衆議院

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第4号 平成17年7月28日(木曜日)

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平成十七年七月二十八日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 赤城 徳彦君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤 剛男君

   理事 宮路 和明君 理事 渡辺 博道君

   理事 長島 昭久君 理事 松原  仁君

   理事 渡辺  周君 理事 池坊 保子君

      小野寺五典君    笹川  堯君

      西銘恒三郎君    根本  匠君

      原田 令嗣君    平沢 勝栄君

      福井  照君    古川 禎久君

      水野 賢一君    山下 貴史君

      菊田まきこ君    田中 慶秋君

      中井  洽君    中川 正春君

      西村 真悟君    笠  浩史君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)常任副会長)            西岡  力君

   参考人

   (元北朝鮮工作員)    安  明進君

   通訳           飯田百合子君

   通訳           申  樹浩君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十八日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     原田 令嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     山下 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     宮下 一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

赤城委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、参考人として北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)常任副会長西岡力君及び元北朝鮮工作員安明進君に御出席いただいております。

 なお、本日は、通訳を飯田百合子君及び申樹浩君にお願いいたしております。よろしくお願いいたします。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、忌憚のない御意見を述べていただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、西岡参考人、安参考人の順で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 発言は着席のままで結構でございますが、その都度委員長の許可を得てから発言されるようお願いいたします。

 それでは、西岡参考人、お願いいたします。

西岡参考人 おはようございます。西岡でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、曽我ひとみさんが帰ってきた後、じっくり話す機会がありました。曽我さんは、いつも夜になると、月や星を見て、この同じ月や星は日本でも見えているんだろうな、佐渡のお父さん、妹たち、近所の人たち、いつになったら会えるんだろうか、いつ帰れるだろうかと指折り数えて待っていたというふうに聞いております。

 特に、日本の政治家、例えば金丸・田辺訪朝団などが北朝鮮に行ったときは、北朝鮮のテレビで大々的に報道がされた。そのとき、ああ、今度は私のことが議題になっているんだろうかといつも期待していたということを言っています。

 多分、きょう傍聴に横田めぐみさんや市川修一さん、増元るみ子さんなどの御家族が来ていらっしゃいますけれども、その被害者の人たちも、今も夜になれば月や星を見て、いつ日本が助けに来てくれるだろうかと、あるいは、まだ名前も明らかになっていない特定失踪者の人たちも、月や星を見て日本を待っていると思います。助けてくださるのはここにいらっしゃる先生方だと思います。そういう気持ちで意見を言わせていただきます。

 私たちは、めぐみさんたち死亡とされた八人は生きている、金正日が拉致を認めた十三人以外にも多くの拉致被害者がいるというキャンペーンを行い、北朝鮮の説明の矛盾を指摘してきました。そのことは、本日の安明進証言でも明らかにされるものです。

 日本政府は、昨年十二月二十四日、北朝鮮から提供された遺骨、死亡診断書、交通事故報告書などすべての物証が捏造と判明したことを受けて、北朝鮮側説明を裏づけるものは皆無である、生存者は直ちに帰国させることが基本という立場を明確にしました。

 同じく政府は、昨年十二月二十四日、北朝鮮側の迅速かつ誠意ある対応をしない場合、日本政府として厳しい対応をとらざるを得ないと、細田官房長官が制裁を予告しました。

 ところが北朝鮮は、日本側が遺骨鑑定を捏造しているなどという言語道断の開き直りを続けて日本との対話を拒絶し、核武装を公言し、核実験の準備さえしています。だれが見ても、迅速かつ誠意ある対応はなされていません。それなのに、小泉総理は制裁発動を決断していません。

 制裁発動は、拉致被害者全員を取り戻すという国家意思を示すことです。それをちゅうちょしていると、拉致問題を重視していないという大変危険なメッセージが発せられてしまいます。

 日本が拉致を理由に単独制裁を発動すれば、金正日に日本の不退転の決意が明確に伝わり、担当者は間違いなくかえられます。これこそがチャンスで、ここで初めて、八人死亡、二人未入境というシナリオを書いた人間とは別人物が担当者になり、被害者を帰すことを考える可能性が生まれます。

 制裁は、韓国、中国へのメッセージにもなります。日本が拉致を理由に単独制裁をかけるならば、韓国、中国は、拉致問題が完全に解決しない限り資金を提供しないという日本の断固たる姿勢を理解し、金正日に対する説得の中に、拉致問題で日本を納得させ得る対応をするようにという注文もつけるようになるのです。

 拉致問題は、今まさに正念場を迎えています。中国、韓国、ロシア、そしてアメリカまでもが、六者協議開催前の日本の単独制裁発動に反対しました。ということは、今開催中の六者協議で北朝鮮が核解決に肯定的態度をとれば、四カ国は北朝鮮に圧力をかけることに反対し続け、それに日本政府が引きずられ、いつまでも制裁発動はなされず、拉致は事実上棚上げにされる。具体的には、核問題解決のために、拉致問題が一切進展しないまま日本が経済的負担を求められるという最悪の構図さえあり得ます。

 やはり、天はみずからを助くる者を助くであります。六者協議で北朝鮮代表に生存者帰国と辛光洙ら拉致実行犯引き渡しを強く迫り、それをしない場合には単独制裁を発動し、国連安保理事会などを通じた国際制裁を求めていくという断固たる姿勢を示すしかないのです。また、普遍的人権という観点から、明確に韓国人拉致に言及して北朝鮮を非難すべきです。

 昨日現在、佐々江局長は、核、ミサイル、拉致を解決して国交正常化をするとしか言わず、北朝鮮非難も制裁予告も一切していません。拉致問題が棚上げになる危険性が高まっています。

 細田官房長官は、七月十五日、日本は、安否がわからない拉致被害者はみんな生存しているはずだから帰すべきであり、それ以外にも拉致された人がいるのではないかと強く交渉しており、六者協議の場をかりてさらに強く主張するのは当然だと話されました。

 佐々江局長は、官房長官が明らかにした政府の方針に従わないのでしょうか。あるいは、官房長官の発言は単なるリップサービスで、政府の方針ではないのでしょうか。このままだと、日本国は拉致問題を軽視しているという危険なメッセージが発信されてしまうと不安でなりません。

 米国議会下院本会議は、七月十一日、北朝鮮による日本人、韓国人の拉致及び被害者を拘束し続けていることを非難し、アメリカ政府に対して、解決に向けたしかるべき対応をとるように求めた決議を圧倒的な賛成多数で採択しました。

 北朝鮮の核問題の解決は極めて重要であるが、しかしそのことで、北朝鮮政権との今後のいかなる交渉においても、米政府当局者が拉致問題及び他の重大な人権問題を持ち出せないようなことがあってはならないと、核問題解決のために拉致問題を棚上げにしてはならないと明確に述べています。また、日本政府がまだ拉致認定をしていない寺越事件について明確に拉致と断定しています。特に、韓国人拉致をも棚上げしてはならないと言い切っている点は重要です。

 日本が断固たる対応をとれば、必ずブッシュ政権、韓国の良識的保守派を初めとする世界の自由と人権を尊重する大多数の支持を得られるのです。

 ブッシュ政権は、金正日は悪だと明言しています。ところが、日本、韓国、中国、ロシアはすべて、その認識を表明していません。ブッシュ政権は孤立しているのです。

 特に、小泉首相は、金正日テロ政権を直接的に非難せず、制裁を発動しません。日本人拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ない、核、ミサイル問題を包括的に解決するという日朝平壌宣言の立場は変わらない、国交正常化してから経済協力だとしか言わないのです。金正日政権に対して抗議したり、悪を糾弾したりしないのです。

 それどころか、田中均外務審議官は、北朝鮮に対する外交戦略について、「まず互いの共通利益を作り、そのうえで協議や交渉をし、国際関係を作って結果を出す」と朝日新聞で語っています。

 テロとの戦争を戦うブッシュ大統領からすれば、テロ政権と共通利益をつくるなどという発想は利敵行為そのものです。しかし、小泉首相は、現在に至るまで、田中審議官の言うような北朝鮮外交を続けています。同盟国であり、最も北朝鮮の脅威を受けている日本がそのような姿勢だから、アメリカも日本が対北単独制裁に踏み切ることに消極的反応を見せたのです。

