衆議院

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第6号 平成19年5月7日(月曜日)

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平成十九年五月七日(月曜日)

    午後一時二分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石破  茂君 理事 渡海紀三朗君

   理事 中谷  元君 理事 西村 康稔君

   理事 松浪健四郎君 理事 神風 英男君

   理事 原口 一博君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    赤池 誠章君

      伊藤信太郎君    伊藤 忠彦君

      石原 宏高君    今村 雅弘君

      宇野  治君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    金子善次郎君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      清水鴻一郎君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君  とかしきなおみ君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      橋本  岳君    藤田 幹雄君

      町村 信孝君    松本 洋平君

      宮澤 洋一君    山内 康一君

      吉川 貴盛君    池田 元久君

      楠田 大蔵君    古賀 一成君

      後藤  斎君    武正 公一君

      中川 正春君    長妻  昭君

      伴野  豊君    山井 和則君

      江田 康幸君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

    …………………………………

   議員           末松 義規君

   議員           原口 一博君

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 菅沼 健一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    原田 親仁君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   辻   優君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  千田  彰君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     藤田 幹雄君

  大塚  拓君     赤池 誠章君

  松本 洋平君     亀岡 偉民君

  三原 朝彦君     小野寺五典君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     とかしきなおみ君

  小野寺五典君     三原 朝彦君

  亀岡 偉民君     山内 康一君

  藤田 幹雄君     越智 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   大塚  拓君

  山内 康一君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)

 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出、衆法第一九号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び原口一博君外四名提出、イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木敏郎君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、外務省大臣官房参事官菅沼健一君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省欧州局長原田親仁君、外務省中東アフリカ局長奥田紀宏君、防衛省防衛参事官辻優君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君、防衛施設庁施設部長渡部厚君及び防衛施設庁建設部長千田彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則です。

 これから政府案そして民主党案について一時間質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは資料を、新聞報道を中心に四枚、四ページと振ったものをお配りさせていただきましたので、これも参考にさせていただきながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず、政府にお伺いをしたいと思います。

 この私の配付資料、共同通信のイラク・マリキ首相への単独会見、この資料を見るまでもなく、航空自衛隊は年内にも不要である、需要はそれまで続かないであろう、それよりも文民支援を望む、そういうことが単独記者会見で、まさに支援を求める側のイラク・マリキ首相から発言をされました。まさにこのことは日本の方針と現地のニーズ、要望というものに大きなずれがあるということが如実に証明をされたということだと思います。

 まず、このイラク首相のコメントについて政府の御感想をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘の報道につきましては、五月の六日イラク政府に確認をしたところ、マリキ首相はあくまで物事が順調に進めば近い将来にイラクに多国籍軍がいる必要はなくなるであろうという希望を述べたにすぎず、航空自衛隊の活動継続を求めるとの従来のイラク政府の立場は何ら変わっておらず不変である、イラク政府としてはこれを可能とする法案が日本の国会で承認されることを願っているとの説明があっているわけです。

 以上の説明はイラク政府のムハンマド・サルマーン首相府官房長代理がマリキ首相本人に発言の意図を直接確認したものであり、当人から本件の報道により日本・イラク間で誤解が生じてはいけないのでとの前置きで我が方の大使館に連絡があっております。

 以上です。

山井委員 そもそも相手の首相が年内にも不要であるということを言っている。それに対してなぜ今回二年延長という法案を出してくるのか。この二年という根拠について答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 今のマリキ首相の発言につきましては、今麻生大臣の方から申し上げたとおりでございますが、なぜ二年なのかということでありますけれども、まず、空自の活動が、マリキ首相から書簡が来ておりまして、主要かつ死活的役割を果たしているという書簡があり、空自の活動継続を求めるイラク政府の希望は、今確認された発言があったとおりであります。

 また、国連や多国籍軍からの期待も高いということもございまして、これは我が国として主体的に判断をするというかねてからの方針のもとでイラク特措法の二年間の延長を国会にお諮り申し上げているところでございます。

 これにつきましては、例えば、今月の四日にエジプトで麻生大臣が潘基文国連事務総長と会談した際にも、事務総長から、自分としては可能な限り長期にわたって空自の支援を継続してほしい、当面多国籍軍の駐留が必要であるという旨の発言もあったところでございまして、我が国としても、一日も早くイラクの治安の回復や復興が進むことを望んでいるわけでありますけれども、今のような理由で引き続き積極的な支援を主体的に行ってまいりたい、このように考えているところでございます。

山井委員 繰り返し質問をさせていただきますが、私は、なぜ二年なんですかということを聞いているわけです。それについて御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 イラク特措法の目的というのは、御案内のように、イラクの自主的な再建に向けたイラクの国民による努力を支援するということで、まず第一に、再建にはかなり長期的な見通しが不可欠だということでございます。それから、イラク情勢の現状をよく見てみますと、治安の安定化を図って復興を目指していく上では、ある程度時間が必要なのは自明であるわけでありますし、先ほど触れましたマリキ首相から来た書簡にございますとおり、空自の活動継続を求めるイラク政府の希望が強い、さらに、さっき申し上げたように、国連の、そしてまた多国籍軍からの日本の空輸支援に対する継続への要望というものも非常に大きいということでございます。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、イラク自身による努力も時間がかかる、そして、多国籍軍も相当程度の時間駐留するだろう、そしてまた、国連も同様に継続した支援活動を続けていくという中にあって日本の空自に対する希望というものを出されているわけでありますので、そういうものを判断材料にして私たちは二年ということを決めたわけでございます。

山井委員 これは、五月四日のときに、年内にも不要と言っているわけですよね。そこが今の答弁を聞いていても全く理解できないのが、なぜ二年なのかという合理的な根拠なんですよ。これは、政府内の議論としては、一年という議論も当然あってしかるべきだと思うんですよね。そこがなぜ一年でも三年でもなくて二年なんですか。どういう議論のもと、二という数字になったんですか。お答えください。

塩崎国務大臣 これも、イラクの今の現状を見て、これが安定的な国家運営になるためにどのくらいの時間がかかるだろうかということを推測いたしますと、これはかなり時間がかかるだろうというふうに思うわけでございます。それは、特に治安情勢についてであります。

 それから、今回もそうでありますけれども、多国籍軍と国連と双方からの継続要望というのが来ているわけであって、それぞれが、例えば年末までとかそんなことを言っているわけでは決してなくて、むしろ、少し長いスパンでこの支援、多国籍軍を含めた国際的な支援を続けていくという考え方があり、また国連も、ある程度の長い時間をかけてイラクの復興に支援を送っていくということを言っているわけで、その中から空自に対する、この輸送について、特にバグダッドからエルビルまでなどに国連の職員は民間機には乗っていけないというふうなルールもこれあり、日本の自衛隊による空輸に期待をしているというところがあるということで、こういった活動が続く限り応援してくれるとありがたい、こういうことだろうということで、我々は二年間という判断をしたということでございます。

山井委員 今の答弁を聞かれた方はだれも、なぜ二年なのかというのが全く理解できないと思います。

 繰り返しになりますが、相手側がこれはもう年内で不要になるだろうということを明言しているわけなんですよね。そのことに対して、なぜ二年なのか。

 そしてまた、この資料の三ページにも書いてありますが、例えばアメリカでも、民主党から、来年三月までにイラクから撤収すべきだ、そういう補正予算案も出ているわけですよね。本家本元でそういう流れになっているときになぜ日本が、私たち民主党はそもそも延長は反対ではありますが、これが二年なのかということが全く今説明もできないわけではないですか。

 民主党の提出者にお伺いをしたいと思います。

 このようなマリキ首相の発言についていかが思われますでしょうか。

原口議員 お答えいたします。

 今回の首相の発言はやはり重いと思います。先日訪日されたときも、マリキ首相が我が国に一番何を求めていらっしゃるか。それは、自衛隊の活動については感謝をお述べになりましたけれども、一番求められたのは投資でありました。イラクが求めていることと、それから今日本がやっていることとの間にそごが生まれているのではないか。

 もっと言えば、ハシミ副大統領は私たちとの会談の中で、米軍がテロリストとそして武力勢力を分けずに掃討している、そのことによって地域社会がどうなっているか、そういう問題提起もございました。

 また、この四月には、マリキ首相が多国籍軍の撤退期限を決めなかったということで六人の閣僚が辞意を示すなど、やはり、さまざまな国に対する支援の思い、イラクそのものの思いと、我が国がやっていることとの間にそごが生まれている、このように考えるのが妥当ではないか、こう思っております。

山井委員 まさに原口議員の理解が真っ当な受けとめ方だと私は思います。

 イラクの当事者が求めているものと日本のその支援のあり方がずれてしまっている、そのことを如実に今回のマリキ首相の発言は示しているのではないかと思います。

 そしてまさに、この週末には、イギリスの地方選挙において、ブレア首相率いる労働党が大敗をいたしました。そして、今週にもブレア首相は辞任の時期を発表するというところまで追い込まれております。そして、この資料の二ページにもありますように、時事通信のニュースでありますが、ブッシュ大統領の支持率も最低の二八%、七九年のカーター氏以来というふうな状況になっております。

 これはまさに、本家本元、もともとイラクへの先制攻撃をしかけたアメリカやそしてイギリスにおいて、イラクへ戦争をしかけたこと自体が誤りであったという世論が巻き起こってきている。そういう中でのこの二年延長という法案をなぜ今日本で出してくるのかという議論になってくると思います。

 そこで、この戦争の大義というものについてお伺いしたいと思います。

 アメリカでもこれだけ中間選挙で共和党が大敗を喫し、そして、この中間選挙の争点はまさにイラク派兵の問題であったわけですね。そして、イギリスの地方選挙においても、ブレアのイラクへの進攻というものが大きな争点になったわけであります。大量破壊兵器は実際にはなかった、アルカイダとの関係もなかった、そういう中で、それに対して、イギリス、アメリカはさまざまな形で首相や大統領が反省の意を表されているわけです。

 そこで、お伺いをしたいと思います。

 この日本のイラク戦争への支持、このようなものというのは本当に正しかったのか、このことについて久間防衛大臣にお伺いしたいと思います。

久間国務大臣 アメリカが武力行使に踏み切ったときに、日本の時の政府としては、総合的に判断してそれを支持する、そういう態度を表明したわけでありますので、今の内閣もそれを踏襲しておるわけでございますから、そのとおりだと思っております。

山井委員 しかし、当時、大量破壊兵器がある、アルカイダとの関係があるというふうに決めつけていた。しかし、それが実際はなかったということが明らかになったわけですよね。だから、その現実が変わった以上は、やはり今、日本政府としても、このスタンスというものを再考すべきではないですか。久間大臣、あのときと状況は全く変わっていないとお考えですか。

久間国務大臣 その当時、私は閣内にいたわけではございませんから、どういう根拠で支持に踏み切ったかは、総合的に判断してという閣議決定を見る以外にはうかがうことはできませんけれども、私は、あのときの日本の立場として、支持するかしないか、どちらがいいかという判断で支持する方に回ったんだと思っておりますし、現在の政府もそのときの支持が正しかったということを言っているわけでございますから、私は、それが現在の政府の立場だと思っております。

山井委員 何か、話を聞いていると、アメリカがこう言ったから日本もそれについていった、それ以外の中身はないように思います。

 本当に主体的な外交のかけらがどこにあるのかというふうに思いますが、この点について、民主党の提出者、いかがでしょうか。

原口議員 お答えいたします。

 久間防衛大臣の御答弁を伺っていると、やはり苦しい答弁だなというふうに思います。政府はあのとき何とおっしゃっていたかというと、大量破壊兵器がないという挙証責任はイラク側にある、その挙証責任を果たさない、そのことにおいて攻撃を正当化するんだ、こういうお話でした。

 しかし、この挙証責任はどうだったのか。アメリカみずからが、みずからの総括をしているわけです。みずからで調査をし、みずからその大量破壊兵器はなかったということをアメリカが認めている。この段階において、挙証責任がどのようになっているか、そこから議論をしなければいけない。まさに大量破壊兵器はなかったわけで、武力行使の根拠たるものが崩れている。今なおそのことを政府は……(発言する者あり)結果論だ何だということで言っていますけれども、それは無責任な姿勢ではないか、このように考えます。

山井委員 まさに、結果というのは非常に重いと思うんですよね。大量破壊兵器があるのではないかということで先制攻撃に踏み切った、しかし実際にはなかった、これは大変な問題であります。

 そして、アメリカでもイギリスでも、このことに関して謙虚な総括というものをブッシュ大統領もブレア首相も行って、ブレア首相も、その責任も大きな一つの理由となって辞任を表明しているわけなんですね。

 久間大臣に改めてお伺いしますが、やはり日本としても、このアメリカ、イギリスの情報をうのみにして戦争を支持した、この大量破壊兵器が実際にはなかったということに関する総括というものが必要だと思いますが、久間大臣、いかがでしょうか。

久間国務大臣 うのみにしたと言いますけれども、うのみにしたのかどうかは、それはまたそのときの判断ですけれども、あのときの閣議決定を読み返しましても、総合的に判断して支持に踏み切ったというような、そういう表現になっておりますから、大量破壊兵器、特に核兵器があるというふうなことを、日本としてもそれを確認して踏み切ったというような表現になっておりませんから、総合的に判断してアメリカが武力行使に踏み切ったことを支持するということになっておりますから、そこのところは若干ちょっと、踏み切った当事の国とそれを支持した国とでは違うんじゃないかなというニュアンスは私自身は持っております。

山井委員 何か今の答弁を聞いていると、アメリカは大量破壊兵器があるということで踏み切ったけれども、それに賛成した日本は必ずしもそれが重要なポイントではなかったということですか。そんなことを今ごろ言い出したら、政府がイラク戦争を支持したその根拠自体が、これはまたうやむやになってくるんじゃないですか。

 この点について、民主党の提出者はいかがですか。

原口議員 私は、大臣の答弁を伺っていて、二つの点で指摘をしておかなきゃいけない。

 今の政権は前の政権と連続していますよね、自公政権です。だから、前の政権がどういう根拠に基づいたかというのはきっちり説明をしていただかなきゃいけない。これがまず第一。前の政権がどうだったかわからないけれどもという答弁ではやはり納得がいかないだろうと思います。

 それから二つ目は、では、そのイラク戦争支持のときにどのような会議が開かれていたのか。先月も答弁いたしましたけれども、国家安全保障会議は開かれていません。どういう根拠によって支持をするのか、これは国連決議についての解釈も、当時、予算委員会で私たちは随分ただしました。国連決議の有権的解釈権は外務省にあるはずです。その決議に対する解釈を聞いたんですが、当時は何と、今はその解釈を示す立場にありませんというような形で逃げていた。そして、今ここに至って、総合的に判断したというこの一言だけでその支持を正当化する。何の説明もしていないというふうに私は思います。

山井委員 久間大臣、これはだれが聞いても、総合的に判断したなんて一言で片づけられる問題じゃないですよ。具体的に中身を言ってください、総合的にの。

久間国務大臣 ここであえてその当時の閣議決定を読み直してみましても、

 イラクは、十二年間にわたり、十七本に及ぶ国連安保理決議に違反し続けてきました。イラクは、国際社会が与えた平和的解決の機会を一切活かそうとせず、最後の最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしませんでした。

  このような認識の下で、我が国は、我が国自身の国益を踏まえ、かつ国際社会の責任ある一員として、我が国の同盟国である米国をはじめとする国々によるこの度のイラクに対する武力行使を支持します。

というようなことでありまして、大量破壊兵器を持っているからということではなくて、「努力に応えようとしませんでした。」そういうような中で、我が国の国益を踏まえ、我が国としては支持します、そういう流れでございますから、我が国が認定したわけではないということを、ひとつちょっと御理解しておいていただきたいと思うんです。

山井委員 全くそれは理解をできません。

 それで、今回のイラクについて、一つ、きょうお配りした資料にもありますが、三ページ目、イラクの航空自衛隊、八割以上は多国籍軍を運んでいる、こういうことがあるわけですね。先ほどのイラクの首相の発言にもありましたけれども、やはりこれは、日本に望んでいるものと実際やっていることとがかなりずれてきてしまっているという、これも一つの如実に示している例ではないかと思いますが、このような現状に関して、人道復興支援から逸脱しつつあるのではないかということについて、いかが思われますか。

塩崎国務大臣 現在のイラク特措法に基づく自衛隊の活動は、国連それから多国籍軍の活動に対する支援が中心でありますけれども、国連はもとより、多国籍軍も、治安維持のための活動のほかに、医療施設、学校等の公共施設の再建といったインフラ整備に当たる、そういう復興支援の活動にも取り組んでいるわけでございます。

 国連及び多国籍軍によるこのような復興支援の活動を支援するための空輸というのはイラク特措法上の人道復興支援活動に当たるわけであって、政府としては、現行の基本計画にあるとおり、イラク特措法に基づいて、引き続いて人道復興支援活動を中心とした対応措置を実施する方針だということで、今回も延長をお願いしているということでございます。

山井委員 この復興支援についてはまた後ほど戻ってまいりますが、久間大臣に、またちょっと別の観点からお伺いしたいと思います。

 きょうのこの新聞報道にもありますように、久間大臣は、武器輸出三原則を見直すということを、アメリカで講演で発言されているわけなんですね。昨年の核保有論議といい、こういう武器輸出三原則のなし崩し的な見直しといい、これはやはり日本の国のあり方が根本的に崩れつつあるのではないかと私は思います。

 久間大臣、この武器輸出三原則の見直しということ、こういう発言をされたその真意について答弁をお願いします。

久間国務大臣 ちょっと今のおっしゃり方は正確じゃございませんで、私が見直すなんということを言っているわけじゃございません。私は、当委員会でも、おたくの前原議員の質問に対して答えましたけれども、武器輸出三原則は、官房長官談話によってあのような形でやられておりますけれども、ミサイル防衛については、共同研究あるいは共同開発、こういったことに窓口を開いたわけであります。

 しかしながら、これから先いろいろな開発をしていくときに、研究コストが、非常に新しい世代の飛行機でありますとか輸送機でありますとか、いろいろなことになってきたときに、かなり開発にかかるから、それを日本単独でやる、あるいはどこかの国が単独でやる、それだけでいいんだろうか、研究開発については、両方で、お互い一緒に研究し合って出す方が、今度はそれを購入するときもコストが安くなりゃせぬかというようなことで、そういう分野については今から先もう研究していいんじゃないかというような、そういう答弁をしたことがございます。

 そういうような趣旨のことを私は申し上げたわけでありまして、今見直すとかそういうことを言っているわけじゃなくて、これから先、そういうように非常に研究コストがかかってくるときに、どういうあり方がいいのか、そういうことについて真摯な気持ちで取り組んだらどうかというようなことを、前から私は思っておりますので、そういう気持ちを聞かれたときに述べたわけであります。

山井委員 まさにそれが見直すということではないんですか。

 麻生大臣にもこれをお伺いしたいと思います。

 このことに関して麻生大臣はいかが思われますか。

麻生国務大臣 今の久間大臣の答弁について私がどう思うかというのが御質問の趣旨ですか。(山井委員「はい」と呼ぶ)

 コストを考えてみたりすると、日米防衛協力というのをやっておりますので、日米関係で、BMD初めいろいろコストのかかるというものが出てまいりますので、そういったものを共同研究をやっていった方がコストが下がることははっきりしていると思いますが。

山井委員 これは、日本は武器輸出三原則というものを持っているわけですよね。では、それの歯どめというものに関してはどう考えられますか。

久間国務大臣 まず、踏み切るか踏み切らないか、これはまた別な話でございまして、日本の国益としてそれをどう取り上げるか、これは国会の議論も踏まえながらやっていかなきゃならないわけでありますから。

 しかしながら、例えばこれから先、生物化学兵器等についても、バイオ関係で、例えば我が国の技術が非常にすぐれている、そういうふうにした場合に、バイオ攻撃があったときにどう対処するかということについて共同研究しようじゃないかと持ちかけられたときに、それに対してノーと言うべきか、一緒になって研究しましょうよ、一緒になってこういうような防護服をつくりましょうよというようなことが悪いのかいいのか、そういうようなことについて、今までは一切そういうのは、要するにBMD以外はだめですとなっているけれども、それでいいのかなという思いがあるからそれを素直に言ったわけで、むしろ、おたくの党の中にもこういう意見を持っておられる方はたくさんおられますよ。

 だから、そういうような真摯な気持ちで取り組む必要もあるんじゃなかろうかということを言ったので、これは、政府としてそれに踏み切るとかそういうことじゃございませんから、そこのところはひとつ御理解をしていただきたいと思います。

山井委員 麻生大臣にもお伺いしたいと思います。

 武器輸出の三原則の見直しを検討するんですか、そうしたら。検討するということに関して、麻生大臣はどう思われますか。

麻生国務大臣 基本的には今の久間大臣の答弁と同じことになるんだと思いますが、これは、武器輸出三原則というのは今後とも引き続き慎重に対処するというのは従来の方針だと存じます。

山井委員 またこのことは後ほど触れさせていただきたいと思います。

 では、いろいろ聞きたいことがありますので、ちょっと質問が飛びますが。

 安倍総理、今回アメリカに行かれました。そして、アメリカで従軍慰安婦問題に関してはどのような発言をされたんでしょうか。お答えください。

塩崎国務大臣 質問通告がないものですから、手元に何もないままに答えなきゃいけないので大変正確性に欠くと思いますので、それを踏まえた上でお答えをすれば、たしかブッシュ大統領に対して、個人としても、慰安婦の皆さん方の置かれた状況について大変心を痛め、また申しわけなく思っているということを率直に申し上げたというふうに聞いております。

