衆議院

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第13号 平成16年5月11日(火曜日)

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平成十六年五月十一日(火曜日)

    午後二時三十分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      遠藤 利明君    大村 秀章君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      西銘恒三郎君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      加藤 尚彦君    鎌田さゆり君

      川端 達夫君    末松 義規君

      武正 公一君    筒井 信隆君

      中川 正春君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   松谷有希雄君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  小林 誠一君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    山中 昭栄君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  河野 孝義君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長)        荒木喜代志君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全監)  小田 公彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       上田  茂君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     佐々木宜彦君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  仲村 正治君     西銘恒三郎君

  岩國 哲人君     加藤 尚彦君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     仲村 正治君

  加藤 尚彦君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官大石利雄君、防衛庁防衛参事官松谷有希雄君、防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長小林誠一君、防衛施設庁長官山中昭栄君、防衛施設庁建設部長河野孝義君、消防庁長官林省吾君、外務省大臣官房参事官鈴木敏郎君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長荒木喜代志君、外務省北米局長海老原紳君、外務省条約局長林景一君、文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全監小田公彦君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官上田茂君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長佐々木宜彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 委員長、そして委員の皆さん、私たちはずっと、三十数時間、議論を続けているわけですけれども、私は、この法律、七件の法律そして三件の条約ですけれども、本当に重要な法律だ、そういうふうに思います。そして、そのことは、今私たちが生きているこの地球の上で、一方で私たちは日本の有事法制ということを論議しておりますが、リアルタイムで、地球の片隅で、あるいは地球の各所で、いろいろな紛争が出てきて、そのことが私たちの今論議している有事法制と密接な関係を持っているんだなとつくづく感ずるところがあります。

 我が国が自衛隊の若者を送り出しているイラクのサマワにおいて、昨日、オランダ兵に対する攻撃が行われました。手りゅう弾が投げられて、一名のオランダ兵が死亡し、そして一名が重傷と聞いております。こうしたことは、アメリカと同盟関係にある我が国、そしてその紛争地に自衛隊を送り出している私たち、そしてそれを送り出した国会の責任、こういうことを深く考えないわけにはいかないわけです。

 今、そのオランダ兵に対する攻撃の事件でございますが、外務大臣、事実関係はどのようになっておりますでしょうか。

川口国務大臣 サマワのオランダ軍の検問所で、手りゅう弾が投げ込まれて、オランダ兵が一名死亡し、一名が負傷したという報道、これは承知をいたしております。

 事実関係につきましては、現在、オランダ軍が確認中であるというふうに承知をしております。

首藤委員 外務大臣、私、常々不思議に思うんですけれども、外務大臣は、承知をしておりますとおっしゃいますよね。それで、報道である、確認中であると。もう何年もそういうことをお聞きしているわけですけれども、イラクではなくて、例えばコンゴの山の中で起こったとか、あるいは我々が全然関係ないところで起こったのならともかく、六百名の自衛隊が行って、さらにそれに外務省の五人、キャリアを持ち、現地社会と溶け込んで、現地の当局とも密接な関係のある外務省の方がサマワにおられながら、どうして確認中なんですか。

 もう既に十時間以上は経過しているのに、それはなぜ――それは、報道はそうだ。しかし、報道よりも、我が国の派遣の機微に最も触れた情報に対して、なぜそれが確認できないんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 これは、オランダ軍がまず事実関係を今確認しているということでございます。そして、我が国としては、オランダに対して事実関係を確認しているということでございます。

首藤委員 皆さん、これをお聞きになってどう思いますか。それは、この対応をどうするかはともかく、一体何が起こっているのか、私たち、外務省がありながら、そして六百名の自衛隊を派遣して、そして、ひょっとしたらこのことがサマワの大暴動のきっかけとなるかもしれない、そうした大きな問題、国の名誉がかかっている問題、若者の、六百名の命がかかっている問題に関して、それをオランダ軍に聞かなければわからないものなのか。我が国の外務省というのは一体何のためにあるのか、疑問を感じないわけにいかないんですね。

 こういう情報が入らなければ、この有事法制だって論議にならないですよ、はっきり言って。一体どこでどういうことが起こっているのかも、いや、そういう報道があるのは承知しておりますがまだ確認はできておりませんと言うのだったら、有事法制なんて意味がないですよ。

 ですから、外務大臣にお聞きします。未確認でもいいですから、現地から、外務省の大使館員から伝えられている情報はどういうものであるか、お伝えをお願いします。

川口国務大臣 まず、オランダ軍あるいはオランダ政府がこれについて発表をした段階ではないというふうに承知をいたしております。我が国は、引き続きオランダ政府に対して確認を行っているということでございます。

首藤委員 いや、私は、今何をおっしゃっているのかわかりませんが、それはプロトコールの話をされているんだと思うんですけれども、そうではないんですよ。

 我が国の若者の命がかかっている情報というものは、別にオランダ軍に確認しなくたって、それはイギリス軍に確認したらどうですか。治安を担当しているのはイギリス軍ですよね。CPAに確認されたらどうですか。サマワにCPAがございますよね。それから、何度も何度もここで論議した、補正予算以来論議している、サマワの評議会はどうしましたか。

 それから、いろいろな形で警察とか当局と、何度も何度も当局とも打ち合わせているというお話をお聞きしました。その当局に確認された状況はどうですか。そんなことをしなくたって、だれか飛ばしていって、あるいはそこに雇用している現地スタッフを使って、病院に行ったらどうですか。

 そこから得られた情報は、どういうものがございますでしょうか。

川口国務大臣 当然に、我が国としても、いろいろな情報の確認に努めております。これは、オランダ軍あるいはオランダ国政府、まさにこのオランダ政府あるいはオランダ軍が当事者でございます。当事者が今現在確認中であるということでございますので、我が国といたしましては、そのオランダ軍の確認を待つということであると思います。

首藤委員 皆さん、どうお考えですか。これは、私たちの六百人の若者を送り出している、そこにおいて、ありとあらゆる情報を探って、ありとあらゆるつてを探って、そして、この六百人の若者の安全と日本の名誉が守れるかどうか、そのために一瞬一秒を争って情報を集めてくるのが当然じゃないでしょうかね。私は、今の外務大臣の、オランダ政府に、サマワからさらに離れた遠いヨーロッパのオランダ政府に確認されているということの真意が全くわからない。

 ですから、未確認情報でも結構でございます。新聞に幾つも報道されている、それ以外の情報はどういう情報があるのか。ここは国会ですよ。国民を代表して、今の私たちの外交を決めていかなきゃいけない。その場で、どうして、次の報道を待ち、そして、サマワから数千キロメートルも離れたオランダからの情報を待たなければいけないのか。現地にいる、数キロ車を飛ばせば情報が得られるところからの情報というのは、私は、全くないとは思わないんですよ。全くないとも思わないんです。

 外務省の独自の判断としては、この事件というのはどういうものであるか、はっきり外務省の独自の立場からお伝えください。

川口国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますけれども、これはオランダ軍が当事者でございます。そのオランダ軍が、今、事実関係を確認中ということを言っているわけでございます。我が国として、これについてさまざまな、もちろん情報を集める努力をいたしております。オランダ軍がこれを確認していない、当事者が確認していないという状況で、我が国の立場で、我が国がどのような情報を持っているかということをこういった公の場で申し上げるというのは適切ではないというふうに判断をいたしております。

首藤委員 私は、それはもう本当に間違っていることだと思いますね。

 ですから、私たちの若者が、私たちの自衛隊がそこに行っているわけですよ。それで、確かに小さな事件かもしれない。しかし、すべての大事件は小さな事件から始まりますよ。本当に、小さな事件があって、何だ、こんなことがあったのかと思ったら、どんと大きな爆発が起こったりするわけですよ。小さな紛争がまた全市が紛争のちまたとなるような地域紛争に発展したりすることがあるわけですよ。

 ですから、こんなことは常識ですが、物事の兆候というものを悟らないと危機管理というのはできないんですよ。危機管理というものは、兆候を察知してアーリーウオーニング、早期警報を出す、これしかないんですよ。ですから、それができていなかったらどうしようもないじゃないですか。

 ここでこんなに集まって論議することだって、こんな状況で、例えば、この法律が関係しているようなテーマにおいて、日本の近くで第三国の船舶なり何かが攻撃された。しかし、その船舶は、そのフラッグは日本のフラッグでないから、それは本国に照会しつつある。そうしたら、どういう状況が起こっているか、それだったらわからないでしょう。そうじゃないでしょう。我々がまさに直結した利害関係を持っているわけですから、それに対してどういうふうに対応するかということが重要だと思います。

 もし、このような報道がそのとおりだというと、チェックポイントで手りゅう弾が投げられるというのは大変難しい状況です。なぜかというと、町を通っている人間にぼんと投げるのではなくてチェックポイントを襲うというのは、襲う側にも覚悟が要って、襲う側にも組織がいて、襲う側にも計画があって、襲う側も逃亡する計画をきちっと組んでいる、これを組織的にできなきゃいけないわけですね。しかも、チェックポイントがあることを経常的に見ていなきゃいけない。それはまさに、攻撃というものが計画的、組織的、永続的であるということを示唆しているわけですよ。

 ですから、ここは、この事件というのは、まさにイラク特措法における条件というものが、自衛隊派遣の条件というものが崩れたということを証明している事件ですけれども、これに対して、防衛庁長官、いかがですか。水を飲む前にお答えください。

石破国務大臣 先生がおっしゃるようなそういうようなことも、それは私はあながち全面的に否定をするものではございません。

 しかしながら、まさしく今外務大臣から答弁がございましたが、どういう状況で何が起こったのかということを正確に把握していない時点で、断定的なことは申し上げられないと思っています。それがイラク特措法の根源を揺るがすものであるかどうか、そのことも含めまして、それはきちんとした情報に基づいて私どもとしては申し上げるべきもので、現時点において、そうかというふうに問われまして、そうでございます、そうではございませんというようなことは申し上げられない。現状においては特措法の条件は満たしているというふうに私どもは考えております。

首藤委員 防衛庁長官、これはお互いによくお互いの知識のレベルは知っていますよ。それで、皆さん御存じだと思うけれども、軍隊というのは、あなたが何度も繰り返してきたように、自己完結性なんですよ、自己完結性。要するに、どこにあってもすべてのことがある、食糧もある、水もある、活動もできます、そして病気になれば医療もある、けがをしたら医療もある、そして情報もある、こういうことなんですよ。

 今おっしゃったのは、六百人の自衛隊がいながら、そこで、身の回りで、たかだか数キロ離れたところで起こっている攻撃事件、これに関して、あなたは、自衛隊として何ら情報を入手していなくて、それを外務省に聞いて、外務省がオランダに聞いて、それをまた日本の外務省に言って、それを今度あなたに情報を伝えるということじゃないですか。

 では、六百人の自衛隊の方は、そこでどういう情報を察知して、どういう対応を今とろうとしているんですか。いかがですか。

石破国務大臣 先生おっしゃいますように、サマワに自衛隊を派遣し、それに対する安全配慮義務というものを防衛庁長官は負っております。したがいまして、正確な情報を把握するために、私どもも、外務省と緊密な連絡をとりながら、あれこれあれこれこういうような手によってということは申し上げることはできませんが、詳細な情報を把握すべく努めております。

 ただ、先ほど来外務大臣から答弁がございますように、当事国はオランダであって、状況がどうなっているかというのを一番正確に知悉をし得るのはオランダであって、そしてオランダ兵の安全にも全責任を負っているのはオランダ政府であって、そのオランダ政府から何らまだ公式にこういうことであったという確認がない段階において、未確認のいろいろなことをこの場で申し述べるということは決して適切なことだと私は存じません。(発言する者あり)

首藤委員 これを常識的とか良識的と言うのはとんでもないことですよ。そういうことをおっしゃるなら結構ですよ。

 では、未確認情報ABCDEと言ってください。その中、どれか、それでいいですよ。だから、それはオランダにもメンツがあるとか、国家間の関係があるからそういうことは言えないと言うのなら、今サマワにいる自衛隊がこの事件をどの程度把握できているのかということを私は知りたいわけですよ。

 ですから、そこの情報、この件に関する情報ABCDを、未確認情報で結構ですから、それをお伝えください。それは自衛隊の持っている情報能力を示すわけです。

石破国務大臣 大変恐縮でございますが、情報収集能力を知りたいというふうに先生はおっしゃいました。もちろん、情報収集能力というものが、世の中に万全というものはございませんけれども、それが高いレベルであるべく私どもは努力をいたしております。

 ここで、これがABCDと、これが私どもの防衛庁の、自衛隊の情報収集能力でございますということをこの場で、いかな先生から御質問がありましても、開陳をすべきことは決して得策だとは私は思っておりません。御理解を賜りたいと存じます。

首藤委員 いや、大臣、手のうちを明かせないんじゃなくて、手のうちがないんですよ。そうでしょう。自衛隊はそういうことをやっちゃいけないんでしょう。どうですか。例えば索敵のために、偵察のために兵を送ってこの状況を確認できるか。今の自衛隊法じゃできないんでしょう。そうじゃないですか、防衛庁長官。

石破国務大臣 これは先生、現地の状況がどうであるか、情報収集ということは、それはできないというものではございません。それは、その場においてどのような武器使用の権限を有するとかなんとか、そういうような議論であれば、これはまた別のお話でございます。それは自己を守るための武器使用というものの権限ということに一般的になるわけでございますけれども、現在、全くそういうことをやっていないか、やっているかということも含めて、それはここでお答えをするのは決して適当だとは思っておりません。

 しかし、私は、どういうような状況が起こったか、それを正確に認識し、それを抑止し、避け、そして被害を局限するためには何ができるかということについては、これは、万全というものは世の中にないことを承知の上で申し上げますが、万全に近いものを考える義務が私どもはあると思っております。

首藤委員 この問題は、なぜこの委員会の冒頭に私が言ったかというと、大変大きな問題なんですよ。要するに、我々は、いろいろ、国際社会においても、あるいは日本に対する攻撃においても、明確な情報をシステム的にも現実的にも把握できないんですよ。できていないんですよ。それはもうどんなふうに言いわけしてもそうなんですよ。ですから、たまたまこういうことが起こった、結局、それに対していろいろな情報が出てこない。

 世界のニュースを見てごらんなさい。起こったことに対して、それこそ、どこの国の国防相でもどんどん言っていますよ。秘密として隠さなきゃいけないのは本当に限られたことなんですよ。ですから、何から何まで秘密だというのが日本の立場ですが、それは、何から何まで秘密じゃなくて、何から何まで持っていないということなんですよ。

 ですから、このことを指摘して、本題により近いところに行きますけれども、そのイラクで、最近、非常に我々が関心をというか憂慮しているのは、イラクのアブグレイブ刑務所における、拘束されたイラク人への拷問の問題なんですね。

 これは、昨日も民主党の同僚議員が、これはジュネーブの人権条約、戦時国際人道法のジュネーブ条約違反じゃないかということを質問させていただきました。それに対して、川口大臣は、それはジュネーブ条約違反の可能性があるというふうにおっしゃったわけですが、答弁をお変えになる気持ちはございませんでしょうか。いかがでしょうか、外務大臣。

川口国務大臣 今回のイラクの刑務所で起こっている事件、写真等で報道されている件につきましては、これは非常に、極めて遺憾であるというふうに考えております。

 米側自身、この虐待事件については、これを深刻に受けとめて、ブッシュ大統領自身が謝罪を行い、引き続き調査を行うということを言っています。また、軍事法廷での訴追、そして処罰、再発防止策といった一連の事柄に着手しているというふうに承知をいたしておりまして、我が国としても、米国において適切な対処がとられるということを期待しているわけでございます。

 それで、ジュネーブ条約との関係でございますけれども、これは我が国として事実関係の詳細を承知しているわけではございませんので確定的に申し上げることが難しいので、一般的にということで申し上げたいと思いますけれども、一般的に考えますと、今回のような虐待行為が行われた場合にはジュネーブ諸条約の違反に該当する可能性があると考えております。

 これについて、きのう申し上げたとおりですけれども、今回の事案については、米国といたしまして今これを調査中であるということでございますし、日本は当事者ではなくてその詳細な事実関係を承知していないということでございますので、ジュネーブ諸条約の違反の行為があったか否かについて確定的に申し上げるということは困難であるということでございます。

