衆議院

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第5号 平成16年5月27日(木曜日)

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平成十六年五月二十七日(木曜日)

    午後二時四分開議

 出席小委員

   小委員長 鈴木 克昌君

      岩永 峯一君    永岡 洋治君

      野田  毅君    船田  元君

      古屋 圭司君    森山 眞弓君

      鹿野 道彦君    玄葉光一郎君

      辻   惠君    馬淵 澄夫君

      斉藤 鉄夫君    山口 富男君

      土井たか子君

    …………………………………

   憲法調査会会長      中山 太郎君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  重松 博之君

   参考人

   (一橋大学大学院法学研究科助教授)  只野 雅人君

   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 小委員土井たか子君同日委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員衛藤征士郎君同日小委員辞任につき、その補欠として船田元君が会長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員船田元君同日小委員辞任につき、その補欠として衛藤征士郎君が会長の指名で小委員に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 統治機構のあり方に関する件(二院制と会計検査制度)


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     ――――◇―――――

鈴木小委員長 これより会議を開きます。

 統治機構のあり方に関する件、特に二院制と会計検査制度について調査を進めます。

 本日は、参考人として一橋大学大学院法学研究科助教授只野雅人君に御出席をいただいております。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 二院制と会計検査制度について、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。次に、只野参考人から御意見を四十分以内でお述べいただきます。次に、参考人及び会計検査院当局に対する質疑を行います。

 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。会計検査院長森下伸昭君。

森下会計検査院長 会計検査院長の森下でございます。

 本日は、憲法調査会で会計検査院について説明をする機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、説明に入ります。

 まず、会計検査院の現行法制上の地位でございますが、会計検査院は、憲法九十条と会計検査院法の一条によりまして、国会、裁判所、内閣のいずれにも属さない独立した機関とされております。そして、その使命は、憲法では、国の収入支出の決算を検査し、検査報告を作成して、内閣を経由して国会へ提出することとされております。具体的な組織、権限は法律に委任され、会計検査院法が制定されております。

 会計検査院の独立の意義でございますが、国の財政監督機関として、客観的、中立の立場に立って厳正、公平にその職務を遂行するために、検査を受けるものを初めとし、さまざまな外部の勢力からの影響を受けないで、中立、公正な立場からの活動や意思決定が行えることが必要であろうというふうに考えております。

 この独立性を担保する措置といたしまして、現行法では三つを挙げることができようかと思います。人事の面から、検査活動の面から、それから予算の面からということでございます。

 まず、人事面での独立性でございますけれども、検査院は、意思決定機関である検査官会議と、その指揮監督のもとに検査等の事務を行う事務総局とから構成されております。

 このうち、検査官会議の構成員である三人の検査官の任命は内閣が行いますが、この任命に当たっては、国会の両議院の同意が必要となっております。検査官は任命されますと、心身の故障等の場合を除いて、その意に反してその官を失うことがないという身分保障が与えられております。

 また、事務総局の職員の任免、進退につきましても、検査官会議の合議によって院長が行うこととされております。このようにして、人事面について外部の意思が介入しないような仕組みになっているわけでございます。

 次に、検査活動の独立性につきましては、規則制定権というのが国会や裁判所と同様に認められております。これによりまして、会計検査院は、検査報告に掲記する事項を定めたり、各省庁から提出させる計算書の書式や証拠書類の種類を定めたりすることができまして、会計検査に必要な事項は、閣議決定を要する政令によらないで、会計検査院法を運用していくことができる、そういう自主性が認められているということでございます。

 それから三つ目の、予算における独立性でございますが、財政法において二重予算制度というのがとられております。

 予算は内閣において編成されますが、会計検査院の歳出見積もりを減額した場合、検査院の要求額を歳入歳出予算に付記して、国会が、この歳出額を修正する場合の必要な財源についても明記する、こういう仕組みが財政法に規定されております。

 これは、国会、裁判所についても同様でございますけれども、独立機関の独立性を予算の面から制約することがないようにという趣旨から出たものでございます。ただ、会計検査院の予算につきまして、この規定が今までに発動されたことはございません。

 さらに、独立性についての国際的認識を御紹介いたしますと、各国の会計検査院の組織であります最高会計検査機関国際組織、INTOSAIというふうに略称しておりますが、このINTOSAIの一九七七年リマ宣言によりますと、各国は、会計検査院の独立性を憲法または法律によって保障することが不可欠であること、それから、会計検査院の独立性は、受検庁から独立し、かつ外部の影響から保護されている場合に限り、その職務を客観的かつ効果的に遂行できるものであるという旨が掲げられているところでございます。

 このように、幾つかの措置がとられており、会計検査院の独立性が確保されているということでございます。

 それから次に、会計検査院と国会との関係を御説明申し上げます。

 国権の最高機関である国会は、内閣から決算と会計検査院の検査報告の提出を受けるところでありまして、また、その決算を審議する機関でもあります。したがいまして、会計検査院は独立機関ではございますが、国会と密接な関係を有していることになります。

 国会との関係について幾つか御説明をいたしますと、まず第一には、検査官の任命には国会の同意が必要となっております。これは先ほど独立性のところで申し上げたとおりでございます。

 それから、二つ目に挙げられますのは、国会が検査院の検査報告の提出先となっているということでございます。会計検査院は、内閣を通してその検査報告を国会に提出しております。国会の決算審査の際、この検査報告も参考資料としながら審議が行われております。

 この検査報告の提出期限につきましては、憲法では「次の年度に、」と定められ、財政法四十条で「翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。」とされておりまして、近年では、別紙二に資料がございますけれども、会計検査院から内閣への送付が十一月の末ごろとなっておりますが、国会への提出は翌年の常会の冒頭、一月下旬ごろとなっておりました。

 これに対しまして、昨年、参議院から内閣に対し、平成十五年度決算以降は、決算の国会への提出期限はこれを早めて、会計年度翌年の十一月二十日前後にお願いしたいという要請があり、本年の検査から、会計検査院もこれに協力すべく、検査サイクルの大幅な前倒しをして現在検査に臨んでいるところでございます。

 これは、十一月二十日前後に召集されているであろう臨時国会に決算と検査報告が提出されることによりまして、直ちにそこで決算審査を行い、十二月から本格的に行われる予算編成に国会の決算審査の内容を反映させるという目的を持っているものでございます。このことが実現いたしますと、予算におけるプラン・ドゥー・シーのサイクルが完成することになるわけでございます。

 具体的に申し上げますと、十二月の予算編成から始まって国会での予算審議、それから予算の成立、新年度においての予算の執行、そして年度終了による決算の作成、会計検査院による決算検査と検査報告、それが秋の国会に提出され、そこで決算審査が行われ、また次の年度の予算編成、十二月に行われます予算編成に反映されるという予算過程の循環が閉じることになるわけでございます。

 国会とそれから検査院の関係でさらに申し上げますと、会計検査院長以下検査院の職員の国会での出席説明ということがございます。これは、各議院の委員会は、会計検査院長の出席説明を求めることができると国会法でされており、また会計検査院も、検査報告に関して国会に出席して説明することができることと会計検査院法でなっております。実際にも、たびたび決算委員会を初め各種の委員会に出席をして説明しているところでございます。

 さらに、平成十年の通常国会から、国会による検査要請ができるようになりました。国会の各議院または各議院の委員会は、会計検査院に対して、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができるというふうになったわけでございます。

 これまで、二件の実績がございます。その事項については別紙三にタイトルを紹介してございますが、平成十年の衆議院決算行政監視委員会からの公的宿泊施設の運営についてという事項と、それから、平成十二年に参議院行政監視委員会からの政府開発援助に関する決議の実施状況についてという事項の二件でございます。

 正式の検査要請は以上の二件、これまで二件でございますけれども、会計検査院といたしましては、正式の検査要請には至りませんけれども、国会の審議の内容を念頭に置きまして、会計検査院の判断において検査を実施して、それを検査報告に掲記してきたものも幾つかあるわけでございます。

 それから、さらに国会と会計検査院との関係で申し上げますと、衆参両議院のそれぞれの関係の調査室へ検査報告の内容をかなり詳細に説明を行っております。衆議院においては決算行政監視調査室であり、参議院では決算調査室でございますけれども、本年の例でいきますと、それぞれ、衆議院に対しましては延べ十九日をかけて約八十時間、それから参議院に対しましては延べ十日間、五十五時間をかけて会計検査院の担当課長が説明に当たっております。

 このように、会計検査院は国会と密接な連携を図って、その検査活動の効果を上げるようにしているということでございます。

 今度は、検査成果の反映ということについて御説明をいたします。検査結果は、行政や予算へどのように反映しているのかを説明いたします。

 会計検査院は、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ是正を図ることを目的として、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性など多角的な観点から常時会計検査を行っておりますが、その検査結果を行政や制度あるいは予算へ反映させるための仕組みや取り組みについて、次のようなものを挙げることができると思います。

 まず第一には、国会の審議を通じての反映ということでございます。会計検査院の検査結果は、検査報告によって国会へ報告され、国会における決算審査の際の重要な参考資料となっております。この審議に当たりましては、会計検査院の職員のほか、財政当局や関係省庁も出席して説明を求められております。このことによって、会計検査院の検査成果が行政や予算編成に反映されるという道筋が一つございます。

 それから、決算審議が終了する際に、衆参両院とも、多少違いがあるようですけれども、警告決議でありますとか報告を求める決議が行われており、この中には検査報告で取り上げた事項も含まれておりますことから、各省庁に対するインパクトは大きいものがあるというふうに考えられます。

 それからまた、政府が毎年度決算及び検査報告とともに国会に提出しております「決算検査報告に関し国会に対する説明書」という文書には、会計検査院が不当事項として掲記した事項についての各省庁でとられた補助金の返還やあるいは手直し工事等の是正の処置が記載されておりますし、さらに、会計検査院法三十四条または三十六条によって、意見を表示したり改善の処置を要求したりした事項についての各省庁の対処方針が記載されておりまして、各省庁には検査の結果に対して速やかに処置を講ずることがこのことによって求められているということが言えようかと思います。

 それから、会計検査院といたしましても、院法三十四条または三十六条によって、行政庁に対し改善の処置を要求したり意見を表示したりした事項につきましては、指摘を受けて各省庁がとった処置を把握いたしまして検査報告に掲記しなければならないこととなっております。これによって、事後処置の状況が国会へ報告されることになりまして、各省庁に対する是正改善への牽制となっているというふうに考えられます。

 次に、三番目に、これは予算編成、予算への反映についてでございますけれども、国会審議による予算への反映は当然のことでございますけれども、会計検査院としても、財務省の主計局や理財局との間で毎年定期的に連絡会を開催して、財務省からは予算編成の考え方を聴取したり、検査院からは検査結果を説明したりして、予算編成等に関して相互の活動に資することとしております。

 昨年の例でいきますと、三月に延べ八日間、七月から八月にかけて延べ六日間、それから秋には財務省の主計局長と会計検査院の事務総局次長が会談をし、意見交換、情報交換もしております。

 さらに補足して申し上げますと、会計検査院は、検査報告に掲記した事項についてもその後の状況をフォローアップするように努めておりまして、改善の実が十分上がっていないような事態があればさらに検査を深めて検査報告に再度掲記するというようなことも行っております。

 例えば、昨年のODAの検査におきましては、過去に効果が上がっていないとして取り上げました事業について、その改善状況を調査してその結果を検査報告に掲記する、こういうことをやってみました。

 戦前の会計検査院法では、法律または行政上改正を要すべき点があれば、天皇に上奏することができましたけれども、主務官庁には注意書を発するのみで、直接積極的に行政庁に対し是正改善を求める方途がなかったということの反省に立ちまして、現行の院法は、検査結果を直ちに行政に反映させる方途として、この院法の三十四条や三十六条の各省庁に対する改善処置の要求あるいは改善の意見の表示を規定したということでございます。

 また、会計検査院のそれぞれの局長は、各省庁等検査を受ける者に対して質問を発することができます。そして、その回答を受け取っているわけでございますが、その受検庁とのやりとりの中で、検査結果を行政や予算執行に反映させるということも可能になってきているわけでございます。

 会計検査院は、今申し上げましたように、憲法、法律によって独立性を保障され、そして自主的な検査活動を積極的に行いまして、国会との連携を図りながら、その検査成果を行政や予算に反映させるように努めているところでございます。

 最後に、外国の会計検査院についてごく簡単に御紹介をいたします。

 まず、アメリカですけれども、GAOと呼ばれまして、明文の規定はございませんが、実質的には連邦議会の附属機関とされております。毎年千件ぐらいの報告書を議会等に提出しておりますが、議会はこれらの検査報告に基づいて連邦省庁に対する改善勧告を行っております。議会や議員個人からの検査要請は、その報告の九〇%程度を占めていると言われております。ただ、この中に勧告の内容を含むのは半数程度であろうということも言われております。

 次に、イギリスでございますが、NAOと呼ばれ、院長は下院の官吏とされております。そして、会計検査院という組織は院長の職務執行を補助する機関とされております。NAOは財務検査とバリュー・フォー・マネーの検査を行っております。

 前者に関しては、毎年五百ないし六百件の報告書、それからバリュー・フォー・マネーに関しては、五十件前後の報告書を下院の決算委員会に提出しております。下院の決算委員会は、NAOの検査報告書に基づきまして、各省庁への改善勧告をまとめた委員会報告書というものと、それから改善措置をまとめた財務省覚書というものを作成いたしまして、本会議で議決しているということでございます。

 ドイツにつきましては、議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関でございます。検査報告は年度終了後議会と政府へ提出されますが、特別検査報告というのが毎年十ないし十五件あるということでございます。下院では、この検査報告をもとに予算委員会報告書を作成し議決をしております。

 それから、フランスにつきましては、これも議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関であります。年次報告書が大統領と議会両院に提出されておりまして、業績検査報告書が議会からの要請を含めて年間数件程度提出されているということでございます。

 以上、雑駁な説明でございましたが、これで終わります。

鈴木小委員長 以上で会計検査院当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木小委員長 次に、参考人から御意見を聴取いたします。

 只野参考人、お願いいたします。

只野参考人 只野でございます。本日はお招きいただきましてどうもありがとうございました。

 私、これまで二院制について幾つか論文を発表したりしておりますけれども、本日は随分詳しい資料を事前にいただいております。その中に、きょうお話ししようと思っております重要な視点が随分含まれているように思います。ですから、私の話というのは、むしろそれらを再構成して改めて提示する、そんな形になろうかというふうに思います。

