衆議院

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第6号 平成16年4月21日(水曜日)

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平成十六年四月二十一日(水曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩永 峯一君

      江崎洋一郎君    遠藤 利明君

      大村 秀章君    佐藤  錬君

      菅原 一秀君    田中 英夫君

      谷  公一君    谷川 弥一君

      中西 一善君    仲村 正治君

      蓮実  進君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    森岡 正宏君

      山口 泰明君    大畠 章宏君

      奥村 展三君    川端 達夫君

      末松 義規君    田嶋  要君

      武正 公一君    中川 正春君

      中村 哲治君    長島 昭久君

      長浜 博行君    楢崎 欣弥君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  貞岡 義幸君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   松谷有希雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  小林 誠一君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  清水 英雄君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長)        荒木喜代志君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       上田  茂君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  植竹 繁雄君     岩永 峯一君

  塩谷  立君     谷川 弥一君

  岩國 哲人君     田嶋  要君

  鎌田さゆり君     中村 哲治君

  中川 正春君     長浜 博行君

同日

 辞任         補欠選任

  岩永 峯一君     植竹 繁雄君

  谷川 弥一君     塩谷  立君

  田嶋  要君     岩國 哲人君

  中村 哲治君     鎌田さゆり君

  長浜 博行君     中川 正春君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官大石利雄君、内閣官房内閣審議官貞岡義幸君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛参事官松谷有希雄君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長小林誠一君、総務省郵政行政局長清水英雄君、消防庁次長東尾正君、外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長荒木喜代志君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君、外務省条約局長林景一君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官上田茂君及び海上保安庁長官深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森岡正宏君。

森岡委員 自由民主党の森岡正宏でございます。

 二、三、質問をさせていただきたいわけでございますが、まず最初に、この間、イラクで日本人が五名拘束された事件、これにつきまして、私は、多くの教訓を与えていただいたような気がするわけでございます。

 その一つが、公と個人というものをどう考えるのか、国家と国民は対立しているものなのか、それとも一体のものなのか、そういうことを私はこの事件を通じて感じました。というのは、政府が退避勧告を再三やっておったにもかかわらず、今、渡航禁止をどうするんだということが検討されているようでございますけれども、このことにつきまして、いろいろな議論があるわけでございます。

 今回、本委員会で審議されております国民保護法制について、国民の協力ということが第四条にうたわれているわけでございまして、その第四条の二項に、さらに、「強制にわたることがあってはならない。」とも書いてあります。

 例えばスイスなどでは国民の義務として民間防衛体制を確立しているということを聞いております。国を守るということについて、国家の防衛力と並んで民間防衛の努力による国民の強い防衛意識を表明するということは大変な抑止力になるんじゃないか、私はそう思うわけでございます。

 例えば、警報を発する、避難の指示に従わない国民がいるとする、そういうときに、強制措置が必要じゃないか。自治体は「責務」と書かれてある。個人は「協力」と書かれてある。私は、何度もこの議論が本委員会でもあるわけでございますが、どうしても腑に落ちないわけでございまして、やはり国民の義務と。

 日本国憲法に国民の義務ということは少ししか書かれていなくて、権利権利ということばかり書かれておるものですから、余りにも個人の権利に気遣いをし過ぎているんじゃないかなというふうに思えてならないわけでございまして、この点につきまして、井上大臣の御感想を伺いたいと思います。

井上国務大臣 武力攻撃事態対処法の審議におきまして、今委員が言われましたことが議論になったわけでございます。義務化すべきだ、国民の協力を義務として規定すべきだという意見もありますし、それは行き過ぎだ、協力でいいという議論もあったわけでございますけれども、武力攻撃事態対処法の中では、「国民の協力」ということで、これは武力攻撃事態対処法の八条でありますけれども、「国民は、」「必要な協力をするよう努める」、そういう規定に相なったわけでございます。したがいまして、今回の国民保護法案におきましても、それを踏襲いたしまして、国民の協力は義務としないで協力を要請する、こういうことになっているわけでございます。

 ただ、武力攻撃事態等は本当に国家が危機に瀕したときでありますので、そういう事態におきましては、国民の協力も得られるものと思いますし、あるいは、ふだんの意識の啓発とか訓練を通じましてそういった協力体制ができるものと我々は期待をしているわけでございます。

森岡委員 自治体の中には妙な知事さんも最近出てきておりますし、個人だって、先ほど私が言いましたように、警報とか避難の指示に従わない、こういう人が出てきたときにどうするんですか。

井上国務大臣 これは、警察なり消防を通じまして避難の指示に従うように努力をするということは当然でありますし、また、必要な場合には警察あるいは消防の力をもって避難をさせるということもあり得ると思うのでありますが、しかし、やはりそれぞれの個人の生命とか身体に関係があるわけでありますから、そういった場合にはそれぞれの個人が避難に協力していただける、こんなふうに考えるわけであります。

森岡委員 今の大臣の御答弁では、ちょっと私は不満なんですね。それじゃ、第二項の「強制にわたることがあってはならない。」というような文言はもう要らないんじゃないでしょうか。

井上国務大臣 これも本法のときに大変議論になった点でございまして、特に配慮する規定といたしましてこれを規定したわけでありますけれども、往々にして、過去の歴史的な事実からそれを懸念する向きもありますので、念のためにそういう規定を置いた、こういうことであります。

森岡委員 この件についてはどうも平行線のようでございますが、私は、政府までが国家と国民というものが対立しているんだというような意識に本当にやられてしまって及び腰になっているんじゃないか、法案をつくるときまで及び腰になっているんじゃないか、そんなふうに思えてならないわけでございます。ぜひしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 次に、ジュネーブ条約についてお尋ねをしたいと思います。

 昨年、いわゆる有事関連三法が衆議院を通過した日でございましたが、私のところへ祝電が参りました。初代の内閣安全保障室長を務められた佐々淳行さんからでございました。三矢研究以来、私は四十年待ったんだ、本当に感涙にむせんでいるんだ、どうもありがとうと、私のところへまで祝電が来ました。私は、本当にその祝電を見ながらじいんときたんです。

 我が国が、一九五三年にジュネーブ諸条約に加入しながら十分な国内法整備をしてこなかった。また、一九七七年の追加議定書についても、これまで締結することができなかった。これは、その背景に、これらの条約の実施のために必要な国内法が有事立法に属するものだということで今日までずるずると来たんだろうと思います。

 例えば、武力紛争の際の傷病兵の保護、捕虜の待遇、文民の保護、こういうことがあるからだと思うんですが、私は、佐々淳行さんの言葉をかりるまでもなく、野党第一党の民主党の皆さん方も賛成をしていただいて、ようやく、有事法制が整備される、そして、ジュネーブ諸条約の国内法整備そして追加議定書の締結が現実のものとなってきたことは非常に喜ばしいことだというふうに思っております。

 ここまで来るのに半世紀かかっているわけでございますが、政府の考え方をお伺いしたいと思います。外務副大臣、お願いします。

逢沢副大臣 今委員御指摘のように、ジュネーブ諸条約につきましては、我が国が一九五一年にサンフランシスコ平和条約に署名した際、同条約の効力発生後一年以内に加入することを宣言したという経緯がございます。

 しかし、今委員御指摘のようないわゆる有事法制については、戦後の政治状況の中で、本格的な議論が先送りをされてまいりました。いわばタブー視され、そのことに触れたくても触れられない、そういう政治状況が事実上あったというふうに私ども承知をいたしております。

 しかし、昨年成立をいたしました武力攻撃事態対処法におきまして、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。」というふうに規定されておるところであります。

 今般、事態対処法制の整備に当たり、ジュネーブ諸条約を含む国際人道法の的確な実施を確保した国内法制の整備を行うこととしたわけであります。そして、私どもが大切に考えておりますことは、国際人道法の理念の基本は、武力紛争という極限の状況においても犠牲者を保護する等の法規範を遵守することにより紛争の惨禍をできるだけ防ごうとする、その理念にあるというふうに考えております。

 我が国がジュネーブ諸条約追加議定書を締結し、ジュネーブ諸条約及び追加議定書を実施するための国内法の整備を行うことは、そういった観点に照らせば、我が国国民の生命、身体及び財産の保護に資するとともに、国際社会における国際人道法の発展を促進する、そして我が国の国際的な信頼性を高めるとの観点からも意義があるというふうに承知をいたしております。

森岡委員 ぜひ、これは大事な問題でございますので、本委員会でも早く審議をして成立させていただきたいものだと思っております。

 次に、私は領土問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 竹島について、昨日、民主党の末松委員の御指摘がございました。私も、この竹島の現状を考えましたときに、武力占領されている状態じゃないかと。武力攻撃事態とどう違うのか。どういうふうに受け取ったらいいのか。

 韓国の海軍が占拠している状態、これが長く放置されている。その気になれば、これはあってはならないことでございますけれども、フォークランド紛争のようなことが起こりかねない。韓国政府は、実効支配していることが領有権を主張する核心要件だ、こういうふうにはっきり言っているわけです。自衛権が行使される三条件に該当すると読めないことはないんじゃないか。

 私は、武力行使を望んで言っているわけじゃございませんけれども、まるではれものにさわるようにしている日本政府の姿勢が余りにも弱腰ではないか、そんなふうに思えてならないわけでございまして、はっきりと韓国に対しても物を言うべきだというふうに思うわけでございまして、井上大臣の御感想を伺いたいと思います。

井上国務大臣 今のお話のように、竹島につきましては、我が国固有の領土でありまして、現在、不法に占拠されていることは、言うまでもないわけでございます。

 外務省のホームページを見ましても、こういうことが書いてあるんですね。「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土である。」これが一つ。二つ目は、「韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であり、韓国がこのような不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではない。」このとおりなんですね。

 さて、しかしながら、これをどうするかということでありまして、どのようにしてこれを解決していくかということなんですね。

 これは、第二次世界大戦後の混乱の中でこのような状況が生じたわけでありまして、もう何年もたっているわけでございまして、政府といたしましては、これまで、これを平和的に解決するという方向で努力をしてきているということであります。我が国の立場としては、委員の御指摘のとおり明確でありまして、そういうことも率直に言っていくべきだ、こんなふうに思います。

森岡委員 今、井上大臣がお読みになった外務省のホームページは、この間、私が国会で質問で取り上げまして、変えさせたんですよ。ようやくこうなったんですよ。政府は余りにも弱腰じゃないかと。私は、どちらの国のホームページかわからないような内容だった、それを変えさせたんですよ。私は、政府はもっとしっかりしてもらいたい、領土問題についてもっとしっかりしてもらいたいという思いを強く持っております。

