衆議院

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第6号 平成18年6月22日(木曜日)

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平成十八年六月二十二日(木曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 三原 朝彦君

   理事 石破  茂君 理事 岩屋  毅君

   理事 西村 康稔君 理事 松浪健四郎君

   理事 渡辺 具能君 理事 末松 義規君

   理事 伴野  豊君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    江渡 聡徳君

      大塚  拓君    金子善次郎君

      河井 克行君    木挽  司君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      高鳥 修一君    谷本 龍哉君

      土屋 正忠君    寺田  稔君

      土井 真樹君    冨岡  勉君

      中森ふくよ君    西銘恒三郎君

      西本 勝子君    橋本  岳君

      藤野真紀子君    町村 信孝君

      松本 洋平君    若宮 健嗣君

      池田 元久君    大串 博志君

      北神 圭朗君    後藤  斎君

      神風 英男君    園田 康博君

      田島 一成君    武正 公一君

      達増 拓也君    山井 和則君

      高木 陽介君    谷口 和史君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      額賀福志郎君

   防衛庁副長官       木村 太郎君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  井上 源三君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  樽井 澄夫君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   西山 正徳君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        田島 秀男君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十二日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     土屋 正忠君

  今津  寛君     河井 克行君

  宇野  治君     西銘恒三郎君

  越智 隆雄君     木挽  司君

  清水鴻一郎君     若宮 健嗣君

  玉沢徳一郎君     杉田 元司君

  中根 一幸君     高鳥 修一君

  宮澤 洋一君     寺田  稔君

  長島 昭久君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     今津  寛君

  木挽  司君     越智 隆雄君

  杉田 元司君     玉沢徳一郎君

  高鳥 修一君     中根 一幸君

  土屋 正忠君     石原 宏高君

  寺田  稔君     宮澤 洋一君

  西銘恒三郎君     宇野  治君

  若宮 健嗣君     清水鴻一郎君

  北神 圭朗君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  園田 康博君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 博志君     長島 昭久君

    ―――――――――――――

六月十六日

 一、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

三原委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。内閣官房長官安倍晋三君。

安倍国務大臣 サマワに駐留する陸自部隊の撤収等について御報告申し上げます。

 イラクでは、我が国を含む国際社会による一致団結した支援のもと、政治プロセスが着実に進展し、昨年十二月には国民議会選挙が実施され、先般、新政府が発足しました。また、多国籍軍からの治安権限移譲プロセスが進行するなど、民主的な政府のもとで、イラク人自身による自立的な復興に向けて本格的な第一歩が踏み出されました。

 ムサンナ県では、約二年半に及ぶ医療、給水、学校、道路等公共施設の改修など多岐にわたる陸自部隊の活動及び我が国のODAによる支援により、現地の生活基盤の整備、雇用の創出など目に見える成果が生まれました。ムサンナ県民全員の基本的な医療サービスへのアクセスが可能になり、サマワ母子病院では、新生児死亡率が二〇〇二年上半期と比較して約三分の一に改善しました。給水事情や教育環境も改善し、雇用についても、自衛隊やODAによる事業により、一日最大六千人程度、延べ約百五十六万人の雇用を創出しました。こうした支援は、イラク政府及び現地の人々から高い評価と信頼を獲得しています。

 また、同県においては、このほど、これまで治安維持に当たってきた英豪軍からイラク当局への治安権限の移譲が決定されました。

 以上から、ムサンナ県において、治安、復興の両面において、応急復旧的な支援措置が必要とされる段階は基本的に終了し、イラク人自身による自立的な復興の段階に移行したものと考えられます。

 そこで、政府は、平成十六年初めの派遣開始以来、イラク復興支援特別措置法に基づきイラクのサマワにおいて人道復興支援活動に当たってきた陸自部隊について、同地から撤収させることを決定いたしました。一方、空自部隊については、国連及び多国籍軍への支援を行うため活動を継続し、新たにバグダッドやエルビルへの空輸を行うこととしました。また、もとより我が国は、多国籍軍が行うPRT、プロビンシャル・リコンストラクション・チームとも連携しつつ、円借款による経済活動の基盤整備を中心とする対イラク支援を継続していきます。

 今後、我が国とイラクとの関係は、政治対話の強化、経済関係の強化を含む幅広いものに移行すべき時期に来ています。我が国としては、これまでの復興支援の成果を着実に根づかせるとともに、イラクとの幅広い長期的なパートナーシップの構築に向け、取り組んでまいります。

 以上の基本的な方針については、イラク政府からも全面的な同意を得ています。このような今回の決定につきまして、委員各位の御理解、御協力をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

三原委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官井上源三君、内閣官房内閣審議官樽井澄夫君、防衛庁防衛参事官西山正徳君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛庁運用局長山崎信之郎君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房参事官辻優君、外務省大臣官房参事官梅田邦夫君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君及び外務省経済協力局長佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則でございます。これから三十分間、質問をさせていただきます。

 まず最初に、一言申し上げます。

 約二年半のサマワ駐留から陸上自衛隊がこのたび撤収することが決まりました。まさに、遅きに失した決断です。ただ、一人の犠牲者もなく無事に任務を終えることができるのは喜ばしいことであり、派遣された延べ五千五百人の陸上自衛隊員の皆さんに、心から感謝と敬意を表します。今後、安全に、速やかに撤収されることを望みます。

 しかし、このイラクへの自衛隊派遣については、大量破壊兵器の存否など不正確でかつ恣意的な情報に基づき、安易にこれを支持して大義ない派遣となったこと、及び、イラク特措法に基づく自衛隊の活動に対して無理を重ねた法的構成と、国連中心の支援体制を構築してこなかったことは大きな問題であると考えます。今回があしき前例となり、今後とも、アメリカによる自衛隊への海外への支援要請は地球規模に拡大していく危険性があります。

 そこでまず、安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

 この二年半の総括なんですが、国際貢献ということに関してはもちろん賛成でありますが、サマワは、この二年半を振り返って本当に非戦闘地域であったのでしょうか。

 防衛庁からの資料をこのパネルにしてみましたが、陸上自衛隊宿営地内外における事案等で合計十四回、こういう危険な事案が起こっております。例えば、平成十六年四月七日、迫撃砲によるものと思われる爆発音、二十九日にも迫撃砲、六月十日にも迫撃砲、八月二十一日にロケット弾、十月二十二日もロケット弾とこういうふうに続いておりまして、また、平成十七年の六月二十三日には簡易爆弾が陸上自衛隊の車両のそばで、人道復興支援活動に向かう路上で爆発してフロントガラスが破損したというようなことも起こっております。

 このような状況において、このサマワというのはやはり非戦闘地域であったと今でも言えるのでしょうか。

安倍国務大臣 まず初めに、陸上自衛隊につきましては、まだもちろん任務が継続中でございますが、今までのところ一人の死傷者も出さずに、また、一発の銃弾も発射せずに任務を遂行してきたということは申し上げておきたいというふうに思います。

 サマワの治安につきましては、イラクの他の地域に比べれば比較的安定をしております。宿営地に対する迫撃砲発射等の事案につきましては、今委員の御指摘があったように、あったのも事実でございますが、これらの事案やサマワの情勢を総合的に判断すれば、イラク特措法に言う戦闘行為に該当するというふうには認識はいたしていないわけであります。

 つまり、サマワについては、いわゆる非戦闘地域であったというふうに考えているわけであります。

山井委員 結局、そういう非戦闘地域というフィクションをつくってどんどんこれは拡大をしていっているわけであります。そして……(発言する者あり)

三原委員長 静かに、静かに。

山井委員 麻生外務大臣にお伺いをしたいと思います。

 まず、イラク全土の状況なんですけれども、この間の武力行使において多くの民間人がイラクで亡くなったということが言われております。日本政府としては、どれぐらいの方が亡くなられたと把握しておられますでしょうか。

塩崎副大臣 イラクの民間人の死亡者の数でありますけれども、多国籍軍の活動に巻き込まれて犠牲となったイラクの民間人の死者数については、公式にとりまとめられた情報はございませんで、非公式な推計があるのみであるというふうに承知をしております。

 その一つであります、英米の研究者等がつくるイラク・ボディーカウントというところが推計をいたしておりますけれども、対イラク武力行使開始の二〇〇三年の三月からことしの六月十日までにイラクで死亡した民間人、これは軍人を含まないベースでありますけれども、この死者数は、最少で三万八千四百七十五人、それから、最大で四万二千八百八十九人というふうにこの団体からの数字では示されているというところでございます。

山井委員 このように多くの、繰り返しますと、少なく見積もっても三万八千四百七十五人、多ければ四万二千八百八十九人の民間人の方々がこの間の武力行使でイラクで亡くなっておられるという報告が今ありました。

 安倍官房長官、これだけ多くの民間の方々がお年寄りから子供を含めて亡くなっておられるということについて、いかが思われますか。

安倍国務大臣 我々、イラクの復興支援に協力をしているわけでありますが、それは、一日も早く、そうしたテロのない、平和で安定した、イラク人の手による民主的なイラクが建設される日を目指して努力をしているわけであります。もちろん、そうしたお年寄りを含めて死傷者が出ていることは大変残念でありますが、そういう意味におきましては、この苦しいときこそ国際社会が一致協力してイラクの復興のために汗を流さなければならない、日本はしっかりとその国際的な責任を果たしている、このように思っております。

山井委員 これだけ多くの民間人が亡くなっておりますし、また、イラクの調査機関では、十万人以上が亡くなっているという結果も出ているわけであります。

 私たち民主党は、イラクへの自衛隊派遣には最初から反対でありますし、国連のきちんとした行動であれば別でありますが、アメリカが始めたこのような戦争に協力する余地はありません。

 そこで安倍官房長官にお伺いしますが、なぜ今陸上自衛隊が撤退するのか。人道復興支援は終わったのですか。

安倍国務大臣 陸自部隊の活動しているムサンナ県においては、治安、復興の両面において、応急復旧的な支援措置が必要とされる段階は終了いたしました。イラク人自身による自立的な復興の段階に移行したものと考えられるため、これまでの陸自部隊の活動は、その目的を無事に、そして立派に達成をした、このように判断し、サマワから撤収させることとしたものでございます。

 我が国としては、今後も、イラクとの幅広い長期的なパートナーシップの構築に向けまして、各国また国連とも連携協力をしながら、円借款による経済活動の基盤整備を中心とする対イラク支援を継続していく考えでございます。

山井委員 人道復興支援が一段落ついたということですが、そんなもの、今なぜそれが一区切りするのか、全く説得力がないわけですね。逆に、イギリス軍やオーストラリア軍がこれから撤退する、その際にこれは撤退するにすぎないだけじゃないですか。国会が閉会してからまたこのようにこそくに報告するというのも、私はとんでもないことだと思っております。

 額賀防衛庁長官にお伺いをいたします。

 この拡大していく航空自衛隊の活動範囲、今後どのように拡大するのですか、また、いつから拡大するのですか。

額賀国務大臣 今、陸上自衛隊はそういうことで撤収を先日命じたわけでありますけれども、航空自衛隊の人道復興支援活動あるいはまた安全確保支援活動につきましては、国連等の要請があったことはもう委員も御承知のとおりでございまして、小泉首相もこれについては前向きに考えたいということで、我々も検討をしてきたところでございます。

 また、多国籍軍においてもさまざまなニーズがありますので、我々航空自衛隊で、実際にどういうニーズがあるのか、そして航空自衛隊でどういう仕事ができるのか、そういうことについて検討をしてきているところであります。

