衆議院

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第2号 平成16年8月4日(水曜日)

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平成十六年八月四日(水曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 三原 朝彦君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 藤田 幸久君 理事 河合 正智君

      今津  寛君    江藤  拓君

      金子 恭之君    木村  勉君

      岸田 文雄君    倉田 雅年君

      近藤 基彦君    桜井 郁三君

      塩崎 恭久君    菅原 一秀君

      鈴木 淳司君    竹下  亘君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      西川 京子君    萩生田光一君

      早川 忠孝君    望月 義夫君

      山下 貴史君    池田 元久君

      生方 幸夫君    岡島 一正君

      小宮山泰子君    首藤 信彦君

      田島 一成君    田嶋  要君

      高山 智司君    長島 昭久君

      原口 一博君    伴野  豊君

      前原 誠司君    松本 剛明君

      室井 邦彦君    山田 正彦君

      横路 孝弘君    若井 康彦君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          中嶋  誠君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月四日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     菅原 一秀君

  橘 康太郎君     鈴木 淳司君

  小宮山泰子君     室井 邦彦君

  田嶋  要君     田島 一成君

  達増 拓也君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     近藤 基彦君

  鈴木 淳司君     早川 忠孝君

  田島 一成君     田嶋  要君

  高山 智司君     達増 拓也君

  室井 邦彦君     若井 康彦君

同日

 辞任         補欠選任

  早川 忠孝君     橘 康太郎君

  若井 康彦君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

八月四日

 イラク多国籍軍からの自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一七号)

 同(山口富男君紹介)(第一八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省経済協力局長古田肇君、外務省領事局長鹿取克章君及び経済産業省貿易経済協力局長中嶋誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 まず、サマワの陸自部隊においては、七月九日には最高気温が五十度を記録するなど、連日五十度近い猛暑が続く過酷な状況が続いておりますが、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のルメイサ、サマワ、ヒドル、スウェイル、ブヤイサ、ヒラルにおける学校補修、ナジミ、ルメイサ、サマワ、スウェイルにおける道路整備、病院における医療活動を引き続き実施しています。

 給水活動に関しましては、現在一日当たり約二百トンから約二百二十トン程度を給水しております。これは、仮に一人一日当たりに必要な水を四・五リットルとした場合に、約四・四万人から約四・八万人の所要量を満たす計算になります。なお、三月二十六日から八月三日までの間に、計約一万五千トン給水してきたところであります。

 六月八日に工事を開始したマジッドの学校補修については、このたび工事を完了し、七月二十二日に現地で竣工式を実施したところです。

 七月二十四日には、サマワ東部に所在する貴重な文化財であるウルク遺跡の外さく補修を開始しました。

 なお、現地部隊においては、これらの活動により、一日当たり約五百名から六百名の雇用を創出しているところです。

 このほか、七月二十四日には、宿営地において、サマワ救急センター要員に対し医療指導を実施しました。

 また、現在、現地で活動する第二次復興支援群は、八月から九月にかけて、七月二十八日に派遣命令が発出された第三次復興支援群に部隊交代を行い、業務の引き継ぎを実施後、帰国する予定です。また、業務支援隊については、七月上旬から八月上旬にかけて、一次要員から二次要員に逐次引き継ぎを行い、一次要員については八月上旬までに帰国します。

 六月十八日以降のサマワ周辺の情勢については、次のとおりです。

 オランダ国防省の発表によれば、六月二十二日午後、タリル空軍基地付近の道路をオランダ軍車両が通過しているそばで自動車爆弾が爆発したが、オランダ軍兵士にけがはなかったとのことです。

 六月三十日午前、現地部隊においては、ムサンナ県警本部付近において自動車爆弾が使用され、負傷者が出たことを確認しています。

 七月五日午前にサマワ市街地北部の国道において何らかの爆発があったこと、六日午後にサマワ市中心部の警察施設で発砲事案が発生したことを確認しています。

 その後、本日まで、サマワ周辺においては特筆すべき事案は発生しておりません。

 いずれの事案においても、現地部隊に異状がないことを確認しておりますが、現地部隊においては、さまざまな情勢を踏まえ、その活動も慎重に行っているところであり、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ、活動を実施してまいります。

 最後に、航空自衛隊の部隊については、六月十八日から八月三日までの間、陸自関連及び関係各国、関係機関等の物資、人員の輸送を計十一回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

斉藤委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 イラクの治安情勢について御報告申し上げます。

 イラクの政治プロセスに関する最近の大きな動きとしましては、六月二十八日、連合暫定施政当局、CPAからイラク暫定政府に対し統治権限が移譲されました。我が国は、六月二十八日付をもって同暫定政府を承認することを閣議にて了解しました。

 国民会議につきましては、七月中の開催が予定されていましたが、同会議準備委員会側より二週間程度延期する旨の発表があったと承知しています。同会議は出席者一千名規模で開催され、百名程度の暫定国民評議会委員を任命することになる見通しです。同評議会は定期的に開催され、大統領評議会及び閣僚評議会に助言を行い、また、二〇〇五年の予算承認権限を有します。

 我が国としましては、ヤーウェル暫定大統領、アラウィ暫定政府首相のもとで、イラク人自身による国家再建への努力が行われるとともに、政治プロセスが着実に進展していくことを期待しております。

 イラク暫定政府は外交活動を活発化させております。アラウィ暫定政府首相は、七月十九日から就任後初めて中東諸国歴訪を開始し、これまでにヨルダン、エジプト、シリア、レバノン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーンを訪問しました。二十一日、カイロに、イラクのほか、シリア、トルコ、イラン、ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、エジプトの外相が集まり、イラク周辺国会議が開催されました。また、二十九日には、アラウィ首相がサウジアラビアでパウエル米国務長官と、三十日には、ヤーウェル大統領がバグダッドを訪問した同長官とそれぞれ会談しました。

 国連の動きにつきましては、先月、国連事務総長イラク特別代表にパキスタンのカジ駐米大使が任命されました。同代表は今月中にバグダッドを訪問する予定と承知しております。

 我が国としましては、今後、国連がイラクの政治プロセスにおいて主導的な役割を果たすことを期待しております。

 イラクの治安情勢全般につきましては、統治権限移譲後も、脅威の度合いは地域により異なるものの、特にイラク暫定政府関係者を対象にした自動車爆弾等によるテロが国内各地で発生する等、予断を許さない状況が続いております。

 七月二十八日には、中部バクバの警察署近くで自動車爆弾が爆発し、また、八月一日夕方には、バグダッド中心部でキリスト教教会をねらったと見られる爆発が相次ぎ、さらに、同日夜には、モスル中心部のキリスト教教会前でも自動車爆弾が爆発したと報じられています。さらに、最近では各国の民間人を殺害ないし拘束する事件も多発しております。

 他方、イラク暫定政府は、治安回復のため、現在約二十二万人強のイラク人治安要員の強化、増員、国家治安維持令の制定等、さまざまな措置を講じており、我が国としましては、これらの措置が早期に効果をあらわすことを期待しております。

 ファルージャにつきましては、七月二十三日、駐留米軍は、ザルカウィに関連するテロリストの隠れ家を標的とした空爆を行った旨発表しました。また、七月二十九日夜から三十日にかけ、さらに三十一日深夜から八月一日未明にかけて、駐留米軍と武装勢力間で激しい戦闘が発生したと報じられています。ファルージャの状況については、今後とも注視してまいります。

 南東部は比較的安定した状況にありますが、四月以降、サドル師支持勢力と連合軍の間の緊張関係が継続しております。七月十七日、サドル師は国民会議への参加を拒否する一方、来年一月末までに実施が予定されている選挙には参加する旨表明しました。今後も状況を注視していく必要があります。

 サマワの治安情勢に関しましては、イラクの他の地域と比べ比較的安定している状況に変化はありませんが、今後もテロ等の企画可能性を否定することはできません。これまでにサマワで生じている一連の事案も踏まえつつ、現地の情勢については予断することなく、引き続き十分に注意を払っていく必要があります。

 以上で報告を終わります。

斉藤委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 自衛隊のイラク派遣に関しまして、先ほど報告にもありましたが、五十度を超える暑さの中で、派遣されている自衛官の皆さんも大変御苦労なことだと思います。

 派遣されて半年になって、今三次隊が出発をする状況で、非常にこれまでの成果も多いわけでありますが、私は、一番の大きな成果は、日本の自衛隊というものがイラク及び国際社会の中で大変優秀な組織であるという評価を得た。国民の方からも、今一番尊敬できる仕事はということで自衛官、では、一番尊敬できないのはと聞くと政治家と言われましたけれども、それだけ一生懸命やっているというのが伝わってまいります。

 せんだって、新聞で一次隊の隊長の番匠さんの記事が出ていました。ここで彼が言っているのは、安全というものは自分たちでつくるもので、与えられるものではない、それにはまず誠実であることだと。したがって、規律を非常に重んじたということで、規律正しい部隊というものは尊敬をされ、この参加国が、三十八カ国から参加していますが、その中で金メダルをとってやろうと、軍隊のオリンピックのつもりでやりましたということで、特に敬礼一つとってもその規律の一部であって、そこまで一生懸命やったということで、非常に評価を得まして、自衛隊はモデル宿営地であるというふうに評価をされたそうでございます。

 このように、高い士気を維持しながら勤務をしている隊員に敬意を表したいと思いますが、しかしながら、状況が大きく変わってきております。

 その中で、私は、国会として、真のシビリアンコントロールというのは、やはり政治が意思を決めることで軍の運用をきちんと行っていくという観点で、この委員会で二、三確認をしておきたいことがございますので、お尋ねをさせていただきます。

 まず、日本の自衛隊は、今回イラクへの多国籍軍の創設に対して参加していると言われておりますが、これは参加しているということでよろしいでしょうか。

川口国務大臣 結構でございます。

中谷委員 過去の国会答弁で、平成二年の中山外務大臣は、参加か協力かという定義の中で、参加とは、当該国連軍の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、自衛隊が、国連軍の目的、任務が武力行使を伴うものであれば憲法上許されない、参加でなく協力なら武力行使と一体しないとしており、法制局も、多国籍軍もこれは同じだというふうに言っております。

 今回の多国籍軍は、ファルージャなどで掃討作戦なども行っておりますが、確かに人道支援という目的もありますけれども、武力行使も伴う目的の多国籍軍でありまして、この答弁と比べてみますと、武力行使を伴うものであるという多国籍軍でありますが、参加ということになっております。

 そういう意味におきまして、今後の考え方として、国連決議があれば今後とも、それが一部武力行使を目的とするものでも参加できるということで、これからもよろしいか。この点についてお答えいただきます。

西田政府参考人 お答えをいたします。

 今、委員御質問のとおり、これまで、参加という言葉につきましては、当時の中山外務大臣の答弁等、政府は、いわゆる多国籍軍の参加につきまして、当該多国籍軍の司令官の指揮のもとに入って、その一員として行動するという、極めて限定された意味でもって参加という言葉を使ってまいりました。

 今般のイラクにおきまして新しくできました安保理決議に基づきます多国籍軍は、委員御案内のとおり、いわば治安ということもやっておりますが、同時に人道復興ということについてもその使命の一つとしているところでございます。

 そのような意味におきまして、今般の我が国自衛隊の多国籍軍の活動の形態につきましては、専ら、我が国の指揮に従いまして、イラク特措法及びその基本計画に基づいて人道復興支援活動などを行うということでございますので、先ほど御指摘のございました中山大臣等の答弁にございます限定された意味での参加ということはしておりませんが、自衛隊がイラクにおける多国籍軍の中にあって活動していくということは、先ほど外務大臣からお答えしましたように、一般的な意味において参加しているということで差し支えないものと考えております。

中谷委員 これは、今後参加できるかという質問でありまして、法制局も来られておりますのでお答えいただきたいんですけれども、つまり、目的が武力行使を伴う多国籍軍で一部人道支援もある。そういう意味で、憲法的にいいますと、武力行使をしない、集団的自衛権も使わないという範囲なら非戦闘地域において自衛隊が活動できるということでありまして、これを拡大的に考えますと、武力行使を伴う多国籍軍であっても、その中の非戦闘地域において、自衛隊が武力行使をせずに、集団的自衛権に及ばない範囲だとすれば参加することもできると考えますけれども、この点、今後こういうものも参加できるということでございますでしょうか。

秋山政府特別補佐人 中山外相答弁などで、当該多国籍軍の司令官の指揮のもとに入るという特定の意味において参加が許されないとされてきておりましたのは、その目的、任務が武力の行使を伴う多国籍軍にこのような意味で参加いたしますと、自衛隊の活動が武力の行使に及んだり他国の武力の行使と一体化することがないという前提を確保することが困難であるというためでございます。

 今回の安全確保支援活動、あるいは人道復興支援活動にいたしましても、やはりかなり紛争の存在する地域で活動を行うものでありまして、仮に多国籍軍の司令官の指揮下に入りますと、例えば、非戦闘地域で活動を行うという前提が守れるかどうかとか、あるいは、武器使用が法律に定められておりますいわば自己保存のための自然権的権利を超えたものになるおそれがないかどうかとか、そういうことがありますので、今回のものにつきましても、やはり多国籍軍の任務の一部に武力行使が含まれている以上は、司令官の指揮下に入るという意味での参加はできないと考えております。

 今回の、一般的な意味において参加して、一員となって活動しているということでございますけれども、これは、いわゆる我が国が主体的な判断のもとに、指揮に入ることなく、イラク特措法に基づいて活動するという前提が確保されておりますので、そういう意味で、一般的な意味での参加することが憲法上問題ないという判断をしているわけでございます。

中谷委員 今、一般的な意味での参加とおっしゃいましたが、先ほど、国会の答弁として、自衛隊が参加しますということを言われました。それで、平成二年の中山大臣の答弁も、参加とは、国連軍の指揮官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味するということで、協力と使い分けているんですね。

 したがって、参加となりますと、一般の常識人が考えると、先ほど一般的な意味の参加と言いましたが、当然、その組織の指揮下に入って、一員として行動するということが常識的な意味でありますし、法律的な意味も、この平成二年の時点で、指揮下に入って、その一員として行動することと言っていますので、これは今回その意味を、参加するとなると、大きく変えるものになるというふうに思います。

 そこで、指揮権についてお伺いをいたしますが、確かに軍隊、参加国の指揮権はおのおのにある、これは正しいと思います。しかし、そこでコントロールをして組織的に活動していく多国籍軍にとって、ある程度の統制なり指揮、コントロールですね、それから統御、こういうことは必要なわけであって、戦場において統制がないということはあり得ないし、参加したら統制並びに指揮を受けるというのは軍の世界や国際常識からすると当たり前のことでありますし、指揮官も、指名をされますと、任務を受けてそれを達成する責任を持っています。

 指揮統制なくして任務の達成はできない。おのおのの意思でオペレーションがもし行われるとなりますと、それは多国籍軍と呼べなくなって、もう何でもできるんだ、日本は多国籍軍のルールに従わなくても独自の権限でやってもいいよということになってしまいますので、この原則を今回の目的で崩すということは後世よくないと私は思います。

 確かに、指揮は受けなくても、コントロールとか統御という形で、緩やかな統御もあるべきだと思いますが、やはり軍隊の常識、国民の常識からこれは離れているのではないか。やはりこれは協力と言うべきではなかったかなと思いますが、もう一回聞きますが、今後、こういった武力行使を伴い、日本は武力行使をしない範囲で、その中で活動する場合に、多国籍軍に参加できるという見解でよろしいでしょうか。

秋山政府特別補佐人 我が国として武力の行使をしない、あるいは他国の武力の行使と一体化しないという条件が確保されるという状況のもとで、多国籍軍の中であるいはその一員として活動するという意味での、言葉の一般的な意味での参加ということは憲法上問題がないと考えております。

中谷委員 最後の、言葉の一般的な意味での参加と言われましたが、それじゃ、武力行使を目的とした多国籍軍に日本が武力行使をしない範囲で参加することも可能だということですね。

秋山政府特別補佐人 多国籍軍の司令官の指揮のもとに入りまして、我が国として武力の行使をしない、あるいは武力の行使と一体化しないという前提が確保できないような状況での多国籍軍への参画はできません。

 それから、これは平成二年の中山外相答弁では協力という分類に入っておりますけれども、要するに、そういう指揮下に入らない形で我が国が活動に関与するということは憲法上問題ないと思いますが、いずれにせよ、その関与がどうあるべきかということは、具体の事例に即しまして、我が国として武力の行使をすることがないか、武力の行使と一体化することがないかということを確保できるかどうかということを念頭に置いて判断していくべきものと考えます。

中谷委員 憲法的に言いますと、要は、武力行使をしません、集団的自衛権をしませんという範囲なら、日本も国連の多国籍軍なり国連軍に参加できるという認識が今回示されたものだと私は理解をしていますが、それでよろしいですか。

秋山政府特別補佐人 いずれにせよ、言葉の問題でございまして、それから法律上の定義された言葉でもございませんので、従来の平成二年の中山大臣答弁の分類でいけば、いわゆる協力、参加に至らない協力ということになろうと思いますけれども、そういうものができるかどうかは、その具体の事例に即しまして、武力の行使をしないか、武力の行使と一体化しないかということを判断基準としながら、どのような関与が可能かということを判断していくべきものと考えます。

中谷委員 先ほど外務大臣は、日本は多国籍軍に参加したと言いました。この辺は非常に土台の部分で基本的なところでありますので、シビリアンコントロールを明確にする意味でもきちんと整理をしていただきたいと思います。

 もう一点、今話題の、国連軍に対して憲法上協力できるか。これは民主党が話題を提供していただいた問題でございますが、国連に協力することは国権の発動であるかどうかという議論がありました。

 我が国が国連の待機軍なるものをつくって武力行使を伴う国連活動をすることは、民主党の党首は憲法を改正して行うべきだと言いましたが、民主党の大物の人は現行憲法でも可能であると言っております。

 したがって、この点において法制局の見解を伺いたいんですけれども、現行の憲法でも国連待機軍なるものを使って武力行使を伴う国連活動をするということは可能なんでしょうか。

秋山政府特別補佐人 憲法九条で、一項は、国権の発動たる戦争及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄するというふうに決めているわけでございます。

 それで、「武力の行使」には「国権の発動たる」という修飾語はついておりませんけれども、やはりそれは、国権の発動たる、すなわち国家の行為としての武力の行使というものを考えているのだと思います。

 それで、九条は、このような武力の行使を、我が国自身が外部から武力攻撃を受けた場合における必要最小限度の実力行使を除きまして、国際関係において武力を用いることを広く禁ずるものであるというふうに政府は考えているわけでございます。

 それで、今の国際待機軍の問題でございますけれども、お尋ねの構想がどのような場合に部隊を派遣するのか、あるいはその具体的な任務や活動をどうするのかなどが明らかにならないと、現段階で憲法九条との関係について確定的に申し上げることは難しいのでございますが、一般論として申し上げますと、憲法九条に言う「武力の行使」とは、基本的には国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうものでありますから、行為の主体が自衛隊以外の機関であるというその一言をもって、当該行為が我が国による武力の行使に当たらないとされるものではないと考えております。

 すなわち、それが自衛隊以外の我が国の機関によって行われた場合でありましても、我が国による武力の行使と評価されるものであれば、いわゆる自衛権発動の三要件が満たされない限り、たとえ国連決議に基づくものであるとしても、憲法九条との関係で問題を生ずるものと考えております。

中谷委員 やはりいずれの国の軍隊も自国の指揮を離れることはできないという、これも常識なんですが、指揮権においても、その組織の中で指揮、コントロールを受けるということも常識であって、この国連活動において、本来は、自衛権という世界ではなくて国際的な活動であるという意味づけからしますと、活動することができるという世界も広がります。

 したがって、この点においては、もう無用の混乱を招くことなく、しっかりと憲法を改正してきちんと位置づけをする時期に来ていると思いますので、今後憲法問題も議論をしていきたいと思います。

 それから、最後もう一点。

 防衛庁長官、今度統合運用、来年度から実施ということでありますが、今後、国際オペレーションも統幕の方で運用をしていくことになるのか。そして、軍事オペレーションに近いわけでありますが、これは統合幕僚長ができた場合に、直接防衛庁長官に報告をして指示を仰ぐのか。現在、参事官会議がありますけれども、これと並行して、防衛会議という会議もありますが、これをさらに活用、発展させて、統合幕僚長の報告とか方針を長官が直接聞いて判断するということも検討されるのか。この点において、防衛庁の統合幕僚における海外活動における考え方についてお考えを聞かせていただきたいと思います。

石破国務大臣 この統合運用の構想というのは、委員が長官であられたときに御発せられた構想であって、それを私が防衛庁長官を務めるようになりましてからも、委員の長官時代の構想というものを実現すべく努力をいたしておるところでございます。

 今回のイラクのオペレーションにつきましても、これは陸海空、すなわち陸はサマワにおいて活動し、空はクウェートからタリルまでということでございますし、海も「おおすみ」を使いまして物資の輸送等々を行っておるわけでございます。これは一つの統合運用のモデルケースとして考えるべきではないかということを私は申してまいりました。そういう形で、統合運用の一つのモデルケースとして今回のイラク派遣というものを実行いたしておるわけでございます。

 今後、統合幕僚長というものができましたときに、こういう国際的な活動をどのようにやっていくか。基本的に、陸だけとか空だけとか海だけとかいうことは非常に考えにくいことでございまして、そうしますと、統合運用という観点から、統合幕僚長の権限をどのようにするかということは、今後防衛庁設置法をどのように書いていくかということと関連をいたしますので、今ここで断定的なことを申し上げることはできませんが、基本的にそういうことになるのだろうと思っております。

 海外における活動は統合というものをすべからく基本にしてやっていくことになるでしょうし、また、参事官会議というものが公式な会議としてあるわけではございません。これは委員も大臣をやられて御存じのとおりでございます。そうしますと、じゃ、防衛会議というものになってくるのかということになりますと、防衛会議というもの、これは制度上はございますが、これをどのようにして今後運用していくのかということを、防衛庁内部におきましても、あるいは政府の中におきましても議論をしていかねばならないことだと思っております。

 一番大事なのは、委員おっしゃいますように、シビリアンコントロールというものをいかにして担保するか、それはきちんとした責任をだれがとるかということなのだろうと思っています。実際にだれが責任をとるんだかわからないような、そういうような組織の運用というものはあってはならないことだと思っておりまして、そういう観点からも統合ということは議論されねばならないと考えております。今後とも御教示を賜りますようお願い申し上げます。

中谷委員 では、しっかり議論していいものをつくっていただきたいと思います。以上で終わります。

斉藤委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 中谷委員に引き続き質問をさせていただきます。

 まず、多国籍軍の参加の問題についてもう少し触れたいと思います。

 私も、今回のこの多国籍軍参加については、ちょっとこのプロセスについては一つ丁寧さを欠いたんではないかということを実感しております。特に今回、確かにこの多国籍軍参加につきましては、アメリカのブッシュ大統領からは大変な評価を受けたということですが、実際に日本が評価を得べきものは、本当はイラクの一般の国民の皆さんから得ることが必要だというふうに思います。その中で、本当にこの多国籍軍の活動はイラクの一般の人たちが喜ぶのか、そのことを少し聞いてみたいというふうに思っています。

