビッグガバメント、そういう大きい行政国家の時代でありますから、そのうちの必須の一つの重要な制度として、二十一世紀において我が国が、非常におくれておりますけれども、オンブズマン制度を非常に重要な制度として位置づけて、これを設けていくことは重要なことでありますし、ぜひその辺のところを御検討いただきたいな、こういうように思っております。

福島小委員 ありがとうございました。

木下小委員長 次に、山口富男君。

山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。

 私どもも、このオンブズマン制度については、一九七〇年代から一貫して導入を提案してきた党なんです。十年ほど前には、行政監視院の法案もつくりまして、やはり国会のもとに独立の機関としてこういうオンブズマン制度の機構を設けるべきだという提案をいたしました。

 それで、これについては、一つは、国政の最高機関としての国会としての行政監督権や六十二条の国政調査権もありますし、それから、きょう参考人が指摘されましたように、国民の苦情や請願という意見の表明からして十六条にもかかわるというお話だったんですけれども、憲法論上のオンブズマン制度の位置づけとしては、そういう国会の国政調査権という面と、それから国民の十六条にかかわる面、そういう形で包み込まれているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

宇都宮参考人 国会でつくる場合の現行法上での根拠としては、よく議論されているのは、苦情処理というのは内閣に付与されている行政権に属するんだということで、憲法を改正しなきゃできないという議論があるんですが、私は、苦情処理というのは、十六条の請願権で、国会で国民の苦情を受け付けて処理するということは、憲法に認められていることであると。

 それから、国政調査権との関係で、六十二条の関係でありますけれども、これについてもこの資料の中でも取り上げられておりますが、要するに、国会というのは行政監督権がある。行政監督権、もちろんあるんですが、私は、もう少し広く、行政監視権ということを言っているんです。国会には行政監視権、権利があると同時に責任と義務があるんだろうと思うんですが、その行政監視権の中に、内閣に対する行政監督権というのが入っている。

 それから、個々の行政機関の行為あるいは行政機関の行為の結果、ここにまで行政監督権というのは及ばないんじゃないかなという議論がこの中にもされておりますけれども、私は、広い意味での行政監視権というのは、内閣に対する全体的な行政監督権と合わせて、国会には、個々の行政機関、国土交通省の行政行為とか、それぞれ、公務員の行政行為の結果とか、こういう個々の行政の行為についても、国会というのは、当然、監視権の中にそういうものも入るんだということであります。

 国政調査権というのは両院に設けられておりますけれども、これとオンブズマンの調査権というのは、両方とも有力な調査をする手段になりますので、矛盾するものではなくて、両者を連携しながら、国民の権利利益を守るために使える一つの有力な道具である、こういうように考えております。

山口(富)小委員 私も、憲法改正の必要はなくて、おっしゃるように憲法論上の位置づけを持っているし、かえって、憲法の定めからいくと、この機能をもっと強めなきゃいけない、具体化しなきゃいけないという意見を持っております。

 さて、もう一点お尋ねしたいんですが、先ほど、日本の場合、立ちおくれがあったという指摘がありました。それで、事務局の資料で、一九七〇年代後半から八〇年代以降のオンブズマン制度導入に向けた動きの中で、十二ページから十三ページですけれども、特にオンブズマン制度研究会報告の問題なんですが、これを見る限り、行政府のもとに置かれるという点でいうと、私は独立性の問題で疑問を感じるんですが、立ちおくれという認識を参考人はお持ちになっているわけですけれども、少し、この研究会での報告の到達点についてどういう評価をお持ちなのか、示していただきたいと思うんです。

宇都宮参考人 立ちおくれということを申し上げましたのは、先進主要国は五〇年代から導入が始まって、七〇年代、八〇年代でほとんどの国がこれを導入してきている、それから三十年ぐらいたっても日本では国のレベルで本格的なオンブズマン制度がまだ導入をされていないということで、かなり立ちおくれている。これは、情報公開制度も同じように三十年ぐらいおくれてできたんですが、これはできたんですから評価はしなきゃいけないと思いますが。そういうことで立ちおくれというのを申し上げたんですが、立ちおくれの中で、いろいろ議論がなされると思いますけれども、これは政権の問題とかいろいろなことがあっておくれたんじゃないかなと思いますけれども。

山口(富)小委員 八〇年代のオンブズマン制度研究会報告についての評価について。

宇都宮参考人 これは最終報告書が出ておりますけれども、これにつきましては、その報告書の中で、行政府型オンブズマンの制度を導入することを提言しておりますね。それは、先ほど私が申し上げましたように、内閣に付与されている行政権の関連で、行政機関の行為の結果について調査をしたり苦情を受け付けるというのは行政権に属するものなんだ、したがって、現行法上の中では行政府型オンブズマンを設置するのが適切である、こういう報告書になっておりますけれども、私の意見としては、議会型も行政府型もいずれもできる、これはもう既にお話ししたとおりでございます。

山口(富)小委員 それから、民間オンブズマンなんですが、先ほど、機能の分類としてはオンブズマンというとらえ方をしない方がいいんじゃないかというお話があったんですけれども、全体として、この活動というのは、日本の特に地方政治の中で、行政監視という点で、あるいは苦情の実際の処理という点で非常に大きな力を発揮してきたと思うんですが、参考人が機能の区分の点ではオンブズマン制度ということに区分けしない方がいいんじゃないかという御意見をお持ちだとしますと、どういう位置づけを民間のオンブズマンの活動については見ていらっしゃるのか、その点、お願いいたします。

宇都宮参考人 先ほども申し上げましたけれども、私は、公的オンブズマンと民間オンブズマンというように類型化した場合に、日本におけるいわゆる市民オンブズマン、これは民間オンブズマンに類型化すべきではないという意見を持っているんですよ。

 といいますのは、世界各国でもいろいろな問題が起きておりまして、名称の問題ですね、デンマークでもニュージーランドでも、何でもオンブズマンというような名称をつけるというようなことになりますと国民の混乱が起こってくるということで、デンマークは法律改正で名称の使用の規制が行われています。ニュージーランドの場合も法律改正で名称の規制が行われていまして、ニュージーランドの場合は、一定の基準を満たしたものを、首席オンブズマン、代表オンブズマンがそれを承認すればオンブズマンという名称を使ってもいい、こういうことになっておりまして、ニュージーランドの場合は、銀行オンブズマン委員会、それから銀行オンブズマン、これが名称を使ってもいいというように承認をされております。