山井委員 それは謝罪をされたということですか。

塩崎国務大臣 今申し上げたとおりであって、河野官房長官の談話でいつも申し上げているとおりで、あれ以上でも以下でもないということであります。

山井委員 これは、四ページ目に「「同情とおわび」を表明」という毎日新聞の報道があります。「安倍首相の謝罪、米側は評価」、こう書いてあります。

 念のため、もう一回お伺いをしますが、これは、安倍首相は謝罪をされたということなんですか。

塩崎国務大臣 ブッシュ大統領に謝罪をする理由は余りないと思いますね。

山井委員 そうしたら、従軍慰安婦問題について同情とおわびを表明ということですが、おわびは表明されたわけですか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、ブッシュ大統領におわびをする理由はないと思いますね。

山井委員 それでは、ブレア首相が今回地方選挙で大敗をされた、ブッシュ大統領も、この資料にありますように、イラクの問題で今非常に支持率が低下している、こういう状況なわけですね。そういう状況で、やはりこれはもう国際的に、これはやはりイラク戦争は間違っていたんだ、そういう世論がアメリカでもイギリスでも多数派になっているのは、これはもう自明のことであります。

 そこで我が党は今回法案を提出したわけでありますが、この民主党の提出した法案の趣旨及び具体的内容を民主党の提出者、お願いいたします。

原口議員 お答えいたします。

 まず、この法律案は、イラクに対する国連加盟国による武力の行使が正当性を有していない、先ほど委員がるるお話しになっているとおりでございます。非戦闘地域の概念が虚構の概念である等の理由により、特措法の法的な枠組みが今や完全に破綻をしている。

 また、この連休中、私たちは、実際にイラクにおける日本の自衛隊の安全確保がどのようになっているのか現場を見たいということで、視察団を送って、イラクに入ろうとしました。それさえかなわない。実際に安全確保ができているかどうか、私たちは政府からもきっちりとした答弁をいただいていません。

 こういう理由により、イラク特措法を廃止するとともに、現在行われている対応措置の終了に関し、必要な範囲内で特措法の規定が効力を有するように経過措置を規定した、これがこの法律案の中身でございまして、趣旨でございます。

山井委員 続きまして民主党にお伺いしたいと思います。

 イラクの武力行使に関する民主党の認識というものをお答えください。

原口議員 先ほどから申し上げておりますとおり、イラクに対する武力行使の国際法上の、あるいは国際法と正義に基づく、どこに根拠があったのか、これをずっと私たちは委員会でも国会でも質疑をしてきました。その根拠については、当時、イラクにおける挙証責任、そして大量破壊兵器の保持ということが大義になっていたわけですが、まさにそれ自体が今や崩れ去っている。政府は、湾岸戦争時の国連安保理決議を出して、また武力攻撃を容認していない国連安保理決議一四四一を根拠にこれを支持していて、私たちはこれを厳しく批判してきたところでございます。

 ところが、当時、あれはパウエルさんの国連演説についても、六ページ目から十六ページ目、これはいかがなものか、私たちはその大量破壊兵器の根拠とされるものについても随分な議論をしてきました。そのことについては何も耳をかさずに、ただただアメリカの決断に追随するだけでは、本当の意味での正しい選択をしたとは言えない、このように考えております。

山井委員 そこで、麻生外務大臣に現在のイラク情勢についての認識というものをお伺いしたいと思います。どのように認識しておられますか。

麻生国務大臣 今のイラク情勢については、バグダッドを中心に厳しい情勢になっておると理解をしております。北部のクルド地域は安定しておるというのはもうよく言われているとおりでもありますので、地域によってかなり差がある。

 テロ等々、宗派間の対立が激化をしておるということだと思っておりますが、他方、今申し上げましたように、バグダッドで新たな治安対策というのが始まっておりますし、まだその答えは結果が出てくるまで来ていないとは思いますが、南の方の状況も御存じのようなことになって、よくなってきつつあるということは、自衛隊が撤退、またイギリス軍も南部から撤退、権限が移譲されているということは、南部地域等々はよくなってきているということだと私どもは理解をいたしております。

 したがいまして、この間の五月の三日、四日、エジプトのシャルムエルシェイクでイラク・コンパクトの発足に関する閣僚会議というのをやらせていただきましたけれども、この会合の中におきましても、イラクの復興、安定化に関して世界じゅうの希望が示されると同時に、マリキ首相を初め、以下から、いわゆる治安対策プラス国民の融和というものがない限りは、これは安定化しませんよ、治安の安定化はしませんということを日本からも言い、結果として、治安の改善、また国民融和等々、困難な問題は抱えておるけれども、我々としては全力を挙げてまいりたいという決意表明がなされております。

 したがいまして、今申し上げました、イラクの現状だけを見た場合は、バグダッド周辺に主に問題がある、北部地域、南部地域等々においては、かつてと比べて治安情勢はよくなったというように理解をいたしております。

山井委員 まさにこれは本当に内戦状態に突入しつつあるのではないかというふうに私は思うわけですが、現在のイラク情勢に関する認識について民主党の提出者にもお伺いします。

末松議員 お答えします。

 二〇〇三年三月に攻撃が起こって四年たつわけですけれども、依然として米軍の武力攻撃をもっても状況が不安定、さらに最近は自爆テロ等が始まってから毎日数十人程度あるいは数百人程度亡くなっているという状況、これはまさしく内戦と言ってもいいような状況だろうと思います。

 先ほど麻生外務大臣の方から、北部それから南部については治安状況がよくなってきているんじゃないか。そういう点が見られないことはありませんけれども、依然、中部に対しては非常に大きな米軍等増派をしなければいけないような不安定さが出てきておりますし、私が一九八〇年代半ばに在バグダッドのイラク大使館に勤めておったところを見ても、先ほど融和という話がございましたけれども、スンニ派、シーア派の対立、そしてクルドの対立、非常に潜在的にすさまじい対立がございまして、それをサダム・フセインが石油収入と部族長に対する融和政策によって力でもって治めていった。それが外れたということで、大変不安定な状況はこれからも続くものと考えております。

山井委員 先ほど麻生大臣から、バグダッド周辺は非常に不安定というか危険というか、そういう趣旨の答弁がありました。まさにそのバグダッドに航空自衛隊が行っているわけなんですが、現状のイラクは戦闘地域なのか非戦闘地域なのか、これは何度も議論になったことですが、改めて麻生大臣に今の状況をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、クウェートから飛んでまいりますバグダッドに至るまでの経路に関しましては南部に属しますので、その地域は当然のこと非戦闘地域だと存じておりますし、バグダッド周辺の中におきましてもまたエルビル周辺におきましても戦闘地域という認識はありません。

山井委員 この点について民主党の提出者にもお伺いします。

末松議員 この戦闘地域、非戦闘地域が、政府の言っていることが虚構であると我々は言ってきたわけですけれども、それの前提として、だれが戦闘を行っているかというのが大きな要素の一つになっているわけです。国及び国に準ずる者というものでございますが、国は、イラクではもう今新しい政府ができたわけですけれども、国に準ずる者ということで、この国に準ずる者というものを、武装勢力というものは国に準ずる者でないという理解がございますから、結局、このこと一言でもってイラクに戦闘地域はないというふうに断じてきているのが今までの議論であったと思います。

 ただ、これであれば、非常に大きな武装勢力であって、組織的そして継続的、さらに国際性を有しているということのこういった武装勢力は入らない、該当しないという話になってしまいますから、それであれば、非常に危険な状態であるのに非戦闘地域だということになってしまう。そこが政府が言っている非戦闘地域だということの矛盾であろうと思います。

山井委員 これは本当に、イギリスの飛行機もロケットミサイルで撃墜をされたということもバグダッド市の周辺ではあったわけであります。

 そこで、久間防衛大臣にお伺いしたいんですが、日本の航空自衛隊が何らかの攻撃を今日まで受けたということはございましたか、なかったですか。

久間国務大臣 直接攻撃を受けたということは聞いておりません。

山井委員 撤退についてまた塩崎官房長官にお伺いしたいんですが、結局これはイラクのニーズというよりも、やはり今撤退するとアメリカとの関係が悪化するんじゃないかとか北朝鮮問題に影響するんじゃないかとか、結局そういうことが一つの理由になって撤退できないんじゃないかというふうに思えてならないんですが、その点についてはいかがですか。

塩崎国務大臣 日本がイラクの復興を支援していこうということは、今おっしゃったような米国との関係とか、あるいは北朝鮮などで米国等の対応にいろいろな問題が起きるんじゃないかとか、そんなことを御指摘になったようでありますけれども、あくまでも日本は日本の独自の判断で、特に日本の国益と国際的な責任というか役割を考えた上での決定であり、またそれを続けていこうという方針だということだと思います。

 特に、国際社会の共通の重要課題としてイラクの安定と復興というのがあることは当然のことでありますし、御案内のように、日本は石油資源の九割近くを中東に依存している、こういう極めて重要なところの安定性というものが大事であり、また、イラクの新たなる国づくりをするためのサポートをしていこうということでやっているわけであります。

 今後、さっき申し上げたように、国連もそれから多国籍軍も数年はこれから支援を続けていこうということでやっているわけで、直接国連の事務総長やマリキ首相、先ほどの新聞報道は我々も確認をした結果、必ずしもこの報道は正しくない表現をされているわけであって、あくまでも我々、直接マリキ首相からも継続を頼まれているということであって、そういうようなことを踏まえた上で主体的に我が国として決めているということであるわけでありますから、今御指摘のような理由ではないというふうにお考えをいただければいいと思います。

山井委員 同じ質問を民主党の提出者にもしたいと思いますが、こういうふうないろいろな諸般の事情というんですか、そういう配慮で撤退ができないんじゃないか、そういうふうな見方があるわけなんですが、この点について民主党の提出者はいかがでしょうか。

原口議員 どのような根拠で撤退をしないのか、あるいはどのような法的枠組みが機能しているのか、それに対する納得のできる答弁はやはりなかったと思います。なかったということであるからに、このことからすると、何かほかに理由があるのかなと委員が思われても仕方がないのかもわかりません。

 ただやはり、国益に準じて主体的に判断をしている、私たちとしてはそう考えたいんですが、先ほどの御質問に付随して答弁をすると、アフガニスタンのテロリストに対しては、自衛権の行使に対して我が国がその戦争を支援していると先日久間防衛大臣はお答えになりました。だとすると、今のイラクはどうなのか。アメリカのブッシュ政権はテロリストとの闘いということを言っています。ということは、このテロ掃討作戦、これを支援する法律を私たちはイラクでもうつくっているんじゃないか、それを安全確保支援活動と読みかえているだけではないか、このように考えます。

 アフガニスタンにおけるテロリストが国または国に準ずる者である、だからこそ、自衛権の行使としての戦争をアメリカはしかけたのではないか。当時イラクはこのテロリストとは無関係とされていましたが、今起きていることは、そのテロリストが国境を越えてさまざまに入ってきて、そしてそれをもとに内戦の状況になっているのではないか、このように考えております。

山井委員 今原口議員からも御指摘がありましたが、先日、我が党の後藤議員そして内山議員のテロ特措法についての質問の中で久間防衛大臣は、例えば後藤委員の質問に対しては、戦争をすることについて、これは支援する法律に実はなっておりますという答弁、また内山委員の質問に対しては、アメリカの自衛権に基づく戦争を法律をつくって支援しようというふうに答弁をされているわけなんですね。これはどういう意味ですか、改めて説明をお願いします。

久間国務大臣 テロ特措法とイラク特措法を読んでいただければ、その目的のところの書きっぷりの違いがわかると思いますけれども、テロ特措法では、国連の決議によってテロの脅威から除去するため、あるいはテロを撲滅するために云々というようなことも書かれておりますけれども、イラク特措法ではそういうことは一切書かれていないわけですね。

 イラク特措法の方は、戦争が終わってしまって、イラクの復興あるいはまた安全確保支援活動、この二つをやるために自衛隊を派遣するということで、二つの法律の違いを強調したかったために戦争支援法というふうな、そういう言い方で私は答弁しました。テロ特措法の方ですね。それに対して、それはどうかと言われましたので、その後の委員会で、まあ、戦争を支援する法という言い方がもし適切でないなら削除してもらいたいということを言いましたけれども。

 いずれにしましても、二つの法体系は違うということでありまして、しかも、テロを撲滅するために闘っているアメリカを支援するという法律をつくるときには、最終的には民主党さんも反対でございましたが、その反対は、最後に事前承認をするかしないかで意見が一致しなかったわけでありまして、そういう目的の書きっぷりその他は全部合意したわけでございますから、その当時携わった私としてはその二つの違いが非常にリアルに脳裏に残っておりますので、そういうような表現をしたわけであります。

山井委員 久間大臣、ここは非常に重大な発言だと思うんですが、戦争を支援する法律というのは、日本の国はつくれるんですか、そんな法律は。それは憲法上問題ないんですか。

久間国務大臣 戦争支援、ただ、その法律の中に、どこまでできるかについては別個個別に後段で書いておりますから、武力の行使にならないようにしなければならないという歯どめは書いております。

 それと同じことは周辺事態法でも言えるわけでして、周辺事態で何か発生して我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合には、それはもう戦争が始まっているわけですね。それを支援するために我が自衛隊が、あるいは我が国が応援するということはできるわけですから、そういうのを、周辺事態で何か発生して、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような戦争を支援するというのは周辺事態法でも想定しているわけでありますから、そこのところはそういうふうに御理解していただきたいと思います。

山井委員 この点について、民主党の提出者のお考えをお伺いしたいと思います。

原口議員 後で末松答弁者の方から補足していただきますが、私は、非常に危険な答弁であるというふうに思っています。私たちは、戦争を支援する法律をつくれることはないというふうに考えています。

 テロ特措法のときの民主党の姿勢を久間大臣はお話しになりましたが、私たちが考えていたテロ特措法はアメリカの戦争を支援する法律ではなくて、アメリカの自衛権は確かに九・一一に対して発動されました。しかし、その発動が終結した後、まさに国連の集団安全保障の枠組みの中で、その枠組みをしっかりと維持した中で後方支援をするというのが私たちの考え方でございまして、久間大臣がおっしゃるようなことはみじんも考えていなかったということを申し上げておきたいと思います。

 また、これは平成十八年十二月七日の参議院の外交防衛委員会ですけれども、久間大臣はこのように御発言なさっています。お尋ねのテロ特措法についてですが、これは我が党の犬塚委員に答えてでございますが、テロ特措法、「非常に今までの海外に出ていった自衛隊の活動の中で一番危なっかしいなと思うのは、危なっかしいというのは法律的にですよ、危なっかしいと思うのは、本当言うとテロ特措法なんです。」と。久間大臣御自身がこのテロ特措法を危なっかしい法律というふうに考えておられるのは、まさに「アメリカが戦争を仕掛けるのに後方支援として応援しているわけですから。」これは答弁ですが、「イラクの場合は、アメリカの戦争の応援のために非戦闘地域だからといってやっているわけじゃありませんので、そこはきちっと線を引いているわけですけれども、テロ特措法の場合はそれが今までの法律の中でやや異色なわけですね。」と。

 つまり、まさに戦争を支援する法律で危険な法律であるということを大臣御自身が認めておられるということは、大変問題な答弁である、このように考えています。

末松議員 私も、原口議員と全く同じ考えでございます。もし戦争を支援するという法律であれば、その地域は紛争地域になってしまうわけです。その地域に自衛隊を行かすことそのものもおかしいという話になりますから、今の久間大臣の発言、私も非常に問題だと思っています。

久間国務大臣 今までの自衛隊を海外に出した法律の中では非常に異色であるという認識を、私も持っておりましたし、その当時の民主党の皆さん方も持っておられました。

 だから、あくまで武力行使の一体化にならないようにということで、テロ特措法でも、戦闘地域じゃない非戦闘地域でやるということで、海外に、海外といいますか、海外と同時に公海に限ったという点がございますけれども、やはり今までの法律、例えば今度のイラク特措法もそうですけれども、イラク特措法みたいに、戦争が終わってしまってからその後の復興のためにやろうという法律じゃなかったわけであります。

 それは、今、原口議員はああいうふうにおっしゃいましたけれども、その当時から、お互い一緒になって民主党の皆さん方と議論しているときから、これは一歩踏み出す形になるぞ、しかしながら、やはり日本の憲法の制約があるからそれは抵触しないようにしなきゃならないけれども、黙っておっていいのか、国連がこれまでテロとの闘いでここまでやろうというふうに言っているときに日本はしないでいいのかということで、あのとき、ぎりぎりの法律をつくった。

 そういうようなことでございますので、そこは私は、今でもその当時の認識としては間違っていなかったと思っております。

山井委員 これは、武力行使と一体化しなくても、戦争を支援するという法律、それは日本の国でつくっていいんですか。

久間国務大臣 それはつくっていいわけでありまして、まさに周辺事態のとき、武力行使と一体になったらいけないから、武器弾薬まで積んで、はい、行ってらっしゃいというのはできないけれども、それを応援するために油とか水とかは応援してやっていいじゃないかということで周辺事態法のときに法律をつくったわけで、それは憲法上は問題ないという、法制局も含めて、そして与野党の皆さん方の議論の中でも、あの当時、周辺事態法については御理解を賜って、あの法律も実は私も関与しておりますのでそのときの議論もよく存じておりますが、そういうような、戦争を支援するけれども武力行使と一体化にはならない、そこが我が国のぎりぎりの限度である、そういう認識はみんなが非常に慎重に持っていたつもりであります。

山井委員 これは我が党の提出者にお伺いしたいんですが、これは本当に、割と重い議論だと思うんですよね。戦争を支援する法律という理解で本当にテロ特措法はいいのかということを思うんですが、このことに関連して、原口議員、お願いいたします。

原口議員 議論を整理するために、戦後の世界の戦争の違法化の流れを少しお話ししたいと思います。

 戦争はいかなる場合も違法である。ただ、それを認められる場合が二つある。それは、急迫不正の侵害による自衛権の行使、ほかに方法がなくて、相手が与えた損害、与えるであろう損害に応じて自衛権が限定的に認められる場合と、もう一つは、集団安全保障、国連の枠組みの中でどうしてもこれが世界の平和と安全に対して除去しなければいけない脅威である、この二つの場合だけであります。

 この二つの場合に限って国際的に戦争の違法化が阻却されている、このように考えると、では、このアフガニスタンのテロ特措法というのは何なのか。

 当時、自衛権の発動として行われた米軍による戦争、この戦争を、我が国が無条件で、武力行使と一体とならないから支援できるというふうには、私たちは憲法上読めないと考えております。だからこそ、また久間大臣の答弁を引いて恐縮ですが、久間大臣は、先ほど私が御紹介した答弁の中で、こうもお答えになっています。「テロ特措法みたいなアメリカが戦争を仕掛けた、自衛のための戦争としてやった、それを後方支援と言いながら周辺事態でもないのに応援する、その法律まで含めて恒久法を作れと言われると、私は慎重にならざるを得ない」ということを言っているわけであります。これが久間大臣の答弁であります。

 まさに、周辺事態法で私たちが認めていた後方支援と、それと今回のアフガニスタンにおける戦争支援、これは全く別物であるということを御理解いただきたいというふうに思います。

久間国務大臣 それと、もう一つつけ加えさせていただきますと、アフガンの戦争の場合は、国連も決議をして支援を決めているわけですね。イラクの場合はそれをしなかったわけです。だから、イラクは戦争をしている状態の中で、アメリカがやっている状態の中で、日本はそれを応援するということは考えられないので、それで私どもは動きませんでした。終わってから、国連が、復興と安全確保支援活動ということで要請があったので、初めて法律をつくったわけでありまして、私は自分自身、そういうふうにかなり、どこまでやれるかやれないかを自分なりには峻別しているつもりでございまして、テロ特措法の場合は、これはやはり国連もそういう形で一緒になって動いているわけでありますから、イラクの場合と若干違うということもひとつ御理解賜りたいと思うわけです。

山井委員 今の議論を聞いていると、では、これから、アメリカがどこかからテロでやられた、それでアメリカが自衛権に基づく戦争をした、その場合は、日本はまたその国に同じように行く、支援をするということに今後なりかねないと思うんですが、久間大臣、そのあたりについてはいかがなんですか。

 今後も起こり得ると思うんですよね、いろいろなケースが。そうしたら、アメリカが自衛権に基づく戦争をやったら、その支援に基づく法律によって日本はどんどんどんどん際限なく広がっていくんじゃないですか。

久間国務大臣 それは、国会でどこまでやれるか、法律をつくらなきゃなりません。そして、アメリカが自衛権のための戦争だとやったからといって、国連がそれを支援するような決議をするかどうか、そこも問題であります。アフガンの場合はそれをやったわけであります。

 だから、我々としては法律をつくって踏み切ったわけでありまして、これから先は、そういう意味で私は、恒久法をつくるときは非常に慎重にやってもらいたいというのは、そういうようなこともちゃんとわきまえながら恒久法をつくろうとすると、あのテロ特措法という法律は、今までの自衛隊が海外に出ていった中では非常に希有な例であるということの条件としては、今言ったように自衛権に基づくだけではなくて国連、そういう二つのものが重なっている、そういう歯どめをかけていましたけれども、これから先の恒久法をつくる場合でもそういうような思いを私自身は持っているということもあえて含んで、あのような答弁をほかの委員会でしたわけであります。