 お手元に簡単なレジュメと資料がございますので、そのあたり、ごらんになりながらお聞きいただければというふうに思います。

 最初に引きました、第一院は、第二院と一致するなら無用であり、一致しないなら有害である、これは二院制を論ずればよく引かれる言葉でして、趣旨は明瞭であります。二つの議院を設ける以上、第二院については第一院と異なる独自性が必要になる。両院の行動が一致してしまいますと、第二院の存在は無用となってしまう。そうなりますと、どう独自性を発揮させるのかということが問題になってまいります。

 通常、まず考えられますのは、例えば代表方法を変える、あるいは選挙制度を変えるということで、構成を異ならせる、こういうことであります。

 この場合、構成が大きく異なりますと、第二院が第一院の決定を阻止する、こういうことが生じてまいります。これはもちろん独自性と呼ぶこともできるわけですが、その場合同時に問題になりますのは第二院の正当性ということではないだろうか。特に、民主的な正当性が劣るような選挙制度で独自性が生み出されるような場合、なぜ第二院が第一院の決定を阻止できるのかということがあわせて問題になるように思われます。

 こうした独自性の発揮が問題にならない場合もあると考えられます。これは後で若干申し上げますけれども、例えば連邦国家の場合でして、この場合には第二院が独自性を発揮するということの根拠、非常に強い正当性が憲法上存在しているということになろうかと思います。

 これに対して、そうした正当性を持たない単一国家における第一院の場合、第二院の独自性をどこに求めるのか、それから、独自性が発揮された場合のその正当性の問題、これをどう考えるかということがやはり大きな問題になってくるように思われます。これはとりわけ、日本の参議院に当てはまる問題であろうかというふうに考えるわけです。

 そこで、まず、日本の参議院について考えます前に、一般に二院制というものにどういうものがあるのか、それから二院制というシステムにどういう意味があるのかということにつきまして、皆様方よく御存じかと思いますけれども、改めて私なりに整理をいたしたいというふうに思います。

 まず、二院制についてはさまざまな分類の仕方が存在しております。これは、どのような基準で分類を進めるかということによっていろいろあるわけですけれども、例えば、一般的なものとしましては、国家類型といいますか、あるいは政治体制から分類を試みるということが考えられます。

 こうした分類としては、一般に貴族院型、連邦国家型、そして単一国家における第二院、こうした分類がなされるのが一般的ではないかというふうに思うわけです。

 このうち、貴族院型につきましては、これは歴史の中の過渡期に生じてきたものでありまして、現在は数が少なくなっておりますし、イギリスのように存在する場合においても、第二院の権限は大幅に縮小されております。

 恐らく、第二院が一番大きな存在意義を持ち得るのが二番目の連邦国家の場合であろう。これはよく言われることでありますけれども、私もそう考えております。

 この場合の第二院といいますのは、個々の国民ですとか市民ではなくて、連邦の構成単位である、通常は州ということになろうかと思いますが、この州を代表する、こういう役割を担うことになります。当然、その州を代表するということですので、通常の例えば人口比例等とは異なった選挙制度によって第二院が選挙される。

 そうなりますと、非常に強い独自性が発揮される可能性があるわけですけれども、連邦国家におきましては、その連邦を構成しますそれぞれの単位の同意なくして決定できない事項というものが当然考えられましょうから、仮にそれが第一院の決定を阻害したとしても、ここで第二院の正当性という問題は直ちに生じないわけです。

 これに対して、日本のように単一国家において第一院を設ける場合、そこにどういう意味を読み込むのかということは非常に大きな問題になってまいります。

 先ほど、独自性とかかわってどのような代表を考えるのかという問題があるであろうというお話をいたしましたけれども、二番目の類型の切り口といたしましては、代表原理ということが考えられるかと思います。

 通常、第一院というのは特別な代表原理を持っておりませんので、一応、政治代表、こう呼ぶといたしますと、政治代表である第一院とは異なった代表原理によって第二院を選出する、そうすることによって第二院の独自性を発揮させてはどうか、こういう方向が考えられるわけです。

 具体的に挙げますと、例えば地域代表という考え方がございます。これは、先ほど申しました連邦国家の場合もここに含まれますけれども、連邦国家までいかなくとも、連邦制の途上にある国家というんでしょうか、国家を構成する自治体に、州と呼ぶ場合もあろうかと思いますが、非常にやはり強い自治性、自律性が認められているような国家においても同じようなことが考えられるだろうと思います。

 いずれにしても、この場合は、人口や有権者を基礎とするのではなくて、それぞれの地域を代表単位にする、こういう発想に立った代表原理だということになります。有名なのはアメリカでして、人口にかかわらず上院議員は各州二名、こういうことになっております。例外的に、日本と同様の単一国家におきましても、例えばフランスがこの地域代表という原理を取り入れております。

 ただ、私、ここにはいろいろ問題があると思っておりまして、この点も後でまた若干御説明させていただきたいというふうに思っております。

 地域代表以外にも、例えば、利益職能代表といった考え方も存在しております。こちらの方は、やはり、個人以外にも社会を構成する要素が存在するであろう、そうした要素をいかに代表するのか、こうした発想に立った考え方でありまして、さまざまな個人以外の要素、例えば、社会的な階層ですとか、あるいは経済活動の単位であるとか、あるいはある種専門的な能力を持った人たちの集団であるとか、そういった個人以外の要素を代表に反映してはどうか、こういう考え方であります。

 ただ、こちらにつきましては、非常に大きな問題がございます。つまり、適切な代表の指標といいますか、これをどう見出すのか。特に、普通選挙ですとか平等選挙といった原則と調和する形で利益職能代表を考えるということは非常に難しい部分がございます。

 そこで、先ほどフランスの話をいたしましたけれども、例えばフランスでは、二院制を設けた上で、それとは異なる形で、諮問機関という形で、経済社会評議会という利益職能代表的な機関を設ける、こういう位置づけになっております。

 このように、幾つか異なる代表原理というのを考えることはできるわけですけれども、いずれにしても問題になるのは、それらをとらない場合、あるいは憲法上それらをとることが難しいと考えられる場合、いかに政治代表という枠の中で第二院の独自性、特に単一国家における第二院の独自性を考えるのか、こういうことになってまいります。

 一つ考えられますのは、言うまでもなく、選挙制度あるいはその任期といった点であろうかと思いますが、もう一つ重要なのが、恐らく、両院の間の権限配分をどう行うかということになると思います。

 権限配分から見た類型というのは、これは非常に簡単でして、通常は対等型と不対等型というものが区別されます。

 対等型といいますのは、両院に同等の権限を与えて、両院の合意を決定の条件にする、こういう場合もございますし、それから、例えばアメリカの上院などがそうですけれども、ある特定の事項について、上院のみに決定権を付与する、こういった形もあろうかと思います。

 これに対して、不対等型の場合、これもさまざまなバリエーションを考えることができるかと思いますけれども、例えば、立法について不対等型をとるということになりますと、両院の意見が食い違った場合、最終的には第一院の意思によって決定を行うことを可能にする、あるいはそれを容易にする、こういうスタイルが考えられるわけです。

 日本の衆議院、参議院の関係というのは、不対等型だ、衆議院の優越ということがよく強調されますけれども、私、この点は若干疑問に思っておりまして、この点は後でまたお話をいたしたいというふうに思います。

 以上、漫然と幾つか分類を申し上げてまいりましたけれども、実際には、これらを組み合わせて、それからまた実際の二院制の機能というものを考慮しながら二院制の類型化を行っていくということが恐らく必要になろうかと思います。

 これもさまざまな考え方がございますけれども、きょうレジュメで御紹介していますのは、レープハルトという著名な政治学者による分類であります。

 御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、レープハルトは、二院制というものを、強い二院制、弱い二院制、それからその中間、中間的強度の二院制、仮にこう呼んでおきたいと思いますが、この三つに区分しております。それぞれの強さ、弱さを決める要素として、一つは権限の問題、それからもう一つが、やはり、さきに申し上げました議院構成の問題が要素として考えられているわけです。

 このうち、強い二院制というのは非常にイメージがクリアでして、まず、両院は対等な権限を持つ、その上で両院の構成を異ならせる、こういうことになります。構成が異なりますので、非常に強い独自性、第一院と異なる投票行動が予想される。しかも、権限が対等ですので、第一院の決定が第二院によって阻止されるということが当然予想されるわけです。したがいまして、冒頭で申し上げましたように、なぜ第二院にそうした権限があるのかという第二院の正当性の問題が生じてまいります。

 そこで、この種の二院制をとっている国としてどういうものがあるかといいますと、これはレープハルトの分類に従いますと、筆頭はアメリカでございまして、基本的には連邦制を採用している国ということになろうかと思います。この場合には、第二院が第一院の決定を阻止することについて、ある種憲法上強い正当性が見出されるということになります。

 これに対して、この対極にありますのが弱い二院制ということでして、権限の面から見ますと、不対等型、つまり第二院の権限が弱い。それから、構成の面から見ますと、両院の構成は似通っている。これは、人為的につくられる場合もあるでしょうし、事実上そうなっていくという場合もあろうかというふうに思いますけれども、構成が似通った議院で、しかも第一院より権限が劣る第二院ということになりますと、なかなか独自性が発揮されにくい、こういうことになろうかと思います。

 もっとも、この種の二院制に存在意義がないかどうか、この点はやや検討の余地があるように思われますが、これも後でまたお話をいたしたいと思います。

 日本との関係で一番問題になりますのは、この中間ということになるわけです。事実、レープハルトも日本をこの中間に分類しております。これは、日本で一般になされております二院制の認識とはやや違うように思われますけれども、ここには実は二つのパターンが区別されております。

 一つは、両院の構成をまず異ならせる。こうなりますと、当然独自性が発揮される余地というものが考えられるわけです。しかし、独自性が発揮された上で、両院の意思をどう調整するかというレベルでは、基本的に第一院の意思を優越させる、つまり第二院の権限を劣らせるということで不対等型を採用する、こういう型が考えられます。これには幾つかの国がございますけれども、後に述べますように、単一国家ではフランスがここに分類されております。

 これに対して、中間的強度のもう一つのパターン、ここに日本が実は分類されているわけですけれども、こちらの方は、両院の議院構成は似通っているということが前提になっております。どうやってその独自性を発揮するかということになりますと、こちらは、構成の違い、議院構成の相違ではなくて、むしろ強い権限を第二院に付与する、対等な権限を第二院に付与することで独自性を考えていく、恐らくこういう方向性ではないかというふうに思われます。

 通常、日本で参議院の問題を議論します場合、両院の構成が似通っている、したがってその独自性が発揮されないのだということをよく言われますけれども、実は私、きょう一つ申し上げたいと思っていた点が、構成が比較的類似しているということが果たして第二院の独自性を阻害するような決定的な要因となり得るのかどうか、この点でありまして、ここは少しまた後で詳しくお話をしていきたいというふうに思っております。

 以上、二院制の分類をいろいろお話ししてきたわけですけれども、当然これ以外にも、二院制を採用しない国、つまり一院制を採用している国というのがあるわけです。単純に数の面だけで申しますと、二院制を採用している国よりも一院制の国の方が多い、こういうふうに言われております。

 ただ、これには若干注釈が必要でして、特にやはりレープハルトが指摘をしていることですけれども、ある一定以上の人口規模を持っている国では一般に二院制が採用されている例が多い。具体的に申しますと、人口規模一千万人という数字を挙げていたかと思いますが、一千万人を超えますと二院制が採用される例が多い、こういうことであります。

 もちろん、一院制が採用される場合であっても、二院制に類似したメカニズムが政治機構の中に組み込まれている場合は多いわけです。例えば、比例代表制を採用する、少数代表的な機能を強調する、あるいは地方分権を進めるとか、あるいは議事手続で少数派を優遇する、さまざまなメカニズム、一院制の中でも考えることができます。しかし、人口規模がある一定の限度を超えると二院制を採用する例がふえてくる。

 これは経験的な問題でありまして、理論的に説明することはなかなか難しいのですけれども、私は、それがゆえに非常にこれは重要な事実ではないかというふうに思っております。

 つまり、一院のみでは酌み尽くせない民意というものが存在するのではないか。人口がある一定規模を超えた場合、ある一定規模の政治共同体を考えますと、民主的に選挙された一つの議院だけですべての民意を代表するということにはやはり限界が生じてくる。そういう中で経験的に生み出されてきたシステム、これが二院制ではないだろうか、こんなふうに思うわけです。

 いずれにしましても、その上で二院制を考えてみますときに、重要なのは、これも先ほど申しましたように、第二院の独自性と同時に、その第二院の持っている正当性、特に民主的な正当性ということになろうかと思います。

 第二院が民主的にやや劣る制度によって選挙されて独自性を発揮するということになりますと、最終的には、やはり第一院に強い権限を与えて、第一院が最終的な決定権を持つ、こういうシステムをとらざるを得なくなるだろうというふうに思うわけです。

 この場合、両院の対立ということは頻繁に生じるかもしれませんし、最終的に第一院が独自に決定をするということになるんですが、果たしてこういった対立型といいますか、正面衝突を繰り返すような二院制が本当に好ましいのかどうか、これは一つ考えてみる余地のある問題ではないかと私かねがね思っております。

 それから、その裏返しになりますけれども、両院の構成が似通っているということが本当に第二院の独自性を阻害する要因になるのかどうか。当然、これに答えるためには、第二院の独自性というものをどういう意味で考えるのかということを考えざるを得ないわけです。

 以上、二院制一般についてお話をしてまいりましたけれども、今度は、それを踏まえて少し具体的な例を考えてまいりたいというふうに思います。

 まず参議院をということになるわけですが、参議院に入る前に、もう一つ、日本と同様に単一国家における第二院を採用しておりますフランスの例を挙げてみたいと思います。これは、たまたま私がフランスのことを研究してきたということもございますが、日本との関係を考える上でも、フランスの第二院というのはなかなか興味深い素材になるのではないか、かねてこう考えているわけです。

 一枚物の簡単な選挙制度に関する資料がございますので、そちらをあわせてごらんになりながらお話を聞いていただければというふうに思います。

 現在のフランス憲法のもとでは、第二院、これは元老院と普通訳すようですけれども、この元老院には地方公共団体の代表、つまり先ほど申しました地域代表としての地位が付与されております。

 問題は、その地域代表、つまり人ではなくて、人口ではなくて、地域を代表するということをどう実現するかということでありますけれども、この点でフランスは実は非常に独特な制度をとっております。つまり、間接選挙ということになります。具体的に申しますと、各県ごとに、その県選出の国会議員、それから各種の地方議会議員が集まって、選挙人団を構成して元老院議員を選挙する、こういうシステムであります。

