衆議院

メインへスキップ



第2号 平成16年2月24日(火曜日)

会議録本文へ
平成十六年二月二十四日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席小委員

   小委員長 遠藤 武彦君

      岩永 峯一君    木村  勉君

      中谷  元君    西銘恒三郎君

      宮下 一郎君    渡辺 博道君

      加藤 尚彦君    武正 公一君

      中野  譲君    増子 輝彦君

      松原  仁君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務委員長        米澤  隆君

   参考人          横田  滋君

   参考人          横田早紀江君

   参考人          蓮池  透君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

二月二十四日

 小委員漆原良夫君同日小委員辞任につき、その補欠として丸谷佳織君が委員長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員丸谷佳織君同日小委員辞任につき、その補欠として漆原良夫君が委員長の指名で小委員に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

遠藤小委員長 これより北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する小委員会を開会いたします。

 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する件について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、参考人として横田滋君及び横田早紀江さんに御出席をいただいております。なお、後刻、蓮池透さんが御出席の予定であります。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 一連の拉致事件に関しましては、私どもも大層心を痛めておるところでございますし、また強い憤りも覚えておるところでございます。国会といたしましても、丹念な事実の積み重ねをしてまいりまして、克明に解明していくことが責務の一つと考えておりまして、また、政府に対して言うべきことは申し上げる、このような姿勢を貫いてまいりたいと思います。どうぞ、忌憚のない御意見なり御提言なりをいただければ大変ありがたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、横田滋参考人及び横田早紀江参考人から十五分程度御意見をお述べいただき、その後、小委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際は小委員長の許可を得ることとなっております。御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、横田滋参考人、横田早紀江参考人にお願いをいたします。

横田(滋)参考人 ただいま委員長の方から御紹介いただきました横田滋でございます。

 まず、私の方から三点申し上げます。

 最初は、圧力を伴う外交ということでございまして、拉致は現在進行形のテロリズムであり、日本を含む各国がこれに対し厳しく対処していく必要がございます。小泉首相とブッシュ大統領は、クロフォードにおいて、北朝鮮には対話と圧力で臨むとの見解で一致し、これまで幾つかの交渉、つまり対話を試みてまいりましたが、それによる具体的進展や安全保障上の脅威は何一つ解決することがなく、対話で何かが進展するということがいかに幻想的であるかということを厳しく認識する必要があると思います。

 圧力を通じて日本の安全保障を守り、そして拉致問題の解決を進展させていくことが必要であると認識しております。六者協議が明日から開催されますが、時間稼ぎのためのごね得外交が続くようなことがあれば、日本は速やかに北朝鮮に対して経済制裁を発動するべきであると思っております。

 二番目に、拉致問題の解決の定義ということでございますが、拉致問題の解決という言葉の意味は、再度確認させていただきます。

 原状回復できている五人の家族を無条件で、北朝鮮に残した家族ですが、無条件で帰国させるということは言うまでもなく、北朝鮮側から一方的に死亡と提示されている安否未確認者、そして百人を上回るとされる特定失踪者の方々の原状回復ができて初めて解決のための道筋がつくということを確認する必要があります。

 私たちが知る範囲では、北朝鮮が発表した死亡日時等に安否未確認者を目撃しているという情報が幾つもあるわけでございます。日本政府は、その全員が生存しているという大前提で行動していくよう要請するとともに、北朝鮮に拉致された日本人全員を取り戻すまでいかなる譲歩もしないという強い姿勢を打ち出すよう、国家一丸となって行動していただきたいと思います。

 最後に、拉致問題解決のための情報収集でございます。

 拉致問題の具体的進展を図る目的で、そして過去の日本政府がなぜ三十年近くも無作為のもと北朝鮮による拉致被害者を放置したままにしていたのかを究明するために、国会において、韓国に亡命している黄書記や元工作員等から証言させる努力を行い、具体的情報収集に努めてくださるようお願いいたします。

遠藤小委員長 どうぞ、横田早紀江さん。

横田(早)参考人 おはようございます。横田めぐみの母でございます。

 私は、二点、これまでの道のりと、それから待つ家族にはもう時間がありませんという二点でお話をさせていただきます。

 一昨年の小泉首相のピョンヤン訪問によりまして、ようやく北朝鮮が日本人の拉致についてみずからの非を認めました。それまで私たちは、二十年近い間、また三十年近い間、本当にもう生殺しのような苦しみの中で子供たちを探し求めて生きてまいりました。そして、一刻も早い拉致被害者の救出を政府関係各所に要請してまいりましたけれども、その願いは表面的なものに終始して、結果的に多くの被害者たちは、三十年近くも過酷な環境の中で、家族のもとから離されて、そして苦しい生活を今も強いられている状況となっております。

 被害者たちは今も本当に、青い空を見たり、夜空の星や月を眺めながら、父や母、そして先生や子供たち、また先生方を求めて、いつかだれかが助けに来てくれるに違いないと、蓮池さんや地村さんが思っていらっしゃったのと同じように、毎日毎日その望みを持って一生懸命に、涙を流して頑張っていると思っております。私たちは、家族のこの悲痛な叫びを聞き流すことはできません。そして、政府は自国民の救出のために見過ごすことがあってはなりません。北朝鮮には強い姿勢を持って、一刻も早く被害者たちの救出に向けて具体的な行動に出ていただきたいと思っております。

 そして、金正日の直接的指揮のもとに拉致が実行されてから三十年近くが経過しようとしております。何にも具体的な救出活動に出ようとしない日本政府にかわって、私たち被害者家族が活動の前面に立って懸命に活動してまいりました。しかし、私たちも同じように年をとり、私自身ももう六十八歳を迎えております。市川様の御両親はもう九十歳近くあり、また地村様、増元様、蓮池様の御家族、奥土様も、孫や息子、娘の顔を見ることなく他界されるという悲しい事実に直面しております。どの家族においても同じような状況にあると言っても過言ではございません。もう時間がないのです。

 北朝鮮が日本人拉致をみずから認めた以上、だれに遠慮して、そして何に考慮して救出のための手だてをおくらすことが許されるのでしょうか。拉致された被害者本人とその家族を一刻も早く救出するために何が具体的にできるのか、そしてどのような手段を用いれば一番早く奪還することができるのか、そのことだけを追求していただきたいと思っております。

 私たちは、善意を持って臨めば拉致問題の進展につながるのではとかすかな期待を抱いておりましたけれども、実際にそれが何ら意味もないものであることを学びました。逆に、不審船の領海侵犯や弾道ミサイルが日本上空を飛び越えるありさまでありました。幻想的な融和策では解決には至らないと思っております。どうか一日も早く、この拉致問題解決のための策を講じて動いていただきたいと願っております。

 ありがとうございます。

遠藤小委員長 ありがとうございました。

 これにて横田滋参考人及び横田早紀江参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤小委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺博道君。

渡辺(博)小委員 おはようございます。

 横田御夫妻には一年ぶりにお会いしますけれども、お元気そうでございます。そしてまた、この間、大変御苦労があったということは、今のお話で大変私も心を痛めているわけでございます。

 特に、きょうの新聞各紙に出ておりますけれども、田口八重子さんの長男が記者会見をした。消えた母、いつまでも元気でいてほしい、一片でも思い出を語ってほしいということで、記者会見の席でその旨を述べられております。拉致というものは、まさに、被害に遭った皆さんにとりまして大変過酷な現実を突きつけているんだな、改めてそのように思った次第でございます。

 さて、いよいよ、拉致の問題につきまして、二十五日から六カ国協議が行われます。そのときに、私どもは、ぜひとも、一つの進展を見るように、政府としても努力していただきたいというふうに思うわけでありますが、現在、横田さん御夫妻、あすからの六カ国協議を踏まえての現在の感想をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

横田(滋)参考人 今の、委員の前半の方にございましたのですが、田口八重子さんの長男の方が初めて我々の前に登場したわけでございます。我々の場合は、幸いにも、被害者ということで同情されていましたのですが、田口さんのケースですと、何か犯人の一味みたいに思われて非常に苦労されたということで、それは本当に我々以上に大変だったと思います。ぜひ、金賢姫さんに対する手紙が届き、会ってくれて、真相が聞けるようになればと思っております。

 それから、六者協議の点でございますが、最近、北朝鮮が核の全面廃棄に同意するんではないかとかいろいろ言われておりますが、それと同時に、我々としましては、ぜひこの機会に、冒頭の演説で拉致の問題を取り上げていただきたいと思いますし、それからアメリカのサポートも期待しております。ただ、二国間協議というのは、前回でもそうでしたが非常に時間が短いですから、ここで一気に進展するということは考えられませんが、やはり少しでも具体的な進展があればと願っております。

渡辺(博)小委員 早紀江さんの方にお伺いいたします。

 先ほどのお話の中で、二十年以上生殺しの状態に置かれている家族の思いについて述べられたわけでございますけれども、九月十七日までの家族会としての活動と、十七日以降の家族会の活動とに変化というものがございましたかどうか。とりわけ、九月十七日以前、本当にいろいろなところに活路を求めて活動してまいったと思いますけれども、どういった点に心を痛め、また、どういった点で心を勇気づけられたか、そういったものがございましたら、ひとつお話をいただきたいと思います。

横田(早)参考人 九月十七日までの活動におきましては、家族が一体となっておりまして、帰ってきた人もいませんし、本当にみんな同じ思いでやっておりました。九月十七日以降は、やはり十月十五日の家族の帰国ということもありましたものですから、その中で、少し心の面でいろいろとニュアンスが変わってきたかもしれませんけれども、これが北朝鮮の拉致であるという中においての運動であるという意味では、何一つ変わっておりません。

 人間ですから、いろいろな思いがそれぞれにあると思いますが、この拉致問題ということが、帰ってきた方も、または死亡とされた人たちも含めて、一つの板の上にみんな同じものであるということを私たちはみんな考えて動いておりますので、内面的には何一つ変わったことはありません。

 そして、やはり今まで、このことが浮上するまでの私たちの苦労、そして、北朝鮮にいるということがわかった後の私たちの署名活動やあらゆる活動の中においては、拉致は、拉致疑惑と言われ続けておりました。そして、疑惑の線を出ないで、私たちは本当に苦しい思いをしてきました。国民の方々も、町の方々も、署名活動に会っても、ほとんどの方は素通りをする方が多い時期が長い間ありましたけれども、九月十七日以降は、本当に国民の方々がみんなこのことをわかってくださるようになりました。

 そして、国際的にも拉致ということが知られるようになって、本当の心で私たちを励ましてくださり、全国からたくさんの励ましのお便りを、何箱もの段ボールにいただくほどの励ましをいただくようになりまして、ようやく、日本の国の皆さん全部が、これは大変なことが起きていたんだということに気づいてくださったという意味では、物すごい変化がございました。

渡辺(博)小委員 その結果ではないんですが、きょうの読売新聞の世論調査においては、入港禁止法案までも含めて賛成八〇%、そして、拉致協議について七七%の方が期待を持っている、そしてまた、国交正常化のためには拉致問題の全面的な解決が前提だと思うという人は九〇%に達しているという調査がございました。

 このように、多くの国民の皆さん方が拉致の問題により関心を持っていったとき、まさにこの拉致を早期に解決することが大変重要であるという認識が国民の皆様方に広まっていったんではないか、そのように思うわけであります。