山井委員 今の点について、民主党の提出者にもお伺いします。

原口議員 武力行使と一体とならないという要件だけで、私は、日本がどこにでも米軍の武力行使を支援できるという考え方はとるべきではない、抑制的で慎重であるべきだというふうに思います。その考え方からすると、では、イラクというのは、二〇〇三年五月一日、ブッシュ大統領が戦争終結宣言をなさいましたけれども、本当に戦争というのは終結しているんだろうか。アフガニスタンと同じように掃討作戦をやっているということは、まさに戦争は続いているのではないか、このことをもっときっちり議論していく必要があるのではないでしょうか。

 いずれにせよ、久間大臣の答弁は、今までの政府の見解からすると大変大きな疑義をはらんだ答弁である、このように考えます。

山井委員 先月のアメリカの死傷者も、今までの闘いの中で最高を記録した。まさに原口議員がおっしゃるように、これは戦争が終わったどころか、ますます内戦で泥沼化していっているというのがやはり一般的なイラクに対する情勢ではないかと思います。

 久間大臣にお伺いしたいんですが、先ほど議事録を削除してもよいということをおっしゃっていましたが、そうしたら、戦争を支援する、アメリカの自衛権に基づく戦争、それを支援する法律云々、それを法律をつくって支援しようというこのあたりの議事録は全部削除する、そういうお考えですか。

久間国務大臣 戦争を支援という言葉がひとり歩きして将来誤解を生むようなことがあるなら、それは大変まずいので、そういう点では皆さん方に判断していただきたい。しかし、私の真意は、先ほど言いましたように、若干、自衛のための戦争、そしてそれに対して国連が決議をして撲滅をしようという闘いという意味でのテロの脅威を除去する、あるいはテロとの闘い、そういうことについて戦争という言葉を使っていけないのなら、それは削除してもらった方がいいのかもしれません、そういう趣旨で言ったわけでございますので、皆様方にお任せしますので。

山井委員 最後に、今の点について、民主党の提出者にお願いします。

原口議員 国会にお任せされると言われても困るなと思います。

 つまり、ではアフガニスタンは戦争は続いているのか、テロリストの掃討作戦は続いているのか、あるいは、これからすると、ではイラクも続いているのではないか、続いているとすれば、国または国に準ずる者はイラクにもいるわけで、そこにおけるイラク特措法はまさに非戦闘地域、戦闘地域というフィクションをつくっただけではないか、このことを強く指摘しておかなきゃいかぬというふうに思います。

山井委員 時間が来たので終わりますが、まさに最後に原口議員もおっしゃったように、イラクで戦争が終結したと思っているのは本当に私たちだけであって、終結は実際はしていないわけなんですよね。やはりそこにおいて非戦闘地域というフィクションをつくっていく、そして、実際はまさに久間大臣がおっしゃったように、戦争を支援するということを日本の国はどんどんどんどん気がつけばなし崩し的にやっていっている、そういうことは非常に重大な問題だと思います。このことはまた引き続ききっちり議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 中川正春です。

 続いて、さっきの議論はなかなかいいところまでいきましたので、そこの辺をもうちょっと深掘りといいますか、さらに進めていきたいというふうに思っています。

 さっきの久間大臣の答弁を聞いておりますと、アフガニスタンの場合は恒久法にするときに考えるべきことがある、それは自衛権の発動、いわゆるテロとの闘い、これに対して日本が支援をする、いわゆる戦争に対して支援をするということ、この構図ではなくて、国連があるから、だから支援ができたんだ、こういうことでしたね。しかし、NATOはアフガニスタンに参加しているわけですが、このNATOの議論というのは、アメリカの自衛権を集団的自衛権で我々は補足をしていくというふうな決断でありました。

 ということは、さっきの大臣の話を聞いていると、本来はアフガニスタンも、日本が自衛隊をもって支援をしていく、そんなようなところまで憲法を逸脱していくような議論ではなかった、周辺事態法の範疇だけでとめておくべきだった、周辺事態法を超えて、こんな遠くまで、どこで起こってもいいから、そこは国連のお墨つきがあれば行くんだというようなそういう話ではないんだと私は解釈したんですけれども、大臣はそう思っておられるからそういう答弁をしたんですね。だから、アフガニスタンに対する軍事的な支援というのは異質だというふうに表現をされた、そういうことですね。

久間国務大臣 それともう一つ、あのときいろいろな議論がありましたのは、アメリカがああいう形でテロ、アルカイダから攻撃を受けた、アメリカじゃなくて日本が受けたときに、では日本はどこまでやれるか、あそこまで、アフガニスタンまで行って日本は闘うことができるのか、そのときに国連がどういう活動をしてくれるか、そういうことを考えたときに、アメリカが自衛のためにテロリストといいますかアルカイダを相手に立ち上がった、そして国連が支援した、そうしたら日本としても支援すべきでないか、そういう議論が圧倒的に強く起きてまいりまして、それで与野党で特別法をつくってやろう、そういう形になったわけであります。

 だから、アメリカが全然関係ないところで戦争を一方的にやっているときに集団自衛権だということで我が国がそれに参加するということじゃなくて、やはり国連の一員として決議があったということも非常に重かった。それと同時に、我が国がもし攻撃を受けたらなすすべがないんじゃないか、このとき国際社会が立ち上がって、全部でテロリストを、いわゆるあの法律で言うと撲滅をしようというようなことでやっているときに、我が国としては武力行使が一体化するようなことはできないけれども、それまで及ばない範囲で、しかも非戦闘地域だったら支援をしていいじゃないかという形で、ああいうふうに限定した形でございましたけれども、法律をつくって支援しようというふうになったわけであります。

中川(正)委員 それは、いわゆる恒久法をこれからつくっていくという前提に立ったときに、今の政府の一般的な認識として考えていいわけですか。

 というのは、さっき我が国に直接の攻撃があった場合という表現をされましたけれども、周辺事態法は、我が国に直接でなくてもそうした脅威があるという範疇が周辺事態だと理解しているんですよね。そういうところで直接の関連性があったときには、アメリカが戦うことに対して我々は支援をしていきますよというのが周辺事態法で整理をされたということですよね。それを超えていったときには国連という枠組みを出してきた。しかし、これはさっきのお話では、どこででもやるわけじゃないんだ、特別な理由があったからアフガニスタンは行ったんだ、そういうことだから、どこででもやるんだったらこれは恒久法になるけれども、アフガニスタンは特措法でやりましたよ、だから、アフガニスタンの特措法がどこででも応用するということではないんだと。

 だから、そういう意味では、恒常的な、いわゆる一般的な法律をこういう形でつくっていくことはしない、そういう意味ですよね。

久間国務大臣 私は立法者じゃありませんけれども、慎重にやるべきだという気持ちを持っております。

 ただ、恒久法でも、おたくの党首が言われますように、国連が決議を決めたときには、みんな加盟国は一律に警察行動として外国まで出かけていってやるべきだという恒久法の決め方だってあるわけですよ。

 しかしながら、我が国が従来とってきた考え方からいくと、なかなかそういう議論には難しいんじゃないか、やはり問題があるんじゃないか、そういうようなことから、このテロ特措法という法律ですら、周辺事態法その他と比べたときには非常に異質な法律だけれども、周辺事態法にかわるテロ特措法という法律をあえてつくってスタートした。

 こういうような体系なんですよということを強調したかったので、私は、すべきでないとかすべきであるとか、それは立法府で決められることですから、政府はそれに従うわけですけれども、やはり慎重にやってもらいたいという思いの中にはそういう一面があるわけであります。

中川(正)委員 実は、イラクなんですが、これは今アメリカで、皆さんが2プラス2で渡米をされているときに私もアメリカに同時におりましてさまざまな人たちと議論をしてきたんですけれども、アメリカで何がイラク戦争のポイントになっているかというと、ブッシュ大統領にとって、今の状況というのがシビルウオーなのか、それともテロに対する闘いなのか、どっちかということなんですよ、御存じのように。

 ブッシュ政権は、ブッシュ大統領は、これはテロに対する闘いなんだ、テロの脅威に対して我々は闘っているんだから増兵をする、いわゆる二万人増強をしなければならないんだという論理で国民を説得しているんですよ。だから、そういう意味からいえば、本質的な、一番前面で闘っているアメリカが、これは治安維持あるいはネーションビルディングの話を超えて、テロというものに対する闘い、そういう形を表明しているわけです。

 それに対してここでも日本は支援をしているということになるわけでありまして、日本が勝手にこれは治安維持あるいは人道支援に対する後方支援なんだ、こういうような理屈を言っていても、当の闘っている本人がテロに対する闘いだと言っているんですよ。これをどう考えたらいいんですか。

 その意味で、まず、民主党の方でこれを整理すると、どうですか、これはやはりアフガニスタンと同じ構造がここにあると考えるべきじゃないんですか。

原口議員 ここに平成十五年の三月四日受領の答弁書、衆議院議員江田憲司君提出米国によるイラクへの武力行使に関する質問に対する答弁書を持ってきましたけれども、まさに今中川委員がお話しになったように、「アフガニスタンにおける行動の国際法上の位置付けは、」これは政府の答弁書ですが、「自衛権の行使として行われている」。米国は自衛権の行使としてアフガニスタンにおける行動をやっている。

 今お話しのように、アメリカの議会での議論を見ていると、イラクにおけるテロリストとの闘いも、まさにアメリカにとっては自衛権の行使としてやって、我が国はそれを支援している、まさに同じ構造だと思います。タリバン政権が崩壊をしたことと、イラクのサダム政権が崩壊をして、まさにアフガニスタンにもイラクにも私たちの言う国というものはなくなりました。しかし、国に準ずる者としてのテロリストがある、このテロリストを掃討するんだというのがアメリカの考え方ではないかと思います。

中川(正)委員 なぜそうなるかというと、内戦、いわゆるシビルウオーにしてしまったら、アメリカがそれに関与していく大義がなくなってしまうんですよ。だから、敵はテロだというふうにはっきり目標をつくることによってアメリカの大義が出てくるということなんですね。

 それを、日本の今の議論の中でははっきりと区別せずに、そのままアメリカが自衛権を行使しているものに乗っかっている、そんな結果になっているわけです。これはもう論理が破綻していますし、ここのポイントについては日本もしっかり整理をしていかなければならない、そういうところだと思うんですが、大臣。

久間国務大臣 テロ特措法の場合は、アメリカが自衛のための戦争をやって、それに対して国連もそれを支援するということでやりまして、そして、それから日本は特措法をつくりまして支援を始めたわけですね。その後、国連は改めて、戦争が終わった後も引き続いてやってくれよというようなことを言っているわけじゃございません。だから、その状態がずっと続いているわけですね。

 ところが、イラクの場合は、アメリカが戦争をやって、終結宣言をしてしまって、その後に国連が要請をして、日本も、あるいは世界各国も、その復興のため、安全確保支援のために応援してもらいたいというようなことを要請してきた。だから、違うんですね。戦争が終わってから一応やって、その後の状態が、現在はどういう状況かということの認識についてはまた別かもしれませんが。

 少なくとも、形式的にいいますと、アフガンの場合とイラクの場合では国連の関与の仕方が違っておるという点については、ひとつ御理解いただきたいと思うんです。

中川(正)委員 いや、国連の関与を言っているんじゃないんですよ。我々が後方支援をしている、その前面に立っている米軍、その大統領のこの闘いに対する大義を言っているわけです。みずからが、これはテロとの闘いだ、シビルウオーという形じゃなくてテロとの闘いなんだと何回も何回も言い返しているんですよ、そこは。逆にアメリカの民主党は、いや、違うんだ、これはシビルウオー、内戦なんだ、だからアメリカがそこに介入すればするほど話がややこしくなってくるから早く出てこい、こういう理屈になっているんです。この二つが今対立しているんですよ、議論として。

 日本の場合は、これは、内戦に対しての支援、いわゆるネーションビルディング、治安ということと、それから復興支援ですよね、あるいは人道支援。この理屈を立てたら自衛隊は要らないんですよ、アメリカの民主党が言っているように。それは民間の中でしっかりと組み立てていくべき話なんですよ。ところが、もう一方のテロとの闘い、こういうことになると、軍事的な支援というのを一体的に言ってくるんです。そういう理論構成になっているにもかかわらず、日本は、両方がうまく交差をして、それでこの法律の体系がなっているということでありますから、とんでもない矛盾が出てきているということで、これは論理破綻しているんですよ。

 そこのところをはっきりさせなくてはいけない。それをはっきり整理するまではこの話もなかなか前には進みませんよということだと思うんですよね。

久間国務大臣 両方の法律が違うんですね、基本的に。

 先ほど中川委員はアメリカを支援するために自衛隊が行っているとおっしゃいましたけれども、そうじゃなくて、イラクの場合は国連の要請に基づいて自衛隊は行っているわけでありますから、そこが、アメリカを支援するために自衛隊が行っている、そういうふうに前提を置いてしまいますと、アメリカの国内のいろいろな意見の違いが入ってまいりますけれども、我々としては、そこはやはり整理をして、国連からどういう要請があったか、それに対して日本としてはこたえるべきかこたえるべきでないか。

 そして、今でも国連事務総長は、前の事務総長もそうですし現在の事務総長も、やはり日本としてはイラクの復興のためあるいは安全確保支援のために応援していただきたいというようなことを言っているわけですから、国連の姿勢がそういう立場であるときに、それに従うべきか従わざるべきか、それをやはり中心に考えていくというのが私は大事じゃないかなと思います。

 それは、米国を重視される方もいらっしゃるでしょうし、あるいはまたその他のいろいろなことかもしれませんが、私の気持ちとしては、国連がもう日本はいいですよと言わない限り、日本はやってくださいよというときに、それに対してノーという立場はなかなかとるべきでないんじゃないかなというふうに私は思っております。

中川(正)委員 いや、これは一番最初のスタートから考えていけば、ヨーロッパの論理というのがあったんですよね。ヨーロッパはアフガニスタンでやっていた。それで、イラクでアメリカの先制攻撃で戦争が勃発したけれども、これに対してヨーロッパは異議を唱えた。さっきの話で日本はこれを認めたという話になっていますが、ヨーロッパは違う、これに対して異議を唱えた。異議を唱えたものが、そのまま継続して我々はアフガニスタンでやるから、ヨーロッパでも、イギリスを除いてということですよ、フランスやドイツはイラクには関与しませんよと。だから、そこで困ったあげく、アメリカがでは日本に何とか頼むというのが、ちょうど小泉さんが行ったときに頼み込まれた話じゃなかったんですか。

 だから、そういうことからいくと、国連国連と言うけれども、これはやはりアメリカなんですよ、現実は。そんな中でこの話が動いてきた。それを論理的に構築するのに、さっきの話で、肝心のアメリカは、これはテロとの闘いだ、こう言っているわけで、それを日本は何やかんやと言いながらまた国連をここに出してくるということであるとすれば、それはやはり、アフガニスタンのときと同じで、周辺事態を通り越してしまった、これはもう特別な形で、本来はやってはいけなかったような自衛隊の使い方でやったんじゃないかという結論になっていくわけであります。そこのところをちゃんと整理しないと、法律的にも憲法的にもここは通過をしませんねということですね。そこは納得できないんですよ、さっきの大臣の答弁では。

 これは、もう一回、民主党の方からそこのところを整理して、これ以上進めない、進むことができないというところまでちょっと説明をしてください。

原口議員 別の法案の提出者なので、私たちが廃止をしている法律案を整理しろというのはなかなか難しいですが、やはり自衛権の行使というのはどこまで認められるんだろうかということが大きな論点だと思います。

 アフガニスタンにおける米国による自衛権の行使というのは現在も続いている。では、それは本当に国連憲章上、国連が認めたことなのか、そしてそれを我が国が武力行使と一体とならないということでいつまでも支援できるのかというこの問題と、それから、イラクにおいて現実の脅威が何なのか、脅威の同定のところの議論がやはりきっちりやられるべきではないかというふうに思います。

 そして、もっと言えば、武力行使と一体とならないためには二つの要件が必要だったはずです。それは、指揮下に入らない、そして、一体というか、いわゆる多国籍軍の中に入らない、この二つだったと思いますが、現実に私たちがクウェートのアリ・アルサレムに今回派遣をしたときに、クウェート政府はオーケーが出ましたけれども、現実に自衛隊の基地に入るためには米軍のオーケー、アメリカ政府のオーケーがなきゃ入れないわけですね。我が国は、まさにこのことが示すように、アメリカの指揮下の中で行動をしているのではないか、このように考えます。

 ですから、今の久間大臣の答弁は、あるときにはアメリカ、米国を出し、あるときには国連を出し、都合のいいように法的な根拠をすりかえておられるのではないか、このように考えます。

中川(正)委員 そういうことで、納得できないですね。なかなか理解、久間大臣が何を言わんとしているのかということが、言えば言うほどこんがらがってきて納得できないという話になってきまして、ここのところは、改めて、ちゃんとした説明ができる、そういう見解を出していただきたいというふうに思います。

 委員長、それを改めて要求したいんですけれども、よろしいですか。

浜田委員長 理事会で預からせていただきます。

中川(正)委員 はい。

 話を私のペースに戻させていただきます。

 また改めてイラクのことには戻っていきますけれども、訪米したときの、さっきもちょっとお話の出ていました従軍慰安婦問題について、ちょっとお聞きをしておきたいというふうに思うんです。

 今回の一連の安倍総理の訪米、それからそこでの大統領並びに関係者とのこの問題に対するコメント、これは私も手元にコメントを持っていまして、さまざま出ているんですが、官房長官、これでこの問題は鎮静化したといいますか、理解を得られて一件落着をしたというふうに考えておられますか。

塩崎国務大臣 先ほどちょっと質問通告がない中でお答えしたものですから、もう少し正確に申し上げておきますと、安倍総理は、先般の訪米の際に、ブッシュ大統領及び議会関係者に対してこういうふうに申し上げております。

 自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として、心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況に置かれたことについて、申しわけない気持ちでいっぱいである。二十世紀は人権侵害の多かった世紀であり、二十一世紀が人権侵害のないすばらしい世紀になるよう、日本として貢献したいといったような考えを述べたということでございます。

 ブッシュ大統領からは、慰安婦の問題は歴史における残念な一章である。河野談話と安倍総理の数々の発言は非常に率直で誠意があり、自分はこれを評価する、こういうふうに述べられているわけであります。

 今、御質問は、これで一件落着したのか、こういうお話でございますけれども、政府としては、以上の日米首脳間のやりとりをも踏まえて、本問題に対する我が国の基本的立場やこれまで行ってきた真摯な対応等について関係者の理解を得られるように、今のようなラインで引き続いて努力をしていくという考えであって、こういう問題に落着とかなんとかいうことがふさわしいのかどうかわかりませんが、我々としては、総理の率直な考えをもとに、引き続いて理解が得られるように努力をしてまいりたい、こう考えております。

中川(正)委員 これは、一番もとの話は、ブッシュ大統領から出てきたんじゃなくて、アメリカの議会で、日本のおわびというのを正式にやるべきだという決議案、これを提出する動きが毎年あって、ことしもこのタイミングで出てきたということから安倍総理の発言に結びついていった、こういうことでしたよね。

 そういう意味から、外務大臣に改めてお聞きをしたいんですが、恐らく、アメリカ大使館としては、それぞれの議員に対してロビー活動もやり、また情報収集もしておるんだろうというふうに思うんです。安倍総理も直接議員の皆さんにも会っておられるようですが、そういうことを踏まえて、議会の中が今どうなっているか、どんな情報が報告として上がってきているか、そのことについて答弁をいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 アメリカ議会の中の個別のところまでを、細目全部承知しているわけではありません。ただ、五月の一日でしたか、安倍総理との会話に列席をした一部の院内総務等々、そういった人たちと飯を食う機会があったときには、極めてよかったという反応が得られたことまでは確かです。

中川(正)委員 私は、その辺の情報しか上がってきていないというのが、非常に心もとない、今、外務省の実態ではないかというふうに思うんです。

 その辺が気になったものですから、私は直接、この決議案を準備して、今上げようとしているマイク・ホンダ氏に会ってまいりました。彼に対して、これだけ日本が、日本がというよりも安倍総理が改めておわびをし、河野談話を踏まえた上で、これからの人権ということに対しても自分の気持ちを述べているわけだから、もうこれでいいんだろう、こういう話をしたら、彼から実はこんな答えが返ってきました。参考のためにお話をさせていただきます。

 官房長官談話やあるいは安倍総理の記者会見では、真の意味での正式なおわびとは受け取れない。彼自身の生きざまというか生き方、これは、ホンダ氏は日系ですから、日系アメリカ人がなぜ日本をこんな形で責めるのか、そこが私たちもわからなかったところなんですが、それはこんなふうなことなんですね。

 日系移民が戦争中の強制収容所でこうむった人権侵害に対して、ずっとアメリカ政府に対して闘い続けてきた。政府の責任を求め、そしてその謝罪と、それから賠償を求めてきた。私たちが長い闘いの中でこの問題を決着させたのは、最終的には国会、米国議会を通じて、法律の中でおわびを明記して国家の非を認めたから、私たちはそれで決着をしたんだ。だから、日本のやり方では、総理大臣がかわればまた勝手なことを言うし、他の大臣や議員たちも別なことを言っているではないか。正式な国家の意思とは法律や国会決議で定められるべきものではないんだろうか。そういう意味が彼の口から出てきたわけでありますが、この正式なおわびという意味合いを、こんなふうに国会の関与ということで彼は表現しているわけであります。

 これについて、官房長官、どのように受けとめられますか。

塩崎国務大臣 日本のことは日本で決めたいというふうに思います。

中川(正)委員 それは答えになっていないでしょう。当たり前のことですが、日本のことは日本で決める、それは国会なんですよ、国会が意思を持って決めるということで、当然のことです。