 というのは、一定の基準ですから、本来のオンブズマンと同じような制度、例えば、苦情があれば苦情を受け付けて迅速に処理する、非常に公平な調査ができるとか、そういう一定の基準が設けられている、そういうのは民間オンブズマンだというように位置づける。また、私はこういうようにすべきだろうと思うんですね。

 我が国の場合は、いわゆる市民オンブズマンというのは、私は行政監視の面で非常に重要な役割を果たしてきているというように評価をしているわけですが、ただ、同じ自治体で同じ名称を使っているところがあるんですね。そうすると、市民が非常に混乱をするというようなことがありまして、自称、自分がオンブズマンだと言うのは、だれでもこれは自称オンブズマンと言えるわけでありますから、その辺のところは、名称の使用については慎重に検討する必要があるのではないかなというように思います。

山口(富)小委員 きょうは、オンブズマン制度について、憲法論上の位置づけでも現状でも大変豊かなお話をいただけたと思います。ありがとうございました。

木下小委員長 次に、阿部知子君。

阿部小委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 本当に、今山口委員もおっしゃいましたが、私にとっても大変に有意義なお話をいただきまして、まず冒頭、お礼を申し上げます。

 私は、まず第一に、きょうの参考人の基本的な御趣旨である議会オンブズマン、立法府の定めるオンブズマン制度について、さらに充実させていくためにどうすればいいかということでお伺い申し上げます。

 一九九八年に参議院の方では行政監視委員会、それから九七年、衆議院では決算行政監視委員会となりましたこの委員会というものも、参考人がおまとめいただきました文章等々を拝見いたしますと、まだまだその意味で、本来的な議会オンブズマンとして目指すべき理想とのギャップといいますか、まだいろいろな点で問題があろうというふうに、これを拝読しながら思った次第であります。

 そこで、私は、一点目は、いわゆる会計検査院の機能ということに関しまして、行政監視委員会でも、かつて、ODAの支出に関しまして会計検査院に命じてチェックをさせてという事例がございましたが、先ほど福島委員のお話しになりました、例えば年金積立金の現状での問題がどうであるか等々も、本来は、会計検査院の機能が、さらに行政からも、ある意味で内閣からも真に独立してチェック機能が働いておれば、もうちょっと違ったのではないかと思う次第であります。

 そこで、例えばアメリカ等の会計検査院は、これは国会に附属するものとなってございますし、会計検査院の我が国におけるあり方と、それから、これ自身、オンブズマン制度そのものというよりは、広い意味でのオンブズマン制度の意味するものとも関連すると思いますが、会計検査院のありようの充実と、一方、もしもそれ以外に、このオンブズマン制度を現在議会に設置された場合に、特に予算執行状況等において国民に利するところがどのようにありやということを教えていただけますでしょうか。

宇都宮参考人 会計検査院のあり方の問題でございますけれども、アメリカではGAOというのがありますね、会計検査院というのが。GAOの役割というのは、プログラムレビューの評価なども非常に細かく吟味をしておりまして、日本で言う会計検査院よりももっと広い範囲の役割を果たしてきている。そういう意味からも、もう少し、日本の会計検査院というのは、GAOのような体制に確立することも検討に値するのではないかなという意見を持っております。

 それから、議会にオンブズマンを置いた場合にどういうようにして拡充をするかということですけれども、オンブズマンというのは職権調査があるんですね。だから、会計検査院の決算というだけではなく、オンブズマンの調査というのは、行政行為全般にわたってそれをウオッチしているという役割がありますので、いざ必要であれば、みずからの意思で調査に入ることができるということで、例えば、静岡県で、市民オンブズマンが、警察の食糧費の関係で最高裁まで行って、開示しろということになりましたけれども、もし静岡県でオンブズマンというのがあれば、非常に迅速に解決されていたと思うんですね。オンブズマンはすべての資料を見ることができますから、警察情報でも見ることができますので、解決できるのではないかなと思う。そういうような効果があるのではないかなと思います。

阿部小委員 あと、先生からちょうだいいたしました中に、議会に議会オンブズマンを設けるときのことに引き続いて伺いますが、現在ある行政監視委員会で、一、二、三と小分けしてございます第二に、行政監察計画ということなどについての調査であると書かれておりますが、この行政監察計画ということは、現在の行政監視委員会で十分になされておりますでしょうか。

宇都宮参考人 私は、行政監察計画について今十分フォローしておりませんので、それはちょっと……。

阿部小委員 申しわけありません。

 あと、情報公開制度がたしか一九九九年からできまして、これを逆に、鬼に金棒と申しますか、こうしたオンブズマン制度とリンケージさせて、さらに国民にとって、市民にとってよりよい行政のあり方というのを求めていけると思いますが、まだ情報公開制度も十分に活用されていないし、例えば、市民として情報公開請求すると真っ黒けになって出てくるものもございますのです。

 参考人がお考えになる、さらに一歩、情報公開とこのオンブズマン制度をリンケージして進めていくということについて、何か御示唆がございましたらお願いします。

宇都宮参考人 情報公開制度とオンブズマン制度というのは、私は、公正な行政と開かれた透明な行政というのを確立していくということが二十一世紀の重要な課題だろうと思うんですね。開かれた透明な行政というのは、アカウンタビリティー、説明責任の問題もあるんですが、情報公開制度というのは、私はもう一歩進めていくべきではないかなと。

 アメリカにおきましては、六六年に情報自由法ができて、一九九六年に電子情報自由法というのができた。アメリカはもっと先に行っておりまして、要するに、情報公開制度というのは、開示請求をしてから、そういう手続をしてから、それを開示するかどうかを検討して、適用除外条項が適用されなければ開示してもいいということになって、国民は情報を得られるんですけれども、非常に手間と時間がかかる。

 私は、政府情報のほとんどは開示してもいい情報だと思うんですよ。適用除外情報というのは非常に限られたものだと。それで、ほとんど開示できるものを、公開手続で非常に手間暇かける手続をやってやっと公開できる、情報が開示されるということでは、この二十一世紀の民主主義の深化に対応できないんではないかなということで、アメリカはもうとにかく、情報公開制度というのは非常にコストもかかるわけですから、公開できる大半の情報はすぐ見られるようにしようということで、そういう開示手続はしなくても提供して、閲覧して、利用可能にしようというように進んでいっております。そういう方向に日本の情報公開制度も進めていくべきだろうと思います。