 そこで、どのようにしたら早期に解決するかということでございますけれども、まずは、両方の、日本と北朝鮮のそれぞれの主張が全く対峙してございます。日本は、今横田さんがおっしゃったように全面解決、一歩たりとも条件は付してはならないというような形で進めていく、片や北朝鮮は、一度帰しなさい、そしてその場で家族の意思を確認しますというようなことを言っておりまして、なかなか並行線をたどっております。

 この部分を踏まえまして、ある人は、拉致家族の被害者を早期に帰すことが最優先だから、早くその部分について、例えばピョンヤンへの出迎え案や、または第三国での出迎え案というものを、必要ではないかというふうに言っている方もいるんですが、こういったものに対してはどのようにお考えですか。

横田(滋)参考人 今委員がおっしゃいましたように、世間には、出迎えてでも取り返すべきだというような意見の方も一部にはいらっしゃると思いますが、やはりそういった、ありもしない約束を守るために北朝鮮へ行くということは、日本が約束を破ったということを認めることになります。それはもう絶対、そういったところで譲りますと、これからの日朝間の交渉のすべてが北朝鮮のペースで行われることになると思います。

 そうすると、仮に今すぐ帰ってきたとしても、これで拉致の問題は解決した、死んだ者はもう死んでいるんだというようなことで終わる可能性もありますので、やはり薮中局長なんかがおっしゃっていますように、日本は原則を貫き通すべきでありまして、ここで安易に妥協するということは、私は、将来の交渉によい結果を招かないと思っております。ですから、私は、それに対しては反対でございます。

遠藤小委員長 次に、丸谷佳織さん。

丸谷小委員 公明党の丸谷佳織でございます。きょうはどうもありがとうございました。

 大変貴重なお話を聞かせていただきまして、私も、今のお話を伺っていく中で、早紀江さんの言葉によりますともう二十年以上も生殺しにされたような状況の中で、また三十年来、拉致をされた御家族の救済に向けまして頑張ってこられた御苦労を本当にお伺いしていく中で、非常に私自身も、議員として、では、自分は一体何をしてきたんだろう、これを考えたときに大変に申しわけない気持ちもいたしました。

 また、一昨年、小泉総理が訪朝されてから、五人の方が帰国をされる、少しずつ前進をしていくこの拉致問題の解決に向けて、確実な一歩、またその一歩を加速度を上げていかなければいけないなという思いがしてお話を聞かせていただきました。

 そこで、質問をさせていただきたいと思いますけれども、実際に、情報というものが、御家族の方にとっては物事を判断するときに非常に必要になってくるものというふうに思われます。そこで、現在、日本政府の情報を含めた御家族に対します支援体制について、御不満な点があればぜひ素直におっしゃっていただきたいと思いますし、また、改善すべき点があれば、お伺いをしたいと思います。

横田(滋)参考人 二つの点がございまして、最初は、従来、外務省から我々に対して、時たま交渉の状況なんかを聞かせていただくことがありましたのですが、それは、最近内閣府に支援室ができまして、そちらの方からいろいろな交渉の模様等を非常に詳しく説明していただけるようになりました。これは、我々は比較的直接お話を伺う機会がありますが、地方に住んでおられる方にとっては、これまでですと情報不足だったのが、正確な詳しい情報が入るようになったことは非常に大きな力となっておりますし、最近政府に対する信頼感が強くなったということも、こういったことによると思われます。

 それからもう一つの情報というのは、被害者が北朝鮮でどういうことをしているかというようなことについてでございますが、それは、五人の方が残した八人の家族については、写真が届いたりビデオが届いたりということで幾分情報が入っていますが、それ以外の人につきましては、どこにいるのかというようなことが全くわかっておりません。

 しかし、週刊誌等によりますと、例えばめぐみを例にとりますと、金正日一族の日本語の先生をしているんじゃないかとか、いろいろな不確実な情報はたくさんあります。最近は政府の方も情報の収集ということに力を入れてくださるというふうにおっしゃっていますのですが、やはり週刊誌等と違って、本当に正確なものでなかったら伝えられないということがあるのかもしれませんけれども、現在のところ、だれ一人、どんなことをしているとか、どこにいるというようなことが伝わってきたような例はございません。

 ですけれども、あれだけ一般の、民間のNGOの方が入ったり、それから週刊誌等、確かに根拠というのが我々にはわからないんですけれども、に出るようなものであれば、やはりもう少し政府の方でどういった生活をしているかということを早く究明して、もしあちらの方で政変が起こった場合でも、どうすれば救出できるかということの対策を立てるためにも、ぜひ被害者、それは死亡したと言っている人も含めてですが、そういった人の情報の収集に努めていただきたいと思っております。

丸谷小委員 ありがとうございました。

 さきに、外務省の方から田中審議官そして薮中局長が訪朝されまして、日朝間交渉というものが進められました。実際に、そのことについて前後の情報提供、また、家族会の皆さんとの、例えば、これから訪朝するのでその際にこういった会談をするとか、御家族の御希望をお伺いしていくだとか、そういったことがあればもっとよかったのかなと私は思いながら報道を見ておりましたけれども、この訪朝、交渉自体を家族会の皆様はどのように評価されているんでしょうか。

横田(滋)参考人 今回の場合も、訪朝の、ハイレベル会談の行われることはちょっと知らされておりませんでしたが、その前に、内閣府の支援室で定例的に家族とそれから政府の方と情報交換する場がございまして、そのときに、六カ国協議にどういう姿勢で臨むかということのお話がございましたので、そのときにいろいろな意見交換が十分にできましたし、それから、お帰りになった後は、すぐにそのときの情報を聞かせていただきました。

 それは、やはり双方がお互いの主張を述べるにとどまって、特に合意事項ということはなかったわけなんですが、そういった文章にあらわれた以外に、その場の雰囲気とか、そういったことも含めて詳しく御説明いただきましたので、家族としましては、特に成果がなかったということでありますが、それに対する不満とかということは全く出ませんでした。よくやってきてくださったということで、やはりこの姿勢を貫き通してほしいというような依頼はありましたのですが、特にそれに対して、成果がなかったこと自体に対しては不満ということは起きませんでした。それは、やはりいろいろな情報をきちんと伝えてくださっているからだと思います。

丸谷小委員 ありがとうございました。

 御夫妻は、実際にアメリカに渡られたり、あるいは、アーミテージ副長官が来日した際にもお会いしてお話をされていらっしゃいます。六カ国協議の際に、アメリカ、そして中国という役割は非常に大きいものがあると思いますけれども、実際に、この拉致問題に向けての米側の感触についてどのようにお感じになっていらっしゃるか、また、中国に対する期待があればお伺いしたいと思います。

横田(滋)参考人 これまでアメリカには二度参りました。それ以外にも、民間の方と会ったのを入れれば三度になるわけですが、アメリカの方は、やはり自由を愛する、それからテロを憎むという気持ちが非常に強くて、そして、以前から、我々は拉致はテロであるということを主張しますと、全くそのとおりだとおっしゃっていました。

 そして、今アメリカは北朝鮮をテロ支援国家のリストに指定されておりますが、その中には、よど号犯の保護ということも含まれております。しかし、日本人拉致のことについてもぜひ入れていただきたいとお願いしましたら、アーミテージ国務副長官は、それは確かに話は承ったけれども、答えはちょっと待ってほしい、今度の六者協議で北がどういったことを発言するかよく聞いて、かつ、どういうふうに行動するかをよく目で見てから答えを決めて報告しますというようなことをおっしゃっていましたので、それは、何もしなければ、その場で拉致が解決しなければ入れますよというような、暗にそういった意味で答えてくださったんだと思いますので、そういった点では、非常に力強い支援。これは、自分の国のことではありませんが、やはり人権ということとか同盟国ということで、非常に熱心に話を聞いてくださって、かつ、それを実行に移してくださるということは非常に力強く感じております。

 それから、前回の六者協議の際も中国大使館へ行って協力をお願いしたわけなんですが、最近の動きを見ていますと、中国も、やはりホスト国として、何とか核をまとめよう、そのためには拉致も解決しなければというふうに少しずつ変わってきていると思いますので、これはこれまでの外交の成果だと思っております。

丸谷小委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

遠藤小委員長 次に、増子輝彦君。

増子小委員 民主党の増子輝彦でございます。

 本日は、当小委員会においでをいただきまして、本当にありがとうございます。心から、民主党を代表して御礼を申し上げたいと思います。

 先ほど来、お二人のお話を聞いておりますと、本当に心が痛む思いがいたしております。私ども政治にかかわる者が今日まで何をしてきたのかなとじくじたる思いも今改めて強く持っているところでございまして、今日までお嬢様が拉致されて約三十年、その思いをはせるときに、本当に心からおわびとお見舞いを申し上げなければならない、そういう気持ちでいっぱいでございます。

 お二人は、かつて平成十四年、参議院の外交防衛委員会にも参考人としておいでいただき、そのときの御心情も議事録で拝見をさせていただきました。また、国会も、平成十四年の四月十一日に、衆議院で全会一致で日本人拉致疑惑の早期解決を求める国会決議もいたしておりますし、参議院もまた同様に平成十四年の四月十二日にこの決議をいたしているわけであります。ただ、残念なことに、国会のこの決議が何ら力を持たないということ、多分御家族としても残念な思いと悔しい思いをお持ちになっていると思います。

 先ほどの話の中で私が特に強く感じたことは、もう時間がない、高齢に皆さんなってこられた、時間がないというその思い、非常に私も心が痛むわけであります。お母様がお書きになった「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」、あの著書を拝見させていただきました。改めて、この小委員会が開かれる前にも繰り返して読まさせていただきました。私ども何とかしなきゃいけないな、そういう思いを強く持っておるところでございます。

 先ほどのお話の中で、政治の中で、やはり韓国のあるいは拉致された関係者の方々をお呼びしてほしいということでございましたが、先ほど、当小委員会でも三月の二日に韓国の方三名をこちらにお招きして、参考人招致をいたすことになりましたことを実は御報告させていただきたいと思います。

 そこで、幾つかの御質問をさせていただきたいと思います。

 今日までの政府の対応等について、先ほどもいろいろとお話がございましたが、改めてこの政府の対応、特に今家族連絡会の皆様がこの政治に対する不信ということについて、これは率直に申し上げますけれども、マスコミ等の報道を含めて私どもお聞きしているところによると、外務省がしっかりやっていることは私どももこれは認めておるわけでありますが、その交渉の窓口として田中審議官が当たっているということについて、家族会の皆さんが若干不信を持っておられるというようなことが報じられておるわけであります。

 この件について、外務省は薮中局長が責任者であるということを明確にいたしておりますけれども、先般の二国間高官レベルの協議の中でも田中均さんが行かれました。率直に、この件について、そのお気持ちをお聞かせいただければありがたいと思います。

横田(滋)参考人 田中審議官に対しましては、家族の中でもやはりいろいろな考えがございます。

 私個人的に考えますと、やはり、これまでは議員外交だったのが、政府間の交渉に切りかえて、そして日朝の首脳会談を開き、そして金正日が拉致を認めて、そして一部の方ですが帰国も実現したということは、非常に大きな功績だったと思いますが、その一方、日米首脳会談のときでも死亡したという人の死亡年月日のリストの公表をおくらすとか、それから、アメリカでの日米首脳会談の席でも対話と圧力が必要だという圧力の部分を隠そうとしたとか、いろいろなことがありますし、それと、やはり個人的に、先方のミスターXという人と交渉したというようなことに対する不満ということはあります。