 今回の六者協議が成果を上げなければ、国連の安保理事会で北朝鮮の核問題が議論されることは間違いないでしょう。日本は外交力を駆使し、その決議の中に、日本人、韓国人拉致被害者を全員帰さない限り経済制裁を続けるという文言を入れる必要があります。そこには当然、北朝鮮が核開発をやめない限り経済制裁を続けると書かれるだろうが、拉致問題を併記させることが重要なのです。

 アメリカのイラク攻撃の根拠になった国連安保理決議一四四一号、二〇〇二年十一月八日、中国、ロシアも含む全会一致で成立していますけれども、その一四四一号には拉致が入っています。安保理は、イラク政府が、イラクによって不当に拘禁されたクウェート人や第三国国民を送還あるいは消息確定に向け協力すべきとした国連決議をないがしろにしてきたことを遺憾とすると明確に書いてあります。

 クウェートができたことを日本ができるのか、国家としての日本の姿勢が問われています。そのためには、まず、日本が単独で制裁をかけておくことが絶対不可欠です。

 アメリカは、リビアによる旅客機爆破テロに対して、まず自国で制裁をかけ、その上で国連の安保理に持ち込み、国際的な制裁をかけました。日本も、まず一国で制裁をかけることです。自国でかけていなかったら、他国の協力は得られないのです。

 既に国会は制裁法を成立させています。そして、この衆議院の拉致特別委員会また参議院の拉致特別委員会は制裁発動を決議し、超党派の拉致議連、また自民党、民主党、公明党三党の拉致対策本部も制裁発動を訴えています。

 国民の大多数も制裁発動に賛成しており、その意思は五百万を超える署名となって政府に提出されています。

 家族会も、愛する肉親が北朝鮮でとらわれている苦しい立場にありながら、座り込みまで行って制裁発動を求めています。

 改正外為貿易管理法により、北朝鮮への送金と貿易を全面的に停止していただきたい。特定船舶入港阻止法により、万景峰号を初めとするすべての北朝鮮船舶の入港禁止を行っていただきたい。

 国家犯罪である拉致が解決していないのに、北朝鮮国会議員、最高人民会議代議員である朝鮮総連最高幹部六人は日朝を自由往来しています。最高人民会議代議員である朝鮮総連最高幹部六人、徐萬述朝鮮総連中央本部議長、許宗萬朝鮮総連中央本部責任副議長、梁守政朝鮮総連中央本部副議長・在日本朝鮮人商工連合会会長、金昭子朝鮮総連中央本部副議長・在日本朝鮮民主女性同盟中央本部委員長、朴喜徳在日本朝鮮人商工連合会顧問、張炳泰朝鮮大学学長への再入国許可を取り消してください。

 また、北朝鮮、総連への不公正な優遇措置の適正化を行っていただきたい。

 さまざまな証拠や証言から拉致であることが間違いない寺越事件、小住健蔵さん、福留貴美子さん、安明進氏が北朝鮮で目撃したと証言している古川了子さん、加藤久美子さんなどの拉致認定を早急に実現してほしいと考えております。

 ありがとうございました。(拍手)

赤城委員長 ありがとうございました。

 次に、安参考人、お願いいたします。

安参考人(通訳) 本日、このように私を日本の国会に招待してくださり、お呼びくださり、我が民族と人類の共同の敵であり悪魔である金正日の反人倫的蛮行を告発し、証言することのできる機会を下さった日本の国会、衆議院拉致特別委員会の皆様に感謝いたします。

 証言に先立ちまして、まず自己紹介から始めたいと思います。

 私は、一九六八年八月二十六日、北朝鮮黄海北道シンゲ郡で生まれました。元山と沙里院外国語学院で八年間外国語を学んだ後に、一九八七年三月五日から一九九三年五月二十日まで平壌市内の東北方向の外郭地域にあるスパイ養成機関であります朝鮮労働党一三〇連絡所、これは公式的には朝鮮人民軍六九五軍部隊というものでありまして、非公式には当時の朝鮮労働党中央委員会直属政治学校、これは今の金正日政治軍事大学を指します、というところに入りましたが、そこを卒業いたしまして、一九九三年五月二十一日から対南工作機関であります朝鮮労働党七一五連絡所三方向三組に任命をされ、一九九三年八月三十日対南工作のために前方偵察任務を遂行中、九月四日大韓民国に亡命をいたしました。

 私は、大韓民国に亡命した後、一九九七年から横田めぐみさんを金正日政治軍事大学で目撃したということと北朝鮮情報機関の日本人拉致と日本での各種の工作について常に証言を行ってきました。

 本日、この場をおかりいたしまして、私が一九八八年十月から一九九一年初旬まで、当時の朝鮮労働党中央委員会直属政治学校、今の金正日政治軍事大学などで目撃した日本人について再び証言をいたします。

 当時学校にいた日本人たちとしては、横田めぐみさん、市川修一さん、増元るみ子さん、蓮池薫さん、田中実さん、朝鮮語が余り上手ではなかったちょっと独特の容貌をした北海道から拉致されたという男性、加藤久美子さんなどなど、合計十一人です。また、工作員たちの専門病院であります朝鮮労働党九一五連絡所で目撃した古川了子さん、学校で訓練装備を持って出入りをしていた寺越武志さん、そして放送局爆破訓練場で見たもう一人の日本人の女性と、北朝鮮が一九八六年に死亡したと言っている田口八重子さんも一九九一年まで確実に生きていたという直接的な情報を持っており、すべて合わせて十五人になります。

 私が目撃したり、または生きているという直接的な情報を持っている十五人の拉致被害者のうちで、現在北朝鮮が認めているのは五人だけ、それからまた日本政府も田中さんを加えて六人しか拉致の事実を認めていないことは大変残念です。

 寺越武志さん、古川了子さん、加藤久美子さんは救う会が拉致として認定していますが、日本政府はまだ拉致と認めていません。

 北朝鮮でお母様が何回も寺越さんに会ったにもかかわらず、日本政府はなぜ彼を拉致だと認めないのか、古川了子さんと加藤久美子さんも明らかに北朝鮮にいる拉致被害者なのに、それとして認定されていないことが残念です。

 日本人拉致は、今、日本では北朝鮮の犯罪として認められていますが、少なくとも金正日政治軍事大学では工作員たちの自慢の種になっています。

 特に、寺越武志さんとそのおじさんたちを拉致した金正日政治軍事大学の航海講座の副講座長、呉求鎬は、自分の口で、一九六〇年代、日本の能登半島に侵入し、仕方なく彼らを拉致して、そのうち一人が自分たちの強盗のような要求に応じなかったとして、その場でおじさんの一人を射殺したという内容まで自慢げに話していたことが記憶に生々しいです。

 実際、私自身も証言するために能登半島の現地を訪問したことがありますが、そこは本当に呉求鎬副講座長が話したことと一致する場所でした。

 工作員が自分がしていない拉致をしたと話すわけもありませんが、現場も一致することから、私は呉求鎬教官の話が間違いないと確信しております。

 これら拉致された日本人は、学校で海外工作員たちの日本人化教育に利用される日本語教官として勤務しており、彼らの居住地も、当時は私たち学生が十号洞と呼ぶ工作地区内の統制施設でした。

 北朝鮮労働党情報機関である三号庁舎は、彼ら拉致された日本人たちを外部に公開せず秘密に付すため、彼らの子供たちは幼稚園に通うときまで統制施設内部から通わせ、初等教育を受け始めるときから父母と遠く離れたほかの地域の学校に通わせ、休みの期間に父母と一緒にいるときには、彼らに言葉に慎重になるよう強調することもありました。

 結局、長い間、北朝鮮の日本人拉致が全く存在しない事実として外部に公開されず、拉致された日本人たちは、その存在さえも確認することができませんでした。

 犯罪者の罪過は長続きしないという人類普遍的な真理があるように、金正日の犯罪は、一九八七年十一月、大韓航空機爆破事件以降、同じ学校の卒業生である金賢姫先輩によって田口八重子さんの存在が初めて明らかになり、その後、私の亡命とともに、ほかの日本人拉致被害者たちの存在が世の中に知らされました。

 しかし、当時は、日本の大多数の国民たちはもちろん、日本政府の高官さえも私の話に否定的であり、その上、北朝鮮政府も私自身を、北朝鮮に存在しない、また韓国政府がでっち上げた、日本の反動がつくり上げた人物として決めつけ、私は、うそをつきまくるにせの人物としてみなされていました。

