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第1号 平成15年3月18日(火曜日)

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平成十五年三月十八日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
  経済産業委員会
   委員長 村田 吉隆君
   理事 阪上 善秀君 理事 下地 幹郎君
   理事 竹本 直一君 理事 谷畑  孝君
   理事 田中 慶秋君 理事 中山 義活君
   理事 井上 義久君 理事 土田 龍司君
      小此木八郎君    梶山 弘志君
      北村 誠吾君    河野 太郎君
      佐藤 剛男君    坂本 剛二君
      桜田 義孝君    西川 公也君
      林  義郎君    増原 義剛君
      松島みどり君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    小沢 鋭仁君
      奥田  建君    川端 達夫君
      鈴木 康友君    中津川博郷君
      松野 頼久君    松原  仁君
      山田 敏雅君    河上 覃雄君
      福島  豊君    工藤堅太郎君
      塩川 鉄也君    大島 令子君
      金子善次郎君    宇田川芳雄君
  財務金融委員会
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 生方 幸夫君
   理事 松本 剛明君 理事 上田  勇君
   理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      林 省之介君    増原 義剛君
      山本 明彦君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    上田 清司君
      小泉 俊明君    中津川博郷君
      永田 寿康君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国務大臣
   (産業再生機構(仮称)担
   当大臣)         谷垣 禎一君
   内閣府副大臣       根本  匠君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   経済産業大臣政務官    桜田 義孝君
   経済産業大臣政務官    西川 公也君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室長)    江崎 芳雄君
   政府参考人
   (内閣府産業再生機構(仮
   称)設立準備室次長)   梅村 美明君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           中嶋  誠君
   政府参考人
   (経済産業省経済産業政策
   局長)          林  良造君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
   経済産業委員会専門員   鈴木 正直君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 株式会社産業再生機構法案(内閣提出第三号)
 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四号)
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――
村田委員長 これより経済産業委員会財務金融委員会連合審査会を開会いたします。
 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。
 内閣提出、株式会社産業再生機構法案、株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 各案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。
 これより質疑に入ります。
 なお、質疑者におかれましては、質疑時間を厳守されますようお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 財務金融委員会所属の民主党の五十嵐文彦でございます。
 私は、予算委員会審議等を通じて、日本の今の経済状況の最大の問題は、産業立地の国際競争力が劣っている、これが最大の問題であるということを言い続けてまいりました。最近、政府におかれても、競争力の問題ということを真剣に対処され始めた、ようやくされ始めたということで、随分おくれをとったなと思っているわけですが、もう一つ、今の日本経済の低迷について大きな問題があると思っております。それは、バブル経済の生成と崩壊の過程で生じたモラルハザード、この総括、整理というものがきちんとなされていないということであります。
 特に問題なのは、責任の大きな政治家と、為政者とそして私は銀行経営者のモラルハザードというのが非常に大きかったと思っているわけです。特に、自分の責任を回避したいために、損を確定したくないということから、ビジネスモデルの劣った過当競争の大企業に追い貸しをして生き長らえさせた。その自己資本が減りますから、その分を、まだ生きることができる、十分活力があるはずの中小企業から貸しはがしをした。これは八十六兆円に及びます。この大幅な中小企業からの貸しはがし、そして腐った大企業への、債務者企業への追い貸しというのが不良債権を拡大させてきて、日本のマネーサプライを締めてきた、このように思っているわけであります。その根本は、強い金融機関の経営者がみずからの責任逃れを、唯一最大の理由だと私は思いますが、そこを優先させてきたことが問題だ、こう思っているわけですね。
 そこで、その観点からこの法案を、特に産業再生機構という仕組みを見ていきますと、まさにモラルハザードを起こした金融機関の経営者を救済することに使われるおそれが大きいという点が最大の問題だと思うわけであります。
 そこで、一つは、例えば私は、このスキームを使っていくと、どうもうまく機能しそうもないと思っているんですけれども、結果として中小企業の方々から怨嗟の声が起きるのではないかな、そういうふうに思っています。