 フランスの地方自治制度というのは、若干複雑なところがございます。三層制になっておりまして、一番下に基礎自治体であるコミューン、これは日本でいうと市町村に当たるでしょうか、それからその上に県があり、さらに広域自治体として地域圏というものがその上に存在しておりますが、数の上から申しますと圧倒的多数を占めるのがこの基礎自治体であるコミューンでして、総数では恐らく三万六千程度、これはヨーロッパのすべての基礎自治体を集めたより多い、こう言われております。日本の基礎自治体の十倍以上ということになりますが、数の上ではこのコミューンが圧倒的多数を占めるわけです。

 地方公共団体の代表を保障するということになりますので、少なくともそれぞれの自治体に最低一定数の選挙人を配分しなければならない、こういうことになります。そうなりますと、コミューンの代表が選挙人団に占める比率というものが非常に高くなってまいります。三万六千基礎自治体がありますと、当然人口の不均衡というものも非常に大きい。一番大きいのはパリで、二百万を超える人口を持っておりますけれども、小さなところですと百人を切るようなコミューンもたくさんあるわけです。それらに人口に比例した選挙人を配分するということは事実上不可能ですので、実際には人口比例という観点から見ますと非常に大きな不均衡が存在しております。

 その次に、若干、議席配分の表がありますので、こちらもごらんいただければというふうに思うのです。

 いずれにしましても、独自性を出すためにフランスでは地域代表という原理を導入する、それから、その具体化の手段として、人口比例を犠牲にした間接選挙というシステムをとっております。したがいまして、これは最初に申しましたように、しばしば第二院が第一院の決定を阻害するということが起こり得るわけです。

 フランス憲法はそれをどう解決しているかといいますと、これも先ほどから繰り返し申し上げておりますように、第一院の権限を第二院に優越させる、つまり、両院の決定が対立した場合、一応両院協議会を開きまして、その上で最終的には第一院が決定をする、こういうシステムを採用しております。ただ、不対等型とはいいましても、実際上の機能の面から見ますと、第二院の権限は実際以上に非常に強いように私には思われます。

 なぜ、こうした地域代表としての第二院が置かれているのか、これも興味深い点でありますけれども、幾つかの説明が可能であろうかと思います。

 一つは、これは日本でよく言われることですけれども、第一院とは異なる角度から民意を反映しているのだ、こういう説明であります。地域を代表するというのが表立っての説明でありますけれども、この地域代表というのは、実際の機能の面におきましては、中央に対する地方の代表といいますか、あるいは、さらに言いますと、都市部に対する農村部の代表といったイメージでとらえられることも多いようです。

 それから、そういった選挙制度をとりますと、当然議会構成の面では保守派、あるいは中道派、保守派という言い方をする方が正確かもしれません、が常に議会では多数を占める、こういうことになります。ですから、特に下院の方、左翼、フランスですと社会党ですけれども、社会党が議席の多数を握った場合、両院の衝突ということが非常に先鋭化してあらわれるわけです。

 いま一つの説明、これは日本でもよくなされるところでありますけれども、第一院に対する均衡といいますか、あるいは熟慮の議院といったらいいでしょうか、こういった役割分担であります。

 これは、特に選挙制度ともかかわっておりまして、間接選挙がとられているということがあって、比較的議会構成の変化が第一院に比べると少ない。それからさらに、議員の任期が、最近少し改正がありましたけれども、従来は九年と非常に長い。そういう中で、比較的、中道右派に偏ったような安定した議会構成が続いている。そこで、第一院の行き過ぎに対するある種のブレーキをかけているのだ、こういう説明が伝統的になされてきたわけです。

 さらに、加えて、地方の代表ということもあって、その地方の問題ですとか、あるいは文化的な問題ですとか、こういった特定の領域で第二院は一定の成果を上げてきたのだ、こう言われることもよくございます。

 ただ、実際の機能ということを眺めてみますと、必ずしもそういった熟慮の議院といいますか、中立的な役割ではない部分が随分ございまして、一番最後に簡単な表を準備いたしました。ちょっと最新のデータが入っておりませんけれども、一枚物の一番下のところですね。

 フランスの政治制度というのは、大統領と首相が併存しておりまして、ちょっと複雑なんですけれども、特に一九八〇年以降、国民議会で社会党が多数をとり、大統領に社会党のミッテランが選ばれる。その左翼政権があらわれた局面で、第二院の政治化ということが非常に顕在化してまいりました。これは、どういうふうにつかむかというのはなかなか難しいのですが、一つの指標として、議会に関する統計を使うことができるかと思います。

 右の方にCMPと書き出してある、これは日本風にいいますと両院協議会、つまり、両院の意思が対立した場合、調整の場として両院協議会がどれだけ設けられたかという数であります。期間にばらつきがありますし、扱われた立法の数も違いますので、単純な比較はできないのですけれども、八〇年代初頭を見ていただきますと、両院協議会の開催は非常にふえている。しかも、そのうち、かなりの事例では、最終的に第一院が単独で決定をする、両院の対立が非常に先鋭的にあらわれる、こういう場面が出てまいります。

 それから、一方、その数年後、一九八六年の半ばに選挙がありまして、下院の多数派が入れかわりますと、今度は元老院、上院は、下院に対して非常に協調的になる。場合によると、審議権を放棄してまでその審議の促進化に協調するということで、非常に政治的な動きがあらわれてまいりました。

 その意味で、よく非政党化ということを日本の参議院についても言われるわけですが、普通選挙を前提とします限り、特に間接選挙をとっていてもなかなかこれは難しい問題ではないかと私は考えているわけです。

 こういった、選挙制度で選ばれて、しかも、時々、第一院の決定と激しく衝突する、場合によると、それを阻害するという第二院の存在がありますので、選挙制度のあり方というのが従来からずっと問題になってまいりました。特に、左翼政権にとってはこれは悩みの種でして、一九九七年に誕生した社会党のジョスパン政権のもとで、選挙制度の民主化、これは括弧つきの民主化かもしれませんが、試みられております。

 具体的には、先ほど申しましたように、選挙人の配分に非常に大きな人口上の不均衡があったわけですが、ここに徹底して人口比例の原則を導入しようということを考えたわけです。ところが、この改革については、憲法院から、憲法裁判所ですが、憲法違反という判断が一部下されております。

 なぜそうなったかといいますと、人口上、非常に大きな不均衡が基礎自治体であるコミューンについては存在しております。一番人口規模が小さいところに最低限一人の選挙人を配分するということになりますと、人口規模が大きい、例えばパリのように二百万を超えるような人口規模を持っているところにそれに比例した形で選挙人を配分するということになりますと、これは膨大な数の選挙人を配分しなければならない。二十人、三十人という数ですと、議会の議員全てを選挙人にすることで対応ができますけれども、人口比例を徹底しますとそれが難しくなる。議会外から、いわば普通選挙によって選ばれていない人たちを補助的な選挙人として加えることでしか人口比例というものが成立しない。ここが非常に問題になったわけです。

 その意味で、大きなジレンマを抱えた二院制だ、一方で高い評価もございますけれども、そういうことが言えるかと思います。

 それから、もう一つ、フランスの二院制について指摘したいと思いますのは、今、両院の構成が違った場合の話をしていたんですけれども、両院の構成が似通っていた時期、実は、この時期に、比較的有益な役割を第二院が演じていたのではないか、こういう評価があります。

 これは、私も実は同感でありまして、先ほど見ていただいた一番下の表をごらんいただくとわかるんですが、具体的に申しますと、一九七〇年代の半ば以降、大統領も、それから上下両院も、それぞれ保守中道が多数を占めるという時期がございました。両院の構成が一致しまして、しかも、権限でいいますと不対等ということになりますから、さっきのレープハルトの分類からいきますと、これは弱い二院制だ、こういうことになりそうなんですが、実際は必ずしもそうでありませんで、構成は似通っておりますけれども、両院の意思が食い違う場面というのが結構生じております。それからさらに、その上で両院が協議をして一定の合意に至るというケース、これは両院の構成が似通っていますので、当然そうなるかと思うのですが、これがかなり生じているわけです。

 そういう意味で、最初にもちょっと申しましたように、両院の構成が似通っているから独自性が発揮されないのだと本当に言えるのかどうか。この点は、改めて検討を要するように思われます。特に、そこでの独自性ということをどういう方向に求めるのかということともこれはかかわってくると思います。

 そこで、最後になりますが、以上の話を踏まえまして、今度は日本の参議院についても簡単にお話をさせていただきたいと思います。

 制定の経緯という項目を設けましたが、時間の関係でここは割愛させていただきまして、まず、前提として、一つ確認したいと思います点が、日本の参議院あるいは二院制についてよく言われます、衆議院の優越あるいは不対等型の二院制という認識についてであります。

 これも繰り返し申してきたところなんですけれども、本当に日本の二院制というのは不対等型なのか。これは、実は、ここにいらっしゃる国会議員の皆様方がよく御存じの点ではないかというふうに思うのですが、私は必ずしもそう思っておりません。

 特に、法律ということに限ってみますと、再議決のためには衆議院で三分の二の特別多数が必要になります。これは、現実的に見ましても非常に高いハードルでありまして、この点だけ取り上げても、日本の参議院というのは実は非常に強いのではないか、レープハルトが分類するように、むしろ対等型に近いのではないか、こういうふうに思われるわけです。

 そのことを前提とした上で、参議院の独自性をこれまでどこに求めてきたのか、参議院の独自性をめぐってどういう議論があったのかということについても簡単に触れてみたいというふうに思うのです。

 最初に代表原理という話を少ししましたが、一つの方向は、政治代表とは異なる方向、つまり、例えば、利益職能代表的な要素を加える。これは正面から導入することはできませんけれども、旧の全国区についてはこういうことが言われてきたわけです。それから、他方で、これは人口比例を犠牲にした上でのことですので、非常に問題がございますけれども、都道府県代表的な要素を加えるんだということも言われてまいりました。しかし、にもかかわらず、両院の間には大きな相違は生じてこなかった、また、目立った独自性が発揮されてこなかった、これが現実ではないかと思います。

 それから、もう一つの方向性、これもフランスとやや似通っておりますけれども、一言で言いますと、理性の府ということになろうかと思います。

 つまり、数が支配する衆議院とは異なる観点から、国政にそれとは違った視点を持ち込むのだ、こういう話でありまして、これとの関係でよく言われてまいったのが、一つは、非党派性といいますか、非党派的な要素を参議院に持ち込むことで独自性を求めていこう、こういう話です。

 特に、これもよく言われることですけれども、戦後初期の参議院では緑風会という独特の組織があったこともあって、参議院は非党派的な議院であるべきだということがよく言われております。

 ただ、さきに御紹介しましたフランスの例からもわかりますように、普通選挙を前提といたしまして、どこまで非党派的な議院が実現できるのか、私自身は非常に懐疑的でありまして、むしろ、目指すべきは非党派的な議院ではなくて、参議院らしい政党化ということではないだろうか、こう思っているわけです。

 具体的にどういう参議院らしい政党化があるのかということなんですが、一つの方向は、これは憲法との関係で申しますと、憲法は議院内閣制を採用して、解散と不信任というメカニズムをとっておりますけれども、参議院は一応この外に置かれております。

 そうなりますと、衆議院が内閣をつくる、あるいは、衆議院が内閣を維持するのに対して、参議院は内閣の批判に徹する。場合によると、参議院から閣僚を出さないというような慣行を確立して、内閣からは一線を置いたところに参議院の独自性を見出していこう、こういう方向性が一つ考えられるわけです。

 ただ、実際には、解散と不信任のメカニズムの外にあるといいましても、例えば内閣が提出した重要な法案を否決するという形で参議院は内閣の存立に大きな影響を及ぼすことができます。そこで、こうした方向が好ましい効果を生み出すかどうか、あるいは有効かどうかということについては、私は若干疑念を持っております。

 それから、参議院の独自性に関しては、もう一つ、特に一九九〇年代以降、衆議院と参議院のいわゆるねじれ現象といいますか、構成が食い違った状況が続いてきているということについても触れておきたいと思います。

 本来ですと、両院の構成が食い違っていますので、参議院の独自性が発揮されることが期待されるわけですが、必ずしもそうなってこなかったところがございます。

 なぜかということですが、一つには、やはり一番大きいのは、参議院の反対を見越して、参議院を含めた形での多数派形成が行われる。奇妙な慣行と呼ばれたり、あるいは国会内閣という言葉が使われたりいたしますけれども、参議院も含めた多数派というものを事前につくって、両院の対立が起きないような状況をつくるということが行われてまいりました。

 なぜこうした方向がとられてきたのか。これはやはり理由があることだと思っておりまして、これは先ほどの参議院が強いのかという話とかかわってまいります。

 つまり、参議院が法案の成立に非常に強い権限を持っている。したがって、その対立が生じそうなのであれば、事前にそれを抑えるような方策が必要になるだろう、こういう方向から、両院にまたがる形での内閣の形成というものが考えられてきたのではないか。それに基づいて、参議院の独自性の発揮というものがなかなか果たされなかったのではないか、こう考えられるわけです。

 そうなりますと、では、憲法を改正して参議院の権限を弱めたらどうか、不対等型であればそうした慣行は生じないのではないか、こういう話になりそうでありますけれども、これは繰り返し申しましたとおり、仮にそうした形で参議院の独自性が強く発揮される、最終的に第一院が決定を下す、こういう図式が果たして二院制として本当に好ましいのかどうか、ここは私としては考えてみるべき余地があるように思っております。

 そもそも、なぜ憲法が三分の二という再議決の高いハードルを設けたのか、問題はここにもかかわってまいります。私が考えておりますのは、あえて高いハードルを設けることで両院の間のある種の妥協なり協調を促しているのではないか、こういうことであります。

 日本の場合、両院は同じような民主的正当性を持ち、似通った選挙制度で選ばれておりますので、なかなか構成の相違が生まれにくい、こういうことはあるわけです。しかし、それはあくまで大枠での話でして、先ほどのフランスの例からもわかりますように、細かな点で、細かなというといささか言葉が悪いかもしれませんけれども、大枠とはかかわらない部分でさまざまな修正を第二院が第一院に加える、こういう余地は十分にあり得るのではないか。いささか地味な二院制ということになるかもしれませんが、二院制のあり方としてこれはこれで有用なものではないだろうか、私自身はそんなふうに考えているところがございます。

 時間も随分なくなってまいりましたが、その上で、参議院の意味ということについて、私なりに最後に簡単に整理してみたいと思うのです。

 やはり、一つ重要な役割は、衆議院と異なる形で民意を反映するということであろうというふうに思うわけです。

 代表原理なり選挙制度が大きく異なれば、確かに、異なった形での民意の反映がなされたのだ、こういう評価があるかもしれませんけれども、最終的にそれが両院の対立をもたらし、最終的に一院のみによる決定を導くということになりますと、これはやはりいささか問題ではないだろうか。