 そのような中でも、救う会佐藤勝巳会長と、ここにいらっしゃる西岡先生、そして横田御両親を初めとする拉致被害者家族たちが私を信じてくださり、絶え間なく運動を展開した結果、自分の民族三百万人を飢え死にさせても謝罪の一言もなかった悪魔金正日に認めさせ、謝らせるに至りました。

 しかし、日本政府と国民を代表する日本の総理と日本政府代表団の前で謝るという席でさえも、金正日は、拉致の本当の命令者とその実行犯について率直に認めず、今この瞬間までもうそを貫き、日本政府と国民を愚弄しています。

 金正日が貫き通しているうその中の一つは、一九九一年まで私が直接話も交わし、たばこまで分け合って吸ったことがある市川修一さんが一九七九年に死亡したという内容と、やはり私が一九九〇年代ころまで目撃した増元るみ子さんが一九八一年に死んだということです。

 また、田中実さん、加藤久美子さんなど拉致された日本人と、金正日政治軍事大学に出入りしていた寺越武志さん、そして工作員の専門病院である朝鮮労働党九一五病院で目撃した古川了子さんと、放送局爆破訓練場で目撃したもう一人の日本人女性など、十人の日本人を金正日は認めていません。

 金賢姫の日本語教官であった田口八重子さんは、やはり私たちの学校の先輩である金賢姫が韓国で一九九一年当時、恩赦を受け手記を出版するという時期まで確実に生きていたという事実は、金賢姫に射撃を教えた教官、金正日政治軍事大学射撃講座の咸教官から、私だけでなく、私の二十五期同期生全員が一緒に聞いた話です。

 私はもちろん、北朝鮮にいたとき、これら日本人たちの名前は一つも全く知りませんでしたが、彼らの顔と特徴などは今この瞬間もはっきりと記憶しています。

 私が目撃した日本人たちが拉致された日本人の全部でないことは、学校の教官たちと先輩たちを通じてもよく知ることができ、その数は何と三十人余りにもなると聞きました。今この瞬間にも、彼ら拉致された日本人たちは、自分の父母と日本政府と国民を信じて、自分たちが救い出されるその日だけを首を長くして待ちわびています。

 しかし、日本国民であり、日本の子供たちである彼ら拉致された日本人を救い出すべき日本が、今むしろ、北朝鮮工作機関が決心さえすれば、もっと多くの日本人を拉致し、日本に敵対行為をすることができるように、工作資金と数多くの工作装備まで供給してやっているのが現実です。

 ここにいらっしゃる国会議員の方々と、これを見守っているすべての日本人たちが、北朝鮮によって拉致された日本人被害者たちを自分の息子、娘、兄弟として、本当の肉親として考え、彼らを悪魔の巣窟から助け出すという強い意思を持ち、その悪魔金正日と戦う覚悟がなければ、そういったかたい覚悟で臨まなければ、決してこの戦いは簡単には終わりません。

 その戦いがまだ弱いために、北朝鮮政府は対日工作機関である清津連絡所を完全に解体させず、今でも存在させており、引き続き日本工作をするために、以前のような工作船ではない新しい工作船を運営しようとしており、今新しい工作船基地を構築しつつあります。

 悪魔との戦いは、今、日本が持っている最も強力な手段である経済制裁で金正日の首を絞めることだと私は確信しており、わずかな動揺もない経済制裁が加えられるとき、金正日はついに日本国民と国家を恐れ、日本に対して真摯な姿勢になると確信しております。

 日本の対北朝鮮経済制裁は、金正日政権の脅威になるのであって、金正日政権が一日でも早く終わり、殺人独裁がない人間らしい世の中で暮らすことを希望している北朝鮮の二千三百万住民の大きな望みでもあります。

 実際に、北朝鮮で長く暮らした後、韓国に亡命して暮らす七千余りの脱北者も、韓国政府の太陽政策は全く疑わしいものであり、これは北朝鮮政権を生かすものであると言っております。実際に、北朝鮮政府が韓国政府から受けている経済支援というのは、北朝鮮が崩壊しつつあるときに改めてリンゲルを打つような効果を生み出しており、また、北朝鮮の高官でさえも、韓国もしくは海外に滞在しているときに、韓国政府がなぜ北朝鮮に経済支援を行い、北朝鮮政府を生かすような行動をとるのかと口をそろえて言っております。

 日本政府が北朝鮮に経済制裁を行わないということは、北朝鮮にいる拉致被害者を救済せず、そのままにしておくということを意味しております。

 ここにいらっしゃる国会議員の方は御存じかもしれませんが、韓国に対する北朝鮮の軍の警備というのはかなり、海軍などを初め、相当に厳しいものがあります。最前線の方には、最前線から百五十五マイルぐらいのところに、韓国軍百万人が警備を行うために対峙しているにもかかわらず、北朝鮮は一九六〇年以降、四千人余りの韓国人を拉致し、現在も五百人はそのまま北朝鮮国内にとどめております。

 しかし、日本海周辺では、鉄条網一つなく完全にオープンな状態になっているということ、そして、日本では金正日が認めた十三人以外は拉致されていないと思っていること自体、全く異常な事態であります。

 次のように申し上げますと、恐らく日本の方々のプライドを大変に傷つけることになってしまうとは思うんですけれども、北朝鮮の工作員たちが口々に言っていることといいますのは、韓国に浸透することはかなり難しい、しかしながら、日本に浸透するのは御飯の途中でちょっとトイレに行ってくるようなものだ、それぐらい簡単であると彼らは言っています。

 そのように、日本という国自体をもばかにしている、そうした犯罪集団であります北側、北朝鮮に対して経済的に支援を行うなどということは、日本の国民はもちろんのこと、北で一生懸命暮らしている人民たちにとっても間違ったことである、ためにならないことであると私は強調したいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

赤城委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤城委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 本日は、西岡参考人、安参考人、特に安参考人は昨日韓国よりおいでいただいたとのこと、大変有意義なお話を伺うことができました。心より感謝しております。

 時間がございませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 六カ国協議は今まさに渦中にございます。今までの経過を考えますと、拉致被害者の御家族の皆様方、そして日本人も落胆をしているのではないかと思います。

 言うまでもなく、佐々江日本首席代表は、日朝国交正常化を図るため、核、ミサイル、拉致といった諸懸案が総括的に解決されなければならないと冒頭にはっきり申しておりますが、意外だったのは、あるいはまた予測の中にあったかもしれませんけれども、韓国がその直後にすぐ、会談の焦点を分散させる行動は決して望ましいものではないと、拉致問題を取り上げることを牽制したことです。

 これは韓国ばかりではございません。ロシアのアレクセーエフ外務次官も、日本との二国間協議で、六者協議の中で拉致問題を取り上げないように要請いたしております。朝鮮半島の非核化という主要な問題の解決が困難になる、今ほかの国々の人たちは、この朝鮮半島の非核化という問題一点しか見詰めることができないのではないかという気がしております。中国の人民日報も、拉致問題を取り上げることには今批判的です。

 私どもは、少しの救いは、私どもの小泉総理が、日本には日本の事情があるのだ、各国とは違うのだと、ここで改めて日本の事情を明言していることではないかと思います。

 私は、こういう状況であればこそ再確認しなければいけない、強く私たちが自分たちの心に言い聞かせなければいけないのは、日本の国というこの主権の問題に関しても、また人権問題からも、私たちはこの拉致被害者救出に対してさらなる強い意思で臨まなければならないのだと思います。

 ただ私は、目的は一つ、拉致の被害者を救う、だけれども、その方法はたくさんあるのではないか、今の外交方法を決して批判するわけではありませんけれども、もっと諸外国のことをしっかりと把握し、その事情を考えながら支持や理解を得ることも必要なのではないか。

 今、安参考人は韓国にお住まいでいらっしゃるので、韓国の事情はよくおわかりだと思います。韓国は、本当は拉致被害者を抱えている私たちと一緒の国なんですね。そういう意味では、手をとり合いながら一緒に協力しなければならないのに、急にこういうふうに態度が変わってまいりました。三回の協議のときには、これはアメリカと日本と韓国は歩調を合わせてきたわけです。今、世論としては、この拉致被害者に対して黙殺をしているのではないかと思うのですが、その点の事情をお話しいただきたいと思います。