 ですから、拉致された人の救出と、それから日朝国交正常化交渉を進めるということのどちらに重点を置いているかということに対して、家族の中には不満を感じている人もたくさんいらっしゃると思いますが、やはり、先般、薮中局長からお話を伺いましたときにも、拉致問題の解決はアジア大洋州局の管轄事項であり、その責任者が局長であるということをおっしゃってくださいましたので、これからの交渉につきましても、そういった人脈等を、田中審議官の人脈等を生かすことも必要だと思いますが、やはり、基本的には、我々としましては薮中局長の線で進めていっていただきたいと思っております。

増子小委員 ありがとうございます。

 そこで、私ども先ほどお聞きいたしまして、情報の問題も出てまいりましたけれども、先ごろの二国間交渉につきましても、ファクス一枚で最初にその報告があったというふうにお聞きをいたしております。その後に薮中局長が御説明をされたということでございますが、この情報というものについて、やはりいま一つ政府の対応が鈍いのではないだろうかというふうに、私自身も少し疑問に感じているところでございます。

 そういう意味で、情報を含めて、家族連絡会に対する政府の対応というものが果たして今十分なんだろうか。例えば情報の問題、あるいは家族会の皆さんが、この組織、連絡会といえどもあらゆるところに行っていろいろなことをされておるわけでありますから、こういったことに対してのいろいろな精神的あるいは経済的な支援というものが、私は率直に申し上げて、もう少しあってもいいのかなというような考え方を持っておりますが、家族連絡会に対する政府の対応についてはどのような希望をお持ちになっておりましょうか。

    〔小委員長退席、中谷小委員長代理着席〕

横田(滋)参考人 従来に比べますと、家族会に対する情報の提供というものは随分多くなっております。従来ですと、例えば日朝赤十字会談が行われたり、それから非公式の協議が行われた場合、そのときに事後的にこういうことがありましたとか、北朝鮮はこういうふうに変わってきましたとかということはありましたのですが、今回の場合は、ファクス一枚と言えば一枚なんですが、途中の経過とそれから終わったときの結果については情報をいただいておりますから、以前に比べれば随分情報は多くなってきていると思います。

 ただ、今回、訪朝されたこと自体は、ちょっと、ほかの我々だけでなくてマスコミの方も含めて皆さん御存じなかったわけですが、私たちもその日、私は、千葉の方で署名活動をやった後で、帰ったらマスコミの方がマンションの下におられて聞いたとか、早紀江の方は、やはり京都府の方で集会があったときに、その記者会見の席で記者の方から伺ったということで、そういった突然訪朝されたことについては、事前にももちろん知らされておりませんし、近く開かれるというふうなことも聞いておりませんでした。

 外交の場合ですと、一〇〇%手のうちを明かしたりということはもちろんできないわけですが、やはり、これから行くというぐらいのことはちょっと情報があった方が、我々家族としては安心できると思います。ですから、今回の件につきましては、できれば、何日までは口外しないようにという形ででも情報をいただければよかったと思っております。

増子小委員 先ほどもお話がございました対話と圧力、まさに対話という言葉は響きはいいですが、この拉致問題については、国家の主権の侵害と国民の基本的人権の侵害ということの、まさに国家のある意味では存亡にかかわる問題と認識をしなければなりません。

 そういう意味で、この今帰国されている五人の皆さんの件につきましても、先ごろこの小委員会でも薮中局長から、その出迎え論やあるいは一時帰国ということについて、必ず帰すからという約束があった、ないというようなことで、約束はなかったと証言いたしておりますけれども、しかし調整はあったという話もまた、外務大臣、薮中局長からもこの話が出ているわけであります。

 この調整があったというところが非常に私はデリケートな実は問題で、これが北朝鮮からの実は約束があったということで問われているんではないかというふうに思っているわけであります。この調整があったということについてのお考えといいますか、御見解。

 そして、私はもう一つ、アメリカとの関係によってこの北朝鮮の拉致問題を解決することは非常に大事だということは、私もそのように感じております。と同時に、私はやはり、今北朝鮮に最も影響力のある国は中国ではないだろうかというような気がいたしております。今度の六カ国協議、あす行われますけれども、やはり中国がこの六カ国協議を主導いたしておりますし、私はむしろ、家族会の皆様方も中国の方に行かれて、この問題についての協力要請をされることもまた大事なことなのかなと私個人的には思っているわけでありますけれども、この中国に対する働きかけということについてどのようなお考えをお持ちになっているか。二点、最後にお話をお伺いしたいと思います。

横田(滋)参考人 まず、北朝鮮と日本で五人の方が帰ってくることに対する折衝というんですか、それは私もあったと思います。何もなくて、日本が飛行機を飛ばして、そしてピョンヤンに五人の人が来るなんということは、そんな偶然なんということはもちろんありませんから、その際に、このまま帰すのか、それとも一、二週間でまた向こうに戻すのかというようなことは、文書による何か国家間の条約みたいなものではないかもしれませんけれども、少なくとも口約束みたいなものはあったと思います。

 ですから、やはり日本も、そうであればはっきり、これは、そういったことはあったけれども、日本国内から連れていかれた、主権の侵害の問題だから、やはり原状回復だから、はっきり、こちらに永住のために帰国するんだということをもっと最初から主張すべきだったと思います。その点は、そんなことを言えば向こうは帰さないと言うかもしれないと思ったんでしょうけれども、そこでとりあえず帰してもらうというようなことをやったのが、ちょっと今でも後を引いていると思いますから、やはり最初から原則論を主張すべきだったと思います。

 それから、中国に対する働きかけの重要性というのは、やはりこれまでの両国の関係からいきますと非常に大きな力があると思います。それで、昨年八月の第一回協議の前に、中国大使館に家族会とそれから議員連盟の方も行ってくださったわけですが、そこで中国政府に、ぜひ拉致問題について全体で討議してくださるようお願いしたわけでございます。

 それで、アメリカ大使館にお願いに行ったときは若干違いましたんですが、それでも本国に伝えるということは約束をしてくださいましたし、それから、今回の六者協議の前に日米韓の局長級の会談というのは既に行われておりますが、中国、ロシアについても事前に折衝をするというようなことは伺っておりますので、政府としても、対中国ということは重要視して、そしてそのために努力してくださっていると思います。

    〔中谷小委員長代理退席、小委員長着席〕

増子小委員 ありがとうございました。

遠藤小委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺小委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょう、本当に、御夫妻の発言をお伺いしながら、私も二人の娘を持つ立場ではありますが、生殺しと表現された不条理さに対する怒り、筆舌に尽くしがたい皆さんのお気持ち、痛いほど伝わってまいりました。

 そこで、具体的な問題を質問したいと思いますけれども、あしたから六カ国協議が始まります。この六カ国協議は、北朝鮮、韓国、中国、そしてアメリカ、ロシア、日本という、いわば北東アジアの平和と安定にかかわるすべての国が参加をしているという点でも、それからまた、核問題を解決していく、ひいては拉致問題の解決を促進するという点でも、そして、それが成功すれば北東アジアの平和の枠組みがつくられるという点でも、大変大事な協議の場であると私たちは考えておりますが、横田さん御夫妻それぞれのお立場から、考えを聞かせていただけたらと思います。

横田(滋)参考人 拉致問題の解決のためには、政府はあらゆる手段を使って解決のために努力していくというふうに薮中局長がおっしゃっていました。それは、先般の日朝ハイレベル協議でもありますし、それから今回の六者協議ですか、そういったあらゆる機会を使って拉致問題の解決を図るということであれば、国際的な世論の高まりで、北朝鮮に、拉致の解決をしなければ北東アジアの平和はあり得ないんだからということで解決を促していただくことも非常に大きな力となりますが、やはりこの問題は日朝二国間で最終的には解決すべき問題ですので、やはりその間、二国間協議が行われる、先般もそうでしたけれども、行われると思いますので、その機会を生かして、できるだけ両国の隔たりを縮め、さらに次回いつ開催するかというようなこともまとめてきてくださると思います。

 それは、従来の民間の外交ということを断ち切って政府間の交渉を続けていくためには非常に重要なことだと思いますし、そういったことがなければこの問題の解決はできませんので、ぜひ六カ国協議の席でできるだけの努力をして、この対話を続けていくということが必要だと思いますが、ちょっと質問から外れますが、やはりそれでも先方が誠意を示さない場合は、やはり圧力ということも考えるべき時期に来ているのではないかと思っております。

横田(早)参考人 私は、拉致ということは本当に物すごい残虐な事件でありまして、人命ということに対して、全く核の問題と同じだと思っております。

 それで、六カ国協議というようやくやってきた六カ国の話し合いの中で、本当に、拉致をして、そして一応五人の人は帰りましたけれども、あと私たちの八名プラス二名の不明の方を含めて十名の方のことは、もう全く骨もありません、亡くなっておりますというただその一言で、私たちの全人生を覆すような大変な問題なんです。そのことをはっきりと、じゃ、どうして亡くなって、どのようなことで、どうだったかという本当のことを、骨を出していただいても私たちは取り返したい思いでいっぱいでありますから、百五十項目の質問状をあちらに出しておりますけれども、いまだに一年過ぎてもそれに対しての細やかな返答はありません。そのようなことを平然と認めた中でやり続け、そして子供たちもまだ帰してこない。

 そのような国が核を持ったときに、本当にそれは世界にとってどういうことなのかということを、日本政府もアメリカも、そして中国もロシアもみんな含めて、韓国も含めて、北朝鮮に対して、そのようなことがどういうことなのかということを、本当の平和を得るためにはどうしたらいいのか、あなたたちもしっかりとそこは見きわめて、はっきりとしたことを公表しなさい、そしてその後に、私たち世界はみんな手を差し伸べて、みんなが平和になるために努力ができるのですということをはっきりとしたメッセージとして北朝鮮に伝えていかなければ、今大変なときではないかと私は思っておりますので、どうしても六カ国協議では、拉致という一言じゃなくて、本当に世界平和のための大事な取っかかりの問題なんだということを伝えていただきたいと願っております。

赤嶺小委員 私も拉致問題について、これは日本国民に対する重大な人権に対する侵害であり、そして許すことのできない国際犯罪で、日本の政府がその真相の究明を断固求めていくという立場が必要だと思います。それから、五人の御家族の帰国についても、その実現のために北朝鮮が誠意を持って対応することを求めていくべきだ、このように考えています。

 私が六カ国協議のお話を伺いましたのは、北朝鮮というのは無法な国家であります。これは、私たちの党に対するいろいろな干渉からも経験的に思っているわけですが、ラングーン事件だとかあるいは大韓航空機事件だとか、それで、拉致問題もその一つだと思うんです。

 私、拉致問題が国際社会において重要だと思うのは、北朝鮮は、国際社会に復帰するためにはこの無法を清算しなきゃいけない。しかし、どの無法も認めていないけれども、拉致については国民の運動の高まりの中で認めざるを得なかった。ここをやはり一つの突破口にして、拉致問題を国際社会の無法国家の無法の清算の課題として、国際社会が共通の課題として取り組んでいくということが大事じゃないかなと思うんです。

 そして、その場が二国間の協議の場でもあり、それから六カ国協議の場で、対話、話し合いに基づいて解決していく、これが、拉致問題が国際社会の共通の課題として、真相が解明されて犯人の処罰などもきちんとすれば、それはまた北東アジアの平和と安定にもつながっていくということにならないかという意見を持っているものですから伺ったところでありますが、この点ではいかがでしょうか。