 そうではなくて、それほど大きな対立は生じないかもしれませんけれども、例えば法案の修正という形で参議院がイニシアチブを発揮していく、ここに実は多様な民意の反映という意味を一つ求めることができるのではないか、こう思っているわけです。

 日本の場合、ヨーロッパに比べて国民なり世論が等質であるということはよく言われるわけです。社会学的に見ますと、確かにそういう面はあるのかな、こう思っております。しかし、世論が等質か多様かということは、これは所与のものとして決まっていない部分がある。特に、代表のあり方を通じて世論の多様性というものが具体化されてくる部分があるわけです。

 世論の中に潜んでいます非常に微妙なニュアンスとか細かな表情といったもの、これを拾い出して、それから、例えば修正なり調整という形で国政に生かしていく、これは実は多様な民意の反映を考える上でも一つ重要な視点なのではないだろうか、私はこう思っております。

 では、どうしたらそれが発揮されるのか、では、なぜ現在それが発揮されていないのか、これは一つ検討を要する点でありますけれども、二つほど指摘をさせていただきたいと思っておりまして、一つは、さきに申しました政党化ということにかかわっております。

 参議院の政党化を防ぐことはできないであろう。これは先ほど申し上げた点でありますけれども、政党化が防げないということは、参議院と衆議院が全く同じような政党化をするのがよいということではもちろんないわけです。特に、任期や選挙が違いますと、同じような政党や党派構成を前提としましても、民意と議院の関係というものは大きく変わってまいります。

 ところが、現在の選挙制度を見てまいりますと、衆参で制度が似通っている、代表原理に着目してこういうことがよく言われるわけですけれども、同時に、もう一つ大きな意味を持っていると思われますのは、特に政治改革以降、政党本位ということが非常に強調されてまいりました。これはさまざまな面にあらわれておりますが、他国と比べてもかなり強力な政党本位の制度が衆議院、参議院双方に導入されております。

 ということになりますと、議院と政党の関係というものが衆議院、参議院双方で同じように固定化されているのではないだろうか。この点は、例えば選挙制度に関しては一つ見直してみるべき価値があるのではないか、こう思っているわけです。

 それからもう一つ、これはきょうぜひ申し上げておきたいと思った点なのですけれども、両院の独自性を発揮させる前提として、当然、それぞれの院の自律性というものを考える必要があります。

 日本国憲法の場合ですと、例えばそれぞれの院に独自に議院規則の制定権を認める、こういう規定がおかれております。戦前の憲法には議院法の存在というものが予定されておりまして、議院法が決めた後で残りの細かな事項を議院規則が決める、こういう役割分担が考えられていたのだと思いますけれども、日本国憲法はこの種の法律の存在を本来は予定しておりません。

 現実には、国会法等で、例えば委員会等についても細かな規定が置かれておりますけれども、これが本来の姿なのかといいますと、私は必ずしもそうではないと思っております。

 これは私の先輩の諸先生方が繰り返し指摘されてきたことでもありますけれども、本来からしますと、憲法が法律に留保している事柄を除いて、基本的に、両院の組織に関する重要事項、これはそれぞれの議院が自律的に議院規則という形で定めてもよいのではないか、こう思っております。つまり、みずからの院の組織をみずから決定することができない議院に独自性を期待するということは難しいのではないか、こういうことであります。

 議院規則と国会法の役割分担、ある意味では、憲法改正にも匹敵するような大きな意味を持っておりますけれども、これはぜひひとつお考えいただければと思っている点であります。

 こう考えた上で、改めて、参議院の役割をどこに求めるかということになるわけですが、一つは、先ほどから申し上げておりますように、必ずしも衆議院との大きな違いではないかもしれないけれども、ある種細かな世論の違いというものを反映していく、こういう方向が一つあり得るのではないか。

 それから、それと結びついてもう一つ、憲法は参議院に長い任期を保障しておりますけれども、こことの関係でも、多様な民意の反映を具体化する方向性というものが考えられていいように思われます。

 衆議院と異なって解散がない、しかも六年の任期が保障されているということですので、当然考えられますのは、長期的な視野に立った調査活動、現実には調査会といった制度がございますけれども、あるいは行政に対するコントロール、こういった方向性が、一つ、参議院の好ましい機能として、あるいは役割として憲法上考えられるように思われます。

 本日のテーマの一つの、決算ともこれはかかわってまいります。

 時間がございませんので、簡単にここではコメントだけすることにいたしますけれども、予算の事後的な統制というのは、かかる視点からいたしますと、当然、参議院の一つの役割というふうに考えられるわけです。

 ただ、これもこういうお話があるというふうに伺っておるのですけれども、例えば憲法を改正して、衆議院に予算の議決権を与える、参議院は決算に特化したらどうか、こういう方向があるというお話を伺いました。これは確かに一つの方向性ではあるわけですけれども、それが果たして好ましい方向なのかどうかということにつきましては、私自身はやや疑問を持っております。

 といいますのは、これはレープハルトの分類ともかかわってまいりますけれども、決算に特化した参議院を考えるということになりますと、当然、予算の審議とは切り離した参議院を考えることになる。例えば、内閣とは一線を引いた形で参議院を考える、それで決算という形で比較的弱い権限を付与する、こういうことになりますので、そういった弱い権限を持った参議院がどこまで有効なコントロールを行使できるのか、これは一つ問題になる点ではなかろうか、こう思っております。

 きょうの私のお話は、基本的には、現在の憲法を前提としても参議院にはさまざまな役割を考え得るのではないか、こういうことでございましたけれども、さらにもう一歩踏み込んで申しますと、憲法政策的に見ましても、現在の日本国憲法が想定している二院制、これは方向として大きく間違っていないのではないか、むしろ問題なのはそれを生かすための前提条件なり、その前提となるさまざまな要素ではないだろうか、これが私なりの一つの結論でございます。

 時間もございますので、足りない点は質疑の中で補わせていただければと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

鈴木小委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木小委員長 これより参考人及び会計検査院当局に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山太郎会長。

中山会長 自民党の中山でございます。

 まず、会計検査院長にお尋ねしたいのですが、私、かつて参議院におりましたころは、二年、三年分の決算報告を一年で処理したというような歴史が参議院にはございます。そういうことで、決算の承認がそんなに大した意味を持たないという意識が非常に私はあったと思うのです、旧来の参議院のあり方の中で。

 そういう中で、コンピューターが導入されて計算速度が非常に上がったということで、次年度の十一月ごろには検査の報告が出るという時代に来たのではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。

森下会計検査院長 予算編成が行われる前に決算の審査をすることができるように、その時期に間に合うよう決算の検査の結果を出してほしいということでございまして、それは大変意味のあることだというふうに考えております。

 ただ、決算そのものの確認というものはコンピューターを駆使すれば時間短縮はできるわけでございますけれども、具体的な検査活動の、検査の内容になりますと、これは問題によりましてはかなり時間がかかるものもございます。

 そういう点で、今私ども会計検査院の悩みは、時期が早められたことによって検査の内容とか質が劣るものにならないように頑張っていかないといけないという点でございます。

中山会長 会計検査院長、もう一回別の立場から質問させていただきますが、会計検査院の職員の採用に当たって、理工系の出身者というのは何%ぐらいか、アバウトで結構ですが。

森下会計検査院長 現在、二百名を超えておるかと思います。約千二百五十人ぐらいの職員のうち、二百人を超える者が理工系の学部を卒業した者でございます。

 本年、検査報告を早く出すということのために四十人の定員の増が認められまして、約千三百人ぐらいになってはおります。これからいろいろな分野の採用に心がけていかなければいけないというふうに思っています。

中山会長 そこで、アメリカのGAO、我々は去年調査をいたしましたけれども、これは議会に附属したような機関であって、非常に強い立場を得ているわけですね。ここのいわゆる検査結果によって、二〇〇二年度は年間約三百七十七億ドルの節約がなされた、こういう調査結果が出ております。GAOの年間予算が約四億四千二百六十万ドルでありますから、八十倍以上のいわゆるコスト削減に向かってのアドバイスができた。

 ここで、会計検査院が中立的な機関であるということは先ほど御説明いただきましたけれども、政府から独立して、いわゆる議会に密着した立場で検査報告を出すようなことはできないかどうか。これは非常に議会にとっても大切なことだろうと思うのです。

 というのは、予算審議それから予算関連法案は、まずこの審議の過程で、衆議院で優先的に議論されている間、参議院に法案審議の余裕が出てくるわけですね。その期間に会計検査というものを参議院に集中して調査させていくということが納税者にとって非常に意味があるんじゃないか、こういうふうに実は感じておりまして、この点については只野参考人にもお伺いしたいと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。

森下会計検査院長 会計検査院は、決算の検査ということでございまして、できるだけそういう成果を早くまとめて、そして国会の方に明らかにしていきたいという姿勢で今検査にも臨んでおります。

 ただ、検査報告といいますのは、憲法上、決算とともに提出するということになっておりまして、年一回という制約がございます。その制約はございますけれども、先ほども少し触れました、会計検査院法の三十四条でありますとか三十六条によります改善の処置要求とか意見の表示というのはその都度行うことができるものでございますので、こういった手段を活用して、今の中山委員の御要望のようなことに沿っていけたらなというふうに思っております。

只野参考人 ただいまの御質問にありました、会計検査院を例えば国会の附属機関としてといいますか、国会とリンクさせる形で機能させてはどうかという点でございますが、国会なりそれぞれの議院によります財政統制ということを考えますと、有能なスタッフを国会が備えるというのは確かに一つの方向であろうかとは思います。

 ただ、これはなかなか難しいところがございまして、これはよく会計検査院について言われるところでありますけれども、アメリカのように、大統領制という形で立法と行政の厳格な分立が果たされている場合とは異なりまして、議院内閣制の場合、議会の多数派と、それから予算の執行の責任を有します内閣との関係は非常に密接でございます。

 特に、予算の執行という面について会計検査院がかなり踏み込んだチェックをする、場合によると、専門合理性という観点から政策的に問題があるのではないかという指摘をすることも本来あろうかと思うのですけれども、そういったものまで考えてみますと、特に内閣からの独立性ということを考えてみますと、議院内閣制のもとで、国会のもとに会計検査院を置くというのはなかなか難しい面も他面においてあろうかというふうに思っております。

中山会長 最後の質問でありますけれども、これは只野参考人にお尋ねしたいと思うのです。

 両院制の中で、参議院は、衆議院と違って内閣不信任案は出せない、問責決議案ですね。だから、直接内閣が退陣するとか、そういうことは参議院ではあり得ない。

 こういった中で、戦後のドイツの内閣総理大臣と日本の総理大臣の数を比較してみますと、大体、日本が五十人近いでしょう、ドイツは十二、三人じゃないかと思いますね。つまり、内閣不信任案を出すときに、あらかじめ次の首班候補を決めてからでないとドイツの憲法は不信任案を出せないのですね。こういうところに、この失われた十年というか、いろいろな政治の変化が絶え間なく起こってきた。

 ここらの点は、国会の仕組みについてよく御存じの只野参考人、どういうふうにお考えでしょうか。

只野参考人 今ドイツの建設的不信任のお話がございましたけれども、日本でなぜ総理大臣がよくかわるのかということについては、不信任とは若干違う要素があるのではないかというふうに考えております。

 特に、日本の場合、衆議院には、場合によると参議院まで含めまして、安定した多数派が少なくとも外見的にはずっと存在してきたわけでありまして、そこから多数派が支える内閣不信任が出されるということは非常に考えにくいわけです。

 そうした安定的な基盤があるにもかかわらず、なぜ内閣総理大臣がよくかわるのか。これは、やはり党と内閣の関係をどう考えるのかというような問題を含んでおりますので、直接その不信任のメカニズムとかかわらないのではないか、こんなふうに思っております。

 それから、参議院が衆議院の命運を左右するのはいかがなものか、これも一つ筋の通った議論ではないかというふうに思っているんです。しかし、現実には、例えば参議院によって内閣の命運が大きく左右された事案というのはそれほど日本の場合多くないのではないか、これも、私、感じているところでございます。

中山会長 どうもありがとうございました。

鈴木小委員長 次に、鹿野道彦君。

鹿野小委員 最初に、森下院長、只野参考人、大変貴重な話を賜りまして、ありがとうございました。

 最初に、森下院長にお聞きいたします。今もお話がございましたが、いわゆる会計検査院というのは、国会、内閣、裁判所、いずれにも属さない独立機関だ、こういう中で、議会の附属機関化を検討すべきでないかという声もあるわけですね。

 これは、やはりアメリカがそれだけの成果を出しているというふうなことだと思いますが、実質的に、議院内閣制のもとで立法府に監視機関を設置するというふうなことについては本当に中立性というものが保たれるのかどうか、こういうふうなこと。すなわち、与党と内閣という非常に密接な関係からして、重ねて申し上げますけれども、十分中立性というものは維持できるのかどうか、この辺のところのお考えを聞かせてください。

森下会計検査院長 お答えするのは難しいのでございますけれども、そういう政治の場に近いところに密着しておりますれば、何らかのやはり影響は受けるのではないかというような感じを個人的に持っております。

 現在の会計検査院法が新憲法とともに制定されるときの改正要綱の中でも、なぜ国会に附属させないかという説明で、やはり政治的影響を避けるべきであるというような趣旨のことが言われております。

鹿野小委員 そうしますと、只野先生がおっしゃったとおりに、いわゆる統治機構が違う、議院内閣制のもとでなくて、アメリカのように大統領制、大統領と議会の関係ならば議会の附属機関化するというふうなことはどうだろうかということについての考えはどうですか。

森下会計検査院長 これも、そういう統治機構を専門に研究したわけでもございませんので、今までのつたない知識の上でのお答えになるかと思いますけれども、アメリカにおいて厳格な三権分立のもとでGAOというのが存在するということであれば、我が国も、そういう厳格な三権分立ということであれば、それはあり得るのではないかということでございます。

 ただ、我が国で厳格な三権分立というのがいかがなものかというのは、また次の問題があろうかと思います。

鹿野小委員 もう一つお聞きしたいと思います。

 先ほどの説明の中でも、平成九年の国会法の改正で、いわゆるそれぞれの議院もしくは委員会、調査会が、審査、調査のために必要なときは、特定の事項について会計検査を行い、その結果報告をするよう求めることができる、こういうことになりました。これについてはまだ二件きりやっていない、こういうことですよね。

 果たして、せっかくこういう法改正によってということならば、より有効に機能させるにはどういう見直しが必要なのかということについてはどうお考えでしょうか。

森下会計検査院長 二件にとどまっている理由というのは、私どももどういうことによるのかよくわからないわけでございます。

 先ほどもちょっと御説明いたしましたように、やはり国会のいろいろな審議の中から検査要請というのが生まれてくると思いますけれども、私ども会計検査院は、そういう審議内容を十分に把握しながら検査計画の中で検査テーマに選定したりしておりますので、ある意味では先取りをしながらやっているという面はあるのかなというふうにも思ったりしております。