安参考人(通訳) お答えをいたしたいと思いますけれども、私がこの場で六カ国協議についてあれこれ言うということは私の分に過ぎたことであるとは思います。しかしながら、私が考えますのに、今、拉致被害者を救うということについての焦点がぼやかされている、ぼやけてきているということを考えますのに、六者協議も含めまして、北に対して、北朝鮮に対してほかの国々はちょっと卑屈な態度に出ているのではないかと思います。北が欲しいものを与えてしまうような路線に出ているのではないかと思うんです。

 韓国にも拉致被害者は五百人以上います。韓国にも拉致された人々がたくさんいるのです。しかしながら、そうした韓国が日本政府と歩調を合わせてこれに対応をすることができないというのはなぜかと申しますと、これを認めるならば、韓国政府はこれまで自国民を保護してこなかったということを認めることになってしまいます。それを認めたくないという政府の立場もありますし、韓国の現政権はできるだけ北朝鮮を刺激したくないという立場を今とっています。

池坊委員 西岡参考人に伺いたいと思います。

 今の問題に関係いたしますけれども、韓国は、現大統領になってから、これは恣意的に北朝鮮との和平の流れをつくろうとしているのではないかというふうに思います。同時にまた、中国、韓国には歴史認識の違いによる日本との葛藤もあるのではないかと思っておりますけれども、その辺についての御意見を伺いたいと思います。

西岡参考人 先ほど意見陳述で申し上げましたが、アメリカは日本人と韓国人拉致について明確に悪だという認識を示しています。日本は、自国民の拉致について取り上げていますが、韓国人拉致、そして北朝鮮の人権問題を取り上げていません。そして、韓国、ロシア、中国は、拉致も人権問題も取り上げないという立場です。アメリカが一番孤立しているわけです。韓国や中国が今のような姿勢を続けられるのは、アメリカだけが、第三国であるにもかかわらず、韓国人、日本人拉致、北朝鮮の人権問題まで取り上げているという姿勢だからです。

 ですから、先ほど申し上げましたように、日本も、普遍的な人権という観点から韓国人拉致も取り上げてきちんと非難すべきだ。そこをすれば、日本とアメリカ対韓国、対中国ということになるんです。それがないから、日本はもちろん主権の問題では日本人拉致をしますけれども、韓国人拉致までぜひ取り上げてほしいと思っております。

池坊委員 今おっしゃった問題は大変重要と考えております。つまりこれは、日本の主権の問題であるとともに、世界、アジア諸国のすべての国民にとっての人権問題だということを高く高く掲げて、国連あるいはアメリカにもっともっと協力を呼びかけるべきであるというふうに考えます。やはり周辺諸国の理解、協力が不可欠なのではないか、そのような理解を得ていくためにはどうしたらいいかということも考えなければならないと思います。

 この六カ国協議の中で、北朝鮮は、四カ国とはやっているけれども日本とはやらない、もう嫌がらせとしか思えないのですが、そういう態度をとっております。

 ヒル次官補は、この間、北朝鮮の金外交次官に、日本はあなた方と、拉致問題も解決したならばきちんとした国交正常化ができるのだから、二国間協議をしたらどうかという勧めに対して、助言には感謝するというふうに答えております。

 そしてまた、この間、自民党の山崎拓前副総裁が、七月十七日にソウルで韓国の鄭東泳統一相と会談されました。その中で鄭統一相は、六月に金総書記と会談したときに、鄭統一相が、日本は核、拉致問題を解決して日朝国交正常化をなし遂げたい考えに変わりはないと日本からのメッセージを伝えたのに対して、金総書記は、確かにお聞きしたというふうに答えております。

 この辺のことを考えますと、安参考人は韓国に今いらっしゃいますが、その前は北朝鮮で北朝鮮の政府のやり方あるいは外交のやり方を見ていらしたと思います。この発言等を考えるときにどういう考えでいるかということを、今お考えのことがあるかどうかお聞きしたいと思います。

安参考人(通訳) まず第一に、私は、北朝鮮にいるときから外交官としての仕事はしておりませんでしたので、北の外交方針についてはここで申し上げることができません。

 しかしながら、今現在の北朝鮮の態度といいますのは、北朝鮮の行動のベースになっているのは、日本に対して要求をしている数百億ドルがなかなか出ないものですから、じだんだ踏んで欲しがっている子供のような態度ではないかと思います。

 そしてまた、金正日という人間は、自国民を三百万人餓死させても少しも恬として恥じないような人間でありますのに、そうした人間が拉致問題については日本に対して一応謝罪はしたわけです。それにもかかわらずドルをくれないといって、彼は非常に傷ついていることでしょう。

 北朝鮮を相手に何かの交渉をするなり話をするというときには、日本が持っている通常の常識ですとか良識ですとかいうものをもって相対してはいけないと思います。

池坊委員 今のお話を伺うと、北朝鮮との外交は、交渉は、私たちも本当に大所高所、いろいろな創意工夫をしなければいけない、知恵を働かせなければいけないということの再確認であったような気がいたします。

 西岡参考人に伺いたいと思います。

 今の問題に関連いたしますけれども、経済制裁という問題が出てきてまいります。ただ、今、韓国では二百万キロワットの電力も提供しようとしている。韓国は、確かに先ほど安参考人がおっしゃるように、韓国のみならず中国もロシアも北朝鮮に甘いんじゃないかという感じがしないわけではありません。

 五月十六日の衆議院予算委員会において小泉総理大臣は、「経済制裁を発動して、この拉致の問題が、今日本が思っているような対応を北朝鮮がするかどうか、またそれが効果的かということを考えると、必ずしもそういう面ばかりではない。」というふうに慎重な姿勢を示されました。

 このことは前にも西岡参考人は述べていらっしゃいますけれども、再度この問題についてお伺いしたいと思います。

西岡参考人 小泉総理の答弁は、率直に申し上げて、大変危険だと思います。

 なぜならば、昨年の十二月二十四日に細田官房長官が、日本政府の公式見解として、北朝鮮に対して、迅速で誠実な対応をしなさい、それがなければ厳しい対応をとるとはっきりと言っているわけです。

 これは我々が言ったんではないです。家族が言ったんではないです。細田官房長官が日本政府としておっしゃったことです。その前に今の答弁があるならわかります。しかし、北朝鮮に、国際社会に対して公式に通報しておきながら、五月になってそのようなことをおっしゃるということは、日本がこの問題を真剣に考えていないという間違ったメッセージを金正日や国際社会に発することになってしまうという点で、大変危険だと思います。

 先ほど申し上げたように、佐々江局長の発言も、細田官房長官が北朝鮮に対して強く求めると言ったことまでは踏み込んでいない。そのことも危険だと思っています。

 外交というのは、言うべきことをきちんと言って、それから後で交渉が始まるものだと思っております。

池坊委員 私も、言うべきことをしっかり言い、そしてまた相手の意見も聞きながら話し合いを行う、これは、外交は国と国ですが、人と人のかかわりでも同じですから、そういう毅然とした姿勢をこれから日本は外交においても人と人のつき合いにおいてもしっかりと持っていかなければならないのだと思います。

 今、ロシア、中国、韓国に対して、やはり私は、アメリカはもとよりですけれども、協力、支持を得ることが大切ではないかと思うのです。少なくともこの問題を解決するときの一つのいい要因になるのではないかと思いますけれども、どういう方法があるか、そのことについて安参考人に伺いたいと思います。(発言する者あり)

安参考人(通訳) 私が、日本が何をしたらいいかと申し上げること自体がなんなんですけれども、やはり日本というのは、現在、非常に北朝鮮、金正日に対して強硬な立場もとっているし、また、それを北朝鮮、金正日に対して何かを受け入れるようなニュアンスを含めて言っていることも事実だと思います。ですから、北朝鮮、金正日が逆に、日本の顔色をうかがいながら、日本というのが一貫した意見がないために、こう言えばもしかしたら通用するのではないかといったすきを日本が見せているのではないかと思います。

 ですから、日本が声を一つにして、世界の悪である金正日と対峙するならば、日本を金正日は怖がるでしょうし、また、世界も日本に譲歩せよとかいったようなことは言わなくなると思います。

池坊委員 同じ質問を西岡参考人に伺いたいと思います。

西岡参考人 韓国は今、実は政治的、思想的に内戦状態である、真っ二つに割れている。南方三角同盟、日米韓の同盟を守るべきという勢力と、そこから離脱して親金正日、親中の方向に行こうとする勢力が、激しい思想戦、政治戦を今戦っている。