 そういうことで、公正な行政の確保と開かれた透明な行政の確立というのは、両方とも二十一世紀の非常に重要な装置だと思いますが、連携することによって、より国民の権利利益とか国民の要求にこたえていくことができる、こういうような意見を持っております。

阿部小委員 大変示唆に富むお話で、ありがとうございます。

 最後に、お礼を兼ねて、私は藤沢市でございますが、先生がかかわってくださった行政のオンブズマンのおかげをもちまして、市もより開かれた行政になっておりますので御報告を申し上げます。

木下小委員長 次に、杉浦正健君。

杉浦小委員 私、先生のお話を伺って、資料を読ませていただいて、日本でこの種制度を進めていくとすれば、先生が非常に御尽力いただいた地方、まず地方で進めていくことが大事なんじゃないかというふうに思います。つまり、ビジブルという意味で言いますと、市町村に置かれますと本当に市民から見えますね。

 例えば、中央政府となりますと、国民から見ると非常に遠いところになるわけで、しかも、中央については、議会も国政調査権を行使して非常にきっちりやっておるんですね。予算委員会なんというのは、まさに行政不祥事追及委員会みたいな感じがするぐらい厳しくやっておるんですね。ですから、私は、まず地方からやるのがいいのではないかという印象を持っております。

 ユニークな我がふるさとの例を紹介させていただきますと、今私は岡崎市なんですけれども、三年前に市長が当選したんですが、市民主導型市政というスローガンで当選されまして、その公約の一つに、新しい課を設ける。教えてくれません課というユニークな課を設けちゃったんです。市民相談室を改組しまして強化して、三十人規模、玄関入ったところに教えてくれません課という課ができたんですね。

 それで、ここは、市民からの苦情、相談、何でも受け付ける。見ていますと、来庁する人、電話の人、文書をよこす人、提案箱というのが支所なんかに置いてあるんですが、そこへ入れる人、はがきをよこす人、電子メールまで、いろいろありまして、三年やっておりますと、大体、毎年二万件ぐらい、三十五万市民で二万件。私の女房ももう二回電話をしておるんですけれども、電話したら出かけてくる。マニアもいるそうですけれども、毎日、朝来て粘る人もいるらしいんですが、物すごいのが来る。

 そして、受け付けるだけじゃなくて、その受け付けたものは必ず市長は見るそうです、何が来たか。市長は必ず見る。一日平均千五百件ぐらい。ともかく一応目を通す、どういうのが来たか。そして、そのうち、担当課に処理すべきものは処理させる。必ず返事をする。できないならできない、できるのはできる、できないのはこういう理由ですというのを付して必ず手紙で返事をする。処理させないものは、それはだめですということで口頭で処理してしまう。それが七五%。二五%は必ず担当課で処理させて対応するということをやっておって、これは市民に非常に評判がいいですね。

 それからもう一つは、出前の市政といいまして、公聴会に出かけていく。今までの市長がやっておったのは選んだ人の質問ですが、今度は無差別、三時間なら三時間、手を挙げてどんどん言ってもらう。部長を連れて行く。それで、出た意見は、できるものは説明をする、検討するものは持ち帰って、同じように検討して返事をするというのを三年間やっておるんです。市民の評判もすこぶるよろしいですね。苦情の処理、相談事というのは、うちの市だと市長みずからがオンブズマンでやっているような印象を受けます。

 私は、そういう草の根レベルで、先生にもっと御指導いただいて、川崎とか、いい例がたくさんあるようですから、それをもっと広げてやることが大事だし、市民の相談事、苦情というのは身近なところで多いんです。通産省が何とかというのは余りないように思うんですが、先生の御意見はいかがでしょうか。

宇都宮参考人 私も率直にそういうように思っておりまして、やはり市民は気軽に自分の申し立てたいことを聞いていただけるということが非常に重要で、それは、市民相談とか市民の受付窓口とか、そういうことがいろいろな自治体でも努力してやられておりますから、非常にその制度は重要なことですし、そうかといって、それでは公的なオンブズマンが必要でないかというと、非常に複雑で、あるいは行政側からいうと、大変なこと、大変な不公正なことが行われているものが市民相談の中で上がってくるかというと、なかなか上がってこないケースがかなり見られるということで、既存の市民相談と公的な地方のオンブズマンというのがうまく連携していけば、市民の権利利益を守る制度として実を上げていくんではないかな、こういうように思っております。

杉浦小委員 つけ加えますと、岡崎市の場合は、教えてくれません課で絶対やらせているのは、岡崎市は行政相談委員というのを置いております。相談のうち、人権擁護委員とか行政相談委員に必ず連絡をとることというのもこの事務に入っておりまして、行政相談でしたら必ず相談委員と連絡をとる、その上で所管課に持っていくというふうにしておるようです。申し添えておきます。

 実は、国政レベルでも今も聖域なき改革でいろいろやっておるんですが、司法改革も、この関連法案がたくさん出ますが、見違えるようなふうに生まれ変わると思います。例えば、裁判にも裁判員というのを、国民参加にするとか。

 この関係でいうと、通称司法ネットと言っていますが、法律扶助協会とか、あるいは弁護士会とか都道府県とか、相談窓口をネットして、国民から相談、苦情を受け付ける窓口を津々浦々までつくろう、それで裁判所とか法務局、そういう公の施設を利用して、人も配置するという壮大な独立行政法人を新たに立ち上げることにしました。これは、法の支配といいますか、法の光を国民にすべて広く均てんしよう、今まである窓口を統合して、さらに過疎地域には新設して相談を受け付けよう、これは司法の世界ですけれども、そういうこともやっております。それから、行政訴訟も、かた過ぎますから、もう少しやわらかくしよう、さまざまな試みをやっておるんです。

 ですから、中央レベルでオンブズマンを置く必要性というのはさまざまな角度から検討する必要があると思うんですが、先ほどの質問でも言いましたが、決算行政監視委員会ですか、この機能をもう少し強化して、あるいは事務局、この憲法調査会みたいな強力な事務局を置いて、苦情も受け付けるというふうに改組するとか、いろいろ工夫したら、議会はしっかりしておりますので、与党も、野党の追及も厳しいし、オンブズマン的機能はこの委員会とその事務局の強化である程度カバーできるんじゃないのかなという感じもするんですが、先生、いかがでしょうか。