 まず初めにお伺いしたいんですが、この多国籍軍参加、先ほど中谷委員からも、この話の中では、参加なのか協力なのかということがありましたが、参加ということになった場合、現在イラクで活動しているこういう軍隊を有する国の数、そしてまた、多国籍軍に移行するという中での撤退した国があるのかどうかということをお伺いしたいと思います。

西田政府参考人 御質問の、新たにイラクに主権が移りまして、多国籍軍が今活動しているわけでございますが、そのような中で、現在、我が国を含めまして三十二カ国が部隊を派遣しているということでございます。我々の承知する限りにおきまして、このような多国籍軍の外で活動している外国の軍隊があるというふうには承知をしておりません。

 それから、フィリピン、タイが部隊を撤退させるというような動きが出ておりますが、それ以外に具体的に撤退というような話が出てきている国はないというふうに承知をいたしております。

小野寺委員 そうしますと、ちょっと確認したいんですが、イラクで日本が目的とします人道復興支援をするためには、どうしても多国籍軍に現実問題として参加、もしかしたら協力という形でそのスキームの中に入っていなければ実際に活動が恐らくできないだろう、またその外でしている国もないというふうに考えていいでしょうか。

西田政府参考人 委員御指摘のとおり、自衛隊は、多国籍軍に入る前、それから入る後も、イラク特措法に基づきまして人道復興等の支援をしている、活動をしているという意味において、活動の実体には何らの変化もございません。

 しかしながら、まさに六月二十八日をもちまして、それまでの占領というものから主権がイラクに戻りましたものでございますから、新たにできましたイラクの具体的には暫定政府との間におきまして、外国の軍隊の一つであります自衛隊も、活動するに当たりましては、法的な地位を確認する必要があるということでございます。

 他方、先ほど御説明しましたように、暫定政府は、まさに主権を移譲されるときに、国際社会に対しまして、多国籍軍という形で治安あるいはその他の活動についての支援というものを求めまして、一五四六で国際社会は安保理が全員一致で多国籍軍を編成するということになりましたものですから、そのような中で日本もこれに参加するというのが適切だったと思いますし、また同様に、もしそうでなくて、個別にそのような形での法的な地位等を確保して参加するということは実際上も極めて難しかったものというふうに考えております。

小野寺委員 現在の状況についてはわかりました。

 防衛庁長官にお伺いしたいんですが、多国籍軍参加、今回なったわけですが、その前後におきまして、自衛隊の活動について変化があったのかないのか、そのことをお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 委員お尋ねの、活動に何か変化があったかという問いにそのままお答えするとすれば、何の変化もございません。これは、多国籍軍ができる前もできた後も、いわゆる参加をするに至る前も至った後も、根拠法はイラク特措法に基づいて活動いたしております。したがいまして、活動の内容が変わるということも論理的にはないわけでございまして、したがいまして、全く変化がないというふうにお答えを申し上げるのが適切かと存じます。

小野寺委員 わかりました。

 その中でちょっとお伺いしたいんですが、先ほど法制局長官の中で、今回、この多国籍軍の参加について、日本の自衛隊の活動について、それが憲法に抵触するかしないかということに関しては、個別具体例の中で判断をすると。ですから、日本が行っている中では、物資の輸送あるいは人員の輸送も一部あるというふうに伺っています。そうなりますと、例えば武器を保有した米軍を輸送するという業務、それが憲法に違反するかどうか、今回のイラク特措法の趣旨に乗るかどうかということも恐らく一つ一つ個別具体に判断せざるを得ないということになると思うんです。

 ただ、私ども議会に対しては、実はこういう自衛隊の今回の活動はほとんど表に出されていません。ですから、委員会、理事会の中でお伺いしても、これは軍の中の機密ということで当然表に出せないということになるんですが、じゃ、一体だれがこの個別具体例を、一々これは憲法に抵触するのか抵触しないのかという判断をされるのか。

 例えば防衛庁長官がそれを一々本当に報告をされて、内部で、例えば内閣の中で、これは憲法に抵触する、抵触しない。恐らくこれからも、多国籍軍の中で、参加なのか協力なのかわかりませんが、その一部ということになりますと、当然何らかのいろいろな要請がさらに来ると思います。そうすると、その一つ一つに対して大変な重い憲法に対する判断をしなければいけない。そういう内部での役割はどのようになっているのか、教えていただきたいと思います。

石破国務大臣 それは、先ほどもお答えをいたしましたが、根拠法令がイラク特措法ということになっておるわけでございます。その法に照らしてどうなのかということは、それはかなりの程度現場指揮官の判断に任せても問題がないものだと考えております。

 例えて言えば、政策的な判断でございますが、武器の輸送は行わない、こういうことを申し上げております。武器を携行した兵隊さんを輸送するということは常識の範囲内においてはございますが、武器の輸送は行わないという政策的な判断がございます。これはやらないということははっきりしているわけですね。あるいは、武力の行使と一体化するようなこと。それはどのようなものが一体化するのかということも、これは累次国会答弁等々で類型化されておりまして、こういうものは一体化するということがある程度確立をいたしておるわけでございます。

 ましてや、武力の行使に当たるか当たらないかというようなことは、これは本当に東京まで上げてううんと言って判断をしなきゃいかぬような、そういうものはほとんどないというふうに考えておりまして、私どもとして、自衛隊が海外で活動いたします場合に、武力の行使との一体化とか、海外における武力の行使とか、あるいは集団的自衛権の行使、集団的な自衛権の行使というのは、例えばイラクにおいてどの国も自衛権を行使しておるわけではございませんので、集団的自衛権の行使という概念そのものが成り立たないというふうに考えております。

 そういうようなものについて、個々具体的に判断をすべきものではございますけれども、それによって現場が非常に困難な状況に陥るとか、それによって判断に遅滞が生ずるとか、そういうことが私は起こるとは考えておりません。そのことについては相当に明確に、こういうことは行える、こういうことは行えない、そういうようなスタンダードは確立をしておるものと考えております。

小野寺委員 防衛庁長官に再度確認したいんですが、そうしますと、実際、今どこでどういうことを、例えば物資輸送にしても活動しているということは、当然私どもはわかりませんが、長官あるいは内閣には逐次報告があって、そのことに関して、今言った現場の指揮官の判断ではなくて、政治の判断として、これは憲法に抵触するような活動ではない、イラク特措法の趣旨に反するものではないということを一つ一つ確認されているかどうか、もう一度お伺いしたいと思います。

石破国務大臣 委員が冒頭おっしゃいましたように、なぜ明らかにできないかといいますと、一つは、何々国のどのような人を、いつからいつの期間において、どこからどこまで運びましたというようなことが公に言えるはずがないということは、これは軍事の常識でございます。これは日本が運んでおるのだからといって、例えばアメリカのどんな部隊を、何人、どこからどこまで、何月何日運びましたなどということは申し上げるわけにはまいりません。これは日本だけの判断でできることでもございません。

 しかし、部隊が、何をどのようにして活動しておるかということは、それは当然防衛庁全体として把握をしておるものでございます。しかしながら、それは現場の部隊において、例えばC130が輸送をいたします場合に、どういうニーズがあるか、そしてどういうような能力が各国から提供されるかということを調整を行いまして、その中において日本ができることしかやらないということでやっておるわけでございます、当然のことでございますが。

 したがいまして、個々具体的に一々防衛庁として判断をし、指揮をするということではなくて、その運用は相当の部分現場に任されております。それは、調整の過程におきまして、法令によらないことはできません。それはやらない。それは法治国家の組織として当然のことだからでございます。それは法による信頼というものでございましょうし、指揮官はそれにのっとって行動するということを当然信頼しておることによるものでございます。

小野寺委員 再度確認しますが、長官は、その内容については逐次報告を受けて、確認をされているんでしょうか。それとも、指揮官に任せているから、ちょっと自分はそこまで知らないということなんでしょうか。

石破国務大臣 それは一々判断を私がしておるものではございません。それは現場の指揮官も、と申しますよりも、自衛隊全体が法令にのっとって活動をしておるからでございます。

 しかしながら、仮に疑義を生ずるようなことがあるとするならば、それは判断をすることもございましょう。いつ、どこで、何が行われているということは、防衛庁全体として、当然オペレーションの実態というものは把握をしておるものでございます。しかしながら、すべて把握をし、すべてについて、これはいい、これは悪いというような判断をすることが法の要請するところだとは考えておらないところでございます。それによって十分活動は担保をされていると考えております。

小野寺委員 済みません。なぜこれほどしつこく聞くかというと、実は今回のこの多国籍軍参加、あるいはいろいろな形での今回の自衛隊の活動というのは、私は、かなりぎりぎりのところをやっていると思うんです。そのぎりぎりのところをやっている中で、本当に相当慎重に私どもは活動しないと、もしこれが今後の、この活動が終わった後に、今回の活動内容が明らかになって、つまびらかになって、その中で、あれ、これってもしかして抵触しているんじゃないのということが後々わかった場合、これは大変な政治の責任になります。

 ですから、ぜひ事細かに、逆に言えば、私ども委員、恐らくいろいろな秘密で明らかにしてもらえないと思います。ですが、後ではわかることです。現在判断できるのは、逆に言えば内閣。それを私どもは政治の責任として信頼するからこそ、政権党ということで国民の信頼を受けていると思うんです。ですから、かなり慎重に、一体何をしているのかということを慎重にも慎重に、重ねてぜひ確認をしていただきたい、そういうふうに思います。

石破国務大臣 委員がおっしゃっておられますぎりぎりのところというのが、何を指してぎりぎりとおっしゃっておられるのか、ちょっと私には正確に理解しかねるところでございますが、今回のオペレーションというものが当然憲法の範囲内で行われているということ、それは十分に担保をされていることだと思っております。

 一歩踏み間違えたらば憲法に抵触するとか、あるいは一歩間違えたらば法の運用というものを間違えるとか、そういうようなことを私は現場にやらせるべきだとは思っておりません。ぎりぎりいっぱいで、本当に一歩踏み間違えたらというような形で今回のイラクあるいはクウェートにおけるオペレーションをやっているとは考えていないところでございます。

 ただ、委員おっしゃいますように、何をやっているのかということについて、防衛庁長官として、あるいは政府全体としてきちんと把握をしておくということは極めて重要なことだと思っております。私自身、航空自衛隊が、陸上自衛隊がどのように活動しているかということは、委員御指摘の点あわせまして、安全確保の義務を負っておるわけでございますから、その点もあわせまして、きちんきちんと一つ一つのオペレーションというものを把握するように、その実態がどうであるかということを把握するように努めるのは、これは当然の責任であるというふうに心得ておる次第でございます。

小野寺委員 ありがとうございます。ぜひそのようにお願いできたらと思います。

 それからまた、いろいろな状況はあるんでしょうが、政治の責任として、まだ現地のサマワに防衛庁長官なり総理が伺っておりません。ぜひいろいろな機会を見つけて、長官は多分行きたいと思っていらっしゃると思いますが、そういう直接の現場の状況も把握していただければと思います。

 もう一点お伺いしたいと思います。

 現在サマワで活動している自衛隊の前提となりますのはあくまでも人道復興支援ということで、自衛隊の周辺を治安維持する、例えばオランダ軍の活動については、オランダ軍がそこを担うということになっていると思うんですが、このオランダ軍にしても、現地の駐留についての期限があると聞いています。例えば、現在のオランダ軍の駐留期限は二〇〇五年の三月というふうに伺っているんですが、この期限が切れた後、自衛隊の活動というのはどのような形になるのか、お伺いしたいと思います。

石破国務大臣 これはオランダにおきまして、オランダ政府あるいはオランダ国としての判断がなされることであって、仮に来年の三月末日をもってして撤退するとかしないとかいうことを、予断を持って今お答えするのは余り適切なことではないと考えております。

 他方、ではオランダが仮に引いたら自衛隊は引くのかねというふうに問いかけがあった場合には、それは、そのときの治安の状況というものがどうであり、いつも申し上げることでございますが、自衛隊の持っております権限と、そして持っております装備と、そしてまた持っております能力をもちまして危険が回避できるかどうかということにかかっておるのだろうと思っております。

 仮にオランダに代替するものが出たとしたらどうなるのか、あるいはそのときの治安の状況がどうなっておるのか、現在においては、ちょっと予断を持って申し上げることは適切ではございません。しかし、それは本当に法が定めておる安全の確保というものができるかできないか、一にかかってそこの点の判断を日本国として主体的にすべきものと考えておる次第でございます。

小野寺委員 時間もありませんので、最後に、少し活動についてお伺いをしたいと思います。

 一部の報道ですが、ムサンナ県の評議会議長、この方が、日本のイラクへの支援について大変な失望を覚えている、私たちはこれをなかなか評価できない、当初の期待をはるかに下回っていると失望感を表明したという報道がありました。片や、また一つの報道なんですが、給水活動以外にいろいろな修復活動をしていますが、その中で橋の修復を自衛隊は一生懸命やっていらっしゃる。その中で、そのことを感謝して、佐藤ブリッジという、佐藤隊長の名前をとって感謝していると。その両方があるんですが、一体、今どういう形で現地では評価をされているのか、そのことをちょっと最後にお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 これも例えて言いますと、七月一日付の朝日新聞がございましたが、そこにおきまして、朝日新聞と現地の報道機関がジョイントで世論調査を行った。サマワ市民の八五%が自衛隊の活動を評価しているというのがございました。これは、やはり人によってまちまちなんだろうと思っております。

 当初から、期待値と実現値の乖離をどうやって縮めるかというお話もしてまいりました。私どもは、法令によって、できることとできないことがございます。能力的にも、できることとできないことがございます。私どもは手品師でもなければ魔法遣いでもないわけであって、一夜にしてすべてのニーズを満たすということはできません。しかし、私どもとして、外務省とよく協力をしながら、自衛隊としてできること、ODAによってできること、あるいは草の根無償でできること、要は期待値と実現値の乖離をどれだけ埋めていくかということが重要であります。

 あわせまして、私は、あれもやってもらいたい、これもやってもらいたい、当然のことだと思いますが、余りに手を広げることをいいことだと思っておりません。与えられたことをきちんきちんと一つ一つ確実にこなしていく、そして、そこにおいて大事なのは、いかにして安全を確保するかということなのだろうと思っております。それは、憶病とおしかりを受けるかもしれませんけれども、まず安全を確保するということ、そして、現地の人々の期待に一つ一つ着実にこたえていくことなのだと思っております。

 冒頭、運用局長が申し上げましたけれども、五十度という暑さの中で一番求められているのは、雇用と同時に水なんだと思っています。安全な水をきちんと定量的にコンスタントに提供できるということだけでも、私は大変なことなのだと思っております。

 私ども、本当にイラクの人々の期待にこたえるために、そして自衛官の活動を安全に行うために、今後とも万全を期してまいりたいと考えておる次第でございます。

川口国務大臣 今の御質問に関連して、事実関係だけちょっと明確にさせていただきたいと思うんですが、おっしゃられたムサンナ県の知事の報道された発言でございますけれども、これにつきまして、サマワの外務省事務所長がムサンナ県知事に確認をいたしました、そういうことを言ったのかどうかということですけれども。そういたしましたところ、知事から、失望したという発言はしていないということを言われていまして、日本による大型プロジェクト、これを期待する、そういった趣旨であったということを知事から聞いているわけでございます。

 今石破長官からもありましたけれども、現地は、日本は何でもやってくれるという期待が非常にあるということがあるわけでして、そういった期待を背景になされた発言であるというふうに承知をしています。

小野寺委員 最後に一言。

 仕事というのは、ある年限があって、それを目標に一生懸命やるから仕事ができると思います。ぜひ、今回のイラクの人道復興支援、自衛隊の活動もある年限をそろそろ考えて、それまでに私たちは復興を実現する、逆に言えば、イラクの皆さんは、日本がこれからは自衛隊じゃなくて民間人が活動できるような、そこまでの治安維持を保ってほしい、お互いにそういうやりとりも必要かと思います。

 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 私は、きょう冒頭で外務省、防衛庁から、現在のイラクの状況について、防衛庁からは自衛隊の部隊の活動、そして外務省からはイラクの治安情勢について御報告がありましたが、それについて若干お尋ねをしたいと思います。

 まず、私自身、イラクという国が今日のこういう事態を迎えるに当たって、イラクにおける知識人、イラクという国は、私は行ったことはないわけですけれども、中東の中における非常に文化の程度が高い、民度の高い国だ、そういうふうにお聞きをしているわけですけれども、そういう状況の中で、イラクにおける知識人が今日の事態をどうとらえているかというのが非常に気になっておりました。

 余り具体的なだれかれという人を今まで私は存じ上げないんですけれども、たまたまある雑誌にコメントが載っていたのが印象に残っております。それは、詩人で、イラク知識人連盟の議長という立場にありますモハメド・バドル・エッディーンという人のものでありまして、こんなふうに言っているわけです。フセイン政権時代、人々は、いかにして抑圧的な当局から逃れるかや、また日々のパンをどう手に入れるかばかりを考えていた。そういう発言の後、フセインがいなくなり、人生に新たな可能性が開けたが、暴力に彩られた文化や宗派、民族による抗争という遺産は数十年にわたって積み重なったものであり、すぐには消えない。

 こういうふうなコメントをされているということを目にいたしまして、国家再生の難しさを吐露されたということに対して非常に胸に突き刺さる思いがしますと同時に、極めて落ちついた見方というものにほっとした思いがしたというのが率直な感想であります。

 そういうことを冒頭申し上げさせていただきまして、イラクにおける主権移譲というものから約一カ月がたったわけです。この治安をどう見るかという問題について、若干、外務省の担当の方、また後で大臣からもお聞きするかもしれませんけれども、去年の三月の二十日ですか、いわゆる戦闘が行われてから一年と五カ月程度の歳月がたって、その一年と五カ月の歳月というのは、私は、後でちょっと申し上げようと思っておるんですが、幾つかの局面というか変化があるというふうに思っているんです。

 外務省のとらえ方として、先ほど読んでいただいた報告によると、この報告は、集約して、私の興味のある観点からいくと、印象的な言葉を言えば、「予断を許さない状況」と。さっき、大臣も予断を許さないと言う。予断を許さないという言葉は非常に使いやすい言葉であるんですけれども、たまには予断をしてもらいたいという感じもするんですね。

 今の状況、とりわけ主権移譲後一カ月がたった状況と、例えば開戦直後の状況というのはどこがどう違うのか。そういう治安の情勢というのは非常に私たち日本にいて気になることでありまして、いろいろな報道に接していると、ともかく至るところで、いつ何どき、時と場所を問わずテロが行われている、大変だなというふうな思いのみが走るわけですけれども。

 私は、おのずと、徐々でありながら変化が起こっているはずだ、こう思っているんですが、外務省のとらえ方、まず、的確にその辺の治安情勢をどう見るかということについて、予断を許さないなんて言わないで、ぐっと突っ込んだとらえ方を教えていただきたいと思います。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘いただいたように、この一年余りを概観していたときに、これから申し上げることは政府の公式見解ということではありませんが、全体の見方としましては、イラク特別措置法が成立しました当時は、イラクでは、主要な戦闘は終結しているけれども、治安確保というのが当面の課題の一つであって、治安情勢には地域的なばらつきがあり、全体としては引き続き十分注意を要する状況が継続している、そういう認識であったと思います。

 その後、例えば去年の十一月のラマダンの時期や、その後、ことしの四月から五月、サドル師と駐留連合軍の衝突が激化したというころには、四月、五月にかけて非常に状況が悪化いたしました。いわゆるスンニ・トライアングルを中心にして頻発しました連合軍に対する攻撃は南部にも広がりを見せたほか、イラク市民を含んだ政府関係者、いわゆるソフトターゲット、軍人さん以外の市民ですね、そういう方々に対する攻撃が目立つようになって、さっきの言葉を使わせていただければ、全般としては「予断を許さない状況」が来たということだったと思います。

 それで、安全保障理事会の一五四六という重要な決議が六月の初めに全会一致で決まって、そこで三つの政治プロセスが決まりました。

 一つは、六月の末までに権限を移譲しましょう、CPAはなくしましょう。それは三日前倒しで実現したわけですね。

 この当時、統治権限が移譲したら治安情勢についても非常によくなるんじゃないかという見通しがあったことは確かです。しかし、実際に起きていますことは、先ほど、冒頭申し上げましたとおり、脅威の度合いは地域により異なるものの、特に新しい暫定政府の高官になった方々をねらった襲撃、それから民間人を対象にした誘拐、殺害というものが続いております。しかし、一つ最後に言えますことは、イラク暫定政府は、警察官を、二十二万人をさらに強化しようとかということで、大変な努力をしておりますので、これらが効果をあらわすことを期待している、そういう状況認識でございます。

赤松(正)委員 そういう説明は大体わかるんですが、私が聞きたいと思っているのは、こういう提示の仕方をしますから、それに従って答えていただきたいと思うんです。

 私は、去年の開戦のときから今日に至るまでの場面を三つぐらいに分けられるんじゃないか。最終的にイラクに平和が訪れるのをゴールとすると、何をもって平和とするかという見方もいろいろあるわけですけれども、最終ゴールに至るまでに四つぐらいの局面があるんじゃないかと思うんですが、その前に、とりあえず今日までの状況は三つあるというとらえ方をしたいと思うんです。これについての感想というか意見を聞かせてもらいたいんです。

 要するに、日本から見ていて、先ほどのようなお話を聞いていても余りよくわからない。むしろ新聞やテレビで言うような、非常に戯画化するというか、非常に短縮化して、一つのエッセンスをぐっとつかみ出してとるとらえ方というのが世の中に受けるわけですね。

 という観点からしますと、例えば戦闘状態が終わった直後というのは、いわゆる米英軍、当時はコアリションと言っていたんでしょうか、米英軍対いわゆるフセイン残党という対立の構図だっただろうと思うんですね。米英軍対フセイン残党、まずそういうふうに私はとらえたい。とらえるのが普通だったと思うんです。それが一つ目。

 二つ目は、米英軍対フセイン残党プラスいわゆる国際テロリズム。これは、この当委員会は冒頭に国際テロと来ているわけで、実は、その国際テロがいつからどうイラクの情勢にかかわったかというのは、意外と余り語られていないというか、その辺が不問に付されている部分があると思うんですね。私は、二つ目の、どこからかは、いつからとは言いません、わかりませんが、米英軍対フセイン残党プラス国際テロリストのそういう固まり、これは、言葉をかえれば、米英軍対反米英軍、いわゆる反米抵抗勢力という言い方をする向きもありますけれども、そういう局面がどこかからあったと思うんです。