 例えば、民事再生法というのを、私は、使い方によっては、かつての倒産法制に比べて極めて機動的に運用し得る、ある意味では使い勝手のいい法律だと思うんですが、民事再生法についても実は中小企業の皆さんから怨嗟の声が起きているということを平沼大臣は御存じでしょうか。
平沼国務大臣 中小企業の皆様方が、民事再生法に関しましては、ある意味ではそういう使い勝手がよくない、そういうことの御不満は私も漏れ承っているところでございます。
五十嵐委員 いや、中小企業の経営者が使い勝手が悪いと言っているのではなくて、民事再生法は、本来、中小企業に適用すべきものを大企業が使っているために、中小企業が被害を受けているという話なんですよ。大変評判が悪いんです。つまり、大企業が責任をとらないで、いわゆる取引先企業である中小企業の債権を勝手にカットしてしまうということがあるわけです。だから、大変評判が悪いんですよ。そういうことと同じようなことがこのスキームにおいても心配されはしませんか、中小企業の担当大臣としてそういうことを心配していないのですかという意味から御質問しているんです。
平沼国務大臣 御指摘のように、この民事再生法を使って、そしてそのしわ寄せが中小企業に来る、こういう事例がある。そういう意味では、中小企業に用意したものが結果的にはそういうしわ寄せが来て使い勝手が悪い、こういう意味で申し上げているところでございます。
五十嵐委員 問題は、経営に失敗をした大企業の経営者が責任をとらないということが大きな問題なんです。その大きなもとが、この法律でも同じことが起こり得る。
 例えば、この法律の中では、二回目の債権放棄というものを否定していないと思うんですね。私は、もう既に大きな金融機関から、メガバンクから大変巨額の債権放棄をしてもらった企業が、もう一回ここで債権放棄をしてもらいたい、あるいは金融機関の方が、二度目の債権放棄をしてしまうと非難が大きい、また経営者の追及が厳しくなるということで、そこを逃れるために、実は、準メーン以下の金融機関がこの機構に債権を買ってもらう、そして自分たちのかわりに債権放棄をしてもらうということになれば、自分たちの責任を逃れられるわけですよ。
 こういう仕組みというのは、私は、完全な日本のモラルハザードの経済体質を温存することになる、これが大きな問題点の一つだ、こう思っているわけですが、そういうことをおやりになるつもりですか。私は、再建計画が一度失敗して、二度目はあり得ないというのはもう常識だと思うんですね。それを糊塗するためにこのスキームを使うというのは問題だと思う。私は、このスキームにおいては、二度目の債権放棄をするようなケースは認められない、すなわち、一度既に債権放棄をしてもらった企業については適用除外とするということをはっきりとお答えいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 今の五十嵐委員の御質問に対しては、機構が支援に乗り出すときの再生計画、これは十分深掘りしたものである必要がある、まずそのことをお答えしなきゃならぬと思うんですね。
 その上で、ですからその深掘りした計画で責任も明らかにしながらやっていかなきゃならないわけですが、二度目の債権放棄をこのスキームは否定しておりません。しかし、その場合には、主務大臣のほか事業所管大臣の意見も聞いた上で、いわば当初の事業計画をつくると同じような慎重な手続を要求しておりますので、当初の再生計画が履行されるよう最善を尽くす、こういうことでございます。
五十嵐委員 それはやはり、ごまかしなんですよ。それは、最初の再建計画というのは、本来ならば同じように綿密にされるべきであって、そのために債権放棄というのがなされたわけでありますから。そして、その債権放棄をした金融機関には国のお金が入っているんでしょう。公的資金が投入されているんですよ。それを二回目も認めるということを含みとして置いているというのは、大変おかしなことだと私は思います。そういう意味で、私は、二度目の債権放棄をしない、させない、あるいは、ロスが生じた場合にきちんと銀行に責任をとらせる、そういう仕組みが必要なんだろうと思います。
 この二次ロスを生じさせるということは、二重の意味で国民に負担をかけるということになると私は思うんですね。すなわち、最初の、公的資金を注入したという事実があるということ、ここでもう一度、結果として再建できなかった場合には、再建が難しい企業に最終的に国に負担を回すという意味で、二重に国民に対して申しわけないことをするということになるんですが、私は二次ロスという考え方について、認めるかどうかということについて、財務大臣からお話を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 二次ロスの問題でございますけれども、今回のこの再生機構全般について流れておる思想からいいますと、そういうものを出さないようにして処理したいということと、それからもう一つは、不良債権の整理を加速さすということに重大な意味があるのでございます。債権の安全を図るというよりも、加速をすることと、それから、ロスを出さないようにして速やかに処理をするということでございますので、二次ロスのことについての我々の責任というものは、現在、今考えておらない、出さないようにするということに重点を置いておるわけであります。
五十嵐委員 大変いい御答弁をいただいたと思いますね。
 二次ロスを出さないというんだったら、二次ロスを出さないように、歯どめを法案の中ですべきだ、私はこう思いますが、いかがですか。
谷垣国務大臣 要するに、二次ロスを最小限に、国民負担を最小限にするように努力するというのは、私は当然のことだろうと思います。
 ただ、やはり、今までなかなか進まなかったこの事業再生をやっていこうというのは、かなりリスクのある仕事でございます。そのために、二次ロスが広がらないような工夫は相当この機構の設計の上でしたつもりでございますが、その上で最終的に二次ロスが出てくるということは、完全に否定し切れないと思います。
 そこで、その二次ロスを最後にどこに負担させるのかというのは、この法案では、国が予算措置をすることができるというふうに規定してございますが、その前段階で努力することはたくさんございます。ただ、この仕事を進めるに当たって、そのことをあらかじめ否定してしまうことはできないというふうに私は思っております。