 その中で、普遍的な人権、民主主義、海洋国家として、我々のパートナーは、日米韓三角同盟を守ろうとする勢力であり、その人たちは日本が経済制裁を発動することに賛成しています。そしてその人たちは、韓国人拉致問題、日本人拉致問題、両方取り上げています。北朝鮮の人権問題も取り上げています。

 日本の歴史問題に関しては、歴史観が一致しないのは当たり前だ、国が違えば歴史観は違って当たり前だ、教科書が一致しないのは当たり前だと言っています。韓国は、今自由民主主義国家ですから、そういう人たちがいるんです、中国とは違います。ですから、そういう人たちとの連帯、交流をぜひ国会議員レベルでもしていただくことが、国際社会の多数派をつくっていく道だと思っています。

池坊委員 時間が参りました。ありがとうございます。

 今、経済制裁なんだというやじが飛んでおりました。私ももちろん経済制裁に賛成でございます。ですけれども、それだけでなくて、解決に向けたさまざまな方法を模索することも必要だというふうに思っているのです。複合的にさまざまな問題を解決する能力なくして、そういう知恵を出すことなくしてこの問題は解決できないのだということを私たち政治家は肝に銘じなければいけないと思います。

 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、西銘恒三郎君。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎と申します。

 冒頭、西岡参考人そして安参考人、まず、西岡参考人がこれまで救う会に長い間精力的にかかわってこられましたこと、本当に心から敬意を表したいと思います。

 安参考人につきましては、これまでの生い立ちから、あるいは北朝鮮での経験、さらには、北朝鮮から韓国に亡命をして、勇気ある心の決断をして、今こういう参考人の立場でみずから経験されたことをお話しする。私が想像するに、私も人生五十年生きておりますけれども、本当に命がけで決断をしたといいますか、命がけで物事に取り組んでくるという意味では、安参考人の人生経験に足元にも及ばないのではないかな。そういう意味では、安参考人が、今現在、我が国の国会で勇気ある決断をされ、命がけで人生を生きているという点に関しましても、心からの敬意を表したいと思います。ありがとうございます。

 最初に、西岡参考人の方に質問を順次やっていきたいと思っております。それが一段落しまして安参考人に移って、また最後という形にしたいと思います。

 実は、昨日、たまたま「亡国のイージス」という日本のプレミアの映画を見る機会がありました。本当に、国家とは何ぞや、その中で、映画ではありますけれども、某国の工作員が、その映画の一つのテーマかなとも私は感じたのですけれども、こういう発言を吐いております。「よく見ろ、日本人。これが戦争だ。」というような発言を某国の工作員がやっております。

 我が国は、戦後六十年間、平和国家を推進してまいる中で、経験として、現実に武力紛争をした経験はありません。私たちは、これからも、これから続く二十一世紀も武力紛争のない事態をいかに永続させていくのかというのが、これは一つの政治家の役回りだとは思っておりますが、そういう中で、国と国とのかかわりの中で、経済制裁とか、あるいは世界じゅうの国々では武力紛争が絶えないというのも事実でございます。

 今、この拉致問題を考えるときに、私も四名の子供がおりますけれども、いざ、自分の子供がある日突然いなくなって二十何年間もというような拉致被害の事件の当事者になったことを想像すると、本当にぞっとします。私たちは、国民として、国家を形成する一員として、税金も払いながら、国家の一員としての役割をしっかりと国民としての立場でやっていきますけれども、同じように、国家が国民の生命と財産を守ってくれるという前提があって初めて、国民と国家のいい関係ができるものだと思っております。

 私は、経済制裁について、なぜ我が国政府がこの経済制裁を発動しないのか。相手国がどういう態度に出てくるかということを懸念するよりも、まず、自国の国民の生命と財産を守るという立場から、私は、西岡参考人と同じように経済制裁を発動する。その前に、国民にあらゆることを、少々緊張関係に入るけれども、これが国家としての立派な一つの仕事だという点で、先行きがどうなろうが、不安はあるかもしれませんが、国民の生命と財産を守るという一点からすると、経済制裁発動に賛成する立場でございます。

 西岡参考人にお伺いしたいのですけれども、巷間、経済制裁の発動には段階があるという言葉も聞かれます。そういう中で、参考人はどういう段階で経済制裁を発動していった方がいいのか。きょうは、どちらかといいますと、私が質問する以外のことも両参考人から、参考人が考えておられることをすべて引き出したいという思いでこの場を展開してまいりたいと思いますので、存分に、西岡参考人のまず経済制裁の発動の段階という視点で、どう発動をやっていけばいいとお考えでしょうか、その辺のところを説明していただきたいと思います。

西岡参考人 安倍晋三自民党拉致対策本部長が、四月二十四日の拉致議連、家族会、救う会共催の国民大集会にいらっしゃって、経済制裁をすぐ発動すべきだ、その場合に、日本国内の一部の専門家はミサイルが飛んでくるなどと言う人がいる、しかし考えてほしい、経済制裁というのは北朝鮮からのカニの輸入をとめることだ、カニの輸入が、貿易がとまったということで金正日がミサイルを発射すれば、日本とアメリカは日米同盟があり、アメリカは集団的自衛権を発動する、その発動の中には金正日本人に対する攻撃も含まれるのは当然の軍事的常識だ、金正日は、自分も会ったけれども、理性的な判断ができる人物である、カニの輸出のために自分の命を危険にさらすようなことを行うはずがない、したがって何も恐れることはないというふうにおっしゃっていました。

 私も全く同じ考えであります。経済制裁は、先ほど申し上げましたように、日本の単独制裁で金正日政権が倒れるような即効的な効果があるとは思っておりません。じわじわと北朝鮮の軍の部品がなくなったり、金正日の生活水準が下がったり、北朝鮮が政治警察や軍人に物を渡せなくなったりする効果があると思いますが、そのことで向こうが戦争をして、日米同盟と正面切って戦うということはあり得ない。北朝鮮はおどすことはできますけれども、しかし、戦うことはできない。

 実は、私が一九九一年に最初に拉致問題について「諸君!」という雑誌に原稿を書いたとき、周りの人から、身の危険はないですかと随分言われました。それは、日本の治安を担当する公務員の方からも言われました。脅迫状をもらったりもしました。自宅の位置が多分わかっているんだろうなと思うようなこともありました。しかし、恐れたらば、脅迫が続くんです。彼らは恐れさせることしかできないんです。私に脅迫をすればするほど、もっと書く、こんな手紙が来た、脅迫状が来たというふうに書き続けると、あの人は聞かないということになってなくなるんです。日本と、日米同盟と北朝鮮の国力の違いを考えれば、我々は何にも恐れることはない。

 済みません、長目に話をしていますけれども、もう一つ、「よく見ろ、日本人。これが戦争だ。」というお話がありましたけれども、実は私は、もう既に日本は有事じゃないかと考えています。

 十三歳の少女が普通に通学路を帰っていた、そしたらば、外国の工作機関によってさらわれて、いまだに帰ってこれない。これは非正規戦争の一種ではないか、国家テロだ。

 そうでなければ、日本を侵略しようと思っている某国が拉致は戦争だと思わないのであれば、どんどん拉致をすればいいわけです。日本国民の一〇%を拉致したときに日本は戦争だと思うのか、防衛庁の幹部をみんな拉致すればどうするのか、それでも経済制裁もしないのか。

 主権が侵されて日本人が連れていかれている、特に十三歳の子供が普通に、いつもどおりの通学路を通っていて連れていかれて、いまだに帰ってこれないということについて、我々は、これは有事に準ずるものだと。

 つまり、「よく見ろ、日本人。これが戦争だ。」というのは、実は、我々が今ここで言われていることだ。しかし、我々は北朝鮮より全然強いんだ、恐れる必要はないと思っております。

西銘委員 経済制裁の具体的な事例としては、港を閉じること、あるいは万景峰号の入港禁止、その次には人の往来、そして次、物の往来は港を閉じることに準じますけれども、金の往来、こういう細かい事例があろうかと思います。これを一遍にまとめて経済制裁の発動をするということは、ある意味、国家主権を侵された、今先生が言われたように、十三歳の子供が学校の帰りにある日突然拉致されていなくなるということに対しての対抗手段として、人、物、金、そのすべてを包括的に経済制裁の発動をすべきと私も考えますが、先生のお考えを聞かせてください。