宇都宮参考人 司法改革とかそういう面で改革をされて、国民参加的なものがふえておりますし、行政訴訟関係でも改善をしていこうということで、国民の権利利益のために非常に有効だと思うんですね、改善されておりますので。

 それと、今の御指摘のように、国会での決算行政監視委員会ですか、参議院の行政監視委員会というのを拡充してオンブズマン的な機能をそこで充実していこうということで、拡充、充実することは私も賛成でありますし、そういう方向で進められる必要があるんではないかなと思いますけれども、では、そうかといって、それでは国会に置くオンブズマンがそういう機関が充実していけば必要でないかなという議論には、私は賛成できないんですね。

 だから、オンブズマンというのは、国会の監視権を拡充、充実強化していこうということで一つは重要な役割があって、要するに、専門的能力を持った人物がオンブズマンに任命されて四六時中行政機関を見守っている、これは専門的な能力と知識と情報を持っておりますから、そこに意義があると思うんですよ。

 私はイギリスのオンブズマンに何回もお会いしていますけれども、どういうところにオンブズマンの意義があるんですかと。それはもう、市民の苦情を受け付けて迅速に解決していく、それから、行政に対して、市民の苦情が必ずしも正当な苦情を訴えていない場合がある、その場合には、市民の言われていることは正当性がないですよと言うこともできる。したがって、オンブズマンというのは反行政ではないということを言われておりましたけれども、その存在意義の中で、要するにオンブズマンというのが存在しているというところに意義があるんだと、存在し続けていると。それは、苦情件数がどのくらいあるということではなくて、オンブズマンが四六時中監視をしているというところに意義があって、そうすると、官僚機構の官僚は、あるいは行政官というのは、いつも緊張しながら仕事をしている、それでミスのないように仕事をしている、これが非常に効果があるんだ、こういうことを申しておりましたけれども、私は、まさにそうだと思うんですね。

 したがって、この国会に設けられている監視委員会とかそういうものと国会に置くオンブズマンというのは、両者が連携することによってより有効な制度になる、こういう考えを持っております。

 以上です。

杉浦小委員 どうもありがとうございました。終わります。

木下小委員長 次に、辻惠君。

辻小委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 オンブズマン制度を考える場合の私の問題意識を冒頭で若干申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 世界的に見て、政府、行政府が非常に強くなる傾向がある。特に議院内閣制のもとでは、しかも政権交代が起こらない議院内閣制のもとでは、ますます行政権が肥大化し、行政国家化していく。しかも、行政の概念について、行政控除説ということで、司法と立法を除いたものが全部行政に含まれるというような考え方に立った場合に、ますます行政国家化が加速される。そして、チェック・アンド・バランスで行政なり立法に対して役割を果たすべき司法が、司法消極主義というものを現在の日本がとっていて、現実に機能していない、本来の三権分立の原理原則が現実に機能していない、そのような現状を何とかしなければいけない、こういう問題意識を私は持っております。

 そのためには、まず、行政と立法を分離して、ある意味では大統領制的な要素で統治機構を考える必要があるということが一つあると思います。また、司法消極主義を脱するために、憲法裁判所的な物の考え方も必要なのかもしれない。そして、行政というふうに言った場合に、地方行政は行政とは違うんだという意味で、地方分権を徹底させる必要があるというような考えがあると思います。

 ただ、具体的には、どのように政策的にそれを一歩一歩前進させていくのかということが問われている。地方分権を徹底させるということが一つは重要でありましょうし、司法消極主義をどのように改善していくのかということが問題ではなかろうか。

 私は、先ほど杉浦委員がおっしゃられました司法ネットが、むしろ、独立行政法人がそれを運営するという意味で、行政が強い影響力を持つ可能性がある危険性が司法ネットにはあるんじゃないかという問題意識を持っております。

 そのような一連の流れの中で、国会の機能を強化していくという観点において、オンブズマン制度の持つ役割、意味、重要性というものが大きなものがあるんではないかというふうに考えております。参考人も、私が伺う範囲では、その点においては同じ問題意識を持っていただいていらっしゃるのかなというふうに思いますが、今日本でオンブズマン制度を国政の機能を強化するという観点で考えたときに、一般オンブズマン、そして特別オンブズマンという二種類があるというふうに参考人はおっしゃっていると思いますが、具体的にどのようなものを想定することが可能なのか、この点について伺わせていただきたいと思います。

宇都宮参考人 国会に置くオンブズマン制度というのは、国会の監視権ですか、そういうものを充実強化する意味で重要である、こういう意見を持っておりますが、まず、私は、国会に置くのは一般オンブズマンだと思うんですよ、全体的な。議会オンブズマンというのは一般オンブズマンでありますから。

 私は、特別オンブズマン、日本にはいろいろなニーズがあると思うんですね。例えば医療オンブズマンというのが英国で設けられておりまして、医療ミスとかそういうものに対して非常に重要な役割を果たしている。英国の場合は、国のオンブズマンが医療オンブズマンも兼務しておりますから、一人のオンブズマンが医療も全般のオンブズマンもやっているんです。医療の分野とかあるいは人権の関係、これは、自治体においては人権オンブズマン、川崎でも人権オンブズマンができておりますけれども、そういう管轄対象ごとの課題のオンブズマン。

 もう一つ、私はいろいろ主張もしてきているんですけれども、環境オンブズマンというのはやはりこれから重要になってくるんではないか。二十一世紀は環境の時代と言われておりまして、そうすると、次の世代の環境利益というのは一体だれが守るんだ、あるいは地球環境、地球益ということが言われておりますけれども、地球益というのはだれが守るんだということになりますと、環境オンブズマンというようなものも想定に入ってくるんではないかなというように思います。

 以上です。

辻小委員 特別オンブズマンとしていろいろなものが考えられると思うんですが、やはり、権力機関のいろいろな不透明な出来事、例えば刑務所の中でいろいろな暴行、虐待が行われて、これが明らかにならないというような意味におきまして、警察とか刑務所とか軍隊とかいうことに対する特別オンブズマンというものを設置する意味は大きなものがあると思うんですが、この点についてのお考えと、あと、日本においてこれを具体化するためにはどのようなものが想定されるのか、この点について教えていただけますでしょうか。