五十嵐委員 新生銀行のことを思い出してほしいんですね。二次ロスをどこが持ったんですかということですね。あれは、国民から大変な批判を浴びました。いわゆる瑕疵担保特約ですね。もし銀行が、重大な知っていることを隠し、あるいは、再建計画が本来ならばできそうもないということを知っておきながら持ち込んだとすれば、それは、受けた方が悪いのか、持ち込んだ方が悪いのか、私は貸し手の責任もあると思いますね。国の方が逆に、金融機関の方にロスシェアリングなり瑕疵担保特約をつけたって悪くないと思います。
 そういうぐあいに、なるべく国民のロスを少なくする、二次ロスを発生させないようにするというならば、何らかの工夫があってもいいはずじゃないですか。
谷垣国務大臣 今委員のおっしゃるところの工夫は、まず第一に、事業再生計画をしっかり立てる。そのために、専門家から成る産業再生委員会で専門的に再生計画の妥当性を判断していただく、こういう仕組みでつくっているわけであります。
 それで、今のように、もし二次ロスが出た場合に、貸し手側、銀行側に、いわばロスシェアリングといいますか、瑕疵担保ということもおっしゃいましたけれども、そういうことをつけるということは、要するに、債権を売却した後でも、いわばバランスシートからオフバランス化することができないということを意味するわけであります。やはり今求められているのは、不良債権をオフバランス化していく、それを加速していくということが求められているんだろうと思います。
 したがいまして、今の時点でそういうことを決めてしまうということは、不良債権処理の観点がこの機構には抜け落ちてしまうということになるんではないか、こう考えております。
五十嵐委員 だから、我々は、むしろ公的資金を一挙投入して十分な引き当てをさせて、いわゆる貸しはがしや貸し渋りをなくしなさいということを言っているわけですね。そして、結果として国有化なりしてしまうかもしれないけれども、そうやってだめな銀行経営者に十分責任をとらせる、そして銀行経営の責任の主体を変えて新しいビジネスモデルを構築させるということが必要だということを申し上げているんですね。今のやり方では、今の経営者を温存し、今のビジネスモデルを温存し、結果としては、買い取ってホールドするだけの存在になってしまうという可能性が高いということなんですよ。だからこそ、私は先ほど、モラルハザードということが大事だと。この仕組みだと、だれが責任をとるのか、最初に貸した貸し手の責任はだれが一体とるのかという問題が全部あいまいになってしまう。
 そして、このスキームでは、もしこのスキームを使って、失敗しないようにすると言うかもしれないけれども、失敗が出るかもしれないから、二次ロスが発生するかもしれないので、二次ロスを発生させないということを法案にできないとおっしゃったわけでしょう。それだったら、ある程度二次ロスの発生があり得るということを想定しているわけですから、責任の所在も想定しなきゃならないはずじゃないですか。
 機構の社長が責任をとるのか、再生委員会の委員長が責任をとるのか、それとも、最初の貸し手である銀行は全く責任をとらなくていいのか、一体だれが、大臣がとるんですか。だれが責任をとるのかというのが極めて不明確なスキームになっているということが最大の問題点です。
谷垣国務大臣 貸し手の金融機関の責任という意味におきましては、再生計画の中でやはりこの事業再生計画を深掘りする、そういう中で、金融機関にもそれぞれ責任をとっていただかなければならない計画に多分なると思うんですね。それはやはり債権放棄ということでございます。それから、多くの場合には、そうやって経営してきた方々の責任をどうしていくかというのも多分再生計画の中に入ってくる場合が一般的であろうというふうに思います。
 それで、今の二次ロスという点では、個々の再生計画については、成功するものもあれば、失敗するものもやはりあるんだろうと思います。ですから、最後にこの機構を閉めるときに全体でどうなっているのかということが我々の問題であるわけでございまして、閉めるときは、先ほど申しましたように、もし黒が出ていればこれはまことに問題がないわけでありますが、赤が出ている場合には、まず第一は出資で埋めるということになるわけですね。出資でも埋められないということになれば、予算措置をして国が補てんをできるということにしております。しかし、その場合でも、できるということにして、それ以上この法案では、どういう責任といいますか、最後に負担をさせるのが妥当かということがまだ詰められませんので、明らかにはしておりません。
 それから、その上で、では責任はどうかということになってまいりますれば、行政的には主務大臣が責任である、これははっきりしていると思います。それから、この機構の経営上、運営上の問題点については社長が責任をとる、こういうことでございます。
五十嵐委員 大臣がずっと大臣を務めるということは、日本の仕組みの中では考えられないわけでありまして、責任の所在がやはり結局はあいまいになる。出資の範囲内と言うけれども、では、出資の範囲内でロスはおさまるんですか、多分。その場合に、失敗したケースでは多分おさまらないでしょう。それは十分な説明にならないと私は思います。
 それから、では、そのような仕組みをつくるんでしたら、なぜRCCを使わなかったんですか。RCCとの関係はどうなっているんですか。
谷垣国務大臣 RCCは、もうこれは委員もよく御承知のとおりでありますが、出発点は、やはり債権の回収ということを目的としてつくられた組織であります。そして、いわゆる破綻懸念先以下の債権を買い取って回収していく中で、その中でやはり再生できる資源があった場合には再生をしていこうということで、かなりの成功例も出した、こういう仕組みでございますね。
 これに対して機構の方は、債権の回収ということが本来の目的ではなくて、有効な経営資源をそのまま散逸してしまうのは余りにも国民経済的に負担が多過ぎるということで、再生できるものは再生させていこう、そちらの方が主眼になっております。
 ですから、目的は競合することがあり得るわけですけれども、何というんでしょうか、組織のつくり方が、債権回収を目的としているのか、それとも事業の再生を目的としているのかということによってつくり方が違っているということだろうと思います。
五十嵐委員 それは、RCCの中に事業再生本部があるわけですよ。それを再生専門にさせればいいわけです。二重の仕組みをつくっているということになっているんですね。これは、今の行政改革の考え方からすると反するんじゃありませんか。