 したがって、今後、国連等の要望に応じて具体的にどういうふうに展開することができるかどうか、まだ判断をしておりませんけれども、これから実施要項を決めてしっかりと対応していきたいということをこの前明らかにしたわけでございまして、具体的にいつからどういうふうにということはまだ考えておりませんけれども、国連の要望はバグダッド空港それからエルビル空港等を要求しておりますので、そういうところの安全等々について今調査をしているところでございます。

山井委員 今までは人道復興支援というものが前面に出ていたわけですけれども、これからますます安全確保活動、後方支援というものが中心になっていくわけで、まさに多国籍軍支援、アメリカ軍との一体化という懸念が高まってくるわけですね。今回、陸上自衛隊が撤退しても、航空自衛隊の輸送機がアメリカ軍その他の支援活動をやる意味で、仕事量の拡大以上に、撤退どころか、ますます踏み込んでいくということになるわけであります。

 そこで、今後どのようにこれを国民に説明していくのか、安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 空自の任務につきましては、これはアナン事務総長からも要請をされてきたものでございまして、私がアナン事務総長とお目にかかった際にも、空自の協力の要請がございました。こうした要請も踏まえまして、多国籍軍に加えまして国連の活動も支援を行うことといたしまして、新たにバグダッドやエルビルへの移送を行う旨決定をしたわけでございます。

 このような方針につきましては、二十日に発表されました内閣総理大臣の談話においても御説明がなされたわけでありまして、また、本日の審議を含め、政府として国会などの公の場において適宜説明をしていきたい、時期に応じ説明することを通じて国民の理解を得ていきたい、このように考えているところでございます。

山井委員 現時点ではなかなか中身が見えてこないわけですよね。やはりそのあたり、アメリカとはきっちり話をしながら、国民に対する説明責任が極めて不十分だと考えます。これは、実際派遣される航空自衛隊に対しても私は極めて失礼な話だと思います。国民に十分な説明もせず、国民の理解も得ずに、非常にこれは危険な任務につかせることになるわけです。

 次に、このパネルで、今回のバグダッド方面にまた輸送機が飛んでいくということについて少し考えてみたいんですが、これはきょうお配りしたこの資料にも出ておりますけれども、二〇〇三年五月一日以降でも、ムサンナ県では、死傷者、これはサマワがあるところで二人でありました。しかし、バグダッド周辺では四百八十七人もこれは亡くなっているわけですね。また、六月以降は、バグダッドではアメリカ軍とイラク軍による過去最大規模の武装勢力の掃討作戦も展開されています。そして昨年は、イギリス軍の輸送機がバグダッド周辺でテロ組織の対空ミサイルで撃墜をされた、そういうことも起こっているわけです。陸上自衛隊以上に、ますますこれは危険な任務じゃないですか。

 額賀防衛庁長官にお伺いします。

 このように、テロ組織の対空ミサイルの射程内に入って実際昨年イギリスの輸送機が撃墜されていても、それでもこのバグダッド空港周辺は戦闘地域ではないのですか。

額賀国務大臣 バグダッド地域全体が戦闘地域であるのか非戦闘地域であるのかということについて、今我々は区別をしているわけではありません。ただ、バグダッド飛行場については、これは比較的、人員輸送それから物資の輸送等々について極めて重要なところでありますから、治安も物すごく重要視しているところであり、この地域については、飛行場については、我々は、非戦闘地域である、仕事の対象地域である、実施区域の一つであるという形で対応させていただいております。

 おっしゃるように、さまざまな、イギリスの飛行機が攻撃をされて墜落した事件もありました。それは一月のことでありましたけれども、その後半年間は、そういう事故、事件というものは起こっておらないわけでございます。

 もちろん、我々が空自を実際に飛ばす場合には、多国籍軍あるいはまた関係のイラクの政府治安当局と綿密な打ち合わせの上で、しっかりと安全を確保した上でこの任務を遂行させたいというふうに思っております。人員それから物資の輸送でございますから、これは、一分一秒を争う、そういう中で仕事をしていくわけではないので、きっちりと安全を確保した上で仕事をさせたいというふうに思っております。

山井委員 今の話を聞いていると、自分たちが行く地域は非戦闘地域だと勝手に定義する、まさにこれは、本当にフィクションの世界であるわけですよね。そこで、本当に日本の輸送機がバグダッドあるいはエルビルまで行って撃墜されるということが起こらないのか。そのことは、これは非常に本当に重大な問題だと思います。

 これから秋以降の総裁候補と言われているお二人にお伺いをしたいと思います、安倍官房長官と麻生大臣に。このような地域に自衛隊を派遣して、万一、日本の輸送機が撃墜されたときの責任問題についてはどのような覚悟を持っておられますか。麻生大臣、安倍官房長官にお伺いします。

麻生国務大臣 二人いらっしゃるというお話だったのでどちらかが言うお話ですけれども、ほかにも大勢いらっしゃるということをまず大前提にしておいていただかぬと失礼に当たりますので、お断りしておきます。

 今、自衛隊を派遣するという話から、いろいろこれからに返ってみますと約二年有余になりますけれども、少なくともこの二年半の間、犠牲者はゼロだったという事実はまず認めていただかにゃいかぬところです。

 ここが、結果として、お出しになりました資料を見ましても一人豪州兵のみということになっておりますが、それは、その地域だけが、いい、平和な地域、だから一人だったのか、自衛隊、豪州、イギリス軍等々の現地の人たちとの連絡がよく、人間関係もよかった結果として一人になったのか、極めて判断の大事なところなのであって、一人だけだったからここだけ平和だったなんという判断は明らかに偏っていると、基本的にはそう思っております。

 二つ目は飛行機の輸送の話ですが、これは国連からの要望だったと、私は、アナン事務総長にお目にかかったときにはそういう印象を強く持ったのが事実です。そして、国連から直接要請を受けたのに対しまして、私どもとしては、そういったことは防衛庁が判断されるところでもありますので、御要望としては預かっておきますとお答えをしたと記憶いたします。

 少なくとも、バグダッド周辺、空港周辺半径五キロ以内でいわゆる戦闘地域というような状況であろうかと言われると、その判断は、私どもがいただいている資料では、この五年間、そのようなことはないというような感じがいたしております。したがって、そういった状況が起きたら、巻き込まれたときには、政府として、基本的に、そういった危険地域、だから民間航空ではなくて自衛隊員が出ていくわけですから、ある程度危険を顧みず出ていってもらえる、日本で持っております組織というものは、これは自衛隊ということになろうと存じまして、これは政府の責任として対応していかねばならぬものだと存じます。

安倍国務大臣 もう既に麻生外務大臣が答弁したとおりでありますが、バグダッドにおいては、民間の航空会社も既に運航を行っているとはいえ、全く危険がないという地域ではないのはもちろんのことであります。だからこそアナン事務総長も、日本の能力の高い航空自衛隊にこの任務を遂行してもらいたいという依頼があったわけであります。イラクの復興支援のためには、そうした任務をだれかがやはりやらなくてはならないわけであって、その中で、私たちもしっかりとこの復興支援の中で責任を果たしていくという決意をしたわけでございます。

 我々は、こうした決意を行った以上、しかし同時に、なるべく危険がないように最大限の調査等を行ったわけでございまして、その上で最終的な判断を政府全体として行ったところでございます。

山井委員 これは、我が国には憲法という枠があるわけでありまして、戦闘地域には行けないわけですよね。それをなし崩し的にどんどんこういうふうに踏み込んでいく、これは本当にあしき前例になりますよ。これからますます地球規模にどんどん支援要請が来ることになります。

 それで、今後もう一つ心配なのが、撤収する際はこれは危険性が増すわけなんですよね。実際、今回、サマワからタリルまで百キロ、長い車列を組んで撤退する。そして、その後タリルからアリ・アルサレムまでは航空機になるということですが、この場合、長い車列が毎日同じような時間に通行するというのは非常にねらわれやすいですし、また、宿営地がこれから警護を解いていく、その段階というのも非常にねらわれやすいわけですね。ここには万全の態勢をしいていただきたいと思いますが、どのように安全確保するのか、また、どこの軍が守るのか、そのことについてお答えください。

額賀国務大臣 先ほど、バグダッドで英国の輸送機が墜落したのはこの一月と言いましたけれども、一年半前のことでありました。

 今、陸自が撤収する際にやはり安全が一番大事だと委員が御指摘いたしました。そのとおりだと思います。したがって、人道復興支援をするにしても、民間の日常生活を行うにしても、治安というものは一番大事なんですね。したがって、航空自衛隊も、治安確保のためにそれなりの、我々のできる範囲で仕事をさせてもらうということは大事なことだというふうに、あなたもだから考えていただけるものと思っております。

 したがって、陸上自衛隊が今度撤収する際にも、やはり安全があって初めてできるわけでありますから、これまでと同じように、南部の治安を担当している英国、豪州とよく連携をとる、それから、イラク政府それから現地の治安部隊と連携をとりながら、安全をしっかりとした上で撤収を図らなければならないというふうに思っております。

 それから、この二年半の陸上自衛隊の活動が成功した背景は、やはり現住民、地域の人たちと極めて良好な関係を築いてきたということがあったと思います。もちろん、仕事をやってのけたということもそれが実績として残っているわけでございますけれども、この撤収の際も、そのバックグラウンドとして、地域の方々とよく了解する中で、たたえられながら撤収をする、そういう環境づくりにも万全をし安全を確保したいというふうに思っているところであります。

山井委員 ここは、これから一カ月あるいは一カ月半かけて撤収されるということですが、ぜひとも、最後の最後まで安全の確保をしていただきたいと思っております。

 少し視点が変わりますが、自衛官の方の自殺の割合について少し額賀防衛庁長官にお伺いしたいと思っております。

 私心配しておりますのは、いただいた資料では、イラク特措法に基づき派遣された経験のある隊員のうち自殺された方が六名であるということなんですね。問題は、この割合をそれ以外の隊員の方々の自殺される割合と比較すると、約二倍高くなっているわけであります。

 もちろん、こういうみずから命を絶たれるという不幸なことは、因果関係というのはなかなかこれは証明されることではありませんが、客観的な事実として二倍自殺率が高いという歴然たる事実があるわけでありまして、そういう意味では、帰国後の隊員の方々のサポートというのは、これは本当に十二分にサポートしていく必要があると思いますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。

額賀国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。このデータが、イラクに派遣された隊員のうち帰国後に自殺した方が六人いるわけでございまして、その割合と防衛庁・自衛隊員全体の中の自殺率を考えると、おっしゃるように二倍ぐらいの数字のデータにはなっているんだけれども、これが総体的に自衛官がイラクに行かれたから自殺したのか。六人の自殺の原因を考えると、イラクに派遣されたから自殺をしたということは直接断定できない、ストレートに結びつくものではないというふうに我々も理解をしているわけでございます。

 そういうことを考えると、全体的にこれをもうちょっと敷衍して考えますと、例えば一般職の国家公務員の自殺の割合とか、それから一般の国民全体の男子の自殺の割合とか、そういうことを考えると、自衛官の場合は三八・六になっているけれども、一般の国民の男子の場合でいくと四三・四になっている。そういうことを考えると、自衛官だけが高い割合ではないというデータもあるわけでございまして、それでなくても最近は自殺というのは多くなっているわけでありますから、もうちょっとその背景は別の視点からの分析をしてみる必要があるのではないかというふうに思っているところであります。

 もちろん、イラクに派遣する前のヘルスケア、それから帰ってきてからのヘルスケア、健康診断等々については、万全を期していかなければならないというふうに思っております。

