衆議院

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第3号 平成15年6月26日(木曜日)

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平成十五年六月二十六日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 高村 正彦君
   理事 浅野 勝人君 理事 中谷  元君
   理事 浜田 靖一君 理事 松下 忠洋君
   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君
   理事 赤松 正雄君 理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    伊藤 公介君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    新藤 義孝君
      杉浦 正健君   田野瀬良太郎君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      谷本 龍哉君    仲村 正治君
      福井  照君    牧野 隆守君
      松浪 健太君    松宮  勲君
      宮腰 光寛君    森岡 正宏君
      伊藤 英成君    大畠 章宏君
      桑原  豊君    原口 一博君
      平岡 秀夫君    前原 誠司君
      山口  壯君    吉田 公一君
      渡辺  周君    佐藤 茂樹君
      斉藤 鉄夫君    丸谷 佳織君
      佐藤 公治君    中塚 一宏君
      赤嶺 政賢君    木島日出夫君
      今川 正美君    金子 哲夫君
      山谷えり子君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局環
   境保健部長)       南川 秀樹君
   衆議院調査局イラク人道復
   興支援並びに国際テロリズ
   ムの防止及び我が国の協力
   支援活動等に関する特別調
   査室長          前田 光政君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十六日
 辞任         補欠選任
  丸谷 佳織君     斉藤 鉄夫君
同日
 辞任         補欠選任
  斉藤 鉄夫君     丸谷 佳織君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第一二〇号)
 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)


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     ――――◇―――――
高村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局環境保健部長南川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
高村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
杉浦委員 自由民主党の杉浦でございます。
 私と申しますか、私どもは、きのう、イラクから帰ってまいったばかりでございます。
 与党の現地調査団ということで、二十日に成田を立ちまして、アンマンからバグダッドへ、陸路千キロちょっとですが、一日がかりで視察かたがた参りまして、バグダッドでは、後ほど詳しく申し上げますが、さまざまな調査を行い、それから南部のバスラへ、これも車で参りまして、バスラそれからウンムカスル港も見てまいりました。そしてクウェート経由で戻ってまいったんですが、その調査団の調査の御報告を兼ねまして、関係閣僚に御質問申し上げたいと思います。
 私ども参加メンバーは、自民党から、私と岩屋毅君、衆議院ですが、参議院から阿部正俊先生、舛添要一先生、四名。公明党から、衆議院の斉藤鉄夫先生、参議院の山本保先生。保守新党から、参議院の泉信也先生。七名の議員。それから、外務大臣政務官の新藤さん、防衛庁長官政務官の小島さんと、議員は九人でございます。
 その他、各党の事務方、関係省庁、同行いたしまして、車は、私どもの防弾車三台、前後に六台。九台の車列で長旅をいたしてまいりました。
 主な会談相手は、連合暫定施政局長官のブレマーさん、OCPAの長官でございますが、この方は私ども会えないと思っておったんですけれども、アンマンで開かれておりましたダボス会議、イラク問題のダボス会議に出ておられるので、ちょっとお目にかかれないということであったのですが、どうやら先方が私どものミッション、大事だと思われたのだろうと思いますけれども、二十二日の夜戻ってきてくれまして、夜、一時間ほど会談いたしました。戦後の日本占領時期に例えますと、マッカーサーさんの立場にいられる、要するにCPAの長官でございますので、非常に有意義な会談ができたと思っております。
 当初の予定では、次席のソーヤーズさん、これはイギリスの方なんですけれども、ナンバーツー、この方とはじっくり会談いたしました。
 また、デメロ国連事務総長特別代表はニューヨークで所用があって戻っておられましてお目にかかれませんで、デメロの官房長でございますユーニスさんという女性ですが、この方と、ケネディさんという副人道調整官、お二方と国連の活動についてさまざまなお話を伺いました。
 それから、CJTF7、連合軍総司令部がバグダッド国際空港の中にあるのですが、サダム宮殿、二十八も宮殿をつくったらしいのですけれども、その一つが空港の中にある。その宮殿を接収いたしまして、そこにございます。そこへ参りまして、責任者はいらっしゃいませんでしたが、佐官クラス、尉官クラス何人かから、連合軍の活動状況について詳細な御説明をいただきました。
 それから、米軍の活動状況ということで、バグダッド、五百万都市なんですけれども、バグダッドは十二の軍管区に分けまして、それぞれの軍管区に大体三十万人から五十万人ぐらいの人口を割り振っておるようなんですが、そこに一大隊、一大隊が張りつけられておりまして、治安の維持、それから、日本でいうと区役所的な仕事ですね、調整活動をやっております。その一つの地区、バグダッド市の北西部にある、住宅が主の地区でありますが、シェイク・ハミド・ウム・マアリクという地区の管区に伺いまして、責任者である大隊長、中佐でありますが、御説明を聞き、警察署ですとか給油所あるいは病院等を案内してもらいました。大変有意義な視察ができたと思っております。
 それから、バグダッドでは市内を会談のためにあちこち移動したのですが、その途中、イラクの大使館にも寄りました。略奪とまではいかない、強盗に入られたらしいのですけれども、コンピューターなんか盗まれたと言っておりましたが、見てまいりました。外務大臣おられますが、あの大使館はだめですね。住宅地の中みたいで、もっといいところへ引っ越して、やはり独立した建物で、警備もあれじゃだめですし、転居を考えているようなんですが、早く移った方がいいと思います。人数をふやしまして、手狭だと思いますが、見てまいりました。
 それから、サダム・シティーと言っておりますが、今はサウラ地区と言っておりますが、シーア派の比較的貧しい人たちが住んでおる地域も車で詳細に見ました。大部分がいわゆるスラムと言われている地域のようですけれども、確かに下水があふれていますし、ごみはいっぱいですし、しかし、人々は元気で、マーケットもあちこちでやっていました。物は随分ありますし、平穏な市民生活が戻っているかなという感じもしましたが、さまざまな部面で見てまいりました。
 昼食の時間に、現地のイラク人に、大使館にお願いして三人ほど来ていただきまして懇談いたしまして、イラク人のいろいろな考え方も聞けましたし、また夕方、夕食は、NGO、ジャパン・プラットフォームとピース・ウィンズ、十人ぐらいの人に来てもらいまして、懇談ができました。有意義な懇談だったと思います。バグダッドではそういうことで、夜はブレマーOCPA長官と有意義な会談を行いました。
 二十三日はバグダッドを立ちまして、約五百キロ、車で向かいまして、バスラへ参りました。バスラ空港の中に、ターミナルビルを接収して英軍がいるわけですけれども、英軍の責任者がちょっとお出かけでしたので、次席その他から、英軍、デンマーク軍もおりました、デンマークの人も説明に来ていましたが、南部の軍の活動状況について詳細を聞き、バスラ市内を見まして、ウンムカスルへ参りました。
 ウンムカスルは、UNDPの事業で日本が二百五十万ドル緊急支援をして港のしゅんせつをやったわけですが、終わっておりまして、三万トンクラスの船が接岸できるようになったと大変喜んでいました。三万トン近い大きい船が入ってタイ米を陸揚げしておりましたが、その様子を見てまいりました。
 ウンムカスルでは四十七・五度を記録いたしまして、大体昼間は四十度を各地超えておりましたが、大変な暑いところで、連合軍、今十五カ国活動していますけれども、大変だなという印象でございました。車の外へ出ますと、サウナ風呂へ入ったようなもので、ちょっと風が吹きますと、ドライヤーでふっと吹きつけられるような、そういう暑さでございました。
 帰ってまいりまして、私ども、また詳細な報告書を発表いたしますが、昨日の委員会でさまざまな議論が行われたようですけれども、末松委員の質疑の概要をちょっと拝見いたしましたが、現地の治安状況についての状況認識では、末松先生の感じられているところとそんなに変わったところはないという印象でございます。
 もはや戦闘は終了している、これは軍関係者も言っていました、CPAからもそういうことでございました、コンバットは終わっていると。襲撃が各地でありまして、報道されておりますけれども、これは散発的なもので、人数からすると五人とか十人単位、あるいはもっと小人数のものもあるようなんですが、警備の手薄なところを突いた形で行われている、きちっと警備しているところでは事故は起こらないというふうな御説明がございました。
 例えば、ガソリンを買うために車が数珠つなぎになっているんですね。三時間、四時間かかるのは当たり前だという状況のようですが、したがって、待っている人はいらいらする、割り込むのがいる。そういう整理をやっている米軍、大体最低二人組んで、単独ではやらないそうなんですが、整理しているところを後ろからズドンと撃たれるとか、そういうような事故が多いということでございました。
 クウェートを立とうとしたら、バスラの北方二百キロのところで英国軍人が六人殺されたという事故もございましたが、帰ってきてからいろいろ聞いていますと、これは警察署の中で起こったことのようでして、イギリス軍、デンマーク軍そのほか入っていますが、南部の方は治安がいいということで、軍隊が非常に軽装で、警官のような治安維持活動をやっているわけですね。そういうような手薄なところを突かれたのではないかという感じでございました。今イギリスの方で調査中ということなのであれですが、南部の方は比較的バグダッドや北部に比べると治安がいいというふうに言われておりましたので、少し意外な感じもしておる次第でございます。
 治安状況は日に日に改善されておるということを異口同音に皆さんおっしゃっておりました。ブレマーさんは着任後三週間だと言っていましたが、彼が来たときにはまだ公然と商店が襲われるとか、路上で白昼公然と犯罪行為が行われるという状況だったけれども、今は全くそういうことはないと。ソーヤーズさんも、七週間になると言っていましたけれども、治安の改善ぶりは非常にドラマチックだという表現を使っていましたが、改善されているということを言っておられました。
 末松先生と違うところがあるとすれば、末松先生たちのミッションは六月初めでしたね。ですから、二十日たっているわけですから、六月初めと比べると、三週間近くたっているということは、相当の改善があるのではないかというふうに思われました。私どもの旅行中で危険を感じたことは、私、一度もございませんでした。人によっては、通常の大都市の治安状況と余り変わりないぐらい改善されているという表現をされる方もおりました。
 さはさりながら、旧政権のいわゆる残党と言われている人はおるわけです。サダム・フセインに忠誠を誓う人で、敵意を持った勢力というのは、人によって表現は違いますが、数%はいると。武器は相当大量に出回っておって、刀狩りを始めておりますけれども、回収した量は微々たるものでございまして、何百万丁と言われている小銃等が町の中にあるとのことでございますから、危険な地域であることに変わりはないと思います。バスラ周辺のケースも、刀狩りをやるやり方が強引過ぎたのでそれに対する反発だというようなことをメディアが言っておりましたが、旧勢力が一部なりともおり、そういう状況があるということは、危険であるという点においては変わりはない、だから軍隊による活動が必要だと一面言えると思います。
 ただ、バース党は崩壊しております。イラク軍も雲散霧消しております。また、三人でしたけれども、イラクの方、これは民間の方ですけれども、聞いた話、それからNGOの諸君、あそこで活動しているわけですが、彼らの話を聞いても、サダム政権というのは、イラク国民一般からは忌み嫌われているといいますか、崩壊することによってほとんどの人が喜んでおる、なくなったのを喜んでおるという状況のようです。ただ、サダム・フセインが死んだかどうかわかりませんから、トラウマが残っていて、外国軍隊がいなくなったら、サダムが生きていてまた復帰してくるんじゃないかというような、そういうおそれというのはかなりあるようでございますが、政権そのものに対する支持基盤は全くないと言っていいと思われますので、今後、組織的、計画的な攻撃というまでにはもう至らないというふうに私どもは観察してきた次第でございます。
 ただ、警察組織が不十分でありますし、また、アメリカの大隊長、軍管区司令官の話を聞きますと、イラク警察というのは、パトロールをするとか取り締まるとか、そういうことは前からやっていなかった、国民から苦情を受けてそれを処理するだけだった。そういうビヘービアの警察だから、彼らを訓練して、パトロールを一緒にやっているらしいです。MPをつけて一緒にパトロールしているらしいんです。それから、人も徐々に採用して訓練し直して、先進国の市民警察のようなものにしていかなきゃいかぬ、ちょっと時間がかかるということでございましたので、当分の間は米軍等が治安維持をやっておるわけですけれども、この重要性はなくならないだろうというふうに思いました。
 社会経済基盤は、戦争による被害は局所的なものだった、末松先生の御認識もそうですし茂木副大臣もおっしゃっていましたが、実にピンポイントで軍事施設をたたいておるということでございます。ただし、戦後の略奪行為は相当すさまじく、今もつめ跡が残っておりますし、また、サダム政権下の長年の間、社会経済インフラへの投資が十分でなかった。経済制裁もそれに加わりまして、電力、上下水道等々、社会経済基盤は極めて不十分で、治安を初めとする国民生活全体に悪影響を及ぼしているのは推察できました。私ども、パレスチナホテルに泊まったんですが、停電がしょっちゅうでして、電気がついている方が珍しいという状況でございました。
 もちろん、CPAもインフラの回復に全力を尽くしております。軍管区の方でも、それぞれ問題を見つけてはCPAに連絡をとって、各役所から道路を直したりいろいろやっておると言っておりました。
 私どもが行った軍管区では十幾つ項目があったけれども、あと残されているのは、大きなのは二つであって、一つは電力、一つは下水道だ、こう言っておりました。下水道はオープンシューエージ、川になっていまして、ひどい状態で、ごみもいっぱいで、電気はしょっちゅう停電という、少し中長期的な課題になりますが、大きな問題であるというふうに思います。
 各国のイラク支援状況ですけれども、現在軍隊を出しておりますのは十五カ国でございます。アメリカ、イギリス、アメリカ軍約十万人、イギリス軍約五万人。その他、オーストラリア、イタリア、サウジアラビア、韓国、デンマーク、ヨルダン、スペイン、アラブ首長国連邦、カナダ、ラトビア、リトアニア、チェコ、ポーランド、十三カ国。合計十五カ国が派遣しております。それぞれ人数はまちまちでありますが、千人規模から数十人規模までであります。
 既に派遣を決定している国がそのほか十四カ国ございまして、タイ、ニュージーランド、モンゴル、アゼルバイジャン、ウクライナ、オランダ、カザフスタン、ブルガリア、ホンジュラス、ポルトガル、ハンガリー、エストニア、ドミニカ共和国、ルーマニア、以上十四カ国が派遣を決定しておる。人数はこれもまちまちでございます。
 そのほか検討中は、ノルウェー等、チリ、パキスタン、ウズベキスタン、フィジー、キルギス等々が、十数カ国が現在検討中というふうに聞いてまいっております。
 軍管区、現在は、北部と中部は米軍、南部は英軍という責任分担になっていますが、中部地区が今、アメリカの海兵隊が五万人、中部地区をやっておるわけですが、ブレマーさんの話によりますと、海兵隊はできるだけ早く撤収したい。そこを、ポーランドを頭にして、ポーランドが三千人規模を出すということになっているんですが、ポーランドを頭にして多国籍軍で警備するという方向を考えておるということを言っておりました。
 それから、一番問題の、問題といいますか核心でございますイラクの暫定統治機構の立ち上げですが、ブレマー長官は、七月の中ごろまでにまず政治評議会を立ち上げる。これについては、二十人から三十人ぐらいイラクの各党各会派の責任者格の人をそろえて政治評議会をつくって、これをトップに据える。つまりCPAのカウンターパートにする。そして、九月を目途にしまして、そのもとに各省庁、今崩壊しておりますが、を整備、立ち上げていって、各ミニスターを選任する、そして行政機構の体裁を整えていくという方向だと申しておられました。
 並行いたしまして、七月中ごろに憲法評議会を立ち上げる。これは数百人規模で、学者等専門家、各界の代表者をそろえて憲法の策定に入る。つまり、旧憲法といいますか、サダム憲法は選挙に関する規定がないので、新しい憲法の制定が必要だと。日時は未定ですが、早急に憲法制定作業に入って、最終的には国民投票で憲法を定める。その上で各種選挙を行って、イラク人の手による国家の樹立を目指すということを言っておられました。そういうものが並行して行われている。
 また、治安のもとになっている大量失業ですね、軍人、官僚等についても手当てをしております。警察等は再雇用していますし、国家公務員もどんどん採用するようにしている。
 私どもがブレマーさんにお目にかかったときは時間がかかると言っておられましたが、給与の支払い、年金の支払い等は、私どもが帰る飛行機の中で得た新聞報道によると、軍人に対しては再就職するまで給与を支払うということを決めたようでございます。そして、二、三年かけて国軍を形成していくということもCPAで決めたようであります。私どもが会ったときには、まだ検討中で、ちょっと時間がかかるとおっしゃっておりましたが。
 年金の支払いも、バスラへ行きましたら国立銀行の前が黒山の人でしたが、何だと聞いたら、年金を受け取りに来ているんだという話でしたので、ああ年金の支払いも始めたのかなというふうに思っております。そういうようなことが行われますと、人心の不安も徐々に解消していくんじゃないかなという感じもしたわけでございます。
 日本の自衛隊といいますか、日本の協力についてどういうことを望んでおられますかということをそれぞれお尋ねしたんですが、日本に対してどうこう申し上げるのは失礼なことで、それは日本においてお決めいただくことだと。これはブレマーさんもソーヤーズさんも、軍の司令官も国連の方も言っていましたが、協力する分野はあらゆる分野であると。戦闘は終わっているんだ、あとは治安の問題なので、日本からお申し出いただければどのような分野でもお願いできるということを皆さんおっしゃっておられました。
 私ども九名、いろいろ話を聞きながら行ったんですが、例えば治安の維持でも、各国軍隊に一定の地域を割り当ててやっているわけですが、治安のそんなに悪くないところだったら検討する可能性がないわけじゃないとも思いますが、自衛隊を派遣するとすれば、むしろ自衛隊の持っている能力、長所を最も生かした、しかも向こうが必要とする協力も随分あるんじゃないかというふうに思われました。
 私どもの結論は、一刻も早く専門的、実務的な調査団を派遣して、どの分野、どの地域で、どういうことが求められてできるかということをするのが一番いいんじゃないかというふうに思った次第でございます。
 例えば、これは個人的な意見なんですけれども、水の供給、これは一つの大きい分野だと思います。
 軍隊は、ともかく二十万人近く展開しておりますから、飲む量だけでも物すごいです。一人当たり、あの猛暑の中で、ペットボトル大きいのを二本ずつしか配給がないという状況であります。一般の民衆にも水は不足ぎみということでありますから、チグリス川、沼があちこちあります、そこから、自衛隊の浄水能力は高いようでありますから、自衛隊が行って浄水をして水を供給するということは大変喜ばれるんじゃないか。その話をCPAや国連のユーニスさんにもしたんですが、大変ありがたい、国連としてもそういう人たちが来てくれれば国連の人道支援等にも役に立たせてもらえるというふうにおっしゃっておられました。
 また、輸送というのがあると思います。特に緊急輸送、航空輸送。陸送もありますけれども、カナダが三機ほどC130を出しているんですが、とても足りない。病人を運んだり、緊急物資を輸送したり。今使える空港は四つあるそうなんですが、これを八つか九つにふやす、空港間の物資、人員等の緊急輸送にもしC130を出してもらえば大変ありがたいというのが、お伺いした関係者、異口同音に申しておられました。
 個人的な意見でありますが、さまざまな分野で協力が可能だと思います。また、ああいう治安状況、各国とも完結した組織である軍隊を送っているという状況からいたしますと、日本としても自衛隊を送るということが大切じゃないかというふうに私ども思った次第でございます。
 そこで、そういった報告を前提にして関係閣僚にお伺いするわけなんですが、きのうの委員会の議論でも、戦闘地域であるかないかというのが議論になったようでございますけれども、この法律で言うところの「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域でないと出せないということですね。
 現在のイラクは、私どもの判断では、戦闘は終わっている、あとは治安の問題だ。確かに、治安は場所によっていろいろ違いがあるけれども、戦闘行為という点からすればもう散発的な、今テロのような、注意深く用心すれば避けられないものでもない状況だと言っていいと思うんです。ですから、場所は選ばなきゃいけませんし、十分な対応はする必要があると思うんですが、私どもは、今のイラクの状況が戦闘地域というふうな印象を受けて帰ってまいらなかったんです。各国のCPAも、軍の当局もそういう説明でございました。
 官房長官にお伺いしますが、どういう状態が現に戦闘が行われておらず、かつ、行われることがないと認められるのか。その程度によって、ではこの状況は変化すると思うんですね、一瞬にして、テロだったらどこで起こるかわからない。だから、その線引きも、しようと思ってもなかなか難しいと思うんですが、私どもは、今イラク全体として軍がきちっと抑えていますし、治安を守っておりますし、散発的なテロ的な問題はないわけじゃないけれども、これも時間の経過とともにおさまっていくだろうと思います。片っ方において暫定政府が立ち上がっていく、あるいは給料も支払う、年金も払う、インフラの復旧も行うというふうに改善されていくと思うんですが、三十日後にはまたさま変わりになるんじゃないかと思うんですね。
 例えば、バグダッド空港もそれから南部バスラ空港も、七月末には今のところでは民間に開放すると。民間空港に。バスラの英軍は、ターミナルから撤退する場所を今探しているそうです。
 そういう状況で、日に日に改善されていくと思うんですが、そのあたりの仕切りというのをどういうふうにお考えになっているのか、まず官房長官にお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 まず、お答えする前に、急に調査団として行って、幅広く、委員の皆様方の目でもって、また耳で聞いてきた、そういう最新の情報を提供していただきまして、大変御苦労さまでございました。お礼を申し上げたいと思います。
 今、いろいろ御説明いただきました。要約いたしますと、戦争は、戦闘状態というものは終結をしているというように見ていいのではないか。そしてまた、治安は日に日に改善をされているという、そういう状況であるということ。
 これは、私どもも今まで政府関係で調査に行っておりまして、その報告のたびごとに、治安情勢は改善されている、こういう報告は聞いておりますので、その方向、改善されているという方向は間違いなく定着してきつつあるんではないかというように思っておるところでございまして、一つ安心がふえてきている、こう思っております。
 しかしながら、実際に、散発的にまたは部分的に思わざる事故も起こるというような現実もあるということである。しかし、これも、警備がしっかりしていないというところを襲われるということはある、こういうようなことでございますから、これも、対応すればそういう問題を排除することはできるんではないか、こういうような感じがいたしました。
 経済、社会、インフラ、これはもう非常に悪いというのは私どももかねがね聞いておりました。実際問題言って、イラクのGDPは、一九九〇年と二〇〇一年の統計しかないんですけれども、この間に半減しております。それから、一人当たりのGDPは、一九八〇年、これはピークだったんだろうと思いますけれども、これと比べますと三分の一になっているんです、今現在というか二〇〇一年ですけれども。
 そういう状況の中で、いかにフセイン政権というものが民生に重きを置かないで政治を行ってきたか、統治を行ってきたかということはありありと、数字だけ見ましても目に見えるような、そういう感じがいたします。
 ですから、私どもが取り組みます今後の中東政策というのは、やはり中東地域の安定ということを考えて行われることでございますので、そういう観点から考えれば、イラクの貧困、これを排除するということは、これは極めて大事なことである。そういうことで、そういう面に対する我が国の協力というものは、これはぜひやっていかなければいけないと思いますし、また国際社会、広く、できるだけ多くの国々がこの協力に参加をする体制というのは好ましいのではないか、こんなふうに思った次第でございます。
 イラクの公務員と申しますか、軍を含めまして、待遇も改善するというような、そういうふうなことも考えているようだし、また、イラク人による国家の再建、これを目指した体制づくり、これも早期に実行に移すというようなCPAの考えもある、こういうことでございますので、私どもも政府として、これはやはりできるだけ早く復興のための協力に参加をしなければいけない、こういうような思いを持っておるところでございます。
 そういう上で、ただいまのお話でございます戦闘行為か非戦闘行為か。これは昨日も議論で随分ございました。この線引きをどうするのか。確かにこれ、常識的に考えれば、戦争を行っていれば戦闘行為だ、戦争が終われば非戦闘行為だ、非戦闘地域だ、こういうふうなことは言えますけれども、具体的に地域を指定するとかそういったようなことになると、これはまた何か分類というか定義が必要なのかなというような感じもいたします。この辺、実は防衛庁長官の方へ、こういうことについてのもう少しわかりやすい説明の仕方はないものかということでお願いを今しておるところで、いずれ防衛庁長官の方でお話をしてくださるんではないか、説明をしてくださるんではないか、こういうふうに思っております。
 現状は、戦闘行為は、これはただいまの報告で、全土でございません。バグダッドとそれから南部地域ですね、バスラを中心とする、そういう地域の調査報告ということでございまして、北部とかそれから西部の方のことについては、若干のお話ございましたけれども、その地域についてはよくわからないところがございます。これはこれでまたよく調査をしなければいけない、そう思っておりますので、北部、西部、この地域が戦闘行為なのかどうか、このことを私から今申し上げるのは、ちょっと私も自信がない、こういうふうに思っております。
 そういうことでありますけれども、いずれにしましても、この法案では、非戦闘行為の活動、協力を行う、こういうことになっております。非戦闘行為といえども、この中で、散発とはいうけれども、頻度の高い散発地域、こういうこともあろうかと思います。そういう地域において自衛隊が活動するかどうか、この辺は、これはよく調査をし、そしてそういう危険が排除できないかどうかということを考えた上で派遣を決定する、こういうことになるかと思います。ですから、非戦闘地域だからといってすべてがいいというように私は考えておりません。でございますので、その辺は、今後の調査、事前の調査、現地調査も含めまして、綿密な調査を行わなければいけない。それから、諸外国、国際機関からも十分な情報を得なければいけない。そういうことを行いまして、総合的な判断をしなければいけないというように思います。
 これから状況もだんだん変わってくると思います。変わってくるということでありますから、この調査はまたその時々、何回も調査を行いながら慎重に総合判断をする、こういうことになりますが、いずれにしましても、自衛隊が活動する区域はいわゆる非戦闘地域である、そしてその要件を満たすような、そういう地域に限定するということを考えておるわけでございます。
杉浦委員 ぜひとも、実際、仮に派遣することになる場合には、全土にわたって実務的、専門的な調査団を派遣して、詳細な調査を行った上で決定すべきだ、これは私ども調査団全員の総意でございます。一日も早くそういう調査をやっていただきたいというふうに思うわけでございます。
 また、国連のユーニスさんというデメロさんの官房長と話をしたのですが、国連は安保理決議一四八三を受けまして特別代表を置いた、そして、そのマンデートは、一四八三にございますが、イラク人の手による主権国家への速やかな移行を支援するんだ、そういう意味でOCPAと協力、調整を行うということでございます。そして、国連が行っておりますさまざまな支援、人道支援、司法改革、人権、男女共同参画、政治プロセス支援等の役割を果たしていくんだということを言っておられます。とりわけ、占領当局が全般の責任を有しておって、特に治安についてはそうなのであるけれども、国連としても協力するんだということを言っておられました。そして、これから国連の役割の定義、集約を行って、七月中旬には事務総長を通じて最初の報告を安保理に対して行うということを言っておられました。
 ですから、国連ともよく協議をして進められることが大切ではなかろうか。デメロさんというのは東ティモールの代表もやっておられまして、私もよく知っておるのですが、大変活動的な人で、全土を回ったと言っていますね、三週間で。全土の指導者、ほとんどの人と対話を交わしたということでございますので、CPAの方も国連の役割を大いに期待しておるところでございますので、国連との連携ということが大事じゃないかというふうに思います。
 そこで、思うんですけれども、外務大臣にお伺いしたいんですが、国連のデメロさんのところには日本人がいないんですね。CPAには現在四人おります。ブレマーさんにお目にかかったときに、その隣にナンバースリーのケネディさんという人がおられまして、ケネディさんが最後に、優秀な日本のスタッフを送っていただいて感謝する、大変役に立っているという謝意が表されました。
 私は、この国連のデメロさんのもとにも、要請があるなしは別にして、人を送って支えるということは、非常に意味深いんじゃないかという印象を持って帰ったわけなんですが、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
川口国務大臣 まず、杉浦委員には、本当に酷暑の中非常に密度の濃い調査をしていただきまして、今御報告をきちんと伺わせていただきましたけれども、いろいろ参考になる点が多々ございました。ありがとうございました。
 それで、御指摘の人的な協力ですけれども、イラクの復興について、国連あるいはCPAを通じて協力をしていくということは大事なことであると考えております。
 それで、CPAについては、現在、バグダッドに二名、そしてバスラに四名、合計六名おります。それから、国連事務総長特別代表のもとには、今委員がおっしゃられましたように日本人のスタッフは派遣をしておりませんけれども、バグダッドにございます日本国大使館を通じまして、緊密に連携をして協力をしております。
 それで、CPAへの人のさらなる派遣、それから国連事務総長の特別代表のもとへの派遣、これらにつきましては引き続き、御指摘も踏まえまして、いかなる協力ができるか検討をしてまいりたいと考えております。
杉浦委員 ぜひとも検討していただきたいと思います。
 さらに要望をさせていただければ、これは私ども団員全員の共通した意見なんですが、イラクの大使館をもっと充実強化してほしい。場所も狭いですし、広いところに移すのはもとよりのこと、人も、どんどんふやしておるようなんですが、これから自衛隊の派遣が起こった場合でもそうですが、そのほかのさまざまな支援が現地で行われているわけですね。ユニセフを通じたり、大臣御存じのとおり、いろいろやっておりますね。ウンムカスルなんか大変感謝されていました。そういう支援活動を行うNGOもたくさん入っていますし、そういう活動を円滑に進めるためにも、イラクの大使館の充実というのは非常に大切であります。末松議員の質疑の中にもそういう指摘があったわけですが、ぜひともその点は十分に検討されて、充実をしていただきたいというお願いをさせていただきたいと思います。
 官房長官にお伺いしますが、基本原則の中に、外国で活動する場合、「当該外国の同意がある場合に限る。」とございまして、イラクにあっては、安保理決議第一四八三号等に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる、こうあります。
 CPA、イラクの、これ正式に訳しますと、統合された司令部、終戦直後のGHQみたいなものですが、連合暫定施政局といいますか、訳はいろいろあるようですが、いわゆるOCPA、今、OCPAがイラクを支配しているといいますか、ということは間違いないと思うんですが、もう一つ、このOCPAが七月に立ち上げようとしているイラキ・インテリム・オーソリティーというのがあるわけですね。七月中旬には、二十人か三十人の政治評議会を立ち上げるということのようです。憲法評議会、先ほど申しましたが、そこに政府の実体をだんだん整えていくということなんですが。
 一四八三では、そのインテリム・オーソリティーの定義がはっきりされていないわけなんですが、仮に七月中旬に政治評議会ができた場合、OCPA、これは何といいますか軍政ですかと、インテリムが立ち上がるとしますと二つできるという感じになるわけですが、同意という、ここに言う同意は、そういうものが立ち上がった場合、どちらの同意なのか、双方なのかというような法的問題も生じると思うんですが、そのあたりはいかがお考えでございましょうか。
福田国務大臣 この法案では、イラクの領域において活動する場合には、安保理決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によること、こういうふうになっておるわけです。ここで、今申しましたイラクにおいて施政を行う機関というのは、これは、イラク全域に対して現実に権力を行使している政治主体のことを言いますが、現時点は、一四八三決議において、国際的に承認された代表政府が、イラクの国民により設立されるまでの間は、権限を行使するとされている米英の統合された司令部、当局ですね、決議では当局と言っております、これに該当するわけであります。
 今後、今御説明ありました、七月にも暫定行政機構が立ち上がるかもしれぬ、こういうことになります。そういう場合には、これは恐らく今の当局から権限が移譲されていくということになると思います。その権限が移譲されていくぐあいによりまして判断すべき問題だと思いますけれども、移譲された権限については、これは新しい暫定行政機構が行う、このように考えていいのではないかというふうに思っております。
杉浦委員 法的にはそうだと思いますが、私ども調査団の感じとしては、七月中に立ち上がれば、だんだん政府としての体裁を整えていくことになるわけでございますが、この法律上の建前あるいは一四八三の決議が示すところの法的解釈とは別に、そういう暫定組織が立ち上がっていった場合には、相談する場合には、そことも重々相談する、実際の権限は占領軍が持っているかもしれぬけれども、そことも相談する、しながらやるというふうにした方がいいのではないか、こう思うんですね、実際問題として。
 これから立ち上がりぐあいが、九月中には内閣をつくって関係省庁を整備するというようなことをブレマーさんがおっしゃっていましたですけれども、どういうふうになっていくかまだ見通しははっきりしませんが、法律が国会を通過して、準備をして、自衛隊が派遣できるようになるなら、調査もしなきゃいけませんから相当先になると思うんですが、かなり実体を持った暫定機構が立ち上がるんじゃないかと思われますので、そのあたりは、いや、法的にはCPAでやればいいんだということではなくて、やはり現地のイラク人の手によって形成されつつあるところとも十分協議しながら進められるべきではないかという趣旨で御質問を申し上げたわけですので、運用の面については、将来あるとすれば、御配慮願いたいと思うわけでございます。
 防衛庁長官に最後お伺いいたしますけれども、米英軍が中心ですけれども、諸外国が現在のところ十五、これから十四、確定しているのは二十九ですか、その他検討中のところを入れますと最終的には四十を超えるんじゃないか、あるいはこれからまたあるかもしれない、五十になるかもしれないというようなお話でございました。
 自衛隊が参加するとすればその一つに加わるわけですが、長官の指揮のもと支援活動に当たるわけなんですが、要するに国連の一四八三の決議のもとで諸外国がイラクの復興支援に協力する、そういう中に自衛隊が入っていって、そして長官の指揮のもとで各国軍隊と協力しながらイラクの復興に当たる、そのことの中に私どもは国際貢献のあり方として非常に意味があるんじゃないだろうかと。
 例えば、さっき水と申し上げましたが、水は何も米英軍だけではない、各国軍隊とも必要ですね。自衛隊は非常に水の浄化能力が高い、国際的にも知られております。それが水を浄化して供給してくれる、これは民間にも配給できるぐらい能力があるらしいんですが、それは各国からも感謝されると思うんです。
 一例を挙げましたですけれども、そういう国際貢献のあり方として極めて意義深いんじゃないかと私ども思うんですけれども、長官としてのお考えはいかがでございましょうか。
石破国務大臣 杉浦先生初め調査団の先生方、本当に過酷な日程の中で有意義な御報告をいただきました。心から厚く御礼を申し上げ、本当に貴重な参考として、私ども議論の糧にさせていただきたいと思っております。
 先生御指摘のように、どの国も軍隊を出しているのはなぜなんだろうかということを考えてみましたときに、それはやはり自己完結性ということなんだろうと思うんです。自分たちで何でもできる、ほかの国へ頼ることもなく、ましてやイラクの人たちに御迷惑をかけることもなく、全部のことが自分でできるという自己完結性、そして危険を回避できる能力を持っているということ、だからどの国も軍隊を出しているのだということだと思います。私どもでそれに対応する組織というのは自衛隊なのだということ、これはやはり国際的に言えることなんだろうと思っています。