首藤委員 ですから、それはもうきのうの時点で明らかだったわけですよ。それはジュネーブ条約違反だということは、アメリカの中でラムズフェルドの公聴会に関してもみんな言っているわけで、これはジュネーブ条約、人道法に対する違反であるということはだれが見ても明らかなんですね。それはジュネーブ条約をお読みになったとおりですよ。そのジュネーブ条約じゃなくて、もっと、こんなものであれば、昔のハーグ陸戦規定とか、そういうものにだってこれは違反するような行為なんですね。

 こうした行為を、ラムズフェルド国防長官が事実を認めて謝罪し、七名が不名誉除隊となって、もう既に何人かは軍法会議にかけられている。イギリスでは、ブレア首相が九日に、これは違反であるということを認めて謝罪している。フーン国防相もイギリスでは認めた。それから、この問題がジュネーブ条約に違反するということは、赤十字報告書がことしの二月に出ている。

 これだけのことがありながら、なぜ川口大臣が、日本の国の外務大臣だけが、これはジュネーブ条約違反の可能性とおっしゃったのか。世界で指導者がみんな断定的に言って謝っているのを、なぜ日本の政府だけが違う判断をされたのか、その判断の基準をお聞かせ願いたいと思います。

川口国務大臣 先ほど委員が引かれたラムズフェルド国防長官あるいはブレア首相、それぞれ、遺憾その他の表現で遺憾の意を表明していますけれども、ジュネーブ諸条約違反であるということを明確に言ったということではないと承知をしています。

 それから、国際赤十字、これはアブグレイブに入っておりますけれども、ジュネーブ諸条約に違反しているということを明確に言ったということは、少なくとも公表されていない。どういうことを言ったかということについては、私どもは承知をしていないわけでございます。

 私が違反の可能性というふうに申しましたのは、この理由は、先ほども申しましたけれども、我が国として、このアブグレイブ刑務所で起こったことについて、その事実関係の詳細を承知しているわけではございません。したがいまして、確定的に申し上げるということは困難であるということを申し上げているわけでございます。

首藤委員 外務大臣、それならどうすればあなたは承認するんですか。イラクへ行って、イラクの人たちが、イラク政府がCPAにこういうのがあったといって、それを報告されたら承諾されるわけですか。一体どういう形で承諾されるわけですか。現実に起こっていることは全部否定して、それが外交ルートで到達するまでは事実と認定できないというのだったら、それはいつまで待っていればいいんですか。そんなことを聞いているわけじゃないんですよ。もう既に二月に、赤十字の報告書では、この問題は関連があるということを言っているわけですよ。

 このジュネーブ条約というのは、まず最初にジュネーブ条約ありきじゃなくて、最後にジュネーブ条約なんですよ。だれが見たって、これは拷問であり、人間に対する侮辱であり、肉体的な、精神的な破壊なんですよ。犬をけしかけてかみつかせている、これはだれが見たってだめなもので、ジュネーブ条約なんかはもっと先なんですよ。ずっと先に、一番底の部分がジュネーブ条約で、だれが見ても違反だからと言っているわけですよ。

 ですから、なぜそれがジュネーブ条約違反じゃないか。ジュネーブ条約には拷問の禁止の規定があるでしょう。それから、過酷な精神的な苦痛を与えるのがそうでしょう。裸にしただけでジュネーブ条約違反ですよ、はっきり。御存じでしょうね。裸にするんですよ、みんな。

 例えば日本は、BC級裁判において、BC戦犯という方が生まれました。BC戦犯がモンテンルパ刑務所で処刑されていく、あるいはアーロン刑務所で処刑されていく、そういう日本のBC戦犯を見れば、裸にしたなんというのは余りないですよ。どういうことで日本人は捕虜の虐待として殺されていったか。例えば、ゴボウを食べさせた、草の根を食わせた、捕虜虐待だと。それから、抵抗勢力で、ゲリラの隊長が勇敢だった。しかし、それは敵対したから銃殺した。そして、銃殺したのを、その人の名誉を認めてだびに付してあげた。そうしたら、カトリックのフィリピンで、いや、私の夫を焼き捨てたといって訴えられた。こういうのがあるわけですよ。

 ですから、今回の、裸にした、もうそれだけで、殴る前に裸にしただけでジュネーブ条約違反なんですよ。その事実はお認めになりますね、外務大臣。

川口国務大臣 違反の可能性があるというふうに申し上げておりますのは、これは、非常に厳密に言葉を使わせていただいているつもりでございます。我々はその当事者ではない、その現場にいて事実関係をきちんと我がものとして把握しているわけではないわけです。そういった国の政府がこれは違反であるということを断定する、確定的にそれを言うということはできないということを先ほど来申し上げているわけでございます。

首藤委員 この話をしてもしようがないですよ。こんなもの、確定的に何も正確に言えないということだけを綿々と聞くのが審議の場じゃないんですよ。ちゃんと、それは明確に断言して、これはジュネーブ違反でございますと言わなくたっていいけれども、そういうことに対してどういう見解をお持ちなのか、それを聞かないとこれ以上先へ進めないですよ。いかがですか、委員長。

自見委員長 首藤委員から、きょう、理事会でもお話がございまして、引き続き理事会で協議をしようということもございましたので、理事会の方で引き取らせていただきたいと思っております。

首藤委員 このような問題は、私は、日米関係に非常に深い、悪い影響を与えると思うんですね。それだけじゃなくて、日本とアメリカの同盟関係にもひびが入ってくる問題だと私は思います。そして、信頼関係が失われてくる。

 それと同時に、もっと恐ろしいのは、今、日本の軍隊というのはアメリカ軍と一体化されて考えられているわけですよ。いかにそれは違うと言っても、分離されていると言っても、最近起こった日本人の五人の人質事件にわかるように、イラクの人たちから見れば、アメリカ軍と日本軍というのは、自衛隊というのは一体化されて考えられているわけですね。

 というのは、こういう形でイラクの人たちを拘束し、殺し、ばかにし、女性をレイプし、子供までレイプし、十五歳の少年もレイプし、そして死体を捨てている。こういうことで我が国の自衛隊に対する憎悪が燃え上がってくるのをどうやってとめますか。

 ですから、こういうことはアメリカ兵は絶対やめなきゃいけないということをまず強く抗議すべきだと思うんですが、川口大臣、どのようにアメリカに対しては同盟国として抗議されたでしょうか。

川口国務大臣 今委員が言われたような幾つかの例、これについては私は確認をすることはできませんが、先ほどのアブグレイブの事件について、我が国としてどういうことを米国に伝えたかということでございますけれども、我が国の考え方、これは、小泉総理も記者会見、ぶら下がりの場でおっしゃったと思いますし、当時の細田副長官も言われたということでございます。

 米国政府に対しては、大使館を経由いたしまして、我が国のこれについての考え方、これは既に伝えてございます。

首藤委員 その抗議が小泉総理のぶら下がりだというのは驚いてしまうんですが、どのような形で声明を出されたか。例えば、世界のリーダーがこの問題に関して厳しい声明を出しております。それから、同じように、例えばイスラエルで今のシャロン政権が行った暗殺や爆撃行為に関しても、日本政府はきちっとそれに対して反対の声明を、遺憾の声明を出しております。こんなに明々白々な人道に対する犯罪に対して、どうしてぶら下がりの抗議しかされていないんでしょうか。一体どのような、明文化された、世界の人々に、日本の態度はこうだ、日本は国際人道法に関してこういう態度を持っているということがわかるような声明を出されたでしょうか。

川口国務大臣 私、ぶら下がりだけとは申し上げていませんで、先ほど申し上げたことは、そのぶら下がりでもちろん意見の表明もしているし、さらに、我が国の政府の立場というのを米国政府に米国大使館経由で伝えたということを申し上げたつもりでございます。

 それで、具体的に何を言ったかということですけれども、この問題について、我が国としては、これは遺憾だ、懸念をしているということを伝えたと同時に、これに関連して、米国が透明性を持って調査をきちんと行って、再発防止策、これをやっていくということは非常に重要であるということを言ったということでございます。まさに、我が国としては、これが、イラクにおいて連合国が行っている復興支援、人道支援あるいは治安面の努力、政治プロセスの進展、そういったことに対して国際的に悪い影響、あるいは国際的な協調に影響を及ぼしかねないということの懸念もあわせて伝えているわけでございます。

首藤委員 それでは、外務大臣、この拘束者に対する拷問ですけれども、これは、そこの看守などの個人犯罪、いろいろ名前も挙がっていますね、リンディー・イングランド上等兵とかそういう個人名も出ていますけれども、そういう個人の犯罪ととらえるか、あるいは、アメリカ国防省の、アメリカ軍の情報収集のための組織的行動の結果である、そういうふうに判断されますか。どちらでしょうか、外務大臣。

川口国務大臣 これはまさに、アメリカ政府が今調査を継続しているということでございます。軍事法廷においてのプロセスも進みつつあるわけでございまして、透明性を持ってこれらが行われるというふうに聞いておりますので、そういった過程を経て、過程を通じて、今おっしゃった点についても解明されるということを期待しているわけでございます。

首藤委員 これは外務大臣も井上大臣も石破長官も聞いていただきたいんですけれども、これは軍の組織的な情報収集のための行動であるということはもう報告されているわけですよ。拘束者を眠らせない、裸にする。裸にするというのは、余り御存じないかもしれませんけれども、最初にやる。要するに、拘束している者と拘束されている者の上下関係を見せつけるために最初にやる行為なんですよ。最も古くから行われ、最も古くから禁止されている行為なんですよ。

 だから、イスラムが禁止している犬を使ったりするのは、要するに、これも第二次大戦中から盛んに使われた、これはもう文化人類学を駆使した、人間の心を破壊するという情報収集活動なんですよ。人間の心を破壊すると、途端に協力するようになる。その成果が、皆、あなたも御存じのとおり、ルース・ベネディクトの「菊と刀」ですよ。ルース・ベネディクトという世界で有数の文化人類学者が日本兵をずっと調査していって、日本人というのはお国のためとして頑張っているけれども、ある瞬間から、ぽきっと折れたら、もうめちゃくちゃにすぐ協力してくれるようになると。いかにその精神を破壊することがいいか、やれるかということが第二次大戦から非常に盛んになるわけですね。だから、精神を破壊する。

 これも皆さんも御存じのとおり、会田雄次さんの「アーロン収容所」、お読みになったでしょう。アーロン収容所で、日本兵を処刑する前にどうするか。日本兵の精神を破壊する。日本兵に対して、ああ、もうすぐあなたは帰れますよ、いとしい妻子に会えますよと言って、いや、だめでしたと言う。しばらくするとまた、もう今度こそ帰れますよと言って、まただめでしたと。そして、最後は処刑。「かんな萌ゆ、いとし妻子にもう会えぬ」この俳句が私はもう本当に心にしみるわけですけれども。

 こうやって精神を破壊するんです。これは第二次大戦中から盛んに行われたことで、だからいけないよというのが一九四九年のジュネーブ四条約じゃないですか。だからいけないよというのが一九七七年のプロトコール一、二じゃないですか。だから、それに違反する行為が今起こっているわけでしょう。ですから、これに対して、まだ事実が確認できていないとか、それだけではだめなんですよ。

 例えば、こういうことによって宗教的に汚された人はもう天国に行けないわけですよ。少年と交わりをしたり人前でセックスをしたり、そういうことは宗教の絶対やっちゃいけないことであって、もうこの人たちは天国へ行けないんですよ。だから、天国へ行ける唯一のチャンスは自爆テロしかないんですよ。そして、聖戦をやって、自爆テロで、これで天国に行くことが初めて可能になる。だから、最近やたらと、つまらないターゲットにも自爆テロが行われるようになったのは、まさにこうした、もう人間の心をずたずたにして、その人たちを普通の生活に戻れないようにしたその結果で起こっているわけですよ。

 ですから、私は、この問題に関しては、日本はそういう第三者的なことじゃなくて、今起こっているんだったら、我が国の国是として、例えば、収容所や非人道的な扱いに対して、傷ついた人たちの心のケアや、あるいは社会への復帰の道づけのために日本の援助を使われたらいかがでしょうか。外務大臣、そういうお考えはいかがでしょうか。

川口国務大臣 イラクへの援助、無償につきまして十五億ドルということで、これにつきましては、首藤委員も含め国会の御審議をいただいたところでございます。

 今後引き続きイラクにどのような支援をしていくかということについては、これは、イラクの人たちのニーズ、復興のための必要性、それから、我が国の持っている比較、どういう分野で我が国のエクスパティーズがあるか等々を総合的に判断して決めていくということであるかと思います。

首藤委員 ぜひ、私の考え方をよく頭の中に入れておいて、こういう新しいやり方の援助こそが今のイラクの現状に必要だということを外務省の皆さんもちょっと考慮していただきたいと思うんですね。

 この拷問というのは、このイラクだけではなくて、アフガニスタンにおいても、あるいはまたキューバのグアンタナモ基地で、アルカイダ兵に対して、いわゆるストレス尋問、感覚攻撃ということで、国防省が二十項目のストレス尋問項目を挙げて、これは国防省自体が取り組んでいた、そういう現代心理学や現代精神医学を使った尋問だということがおわかりになってきているわけですね。

 もう一つ、この件で非常に私たちが驚かされたのは、あの裸の人間が拘束されているところに立っている私服の男なんですよ。要するに、この刑務所においても実は傭兵が使われている、民間業者が入り込んでいるということですね。ですから、ファルージャで四人の民間人が殺されて、焼かれて、つるされたりしましたけれども、膨大な数の民間人が入り込んでいる、軍事活動に入り込んできている、この尋問に関しても入り込んできているということなんですよ。

 なぜ入っているかというと、これが現代の紛争のごく当たり前の姿なんです。ですから、日本の有事法制を考えるときにも、こうした視点をいつも考えておかなきゃいけないということですね。

 さて、その日本の有事法制なわけですが、今回、このきっかけで私が非常に驚いたのは、先ほど、リンディー・イングランド上等兵という話をしました。それ以外にも、驚いたことは、これは明らかなジュネーブ条約違反ですが、アメリカの兵士が、この拘束されている、要するに不名誉除隊になった七名、そして軍法会議にかけられている人たちが、ジュネーブ条約を知らなかったと言っているわけですよ。

 これは驚くことで、アメリカはジュネーブ四条約に関しては少なくとも加盟しているわけですが、ジュネーブ条約の最大の焦点というものは、ただ法律があるんじゃなくて、これを徹底させる、すなわち周知義務というものがジュネーブ条約の最も重要なエッセンスなんですよ。そこで、アメリカが、ジュネーブ四条約に入っているアメリカが、この問題、ジュネーブ第三条約の捕虜条約に関して、これを知らなかった。これはまさに、かつての日本の帝国陸軍と同じじゃないですか。

 ですから、実際にアメリカでは、このジュネーブ条約を兵士に対して周知させていないということですね。また、アメリカの軍法規に関して、これが明確に取り入れられていないんじゃないでしょうか。

 私は、四月十三日の本会議代表質問において、追加議定書に触れました。アメリカはジュネーブ四条約、四九年のジュネーブ四条約に入っていますが、七七年の追加議定書第一、第二に入っていない。これでどうやって――我が国がこれから入ります。今回出ているのは、まさにその法律です。条約です。井上大臣、そうですよね。これから日本は入ります。早ければ、久間さんが早くしろ、早くしろと言っていますから、今週中にもう採決だなんて言っている人もいるぐらい、すぐ入ろうと言っている。一方、アメリカは、ジュネーブ条約のプロトコール第一、第二に入ろうとしないんですよ。国際刑事裁判所にももちろん参加しようとしない。

 そこで、私は、では、日本とアメリカが共同してこの国でもし軍事行動を行ったとき、行おうとしたとき、日本はジュネーブ条約を守ってある一定の規範ある行動をとる、アメリカはもうめちゃくちゃやるというようになるとどうするんですかということを言ったら、川口大臣は、いや、アメリカはジュネーブ条約のプロトコール第一、第二にも参加していませんけれども、それはアメリカの軍事教範に盛り込まれていますと。