横田(滋)参考人 二〇〇〇年に二度、日朝国交正常化交渉が開かれましたのですが、そのときの外務省の方からの御説明を伺いますと、やはりその当時は北朝鮮は拉致を認めておりませんでした。拉致を認めていないということは、結局、交渉にならないんだそうです。認めれば、あとは条件の問題とか時期の問題になりますけれども、以前は全く認めていなかったわけであります。

 そういう点では、赤嶺委員のおっしゃいましたように、こうして認めた以上、もっと日本はあらゆる手段をとって解決に努力すべきだと思っております。それは、主権を侵されたからということで、強く交渉することもそうですけれども、国際犯罪であれば国際刑事裁判所とかそういったところに訴えるとか、それから国連の人権委員会の強制的失踪作業部会へ訴える、これはもう家族の方でやっておりますけれども、政府だってそれより前にできたわけです。

 それから、どうしてもということであれば、国連の安全保障理事会の方に訴えて、そして、それこそ共同で経済制裁するというふうなところまで持っていって、それは対話だけで解決できればそれが一番望ましいことでありますが、それは確かに小泉総理の訪朝から見れば一年三、四カ月ということになりますが、実際、犯罪が起きてから見ますとそれこそもう三十年も近いわけですから、いつまでも待っているというわけにもいきませんので、やはりそれは、向こうが拉致を認めた以上、犯人の処罰と言っていますけれども、これも例えば辛光洙も処罰されたと聞いていませんし、ですから、それはもう北朝鮮の言っていることはそのまま受け取るわけにもいきませんので、認めた以上は誠意を持って、被害者の即時帰国ということをぜひ日本政府としては強く求めていただきたいと思います。

    ―――――――――――――

遠藤小委員長 ただいま参考人として蓮池透さんが御出席されました。

 この際、蓮池参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、いろいろと御多用のところを本小委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。

 我々も、北朝鮮による拉致につきましては、強い憤りとまた深い悲しみを、御家族の心情を思うとき覚えておるところでございます。衆議院としてこのような小委員会を設けてお話をお聞きするということは初めてのことでございますが、どうぞ率直に、忌憚のないお話を賜りたく、お願いを申し上げる次第でございます。よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、蓮池参考人から十分程度の御意見をお述べいただき、その後、横田滋参考人、横田早紀江参考人及び蓮池透参考人に各小委員が自由に質疑を行うこととなります。

 なお、御発言の際は小委員長の許可を得ることになっております。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 なお、事前に申し上げておきましたが、発言を希望なさる方は名札をお立てくださるようにお願いを申し上げます。

 それでは、蓮池参考人にお願いいたします。

蓮池参考人 本日は、発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。北朝鮮に拉致されまして帰ってまいりました蓮池薫の兄の透と申します。よろしくお願いいたします。

 時間が限られておりますので、早速本題に入らせていただきたいと思います。

 平成十五年七月三十一日、弟薫と妻祐木子が北朝鮮に拉致されてからちょうど四半世紀が経過いたしました。四半世紀と申しますれば、オリンピック六回分でございます。生まれた子供が成人してばりばり働き出す年月に相当いたします。しかし、いまだにこの拉致問題は解決しておりません。これほど長きにわたって日本人の人権が侵害され続けております。

 昭和五十三年七月三十一日、弟たちは拉致されました。だれもがデートし、遊びに行くごくごく普通の海岸で、不法侵入した北朝鮮の工作員の手によって暴力的に拉致されたのであります。この上ない凶悪犯罪、人権じゅうりん、国家主権の侵害、国家テロであります。これはほかのだれにも拉致される危険性があったという状態であり、それがまだ継続している可能性があるということだというふうに思います。

 弟たちは一体どのような気持ちで連れ去られたのか、到底私たちには想像がつきません。北朝鮮で二十四年間、祖国へ帰るという究極の自由を剥奪され、わずかに与えられたささいな自由らしきものの中、希望のない不毛な暮らしを強いられてきたのです。

 弟も言っています。二度と日本へ帰ることはできないと思っていた、日本に帰ることを忘れること、それが我々にとってのプラス思考である、日本に帰りたいなどと始終考えていたら死ぬしかない。プラス思考という言葉に私はショックを受けました。

 ようやく帰国した現在もなお、家族離散の状態に置かれています。人権じゅうりんも甚だしいと思います。親子二代にわたっているこの拉致行為、こういうことを働いている卑劣な北朝鮮を絶対に許すことはできません。

 と同時に、四半世紀にわたってこの問題を放置し続けてきた日本の国家責任は甚大であるというふうに考えます。

 五人の気持ちは、二十四年前、青年のままでございます。純真で生まじめで、二十四年間見捨てられてきた日本政府に対して、どう責任をとってくれるんだなどとは絶対に言いません。それは、我々周りが言っているだけであります。

 弟は言っています。北朝鮮では自由がなかった、だれかと会うにも、どこかへ行くにも、好きなように自由にそういうことができる、平凡だが、それが今の我々にとっての幸福だと。これほどまで彼らはぎりぎりの生活をして生き延びてきたのであります。そして、まだ同じ思いで北朝鮮で生活をしている拉致された日本人とその家族が大勢いる状態でございます。

 二十四年間何もしてくれなかった国を、この期に及んで、まだかいがいしく信用していると言っているのであります、国がきっと家族を取り返してくれると。政府は、外務省は、彼らのそのけなげな思いをもっと重く受けとめなければいけないというふうに思います。

 しかし、帰国一年が過ぎ、五人の心中は決して穏やかではありません。北朝鮮に対する怒り、憤り、日本政府に対する不満、不信は募り募って、もうのど元まで来ていると思います。しかし、その思いのたけをすべて口にすることはできません。北朝鮮を刺激したくない、日本政府を信頼する、そういう思いで、自分自身の中にストレスとしてためているだけでございます。

 とにかく当事者意識がまるでない。政府も、外務省も、多くの政治家の皆さんも、真剣に日本人を救出しようという意志が本当にあるとは思えません。多くの拉致被害者とその家族の気持ちをおもんぱかる優しさなどみじんも感じられないのであります。

 これは、憲法にもうたわれ、国際条約にも規定されている人権問題です。四半世紀以上にわたり、人権が侵害され続けているのです。世の人権を標榜する識者の皆さんは、なぜ声高に日本人の人権を守れと叫ばないのでしょうか。不思議でなりません。人権人道課、人権擁護局という看板を掲げている外務省、法務省はなぜその職務を全うしようとしないのでしょうか。

 一昨年の九月十七日、情勢は一変したのであります。私たちはこの二十四年間、疑惑にすぎないとかでっち上げだとか言われ、ほとんどだれにも相手にされない中、必死で闘ってまいりました。それがあの日、疑惑が真実となり、でっち上げが事実となって、北朝鮮の拉致行為が白日のもとにさらされました。これでこの国も本気になって取り組むだろう、対応も一変するだろうと期待したのであります。しかし、そうではありませんでした。その後も事態は一向に動いておりませんし、むしろ後退させるような政治家や官僚がいるほどです。

 我々も、やっとここから始まるんだ、二十四年目にしてようやく本当の闘いが始まるんだと思ったのです。しかし、政府、外務省は、九月十七日、あの日一日で終わりにしようと考えたのではないか。つまり、日朝国交正常化こそが日本の国益だという理不尽な思惑に支配された北朝鮮外交が行われたとしか思えないのであります。

 飯倉公館における我々への対応を見ていただければ一目瞭然だと思います。

 あの日の報告は、日本政府が血眼になって得た情報ではなく、北朝鮮が一方的に伝えたものにすぎなかったのであります。五人が生存、八人死亡、北朝鮮がそう言っただけで、あたかも真実であるがごとく我々に伝えられました。おたくの息子さん、娘さんは残念ながら亡くなっておられます、死亡日時も場所も死因もわからないままに、そうはっきり宣告されたのです。報告の中にも、その伝え方にも、およそ被害者一人一人の人権、尊厳、人格などまるでありませんでした。

 一人一人の生存、死亡という情報は非常に重たいと思います。しかも、一日千秋の思いで待っている家族に伝える情報です。北朝鮮がそう言ったとして、一人一人の情報についてもっと詳しく、もっと吟味しなければならなかったのです。死んだというのなら、いつ、どこで、どういう状態で亡くなったのか。いや、その前に、拉致を認めるのであれば、いつ、どこで、どうやって拉致したのか、その後北でどういう生活をしていたのか、それを確かめもせず、ただただ北が伝えた情報をそのまま真実がごとく我々に宣告したのです。どこかで情報操作が行われたとしか思えません。

 それも、北朝鮮とホットラインであたかもつながっているように思わせる飯倉公館にわざわざ我々を軟禁して、マスコミの皆さんから隔離して、重要な情報なので最後の詰めと確認をしているという大層ごもっともな言い分で、平壌宣言サイン終了まで巧妙な時間稼ぎをしたのです。異常な作為を感じます。この真実は私は暴かれなければならないと思います。

 そこで、死亡、生存の唯一の生き証人であるとされた梅本駐英公使は、横田めぐみさんの死亡は検分したわけではないので確認していないとおっしゃいました。そして、生存とされる五人と面会しても、本人と断定する情報を何も持ち合わせていないのですから、確認などできるはずがありません。梅本氏御本人も、自分が見て聞いてきたことを客観的に伝えただけだとはっきり認めておられますし、後に小泉総理にも確認しましたが、あれは伝聞情報にすぎないとおっしゃっておりました。

 それを聞いて、我々は、政府、外務省のやり方に憤慨したのです。すると、急に調査団が派遣されることになりました。我々がもし騒がなければ、調査団は決して出なかったと思います。その調査団も、あきれたことに、出発当日朝になって、被害者の特徴を聞かせてくれと家族に依頼してきたのです。ここでもまた、二十四年間にわたる外務省の不作為が明らかになりました。

 要するに、こういうことだったと思います。八人はかわいそうだが死んだ、だから葬式を出してあきらめなさい。五人は生きているが、北朝鮮がいいと言っている。家族が会いたかったら、北朝鮮に行きなさい。事実、五人は調査団の撮ってきたビデオの中で盛んに両親の訪朝を訴えていましたし、一時帰国という名目の帰国の目的は、両親を初めとする家族の訪朝を促すことだったのです。五人をすべて寺越武志さんのようにしようとしたのです。

 拉致した人間を帰そうともせず、性懲りもなく自国の利益のためにまた利用する、北朝鮮という国はそういう卑劣きわまりない国なのです。それで、拉致問題は一件落着、さあ日朝国交正常化交渉スタート、これが描かれていたシナリオだというふうに考えております。これでは、どこの国の政府なのか、外務省なのか全くわかりません。この真相もまだ暴かれておりません。

 謝って済む問題ではないと思います。もっとも、金正日氏が謝ったという確実な証拠などどこにもないのでありますが。拉致を認めるなら、なぜそれに怒らないのか。八人も死んでいるというのなら、責任を追及して、その補償問題まで突き詰めてしかるべきだと思います。五人の生存者がいるというのなら、二十四年間かかってやっと見つけたのですから、即刻連れて帰るとなぜに言えないのでしょうか。せめて保護下に置くべきだというふうに私は思います。外務省が身柄を保護するのは当然ではないでしょうか。邦人保護とか邦人救出などという発想は、彼らには全くないとしか思えません。

 北朝鮮は、拉致という国家犯罪、国家テロを犯したのです。日本にとって被害者の帰国を要求するのは当然の権利であって、これを交渉のカードにするなどもってのほかのことだと思います。

