衆議院

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第4号 平成20年10月20日(月曜日)

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平成二十年十月二十日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 渡辺  周君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    赤城 徳彦君

      秋葉 賢也君    新井 悦二君

      石原 宏高君    浮島 敏男君

      江渡 聡徳君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    木原  稔君

      北村 茂男君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    玉沢徳一郎君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      中森ふくよ君    葉梨 康弘君

      橋本  岳君    松浪健四郎君

      松本 洋平君    三原 朝彦君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      吉田六左エ門君    大島  敦君

      川内 博史君    田嶋  要君

      武正 公一君    長島 昭久君

      伴野  豊君    平岡 秀夫君

      松野 頼久君    山口  壯君

      石井 啓一君    遠藤 乙彦君

      冬柴 鐵三君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君    下地 幹郎君

    …………………………………

   参議院議員        浅尾慶一郎君

   参議院議員        犬塚 直史君

   参議院議員        直嶋 正行君

   外務大臣         中曽根弘文君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  福島 克臣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  野田  仁君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      秋元 義孝君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  木寺 昌人君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (海難審判所長)     上中 拓治君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  鈴木 馨祐君     玉沢徳一郎君

  松本 洋平君     安井潤一郎君

  三谷 光男君     山口  壯君

  冬柴 鐵三君     遠藤 乙彦君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  玉沢徳一郎君     鈴木 馨祐君

  安井潤一郎君     松本 洋平君

  山口  壯君     三谷 光男君

  遠藤 乙彦君     冬柴 鐵三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一三号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官福島克臣君、内閣官房内閣審議官野田仁君、内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、外務省大臣官房審議官梅本和義君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省中東アフリカ局長鈴木敏郎君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官秋元義孝君、外務省国際協力局長木寺昌人君、外務省国際法局長鶴岡公二君、海上保安庁長官岩崎貞二君、海難審判所長上中拓治君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、防衛省人事教育局長渡部厚君及び防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。

三原委員 先週の金曜日の民主党の長島さんの質問、ちょうど午後の時間で、私も昼飯を食った後、少しうつらうつらしていたところへ、ぱっと目が覚めるような政策提案で、本当によかったと思いましたね。あれがあってこそ、外交とかそういうたぐいのことは歩み寄って国家として動くことができるものだと思って、大いに敬意を表したい。あの案だったら、海賊を退治するためのいろいろな手だてを考えるというんだったら、自民党から共産党までいいんじゃないの。(発言する者あり)何か笠井さんだけ、心の中でイエスと言って顔ではノーと言っているようだけれどもね。私は、冗談ではなくて、海賊を退治するということに対しての国民的コンセンサスは絶対にある、こういうことを言いたいのであります。

 ところで、その前に、民主党の党首の小沢氏の考え方についていろいろ最初に議論しましたよね。一種のブルーヘルメット至上主義といって、国連至上主義的な考えに対する我々の疑念、それは国連憲章七章があって、それの中でも、集団的自衛権、個別的自衛権も、トラブルが起こって、国連軍がちゃんと来るまでの間は認められていますよなんて言われていますけれども、実際問題としてそういうことが起こったためしがないわけで、朝鮮戦争のときだけ全く例外中の例外で、棄権していたから国連軍というブルーヘルメットが出てきたようなもので、実際問題としてなかなかそういうことは起こり得ない中で、今、アフガニスタンのテロの撲滅そして国家の安寧秩序に対して我々は国連の決議のもとでやっているわけですね。

 それに対して、しかしながら、我が国も、憲法の制約というのがあるから、憲法の制約があるからこそ、その中でできることは何なのかと、ぎりぎりのところで海上補給ということを選択して、国際社会の中での貢献をしておるわけですよ。そのことまでも反対するというのは、まことにもって、私は、野党第一党の諸君に対して残念だと思わざるを得ないんですね。

 あなた方が考えられた国際的なテロリズムの特別措置法が提出されましたね。この対案というものを出されたことに対しては私は大いに賛同しますけれども、これを読ませてもらっても、皆さん方の、抗争停止合意などというものを待ってからいろいろなことをやろうというのでは、まことに、火種をとめる場面ででも我々は一切やっちゃいけませんと。しかし我々は、政府の責任として、国家の責任として、国際社会の一員として何ができるか、今の状況で、憲法の枠内で、それで考えたのがああいう問題なんですよね。

 その間は知りませんと。皆さん方からいったら、抗争停止合意というのが成った後には、やっていいことは治安の分野の改革支援活動、人道復興支援活動と書かれておられますけれども、これではやはり余りにも後ろ向きなんですよ。だからこそ、我々は今苦労の中で海上自衛隊を出して努力しておるという、その点も前向きにあなた方も考えて評価しないと、これではやはり、国際社会の中で生きていく上では説得力を欠くと思いますけれどもね。

 あなた方は、その点に関してはどういう考えなんですか。それをちょっと一言言ってくださいよ。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

浅尾参議院議員 お答えいたします。

 金曜日の議論と重ならないように、一部重なる部分もあろうかと思いますけれども、答弁をさせていただきたいと思います。

 まず、テロに対して、私どもも、しっかりとそれは対策をとっていくということについては、今回提出をさせていただきましたテロ根絶法の中にその理念をうたっているということをまず申し上げさせていただいた上で、テロに対する対策としてどういったことが必要かというのがこの根絶法の中に書かれておるわけでありまして、現在のアフガニスタンの現状を考えてみれば、御案内のとおり、二〇〇一年から現状がよくなっているという認識を私も持っておりませんし、恐らく三原委員も、アフガニスタンの現状についてはよくなっているという認識は持っておられないのではないかというふうに思います。

 その中で必要なことは、治安分野の改革と人道復興支援、その二点だと思いますが、治安分野の改革については、直ちに、今まで以上に力を入れて行っていこうというのが私どもの考え方でございまして、その上で、抗争停止という、現在のカルザイ政権に対して武力をもって反する勢力がいるという中で、アフガニスタン全土でなくても、一部においても抗争停止の合意ができたところについては人道復興支援活動も治安分野の改革とあわせて示していこうというのがテロ根絶法の骨子であります。そういう意味では、アフガニスタンの現状を変えていく、結果として、貧困をなくし、そしてテロの根絶につながる法案だというふうに理解をいたしております。

三原委員 いや、その言い方だと本当にまた何もしないと同じだと、私は結論としては思うんですね。

 苦労した中で、防衛省が、もう今引き揚げてきましたけれども、イラク特別措置法も出して、それで復興人道支援をやったわけですね。あのときだって、それは、可能性から見れば、あなたたちが言われる基準からぐっとまだ危険地帯であったかもわからない。小泉総理は、自衛隊が行くところが平和なところなんだ、こう言われましたけれども。私は、やはりあのときだって、当時石破大臣も、私は夜も本当に眠れないんだ、何か我々は出してみたものの、何度、万々が一のことが起こらないことをいつもいつも念じながら、朝起きたときにはっと目が覚めて、それで、はあというほっとした気分になるんだということを言われました。

 では、浜田大臣、万々が一、これから先アフガニスタンに、今民主党の諸君が言われたように何か出せるような場面が来たとして、どういう場面のときに、例えばPKOのときには一応五つの原点がありましたよね、五つの基本の原則がありましたけれども、どういう場面でなら、これから先、例えば海上の行動だけじゃなくて復興支援だ何とかなんというとき、アフガニスタンに出せる場面になるんでしょうね、我が国として。その点についてどうお考えですか、浜田大臣は。

浜田国務大臣 我々が考えられることというのは、当然これは今までの法律にのっとってできる限りのことというのが、今先生おっしゃったようなことが考えられるわけですし、とにかく、武器使用基準の問題とかいろいろありますから、そういう意味では、やはり安全が確保されるというのが一番重要だし、また、現地のニーズというのが極めて重要だと思っておりますので、それに適合して、法律上問題のない形で出られるということが大きな要因かとは思っております。

三原委員 私は残念ながらイラクのサマワの中まで行けなかったんですけれども、少なくともあそこで、ムサンナ県のサマワのところでは、自衛隊が行ってきたことに関しては大いに評価もされておるし、あのときに、幸運でもあったかもしれないけれども、遠くから迫撃砲あたりは飛んできたことはあったんだけれども、それ以外に、ある程度の実行力のある組織体が行ってやっているということがやはりおもしにもなるんですね。

 だから、これから先、アフガンの復興、再生のため、そしてまたテロリズムの温床を早くきれいにするためにも、ポジティブな考えで我が国はアフガンの復興支援のために頑張るべきだと私は思っておりますので、それは対案を出された民主党さんにも敬意を表しますけれども、これではなかなか、自衛隊の出ることも書いてありますけれども、復興支援の職員として出ることが書いてあるけれども、これではやはり具体的、客観的に、相手国の民、ともがらにお手伝いをするというようなことにはならない、残念ながら私はそういう印象を持たざるを得ないんです。

 しかし、私は、集団的自衛権も今の憲法の枠内ではできないんだという考えなんです。私は、そのためにも憲法は堂々と変えて、国民に訴えてやるべきだ。

 なぜかというと、国内の防衛とかいうときには国家の意識が一つになるかもわからないが、集団的自衛権なんかを行使するどこかの場面が万々が一あったときには、同盟のため、他国のためにも、あるときには損害といいますか人的被害も考慮しなきゃいかぬ場面があるかもわからない。そういうときに、国民がそれを納得、理解してくれるかという場面をやはり醸成する。その意識を醸成するためには、まだまだ私は時間がかかると思っているんです。

 見てみましたら、アフガンだけでももう七、八百人の人が、いろいろな国、アメリカが六百十人、英国が百二十人、カナダが九十七人、こう書いてありますけれども、そういう人たちが亡くなっていて、そして、自国に帰ったときでも、他国の平和、そして世界のテロリズムの撲滅のために命をささげたということに対して、国家として、それで国民が苦しい中でも痛みを感じながらそれを受けとめる、そういう状況にあることは、やはり我々は、我が国でそれを醸成する、理解してくれる、そういう状況になるかということを考えながら、私は、これから先も、国際貢献といいますか、そういうたぐいのことをやっていかなきゃならない、進んでいかなきゃならない、こう思っておるのであります。

 それから考えると、残念ながら、今、浅尾委員が説明された治安分野改革の支援とかなんとかも含んであるこの特措法というのは、どうも国際的な意味での我が国の援助、手助け、参画には具体的な成果は出し得ないと私は思うんです。それについてあなたたちは、一言でいいから、反論の機会を与えますから、言ってください。

犬塚参議院議員 反論の機会をありがとうございます。

 今のお話、二点申し上げたいんですけれども、まず、目の前のことと少し中長期の話と分けてお話ししたいんです。

 まず目の前のことについて。どうして民主党がここまで抗争停止合意にこだわるかということなんです。これは一言で言うと、紛争の当事者になってはいかぬということだと思います。

 九〇年代を通じて、国連のPKO、平和維持活動がことごとく失敗したのがここなんですね。要するに停戦合意というような、非常にきれいな、全国的な、しかも永続的で逆戻りしないような停戦合意というのは今ほとんどないですね、冷戦後。そうした中で、いわば内戦状態の中で一体どうやって平和維持をしていくかということになると、やはり、地域的でもいい、逆戻りしてもいい、しかし少なくとも関係者の抗争停止合意というものがなければ、結局は、行っても紛争の当事者になってしまう、ここだけは絶対に外すことができないというのが短期的な話であります。

 長期的な話をすれば、例えば緒方貞子さんが、援助を日本の文化にしたい、そういうようなことをおっしゃっております。しかし、翻ってみますと、今の実態というのは、例えばペシャワール会の方々のようにどんなに高邁な理想を持って働こうとしても、まず向こうに行くに当たっても旅行の傷害保険さえとれない、戻ってきても職場の復帰さえできない、医者として行っても日本の国内で社会的な保障も全くないというような状況の中で、援助が日本の文化になるとはとても考えることはできません。

 そういう意味で、この法案で言っているのは、内閣府の下に人間の安全保障センターというものを設けてしっかりとした足元から固めていこう、まずこれが私は第一歩でやるべきことではないかなと思っております。

三原委員 いやいや、あなたの言っていることを別に私は全否定するわけじゃないんだけれども、現実性がない、こう言っているわけです。現実性がない。そのことをもう一回再考慮してもらって、もう一回いろいろな場面でまた議論することができればいいなと、私はあなたたちの特措法を見てそういう印象を持ちました。

 海賊の問題がこの前出てきました。長島委員も言われた、我が党の新藤委員も言及されました。明らかにあの地域は無政府状態みたいなところになっているんですね。自衛隊も給油のために一つの護衛艦と一つの給油艦をもって行っているんですけれども、あの船が遊よくするだけでも海賊たちは、我々は別にプラカードを掲げて、うちは給油しかしません、何もほかのことをしませんと書いているわけではないだろうから、軍艦が行けば、まあ、護衛艦、軍艦ですね、ウオーシップが行けば海賊にとってのおもしになると思うんだけれども、そういう状況の中で海上の警備活動というものに、補給だけじゃなくて、それを私はより積極的にやるべきだという考えですけれども、その点に対してはどうですか。今度は政府に聞いている、政府に。

浜田国務大臣 このお話は、我々とすれば、御指摘のとおり、当然そういった抑止というのは極めて重要な役割を果たせるとは思っておりますけれども、一義的にはやはり海上保安庁の責務ということもあり、そしてまた、自衛隊は、海上保安庁によって対処が不可能または著しく困難な場合に、自衛隊法の第八十二条の規定に基づいて海上警備行動によって対処するということになっていますので、海上警備行動を発令してソマリア沖、アデン湾へ自衛隊の部隊を派遣するかについては、それこそ自衛隊法第八十二条に規定する法的要件に該当するかどうかということを、政府全体として、海賊対策のあり方、部隊運用上の課題、そしてまた諸外国や関係国際機関との協力のあり方等々のさまざまな点でこれを十分に検討することが必要というふうに考えておりますので、我々とすると、当然先生御指摘のとおりだとは思いますけれども、まだ調整しなければいけない点があろうかと思っておるところであります。

三原委員 自衛隊を動かすのは法律のもとでと、当然のことでありますけれども。

 テロの防止のためには、OEFでやっているあそこの軍船も、そういう意味ではいること自体で海賊たちに対するおもしにもなっていますし、それから考えると、何かあったときに、いざというときにはある面での行動をできるぐらいのことはあってしかるべき、全くもってこれは軍事行動とは違いますから、一二〇%違う問題なんですから、そこのところはもっと積極的にやるべきだと私は考えるところでありますので、それは防衛省内でも浜田大臣のもとで積極的にやってもらいたいというのが私の希望なのであります。

 それと、すぐ近所のパキスタンは一応艦艇を持っていますから、パキスタンあたりと、そしてまたあそこで遊よくしている他の国の船とも協力し合うということが大切なことだ。軍事行動ではないというお互いの了解のもとにやるわけですから、積極的にやってもらいたいというのが私の考えであります。

 あそこあたりでも、テロ、海賊、そういう国際秩序、安寧を破壊するような非政府組織の行動に対して、いろいろな意味での手伝いが我が国はできると思うんですね。今、浜田大臣がいみじくも言われたように、海上保安庁あたりでも、あそこまで遠いところまで出ていくような船もないし、それは無理としても、海上保安庁の持っているノウハウを出して、そしてあの近所のオマーンとかイエメンとか、ソマリアはもう無政府状態だから何をやるといってもできないでしょうが、海上の安全のためのいろいろなことをできると思うんですよね。私の記憶が正しければ、インドネシアか何かにそういうことの援助をした経緯があったんじゃなかったかな。

 だから、そういうことが、ましてやあそこは船が縦横に航行していて、我が国の船だってもう既に二隻ですか、海賊に捕まったような経緯もあったりして、まだ捕獲されているのがかなりあるんでしょう。金曜日の新藤先生のあれを見てみますと、海賊の発生件数が二百十五隻もある、ことし一月から九月まででも八十近くあるんだそうですね。それを手をこまねくというのは余りにもみっともないと思うんですが、その点に関してはどうなんでしょう。

 ODAの方から見た海賊に対する対応ということに関して政府の見解を聞きたいと思うんです。

中曽根国務大臣 海賊に対する対応というのは非常に今重要になってきておりますが、一つの例ですが、イエメンとかあるいはジブチ等湾岸諸国への海上警備をどういうふうにやっているかということを御説明させていただきたいと思いますけれども、こうした海賊行為への対策といたしまして、我が国はこれまで、沿岸国の海上取り締まり能力の強化のために人材の育成あるいは機材の供与、こういうことを行ってきております。

 御指摘の、アデン湾ですね、あの辺は一番危険な地域でありますが、あの諸国につきましても、海上警備関係者の海上保安能力の向上を目的といたしまして、JICAにおきまして、例えばJICAの研修にイエメンの沿岸警備隊職員を招聘しているところでありまして、ちょうどきのう十月十九日から、イエメンの沿岸警備隊員二名を我が国に呼びまして研修をやっているところでございます。

 今後もこのような分野で積極的な協力の検討を行っていく予定でございます。

三原委員 きょうは海上保安庁の岩崎長官が来られていますので、あっちの方面との連携みたいなところは、もう数年前ですか、インドネシアのマラッカ海峡でタグボートか何かが捕まって大慌てしたことがありましたけれども、あの近所の国とはこのごろは海上保安庁もいろいろな意見の交換をやって、もっと国際的な結びつきの中で、二度と再びああいうことが起こらないようにしようということでやっているようですけれども、これほどたくさんトラブルが起こっているところですから、海上保安庁も、やはり防衛省がやりにくいというかやれないところは積極的に出ていくべきだと私は思うんですけれども、どうでしょう。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、インドネシア、マレーシア、フィリピン、そうした諸国につきましては、海上保安分野がそれぞれの沿岸国できっちりするように、私ども積極的な協力を行ってきたところでございます。こうしたイエメンとかについても、まだこれからでございますけれども、積極的にやっていきたいと思っております。

 今外務大臣からお話ありましたとおり、JICAと協力しながら、向こうの海上保安機関の研修なんか、我々も講師の派遣等々含めて協力していく。それから、そうした諸国の状況がどうなっているか、まだ私どもは必ずしも十分な情報もないものですから、そうした情報の収集も含めて、私どもでできることは積極的に頑張ってやっていきたい、このように思っております。

三原委員 明らかに目に見えた、続けて起こっている事件ですから、やはりこれはもっと積極的に踏み込んで我が国政府もやらなきゃいけない、こう思うんです。

 ところで、例えばODAで、日本の海上保安庁なんかは船を立派にきれいに使うから、それこそ、船の、使ってもうこれをやめますという期間は、海上保安庁は二十年ぐらいなのかな、どうなんだろう。そういうのがあれば、例えば、本当はODAでやるときには古いものはやらないことになっているけれども、むしろそういう中古のものでも例外的にでも使ってもらうようなことをして、ああいうオマーンとかイエメンなんというところだと千トン、二千トンクラスの公的な船なんてそんなにないんだろうから、それでも使うぐらいの前向きな考え方でどうですか。

 だって、この一月から九月でももう八十件近くの海賊行為が起こっているのに、手をこまねくというのは余りにも策が足らないと思いますね。どうでしょう。

岩崎政府参考人 海上保安庁の巡視船も最近は三十年ぐらい使っておりまして、なかなかいい中古船というのがないことが一つございますが、ただ、先生御指摘のような話は、東南アジア諸国からも要望がないわけじゃございません。そうした要望に対して、お渡しすることが本当に適正かどうか、あるいはいろいろな問題がないかどうか、少し勉強してみていたところでございますので、きょうの先生の御指摘もあったので、また引き続き勉強していきたい、このように思っております。

三原委員 やはりもっと私たちは国際的視野に立って物を考えるべき。まして貿易立国の我が国ですから、よその国のおんぶにだっこみたいなことは余りにも情けない、こう思うんですね。

 そのことから考えますと、やはり、あらゆる意味で、我が国のすべてのエネルギーを使ってやることは大切だと思いますね。

 海外へ行きますと、実は消防署の消防車が結構開発途上国にあるんですよ。そのまま何とか市なんて市の名前が書いてあったり、町の名前が書いてあったりするんです。そういうのを見ていると、あれも二十年ぐらいで、あれは払い下げられたのかどうだかわからないですけれども、それを持っていってやっていますよ。

 だから、あらゆる手だてを使ってやることが、海外援助に対する目を向けること、国際社会の一員として我々のできることをできる限りやるということ、このことを我々は常に念頭に置いてやらなければいけないと私は思います。

 もうそろそろ時間になりましたので、最初に申し上げた長島委員の政策提案については、残りの部分で中谷委員がより具体的にいろいろなことを話していただくことになっておりますので、譲りますけれども、やはり私たちは、今与えられた状況の中で、法律のもとでぎりぎりの線までやること、そのことを常に考えてやるぐらいの、国家として行動しなきゃいけないということを私は思いますし、お互いに切磋琢磨して民主党の諸君もやろうじゃありませんか。

 そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

中谷委員長代理 次に、松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 おはようございます。自由民主党の松浪健四郎でございます。

 このように質問の機会を与えていただきましたことを大変うれしく思います。

 と申しますのは、国会議員の中で、アフガニスタンという国で生活を体験した人間は私一人だけでありまして、そして、アフガニスタンを復興させ、あの豊かな、美しい笑顔を持つ国民の住む国に早く復興したい。我が国も一生懸命努力をしてまいりました。しかしながら、国際テロ集団とタリバンという勢力が、民主化されたアフガニスタンに大きな脅威を与え、国民に不安を与えております。

 そこで、我々諸外国は何ができるのか、どのような協力ができるのか、一生懸命議論し、そして、とうとい犠牲を払ってまでもアフガニスタンの復興のために御尽力をされておるわけでありますが、我が国は憲法の制約等もあって、なかなかいろいろなことができない。そして、現在やっておる油と水の支援、これしかない。もちろん、JICAを中心にいろいろなことをやっております。

 私は、アフガニスタンの人々のためにこれ以上何ができるんだろうか、いつも模索をしておりますけれども、悲しいかな、今のところこの油と水に限られるということでありまして、一体この支援が諸外国からどのような評価を得ているのか、いろいろな会議に、また要人と会談されておる外務大臣にまずお尋ねしたいと思います。

中曽根国務大臣 先週の金曜日でございますが、当委員会終了後、国会のお許しをいただきまして、アラブ首長国連邦で同国と我が国が共催で議長国を務め開催をいたします、G8と中東・北アフリカ諸国の閣僚が出席いたします未来のためのフォーラム、これはBMENAと言っておりますけれども、この閣僚会合に出席をいたしました。約四十カ国の外相とか担当閣僚が出たものでございますが、各国の外相等と二国間会談をしてまいりました。

 閣僚のワーキングディナーが行われまして、各国からインド洋の日本の補給活動について大変な評価と重要性が指摘されたわけでありますが、二日目の本会議、議長役をやる本会議でございますが、本日の補給支援特措法の延長の審議があるということで、大変申しわけないけれども失礼をさせていただきますと申し上げたところ、各国から快く、法案の方を頑張ってください、そういうお話がありました。

 二国間会談の中では、今委員がおっしゃいましたアフガニスタンの外務大臣とも会談をいたしまして、あるいはアラブ首長国連邦、それからアメリカのネグロポンテ国務副長官等と会談をいたしましたが、特にアフガニスタンの外務大臣等からは、このインド洋での補給支援活動に関しての高い評価をいただきまして、またぜひ継続をというお話がありました。米国からも同様でございます。

 このように各国の評価と期待が高いこの法案でございますので、この委員会で今御審議中でありますが、ぜひ速やかな御審議をお願いしたい、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 ありがとうございました。

 政府としてできることをきちんとやらなければいけないし、また、アフガニスタンのスパンタ外相も中曽根大臣に対して評価をし、強い要請があったということでございます。

 それで、G8はいろいろな面からいろいろなことをされております。

 民主党案の中では、抗争停止、このために仲介の労を我が国政府がとるべきだと。これは、タリバンと交渉して、そして抗争停止に持ち込むべきだということであろうかと思いますけれども、このタリバンの本拠地が一体どこにあるのか、そしてアルカイダとタリバンがどんな関係になっておるのか、恐らくだれもわからない。法律を出された民主党の皆さんもわからない。そして、どこにいるのか。

 なぜ、アルカイダのオサマ・ビンラディンやタリバンのオマルを捕まえることができないのか。これは、パシュトゥニスタンと言われるトライバルエリア。これは、峻険な峰々が連なり、複雑怪奇な地形、そして過酷な風土の地で特殊な生活をしておりますけれども、かつてはパシュトゥニスタンと呼ばれました。そして、デューランドが線を引いたことによって、このパシュトゥニスタンがパキスタン側に組み入れられて、トライバルエリアとなったわけであります。これはFATA、こう呼ばれておりますけれども、この地域を何とかしなければ、アルカイダやタリバンを掃討することもできないし、また話し合いをすることもできない。

 アフガン政府は、タリバンとの和解策というのはもう随分以前からとっております。先ごろの報道によりますと、ハリリ副大統領がタリバンと和解する用意がある、そしてその仲介をサウジアラビアに依頼したというような報道もありましたけれども、下院の選挙で、当時のタリバン政府の外務大臣を務めたムタワキール氏が立候補をしたというような経緯もありまして、政府は、カルザイ暫定政権ができたそれ以前のことについては恩赦を与え、和解する、そういう方向を明示し、いろいろなことをやってまいりましたけれども、なかなかうまくいかないんです。だから、抗争停止をするといったって、どこでだれと、どういう交渉をするのか、雲をつかむような話、このように言わねばなりません。ということは、抗争停止できないんだから、民主党案では何の支援もできないということになります。

 とはいえ、抗争があるのはパシュトゥン人の住むところ。パシュトゥン人というのはアフガン族の意味でありまして、何々スタンというのは、何々の民族、何々人の住む国、住む地というような意味でありますけれども、このパシュトゥニスタンを何とかしなければいけない、豊かな暮らしができるように支援をしなければならないということで、ことしの六月、京都でG8外相会談が持たれて、そこで支援策が決められた、こういうふうに聞いております。

 この会議でどういうようなことが決まったのか、外務大臣にお尋ねしたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がお話しされました、京都で開催されましたG8外相会議でございますが、ここにおきまして、連邦直轄部族地域、いわゆるFATAですね、これがトライバルエリアでございますが、ここを含むアフガニスタンの国境地域に対するG8による支援強化策を打ち出したところでございます。

 いろいろな内容がありまして盛りだくさんなんですが、この地域におきましては、G8各国が約四十億ドル、そしてプロジェクトとして百五十以上のプロジェクトの計画を行い、また実施中のものもございます。そういう中で、我が国も、教育とか医療とか、あるいは国内の避難民対策、それから国境管理等の支援を実施してきておるところでございます。

 G8各国と協調しつつ、今後も我が国としてこの地域への支援を強化していきたい、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 ですから、我が国政府は何も油と水だけの支援をやっておるのではなくて、国際テロ集団も撲滅するために、そしてアフガンの人々また周辺の人々の豊かさを取り戻すために一生懸命支援をしておるということは、国民の中でも知られていない。これを私は残念に思います。

 とにかく、このトライバルエリア、私は何回も訪れたことがあります。DDRもDIAGも比較的成功したかに映ります。

 ところが、これを支援するということは民主党案の中にも書かれてありますけれども、このトライバルエリアで武器がつくられているんです。そして、その武器がどんどんどんどんアフガンの国内に流れる。だから、武器を持っていって、これは別名刀狩りとも言われましたけれども、お金をもらって、あるいは就労のための訓練を受けたとしても、それよりも安いお金でまた武器を買うことができる。これが現実なんですね。

 ですから、私は、DDRもDIAGもある程度成功したけれども完全に成功しなかったという背景には、やはりこのパシュトゥニスタン、トライバルエリアの存在がある、こう読んでおりますけれども、この辺のことについてもっと知識があれば、民主党案はもうちょっとましな法律になっていたなというような気もいたします。

 このトライバルエリアの中で、百五十あるいは百五十二とも言われる支援策の中で、ジルガを支援する、こういう項目があります。これは部族会議というものでございまして、トライバルエリアというのは、法治国家で暮らしてきた私たちには理解しがたい、そういう一面がありますが、極めて特殊な地域でありまして、法律が及ばない、国の行政権、警察権、これらが及ばない、大変なところであります。そこでいろいろなことを決めるとしたならば、アフガニスタンも、またパキスタンも含めてこの地域は、部族主義社会、このように呼ばねばならない点があろうかと思います。

 そして、このジルガ、いわゆるトライバルエリアの中の部族会議、これをG8が支援するということは一つの前進であるし、着目点がすばらしい。そして、この部族会議によってトライバルエリアが民主化され、そしてタリバンやアルカイダに協力する人々が減っていく、いなくなる、このことを期待しますし、同時に、医療それから教育、いろいろな貧困との闘いで疲弊した一面がありますけれども、これらをも支えていくということに私は期待感を寄せるものであります。何としても成功していただきたいということを表明しておきたいと思います。

 次に、インド洋での活動メリットについていろいろ議論がございます。海賊の問題も出ました。私は、それよりも、このインド洋を北朝鮮の船がどういうふうな形で航行しておるのか、北朝鮮とイランの関係はどうなっているのか、北朝鮮とシリアの関係はどうなっておるのか、このことに強い興味を持ちます。

 しかし、最近の例を見ておりますと、北朝鮮の船が、あるいはイランの船が問題を起こしたというようなことはございませんけれども、二〇〇二年の十二月にソ・サン号事件というのがございました。このことについてお教え願えますか。

中曽根国務大臣 海上自衛隊が補給支援活動をして行っております海上阻止活動、これが各国間の交流にどういう影響を与えておるか。今お話ありましたように、イランと北朝鮮とか、あるいはシリアと北朝鮮とか、いろいろあろうかと思いますけれども、一概に申し上げることはできませんけれども、まず一般論といたしまして、この活動は、インド洋海域において、もう委員十分御承知のとおり、テロリスト、それから武器、麻薬等の海上移動の阻止、抑止に貢献するものでありますが、その結果として、この海域の海上交通の安全にも貢献をしております。

 そして、御指摘のソ・サン号のことでございますが、これは、二〇〇二年に、国旗を掲げずに、国籍照会にも応じなかった北朝鮮の商船でございますが、このソ・サン号に対しまして、海上阻止活動に従事をしておりましたスペインの艦船が臨検を行いまして、スカッドミサイルを発見した、そういう事例がございます。

松浪(健四郎)委員 それ以後問題が起こらないということは、そこでいるということが、武器、これらの輸出、そして核にかかわるような問題、これを牽制しておるという大きな意味があるということを私たちは忘れてはなりません。この視点が欠落しておるのではないのか、私はこのように思ってまいりました。

 そして、民主党の皆さん方は、タリバンとそしてカルザイ政権、これが和解をし、そしてうまくいくということ、これは私たちも強く望んでおりますけれども、なかなか難しい。その仲介の労を日本がとるべきだというお話がありました。可能ならばやるべきだ、このようにも思います。しかし、その前にやらなければいけないことは、日本はアメリカとイランの国交回復のための仲介の労をとるべきではないのか、私はこう思っておりますし、イラン政府は強くそれを期待している、このようにも私は思います。そうでないと、この問題はなかなかうまくいかない。

 と申しますのは、イラクのシーア派のイスラム過激集団、あるいはレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、アフガニスタンのタリバン、この人たちの使っておる武器は、押しなべてイラン製と言われております。そしてお金もイランから出ておるのではないのか。私はイラン政府にこのことをただしましたけれども、我々はタッチしていないと。それは、イラン国内にあるいろいろな組織、集団がやっているのかもしれないというふうに受けとめられるわけでありますけれども。

 とにかく、イランとアメリカがどのような形であるか。私は、国交回復のために我が国が仲介の労をとるべきだ、このように強く望んでおりますし、そのことについて、外務大臣、どのような所見をお持ちであるか、お尋ねします。

中曽根国務大臣 我が国は、イランとはかねてから、かつてからずっと良好な関係を有しておるわけでございまして、アメリカとイランとの関係におきましても、我が国のそういう関係をうまく活用しながら両国のそのような関係の改善に努めていきたい、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 次に、防衛大臣にお尋ねしたいんですけれども、この油と水の支援は、新聞なんか読んでいると、ガソリンスタンドと言われているんですね。町にあるガソリンスタンドと同じだ、こういうふうに受けとめられております。