 尖閣諸島で、この間、三月二十四日、中国人の七名が魚釣島に不法上陸いたしました。これを許してしまった。海上保安庁の方に聞きますと、千トンの船が一隻、それに対して中国の百トンぐらいの漁船が一隻来た、それを阻止できなかったんだ、そして、手こぎボートに移って上陸を許してしまったというようなお話でございました。

 そしてまた、この間、台湾が、この尖閣諸島の五つの島を、宇宙衛星を使った地図で大体の面積をはかって、台湾の宜蘭県という県の一部に土地登記をしたというニュースがございました。外務省も交流協会を通じて抗議されたようでございますけれども、この尖閣諸島、日本が実効支配している、皆さんそうおっしゃいます。しかし、余りにも守りが甘いんじゃないか。私は、また竹島のような問題に発展しかねないと大変心配しているわけでございます。

 海上保安庁に伺いたいわけでございますが、予算がないからこんな守りしかできないんだということであるならば、警備態勢を強化するための予算をふやしたらいいと私は思いますし、今のままでどうなのか、率直に海上保安庁としての意見をお伺いしたいと思います。

深谷政府参考人 お答え申し上げます。

 尖閣諸島の警備でございますが、これにつきましては、もう先生御案内のとおり、これまでは約一千トンクラスの巡視船を常時、二十四時間、三百六十五日、特段の情報がなくても配備して警戒に当たってきた。これまでは、いろいろな中国、台湾、香港等からのいわゆる団体が領有権活動を活発化してきて、これに対しましては、事前情報がございますれば、それに従いまして、その状況に応じた巡視船艇を集結いたしまして、これを排除してきたということでございます。

 例えば、ことしの一月にも、中国から二隻の同種の船が出てまいりました。これに対しましては、事前情報がございましたものですから、それに基づきまして巡視船艇を集結しまして、これを排除、退去させたということでございましたが、今御指摘のように、三月二十四日の件につきましては、事前情報は具体的にはございませんものでしたので、常時配備している巡視船一隻で対応したのでございますけれども、残念ながら上陸を許してしまったということでございました。

 海上保安庁といたしましては、この事実、事案を踏まえまして、現在、巡視船艇一隻を増強いたしまして、現時点におきまして、二隻態勢で巡視、警戒に当たらせております。また、万一のことがございますれば、石垣島から巡視船艇を速やかに派遣できるような態勢をとっております。

 今後さらに、当面の話ではなくて、今後の話といたしましては、私どもといたしましても、今回の事案をよく分析いたしまして、検証しまして、事前の情報収集のあり方あるいは警備手法、こういったものをよく検討いたしまして、全体を再点検して、改善すべき点につきましては装備面も含めまして検討してまいりたい、かように思っております。

森岡委員 海上保安庁だけで守れるのか、また、海上保安庁の今の警備態勢で大丈夫なのかどうか、よく検証していただいて、尖閣諸島が竹島のようなことにならないようにぜひお願いしたいと思います。

 次に、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

 一月十六日に、竹島をデザインした切手を韓国政府が、我が国の反対を押し切って、出しました。民間の方が日本郵政公社に写真つき切手を、日本郵政公社がいわゆるプリクラ切手というのを発行しているわけでございますが、それを申し込まれた。そうしましたら、発行を認められた人と、外交上問題があるからということで拒否をされた人とあらわれました。一万セットという大きな数字だったものですから、上まで行ったから総裁がとめたんじゃないかなというふうに私は思うわけでございますが、外交上問題があるからといって日本郵政公社がとめる。

 どういうことだというふうに思って、私たち、私と一緒の国会議員、同志が十三名、三月五日に、竹島、尖閣諸島、北方領土、この三つの図柄が入った写真つき切手を東京中央郵便局に申し込みました。検討して後ほど返事をいたしますという日本郵政公社の部長さんのお話でございましたが、それっきり、一月以上たっておりますけれども、まだ返事が返ってきていないわけでございます。

 領土問題について、麻生大臣は私と思想、信条が同じような人だと思っているわけでございますが、日本郵政公社の総裁を督励してくださいよと言いたいわけでございますし、尖閣や北方領土、それぞれ事情も違うと思いますけれども、竹島はだめだと。そうしたら、尖閣諸島はどうなんだ。北方領土はどうなんだ。佐渡島を図柄にして出したらどうなんですか。どういう答えが返ってくるのでしょうか。

 私は、日本郵政公社の結論を早く聞きたいと思いますし、佐渡島はいいけれども尖閣諸島はだめだと公権力を行使して中国人を逮捕した、その逮捕した人を強制送還させたのに、政府がこの切手について及び腰なのは解せないなというふうに思うわけでございます。麻生大臣のお答えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今、森岡先生からお褒めの言葉をいただきましたけれども、森岡先生に比べたら私の方がまだ左翼かなと思っております。比較対照の問題で左にも右にもなりますので、スタンダードのところ、基軸のあれなのでいかがとは思いますけれども、今の御質問の点に関しましては、御存じのように、昨年の四月から郵政公社でありまして、基本的には、総務省の直営ではないという形になりますので、この切手、プリクラというか切手を発行するしないということにつきましては、これはかかって公社ということになって、私ども総務省が直接という立場にないということでありますので、総務省として、この切手を早く出せとか出すなとか言う立場にないということだけはまずはっきりしておかなければいかぬところだと思っております。総務省としては出す立場にないというのが一点。

 それから、時間がかかっておるのは、多分、公社もそれなりにいろいろ調査をしておられるのだと思いますので、その点につきましては、外務省に聞かれたり、いろいろ聞かれておられる最中なんだと存じますので、ちょっとその内容まで詳しく存じませんけれども、申し上げたいことは、基本的には、これは公社というものの判断によるところであって、総務省がどうのこうの言う立場にはないという点だけは御了解いただければと存じます。

森岡委員 今の大臣の御答弁、それはそのとおりなんですけれども、麻生大臣は、日本郵政公社生田総裁の任命権を持っておられる方でございます。しかも、監督権限もちゃんと日本郵政公社法に書いてあるわけでございます。大臣が指示をされたらできる話だと思います。ぜひ善処していただきたいなということをお願いしておきたいと思います。

 それから、私は、この領土問題について、日本の教科書の記述がどうなっているのか、調べました。中学校と高等学校の学習指導要領を見ました。そうしましたら、中学校の学習指導要領、社会科、「北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにすること。」こう書かれております。高校には、具体的なことは書かれておりませんけれども、「日本の領域をめぐる問題にも触れること。」「日本の位置と領域についてとらえる」などと書かれているわけでございます。

 実際の教科書を見ました。そうしましたら、私の手元にある中学校の社会、日本書籍が出している教科書でございますが、「日本と韓国の間には、日本海の竹島をめぐる問題がある。」こう書かれているだけで、日本国の領土であるということは全然記述されておりません。ただ漁業交渉をまとめる、漁業協定を結んだという、漁業の問題に触れているだけでございます。

 そしてまた、これは清水書院のものでございますが、高校の地理Aという教科書、ここには、竹島については、「島根県に属する竹島には、韓国との領有権問題がある。沖縄県の尖閣諸島については、中国が領有権を主張している。」こう書いてあるんですよ。日本が主張しているとは書いてないんですよ。日本のものだとは書いてないんですよ。「韓国や中国と漁業協定を結び、漁獲量の割り当てや、操業水域の調整などが行われている。」と、経済のことが書いてあるだけですよ。領土の主張がなされていない。

 こんなことでいいんだろうか。ぜひ、文部科学省の大臣政務官がお見えでございますので、御答弁をお願いしたいと思います。

馳大臣政務官 お答えいたします。

 国家社会の有為な形成者を育成する上で、領土、国民、主権などについて正しく理解させることは極めて重要なことと考えております。学習指導要領においては、学校段階に応じて我が国の領土や我が国の領域をめぐる問題について指導することとしているところであります。

 なお、学習指導要領は大綱的な基準であり、北方領土の問題を代表的な例として示しているところであります。したがって、実際、教科書においては、竹島や尖閣諸島について記述しているものがあるところでございます。

 地図においては、すべてにおいて、竹島、尖閣諸島が我が国の領土であることが明示されております。

 今後とも、学習指導要領の趣旨を踏まえて、我が国の領土に関する指導が適切に行われるように努めてまいりたいと思っております。

森岡委員 私は、今の教科書の記述では不十分だと思いますので、ぜひ検定に当たって是正をしていただきたい、そういうふうに思います。

 それからもう一つ、この国民保護法制の中で、文化財の保護についてお尋ねをしたいと思います。

 私の選挙区は奈良市でございまして、国宝とか重要文化財がたくさんあるわけでございます。私は、子供のときから、奈良は文化財があるから米軍の攻撃を免れることができたんだという話をよく聞かされたものでございました。だから、全然爆撃に遭っていないわけでございます。

 しかし、有事において、相手国の国民の精神的支柱となっている国宝などを破壊する、士気を阻喪させる、こういう目的から文化財の破壊が行われるおそれがあるわけでございます。文化財というのは、御承知のとおり、一たん破壊されたらもうもとに戻らない。私は、有事においてどうやって保護するかということは日本国にとっても大変大事な問題だと思っているわけでございまして、国民保護法案の中で文化財保護をどう位置づけておられるのか。

 それと、国宝とか重要文化財の所有者の多くは、社寺仏閣、すなわち宗教法人が持っているものでございます。この文化財保護について、例えば、文化庁から補助金を出して、そして重要文化財や国宝の修理をしている。これは、文化財保護法三十五条の中で、それぞれの所有者がとても背負い切れないような額になったら、文化財を守るという視点から税金のお金を出せるんだというふうに位置づけておるわけでございますけれども、憲法二十条に、いかなる宗教団体も国から特権を受けてはならない、こう書かれている。このことと今回の国民保護法制の中で文化財を守るということの整合性はうまくできているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。井上大臣、お答えいただけますか。

井上国務大臣 文化財を守っていくというのは大変大事なことでありまして、国民保護法案におきましても、これを保護するために文化財保護の特別の規定を置いているわけでございます。

 今お話がありましたように、宗教法人と大変関係が深いものでありますから、そういった特殊性にも配慮いたしまして、文化庁長官は、文化財の所有者に対して、その保護に関し必要な措置を講ずべきことを命じ、または勧告することができるという文化庁長官の命令、勧告、それから、命令、勧告に従って必要な措置を講じようとする文化財の所有者等は、文化庁長官に対して、その保護のため必要な支援を求めることができる、こういう規定もあわせて置いているわけであります。そこで国宝等の所有者が命令に従わないときは、文化庁長官は、みずから被害を防止するため必要な措置を講ずることができる。