山井委員 今も答弁ありましたように、一般の隊員の方の自殺率が三八・六ポイント、そして、イラク特措法に基づき派遣された経験のある隊員のうちの自殺の割合が七八・九ポイントと、約二倍になっているわけであります。このような対応、ぜひとも十分によろしくお願いしたいと思います。

 それで、また額賀防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、陸上自衛隊が撤収して航空自衛隊が残るわけですね。これは、飛行中の安全または空港での安全ということにも関係してくるわけですけれども、どこの軍に守ってもらうことになりますか。

額賀国務大臣 これは例えば、我々はさまざまな情報を、その空港の地域の天候の情報だとか治安の状況だとかそういうのは、米国を初め多国籍軍、あるいはまた北部のエルビルであれば、そこで仕事をなさっているのは韓国であります。そういう国々と、飛行場と関係のあるところで仕事をなさっている多国籍軍のそれぞれの国々と緊密な連携をとりながら安全を確保していかなければならないというふうに思っております。

 みずからのことでありますから、C130の防護装置等々さまざまな安全条件について、十分な形が整わなければ仕事はしないぐらいの覚悟を持って今度の仕事をさせなければならないというふうに私は思っているところであります。

山井委員 このたび撤退する陸上自衛隊は自衛隊の一部であって、実際、航空自衛隊の活動範囲が拡大され、結果的には全面的な撤退というのは、次の内閣、つまり、次の総理の宿題として残ったわけです。アメリカでもブッシュ大統領は、全面撤退は次の大統領の仕事とおっしゃっているわけですね。

 そこでまた改めて、次の総理になる可能性が高いと言われている麻生大臣そして安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

 このような全面撤退について将来的にどのように考えておられますか。これはまた今後の総裁選びの際にも大きなポイントになってくると思いますが、イラクからの自衛隊の全面撤退について将来的にどのようにお考えなのか、麻生大臣と安倍官房長官にお伺いします。

麻生国務大臣 安易な予測みたいな話は余り意味がないことだと思っていますので何ともお答えのしようがありませんが、少なくとも、選挙をやって、新しい憲法を制定して、それに基づいて新政権をつくって、組閣が終わったマリキという今の内閣のもとで防衛大臣、治安大臣、石油大臣等々を決めて、今スタートしたばかり、治安がどれぐらいで移譲されるか私は最大の関心がありましたけれども、治安権限を移譲された中で、今回、名前を挙げて治安権限の移譲が行われたのがサマワということになって、まことに光栄だったと私自身はそう思っております。

 ほかの地域でも同じようなことが全面的に成っていくのかということに関しましては、これは今後、いわゆる宗教的にとか地理的にとかいうと、バグダッドから北西部に至る部分とかクルド人の地域とか、いろいろ分け方が分かれているところなので何とも申し上げられませんけれども、全体で完全に撤退が終わるのがいつかというのを今の段階で予測するのは、極めて難しいと存じます。

安倍国務大臣 今回のサマワでの自衛隊の任務の終了につきましても、これにつきましては、イラクの政治プロセスの進展の状況あるいはまた治安権限の移譲状況、または現地の治安の状況、さらには、現地で活動している多国籍軍の状況等々を判断して最終的に決断をしたわけであります。

 今、今後の自衛隊の撤収の時期という御質問でございますが、これもやはり同じように、現地の、またイラクをめぐる治安の状況、あるいは多国籍軍の取り組みの状況、また、復興の状況等々を適切に判断して決めていきたい、こう思っています。

山井委員 これは、安易にアメリカの大義なきイラクへの武力行使を支持して、そして、海外の戦闘地域に非戦闘地域というフィクションをつくって自衛隊を派遣したのは、本当に大きな禍根を残すあしき前例になると思います。

 最後になりますが、陸上自衛隊員が全員無事に帰国されることと、航空自衛隊の撤退を求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三原委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 イラクへの自衛隊派遣については、私ども民主党は、先ほど山井議員からも明快に再度言われましたけれども、民主党としてはイラクに自衛隊を送るべきでないという判断をしたわけでございます。その上で、現実にイラクに送られた自衛隊、特に陸上自衛隊、航空自衛隊そして海上自衛隊含めて、こういった方々の誠意と忠誠心に心から敬意を表させていただきますし、また、安全に戻られることを心から、当然のことながら望ませていただきます。

 質問に入る前に一言。今ちょうど、北朝鮮によるテポドン二号というのが、燃料を注入された、されないのいろいろな話がございまして、質問に入る前に、ちょっとだけこれについて、国民が不安に思っている話でありますから、政府からしっかりと国民に対する説明の責任があると思いますので、それについてお伺いします。

 今、テポドン二号の発射について、どのような現状認識を政府として持たれているのでしょうか。

安倍国務大臣 北朝鮮のミサイル発射に関連いたしましては、我々は、情報の収集、分析を行っているところでございます。また、米国とも緊密に情報の交換、今後の対策における連携について話し合いを密に行っているところでございまして、私どもといたしましては、もし北朝鮮がミサイルを発射すれば、これは平壌宣言に違反することになるわけでございまして、我々としてもそれに対する厳しい対応を検討していかざるを得ない、こう考えております。

 また、外交ルートを通じまして、北朝鮮にミサイルの発射を自制する、抑制するように働きかけを行っております。また、米国、韓国あるいは中国も同様に、北朝鮮に対しての働きかけを行っている。そうした国々のみならず、国際社会において、北朝鮮に対するそうした働きかけを行っているところでございます。

末松委員 質問に答えてください。どういう現状の認識をしているのかというのが私の質問です。

安倍国務大臣 現状につきましては、現在の、北朝鮮がテポドンについてどのように発射準備を進めているか等々については、我々がどのような情報を得ているかということにもつながることでございますので、詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

末松委員 かなり最高度の警戒態勢をとっているんですか、今政府は。そのくらいは答えられるだろう。

安倍国務大臣 ただいま申し上げましたように、我々としては、この北朝鮮のテポドンの発射に対しましては、当然、情報の収集、分析に全力を挙げているところでございます。そして、どういう段階に至っているかということにつきましては、先ほど申し上げました理由におきまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

末松委員 危機感を非常に持っているのかどうかぐらいは答えてもらわないと、国民に対してもそこは困るんじゃないですか、何も答えてくれていませんけれども。

 では、米側に対してどういう協議を行うか、これは差し控えるという話があるかもしれませんけれども、米側との協議の中で、対応を抑制するという形で、報道によれば、アメリカがミサイルディフェンスをやるんだとかそういう報道がよく出ていますけれども、そういった形での、物理的な対応といいますか、そういうことも話し合われているんですか。

麻生国務大臣 今官房長官からお話がありましたように、朝鮮の弾道ミサイルの発射に関しまして、準備が進められているであろうと思われます。どの程度のところまで進んでいるかは、今官房長官の言われたとおりであります。

 今どのような情報を交換しているかといえば、十七日に、あの騒ぎのありましたときに、駐日大使シーファーに外務省に来てもらって、その上でいろいろ内容の話をさせていただいております。少なくとも、日朝平壌宣言、あっちは米朝コミュニケでしたか、こういったものをやっておられますので、そういった意味では、こういったもので約束したものというのが、ミサイルの発射のモラトリアムというのは両方の宣言の中に入っておりますので、それに違反をしているということははっきりしているし、六者会合等々の共同声明とも相入れないということははっきりしているので、その認識は共有をしておるということであります。

 また、それに先立つ十六日に、外務省としては、あれは北京ルートでしたか、北朝鮮によるミサイル発射準備という活動に関しての日本としての懸念を表明して、発射の中止の警告を発しております。同じくアメリカ側も、北朝鮮に対して、こっちはニューヨーク・チャンネルを使ったと思われますけれども、直接警告を行ったと承知いたしております。

 いずれにしても、これは発射を自制させることが大事なところなのであって、発射してからの話より、発射を自制させるのが目的です。

末松委員 発射されたらこれは終わりという話。

 その終わりという話の前提に私の次の質問があるんですけれども、テポドン二号には核弾頭も搭載可能だという報道がよくなされておりますけれども、これはつけられるということの認識を政府は持っているんですか。

塩崎副大臣 とりあえず私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 核弾頭が搭載される可能性があるかどうかという御質問かと思いますが、北朝鮮が現在どうしているかは、今官房長官等々からお話があったとおりであります。核兵器をミサイルの弾頭に搭載するための小型化にはかなりの技術力が要るということは先生も御案内のとおりであろうと思いますが、そういうことで、現時点では、北朝鮮がそうした技術力を有しているとの情報には私どもとして接していないというところでございます。

末松委員 今の副大臣の話を聞いて、防衛庁長官にお伺いしますけれども、では、核弾頭を搭載する可能性は極めて少ないという認識ですね。

額賀国務大臣 防衛庁は、今度の案件について、艦船とか飛行機を動員して情報収集に最大限の努力を払っているところである。これによって、国民の皆さん方に迷惑がかからないように、安心してもらえるように全力投球をしているところである。

 核弾頭化がどうであるかという実態については、正しい情報、そして、どういう技術力を持ってどういう段階にあるかということについて、詳細について我々がきちっと把握しているわけではありません。

末松委員 アメリカとの間での情報交換は一体何をやっているんですか。そこは、そういったことを、情報を把握できるような形で協議をやっているんでしょう。

 では、お伺いしますけれども、核弾頭のほかに、化学兵器とかほかの生物兵器、これの弾頭化ということについての可能性はどうなんですか。

山崎政府参考人 お答えいたします。

 論理的にはいろいろな可能性が、当然搭載可能であるということも言えようかと思いますが、それでは、実態上、ミサイルに化学弾頭あるいは核が積めるかどうかについては、詳細な情報について我々は接しておりませんし、明確な判断というのは差し控えさせていただきたいと思います。

末松委員 詳細な情報に接していないということそのものが今の答弁になっていると思うんですけれども、そこは、とにかく情報をとっていただいてやるのが当然の政府の責務ですから。それについてどう対応する、手のうちを明かすということはしないというのはそれは常識の話でありますけれども、そこはもうきちんととってもらわないと困りますよ。

 テポドン2が領空を通過したときというのは、平壌宣言にも米朝コミュニケにも反対するということで、厳しい対応をとると言っていますけれども、どういう対応を今検討しているんですか。

安倍国務大臣 テポドン2が発射をされた場合でございますが、仮にそうした事態が発生した場合におきましては、我が国独自に対応できるよう法律は既に整備されているわけでございます。そうしたことも念頭に置きながら検討していくことになるというふうに思います。

 どうした対応をとるかということにつきましては、現段階ではお答えは控えさせていただきたい。そのことについてはしっかりと、むしろ北朝鮮側が考えることではないか、こう思います。

末松委員 発射されたら非常に厳しいことになるという話で、もし日本の領土に来れば、あるいは領空に、あるいは領海に来れば大変な話なんでありますけれども、これを予防的に、自衛権の行使として予防的な対応措置をとるというようなところまで視野に入れた対応を考えておられるかどうか、これについて一応確認をしておきます。

安倍国務大臣 これは政府の立場としては、従来から申し上げておりますように、自衛権の行使に際しましては、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するために他の適切な手段がないこと、そして必要最小限の実力行使にとどまるべきことという三つの要件が満たされる必要があるわけでありますが、現在の状況におきまして、この三つの要件を満たしているというふうには考えておりません。

 いずれにいたしましても、ミサイルを発射させないための努力をしていくことが重要である、このように考えております。

 また、先ほど来、テポドンへの核の搭載の可能性についての御質問がございましたが、北朝鮮は、現在のところ、いわゆる核実験というのは行っていないというふうに承知をしております。