 私は、聞くところによれば、あの給油には大変な技術が要ると聞きました。大変な技術が要るとしたならば、我が国のすぐれた一面を諸外国にちゃんと示して、そして、さすが日本と言われる、つまり、その技術だけでも国益に資する、こういう思いをしておるんですが、これが難しいのか難しくないのか、そしてすぐれた技術なのかどうか、防衛大臣にお尋ねします。

浜田国務大臣 先生御指摘いただきました部分に関しましては、これは、まさに海上補給というのはその意味では大変難しいというふうに言われていますが、どんなものなのかということでございますが、まずこの補給支援活動は、海上阻止活動に参加している各国艦船の作戦効率向上に大変大きく寄与しておりまして、まさにそれが海上阻止活動の重要な基盤になっているということをお話ししなければなりません。

 そしてまた、補給活動の形というのは、まさに自衛隊の補給艦と補給対象の艦船が、給油用のホースをつないだまま四十メートルから五十メートルの等距離で数時間にわたって同じ速度で、大体速力で十二ノット、時速でいうと約二十キロの速さで航行をし続けなければならない、そういう高い技術と能力を必要とするものであります。この補給量に応じて、一艦当たりの時間が大体一時間から長いときには五、六時間にもわたって補給活動するということでございますので、その間、当然これは乗組員は不測の事態に備えて総員で対応しますし、また、護衛艦及び艦艇搭載ヘリコプター等は、当然これは当該海域の安全を確認するために警戒活動に従事するということでありますので、そういった意味では大変な作業であります。

 また、インド洋の環境は、これはもう先生御存じのとおり、気温は四十度もあり、甲板の温度が七十度にもなるということですから、そうした中での補給活動に従事するというのは、これは大変なことであるということは御認識していただけると思います。

 また、補給艦を多数保有して国外に派遣する能力のある、余裕のある国というのは極めて限られておりますので、こうした観点からいいますと、この補給支援活動というのは我が国の能力からいっても最もふさわしい形での貢献であるというふうに考えておりますし、また、各国から、そういった活動というか行動がまさにほかの国にはできない数少ないことだということでありますので、評価も当然高いということをお話しさせていただきたいと思います。

 以上です。

松浪(健四郎)委員 防衛大臣の説明、よくわかりました。

 次に、民主党の皆さんにお尋ねをいたします。

 この前から議論を聞いておりますと、油より水だ、こういうお話がございました。私は、油よりも水ではなくて、油と水だ、こういうふうに思います。

 そして、よく干ばつという言葉が使われます。アフガニスタンにおける干ばつというのは、私にはよくわからない。国民の皆さんもよくわからないのではないのか。もとより砂漠の国でありますから、砂漠の国の干ばつ、これは一体何なのか、ちょっと質問させていただきます。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

犬塚参議院議員 アフガニスタンに住んだ御経験のある委員からのアフガニスタンにおける干ばつとは何かという御質問です。

 私は、この水のことについて、ペシャワール会で二十年以上にわたって現地で病院の運営をしてきたこの活動が、結局は農村の復興こそアフガニスタン復興の基礎である、そういう認識のもとに、去年の八月までの間に井戸千五百本を掘った。その上、農業用水路が第一期十三キロメートルを竣工した。この農業用水路のおかげで既に千数百町歩を潤した。さらに、これはもう完成していると私は聞いておるんですが、さらに数千町歩のかんがいが目の前に迫っているというレポートがございます。総工費が九億円です。そして、延べ三十八万人の現地の雇用対策になっている。

 このペシャワール会の中村医師が最後に言っているのは、こうした活動ができたのはこれまで現地が親日的であったからである、なぜならば、親日的であった歴史的根拠の一つは日本が他国の紛争に軍事介入しなかったことにある、つまり油よりも水であると。

 油と申し上げているのは、決して給油をしてはいけないと言っているのではありません。当然のことながら、我が党の同僚委員が提案をいたしましたように、この海上における治安維持活動は絶対に必要であります。

 しかしながら、今、下部作戦でやっているOEF・MIOというこの作戦の前方は、もともとは、アメリカが自衛権の発動をしたタリバン、アルカイーダの掃討作戦をやっているということであります。つまり、こうした自衛権の行使が今は何だかよくわからなくなっている。こういう中において我が国が本当にその下部作戦をやる必要があるのか。こういうことをやると、現地で二十年間にわたってこういう活動をしてきた人たちの足を引っ張ることになる、私はそのように考えております。

松浪(健四郎)委員 カブール市内の水道施設は我が国が支援をしたものであります。したがいまして、それはきのうきょうやったのではなくて、我が国のアフガニスタンに対するODAの歴史は他の国々にぬきんでておることをも御理解賜りたいと思います。

 そして、水のことについては、今もバーミヤンで日本人の技師が農耕のために一生懸命水路をつくられたりして活躍をされております。何も、抗争停止合意するまでもなく、JICAを初めいろいろな組織が政府の金を使って支援をしております。このことについても御理解を賜りたい。

 今、ペシャワール会のお話が出ました。ペシャワール会は千五百の井戸を掘った。では、なぜ伊藤さんが殺されたのでしょうか。これは、二〇〇三年九月に大統領から、深掘りの掘削禁止令というのが出ているんです。井戸を掘っちゃいけない。なぜ掘っちゃいけないのかといえば、深い井戸を掘ると浅い井戸の水が枯渇する、そして自然水路と言われるカレーズがうまくいかなくなってしまう。だからむやみに井戸を掘っちゃいけないんです。そのことが、二〇〇三年、大統領令で出たんです。

 ですから、我々は日本人の発想で水だ水だと言っても、これがなかなか難しい。そして、ダムをつくれば水をつくっていいじゃないかというと、下流で農業をしておる人が困る。国民の八五%が農業にいそしんでおりますから、水は大切であることは民主党の言うとおりであります。けれども、このやり方は相当難しい。

 それと、ペシャワール会の皆さん方のおられたところは、我が国政府は退避勧告を出しておりました。極めて危険なところでありました。その危険なところでボランティア精神を発揮して亡くなられた伊藤さんに我々は哀悼の誠をささげますけれども、なぜペシャワール会は外務省の言うことを聞かなかったんだろうか。中村さんは、我々はタリバンとの関係がうまくいっている、相互の理解がうまくいっているというような思いを持っていたとしたならば、私は、伊藤さんは大変気の毒だったな、このように思います。そして、今も、あの伊藤さんを殺害した集団はどの集団であったのか、タリバンであったのかなかったのか、なぜとうとい犠牲者になられてしまったんだろうか、このことが報道されていません。

 農業支援というのは極めて難しい。その地域の人が幸せになるかもしれないけれども、水脈が変わって両サイドが農業ができなくなるというようなことも考えられます。極めて難しい。それゆえに、私たちはいろいろな協力をしなければなりませんけれども、これはやはり政府とうまくタイアップして、そしてやっていかなければならない。この政府を無視した形では、幾ら優秀な立派なNGOといえども、私たちは協力をする上において慎重でなければならないということは、それらのことを理解した上でなければ難しいということであります。

 いずれにいたしましても、我々は、アフガニスタンの復興のためにこれからも真剣に取り組み、そしてアフガニスタンが平和になるよう心から祈念をし、私の質問を終わらせていただきます。

深谷委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 この委員会で、テロにいかに対応していくのか、アフガンの復興をしていくのか、いろいろな論点で議論をしてまいりましたが、かなりの成果も出つつあります。そこで、きょうは、民主党の政策責任者でございます直嶋正行提案者にもお越しいただき、これから我が党として総括的な質疑をさせていただきます。

 まず、民主党の基本的な憲法についての考え方でございます。

 民主党は、質疑の中で、民主党の基本的な憲法の考えは、自衛権と集団的安全保障を分けて考えるという旨の説明がございました。そうしますと、政府はこれまで、国連決議が出たとしても武力行使に及ぶことは憲法上許されないとずっとしてきたわけでございます。民主党は、この集団的安全保障を分けて考えるということでございますので、小沢党首が言うように、国連決議があれば武力行使ができるというふうにお考えになっておられるんでしょうか。

浅尾参議院議員 先般、政権政策の基本方針でお答えさせていただきました。武力の行使、自衛権と集団安全保障とは性格が異なるというお答えをさせていただきましたので、集団安全保障の活動というものは自衛権とは性格を異にするということを政権政策の基本方針の中でまとめさせていただいておりますので、そういうお答えになります。

中谷委員 自衛権と集団的安全保障があるということですね、憲法の許容される範囲は。

 自衛権は今までいろいろと議論をしてまいりましたが、では具体的に、集団的安全保障が行使し得るときというのはいかなるときがございますか。

浅尾参議院議員 国連憲章の四十一条、四十二条によるものというふうに理解をしております。

中谷委員 四十一、四十二。それは国連軍などの規定ですよね。したがって、そのような国連決議による国連軍とか国連のPKOなどの活動において、我が国が参加した場合は、武力行使をすることもあり得るということでございますか。

浅尾参議院議員 国連憲章第七章四十一条並びに四十二条のところですけれども、「安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。」これが四十一条のところです。

 ですから、四十一条のところは武力の行使にかかわらないところでありますが、次の四十二条のところは、「安全保障理事会は、第四十一条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」ということで、四十一条、四十二条というふうにお答えさせていただきました。

中谷委員 それは、では、できるということですが、小沢党首はできるんだとはっきり言っております。

 直嶋政調会長、せっかくお越しでございますが、小沢党首が言われるように、武力行使ができるというふうに民主党が決定したというふうにお考えしてよろしいですか。

直嶋参議院議員 私の方からお答えさせていただきます。

 今御答弁させていただきましたように、国連憲章四十一条、四十二条、今は四十二条の場合ですね、それは可能であるということであります。

 しかし、それは国連のそういう決議があれば可能であるということでありまして、直ちにそれをもって日本が武力行使を行うということではありません。それは日本政府として判断をするということであります。

 小沢代表も、「国連の決議があっても、実際に日本がその活動に参加するかしないか、あるいはどの分野にどれだけ参加するかは、その時の政府が総合的に政治判断することです。それは政治のイロハです。」というふうに、きのう、おととい議論になりました雑誌の寄稿の中でも述べております。

 若干私の考えをつけ加えさせていただきますと、現実の問題に即して対応していこうとする場合は、国民世論の御支持を得なければいけないことはもちろんでありますし、例えば、近隣諸国を初めとした国際的な理解や協力も当然必要になるというふうに思っています。

 したがって、現実を見ながら総合的に判断をするということであろうかというふうに理解をいたしております。

中谷委員 現実的にどうするかというお話をされましたが、問題は、この日本国憲法九条をどう考えていくのかということで、今のお答えでしたら、憲法上はこのような武力行使もできるんだというケースもあり得るということでございます。

 そこで、お伺いしたいのは、仮に、民主党が政権につくというふうに民主党は言われておりますが、では実際に民主党が政権につかれたら、従来の憲法解釈というものを変えて内閣運営をされるかどうか、この点について、政策責任者はいかがですか。

直嶋参議院議員 今お話し申し上げましたように、民主党の基本的な考え方でございますから、その方針に基づいて、当然私は、法律の整備も必要になると思いますし、先ほど申し上げましたように世論の御理解もいただかなければいけないというふうに思っています。

 いずれにしても、そういう方針に基づいて、政権を担当させていただければ、作業に着手するということになるのではないかと思っております。

中谷委員 これは、憲法の解釈を変えますということにとらえてよろしいですか。

浅尾参議院議員 この委員会でも金曜日にも御答弁させていただいておりますが、自衛権の行使段階と、国連が定める集団安全保障とは別段階であるというのは国際法が認めているところでありまして、したがいまして、自衛権の行使と国連憲章に定める四十一条、四十二条とは異なるということでございます。

 それから、今の御質問に関して申し上げますと、解釈を変えるということではなくて、基本的に、それに基づく……(発言する者あり)ちょっとよく聞いていただきたいんですが、それに基づく法律ができた段階で、従来の政府の考え方と違う法律ができるということだというふうに思っております。

中谷委員 先ほど、御答弁では、四十二条の国連軍が編成された場合においては、集団的安全保障で、そのような自衛権以外の活動において国際活動もあり得るというお話がありましたので、これは憲法の解釈の変更になってくると思いますが、これは従来の内閣法制局と見解が違ってきます。

 これで政権をつくられた場合に、では一体、この内閣法制局の答弁をどうされるおつもりですか。

直嶋参議院議員 今、内閣法制局の答弁のお話がございましたが、私の理解では、政府、まあ内閣法制局かもしれませんが、この憲法の解釈は何度か変更されているというふうに思っております。

 それは、例えば、第一次湾岸戦争のときには、自衛隊に人的貢献をさせたいということで、輸送業務であるとか補給業務に携わらせたい、あるいは野戦病院を担当することはどうだ、こういう議論があったというふうに伺っております。しかし、そのとき政府内では、特に内閣法制局だというふうに私は聞いておりますが、いわゆる兵たんと前線とは一体である、したがってこの考え方は武力行使と一体になるので派遣はできない、こういう主張をされて、政府内でまとまらなかったというふうに小沢代表からも聞いております。

 そういう意味でいいますと、状況によって憲法解釈が変わるということはあるということでありまして、御承知のとおり、その後、政府は後方支援とか非戦闘地域という概念を持ち出されてそこを区分されたということであります。

 先ほど浅尾委員から御答弁させていただきましたように、私どもが政権をとらせていただきますと、こうした議論も含めて、きちっと整理をする中で、法整備をした上で対応してまいりたいということでございます。

中谷委員 今、政府が憲法の解釈の変更をしたんだ、したこともあるという御答弁でしたが、これは認識は間違っております。

 今まで判断をしていなかった空白の部分がありまして、その部分に自衛隊が参加することがどうかという議論で、この国会や政府の法律を考える上で、その空白部分が埋まってきたわけでありまして、現在、政府のとっている基本的な考え方は武力行使をしないというのが大前提でありまして、これは実態論から見ても武力行使に当たらない範囲はどこかというところでここまで来たわけでございます。

 これに対して民主党は、国連決議が出たならば武力行使もできるんだと。そして、マグナカルタ、基本政策においても、集団的安全保障の分野で我が国は憲法上行動することもあり得るということで、これは重大に解釈が違います。したがって、政権をとりましたら憲法の解釈の変更になるのではないかという質問ですが、これはいかがですか。

犬塚参議院議員 今お話しになったような集団安全保障の件ですね。今までの政府の解釈というのは、四十二条に基づいて、特別協定に基づいて行われるような武力行使、いわゆる国連軍というものは、今までできたためしもないしこれからできる可能性もない、であるから、そういうものができるような段階になってからこれを検討するというのが今までの解釈ですので、直嶋会長が言ったとおりなんですけれども、つけ加えさせていただきます。

中谷委員 そのような答弁であっても、国連軍ができたとしても武力行使を伴うものは憲法上認められないというのが今の憲法の解釈でございます。

 では、引き続いて憲法の問題を伺いますが、非常に大事な問題なんですね、憲法上何ができるか。

 そこで国会は、平成の十二年から憲法調査会が始動しまして、改正の手続を法律でつくったり、また、憲法審査会という憲法の中身を議論できる審査会を立ち上げました。これができた途端に、二年間、始動できないままになっているんですね。これはどうしてかというと、私は、小沢一郎氏が政局第一主義で、この国会において憲法を議論、政策議論をしたいのにこれを始動させない、特に参議院の方はこの審査会すら認めないということを聞いておりますが、なぜ憲法審査会を始動させないんでしょうか。

直嶋参議院議員 今の中谷先生の御質問にお答えする前に、先ほどの憲法解釈の問題についてちょっと補足をさせていただきたいと思います。

 先ほど、政府は武力行使をしないという解釈は変わらないというお話がございましたが、私が申し上げましたように、その武力行使の内容が変わってきているということでありまして、それも解釈の変更だというふうに思っております。

 それから、あえて申し上げさせていただきますと、例えば、浜田防衛大臣は、集団的自衛権の行使を容認すべきだという個人的な考え方をおっしゃっておられます。私の記憶では、麻生総理も同様のことをおっしゃってきたと思います。これらはいずれも憲法解釈の変更を伴うものであります。しかも、現実に自衛隊の総指揮官であります。指揮官が、司令官がそういう発言をされているということは、将来、憲法の解釈を変更する可能性もあるということであります。私どもは、今は残念ながら野党でございます。政権を握っている政府・与党の最高責任者なり防衛担当大臣がそのような発言をされている、このことも当然議論をしなければいけないことであるというふうに申し上げておきたいと思います。

 それから、今の御質問の件でございますが……(発言する者あり)静かにしてください。うるさいんです。先ほどの御質問の件でございますが、私どもの理解を申し上げさせていただきますと、憲法審査会の議論ができていないのは、民主党が検討を放棄しているということではなくて、ではなくて、昨年の参議院選挙前に当時の安倍総理が憲法改正を選挙の公約にされた、このことでそれまで政党間で積み上げてきた信頼関係が壊れてしまった、そのことの結果だというふうに受けとめております。

 したがいまして、私どもはこの議論を全否定するつもりはございません。しかし、政党間の信頼関係を再構築するということが必要であるというふうに思っております。

中谷委員 今の理屈でいきますと、当分国会で憲法を審議する審査会ができないということになってしまうんですね。これは本当に国民にとっていいことかと思えば、やはり、国際貢献する事態においてもこれほどの憲法議論があって、一歩も前に進めない。我々与党は、何度も何度も民主党に政策審議をしてくれと呼びかけをいたしました。それに対して、委員会でやればいいと。実際、委員会でやっても詰まらないんですね、内容が。

 そして、憲法においては、政権をとったらどうするかということで、民主党は政権をとりたいわけでしょう。ですから、憲法についてはいつまでも野党のような立場ではいけないんです。やはりしっかりと、政権を担った場合にこう考えるということをまとめて臨まないとだめだ。

 そういう意味で、この国会で憲法を議論しましょうと何度も何度も憲法審査会の立ち上げ、始動を要求しているのに、そういった約束を破ったからということでいまだにできていないということは納得できませんが、早期にこれは議論すべきであると思いませんか。いかがですか。

直嶋参議院議員 憲法審査会での議論については、衆参それぞれのハウスの中で担当ベースで話し合いをさせていただければいいというふうに思っております。

 それで、もう少し申し上げたいのは、憲法調査会の当時に、やはり自民党さんの筆頭理事と私どもの筆頭理事との間でさまざまな意見交換をさせていただいてまいりました。我々も、憲法の論議を否定しているものではございません。今の憲法が時代に合わなくなっている部分はあるというふうに思っております。しかし、御承知のとおり、具体的に憲法を改正しようとすれば、国会で衆参それぞれ三分の二以上の多数で発議をすることが必要であるわけであります。

 したがって、当時、筆頭理事間で確認をされてきたことは、その三分の二が必要だということを念頭に置いて、調査会できちっと議論を積み上げていきましょう、与党さんだけでもだめだし、もちろん我々民主党だけでもだめであると。あえて申し上げれば、国民的な議論でありますから、改正そのものに反対をされている社民党や共産党の皆さんも、反対ではあっても議論には参加していただく、こういう考え方で四、五年にわたって積み上げてきたというふうに思っております。

 したがいまして、中谷先生のおっしゃるように、憲法を議論するということに私は決して反対ではございません。しかし、今申し上げたような経過であるとか、現実に三分の二の多数の議決が必要であるということを念頭に置いた上でやはりこれからの議論を進めていかなければいけない、こう思っておりまして、したがって、さっき申し上げたように、政党間の信頼関係を回復することが大事なことであるというふうに認識をしているということでございます。

中谷委員 日本の安全保障政策は憲法をどう考えるかということでありまして、そのような議論を否定しないというなら、やはりこれは国会の中で審議をして、では憲法九条でどこまでできるのか、では改正するのかしないのかということも議論することは大事でありまして、直ちに衆参で憲法審査会を始動させていただきたいと申し上げます。これでも始動させませんか。

直嶋参議院議員 今申し上げましたとおりの考え方でございます。したがって、衆参それぞれのハウスにおける国対あるいは議運等で議論をしていただければ結構かというふうに思っております。

 それから、あえてもう一つ申し上げさせていただきますと、中谷先生おっしゃっていますように、安全保障の問題というのは憲法にかかわる重要な問題であります。また、一般法の議論もございます。すぐにも衆議院の解散・総選挙がある、今はこういう情勢下でございます。また、麻生総理もお話しされていますように、準決勝が終わった後、総選挙で、つまり決勝戦をやらなければいけない、このように申されている状況でございます。

 したがって、私は、国民の皆さんの審判をいただいた正統な政府ができた段階でそれぞれ話し合いをするということが望ましいのではないかというふうに思っております。(発言する者あり)

深谷委員長 お静かに願います。

中谷委員 そのようなことを言いながら、もう国際情勢はどんどんどんどん変化して、日本の対応を待ってくれません。

 金曜日の質疑でも、民主党の長島議員から、アデン湾そしてソマリア沖の海賊対策、これを早急に民主党と与党で詰めるべきじゃないかと。これに対して麻生総理も、これはいい提案で、検討するということで、総選挙もありますが、それを待っていたら、この海賊の被害というのは非常に深刻になっていまして、ことしは五十七件、一カ月だけでも二十六隻の船舶が海賊に捕まっております。当然、我が国の船舶も含まれますが。

 金曜日に総理の方から、ぜひこれを民主党の方に正式に政策協議としてやっていただけないかというお話がありまして、先ほどの理事会でも野党の筆頭理事に、民主党の鉢呂理事に、このタンカー問題について政策協議をしたいという申し出をいたしました。政策責任者としてこれを受けていただけるかどうか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

直嶋参議院議員 先生の御提案については、後ほど鉢呂理事の方からも詳しくお聞きをしたいというふうに思っております。

 それから、今お話がございましたように、海賊対策というのはやはり世界共通の課題であるというふうに思っていまして、私どもも、このための法律の制定の議論そのものを否定するわけではございません。しかし、先ほど申し上げたとおり、今の政治情勢等を判断いたしますと、衆議院の総選挙が終わった後、正統な政府ができ上がった上で責任を持った議論をきちっとしていくべきである、このように考えております。(発言する者あり)

深谷委員長 お静かに願います。

中谷委員 この法律には、民主党の方から、国際船舶の安全のために我が国としてとれる対応を早急に講ずるべきだと書いております。政局も大事ですが、国益や国の安全保障を考えますと、私は国の安全保障や国益の方が大事だと思っております。

 そこで、防衛大臣に伺いますが、国連の海洋法条約において、すべての国に対して抑止のための協力の義務が課せられておりまして、船舶による拿捕の権限も限定をされて、軍艦による拿捕の権限も規定されております。

 EUにおきまして、EUの海上軍事作戦の実施に向けた準備を開始するという現状でありまして、日本もEUと協力して海賊の取り締まりを実施すべく自衛隊を派遣すべきではないかと考えますが、防衛大臣の見解を伺います。

浜田国務大臣 お話にありましたEUの関係でございますけれども、当然、これは我々、海上貿易に依存する我が国にとっては航行の安全を確保することは重要でありますし、また、政府として、関係省庁が収集した航路等の安全情報を運航会社等に提供するとともに、我が国船舶の安全確保について同海域に艦艇を派遣している有志連合各国と調整を行うなど、必要な対策をこれまで実施してきております。

 また、現在、総合的な海洋施策に係る法制の整備方針を重点審議する総合海洋政策本部に関係閣僚から成る法制チームを設置しておりまして、海賊に対する取り締まりのための法制度上の枠組みについて検討を進めているところでもあります。

 防衛省は各関係省庁等の一員として本格検討に参画をしておりまして、実効性ある海賊対策の措置を講ずるべく、防衛省としても、関係省庁と連携協力して検討を進めてまいりたいというふうに思っておるところであります。

中谷委員 もう一問、大臣に伺います。

 金曜日の議論におきまして、海賊対策のためにP3Cを派遣すべきであると議論が行われましたが、防衛省の見解を伺います。

浜田国務大臣 御指摘の点につきましては、現在、具体的に検討しているわけではございませんが、仮にP3Cの派遣を検討するとなれば、政府全体としての海賊対策のあり方、派遣の根拠など法的側面、そしてまたP3Cの機体整備などの運用体制、そしてまた受け入れ国との関係等のさまざまな点についての十分な検討が必要であるというふうに考えておりますので、これから対処していきたいというふうに思っております。

中谷委員 問題は、日本船籍を含むこういった海域の輸送船、日本にもたくさん物資が来ていますが、これを安全に確保するという問題です。

 では、民主党に伺いますが、今防衛大臣に質問した、EUと協力をして海賊の取り締まりをすること、そしてP3Cを派遣して我が国の航行の安全のために警戒監視も行うこと、これにつきまして民主党はどうお考えなのか伺います。

直嶋参議院議員 今防衛大臣の御答弁、あるいは、先ほど海上保安庁の長官の御答弁もありました。今先生が御指摘されたことについて政府の方もきちっと議論をしていないようでございますし、まだ検討中だ、調査もしていない、こういうことでございます。

 今の段階で私どもに協議を呼びかけるより、むしろ政府のしりをおたたきになった方がよろしいのではないかというふうに思いました。

中谷委員 時間が参りましたから最後にお話ししますが、難しい問題とか都合の悪い問題は政府任せで本当にいいんでしょうか。これはやはり、憲法の問題や国際貢献の問題は、国会の場でこういう議論をしながら詰めて、この委員会の中でも一つでも二つでも、国のために、国民のために、国益のためにいいことを生み出すというのがこの委員会でありまして、直ちにこの憲法の問題も国会で質疑をし、そしてこのインド洋の航行安全の問題も各政党間で議論すればいいじゃないですか。それを何で拒むのか理解できませんが、最後にもう一度、民主党に対して、これらの問題に対して政策的な協議をしたいと麻生総理も言っておりますが、これに対する御返事を聞かせていただきたいと思います。

直嶋参議院議員 私の方の考えは先ほど申し上げたとおりであります。まず、政治そのものがきちっと国民の審判を得た、安定した政権をつくる、このことが今一番大事であります。私どもは、衆議院の総選挙を政局とは思っておりません。非常に大事なことだというふうに思っております。

 それから、先ほど来申し上げていますように、議論をしていくこと自体は私どもは結構でございます。したがいまして、しっかり議論をしたいと思っておりますが、一方で、政府の答弁を聞いていますと、とても中谷先生の問題意識のところまで行っていないと思っておりまして、現実にそういうことも御指摘をさせていただいたということでございまして、決して私どもが逃げているということではございません。

中谷委員 せっかく機会ができたので、逃げないでください。こういう内容を詰めるのは我々国会議員の仕事であって、この審議を通じて提案もされたわけですから、それを深めることが我々の仕事であるということを申し上げまして、終わります。

 どうもありがとうございました。

深谷委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 本特別委員会におきまして初めての質問でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、政府の広報活動について質問させていただきたいと思いますけれども、インド洋でのテロ対策海上阻止活動の意義ですとか、あるいは海上自衛隊が補給支援する必要性について、世論調査の結果では、残念ながら必ずしも理解は広がっておりません。

 今手元にあるデータで、この補給支援活動法の成立前とそれから最近の世論調査の結果、手元のデータでは産経新聞と読売新聞のデータが比較ができるわけでありますけれども、例えば読売新聞では、昨年の十二月の十一日時点で補給支援活動に関して賛成する方が四八%、それに対して、ことしの十月十三日の調査では四七%ということでほとんど変わっておりません。読売新聞によりますと、反対の方が、昨年十二月十一日では四一%に対して、ことしの十月十三日は四〇%、これもほとんど変わっていない、こういう状況であります。

 もう一つ、産経新聞では、昨年の十一月の十三日の時点で賛成する方が五二%だったのに対しまして、ことしの九月二十七日では四四%にこれは減っております。同じく産経新聞で、昨年の十一月十三日、反対する方が三八%だったのに対して、ことしの九月の二十七日では四四%にむしろふえている、こういう状況でありまして、先ほど申し上げましたように、必ずしも理解が広まっていないという状況でございます。

 そこで、私は、国民の皆さんに対してこれまで以上に十分に丁寧に政府は説明する必要がある、こういうふうに考えておりまして、その見解と対応について三大臣にそれぞれお伺いをいたしたいと存じます。

河村国務大臣 御指摘をいただきました点、海上自衛隊による補給支援活動、これをもっとこれから進めていく上においても、広報宣伝の必要性、また、その成果はどういうものであるかということを政府として広く国民に広報を行うということは、私は非常に大事なことだというふうに思います。

 このために、関係各省庁間の連携をとりながら、パンフレット、今お手元に配らせていただきましたが、またポスターの作成、配布、またホームページ、セミナー等々で活動を進めておるわけでございまして、これからもさらに国民の幅広い御理解、また御支持をいただくために、今後とも引き続き積極的に広報はやっていく所存でございますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

中曽根国務大臣 広報活動の重要性、必要性は、今官房長官からお話があったとおりです。パンフレット等、あるいはポスターの作成を行っておりますが、外務省としても、ホームページとかあるいはセミナーとか、そういうものも開催をいたしまして、広く国民の皆さんに御理解をいただくように努力しておりますし、今後も、まだまだ十分ではないところもあろうかと思いますので、さらにこういう広報活動を強化していきたいと思っております。

浜田国務大臣 今、官房長官、外務大臣から御説明があったとおりでございますし、我々としても、大変努力をしているつもりであってもなかなかこれが伝わらないというところには大変問題意識を持っておりますので、それが何なのかをしっかりと見きわめながら、今後も広報活動を含め頑張ってまいりたいというふうに思っているところであります。

石井(啓)委員 これに関してちょっと官房長官に追加で質問いたしますけれども、なかなか理解が広まらない原因の一つとして考えられますのが、一時期に比べて少し落ちついたとはいえ、ガソリンが非常に高くなっているのに対して、何で無償で補給、給油をするんだというような率直な国民感情もあるのではないかなというふうに私は想像しておりまして、この点についても、この補給支援活動というのが我が国の国際貢献としては非常に費用対効果のいいものであるということで国民の皆さんに説明をしていくということも必要なのではないかな、こんなふうに思うわけでありますけれども、官房長官、いかがでございましょうか。

河村国務大臣 ああいう原油の急騰等もありまして、国民的に見ても今委員御指摘のような点があるのではないか、私もそういうことを懸念しないわけではございませんが、やはり今回のこの継続がいかに重要なものであるか、国益にかなったものであるかということを十分御理解いただくことが一番だというふうに思っております。

 言わずもがなでありますけれども、我が国の国内のガソリン販売高というのはもう八兆六千億になんなんとしておりますが、それの、給油部分というのは約二十億円でありまして、〇・〇二%のものであります。それだけのものがどれだけ大きな意味を持っているかということをしっかり国民の皆さんに御理解をいただくことが一番だ、こう考えておるわけでございます。

石井(啓)委員 それではよろしくお願いをいたしたいと存じます。

 続いて、仮に現時点で我が国がテロ対策海上阻止活動への補給支援から撤退をするというようなことになった場合に、国際的な反応とか影響というのはどういうことが想定をされるのか。これは官房長官、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

河村国務大臣 現実にテロとの闘いが今続いておるわけでございます。多くの国、四十カ国になんなんとする国が、とうとい犠牲を出しながらも、アフガニスタンにおける取り組みの強化を今している現状がございます。

 補給支援活動については、日本の立場というものは国際社会も高く評価をされておりますし、また、国連等においても継続に強い期待が寄せられていることは御承知のとおりでございます。このような中で、もしインド洋での補給支援活動から日本が撤退をするということになりますと、日本はテロとの闘いに消極姿勢に転じた、こういうことに受けとめられるわけでございまして、国際社会における我が国の地位、発言力、これに否定的影響が生じる懸念、これはやはり避けなきゃいかぬ、このように私は感じます。

 また、海上阻止活動に補給艦を提供できる国というのは非常に限定をされております。この能力を持っている国というのは限定をされておりますから、日本の国がそれを撤退することになりますと、この活動の全体に大きな影響を及ぼす、こういうことも考えられます。

 そういうことも考えますと、我が国の国際社会における地位、またこの社会をリードする立場にある日本としても、この活動から手を引く選択ということはあり得ない、このように考えております。

中曽根国務大臣 撤退した場合の国際的な反応、影響について、今官房長官のお話しのとおりでありますが、去る九月の末に国連総会に参りまして、総理が国連でスピーチされたわけでありますが、私も同行させていただきました。そのとき各国から、この補給支援のことについてはぜひ継続をしてほしいというお話と高い評価をいただいてまいりました。また、昨日、一昨日、アラブ首長国にトンボ返りで行ってまいりましたけれども、アフガニスタンの外務大臣を初め、中東諸国の外務大臣あるいは北アフリカの外務大臣等々、皆さんから同様にこの継続を強く私に対して要請がございました。