 それを、拉致のラの字も書かれていない、私どもにすればあのような屈辱的な平壌宣言にサインがなされました。私は、あの宣言、サインこそ、その後の混乱を招き、事態を膠着状態に陥らせた元凶だと思っています。確かに、小泉総理が拉致問題の扉を開かれたという方がいらっしゃいますけれども、そうであるならば、この問題を最後まで決着してくださるのは小泉総理の責任ではないでしょうか。

 とにかく、こんな冷たい国はないと思います。帰国した五人にしても、当初は北朝鮮に戻すつもりでいたわけでございます。泥棒が盗んだものを一たん返すからまたよこせなどという、通常では考えられないことを平気でしたんです。五人は、拉致という国家犯罪、テロの被害者なのです。国には、本当に拉致被害者を救出しようとか、日本国民を守ろうという意識があるのでしょうか。

 被害者五人に対する扱いも非常に冷たいと思います。国会議員の皆さんは、支援法をつくって満足し切っているような気がしてなりません。失われた二十四年間のアフターケアはだれがやってくれるのでしょうか。身一つで帰ってきた日本人の面倒はだれが見るんでしょうか。これは国の責任ではないでしょうか。

 大体、なぜ国に拉致事件の対策本部がないのでしょうか。先般、各党内に対策本部ができましたが、二十四時間拉致事件だけに従事して、どうやって救出するかさまざまな知恵を絞るプロジェクトチームはどこにもないのです。政府も、外務省も、警察も、いろいろの仕事がある中で、いわば片手間にやっているのだと思います。細田官房副長官の幹事会にしても、専属の人ばかりで構成しているわけではありません。責任者はだれなのか、だれが責任を持ってこの問題を解決してくれるのか。私は、担当大臣を置くぐらいのことをしてもいいのではないかというふうに思います。

 とにかく、北朝鮮に対する対話のみの段階は過ぎていると思います。圧力をかけていく必要があります。日本政府は、経済制裁も辞さないという姿勢をはっきり示さなければならないと思います。北朝鮮の恫喝におびえて譲歩すれば、彼らの術中にはまります。今まで、日本政府が北朝鮮に対し厳重抗議をしたということを聞いたことはございません。せいぜい、遺憾である、その程度でございます。なぜもっと怒らないのでしょうか。

 日本人を帰せ、その家族がいるんならその家族も帰せ、さもなければ経済制裁だと言わなければならないと思います。そして、責任を追及し、犯人を処罰し、補償問題まできっちりさせなければならないと思います。もっと正面から正々堂々と要求すればよいではないですか。これほど日本人の人権がじゅうりんされ、国家主権が侵害されている問題はないのですから。

 北朝鮮を刺激して、日朝の国交正常化が遠のくのがまずいなどという考えがもし存在しているのであるとしたら、言語道断だと思います。

 今まさに六者協議が始まろうとしておりますが、私は、政府が示しております方針、すなわち、最優先で五人の家族八人の無条件帰国を実現し、その後の国交正常化交渉の中で十人ほかの真相解明を追及していく、この方針にのっとり、北朝鮮を凌駕するような、いや凌駕する、したたかで、戦略的、戦術的な外交を望むものであります。そして、その外交の強力な後ろ盾となる改正外為法に続き、特定船舶入港禁止法案の早期成立、衆参両院への拉致問題特別委員会の設置を強く求めます。

 一体、いつになったらこの国は私たちを救ってくれるのでしょうか。四半世紀以上も待たされて、まだ辛抱しろとおっしゃるのでしょうか。私たちは、もうこれ以上待つことはできません。

 ありがとうございました。

遠藤小委員長 御苦労さまでございました。

 これにて蓮池参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤小委員長 これより自由質疑を行います。

 この際、小委員各位に申し上げます。

 質疑につきましては、幹事会の協議に基づき、原則として、一回の発言につき質問は一問のみとし、簡潔に御発言いただくよう御協力をお願いいたします。また、御発言は、小委員長の指名に基づいて、自席から着席のまま、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元にあるネームプレートをお立てください。発言が終わりましたら、戻していただくようにお願いいたします。

 それでは、発言を希望される方は、ネームプレートをお立てください。時間があれば、お一人で、また再び指名することもございますので、どうぞ質問は簡潔に、一問ずつということをお守りいただければありがたいと思います。

武正小委員 民主党の武正公一でございます。

 きょうは、参考人、御出席をいただきましてありがとうございます。

 先ほど、我が党の増子委員から、三月二日、三名の韓国拉北者をこの小委員会に招き発言を求める旨の御紹介がありました。この三人には、鳩山由紀夫団長以下、韓国で会ってまいりまして、拉致された日本人は十五人程度でなく、五、六十人にも上る、必要な人間は必ず外に出さず、死亡したと公式に発表している、こうした発言がございました。

 先ほど、横田参考人からはファン・ジャンヨプ書記についての御発言もありました。また、横田めぐみさんを見かけたという安明進さんと横田早紀江さんが会ったときに、安明進さんの家族のことも祈ってあげるわということで、安明進さんは顔を出して発言をするきっかけが横田早紀江さんのその言葉だったということも伺っております。

 そうした中で、昨日、王毅中国の次官は、新聞報道によりますと、今回六者協議で拉致問題は余り取り上げるな、そういうような発言があったというふうに言われております。そしてまた、十八日、当委員会で薮中局長の出席を求め、参考人として質疑を行いましたが、そのとき、私はやはり、外務省がこの拉致問題の解決と日朝国交正常化交渉を同時並行で進めるような印象を持ちました。私は過日、二十一日、北京のシンポジウムでも、家族会も拉致議連も日本国民もやはりこの拉致問題の解決が大前提なんだ、外務省はどうかわからないけれどもというような発言を中国の皆さんの前でしてまいりました。

 そういった意味では、先ほど蓮池さんも触れられたこの日朝国交正常化交渉、平壌宣言、経済協力ありきというような感じのこのことを急ぐ余り、拉致問題解決がおろそかになるという危惧を私は持っておりますが、ちょうど六者協議を前にして、政府や外務省が日朝国交正常化交渉を急ぐことがないように、拉致問題の解決があくまでも前提なんだといったことを再度御確認をさせていただきたいと思います。横田参考人。

横田(滋)参考人 六者協議では、核問題ということは非常に重要なことですが、我々日本にとってみますと、それと同じぐらいに拉致問題の解決ということが重要なことだということはもう国民皆さんが思っていることだと思います。

 それで、昨年の八月に開かれました第一回協議のときに、薮中局長から説明がございまして、帰国した五人の方が残してきた家族をまず日本に取り返す、そしてそこで日朝国交正常化交渉を始める、そしてその中で、死亡している八人等についての正確な情報を求める、そしてそれが、我々が納得できるような情報が入らなければ日朝交渉は妥結しない、したがって、経済協力も行われないというようなことの説明がございました。

 それで、それまで我々は、日朝国交正常化交渉を始めるに当たっては、もちろん最初の八人の方の、家族の帰国とありますけれども、それにプラス死亡とされている人の情報もなければ入らないんじゃないかというようなふうには考えておりました。それで、それは安倍当時の官房副長官のお話からそういうふうに思ったわけなんですが、実際、拉致問題の専門幹事会では、初めから、特に局長の話がありましたように、八人が帰れば国交正常化交渉を始めるというようなことが決まったそうです。ですから、クアラルンプールで平成十四年の十月に開かれたときには、そういった条件が何にもなかったんで、むしろハードルを設けたんだというような説明がありました。

 それでちょっと、我々は、そのことによって、八人が帰ることによって拉致問題はこれですべて解決したんだという幕引きをされるんじゃないかという心配もしたわけですが、そのときに薮中局長が日本側さえちゃんとやればそんな心配はないんだということをおっしゃったんで、早く八人の方に帰ってきていただくためにはそれがいいだろうということで了承いたしました。

 ですから、家族としましては、現在の方式については、そのときの説明で納得しているわけでございますが、そのかわり、政府としてはぜひその発言を貫き通していただきたいと思います。

 ですから、もし政府がその方針を貫き通すということであれば、我々の家族のように死亡したと言われている人のことについても、それの解決がなければ先方に対して経済支援協力なんかの前倒しは行わないということになっておりますと解決すると思っていますので、今のところは政府の交渉を信じているというところでございます。

武正小委員 ありがとうございます。

丸谷小委員 ありがとうございます。

 蓮池参考人にお伺いをしたいと思います。

 きょうは大変に貴重な御意見を賜りまして、どうもありがとうございました。また、私どもに対するおしかりも含めて、しっかりとまた受けとめていかなければいけないという思いで拝聴させていただきましたけれども、蓮池参考人からごらんになって、日本の政府の拉致認定作業、これは今までの経緯も含めて、まだ認定されていない方も多くいらっしゃいますけれども、これをどのようにごらんになっているか、この点についてお伺いをします。

蓮池参考人 今、十件十五人という認定がされているわけでございますが、これは警察庁がみずからの手による調査等によって得た情報で認定した例はほんのわずかだというふうに考えております。特に、帰ってこられた曽我ひとみさん親子の例につきましても、北朝鮮が認めてから認定されたわけでございますし、積極的な調査結果によって捜査当局が拉致された人間だというふうに認定した例は非常に少ないというふうに考えております。その辺、私どもも警察庁に何回かお邪魔して情報開示を求めましたが、警察庁のお答えは常に、法にのっとってやっていく、法と証拠に基づく調査というお言葉しか返ってこないような状況でございます。

 それで、今、特定失踪者問題調査会という全くのボランティア組織が、うちも拉致ではないかという家族の方々に対応しているわけでございますが、私は、そのような方々の相談窓口が国の機関として設置されることを強く望むところでございます。ボランティアがやるような仕事ではないというふうに考えておりますし、警察庁ももっと主体性を持ってそういう調査、認定作業に当たっていただければというふうに考えております。

丸谷小委員 どうもありがとうございました。

加藤(尚)小委員 民主党の加藤尚彦でございます。きょうはありがとうございます。

 お三方の話を聞きました。むしろ我々の方が参考人の立場でというような思いもいたしましたけれども、実はこの小委員会、発足したのが二十七年ぶりでございます。まさにめぐみさんが拉致された年から数えてということになって、この外交委員会でも二十七年ぶりということで、いみじくもというふうに思えるんですけれども、私は小委員に任命されてから、先週の土日、アンケートをとりました。そして、街頭にも立ちました。約三百名近いんですけれども、九五%の人たちが拉致問題に強い関心があるという答えでありました。そして同時に、政府の対応については結構厳しかったですね。七八%の人が、なっていないという答えが返ってきましたね。

 きょうも、お話の前に、きのう御婦人方を四十数名集めまして、いろいろ意見交換しました。その中で、早紀江さんファンが圧倒的に多かったですね。そんな言い方は失礼かもしれませんけれども、真剣勝負でずっともう二十数年間闘われて、その真摯な姿、御夫妻もそうですけれども、透さんもそうですけれども、そういうことに物すごい大きな感銘を与えているということを改めて私は感じたし、またきょうは伝えたいなというふうに思います。

 先ほど蓮池さんの方から、この「奪還」じゃないけれども、あなたが書いた本の「奪還」そのままの強い意見がありました。その中でも特に強く僕が感じたのは、無法国家北朝鮮、無能国家日本、そして、場合によっては日本政府も敵とするというような表現がありました。それは、早紀江さんがさっきおっしゃった生殺し状態、それに対して解決しないんじゃないかという思いがその表現に加わっているというふうに思います。

