衆議院

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第18号 平成16年5月20日(木曜日)

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平成十六年五月二十日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      遠藤 利明君    大村 秀章君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      西銘恒三郎君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      内山  晃君    大畠 章宏君

      川端 達夫君    末松 義規君

      武正 公一君    筒井 信隆君

      中塚 一宏君    永田 寿康君

      長浜 博行君    楢崎 欣弥君

      細野 豪志君    松崎 公昭君

      松本 剛明君    三日月大造君

      笠  浩史君    渡辺  周君

      上田  勇君    大口 善徳君

      桝屋 敬悟君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  仲村 正治君     西銘恒三郎君

  岩國 哲人君     笠  浩史君

  奥村 展三君     三日月大造君

  鎌田さゆり君     永田 寿康君

  中川 正春君     長浜 博行君

  長島 昭久君     内山  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     仲村 正治君

  内山  晃君     長島 昭久君

  永田 寿康君     鎌田さゆり君

  長浜 博行君     中川 正春君

  三日月大造君     奥村 展三君

  笠  浩史君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件並びに久間章生君外八名提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する両修正案を一括して議題といたします。

 各案件及び両修正案に対する質疑は、昨十九日既に終局いたしております。

 これより各案件及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 私は、自由民主党を代表して、議題となっております国民保護法案初め十案件並びにこれらに対する自由民主党、公明党、民主党提出の修正案について、賛成の立場から討論を行います。

 我が国に対する外部からの武力攻撃を含め、国家の緊急事態に対処し得るよう必要な備えをしておくことは、独立国として当然の重要な責務であります。

 今回提出された七法案は、昨年、国会の大多数の支持のもとに成立をした武力攻撃事態対処法に定められた枠組みに沿って、我が国の緊急事態への対処について具体的な内容を定めるものであり、これら七法案の成立により、有事法制の集大成を目指すものであります。

 まず、国民保護法案については、武力攻撃事態等における住民の避難、避難住民の救援に関する措置等を定めるものでありますが、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するためとりわけ重要な法案であり、昨年の衆議院における附帯決議において早急な整備が求められていたものであります。

 また、米軍行動関連措置法案、特定公共施設利用法案及び国際人道法違反処罰法案についても、それぞれ、米軍行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置、特定公共施設の利用の総合的な調整に関する事項、国際人道法に規定する重大な違反行為に係る罰則等を定めるものであり、我が国が武力攻撃事態等に適切に対処するために不可欠なものであると考えております。

 次に、海上輸送規制法案、捕虜取り扱い法案及び自衛隊法の一部改正案については、それぞれ、外国軍用品の海上輸送の規制に関する措置、捕虜の拘束、抑留等の取り扱い、ACSA協定の改正に伴う所要の規定を定めるものであり、我が国の平和と安全の確保のために当然必要なものであります。

 さらに、ACSA改正協定についてはACSA協定の適用範囲を拡大するものであり、また、ジュネーブ諸条約第一追加議定書及びジュネーブ諸条約第二追加議定書についてはジュネーブ諸条約の内容を補完、拡充するものでありますが、今回の法制整備に合わせてそれらの締結が必要となるものであります。

 昨日、七法案及び三条約に対するこれまでの審議を踏まえて、与党及び民主党は修正案を提出いたしました。すなわち、国民保護法案に規定される緊急対処事態について、事態対処法に新たに位置づけるとともに、その事態認定を国会の承認事項とすること、現場レベルでの迅速かつ機動的な対処を可能とするための現地対策本部を設けること等の修正を盛り込むこととしています。この修正案は、政府案の基本的な枠組みを維持しつつ、国民の一層の理解と支持を得ていく観点から必要なものであると考えております。

 国家の緊急事態への対応は、いっときたりともおろそかにすることができません。政府に対し、法案成立後、国家の緊急事態にすき間なく対処し得るよう万全の態勢の構築に向けより一層力を入れることを要請し、政府提出法案並びに与党及び民主党提出の修正案に対する自由民主党を代表しての賛成討論を終わります。(拍手)

自見委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、民主党が自由民主党、公明党の与党二党と共同提案した、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する修正案に、遺憾ながら賛成の討論を行います。

 遺憾であると言わざるを得ないのは、今回政府提出の七法案三条約に関し、同僚委員が何度も本質的な問題を質問したにもかかわらず、政府は、法案の目的である国民保護対策の詳細の多くに対し、現実性、具体性を持った実のある回答をすることができなかったためであります。