 それから三つ目が、実は、今、イラクの主権が移譲された状況が約一カ月前から起こっているんですが、その時点前後から、私は三つ目の局面に移ったんじゃないのか。これは期待もあるんですが、移ったと見るべきじゃないのかという、私のようにどちらかというと土地カンが全くない人間が言っていることですが。

 イラクの情報に非常に詳しい外務省の皆さんから見て、三つ目の局面というのは、先ほど言った米英軍、これは多国籍軍という格好にさっき外務大臣もおっしゃったように今変わっているわけですが、この多国籍軍プラスイラク人、いわゆるイラク体制派と呼ぶべきでしょうか、イラク人というものが一緒の固まりになって、対する構図は、反体制イラク人と呼ぶべきでしょうか、フセイン残党でもいいんですが、いわゆる反体制イラク人プラス国際テロリズムの動きというふうに三つ目は変化しているというふうに私はとらえるんです。

 さらに、次の段階というのは、言ってみれば、アメリカが完全にイラクから手を離して、イラク政府対国際テロ、もちろん反イラク政府というのは残るかもしれませんが、やがては国際テロだけという、イラク政府対国際テロというような構図になり、そしてゴールとしてのイラクの平和というものに突き進んでいくんじゃないのか。

 そういうふうに四つぐらいに分けて、とりわけ今は三つ目の局面にある。つまり、米英、いわゆる多国籍軍プラスイラク体制派イラク人対先ほど言った反体制イラクそして国際テロ、こういうふうに変化をしてきている、こういう局面のとらえ方、これについてどう思われるか。もう時間がないので、外務大臣にお願いしたいと思うんです。

川口国務大臣 いろいろなつかまえ方、とらえ方というのはあると思いますけれども、おおむね、非常に大ざっぱに申し上げると、委員がおっしゃったような流れをたどってきているのかなというふうに思います。

 若干、私としてはちょっと違うふうに考えていますというところがありますので、それを申し上げたいと思いますけれども、まず、米英軍というふうにおっしゃられましたけれども、これは連合軍であり、多国籍軍に途中から変わった、二期目の途中ぐらいから変わっているということであると思います。それから、今の体制派、一方で多国籍軍プラス体制派、それで、反体制派プラス国際テロということですけれども、私は、大部分のイラク人というのはむしろ体制派に近いところに位置しているのではないかというふうに思っています。

 ごく少数のサダム・フセインの残党なりあるいはテロリストなり、そういうグループが片方にあるということは事実であると思います。それを、委員がおっしゃられましたように、今後イラク政府が、イラク人の治安機構、これをきちんとしていくことによって最後の段階に入っていくということかなと思っております。

赤松(正)委員 私がここで申し上げたいのは、単にイラクの情勢というものが治安が非常に厳しいということだけを発信するのではなくて、その中身は大いに変質してきている。先ほど外務大臣がおっしゃった、イラクの大半が私の言葉で言うところの体制派なんだということも、なかなか一般的にはそういうメッセージというのは伝わっていないという現状があると思うんですね。だから、そういう点で、しっかりとこのイラクの状況というものを的確に日本の国民の皆さんに伝えるという努力を、いろいろな角度をとってやられた方がいいということをまず申し上げたかったわけであります。

 時間がありませんので、そのことについてはとりあえずきょうはその辺にしておきますが、特に、いろいろな悲観論もある中で、楽観論とは言いませんが、これからの情勢を見ていく場合に、大事なポイントを提示している専門家の皆さんがいらっしゃるわけです。

 そういう中で、私も同感をするのは、イラクの治安の情勢について的確に、それこそ米英を中心とするグループの国々、また日本の治安状況に対する適切なる手だてというものが大事だろう。それは、直接的に日本が治安をしていくために人的な貢献をするという意味じゃなくて、いろいろなソフト部分あるいは物質的部分ということでやらなきゃいけないことがいっぱいあるんだろうと思うんです。

 もう半年ぐらい前に日本の政府が治安のためにパトカーを六百台、金額にして、全体の四十億円のうち車に関する費用が三十億円、こういうふうな話で聞いているわけですが、これは、現実に効果を上げている、いや、まだそれは実際に届いていない、あるいは何かの効果を上げている、あるいはまた、それだけでは足らないので、何か順次、次に考えていることがある、その辺のことについて的確に、では、局長、お願いします。

吉川政府参考人 イラクの治安維持のために日本政府がどういうことをやっているのかというお尋ねだったと思いますが、先ほど先生御指摘いただいたように、内務省に対しましては、警察車両、実際には千百五十台の供与を行い、その一部は既にバグダッドの内務省に届いております。これからはまた二十台の防弾車両の供与ということも決定しております。さらに、警察官の育成という分野においてどういう支援が可能かにつきましては、ドイツを含めた関係国と具体的なやり方について協力をしております。

 そもそも、申し上げれば、イラクの治安を回復するためにも、イラクの経済復興というものが大事であって、国際社会、その中でも日本は復興支援に取り組むことが非常に大事だと考えております。

赤松(正)委員 次に、メソポタミア湿原のお話をしたいと思いますが、これはつい先ほど、国連環境計画、UNEPを通じて我が国の支援プロジェクトの概要が決まったということの報道に接しました。

 これについては、我が党も昨日、そのプロジェクトチームを開きまして、いろいろな角度からこの問題についての今後の進め方について外務省の方あるいは環境省の方と議論をしたわけですけれども、この世界遺産というべき湿原の復元及び雇用の創出に日本の科学技術を役立てるということについては、一石二鳥あるいは三鳥というふうにいろいろな角度から利点があろうと思うんです。

 ただ、既に当委員会でも、一月に行われた参考人質疑で、我が党の質問に対しまして、元衆議院議員で国連大学の客員教授をやっている山中あき子さんが指摘をされていましたように、既に一九七〇年代の終わりから、イギリスもこの復元の計画に非常に熱心に取り組んでいたという経緯があったり、バロネス・ニコルソンというEUの女性議員もかねて働きかけているという経緯があるということで、日本だけ突出せずに各方面、各国との連携が大事だという指摘がある。これは非常に大事な指摘だろうと思います。

 そこで、昨日、我が党の中でも議論が出て、ぜひ要望したいという話が出たのは二つあります。

 一つは、いろいろな国に呼びかけるということは大事だろう。特にフランスやドイツにも、この問題について参加を迫ったらどうだというのが一点。

 それからもう一つは、九月の初めでしょうか、ヨルダンでこの工法についての会議が行われるということですけれども、その前後、後でもいいんですけれども、ぜひ日本、UNEPの支所がある大阪でしょうか、そういうところでこのメソポタミア湿原の復元に関する会議を行われる、そういうおつもりはないかどうか。

 この二点について、考え方を聞かせていただきたいと思います。

吉川政府参考人 御指摘いただきましたように、このメソポタミアの湿原問題は、日本政府が非常に力を入れて取り組んでいる問題でございます。川口外務大臣も、この問題についてはいろいろな方々と協議をしております。

 先生御案内のように、メソポタミアの湿原というのは非常に広い、四国より広い領域を対象にして、しかも、水資源、農業、漁業、環境改善、それから少数民族、被迫害住民の帰還とかいろいろな問題があります。

 先生今おっしゃいましたきのうの会議には、国際社会協力部長石川薫も出させていただいたと聞いておりますので、担当部局、国連関係者の間で、今先生おっしゃいました二点について真剣に検討をしているところでございます。

赤松(正)委員 では、真剣に結果を出していただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 官房長官、大変お忙しいところおいでいただいており、また後ろの時間の方も、記者会見、四十五分からというふうにお聞きしておりますので、ちょっと論理的な順番は変わるかもしれませんが、官房長官に先にまとめてお伺いをいたしたいと思います。少なくとも十分ほどはかかると思いますので、両大臣、先に申し上げておきたいと思います。

 官房長官には、イラクのことと、それから全体の国際貢献のこれからのあり方という意味で、現在、総理の諮問機関の懇談会の方で御検討を進めていただいているということについてお聞きをいたしたいと思っております。

 全体の方から先にお聞きしようと思ったんですが、イラクのことについて、先ほど自民党の中谷理事さんの方とも随分と議論がありまして、それに関連して二、三、先般のこのイラク特別委員会での審議に関連して確認をさせていただきたいと思っております。

 一点は、今回、多国籍軍に参加という言葉をどう使うかということ自身が議論になったわけですが、多国籍軍の中で活動される。これについては、主たる理由は、やはり法的地位を確保するための手続を行うことが事実上不可能であったことなどによるといったような御表現で御説明があったと思いますが、専らその理由だと思っていいのか。などという言葉に若干の含みがおありなので、そのことを含めて幾つかの理由がおありなのか、もう一度お話しいただけたらと思っております。

細田国務大臣 あの段階におきまして、それまでの間に、半年以上だと思いますけれども、自衛隊が現地に、人道復興支援等活動をして、かつ、日本の選んだあのサマワ周辺の地域は結果としてもイラク全土から見てもより安全な地域であったと思いますけれども、そして水あるいは医療その他、復興の活動をしております。

 そして、一部の方は、ぎりぎりの段階で、政権ができますときに、一たん戻れとか、全部すべてを振り出しに戻してやったらいいじゃないかという御意見はありましたが、やはり人道復興支援等を継続してやることが最も望ましいんじゃないかという判断もいたしまして、いろいろな可能性は当然検討したわけでございますけれども、新しい国家、政府も準備不足ということもあり、このまま、実体は同じであっても、多国籍軍の傘下に今後入るということ、そして実際の活動は同じ活動を継続する、こういうことが適当であるという判断をしたわけでございまして、その判断は今でもよかったのではないかというふうに考えておるわけでございます。

松本(剛)委員 政府の御認識も、報道等の流れ方を見ても、恐らく多くの国民も、今回、日本の自衛隊は多国籍軍の中に入って活動をしたという実績がこれで残ったという認識にはなるのではなかろうかというふうに思います。しかし、過去なかったことでもあり、また多国籍軍というものの位置づけも含めて、もちろんいろいろな態様があるということはこれまでもここで議論をしてきたことでありますが、大変大きな問題である。

 もちろん、六月三十日の主権の移譲はある程度わかっていたことでありますが、暫定政権の構成等を組み立てるのにもかなりぎりぎりまでかかったとか、現地の事情を含めて諸般の事情があったことはわかりますが、そこだけお聞きをすると、法的地位を確保するという手続を行うのにほかの方法がなかったから多国籍軍に入るしかなかったと。多国籍軍に入るということが、そんな何か便法のような話なのかという感じがやはり率直に言って残るわけであります。このことは、そこからはある程度価値判断も入ってくるかもしれませんが、議論を先へ進めさせていただきたいと思います。

 その際、憲法に関連することもいろいろ御議論があったと思いますし、我々もここで議論をさせていただいております。先ほど中谷理事もおっしゃったのは、多国籍軍に入るという以上は、ある程度一体の軍の中のものでなければいけないんじゃないか、そうでなければおかしいんじゃないかといったような趣旨の御議論だったのではないかと私は理解をいたしたのであります。

 今、多国籍軍の中に入って活動するとおっしゃった。御案内のとおり、参加と協力という話をずっとしてきておりますし、今法制局は、参加に至らない協力を一般的に参加というような御説明をされておられるわけですが、日本語として、私ももう一遍辞書を引いてみたんです。協力というのは、対等のことが多いようですけれども、別々のものが力を合わせるというものなんです。参加というのは、やはり一員となるという部分がある。アンダー・ユニファイドコマンドのユニファイドコマンドが何なのかという議論もさんざんありましたが、アンダーの方を考えると、やはり縦の関係なんだろうというふうに思います。

 先ほどの御議論でも、石破長官、連絡調整はするとおっしゃっている。指揮は受けないと言っている。その間の言葉として、さっき、統御なのか統制なのかコントロールなのかという話がありましたけれども、一つ私は、参加はやはり中に入るということだと思いますし、協力はある意味では外からやるという部分が日本語として一般的に考えたらあるんではないかというふうに思います。

 そうなりますと、少なくとも、今まで参加と協力というのは中と外で区別をしていたんではないかというふうに思われますが、今回、参加に至らない協力と言われて、そうかなと私も思いながら聞いていましたけれども、何となく違和感を覚えるのは、もう一遍整理して考えると、そういうことではないかというふうに思います。一員として、一応アンダーなんですから、指揮は受けないという御説明であったことを認めたとしても。そうすると、多国籍軍とは一体のものであるということに、中に入っているという理解でよろしいわけですね。

細田国務大臣 まず、いろいろな形態はあると思うんですけれども、あのイラクのクウェート侵攻というのは、ようやく両国が和解をしたようでございますけれども、早いもので十四年たつわけですね。あのときは、一方的な侵略があって、油田は燃やす、男は殺す、女性は凌辱するという大変な一方的侵略でありましたね。そして、まだまだ実態解明しなきゃいけませんけれども、あのときに多国籍軍を皆組織してやった。そのときは、まさに取り返すための戦争状況ですから、こういったときに、日本は非常に議論をして、それでは資金的な貢献でいこう、こういうことですね。

 今回は、イラクというものがある一定の状態になって、そのもとに多国籍軍が設置されている。しかし、その多国籍軍は、もともと前の国連決議によっても当然多国籍軍であったわけで、日本は、まだ政府がしっかりしていない状態で自衛隊派遣という格好で出しているわけですが、あのときの多国籍軍も、例えばスペインは、多国籍軍の一部であったけれども、いや、私の方はちょっといろいろ事情もあって、テロもあったし、政権もあった、失礼しますといって帰りましたね。

 だから、そもそも多国籍軍の中における各国の自由度というのはどうか。もう国会幕切れで大変な熱のある議論が行われましたから、余りそこの議論が深まっていない面もございますけれども、そもそも、その国の自主的な判断で、自分の国の法令の範囲内で、参加したり撤退したり、ありようを考えるということは、かなりの自由度で行われているわけですね。最近も、もうやめましたと言って帰るような国もあります。

 そういった意味で、日本がほかの法的な地位というものがなかなか得にくい、新しい政権が発足して。そのときに、我が国は、撤退している国やいろいろな国がありますが、憲法という制約もあり、これまではこういう実績でやっています、この地域でやっています、それでは、今までやってきた範囲内で貢献はするけれども、それは我が国の自由度の中でやらせてもらいますよ、憲法も御存じですねという話は、アメリカその他各国政府と話をして、各国から、日本国憲法もよく存じておりますし、それは当然のことでありますという回答も得た上でやっておることでございます。

 ただ、前回の国会の、もう最終盤でしたか、それぞれのいろいろな言葉その他、あるいは多国籍軍参加という言葉自体が、国民に非常に危ないんじゃないかという認識を持たれたということは、説明が十分でなかった面もあると思います。そこの段階で協力か参加かということを余り差別して言うことは、総理の御判断もあり、そういう言葉の差で言うよりは、参加でいいんじゃないか、基本的にはいいんじゃないか。しかし、従来、差をつけて、我が国の方針はそれを協力と言っておるし、その意味は変わっていないんだということを私どもは申したような経緯はございます。

 ただ、厳密に言うと、先ほど言いましたように、多国籍軍に参加して軍事活動に協力するという意味はございませんので、そこを法制局長官等がいろいろな説明をしたことは事実でございます。

松本(剛)委員 議事録をもう一遍きちっと読んでみたいと思いますが、今のお話をつなげると、総理は厳密には言葉をお使いにならないという趣旨のようにも聞き取れなくもないんですが、まあ、そのことはおくとしまして、例えば、法制局の解釈については、安全保障委員会だったと思いますが、長官とも御議論させていただきました。今のこの時点での法制局の解釈を論理的に突き詰めていくと、湾岸戦争のときの後方支援も、武力行使と一体化しない限り可能だ、安全確保支援活動というふうに思います。少なくとも、あの時点での国会の論議のニュアンスもしくは多くの人の受け取り方、ひょっとしたらそのときもそういう意味ではなかったのかもしれませんけれども、とは明らかに違ってきているということがあります。

 さっき申し上げたのは、多国籍軍の参加と協力というのはそんな厳密な話じゃないとおっしゃいましたけれども、やはり、多国籍軍の中に入るのかそうでないのかというのは、大変大きな違いが私はあると思うんですね。

 先ほど指揮の話がここで出たのも、法的地位を確保するのは、多国籍軍というものに対して、ある意味では一括して同意を与えているということになるわけですね、国連の決議に基づき、そしてイラク政府の要請に基づき。そうなりますと、一体のものだからこそ、ある意味では一括している。それぞれが中で本当に好き勝手なことができるのに、外国の軍を駐留させることを同意する、外国の軍隊が駐留をするというのは大変なことだと思うんですよ。これを、一つの多国籍軍というくくりの中だからこそ同意をしている。

 そうなると、当然アンダーであるし、一つのくくりの中である。先ほど中谷元長官は、全体の、軍の一つのルールとして、当然何らかの縦の関係があるという趣旨のお話だったと私は理解したんですけれども、それはやはり、多国籍軍という名前がついて、一つのくくりだからこそ、そこでまとめて同意が可能だというふうに思うんですね。ここにやはり相当矛盾があると思いますけれども、いかがですか。違いますか。

細田国務大臣 防衛庁長官からも後から答えていただこうと思いますが、例えば、多国籍軍の一員だから、多国籍軍全体がどうなっているよとか、こういうふうに動いているよ、そういうことは情報としては当然共有すると思います。

 では、どうしてくれ、サマワから動いて、あるいはもっと増強して、千人にして動いてくれとか、ここにこんな治安維持活動があるからこれをやってくれとか、そういうことまでを拘束することはない。これは、他の国でも全部自分の国の方針に従ってやっているんだから、そこの仕分けは必要だと思います。ただ、中に入っていて、これは単なるヤドカリで、何の情報もなく、形だけ入っているのかと言われれば、そういうものは共有はしておるけれども、拘束は受けない、こういうことでございます。

松本(剛)委員 それぞれの国の軍も当然、参加をする、撤収をする、またその中のことについても、それぞれの国のしかるべき政治的力がその軍に対して何らかのマンデートを与えて、それに基づいて動いているというのが当然だろうと思うんですね。しかし一方で、今おっしゃったように、それぞれの国が皆そうだということであって、しかし、多くの国は多国籍軍のある意味では指揮下だというふうに考えてもおかしくなくて、日本だけがわざわざイギリスとアメリカに了解を得に行ったわけですね、逆に言えば、ほかの国と違うからこそ。

 申し上げたいのは、こういう、ある意味では一体だからこそまとめて同意が得られる、しかし一体でない。憲法上は、武力行使と一体化しない参加は可能だ。何が憲法違反かといったら、武力行使しないことだ。これは、言葉をぐるぐる回しているだけで、実は何の説明にもなっていない部分というのが厳密に言えばあるわけですね。

 ついこの前までは参加と協力という言葉を使っていましたし、それは、一般的には中と外のように、少なくとも私の日本語の調べた限りでは聞こえてもおかしくないような一つの線が引いてあったのが、いよいよその線もなくなって、武力行使と一体化しない中での参加であればオーケーだ。

 これはもうハードルがどこにあるのかというのを具体的な形では何ら示していない。ある意味では個々の判断に自由になっている部分があると言ってもおかしくはない憲法解釈ではないかと思う。こういう矛盾を、先ほど憲法改正の話がありました。我が党も創憲ですけれども、私たちはきちっと整理をしてから本当はするべき話だったのではないかということをずっと申し上げてきたということであります。

 長官の時間も限りがあるだろうと思いますが、こういう矛盾がある形のままでお出しになるからこそ、我々は一回どこかできちっと整理をするべきではないかという意味で、撤退ということを岡田代表も申し上げたということをまず申し上げておきたいと思います。

 長官に、多分あと四、五分しか時間がないと思いますので、懇談会のお話についてもお伺いをしたいと思います。

 既にいろいろな形で報道も出ていますし、中間の発表もあります。お聞きしたいことはたくさんあるんですが、ここはイラクの支援特委ですので、国際貢献の部分に絞ってお聞きしたいと思っております。

 国際貢献は運動競技のお手伝いと一緒なのはおかしいといったような言葉がたしか出ていたというふうに思います。言うなれば、付随的な業務であるというのはおかしいという趣旨でおっしゃったようでありますが、私も長官と一度そういう議論をさせていただいて、根拠法律その他を含めて改正する必要があるということを申し上げた記憶があります。長官と大臣所信をお聞きした質疑ではなかったかと思いますが。

 今その方向に進んでいるという理解でいいのか。そうであるとすれば、次期通常国会で自衛隊法を含めていろいろな形で動きが出るというふうに考えていいのか。官房長官に、懇談会の進め方等、一言いただけたらというふうに思います。

細田国務大臣 現在、総理の諮問機関として、安全保障と防衛力に関する懇談会を開催いたしまして、その道のさまざまな御意見を持っておられる皆様方、約十人でございますが、けんけんがくがく、既に七回にわたって議論を行い、かつ、これからは若干取りまとめの方向に向かって議論を収束させようと思っているわけでございます。

 そういった中で、安全保障問題について全般的なさまざまな意見が出ていることは事実でございます。一番強くいろいろなことをおっしゃる方もいれば、そうではない方もいらっしゃいますから、少し委員によって御意見が違いますけれども、これをまとめてまいりたいなと。これは荒木さんという方が座長でございます。まとめる方は荒木さんでございますが、そういったことを踏まえまして、政府としても、これからの防衛計画大綱に、この御意見を踏まえまして策定していくことになる。したがって、貴重な御意見をいただけるんじゃないかと思っておるわけでございます。国際平和協力の問題も含めまして、目下何をどうするということをはっきりと今決めているわけではなく、そういった御議論をいただいているということでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、ことしの暮れまでの間には、いろいろな意味でまた検討すべきは検討するということを今やっておるわけでございまして、特に中期防衛力整備計画、平成十六年度末までに策定することといたしており、また、このために、新中期防策定の前に新たな防衛計画の大綱を策定するということにしておりますので、そういった御意見をいただきながら、今後検討をしてまいりたいと思います。どれをどうするということは、今の段階ではほとんどまだ具体的な姿をあらわしておりません。

松本(剛)委員 後ほど防衛庁長官にもお伺いをしたいと思っておりますが、大綱の方、また陸海空の自衛隊のあり方という意味でかなり具体的な、例えば国際協力の即応部隊であるとか教育隊であるとか、いろいろなことが既に出てきている中で、懇談会が基本的にたたき台だということであるとすれば、ある程度、一つ方向をお示しいただき、また、これはもちろん防衛庁の所管の話でもありましょうが、内閣全体、国全体の話でもあるからこそ、恐らく総理の私的諮問機関として安全保障と防衛力に関する懇談会ということで設けられたんだろうというふうに思いますので、ぜひ国会の方にも逐次お話をいただき、議論させていただきたいと思っております。