 この外交委員会の小委員会もそうですけれども、精鋭部隊でこの問題を取り扱っていく決心でありますけれども、外為法あるいは船舶の問題、加えて、特にこれは蓮池さんがどこかで講演なさった、三枚目の切り札として、アメリカも中国も物すごくこれに協力してもらわなきゃいかぬ、同時に、日本ではODAで、北朝鮮と国交のある百五十二カ国と関係があるんです、これを動かさなきゃ。

 だから、第三のカードといいますか、私はそう思っているんですけれども、蓮池透さんの第三のカードというものがあるんだったら、率直な思いをぜひ聞かせていただきたいと思います。

蓮池参考人 私は、第一のカードが改正外為法であるとすれば、第二のカードは特定船舶入港禁止法案だと思います。私が先日申し上げましたのは、衆参両院に特別委員会をつくってこの問題を審議するということ、その審議プロセスが私は第三のカードになるんではないかというふうに思って、それを申し上げた次第です。

加藤(尚)小委員 ありがとうございます。

木村(勉)小委員 自民党の木村勉でございます。

 今の質問とちょっと重複しますけれども、政府は対話と圧力を基本にしてやってまいりましたけれども、今三人のお話を聞いても、対話では進展しないじゃないか、そんな対話で話が進む相手じゃない、もっと圧力をかけなくちゃだめだと。私もそう考えておるものであります。

 そして、今三人のお話を聞いておりますと、改正外為法、そしてまた船舶の禁止法を、こっちはこれからつくるわけですけれども、早くそれも成立させて、あしたからの六者協議の結果いかんによってはその二つを早く発効させろ、実行させろという意見だと思うんですけれども、そう理解してよろしいのか。

 それと、また、そのほかの圧力として今蓮池参考人からお話がございましたけれども、横田御夫妻はそのほかの圧力としてこういうものも考えられないかというものがあれば、お聞かせいただきたい。

横田(滋)参考人 先ほどの、特別委員会それから外為法の改正、それから船舶の入港禁止を可能にする法案ということが言われておりますが、それ以外に、もう一つ、新聞等で拝見していますと、好ましくない特定永住者の再入国を制限する法律、よく、人、物、金の、人の部分についての入管法の改正ということが言われておりますが、これはなかなかちょっと難しいんではないかというようなことも言われております。

 しかし、それは恐らく誤解があると思います。

 そういう法律がつくられますと、改正されますと、例えば北朝鮮の子供たちが修学旅行に行っても帰れないんではないかというふうに思っている方もあるようですけれども、それはそういうことももちろん可能でありますけれども、実際の運用としては、朝鮮総連の中には北の国会議員の方が六人もいるとかと言われておりますし、そういった方が自由に出入りしているといった、特定の好ましくない人を制限するための法令の改正ということに我々理解しておりますので。

 ただ、その辺のPRが足りないのかもしれませんけれども、もしそんなことをすれば一般の人が故郷訪問もできなくなるんじゃないかなんという心配をして、それは人権上問題だというふうな言い方をするところもありますけれども、それはあくまで運用としてはこういうことなんだということをもうちょっとPRした上で、我々も今国会でぜひ成立させていただきたいと思っております。

蓮池参考人 今、木村先生のお話に関連しまして、私は、経済制裁の法案は非常に圧力になるとは思いますが、その発動に関しましては、これは政府、外務省の手腕にかかっているというふうに思っております。

 先ほど私が戦略的、戦術的、北朝鮮を凌駕するような外交をやってくださいと申し上げましたのは、せっかくつくった外為法、一枚しかカードがないわけでございます。その一枚を早速切ってしまいましたらまた丸腰になってしまうわけですから、私はこのカードを切るタイミングは非常に難しいというふうに考えておりますし、その辺の戦略をきちんと練っていただきたいなと。

 それよりも、私は、外為法のカードを切るよりは二枚目のカードの成立を急ぐべきであるというふうに思いますし、横田さんが今おっしゃいましたように、人をとめる法律、そういうものの制定も急いでいって、私は、いわば真綿で首をじわじわ絞めるようなやり方でやっていくのが得策ではないかというふうに考えておりますし、やるぞやるぞと北朝鮮流のおどしを当面やっていればいいんではないかなと。

 拙速な制裁発動は私は余り得策ではないというふうに考えておりますし、私は、五人の家族八人というのは帰して当然だと思います。そうしなければ次のステップに行かない。早く次のステップ、八人プラス二人に焦点を当てるためにも、無条件で五人の家族八人を取り返して、そこからでも制裁発動でもして、八人、十人の真相解明を徹底的にやっていく、そういうような私は戦略、戦術をとっていただければというふうに思います。

 余り詳細を言ってしまうとまた向こうに伝わるでしょうから余り言いたくないんですけれども、私は、切るぞ切るぞと、その姿勢を見せていればいいと思いますし、逆に言いますと、今政府が言っていますように、つくったけれども使わないというようなことはやみくもに言うべきことではない。場合によっては使うというようなことを言っていればいいと思うんですが、つくったけれども使わないという発言が非常に目立っておりますので、使うぞ使うぞと言っていればいいんではないかと思います。

中野(譲)小委員 民主党の中野譲でございます。

 先ほどいみじくも蓮池透さんの方から特別委員会のお話が出ましたけれども、私、過去の政府ないし外務省の答弁、そして今回小委員会で落ちついてしまったというこの対応について見ておりましても、果たしてこの国が本当に国民の一人一人をしっかりと守っていく、そういった対応をしてきたのかなというのは本当に疑問に思っております。特別委員会がまず立ち上がらなかったということもその一つの大きな証明ではないかと考えております。

 そして、先ほど我が党の武正委員からもお話がありましたけれども、どうも国交正常化ありきで、国民の側に立ったような政治をやっていないのではないかなというふうに私も感じております。

 蓮池透さんとそして横田滋さんにお聞きをしたいんですが、小泉総理が、拉致問題の解決なくして国交正常化はないというふうにお話をしているようでございますけれども、この拉致問題の解決というのを、先ほど横田滋さんは、まずは家族の帰国、そして死亡されたという方々の解明、そしてそれから今まだ拉致に認定をされていない方々の真相の究明、それも含めて拉致問題の解決だというふうにおっしゃったと思いますが、そういったものに対してしっかりとした答えを小泉さんの方からいただいているのか。すなわち、拉致問題の解明というものが一体何なのかということを、しっかりと確約めいたものを政府ないし外務省の方からいただいているのかということをちょっとお聞きをしたいと思います。

横田(滋)参考人 拉致問題の解決ということは、一部には現在の政府が認定しています十五人の方というふうに言う方もいらっしゃいますけれども、やはり根本的には北朝鮮が拉致していったすべての人が帰ってくる、または消息が判明するということが本当の意味での解決だと思います。

 ただ、そうしますと、それに対して外務省等の政府関係から拉致の解決ということに対する定義、これは全く、どういうことだという政府の見解というものは伺っておりません。ただ、政府の関係の方や何かがテレビ等に出演なさったときに発言なさるところから我々は想像するだけで、こちらとしましてはすべての者というふうに要請はしておりますが、政府側からは、はっきりした範囲というのは伺っておりません。

 ただ、実際問題としては、百人とも言われる現在の北朝鮮による拉致ではないかと言われている方は、非常に、黒に近いようなグレーの方から普通のグレー、それから白に近いグレーとかと範囲が非常にあいまいですから、そうすると向こうだって、例えば五十人帰したって、まだいるだろう、じゃ、残り五十人帰しても、まだいるだろうと言えば、いつまでたっても終わらないわけですね。そうしますと日朝国交正常化交渉も終わらないということであれば、向こうの方も初めから出してこないというようなことがありますので、その辺はやはり政府の方ではっきりした見解を示していただければと思っています。

蓮池参考人 政府から何か聞かされているかということでございますけれども、まず、当事者五人に関してでございますが、五人が総理にお会いしたときに、総理は、二十四年間よく頑張ったとおっしゃったそうでございます。どこかの大相撲の力士に言っているような言葉をおかけになったそうでございます。

 希望を捨てるなとおっしゃったそうでございますが、そのときには、こういうことをやるから希望を捨てるなとおっしゃったのではなくて、ただ単に希望を捨てるなとおっしゃったそうです。弟は、何に希望を持てばいいんですかというふうに聞けばよかったかなと私に問うてきましたので、言えばよかったじゃないかと言いましたら、弟は、いや、我々は政府を信用しているというのであるから、その政府のリーダーを批判するようなことはできないというふうに言っておりました。

 福田官房長官にもお会いする機会がございましたけれども、福田官房長官は、我々家族に対しまして、ああいう難しい国だから辛抱しなさい、そういうお言葉でした。

 外務省につきましても、私が先ほどから申し上げておりますように、したたかで朝鮮を凌駕するような戦略、戦術を持ってやってくださいと申し上げているのは、それが全く見えてこないからでございまして、こちらから何か秘策はあるのかということを伺いますと、すぐに外交機密という隠れみのに頼ってしまって、すべての話を聞かせていただけない。ですから、我々は非常にいら立ちを持つわけでございます。果たして北朝鮮外交について一定の戦略、マニュアル、そういうものがきちんと整備されているのかどうか甚だ疑わしい。

 そういう背景がありまして、我々がいろいろなことを申し上げますと、家族会は政治の中に介入してきているとか、偉そうな口をきいているとか、そういうことを言われるわけでございまして、きちんと国から、これこれこういうことをやるから、いつまで、こういうことをやるから辛抱しなさいと言われれば、我々は待ちます。しかし、それがないから我々は声を上げているわけであって、それが逆にとられているのは、我々は本当に心外でございます。

 それから、先日、日朝協議が行われましたが、私は曽我ひとみさんに電話しましたところ、曽我ひとみさんは非常に憤慨されておりました。なぜかといいますと、日朝協議の状況が、ファクスが一枚送られてきて電話で一言二言、これで終わりですかと。少なくとも当事者というのは私たちじゃないんですかと曽我ひとみさんはおっしゃっておりました。

 外務省の、向こうで話して協議してきた方々がみずから出向いてきて御説明に来てくださってもいいのではないかというようなことを曽我ひとみさんは訴えておられましたし、私は、この紙ぺら一枚でどういう協議が行われたのかわからない、向こうはどういう表情をして、どういう雰囲気で協議が行われたのか、そういう現実感を知りたい、曽我ひとみさんはそういうふうにおっしゃっていましたので、五人の当事者に対してもそうですから、その家族に対してどういう対応であるかというのは簡単に想像していただけるかと思います。

西銘小委員 蓮池参考人の意見陳述を聞きまして心を打たれました。特に、特命大臣を置いてほしいという要望が非常に私の中で重く心に響いたわけですけれども、現在の内閣府の支援室の対応で足りないところ、あるいは御不満に思っている点を、蓮池参考人、横田参考人に率直に語っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

横田(滋)参考人 支援室の家族に対する対応ですが、それは従来に比べますと、外務省と我々が直接話を伺っているときに比べますと、格段の違いで、月に一度の定例的な状況説明と意見交換、それ以外に、何かあった場合のそういった話を聞く機会をつくってくださる。それは非常に、私は、今の対応というのはうまくいっていると思います。

 ただ、これは支援室の仕事ではないんですけれども、家族がやはり一番望んでおりますのは、正確な情報も必要なんですけれども、そうでなくても、こういう状況があるからこんなふうに調べているというような中間報告的なものを知りたいという意見もかなり強いわけです。ですから、関係方面に連絡した上で、これは確認された状況ではないけれどもということででも結構ですから、ぜひそういった状況も知らせていただければと思っております。