 これはもちろん、我が国の国民生活にとって、補給活動をするということは、自動車があの地域を通って輸出をされたりするわけでありますけれども、我が国のみならず、東アジア地域のいろいろな貿易面においてやはりあの地域というのは大変重要な地域だと思っております。

 また、さらにつけ加えますと、十七日に国連の非常任理事国に日本が当選いたしました。そういう国連活動、国際活動を行う上でも日本はしっかりとした役割を果たしていかなければならないと思っておりまして、そういう意味で、撤退するということは大変大きなマイナスになると思っております。

石井(啓)委員 今、両大臣から御答弁がございましたとおり、今回の補給支援活動というのは非常に国際的に高い評価を受けている、これをやらなくなったという場合はかなりマイナスの影響が出るだろうということでありますので、私どもも継続する必要性を大いに感じているところであります。そういった点も、国民の皆様にもぜひ十分御説明をいただきたいと思います。

 それから次に、官房長官に、いわゆる出口戦略といいますか、どういった状況になった場合に、我が国は補給支援活動をする必要はもうないだろう、中止してもいいんじゃないか、こういうふうに判断するということになるのか、その点についてお考えを確認いたしたいと思います。

河村国務大臣 御指摘のいわゆる出口戦略といいますか、補給活動の終了の時期というのは、一概に申し上げるのは現時点ではまだなかなか難しい課題でございます。願わくば早くそういう時期が来て、アフガニスタンの状態が平和を取り戻して国民に幸せになってもらいたい、これはみんな世界じゅうが思っていることでございます。しかし、現実には今テロとの闘いが続いている状況でございます。

 その上であえて申し上げますならば、インド洋における海上阻止活動の状況、あるいはアフガニスタンにおけるテロリスト掃討作戦あるいは治安維持、復興活動の進捗状況等、またアフガニスタンの内外の情勢、国際社会におけるテロとの闘いの取り組みの推移、そこにテロの巣がある、これを早くなくしてしまえという国際世論がございます。こういう状況下の中で、日本として果たすべき役割等々、あらゆる要素を総合的に勘案して、テロとの闘いにおいて我が国としてふさわしい役割を果たしていく上で自衛隊による補給活動を継続することが必ずしも必要でなくなった、こう判断した場合に日本の国として自主的に活動を終了させる、こういうことになるであろう、こう考えております。

石井(啓)委員 続いて、外務大臣にお伺いいたしますが、麻生総理は、我が国の石油の主要な輸送航路に当たるインド洋でのテロ対策を支援することは我が国の国益に直結するという趣旨の御発言をされましたけれども、この海上阻止活動が輸送路の安全確保に及ぼす効果、これについて確認をいたしたいと思います。

 特にインド洋では、昨日から質疑の中でも指摘がございますとおり、ソマリア沖を中心に海賊活動が活発化しているわけでありますけれども、海賊取り締まりにおける海上阻止活動の効果というのはどういうふうにお考えになっているのか、見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、この地域の補給活動というのは、アフガンのテロとの闘いに資するのは当然でありますけれども、委員のお話のとおり、経済的な面でも国民生活の面でも、いろいろな面で重要な役割を果たしております。

 我が国は、国際社会の安定なくしてはみずからの発展を享受することができないわけでありまして、御案内のとおり、原油輸入の九割は中東に依存しております。そして、そのほかのいろいろな物資につきましても、これも申し上げましたけれども、自動車を初めとしていろいろな物資もあの地域を通過してくるわけでございます。そういう意味で、我が国の輸出産品の安全輸送を確保するという大事な役目もあるわけです。

 先ほど申し上げましたけれども、インド洋というのは、我が国のみならず、また東アジア全体のいろいろな貿易面におきましても、あの地域を各国の貿易にかかわる船が通過しているということもありまして、そういう意味で海上輸送の安全を図ることが重要で、日本の船主協会といいますか、船舶を保有する協会の皆さん方からも、安全運航のためにこの補給活動を続けてほしいという要請がありましたし、これは当然のことながら、海賊対策という意味におきましても、また、日本が補給活動を行うことによって各国の艦船あるいは航空機が日本の船舶の安全のために働いていただいているということがあるので、ぜひ補給活動を続けてくださいという要望がございます。

石井(啓)委員 続いて、外務大臣に今度はODAについて伺いたいと思いますけれども、私どもは、我が国ができるテロ対策の両輪として、補給支援活動と並んでODAも非常に重要であるというふうに考えております。特に、テロの温床となる貧困や飢餓等を解消するために、アフガニスタン本土の復興支援をODAで支えていくということは非常に重要なことであるというふうに考えております。

 アフガニスタンは治安情勢が非常に不安定化しているという中でございますから、援助実施に当たっての困難性も増しているという状況かと思いますけれども、これまでの支援に引き続いて、今後さらにODAによる支援を充実させていく必要性があるというふうに考えております。

 これまでの支援の実績と今後の方針について伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 アフガニスタンを再びテロの温床にはしない、そういう決意のもとに、厳しい治安状況下ではありますけれども、知恵を絞りつつ、例えばインフラ面、あるいは医療の面、教育の面等、総額一千六百億円、約十四・五億ドル以上の支援を今まで実施してきております。

 ことしの六月にパリで開催されましたアフガニスタン支援国会合におきまして新たに我が国は五・五億ドルの支援を表明いたしまして、これによりましてプレッジの総額が二十億ドルとなったわけであります。

 アフガニスタンの復興には進展は見られますけれども、委員御案内のとおり、まだまだ多くの課題が山積をしているわけでありまして、我が国といたしましては、アフガニスタンの本格的な復興を実現するために、一つはDIAG、これは非合法武装集団の解体でございますが、DIAGを初めとする治安の改善、それから道路などのインフラの整備、それから教育や保健、医療等の基礎生活分野の支援、さらに農業や農村開発、こういうものを中心といたします地方総合開発などにおいて、引き続き積極的に支援をしていく考えでございます。

 何回も申し上げておりますけれども、治安・テロ対策は人道復興支援では代替できないというのが国際社会の一致した認識でございまして、今後も、治安・テロ対策それから人道復興支援を車の両輪として我が国は取り組んでいきたいと思っております。

石井(啓)委員 JICAやあるいはNPOの現地の要員の方も大変御苦労されているかと存じますが、安全確保に十分留意をされた上で、ODAのさらなる充実というのも期待をいたしたいと存じます。

 続いて、民主党案の提出者にお伺いいたしたいと思いますけれども、民主党案の人道復興支援活動が行われる地域というのは、これはいわゆる非戦闘地域よりも厳しい安全面での条件が課せられていらっしゃいますよね。法案によりますと、「人道復興支援活動については、抗争停止合意が成立している地域であってそこで実施される活動の期間を通じて当該抗争停止合意が維持されると認められる地域又は当該人道復興支援活動に対する妨害その他の行為により住民の生命若しくは身体に被害が生じることがないと認められる地域」ということで、非戦闘地域よりも厳しい条件が課されているわけでございます。

 先週の金曜日の質疑では、現状ではこういう人道復興支援活動が行える地域はないという御判断のようでありますけれども、それでは、法律の有効期間である一年以内にこういう地域が生まれる可能性というのはあるのか、それについてどういうふうにお考えになっているのか、民主党の提出者にお伺いしたいと思います。

犬塚参議院議員 一年以内に抗争停止合意を結ぶことができるかというお尋ねですが、当然我々はそれを前提にして法案を提出しております。

 多分、抗争停止合意というのは非常に難しいから、結局民主党は何もやらないということを言っているんだろうということをきのうからずっと言われるんですけれども、決してそんなことはないんです。いわゆる全国的な、アフガニスタン全土における停戦合意と、我々が言っている抗争停止合意を少し混同されているんではないかと思うんです。

 例えば一つの例を挙げますと、デンマークがやっておりますPRTなどは、これは大変いい例だと思うんですけれども、まずはプロジェクト単位の抗争停止合意がある。何を指して言っているかというと、この地域のここに学校を建てるよと。この学校を建てるに当たっては、地域の部族長はそれは大変ありがたいことだと言っておる、アフガニスタン政府もそれは大変ありがたいことだと言っておる、近隣国もそれは大変ありがたいことだと言っておる。その上で、その地域においてありがたいことではあるが、平和維持をすることは難しいというときにはPRTを派遣しているわけですね。しかし、この地域においてこのプロジェクトについては、抗争停止合意がしっかりとしているから、武装集団を送って平和維持をしなくてもできるよということも当然あるわけですね。

 ですから、我々が言っているのは、抗争停止合意というのは、地域的、場合によっては一時的、プロジェクト別、しかし非常に現実的な一つの案であります。

石井(啓)委員 確かに、抗争停止合意ができればそれにこしたことはない。そういう願望をされることはわかります。私どももそういうことができればよろしいと思いますけれども、ただ、それが必ずできるという前提に立っているというのは、ちょっと今の説明では根拠が薄弱ではないかな。確かに全体的に緊張緩和の兆しというのもあるようですけれども、私は、明確な見通しに基づかない政策というのは、残念ながら実効性が薄いわけでありますし、説得力もないのではないかなと指摘をしておきたいと思います。

 それでは、民主党案では当面何ができるのかということを確認いたしたいと思います。

犬塚参議院議員 まさに、当面今すぐやらなければいけないのが、抗争停止合意を求めることであります。

 抗争停止合意を、一部の地域でもいい、一つや二つの地域でもいい、ここでまず求めること、これを抜きにしていきなり武装集団を送れば、今までの例と同じように、これがそのまま抗争の主体になってしまう。これが今までの一番大きな原因であります。いわゆる伝統的なPKOというものが停戦合意に基づいて今まで成功をおさめてきたのが、冷戦後これがなかなか成り立たない。ここのところをしっかりと理解する必要があると思います。

 その上で、民主党が今すぐできることは幾つかここに書いてあります。一番初めにやらなければいけないのは、内閣府の下に人間の安全保障センターを置いて、どんなに立派なことを言っても、国内的な、この国際平和協力活動に従事する人材というものを育てていこうという体制が全くできていない。まずここをやらなければいけないだろう。

 その上で、まずここでやらなければいけないと言っているのは、当然のことながら、武装集団が自国の土地の上にいれば、その武装集団がいる限りは平和な国にはならない。当たり前のことであります。その理解に基づいて、これはライス国務長官も言っておりますが、現地のオーナーシップを大事にしなければいけない。つまり、現地の国軍の創設、警察の改革及び司法の改革、麻薬対策、こういうものをしっかりやっていく。これを今すぐやろうと言っているのが民主党案であります。

 その上で、我が国が担当だとされているDIAGについて今のところ担当者は二人しかいないというようなことを今政府はどういうふうに取り組んでおられるのか。民主党は、ここに今すぐ力を出せということを言っているわけであります。

石井(啓)委員 今の御答弁によると、現地で行うのは抗争停止合意を求めることと、それから、現地の国軍の創設とか警察の改革とか司法の改革、これをやるということであるようでありますけれども、これは、いわゆる文民が行ってそういうことをやるということになると思うんですよね。

 民主党案では、補給支援活動、自衛隊は撤退をするということになると思いますけれども、非戦闘地域で活動している自衛隊を撤退させて治安の悪い地域に文民を派遣するというのは、民主党の当面の活動というのは、私は非常にバランスが悪いんじゃないか、こういうふうに思っております。

 それで、最後の質問になるかと思いますけれども、安保理決議一七七六では、海上阻止活動等に対する各国の貢献が評価され、また、テロ対策、海上阻止活動の継続の必要性が強調されていますけれども、民主党の案では、当面我が国の補給支援がなくなる。このことについてはどういうふうにお考えになっているのか、確認をいたしたいと思います。

浅尾参議院議員 今援用されました安保理決議一七七六の御指摘の部分というのは、あくまでも前文の部分でありまして、海上阻止の要素を含む各国の活動に対して前文の中で述べられたものというふうに認識をしておりまして、主文はISAFの延長というふうに理解をいたしております。

 当面、我が国としては、まさにアフガニスタンにおけるテロの根絶に注力をしていかなければいけないというふうに考えておりまして、テロの根絶のために、今累次申し上げてまいりました治安分野の改革と、そして人道復興支援の活動ということに従事をしていきたいということでございます。

 なお、テロ対策海上阻止活動については、本法案の第二十七条に規定してありますとおり、これが国連加盟国に対する主文の中で要請される行動になった場合には、それについても真剣に検討していくということも二十七条の中に敷衍してあるとおりであります。

石井(啓)委員 私どもはもう既に、補給支援活動は国連決議の枠内の活動であり、国連決議の求めに応じた活動であるというふうに認識をしております。改めて国連決議でマンデートを決めなければできない活動ではない。それを、各国からも評価が高く、国連からも評価の高い、そういう活動をあえてやめる必要はないのではないか。先ほど政府にも確認したとおり、むしろ国際的にはマイナスの影響の方が大きい、これをあえてやめる必要はないということを重ねて申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 私は、この委員会では初めて質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。また、午前中の審議に引き続き、御苦労さまでございます。

 まず、民主党の提出者の方々に御質問をさせていただきます。

 金曜日の質疑の中で、我が党の佐藤茂樹委員の質問に対しまして、小沢代表がたびたび現行の補給支援法は憲法違反であるということを指摘されていることに対して佐藤議員が質問され、それに対しまして、民主党委員の方からは、現行の法的枠組みについては憲法違反ではないということを言われました。また、小沢代表の、例えば「世界」の論文等については、これは小沢代表の個人的見解であって、民主党の公式見解ではないという趣旨の答弁をされましたが、改めて、この点につきましてもう一度確認をさせていただきます。

浅尾参議院議員 金曜日もお答えをさせていただいたところでありますけれども、旧給油支援法というんですか、旧法に基づく給油の支援については、その油の利用がイラク戦争へと転用されていた疑いが濃厚である。当初二十万ガロンという報告があったものが八十万ガロンであったというようなこともわかりましたし、その後、それが転用されていないというようなことが明確な説明もされていないということで、憲法上の疑義があるということはお答えしたとおりでございます。そのことについて、そうした武力の行使と一体になるということについて、党としても小沢代表としても憲法上の疑義があるということを申し上げているところでございます。

 その上で、今お話がございました「世界」の論文ということでございますが、これは書簡という形になっておりまして、代表の考え方を書簡という形で発表したものでありますけれども、民主党のテロ根絶法はその後にできておりますので、代表の考え方も踏まえてつくられたものということでお答えをさせていただきたいと思います。

遠藤(乙)委員 小沢代表の書簡の論旨は、いかなる理由であろうとも、他国の自衛権の発動に対して日本の自衛隊が協力をすることは憲法違反であると、明確な一つの論理があります。それから、もう一つのポイントは、後方支援は武力行使と一体であるという意見ですね。これは、後方支援は戦力の重要な一環であって、これはやはり武力と一体である。この二つが非常に重要な論点であると思っております。

 そういった論理からこの補給支援法は違憲であるというふうに言われておりまして、決して単純に転用の疑義があるからということではなくて、まさにこの法律の構造、枠組み自体が違憲である、そういう論理構造になっているかと思っております。また、浅尾議員の御説明の際は、実態ではなくて、旧法の枠組みであれば、これは憲法違反ではないと言っておる。明らかに矛盾があると私は思っております。

 今、やはり民主党の法案が小沢代表の見解に基づいてつくられたものだというふうに御説明がありましたので、ちょっとまた理解が私はできなくなりまして、明確に矛盾があると私は思っておりまして、間違いなく浅尾議員は、実態ではなく、旧法の枠組みについては、これは憲法違反ではないと明確に言われました。そうですね。そして、それがまたきょう、今の民主党案が小沢代表の見解に基づいてつくられたものだというふうに言われており、ちょっと、明確に矛盾があると私は感じておるんですが、これにつきまして明確な御説明をお願いしたいと思います。

浅尾参議院議員 今、旧法の枠組みの話と、それから転用の話とございました。武力の行使ということもございました。

 小沢代表の論文、今引用された部分でいえば、武力の行使と一体とされている部分であれば、それは違憲であるということでありまして、今申し上げましたように、イラクの戦争に流用された疑いが濃厚であり、私どもとしても、流用されていないということについて十分な御説明もいただいていないものですから、そうであれば憲法上の疑義があるということを申し上げたところでございます。

 その上で、旧法の枠組みはどうかということでありますが、法の枠組みについて言えば今お話があったとおりでありますが、しかし、流用されているということであれば、これはやはり違憲の疑いが濃厚である、疑義があるということでございます。

遠藤(乙)委員 旧法の枠組みでは、これは枠組みとしては憲法違反ではないということを今言われたと私は理解をいたします。

 そうしますと、小沢代表の「世界」の論稿は、論拠が、米軍の自衛権の発動である行動に対して日本が、自衛隊が支援することは違憲であると明確におっしゃっておられますし、また、給油そのものについても、これは明確に武力と一体化するということをやはり論文で指摘されておりまして、明らかに今浅尾委員の言われた見解とやはり矛盾があると私は思っておりまして、この点、ちょっと明確に御説明をいただきたい。

 もう一回質問しますと、旧法の枠組みであれば憲法違反ではないと言われました。ところが、小沢代表は明確に違憲であるというふうにおっしゃっておられるわけであります。そうしますと、では、なぜ、民主党の公式見解としては、小沢代表の見解と違ってこれを憲法違反ではないと逆に考えられたのか、その点を逆に伺いたいと思います。

浅尾参議院議員 民主党の公式見解としてなぜ違憲でないかという御質問でございますが、公式見解は、先ほど来申し上げていますとおり、イラクの戦争に転用されているという疑いが濃厚であるということであれば、これは憲法上の疑義があるというのが公式見解でございます。

 そのことについて、小沢代表も、兵たん線が一致している、イラクの戦争に使われているということであれば、これは憲法違反だということを言っているわけでございまして、そういう面で、私としては矛盾がないというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 OEF自体はアフガンに関したいわばオペレーションであって、これはイラクとは一応別個のものであるわけですね、最初から。なぜ、では、それなのにおかしいのかという、ちょっと私も理解しがたいんですが。

浅尾参議院議員 御指摘のとおり、OEFの枠組みはまさにアフガンの戦争でありますし、旧法もアフガンを対象につくられたものというふうに理解をいたしております。

 しかしながら、給油艦ペコスの話が、昨年も随分させていただきましたが、当初、防衛省・自衛隊は、二十万ガロン自衛艦からの補給があったということでありますが、実態は八十万ガロンであったと。これは、八十万ガロンであるとすれば、十分、ペコスからさらにその補給を受けた航空母艦はイラクの戦闘地域の中に入っていくこともできますし、そうであればそれは武力行使と一体ということになりますので、そういう観点から、憲法上の疑義があるということを申し上げているわけでございます。

 OEFとイラクの戦争が違う、だからこそ、そういう御説明を今まで政府の方々からもいただいておりまして、それに従って、私どももそういうものだろうというふうに信じておったわけでありますが、実態上は、その補給された油がイラクの戦争に使われた、その疑いが濃厚であるということで、今申し上げた答弁になるわけでございます。

遠藤(乙)委員 実態は別として、では、それがない場合、全くそれが論証されなかった場合、転用がないという場合、法的枠組みとしては明確にイラクとは切り離しているわけですし、実態としてないという場合には、これは憲法違反ではないということになりますか。

浅尾参議院議員 実態上そういうものがないという仮定、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、イラクの戦争に流用されているというふうに、少なくとも、されていないということで証明をしていただいたわけではないということでありますので、憲法上の疑いがあるということを申し上げているわけでありますが、仮に実態上流用がないという法的な枠組みであるとするならば、それは法的枠組み自体に問題がないというふうに評価したということであります。

遠藤(乙)委員 実態の問題は別として、枠組みの問題としてはそういうふうに受けとめさせていただきます。

 それからまた、もう一つ、小沢代表の論文の中で、ISAFへの参加を非常に積極的に主張されております。国連決議があるのであるからISAFへの参加は憲法違反ではないと、むしろ積極的にISAFへの参加を主張されておりまして、「私が政権を取って外交・安保政策を決定する立場になれば、ISAFへの参加を実現したいと思っています。」と言われております。

 これは今の民主党の立場とはどうなんでしょうか。そごがあるんでしょうか、同じなんでしょうか。

犬塚参議院議員 昨年の十月時点で小沢代表がISAF参加に理解を示しているというのは御案内のとおりであります。

 しかし、現実的に、ISAFの指揮命令系統はNATOが持っております。日本の自衛隊は、御存じのようにNATOには加盟をしておりませんので、NATOに加盟をしていない日本がNATOの指揮命令を受けるということはまず一つ問題があろうかと思います。

 いま一つは、日本は、昨年の十月にICC、国際刑事裁判所に加盟をいたしました。しかしながら、このNATOの持っている、アフガニスタンにおいての地位協定は、この国際刑事裁判所にあたかも挑戦するがごとくの内容を持っておりますので、この件についても、そのまま現状のISAFに参加することはどうかと思われます。

 もう一つは、これはやはり一番大事な問題だと思うんですけれども、現状のISAFのやっておられる民軍の関係というものが、一般的に軍優先の作戦であるというような批判を受けておりまして、成功の合理的な見通しを持ちにくいというところが一番の問題であろうかと思います。

遠藤(乙)委員 小沢代表の御主張は、国連決議があればむしろ積極的にやるべきだという御意見のように私は受けとめております。

 そうしますと、今の御説明は、民主党の公式の立場と小沢代表の御意見とはやはりかなりそごがある、やはり小沢代表の主張はあくまで個人的見解というふうに受けとめてよろしいんでしょうか。

浅尾参議院議員 民主党の公式見解と小沢代表のその論文とはそごがないというふうに考えております。

 その理由は、該当の箇所を申し上げさせていただきますが、民主党の公式見解は、まず、国連憲章四十一条、四十二条によるものも含めまして、それに参加するということは、午前中の議論で申し上げましたが、それは、我が国の主体的判断のもと、民主的統制、主体的判断というのは、政府が判断し国会の関与のもと参加することができるというのが公式見解であります。

 ちなみに、今援用されました論文の中で、その該当の部分を読み上げますと、これは小沢代表の論文ですが、「国連の決議があっても、実際に日本がその活動に参加するかしないか、あるいはどの分野にどれだけ参加するかは、その時の政府が総合的に政治判断する」ということでありますので、その論文と、先ほど申し上げました民主党の政権政策の基本方針との間にそごがないものというふうに理解しております。

遠藤(乙)委員 これは憲法論と政策判断と立て分けて議論したいと思っておりますが、小沢代表は明確に、一つは、憲法論としては「国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することは、ISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しない」というふうに言っておられるんですね。そういった意味で、ISAFへの参加は憲法に抵触しないという御判断でしょうか。

浅尾参議院議員 憲法論としては、民主党の政権政策の基本方針も小沢代表の論文も一緒であります。

 その上で、今申し上げたいことは、国連の決議があったら自動的に参加するかというような誤解があるかもしれませんが、そうではなくて、国連の決議を踏まえて、その上で政府が判断をし、なおかつ国会が衆参両院で承認をしなければ参加できないという仕組みになっているというのが民主党の基本方針でありますし、そのことについては、今申し上げました論文の中にも、先ほど援用した部分でありますが、「国連の決議があっても、実際に日本がその活動に参加するかしないか、あるいはどの分野にどれだけ参加するかは、その時の政府が総合的に」「判断することです。」ということで、矛盾はないものというふうに理解しております。

遠藤(乙)委員 憲法上抵触しないというのは一つの見解だと思っておりますが、小沢代表は、やはりこの書簡の中で、政権をとったらぜひISAFに参加したいということを明確に政治判断としても述べておられるように私は感じておるわけなんですけれども、これはこう言い切っておられるわけですから、これは単に憲法上の議論をしているのではなくて、実際、今、日本が国際貢献として何をやるべきかという問いかけに対して、給油ではなくて、給油は逆に憲法違反だ、そうじゃなくて、ISAF参加をやるべきだと。まさに今の判断としてこれを述べておるということであって、これは、決して単純な憲法論じゃなくて、政策判断としても小沢代表はそういうことを強く主張しておられると私は理解しておりますが。

浅尾参議院議員 多分同じ論文を読んでいるんだと思います。その同じ論文の百五十二ページの下段のところだと思いますが、「国連の決議があっても、実際に日本がその活動に参加するかしないか、あるいはどの分野にどれだけ参加するかは、その時の政府が総合的に政治判断することです。それは政治のイロハです。」ということであります。

 したがって、国連の決議があったから自動的に参加するということにはなっていないということであります。参加することが法律上できるということは、今申し上げたとおりであります。

遠藤(乙)委員 それは一般論であって、あくまでこの書簡は、まさに今の状況において日本としてやるべき国際貢献は給油ではなくてISAFへの参加だ、私はそういうコンテクストに読めてしようがないんですけれども、この点、いかがなんでしょう。

 では、小沢代表のこの主張は、将来そういう条件が満たされたときにということなんでしょうか。そうすると、やはり大分この小沢代表の文章はミスリーディングだなというふうに強く感じておりますが、いかがでしょうか。

浅尾参議院議員 先ほど来同じところで申し上げますが、そこをもう一度繰り返し読ませていただきますと、「前述したように、私の主張は、国連の決議に基づいて参加する活動は日本国憲法に抵触しないということですが、合憲なら何でもやるということではありません。国連の決議があっても、実際に日本がその活動に参加するかしないか、あるいはどの分野にどれだけ参加するかは、その時の政府が総合的に政治判断することです。それは政治のイロハです。」ということでありますので、そのことと、民主党が定めております、政権政策の基本方針でありますところの国連の集団安全保障に基づく活動については「わが国の主体的判断と民主的統制の下に、積極的に参加する。」ということとは、全く矛盾がないものというふうに理解しております。

遠藤(乙)委員 押し問答ですので余り追及しませんが、ただ、あくまで素直に読むと、小沢代表の発言は、憲法解釈論でもなく一般論でもなく、今そこにある国際貢献の問題として日本がやるべきはISAF参加だというふうに断定しているように私は強く受けとめますし、また、多くの方がそう受けとめておるということを改めて指摘したいと思っております。

 さらに、金曜日からの議論を伺っておりまして、民主党の委員の御説明の中でちょっと気になるのは、テロ対策に必要なのは油ではなく水と主張されている、これは犬塚先生が言われておるわけですね。水はもちろん象徴的な意味で、対話とかそういうのも含めてということだと思っております。

 ただ、今の現状、テロ対策を考えますと、やはり抑止と対話のバランスがあってこそテロ対策というのは進むのであって、抑止のない対話、対話のない抑止、いずれもいい結果を生まない。これは歴史の示すところでありまして、どうも民主党の委員の御説明は、抑止よりも対話、抑止ではなくて対話だ、対話だというふうにおっしゃっておりますが、今のアフガンの現状を見て、そんなことがすぐできることではないことはだれも理解をしていることであります。

 また、実際に、アフガンは今治安が大変悪くて、邦人に対する退避勧告もずっと出ているような状況であって、そういった中で、水、水と言って、そういった一般の人たちに対してアフガンへのボランティア活動を逆に勧めるようなことは、やはり、国民の生命と安全を守るという政府の立場からいっても、それは非常に国民の生命をリスクにさらすことになるわけでありまして、余り安易にこういったことを言うべきではないんじゃないかと私は思っております。

 そういった意味で、テロについては抑止という、対話も、両方必要ですが、現状においては、やはり抑止というものを欠いてはますますアルカイダあるいは急進派の活動が拡大していくわけであります。

 今のMIOのオペレーション内容を見ると非常に限定した目標です。テロリスト、武器の移動をチェックする、そしてまた資金源になる麻薬密売をチェックする、非常に限定された目的で活動しているわけでありまして、これはまさに、だれが考えても、今のテロの活動を抑止する非常に重要な要素であって、日本として、具体的に参加し国際貢献し得るほとんど唯一の方法ではないかと考えますが、この点いかがでしょうか。

犬塚参議院議員 今、抑止の重要性をおっしゃいました。当然のことながら、抑止があって、そこの上に立って人道的空間があり、そこの中でいろいろな生活の水を提供できるという認識は多分共有させていただいているんだろうと思います。

 ただ、ちょっと誤解を受けているのかなと思いますのは、抑止ということと、だれがタリバンかあるいはアルカイダかわからない中で掃討作戦をやっている、いわゆる内戦に近いような状況の中で平和の強制、いわゆる掃討作戦をやることと平和構築活動を同時に進めることについては、合理的な成功の見通しが持てないということなんですね。

 それの一番端的な例がコラテラルダメージ、いわゆる二次的被害というものであります。私は、二次的被害などという表現は大変失礼じゃないかと思うんですね。人間の生死にかかわることが二次的被害であるわけがないんです。

 要は、だれが敵だかわからない状況の中で掃討作戦をやるということについての合理的な成功の見通しが持てない、こういう中にあって、我が国がまずやることは、抗争停止合意をまず求めて、非常に不安定な中であるが、抑止を前提にした人道復興支援活動をやるべしということを申し上げているわけであります。

遠藤(乙)委員 犬塚先生は掃討作戦とおっしゃいましたが、MIOは掃討作戦ではない。これはあくまで限定された、先ほど申し上げたように、テロリスト、武器の移動をチェックし、麻薬密輸をチェックするという非常に限定されたオペレーションであって、決してこれが掃討作戦そのものではないことは御理解されると思います。

 たとえどういう状況であれ、テロリストの移動をこういう形でチェックすることは、テロ活動を抑止する極めて重要な環境であって、条件であって、これはやはり、国際社会としては今の状況においてぜひともやるべき重要なテロ対策ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

 掃討作戦ではなくて、MIOについてどう評価されているのかということです。

犬塚参議院議員 今御指摘の部分は、私も何度となく参議院の委員会で質疑をさせていただいた部分であります。

 なぜかといいますと、OEF・MIOというこの作戦名なんですね。MIOに限っておっしゃるのであれば確かにそうかもしれない。しかし、MIOというのはあくまでもOEFの下部作戦でありまして、OEF、不朽の自由作戦というのは、九・一一後アメリカが自衛権を発動して行った武力の行使でありまして、今それがどういう形になっているか。武力の行使が自衛権の発動ではなくなったことは確かではありますが、実質としてISAFよりもさらに武力行使が強くて、現実的に掃討作戦をやっているのがOEFであるということは御理解いただけると思います。

 そうした作戦に参加するのではなくて、民主党の提出したテロ根絶法に言っております、例えば第二十八条において、航海の安全に資するような国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するものということもうたっておりまして、午前中も随分この件については議論がありましたけれども、そういうチャンスも出てまいりましたので、積極的にやるべしということでございます。

遠藤(乙)委員 それは理解できますが、ただ、MIOに参加するなということは、テロリストの移動をチェックするな、武器の移動をチェックするな、麻薬密輸をチェックするな、そういうことですよね。そういうことについて、では日本は手を引けということなんでしょうか。

犬塚参議院議員 先ほど来申し上げているように、内戦状態にあるようなアフガニスタンという地域に隣接をしている海域の海上における治安の維持活動をするということについては、だれも反対するものではないと思います。

 しかしながら、では、どういう作戦のもとにこれをやるのかということを我々は申し上げているのであって、この海域の治安の維持を求めるのであれば、それを目的とした作戦に参加をするべきである。そうではなくて、タリバン、アルカイダの掃討作戦をやっているこの作戦の下部作戦に入るということについては疑義があるのではないか、そういうことを申し上げております。

遠藤(乙)委員 かなり議論が行き違っているようでございますので、余りこれ以上あれしたいと思いませんが。

 私は、今のアフガニスタンの現状、またアフガニスタンをめぐる国際情勢から見ると、極めて今日本ができる選択肢は限られておって、やはりこのMIOへの参加というのが最も賢明な、現実的な、日本としてできるミニマムの国際貢献だろうというふうに考えております。

 そこで、今度は政府側にお聞きしたいと思っておりますが、この海上補給活動に対して、今までの評価、今までやってきたことについての日本の評価、そしてまた、今後引き続きやっていかなければならない理由につきまして、わかりやすくひとつ御説明をいただければと思います。官房長官、お願いいたします。

河村国務大臣 現在、国際社会においてテロとの闘いが続いておるわけでございます。そのためのさまざまな努力が今されておりますが、その中心が、アフガニスタンを再びテロの温床にしないということでありまして、この取り組みを、四十カ国以上の国々が、多くの犠牲を払いながらも軍隊を派遣し、忍耐強く活動をしておる、こういう状況下にございます。