鹿野小委員 只野先生にお聞きしますけれども、結局、二件きりやっていないということは、与党がオーケーしない限り提出ができない、こういうふうなことになるものですから、そこは見直しの中で、一定の数で要求すればそれはできる、今申し上げたようなやり方も一つの考え方ではないかなと思うのですけれども、いかがでございましょうか。

只野参考人 これはおっしゃるとおりではないかと思います。

 先ほど統制機能という話を少しいたしましたけれども、議院内閣制というシステムを前提にいたしますと、特に有効に行政統制を行うためには、議会内の少数派がイニシアチブをとった形でのコントロールを考えるということが非常に私も重要だというふうに考えております。

鹿野小委員 只野先生にお聞きいたします。

 先生は、両院が対立するようなことは決して望ましいことではない、いわゆる衝突するような状況になるということは二院制の機能にとって果たして望ましいと言えるのかどうかというお考えだと思うわけでございますけれども、そうすると、結局、選挙制度によって両院間に大きな相違というものをつくり出すことはどうなのかということは慎重にやはり検討する必要がある、こういうふうに先生もおっしゃっておられるわけですね。

 ただ、一方において、せっかく二つの議院が個々の選挙を行うということならば、それぞれ異なる形でも代表機能が期待されるというふうなこともいわゆる自然なことではないかと思うんです。

 この辺のことを考えたときに、先生のお考えとして、選挙制度のあり方というのはどうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。

只野参考人 確かにどうやって両院を、特に第二院の独自性を出すかということになりますと、まず考えられるのは構成を異ならせるということでありまして、そうであれば両院の選挙制度を異ならせたらどうか、これは比較的自然に出てくる結論であろうかと思います。そういう点で、私、先ほど申し上げた結論は余り普通でないのかもしれません。

 ただ、先ほども申しましたように、両院が大きく対立したような場面を考えてみますと、やはりどちらの決定に正当性があるのかということが問題とならざるを得ないように思われます。

 フランスのように、第一院が最終的に決定をするという形で、つまり不対等型の第二院とであればこれは比較的うまく機能する可能性があるというふうに思っているわけですが、対等型の第二院の場合、なかなかそれは難しい部分があるのではないか。

 そうであれば、両院の協調を考えるということを重視いたしまして、むしろ選挙制度によって大きな差異を生み出すということに必ずしもこだわらなくてもよろしいのではないか、こういうことでございます。

鹿野小委員 最後に、只野先生にもう一つお聞きします。

 我が国の憲法では、四十三条の第一項に、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」ということだけ定められているわけでありまして、選挙制度についての、いわゆる参政権にかかわる事柄ついては憲法上明記されていないんですが、諸外国なんかは、選挙制度について、非常に重要な事項だということからきちっと明記されている、我が国においてもやはり具体的な定めを置くべきではないか、この憲法調査会における参考人質疑におきましても、大石先生がそういうこともおっしゃっておられたことがあるのでございますけれども、只野先生のお考えはどのようなお考えでしょうか。

 そして、規定をするならば、具体的にどういう形の規定がよろしいかということもお聞かせいただければと思います。

只野参考人 確かに、選挙制度をどう定めるかということは非常に重要な問題でありまして、ある意味、選挙制度こそが憲法だ、こういう言い方をされる方もいらっしゃいます。

 また、どうしても選挙制度は時々の多数派にとって有利なものが選ばれやすいという側面もございますので、憲法にそれを書き込むべきだ、できるだけのものは書き込むべきだというのはそういったところから出てくる考え方であろうか、こう思うわけです。

 他方で、選挙制度をどう定めるかというのは非常にさまざまな要素が絡み合ってまいります。どういう代表観でもって憲法を理解するのかということもございますし、それから、その国の例えば世論のあり方あるいは社会のあり方、これに応じた選挙制度を選択するということも非常に重要だろうというふうに思っております。また、そのあり方自体も大きく変わるわけです。

 そういたしますと、改正が困難な憲法の中にどこまでそれを書き込むのかという部分、非常に難しいところがございまして、一般には、やはり日本国憲法のように、普通選挙ですとか幾つかの重要な原則のみを書き込んで、あとは立法裁量の中でそれを考えていくというのが一つの合理的な選択かな、私自身はそんなふうに思っております。

鹿野小委員 ありがとうございました。

鈴木小委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)小委員 公明党の斉藤鉄夫です。きょうはありがとうございました。

 まず、只野先生にお伺いいたします。

 連立政権ということについての御意見をお伺いしたいんです。衆議院では自由民主党が過半数を超えておりますけれども、参議院において自由民主党は、第一党ではありますけれども過半数に達しないということで、政治的な安定を求めるというふうに私たちは支持者に説明をしておりますけれども、今、自民党と公明党との連立政権という形態になっております。

 ある意味では、参議院の存在が今の連立政権の根底にあるということになるわけですけれども、そのことについて先生はどのようにお考えになっているか。ちょっと、私も当事者ですのでなかなか聞きにくい点はあるんですけれども、お答えいただければと思います。

只野参考人 なかなか一言でお答えするのが難しいところなんですけれども、私自身は、衆議院と参議院にまたがって連立政権が形成されるということは、それ自体としては大きく間違っていると必ずしも考えているわけではございません。

 また、連立政権には連立政権のメリットというものがございまして、単独の政権よりもさまざまな民意をくみ上げる余地がある、こういうことであろうかと思います。

 ただ、反面、これは連立だけの問題ではないんですけれども、与党内から、特に衆議院と参議院という関係を考えますと、例えば衆議院の決定したものとは異なるような視点が参議院では出てくる、同じ政党であっても違う視点があらわれてくる。これは、実は議会制のあり方としては比較的普通ではないかと私は思っています。

 よく言われますのは、欧米では法案に対する修正案、これは与党からも結構たくさん出てまいります。もちろん、大枠を変えるものが出てくるということは議院内閣制のもとではなかなか考えにくいわけですけれども。そういった意味で、さまざまな独自性なり、あるいは連立政権のよさの発揮の仕方というものがあろうかというふうに思うのです。

 ただ、なぜそうした修正案が与党から出てこないのか。これはやはりさらに検討を要する問題だと思いますが、よく言われますように、例えば事前審査の問題ですとかさまざまな問題がありますので、そういった面も含めて考えていく必要があるのかなというふうに思っております。

斉藤(鉄)小委員 ありがとうございました。

 その参議院なんですけれども、いろいろな先生の御意見をお伺いしましたけれども、一つポイントになるのが選挙制度なのかな、こういうふうに思っております。

 先生が、今の衆議院の小選挙区比例代表並立制、これが与えられたものとして、それでは参議院の選挙制度はどのような形が最も理想的か。また、被選挙権が、衆議院は二十五歳ですけれども、参議院は三十歳ということも含めまして、先生のお考えを聞かせていただければと思います。

只野参考人 これもなかなかお答えするのが難しいところがございますが、一応、現在の衆議院の制度を前提にしてというお話ですので、それを前提にした上でお答えをいたしたいと思うのですけれども、一つの方向は、やはり、さきにも申しましたように、議院と政党の関係ということになるのかなというふうに思っております。

 特に、政党本位の選挙制度設計ということがこの間ずっと進められておりまして、これはこれで意味があることだというふうには思うのです。しかし、それが行き過ぎている部分がある。それからさらに、参議院には非拘束名簿の導入というようなことはありましたけれども、参議院についても同じように非常に強い政党本位の制度設計というものが私は貫かれているように思っておりますので、一つは、このあたりを少し見直すということが考えられてよいのかなというふうには思っております。

 ただ、具体的にどういう制度をとるかというと、なかなかこれは難しいのですけれども、例えば大選挙区制のような方法というのが一つ考えられるのかなというふうに考えております。

斉藤(鉄)小委員 それからもう一つ。憲法の議論とちょっと外れるんですけれども、委員会方式についての疑問が呈されました。

 確かに、私も議論をしていて、例えば私は文部科学委員会に所属しておりますが、文部科学省に対応する形での文部科学委員会、財務省に対応する形での財務委員会というふうに役所組織に対応した形での委員会審議、非常に効率的ではありますけれども、本当にそれでいわゆる国会の機能が発揮されるのかなという疑問点があるんですけれども、この点について、もう少し先生のお考えを聞かせていただければと思います。

只野参考人 この点は、恐らくここにいらっしゃる皆様方の方がよく御存じの点ではないかというふうに思いますし、私自身余り深い知識を持っているわけではないのですけれども、確かに、議院内閣制を前提にしますと、省庁別の委員会というのも一つの方法かなというふうには思うのです。

 他方で、例えばさきに申しましたように、議会の統制機能、立法だけではなくて統制機能も持っているということを考えますと、そうした機能に特化した委員会を設けるというようなことは一つあり得るのかなというふうに思っております。

 実際に、委員会をどう構成するかというのはなかなか難しいところがございます。特に、これは参議院の場合ですけれども、そういったものをもっと強く考えるということはあり得てよいのではないかというふうに思います。

斉藤(鉄)小委員 森下院長にお伺いしますが、これは基礎的なことをちょっと教えていただきたいという意味での質問です。

 会計検査院で行われるチェックですけれども、一つは、いわゆる悪意を持って行われる操作、また、悪意とは言わなくても、明らかにタックスペイヤーの利益ではなくて自分が所属する組織の利益を目的としてお金を扱う、そういうものをチェックする機能、これは会計検査院に求められている一つの機能だと思います。

 もう一つ、いわゆる制度そのものに起因するところのお金のむだ遣い。例えば、入札制度に絡んで、これだけ今技術が発達してきている中で、例えば技術が絡んだ仕事について、今の入札制度が本当にお金のむだ遣いという面からいいのかどうか。

 こういう制度にかかわるお金の使い方、そういうことへのチェックということも当然国民は期待しているわけですけれども、どちらを主体に仕事されているのか、現実にはどういう比率になっているのか、これを教えていただければと思います。

森下会計検査院長 どちらにどういう比重を置いてということではございませんで、どちらもしっかり検査に当たらなければいけないということでございます。その時々のいろいろな問題のあらわれ方によりまして、そういう厳しいチェックの検査が前面に出ることがありましょうけれども、いずれの着眼点といいますか観点も常に持ちつつ検査をしているということでございます。

斉藤(鉄)小委員 終わります。

鈴木小委員長 次に、山口富男君。

山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。

 まず、会計検査院にお尋ねします。

 先ほど、独立性を担保するための三つの面という指摘がありました。いわばこれは外形的な制度設計だと思うのですけれども、私がお尋ねしたいのは、具体的な仕事の中身として、客観的、中立の立場で厳正、公平にやるということになりますと、そういう視点で見たときに、今の会計検査院の仕事のありようとして、やはりこういう点は改革したり、改善したり、何らかの措置をとる必要があるな、そういうようなことを考えている検討課題というのはあるんですか。

森下会計検査院長 現在の与えられているいろいろな権限ということで考えていきますと、我々はそれを十分使っておりますし、さらに新しい何かがなければそういう自律的な活動が難しいという点は感じていないところです。

山口(富)小委員 私が冒頭にそのことを聞きましたのは、今の予算執行の点検というのが行政府の政策動向を追う形での検査になってはいないかということを感じたからなんです。

 それから、もう一点。いわゆる機密費、報償費なんですけれども、ここ数年、内閣官房や外務省をめぐって大問題になってきました。皆さん方も国会で随分答弁されたと思うんですが、この問題をめぐっては、現在どういう問題があると認識されているのか、示していただきたいと思います。

森下会計検査院長 平成十三年のころだったと思いますが、今おっしゃいました内閣官房報償費でありますとか外務省の報償費について、精力的に検査を行いました。そして、やはり内部のチェック体制に少し十分でない面があったということを発見いたしましたので、その管理体制を整備するようにという処置の要求を、内閣総理大臣に対しましても、外務大臣に対しましても、出したというわけでございます。それに対しまして、内閣官房と外務省におきまして、それぞれそういう管理体制を整備されております。

 現在の関心は、そういう整備された管理体制がうまく機能しているかどうかをまたチェックするということ、そういう検査を今やっております。

山口(富)小委員 引き続き厳格な検査を期待したいと思います。

 私は、次に、只野参考人にお尋ねしたいんですけれども、きょうは、三つ目の柱の、日本国憲法の二院制と参議院については時間の関係で少しはしょられたように思うんです。

 お話をお伺いしていまして、結局、参考人の問題設定といたしましては、二院制をめぐる規定で、日本国憲法に何らかの問題があるという設定でなくて、今の、現実の政治や運用のあり方の方に問題がある、ですから、参議院の独自性の発揮のための方向というものをそういう立場で考えていこう、そういう大きな問題設定だというふうに理解してよろしいんでしょうか。

只野参考人 そうお考えいただいて結構です。

 もちろん、憲法という枠を取り払いますといろいろな選択肢が出てくるわけですけれども、差し当たって現行の憲法の中でもうまくいく要素はあるのではないか、また、現行の憲法が採用している大枠といいますか、制度設計それ自体が大きく間違っているというわけではないのではないか、私、確かにそんなふうに考えております。

山口(富)小委員 そうしますと、二院制について、先ほどの指摘にあったんですが、憲法四十一条で国権の最高機関とされるわけですけれども、先ほど政治代表という言葉もありましたが、いわば国会を国民の代表機関として位置づけるわけで、そこに主権者国民の意思が貫徹するかどうかというところが非常に大事な問題になると思うのです。

 それで、二院制の問題を論じる場合、日本国憲法の憲法原則としてここが非常に大事な点なんだというように参考人がお考えになっている点を、幾つか示していただきたいと思うのです。

只野参考人 幾つか重要な点はあろうかと思うのですけれども、一つはやはり代表原理にかかわる部分、特に憲法の四十三条ではないか。

 先ほどもちょっと御質問にありましたけれども、日本国憲法の場合は、例えばフランスのように地域代表という特別な地位を第二院に与えておりません。両院はひとしく全国民の代表、こう規定しております。したがって、ある種同等の民主的な正当性を付与するということを前提にしているのではないか。例えば、人口比例を犠牲にした独自性の発揮というのはこういった点から問題になろうかというふうに思っております。

 それから、もう一点。ここは恐らくいろいろ議論があろうかと思うのですけれども、特に法律の再議決に関して非常に高いハードルが設けられている、衆議院の意思のみではなかなか法律が通りにくい仕組みを設けている、ここであります。