 川口大臣、アメリカの軍事教範のどこにここが盛り込まれていますでしょうか。

川口国務大臣 米軍の軍事教範ですけれども、これは米軍の文書ということでございますので、それについて一条一条、これはジュネーブ条約の何であるということを我が国としてきちんとこの場で解釈を申し上げるということはできませんけれども、いずれにしても、いろいろな米軍あるいは米国政府の方々の発言、これに、米軍として、あるいは米国としてジュネーブ諸条約及びこの追加議定書に盛り込まれている多くのこと、これを守っていくということは表明されているということでございます。

首藤委員 そんな話はないですよ。軍事教範に、どこかに書いてあると、昔の何か文化大革命の紅衛兵みたいなことを言わないでください。何かあっても、とにかく赤い本を出して、ここに書いてある、ここに書いてある、中国の近代化もここに書いてある、世界革命もここにあると。何も書いていなくて、ただ本を出して、これに書いてある、これに書いてあると。それと同じじゃないですか。

 だから、アメリカの軍事教範のどこに、どういうふうにしてこの問題、人道に対する問題というのは取り上げられていて、それをどういうふうにアメリカの中で周知させているのか。どうしてこのリンディー・イングランド上等兵みたいな人が出てくるのか。いかがでしょうか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、我が国として、この米国の軍事教範、これは米国の文書でございますので、この場で我が国が解釈をするということは適当だというふうには考えませんけれども、その前提で申し上げるということで申し上げれば、例えば攻撃の対象、これは軍事目標に限定されるという軍事目標主義や、不必要な苦痛を与える兵器等の使用の禁止といった国際人道法の基本的な原則、これについては、米国の軍事教範、これに取り込まれているというふうに承知をいたしております。

 それから、ジュネーブ条約の内容について、これをきちんと周知させているかどうかということについての御質問がございましたけれども、これについて、具体的に、これはジュネーブ諸条約の普及義務ということとの関連ですけれども、これは、締約国に対して、ジュネーブ諸条約は、自国の軍当局、軍当局ですが、等に条約の内容を普及させ、教育を行うこと等の義務を課しているわけでございます。

 それで、この関連で、我が国として具体的にどのような措置をとったかということについて網羅的に承知をしているわけではございませんけれども、例えば法務ハンドブックというようなものをつくっているというふうには承知をいたしております。

 いずれにしても、米国は、今回の事件を受けて、ジュネーブ諸条約等については追加的に訓練を実施する、そういう方針を明らかにしていると承知をしております。

首藤委員 そんな、外務省が軍事教範の内容をわからなかったら、今回の七法案三条約は成立しないですよ。米軍と共同して我が国を有事には守ろうという法律は成立しないですよ。

 それで、今おっしゃった、必要以上の被害を与える武器の使用とか、あるいは軍事目標と民事目的の分離というのは、アメリカがまさにファルージャでやっていることの逆さまじゃないですか。軍事教範で教育を受けたアメリカ兵は、イラクでモスクを撃ち、不用意に少年まで撃ち殺しているわけじゃないですか。ですから、それはもう全く合っていないわけですよ。

 では、今回の論議の中で、もう一つお聞きします。

 このジュネーブ四条約の追加議定書第一に関しては国内法をつくりました。しかし、ジュネーブ第二議定書、これに関しては日本の国内法はないんですよ。本当ならば、三条約七法案じゃなくて三条約八法案でなきゃいけないんですよ。それが、プロトコール第二に関しては国内法がないんですよ。用意されていないんですよ。

 その意味で、そもそも今回の政府の提出というのは最初から欠陥があるわけですよ。そこを指摘したら、外務大臣はこうおっしゃいました。いや、そのプロトコール第二に関しては日本国憲法がその内容を担保しておりますと。そういうお話ですね。それは、人道に対する問題とか、人類に対する責務とか、世界平和とか、そういうことだと思いますけれども、プロトコール第二を今回いよいよ批准しますけれども、本当に、その国内法は日本国憲法だというふうに考えてよろしいですね。

川口国務大臣 ジュネーブの第二追加議定書でございますけれども、これは、いわゆる内乱等の非国際的な武力紛争における敵対行為に直接参加していない者に対する人道的な待遇や、傷病者、医療要員、医療組織、医療用輸送手段等に対する保護について定めているものでございます。そしてまた、軍事行動から生ずる危険から住民を保護するために、住民に対する攻撃を禁止するとともに、住民の生存に不可欠なもの等に対する保護について定めている、そういったものでございます。

 したがって、第二追加議定書の規定というのは、基本的に、憲法の基本的な人権の保障に係る諸規定、それから、刑法の関連規定等の関係の法令に基づいて実施するということができるということでございます。

 それから、十二条において、赤十字、赤新月等の特殊な標章の不当な使用が禁止をされているわけでございます。この規定については、国民保護法案、これの附則におきまして、赤十字標章等使用制限法を改正することによりまして、乱用の防止の対象として、赤十字のほか、赤新月、赤のライオン及び太陽の標章、これを加えることによって担保をいたしております。

首藤委員 いや、質問に答えていただいていないですよ。ですから、それが憲法だと言うならば、ジュネーブ追加議定書第一だって憲法ですよ。あるいはジュネーブ条約だってそうでしょう。

 ですから、どうやって今回の場合は――ジュネーブ第二議定書に盛られた紛争地というのは、昔のように国家と国家が対立するんじゃないんですよ。ここに来れば、日本だっていろいろな人たちがいますよ、はっきり言うと。いろいろなグループがいて、果たして政府と同じ考え方をするかしないかわからない、いろいろな問題がある、いろいろなグループがある。外国人比率だって三%を超えているところがたくさんあるんですね。いろいろな考え方をする方もおられます。

 ですから、そういうところでどうやって人道を守っていくかというのは、それなりに国内法がなければいけないわけですよ。ですから、その意味で、今回の政府提案、三条約七法案というのは非常に欠陥があるものだと私は思うんですね。

 それで、私が一時間話してきました。何を話してきたか。このような軍事組織文化を持ったアメリカ軍と日本有事のときに共同作戦をとるときには、例えばジュネーブ第三条約における捕虜の取り扱いに基づいて、果たして私たちは人道的にこれを担保できるのだろうかという危惧がここで出てきているわけですよ。

 例えば、今、赤十字の報告書を見ますと、約四万三千人のイラク人が拘束されて、その大体八割から九割が全然関係ない無実の人だと言われていますね。ですから、アメリカ軍と共同してここで日本で有事対応しているときに、アメリカ軍からしてみれば、もうわけがわからないから、英語のできない日本人はみんなもうしょっぴいていっちゃう、それで裸にしていろいろ本当のことを言わせよう、そういうことだって十分考えられるわけですね。そういう形が十分に考えられるわけですね。

 ですから、ここで大きな問題として上がってくるのは、二つの問題ですね。それは、外国の軍隊が駐留しているときには、その軍隊は接受国の法律を尊重はし敬意を払いますけれども、それを遵守する必要はない。第二、もし有事になった場合、アメリカ軍は日本軍の、日本自衛隊の石破長官の配下になるのではなくて石破長官と並列に、何やらキミット准将みたいな人が来て、片やキミット准将はどんどん軍事行動をやる、片方は石破長官が栄誉礼を受けている、こういう世界になっていったら、これはきちっとした対応ができないわけですね。

 ですから、まずお聞きしますけれども、これは井上大臣にお聞きしますけれども、これは政府にも一回、統一見解を求めました。しかし、全然まともな見解ではないんですね。ですから、なぜ有事のときには、この国で、この法律の中に、日本を守る行動においては、共同防衛するときにはアメリカ軍は日本の一元的な指揮権に入るとどうして明記できないんですか、井上大臣。

井上国務大臣 これはいろいろな対応の仕方があろうと思うのでありますけれども、日本の場合は、日米安保条約、それに基づく防衛協力につきましては、それぞれが指揮権を持つ、日本は日本の、アメリカはアメリカの指揮権を持つという形で対処するということになっておりますから、できるだけ緊密に連絡をしながら統一的な行動をとっていくということだというふうに考えます。

首藤委員 いや、世界の中で、井上大臣がお知りになっている世界史の中で、ある一つの国を共同して守るときに、外国軍は勝手にやる、日本軍は勝手にやる、もちろん相互調整する、そんなことで祖国が防衛できたことが世界史の中にありますか。どうするんですか。

 本当に自信を持って、有事があったときには、井上大臣が、それはもうラムズフェルド長官ときちっと話を決めて、一切の人権侵害が起こらないように、効果的にできるように、我が国の国民が傷つかないようにできる、何を根拠にそんなことが言えます。

井上国務大臣 まさに日米安保条約という基本の条約がありまして、それに基づく運用でございます。ですから、閣僚なら閣僚間の意思疎通も必要でありましょうし、現場の軍隊相互間のそういう調整も必要だと思います。

 要は、意思疎通ですね。これを十二分にしながら共同の目的に対処していくという、これしかないんじゃないでしょうか。

首藤委員 何か、会社が合併したときに人事部が二つあるような世界の話をされているわけですけれども、戦場はそうじゃないわけですよ。戦場というのは、もう本当にチェーン・オブ・コマンド、一本のコマンドの列がびしっといくんですよ。両方、二つあって調整するなんということはないんですよ。閣僚が出て調整するとか、それはもうまるで詐欺のような話じゃないですか。敵が直前まで迫っているのに、片方は撃つと言っている、片方は人家があるからこっちから迂回すると言っているんですね。どうやって調整できますか。

 ですから、これをきちっと明確にしないと、この七法案三条約は成立しないんですよ。ですから、一元的な指揮権は我が国にある、なぜならば、この法律は我が国の独立と平和を守るための法律である、だから一元的な指揮権は我が国にあるときちっと明言してください。

井上国務大臣 これはお互いがそれぞれの軍隊に対して指揮権を持つということでありますから、それを前提にして共通の目的に対して向かっていくということで、それは、日ごろの訓練なりあるいは意思疎通を通じましてそういう実効を担保していく、こういうことだと思います。

 委員のおっしゃるようなそういうことができるようなシステムであれば、それはそれでよろしいかと思うのでありますけれども、指揮権についてはそれぞれが持つということになっておりますので、それを前提に、できるだけそれらが有効に機能するように努力をしていくということだと思います。

首藤委員 今、井上大臣、訓練とかその他いろいろやりながら調整をしていくという話がありましたけれども、今やっているのは訓練ですよ。訓練は日本海の周辺でやっていたりするわけですね。第七艦隊とか、いろいろあるわけですね。では、日本の防衛庁の海幕長が指揮権を持ってやっておられるんですか。いかがですか。調整しながらやっておられるんですか。いかがですか。

井上国務大臣 これは、訓練の場合でも、そういったことを前提にして、つまり、指揮権をそれぞれが持つということで、お互いに協力しながら訓練をするということだと思います。

首藤委員 私は、いろいろこの法律を勉強するに当たって、外国の軍隊が駐留しているということの重みをつくづく感じたわけですよ。

 例えばカナダ、これはもうアメリカべったり、すべてがアメリカに依存しているような国ですよ。しかし、カナダはアメリカ軍を駐留させていないんですよ。カナダにあるのはもう本当に限られたレーダーサイトだけで、そこに長くいることすらカナダ政府は認めていないんですよ。同じように駐留している韓国、これは統一的な指揮権はアメリカにあるとしっかり言っている。フィリピン、これはもう外国の軍隊の駐留を憲法で禁止しているんです、まあ時限がありますけれども。だから、難しいのは我が国なんですよ。

 しかし、この一元指揮権というものは常に一元であり、二つの指揮権があるということは、まさに、双頭のワシじゃないけれども、ダブルイーグルということで、軍事上最も禁止されている組織形態ですよ。ですから、もし統一的な指揮権が日本にないと言うなら、では、統一的な指揮権はアメリカ軍にあるとおっしゃったらどうですか。いかがですか。

井上国務大臣 ですから、現実の指揮権が一元的に行えるようなそういう場合、それはそれぞれの国の状況によって違うと思うのでありますが、日本の場合は二つの指揮権があるということでありますけれども、それが二元化していくということ、二元化して違う方向に行くというんじゃなしに、一つの方向に収れんをした形で指揮権が実行されるというんですか、そういうことをしていかなくてはいけないということでありまして、それを可能にするようなお互いの話し合いなり訓練というのは必要じゃないか、そんなふうに考えているわけであります。

首藤委員 だから、井上大臣、私がなぜ最初から捕虜の問題をやっているか、ジュネーブ条約の対応を考えているかということは、そういうことなんですよ。よろしいですか。

 アメリカは独自の考え方をやっていて、ジュネーブ四条約第一議定書、第二議定書も入らない。国際刑事裁判所にも参加しない。そして、ここで犯罪を犯しても、本国へ連れ帰って不名誉除隊ですね。例えば今回問題になっている七人なんといったら、イラクでイラクの法廷で裁かれたら当然死刑ですよ。しかし、アメリカは、本国へ連れ帰って、ハーグに送られることもなく、自分の国へ連れ帰って不名誉除隊。除隊ですよ。

 それは、同じように、ベトナム戦争のときに、ソンミ村の虐殺、ミライの虐殺、そこで大虐殺を行った人は、アメリカへ帰ってきて、国際裁判所、ハーグで裁かれることなくアメリカへ帰ってきて、本国で英雄になっている。それから、最近の我々が関係したのは、えひめ丸。えひめ丸を沈没させた原子力潜水艦の船長も不名誉除隊ですよ。刑事責任はどうなっているんだ、注意義務はどうなんだ。業務上過失なのか、業務上致死じゃないかと。関係なくて、不名誉除隊ですよ。悠々と年金生活に入っていますよ。それはおかしいじゃないですか。

 捕虜の扱いだって、だからそこで問題あるのは、指揮権が二元的になれば、ある方は、自分の軍事行動をするために、この辺でもう、例えばそういう外国人のリストか何かを持っていて、敵性外国人でばっとみんな捕まえて、裸にして調査する。片方は、日本国の憲法に基づいて人権を守らなきゃいけない、この有事法制にも書いてあるように、人権を絶対守らなきゃいけない、有事においても人権を守らなきゃいけないという法律に基づいて自衛隊も行動していく。二つの指揮権があれば、これはもう全く違う体系が一つの軍事行動の中で行われていくわけでしょう。そういうことはあり得ないわけですよ。ですから、指揮権は一つであるべきなわけですね。

 ですから、その辺に関して、それは調整してやるとか別々にするというところが、では、アメリカが勝手に自己の考え方で行おうとしている軍事行動を日本はどのようにして抑制できますでしょうか。いかがですか。

井上国務大臣 それはまさに日米の間の調整を通してやるということでありまして、もうそれは、有事になれば、当然のこととして各レベルにおきまして日米間の話し合いがあるわけでありますから、その話し合いを通して担保していくということだと思うんです。

 今のお話の、指揮権が二元化しているというのと犯罪行為を仮に起こした場合、それはまたちょっと別個の話じゃないかと私は思うんですね。指揮権の話は指揮権の話、犯罪を犯した場合にどういうようにそれぞれの軍隊において裁判を行うかということは、それは別の問題として考えるべきじゃないか、こんなふうに思います。

首藤委員 いや、それは違うわけですね。

 先ほどから防衛庁長官もおっしゃっているとおり、前から言っておられるように、軍隊というのは自己完結性なんですね。法律も含めて一つのシステムなんですよ。その違う二つのシステムがこの日本で、一つの例えば外部からの攻撃に対して二つのシステムが存在してしまう。だから、例えば、ある人がいて、日本から見ると、この人はいい人ですと言っている。片方は、いや、こいつは怪しいといって捕まえてしまう。それを決定するのは指揮官なわけですね。ですから、これはもうまさに存在しないわけですよ。

 ですから、話を調整するとおっしゃいました。いいコメントですね。では、お聞きします。それはどういうことになるかというと、日米地位協定ですね、日米地位協定というものは平時を前提としております。戦時を前提としている地位協定は日本にございますでしょうか、井上大臣。

井上国務大臣 日米の地位協定といいますのは、まさにアメリカ軍が日本におきましてどのような取り扱いを受けるか、法律上どういうような権利があり義務があるか、こういうことを決めたものでありまして、これは平時であると有事であるとを問わず共通して適用されるものだというふうに考えております。

首藤委員 いや、それは、そういうふうに言われるともう言葉が出ないわけですが、そんなことってあり得ないわけですよ。平時に役立つものは戦時でも役立つ、そういうふうに言われてしまうと。それはおっしゃるのは勝手ですよ。それは答弁者でおっしゃるのは勝手でございますけれども、そんなことってあり得ないわけですよ。