 海上自衛隊がやっております補給支援活動は、インド洋におけるテロリストや武器、麻薬等の海上移動を阻止、抑止する海上阻止活動の重要な基盤として定着しております。アフガニスタンを含め各国からも高い評価を受けておるわけでございまして、この補給支援活動は、結果として、我が国の生存と繁栄にもつながる重要な輸送路でありますインド洋の海上輸送の安全にもつながっている、こういうことで、この貢献も大きいものがございます。

 このような点を踏まえて考えますと、補給支援活動を継続する必要性は依然として高いものと判断をされるわけでございまして、日本としては引き続き国際社会におけるテロとの闘いの一翼を担って、国際社会の連帯のもとにその責任を果たしていくこと、これが極めて重要である、このように考えておるところであります。

遠藤(乙)委員 今後のアフガニスタンの平和構築へ向けた取り組みということなんですが、私は、民主党の委員の言葉をかりるならば、油ではなく水だではなくて、水も油もということだと思います。現実を直視した上で、今何が一番ベストな戦略かということを考えて、やはり抑止と対話をしっかり組み合わせて一歩一歩平和環境をつくっていく、またテロを抑止していくことが大事であって、そういった意味での戦略は極めて重要。

 その中で、民主党さんの法案にあるさまざまな要素は私も評価をしており、こういったことは今後検討しなきゃいけない要素であることは評価をするものですが、今すぐこれができる状況ではないということも私も認識をしているわけであります。

 そんな意味で、アフガニスタン平和構築へ向けての今後の取り組み、特に一番のポイントは、タリバン、イスラム原理主義、この勢力、これが非常に難しい位置づけだと私は思っております。

 日本でもテロ事件はありました。あのオウム真理教の事件があったわけでありまして、ただ、これは、異常に孤立した特異な犯罪者グループと言えるようなグループがやったことであって、国民の支持は全くありません。したがって、上九一色村のサティアンを制圧して、サリン施設を破壊し、関係者を拘束すれば市民の危険は取り除かれたわけでありますけれども、アフガニスタンの場合には極めて複雑な情勢があり、特に、タリバンというイスラム原理主義勢力がむしろ非常に強い勢力を持っており、しかも、非常に国際的にもそういったことに対する共感も特にイスラム原理主義の中にあるわけでありまして、したがって、オウム真理教のようなテロとは非常に異にする、むしろ非常にこれから困難なプロセスを経なければならないわけであります。

 そういった意味では、このテロとの闘いという大きな流れの中にあって、タリバンやイスラム原理主義に対するスタンスをどうとっていくか、これが大変大きなポイントになるかと思っておりまして、今後の平和構築の取り組み、全体像を含め、その点も含めてお話しをいただければと思っております。これは外務大臣にお願いしたいと思います。

中曽根国務大臣 委員御承知のとおり、アフガニスタン政府はかねてから、国内和解、これを推進する決意を表明しているわけでございます。我が国も、アフガニスタンによります和解の取り組みというのは同国に政治的な安定をもたらし得るもの、そういうふうに思って支持をしているところでございます。

 他方、タリバン指導部は、アフガニスタン政府と交渉しているとの報道を否定しておりまして、現地では大変複雑な情勢が続いていると承知をいたしております。また、同国の反政府勢力は、タリバンに限られずに、さまざまな勢力が存在をしております。

 このため、アフガニスタン政府によります国内各派との対話には困難な道のりも想定されると認識をしておりますが、我が国といたしましては、まずは同国政府の主体的な和解努力の動向を注視しておるところです。その上で、今後、こういう状況の変化、それから同国政府からの要請等がある場合には、どのような効果的な支援ができるのかを検討していく考えでございます。

遠藤(乙)委員 以上で終わります。

 ぜひとも現実を直視した上で、抑止と対話のバランスをしっかり考えながら、ぜひ、この地域の平和のために日本としても最大の努力をしていただくことを期待しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 具体的な質問に入る前に、一言、委員長に申し上げておきたいと思います。

 十七日の金曜日、私が総理に対して質疑をする中での発言について、委員長から御発言がありました。私も議事録でチェックいたしましたけれども、その際の委員長の御発言は誤解に基づく発言であったというふうに思います。

 私としては、委員長として発言すべきことではなかったということで、委員長から陳謝をしていただきたいというふうに思います。

深谷委員長 私の発言に関して陳謝を申し上げる気持ちはありません。(発言する者あり)

 ただいまの平岡君の発言につきましては、理事会で後ほど協議をいたします。

平岡委員 それでは、よろしくお願いします。

 それで、せんだっての質問の中でも触れさせていただいたわけでありますけれども、新法になってから、給油活動が行われているわけでありますけれども、この補給先を明らかにしてほしいということで申し上げました。

 繰り返しになりますけれども、せんだっての審議の中でも、与党の議員の中からも、この法律は一年ごとに区切っているのは、そのたびごとにちゃんとシビリアンコントロールでチェックをしていくんだということを言っておられました。一年たって、継続をさせるという審議をしている中で、この一年間の給油実績というものについては我々としてもしっかりと把握しなければ、シビリアンコントロールはできないというふうに思います。

 給油実績をぜひ示していただきたい。お願いします。

浜田国務大臣 十七日に平岡先生の方から御指摘を受けまして、我々としても、この国会審議の場においての関心が大変高いということは我々も承知しておりますので、今いろいろな形で働きかけをしておりまして、今後そういった形でそれに対してこたえていきたいとは思っておりますが、現状、今の時点では、これは公表することがまだちょっとできない状況でございますので、平岡先生の御意向等も含めて、しっかりと踏まえてやっていきたいというふうに思っております。

平岡委員 現状できないというのはどういう理由ですか。現状、公表することはできないという理由。明確に述べてください。

浜田国務大臣 いや、問い合わせをしておりまして、問い合わせをしているがゆえに、まだ答えが返ってこないということでございますので、我々とすれば、今その問いかけをしておる最中ということでございます。

平岡委員 今の御発言は、物理的に、時間的に間に合っていないという説明だったと思いますけれども、この問題については、この委員会が始まるずっと以前に、我々が部門会議で、この実績を示してほしいということを防衛省に対して、外務省に対してもう既に要請しているんですよね。その段階からもうどれだけたったのか。それに対して何らの前向きな発言もないというのは、私はこれはおかしいと思いますよ。どうですか。

浜田国務大臣 私は、そういう意味では前向きに発言をしておるつもりでございますし、今努力をしているということでございます。

 要するに、公表の可否について問い合わせをしているということでございますので、それは私とすれば決して後ろ向きの発言をしているつもりはございません。

平岡委員 十月十七日にこうやって資料をいただいたときにも同じような議論をしておるのでありますけれども、そのときも、発表できない理由というのは、問い合わせをしている最中だからという話では全くなかったですね。今になって、これは浜田大臣の英断で、問い合わせてみよう、その結果を踏まえて公表してみようというふうにされたのであれば私は多としますけれども、いかにもこの審議に間に合わないようでは、私たちとしては、これはシビリアンコントロールが達成できないということで、入り口のところで反対せざるを得ないということになると思います。その点をまず申し上げておきたいと思います。

 次に、旧法の審議をしているときでありましたけれども、石破防衛大臣、当時ですけれども、昨年十月三十日の委員会審議で、OEFの任務に使う量をきちんと確認しながら出すんだ、言いなりの量を出すことはしていないというふうに答弁をされました。

 当時は、OEF・MIOに対してというよりは、むしろOEFに対しての給油だというようなことでありましたので、イラク転用疑惑の方が中心だったのでこういう表現になっていると思いますけれども、その論理的帰結として考えれば、新法のもとでは、OEF・MIOの任務に使う量を確認して補給するということになると思うんですけれども、この確認というのはできているんですか。どうですか。

浜田国務大臣 今お話にありました、この補給支援特措法になってからは、補給した燃料が補給支援特措法の趣旨に沿って適正に使用されるように措置を講じております。

 まず第一番目に、政府レベルにおいては、我が国と補給支援の対象国との間で交換公文を締結しておりますし、この中に、補給支援特措法の目的を明記しております。そしてまた、新たに協議条項を設けまして、我が国が補給した燃料等の適正な使用についても必要に応じて協議することとしております。

 また、現地レベルにおいて、バーレーンのコアリション司令部に派遣された海上自衛官の連絡官が、補給の都度行う確認作業において、補給日時、補給対象艦の名称、配属部隊、補給量や今後の活動予定について確認作業を行っているところでございます。

平岡委員 一般的にはそういうふうに説明されているんですけれどもね、本当にそれで石破大臣が答弁されたようなことができているのかどうか、私にはよくわかりません。そういう意味で、先ほど来から主張している補給先の艦船の名前をしっかりと明らかにしていただきたいというふうに思うんですね。

 そこで、この補給実施基準というのが、これは防衛大臣の行動命令という形でことしの一月にできているようでありますけれども、この中を見ますと、対象艦船としては、OEF・MIOに従事している艦船であっても、次の艦船に対する補給は上申するものとする、こうなっているんですね。その中で、OEF・MIO以外の任務をあわせ有する艦船であって、イラク、アフガニスタン等における作戦に係る任務に従事中の艦船というふうになっています。

 これについては具体的に上申があったことはあるんでしょうか。

浜田国務大臣 現状ではございません。

平岡委員 現状ではないということは、当然、これに上申しなさいと書いてあるわけですから、上申の対象になっているということだろうというふうに思うんですよね。ということは、やはり、可能性があることは当然ここで明示をしているということですよね。

 せんだっての議論の中でも、今、アフガンに対する増派の話が、派遣の増員ですね、話が出ている中で、アフガンにおける武力抗争が激しくなるかもしれない。そういう状況の中で、私は上申が上がってくる可能性も否定できないんだろうというふうに思います。上申が上がってきた場合は、浜田大臣としては、どういう方針で、どういう基準で判断していくということになるんでしょうか。

浜田国務大臣 それは、当然この法律に沿って我々判断することになるわけでありますし、また、疑わしきものにはこれはもう当然補給しないということだと思っております。

平岡委員 せんだって防衛省からいただいた資料で、補給調整状況という例の紙ですけれども、その中に、自衛艦隊司令官が上申するというふうに書いたのが、平成二十年三月二十八日の年月日であるんですけれども、これは、先ほどの浜田大臣の答弁とは異なっているんじゃないですか。上申がされたことがあるんじゃないですか。

浜田国務大臣 これに関しては補給しなかったということでございます。

平岡委員 私は、さっきの質問は、補給したかしなかったかじゃない、上申があったかなかったかと聞いたんですね。浜田大臣は上申はなかったと答弁されたんですよね。ちょっと答弁が食い違っているんじゃないですか。

浜田国務大臣 補給をしなかったので上申がなかったということですね。だから、補給をしなかったということなので、その上申書は上がってこなかったということです。

平岡委員 いや、これは上申するというふうに書いてあるから聞いたんですけれども、それは、浜田大臣に対して上申が、すると書いてあるけれども上申がなかったということですか。それでは、この書類というのは何かうそが書いてある、上申するとしながらも、上申をしないで補給をやめちゃったということですかね。

浜田国務大臣 結局、ですから、補給を向こうが断ってきたものですから上申が上がってこなかったということだそうです。

平岡委員 そういう経緯があるのなら、確かに上申がなかった、結果的にはなかったのかもしれませんけれどもね。だけれども、我々に提出された資料では上申するという形になっていますから、そこのところはちゃんと明確な説明、答弁をしていただかなければいけないというふうに思います。

 さっきの質問にちょっとまた戻りますと、私はいろいろ思うんですけれども、例えば、これは地点というべきなのか、海点というべきなのかもしれませんが、A地点からB地点へ移動するまでの間は、これはOEF・MIOを活動しています、そして、B地点からはアフガンとかイラクのための活動をします、こうなったときに、A地点からB地点に移動するということは、アフガン、イラクに対する作戦に従事するためには必要な移動であるという位置づけになると思うんですよね。そういう、A地点からB地点までOEF・MIOの任務に従事するけれども移動している、これについては、浜田大臣としては、これはいいんですか、いけないんですか。

浜田国務大臣 基本的には、当然その移動間の距離だけでありまして、法律上はそこまではできますが、しかし、運用上、我々、もしもそれが最終的にアフガンの地上攻撃とかにかかわるものであれば、これは補給をしないということになると思いますので、逆に言えば、その間の移動だけの部分のことに関しては補給はできるということだと思います。

平岡委員 今の答弁からもわかるように、この前も私パネルでも示しましたけれども、OEF・MIOの活動をしている艦船に対して給油をするということは、その艦船というのはいろいろな任務を持って活動している。したがって、OEF・MIOという名目のもとに給油活動をしたとしても、OEFそのもの、あるいはOIFに対しても支援の対象になっているというふうに私は言わざるを得ないと思うんですね。混然一体としているんですね、外国の艦船等について言えば。

 そういう意味において、法律ではあたかもOEF・MIOのためだけに給油しているように表現が見えないわけでもありませんけれども、実質的にはそこの切り分けというのは非常に難しくて、OEFあるいはOIFのためにも給油しているというふうな事態が生じると思うんですけれども、この点、将来の可能性も含めて、どうですか。そういう可能性があるんでしょうか。

浜田国務大臣 我々とすれば、当然、この運用上の観点からすれば、そういった疑義を持たれるということのないようにそこはしっかりと対応していきたい。当然、この法案の趣旨にのっとったものしかやらないということを明確に申し上げておきたいと思います。

平岡委員 だから、法案の趣旨というのは、もともとOEF・MIOの活動を支援するための給油なんですよね。だけれども、それに従事しているのであれば、ほかの作戦に従事していても給油をするんだというところに、私はこの法のいいかげんさがあるというふうに思うんですよね。

 逆に言うと、私、OEF・MIOのためだけに本当に限定してやろうと思うと、これはなかなか法律としてできないんだろうと思うんです。だから、この法律そのものがもう、私は、我々の立法趣旨からすると困難な法律になっているというふうに思うんですね。

 この点、どうですか。官房長官、法案提案者として、そういうふうにいろいろな作戦に使われることになるような法案、このような法案については私は撤回すべきだというふうに思いますけれども、いかがですか。

河村国務大臣 補給の対象となる艦船が実態としてテロ対策海上阻止活動に従事していることについて、これはさっき話がありましたように、補給の都度、個別具体的に確認をしているということは先ほどお話があったとおりでありますが、そのテロ対策海上阻止活動において、OEFの海上作戦として行われているもの、これはOEF・MIOと、今お話しのとおりでありますけれども、補給の都度確認をされているところでは、補給の対象となっている艦船はOEF・MIO以外のアフガニスタン本土における作戦やイラクにおける作戦には従事していないというのが原則であります。

 今お話にありましたように、例えばMSOあたり、こういうことになりますと、港湾の防御、海賊船の取り締まりといったOEF・MIOに当たる、当然これは付随する任務を明示しておりますから、実態としてはインド洋における海上阻止活動と変わるところはない、こういう理解に立っておるところであります。

平岡委員 今の説明では、OEF、OIFに従事していないということが原則であるというような表現がございまして、それが原則であるならば、ちゃんと原則が守られる法律でなければいかぬということを指摘して、次の質問に移りたいというふうに思います。

 せんだってOEFの国際法上の位置づけについて私が質問させていただきました。外務大臣の方からは一応の説明がありました。開戦時の国際法上の評価というのはこういうものであり、そして現在はこういうものであるということなんですけれども、そのときもちょっと触れましたけれども、開戦のときは相手方がタリバン政権でありアルカイダだということであったんですね。タリバン政権というのは確かに間もなくして倒れてしまいましたけれども、アルカイダというのはまだ存在として残っているということなんじゃないか。にもかかわらず、自衛権の行使である武力行使というものがなくなってしまったというのは何か変だと私は思うんですけれども、どうですか。その点、どのように評価されているんでしょうか。

中曽根国務大臣 ある国が領域国の同意に基づいて当該領域国の警察当局などの機関がその任務の一環として行うべき治安の回復それから維持のための活動の一部を補完的に行うということは、国際法上は国連憲章第二条第四項で禁止されております武力の行使には当たらないわけであります。したがいまして、自衛権の行使に当たることを理由とする違法性の阻却を論ずる必要はない、そういうふうに考えられます。

平岡委員 今のは全く答弁になっていないですよね。

 アルカイダは存在している。アルカイダとの関係においては、今、治安の維持、治安の回復というのをやっているということですか。そういうことですか。

中曽根国務大臣 そういうことであります。

平岡委員 その説明というのは、アルカイダというのは基本的にはそんなに力がなくなってしまって、武力の行使をするまでもなく、治安の維持、回復というような範疇の中での警察活動で十分であるという認定をされておられるということですよね。私はちょっと常識的にも反しているような気がしますね。

 例えば、今のアフガニスタンの状況を考えてみたら、まさに空爆も行われているし、激しい戦闘活動が行われていますよね。これはまさに武力行使という範疇に入る話だと私は思いますね。そして、どこに対してそれを行使しているかといえば、反政府勢力であり、そしてアルカイダという組織だろうというふうに思うんですね。そうであるならば、いまだにまだ自衛権の行使の対象となるかならないかという議論の中においては武力行使が行われているという状況にあるというふうに私は思うんですけれども、そういう認識に立てませんか。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げまして、繰り返しになってしまいますけれども、ある国が領域国の同意に基づいて当該領域国の警察当局などの機関がその任務として行うべき治安の維持、回復、そういう活動の一部を補完的に行うということは、先ほど申し上げましたけれども、これは国際法上は国連憲章の第二条四項で禁止されている武力の行使には当たらないということです。したがいまして、自衛権の行使に当たることを理由とする違法性の阻却を論ずるという必要性はないと考えております。

平岡委員 今の説を極端に推し進めていくと、アフガンにおいてはアフガン政府から要請を受けて治安の維持、回復ということをやっているので武力行使ではありません、こういうことであるならば、では日本の自衛隊がアフガンに行って、これは武力行使じゃないんだから、治安の回復、維持の警察活動をやるんだから、これは憲法で禁じるところの武力の行使じゃない、だから自衛隊も行って積極的にその活動に参加すべきである、参加しても憲法上の問題はない、そういうふうになるんですか。(発言する者あり)すべきであるとはちょっと言葉が過ぎたかもしらぬ。憲法上は問題がないということになるんですか。

中曽根国務大臣 アフガニスタンにおきますOEFとか、あるいはISAFの活動の詳細を私ども承知しているわけではありませんけれども、極めて厳しいアフガニスタンの治安状況の中において、OEFやISAFはやむを得ず危険な事態に対応せざるを得ません。そして、多数の犠牲者が出るような事態も少なくないと聞いております。

 これらの活動への参加を具体的に検討したことがありませんので断定することは避けたいと思いますが、このような活動を自衛隊が実施するということは憲法上認められるかということにつきましては、国際法上の側面とは別に、憲法解釈との関係を含めて相当慎重な検討が必要と考えております。

平岡委員 国際法上で言う武力の行使と日本国憲法に言う武力の行使というのは違うものであるというような説明でなければ、なかなか説明ができないような気がしますけれども、そういう評価が果たしてできるのかなと私は大変疑問に思います。

 そこで、アメリカが一体今の状態について治安維持、回復というふうな認識を持っているのかどうかについて、例のキューバのグアンタナモにあります収容施設で、テロリストという位置づけにした人を拘束し、そして軍事裁判にかけているという状況の問題についてちょっと触れてみたいと思うんですけれども、この問題については、この拘束されている人は、前に政府が出した資料の中では、OEF・MIOの活動の成果の一つとして挙げられていたものであります。

 通常は、アフガニスタンが今治安の回復、治安の維持という活動をしているということであれば、これは警察活動を補完しているわけですね。そうであるならば、そこで拘束した人について言えば、アフガニスタンにおける司法手続の中で裁いていくべきだというふうに思いますけれども、アメリカがキューバのグアンタナモに連れていって、そしてそこで軍事裁判にかけているというのは、まさにアメリカがいまだに、OEFの活動というのは戦争である、武力の行使をしているんだという認識に立っているからじゃないんですか、どうですか。

中曽根国務大臣 我が国は、OEF自体に参加しているわけではございません。また、これまでの活動を通じて拘束されましたテロリストなどの取り扱いにつきましては、各国とも作戦の円滑な遂行やそれから作戦参加者の安全を確保するとの理由で原則として公表をしておりません。我が国といたしましても具体的に承知しているわけでもございません。

 したがいまして、OEF下の活動に伴い、アフガニスタンで米軍等が拘束した者の取り扱いにつきましては、政府としてその詳細を知り得る立場にはありませんけれども、米政府に照会いたしましたところ、アフガニスタンで拘束された者の一部は非合法的な敵の戦闘員としてグアンタナモに移送されているものの、拘束された者のすべてがグアンタナモに移送されているわけではなく、圧倒的多数はアフガニスタン国内にとどめ置かれているものと承知をしております。

平岡委員 多くがアフガニスタンにとどめ置かれていればそれでいいというんじゃなくて、何でアメリカはグアンタナモに連れていくという国際法上の権利を取得するんですか。これは捕虜だからじゃないんですか。

 二〇〇六年六月の連邦の最高裁判決でも、これらの拘束された人たちについて言えば、戦争捕虜の待遇を定めたジュネーブ条約が適用されるべきであって、アメリカ政府の行動はそれに違反をしているというふうに認定をしております。

 この点についても、アメリカはいまだに戦争を続けている、OEFは戦争状態である、治安の回復、維持ではない、このように考えているというふうに私は思いますけれども、どうですか。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、我が国はこのOEF自体に参加しているわけではなく、また、これまでの活動を通じまして拘束されましたテロリストなどの取り扱いについて、各国とも、作戦の円滑な遂行や作戦参加者の安全を確保するとの理由で、原則として公表していないわけでありまして、我が国といたしましても具体的に承知をしているわけではありません。

 以上です。

平岡委員 事情を具体的に承知していないのは仕方ないかもしれませんけれども、国際法上の議論をしているんですから、そういう行動が行われていることが国際法上に照らしてどういう評価をされるのか、そのぐらいは日本政府としてもしっかりと押さえておかなければいけないんじゃないか。事実、日本政府はOEF・MIOに対しては参加をし、そして、この十二人のグアンタナモに拘束された人たちは、まさに皆さん方が給油をしているOEF・MIOの活動の成果として挙げているぐらいの話ですから、そんないいかげんな対応では私は認められないというふうに思います。しっかりと調べていただきたい。

 次の話としては、実は、九・一一事件発生直後に、イスラエルが、パレスチナ自治区における軍事作戦を自衛権に基づく対テロ対策ということで説明をしております。これについては、後ほど御紹介しますように、EU諸国であるとかあるいは国連の方からもちょっと異議が唱えられているといいますか、異なった意見が出されているようでありますけれども、このイスラエルの行動に対しては、日本政府としては、これはテロ活動に対する自衛権の発動であるという認識に立っておられるんでしょうか、どうでしょうか。

中曽根国務大臣 イスラエルがパレスチナ自治区におきまして九・一一以後もテロ対策を継続していることは、私どもも承知をいたしております。しかしながら、イスラエルの自国の対テロ対策の根拠につきましては、我が国は当事者ではなく、評価を行う立場にはございません。

 いずれにいたしましても、我が国は、テロを根絶するためにも、貧困や難民などの問題への取り組みや、あるいは中東和平の推進等に努力をしてまいりたいと思います。

平岡委員 前回の麻生総理との質疑応答の中でも、どうも日本はこういう問題についてアメリカに余りにも配慮し過ぎているのかなという感じがしますけれども、先ほど冒頭申し上げましたように、この点についてEUは、首脳会議で、二〇〇二年の三月の十六日に、パレスチナ人による無差別テロを非難すると同時に、イスラエルの過剰な力の行使を正当化できないというふうに批判もしているということであります。そして、国連も、二〇〇二年の四月五日の安保理決議の採択に先立って、当時のアナン国連事務総長が、テロに対抗するのだからといって国際法の制約を逃れるものではないというふうに指摘をして、イスラエルが主張する自衛権に基づく攻撃ということについても暗に批判をしているというような状況があります。

 当然アメリカはこの件についてはイスラエルを支持しているようでありまして、ブッシュ大統領も二〇〇二年の四月四日の声明の中で、アメリカはテロに対するイスラエルの自衛権を認めるんだというふうに言っているようであります。

 こういうふうに見てみると、アメリカはアメリカで自分の立場というものがあってこういうことを言ったんだろうと思いますけれども、EUとかあるいは国連では、アメリカがOEFで開始したようなテロ行動に対する自衛権の発動ということに対しては、極めて慎重な姿勢を示しているということであります。

 私も、日本国政府として、OEFを含めたこうした行動について、安易に武力行使ということが行われるということがないように、やはりしっかりと国際法上の位置づけを明確にしていかなければいけないんだというふうに思うんですけれども、どうでしょうか、外務大臣。

中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、イスラエルの自国のテロ対策の根拠につきましては、私ども当事者ではありませんので評価を行う立場にありませんけれども、いずれにいたしましても、我が国は我が国として、テロを根絶するためにも、先ほど申し上げた貧困や難民などの問題への取り組み、あるいは中東和平の推進に今努力をしていかなければいけない、そういうふうに思っております。

平岡委員 今、二つの問題、給油活動の問題そして国際法上の問題ということを指摘してまいりました。せんだっての質疑でも申し上げましたけれども、インド洋上で補給活動をしていることについては、アフガンの人たちの中にも、これまで日本人あるいは日本というのは自分たちと仲よくしてきた、信頼できる人たちであったということが、アメリカにあるいはイギリスにくみしているのかというような印象を持たれて、日本がこれから和解仲介の役割を果たすことについてなかなか厳しい難しい問題が生じてきているという問題、それから、そもそものOEFそのものが国際法上もっともっと慎重に審議されなければならない問題、こういうことを考えたときには、私は、インド洋上での給油活動というのはこの際やめて、本来のテロ撲滅のための貧困対策ということでしっかりとやっていくべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、これにちょっと関連する話として、来年度予算で防衛省が、可搬式海上航空作戦指揮統制システム、俗称MACCSというふうに呼んでいるようでありますけれども、これの整備ということをしておりますけれども、これについては、予算の要求の資料を見ますと、国際平和協力活動のための装備品等の改善充実の一環として要求しているというふうに整理されています。

 国際平和協力活動においてどのような運用を念頭に置いておられるのか、この点について防衛大臣から答弁願いたいと思います。

浜田国務大臣 今回の予算の計上は、次期固定翼哨戒機P1について、現有の固定翼哨戒機P3Cの代替として、探知能力の向上、飛行性能の向上、通信能力の向上等によって、我が国周辺海域の警戒監視、潜水艦や不審船等の小型船舶の探知識別などを初め、新たな脅威や多様な事態、国際緊急援助活動等の国際平和協力活動において、より実効的に対応することを可能とすべく、整備をすることとしているところであります。

平岡委員 ちょっと私、よくわからないんですけれども、海外における災害救助などのために、俗に言うP1を国外で効果的に運用するためのMACCSというものが整備される必要があるんですか。何か、災害救済のためのというのは、ちょっと私も理解できないんですけれども。

浜田国務大臣 済みません。この可搬型の海上航空作戦指揮統制システム、MACCSは、作戦基盤のない海外に展開する固定翼哨戒機部隊に対して、運用、指揮、統制、戦術支援を効果的に実施するシステムでございまして、固定翼哨戒機の国際緊急援助活動等に関する能力の充実と強化につながると考えておりまして、国際平和協力活動の本来任務化を踏まえた同活動への積極的な、主体的な取り組みに資するものであると考えております。

平岡委員 どうも災害救助活動とかと言われても、ちょっとぴんとこないんですね。

 私、ちょっと勘ぐり過ぎなのかもしれませんけれども、例えば今回インド洋上でいろいろ活動を、OEF・MIOで活動していますよね。こういうものを飛ばして、いろいろと、船がどこにおるのか、不審船がどうなっておるか、そういうことを調べる、そういうような活動をするためにも、こういうことを予算要求して調べておかなければいけないんじゃないかというふうにも思うんですけれども、どうですか、そういう意図はあるんですか。

浜田国務大臣 このシステムは、インド洋上での運用等、特定の活動を念頭に置いたものではございませんで、国際緊急援助活動等の固定翼哨戒機の能力の充実強化を図るためのものでございまして、今おっしゃったようなことではございませんし、また、海上自衛隊の固定翼哨戒機であるP3C及びP1は、海上での哨戒、警戒監視等を念頭に置いて整備された航空機でありますが、陸上での運用は、センサー等の観点から極めて限定的な運用にとどまるものの、災害派遣等の一部の任務については実施が可能でございます。

 いずれにせよ、可搬型の海上航空作戦指揮統制システムの整備は、陸上における偵察任務を念頭に置いたものではございません。

平岡委員 私は、別に陸上のことを言っているわけではないので、インド洋上でのOEF・MIOの活動の中で、給油以外にもいろいろなことを考えているということの、ある意味では一つの端緒になっているんじゃないか、そういう意味なんです。

 時間がなくなりましたけれども、私は、こういう装備の関係についても、本来、国際平和協力活動というものをどう展開するかという国会での議論がしっかり行われた上で、そしてそれに必要な装備というものはどうなのかということについてやるべきであって、先に防衛省が既成事実づくりのためにこういう形をやるというのは本末転倒であるということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。

深谷委員長 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 テロ問題にどう対応するかについて、私はそろそろ日本流のビジョンを持たねばならないと思っています。どうも事態が非常に変化しているということがいろいろな情報源を通じて出ているわけですけれども、きょうは、それを踏まえて、今のアメリカなりあるいはNATOのアプローチに乗ったやり方で果たしていいのかどうか、それについてお聞きしたいと思います。

 最初に、もう通告してあるとおりですけれども、米軍あるいはNATO軍による誤爆あるいは誤射はこれまで何件あったんでしょうか、それによる民間人の犠牲者数等、どうでしょうか。

伊藤副大臣 山口議員にお答えします。

 一般的に申し上げて、各国軍隊は、おのおのの作戦の円滑な遂行とか、また作戦参加者の安全確保という観点から、作戦にかかわる事実関係の詳細については公表していないということを承知しているわけでございます。

 その上で御質問にお答えして申し上げれば、アフガニスタンにおいては、アフガニスタン政府及び国際部隊の活動によって市民の犠牲が出ているということは承知しております。

 アフガニスタン政府の公式な統計というものがあるのかないのか、これについてはまだ承知しておりませんけれども、国連資料によれば、本年一月から八月にかけて、アフガニスタン政府及び国際部隊の活動に伴い五百七十七名の民間人の死亡が確認されております。そのうち三百九十五名は空爆によるものと報告されております。しかしながら、このうち何名が議員おっしゃる誤爆によるものかについては明らかになっておりません。

 テロの掃討作戦においても、仮にやむを得ず空爆を行う場合でも、一般市民の被害というものは最大限回避すべき、これは当然のことであります。米軍等もこの点に最大限配慮しているものと認識しておりますけれども、まさにこうした考慮から、現在、空爆を含め、テロ根絶のための活動の実施に当たっては、一般市民の被害を回避するための方策について、アフガニスタン政府とNATO及びOEF参加国の間で協議されているものと承知しております。

山口(壯)委員 この誤爆、誤射のみならず空爆も入るかもしれません、アフガニスタンの人たちが外国の軍隊を敵視する大きな原因になっているわけですね。それはそうでしょうね。現実に、結婚式をやっていて、そこにドーンと爆弾が落ちて、悪いタリバンと全く関係ない人たちが肉の塊に化してしまったときに、その息子たちが、自爆テロに行くぞといったときに行きますと言って、最大のリクルート源にもなっている。

 我々は、テロの問題をどう片づけよう、解決しようとしているかですから、そういう意味で、外国軍隊によるアプローチが果たして今どういう効果を持っているのか、あるいは逆効果じゃないのか、ここも見ていかなきゃいけないと思うんです。

 今お配りさせていただいた資料、済みません、これは私、きのうの夜ぱっと見たらちょうどいい記事があったものですからそのままをコピーさせていただいたので、本当にその原文のままで申しわけないんだけれども、そこに、悲観主義の高まりという題にはなっていますけれども、その下の方に、在カブール英大使、アンバサダー・ツー・カブールのシェラード・カウパー・コールズというんですかね、その人がその次の段落で書いていますね。