 それからもう一つは、競合はあり得るというわけですね。そうすると、RCCがメーンの銀行から債権を買って、準メーン以下を再生機構に買わせると、結局、そっくりそのまま不良債権を国が肩がわりするということになるんじゃありませんか。そのことを排除しないのはどういうわけですか。
谷垣国務大臣 競合があり得るというのは、ややちょっと、余り正確な表現ではなかったと思います。委員御承知のように、RCCは破綻懸念先以下を扱う、こういうことでありますし、目的も選好しているものが違う。それから、機構の場合は主として要管理先を対象とする。しかし、これはあくまで、買い取るのは、再建可能であると判断できることを前提として買い取るわけであります。
 それから、不良債権を結局救ってやるとおっしゃいましたでしょうか。それは、再生計画をどう立てて、どういう価格で買い取ってくるかということに関係してくるわけでありますけれども、この機構は、出口を見据えて、三年なりの再建計画が完成したときにはどういうような市場価値を持つかということで判断するわけですので、不良債権を肩がわりしてやって、そして塩漬けにするというような意味合いのものではありません。
五十嵐委員 結局、ビジネスモデルが変わらなければ何にもならないんですよ。そういう可能性があるかというと、多分そうはならないだろうと。だから期待感が生まれていないんですね、実際には。
 銀行に言わせてみますと、私も聞いてみましたよ、そうしたら、再生できそうなところはうちでやりたいから国なんかに売りたくないよということです。結局、押しつけたいのは再生が難しい企業、そして不良債権になりそうなところを押しつけたいわけでしょう。なぜRCCがやらないかというと、RCCは高値で債権を買えない仕組みになっているから、別のものをつくって高値で買ってもらおうということなんじゃないですか。これは最初から動機が不純な仕組みになりかねないということになるわけですね。その辺を説明してください。
谷垣国務大臣 ビジネスモデルが変わらなければならないという委員の御主張は、私も大変共感できるものでございます。
 それで、多分、私も余りこういう議論に長く時間を使う気持ちはありませんけれども、プロジェクトファイナンスがどうかとか、いろいろな問題がございます。それから、担保のとり方がどうか、そういう問題、今大きく変化していこうという過程にあると思うんですね。それで、この産業再生機構も、そういう大きな、いろいろな企業経営あるいはビジネスモデルの変化の流れの中で、それを後押しするものにならなければいけないという点では、私は委員と問題意識を同じくしているのではないかな、こういうふうに考えております。
五十嵐委員 ですから、債権をどの価格で買うかというのは、RCCとの関係では非常に重要になってくるわけですね。買った債権価格というのを公表するお考えはないですか。
谷垣国務大臣 これは、再生計画の概要等は支援を決めましたときには速やかに発表させていただきますが、価格が幾らかというような問題は、この機構としても次にまた売らなければなりません。そういうことを考えますと、幾らで買ったものを幾らで売るかというのは、実はこの機構が経営的に成功するかどうかのかなりコアとなる部分でございますので、その辺を全部手のうちをさらけ出してしまうのは難しいのではないかと思います。
 ただ、この機構が国民から信頼されるためには透明性が必要でございますので、どこまでできるかということは我々これから詰めていかなければならないと思っております。
五十嵐委員 一つのあり方は、でもスポンサーが見つかってからやるわけでしょう。ですから、スピードが大事だからこの機構をつくったというのであれば、それは公表する段階ではもうスポンサーも決まっている、再建計画も決まっている、売買価格も決まっているということなんだろうと思うんですね。それは直ちに私はやはり発表すべきなんだろうと思いますが、そういうことも考えないで秘密裏に先まで持っていく、そして最終的に五年後に閉めたときにしか発表できないということですか。
谷垣国務大臣 これは、スポンサーが事業再生計画をつくったときにあらわれていることもあれば、あらわれていないこともまずあるだろうと思いますね。それから、仮にあらわれて、その方たちに機構から債権を引き取っていただくということがあり得るにしても、彼らもまた売却をするという場合があり得るだろうと思います。
 したがいまして、そういうことを考えますと、やはり、かなり経営上の秘密に属する部分が多いのではないかというふうに考えておりますが、どこまで明らかにできるかということは、これから少し検討する必要があると思っております。
五十嵐委員 結局、国民の目からよく見えないところで国民の資産が使われるということが、今の答弁だとそういう方向になってしまうんだろうと思います。これは大変危険なことだと思います。それだったら、私は、債務の株式化やあるいは債務の免除というものを機構の仕事から除いていく必要がある、こう思いますが、どうですか。
谷垣国務大臣 債務免除とかそれから債務の株式化というのは、今、事業再生をするについては広く使われている手法でございまして、むしろ、事業再生をやっていく場合のいわばコアの技術だと言っていいのではないかと思います。それを全部するなと言われますと、この機構そのものが役割を果たせなくなるということになりはしないかと恐れます。
五十嵐委員 いや、この仕事は本来民間でやれる仕事なんですよ。サービサーがあるじゃないですか。金融機関だってそういうことを今までやってきているわけですから。国がやるということが民間の仕事の邪魔をしちゃいけないというのは、これは小泉さんの完全な今までの主張なんじゃありませんか。むしろ、スポンサーと金融機関を結ぶ仲人に徹すればいいんじゃないですか。
谷垣国務大臣 何で結局こういうところに政治とか行政が関与していかなければならないかという根本問題を御質問かと思います。
 委員のおっしゃるように、これは民間でできれば私は民間でやっていただくのが一番いいんだろうと思います。確かに機運はあるんです。機運はあって、何とか民間でそういう技術や手法も伸ばしていこう、あるいはそういうマーケットも育てたいな、それからそういう仕事をしたいなという人材もおります。だけれども、今までいろいろな方が御努力をいただいて、そしていろいろなガイドラインもつくっていただいて試みていただいているんですが、いま一つブレークスルーしないというのが現実ではないでしょうか。