 こういった特別の規定を設けて、文化財を保護しようとしているわけでございます。

森岡委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

自見委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 私も、この委員会にはもう二年ほど在籍をしておりまして、有事法制が二年前に提示をされ、そして国民的に大きな関心を呼んでから今日まで、昨年は、与党と我が党との合意のもとで、今回法案が提出されております国民保護、一年以内に国民保護法案を成立させる、そうした与野党を超えた、まさに国家の存亡の状況において、いかなる形で我が国の独立と平和を守り、そしてまた国民の生命と財産を守るか、この点について今ここまでこの法案が審議される、まさに感慨深いものがございます。

 法案の内容に入る前に、実はお尋ねをしたいことがございます。最近の新聞報道等でいろいろ出ていることでございますが、まず、防衛庁長官にイラクの状況についてお話を伺いたいと思います。時間もありませんので、どうぞ端的にお答えいただければと思います。

 サマワで活動している復興業務支援隊長の佐藤一等陸佐が昨日帰ってこられた。防衛庁長官に報告をされてまた戻るというようなことでありますけれども、これは、定期的な、ちょうど派遣されてから三カ月たって帰ってこられて、いかなることを報告されたのか。

 それからまた、今、スペインが、選挙で政権が変わった、そして軍を撤退させる、そしてまた、追随するように中米の国、例えばホンジュラスが撤退をこの夏以降にも検討しているというような報道がされているわけですが、今、各国が参加をして、もちろん我が国は人道復興支援ということを大義にして行っているということは承知の上で聞くわけでありますけれども、その上で、イラクの今後、例えば各国が撤退を表明する、あるいは検討しているという中でどのように変わっていくというふうに見通していらっしゃるのか。

 ぜひ、その点について冒頭お尋ねをしたいと思います。

石破国務大臣 佐藤一佐、今帰ってきております。私、まだ報告を受けておりません。本日受ける予定にいたしております。

 それは、先生御指摘のように、本格的な活動が始まっております。実際に現地と私との間で頻繁に連絡はとっておりますし、陸上幕僚監部あるいは統合幕僚会議とも話をしておるわけでございますが、やはり現場に行って一番詳細なことを知っておる佐藤一佐から直接報告を聞きたいということがございます。

 それは、想定しておったことが一〇〇%そのとおりということは世の中にはないわけでございまして、部分的にはいろいろな問題というものがないわけではない。それをどのように解決していくかということも考えなければいけない。そして、いつも先生方から御指摘をいただきますように、防衛庁長官として法律第九条にありますような義務というものを果たしているかということも、私としても確認をしなければならない。そういうことで、佐藤一佐から報告を受けたいというふうに考えておる次第でございます。

 それから、スペイン等々が引き揚げるということについてどのように考えるかということでございますが、これは、それぞれの国がそれぞれの国の民主主義によって決定をしておることでございまして、我々としてとやかく申し上げることだとは考えておりません。

 要は、私どもとして、いつも答弁申し上げていることでございますが、法律に定められた要件というものをきちんと満たしております限り、これは国会においてお決めいただいた法律でございます、そして国会において派遣も御承認をいただいておるわけでございます、そういたしますと、法律に定められた要件というものがきちんと充足をされておるということ、そうであります限りは、派遣というものは当然行う、それがイラクの人々のためであり、日本の国益であり、そしてまた地域の安定に資するものである、このように考えておる次第であります。

渡辺(周)委員 長官、私が聞きたかったのは、スペイン撤退についての感想ではなくて、例えばそうした各国が撤退を表明する、あるいは検討し始めたということによって、イラクが今後どういうふうになるのか。あるいは、それによって、我が国の役割が、例えばアメリカあたりももう追加派兵を決めておりますけれども、大変に、もういっぱいいっぱいになってきた、では、ほかの国の役割というのは今行っている人道復興支援以上の役割を求められるんじゃないだろうか。例えばその点についてはどうなんですか。そういうことを私はお尋ねしたんです。

石破国務大臣 例えばスペインが千人ぐらい撤退をするということでございますが、もちろんそれは大きなことでございますし、軽々しく扱っていいとも思っておりません。これは重大なことだとは思っておりますが、しかし、それで現在のコアリションの体制が根本的にどこか変わるかといえば、私は、そのような認識をいたしておりません。そしてまた、それによって日本に新たな役割が求められるとも考えておりません。

 私どもといたしましては、この法律によって定められた役割というものをきちんと果たしていく、そのことに専心したいと考えております。

渡辺(周)委員 私が冒頭申し上げたとおり、人道復興支援であるということを大義に行っているということはもちろん承知の上で言っております。ただ、ここが戦闘地帯であるか非戦闘地域であるかということについては、議論はまた別にします。きょうは法案の質問がたくさんありますのでいたしませんが、その点についてはまたしますけれども、また状況が刻々と変化する中で、もちろん我が党も、我が国の国際貢献、人道復興支援ということについては何ができるか、その条件は何であるか、国連主導の枠組みができればということはここにいらっしゃる我が党の前原議員が再三繰り返しているとおりでございまして、その見解、立場についてはまた改めて披瀝しながら質問をしたいと思うわけであります。

 もう一つだけ、ちょっとお尋ねしたいのは、先般、内閣情報調査室を日本版CIAという組織にするのではないか、それが既にもう検討が始まって進んでいるんだというような一部報道がございました。

 だとすれば、私もこれまでも言ってきましたが、我が国の情報組織が余りにもあちこちにあり過ぎて、各省庁の縦割りの弊害によって情報の一元化ができないということ、それから、今のような時代、特にテロでありますとか、あるいは我が国に対して何らかの不穏な、有形無形の威嚇、脅威があるというときにどのように対応するかという中で、我が国が情報組織というものについては大変おくれてきた、そう思っていたところで、これまでもさまざまな方から指摘があったわけですが、先般の、産経新聞だったでしょうか、内閣情報調査室、千人体制に拡大してアメリカCIAをモデルにした組織をつくる、それによって公安調査庁なんかは縮小されて活動対象は限定されるというようなことが出ていたわけですね。

 それはもう既に平成十八年度をめどに情報組織を立ち上げるということだというんですが、この辺について、報道が事実であるのかどうなのか、また、そうだとするならばどのようにお考えなのかということが一点。

 それから、警察の組織再編の中で、警察庁の中にも新たな組織をつくって、特に外事を強化して、まさに我々が今から議論しようとしている有事、とにかく、大規模直接侵略というよりも、例えばテロのような、あるいは間接侵略、思想侵略といった形で我が国に脅威を与えるであろう今後の中で大変大きな役割を果たすのかなと思いますが、その辺の事実関係と、今後どのような活動をされるかということにつきましてお尋ねをしたいと思います。

貞岡政府参考人 御説明申し上げます。

 最近の厳しい国際情勢等から、情報収集体制の強化の重要性については十分認識しているところでございます。しかしながら、一部で報道されているような内閣情報調査室の大幅な人員強化について検討に入ったというふうな事実はございません。

 内閣の情報の収集・分析機関である内閣情報調査室につきましては、平成八年、内閣情報集約センターを設置し、平成十三年、内閣衛星情報センターを設置するなど、同室の機能、体制の強化を図っているところであります。

 今後とも、外交、防衛、治安等の情報を担当する関係省庁との密接な連携の強化を図ることなどにより、内閣全体の情報収集・分析機能の一層の拡充強化に努めてまいりたいというふうに考えております。

瀬川政府参考人 今般の警察法改正で設置されました外事情報部についてのお尋ねにお答えいたします。

 これは、御質問にもありましたとおり、国際テロの脅威というものが大変深刻化し国際社会が共通して取り組むべき課題となっている、また、イスラム過激派によるテロへの対策というのが今まさに焦眉の急である、こういった情勢認識がございます。それから、国際テロだけではなくて、北朝鮮による日本人拉致容疑事案あるいは不審船事案あるいは諜報事案等の対日有害活動、そして、今また問題になっております大量破壊兵器関連物資の拡散、こういった事象に対処する必要があるということで、警察庁警備局に外事情報部を設置いたしました。

 局長級の幹部が先頭に立って、外国の治安情報機関との間で質の高い情報の入手を図る、あるいは関連情報を有機的に統合分析する、また、海外でテロ事件等が発生した場合にはこれに的確に対処する、その他、北朝鮮工作員による各種違法行為、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出等々の事案につきましても取り締まりを強化してまいる、こういう考え方に立ったものでございます。

 なお、当然のことでございますけれども、例えば国際テロ組織による我が国に対する具体的な脅威情報等が入手された場合には、これにつきましては、情報関係機関の調整役でもあります内閣官房に迅速に報告をして、内閣官房と一体となってこの情報の評価なり処理なりを行ってまいりたい、さらにその上で諸対策が必要なものにつきましては、内閣官房の調整のもとで、関係する当局、例えば入国管理局でありますとか海上保安庁でありますとか、そういった関係当局と連携いたしましてテロ等の未然防止に必要な諸対策を講じてまいりたい、こう考えております。

渡辺(周)委員 警察の方のお答えはわかりました。

 そうしますと、この問題、長くはやりませんけれども、内閣情報調査室を改組して何らかの情報機関的なものをつくる、この点については、まだ検討もされていないというふうに理解してよろしいんですか。

貞岡政府参考人 御説明申し上げます。

 ただいま御答弁申し上げたとおり、具体的な検討には一切入っておりません。

渡辺(周)委員 これは大変残念なことでございます。私は、逆に、そういうものをつくるべき時期にもう来ている、というよりも、遅きに失しているのではないかなというふうに思うんですね。ぜひ、そういう検討がどうなるか、日本におけるインテリジェンスの重要さについてはこれからまた論議をしたいと思います。

 それから、先ほど警察庁の方からおっしゃいましたが、拉致のことに触れられましたけれども、当初、拉致などとまだ認定されずに、日本海側でアベックの蒸発事件として一九七〇年代に報道されたときに、地元の警察では、これは外国人による犯罪である、あるいは日本国内にいるそういう組織立ったものであるというようなことをある程度把握していた。

 あるいは、海上保安庁では、日本海側に幾つもの、不審船でありますとか、あるいは不審船、母船から出てきたゴムボートのようなもののいろいろな残骸といいましょうか遺留品があって、目撃情報もあったと。幾つかのいわゆる上陸ポイントにそういうものがあって、目撃をされている。他国の人間が侵入した形跡が非常に濃い。あるいは、捕まえたんだけれども、法律がなくて罰することができなかった。結局、不法入国だけで帰してしまった。

 実際はそういうデータの蓄積がたくさんあったんだけれども、結果的には、それぞれが持っていて、後になってから、実は我々も知っていた、実はそういうものはもう既にキャッチしていたんだと。ところが、事が起こって大きくなるまではずっとそれぞれの情報を抱えたままで、結果的には何ら真相解明や事案の解決にもならなかった。