 そして、その能力はどうなんだということですが、私も小島政務官からきのうも詳細にいろいろな話を聞きました。そのときに、日本に対する期待というのは、我々のPKOが世界じゅうに出て、どの国からもなぜ評価が高いかといえば、これは本当にやったことをきちんとやる責任感、そして規律、そして能力、これは日本は本当にすばらしいということで各国から評価を受けておるわけでございます。どの国もどの国ももちろん一生懸命やっておるわけですが、日本の場合には、責任感が強い、規律が正しい、能力が高い、信頼が置ける、そういうことで、お世辞でも何でもなく、高い評価をいただいております。そして、PKOはいろいろな国の軍隊とともにやるわけでございますから、いろいろな国の軍隊とも意思疎通というもののいろいろな経験を積んでまいりました。
 その中にあって、では浄水能力はどうなんだということでございますが、阪神大震災なんかのときもそうですけれども、私どものそういう水の補給というものは大変市民の皆様方に喜ばれた。
 私どもの浄水車というものは、新しいタイプと古いタイプとございますが、古いタイプですと三十六両を有しております。さらに能力の高い新型というのは十五両有しておるわけでございます。もちろんこれは全部出払うというわけにはまいりませんが、百条系列で行きますので、そうしますと、相当に高い能力、ほかの国が有していない能力というものを持っておるということだと思います。
 これはさらに具体的に検討していかなければいけないことでございますが、では、C130という飛行機を持っていて、それがきちんと飛ばせる、そういうような能力を持った国というのも、そんなに世界じゅう、そんじょそこらにあるものではございません。私どもの国が、武力の行使をしないということで、自衛隊が持っておる自己完結性、そしてまた高い能力、そういうものが生かせる、そして、そういうような装備を持っておるということは、日本として、イラクの再建、イラクの復興という国連から要請されたニーズというものにこたえ得るのではないか、私はそのように先生のお話を聞きながら思ったことでございました。
杉浦委員 最後に長官にお伺いしますが、今ちょっとお触れになりましたですけれども、前にも調査団を出されましたね、今回も小島政務官その他参加しましたが、自衛隊として、イラクの状況を判断されて、どういうようなニーズがあるとお考えか、お伺いしたいと思うんです。
 今まで、私、個人的ですと、カンボジア、知っています。東ティモール、知っています。それから、ゴラン高原へ行きました。ゴランは輸送をやっていますね。東ティモールは、道路の建設、インフラの整備、浄水もやっています。カンボジアは道路整備が主でしたが。自衛隊の能力は高いと思うんですね。水もできる、輸送もできる、道路整備もできる、地雷の除去も能力がありますね。さまざまな貢献のあれがあると思うんですが、現時点で、防衛庁長官としては、どのようなニーズにこたえられるとお考えになっているか、お伺いして、終わりたいと思います。
石破国務大臣 これはまだ現時点で確定的なことは申し上げられないと思っております。しかし、例えて申し上げれば、今先生御指摘になったような給水でありますとか、その給水も、いわゆるきれいな水をつくる、例えば川からあるいは沼から、浄水をするという行為があって、水をきれいにするという行為があって、それから水をお配りする給水という行為がございます。私は、そういうものはニーズはあるのだろうというふうに、政府の調査団あるいは与党の調査団の御報告を聞きながら思っております。あるいは、空輸というものもニーズはあるというふうに考えています。
 ただ、問題は、それが非戦闘地域で行われ、そしてまた、仮に法案が通りましたときに私が持つことになります安全確保、自衛隊員の安全確保というものがきちんと図られるか、それが両々相まって、私どもが法案が通った暁に行う活動のかなりの部分を占めることになるのではないか。あくまで、そういうような、現状における感想のようなものでございます。
杉浦委員 これで終わりますが、いずれにしても、私どもの調査はいわば偵察みたいなものでございまして、五感を働かせて行ってまいりましたが、いろいろ申し上げましたが、もしやることになるとすれば、これは専門家、実務家による徹底的な調査を十分やっていただいて、地域についても分野についてもやっていただいた上で計画をつくるということが大事である、これは私どもの調査団の一致した意見でございますので、政府当局においては、もし法律が通った場合はそのように進められることを切に望みまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
浅野委員長代理 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 私も、与党イラク調査団の一員として、昨日帰国をいたしました。その調査団の内容につきましては、先ほど杉浦団長の方から詳細にございましたので、繰り返すことは避けたいと思いますけれども、まず三点ほど、私が私なりに感じた点を報告させていただきたいと思います。
 まず第一点は、自衛隊の派遣についてでございますけれども、我々、いわゆる連合軍の暫定行政局、このブレマー長官、それから次席のソーヤーズ、イギリスからいらっしゃったソーヤーズ大使にお会いしました。それから連合軍司令部、これは軍の方のトップですけれども、CJTF7と言っていました、コアリション・ジョイント・タスクフォース・セブン、このトップにも、ここも次席の方でしたけれども、お会いしました。それから、国連特別代表事務所にも行ってお話を聞きました。
 行政局長、連合軍、それから国連、それぞれの方が異口同音におっしゃっていたのは、日本の貢献を非常に期待する、期待している、特に自衛隊の派遣についてはそれを強く要望する、こういう御趣旨でございました。現地におきまして、日本の貢献、そして自衛隊の派遣が要請されているということを強く感じてまいりました。
 それから、そのときに皆さんおっしゃっていたのは、しかし、その内容については日本が主体性を持って日本が決めることである、このような言葉も必ずございました。また、日本の自衛隊が置かれている立場、日本国憲法でありますとか、またその性格についてもよく理解がされているという感触を得ました。これらの方々との会見を通して、自衛隊の派遣について現地から強い要望があるということをまず御報告をしたいと思います。
 これからは私の率直な感じですが、大変外に出ますと暑い。中もバグダッドは冷房がきいていない建物がたくさんありまして暑いんですけれども、特に外に、任務で外に出ると非常に暑くて、重装備の兵士の方、大変な任務だな、もし夏の任務になるとすれば、これに対する配慮は必要だなということを感じました。
 それから、二点、治安についてですけれども、これは全体として、先ほど杉浦団長がおっしゃったとおり、報告があったとおり、かなり改善されているという感じがいたしました。
 私どもも、掃討作戦が行われておりますラマーディー、それからファルージャといういわば一番危険な都市と言われるところも、ここは、防弾車でしたけれども、車をおりないで見てきた、通過をしたわけですけれども、非常に落ち着いている感じがいたしました。
 直接それをあらわすことにはならないんですけれども、ちょっと写真を撮ってきましたので、予算がなくて一面にしかなくて、全体に見ていただきたいんですが、これはバグダッドの市場の写真でございます。直接感じたのは、非常に物が豊富である、いわゆる庶民がたくましく生きているという感じがいたしました。素人が撮った写真で、うまくこのにぎやかな雰囲気が出ていないところが申しわけないんですけれども、これがバグダッドの下町の市場の感じです。
 びっくりしたのは、このすぐ隣で略奪品と思われるものが、明らかに略奪品と思われるものがたくさん売られている。いすとかロッカーとか、明らかに国の事務所からとってきたものだなと思われるものが売られているというのも、そのたくましさを感じた次第でございます。このように、非常に治安は改善されている、こういう感じがいたしました。
 バスラの英軍司令本部で、英国軍とともに任務についているデンマークの司令官から話を聞きましたけれども、このデンマーク軍は、バスラを含む県と隣の県を担当している。その広さは七千平方キロメートルということで、デンマークとほぼ同じ広さ。この地域での犯罪発生率は、驚くことに、デンマークと全く変わらないということだそうでございます。ここも治安が非常に改善されている、これは南部ですから治安がいいところですけれども、そういう感じがいたしました。治安が落ちついている。したがって、非戦闘地域というのは、確実に私は、限定できる、そういう地域は存在するという確信を持ちました。
 しかしながら、バース党残党による治安の不安定なところというのは存在するわけで、治安に問題がある、そういう事件が散発するということを考えれば、後から述べる社会インフラが非常におくれているということも考え合わせて、自衛隊の派遣が適当なのではないか、このように感じた次第でございます。
 それから三点目。演説はこれで終わりますけれども、社会インフラのおくれということを感じました。
 米英軍による攻撃そのものは、まさにピンポイントで正確に行われている、その被害は限定的であるということを感じました。フセインの息子が経営していたというレストラン、あのピンポイント爆弾が行われた現場にも行ってまいりましたけれども、まさに建物の真ん中に正確に撃ち込まれておりまして、その隣の建物は全く被害を受けていないという状況も見てまいりました。しかしながら、社会インフラは、攻撃というよりも、十年間、十年以上にわたる経済制裁によって、社会そのものが本当に疲弊している、それを感じました。
 一九七〇年代の後半、私はある会社へ勤めておりましたけれども、当時、私は直接担当しませんでしたが、その企業、日本の企業ですけれども、一千億円弱のプロジェクトをイラクから受注して、イラクハイライズという高層アパートの仕事がございました。その当時、私が勤めていた会社がそのプロジェクトを受注して、イラクにたくさんの私の仲間が行ったわけですが、そこで聞く話は、まさに明るい将来に向かって発展をする国、こういうイメージを持っていたわけですけれども、二十数年たって、今回行ってみて、ある意味で、そこで私が予想した姿とはかけ離れた厳しい社会の現状を見て、本当に政治というのは大事なんだな、政治が一つ間違えれば、あの発展すると言われた、明るい希望に満ちたあのイラクがこのような状況になってしまうんだなというのを強く感じました。
 社会インフラのおくれということで、もう一枚写真を、これもうまく撮れていないんですが、これはバグダッド市内でございまして、実はヤギの群れがたくさんおります。これは野生のヤギではありません。ちゃんとヤギ遣いがそばにいるわけです。町の中に、まさにごみの山が出ているということで、そのごみあさりに、多分、郊外で草を食べさせているより栄養が行き渡るんでしょう。バグダッド市内にヤギの群れがたくさん来て、ここはごみの山というところをうまく撮れなかったんです、写真で。やたらと写真を撮って、その写真の中に女性が入ると大変なことになるということもありまして、写真を撮るのにも注意をしましたのでうまく撮れていませんけれども、これもその社会整備のおくれの一環かと思います。こういうことを感じました。
 先ほどの治安の問題、それから、先ほど杉浦団長からもありました電気、水道、こういう社会インフラの整備のおくれということを考え合わせると、自己完結型の自衛隊が日本の貢献としてまず派遣されるということが最も適当ではないか、このように感じてきた次第でございます。
 それでは、こういう基本的な認識の上に立ちまして、何点か質問をさせていただきたいと思います。
 まず、輸送に対する要望、特に航空輸送、これが非常に強かった。これは、連合軍司令部そして暫定行政局、OCPAでも聞いたところでございます。現在、連合軍はC130を十八機運用している、けれども足りない、こういう状況であると。私どもも、ヨルダン国境から入りまして、国内にはとにかく航空輸送がないわけですから、車でヨルダン国境からバグダッド、それからバグダッドからバスラを通ってクウェートを抜けるまで、千五百キロ強を車で移動しましたけれども、非常に効率が悪いということを感じた次第でございます。
 自衛隊として、輸送機、特にC130という具体的な名前も出ておりましたけれども、このC130を派遣できる体制にあるのかどうか、派遣するとしたら何機ぐらいが可能なのか、この点について防衛庁長官にお伺いいたします。
石破国務大臣 具体的な検討に入っておるわけではございませんが、今どういうような状況かという御下問でございます。
 その前に、先生、本当にお疲れさまでございました。ありがとうございました。
 今私ども、C130型の輸送機は十六機保有をいたしております。その中で、もちろん整備に入るものもございますので、稼働いたします飛行機は十三機ということでございます。これは六名をもって運航いたします。この稼働いたします十三機というものの運航に必要なクルーというものは当然おるわけでございますが、ただ、では国内的に何機残せばいいのかという問題がございます。全部出払っちゃうというわけにはまいりませんものですから、あるいは国内においての輸送も担当いたしますわけで。今ございます飛行機は十六機、稼働は十三機という中で、ニーズ、それから国内におきますニーズ、そういうものを勘案することになろうかと思います。
斉藤(鉄)委員 まだ具体的な検討は、詳細な検討はこれからだと思いますけれども、特に航空輸送に対する要望が強かったということをお伝えしておきたいと思います。
 それから、先ほど杉浦団長からもお話がございました水、今回、本当に水の話が多かったんです。我々も、特に脱水症状にならないようにということで、一リットル入りのボトルを常に持ち歩いて水を補給しながら、我々は移動中は冷房のきいた車内にいましたけれども、それでも本当に水というのは大切だなということを感じたわけですが、ましてや、外でずっと任務する方にとっては水というのは本当に大事だ、このように感じました。
 英軍、バスラの方ではそこまで制約が強くなかったんですが、米軍、バグダッドに展開する米軍は、洗濯用の水も含めて、一日に兵士に配給される水は大き目のペットボトル二本、このように聞きました。それから、米軍輸送の半分を水が占めているとも聞きました。
 そういう中で、我が国が持っております自衛隊の水の浄化能力、これを駆使してあのイラク国民や米軍等への補給ができないかという感じを持ったわけでございます。
 先ほどの質問にもありましたけれども、現在の自衛隊にどの程度の能力があって、かなり大きな機械だと思いますけれども、それをイラクに展開することは可能なのかどうか、この点についてお伺いします。
石破国務大臣 これは、高温多湿の日本で使います場合と先生方がいらっしゃいましたイラクで使います場合に、気象条件が違いますので、そのまま持っていって可能かどうかということは、もう少し検討が必要かと思っております。ただ、世界で一番優秀な日本の自動車でございますから、それが仮に今そのままでは不可能であったとしても、改修を施すことによって使うことが可能になるのは十分可能なことかというふうには思っております。
 先ほどの御質問と重複いたしましたら申しわけございませんが、私ども、浄水車、水をきれいにする車というものを新型と旧型と有しております。
 旧型、古いタイプのものは三十六台持っておりまして、これが浄水能力が一日に百五十トンでございます。百五十トンといっても何のことだかよくわかりませんので、一本二リットルのペットボトルで申しますと、七万五千本というものを一日に浄水する能力がございます。石油なんかを入れます十八リットルのポリタンクでいえば、八千三百三十三個を一日に浄水をすることが可能でございます。東京の標準世帯、三名から四名の標準世帯でいきますと、一日に大体〇・八トンの水を使うといたしまして、百八十七日分のものを一日に浄水することが可能でございます。
 新タイプというものもございまして、この新タイプは、現在、国内の使用台数は十台、保有台数は十五台有しておりますが、海外に出しておるのもございまして、今のところは国内でおりますのが十台ということでございます。これは、浄水能力が百五十トンではございませんで、七十トンの浄水能力を有しております。ですから、ペットボトルで申しますと、古いタイプですと七万五千本でございますが、新しいタイプですと、二リットルに換算をいたしまして三万五千本、こういうことになります。
 何でこういう差が出るかと申しますと、その浄水した水というものが、古いタイプのものですと、大腸菌ぐらいは除去することは可能でございますが、そのほかのウイルス等々が除去できません。したがいまして、古いタイプは、多くの水をつくることは可能でございますが、それをそのまま飲みますと非常にぐあいが悪いので、塩素等々を加えまして滅菌をするということに相なります。
 新タイプでございますと、これはウイルスも除去が可能でございます。あるいは、生物化学兵器、生物化学物質で汚染された場合でも浄化可能でございます。したがいまして、そういうような高度な浄化能力、量という意味ではなくて質でございますが、それを有しておりますために、一台一日当たり七十トンということでございます。
 ですから、先生御指摘のように、飲む水あるいは体を洗う水、いろいろな用途があろうかと思います。そういうものに合わせまして検討することに、仮にそういうようなニーズが確定でき、行うことになるとしました場合には、我々の浄化能力というのはそういうものを備えておるということでございます。
斉藤(鉄)委員 バグダッド市内を歩きまして、まさに不衛生そのものでございました。先ほど話がありましたけれども、下水もオープンシューエージ、まさに溝を掘ってそこに下水を流している。川にそれが直接入る。それから、地下にある下水も逆流して、下水の汚い水が道路にあふれておりました。それから、私どもが泊まったホテルも、停電はしょっちゅうですけれども、水が出ない、トイレも流れない、ゴキブリが徘回している、一応いい方のホテルでしたけれども、そういう状況でございまして、水というのは大変重要だなと。後でまた小児病院の話もさせていただきますが、本当に医療という面でも水というのは非常に大事だなというのを感じましたので、それをお伝えしておきたいと思います。
 それから、バグダッドに行っているUSアーミーの第八二空挺師団第三二五旅団第一大隊のナンツ大隊長という方のお話を聞きました。市役所の仕事をされている、こうおっしゃいました。市役所の訓練、いわゆる行政の訓練はされているんですかと聞きましたところ、我々がふだん受けている訓練は、大統領が命令すれば十八時間以内に世界のどこへでもスタートする、スタートするまでの時間が十八時間という意味ですけれども、そういう訓練は受けているけれども行政についてはいま一つだ、こういうことでございました。
 それから、これまで行政能力を持ったバース党幹部が追放されております。そういう意味で、行政を整えるということは非常に重要だなと思いました。
 もう一つ、写真を。これはバグダッドのガソリンスタンドでございます。これも余りうまく写っていないんですが、このガソリンスタンドの周りに給油を待つ車がずっと列をつくっております。そういう中で、秩序正しく給油されるように米軍がいる状況でございます。並ぶという習慣がなかなかないらしくて、秩序正しく行うというのが非常に困難だったんだそうですけれども、こういう市民生活の現場にまで軍隊の人が出かけていって市役所の仕事をしているというのを感じてきました。
 そういう意味で、行政能力ということ、それから、政府がない状態ですので、いわゆる行政サービスをする、イラク人自身が行政サービスをするようにならなくてはいけないわけですが、その給与が払えていない。実際、政府がなくなっているわけですので、給与は払えない、いわゆる暫定行政局が払うしかないわけです。それも、これまではごくわずかなお金がアルバイト代程度のものでしか払われていないということですけれども、こういうことも考えていかなくてはいけないのではないか、このように感じてきた次第です。これは官房長官にお聞きすることになるんでしょうか、外務大臣にお聞きすることになるんでしょうか、行政へのサポート、それからイラク人の給与の問題等についてお伺いいたします。
川口国務大臣 行政面で人が必要であるということは、そういうことがあろうかと思います。CPAに今六人、人を出しておりますし、その他さらなる派遣についての検討もしております。現地の実情、ニーズを踏まえまして、人的な派遣については検討をしてまいりたいと考えております。
 それから、給与でございますけれども、これは同じような問題が実はアフガニスタンでもございました。我が国が今まで給与等の、これはリカレントコストというふうに呼ばれていますが、それを支払っていくということにつきましては、税金を使った支援ということですけれども、お金がどのように使われるかということについての透明性が低いという問題点があるもので、我が国としては、今までどちらかといえばリカレントコストについては消極的に対応をしてきております。
 同じ、ODAに制約がございますので、給与として我が国がお金を出すかあるいは給料をもらえるような仕事をODAを使ってつくっていくかという考え方の問題だろうと思いますけれども、それから、イラクの場合には、基本的には石油がございますので、払えることができる財源は潜在的にはあるということと、それからCPAが公務員の雇用問題に取り組んでいるということもございまして、引き続き、その給与に対しての支払い、支援につきましては、実情を見きわめながら考えていきたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 治安という面からも、この給与の問題、それから行政組織の整備という問題は非常に大事だと思いますので、ここも日本が貢献できる一つの大きな分野だと思いますので、検討をよろしくお願いいたします。
 それから、千五百キロ走ってみて、私がもう一つ感じたのは、子供が多いということでございます。日本と逆です。至るところに子供があふれているという感じで、その一人一人の子供たちが非常に表情が明るくて生き生きしている、目が輝いているという感じを受けました。そして、その子供たちが、これはバグダッド市内でもそうです、それからバグダッドからバスラまで行く途中、イラクの田舎、農村地帯を走りましたけれども、みんな元気に学校に通っている、学校に集まっているというのを見ました。私はその姿を見て、教育システムが、ある意味ではフセイン政権下でもきちんと力を入れていたんでしょう、整っている。これはある意味で、軌道に乗り出せばイラクの復興は早いんではないかということを感じた次第でございます。
 そういう意味で、教育システム、インフラの回復、これも非常に重要ではないかと思います。ユニセフ、ユネスコ等が一生懸命やっている、このように聞きましたが、日本が直接顔の見える形で貢献できる分野ではないかな、このように思いました。ここも学校の先生の給与の問題があるそうですけれども、だれも払う人がいないということですが、学校の先生たちは使命感で、子供たちが学校に集まってくる、それを見ていらっしゃるということのようでございます。ここも何とか貢献できないか、このように思うんですが、この点についてはいかがでしょう。
川口国務大臣 教育は、我が国が、イラクも含めアフガニスタンも含め、支援の中では重視をしている分野でございます。これは我が国の経験からも来ているわけですけれども。
 それで、イラクとの関係でいきますと、既に教育分野では、ユニセフで百万人の児童が裨益するプロジェクトに一千万円強のお金を出しておりますし、ユネスコの基金のうちから百万ドルを教育関係にイヤマークをしているということを行っております。それで、引き続き、取り組み、どのような貢献ができるかということは検討してまいりたいと思いますけれども、顔が見えるということは大事なことでございますので、ユニセフ等で行っているプロジェクトにつきまして、例えばかばんに日の丸をつけるというようなことで配っているということはいたしております。
 教育でユニセフの持っている知見、あるいはそういったことを効率的に実施することができるという能力が世界的に大変、人材もいまして、大きなものがございますので、ユニセフということで、日の丸をつけながら仕事を今ユニセフにお願いをしてやっていただいていますが、引き続き、どういう形での貢献が教育分野でできるか考えていきたいと思います。
斉藤(鉄)委員 この点、よろしくお願いします。
 それから、最後ですが、これもうまく撮れていないんですけれども、これは国立の小児病院でございます。イラクの中でも特に進んだ医療設備を持った病院ということですけれども、この写真からもわかりますように、電気がたびたび停電しますので、当然冷房はききません。窓は全部あけ放たれております。非常に酷暑の中、劣悪な環境。それから、子供たちであふれておりました。院長先生とお話をするということで玄関を入ろうと思いましたら、何とびっくり、玄関の前が逆流した下水でべちゃべちゃなんです。そういう中で子供たちが廊下に列をなしている、こういう状況でした。
 院長とも話をしましたところ、医薬品等全く足りない状況であって、この病院でお医者さんが百十六人と言いました、看護婦さんが八十七人と言っておりました。看護婦さんが少ないなという感じを受けたわけです。お医者さんはある程度いるけれども、医薬品、またそして医療器具が足らないという話でございました。この面での日本の貢献、これも、先ほどの水とも関連いたしますけれども、非常に重要ではないかと感じた次第ですが、この点についてはいかがでございましょうか。
川口国務大臣 医療についても必要があるということについては十分認識を持っておりますし、今までも、国際機関あるいはNGOを通じての医療支援を実施してきております。今後もできる限りのことをいたしたいと思っています。
 それで、下水のお話がございましたけれども、私も昨日、下水があふれ返っているところをテレビで見ましたけれども、この問題につきましても、これは、水分野はユニセフが担当しておりますので、ユニセフあるいはCPAと相談をして、我が国としていかなる貢献が可能かということについては検討してまいりたいと思います。
斉藤(鉄)委員 時間が参りましたので終わりますが、全体の感じとしては、イラクの方は日本に対して非常に好印象を持っているというのも感じました。また、日本に対する期待も非常に大きいということでございますので、早期にこの法律を成立させて、日本の顔の見える貢献が必要であるということを訴えて、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
浅野委員長代理 この際、お諮りいたします。
 政府参考人として厚生労働省健康局長高原亮治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
浅野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
浅野委員長代理 大畠章宏君。
大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。私は、この法案について質問をさせていただきます。
 今いろいろとやりとりがされている中で、与党だからあるいは野党だからという話もありますが、私は、そういう観点でなく、中曽根さんもおっしゃっていますが、私たち政治家は歴史上において被告席に座るべき立場にある、したがって、私たちの判断がこれからの未来においてどう審判されるか、そういう覚悟を持って政治を行わなければならないという話をされたということを聞きましたけれども、まさにそのとおりだと思うんです。したがって、この法律案について、本当に真摯に、私たちはこれからの未来の日本人に対して責任ある結論を得なければならないと思っておりまして、そういう立場から質問をさせていただきます。
 まず、今回のイラク支援法の背景にはさまざまな要因がありますが、大量破壊兵器の問題あるいは人道的支援の問題等々がありますが、幾つか質問をさせていただきます。
 冒頭に、法案の質問に入る前に、実は旧海軍の毒ガス弾、いわゆる大量破壊兵器による日本国内の被害者が明らかになっておりまして、多分こういうことだろうという推測の状況もございますが、この問題について、政府の認識を最初にお伺いしたいと思います。
 私自身も現地に参りましたけれども、現地の方では原因究明と被害者の救済というものを強く求めているところでありますが、この問題についての政府としての基本的な方針を最初にお伺いします。
福田国務大臣 今大畠委員から提起をされました旧日本軍の毒ガスによる疑い、それも極めてその可能性の高い疑いということにつきまして、これは政府としても真剣に取り上げなければいけない課題である、このように考えておりまして、そのような知見を有します環境省において対応を考えております。私ども、この問題が提起されまして、環境省とともに協力して素早い対応をすべきであるということで、環境省も問題提起後直ちに取り組んでしかるべき対応を考えておる、具体的なことについて、必要であればまた答弁させていただきますけれども、そのように思っております。
 ただ、この問題は、我が国の大量破壊兵器であったということでございますので、委員が御指摘なさるのは、そういう観点から、今の問題と絡み合わせて大変重要な提起であるというように考えております。
大畠委員 当初、いろいろな、三月ぐらいからこの被害者が出たわけですが、政府の方でも早くそれに対して対応しようという努力は見えます。
 ただ、住民の方のお話を伺うと、どこが窓口だかわからないというんで直接環境省に電話をしたり、被害者自身が一生懸命努力して現在の情報を得なければならないというような話もございまして、調査のときの段階で、これは窓口を一本化すべきだ、そして情報は適切に、タイムリーに出すべきじゃないかということを要請してきたところであります。
 この被害者住民に対する情報提供というものは今どういう形で行われているのか、そして住民への対応というものはどういうふうな形で今やっているのか、その現状についてお伺いしたいと思います。
南川政府参考人 御指摘の現地における連絡体制でございます。
 私ども環境省では、環境リスク評価室という部屋を窓口にいたしまして、そこが、茨城県庁の潮来保健所それから神栖町役場、おのおの一つずつ窓口を設定いたしました。そこが連絡をとりながらやっております。地元の問題でございますから、一義的には町なりあるいは潮来保健所にお話しをいただくことにしておりますけれども、もちろん私ども、直接お問い合わせがございました場合にもできるだけ丁寧にお答えして、その旨をまた地元の保健所にも流しております。
 そして、私どももできるだけ直接現地に出向きたいと考えておりまして、具体的な原因究明調査の直前、あるいは救済策を官房長官に報告した夜にも、私自身も現地に出向きまして、現地で二回にわたって説明を行っております。
 引き続き、十分連絡をとりながら、コミュニケーション不足にならないように努めてまいります。
大畠委員 きのうの新聞をちょっと見たんですが、明治大学の大学院の先生がいろいろと調査した結果、アメリカから返還された資料の中に、旧海軍の毒ガス実験場がそこにあったというのを発見したという話ですが、正直言って、これはこの神栖町だけではなく、全国に一体どういう旧軍の毒ガス実験場あるいは毒ガスが保管されていたのかというのは、やはり防衛庁の管轄なんだと思うんですね。
 そこで、防衛庁の姿が余りこの問題については見えないんですが、これは、海外のイラク支援も大事だと思いますけれども、日本国内の日本の国民に対する、大量破壊兵器による被害者救済に向けて、防衛庁としての姿勢をきちっとしなきゃいかぬと思うんですが、このことについて防衛庁長官の御認識をお伺いしたいと思います。
石破国務大臣 これは先生御案内のとおり、旧軍というものは一回なくなっております。私ども防衛庁というのは警察予備隊からスタートいたしておりまして、組織的同一性というものは継続をいたしておりませんということが一つございます。したがいまして、旧軍が有しておりましたそのような毒ガスについてどのようにするかということについて今環境省が所管をしておるというのは、そういうことでございます。
 今先生が御指摘になりました新聞報道でございますが、昨日付の報道によりますれば、私どもの組織であります防衛研究所が保管をしております資料、「特殊弾及化学兵器実験」の中から、一九三九年七月に、井戸から約五キロ離れた場所で旧日本軍によって毒ガス発射実験が行われた、こういうような内容が記されておりました。この報道にございますように、この資料の中に、旧日本軍によって毒ガス弾発射実験があったことを示す内容が記されておるわけでございます。
 また、神栖町からあるいは知事さんからそういうようなお話もいただきました。こういうことで、防衛庁はどうするのかというお話をいただきました。私はそのときに知事さんにも、これは政府全体として、環境省とよく連携をとりながら、防衛庁としてできることがあればさせていただきますということを申し上げたわけでございます。
 当庁といたしましては、原因特定作業を行っておられます環境省等の関係省庁や茨城県などに対しまして、この資料の内容も含めまして必要な情報は提供させていただく、原因究明のためにできる限りの努力はさせていただくということでございます。
大畠委員 いずれにしても、原因究明ということでありますが、物が見つかった場合、これは環境省では処理できません。やはり防衛庁の力をかりないとできない話でありますから、今長官がおっしゃいましたけれども、ぜひ、国内のこの大量破壊兵器によると思われる被害についても積極的に行動していただきますよう要請しておきます。
 そこで、原因究明と住民救済というものを強く求められていますし、また、私も会いましたが、三年前から、病院に入院すると元気になって自宅に帰るとぐあいが悪くなる、この繰り返しで三年たちまして、夫婦の方でありますが、失業し、今生活保護を受けているという方から直接のお話も聞きました。こういう健康被害者救済のための対策あるいは健康管理体制というのは、政府としてどういうふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
南川政府参考人 私ども、六月四日に官房長官に報告いたしましたが、その中で、実際に高いレベルの砒素の水を飲まれた、ジフェニルアルシン酸の入った水を飲まれた方で、健康影響を受けられた方がおられるわけでございます。そういった方に対しまして、できましたら、六月の三十日から実際に申請を受け付けまして、それ以降の、例えば医療費の自己負担分であるとか、あるいは通院費であるというものについては公的に負担をさせていただきたい。
 また、実際に御指摘の方につきましてはかなりいろいろな病で悩まれております。そういった方につきましては、特に健康管理を重点的にやっていただく、あるいは、これまでの病気への対応について詳細にお伺いするという趣旨も含めまして、救済も念頭に置いた上で、一時金あるいは毎月の手当というものも出していきたいということで、できるだけ健康管理のお手伝いをしていきたいというふうに考えております。
大畠委員 それでは、この件についてはこれで終わりますけれども、いずれにしても、海外の人道支援も重要だと思いますが、自国民のこの種の、全く本人の瑕疵がない、まさに、何でこうなったんだというのがさっぱりわからない状態に置かれて、そして失業し、生活保護を受け、五十一、二歳の方ですが、年老いてきたからこういう形になってきたのかなというあきらめの気持ちを持っていましたが、だんだん原因がわかってきて、それが非常に怒りになってきたんですね。防衛庁長官は、旧軍は自衛隊とは関係ないんだと言うんだけれども、では、その被害を受けた方はどこにそのものを求めていいのかさっぱりわからない。
 そういう意味では、政府の方でぜひこの問題についてきちっと対応していただきたいと思いますが、官房長官、ちょっとこの件についての御発言をお願いします。
福田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございまして、我が国国民の生命財産等々、守るべきものはしっかりと政府が守っていかなきゃいかぬ、こういうことであります。
 今回の件につきましても、当然のことながら、この原因が確定すれば、それなりの対応をしなければいけませんけれども、その以前に、今現在、極めてその可能性が高いという状況から判断いたしまして、政府としてできるだけのことはしてまいろう、こういう考え方でございます。
 防衛庁が責任をとるべきと、こういうお話ございましたけれども、これは、一言で申し上げれば、政府全体として受けとめてまいらなければいけない。したがいまして、必要に応じてその省、庁が対応いたしますけれども、しかし、これは政府全体の問題である、このように考えております。
大畠委員 それでは、この法律案について質問をさせていただきます。
 まず最初に、この法律案の背景について政府の考え方を聞きたいわけでありますが、これは外務省の管轄かもしれません。
 外務大臣にお伺いしますけれども、日本の国の基本的な考え方、前からお話がありますが、国連中心主義なのかアメリカ中心主義なのかという話があります。
 私自身、憲法調査会で、いろいろこの憲法問題についても勉強といいますか学ばせていただいておりますが、やはり、日本の国も過去の戦争を反省し、日本国憲法をつくり、国連の方でも、戦勝国側でも、第一次世界大戦、第二次世界大戦、合わせると五千万人の被害者を出した、それを深く反省して、もう二度と地球上から戦争というものをなくそうという努力の結果として国連憲章ができていると、この憲章を読みながら私自身理解しております。
 「紛争の平和的解決」が第六章、第七章が「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」に対する規定等々で、第五十一条には、
  この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当つて加盟国がとつた措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
ということであります。
 しかし、今回のいわゆる大義の問題がアメリカでもイギリスでもさまざまな論議をされておるわけでありますが、日本国としてこれからどうするのか。ここまでアメリカ支援というものに踏み込んでしまったわけでありますが、外務省として、あるいは政府として、これからの世界の平和の維持をどういう仕組みで考えていくのか、その基本的な考え方を外務大臣にお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 よく、国連中心主義なのか米国中心主義なのかという問いが発せられるわけでございますけれども、私は、その二つは相対峙するものではないと考えております。
 我が国の外交の観点から申しますと、外交の目的は、言うまでもなく、我が国の安全とそして繁栄を確保するということであるわけですけれども、それをするためには、国際社会が平和であって繁栄をしているということが非常に重要で、我が国にとってはそれが重要であるわけです。
 それでは、では、いかにしてそれを確保するかということから考えますと、我が国として大事なことは、一つは米国との同盟関係であります。そしてもう一つは、国連を中心にするさまざまな国際社会が平和であって安定をするような努力、これに貢献をしていくということであると思います。これの二つは、こちらかあちらかという話ではないわけでございまして、したがって、その二つを我が国は両方とも重要だと考えてやっていくということだろうと思います。
 今回のイラクの場合につきましても、米国は、一四四一をつくる過程、あるいはそれまでの過程において国連の中でずっとやってきたわけでございまして、最後、イラクにおける大量破壊兵器の廃棄が武力行使をなしに可能でないということになって、我が国としても平和的に解決をしたかったわけですけれども、武力行使を決定をした米英を支持したということでございます。
 また、今現在、一四八三という形で国際社会が、これは全会一致で合意された、決定された決議でございまして、イラクの復旧のためにみんなで力を合わせてやっているという状況であります。
 したがいまして、国連の場というのも我が国としては重要でありますし、また、米国との同盟関係も非常に重要であるということだと思います。