西岡参考人 私も全く同じ意見であります。

 まず、にせの遺骨が来たという国民がみんな怒っているこのタイミングで、そして六者協議で北朝鮮が日本を無視しているという、誠実に拉致問題を解決する意思を見せないというこのタイミングで制裁をかけなければ、もうタイミングはなくなると思います。そして、今一番強いものをかけて、後でどれを少しずつ外していくのかということで交渉すればいいんです。

 アメリカは既に経済制裁をかけています。北朝鮮をテロ国家に指定して、さまざまな経済的な制裁をかけています。しかし、北朝鮮は、アメリカと交渉をして、制裁を解除してくれと要求しているんです。強い制裁をかければ、それを少しずつ解除するということがこちら側のカードになるんです。

 今一番国民も怒っている、そして、六者協議で拉致問題について北朝鮮がはっきりと解決する意思を見せていないという、だれでもわかることが起きましたから、六者協議が終わった瞬間に制裁をかけるべきだ。そして、それは一番高いレベルの、国会が国民の意思を踏まえて、昨年つくられた二つの制裁法案、改正外為外国貿易管理法それから特定船舶入港禁止法、この二つを発動して、船を全部とめる、貿易、資金の流れを全部とめる。そして人の流れも、先ほど申し上げた朝鮮総連の幹部の自由往来をとめるということをぜひしていただきたいと思っております。

西銘委員 我が国の経済制裁発動がマスコミ等を通じて北朝鮮にも伝わったと思いますけれども、北朝鮮側の反応としては、報道で見る限り、これは宣戦布告だ等々の発言をしておりますけれども、そういう事態は全く関係なくして、我が国は我が国としての主権の発動として、経済制裁、包括的に人、物、金の往来をとめるという政策をとった方がいいという参考人の御意見に私も賛成をいたします。

 それから、国家の意思を明確に伝えることの重要性を参考人はよく説いておられますが、その辺、詳しく御説明いただきたいと思います。

西岡参考人 今私たちは、残念ながら、めぐみさんたちやるみ子さんや八重子さんや修一さんたちが今この瞬間、北朝鮮のどこにいるか、確実な情報を持っていないんです。しかし、生きていると信じて今救出を図っておりますけれども、彼らの、彼女らの身辺の安全をどう守るのか、このことも、今先生がおっしゃった、日本の国家意思を厳しくしっかりと示すということと関係があると思っております。

 北朝鮮では、日本が拉致問題にこだわっている、日本国民は怒っているということを、対日謀略機関の三号庁舎それから外交部はわかってきていると思います。それ以外の人たちはどれくらいわかっているのか。北朝鮮では、先ほど安参考人も少し話をしましたけれども、経済的にも大変苦しいところにあり、国民の不満も高まっていて、いつ政変が起きるかどうか、だれも予測ができません。

 あるいは、彼らは、日本と国交正常化してお金が欲しいわけです。その場合に、日本国民がこれらの人たちが帰ってこなければ絶対怒りを解かないんだということを、メッセージを発すれば、めぐみさんが例えば病気になったらば、最高の治療をします、そうでなければ日本国民は怒ってしまうと。

 あるいは、我々がまだ名前のわかっていない人たちも全部助けるんだ、それが明らかにならない限り援助はしない、国交正常化はしない、国民が全然意識が冷めない、世論が冷たくならないということを北朝鮮が骨身にしみてわかれば、すべての被害者はどこにいるんだ、大切に扱っておけよ、いつか人質としてお金と交換するときが来るかもしれないと思うわけです。

 実は、ここに傍聴にも来ていらっしゃる家族の人たちが、九七年に家族会をつくったときに悩まれたわけです。名前を出して訴えたらば、北にいる人たちの身の上に何か危険が来るのではないか。そのときに私などが申し上げたのは、いや、逆だと思う、名前を出して世論が覚えて、横田めぐみという名前は日本国民が全部覚えているわけです。その人に手をかけたとすれば日本国民は永久に北朝鮮の現政権を許さない、支えること、支援することはないんだ、それくらい日本国民はこの問題に関心があり、怒りが解けないんだということを示し続ける、国家意思を示し続けること以外に、今我々が、直接助けに行けない、どこにいるかわからない人たちの安全を図る方法はない。

 蓮池薫さんは、北朝鮮にいたときに実は日本の新聞を時々読むことができたと言っています。しかし、日本の新聞の拉致問題に関係するようなところは切り抜かれていた。ただし、時々その切り抜きのミスがあって、北朝鮮当局が読ませてはならない部分も入っていることがあった。そこで、家族会、救う会が結成された、お父さんの写真を見たと言っています。ああ、私を助けるために日本で家族が立ち上がってくれたということがわかったと言っていました。

 地村さんは、北朝鮮の労働新聞で、福井県の小浜市で日本の反動がけしからぬ集会をやった、ありもしない拉致問題で集会をやったという記事が出た、小浜市といったら自分のこと以外にないだろうと思った、こういう形で、実は向こうにいる人たちと、我々が立ち上がったことによってコミュニケーションもできたんです。それも国家意思を示すということです。

 彼らが意識すればするほど安全は図られる。そして、政変が起きたときに、最初に放送局を占拠したりするでしょうけれども、その後、拉致被害者はどこにいるんだ、捜せ、流れ弾に当たるようなことをするなよ、後で日本と交渉するんだと軍の幹部や政治警察の幹部が思わなければいけないぐらい日本国民の怒りを伝えておく。これ以外に、今北朝鮮にとらわれている人たちの安全を図る方法はない。

 そのためにも、制裁の予告を十二月二十四日に日本政府はしたんですから、それを守るべきだ。それをしなければ、日本政府はオオカミ少年になって、日本はこの問題を重視していない、世論もそのうち忘れるだろうという誤解をさせることになってしまうと思っています。

西銘委員 次に、国交正常化交渉と拉致問題という点でお伺いをしたいと思うのであります。

 朝鮮半島、北東アジアの安全保障環境をよくしていく、良好にさせるには、確かに、今六者協議で話し合われている非核化していくという問題、我が国はそれに加えてミサイルと拉致問題を包括的に交渉するという態度をとっておりますけれども、技術的な問題として、北朝鮮という国に対して、日本も国交正常化をしたい、それは朝鮮半島の安全保障環境も含めてですけれども、しかし、そのためにはどうしても拉致問題を、今北朝鮮にいる拉致被害者をすべて我が国に帰国させる、この一点で集中していくという技術的な方法もあっていいのかなと思うのであります。

 我が国は、非核化と拉致問題とミサイルを包括的に政策として選択しておりますが、この点、一つ一つという意味で、むしろ、国際社会に通用する人権問題のこの拉致問題を重点的に、階段を上るように取り上げていく、それと国交正常化をという形で、拉致問題を優先的に取り上げていくという方法があってもいいのではないかと私は考えますが、西岡参考人の御意見を聞かせてください。

西岡参考人 私は、国交正常化ということを余り表に出すことは実は賛成ではありません。冷戦時代の共産党独裁政権との交渉を考えれば、彼らから何らかの妥協を引き出すというのは、実はこちら側があめとむち、強い姿勢を見せたときだけであります。

 金正日独裁政権に対してこれまで日本の外交は、金丸訪朝以降、国交正常化というカードを使って、つまりあめだけを使って、あるいは一方的な米支援とか、あるいは例えばこの間の小泉総理が朝鮮総連のパーティーにメッセージを出されるとか、こちら側が誠意を示す、そうすると向こうからの誠意も出てくるのではないかという立場の外交をされてきたというふうに認識していますけれども、それは、冷戦時代のソ連に対してレーガン政権がやったような、そのような原則的な外交ではないと思います。友好国に対する外交と、国交を結んでいない、そして日本の主権を侵害して帰さない、アメリカはテロ国家と言っているわけです、その国に対する外交とは変えるべきであるというふうに思っております。

 ですから、最低限、全部解決すれば国交正常化するということを言うにしても、しなければこういうマイナスが来ますよと。あなたたちが今の状態でいれば、現状維持は時間稼ぎではなくて、現状維持をしていれば日本人の怒りはどんどん強くなって、まず経済制裁をするんだ。そして、それだけではなくて、今度は国連の安保理事会で、日本は非常任理事国ですから、拉致問題をテロとして議題に出す。彼らが現状維持していればどんどん不利益が来るんだということを片っ方で言うべきだ、両方言うべきだ。それのない外交が失敗の原因ではないかと私は思っております。