 「アメリカズ ストラテジー ワズ ドゥームド」、要するに、アメリカの戦略は失敗するぞと。そして、「プレジデンシャル キャンディデーツ ハッド ツー ビー パスウェイディド ノット ツー ゲット ファーザー ボッグド ダウン」、要するに、今の大統領候補たちはもうこれ以上泥沼に入らないようにこれをうまく説得しなきゃいけない、そういうことを彼が言っている。そして、「フォーリン フォーシズ ワー パート オブ ザ プロブレム」、外国の軍隊がむしろ問題であって、「ノット ザ ソリューション」、解決ではない、そういうことが書いてあるわけです。そして、「ア サージ オブ トループス ウッド ミアリー インクリース アフガンズ センス オブ オキュペーション」、外国軍隊がふえるということは、占領されているという意識を高めるにすぎないと。

 特にこのアフガニスタンというのは、私もパキスタンの大使館に勤務していて、そこをずっと見させてもらっていて、ジャララバードとかいろいろ行ったんですけれども、トライバルエリアにも行きました。彼らは、やはり外国の軍隊に対する物すごい反発を持っている。したがって、ソ連が侵攻したこの件についても、最後は打ちかったわけですね。

 そういう意味で、外国軍隊による解決が果たして正しいんだろうかという疑問を我々は念頭に持っておかなければいけない。中曽根大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 テロとの闘いというのは、世界的な、国際的な大変重要な課題でありまして、アフガニスタンもみずから努力を行っておりますけれども、やはりこれを根絶するためには国際的な協力のもとにテロ撲滅作戦をやらなければならないということであります。

 もちろん、誤爆はない方がいいに決まっておりますし、米国等も細心の注意を払っているわけでありますが、アフガニスタンの国民のためにやっているということで御理解いただきたいと思います。

山口(壯)委員 大臣、別に私が理解するとか云々というよりも、それが正しいかどうか、そういう解決を探したいわけですね。

 そして、軍隊あるいは力による解決というものですけれども、私はたまたま二〇〇一年の九月十一日の日にはワシントンにいて、そして議会のスタッフの人と懇談していたんです。急に、イバキュエート、避難してくれと言うので、何だと聞いたら、飛行機が来ると。何のことだ、わからないと。そうしたら、しばらくしたら、ペンタゴンの方で煙がどんと上がったと。

 次の日にマイケル・グリーンと会う約束をしていたので、私、電話を入れたんです。もういいよ、おまえ忙しいだろうからいいよと言ったんですけれども、来いよと言うので、ホワイトハウスまで行きました。彼は、二、三時間待たせたあげくに、顔を真っ赤にしてこう言ったんですね。ゼアズ ゴナ ビー ウオー、戦争になるよ、ジャパン マスト コオペレート、日本も協力しなければいけないと。私はつい、二、三時間待たされたものだから、ちょっとかちんと来まして、ちょっと待て、ホワイ マスト コオペレート、どうしてまず協力、戦争に協力というより、ちょっとまずエビデンスとかいろいろ示してよ、こう言ったわけですね。

 そして、私はさらに言ったのは、ソ連はアフガニスタンに侵攻して崩壊したではないか、本当に大丈夫かと。彼が言ったんです、三日だ、三日じゃなくても三カ月だ、もう全然軍事力が違うんだよ、そう言ったわけです。

 だけれども、現実に今何が起こっているか。三年たっても片づかないのみならず、今八年目に入ろうとしています。そして、アメリカは本当に大丈夫かということを考えた場合に、現実にアメリカの経済というのは非常におかしくなっている、兆候が出ているわけですね。では、我々は、アメリカをうまく支えながら、そして本当に今の軍隊による解決で正しいのかということを考えていかなければいけないと思うんです。

 そういう意味では、先ほどの、前の方のいろいろな方の答弁の中で、官房長官も出口戦略についてお答えになっておられました。あれをお聞きしたときに、私は、日本の出口戦略についてお考えを述べられたと思うんです。ただ、アメリカもNATOも全部含めて、どういうふうにこの出口を探していくのか。もしも軍隊による解決が逆効果になっているのであれば、我々の発想というのはそこに基づいているわけですけれども、出口戦略についてどう考えておられるのか。これは外務大臣に聞いたかもしれませんけれども、どちらかお答えいただけますか。事前通告のとおりお答えいただければ。

河村国務大臣 もう二〇〇一年の九月十一日から七年たつというこの時点であります。私は、やはりいろいろな機運が生まれてきてもおかしくはないというふうに思います。

 日本としては、平和憲法のもとでこの活動を続けておるわけでありますから、我々はそういう機運が盛り上がってくることを大いに期待はしておるわけでありますが、日本は日本としての役割をきちっと果たしていくということが一番だし、特に今お示ししている法案においては、インド洋、あの沿岸、海岸は、この日本のエネルギーの生命線であるし、また日本の商船の生命線である、国益にもかなっている、そういう視点で支援をしておるわけであります。

 今、山口先生がおっしゃったような機運ということについては、我々は注視をしながら、どういう動きが出るのか、それによって出口戦略というのも見えてくるだろう、こういう考えを先ほどは答弁した次第であります。

山口(壯)委員 私たちの発想は、実は、その機運を待っているのではなくて、むしろそういう状況をつくり出そうじゃないかということを我々は思っています。

 例えば、アメリカの経済的な今の危機、これはサブプライムローンが原因のように言われますけれども、私はそれは現象だと思います。現実には、一日に数千億と言われる戦費をアフガニスタンとイラクで垂れ流していること、これでアメリカの底が抜けつつあるんじゃないか、こういうふうに思うんです。

 そうすると、今、河村官房長官が言われた出口戦略というのは、状況を注視しておこう、それに応じて対応しようという発想ですけれども、むしろ、我々が本当にアメリカの大親友であれば、アメリカの経済というものを本当にどうやって救おうかといったときに、根底に戦争の問題があるのであれば、それについて我々がもっと能動的にやらなければいけないんじゃないかと思うんです。

 ちなみに、二ページ目に、私がお配りさせていただいた資料、本当に申しわけないです、これもそのままプリントアウトしたので字が小さいんですけれども、これはエコノミストのプリント版じゃなくてむしろウエブサイトの方です。そっちにしか出ていないんですけれども、アフガニスタンというキーワードで探したらこういうのが出てきたので、ああ、なるほどと。

 ここに私、枠で囲ませていただいたのは、「メニー オブ ザ レスポンデンツ レート ザ ウオーズ イン イラク アンド アフガニスタン アズ イシューズ オブ パティキュラー インポータンス」。要するに、イラクとアフガニスタンの戦争というものに対して特に我々は重要だと思っている、そういう答えなんです。だから、現実の経済にその戦費が大きな悪影響を及ぼしているという実感を、アメリカの経営者たち、財務担当の人たちは非常に強く思っているということですね。

 そういう意味で、我々が今、待っているというよりも、どういうふうに出口戦略をみんなでつくろうかという動きをそろそろ日本の外交としてはやるべきじゃないのかなと思うわけです。

 そういう意味では、今、河村官房長官がおっしゃられた出口戦略というのは、状況を見て注視しているということですけれども、我々、一歩も二歩も進めて、アメリカの経済の本当の部分、底抜けしつつある部分というものにこの部分がかかわっているんじゃないのかという発想を持っているわけです。

 そして、アフガニスタンについて、G7とかG8とか全然関係ないように思われるかもしれませんけれども、私はむしろ、幾らG7とかで会合しても、デリバティブとかそういう話はむしろ表面的な話で、この部分を、戦争の部分を、うまく出口戦略を、道筋がある程度見えないと、ビジョンとして持たないと、この経済の株価の下落というのは本当の部分でとまらないと思うんです。

 もしもG7のあの会合でみんなが納得するのであれば、一日目だけじゃなくて二日目もばあんと一直線に上がったでしょう。でも、一日目、最高の値の上がり方をして、その次はまたすとんとおっこってしまった。下落あるいは上昇を続けているわけですね。

 そういう意味で、我々が民主党案として出させていただいているものの発想の根本というのはそういうところにあるわけなんです。

 したがって、軍隊による解決というものが逆効果になっている、むしろそういうことを踏まえていただいて、そして、我々が何をすべきかということが出てくると思うんです。

 順番に続けます。

 そして、例えばアフガンの事態がどうなっているんだろうか。これはもう既にいろいろお答えになっておられるし、事前通告してあるので、済みません、中曽根大臣、もう一度お答えいただけますか、アフガンの今の事態をどう見ておられるか。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、今、国際社会が協力してテロとの闘いを行い、アフガニスタンに一日も早く平和と安定が戻るように努力しているわけであります。

 テロとかそれからゲリラというのは掃討したり解決するのが非常に難しいのはもう委員が御承知のとおりでありまして、そういう中で、我が国もいろいろな人道復興支援活動をやっておりますし、またアフガニスタン政府も、六月には、みずから五カ年計画でありますアフガニスタン国家開発戦略を策定いたしました。そして、和解にも取り組んでいる、そういうふうにも承知しておるところです。

 ですから、先ほど官房長官からもお話ありましたけれども、我が国としては、道は半ばでありますけれども、治安の回復とか麻薬問題の課題、こういうものの解決とか、そういうことを通じてできるだけの努力をしていくということが我が国の方法であると思っております。

山口(壯)委員 今、中曽根大臣は今までのポジションを述べられたわけですけれども、現実に、アメリカの情報機関が最近レポートをたくさん出している中で、三つ問題があるというふうに指摘しているようです。一つは蔓延する汚職、もう一つはヘロイン交易、もう一つはパキスタン領内からの攻撃、この三つが片づかない限りはどうしても出口は見えないと言っているんですね。

 そうした場合に、インド洋の給油は正直言って軍隊による解決につながるという意味で、私は、火に油を注ぐ、そういう今現在のアプローチを追認することになるから、むしろ違うアプローチでいこうじゃないかという発想を我々はしているわけです。

 その中で、今、カルザイ政権がいろいろプランをまとめているからとおっしゃいましたけれども、現実にはカルザイ政権ではもたないだろうということは既にアメリカも考え始めている。だから、そこと幾らやっても、現実問題、いわゆる汚職の問題、コラプションの問題というのはむしろひどくなっているということがあるので、我々は例えば警察改革ということを言っているわけですね、汚職の問題。

 というのは、泥棒に遭ったときに人々が警察に行ったら、賄賂は取られるけれども何にもしてくれない、だからタリバンに行くらしいんです。タリバンが、よし、任せておけと言うので、懲らしめてやると。現実にそれで民衆はタリバンの方に行っているから、警察改革が進まない限りタリバンの増殖がとまらないんです。

 現実に、タリバンの増殖をとめるために軍隊を送っても、民衆と軍隊の距離というのは、もう上の方にいますから、やはり民衆のレベルは警察のレベル、そこをきっちり解決しないと、我々は本当の意味でのタリバン増殖はとめられないということなんです。

 警察改革について、これも事前通告してありますからそのとおりお答えいただければいいんですけれども、警察改革についての今の評価はどういうふうになっているか、いかがでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申します。

 委員おっしゃるとおり、アフガニスタンの安定のためには、アフガニスタンの政府自身が治安活動の責任を担うことが不可欠だということであります。その中でも、警察改革というのは非常に重要な取り組みだというふうに考えております。

 二〇〇三年に警察が創設されるわけでございますけれども、国際社会の協力によってこれまで約八万人の規模まで育成されているということです。他方、内務省における腐敗対策及び機構強化が引き続き大きな課題であるというふうにされております。

 我が国といたしましては、これまで警察分野を含む治安改善支援をしてきておりますし、委員の御指摘もあり、引き続き積極的に支援をしていくという考えでございます。

山口(壯)委員 伊藤副大臣、せっかくお答えいただいたので、今までどれぐらいの規模でされているのか、もしもおわかりだったらお答えいただけますか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 我が国は、これまで警察分野で金額にして総額約一千四百万ドル、これはいろいろなものに使われるわけですけれども、警察官の給与であるとか機材供与というようなことでお金を出しております。また、我が国において警察研修ということも実施しております。

 もう少し砕いて御説明申し上げますか。よろしいですか。(山口(壯)委員「いいです」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。

山口(壯)委員 今、警察改革というのは、例えば我々の民主党案の中でも、我々の気持ちの中で非常に大きな部分を占めている。

 インド洋の給油というのが外国軍隊によるアプローチということをむしろ追認するからというのを先ほど申し上げました。

 だから、そういう意味では、今、例えばアメリカがこの問題を解決するに際して、いろいろな諸国にそれぞれの長所に応じた貢献をしてくれるかと。そうした場合に、我々は、アメリカそれからヨーロッパの状況を見ると、いろいろな違いがわかると思うんです。例えば、ヨーロッパのイギリスにしても、それからオランダにしても、本当はもう引きたいという気持ちがどんどん出ているんですね。それはもう報道に出ているとおりです。

 その中で、例えばヨーロッパはアメリカに遠慮して言えない。アメリカの方は、むしろ内政的な観点から、今大統領選挙もやっているし、なかなか弱気なことも言いにくいということがあって、みんながどうしようかどうしようかということになっている。では、そこで日本が全体の図柄を言えるぐらいの外交になりたいなという気持ちを私は今述べさせていただいているわけです。

 今それができているかできていないかをお聞きするつもりはありません。現実にはそこまで今手が回っていないでしょう。だけれども、我々がどういう出口戦略を持ち得るかということを、民主党の案の中でもいい部分はいっぱいありますし、それから本当の哲学の部分をもっと取り上げていただきたいんですね。

 例えば、インド洋の給油。安上がりだという議論もあるけれども、それは安っぽい議論だと思うんですよ。そこはやはり、本当にテロの問題を解決するにはどうすればいいのかという根本問題を取り上げていないからなんですね。

 だから、最初に、二〇〇一年の九月十一日の事件が起こった後、ショー・ザ・フラッグと言われて、とにかく旗幟鮮明にしてくれということで、どうやったら自衛隊を使えるかということを、むしろ結論を先取りして逆算したわけですね。だけれども、本当にテロの解決のためには何が必要かという場合には、軍隊の解決で本当にいいのかということをきょう私はるる申し上げているわけです。

 今、NATO諸国の問題から、あるいはアメリカの内政上から、日本がいろいろ、もっともっとリーダーシップをとるべきだということを申し上げたわけですけれども、アメリカと、それから例えばアフガニスタンの中に、カルザイ政権のほかにいわゆる反乱分子としてタリバンたちがいるわけですね。だけれども、だんだん対話をしたいと思っているようなところが出てきている、らちが明かないから。

 そうした場合に、二つポイントがあると思いますけれども、タリバンとの対話。今、カルザイとタリバンの一部が接触しようとしているようですけれども。それからもう一つは、アメリカとタリバン、これもどうも議論に上りつつあるようですね。それから、アメリカとパキスタン。この三つぐらいのルートを今どうしようかどうしようかと言っている。本当は日本がもっともっとできるはずなんです。我々の対案というのは、むしろそういうところに論点を置いているわけなんです。

 中曽根大臣、まず、今の対話の動きの中で、カルザイ政権とタリバンとの対話の進展というのはどんな状況でしょうか。

中曽根国務大臣 アフガニスタンの政府はかねてから国内和平を推進する決意を表明しているわけでありますが、各国の関与につきまして、いろいろな報道を承知しておりますが、まだ各国とも公式に状況を詳細に説明できる段階ではない、そういうふうに今承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、アフガニスタン政府によります主体的な和解の取り組みというものは、同国に政治的な安定をもたらし得るものとして、我が国は同国政府の取り組みを支持しておりまして、要請があれば支援について検討していきたい、そういうふうに思っております。

山口(壯)委員 それは今ほかの方の答弁にもあったとおりの答えですけれども、現実に、私たちは、要請を待たずに、我々が、日本ができる役割というのはもっとあるんじゃないのかということを思うわけですね。

 例えば、今報道というふうにおっしゃられましたけれども、外務省には情報をとる仕組みがいっぱいあるわけですから、その情報をもとに、外務大臣はどういうふうに把握されていますか。

中曽根国務大臣 私どもといたしましては、我々独自の情報それから報道、そういうものを総合的に踏まえて判断をしてやっているところでございます。

山口(壯)委員 対話は進んでいますか。

中曽根国務大臣 今の段階では定かではございません。

山口(壯)委員 例えば、外務省としてタリバンとコンタクトはとっておられますか。これは事前通告していないので、もしもすぐにということでなければ、どなたか事務方が手伝っていただければと思いますけれども。

 私は、パキスタンの大使館に勤務していたときに、当時のアフガニスタンの戦士たちはムジャヒディンと呼ばれていました、このムジャヒディンたちとよくコンタクトをとった。マスードとかハッカーニとか、いろいろとっていた。だから、コンタクトのとり方というのはいろいろあるはずです。アフガンの中でカルザイさんがいるから、それはちょっと遠慮があるでしょう。しかし現実に、アメリカもあるいはほかのところも、そろそろある程度選択的にも対話をした方がよさそうだということを思っているときに、日本が何ができるかということを考える際の一番のポイントは、まずアフガンとのコンタクトがあるかどうかだと思うんです。いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 私ども、アフガニスタンにおきましては、アフガンの政府であるとかあるいは非政府の関係者といろいろ、できる範囲でコンタクトを維持するようにしております。

 何をもってタリバンというかというところはなかなか難しい点もあるんですが、現段階で私どもがタリバンの指導部と何らかの格好でコンタクトしているかどうかということであれば、現在のところは、私ども、そういう段階にはございません。それ以外、最初に申しましたように、いろいろな格好でアフガンの非政府関係者等ともコンタクトはしている、そういう一般的な状況がございます。

山口(壯)委員 アフガニスタンの現地の人がしゃべる言葉、ダリー語というふうにも言われているそうですけれども、例えば、ダリー語を駆使していろいろな人とコンタクトする体制というのが果たして整っているんだろうか。

 私、たまたまパキスタン大使館にいたときに、ある人物、そのときには専門調査員ということで来ていただいていましたけれども、ダリー語の専門家で、ムジャヒディンのおじさんたちと連絡をとっていた方に外務省に来てもらっていたんですけれども、なかなか専門家というのは、言葉の特殊性もあるんでしょう、それを育てるのが難しい。だけれども、連絡をとるといっても人脈がなければ、要するに、ただ言葉がしゃべれるだけじゃ足りないわけですね。そいつのことを信用できるという信頼性がないと。それは相当時間のかかるものです。

 外務省の中で、このアフガン問題に対応するための人材はどういう体制になっていますか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 元外務省にいらした山口議員にお答えするのも何か恐縮ですけれども、二問目の方から先にお答えしたいと思います。

 アフガンを含む地域との関係やテロとの闘いといった現下の諸問題に適切に対応するため、在外公館においては在アフガニスタン大使館及びその近隣公館、本省においては中東アフリカ局中東第二課等関連の部局を中心に、アフガニスタン及びその周辺地域についての知見を有する職員を配置しているところでございます。また、必要に応じて外部の専門家等の知見を活用することにより、多面的な対応というものも図ってきております。

 今後とも、アフガニスタン及びその周辺地域について知見を有する職員を適切に配置することにより、現下の問題に適切に対処していくという考えでございます。

 一問目のダリー語でございますけれども、現在、ダリー語の専門家は本省内に一名おりまして、アフガニスタンに係る業務に従事しております。

 なお、ダリー語と言語的に非常に近似性のあるペルシャ語、これを研修した、あるいは研修中の職員は現在二十四名おります。これらの職員は、在アフガニスタン大使館、その近隣公館、また本省の関係部署においてその専門性というものを活用した業務に従事しております。

 現時点において、ダリー語等の専門家を入省時よりは養成しておりませんけれども、研修人員の制約があるものの、引き続き、アフガニスタンに関する専門性を有する職員の養成に可能な限り力を入れていく所存でございます。

山口(壯)委員 今、伊藤副大臣るる説明されましたけれども、現実には、人脈も含めて、きちっと戦略を練る、そういう体制ではないというふうに私は受け取れるんです。したがって、出口戦略といっても、結局、アメリカがどう考えているか、あるいは米欧の国がどう考えているかをむしろ参考にしている。したがって、日本としての出口戦略をつくる体制がないわけなんです。そこが一番我々は、多分、ポイントとして違うところなんでしょう。

 そういう意味で、インド洋の給油という話は、外国軍隊によるアプローチを後押ししてしまう、それがむしろ逆効果になっているという最近の評価を踏まえて、ではどういう対応があり得るかというときに、その出口戦略という話が一つ一つ出てくるんだと思うんです。

 先ほどは警察改革の話だけを取り上げました。だけれども、例えばケシの栽培、この話もありますね。ケシ栽培について日本がどういうふうに取り組んでいるかということに関しては、額的に非常に少ないんだと思うんです。先ほど、千四百万ドル、警察改革という話がありました、十四億円ですか。正直言って、給油の全部で六百億に比べれば物すごく少ないと思うんです。実際には警察改革の方が私たちには重要に思えますけれども、このインド洋の給油というのはむしろ象徴的な意味になっていますから。

 そういう意味で、例えばケシの栽培について、それをやめるような、あるいは転作を奨励するような農業支援も含めて、日本が政府としてどういう支援をされていますか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 我が国としては、ケシの栽培と申しますか麻薬対策に関する主導国である英国を初めとする国際社会との協調のもと、アフガニスタン政府の取り締まり能力の強化、代替生計支援、需要削減などを支援しております。

 二〇〇六年六月には、アフガニスタンからの麻薬取引ルートに関する会議において、これはモスクワで開かれたわけでございますけれども、五百万ドルの支援というものを表明しております。

 また、我が国は、各地方の実績に応じた地方総合開発支援を実施してきておりまして、これはケシ栽培に対する代替生計支援の側面というものも有しているということでございます。

山口(壯)委員 伊藤副大臣、農業支援によって転作を促すということもされていますでしょうか。先ほどは、会議で五百万ドル、五億円の話が出ましたけれども。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 しております。アフガニスタンでは、御存じのように、就労人口の七〇%以上が農業に従事しているわけでございまして、農業の振興というのはアフガニスタンの安定化に不可欠でございます。

 その際、先ほど水の話もありましたけれども、土地の乾燥、荒廃により、水の確保というのが常にその上で問題でございます。我が国はこれまで、合計約一億二千四百万ドルに上るかんがい施設整備等の農業農村開発支援というものを実施してきております。

 また、農業分野の技術協力としては、これまで、かんがい施策の専門家を含む延べ六十八名の日本人専門家を現地に派遣しておりまして、また逆に、七十三名のアフガン人の研修員を日本に受け入れております。

 政府といたしましては、アフガニスタンの本格的な復興を実現するためには、治安改善、インフラ整備、教育及び保健、医療等の基礎生活分野とともに、御指摘のかんがい分野を含め、農業農村開発を中心とする地方総合開発について、引き続き積極的に支援を行うという考えでございます。

山口(壯)委員 伊藤副大臣、一億二千四百万ドル、それはかなり昔の話じゃなくて、最近ですか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 これまでにということでございます。

山口(壯)委員 どれぐらい前ですか。

伊藤副大臣 二〇〇二年からでございます。

山口(壯)委員 最近はやっていないわけですね。

 私も、ジャララバードの方に地雷撤去のプロジェクトを視察に行ったりして、これはすごいところだなと。地雷もいっぱいあるし、そういう中で大変なんでしょうけれども、しかし、そういうところのケシ栽培をやめて、そして資金源を断つという話でしょう。インド洋の給油というのは、いわゆるケシを押収したとかいう話がよく出てきますけれども、根元を絶たなきゃだめだと思うんですよ。広い海でちょろっと捕まえて成果がありますという話は、それはゼロじゃないですけれども、正直、説得力はないと思うんです。むしろ根元を絶っていく、そういう施策を日本が打ち出せるかどうか、そこが、私は正直言って、このインド洋の給油というのは欠けていると思うんです。

 そういうことを考えた上で、このケシの栽培というものが非常に大事になっていて、タリバンたちの、タリバンといっても確かに名札をつけているわけじゃないから一般民衆に溶け込んでいるわけですけれども、その資金源になっているとしたら、むしろそれを断ち切るような動きを日本がそういう形でできるというのは、大いに、西欧あるいはアメリカ、あるいは世界から歓迎され、評価され、しかも実質的な意味を持つんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、ケシの栽培、これに従事している農家を別のものに変えさせるということも大切ですし、警察の力を強化するという支援をすることも大切でございますし、かんがい事業をやるということもそうですし、いろいろなことを我が国としては支援策を打ち出していくということで、十分ではないところもあるかもしれませんが、できるだけのことを、また資金的な面も含めてやっていくということだと思います。

山口(壯)委員 いろいろな分野をどうやって今コーディネートしているのかということに話を進めたいと思うんですけれども、例えば国連という話もありました。今ほとんど現実の意味ではまとめ役としては機能していないと思います。アメリカがOEFでやったり、それを手伝うNATOがいたり、日本がアメリカの要請で、あるいは国連決議の衣をかぶりながら給油をやったり、だけれども、どういうふうに解決するかというのが見えないから、現実に今みんなが出口戦略をどうするんだどうするんだと言っているわけですね。

 国連を例えばしっかりまとめ役としたらいいじゃないかという議論もアメリカの方で出てきつつあります。それについて、非常任理事国になった日本です、どういうふうにこれからお考えになろうとしていますか。

中曽根国務大臣 アフガニスタンにおきましては、国連安保理決議の第一四〇一号に基づいて設立をされました国連アフガニスタン支援ミッション、これはUNAMAと申しますけれども、これが、和平プロセスのための政治的な、また戦略的な助言の提供、それからDIAG、また独立選挙委員会などへの支援等を実施しております。

 また、このUNAMAは、アフガニスタン政府とともに、共同調整モニタリングボード、JCMBと言っておりますが、これの共同議長として、国際社会とアフガニスタン政府の間での援助枠組みについての合意でありますアフガニスタン・コンパクト、これの履行のための調整、モニタリングに中心的な役割を果たしております。

 かかるこのUNAMAの中心的な役割につきましては、ことしの三月にUNAMAの任期延長を決定いたしました国連安保理決議第一八〇六号でも言及されているほか、本年九月の国連事務総長報告では、UNAMAがドナー協調や援助効果の強化を図っていることに言及されております。

 このように、UNAMAは、同国の安定と復興に向けまして重要な調整機能を果たしている、そういうふうに考えております。

 アフガニスタンに対しましては、我が国はこれまで、国連を初めとする国際機関を通じたものを含めて総額約十四・五億ドルの支援を行ってきております。また、我が国は、来年一月から安保理の非常任理事国となることを踏まえまして、安保理の場なども活用しつつ、アフガニスタン問題に一層積極的にかかわっていきたい、そういうふうに思っております。

山口(壯)委員 現実に国連が実効的な取りまとめ役を果たせていないというのは、かなり一致した見解です。そういう中で、日本としてはどういうふうに今かかわっておられますか。

中曽根国務大臣 現在はG8の議長国という立場でもありますので、そういうような立場で各国とまたいろいろな相談をしながらやっていくということだと思います。

山口(壯)委員 私は事前通告してあるので、その答えのとおり答えていただければいいんですけれども、現実には日本から職員が一人行っているだけなんですね。私がもしも間違っていたら後で訂正してください。その職員で、現実にその国連の取りまとめ役というものに対してサポートがほとんどできていない。だから、そういうところを日本としてうまくきちっとコーディネートする役割を果たせば、お題目の議長国としてだとか云々ではない、本当の意味でのまとめ役ができるのではないかということなんです。

 もう一度、大臣、お願いします。

鈴木政府参考人 お答えさせていただきます。

 国連との全体的な関係は先ほど大臣の方から御説明したとおりでございますけれども、もちろん、現地の状況は、相当治安等も荒れておりますし、国連の方も二百数十名の職員を置きながら各地に事務所を持って運営していますけれども、やはり活動自体が相当難しいというのが実態だと思います。

 そういった中で、おっしゃるとおり、国連のセントラルな機能というものをできるだけ強化していかなくちゃいけないというのは国際社会の一致した意思でありますから、そういった意味で、日本としてはできるだけ支えていきたいということでやっています。

 ことしはG8の議長でもありますし、例えば、現地の佐藤大使は国連の代表と相当緊密に連絡をとっておりますし、あるいはG8で決まりましたような国境地域での協力という点につきましても、相当頻繁に、どういう格好で調整するかということを連絡をとっていて、なかなか完璧なものは実施できないのが現状ですけれども、できるだけのことを現地でもやっているということで御理解いただければと思います。

山口(壯)委員 大臣、大臣に私はお聞きしているものですから、大臣からお答えください。今、鈴木さんがいろいろお答えになりましたけれども、現実にはこれは一種の政治的な問題ですよ、役人がやる話でもないですから。

 そういう意味で、我々がどういうふうに解決しようとしているのかということを、もっと外務省としてあるいは日本政府として、アメリカの御用聞き外交ではなくて、自分たちで考えていくというアプローチをぜひやっていただきたいと思います。ぜひお願いします。

中曽根国務大臣 先ほどからも御答弁申し上げておりますけれども、一つは、G8の議長国としての立場でいろいろ各国、また相談しながらやっていくということもありますし、我が国のできることをやっていくということで、最大限の努力をしていくということしかないんじゃないかなと今思っております。

 ただ、委員がおっしゃいますように、ただ計画性なしにやるということではなくて、やはり一つ一つ今行っていることを検証して、さらに効果が上がるように、そして何が欠けているのかというようなことを考えながらやっていくことが大事だと思っております。

山口(壯)委員 質問を終わる前に、我々は、自分たちが政権をとらせていただいた際にはもっともっと、この難しい状況ではあれ、きちっと不可能を可能にしていく、あるいは道なきところに道を開いていくというつもりです。ぜひ、その間においても、中曽根大臣、最後まで頑張ってください、お願いします。

深谷委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、本年二月に発生をしたイージス艦「あたご」と漁船清徳丸との衝突沈没事件について聞かせていただきます。

 イージス艦「あたご」には、衝突しそうになる船がある一定のエリア内に入ってきた場合に、レーダー上に危険という表示が出、そしてまた鳴動音が鳴るという、ARPA機能という機能がレーダーに備わっていたということでございますが、間違いないでしょうか。

浜田国務大臣 護衛艦「あたご」には、OPA―6Eというレーダー指示器を装備しておりますし、このレーダー指示器は自動衝突予防援助機能を有しております。今委員がおっしゃったことでございますが。

 そしてまた、この機能は、レーダー指示器の画面上において、追尾している目標が、あらかじめ設定した一定の時間内に一定の距離に近接すると予測される場合、危険目標であることを示す情報を画面に表示し、警報音を発生させるものであります。

川内委員 今大臣から御説明をいただきましたが、危険という表示が出て、さらに鳴動音が鳴るという機能でございますけれども、ところが、防衛省が三月二十一日付で発表したこのイージス艦「あたご」の衝突事件における報告書並びに六月二十七日付の海難審判所の申し立て書、さらには七月十五日付の防衛省改革会議の報告書、以上三件が今現在政府から発表されている、このイージス艦「あたご」に関する報告書でございますが、この三件の報告書の中には、このレーダー指示器の機能である、鳴動音が鳴る、衝突しそうな船がある一定のエリア内に入ってきたときに鳴動音が、ピーピーピーという音ですが、鳴ったのか鳴らなかったのかという記述が一切記載をされておりません。

 この点に関して、本年二月に下地議員が委員会で聞いたところ、当時の寺田大臣政務官が、まさにこの鳴動音が鳴ったのか鳴らなかったのかということが、「この事故の核心に触れる部分であり、捜査中のさなか、当事者である防衛省からのお答えは、これは差し控えさせていただかなければなりません。」というふうに御答弁をされていらっしゃいます。捜査中である、だから事件の核心だけれども言えないんだよということをおっしゃっていらっしゃる。

 それでは、防衛省がこの事件の核心であることを言う言わない、あるいは発表するしないということが捜査あるいは調査に影響を与えるのかということをお尋ねしたいと思います。

 きょうは、事件の捜査をしている海上保安庁、さらには処分を検討している海難審判所長にお運びいただいておりますが、まず海上保安庁の長官に御答弁をいただきたいというふうに思いますが、防衛省がこの事故の核心であるとおっしゃっていらっしゃる鳴動音が鳴ったのか鳴らなかったのかということについて明らかにすると、海上保安庁として捜査に影響を来しますか。