 日米地位協定をよくごらんください。日米地位協定に、有事のときにどうやって例えば共同の軍事法廷をつくるか、片方では日本の刑事訴訟法、片方は軍法会議、では共同してつくるか、そんなこと一つも書いてないでしょう。ですから、日米地位協定というのは、まさに、余り戦争がまだ起こっていないときに、日本に長くいて、思いやり予算ももらって、日本で普通にやっているということを前提としているわけですよ。

 答弁、変更されますか。いかがですか。

井上国務大臣 有事と平時におきますそれぞれの現象といいますか、事態というのは違うと思うのでありますけれども、日米の地位協定といいますのは、これは有事であれ平時であれ適用される国際法だというふうに理解をしております。

首藤委員 では、テーマを少しずらしますけれども、私は、今の社会の動きを見ていて、国際化の状況を見ていて、なぜこのジュネーブ四条約、そしてそれに追加議定書が出てきているかというと、もう国家概念から人間概念に移ってきているわけですよ。

 ジュネーブ四条約第一、第二議定書、恐らく、今度もし第三議定書というのができれば、防衛の主体は国家でなく個人に移ってくるわけですよ。ですから、このジュネーブ第一プロトコール、第二プロトコール、議定書の中で重要になってくるのは、民間防衛という考え方ですね。ですから、市民は市民のものをきちっと守っていくということで重要となっていくわけです。

 そうした状況において、今の社会が、五十年前と違って、お上があって、あるいは政府があってというところから、現実の今の私たちが見ているこの社会を見ると、例えば、こういうところでいろいろな問題が起こると思いますよ。

 例えば、アメリカ軍が独自の行動をとる。それはその地域にとってみれば物すごく好ましくない。日本であれば、それは迂回する。しかし、アメリカは、そんなのは関係なくて、最も軍事上の有利性を求めてやる。そうすると、地域の人はどうするか。恐らく、地域の人は武器をとって立ち上がりますよ、今のような状況の中で。そうすると、日本国民が米軍の不法行為に対して自己救済、例えば、勝手に家の中に入ってきた米兵を捕まえちゃう。米兵の拘束をしたり、あるいはこんな基地や施設が好ましくないといって破壊したりする。

 こういうものに関しては、では、どのような法律で対応できると思いますか。

井上国務大臣 これは、現実の戦争になりますと、国と国との武力紛争でありますから、それはそれぞれの国が総力を挙げての戦いだと思うのでありますけれども、今おっしゃるように、それが個人のレベルまでおりてきますと、個人が時と場合によっては自力救済に走るということは大いにあり得ることだと私は思うんですね。

 それはそれとしまして、だから、政府として、国としてどのように対応するかということでありますけれども、国としては、国とか自治体とかあるいは関係機関がありますから、一体となってこの武力攻撃に対応しないといけませんし、できる限り幅広く民間の方の協力も得て対処していくということ、そういう態勢づくりをやはりしていかないといけないだろう、こんなふうに思います。

首藤委員 ですから、委員長、これも、先ほどの理事会で問題になりましたけれども、結局、回答が漠として、後世の評価に耐えられるものじゃないわけですよ。ですから、そうしたものでこの問題を論議していても、本当にこんなことで法律を通していいのかどうかと思うわけですが、こういうような状況というのは、別に私が状況を誇張しているのではなくて、本当に恐らく考えられることなんですね。

 そこで、重要となるのは、本当に、最終的にだれかが責任を持ってやらなきゃいけないということで、緊急事態においては緊急大権ということがやはりいつも問題となる。この法律に関しては、国民保護法、そしてその前の本法も含めて、これはすべて内閣総理大臣ということになりますね。すべて、何かというと、対策本部長でも何でも内閣総理大臣、内閣総理大臣になる。これも前回質問させていただきましたけれども、果たして、内閣総理大臣が有事対応の最終総括責任者となれるかということなんですね。

 これもまた内閣法制局にお聞きしたいんですが、この間のお話の中でも、緊急大権というものは、フランス第五共和国の憲法十六条の第一項に書いてあるわけですけれども、そして、フランスというのは大統領制なんですね。首相もおりますね。この緊急大権に関しては、あるいは非常大権に関しては、大統領の専管事項であるということになっている。すなわち、したがって、何かの命令を出すときに、首相がそれに副署する、署名する、その必要はないということがフランス憲法の第十九条に書いてあるわけですね。

 内閣法制局にお聞きしたいんですが、では、日本と同じように内閣制をとっている国で非常大権が元首にない国というのは、どういうような例がございますでしょうか。

秋山政府特別補佐人 外国に関する法令を正確に把握することは難しい点がございますけれども、私どもが承知しております限りでは、ドイツ連邦共和国でございますが、これは憲法上に規定があるわけではございませんが、一応、国のトップとして大統領が元首であるというふうに解されていると思います。しかしながら、ドイツ連邦共和国におきましては、防衛事態などの国家の緊急事態におきましても、立憲的な憲法秩序を一時停止するような性格を有する国家緊急権のような権限は大統領にも与えられておりませんで、現行ドイツ基本法の規定に基づき制定されている、あるいは、新たに制定される法律の定めるところにより連邦政府がこれに対処するものとされているものと承知しております。

 ただ、細部にわたってこれは正確かどうかちょっと自信がございませんけれども、大勢としてはそういう考え方でございます。

首藤委員 やはりそれは連邦制だからですね。恐らくは、連邦制であると同時に国会に非常な権限が与えられている。それが回答だと思うんですよ。

 ですから、日本においても、総理大臣というものが憲法上において元首としての明確な位置が明記されていない以上、その緊急大権というものに関して、最終的な、要するに、危機が起こったときの最終的なゴールキーパーとして、それはやはり国会に緊急事態における最終決定権をゆだねる必要があるのではないか。

 ですから、そのことに関しては、単に、今までの、通常の、これも平時における国会システムだけではなくて、緊急時における、例えば国会が開かれていないとき、これはもちろん憲法に規定があります、参議院で開くとかいろいろありますが、しかし、そうではなくて、例えば、国会が開かれていなくて、しかも、その内容が非常に、ごく限られた人が、少数の人間がこの問題に関してきちっと意見統一してやらなきゃいけない。これは与党も野党もなく、党派を超えて決定しなきゃいけない。その情報の共有をしていく。

 そういうことがドイツの今の連邦政府の中であるわけですが、そうした新しい緊急問題に関する国会のシステムというものに関して井上大臣はどのようにお考えでしょうか。

井上国務大臣 私はやはり、今の現行憲法を前提にしますと、立法と行政、司法というのはそれぞれ分かれておりまして、武力行為に対処するというのはまさに行政の分野でありまして、あくまで立法というのはそれにいかにかかわっていくかということでありまして、立法府自身が決定権を持つというのは、私はいかがかと思うんですね。

 したがいまして、緊急時におきまして、いかに適切に迅速に対処できるような行政府をつくっていくか、こういうことだと思うのでありまして、今の憲法を前提にいたしますと、やはり内閣が責任を持つということでありますから、いかに内閣で迅速に適切な決定ができるかということを考えるべきだと思いますし、さらに進んで言えば、委員の議論というのは、憲法改正なんかに絡みまして、そこは大きな論点といいますか議論になる点だと思いますし、当然、議論すべき点だろう、こんなふうに思います。

首藤委員 ですから、民主党は、基本法というものに非常に大きな重要なものがあると。憲法改正はいろいろな問題がございます。ですからこそ、目前に迫ってきているこの危機、そして、その可能性に対して、基本法でそれを書いていこうということがやはり重要なんだと思うんですね。

 ですから、この基本法の制定こそが、今までつくられた本法、そしてこの国民保護関係の法律よりも、基本法こそが重要なテーマであり、そこにおける実務機関としての、そして、経験を蓄積するための日本版の危機管理庁、そして、憲法と具体的な、機能的なシステムをつなぐ法システムの間の何らかのシステムを構築しなければ、この法律は幾らつくっても仏つくって魂入れずになるということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。

自見委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 首藤委員に引き続きまして、持ち時間の中で質問をさせていただきます。

 首藤委員も触れられましたけれども、きょう午前に飛び込んできたニュースの中で、サマワのオランダ軍が手りゅう弾の被害によって死傷者が出ているというようなことが報道されております。

 確認なんですけれども、この点について事実関係をどのように御認識かということをお尋ねしたいと思います。その後、この質問をさらに深めさせていただきます。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 現地時間五月十日夜、サマワにおいて、オランダ軍に対する攻撃があったということは承知しております。

 本事案の事実関係につきましては、当省としても情報収集に努めておりますけれども、現在、オランダ軍が詳細を確認中であるというふうに承知しておりまして、詳細についてオランダ国防省からの正式な発表を確認するまで、現時点でコメントをすることは差し控えたいと思います。

 いずれにしましても、外務省としては、最近サマワで生じております一連の事案などを踏まえながら、現地の情勢については、予断することなく、引き続き細心の注意を払いながらいきたいと考えております。

渡辺(周)委員 先ほどの御答弁と変わるところなく、情報収集をしているし調査をしているけれども、答弁は差し控えたいと。それは一体、何に配慮して答弁を控えたいとおっしゃっているのか。その点、確認できますか。

鈴木政府参考人 申し上げましたとおり、そういうような報道等があるのは我々としても承知をしておりますが、これは事オランダ軍に関する事案でございます。やはり我々としましては、その当事者であり、責任を持ってその内容について判断し得るオランダ政府当局、国防省からのきちんとした報告を受けた上でコメントをしたいということでございます。

渡辺(周)委員 だとすると、サマワにいる自衛隊はこの事案があったことを当然知っている、もしくは、現場でわからないまでも我が国からは何らかの形で情報は伝達されていると考えていいでしょうか。

西川政府参考人 防衛庁におきましても、現地におきまして情報収集等の活動をやっておりまして、いろいろな関連情報等の入手に努めておるところでございます。

渡辺(周)委員 それは、サマワにいる自衛隊も含めて情報収集の任に当たっているということでよろしいですか。

西川政府参考人 サマワの部隊の一部もそういういわゆる治安当局等といろいろ連絡等もとっておりますので、そういうものを通じ、そしてまた、我々、国のこちらの方でも、あるいは連絡員等が行っております。そういうレベルでも、それぞれのレベルでいろいろな情報を集める努力をしている。サマワにおります部隊員もいわゆる治安当局等との連絡をとりながら必要な情報をとる努力はしております。こういうことでございます。

渡辺(周)委員 当たり前の話なんですけれどもね。

 まさに、先ほど首藤委員もおっしゃいましたけれども、まず、自衛隊が活動している同地域でこういう事案があった、さかのぼれば、言うまでもなく、自衛隊の宿営地に向かっても襲撃と思われることもあった、そして、非常に治安が徐々に悪化してきているというふうに当然のことながら認識をしているわけであります。

 この中で、例えばですが、自衛隊の活動中に近隣でオランダの兵士に何かがあった、そういった場合は日本の自衛隊が救出もしくは何らかの形で手助けをする、あるいは死傷者を運搬するということは当然できるんでしょうか。

 活動をしていて、これはもう既にそういう蓋然性を考えればあってもおかしくないわけであります。そうしたところで、例えば何名かの方がそこで死傷もしくは負傷しているといった場合に、日本の自衛隊がその方々の救出もしくは何らかの形で助けに行くということはあり得るんですね。

 どうなんですか、もしそういうことが起きた場合、考えたくないことですが、今後こういうことが不幸にしてまた何らかの形で起こった場合にはどうなるんですか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛庁の自衛隊員にございましては、原則として、自己または自己の管理下にある者の場合には対応できますが、それと全く状況が違う、そこにない状況の場合の者に対するそういう警護的な活動というのは一応できないという形になっております。

渡辺(周)委員 いや、活動できないというのは、例えば、要請があったとか、一緒に行動していたのではなくて、自衛隊が何らかの形で行動しているすぐ近隣に、すぐそこで何らかの襲撃があった、あるいはそこに手りゅう弾が投げ込まれたことによって、そこにオランダ軍に限らず兵士が倒れていた、そのときに、当然のことながら、見て見ぬふりはできないわけですね。これは、隣を通って、だれかが倒れているけれども、今救ってあげれば命が助かるかもしれないけれども、とにかく今それはできぬのだという判断はできないわけですね。そういう意味で聞いているんです。確認なんですけれども、当然そういうことはできるということですね。

西川政府参考人 今先生、一つ具体的な例でございますので、その例だけに答えるのはちょっと問題があるかもわかりませんが、先生おっしゃるように、そばで倒れておられて医療を必要とする、そういう形で向こうの隊員から要請があった場合には、すぐ近傍であった場合には、うちの方はいわゆる安全確保の支援活動の中に医療業務がございますので、そういうことが適用できる場合には当然適用してそういう医療活動等をやることはできる、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 いや、これは当然のことながらしなきゃいけないと私は思っているんですよ。当たり前のことですね。人道的なものであります。

 そこで例えば何らかの形で被害に遭った方がいる。どこかの軍が倒れている。そのときに、偶然、自衛隊の活動が近隣で行われていた、もしくはそれを目撃したという場合には、救出をするというよりも、当然、救命しなければいけないわけですね。それは可能ですかというふうに聞いているのであって、原則としてとかどうとかこうとかじゃなくて、それは当然できるというふうに考えてよろしいですか。長官、先ほど手を挙げていただきましたけれども、どうなんですか。

石破国務大臣 それは、自己の管理に入った者とかいろいろな、十七条に規定がございます。これは武器使用の規定でございますから、どういう場合に武器を使用できるかということを書いたものでございます。

 ですから、人道的にそういうことはできないということでは決してございません。しかしながら、それでは、非常に離れたところ――どの辺が近いかというのは議論としては非常に難しい、現場性という議論もございますので。しかし、数キロも離れたようなところでオランダ軍が襲撃された、それを助太刀に行くというようなこと、それは当然できないというふうに考えておる次第でございます。

渡辺(周)委員 助太刀というのは、例えば、そこで銃撃戦をやっていて、三人しかいないオランダ軍に対して、何らかの敵が四、五十人集まって自動小銃をぶっ放したり、あるいは手りゅう弾を投げてきたりしている、これは大変だ、何とかしてあげなきゃというようなことは、そこに行って一緒に戦闘することはできない。ただしかし、そこで倒れて負傷している人たちを運んであげることはできないんですか。

 そこなんですよ。これからこういう可能性は起きてくるんじゃないかと私は思っているんですね。これからサマワの治安が悪化してくる、こういう何らかの襲撃が行われる、そのときに、日本の自衛隊がそばにいた場合に、オランダから、日本の自衛隊はすぐそばにいたのに素通りしてしまったと、これは大変な問題になります。そっちだって大きな問題ですね。

 これは確かに集団的自衛権に抵触をするかもしれない、そこでただ助けることはできる、では、結果として、そこで助けているときに例えばまた襲撃を受けた場合に、そのときは当然のことながら正当防衛が成立するということですが、そこに行くことはどうなんですか。つまり、そこへ行ってみずから自己の管理下に置くという行動をとった場合ですね。

石破国務大臣 それは、先ほど運用局長からもお答えを申し上げましたが、安全確保支援活動としての行為ということであればできるということになります。その場合の武器使用というのは、これは、先生が先ほどおっしゃいましたように、正当防衛、緊急避難を違法性阻却事由としてと、こういう形になろうかと思います。

渡辺(周)委員 当然、法律上、今おっしゃったように、武器の使用に当たっては正当防衛あるいは緊急避難という場合には使用することができるわけであります。

 そこで上官がいれば上官の命令に従う。ただ、そこで上官もいなくて現場で判断しなきゃいけない、しかし、ここで見過ごすわけにはいかないんだというときには――言いましょう。そこで実はたまたま自衛隊の方々が移動していた。その横に、たった今そこで何らかの襲撃があってオランダの兵士の方々が倒れている。しかし、そこへ行ったら、ひょっとしたら第二、第三のアタックといいましょうか、また何らかの襲撃を受けるかもしれない。そういう危険性の中でも行かなければいけないのか、そのときは素通りすることが許されるのか。許されないと私個人は思いますけれども、その場合は法律に照らし合わせていけばどうできるんでしょうか。これはこれからちょっと考えておかなきゃいけない問題だと思います。