宇都宮参考人 これはオンブズマンの管轄範囲の問題だと思うんですね。

 スウェーデンのオンブズマンの場合は、裁判所も入っているんですが、警察も入っていますし、地方行政もすべて入っているんですよ。軍隊も入っているということで、軍隊については、またそれぞれ特別オンブズマンをつくっている国もあります。警察とか刑務所についても、スウェーデンの一般オンブズマンが管轄範囲に入れております。そういう意味で、日本では、警察オンブズマンの必要性を主張されている学者の先生方もいらっしゃいます。

 そういう意味で、私の考え方としては、国会につくられるんだったら国会オンブズマンが、警察も刑務所も、自衛隊ですか、そういったものも管轄範囲に入れて、広く取り込んですべきだ、こういう意見を持っています。

辻小委員 具体的に、どういうスタッフで、どういう権限で、どういう役割なのかというのを詰めていかなければいけないというふうに思いますけれども、その場合に、勧告の権限というのが基本なんだというお話だったと思うんです。

 ただ、お話の中では、直接的な行政を抑制することについてもオンブズマンは権限として含んでいいんだというようなお考えをおっしゃられたと思うんですが、是正措置のための、直接抑制の権限の内容としては、具体的にどのようなものをお考えになっておられるんでしょうか。

宇都宮参考人 行政に対する苦情というのは個々のケースですよね。個々のケースについて、資料閲覧権がありますから、請求権もありますし、原則としてあらゆる資料をオンブズマンは見ることができるということですから、客観的に調査ができる。苦情を訴えた方も、それから訴えられた行政機関についても、資料はすべて閲覧することができるということでありますから、客観的な調査ができる。それに基づいて、苦情の訴えに対して正当性があれば救済をするということで、行政機関に対して勧告をするということになりますので、それぞれ個々のケースについて、結果について調査ができるということだと思います。

辻小委員 時間がもうございませんので、今後またこのオンブズマン制度については、その実現に向けて、いろいろな場面で論議をし、具体的な提言等もなしていければいいなというふうに思っております。

 事務局の方から配付された資料の中で、きょうはオンブズマン制度と同時に準司法機関ということで取り上げられておりまして、これは、行政の公正性を保障するということとか、あと事後的な利害調整とかいうような機能ということで、オンブズマン制度とはちょっと位相を異にするのかなというふうに思うんですけれども、私は、意外とこれは捨てたものではないんじゃないかというふうに思うところがあります。

 例えば、労働委員会であれば、国労の不当労働行為について、やはりこれは違法であるということを中央労働委員会が出しております。また、公安審査委員会においても、オウムの破防法適用について、これは妥当でないというような意見を出している。公正取引委員会も、今独禁法の問題で独自の意見を出しておられる。

 つまり、今の裁判所が行政寄りでチェック機能を働かせていないという観点から考えたときに、この準司法機関が意外と役割を果たしている点があるんではないかということに注目しながら、これとあわせてオンブズマン制度の設置、拡充ということを考え、行政のチェックを制度的に実現していくべきなのではないかということをちょっと最後に申し上げさせていただいて、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

木下小委員長 次に、衛藤征士郎君。

衛藤(征)小委員 宇都宮参考人、貴重な御意見、ありがとうございました。

 御指摘ございましたとおり、このオンブズマン制度、スウェーデンに始まりデンマーク、ニュージーランドと国際的に普及していったわけですが、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド、いずれもこの三国は一院制の制度、国会が一院制なんですね。

 今、列国議会同盟の資料によりますと、百八十三カ国の中で一院制が百十五カ国あるわけでありますが、いわゆる一院制におけるチェック、そういう機能をも持つこのオンブズマン制度、そういうことと、いわゆる一院制と二院制におけるこういうオンブズマン制度の絡みといいますか関係といいますか、そういうものは何かあるんでございましょうか。

宇都宮参考人 私は、特に関係がないと思うんですね。一院制であろうと二院制であろうとオンブズマン制度は設置できるし、イギリスの場合は二院制でありますから。いずれも、議院内閣制をとっているところはできますし、大統領制をとっている、例えばオーストラリアでも連邦オンブズマンがつくられておりますので。例えば二院制の場合に、それでは両院でオンブズマンをつくるのかという議論もあるんですが、私は、両院で協議をして国会オンブズマンをつくればいいというように思っております。

衛藤(征)小委員 憲法におきまして、オンブズマンを裁判所と並ぶ権利救済機関として明文で位置づけることについては、参考人はどのようにお考えでしょうか。

宇都宮参考人 私は、憲法で位置づけるということは非常に賛成なんですね。何回も繰り返しておりますけれども、では、憲法を改正しなければできないかという意見ではない。法律でもできる、こういう意見を持っております。

衛藤(征)小委員 もしオンブズマン制度を憲法上明文化する場合は、どのような事項を憲法に明記すべきとお考えですか。また、特に独立性や関係行政機関の協力義務などを規定すべきではないか、このように考えられるんですが。

宇都宮参考人 どういう条文にするかというのは慎重に検討しなきゃいけないと思いますけれども、この資料四十二号の付録のところで、憲法でオンブズマンを規定している国の条文が一ページからずっと出ておりますけれども、オンブズマンの監視権とか苦情処理、あるいは行政改善に関するそういう役割、機能というものをやはり憲法の中で明文化していくというのが一般的なやり方ではないかなと。そこの中で独立性の確保や関係行政機関の協力義務的なものを入れるというお話だったんですが、そういうことを明文化に含めるということは適切ではないかな、こういうように思います。

衛藤(征)小委員 もう既に質問があったかと思いますが、もし我が国にオンブズマン制度を導入するとすると、いかなる国のオンブズマン制度が参考になるんでしょうか。お尋ねいたしたいと思います。

宇都宮参考人 私は、スウェーデン型オンブズマンと言っておりますけれども、デンマークとかスウェーデンとかフィンランドとか、そういうところが基本的な重要な特色を備えておりますから、それをベースにして、ニュージーランドのオンブズマン制度というのが、基本的に非常に参考になるのではないかなと。

 スウェーデンの場合は、例えば裁判所を入れたり、スウェーデンのオンブズマンには訴追権まで与えられておりますから、世界のオンブズマンで訴追権を持っているのはスウェーデンとフィンランドだけでありますので、その辺のところはかなり問題があるかなというふうに思いますけれども、そういうふうに考えております。

衛藤(征)小委員 参考人は、いわゆる立法府型、議会型オンブズマンが望ましい、このように指摘されたわけですが、その組織でございますが、議会の附属機関とすべきと考えるか、それとも、会計検査院のように独立の機関とすべきとお考えでしょうか。