 しかし、考えてみたら、これまでの歴史認識の問題あるいは靖国の問題、それぞれが、大臣のコメントとかあるいは総理大臣のそのときのコメントとかで日本は整理をしてきているわけですね。

 国会の中で例えば一つ一つを、特別な委員会をつくって、アメリカの場合は、この問題を整理するのに特別な委員会をつくった。ちょうど今憲法調査会がそうであるように、歴史認識も、改めてこの国会の中で基本的な議論をし、その基本的な議論と史実に基づいて国会が意思を持って決議をするというふうなプロセス、こういうことが一般のヨーロッパの歴史認識の整理でもやられた。アメリカの歴史認識の整理でもやられている。そこのところを実は周りの国が日本に対して、どうなんだと。

 先ほど話が出てきましたが、総理大臣がかわるたびに、あるいは、その総理大臣が総理大臣になる前に言っていたコメントと総理大臣になってからのコメントがまた違ってくる、こういうことで、本当に国としての意思を総理大臣の口から公式に述べているということになるのか、それが信じられるのかというところが実は問われているんだということだと思うんです。

 それは私は非常に大事な視点なんだろうというふうに思いまして、さっきのように、自分の国のことは自分で考えますと言っている限りは、これは外交にならない。本当の信頼感というのは周りから出てくるはずがないんですよ、そんな答弁では。そこのところは、さっきの答弁、消してもらいたいと思いますし、もう一度真摯にこの問題については考えてみるべきだというふうに思うんですが、官房長官、どうですか。

塩崎国務大臣 先ほどの発言は、別に取り消す必要はないと思います。

 日本のことは日本で決めるということであって、日本の中には三権というのがあります。当然のことながら、御案内のとおりであって、立法府、行政府、司法。そのうちの、今御指摘の点、マイク・ホンダ議員がおっしゃっているのは立法府の話をしているわけであって、立法府の話を含めて日本が決めればいいことであって、立法府は立法府が物事を決めるということではないかと思います。それは我々、今、政府の立場から言うことではないので、立法府がお決めになることではないかというふうに思います。

中川(正)委員 さらに付言すれば、これまで、アメリカで十五人ぐらいかな、毎年この法案に対して、いわゆる法案を上げていく段階での賛同者というのはそれぐらいだったんですが、今回でもう五十人を超えてきているということになってまいりました。

 そういう意味では、私たちも、新しい枠組みで、自分たちの過去を振り返って、しっかりとした、めり張りのきいた議論をしながら清算をしていくということ、これは必要なことなのかなということ、これを改めて考えた上で、実は民主党は法案をこれについては出しているんですが、そのことについて民主党のサイドから、せっかくの機会ですから。

原口議員 お答えいたします。

 民主党は、やはりこの問題について何が問われているか、それは人権に対する姿勢であるというふうに思います。日本のことは日本が決める、それは官房長官の御答弁のとおりでありますけれども、そうであるとすれば、日本の首相がどうしてアメリカの上下院の院内総務に対して説明をするのか。それはまさに、その人たちからも日本の人権に対する姿勢が問われている、従軍慰安婦という未曾有の人権侵害の事実に対してどのような姿勢をとるかということが問われているんだと思います。

 現に、マイク・ホンダさんのお話がありましたけれども、委員は北朝鮮人権法の民主党の提出者でもいらっしゃいますが、アメリカにおいて日本の拉致問題に協力をしてくださっている方々は、この人権侵害という一点に対して大きな支援をいただいている。

 人権に対する民主党の姿勢を示すために、私たちは従軍慰安婦に対しても法律をつくって提出をしているところでございます。

 以上です。

中川(正)委員 この問題が、いわゆる国際レベルで、大きな視野に立って我々の議論が進んでいくということ、これを切に願い、また与党の皆さんにも、そうした観点で、一度国会の中でも真剣に議論をしようじゃないか、そんな場をつくっていく必要があるんだということを改めて申し上げておきたいというふうに思っております。

 次に、イラクの話に戻っていきたいというふうに思います。

 先ほどの話の続きでもあるんですけれども、ここで一たん戦争になって、アメリカのいわゆる武力による先制攻撃が行われた。それが、さっきのお話のように、一度終結宣言があって、その上で次のプロセスとして、これは国連がかんでいきながら、民主的な政権の樹立ということとそれから戦後復興に対してのプロセス、全体を言ってネーションビルディングというんだと思うんですが、そういう経過の中でそれぞれ今活動が組み立てられているんだというのは日本の理屈でありますよね。それに対してアメリカの大統領は、いや、これもテロに対する闘いなんだ、こう言い続けているわけであります。

 そのときに、まず、改めて過去に戻って聞いていきたいんですが、ちょうど二〇〇三年の特措法が成立したころのことを私思い出すんですけれども、ここにたまたま石破さんや何かおられますが、乱闘騒ぎでこれは決着をした経緯がありまして、そのときに、ここに私も、一生傷になりましたけれども、けがをしまして、血を流したりしたような、そんな思い出がこの法案にはあるんです。

 そのときの議論として、アフガニスタンみたいに、遠いところで海自が協力をして、それこそ紛争地域から全く遠い、直接の関係のないところでの自衛隊の活動という枠組みをつくらずに、あえてサマワに陸自を投入した。その投入の仕方も、本来なら水の供給なんというのはNGOのやる話だったんですが、しかし、自己完結型だからというような理屈をつくって、陸上自衛隊という、いわゆる一般的には軍隊の一環の中で派遣をしたということですね。

 これは特別な理由があったんだろうと思うんです。なぜ、あのときに陸自が参加をしたのかというところ、ここから答えていただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 先生、採決のときにもここにおられたということでございますが、そのときの、なぜイラクに陸上自衛隊が派遣されたのかということで、もう一回おさらいだということでございますけれども、幾つか理由があったかと思います。

 一つは、イラクの重要性、そしてここの安定というものが極めて大事だということで、中東地域はもちろん日本にとっても重要だということで、それは広く国際社会全般の平和と安定に大事だ、こういうのがまず第一点ありました。それから、やはりテロという観点から、イラクをテロの温床にはできないということでありました。

 そして、今先生御指摘の、自己完結性というお話がありましたが、やはりいろいろテロも可能性としてある中にあって、自衛隊の皆さんは厳しい訓練を積んで、自活の能力も極めて高い。そして、活動をするに当たって、今の自己完結性という言葉がありましたが、ございます。それから、危険をみずから回避するという訓練を受けている。また、世界の各地でいわゆる平和構築の試みに積極的に参加をしてきた。そういうことで、きっと地元のイラクの人たちからも評価をされるのではないかということで自衛隊のイラク派遣を決定したというのが当時の論理であったと思います。

中川(正)委員 私は、本当のところは違うと思うんです。違うと思いますし、そのころの小泉総理から出てくる答弁の中にははっきりとこんな話が出ていた。いわゆるショー・ザ・フラッグですよね、日本の存在感をそこで示す。

 それは、なぜそうしなきゃいけないかといったら、アメリカに頼まれたからです。アメリカというのは、その当時、ちょうど北朝鮮のミサイルの問題や核の問題が出てきておって、日本にとっての脅威をやはりアメリカという盾でもって防いでいく、その協力関係を維持しようと思って、行くならば、小泉さんが訪米をしたときにこれについてはちゃんとした話を成立させて、うちも自衛隊を出すよという話でないことにはこれは話が通らないだろうという、アメリカを怒らせてしまうということに対して怖さがあるということ、これが本音じゃなかったんですか。

久間国務大臣 アメリカを怒らせてしまうとかそういう議論よりも、ショー・ザ・フラッグという言葉は確かにありました。やはりクウェートとの、あの第一次湾岸戦争のときに、日本は、一人当たり、みんなたばこ一本一円ずつ出して、一兆円のお金を出したけれども、クウェートが解放されて全世界から招待したときに、日本は呼ばれなかった、やはりお金だけ出しておったらそれでいいのかというような、そういう批判があったのは事実でございまして、目に見えるような形で復興支援をやるべきではないか、そういう気持ちがあったのは事実でございます。

 そのためには、民間企業でもいいんですけれども、民間企業はまだ組合等がなかなか行きにくいいろいろなことがあって、やはり自衛隊が自己完結的でもあるし自衛隊に行ってもらおうということで、法律をつくって自衛隊を派遣しよう、そういうようなことになってきた。

 私は、あのときも法律にタッチしておりますから、よくその辺の背後関係については、そういう気持ちがみんなの中に非常に強かったのを思い出しております。

中川(正)委員 私も、そのころのことを思い出すんですが、やはりチェイニーさんですよね、恐らく防衛大臣も、直接日本が参加をするということについては、アメリカから、その決断をしたということについては評価するし、それでいいんだというような話があったんだろうというふうに想像をするわけであります。

 その上で、その当時から実は情勢が非常に変化をしてきている。また、アメリカの中の議論、あるいは我々がイラクの紛争というのを見ていく視点というのも大分変わってきているんですね。

 そのうちの一つが、アメリカ自身の大義だと思うんですよ。これは、最初の先制攻撃に対する判断、この過程で意図的に捏造された情報がベースになっていたということをブッシュ大統領がみずから認めたということでありますし、それから、WMD、大量破壊兵器はその時点でイラクに存在はしていなかったということ、このことがはっきりしてきた。

 あの当初ではそうじゃなかったんですね。当初は、さっきちょっと話が出ていましたが、それがないという挙証責任はフセインにあるんだから、それをしなかったから攻撃したんだ、これで終わっていたんです。ところが、逆にアメリカのサイドが、メディアを含めてアメリカの中から、あれは捏造だったんだということがみずから検証をされてきた。自分たちが、あれは情報として間違っていたんだ、判断としてもひょっとしたら間違っていたんだというふうな検証がアメリカのサイドから行われたというこの変化、これは大きな変化でありますし、戦争への大義がここで大きく損なわれているということであります。

 ここについては、これは日本政府も認めるんですね。

塩崎国務大臣 これというのは、どれを認めるんですか。ちょっとそこを、聞こえなかったものですから。

中川(正)委員 アメリカの大義がここで崩れているということですね。これは大統領みずからが、捏造に基づいた情報によって判断をしたということは間違っていたと言っているわけです。それについては日本政府も認めるわけですね。

塩崎国務大臣 私の記憶が間違っていなければ、ブッシュ大統領が今おっしゃったような誤った情報に基づいた判断をしたということを認めたことは私も聞いておりますが、イラクに対してとった行動自体が間違いであったということを言ったということではないというふうに理解をしておるところでございます。

中川(正)委員 ということは、ブッシュ大統領が今自分の国民に説明をしている話をそのまま日本は追認するということですね、さっきの答弁は。そういうことですね。ブッシュ大統領はそのように説明しているんですよ、自分の国民に対して。それを日本政府も追認する、そういう理解でいいんですね。

塩崎国務大臣 ブッシュ大統領が言ったのは、フセイン政権が続くべきではないということでアクションをとったことについては間違っていなかったということを明確に言っているというふうに思います。

中川(正)委員 そして、もう一つの変化というのは、当初、これはこんなに長くならないだろう、いわゆる短期で抑え込まなきゃいけない、民主的な政権が樹立されたら、それでアメリカの撤退というシナリオになるんだろう、そういう想定で始まったことが、ここに来てそうじゃなくなった。これは長期化するということが見込まれる、これもブッシュ大統領の見解でありまして、そのことに基づいて、軍の規模を減らすんじゃなくて、逆に増派をするという決断に今至っているわけです。

 しかし、確かに中を見ていると、大統領は、これはテロに対する闘いだ、こう言っていますが、やはりシビルウオー、これは先ほどからお話の出ていたシーア派、スンニ派、そしてクルド族という従来からの民族、宗教対立がさらに激しいものになってきておって、もう内戦状態であるというふうに定義ができるんじゃないかというようなこと、これは我々の支援活動が始まった当時では考えられなかったといいますか、想定していなかったような状況に悪化をしてきているということがあると思います。

 そのことについての認識はそれでいいんですか。

塩崎国務大臣 内戦状態かどうかということでございましょうか。(中川(正)委員「ええ」と呼ぶ)

 先ほど麻生大臣から御答弁申し上げましたように、今一番テロが激しいのはバグダッド及びその周辺ということであって、私も行ったことがありますが、クルド並びに南部はそういうような状態ではなくて、かなりバグダッドに集中をしているということであります。したがって、それを内戦と呼ぶという今中川先生のお考えでありますが、我々はそういう表現は使っていないというふうに思います。

中川(正)委員 こういう重立った二つのイラク内での状況の変化ということに対して、実はアメリカではこれを国民がどう評価して何をすべきかという判断が出ているわけです。その判断というのは、中間選挙で、イラク撤退すべきか、それともそのまま増強していくべきかというのが争点になって、その結論が出たわけです。結論というのは、ブッシュ政権に政策転換を求めた、いわゆる共和党が負けた、ブッシュの大義が負けたということであるとすれば、それはブッシュ政権に政策転換を国民が求めたんだということ、そういう解釈になるんだろうというふうに私は思います。

 私はそう思うんですが、この中間選挙の結果というのを日本政府はどのように受けとめていますか。

麻生国務大臣 十一月に行われました中間選挙において、民主党が上下両院において多数を占めたというのは事実でありますけれども、これに対してどう評価するかと、日本政府としてコメントする立場にはないと存じます。

中川(正)委員 大臣はどう思われますか。

麻生国務大臣 今、大臣としてお答えを申し上げたと存じます。

中川(正)委員 はっきりしているんですよ。これは方向転換をしなさいということなんです。だから、はっきりしているから、今それぞれの下院でも上院でも、さっきお話の出た、予算を通すときに、撤退時期を来年の三月撤退ということを明確にした法案でペアにして、アメリカ議会としてはこれを承認あるいは可決して、それで大統領に上げたということになってくるわけですね。

 そのときにもう一つ、これの要因があったんだろうと思うんですよ。さっき官房長官は、ブッシュ大統領の国民に対する説明をそのまま日本政府の説明として、そういうことなんだというような答弁をされましたけれども、その中にやはり例の挙証責任があるんですね。あのとき、フセインが大量破壊兵器がないということを証明しなければならなかったんだ、しかし、それをしなかったから先制攻撃になったと。これは、ブッシュ大統領がその論理を使っているだけじゃなくて、日本の政府もその論理を使ってこの戦争の正当化ということをしてきたということなんですが、実は、アメリカではこの論理は崩れているんですよ。

 なぜかといったら、さっき申し上げたように、その判断というのは、結局のところは、捏造された情報によって上げられ、そしてそのことによってだまされた形、大統領がCIA、その他情報機関にだまされた形で判断を強いられたということから、だからここで大統領は責任を逃れているわけですけれども、そういうことでこの判断に至ったんだ、こういうことになっている。だから、挙証責任がフセインにあったんだというのは、そうじゃなくて、アメリカの方がみずから、あれは間違いだったんだという形でそれを証明して、そのことをもって、実はこの中間選挙で、アメリカの戦争に対する大義が崩れて、国民は、そういうことだったんだ、あの戦争は大義のない戦争だったんだということを判断して、現在の法律というのが上げられているということだと思うんです。

 そこのところ、日本はいまだにフセインの挙証責任を皆さん、説明に使っていますよ。これは、本家本元のアメリカで国民から否定されている、そういう論理です。だから、それは使うことはできないと思うんですけれども、これからもまだその理屈を使っていかれるつもりですか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、先ほど来申し上げているのは、アメリカがアクションを起こしたときの論理について日本政府としては支持をしたということであって、先ほど来出ている、インテリジェンスの情報が間違っていたがゆえにその判断は間違いだったという、その判断というのは、インテリジェンス、つまり大量破壊兵器があるという判断をしたこと自体は間違いだったということを言っているが、しかしながら、とったアクションそのものについて否定をしているわけではブッシュ大統領はないということを言ったわけです。

 しかし、我が国は、あくまでも主体的な判断のもとでイラクの復興に支援をしようということを言い続けてきて、判断をし続けてきているわけで、今回も同じように判断をした上で、国連からの要請もこれあり、今回、二年へ延長しよう、この七月末で終わるということはやはり適切ではないということを申し上げているわけであって、アメリカでの大義が崩れたと先生がおっしゃることで、そのことを我々がずっと使い続けるのかという御質問でありますけれども、それとこれとはまた別問題です。

 我々はいつも、例えば、先ほど来何度も出ている治安の情勢であるとか、政治状況が、クルド勢力、シーア派、スンニ派、それぞれ本当にいろいろな考えがある、そういうものをどう考えるのか、あるいは国連がどういうアクションをこれからとろうとしてくるのか、多国籍軍もアメリカだけではないわけでありますから、それらの諸国がどう考えるのかを見て判断をしていく。そういう中で我々はぎりぎり考えた末に、二年間の延長をお願いしている、こういうことであります。

中川(正)委員 そんな複雑なことをやっていないですよ、政府は。アメリカがどう考えているか、ブッシュがどう考えているか、それだけでしょう。

 ブッシュは確かに、これを継続していくということを言っているんですよ。さっきの話で、あの攻撃は間違いじゃなかったと言っているんです。ただ、私が言っているのは、ブッシュの話じゃなくて、アメリカの話なんです。アメリカの国民はそれを否定しているんですよ、この選挙で。選挙で否定した上で、アメリカの議会でもって撤退をはっきりと表明しているんですよ。

 だから、私が聞きたいのは、こういうときに、日本の国家としての判断、アメリカの意思というのはどっちにあるんだ、ブッシュ大統領にあるんですか、それともアメリカの国民にあるんですか、皆さんはどっちを見ているんですかということなんですよ。これは、将来に対してアメリカがどう変わっていくかということを予想している話なんですよ。このままブッシュ、ブッシュと言っていて本当にいいんですかという話なんですよ。

 そこのところを改めて民主党の方から、ひとつ整理した話をしてください。

原口議員 お答えいたします。

 第一回目の特措法の延長のときの議論を思い起こしていただきたいんです。その当時、イラク特措法の延長、当時の小泉総理は何とおっしゃっていたのか。それは、日米同盟がとても大切であるということをお話しになっていました。いろいろなところでの議論でも、北朝鮮を抱えているから日米同盟を緊密にする必要があるんだと。まさに、あるときには国連を出し、あるときにはアメリカを出す。しかも、そのアメリカも、アメリカの民意というよりも、むしろ現在の政権の誤った情報による大義なき戦争をいつまでも支持をする。このことはとても危険なことだというふうに思います。

 そして、重ねて言えば、日本の対イラク政策ももう見直す時期に来ているのではないかと、私は委員の御指摘を聞きながら思っています。人による貢献と金による貢献、二〇〇三年度の緊急支援、それから二〇〇四年度の直接グラント支援十五億ドル、それから二〇〇五年―七年の円借款を中心とした三十五億ドル、この支援のスキームは、三、四年のうちに安定するだろうということを見越したスキームなんですね。それ自体が崩れている現在においては、やはり根本的な政策の見直しが必要だということを申し上げたいと思います。

 また、自己完結的でほかに補完するものがないから、ほかにかわるものがないから自衛隊を出すんだと小泉総理はおっしゃっていたはずです。実際に、エルビルには、あるいはバグダッドには四つの国から定期便が飛んでいますし、特措法の根本そのものも崩れているのではないか、このように考えます。

中川(正)委員 私は、今回訪米をして、改めて、ここまでブッシュ大統領の、いわゆる支持率といいますか、これが落ちているのかと思って、愕然としたというか、改めて考えなきゃいけないなというふうにつくづく思いました。

 これはもう本当に卑近な、身近な例でありますが、土産物屋に例えばこんなものが売っているんですよ。「ジョージ・W・ブッシュ・アウト・オブ・オフィス」、首にするまでカウントダウンで、この中にこれまでの失言録といいますか、ブッシュがとんでもないことをいろいろ言っているんですが、それが書き並べてあって、ハング・イン・ゼア、頑張れよ、もう少しでブッシュは終わるから、こういう本がさもアメリカらしく並んでいるという状況。あるいは、これはミントなんですけれども、ブッシュの顔がここにありまして、普通はナショナルエンバラスメントなんですよ、これをエンバラスミントとひねくり回して、売っているんですよ。なかなかこれはよく売れているそうなんです、聞くと。というところまで実はアメリカの世論が変わり始めているということなんですね。

 そんな中でこの法案が出てきた。この法案というのは、さっき申し上げた、補正予算の中で来年の三月には撤退するということを条件づけた法案が上下を通った。しかも、上院では五十一対四十六という相当の差をつけてこの法案が通過をしたということ。それをもって大統領は拒否権を発動したわけでありますが、ここから何が始まるかというと、現実的には、大統領と議会の中で話し合いをしていかなきゃいけないわけですよ、打開していくためには。だから、大統領も政策転換をせざるを得ない状況まで追い込まれてきている。

 そんな中で向こうの議員といろいろ懇談をしたんですが、どの辺に、いわゆる落としどころといいますかまとめていくポイントがあるのかというと、一般的に言われているのは、ベンチマークをつけていこうと。派遣をしていくにもある程度の条件それから基準というのをつくって、その基準を満たしていく中で派遣を認めて、その基準が満たされない場合には撤退だというふうなこと。あるいは、来年の三月すぐと言わずとも、撤退の時期というのを明記した形の中で条件づけをしていこうとか、そういう議論が出てきております。