 これがゆえに独自性が発揮されていないのだ、これは確かに一つの見方だと思いますし、それなりに説得力はあると思うのですけれども、私自身は、本来はやはりそこにそれなりに意味があるのではないか、同じような民主的な正当性を持つ両院を設けたわけですから、両院にできるだけ対等に近い権限を与える、その上で、両院の間の調整、あるいは参議院による衆議院の修正ですとか、そういった視点をどうやって実現していくのかということが恐らくそことの関係では問題になるように思います。

山口(富)小委員 事前にいただきました参考人の論文を読ませていただいたんですけれども、それを拝見しますと、参議院の存在意義について、多様な民意を多元的に反映するという言及がしばしばあるんです。これは大変重視されていると思うんですが、今お話しになった政治代表という原則からきているとは思うのですけれども、もう少し具体的に論じていただけませんか。

只野参考人 そこにはいろいろな要素がありますので、なかなか一言で申し上げるのは難しいところがございますけれども、一つは、やはり一つの議院だけで、仮にそれが民主的に選挙されているとしても、すべての民意を酌み尽くすことは難しいだろうということが前提としてございます。

 その上で、どういう形でさまざまな形の民意というものを具体化していくのか。これは所与として存在している部分もございますけれども、代表というプロセスを通じて具体化される部分もある。その一つとして、もちろん二院制だけではありませんけれども、やはり二院制というのは大きな意味を持っているのではないか、こう考えたわけです。

 具体的に、では、どういう方向でそれを具体化するのかということになるわけですが、両院の構成が違う、これは非常に目に見える形で多様性があらわれているではないか、こういう話になるわけです。

 しかし、結果的に、一院の意思のみで決定が下されるということになりますと、なかなかその意味が具体化してこない。そうであれば、むしろ多少その構成が類似するようなことがあっても、ある種衆議院と違った視点が参議院の中から出てくる、それがある種国政の中にうまく生かされていく、こういう方向で多様性を考えることもできるのではないか、最近そんなことを考えておりまして、きょうはそういう視点からお話をさせていただいたわけです。

山口(富)小委員 先ほど、決算に特化した参議院のあり方については疑問を感じるというお話があったんですけれども、憲法上の要請として、日本の場合は、財政に対しては、事後のコントロール、会計検査院の報告を踏まえてやるわけです。となると、両院に予算と決算のきちんとした権限を持たせないと、これは憲法上問題になってくるんじゃないですか。

只野参考人 もちろん、それはそのとおりではないかというふうに思っております。さらに、その上で、参議院の一つの役割として予算の事後的な統制ということを考えてもよろしいのではないか、こういう趣旨でございますので、憲法規定を踏まえますと、予算の審議、議決、それから決算、両院にはそれぞれの権限がある、これは当然前提になる部分だろうと思います。

山口(富)小委員 前提の前提みたいな話ばかりが続いているかもしれませんが、もう一点。院の自律にかかわる問題で、先ほども指摘があったんですが、憲法五十八条の趣旨から見て、国会法と議院規則について幾つか見直しを提起されたようなんですけれども、この趣旨をもう少し説明していただけませんか。

只野参考人 そもそも日本国憲法の場合、国会法のような法律の存在を前提にしていたのかどうかという点について一つ議論があると思います。

 諸外国の例などを見てまいりましても、この種の法律を設けずに、憲法の規定を受けて、基本的には議院規則がそれぞれの議院の組織について規定する、場合によると両院の関係についても規定をするという例が非常に多いように私は思っております。

 日本国憲法がどういう立場をとっているかということになるわけですけれども、例えば憲法上法律に留保されているような事柄、あるいは、場合によりますと両院の関係も若干法律にかかってくることがあるかもしれませんが、それ以外につきましては、基本的には議院規則の専管事項といいますか、議院規則のみが定め得る事項だ。そういう意味で、法律が規定する余地というのは本来狭いのだ、こういう解釈が本来成り立つのではないかと私は思っております。

山口(富)小委員 どうもありがとうございました。

鈴木小委員長 次に、土井たか子君。

土井小委員 きょうは本当にありがとうございました。

 会計検査院の、御説明をいただきました院長さんにお願いをしたいと思います。

 法文上は、内閣に対して独立の地位を有するということがございますながらも、実態的には、内閣、行政府の権限の中に会計検査院というのはあるんじゃないか、本来の機能というのが十分にまだまだ果たされていないという批判があるんですが、そういう批判の声に対してどうお考えでいらっしゃいますか。

    〔小委員長退席、辻小委員長代理着席〕

森下会計検査院長 内閣に対して独立をしているということは、検査の対象とは一線を画しているということだと思います。そのような意味では、これはしっかりと一線を画して検査に当たっておりますということでございます。

土井小委員 それは確かに、心得としてはそのような心得で努力していらっしゃるということは百も承知です。ただしかし、実際問題とすると、人事権というのが内閣にありますし、それからさらに、予算の作成ということからすると、財政法の十七条、十八条、十九条あたりを見ますと、会計検査院を、国会や最高裁判所と同様に独立機関としてその予算の編成に十分配慮することを求めつつ、しかし、実際はほかの行政省庁と同じであって、財務省の査定を受けるということになっているわけでしょう。

 だから、そういう点からすると、実質的にはどうも内閣からの独立というのが環境として困難だということにあるのじゃないかという指摘がよくありますね。こういう問題はいかがですか。

    〔辻小委員長代理退席、小委員長着席〕

森下会計検査院長 私どもも、予算でありますとか、人員でありますとか、そういう点で本当に困っているということになりますと、それは強く財政当局に要求をいたしまして、そのような折衝をするわけでございます。

 それから、国会の方からも、時々といいますか、ある年度においては、会計検査院の機能の充実強化を図るようにという決議がなされたりしておりまして、現在の会計検査院といたしましては、そのような制約があるために活動が非常に困難であるというふうには感じていないわけでございます。

土井小委員 強く主張されるということを聞きますと心強い限りなんですが、かつて、少し古い話で恐縮でございますけれども、昭和二十七年に、たしか最高裁判所が営繕工事の中身について予算要求をされたわけですけれども、その中身に対して、内閣の方と意見が一致しない。内閣の方はそれを減額するという立場でこの問題に臨まれていて、結局は最高裁の方が引かれたという経過があるんですね。

 だから、どうも、頑張ると言っても、やはり内閣がどう認識されるかの方が大変強い力を発揮されるということに結果としたらなっているわけで、それ以後は、予算要求されていて、そのことに対して頑張られたという経過を私、余り知らないものですから、古い事例を引っ張り出して恐縮なんですけれども、少しその辺は、やはり現実の問題とすれば、独立機関だといいながら、なかなかそれは、独立機関としての立場ということを貫くというのは大変な努力が要ると思うのですね。

 むしろ私は、やはり国会というのが今の会計検査院に対してはバックアップしているということが大変大事じゃないかなと思いながら、一問お尋ねしたいんです。

 今の会計検査院法の二十条の三というところを見ますと、「会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行うものとする。」となっておりますね。

 どうも諸外国では、特にアメリカなどは顕著なんですけれども、いわゆる有効性というのが大変問題にされているんですね。アメリカの場合は、その八割までが有効性に重点を置いて検査されるというふうに言われておりますが、日本の場合は、会計検査院とすれば、これは一番重点を置かれているのはどういうところですか。私は、正確性という追求も大事だと思うのですが、やはり橋をつくったら、その橋をつくるという所期の目的どおり役に立っているかどうかということを検証するというのは、大変大事な検査のありようだともまた思うのですね。

 この辺はどうでしょう。一割か二割ぐらいでしょうか。アメリカの場合、これに八割かけられているというふうな数字が出たりしておりますが、いかがですか。

森下会計検査院長 現在の会計検査院は、そういう幾つかの検査の観点の中でも、有効性の観点ということにかなりの重点を置いて検査をしております。それがどのぐらいの割合を占めるのか、数字的にとらえているものはございませんけれども、一つ一つの有効性に関する検査報告の内容は、やはり大勢の調査官がかかっておりまして、そういうものを一件と数えたりするわけです。正確性や合規性の検査で一件というものとは、かなりウエートの違う検査になっております。そういった有効性の検査は、やはり検査院のこれからの進んでいく一つの方向だということでございます。

 それから、アメリカの会計検査院の有効性の割合が高いということでございますけれども、アメリカは、GAOという組織のほかに各省庁の会計を監察する組織として、監察総監といいますか、それぞれの省庁にそのような職が置かれておりまして、ある程度正確性、合規性のような検査がそちらで分担されているというようなこともあろうかと思います。

重松会計検査院当局者 今、委員からGAOの八割が有効性だというお話がございましたけれども、GAOでは結果を観点別に分類しておりません。八割というのは、恐らく議員あるいは議会からの要請に基づくものが八割ということだろうと思いますので、その点だけ御説明します。

土井小委員 大いに会計検査院としては頑張ってもらわなければならないと思うのですが、これは、頑張っていくことに対してどこがネックかということをやはり私たちもよく知っていなければ、その辺はうまく作動することになりませんから、一つだけ申し上げますけれども、今、会計検査院の方は定年は何歳ですか。

鈴木小委員長 質疑時間が経過しておりますので、簡明に御答弁をお願いします。

森下会計検査院長 会計検査院の職員は、国家公務員の一般職の職員と同じでございまして、六十歳でございます。

土井小委員 六十歳ですか。私は六十五歳が定年かと思っていました。そうですか。公正取引委員会なんかは定年七十歳じゃないですか。

森下会計検査院長 先ほどのは職員の定年のことを申し上げたんですが、会計検査院の検査官の場合は定年六十五歳でございます。

鈴木小委員長 土井君、時間が経過しておりますので。

土井小委員 はい。これは任期が七年ですね。

 そうすると、六十五歳、七年の任期だということになれば五十八歳あたりでやはり検査官になられる。働き盛りですから、これは有力な方になっていただけるという条件からしたら、まずその定年を少し延ばしたらどうですか。

森下会計検査院長 そういった制度につきましては、いろいろと国会で御検討をいただければありがたいと思いますが、確かに六十五歳という定年は、ほかのそういう特別職の長と比べましても若いのではないかというふうに思います。

鈴木小委員長 土井君に申し上げます。時間が来ておりますので。

土井小委員 もう終わりますが、やはり会計検査院の人事権とか予算の実質的な査定というのは行政府から切り離すことを考えていくというのが大変に大事な問題。やはり独立性をきょうは非常に強調されましたし、またそれは存立している意味というもののよって立って、そこが一番の私はポイントだと思っておりますから、その辺を考えていくということは大事だと思います。

 最後に、先生、きょうはわざわざありがとうございました。この人事権とか予算の実質的な査定、これは行政府、内閣から切り離すということが非常に大事な問題じゃないかというふうに思っておりますが、どのようにこの点は考えたらよろしいでしょうか。

只野参考人 先ほど申し上げたことと重なりますけれども、これは非常にやはり重要なことだというふうに思っております。

 それから、場合によりますと、かなり踏み込んだ形で会計検査院の方で権限を行使するということは、私は本来あり得てよいだろうというふうに思っておりますので、そういった点からも、改めて、憲法が独立の機関を設けた意味ということは重く受けとめる必要があるのではないか、こう考えております。

鈴木小委員長 次に、岩永峯一君。

岩永小委員 先に会計検査院の方から御質問を申し上げます。

 英国の会計検査院は大変開放的でかつ流動的だ、そういうことをよく言われますね。逆に、フランスは大変閉鎖的だ、こういうふうに言われるわけです。ただ、その中で私が感心しておりますのは、監査の一部または大部分を民間の監査法人に委託している、こういうことで、会計検査院がこれを管理するというような状況ですし、これは本当に効率的で行革に沿った動きだ、このように思うわけですね。日本でも、できる部分から民間への業務の委託というのを検討されるべきだと思うのですが、会計検査院はどのように考えておられるかということ。

 それから、会計検査院で、今公認会計士を任期付職員として採用しておられるわけですね。公認会計士というのは大変高度な専門知識を有する方でございますので、どういうふうに今活用しておられますか。そして、採用によってどういうふうな効果が出ているかということを最初にちょっとお聞きしたいと思います。

森下会計検査院長 イギリスの会計検査院の検査の内容は、財務諸表の検査ということと、それからバリュー・フォー・マネーというものの検査、この二つをやっておりまして、今外部の監査法人に外注をしているというのは財務諸表の検査というところでございまして、それはある意味では公認会計士という方の職務と共通な部分がございます。イギリスの会計検査院の財務諸表検査というのはそういう検査でございますから、そこはスムーズな外注があるのかなと思います。

 日本の場合は、先ほども申し上げましたけれども、多角的な観点から総合的に検査するという検査の手法でございますので、外注といいますか、監査法人にすべてを任せるというのはまだいかがなものかなという感じを現在持っております。

 それで、私どもも、これからはいろいろな検査対象団体の中にも企業会計的な考え方を取り入れた独立行政法人とかが入ってまいりますので、そういった検査の助けを公認会計士の方にお願いをできればいいかなというふうに考えたりもしております。

 ただ、公認会計士の方だからといってそういう分野ばかりではなくて、やはり公会計の、行政のそういう検査にも当たっていただいた方がというふうに考えております。

 それから、中には、原価計算のような専門的なことを助けてもらいたいということで、一年間の契約を更新しながら来ていただいている公認会計士の方もおられるということです。

岩永小委員 もう一つ。全世界の会計検査院で組織している最高会計検査機関国際組織というのがありまして、それに加盟しておられますね。それで、諸外国の会計検査院とさまざまな機会を通じて知識や経験を交換しておられると思うのですが、英国のNAO、それからアメリカのGAOは大変有名なんですよね。そして、NAOの場合は支出に見合った価値というものを対象にしているし、アメリカのGAOはプログラム評価というのを行って大変高い評価を得ているわけでございますが、こういう交流、研修を通じて日本の場合はどういう改善を行っていこうとしているのか、お願いします。まだ只野先生に御質問しなきゃならぬので、簡単に答えてください。

森下会計検査院長 GAOのプログラム評価といい、それからNAOのお金に見合った価値、バリュー・フォー・マネーというふうに呼んでおりますけれども、日本の会計検査院ではそのあたりを有効性の検査というふうに呼んでおりまして、ほとんど内容的には共通の検査を実施していると思っております。

岩永小委員 先ほどの外部委託というのは、私はこれから大変大事だと思いますよ。そして、むしろ今の会計検査院の足らざる部分というのを外部で充足させるなら、彼らはかなり専門的ですので、これはやはり今後考えていく必要があるんじゃないか、このように思います。

 それでは、只野先生、先ほどの二院制の問題ですが、その中で私はいつも疑問に思うのは、参議院、衆議院の選挙区選挙と比例代表制の組み合わせが大変似通った状況になっているわけですね。これは、何でこんなばかな選挙制度を参議院も衆議院もとっているのか。