宇都宮参考人 私はいずれでも適切だと思いますけれども、国会オンブズマンという場合には、やはり議会の附属機関とすべきではないかなという意見を持っております。

衛藤(征)小委員 先ほど杉浦委員からも御指摘がありましたが、我が国におきましては行政相談制度が整備されておるわけですが、一般のオンブズマンよりも、警察、刑務所、報道等のような、専門性があり、人権侵害のおそれの大きい分野に限定したいわゆる特殊オンブズマンを整備した方がいいのではないかという意見もあるわけですが、この点、参考人はどのようにお考えでございましょうか。

宇都宮参考人 私は、行政相談委員制度というのは非常に重要な役割を果たしているという意見を持っておりますけれども、何回も繰り返しておりますが、それはいわゆる日本型オンブズマン、こうよく言われていますけれども、それと国会に置くオンブズマンを代置できるものではない。したがって、行政相談委員制度があるから国会に置くオンブズマンが必要でないということにはならない。両者が連携してより拡充をしていくという意味で、国民の権利利益を擁護する面で両者が連携することによってより充実した制度になる、こういう意見を持っております。

衛藤(征)小委員 地方公共団体におきましても議会型オンブズマンを設置することができるよう地方自治法を改正する必要があると考えるわけですが、この点、いかがでございましょうか。

宇都宮参考人 私も、「公正と公開の行政学」という本の中で最後にまとめを書いておりますけれども、国が地方自治法を改正して地方のオンブズマン制度をつくるというのは、非常にあるべき姿のオンブズマン制度をつくることができると思うんですよ。したがって、私は、地方自治法を改正して、あるいは新たな法律をつくって、地方に議会型のオンブズマンもつくることができる、つくるというような改正ということに対してずっと提唱してきておりますので、それは賛成でございます。

 といいますのは、現行法で、日本の自治体で、川崎を初めとしていろいろ知恵を尽くしながらつくったんですけれども、現行法の枠内でやると、附属機関ですから、オンブズマンは専従のオンブズマンではないわけですね。世界のオンブズマンで四六時中行政機関を見守っているオンブズマンというのは、これは専任のオンブズマンなんですよね。それで、日本の制度でやると、専任のオンブズマンを任命できませんから、附属機関というのは。したがって、週に二回勤務をするとかいうような形ですから、やはり中央で、地方自治法とか新しい法律で、フルタイムで専従、専任で調査あるいは苦情を受け付けるような制度をつくるべきではないかなということ。

 いろいろ考えているんですけれども、例えばイギリスのイングランドでローカルオンブズマンというようなものが設けられているんですが、何人いるかというと、三人なんですね。イギリスの地方自治体全体に対して、イングランドでは三人のオンブズマンなんですよ。

 それでは、日本で今三千幾つありまして、合併で千ぐらいにしようという方針で進められておりますけれども、例えば三千幾つある自治体で二人のオンブズマンをやれば、もう六千人ぐらいになっちゃうわけですよね。それだと、私は、英国方式でブロックごとにオンブズマンが任命できるような法制度というのはできないかな、それの方が非常に効率的で有効な制度になるのではないかな、そういう意見を持っております。

衛藤(征)小委員 参考人は、川崎市を初め地方レベルでのオンブズマン制度の創設にかかわったわけでありますが、もし国レベルのオンブズマン制度が導入された場合、それが今後日本に根づいていくためには、運用上特に気をつける点としてはどのようなことが考えられますか。

 また、参考資料の中に国際オンブズマンというのがあるんですが、この国際オンブズマンについてもちょっと御説明をいただきたいと思います。

木下小委員長 宇都宮参考人、時間が終了していますので、簡潔にひとつお願いします。

宇都宮参考人 国際オンブズマンというのは、現在のところ、恐らくEUの欧州議会のオンブズマンだと思いますけれども、可能性としては、例えば国連に置いておくオンブズマンも想定はできると思いますけれども。

 それと、根づくにはというお話だったんですけれども、やはりオンブズマン制度というのを国民に周知徹底する、そういう問題があろうかなと。川崎とかいろいろなところで、それでは十分市民に周知徹底されているかというと、その辺のところはかなりまだ課題があるのではないかなと思いますし、任命の方式とか、どういうようにして調査権限を与えるか、あるいは国政調査権の問題とか、あるいは事務局の調査能力の問題とか、さまざまな課題がありますし、それではオンブズマンの適任者をどういうようにして選ぶのかとか、そういう課題がありますので、そういう課題を検討しながら制度を導入して、いい制度、制度のビルディングを慎重にやっていくべきだろう、こういうように思っております。

衛藤(征)小委員 どうも貴重な御意見、ありがとうございました。

木下小委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 宇都宮参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。小委員会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

木下小委員長 これより、本日の参考人質疑を踏まえて、小委員間の自由討議を行います。

 一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小委員長の指名に基づいて、自席から着席のまま、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをこのようにお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 発言時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。御発言を希望される方は、ネームプレートをお立てください。

古屋(圭)小委員 自民党の古屋圭司でございます。

 きょうは、宇都宮先生から、私も決してこのオンブズマン制度ということは専門的に勉強したわけではございませんので、大変貴重な意見をお伺いすることができました。

 先生の意見は、世界の趨勢は、オンブズマン制度をとっている国では議会オンブズマンである、したがって、設置をする場合にはそういう方向に持っていくべきだという趣旨の内容だったと思います。ただ、その中で、そういった実施をされている国については、国民の皆さんが極めて高い認知度を持っているという指摘もございました。オンブズマンが実際に活動することに対して大変理解を示している、十分市民に浸透している、こういうことでございました。

 一方、日本では、公的なオンブズマンと私的なオンブズマンがありますけれども、ややもすると、私的オンブズマン、これが、いわば市民の権利の擁護という視点だけではなくて、ある意味ではイデオロギー的な活動をしているということは、私は否定できないと思います。そういう意味で、もし日本で実施するというならば、やはり公的オンブズマンを目指していくというのが筋だと思います。

 しかし、一方では、日本には行政相談制度というのがあります。今、全国で五千人近く任命をされているということでありますし、また、それを補完する機能として、いわゆる行政苦情救済推進会議ですか、こういうものもあるわけでありまして、果たしてここが十分に機能しているだろうか。ここを検証した上で、もし十分に機能していないというならば、まずここの補完というものをしていくことによって、いずれはこのオンブズマン制度というものが広く国民に認知されていくことになるのではないだろうか。