 アメリカでさえそんな状況になってきているんですよ。日本でなぜ何にもなしに二年間なんですか。ベンチマーク、議論しましょうよ。(発言する者あり)二年いなきゃならないわけじゃない、そのとおりなんですよ。だから、そこのところは日本が、さっきの、塩崎さん、日本で考えるんだというのだったら考えましょうよ。ただ何にもなしに二年というのは、何にも考えていないということなんですよ。意思がないということになる。恥ずかしい話ですよ、こんなものは。だから、そこのところは、お互いが、私たちの党も含めて、現実的な対応の中で一遍真剣に、日本としてはどういう条件の中でイラクを見ていくのか。

 私は、こんな名前だけの、あるいはC130三機で日本がこれだけ貢献しているんだ、そんな大見え切ったようなうその援助じゃなくて、本来この国が、いわゆるイラクを中心にして、実際周辺国の状況も含めて、ダイナミックに外交政策が展開ができて、ODAの金の使い方もしっかりしたものになって、芽が出てくるという、現実的なものが手ごたえとして出てくるという、そんなものにしていきたいじゃないですか。それを、こんなごまかしで、やったやったと言うのは恥ずかしいと思うんですよ、私は。そういう意味で話し合いを求めます。ベンチマークをつくったらどうでしょうか。与党、民主党、それぞれ答弁をいただきたいというふうに思います。もう時間が来たようであります。

浜田委員長 塩崎官房長官、時間が来ておりますので、短目にお願いいたします。

塩崎国務大臣 民主党さんは、要は七月の末で終わりにせいというだけの提案をされているというふうに理解をしておりますが、我々はもう少し、イラクの国民に対しても、あるいは世界の安全と平和のためにも責任をやはり持っているというふうに考えています。先ほど、アメリカの議会とブッシュの双方を無視しているという話でありますが、ブッシュ大統領を無視しているわけでも、従っているわけでも、あるいは議会を無視しているわけでもなく、いろいろなプレーヤーがいる中で国際的に支援をしているのがイラクの復興支援であります。

 特に、例えば国連は、少なくとも数年間はこの活動を続ける、こう言っているわけですし、今原口さんが週四便飛んでいるという話でありますけれども、国連の職員は公務で動くときは民間機を使ってはいけないという内規が明確に定めてあります。したがって、私自身も、麻生外務大臣のもとで副大臣をやっているときに、アナン事務総長がぜひ空輸を続けてほしいという話を聞きましたし、今の潘基文さんも同様に言っているということでもありますし、マリキさんもそう言っている。

 我々はあくまでも主体的に、先ほど申し上げたとおりいろいろな状況を考えた上での判断をして、独自の支援活動をしているということでありますので、おっしゃるようなそう単純な話ではないということを我々考えなければいけないと思いますし、責任を負っている立場として、我々は責任を果たしていく義務があると思っております。

末松議員 今アメリカの方でも、上院、下院とも撤退決議が出たということでございますけれども、この問題、戦争の正当性からずっときている話で、テロとも関係なかった、大量破壊兵器とも関係なかった、そしてブッシュ大統領がその過ちをみずから認めた。先ほど日米の同盟という話がございましたけれども、もし同盟であるならば、それはブッシュ大統領が同盟国に対してもわびなきゃいけない、そういうふうな状況だろうと思うんですね。

 その正当な戦争を前提にやっているこの自衛隊の復興支援についても、フランス、ドイツ、カナダなんかもそういった部隊を送らずともしっかりとした支援をしているわけですから、こういうことを含めて考えれば、総合的に考えるとやはり即座に撤退をやるべきだと思っています。

浜田委員長 時間が来ましたので、よろしくお願いします。

中川(正)委員 終わります。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、法案について聞きますが、今中川委員からもありましたように、なぜ二年なのか、いろいろな関連で質問していきたいと思います。

 まず官房長官に聞きますけれども、今回の法案はイラクにおける自衛隊の活動を二年間延長するもの、こうなっています。一方で、テロ特措法は、状況の推移を注視していく必要があるということで一年間の延長幅となっておりました。今回の法延長に当たり、延長幅を二年とした理由について説明していただけますか。

塩崎国務大臣 先ほど中川議員にもお答えを申し上げましたけれども、今後数年間、恐らく国づくりにイラクは邁進をする、苦労する時期で、大変重要な時期を迎えるということだろうと思います。そして、先ほどもお答え申し上げましたけれども、日本は米国に言われたからやっているわけでもなく、それから、国連の要請もあって空自が輸送で貢献をしているわけでありまして、その国連関係者が少なくとも数年はやはり活動を続けるだろうと。先ほど申し上げたように、国連職員がイラクの中を移動する際には、公務で動く限りは民間航空機を使うわけにはいかないということで、エルビルとバグダッドの間は特に国連にとっては重要な足になっているわけでございます。

 そういうようなこともあって、先ほど来、いろいろ新聞報道もございましたけれども、マリキ・イラク首相からは手紙も、そして先般は来日をされた際にも、直接総理にも延長のお話がございましたし、それから潘基文事務総長からもその旨の要望があったわけでございます。

 ということになれば、我々としても、ある程度腰を据えて空自の輸送支援を続けていくことによってイラクの安定と復興を実現していくということが必要だろうということで、二年ということで法律の延長をお願いする方針を決めたということでございます。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

赤嶺委員 官房長官、空自は今、国連の輸送活動、人員の輸送は多国籍軍が八割、物資は九割が多国籍軍というのが本委員会で明らかになった経過なんですよ。国連は他国の輸送機を利用しているという説明もありました。ですから、それが二年延長という理由にはならないと思うんですよ。

 私が聞いていますのは、少なくともテロ特措法のときは、皆さんは状況の推移を注視していく必要があるとおっしゃったんですよ。それで、一年だ、このように決めたわけですね。今、まさに状況の推移という点でいえば、先ほどから出ているように、昨年末の米国のイラク研究グループの報告や、あるいは上下両院の可決や、あるいは来年にも戦闘部隊の撤退を求める動きがあるということなど、また、何よりも治安回復という点で今皆さんが重視しているのは新たな治安作戦だ、このように思いますけれども、皆さんの側はそれがかぎになるというぐあいに考えているはずです。

 いわば、まさにイラクというのは、何年延長するか、我々は延長に反対でありますけれども、政府の立場からいっても、テロ法のときには治安状況の推移を注視していく必要があるとして一年にしたのに、何で今回、これだけ状況の推移が激しいイラクにおいて二年にしたんですか。

塩崎国務大臣 テロ特による支援とイラクへの支援と、全く同じ状況の中で同じことをやっているわけでは決してないわけであります。

 特にイラクの場合には、何しろ大事なことは、復興支援をするということで日本は行っているわけで、戦闘行為をしに行っているわけでは決してないわけでございまして、先ほど申し上げたように、プレーヤーとしては、先ほど先生御指摘のように、多国籍軍がリクエストが多いという話がありましたけれども、今回、延長について、確かに多国籍軍からの要望もございます。それから、国連からもございます。そして、イラク政府からもございます。それぞれ復興支援のために腰を据えてやろうということであり、この地域の安定性は先ほど来申し上げているとおりでありますから、日本としてもしっかりと腰を据えてイラクの復興支援を応援していこうということで、空輸支援継続ということで日本としての支援の姿勢を示そうということで二年にしようということでございます。

 先ほど、国連が数年ぐらいは少なくとも復興支援を続けていかなければならないというふうに考えているということはお伝え申し上げましたけれども、そういう中で、イラク政府それから国連、そしてまた多国籍軍、それぞれからの要望に基づいて私たちはこの二年という延長幅を決めたところでございます。

赤嶺委員 今、官房長官は答弁の中でみずから、多国籍軍の支援要請が多くなっている、いわば国連支援が非常に空自の活動において比重が落ちていることをお認めになりながら、国連の要請、要請と言いますけれども、これでは本当に、二年延長、全くわからないんですね。

 それで、先ほども質問が出ましたが、そう考えているときに、やはりマリキ首相の報道にある発言であります。ことしじゅうにも日本の部隊は必要なくなる、このように述べているわけですけれども、この発言と二年延長との関係、これはどう説明しますか。

塩崎国務大臣 先生、先ほど、多国籍軍からの支援要請がふえているととられるかのように私が申し上げたかもわかりませんが、別にそれはふえているわけでもなく、同じようなウエートで来ているということをもう一回改めて申し上げたいと思います。

 今、共同通信によるけさの報道でしょうか、マリキ首相がことしいっぱいでも支援は終えられるんではないのかという話があったかのような報道があることについての御指摘が今ございました。

 これについては、先ほど麻生外務大臣から申し上げたように、これはイラク政府にも確認をいたしましたけれども、あくまでもこれは希望を述べた発言であって、なおかつ、そういう報道であるわけであって、我々は改めてこの報道の後にイラク政府に確認をいたしましたけれども、引き続いて航空自衛隊の活動継続を求めるという従来のイラク政府の立場は何も変わってなく不変だ、そしてこれを可能とする法案が日本の国会で承認されることを願っているという説明が改めてあったところでございます。

赤嶺委員 多国籍軍のウエートがふえているわけではないということであれば、最初から自衛隊の活動は国連支援どころか多国籍軍支援が中心であったということになるだろうと思うんですね。

 それで、今、マリキ首相が希望を述べたと。まさにそれを希望だととったにしても、ことしじゅうにも日本の部隊は必要なくなるという強い希望をイラク側がお持ちだ、こういうことになるだろうと思うんですね。マリキ首相はこれまでも、治安権限の移譲については、この四月には、年内にもイラク全土で権限移譲を完了する考えというのを表明してまいりました。私は、こういう経過からいっても、今回のマリキ首相の発言は驚くものではありませんでした。本当にそう考えていらっしゃるだろうなと思いました。

 そこで伺いますけれども、法律の延長幅二年、こう判断するに当たって、当然、こうした治安権限移譲との関係についてイラク政府と協議を行った上で決定したはずだと考えますが、具体的にどういう協議を行ったんですか。

塩崎国務大臣 イラク政府とはいろいろな形でコミュニケーションをとって意見交換をしているところでありますけれども、あくまでも我が国による復興支援については我が国が主体的に物事を決めているわけでございますので、それは我が国が主体的に決めたと言うほかないと思います。

赤嶺委員 イラクのマリキ首相のそのような希望ということが、治安権限移譲についての繰り返しの首相の発言を見た場合に、自衛隊の駐留について協議するということが私は当然だと思いますけれども、政府も、イラク自身による国づくりを支援する、あくまでも国づくりはイラク自身だ、こうおっしゃってきたわけですから、イラク政府と協議することはやはり必要だったんじゃないですか。

塩崎国務大臣 先生、けさの新聞で希望を述べたことですべてを判断してもらっても困るわけでありまして、当然のことながら、イラクと我が国は、政府同士の話し合いはいつもしているわけであります。

 その中で、先ほどの希望というのは、これはもう麻生大臣が御答弁されましたけれども、あくまで、物事が順調に進めば近い将来にはイラクに多国籍軍がいる必要はなくなるという希望を述べたにすぎない、こういうことでありますから、余り報道ベースで語られてもちょっと困るかなという感じがいたします。

 あくまでも、今申し上げたように、いろいろなコミュニケーションをイラク政府と日本政府はやり続けているところでありますし、何がイラクにとって一番大事なのかということを日本は当然考えながら、どういう支援が一番イラクにとって必要であり、日本にとっても貢献可能なものかということを考えながら行動を決めているわけでありますから、今回の法律の延長についても、さまざまな意見交換のもとで日本が主体的に判断をさせていただいたということで二年間の延長をお願い申し上げているところでございます。

麻生国務大臣 先方との連絡がきちんとされていないのではないかということがおっしゃりたいことなのかと存じますが、少なくとも、おとといマリキという人とはエジプトで会っておりますけれども、直接わざわざ寄ってきて、この件に関しては感謝と同時に継続を要望していることも確か、間違いなく本人が言っておりますので、聞いた本人、向こうは言った本人ですから。また、潘基文という事務総長ともその後会談を三十分しておりますけれども、先ほど一連の答弁とほぼ同じ内容の話を潘基文という事務総長からももらっております。

 したがいまして、国連として、またイラク政府として、この航空自衛隊の支援というものに多大の感謝と継続を求めておるということは確かであります。

 その他のいろいろな支援、ODAを含みます一連の支援につきましては、随時いろいろな形でイラク側と詰めておりますことも確かですし、その後ジバリという人と約一時間半ほどやりましたけれども、その場におきましても、細目につきましては後日外務省等々ときちんと詰めさせてもらいたいという希望が示されておることも事実であります。

赤嶺委員 私が伺いましたのは、きょうの発言をとらえて全体がどうのこうのというお話ではなくて、マリキ首相も含めて、多国籍軍の早期撤退に向かった治安権限の移譲、そして来年中には治安権限移譲はできるということを繰り返し発言しているわけですよ。ですから、自衛隊がいつまでいるかというときに、これはイラクの復興はイラク人自身の手によるものであるわけですから、やはり、次はどうですか、こういう協議、政府の立場からいってもあってしかるべきじゃないかと思って聞いたんですが、全くなかったと。全くないまま日本が勝手に決めているというような思いを非常に抱いております。

 外国の、今イラクに軍隊を派遣している国で、二年先まで活動を継続する、こういう意向を表明している国はありますか。

麻生国務大臣 二十六カ国あると思いますけれども、その内容を一カ国ずつ全部、細目を知っているわけではありません。

赤嶺委員 結局、先ほどから指摘がありましたように、だれのための支援か。アメリカで孤立を深めているブッシュ政権を政治的にも実態的にも支援するための今回の延長と言わざるを得ないと思います。私は、自衛隊の活動は直ちにやめるべきだと思います。

 そこで、連休中、いろいろ外交日程もありました。防衛、外務両大臣も各地にお出かけであったようですが、久間大臣にお聞きしますけれども、この間、国会や当委員会でもイラク戦争の評価にかかわる大臣の発言がありました、この点については一連の日米協議の中で議論なさったのでしょうか。

久間国務大臣 一度も話はしておりません。

赤嶺委員 一度も話をしていないという御答弁でありましたけれども、私は、とてもイラクが今泥沼化していることについて久間大臣と議論を交わしながら、一度だけ共感を覚えたことがあったんです。それは、アメリカ兵のバグダッドにおける乱暴なやり方、それをイギリス兵と比較して大臣は説明しておりました。

 私、さもありなんと思いながら聞いておりましたけれども、日米防衛首脳会談もあり絶好の機会だと思うわけですが、やはりイラクの泥沼化、米兵のそういう行動のあり方、常々日本の国会で問題提起してきたことなんだがというようなお話はなさいませんでしたか。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

久間国務大臣 ほかに詰めることがたくさんございまして、そういう一般論としての話をする時間がございませんでした。

赤嶺委員 ところが、大臣、日米防衛首脳会談の後の大臣の会談要旨を見ますと、久間防衛大臣より、本年一月アメリカが発表した新たなイラク政策について、イラクの安定化と復興に向けた米国政府の新しい決意を示したものと評価し、今後、よい成果を上げることを強く期待すると。いわば、新たなイラク政策というのはバグダッドにおける強化された掃討作戦ですよね。この間も民家をヘリから攻撃して民間人が殺害されている。結局、それを強く期待する、このように、いわば会談要旨ですよ、政府が発表された会談要旨でそういうことを言っているわけですが、私、これは非常に疑問なんですけれども、いかがですか。

久間国務大臣 今みたいに言われますと、アメリカ軍はそういう民家を攻撃した、そういうのを期待するかのようなとらえ方でありますから、そこのところは言い方を注意していただきたいんですけれども、アメリカが増派してまででもイラクの安定を図ろうとするその決意については高く評価しておるということを言ったわけでありまして、ああいう状態になった後、ではもう構いませんよということで放置するよりは、増派してでもそれをとにかくおさめたいというそういう気持ち、そういう決意を私は高く評価しておりますということを言ったわけであります。

赤嶺委員 私は今の久間大臣の発言を伺いまして、イラクを泥沼化させている米兵のそういう乱暴な掃討作戦、これについて、前に発言されたことと今回の態度とはちょっと違うんじゃないかなと国民からは疑問を持たれる結果になるだろうと思います。私も大いに疑問であります。

 久間大臣は、今度、ブリュッセルで、同行記者団との懇談の場でテロ特措法の延長について言及しておられます。具体的にテロ特措法についてどういう発言を行ったんですか。

久間国務大臣 延長じゃございませんで、今のアフガンのためのテロ特措法というのは、先ほどからも何回も言っていますように、テロとの闘い、それをバックアップするためにつくられた法律でございますが、いわゆるイラクみたいに、復興というのを先に、前提にしてつくられた法律でない。その辺の制約があるので、このままでいいのかどうか、これはまた国会でいろいろな意見を聞きながらまとめていかなきゃいけないんじゃないかなという、そういうような思いを述べたわけであります。

赤嶺委員 報道によりますと、「インド洋での給油活動以外に、例えば、民間活動団体(NGO)の輸送などを行う場合は、現行法をどうするか検討しなければならない。」このようにおっしゃったと報道はあるんですが、NGOにかかわってそういう発言があったんですか。

久間国務大臣 NATOの事務総長から、NGO、民間人を輸送する、そういうことについて自衛隊で行ってもらってもいいんじゃないかという話がございました。私も、それはできないわけじゃないけれども、現在の法律はそういうことを前提としているかどうか、あの法律をつくった当時からの考え方によりますと若干ちょっと外れておる可能性もございますので、読めないとは言い切れないかもしれませんけれども、現在のままでいいのかなという思いがありましたので、やはりこれは研究してみたい、そういうことを言ったわけであります。

赤嶺委員 研究の課題だということなんですが、NGOから具体的に何か要請があるわけではないんですね。

久間国務大臣 私どもが直接会ったわけではございませんで、NATOの事務総長がそういうことをおっしゃったということであります。

赤嶺委員 次に、久間大臣、普天間飛行場の問題について聞きたいと思います。

 日米首脳会談、そして日米防衛首脳会談、2プラス2、いろいろな機会に日米合意の着実な実施を確認したようでありますけれども、それぞれどういうやりとりがあったんでしょうか。説明していただけますか。

久間国務大臣 特別な話はございませんで、昨年のロードマップで決めたその内容を再確認したということでございます。

赤嶺委員 つまり、日米合意どおり実施していくという表現になっているだろうと思うんですが、あるいは2プラス2の共同文書では、「日米合意に従った着実な実施の重要性を確認。」ということになっているわけですけれども、これは、沖縄県や名護市が求めている日米合意の沖合移動には応じないということを確認したということですか。

久間国務大臣 そういう細かいことではございませんで、日米の政府間で決めたロードマップに従ってこれを着実にやっていく、そういうような言い方をしたわけであります。

赤嶺委員 日米合意の微修正が今、沖縄県、名護市、久間大臣との間で問題になっているわけですが、これらの微修正については、今回の日米会談では協議したんですか。

久間国務大臣 そういう細かいことは言っていないわけでありまして、現在進めておる段取り、これから先アセスをやるとか、そういうことも踏まえて、いわゆるロードマップに従った内容に従ってこれから先やっていくということを合意したわけであります。

赤嶺委員 私は、連休に入る前に辺野古に行ってまいりました。ここで繰り広げられているのは、環境アセス法に基づいて環境に対する配慮を重ねた上でとられるべき調査が、いわば環境アセスについて沖縄県との間の合意が見られないので、環境調査というような意味不明な単語を使って無法な調査活動が行われていることに、本当に日本の環境アセス法が泥靴で踏みにじられているという怒りを持ちながら辺野古での調査活動を行いました。

 基本的に、微修正だ、地元の意見をよく聞くんだ、日米合意のまま実施するんだと、いろいろなことを言いながら、基本的なことは何も決めないで、必要な法律の手続も無視していくやり方は、本当に私は許されないなと思います。

 次に、2プラス2の中身で、在沖海兵隊のグアム移転に触れられておりますが、概要によりますと、在沖海兵隊のグアム移転については、「二〇一四年の完了に向け課題も多いので、引き続き日米で協力して確実に進めていきたい。」とあります。

 具体的にどういう課題を指しているんですか。

久間国務大臣 そういう具体的な内容でございませんで、日米ロードマップに従って、グアムへの移転もロードマップにもうきちんと書いておるわけですから、だから、それに従ってやっていくということを合意したわけであります。

赤嶺委員 それでは、2プラス2の中で役割、任務、能力についても合意した点を幾つか確認しておきたいのですが、その中で、GSOMIA、軍事情報包括保護協定として知られているのが書かれているわけですが、「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する両政府間の実質的合意。」というのが挙げられております。

 まず、その協定の内容について説明していただけますか。

久間国務大臣 これは、これから先、GSOMIAを締結して、一般協定を締結してやっていこうという、そういうようなことを決めたわけでありまして、中身についてはこれから外務省マターとして、外務省と向こうの国務省とがいろいろと詰めていくことになろうかと思います。

赤嶺委員 「両政府間の実質的合意。」とあるわけですが、これはどういうことですか。

久間国務大臣 GSOMIAを締結するということについて、アメリカが各国、ほかの六十数カ国だと思いますけれども、そういうところと結んでいるGSOMIA、それを日本についても同じように結ぼうという、そういう方向については一致したわけであります。

赤嶺委員 報道によりますと、GSOMIAの締結に当たって国内法の改正はしないとか、いろいろな報道がされていますが、この点はどうなんですか。

久間国務大臣 これも、私よりも外務大臣かもしれませんけれども、一般的には、国内法を特別設けなければならないという必要性は、現在のところ、そうないんじゃないかなと思っております。

赤嶺委員 今のGSOMIAについて言いますと、やはり私は、国民の知る権利に対する重大な侵害につながるものとして、これからも政府に対して追及していきたいと思います。