 それぞれのケースについては、例えば具体的なケース、それぞれでいろいろな判断の仕方は違ってくるところがあると思います。
大畠委員 外務大臣から、アメリカ中心主義でもない、あるいは国連中心主義でもない、どっちか二者択一じゃなくて、両方あわせ持ちながらやっているというような話でありますけれども、どうも今回のイラク問題については国連というよりもアメリカを非常に重視した。それは私は、世界の見るところ、もう否めないんじゃないかと思う。いや、国連も大事だ、アメリカも大事だ、両方大事なんですという、その一般論はわかりますが、国民だって、アメリカにシフトしたな、ヨーロッパだって中国だってそうですが、日本という国はアメリカとくつわを並べて進むということを決断した、そう見ているんじゃないのか。
 もしもそういうふうに外務大臣がおっしゃるのであれば、では、世界秩序をどう回復するかという、その努力が今見えますか。アメリカとトーンを合わせようという波長はどんどん伝わってきますが、世界秩序をこうやって日本としてリーダーシップをとって何とか回復しようという姿が見えないんですね。
 このイラク新法問題もそうでありますが、私は、どうもそこら辺、外務大臣が一般論をおっしゃいますが、具体的な日本としての、国際秩序をこういう形で念頭に置きながらやっていこうという姿が見えないんですよ。ドイツやフランスやあるいはまた中国、ロシア等々、安全保障理事国のメンバーがこの問題についてはずっと懸念を表明しているわけでありますが、そこのところ、私は、外務大臣、そう一般論をおっしゃいますが、政府としてのトーンが出ていないんですね。
 ですから、今外務大臣から両方大事だとおっしゃられましたけれども、どうもそういう形には実際上なっていないということを指摘させていただきたいと思います。
 二番目に、今のアメリカの話でございますけれども、今回の法律案の内容あるいは何をやるのかということを、きのういろいろ論議を聞いておりました。しかし、具体的なものは出てこない、何をやろうというのが出てこない。一体何のために自衛隊を派遣するのか。どうも私自身、防衛長官は頭を抱えているようでありますが、要するに、自衛隊を派遣して何をやるのかというのが明らかじゃないときに、きのうの話を聞くと、米英軍を支援するために自衛隊を派遣する、これは色濃く見えるんですよ。色濃く見えるんですが、一体派遣して何をやるのか、そこのところが明確にきのうは聞こえてこないんですね。
 そこで、先ほどの話とダブるかもしれませんが、フランス、ドイツ、ロシア、中国は国連決議を踏まえて軍隊は送りませんね。国連の安保理の主要国は、どちらかというと、非軍事の人道支援という形の態勢をとっていますし、きのう総理が、カナダもやっているんだ、カナダもやっているんだと言っていましたけれども、カナダはC130という飛行機だけで、地上軍は送っていないんですよ。あれを国民は聞いていたら、カナダも地上兵を送っているように誤解すると思いますが、このカナダのイラク支援の現状について、外務大臣か防衛庁長官か、わかったらちょっと教えてくれますか。
川口国務大臣 ちょっと手元に資料がございませんので記憶から申し上げますけれども、C130、これをたしか三機かと思いますが、それを使いまして輸送活動をしている、陸上部隊をイラクの中に置いているということはないと承知をしております。
大畠委員 ですから、きのう総理は、カナダだってやっているんですよと言うのですが、日本は今、自衛隊を地上に送ろうとしているわけでありますが、私もカナダの国から聞いていますが、いや、我々は地上兵は送っていない、輸送だけを支援しているだけだ、こういうふうな話を聞いています。したがって、きのうの総理の話をテレビで聞いている人は、ああ、カナダも日本と同じように地上の支援部隊まで送っているのかというふうに誤解するので、ああいう不確かな情報は総理に与えない方がいいと思いますね。
 そこで、今でもC130の輸送機の派遣というのは、イラク国内は難しいと思いますが、周辺国には派遣が可能だという感じもするんですが、ここら辺は、防衛庁長官、これはどうなんですか。
石破国務大臣 今外務大臣がおっしゃったとおりでありまして、C130はイラクの国内にも入っております。先ほどの答弁で申し上げましたが、C130という輸送機の能力はかなりのものでございまして、それがイラク国内に入っているというのは、カナダとしては大変な貢献であるというふうに私は考えております。地上軍が入らないから、それは飛行機の輸送だけだからカナダとして大したことはやっていない、もちろん委員はそういう表現はお使いになりませんが、そういうことだとは思いません。私は、総理が誤った情報に基づいてきのうお話しになったとは考えておりません。
 そして、C130を飛ばすということでございますけれども、これは、当然のことでございますが、PKO法によりまして、現在でも可能でございます。
大畠委員 私は、イラク新法問題、ですから、日本国として今でも何かやれることがあったら、検討をすべきだと思いますよ、これは。今の法律でもできることを。それを、この新法でなければならない、それで秋のころというんですが、先ほどの報告を聞いたら、今が必要なんじゃないですか、混乱期が。今、イラク国内で大変混乱状態にある、輸送機が足らないという話もありましたよね。今が大事なんじゃないですか。
 このイラク新法に頼らず、今でもできることをきちっと政府として考え方をまとめてやるべきであって、そういうことからすると、ブーツ・オン・ザ・グラウンド、いや、アメリカから要求されたことはないというけれども、二千ブーツという話も随分聞いていますし、何かアメリカから要求されてそれにこたえるという、そういう意味では、外務大臣が先ほど国連中心主義、アメリカ中心主義ではないと言うんだけれども、今回のイラク新法そのものが、どうもアメリカから実際の自衛隊をイラク国内に入れてほしい、地上に入れてほしいという要請を踏まえてのものに見えてしようがないんです。
 私は、総理がブッシュ大統領と会談した、二人きりの会談は全く明らかにしないというんですが、ブッシュ大統領と小泉総理の間で二人だけで何か密約をしたんじゃないかという感じもするんですが、ここら辺、外務大臣、今、どういうふうにとられていますか。
川口国務大臣 昨日、総理がはっきりおっしゃいましたように、そのようなことはございません。
大畠委員 今、イギリス国内では、四十五分説、ブレア首相がどうもうそをついたんじゃないか、危機をあおって戦争を開始させる、戦争の正当化のためにでっち上げのデータを出したんじゃないかという話で議会の中では大変な論議が起こっていますし、またアメリカでも、大量破壊兵器の問題について、国会でも大変な論議を呼んでいます。
 私は、日本国内で非常に残念なのは、大義というのは、もともと日本の国の国民の大変重要なものだったんですよ。どこに大義があるか。イギリスのこの四十五分説あるいはアメリカの大量破壊兵器の問題で国連が紛糾し、アメリカ、イギリス軍が攻撃に入りましたけれども、それをいち早く日本は支持しました。もしも、もしもの仮定には答えられないかもしれないけれども、この過程で大もとが間違えていたといったら、日本の大義はどうなんでしょうか。
 もともと、この日本国内で論議すべきは、事実を事実として明らかにする、結果だけじゃなくて、過程についても大変重要なんです。総理はきのう、そのことについてはもう済んでしまったことだがというような趣旨の発言をされておりましたが、結果だけじゃなくて過程も、日本という国は大事にする国だったんですよ。
 したがって、私は、外務大臣が、今そんな約束はしていないという話をされていましたが、いずれこれは出てまいりますから、先ほどの中曽根さんの話じゃありませんが、政治家は歴史上の被告席にいる、必ず明らかになってきますから、そのときに日本の国の政府がとった姿勢、方針というのが、大義に照らして、あるいは正義に照らして間違えていたということになりますと、これは大変なことになりますよ。そのことはぜひ、外務省としても、外交問題の重要な部分でありますブッシュあるいは小泉総理の対談といいますか会談の状況については、通り一遍ではなく、深く注視をし事実関係を明らかにするように努力をするべきだと私は思います。
 そこで、具体的な話についてちょっとお伺いしたいと思いますが、アメリカでは、テロは戦争であるということをブッシュ大統領が明言しました。日本国内においては、日本の政府はテロというものをどういうふうに考えているか、あるいはゲリラ戦というものをどういうふうにとらえているのか、このことについて政府の考え方をお伺いします。
川口国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、ブッシュ大統領が九月の十一日の同時多発テロを受けて、国際テロとの闘いを戦争と言われたということはあったと聞いております。そしてこれは、そのような米国に起こったようなテロが戦争の被害にも匹敵をするような大きなかつ悲惨な被害を招いているということで、国際テロのネットワークとの闘いにおいて、外交、軍事、財政、経済等のあらゆる分野で長期的な対策を行う必要がある、そういう意味で言われた、すなわち、政治的な意味でその言葉を使われたということであると思います。
 それで、パウエル長官がその後で発言をしていらっしゃいまして、これは法的な意味での戦争ではない、米国及び国際社会のエネルギーを駆り立てるために戦争と言っているんだというふうにもおっしゃっているわけです。
 それで、我が国としての認識ですけれども、米国であったようなテロ、これは安保理の決議の一三六八にも述べられていますけれども、国際の平和及び安全に対する脅威であるというふうに認識をしております。そのような認識を持つからこそ、我が国として、テロ対策特措法、これを通していただいて、これに基づいて支援をしているということでございますし、情報収集ですとか資金の対策ですとか、そして途上国におけるテロ対処能力向上のためのキャパシティービルディングですとか、そういった面でほかの国とも協力連携をしながら真剣に取り組んでいる、そういう認識を持っております。
 それから、ゲリラ戦についてどういう認識を持っているかということをおっしゃいましたけれども、ゲリラ戦がどのようなものであるか、個別具体的にいろいろあるかと思いますけれども、まず、戦争という意味でいいますと、戦争という概念、それは法的にいいますと、これは、伝統的な国際法、これにおいて、国際紛争を解決する最後の手段として、二つの国が対等の立場で、国権の発動として武力を行使するということを意味しているということです。これは伝統的な国際法における考え方であったわけでございます。そういう意味で、現在、国連憲章にもありますように、武力行使というのは、自衛権の行使か、あるいは安保理の決議によるということになっておりますので、伝統的な国際法に基づく戦争というのは法的には現在はないわけでございます。
 そういう意味で、抵抗運動という、いわゆるゲリラ運動、ゲリラですね、俗にはゲリラ戦争とも言われますけれども、これがそういう戦争に当たるというふうには考えていないということです。
大畠委員 私がなぜこういう話を伺ったかというと、きのう防衛庁長官が、憲法上の制約があるから戦争行為に協力はしない、あるいは、非戦闘地域に派遣するということを何度もおっしゃっていましたけれども、今外務大臣からお話があったように、世界の軍事力の半分ぐらいをアメリカが握っている中で、国対国の戦争というのは非常に考えにくい状況に至っています。
 したがって、中東でありますように、ゲリラ戦等々が発生するということが現実的には多く考えられるわけでありますが、イラク国内における戦闘行為あるいは主要な戦闘行為は終わったというきのうの話でありますが、私は、これからイラク国内で起こるというのはゲリラ戦的なものだと思う。
 そこで、そのことについてちょっとお伺いしたいのは、防衛庁長官に御認識をいただきたいんですが、約四十万人というイラク兵が忽然と消えたというんですね。要するに、武器を持って消えたと言われているんですよ。降伏したわけではない。したがって、終戦といいますか、イラク政府が負けたと言っているわけじゃないし、忽然と武器を持ってそのまま消えてしまったというのがどうもイラク国内の現状だというふうなことをイラクに精通している方から言われたんですね。
 したがって、イラク国内を走る米英の戦車も、非常に危険な地域はストップしないで走行している。そうじゃないと、とまった場合にはロケット砲等でねらわれる可能性があるから、こういうふうな話も聞いているわけであります。
 こういう状況の中で、戦闘地域、非戦闘地域とを区別すること自体が難しいし、きのうは、いや、きちんと区別できるんです、非戦闘地域にしか自衛隊は派遣しませんという話なんですが、そこら辺の防衛庁長官の御認識が私は誤っているんじゃないかと思うんですよ。それは、防衛庁長官はこの委員会の中でそう言い切りますが、実際に派遣される自衛隊にとってはたまったものじゃないですね。
 防衛庁長官が明確に戦闘地域と非戦闘地域を分けられるという根拠をもう一度お伺いしたいと思います。
石破国務大臣 きょうの冒頭に杉浦委員から現地の視察の御報告がありました。また、斉藤委員からもあったわけであります。治安状況がどうなのかということは、私は、まさしく昨日帰ってこられた方々、そして現地の治安の責任を負っておられるその責任の衝にある方々のお話というものが一番確かなのだろうと思っています。
 現地でごらんになって、まさしく千五百キロも踏破をされて、そしてそれぞれの責任者の方々に会って、この国会という権威のある場で責任を持ってお話しになった。そういうようなものが私は一つの判断材料になるというふうに考えております。
 そして、その上で申し上げますが、きのうから繰り返して申し上げておりますとおり、なぜ戦闘地域と非戦闘地域を分けるのか。それは、戦闘行為が行われていないところでなければいけない。なぜならば、戦闘行為とは何なのかといえば、先生御案内のとおり、今までずっと政府が解釈をとっておりますのは、戦闘行為とは、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」であります。では、国際的な武力紛争とは何かといえば、国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争い、それが戦闘地域であります。
 なぜでは我々がそういうふうに定義をしておる戦闘地域に行けるなんぞということがあり得るのか。我々日本国の自衛隊を派遣する場合に、このように戦闘地域ということを定義してきたわけです。これは従来ずっと維持をしてきた考え方です。その戦闘地域に派遣をしてはならない、非戦闘地域でなければならないというのは、これは憲法上当然の要請であって、非戦闘地域に限るんだということは、私は、自衛隊が武力行使をしに行くのではないということをきちんと担保するために法的にも書いておかねばならないことだ。それが、決して日本は武力を海外において行使しないという憲法の趣旨を明確にすることになるというふうに考えておるのであります。ですから、非戦闘地域でなければ活動を行ってはならない、これは当然のことであります。
 そうしますと、ではそんな地域は分けられるのかいということでございますが、国または国に準ずる者が、そういう組織が、一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争いであるかどうか。
 それは、きのう野盗のたぐいというお話をいたしました。あるいは山賊、強盗のたぐいというお話をいたしました。
 フセイン政権というものが、こんなことはあってはならないことですが、いざとなったら国民よ銃を持って戦えと言って、市民一人一人にわたるまで銃を持たせて、こんなことは本来許されざることなのです。しかし、それが、銃を持っている、刀狩りにも応じない。あるいは、解散してしまった軍の人たちが、もう仕事がないということで、先ほど斉藤委員から略奪の写真のお話がございました、そういうところにいる。では、それは戦闘行為なのかいということですね。そういう人たちはお金がない、それで略奪を行っている。それは、憲法上に基づく、戦闘地域、非戦闘地域というのを分けた場合に、それを戦闘地域と言ってしまったらば、これはもう、治安も何も憲法上もあったものではありません。
 何のために軍が行くか、何のために装備を持っていくか、何のために権限を与えられて行くか。それは、そういうような治安の悪い地域であっても、それはもう東京のように治安がよくて、夜お嬢さんが一人で歩けるような、そんな状態だとは思いません、しかし、そこにおいて、きちんとした権限、きちんとした武器、それを持っていって危険を回避する、そうであらばこそ、どの国も、自己完結ということに加えて、そういうような能力、装備を持った軍隊を派遣して、イラクの治安というものを早く復興する、そのために国際社会がやっているのだと私は考えます。
 そういう観点からいたしまして、戦闘地域、非戦闘地域というものを峻別することは可能でありますし、そうでなければならないものだと私は考えております。
大畠委員 それでは、現在におけるイラク国内の戦闘地域と非戦闘地域というのは、具体的にどういう状況に区分けできますか。
石破国務大臣 それは、今政府の調査団、そしてまた与党の調査団から御報告がありましたように、イラクの北部あるいはバグダッド南部、中部、そういう地域において、それぞれ差はございます。それは、私どもが基本計画において定める部分、そしてまた、あるいは実施要項において定める部分、そこにおいてそれぞれ検討されることになります。
 今日ただいま、ここが非戦闘地域であり、今日ただいま、こことここが安全ですということを申し上げる状況にはございません。これは、先ほど来お話があるように、与党の方からも御指摘がありましたが、本当にきちんとした調査団を出せ、そして、まさしく先生がおっしゃるように、おまえが行くわけじゃないだろう、確かにそうです。実際に行って活動を行う人たち、それは補給なのかもしれない、輸送なのかもしれない、給水なのかもしれない、それを行う人たちが、自分たちの目で見てどうなのかということ、そしてそのときの状況がどうなのかということを判断して、ここはそういう地域ですということを決めることになるでありましょう。そうあるべきものだと私は思います。
大畠委員 現時点ではよく調査していないので、戦闘地域、非戦闘地域というものを明確に分けることはできないということでありますが、最近のニュースあるいは情報等々を見ますと、もちろん、金目のものをねらった略奪、強盗に加え、銃や対戦車ロケット砲で武装したイラク人が米兵を襲撃するケースも目立ち始めているというのが実態で、戦闘地域、非戦闘地域というものを分けたとしても、そこに派遣した自衛隊の隊員が襲われないという保証は全くないわけですね。外務大臣は、いや、そんなことは戦闘行動にはなりませんからということをきのう明言されていましたが、それは余りにも無責任な話なんです。非戦闘地域だからといってねらわれないという保証なんかないんです。
 私は、ここで具体的に、では、自衛隊というのを派遣して、主な任務、一つか二つ挙げるとしたら、何をやろうとしているんですか。
石破国務大臣 それは、先ほどもお答えをしたとおりでございます。今の時点で、これを行うということは確定はしておりません。
 それは、私どもは何でもいいんです、私たちはできることはこれこれですといって、ニーズに合致するかどうかわからないけれども、とにかく行くことに意義があるなんぞという無責任なことは、私どもは考えておりません。そして、自衛官の安全というものも考えなければなりません。憲法の要請から非戦闘地域というものも選ばなければいけません。そこにおいてどんなニーズがあるかということは、先ほど、例えば与党の調査団の方々が給水ということをおっしゃいました。確かに水というニーズはあるでしょう。そしてまた、航空輸送というニーズもあるでしょう。
 しかし、それが実際に非戦闘地域であるのか、そして、そこにおいて自衛官の安全は確保されるのか、本当に国民の、国民のというのはイラク国民ですが、イラク国民のニーズに合致をしたものであるのか。私どもは、そういうものをきちんとして自衛隊を派遣するならするということであります。とにかく行けばいいとか、どんな地域だかわからないけれども出せばいいとか、アメリカに対するアリバイづくりだとか、そのようなことは私は全く当たらない。そんなことであれば、こんなにきちんと調査をし、こんなにきちんと議論をするはずがない、私はそう思っています。
大畠委員 給水または給油、輸送、そういうふうなものが一つ考えられるという話でございますが、私は、例えば先ほど言いましたように、イラク兵、約四十万人と言われたイラク兵が忽然と消えた、武器を持って消えている。国内のどこかに潜んでいるのだと思いますが、これは、彼らからすれば、米英軍は占領軍である、その米英軍を支援する自衛隊、フォースを派遣した日本、そして派遣されたフォースは兵と見ますよ、日本国の憲法がどうのこうのというのは全くゲリラ兵にとっては関係ない話ですから。
 したがって、米英軍を支援する補給路を断つ、あるいは補給路をねらう、そういうのは戦略上当然になってきますね。したがって、非戦闘地域に自衛隊を派遣したとしても、外務大臣がおっしゃるように、そういう戦闘行為が行われることではないんですからという話だけでは済まないことになると私は思いますね。
 そこで、今の防衛庁長官のお話の水、油あるいは輸送、まあ輸送というのは空と飛行場でありますが、いずれにしても、給油というものにターゲットを絞った場合に、その補給路を断つためにゲリラ活動に襲われた場合、自衛隊はどういう行動をとったらいいのか。
 それから、きのうも論議がありましたが、米英軍の指揮下には入らないということを明言されましたね。これも、憲法上からそういう言葉で定義づけているわけでありますが、米英軍の指揮下に入らないで、そして単独で行動する。そこが任務を与えられてある任務をしたとしても、そこをゲリラが急襲をしたということを想定した場合に、どういう形で対応を自衛隊隊員はしたらいいのか。
 このことについて、防衛庁長官の基本的な概念をお答え願います。
石破国務大臣 四十万人が忽然と消えて、それが武器を持って今や遅しと待っているというようなことは、私はないのだろうと思います。これは、私どもからも、制服の自衛官が与党の調査団にも随行しておりますし、その前にも行っております。防衛庁からも小島長官政務官が行っております。みんな軍事のプロが行っておるんです。
 みんな、本当にそこでどうやって治安を維持し、本当に命がけでそこでやっている人たちがいるんです。四十万もの人間が武器を持って本当に忽然と消え、潜んでいるということであるとすれば、そういう報告が必ずあるはずだと私は思っています。私は、そういうような現状が、本当に四十万が忽然と銃を持って消え、米英軍をねらっている、そういうような状況が今あるというふうな認識は持っておりません。
 その上で申し上げるといたしますと、確かに、補給というものは必要になる。一カ所で浄水を行う、水をきれいにする。でも、それをどなたかに配るということのために浄水をやるわけですから、では、その場で襲われたらどうなるのかというお話ですが、これは、法案第十七条並びに自衛隊法九十五条、これに記してあるとおりのことでございます。
 したがいまして、正当防衛、緊急避難ということにおいて、自己を守るために武器を使用することができるということが十七条に書いてございます。そして、自衛隊法第九十五条というのは武器等防護というものが定めてあるわけでございます。そこに定められた権限に従いまして自衛官は武器を使用する、そういうことに相なります。それは、自分を守るためということでありますとするならば、それがたとえ野盗のたぐいであろうが、あるいはそうでなかろうが、それは自分を守るためということであれば同様のことでございます。
大畠委員 そのときに、他の国の軍と日本の自衛隊は装備等々も異なるわけですね。それはなぜかというと、日本国憲法等の縛りの関係から非常に装備が制限されている。言ってみれば、他の国の軍の自由度に比べて非常に自由度が少ない、あるいは反撃する能力等でも制限されている。それでもなおかつ派遣しなければならない。そこら辺が私はどうもよく理解できないんです。
 先ほどの防衛庁長官、外務大臣の話を聞く限り、では、なぜフランスやドイツやロシアや中国、あの湾岸戦争のときに軍を派遣した国々が軍の派遣を控えているのか。日本は今急ごしらえに法律をつくって、何としても自衛隊をイラク本土に地上軍として派遣しなければならないんだというんだけれども、頑張っているわけでありますけれども、どうもそこら辺が、防衛庁長官、あなたの責任で行くわけになるでしょうけれども、本当に長官は、そういう状況の中で活動しなければならない自衛隊隊員の気持ちというか、あるいは自衛隊隊員の立場というもの、そういうのを考えておっしゃっているんですか。
石破国務大臣 それは、そういう御批判をいただくとすれば、一にかかって私の不徳のいたすところであります。
 ただ、申し上げておきますが、自衛官の立場がわからなくて防衛庁長官なんかやる人間はいないと思います。今まで歴代防衛庁長官やっていますが、少なくとも、先生方と同じように、自衛官を思う気持ちがなくてどうして自衛隊のトップであります防衛庁長官が務まるか。私は、私に対します個人的な御非難は幾らでも受けますが、私自身、自衛官のことを考えないで物を決めるなどということは一回もしたことがありません。何をやる場合にも、本当に現場に行く人たち、それはトップの人たちということではなくて、人たちの意見も聞きますが、実際に行く曹クラスであり、士クラスであり、そういう人たちにどうなんだということを聞いてやります。それをやらないで自衛隊を派遣する、自衛官を派遣するなぞということは、シビリアンコントロールのあり方からいって、決してあるべきものだとは思いません。
 そうして、そこにおいて本当に犠牲が生じたとするなら、無用な犠牲が生じたとするならば、つまりそれは、十分な権限も与えず、先生がおっしゃるように十分な武器も与えず、そしてそういうようなことが発生をするというようなことがあれば、それはシビリアンコントロールは根底から崩れます。私は、そういうことは日本の民主主義においてシビリアンコントロールとして既に確立をした、少なくともそのように考えています。
 その上で申し上げますけれども、先生は自衛隊の持っていく武器に制限がある、外国は何でも持っていけるとはおっしゃいませんでしたが、外国が持っていくものと自衛隊が持っていくものと、憲法上の要請により制限があるというようなお話をなさいました。それは間違いです。そのようなことはございません。私どもが持っていく武器に法的な制限というものはございません。それはルワンダのときに、機関銃一丁二丁というお話がありました。その話がございますので、その延長線上としてそういうような議論が時々ございますけれども、これは、何を持っていって、何は持ってはいけないということが法によって決まっているものではございません。
 つまり現地の情勢に応じて、相手が何を持っているのか、それがけん銃なのかあるいは小銃なのかあるいは携帯用の武器であるのか、それに合わせて、少なくとも自分を守るために必要な武器は何なのかということを考えて持っていくわけでございます。それは何に制限があるというものではなくて、しかしながら、余りに非常識なものを持っていくということはあり得ません。つまり、向こうが小銃程度しか持っていない、あるいは向こうがけん銃程度しか持っていない、それに対して物すごい装備を持った装甲車を出すというようなことになれば、何を持っていったっていいとは言いながら、それはやはり常識の範囲というものがございましょう。それは、私どもは他国に比べて制限されたものしか持っていけないんだ、自衛隊は、日本の国は制限されたものしか持たせないんだということは、それは誤りであります。
大畠委員 どんな武器を持っていくかというのは、常識論を持ち出して、常識の範囲内であるというのは、そんなのは全くおかしいと思いますよ。常識というのは一人一人違いますよ。ある人の常識はこれを持っていく、ある人の常識はこれを持っていく、全く統制がとれないじゃないですか。
 それで、今答弁があったんだけれども、私は、もう一つお伺いしたいのは、ゲリラに襲われた場合、米英軍の指揮下には入らないという話になりますと、そうすると、ゲリラに襲われた隊はどことコンタクトして対応をしなければならないのか、それをちょっとお伺いしたい。防衛庁長官が指揮官になるわけですか。だれが指揮官なんですか、この最高指揮官は。
石破国務大臣 常識と申し上げましたのは、それは世間の常識ということで申し上げているのではありません。軍事常識ということで申し上げているんです。
 それは、いいですか、軍事常識というのは、実際にPKOに行った人たち、あるいは今回行く人たち、それにはどういう地域でどういうものを持っていけばいいか、まさしく自分たちの命をかけて行く人なんです。自分たちの命をかけて行く人たちが、自分たちの身を守るために何を持っていけばいいか、現地でどのようなものが使われている、どんな状況である、そのために自分たちの身を守るためには何を持っていったらいいか、それは実際に行く人間たちが一番よく知っていることなんです。そして、それが、先ほど申し上げましたように、銃しか持っていない、こちらが、それじゃ装甲車、それは常識が違うでしょうということを申し上げている。
 軍事常識というのは、実際に行く人たちが自分たちの身を守る、そしてそれは、与えられた任務をきちんと完遂する、そのために何が必要なのかという意味において常識と言っているのです。我々が考えておる世間の常識とか、そういうようないいかげんなことを私は申し上げているのではありません。そして、持っていく武器の種類というものに制限がない、しかしながら非常識なものは持っていけないというのは、そういう意味であります。
 そしてまた、誘拐された場合のことをおっしゃっておられるのかと思います。(大畠委員「違う」と呼ぶ)どういう場合ですか。(大畠委員「指揮権」と呼ぶ)指揮系統ですか。指揮系統というのは、米英軍の指揮系統には入りません。それは、米英軍であれオーストラリア軍であれ、あるいはどこの軍であれ、そこでやる場合には、調整を行うということになります。アメリカやイギリスの指揮下に入って行うわけではありませんが、勝手にそれぞれがばらばらのことをやりますとミッションとして全体がおかしなことになりますので、当然、調整は行うということに相なります。
大畠委員 そのときの、いわゆる派遣された自衛隊の最高指揮官というのはだれになるんですかということを聞いたんです。
石破国務大臣 最高指揮官という言葉は、いろいろと、自衛隊的には内閣総理大臣ということになりますので。
 その場合に、最高位のということで申し上げれば、現場の指揮官ということになります。それは派遣されました隊の指揮官ということになりましょうし、最高位ということであれば、そういうような考え方になろうかと思います。
 しかしそれは、何をどのように派遣をするか、どのような部隊を編成するか、それは現時点においては全く決まっておりませんので、この者がその場における最高指揮官でありますということは編成される部隊によって異なりますので、一概なお答えは不可能です。
大畠委員 現場の指揮官が非常に困ったときに、やはりどこか相談するところがあると思うんですね、それは完結型自衛隊とはいいながら。こっちの方も、日本ももしもやるのであれば、二十四時間態勢できちっと現地の自衛隊と連絡がとれる態勢は当然にとらなければなりませんし、私はそういう態勢も含めて考えなければならないと思うんです。
 もう時間が参りましたのでこれで質問は終わりますが、私は今回この質問をさせていただいて非常に残念なのは、アメリカ、イギリスでは、議会において、いわゆる大義という問題が非常に大きくなりました。結果ではなく大義なんですね。途中経過も含めて、事実は何だったかということをしっかりと論議して、大義というものを、道筋を明らかにしようとして努力しているわけですね。
 ところが、日本の場合には、社会的な風潮もあるかもしれない、結果がよければいいじゃないかという社会的な風潮が強まっている傾向もあるかもしれないけれども、ここまで来ちゃったんだからしようがないだろう、アメリカで約束したんだから実際に自衛隊をイラクの本土に、ブーツ・オン・ザ・グラウンドでやらなきゃだめなんだという、どうも、目的と手段といいますか、大義がごちゃまぜになっていまして、国民にとっては、今回のイラク新法の内容あるいはなぜ自衛隊を送らなければならないか、そこが非常に不鮮明なままの法案になっているということを指摘して、私の質問を終わります。
浅野委員長代理 次に、桑原豊君。
桑原委員 私は、午前中と午後と二つに分かれておりまして、まず午前中には、イラク戦争というものをしっかり検証していくという立場でこの問題について質問したいと思うんですが、その前に、今大畠議員と石破長官のやりとりを聞いておりまして、派遣された自衛隊の武器使用の基準、軍事技術による考え方で決めていくんだ、こういうふうに石破長官はおっしゃられたわけですけれども、私は、やはり、自衛隊が行くところがなぜ安全でなければならないのかという議論なども含めて、憲法の考え方に基づいて、携行する武器の内容というものは大きな枠がはめられていくと思うんですね。そういうことがあるから、行くところがどこなのかということについても大変な議論をするわけですし、武力の行使に当たってはならないという憲法の考え方も当然出てくるわけで、軍事技術を基本にして決めるんだ、そういう考え方というのはどうも納得できませんが、もう一度ちょっとお答えください。
石破国務大臣 私の発音が悪くてごめんなさい。軍事常識というふうに申し上げました。技術ではございません。
 そして、日本の国が海外において武力の行使をしてはならない、当然のことでございます。そして、PKO法の審議のときに武器の使用と武力の行使という議論をさんざんいたしました。当然、憲法の要請によって武力の行使をしてはならない、当然のことでございます。
 他方、仮に法律が成立をしたとして、今回派遣される自衛官は非戦闘地域に参ります。そしてまた、防衛庁長官はその安全を確保する義務というものを負っております。しかし、不測の事態というものは排除されない。どんなに非戦闘地域であり、どんなに安全確保義務をかけたとしても、不測の事態というのは考えられる、排除されない。それは日本の国の中においても同じです。我々日本の国の中においても不測の事態があるということと一緒のことです。しかし、それが武器を持っている。日本みたいに武器を持っていない国との違いです。
 武器を持っている、それはいろいろなものを持っている。そして、その場合に何を持っていけば身の安全が保たれるか。あくまで個人の安全を保つために、法案の十七条というのはそういうことが書いてあります。そしてまた、自衛隊法九十五条の武器等防護というものも、正当防衛、緊急避難という場合でなければ危害を加えてはならない、こう書いてあるわけでございます。これは法律によってそのように決まっております。憲法によって武力の行使をしてはならないということが求められ、そして、この法律によっても、自衛隊法九十五条によっても、使えるやり方、態様というものは決まっております。
 ただ、相手が何を持っているかということに合わせてこちらも持っていくものを合わせていかなければ、それは身を守ることができないでしょう。幾ら正当防衛、緊急避難で撃てるというふうにいたしましても、相手が非常に強力なものを持っておって、こっちがそれに比べて小さなものを持っておれば、幾ら正当防衛、緊急避難の場合は撃てるといいましても、身の安全を保つことはできないでしょう。そういうことで申し上げておるのであります。どうすれば安全に身を守ることができるかということであり、武力の行使ということにつながらないのは当然のことでございます。
桑原委員 今の軍事常識という考え方でいきますと、私は、まさに、万が一何を持っているかわからないという、際限のないものが許されるような考え方につながっていくのではないかというふうに思います。ですから、軍事常識ということで決めるということではなしに、私は、プラス憲法の考え方、当然のことながら武力行使になってはならない、そういうことを含めて安全な地域、非戦闘地域というふうな考え方であるわけですから、そこら辺を軍事常識だけで、持っていけるんだ、軍事常識で決めるんだ、この考え方は私はどうしても納得できませんね。
石破国務大臣 何を持ってもいいということになるか、それは決してなりません。そして、そんなものを持っていって何をするんですか。そのようなものを持っていって武力行使でも行うのですか。それは、持っていかされる方こそ大迷惑であって、当然、どうすれば身を守ることができるか、個人の身を守るんです。個人の身を守るという構成が使われておるわけですよね、この法律は。現場に指揮官あるときは指揮官の命令に従いますが、どうやって個人の身を守るかというために何を持っていくかという話なのです。そのためにどうしてそのような大きなものを、先生がおっしゃいますような、際限のない、歯どめのない、そういうようなものを持っていって何の役に立つのか。
 我々は、武力の行使をしてはいけないということは、日本の民主主義のもとにある自衛隊として、本当に徹底をいたしております。そのようなものを持っていく意味合いは全く認めませんし、実際にそんなものを持っていかされる側の方こそ迷惑です。
 先ほど、自衛官の立場に立って物を考えろというお話がありました。そんなものを持っていかされる自衛官こそたまったものではありません。自分の身を守るために何を持っていけばいいかということは、銃を使う、そういうものを使っている人たちが知っている。それは、その人たちの常識です、軍人の常識というものです。
 私は文民ですから、そういうものの常識というものが、物の本で読むことはありましても、実際にそういう現場に行って、相手が例えばカラシニコフならカラシニコフを持っている、ではこちらは何を持っていくか。それは、軍の、当然身を守る知識と言ってもよろしいかもしれません。常識という言葉が仮に不適当だとおっしゃるのであれば、それは軍事知識と申し上げてもよろしいと思います。それは、行かされるという言葉を仮に使うとするならば、実際に行かされる側の、国の命令によって行く側の彼らがプロとして何を持っていくか、武力の行使に当たらず、しかしながら身を守るために何を持っていくかということです。
 そして、そんなものを持っていかねばならない、先生がおっしゃるようなとんでもないものを持っていかねばならない、そんな状況になるとしたら、それは通常は戦闘地域というものでしょう。そういうところには、そもそも派遣をするということがあり得ないのです。
 そういうことが起こったとするならば、その瞬間瞬間におきましては、現場の指揮官が、活動を一時中断する、休止する、回避する、そして中断するかどうかの判断を仰ぐということになるわけでありまして、そういうところに行くということはそもそも考えられない。そういう状況が起こったとすれば、休止し、回避し、そして中断するかどうかの指示を仰ぐ、そういうような仕掛けになっておるわけでございます。
桑原委員 いかにも何か、何でも持っていけばいい、何でもありだと私が言ったようにおっしゃっていますけれども、私はそう言ったんじゃなしに、あなたの言われた軍事常識という考え方でいくとそうなりかねませんよ、そういうふうに言ったので、これは議事録なども少し詳細に検討させていただいて、改めて議論をさせていただきたい、こういうふうに思います。
 それで、今回の戦争、イラク戦争ですけれども、アメリカの戦争目的というものが何であったのか、そして、我が国がこの戦争を支持した、その理解の仕方の中で我が国が考えた目的は何であったのか、このことをまずお聞きをしたいと思います。
 アメリカは、当初、大量破壊兵器の除去というものが、戦争をせずして、イラクを攻撃せずしてそれを除去することは不可能だ、こういうことで戦争に入ったわけですけれども、加えて、その途中からサダム・フセインの追放と政権の崩壊というものが一つの戦争目的に加わっていったんではないか、私はこういうふうに思うんですけれども、その点についてどのような理解をされているのか、これをまずお聞きしたいと思います。
    〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 アメリカが武力行使に踏み切った理由ということですけれども、これは、その後でアメリカの国連の大使が、国連に、安保理の議長あてだったと思いますが、議長に出した手紙でも明らかなように、六七八、六八七、一四四一といった安保理の決議、これのもとで、イラクにおける大量破壊兵器というのが人類あるいは世界、国際社会に対する脅威であるという認識のもとで、国連決議に基づいて行った武力行使である、そういうことであると考えております。
 先ほどアメリカは、サダム・フセインのいわゆるレジームチェンジといいますか、それが目的ではなかったのかという趣旨のことをおっしゃっていらっしゃいましたけれども、ずっと、国連において何年も、サダム・フセイン政権との間で、イラクが国連の決議を守って行動するように、六八七において決められたさまざまな条件、これに違反をしてはいけない、それを直すように、そして一四四一で最後の機会を与えられても、なおかつそれに従わなかったということがあったわけで、事実上、サダム・フセインの政権がなくなるということが、国連の一連の決議に従っていく、これを守らせるということのために必要だ、事実上重なった、そういう理解を我が国としてはしております。
桑原委員 外務大臣、日本はどう考えていたのかということ。アメリカはそういうふうな戦争目的であったと。日本はそれを支持したわけですから、どういう戦争だ、どういう攻撃だという理解でそれを支持したのか、日本の立場を少しはっきりしてください。
川口国務大臣 先ほどの繰り返しになる部分が多いんですけれども、イラクに……(桑原委員「いや、同じなら同じだと言ってください」と呼ぶ)基本的には同じことでございます。
 我が国としては、イラクが一連の国連の決議を守って行動する、その結果として問題が平和的に解決するということを望んで、そのために努力もいたしましたけれども、最終的に武力行使によってしか大量破壊兵器の脅威を取り除く道がないということが、あるいは大量破壊兵器に関するイラクに対して国際社会が持っている疑惑、これを取り除くことができないということが明らかになった時点で、我が国としては英米の武力行使を支持するという決定をしたわけでございます。
桑原委員 大量破壊兵器の存在に日本としても一つの確証を持って、この攻撃をもってしてそれを除去するんだ、そういう決意をしたということだと思いますし、それからいま一つは、結果的に重なり合ったわけですけれども、サダム・フセインの政権の交代、転覆、そういうものも同じように日本も理解して支持をした。そういうふうなことになれば、私は、大量破壊兵器が依然として出てこないのはなぜなのか、そのことについて日本としての説明がなければやはりだめだと思います。
 それから、サダム・フセインということになれば、私はこれはアメリカのやり方にも問題があったと思うんですけれども、これはやはりいわゆる内政の干渉につながっていく、そういうふうに理解をするわけですけれども、その二点についてどう考えておられますか。
川口国務大臣 大量破壊兵器に関してのイラクに対する疑惑、これは国際社会が持っている疑惑でございます。日本も、当然にそれをシェアしている。それは、決議の一四四一において全会一致で、イラクが六八七に継続的に違反をしているということは認められてきているわけです。これはまさに、大量破壊兵器に対してのイラクに対する疑惑があるということであります。我が国も、国際社会の一員として、このイラクに対する大量破壊兵器についての疑惑、これは当然に共有をしているわけでございます。
 それで、なかった場合にどうなのかということですけれども、これは、イラクが過去において国内で、あるいはイランにおいて使ったということがあるわけです。それから、現実に、国連のUNMOVIC等において、あるいはUNSCOMにおいてもそうですけれども、実際に数々の懸念が具体的に数量的にも提示をされている状況であります。それから、最後の段階でも、国連の査察団が未解決の武装解除問題について言及をしていますけれども、これは三十の分野に残された、一つはアルサムード、アッサムードですけれども、それを除いても、ほかの二十九の分野において疑惑について語っているわけでございます。
 ということで、イラクに対して大量破壊兵器に関する疑惑が存在するというのは、国際社会の一致した認識であると思います。
 そういうことでありますから、イラクにおいて今、我が国の一・二倍の国土において米英が捜索をしているということがあるわけですけれども、我が国として、大量破壊兵器が存在しなかったというふうに想定するということは非常に難しいのではないかというふうに考えております。我が国として、その捜索の状況については引き続き注視をしていきたいと思います。
 それから、おっしゃった、いわゆるサダム・フセイン政権の交代といいますか、いわゆるレジームチェンジですけれども、それについての我が国の考え方は、我が国は、大量破壊兵器のもたらす人類への脅威について、我が国自身に対する脅威だとして受けとめているわけでございます。そして、そのレジームチェンジを第一の目標にしたということは全く、アメリカにおいてもこれはないわけでございまして、先ほど言いましたように、これが事実上重なったということで我が国としても考えております。
桑原委員 アメリカは、サダム・フセインの追放はいろいろなところで、いろいろな高官がそういうふうに語っていたと私は思います。それは日本が十分に事前に知り得る立場にあったわけですし、そういう言い方は事実とは違うんではないか、こういうふうに思います。
 それから、大量破壊兵器の問題については、疑惑は国際社会みんな共有していたわけですね、これはおかしい、あるんじゃないかと。だから査察をやったわけですね。だから、その問題を疑惑というふうにとらえて査察で解明しよう、こういうふうにやっていく立場をみんなとったわけですね。ところが、日本は、よほどの確証が日本としてあったんだろうと思うんですけれども、確実にあるんだ、こういうことであの攻撃を支持したんだろうというふうに私は思うんです。
 そういう意味では、注視をしたいとか見守っていきたいとかという他人事ではなしに、日本はまさにこの大量破壊兵器、必ずあるという確証でやったということであれば、ないとしたら、日本の認識に対して、やはり日本みずからが責任をとる立場に私は当然あるというふうに思うんですけれども、その認識がどうも、注視をする、様子を見ていきたいという。そんな甘いものじゃないと思うんですけれども、どうでしょうか。戦争に支持を与えたわけですよ。
川口国務大臣 イラクの大量破壊兵器の国際社会にまつわる懸念、これをどうやって取り除くかということについて、委員は今、査察によって継続をするということをおっしゃられましたけれども、この点については、確かに意見は国際社会において分かれていたということではございましたけれども、査察によってこの問題が解決をできたかどうかということについて、この点がまさに意見が分かれたところであるわけです。委員は、そうおっしゃられたわけですから、当然に、査察を続けていれば問題は解決をしたというふうに思われたということだと思いますけれども、実際に査察をして解決をすることができたかどうか。
 そのときの状況において、イラクは、十年以上にわたって国連の決議を無視し続けたということであります。それから、さらに加えて、最後の機会を一四四一によって与えられても、なおかつ無視をし続けた。無視をし続けたという言葉はちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、基本的に従わなかった。無条件に、そして直ちに、積極的に、プロアクティブに従うべきであるという考え方が国際社会にあったわけですが、そういう行動をとらなかったということであります。それに加えて、米軍が周りに対峙をしている、存在をしている、これだけの圧力がかかって、なおかつイラクは小出しにしか対応しなかった。
 そういう状況を見たときに、査察をその後引き続いてやっていたところで、果たして、イラクが対応をしてくるということについては疑問を持たざるを得なかったということであったわけで、米英軍がそういう考え方に基づいて武力行使に踏み切ったということについて、我が国としては平和的に解決をするための努力をいたしましたけれども、私自身もいたしましたけれども、それは可能でなかったということで、我が国として支持に踏み切ったということです。この点については、今まで、当時の国会でさんざん御議論をさせていただいたところでございます。
 それで、武力行使に踏み切った後、先ほど申しましたように、米軍、英軍の調査が行われている、捜査活動が行われているわけでございまして、これについて、非常に広い国土であり、またいろいろな文書の分析等、さまざまやることがあるわけでして、我が国としてこの状況を見守っているということでございます。
桑原委員 疑惑というふうに言いながら、攻撃したわけですね。疑惑なら、普通はそれを晴らすさまざまな行動が付随するわけですけれども、私は、疑惑というふうに言いながらも、確実にあるという確証があったから恐らく攻撃に踏み切ったんだろうというふうに思うんですね。
 アメリカも、パウエル国務長官を初め、そういったことのこれが確証だ、これが証拠だということを挙げて説明をしたわけですよ、あの前に。そして今、そのことが、アメリカにおいても、イギリスにおいても、いろいろな情報操作があったのではないかとか、あるいはレポートの偽造があったとか、さまざまなことがやはり取りざたをされて厳しい批判にさらされているわけですね。
 確証があったから攻撃したわけですよ。それでは、日本は、疑惑の段階で攻撃をしたことになるんですか、やはり確証があったからあれに支持を与えたんじゃないんですか。だとすれば、私は、そのことについて、当然、出なかったら責任をとるべきだ、こういうふうに思うんですよ。どうなんですか、そこら辺は。
川口国務大臣 委員は、あったかどうかの証明を、イラクでない方の国、国際社会側がしなければいけないというふうにお考えのようでございますけれども、決議について言いますと、イラクがそれをするべきである、そういうことであったわけです。
 それで、イラクがそれをするように、国際社会としてそれはずうっと働きかけた。一四四一で最後の機会を与えて、イラクが身が潔白である、ということはすなわち持っていない、あるいは破棄をしたとしたら、その証拠を出すということで働きかけたわけです。それにもかかわらず、イラクはそれに小出しにしか応じようとしなかった。しかも、最後の最後の段階で小出しに応じたということであります。それを、先ほども申しましたけれども、米軍の武力が周りに待って、二十万に上る軍隊が周りにあって、圧力が最大限にかかっても応じなかった。私は、これ以上の圧力のかけ方が可能であると思いません。
 したがいまして、日本といたしまして、英米軍が武力の行使にやむなく踏み切ったということについて、我が国としては支援をする、平和的に解決をしたいと考えたわけですけれども、それが不可能になった時点で支援に踏み切ったということであります。
桑原委員 そういう厳しい状況の中で、やはり、最後の機会とはいえ、イラクがそれなりに、小出しという表現をされましたけれども、それまでと違う対応をしてきた、さらに、国連のUNMOVICもあるいはIAEAもさらなる査察の継続ということを考え方として打ち出していたわけですから、そういう状況の中で、主要な国々の中でも、さらに査察を継続しよう、こういう考え方があったわけですから、私は、そこで日本としてのしっかりした判断ができなかったと非常に残念に思います。
 これに余り時間をとられてもあれなんですけれども、さて、この戦争を、大臣は、国際法上どういう位置づけの戦争だというふうに規定をされますか。
 アメリカのブッシュ大統領は、宣戦布告的な演説の中では、ある意味では、大量破壊兵器がテロ集団に渡って、さらにアメリカが攻撃されるような事態になるならば、自衛のためにもそれは許されないんだ、こういうような趣旨で、自衛戦争のような言い方もしております。その自衛というのも、やられてやり返すという自衛というよりも、むしろ、ブッシュ・ドクトリン、いわゆる予防のための先制行動、先制攻撃、そうしたものが許されるというような考え方を前提にした、そういう考え方を表明しております。
 しかし、一方では、これはどうも、集団的な安全保障、そういう考え方に基づく戦争ではないのか、こういうような意見もございます。
 しかし、私は、最終局面ではこの戦争は国際社会全体の合意、国連の決議を経ることができなかったわけですから、非常にそういう点では問題がある、こういうふうに思います。
 では、侵略戦争だったのか、あるいは単なる、何かよくわけのわからぬ国際紛争だったのか、いろいろなとり方があると思いますが、この戦争は、一体、国際法上どういう位置づけをされる戦争なんでしょうか。
川口国務大臣 これは、米国がきちんと説明をしておりますように、国連の憲章第七章のもとで採択をされました安保理決議の六七八、六八七、一四四一、これを含む関連の安保理決議のもとで行われた戦争、戦争といいますか武力行使であるということでございまして、伝統的な意味での戦争には当たらないということでございます。
桑原委員 時間が参りましたから午前中はこれでやめたいと思いますけれども、引き続き、午後、よろしくお願いいたします。
高村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。桑原豊君。
桑原委員 それでは、引き続き質問させていただきます。
 先ほど外務大臣の方から、今回のイラクへの武力行使、これは国連の決議、例えば六八七、六七八あるいは一四四一、そういった決議を踏まえているというお話がございましたけれども、アメリカがあの武力行使に及ぶぎりぎりの段階で、国際社会の一致した、そういう決議を前提にということで、決議案をつくって、いろいろと協議をしたけれども、結局は不調に終わったわけですね。それは、決議案としては提案をされなかったと思いますけれども。
 結局、安保理の拒否権を持った国々を中心に、アメリカのこの武力行使は、最終的には国際社会の一致した後押しを得ることなく行われた、こういうふうに私は認識をしておるわけですけれども、そういう認識でよろしいでしょうか。
川口国務大臣 最後の段階で、立場といいますか、その物事の進め方について二つに意見が分かれたということは事実あったと思います。ただ、イラクにおける大量破壊兵器に関する懸念、これについては国際社会が一致をしていたということで、これは間違いがないところです。
 それで、新決議案については、もしこれが成立をしていましたら、イラクに対して、問題であるということを一致したメッセージとして送ることができ、イラクに対して強力な働きかけになったという意味で、これが合意できなかったというのは我が国としては非常に残念に思っていますけれども、ただ、それがなかったからといって、法的に国際社会としてイラクに対しての武力行使が問題があるということではない。それは、六七八、六八七、一四四一において、これは適正であるといいますか、正当化されるということが、我が国の考え方であり、また国際社会としての見方であると思います。
桑原委員 何か大変おかしな言い方をされておるようですけれども、結局、最終的にはこの武力行使は国際社会の一致した認識のもとに行われたわけじゃないことだけははっきりしているわけですよ。
 問題は、そうであったかどうかということを私が聞いているわけで、例えば、フランスや中国やロシアなどは、大臣がおっしゃったような国連決議を前提にして武力行使にまで踏み切るということをだれも認めていないわけですね。そういうことでありますから、最終的にはこの戦争は国際社会の一致した認識のもとで行われた武力行使ではないということははっきりしているんじゃないですか。それに異議があるというのは事実に反するわけじゃないでしょうか。どうですか。
川口国務大臣 先ほど申し上げたことは、国際社会として、最後の段階で、どのような方法によってイラクに大量破壊兵器の脅威、それを対応させるかという方法論において考え方が違ったということであって、イラクの大量破壊兵器の問題に国際社会として対応しなければいけない、これは一致をしていた。これは、例えば一四四一が全会一致で合意をされたということからも明らかであるわけです。
 それで、合意されなかった新しい決議、合意されなかったといいますか、日本が望んでいた新しい決議はできなかったわけですけれども、この決議の性格は政治的なものであって、国際法上からいって、これがなければアメリカのやったことが国際法上不法である、正しくないということでは全くないということであります。まさに、政治的に新しい決議があれば国際社会が一致してイラクに対して迫ることができるという意味で強力であったという意味で、我が国としてはそれを欲していたわけですし、そういう意味でできなかったのは残念ですけれども、この性格は政治的なものであって、国際法上、武力行使をするに当たって必要なものではない、そういうことであります。
桑原委員 私は大変な詭弁だと思いますね。この問題についてこれ以上議論は深入りはいたしませんけれども、やはり、あの問題の焦点は、最終的に武力行使に踏み切るということについて国際社会は一致しなかったということが眼目であって、お述べになられた決議の中にそういうものの意味が込められていたなどという、そういうことが問題になっているわけじゃないんですよ。最終的に武力行使をするかしないかというのは、これは問題の解決の仕方として大変な相違があるわけです。行って来るほど話は違うわけですね。そこで意見が違ったということは明らかだということを改めて私は申し上げておきたいと思います。
 そういう意味では、国際社会の認知を受けなかった、ある意味では、国際法上、違法性の強い、その上に、大量破壊兵器というその存在の大義というものがいまだに証明をされていない、そういう戦争であった。そして、なおかつ、日本の立場でいうならば、大量破壊兵器の問題についても、日本独自で確証を持ってあの戦争に支持を与えたわけではないわけですね。アメリカがそう言っていた、そういうことを前提にして認知を与えたわけですから、そういう意味では、私は、大変無責任のそしりも免れない、そういう支持であったというふうに理解をしておきたいと思います。
 さて、次に、復興問題について質問をさせていただきたいと思います。
 日本も、あの戦争に敗れて、大変な思いをして今日に至ったわけであります。日本の復興の過程、私は戦後すぐに生まれたものですから、そこら辺は、いろいろな思い出はありますけれども、つぶさにわかりませんが、大変な歴史をたどってきたと思います。
 復興のあり方というもの、復興にどういう支援体制がとられたかということ、そのことが今日の日本というものを根本で規定をしているというほどに、何十年あるいは一世紀にわたってこの復興のあり方、内容というものが大きな影響を及ぼすわけでありますから、私は、この復興というものは大変な事業だ、日本の例をとってみてもそういうふうに思うわけであります。
 そこで、まず、アメリカがこのイラク国家というものをどのように再建して、どういう国家像を描いているのか、再建されたイラクというものがどうあってほしい、どういう国家であってほしいというふうに思い描いているのかということが一つと、これは、日本の立場からそれをどう見ているのか、こういうことになろうかと思いますし、日本自身が再建イラクというものをどういう国家であってほしいと願っているのか、そういうふうな点についての思いがあればお聞かせをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
福田国務大臣 今後、復興に向けて、イラク自身が独立国家として立ち上がるという、その日がなるべく早く来るように、我々、国際社会の一員として協力をしていかなければいけない。それは、目的は何かといったら、やはり中東地域の安定だというふうに思います。平和と安定、このことが国際社会の中で求められていることであり、なおかつ我が国にとっても非常に重要なことである、そういうことでございます。ですから、そういう意味でいいますれば、これは我が国の国益にも関係することである、そのために、独立に向けて具体的な歩みを進められるようにいろいろな支援をしていくということが大事だと思います。
 具体的なことは、外務大臣から答弁をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 我が国の復興の過程を考えてみても、一番大事なことは、我が国の国民がどのような日本をつくりたかったか、そして、そのためにいかに努力をしたかということであったと思います。そういう意味で、イラク人のイラク人のための国家の建設ということが非常に重要であると考えております。そして、それがまたアメリカが考えていることであると私は承知をしています。
 アメリカは、大量破壊兵器の脅威のない民主的なイラクということを言っているわけでして、それを目的としてイラクの復興に今努力をしているわけですけれども、先ほど与党の調査団の御報告にもありましたけれども、七月の中旬に政治評議会、そして憲法会議を発足させるということは、イラク暫定行政機構を発足させて、その中に政治評議会とそれから憲法会議を置くということでございますけれども、そうして、その後で、イラク国民のイラク国民によるイラク国民のための政府を構築していく、これがアメリカ政府の考え方であると思います。
 それで、我が国としては、決議の一四八三、これに言及をされています暫定行政機構の設立を初めといたします政治プロセスを早期に推進をしていくということが非常に大事であると考えております。再建されるイラクが周りの国と友好裏な関係を持って、そして共存をして、大量破壊兵器の危険のない国家として、イラク人自身の手によって建設をされるべきだというふうに考えております。
 先ほど官房長官もおっしゃいましたように、イラクが立派な安定的な国家として発展をすることが、我が国がずっと伝統的に持っているイラクと我が国の関係、そして、中東の和平あるいは中東が平和であるということにおける我が国の国益、これにかなうものであると思います。
桑原委員 CPAのブレマー文民行政官は、七月の中旬にもイラク人から成る政治評議会を立ち上げると。しかし、それはアメリカ側からの人選だ、こういうふうなことで、シーア派のイラク・イスラム最高評議会ですか、その皆さんは、それについて、イラク人にも選ばせろ、こういうような主張をされているようです。私は、やはり、今おっしゃられたイラク人の手によるイラク人のための復興、こういう暫定政治機構を本当に早く立ち上げるということが大切だと思うんで、その面で日本のノウハウというのは私はいろいろあるだろうと思うんで、ぜひ貢献をしていただきたいというふうに思います。
 加えて、小泉総理の答弁の中にもございましたけれども、いわゆるアラブ世界における、イスラム世界におけるイラク復興のあり方といいましょうか、ぜひ、さまざまな復興策の中で、アラブ諸国が果たす役割というものを本当にしっかりしたものに打ち出していく必要があるんではないか。アラブ世界の連携の中でイラクが復興されていくという姿が、将来的な中東の力のバランス、いろいろなことを考えても、私は、安定と和平につながっていく、こういうふうに思いますので、アラブ世界の関与というものについても日本が特段の力を尽くす必要があるんではないか、こういうふうに思います。
 その点について具体策、日本として今こんなことを考えている、こんなことをやりたい、そういうことがあったら出していただきたいと思います。
川口国務大臣 委員の今おっしゃられたことは、私ども、全くそのように思っています。重要なことだと考えております。
 それで、幾つか具体的なことはやっております。例えば、復旧に際しまして、ヨルダンあるいはエジプトのNGOの人たちと一緒になって医療面での支援を行うというようなプログラムも考えております。それから、先般、総理がエジプトに行かれた折に、それからサウジにも行かれた折に、この話について、イラクと日本の間でいろいろな話し合いをしていく場を立ち上げましょうということで、今その準備が最終段階にかかっておりますけれども、そういった日本と周辺のアラブの中でも重要な国々と対話をしながら、イラクの問題も一緒に考えていくということであると思います。そういうことは具体的に手をつけております。
 それからさらに、いろいろな、今、茂木副大臣が中東和平について議論をする場に行っていますけれども、日本として、中東和平のプロセスにも積極的に対応をしております。その取り組みを通じて、それはイラクの平和的な復興、これにもつながる動きであるというふうに考えております。
桑原委員 さて最後に、自衛隊の派遣の問題でお伺いしたいと思います。
 先ほど来議論をしてきたように、この戦争は国際法に照らして大変問題が多い、加えて大義を今のところ欠いている。そういう戦争を遂行した米軍の諸活動、たとえ今、治安維持に当たっている、こういうふうに言っても、イラク全土は大変危険な状態にある、こういう状況の中で、この米軍等を日本の自衛隊を派遣して支援していく、そういう大義は成り立たない、こういうふうに私は思っております。
 そういう前提でお聞きをしたいと思いますが、一つは、先ほど来の議論にもございましたが、イラクの全土、今どういう状態にあるのか。国際紛争地としての状況は一応おさまっているというふうに見ているのか、あるいは、そういう状況にはまだ至っていない、こういうふうに見ているのか、まず、イラク全土の状況について基本的な認識というものをお聞きしたいと思います。
新藤大臣政務官 きのう帰ってまいりましたので、私の方から御説明させていただきたいというふうに思います。
 私ども、二十日から、杉浦委員を団長にいたしまして、そして先ほど、午前中御質問されました公明党の斉藤委員、また小島防衛庁政務官、さらには岩屋議員等々、衆参あわせて政府・与党調査団として行ってまいりました。そして、いろいろな方々とお会いをいたしましたが、その中で、関係者が……(発言する者あり)政府・与党です。(発言する者あり)ですから、政務官と両方でやりました。
浅野委員長代理 場外発言にかかわりなく、答弁してください。
新藤大臣政務官 それで、イラクにおいては、もはや戦闘は終了している、しかし旧政権の勢力が散発的な襲撃を行っている状態だ、しかし組織的、計画的な攻撃は見られていない、こういう状況でございます。
桑原委員 そうしますと、戦闘が一応終了しているということになると、イラク全土は非戦闘地域というふうに全体をくくって考えていいということになるわけですか。
新藤大臣政務官 これは議論が分かれているところなんだと思いますが、私が言うよりも、むしろ現地のソーヤーズ大使から、OCPAのナンバーツーでございますイギリスのソーヤーズ大使が申しておりました。これは、イラクにおける戦闘は終結している、しかし治安を回復する段階にある、イラク社会の安定を脅かすような犯罪が目前で発生している場合、これはそこにいる治安を維持する部隊が当然にその犯罪をとめようとするのではないか、こういうことをおっしゃっておりましたのが大変印象的でございます。
桑原委員 ちょっと概念の整理をさせていただきたいんですが、一応戦闘がそういう意味で終了しているというふうなことであれば、この法律で言う戦闘地域というものには全土は当たらないということになるんでしょうか。これは、長官、どうでしょう。
石破国務大臣 戦闘行為というのをもう一度申し上げます。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」、これが戦闘行為でございます。そしてまた、戦闘地域、非戦闘地域というふうに分けますときに、現に戦闘が行われておらず、また、その活動する期間において戦闘が行われることが認められない地域ということになっております。
 そうしますと、国際的な武力紛争の一環、すなわち、国内のみにとどまらず、それが国または国に準ずる者としてそのような行動を行う、活動を行うということはほとんどなくなったと言ってもいいでしょう。しかしながら、それが活動する期間においてそういうことが行われることが認められないということは、かなりの予測とか蓋然性を含むものだと思っております。
 今の与党の調査団の御報告にもありますように、そういうような状況は改善しつつあるけれども、しかしながら、我々は、本当にそうではない地域に出すということには万全を尽くさねばならない。加えて、午前中、官房長官が答弁されましたように、そういう地域の中にあって、なお派遣される部隊が安全な地域というものを考えていかねばならない、そういうことだと思っております。
 戦闘地域の概念がそういうものであります以上、イラク全土が非戦闘地域になったと思うかと言われれば、必ずしもそうではないというお答えになろうかと存じます。
桑原委員 そうしますと、整理をさせていただきますと、いわゆる戦闘というものがおさまったという点では戦闘地域ということは言えない、しかし、将来的にそういうものが活動の期間を通じてないという蓋然性があるかどうかということになると、甚だそうとは言い切れないところがあるということですか、全土的に。
石破国務大臣 その全土的にというおっしゃり方、これは本当に用語の整理を、政府側も先生方との間もきちんと用語の整理をして議論しませんと、かえって私ども、先生方に御迷惑をかけることになってはいけないと思いますが、全土的にと言われますと、これが北から南まで、西から東まで、全部そうなのかいと言われますと、その全土の中には戦闘地域ではないというところは明らかにあろうと思います。国際的な武力紛争の一環としてというようなことが行われていない、そして将来も、活動する期間において認められない、そういう地域は存在すると思います。
 しかし、東西南北、いろいろな地域があって、イラクの地域のどこかにはそういうことが予想される地域というのがあると思います。したがって、私どもは、基本的に戦闘行為が終了したというふうに申し上げておるのはそういう意味でございます。
桑原委員 将来の蓋然性の問題ということになると甚だ予測が難しいところがあろうと思いますけれども、具体的に、どういう勢力が存在をして、どういう事態というものが将来考えられる、そういうふうに想定されているのか。何か知らぬけれども将来あるかもしれぬという話になると、どこでもあるような話になるわけでして、具体的に、例えば先ほどいろいろお話がありましたように、四十万の軍隊が武器を持って忽然と消えたか、あるいは成り済ましているか、それはいろいろなあれはあると思いますけれども、確かにそれほどの多くの人が武器を持って潜んでいるという可能性は、それはあるわけですよね。
 そういう意味で、どういう具体的なことが蓋然性の中に考えられるのか、どういうふうなことを想定されているのかということをお聞きしたいと思います。
石破国務大臣 それは、典型的なケースで申し上げれば、バース党の残党というものがあるだろうと思います。バース党の残党が、お金がなくなっちゃって、仕事もなくなっちゃって、泥棒を働いて食べているということであるとするならば、それはそういうものには当たらないと思います。しかしながら、本当にフセイン政権再興みたいな形で行っている場合、それはやはり、国またはそれに準ずる者ということになるだろうと思います。
 では、そんなものをどうやって見分けるんだということになろうかと思いますが、それはやはり、組織性あるいは指揮命令系統というようなことで判断をすることになるだろうと思います。それはやはりそういう形でなければ、つまり、一人だけで狂信的に、私はフセイン政権を再興するんだと言いましても、これはなかなか難しい場合もございましょう。
 きのうから、強盗、山賊のたぐいというふうに申し上げておりますのは、たとえ起こっておる事象が同じであったとしても、これは憲法の禁じているがところの国際紛争の一環としてということにならないように、そしてまた、派遣されます自衛官があくまで法第十七条もしくは自衛隊法九十五条に基づいて行動しますためにも、そういうような峻別は必要なことであるというふうに考えております。
 自己を守るための武器の使用ということは認められますが、国際紛争の一環としてというようなことで武力を行使することは当然認められないと思っております。
桑原委員 バース党の例をおっしゃられましたけれども、私は、それ以外にも、いろいろな組織的な、そういう反旗を、反旗といいましょうか、決起するような可能性というのは考えられるんだろうと思います。そういう意味では、ある意味では大変な情報で、大変な調査をしないとおよそ確定をできないんではないかと思うんですよ。
 そういう意味で、私は、全土的にそういう危険性がやはりあるんだ、およそ区分けをできないんだということの方が現実的なんではないかというふうに思います。
 その点を申し上げて、質問時間が終わりましたので、これで終えたいと思います。ありがとうございました。
浅野委員長代理 次に、山口壯君。
山口(壯)委員 山口壯です。
 きょうは、イラクの特措法ということで、いろいろな議論がありますけれども、私自身が、実は一九九一年の湾岸戦争のときには、あのときはちょうどC130の輸送機を、ヨルダンからカイロまで難民を移送しようということで、当時はまだ外務省におりましたけれども、防衛庁の方といろいろ協議をして、もうすぐ寸前まで持っていったんですね。当時は小沢一郎幹事長が自民党におられて、海部総理が総理大臣で、みんなもう全部オーケーをとって、もう行くぞと、C130のパイロットの方もみんな待機されていたわけですけれども、最後に、戦争が終わって、あれが実現しなかったと。
 そういう意味では、この二〇〇三年に至って、私も衆議院に来させていただいて、この法律がいろいろ議論されているということは非常に歴史の移りを感じることもあるんですけれども、他方、我々がどういう方向に進もうとしているかということは、はっきりと国民にわかるように議論しておかなきゃいけないと思うんです。
 このC130を導入するときには、私自身は実は防衛庁に出向したこともありましたから、今、当時の同僚の方が局長や審議官になっておられますけれども、このC130を導入するに至っても、やはり、日本がなぜC130を持たなきゃいけないか、いろいろな議論がありましたね。
 そういうようなことを考えたときに、どういうふうに法律がずっと進展してきているか。自衛隊が一歩一歩前に出ようという気持ちがそこにあると思うんです。私は、それは決して悪いものだと言ってはいないんです。これは他方、日本がどういう国益をそのことによって進めようとするのか、その辺がしっかりしていれば、その辺は、私は、国内あるいは国外に大いにメッセージが伝わっていくと思うんです。だけれども、これがしっかりしていなければ、なぜ自衛隊が派遣されるのか、それがはっきりわからないということにもなってしまうと思うんです。
 そろそろ、日本が何を考え、あるいはどういう哲学を持って自衛隊を派遣しようとするのか、この辺をきょうはいろいろ議論させていただければと思います。例えば、きのうの委員会でもって公明党の赤松議員が言っておられました、災害派遣ということになぞらえてはどうか。それも、ああ、なるほどうまいこと言われるな、一つの考え方だなとは思うんです。
 私も防衛庁の運用課というところに二年間いましたから、その運用課で航空自衛隊の担当だったんですけれども、他方、災害派遣を担当した時期もあって、災害派遣というのは、私の記憶している限りは、要請がなければ一応出ないという要請主義が原則になっている、そういうことだったと思うんです。
 今からいろいろな議論をさせていただきますけれども、とりあえず、まず石破長官、今もこの災害派遣については要請主義ということが原則になっているのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
石破国務大臣 実際に実務を担当されました先生が一番よく御案内のことかと思いますが、御指摘のように、要請主義ということになっております。都道府県知事等、つまり、都道府県知事のほかに海上保安庁長官、管区本部長あるいは空港事務所長からの要請を受け部隊等を派遣することが原則でございます。
 しかしながら、その事態に照らしまして特に緊急を要し、要請を待ついとまがないと認められるときには、要請を待たずに部隊等を派遣することができる、そういうふうな規定になっております。例えば、通信が途絶をしてしまったような場合でありますとか情報を提供しなければいけない場合でありますとか、自衛隊が実施すべき救援活動が明確な場合に、当該救護活動が人命救助に属するものであることが認められる場合等々でございます。あとは、近傍派遣というものがありますことは、先生御案内のとおりでございます。
山口(壯)委員 今長官から説明があったとおり、できるだけ誤解がないように要請に基づいて行かれるということです。
 ちなみに、今回のイラクのこの特措法にかかわる自衛隊については、どこかから要請がありましたか。
川口国務大臣 国連決議一四八三におきまして、世界、国連の加盟国に対しまして、イラクの人道、復旧に対して加盟国が貢献をすることの要請、それから安全確保についての要請というのがあったわけでございます。我が国として、そのために我が国として何をしたらいいかということを考える中で、主体的な判断として自衛隊を送るということがふさわしいというふうに判断をしたということでございます。
 それで、自衛隊を送るのがなぜいいかということについては、これは石破長官から御説明いただいた方がいいかと思いますけれども、この厳しい環境のイラクという、厳しい現在の環境の中できちんとその仕事をできるという意味で、自己完結性を持っている自衛隊が現地に行って貢献をするということがふさわしいということが理由でございます。
 イラクにおいて今非常に、先ほどの与党の調査団でも御報告ありましたように、さまざまな問題があるわけでして、イラクの人たちの今持っている不満、これをできるだけ早く取り除いて、復旧あるいは人道的な支援をやるということが私は必要であり、それからそれが我が国の国益でもあると思っています。
山口(壯)委員 今川口大臣が言われた厳しい環境、この厳しい環境というのは、どういう環境をイメージされているんでしょうか。
川口国務大臣 これは、安全の面もございますし、例えば水、下水、電力、さまざまなことがあると思います。そういった厳しい環境の中で、イラクの社会に迷惑をかけないで、行った人たちが自己完結的にイラクのために貢献ができるということが重要であると考えます。
山口(壯)委員 安全のみならず、水とかの気候も含めてという今お答えでしたね。私、自己完結的ということだけであれば、それは必ずしも自衛隊でなくても本当はいいわけですね。ちなみに、今NGOも行っている。
 ここを私は、実は、自衛隊がなぜ行かなきゃいけないかということを、もっと戦略的に、国の国家戦略として実は考えていただきたいからこの議論をしているわけです。ただ単に行っちゃいけないとか、そういう話をしているんじゃないんです。自衛隊を送るということが、日本という国家として、どういう戦略としてあり得るか。この戦略という場合には、外交戦略というものももちろん含めての話です。したがって、大変だから、自衛隊の人は鍛えられているから行く、あるいは安全に不安があるから行くということを一歩超えて、きちっとしたメッセージを私は今、日本政府が出さなきゃいけないと思うんです。
 そういう意味で、今、もちろん安全あるいは水というふうに外務大臣はお答えになられましたけれども、例えば、アメリカがどういうふうにこの中東の戦略を今進めようとしているか、なぜ戦争したかということにもかかわりますね、それで、小泉総理がなぜそれを支持されたか。それは大きな戦略の動きがあって、そしてその延長上の中で自衛隊を派遣する、そういう決断があったのであれば、それは私は国民がしっかり理解すべきことだと思うんです。
 そういう意味で、川口大臣、今のお答え、若干テクニカルなお答えのように私には聞こえたものですから、もう少し踏み込んでいただいて、戦略的な発想を持ってそういう判断をされているのかどうか、お答えいただけますか。
川口国務大臣 おっしゃるとおりであると思います。
 我が国として――それからその前に、NGOも自己完結的であるというふうに言われましたけれども、私は、NGOは自己完結的であるとは思っておりません。自己完結的なのは軍、自衛隊であると思っています。