 その点については、ただ情報収集だけをしてストックしておくのではなくて、ぜひ実際に役立てていただきたい、実際の我が国の脅威除去に役立てていただきたいと強くお願いするわけでございます。これについてもまた改めてやりたいと思います。

 それでは、この有事法制の中の国民保護法制の中で、昨日も大勢の方が質問されました。あすもまた、我が党から何名もの精鋭の方々が質問されます。私は、幾つかに絞って質問をしたいと思うんです。

 それは、その中における指定公共機関についてでございます。指定公共機関の中で、この法の中で触れられております放送事業者、この放送事業者のことについて特にこだわって質問をしたいわけであります。

 私もかつては、わずか短い間ですが、報道機関に籍を置いたことがございます。最近、戦時下のメディアについていろいろと読みました。特に、今イラクに行っている自衛隊取材に対して日本の報道機関と例えば防衛庁の間でどういうやりとりが行われたのか、あるいは九・一一以降の、あるいはそれにさかのぼること湾岸戦争からの、メディアと国防省なりオペレーションをするところとさまざまな制約があり、報道の自由といわゆる軍事上の機密と、作戦遂行における障害になってはならない、そういうさまざまな交渉の葛藤のようなものも随分読んだんです。

 その中で、この中にあるのが、当初は事前協議というものを本来するという中でこれが撤回された、ただしかし、指定公共機関が作成する計画に対しては報道機関については首相は助言を行うことができる、あるいは地方の指定公共機関においては都道府県知事が助言をすることがここで書き込まれているわけでありますけれども、そもそも助言というのはどういうことなのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

井上国務大臣 助言といいますのは、最近は横文字でよく言うようになってきておりますけれども、いわゆるアドバイスなんですね。助言をすることによって、何か有益な、参考になるようなことがある場合にそれを教えてあげる、これが助言ということでございます。

 確かに、最初は、業務計画につきまして、国の方との協議の規定が入っていたわけですね。これにつきまして、放送関係者の方とも私はお話ししましたけれども、非常に統制的な色彩が濃くなるおそれもあるということで余り賛成をされなかったのでありまして、当初からそんな統制をしていくというような考えはなかったのでありますけれども、その意向を受けまして、業務計画を報告していただく、こういうことになったわけであります。

 業務計画は、御承知のとおり、それぞれの指定公共機関、放送機関でありましたら放送機関がつくって出していただくものでございます。ですから、これは会社によりまして大分違うと思うんですね。別にこういうものをつくりなさいとかという強制をするものではありませんから、必要な事項だけを放送していただきたいということですから、このつくり方自身については非常に差があると我々は思っておりまして、それを統一するような意向もありませんし、そういう場合に、例えば、出された業務計画を見まして、ほかの社はこんなことまで書いていますよ、これは業務計画を実行する場合に非常に参考になりますよというようなことを申し上げるということです。

 そのことによって業務計画を変更するとかというようなことを考えておりません。あくまで業務計画の実施に参考になるようなことを申し上げる、こういうことでありまして、強制でも何でもないんです。参考になればそれを参考にしていただきたい、こういうことであります。

渡辺(周)委員 それは、各報道機関が、これまでの経験あるいはこれまでの検証、こうした有事報道でありますと過去の諸外国の有事における報道、さまざまなことを検証して、当然その自主性と、何よりも大前提は国民の知る権利と報道の自由、それのもとで、あわせて国益ということを考えて、先ほど国家と国民は対立するものだろうかという森岡委員の指摘がありましたが、私は、そうした国家の存亡の危機に立ったときに国益を損ねるような報道機関というのは我が国の報道機関であればないんだろう、当然そのように思っているわけです。

 ただ、他国のいろいろな例を見ますと、さまざまな規制がかかってくるというのは、これはもういろいろな文献にも出ておりますし、当然、専門家もそういう指摘をしているんです。

 つまり、そこにおいて、業務計画を作成します、それを報告します、そこに助言を与える、助言を与えるというのは、突っ返すということがあり得るんじゃないかなというふうに思うんですね。それはアドバイス、今も昔も、多分アドバイスという言葉はそんな最近の言葉じゃなくて昔からあったと思いますが、決して最近はやりの横文字でも何でもございません。つまり、そのアドバイスがどれぐらいの拘束力を持つのか。

 つまり、わかりました、そこで首相がアドバイスをした、あるいは都道府県知事がアドバイスをした、そうですか、承っておきますということで終わるのか。わかりました、ではそれは悪いけれどももう少しここを踏み込んでこう書いてもらえませんか、こういうふうな、例えば業務計画に何らかのもう少し、ハンドルでいうところの遊びを残してもらえませんか、そういうことを言うことはあると思うんですね。

 その助言が、一回返されて、私の助言を聞いた上で、悪いけれども再提出してくださいということはあるんですか。その辺はどうなんですか。

井上国務大臣 これは、提出された業務計画について助言を申し上げる、こういうことになっておりまして、したがいまして、業務計画そのものを直してほしいとかというようなことはないわけです。ですから、業務計画を実施する上で参考になるようなことについて助言をする、こういうことになると考えています。

渡辺(周)委員 では、そこの助言に従わなかった場合はどうなるのかということもあわせて伺いたいわけです。

 つまり、事前協議といって、報道の中立性や報道の自由ということを考えたときに、いわゆる公権力の介入というものを非常に恐れた。ですから、これまで、昨年の法成立から今日の国民保護法制の制定に至る間、マスメディアから何回もアピールがあり、そしてまた協議を重ねてきた。そうしたことが行われてきた中であったからこそ、今回、事前協議という形から事後報告、しかしながら、首相の助言あるいは都道府県知事の助言という何らかの余地を残したと思うんですが、では、助言に従わなかった場合はどうなるんですか。そこだけちょっと聞いておきます。

井上国務大臣 これはまさに助言でありまして、助言に強制力とか拘束力があるものではございません。

 助言をいたしまして、それはいい助言だなということで、それを参考にして業務計画を実施される方もありましょうし、いやいや、そんなものは当然のこととしておれは考えているんだというような方もありましょうし、いやいや、おれはそんな助言に従わないよというような方もあろうと思います。それは全く指定公共機関が自主的に判断をされることでありまして、国として強制をするというようなことは毛頭考えておりません。

渡辺(周)委員 その点についてはわかりました。これは当然、当事者同士でこれからまだいろいろなことが議論されると思うんですが、ちょっと幾つか他国の例を挙げたいなというふうに思うんです。

 なぜ私がこのメディアの部分に特にこだわったかといいますと、これは、一般論として申し上げると、やはりメディアコントロールということが当然行われてしかるべき。我が国が有事であるときには、正しい情報と的確な指示によって、当然、国民の生命財産が守られなきゃいけない。ただしかし、その反面で、いわゆる情報が一元化されなかった、それで、結果的には、その背後にあることも、本来知っておかなければいけないことまでも知らされないんじゃないか。当然、そういうことが時間がたってくると起きてくるわけであります。ですから、メディアの持つ怖さというもの、まさにその頼りになる部分と怖さという部分と両方について我々は今から議論をしておくべきだろうなということでこだわっているわけであります。

 例えばなんですけれども、アメリカでは、あの九・一一のときに、統合情報センターというのをつくったんですね。つまり、情報を一元化して、定期的に、情報を一元化することで発表する。そしてもう一つは、その後に世界広報局というセクションをまたつくって、情報の一元化をして、要は、発表したわけです。それによって取材の一元化、情報の一元化をしたわけであります。

 確かに、メディアの混乱というものがあって、今回の三人の人質が、高遠さんたち前半の三人、この人たちが解放されるか否かというときにいかに混乱したか。つまり、総理大臣ですら、正確な情報を持ち合わせないというふうに発言されたわけですね。総理大臣が正確な情報を、これは手の届かないような大変遠いところの国であったということを考えても、我が国の最高責任者がまさに正しい情報を持ち合わせていないというときには、これは事例は違いますけれども、まさに我が国有事になったときに、地方自治体であるとかあるいは肝心の国民であるとかという人たちがどうやってその正確な判断ができるんだろうか。まさにメディア自身も混乱をしたわけでありますし、また、実際そういうことが想像されるわけであります。

 そういう意味では、例えば統合情報センターだとか世界広報局、こういうものをアメリカはつくったわけですけれども、当然、そういうことになれば、メディアの一元化ということも含めて何か考えていらっしゃるんでしょうか。

井上国務大臣 武力攻撃事態等のように、国家にとりまして本当に大きな有事でありまして、そういうときに政府が出します情報がばらばらであるというようなことは、これはもう一番国民を混乱させるもとになりますから、政府の発表するものについてはきっちりと統一したものじゃないといけない、こんなふうに考えておりますけれども、メディアにつきまして特別に規制をしていこうというような考えのところはございません。

 ただ、指定公共機関で放送事業者を指定いたしますのは、これは政令で指定するのでありまして、その指定する範囲をどうしていくかというのはこれから検討するのでありますけれども、指定をするかしないかというその問題はあろうかと思うのでありますけれども、放送機関を統一して統制していくというような考えは全く持っておりません。

渡辺(周)委員 ただ、法律の中には指定公共機関たる放送事業者というふうに入っているわけですから、すべての放送事業者と読めるわけですね。当然のことながらそういうことになるんだろうということを前提にもちろんお話をして、昨日の御答弁では、指定公共機関に民放は含まれるというふうにありますね。そういうふうに思っております。

 時間が大分限られてきましたのでちょっと急ぎますけれども、例えば、確認なんですけれども、放送事業者が取材過程で知り得た情報あるいは情報源を政府に提供するということが事実上強いられる可能性があるのではないかという識者の指摘もあるんです。

 その辺、つまり、国家のまさに存亡をかけた時期である、報道の取材源の秘匿性はもちろんでありまして、報道の中立性ももちろんでありますけれども、国家がどうなるかというときに、例えば報道機関にも当然協力を求める、あるいは国家が実は知り得ていない情報を前段階で、例えばマスメディアの情報というものを収集する必要性も出てくるんじゃないかと思うわけですね。

 例えばその点については、これは事実上強いるかどうかは別にしても、何らかの形で情報提供というものを要請するということはあるんですか。

井上国務大臣 これは、事実上の問題として、いろいろな情報について報道機関から入手をするようなこともあろうと思うんですね。それはあると思いますけれども、情報源を知らせる、公開するというようなことは、これは報道の自由の中でも一番基本のところだと思うのでありまして、これは法律の規定に直にそういうものがなければできないことでありまして、私どもとしては、法案全体を読んでいただければおわかりのように、情報源を明らかにする、知らせる、そんなことを考えていることは全くございません。