 計画検討作業というのが2プラス2の中で出てまいります。「変化する安全保障環境を反映し、また、地域の危機において共に行動する自衛隊及び米軍がより良い態勢をとるための、より具体的な計画検討作業の持続的な進展。」こうあるわけですね。ガイドラインや共通戦略から始まって、この計画検討作業というのが非常に目立つわけですが、具体的に何をどう、より具体的にするんですか。

久間国務大臣 何をどうと言われましても困りますが、もうガイドラインを取り決めたときから、両国の、特に軍同士の連絡調整機能を強化しようということをあのときに申し合わせたわけでありまして、その一環として、役割、任務それから能力、これについても検討作業を進めましょうということで今日まで来たわけでございますから、そういう意味で、これから先さらにそれを深化させていこうという、そういうことをお互いが確認し合ったということであります。

赤嶺委員 ちょっとよくわからないんですけれども。

 この問題との関係で、最近の琉球新報の報道の中で、SACO最終報告に向け在日米軍内で調整を進めていた九六年十一月、米空軍嘉手納基地が、返還後の普天間飛行場の緊急時の滑走路機能として那覇空港を使用できるよう求めていたということが米空軍の文書でわかったとあります。

 ロードマップの中でも、この問題は「民間施設の緊急時における使用を改善するための所要が、二国間の計画検討作業の文脈で検討され、普天間飛行場の返還を実現するために適切な措置がとられる。」と明記されていたわけですが、その場合に、那覇空港の使用も検討しているんですか。

浜田委員長 防衛省大古防衛政策局長、時間が来ていますので、手短に。

大古政府参考人 民間施設の緊急時における使用でございますけれども、これは先ほど御指摘のありました計画検討作業の中で検討されておりまして、現時点で具体的な内容は決まっておりません。

赤嶺委員 私は、今回のイラク特措法の二年延長といい、それから2プラス2の中で記述されているいろいろな合意といい、日米同盟、まずアメリカありきの世界戦略、日本国憲法九条に基づく日本外交はどこに行ったかという思いを強く抱かざるを得ないことを申し上げまして、質問を終わります。

浜田委員長 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 聞くところによりますと、官房長官、所用で四十五分から退席ということでございますので、まず、官房長官に端的にお聞きしたいと思います。

 その前に申し上げておきたいのは、いわゆるこの法律は、当然期限立法ということでございます。期限立法はたくさんありますけれども、当然、その趣旨というものは、時代は変わる、状況も変わるというようなことで、その折々に見直していくという趣旨であることはもう御承知のとおりです。この法律が、とりわけイラク特措法というのが期限立法であるのは、状況が変わってくる、戦争にかかわることだ、そういうことで、大変国運というか、場合によっては国の安全にもかかわる重要な問題ゆえに、私は審議しているものだと思うんです。

 したがって、新法ではない、延長だからということで軽く考えるべきものではなく、これだけ事態が変わり、前提条件も思いのほかうせていったという状況の中では、本当に政府側は、答弁として真剣な説明、それは国会議員、野党の議員に対する説明というよりも、国民に対する説明であるという思いで私はお答えをいただきたいと思っております。

 それで、何人かの議員の皆さんが二年延長の根拠について聞かれました。同じことは聞きません。その中で、官房長官が国連の要請がありということを何度かおっしゃいましたけれども、それは、今回のイラク特措法二年延長について、二年延長してほしいという要請が国連からあったと理解してよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど来繰り返し御答弁申し上げているように、このイラクに対する復興支援の政策は、日本が主体的に最終的には決めているものでございます。

 その主体的な決断に至るまでにさまざまなやりとりをやってきているわけでありまして、その中に、先ほど来申し上げているように、まず多国籍軍、そして国連、そしてまた当事者たるイラク政府、こういったところと緊密な連絡をとり、なお、多国籍軍ということは、その出身元の政府と緊密に連絡をとってきているということでございます。

 国連の話が今出ましたけれども、国連関係者いろいろおられますが、我々が話をしている限りは、今後少なくとも数年間は今の活動を継続していく、それはイラクの復興支援のためにということで、その意向を私たちに示してきているのは、アナン前事務総長そしてまた潘基文事務総長も、先ほど来お話が麻生大臣からあったように、直接、継続についてもお話があったところであるわけでございます。カジ事務総長特別代表という方からも、この継続を要請する書簡が来ております。

 また、UNAMI、つまり国連イラク支援ミッションの本部がバグダッドにありますが、そのUNAMIの重要な活動拠点がエルビルになっている。ですから、その間を空自が国連職員を運んでいるということでありますけれども、先ほど来申し上げているように、治安等の理由から、公務に関する移動については、国連職員は民間機を使うことはならないということに内規で決められていることであって、自衛隊の輸送に期待をされているということになっているわけで、そういった活動も数年続くだろうというもとに我々に話が来ているわけでありますから、主体的に我々は二年ということで今回は延長をお願いしている、こういうことでございます。

古賀(一)委員 今、カジ事務総長代行の方から書簡ということで具体的な話がありましたけれども、それはそれでわかりました。

 ただ、官房長官がるる主体的という言葉を使われるときに、結局主体的にというのは、具体的な要請はないけれども、日本で勝手に先を見越して安全サイドで決めたんだというふうに私はずっと聞こえていたんです。ところが、書簡はあると。

 でも、その中でもう一つ、これは一点しかないと思うので、国連の職員が民間航空を使ってはならないという内規という話がありましたけれども、我々常識的に言えば、国連の職員が東京に来る、あるいは国連機関の人がいろいろ世界を移動するときには民間機を使っている。これは私、ちょっと常識に反するような感じがするんです。この内規とやらを私は本当なんでしょうかという疑いを持つんですけれども、これを資料としてひとつぜひ見せていただきたい、かように思いますが、いかがですか、もう一点。

 そして、先ほど、主体的に考えたという中に、コンタクトをいろいろイラク政府等ともとった、こういう話があるんですけれども、現場の状況等々から見て、本当にイラク全権特命大使、イラク大使がイラク政府とどれだけコンタクトをとっているかということは、私は真に受けられないような気もする。これはどれだけ、この半年というか、日本国を代表するイラク大使がイラク政府とコンタクトをとったというのは、中身についてはなかなか言えないことはあっても、事実としてはこれだけのコンタクトをとっているというのを私自身は疑念に思います。本当にそうなのか。これも私は、箇条書きでもいいから出していただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

塩崎国務大臣 後段は外務省かなと思いますので、前段のことでございますが、いや、東京に来るときには民間航空機に乗ってくるじゃないかというお話でありますが、当然のことながら、危険地帯の場合の話でありますから、危険度に応じてそういうような内規があるということであります。

 それで、今外務省の方にちょっと確認をいたしましたけれども、内規というものは、内規でありますので、出せるかどうかは国連の方に確認をしてみないといけないということでございますので、確認をさせていただきたいというふうに思います。(古賀(一)委員「ぜひ出してください」と呼ぶ)

麻生国務大臣 これは、駐イラク大使含め、何回となく連絡はやっておりますし、我々のところに、外務大臣との交渉等々を含めまして、かなり綿密にやってきたと思っております。

古賀(一)委員 私がこういう事実関係について資料まで出せと言うのは、要するに、このイラク特措法、そしてテロ特措法もそうですよ、私もあのとき委員会におりましたけれども、いわゆる説明されたことというものが極めて説明が不十分、我々国会議員にしてそう、ましてや国民にとっても、全然イメージがわくようなちゃんとした答弁がなかった。

 それで、案の定、もう先ほど来何度も言われておりますけれども、大量破壊兵器の話にしても、すべてが現実が異なってきた、こういう状況なので、疑いを持たざるを得ないんですね。しかも、事柄は極めて重要だ。そしてまた、イラクからイランへというきな臭い動きもこれまたあるので、先ほど申し上げましたように、この延長問題を議論するときに、私は、政府側としては、過去の不十分な説明も、ここまで現実が見えてきた以上、はっきりともう一回説明をし直す、あるいは、変わり続ける現実の変化というものをしっかりここで、国会で把握をして説明もする。

 それから、とりわけ将来のシナリオというものは、右に行くか左に行くか、どうなるか本当に見えない状況、まさにおっしゃるように今は転換点だと思うんですよ。だからこそ、将来の展望について、こういうシナリオ、こういう危険性、これがあるんだというものをやはりこの延長問題を機にしっかりと議論するというのが国会の務めだろう、かように私は思います。

 この戦争が始まったとき、ラムズフェルド国防長官、やめられましたけれども、安定にかかる時間は五日か五週間か五カ月か、いずれにしても短期間で終わると言明をしました。ブッシュ大統領に至っては、あれはたしか空母の上だったと思うんですけれども、任務完了、もうこれで終わったという発言をされたこともある。チェイニー副大統領も、数週間で安定する、これは二〇〇三年の話であります。もうとんでもない状況になっております。

 それで、官房長官が出られましたので、これは質問の仕方を変えて、外務大臣にお聞きしたいんですけれども、法律が言うイラク国民による自主的な努力を支援する、これがこの法律のコンセプトであると思うんですよ、イラク国民による自主的な努力を支援する。

 さて、現実を見たときに、イラク国民による自主的な努力というものは発揮されているような状況であるかどうか。これが否定されるならば、この法律の理念というものはまず冒頭から吹っ飛ぶわけで、私は、それだけでもこの法律は即時廃止ということになるのではないかと思いますけれども、イラクの現状を、今の一点において、つまり、イラク国民による自主的な努力というものが行われているという点において、どう評価されますか。御意見を賜りたいと思います。

麻生国務大臣 古賀先生、この四年数カ月にわたって、サダム・フセイン独裁下にあったイラクが、少なくとも、選挙をやって、そして憲法をつくって、そしてそれに基づいて議会を開いて、それに基づいて行政府をつくるという一連の進展は、間違いなくイラク国民の手によってなされた、私はそのように理解をいたしております。基本的認識として、イラク人の手につくられた憲法によって、イラク人が選んだ政府によって、イラクの今の行政府ができ上がっておるというように理解をしておりますので、その面におきましては、間違いなく大前提に関しましては満たしておるというのは自明の理だと考えております。

古賀(一)委員 それでは、私なりに。確かに議会はできた、しかし、国民議会の内部でテロが行われたことはもう報道のとおりでありまして、昨日も、政府庁舎で何かテロが起こったというのがインターネットで流れておりました。これまでイラクの情勢を総括するに、この前の委員会の後、四月二十八日は、ニュースで流れておりましたけれども、六十人が、ある場所で、カルバラというところですけれども、テロで亡くなった、死んだ人だけですね。百七十人が同時に負傷。そのカルバラだけじゃないんですね、ほかの地域でも同時に一日でテロが各地で行われまして、百十九人が一日で死亡した。このカルバラもたまたま初めてじゃなくて、四月十四日にも四十七人が死亡するというテロが行われている。

 また、四月の統計によれば、米軍の死者は一カ月で百三人に上った、これまでの最大の死者である。いわゆるエスカレーションしてきている。そして、きのう、実は、バグダッドの西部でもテロがあり、三十五人が死亡、八十人が負傷する。この日だけで、全土で五カ所のテロ、五十人の死亡。もうこれは、それは、議会はできた、憲法はできたと言いながら、先ほど言いましたように、国民が自発的な努力というよりも、あるいはアメリカ側から見れば、テロに対する闘いというよりも、まさに内戦、シビルウオーという状況そのものではないかという気がしてならないんです。

 外務大臣は今そうおっしゃいましたけれども、そのような、全土でこれだけ激しく、これだけ日に日にエスカレートする殺し合い、自爆、宗派対立が起こっているというその一点においては、私は、まさに内乱、内戦の状況ではないかと思うんですけれども、いかが把握しておられますでしょうか。

麻生国務大臣 内乱、内戦について、これは国際的な定義がありませんので、これをもって内戦、これは内戦ではないというのは、どこでどう線を引くかというのは、これは国際的なルールが存在しませんので、古賀先生がこれをもって内乱、内戦と言っておられることを否定する、私ども、それはかくかくしかじかで否定と申し上げるわけにはいかぬというのがまず基本的な観点だと存じます。

 続けて、今の点で申し上げさせていただければ、例えば北の、大統領もしくは今の外務大臣、これはクルドだと存じますけれども、この地域においては、どの報道を見ましても、極めて平穏に事が推移しておるというのも事実です。一般に商業も営まれておりますし、この間帰ってきた商社の人の話を聞いても、とても戦争が起きている雰囲気は全くないという話をしておりますので、地域によってかなり差があるというのは確かでありまして、いわゆるスンニ派と言われる方たちの多い中部、いわゆるバグダッド周辺にこの種の話は集中しておるというのが現実だと思っておりますので、全土にわたって極めて厳しい内戦状態にあるというようには私自身は理解をいたしておりません。

古賀(一)委員 この点は民主党の方にも認識を聞きたいと思います。

 提案者、今回、法案によって、法案を、廃止というスタンスをとられた、その民主党の、イラクにおける現状あるいは今後の展開の予測というものをどう見ておられるか、お答えいただきたい。

原口議員 お答えいたします。

 古賀委員が御指摘のように、イラクは、予断の許さない、そういう状況が続いているというふうに思います。

 ただ、先ほど外務大臣がお答えになりましたように、死者ということでいうと、特定地域で死者が出ている。ただ、これも注意深く見ていくと、アメリカ軍が掃討作戦を行うときに死者のピークが出ますが、その後、幾つかのパターンの死者が出ていることを注目しています。つまり、イラク人の死者数がどのようなときにふえるのか。万全の装備のアメリカ兵を、テロリストからすると、殺害することはできないけれども、その分、多国籍軍あるいはイラク人という無差別テロに向かっているところ、これは着目をしなければいけないところではないかと思います。

 つまり、力による封じ込めの限界がもう既に出てきている。先ほど御指摘なさいましたラムズフェルド氏についても私も国防総省で直接お話をさせていただきましたが、イラクの治安に必要な兵力数、その中身は、外交的な信頼がありますからここではつまびらかにしませんが、とても今のような数ではございませんでした。アメリカにおけるイラク占領政策の失敗というものが一つ大きな背景にあると思いますし、そもそも、イラク戦争そのものが終わったかどうか、ここについてもきっちり議論をする必要がある、このように考えております。

 イラクにおいて、サダム・フセイン下で封じ込められていた幾つかの勢力、宗派対立が再燃している、このことは大きな懸念である、このように考えております。

古賀(一)委員 泥沼戦争という言葉を言うとベトナムを思い出すわけですが、ちょうどベトナム戦争真っ盛りのころ、私はたまたま外務省の方に出向しておりました。そのベトナム戦争、日本は、もちろん加担をしなかった、間接的にはあったという反対闘争もありましたけれども。あのときの状況に比べるならば、今のイラクの状況はもっと、私は、米軍にとって、多国籍軍にとって、危険な状況、見通しの暗い状況としか思えません。いずれ、ベトナム戦争が泥沼に陥り、選択肢を失い、アメリカ国内においてあれだけの反対の世論が巻き起こり、そして、アメリカ社会に物すごく大きな心の傷跡を残して、アメリカの経済自体も、社会自体も荒廃するところまで行った、私はこの轍を踏むような気がしてならないわけであります。

 したがって、やはりそういう歴史の教訓を見ながら、今回は日本が参加していますからね、加勢していますからね、本当に、もっと真剣に、私は、今後、将来の展望を、この延長法案を機に、しっかり議論すべきだと思います。その点は最後に申し上げます。

 さてそこで、後ほどイラク安定化外相会議のこともちょっとお聞きしたいんですけれども、その前に、現状として、イラクへの多国籍軍参加が、矢継ぎ早に撤退、縮小というものが起こっております。現在、どういう国が撤退、これは外務省の担当でも結構ですけれども、撤退の状況あるいはその理由というものをひとつ説明をいただきたいと思います。

岩屋副大臣 現在も二十六カ国がイラクに部隊を派遣しておりますが、今まで派遣をした国の中で既に撤退させた国は十五カ国でございます。国名は、サウジアラビア、ニカラグア、スペイン、ホンジュラス、ドミニカ共和国、フィリピン、タイ、ニュージーランド、ハンガリー、トンガ、ポルトガル、オランダ、ノルウェー、イタリア、そしてスロバキアでございます。

 その理由ということでございますが、大半の国は必ずしも明らかにしておりませんけれども、例えばこのうちオランダでございますけれども、イラクからの撤退の理由を公表しております。オランダ軍は、従来よりイラク治安組織の訓練を行っており、イラク治安部隊の自立化に応じて多国籍軍の規模が縮小されるという旨の説明を行っております。

古賀(一)委員 ところが、先ほどの死者の数、テロの数という面から見れば、どんどんエスカレートしている中で、オランダはそういう理屈で、担当地域がということで撤退をしております。それは、まさか失敗だったからというわけには派遣した方としても言えない、現実の理由はそうじゃないんじゃないかと私は危惧をするわけであります。

 ちなみに、盟友中の盟友イギリスはかつて四万六千人いたんですよ。四万六千の派兵を行っておったイギリスは、御承知のとおり、駐留する現在、七千人おるわけですけれども、これを数カ月のうちに五千五百規模まで、ざっと千五百人、縮小をさらに進める、こういうふうになっております。

 その中で、先ほどのお話のように十五カ国が撤退を続けていく、こういう状況でありまして、私は、その一点においても、日本だけが二年延長というのを決める、しかも十分な理由、先ほど主体的に、総合的に、国連やイラクからの要請、それだけの説明で二年延長ということを決めるのには、事の重大性から比較すれば説明は極めて不十分だと私は批判をしなきゃならぬと思います。

 これは、一年延長という、これは答弁する人がいないんですか。官房長官だけですか、延長問題は。困ったことですね。では、私の一方的な意見を言いましょう。

 国連の決議、昨年の多国籍軍のイラク駐留の決議は一年延長、日本が二年延長ですよね。一年延長だってよかったんじゃないかと思うんですけれども、先ほどのお話では、主体的に、総合的にということで二年と。勘ぐるならば、来年十一月は大統領選挙だ、こんなときに、とてもじゃないけれども国会で大統領選直前にそんなことはできないというような話があって、チェイニーさんが来て、盟友日本の国内で大統領選前にイラク派遣延長問題が火を噴いたらたまらぬ、国論を二分しないように二年ぐらい延長しておいてくれと言われたのではないかと、私は国連決議との比較において勘ぐらざるを得ないわけでありますけれども、その点はいかがでございましょうか、御意見があるようでありますし。

久間国務大臣 これは官房長官マターかもしれませんが、私どももこの議論に参加しましたので私の方から答えさせていただきますと、やはりテロ特措法というのは二年間でありました。そして、延長するときに半分ということにしましたが、このイラク特措法の場合は、法律をつくるときに、やはり復興は少し長くかかるから四年にしようということで、法律そのものを四年にいたしました。そういう意味で、向こうは二年の法律で一年の延長をした、今度はこちらは四年の法律でそれを半分の二年延長するということでございまして、それは私自身がはっきりとそういう意見を申し上げた経緯がございます。

古賀(一)委員 確かに、いろいろな答弁の仕方もあると思うものですから、あと質問もたまっておりますので、次に向かいたいと思います。

 そろそろ私は出口の議論もしなきゃならぬと思います。冒頭申し上げましたように、私は、今のイラクをめぐる状況、もっと言うならば、中東をめぐる情勢、あるいはアメリカの中東政策、こういうものは今まさに右に行くか左に行くかの転換点に置かれているような気がしてなりません。

 イラクがずるずるとなって、またイランとの関係で、さらにそこからアメリカ・イラン戦争というか戦いというか、そういうものが実は始まる危険性もるる指摘をされておりますし、ブッシュさんもそういう発言をこれまでしてきた。しかし一方で、アメリカの世論は、そうはいかじと大統領選へ向けていろいろな動きが起こってきている。

 そういう面で、非常に貴重な転換点。ブッシュ大統領としてはこのまま突き進めなきゃならぬ、しかし、世論、そしてこの前いわば可決をされました戦費調達法案、これの拒否権発動後の処理の問題があるということで、ちょうど私はここは、アメリカが悩みつつもどうしようかを呻吟している状況じゃないかと思うんです。

 そういうときこそ、何といっても盟友なら、同盟国なら、世界第二の経済大国なら、日本の外交がここでひとつ手を差し伸べるというかアドバイスをするというか、そういう一番の時期だと私は思うんですよ。これまで、正直言って、日本の中東政策、中東外交というのは、私は、アメリカ外交の追随外交そのものだったというふうに思います。しかし、これでいいはずがない。

 私は、この点において、今回のイラク安定化外相会議、今回は成功だったのかどうかわかりません、しかし、次への布石というものにもなったんじゃないかという気もしますが、これは質問通告をしておりません、帰ってこられたばかりの麻生大臣に、今回のイラク安定化外相会議、どういう息吹というか、感じられたか、お答えをいただきたいと思います。印象で結構です。

麻生国務大臣 アメリカのこれまでの中東政策をさかのぼると、やはりイランのパーレビまでさかのぼらないといかぬのじゃないですか。最近の話だけしても、とてもじゃないけれどもわかりませんし、その前はやはりパレスチナ、イスラエルができました一九四八年のイスラエル建国、もともとはあの辺からスタートしますので、長い話になりますので、とてもじゃないけれども時間がありません。どこか別の場所で、別の時間でもさせていただかないと、簡単に言葉を言うと、言葉をはしょると話はえらく危険なことになりますので、差し控えさせていただかぬといかぬと思います。

 今回のイラク安定化に関する周辺国拡大外相会合というのは、少なくとも、今までのGCCというより湾岸諸国とかサウジアラビアという国境を接している国に加えて、G8等々、中国を含めていろいろな国々が外相を送って会議をしたということによって、イラクというのは単なる中東の話だけじゃありませんよ、世界全体にとって非常に大きな問題だという位置づけにしたというところは、この拡大外相会議の意義は高かった、私自身はそう思っております。