 なぜNGOが自己完結的でないかといいますと、例えば安全の確保、これについて、NGOは安全の確保については人に頼らなければいけないということであります。それから、大々的にNGOが大勢いるということを考えますと、それは自衛隊の場合と違ってみずから食料を持っていくわけではない、イラク人と一緒に、その食をともにし、泊まるところもともにして生活をするわけですから、イラクの社会に対する負担であるという意味で、自己完結性があるのは自衛隊であるということでございます。
 それから、私は、イラクが平和で安定する国家に一日も早く、そして民主的な国家、大量破壊兵器の脅威のない国家に一日も早くなるということが重要である、それが日本の国益であると思います。
 それで、イラクがそうなるということは、これは日本とイラクの関係だけではなくて、中東の全体の和平のプロセスとイラクの復興のあり方というのは大きな影響を、関係を持っていると思います。我が国の国益として、中東が平和で繁栄をしている地域になるということは非常に重要であり、これは我が国のみならず国際社会全体にとってそうですけれども、であるからこそ中東和平の問題については積極的に関与をしてきているわけでございまして、したがって、イラクの復興とそれから中東和平のプロセスとは相互に切っても切れない関係があるということです。
 イラクが一日も早く民主的で平和な国家になるということは中東和平のプロセスにもプラスですし、また、中東和平がそういった形で動くということはイラクの復興にも資するということだと思います。
 我が国が、そういった国際的にみんなが貢献をすることが必要であることに対して、単にお金を送るだけではなくて、我が国のNGOあるいは自衛隊、いろいろな各層でこれをやっていくということが日本のこの地域における貢献という意味で非常に重要な過程、重要なことであるというふうに思います。
山口(壯)委員 自衛隊が特に要請を受けたわけじゃないけれども、この国連の決議に基づいて、一四八三号に基づいてやっていくということですね。
 ちなみに、これは、その前提として、安保理としてアメリカのイラク攻撃を承認はまだしていないですね。
川口国務大臣 安保理が承認をしているかいないかということについて、どういう観点からの御質問かよくわかりませんけれども、アメリカとイギリスのイラクに対する武力行使、これは安保理の決議の六七八、六八七、一四四一にのっとったものであるということが我が国の見解でございます。
山口(壯)委員 アメリカは、その決議では足りないから直前まで一応その修正決議ということを提案していたわけですね。それが成らなかったから、ここは攻撃に踏み切った。そういう意味では、今川口大臣がおっしゃったことというのは舌足らずだと思うんです。そういう意味で、イラクに対する戦争を国連での修正決議が成らないままに実行に移した、これについて、安保理はまだ一四八三号という対応しかできていないわけですね。これに対していかがですか、大臣。
川口国務大臣 新しい決議、これは結果的には日の目を見なかったわけですけれども、これは、我が国としてこれができなかったということは残念であります。
 残念でありますという意味は、これが武力行使の根拠として不可欠なものであったのに、これがなかったという意味では全くございませんで、武力行使の法的な根拠という意味では、六七八、六八七、一四四一で十分であったということでございます。我が国として新しい決議があると望ましいと考えたのは、これは政治的な意味でありまして、イラクに対して国際社会が強いメッセージを発することができる、イラクに対して国際社会が今まで望んできたさまざまな決議にこたえるということをもっと積極的に働きかけることができる最後の機会であったわけですから、ということであります。
 したがって、それはあくまで政治的に望ましかったと我が国として考えているわけであって、法的に、これがなければ武力行使というのは違法であるということでは全くないということです。
山口(壯)委員 今大臣がおっしゃったのは、法的に今回違法かどうかということにこだわっておられるわけですけれども、私は、今の現実をずっと見てみましたら、イラクをめぐる国際法の動きというのは必ずしも現実に追いついていないと思うんですね。
 要するに、今までの伝統的な国際法だけでいくと、国連憲章が武力の行使を禁止している中で唯一認められている例外というのが自衛権の場合、個別的であれ集団的であれ自衛権の場合、もう一つは、国連としての強制措置として決められた武力の発動ですね、この二つだけ。
 したがって、アメリカの場合には、例えば個別的自衛権、集団的自衛権の概念からも、伝統的な自衛権の概念からも踏み出している。要するに、自分がまだ攻撃、実際には弾が撃たれたわけでもない、その段階で、査察をこの場で区切って戦争しようということですから、伝統的な国際法からは一歩踏み出しているわけです。
 こういう場合にどういうふうな国際法の根拠があったかどうか、それはこの国連決議だけでは、とてもじゃないですけれども、それは不十分ですよ。それは、日本政府としていろいろな言いわけをする場合にはそういうこともあり得るでしょう。それは先ほど私が言及しかけた、国としてアメリカとのつながり、信頼関係、同盟国としてのきちっとした揺るぎない信頼関係を持っておきたい、若干アメリカの最近の動きには無理が感じられても、この際、北朝鮮の話もあるから仕方がないか、これは一般の人には非常にわかりやすい議論だったわけです。だから、小泉さんの支持率もそれほど落ちなかったでしょう。
 そういう意味では、今、国連決議だけで、これで大丈夫だ、法的に全然問題なかったんだと言い切られることは、これは伝統的な国際法上は無理なんです。そして、それを一歩踏み出してやろうとしているのが、あるいはやったのがアメリカですね。
 だから、そういう意味では、日本はどういう国際秩序をこれからつくりたいのか、そういうことをきちっと見据えた上で、今までの国際法は足りなかったんだ、今新しいものに行くんだということであれば、そういう考え方をきちっと言われた方が私は正直だと思います。いかがでしょうか。
川口国務大臣 一般論として申し上げれば、委員がおっしゃったように、国際社会においていろいろな新しいことが起こっていて、国際法のレジームがそれについていっていない部分というのは、現実問題として存在をすると思います。
 そういうことでありますけれども、この場合、このイラクの大量破壊兵器に関する問題、これについて言えば、それはいろいろな考え方が今後出てくるかもしれませんけれども、という意味は、国際法的に違ういろいろなアプローチが将来的にはある、ないとは言い切れないわけですけれども、今回のこの件について言えば、これは国連憲章のもとにおける六七八、六八七、一四四一、これできちんと説明をアメリカもイギリスもしている、国連への報告の中でそれを引用して説明をしているわけです。
 したがいまして、今回のことについて言えば、まさに安保理の決議に従った武力行使であるということに尽きるというふうに思います。
山口(壯)委員 大臣、今おっしゃった決議の中に、武力の行使という言葉が触れられていますか。
川口国務大臣 これは、具体的な言葉として、ちょっと今ここにその資料が、具体的な文言がありませんけれども、必要な行動をとることができるというふうに六七八においてされているということでございます。
山口(壯)委員 大臣、今石井秘書官から資料が行ったと思うので、正確な文言を言っていただきたいんですけれども、そこには武力の行使という言葉はないと思うんです。確認いただけますか。
川口国務大臣 文言といたしましてありますのは、安保理決議六六〇及びすべての累次の関連諸決議を堅持かつ実施し、同地域における国際の平和と安全を回復するために、あらゆる必要な手段をとる権限を与えるということになっております。
山口(壯)委員 イギリスとかアメリカは、あらゆる必要な手段という中にそれを読み込もうとしたわけですね。
 安保理というのは五カ国あるわけですから、イギリスとアメリカ以外にフランスとロシアと中国もあるわけですね。フランスとロシアと中国というのは、そういう決議でもって武力を行使するということについて、一致した見解を持っていますか。
川口国務大臣 過去において、六七八、これにつきまして、例えば、九三年、九六年、九八年のアメリカ、イギリス等による武力行使の根拠として六七八は引用されているわけですし、現実にフランスも九三年にはこれに基づいて軍事行動に参加をしているということでして、六七八は、今申し上げたようなコンテクストにおいては、あらゆる必要な手段をとる権限を与えるということで、これは武力行使を含む概念として既に過去において使われているということであります。
 湾岸紛争のときに武力行使がありましたけれども、それに際しても、新しい安保理の決議、決定というのは、その際にはございません。
山口(壯)委員 失礼、最後、ございませんと言われましたか。ちょっと聞き取れなかったので。(川口国務大臣「はい」と呼ぶ)ございませんと。あのときには、しっかりした決議は、クウェートの話として、クウェートにイラクが占領に行ったわけですから、それはあったと思いますよ。今回も、それをしようとしたけれども、全会一致の決議にはならなかった。
 でも、ここは、私はなぜこんなことを聞いているかというと、一つの新しい国際法の秩序を日本が思い切ってつくるのかどうかというところまでの気概がないと、アメリカに言われたからついていくという格好にしか国民には見えないからなんです。その辺を一生懸命言っているんです。
 したがって、この一四八三号においても、この武力の行使というものが正当化されないということは、大臣もよくわかると思います。これは、イラクの復興について、みんなが、やろうか、しようがないな、やろうかということですね。そういう意味では、私自身は、この今回の自衛隊をイラクに特措法で派遣するということによって、川口大臣はどういう国益がそれによって増進されようということをお考えですか。
川口国務大臣 イラクの復旧あるいは人道的な支援、安全確保の支援、これをイラクのために行うということは大変に重要なことであると思います。
 それは、イラクの人たちの不満、これを一日も早く解消し、イラクの人たちが快適な市民生活ができるようにしていくということのためには時間も大きなかぎであるわけでして、先ほど、しばらく前に申し上げた、まさに自己完結的な部隊といいますか、組織ができるということであると思います。
 そして、イラクの国民が、平和で民主的な生活をできるだけ早く送ることができるようになるということは、それ自体非常に、我が国とイラクの伝統的な関係、あるいはイラクが世界で第二の原油埋蔵量を持つ国であるということからいっても、それからイラクの復興、民主的な国家になるということが中東全体の和平の進展あるいは中東の安定、発展に大きく貢献をするという観点からも、我が国にとって国益であるというふうに考えます。
 したがいまして、そういったさまざまな観点から、我が国として自衛隊を送ることが国益だというふうに考えております。
山口(壯)委員 中東の安定と発展、そして油ということも言われました。実は、この油というのは非常に大事だと思うんです。そのことはもう、アメリカのいろいろな意図がある中で、油も一つの大きな要素であったということは、ちまたでも言われているのみならず、これは国際的ないろいろないわゆる専門家が言っていることでもあります。
 そういう意味では、この中東の安定と発展のみならず、川口大臣のその戦略的な思考の中にアメリカとの同盟関係というものはありませんでしたか。
川口国務大臣 これは、委員に申し上げるのは釈迦に説法もいいところだと思いますけれども、我が国の外交の基本的な考え方として、我が国の安全とそれから繁栄ということがあるわけでして、それのために国際社会が平和で安定的に、そして繁栄をしていくということが重要であるわけで、この目的を達するため、我が国として何をするかということの大きな柱の一つは、日米安全保障条約、アメリカとの間の安全保障条約であるわけです。
 そういう意味で、日本は、単にアメリカとの間で防衛面でその条約を持っているということだけではなくて、その背景といいますかその基盤としまして、日本とアメリカはさまざまな点について物の考え方を共有している国である。逆に言えば、そういう国であるからこそ安全保障条約を持ち、同盟の関係を持てるということであると思います。
 そして、大量破壊兵器の脅威に対する考え方、あるいは民主主義に対する考え方、市場メカニズムに対する考え方、法のルールについての考え方、すべてそういうことについては、我が国とアメリカは考え方を共有しているわけであります。
 当然に、イラクの復興、イラクにおける民主的な政府ができて、イラク人の手によってイラクの復興がなされること、その成果、そして中東の平和、安定、これらのことはすべて日本とアメリカが共有をしていることであると思います。
山口(壯)委員 今、川口大臣言われたように、アメリカとの、今同盟関係という言葉が市民権を得ていますけれども、この安保条約を基本にする大きな関係ですね、この同盟関係、これも要素の大きな一つであったということですね。
 これは、実は一九五一年に一番最初の安保条約ができたときから、アメリカの防衛コミットメント、いざというときに守ってくれるか、それを条約上確保するというのが日本の一番大きなポイントだったわけですね。一番最初の条約にはそれが入っていなかった。
 あれは、一番最後の交渉の時期にアメリカ側は、当時はヨーロッパで戦争が起きると思っていましたから、極東で足を引っ張られるのは大変だからディフェンスコミットメントはゼロにしたいと思っていたわけですね。アメリカ側から、極東の事態について在日のアメリカ軍を、メイ・ビー・ユーティライズド、使うことができるとも訳せるけれども、メイ・ビー・ユーティライズドですから、使うかもしれないという意味でもあるわけですね。メイ・ビー・ユーティライズドと言われたら、当時は五〇年から朝鮮戦争が起きていましたから、極東で使ってもいいと言われれば、それはそうだなと思ってオーケーしてしまったわけです。
 オーケーしたら、次の日に気がついて、いや、ちょっと待てよ、これはメイ・ビー・ユーティライズドだけれども、メイ・ノット・ビー・ユーティライズドだな、これは大変だということで、アメリカ側に急いで、日本についてはシャル・ビー・ユーティライズド、絶対使うということに解釈してくれ、極東の、日本以外のことについてはメイ・ビー・ユーティライズドだと。
 この宿題が、これが結局アメリカに通らなかったものですから、十年かかって、一九六〇年の安保改定まで、一生懸命アメリカのディフェンスコミットメントを取りつけるために頑張らざるを得なかったわけですね。
 その後も、いざというときにアメリカが助けてくれるかどうか、これがいつも大きなポイントだった。特に、北朝鮮について、これはアメリカからの情報がほとんどですけれども、大変だ大変だということになってくると、いざというときに、アメリカの防衛コミットメントが本当に中身のあるものなのかどうか。これは一般の日本人も今非常に心配しているところです。
 そういう意味では、今回のイラクの特措法が、そういう大きな歴史的な文脈あるいはこれからの日本の国家の進むべき戦略として、アメリカとの関係は非常に大事だということであれば、これは一つの説明の仕方だと思います。そういうことでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、日本とアメリカは同盟関係を持っている国同士ですから、いろいろな物の考え方について考え方を共有している。実際のところ、ここまで共有をしている国であるから同盟であるわけですし、ということでございます。
 ただ、今回のこと、これは昨日も総理がおっしゃいましたけれども、我が国として、我が国の国力にふさわしい貢献の仕方は何かという観点から考えているわけでございまして、そういう意味で、主体的に我が国として何ができるかと考える中で、自衛隊を送るということは、国際貢献として、国連加盟国としてふさわしいことであろうというふうに考えて、この特措法の審議をお願いしているわけでございます。
山口(壯)委員 もう一回、後でこの議論は戻ってきます。
 というのは、主体的にというのは、もちろんそれは主体的にです。他方、アメリカとの関係を非常に大事にしたいからという部分というのも、これは非常に大事だと思うんですね。国民に説明をするときに、なぜ自衛隊なんですか、ただ単に、それは暑いから、安全じゃないから、水も大変だからということの説明を超えた部分を、正直に私は、納得をみんながしておかなければいけないと思うのです、軍隊を動かすのですから。
 自衛隊というのは、外から見れば、我々がどう呼ぼうと、戦力と呼ぼうと何と呼ぼうと、これは軍隊に間違いない。そういう軍隊を動かすのですから、軍隊を動かすということは、まかり間違ったら戦争になる可能性もちゃんと念頭に置いておかなきゃいけない。そういう場合に、国民の、みんなの納得というものが非常に大事だと思うのです。そういうことの観点で、もう一回、後で戻ってきます。
 そして、日米同盟関係云々の話のほかに、私は、自衛権の解釈というものも非常に関係していると思うのです。というのは、武力行使、一体化するとかしないとか、あるいは非戦闘地域云々、全部、憲法九条の解釈という枠があるから、そういう議論を積み重ねないとしようがなくなっているわけですね。そういう意味では、どうでしょう、最初に、これはちょっときのうお伝えしていないから、もしもお答えが難しいようであれば……。
 例えば、周辺事態法に基づいて、公海上で米軍の後方地域支援に従事する海上自衛隊の艦船が攻撃を受けた、この場合に自衛権が認められるかどうか。これは灰色の部分ですね、本当は。周辺事態法で公海上で米軍の後方地域支援に従事していた海上自衛隊の艦船が攻撃された、この場合、自衛権の発動というものは認められるかどうか。
 これは、石破長官からもしも、きのうお伝えしていなかったから、これは答えはいいですよ。――秘書官は何と言っていますか。
石破国務大臣 それは、一にかかって、その攻撃が我が国に対する武力行使というふうに認められるかどうかという評価になります。ですから、それが、周辺事態法が発動されておって、先生御指摘のようにアメリカの後方支援を非戦闘地域で行っておった、突然攻撃されたということは、それは攻撃する側の意図等々にもよりますので一概に判断はできません。それはもう、本当にそれが我が国に対する武力攻撃というふうに判断され、そしてまた、ほかにとるべき手段がない云々という自衛権の三要件を満たせば、それは自衛権の発動になる場合もあり得る、しかしながら、ならない場合もある。それは、具体的なその場合のケースによろうかと存じます。
山口(壯)委員 今、石破長官言われたことで合っていると私は思いますよ。基本的には、これは必ずしも当たるというふうに、日本の今の憲法解釈を前提にすればそうならないわけですね。他方、普通は、普通はというのは、憲法九条を持っていないほかの国の場合には、これは当然、自衛権の発動になるでしょう。今長官おっしゃったように、日本の場合には普通はならないと思うんです。
 他方、状態、いろいろなケースを想定すれば、それは認められる場合もあるかもしれない、それは合っていると思いますが、ポイントは、普通の国であれば自衛権の発動ができることが、日本の場合には今の憲法九条の解釈によると必ずしもこれができないわけです。
 それからもう一つ、この話で、PKO協力法のもとで停戦監視のために紛争地域に派遣された国際平和協力隊が、ゲリラに襲われた近くの第三国の部隊を、第三国の部隊がゲリラに襲われたわけですよ、PKO法で行っていた人たちがこの部隊を救助する目的で武器を使用することができるかどうか、これはいかがですか。
石破国務大臣 通常できません。
山口(壯)委員 今の石破防衛庁長官の見解は私も賛成します。これは、そういう意味では、日本の今の憲法九条の解釈からすると、どうしてもそういう結論になってくるわけですね。他方、例えばイギリスの軍隊がPKOのオペレーションの関係で行って、第三国がやられた、では、その場合に彼らは何もしないことがあり得るかどうか。これは大分状況が違いますね。
 そういう意味では、実際、我々は平和主義という憲法九条を持っています。この平和をどう考えるかということに大いにかかわると思うんですよ。
 私は、キリスト教徒なものですから、よく聖書を読むんですけれども、聖書の中に「ブレスド・アー・ザ・ピースメーカーズ」という言葉が一回だけ出てくるんです。これは、マタイの第五章の第九節なんですけれども。ピースメーカー、平和をつくる人は幸いだと。ピースはメークするものだというのが聖書の発想なわけですね。ピースはメークする。
 そういう意味では、我々が憲法九条を平和主義だと言っている、他方、自衛権の解釈というものが、国際的な、一般的な解釈、解釈というか、いわゆる個別的自衛権、集団的自衛権の話ですね、これとは大分違っているわけですね。そういう意味では、せっかく、例えば自衛隊を派遣した場合にも、外から見れば、危ないところには近寄らない、こう見えてしまうわけですね。今の憲法九条を前提にすれば、それをどうしても避けるために、非戦闘地域の話あるいは武力行使と一体化しない話、そういうことになってしまっていると思うんです。
 ですから、本当は根元の議論が欠けていると私は思うんです。それを恒久法と言う人もいるかもしれない、あるいは憲法解釈の話だと言う人があるかもしれない。だけれども、それをおいておいて、とりあえず自衛隊を今のいろいろな枠の中で送っていこうと思うと、この非戦闘地域の話あるいは武力行使と一体化しないいろいろな話というものが出てきてしまうと思うんです。
 それについて、官房長官、どうでしょうか。そういう大きないろいろな流れの中で、我々が今回、イラク特措法を今審議していますけれども、この審議の中のいろいろなポイントの中で、非戦闘地域とか戦闘地域ということが何度も話題になっています。このことは武力行使との一体化をなくすという意味でそういう議論になっているわけですけれども、この憲法九条の話というものが我々の解釈の中で枠を課しているわけですから、どうしてもそうなっているわけです。でも、これを実際にはきちっと整理してから本当は我々は議論をすることが、実際に自衛隊を送った場合でも、自衛隊が来たって危ないところはやらないと言っているからな、そういう話に外からは見られなくて済む、平和はつくるものだというようなことが言えるようになると私は思うんです。官房長官の御見解はいかがですか。
福田国務大臣 委員のおっしゃることは、そのとおりだと私は思います。
 その前に、自衛隊の活動、自衛隊が出ていくと問題があるかもしれぬというような御指摘がいろいろあるんですけれども、委員はそれほどそのことについて危惧を、懸念を持っていらっしゃらないだろうというふうに思うのでありますけれども、しかし、そもそも我が国の自衛隊が持てる力を十分に発揮していないんではないかということは、我々は常々考えてきたところでございます。
 例えば、PKOが十年前にできるようになったのであります。これは自衛隊が中心になって行う活動ではございますけれども、このPKOも、昨年の二月に東ティモールのPKOが六百八十人出動するということになる前は、恐らく百名程度の、大きく見積もってもその時々百名程度ぐらいしか出ていない、そのような状態ではなかったのか。世界のPKOというのは約五万人近く常に出動しているわけでありますけれども、そのうちのわずか百名とかいうようなことであったわけですね。
 私は、自衛隊はなぜ出るかという議論はその前に必要ですけれども、やはり、できることはもっと積極的にやったらいいのではないかというように思いますので、今、東ティモールで大規模に出ていくということについて、私は大変よかったというように思っております。PKOの分担金も、国連分担金ほどではないけれども相当程度のものを払っている、しかし、実際に人的な出動というのは、協力というのはゼロに近いというような状況から、今脱しつつあるのではなかろうか。
 私は、もっと自衛隊というのは活動できるんではないか、それも、国際平和協力というために、そのために活動する、そのことに限って海外で活動するということであれば、大いにやるべきだというように思っております。
 テロ特措法もそうでありますけれども、今回のお願いしています法律につきましても、これもまさに国際平和協力の一環であるというように考えておりますので、今回も、イラクの人道復興支援に大いに協力して、そして、国際社会の中において、日本は人的にも大いに貢献する国だ、協力する国だということは示していく必要があるんだろうと思います。
 そのことは何で必要なのかといいますと、それはやはり国益だと思います。もう私からよく御存じの委員に説明するまでもないのでありますけれども、私は、国益だと思います。
 我が国は国際社会においてどういうことをなすべきか、それはやはり目的は世界の平和、安定だと思います。そのことによってのみ、私どもはというか日本は、今まで戦後六十年、経済的な繁栄も遂げてきた、その経済的な繁栄の陰には、十分に国際間において資源調達をし、そして逆に製品を販売するとかいったようなことにおいて日本の経済の発展というのはなし遂げられたんだ、こういうことがあるわけですから、私は、日本は、世界が平和で安定が保たれるのであれば、これからも発展し続ける国ではなかろうかというように思っております。
 ですから、平和というのは日本にとっては非常に大事な一つの条件だというように思っておりますので、そのために貢献するということは、本当に国のために、国の利益にかなっていることだというふうに思っております。そういう点において御理解を賜り、そして、できるだけ自衛隊がそういう方面において活躍できる道をつけるように、今後、お知恵を拝借したい。
 政府としましても、今、恒久法というお話ございましたけれども、そういう観点からの、要するに、国際平和協力という、そのことに絞った自衛隊の活躍、また自衛隊に限らず文民も活躍できるような、そういう道筋を立てるべきであるというような考え方は、政府内部でも今議論をしているところでございます。
山口(壯)委員 今、恒久法について前向きの返事をしていただいたように思うんですが、アメリカとのつき合い方が、今まで、戦後すぐの時代においては、アメリカにぴったりくっついていくことが平和ということにつながっていたという図式も若干ありました。でも、今は、本当はアメリカのやり方について異論を持っている人も、アメリカ国内にも、あるいは識者の間にも多いと思うんです。ただ、今与えられた、与件の中では最大の選択だろうという考え方だと思うんです。
 そういう意味では、アメリカのブッシュ大統領が、どういう中東の構想でもってこのイラクの戦争に入ったのか。
 いろいろなことがある中で、これはたまたま、「外交フォーラム」七月号ですけれども、そこにブルッキングスのフィリップ・ゴードンという人が書いています。これはフィリップ・ゴードンさんが書いたことですから、別に外務省が書いているわけじゃないですけれども。
 いろいろな見解の中で、「極端あるいは批判的な論評では、ブッシュ大統領は国内タカ派の親イスラエル・ロビーの意のままになっており、中東に平和と正義と安定をもたらすことよりも、票集めと父親がサダム・フセイン追放に失敗したことへの報復に関心があるのだ、と手厳しい。」これは、こういう意見もあるという、そういう紹介の仕方ですね。
 それから、「構想の中心にあるのは、かつてない強大なアメリカの力を使って、中東地域の親米諸国を援助し、敵対諸国に対抗し、民主主義と自由の促進に努めることにより、中東を再編するという決意である。その第一歩が、イラク独裁政権の打倒であった。」と。
 さらに進んで、「政権のメンバーすべてが、この考えを完全に承服しているわけではない。」「このような考え方は、アメリカの力と理想をもってすれば世界を再編できるという、とりわけアメリカ的な楽観主義から生まれたものだ。」と。
 我々は、アメリカとつき合うときに、アメリカが何を考えているかということはきちっと把握した上で、その上で日本の国益を考えていく、こういうことになろうかと思うんです。
 そういう意味では、アメリカに対して、例えばこういう意見も当然あり得るわけですから、その意味で、小泉総理が、あるいは川口外務大臣が、アメリカのブッシュ大統領なりあるいはパウエル国務長官と会われるときには、今のアメリカのやり方というのは、ある意味で、中国の孟子が言った覇道、中国語でパーダオですね。力で力をねじ伏せる。英語でマイト・イズ・ライト、力は正義なり。こういうやり方に今傾き過ぎていないか。軍事に偏り過ぎた外交になってしまっていないか。
 むしろ、それよりもワンダオ、王道、天意をうかがい天意に従う、こういうやり方が実は日本にとっては東洋の伝統的政治思想だったんじゃないかということを、実はアメリカとの間でもやっていくことが、これから日本が将来、例えば川口大臣もいろいろ話されている、あるいは小泉総理も最近言及されている、アジアの中で例えば自由貿易協定、これを進めてアジア共同体というものを進めていく、ともに生きるアジアというのをつくっていく、そういうことをやる場合に、余り日本がアメリカの、力で力をねじ伏せる覇道にあんたのところも傾いているんじゃないのと思われることは、実は日本がアジアの中でともに生きる秩序をつくっていく、この際、リーダーと言わずにコーディネーターと言った方がいいと思うんですが、そういうことをやろうと思っても、説得力がどうも少なくなってしまうという懸念を私は持っているわけです。
 したがって、これからアメリカがいろいろ極端なことを言ったり、あるいはやろうとする傾向、これは昔からありました。でも、日本として、やはりパートナーとして、それに対してきちっと友達として、いろいろ相談に乗ってくれと、アメリカ、もうちょっと抑えてくれよと言うことも私は大事だと思うんですね。
 川口大臣には苦言になりますけれども、やはり、アメリカの説明ぶりのとおりを繰り返されているように私には印象が強いんです。したがって、日本としてのやはり物の考え方、そのことがなければ、アジアで日本が大きな役割を果たしていく、ともに生きるアジアをつくっていくという大構想、これはできないと思うんですね。
 だから、そういう意味では、アジアの中の日本の信頼度、これを将来きちっと保っていく、あるいはそれを確保していくというためにも、イラクの特措法の話については、なぜ我々がこれに行くのかということが国内にもあるいは国外にもよくわかる形で議論を深めていくことがどうしても大事だと思うわけです。
 今のところは、議論がそこまで深まっているかどうか、私は若干まだ心配があるものですから、そういう意味では、なぜ行くのかということ、ただ単に我々として主体的に発想したと、あるいは、安全面も不安があるし水も云々ということを超えて、国家戦略としてあるいは外交戦略としてこういうことは非常に大事なんだと、中東の平和と安定のみならず、例えばアメリカとのつき合いをこうするから、このためには今回必要なんだという発言を、ぜひともはっきりとしたメッセージで送っていただきたいと思うんです。
 そして、派遣の自衛隊員の人たちが、今回、戦闘地域、非戦闘地域とありますけれども、私自身が理解しているのは、こういうことじゃないですか、バグダッドとそれからその北部については、いろいろ散発的なゲリラ活動みたいなものも今起こっている、米英の兵士も犠牲になっている。ところが、南部についてはもう完全にアメリカ軍を中心とする制圧下に入っている。だから、もうほとんど、ほとんどというか、これは絶対安全だということを思っておられるように思うんです。
 実は、私も現地の人と話したんです。それはもう彼らがそういうふうに言っていまして、それは自信を持って言っていた。今、新藤政務官からもいろいろな御報告がありました。
 多分、そういうことを踏まえての話だと思いますから。石破長官なり川口大臣あるいは福田官房長官がおっしゃる中で、それは絶対大丈夫なので、気をつけます、そういう戦闘地域に行かないんだからと言っておられるのは、多分そういう南部のもう絶対大丈夫な、アメリカ軍の制圧下にあって、その保護のもとにあるんだから大丈夫だということだと私は思うわけなんです。
 そのとおりでいいですか。
石破国務大臣 イメージとしてそれに近いものはございます。ただ、それが確定をしているわけではございません。
 これは、むしろ先生のお教えをいただきたいなと思いますが、イギリス兵が多く死傷したということがございました。南部は安全だと言われながら何事であるかというような御指摘をいただいたこともございます。
 ただ、イギリスの場合には、アメリカとやり方が違って、自分たちで武装して守るというよりも、現地のイラク人の治安組織、そういうものにゆだねて、自分たちはほとんど武装もしないで、むしろ、そちらの方がいいやり方なんだというイギリス流の考え方があったということをおっしゃる方もあります。
 そうしますと、その地域がまさしく戦闘地域であるかないか、そして、同じ弾を撃つにしてもどういう人間が撃ってくるか、それに対してどのような備えを持つか、そのようなことを総合的に勘案することが必要で、現在、私どもとして、南の方が必ず安全だ、非戦闘地域だというふうに断定をしているわけではございませんが、総体的に考えれば、そういうイメージに近いものは持っております。
山口(壯)委員 そういう意味では、今回、極めて安全に近いところに行くという状態に、南部をとってみれば私は言えると思うんです。だから、それはいろいろな人がいろいろなことを言うでしょう。もうそれだったら、自衛隊でなくたっていいんじゃないか、いろいろ言うでしょう。他方、それは戦略的な観点から行こうとしているということを、はっきり説明しないとわからないと思いますね。
 それで、一つ、国会承認の話。今の法案では、国会の承認は事前ではないですね。二十日以内とかいう話があります。他方、今回は、復興のために行くわけです。ある意味で戦争が差し迫っているわけじゃないわけですね。もう主たる戦闘は終わった、あとは復興に行くんだということであれば、特に私は国会の承認というのは事前であるべきだと思うんです。
 ちなみに、自衛隊法の七十六条でしたか、石破長官大変お詳しいわけですけれども、防衛出動の七十六条、これは国会の承認というのは事前になっているわけですね。そういう意味では、軍隊を動かすということについて、非常にシビリアンコントロールというものを意識している。シビリアンコントロールの最たるものはシビリアン、すなわち、市民の代表の国会がコントロールするという部分が非常に、最終的なものですから、国会の承認というものが、やはり軍隊を動かす場合には事前の承認というものが原則であるべきである、そのメッセージが私は最初に出てきてしかるべきだと思うんです。
 そういう意味では、今回、復興ということで、特に、時間的余裕もあるんだから、国会の承認が事後になってしまっているというのは極めて納得がいかぬなというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。官房長官、お願いできますか。
福田国務大臣 この議論は何回かさせていただいておりますけれども、なぜ個々の活動について承認を得なければいけないのか、こういうことになります。それも事前承認を得なければいけないか。
 そもそも、今回の自衛隊の活動は武力行動じゃないということです。あくまでもイラクの国民の福祉の向上というか、復興のために、また人道的なために行う活動であるということでありますから、いわゆる防衛活動とは違う、根本的に違う、こういうように思います。
 実際問題からいって、事前承認ということになりますと、当然ながら計画をつくって、そして対応措置をつくり、国会の審議をいただく。この審議がどのぐらいかかるか、こういうこともございますし、またその審議をしている間は、では、実際に資材の調達とかそういうものをしていいのか、いけないのか、通常はいけないんだろうと思います。また、審議の途中、変更になるとか、これは変更という概念ではないと思いますけれども、変更しなきゃいかぬというようなことになれば、また資材の調達を変えなきゃいかぬとかいったような問題がありまして、機動的に対応するというのは非常に難しい。
 復興という概念からいきますと、時間がかかるということはあるんですけれども、その中には人道的なこともございまして、緊急に医療を提供しなきゃいかぬとかいったようなこともあるかもしれぬし、それはやはり、そういうことについて機動的に対応できるような仕組みというのは必要なのではなかろうか。
 そして、そもそも、この法律そのものが今事前承認、事前審議をしていただいておるわけであります。そして、この中で、限られたことについてやるという活動について、その個々のことについては事後承認という、今この法律に書いてありますとおりで御理解をいただきたい、こう思っておるところでございます。
山口(壯)委員 今、官房長官、法律は事前承認だからというふうにおっしゃるわけですけれども、ただ、持っていく武器の話とか、それは全部後の基本計画の中で入ってしまうわけですね。国会の中では、そういう議論が必ずしも直接の中身としては行われないわけですから、やはりそこは、本当はきちっとした事前の承認というものが私は必要だと思います。
 そして、特に軍隊を動かすわけですから、国際政治の中で持つ意味というのは特に大きいと思いますね。特に大きい、そういう軍隊を動かすという政治的な意味を持っているのであればこそ、なおさら国会の事前の承認ということが議論されてしかるべきだと思うんです。ぜひともこれは、まだ時間が若干ありますから、やはり議論の、検討の余地を残しておいていただきたいと思うんです。
 そしてあと、さっき武器の中で、石破長官、いろいろ議論されていました。さっき私もちょっとビデオを起こしまして、多分、石破長官も言葉が足りなかったんだろうと思いますから、あのとき言われたのが、持っていく武器の種類というものは制限がない、こうおっしゃったわけですけれども、ただし、これは憲法九条の解釈の枠内で、核爆弾を持っていっていいわけじゃないわけですから、そういう意味で、これは制限がないというよりも、やはり本当は制限があると思うんです。
 他方、それは決して軍事の常識で決められるものでもなくて、やはり日本として、今の憲法九条がある以上は、あるいはその憲法九条の今の解釈がある以上は、武器の種類というものは制限がないというのは、私は不正確だと思うんです。長官、この際、もしも修正することがあれば修正しておいてください。
石破国務大臣 どうも、ビデオをごらんいただきまして、ありがとうございました。
 それは、もっと正確に申しますと、法的に明示された制限がないということだと思います。つまり、法律でここまで持っていっていいという明示されたものがないというふうに、事実は申し上げた方がよろしかろうかと思います。
 ですから、もちろん、何を持っていってもいいというものでは決してございません。それは、正当防衛にいたしましても、緊急避難にいたしましても、自然権的なものという御説明を今までしております。自分の身を守るための自然権的なものであるとするならば、おのずから、そこに制約はございましょう。
 しかしながら、相手が何を持っているか、つまり、普通のけん銃なのか、それとも小銃なのか、機関銃なのか、サダム・フセインがいろいろな武器を配っております。そこにおいて、自分たちの身を守るために自然権的に行使をするにしても、それはある程度向こうとの対応というものが必要であろうということでございます。
 常識というふうに申し上げたのは言い方が足りませんで、これは、軍事的な知識ということだろうと思います。すなわち、どの銃がどれぐらいの性能を持っておって、どれぐらいの連射が可能であって、どれぐらいの貫通力を持っておってということであれば、これはもう先生も運用局運用課にいらっしゃいましたから、よく御案内のとおりで、本当に、実際に銃を撃ち、銃を持ち、そういう人たちが知っておることでございます。
 ですから、知らない者が勝手に、これでいいな、そういうことがあってはならない。もちろん、シビリアンコントロールはきちんとかけなければいけませんが、実際に自然権的な権利を行使して、何かあったときに自分の身を守らねばならない、少なくともその権限を持っていく、そういう人たちの感覚、知識ということで申し上げました。
 当然、おのずからそこに制限というものはございます。法的に明示されたものはございませんが、その現場の状況、与えられた権限、行く地域、そういうものを考え、当然、おのずから決まってくるものだと思っております。