 例えば、やはり、そういうものを阻んでいるのは何かというのもいろいろあると思いますが、関係者が多くいてどうも話がまとまらないとか、それから、そういうものを処理していくときのいろいろなマーケットというものが未成熟であるとか、それから、さらに再生を進めていくには異なった金融機関で合併なんかをさせなきゃならない場合があると思いますが、なかなか話が進まない、そういうあたりのいわばモデレーターとしてこの中で機運があるものを動かしてやる、そういう意味が私はこの機構にはあるのじゃないかと思っております。
五十嵐委員 そうじゃないんですよね。結局は、銀行の体力がないから国が肩がわりしなきゃいけないということなんでしょう。その銀行の体力というのは何かというと、それは公的資金の注入で十分補えるはずなんですね。ところが、それをやると銀行経営者の責任を追及されるから、それが嫌だから自己増資ということになって、自己増資でもせいぜい株価の低落部分の一部を埋めるぐらいにしかならないから、だから国が助けてくれ、こういう話じゃないですか。だから、これは、堂々めぐりに戻ってしまうけれども、このスキームそのものが銀行を助けるスキームになっている。しかも、銀行を助けるんじゃなくて、銀行の今の経営者を助けるスキームにしかなっていない。
 実際に聞いてみれば、メーン寄せという事態はもう大体済んでいるんですよ、実際には。不良債権のメーン寄せは大体もう終わっているんです。今さらこの時期になって国がやらなければいけないというのは、結局、体力が弱った銀行を助けてやろう、新たなお金を入れる仕組みをつくってやろうというだけなんですよ。これは大変問題がある。
 今、きょうの御答弁を聞いても、まだまだ解明すべき事柄が残っていると思います。私どもは十分な審議を要求して、とりあえずの質問を終わります。
村田委員長 達増拓也君。
達増委員 産業再生機構という名前でありますけれども、直接的には個別企業再生であり、また銀行再生、特に大銀行、主要銀行再生のための機構なのではないかという疑問がわくわけであります。
 そこで、谷垣大臣に伺いますけれども、そもそも小泉内閣の構造改革というのは、非効率な企業、これは銀行も含むんだと思いますけれども、そういうものには市場から撤退してもらう、そして新しい分野にどんどん移ってもらう。これは、竹中平蔵経済財政大臣のもとで編まれた経済財政白書に、構造改革というのは資源配分を変えること、非効率な部門から効率的な部門に人やお金が移っていくことだと。
 そこで、非効率な企業や銀行には市場から撤退してもらうということで、小泉総理大臣は、あの有名なエピソード、ある大手建設会社が破綻したときに、これは改革が進んでいるということです、改革が進んでいる証拠だと小泉総理がおっしゃったわけでありまして、個別企業が破綻していくことは小泉構造改革の趣旨だったはずであります。また、竹中大臣は、これもまた有名なエピソード、ノー・バンク・イズ・ツービッグ・ツーフェール、大き過ぎてつぶせない銀行なんてないんだということで、大銀行もまた破綻の可能性、市場から撤退する可能性があるということをおっしゃっている。
 そういう今までの小泉内閣の構造改革の方向性からすると、あえて個別企業を再生する、そして、銀行、特に大銀行を支える今回のこの産業再生機構というのは政策転換、今までの小泉構造改革からすると政策転換なのではないかと思われますが、この点、いかがでしょう。
    〔村田委員長退席、小坂委員長着席〕
谷垣国務大臣 構造改革について、達増委員がおっしゃった細部については同意できないところもございますが、大きな意味では、効率の悪いところは退場していただかなければならないし、資源を伸びていくところに回していこうというのは、大きな政策の流れはそのとおりだと思います。
 しかしながら、個別に、現実を見てみますと、日本の企業の中には、コアの事業は優秀なものを持っている、優秀な技術力や優秀な商品開発力を持っている、あるいは労働力も非常に質が高い、そういうものを持ちながら、不採算の事業部門を抱えてしまって、そこに大きな過剰債務も抱えてしまって、それに足をとられてにっちもさっちもいかないという企業がこれはたくさんございます。
 それを全部、退場すべきものは退場だといって退場させてしまえば、それは貴重な経営資源を散逸させることになるし、また雇用にも非常に悪い影響を及ぼしていくということで、そういう貴重なものを持っている経営資源は、過剰な債務からやはり切り離してやって生かしていくという方法を講ずるということが、日本国民経済の上からもあるいは雇用の上からも、求められている意味のあることではないかというふうに私は思っております。
 そういう役割を果たしながら、先ほど個別の企業再生と言いましたけれども、同時に、しかしそれは、過剰供給で競争力が落ちているところをみんなで、ゾンビが生き返ってみんなで足を引っ張ってみんなで弱るというようなことをしてはいけませんから、それは過剰供給構造を排除していかなければならないわけですが、そういう個々の事業再生を深掘りをして行うことによって、結果として全体のその分野の競争力といいますか、過剰供給も是正していくということではないかなと思います。
 それから、大銀行を助けるためだというふうにおっしゃいましたけれども、これは、再生計画の立て方、そしてその債権を買うときの価格というものをどうするかということによって、これを非常に甘く、ずぶずぶにしていけば救ってやるということになるわけですが、ここをきちっと立てていけば、必ずしもそういうことにはならないというふうに私は思います。
達増委員 倒産、失業をどんどんふやすことが構造改革というのは、これは私の考えではありませんで、小泉総理や竹中大臣がそういう趣旨の発言を繰り返されてきたということであります。
 倒産、失業というのは、特に失業というのは基本的に好ましくないことでありまして、実際、市場からの撤退を、中小企業、個人、多くの企業や個人が今余儀なくされて、平成十五年、これは政府見通しでも、失業率は五・四%から五・六%に上がる。
 そのように、市場からの、一時的であってほしいんですが、一時的撤退を余儀なくされる個人がふえる一方で、では産業再生機構がどういう企業を再生させていくのかということに関心が集まると思いますが、過剰供給構造ということをおっしゃいました。過剰供給構造というのが今回大きなキーワードだと思うんですけれども、この法案の中でも、著しく需要を超える供給のあるようなそういう事業分野、それを過剰供給構造と呼ぶというような定義がなされているんですが、現在どういう分野にそういう過剰供給構造があると政府の方では見ているんでしょうか。