 中国を含めまして、ロシアを含めまして、いずれもこのことに関してはっきり懸念等々を表明しておりますし、いろいろな形で、この安定というものに関しては各国の努力というものが示されなければならぬということに関しては、いろいろもっと期待された言葉もありましたけれども、皆そこそこ、反対することなく、これは間違いなく前に一歩進んだという点に関しては大きな意味があった、あの拡大会議に関してはそのような感じをいたしております。

古賀(一)委員 今度も、次回会合はもう拡大外相会議ということで引き続きやるということは決まったやに新聞で聞いていますけれども、そこら辺の雰囲気をお聞きしたいんですよ。

麻生国務大臣 次はトルコで開くことになっております。これは、一回目を開くときに当たりましては、イラク、イラン等々はトルコで開くのに反対、御存じのように、ここはクルド人の関係がいろいろありますので反対ということでありましたけれども、次回トルコで開くことまでは決まっておりますが、まだ時期等についてはこれから詰めるということになっております。

 したがいまして、それに至りますまでの間に雰囲気等々が出てくるんだと思いますけれども、今の段階は、場所が少なくともトルコに決まっただけでも、今まで全く不明でありましたものがきちんと決まっただけでも少しは進歩かなと思って見ております。

古賀(一)委員 今回の安定化会議では、要するに、イラン外相とライス国務長官の会談があるんじゃないかとか、日本の新聞では、そういう動きがあったら次のステップが開けるのでは、こういう話になっていましたけれども、日本としては、外務大臣としては、このイラク外相会議に臨む基本方針、ひとつ何かを開こう、何かの世話をしよう、何かのそういう戦略はあったんでしょうか。

麻生国務大臣 もともとイラクの、イランではなくてイラクの安定化会議に関しましては、少なくともこの拡大外相会議をして、ここにいろいろな形でドナー、貢献している国々を入れない会議ばかりやったって意味がない、拡大会議をすべきだと主張したのが日本ですから、したがって、それに合わせてこの会議をやらせることになったというのが私どもは大きかったと思います。

 したがって、そこに中国も出てくる、ロシアも出てくるというので、G8みんな出てくるという条件を出して、みんな出てきてその会議をさせるところまでしましたし、その前にロシアで、ラブロフとはこれに臨む態度を、ロシアの態度が非常に問題でしたので、これははっきりその点でもいろいろ話をさせていただいております。

 少なくともこの問題を、一部の地域の話ではなくて、これは世界全体にとって、少なくとも日本にとりましては約九割を中近東から油を輸入しております関係上、この地域の安定というものは極めて大きい意義を持っております。したがって、日本としてこの話を、一部の地域の話ではなくて、世界のエネルギーの問題にとって非常に大きな問題なんだという意識を持っていないのがおかしいのであってということでこの会議を主張したというあれがありましたので、私どもとしては、まず第一歩としては成功したと思っております。

古賀(一)委員 そこで、この安定化外相会議は、今回もそうですし、とりわけ次回のイスタンブールですか、予定されておるトルコの会議というのは極めて私は重要だと思うんですよ。

 マリキ首相の先ほどのお話がありました。政府答弁によれば、そうではないんだと否定されましたけれども、それはやはり、心の中に動きとしてはあるからこそああいうのが出るのだと私は思うんですよ。

 いわゆるイラクにおける航空自衛隊の必要性、宗派対立の激化、イラクのみならずイランとの関係、そして今お話がありましたように、石油をめぐる中国の動きはやはりすごいものがあるんですね。アメリカも必死。そういう思惑が錯綜しながらこのイラク戦争がどういうシナリオになっていくかというものを、経済的な面でも、戦略、軍事的な面でも、いろいろな思惑で各国、各派、各宗教、そういうものが絡み合いながらこのイラクのシナリオというものが行くんだと思うんですよ。

 一番やはりこのもつれというか、イラクからイランへとか、サウジだってそうですよ、サウジだって先ほどの話で撤退をしているわけですから、王位がかわればどうなるかわからぬというような本当に複雑な、わけのわからぬオセロゲームをやっておるような状況もこれはある。

 そうなりますと、本当に日本という国は手を染めたことがない。石油はそこに、膨大なる、命運がかかるぐらい多くの石油を依存している。そして、平和憲法を持ち、これだけの技術大国をつくったという尊敬は今なおある。

 今度のイスタンブールの会議へ向けて、今後この中東情勢、中東政策、そしてアメリカとイラク、そういうものがどう動いていくかを、本当に、次の五十年、極端に言えば次の数十年の日本のあり方を決める重要問題というふうなことで、この今回の二年延長、この程度の提案ではない、私は国を挙げての検討をすべきテーマだと思うんですよ。

 でも、法律をつくったとき、そして今回のこれについても、何か国民に対する説明が、国民の心を納得させる十分なものがない。そして、ずるずると動いておる。これは、別に与党野党は関係ない、日本の今後の百年にとって極めて私は重要な転換点と思うわけです。

 私は、出口戦略、もう既にアメリカでも実際は出口戦略というのはしっかり議論されているんだと思うんですよ。それは、共和党であれ民主党であれ、どこで、どのタイミングに、どの理屈でどうするか、それを一つ提言し得るのは、アメリカは自分でおっ始めておいてやっぱりやめたというわけにはなかなかいかない。やはり日本の出どころですよ。私はそういう面で、今後のイラク戦争終結、どのタイミングで、どういうきっかけで、日本が何かをすれば出口戦略が描けるんじゃないかというようなシミュレーションとともに戦略を検討すべきだと思うんですけれども。

 政府においては、それは官房長官マターかもしれませんが、おられませんので、でも一閣僚として御承知だと思います。両大臣、そこら辺はどう閣議等において議論されておるのでありましょうか。

麻生国務大臣 出口戦略と言われましたけれども、このイラクの特措法のいわゆる終了期について今一概に申し上げることは、これは極めて困難だと思います。

 申し上げましたように、イラクの政治状況とか、また現地の治安状況を含めまして、国連及びその他多国籍軍いろいろおりますので、そういった国々の対応等々見た上で我々としては判断していくということになるんだと存じます。

 いずれにいたしましても、この政策を遂行するに当たりまして、イラクが治安を回復すれば中近東すべてが回復するのかというとそんな簡単な話ではないと、先ほど古賀先生そう言っておられるんだと思いますが、私どもも、イラクが落ちつけばすべて落ちつくというほどイラク、中近東全体の情勢は簡単なものだと思っているわけではありません。

 少なくともこの地域は長い歴史がございますので、それを我々のように余りよく知らない者が入っていった場合のいいところ、悪いところ。知らないといいところは、全くこれまで利害がなかったから話が言いやすいというところもあります。それから、全く知らないがゆえに無知丸出しなところになりかねぬというところも注意しなきゃいかぬ。これは両方を考えた上で対応していかねばならぬ大事なところだ、私どもはそう思っております。

 いずれにいたしましても、今現状、少なくとも彼らの手によって選ばれた政府が、正式に我々の総理に向かって、ぜひ今、治安回復までの間、我々の手で最終的にやってのけるとして、今、治安部隊は十三万人から三十三万人までふえてきておる最近の状況にもありますので、そういったものがきちんとでき上がった段階で、御本人の御希望どおり、本当に今年で撤退が可能な状態になり得ないと我々が今断言する立場にありませんので、私どもとしては、そういう御本人の希望はある、世界じゅう一日も早い治安回復を望んでおりますのもこれは世界の希望であろうとは存じますけれども、現実的に果たしてそうなるかというところがいま一つよく私どもで見えているわけではありません。

 したがって、今の状況としては取り急ぎ二年ということを申し上げているのであって、私どもは一年で終われば一年で撤退できますでしょうし、私は、そういったものは希望としてやはりずっと持ち続けておくべきものだと思っております。

古賀(一)委員 それでは、中東から今度アメリカの状況にちょっと目を移しまして、るる質問もありましたけれども、イラクのみならず、アメリカの政治状況の変化も極めて激しいものがあると私は思っております。こんな調子でいくと、数カ月後、イラク政策、アメリカの中東政策は本当にあのままか、ある日突然、君子豹変すじゃないけれども、変わるのではないか、そういう感じすらしております。

 現在、アメリカにおいても六割の世論が反対というふうになっていますし、そこに対応するブッシュさんは、要するに、イラク治安部隊と一緒に治安維持に当たるためにはやはり兵が足りない、増派するという理屈で、今度二万人以上の増派を決める。一方で、イギリスだとか、先ほどのように十五カ国、どんどん減っていく状況の中で、アメリカは、孤軍奮闘ではないけれども、今度、ほかの国が撤退、削減を続ける中に、アメリカがイラク治安部隊と一緒にやって治安に当たるという理屈で、これしかない、こう言っておられるわけですけれども、今までの流れからいえば、むしろアメリカ軍が宗派対立にも火を注いだ、こういう状況もあると思っているんです。本当に二万人増派はどうなるかというのを私は大変懸念をいたします。

 一方、政権内でも、ラムズフェルドさん、極めて責任重き立場の人、この人が要するにやめさせられたわけですよね。それでその後にだれがなったかといえば、ロバート・ゲーツという、かつてのCIA長官でありますけれども、これはどちらかというと、新しいイラク政策を超党派で提言する予定、撤退も含めたそういうものを提言するグループの一人の中心人物でもある。つまり、政権内部においても、ラムズフェルドさんから撤退の布石が打たれたようにも感じられる。

 そして、何といっても、大統領が拒否権を持っているといって、ブッシュさんは二回目の拒否権を発動した。しかし、これとて、十二兆円、一千億ドル近い戦費を調達しないとこれは破綻しますから、何があっても議会を通さなきゃならぬという中で、今後、アメリカの上下院とブッシュさんはやるんでしょうけれども、これだって国論を二分したテーマでありますから、野党の方だって、はい、大統領、わかりましたというふうにはならぬだろう。これをきっかけに、一つの撤退のシナリオというか、そういうものが生まれてくる可能性もある。

 そして、民主党の大統領候補、これはあと一年以上もあるからどうなるかわかりませんけれども、黒人の候補者のオバマさんが、一時期とはいえ、支持率でトップに、ヒラリーを追い越したというような状況もある。

 やはり何かが動いている、こう思うんですけれども、アメリカのその状況というのは、これまたイラクの現実の姿と並んで、そしてイラク特措法の大義とともに重要な要素だと私は思いますけれども、この点について、外務大臣、そういうアメリカの中東政策の大転換ということ、そういう可能性というものを感じることはないんでしょうか。あるいは検討すべきではないでしょうか。

麻生国務大臣 アメリカのイラク政策がどう変わるであろうかという、アメリカ行政府内、もしくは立法府との間によってどう変わるであろうかというのを他国が予想するのはいかがなものか、私自身はそう思っておりますので、その点に関して、こうであろうなどということを言うつもりは全くありませんし、言うべきでもないと思っております。

 アメリカの中において、今、いろいろ、イラクにおいて増派をし、イラク国内の治安の回復ということが主たる目的だと存じます。

 日本としては、国民融和というものも忘れちゃいかぬということで、我々としては、国民融和というものに非常に重きを置くべきなのではないかということで、宗派対立の激化の中に、その下に、人種間、宗派間、いろいろ表現がありますけれども、クルド等々、ペルシャですからイラン人、イラク人、クルド人、いろいろ表現がありますけれども、そういった種族間、宗派間の対立等々も含めまして、少なくとも話をする信頼関係が醸成されるのが大事なのではないかということで、過日、国民融和担当大臣を呼び、それ以下、各部族ごと四人ずつの人を呼んで十二人、合計十三人で日本で会議をさせ、いろいろな話をさせたり、そういった努力を今やっておるところでもあります。

 いろいろな努力をしてみた結果、どういう形が一番いいのか、正直申し上げて、彼らから非常に信頼が厚いことはわかりますけれども、我々としてはかなり無知なところがありますので、これまでの経験則として知らない部分もありますので、なかなか言いにくいところは確かにありましたけれども、少なくとも三つの異なったところがそれぞれ話をし始めたことだけは大きな成果だと思っております。

 ただ、おっしゃるように、この種の話が始まる前に、おまえスンニ派、おまえシーア派と知っていたことはほとんどないそうです。考えてみますと、我々も、仏教、何宗ですかと言われて、答え切れない人は多分いっぱいいらっしゃるんだと思いますけれども、私も言われて、ええ仏教ですと答えて、曹洞宗ですか天台宗ですかなんと言われて、臨済宗かどうか全然区別がつかなかったと同じような感覚なのかなと思ってその話を聞いたことがあるんですが、少なくともこの数年間えらく激しくなってきたので、昔はそうでもなかったというのが、彼らの、スンニ派の方々、シーア派の方々、それぞれお見えになった方々の感想として聞かされたのが非常に印象に残りました。

古賀(一)委員 ちなみに、中東では仏教というのは宗教と見られていないそうですね。あれは思想だそうで。思想だと。さはさりながら、シーア派、スンニといっても、彼らはみんな、コーランを読んで、実際あれだけの宗教的な、断食から何から実践している。我々はもう全く無宗教に近いような状況であるように私は思うんです。

 さはさりながら、やはりこれは、私は、中東の問題は、スンニ、シーアもある、本当に複雑だと思うんですね。イラクとイランもそう。これは人種が違う。サウジも、今は盟主としてアメリカ、親米だけれども、これもわからない。かつてのいわゆるアフガン問題、そしてパーレビ国王が倒れた後、イラクへの肩入れ、もう本当にオセロの白黒をアメリカが、石油資源、軍事の問題、対ソ連と、そして最近においては、結局、ユーロによる石油代金の決済でアメリカがどうのこうのとか、石油の、そういう対ヨーロッパとの関係、実はいろいろな思惑、価値観でアメリカは中東に関与してきたわけですよ。

 だから、この国がどうも敵の味方だ、つまり黒だ。それなら右を、今度はでんぐり返して白にして、オセロで挟み込んで、また白にしようと。ところが、途中でまた今度、白になったのが黒になるものだから、今度は慌ててまたその隣に行って黒を白にひっくり返そうとする、こういう連鎖であったと私は思うんですよ。

 私は本当に、そういう面で、アメリカの中東政策というのは混迷に混迷を続け、そのときは強大な軍事力と資金力でやっているけれども、結果としてこんなのを繰り返していくならば、私は、中東全体は、もうアメリカの軍事力で、この国もその隣の国も、敵の敵も、味方と思ったら、この国もアメリカの軍事力でずっと抑え込んでいかなきゃならぬというような、とんでもないアメリカの負担でもあり、アメリカの収拾のつかない状況に陥るんだと私は思っているんです。

 そこで、では、イスラム世界はどうであるかというと、今、人口は十三億ですよね。二〇二五年、間もなくですよ、これが二十億になると言われている。今、人口増加が一番高いのは、別に中東だけではない、アメリカでもそうですよ、アラブ人ですよ、宗教的な。インドネシアから、もちろんアメリカのアラブ人も、宗教的な理由から、人口増加が極めて大きいのはアラブ人。そして、そのアラブに日本は死命を制せられるような、要するに石油依存である。

 そうして見ると、私は、今後、イスラム世界とのつき合い方、アラブとのつき合い方というものを、単にアメリカの、先ほど言ったような、年々変わる、国によって変わる、黒をひっくり返すために、白のオセロにひっくり返そうとしたらそれがまた今度黒になる、それをしまくっているこういうアメリカの中東政策ではない、やはりもっと日本らしい、大義を持った、そして、現に今なお技術大国、平和大国としてこれだけの国をつくったという尊敬のある日本は、将来の戦略としても、まさにこれから中東あるいはイスラム政策を徹底的に私は議論すべきだと思うんですよ。

 外務省において、あるいは内閣官房でもいいです、政府においてこういった戦略というのはどこがやっておるんでしょうか。外務大臣、外務省においてやっているんでしょうか。

麻生国務大臣 今、中東のお話で、これはちょっと全部挙げていくとまた時間がありませんので、もうちょっと最初の方に聞いていただくともう少し時間を使わせていただけるんですけれども。

 今、パレスチナというところで、日本としては、ジェリコというパレスチナの中に巨大な農業団地をつくろうとしております。ここで、イスラエル、パレスチナ、ジョルダン、三つの国を日本に呼んで、それぞれ話をさせ、私ども同席の上でこのプロジェクトに同意をしてもらうことに成功しております。少なくともイスラエル代表、シモン・ペレスが来ておりますので、そこそこの人が来ていると思っていただいて結構だと存じます。

 そこで、日本として、ここでイスラエルが建国に成功した一番大きな理由は、農業団地キブツというのの成功というのが非常に大きかった。したがって、農業生産物というものをつくるということをしないと、少なくともパレスチナにおいては絶望と貧困というものが非常にはびこっておるわけであって、この二つがある間はなかなかテロはおさまらぬ。この二つをなくすためにはということで、農業団地、日本が指導しましょう、売り先も売り方も我々として十分に指導できると思います、そういったようなことを申し上げて、私どもとしては今それをやってきておるところでありますので、全体として、今一部だけ御紹介申し上げましたけれども、そういったものを含めて、中近東ということに関してどうあるべきかを検討しているという実態がございます。

古賀(一)委員 今キブツの話が出ましたけれども、やはりイスラエルはああいう厳しい状況の中で国家を維持していくということで、いろいろな、やはり乾燥のアラブ世界へ対する力を見せつけるプロジェクトを私はやっていると思うんですね。

 かつて私は、先ほど言いましたように外務省に二年いたときに、世界水会議というものをイスラエルがやっていたんです、水会議。それで、日本に対しても旅費を全部出す、滞在費も出す。世界の先進国にも、水会議をやるから来てくれよと。いわゆる造水ですよね、水をつくる能力。私も、随分前の話ですけれども、ああ、イスラエルという国はやはり生き延びていくために水についての専門知識を持った国家、やはりアラブの世界に我々と仲よくしないといけないよというような国家戦略で、先進国まで巻き込んで、イスラエルの地において世界水会議をやる。日本も来てくれ、アメリカも来てくれ、先進国もと。やはりこれだけの国家戦略を考えてやっているんですね。

 日本はネタは山ほどあると思うんですよ。今大臣がおっしゃったことも一つ。そういう意味で、本当の意味でのシンクタンクというか、ただ国連がどうだ、国会がどうだ、あの戦争が起こってどうだという短期的な、個別的な戦略では、これはアメリカのオセロゲームまがいの、次から次に変わっていく話になってくると私は思うんです。

 したがって、官房長官、途中抜けられて、意外と早くお帰りになったので、先ほど申し上げたのは、出口の戦略というものを、そういった単にイラク戦争というだけじゃなしに、幅広いアメリカの分析、中東の支援の問題から各国の状況、いろいろなものを含めた出口戦略をやはりしっかりと今検討し、その好機だと私は思うんですよ、チャンスだと。それはやはり防衛省、外務省、政府全体が絡む最重要課題の一つでありますから、私は、そういうものをこの時期にしっかりやるということの姿勢が必要だと思いますけれども、現在そういうのが官房で進められておるならば結構、ないのであれば今後の所見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 少し抜けていたので、少しとんちんかんかもわかりませんが、アメリカでもイラク・スタディー・グループというのが、かなり知見の高い人たちが集まっていろいろなシナリオを書いておられました。出口シナリオとよくおっしゃいますが、出口という言葉がふさわしいのかどうか、私たちはやはり、どこかから入って出るという話ではなくて、むしろその国、地域にどうかかわっていくのかということを総合的にやはり考えていかなきゃいけないんだろうと思います。

 先生おっしゃるように、パレスチナ、イスラエルの問題もあり、それから、イラン、シリアをどうコミットさせていくのかとか、当然、湾岸の国々、今回総理も訪問されましたけれども、やはり見方はそれぞれでありまして、我々の石油依存度も考え、それから石油だけで食べていけるわけではない中東の湾岸も含めた国々とのつき合い方というのはいろいろなことがあると思います。

 ですから、出口というふうに考えるよりは、どういうふうにみずからをその地域にコミットし、その国にかかわっていくのかというトータルプランをやはり持っていくべきだという意味において、恐らく先生がおっしゃっている考えもそういうような方向性ではないのかなというふうに、今拝聴をしていたところでございます。

古賀(一)委員 出口は私は新しい可能性の入り口だと思いますし、やはり私は外交力はもっともっと高めなきゃならぬ、本当にこの問題を考えても、いろいろな意味で私は常々、日本の外交力、これで次の時代が開けるのかと疑問を持っておりますし、感ずることもあります。このイラク問題の出口というのは、本当に新しい可能性、下手すると地獄への道にもなるし、この機に外交力をこの一点において高めていくという、その分野としてぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、先ほど私の質問でアメリカの動向について、麻生大臣、我が国でアメリカの動向を云々するのはおこがましいというような御答弁もありましたけれども、私は、やはりアメリカにつき合ってここまで大きい深刻な重大なコミットメントをしてきたわけで、やはりアメリカの動向というのは真剣に我々日本政府としては読むべき事柄だと思うんです。

 そこで、これは民主党の方にお聞きしたいんですけれども、アメリカの今後の動きというものを、どういう可能性があると見ておられますか。このまま本当にブッシュさんのやり方で任期満了まで行くというふうに思えるのか。私はそう思わないんです。必ずどこかで転換点が起こる、撤退への入り口が開く、こう思っておるんですけれども、廃止法案を提案された民主党の御意見を最後に聞きたいと思います。