 それに関連して、即答いただける話ではないかもしれませんが、先ほど申しましたように、石破長官とこの議論をさせていただいたときに、予算の問題もある、こう長官もおっしゃいました。私自身も、今、日本の国の予算、もちろん動かせないものがたくさんあることは我々も予算の精査をさせていただいたりして承知しておりますが、大ざっぱに言えば、八十何兆もの予算の中で毎年数千億ほどの何か別枠みたいなものを政治的に取り合いをするような、ごく数%、〇・何%と言った方がいいかもしれません、あとの部分は膨大な官僚機構の中で全部決まってしまうという形、この辺は、今までのスクラップ・アンド・ビルドであるとか、基本的なめり張りのきいた予算編成ということになかなかなっていないのではないか。だからこそ経済財政諮問会議をつくって動かしているんだとか、いろいろお話はあるだろうと思いますが。

 そこで、一つお願いを申し上げたいのは、国際貢献の問題でありますが、既に付随的業務として、私が見る限り、日本の自衛隊は相当な負担を担ってきたというふうに思っております。特に、例えば、今のような支援がある限りは、補給であるとか施設であるとか、そういったものにかなりしわ寄せも来る形で負担をしながら活躍をしてくれているんだろうというふうに思うわけであります。

 国際貢献がこういう形でもしきちっとした位置づけになり、しっかりした形になったときに、防衛庁の枠の中からまたスクラップ・アンド・ビルドだなどということを言うのではなく、しっかりと、これはこれ。もちろん防衛庁の予算で要らないものはきちっと削っていただくことはしていただく必要があると思いますが、日本の国を守るということと国際貢献をするということは、もちろん広い安全保障という意味では両輪だと思いますけれども、直結する問題でもないということを考えれば、今後の予算編成、こういうものを一つ突破口にしていただいて、めり張りのきいた予算編成をしていただきたいと思いますが、官房長官、一言ありましたら。

細田国務大臣 今の御提言は非常に貴重な御提言であると思います。いわゆる防衛予算の中で一くくりすべきか、そうでなくて、日本の国際貢献という形でより広く見る。あるいは、いろいろな形でそういう予算というのがありますね。科学技術予算といっても、その中で各省の関係予算もあれば科学技術のための独自の予算もあるというようなこともございますし、貴重な御意見ですので、今後、予算期に向かっていろいろな意味で検討させていただきたいと思います。

松本(剛)委員 申し上げたように、国際貢献については相当今まで無理をされてきているという感じがしております。ただ、いろいろな意味で軍事的なものも随分変わってきておりますから、要らなくなっているものも出てきていると思いますので、それはしっかり切っていただくし、我々もチェックをしていきたいと思いますが、そうい形でお願いをいたしたいと思っております。

 官房長官の多分お時間だろうというふうに思いますので、実は、各委員と大臣のお席に資料を配らせていただきました。後ほどまた官房長官にはごらんをいただけたらと思いますし、両大臣にはざっと目を通していただけたらと思いますが、イラクで戦争を起こしたことによってこれだけの方が亡くなり、これだけの財産が失われたという、これはアメリカの研究機関のものであります。

 私は、後ほど両大臣には感想を伺いたいと思いますが、サダム・フセインがノーであるということについて、私たちも何も反対するものではありません。しかし、戦争という手段をとるということは、やはりそれだけ重たいということだろうというふうに思います。本当にこれしかなかったのかということを、どこまでぎりぎり考えた末にこういう形で考えたのか。

 例えば、中東の石油という話もありましたけれども、中東の石油、中国の需要とかさまざまな理由がありますから、原油高の原因は一概には言えませんけれども、これだけ一年たって、原油高という状況も結果として起こってきている。戦争という手段を選択することが大変大きなことであるということをぜひこの場をかりて私の方から申し上げたかったので、一度機会がありましたらぜひお目通しをいただきたいと思います。官房長官、お時間だと思いますからどうぞ。

 両大臣に、残されました時間でお聞きをしてまいりたいと思っておりますが、私は必ずしも英語が得意ではないんですが、川口大臣、石破長官は多分御不自由がないことと思いますので、ざっと目を通していただけたらおわかりだと思います。

 どうしても日本の報道は、アメリカからは大量の情報が入ってくるということもあって、米国の兵隊さんの死者が何人ということは時々報道されております。もちろん、全く報道されていないわけでありますから、ごらんいただいたように、これはイラクの、シビリアンというのを非戦闘員と訳すかどうかは、恐らく国の体をなさなくなってからは軍というのがなくなっていますので、武器を持っている人もシビリアンに入っている可能性はあると思いますから何とも言えませんが、大変な数の方が亡くなっている。

 サダム・フセイン政権を打倒する、もしくは追い込むというのに本当にこの手段で、このコストでなければなかったのかということを私は思っておりますが、もし御感想がありましたら、両大臣から伺いたいと思います。

川口国務大臣 今ざっとこの資料を拝見させていただきましたけれども、連合軍で死んだ人、一千人を超え、それから、民間人で死んだ人が一万一千から一万三千、その他いろいろあります。こういう数字を見ると非常に残念でなりません。いかなる戦争もそれなりの犠牲を払うということになるわけでして、この戦争においてもそのような犠牲が払われてしまったということについては、私も非常に残念だというふうに思います。

 それだけの犠牲があった、残念であった、それでは、やらなくて済んだかどうかというのは別な質問であるというふうに私は思っております。これはもう繰り返しませんけれども、イラクについては、かつて大量破壊兵器を使い、そして、さまざまな決議違反、大量破壊兵器にまつわる疑惑があって、そういった上で安保理決議に継続して違反をしてきた。それに対してイラクがこたえなかったということがあるわけでございまして、これは何も英米の報告だけではなくて、国連査察団の報告等、国際社会が一致して認識をしていたことでもあったわけでございます。

 そういう意味で、私としては、この戦争が行われたということは非常に残念であった。サダム・フセインがあのとき、決議に完全にこたえるということをやっているべきであったという感をさらに強くいたしております。

松本(剛)委員 もうこのことは議論をいたしませんが、一年数カ月たった現段階で、たまたまアメリカの機関がこういった数字をまとめた。我々も、例えばクウェートを侵略した湾岸戦争、これも犠牲者は出ているわけでありますが、そのことを否定する者は、私どもも含めて、いないと思います。しかし、今回のこのイラクの戦争に関しては、日本国内では私どもなり幾つかの政党、そして世界の中でも幾つかの国々と意見が分かれた。

 もちろん、意見が分かれたから、全会一致にならないと絶対やっちゃいけないというふうにしていいかどうかというのは過去の歴史を振り返っても非常に難しいところがありますけれども、少なくとも、これだけの犠牲が出ることを決断し、支持をし、そしてある意味ではまた今支援をしているということを認識して政権をお預かりいただき、内閣の一員として御判断をいただきたいということをお願い申し上げていきたいと思います。

 官房長官に先にまとめてお聞きをしましたので、どうしても話が行ったり来たりになりまして申しわけないのですが、石破長官に、防衛計画の大綱の見直し、あり方懇談会の検討の経緯から、白書も、ことしの白書は、私もここへ持ってきましたけれども、去年より一層分厚くなりまして、長官の思いがいっぱい入っておられるんだろうなと思っておりますが、例えば第四章も、去年は「より安定した安全保障環境の構築への貢献」という、二、三回読まないとよくわからない日本語でありました。こうせざるを得なかった今までの環境もあると思いますが、ことしは率直に、「国際社会の平和と安全を確保するための取組」という言葉になってまいりました。

 そういったことに対する国民の理解を求める努力もされてこられたんだろうというふうに思いますけれども、いよいよこの国際貢献について、かなり今までとは違った取り組みに対する方向性が見えてきております。当然、それに伴って法制その他も変えていく必要が出てきているというふうに思いますが、その辺の、もちろん、これは大綱が閣議決定されたわけでもありませんから、現段階では言えること言えないことがおありかもしれませんが、大臣御自身としての取り組みの決意をちょっと述べていただけたら。特に国際貢献の部分について、この委員会ですので、お願いします。

石破国務大臣 これは委員とも何度も議論をさせていただいたことですが、要は、自衛隊の活動の中に本来的任務と付随的任務とあって、どうも国際活動、私は余り貢献という言葉が好きじゃないのですが、海外において自衛隊が活動しますのは、一つは、やはり国際社会の平和と安定があって初めて日本の国が成り立っていける。人のためだけやっているわけじゃなくて、日本のためになるんだということを考えてみたときに、これはやはり付随的任務じゃないだろうねという議論は私はあるんだろうと思っています。それをやることがすなわち日本の平和と安定あるいは繁栄に直結するものであるとするならば、やはりこれは本来的任務じゃないですかという御議論が私はあるのかなというふうに考えております。

 同時に、今回のイラクにおける活動に見られますように、その地域の人々のニーズが非常に高いということ、あるいは、委員と意見を異にするかもしれませんが、国連において決まったことはきちんとやろうよということ、そういうことも含んでいるのだろうと思います。

 政府として決定したわけではございませんが、そういう方向性というのは議論としてあり得るだろう。

 では、他方、本来任務としたときに、今度は主たる任務か従たる任務かという議論が必ず出てくるんだろうと思っています。

 これは私の個人の考えでございますが、古今東西、いかなる国家も、国の平和と独立、独立と平和と言っても構いませんが、これを守るということが軍隊あるいはそれに類する組織の究極の任務であることは、古今東西、未来永劫変わらないのだろうと思っています。そうしますと、国際的な活動というものを、我が国の自衛隊法で申し上げれば、防衛出動と同列に論ずることが果たしていいのかどうなのかという御議論が論理的には次のステップとしてあるのだろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、仮に本来任務としましたときには、それを自衛隊法上どう書くのか。

 あわせて、仕事はたくさんふえました、予算はちっともふえません、人もちっともふえませんということになりますと、これはいかがなものなのかねというお話もございます。そこは、委員も御指摘になりましたように、それでは単に別枠でふやすというお話じゃなくて、今の時代に本当に合ったような予算なのか、装備なのかということを徹底的に見直した上でなければ、それは納税者に対して不誠実だろうというふうに考えておりまして、まず何をなすべきかということについて広範な国民の御議論をいただき、野党の先生方の御指摘もいただきながら、政府全体として決めていくことになるのだろう。

 現時点において、こうだという方向は決めておりません。そういうような議論があるし、それはそれなりに国民の皆様方にきちんと開示をいたしまして、自衛隊をどのように使うべきか、国民の、あるいは地域の公共財としてどのように使うべきかという御議論を広いコンセンサスのもとに行っていくべきものだと考えておる次第でございます。

松本(剛)委員 今までの一般的な大臣の御答弁という意味からすると、そういうことなのかもしれません。年金の議論のときも、岡田代表が自民党の方針を決めた上でしっかり議論をしたいというふうに申し上げたら、総理は、決めないからこそ議論ができるという言い方をされた。おおむねそういう趣旨のお話をされたように思います。

 今回のお話も、ある意味では、はっきりしたことはこれから決めることだという御答弁というのはそういうことだと思いますが、しかし、これから防衛の議論をするに当たっては、既にあり方検討委員会の途中での御報告であったり開示されている内容を見れば、ある程度お考え、方向性ははっきり出てきていると言っても過言ではないと思う。

 もちろん、そこから我々も読み取るわけですけれども、やはり国民に対しても、むしろ大臣は、我々防衛庁の現場としては考えた末にこうあるべきだと思うということをこれからもっと、大臣みずからがはっきり国会も含めておっしゃった上で議論をするという形に変えていただくことが、これから国際的な、海外の人に見てもらうという意味でも、私はその方が本当はいいのではないかというふうな気がするということを申し上げたいと思っております。

 お聞きしたいことがたくさんあるんですが、今度は川口大臣にイラクの復興のことについてお聞きをいたしたいと思います。

 イラク全体をこれからどんな形で復興していこうとしているのかという、当然、構想、ビジョン、計画、今は主権が返りましたから、政府が主となっておやりになることだろうというふうに思いますが、まず、日本はどの程度そのことを承知されておられて、また日本としてどういうふうにそこにかかわっていこうとされておられるのか。

 先ほど、多国籍軍への参加もそれぞれの国の事情とあれで自由だという話がありましたが、支援のあり方ももちろん、やはりそれぞれの国の事情があったり、得意不得意があったりということだろうというふうに思うんです。

 私が申し上げたいのは、心配をいたしますのは、そんなことはないと思いますけれども、ひょっとしたら、余りそういうビジョンがないということもあり得るのではないか。

 例えば、発電所は日本がこれまでにかかわったところ、病院はかかわったところはとりあえず行きます。サマワについては給水ということでスタートいたしましたけれども、もちろん日本とは事情が違いますから、残念ながら、私はまだ現地に行っていませんから申し上げられませんが、給水というのは普通に考えたら極めて臨時的な話でありまして、一年、二年の時間がもしあるとすれば、水道をどう整備するかということの計画も出てきてもおかしくない話だろうというふうに思います。

 そんな中で、全体の復興に対する計画と、地域的に日本がこの地域、南東部を主としてやるんだとか、全体の部分で人材育成を日本はやるんだとか、いろいろなことがあると思います。また、私たち自身はどんなことができるのか、我々も建設的な提言をしていきたいということで党の中でも議論をいたしておりますが、例えば人材育成であるとか、そういったところについてもこれからもっともっと日本もかかわっていかなければいけないのではないかというふうに思ったりしておりますが、全体の復興の計画、それから日本としてどんな形で復興にかかわっていこうとされているのかという総合的なビジョンみたいなものをお示しいただきたい。川口大臣にお願いしたいと思います。

川口国務大臣 まず最初に申し上げたいのは、イラクの復興、これはまさにイラク人が中心となって考えるべきことであって、日本も含め、国際社会はその支援をするということであるということが基本的な考え方の枠組みであります。したがいまして、日本がこのようにイラクは復興すべきであるというビジョンを持つということではなくて、イラクがそのビジョンを持つことについて日本は支援をしていくということであります。

 今まで、日本はイラクに対してさまざまな、補正予算等もいただいて、支援をしてきたわけです。そのときに、日本が何について、例えば、医療とか水とか、それから電力とか、人材供給、育成とか、治安とか、そういうところの支援をいたしました。その支援は、イラク人の、あるいはイラクのニーズに従って、そのニーズを把握した上で、これは国際機関とかさまざまなところがニーズを把握して発表をし、マドリードの会議でこれは議論されたわけでして、そういったことに基づいて支援をしてきたということでございます。

 そして、今、暫定政府ができたということでありまして、統治権限が移譲されまして、イラクの新しい国づくりが緒についたということでございます。それで、緒についたばかりでありますので、イラクの暫定政府として、今の時点では長期的な、総合的な、例えば何年計画といったようなものがまだつくられているわけではないということでございます。

 金額面では、各国の支援と、それから国際機関等が行った資金援助、それはその各国の支援が流れているということでありますけれども、という面がありますし、それからイラクの石油収入ということもあります。また、NGO等の復興支援、これもお金そのものというよりはもうちょっと別な形で、それが国際的な支援としてはあるということです。

 それでは、今イラクの復興というのがどのような形で動いているか。先ほど長期的な計画はまだできていないというふうに申しましたけれども、実際には、イラクの国づくりのために、今の暫定政府の各省がそれぞれまとまった形で復興が行われ始めているということです。

 それはどういう形かということで申しますと、まず、イラクの暫定政府というのは、当面のですけれども、当面の復興計画については主導権を持っているということでございます。そして、計画開発協力大臣という方がいらっしゃいまして、そして財務大臣という方もいらっしゃるわけですが、それらの政府の関係者がイラク戦略レビュー委員会、略してISRBと呼んでいますけれども、これをつくって、そこが多国間、二国間支援、これについての全般的な政策指針を出すということをやっています。

 したがって、計画はないけれども、そういうイラク暫定政府の政策の指針というようなものは今ある、あるいはできつつあるということであります。

 それで、計画開発協力省が……(松本(剛)委員「大臣、時間がもう私も終わりそうなので簡潔に」と呼ぶ)そうですか。それじゃ、簡単に言いますと、そういうところが中心になっていろいろな、したがって政府全体として取り組んでいるという形に今なっているということが一点です。

 それから、日本としては、そういった政府全体、イラク暫定政府との間で話をしている。その政策に基づいて、日本の支援がはまり込むような形で議論をして、日本が比較優位を持っているところ、経験を持っているところに日本の支援が行くような形で、話し合いをしながら今後支援をしていくということになるわけです。

 それから、日本として、この秋、東京で支援会議を開こうという、復興信託基金の会議を、議長をやっておりまして、やるということを考えております。

 それから、日本だけということではなくて、第三国と一緒になって、ヨルダン、エジプト等いろいろございますけれども、イラクの復興に支援をしていこうということで考えている。そういう形で動いているということです。

松本(剛)委員 もう終わりますが、もちろんイラク人がイラク人のためにやるべきだというのはそのとおりだろうと思いますが、例えば、協力を仰ぐのであれば、私たちはこうしようと思っているからここを手伝ってくれと言うのか、私たちはこうしようと思っているからどこか手伝ってくれるかと普通は聞いてくる。しかし、まだ緒についたばかりだと言います。私が申し上げれば、CPAの一年の間に何もなかったのかという気もしなくもないわけでありますけれども、それを含めて、イラク人がおやり始めたということなんだろうというふうに思います。

 ただ、申し上げたいのは、日本も、例えば給水にしても、その先が見える説明を少なくとも私どもは伺っていない。本当に日本にとってもイラクにとってもいいことをやっていただくと同時に、そのことがイラク人にとっても、日本はよく協力をしてくれたということがこれから三十年、五十年、百年残るような形をぜひ考えていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 きょうは、今の多国籍軍の参加問題にちなみまして、特に武力の威嚇ということに焦点を絞った形で質問をさせていただきたいと思います。その後、中東和平関係の、イスラエルの壁の問題、さらには軍縮の問題についても時間があればやらせていただきたいと思います。

 まず、法制局長官の方にお尋ねしますけれども、先ほどからずっと参加の問題についてお話をお伺いしていました。ある新聞を見ますと、法制局長官は参加という言葉を嫌って、できれば協力というような形の言葉を使いたがったことに対して、小泉総理が参加ということで押し切ったというような記事も載っていたんですが、私、この件を考える上で、多国籍軍に参加したということは、多国籍軍のメンバーの一員になった、そういう形で属したという解釈でよろしいんですね。まずお伺いします。

秋山政府特別補佐人 今回の具体の事案に即しまして、多国籍軍と我が国の自衛隊との関係について、どういう法的関係になったのかということはむしろ外務省にお答えいただいた方が適当なのではないかと思いますが、私どもの理解では、多国籍軍の中にあってイラク特措法に基づく活動をするということになったというふうに理解しております。

末松委員 それでは、外務大臣にお聞きします。

 多国籍軍の一員、メンバーになったという理解でよろしいですね。

川口国務大臣 一員になった、メンバーになったという言葉自体それほど厳密な言葉ではないというふうに思いますので、そうなったかならないかということを議論するということの意味が、一般的な言葉のやりとり以上のものを出るというふうに私は思っておりませんが、一般的な意味で参加をしているんだということであります。

末松委員 いや、多国籍軍に参加しているということは、一般的な意味で、やはり多国籍軍の一員になったというふうに解釈、当然するんじゃないですか。それを否定されますか。

川口国務大臣 否定しているとか肯定しているとかそういうことではございませんで、一員になるということの言葉の定義自体が厳密ではないということなので、それに基づいてイエス、ノーを申し上げるのは非常に難しいということを言っているだけでありまして、今まで申し上げたように、これは多国籍軍、我が国としては我が国の指揮のもとにあるということであって、そういったさまざまな前提を置いて、それも含めてメンバーになったということをおっしゃっているのであれば、それはそういう言い方もできるかというふうに思っています。

 一般的な意味で参加しているということは申し上げているわけです。

末松委員 もうちょっと言えば、我が国は、自衛隊は多国籍軍なんですね、多国籍軍の一部ですよねということはどうですか。

川口国務大臣 ですから、一般的に言えば、多国籍軍の一員である、参加しているということを申し上げているわけです。

末松委員 ちょっと私、憲法問題で、憲法九条を何回もまた読み直してみたんです。

 法制局長官に問いますけれども、九条、先ほども法制局長官も読まれましたけれども、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」そして、戦力を持たない日本がそういう多国籍軍、武力行使を伴う軍の一員、一般的な意味で、参加という意味で、それに加わるということは、これは憲法に違反しているというふうに私は感じざるを得ないんですけれども、いかがですか。

秋山政府特別補佐人 先ほどの議論の続きになろうかと思いますが、憲法九条で我が国ができないこととされておりますのは、我が国の行為として武力の行使を行う、あるいは我が国の行為として武力による威嚇を行うということ、あるいは他国による武力の行使と一体となるような形でそれの支援を行うということでございまして、一員となるという言葉の意味にもよると思いますが、今回のような形での我が国の、要するに主体的な指揮権が確保されている、それから活動はすべてイラク特措法の枠組みの中で行うという要件が確保されている限りは、我が国の行為として武力の行使あるいは武力による威嚇を行うという評価は受けないというふうに考えております。

末松委員 私は、申し上げたいのは、憲法九条でどこまでぎりぎりできるかという解釈の立場でいけばそういう形になるんだろうと思うんですけれども、憲法九条はそもそも、国際紛争を解決する手段として武力は用いませんよ、そういう国なんですよということを、そのための戦力を持たないんですよということを、青臭い議論かもしれないけれども、国際紛争を解決する手段としては武力はもう用いません、そういうふうに誓ったんですよという国が、それが、武力の行使をしてイラクを制圧して、そういった部隊と一緒に参加しますということは、本当にこの憲法を守っているのかなという、いや、これは本当に素直な解釈で私自身はそう思っているんです。

 政治は動きますよ。だから、政治は動くから、いろいろな形での解釈の中で、あなたの方は網の目をつぶすようにぴちぴちと詰めていかなきゃいけない立場だろうと思うので、その御苦労は大変だと思うんですけれども、これは本当に憲法に違反していないのか。私は、素直に、ちょっとここはもうその域を超えているんじゃないか。

 もうちょっと言わせていただければ、日本が、国際紛争を解決する手段として、武力の行使あるいは武力の威嚇を永久にこれを放棄するということをうたっているのであれば、この精神を生かすのであれば、本来、アメリカとかほかの国に対しても、そういうことはやめようよというふうな立場であっても不思議じゃないと思うんですけれども、この私の解釈はあなたから見て非常におかしいですか。

秋山政府特別補佐人 憲法解釈の中でもかなり政治的な裁量の分野に入り込んだ議論になっていると思いますが、イラク特措法の目的、これは、イラクの今回の事態を受けまして、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラク国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取り組みに対し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、武力の行使に該当しないような活動を行って再建に寄与しようという話でございますので、これは憲法九条上の問題は私はないものと考えております。

末松委員 今、条文を読むような形、答弁を読んでいますけれども、要するに、多国籍軍に参加せずに協力、今までの立場で協力ということであれば、法制局長官、秋山さんの言われていることはそうだろうな、ぎりぎりそういうことになり得るのかなということが言えたんですけれども、今回、もともと、多分あなたが嫌がっていたと思われるような記事があるけれども、それで、参加というところまでいっちゃうと、先ほどから湾岸危機の中山答弁の話もありましたけれども、やはり属して、そして指揮命令系統に従うと。