平沼国務大臣 過剰供給構造というのは、特に指定はしておりません。しかし、例えば半導体の分野なんかは、技術的なポテンシャルがありますけれども、しかし、例えば半導体の状況を見てみますと、メーカーが乱立して、そして経営資源というのは集中的に投下できていないので競争力が弱まっている、そういうことも言えると思いますし、あるいは、これも指定をしているわけじゃございませんが、例えば建設業等もそこの中に含まれる、こう思いますし、さらに、今いろいろ問題になっております流通業等も、指定はしておりませんけれども、そういう過剰な供給構造にある、こういう形で私どもは言えるのではないか、こういうふうに思います。
達増委員 では、平沼大臣に質問いたしますけれども、産業再生機構の法律とあわせて産業活力再生法の改正案が出ています。
 この産業活力再生法、現行のものは、資金繰りに困っているとか行き詰まっている企業を助けるというよりは、むしろ、やる気のある、これから伸びる企業を支援していくというものだったんだと思います。事業構造変更や事業革新を行う場合、そこを支援する。特に、新商品、新サービスの開発、生産、提供ですとか新生産方式の導入ですとか、そういう前向きな、これは過剰供給解消というよりは潜在需要の掘り起こし、そういう新しい商品、新しいサービスに挑戦する企業を助けるのが産業再生法の本来のあり方だと思うんですね。
 ところが、今回、産業再生機構との密接な連携ということが強調されて、確かに一部、事業革新設備、いわゆる実証一号機の導入促進みたいな前向きの部分もあるんですが、むしろ撤退戦というか退却戦というか、そういうところに軸足を移していくような改正になっているんじゃないかと思うんですね。それは、前向きな産業構造改革というよりは、当面のデフレ、企業のそういう破綻のしりぬぐい的な、後ろ向きな方向にこの産業再生法が向きを変えてしまうんじゃないかと懸念するんですが、その点、いかがでしょう。
平沼国務大臣 現行の産業再生法というと、企業の選択と集中、これを促進することによりまして、今おっしゃったように生産性の向上を図って、そして我が国の産業の活力を向上させる、これを基本理念とした法律でございまして、約三年間、期間が経過をいたしました。そして、この三年間の間に百九十件の事業の再構築の認定実績があるわけでございます。これまで当省が認定したものは十四件ございまして、それぞれ改善目標を達成しています。
 他方、我が国産業全体の生産性を示すROAの推移を見ますと、この産業再生法の制定後、一たんは持ち直しましたけれども、こういう経済状況の中で再び下落に転じておりまして、回復基調が定着したとは言いがたい状況に相なっております。
 その背景には、多くの事業分野において、今おっしゃった過剰供給構造が見られたり、さらには過剰債務問題が非常に深刻化している、こういうことで、企業単位で選択と集中を進めて生産性の向上を図るのみでは限界がある、こういうことでございます。
 今回、そういう意味では、むしろ、そぐというようなことをおっしゃいましたけれども、例えば、企業のことももちろんやりますけれども、企業間の中でいいところをお互いに力を出し合って伸ばして、結果的には産業の競争力、活力を高めていくということもやりますし、あるいは、複数の企業の中で一つの分野を大きく力を合わせて伸ばしていく、それから、新しいそういう新規のものに対しては、ばっと投資するときにはそれを後押しする、こういうようなことを通じて、決して後ろ向きじゃなくて、結果的に産業の競争力、活力がつく、こういう形で今度の改正をやる、こういうことでございます。
達増委員 時間ですので、終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 私は、産業再生機構と財政負担の関係について、谷垣大臣にお聞きしたいと思います。
 この機構は、銀行間の利害が対立をして再建計画が進まない経営不振の企業を対象にして、非メーンの金融機関から債権を買い取り、企業再生を進めるというものだとされております。債権の買い取り資金には政府保証がつけられているために、仮に企業再生がうまくいかず機構に損失が出れば、財政負担、国民負担が発生する、その金額は最大十兆円に上る。一方で、法案では、国とともに銀行、産業界なども機構設立の拠出金を出す、こういうことになっているようであります。機構の解散時に損失があれば、まずその拠出金で穴埋めをし、埋まり切らなければ国民負担が発生する、そういう仕組みになっていると思いますが、まず確認をしておきたいと思います。
谷垣国務大臣 委員のおっしゃるように、十分に買い取れるように買い取り資金の政府保証の枠を十兆円に限定しております。それから、個々の事業計画で深掘りをできるだけして、二次ロスが出ないような工夫をしなければならない、これは大前提でございますが、それにもかかわらず、最後に閉めたときに赤が出ている、それは第一次的には出資金で埋めていく、それでも埋められない場合には国が予算措置をとって補てんすることができる、こういう定め方をしております。
佐々木(憲)委員 そうすると、問題の当事者である銀行業界あるいは産業界の出資金が一体どうなるのか。出資金の金額が多ければ国民負担は少ない、少なければ国民負担は多くなる、こういう関係にあると思うんですね。
 そこで、銀行業界に対して幾らの拠出金を求めていくのか、この点について伺いたいと思います。
谷垣国務大臣 まだ最終的に決まったわけではありませんけれども、おおよそ五百億程度の拠出をしていただくという方向で今調整をしているということであります。
佐々木(憲)委員 そうしますと、国民負担が最大十兆円というような仕組みでありますが、銀行の拠出金が五百億ということになりますと、当事者がいわば国民負担の二百分の一しか負担をしない、こういう仕掛けになっているわけでありまして、不良債権処理を企業再生と一体で行うための機構だといいながら、当事者はほとんど負担しない、国民に膨大な負担をかぶせる、こういう仕組みになっているわけであります。
 そこで、谷垣大臣にお聞きしたいんですが、一つの企業が経営不振になった、しかし、国民にその責任が果たしてあるのかどうか、国民に一体どんな責任があるんですか。
谷垣国務大臣 まず最初に、十兆に対して五百億じゃ二百分の一だというのは、賢明な佐々木委員にしては、いささか誇張の過ぎた強調であるというふうに思います。個々の再生計画をきちっと立てれば、それは結果として、ロスを生まないという場合もあるでしょうし、ロスを生んだとしても買ったものが全部赤になるということはまず考えにくい、こういうことであります。