末松委員 本来のイラクの質問について行わなきゃいけませんので、一応きょうはこのくらいに、北朝鮮については質問を終えさせていただきます。

 イラクについてなんですけれども、先ほど来議論が行われていますが、ちょっと私の方で、これも確認なんですけれども、この政府のきょうのコミュニケを見てみますと、政治プロセスもよくなってきた、それからムサンナ県においては治安もよくなった、そして治安権限の移譲が決定された、復興もある程度一段落しているということで陸上自衛隊を撤退させるということでありますけれども、イラクの状況というのは非常に動いていますよね。またムサンナ県が非常に危険な地域にならないとも限らない。そういった場合というのは、これは確認ですよ、陸上自衛隊をまた再派遣して、地域の安定あるいはその復興の中でやっていくということがあるのかどうか、ちょっと確認させていただきます。

 と同時に、ここのコミュニケの中で、サマワから撤収させることを決定したと。ただ、政府がずっと前から言っていますように、一カ月前までずっと言っていましたように、人道復興支援、イラクは物すごく大きな復興需要、そして人道支援の需要があるということなので、サマワからは撤退したけれども、また別途、ほかの地域に行くということを検討することについては一言も触れていないわけですが、その辺について政府の態度をお伺いします。

安倍国務大臣 政府としては、現時点において、自衛隊の部隊をイラク特措法にのっとって派遣することは考えておりません。

末松委員 ちょっと細かいことを聞きます。

 サマワで治安権限移譲が行われたというのは、いつ、どのような形で行われたんですか。これは、もしあれだったら政府委員でも結構です。

額賀国務大臣 御承知のとおり、マリキ首相は六月十九日の記者会見で、治安権限移譲のための大規模な式典が来月に開催される、七月に開催されるというふうに言っておるわけであります。

 それでは、具体的にいつなのかということについては、この国らしいわけでありますが、全般的な治安の責任は、神のおぼしめしにより来月に定められる日に引き継がれることになる、そういうふうに述べただけであって、具体的に言っているわけではありません。ただ、来月中にそういう式典が行われる可能性が強いということだと思います。

末松委員 治安権限が移譲されたされたという話をコミュニケで書いているわけですけれども、では、されていないんですね、まだ。七月末までにされる可能性がある、そういうことですか。改めてちょっとそこを確認します。

額賀国務大臣 もう治安の権限の移譲については、これはイラク政府も、それから英豪軍も多国籍軍の代表も含めて、ムサンナ県で初めて移譲されるというその合意が得られた、その上に立ってマリキ首相の記者会見が行われた。その後のことについてはイラク政府の段取りでございますから、七月中に行われるだろうということであります。その具体的な日は、神のおぼしめしによるということでございます。

 その決定に基づいて、我々は陸自の撤収の作業を開始したということでございます。

末松委員 豪州軍は、それに基づいてもう撤退という形で決定して、そして撤収作業に入っているんですか。

額賀国務大臣 私が知っている限りにおいては、恐らく、イラク政府、イギリス、それから我々とよく緊密な連携をとった中で、みんながうまくいくような形で豪州軍も考えているのではないかというふうに思っております。

末松委員 防衛庁長官が、緊密な連絡をとっておられるということを強調すればするほど、そうしたら、豪州軍はもう撤退するんです、しているんですというふうに言うのが筋ですよね。恐らくという言葉を使われたのでやや不安が残りますけれども、実際に、どうなんですか、豪州は撤退表明をされたんですか。

山崎政府参考人 お答えをいたします。

 豪州政府、英国政府あるいは現地部隊で意見交換を当然しております。私どもが承知しております限りは、豪州軍はサマワから撤退するということについて、あるいは撤収するということについて明確な報告を受けておりますが、今後どこに再展開するかとかいうことについては、ちょっと豪側の関係もありまして、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

末松委員 航空自衛隊について質問します。

 航空自衛隊の方では、バグダッド、エルビルに対して航空活動をやっていくということですから、それの現地の連絡室とかそういったことで、連絡要員、あるいは大使館の連絡要員ですね、いろいろとまたそこで作業があると思うのですけれども、それはどの規模の人たちを現地に置いておくんですか。

額賀国務大臣 先般、陸自の撤収に伴って、航空自衛隊の活動については継続する、特に国連等の要請もあるので、今後の活動範囲を広げるということを考えているわけでありますが、それに伴って、我々は約十名の要員を増員して、従来のと合わせて二百十名の規模で今後空輸活動を展開していきたいというふうに思っております。

 それから、多国籍軍の司令部に今まで陸上自衛隊の数名の隊員を派遣して、情報収集、連絡等を行ってきたのでありますけれども、航空自衛隊の数人をそこに派遣して、治安関係あるいは安全関係、それからさまざまな情報収集、連絡等をするようにしていきたいというふうに思っております。

末松委員 これは、大使館員とか通訳とか、そういった者も含めた形での増強になりますか、現地、エルビルとかバグダッドの要員。まあ、バグダッドは大使館員がいるからいいんでしょうけれども。ただ、行き来をするということは、彼らにとっても極めて大きな危険性が伴う話になりますけれども、通訳要員も含めて、そういった方を現地に、エルビルについても置くということですね。

額賀国務大臣 エルビルについては、既に韓国軍がさまざまな輸送とか治安の関係等の仕事をしていると聞いております。したがって、安全を確保するために、韓国とよく連絡をとりながら状況把握に努めるようにしたい。

 そして、空自の隊員を派遣するのは、そのバグダッドの司令部と、それから航空自衛隊に十人増員するということだけでございます。

塩崎副大臣 末松先生からの御質問は、大使館の増員をするのかどうか、エルビルでですね。その点につきましては、今、自衛隊の方はふやされるというお話がありましたけれども、大使館の連絡要員につきましては、まだ派遣をするべきかどうかについては何ら決定をしていないというところでございます。

末松委員 本当にこのバグダッドについても、私も大使館にいたからよくわかるんですけれども、大使館から空港まで、そこの間の移動も、多分、今安全じゃないというところがあると思いますから、当然、安全確保については最大限の警戒を払っているわけでしょうから、そこはぜひお願いしたいということです。それは外務省だけじゃなくて、関係者すべてでありますけれども。

 それともう一つ。先ほども質問がありましたけれども、航空自衛隊の活動というのは、人道復興支援あるいは安全確保支援、これは両方というふうに言われましたけれども、一応物資の輸送ということですよね。これの中に、武器弾薬は、再度確認ですけれども、運ばれるんですか。

額賀国務大臣 これは当初から言っておりますように、武器弾薬はその対象になっておりません。

末松委員 この航空自衛隊の活動は国連から要請があったということを盛んに先ほどから強調されておられますけれども、アメリカ側からはなかったんですか。よく報道では、アメリカ側からの要請で、その話し合いの中で実質的に決まっていったという話ですけれども、その辺はどうなんですか。

額賀国務大臣 これは、航空自衛隊は人道復興支援を中心として活動するということが当初からの我々の行動の基準でありました。その中で、さまざまなニーズがどこにあるのかということについては、いろいろ情報収集をしたりしてきているわけであります。

 その中で、最近、国連から人道復興支援活動を具体的に要請がされたということがありましたから、その国連の要請にも基づくし、それから、今後も多国籍軍のそれぞれの要求、ニーズにどうこたえることができるのか、こたえることができないのか、そういうことを判断しながら空自の仕事をやっていきたいということでございます。

末松委員 ちょっとわかりにくかったんですが、アメリカ側からの要請は具体的になかったということですね。

 それからもう一つ。国連から航空自衛隊にこういった形で要請があるというのは、私の知る限りでは、直接受けたということでは初めてだと思うんですけれども、そこの点はやや妙な感じがするんですが、そこの二点についてお答えください。

額賀国務大臣 私どもはアメリカの国防長官ともお話をする機会が多々あったわけでありますけれども、具体的に我々に要請することはありません。アメリカは、原則的に、それぞれの国はそれぞれの主体的な考え方で行動してほしいというのが原則だというふうに思っておりますし、我々に対しても、具体的にそういうことがあるわけではないわけであります。

 ただ、国連の場合は、官房長官、外務大臣もおっしゃるように、具体的に要請があって、そして我々も、人道復興支援あるいは治安確保活動のためにどういう要請があるのかということの状況把握に努めてきておりますので、今後もイラクの人道復興支援活動、民主化活動にどういう貢献ができるかという視点でいろいろ調査をしてきたということでございます。

末松委員 国連の方ですけれども、安倍官房長官なんかも、この前、国連事務総長にお会いしたとかいう話がありましたけれども、国連のどの人たちから具体的な行動、その要請があったんですか。事務総長からあったんですか。

安倍国務大臣 私が答弁いたしましたのは、私自身、事務総長とお目にかかった際、事務総長から、空自によるそうした空輸において国連の活動を支援していただきたい、そういう要請がございました。また、事務的にも当然そういう要請がなされているんだろう、このように承知をしております。

麻生国務大臣 アナン事務総長と会談をした際、アナン事務総長の方から外務大臣に対して、今安倍長官にありましたのとほぼ同様の内容の要請があっております。

末松委員 では、最後になりますけれども、何か小泉総理が、七月末までには撤退完了だと言われているような由でございますけれども、通常、撤退といった場合には三カ月ぐらいかかるんだということを私も現地のいろいろな部隊の方からも聞いていたんですけれども、これはちょっと早過ぎるんじゃないか。これはどういうことなんですか。自衛隊のそういった輸送能力が上がったのか、それとも前々から準備をしていたのか。その辺について、一カ月ちょいで本当に撤退が完了するようなことが可能なんですか。

額賀国務大臣 ついこの前、撤収についての命令をしたわけでございますけれども、これはやはり、何日かかるというふうに具体的に明確に申し上げることができないと思います。それは、気候的に真夏に向かっているわけでありますし、あるいはまた砂あらしとかさまざまな自然条件の中で仕事をしていくわけであります。

 しかし、日本の自衛隊というのは、こういう範囲で仕事をやれということになれば、それに対してきっちりとまじめに取り組む、そういうものを持っていると思っておりますので、一カ月から一カ月半ぐらいの間に仕事ができるのではないかという想定はしておりますけれども、具体的に何日ということまでは言い切れません。ただ、そういう方向で一生懸命作業が始められたというふうに思っております。

末松委員 質問時間がなくなりましたので、最後ですが、自衛隊員の、本当にまじめで、しかも忠誠心あふれた自衛隊の皆さんが全員安全で帰ってこられるように、そして航空自衛隊も、私ども民主党の判断のようにできる限り早期に撤収することを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

三原委員長 次に、石破茂君。

石破委員 両大臣、御苦労さまであります。

 閉中でございます。本来なら安保委員会で申し上げるべきことかと思いますが、今、末松委員からもお話がありました北朝鮮のミサイルにつきまして所見を申し述べ、もし御見解があったらお述べをいただきたいと思います。

 何のためにやろうとしているのかはだれにもわかりません。いろいろな推測はあります。国威発揚だという説あり、いやいや、持っているから、どこかの国買ってくれないかなと思ってやっているという説あり、あるいは、アメリカまで届くミサイルを持っているのだということで、九八年のときと同じように、アメリカを取引の場に出そうというような考えがあるとか、もういろいろなことがわかりますが、私は将軍様ではないのでわかりません。

 ただ、あの国と我が国は、恐らく物事の価値判断がひっくり返って、百八十度逆なんだろうと思っているのですね。私は一度しか北朝鮮に行ってみたことはありませんが、要するに、あの国の国家目標というのはすべからく体制の維持、それが国家目標なのだということだと思います。