 日本はよく、いろいろな制度があるんですけれども、それが有名無実化していると、その本来の制度を活用する、よみがえらせるという行動ではなくて、屋上屋を重ねると言うと誤解がありますが、また別な制度をすぐ新たにつくり上げようという嫌いがなきにしもあらずだと思っております。

 憲法論議の中にもそういうことがございます。例えば、一院制か二院制か、これはそれぞれ、一院制、二院制論者というのはいらっしゃるとは思うんですが、あえて私見は申し上げませんけれども、例えば、現実に二院制でありながら、本当にこの二院制がしっかり機能しているんだろうか。単なる、参議院は衆議院のコピーだから一院制でいいのではないかと、やや乱暴な議論もあるということも否定はできないと思います。

 そういった観点から、やはり広く国民に認知をした上での、将来的なオンブズマンを目指すならば、この行政相談委員制度というのをいかに充実させていくかということをまず取り組んでいくべきではないかなという意見でございます。

 以上であります。

杉浦小委員 国会に参考人のおっしゃったようなオンブズマンを置くかどうかというのは、似た例を探すとすれば、大統領制がいいか議院内閣制がいいかの議論とやや似ているところがあると思うんですね。

 だから、私は、今衆参にある行政監視委員会ですか、この機能を強化して、事務局をしっかりさせて、一般国民から苦情も受け付ける。そこで事務局長にしっかりした人を置いて、委員会と緊密な連絡をとりながら苦情を処理する、大分苦情も来ているようですけれども、進めていくという方がいいんじゃないかという感じがするんです。いずれにしても、憲法改正が必要かどうかという問題は憲法調査会の検討議題かもしれませんが、衆参のそれぞれの委員会で制度導入の是非を検討していただくのがいいんじゃないかと思っております。

 ついでですので、さっき辻先生が司法ネットのことにちょっとお触れになったので、あれは私が座長をやって与党案をまとめたんですが、最後まで民間でやろうということでこだわったんですよ。ところが、国選弁護の事務を裁判所から持ってくるんですね。だから、国の事務をやるんだから、どうしても独法でなきゃいかぬということで妥協したんですが、最後に妥協したのは、役員は民間人登用、天下りできない。民間人がやらないとお役所仕事になる、絶対にお役所仕事にはしない、これは法務省も大賛成でありましたので、法律の中に、僕は公務員としろと言ったんですけれども、公務員とするとほかの省庁が抵抗して人事院はオーケーできないというので、就任前二年間判検事であった者は就任できないというふうにしました。

 法務省のお役人は、局長以上、主な役職員、全部判検事ですので、事実上法務省からは、民間並みに、民間は二年間ストップですが、二年後は人事院の許可を得て就職できるようになっているんですが、司法ネットの場合は、民間人登用、法律にきっちり書き込んだ。他省庁のが来たらいかぬからという、これは法律に書き込めないから、大臣訓令か何かでやるということで話はついておりますけれども、その点だけちょっと、いずれ法案審議の際に出てくることですが、出たついでに申させていただきました。

 以上です。

玄葉小委員 民主党の玄葉光一郎です。

 オンブズマン制度について一言だけ述べさせていただきたいと思いますけれども、制度設計をよく吟味した上で、基本的には導入の方向で考えたらいいと思います。その際、導入するということで決まれば、憲法に根拠を置いた方がいいというふうに思います。

 ただし、今までも議論が出ていましたけれども、こういった行政監視機能等々に、我々は一体どのくらいの税金を使うのか。税金のむだ遣いをチェックするというのも一つの大事な役割なんでしょうけれども、またまたそのために税金を使うということにもなるわけで、改めて、これらと同種あるいは類似の機能を持つ、各種委員会も含めてですけれども、再編整理というか、体系的整理が大前提になるのではないかというふうに思います。

 以上です。

辻小委員 辻惠でございます。

 きょうの宇都宮参考人のお話を私なりに総括いたしますと、川崎市のオンブズマンにかかわられたことを含めて、日本における先駆者としてこのオンブズマン制度にかかわってこられたそのお立場で、役割や機能や必要性や制度導入の意味等について、詳しくお話をいただきました。日本においては、ニュージーランドを一つの参考にして具体化すべきではないかというような御発言もありました。

 いろいろな御質問等の中で、宇都宮参考人がやはり最後まで筋を通された点というのは、議会型のオンブズマンを設置すべきなんだ、今の行政を統制する、行政を監視していく必要が、今の日本の国のあり方、政治のあり方の中で絶対に必要なんだということを、最後まで堅持してきちっと発言をされた、このことをしっかりと受けとめ、尊重してまいりたいと思います。

 議会がなかなか行政をチェックできない、司法も消極主義をとっている、地方分権ということが言われていても、金、人そして法律、課税権や条例の制定の権限の問題を含めて、地方分権といってもそれはなかなか形式的なものの域を出ていない、そして、独立行政法人が数がふえていくという意味で、行政がどんどん肥大化していっているというのが現状であります。

 そういう意味におきまして、きょうの宇都宮参考人のおっしゃられた、行政統制、行政監視のためのオンブズマン制度の設置というのが、極めて喫緊の課題であるというふうに考えていいのではないかと思います。

 以上でございます。

阿部小委員 私も、参考人の御意見を拝聴しながら、衆参両院で行政監視委員会というものができた経緯も、また改めて学んだ気がいたします。

 そして、そうした前提に立ってなお、きょうの参考人が何回も御指摘なさいましたように、議会型のオンブズマン制度というのは、さらにこういう公平性、透明性が要求される政治の中ではつくられてしかるべしと思いますし、その場合に憲法改正等の手続をとるか否かについても、参考人は、その方が望ましい形態ではあるが、なお現状でも努力が可能であるというお話でしたので、その点に関しても、また皆で論議していきたいと思います。

 そして、現在ある行政監視委員会については、私も寡聞にして実情を余り知りませんので、例えば参議院では、ここに持ち込まれたいろいろな請願と申しますか上げられた案件、苦情処理が受理されていない状況もあるようですし、こちらは院は衆院ですが、このあたりも、もしかして周知徹底というところが、知名度がゼロということで限界があるのであれば、現状でもその点は取り組んで、周知させるということもできるのではないかと思います。