蓮池参考人 支援室も、中山参与を初めとする国の支援室、県の支援室、市の支援室がございますけれども、まず、国の支援室に関しましては、私どもから支援室それから外務省というラインでのコミュニケーションは非常にうまくとれているというふうに思います。

 しかしながら、逆方向、外務省から支援室を経由して私どもに来るという情報に関しましては圧倒的に少ないというのが現状でございまして、私もこの前、薮中局長にお会いしたときに、ぜひ双方向のコミュニケーションを良好にしてください、先ほど申し上げましたように、すぐに外交機密というそういうお題目で情報を隠匿するように思わせるようなことはやめてくださいというふうに申し上げたんですが、私どもと参与の支援室というのは非常にいい関係にあると思います。問題は、外務省からの情報開示だというふうに考えております。

 あと、県の支援室は、はっきり申し上げて、私は何をやっているのかよくわかりません。市の支援室もわかりません。

 物心両面の支援ということに関しまして言えば、曽我さんの話を出して恐縮ですけれども、曽我さんに半年間連絡がなかったとか、そういうことがございましたし、やはり曽我さんの置かれている立場というのは非常に厳しいというふうに我々も考えておりますし、私も始終、支援室、参与にはお願いしているんですが、曽我さんには特にケアをしてやってくださいということをいつも申し上げております。

 あと、そういう物心両面でということであれば、被害者本人も私たちも、ちょっと経済的なことを申し上げるとぶしつけかもしれませんが、将来の経済的な問題については不安を持っていることは、これは事実でございます。ですから、先ほど申し上げましたように、現在の支援法というのはこれでよろしいんでしょうかということを問題提起させていただくわけでございます。

松原小委員 先ほど蓮池さんから、いわゆる全体を統括して専門的に扱う部署がないという指摘があって、私、極めて重要な指摘だと思っております。

 実は、先般の予算委員会でもこのことを私は福田官房長官に対して質疑いたしまして、例えばさまざまな会議をやっているけれども、全部、その他のことをしながらこれをやっているということで、まさに専門的にそれのみを行うスタッフそして組織というものが日本にない、こういったものはつくるべきだということを私は福田さんに申し上げたら、官房長官は、いや、今ので十分機能しているような発言があったわけであって、私は、それは違うんじゃないかという議論をしたわけであります。

 私は、今お伺いしたいのは、そういったこともあり、また同時に、改正外為法がつくられましたが、これは今の拉致問題、冒頭、横田さんから、拉致問題は現在進行形であるというふうな話がありましたが、まさにこの外為改正法は私はすぐにむしろ実行するべきだ、タイミングとしては実行するというのが前提であって、それを執行猶予する条件として、北朝鮮側が何らかの具体的な提案をしてくれば、少しはそこは執行猶予するんだというふうに思っております。

 こういった、いわゆる改正された外為法の実行もこれは内閣の所管事項でありますし、また同時に、こういった専門にそれを扱う部署をつくるというのも内閣の所管であります。こういったものが不十分であるということによって戦略性もないんだろうと私は思っておりますが、こういったことを含め、内閣に対するメッセージを横田御夫妻、また蓮池さんからお伺いしたいと思います。

横田(滋)参考人 私も、松原委員が発言されたことはそのとおりと同感いたします。

 各党には拉致の対策本部みたいなものがつくられておりますが、政府にも専門の幹事会はございますけれども、やはりそれだけをやっているというところはありませんので、ぜひ、一日も早く専門の部署をつくって、一日も早くこの事件を解決していただきたいと思っております。

横田(早)参考人 松原仁さんのお話は本当にそのとおりだと思っております。

 特に、拉致問題特別委員会というのを私たちはぜひ早くつくっていただきたいということでお願いしておりますけれども、先ほどもだれかがおっしゃってくださったように、今ちょっと引き延ばしになっておりますが、本当にこのような一つ一つの大事なことを、助けるために、早く救出するために必要などんな小さなことでも大事なことは、まずそれを率先してやっていただかなければ、いつまでたっても後手後手に回っていくことでないかと思っております。

 そして、ファン・ジャンヨプさんを初め、金賢姫さんや安明進さんという、本当に命がけでこちらの方へ逃げてこられた、家族もみんなもう亡くなられた中で、苦しい中でこのことをきちっと、拉致問題を初め、北朝鮮の人民の問題を思って命がけで闘っていらっしゃる方々のはっきりとした証言を日本国の中にきちっと言っていただかなければ、これは本当にだれにもわからないことですから、そういうことの審議が一日も早くなされるためにも、拉致問題特別委員会というのを速やかにつくっていただきたいと願っております。

蓮池参考人 私は、松原委員のおっしゃるとおりだと思います。

 昨年の暮れに松原先生も北朝鮮側と接触されたわけですけれども、その話を伺いますと、北朝鮮側は日本のことを非常によく理解している、非常に状況を熟知しているということがございます。こういった情報戦においても、既に北朝鮮に負けているわけでございまして、私は、日本国内は北朝鮮の情報を何も知らない、北朝鮮は日本国内の状況を熟知している、こういった立場の違い、対等な外交ができることはないと思います。

 まず、情報収集、情報の分析、解析、そういうことをやって、相手の出方に応じたしたたかな外交をやるためにも、やはり専従スタッフというのは必要だというふうに思いますし、これは私ども、五年も六年も前から国にお願いしていることでございます。

 専従のこの問題に対する方策を練る専門家、シンクタンクみたいなものを置いてもいいと思いますけれども、そういう組織をぜひつくっていただきたいというのが私たちのお願いでございまして、さっき私の意見陳述の中で申し上げましたけれども、一つ皮肉を言わせていただければ、拉致問題を終結させようとしていた政府がそういう組織をつくるかどうかは、私は極めて危ういんではないかというふうに思っておりますけれども。

宮下小委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、参考人の皆様方、本当に御苦労さまでございます。

 私は、今回の六カ国協議が、この拉致問題解決に少しでも前進になるということを非常に心から願っているところでございますけれども、先ほど来、アメリカや中国のサポートは得て、何とか前向きにというお話でございましたけれども、もう一つ気になるのは、韓国の対応なんではないかなという思いがいたしております。

 昨日来の報道でも、核問題に関して、北朝鮮が完全廃棄ではなく凍結でも前向きの交渉に進んでもいいんではないかというような韓国政府の態度表明もあったやに聞いておりますけれども、私自身、やはり拉致問題も含めて、他の五カ国が共同して北朝鮮に対してしっかりとしたことを突きつけていく、それが非常に大切だと思いますので、特に融和策をとられる韓国が中心になって腰砕けになってしまうと非常にまずいんではないかなという危惧を抱いております。

 韓国においても、北朝鮮の行為によって被害を受けられた多くの方がいらっしゃるわけですけれども、家族会の皆様方としては、韓国のそういった皆様方との情報交換や連携、また政府への働きかけについてどのようなことがあるのか、状況について教えていただきたいのと、また、もし可能であれば、韓国の今のスタンスについての御見解をいただければと思います。

    〔小委員長退席、中谷小委員長代理着席〕

横田(滋)参考人 新聞なんかを見ていましても、日米韓の局長級の会談でも、やはり韓国の方はちょっと日米との温度差があるというふうに言われておりますが、昨年、我々がソウルに行って、拉致被害者とそれから国会議員の方ともお目にかかったわけなんですが、やはり韓国の場合ですと、朝鮮戦争が昭和二十五年に始まって、三年間の間にソウルが壊滅的な打撃を受けたということを非常に何か恐れておりまして、また、そういうことを防ぐためにはやはり融和政策しかないというふうな考えを持っている方が非常に多いと思いました。

 それで、拉致被害者につきましても、日本人と同じような条件ですともう千何百人も拉致されていますけれども、漁船員の方ではほとんどが帰されますから、現在は約五百名ぐらいと、そのほかに、朝鮮戦争当時に連れ去られた人が八万人ぐらいいらっしゃると言われております。こちらの方は非常に高齢化していますから、皆さん、全員生きているとはちょっと考えにくくて、家族の方も、もし生きていれば百何歳ですけれどもというような形で、せめて遺骨でも返してほしいというようなことをおっしゃいましたけれども、やはりこれも、それこそどなたかの発言でないですけれども、それこそたった数百人の拉致された人に比べて、ここが火の海になったら、もうそれは比べ物にならないというような感じを強く持っておられるということを受けました。

 日本では、少なくとも拉致の家族というのは、関心がない人も以前はいましたけれども、同情しましたけれども、韓国ではむしろ、スパイの家族というんですか、例えば漁船員の船長が拉致されると、下の方の人は帰されるけれども、上の人は、私はスパイですなんて言ってテレビに出てきて、だから、いることはもう確実なんです。だけれども、その後、もしかしたらこっそり韓国に戻ってきて何かスパイをしているかもしれないということで、むしろ被害者家族の方が警察から尾行されたなんという話も聞きました。

 それで、我々もずっと平成九年ぐらいから、国民大集会なんか開いたときには、韓国の被害者もお招きして向こうの実情を聞いて、それで協力していきたいということをしておりますが、やはり政府関係者それから国会議員の方が非常にこのことに関して認識が深いということで、日本の方はうらやましいなんて言われますけれども、本当にぜひ、そういった方とも一緒にやって、日本の人だけでなくて、韓国の被害者ももっと深刻ですから、そういった方もぜひ一日も早く解放されることを望んでおります。

    〔中谷小委員長代理退席、小委員長着席〕

蓮池参考人 私ども、一時期、今もそのつもりでおりますが、韓国の拉致被害者と連携していこうという動きがありましたけれども、非常に残念なことに、韓国政府は非常に、韓国内における拉致被害者に対して全く他人事でございます。それは、同じ民族であり、拉致に関してはお互いさまという認識があるのだというふうに私は分析しておりますけれども、韓国の当局が拉致問題に関して非常に冷淡であるということは非常に残念だというふうに思っております。

 それから、日米韓の連携につきましては、米国につきましては、私ども、独自の判断でアメリカに参りまして、アメリカの非常に協力的な姿勢を引き出してきたわけでございますが、これも元来、我々のやる仕事ではないと思っておりますけれども、去年の三月に行って話を引き出してまいりまして、ブッシュ大統領と小泉総理の対話と圧力という結論に至ったわけでございます。

 韓国に対しましても、日本から働きかけて理解を得るということは非常に重要なことだと思います。それは、中国に対しても重要なことだとは思いますけれども、その前に、私は、政府の方針が、強力な方針というものがいま一つ見えてこないと思うんですね。政府としてこの問題を重要にとらえて、こういうふうに経済制裁も辞さない形で北に当たっていくから協力してくださいと言わなければ、向こうだって協力するとはいっても何に協力すればいいのかわからないと思うんですね。

 ですから、この拉致問題の重要性を海外にいろいろ訴えて重要性を認識してもらっているということを外務大臣も小泉総理もおっしゃいますけれども、もはやそういう段階ではないと思うんですね。重要性だの、そんなものを訴えても、それに賛同してもらってもしようがない。日本はこういう方針でいくからついてきてくれ、協力してくれ、そういう具体策を示さなければならないと思うんですね。