 私どもの国におきましては、これはほとんどの国がそうです、我が党にせよ民主党にせよ、それはどの党もそうでしょうが、国家目標というのはそんな大げさな話じゃなくて、とどのつまりは一人一人の幸せだと思いますね。国民が飢えに泣くことがなくて、望めば教育が受けられて、望めば医療が受けられて、老後の保障というものがきちんとある。それを何とか達成しようと思ってやっているわけですが、かの国においては、国民が飢えに泣こうが、教育を受けることができなかろうが、お医者さんにかかることができなかろうが、そんなことはどうだっていいのであって、いかにして体制を維持するかということが国家目標ですから、そのためには何だってやるということだと思っています。

 同時に、北朝鮮は、自分の国の上をどこの国の衛星が何時何分に飛ぶかということは全部知っているはずですよね、知らなきゃおかしい。何が写っているかということも全部知っている。だから、時々にせものを見せたりすることも当然あり得るわけであります。だから、何が目標かわかりません。

 ただ、私どもがよく心しておかねばならぬのは、九八年のときに、あれは衛星なのかミサイルなのかという議論がありました。北朝鮮は、あれは衛星なのだ、衛星の打ち上げに成功したのだ、光明星一号と名づけたのだ、空から金日成様の歌が聞こえるであろうと言われて、一生懸命聞いたけれどもわからなくて、それはお前たちの心が濁っているからだとか言われて、もうますますわからなくなるわけですが。

 というような話で、衛星ならよくてミサイルならだめ、そんな話はないのであって、衛星もミサイルも原理は全く一緒ですから。ある一定の高度に達したときに、第一宇宙速度というのに達するとぐるぐると地球を回る衛星になるし、達さなければ物理の法則に従って落ちるということでありますが、ミサイルであればできるだけ遠くに飛ばしたいですから、それはもう四十五度の角度で打ち上げるということになるのでありましょう。九八年には、数カ月かかったと思いますが、結局は、我が方のいろいろな手段によって、これは衛星にあらずということを確認したわけであります。

 いずれにせよ、シカゴ条約に従うにせよ何にせよ、飛行機であれ船であれ航路情報というものを出さなきゃいけませんし、そのことにも注意をしておかなければいけないと思っているのですが、これが衛星なのかミサイルなのか、仮にテポドンの非常に射程の長いものだとするならば、日本の能力をもってしては把握は不可能なのかもしれない。

 いずれにしても、ソビエトがスプートニクというのを打ち上げたときに、アメリカ合衆国は、これは、ソビエトはアメリカまで届く弾道弾を持ったねというふうにすぐ判断をするわけですよね、原理は一緒ですから。だけれども、向こうは衛星だと言い張るかもしれない。そこのところできちんと日米の対応が一致をしなければいけないということがあるのだろうと思っています。

 もう一つは、仮に、アメリカまで届くミサイルを持ったので、やがて核を搭載できるかもしれないのだ、だから取引に応じなさいというようなことがあったとしても、間違ってもそんな取引には絶対に応じないということを明らかにしませんと、結局、核ミサイルを持った国は何でもできるということになってしまうわけですね。そこの点において、政府内そして日米、そこの見解をきちんと統一しておいていただきたいというお願いが第一点です。

 第二点は、先ほど末松議員もおっしゃいましたが、テポドンであれば、それはもう遠くまで届きます、高いですから。そんなものは、日本に撃とうと思えば、テポドンなんて高級なものを使わなくたっていいのであって、それはノドンを撃てばいいわけですよね。

 いずれにしても、まだパトリオットもイージスの迎撃システムもそろっていないわけであって、現時点において、仮に仮に、我が国に対して何をやるかわかりませんから、そういうような危険が差し迫った、つまり、どの時点で武力行使の三要件というものになるか、自衛権行使の三要件になるかというと、我が国に対する急迫不正の武力攻撃があったことですが、それは被害が生じてからでは遅い、おそれの段階では早過ぎる、どこがスタートなのかといえば、それは着手したときであるというのが政府の見解であると思っています。

 そういうような認識を前提に置いて、仮に、撃ちました、いついつどこに落ちますということがわかったときに政府として何をすべきかということは、やはり考えておいた方がいいのだろうと思いますね。着弾するまでに何分かはあるわけで、撃ち落とせないとしても、地下があるところは地下に隠れるというのですか、そして堅牢な建物が近くにあるときは堅牢な建物の中に入る、それだけで被害は相当に小さくなるはずなのですね。

 だとすれば、それは国民保護法制等々できちんとしてあることですが、それが条文上きちんとしてあったとしても、実際にそれが行えるかどうかは別の問題。そういう訓練をやるとすると、すわ、また戦争準備かとか言う人がいるけれども、そういうことに対しては万全を期しておくということもあるいは必要なことではないか、いや、むしろ絶対に必要なことだと私は思っておりますので、以上、見解を申し述べておきたいと思います。御答弁は要りません。

 イラクのお話でございますが、先ほど来聞いておりますと、またクラシックな議論といいますか、戦闘地域かどうかというようなお話がございまして、伝統的なと言っても古典的なと言っても結構ですが、これは、日本がやってはいけないことは何か、何のために、自衛隊が活動を行うのは、現に戦闘が行われておらず、また活動の期間を通じて戦闘が行われると認められない地域というふうにわざわざ法律に書いたのかということであります。

 それは、憲法九条というものをきちんと守って行動しますよということを担保するためにわざわざ特措法に書いているということを、どうも誤解なさっておられる方がたくさんおられる。理解したくないのかもしれないが、そこのところはきちんとしておかないといけないと思います。

 すなわち、憲法第九条第一項に何と書いてあるか。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というのが憲法九条一項ですよね。これをきちんと守りますということが、自衛隊が活動するのは、現に戦闘が行われておらず、また活動の期間を通じて戦闘が行われると認められない地域でなければいけないということなので、憲法九条をきちんと担保するためにつくった概念であるということをよく御理解いただきたいと思っております。危ないから戦闘地域だと言うのは、そこの仕組みが全然理解できていないからそんな話をするのであって、危なくても非戦闘地域というのは存在するということをよく認識しておかなければいけない。

 ここから先は寿限無寿限無みたいな話になりますが、もう一回確認をしておきたいと思います。

 つまり、戦闘行為とは何ですか。これは定義の話ですから、法律は定義に基づいてやっていますので、定義を勝手に考えて議論されると議論そのものが崩れますから、そこのところはきちんと立法府の人間としてわきまえるべきことだと私は思います。

 戦闘行為とは何か。それは、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」、これが戦闘行為なのです。だから、歌舞伎町でやくざが撃ち合っておったとしても、それは大変に危険な地域ではあるだろう、しかしながら、あれを称して戦闘地域と言うか。それは違うんですよね。危険かどうかというものはこの際関係がない。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」、これが戦闘行為であります。

 それでは、国際的な武力紛争とは何ですかということであります。ここが憲法九条一項と関連をするところ。国際的な武力紛争とは何か。国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争い、これが国際的な武力紛争ですね。

 つまり、アクターは国または国に準ずる組織だということであって、それが野盗、野党じゃないですよ、野盗のたぐいであるとかあるいは強盗のたぐいであるとかテロ、ゲリラ組織であるとか、それが国または国に準ずる組織ということにならない限り、そこで行われていることは国際的な武力紛争が行われているとは法的には評価をされない。そうであるとすれば憲法九条一項には抵触をしないという論理を展開しておるのであって、それが違うのだということであるならば、憲法九条一項が禁止している行為は何かということをちゃんと議論していただかないと困るんです。憲法九条一項が禁止しておる行為は、我が国は、国権の発動たる戦争と、国際紛争を解決する手段としての武力の行使または武力による威嚇、これを禁止しているのであって、それは絶対にやってはいけないということなんですね。

 今サマワで行われていることは何なんだ、あれをやっちゃいかぬということであるならば、そこにおいて国際紛争が行われているんだ、あそこでやっているのは国または国に準ずる組織だ、こう言ってもらわないと、だめだというお話に相ならないのであります。

 あるいは、国際紛争の定義を全部変えるということであればそれは話は別ですが、それは今までの国際法の常識とは大きく逸脱するものであって、そういう前提に基づいて議論をする限り、ちっともお話は前に進まない。危険だから戦闘地域だろうとかなんとか言っている間に、ちっとも次の事態になっていかないわけですね。次に議論が進行していかないんです。

 私たちは、最後の一人が無事に帰ってきたときに、ああ、よかったねというふうに言いたい。私は派遣したときの防衛庁長官でありましたけれども、本当に、派遣したときに、ずっと在任中もそうです、恐らく額賀大臣もそうだろうと思います、寝られない夜はたくさんあります。今でも、うなされて目が覚めることだってあります。どうやってこれを安全に完了するかということをいつも考えてきた。当然のことであります。

 それで、何のために出したのかということです。これは、国家の命によって自衛官をあえて危険な地域に派遣している、そういうものであります。何のために出したのか。

 それは、まず第一に、我が国は石油が全然出ない。一〇〇%輸入である、そのうちの大部分をイラクを含む中東地域から輸入している。イラクが大混乱に陥り、治安も維持できず、イラクの混乱がだんだん中東に波及していく、そうすると、それは我が国の国益を大きく損なうことになるであろう。イラクの安定のために我が国としてできることはしなきゃいかぬということが第一であります。

 第二は、戦争の是非とかなんとかそういうことに関係なく、国連決議が何と言っているか。戦争が終わった後、軍事、非軍事を問わず、イラクの復興に加盟国は力を尽くせということが国連決議で決まっている。国連で枢要な地位を占めたいと言いながら、全会一致で決まったことには参加しない。そういって、何が枢要な地位を占めるか、国際社会で発言力を強めるか。そんなことがあるはずはないのであって、国連の決議にきちんと従うということが二番目でしょう。

 三番目は、イラク人って本当に日本の助けを待ち望んでいるわけですよね。何度海外の機関を使って世論調査をやっても、一番来てほしい国はどこですか、それは日本ですというのが一番ですよ。東ティモールの大統領も言っていたけれども、日本の自衛隊はほかの国の軍隊と違う、人を見下さない、現地の人を見下さない、ともに笑って、ともに泣いて、ともに汗をする、そういう組織が本当にあるんだ、日本の自衛隊は本当にそんな組織なんだということを、自衛隊が展開したティモールも、そしてまた今のイラクの人たちも言っているわけですね。

 長官がよくおっしゃるように、世界で一番暑い国で水が出ないというのはどういうことなのか、世界で一番暑い国で病院が機能しないというのはどれほどつらいことなのか。そして、子供たちが学校に行こうと思っても行けない状況、道路が完全に破壊されている状況、それを何とかしてくれというふうに、そして日本人に来てくれと言っている人たちがいるときに、行きませんというようなことが本当にあっていいんですかということであります。

 そして第四点は、これは日米安全保障条約に基づいて行っているわけではありませんが、唯一の同盟国たるアメリカが一番苦難をしているときに、日本は何もしません、人道復興支援もしません、そんなことで本当に日米の信頼関係は保たれるかということだと私は思っています。

 その四つの目的を果たし得るのは、我が国において自衛隊しかないのだ、その四つの、我が国の国益、国際的な責任、イラクの人々の願いにこたえる、それをやるために、できる組織は自衛隊しかないのだ、だから自衛隊が行くのだということであって、これに反対するということであるならば、それは、危険も冒しません、でも利益も欲しいです、そんないいかげんな話があってたまるかと私は思っておるのであります。(拍手)