石破国務大臣 自衛隊が例えば移動している、その経路上においてそのような場面に遭遇した、オランダ兵が倒れているという場合にどうなのかというのは、先ほどの御質問と同じケースなのだろうというふうに思っております。

 安全確保支援活動としての医療行為あるいは輸送行為、そういうものはできる。それは、我々の方から危険への接近というのをあえて行うというわけではございません。移動中にそういうような場面に遭遇をしたということになれば、そういうような行為を行うことはできる。武器使用につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。

渡辺(周)委員 ただ、そういう可能性は想定しておかなければいけないと私は思うんです。

 もう既に、現実にそういうことが何度か繰り返されて、自衛隊の活動の近隣で他国の兵士が例えばゲリラによって、武装グループによって何らかの襲撃を受けた、もしくは受ける非常に厳しい危険な状況にあるといったときには、確かに自衛隊はみずから危険なところには行けないけれども、しかし、そこで見捨てる、見捨てると言ったら失礼ですけれども、言い方がちょっと極端ですが、見なかったことにするということは当然できないわけですね。

 そこのところの判断というのは非常に難しいと思うんです。現場の人間もその場で瞬時に判断しなきゃいけないと思うんです。その場合のことはやはりこれから考えておいて、ぜひ、現場現場で判断されることになるとは思いますけれども、そこのところをあえて確認したいと思いますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

 つまり、えらい離れたところで、自衛隊来てください、今襲撃を受けて助かりませんから何とかしてくださいということで何らかの形で連絡があった、しかし、そこに行くことはできないけれども、たまたまそこに居合わせてしまった、遭遇してしまったというときに関しては、そこに駆けつけざるを得ないときは行くことができる、そういうふうに判断しておいてよろしいですね。

石破国務大臣 たまたまそこへ居合わせて駆けつけるということがちょっとよくわからないのでありますが、基本的に、先生御指摘のように、何キロも離れて、やられた、助けに来てくれという場合に、行くことはできない。これはこの法案からそのようなことになります。

 移動中にそういう場面に出くわしたときに、それを見て見ぬふりをして通り過ぎるというようなことはございません。しかし、その場合において行える武器の使用権限というのは先ほど来申し上げているとおりのことでございます。

渡辺(周)委員 私は、別にこの議論を、そうなった場合にはそれは法律違反だとか憲法違反だと言うつもりはございません。もちろん、我が党は、この派遣に対してというのは従来からの姿勢は変わっていないんですが、ただ、現実は、そうはいっても、では現場でそういうことに遭遇した場合にどうするんだということは当然考えられることなんですね。

 ですから、そこのところをやはり現場で判断できるようにして我々も考えておかないと、結果的には、我が国の自衛隊が行ったけれども、実は目の前で乱暴を受けている、変な例えですけれども、道端を歩いていた、たまたま暴漢に襲われている人を見かけた、しかし、おれは手を出しちゃいけないからといって素通りするということは許されないわけであります。

 ただ、行ったことが、戦闘というか襲撃に対する応戦が行われる可能性もあるわけですね。そのときには正当防衛が当然発生するわけです。ですから、そこのところについてはやはり確認をしておきたいということで、最初に質問をしたわけであります。

 ということは、非常に近接していれば、これはやらざるを得ないなということだと思うんです。そのことについては、これからそういうことがないようには祈りますけれども、ただ、サマワの治安状況というのは非常に悪化してきている、これはもう皆さんが言っているから繰り返しませんけれども、結果的にはそういうことが起こるだろうな。

 そこで、この問題の質問の最後にひとつ確認したいんですけれども、日本はオランダ軍を守ることはできないけれども、オランダ軍は日本を守ることができるということでいいですね。そもそもの話ですけれども、それでよろしいですか、そう理解して。

石破国務大臣 それは、オランダ軍は現地の治安に責任を負っております。それはイギリスも同様でございますが、このサマワにおきましては、オランダが治安を担当いたしております。オランダの任務として現地の治安を守る、その中の一環として日本を守るということに相なります。日本がオランダを守れるかといえば、それは法律条文上、根拠はございません。

 そのことによって、それではオランダと日本との信頼関係が損なわれるかという議論が法律制定時もございました。

 これは、私、オランダに参りました際にもカンプ国防大臣とこの件だけで相当の時間、話をいたしました。これは前も先生にお答えをしたかもしれませんが、そのようなことでオランダは日本を信頼しなくなるというようなことはあり得ない。それぞれが国内法に基づき法律をつくって出しており、オランダは治安維持の任務を負っているのだから、日本を守るのは当然であり、そのような装備も持っていっているのである。しかし、日本は人道支援と安全確保支援に来ているのだから、そういうような権限も与えられていないし、能力も持っていない。そのような日本に守ってもらえるということを想定してオランダは軍を出しているわけではない。この点はきちんと確認をしようということで、お互い合意をしておるところでございます。

渡辺(周)委員 同じことを繰り返しませんけれども、ただ、そうはいっても、現場ですから、相手がどういうふうなアタックに出てくるかということは全くわからない。そう考えたときに、やはりいろいろな可能性を考えておくべきだと私は思うんです。

 もっと言えば、ひょっとしたら自衛隊の乗っている車を盾にして相手の銃撃を阻止するために車を横づけにして、例えば、倒れている兵士がいる、その兵士が次の第二、第三のアタックを受けたら亡くなるかもしれない、そのとき、自衛隊の車が横に入って盾になってその人を救出することだってあり得るわけですね。だから、そういうことがいろいろこれからは起こり得るのではないかということを私は想定してこの質問をしたわけなんです。

 ですから、もちろん、現場に応じて現場の方が判断される状況に結局はなると思います。そうはいったって、いろいろな可能性を考えておかなきゃいけない。だから、その点を冒頭に質問させていただいたわけであります。別に、私自身は、それをやったらどうなんだと言って、それをあげつらってどうこうするつもりもありませんが、そういう究極の状態ということも考えておかなきゃいけない。そのことを冒頭にお尋ねいたしました。

 もう一つお尋ねをしたいのは、最近の見聞きした話では、かつてイスラムの何かウエブサイトに、日本のというよりもアメリカの司令官あるいはCPAの幹部を殺害した場合には金塊を五百グラムあるいは千グラム、何十万円相当だそうですけれども、懸賞を出す、アメリカ政府は我々に対して、アルカイーダの幹部を拘束するためには懸賞金つきで一生懸命行動に出ているじゃないか、だからその逆をやるんだということで、非常に恐ろしいような、そういうメッセージが流れたということも報道されているわけでありますけれども、このことについては、この真贋というのはもう確認されているのでしょうか。

鹿取政府参考人 お答えいたします。

 今の、アルカイーダと思われる声明は、私どもも承知しておりますけれども、現在の段階で、これがオサマ・ビンラディンであるかどうかについては、まだ最終的には確認されておりません。

渡辺(周)委員 この確認はとれていないということですね。

 これは、それが例えばオサマ・ビンラディンを名乗る何らかの、小さく言えばいたずらというか、恐怖心に陥れようとする悪質な脅迫めいたものなのか、それとも、別の何らかのグループがその名前を使ってやっているのか、もしかしたら本当かもしれない。

 真贋のほどはわからないにしても、当然、中東にいる邦人、特にこれはサマワで活動している自衛隊もそうですけれども、あらゆる邦人に対して何らかの注意喚起が必要だと思いますし、また、それもされていると思いますけれども、例えばこういうふうな、ある意味では宣戦布告のような形である現在、どのように対応を考えていかれるのか、この点についてお答えいただけますか。

鹿取政府参考人 お答えいたします。

 イラクにつきましては、従来から重ねて退避を勧告してまいりました。今回のオサマ・ビンラーディンと見られる声明を受けまして、改めて七日、スポット情報、これは速報でございますけれども、発出して、イラクへの渡航はどのような目的であれ絶対に見合わせることを、また、既にイラクに滞在されている方については直ちに退避されることをまた勧告しております。

 今申し上げましたように、今回の声明は、これが真にアルカイーダのものであるかについては現時点の段階で明らかでありませんが、日本が直接攻撃対象として名指しされていること、また、このような声明が各地のテロ組織に影響を及ぼす可能性も排除されない、こういうことに留意しまして、イラク以外においても、邦人がテロ事件や不測の事態に巻き込まれることのないよう、安全確保に十分注意を払うよう、改めて、これも七日付でございますが、我々の持っている広域情報というものを発出しております。

 また、一言敷衍させていただきますと、政府としては、特に昨年夏以降でございますが、国際テロの対象が多様化していること、また、このような状況の中で、昨年の十月十八日でございますが、初めて我が国もアルカイーダと見られる声明においてテロの対象として明示的に言及されたということを深刻に受けとめてまいりました。

 その関連で、政府としては、渡航情報等で積極的に注意喚起を行い、また、国内においては危機管理セミナーや講演等を通じて、また、在外においてはやはりセミナー、あるいは在外公館と在留邦人との間の安全連絡協議会等を通じて、危機管理に関する連携また情報発信を強化してまいりましたが、引き続き、私どもとしては、国内また在外において、このように民間の方々との安全問題についての連携を強化するとともに、注意喚起をさらに行ってまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 その真贋を調べる手段というのは、私も、実は、ウエブサイトがどうだとかという、そのあれなんかははっきり言って余り詳しい方じゃないんですけれども、つまり、そういうふうなものがこれから頻繁に流される可能性があるわけですね。

 例えば、アメリカと同盟を結んでいる国々に対しては、例えばイタリアだとか日本であるとか名指しをされて思い知らせるというように、一回目、今おっしゃったようにありました。そして今回は、もっと極端に、具体的に、日本人を殺した場合には何ぼの金塊をやるんだというようなことがありました。つまり、第二弾、第三弾とこれから当然出てくる可能性がある。

 そうしますと、渡航情報でイラクへ行っちゃいけないんだ、まあ本当に当たり前のことでございまして、ただ、そうはいっても、それ以外の、例えばヨルダンであるとかクウェートであるとかという国もあるわけです。もっと言えば、先ほどお答えにありましたように、日本の国内にいたってどうなるかわからないということだって、もちろん可能性としてないわけではないわけですが、例えばこういうものの真贋を見きわめるすべというのはないんですか。

 つまり、そうしないと、次から次へとこういうものが出るたびに、ビジネスの世界でもそうでしょうし、もちろんサマワの自衛隊もそうですが、それ以外でも、これはあらゆる、例えば外交官、民間人をひっくるめて、そういう意味では非常に萎縮をして、これはある意味では注意を払っていかなきゃいけないのはわかるんですけれども、そのたびに我が国のさまざまな行動が制約される、あるいは日本人の活動が制約される。

 つまり、この問題の真贋を見きわめる手段というのはないんでしょうか。これからこういうことがどんどん出てくると思うんですね。その辺、どうなっているんですか。

鹿取政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、昨年の十月十八日以降、我が国が直接テロの対象として明示的に言及されるということがしばしばございました。これに対して、私どもとしては、その都度、やはり渡航情報等で注意喚起したり、また、先ほども申し上げましたように、我が国においてもまた在外においても、海外に進出されている民間企業の方々あるいは在留邦人の方々、あるいは旅行会社ともそうでございますけれども、安全問題についての連携を強化するとともに、やはり注意喚起等、今積極化しているところでございます。

 先生の御指摘で、こういう声明が真実であるかどうか確かめるすべはないのかという御指摘でございますが、私どもとしては、こういう声明が昨年の夏以降特に続いておりますので、いずれにいたしましても、やはり注意喚起それから民間の方々との連携、これを強化していくのがまずは重要であるということで対処しているところでございます。

渡辺(周)委員 よく出てくるのが、例えば声明の声がオサマ・ビンラディン本人かどうかとか、これはもうなかなか、我が国だけでは正直言ってわからないわけですよね。それについては、アメリカなんというのは当然声紋を全部とられてあって、よく言われるように、ECHELONというシステムが、衛星を使って電話をかけたら、その声は全部キャッチされる。そして、それによって本人たちがどこから何を電話しているかということはキャッチしている。これは、当然のことながら欧州議会なんかでも認められているわけでありますけれども、もちろんアメリカを初めとする英語圏はその話のあるなしについては否定をしているわけですけれども、当然そういう形でやっているわけであります。

 ぜひ、そういう意味でこれからも、そうした声明、何らかの我が国に対する脅威となるべきものについては、詳細な注意を払いながら最大限の努力をして、また、その真贋を見きわめることも含めて体制をつくっていただきたいな、そういうふうに思うわけでございます。

 時間が限られておりますので、少し次のことになりますが、先ほど首藤委員も触れられましたけれども、ジュネーブ条約、国際人道法の部分について、ちょっと違う観点からお尋ねをしたいというふうに思います。

 国際人道法というものがあるということは、多くの日本人は恐らくいまだに知らないんではないのかな。つまり、戦争にもルールがあるんだということを大方の方は知らない。また、我が国は、これまでもそうしたことについては、日本という国は戦争を起こさないんだからそれは必要ないんだというようなことは、今まで一貫してきたわけでございます。

 やはり戦時には許されないものがある、戦時であっても許されないものがあるという、まさに説得力のある考え方から生まれた法でございまして、これは戦争の合法であるか非合法であるかということを問題とするのではなくて、やはり不必要な苦痛を制限することを目的とするということがあるんですね。人間の暴力にも超えてはならない限度があるんだということをうたったこの法律でありますけれども、今回の、先ほどお話のありましたイラクでの刑務所捕虜に対するあの行為を見て、大変な波紋を今呼び起こしているところであります。

 さてそこで、有事になって、もし我が国でこうしたことが起きた場合はどうなるのか。これは、一つ例を挙げますと、まず、これは考えたくはないことですけれども、日本の自衛隊が、例えば何らかの形でああした行動をとってしまったといった場合に、これはどのような形で、日本の自衛隊はどういう法によってその処罰なりをされるんでしょうか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 今先生から御下問の、我が国の自衛隊員が有事において捕虜に対して虐待行為を行った場合、こういうことがあってはならないことであり、想定しがたいことではございますが、あえてそういうようなことが起こってしまったという場合のことを申し上げれば、それは、個別具体的な事案に応じまして、既存の刑罰法令の規定を適用する。そして、自衛隊員の刑事責任をとっていく。例えば、特別公務員暴行陵虐罪、暴行罪、傷害罪、強要罪というようなものが罰条として考えられるところではないかと思っております。

渡辺(周)委員 それは、平時において、今お話のあったような暴行罪、傷害罪あるいは公務員に関する法律で罰せられるということなんですが、有事になった場合の話をしているんですが、有事になった場合でも、国内法的にはこの日本の刑法で判断されるということなんですか。

増田政府参考人 有事になりました場合にも、基本的に既存の刑罰法令の規定を適用して処罰するという考え方でございます。

渡辺(周)委員 つまり、これは、捕虜を捕虜としてではなくて、あくまでも一般の人、当然、捕虜は、ジュネーブ条約のもとで、捕虜として人権を尊重されるというもとで保護されるとすれば、一般人と同じように日本の刑法の中で判断をされる。つまり、それは平時の法律が適用されるというふうに考えていいわけですね。

増田政府参考人 捕虜の取り扱いそのものは捕虜法制というもので取り扱われるわけでございますけれども、そういう取り扱いの中で違反というようなことがあれば、それはその内容に照らして現行の刑罰法令を適用して処罰していくという考え方でございます。

渡辺(周)委員 では、この法の中に出てきますけれども、捕虜の収容施設は、例えばどのようなものを想定しているんですか。

 この法律案を読みますと、陸海空三自衛隊の共同機関として設置することができるんだと。その中で捕虜を収容するということになるわけですけれども、例えばこれ、捕虜収容と、もちろん、我が国がそのような、我が国の中で捕虜が収容されるなんという事態にならないことが当然理想的なんですけれども、この法律から一つ一つ解きほぐしていきますと、この捕虜の収容施設というのはどういうふうなものを考えていらっしゃるんですか。

飯原政府参考人 お答えを申し上げます。

 ジュネーブ第三条約におきまして捕虜収容所の要件が決められておりまして、まず、捕虜は、衛生上及び保健上のすべての保障を与える地上の建物のみで拘束し得るとか、それから、いかなる場合にも、戦闘地域の砲火にさらされるおそれのある地域に送ったり抑留してはならない、それから、宿営条件は、同一の地域に宿営する抑留国の軍隊についての宿営条件と同様に良好なものでなければならない、こういった要件が定められております。