 ただ、その指揮命令どうのこうのについては、これは軍隊のボランティアグループみたいなのが多国籍軍だというような形でいけば、本当に純粋な指揮命令があり得るのかというのは、それは確かに、ひょっとしたら命令はなくて、調整という中で各国の合意のもとでやるということが実際かもしれないけれども、でも、参加という言葉は、これは余り、一般的な参加とか、いいかげんな意味に使ってほしくないんですね。本当に、きちんと、属するという形までどうしても来るんでしょう。そこはいかがですか。

秋山政府特別補佐人 先ほども申し上げましたけれども、協力という言葉は、平成二年の中山外相答弁の狭い意味の指揮監督に服するという意味の参加も含め、あるいは組織の外にあって行う各種の支援も含め、あるいは組織の中にあるけれども指揮命令には服さないという格好の関与も含め、広い意味の協力という言葉を使ってきたわけでございます。

 そのうちの、今申し上げた意味の参加に至らないような協力については、武力の行使と一体化しないものについては憲法上許されるものと考えるということを言ってきたわけでございまして、今回、わかりやすさとかそういうこともあろうと思いますけれども、広い意味の協力の中で、先ほどの定義された意味の参加、それから組織の外にあって行う支援という以外のところ、つまり、組織の中で活動するというところを一般的な意味の参加ということでやっているわけでございまして、必ずしも今までの考えと全く違うということではございません。

末松委員 あなたの言う一般的な意味の参加と厳密な意味での参加、あなた自身のカテゴライズを今聞いたけれども、そんな言葉は私は一般的に通るとは思っていない。組織の、多国籍軍という枠の中の外なのか内なのか。そこを、じゃ、はっきり言って、今のあなたのカテゴライズを説明してくださいよ。

秋山政府特別補佐人 組織の内か外か、あるいは内の場合にどういう関係でもって多国籍軍に関与していくのかということ、いろいろあろうと思いますが、今回、外務省等から伺っている範囲内では、これは組織の中であることは間違いない。

 しかし、それは、主体的判断は確保され、それから我が国の活動はイラク特措法に基づいて行うものであるということを承っております。

末松委員 組織の内ということを外務省からも伺っているという話でした。ということは、要するに、最初の質問に戻りますけれども、多国籍軍のメンバーあるいは一員だよねということが確認をされて、また堂々めぐりの話になるわけです。それが本当に憲法上、これはやはり憲法の九条の精神からいっておかしいんじゃないかということを、ここでどうも堂々めぐりになる議論、すれ違いの議論になるので、これ以上私は時間を浪費したくありませんけれども。

 じゃ、武力の威嚇ということについて聞いてみましょう。武力の威嚇を感じる主体はだれですか。

秋山政府特別補佐人 これは、国際関係における法律関係を規律するものが国際法であろうと思います。それで、憲法は、その国際法の概念である「武力による威嚇」を我が国としては行わないということを決めているわけでございます。

 したがいまして、その「武力による威嚇」と申しますのは、国際法上は、現実にはまだ武力の行使をしないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すことにより相手国を威嚇することをいうということでございますので、威嚇の対象は国、要するに国際……(末松委員「威嚇を感じる主体はだれか」と呼ぶ)威嚇を感ずる、相手国を威嚇するということでございますから、国際法上、国ないしあるいは国際紛争の主体たり得る国に準ずる組織、従来から申し上げております、そういうものが威嚇される主体、客体と申しますか、そういうものであろうと考えます。

末松委員 ということであれば、現地の、今まさしく、アメリカの司令官も言っているとおり、紛争地域でさまざまに情勢が動いているわけですよ。ある程度おさまった、そして国際的な認知を受けた暫定の政権ができたという話でありますけれども、その場合、威嚇される客体は国及び国に準ずる者という話でありました。

 では、国ということであれば、今新たな暫定政権ができたということでありますけれども、国に準ずる人々から見たら、多国籍軍に参加した日本軍、つまり自衛隊というのは日本軍ととらえられるわけですね、多国籍軍の一員ということであるわけですから。これは彼らにとって、幾ら日本が、いや、これは人道目的だ、やれ安全確保目的だと言っても、彼らが威嚇されたと思ったら、それは威嚇されたという事実が残るんじゃないですか。いかがですか。

秋山政府特別補佐人 我が国が行っております活動は、これはイラク人道復興支援特措法に基づいて行っているわけでございまして、この法律では、「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」ということを明定いたしました上、先ほど申しましたような、復興支援を行うんだということを第一条の「目的」に掲げ、それから、それ自体としては武力の行使に該当しない人道復興支援などの活動をいわゆる非戦闘地域に限って行うということでございます。

 そのような枠組みの範囲内で行われるものでありますので、先ほど申しましたような、現実にはまだ武力を行使しないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すというような要件にはおよそ当たらない行為でございまして、我が国が行っております現在の活動が憲法上の「武力による威嚇」に該当するということはないというふうに考えております。

末松委員 いや、あなたは先ほど、自衛隊は多国籍軍の一部、一員だという形で整理されたんですよ。であるならば、では多国籍軍の目的は何かといったら、アメリカが主体となってサダム・フセイン政権をたたいて、そして崩して、占領して、そして今はその占領が治安維持というような言い方で、まだ武力攻撃あるいは掃討あるいは戦闘行為を続けているわけですよ。それが目的の多国籍軍なんでしょう。

 それなのに、その中の一部の日本が、いえいえ、私のところだけは人道目的で安全確保ですと今の暫定政府に言うことは、それは理解できますよ。それはそのためのみんな、アメリカも含めたおぜん立てがなされているから、そうなんでしょう。ただ、ああいう国に準ずる者、まだいますね。そういった形の、武装勢力から見たら、日本は多国籍軍の一部であって、それは我々に対する武力の威嚇じゃないか、武力行使はしていないけれども武力の威嚇じゃないか、武力の威嚇を日本の憲法は禁止しているじゃないかという話をされたらどうするんですか。それで、彼らは、人質のときに、武装勢力の一部ですよ、自衛隊は出ていけというようなことも主張しているじゃないですか、現実に。どうなんですか。

秋山政府特別補佐人 多国籍軍の中でということではございますが、イラク特措法に基づく我が国の活動、これをどう見るか、それは見る者の立場によってさまざまあろうと思いますけれども、先ほど申しましたように、我が国は、イラク人道復興支援特措法の枠組みの範囲内で、我が国の主体的な判断で、我が国の行為として人道復興支援等を行っているのでございますから、我が国が武力行使を行うということはないわけでございます。したがって、先ほどの「武力による威嚇」の要件に該当するような行為を我が国がやることはない。法的評価としてはそのようなことになろうと思います。

末松委員 秋山長官、あなたが言っているのは、日本側の立場を主張しているだけなんですよ。あなたがさっき言ったように、威嚇の客体はだれかと、あなたはさっき言ったじゃないですか。客体は、イラクか、あるいはイラク国に準ずる武装勢力、そういったものなんでしょう。威嚇を感じる者が、それが威嚇されたと思ったら、それは武力の威嚇になるんでしょう。違うんですか。

 あなたが言ったのは、さっきから日本の立場を述べているだけですよ。ちゃんと話し合ってくださいよ。

秋山政府特別補佐人 冒頭申しましたように、「武力による威嚇」の要件は、国際法上は、現実にはまだ武力の行使をしないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すことにより相手を威嚇することをいうということでございまして、我が国はこのような意思、態度を示すということはないのでございますから、したがって、憲法九条の「武力による威嚇」あるいは国際法上の「武力による威嚇」を我が国が行っているという法的評価が生ずることはあり得ない。

 受け取る側がどのような受け取り方をするか、これは現実問題として別でございましょうけれども、法的評価として、今申しましたような要件に該当するような「武力による威嚇」を我が国が行うことはないということでございます。

末松委員 あなたが言ったその今の国際法的定義というのは、どこの言葉をとっているんですか。そして、その要件は検証されているんですか。実際に、自国の主張及び要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すことがない、この要件が必ず必要だということを、あなた、証明してくださいよ。

秋山政府特別補佐人 国際法の世界でございますので、私ども、こういうものが明文の規定として入っているということはございませんけれども、一般的にそういうことに理解されているという通念上の理解でございます。

末松委員 あなたの言っている通念というのはどこから出てくるんですか。勝手に、国際法上ないと言いながら、通念上出てくるというのは、あなたがつくっているんですか。そこをはっきりしてくださいよ。ここは非常に重要なポイントなんですよ。

秋山政府特別補佐人 国際法でございますので、そういうものが明文として規定されているということはないのでございますが、いろいろな国際法上の議論の蓄積が大体そのようなことを指すという議論になっているわけでございます。

末松委員 法制局長官とは思えない答弁をしないでくださいよ。しっかりしてくださいよ。

秋山政府特別補佐人 先ほど申しましたような「武力による威嚇」の定義が、国際法上、一般に受け入れられているということだろうと思います。

末松委員 外務大臣は、それを確認できますか。急に言われても、あなたも困るかもしれないけれども。

 明文がなくて、どうして通念上の議論ができるんですか。そこはちょっとはっきりその根拠を示してから言ってください。もしどうしても示せないんだったら、ちょっと後で紙で下さいよ、そこは。

 確かに、あなたがこの質問主意書に対する政府の答えとしてそれを書いたのは、私は知っていますよ。だけれども、そこの根拠が何も示されなくてそういうことを言わないでいただきたい。

 もう一つ具体的に言いたいのは、多国籍軍に参加したことそのものをもって、多国籍軍というものが意思があるから、武力行使という形の意思を示してきたわけですから、それだけで大きな脅威あるいは威嚇ということを、たとえ主張しなくたって、アメリカはサダム・フセイン政権に対してやりましたよ、武力の威嚇及び武力行使、これを認めなければ攻撃するぞと言って攻撃してつぶしたんですから、それは武力の威嚇であり、行使もやったわけですよ。それが多国籍軍ということなんですよ。

 その多国籍軍のメンバーに入っているという日本が、自衛隊が、いやいや、私のところは違うんですよ、特殊ですと幾ら言っても、あなたが認めたように、客体の国に準ずる者がそういうふうに武力の威嚇と感じたら、それは日本国憲法の禁ずる威嚇になるでしょう。この論理に大きな間違いがあるんだったら言ってください。

秋山政府特別補佐人 先ほどの「武力による威嚇」の定義は政府の答弁書にございまして、外務省とも十分すり合わせた上での見解でございます。

 それから、今の、受け取る側が威嚇されたと考えれば九条の「武力による威嚇」が生じているのではないかということでございますが、それは受け取る側はまちまち、いろいろな受け取り方をされると思いますけれども、我が国として、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思、態度を示すことはないのでございますから、したがって、我が国のイラク特措法に基づく支援活動等が「武力による威嚇」に該当することはないというふうに繰り返し申し上げているところでございます。

末松委員 議論をはっきりさせたいんですけれども、我が国がそれを言うことはないことは私も十分承知していますよ。間違ってもそれは言うことはないでしょう。

 ただ、多国籍軍に入った。入らないのであれば、それは私は何もそこは言わなかった。でも、入ったということであれば、それがそのまま多国籍軍の意思を体現することになるでしょう。これはパーセプションとしてですよ。それは、一々一々イラクのテレビに言ったって通じない話なんですから。そこがあいまいにされたまま、今回の多国籍軍に参加という、あなたが実は本当は忌み嫌った参加という言葉が大きな波紋を実際呼んでいるし、内閣の法の番人、憲法の番人のあなたとしては、あくまであなたが反対を貫くべきだったんですよ。それをいいかげんにしちゃったから、こんな形で今批判をされているんじゃないですか。

 もうちょっと言いますよ。

 イラク、さっき言いましたね、威嚇された者として、客体として、私は国に準ずる者というのを問題にしました。でも、国そのもの、イラクそのものも、それは今は暫定政府です、完全な国じゃありませんよ、国に準ずる者と限りなく近いところになっているでしょう。

 この正式な政府ができて、そして国民の選挙がやられて、本当に自由で干渉がない政府になったときに、イラクへの米軍の攻撃あるいは多国籍軍の攻撃そのものが、あれは侵略であったというふうに、国民の意思に選ばれた政府が、そういうふうな政府ができたらどうしますか。彼らはそのときには、米軍は出ていけ、侵略者は出ていけという形になるわけです。それが民意でもって組織されたときに、そのときに、日本というのはその侵略者であった米軍を初めとした多国籍軍の一部をなしたんだということであれば、これは武力の威嚇があったと後で判断されても仕方がないじゃないですか。

 その点はいかがなんですか。

秋山政府特別補佐人 将来にわたる見通しについてはちょっと私どもでお答えする限りではございませんけれども、繰り返しの答弁になりますけれども、累次にわたる国連安保理決議に基づきましてイラクの復興支援を行う、それをイラク復興支援法の枠組みの中で行うということでございますので、憲法九条の「武力による威嚇」に該当することはないと考えております。

末松委員 繰り返し繰り返し、話にならないようなすれ違いの答弁をしないでくださいよ。

 そこの参加のところで、僕はもうこれ以上きょうは議論しません。ただ、参加という意味の、これは委員長にお願いしますけれども、法制局の長官あるいは外務省で、これは法制局の長官ですよね。参加という言葉を、何か答弁では、今言われましたけれども、私は、あの解釈、非常に疑問を持っている。だから、紙できちんと理事会の方に出していただきたい。

 それはなぜかというと、先ほど中谷筆頭理事も言われましたけれども、中山外務大臣の湾岸危機の答弁、参加というのは当該国連軍の司令官の指揮下に入り、その一員として行動していることを意味し、自衛隊が当該国連軍に参加することは、当該国連軍の目的、任務が武力行使を伴うものであれば、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えているということをはっきりと否定する形で、そこで秋山長官が言われたように、自分でカテゴライズされた、そこの答弁が、ちょっと私は紙でしっかりもらいたいので、ぜひそこは委員長、御検討をお願いしたいと思います。

斉藤委員長 理事会で諮ります。

末松委員 次に、この問題、中東の関係が出てくるんですけれども、余り時間がなくなったので簡単に申し上げますけれども、イスラエル、今壁ができて、中東和平、また大変な状況になっています。スーサイドアタックとか、さまざまなアタックがなされていますけれども、そこで、この前、ICJ、インターナショナル・コート・オブ・ジャスティス、国際司法裁判所が、この壁について法的勧告を求められて、勧告をいたしました。

 そこで、その結論として、勧告の内容が、パレスチナ占領地での壁の建設作業を即時停止せよということ、そしてパレスチナ占領地でのこの壁を含めた建造物を即時撤去せよ、そして関連するすべての法律及び規制はまた無効であるということ、さらにはこの壁の建設によって生じたすべての損害を回復する義務があるということを言ったんですけれども、これに対して外務省は外務報道官談話を発表したんですね。

 そこで、私はちょっとあれっと思ったのは、この報道官の談話で、「我が国としては、イスラエルがこの問題につき適切に行動することを期待する。」、この「適切に行動する」という意味はどういうことなんでしょうか。

川口国務大臣 イスラエルがパレスチナの内側に建設をしている壁の問題でありますけれども、我が方はこれに対しては建設をとめるということで今まで申し入れてきているわけでございます。

 それで、この問題を解決するときに必要なことは、法的判断だけではなくて、政治的に解決していくということが重要であるというふうに日本としては考えている。政治的な解決の意思、あるいは政治的な解決のための行動、これがなくては問題は解決しないというのが基本的な考え方であります。

 その考え方に基づきまして、七月の国連緊急特別総会の決議に際して外務報道官の談話で言いましたことは、この勧告的意見で言及されている法的義務の履行を求めながら、同時に、先ほど政治的と申しましたけれども、イスラエル、パレスチナ両当事者に対して、ロードマップ上の義務の履行と二つの国家の平和共存の実現を求める、そういう政治的な行動を含んだ内容になっているということで賛成をし、この報道官談話で言いましたところの「適切に行動することを期待する。」というのは、そういう方向に向かっての行動であるということです。

末松委員 これは政治的な問題だということで、ICJ、国際司法裁判所に勧告的意見を求めることを日本は棄権したんですね。そこは確認されているわけですけれども。政治上の解決というのが本当に実際にあるのかというのが、実際に壁が建設されてきているわけですよ、もう百八十キロぐらい。実際にそれに対してみんな手をこまねいていたわけでしょう。政治的にもこれは難しかったんですよ。だから、勧告的意見をICJに求めたわけですね。それが、結局はICJがはっきりとだめだと言った。

 適切に行動せよといった場合に、日本政府が求めていたのは、建設をストップせよかな、そういうことなんですけれども、日本政府としては、即時撤去、そして補償まで含めたICJの、国際司法裁判所の勧告をフルにイスラエルに求めるという立場なんですか。それをはっきりしてください。

川口国務大臣 この問題を政治的に解決していくという部分が必要であるということは、すなわち、それで解決できないかどうかということですけれども、ロードマップがありまして、ロードマップに戻って話し合いをし、ロードマップに従って二つの国家の平和的な共存を図っていくことが必要であるということを我が国はずっと主張してきているわけです。それで、イスラエルとパレスチナ両方に対して、ロードマップに戻るということを慫慂してきているということでございます。

 したがいまして、政治的な解決を含まなければこの問題は解決しないというのが基本的な考え方であるということは先ほど申し上げたとおりです。したがって、その壁の建設をやめるべきである、この違法な状態というのを終了させるべきであるというふうに我が国は思っているということであります。

 それで、それを終了した後、例えば損害賠償まで必要かどうか、それを今判断できるかどうか、それは、まさにその両者の政治的な解決の中で行動としてもたらされることであるというふうに考えております。

 したがって、パレスチナとイスラエルがこの方向に沿った解決を、壁を建設するのをイスラエルがやめ、そして話し合いによって、そしてロードマップに戻っていって解決をすることが大事であるということが報道官の談話の趣旨であります。

末松委員 ICJの判断は、さっき言ったように、壁の建設の中止のみならず、撤去と法的に無効と賠償まですべて含んでいるんですよ。それがICJの勧告なんでしょう。それを踏まえた決議が七月二十日に出されて、私、総会決議、読みましたよ、日本も賛成したわけですよ。ということであれば、イスラエルとかほかの国に対してその決議を守らせるように求めていくんですか、そこのICJの勧告をフルに求めていくんですかというのが私の質問です。よく聞いてください。それにイエスかノーか答えてください。

 そして、もう一点だけつけ加えさせていただければ、政治的な解決といったって、ロードマップで、全然戻っていないでしょう。ロードマップそのものが今もう形骸化して、何も機能していないじゃないですか。それを勝手に、政治的な解決じゃないとだめだと。それは、概念的には、言葉の遊びではわかるけれども、実際に救済になっていないでしょう。もう余り長答弁要りません、そこだけ。

川口国務大臣 ICJの勧告を受けた決議、これ自体は、委員がおっしゃっていらっしゃるよりももうちょっと広い範囲を含んでいるというふうに考えています。

 これは、イスラエルに対して、ICJの勧告的な意見で言及された法的義務の履行を求めつつ、イスラエル、パレスチナの両当事者に対してロードマップ上の義務の履行と二国家の平和共存の実現を求める内容となっているということであります。ということであって、我が国は、したがって賛成をしたということです。

末松委員 いや、だって、この原文を見ても四項目以上書いてあるじゃないですか。それは、ロードマップについても言及はしていますよ。言及はしているけれども、実際に、この今の私が言ったメーンがそこにあるでしょう。そこをはぐらかさないでくださいよ。もしあなたが答えられないんだったら、政府委員で答えられる人いますか。

吉川政府参考人 大臣が御答弁申し上げていますとおり、二つの要素があると思います。ICJの勧告的意見につきましては、委員御指摘のとおり、いろいろな項目が入っております。日本政府は、この問題につきましては、政府の陳述書ということで、日本政府の考え方を非常に明らかにしております。そこは、建設は停止すべきだということ、それからロードマップでの合意を実施すべきだ、この二つから成っております。

 例えば、これにつきまして、川口大臣が出席しました日本・パレスチナ閣僚級会合、ここで、先方の外務長官は、日本の意見、考え方を評価するということを既におっしゃっております。

 ですから、私たちとしましては、先ほど大臣から申し上げておりますとおり、全体、ICJの勧告的意見とロードマップ上の義務の履行というこの二つの内容を持っている総会決議に賛成したということでございます。

末松委員 明らかにしたくないという気持ちはわかるんですけれども、そこのICJの勧告を、本当に建設のストップだけじゃなくて、さらにICJの勧告のとおりこれをどこまでやるかということについてもはっきりと、日本の対応をきちんと詰めてくださいよ。もうちょっとしっかりしてもらわないと、みんなあいまいで、結局は、何かヨーロッパと一緒にやっていけばいいんだというようなそんな考え方はもう終わりにして、きちんとみずから詰めていきましょうよ。それを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。

 きょうは、主に逢沢副大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、四月に日本人の人質事件がイラクで起きましたが、逢沢副大臣がヨルダンに飛ばれて、現地で指揮をとられましたが、あれから数カ月たちました。また、その後もいろいろ、外務省の方でも情報を把握、整理をされたのではないかと思っておりますので、そもそも、今回のファルージャあるいはアブグレイブで起きた人質事件の背景についてどう認識をされておられるか、お答えをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 四月八日木曜日の日本時間の夕刻でございましたけれども、高遠菜穂子さんを初め三人の日本人、邦人の方がイラクで身柄を拘束された、そういう事実がもたらされたわけでございます。

 藤田先生、先ほどお話をいただきましたとおり、私は、現地緊急対策本部の責任者として、ヨルダンのアンマンにおきまして、三人の解放の実現を確保する、そのために仕事をさせていただきました。また、民主党の国際局長として藤田先生御自身も現地に来られ、情報収集等々に当たられたということは私もよく記憶をいたしているところでございます。

 宗教関係者あるいは部族の関係者、さまざまな方の協力、支援、努力等もございまして、四月十五日木曜日の現地時間の午後であったと記憶をいたしておりますけれども、無事、解放が実現をされました。改めて、解放のために協力、支援をいただいたすべての皆様に感謝を申し上げたい、そのように存じます。

 実行犯は、事実関係としてまだ捕まっていないわけでございます。人質になられた三名は、サラヤ・アル・ムジャヒディンと名乗る犯人グループに拘束をされたわけでございます。

 また、三人は、藤田先生も現地で確認をされたわけでございますが、隣国のヨルダンのアンマンから、自動車をチャーターし国境を越えてイラクの首都バグダッドを目指しつつ、その途上、ファルージャないしその周辺で拘束をされたというふうに承知をいたしております。

 恐らく犯人グループは地元の住民であろうか、そのようにも思うわけでございますが、正確なところは確認をされておりません。犯人グループは、地元住民かあるいは外国人武装勢力の犯行かを含め、今現在、正確に申し上げますと確認ができていないということでございます。