渡辺(周)委員 それでは、重ねて伺いますけれども、あの九・一一が起きたときに、ライス女史、大統領補佐官が、全米の主要メディアに対して、オサマ・ビンラディンのいわゆる犯行声明、声明のメッセージを流すんじゃない、繰り返し流すんじゃないと。つまり、ビンラディンのそのコメント、発言の中に、次なるテロであるとか、あるいはどこかに眠っている、いわゆる潜んでいる次なるテロリストたちに対して次なるメッセージが実はその中に組み込まれているのではないかということで要請をしたんですね。これは検閲ではなくてあくまでも要請であると。しかし、全米のメディアは、これは国家の一大事ということで、それに従ったわけであります。

 当然、そういう形での協力を求めるということは、例えば取材に一定の規制をお願いするということはあり得ると考えていいんですか。

井上国務大臣 取材を規制するというのは、通常の場合の取材のルールというのはあろうと思います。そういうことはお願いすると思うのでありますけれども、あと、いろいろな情報について要請をする場合はあろうと思います。これは別に法律で強制するものでも何でもないので、事実の問題として、各放送事業者が持っておられる情報について、どんなものだろうかというようなことを、教えてほしいというようなことを要請することは、それはあり得ることだと思います。

渡辺(周)委員 取材の規制というよりも、例えば、何らかのビデオテープなりが、それこそ、もし、考えたくないことでありますけれども、日本の国内で何らかのテロが起きた、それによって犯行声明をどこかの国の指導者かどこかのテロリストグループの指導者がどこかで流した、それを流したことによって次なるテロ指令が実はそこに含まれているという可能性があるわけですね。だからアメリカは、もうこれ以上ビンラディンの映像を出すんじゃないというふうに言ったわけです。

 取材というよりも報道、それに一定の制約をかけるということはあり得るというふうに今お答えになったということでよろしいですか。

井上国務大臣 そういう規制をかけるというような条文は今回の法律の中にないわけでありまして、したがいまして、そういうことは考えていないということであります。

渡辺(周)委員 いやいや、アメリカも法律には書いてないんですよ。だけれども、実際にこういうことになった場合にはあり得るというふうに考えた方がいいと私は思いますね。当然のことなんです。それについてお考えを聞いているわけでございます。

 もっと言いますと、アメリカの場合は、大統領令がありまして、報道機関を一定期間、国益に利するために接収するといいましょうか、利用することができるわけですね。放送伝達業者の持っている有益性を考えたら、これはアメリカだけじゃなくて、イギリスであるとかドイツでありますとか、必要な情報や警報を伝えるために一時的にマスメディアの施設や設備等を使用することができる、あるいは一定時間を政府の発表のためにあけてくれということをやることができるんですが、当然そういうことも有事の際にはあり得るというふうに考えるているんですか。

 せっかくですから、きょうは総務大臣もいらっしゃいますので、総務大臣のこの辺の御見解を聞いておきたいと思いますが、両大臣にお尋ねしたいと思います。

井上国務大臣 そういうようなことは全く考えていないことでございますし、また、報道の自由、表現の自由について制限を加える場合は、当然のこととしてこれは法律の規定が要ると思うのでありまして、そのような法律の規定を入れていないことは、これはもうおわかりのとおりでございます。放送設備等につきまして、放送局の設備を利用する、そういうようなことも考えていないということであります。

麻生国務大臣 法律に書いてないのはもう御存じのとおりなんだと思いますが、依頼するということは十分にあり得ると思います。どこからどこどこまで部隊を移動して、それに当たっては武器の内容はどうたらこうたらなんということが公表されるなどということは敵を利するだけのことであって、それはある程度控えていただく等の依頼をするなどというのは当然のこととしてあり得ると思っております。

渡辺(周)委員 この議論は非常に難しいと思うんです。過去にマスメディアがかなり独立性を持って発達、発展をしてきた例えば欧米諸国においても、この戦時報道とか有事報道におけるあり方というのは非常に難しいものがございます。

 例えば湾岸戦争のときに、イギリスの国防省とマスメディアが十六項目にわたる報道協定を結んだ。その中には、例えば軍隊の数であるとか、まさに今大臣がおっしゃった、武器は何であるとか、あるいはどういうオペレーションをやって、どういう人たちが指揮官であるか、あらゆることについて規制をしたわけであります。当然のことで、相手国を利するようなこと、あるいは、国に限らず相手の、我が国に何らかの脅威を与えようとしているところに対して利益を与えるようなことがあってはならないという上で、ぎりぎりの妥協をしてきているわけであります。

 そういう中で、私が何でここまでこだわったかといいますと、例えばNHK、我々も海外へ、大臣と同じように世界各地へ行きます。当然のことながら、外国へ行ってもNHKの衛星放送を見ることができるわけですね。アメリカにいようが、ヨーロッパにいようが、「おはよう日本」を見ることができる。朝鮮半島では、もう釜山あたりでは日本のNHKがそのまま入ってくるわけですね。対馬海峡を越えて入ってくる。対馬からNHKが入ってくる。当然、かの国、北朝鮮でも、国家指導者は日本の番組を見ている。そうしますと、例えば何らかのことがあった場合に、我が国の国民向けの報道というのは世界じゅうに当然流れるわけであります。当然、世界各地にいる邦人は、自分の親族や自分の身内であるとか自分の企業は大丈夫なんだろうかということで、一斉にくぎづけになるわけであります。

 そうしますと、テレビメディアのみならず、インターネットなんかも、何らかの形で情報に一定の、報道に一定の制約があるということは、まさにそのときが起きてみないとわからないわけでありますけれども、この点については、大変この問題、特に昨年のイラク戦争、その前の湾岸戦争、あるいは九・一一テロをめぐってさまざまな、まさに報道と政治のあり方が問われて検証されておるわけでありまして、その点についても恐らく議論がされると思います。

 それと、もう一つだけ申し上げますと、有事というものを二つのカテゴリーに分けたときに、類似する例として、直近の我が国におけるいろいろな事例がありました。

 それは、一つには、大規模災害でいうところの阪神大震災がございました。そのときに、阪神大震災の発生からさまざまな教訓を得て、我々は、一つの危機管理対応というものを学んだわけであります。

 もう一つは、いわゆる東海村の臨界事故であります。これは、見えない、まさに今の想定しているテロでいうところの放射能汚染でありますとかあるいはBC兵器、それが化学兵器であったり生物兵器であったりするわけですけれども、見えない脅威とある意味では戦ったといいましょうか、我が国が経験したのがこの東海村の臨界事故であります。

 そのときに起きたのが、現地と官邸とまさに情報が錯綜して混乱をした。ちょっとだけ例を挙げますと、臨界事故のときは、当時の科学技術庁の中に対策本部をつくった。そして、現地にも科学技術庁の対策本部をつくった。官邸にも対策本部をつくった。三つの対策本部がそれぞれに機能したことによって、実は情報が大変混乱したわけですね。特に、現状は現地が一番早いわけですから、現地から入ってくる情報と時間差で入ってくる中央での情報とがこれまた全く違う角度でとらえられたりすると、これは何でもそうですけれども、大変な混乱を招いて、しかも、海外に誤報まであのときは流してしまったというようなことも実はあったわけでございます。

 その点のいろいろな反省も踏まえて、国家緊急の事態には、政府に頼るだけじゃなくて、我々もいろいろな角度から議論をしたいなということで、これはまたいずれ議論させていただきたいと思います。

 ここで大分時間をとってしまいまして、予定の時間があと十五分しかなくなってしまったんですが、ちょっと大急ぎでやります。

 避難・誘導の部分について、私の地元は静岡県でございまして、静岡県の防災担当者、特に有事法制を担当しているところにも聞きました。御存じのとおり、静岡県の場合は、来るべき東海地震に備えてもうある程度下地はできているといいましょうか、東海地震が起きるということでさまざまなマニュアルをつくっているわけであります。その静岡県ですら、災害対策基本法をベースにした今回の一連の法案の中で、担当者も実は困っているのが避難の問題なんですね。

 防衛庁長官は御存じのとおり、鳥取県で、例えば、二万六千人ですか、鳥取県の東部の方々を、図上訓練だか演習だか、隣の兵庫県に避難させるとしたら、バスで避難させるだけで、ちょっと名前を忘れましたけれども、三つの町で二万六千人、バスで移動させたら実は十一日間かかるというすごいシミュレーションがあって、それを超えるような住民の避難なんというのはちょっと想像できないというか想定できない、つまりお手上げだということをもう既に鳥取県の場合は発表しているわけですね。

 実は、静岡県の方々にも、静岡県は東海地震の一応マニュアルをずっとつくって防災計画も何回も見直してきているからある程度下地があるんだろうと聞いてみましたら、この避難に関してだけは正直言って全くお手上げです、ですから国の指針を待っていますと言うんですけれども、実際問題として、国がどういう指針をつくっても、起きたときに地方で膨大な人の流れを規制することは非常に難しいということを言っておりました。そうなると、これは本当にどういうふうにしたらいいのか。

 我が党でも、鳥取県の片山知事に来ていただいてお話を聞いたことが一月ほど前ありましたけれども、例えば静岡県で同じことを当てはめると、国道一号線と国道二百四十六号線が二つ走っています。国道一号線というのは箱根を越えて静岡県から神奈川に行く、国道二百四十六号線というのはもっと北の方の御殿場というところを通って足柄の方に行くんですけれども、例えば、首都圏と結ぶ、隣県と結ぶ幹線道路が二つあったら、片っ方の国道一号線はもし何かあったら自衛隊が入ってくる進入路にしよう、これは鳥取の知事も言っていましたが、そして、二四六は避難させる県民のための要は出口にしようというようなことをするしかない。

 それにおいても物すごい混乱が起きるけれども、例えばそういうことというのは可能なんでしょうか。その点についてはどうなんですか。あるいは、さまざまな今までの議論の中で、こういうことについて地方から当然こういう声が多数寄せられていると思うんですが、その点についてはどうなっていますか。

井上国務大臣 これは道路の使用に関連することでありますけれども、いかに道路の使用を効率的にやるかということですね。

 一般の民生用、あるいは自衛隊とか米軍が使用するわけであります。道路でかなり道幅の広いものでありましたら双方向で利用できるということもありましょうし、そうでなければ時間を区切ってどうするとか、その置かれた状況の中で判断していく以外にないと私は思います。

 だから、そういった地域の実態を一番よく知っているのはやはり市町村長だと思いますし、かなりの市町村長から、市町村長といいますか市町村ですね、市町村長を初め職員、それを県が十分に把握して、地域の実態に合ったような、そういう道路の利用を考えていくということだというふうに思います。

渡辺(周)委員 これから、緊急時には、例えば、国道何号線は進入路、国道何号線は脱出路にする、あるいは幹線、高速道路、例えば中央自動車道が走っていたり東北自動車道が走っていたりする中で、それはこういう規制をしますということは、当然、国として自治体等に対して、避難の指針をつくる上で何らかの形は提示できるんですか。これはなかなか難しいとは思いますが、そこまでやらないと、どこへどうしていいものやらわからない。もしそうなった場合にということを考えればそうせざるを得ないと思いますけれども、そこまで考えていますか。