 それから、そもそもこういうものをつくって個別企業を結局再生させるのではないか、こういう……(佐々木(憲)委員「国民負担」と呼ぶ)そうすると、それが最終的に失敗すれば国民負担になるのはなぜかと。
 これは、今の経済情勢のもとで、先ほど申し上げましたように、有効な経営資源をどんどん散逸させていけば、結局は、雇用にも響いてくるし、国民経済に大きなダメージを生ずる。したがって、そこはどんと背中を押してやる必要があるということでやっている、こういうことでございます。
佐々木(憲)委員 私が申しましたのは、十兆円というのは最大そういう仕掛けになっているということでありまして、結局、銀行は最大限五百億しか負担しないわけですから。そうでしょう。それ以上負担をしないわけでしょう。そうしますと、それ以外の十兆円までの枠の負担は全部国民がかぶるという仕掛けになっているじゃありませんか。そのことを私は言っているわけです。
 それからもう一つ、国民にどういう責任があるのかとお聞きしたんですけれども、その点については全く答えずに、雇用が大変だとかいろいろなことをおっしゃいましたが、一番の責任はその企業の経営者と銀行の側にあるわけですね。その一番の責任者が全くほとんどの負担をせずに、国民に負担を押しかぶせるような仕掛けをつくった、これが私は一番の問題だと思うわけでありまして、企業が経営がうまくいかないといって、大手の企業だと思いますが、国民の税金で身ぎれいにしてやる、民間同士で解決すればそれは済む話でありまして、どうしてこういう仕掛けをつくらなきゃならぬのか。
 配付した資料を見ていただきたいんですが、これまで政府は七十兆円の公的資金を準備してまいりました。来年度予算では、特例業務勘定の交付国債と政府保証枠が廃止されるにもかかわらず、今回の産業再生機構に対する十兆円が新設されるため、公的資金枠は七十三兆一千五百億、三兆円拡大するということになっているわけであります。この七十兆円の公的支援策のもとで、今まで三十兆円以上が使用されております。そのうち、約十一兆円が国民負担として確定しております。
 今回の新たな国民負担の仕組みは、このような国民の痛みの上にさらにそれを上乗せするということになるわけで、これはやはり国民の理解は得られないと私は思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
谷垣国務大臣 先ほどからの御議論は、賢明な佐々木委員としては、初めからとにかく損失があるんだあるんだ、つまり、全く一文の価値もないものを十兆円全部買い集めるんだという前提で御議論をされているように思うんですね。そこを委員が一生懸命おっしゃいますので、私もそれには一生懸命反論しなければならない立場に置かれているわけでございまして、やはり再生計画を立て、どう深掘りしてやっていくかということで、損失の出ない工夫をこの機構はいろいろしているわけでございまして、ぜひそこをよく見ていただきたいと思います。
佐々木(憲)委員 谷垣大臣の答弁は、国民の疑問に対して、全くまともな回答にはなっておりません。
 私が言っているのは、それは損失が出たり出なかったりということはあり得る、しかし、仕掛けとして最大限十兆円の国民負担が生まれる、こういうことをこの法律の仕組みとして問題を指摘しているわけでありまして、なぜそういうふうに国民負担をふやす仕掛けをつくる必要があるのか。こういうのは本来、銀行と産業界が民間同士でしっかりした計画を立てればいいわけでありまして、国民の負担をふやすという仕掛けをつくる必要はありませんよ、これは。今までも、公的資金をどんどん入れて何の役にも立ってこない、不良債権はどんどんふえる、そういう状況をつくっておきながら、また新しい国民の負担をふやす仕掛けをつくるということは、やはり私は納得ができない、このことを強調して、時間が参りましたので終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、限られた時間でございまして、産業活力再生特別措置法にかかわって、幾つか平沼大臣にお伺いしたいと思っています。
 塩川財務大臣、きょうは私、大臣に伺うことはございませんので、何か後がつかえておるということですので、御退席いただいて結構でございます。またいつでもお会いできますので。
 それで、まず平沼大臣に、この間我が党の議員も何度か話題にしておりますが、事業再構築にかかわって雇用がどうした影響を及ぼしておるかということですけれども、九九年七月の商工委員会で、故前島議員、我が党の前島秀行さんが聞いたときに、与謝野大臣が、十八条の規定にかかわってですけれども、精神規定だけではなくて、実際の問題として、十分な理解と協力を得ながら物事を進めていく必要があるというふうに認識を示されております。こういう答弁があります。
 少なくとも経産大臣の認識としては、この間百九十件ぐらい、認定事業再構築計画に従って事業再構築が行われたわけですけれども、労使間でやたらとそれにかかわって交渉が長期に、必要以上に及んだとか不適切なことがあったとかということについては、問題があればこれは厚労省マターになるかもしれませんけれども、少なくとも経産省として、十八条の精神にのっとって、問題があるような事例というものは掌握されているのか、されていないのか。順調に運んでいるなら、そのつもりです、そうですというふうにお答えいただければ結構です。
    〔小坂委員長退席、村田委員長着席〕
平沼国務大臣 当時の与謝野大臣が、精神規定ではなくて、働く人々の理解と協力を得ながら物事を進めていくことが必要である、こういう答弁を御指摘のとおりされております。
 このような趣旨というのは、言うまでもございませんけれども、事業再構築計画の認定要件の一つとして、従業員の地位を不当に害するものではないこと、これを課しているわけでございます。その解釈というのは、産業活力再生特別措置法の施行に係る指針において、「当該事業再構築に係る事業所における労働組合等と必要な協議を行うことなど労使間で十分に話し合いを行うこと、」そして「事業再構築計画の実施に際して雇用の安定等に十分な配慮を行うこと」こういうことにしておりまして、その旨公表をしております。
 したがいまして、例えば、参考人で来ていただきました連合の成川参考人が答弁されておられますように、これまで特段の問題がなく運用されてきた、こういうふうに言われておりますので、私どもも、特段問題はなかった、このように思っております。