末松議員 お答えします。

 私も、連休中アメリカの方に行きまして、ワシントンで何人かの向こうの国会議員とか政府関係者とも会っていろいろと話していたんですけれども、彼らの言うことをまとめると、要は、イラクに対する米軍の撤退問題については、基本的には、アメリカの政策云々よりもアメリカの国内事情、先生がおっしゃったように、まさしく世論の動き、それから膨大な軍事予算、これがどこまで米国民が受容できるか、それが今大きな問題になっていまして、そこが一挙に変わる可能性、先ほど世論でも六〇%というお話が先生から出ましたけれども、そこが変わっていけば、一番のメルクマールは来年の大統領選になるんでしょうけれども、その前にも変わらざるを得なくなる可能性は十分にあると思います。

 ただ、そのときに、中東に対して、先ほど外務大臣が、イラクの政治は、議会もイラク人によって選ばれ、そして憲法もその後イラク人によってつくられたと。ただ、一つ忘れてならないのは、多国籍軍、アメリカを中心とする軍がいて初めてそれができる話なので、これがいなくなったときに実際にイラクがもつんですかという話というのは、アメリカ人が非常に気にしているところでございました。

 我々としても、日本としてもそういうことも踏まえながら考えていかなきゃいけないと思いますけれども、先生が最後に御指摘になられた日本としての戦略の中で、やはり紛争下においてどういう対外援助をするか。つまり、国に入ると危険だ、それを、やはり日本でも、周辺国の中にいて、そして対外的に、例えばテレビ電話等を使ってイラク人が自分で自律的に国づくりを進められるような、そういうふうな援助の仕組みを今こそ考えていかなきゃいけない、そういうふうに今考えています。

古賀(一)委員 これで終わります。

中谷委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 この連休中は、我が国の安倍総理を初め、麻生外務大臣また久間防衛大臣がアメリカ並びに中東に行かれて、今、世界的に見ても外交上最も多難で、なおかつ何とか平和を回復せねばならない時代の要請を一つでも実現すべく、外交努力を重ねてこられたことと思います。そういうことにのっとって本日は質問をさせていただきます。

 冒頭、予告外のことですが、お帰りになりました塩崎官房長官にお伺いをいたします。

 安倍総理の訪米に関しまして、その中で従軍慰安婦問題について、総理みずから、人権問題がこれまでも歴史の中でも侵害され、また現状、我が国の北朝鮮の拉致問題等々でも深く傷つく人々がいて、何とか二十一世紀を人権の世紀とするためにも、我が国の従軍慰安婦に対する態度はきちんと河野談話を継承したものであり、総理としても深く反省の念、遺憾の念、同情の念を持っておられるというお話をしてこられたという報道があります。

 私は、そのことにのっとって、もしその言葉に偽りなきことであれば、もう一つ実は解決していただきたい、この従軍慰安婦問題についての安倍総理の発言がございます。

 塩崎官房長官は、きょう私がここに持ってまいりました「歴史教科書への疑問」、こういうタイトなものでございますが、この書物は御存じでありましょうか。――はい、御存じないと。

 官房長官は入っておられないのですが、実はこれは、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会、自民党の中川昭一現政調会長が代表、そして、当時まだ若手の議員であった安倍総理、これは平成九年の書物でございますが、皆さんで会議を持たれて歴史教科書の記載についての論議をなさったというもので、編集もこの若手議員の会になっておりますから、編集責任もあるものだと思います。その中で、本来これは安倍総理にお伺いすべきですが、残念ですがこの場においでではございませんので、官房長官に宿題をお願いしたいと思います。

 安倍総理は、この従軍慰安婦問題で、私が読みましてずっと懸念しております、韓国政府に対しての二つの大きな、私は不適切な表現かなと思うところがあります。

 一つは、拉致問題に関して、

 実態は強制的に連れていかれたということになると、本人だけではなくて、その両親、そのきょうだい、隣近所がその事実を知っているわけですね。強制的にある日、突然、拉致されてしまうわけですから。横田めぐみさんみたいに連れていかれちゃう。そうすると、周りがそれを知っているわけですね。その人たちにとっては、その人たちが慰安婦的行為をするわけではなくて、何の恥でもないわけですから、なぜその人たちが、日韓基本条約を結ぶときに、あれだけ激しいやりとりがあって、いろいろなことをどんどん、どんどん要求する中で、そのことを誰もが一言も口にしなかったか

ということを述べておられます。

 要約すると、そもそも従軍慰安婦問題は、日韓基本条約のときになぜ韓国政府なり慰安婦とされた方が言い立てなかったのか、不思議に思うということが一つ。

 そして、後段でございます。

 もしそれが儒教的な中で五十年間黙っていざるを得なかったという、本当にそういう社会なのかどうかと。

これも疑問に思うと述べておられます。

 実態は韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っているんですけれども、

と続いてまいります。

 これは逆に、売春あるいは買春、そうした行為が、キーセン・ハウスが韓国は多いから日常生活の中に溶け込んでいる、それゆえに慰安婦の方たちも発言されなかったという筋立てになってございます。

 私は、これが、議員の会が責任編さんでありまして、これは安倍総理御自身の言葉であります。もし今こういうことが韓国との間で問題になれば、これもまた、我が国は、もちろん中東との関係も重要ですが、一方で、このアジアで生きていくわけでございます。このことがどのように理解され、どのような余波を生むのか。私は、この書物が発行された当時から、ほかにも幾つも問題と思うところは赤い線を入れさせていただきましたが、特に安倍総理御自身の言葉としてやはり非常に問題が多かろうと思います。

 きょう、塩崎官房長官には初めてお読みするので、内容等々つまびらかでなければ、これは総理自身はお持ちであろうと思いますから、ぜひ伺っていただきまして、このたびの米国での謝罪とこのこととの関連性をきちんとお話しいただけるようお伝えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 お言葉でございますので、伝えたいと思います。

阿部(知)委員 また次回の質問でお答えもいただきたいと思います。

 では、イラク関連の質疑に移らせていただきます。

 私は、先回の質疑でも、日本、あるいはアメリカ自身は当事者ですからかなり戦闘場面も多く経験し戦死者も多い中で今非常に悩んでいると思いますが、日本自身のこの間のイラク情勢の見通しは余りに楽観的に過ぎるのではないかということを指摘させていただきました。それに対しての麻生外務大臣のお言葉は、いわゆる政治プロセスが一定進んだのだから、先ほどのどなたかの御質疑への御答弁でもありました、みずからの手で憲法をつくる、政府の代表も選ぶということが進んでいるのだから、それはそれなりの進歩であろうという御答弁でした。

 しかし同時に、この政治プロセスと治安と経済というものを三つ並べました場合に、治安は、この間の死者数の多さから見ても非常に劣悪と言わざるを得ません。そして、だれもがこのことを何とかしたいと思いながら、いい手だてがなかなか見つからないというのもまた正直なところだろうと思います。

 私は、自衛隊のイラクからの撤退ということはまず第一になすべきと思いますが、またその理由は後ほど述べさせていただきますけれども、この場で麻生外務大臣にお伺いしたいのは、特に雇用、経済政策でございます。

 私もこれまで二度、いわゆる戦争前のイラク、そしてアメリカが勝利宣言を出した年の夏のイラクに行きました。その夏のイラクでは、いわゆる仕事を求める人々が長い列をつくっておりまして、それまでイラクは六割以上が公務員でございましたから、そういう中で一挙に政府も公共機関も瓦解するという中で、多数の失業者が町にあふれていて、そのことは当然、その後の治安の悪化を十分予測させるに足る光景でありました。

 私は、自衛隊がイラクのサマワに出向きました折に、もちろんそれ自身反対いたしますが、しかし、その撤退段階でのどのような見通しと計画があるかということにおいて、日本の見通しが、もしも見通しどおりに進んでいれば、まだ救われる部分もあるように思いましたので、麻生外務大臣には、実は昨年の七月、イラクの陸上自衛隊が撤退し、その翌月に掲げた今後の見通しというところを、御存じかもしれませんが、再確認させていただきます。

 ここにおいては、イラク全土への支援とサマワの支援を分けて書いてございまして、イラク全土には、いわゆる無償資金援助から円借款へ等々、あるいは政府の樹立の政治プロセスの進展等々書かれておりますが、特に直近のサマワ情勢に関しては、現在取り進めている無償資金協力の確実な実施、表明済みの円借款事業の実施、そして三番目に、二〇〇七年三月ごろまでに国連機関経由でさらに延べ九十一万人日の雇用を創出となっております。四点目は、人材育成、行政能力向上となっております。

 さて、この三点目、少なくとも数値目標が非常に明確に挙がっておりますので、二〇〇七年三月ごろ、今を「ごろ」と見てもよろしゅうございます、国連機関経由でさらに延べ九十一万人日の雇用は創出されたのでしょうか。いかがでしょうか。

岩屋副大臣 事実関係だけ、私の方から報告をさせていただきたいと思います。

 先生が御指摘ありました事業ですけれども、我が国は、UNDP、それからUNハビタット、主にこの二つの国際機関を通じて支援事業を行っているわけでございますけれども、この両機関からの昨年六月末の雇用見込み数の報告に基づいて九十一万人という数字を立てたわけでございますが、現実は、治安の悪化等により必要な資機材の調達及び搬入等が円滑に行われなかった等の理由によりまして、現実の雇用創出は、昨年七月から本年三月までの間で延べ三十万人ということになっております。

 ただ、既に開始されている事業は今後も継続して実施をしてまいりますので、ぜひこの目標にどんどんと近づけていきたい、こう思っております。

阿部(知)委員 今の御答弁で確認ですが、治安がままならなかったというのはどこの治安でしょうか、サマワのことでしょうか。私は今、サマワの雇用の九十一万人日、予定を伺いました。

 そして、外務省もそれなりの情報ルートをお持ちでありますから、実際なぜ、今のはただ報告を受けておるというだけであります、どこがどう滞って、本当にサマワの治安が悪くて行かなかったのですか。そうであるならば、先ほど来お答えの麻生外務大臣の、治安はクルドはいい、バグダッドは最悪だ。サマワは一体どうなんでしょうか、お答えください。

岩屋副大臣 必要があれば事務方から補足をさせますが、先生御承知のように、UNDPを通じた事業は、道路それからかんがい用水路、上下水道などの基礎的インフラの整備でございます。

 それから、UNハビタットの方は、教員養成学校、商業学校、住宅などの整備事業でございます。

 御指摘のように、ムサンナ県、サマワ周辺の治安は安定をしているわけでございますが、必要な資機材はいろいろなルートから持ち込むということになりますので、そういう全体状況の治安の悪化等によって調達がおくれているところがあったというふうに聞いております。

阿部(知)委員 では、どこの治安がおくれて、ここが進行しないのでしょう。サマワはバスラに近く、ウンムカスル港とか港に近いわけです。なぜ日本が南部のサマワに拠点を当初考えたか。やはり経済支援、産業支援が将来でき得るだろうと。私は、これが自衛隊ではなくて他の支援方法であれば着眼点はよかったと思っております。今のような、全土の治安が悪いからこっちに物資が来ないのですか。そうではないはずです、この地域は。そんなにいいかげんな答弁をなさらないでください。どこの治安が悪くて、サマワの道路や学校や、いろいろ今おっしゃった住宅がおくれているのですか、どこからの物資が。なぜ港の方からは運べないのですか。

岩屋副大臣 どこの地域の治安がどう悪かったという詳細な報告を私ども受けているわけではございませんけれども、この二つの国際機関を通じて最大限の努力をしてきたというふうに御理解いただきたいと思います。

 そして、事業は継続中でございますから、最初の見込みはある意味では甘かったのかもしれませんが、この目標に向かって引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

阿部(知)委員 ある意味ではなくて、残念ながら甘いのです。それが事実です。三十万人の雇用、やはり本当に、なぜイラクで人々が例えば部族抗争と言われるようなものに走るか、あるいは宗派対立が激化するか。普通に考えれば、そこに暮らすすべ、仕事がないのです。そして、今そのことは、残念ながら、イラク国内では、経団連のミッションが行かれても即民間団体の事業規模に展開できないのは、麻生大臣も御存じのことと思います。

 そうなれば、国連経由の、今おっしゃったような二つの機関を利用したというか回路として使った雇用の創出しかないわけです。もし日本が本当にイラクの復興を願うのであれば、どこがどうして、どこの治安が問題で、そして治安状況はさほどに深刻であるのか、きちんと外務省としてお聞きになるべきではありませんか。麻生外務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 今のことを実際にやろうと思うと、そこに入り込むにはかなり危険を伴いますよ。その危険を伴うのには、当然のこととして、しかるべき武装したような者でなければ、その中にはなかなか入り込めないという大前提があろうと存じます。

 したがって、私どもとしては、国連機関を利用させていただいて、国連機関が九十一万という話に基づいて私どもはその数字を出したというように御理解いただいて、それを細目二十八万三千八百何十人まで調べろという御意見だったら、それは日本とは違いますとお答えするしか申し上げようがないと存じます。

阿部(知)委員 大臣、はぐらかさないでください。そんなことを聞いていないでしょう。国連機関の物資の輸送がうまくいかなかったのであれば、どこが問題なのかくらいは聞く権利があります。国民の税金を使って行われている事業であります。そして、国民はイラクの復興を願っているわけです。

 私は、何も二十八万三千幾らと言ってくれと言っているのではないです。国連が滞っているなら、どこの部分の治安が問題で、大臣の認識にあるようにバグダッドだけが悪いのか、全土の問題なのか、ここへの物資はバグダッドを介さなきゃ入れないのか。そうではないはずです、この位置関係から見ても。今まで自衛隊がいるときの物資の輸送だってやっていたわけです。自衛隊がいなくなり、その物資の輸送すらできなくなったということですか。

麻生国務大臣 自衛隊がいなくなって、物資の輸送は極めて効率が落ちたことは確かです。これははっきりしています。

 したがいまして、バグダッドからすべて輸送しているわけではありませんけれども、国連機関でありますからエルビルにあるんだと存じますが、そのエルビルとの間の連絡も、極めてうまく連絡がいかない、事実だと思いますが。

阿部(知)委員 実は私は、航空自衛隊を今のように米軍の後方支援のために使うのであれば、賛成はしませんが、本当に必要な物資の輸送のために使う方がまだいいんだと思います。本当に何が復興支援かです。何がイラクの人たちを生きる支えにするかです。

 私は、もしもアメリカの中で政権交代が起こり、方針が変わろうとも、イラクのこの困難とぐちゃぐちゃにされた国土、たくさんの劣化ウラン弾の被害、人々のさらされた命の危険は本当に深刻で、そして、生きていくための手だてをどうやって日本がつくるかということに汗をかいてほしいと思います。大臣には、またそれだけの力量がおありなはずです。それゆえに、大臣は、中東調査会でも中東全体の今後のさまざまな取り組みのことをきちんとお話しになっていると思います。イラクの復興に本当に真剣に何ができるかということを外務省はもっと考えるべきです。

 亡くなられた二人の奥大使、井ノ上参事官、彼らは、本当に日々あの危険の中で、何がイラクの人たちにできるかを一生懸命走り回って求めておりました。私は、たまたま訪問し、彼らに案内してもらって、いろいろな事業を拝見させていただきました。命を落とされて、犠牲になり、外務省の貴重な職員を失ったということは知っています。しかし、その志は高く評価するものですし、そして、危険にさらさない形で何ができるのか、もっと大臣には真剣に求めていただきたいと思います。それは、今、軍事中心になったイラクの復興を、そうでないものに変えていける、いわばキーになる国があるとしたら日本だと私は思うからです。そのためにも、アメリカの後方支援からは手を引き、日本が国連経由でなせることをなすべきだと思います。

 もう一つ、麻生大臣に伺います。

 今の外務省のアンテナには、イラクの国民の反米感情の進捗状況といいますか、どのような形であるかということはどうお聞きでありましょうか。

麻生国務大臣 これまた数字を言われると、私ども、今あそこに世論調査というようなものがとても作動するとは思えませんので、どれくらいがどうかということに関しましては、私どもの立場として言える数字を持ち合わせてはおりません。

 ただ、現実問題として、そこに他国の軍隊が入ってくるという状況を見て、なかなか感情論としてはおもしろくない。ただ、イラクの前政権が倒れた、いわゆるフセイン政権が倒れたときには、イラク国外に逃れていたイラク難民が三十万人戻ったというのも事実です。また、それから後出ていった人もおられる。

 だから、そういった意味では、私ども、どれくらいの人がどれくらいの反米感情があるかというのは、数字として何%かと申し上げる資料を持ちませんが、常識的に見て、他国の人たちが自分の国にいるということに関しては、感情論としてはいろいろおもしろくないものがあるのは通常だと存じます。

阿部(知)委員 常識論としてだけではなくて、それは外務省のいわば諜報活動の一環ではありませんか。反米デモがスンニ派とシーア派と並んで一緒に行われるような状況もあるんです。それは私どもにさえ入ってくる情報です。

 外務省は、必死に求めれば、今の治安体制の中で人々が何に不安を持っているか。例えば、これはアメリカの調査です、米兵がいかに倫理的にルーズになり、堕落をしてきたか、そういうこともアメリカ本国は懸念しているわけです。近くで市民が犠牲になったとき、米兵はどう行動するか、あるいは、踏み込んで、テロの組織じゃなかった、でも、そのとき、市民が犠牲になったことにどんな心を痛める米兵がいるか、そういうことをアメリカはみずから調査しています。

 日本は情報を求めようと思えば、求めよ、さらば与えられんです。しかし、それを、耳をふさいで、あるいは自分たちの独自な努力をしなければ、私は、いつまでもイラクの人々の声というのは聞こえない。そして、日本は、逆に航空自衛隊の支援というものも、実はマリキ首相の話にもありました。私は、マリキ首相はやはり経済的な足腰を当たり前ですが求めているんだと思います。

 麻生大臣にはまた明日伺わせていただきますが、この点についてしっかり日本の方針を立てていただきたい。

 そして、難民問題で最後に一つ伺いたいと思います。

 大臣は今、サダム・フセイン政権が倒れて三十万人が帰ってきたと言いました。しかし、せんだって私がお話ししましたように、今、国内難民が二百万人、国外難民は二百万人、合わせて四百万、数によっては四百五十万と言われています。これはいわゆる難民申請というある中長期的なことをした人たちではありません。しかし、この難民申請をする人の数の中でもイラク人が一番多いのです。長期的にも短期的にも膨大な数の難民を抱えています。このことについて、四月十七、十八日の私が先回お尋ねしましたUNHCRの会議並びに今回の中東の首脳会議を通じて、日本国としてはどのような支援を具体的になさるのでしょうか、お願いします。

麻生国務大臣 三十万人のほか、国内百九十万人、海外二百万人、合計三百九十万人というのが公式な発表だと記憶していますが、その中で、今言われた分の中で、シリアが一番多くて百二十五万人ぐらいになっていると存じます。

 そういったものに対して、どのような形で具体的にやっていくかということに関しては、具体的な数字を詰めた段階まで詰めてやっているわけではありません。

阿部(知)委員 大臣は何かといえば数字数字と、数字にあらわせないものもいっぱいあると言っておきながら、数字数字とおっしゃるのは変ですよ。

 だって、大臣、例えばアフガニスタンでは、日本のNGOにそこに一緒に支援に加わってもらおうとかいろいろな取り組みがあったはずです。イラクでは、今イラクの国内に入れないから、クウェートやヨルダンからイラク国内に医療物資の支援をするNGOが活動しています。そういうものをとりあえず生かすなり、あるいは現地の調査、これはイラクの保健省と手を組めばきっちりできるはずです。サマワでは新生児死亡率が三分の一に減ったというような報道がありますが、しかし、イラク全土、一回根絶していたはしかが再びまた勢いを得て、乳幼児死亡の大きな原因になっています。日本の顔の見える支援はやはり医療の支援であるべきだと思います。

 それでは再度伺います。大臣は、このたびの外相会議等々でこのイラクの難民問題は問題にならなかったのか、そして、私が前回指摘した、エジプト外相が、アメリカがずたずたにして、多国籍軍に非常に責任があるのだから、それなりの負担をしてほしいというような声は大臣はお聞きにはならなかったのか、お願いします。

麻生国務大臣 イラクの拡大外相会議でも今のは話題になっております。

 今、数字を言われるのはお気に召さぬようなので、数字を言わないようにして申し上げるのはちょっと難しいのですが、イラク国及び周辺国における難民、避難民支援に関する国際会議では、避難民をめぐる深刻な人道状況に対する懸念がみんなで共有をされております。

 日本といたしましては、しかるべき額を提案をしたのは御存じのとおりでありますので、この種の問題につきましては、私どもとしては、これは一月の二十六日の安倍総理の話の中にも、NGOとも連携をしたODAの活用ということも言っておりますし、ピースウィンズ・ジャパンが本年四月より職業訓練、学校修復等の事業を実施しておりますのも御存じのとおりだと思いますので、こういう意味で連携を含め、効果的な援助というものを今後ともやっていきたいと考えております。

阿部(知)委員 そのためには、実はイラクの内情、現実の医療状況、私がこの前問題にいたしましたクラスター爆弾以外にも劣化ウラン弾の被害もございます。そうしたことをまずきちんと調査し、必要な支援を日本が真剣に考える、そのことは日本の評価を高めこそすれ低めるものでもありません。また、イラクの人たちが、大臣、おっしゃったじゃないですか、子供を非常にかわいがる方々です。子供のためなら家を売っても医療品を買うような方々です。そうしたことにきちんとこたえていく道だと思います。

 この続きはまた明日行わせていただきます。終わります。

浜田委員長 次回は、明八日火曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


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