 当時、ファルージャにおきましては、かなり緊張が高まっていた等々の状況がございますけれども、事件の背景、なぜそのようなことが起こったのか、あるいは犯人グループはどういう人物像であるか、正確に申し上げれば確認ができていないということを申し上げておきたいと思います。

藤田(幸)委員 私もヨルダンで大臣、副大臣と一緒に活動いたしましたが、当時、私ども民主党は、この人質解放に関しては政府に全面的に協力をするという立場でヨルダンに行っておったわけでございます。

 今の逢沢副大臣のお話によりますと、やはりいわゆる外国人の武装勢力という可能性よりは、むしろ地域の住民による抵抗運動。この間もある外務省の方が、いわば関所でお札をチェックしているような存在の人々ではないかというようなお話もありました。したがって、当時アメリカ軍によってファルージャに対する大変な攻撃が続いていた、そういったこととの関連において起きた可能性というものが、外国のいわゆる武装勢力といった可能性よりはやはり高いという印象をお持ちでしょうか。いかがでしょうか。

逢沢副大臣 先ほども答弁申し上げさせていただいたとおり、犯人像はいまだに確認ができていないわけでございます。さまざまな情報から総合的に判断をいたしますと、むしろ地元住民による犯行の可能性が高いのかな、個人的にはそういう心証を持つわけでございます。しかし、断定的に申し上げるわけにはいかないということをつけ加えておきたいと思います。

 また、当時、確かにファルージャにおきましては相当緊張が高まっておりました。私もアンマンでさまざまな聞き取りを行いました。三人の方々も、出発をされる前に、ファルージャあたりは相当危険であるという会話を交わされ、そういう認識を恐らく間違いなく持っていらっしゃったということも承知をいたしたわけでございますが、そのことと事件の因果関係がどのように説明されるかということは、確定的に申し上げられないというふうに思います。

藤田(幸)委員 逢沢副大臣も陣頭指揮をされて、外務省、日本政府の方でもかなり広範囲に、シリアからカタール、いろいろな地域等も含めて活動された記憶がございます。結果的に人質五名の方が解放されたわけですけれども、その解放に至った経緯と解放につながった理由、それから、今回のこの人質事件を通して、今後生かせる反省といいますか教訓ということはどういうふうに認識をされておられるか、お答えをいただきたいと思います。

逢沢副大臣 先ほども申し上げましたように、三人の邦人の安全の確保、無事に解放するということのために、実にさまざまな立場、多くの方々の支援と協力をいただきました。イラクの宗教関係者の方々、また部族の関係者の方々、イラク警察当局、CPA、米軍、また、私が滞在をいたしておりましたヨルダン政府を初め周辺国からもさまざまな情報等をいただきました。それらの努力が実り、十五日木曜日になりまして、バグダッド市内で無事安全が確保されたわけでございます。

 正直申し上げて、いまだに複数の国の多くの方が人質にとられている、身柄を拘束されている、そういう現実が今なお続いております。また、三人の無事解放のために具体的に協力をくださった方々、また、引き続きその関係者の安全という問題も、当然私どもは念頭に置いておく必要があろうかというふうに思います。今この段階で、どのような方がどういう協力をしてくださったか、それが解放に具体的にどう結びついたかということについて申し上げさせていただくことは差し控えさせていただきたい。また、藤田先生にもそのことについては御理解をいただきたい、そのように申し上げたいと思います。

 このたびの事件から多くの教訓を、政府といたしましても、また、恐らく国民の皆様も得ることができたのではなかろうか、そのように承知をいたしております。まず何といっても、国民の皆様お一人お一人が自身の安全の問題についての意識を一層高めていただく、そのことが最も大切であろうかというふうに存じます。みずからの安全についてはみずから守る、その安全意識の一層の徹底を図ってまいりたい、そのように思います。

 政府は、渡航情報、とりわけ危険情報について、インターネット、ホームページ等を通じて、できるだけわかりやすく、また、国民の皆様にアクセスをしていただきやすい形で広報を行っていくという必要性を強く感じておるわけでございまして、そのことの努力を引き続き行ってまいりたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

藤田(幸)委員 今まで現場で活動された逢沢副大臣のお話を伺っておりまして、当時、人質事件が起きた直後に、小泉総理がその実行犯に対してテロリストという言葉を使われて、それが現地で、イラク、ヨルダンあるいはアラブ諸国周辺で随分反発を買っておられたわけですけれども、今お話を伺っておりますと、やはり地元の住民の抵抗運動的な可能性が強いという流れの中で、テロリストとおっしゃったことが、実は逆に地元でかなり反発を買ったということもあるわけでございます。それから、一部政府の関係者の中で、その実行犯に対してクリミナルというような言い方をされておられた方もおります。やはり認識が大分ずれているのではないかなと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

逢沢副大臣 当時、私もアンマンに滞在をいたしておりまして、日本の動き、また日本発の情報についてはできるだけ聞き逃すまいという注意を傾けておりましたけれども、克明に、どの段階でどなたがどんな発言をなさったか、そのことは十分承知をいたしておりません。

 総理がそういった発言をされたということをおっしゃられたわけでございますが、仮にそういう発言があったとしても、そのことと事件の解決の困難さとの因果関係について、必ずしも確定的に申し上げられないのではなかろうかというふうに存じます。

藤田(幸)委員 一方、そのファルージャに関して、きょうの委員会の外務省の報告にもございましたが、いわゆるファルージャでザルカウィに関係するテロリストとの発表、つまり、に対する攻撃があったということがそのまま引用されておりますけれども、そうすると、やはり当時のファルージャと今のファルージャというのはかなり状況が変わってきたというふうに認識をされているんでしょうか。副大臣。

逢沢副大臣 当時は、四月の八日、またその一週間でございますが、確かにファルージャ及びあの地域は相当に緊張が高まっていた、そのことは事実であったかと思います。したがいまして、いわゆるアンマンからバグダッドに向かう国道と申しますか街道、これが封鎖をされていた。いずれの車両も迂回をしてバグダッドを目指さなければならない、そんな状況であったというふうに承知をいたしております。

 その後、大変厳しい軍事行動があり、相当な死傷者が出たという事実にはもちろん私も接したわけでございますが、そういう意味からいたしますと、緊張が相当高まっていた当時の状況、その後、いわゆる武力衝突が実際に起こった状況は、確かに時間の経過とともに変化をしたというのは、事実関係としてそのとおりであったというふうに思います。

藤田(幸)委員 副大臣、済みません、私が聞いている意味は、ザルカウィという、いわゆるいろいろなテロ事件の首謀者であるという人がいるという認識のもとでアメリカが空爆をしているというのが先ほどの外務省の報告にあったわけですけれども、ということは、四月ごろは地元の人々が中心に活動していたけれども、最近は外部勢力が大分ファルージャに入っている、したがって、アメリカがそうした空爆の理由として、外部の人間が今ファルージャにたくさん入っているということで空爆をしているのか。それを外務省の報告の中で、そういうふうに報じられているということを文書で出しているわけで、外務省はそういうことに対して、アメリカが言っているとおりだと思っているのかどうなのか、その認識。

 それから、あれだけ四月にヨルダンのいろいろな機関を通して、ファルージャというのは非常にヨルダンの影響力がある、情報がとれる場所なのでヨルダンに本部を構えて情報収集をやっておられたわけですから、かなり日本政府としてもヨルダン政府等を通して、ファルージャの治安情報あるいは諜報活動についての情報があるはずなので、その認識に基づいて、ザルカウィその他のグループがファルージャに存在しているという認識を持っているのか、情報を持っているのか。そのことについて、副大臣、お答えいただきたいと思います。

吉川政府参考人 今の藤田先生の御指摘の点ですけれども、先ほどお話し申し上げましたのは、あそこにも書いてありますとおり、駐留米軍がこういう発表をしました、それからこういう報道がございましたという……(藤田(幸)委員「だから、それに対してどう思っているんですかという話を聞いているんです」と呼ぶ)

 大きな状況については、先ほど申し上げたような動きがあるという認識はありますが、他方で、私どもがファルージャにおいて具体的に情報を持っているような、実際に大使館員なりが見ているわけではございませんので、この辺については、報道をベースにした私どもの現在の認識ということで先ほど申し上げたとおりでございます。

藤田(幸)委員 直接外交官がファルージャに行けと言っているわけじゃないですけれども、ヨルダンの内務省等を通して情報をとっていたわけですし、それからヨルダンの病院もあるわけで、ヨルダンの軍人がファルージャに入っているわけで、当然そういった関係の情報収集活動もやっていたはずで、四月のいろいろな人質解放事件のことがイラクの情勢分析に全然役立っていないのかということが一つ。それからもう一つは、仮にそういった活動をしていながら、単にアメリカ中央軍の発表だけを引用のような形で載せるということ自体が、これまた非常に問題ではないか。その二つの理由で今の質問をしているわけです。

 ですから、実際に情報がないのか、ということは、四月なりに動いたこと、あるいはイラク国内における情報収集活動について、ほとんどなすすべがないのか、そういったことをお聞きしているわけです。

吉川政府参考人 先ほどは先生の御質問の趣旨をちゃんとわかっていなかったようでございますが、私どもも、近隣諸国のいろいろなソースの情報、それから、近隣を越えまして、この地域に昔から長いネットワークを持っている諸国の情報、そういうものはもちろんいろいろな方法で入手しておりますが、そのそれぞれについてどういうふうな情報があるのでこういうふうに申し上げている、そういう話ではないと思います。

 ここに書きましたのは、従来とも、イラクの治安情勢についてどういう動きになっているかということを委員会に御説明する際に、外に出ている情報を中心にしてお話を申し上げて御報告をしているという従来の方式に従っての御報告をしたわけでございます。

藤田(幸)委員 今、人質事件に関連してお聞きしたのは、つまり、イラク国内での活動は限られているにしても、周辺あるいはいろいろなネットワークを通して、イラク戦争あるいは今後の暫定政府、今までは占領政策でございましたが、いろいろな形で検証していく、あるいはダブルチェックをしていく、そういった体制というものが限られた中で非常に重要だろうと。

 そういう意味では、人質事件というのは、ある意味では大変いい機会をケーススタディーとして与えていただいて、そのとき動いた動き方がその後の占領政策あるいは今後の暫定政府の支援活動に当然生かされるべきであるし、そういったネットワークが少なくてもできたんだろうという想像で私はこういう質問をしているわけですが、今までの答弁だと、人質は結果的に聖職者協会の方々とかイラクの本当にいろいろな方が動いてくださって解放されて、本当に日本政府、国民としても安心したけれども、そういった教訓なり、せっかくの機会を全然生かし切っていないのではないかというふうに断定せざるを得ないというのが非常に残念なわけでございます。

 もし、それ以上のことを実際いろいろな形でやっているというならば、西田局長が手を挙げておられるので、では簡潔に説明してください。

西田政府参考人 簡潔にお答えいたします。

 中東局長からも御説明させていただきましたけれども、当然のことながら、人質のまず無事解放の際にはありとあらゆる手段をとらせていただきました。その結果としまして、従来持っていなかった形でのコネクションあるいはネットワークというものも十分にできてきているということでございます。

 そのようなものも使って、特にイラクを中心とする、あるいはイラクのみならず、その周りにありますテロリスト等々の動きも含め、種々の情報というものは収集し、分析をさせていただいている。それからまた、各国との意見交換、これはインテリジェンスも含めてかなり進んでいるという自負もございます。

藤田(幸)委員 まさにファルージャはインテリジェンス、ヨルダンも実際に入っておるわけですから。したがって、そういったことも含めて、例えばザルカウィ・グループがファルージャに恐らくいるであろうという、もちろん直接行って検証はできないまでも、少なくとも引用しているということは、そういったある程度の蓋然性というものを外務省として認識しているんでしょうか、どうでしょうか。

吉川政府参考人 いろいろな情報を総合的に判断すれば、ここに書かれているような、先ほど御報告申し上げましたような、ザルカウィの所在であるとかその辺については、確証はないものの、複数のソースから見れば、外に出ている情報はかなり正しいのではないか、そういう判断は持っております。

藤田(幸)委員 そういうふうに答えていただければよかったのです。

 つまり、やはりファルージャというのは、ある意味ではコアリションによる攻撃、あるいは一般の人々が、特にファルージャの場合、一週間に七百名亡くなって、競技場が死体で埋まった、そしていわば一般のイラクの国民が犠牲になっているということのシンボルのような形で、中東諸国ばかりではなく世界に伝わっているわけです。ところが、当時の状況と今は違うんだ、最近は大分質が変わってきた、いろいろなテロに対する関係のある人々がいる可能性があるというふうに認識しているかいないかということをはっきりおっしゃっていただくということは、やはり日本の今後のイラクに対する政策への国民の理解を得る上で私は非常に重要だろうと思うんですね。

 そんな意味で、単にアメリカ軍がこう言っているというのではなくて、やはりそういった認識を、確証は得られないまでも持っているということ、あるいはほかのことについても、実は日本以外のいろいろな国は随分イラクの情報についていろいろな分析をしているんですね。

 例えば、ここに、ある方からいただいた、アメリカにGAOというのがありまして、ゼネラル・アカウンティング・オフィスという、行政監視院とでもいうんでしょうか、これは六月にこんな厚い文書を出して、いろいろイラクの再建について、治安の問題とかガバナンスの問題とかについての報告書を出しています。それから、いわゆるコアリションフォースの方もホームページに随分厚いものを出しておりまして、相当なものが公開されているわけですね。

 ですから、むしろそういったものをはっきり公開をしながら説明をしていただいた方が、先ほど、いろいろ指揮権の問題とか法律の問題もありますけれども、やはり情報を開示していくということが、これからの、単にイラクばかりではなく、外務省のいろいろな活動について国民に理解をしていただく上で大変重要ではないかと思うので申し上げているわけです。

 したがって、そういった感じで今後も、あと残された時間、答弁をいただきたいと思っております。

 そして、その前段を踏まえまして、次に、今回のイラク戦争に関するそもそもの大義について、いろいろな調査報告が最近出ております。七月だけで三つ主なものが出ていると思いますけれども、まず九日にアメリカの上院の情報特別委員会、十四日にイギリスの独立調査委員会、それから二十二日にはアメリカの独立調査委員会。これは三つとも、結論から言いますと、要するにイラクの戦争のそもそもの大義を否定する情報、つまり調査が出たというふうに言えると思っております。

 私は、先週も、実はアメリカの独立調査委員会の報告をまとめたリー・ハミルトンという元の下院の外交委員長でございますけれども、お会いをしましたけれども、このハミルトンさん自身が、やはりイラクとアルカイダの連携や協力の証拠はないというようなこともはっきりおっしゃっておるわけでございます。

 そして、こうした発表に対して、ブッシュ大統領もイギリスのブレア首相もそれなりの対応をし、ブレア首相は、いろいろな意味で自分のそうした決断に対しては責任をとるということも表明をされております。

 こうした極めて大がかりで周到な調査が発表されて、そもそもの情報、つまり大義を裏づける情報というものが否定をされたということに対してどういうふうに認識をされておるのか。この中身と、それからそれに対する対応、両方について副大臣からお答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕

逢沢副大臣 委員御指摘のように、アメリカ上院の独立調査委員会の報告が出ました。また、英国のいわゆるバトラー報告も既に公になっているところでありますし、もちろんその中身については私どもも承知をいたしているところでございます。

 しかし同時に、我々が忘れてならないことは、かつて、サダム・フセイン率いるイラクは、大量破壊兵器、生物化学兵器を実際に使用したという事実があるということであります。クルド人に対して、あるいはイラン・イラク戦争当時におきましても、実際にこういった兵器を使用し大変悲惨な結果を招いた、またその悲惨な映像は全世界に発信をされたということは、お互いの記憶に新しいところであります。

 我々は、この大量破壊兵器の疑惑がある以上、その大量破壊兵器の存在を確認する、またそれを廃棄する、そういう国際の大きな責務を負っているというふうに常に発言をし続けてきたわけでございます。

 たび重ねて安保理の決議が採択をされたわけでございますけれども、もう短く申し上げますが、イラクは、それをことごとく無視する、また決議違反を繰り返す、そういったことが残念ながら繰り返されたわけでございます。国連決議六七八、そして六八七、一四四一、たびたび国会でも申し上げてまいりました。イラクは、みずから最後のチャンス、つまり武力行使を回避するチャンスを逃してしまった、深刻な結果を招いた責任は挙げてサダム・フセインの側にあるということは改めて想起をしておかなくてはならない、そのように思います。

 もちろん、独立調査委員会の報告、またバトラー報告、これに対して世界がどんな反応を示しているか、そのことは承知をいたしているわけでありますが、一連のこの経緯を考えましたときに、最後の手段として武力行使をする、そしてその政権を除去する、その選択は正しかったというふうに私どもは承知をいたしているところであります。

藤田(幸)委員 大量破壊兵器がないという結論が出ているということと、今、例えばブッシュ大統領なりあるいはブレア首相に関しても、今、逢沢さんが説明されたような映像がどうこうとかそんな話はしないで、はっきり責任について言っているわけで、これを今、日本だけが日本独自の説明だけでするということは、これはやはり世界的に通用しないんだろうと思っております。

 そもそも、日本自体は検証したんですか。英米が提示をした情報について、日本政府は検証してその英米の動きについて支持をしたんでしょうか。それとも、検証はしていなかったんでしょうか、英米の情報に関して日本政府は。

逢沢副大臣 アメリカは、独立調査委員会が上院に設けられ、まさに独立した存在として調査を行われた。また、英国におきましても、バトラー報告の形でこれが提出をされたわけでございます。もちろん、その中身につきまして、あの当時、大量破壊兵器は必ずしも明確な形でイラクに存在していなかった、また、アルカイダとの関係も明示的な形で確認はできないといったような内容が両報告書の中に盛り込まれていたということは、承知をいたしているところであります。

 報告書がどんな報告をもたらしたか、どんな報告を最終的に出したか、その事実は事実として私どもしっかり受けとめているところであります。そのことと武力行使に踏み切ったということの是非についてはやはり分けて考える必要があろうかというのが私どもの立場でございます。

藤田(幸)委員 私の質問は、武力行使に踏み切ったという根拠についての英米の、当時、昨年出しておいた情報を日本政府は一応検証したのかどうかということを聞いたわけです。

 大臣、済みません、今まで余り質問しておりませんでしたが、昨年、英米の武力行使、そして日本がそれに賛同を示したわけですが、アメリカ、イギリスが言っておりました根拠となる情報を日本政府は確認したんでしょうか。

川口国務大臣 英米が報告書、国連等でこれについて説明をしたということと同時に、私どもは、判断をする際の一つの重要な材料として、国連の査察団の報告書、これをきちんと分析いたしました。

 これは、御案内のように、三十近くの項目にわたりまして、イラクが過去どのような大量破壊兵器を持っていたか、VXガスですとかサリンですとか等々のことが書いてあり、その後イラクがどれぐらいを破壊し、あるいは破壊したということがどれぐらい不確かであるか、そして、引き続きどのような疑問が残っているかということを細かく書いてあるわけでございます。

 私どもは、米英の説明もさることながら、国連の査察団の報告書をベースに物事を考えております。

藤田(幸)委員 ブリクス委員長自身が、最近も本を書いておられますけれども、まさにそういったいわゆる大量破壊兵器については否定をしておりまして、むしろブリクス委員長の本の方が、この七月に三つ出た英米の調査報告以前にその大義がないということをはっきり言って、それから最近も講演活動をされておられるという事実だろうと思います。

 したがいまして、ちょっと時間が費やされてしまいましたので、要は、その根拠になっておった情報そのものが今否定をされている中で、いまだに、先ほどの政府の答弁を聞いておりますと、そのそもそもの情報が根拠を失ったと言っていながら、同じ理由づけで今答弁をしているということ自体が、やはりこれでは説得性のある今後の暫定政府に対する支援活動というものも非常に難しいのではないかということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 それは、主権移譲をされてから来年一月の選挙に至るまでの政治プロセスの実現性についてお聞きをしたいというふうに思っているわけです。

 まず、問題となっております治安状況が悪化しているし、これからますます悪化するだろうということは、これはアメリカのラムズフェルド国防長官自身がはっきりおっしゃっておられる。その前提で、ますます悪化をするこの治安情勢の中で、今の多国籍軍の規模でそれだけの悪化する治安状況に対応できるのか。それから、多国籍軍に加えて、イラクの治安部隊が二十二万人、これは警察を含んで内務省所属というような数字が出ておりますけれども、この今の多国籍軍の規模、能力及びイラクの治安部隊の能力、規模でこの現在の悪化しております治安状況に対応できるのかどうか。それについて、大臣か副大臣の方からまず簡潔にお答えいただきたいと思います。

吉川政府参考人 治安情勢につきましては、冒頭の御報告の中に譲ります。

 今の御質問の部分について、先ほど赤松先生の質疑の中でも出ておりましたが、二つの点を申し上げたいと思います。

 一つは、イラクの政府自身が、自分の問題としてイラクの治安問題に取り組むという非常に強い覚悟を示していること。現在、その二十二万人の治安部隊を増員しようという動き、それから、イラクの人たちも自分たちの治安の回復を求めていて、外国から流入したと見られるテロ勢力を非難する声が非常に強くなっております。

 最近、新聞、日本の読売新聞なんかに出たものを見ますと、新政権への主権移譲後、イラクはよくなるかと聞かれて、八〇%の人がよくなると答えております。やっぱり自分たちの政権になったのでこの国をよくしないといけない、こういう気持ちが非常に強くなっていると思いますので、このような措置が早急に効果を出して、治安の状況というものが、なかなか改善は容易ではありませんが、よくなるということを期待しております。

藤田(幸)委員 そんな精神論で済む話じゃございませんと思うんですけれども、これまたアメリカのGAOのレポートの中によりますと、いわゆるイラクの治安部隊の装備も訓練もほとんど体をなしていないとはっきり書かれています。それから、ファルージャとか南部における活動はお粗末、プアという表現をされております。

 これはアメリカの独立した委員会の最近のレポートですけれども、そのぐらいに書かれているのがこのイラクの治安部隊の状況だろうと思うんですけれども、それと今、吉川さんがおっしゃった精神論、これは余りにも乖離があって、こんなんで治安ができるわけないんじゃないか、そういう精神論だけで。こういうプアな状況をわかっていてそういうふうにおっしゃっているのか、そもそも情報がないのか、それとも、情報があるので、言えないのでそういう言い方をされておるのか。

 実際に、これからそういった治安状況、それから今度は選挙の準備、国連の職員も圧倒的に少ない、今までの東ティモールだとかカンボジアとかナミビアなんかに比べても非常に少ない。こんな中で本当に治安を確保しながら選挙まで持っていけるという、もうちょっと具体的な、ただ精神論じゃなくて、そうした選挙までに行く政治プロセスが可能性があるということについて、根拠を示していただきたいと思います。