 私は、これを立派に果たしつつある自衛官諸官に心から敬意を表したいし、一人残らず無事に帰ってくるそのときまで、よかったねということは絶対に言ってはならないのだと思っております。

 そこで、長官にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、今回なぜ引くのかということです。それは、目的を達したから引くのだということだと思っています。

 つまり、一種の国内における災害派遣と一緒で、緊急性と非代替性と公共性、これがなければ国内においてだって軽々に自衛隊を動かしてはいけませんよね。ましてや海外においてもそうなのであります。やはり、その緊急性というものが、自衛隊の活動によって、水がないとか学校が壊れているとか、そういう状況が解消されたのだ。そして、他方、治安も、ムサンナ県においては権限が移譲されるというようなことにもなった。両々相まって、今回撤退するのが一番いい時期であるということで私は考えておりますが、それでよろしいでしょうか。

額賀国務大臣 自衛隊をイラクに派遣したときの防衛庁長官である石破委員、感慨深く、そしてまた当初の目的についてるる説明をいただいたわけでありまして、まことにそのとおりだと私は思っておりますし、またまた、委員の皆さん方も、拍手が起こるぐらい、その理念それから目的について賛同をいただいているものと思っております。また、イラク国内だけではなくて、世界の皆さん方も、これまでの自衛隊の行動に対しては高い評価をしているわけであります。

 自衛隊がイラクに派遣されたときは、言ってみれば、戦争が終わった後、しかもなおかつ、サダム・フセイン時代、あの地域はそんなに目を向けられなかった地域でもありまして、社会インフラ等々が未整備のところであったと思います。おっしゃるように、きれいな水がない、道路はでこぼこ、学校は破壊され尽くされている。

 そういう中で、自衛隊が行ってきれいな水を供給する。それについて、一年間ちょっとの間で五万三千トンの水を供給し、しかもなおかつ、ODAと相まって水を常時供給するようになって、乳幼児の死亡率が三分の一に激減をしたという実績もあるわけであります。道路は千四百キロメートルにわたって整備されたということでございます。学校も、サマワの三分の一が全部きれいになった、父兄ともども、子供たちもそこで今学んでいるということ。そういうふうに、緊急対応については自衛隊のこれまでの活動でほぼ完了したというふうに言ってもいいと私は思っております。

 その過程で、自衛隊はまた、民間人とか行政当局に対しまして、ただ仕事をやってのけただけではなくて、どういうふうにやればいいのか、住民がどういう要望を持っているのか、そういうノウハウについてもきちっと教え込んできているわけでありますから、今後はイラク人によって行政やあるいは仕事が展開されていくだろう。そのレールを敷いた。そういう意味で、自衛隊の活動は当初の目的を達成したと言っても過言ではない。そういう思いで今度の撤収がなされたというのが原点であります。

 その上に立って、民主化路線も、イラク政府がきっちりと発足をし、そして、地域住民の皆さん方の生活の安定の基準である、バロメーターである治安の権限がなされたという環境も整いつつあるということで、撤収の環境も整備される中で自衛隊の撤収が発令されたというふうに認識をしております。

石破委員 時間が参りました。

 空自が今後残ります。それは、安全確保支援と人道復興支援、両方やるわけですね。安全確保支援はいかぬのだみたいなことを言う人がいますが、これは、だって治安の確保がなされて人道復興支援ができるわけで、治安の維持ができなきゃ何にもできないわけですよね。それで、私どもは治安の維持そのものをやるわけじゃない、後方支援をやるのであるということはきちんと認識をしておかねばいけないことだ。そして、国連の活動を支援するというのは、条文上は人道復興支援で読むのだというふうに私は思っておるところであります。

 それから、いろいろなことが起きました。先ほど長官がお答えになったように、C130が落ちたことも、被弾したこともあります。そこについては、考えられるありとあらゆる措置を施していただきたいと考えております。それが特措法九条の趣旨でもあると思っています。

 最後に、これは、ああ終わったね、よかったねで済ませてはいけないと思う。つまり、テロ特もイラ特も特措法で出している。そのときに法律をつくり、出している。これはやはり、一般法という形にしていかなければいけないと考えている。その一般法をつくるときに、今回のイラク派遣というのはいろいろなことを学ばせてくれたと思っています。どんなときに出すのか、そしてどんなときに引くのか、どのような条件が整えば引くのか、何のためにやるのか。そういうことをきちんと踏まえながら、特措法から一般法という作業を急いでいかなきゃいけないし、そしてまた、情報の収集という能力をきちんと持つということも考えていかねばならないことであろう。

 一般法について、政府の考えがあれば最後にお尋ねして、質問を終わりたいと存じます。

樽井政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生御指摘のとおり、政府の内部におきましては、国際平和協力全般につきまして幅広く検討を進めさせていただいております。

 ただいま御指摘のように、両特措法、特にイラクでの経験というのを十分に踏まえまして真剣に検討しつつ、今後の検討の大変重要な素材にさせていただきますし、その経験を踏まえまして幅広く検討を進めてまいりたいというふうに思います。

石破委員 一般法をつくるというのは、我が党のさきの選挙における政権公約であります。これをきちんとつくるということが、今回のイラクの活動に対して、我が国としてきちんとこたえる、自衛官に対してもこたえる、国際社会に対してもこたえる、そういう責務であるということを申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

三原委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端でございます。

 今回、ムサンナ県の治安権限がイラクに英国から移譲されたということで、二十日に、額賀防衛庁長官、サマワでの活動をしている第十次自衛隊に対しての撤収命令を出されたということ、そして、こういう事態に、約二年半ですか、一人の犠牲も、また一発の弾も発射することなく、無事に撤収することを迎えられたということは大変私は喜ばしいと思いますし、ここまで頑張ってこられた自衛隊の方はもちろん、こういう事態を生み出すために努力された方々に対して敬意を表したい、こう思います。

 それで、まず防衛庁長官に、印象といいますか心境を伺いたいんですが、実は私は大阪でありまして、阪神・淡路、今から十一年前、平成七年に起こりました。そのときに、自衛隊をめぐって非常に問題がいろいろ出ました。もっと早く来てくれていればとか、そういうことが後になっていろいろな議論になったわけであります。

 あれから十年たって、自衛隊がいろいろなときに国内においても真っ先に駆けつける、そういう流れがあそこから教訓として出たんだと私は思っておりますが、今回は、国際社会の中にあって、日本の自衛隊が初めて、イラクという地にあって、イラクの人道復興支援ということで頑張ってこられて、そして無事に使命を終えた。そういう意味では、自衛隊に対する国際社会での評価も今回高まったと思いますが、防衛庁長官の率直な印象をお伺いしたいと思います。

額賀国務大臣 イラクの自衛隊派遣が、委員がおっしゃるように、一人の犠牲者もなく、一発の弾を撃つこともなくというのは、今日までのことであります。私からすれば、きちっと陸上自衛隊の皆さん方が全部引き揚げてくる、そして、なおかつ、航空自衛隊はまだ二百十人余りイラクに残って引き続いて活動を展開していくわけでございますので、そういう思いにはなっておりません。ただ、ひたすら無事に、今後も一人の犠牲者もなく、一発の銃弾も撃つことなく、最後まで仕事を完遂させるためにどうしたらいいかということを考えなければならないというふうに思っております。

 また、自衛隊員の皆さん方が、現地の人たち、あるいはまた国内においても、世界の国々からも高く評価されているというのは、やはり自衛隊員の五十年の歴史の積み重ねだというふうに思います。憲法違反と言われる中で、各部隊が北海道から沖縄まで住民の中に溶け込んでいくために、地域づくりのために地域の住民と時間外でも汗をかいたり、農作業の手伝いをしてまで地域の間の理解を得る努力を先人たちがしてきた、そういう思いが、自衛隊の地域に溶け込む、そういう理念というか哲学というものが体にしみ込んでいるものと私は思っております。

 したがって、イラクにおいても、やはり部族の皆さん、住民の皆さん、行政当局等々としっかりと腹を割って率直に話し合いをし、そして、合理的な目標に向かって仕事をしていく、そういうものが、私は、長年、五十年の自衛隊の積み重ねの言ってみれば結晶として、イラクにおいてもそれが成果としてあらわれつつあるというふうに理解をしております。それはまた、委員がおっしゃるように、阪神・淡路大震災の経験も含めて、みんなそういうものが生かされているものというふうに私は思っております。

 先ほど石破委員からも御質問がありましたけれども、生活インフラ、それから道路、教育、医療、さまざまな分野でそれなりの仕事をして、地域住民にもっといてほしいと言われているわけでありますから、私は、地域住民の皆さん方からたたえられる形で、ぜひ陸自も無事に引き揚げてもらいたいというふうに思っております。

 先ほど、道路、千四百キロと言いましたけれども、百数十キロでありましたので、訂正しておきます。

田端委員 おっしゃるように、そこで大事なことは、撤収作業を無事何事もなく終えるということがここから先大事なテーマだと思います。それで、特に五十度という過酷な自然条件の中で、しかもまたクウェートまでが五百キロぐらいですか、東京―大阪間ぐらいあると聞いておりますが、これは一番またねらわれる場所でもあろうか、こう思います。

 そういう意味で、何事もなくスムーズにということが一番願っている国民の気持ちだと思いますが、この手順とかスケジュールとか、そういった作業について、長官、いろいろと御努力されていると思います。きのうもイラク駐日大使にもお会いになってそういったことも要請されたようでありますし、どうぞ英豪軍ともまた協議していただいて、ぜひ、無事に撤収できるように、作業がスムーズにいくように、何としてもしなきゃならないと思いますが、そこのところの長官の御決意をお願いしたいと思います。

額賀国務大臣 もちろん、一番大事なことは、先ほども言いましたけれども、まず地域住民の皆さん方に喜んで送り出されるような環境、良好な関係を保ちながらこの撤収作業をしなければならないというふうに思っております。

 その上に立って、治安をどういうふうに維持していくのか。これは、英豪軍と緊密な連携をとる必要がある、それから自治体の皆さん方の協力を得なければならない。そういう中で、順次この作業を進めていきたいというふうに思っております。

 そのために万全を期すのは当然でありますので、私といたしましては、そういう皆さん方の協力を得ながら、無事に日本に帰ってくるまで、全神経を張りめぐらせて仕事をさせていただきたいというふうに思っております。

田端委員 それで、長官、いずれかの時点で、クウェートまで長官自身が出向いて自衛隊の皆さんの労をねぎらう、そういうぐらいの気持ちを持って対応されたらいかがか、こう思いますが、どうでしょうか。

額賀国務大臣 温かいその気持ちは、よく受け取らせていただきたいと思います。

 現地で余り負担をかけることがいけないと思っておりますので、やはり現場主義ですね、現場は現場の最もやりやすい環境をつくってあげなきゃいけない、また現場の人の言うことを聞いてあげなければいけない。そういう中で、田端委員の御指摘もよく受けとめさせていただきたいというふうに思います。

田端委員 というのは、自衛隊の方々は大変なストレスといいますか緊張感といいますか、そういう中で頑張っていられたわけですから、ぜひ、政府の代表として、あるいは自衛隊の最高責任者として、そういう行動でひとつ示していただければ、こう思います。

 それは、先ほども質問がありましたが、やはり自衛隊でイラクに派遣された人の中から、陸自で五人、空自で一人、六人の方がその後自殺されているということもあります。これは、そういった意味では非常に緊張感といいますか気苦労といいますか、そういうものが、我々にはわからないものがやはりあったんだろう、直接それが自殺の原因とはそれは限らないとは思いますが、しかし要素の一つであることはあったんだろう、こう想像されるわけであります。