西銘委員 ありがとうございます。

 今開会中の六者協議を見ておりますと、本来私は、自由主義、民主主義国の日米韓対中、ロシア、北朝鮮になるのかなという構図を想像しておったのでありますが、どうも六者協の中身は、日米は辛うじて連携をとっているものの、韓国は我が国と共同歩調がとれないような状況になっております。

 先ほど先生のお話の中で、韓国の国内の政治事情もお話を聞かせていただきましたが、なぜ韓国が自由主義、民主主義の理念のもとに日米と共同して動けないのか、先生はその辺をどうお考えになっていますか。

西岡参考人 先ほども申し上げましたように、韓国の中では思想的、政治的な内戦状態になっている。そして、金大中政権以降、日米韓三角同盟から抜ける人たちが大変権力の強い大統領制で二回連続して勝った。しかし、投票の差は大体一%とか二%であります。真っ二つに割れているわけです。

 もう一つ、日本と共通する側面がありますが、実は韓国の学校の歴史教育、それからテレビの放送が大変左傾化している、自虐的である。大韓民国の戦後建国以来六十年の歴史が汚れたものだ、アメリカの半植民地だ、日本の植民地支配に協力した人たちを全部処分しなかった。それに比べて金日成は日本の植民地に協力した人を全部粛清した、中国やソ連の軍隊を国内に入れなかった、金日成、金正日の方が民族として純粋だという韓国版自虐史観が二十五年ぐらいかけて韓国社会を席巻している。

 日本も同じだと思いますが、自国を愛する歴史教育がなくなると国がおかしくなる。二十五年たって韓国もおかしくなってきている。しかし、韓国の保守愛国勢力がそれに危機感を持って、例えば、昨年の十月にソウル市役所前広場で二十万人が集まって屋外集会をしました。

 日本の新聞は報道しませんでしたが、そこの集会には、韓国の元将軍とかKCIA部長とか大臣とかみんなが新聞紙を地面に敷いて座っていました。危機だと思ってまさに戦っている。北朝鮮の工作の結果で、今の政権は左傾化した反米的な思想が強い人たちがたくさん入っていますが、韓国の一般の国民は常識を持って、南方三角同盟こそが韓国の繁栄と平和の基礎であるということをわかっていると思います。

 今、韓国はまだ民主的な言論の自由があり、選挙がありますから、次どうなのかということを私は見守っております。

西銘委員 私は、今回の第四回六者協議が期限を区切らずに開いたというのは、これはまかり間違うと、六者協議が最後の協議になって、物別れになる可能性もはらんでいるのかなというふうに見ております。そうしていきますと、次の段階、国連安保理事会で北朝鮮の核の問題が議論されるような事態も、西岡参考人が主張されるように十分に出てくるだろう。そうしますと、参考人が発言しておられる、この安保理の決議の中で拉致問題の一項目をぜひとも挿入していきたいという考えに私は賛同します。

 その六者協議が今精力的に開会中ではありますけれども、外交戦略という意味では先手先手という視点も大いに必要であります。そのために我が国がとるべき行動と、西岡参考人が主張しておられる国連安保理の決議の中に拉致問題を文言として確実に組み込んでいく、この辺を、参考人、どう具体的に実現していけばいいのか、お考えを聞かせてください。

西岡参考人 まずは同盟国のアメリカだと思います。ブッシュ政権と緊密に話し合いをする。我々は実は、にせの遺骨が来た直後にでも日米首脳会談をしていただいて、日本の厳しい姿勢をとるということに対してアメリカの理解を十分とった上で、制裁を発動していただきたかった、アメリカにきちんとまず説明をしていただきたかったと思っていますが、六者協議が終わった段階で、ぜひ最高レベルできちんとした意思疎通をアメリカとの間でしていただくことが第一だと思います。

 そして、アメリカの同盟国であるイギリスそしてフランスという国連の常任理事国にまず理解を求めて、その後、中国、ロシアに対しては、やはり先ほど申し上げましたように、彼らの国は民主国家ではありませんから、あめとむちで、もちろん協力を求める、しかし協力をしない場合はこちらにもいろいろ考えがあるという形で説得、交渉をして、対イラク一四四一号決議に入っていたような問題を入れるべきだ。

 そのためにまず、国会議員の先生がぜひ立ち上がっていただいて、それぞれの場所で発信をしていただきたい。日本国内でまだこの問題を知っている人が少ないです。我々は、国連の安保理事会で議論がされるときは、家族会の方々とニューヨークに行って、国連の前でむしろを敷いて座り込みをしようと思っています。そして、世論に訴えたいと思っています。ぜひ御協力をいただければと考えております。

西銘委員 ありがとうございました。

 それでは、安参考人にお伺いしたいと思います。

 まず、工作員についてお伺いしたいのでありますが、安参考人が学んだ金正日政治軍事大学には日本人の教官が三十人いたと発言をしておられますが、これらの教官はすべて日本から拉致された人々でしょうか。

安参考人(通訳) 三十人全員が拉致された日本人だというふうには聞いておりません。拉致された日本人を含めて三十人いるというふうに聞きました。

 でも、逆に考えてみますと、北に自分の足から来た人、今のように北朝鮮がよく知られる前ですけれども、みずから歩いてきた人がいるのかと考えたときに、私はいないと思います。

 しかし、懐柔されて、例えば金をやるから来ないかとか、そして一度ちょっと遊びに来てみないかとか、もちろんそういった意味で、だまされて自分の足で来たとは言えるかもしれませんが、やはりこれも拉致に入ると思います。そして、こうしたテロというのは、やはりうそをつかれて、誘導されて行われる行為ですから、もちろん戦術的なやり方の問題もあると思いますけれども、あくまでも拉致は拉致、テロはテロだと思っております。

西銘委員 それから、安参考人の資料の中で、横田めぐみさんが金正日の子供の教育をしていたという情報を、確証を得たというところがありますけれども、大分前のことになろうかとは思いますが、安参考人が記憶の限りで、この横田めぐみさんに関する情報、今現在も生きているという強い確証等を得ているような資料を見ているものですから、今現在知り得る限りの状態で詳しくお話しいただけませんか。

安参考人(通訳) 私が横田めぐみさんに直接お会いしたのは金正日政治軍事大学でのことでした。そして、その後、韓国に亡命しまして、めぐみさんの御両親にお会いし、また家族会など、運動をされている日本人の方にお会いすることによって、めぐみさんにより多くの関心を持つようになりました。

 特に、二〇〇二年九月十八日でしたか、十七日でしたか、金正日が拉致を認めたとき、日本のマスコミが私の方に大挙押しかけまして目が回るほどだったということ、そして、そのときのことは韓国政府の方でもよく認識しております。

 また、韓国の情報機関は長きにわたって反共産主義を率先して行ってきたわけですから、韓国の現在の対北朝鮮政策に対して、表立ってではありませんが、裏でそういったやり方を批判し、私に情報を提供してくださる方も多数おります。

 そして、日本のマスコミが私の方に大挙、インタビューなどを求めてきたときに、やはりこれも韓国政府の確認した内容でもありますが、横田めぐみさんは死んだと結論づけてはいけない、まだ北朝鮮で生きている、そしてその一月後に、私の方にまた別の情報として、金正日の子供たちのだれだかはわからないけれども、だれかを教えているという情報がありました。そして、これは日本でも確認されている確実なものだということで、直接私の耳に入りました。

西銘委員 安参考人は今でも横田めぐみさんは北朝鮮のどこかで生きていると確信しておりますか。

安参考人(通訳) 確信しております。

西銘委員 もう一点、曽我ひとみさんが手記の中で、親子が拉致された状況を詳しく報告しておりますが、あの文章を読みますと、三人組で、曽我ひとみさんは袋に入れられていくわけであります。お母様のミヨシさんは北朝鮮で聞いたところでは日本に残って元気という話でありましたが、お母さんのミヨシさんはどうなったと安参考人はお考えでしょうか。