 衆議院は、私は三百選挙区でいいと思うのですよ。そして、参議院は比例だけで百人ほどでいいと思うわけなんですが、ここらあたりを先生、率直にどのようにお考えいただいているか。

只野参考人 なぜ同じような選挙制度がとられたか、これはなかなか私もよくわからないところがあるんですけれども、本来ということを考えますと、例えば、おっしゃられましたように、内閣の存立と深く結びついている衆議院については、多数派の意思を反映しやすい小選挙区をとる、それから一方、そこに対する牽制役である参議院については、比例代表を中心とした選挙制度にする、確かにこれは一つの考え方であろうかというふうに思います。

 ただ、さっきから何度か申し上げているんですけれども、両院が対立した場合の調整をどう考えるかというのもあわせて考えておく必要のある問題だろうと思うのです。

 例えば、参議院の権限は弱いということになりますと、これは最終的に衆議院の意思が優越するということになりますが、日本の場合、必ずしもそういうシステムになっておりません。両院の構成が選挙制度を通じて大きく異なる、しかも、参議院が衆議院の意思に場合によるとストップをかけるといった場合、うまくそれが機能するのかどうか。

 これは一概に言えない部分がございますけれども、例えば比較的選挙基盤が似通った方が場合によるとうまく機能する場合もあるということですので、必ずしも選挙制度によってラジカルに両院の構成を大きく異ならせることがよろしいのかどうか、ここは少し慎重に考えた方がよろしいのじゃないか、私はそんなふうに思っております。

岩永小委員 僕は、数が多い少ないでその機能が弱いか強いかということではなしに、同じように過半数でもって可決をしていく、そしてどういう議案を、どのように権限を持たすか、そこにかかっていると思うのです。

 ただ同じような選び方ではなしに、地方から選んだ衆議院と、それから全国的に選んだ比例代表の中での、やはり違う感覚、意識というものの中での審議というのが大事だ、このように思うのですが、三百と百についてはどう思いますか。

只野参考人 比較法的にといいますか、他国の場合なんかを見てみましても、現在の国会の議員定数が必ずしも多いと私は思っておりません。

 三百と百というのは、数からするとかなり少ないだろうというふうに思っております。もちろん国会議員というのは数が問題ではないんだ、おっしゃられるように非常に趣旨はよくわかるのです。

 しかし、先ほどからいろいろ申していますように、民意というのは非常にいろいろな側面を持っておりますので、ある程度それをきめ細かく反映していくということを考えますと、それなりの数は必要だろう。三百と百がどうかと言われるとなかなか一概にはお答えしにくいのですけれども、やや少ないのではないか、特に参議院の百というのはかなり少ないのかなという気がいたします。

岩永小委員 もう時間がないので。ただ、私は何で減らせと言うかといいますと、私も八年目なんですよね。ただ、こんな国会議員の待遇で、本当に真剣な仕事、できませんよ、これは本当に。地方、地域へ帰っては走り回らなきゃならないわ、東京では本当に時間に追われてしまっているわというような状況。そして、やはり秘書も要るわ、車も要るわ、選挙もしなきゃならぬわというような。

 だから、私は、多くの秘書を与えて、そして本当に成果を発揮できるような環境というものをきちっとやはり国会議員に与えるべきだ、そしてその国会議員が本当に十分に能力を発揮できるようにするべきだ。そのことが、今の国会議員が多い、そして、それにどっと金が要るというようなことの中で、問題があるのなら、少なくして、もっと能力を発揮させていく。だから、小選挙区だけでいいんですよ、衆議院は。そして参議院は比例だけでいいんですよ。

 だから、その状況の中で、きちっと整理できて、時間的余裕とそれから経済的支援がきちっと行政の中でできるとしたら、やはり少なくせざるを得ぬということを私は考えているので、そこらあたりについてどうお思いになっておられるかということを最後に聞きます。

只野参考人 何とお答えしていいか、ちょっと難しいところがあるんですけれども、議員の数を減らしますと、必然的に一人の議員が代表する人口規模が大きくなります。それから、恐らく選挙区の規模、これは議員定数ではかることが多いんですけれども、選挙区がカバーする面積というのも大きくなる。ですから、それだけ労力が大きくなるということも言えるような気がいたしております。

 それから、民意との接点を考えるということからしますと、やはりさまざまな形で接点を持つということが重要ですので、単に数を減らすだけでは解決しない問題ではないか、そんなふうな印象を持っております。

岩永小委員 ありがとうございます。

 しかし、今、政治資金はどんどん絞られるわ、そして報酬はダウンするわ、そして国会議員を取り巻く環境というのはかなり厳しくなるわというような状況。一方、いろいろなお話がございますけれども、逆に、やはりアメリカの下院、上院ぐらいの立場と環境整備をしていかないと、我々はもう年ですので早くやめていきますけれども、これから頑張っていただく方にはそういうものだけはきちっと残したいというような気がします。

 以上でございます。

鈴木小委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵小委員 私は、前職といいますか、この国会に来るまでは経営の現場におりました。実体経済社会の中におりますと、非常にダイナミックに変革を行わねばならない、そんな必要性に迫られます。

 そのダイナミックな変革を政治の世界にという思いでこの国会へ上がらせていただいたわけなんですが、一方、政治の世界に入りますと、必ずしもダイナミックさというものが、もちろん一般的には要求はされていますけれども、そればかりではない、そういった感覚も実は私の中には芽生えております。

 特に、人間がやる政治というものに対しては、生命体の変化速度というんですか、そういったものが微妙に私は影響しているんじゃないか、政治や社会というものは、実は変革というものはある程度の時間をかけないと実質進展しないのじゃないか、むしろ、人間がやることというのは、そういった慎重さそのものがビルトインされているのではないか、変わり行く民意ということを考えますと、民主主義なんというのはまさに時間がある程度必要なものではないかとすら私は昨今感じているんです。

 そんな中で、最近の動きを例にとって、只野先生に、二院制についてのお話を伺いまして御質問させていただきたいんです。

 最近の動きでいいますと年金法案、私ども、この国会で議論をしてまいりました。そして、先般衆議院を通過したわけであります。この年金法案が衆議院を通過して参議院に回る。もちろんこれは、どんどん進めようという意図の一方、また、それに対して、反対なりあるいは議論を重ねていこうという意見がある中で、参議院へと場が移りました。

 先ほど先生の話の中で、民意の反映という部分に関しては、院の構成、ひいては選挙制度というようなところにまで踏み込んでおられましたが、私は、もう一つの民意の反映という部分においては、タイミング、時期というものも生まれてくるのではないかと思っています。つまり、時期によって変わってくる可能性がある。

 それは何を意味するかというと、国民が国会での審議の中で情報を幾つも幾つも受けていく中で世論が変化していく、衆議院から参議院へとこの法案が送られていく中で国民の民意そのものが大きく変わっていくというようなことが十分起こり得るのではないかという気がしています。

 もちろん、年金法案の具体的な先行きというのはわかりませんが、一方で、衆議院、参議院という二院制の中で、選挙や院の構成とは別に、こうした形の中での慎重審議というもので民意を十分反映させていくという一つの仕組みがここに生まれているのではないかというような考えを私は持っておるんですが、これに関して只野先生の御意見をいただきたいなと思います。

只野参考人 私も今の御意見、基本的に同感であります。きょう申し上げた話もここにかなり重なってくるかというふうに思っているんです。

 特に、第二院の存在意義の一つとして慎重審議ということはかねてよりずっと挙げられてきたわけです。これに対して、迅速な決定を阻害するのだ、こういう批判もございますけれども、これをメリットと見るかデメリットと見るかというのは、慎重な審議、時間をかけた審議の中でどれだけ有用な視点が付加されるのか、恐らくそこにかかってくるのだろうというふうに思っております。

 ですから、世論の変化を受けとめながら従来の審議とは異なる視点を参議院がつけ加えていくということがうまく実現できればこれは一番よいだろうというふうに思いますし、そこに参議院の意義を求めるというのは十分あり得ることではないか、こう思っております。

馬淵小委員 今、先生も、慎重審議というのが、ただ同じ手はず、手順を二度重ねているということではなくて、民意の反映がそこにかかわることに意味がある、こういうふうにお考えだという御意見だったと思うのです。

 もう一方、直近といいますか最近の動きの中からいいますと、昨年の衆議院選挙では、我々はマニフェストという形で政権公約を掲げて、政権選択という形での選挙を行いました。実際には、これによって我々が、新人議員はこうやって国会に来たわけでありますが、この政権公約、政権選択という選挙を前回は掲げた。

 しかし、今回、参議院選を控えております。この参議院選は、先ほどのこの流れでいいますと慎重審議の場であり、かつ、今度は政権を生む選挙にはならない。この参議院選においては、マニフェストというものの位置づけはどうあるべきかということをちょっと考えたときに、二十一世紀臨調さんなどは、衆議院マニフェストの検証であったりあるいは評価を行うべきだ、こういう御意見を挙げておられます。

 衆議院が政権の製造者あるいは保持者という立場であるということを考えますと、このマニフェストの関係で、参議院でのあり方というのはどういうふうなものと先生はお考えでしょうか。

只野参考人 非常に重要な点ではないかというふうに思うのですけれども、参議院についても、例えば同じようにマニフェストを提示して選挙を行うということは、当然あり得るのだろうというふうに思います。

 そうしますと、衆議院と参議院、同じ政党で違う公約を掲げたではないか、こういう話が出てくるかもしれません。しかし、世論は、もちろん選挙の時点で、次の選挙の間まで固まっているというものではございませんので、その間の世論の変化を受けとめる必要性というのは非常に大きいのだろうというふうに思います。

 例えば、同じ政党であっても、選挙された時期が違えば、世論との関係で、あるいは民意との関係で、若干投票行動が異なってくる。これは大枠が変わってきますと確かに問題かもしれませんけれども、これは当然あり得ることだろうと私は思っております。

 また、そういったことを前提にしますと、先ほど申したような参議院の独自性の発揮ということにもつながってくる余地があるのではないか、こんなふうに考えております。

馬淵小委員 そうしますと、独自性あるいは民意の反映というのが、選挙という一つの期間を置いて民意が変化する中での受け皿としての仕組みは選挙としてある。そして当然ながら、もう一つは、その選挙制度そのものに踏み込んだ院の構成、先ほど、地域代表であったり、あるいは職能代表であったりといったさまざまな方法論があるということも御指摘になられましたが、そういった民意の受け方もある。

 また、二院での審議という形で、一つの法案に対して、衆議院、参議院とその違った院の構成の中での議論によって、またそれがフィードバックされて世論、国民に対して影響を及ぼすということが、現在の日本のこの国会で、それはある程度理想的に行われているかどうかというのは、先生の今のお感じでも結構ですが、いかがでしょうか。

只野参考人 必ずしもやはりうまくいっていないということではないだろうかというふうに思います。

 特に、参議院につきまして、衆議院と異なる視点、本来は党派構成が似通っていてもあり得ると私は思っているんですが、必ずしもそうなっていない。その一端については、先ほどちょっとお話をさせていただいたところです。

馬淵小委員 そうなりますと、殊さら今度はうまくいっていないということを理由にして、これは院の構成そのものを大きく変えてしまったらどうかというような意見が、私は多分に出かねないなということを感じています。

 例えば、我が党の小沢衆議院議員などは、御自身の参議院改革という形で公に述べられておるのは、権力なき貴族院のような形で参議院を置きかえたらどうかというような御意見も出されています。

 これは、特に衆議院なんかで二十五年の勤続を終えた方々は、それこそ自動的に終身で名誉職としての参議院という議席を与えたらどうか、先ほどの両議院は国民の代表として選ばれるをむしろやめて、衆議院は選ばれる、ここまで大胆に変えたらどうかといった、こういうチェック機能に徹した参議院の姿などというものも意見として出されています。

 もちろん、これは一人のお考えという部分もあるかもしれませんが、この両院のあり方を考えたときに、ある意味で非常に端的な一方の考え方だというふうには思うのですが、これに対しては只野先生はどんなお考えでしょうか。

只野参考人 さきにも申しましたように、議院の権限とそれぞれの議院の民主的正当性、これはやはりある種の相関関係があるんだろうというふうに思います。

 ですから、第二院の権限を思い切って縮小するということであれば、例えば民主的な正当性を犠牲にしても全く違った構成の議院をつくってみる、これは確かにそれなりに一貫性のある論理なんです。しかし、それが果たして好ましいかどうか、これはまた別の問題があるように思います。

 特に、一定以上の人口規模の国で、ある種やはり一定の権限を持った二院制があちこちで設けられているということの意味は非常に重いというふうに私は考えておりますので、そういった観点から見まして、そのような二院制が望ましいかどうかと言われますと、やはりこれは問題があるのではないかというふうにお答えすることになります。

馬淵小委員 時間になりましたので、最後になりますが、今のお話も含めて、先生は、人口とおっしゃいましたけれども、政治レベルがある程度進化した形がやはり二院制という形で民意の反映の仕組みとしてあるんだという、ある意味での理想論をモデルとしてお持ちだというふうに解釈すればよろしいですか。

只野参考人 そういうふうに解釈していただいて結構だと思います。

馬淵小委員 わかりました。どうもありがとうございます。

鈴木小委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)小委員 自民党の古屋圭司でございます。

 まず、只野参考人にお伺いしたいんですが、古くて新しい問題として、参議院は衆議院のカーボンコピーだから不要であるという議論が昔からなされているわけです、私は、やはり本来あるべき役割というものを果たしていけば、二院制の機能というのは十分果たせるというふうに思っております。最近は、一院制を実現する会等々ができておりますが、私は基本的にそれは慎重であるべきだ、要するに余り賛成はできないというふうに考えています。

 今、只野参考人のお話の中でも、二院制の、むしろ参議院の役割は、多様な民意の反映にあるというふうに聞きました。また、参考資料でもそういうふうに見させていただきました。ただ、これはいわば衆参両院の構成あるいは選挙制度といいますか、そういった問題に行き着くと思うんですけれども、やはり私は、そういった構成という面ではなくて、むしろ具体的な役割、権限、こういった側面から見て、参議院の独自性をどういう形で具現化すべきか、具体的にお聞きしたいと思います。

 それから、もう一点、仮にそういった衆参両院の権限とか役割分担を今の制度以上に変える、要するに異ならせるという場合、それが構成あるいは選挙制度のあり方にリンクするべきなのか、あるいは、それとは全く別なのか、ちょっとこの二点についてお伺いしたいと思います。

只野参考人 まず最初の御質問ですけれども、参議院の役割といいますか、存在意義の一つが、多様な形で民意を反映することにあるだろう。私、先ほど申し上げましたけれども、もちろん、これは選挙制度と結びついた問題ではありますが、それだけではないというふうに考えております。