 具体的にどこにどういう形の施設をつくるかは、まさに武力攻撃事態の態様次第によりますが、いずれにいたしましても、その場合の状況に応じまして、テントであるとかプレハブを使う場合もあるかもしれませんし、既存の自衛隊の施設を使う可能性もあるかもしれないということで、具体的なところは、その状況次第でございます。

渡辺(周)委員 そういうことになった場合には、何らかの形で、それが数名なのか、ひょっとしたら大変な数になるのかわかりませんけれども、今お話がありましたように、この収容する施設というものを当然考えなきゃいけない。

 もちろん、それがどこで起きるかによって、都心、町の真ん中で起きるのか、あるいは北海道の広大などこか土地の中に、例えばプレハブのようなものをつくって置くことができるのか、あるいは何らかの例えば代用監獄、監獄と言ったらいけませんけれども、代用することができるのかなというふうにも考えるわけでありますけれども、当然、既存の施設を転用するということも考えられるわけであります。

 そういった場合には、例えばどういうことを想定しているのか。この法律が通って、このジュネーブ協定に基づいて国内法、さまざまな形で法律に沿って整備をするとすれば、考えたくないことですけれども、こういうものであろうというふうに当然今考えていると思います。その点については、具体的にどう考えていらっしゃいますか。

飯原政府参考人 消極的な条件の方から申し上げますと、実は、ジュネーブ第三条約におきまして、原則として、捕虜自身の利益になると認められる特別の場合を除くほか、刑務所のたぐいの転用は認められていないということになっておりますので、基本的にはそれを捕虜収容施設に転用することは考えておりません。

 ということで、既存の自衛隊の施設と申しましたので、例えば営舎であるとか、それから仮設のテントであるとか、そういったものが一番考えられる形態であるというふうに思っております。

渡辺(周)委員 こういうことが現実的に本当にこれから先にあり得るのかどうか。当然ないことが理想でありますし、ないことの可能性が高いなと正直思うわけですが、ただ、この法律が成立する以上は、当然そういうことを考えておかなければならないわけでございます。

 そこで今、日本の自衛隊がもしそういうことを、例えば、日本の国内に何らかの相手国の、某国のそうした兵士が入ってきてギブアップした、もう我が国に対して敵対する意思は持っていない、そして従うというふうな意思を示した場合には、当然捕虜として扱うわけですが、一緒に共同行動をやっている米軍、先ほども首藤委員がおっしゃられましたけれども、もし米軍がそのようなことを起こした、共同行動している軍隊がそのような行動をとった場合、これはどういうふうに考えたらいいんですかね。

飯原政府参考人 基本的に捕虜に対する責任は抑留国が持つということにジュネーブ条約上もなっておりますが、ただ、その後、互いにジュネーブ条約を守る、遵守する国同士の移送の規定もございます。その場合、例えば日本が、米軍が抑留した捕虜を引き受けるといったことも考えられますが、基本的には抑留国が責任を持つというのが原則でございます。

渡辺(周)委員 非常にこれは答えにくいんじゃないかと思いますけれども、その米軍が今回のイラクで行ったようなことを我が国の国内でやった場合にはどうなるんですかね。

川口国務大臣 これは、先ほどもありましたように、米軍というのは我が国の法令の遵守義務というのがあるわけでございます。それから、安保条約、国連憲章、国際人道法、そういったことについて守って行動するというのが当然想定をされるということであると思います。

 したがって、そういうことがあるということを前提にということで、要するに違反をするということを前提にするという形で御質問にお答えするというのは非常に難しいわけですけれども、あえて一般的に申し上げるとしますと、これは我が国の政府として、米軍に対して必要なこと、それはジュネーブ条約違反ではないか等々の必要なことをきちんと言っていくということであると考えております。そういう意味では、例えば今回のイラクのケースについても、そういった我が国の考えについては米国政府に伝えたということでございます。

渡辺(周)委員 今、遵守とおっしゃいましたけれども、我が国の国内法令を尊重する義務でございまして、当然尊重をすると。これは地位協定においても何においてもずっと言われてきたわけなんですけれども。

 ただ、現実問題として、そうなった場合に、我が国の法律でこれは当然、どうなんですか、我が国がアメリカに引き渡すわけですか、協議をして。そこのところだけ確認をしておきます。

 つまり、日米で共同行動をとっている。例えば自衛隊員の場合は日本の刑法が適用されますが、アメリカの施設に引き渡す、あるいは日本とアメリカが一緒にやるというのはあり得ないですよね。つまり、捕虜の監視を日米が合同でやるということを例えば想定した場合。

林(景)政府参考人 先ほど大臣が遵守とおっしゃったところは、国内法令については尊重の誤りでございます。

 日米の共同行動ということにおきましても、それはてんでんばらばらで個人がやるわけではなくて、当然のことながら、日米それぞれの部隊単位で行動が行われるわけでございましょうし、そういうときにおきまして、その今おっしゃったような事例、あってはならないことだろうと思いますけれども、そういうものが起こったときに、それではどういう対応をするのかというお話でございますけれども、これは、仮にアメリカの軍人がジュネーブ条約に反するような行動を行ったということであれば、まずもって米国自身が、ジュネーブ諸条約の締約国であるわけでございますから、締約国としてその義務違反に対する対応というものをしかるべく行うということが期待されるということだろうと思います。

渡辺(周)委員 では、例えば、日米が合同でやっていてジュネーブ条約違反を行った場合は、セパレートして考えるということでいいんですね、日本とアメリカとで。

林(景)政府参考人 共同でやっているというところが具体的にどういう形なのか、ちょっと私、必ずしもよくわからないのでございますけれども、基本的には、共同対処ということでございましても、米軍と自衛隊が共同にそれぞれ対処するわけでございますから、それぞれにおきますディシプリンと申しますか、規律といいますか、そういうものが貫徹されるということでございますので、それぞれが必要に応じて処罰するということでございます。

渡辺(周)委員 このジュネーブ条約関連の質問、先ほど首藤さんもされましたけれども、現実問題として、我が国で捕虜収容所ができて、そこで捕虜がいてというようなことは非常にイメージしにくいことなんです、正直言って。ですけれども、この法律を成立させるということを前提に議論している以上は、当然そういうことも考えなきゃいけない。

 やはり、一言申し上げれば、今回のイラクの刑務所で起きた、なぜ、二十一歳の、日本でいえば、本当に、成人式を過ぎた、まだまだ若い女性が、なぜあそこまで残虐な場に居合わせる。まさに、人間の尊厳を失うようなことを、御本人の意思であったか、そうであったかはまだこれからアメリカがいろいろと調べられるでしょうけれども、あのような場に、なぜ笑顔で記念写真を撮ることができるのか。

 なぜ、ちょっと言い方は悪いですけれども、非常にサディスティックな写真、つまり、裸体をピラミッドにしてみたり、あるいは、先ほども話がありました、首に、何か犬のようにして、イスラム社会で犬というのは非常に侮べつされる対象でありながら、わざわざその格好をさせる。最もその国の人間がしたくないという、恥辱の思いをさせるだけの、人間の狂気といいましょうか、残虐性というものを本当に今回見ました。

 そういうことが、やはり戦場にいると、恐らくあの方も、お母さんが時々何かテレビなんかに出てきて言っています、誇りに思う娘なんだと。ただ、しかし、戦場へ行ってしまえば、そういう感覚というのはやはりああなって麻痺してしまうんだろうなというふうに思いますと、やはり人間を狂気にさせるのかなというふうに思わざるを得ないわけであります。

 まさにそんな、今回の問題というのは、どうであったかという、どこそこの政府機関からの指示によるものであるとかどうだとか、いろいろありますけれども、やはり人間があそこまで、あの場面で笑顔で写真に写ることができる、あるいは、首輪をつけて犬の格好をさせて、あんな散歩するまねをさせられるなんという、ああいう異常な状況になるということを考えた場合に、我々は、まさにああいう狂気のるつぼである戦場というものを絶対につくり出してはいけないなというふうに思ったわけでございます。

 そういう意味だからこそ、たとえそうであっても、戦争にも戦場にもルールがあるということで、今回、この条約の、まさに我が国がこれまでずっと先送りしてきた問題に、今回は我が国として、やっとこさ、ある意味ではっきりと、これからもこういうあらゆる可能性を考えた議論をしていかなきゃいかぬというふうに思っているわけでございます。

 ちょっと、これから別の観点で考えますが、テロ対策のことについて質問をしたいと思います。

 まず、防衛庁長官にお尋ねしたいのは、特殊部隊を防衛庁が、自衛隊が今立ち上げて、訓練を始めたということなんですけれども、その意図と、どのような事態を想定してそうした特殊作戦群を形成したのかという点につきまして、ちょっとお尋ねをしたいと思います。

石破国務大臣 先生御指摘のように、先般、と申しますのは本年三月末でございますが、三百名から成ります特殊作戦群というものを新編いたしました。長官直轄部隊でございます。

 要は、これは、非対称的な脅威、こう言うわけですが、例えて言いますと、特殊工作員のようなものに対して、非対称的脅威だからといって何も備えないでいいということにはならない。やはりそれに合ったような、見合ったような、そういう部隊というものを持っておかなければ、抑止力にもならないし、被害の局限にもならないということだと思っております。

 私どもといたしましては、そのような非対称的な脅威というものに対して、対称性を持たせるという言い方が必ずしも適当かどうかわかりませんが、抑止力を持つ、そしてまた被害を局限するために、このような特殊作戦群というものを新編したものでございます。

渡辺(周)委員 それは、当然のことながら、警察でも既にSATができました。これまでも、例えばハイジャック事件は、あれは函館空港だったでしょうか、それで活動された。あるいは幾つかの、これはたしかダッカ空港事件の発生を受けて、我が国でもこうした、ドイツの国境警備隊、GSG9のような組織が必要であるということで、その後に起きた、あれはどこだったでしょうか、モガディシオだったでしょうか、エンテベで起きた、ドイツのGSG9というグループが、対テロの国境警備隊、突入部隊が救出をしたという、奇跡の救出劇をやった組織があります。それをモデルにして日本も警察でつくったということでございます。

 警察には、対テロという形で、あるいは対ハイジャックを中心にしてこうした組織がつくられたわけですが、正直、自衛隊がつくられるのが遅かったんじゃないのかなというふうに思うのです。

 それが、なぜ、この時期へ来て、警察ではかなり早い段階で、テロ対策は、第一義的に治安を担当する警察庁がやるんだということでございます。防衛庁が、実はここでようやくそうした特殊部隊をつくるということになったわけですけれども、非対称という言葉を今長官使われましたけれども、この非対称の脅威に対して、警察と自衛隊が今度どのような形でテロの脅威に立ち向かうかということについては、この役割分担はどうなっているのですか。

石破国務大臣 結局、治安出動の規定というものは、大規模騒擾みたいなものを考えておったわけですね。どう見ても、この今の時代に、そういうものが全くなくなったとは言いませんが、今の時代には合わない。したがって、中央における協定も改定をし、そしてまた、各都道府県警とそれぞれの自衛隊との協定も改定をしておるわけでございます。

 自衛隊が出ます場合にはどういう場合かというと、一般の警察力をもってしては対処しがたいという治安出動の規定によって出ることになります。そうしますと、治安出動の場合には、これは警察との共同という場面は基本的に起こりません。これはSATでは対処できない、つまり、これは私も見たわけではありませんから断定的なことは申し上げられませんが、例えば北朝鮮の工作員というものは、大体、十人分とか二十人分とか、とんでもない能力を持っておるものらしい、そうだとすれば、いかなSATとはいえ対処できないという事態になって、治安出動が下令をされ、自衛隊が出るということになるのだろうと思います。

 ただ、SATが、いつも申し上げますように、例えば、SATが全滅をしてしまって、それからおもむろに自衛隊が出るということではなくて、どういう場面でSATが対応し、どのようにしてそこがかわるか、どのようにして我々が後ろの方にいるかということ、そういうことは常に緊密に連携をしていかねばならないことだと思っております。

 先生御存じのように、治安出動の際におきます治安の維持に関する協定というものがございますが、それは、自衛隊及び警察は、治安出動命令が発せられた場合には、警察力の不足の程度、事態の状況等に応じた具体的な任務分担を協議により定め、それぞれの指揮系統に従い事態に対処をするというふうに定められておるとおりでございます。

渡辺(周)委員 公安委員長、いかがですか。そういう意味で、自衛隊、防衛庁と警察とで。

 ただ、私は、どちらかというと、すみ分けをして、ここは何々、この場合はだれだれというよりも、国家的なそうした脅威、危機に面した場合は、ある程度両方が常にスタンバイをして、時には共同行動をとるときもあるんではないかなという意味で申し上げたのですが、これはどうなんですか、今のSAT、特殊部隊がどのような形で防衛庁と連携をして行動するのか、その点についてお答えいただけますか、警察庁の立場から。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 SATの件は、先生先ほどお話しくださいましたように、ハイジャックあるいは重要施設の占拠事案等の重大テロ事件、それから銃器等の武器を使用した事件に際しまして、事態の鎮圧あるいは被疑者の検挙等に当たることを目的としているわけでございます。そういうことで、全国七都道府県の中に二百名の人員でもって体制整備されておりまして、いわゆる自動小銃やライフルあるいは特殊閃光弾、作戦用のヘリコプターなどの装備を備えているわけでございます。

 国内におきますテロ等事案発生時におきましては、治安維持に全般的な責任を有する警察が第一義的にはまずは対処いたしますけれども、一般の警察力をもってこれが治安を維持することができないと認められた場合には、ここで自衛隊に治安出動の命令がなされ、警察と自衛隊が連携をして、そして対処していくものと承知をいたしております。

 その場合に、SATを含みます警察部隊と自衛隊の部隊におきましては、事態の状況を勘案いたしまして、具体的な任務をあらかじめ分担して、そのような中で緊密な連携を図りながら対処していくことが適当である、そのように考えております。

渡辺(周)委員 これも、起きてみないとどうなるかということでありますけれども、ただ、こうした特殊部隊が警察でかなりベールに包まれていることも承知をしています。

 よく言われることなんですけれども、一つの例を挙げますと、そうした対テロという形で警察組織も当然出てくるし、当然防衛庁も出てくるわけでありますが、規模の大きさよりも、やはり脅威の形によって当然いろいろな組み合わせがあるんだろうと思います。

 その場合に、例えば米軍と一緒に行動する、米軍の特殊部隊と行動するというようなことは当然想定されているわけですか。

石破国務大臣 これは、想定を基本的にはいたしておりません。

 と申しますのは、治安出動下令時でございますから、治安出動の場合には、これは基本的に自衛隊でもって対処することになります。それが、確かに先生おっしゃいますように、だんだんだんだん事態が拡大をしてまいって、これはどうも状況としてはもう治安出動ではないのかもしれないというような場合になれば、これは話はまた別でございますけれども、基本的に、テロ、ゲリラ等々の治安出動に基づいて行動いたします場合には、米軍との共同対処というものは想定をしておらないところでございます。

渡辺(周)委員 ただ、事態の性質によっては、治安出動だけではもうおさまるというところではないという場合には当然その特殊部隊が、というのは、これから特殊部隊がいろいろな訓練をされて、ひょっとしたら外国にも行かれる、既にそういうことでトレーニングをしてきた、あるいは実績を重ねている諸外国の機関のノウハウを、指導を受けながらこれからつくっていくであろうと思いますが、あらゆる可能性についてトレーニングをしていかれる、訓練していかれると思うんです。

 ただ、現実にそういうことが起きた場合には、当然のことながらですけれども、それはアフガニスタンであったりイラクであったり、あらゆる国で活動をしている経験を持つ国の特殊部隊と将来的には合同で一緒にやることがあることも当然、顔をしかめていらっしゃいますけれども、否定はできないわけですね。その場合には、当然それはあり得る、想定はしていないけれどもあり得るというふうに考えていいわけですよね。

石破国務大臣 それは全く否定しておるわけではございません。それは、事態に応じて、そういうことが全く排除されるわけではございません。

 ただ、現在のところ、まだ、先生が御指摘のような、そういうようなところまで想定を行っているわけではございませんが、将来的にそういう可能性を排除するものではございません。