 我が国が直面する脅威は、古典的な軍事侵攻の脅威だけではなく、発射後八分で首都に到達するミサイルから、緊張する北東アジア情勢が生み出す工作船やゲリラ活動、国際テロリストネットワーク・アルカイーダが実行したとされる九・一一テロのような高度テロ、地下鉄サリン事件、鳥インフルエンザが暗示する疫病の蔓延など、現代世界の生み出すさまざまなリスクと一体化し、技術的にも高度化し、複雑化しています。脅威の質が本質的に変わったことを政府は認識すべきであります。また、極度に人口と情報が集中し、災害に脆弱な都市の現状を想起すれば、国民の被害を最小とするためには、緊急事態には、災害も含め、迅速かつ強力な対応が必要なことは論をまちません。

 何よりも、日本の緊急事態対応は、憲法に代表される基本的な法的システムが平時を前提として構成され、緊急時を想定した法体系にも法文にもなっていないことを認識する必要があります。

 したがい、緊急時への対応に沈黙する憲法と今回政府提出の国民保護法制定の前に、両者の空白部分を埋める基本法が欠くことのできないものですが、残念ながら、その提出は来年の国会を待たなければなりません。これではまるで犬の絵を描くのにその足のつめから描くようなもので、法制定の基本に反するものです。

 また、同様に、武力攻撃を受けた場合に共同して対処に当たる米軍の行動に関しても、それが果たして日本政府の一元的な指揮権に帰属するのかどうか、また、米軍は日本国の法令を遵守するのか否かも、明確ではありません。これでは、歴史が証明するように、ダブルイーグルすなわち頭を二つ持つワシの頭がお互いに争って、その行動に混乱を導く可能性があります。

 さらに、緊急事態対応の実体験に乏しい日本は、緊急事態庁や危機管理庁のような横断的な行政権を持つ実務機関をつくると同時に、緊急時対応の知識や経験の蓄積を図らなければなりませんが、このような組織設計も今回政府提案は欠いております。

 しかしながら、民主党は、結党以来、緊急事態に対処する法制度が必要であるとの観点から、昨年、当時の与党三党及び自由党と共同で、いわゆる武力攻撃事態対処法等を成立させました。この法律が成立した以上、国民保護法制の制定は急務であります。すなわち、どのような緊急事態にあっても、国会による民主的統制と基本的人権を確保することであり、超法規的行為がとられないよう、法体制を整備しておくことであります。

 このような見地から、政府より提出されました国民保護法案及び特定公共施設法案に対する審議に臨み、よりよい有事法制としていくため、これら二法案を修正することを提案し、結果的に、緊急対処事態の武力攻撃事態対処法への位置づけ、緊急対処事態の国会事後承認、国会議決による緊急対処措置の終了など、政府案の不備であった諸点について、民主党の主張を反映させた大幅な修正案が三党間で合意されました。

 私は、政府・与党が、緊急事態に関する当委員会での質疑を真摯に受けとめるだけではなく、さきに述べました今回の法整備の欠陥、特に憲法や日米安保条約との整合性、ジュネーブ条約追加議定書に込められた国際人道法の新潮流への対応、そして、緊急事態対応のための危機管理庁の新設などを組み込んだ基本法の制定を速やかに実現していく責任を負っていることを、ここで重ねて強調します。

 民主党は、我が国の緊急事態に際して、我が国が適切かつ効果的に対処することができるよう、今後も必要な法制、体制の整備などに全力で取り組んでいくことを約束して、民主党・無所属クラブを代表しての賛成討論を終わります。(拍手)

自見委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 私は、公明党を代表して、議題となっております武力事態対処法制関連十案件及び国民保護法案等に対する自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党提出の修正案について、賛成の立場から討論を行います。

 我が国が外部からの武力攻撃等を含む有事に的確な対処を行うために必要な備えを行うことは、独立主権国家として当然のことであります。国会は、立法府として、平時においてそのための所要の法律の整備を行う責務があります。万が一の場合のための法制度を備えつつ、政府が武力攻撃事態を未然に防ぐための平和外交を推進してこそ、国民は自由と平和を享受し、安心して生活できます。

 昨年成立したいわゆる有事関連三法についての審議、そして、今般の十案件についての審議を通じて、有事法制の必要性につき、大多数の議員の間で意見の一致が見られたことは、我が国憲政の大きな前進であると考えます。

 我が国に対する外部からの武力攻撃を初めとする有事に際して、国民の生命財産を保護することは政府の責務であり、非常事態の場合であっても、日本国憲法が保障する国民の自由と権利が最大限尊重されることを確保することは極めて大切なことであります。国民保護法案は、この点を踏まえた、国民の保護のための措置が盛り込まれています。

 国民保護法案を含め、政府提出十案件は、昨年成立した有事関連三法と相まって、我が国への武力攻撃事態や緊急対処事態が万が一発生した場合において、国全体が一体となった対処を行うための態勢の基盤となるものと考えます。