岩崎政府参考人 私どもの捜査は一応六月二十四日に一段落をいたしまして、今、検察に送致をしておる段階でございます。

 今の、鳴動音についてどうのこうのということについてのコメントは差し控えさせていただきますけれども、私ども、捜査は独立してやっているものでございますので、防衛省等の調査報告が出るということに私どもの捜査が干渉されるというものではないと理解しております。

川内委員 それでは、海難審判所長さんにお伺いをいたしますが、防衛省がこの事故の核心であるとおっしゃっていらっしゃる鳴動音が鳴ったのか鳴らなかったのかということについて発表するということが海難審判所での審判に影響を与えますか。

上中政府参考人 お答えします。

 審判官の独立性が確保されておりますので、海難審判に何ら影響を及ぼすものではありません。

川内委員 浜田大臣、今、海上保安庁長官並びに海難審判所長、お二方からそれぞれ、独立して捜査、審判を行っているので、防衛省が独自に調査されたことを発表されることは何ら支障はない、影響はないということをおっしゃられました。

 この警報音が鳴ったのか鳴らなかったのか、レーダー上に危険という表示が出たのか出なかったのかということについて、事件の核心であると。このことを、私は、防衛省としてしっかりと調査をし、もうしていらっしゃると思いますが、発表すべきである、早急に明らかにすべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 本事故につきましては、六月二十四日に海上保安庁から横浜地方検察庁に書類送検をされておりまして、現在も捜査が継続しております。また、海難審判の審理も進められているところでございますので、現在の調査状況について公にすることは、捜査当局による捜査に対して、審理に対して影響を与えるおそれがありますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 防衛省としては、捜査当局における捜査や海難審判における審理の進行に十分配慮しつつ調査を進め、可能な限り早期に調査結果を出していきたいというふうに思っております。

川内委員 いや、ちょっと大臣、今、海上保安庁も海難審判所も、調査の結果を明らかにすることは影響ないですよとおっしゃっているわけですから、今の答弁は理由になっていない。捜査に影響を与えるからとおっしゃっているが、全然もう影響はないとお二方が、両者が言っているわけですから、防衛省として明らかにすべきであるという私の質問に対しては、もっと別な答弁がなければおかしな話になります。

浜田国務大臣 いや、おかしな答弁だとは思っておりませんで、要するに、海上保安庁から横浜地方検察庁の方に書類送検されているわけですので、現在も捜査が継続しておりますし、また、これが整々と進むということが我々とすると重要なことだと思っておりますので、私とすればそれが一番の要件だと思っておりますので、そこは慎重にならざるを得ないということを申し上げたいと思います。

川内委員 いや、全く理屈になっていないですよね。委員長、変だと思いませんか。

 海上保安庁も海難審判所も、関係ないです、それぞれ独立してやっていますと。他方で、この件は事件の核心だと防衛省みずから言っているんですよ。それを言わないというのは、すなわちこれは隠ぺいする、事件の核心だから言いたくありませんと言っているにほかならないことであって、私は、許しがたい防衛省の隠ぺい体質であるというふうに思いますが、いや、もう何回聞いても同じことしか言わないので、ちょっと官房長官にお聞きします。

 官房長官は、防衛省改革会議の主宰者であり委員のお一人ですよね。さらに、防衛省改革会議では、私が予算委員会で確認したとおり、イージス艦「あたご」の衝突予防機能、鳴動音が鳴ります、ある危険を知らす鳴動音が鳴りますということについて、防衛省から防衛省改革会議に対しては説明がなかったということを確認しております。この防衛省改革会議は、報告書の表紙に「不祥事の分析と改革の方向性」と書かれているんですよ。このイージス艦「あたご」の事件が、事故がなぜ起きたのか、どうして起きたのかということについて、核心の部分について、鳴動音が鳴ったのか鳴らなかったのかという核心の部分について、防衛省は改革会議に言っていない。きょうこの場でも言わないと。

 これは、官房長官、物すごくおかしなことだというふうに思いませんか。海上保安庁も海難審判所も、全く関係ないと言っているんですよ。

河村国務大臣 なぜすぐ出さないんだという話ですが、今、審判所等は独立しているという話ですが、今のこの捜査は検察に渡っているわけでしょう。渡っているんです。したがって、私どもとしては、この捜査等に配慮の上、調査が進んで、可能な限り早期に、今の鳴動音が鳴った鳴らない、衝突予防援助機能に関する点を含めた調査結果が取りまとめられるものだ、このように考えていますから、その結果が出次第必要な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

川内委員 いや、こんなことを私が官房長官に言う必要もないわけですが、検察官も独立して、検察官独立の原則でやられているわけで、送致されたものを今度は検察官が立件するか否かということを検討されるわけで、それは防衛省の発表には全く影響されませんよ。これは多分、最高検の方にここに来ていただいて答弁していただいても同じことを言うと思います。

 さらに、では、今官房長官がおっしゃられた、これからさらに調査が進むと思いますと。ということは、防衛省改革会議の、不祥事の分析というこの報告書は、イージス艦「あたご」の報告の部分については不十分である、まだ不十分な報告であるということを認めてください。

河村国務大臣 御指摘のように、この問題について、いわゆる申し立て書に、警告が鳴るという機能について記述がなかった、これはもう確認をお互いにしたところでありますね。これについて、なぜなかったのかということについても、これは説明だと、見張り機能を重視したというようなこともあります。

 そういうことも含めて、この機能がなされなかったわけでありますから、これも今申し上げましたように、捜査等も進んで、早急に取りまとめる、こういうことでありますから、これがまとまり次第、私どもとしては必要な措置を講じる、こういうふうに申し上げておるわけです。

川内委員 それでは、ほかの話題もやりたいので、この「あたご」については最後の質問にしますが、浜田大臣に、「あたご」の衝突事件について、鳴動音が鳴ったのか鳴らなかったのかということを含めて、最終の調査報告書というものが防衛省の中で今取りまとめられている最中である、取りまとめに向けて作業が行われている最中であるということを確認してください。

 さらに、官房長官には、防衛省改革会議のこの不祥事の分析という部分において、あるいは改革に向けたさまざまな施策において、まだ不十分な点があるということでございますから、防衛省改革会議はまだ解散していないということもございますし、防衛省の報告書が出たらば、防衛省改革会議を速やかに招集し、もう一度この不祥事の、事故の原因の分析ということはしっかりやるよということを御答弁いただきたいというふうに思います。

浜田国務大臣 艦船事故調査委員会は、捜査当局による捜査に十分配慮するとともに、海難審判における審理の進行に協力しつつ、事故原因の究明と再発防止を講じるために必要な調査を行っておるところであります。

 いずれにせよ、防衛省としては、捜査当局における捜査や海難審判における審理の進行に十分配慮しつつ調査を進め、可能な限り早期に調査結果を取りまとめてまいりたいと思っております。

河村国務大臣 今、防衛大臣から答弁があったわけです。取りまとめるということでありますから、これをどのように扱うかということについては、まさに国民目線にも立って考えなきゃなりません。この会議をどういうふうにするかについてもその時点で判断をしたい、このように思います。

川内委員 いろいろ言い出すとまた切りがないので、次の話題に行きますが。

 さて次は、先般取り上げさせていただいた、江田島で発生をした特別警備隊の、私は集団暴行事件というふうに申し上げさせていただきますが、これについて取り上げさせていただきたいと思います。

 金曜日の質疑では、この隊員が異動二日前であった、九月九日に事件が発生し、九月十一日に異動する予定であったということについては防衛省はまだ公表していないという浜田大臣の御答弁でした。今、正式に御答弁をいただきたいと思いますが、異動二日前の出来事であったということを確認していただきたいと思います。

浜田国務大臣 そのとおりでございます。

川内委員 大臣、教えていただきたいんですけれども、異動する場合に、九月十一日に潜水艦隊に戻ってくださいねという発令が出る、しかし、その内示は一週間か二週間前に出ると思うんですけれども、内示が出たのがいつであったのかということを教えてください。

浜田国務大臣 学生を免じられるのは九月の一日でございます。(発言する者あり)済みません、内示でございます、内示されるのが九月の一日です。

川内委員 特別警備隊の特別警備応用課程をやめて潜水艦隊に戻っていいよという内示が出たのが九月一日。すなわち、九月一日の時点で、その隊員の方はもう特別警備隊の正規の隊員になることはないということが人事上もほぼ明らかになっていた方であるわけですけれども、その方を九月九日に訓練する。

 何を訓練したのか、何の訓練だったのかということを御説明いただきたいと思います。

浜田国務大臣 その点に関しましても、今、なぜその日に訓練をしたかということも含めて調査をしているところであります。

川内委員 いろいろなことをお聞きしてもなかなか聞いていただけないのは残念ですが、それでは、金曜日に大臣と議論させていただいた、この事故調査委員会が、海上自衛隊の中で定められている「海上自衛隊一般事故調査及び報告等に関する達」の中のどの条文のどの部分に該当して事故調査委員会がつくられているかということについて、ちょっと金曜日は意見の相違があったんです。

 私は、第十二条の「刑罰法令違反又はそのおそれのある場合」ということで事故調査委員会が調査に当たるべきであるというふうに考えておりますけれども、大臣は、金曜日の時点では、十一条の(五)「公務上又は通勤時の死傷(服務事故に該当するものを除く。)」というところが事故調査委員会の調査しているところであるというふうにおっしゃったわけですが、きょう現在でもその見解は変わっていないでしょうか、それとも変わったでしょうか。

浜田国務大臣 本事案については、呉地方総監部が、訓練中に生起した事故であったため、海上自衛隊一般事故調査及び報告等に関する達第十一条(五)の「公務上又は通勤時の死傷」に当たると判断して、九月十日、呉地方総監部幕僚長を長とする事故調査委員会を立ち上げたと承知しております。

 その際、本事案については、呉地方総監部は、服務事故に該当する第十二条(四)の「刑罰法令違反又はそのおそれのある場合」に当たらないと判断したと承知しております。

 本事案については、現在、事故調査委員会が、その経過によっては第十二条(四)の「刑罰法令違反又はそのおそれのある場合」に該当する可能性もあり得るものとして調査を進めており、また、警務隊は、事件性の有無を含めて必要な捜査を行っているところでありますので、私とすれば、私の発言は変わっていないということだと思います。

川内委員 警務隊としても必要な捜査を行っているということをつけ加えていただいたわけでございます。

 それでは、私が不思議に思うのは、例えば、一般的な世間で何か事件とか事故があった場合に、警察の方は、警察が捜査していますよということを文書で知らせるわけですけれども、本件に関しては、防衛省の、例えば呉地方総監とかあるいは海上幕僚監部が、警務隊のことまで、捜査していますよというようなことを言っていらっしゃるわけですけれども、本来的には、警務本部は防衛大臣の指揮監督に入るわけで、必要な捜査は独立して行われなければならない。であるならば、呉地方総監とかあるいは海上幕僚監部とは関係なく、警務本部そのものが、本件に関して捜査をしているという文書を発表すべきである。

 そうでなければ、やはり軍隊の中ですからいろいろな階級とかあるじゃないですか、警務本部の本部長さんとかあるいは地元の警務隊の隊長さんとかが、事故調査委員会の委員長の方が偉かったりすると遠慮したりとか、いろいろ階級的なこともあるでしょうから、そうではなくて、防衛大臣が指揮監督をして、警務本部として捜査しているよということをしっかりと文書で発表をすべきである。

 そういうことが今まで一切なされていないわけですけれども、私の、文書で発表すべきであるということについて御所見をいただきたいというふうに思います。

浜田国務大臣 事案発生時には関係部隊より事案の概要を公表しているため、これとは別に警務隊から事案の概要について公表を行ってこなかったところでございます。また、必要に応じて、逮捕時、書類送検時には関係部隊等が公表を行っているところでもありますので、そういった意味では、今現在これを、自分たちで、警務隊の方で対処するということには考えておらないところでございます。

 なおまた、警務隊の捜査が行われている場合には、必要に応じて、事案発生時に公表している関係部隊等が作成する事案の概要の中において、また、報道機関から問い合わせがあった際に警務隊が捜査している旨を回答しているところでございます。

川内委員 そこが、大臣、警務隊というのは人数も少ないし人員も薄いし、本当に捜査する体制になっているのかということを私は非常に疑問に思うわけです。

 この隊員の直接の死因である急性硬膜下血腫という死因なんですけれども、外科のさまざまな資料等を読むと、本来的には、急性硬膜下血腫であるということがCTなりMRIでわかったら即座に緊急開頭手術を行わなければならないというふうに大体の本に書いてあります。ところが、どうもこの隊員の場合、もう病院に運び込まれた時点で脳死のような状態であって、手の施しようがなかった、それほどひどい状態で運び込まれたのだというようなことが伝わってきております。

 そういう意味では、私は、不幸な事件なのか不幸な事故なのか、それはしっかりと調べなければわからないことではありますけれども、しかし、あらゆる可能性を排除せず、しっかりと調査もするし捜査もする、それがそれぞれ独立して行われるということでなければ、防衛省の今までの国民の皆さんから失ってしまった信頼というものが果たして取り戻せるんだろうか。やはり、信頼を回復していくには、情報を公開すること、私たちは今こうしています、原因はこうだったです、だからこうするんですと解決策を示すということでなければならないというふうに思うんです。

 私は、防衛大臣が、いや、ちゃんと捜査させているから心配するな、やっているから大丈夫だということはもちろんわかっておりますけれども、しかし、シビリアンコントロールという観点からも、防衛大臣が、やはり捜査本部をしっかりと警務隊の中に立ち上げて、そして、その捜査本部でしっかりと全容を解明するよという意思をお示しいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 私どもとすれば、その点はしっかりと捜査をさせていただきたいと思います。

 捜査本部を立ち上げる立ち上げないは、これはまた法令上のあれもありますし、いろいろな要件もございますので、我々とすれば確かにそういうぐらいの思いを持ってしっかりと対処していきたいというふうに思っているところであります。

川内委員 ちょうど時間となりました。

 とにかく、この事件は、「あたご」のこともそうなんですけれども、重大な問題だと思うんですよ。やはり、防衛省・自衛隊がこれから国際貢献もしていこうねというときに、国民の皆さんから、ああ、頑張っているね、信頼できるねと言っていただけるような組織になるかならぬかというのは、今までのような、情報を隠すのではなくて、積極的にこうだったですと、人間の社会だから間違うこともあれば失敗することもある、しかしそのことをしっかりと反省し、原因を分析し、対策をとっていくということが未来につながる道であるということを申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょう午前中の質疑の中で、与党の側から、ペシャワール会の活動について殊さらに問題があったかのような発言がありました。

 私は、ペシャワール会の活動については国の内外から大変高い評価を受けていると思っています。アフガニスタンの現地で伊藤さんの葬儀が行われました。村人がたくさんその葬儀に詰めかけた様子が報道もされておりましたが、その場で中村哲現地代表が弔辞を述べておられます。その弔辞を紹介したいと思います。

 伊藤君の遺徳については、多くの方々がさまざまに生前のことを述べられたので、私がくどくどと申すことは無用かと存じます。ダラエヌールの小さな子供や御婦人方に至るまで、悲しみを表し、私たちペシャワール会医療サービスへの同情と感謝を改めていただいたことは、悲しみの中にあっても、光栄と言うほかありません。

 伊藤君を殺したのはアフガン人ではありません。人間ではありません。今やアフガニスタンをむしばむ暴力であります。政治的なものであれ、物取り強盗であれ、心ない暴力によって彼は殺されました。

 不幸にして世の中には、伊藤君の死を政治目的に利用しようとする者もいます。また、アフガニスタンという国の文化を知らず、ペシャワール会と皆さんとの交誼を知らず、さまざまなうわさや論評が横行いたします。その中には聞くにたえない無理解、戦争肯定が少なからずあります。そうして生まれる武力干渉が、現在のアフガニスタンの混乱を招いてきました。このことを否定する者は、きょう集まられた方々の中にはいないと思います。私たちはもう、戦争に疲れました。

 私たちペシャワール会現地医療サービスは、極力アフガンの文化を尊重し、アフガン人がアフガンのふるさとで、アフガンのやり方で生活できるように、平和なやり方で、事業を進めてきました。繰り返しますが、平和にです。戦争と暴力主義は、無知と憶病から生まれ、解決にはなりません。

 私は、この中村哲現地代表の発言を政治も強く重く受けとめなければいけないということを、まず冒頭指摘しておきたいと思います。

 それで、質問に移りますけれども、きょうは、この間も質問しましたが、空爆の問題に絞って伺っていきたいと思います。

 アフガン復興を進めていく上で、アフガン政府との間で、空爆の問題は大変大きな問題になっています。先週の質問では、私は、二〇〇一年以降の、攻撃開始以来、民間人と多国籍軍の犠牲者数について外務大臣に質問をいたしました。テロ事案による民間人の犠牲についてはそのとき説明がありましたけれども、空爆による犠牲者数については説明がありませんでした。

 二〇〇一年以降の、米軍やあるいはISAF、これらの空爆による犠牲者数についてどのように把握しておりますか。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 アフガンの状況というのは大変今厳しい状況にありまして、予断を許さない状況なわけでございますけれども、空爆に特化した数字はちょっと持ち合わせていないので恐縮ですけれども、民間団体の発表によりますと、テロ事案による死者数は、二〇〇二年七十九人、二〇〇三年百三十三人、二〇〇四年二百三十人、二〇〇五年二百八十八人、二〇〇六年七百五十五人、これは民間団体の発表でございますが。そしてまた、引き続きまして、国連によりますと、民間人の死者数は、二〇〇七年、約千五百人、二〇〇八年一月から八月までの間、千四百四十五人、これはUNAMAの報告によるものでございます。

 アフガニスタンで活動する各国の軍隊の死者数については、OEF、ISAF等から発表された公式の統計があるとは承知しておりませんけれども、民間団体、アイカジュアルティーズオーガニゼーションの十一月七日付の統計によりますと、二〇〇一年十二人、二〇〇二年六十九人、二〇〇三年五十七人、二〇〇四年五十八人、二〇〇五年百三十人、二〇〇六年百九十一人、二〇〇七年二百三十二人、二〇〇八年二百四十二名となっております。

赤嶺委員 一般的な民間人の犠牲ということを伺っているのではなくて、空爆による民間人の犠牲者の数というぐあいに聞いているんですが、それは政府としてはつかんでいないということですか。

中曽根国務大臣 一般的に、各国の軍隊は、個々の作戦の円滑な遂行、また作戦参加者の安全確保のために、作戦にかかわる事実関係の詳細については公表していないと承知をしております。

 アフガニスタンにおきましては、アフガニスタン政府及び国際部隊の活動によりまして市民の犠牲が出ていると承知をしております。政府の公式な統計の有無については承知をしておりませんが、国連資料によりますと、ことしの一月から八月にかけて、アフガニスタン政府及び国際部隊の活動に伴い、五百七十七名の民間人が死亡しております。うち三百九十五名は空爆によるものと報告をされております。

 ただし、これらのうちどこまでが誤爆によるものかは明らかになっておりません。

赤嶺委員 今数字が出されましたわけですけれども、るるこの委員会でも各委員から発言ありましたけれども、手元にある私たちの数字では、ニューハンプシャー大学のマーク・ヘロルド教授の数字では、攻撃が開始された二〇〇一年十月から二〇〇四年七月までに約三千五百人から四千人、二〇〇五年から現在までに約二千七百人から三千三百人の民間人が空爆によって死亡した。それから、ヒューマン・ライツ・ウオッチが先月出した報告書、これによりますと、少なく見積もって二〇〇六年に百十六人、二〇〇七年には三倍の三百二十一人、ことしも七月までに既に百十九人が死亡したと。

 実際どういう状態になっているか、実際のところはだれにもわからないわけですが、しかし、開戦から七年たった今もたくさんの人が空爆の犠牲になって、しかも、その犠牲者が急増しているということが問題だと思うんですね。

 私は去年もこの議論をやりました。そのときに、カルザイ大統領は空爆の中止を求めている、だからアメリカなどに対して日本政府も空爆の中止を要請すべきではないか、このように求めました。そのときの政府は、米軍も民間人の犠牲が少なくなるように十分配慮しながらやっている、こう答えて、空爆の中止の要請を行おうとはしなかったわけですが、中曽根外務大臣はどうですか。

中曽根国務大臣 テロの掃討作戦をやる上におきまして、仮に、やむを得ず空爆を行う場合でも、今委員もおっしゃいました、また、私も金曜日に御答弁申し上げましたけれども、一般市民の被害を最大限回避すべきこと、これはもう当然のことでございます。

 お話ありましたように、米国等も、あるいはNATOも、この点を最大限配慮しているものと認識をしております。まさにこうした考慮から、現在、空爆を含めてテロ根絶のための活動の実施に当たりましては、一般市民の被害を最大限に回避するための方策について、アフガニスタン政府とNATO、それからOEF参加国との間で協議をされているものと承知をしておるわけでありまして、できるだけ市民への被害が及ばないようにやるということだと思います。

赤嶺委員 今までと変わらないわけですね。この地球上で罪のない人たちが空爆の犠牲になっている。いや、あれは米軍とISAFとアフガン政府の問題だといって、それぞれ努力しているだろう、日本政府がその答弁から一歩も出ないわけですね。

 私は、実態を見る必要があるだろうと思うんですよ。先ほど触れましたヒューマン・ライツ・ウオッチ、空爆に関して九月に報告書を出しました。「「部隊交戦中」アフガニスタンにおける空爆と民間人犠牲」という報告書でありますが、報道もされ、先週も大分質問に出ました。

 この報告書については外務大臣も御存じですか。

中曽根国務大臣 私自身、詳細は承知しておりません。

赤嶺委員 実は、今アフガニスタンの問題を考える上でこの報告書というのは非常に大事な意味を持つ報告書だと思うんですよ。テロとの闘いというのは繰り返ししゃべりますけれども。

 では、この報告書の存在については官房長官は御存じですか。

河村国務大臣 補給した艦船がアフガン空爆に参加しているんではないか、こういう御指摘かと思いますが、補給の対象となる艦船が……(赤嶺委員「いやいや、官房長官、全然違います。ヒューマン・ライツ・ウオッチという報告書を知っているかという質問です」と呼ぶ)失礼しました。

 これは私は見ておりません。申しわけありません。

赤嶺委員 やはり日本政府はこういう報告書にも関心を持つべきだと思うんですよ。私は知りませんという話ではないと思うんです。

 私も、その報告書の内容をちょっと私たちのスタッフに訳していただきました。報告書は、現地調査も行い、そして特徴的なのは、具体的な空爆の事例を幾つも挙げて、それがどのように起こったか、そしてどういうてんまつがあったかという一部始終を紹介しているんです。つまり、今アフガニスタンで空爆が引き起こしているもの、これを理解する上で非常に参考になる報告書なんです、現地に行って調査をしているわけですから。

 その中に、二〇〇七年三月四日に、首都カブールのすぐ北に位置するカピサ州で、女性五人、子供三人、高齢者一人、合計九人の民間人が亡くなった事例を紹介しています。

 まず、これについて、米軍はこう発表いたしました。三月四日の夜の九時ごろ、タリバンの地元指導者が米軍に対して発砲をしてきた。米軍のパイロットが、自動小銃で武装したそのタリバン、現場から逃げようとしていた二人の男を発見した。地上の米軍部隊は、一時間余り、迫撃砲による集中砲火で応戦した。そこへ米軍機が、二人が逃げ込んだ五階建ての建物に精密誘導弾二発を投下し、二人を殺害した。これが米軍の発表なんです。

 それに対して、州政府当局は、カピサ州の当局者は、二人は負傷し逃亡したと言っているんですね。現場にいたメディアも、死亡した九人の中にタリバンと目される二人はいなかった、このように伝えているわけです。亡くなった家族の親戚は、米軍の地上部隊とタリバンとの交戦がそもそもなかった、そして、アメリカ軍は、空爆の前の日、その地域に来て、家を既に捜査し、女性や子供がいるのを見ていた、このように訴えているわけです。米軍も、前の日にその村を調査したということは認めています。生き残ったのは、七歳の男の子、ムジブさん。これは報告書に書いてあることです。お母さんや兄弟、おじいさんが死んでいるのを見たとある記者に語っている。

 誤爆じゃないんですね。さっき、誤爆はどれほどの誤爆があるかわからないというお話がありました。これは誤爆じゃないですよね。前日に現場も確認し、どういう人たちがこの家庭で暮らしているかもわかっていた。そもそもタリバンとの応戦などなかったのに、空爆で九人の方が亡くなった。民間人がいるのを知りながら、タリバンが逃げ込んだ、こんなふうに言って爆弾を投下しているんですね。

 外務大臣、これは、皆さんは、カルザイ政権と米軍とISAFがよく協議して民間人の犠牲者が少なくなるように頑張っていると言うんですけれども、去年も同じ答弁だったんですが、その後起こっている事件ですよ。何の改善も見られないんですよ。これで民間人の犠牲に十分配慮している、こんなふうに言えるんですか。

中曽根国務大臣 今お話しの事態というものを、私ども詳細承知しているわけでもありませんけれども、民間人が犠牲になるということは本当に痛ましいことであって、これは、テロ掃討作戦とはいえ、できるだけなくするようにしなければならないのは当然のことであります。

 アフガニスタンにおきまして、カルザイ大統領は、アメリカ等がアフガニスタンの領域内で実施をしております活動に関して、一般市民に被害が及ばないよう要請したわけでありますが、それを踏まえて、現在アフガニスタンとNATOまたOEF参加国との間で、一般市民の被害を回避するための方策について議論が行われていると先ほど申し上げました。こうしたカルザイ大統領の要請というものは、米国等に対して、アフガニスタンにおける治安の維持とかあるいは回復活動そのものを中止するよう求めているものとは理解をしておりません。

 繰り返しになりますけれども、テロ根絶のための活動の実施でありますけれども、十分に配慮していくということが大切である、そういうふうに思っております。

赤嶺委員 カルザイ政権が求めている空爆の中止。民間人を標的にした空爆も起こっている、それが事実起こっているかどうか、日本政府がアメリカに問い合わせるおつもりはないですか。

中曽根国務大臣 これも先ほど申し上げましたので恐縮ですが、一般的に、各国の軍隊の活動、また個々の作戦の円滑な遂行、あるいは作戦参加者の安全確保とか、そういうようなことのために、作戦にかかわる事実関係の詳細については米国も公表しておりません。

 そういうことから、ぜひ御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 米側は作戦にかかわることだから公表していないとおっしゃいますけれども、事は人道にかかわる問題じゃないですか。戦争で民間人が標的にされている、それも誤爆なんてものじゃない、民間人しかいないことがわかりながら攻撃して犠牲にしている。それは軍の作戦の問題じゃないですよ、人道にかかわる問題ですよ。

 日本だってそういう人道上の条約については合意しているわけですから、こういうことについて、あったかどうか、あるのであれば、そういう空爆をやめてほしいと申し入れるべきじゃないですか。

中曽根国務大臣 また繰り返しになりますけれども、今委員がおっしゃったようなことを回避するために、アフガニスタン政府とNATOまたOEF参加国との間で協議が行われているということでございます。

赤嶺委員 協議が行われ、改善が見られたら、そういう質問にはならなかったと思います。去年も、協議が行われている、一生懸命犠牲が少なくなるように努力していると。

 それでは、ことしの八月の事件、これが報告書の中に出ております。

 八月二十二日、アフガニスタン西部のヘラート州で、米軍の空爆によって九十人もの住民が死亡した。十八日土曜日の毎日新聞の報道によると、米軍基地の土木工事を失ったことをめぐって氏族間の対立があって、タリバンの司令官が潜伏している、こういう情報が米側にもたらされた。にせ情報ですよ。このにせ情報について、それを信じて空爆に至った可能性、このことを報告書は指摘しているわけです。

 この件は余りにも有名な事件ですから、外務大臣、御存じですよね。

中曽根国務大臣 ちょっと急なお尋ねでございますので、今詳細を承知しておりません。

赤嶺委員 外務大臣、先週から、これは私以外の委員の方々も繰り返し出している問題なんですよ。だから、急なお尋ねでも何でもないんですよ。

 では、そのときに、そのヘラートの事件をめぐって、これは、カルザイ政権、アフガン政権と米軍の間でやりとりがありました。このやりとりについても承知していないということなんでしょうか。

中曽根国務大臣 まさにアメリカとカルザイ政権との間の話し合いということによって、現在、空爆を含めましてテロ根絶のための活動の実施に当たって、いかに一般市民への被害が及ばないようにするかということをNATOやOEF参加国との間でも協議をしているということでございます。

赤嶺委員 やりとりはその程度の問題じゃないんですよ。ヘラートでもまた民間人の犠牲者が出たから気をつけてくれよということじゃないんですよ。

 アメリカは、米軍は、この空爆で民間人の犠牲は五人から七人だった、このように述べたんです。それに対してアフガン側は、調査団を現地に派遣して、犠牲者は九十人、そのうち六十人が子供だ、こう主張したわけです。国連も調査に入ったんです。国連も報告書が出ています。そして、アフガン政府の報告書を支持いたしました。これを受けて米軍は、調査を行って、今月の八日になって三十三人の民間人が死亡していたと認めているわけですね。

 米軍は、攻撃したら、民間人の犠牲はなかったとか、そこにタリバンがいたとか、いつでも自分たちの空爆の正当性をまず真っ先に発表する。しかし、アフガニスタンでは我慢できない事態が続いている。だから、親米のカルザイ政権でさえ、こんなこと許せない、こう言っているわけですよ。

 そういうことが起こっていることについて、これは、では外務大臣、どんなお考えをお持ちでしょうか。

中曽根国務大臣 いろいろな報告があろうかと思います。また、立場によってもいろいろな見方、また数字というものが出てくるんじゃないかと思います。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたけれども、カルザイ政権としても、米国等に対して、犠牲が少なくなるようにというような要請といいますか、あるわけで、だからこそ、現在まさにNATOとか米国が、こういう犠牲を少なくするにはどうしたらいいかということを協議しているということでございますので、我々ももちろん少ない方がいいというのは当然のことでございますが、我々は当事者でございませんので、そういう状況を今は見守っているというところでございます。

赤嶺委員 人道上許されないようなことが起こっている。あなた方は日米同盟だと言っている。同盟国が人道上許されないようなことを繰り返し行っていて、いや、それは努力しているんだ、努力しているんだと、去年から今日まで同じ答弁ですよ。同じ答弁で、事態は悪化していくばかり。事態は悪化していくのに、いや、努力しているんだからというのは、これは日本政府の国際的な人道上の責任を放棄していると思いますよ、私は。

 私、この間も結婚式の問題で空爆の話を取り上げましたが、やはり国際人道法上重大な疑念がある。日本もジュネーブ諸条約の追加議定書に加盟している、こういう立場に基づいて、どうですかと問い合わせたらどうですか。やはりこういう疑念が、日本の国会でもそういう議論が行われている、日米同盟を損なうようなことだと、あなた方だったら言えるはずですよ。私たちは日米同盟の当然の帰結としてこういう事態に至っていると思いますが、あなた方は、日米同盟を損ねているような行為だと国会で言われている、どうだと、やはり言えないんですか。

中曽根国務大臣 人道の問題、人の命の問題は、日米同盟だからどうということじゃないと思います。これは一番大切なことだと私も思っております。

 そもそも何でこういうことになったのかというのは、総理も御答弁がありましたけれども、九・一一のテロがあって、日本人も含めて本当にとうとい命が失われた、こういうテロは何としても撲滅をしなければならないところで、今回こういうような掃討作戦が行われているわけです。

 繰り返して申し上げますけれども、立場によって発表、数字等も違うかもしれません。それから、米軍等の言い分もあろうかと思いますし、また十分配慮もしていること、そういうふうに思います。ですから、現在、そういうことを避けるべく協議を行っているということでございますから、繰り返しになって申しわけありませんが、その協議を見守り、また一人でもそういう犠牲者がなくなるように、我々もできることが何かということを考えていきたいと思っております。

赤嶺委員 同じ答弁の繰り返しですから、では、ちょっと別の質問を伺いたいと思いますけれども、ヒューマン・ライツ・ウオッチのこの報告書の中に、空爆は重大な政治的影響も与えている、アフガニスタン国民の世論の反発を招き、アフガニスタン政府と国際的に支援する者への信頼を台なしにしている、このように指摘しています。

 先ほど、九人が殺された、それを米軍が認めなかった、あのカピサ州の例では、カブールで反政府デモが大規模に行われたわけですから。今までの議論を振り返ってみると、外務大臣、現実の問題として、やはり今のアフガニスタンの情勢を悪化させているのは、米軍やISAFの空爆が新たな憎しみを生み、憎しみを拡大し、そして一層の情勢悪化を招いている。この点はそのとおりですよね、この点は私たちと認識は変わりませんよね。いかがですか。