吉川政府参考人 イラクの治安情勢につきましては、日本政府のみならず、先生が今御紹介いただきましたような、アメリカそれからイギリス、かつての占領軍の国々が、非常に現状は予断を許さないということを言っていること、これはもう紛れもない事実だと思います。

 ですから、そういうものについて、二つの点、先ほどから申し上げていますが、六月の二十八日に新しい政府になり、その治安維持の能力を高めないといけない。警察官がみんな、装備も弱い、訓練が足りない、これはもう我々も認識しております。したがって、警察車両の供与であるとか、それから、ヨーロッパ諸国もやっておりますが、警察官そのものの訓練をする、こういうことを我々もやっておりますし、もちろんアメリカ軍がそれを中心になってやっているわけです。

 したがって、イラク人の治安というのは、外国人ではコントロールはできないと思います。基本的には、イラク人自身の警察能力をどうやって高めるか。これに対して、イラク人自身、それから我々を含む諸外国が一緒に協力しているというのが現在の状況であり、先ほど申し上げましたのは、楽観的に聞こえたかわかりませんが、そういうことを期待しているという気持ちを述べたものでございます。

藤田(幸)委員 治安部隊、さっき私が申し上げたアメリカの報告、多分合っているんだろうと思うんですけれども、否定をされませんでした。それから、暫定政府の職員も、恐らく行政実務を担う各省庁の職員はイラク人よりもアメリカ人の方が多いんだろうと思うんですね。大体千人規模で各省庁にいて、いわゆる行政実務を担う人間が。

 そうすると、これは暫定政府に主権を移譲されたということになっておりますけれども、この主権というのはどういうことでしょうか。副大臣か局長か。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 この問題につきましては、国連安保理決議一五四六におきましてイラクの行政政権が暫定的な統治権限をもらったわけですが、その中にただし書きが入っております。それは、その暫定政府は、限られた暫定期間を超えてイラクの命運に影響を与えるいかなる活動も控えるものとするというような、すなわち、イラクというのは主権を回復したわけですが、ただ、これは、来年の年末までに新しい政府をつくろうとしていますから、その間に、将来にいろいろな負担を残すような話、それはやらないようにしましょうというのが一五四六の一番最初に入っております。

 そういうただし書きはありますが、全体としては、一五四六の示しておりますのは、六月の二十八日に成立しました暫定政府というのは、国の政府機能を完全に与えられたそういう主権国家である、こういう理解でおります。

藤田(幸)委員 ただ、この一五四六に「完全な主権」と書いてあります。したがって、ただし書きがあるにしても、完全な主権が戻った、与えられたというふうに言っているわけで、そうすると、その「完全な主権」という、その「完全な」という形容詞が数カ所に出ているわけで、とてもとてもこれは、仮にその「控える」というただし書きがあるにしても、そもそも治安部隊も、これは自前の能力もない、それから行政機構もそうだ。

 それから、主権ということの、これは外務省からいただいた定義によりますと、ほかの権力に従属することのない統治権ということになっておりますけれども、これは治安も行政も実態的に、ほかの権力にやはり実際に従っているというのが実態だろうと思いますので、だとすると、これは完全な主権というものがこの六月の末で暫定政府に来たというふうに、実態としては認知できないんじゃないかと。それを日本政府は政府承認をしているわけですけれども、この政府承認の、これは政府としての権力を確立とありますけれども、これも実際に要件を満たしていないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

吉川政府参考人 藤田先生も御存じのように、例えばアフガニスタン、例えば東ティモール、独立したからといって、その日からすべてのことを我々先進国と同じようにやれる国というのは、残念ながら少ないと思います。それどころか、アフリカの国々を例にとれば、もう独立して二十年、三十年たっても、やはり外国の援助がないと財政を維持できない、外国のいろいろな技術支援、軍事支援を得ないと国防それから警察能力をできない、こういう国はありますが、では、そういう国々、名前は言いませんが、それは主権国家じゃないのか……(藤田(幸)委員「完全なる主権」と呼ぶ)ええ、それは全部、完全なる主権を持った国々だと思うのです。

 ですから、そういう意味で、統治能力については、不十分な点は、それは現実、みんな能力は違うわけでございますが、この新しい六月の二十八日に発足したイラクの暫定政権というのは、そういう意味での完全な主権を回復したというふうに理解しております。

藤田(幸)委員 完全でないと思いますけれども、それを指摘して、質問を終わります。

西田委員長代理 次に、長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。

 両大臣、長時間御苦労さまでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 先週、岡田代表と訪米をしてまいりました。私にとっては四年ぶりの訪米だったんですけれども、いろいろな意味で大変勉強になりました。帰ってくるや否や党内で物議を醸しておるようでありますが。

 訪米をしたときにいろいろな方にお会いをしたんですけれども、もちろんイラク問題はかなり大きな争点になっておりました。ただ、アメリカの民主党といえども、ブッシュ政権とはイラク戦争に対するスタンスはほとんど違いがないというのを私も再確認いたしました。

 とりわけ、ケリー政権ができたら国務長官になるのではないかと言われているジョセフ・バイデンという上院議員がおりますけれども、彼と個人的に話す機会がありましたが、彼ははっきり、イラクで幻想を抱いてはいけないんだ、集中的に兵力を投入して、一日も早くイラクを安定化しなければいけない、そのためにも日本にもっと支援をしてほしい、こういう言い方をしておりました。私は、民主党の政策をつらつら述べないで、私としては、国際的な枠組みをつくり直すということがそのためには大変重要な問題じゃないですか、こんなふうに申し上げました。

 私がお会いをした民主党系のジョセフ・ナイ、前のクリントン政権の国防次官補、あるいは共和党系の穏健派と言われているスコウクロフト将軍、これはお父さんのブッシュのときの安全保障担当の補佐官でしたけれども、この方たちも口をそろえて、インターナショナリゼーションというのが大変重要だということを述べておられました。大変印象的でありました。

 つまりは、フランスやドイツあるいはロシア、そして周辺のアラブ諸国、こういう国々を加えた、こういう国々に参加を求められるような、そういう一定の枠組みづくりをこれからアメリカは相当努力をしていかなければいけないなということを再確認したわけです。

 六月八日に国連決議一五四六が全会一致で安保理を通りました。そして、六月二十八日に主権がイラク人のもとに移譲をされました。これは一つの大きなステップになったと思いますけれども、この国連決議一五四六以降、アメリカが国際的な枠組みを拡大していく努力の一環としてやった主な努力の内容、そして、それにこたえてNATO諸国を初め諸外国がどのぐらいイラクの安定化のために歩み寄ったのか、その辺のところを外務大臣に少しお話しいただければありがたいと思います。加えて、その際、日本がどんな努力をしたかということもあわせてお聞かせいただければありがたいと思います。

吉川政府参考人 事実関係について私の方から申し上げたいと思います。

 まず、六月の八日から十二日まで小泉総理大臣が御出席いただきました、アメリカのシーアイランドで行われました主要国首脳会議、G8直前に、先ほど先生から御紹介いただきました安保理決議一五四六が採択されましたので、G8では、イラクの政治プロセス、それから経済復興のために国際社会が一致して支援すべきだということを確認しました。この過程では小泉総理がいろいろ発言されたということは、既にプレス等に出ているところでございます。

 それから、当初の予定、六月末までの政権の移譲、統治権限の移譲を三日前倒しして、CPAからイラクの暫定政府に対して統治権限が成功裏に移譲された、これが一つでございます。

 もう一つは、七月十二日には、国連も役割を果たすということで、イラク担当の新しい特別代表、去年の八月にバグダッドで殺されたセルジオ・デメロさんの後任として、パキスタンの、ワシントンにいる大使、カジという、東京にも勤務した人ですが、この人を任命するということで、国際協調体制の構築の努力が行われております。

 日本としても、先ほど外務大臣から御紹介申し上げましたとおり、ことしの十月には、国連及び世銀の管理下にありますイラク復興支援信託基金の会合の議長国として、東京でこの会合を開催し、国連の役割強化を含めました国際協調体制の構築に努力していく考えでございます。

長島委員 私は、わざわざNATO諸国というふうに名前を挙げて言っておるわけです。ドイツやフランス、ロシアあるいは周辺のアラブ諸国、こういう国々の参加がなかったら、本当の意味でイラクの復興支援というのは成り立たないと思うんですけれども、その辺の反応はどうだったのか。これは外務大臣、お答えできるでしょう。

川口国務大臣 日本として、小泉総理がG8の場等で、ブッシュ大統領だけではなくて、国際協調をつくるということを主眼に働きかけられたわけでございます。

 冒頭で委員が、民主党の政権下でも国際協調の枠組みづくりが重要であるというふうに言われたわけですけれども、私は、これは言葉の使い方で、同じことを言っているのかもしれませんが、枠組みは既にできているというふうに思っております。国連のもとで決議があって、できている。ないといいますか、まだ十分でないのは実態であるというふうに思います。

 そういう意味で小泉総理は働きかけを行われましたし、それから、外務省のレベルといたしましても、例えば周辺のアラブの国々の方々がおいでになられた折に、その国みずからが支援をしていくことの重要性、あるいは日本が第三国協力という形でその国々と一緒になってイラクに支援をしていくということも、今話し合いをやっております。

 また、ACDという場がございましたけれども、アジアの穏健なイスラムの国々、こういった国々に対しても、どのような支援ができるかという話は、私もそれらの国の外務大臣といたしました。

長島委員 私としては、NATOが、シーアイランド・サミットの前のノルマンディーの六十周年のときに、やはり治安状況は大変心配だということで、治安部隊の訓練など、イラク国内でないところでやるんだというような、そんなイニシアチブを出したというような、そんな説明をしていただきたかったんですが、どうもそういう話が出てこなかったので大変不満であります。

 外務大臣、国連に対して、国連からのいろいろな日本に対する期待感があると思うんですね。私も、訪米する前に、国連のイラク、アフガニスタン担当の専門官とお話をする機会がありましたけれども、さっき藤田委員がお述べになりましたけれども、来年一月までの選挙を何とかしたい、その選挙の管理のために少なくとも五百名ぐらいの国連職員はイラクに入らせたい、こういう意向を持っていますね。

 アフガニスタンをめぐっては、事務総長を支援しようという、事務総長を支援するための加盟国の有志のグループができていますね。ですから、イラクでも、例えば日本がイニシアチブをとって、そういう、イラクで選挙をしなきゃいけない、国連職員五百人入れなきゃいけない、そのための治安、警護というか、彼らの安全の確保をするために、例えばパキスタンとか、兵力を出してもいいと言っている国があるわけでしょう。そういう国々に呼びかけて、我々は中に入ってやることはできないかもしれないけれども、例えば、周辺諸国で後方支援をやるから、みんなで事務総長を中心にこの復興支援を支えようじゃないか、こういうイニシアチブが日本からあってもいいと思うんですね。

 何か私も、先ほどから藤田委員とのやりとりを聞いていても、日本の政府の中に、自衛隊さえ出しておけば、あとはそんなにいいやというような、そんな油断の思いというか、少しおおように構えたものがあるとすれば、それは大変悲しいことであるということを一つつけ加えておきたいというふうに思います。

 それでは、次の問題に移りたいというふうに思います。

 これは先ほど来再三議論がありました、例の参加と協力の問題であります。六月の十八日に、イラクに自衛隊を残す、そして多国籍軍の枠組みの中でそれを活動させるんだという、こういう閣議了解というのが出まして、結論としては、従来の政府見解を変えるものではない、こういうことが言われておるわけですね。

 その担保としては、統合司令部の指揮下に入らない、それから自衛隊は引き続き憲法の禁じる武力行使を行わない、それから他国の武力行使と一体化しない、この三つを条件として、今回も、統合された司令部の指揮下に入らないで多国籍軍の一員になる、こういう決定が下されたというふうに了解をしておりますけれども、私は、ここに至る法制局の政府解釈は、かなり紆余曲折というか、混迷をきわめたような気がするんです。それは、かなりの部分は、小泉総理が参加するというふうに言ってしまったことに端を発しているのかもしれません。

 閣議了解では、小泉総理が盛んに使っていた参加という文言は使わないで、多国籍軍の中で活動を行う、すなわち、どういうことかというと、「自衛隊は、多国籍軍の中で、統合された司令部の下にあって、同司令部との間で連絡・調整を行う。」こういう言葉遣いになっているんですね。

 アンダー・ユニファイドコマンドの話はもうさんざん先般の閉会中審査の中でもされたと思いますけれども、多国籍軍に参加するけれども指揮下に入らないという話と、統合された司令部という訳し方、この二つが、ある意味で、政府の説明が国民にとってわかりにくい、そういう印象を与えたというふうに思うんです。

 私は、この混乱の最大の原因は何だろうかというふうに考えたときに、やはり内閣法制局の憲法解釈において、武力行使の有無というのが唯一最大のメルクマール、もちろん武力の威嚇も入っているし、武力行使と一体化するかしないかという問題も入っているんですけれども、束ねて言えば、武力行使にかかわる日本の行動が一つの大きなメルクマールになっているということは了解をしていただけるというふうに思います。

 これが、日本のやる活動が人道復興支援活動だけなら恐らく話はすっきりいったんだと思うんですね。しかし、もう一つ、イラク特措法には安全確保支援活動というのがあるんですね。これは、航空自衛隊を中心にして多国籍軍への輸送業務もやっているわけですね。これは、わかりやすく言えば、治安維持や治安の回復に努めている多国籍軍に対する後方支援をやっている、こういうことになりますね。

 この多国籍軍の治安回復行動の中には、先ほど末松委員も挙げたように、ファルージャで行われたような純然たる戦闘行為も含まれる可能性があるわけですね。それは否定できません。防衛庁長官、首をひねっておられますけれども。自衛隊の活動それ自体は、当然のことながら後方支援ですから、武力の行使に当たらないことは間違いありません。しかし、他国の武力の行使との一体化というのは、そういう意味では、つまり多国籍軍の一員となっているという意味合いにおいては、あるいは多国籍軍への後方支援を行うという意味合いにおいては、その多国籍軍の行う武力行使との一体化にならないという法的担保はどうやって与えられるんでしょうか、法制局長官。

    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕

秋山政府特別補佐人 これは、基本的にはイラク特措法の中にそういう仕組みになっているということでございまして、安全確保支援活動も、輸送などそれ自体としては武力の行使に該当しない行為をいわゆる非戦闘地域において行う。しかも、今回の多国籍軍の中に入るということに際しましても、我が国は、その司令部との間で連絡調整を行いながらも、その指揮下に入ることはなく、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、特措法に基づいて行うということ、それが我が国の行動が他の国の武力の行使と一体化しないということの担保でございます。

長島委員 そうじゃないでしょう。非戦闘地域で活動するから武力の行使と一体化しないんでしょう。(秋山政府特別補佐人「今そう申し上げました」と呼ぶ)ああ、そう。しかし、そう言い切れるのは、武力の行使をしないんだから武力の行使をしないんですというのとほとんど同義なんですね。いや、本当にそうですよ。常識的に考えたらそうです。

 ただ、私は、政府の皆さんがそうやって言い切れるのには論拠があると思っているんです。それは、私、昔も一回指摘をさせていただきましたけれども、政府見解によれば、武力の行使というのは、国と国、国際紛争の一環としての戦闘行動しか入らないんですね。今のイラクに国または国に準ずるような者というのはほとんど見当たらないんです。ゲリラとかあるいはテロ行為を行うそういう武装勢力、ですから、どんな活動に関与しても、極端に言えば、それが武力の行使と一体化するおそれがないから、正々堂々と皆さんそうやって開き直ることができるんです。

 そうなると、逆に言うと、武力の行使と一体化しないという基準は歯どめでも何でもないんですね。何の歯どめにもなっていないんです。基準としては、私は意味のないものになっているというふうに思っているんです。

 それは、私は何を言いたいかというと、内閣法制局の伝統的な憲法解釈というのは、もはや現代的状況にマッチしていないんじゃないかということを申し上げたいんです。二つの点。

 一つは何かというと、内閣法制局が憲法九条の解釈で用いている国際紛争という概念は、国対国の正規軍の正面衝突のことなんですね。国際紛争なんです。これ以外のものには適用されないんですね。これが一つ。でも、今、現代はそういう単純な世界ではなくなったということが一つですね。これをぜひお考えいただきたい。委員の皆さんもぜひそのことは確認をしていただきたいと思うんですね。

 それから、もう一つ申し上げなきゃいけないのは、武力の行使という唯一のメルクマールで、次元の違う二つの行為、一つは、さっき中谷委員もお触れになりましたけれども、個別国家が主体的に判断して行う国権の発動としての武力行使と、国連を中心とする安全保障体制のもとでの武力行使、これは次元が違うんですよ、国際法上は。

 今、法制局長官、首をかしげておられますけれども、国際法の権威と言われている東京大学の大沼保昭教授がこう書いているんですよ。今までの内閣法制局の解釈には自分は疑問を持っていると。ぜひお答えくださいよ。

 九条の「武力による威嚇又は武力の行使」を、日本自身の個別国家としての利益追求のための武力行使と、国連の決定、要請、授権のもとに行われる国際公共価値実現のための武力行使とに区別することなく、一律に解釈してきたことが自分としては不適切だというふうに彼はおっしゃっています。

 ぜひ法制局長官の見解を伺いたいと思います。

秋山政府特別補佐人 憲法九条の解釈になるわけでございますが、一項で、武力の行使などを国際紛争を解決する手段として永久に放棄すると定めました。二項で、戦力の不保持、それから交戦権の否認という世界に余り類のない規定を持つ憲法でございます。

 このようなことで、一見すると国際関係において一切の武力の行使を認めていないというようにも読めるわけでございますが、しかし、我が国が外部から武力攻撃を受けた場合において、これを排除するための必要最小限の実力の行使までは禁じていないはずである、そのための実力組織もその限度で持てるはずであるということが従前政府が申し述べてきた九条解釈の基本でございまして、したがいまして、今申し上げたような個別の国と国との伝統的な戦争のようなもの以外に、国際関係において、今御質問にありましたような国連の決議に基づく武力の行使というようなものにつきましても広く禁止がかかっている。

 ただ、もちろん、国連のメンバーでございますので、憲法で禁ずる武力の行使にわたらない範囲でこれにできる限り協力していくことは当然であるという考え方でございます。(発言する者あり)

長島委員 今まさに筆頭理事がおっしゃったように、これじゃ参加できないということになるんです、今の論理だと。

 だから、私が何をサジェストしているかというと、やはり分けて考えましょうと。先ほどの法制局長官の前段の説明は、あくまでも国権の発動としての武力の行使について縛りがかかっているという説明でしたよ。それなのに、突然、国連を中心とした安全保障体制についてもそれが及ぶというような、そういう説明は私は成り立たないと思う。しかも、国連に加盟しているんですよ。国連憲章を遵守する立場にあるんですよ。国連憲章には、第一条で、侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧のための集団的措置の一環としての武力行使が認められているんですよ。これを日本国憲法に適合させないで来たというのは、私は、国際社会の一員としてまことに無責任だ、こういうふうに申し上げているんです。

 ですから、これは見解の相違なんです。九条を変えなければできないのか、それとも現行憲法上それが読めるのかというのは、これは大変重要なポイントなんです。こういう問題をあいまいにしているから、結局、サマワは非戦闘地域ですというようなまやかしのロジックに引き込まざるを得ないんですね。

 私は、一言、出過ぎたまねかもしれませんけれども、申し上げたいと思いますが、これは岡田代表がアメリカで申し上げたことと通ずる話なんですけれども、彼は憲法を改正しなきゃいけないと言っているんですが、私はどちらかというと小沢さんに近い方なんですけれども。

 しかるべき国連決議があって多国籍軍が編成された暁には、国連及び関係当事国の要請を受けて自衛隊を派遣することはできる。そして、その際には、武力行使を目的としないんですが、行った先でやむを得ず、任務を遂行するために武力を行使するに至ったとしても、これは現行憲法の禁じている国権の発動としての武力の行使には当たらない。だから許される。こういう解釈を、防衛庁長官、首を振っておられますけれども、こういう解釈をすれば、皆さん、PKOにおける武器使用基準の緩和も大変スムーズにいくんですよ。それから、今後の課題となっている海外活動における恒久法、これをつくっていく際にも一つの大きなブレークスルーになるはずなんです。

 法制局の皆さん、今まで積み上げてきたいろいろな議論があるんだろうと思いますけれども、これはぜひ検討をこれからしていただきたい。政府にぜひ要望しておきたいと思います。

 首を振っておられるので、防衛庁長官、どこが問題なのか、ぜひ御指摘いただきたいと思います。

石破国務大臣 いや、それは委員の御見解を一度論理的に、論文でも読ませていただいて申し上げたいと思います。

 ただ、国権の発動とは何なのかということについて、よく精緻な議論が必要なんだろうと思っています。国連に参加をし、国連の集団安全保障において我が国はそれに参加する、そこにおいて、委員のお言葉をかりれば「武力を行使する」、これが日本の国権の発動ではないという評価をどのように行うのか。あるいは、それだけではなくて、PKOにおいてはどうなのか。あるいは、国連の決議に基づいてイラクにおける活動のような場合にはどうなのか。それが国権の発動として評価できる場合とされない場合とあるというようなことになりますと、かえって法的な安定性を損なうのだろうというふうに考えております。

 そのようなことで、私どもといたしましては論評する立場にはございませんが、これは委員と見解を一にするのだと思いますが、言葉の定義をきちんとした上で議論をしていくということが最も肝要なのだと思っております。そういう意味で、委員の御見解をこれからも承りながら、政府としてというよりも政治家として議論をさせていただく、それは極めて重要なことだと思っております。

長島委員 確かに、防衛庁長官のおっしゃるように、派遣のときに主権的判断が加わる、これを国権の発動というふうに恐らく読み込んでおられると思いますが、国権の発動としての武力の行使ですから、武力の行使にかかっているんですよ。武力の行使の瞬間にどこに指揮権があるかということが問題なんです。

 ですから、先ほど来筆頭理事がおっしゃっているように、仮に国連に部隊を供出して、国連のコマンドのもとに置くとすれば、これは国権の発動としての武力の行使とは違うんですよね。そこはぜひ検討していただきたい。今すぐのみ込めなんというふうには申し上げません。そんな乱暴なことは申し上げませんが、ぜひそこは考えていただきたいというふうに思います。

 それから、最後になりました、もう時間がないんですが、トランスフォーメーションについてちょっと一つ伺いたいんですけれども、前原議員も先ほど外務委員会で指摘をされたようですが、今回の、これは防衛庁長官に虚心坦懐に伺いたいんですが、新聞にぼろぼろリークされる、そして何かサンフランシスコで日米間の協議が行われる、こちら側から外務省の担当あるいは防衛庁の担当者が行く、そして何かそこでだあっといろいろなメニューを見せられる、ああ、そうでございますかと帰ってくるというような印象を与えるような日米協議のやり方について、おとといも前原議員が本会議の際に言っていましたけれども、お粗末な印象を与えるんですね。