植田委員 確かに、連合の成川参考人はそういうことをおっしゃっていました。私も参考人質疑に立ちましたので、その話は記憶しておりますけれども、だからといって、私などはブルーカラーの未組織労働者のせがれでございますので、そういう階級の出身者としては、組織労働者の偉いさんが言うたからといって、はいそうですかというふうにはなりません。
 そこで、百九十件の認定企業のうち、実際に労働組合が組織されていたケースはどうなのか。同時に、これは中小企業とは何ぞやということになれば議論になりますが、御理解されている中小企業の中で、では、そのうち労働組合が組織されたのは何ぼか。それともう一つは、一つの企業の中で複数の労働組合があって、双方と協議をしたような例があるかどうか。
 その辺、現段階でわかる範囲で教えていただけますか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 これまで全府省庁で認定いたしましたのは百九十件ございますけれども、経済産業省が直接やりましたのは百二十一件でございます。その百二十一件について全部チェックをいたしました。まだ、ややチェック中のものもございますけれども。
 それで、従業員との話し合いが必要とされる企業総数が二百十社ございました。そのうち、労働組合と必要な話し合いを行ったというふうに言ってきたところが百六十六件でございます。約七八%に当たります。それから、従業者全員と必要な話し合いを行ったとしているものが二十七件でございます。これは一三%に当たります。それから、労働者代表と行ったものというのが二十件となっております。
 これは、再生法の運用におきまして、労組、あるいは労組が組織されていない場合というときには従業者全員あるいは過半数を代表する者ということで、その話し合いをしたかどうかということについて届け出てもらったものを総計したところでございます。そのうち、明示的に複数の組合を相手にしたというものが二件ございました。
 以上のうち、お尋ねの中小企業でございますが、これは我々の所管のところで三十六件ございました。それで、必要な話し合いを行うべき企業数としては四十四社でございました。これらのうち、労働組合とその必要な話し合いを行ったとしているものが二十一件。それから、従業員全員と話し合いを行ったというものが十八件四一%。それから、労働者の代表と話し合いを行ったというものが五件一一%でございます。
 これは、きのうから、御質問の通告の後、急遽集計を行っておったものでございますから、若干変動はあるかもしれませんけれども、そういうことと承知しております。
植田委員 今、明らかに、中小企業といっても、恐らくこれは大会社が資本を出してやっていて、厳密な意味で中小企業かどうかというと議論になるところもあるでしょうけれども、それで見ても、いわば中小企業に、中小になればなるほど、労組がしっかりあって、そことの協議というのはまずパーセンテージ的には少ないということが一つと、わずか二件かもしれませんけれども、複数の労組と企業側が協議をしておるという場合があります。この二件について、それぞれの組合に対して公正適正に対処したかどうかということについて把握はされていますか。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 再生法の申請の際の手続の資料の中で、必要な協議を行い、十分な話し合いを行ったということで届けてきておりますところから、一般的な労働法規あるいは判例法理に従って、その話し合いについて公平に行われているというふうに推定をできると思っております。
植田委員 推定とおっしゃいましたけれども、それは組合が報告しているわけではありませんね、企業が報告しているわけですね。実際に、要するに、複数の労働組合があるというところは、やはり労の側も企業との向き合い方というのは違うから複数の労働組合があるケースがあるわけですね。そういう場合、例えば、百人の企業の中で九十人の組合と十人の組合がありました、十人間引かなあきませんということで、組合ずつに五人ずつ人を出せといったら、これは不公平ですね。
 その辺、適正にやられているかどうかということについては、これは法律上そこまで企業に対して報告をさせぬでもいいとおっしゃるかもしれませんけれども、少なくとも十八条が担保されているかどうかということを確認する意味では、少なくともバックデータとしてその程度のことは、たった二件なんですから、知っておく必要はあるのじゃないでしょうか。
 わかりますか、わかりませんか。もしそういうことまで調べていないのであれば、調べる必要がないという理由を教えてください。
林政府参考人 お答え申し上げます。
 今の認定段階では十分な話し合いが行われたというところでございまして、そこから後の話は実施段階の話になろうかと思います。したがって、認定段階としては、あくまで十分な話し合いが行われたかどうかという外形標準をもって判断をしているところでございます。もちろん、もし認定後に具体的な問題が発生して円滑な計画の実施に支障を来すというような問題があれば、事業者からの随時報告聴取でございますとか、そういうことができると思います。
 いずれにいたしましても、現在の認定の段階におきましては、十分な話し合いが行われたかどうかという外形標準をもって判断をしているというところでございます。
植田委員 もう質疑時間が終わったみたいですけれども、それは、外形標準とおっしゃいましたけれども、その後どうなったかということが、要するに、十八条を実効あらしめるポイントになるんじゃないでしょうか。認定してしまえば後は終わりよという話にはならないと思います。
 ここは、時間がないからもういいですけれども、二件については、どういう状況であったのか調べてください。それで、そちらがおっしゃるような、別に、特段、問題がその後もなかったというのであれば、そういう報告をいただければいいし、それは調べてください、たった二件ですから。別に期限はつけませんけれども、それだけお願いして終わります。
村田委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午前十時一分散会
     ――――◇―――――
  〔参照〕
 株式会社産業再生機構法案
 株式会社産業再生機構法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
 産業活力再生特別措置法の一部を改正する法律案
は経済産業委員会議録第三号に掲載


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