 ですから、私は、多くの国民の皆さんも私たちに言われます。協力したいんだけれども我々に何ができるんだということを皆さんおっしゃいます。それは、裏を返せば、国の方針が皆さん見えていない、わからないからだと思うんですね。国は、政府はこういう方針できちんとやっていくということを明確に国民に説明があれば、国民の皆さんも、我々も家族の皆さんと一緒に政府の方針を支持していくという言葉がきっと出てくるはずだと思うんですね。それが、我々は何をしていいかわからないという言葉が出てくるということは、日本政府にまだまだこの問題に対する意思表示ができていない、それを裏打ちするものだというふうに私は思っております。

赤嶺小委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 今度は蓮池さんにお伺いをしたいんですが、北朝鮮のこの拉致事件というのは日朝間にとっても許すことのできない国際犯罪だ、こう考えています。厳重な処罰そして真相の解明が求められていると思いますが、北朝鮮はこれまで本当に国際的な無法を繰り返し重ねてまいりました。彼らが国際社会に復帰するためには、この無法の清算というのが求められていると思うんです。

 その無法の清算をやる場として、核問題では六カ国協議等があるわけですが、いろいろ北朝鮮の動きを見てみた場合に、みずからがそれは私たちがやった犯罪行為であったということを認めたのが拉致問題であるわけですね。私たちは、そういう北朝鮮の無法を清算させる課題の一つとして、国際社会が一丸となってこの拉致問題にも取り組んでいくべきだ、このように考えておりますし、当然、六者協議の中でも二国間の中でも取り上げて、この解決のための努力をするべきだと思うんです。

 一方で、この六カ国協議というのは、北東アジアの平和と安定にかかわるすべての国々が参加しているという点で大変大事な場であるわけですが、この六カ国協議では、対話によって北朝鮮の問題を解決していこうという一致点に基づいて協議が重ねられているわけです。

 いよいよあしたからまたそれも始まるわけですが、蓮池さんはその六カ国協議についてどのようにお考えなのか、蓮池さんの御意見を聞かせていただきたいと思います。

蓮池参考人 私は、六者協議で拉致の問題が完全に解決するとは思っておりません。

 もちろん、核問題が主題だということは言われております。しかしながら、日本政府としては、核問題で幾ら北朝鮮が譲歩しようと拉致問題が解決しない限り日本国政府は一切の経済支援も何もないということを、原則は貫き通してくださるというふうに思っております。

 その場で北朝鮮が、今回、核で大きな譲歩を見せてくるかもしれませんけれども、それだけで他の国に追従して経済支援に回ってしまうようではやはり日本国家としての体をなさなくなると思いますので、私は、包括的な解決というのは余り好きな言葉ではございませんけれども、核と拉致とミサイル、これはパッケージだということで、日本政府としてはその姿勢を堅持していただきたいというふうに思っております。

 私としましては、今回の六者協議で、核と同時に拉致問題についても北朝鮮側が譲歩して、一定の方向を示して詳細は日朝間でという結果になればベストだというふうに思っていますが、そうなる確率は極めて低いというふうに思っております。過大な楽観視はいけないんではないかというふうに思っております。

岩永小委員 きょうは、横田御夫妻、蓮池さん、大変御苦労さんでございました。

 先ほどからずっとお話を聞いていて、私も今さらながら、ふんまんやる方ないものを実は覚えたわけでございます。これの根源というのは、国家の大きな基本、国家侵害という日本の国にとっては許しがたい行為であり、そして国民一人一人の生命を守ることが国家の理念、責任であるわけですから、すべてに優先して今回の拉致の問題を国が考えていくのは当然でございます。

 しかしながら、その過程の中で、先ほど蓮池さんがおっしゃったように、むしろ厳しい政府への苦言がふんまんやる方ないという状況の中で出てきている。そして、私も、拉致された、最愛の家族がある日突然いなくなった、そして本当に三十年という長い間の苦悩と、それから先ほどの半殺しのような状況の中での人生を歩んでこられた過程から見ると、これは何としてでも一日も早く適切な手を瞬時に打って解決してもらいたいという気持ちというのは十分わかるわけでございます。

 そういうような意味合いで、本日の横田御夫妻並びに蓮池さんの本音が出された、そのお気持ちというのを、政府はもとより国民もそのことを十分受けとめながら、このきょうの皆さん方のお言葉が一歩も二歩も三歩も大きく前進することをこいねがっているわけでございます。

 その中で一番大きな問題は、皆さん方の問題であり国家の問題であるのに相互の連絡が不行き届きだ、そしてなおかつ皆さん方の提言が受け入れられていない、このことは私は本当に残念でございます。だから、むしろ常時連携しながら政府の対応が行われていくような、そういうシステムというのをきちっとやはり構築しなきゃならぬ、このように思っております。

 私ども、今、党の副幹事長をさせていただいて安倍幹事長のもとで毎日お仕えをしているわけでございますが、安倍幹事長からいろいろな状況のお話を聞くと、もうきちっとした理念、哲学はお持ちでございますし、そして国家の大計に対する考え方を我々も教えていただきながらこの拉致の問題に対応している、このように思っているわけでございますが、もう一度、やはり皆さん方の提言を具体的に政府に受け入れていくために、どういうシステムというかものを構築したらいいか、そこらあたりが一つ。

 それから、きょうは小委員会でございまして大変申しわけございませんが、院としてどういうような対応を望まれるか、この二点についてお伺いしたいと思います。

横田(滋)参考人 やはり、システムとしましては、先ほど松原委員がおっしゃいましたような専門の部署をつくるということがやはり一番大切なことだと思います。

 それから、外為法の改正、それを実際に発動するかどうかということはもちろん政府の判断なんですが、やはりこういった外交委員会の皆様方が、何かの質問のときに、政府に対して、それをもうやるべき時期でないかというようなことを御質問いただいたりすることが、やはり政府を動かす力、家族がすることよりもっと大きな力がありますので、ぜひ、そのときそのときの情勢を判断なさって、政府に対して要求していただければと思っております。

蓮池参考人 本来であれば、我々家族は家のリビングでテレビを見ながら、心配して、国の動きを信頼して待つ、そういうことだというふうに思っておりますが、そうではありませんでしたので、我々は会をつくっていろんな活動をしてきたわけでございます。

 本当に、先ほども申し上げましたが、日本人を守る、日本人の生命財産を守るという気持ちが国会議員の皆さん、あるいは政府の皆さんの心の中にあるのであれば、これは自然とこの問題を重要視してそれなりの対応をとってくださるというふうに思います。残念ながらそうではないから、北朝鮮寄りの方もいらっしゃいますし、国会議員の方もいろいろな思惑があって、なかなかこの問題が解決の方にスムーズに流れていかないという現状があるんだというふうに思います。

 我々家族は、純粋に、素朴に家族を帰してくれと言っているわけで、別に政治に介入しようとか、思想の問題がどうこうとか言っているわけではありませんので、肉親を帰してくれ、そういう素朴な、純粋な思いをきちんと酌んでいただいて、国会議員として何をするのか、政府としてはどういう対応をとらなければいけないのか、そういうことを考えていただければ簡単にわかる話だと思うんですが、それがなかなか進まない。ある方向に行こうとするとそれを阻害するような議員の方が出てくる。政府も一枚岩でいかないような状態になる。外務官僚の皆さんの中にも親北派と称される人がいたり、国会議員の方もしかりですけれども、そこは非常に私はもどかしく思っております。

 我々がどういうシステムでいったら一番いいかということを申し上げるのは本来おかしいというふうに思っております。それは、国が、国会議員が主体的に考えて、こういうシステムでやるから家族は待ってろというのが本来の姿だと私は思っております。

横田(早)参考人 もうほとんど蓮池さんや主人が話をしておりますけれども、やはりどんな法案をつくりましても、どのような規約をつくっても、それに携わっているお一人お一人の気持ちの中で、本当に人命というものがどんなに大事で、そしてその被害者がどんなような生活を二十幾年間、もう三十年近くあちらの国でやっているのか、本当に考えることのできないような過酷な毎日だと思っております。そのようなことを毎日、私たちは毎日、朝起きるたびに、きょうも無事だろうか、本当にもう一日頑張ってくださいという思いで、本当に祈る思いでおります。

 そのような思いがお一人お一人の中に、本当に親としての思いをお持ちであれば、もうどんなことをおいても、まず命を救わなければ、あれをやらなければとまず一番最初に思っていただくことが大事だと思っておりますので、そのことがあって、お一人お一人のその思いがあって初めていろいろな法案や規約が生きていくのだと私は思っておりますので、ぜひ、本当にお一人お一人の、御両親の思いで、自分の子供がこうであったらば必ず私だってこのようにするだろうと思って動いていただきたいと、ただそれをお願いするばかりです。

遠藤小委員長 まだ若干ありますが、この際だからという方はいらっしゃいますか。

増子小委員 端的にお伺いしたいと思うんですが、国家としての対策本部を設置すべきだという蓮池さんのお話、まさに私もそのとおりだと思います。私どももこの国会において特別委員会の設置を強く要求してまいりましたけれども、なかなかそういうことに至らず、今回の小委員会の設置ということに相なったわけでありまして、今後さらに、国会の中でも特別委員会設置のためにしっかりと努力をしてまいりたいと思いますし、必ずそういう方向で実現をしたいと思っております。

 そこで、日本政府の確固たるやはり方針がない、相手は幾らでもこちらの情報はあるけれどもこちらは情報も収集できず、そして確固たる方針がないというようなことでありますけれども、私も、国家としての対策本部を一日も早くつくって、その上で、こちらからの方針を逆に北朝鮮にも発信をしながら、やはり相手としっかりと交渉していく。

 そのときに、最終的にはこれは外務省の高官レベルの協議というものでは私は解決しないのではないだろうか。やはり、サプライズの小泉訪朝というようなものではなくて、確固たる方針をつくり、国を挙げてこれに立ち向かっていくんだということを発信しながら、外務大臣もしくは小泉総理が再び訪朝してこの問題を解決することがある意味では一番大事な国家の方針なのかなという思いもいたすわけでありますが、この小泉訪朝がもう一度なされて解決をするということについてのお考えについては、どのようにお考えになっておりますか。

横田(滋)参考人 やはり、一昨年の九月に小泉総理は訪朝したわけですから、もしそういったトップ会談をするのであれば、もう当然、先方から日本に来るべきではないかと思います。

 それともう一つは、例えばそこで仮に総理が訪朝されて成果が上がらなかった場合、もう日本としては打つ手がないわけです。ですから、そうであれば、総理の訪朝というよりむしろ特使みたいな方が行って交渉してそこで解決するというのが、実は私も一番いいと思います。

 家族の中でも、訪朝すればとおっしゃる方もありますけれども、私は、やはり同格以下のところに日本側が何回もお伺いするというような姿勢はおかしいと思いますけれども、もしそうであれば、ぜひ先方から来てもらうべきだと思います。

蓮池参考人 私も横田さんと同じ意見で、国家間の儀礼とすれば、今度は金正日氏が日本に来るのが道理だというふうに思っておりますが、もし小泉総理が再訪朝して、トップダウンで話が決まるという確約があるのであれば、総理みずから開かれた扉を、扉を開かれたわけですから、きちんと最後までけりをつけてくださるのであれば、再訪朝されても、今度は金総書記の番だ、そういうメンツを捨てて行かれる覚悟がおありであれば、行って解決するのであれば、トップ同士の、ああいうトップダウンの国ですから、そういうことを言う方もいらっしゃいますので、そういうきちんとした確約があるのであれば、行かれても私は問題はないというふうに思います。

増子小委員 ありがとうございます。

遠藤小委員長 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表して厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午前十一時三十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.