 そういう意味では、自衛隊の最高責任者として、長官がそういう行動で隊員の皆さんに示していくということが非常に大事ではないかということを申し上げるわけでありまして、どうぞ、引き揚げてこられた自衛隊の方々に対しても、健康チェックはもちろんのこと、国内での仕事にスムーズに移行できるようなそういう環境配慮もしていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

額賀国務大臣 もうこれは田端委員御指摘のとおりでありまして、私も十二月の上旬にサマワに行ったとき、上空から、クウェートからずっとヘリで行ったわけでありますけれども、もちろん砂漠の上を通っていくわけであります。

 この過酷な自然の中で人間が生活をしていくときに、日本みたいに四季の変化があり、しかも自然に恵まれた中で考えていく思考とこの砂漠における思考というのは、やはり我々の想像の及ばない中で生活というものが行われていく。そういう中で宗教の存在というものがいかに重いものになっているかなということの感慨を持ったのでございますけれども、我が自衛隊の隊員の皆さん方も、五十度以上の暑さ、氷点下の寒さ、砂あらし、そういう中で確かに健康にいろいろ、下痢をしたり発熱をしたりとか、そういう症状を起こす人もあるわけであります。

 したがって、行く前は当然健康診断をし、メンタルケアをし、さまざまな対応をする。医官も同行して、そういう万全の態勢をとっているわけであります。それでもなおかつさまざまな問題が起こってくることはやむを得ないという事実でありますので、我々はこれについても、委員のおっしゃるように、万全の態勢をとって、帰ってきた後も対応していかなければならないというふうに思っております。

田端委員 それで、陸自は使命を終えるということになりますが、しかし、空自の方が大きな役割を今度また背負って、今までのバスラ、タリルという輸送先を、さらにバグダッドやエルビルというところまで拡大するということで、さらに一層使命が大きくなるわけであります。

 しかし、私はぜひここでお願いしておきたいことは、安全確保ということをもう最大に優先事項に挙げていただいて、そしてその中での空自の人道復興支援活動、そういうことが大事であって、ぜひそういった意味で変なことに巻き込まれることのないように最大限の努力をお願い申し上げたい、こう思います。

 ところで、陸自は撤収する、しかし空自が少し範囲が拡大する、この場合、実施計画はどういうふうになるんでしょうか。変更ということになるんでしょうか、それとも、もう少し時間が経過してからそういう手続をとるということになるんでしょうか。その辺はどういう段取りになっているんでしょうか。

額賀国務大臣 陸上自衛隊が無事に日本に帰国した場合については人員的に基本計画の内容を変更する、陸上自衛隊の六百人体制が変わるわけでございますので、それは基本計画を変えなければならないというふうに思っております。

田端委員 ところで、外務大臣にお伺いいたしますが、今回のことで、では、これから日本はどういうふうに支援するのかという次の段階が、また一つのテーマになろうかと思います。

 特に、ODAで五十億ドル、既に決定している分、十五億の無償と三十五億の円借款というのがありますが、これでいいのかどうか。例えば、電力とか石油とか道路とか通信とか、そういった意味ではまだ追加する必要もあるのではないかとも思いますが、その点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたとおりに、陸上自衛隊が撤収をいたしました後も、少なくともこのイラクの人道復興支援というものは、ODAを初めとして、日本としてふさわしい方法で引き続き積極的に支援する方向で考えております。

 今御指摘のありましたとおりに、当面、あの十五億ドル、御記憶かと思いますが、あの十五億ドルの無償資金協力については、すべて使途は既に決定を終わっております。したがいまして、さらに本格的な経済活動、中でも、電力を初めインフラがかなりくちゃくちゃになっておるところがありますので、そういった意味では、電力、それから輸送のための交通、道路を含めまして、残りの三十五億ドルの円借款を中心に支援を進めていきたいと考えております。

 これは治安がきちんといたしませんと、先ほど御質問があっておりましたように、いわゆる民間人を入れてどうだという話になりますので、今正式撤退が決まっているのはサマワということになろうと存じますので、その他の地域に広まっていった段階において、さらにいろいろな形での支援というものをやっていくことになろうと存じます。

 しかし、長期的には民間企業というものが、いわゆる活動が進んでいくんだと思いますけれども、その基本は、イラクが自分の自力で復興していくというのがやはり一番肝心なのであって、その自力を支援するというのが我々の立場でありまして、それに介入して、おれたちのやり方みたいに全部しろというようなわけではありませんので、その点は、イラクの自力復興に我々がどれだけいろいろな形で支援できるかというのが基本的なコンセプト、哲学だと存じます。

田端委員 そうしたイラク復興支援のあり方の一つの具体的な例として、我が党で二年ほど前にメソポタミア湿原の再生事業ということで署名活動をしたところ、国内から五百五十万の署名をいただきました。そして、そのことについて日本政府にも要望し、UNEP、国連環境計画を通して支援をしていただきまして、今プロジェクトが動き始めているんだろうと思います。

 例えばこの問題なんかは、たくさんの雇用を生み出すわけでありまして、そしてまた、自然を再生するという、生態系にも非常にかかわる問題でもあります。そしてまた、この地方は世界的な文化遺産も埋蔵されているわけでありまして、そういった文化財の保護という観点からも、この問題というのは、日本政府がやれる、またやるべき一つの大きな仕事ではないか、こう思いますが、外務省のお考えをお伺いしたいと思います。

塩崎副大臣 お答え申し上げます。

 ただいまのメソポタミア湿原環境保全事業、先生は大変御熱心に今まで取り組んでこられましたが、これは第一フェーズが平成十六年の八月から昨年末まで実施をされてきたところで、我が国は、本件事業に対して、先ほどUNEPのお話がございましたが、これまで一千百万ドルの拠出をしてきたわけでございます。

 この事業は、大阪と滋賀に事務所を持ちますUNEP国際環境技術センターが実施機関となっているわけでありますけれども、第一フェーズでは、我が国等で湿原の水質管理や衛生分野等の技術研修を延べ二百七十人のイラク人に対して行ってきて、先ほど雇用効果の話がありましたが、そのとおりでございます。

 また、イラク南部六カ所にて、浄水装置を設置して飲料水を提供してきている。加えて、塩害を防ぐためにアシを植える。アシはいろいろ塩分とか燐とかを吸収する性質があるということで、こういう環境適正技術も試験的に導入をいたしまして、そのほかに、専門家会合、それから湿原情報ネットワークの構築等も実施して、イラク政府やイラク国民及び国際社会より高い評価を得ているというふうに考えておるわけでございます。

 UNEPを通じての取り組みとは別にまた、ことしの三月、JICAによる技術研修も実施しております。

 また、我が国としては、第二フェーズ、これは十八年度でありますが、UNEPに対して百万ドルの拠出を行う予定でございまして、技術研修の継続、発展を中心に、これまで行ってきた事業の成果をもとにさらなる協力を行っていきたい、このように考えております。

田端委員 今回のイラク撤収ということ、それは一つの大きな節目だと思いますが、しかし、イラクの人道復興支援はまだまだやはり大事だと思います。

 今後とも、日本としても、政府としても、できるだけのことをしていかなきゃならないという思いを込めて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

三原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 政府は、一昨日、サマワからの陸上自衛隊の撤退を正式に決定いたしました。イラク戦争が、大量破壊兵器の保有といううその情報に基づいた国連憲章違反の戦争であったということは、ブッシュ大統領の言明によっても明らかであります。

 また、自衛隊のイラクへの派遣は、そもそもアメリカの戦争と軍事占領を支援するものであり、現に戦闘が行われている国への自衛隊の派遣は憲法違反である、速やかに撤退すべきというのが私たちの見地でありました。

 ですから、イラクからの陸上自衛隊の撤退は、これは当然であります。むしろ、先ほどの委員の指摘もありましたが、遅きに失したということを厳しく私たちは指摘したい、このように考えております。

 問題は、陸上自衛隊の撤退によってイラクから自衛隊が引き揚げるというわけではない。むしろ、総理談話を読みましたら、バグダッドやエルビルなどへの輸送活動の継続、拡大が明示されているわけですね。今まで空自の活動の中心は、サマワで復興支援活動を行う陸自の人員や物資が輸送の中心であったわけですから、私たちは、陸自とともに航空自衛隊も引き揚げるべきだ、このように考えております。

 なぜ陸自と一緒に撤退しないのか。先日のマリキ首相の発言でも、基本的には多国籍軍からイラクへの治安、機構の権限の移譲を進めていく。これがイラク政府の方針であり、イラク国民の悲願だと思うんですね。多国籍軍は速やかにイラクから撤退し、自分で治められるようなイラクを早くつくっていきたい、このように思っているわけです。

 今、なぜ空自の活動を継続、拡大しなければならないのですか。

安倍国務大臣 この空自の任務自体は国連から要請があったものであるというのは、もう既にこの委員会で答弁をしているとおりでございますが、国連はイラクにおける復興支援の活動を拡充しております。その中において、先ほど来申し上げておりますように、アナン事務総長から、その活動拡充のための空自の輸送支援について要望を受けたところでございます。

 政府としては、人道復興支援活動としてこうした国連の活動を支援することは、我が国の貢献としてふさわしいものである、このように考えております。

 既に行っております多国籍軍への活動の支援に加えまして国連の活動の支援も行うこととしたのでございます。そして、新たにバグダッドやエルビルへの空輸を行うということを決定した次第でございます。

赤嶺委員 国連がイラクでの活動を拡充したいという願いを持っている。しかし、その国連職員の安全確保についてイラクでは大きな危惧が生じ、あのデメロ国連代表の、攻撃による死亡という事件もありました。なかなかできないでいる、苦労しながらイラクの復興支援を国連がやろうとしている、そういう非常に制約された条件下なんですね。そういう制約された条件下の国連の活動を、空自でなければならないのかという問題があると思うんですよ。

 同時に、空自は、二百人の隊員、C130を三機残して活動を継続するということになっているわけですが、国連の人員やあるいは物資輸送などについて、輸送機三機、空自隊員二百人といった具体的なニーズが国連の方から上がってきているんですか。

額賀国務大臣 先ほども話しておりますけれども、陸上自衛隊は、二年半にわたって、サマワ市内において、生活インフラとか教育だとか医療だとかさまざまな分野で仕事をし、きちっと自衛隊がやらなければならない基本的な、あるいはまた緊急性のある仕事は大体ほぼ完了した。治安の権限も移譲されて、個々の自治というものが、言ってみればイラク人の力で運営されていくことになった。そういうことで陸自の撤収がある。しかし、イラク全体の人道的な復興支援というのはまだ残されている。その残されている中で、国連等の要請もあり、空自の仕事は引き続いて継続するという判断をしたわけであります。

 ニーズについてさまざまのことがある、要請があるということで、政府は、官房長官がおっしゃるように継続することを判断したわけでありますから、私どもはきっちりと、現在のC130三機、そして人数を若干、十名ほどふやした中で今後のニーズに対応していきたいというふうに考えているところであります。

赤嶺委員 ですから、私が聞いたのは、長官、C130三機、空自をさらにふやしていく、これだけの具体的なニーズが国連から出されているんですか。いかがですか。

額賀国務大臣 これは日本の政府に正式な要請があって、我々もその要請の中身について、今どういうふうに対応できるかを調整しているということでございます。

赤嶺委員 私は、いわば国連がイラクの復興支援に当たる、しかし、一方で、イラクの国民は、外国の軍隊は早くイラクから出ていってほしい、そういうことを悲願のように願っている。そういう中で、国連を支援するなら別に空自でなくてもいいのではないかということを強く持つわけです。空自でなくても国連の支援はできる。それができないというのであれば、国連からの具体的なニーズについて、これは空自でしかできないというようなことをきっちり国民に対して、国会に対しても説明すべきでありますが、そういう説明は一切ありません。