 これも先ほどちょっと申し上げた点なんですけれども、例えば、両院の構成が似通っていても、衆議院の提示した法案に対して参議院が修正を加える、両院の協議の結果、ある種の結果が出てくる、こういう形でも多様な民意の反映というのはあり得るのではないか、そう考えております。ですから、必ずしも選挙制度だけの問題ではない、やはりそういうことになろうかと思います。

 それから、これも先ほどからお話をしている点なんですが、憲法の枠を外してしまいますと、もちろんいろいろな二院制を考えることができるわけです。ただ、その制度設計に当たりましては、やはりそれぞれの独自性とそれぞれの正当性の関係といいますか、これはきちんと踏まえておく必要があるだろう。

 日本型のように、対等な権限と比較的類似した構成、これは一つの論理だと思いますし、それから、別に、例えばフランスのように、構成は違う、しかし権限を不対等にすることによって最終的には民主的に正当性が強い議院が優位する、こういう設計のあり方もあり得るだろうと思います。多分、重要な点はそこなんだろうというふうに考えます。

古屋(圭)小委員 ありがとうございます。

 正当性の問題についてはまた後ほどお聞きしたいと思うんです。

 次に、今、地方分権の一環として、三位一体改革あるいは地方においては市町村合併が進んでいますね。これは、いわば、地方分権のための手段だと思うのですけれども、究極の目標というのは、私はやはり道州制にある。これは明治維新以来の大改革につながりますので、ぜひ道州制を実現すべきだと思います。

 憲法上この記述をする必要はあるかどうかは議論の分かれるところですが、これはさておきまして、将来、道州制というものができた場合は、道州を一つの単位として選挙制度を考えていくということが可能ではないかというふうに私は思っております。

 そうなりますと、憲法の四十三条、全国民を代表する選挙された議員でこれを構成するというふうになっておりますが、やはりこれを改正していくべきではないか、道州制を将来しいた場合にはそういう形にするのが目指すべき方向だと私は思いますけれども、こういう点についてどういうふうに思われるか、お伺いしたいと思います。

只野参考人 確かに、例えばアメリカのように、道州制というか連邦制というか難しいところですけれども、そういったシステムをとりますと、それぞれの国家の構成単位、人ではなくて地域を基盤に代表を考えるというのは当然あり得る選択だとは思います。

 ただ、非常に難しいと思いますのは、連邦制をとっている国あるいは連邦制に向かいつつある国というのは、それぞれの地域について非常に強い独自性といいますか、ある種非常に強い基盤があるのだろう、歴史的な経緯等があって、その上に州なり、連邦制という制度が出てきているのだろう、こういうふうに思っているわけです。

 日本の場合は、もちろん地方分権を進めるということは私は賛成ですけれども、例えば、憲法を改正してまでそこに踏み込むことができるかということになりますと、それだけの基盤があるかどうかということをやはりしっかり考えておく必要があるだろうというふうに思うわけです。

古屋(圭)小委員 私は、やはり道州制を、これは憲法を改正しなくてもやれるということだと思いますので、そういう場合には、やはりその単位でやっていくことが参議院の独自性の一つのレーゾンデートルになるのかなという考えを持っております。これはお答えは結構でございます。

 それから次は、内閣の辞職を求めるいわゆる不信任。これは憲法上、衆議院にしか与えられていないわけでございますけれども、現実には、憲法の規定がなくて、問責決議を参議院でやっていますね。実際、参議院は、そういう重要法案の否決を仮にしたということになりますと、事実上内閣の責任を問う、すなわち辞職に追い込むということは可能であるわけですね。そういうことがあるものですから、やはり内閣としては、安定した運営をする、要するに多数を確保するというために、先ほど指摘の政党化をどうしてもやらざるを得ないということだと思うんです。

 やはり参議院というのは、自主的に権限行使を抑制するような慣行というのがあってもいい。具体的に申し上げますと、例えば問責決議により閣僚を辞任させる、そういった行為を自制していくべきではないか、良識の府と言われているところでございますので、やはりそういうものがあってもいいのかなという気がするんですけれども、この点についていかが思われますか。

只野参考人 確かに、内閣の存立と参議院の結びつきが薄いということからしますと、そういった方向性を慣行としては考える。あるいは、よく言われますのは、参議院から閣僚を出さないような慣行を確立することで独自性を求めたらいいのではないか、こういうお話がある。これは私もよく理解しているところなんですけれども、反面、そういった方向に踏み出すということは、参議院の権限を実質的に縮小するという意味合いを含むかもしれない。

 これは、先ほどの分類で申しますと、特に構成が類似している場合には、参議院の存在意義そのものにかかわってくる問題のように思います。日本国憲法の場合には、構成の相違よりは、むしろ強い権限といいますか、権限の対等性ということに基盤を置きながら第二院の独自性を追求する、こういう方向性を持っているのではないかと私は考えておりますので、必ずしもそういう方向がいいというふうには考えません。

古屋(圭)小委員 もう余り時間がないので。

 国会というのは会期があります。通常国会百五十日、これは憲法上は、国会の常会は年に一回ということでございます。そうなりますと、どうしても予算とか重要法案は衆議院が先に行きますので、もう荷崩れを起こさないで参議院へ持ってきてくれとかいうことで、ばたばたと、参議院は十分な審議時間が得られないというケースが多々ありますね。

 これはやはり、会期制がとられているということだと思うんです。ということは、やはり参議院でしっかり議論していただく、すなわち独自性をとるには、会期制というのを廃止してしまうということも一つの考えだと思うのですけれども、会期制を廃止するということに対して、どういうふうにお考えでございますか。

只野参考人 これは多分、いろいろな考え方があるところだろうと思います。予算の場合は、確かに時間が限られているという問題はあるんですけれども、法案についても同じ問題はあるのかもしれません。

 時間の有効な使い方を考える上では会期の枠がない方がよいのだ、こういう側面もございますけれども、他方で、一定の会期があるということは、例えば議会の少数派にとっては、それ自体、取引の材料になる点ですので、なかなか一概に言いにくい部分があるだろうというふうに思います。

 それから、実際に何日の会期を割り当てるか、これは法律レベルでも決定できることですので、その範囲で対応できることは結構あるのかなというふうに思います。

 それから、予算の場合、これは難しいのですが、例えば法律案の場合ですと、重要なものについては、次の会期についても継続して審議するというような対応の仕方もあるのかなというふうに考えております。

古屋(圭)小委員 もう時間が参りましたので、決算行政監視委員会の機能の強化についてちょっと質問したかったんですが、もうこれで結構でございます。ありがとうございました。

鈴木小委員長 これにて参考人及び会計検査院当局に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 只野参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。小委員会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

鈴木小委員長 これより小委員間の自由討議を行いたいと存じます。

土井小委員 規程十一条からいたしますと、議員の半数以上が出席していないと開くことができないはずなんですよ。ただいま定数は不足しておりますよ。いかがでございますか。

鈴木小委員長 土井委員に申し上げますが、お説のとおりだと思います。しかし、こういう状況でございますので、なろうことなら、しばらくの間、御理解をいただければと。ちょっと不規則発言かもしれませんけれども、そんなことで、ここで流会というのもあれかと思いますので、いかがなものでございましょうか。

船田小委員 規則は確かにございますが、ここまできょうの参考人、そして会計検査院に対する質問をいたしまして、その上でさらに御発言いただきたい先生方もおられるでしょうし、私も一つ発言したいことがありますので、そのことは何とかやらせていただいて、それで終了ということでいかがでございましょうか。御提案申し上げます。

鈴木小委員長 最終的には委員長の判断をというふうに今言われておりますので、大変恐縮ですが、そのような形で御理解をいただけたらというふうに思います。

 それでは、一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、小委員長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。御発言を希望される方は、ネームプレートをお立てください。

辻小委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 只野参考人から、現在の日本における二院制の機能に関連して、参議院の反対意見を見越した多数派形成がなされているという指摘がありました。まさに、参議院の対応を含んだ、それを見越した連立政権ということによって今の二院制が十全に機能しないような現状が現出しているというのは非常に残念な事態であるというふうに私は思います。

 多様な民意の反映がなされる機会として二院制の有効性があるんだという只野参考人の御意見について、一院制にすべきであろうという意見もあるわけでありますが、私は、二院制を維持して多様な意見が反映できる体制をつくっていくべきであろうというふうに思います。

 かつ、本日の只野参考人の御意見で示唆を受けましたのは、二院制といった場合に、対等の権限である、つまり第二院の権限を弱めないでも二院制は両立し得るんだ、独自性を発揮させることはできるんだという御指摘は非常に重要な視点ではなかったのかというふうに私は思うわけであります。

 それでは、多様な意見を反映する二院制をどのように形成していくべきなのかということを考えたときに、私は、現在の行政権の肥大化という中で、行政の決定、執行が中央統制のもとで全国に及ぼされている、東京一極集中の政治の仕組み、社会の仕組みの中で、行政統制もまたそのような形で全国津々浦々に及ぼされている、このことに対して、地方の、地域の意見を本当にきちっと反映させていくことが重要なのではないかというふうに思います。

 そういう意味におきまして、地方分権を徹底させるということが、今、二十一世紀の日本にとって極めて重要な課題であるということでありますが、地方の意見を国政の場にも反映させる、そのような観点で二院制のありようを考えていくべきなのではないか、私はこのように考えております。

 以上でございます。

山口(富)小委員 日本共産党の山口富男です。

 委員長の議場整理権がありますから発言いたしますが、きょうの小委員会が統治機構のあり方に関する小委員会であり、ここは憲法調査会だ、そういうことからいきまして、出席しているのは民主党、日本共産党、社会民主党、そして自民党は船田筆頭理事ただ一人という現状からいきまして、私は、与党に対して、やはり厳しく猛省をしていただきたい、これはまず冒頭申し上げたい点です。

 さて、きょうは、実は私、午前中から、人権の小委員会がまずありまして、そしてきょうの午後の統治機構だったんです。人権の方は刑事訴訟法だったんですが、午後の只野参考人のお話の二院制にかかわっても、両参考人からは憲法の改正論は全く出なかったんですね。

 両参考人は、憲法に反する現状を、例えば刑事司法の問題、二院制の問題、それぞれについての現状の改革が必要だという問題設定でいずれもお話しになったんです。この点は私は非常に重要な点で、今後、私たちが憲法調査会での調査を進めていく上でも、憲法の規範に照らして現状はどうなっているのかということをきちんと見なければいけないというふうに思います。

 そして、午後の只野参考人のお話では、今辻委員からお話があったんですけれども、多様な民意の多元的な反映という視点が非常に大事だということが強調されたんです。

 やはり、憲法が二院制について国民の代表機関として位置づけている以上、結局、主権者たる国民の意思がどういう形で国会に、統治機構に反映しているのかというのが一番大事な角度だと思うんです。その点で、選挙制度ですとか審議の内容ですとか、また議員の議案の提出権の問題ですとか、さまざまな点をよく吟味していく必要があるなということをきょう改めて感じました。

 出席者は寂しいですが、議論が寂しくなるといけませんから、以上をもって発言といたします。

船田小委員 自由民主党の船田元でございます。

 先ほど、土井委員そして山口委員からも御指摘をいただきました委員の出席状況、特に与党側の出席が非常に少ない状況でありまして、大変残念に思っております。

 憲法を議論する非常に大事な場でございますので、今後十分気をつけて、心して対応するようにいたしたいと思いますので、本日のところは御勘弁をいただきたいと思っております。

 私から、特に二院制について、ちょっと意見を申し述べてみたいと思います。

 只野参考人から、二院制のあり方、諸外国の状況そして我が国の状況、それぞれお話をいただきました。日本の場合には、連邦国家でなく単一国家であるということ、それから、両議院が選挙によって選ばれるということが憲法にも書いてありますので、地域代表とか職域代表ではなくて政治代表であるという代表原理に基づいて衆議院と参議院が構成されている、このような状況にあるわけです。こういう中では、二院制のメリットあるいは二院制の違いというものをどうやって発揮していくのか、非常に技術的に難しい問題であると思います。

 では、この際一院制にしてしまえ、こういう乱暴な議論もあるかと思いますが、私は、これまでの二院制度が我が国の政治形態の中で定着をしてきた、そういう観点からすると、むしろこの二院制のメリットを生かしながら、その制度の存続、そして充実を図るという方向で憲法というものを見直していく必要がある、こう考えております。

 一つの方向としては、選挙制度の問題があります。先ほど来只野参考人からもお話がありましたが、もし衆議院の制度を小選挙区比例代表ということで固定するのであれば、参議院は例えば大選挙区制があるのではないか、こういう御指摘。また一方で、同僚議員からは、衆議院を小選挙区のみに絞り、参議院を比例代表のみで行う、こういう大胆な分け方もあるのではないか。私も非常に参考になることでございます。

 小選挙区制度は、これは政権を選ぶ選挙になり得る可能性がある、つまり民意の集約だと思っております。一方で、比例代表というのは民意の反映ということであります。民意を鏡のように正確に反映をする、比例代表のやり方にもよるんですけれども、鏡のように反映をするというふうに言われている。

 そういう点で、やはり今言ったような選挙制度の違いというものは、それによって構成される院において議論することは、非常に二院制の違いを際立たせることにつながっていくということで、一つの方向性かと思っています。

 もう一つの方向は、権限ということから衆参というものを分けてはどうか、こういうことであります。

 ただ、権限といった場合に、衆議院と参議院のどちらが優越をするか、その強弱というのを考えてみても、これは相対的な議論になってしまいまして、本質的な制度上、性格上の問題にはなかなかつながっていかない。

 やはり、私は、権限というよりも権能ということで衆議院と参議院の違いを持たせるということの方が妥当ではないかというふうに思っています。

 例えば、これも乱暴な議論ですけれども、衆議院は予算中心主義、参議院は決算中心主義。そして、きょうも会計検査院からおいででございましたけれども、参議院には決算を中心として審議をするという観点からして、会計検査院を参議院に附置するというようなことも場合によっては考えられるのではないか、そのように考えております。

 いずれにしても、二院制のメリットを生かす、二院制の知恵を大いに利用する、そういうことが我々にとってとても大事なことであるというふうに理解をしております。

 以上でございます。

鈴木小委員長 他に御発言ございますか。

土井小委員 一言。それは何かといいますと、先ほども申しましたけれども、きょうはどういうスケジュールかというのを各委員は全部承知した上で開かれているわけですから、今まで御出席を待ち続けたけれども、どうも御出席の様子がないということを確認して、私は終わります。

鈴木小委員長 それでは、討議も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十一分散会


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