井上国務大臣 これは、国がつくります道路の利用方針に基づきまして、各県公安委員会が、そういう道路の利用につきまして、きちんとした計画というのですか、利用の方法を決めていくということになっているわけであります。

渡辺(周)委員 防衛庁長官、例えばこういうことはあると思うんです。非常にわかりやすい例で言うと、自衛隊が、御殿場に幾つかの駐屯地がございますが、二四六を通って、あるいは東名高速を通って、防衛出動してやってくる。しかし、国民は、ぶつかり合うわけですね。正面衝突してしまう。そうすると、国民は陸路どっちから逃げるか、自衛隊がどこから入ってくるか、あるいは救援物資であるとか周辺からの応援部隊はどうするかということになったら、これは交通整理を、まさに交通整理しなきゃいけないと思うんです。その辺は防衛庁長官としてどうお考えですか。

石破国務大臣 それはあらかじめ決めておきませんと、そのときになってわあわあ騒いでもどうにもならないわけであります。

 先生のところは都会地ですからいっぱい道路がありますが、例えば私の鳥取県なんかでいいますと、大体、海から来るわけですね。来るとしましょう。そうしますと、大体、海岸沿いにみんな住んでいますから、海から内陸に行かなきゃいけない。我々の場合、例えば自衛隊の戦車部隊というのは日本原、岡山県にいますから、内陸から海の方へ来る。海から内陸へ人は逃げる。道は一本しかない。こういうことになりますと、これは大変なことになるわけであります、うちは高速道路がございませんので。

 そういたしますと、最初からきちんと整理をしておきませんと、それはだめになる。それは、自治体とそしてまた警察あるいは防衛庁、よくお話をして、そこを事前に、あらかじめ周知をしておきませんと非常にぐあいの悪いことになると考えております。

渡辺(周)委員 それだから道路が必要とか高速道路が必要という話はちょっと別でされるんだろうと思いますが、それについては私は何も申しません。

 ただ、現実問題として、地方自治体はやはりそう言っているんですね。つまり、そこまで国の方で指針を決めて、ある程度国と調整しておかないと、ただ避難マニュアルをつくれと言われて、県の方針に従って市町村もマニュアルをつくるんだ、国民保護計画をつくると。ところが、県は国の方の指針を待っている。つまり、上の方が決まらないことにはどうにもならないというようなお手上げ状態なんです、はっきり言って。これはもう皆さん方、我々全員のところに来ていると思います。

 ですから、これは、その中で具体的に、何県の場合はもし万が一何かあった場合はこの道路が優先道路としてこうなりますと、そこまでシステムをつくっておかないと、とてもじゃないけれども、何か精神論みたいな話だけで終わってしまっては何の意味もないのかなというふうに思います。どうぞ、大臣。

麻生国務大臣 まことにごもっともな御指摘なんだと思います。

 よく言われます、阪神・淡路大震災のときに緊急車両の道路が確保されていれば被害に遭った人があれだけ死に至ったかといえば、緊急車両を速やかに通しておきさえすれば死に至るまでの人はかなり減らされたのではないかという説はよくあるところで、しかし、交通整理の権限は交通関係のお巡りさん以外はないからという話等々、漫画みたいな話は世の中いっぱい、あの時代もありましたので、あの経験に基づいていろいろ出された。

 各県から消防が応援に行った、消防のホースの径が合わない、電話を持っていった、回線が一つしかないからくちゃくちゃになった等々、あのときの経験に基づいて、例えば消防庁管轄で言わせていただければ、電波は三波持てるようになりましたので、それにあわせていろいろな回線が使えるようになりましたし、消防のホースの径も結構合わせられるようになりましたし、いろいろな形で進歩もいたしております。

 今の御指摘の避難道路の件につきましては、市町村の計画は国の基本指針、都道府県計画に基づいて策定することとしておりますので、これは事前に都道府県と協議するということにもなっておりますし、今回、この法律案を通していただきました後は、保護計画というのは、基本的に、渡辺先生御心配のように、これは実効性が上がらぬと何の意味もないものになりますので、そういった意味では実践的な国民保護モデルというものをつくり上げた上で、ある程度のシミュレーションも必要でしょうし、事実、ある程度の予行演習というか、そういった有事に備えての訓練というものはしておかないと、いざということになったときにパニックに陥るということを避けるという意味でも、いろいろな意味で計画と同時に訓練もある程度必要だろうと私どもは考えております。

渡辺(周)委員 まさに今、訓練の話がありましたけれども、これはなかなか、有事を想定した訓練というものは非常に難しいと思うんです。

 また、意識の上でも、例えば田舎の非常に牧歌的な農村地帯に行って、済みません、これから将来的に無差別テロが起きたときの訓練をやりますのでと言ったって、そんなわざわざ、のどかなこの村でこんなことあるわけないと。これは、みんなそうだと思っているんですね。

 これは、起きてみないと何でこんなことに、起きてみたらこんなことにでしょうけれども、あらゆる災害がまさかということばかりでございます。なかなかそこは難しい。これはまた別のときに、時間を見て議論したいと思います。

 最後に、ちょっと時間も押している中で、さっきの交通誘導とか避難・誘導の中で、例えばなんですけれども、防衛庁・自衛隊の人間は物理的に距離が遠くて間に合わないとか、要請しても行くだけの余力がないということもあると思うんですね。これは防衛出動で手いっぱいであると。では、例えば自治体の職員や警察や消防に任せられるかといったら、それも限界がある。

 そんな中で、私が一つお尋ねしたいのは、自治体に例えば国から職員が派遣をされてきた、つまり、自治体から直接米軍に支援を依頼することができるのかどうなのか。あるいは、国を経由して支援を何らかの形で、支援というのは例えば住民の保護という形で何かできるのか。あるいは、近くに米軍施設があった場合、例えば福生基地であるとか座間基地であるとか、そういうところに国民、日本のその周辺にいる人間が避難することができるのかどうなのか。米軍の中に、つまりキャンプの中に避難することができるのかどうなのか。それは地方自治体が要請することができるのか、あるいは国を経由してならできるのか。その辺を一点、お尋ねしたいと思います。

 それから、今回の法案では、いわゆる隣組というのですか、あの制度を連想させる、つまり、いわゆる民間防衛という形の規定は見送られたわけなんですけれども、では、自治会であるとか自主防災組織にゆだねるという中で、一つ提言したいことなんですが、その住民の中に、これはもちろんプライバシーの問題も出てきますけれども、例えば、かつて看護師さんをやっていた、看護の知識を持っている方がいる、あるいは大型の重機を操縦できる方が、免許を持っている方がいる、あるいはトラックやダンプカーを運転できる人もいればハムの免許を持っている人もいる、そういう人材を何らかの形で、これはもちろん本人が協力すると言わなきゃ別なんですけれども、個人情報をかき集めてきて組織しろとはもちろんできませんけれども、例えばそういう人たちに協力を求めて、何かのときには人材として出てくれ、あなた、救急蘇生措置できるじゃないか、あるいは、あなたはハムのネットワークでこういう情報を伝達してもらいたいとかできると思うんですね。

 こういうことについて、今後、自主防災組織の中にできるだけ組み込んでいくというかお願いしていくということを例えば指針づくりの中で考えていらっしゃるのかどうなのか。

 ちょっと時間がないので、その二点、お尋ねしたいと思います。

井上国務大臣 第一点目の、米軍の施設の中へ避難することにつきましては、一般的に、あらかじめそういう施設の中へ避難するということは想定されにくいわけですね。つまり、米軍の施設というのは攻撃目標になりますから、そこに大勢の人が立てこもるということは適切ではないと思うんです。

 ただ、緊急の場合、一時的にそこへ避難できるかどうか。これは可能性としては、私は必ずしもゼロとは考えていません。これは米軍の方とよく話をする必要がありますが、そういう場合は可能じゃないのかなというふうに考えます。

 後の、いろいろな形で国民の皆さん方に協力を願わないといけないんですが、お話のような特殊技能を持った方、これは本当に必要な場合が出てくると思いますので、こういう皆さん方に対しても協力を要請することがあると思いますので、でき得れば、市町村なんかにそういう方を登録するといいますか、自発的にそういう方がボランティアとして登録していただければ、そういう方の協力を非常に得やすくなると思うんですね。また、そういう皆さん方に対して必要な支援はどういう支援があるのか、よく考えないといけませんけれども、それもしていかないといけないんじゃないかと思います。

麻生国務大臣 後段の部分の方を言わせていただければ、それこそボランティアとしてあらかじめ、地図落としなんというのはちょっと選挙用語ですが、ある程度マーキングしておく、前原誠司、これはかくかくができるとかいろいろしておいていただいて、いざというときになったらということをあらかじめ知っておくということは物すごく有意義なことだと思いますので、御協力をいただけるということなのであれば、まことにいい提案だと。正直、検討させていただきます。

 また、今言われた中で、偉い人が来ていきなり避難方向はこっちですと言われても、ふだん顔見知りの渡辺さんが言えばいいけれども、静岡県で、いきなり隣に見たこともない久間さんが来てこう言ったって、それはあなた、静岡弁と長崎弁も違うでしょうし、避難させられる方の立場に立ちましても、もしかしたらこれは工作員かもしらぬということになりますとなかなか素直にはいきませんので、そういった意味では、顔見知りの消防団員がこちらに誘導してくれた場合、避難する方の安心感が全く違うと思いますので、そういった意味では、あらかじめその種のことを考えたいというのはとても大事なことだと存じます。ありがとうございました。

渡辺(周)委員 ぜひ、その点について御検討いただきたいと思います。

 済みません。もう時間がなくなりました。最後に、前回も安全保障委員会で来ていただいて御質問できなかったんですが、生物テロ対策についてだけ厚生労働省から聞いて、終わりにします。現状どうなっているかということでございます。

自見委員長 手短にお願いいたします。

上田政府参考人 お答えいたします。

 生物テロへの対処については、事態をいかに迅速に認知し蔓延防止に努めるかが重要でございまして、厚生労働省といたしましては、医療機関からの患者の確実な報告ですとか、あるいは指定医療機関における治療の実施等の措置が迅速に行われるような、そのような体制の整備を図っているところでございます。

 また、炭疽、ペスト等につきましては抗生物質が有効でございますので、メーカー及び卸において相当の在庫の確保を確認するとともに、天然痘につきましてはワクチンが有効であり、その備蓄を進めているところでございます。また、昨年の感染症法改正におきまして、いざというときに対応できるように、天然痘を一類感染症に位置づけるほか、生物テロ対策の強化を図ったところでございます。