 これら十案件に対するこれまでの審議を踏まえ、昨日、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党は、国民保護法案等に対する修正案を提出しました。その趣旨は、政府案に対し、武力攻撃事態対処法にも緊急対処事態に関する規定を盛り込むこと、緊急事態の認定を国会の事後承認事項とすること、緊急対処措置は国会が終了を議決した場合、速やかに終了させることができることを追加すること等です。

 この修正案は、武力攻撃事態に準ずる緊急対処事態においても国会の関与を確保するという観点からも必要な措置であると考えます。

 自由民主党、民主党及び公明党は、過日、既に成立した三法、そして審議中の七法案とは別に、大規模自然災害、テロ、有事などに際して、国としての取り組み、対処を行うための基本的な考え方をまとめた仮称緊急事態基本法の制定の必要性に合意しています。

 緊急事態への態勢の整備は、今述べた緊急事態基本法の制定も含め、成立した有事法制が緊急時に効果的に機能するよう、不断の努力が政府には求められます。また、いかなる緊急事態においても、国民が享有する基本的人権が最大限尊重されることと、シビリアンコントロールが適正に機能することが確保されるために国会が果たす役割は引き続き重要であることを申し上げて、政府提出十案件及び国民保護法案等に対する修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、日本共産党を代表して、有事関連七法案、ACSA改定案に反対、ジュネーブ条約第一、第二追加議定書に賛成の討論を行います。

 有事関連十案件は、昨年の武力攻撃事態法の枠組みに沿って、有事法制を具体化するものであります。憲法と人権、日本の進路にかかわる重大法案であるにもかかわらず、中央、地方の公聴会も行わず、本委員会での審議を打ち切り、採決を強行することは、断じて容認できません。

 反対理由の第一は、日本が攻撃を受けていない予測事態から、米軍に対する無限定かつ包括的な支援を可能とするものだからであります。

 アメリカは、単独の先制的な武力行使も辞さないとする先制攻撃戦略に基づき、国連憲章の平和のルールを踏みにじってイラク戦争を引き起こしました。

 法案には、こうした米軍の行動に制約を加える仕組みは一切ありません。米軍がみずからの判断に基づき、我が国周辺で先制攻撃を行ったとき、自衛隊、地方自治体、国民が官民挙げて米軍支援を行うことが可能となるのであります。日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、自衛隊が米軍に弾薬を提供することも、米軍が日本全土の空港、港湾を自由勝手に使用することも、すべて可能になるのであります。

 まさに、憲法の平和原則を幾重にも踏みにじり、米軍の戦争に参戦、協力する体制をつくるものであり、断じて認められません。

 第二は、国民保護の名のもとに、米軍の戦争に国民を動員し、戦争協力に駆り立てる態勢をつくるものだからであります。

 地方公共団体、指定公共機関、事業者に戦争協力の責務を課し、消火や医療、物資の収用に罰則までつけて動員する仕組みをつくり、平時から動員計画に基づく訓練、啓発によって国民の間に戦争協力の意識を醸成することが、憲法の想定する社会のありようと根本的に矛盾するものであることは明らかであります。

 与党・民主三党の共同修正は、原子力発電所の破壊や航空機による自爆テロなどを緊急対処事態と称して武力攻撃事態法に位置づけ、武力攻撃と同様の枠組みで対処しようとしています。

 この緊急対処事態なる概念自体が極めてあいまいであるばかりか、事態の態様も対処の仕方も全く異なる事態を武力攻撃と一くくりにして対処することは、市民生活のあらゆる面に有事態勢を持ち込み、人権侵害を拡大するものであります。ましてや、自然災害にまで拡大するなどは、論外と言わなければなりません。

 ジュネーブ条約第一、第二追加議定書は、国連憲章によって戦争が違法化されながらも、現実に発生する武力紛争において、紛争犠牲者を保護する国際人道法として積極的意義を持つものであり、批准に賛成するものであります。

 しかし、政府がこれを有事法制整備のてことすることは許されません。関連の国内法整備は、米軍行動円滑化法案やACSA改定案などとともに、米軍の戦争への参戦体制づくりの一環をなし、捕虜取り扱い法案など、自衛隊に各国軍隊並みの権限、基準を付与しようとするものであり、反対であります。

 最後に、憲法違反の有事関連法案を断じて許さず、法案の廃案のため全力を尽くす決意を表明して、討論を終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、事態対処法制関連の八案件及び国民保護法案等に対する修正案に反対、ジュネーブ条約追加議定書に賛成の立場から討論を行います。