 問題は、多国籍軍の支援ということにもなっておりますが、その中心は米軍であります。今、米軍がバグダッドでどんなことをしているか。最近も空爆が行われました。イラク戦争始まって以来の大規模な掃討作戦も行われているというぐあいに聞いていますが、外務省、今、米軍はどういう作戦を行っているんですか。

山崎政府参考人 とりあえず、事実関係については私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 国連の輸送需要につきましては、国連から、たしか数カ国あるいは十数カ国に対して支援の要請を行ったというふうに聞いておりますが、それに対して、支援が可能であると答えたのは日本だけというふうに承知をしております。十一月以降についてはデンマークも可能であるという話も聞いておりますが、とりあえず、国連としては、イラクにおける人道復興支援を強化していく際にぜひとも航空輸送について日本側の協力を得たいという要請を受けたというふうに聞いております。

 それから、米軍の掃討作戦については、先生よく御承知のように、中部あるいは北西部を中心に行われているというふうに承知をしております。

 以上でございます。

吉川政府参考人 赤嶺先生から御質問がありました最後の点、最近の多国籍軍、特にアメリカの軍事行動の内容、私ども、すべてを承知しているわけではございませんが、六月八日には、御承知のように、イラクにおける外国人テロリストの代表的な存在でありますザルカウィが殺害されたという発表がイラクの首相から行われました。

 その後、このザルカウィの死亡を受けて、イラクのアルカイダ組織の報復攻撃が行われるのではないかということが想定され、これを阻止するために現在バグダッドで大規模な作戦が着手されており、イラク軍、警察合わせて七万人投入される、そういう報告が出ております。

 これが、現在のバグダッドを中心とした多国籍軍の動きでございます。

赤嶺委員 今、米軍の掃討作戦が現に行われている地域であるわけですね。

 しかも、アルジャジーラの報道によると、バクバでは、米軍ヘリが養鶏農家を空爆し、ヘリから降下した米兵が家屋にいた住民を射殺し、負傷者を理由もなく拘束した、このように伝えているわけです。最近も、ハディサでの住民の無差別射殺の問題が明るみに出ました。

 結局、米軍の軍事占領というのは、アルカイダの掃討といいながら、無辜の民が犠牲になっている。そういう米軍の掃討作戦などの活動を支援する、そのためにバグダッドに空自が飛んでいく、安全確保支援活動として行う。そういうことは行うわけですね。いかがですか。

三原委員長 もう時間が来ていますから、これでおしまいですよ。

山崎政府参考人 航空自衛隊につきましては活動を継続いたします。

 国連の需要等が確定をし次第、エルビルあるいはバグダッド等について輸送を行いたいというふうに考えておりますけれども、多国籍軍の貨物需要につきましても、安全確保支援活動だけではなくて、多国籍軍自体がPRT等を通じて人道復興支援活動を中心に活動を行いつつありますものですから、多国籍軍に対する航空支援につきましても、安全確保支援活動だけではなくて人道復興支援活動も行っていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 もう終わりますけれども、政府が今行おうとしている空自の安全確保支援活動というのは、むしろイラクの混乱と泥沼化を一層続けるものであり、空自も速やかに撤退すべきであるということを申し上げまして、質問を終わります。

三原委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私にいただきました時間が八分でありますので、しかしながら、三大臣おいでですので、できるだけお三方に伺えるように、ちょっと早口になりますが、頑張りたいと思います。

 まず冒頭、安倍官房長官に予告外のことでお願いいたします。

 小泉総理のこのたびの記者会見を伺っておりますと、確かに、自衛隊員が無事に帰国するということは私どもも含めて皆本当に安堵の思いでありますが、一方で、このイラク戦争開始以降、我が国の大事な人材、例えば外務省のお二人の前途ある有望な外務官、奥大使に井ノ上書記官はお亡くなりでありますし、民間人も四人犠牲が出ておられます。私は、総理のメッセージといたしましては、自衛隊員が撤退するということと同時に、この間の犠牲についてもやはりお触れになるべきだと思いますが、安倍官房長官はいかがですか。

安倍国務大臣 このイラク復興支援において日本も責任を果たすという決意をし、実際に支援を行い、そして今回、サマワにおいての活動を無事終了するに至ったわけでございます。そうした間、今委員が御指摘されたように、奥大使また井ノ上書記官という二人の有為の人材の命が失われたということは痛恨のきわみであるのはもう言うまでもない、このように思っております。

 今回、自衛隊のサマワでの任務の終了については、これはサマワでの任務の終了であって、これからも、もう既にこの委員会で答弁をしておりますように、空自の国連の活動への協力、あるいはODA、そしてまた、例えばPRTへの協力等々があるわけでございまして、こうした活動は今後とも続いていくわけでございまして、すべての活動を終了したわけではないわけでございます。そのことは申し上げておきたい、こう思うわけでありますが、この間、繰り返しになりますが、総理も、お二人の貴重な命が失われ、また、邦人の命も今まで何人かの命が失われてきたことは、これは当然我々としても極めて残念である、このように思っているところでございます。

阿部(知)委員 私があえてこの問題に触れさせていただくのは、今、国民の思いといたしましては、例えば、空自が今後バグダッドあるいはエルビル方面に物資を運ぶときにも同じように危険があるのではないかという不安感を当然抱いております。

 私自身は、実はこの委員会の派遣で高村委員長のときに、たまたまバグダッドにございます国連の本部の出先機関に行かせていただき、その直後に奥大使と井ノ上書記官が狙撃によって亡くなられました。そのとき思いましたことは、なぜ彼らがあそこであのように死ななければいけなかったのか。今度新たに航空自衛隊が物資の輸送にかかわりますために、バグダッドにございます多国籍軍の司令部に一部派遣されて、情報を得ながら活動するということでございますが、残念ながら、我が国に入ってくる情報は極めて限られております。ほとんどが米国からのものとなりましょう。情報収集能力を持たない、あるいは制空権は持っておりませんから、非常に自衛隊の活動は不安な中に行わざるを得ないと思います。

 かてて加えて、これは額賀長官にお伺いしたいですが、私は先ほど伺っておりまして、例えば、陸自の活動が現在の基本計画と、当然、ある一部終了するわけですから、基本計画の変更も陸自の撤退後に考えるというお答えでしたが、航空自衛隊の活動は、今まで述べられております中には、このエルビルの空港とかは、少なくとも私の拝見したものの中には出ておりません。とすると、どこに規定されている活動をなさるのか。また、国際社会のPKOやPKFのスキームでもございません。こうやって法的にも計画的にもあいまいなものを続けていく、実は、奥大使と井ノ上書記官の赴任も、私が行ってみて拝見して、非常に危惧感を持った次第です。

 そういうことがありますので、額賀長官としては今なぜ基本計画の変更をなさらないのか、そして、これが私の勘違いであるならばエルビルはここに含まれていないと思いますので、どのように考えるのか教えてください。

額賀国務大臣 おっしゃるように、陸自の場合も、あらゆる情報収集、万全の安全体制をとりながら活動を展開してきました。空自においても当然のことでございます。したがって、その空港においても、実施区域としては、我々は安全確保の上からこれを公表しておりません。それはわかっていただけるのではないかと思っております。しかし、空自のC130が今週はどこへ飛ぶかということを考える場合には、万全の情報収集と安全を確保した上で飛ばさなければならないというふうに思っております。そして、人員、物資の輸送でありますから、それは一分一秒を争う時間の勝負ではないと私は思っておりますので、やはり、弾力的に安全を確保しながらそういう仕事、任務を遂行させる、そういう柔軟な状況判断ができる形で空自の仕事が結果的に目的を完遂できるのが望ましいというふうに思っておりますので、多国籍軍を初め、あるいはまたイラク、あらゆる情報を収集する中で仕事を展開させていただきたい。

 エルビルのことを公にしましたのは、ここを拠点に国連の活動が展開されていくということであり、国連の要請もあったので、エルビルということを公にしたということであります。

阿部(知)委員 そのようなものであったとしても、例えば平成十七年十二月八日変更の基本計画では、バスラ、バグダッド、バラド、モスルとなっておりますから、やはり基本計画なり国民に明示できる、そして国連がそこを拠点としているのであれば、当然、今額賀長官御自身がおっしゃったように既にわかっていることでありますから、私は、やはり基本計画として変更するならなさると言うべきであるし、その上で討議すべきだと思います。

 そして、恐縮です、最後に麻生外務大臣、お願いいたします。

 このイラク戦争が始まって以来、イラクに非常に大量の被害が一般人に起きた。そして、最も日本がやるべき支援は、十三の基幹病院のエンパワーメントだと私は思ってまいりました。そういうことで意見も言ってまいりましたが、いただきましたいろいろなこれまでの無償援助の中身を見ますと、救急車の寄贈であるとか、あるいは警察車のバスとかの寄贈とかございますが、実にコスト高でございます。それに比して十三病院のエンパワーメントは進んでおりません。

 救急車だってどこに運ぶかという問題がございます。これは、国外からの遠隔操作であったために非常にお金がかかり過ぎています。救急車も七百台で三十五億、そして、その間でいろいろコンサル料にとられるお金が一・八億、ただでもODA予算が厳しいという折ですから、何が削減できるかを考えるべきであると思いますが、今後、治安の悪い中でイラクのこのODAを開始されるわけで、お考えはどのようにあるか、お教えください。

麻生国務大臣 イラクの治安状況というのが一部回復しつつあるとはいえ、全体的に見れば極めて不安定な状況にある、予断を許さないということにあるという認識は共有をいたしておると存じます。

 そういった中で、いわゆるこのODA関係を含めまして、援助関係者の安全というものを前提としてこれはODAを実施していくということになりますから、コスト高に必ずなります。当たり前のことだと存じます。治安のいいところでやるODAと治安の悪いところでやるODAとは、こっちの方がコスト高になるのは当然です。そういったものにある程度コストの経費がその分だけかかりますので、そういった意味では、その中で日本人の安全を考えると、邦人を中に入れないという形で、現地のイラク人を使う、コンサルタントを使う、また、隣国のヨルダンから遠隔操作をする等々いろいろな形で今もやっておりますけれども、こうした遠隔操作というものの方がコストはかかるというのは、もう間違いありません。

 したがって、治安状況がよくなれば、その遠隔操作の分が減りますし、現地に入りやすくもなりますでしょうし、いろいろな形でそこの分のコストが削減されていくと思いますが、一番の基幹の電力等々が破壊されていますから、いわゆる病院のエンパワーメントをやろうにもそのパワーのもとがないんですから、そういった意味では、たんびたんび臨時電力というわけにもいきませんので、そういった意味での電力等々、また、それに搬送いたしますためには道路などがきちんとしていくということが大事だろうと思いますので、残り三十五億ドルというものの円借款によります支援というものは、これは中心になっていくとは存じますけれども、そういった中で、今言われましたような点はこれは十分工夫が要るんだと思いますけれども、イラクの復興に関しましては、今言われましたように、治安情勢というものが改善をされない限り、いろいろ工夫をやっていかねばならぬところだと、私どももそう思っております。

阿部(知)委員 治安の回復のない中で、このODAということを極めていびつに行おうとしていると私は思います。またこれも、別途改めて審議させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

三原委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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