 今後とも、都道府県及び関係機関とも連携しつつ、国民生活の安全確保のために最善を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 終わります。ありがとうございました。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 十四日の審議に続きまして、きょうも、米軍の行動関連措置法案、その中の行動関連措置、これについて引き続き伺いたいと思います。

 何しろ、この間の答弁、非常にはっきりしなくて、しかし、この法案の中心が行動関連措置で、それがどういうものであるかということを理解できないと法案全体の理解にもいかないという面があります。

 前回の答弁の確認の意味で聞きますが、「合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」それから「その他の合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置」、前回の説明だと、前者が直の支援、後者が間接的な支援を指すもので、その内容は、前者が、十条、十一条、物品、役務の提供それから指定行政機関の問題、後者が、間接的なものとして、六条、七条、八条、九条と答弁しております。それで間違いないですか。

井上国務大臣 これは法律の条文に関係するところでありますので、ちょっと法律の条文の関連において御説明をしたいと思うんです。

 委員が御指摘のは、第二条「定義」ですね。定義の五号、「行動関連措置」とありまして、この定義は、「武力攻撃事態等において、合衆国軍隊の行動」、ちょっと括弧の中は省きますが、「行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置」云々とありますが、これが行動関連措置であります。我が国が実施する措置ですね。

 そこで、この法律の書き方で、よく法律で書きますが、大体、最初に答弁申し上げたことと一致するのでありますが、この「円滑かつ効果的に実施されるための措置」と「その他の合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置」というのは、これは並立するんじゃないんですね。「その他の」「措置」といいますと、その「その他の」「措置」の中に「円滑かつ効果的に実施されるための措置」が包摂されるわけです。つまり、「その他の」「措置」が非常に広い概念でありまして、その中に「円滑かつ効果的に実施されるための措置」が入るわけであります。つまり、中に包摂されている、概念としてはやや小さい、こういうことでありまして、それで、申し上げたのはこれは例示になるわけですね。

 したがいまして、「円滑かつ効果的に実施されるための措置」というのは、この規定でいいます限り例示的な規定になりまして、この例示は、せんだって御答弁申し上げましたように、直接的な支援の措置、これを例示として挙げているということでありまして、そのほか、「合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置」というものがあるということでありまして、しかし、この措置も、広くは「円滑かつ効果的に実施されるための措置」と関連があるということですね。そういう広い意味の「円滑かつ効果的に実施されるための措置」ということでございまして、そういうことを間接的に実施するといいますか、米軍に対しては間接的な支援になる措置、こういうぐあいに説明をいたしたわけでございます。

赤嶺委員 きょうは政府参考人の方にも来ていただいていますが、それじゃ、その行動関連措置の今大臣が説明された内容をもうちょっと詳しくというか突っ込んで説明していただけませんか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、ただいま大臣が御答弁されたことに尽きておるようでございますけれども、多少技術的な点もございますので補足させていただきますと、まさに、この二条五号にございます行動関連措置の定義の条文でございます。そこで、委員から、合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置、それから、その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置という関係についてのお尋ねかと存じます。

 まさに今、大臣が御答弁になりましたように、「その他の」という法令用語というものは、その前にあるものを一つの例示として、そしてその後にあるもの、まさに「我が国が実施する措置」がその前にあるものを含んで指し示しているという形になっているわけでございます。

 ただ、法律上、この「合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」というものを条文の中に明示しておるわけでございますので、その概念というものが具体的にあるものでございます。その具体的なものとして、直接的に「合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」というものとして我々が念頭に置いておりますのは、法案の第十条に言うところの物品、役務の提供であるとか、また、法案でいえば第十五条のところで、土地等の使用というものが直接的に米軍を支援するということを念頭に置いておるための規定でございますので、この「合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」ということに当たると思っております。

 ただ、法案として、行動関連措置としては、その他の、例えば情報の提供であるとか地方公共団体との連絡も含めて、それから、最初に申しました物品、役務の提供も含めまして、この法律の中では、まさに「合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置」という、全体としてはそういう位置づけになっておるかと存じます。

赤嶺委員 引き続き政府参考人の方に聞きたいんですが、例えば米軍と自衛隊が運用面において警戒監視あるいは機雷除去あるいは海や空域の調整などをやっている、そういうのは行動関連措置の内容として入ってくるんですか。

増田政府参考人 今の先生のお尋ねは、いわゆる広い意味での、我が国が他国から武力攻撃を受けましたときにおける我が国の自衛隊と米軍との間の共同対処行動そのものが行動関連措置に当たるのかどうかというお話かと存じますが、広い意味では行動関連措置の一つということだろうと思います。

赤嶺委員 それから、前回の質問のときに、大臣は、これも直の支援と答えた第十一条というのがあるんですが、今の政府参考人の説明だとそれが欠けておりますけれども、「指定行政機関は、法令及び対処基本方針に基づき、必要な行動関連措置を実施するものとする。」こうあるわけですね。

 当然、この中には、防衛施設庁が入って、土地の使用などで、米軍特措法の手続に基づかないで土地を収用し米軍に提供するというのも入っていると思うんですが、防衛施設庁のもう一つの役割として、例えば、今、日米間で在日米軍基地の使用条件を定めております。沖縄の米軍基地であれば五・一五の使用条件とか、これの変更等についても防衛施設庁の仕事になるわけですが、いわゆる行動関連措置というのはそういう基地の使用条件の変更なども含まれていく、このように理解してよろしいでしょうか。

増田政府参考人 お尋ねは法案の第十一条についてのものと存じます。

 法案の第十一条では、前二条、すなわち九条、十条に規定するもののほか、「指定行政機関は、」「必要な行動関連措置を実施するものとする。」ということを規定しております。

 その中身として、ちょっと長くなりますが、私どもが考えておりますのは、例えば、法案の七条に言います情報の提供、それから法案の八条に言います地方公共団体との連絡調整、また法案の十四条に言います損失補償、そのほかに、防衛施設庁が行います合衆国軍隊のための物品等の調達、それから防衛施設庁によりますところの日米地位協定上の施設及び区域の提供というものが、法案の十一条に言います「指定行政機関による行動関連措置」の例だと思っております。

 今先生のお尋ねの、使用協定と防衛施設庁がやっております業務というものは、最後に申しました、地位協定上の施設及び区域の提供に絡む業務ということで、行動関連措置の中に入り得るものと考えております。

赤嶺委員 それじゃ、次の質問に移っていきます。

 ここで、合衆国軍隊の準備の行動、これも前回の質問でなかなかはっきりしなかったんですが、「日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」、これは具体的にはどういうことを指しているんですか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 法案の二条五号の行動関連措置の定義の中で、今先生からお尋ねの、「日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」という文言を設けております。

 これは、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態以外の武力攻撃事態等、すなわち、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態におきます日米安保条約及び日米地位協定で認められる武力の行使には至らない準備のための合衆国軍隊の行動を意味すると考えております。

 例えば、日本国外から日本国内への、もしくは日本の国内での人員や物資の輸送であるとか、はたまた施設及び区域内における人員の集結や物資の集積というようなものが想定されるところでございます。

赤嶺委員 その場合に、米軍が周辺事態において行動している場合というのがあり得るわけですね。当然、それは、日本の有事に波及しないようにするための努力があり、また、米軍自身のみずからの判断に基づいて周辺事態に対処している場合があるわけですね。そこで行われている米軍の武力行使、これは今の「準備のための行動」に入るんですか、入らないんですか。

増田政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたように、「日米安保条約に従って」、法案では「武力攻撃を排除する」という表現になっておりますが、「武力攻撃」は法案の中で定義されておりまして、我が国に対する武力攻撃でございます。ですから、「日米安保条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」というのが法文上の定義でございます。

 したがって、先生が今お尋ねの、周辺事態に対応して武力の行使を行っておる行動というものは、私どもが考えております、この「日米安保条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な準備のための行動」とは概念を異にいたしますので、入らないと考えております。

赤嶺委員 それじゃ、そこの「日米安保条約に従って」という場合に、日米安保条約の具体的に何条のことを指しているんですか。

増田政府参考人 「日米安保条約に従って」というのは、まさに日米安保条約に従ってということでございますが、代表的なものが五条だろうと思っております。

赤嶺委員 五条であれば五条と明示すべきなんですが、今、代表的なものが五条ということでありました。それは代表的なもので、別のものも含まれるわけですか。

増田政府参考人 日米安保条約というものの意義というのは、あるいは専門的には外務省からお答えいただくのが適当かもしれませんが、私どもが念頭に置いておりますのは、五条という条文は、ある意味では武力行使そのもの、いずれか一方に対する、我が国の施政のもとにある領域における攻撃がというふうに規定されておる条文でございます。

 ですから、私どもが考えておりますのは、そういう事態が起こる前の、例えば予測される事態であるとか切迫している事態においても、日米は、我が国に対する武力攻撃が仮に起こった場合に、我が国に対する攻撃の影響を最小限にし、一番望むらくは、攻撃がないようにいろいろな努力をするということが最善だろうと思っております。

 そういった意味で、直に五条を引くということが必ずしも適当ではないのかと考えて、総体的な意味で、「日米安保条約に従って」という文言にしております。

赤嶺委員 説明は一応説明として理解できます。

 次に、合衆国政府との連絡という問題について聞きます。

 法案の第六条について、「政府は、」「武力攻撃事態等の状況の認識及び武力攻撃事態等への対処に関し、日米安保条約に基づき、アメリカ合衆国政府と常に緊密な連絡を保つよう努めるもの」、このように規定しています。ここで言う「緊密な連絡」というのは、政府間のどのようなレベルで行うことを想定しているんですか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 政府間の緊密な連絡と申しますチャネルは、まさにさまざまなレベルがあろうと思います。一番高いところでは首脳同士、すなわち合衆国大統領と総理との間、また外務大臣と国務長官との間、またその下のレベル、まさに最終、事務レベルという意味では、ガイドラインにも触れております調整メカニズムというものを通じて緊密な連絡を保つように努めるということでございます。

赤嶺委員 そうすると、日米ガイドラインに沿って、調整メカニズムを通じてやる緊密な連絡というのもあるという理解でよいということですね。――それはいいです。

 それでは、次に、いわゆる日米ガイドラインは、情報活動や部隊の活動、移動、後方支援その他の事項を明らかにする日米の共通基準というものを平素から確立しておくということになっています。そして、「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府の合意により共通の準備段階が選択され、これが、自衛隊、米軍その他の関係機関による日本の防衛のための準備のレベルに反映される。」このようになっています。

 日本に対する武力攻撃が予測されるということになった場合、アメリカ政府と緊密な連絡を保つことによってこういう共通の準備段階が選択をされて、それが行動関連措置に反映するものになっていくというぐあいに考えてよろしいでしょうか。