 やはり、日米協議ですから、対等な同盟関係なんですから、日本のアイデアがある、一つ持っていく、そしてアメリカのアイデアを持ってくる、二つのアイデアを突き合わせて、そして、ここはどうだ、あそこはどうだというふうにやり合うことが、それはアメリカが何を考えているかわからないよと言う前に、日本にアメリカの基地を置いているわけですから、この基地の機能がどういう機能で、アメリカのトランスフォーメーションの世界的な流れの中でこの基地がどういうふうに変質する可能性があるかということは、軍事専門家がたくさん自衛隊の中にもおられるわけだから、そういう人たちと議論を重ねていけば恐らく日本のアイデアというのは出てくると私は思うんですね。

 ですから、そういうことが表に見られないこのトランスフォーメーションをめぐる日米協議、私は大変問題だと思うんですけれども、防衛庁長官の率直な感想、印象をお伺いできればと思います。

石破国務大臣 私は、委員のこの本を今改めて読み返しておるところで、非常に含蓄の深い本だと思っております。これは今三回目読み直しておるところでございますけれども、ここにおいて委員が指摘されていることも含めまして、委員のおっしゃるような、同盟関係というのは何なのか、冷戦期における同盟関係と、ポスト冷戦期における同盟関係と、ポスト九・一一の同盟関係というものは、それは信頼関係はもちろん継続していくものでありますけれども、形としては異なることがあり得るのだろうと思っております。

 そして、日米同盟というものは、日米安保条約に基づきまして、非対称的双務性を持って成り立っておるものでございます。その場合の非対称的双務の中身は何なのかということも、それは時代によって変わることがあり得るのだろうと思っております。

 新聞に報道されておりますように、アメリカから具体的な提案があってというような事実は全くございません。私も外務大臣も一切聞いておりません。したがいまして、アメリカがこのようなことだと言って、私どもがそれを受けてどうするというようなことはございません。

 しかし、トランスフォーメーションというものは、アメリカにおいて、例えばポスト九・一一に対応する、あるいは軍事技術の急速な進展に従って対応するというようなことに基づいて戦略的に行われるものだと考えております。その中で、日本が本当に同盟国としてそれについてどのような意見を申し上げるか、それが日本の国益にとってどうなのか、そして日米同盟はいかなる国益を共有するものであるのかという点から、日本国が主権国家としてきちんとした日本の考えを持って対応すべきことは言うまでもないことだと考えております。

 合衆国から具体的な提案があったという事実はございませんが、どう臨むかということは、こういう委員の意見も参考にしながら、今後ともよく政府として議論をさせていただきたいことだと考えております。

長島委員 ありがとうございました。

 ぜひ、日本側の主体的な判断を、みんなに見える形、国民に見える形に示していただきたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 午前中も外務委員会で外務大臣に質問をしたところでありますが、イラク問題について質問をしたいと思います。

 先ほど藤田議員も取り上げましたが、七月九日に公表されたイラクに関する米情報機関の開戦前の情報評価についての報告、これが、ブッシュ政権が根拠とした二〇〇二年十月の国家情報評価にある主要な中心的判断のほとんどは、基礎となる情報報告を誇張しているか、または基礎となる情勢報告による裏づけのないものだったと断定して、イラクの大量破壊兵器に関するブッシュ政権の主張に根拠がなかったことをほぼ全面的に認定しております。

 ところで、この情報に基づきまして、二〇〇三年二月六日、パウエル米国務長官は、国連安保理で行った演説で、少なくとも七つの移動施設があるとか、イラクの脅威の最も強固な証拠と指摘をいたしました。

 時間を置かずに、川口外務大臣は、そのパウエル長官の演説の直後に談話を出しまして、このパウエル演説について、「査察活動に対する非協力、大量破壊兵器の隠蔽工作等、イラクに大量破壊兵器を廃棄する真の意図が見受けられないことを示す情報を提示したことを高く評価すると共に、このような情報が示されたことを重視している。」談話の中身はそうなっています。

 誇張された情報、これを断定されたものとして高く評価していたわけでありますが、川口談話は、振り返ってみて、今日もなお正しかったということでしょうか。

川口国務大臣 あのときに出しました談話自体を、私、今ちょっと手元に持っておりませんので、ここで文言を再現することはできませんけれども、我々は、あの談話を書きましたときに、これが、パウエル発言の内容、それが正しいという判断をするものではないということについて注意を払って書いたわけでございます。

 国際社会がイラクに対して持っている疑念を深めていったということについては触れたような気がいたしますけれども、基本的に、私どもが、イラクの大量破壊兵器に関するいろいろな疑念、これが一体どういうものであるかということについて検討いたしましたときに使いましたのは、国連の査察団の報告書、これは三十ぐらいの項目にわたりまして、イラクがまずそもそも何をみずから持っていると言って申告をしたのか、イラクはさまざまなものを自分たちはつくったと言って申告をしたわけでございますが、それについてイラクみずからがどれぐらい廃棄をした、そしてその廃棄をしたということについてどれぐらいの疑念があるかということについて国連の査察団が評価をした、そのペーパー、その報告書について分析をし、我々のその後につながる判断をしていったということでございます。

赤嶺委員 川口外務大臣、ごまかさないでください。あなたは、パウエル長官が国連安保理で演説した中身を中身そのものとして高く評価したんです。

 それは談話からの引用ですが、つまり、パウエル演説で何が明らかになったか。「査察活動に対する非協力、大量破壊兵器の隠蔽工作等、イラクに大量破壊兵器を廃棄する真の意図が見受けられないことを示す情報を提示した」、そういう、「提示したことを高く評価する」、そして、「このような情報が示されたことを重視している。」後々の政府の態度を決める、そういう場合にもこのパウエル演説の中身を高く評価し、そして、情報が示されたことを重視しているというわけです。

 私、政府の決定過程がどうであったかということを今質問しているのではなくて、パウエル演説を高く評価した川口談話について、今でもそれは正しいものであったと主張なさるのですか。

川口国務大臣 今、談話の現物が手に入りましたので、先ほど申し上げたことについて再度繰り返すことになりますけれども、今委員がおっしゃられたように、この談話は、パウエル国務長官が提示した情報の内容について高く評価したものではないわけです。先ほど申しましたように、この点については我々は注意深くこれを書いたということでございます。

 ここで言っているのは、「情報を提示したことを高く評価する」ということを言っていまして、提示をしたという行動、これを高く評価しているわけです。そして、「このような情報が示されたことを重視している。」ということを言っているわけで、内容については、「イラクの大量破壊兵器に関する疑惑は更に深まったと考える。」ということで言っているわけです。

 したがいまして、その次が先ほど申し上げたことですけれども、我々はどういう情報をほかに分析したかというと、それが先ほど申し上げた国連の査察団の報告であるということでございます。

赤嶺委員 ですから、パウエルさんが誤った情報評価に基づいて国連安保理で演説をした、そういうものをあなたは高く評価した、今後にとっても重要であると評価した。それ自身は、あなたは今でも正しかったと胸を張って言えるんですか。パウエルさん自身、アメリカの上院自身があの情報は誇張されていたということを認めているにもかかわらず、誇張された情報を国連で明らかにしたら、これは立派なことをやってくれたとあなたが言う。そのあなたの談話、これは今でも本当に正しかったと、国際社会に向かってそういうことを今でもなお言うということですか。振り返ってみて、どうなんですかね。

川口国務大臣 パウエル国務長官及びイギリスのストロー外務大臣は、あのときにイラクの大量破壊兵器について、ほかの国々に対して説明責任を果たしたということであると考えています。そういう行動自体を日本としては高く評価したということでありまして、その情報の一部について正しくない部分が含まれていたということについては残念であるというふうに思いますけれども、そういった行動をとり、国連の議論にとってそれが必要であったということについて高く評価をしているということであります。

 我が国が、質問していないとおっしゃるかもしれませんけれども、その後の判断について正しいというふうに考えた理由というのはほかの理由であるということであって、繰り返しますが、談話を出したその内容については先ほど申し上げたとおりでございまして、内容が正しいという評価をして出した談話ではない、適切であると思っています。

赤嶺委員 今、提供した情報が正しくなかったということは残念だ、そういうお言葉を使いましたけれども、それでも、こういう姿勢はこれからもパウエル長官、とり続けていっていただきたいということなんですか。情報が吟味されないまま、誤った情報が国連安保理で演説される、そういうものを高く評価する。高く評価しただけじゃないんですよ。「このような情報が示されたことを重視している。」とあなたは言ったんですよ。この情報が示されたことはまだまだ検討が必要であるかもしれないんだがという条件は全くついていないんですよ。

 私は、この期に及んであなたがなお、あの川口談話は適切であったと言うことについては、本当に今の日本政府のアメリカべったりの、そういう姿勢のゆがみがはっきりあらわれているということを指摘しておきたいと思います。

 それで、今、この戦争自身がアメリカの中でも批判が起きている。六月十四日発表の、アメリカのCNNテレビとUSAツデー紙による共同世論調査、派兵誤り五四%、イラク戦争でアメリカがより安全にしたか、それは安全でなくなったが五五%。今、世界のそういう混迷、混乱、そして武力紛争、これをつくり出した、アメリカの誇張された情報に基づく戦争の始め方、これについて、憲法九条を持つ国として厳しく批判の目を持っていかなければならない、このように考えます。

 それで、次に、閉会中審査で問題になりました指揮権について、これは防衛庁長官になりますか、お伺いしたいと思います。

 政府は、イラクにおける自衛隊は、あくまでもイラク特措法に基づき、我が国の指揮のもとにおいて活動を継続し、多国籍軍の指揮下で活動することはないという、いわばアメリカ、イギリスとの口頭の了解を担保にして、多国籍軍の中に入って活動することは憲法違反ではない、このように強弁をしているわけです。

 そこで伺いますが、多国籍軍の指揮とは、これはどういうことを指しているんですか。

石破国務大臣 多国籍軍の指揮というのは、それはいろいろなレベルがございます。いろいろなレベルがございますが、いずれにしても、我が国としては、調整を行うことはございますが、指揮に服するということはございません。指揮は、あくまで日本の防衛庁長官の指揮にのみ服するのでありまして、仮に何かの依頼というものがあったとしても、それが例えば法律に適合しないということであれば、それはきっぱりと断るということでございます。それをもってして指揮に服しているということには全くならないわけであります。

 一般的に申し上げれば、指揮というのは、指揮権を与えられた者がありまして、その者がその権限に基づきまして部隊、機関または個人に対して意思を表示し、その意思に従わせることをいうということが一般論的に言えば指揮という言葉なのだろうと思います。日本として、当然、イラク特措法に基づいて行っているわけですから、それにそぐわないものはその指揮には服さない、あくまで日本の防衛庁長官の指揮に服するということでございまして、指揮というのはどういうことかと言われれば、一般的に申し上げればそういうことかと存じます。

赤嶺委員 そういう、今の一般的に定義して答弁された、指揮とは何かという内容については、多国籍軍の中でも考え方は一致しているというぐあいに理解してよろしいですね。

石破国務大臣 それは、それぞれ主権国家でございますから、指揮とは何か、指揮権とは何かということについて、一字一句たがわずそのとおりの理解を共有しておるということには必ずしも相なりません。

 私どもとして考えておりますのは、指揮命令に服するか否かということは、これをやれというオーダーがありまして、それに従うということが義務として規定されるということが指揮命令系統だというふうに、一つの理解は可能かと思います。少なくとも、そういう点におきまして、指揮というものはどういうものかということについてコンセンサスはある、私どもの国はそういうような関係には立っていないということであります。

赤嶺委員 アエラという週刊誌の八月五日号に、「激論百八十分 陸海空幹部の本音トーク」と題して実名座談会が特集されております。その中で、陸上自衛隊研究本部総合研究部長山口昇氏は、「イラクでは、各国の軍がそれぞれの制約の中で、国家としての指揮権を維持したまま一種のオペレーショナルコントロールの中にはいっている」このように述べております。作戦統制の中に入っている。これは、先ほど軍事に大変お詳しい中谷元防衛庁長官もおっしゃっている、指摘していたことですが、つまり、自衛隊はイラクでは多国籍軍の作戦統制のもとに入っている、このように理解してよろしいでしょうか。

石破国務大臣 それは、自衛隊の中において統制というものをどのように用いるかということになるのだろうと思います。それは、山口将補がその実名座談会の中で述べておりますように、それぞれの確立した指揮権のもとでということを言っております。それぞれの国は確立した指揮権を持っているのだ、しかしながら、そこにおいては戦術的な統制が行われる、それをどのように理解をするかということでございますが、例えば、それぞれの国が勝手なことをやっておって、調整も何も行わないまま、どこにどのようなニーズがあって、どのようにやることが効率的かというようなことについて何の調整も行わないままやるとすれば、それはかえって非効率なことになるだろう、目的を達しないことになるだろう。そこにおいて調整ということは当然行われることなのだというふうに思っております。

 仮に、委員がおっしゃいますのが、指揮権のもとにはないが統制のもとにはあるのだろうというふうに御指摘になるとするならば、それは調整は行われるということはございましょう。しかしながら、一切拒否権も有さず、これをやらなければいけないというような、そういうような主従の関係、主体性を放棄し主権を放棄するような、そのようなことは一切起こっていないし、あり得ないし、法の予定するところではないということでございます。

赤嶺委員 私は、連絡調整について伺ったわけではなくて、作戦統制ということについて聞いているわけです。

 航空自衛隊の輸送業務があります。これは兵員の輸送等も、アメリカ兵の輸送等も行っているわけですから、当然、作戦統制下で連絡調整を行っている。連絡調整は行っているんだろうけれども、大枠の作戦統制下というもとで行っているということになるんじゃないかと思いますが、その点については、防衛庁長官、いかがですか。

石破国務大臣 それは、ある目的があって兵員を輸送するわけであります。それが何の統制下にもないということだとは思いません。別にピクニックに行くわけではございませんし、遊びに行くわけではございませんから、それはある作戦というものがあって、それを遂行するという目的のもとに兵員輸送ということが行われる、それを統制のもとにあると言われればそうなのかもしれません。

 しかし、他方、コアリションというものがどのように行われるかということは、これは累次お答えをしていることでございますが、例えばこういうニーズがある、合衆国なら合衆国が、何人、どこからどこまで運んでもらいたいねというニーズが提示をされる、それに対して、日本なのかそれともほかの国なのか、どこがそういうようなニーズにこたえ得る能力を持っているかということが提示をされ、そこにおいて需要と供給が一致をしたものが行われる。日本としてそのようなことはできないということであれば、それは当然手も挙げないし、結果として行うこともないということでございます。

 大まかに言って、ある一定の目的を達成するためにいろいろな事象は起こるわけで、そのことを統制のもとに行われているのかと言われれば、それは統制のもとに行われているということは申し上げることはできるでしょう。しかしながら、それが指揮権の問題であるとか我が国の主体性を損なうものであるとか、そういうことには一切ならない。それは、我が国はきちんとした主体性を持って、法にのっとって、やれることはやる、やれないことはやらない、断るべきものは断る、当然のことであります。

赤嶺委員 今、作戦統制下で米兵を輸送しているということについてお認めになりました。

 とにかく、多国籍軍の中で指揮権と言われるものについてはまだまだ不明瞭であります。皆さんは、指揮のもとには入らないというものを口約束、しかも、政府の、両国の代表のだれが約束したかもわからない世界で、担保はとれているんだという強弁を繰り返しておりますが、このことは納得いきませんし、きょうの議論を踏まえて引き続きこの問題を取り上げていきたいということを申し上げて、質問を終わります。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 政府は、イラクにおける多国籍軍への参加を決めました。私は、自衛隊の多国籍軍への参加には反対でありますし、多国籍軍への参加は憲法に違反をするものであると考えております。

 政府は、多国籍軍への参加決定に当たって、統合された司令部のもとで連絡調整はやるが指揮命令を受けるものではないと説明をしておりますが、イラク多国籍軍の実態とその役割などに照らして、政府の説明は詭弁にすぎないと考えております。

 ところで、外務大臣にお伺いをいたしますが、多国籍軍への参加ではなくて、暫定政府との間で個別に地位協定を結ぶという選択肢についてはどのような検討がなされ、いかなる結論を得られたのか、御説明ください。

川口国務大臣 おっしゃるように、自衛隊が、イラクあるいはどこの国でもそうですが、いる場合に、その国の同意と、それから地位の確保ということが重要な要件であってくるわけです。地位の確保をどのように行うかということについて、おっしゃるような、個別にその政権と合意をするということも一つの可能性としてはあるわけでございます。

 それで、イラクにおきまして統治権限の移譲以降、多国籍軍の枠外で活動する外国軍隊というのはないわけでございます。このような状況のもとで日本の自衛隊が、統治権限の移譲まで、あるいはそれと同時に、イラク暫定政府からの個別の同意あるいは法的な地位をしかるべく確保するということは、イラク暫定政府にかかわるさまざまな不確定要素、これが存在をいたしておりましたので、実際に不可能であったということでございます。

 また、統治権限の移譲後に多国籍軍がイラクにおける安全及び安定の維持及び人道復興支援等に貢献することは、これは安保理が全会一致で採択をした決議一五四六に基づくものでございまして、国際社会の総意をこれは反映しているということであります。

 また、日本が個別にイラク暫定政府と交渉を行うことがこの時点でイラク側に過大な負担をかけるということになるわけでございまして、日本が統治権限移譲後に多国籍軍の中で活動しないということを前提にイラク側と交渉を行うということは適当でないというふうに判断をしたわけでございます。

照屋委員 それでは次に、ジェンキンス氏と日米地位協定の問題について外務大臣にお伺いをいたします。

 拉致被害者である曽我ひとみさんの御家族の来日が実現をいたしました。曽我ひとみさんの夫、ジェンキンス氏の日本における入院治療の必要が来日を早めたこともあり、早期の回復と御家族が日本において平穏に暮らせるよう願っております。

 さて、脱走米兵とされるジェンキンス氏の身柄引き渡し問題が大きくクローズアップされておりますが、一般論として外務大臣にお伺いいたします。第三国で脱走して来日する米国民たる脱走兵は、日米地位協定が適用される米軍構成員に該当するんでしょうか。

川口国務大臣 これは個別個別にどういう事情かといったことがございますので、一般論として申し上げるということは難しいと思います。

照屋委員 私はこれまで、外務省の機密文書である「日米地位協定の考え方」増補版の存在確認と開示を求めてまいりましたが、外務省は、存在は認めたものの、開示はいたしておりません。改めて外務省の秘密主義に抗議をするものでありますが、この第三国で脱走して来日する米国民たる脱走兵、これは日米地位協定の米軍構成員に該当しないというのが「日米地位協定の考え方」で示された外務省の従来の考えではないんですか。

 それでは、具体的にお伺いしますが、ジェンキンス氏について、この米軍構成員、日米地位協定で言う米軍構成員に該当するかどうか、お答えください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェンキンス氏が日米地位協定上の「合衆国軍隊の構成員」に該当するか否かということでございますが、このことを含めて、個別の引き渡し請求に関する日米地位協定上の取り扱い、これは、身柄引き渡しの請求がなされた時点でアメリカ政府から提供される事実関係、これに基づいて判断される問題でございます。

 そういう意味で、その具体的な先方からの引き渡しの請求があった時点で我々に提供される事実関係、それに基づいて判断をする考えでございます。

照屋委員 それはおかしいんじゃないでしょうか。アメリカは日米地位協定に基づいて身柄引き渡しを求めるとも報道されているわけですね。

 そうすると、外務省として、在韓米軍に配属されておったジェンキンスさんが脱走した、そして今現在日本に来日をしている、こういう状況でジェンキンス氏が日米地位協定第一条で定める米軍の構成員であるかどうかというのは、当然日本政府としての考えがあってしかるべきでしょう。もう一度お答えください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々日本政府と米国政府との間で、この問題については緊密に連絡はしてきております。そしてまた、米側からは、ジェンキンス氏は七月十八日付で在日米軍に配属された、こういう説明は聞いておりますが、先ほど申し上げましたように、具体的な案件で引き渡し請求があった場合、その取り扱いについては個々具体的な先方から提供される事実関係に基づいて日本政府として判断するという考えでございます。

照屋委員 琉球新報が入手をして、既に逐条的に報道している外務省の機密文書、「日米地位協定の考え方」増補版によると、外務省自身が、第三国で脱走して来日する米国人たる脱走兵については、日米地位協定で言う適用を受けない、構成員じゃない、こう言っているんですよ。もう一度、局長。

薮中政府参考人 今申し上げましたとおりでございまして、我々の立場は、日米地位協定上の構成員に該当するか否か、具体的に個々のケースによるものでございまして、ジェンキンス氏の場合につきましては、先方から、アメリカ政府からその請求がなされ、また、そういう中でのアメリカ政府から提供される事実関係、それに基づいて判断をしていきたいというふうに考えております。

照屋委員 それから、ジェンキンス氏の米軍における所属について、在韓米軍から在日米軍に配置がえになったということについては、日本政府に通報はあったんでしょうか。

薮中政府参考人 これにつきましては、アメリカ政府から日本政府に連絡がございまして、七月十八日付でジェンキンス氏は在日米軍に配属されたという説明は受けております。

照屋委員 もう一点お伺いしますが、ジェンキンス氏について、日米地位協定に基づかないで、日米犯罪人引き渡し条約に基づいて身柄の引き渡しがなされるという報道もありますけれども、ジェンキンス氏の場合、同条約に基づく身柄引き渡しの対象に該当するんでしょうか。外務省のお考えをお示しください。

薮中政府参考人 いずれにしましても、個別の案件、ジェンキンスさんについてアメリカ政府から具体的な引き渡し請求があったとき、その理由、そういうことも含めて事実関係が当然アメリカ政府から我々になされる、提供があるわけでございまして、それに基づいて、そしてまた、アメリカ政府が何に基づいて引き渡し請求をしてくるのか、十分そこのところを具体的に、個々個別に検討する必要があると考えております。

照屋委員 私が聞いているのは、具体的に引き渡しに応ずるかどうかじゃなくして、日米犯罪人引き渡し条約に基づく引き渡しの対象に該当するかどうか、これだけを聞かせてください。

薮中政府参考人 恐縮でございますけれども、日米犯罪人引き渡し条約に該当するかどうか、これもまさに先方から我々に提供される具体的な事実関係に基づいて判断すべき問題であると考えております。

照屋委員 私は、このジェンキンス氏の問題については、これまで外務省は、「日米地位協定の考え方」増補版で明確に、「第三国で脱走して来日する米国人たる脱走兵については、米軍の構成員に該当しない。」こういうことを外務省自身が地位協定の考え方として述べておるわけですから、増補版で明確に記しているわけですから、その点は主権国家としてきちんとした対応をするように強く望んで、質問を終わりたいと思います。

斉藤委員長 次回は、明五日木曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十八分散会


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