中曽根国務大臣 繰り返しになります。政治情勢と申しますか、現地の情勢も非常に悪化をしているわけであります。そういう中で、民間人が少しでも犠牲にならないようにということを、これは先ほど申し上げましたけれども、米軍もあるいはNATOも協議をしながら努力をしているわけでありまして、実際、私どもがそちらでそのような行為を行っているわけではありませんので、そのような被害が少なくなるような、我が国としてどういうような力が、また役割が果たせるかということを考えていきたいということでございます。

赤嶺委員 外務大臣、ジュネーブ条約を含む国際人道上の条約に違反する国があれば、加盟国は、その違反行為について指摘し、違反行為が起こらないように努力する義務があるんですよ。その努力する義務をあなたは今放棄しているんです。

 では、今度また別の質問です。同じ答弁は控えてください。

 今までもテロ対策と復興支援は車の両輪と言ってきたわけですが、先週の質問の中で、麻生首相は、アフガンの政治的和解に向けた動きについて、感じが出てきたことには基本的に歓迎したい、このように述べました。一方で、各国が部隊の増派を進めている中で、日本だけが部隊を引き揚げる選択肢はないと言って、矛盾したことを言っているわけですが、今大事なことは、やはり、軍事力でテロをなくす、こういう路線を転換するのかどうか、これが問われていると思うんです。

 これは何も、私がるる主張して言っているんじゃなくて、現地に駐留するイギリス軍の司令官、カールトンスミス准将は、タリバンに軍事的に勝利することは不可能だ、進むべき唯一の道は、タリバンを含めた政治的な解決策を見つけることだ、このように、アフガン本土に軍を送っている当事者から軍事的に勝利できないと言っておりますけれども、外務大臣、やはり軍事的に勝利できないということはもうはっきりしてきたのではありませんか。

中曽根国務大臣 もう委員も十分御承知のことでありますけれども、こういうテロ撲滅に対しては、治安の回復とそれから人道復興、まさに委員おっしゃったとおり、車の両輪でやるということが必要である、私はそういうふうに思っております。

赤嶺委員 聞いていることはそういうことではないんです。

 もうここまで行き詰まって、そして、誤爆じゃない、空爆によって民間人が犠牲になる、これを世界が黙っていることは異常と思いませんか。憲法九条を持つ国が、民間人が犠牲になっているアフガニスタンやイラクに行くと、広島や長崎の、戦争で犠牲になった日本の国だから、戦争で犠牲になっている自分たちの、国民の気持ちをわかるだろう、これは私も聞きましたし、日本から行っているNGO、みんな言われていますよ。だから、この日本がそういうイニシアチブをとれない、とる気もない、相変わらず今までと同じようにアメリカの対テロ戦争を支援していく、この態度、非常に情けないと思います。

 それで、先週、ちょっとやり残した課題で、戦費負担の問題について聞きました。治安が悪化するアフガニスタンへの軍事支援費の一部として、アメリカ政府が五年間で最大二百億ドル、二兆円もの分担を求めてきている、このように報じられている問題で、麻生総理は、先週の質疑の中で、これは渡辺議員への答弁だったと思うんですが、国軍に対する直接の支援ということはできない、このように答弁をいたしました。

 日本政府は、かつて湾岸戦争のときに、アメリカの要求に応じて戦費負担をいたしました。湾岸協力基金への拠出、間接的な形をとって百三十億ドルの戦費を負担したわけです。

 外務大臣に伺いますが、直接の支援でなければ負担できる、間接的に負担することは検討している、そういうことですか。

中曽根国務大臣 先週、麻生総理も御答弁されましたけれども、我が国のODAにつきましては、これは、ODA大綱で、御案内のとおり「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」そういうふうな原則が掲げられているわけでありまして、これを踏まえまして、政策として軍に対する直接のODAによる資金供与は行わないとの方針を総理が述べたものでございます。

 なお、非ODAの資金協力であれば外国の軍隊に対して資金供与を行うことは可能であります。こうした形で過去に行われた資金供与の例といたしましては、委員も御承知と思いますけれども、国連の東ティモール統合ミッションといった国連PKOの活動に対する拠出金、あるいは在日米軍駐留経費負担等が挙げられるわけでございます。

赤嶺委員 間接的に負担することを検討している、この問題は引き続き追及します。

 あと一問、浜田防衛大臣に残っております。

 きのうの東京新聞、御存じだと思いますが、在沖米海兵隊のグアム移転経費、これについて、日米が当初合意した百三億ドルを大きく上回る百五十億ドル以上になるだろうと。これは、これまでも報道されていたわけですが、米政府の監査院、GAOが公表したわけですが、浜田防衛大臣が、追加負担については当然考えていかなければならない、つまり、グアム移転費、日本側は五九%、総額がふえれば追加負担も当然考えていかなければならないと述べたと報道されております。

 防衛大臣、こういう負担、検討しているんですか。

浜田国務大臣 私は、そういう言い方をしておるつもりはございませんでして、当然これは、我々とすれば、アメリカサイドの方でこういうふうに言っておるということを承知はしておりますけれども、しかしながら、我々は、こういったものに対して、我々が提示した案と話がここでもう違っているわけでございますから、その意味では今後話し合いをしていくべきだと私は思っております。

 ですから、逆に言えば、監査報告書において、米軍の太平洋軍の見積もりとして、在沖海兵隊の移転経費が百五十億ドルを超える目の記載があることは我々も承知しておりますけれども、在沖海兵隊の移転に必要となる事業の詳細やその積算については引き続き米側にて検討中であるということ。

 そしてまた、我々は、ロードマップにおいて、総額百二億七千万ドルのうち我が国は六十億九千万ドル、米国は残りの四十一億八千万ドルを負担することとされておって、我が国の負担分については、この合意に従いつつ、今後我が国として主体的に精査を行って事業の効率化に努めてまいりたいということであって、まだこれが、公表したことについて我々がどうこう検討しているということではございません。

 先ほど委員からもお話があって、私の発言がいかにもそれを検討しているような発言があったというふうにされておりますけれども、私、正確に言わせていただきますと、しかしながら、基本的な合意は合意として、そしてまたそれを超えるとなれば、我々のサイドとしては財務省さんとの関係もいろいろあるでしょうから、これも考えていかなければならないと思いますので、それを積極的にやるかということは別にして、そういった提案があるのか、またそういった状況にあるかも含めて報告を聞きたいというふうに思っているというふうに答えているものですから、私としては検討しているということではないということでございます。

赤嶺委員 時間が来ましたので終わりますけれども、きな臭い戦費負担支援は増大していくけれども、国民生活は疲弊していくばかり、そういうようなことについて本当に怒りを感じます。

 私は、テロ特措法を廃案にして、インド洋から直ちに自衛隊は撤退すべき、もっと議論を尽くすべきということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

新藤委員長代理 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 まず、中曽根外務大臣には、先週の委員会終了後直ちにアラブ首長国連合等の会議にお出かけで、そしてまた週早々のお帰りでありますから、お体にも大変負担なことかとは思いますが、やはり今、外務大臣というお仕事は本当に重要なお役でございますので、きちんと明確な御答弁をくれぐれもお願い申し上げたいと思います。

 そして、質問通告外のことですが、ぜひ中曽根大臣に二点伺おうと思います。

 実は、午前中の与党の松浪委員の御質疑で、私は二点、大変に気になるところがありました。

 一つは、アフガニスタン、砂漠の国だ、干ばつというのはあるのかという御質問でした。

 思い起こせば、アメリカがアフガニスタン空爆を開始せんとする、いや、もう開始が決まっていたかもしれません、二〇〇一年の十月十三日でしたか、この委員会にペシャワール会の中村哲さんに来ていただいて、アフガニスタンの状況、彼は、一九八三年からずっとパキスタンとアフガニスタンの国境沿いで医療支援をやっていた方ですから現地状況を大変よく御存じの方ですが、彼を参考人として招いて、お話を伺ったことがあります。そのときに、彼は多くの時間を割いて、アフガニスタンの干ばつのことをお話しになりました。

 中曽根大臣は、現時点で、特に開戦時のアフガニスタンの置かれた干ばつの状況、そして八年経て、現状をどう認識しておられるのか、大臣自身のお言葉でお願いしたいと思います。

中曽根国務大臣 私自身は、八年前の干ばつの状況、それと現時点、承知をしておりません。

阿部(知)委員 大臣、やはり、私どもアフガニスタン支援の論議をしているんです。御存じないというのは正直でいいかもしれないけれども、せめて公表されているデータくらいお目を通していただきたいんですね。

 例えば、二〇〇〇年にWHOというところが指摘したデータは、千二百万人がアフガニスタンで被災し、四百万人が飢餓で、百万人が餓死線上だと。この干ばつで物がとれない、農作物がとれないと。そこで、中村さんたちは、それまでの医療支援活動から、井戸を掘ったり、あるいは近年はかんがいをして、水を、まず大地を潤わせようという方向に転換したわけです。

 もちろんこの委員会がきょうで終わりで、そんな根本的な認識もちゃんと論議されず、松浪さんはODAとかJICAとか支援をおっしゃいました。私も賛成です。しかし、私はやはり、現状認識を、もっと情報を集めて、データを集めて、それは外務省がここに提示すべきことなんだと思うんですよ。そこをもし大臣が知りませんと言われたら、私は論議の俎上、土壌がなくなってしまうと思いますが、いかがですか。

中曽根国務大臣 ちょっと舌足らずなところがあったと思うんですが、全く存じ上げないということではありません。ただ、今委員がおっしゃったような数字的なことを今把握していないということでございまして、訂正いたします。

阿部(知)委員 今の数字は危機的なんですよ。中村さんたちも、実際医療支援をやっていて、水がないゆえに子供たちが多く感染症で死んでいく、それを本当に見るに見かねたところから活動を展開していったわけです。

 私は、この間、例えばちょうど空爆以前に、アフガニスタンとペシャワルの国境にも行かせていただきましたし、そこで活動も見せてもらいましたよ。そういう中で、何ができるか、ぎりぎり何ができるかとみんなで知恵を寄せ集めなきゃいけないときに、私は、外務省の態度というのはこの国を危うくするんじゃないかと非常に懸念します。

 もう一つあります。済みません、続けさせてください。NGOへの評価です。

 私は、松浪委員がNGOを過小評価したとは思いませんが、思い起こせば、あのちょうど七年前ですね、当時、田中眞紀子さんが外務大臣で、鈴木宗男さんがおられて、NGOの会議への鈴木宗男先生が余りよしとしない人たちの出席を断ったか断らないかということで、委員会ももめておりました。

 私はそのときに、NGOの活動というのを、私たち、GO、政府の側にいますね。どのようにきちんと位置づけ直し、評価し直し、やはり役割が違うんだと思うんです、そのことを学んだはずなのに、きょうの松浪委員のお話の中にはその経緯がどこに行ったんだろうと思うように私には聞こえました。

 もちろん、この場に松浪委員がおられないので、こう言って、反論の機会もない。でも、私は、逆に中村さんたちだって、あの松浪さんの言葉に反論の機会もないですよ。本当にそういう委員会のあり方、いいんだろうかと思います。

 もし本当に何が必要かならば、NGOの皆さんにも来ていただいて、でも、もう彼らは本当に、今アフガニスタンの状況は、アメリカが爆弾を在庫一掃セールのように落とし、それは不発弾が多く、苦労しているという話も聞いていますよ。そういうきちんとしたことをやらずに、安易にこの給油だけをとりあえず形式的に決めていこうという論議自身が本当に私は国民をだまくらかしている、もっと言えばアフガニスタン支援の真実を語っていないと思います。

 中曽根大臣、もう一度、NGOについてどんなふうにお考えですか。

中曽根国務大臣 先ほど、伊藤さんの御葬儀での中村さんの弔辞を拝聴しまして、私も非常に胸にくるものがございました。

 NGOの皆さん方は本当に過酷な環境の中で大変その地域の復興のために御苦労されているわけでありまして、私は本当に敬意を表しているわけであります。伊藤さんの例のように、一生懸命やっている方が命を落とされるというのは本当に断腸の思いでありまして、そういう意味では、早く治安を回復して、そういう人道復興支援のためにやっている方々が思い切った活動ができるようにしなければならない、そういうふうに思っております。

 私たちは、そういう意味で、今後も、そういうNGOの皆さんの活動状況も十分配慮しながらテロとの闘いを進めていくことが大事だと思っております。

阿部(知)委員 中曽根大臣のお人柄を私は否定するものではありませんが、いわゆるNGOというのは、政府側にも属さず、あるいはそこでゲリラやテロと言われるものをやっている側にも属さず、その政治的な中立性が何より重要なわけです。先ほどの松浪委員のお話では、例えばODAとかJICAとか、そうした政府としての取り組み等々、そうしたことと抵触することがあるやに御指摘でしたが、それは、本来もともとNGOの中立性。例えば赤十字も中立性を持っています、そういう中の一環ですから。

 今大臣は、例えば治安状況が悪いからとおっしゃいました。もちろんそれは、例えばOEFみたいな戦闘、それからISAFの治安支援、維持、そしてもう一つ、人道復興支援、これは、三つがおのおのの役割を持っているわけです。

 とりわけ人道復興支援における中立性というのは、NGOの皆さんが身を挺してやってくださっているわけで、そこがあいまいになればなるほどNGOの危険性も増す。もちろん、おのおのNGOも自己を守るためのいろいろな取り組みをしておられますし、また政府もそのNGOの人たちに、外務省としても、この前の伊藤さんの事件でもいろいろな情報を伝えて、なるべく危険なくやってくださるものと私は信じておりますので、ぜひ、NGOの政治的中立性ということに重きを置く方針をきちんと御確認いただきたいと思います。

 そして、次の質問に移らせていただきます。

 実は、民主党案にもございますが、この間、やはりアフガニスタンもベトナム戦争のように泥沼化するのではないかということが大変に懸念され、まず和平のテーブル、それはボン合意が排除したタリバンをも含めた和平のテーブルが大事ではないかということを民主党の皆さんが繰り返しおっしゃっておられます。

 私もその御指摘は全く一にするものでありまして、特にきょう大臣にお伺いしたいのは、ハリリ副大統領がタリバンとの和平ということを言われて、それに対して、アメリカのペトレイアス前イラク駐留米軍司令官、今度の十月末からこの方はアフガニスタンの司令官になられるわけですが、この方もまた、アフガン政府との和解を望む者たちがいるのであれば、交渉は前向きのステップになるだろうと評価しておられます。

 さて、日本政府はいかがでしょうか、こうした和解の動きについて。私は先回も聞きましたし、何人もの委員が聞きましたが、明確な御答弁がありません。今、当事者のタリバンとすら、一部地域であっても和平を結んだ方が、そこから復興支援活動もできるだろうと思うわけです。そのことについて大臣はどんなお考えですか。

中曽根国務大臣 アフガニスタン政府によりますこの和解の取り組みというものは、同国に政治的な安定をもたらす、そういうものでありますので、我が国といたしましては、アフガニスタン政府のこの取り組みをまず支持いたしております。

 他方、タリバン指導部は、アフガニスタン政府と交渉しているとの報道を否定しているわけでありまして、現地では非常に複雑な状況があるんだろう、そういうふうに思っております。

 困難な道のりもあるわけでありますが、我が国といたしましては、まずはアフガニスタン政府の主体的な和解の取り組み、これの努力の動向を注目しておるわけでありまして、その上で、今後、同国の政府から協力の要請がある場合には、どのような効果的な支援ができるかどうかということについて検討していきたい、そういうふうに思っております。

阿部(知)委員 この和平の努力を支援したいという明確な御答弁でしたので、本当に頑張っていただきたい。

 特にフィンランドのアハティサーリ元大統領が、これは小池さんもお取り上げですが、このたびノーベル平和賞を受賞されました。もともと小さなNGOの御出身ですし、今もなおNGO活動を続けながら、紛争で解決できないものはない、そういう信念で、お互いいろいろな対立する勢力があろうとも、解決できない紛争はないと強く信念を持ってお取り組みであります。

 今、中曽根大臣は、もちろん当事者のアフガニスタン政府と、そしてもう一方の当事者の、タリバンとしたら、その双方がまず第一当事者ですが、やはり周辺、周りがどう守り立てていくか。特に、中東でのG8、中東会議に出られました。また、大臣みずからおっしゃったように、日本は安保理の非常任理事国入りをいたしました。日本が本当に今やれることを、例えば大臣はアハティサーリさんとお話をなさるチャンスもあると思います、また十分条件もあると思います。どうでしょう、一度お話をしてみていただけませんか。

中曽根国務大臣 あらゆる機会、チャンスがあれば、そのような働きかけなり、我々も行動をとっていきたい、そういうふうに思っております。(発言する者あり)

阿部(知)委員 そうです、ここで言われたように、チャンスはつくるんです。つくって求めて、確信を持っていくんです、大臣。本当に大臣ならできます。やっていただきたいです。私は、大臣が優しい心を持っていることを答弁の中で、うそじゃなくて本当に思うんですよ。だからやっていただきたい。

 今、パキスタン情勢は待ったなしなんです。あそこのトライバルエリアのタリバンがもしもこれ以上活動が非常に活性化した場合に、もうおさまり切らなくなるんですよ。だからこそ今というこのときが大事であり、私は、そこを大臣はきちんと御認識していただけると思います。

中曽根国務大臣 チャンスが来ればということじゃなくて、チャンスをつくるように努力はしていきたいと思います。

阿部(知)委員 連続、前向き二つ、ありがとうございます。

 次に、もう一問あったのですが、時間の関係で浜田防衛大臣に移らせていただきます。

 この問題は先週金曜日もお伺いをいたしましたので、大臣にはあらあら念頭には置いてくださっていると思いますが、実は、十九日に中間報告の取りまとめが行われたと新聞には出ております。大臣はごらんになりましたか。一問。

浜田国務大臣 まだまとまっておらないので発表ができていないということでございまして、阿部先生からしっかりとしろと言われておりましたので、今督促をしてやっておる最中でございます。

阿部(知)委員 私が担当部局に聞くと、つくって、これから上申して許可をいただくとか内部で検討するやに伺っておりますので、恐らく、間違いでなければ形にはなっておるんだと思いますので、きょうの質問までに私は大臣にお目通しいただきたかったんですね。

 まず、本当に具体的なことから聞きます。

 私自身は格闘技はやりませんが、格闘技の場合に、せんだっても伺いました、この方は七人から八人目の相手のときにもう棒立ちであったと。倒れたのが十四人目なんですね。起きたことはもう本当に著しい硬膜下血腫でありましたから、かなり衝撃があった。

 普通、そういう格闘訓練のときはきちんとレフェリーがいて、その教官たる人はそういう資格を持っていたのか。そして、なぜ分けて入らなかったのか。この点は何か情報を、資格を持っていたかどうかで結構です。格闘技というのはやたら、やはり危険なものですから……いいですよ、ではどうぞ、そちら。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 そういった点につきましても現在鋭意調査を進めているところでございますので、現時点では申し上げることはできませんので、御了承ください。

阿部(知)委員 ばかにしていると思いませんか。大臣、そんなことは聞けば一発でわかるというんですよ、こういうの。そんなことも、一週間以上もごねごねして、誠意がない、隠していると国民から言われたってしようがないと思いますよ。

 格闘技をやるときに、それに、素人がそこに立ち会っていたんじゃ困るんですよ。わかるでしょう、大臣。担当部局も。そんなことも調べていません、あるいは調べ中です。私は今、一番簡単な、具体的な、わかることを聞いたんですよ。誠意がないと言われても反論がないと思いますよ。

 大臣、伺わせていただきますが、同じように、そもそもこういうはなむけの訓練が、ことしに入って、五月とも七月とも報道されていますが、もう一件あったというふうに聞いています。それについては、その方は歯を折られたそうですが、そのときにどんな対処がなされて、なぜ今回のこの、二度目か何度目か知りません、惨劇を防げなかったのか。この点については大臣どうですか。

渡部政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、本年の五月、海上自衛隊の第一術科学校におきまして、特別警備応用課程に所属いたします三等海曹が、同様の格闘訓練を実施したことがございました、その際、歯を骨折したという事案はございました。

阿部(知)委員 事案があって、どう再発防止対策がとられたか。例えばそういう訓練に立ち会う人が、それなりの安全配慮義務がなければやはり危ないんですよ。そのことを自衛隊がきちんと、大事な隊員ですよ、殺したりしてはいけない。私はその感性が、本当に心から怒り、こういうことになるんです。結構です、もう。

 大臣、伺います。そもそも警務隊というのはどのようにして養成され、どういう仕事をしているとお思いですか。

浜田国務大臣 警務隊は、自衛隊の部内の秩序維持に当たることを主任務として、自衛隊法第九十六条第一項に掲げる犯罪の捜査、被疑者の逮捕等の司法警察業務を行うほか、部隊等の長が行う施設、物件の警護、規律違反の防止等に、協力して保安業務を行うことを任務としております。

 警務隊は防衛大臣の直轄部隊で、各自衛隊の警務隊のもとに、陸上自衛隊で計五個の方面警務隊がございまして、海上自衛隊では計六個の地方警務隊があります。そしてまた、航空自衛隊では二十一個の地方警務隊があるということでございます。

 平成二十年三月三十一日現在の警務隊の隊員は、陸上自衛隊が約千五百四十人、海上自衛隊が約百四十人、航空自衛隊が約百五十人という形で今組織としてやっておるわけでございます。

阿部(知)委員 私は、どのように訓練されてこの仕事をなさいますかということを聞いたんですよ、大臣。

 約七カ月、この方たちは司法警察職員の職務に関する教育課程を修了するとこの職につかれるわけです。

 でも、いろいろな事案がある中で、私は先日も申し述べましたが、いろいろな、いじめ、自殺と思われる事案等々、警務隊の調査が必ずしもその場の状況を十分に把握できていないということを多く指摘されておるさなかに、今回の事案のような、大臣のお手元にきょう私が資料として出した、特別警備隊、この方が亡くなった特別警備隊の、これは学生の訓練課程であります。定員は約十人と言われていて、そして、「原則として三等海曹以上であること」とか「三十歳未満であること」とか、「健康診断の適格な」、要するに健康な人が応募して、でも亡くなったわけですね。

 私の方で、ではこの特別警備隊を育成する教育課程は何人応募し、入校し、修了するのかということを伺ったら、実は、これすら教えられないとおっしゃるわけです。(発言する者あり)

 それはそうですとおっしゃいますけれども、そうした秘密部署であればあるほど、私は、さっき川内さんが言いました、ある種特別な捜査機関をもってせねば、通常のものではなかなか対応できないんじゃないかと思います。

 まして、これらを非公開になさる本当の理由は私はないと思います。学生がその課程を終わって、全員その部隊に行っているわけではないわけです。多くの人が途中で落後すると言われ、その落後という烙印を押されて、はなむけの訓練になったということであります。

 私は、ずっとこの間の警務隊の、いわゆる調査というよりは捜査そのものが、本当の意味で自衛隊員の人権、特に構造的なものがございます、階層があって上下があって、お互いがかばい合うことだってあるんです、そういうものにきちんと切り込めないのではないかと。

 そこで、我が党では、いわゆるオンブズマン組織をつくって、そういうところに、駆け込み寺的にして、またそのオンブズマン組織は、日本でいえば内閣府に置かれるような独立性を持ったものにすべきではないかということを挙げているわけです。

 大臣、御存じですか、このたび、運輸安全委員会に海難事故も統合されましたが、その運輸安全委員会と、海難事故のための海上審判の、海上審判所というのでしょうか、これはおのおの第何条委員会か。すなわち、行政府との独立性を問うんです。海難審判所と、それから運輸安全委員会は、どんな行政とのポジションにあるかということをお願いします。

浜田国務大臣 私自身それを承知しておりませんので、逆に言えば、教えていただければと思います。

阿部(知)委員 ぜひ承知していただきたいんですね。理由は、独立性と公正性と透明性。もしも国家機密であれば内閣府に置かれたらいいんですよ。そういうことも可能なんです。

 海難審判所は、八条委員会といいまして、国土交通省の内ではないけれども、一定独立性の中。また、運輸安全委員会は、三条委員会として、公取委員会のように極めて独立性が高いもの。みんなそうやって、事故について、だれが見ても本当に透明性があるように、公正性があるようにやっているんですね。私は、自衛隊だけそうでなければ、当然、この組織の本当の人権意識とかここで働いてよしと思う自衛隊員が育ってくれないと、すごく懸念しています。大臣にあっては、これらのことを御存じないのであれば、ぜひ勉強もしていただきたい。

 お手元の二枚目を見てください。私がこういうことを取り上げるのは、実は、この江田島における事故はこれだけではないのですよ。もちろん、先ほどの秘密組織と申しますか特別警備隊で起きた事故ではございませんが、お手元の二枚目の真ん中ほどに、これは平成十九年の四月、第一術科学校において潜水訓練中の隊員が溺死というのがあります。これも訓練中の溺死なんですね。この事件について、私は防衛省に報告書を求めました。そうしたら、ぐだぐだぐだぐだ言って、先週から今週まで一切出していただけません。そこで、また私は新聞記事等々を見て、私の知り得る範囲で調べました。

 これは、当時、平成十九年四月十二日の読売新聞の記事ですが、十日の午後六時ごろ、江田島市江田島の海上自衛隊第一術科学校近くの瀬戸内海で、潜水訓練に参加していた舞鶴地方隊海士長の根岸さんという方の姿が見えなくなって、一時間半後に海の中に沈んでいたという事案であります。

 私は、これは訓練中の事故であれば、当然、訓練に伴う安全配慮義務があってしかるべきなんだと思うんですね。

 大臣も、恐らくこうした事案が幾つもあることは御存じないと思うんです。

 おまけに、大臣にぜひ具体的に改めていただきたいですが、こういう一般事故の調査報告は三年間しか保存しないというんですね。三年間たったら廃棄。前の審議で、私はあの給油問題で、航海日誌をずっと保存すべきだということを石破さんに何度もしつこく伺いましたよ。こういう事故調査委員会の資料も三年たって廃棄されたら、何が起きたか、何が問題だったか、何が改善点か、何が命を守るものなのかわからなくなるんです。大臣、どうですか。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

浜田国務大臣 多少先生とは我々の組織の見方に違うところがあるかもしれませんが、おっしゃるように、いろいろな形で我々も透明性とかそういったものも考えていかなきゃいかぬと今思っておるところでございますし、一つ一つの案件についても報告は受けておりますので、先生が今おっしゃられる第三者機関等々も含めて、我々とすれば、それは今まで有識者の皆さん方にもしっかりとお話を聞いておるところもあります。ですから、できるだけ先生の御意見も入れながら、特に人権、そしてまた我が自衛隊員のそういった行動等も含めて、しっかりと把握をしていきたいという思いは私の中にございます。

 ただ、やり方に関しては、また今後しっかりと考えてまいりたいと思いますので、御理解いただきたいというふうに思います。

阿部(知)委員 問題の根本所在を認識していただければ、やり方そのものについては論議の余地があろうと思います。

 でも、大臣、報告書すら捨てられちゃうんですよ、年金記録じゃあるまいし。本当におかしいと思いませんか。命がかかっている、死亡事故ですよ。私はそんな組織を見たことがない。そんなふうに自衛隊員の命というのが扱われていいんだろうか。

 最後に、もう一問だけ。

 実は、「さわぎり」という護衛艦であった事件で、これは、「さわぎり」の艦内で二十一歳の隊員が首をつり、亡くなり、親御さんが裁判を起こし、せんだって私が申しましたが、高裁で判決が確定いたしました。

 二つ問題がある。上司による、いわゆる指導を超えた言動がいじめに結びつき、自殺を来したということと、もう一つ、安全配慮義務違反です。

 私は、この安全配慮義務ということを、自衛隊の、さっき言いました人権もそうです、安全配慮ということを隊員に対してきちんと持っていただく。そのための、例えば自殺対策マニュアルもつくられました、大麻、いろいろな汚染に対する対策もつくられました、あるいはサラ金対策もつくられました。自衛隊の中に人権と安全配慮義務をどう定着させていくか。この件についてもお取り組みいただきたいが、どうですか。

浜田国務大臣 もう何回もお話をしておるわけでありますけれども、防衛省・自衛隊として、中長期的な視点に立って、自殺防止対策を継続的に実施することが必要であるということを考えております。これまでも、先生にいろいろ御指導いただきながら、メンタルヘルスに関する啓発教育を反復継続して実施するとともに、隊員の心情把握及び服務指導の充実強化に努めておるところでございます。

 その意味では、先生の御指摘の部分というのをしっかりと受けて今後も対応していきたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 私がこれを申し上げるのは、その後もいじめによる自殺が続いており、今回の集団リンチを疑わせる事案が起きたからです。しっかりとお取り組みいただきたい。国を守るは一人一人の隊員の心と、その遇され方だと思います。

 以上、終わらせていただきます。

深谷委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 この十一月の四日に大統領選挙がありますけれども、外務大臣の予測はいかがですか。

中曽根国務大臣 個人的にはいろいろ予測もいたしておりますが、この場で申し上げることは適当ではないと思っております。

下地委員 そのとおりだと思いますね。

 オバマさんとマケイン候補のイラクとかアフガニスタンに対する政策、どういうふうにおっしゃっているのか、お教えいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 ちょっと詳しくなりますが、よろしゅうございますか。アフガニスタンの方ですか、イラク、両方ですか。(下地委員「両方です」と呼ぶ)両方ですか。

 まずオバマ候補でございますけれども、イラクにつきましては、イラクの開戦がそもそもの大きな戦略的失敗であった、政権発足後十六カ月以内の撤退完了を目標に、責任ある形で戦争を終結させるということを述べております。ただし、アメリカの外交官等のために小規模の部隊を残留させること、また、撤退に関し戦術的調整の必要性があることには言及をされております。それから、イラクの治安確保のために、宗派、民族間の和解支援、中東諸国の安定化に向けた外交強化を主張されております。

 また、アフガニスタンにつきましては、テロとの闘いの最前線はイラクではなくてアフガニスタンやパキスタンである、イラク駐留によってアフガニスタンでの兵力が不足をしていると述べているようであります。

 また、イラクからの撤退計画を進めて、米軍の二、三個旅団をアフガニスタンに増派する、また、NATO同盟諸国からの一層の貢献も求める、アフガニスタンの経済復興のため年十億ドルを支援する、さらに、アフガニスタン、パキスタン国境地域において、アフガニスタン、パキスタン及びNATOがテロ撲滅のため協力する、パキスタンが行動しなければ米国がテロリストを掃討する、このようにオバマ候補は発言をしております。

 マケイン候補でございますが、イラクにつきましては、米軍増派の旗振り役的存在でございまして、増派の成果を強調し、性急な撤退には反対をされているようでございます。イラク戦争を支持、フセイン政権後のブッシュ政権の政策には批判的で、増派の必要性を早くから主張されておられるということです。増派は成功したとしつつ、現地の状況や米軍司令官の助言を無視し米軍の撤退を始めればこれまでの進展はすべて失われるとして、民主党が掲げる早期撤退は無責任かつ無謀であると非難をしていることでございます。ただし、政権一期目が終わる二〇一三年一月までに大部分の部隊は撤退しているであろうとの見通しにも言及をされております。

 なお、アフガニスタンにつきましては、イラクとアフガニスタンの双方で勝利することは可能である、イラクで成功した増派戦略はアフガニスタンでも成功する方途である、包括的な戦略、三個師団規模の兵力増強、それから住民の安全確保のための軍民協力、現場での指揮命令系統の統合、大統領に直接報告するアフガニスタン専任の高官の創設、アフガニスタン国軍の倍増を含むというような、そういう戦略のもと、アフガニスタンでの戦争を好転させる、さらに、アフガニスタン政府の統治機構、法の支配及び経済を強化するための支援を強化する、アフガン、パキスタン国境地域においてテロリストと戦う部族を支援し、パキスタン政府による取り組み強化を支援する。

 このように両候補は述べておられるようでございます。

下地委員 詳しく本当にありがとうございました。

 一つには、オバマさんは、イラクを撤退してアフガニスタンに力を入れる、マケインさんは、イラクもそのままやるけれども、アフガニスタンにも力を入れるというふうに言っているわけであります。