自見委員長 質疑時間が終了していますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

増田政府参考人 今のお尋ねの共通の準備段階等については、私どもの立場からお答えすることが適当かどうかよくわからないところもございますけれども、基本的に、その種の、ふだん、平素からのさまざまな調整活動というものがまさに事が起こったときの日米の共同対処行動に反映されるものと考えております。

赤嶺委員 もう時間がなくなりました。きょう、まだ二条の五号のところであります。今後、引き続き慎重に審議を深めていただきますよう希望しまして、質問を終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。よろしくお願いします。

 十四日の委員会で、石破防衛庁長官は、我が国に対する大規模着上陸侵攻の可能性についての私の質問に対しまして、これまで我が国が平和であったことについて、「もし日本が防衛力も持たず、日米安全保障条約も結ばずやっていたとしたら、やはりそうだっただろうか。」と答弁なさいました。

 確かに、長官のおっしゃるような指摘があることは承知しております。しかし、我が国が平和憲法を遵守してきたことの方が、我が国がこれまで平和であったということのはるかに大きな理由ではないかと私は思います。

 社会民主党は、以前から、北東アジア非核地帯の設置を訴え続けてきており、我が国は世界に誇るべき平和憲法を持つ国として北東アジア非核地帯の設置についてイニシアチブをとって取り組むべきだと思います。政府は有事法制の整備よりも、まず先に平和外交を推進し近隣諸国との信頼醸成措置を図るべきではないかと思いますが、その点について、外務大臣の御見解を伺います。

川口国務大臣 まず、国の独立と主権、これを確保するということのために、平素から、総理が備えあれば憂いなしというふうにおっしゃっていらっしゃいますけれども、そういった考え方に立ちまして、我が国に対する武力攻撃の事態に対して備えておくということは国としての責務であるというふうに考えております。

 それから、外交でございますけれども、外交の目標というのは、我が国の安全、繁栄、それを確保するということであるわけでございます。日本に対する武力攻撃が生ずるということを未然に防止するということのためにも、外交をもって近隣の諸国と友好関係を築くということも大事でございますし、また、国際社会全体が平和であって繁栄していくということになるように我が国として貢献をしていくということが大事であると私は考えております。

東門委員 備えるということ、それはやはり武力攻撃がないように備えることであって、私は、憂いがなくここまで来られた、またいろいろ反論もあろうかと思いますが、日本がここまで平和であったのはやはり平和憲法があったからだと、特に私の立場からは強く感じます。政府は沖縄に対して何も手を打ってないじゃないですか。そういう中で、すぐまた武力攻撃に対して備える、とんでもない話だと思います。

 今回の国民保護法制、国民保護とは確かに名前はついています。私は、国民ではなくて住民ではないかときのうも申し上げました。そのように入れていただきたい。国民保護ということを前に出しながら、実際は、米軍の行動、それを支援するための法制が十本そろって出てきたのではないかと私は思っております。

 米軍行動関連措置法、その法案第七条において、武力攻撃事態等において、国民に対し、米軍行動に係る地域及び状況等につき必要な情報の提供を行うと規定されています。しかしながら、米軍の作戦行動については情報の秘匿が政府に要求されることも想定されて、政府が国民に対し米軍の行動につき適切に情報を提供しているのか、情報を統制していないかどうかチェックすることは困難です。

 政府は米軍の行動についての国民への情報提供をどのように担保するつもりなのでしょうか、伺います。

井上国務大臣 まさにこの法律に規定されてありますとおり、政府は、武力攻撃事態等においては、国民に対しまして、合衆国軍隊の行動に係る地域その他の合衆国軍隊の行動に関する状況等につきまして適切な情報を提供していくということでありまして、ホームページ等によります方法によりまして提供していきたいと思います。

 ただ、今御指摘ありましたように、作戦行動に関する部分については、これは明らかにすることはできませんけれども、極力、米軍関係の情報、そして住民に対する大きな影響がありますようなものにつきましては情報を提供していきたい、こんなふうに考えています。

東門委員 ということは、実際には米軍からの情報というのは余り当てにはならない、しかし条文には書いてあるということになるんですか。そういうことですか。そういうふうにしか伺えなかったんですけれども、いかがですか、大臣。

井上国務大臣 これほどマスコミが発達している社会でありますし、きちんとした国会もあるわけでありまして、委員もこういう立場で御質問されておりますから、言ってみれば衆人環視の中でこの法律を実行していくわけでありますから、私は、それは、そのためのこの法律でありますから、政府を一〇〇%信頼して何も質問をしないとか監視をしないということではありませんで、十分、政府のやっていることも監視をしていただきますし、必要なことにつきましてはまた御意見も賜りたい、こんなふうに思います。

東門委員 今回のACSA改正及び米軍行動関連措置法案により、武力攻撃事態等において米軍に対する弾薬の提供が可能となるわけですが、ある国の我が国への武力攻撃を自衛隊及び米軍が排除した後、引き続き米軍がその国の軍事施設等への攻撃を行おうとしている場合、米軍が我が国から提供されていた弾薬を使用することが許されるのでしょうか、また、我が国が米軍に新たに弾薬の提供を行うことは可能なのか、お伺いいたします。

川口国務大臣 委員がおっしゃっていらっしゃるような事態というのがどういう状態であるのか、ちょっと直ちにはわかりにくいわけでございますけれども、いずれにいたしましても、ACSAに基づく手続の枠組みに従って行われる自衛隊による物品、役務の提供は、あくまで個別活動ごとに我が国の国内法に従って行われるということになっているわけです。そして、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態におきましては、自衛隊は、米軍行動関連法案に基づいて、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施している米軍に限り弾薬の提供を行うことができるわけです。

 それから、米軍の側からいいましても、ACSAに基づいて弾薬を受領して使用するということは、改正ACSAの新しい第五条に基づく場合、すなわち、我が国に対する武力攻撃を排除する、そのために必要な活動を行っているという場合に限られるということでございます。

 したがいまして、米軍がACSAに基づいて受領した弾薬、これを使用するということについて申し上げますと、それは、我が国に対する武力攻撃を排除するため、それ以外の事態に対して使用するということはないということでございます。

東門委員 ちょっと長い御答弁がありましたけれども、確認だけです。要するに、私が申し上げました、ある国が我が国へまず武力攻撃をした、それを自衛隊及び米軍が排除した、そこで、その弾薬はもう使用されない、その後も提供することはないということを確認したかったんです。私はそこをお聞きしたんです。もう排除した後はありませんよね、使用もないし提供もないですよねということだったんですが。

川口国務大臣 非常に大ざっぱに言えばそういうことなんですけれども、要するに、弾薬を使用できるというのは、我が国に対する攻撃を排除する、そのときに使用できるということであります。

東門委員 その同じ法案の第十四条では、米軍の行動によって損失を受けた者があるときは日本国政府がその損失を補償するとして、補償の規定が設けられています。法案では、補償規定の適用場面として、これは避難・誘導との関連で出てくると思うんですが、米軍の緊急通行に伴う迂回や妨害車両等の撤去を挙げておりますが、米軍の行動に伴う損失は決してこれらに限定されるものではないと思うのですが、いかがでしょうか。これら以外によって損失を受けた国民に対してやはり補償はあるということですか。

井上国務大臣 通常の場合は、この法律に書いてありますように、緊急通行それから車両の撤去、これに伴う損失について補償するということであります。

 今委員がおっしゃっているのは、具体的な戦闘行為によりまして損失の生じた場合のことをおっしゃっているとすれば、これは、そういう武力攻撃事態が終了した段階におきまして、どの程度の被害があったのか、それに対してどうするかということは、その時点で考えるべきことだと思います。全体を見ながら最終的に決めていく、こういうことだと思います。あらかじめこうするということは決められないということだと考えております。

東門委員 緊急通行、迂回あるいは妨害車両、それは確かに避難・誘導のときに出てくると思うんですが、それ以外のものはあり得ないというふうな想定ですか。これだけしか考えられないという意味なんでしょうか。

井上国務大臣 通常の場合はそうだろうというふうに考えております。もし何か考えるのであればもちろんそれも入ると思いますけれども、今のところ、私は、法律の中に入れるべきものとしてはこの二つだろうというふうに考えます。

東門委員 同法案の第十五条なんですが、武力攻撃事態に際し、米軍に提供する土地、家屋、それが緊急に必要となる場合には、内閣総理大臣が必要な土地、家屋を収用し、それを米軍に提供するとしているわけです。土地収用に当たっては、その土地上の立ち木などを移転あるいは処分をし、家屋については形状変更も可能となるとしています。これに伴う国民の損失は国が税金で補償するということになっていますが、その補償というのは、もちろんそれは終了後ということになるんでしょうけれども、原状回復可能な分ということでしょうか。

井上国務大臣 この十五条の規定は、武力攻撃事態等が終了してということじゃなしに、土地とか家屋の使用につきまして収用します場合は、それは補償をするということでございます。

東門委員 立ち木、家屋、土地、いろいろなもの、そうしたものをちゃんと原状回復まで政府が責任を持つということなんですか。

井上国務大臣 損失補償ですから、どの程度の損失が出たかということを適正に判断して、それに対して補償をする、こういうことです。

東門委員 武力攻撃、政府の責任によって引き起こされることだと私は思います。そういう中で、国民がいろいろな意味で犠牲になってくる。それを国民の義務だとか、国がそういうときには国民の義務だという声もありました。協力しなければいけない、「努めるものとする。」そういう言葉で国民の協力を要求されるようなことを書かれていますけれども、しかし、国の、政府の責任によって起こされたもの、そういうことだと思います。

 そういうことに対しての補償はちゃんと国が、もしそこまでいくのであれば、この保護法制と一緒にガイドライン的なものをもう決めていなければいけないと思うんです。いかがですか、そういうのは全然ないんでしょうか、補償に関するガイドライン。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。

井上国務大臣 特定の人に損失を強いる場合、それが政府の責任において生ずる場合におきましては補償をするということでありまして、御指摘のとおり、補償の基準等についてははっきりしておかないといけないと思います。これからそういう点につきまして十分に検討していきたいと考えています。

東門委員 私がそれをすごく心配しておりますのは、沖縄の問題がいつも頭をよぎってくるからなんですね。補償というときに、本当に政府は誠意を持って補償してきたかというと、とても大きな疑問符をつけなきゃいけない部分があるんです。

 ですから、今、条文でそういうふうに言っていますけれども、ちゃんとしたものを出していただかないと国民は納得、いや、まず武力攻撃事態を想定するということは私たちにはないわけですが、そういうところをきちんとしていただかなければいけないという観点からの質問です。

 以上で終わります。

自見委員長 次回は、明二十二日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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