渡辺(周)委員 少し基本的なことなんですけれども、これは、当然、将来はそういうこともあり得ると。

 日米合同で軍事演習を行うことも、今これが行われているわけですね、実際。一つ聞きたいんですけれども、これは、言葉は何語でやっているんですか。

石破国務大臣 日本語ではございません。基本的に英語ということになります。それは、米国兵で日本語を解する人よりは日本の自衛隊員で英語を解する方が多いということもございますし、それだけが理由ではございませんが、英語でございます。

渡辺(周)委員 当然ですね。

 かつて、小川和久さんという、軍事アナリストで、ここに参考人で来られました。あの方が、大分前ですけれども、十七、八年前、「在日米軍」という本を書かれたんですね。そのときに、読んでいてなるほどなと思ったのは、やはり自衛隊を米軍の一つの戦闘単位として組み込んで考えているのではないか、それが証拠に、日米共同訓練というのは英語オンリーで行われているんだということなんですよね。つまり、英語オンリーで行われている。

 それは平時の演習だからいい、平時と言うと怒られますけれども、当然訓練だからいいんですけれども、現実問題として、不幸にしてこれからもしそういうことになった場合に、共同行動を何らかの形でとらなければいけなくなった場合に、例えばそうした面での障害というのは、障害というよりも、何らかの、これは英語で行われる、この言葉の問題というのはどうなんですか。これはこれまで議論されたことはないんですか。

西川政府参考人 先生今お尋ねの言葉の問題でございますが、これにつきましては、実は、日米間でこれを使用するという格好で、例えば英語なら英語というふうに規定したものはございませんで、今のところ、大体英語を使っておるというところでございますけれども、これは、ただ、必要に応じまして、日本語もこちらは使いますし、日本側も米国側も通訳を使ったりということでも現実にやっております。

 ですから、そういう意味では、とにかく、まずは意思疎通をしっかり図ることということをベースに、わからないのに無理に英語を使わせても仕方がございませんので、そのあたりは、常日ごろから、外国語教育あるいは共同訓練等を通じまして意思の疎通が十分図れるようにという形の努力をしているところでございます。

渡辺(周)委員 本当にそういう意味では、訓練だからこそ、少々わからなくても身ぶり手ぶりで何とかなるのかなと。ただ、しかし、現場にいて極限状態に陥っているときに意思の疎通が本当にできるかというと、非常に難しいと思うんですよ。

 これは、語学の教育というのは当たり前なんです。当然、学校の中でもやっていると思いますけれども。やはり私は、共通のコミュニケーションをとる上においては、当然、日本語を理解できるアメリカの人間がいたっておかしくないわけです。大体、通訳がいて、通訳を介しながらそんな作戦なんか現場のぎりぎりのところでできるわけがないわけでして、そこのところでも、日本の国も、イコールの関係であるならばやはり対等なコミュニケーションがとれるようにするべきだと私は考えるんですけれども、その点について、長官、もし何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 今も運用局長からお答えいたしましたが、語学教育には相当力を入れております。

 これは、上は将から、下という言い方をしちゃいけませんが、士に至るまで、みんなが同じだけの語学力を持つ必要があるとは思っておりません。やはり指揮官レベルというのは相当に高い英語の能力を持たなければいけないということで、語学教育には陸海空とも大変に力を入れておるところでございます。

 また、予備自衛官補制度というものをとりまして、その中に特殊技能で通訳というものをつくっております。これは、今まで自衛官の経験がなかった者であっても、一般の民間の方々で語学の才能にすぐれた人たち、そういう人たちを採用いたしまして予備自衛官補とし、それが予備自衛官になっておる者もございますが、そういうような形で、いろいろなところで意思の疎通が図れるように、各レベルにおいてこれはもう本当に万全を期していかなければいけないことだと思っております。

 またいろいろなお知恵があれば、どうぞおかしをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、増原委員長代理着席〕

渡辺(周)委員 せっかく国家公安委員長に来ていただいていますので、もう一つお尋ねしたいんです。

 ちょっと特殊部隊の話に戻りますけれども、かつて、あれは広島のバスジャック事件だったでしょうか、どこかであったときに、たしか佐賀県の青年かなんかだったと思います、犯人は。たしか、大音響というんでしょうか、何かしばらく人間の行動を麻痺させる特殊な閃光弾のようなものがあって、それを使用して、一瞬にして音と光で犯人の動きを麻痺させた、そしてそれによって犯人捕獲に成功したという事例を読みました。

 例えば、そうしたことを考えますと、私はそういう特殊な兵器を持っていると思うんですね。我が国の場合は、テロ制圧用とでもいいましょうか、そうした装備というのはある程度十分に装備されているというふうに考えてよろしいのか、他国のそうした特殊部隊と比較して遜色ないのかどうか、その点についてお答えいただけますか。

小野国務大臣 お答えさせていただきます。

 お尋ねのSATの装備については、先ほども申し上げましたように、自動小銃、それからライフル、特殊閃光弾というのが先ほど先生おっしゃってくださったものだと思います。それから、作戦用のヘリコプターなどを備えておりまして、テロ制圧用のいわゆる装備というものは私どもといたしましては十分なものである、そのような認識を持たせていただいているところでございます。

 外国の警察特殊部隊と頻繁に合同訓練をやはりさせていただいておりまして、アメリカあるいは欧州各国とも頻繁にさせていただいているところでございまして、その能力というものは、国際的に見ても相当な練度の部隊であると私どもは認識をさせていただいております。

 そのようなことで、警察におきましては、引き続きまして、この装備資機材の整備、こういうものを初め、SATのテロ対策能力の充実強化にこれからも努めてまいりたい、そのように考えております。

    〔増原委員長代理退席、委員長着席〕

渡辺(周)委員 これから、これはもちろん対テロだけじゃなくて、きょうの有事の議論からちょっと外れちゃいますけれども、治安状況の悪化の中で、例えば立てこもりであるとかシージャックであるとかバスジャックであるとか、あらゆることが起きるんだろうと思います。そうした中で、とにかくあらゆる形でそうした脅威を除去するというお立場で御努力をいただきたいなというふうに思うわけでございます。

 ちょっとこれは防衛庁長官に確認というかお尋ねなんですけれども、有事の際に自衛隊の方々が例えば誤射をしてしまった、こういう場合はどうなるんですか。前もこの議論は、私はたしか何年か前の委員会で議論をしましたけれども、つまり、有事下において農民とテロリストと区別がつかない。

 先般、それは、この間ずっとテレビでやっていまして、攻撃用のヘリコプターのアパッチが赤外線の映像の中でとにかく何か機銃掃射をする場面、あの場面を見ていて、あの人たちが本当にテロリストであるか、武装グループであるのか、あるいは農民であるのか。こんな細長いものを何か持って道路を横切っていた、走ってきたところへ、とにかくわからぬけれども撃て、あそこにもまだ動いているから撃てという生々しい映像をやっていました。

 物すごい威力で本当に人間が吹き飛ぶようなシーンをやっていましたけれども、例えばああした形で、相手がだれだかわからない、テロリストかもしれない、武装グループかもしれない、武装ゲリラかもしれない。しかし、ひょっとしたら山に迷い込んだきこりの、きこりというのは今いるかどうかわかりませんけれども、例えばそういう人かもしれない、そういう森林作業員だったと。わからないわけですね。

 例えば、有事の際に撃って結果的に誤射してしまったという場合は、これは有事の場合はどうなるんですか。

石破国務大臣 それは、今森林作業に従事される方の例を挙げられましたが、本当にケース・バイ・ケースなんだろうと思っています。

 基本的にそれは、正当防衛だと思って撃ったとするならば、これはもう誤想防衛の世界になるわけであって、誤想したことがどうであったかというような議論になってくる。

 基本的に、私どもが有事において行いますことは、これは防衛出動下令下でございますから、撃つということは当然認められるわけでございますけれども、誤想防衛の場合には、それが誤想防衛としてどのように取り扱うか、その場合に、森林作業に従事される方々を敵の工作員もしくは相手国の兵隊と思って撃ったという行為をどのように考えるかということなのだろうと思っております。

 これが故意になるのか、過失になるのか、そのあたりも含めましてケース・バイ・ケースのお話かと思いますが、基本的には、故意犯、そしてまた誤想防衛の世界の議論だろうと思っています。

渡辺(周)委員 当然そういうことはあり得るんですね。

 これは我が国を例にとりましょう。韓国で、特殊部隊が、船が座礁して韓国のある地区の山の中に一斉に逃げ込みました。ああいう事例が例えばあって、山狩りをして、軍を、警察を挙げて、とにかく大変な、延べ何十万人、三十万人ぐらい人が出てきて、北朝鮮の特殊部隊を、山の中、山狩りをして何とか捕まえようということでやったわけですね。

 例えば、ああいう人たちといいましょうか、そういう何らかの武装ゲリラのような方々が日本の国に入ってきた、入っている、非常に危険な状態になって、これはある意味では想定される我が国にとっての大規模な脅威であるといった場合に、当然、現場に出てくる方々も非常に緊張状態に置かれるわけですね。

 とにかく撃たれるよりは撃つしかない、とまれと言ったけれども聞こえなかったのか何なのか、動くなと言ってみたけれども無視した、そうなったときにはもう彼は撃つしかなかった。でも、よく見てみたら、実は持っていたのは銃ではなくてくわだったとか、あるいは何らかの森林作業用の道具であったんだ、チェーンソーであったというようなときに、しかし撃ってしまったといった場合には、例えばですけれども、ここだけちょっと確認して、もう時間がありませんから、当然今おっしゃったような話が、いろいろなパターンが考えられると思います。

 そのときに、例えば損害賠償というもの、これはちょっと例は違いますけれども、広島でシージャック事件がありましたときに、大阪府警から派遣された狙撃手が犯人を射殺したわけですね。そのときに、射殺された人間の遺族は実は訴え出たんです。ところが、広島地裁は、これは正当防衛だ、もうほかに手段がない、ほかの人間が危害を受けることを考えればそれは撃つしかなかったということで、当然のことながらその訴えは認められなかったという判例があるんですけれども、例えば有事の際にもそういうことがある。

 しかし、それが、実は犯罪が起きたときと違って、そうやって誤想、誤射した場合にどのような形で責任を問うのか問われないのか、あるいはそれによって損害賠償というものは発生するのかしないのか、そこのところをお尋ねしたい。もう時間がありませんので簡潔に。

石破国務大臣 責任論につきましては、先ほど申し上げたとおりです。

 これもまさしくケース・バイ・ケースであって、広島のシージャック事件とはかなり違う場合もあり得るだろうと思っています。その場合に国賠法の対象になるかどうかというのは、まさしくそのケースをどのように考えるかということでございまして、その点につきましてはきちんと議論をしていかなければいけない。ただ、なかなか考えにくいとは思いますが、そういうような問題意識を持って今後とも議論してまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 もちろん、その犯罪者を乗客の命を救うためにあえて撃つしかなかった。それは大阪の三菱銀行の事件でもそうです。とにかくこのままにしておいたら次々に犠牲者、被害者が出るという場合と、そうでないというのはもちろんわかって質問したわけです。それですら例えば遺族が損害賠償を訴え出るわけですから、ある意味では、有事の際に、これはまた今までも議論されましたけれども、そういうことが起こり得るということをぜひ法律の世界の方々も含めて当然のことながらいろいろ考えていかなければならないだろうということで御質問したわけでございます。

 時間が来たから終わりますけれども、また次回質問の機会がございましたら、いろいろな角度から質問したいと思います。

 終わります。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、ACSAの改正案について聞いていきたいと思います。

 九六年にACSA協定が締結をされまして、その当時は、共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動であったわけですね。九九年のガイドライン関連法案の審議の際に周辺事態にも拡大をされました。さらに今回、新しい五条で「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」、そして新六条で「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的」、ここまで拡大されたわけであります。

 きょうは、第六条、ここについて伺いたいんですが、「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」というのがあります。この規定を盛り込んだ理由について、これを説明していただきたいと思います。

海老原政府参考人 今委員がおっしゃいましたように、ACSAにつきましては過去に一回改正を行いまして、周辺事態安全確保法に伴います物品、役務の相互提供というのを取り決めたわけでございます。

 今回、この事態に対応するということで改正を行うこの機会に、国際の平和及び安全の寄与、大規模災害への対処その他の目的のための活動にも適用するということにしたわけでございますけれども、これは、一言で申せば、これに該当するような活動を最近自衛隊が行ってきておりまして、このような活動を米軍とともに行っている場合に、その役割を一層効果的に行うことができる、この物品、役務の相互提供を現場でスムースに行うことができることによってそれぞれの役割も効率的に果たすことができるということから、今回の第六条、新六条を設けることによって、このような場合にも物品、役務の相互提供ができるように改正をお願いしているということでございます。

赤嶺委員 これに該当するような活動というのは、具体的に何ですか。

海老原政府参考人 今のお尋ねは、国際の平和及び安全の寄与に該当するということだと思いますけれども、これには、例えば、国際的なテロリズムの防止、根絶のための国際社会の取り組みへの参画、支援、具体的に今の法律で申し上げれば、テロ対策特措法に基づく自衛隊の協力支援活動というのがございます。

 また、もう一つは、国連安保理決議に基づいてイラクの復興に向けての国際社会の取り組みへの参画、支援ということで、具体的に申し上げれば、イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の人道復興支援活動などが含まれるというふうに考えております。

赤嶺委員 テロ特措法やイラク特措法を事例に挙げられましたが、この第六条の中に、「国際社会の努力の促進、」そして「大規模災害への対処」とありまして、それに「その他の目的のために」という文言が続いています。

 「その他の目的のために」というのも説明していただけませんか。

林(景)政府参考人 「その他の目的」と申しますのは、文字どおり「その他」ということでございまして、国際の平和及び安全の寄与、大規模災害への対処、それ以外のその他の目的ということでございますが、典型的な例といたしましては、海外におきまして自国民の救出が必要となるような緊急事態に際して活動が行われる、そういった場合に自衛隊と米軍の間で物品、役務の相互供与が行われ得る、そういうことでございます。

赤嶺委員 今の条約局長の答弁の姿勢に納得いかないのがありますので、「その他の目的」というのを一例挙げましたが、もっと挙げていただけますか。「その他の目的」といったら本当に広いわけですから、どんなのがあるんですか。

海老原政府参考人 これは繰り返しになりますけれども、「その他の目的」でございますので、将来、例えば国内法が成立をいたしまして、それに基づきまして自衛隊が物品、役務を提供できるような場合ということでございますので、今から、現時点であらかじめ包括的に申し上げるということは困難なわけでございますが、今、国会に同時に御審議をお願いしております自衛隊法の一部改正案がございますけれども、この中で、今条約局長から御答弁申し上げました邦人輸送の場合もございますけれども、同時に、いわゆる日常的業務ということで、国内の自衛隊施設におきまして米軍が立ち寄った場合というふうな場合につきましても物品、役務の提供ができる、これも「その他の目的」の中に入るということでございます。

赤嶺委員 「その他の目的」ということで、かなり広くとってあるということなんですが。

 それで、先ほどに戻りますけれども、この機会をとらえて「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」これを入れたということなんですが、その具体的な中身がテロ法とイラク特措法ということになっているというお話なんですけれども、なぜそのときに、テロ特措法が出されたときに、イラク特措法が出されたときに、ACSAの改正をなぜ行わなかったんですか。

海老原政府参考人 これは、その法律が成立をいたしまして、その法律に基づきまして現在活動が行われているわけでございますけれども、その活動を行う中で、ACSAを適用して米軍との間で物品、役務の相互の提供ができるようになればより一層効率的な活動が行われるという、いわばニーズが確認をされてきたということでございまして、その確認を受けまして、今回、ACSAの改正の御承認をお願いしているということでございます。

赤嶺委員 つくってみてニーズが確認されたということです。

 例えばテロ特措法でいえば、もうできてから二年半たつんですね。去年その延長の機会というのがあったわけですよね。そういう機会があったんじゃないかと考えるんですが、いかがですか。

海老原政府参考人 これは機会があったといえば機会があったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、イラクの特措法に基づく活動というものとあわせて活動の必要性というものがより強くなってきたということで、今回お願いをしているということでございます。

赤嶺委員 今度は逆にイラクの場合ですけれども、イラクに向かっていた自衛隊は、クウェートで米軍の支援を受けています。宿泊や食事ですね。これは何に基づいて米軍から支援を受けたんですか。