 今国会に提出された政府提出の事態対処法制関連七法案及びACSA改定の内容は、平和主義にとどまらず、基本的人権の尊重と国民主権、さらには地方自治という憲法の諸原則を著しく逸脱するものとなっています。有事を理由に国家が国民の財産や権利を自由に制限できるという発想は、戦前の国家総動員体制につながる危険な道であり、断じて容認することはできません。

 以下、反対の理由を申し述べます。

 まず第一に、国民保護法案は、国民保護の名称とは裏腹に、軍事を最優先に考えられた法案であるという点です。

 国民を戦争体制に組み込み、一方的な協力を強制するものであり、生命財産の保護、思想、信条の自由よりも自衛隊や米軍の行動を優先するものです。有事の際に優先されるのは軍事であり、国民の権利制限は当然という思想が背景にあることは明らかで、これに抽象的に基本的人権の尊重規定を盛り込んだところで、行き過ぎた人権侵害が政府により行われない担保は何もありません。

 第二に、憲法が定める地方自治のあり方を根底から変えるという点です。

 国民保護法案は、地方公共団体に、国の基本指針に基づく国民保護計画の策定と、その内容に関して国との協議を義務づけています。同計画に基づく措置が実施されない場合には、内閣総理大臣がみずから措置することができるなど、自治体の判断を政府の判断に全面的に従属させるものであり、地方自治の本旨に反するものと言わざるを得ないものです。

 第三に、憲法が禁じる集団的自衛権の行使、交戦権の行使との関係の問題です。

 米軍支援法案とACSA改正協定は、米軍への弾薬の提供を武力攻撃事態はおろか予測事態でも認めるなど、憲法の禁じる集団的自衛権の行使に明確に踏み出すものです。同様に、海上輸送規制法案は、いわゆる臨検を可能とするなど、交戦権の行使に当たる可能性をはらみます。

 また、与党・民主党による修正案によっても、いずれも憲法軽視、軍事優先という本質的な問題解決に何ら資するものではありません。

 以上、各案件は、平和憲法をないがしろにし、基本的人権を侵害し、地方自治を含む我が国の民主的な統治機構を平時から大きく変容させる危険性をはらむものであり、多くの疑念が払拭されないまま拙速に採決することには強く反対します。

 ジュネーブ条約追加議定書の締結に関する二条約については、有事への対応を前提に他の八案件と一括して審議されることは問題ですが、犠牲者を一層保護することなど、国際人道法の的確な実施を図るという観点から、我が党がかねてから加入を主張してきたものであり、賛成するものです。

 我が国が戦後これほどの平和や豊かさを享受できたのは、戦争放棄をうたう平和憲法のたまものであります。今後も憲法の基本原則を堅持し、平和外交を推進して信頼醸成を図ることこそが国民の保護に寄与することになるということを心から訴え、私の討論を終わります。

自見委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

自見委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、久間章生君外八名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)

 次に、武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、久間章生君外八名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 この際、ただいま議決いたしました武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案に対し、増原義剛君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。増原義剛君。

増原委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、案文を朗読し、趣旨の説明をいたします。

    武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たって次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一 指定公共機関及び指定地方公共機関が「国民の保護に関する業務計画」を作成するに当たっては、指定公共機関等において業務計画の下で業務に従事する者等の意見を聴取する機会が確保されるよう配慮すること。

 二 放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置については、放送の自律を保障することにより、言論その他表現の自由が確保されるよう特段の配慮を行うこと。

 三 緊急事態において国民の権利利益の迅速な救済が図られるよう、本法施行後一年を目途として、その手続や文書の適正な管理などの在り方について必要な検討を行い、その結果に基づき、適切な体制の整備等必要な措置を講ずること。

 四 都道府県国民保護協議会及び市町村国民保護協議会については、その設置に当たり、それぞれの都道府県防災会議及び市町村防災会議と一体的かつ円滑な運営を可能とするために必要な検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずること。

 五 武力攻撃事態、緊急対処事態等における惨禍をできる限り軽減し、その被害を最小限にするため、国際人道法の精神等を踏まえ、自助・共助の精神に基づく民間の仕組みを含め、実効性のある施策を検討すべきこと。

 六 武力攻撃事態等において、国民の保護のための措置が適切かつ迅速に実施されるよう、武力攻撃を排除するためにとられる合衆国軍隊の行動につき我が国の法令が最大限尊重されることを担保すべく、日米協力についての透明性を更に高めるとともに、日米地位協定につき全般的な検証を行うべきこと。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

自見委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

自見委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。井上国務大臣。

井上国務大臣 ただいま御決議のありました国民保護法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいります。

 以上であります。

    ―――――――――――――

自見委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

自見委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十三分散会


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