山口(壯)委員 きょうは、イラクの方になぜ自衛隊を派遣するかという戦略的なメッセージというのをぜひはっきり出していただきたいということから始めて、いろいろな議論をさせてもらいましたけれども、最後の部分は、法律に制限がない云々じゃなくて、憲法という大きな、今、あの九条の解釈を前提とする以上あるわけですから、やはりそこは、憲法としての枠が今の解釈を前提とする限りあるということをやはり持っていただきたいと思うんです。
 最後に、我々は、このイラクの復興に当たっては、憲法九条を例えばイラクに受け入れさせるぐらいのおもしろいことをいろいろ考えたっていいと思うんです。そういう意味では、イラクを平和にしていくというんだったら、憲法九条をあんた受け入れてみろ、それだったら復興も一生懸命やろうというぐらいな、いろいろ日本から知恵も出して、そして中東の平和と安定のためにみずから秩序をつくっていくという気概を持って頑張っていただきたいと思うんです。
 どうもありがとうございます。
浅野委員長代理 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 きょうは、いろいろな意味での諸先輩方々に教えていただきたい、そんな思いで立たせていただいております。
 そして、何よりも石破長官におきましては、防衛、自衛隊関係に関しては、本当にかなり奥深く勉強され、御存じだった。かれこれ、六十一年に先生が当選されてから、若くして議員になられ、その専門家としてやられているのを私も秘書時代から見させていただく中、本当に頼もしい方だな、そんな思いで見させていただいておりました。
 その石破長官に、とりあえずは素に戻るというか、基本に返っていただくために、一つ、この論議の前提となり得る話、政治家にとって一番大事なこと、もしくは必要なことというのは何なのか、石破長官にお尋ねいたしたいと思います。
石破国務大臣 恐れ入ります。先生には昭和五十年代からいろいろなことでおつき合いをいただきました。昔のことを思い出しておったところでございます。
 何が一番大切なのか。大切なことはたくさんあるだろうと思います。ただ、自分が今言っていることが自分の利益を考えていないかどうか、あるいは、自分を政治家にしてくださっている人たち、それは一票を入れてくださった方々のことですが、そういう人たちの気持ちを裏切っていないだろうかということ。あるいは、今防衛庁長官という立場でおることからかんがみて申し上げれば、どなたかの質問にちょっと興奮ぎみで答えて失礼をいたしましたが、実際に本当にシビリアンコントロールということで大事なのは、命をかけている、宣誓において身の危険を顧みずという宣誓をする人たちの立場に立って自分は物事を考えているだろうかということで、いずれにしても、自分の利益というものをできるだけ、人間ですから全部ゼロにすることはできませんが、捨象して考えることができるように、いつかはなりたいものだと思っております。
佐藤(公)委員 大変いいお話を今聞かせていただけたかと思います。本当に政治家というのは、信念や理念、また、一つの目的、目標、それにおける基本原則、歴史観というものが大事だという方もいらっしゃったり、また、私は、創造力というものが非常に大事だという方もいらっしゃり、私もそう思う部分があるわけでございます。
 今石破長官が、そういった基本前提、政治家とはどうあるべきか、どういうものを持ち合わせていくものか、そういったものの御答弁があったわけでございますが、それを前提にこれからの質問に答えていただけたらありがたいかと思います。
 私も先日の代表質疑において壇上に立たせていただきました。そのときに、ただ一点のみ、憲法解釈、集団的自衛権のことについて質問をさせていただきました。これに関して、総理から簡単な答弁、または冷たいというか無責任な答弁で終わってしまった、そういうふうに私は思います。
 もうこの総理に、またはこの件に関して福田官房長官に聞いても、多分話は簡単簡潔に終わってしまうと思います。石破長官の今までおっしゃられてきた、まさに憲法上の集団的自衛権の持論というものを私も昔よく聞かせていただきました。少しの時間ですけれども、石破長官の集団的自衛権の持論を少しお聞かせ願えればありがたいかと思います。
石破国務大臣 これは、小泉内閣の一員でございますので、現在の政府の見解に従うということは当然のことだというふうに考えております。政府の見解に従えないようであれば、これは閣僚になってはいけないし、なるべきでもないというふうに思っております。
 ただ、集団的自衛権という議論をしますときに、私、何かの新聞か雑誌で書いたような気がしますが、人によってイメージがすごくてんでんばらばらで、集団的自衛権って何ですかということについての認識の統一もないままに、集団的自衛権が行使できなければ日本はだめだとか、あるいは集団的自衛権の行使をすることそれ自体が日本の国の軍国主義につながるものだとか、いずれにしても、議論が物すごく、定義を精査しないままに、あるいは議論のロジックを整理しないままに、何となく上っ面だけの議論に終わっておるような気がいたします。
 私は、そういう感情的な議論で物事を決めていいとは一切思っておりませんで、そういうような、定義は何か、そして集団的自衛権を保有しているか保有していないか、行使できるか行使できないか、行使するか行使しないか、いろいろな結論を導き出すときに組み立てていく論理というものが、賛成の立場にせよ反対の立場にせよ、きちんと論理を明示して議論をするということが、この集団的自衛権の議論は政治の場において、国会の場において行われることは結構なことだというふうに総理がおっしゃっておられます。
 私も憲法調査会でそういう議論を何度もいたしました。委員と御一緒だったこともあるだろうと覚えています。その論理というものを整理しないままに感情的に集団的自衛権の議論をすることは、私は余り益のないことだと考えております。
佐藤(公)委員 石破長官の今までの過去の発言をいろいろと見させていただき、また確認もさせていただいております。
 石破長官は、私が国会議員をやっている理由は二つある、その一つは、集団的自衛権の行使は合憲であるということを確立したい、こうはっきりおっしゃっていますよね。そしてまた、平成九年のときの予算委員会や何かで何とおっしゃっているのか。逃げも隠れもいたしません、私は、集団的自衛権というものは日本国は保有し、使える、しかし、使うか使わないかはまさしく政策判断であるというふうに思っており、それは私の一つの考え方であります、こういった勇ましい御発言が幾つも残っております。しかも、公式の場での発言です。
 このたび私は集団的自衛権のことに関して総理に尋ねたらば、それは今までの解釈等は変えないということで、この法案等を引き続き延長していくということをおっしゃられました。では、石破長官、まさに今までの国会議員の、さっき、本当に政治家として基本なことは何かということを私は聞きました。その基本にのっとって、今誠実にそれを実行されていると言われるんでしょうか。
石破国務大臣 先生も、守良先生の秘書官をお務めになり政治の世界に長くいらっしゃいますから、政治家が自分の思っていることを実現するというのはどういうことなのかということをよく御認識のことだと思います。
 私も、昭和六十一年から、有権者のおかげで五回当選をさせていただいて、今日ございます。その理想というものをどのような形で達成するか。そして、政府の中にあって、それをどのようにして実現していくか。そして、政策を変えていくためには、これは憲法解釈に限りません、大事なことは、世の中の世論というものが、日本の国は独裁国家ではありませんから、大臣が一人だけで、総理が一人だけで世の中を動かせるということはないと思います。仮にそのようなことをすれば、必ずひずみが来て、民主主義を冒涜した報いが来るだろうと私は思います。
 集団的自衛権というものについて、勇ましいかどうかは別にして、私が議員のときにそういう発言をした、今でも議員ですが、閣僚でないときにそういう発言をしたということは事実ですし、私は、ホームページからそのようなことを消すようなことはいたしません。そんなふうに申し上げてまいりました。
 しかし、閣僚である、そして総理大臣が集団的自衛権の解釈は変えないとおっしゃる以上、それを私は変えますと言うことは、それは当然閣内不一致になりまして、その内閣にとどまることは許されないことだと私は思っております。
 そして、いいですか、集団的自衛権というものをどのように、つまり、使えなければ何が起こる、そして、今の憲法解釈の中で集団的自衛権は使えないんだということによって何が起こっているか。
 先ほど山口議員の御質問にもございましたが、集団的自衛権というものはどういうものなのかということを正しく認識し、検証し、拡張解釈も縮小解釈もせずに、どういうことなのかということをきちんと詰めて、それで、もうこれで十分だという考え方もあるかもしれない、これでは足りないという考え方もあるかもしれない。本当にそこをきちんと詰めて議論が行われているだろうか。そして、それが本当に国益にかなっているだろうか。そして、政策をもし変えるということであれば、国民世論はそれを納得しているだろうか。それが民主主義においてそれぞれの政治家の考え方を実現するステップだというふうに私は思っております。
 私は、おかげさまで委員よりも少し長く政治家をやらせていただいております。自分の考え方というものが本当に実現していくためには、本当に恐ろしい時間と恐ろしい努力と、大勢の人たちの共感を得る、そういうような努力というものが必要だと自己反省の中に思っておるところでございます。
佐藤(公)委員 私は、単純な人間でございます。今、丁寧にお話しをいただいたこと、本当に今ので、その石破長官の姿勢でいいのかどうか。さっきもおっしゃいましたよね。応援してくださる人たち、また後援者の方々を裏切らないと。つまり、自分の主張していることはある意味で公約でもあり、主義主張、これを裏切るようなことになっているんじゃないかということを僕は言いたい部分があるんです。
 それで、石破長官は前にもこんな発言もしているんですね。これは立法不作為の最たるものではないかという気がする。内閣法制局が最高裁、立法府より権威があるというように思われている。おかしくないか。国権の最高機関は国会だ。国家安全保障基本法を定め、その条項で集団的自衛権の行使、それ自体は憲法上容認されるが。こういうこともおっしゃられているんです。
 今までの言われてきたことそのもので、内閣に今入られ、憲法解釈が変更ができない、集団的自衛権は認められないというこの内閣に入る。では、入る前の段階でそういった御議論は、内閣、小泉総理とはされたんでしょうか。
石破国務大臣 恐縮ですが、私は先ほど来申し上げておりますのは、日本は鳥取県第一区だけで成り立っておるわけではございません。日本国じゅう、全国三百小選挙区あるいは比例区の先生方もいらっしゃいます。それは、きちんとした国民世論というものがあって、そして、その大方の御賛成をいただくことができなければ、どんなに立派な政策を考えても、独裁国家でない以上、それを決めることはできません。
 私ども、少なくとも自由民主党がとっておりますやり方というのは、本当にいろいろな議論があって、そして与党三党で議論をして、そして国会の御議論を経て一つ一つ決めていくというやり方をとっております。
 おれの言っていることは正しいから、これが実現できなければ政治家としてだめだなどということであれば、それは本当に、当選一回も経ないまま、自分の何の理想も実現できないまま政治家をやめなければいけないことになります。
 どんなに先生方から、今佐藤先生からおしかりをいただいたのが初めてではございません。私は、小泉内閣で防衛庁長官を拝命しましてから、もう衆議院におきましても参議院におきましても、先生と同様のおしかりはずっといただいてまいりました、今までおまえの考えていたことと違うじゃないかと。
 しかし、理屈として申し上げれば、解釈を変えるということ、それは、それだけでやったとすれば、大臣になる前に議論しておったことでございます、法的安定性というものは一体どうなるんだと。ある人が、九条とは限りません、憲法の解釈はこうであるというふうにある総理大臣がおっしゃった、それによって解釈が変わった。次に全く別の考え方をする総理大臣が出てきて、やはりあれはやめたということになったりいたしますと、それは法的安定性というものに物すごく欠けることになるのだろうと思っています。
 一部にあるように、憲法解釈は総理大臣が一言言えばそれでいいのだ、そういうものなのだということを私も以前申し上げたことがございます。しかし、よくよく考えてみると、それは法的安定性に欠けることおびただしいのではないかということを考えまして、そのような論を申しました。
 私は、本当に自分の考えていること、それは多くの共感者がなければ決して実現できるものではありません。私は、自分の考え方が小泉内閣と違うから、それは入らない、それも一つの見識だと思います。しかし同時に、私は、集団的自衛権というものが本当に認められない、それが行使できない、その中で、一体何がどこまでできるんだろうというきちんとした検証をした上でなければ、議論は次に決して進むことはありません。
 憲法の議論というものは、本当にきちんとした精緻な議論のもとで、そして国の平和と独立、国民の生命財産、そういうものにかかっておるものでございますから、真剣な議論、そして、自衛官の皆様方の命をお預かりする立場におりますわけですから、きちんとした議論のもとに一つずつ積み重ねることが、私は、いつの日か理想を実現することがあるとしても、そこへの道のりだと思っています。
 いずれにいたしましても、その理想というものが何であるのか、そこもみんながいろいろ議論をしていくべきことだと思います。小泉内閣の一員である以上、集団的自衛権は憲法上行使し得ないという解釈に立っていろいろなことをやっていく、これは当然のことでございます。
佐藤(公)委員 法的安定というのは、これは当たり前のことであると思います。これは許容範囲です。許容範囲の中でそこまでいってしまったならば、それはまさに政権交代ができないことになってしまいます。そういう意味で言ったならば、そんなものは当たり前のことであって、ただ、そこにおける、同じ政権の中でも、また党の中でも、政策の許容範囲の中を変えていく、これは十分私はできると思います。
 いろいろな委員の方々からもいろいろな話が今出ておりますけれども、一つだけお聞きします。では、石破長官は、総理大臣になられたら、憲法解釈は、まさに集団的自衛権は、解釈を変えることになるんでしょうか。
石破国務大臣 そういう仮定のことにはお答えができない。
 ただ、どうなんだと。それは先生、法的安定性というものは、やはり私は、立法によってきちんと担保されるべきものだと思うんです。そうでなければ、法的安定性というものは成り立たないものでございます。
 では、その自衛権について、いろいろな御議論がございます。それでは、今の憲法というものを補っているものは何なのか。憲法というものがパーフェクトではないとするならば、補っているものがあれであり、これである、いろいろな御議論が世の中にはございます。
 いずれにいたしましても、憲法の解釈というものが、それでは政権交代できなくなっちゃうじゃないかというお話がありますが、それは私は、政権交代ができないとか、そんなことを申し上げているわけではありません。
 しかしながら、憲法の解釈を変えるということは、それなりの法的安定性を伴うということは、私は法治国家としての知恵だと思います。そして、それがなし得るのが、国権の最高機関であり唯一の立法府である国会の責務だというふうに考えておるわけでございます。
佐藤(公)委員 この集団的自衛権の話というのは、実は、この法案を含めて、本当に突き詰めて考えれば、そこに行き当たることが余りにも多いと思って、私はここにこだわって、長官の私どもを納得させる御答弁をいただきたいと思って、今聞いているわけでございます。
 これはもう余りしてもしようがないかもしれませんけれども、最後にもう一点だけ、では、検証するために内閣に入った、もう検証はし終わりましたか、している最中ですか。
石破国務大臣 そんなに簡単に検証が終わるような問題だとは委員も思っていらっしゃらないと思います。これは、物すごく奥が深くて根が深いお話でございます。そして、集団的自衛権に端を発するものもあれば、それはそうではないものもございます。
 これが本当に、長官に就任して以来七カ月になりますけれども、たった七カ月で検証が終わるぐらいであれば、それはもうとっくにできているだろうと思います。そんなに生易しいものではないことは、委員がよく御案内のとおりでございます。
佐藤(公)委員 私は本当に、石破長官のそれまでの御発言に関しては、非常に共感、共鳴する部分があり、期待もしていた部分があったんです。ですが、内閣に入ってからそれが全く途絶えてしまった。まさに今検証しているという、言いわけでしかないかなと私は思います。私ども、ちょっと長官の御答弁に対しては納得いかない、全く筋の通らない政治家に私は見える部分があります。
 では、これはここまでにいたしまして、次の話に移らせていただきます。再三出ております、戦闘地域、非戦闘地域に関しての話をさせていただきます。
 これは、今までの委員の中での質問、御答弁という中でも幾つも出てきたことでございますけれども、この非戦闘地域または戦闘地域ということに関して、石破長官は、戦闘行為とはという定義、または、それにおける国際的な武力紛争とは何か、こういうことを先ほども御答弁されたわけでございます。そのまま読ませていただければ、国際的な武力紛争とは何かといえば、国または国に準ずる、こういうようなお話がございました。きょう、委員の中から、この内容に関して質問もございました。
 では、もう一度これに関して確認をさせていただければ、今のイラクにおいて国及び国に準ずる組織というのが存在するのかどうか。政府としてそれをきちっと、存在をするのかしないのか、いかがでしょうか。答えられる方。
石破国務大臣 私がお答えすることが適切かどうかは存じませんが、イラクにおいて国というものは現在存在をしていない、国というか政権ですね、政府と申し上げてもよろしい。イラクを代表する、つまり当局、オーソリティーというものがあるわけでございますから、フセイン政権が崩壊をした後は、今、当局というものがあり、これから統治機構をどうやって立ち上げるかという段階にあるわけでございます。
 そうしますと、国または国に準ずる者ということを申し上げましたときに、例えばバース党というようなものがございます。バース党というものに求められるのは組織性ということだと思います。それが組織性というものを持っている場合に、そしてそれが国際的な武力紛争の一環としての一つのプレーヤーを構成する場合には、国または国に準ずる者ということになります。
 ですから、バース党というものが今どういう状況にあるのか、これはだれもつまびらかには存じません。与党の調査団も、これがバース党の残党であった、こんな組織だというようなことがもちろんわかるわけもございません。しかしながら、そこにおけるメルクマールは、国際的な武力紛争の一環としてということのプレーヤーとなり得るかどうかということになろうかと存じます。
佐藤(公)委員 なり得るかどうかじゃなくて、ここはとても大事なことなんです。定義において国及び国に準ずる、国に準ずるということの、その組織というか団体というか政府というものが存在し得るかしないか、政府としてどうそれをとらえているのかという、これは非常に大事なことです。これがあるかないかによって全く、右と左の方向に行ってしまう、そういう議論展開になりますけれども、石破長官は今お答えいただきましたけれども、福田官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 これはその判断が、一方の方に決めつけるということはしにくいような状況なのではないかと思います。ということは、要するに、北部とか西部のような地域において組織的な集団があって、そしてそれが戦闘行為とみなされるような行動を起こしているかもしれない、こういう状況でございます。
 この辺については、今、私も明言できないのでありまして、しかし、このことは、戦闘地域か非戦闘地域かという区分けをするといったようなことには大変大事な要素になると思いますので、この辺のことにつきまして十分な調査をし、または情報を得て、これから判断をしていかなければいけないと思っております。
    〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
佐藤(公)委員 では、今、政府としては、政府が、もしくは国に準ずる組織というものがあるかないか定かじゃないということなんですか。そこのところはきちっと判断できないということですか。福田官房長官、いかがですか。
福田国務大臣 さっき、私、答弁したとおりでございますけれども、要するに、明確にこうだというふうに言い切れない、そういう状況にあるということであります。
 ですから、もし、非戦闘地域があるのかといえば、それは、それを排除するということはできない状況にあると思っております。
佐藤(公)委員 先ほど石破長官は、私の前の委員の質問に対して、残党、バース党というものが国に準ずる組織というような表現をされたんですけれども、石破長官は、その残党、バース党、こういったものに関しては国に準ずると見るというふうに先ほどおっしゃったように私は聞こえたんですけれども、いかがですか。
石破国務大臣 それは、例えばという言い方をしたと思います。
 それは、実際に戦闘地域と非戦闘地域と分けて、憲法の要請するところに従いまして、非戦闘地域でしか活動しないということになっておるわけです。そうしますと、非戦闘地域、逆に言えば戦闘地域がどこなのかというのを定めますときに、国または国に準ずる者、国に準ずる者というものをどうやって判断をするかといえば、それは組織性であり指揮命令系統でありということになるでありましょう。ですから、例えて言えば、トランプの中でバツ、バツ、バツと、いろいろなことが書かれて、フセインの残党というものも大分拘束されたというふうに言われておりますけれども、あれに載っている人たちだけがすべてではないでしょう。それは、組織性を持ち、指揮命令系統を持って、それが、国または国に準ずる者、国際紛争の一環としての、そういう紛争を起こし得る組織であるかどうか、それは、実際に戦闘地域、非戦闘地域を峻別いたしますときの重要なファクターであります。
 今この時点において、きょう、本日ただいま、この地域、この場所において、これは国です、これは国に準ずる者です、こういうことがございますということを申し上げる段階にはございません。それは、きちんとした調査団というものを出し、先ほど来御答弁しておりますとおり、本当に行く人たちが、行く人たちの目で見て確かめて、何が非戦闘地域なのかということを確定して初めて言えることであります。
佐藤(公)委員 ちょっと私、わからないんですけれども、そのまさに国に準ずるというのが、今はバース党残党、今のある情報の中で国に準ずるというような組織があるのかないのかということなんですけれども、それすらもお答えはできないんでしょうか。今、そういうことの情報もなければ、判断もできないんでしょうか。
川口国務大臣 法律との関係でお話をしますと、だれがそうであるかということを今の時点で申し上げるということは、法律とは関係がないことであるわけです。
 法律で規定をしていますのは……(発言する者あり)お聞きいただきたいと思いますが、我が国領域及び現に戦闘行為が行われていない、要するに戦闘行為が行われているかどうか、戦闘行為ということを問題にしているわけであって、だれがそうかということは法律との関係では問われていない。
 それで、戦闘行為が行われているかどうかということは、それは先ほど来官房長官もおっしゃっていますように、個別具体的なその状況でこれを指定するときに決めるということであるわけですけれども、基本的に、戦闘行為をする者というのは、国及び国に準ずる組織の間で行われている武力であって、具体的に、バース党がそうかとか、あるいはフェダイン・サダムがそうかとか、何がそうかとか、そういう具体的な名前を今ここで挙げて申し上げるということではないということでございます。
佐藤(公)委員 ちょっと、すりかえないでくださいよ。僕は、石破長官がお話しされた一つ一つの戦闘行為とか戦闘地域とか、国際的な武力紛争とは何かとおっしゃった定義一つ一つをなぞるようにして話をして聞いているんですよ。
 その中で、まさに戦闘行為とは、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」であります。では、国際的な武力紛争とは何かといえば、国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力、こういうことをおっしゃっているわけでしょう。これ、おっしゃられた議事録そのままを言っているんですよ。
 ここに出てくる、国または国に準ずる、国というのがなくなっているというのはわかりました。では、国に準ずるというのはないのか、あるのかということですね。これによって、もしもないというのであれば、武力地域ということ自体、もう完全にイラク全域非戦闘地域というふうに全部言い切れちゃうじゃないですか。まずここの部分の入り口論をきちっと明確にしなかったら、この先の議論というのはできない。ここがはっきりしないから、いつまでたっても平行線の論議が続くんじゃないんですか。
 お二方挙げていますので、順次。
石破国務大臣 定義は、まさしく先生が今おっしゃっていただいたとおりであります。それは政府として従来一貫をしております。それを今回も使わせていただいております。憲法の要請に基づくものでございます。
 委員の全く同じ御質問が、たしか桑原議員からのお話にもございました。そんなことを言ったらば、イラク全土非戦闘地域になっちゃうんじゃないのかね、こういうお話でございますが、そうではございません。
 非戦闘地域、つまり、国というものをこの際一回置いて考えましょう。国に準ずる者というのは、逆に言えば、泥棒とか強盗とか、要するにバース党の残党、フセインの残党であったとしても……(佐藤(公)委員「違う」と呼ぶ)いやいや、違うという話をしているんです。いいですか、それであったとしても、それがフセイン政権もう一度とか、そういうことで国際的な武力紛争の一環、これになり得るものであれば、それはもう単なる泥棒でも何でもないわけです。
 しかしながら、バース党の残党であったとしても、職もない、お金もない、それではこれを奪ってきょうの糧にしようということであった場合には、同じバース党の残党であったとしても、これは国際的な武力紛争の一環たり得ないですね。(発言する者あり)たり得ません。たり得ません、それは。単なる物取りの話です。
 しかしながら、つまり自衛隊がやってはいけないこととは何なのかといえば、それは武力の行使というものをやってはいけないのです。そして、やってもよいことというのは、自然権的な武器の使用ということであれば、やってよいのです。何をやってよくて、何をやってはいけないかということにかんがみて、何が戦闘地域であり、何が戦闘地域ではないかということは決まっていくわけでございます。
 ですから、同じバース党の残党であったとしても、それはフセイン政権をもう一度つくるぞということで、組織があり、そして指揮命令があり、そのこと一つ一つは要件として認められるかどうか、認められなければできないのかという議論は、これはまた別でしょう。しかしながら、例えて言うとすれば、そういう組織性であり、指揮命令であり、そして目的ということがあるわけですね。これが、物をとってきょうの糧にしようという目的なのか、それが、バース党を再興し、いつの日か米英を追い出してフセイン政権をここに樹立するぞという目的なのか、それによっても異なるわけでございます。
佐藤(公)委員 僕は余り複雑にするつもりはないんです。
 指揮命令系統、組織のあり方、こういったもので判断をしていく、まあ、目的によってということもおっしゃいました。今、現状、この国に準ずる組織というのがあるのかないのかということを、イエスかノーかということでお答え願えればありがたい。これがまだ判断できない、わからないというのであれば、これがきちっと出てから法案は進めるべきだと思いますが、いかがですか。
石破国務大臣 これは、もとの議論、先ほど入り口論という場外発言がございましたが、まさしく、それがどういうものであるのか。
 今回、審議をお願いしております法律は、枠組み法でございます。そして、憲法に従いまして、非戦闘地域というものを定め、そして、防衛庁長官が安全管理義務、安全を確保する義務というのを負うわけでございます。それで、その枠組み法というものを御審議いただきまして、そして、先ほど来申し上げておりますように、実際に行く人たちが、その人たちの目で、つまり、今回、与党の調査団でも自衛官も参りました。その前の政府の調査団でも参りました。
 しかし、仮に、きょうの御議論でありますように、まだ具体的に確定をしたわけではありませんし、これからまださらに詳細を詰めてまいるわけでありますが、例えば給水というニーズがあるかもしれない、例えば航空輸送というニーズがあるかもしれない。そういうのを行う場合に、どこがそのような地域であるか、そして、その地域においてどのような国に準ずる者があるか、それはこれからきちんと確定をしていくことになるわけでしょう。それがなければ議論ができないということであれば、それはもともとの振り出しのお話に戻るわけでございます。
 私どもは、この法案を御審議いただき、そしてまた、きちんとした調査団を出すということは、けさ杉浦委員からの御要請にもあったとおりです。それは、ステップとしてそのようなものを私どもは踏んでおるわけでございます。
佐藤(公)委員 僕は、あるならあるでいいんですよ。ないだったらない、あるならあるでいいということです。
 さっき山口委員には、イメージ的にというのは一体全体、では石破長官、何ですか。北部にはそういった戦闘地域があり得るであろうみたいな危険地域、南部の方は安全なんだろうと、そんなイメージを抱いていますということをおっしゃったじゃないですか。ということは、あるんでしょう。そこにあるという前提で線引きを今後していきますと明確に答えればいいんじゃないんですか。
 それが何で、あるかないかわからない、判断できない、今情報がないというのはちょっとおかしいと思いますけれども、いかがですか。
石破国務大臣 山口委員の御質問に対しましてイメージという言葉を使いましたのは、それがどのような組織であって、どのような指揮命令系統を持っておってということを正確に申し上げることに対する知識が私にはないからです。
 それは、こういうような組織があって、まさしくこれが国に準ずる者である。それが、A党でもよければ、B党でもよければ、C団体でもよければ、D組でもいいのでありますけれども、これがこういうものであって、ここにこんなものが所在をしているということがきちんと私には了知できていない。そういうことをきちんと把握するということも、当然、きちんとした調査団を出すときには必要なことです。
 それは、そういうものがあるでしょう。組織的なものもあるでしょう。少なくとも、すべてが強盗、野盗のたぐいであるというふうに断定をすることは、私は今の時点でできないだろうと思っています。
 しかしながら、それがあるとして、それが個別具体的にどのようなものか述べてみよというふうに先生に言われますと、それは、個別具体的にこのようなものですということがあるということは申し上げられません。そういうものがあるということは決して排除できない、少なくとも、それは申し上げられることでございます。
佐藤(公)委員 では、石破長官にはちょっとこの件はもう聞きません。
 外務大臣、打ち合わせしているかもしれませんけれども。今の質問に対して、外務省や何かは、これは防衛庁とも関係があると思いますけれども、フロリダ州タンパにある米中央軍司令部等々、いろいろなところからのアメリカの情報がいろいろと入ってきていると思いますけれども、外務省としてはどういう判断を下しているんですか。国に準ずるというそういった組織があると一応断定するのかしないのか。いかがですか。
川口国務大臣 基本的に戦闘は終わったということを言っておりますけれども、それは一〇〇%終わったということは申し上げていないわけです。ということは、そのような戦闘行為が行われる可能性あるいはそれが行われる地域があるであろうという可能性は排除をしていない、そういうことでございます。
佐藤(公)委員 ここをこんなあいまいなままで前に進めることは、私はできないと思います。ちゃんとはっきりここの部分を、やはり国に準ずるということがこういった形であり得ると政府は判断する、その上でイラクの中を非戦闘地域、戦闘地域というふうに、今後情報を得て線引きをしていくというんだったらわかるんですけれども、ここもあいまいなまま……(石破国務大臣「そう言っているじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、だから、あるのかないのかということですよ。これはとても大事なんです。
 というのは、ないという前提でかかったとしたら、非戦闘地域というのはもうイラク全土になってくる。これは現実論の話じゃないです、本当に机上の空論的な話になっちゃうかもしれませんけれども、一応もうないということであれば全部が非戦闘地域になるから、どこにでも行けちゃうことになってしまいます、自衛隊が。(発言する者あり)いやいや、だから、これをきちっと現時点で、この法案を今審議しているところで、こういうことで国に準ずる者があり得る、もしくはないということを、ある程度明確になぜ話ができないんですか。
石破国務大臣 非戦闘地域というものを指定します。それを指定するということは、それは非戦闘地域というもの、非戦闘地域というものは、先ほどもどなたかにお答えしましたが、現に戦闘が行われておらず、活動が行われる期間において戦闘が行われることが予測されないというのを含んでいるわけですね。戦闘が行われておらずということだけであれば、きちんと、ここは行われておりません、少なくとも過去何日間か、何カ月間か、我々の定義で言うがところの戦闘がありませんということは、これはもう数字を見ればいいことですから明らかですね。だけれども、活動する期間においてそういうことが予測されないということになりますと、これは可能性を含むものでございます。これも戦闘地域という概念に入ります。そういうところでは行えません。非戦闘地域というものを指定するというのはそういうことでございます。ですから、戦闘地域があることを私どもは否定をしたことは一度もありません。そういう地域があることを排除いたしておりません。
 しかしながら、それが個々具体的に、どの地区においてどのような団体がどういうような戦闘行為をやっておるか、ましてやどういうことが予測されるか具体的に述べてみよというふうに言われたときに、それをきちんきちんと特定できるだけの調査がまだ行われていない。ですから、ちゃんとした調査団を出すというのは、この枠組み法で枠組みを決め、そして実際に参りますときにはちゃんとした調査団、それはプロの目で見る人たちが行ってきちんと見るということでございます。そこにおいて峻別をするということになります。
佐藤(公)委員 これは峻別できないですよ。それだし、僕は一〇〇%と言っているわけじゃないんです。五〇%、六〇%可能性があって、これを一応設定しているというのでも構わない。そういったこともあいまいなままでの答弁というのは、僕はきちっとこの法案審議ができるとは思わない。これに関しては、引き続きまた各委員がこれに関して話をしていくと思います。まさに僕は、非戦闘地域、戦闘地域というのは、ここの入り口論にすべてがあり得るのかなというふうに思います。
 そして、石破長官がまさに先ほどおっしゃった非戦闘地域、戦闘地域、これにおいての一つの線引きの中で、担保ということをおっしゃられた。武力行使一体にならないがための担保ということをおっしゃったのは覚えていらっしゃいますよね。おっしゃられていましたよね。そうならないようにするために、武力行使一体化にならないための担保として非戦闘地域という言葉を使った、こういうことをおっしゃったんですよ。
 これは、一つの抑制的な長官の考え方としては僕は正しいと思います。しかし、それに余りにも偏り過ぎちゃっている。一番大事なことは人命じゃないですか。危険度じゃないですか。安全性じゃないですか。それを安全性を、非戦闘だの戦闘地域ということでやることは非常に不十分だと思う。一番大事なことは、自衛官なりやはり日本人、日本国民、これはちょっと範囲を広くしますけれども、そういう意味での、まず安全性ということの一つの基準における地域限定をするということが僕は大事だと思うんです。
 ちょっと待ってください。私がしゃべり終わってからお願いします。安全性というものを一番考えるべきだと私は思います。その意味で、ここを戦闘地域、非戦闘としたのはいかにも意図的であり、自衛隊をどこにでも派遣できるような状況のすりかえで何か議論している、私はそうとらえます。
 一番大事なことは、自衛官が安全である、この担保というのは一体全体何なんですか。私は、この自衛官たちの担保というのであれば、まさに地域の限定性、そして期間の一つの限定性、または武器携帯における範囲等々のことがあると思います。では、自衛官たちの人命ということを、安全性を担保するものは一体全体何ですか。
石破国務大臣 お言葉ですが、本当に先生だけが自衛官の安全を考えているわけじゃないんですよ。みんなこの法案をつくっている人間は、きちんとどうやって自衛官の安全を保つかということを考えてこの法律をつくっているんです。この法律をよく御理解いただいて……(発言する者あり)よく御理解いただいてください。
 それは、政府がそのような、一番大事なのは自衛官の安全だというふうにおっしゃいました。それは私どもも同じように考えています。自衛官の安全というものを考えないでこの法律をつくったのかという御趣旨でこれは御質問になった。それは、一番の安全は自衛官の安全だ。しかし同時に大事なことは、我が国は憲法に従って武力の行使というものを行ったという評価を受けないことは、これは同時に大事なことでございます。人命が大事だということも大事です。しかし同時に、これは、私どもが日本として武力の行使をしたというふうに評価をされないことも重要なことです。
 したがって、非戦闘地域というところで活動を行い、かてて加えて、官房長官が午前中に答弁をなさいましたように、その非戦闘地域の中でも安全な地域というものを選んでいく、探していくということも重要なことです。
 それは安全かどうかということは、これは例えば全くの民間人の方が、例えて言えばイラクを歩いて安全かどうか、これは極めて安全だとは言いがたいものがあるでしょう。地理不案内な人がバグダッドの町中を歩いたとしたら、これはだれも安全だとは言わないでしょう。しかしながら、権限を与えられ、そしてまた自然権的に自分を守るという権限、そしてまたそのために必要な武器というものを持っていった場合には、それは安全、少なくとも危険を回避できる、そういうようなことにはなるでしょう。
 ですから、非戦闘地域というものを設定する、それは憲法の要請に基づくものでもあるし、安全な地域というものを担保、ごめんなさい、担保と申し上げましたのは、これは武力の行使をしないということの担保ということで何度か申し上げました。これは制度として担保をするというふうに答弁をいたしたはずでございます。
 そして、非戦闘地域であったとしても、安全な地域と安全ではない地域というものに分かれるだろう、それは。非戦闘地域であったらすべて安全かといえば、そうではない。非戦闘地域の中にあって安全な、つまり武器、そして使用権限、それでもって危険が回避できる地域というものを選ばなければいけない。その担保はどこにあるかといえば、先生も条文を全部お読みになって御質問のことかと思いますけれども、防衛庁長官は隊員の安全確保に努めなければいけない、それが条文的な担保ということになっておるわけでございます。
 冒頭、言い方が失礼でしたら、お許しをいただきたいと存じます。
佐藤(公)委員 今おっしゃったことは当たり前のことですよ。それを前提にみんな心配をし、安全確保のためにどういう方法論がいいのかということをこの法案に関して審議しているわけですよ。