 このオバマさん、私は立場がないので、今の世論調査ではオバマさんが勝つんじゃないかというふうに推測をするわけでありますけれども、オバマさんは今の日本の給油支援法だとか日本のアフガニスタン支援に対して、選挙期間中に日本に対してコメントとかそういうのは何かありますか。

中曽根国務大臣 日本に対しては私は承知しておりませんが、アフガニスタンのテロ掃討についての重要性は述べておられると思います。

下地委員 もう十一月の四日に結果が出るんですよね。私は、ちょっと私の考え方なんですけれども、やはりアフガニスタンに対してオバマさんは非常に力を入れるというふうに言っているわけですけれども、このテロ特措法の法案も、延長のものも、やはりアメリカの方向性というのは物すごく大きな意味を持つものになってくるんではないかなというふうに思うんですね。この延長に関しても、私は、やるならば、アメリカ側から非常にコメントが多く出てくるという一つの要因もあってもいいんではないかなというふうに思っているんです。

 今、私がさまざまなところから聞いている範囲では、このテロ特措法案の給油法案に対して熱烈に支持をオバマさんがやっているというのは、まだ民主党側のコメントとしてなかなか出てこないんではないかというふうに思っていまして、一月の十六日まで期間があるので、八百十七億円も出しているし、一千四百億円もODAのお金も出すし、これからもやらなければいけないとなってくると、アメリカがやはり日本に対してもっと積極的な支援のお願いをしてくるというふうなものも私は必要ではないかなというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 両候補ともアフガニスタン支援の重要性というのは述べておられるわけでありまして、我が国としては、我が国として何ができるかということをやはり考えるということではないかと思います。

下地委員 九・一一のテロで、私たちの国も二十四人のとうとい命も亡くなりましたね。そのことも、私たちはこれからもテロの撲滅に対して物すごく頑張らなければいけないし、シーレーンの問題も、私たちは十分に日本の経済を考えたらしっかりとやらなければいけないと思うんですけれども。

 私がこう申し上げるのも、やはり外交なんですよ。先ほどの北朝鮮のテロ国家指定の解除、アメリカのためにやっているわけじゃないと言うけれども、やはり外交というのは必要じゃないでしょうか。

 やはり、税金を使ってやる、さまざまなことをやっても、私たちの国民の七〇%が、今は北朝鮮に対してテロの解除をやってもらいたくない、拉致問題が解決しなきゃだめだ、核もミサイルも拉致も、三点セットでやってもらいたいという気持ちが強い中、アメリカはこれを解除してやったというふうなことなんかを考えると、私がこういうふうに極論みたいな話をするのも、絶えず外交は、みずからの思いを通しながら物事をやっていくとなると、アメリカの外交で一番今私たちが必要なのは、これも必要ですけれども、北朝鮮の拉致問題に対して、この拉致の方々の思いをしっかりと伝えるという意味では、今度のアメリカの決断は、私は申し上げましたけれども、納得できないというふうに思っております。

 そういう意味では、日米安保条約が全部が万能主義でなくて、絶えず自分の考え方を言って、日本の外交に向こうも巻き込むというような結果を出していくことが必要で、オバマさんがこれだけアフガニスタンに力を入れたいと言うんだったら、そういう外交姿勢もあってしかるべきじゃないかというのが私の考えですけれども、その件に関していかがですか。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げませんでしたけれども、九月だったと思いますが、オバマ候補も日本の海上の補給支援活動に対する評価を述べておられるようでございます。

 外交が、北朝鮮問題、大事なのはもう言うまでもございません。六者会合あるいは日米協議等々を通じて、我々も、今回の米朝協議にかかわるいろいろな交渉のことにつきまして、米国に対しましても我が方の考え方も述べたところでございます。

 以上です。

下地委員 この問題に関しては終わりますけれども、これからアメリカと外交をするときに、みずからの考え方がしっかりと通るようなさまざまな協力も私どももしなければいけないことはやぶさかでありませんから、しっかりとやってもらいたいというふうに思いますね。

中曽根国務大臣 これはもう報道もされておりますけれども、今回、そういう外交的な努力といいますか、当然といえば当然でありますが、そういう中の一つの成果といいますか、あらわれとして、米国側も、この拉致の問題に対する重要性、また、この問題を共有しているというような発言が、これはブッシュ大統領、ライス長官、また大使を初め各層から、また一昨日はアラブ首長国連邦での会議でネグロポンテ副長官からも述べられたということを御報告しておきたいと思います。

下地委員 これは、コメントじゃなくて、今テロ解除をやるべきじゃないんですという日本の思いだということを、向こうがどういうふうにコメントしたかというんじゃなくて、やるべきじゃないということをまず私たちは認識すべきだと思います。

 それと、二つ目ですけれども、今、サブプライムローンで物すごくアメリカの経済も厳しくなっていますね。世界の金融機関がこの数年間で百四十三兆円ぐらいの損失をするのではないかとか、日本においても、家計において投資家は百二十兆円ぐらい目減りをするのではないかとか、さまざまな統計数字が悪くなっているんですね。

 それで、アフガニスタンに、二〇〇一年から二〇〇八年まででアメリカは十六兆円投下をしておりますね。そして、二〇〇三年から二〇〇八年まで、イラクに対して六十兆円の投下をしております。そして、人道支援でも、二兆六千億円をアフガニスタン、そして二兆円をイラクにやっているわけなんです。

 こういうふうにして、相当な政策をやってきたわけでありますけれども、そして今回のこの金融危機でアメリカは七千億ドルの投資を行って、総額十二兆円の減税も行うというふうに、莫大な資金をこういう金融危機の回避のために使っていくというふうなことになっているわけです。

 しかし、アメリカの税収は今もう最高潮に達しているんですね。今、アメリカの税収は大体百六十兆円ぐらいあります。これは今までのアメリカの中で最高の水準で税収が集まって、この背景があってこのような戦闘に対しても膨大なお金を使っているというふうなことになってくると思うんですけれども。

 こうして今、金融危機と経済不況と同時に起こる可能性がある、税収もなかなか来年度から厳しくなるんじゃないかというふうに言われる中で、この金融危機とアフガニスタンやイラクに対する支援という関係をこれからどういうふうに官房長官は予測しているのか、少しお願いします。

河村国務大臣 北海道の洞爺湖サミットにおいてG8が声明を出しまして、テロリズムが依然世界の最高の脅威であるということが全会一致でなされております。それだけ世界の首脳はこの問題を重要視していることは間違いない。

 しかし、現実問題として、金融危機が世界を襲ってきている現状がありますから、この影響はどういうふうになるかということは今ここで一概に言うのは難しい話かと思いますけれども、しかし、継続的にテロリズムを排除するという崇高な考え方というのはこれからも世界協調してやっていかなきゃいけないことでありますから、この考え方は恐らく、大変だけれども、私はアメリカとしても下げるわけにいかないものであろう。

 先ほど、両候補の演説といいますか公約等の中に、オバマさんは自分が政権をとったら十億ドル毎年供与するというようなことを公約にしておられると今ちょっとありましたけれども、私は、その姿勢はアメリカとしては変わらないものではないか。ましてや、日本においても、これまでやるべきことをやってまいりましたし、テロとの闘いの一翼を国際社会の中で担っておりますから、この姿勢を崩すわけにいかない、これは国際貢献の一つの大きな役割だ、こういう考え方に立っておりますから、予算編成等々いろいろありますけれども、この方針は貫いていく、こういうことであります。

下地委員 金のなる木を全部の国々が持っているわけはないので、やはり経済の安定が医療や福祉やこういう安全保障に関しても大きな役割を担うというのは認識論としてはみんな一緒だと思うんですね。気持ちはある、お金も出してもいい、やりたい、テロの撲滅もやらなければいけないというのはあるけれども、経済がこれだけ混乱してくると、どこを優先するのかというふうなことになってくると、こういうような問題に関して消極的になりかねないところがあるというふうな不安は持つべきだと私は思うんですよ。

 それで、やはりこういうぐあいになってくると、集中的に物事に優先順位をつけてやるというのが大事じゃないかと思うんですね。あれもこれもと、もうできなくなってくる。だから、オバマさんが言っているように、イラクは少しトーンダウンしながらもアフガニスタンに力を入れてやるというのは一つの戦略だ。今まで六十兆円使っているんですから。それを少し減らしながらアフガニスタンに力を入れていくというのは必要だと思うんですけれども、日本も今の考え方と同じように、どこかでシフトしながら集中してアフガニスタンをやる。

 そういう意味で、ODAの予算が今一千四百億、今まで給油が八百十七億円というふうな数字になっていますけれども、今後は、この法案は私たちがどうこう言っても通るわけだからいいですけれども、今後の話をして、どういう方向に日本は力を入れてテロの撲滅をやった方がいいと官房長官はお考えなのか、少しお教えいただきたいと思います。

河村国務大臣 日本が世界の平和のために貢献していくということ、これは極めて大事なことであります。

 中でも、イスラム共和圏とはいいながらも、アジアの一角にあるアフガニスタンの問題というのは、日本にとっても大事なテーマであります。したがいまして、今、下地先生がおっしゃるように、ここへ集中的にやるというのは一つの外交戦略としてあり得ることだと思います。

 先ほど来の議論の中にもありましたが、これから和平という動きも出てくるのではないか、こういう話もありましたけれども、その中で日本がもっと主導的な立場はとれないのか、こういう御指摘もあったわけでございますが、日本は日米安保条約を基軸とした外交を続けておるわけでありますから、もちろん日米関係も大事にしながら、しかし、アジアの国の一角として、このアフガニスタンあるいはパキスタンを含めての平和構築、このことも外交の中でしっかり考えていく、これはこれからの日本の外交戦略の中の一角に当然入ってくる課題であろう、このように思っております。

下地委員 無駄を省いて効率のいいやり方をして、優先順位をつけて外交をしていくというのが大事だというふうに思うんです。

 そこで、私、一個だけ提案させていただきたいんですね。

 これは、沖縄の基地の問題で今論議しておりますけれども、沖縄の基地の問題で優先順位をつけると、一番大変なのは、普天間基地の危険が一番大変なんです。その次は嘉手納の騒音が大変なんですね。その次に八千人の海兵隊がいるというふうなことを言っておりますけれども、今回の米軍再編では、三番目の八千人の海兵隊の移動をグアムに行うというのが一番目になっているんですね。

 大臣もおわかりだと思いますけれども、海兵隊の遠征部隊というのは年間百一回遠征に行くんですよ。実際は沖縄には余り存在しないんです、この人たちは。タイへ演習に行ったりフィリピンへ行ったりとさまざまやりますから、一番沖縄にいない人たちの移動費を、グアムにやるということで予算をつくるわけなんですね。

 これで大体六千億のお金がかかる。その住居をつくるとかなんとかで四千億かかるというふうに言っておりまして、この辺の予算から見直す。この四千億がありますね。それで、辺野古に埋め立てして基地をつくるとなると、今の新聞報道では三千四百億になりますから、これで七千四百億ありますね。この二年間、十年間で、北部の振興費というだけで落ちたお金が三千八百億ありますから、これらで一兆円を超えましたね。全部やって、十三年間、一ミリも動いていないわけです、役所の人がもういろいろな答弁を準備しているかもしれませんけれども。

 私が申し上げたいのは、この普天間の危険の除去は、嘉手納基地にどんと入れればいいんですよ、嘉手納基地に。二十三機のヘリコプターを嘉手納基地の中に入れて、それでこの物事をやったら、三千四百億の埋め立てのお金が浮いてきますね。これをアフガニスタンへ回したらどうですか。これが効率よくです。

 そして、嘉手納に今いる戦闘部隊が、二つの部隊がいますけれども、大体嘉手納には六千人しかいませんから、このF15の戦闘部隊をグアムに一個移してやると、この嘉手納は、離発着で年間七万回ありますけれども、嘉手納のF15の離発着は三万回しかありません。あとの三万回は航空母艦ですよ。航空母艦の離発着をグアムに移して、あと半分をやったら一万五千回。その普天間のものを持ってきても、普天間の三万回もなくなって、嘉手納だって三万回になるんです。これをやるとお金も浮きますし、両方、その騒音もなくなります。そういうふうなことをやると、お金が浮いてきて集中的に物事ができるのではないかなというふうに思うんです。

 二〇〇二年の七月六日に当時の麻生政調会長が来て、十五年使用期限をつけて一兆円も使う話は国民が冗談言うなと思う、理屈に合わないんじゃないかと言って、その辺野古の埋め立てのことを言いました。今は総理大臣をやっているからそんなこと言わないと思いますけれども。しかし、心の中では、やはりしっかりとした安全保障をやるには無駄を省いてやる。沖縄に関しても、これだけの予算を使わなくたって十分なんです。だから、そういう意味でも、私は、工夫が必要ではないかなということを申し上げたい。

 このテロ特措法案の給油の問題を、ただ延長というだけでなくて、今のアメリカの考え方もしかり、金融政策もしかり、しかし、私たちは、国際社会の中でこの応援をしていかなきゃならない、国際社会の中で貢献する役割があるとなると、やはり日本の中で無駄に使われるような予算があったらしっかりと削って、こういうところに回したらいいんですよ。だれも文句は言いません。世界が喜ぶと思いますよ。

 だから、この米軍再編も、もう一回効率よくお金がかからないようなやり方でやっていくと相当評価されるんじゃないかなというふうに私は思っておりますから、最後に、官房長官のお話を聞いて、外務大臣のお話を聞いて、そして防衛大臣の話を聞いて終わりたいと思います。

河村国務大臣 税金からお預かりしているお金をいかに有効に使うか、これを外交戦略にどう生かすかという非常に大事なことだと思います。御指摘のとおりだと思います。

 ただ、今、米軍再編についておっしゃいました。これは現時点で、一昨年、普天間飛行場代替施設の建設と海兵隊のグアムへの移転と土地の返還、訓練移転と、これはパッケージとして今アメリカと合意を進めているということは御存じだと思います。

 対応については防衛省が直接的にやっておられますし、また、必要な予算措置は予算編成過程で詰めていくことになるわけでございます。

 政府としても、多くの在日米軍施設や区域が存在する沖縄の負担を軽減するんだということ、これは重要な課題でありますから、地元の皆さんとも誠意を持って協議をしていかなきゃならぬ。特に、普天間飛行場の代替施設を建設して海兵隊のグアム移転につなげていく、これが方針でございますので、よろしくまた御協力のほどお願い申し上げます。

中曽根国務大臣 官房長官がおっしゃったことと同じ考えでありますが、抑止力を維持するということと、それから地元の負担軽減を図るというこの二つが非常に重要であることは言うまでもありません。

 そういう点が実現できるように米軍再編を進めていきたい、そういうふうに思っております。

浜田国務大臣 防衛省としても、ロードマップに沿って合意をしておるわけでございますし、それに対してワーキングチームをつくって今作業をしているところでございますので、沖縄の皆さんの御意見を聞きながらしっかりと対処していきたいというふうに思っております。

下地委員 沖縄の気持ちとミスマッチになっていて、このミスマッチが税金の無駄遣いをつくっているんですね。効率よくやりましょうよ、効率よく、こだわらずに。もう十三年たっていますよ。十三年たってできないものはもう一回見直すのが普通の考え方。それでお金がかかるんだったら国民から文句も言われますけれども、一兆円ぐらい浮いてきますからね。国家のためになると思いますから、かたい頭じゃなくてやわらかい頭でぜひお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

深谷委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。

後藤田委員 私は、自由民主党を代表して、政府提出のテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案には賛成の立場から、民主党提出の国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案には反対の立場から討論を行います。

 平成十三年九月十一日にアメリカにおいて発生したテロ攻撃は、日本人二十四名を含む二千九百七十三名ものとうとい人命を奪うとともに、世界の平和と安全に対して大きな衝撃と脅威を与えました。これを受けて、国連安保理は、その決議第千三百六十八号により、全会一致で国際的なテロリズムの行為を非難し、国連のすべての加盟国に対して、その防止などのために適切な措置をとることを求めたのであります。

 その後、国際社会は、国際の平和と安全の確保のため、長く険しいテロとの闘いに取り組んできました。国際社会のテロとの闘いは依然として継続しており、四十カ国以上の国々が一千人近い犠牲者を出しながらも、アフガニスタンでのテロ対策への取り組みを強化しております。我が国も、その国力にふさわしい取り組みを主体的かつ積極的に実施してまいりました。具体的には、ODAを活用した十四・五億ドルにも上る対アフガニスタン復興支援の実施などとともに、旧テロ対策特措法及び本年一月に成立した補給支援特措法に基づき、海上自衛隊艦船をインド洋に派遣し、海上阻止活動に従事する各国艦船に対する給油、給水活動を実施しています。

 我が国の自衛隊艦船によるこの補給支援活動は、九月に全会一致で採択された国連安保理決議第千八百三十三号等にも示されているように、国際的に高く評価され、活動の継続が強く期待されています。

 現行の補給支援特措法の期限は、来年一月十五日までとなっております。昨年は、旧テロ対策特措法が失効したことから、海上自衛隊艦船は補給支援活動を中断せざるを得ませんでした。しかし、今回も我が国がテロとの闘いから脱落してしまうわけにはいきません。

 我が国はODAを活用した復興支援にも取り組んでいるところでありますが、これをもって海上阻止活動に代替できるものではなく、実際、国際社会では、各国とも、車の両輪ともいうべき部隊派遣と復興支援の双方を実施してきております。

 テロとの闘いは、我が国自身の問題でもあります。我が国として、引き続き国際社会の責任ある一員として積極的かつ主体的な取り組みを継続すべきことは明らかであり、インド洋における補給支援活動を継続するための政府提出の法案を成立させる必要があります。

 一方、民主党からは、対案として、国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案が出されました。

 この対案では、自衛隊が行うものも含めて、人道復興支援活動については、抗争停止合意が存在することや、住民の生命もしくは身体に被害が生じることがないと認められること等、実現困難な条件を設けており、事実上、自衛隊を初めとする人道復興支援活動は行えないものとなっております。

 しかしながら、現地では、大使館員や邦人援助関係者など約百四十人の日本人が人道復興支援活動などを続けております。また、同大使館員一名については、NATO・PRTと連携して、我が国草の根・人間の安全保障無償資金協力の円滑な実施のため、NATO文民代表部への連絡調整員として活躍しております。

 また、民主党の対案では、海上阻止活動への参加の検討には国連総会決議または安保理決議が必要であるとしていますが、同活動の実施のために、国際法や憲法との関係で国連総会決議または安保理決議が必要というわけでは全くありません。

 このように、民主党の対案では、我が国が実際に自衛隊を派遣し、テロとの闘いに参加するとの判断をすることは困難であり、また、現地で既に行われている人道復興支援活動の実情にも即さないものであり、本案に賛成することはできないと考えております。

 以上をもちまして、政府提出のテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案について賛成の立場から、民主党提出の国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案には反対の立場からの討論を終わります。(拍手)

深谷委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の補給支援特措法改正案について反対、民主党・新緑風会・日本提出のいわゆるテロ根絶法案について賛成の立場から討論いたします。

 民主党は、第百六十八回臨時会において政府提出の補給支援特措法案を審査した際、まずは旧テロ特措法に基づいて自衛隊が行ってきた六年間の活動の検証が不可欠であると考え、政府に対して、海上自衛隊が給油を行っている日時、場所、燃料の調達先など情報公開を求めましたが、政府の資料開示は甚だ不十分であり、真実を隠ぺいしている疑惑を払拭できていません。

 また、ことし六月に政府がアフガン本土に調査団を派遣したことも当初は認めず、その概要すら明らかにされておりません。

 油の転用問題について、政府は、自衛艦が給油したアメリカ艦船がイラク作戦に参加することはないと説明していましたが、その後、不朽の自由作戦に従事していればほかの任務を行っていても問題はないと答弁を変更し、テロ対策特措法違反が行われていた疑惑が一層深まったため、失効したテロ対策特措法に基づく補給支援活動に限定して継続するとした補給支援特措法案にも反対をいたしました。

 当時も政府は、我が国が提供した油の転用は生じないと断言しましたが、アメリカ国防総省が説明したように、アメリカ艦船が複数の任務につくこともある以上、今後も転用が続くとの懸念が残ったままでありました。

 先週金曜日に始まった本委員会の質疑においても、海上自衛隊が補給する対象艦はテロ対策海上阻止活動の任務を負っていれば他の任務を負っていても構わないとの政府答弁があり、しかも、一年ごとにその延長につき国会で審議することによって国会による文民統制が維持されるといいながら、政府は、海上自衛隊がどの艦船に補給したかについては情報提供を拒否する姿勢を貫いています。

 民主党は、政府が国民に説明できないような自衛隊の活用を目的とする補給支援特措法は直ちに廃止すべきであると考えます。

 アフガニスタンはテロの主戦場と言われています。しかし、これは、米国におけるいわゆる同時多発テロ攻撃が発生する以前にはそのような状態にはありませんでした。アメリカが主導し、今なお継続中のOEFと略される不朽の自由作戦が招いた悲劇であります。

 民主党は、アフガニスタンにおけるテロを根絶していきたいという思いを強く持っており、そのために何が必要かという観点から本法案を提出しました。我が党は、インド洋での給油を含め、OEFによる武力攻撃はテロの根絶に直接的にはつながらない、テロの根絶のために必要なことは、アフガニスタン国内での和平努力と国家の再建支援、そして人道復興支援であると考えます。カルザイ政権もようやく、戦闘ではテロに勝てないという教訓を得、交渉による和平実現を目指す喜ばしい努力を始めました。

 本法案は、アフガニスタンにおいて武装集団が行っている不法な抗争を停止し、その停止を維持する旨のアフガニスタン政府と当該武装集団等との間の合意が形成されるよう支援するほか、アフガニスタン国内における安全及び安定の回復に資するための措置を講ずるとともに、アフガニスタン国民の生活の安定と向上に向けた自主的な努力を支援することとしております。我が国がアフガニスタンの復興支援を通じて国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに寄与し、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とするものであります。

 民主党は、アフガニスタンにおいて、国土の荒廃に加え、水不足により干ばつが広まり、農地が失われ、貧困に絶望し、あるいは誤爆によって家族を失った遺族が自爆テロを志願する連鎖を終わらせなければ、テロ根絶は不可能と考えております。ただ漠然と給油活動を継続するのではなく、真の和平実現のために、アフガニスタンの安定、復興に向けた民生・人道支援を行うことが日本の役割であります。

 こうしたことを踏まえて、民主党案は、油よりも水を、銃よりもスコップをとのコンセプトのもと、かんがい、インフラの整備に重点を置いた内容としております。

 民主党案は、真のアフガニスタンにおけるテロ撲滅にとって最高、最良の案であるということを強く表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)

深谷委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出のテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成、これに対する民主党提出の国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案に反対の立場から討論を行います。

 七年前に米国で起きた同時多発テロ事件では、日本人二十四人を含む二千九百七十三人ものとうとい人命が一瞬にして奪われました。そして、現在も多くの罪のない一般市民を巻き込む無差別テロが世界各地で頻発しており、テロが国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威であることは明白です。

 今も国際社会は一致団結し、引き続きテロとの闘いに立ち向かっております。そのテロとの闘いの中核は、アフガニスタンを再びテロの温床としないための取り組みであり、同国におけるテロとの闘いには四十カ国以上が部隊を派遣、最近では約一万人以上の要員が増派されるなど、各国は取り組みを強化して、とうとい犠牲を出しながらも忍耐強く活動を続けています。

 我が国もこれまで、旧テロ対策特措法及び補給支援特措法を速やかに制定し、テロとの闘いに主体的に取り組んでまいりました。日本から遠く離れたインド洋で各国が行うテロ対策海上阻止活動を下支えする補給支援活動は、国際社会の責任ある一員として我が国が現時点でなし得る安全で現実的なテロとの闘いへの取り組みです。

 海上阻止活動により、テロリストの資金源となる麻薬の大量押収や、テロリストの移動や武器の流出の阻止など、国際テロの抑止に効果を上げるだけでなく、結果として、輸入原油の約九割を中東地域に依存する我が国にとって、海上交通路の安全確保にもつながり、さらに海賊対策にも寄与しています。

 昨年十一月一日、旧テロ対策特措法の失効に伴い、海上自衛隊は一たん撤退しました。その際、国際社会がこぞって残念との反応を示し、再開への期待が表明されました。まさに、補給支援活動が諸外国から高い評価を得た国際貢献策であることの証左であると考えます。

 次に、民主党案について、主な問題点を指摘させていただきます。

 まず、インド洋での補給支援活動が憲法違反と述べられている小沢一郎民主党代表の見解と、旧テロ対策特措法及び現行の補給支援特措法の法律の枠組み自体は憲法違反ではないと判断される法案提出者の見解が全く異なることが、当委員会の審議で明らかになりました。

 憲法解釈や外交・安全保障政策という国の基本に関する問題に関して、党内不一致であいまいな状態の中で出されてきた法案であるということを指摘せざるを得ません。

 次に、法案の内容については、民主党案では、アフガニスタンへの派遣条件を、「抗争停止合意」「住民の生命若しくは身体に被害が生じることがないと認められる地域」としていますが、テロリストのアルカイダやタリバンとの抗争停止合意が成立する地域、住民への被害が生じない地域を今のアフガニスタン国内に見出すことなど現実的ではなく、民主党は実施不可能な法案を提出したと言わざるを得ません。

 また、民主党案では自衛隊の武器使用基準を拡大していますが、今後、憲法解釈を含め、慎重に議論されるべき重要課題であると考えます。

 以上、民主党案の問題点を指摘し、反対を表明します。

 我が党が標榜する行動する平和主義の観点からも、アフガニスタンに対して、引き続き補給支援活動とODAを通じた人道復興支援を車の両輪として取り組むことが、我が国が行うことができる現時点における現実的な取り組みであると申し上げ、私の討論といたします。(拍手)

深谷委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の新テロ特措法延長法案に反対、民主党の対案に反対の立場から討論を行います。

 そもそも、アメリカの報復戦争支援のため、自衛隊をインド洋に派遣し、アフガニスタンへの空爆を含む軍事活動を行う米軍艦船などへの給油活動を行うことが憲法九条に真っ向から反するものであることは明らかです。その活動をさらに一年延長するなど、断じて許されません。

 現在の法律は、昨年、参議院選挙の審判を受け、衆参で三カ月近い審議を行い、最後は、政府・与党が衆議院の三分の二の多数で再可決までして押し通した法律です。

 ところが、今回、与党と民主党の合意で、本会議での趣旨説明、質疑を省略し、本委員会での質疑もわずか二日で採決しようとしています。解散をめぐる駆け引きで憲法九条にかかわる重要法案の審議をないがしろにするなど、到底許されません。強く抗議します。

 今アフガニスタンで問われているのは、軍事力でテロをなくすというこれまでのやり方を根本から転換し、軍事から政治への切りかえを行うのかどうかです。

 アメリカによる報復戦争開始から七年、アフガニスタン情勢は年々悪化し、今最悪の事態に陥っています。国連事務総長は、ことし九月、治安情勢は著しく悪化し、八月の治安事件数はタリバン政権崩壊以降最多と報告しています。国際人権団体も、米軍の空爆による犠牲者が急増し、アフガン国民の反発を招いていると指摘しています。米軍の掃討作戦が新たな憎しみと暴力を生み、さらなる情勢悪化を招く悪循環に陥っているのです。

 戦争でテロはなくせない、この事実ははっきりしたのであります。

 だから今、アフガニスタンのカルザイ大統領がタリバンとの政治的和解を呼びかけ、交渉が開始されています。イギリス軍の現地司令官が軍事的な勝利は不可能として政治的解決を求め、国連の現地特別代表も、今必要なのは軍の増派ではなく政治の増派だと強調しているのです。

 政府は、各国が軍を増派するときに日本だけ撤退する選択肢はないと言いますが、こうした国際社会の変化を全く見誤ったものと言わなければなりません。アメリカ言いなりで活動を継続するのはもうやめるべきです。アメリカの要求に応じて新たな戦費負担まで検討するなど、もってのほかと言わなければなりません。

 この間、自衛隊の海外活動が本来任務に位置づけられ、米軍再編計画が進行してきました。このもとで、海上自衛隊のイージス艦「あたご」による漁船清徳丸への衝突事件、海上自衛隊特別警備隊の徒手格闘訓練での死亡事件など、防衛省・自衛隊にかかわる事件が繰り返されていることは重大です。

 昨年の審議の際にも、海上自衛隊による給油隠ぺい疑惑、守屋前防衛事務次官の軍事利権疑惑など、法案審議の前提が問われました。政府は防衛省改革を繰り返しますが、防衛省・自衛隊の軍事優先、腐敗隠ぺい体質は全く変わらないどころか、ますます深刻の度を深めていると言わざるを得ません。言語道断であります。

 最後に、民主党の対案は、アフガン本土への自衛隊派遣、自衛隊海外派遣恒久法の早期整備を盛り込むなど、憲法違反は明白であり、反対であります。

 以上、新テロ特措法延長法案はきっぱり廃案にし、自衛隊はインド洋から直ちに撤退するよう強く求め、討論を終わります。(拍手)

深谷委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 ただいま議題となりました内閣提出のテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに民主党提案の国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案の両案に対し、反対の討論を行います。

 二〇〇一年十月にアメリカ・ブッシュ政権がアフガニスタンを攻撃してから既に七年余がたちました。九・一一テロに対する自衛として始まったアフガン戦争、不朽の自由作戦は、今日もなおビンラディンやオマル師の所在も知れず、タリバンの勢力も復活し、治安はますます悪化しているのが現実です。

 九・一一テロを上回る犠牲者を生みながら、数多くのアフガン民衆を巻き添えにしながら、一体何のために戦争を続けているのか。そもそも、テロリストを逮捕して罰するために本当に戦争以外の選択肢がなかったのか、大いに疑問であります。米国の対テロ戦争は、テロの危険を減じているのではなく、この戦争自体が新たなテロリストをつくり出し、世界を不安定にしているということを強く申し上げたいと思います。

 我が国は、開戦後間もなくテロ対策特措法をつくり、不朽の自由作戦に参加する艦船等に対して給油を行ってきましたが、この法律が当初期限二年の時限法としてつくられ、その後、二年、一年、一年と延長してきたこと自体がアフガン戦争の失敗を物語っています。昨年は野党の反対で法の延長ができず、この補給支援法となりましたが、多くの非戦闘員の犠牲を生むアフガニスタンへの空爆などを強化しながら毎年毎年さらに延長していこうというのでしょうか。

 ブッシュ政権が間もなく終わろうとする今こそ、米国の対テロ戦争を検証し、これへの協力を見直す好機なのであります。また、隣国のパキスタンの政情不安も予断を許さぬ今日、タリバン勢力を含めた和平のテーブルづくりは喫緊の課題となっています。

 そもそも、昨年の補給支援特措法の審議に当たってさまざまな問題が表面化し、議論されました。特に、自衛隊が給油した燃料のイラク戦への転用疑惑、給油量の取り違えや航泊日誌の誤廃棄など、情報隠ぺいの疑惑が次々と広がり、給油活動に直接かかわる問題について多くの問題が指摘されながら、十分に解明されることなく、しかも参議院で否決された法案を衆議院の三分の二で再議決するという奥の手を使ってまで強引に成立させたものです。

 今回の法案には、それらをきちんと総括する視点は全く見られず、給油された燃料の使途も、交換公文で海上阻止活動が約束されれば、それ以外の作戦への流用を否定せぬままに、その検証方法も明確ではないのです。

 加えて、この間、江田島の第一術科学校での三等海曹の死亡事件を見ても、その非公開性、隠ぺい体質も含めて、自衛隊そのものの中に人権意識が極めて希薄と言わざるを得ない実態が明らかになりました。平和憲法を守り、人間の安全保障を構築しようとする我が国にとっては極めて危機的な状況です。

 アフガニスタンの地で、大地を緑にすべく渾身の努力のさなかに亡くなられた伊藤和也さんの死を無駄にすることなく、テロの根絶のために日本が果たすべき役割、平和国家としての理念に即した役割をいま一度原点に立ち戻って実践すべきと考え、政府案には反対いたします。

 なお、民主党案については、まず停戦合意を第一にするという指摘を評価しつつも、現段階でのISAF、PRT等の活動への評価、また、国連による軍事活動と自衛隊派遣についての見解等において相違があり、反対といたします。

 以上をもって反対討論といたします。(拍手)

深谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより採決に入ります。

 まず、第百六十八回国会、参議院提出、国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

深谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十三分散会


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