飯原政府参考人 ACSAの六条になりますかの「人道的な国際救援活動の実施のため」という規定に基づいております。

自見委員長 もう一度。防衛庁飯原防衛局長、しっかり答弁してください。

飯原政府参考人 申しわけございません。三条に基づいております。条文、引用を間違えまして、申しわけございません。

赤嶺委員 三条ですね。

 ですから、先ほどの説明だと、もう既にACSA三条で、イラクに向かっている自衛隊は米軍から支援を受けている。一方で、日本の側は、テロ法にも第十条に「物品の無償貸付及び譲与」がある、イラク特措法にも同条項が十八条にある。

 いわば相互支援の枠組みというのはつくられているわけですよね。つくられているけれども、何で今回、こういうイラク法やテロ法を口実にした改正ということになるんですか。

海老原政府参考人 先ほど飯原局長が御答弁申し上げましたのは、今、イラクあるいはクウェートでもいいんですけれども、自衛隊の活動といいますのが人道復興支援活動であるということでございまして、したがいまして、従来のACSA、現行のACSAでございますけれども、これの三条に基づきまして米国から物品、役務の提供というのを受けることができる、自衛隊の方は防衛庁設置法に基づいてそれを受領することができるということだと思います。

 他方、こちらから、じゃ、現行のACSAのもとで提供ができるかということでございますけれども、これはPKO法に基づいてのみ自衛隊は提供できるというわけでございますけれども、そもそも、現在イラクに派遣をされております、クウェートにもあれかもしれませんが、いずれにしろ、イラクに派遣されているものは、これはイラク特措法に基づいて派遣をされている自衛隊でございますので、PKO法に基づく供与というもの、これしか現行のACSAでは該当し得るものはないわけでございますけれども、これに基づいて供与することはできないということから、今回、新六条を設けることによって、イラク特措法に基づいて提供ができるようにするということでございます。

赤嶺委員 イラク特措法、テロ特措法で人道支援という概念だけでは相互支援ができなくなっていく、そういうこともあって今度の改正という説明でありますけれども、一方で、付表2というのを設けたわけですね、今回の改正を機会に。この付表にイラク法、テロ法というのが入れられているわけですが、先ほど、「その他の目的」ということも説明がありました。つまり、新たに「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」「その他の目的」というのを、これからいろいろな事例が起きていく場合に、それを付表につけ加える。つけ加えることによって、今度はACSAの改正を国会に諮らなくても済む、そういう仕組みも入っているわけですね。

 それで、国会に諮らずに、いわば日米間の合意だけがあればACSAがどんどん拡大していく。国内の法律があればという前提があったにしても、ACSAというのは日米間の相互支援の協定であったわけですよ。これまで、拡大するたびに国会に承認を求めていたわけですよね。何で今回、承認も諮らずにできるようにしていく、こういう仕組みになったんですか。

海老原政府参考人 これは、まず、自衛隊が米軍に物品、役務を提供できる場合はあくまで国内法に従って行われるということがACSAの中にも書いてあるわけでございます。

 したがいまして、付表2を行政府限りでいわば勝手に改正することによって提供権限を持つということは全くないわけでございまして、まずは国会で御成立いただいた国内法があって、それに基づいて行うという大前提がございます。

 それを受けまして、まあ本来であれば付表がなくてもそれぞれの国内法に従って行うということだけで十分なわけでございますけれども、現場で米軍と自衛隊の間で行うということがより円滑に行われるためにも、付表2に現在有効な国内法は何かということを明記しておいた方がより運用が円滑に行われるだろうということから、付表2に、現在有効な国内法をそこに明記するという形にしてあるわけでございます。

 したがいまして、付表2といいますのは、既に国会で成立をさせていただきました国内法がこういうものがあるという事実を書くというだけでございますので、その改正につきましては、このACSAの改正されました条によりまして、これは十二条によりまして、この改正は行政府限りの交換公文の交換によって行われるということをいわば授権をいただくという形にしておるわけでございます。

赤嶺委員 その場合、今回の改正されたACSAとアメリカが他国と結んでいるACSAと比べて、これ以上、これからもこの点で改正していかなきゃいけない、そういうのはありますか。また、今アメリカはどのぐらいの国とこういうACSAを締約しているんですか。

海老原政府参考人 米国がNATO相互支援法に基づきましてこのような協定、物品、役務の相互提供協定を結んでいる国は約七十であるというふうに承知をいたしております。

 また、今後改正の必要があるかどうかという点でございますけれども、これはあくまで、我々の考え方は、国会で成立をさせていただく国内法に基づいて行うということでございますので、その国内法が先ほど申し上げましたような新六条に該当する限りにおいては改正は必要ではないのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 今度は、「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」という、イラク法、テロ法、いろいろ出されましたけれども、今後これはどういう具体的な活動が想定されていくんでしょうか。

林(景)政府参考人 これは、先ほど北米局長の方から申し上げましたとおり、ACSAの枠組みと申しますのは、基本的に、我が国自衛隊の提供に関する限りは、国会で御授権いただいた立法行為が行われた後で初めてできるということでございまして、その国際の平和と安全に寄与するような活動に係る立法というものが将来行われることがあるとすれば、それが追加されるということでございまして、私どもの立場から国会がどういう形で御意思を表明なさるかということについてあらかじめ申し上げることは、ちょっと、いかがかと思います。

自見委員長 赤嶺君、申し合わせの質疑時間が終わりましたので、手短にお願いをいたします。

赤嶺委員 最後の一問にします。

 「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」という場合に、その「努力」というのは国連安保理決議は前提になるのでしょうか。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

海老原政府参考人 それは今後御成立いただく国内法次第であるというふうに考えております。

赤嶺委員 終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 まず、防衛施設庁長官にお伺いしたいと思います。

 那覇防衛施設局は、四月の二十八日、普天間飛行場代替施設建設に向けた環境影響評価方法書の官報への公告と沖縄県内八カ所での縦覧を開始しましたが、その直後から疑問と不備を指摘する意見が相次いでいると報道されています。長官もよく御存じのことだと思います。

 例えば、基地の運用内容や建設される管制塔、駐機場、環境への影響が懸念される洗浄液の廃水など、軍事施設の概要や配置が示されておらず、さらに、最重要項目である騒音の影響などを予測する上で必要な米軍機の使用機種や飛行回数、離着陸ルート等も示されていない等々、専門家からさまざまな指摘がなされています。

 縦覧直後からこれだけ不備が指摘されるような方法書をもって手続は済ませていると代替施設建設に向けた作業の継続を求める施設局の姿勢には、全くあいた口がふさがりません。施設建設に必要な作業ヤードも未確定のまま三案併記している縦覧するに値しない方法書は、撤回すべきではないでしょうか。

 政府は、これら方法書の不備な点をどのように認識しておられるのか、また、手続は済ませているとして方法書に対する指摘を無視するという考えに至った根拠、それをお伺いします。

山中政府参考人 御指摘のように、先月の二十八日に、環境影響評価の第一段階といいましょうか、方法書の策定をいたしまして、公告をし、縦覧に供したということでございます。

 私ども、新聞の報道等を通じまして、縦覧をされた方々のさまざまな御意見等については承知をいたしておりますが、私どもといたしましては、方法書そのものは、関係法令、主務省令等の規定に沿って必要な事柄を記載し、縦覧に供しているということだと考えております。

 当然、一カ月の縦覧期間がございまして、その間に一般の方々、その後、関係市町村長あるいは県知事等の意見も徴しまして、その次の現況調査あるいは予測評価、準備書、評価書の作成といった段取りに順次移行していくわけでございまして、方法書がその第一段階でございます。

 これをもって、もちろん事柄として、例えば代替施設本体にどういう施設、空港の管理運用に必要などういう施設が建設されるかとか、とりわけ騒音に最も大きな影響を及ぼすでありましょう航空機の機種、こういったものは当然、確定をいたしておりますれば方法書に記載をするということになろうかと思いますけれども、現時点でまだそこまで確定をいたしておりません。

 方法書についてさまざまな意見を徴しながら、具体的にどういう評価項目で、しかもどういう方法でアセスをやっていくかということを順次今後固めていく。また、今申し上げました機種等につきましても、準備書の作成という段階までには、当然騒音の影響ということをしっかりと見きわめる必要がございますので、そういったものについての中身も固めていくという段取りで考えているわけでございます。

 あくまでも、方法書、それをもって完成をするということでございませんで、全体のアセスの第一段階に入っているというふうに御理解をいただきたいと思います。

東門委員 今、結構時間をかけて丁寧に説明していただいたと思うんですが、たとえ第一段階ではあってもです、これからいろいろな段階を経て準備書までいくということなんですが、これだけ最初の時点で不備がある、疑問点が多い、おかしいよという声がある中で、いや、これからやっていきますからと進めていくということには納得がいかないんですよ。

 常に県民の負担の軽減、私も何千回とここで使ったかわかりませんが、これは政府の言葉なんです。それを本当に考えるならば、もっと丁寧な形で、方法書もしっかりと準備をして出すべきだと思うんですね。それが県民の、あるいは専門家の意見であるということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 中身、詳細についてはこれからいろいろ質問もしていきたいと思います。きょうはまず、方法書が出されたという時点で、縦覧に供されたという時点で一問お伺いしたかったということです。

 次に、この米国防総省の高官の発言について私は質問したいと思います。

 外務大臣にお伺いしますけれども、報道によれば、この連休中に訪米した自民党の幹部と会談されたラムズフェルド国防長官は、在日米軍の再編に関連し、抑止力を維持しながら沖縄の負担を軽減したい、米軍が地域から望まれていない場所に米兵を送りたくない、望まれて歓迎されている場所に送るという選択が考えられる旨述べたとされています。

 一方、米国防総省のローレス国防次官補代理は、四日、普天間飛行場の移設問題につき、米国としては十五年から十八年間待つことは喜ばしいことではないと、代替施設の完成に時間がかかる現状に不満を示したとされています。ただし、名護市辺野古沖への移設案を急ぐように促したいのか、あるいは同案を見直すつもりなのかなど、具体的な内容には踏み込まなかったともされてはいます。

 ローレス次官補代理の発言が移設案を推し進める前提での発言であるとすれば、県民の意見を全く無視した軽率なものだと言わざるを得ません。また、辺野古沖への移設は沖縄県民の負担の軽減にはならず、また反対派の住民、市民団体による辺野古の座り込み運動にかんがみれば、望まれていない場所に米兵を送りたくないというラムズフェルド国防長官の発言にも当てはまらないものだと言えます。したがって、ローレス次官補代理の発言はラムズフェルド国防長官の発言とそごが生じていると言えるのではないかと私は思います。

 政府は、SACOの着実な実施、そればかりを繰り返すのみですが、米国政府からはさまざまな発言が投げかけられているように見受けられます。これまでいろいろな報道がありました。こういう米国防総省高官の発言について、川口大臣の御認識をお伺いいたします。

川口国務大臣 今、東門先生から御指摘のあったラムズフェルドの発言ですけれども、これは、私が承知をいたしておりますところでは、四月の二十九日に、安倍幹事長、自民党の幹事長ですね、それから冬柴公明党幹事長とラムズフェルド国防長官との間で会談があった。そのときに、お話が記者会見の中で出たということかと思いますけれども、これは基本的に我が国の国会議員と米国政府の間の会談でございますので、我が国の政府といたしましてこれについて何か申し上げるということではないというふうに存じております。

 そういうことでございますけれども、その会談の中で、ラムズフェルド長官が米軍の軍事体制の見直しに関する基本的な考え方の一つとして、米軍の駐留を望んでいない地域には米軍を送りたくない、歓迎している地域に送りたいと述べたというふうに承知をしているわけでございます。これは委員おっしゃったとおりでございます。

 いずれにしても、在日米軍がトランスフォーメーションと言われています軍事体制の見直しをやっているということでございますけれども、これについての政府の考え方というのは、前から申し上げていますように、まず、米軍の抑止力が効果的に維持をされるということが一つ。それから、沖縄を含みます施設・区域が存在をする地元の公共団体の御負担、これが十分に念頭に置かれるべきであるということで、これは前から申し上げているとおりでして、この観点から協議を進めていくという考えを持っているわけでございます。

 それから、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、沖縄の御負担の軽減につきまして、これはSACOの最終報告を着実に実施していくということに最大限の努力をしていく、これも前から申し上げているとおりで、これに変更はございません。

 そして、この最終報告の実施という観点でいいますと、日米の両国の政府のコミット、あるいは、昨年外相会談がございましたけれども、この状況、この中でも、これは繰り返し確認をされているわけですが、普天間飛行場の移設、返還、これについては、SACOの最終報告や基本計画でございますね、これを踏まえて、今まで米側と緊密に連携を、連絡をし、協議をしてきたという経緯がありまして、これが見直されるということは想定しがたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、普天間飛行場、これは市街地の真ん中にあるわけでございます。地元の方がこれについて非常に不安に感じていらっしゃるということについてはきちんと認識をいたしておりまして、ぜひこれは早く不安を解消したいというふうに思っております。沖縄県の地元の方々とも十分に協議を行いながら、移設、返還の問題については取り組んでいきたいというふうに思っております。

東門委員 普天間市街地の話はそのとおりですけれども、辺野古でのまた住民の思いもあるということをお忘れにならないでください。決して辺野古へ移したからすべてうまくいくということではないということ。

 でも、大臣、やはりお伺いしたい。SACOは何が何でも実施するんですか、どういうことがあっても実施するということなんですか、今の御発言。

川口国務大臣 先ほど申しましたとおりでございまして、政府として、今これが、SACOの最終報告、普天間につきましてですね、これが見直されるということについて、これは想定しがたいというふうに考えております。

東門委員 米軍のプレゼンスは抑止力を維持するということをおっしゃっていました。これまでも何度も聞いていますが、抑止力というのは沖縄県民が負担しなければいけないものなのですか。その点についてもぜひ御意見をお聞かせください、大臣。抑止力というのは沖縄県民の双肩にかかっているものなんですか。

川口国務大臣 日米安保条約、これによりまして米軍は我が国に駐在をしている、その抑止力をもって我が国の平和と安全を守っているということでありますけれども、その御負担、これは、沖縄県に七五%の施設・区域があるということですし、ほかの地方公共団体にも存在をしておりますけれども、その負担がそういった、特に沖縄県に大きくかかっている、我が国を守っていくということの負担が特定の地方公共団体にかかっているということについてはおっしゃるとおりであると思いますし、我が国としては、その地元の方々の御負担、これをできるだけ軽減していきたいということを考えております。この御負担については、大変に御負担だろうと思っております。

 SACOの最終報告というのは、この御負担をできるだけ軽減したい、これを着実に実施することによってそれを軽減していきたいということで、米国とこれについて合意をしているということでございます。

東門委員 大臣、方法書をごらんになられましたでしょうか。そこにどういう変化が起こってくるかというのはある程度わかると思います。中身は本当に入っていません、詳しいことはしっかり入っていませんけれども、辺野古が、あの海が埋め立てられてどのように変わっていくということは、頭の中にイメージとしてしっかり入っておられるのでしょうか。それが沖縄県民の負担の軽減につながると本当に思っておられるのか、もう一度お聞かせください。私には納得いかないんですよ。

 SACOの最終報告の着実な実施が沖縄県民の負担の軽減につながると、大臣、ただいつもおっしゃるんですが、本気で、あの場をごらんになってイメージして、ああ、これで沖縄県民の負担は軽減されるなというふうにお考えなんでしょうか。ぜひお聞きしたいと思います。

自見委員長 川口外務大臣、申し合わせの質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

川口国務大臣 私は辺野古に参りました。海を拝見いたしました。とてもきれいな海だというふうに思います。

 なかなか難しい問題はいろいろあると思いますけれども、この普天間飛行場の移設、返還の問題というのは、地元の沖縄の方々と十分に御相談をしながら進めさせていただいた。そして、平成十一年の閣議決定、そして基本計画ということでございまして、今後とも引き続き、地元の地方公共団体、沖縄県民の方々と協議を、御相談をしながらこれを進めていきたいというふうに考えております。

東門委員 時間ですので終わりますけれども、決して、御相談をしながら、納得をして入ったものではないということを、決まったものではないということを申し上げて、また次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

自見委員長 次回は、明十二日水曜日正午理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十六分散会


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