 私は、当然長官が自衛官のことを思い、それに努めなきゃいけない、そんなものはわかっていますよ。その上で、具体的なところ、まさにさっき言いました担保と言われるのは、地域の範囲のこと、または期間のこと、または携帯する武器のこと、またはその人それぞれにおけるいろいろな状況をどう加えていってあげるか、そんなことでの安全性の担保というものが、いろいろなことの、総合的に考えて担保というものが存在してくると思います。そういう意味で言えば、先ほど地域のこと、まさに非戦闘地域ということに関しては、その安全性ということがないがしろにされて、武力行使一体化というところに余りにも偏ったことでの使われ方と私はとれる。
 では、そうおっしゃるんだったら、首を振られるのであれば、そこには安全性の一つの基準をもっと明確につくって出すべきじゃないですか。それがないんだったら、あなたの、長官の言っていることというのは、私は疑いを持たざるを得ない。
 非戦闘ということだけでこれで全部を済まされるんだったら、それはおかしいですよ。安全基準というのは、例えばAランク、Bランク、Cランク、こういう内容でしたらばここは安全だから、ここのBランク以上であるんであれば自衛官を派遣する、こういうような安全基準というものがあればわかりますよ。だけれども、これを戦闘、非戦闘だけで全部大ぐくりにするというのは、まさに僕は自衛官の安全というものの担保になり得ているとは思わないんですけれども、いかがですか。
高村委員長 防衛庁長官。簡潔にお願いします。
石破国務大臣 それは何を非戦闘地域として定めるか、そしてまたどこにおいて活動するか、これは具体的にこれから定めていくことになるわけです。
 それは、しかしながら、考えていかねばならないのは、どういうような地域にどういうようなものを持っていくか。権限というものは法律に書いてあるとおりです、本法の十七条に書き、そしてまた自衛隊法九十五条に書いてあるとおりです。
 そうすると、どの地区を指定して、そしてまた何を持っていくか、どうすれば自衛官の安全が確保されるかということは、日本国が武力の行使を行わない、どっちが上でどっちが下だというものでは……(佐藤(公)委員「すりかえです、それはごまかしです」と呼ぶ)どっちが大事でどっちが大事でないというものではないということを私は申し上げています。先生は……(佐藤(公)委員「私は両方大事だと言っているんです」と呼ぶ)ですから、私も同じことを申し上げているでしょう。
 先生は、武力の行使と一体化しないということを大事にして優先する余り隊員の安全をないがしろにしているという御指摘になったから、私はそうではないということをお答えしているのです。どちらも大事です。どちらが上でどちらが下というものではありません。どちらも私どもとしてきちんと追求をしていかなければならないものであって、どちらが上、どちらが下というものではありません。
 法律に書いてあるように、隊員の安全というものを確保する、それは当然のことでございます。その内容は、地域をどこに定め、それがどういう状況であり、どういうようなものを持っていくか、武器使用の態様というものは法律によって決まっておるわけですから。そうしますと、地域がどのような地域であり、何を持っていくか、それは本当に行く人たちがプロの目できちんと見て決める、そういうことです。
 それで、ごめんなさい、自分たちが、自衛官が決めるということを申し上げているわけではありません。それはシビリアンコントロールのもとにおいて決めるものです。
佐藤(公)委員 もう時間でございます。
 私は、どっちが大事で大事じゃない、両方とも大事、不十分だというふうにとっていただいた方がありがたいですね、不十分。それは本当に生命にかかわることだから、きちっとそこは組み立てる。
 それで、福田官房長官、福田官房長官もきょうの質疑の中で、非戦闘地域、戦闘地域に関しては、わかりにくいから、それに関してきちっともっとわかりやすい形で出すべきじゃないかという御答弁をされましたよね。そういうことがあるんであれば、これはそこをきちっと直してからもう一回出し直すべきだと思います。
 これにて私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
高村委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 私は、きょうは、イラク特別措置法の中でも、イラク国内に派遣された自衛隊が行う安全確保支援活動に絞って、法案に即して質問をしたいと思います。
 何しろ、我が国の自衛隊が、アメリカが戦争をやり、それに引き続いて軍事占領を続けている外国、具体的にはイラクですが、そこまで武装して出ていく、そして占領軍に対して支援をする、そういう法律、まことに初めてのことであります。もちろん我々は、憲法違反ではないかという指摘をしております。国際問題でもあります。
 この法案は、一言で言ったら、政府や防衛庁・自衛隊に対する権限付与法です。四年間どれだけの権限が生まれるかの権限付与法ですから、法の枠組み法と先ほど石破長官は使いましたが、ですから、その天井がどこまであるのか、厳格に私はこれから聞いていきたい。
 そして、この法律を運用するときにどう運用するかは、それは政策判断の問題だし、法の解釈の問題だし、適用の問題ですから、それは法の枠組みとは概念が違いますから、それは、私は、必要に応じて、その場合はそういうものだとして質問しますから、よく私の質問を聞いて、紛れた答弁はしないでいただきたいというふうに思いますので、念のため言っておきたい。
 まず、大事なのは、ですから定義であります。イラク特別措置法第三条第一項第二号、これがいわゆる安全確保支援活動の定義が書かれた法条であります。第一号はいわゆる人道復興支援活動でありますが、これについては一切きょうは聞きませんから、第二号の安全確保支援活動について聞きます。
 福田官房長官、この定義の具体的な中身を述べてください。どういうものなんでしょうか。
福田国務大臣 どういうものと言われますと、ここに書いてあるとおりなんでありますけれども、説明させていただきます。
 安保理決議一四八三は、これは、フセイン政権崩壊後におけるイラク国民の福祉増進の観点から、イラクの国内における安全及び安定を回復する、そのために貢献することを国連加盟国に対して要請したものでございまして、御案内のとおりでございます。
 現在、イラクにおきましては、医療やエネルギーなどの社会インフラ、これが不十分でございます。また、治安が良好でないという地域もございます。こういうような厳しい環境の中でもって、米英ほか多くの国が、軍隊を派遣するということなどをしてイラクの復興に向けた多様な活動を展開しているわけであります。
 法案に基づいて我が国が支援活動を行う対象となる国連加盟国、これはイラクにおいてこのような多様な活動を行っている国を指しますが、例えば、現地警察と協力し市民生活の正常化に努めている、そういう米軍の活動などはこれに該当する、こういうことになります。
 この法案の趣旨、内容は、そういう意味でございます。
木島委員 まず、概括的に聞くと答えにくいんでしょうから、それでは、言葉の一つ一つ、大事な概念を摘出して、具体的に聞きます。
 この概念の中核概念は、自衛隊が支援をする被支援活動の中身を「安全及び安定を回復する活動」という文言で表現しております。
 そこで、聞きます。自衛隊が支援をする相手の活動、安全、安定を回復する活動とはどういうことでしょうか。戦闘行動、治安維持活動を指すんでしょうか。もうちょっと抽象的に言うと、軍事行動、警察活動、これらを全部含む概念でしょうか。
福田国務大臣 「安全及び安定を回復する」、こういうこと、これは一四八三で要請をしている内容でありますけれども、その内容は、具体的に言えば、犯罪の防止などによってイラク国民の生命、身体の安全、ひいては社会全体の安全を確保するとともに、イラク国民の生活を安定させることによって社会秩序を回復させるための活動、こういったようなことであると思います。
 そういうような趣旨から考えますと、一四八三というのは、そういうイラクの国民の福利厚生のために、そしてまた、復興に向けた人道的支援を含めた活動である、こういうように考えられます。ですから、その趣旨にかなったものであるという限りにおいてその活動というものは国連決議の内容であるということで、その趣旨にかなっていなければそうでないということになります。
木島委員 今官房長官が行った答弁は、犯罪の防止、社会秩序を維持回復する活動と。概念としては、それは警察活動ですね。
 そうすると、警察活動だけですか、この条文の「安全及び安定を回復する活動」というのは。米軍や英軍やその他の国がやっている活動ですよ。自衛隊が支援する対象たる活動です。警察活動だけに限ると聞いていいんですか。戦闘行動を含む軍事行動は支援対象から外れると、はっきり答弁していただけるんですか。大事なところ、根本問題。
福田国務大臣 米英軍などによりますフセイン政権の残党に対する活動、これは、イラクの国内における安全及び安定を回復するために貢献することを国際連合加盟国に対して要請する安保理決議一四八三号に基づいて行われるものであるか、そういうことであります。先ほど答弁したとおりでございますが、若干敷衍して申し上げれば、この活動が犯罪の防止、これは先ほど申し上げましたけれども……(木島委員「質問に答えてください。警察活動だけに限定されるのか」と呼ぶ)ですから、先ほど申し上げたような趣旨であるというふうに認められれば、イラク国内における安全及び安定を回復する活動に該当する、こういうように考えられるわけでございます。ということですね。
木島委員 では、端的に聞きましょう。
 自衛隊が支援をする対象たる被支援活動、「安全及び安定を回復する活動」という法律の言葉でありますが、この中には軍事行動も含むと聞いてよろしいですね。
福田国務大臣 軍事行動ということも概念はいろいろありますので、一概にそれにお答えするのは難しいということでありますけれども、要するに、国連の加盟国に対して要請する安保理決議一四八三に基づいて行われるものであるかどうかということになるわけです。
木島委員 そんなのだめですよ。大体、力を行使する活動として、大きく、警察活動と軍事活動とあるんでしょう、概念上。警察活動をやるのは警察。軍事活動をやるのは軍隊、日本でいえば防衛庁・自衛隊でしょう。そこを聞いているんですよ。根本問題ですよ。自衛隊がイラクに行ってどういう支援をするのか、支援される相手はだれかという問題と、支援される相手はどういう活動をしている相手なのかというのは、この法律の基礎じゃないですか。そんなのすぐ答えられなかったら、こんな法案、撤回してください。
福田国務大臣 治安活動といっても、警察もやるときもあるし、軍隊がやるということもあります。ですから、逆の場合もあるんだろうというふうに思います、まあ、警察が軍事活動することはないとは思いますけれども。軍隊が治安活動をするということは、これはあり得るわけであります。要するに、この国連決議にかなうものであるかどうかということによるわけであります。
木島委員 では、もうずばり聞きますよ。
 きのう、我が党の赤嶺議員が、現在、イラクでは米軍が中心になって旧フセイン政権の残党掃討作戦をやっていると言いましたよ、現状を見に行って。では、自衛隊が支援する活動、被支援活動ですね、この「安全及び安定を回復する活動」の中には、現に行われている米軍によるフセイン政権残党掃討作戦は含むのか、イエスかノーか、答えてください。
福田国務大臣 いわゆる砂漠のサソリ作戦ですね、この活動は広範多岐にわたっております。その活動に従事している米軍の部隊等に対して我が国として支援を行うことは可能かどうか、こういうようなことになるんだろうと思いますけれども、要するに、この作戦に基づく個々の具体的な活動が、イラクの国内における安全、安定を回復する活動に該当するかどうか、これによって判断する、こういうことになるわけです。
木島委員 イエスかノーか答えてください。全然こんなのだめですよ、委員長。
 日本共産党は、これ、事前にレクをやりました。防衛庁、外務省の職員からレクを受けました。そのレクで、私は、安全、安定を回復する活動の中に相手国の軍事行動を含むのかと聞きましたよ。即座に、含みますと答えましたよ。
 含むと言えないんですか。イエスかノーか、質問に答えてくれればいいんですよ。こんなところで突っかかるつもりはないんだから、私も。
福田国務大臣 ですから、何度も答えますけれども、軍事活動をするとしても、それはいろいろなことがあるわけです。治安活動ということもあるし、軍事活動もあるかもしれぬ。しかし、そういう仮に軍事活動があるとしても、それが国連決議一四八三にかなうものかどうか、こういうことです。
木島委員 では、国連決議一四八三にかなえば軍事行動も含むという答弁だということで、ここで切り上げましょう。
 では次に、この活動を行う主体を、法案は国連加盟国という表現をしております。もちろん、その主なものはアメリカ、イギリスだと思うんです。それでいいですか。
福田国務大臣 国連決議はすべての国連加盟国に対する要請ですけれども、この法案では、この趣旨にかなった活動をする参加諸国であります。
木島委員 質問をよく聞いていてください。その主なものはアメリカ、イギリスかと聞いているんです。だから、主なものを聞いているんですよ。
福田国務大臣 そのとおりです。
木島委員 そう答えてくれればいいんですよ。
 それで、占領国はアメリカとイギリスです、国際法上。占領軍はアメリカ軍とイギリス軍です。ところが、この法案では、アメリカ、イギリスに限定しないで、国連加盟国と、もっと概念を広げたのは何でですか。
福田国務大臣 今、十四カ国か五カ国、実際の活動に参加しているわけですね。また、準備している国もたくさんある。こういうような状況の中で、国連加盟国すべてに要請する、こういうことになります。
 安定、安全の確保という意味で現在派遣している国はリトアニア、それから、派遣を予定している国は、イタリア、スペイン、ポーランド、ウクライナ、オランダ、こういう国々があるというふうに聞いております。
木島委員 国連安保理決議一四八三号前文十四パラグラフには、こういう文章があります。
 その前に、十三パラグラフ、「アメリカ合衆国及びグレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国の常駐代表発安全保障理事会議長宛二〇〇三年五月八日付け書簡に留意するとともに、統合された司令部(「当局」)の下にある占領国としてのこれらの諸国の関係国際法の下での特定の権限、責任及び義務を認識し、」そして十四パラグラフですが、「さらに、占領国でないその他の諸国が当局の下で現在活動している、又は将来活動しうることに留意し、」こういう文言を記述しております。
 これによりますと、国連安保理決議一四八三は、当然、アメリカ、イギリスが行動するんですが、それだけでないということを書いていることは当然。しかし、アメリカ、イギリスを除くその他の国の活動に対して、安保理決議一四八三は、すべて「占領国でないその他の諸国が当局の下で」活動するという文言になっております。
 そこで、お聞きします。この決議の「当局の下で」というのは、当局の指揮下に入るという意味ですか。これは国連安保理決議ですから、外務大臣に。
福田国務大臣 今、イラクの安定と安全の確保について、当局が全般的な責任を負っております。国連加盟国が活動するに当たりまして当局と緊密に連携をとっていくということが自然である、そういう考え方を反映したものでございます。
 したがいまして、例えば日本が自衛隊を派遣するとしても、当局の指揮命令に服するといったことではなくて、我が国が占領国というような位置づけになりません、あくまでも協力をするという立場でございます。
木島委員 そんな先回りして答えないでください。私は、国連決議一四八三の解釈を聞いているんです。
 パラグラフ十四は、「占領国でないその他の諸国が当局の下で現在活動している、又は将来活動しうることに留意」する。「当局の下で」というのは、英文はアンダー・ザ・オーソリティーであります。アンダーというのは、英語の辞書を引きますと、支配、影響、保護、監督、指導などのもとにというふうに日本の辞書では訳されています。アンダー・ザ・オーソリティー、当局のもとで、これは、今官房長官が先走って答弁したような、とても緊密な連携なんという概念じゃ全然ないでしょう。国際文書ですからね。勝手な、いいかげんな解釈を日本政府、できないんですから、きちっと答えてください。
福田国務大臣 私が聞いているところによりますと、指揮下というとアンダー・ザ・コマンド、こういうことになるんだそうです。ですから、当局のもとでというのは……(木島委員「違うでしょう、当局のもとですよ、これは。それは軍のもとででしょう」と呼ぶ)これは日本語の問題もあるかもしれません。
 いずれにしても、我が国はその指揮のもとでやることではなく、あくまでも当局に協力してやる、そして参加している国際諸国との、関係諸国との協力によってこの活動をしていく、こういう考え方です。
木島委員 今、答弁で、はしなくも官房長官は、アンダー・ザ・コマンドという言葉を使いましたね、英語。これは、軍のもとでですよ、軍の指揮のもとでということですよ、アンダー・ザ・コマンド。この国連安保理決議一四八三はアンダー・ザ・オーソリティー。そうしたら、同じようにオーソリティーの指揮のもとにということになるじゃないですか。オーソリティーというのは当局ですよ。もう連携とか協力とかいう概念じゃないでしょう。指揮下だということを今はしなくも自白したということになるんじゃないですか。
福田国務大臣 いろいろ考え方もあるようでございますけれども、例えば日本以外にも、サウジアラビアとかヨルダンとかいったような国々もあるわけです。そういう国々がこの当局のもとで、その指揮下でやるかどうか、こういうことになるわけですけれども、そういうことから考えましても、協力できる、そういう関係と考えていただいた方がよろしいのではないか。その指揮下に入るという国ももしかしてあるかもしれませんよ、それは日本ではないということであります。
川口国務大臣 ちょっと補足をさせていただきますと、イラクの中で活動しているすべての外国の軍隊、これは、その指揮下に入っている国は全く一つもございません。
 それで、この解釈ですけれども、現在はイラクの安定と安全の確保ということのために当局が全般的な責任を負っているわけでございまして、そのことから、この分野で国連の加盟国が活動するに当たっては当局と緊密に連携をとっていくことが自然である、そういう考え方を反映をした、そういうことでございます。
木島委員 国連安保理の決議の文書というのは非常に厳格ですよ。一つ一つの言葉、厳格ですよ。ですから、要請するという言葉と訴えるという言葉を区分けしているでしょう。区分けしているんですよ。それは加盟国がどこまで義務づけられるかに関係するからですよ。それと同じように、今イラクに対する占領軍が占領統治していますよ、その占領統治の法的性格、非常に大事だから、非常に厳格に法律の言葉を使っているということを念のため私、警告しておきます。
 そのぐらいにして、次に移ります。
 では、この国連決議一四八三で言う「当局」、オーソリティー、「統合された司令部」とは、具体的に今何ですか。CPAですか、米中央軍ですか。
川口国務大臣 CPAというふうに解されております。
木島委員 そうすると、そのCPAと米英軍との関係は、一言で言うとどういうものなんでしょう。もっと具体的に言うと、米中央軍です。
川口国務大臣 CPAと米軍の関係でございますけれども、これは、連合軍司令官及び米中央軍司令官は、敵対行為の阻止やイラクの領土一体性及び安全を維持すること等を通じましてCPAを直接的に支援するとしておりまして、CPAと米英軍は直接の指揮命令関係にはございませんけれども、相互に調整を行う関係にあるというふうに承知をしております。
木島委員 きょうはそこは深入りしないで、法案に戻りたいと思います。
 国連加盟国、まあその中心がアメリカ、イギリスだということはさっき答弁でしたが、国連加盟国の行う安定及び安全を回復する活動の根拠として、法案三条一項二号は、国連安保理決議一四八三号だけでなく、これに関連する政令で定める国連総会、国連安保理決議を挙げています。
 なぜ法案は、現にある国連安保理決議一四八三号だけじゃなくて、その余の、これに関連する政令で定める国連総会やあるいは国連安保理決議なぞを法案に盛り込んできたんでしょうか。
川口国務大臣 この法案に規定をしております人道復興支援活動及び安全確保支援活動につきまして、今の時点では、これらの活動を行うよう国連加盟国に要請する安保理決議一四八三に基づき実施をするということを考えておりまして、これらに加えて他の安保理決議が必要であるというふうには考えておりません。
 他方で、今後、国連総会におきまして、安保理決議一四八三と同様に、国連加盟国に対して、イラク国民に対しまして人道復興支援あるいはイラク国内の安全、安定の確保のための支援を要請する決議が採択をされたり、あるいは安保理においてもさらなる決議が採択をされる可能性、これが排除をされないわけでございます。
 このような決議が採択をされる場合には、その決議にも基づいてこれらの活動が実施できるようにあらかじめ規定をしておくということがより適切であるというふうに考えまして、そのような規定ぶりにしたわけでございます。
木島委員 そのとおりだと思うんです。私は本当に恐ろしい法律のつくり方だなと。現にない国連安保理決議ですよ。将来どんな形の国連安保理決議が出るかわからない。そういう、将来全く今の我々にわからないような安保理決議によって行動がイラクで行われる。その行動に対しても、自衛隊その他日本の政府、各省庁なんでしょうが、支援できる、そういう枠組みをこの法律でつくってしまうというんですね。すさまじい法律だなということを私は印象だけ述べて、次に質問を進めます。
 法案は、安全及び安定を回復する活動は、安保理決議一四八三号など、将来のこともありますから、等に基づきとあります。この「基づき」という言葉の意味を厳密に聞きます。これは根拠を意味すると聞いていいですか。
 要するに、自衛隊等が支援をする被支援活動、当然、米英等の国がやる安全及び安定を回復する活動は、勝手にやれるものじゃなくて、当面は安保理決議一四八三号を根拠として指定されたもののみだ、そういう意味で、根拠だと聞いていいですか。
川口国務大臣 この法律におきましては、我が国の活動を決めるその根拠であるというふうに考えております。
木島委員 これは違うと思うんですよ。我が国の活動を決める根拠じゃなくて、我が国の自衛隊等が支援をする被支援活動の根拠を書いているんですよ、この条文は。よく理解してくださいよ。被支援活動、米軍がやる活動ですよ。それが、国連安保理決議一四八三等に基づき国連加盟国が行うイラク国内における安全、安定を回復する活動ですからね。そこまで読み込んで答弁してもらいたい。
 次に移りましょうか。
 それでは、本題の、中核である、この条文の、そういう被支援国の行う安全及び安定を回復する活動に対して支援するために我が国が行う措置、これが中核概念ですから、その問題について、順を追って、いろいろな側面から聞きます。
 まず、我が国が行う措置です。支援するために我が国が行う措置の活動主体は、法案では明記されておりませんので聞きますが、自衛隊だけですか。それとも、自衛隊以外の我が国の政府機関、非政府機関、民間も含むんですか。もちろん、今論点は安全確保支援活動だけですよ。明確に答弁願います。
石破国務大臣 法文上は含み得るというふうな考え方をとっております。
木島委員 含むんだと思うんですね。それでは、支援するために我が国が行う措置、自衛隊だけじゃないということは一応承知をいたしました。
 では、措置の具体的内容を聞きます。私が想定しているのは自衛隊の措置ですから、それを想定して聞きます。
 具体的内容がどこに書かれているかというと、第三項の業務というところに書かれております。その問題の業務には、輸送、保管、修理、整備、補給、医療等々書いてあります。そこで聞きます。この三項の業務に書かれている輸送、保管、修理、整備、補給の対象には、米軍等が使用する武器弾薬も含むんですか。兵員も入りますか。
石破国務大臣 法文上は、これは含み得ることになります。
木島委員 では次に、この業務の中の一つに通信というのがあります。軍事行動を支援するために自衛隊が行う通信というのは何でしょうか。どういうことを想定してこの通信ということを盛り込んだんでしょうか。
石破国務大臣 それは、いろいろな諸連絡というものを行うための通信でございます。あるいは、情報の伝達、情報の共有、そういうようなものも含む概念であります。
木島委員 いいですか、こういう場面なんですよ。イラクで占領米軍が行動している、軍事活動も含む、治安維持活動も含む、そういう活動をしておる、それに日本の自衛隊が支援するんですよ。その支援の内容に通信というのが入ってきたんですよ。そうすると、どういうことなんですか。支援をする自衛隊と被支援者たる米軍とは常に通信網で結びつけられている、そういうことを想定しているということですか。
石破国務大臣 具体的にどういう形になるかというのは、これから実際に何を行うか、まだ法案も通っておらないわけでございますから、具体的に何を行うかというのはその場において決めることになります。
 ただ、ここにおいて通信と書かれておりますのは、それは、委員御指摘のように、では不即不離、がんじがらめというようなお話でございますけれども、もちろん、情報の交換というものは法案に従って必要な範囲内において行うことは当然でございます。
木島委員 しかし、権限付与法ですよ。しかも、武装した軍隊たる自衛隊がイラクまで行って、軍事占領している米軍支援のための法律ですよ。どういう活動をして支援するのかという中に、通信とか輸送とか入っているわけですから、それがどういうことを想定しているのか。やはり、この法律を出すからには、ある程度想定した内容を明らかにして我々に示さなきゃ、賛成していいものなのか、これは危ないから反対すべきなのか、判断できないんじゃないですか。
 それは、厳密に適用するときはまた別でいいですよ。しかし、法案を提出するには、それなりの、法律用語で言えば立法事実というのがあるんでしょう、この法案が必要な立法事実というのが。通信の立法事実は何ですかと聞いているんですよ。
 では、もういいです。次に進みます。
 この三項には、医療とあります。医療とは何を指すんでしょうか。これは、戦闘行動で負傷した米兵などの輸送とか治療などがこの医療という支援活動の内容として入るんでしょうか。
石破国務大臣 医療の内容は、傷病者に対する医療、衛生器具の提供並びにこれらに類する物品及び役務の提供ということになっております。
木島委員 その傷病者の中には、戦闘その他の行動で負傷した米英国などの軍人も入るんでしょうか。
石破国務大臣 それは条文上排除されるものではございません。
木島委員 支援活動の中に、建設というのもあります。そして、医療というのもあります。端的に言うと、野戦病院を自衛隊が行ってつくってやるということも法律上入るんでしょうか、排除されないんでしょうか。
石破国務大臣 少なくとも、それを行うことは排除されません。
木島委員 法案第四条に移ります。
 四条第四項には、対応措置を実施する場合には、外国にあってはその国の政府、イラクにあっては、イラクにおいて施政を行う機関、その他の関係機関と協議をして行わなければならないとあります。
 これはもう現実ですから端的に聞きますが、この法律で言う「イラクにおいて施政を行う機関」というのは、現在はCPAと聞いてよろしいですか。
川口国務大臣 現時点では、具体的にはCPAということだと思います。
木島委員 それで、先ほどの質問に戻る感じもするんですが、安保理決議一四八三の前文の十三パラグラフ、十四パラグラフが自衛隊が行う支援活動の根拠にもなると思うんです。そうすると、自衛隊などのイラク国内での活動も、安保理決議一四八三号によれば当局のもとで行うということになるんですが、一応そう聞いてよろしいですか。
石破国務大臣 もとでというのは、先ほど来政府が御説明しておりますとおりで、指揮、命令、監督、そういうようなことではないということの意味でのアンダー・ジ・オーソリティーということでございます。
木島委員 政府はそういう解釈で今頑固に答弁を続けていますが、私は、この国連安保理決議一四八三号は、軍事占領を続ける米軍をも律する安保理決議だし、その米軍を支援する自衛隊を律する安保理決議だとも思うんですね。根拠ですよ。その根拠たる安保理決議に「当局の下で」と書いてあるというそのことから、私は、政府の答弁は、当局、あるいは占領軍でもいいんですが、その指揮下に入らないという答弁は成り立たないということはもう明々白々だということを強調したいと思います。
 それで、次に聞きます。
 今、法案の幾つかの条文と国連安保理決議一四八三をいろいろ聞きました。
 もう一つ、この法案には大きな縛りがかかっている。それは、日本の行う支援活動、とりわけ自衛隊が行う支援活動には、法案第二条の「基本原則」の中の二項、三項にうたい込まれた、いわゆる縛りがかかっている。これは、石破防衛庁長官の言う憲法上の縛りだということになると思うんですが、そういう構造にこの法案はなっていると思うんです。
 そこで聞きます。これは防衛庁長官に聞きます。整理して答えてください。
 この法案二条「基本原則」の二項、三項で言う「現に戦闘行為が行われておらず、」ということは、どういう意味なんでしょうか。繰り返しになるかもしれませんが、整理して答えてください。
石破国務大臣 「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」が現に行われていないということでございます。
木島委員 そこで次に、では、国際的な武力行使の一環として行われるもの、国際的な武力行使の一環というのはどういう意味でしょうか。
石破国務大臣 「一環として」とは、人を殺傷しまたは物を破壊する行為がこのような国際的な武力紛争の一部を構成しているということを一環という言葉であらわしたものでございます。
 そして、ついでに申し上げれば、国際的な武力紛争というのは、先ほど来御議論がございますが、国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争いということになっております。
木島委員 法案第二条第三項の条文を、今一応、基本的な解釈をお聞きしました。
 そうすると、この三項の、自衛隊等が行動できない支援活動、対応措置をとることができないものとして、地域を規定している、そういうつくりですね、地域。戦闘地域では自衛隊は支援措置はできない、そういう法律のつくり方ですね。
 では、聞きますよ。確かに、戦闘地域では、自衛隊はそこでは支援ができない。それでは、支援ができない戦闘地域に隣接する地域、それは非戦闘地域になると思うんです、線が引かれる。隣接する地域、あるいはより離れた地域、そういうところでは、自衛隊は安全及び安定を回復する米軍等の活動を支援する業務ができると聞いてよろしいですか。法律家として反対解釈すると当然そうなるんですが。
石破国務大臣 我々の活動は非戦闘地域において行われることになります。反対解釈ということになるかどうかは知りませんが、非戦闘地域において自衛隊は活動することになります。しかしながら、そこにおいても安全確保というものには万全を期さねばならない、これは法律の条文にもあるとおりでございます。
木島委員 法案第八条第六項第二号には、「自衛隊の部隊等が対応措置として実施する業務には、次に掲げるものを含まない」ということで、排除措置を記載しております。その一つには、「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」という言葉が入り込んでおります。これは周辺事態法やテロ特措法でさんざんやった概念ですが、同じ解釈だと聞いてよろしいですか。
石破国務大臣 本法案におきましても、イラク国内で活動する他国の軍隊に対しそのような業務を実施する必要性はない。そもそも、そういうところにおいて発進準備中の戦闘機に給油をするということは、必要性が想定されないということでございます。ですから、自衛隊の部隊等が実施する業務から、武器弾薬の提供あるいは戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を除外いたしております。
 繰り返して申し上げますが、イラク国内で活動する他国の軍隊に対してそのような業務を実施する必要性はない、そのような観点から除外をいたしておるものでございます。
木島委員 これは、周辺事態法等と同じ文言、全く同じ文言ですから、当然同じ解釈だと思うんです。きょうはそこで繰り返すつもりはないんです。
 ということは、今まで私いろいろ聞いてきましたが、こういうことになるんじゃないでしょうか。要するに、現に戦闘行動が行われていない地域、あるいは戦闘行動が行われていると政府が認定した地域に隣接する地域、あるいはそれよりちょっと、より離れた地域、そういうところでは、いわゆる回復活動に従事する米軍の戦車に対する給油や武器弾薬の補給活動はできるということになる。
 禁じられているのは戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油と整備ですから、これはかなり離れたところでも、まさに攻撃のために今飛び立たんとする航空機に給油したら、これは一体化ということで批判されるからこういう歯どめをかけたんでしょう。
 すると、逆に言いますと、私が言ったような状況のもとでの米軍の戦車に対しては、給油、武器弾薬の補給ができる、そう解釈されるんですが、よろしいですか。
石破国務大臣 なかなか想定しにくい話だと思っておりますが、本法案におきまして、イラク国内で活動する他国の軍隊に対し、繰り返しになりますが、そのような業務を実施する必要性が本当にあるだろうか。これは、先生も軍事は大変通暁していらっしゃいますけれども、よその国の軍隊からそういうものの補給を受けるというようなことが実際に想定をされるであろうかということでございます。
 これは、当然、アメリカであればM1ということになるわけでございまして、戦車のタイプも違います。そこにおいてそういうことがあるだろうかと考えてみた場合に、そのような業務を実施する必要性はないと想定がされます。
 したがいまして、自衛隊の部隊等が実施する業務から、武器弾薬の提供、そしてまた、先ほどのお話がありますように、発進準備中の航空機に対する給油及び整備、これは除外をしておるわけでございます。
木島委員 想定されないと言うけれども、大いに想定されるんじゃないですか。
 マスコミはテロ特措法をどう表現したか、おもしろい表現をしましたよ。日本政府、日本の自衛隊は、海に巨大なガソリンスタンドをつくってやったと。今度は、このイラク特別措置法によって、いよいよイラク国内に巨大なガソリンスタンドをつくってやるんだと。なかなか見事な表現をマスコミはしていますでしょう。そうなるんですね。
 そうすると、巨大な給油所をつくる、その給油所をつくったところは非戦闘地域でしょう。しかし、その隣接する地域ではもう、戦闘地域で、米軍がドンパチやっている、フセイン残党の掃討作戦をやっている、そういうことが大いに想定されるから私は聞くんです。そういうことをこの法律は排除されないですね、確認ですが。
石破国務大臣 巨大なガソリンスタンドというふうに書いた新聞がございましたが、燃料とまた武器弾薬というのは、これは違うものでございますよね。他国に武器弾薬を依存するなんという軍隊は普通はないのです、そのようなものは。したがって、そのような必要性は想定されないというふうに私どもは考えておるところでございます。
 燃料と武器弾薬はおのずから違うということ、それは、軍事の知識からいっても、合理性からいっても、そしてまた軍とは何かという考え方からいいましても、そういうことになるものと思います。
木島委員 本当に想定されないのなら、指摘されているように、この法律から武器弾薬を除いたらいいんですよ。除かれていないから、マスコミ、日本国民、大問題にしているんでしょう。
 ではもう一点、昨日我が党の赤嶺議員が指摘しました、例の米軍の砂漠のサソリ作戦であります。それに従事している米軍に対して、では給油することでいいですわ、そういう給油や補給も、戦闘地域そのものでなくて、そこからちょっと離れたところならできると。確認ですが、きのうも大体そういう答弁で終わったと思うんですが、よろしいですね。
石破国務大臣 それは、先ほど来、官房長官からも外務大臣からも答弁があるとおりでございまして、砂漠のサソリ作戦なるものが、当該作戦に基づく個々の具体的活動が、まさしく言うがところのイラクの国内における安全及び安定を回復する活動に該当し得るかということであります。
 先生も御案内のとおり、砂漠のサソリ作戦というのは人道も含んでおるわけでございまして、いろいろな内容を含んだミッションでございます。それがそのようなものに該当するかどうかという判断、そういうものに依拠することになろうかと存じます。
木島委員 そこが該当されることになるとできるということだという答弁だと思うんです。
 いろいろ私聞いてきましたが、今、かなり、イラク国内に上陸した自衛隊がどういう活動をするか、根掘り葉掘り聞いてきました。ここまで来ますと、私は、政府のこれまでの弁解、戦闘行動をする米軍と一体のものかどうかと、一体性の論理で切り離して、憲法九条の禁ずる武力行使ではないという理屈はもう通らない、国際法上も憲法解釈としてももうこれは通らないということを厳しく指摘をしておきたいと思います。
 時間が迫っていますので、論点を変えます。
 安保理決議一四八三号の本文第五項はこう書いてあります。「すべての関係者に対し、特に千九百四十九年のジュネーブ諸条約及び千九百七年のハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を完全に遵守するよう要請する。」こう規定しております。
 外務大臣に聞きます。安保理決議一四八三がこのような要請をした趣旨はどんなところにあるんでしょうか。
川口国務大臣 これは、占領国としての、その関係の国が、例えば人道法、国際人道法等でございますけれども、そういった権限、責任及び義務をきちんと守るということを確認した、そういうことでございます。
木島委員 私は、一昨日、衆議院本会議で総理に対して、このすべての国に日本の自衛隊は入るのか、要するに、自衛隊はこの安保理決議一四八三号によってジュネーブ諸条約あるいはハーグ陸戦規則に縛られるのか、あるいはこれを守らなきゃいかぬのかという質問をしたら、そうじゃないという答弁をしました、総理が本会議場で。私は大変びっくりしたんですが、もう質問時間が来ましたので、最後にこれだけ、一問だけ外務大臣に聞いておきます。ジュネーブ諸条約の基本原則、三点だけ確認したいと思うんです。
 法文にもありますが、一つ、このジュネーブ諸条約の適用の場合、適用原則としては、外国占領地域において、その外国による占領に対して抵抗する現地住民の行動に対しても、そういう場合でも適用されるということ。
 二つ、占領の場合にジュネーブ条約がいつまで適用されるかは、占領が終了したときである。占領終了がジュネーブ条約、国際人道法の適用が終結する最後だということ。
 そして三つ、こういうジュネーブ諸条約から脱退した国、日本はジュネーブ四条約は批准しておりますが、大事なジュネーブ条約、一番最新の第一議定書は批准しておりませんが、三番目の原則としては、そういうものから脱退したような国に対してもこのジュネーブ諸条約の原則は適用される、そういう原則ですね。
 もう一つ、ついでに言いますと、このジュネーブ諸条約の一番大事な観点は、戦闘員と非戦闘員、戦闘員と住民、これを峻別することだ、そういう原則で成り立っているんですが、きょうはもうこれで質問を終わりますが、そういう四つのような大きな原則がジュネーブ条約、ハーグ陸戦規則などの国際人道法には基本にあるということを、これは聞いていいですか、イエスかノーかで。質問を終わりますが。
高村委員長 川口外務大臣。簡潔にお願いします。
川口国務大臣 一番目の答えは、イエスでございます。
 それから二番目の答えは、占領後も続く場合がある。