 それから、そういう議会型のオンブズマン以外のことで、先ほど辻委員からも一般オンブズマンあるいは特別オンブズマンの御質疑があった中で、参考人が医療のオンブズマンについて触れておられました。

 私は、この間ずっと医療被害問題で、中山太郎先生を会長として議連もつくっていただき、何とか、国民的要請の強い医療被害ということに、やはり立入調査権を持ったオンブズマンが絶対に必要だと。先ほど、行政相談委員制度を充実させてはどうかとおっしゃっておられましたが、例えばカルテを見せていただく、あるいは現場に出向くということも含めて制約がございますから、これは議会型のオンブズマンではございませんが、そういう一般並びに特殊なオンブズマンとして、また皆さんの御意見も拝聴しながら、より国民の利益と安心、安全にこたえられる国会でありたいと思います。

 以上です。

鹿野小委員 行政相談委員制度というものをより充実させていったらどうか、こういうふうな考え方もあるわけでありますけれども、基本的には、オンブズマン導入というふうな考え方は、あくまでも国の行政機関から独立をして、そして国民の視点に立って、いわゆる国民の権利救済、こういうふうなことを図るとともに行政を監視していく、こういうふうなことからいたしますならば、やはり日本型オンブズマン制度と言われる行政相談委員制度は制度として、別個オンブズマン制度というものを導入すべきではないか、こういう考え方に立ちます。

 特に、これだけ世の中が複雑になってきますと、行政相談委員の範疇を超えたいわゆる専門的な分野というふうなことにおいて、対応ができないんではないか、あるいは時間がかかり過ぎる、こういうふうなことでむしろ苦情が持ち込まれない。しかし、需要はあるわけでありますから、先ほど参考人のお話のとおりに、専門的な知識あるいは専門的な能力、調査能力を持ったオンブズマン制度というものを導入した方が、より国民生活にとってふさわしいんではないか、私はこういうふうに考えます。

 また、行政監視委員会が参議院にあって、その後で衆議院では決算行政監視委員会、こういうことになりましたけれども、この委員会とのかかわりというふうなことにおいては、例えば会計検査院法と同じように、いわゆる議院なり委員会なり、あるいは議員個人として調査を要請する、こういうふうなことを明記するということによって、委員会とこのオンブズマン制というふうなものの連携が図られるんではないか。こういう意味においても、オンブズマン制度を導入するということは意義があることだ、このような認識を持つところであります。

鈴木(克)小委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 いつも私申し上げるようで恐縮でありますが、地方の行政に携わってきた一人として、このオンブズマン制度について一言だけ申し上げたいというふうに思っておるわけであります。

 実際に、地方自治体、こういう訴訟とかオンブズマンの問題とかいろいろ現実的にありましたし、そういうことを経験してきたわけでありますが、一言で言って、私は、議会が本来の職務を全うしておれば何もオンブズマンに頼る必要はないんじゃないか、こういうことを実は首長時代にはずっと言ってきたわけであります。オンブズマンのお世話になるということは、議会が本来、そもそもの使命を果たしていないんだということを言ってきた立場であります。では反対かと言われると、決して私もそうではない。今複雑なこういう実情の中では、やはりそういう制度も本当に真剣に考えていく必要があるというふうに思います。

 先ほどお話がありましたように、二、三問題、あえて問題だと言えば、やはりコストの問題が私はあると思います。屋上屋を重ねてさらに同じようなものを積み重ねていく必要は、この辺はきちっとしていく必要がある。

 それから、やはり国民の皆さんに認知、本当にどういうふうにこのオンブズマン制度に対して理解をしてもらうかということが、私はやはり必要なことではないかなというふうに思います。

 それからもう一つ、あえて言わせていただくと、私もたくさんの公務員と接してきた中で、新しい分野に挑戦しなくなるんですね。冒険を冒さないといいますか、後で問題になるぐらいならやめておいた方がいいというような形にもしなっていくと、これは、残念なことでありますけれども、行政の停滞というようなことになりますし、本来の国民の期待を裏切っていくことになるわけでありますので、その辺の兼ね合いというものも十分吟味しながら、この制度は私なりにまた真剣に考えてまいりたいな、このように思っております。

 以上であります。

永岡小委員 自民党の永岡洋治でございます。

 私もこのオンブズマンそのものについて深く勉強しているわけではないんですけれども、きょうのさまざまな資料等を勉強させていただきまして感ずることは、確かに、個人の権利の救済というものを迅速かつ効果的に行っていくことにおいて、その権利救済なり未然にそれを侵害せられることを防止するという意味で、いろいろな装置をつくっていくということは極めて重要であるという認識は持つわけであります。

 しかし、基本的な問題といたしまして、国のレベルでいいますと、三権分立という中で、国会が本来、国民の権利義務を擁護し、行政に対してチェックをするという機能を果たしていくのが本筋でありますし、地方の制度においても、議会というものが行政に対してチェック機能をちゃんと果たしていくというのが筋論であると思います。しかし、これだけ行政が肥大化をして、裁量権の余地というのが、まあここのところは立法の方の問題にもかかわりますけれども、行政裁量の余地が広がれば広がるほど、個人に対する権利救済の道をパラレルに広げていくことが必要だということは、冒頭申し上げたとおり、私はそう考えるところであります。

 そこで注意しなくてはいけないのは、地方段階における個別具体的な案件における救済の問題と、国会、国レベルにおける問題を同列に論ずることがどうなのかという疑問を感ずるわけであります。

 その基本的な問題意識は、要するに、個別具体的な案件において個人を救済する、権利を救済していくというのは必要であろうと思いますが、基本的には、個人の権利と公益、公共の利益というところのバランスのもとでいろいろな行政が行われていく、その個人の権利というものが余りにも強く打ち出された格好で、例えば議会の附属機関としてオンブズマン制度みたいなものができてくるということについては、ここはかなりいろいろな検討を要するのではないかと思うわけであります。

 今、国会の中における、衆議院決算行政監視委員会、あるいは参議院における行政監視委員会があるわけでありますから、その機能の充実強化を図っていくことによりカバーすることがまず第一番目に検討されなければならないんではないか、このように思うわけでありまして、憲法上の問題もあると思いますし、この問題についてはやはり地方レベルと国レベルを分けて考えていくべき課題ではないか、このように考えるところであります。

木下小委員長 他に御発言ございますか。

 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十五分散会


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