 それから三番目は、日本は追加議定書を締結いたしておりませんので、適用されない、そういうことでございます。
木島委員 時間ですから終わりますが、大変大事な問題ですから、次回、私は、もし機会が与えられれば、この問題、徹底して質問したいと思います。
 終わります。
高村委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 私は、最初に、きのう私どもの同僚の今川議員が質問しました、最後に質問して川口大臣から答弁がありました、劣化ウラン弾のことについて少しお聞きをしたいと思います。
 最初にお聞きをしたいんですが、きのうは、答弁では、劣化ウラン弾を使用したかどうかはわからないという御答弁でしたが、きょうも変わらないんでしょうか。
川口国務大臣 昨日お答えしたとおりでございます。
金子(哲)委員 それはなぜでしょうか。米国に問い合わせることができないということでしょうか。どういう理由でしょうか。
川口国務大臣 米軍が、劣化ウラン弾をイラクに対する軍事行動において使ったかどうかということについては述べていないということです。ブルックス陸軍准将が、そもそも米軍の保有する劣化ウラン弾はほんのわずかであって、また、その安全性を確信しているというふうには述べておりますけれども、それを使ったかどうかということについては説明をしていないということです。
金子(哲)委員 私は、きのう質問通告する際に、ぜひ米国に問い合わせをしてほしいということを要望しておいたんですけれども、今の答弁ですと、そういうことをやっていただけなかったということでありますけれども、実は、そんなに難しいことではなくて、現地に行けば、使用したかどうかの調査はすぐわかることであります。
 現実に使用している、これはもうマスコミでも報道されているとおりであります。にもかかわらず、日本の政府だけは、劣化ウラン弾が使用されたかどうかわからないというようなあいまいな答弁を繰り返されているのは、余りにも無責任過ぎるんじゃないでしょうか。
 これから現地に、もしこの法案が通るとすれば、日本の民間人、そして自衛隊も含めて、多くの人々がイラクに行くことになりますけれども、その場所に劣化ウラン弾が残存しているかどうかもわからない、重要な問題であるにもかかわらず、全くそのような情報を収集しようとされていないということになるんでしょうか。改めてお伺いします。
川口国務大臣 今後、法案が通りまして、我が国がその地域を決めることになるわけですけれども、活動する場所を決めることになるわけですけれども、その際においては、今後、いろいろな情報を収集して安全面で問題がないようにしたいと考えています。
金子(哲)委員 今後活動する地域というのは、今問題になっております自衛隊が派遣される地域以外に、NGOや民間人を含めて、人道支援活動では、いわば戦闘地域、非戦闘地域限らずに支援に行くわけですから、そうしてまいりますと、その地域はすべて調査をするというふうに考えていいんですか。
川口国務大臣 いろいろな情報をいろいろなところから収集して安全な活動場所を決めていくわけでございますけれども、劣化ウラン弾との関係でいえば、これは国際機関等において調査が今行われています。例えば、WHO、これがコソボで行った調査報告では、人体及び環境に対する影響はほとんどないという内容でありました。
 そういったことで、調査の動向は引き続き注視をいたしていきますけれども、イラクにおける活動場所を決めていく段階では、必要な情報を安全性という観点から収集してまいります。
金子(哲)委員 つまりは、今、安全性の確認の上から必要な情報を調査するということですから、これは自衛隊が派遣される地域以外、民間人を含めて、人道復興支援の地域も含めてそういうことをやるということでいいわけですね。
川口国務大臣 いかなる調査をするかということについては、それは、どのような場所を選定するかということと同時並行的に、その場所に必要なことが変わってくると思いますが、それはきちんと個別具体的に、ふさわしい安全性の調査をしたいと考えます。
金子(哲)委員 繰り返しになって悪いんですけれども、私が問いたいのは、人道支援の際の民間人が活動するだろう地域、予定される地域もその中には含んでいるんでしょうかということを、そこの点についてだけ明確にお答えください。
川口国務大臣 この法律に基づいて活動をする場所を決める場合、必要な調査は安全性確保という観点から行います。
金子(哲)委員 既にこれは、民間人の皆さんが五月の十九日から六月の二日にかけてイラクへ行かれまして、この劣化ウラン弾の実際の実態調査をして、しかし民間人ですから、すべての調査をするということにまでなっておりません。しかし、例えばバグダッドでは、米軍の攻撃を受けた計画省の建物の中に入ってまいりまして、そしてその中で劣化ウラン弾の弾頭を数発検出するというような状況が出ておりますし、さらには、バグダッドそれからバスラ、その地域に放置されている戦車、こういうものを調査して、実際上、劣化ウラン弾の使用によって貫通した状況、さらにはその劣化ウラン弾の弾頭の残存、そういうことが具体的に調査で出ているわけです。
 今外務大臣が言われるように、使っているかどうかわからないではなくて、実際に行けば――これがすべての調査ではありません、民間人が調査するといって、すべての地域を調査できるわけでありませんから。少なくとも、そういう調査が行われて、実際に使用されているということは現に言われておりますし、その現物を実際に調査活動で見つけているわけです。そういうことを実際に本気で調査されるんですか。
川口国務大臣 場所を決定するに当たってどういう情報を集めるか、収集するかということは、むしろ私がお答えするよりは自衛隊の関連のことであると思いますけれども、劣化ウラン弾ということで申し上げれば、先ほど言いましたように、これはWHOの調査等によりますと、人体及び環境に対する影響はほとんどないという内容でございます。この点については引き続きフォローしていきますけれども、現在、劣化ウラン弾の安全性についてはそういうことであると考えております。
金子(哲)委員 もうこれだけで時間はとれないんですけれども、大臣はちょっと勘違いされていると思うんですよ。今回の戦闘行為で使われて、現に残っている劣化ウラン弾の弾頭の処理の問題、大体十ミリ砲が主と言われておりますけれども、それらが残っているわけですよ、すべて燃焼し尽くさずに。そういうものの処理をしていかなければ安全に作業できないんじゃないですかと、この問題が一つあるんです。それは実施者として、本来それを使用した側に責任がありますけれども、それが不可能であれば、これから支援活動、救援活動で行く国の責任者として、その人たちの安全性を確保するという作業の一つとしてあるのではないかということを申し上げているわけです。
 今大臣がおっしゃっているWHOの問題は、その使用されたことによってどのような健康被害が出るかという問題なんですよ。全く別の問題なんです。結果としてはそこにつながる問題ですけれども、今二つの問題があって、これから実際に行くとき、三月から四月の間に行われた戦闘行動で使われ、今残存している劣化ウラン弾の弾頭をどう処理するかという問題と、既に九一年の湾岸戦争でも使われ、そして今回も使われた問題の、健康被害における問題をどう処理するかという問題で、それを混同してほしくないんです。WHOがやっているのは、残存の劣化ウラン弾の数を調べたり実態を調査しているわけでも何でもないんですよ。そういうことはWHOの権限ではないんです。その後、そこに住んでいた人たちにどういう障害が出ているかということをWHOは調査しているだけであって、そこを混同しないでほしいと思うんですよ。
 さらに、これは本会議で質問した際にも、総理から、例えば世界保健機構、今言われたWHOがコソボで行った調査報告は、人体及び環境に対する影響はほとんどないとの内容でしたが、今後も見守りたいということでありました。
 九九年のコソボの紛争で使われて、調査をされたのはその年かその翌年だと思います。実は、これは広島、長崎の核兵器の使用と違って、急性の放射線障害は出ていません。ですから、短期間で調べたとしても、ほとんど影響を測定することはできないんです。
 今、私の手元に、先般行かれた人たちの状況で、バスラの子供たちの白血病と悪性腫瘍の発生状況という資料があります。九一年に湾岸戦争が始まって、当時もゼロとは言いません、しかし、当時、例えば白血病は十五名から十四名であったものが、九九年になりますと三十名、そして二〇〇〇年には六十名、二〇〇一年には七十名、二〇〇二年には八十五名。その他の悪性腫瘍、これも九八年は四十二名であったものが、子供たちの場合、九九年は六十五名、二〇〇〇年には九十二名、二〇〇一年には百名、二〇〇二年には百六十名。九八年から比べますと、大体、悪性腫瘍の場合は四倍、さらに白血病もほぼ三倍以上の子供の被害が出ているんです。
 この点について言いますと、広島、長崎の白血病やがんの発生というのは、その後すぐ出ているわけじゃないんです。四年、五年、六年後に白血病の症状が発生しているわけです。今私が言いました数字も、そのとおり出ているわけです。実際に調査をしようとすれば、このような調査をしなければ、ある程度の年数を経た上で調査をしなければ実際の状況は出ないんです。
 私が今述べました数字を聞かれて、大臣、どう思われますか。
川口国務大臣 委員が今引用なさった数字がどのような出所の数字であるかということについて、ちょっと私はよくわかりませんので、それに基づいて確定的にこうだということを申し上げるというのは難しいと思いますけれども、仮に、因果関係が非常に明確になっていて、その上での数字であるということであるならば、それは、この劣化ウラン弾の問題については、先ほど来申し上げていますように、確定的な人体についての影響ということを知るためには、今後まだ引き続き国際機関が行う調査、これを注視する必要がある、そういうことであると思います。
金子(哲)委員 どれだけの犠牲者が出れば、日本の政府としてはそういうことに対して支援、救援活動をやろうというんでしょうか。このイラクの問題も、実は湾岸戦争以降、それはいろいろなことがあったにしても、経済封鎖によって医薬品が十分に行き渡らなかった、そういうことも相まって、イラクの国内、今私が言いましたのはバスラの現状を申し上げましたけれども、現実にこれは異常な数字を示しているわけです。
 今回のイラクの復興支援法の中に、人道復興支援というのがあるんですけれども、これなど、そんな眺めて見ている課題ではなくて、今にも手をつける、一日でも早く支援を開始すべきような課題じゃないでしょうか。そのことはそういうふうに考えられないんでしょうか。
 そして、出所が疑われるんであれば、どうぞイラクの外務省の筋を使って、バスラの母子病院を訪ねてください。具体的な数字として出ておりますから、それをぜひ調査していただきたいと思います。そういうふうにおっしゃるんだったら、ぜひバスラの母子病院に外務省で調査をしていただきたいと思いますが、どうですか。
川口国務大臣 まず、委員のおっしゃった数字、それを見て、その因果関係等についてどれぐらいきちんとした調査かということを見る必要があると思いますけれども、外務省としてはその面において専門的な知見があるわけではございませんので、専門家の方に、むしろ厚生労働省等にお話をいただければというふうに思います。
金子(哲)委員 そういうことではなくて、この法案提出している人道支援の中の非常に重要な課題だから、そういうテーマ、その課題の中に挙げたらどうですかということをおっしゃっているわけで、それは、厚生労働省がどうぞ調べなさいということではなくて、外務省が責任持って調べるようにされたらいいんじゃないですか。それは、政府の中で協議してやっていただければいいので、改めてまた厚生労働省を呼んでそれを要望しなきゃいけないという問題ではないでしょう。
川口国務大臣 いかなる事業をこの人道支援の対象としていくかということについては、今後、政府全体として決めていくということでございますので、その中で相談をしたいと思います。
金子(哲)委員 ぜひ、今のような答弁でなくて、私は本会議でも申し上げましたけれども、例えば、イラクの人たちから見ると、やはり広島とか長崎という言葉はよく知っているわけです。そして、広島の人たちが行きますと、こういう人たちに、何か援助してくれ、広島の人ならわかってくれるんじゃないかと思われるぐらい、日本というのは放射能医療とか放射線問題についてはやはり知識があるという認識を持っているわけです。これはもう、チェルノブイリの例のときもそうです。
 そういうことがあるだけに、日本ができる、また、日本しかある意味ではできないような活動だからこそやっていただきたいということを申し上げているわけで、これは、今までは、経済封鎖の問題とかいろいろあったと思います。しかし、今、復興支援に手をかけようという状況の中で一番ある意味では、それだけがすべてとは言いません、日本がある程度期待をされ、日本としてできる活動だからぜひやってほしい、やるべき課題ではないか。
 実態をぜひ、私が言った数字がどうかということがあれば、これは今、バスラのことだけ言いましたけれども、バスラだけではないわけで、全土にそういう問題が広がっているわけですので、ぜひ、その点については、その辺も含めて調査をして、大きな課題にして挙げていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それで、法案の中に入りたいと思うんですけれども、福田官房長官お見えになったので、ぜひ、総理がいらっしゃらないのでお伺いをしたいんです。
 きのう、イラクへの軍事行動の正当性を、いろいろ論議がありました。それで、その中に、疑惑があるからというような話が、疑惑があったんだ、だからそれに対してこたえなかったんだということが随分言われました。
 ブッシュ大統領は、三月十七日の演説の中で、行動するのが手おくれになる前に危険を排除する、米国は自国の安全保障のために武力を行使する権限があると主張して、いわゆる先制攻撃を行われたわけですね。そして今、まだ大量破壊兵器も見つかっていない。
 昨日の討論の中でも疑惑ということが言われていましたけれども、疑惑というだけで、いわば確証なしで、これほど重要ないわば戦争行為というようなものが始まっていいというふうにお考えでしょうか。その点について、ぜひお伺いしたいと思います。
福田国務大臣 疑惑ということだけで始まったものではないと思います。これは、累次にわたりますイラク国内の調査の結果、これはUNMOVICですよ、それからIAEAも。その結果、結果報告というのは出ております。明らかに疑惑があるということであります。
 それを受けて国連決議一四四一も出たわけでしょう。そういう一四四一におきましても、イラクに対して、これは全会一致で出た決議ですよ、この重大な国連決議の違反をイラクが犯し続ける、そして、かつ現に犯している、こういうことをそこで述べているわけでありまして、その上でイラクに対して武装解除の最後の機会を与えた、こういう内容でございますので、決して疑惑だけで行動を起こしているということではないということは、自明のことであります。
金子(哲)委員 今おっしゃった一千四百四十一号は、その武力攻撃が始まる前の国会の論議の中では、これは武力行使を容認するものではないということは、政府の見解として言われていたわけですね。しかし、その後は、新たな国連決議のないままにこれがスタート、攻撃が始まったわけですね。その時点は、依然として疑惑の状況なんですよ。その時点では、少なくとも攻撃が始まった時点では。そしてまた、その疑惑自身が、現在、確証、証明すらされていないのが今の状況なわけですね。
 そうしてみると、先ほど、繰り返すようですけれども、これほど重大な戦争行為、戦闘行為というような事態が、疑惑ということで、確かに国連のさまざまな決議に十分に対応していなかったという問題はあったにしても、こういうことが進んでいくとしたら、これから、疑惑というのをそもそもだれが証明するかという問題があるわけですよね、できるのかという問題が。余りそれをやると水かけ論みたいになるものですから、それはやりませんけれども。しかし、例えば、これから、今イランの核開発の問題も指摘をされております。北朝鮮の問題もそうです。しかし、こういうことがもし仮に疑惑として、そしてそのことによって一国の、まあ二国の判断ですけれども、判断によってスタートを切るというようなことがこれから当たり前の世界のルールになってはならないと思うんですよね。
 ですから、今度の法律というのは、そういうことからいいますと、その前提として、これらの一連の行為を認めていくということになると、そういう疑惑、疑惑だけではないとおっしゃいますけれども、しかし主要には、根本的には、その保有が証明されない、疑惑の段階でボタン、スタートを切ったということは間違いないわけですから、そういうことが今後とも許されるかどうかということを改めてお伺いしたい。
    〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
福田国務大臣 今後そういうことが許されるかどうかというよりか、そういうことで同じことが起こるのかどうかというように申し上げれば、同じことが起こるということはないだろうと思います。それはやはり、そういうことが起こるという状況があったわけでございまして、そして、最後の段階で、米英が攻撃をするという決断をした。しかし、その前に、国連決議もまとめようとした、いろいろな努力をしてきているわけです。最後の最後まで私は、米国といえども平和解決が一番望ましい、すなわち、フセインがみずから疑惑を解明するということをすれば、そうすればいいということは望んでいたと思いますよ。それは決してベストの解明でなかったわけです、そういう意味において、と私は思っております。
 ですから、そういうベストなことでないことを今後同じように続けるということは、あり得ないというふうに考えております。
金子(哲)委員 時間のこともありますので、私は、いずれにしても、しかし疑惑、今日その証明すらできていない状況というのは極めて重大な問題だということだけを指摘しておきたいと思います。
 一つだけ、今まで論議になった中で、戦闘地域、非戦闘地域の問題ですけれども、官房長官じゃなくて防衛庁長官にもう一度御確認したいんですけれども、今、イラクの状況の中には、戦闘地域が依然としてある、戦闘地域も現存しているということと認識されているんでしょうか。
石破国務大臣 戦闘地域が存在していることは排除されないということでございます。
金子(哲)委員 そうしてまいりますと、改めてお伺いしたいんですけれども、先ほどの、論議になりましたけれども、戦闘地域があるということは、今までのお話であれば、国または国に準ずる者の行動ということの規定の上に立って初めて戦闘地域があるということが規定されると思いますけれども、戦闘地域があると規定されれば、それに対応する、その戦闘行動を行っている相手側の者というものは、一体何を想定してそのようにおっしゃっているんでしょうか。
石破国務大臣 繰り返してで恐縮でございますが、活動を行う期間においてそのようなことが起こるおそれというものも含むわけですね。だから、今これこれしかじかこういうものがあったということもありますけれども、そういうおそれも含むということでございます。
 ですから、どういうようなものが国に準ずる者であるかといえば、組織性、計画性という先ほど来お答えをしているとおりのことでございまして、要は、国際紛争の一環としての武力行使という評価を受けないために、私どもはそのことをきちんとしておかなければいけないというものでございます。
金子(哲)委員 私が言っているのは、非戦闘地域とかそういうことを言っているわけではなくて、最初に質問をさせていただきましたように、今、イラクに現在戦闘地域があるのかないのかということをお聞きしたら、それは否定できないとおっしゃいましたから、そうであれば、それを規定するためには一定の勢力がなければ規定できない、その勢力はどういう勢力を認識されて規定をされたのかということをお尋ねしているわけです。
石破国務大臣 特定のこのようなものを私があるいは政府として確認して、これがそういうような国に準ずる者だということを特定できるものが現在ありません。これがそうであるということを特定して、先生や国会の前にお示しできるようなものは持っておりません。
 しかしながら、例えて言えばということで、きょうずっと答弁を申し上げておりますように、バース党の残党で、それがフセイン政権をもう一度とか、米英軍を排除してそこに新たな支配を打ち立てようとか、そういうようなことである場合には、それは国に準ずる者ということになるであろうということを申し上げておるわけでございます。
金子(哲)委員 いや、もうこれは同じ論議になるようですけれども、防衛庁長官が今イラクに戦闘地域があるというふうに規定できるんだと。あるとすれば、どういう勢力がいるから戦闘地域ということが規定されなければ、そちらの方で、国または国に準ずる者による戦闘行動が行われるときに戦闘地域があるということをおっしゃっているわけですから、逆に言うと、戦闘地域があるといえば、それを行っている、行動している者が限定されなければ、それは位置づけはできないんじゃないでしょうか。そのことを言っているだけです。
 いや、なぜですか。戦闘地域があるという、逆に私は聞いているんですよ、だれかがいるかという話を聞いたわけではなくて、戦闘地域がありますかとお聞きしたら、戦闘地域がありますと。ということであれば、今まで答弁されていたように、その戦闘地域というのは、国または国に準ずる者による戦闘行動の行われている地域のことを戦闘地域とおっしゃるわけですから、少なくとも、戦闘地域として認められるとすれば、どういう勢力が行動しているから戦闘地域だということが今説明できなければ、それは説明にならないんじゃないですか。
石破国務大臣 例えて申し上げれば、今まで北部でありますとか西部で米軍兵士に対する狙撃事件があった、それは国または国に準ずる者のしわざなのかどうなのか、それは米軍もだれにやられたのかということを追及はするわけですよね、アメリカ軍で犠牲が出ているわけですから。しかし、今に至るまで、それが国に準ずる者でないという確認ができてないわけでございます。
 そうしますと、そういうような地域もあるだろうということであって、国または国に――つまり、私が申し上げたのは、戦闘地域が存在をしているということは排除されませんということを申し上げました。いいですか、そういう地域が残っていることは排除されない。そして、戦闘地域とは何かといえば、国または国に準ずる者ということですし、それが国際的な武力紛争の一環になるかどうかということなのでございます。
 ですから、そういうものが排除されない、その地域はどこであるかということを、それはこれから戦闘地域、非戦闘地域を定め、そして実施する範囲を定めて、そして区域を定めるときに、本当により詳細に、より精密に調査が行われ、決定をされることになるということでございます。それは、現時点で戦闘地域があるということを排除されないということは、ここで申し上げられることであります。
金子(哲)委員 つまり、今あるかないかわからないということですね。それをおっしゃっただけですね、あるかないかわからないということを。つまり、結局のところ、これから規定づけられるとき、我々が判断するとき、これは戦闘地域なのか非戦闘地域なのかといって判断するときに、示されたときにそうかどうかといって判断するときは、どういう勢力が具体的な戦闘行為をやっているかがなければ規定できないわけですよ。それで、長官がおっしゃるように、二つのことをおっしゃったわけですよ。国または国に準ずる者、そしてまた国際的なということ。
 そうしてみますと、そういう勢力が今いるかどうかということが規定されなければ、それの規定もこれから調査によって初めてわかるということなんでしょうか。
石破国務大臣 これは、本当に同じことを裏から表から言ってみたり、概念が混乱をして、私の申し上げ方が悪くて恐縮なのですが、要は、自衛隊が活動する地域というのは戦闘地域ではないところでなければいけないということが法律に書いてあるわけですね。法律に書いてあるのは、現に戦闘が行われておらず、また、活動の期間を通じて戦闘が行われることが予測されない地域でなければならない、法律に書いてあるのはそういうことなんです。それをひっくり返して言った場合に、では戦闘地域とはどこなんだということになる。
 ですから、どこが戦闘地域なのだということよりも、我々が法律に基づいてきちんとしなければいけないことは、どこが戦闘地域ではないのだということをきちんとすることなんだと思うんですよ。それは同じことなのかもしれない、裏表なのかもしれない、きょうどなたか、反対解釈という議論をされた方がありましたけれども。要は、その地域において、この法律に言うがところの戦闘が行われていないか、そして戦闘が活動の期間を通じて行われることが予測されないか、それをきちんと確定をするということが大事なのであります。
 ですから、あるのかないのかわからないんだねという御指摘ですけれども、それは、戦闘が行われていない地域ということを規定するときに、イラク全土、戦闘が行われていない地域です、この法案に言うがところの戦闘が行われていない地域ですということは断言をできません。その全土がそうであるということではありません。逆に申し上げれば、戦闘地域があるということを排除されないということになりますが、議論としては、法文上に書いてあるそのことが、どういう地域であればそれを満足する地域であるかということが議論の核心かと思います。
金子(哲)委員 結局のところ、非戦闘地域ということの特定が非常に難しいということをおっしゃっているだけで、だから逆説的に、非戦闘地域だけ限定すればいいんだという話をされていますけれども、しかし、私どもとしてはやはり、戦闘地域、非戦闘地域というのは、しっかりと区分けができていくということは当たり前のことだと思いますので、その点を指摘しておきたいと思います。
 次に、携帯する武器についてお伺いをしたいと思います。
 自衛隊が行く際に携帯する武器というのは一体、これから基本計画の段階で決められようということになってくると思います、これまでも論議がありましたけれども。
 昨日の答弁の中で、長官はこういうふうにおっしゃっているんですね。自衛隊はこういうものを持っている、それじゃ攻撃しても自分にも危害が及ぶ、それじゃ攻撃するのをやめようか、抑止力ですね、そういうものを持たせるということを携帯する武器の問題で討論されておりますけれども、このことは一体、もう一度御確認したいんですけれども、何を意味しているんでしょうか。相手の出方による、この考え方で今度の武器は決められるということですか。
石破国務大臣 これもきょう何度かお答えをいたしましたけれども、武器の使用はどういう形でできるかといえば、これは法律で決まっておるわけでございます。それ以外の武器の使用というのはできない。法案第十七条でございます。そして、あと自衛隊法九十五条というものがございます。それに従って武器の使用というのは行われる、自然権的に行われる。そして、正当防衛、緊急避難ということになるわけでございます。
 何を持っていくのかということについて申し上げれば、抑止力、それは自衛隊の存在だって抑止力です。あるいは有事法制だって抑止力だと私は思っています。それは、そういうようなものがあるのであれば、これは所期の結果が得られないなというふうに侵害を加える側が思うということでございます。これが素手であり、丸腰であるとするならば、それは成果がおさめられるかもしれないけれども、例えば武器を持っている、そうであるならば、自分も危害を受け、そして所期の目的が達せない、だからやるのをやめよう、平たく言えばそれが抑止力というものでございます。
 しかしながら、それが余りにかけ離れておって、片一方が、つまり相手方が持っておるものがけん銃である、それに対して例えば機関銃を持っていく、それはやはりおかしいのだろうということでございます。
 それは当然、何を持っていけばそれが自分の身を守る、自然的な身を守る、そういうような武器の種類であるかということは、それは、プロフェッショナルで、そういうような知識が必ずあるはずです。どの銃は、あるいはどの機関銃は、あるいはどの小火器、これは含む概念ですが、小火器はどのような性能を持っているかということは、プロフェッショナルであればわかります。
 逆に言えば、プロフェッショナルでなければわからないものがあります。その地域がどのような地域であり、そして相手がどのような形でそれを使用するか、そういうことをきちんとプロフェッショナルの目で見る。そしてまた、先ほど委員が基本計画ということをおっしゃいました、その中で定めるということになります。そしてこれは所定の手続を踏んでいくわけでございまして、これはもうとんでもないものを持っていって、何を持っていってもいいんだ、そういうことを私どもは申し上げているわけではありません。
 そして、常識と申し上げたのは言い方を訂正いたします、撤回もさせていただきます。これは、実際の軍事的な知識というものでございます。自分たちが、実際に行く人たち、そして使う人たち、そしてまたそれによって身を守る人たち、そういう人たちの考え方というものが当然尊重せらるべきだということでございます。
金子(哲)委員 確かに論議があった点でありますけれども、私はあえてなぜそのことを質問したかといえば、例えば防衛庁長官も今、小火器のたぐいの話も例えばということで出てまいりましたけれども、しかし、持っていく武器によれば非常に、おっしゃるとおり専門の知識を持つ人々がその地域の実情に応じてということではありましょうけれども、しかし、我が国の憲法で武力行使が禁止されている状況の中で、外国の中で、持っていく武器次第によっては、それはやはり明らかにそのことに抵触するということは当然考えられるわけです。
 相手によって、もちろん今長官が言われるように、何でもべらぼうにというような話じゃないんだと。しかし、べらぼうな話じゃないということですけれども、抑止力論に立てば、相手の力、それはどういうふうに判断されるのかよくわかりませんけれども、大体、相手の武器がそんなに、調査に行ったらわかるぐらいな調査活動ができるのかどうかも非常に疑問に思います、そこまでの調査ができるのかというのは。
 そういうことだけでいいますと、一定の歯どめがなければ、やはり武器の持っていく内容次第によっては、仮に防衛的な名目であれ、それを使用しなければならないような事態が招来したときには、そのことによって引き起こされるであろう武力行使に、相手から見れば非常に大きな武器だというようなとらえ方というのは当然出てくると思うんですよ。それによって武力行使に突入する危機というのは当然想定される。そうなれば、憲法九条との関係も必ず出てくる。
 そうであれば、一定の武器の基準というものはやはりこの委員会の中でも明確にしなければ、一応行って調査をしてみてというようなことで携帯する武器の基準が決められるということは問題があるというふうに思うんですけれども、官房長官。
    〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
福田国務大臣 武器の使用は毎回議論になりますけれども、我が国自衛隊が海外に行って、そのときに携行する武器というのは、これはあくまでも自衛なんですよ。自衛の武器ということですから、自衛の範囲ということです。
 ただ、自衛といったって、場合によっては大砲も必要かもしれぬという、拡大していけばそういう話になるんですけれども、そういうところには行かないんです、そもそも。ということなんですよ。ということでお考えいただきたい。
 そういうことで、安全に対しては十分な配慮をしていこう、こういうことで、自衛のための武器を携行していく、あくまでも自衛であるということであります。
金子(哲)委員 それはやはり、行くときは安全なのかもわからないですよ。しかし、それは防衛庁長官も認められているように、長期に、とりあえずは想定として、一定の期間それはないという想定で地域は選ばれるでしょう。しかし、状況の変化ということは昨日来の答弁の中でもおっしゃっているわけでありまして、そういう状況というのは想定される。とりわけ、PKO活動とは違う地域なわけですね。今、占領行為が行われ、そして、場所によれば確かに非戦闘地域かもわからないけれども、同じ国内では戦闘行動も行われている状況も想定される国に行くということになれば、それがいつ飛び火するかもわからないということは当然想定される状況だと思うんですよ。
 そうであれば、そうなってくると、当然武器もそれに備えるということに結果としてなるんじゃないですか。
福田国務大臣 これは、この活動地域をこれから決めるわけです。そのときに、非戦闘地域であることは間違いないことでありますけれども、その中でも安全性に問題のあるような地域は選ばない、こういうことであります。
 翻して言えば、ひっくり返して言えば、自衛のための武器を持っていく、これで自衛ができる、こういう確信が持てる地域に行く、そういうふうに考えていただければむしろわかりやすいんじゃないかなというふうに思います。
金子(哲)委員 それは私が言ったわけではなくて、防衛庁長官の方が、きのう来の討論の中で、そういうことも起こり得ると。最初はそれは非戦闘地域として行ったけれども、情勢の変化はあるということをおっしゃったわけで、私は、何も最初からそういう危ないところに行っているということを言っているわけではなくて、そういう状況が変化するというのは答弁の中でおっしゃったわけで、それは、結局それを想定しなきゃ行かされないんじゃないですか。それを想定した武器を携行しなきゃ行けないということになるんじゃないですか。
福田国務大臣 防衛庁長官から答弁する前に私一言申し上げますけれども、要するに自衛のための武器。そしてまた、それでもって自衛ができないというような、要するに業務に支障が生ずるということになれば、これは業務を中断するしかないんですね。それで、その地域から撤退するとかいうようなこともあり得るということであります。
金子(哲)委員 この論議はそう長くできないですけれども、しかし、現実に今イラクの中でアメリカ軍やイギリス軍に対して攻撃が起こっていることは、あらかじめ想定できたことではないと思うんですよ。一昨日のイギリス軍で起きた六名の死傷者の問題は、イギリス軍は、かなりあの地域は安定していると。いや、危険になったら撤退するとおっしゃいますけれども、そんな危険になることが予知できるような状態というのが実際上あるでしょうか。
 今の戦闘行動というのは正規軍の戦闘行動ではありませんから、現実にイラクの中で起きていることは。いわばテロ的な、散発的な、ゲリラ的な戦闘行動ということになると、そういうことも事前に想定して、危なくなったら逃げますよ、停止しますよなんということが、実際上あり得ない状況を想定して答弁されているように思えてならないんです。
福田国務大臣 きょう、午前中の与党の調査団の報告ございましたけれども、突発的なことが起こり得る、それは否定しません。
 しかし、バスラでもって起こった英軍に対する襲撃、これは何か建物の中で起こったことであって、そして、警備が手薄なところをねらって襲撃をする、こういうことがあり得るから警備は十分にしなければいけない、こういうことで、そういう配慮というのは当然必要だと思います。
 その上で、そういうことが起こらないように、また、先ほど防衛庁長官からも抑止力という話がございましたけれども、そういう装備をしているということがまさに抑止力になるわけで、そういうような不測の事態を防ぐことになるわけでありますから、そういうことも利用しながら安全を確保していくということになるわけであります。
金子(哲)委員 今の答弁を聞いても、抑止力という話が出れば、やはり結局際限のない武器の携帯ということが想定される状況というものをつくるということになると思います。
 次に、安全確保支援活動における問題について少しお伺いしたいんですけれども、先ほども質問が出ましたけれども、この安全確保支援活動というのは、実質上は米英の占領軍の、いわば当局という表現を言われておりますけれども、もとで活動するということになるのではないでしょうか。その点、どうでしょうか。
福田国務大臣 国連決議でもって司令部、これを米英で構成しているわけでありますけれども、それは決議では当局と呼んでおるわけであります。この当局に対して我が国も協力をするという形になります。ですから、当局とはよく提携をして、連携を密にして、そして有効なる活動をするということで、決してその当局の指揮下に入る、こういう概念ではございません。
金子(哲)委員 だけれども、実際に活動する段階において連携をとるといっても、例えば、今回は武器弾薬の輸送も可能ということになれば、それは当然依頼がなければできないことでありますし、それらの物資というのは、いずれにしてもそういう占領当局の物資を運ぶということになれば、実質上その要請を受けて行くということで行動するということになるんじゃないでしょうか。
石破国務大臣 それは要請とかそういうものではなくて、調整というのはそういうものなのでございます。向こうから言われたからやる、そこに指揮命令系統があるわけではなくて、片っ方にニーズがある、片っ方に、じゃそういうのに対応する能力がある、それじゃどうだろうかという調整を行う、そういうようなことであって、指揮命令系統とか要請とか、そういうものではないと理解をしております。
 それから、ついでに申し上げれば、先ほど申し上げました抑止力というのは、軍事というのはすべてそういうものでありまして、日本の自衛隊の組織というもの、装備というもの、先生は陸の装備、海の装備、そしてまた空の装備、よく御存じだと思います。攻撃的なものは一切持っておりません。使わないことをもって旨といたしております。しかし、それをもって抑止力というのでございます。強いものを持っていけばそれが抑止力だ、そういうふうに聞こえるとおっしゃるのは、抑止力の考え方に対しましての認識の相違かと存じます。
金子(哲)委員 その抑止力論については、ここでもう時間もないからやりませんけれども、しかし、抑止力論というのはそんなことはないでしょう。相手の戦力に応じてこちら側も戦力を持つことによって初めて、長官も言われているように、それで、攻撃してだめだという戦力を持たなきゃ意味がないということになるわけですから。そういう観点に立てば、私は、イラクの国内における武装勢力の武器状況に対応するということは当然出てくると思うんですよ。それはいいです、結構です、もうその答弁は。
 最後に、あと武器弾薬の輸送の問題についてお伺いしたいんですけれども、いわゆる国連加盟国となっておりますけれども、実質上は米英軍の安全、安定への回復のための活動になるというふうに思うんですけれども、先ほど、いずれも非戦闘地域から非戦闘地域へ物を運ぶだけだという話でありましたけれども、実際上そういうことは可能なんでしょうか。
 例えば、武器弾薬を輸送する、物資を輸送する。非戦闘地域から非戦闘地域の間は輸送するけれども、現に戦闘地域とも思われるようなところで活動している米英軍に対してはそういうものは輸送しません、そういうことをおっしゃるということになるんですか。
石破国務大臣 活動は非戦闘地域において行うのでございます。
金子(哲)委員 兵士の輸送もこの中に含まれるでしょうか。改めてお伺いしたいと思います。
石破国務大臣 非戦闘地域においてそれを行うことは、条文上排除はされておりません。
金子(哲)委員 兵士の輸送ということになると、輸送途上の攻撃ということが想定されると思いますけれども、その際、仮に攻撃を受けたときに、当然米兵だって武装していると思いますけれども、そういう状態でともに戦うということは想定はされていないんでしょうか。
石破国務大臣 私どもは、条文に定められた範囲内、権限において行動を行います。
金子(哲)委員 時間になりましたので終わりますけれども、いずれにしてもまだ解明しなきゃいけない問題がありますので、また質問させていただきたいと思います。
 終わります。
高村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五分散会


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