安参考人(通訳) 私は北朝鮮にいたときの学校というのが、やはりテロを専門に訓練するところなので、スパイ教育養成機関として私も訓練を受けました。そして、全く予想もできなかった状況で人が拉致されるときは、人は本能的に、その防御本能ということすらも喪失している状態です。しかし、私どものような特殊訓練を受けた者は、やはり筋力も発達しておりまして、例えば木刀なんかで殴られてもびくともしません。しかし、実際、拉致の訓練で、例えば訓練生同士拉致をし合うといった訓練のときがありますが、そうしたときに、訓練をされる、拉致をされる方の立場にいる人間が、拉致をされる状況の中で気絶するということもあります。

 私のこうした訓練の経験から申し上げますと、その当時、曽我さんのお母様が拉致されるときに、恐らく大声で抵抗をされて、そして非常にそれを押さえつけるために打撃的な行為を加えたのではないかと想像できます。そうでもない限り、北朝鮮が曽我ひとみさんを認めて、そしてそのお母様を認めないというのは、全く納得がいかないからです。

 ですから、工作員のミスによって一人だけ拉致してきたということ、つまり、報告をするときに一人だけ拉致してきたという報告を行い、そして、ミスによってその目的を果たせなかったということは恐らく当局には報告されなかったがために、当局は一人だけしか発表できなかったのではないかと思います。

西銘委員 安参考人の報告の中で、北朝鮮の対日工作機関、清津の連絡所は今も存在をしている、また、新しい工作船の基地を構築しているという発言がありますが、現在も我が国で北朝鮮の工作員が活動しているのでしょうか。そして、新しい工作基地は、どこでどのような基地をつくっているのか。結びに御説明をいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 既存の、日本で工作活動を続けていた工作員とか、日本に入ってきた工作員というのは、現在も工作活動を続けています。しかし、現在も新たな工作員が日本に浸透しているかということについては、私は確信がないので確答をすることができません。

 しかし、金正日政権が崩壊するまで、日本に対する工作活動を放棄することはできないはずです。もし放棄するつもりがあるならば、莫大な予算がかかった清津連絡所を閉めているはずです。

 ですから、実際に解体されずに多くの金を注ぎ込んでいる清津連絡所、その新装備を持った基地の構築ということなんですけれども、この公開席上で私が、現在正確な資料がない状態なので何もお答えをお渡しすることができませんが、追って入手次第お伝えしたいと思います。

西銘委員 西岡参考人、安参考人、貴重な御意見、お話、本当にありがとうございました。

 終わります。

赤城委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原であります。

 きょうは、西岡参考人、安明進参考人、どうもありがとうございました。時間が余りありませんので、早速質問に入っていきたいと思います。

 この拉致の問題、だれが拉致の首謀者であったかということがまず問われるわけであります。工作員であります辛光洙、辛光洙はかつて韓国においてその取り調べに対して拉致は金正日から直接指示されたと証言しております。こういったこともありますが、安明進参考人においては、日本人拉致の命令者はだれである、このように思いますか。

安参考人(通訳) 三号庁舎の責任者である金正日が直接命令したと考えます。

松原委員 金正日がこの日本人拉致の命令者であるというふうなことでありますが、その根拠としては具体的にどんなものがあるのか。また、金正日のこれに関する具体的な肉声的なものもあれば御紹介いただきたいと思いますが、根拠は何かということを聞きたいと思います。

安参考人(通訳) 私は、北朝鮮におきまして金正日政治軍事大学校で教育を受けました。そこでは、三号庁舎、情報活動を行いますこの三号庁舎の命令者、トップに立つ者は金正日でありまして、一九七〇年代まで三号庁舎の活動をすべて彼が直接指揮していた。

 そういったことを、チュチェ思想、主体思想と呼ばれる基本的な北朝鮮の政権を支えるための哲学がありますけれども、それの教科書として、私はそうしたことを直接教育を受けております。

松原委員 そうなりますと、拉致の首謀者は金正日その人であると。

 であるならば、金正日が小泉総理との日朝の会談において拉致を全く知らなかったと言っておりますが、これはうそですか。

安参考人(通訳) うそです。

松原委員 うそであるということであります。

 次に、かつて朝鮮労働党の党員であった人間、人物で、韓国の国会議員になった人物はおりますか。おれば、その人の名前を教えていただきたい。

安参考人(通訳) 李哲禹という人がそうです。これは韓国ではすべての国民が知っている事実です。

松原委員 この李哲禹は今も国会議員をやっておりますか。

安参考人(通訳) はい、現役の国会議員です。

松原委員 また、安明進さんが工作員の先輩に、南下政策の中で指導した韓国内の人物で現在国会議員になった者がいる、こういう話を聞いたという話を聞きましたが、その人物はだれでしょうか。

安参考人(通訳) 前与党国会議員であった許仁会という人がそうです。

松原委員 今、六カ国協議が進んでいるわけでありますが、この六カ国協議において、韓国の対応というのは極めて北朝鮮寄りの対応をしているというふうに言わざるを得ないと私は思っております。韓国政府の対応は余りにも、北朝鮮の人権問題等を見ないふりをして、北朝鮮寄りの対応をしている。

 私は、今、安参考人がおっしゃった、韓国の国会議員の中にこういった北朝鮮の工作機関と何らかの関係があったと思われる国会議員がたくさん存在することがその理由にあると思いますが、このことについて、安明進さんの考え方、そして、実際、韓国のどの程度の国会議員、与党、野党ありますが、ウリ党の中の場合はどれぐらいの数の国会議員がこういった北朝鮮の工作員による影響を受けているのか、この辺について詳しく話を聞かせてほしい。

安参考人(通訳) 韓国の国家としての政策を樹立する立場にあります韓国与党の五分の一近くの人々、五分の一近くの議員が、過去において北の工作員からの影響を受けた人々であると考えます。

松原委員 大変に、もしその五分の一という数値が、与党ウリ党の五分の一の国会議員が北朝鮮工作員の影響を受けていたとするならば極めて重大な問題だとなりますが、もしこれの根拠として何かあるならば、なければ結構であります、根拠として何か安さんが思い当たるものがあるならば、それを御披露していただきたい。

安参考人(通訳) まず、韓国の検察と裁判所による発表数字があります。次に、三号庁舎と関連を持ち朝鮮労働党の過去の党員であってまた工作員とも関係のあった人々というものは、韓国で行われたある裁判の判決文の中にもこれが示されています。

松原委員 もしそうであるということならば、与党ウリ党の国会議員のかなりの人数が北朝鮮のこういった工作員の影響を受けているとするならば、今回の六カ国協議において、北朝鮮の意向を体した韓国が日本の拉致問題解決に対して前向きな姿勢をとらないのは一つの必然であると思いますが、いかが思いますか。

安参考人(通訳) 必然的です。

松原委員 ところで、こうした北朝鮮による韓国内の政界工作、当初は暴力革命を韓国において起こそうということが北朝鮮側の意図であったはずでありますが、いつごろからこの政界工作は始まったのでしょうか。

安参考人(通訳) 私が金正日政治軍事大学に入学したのは一九八七年三月だったのですけれども、偶然にもその年の六月二十九日、韓国の次期大統領に決まっていた盧泰愚さんが民主化宣言を行いました。そのときに、北の当局は、あっ、これからは南は民主化をしていくのだ、そうすると対南政策を今しっかり樹立しなければならないと考えました。そのときの対南政策の方針というのが、韓国の学生とか知識人の中に北に対する協力者をつくっていく、そしてそういう協力者が政党、政治活動に入っていくようにしむけていこうという方針をそのとき立てました。

松原委員 この北の工作員というのは、当時、韓国にどれぐらいいたと思われるか。また、日本には北の工作員はどれぐらいいたと思われるか。当時の数値で、もしわかるのであれば教えていただきたい。簡潔にお願いします。

安参考人(通訳) 私自身は、北の三号庁舎のトップというわけではありませんので、何人ということは明確にお答えすることはできません。韓国の方に何人いたかということについては、一番多い説としては五万人、十万人というような説もあったりしたのですけれども、そこまでいかないとしても最低限でも数百人は韓国に入っていたと思います。

松原委員 そうなると、当然、日本の政界に対するそういった工作もあり得た、このように思いますか。

安参考人(通訳) 工作機関の任務として当然やるべきことであったし、それをやった可能性はあります。

松原委員 次の質問に移りますが、市川修一さん、増元るみ子さんは七九年、八一年に死んだというふうに北朝鮮は言っております。しかし、その死亡時期以降、安明進さんは間違いなく二人を見たということに関して自信はありますか。

安参考人(通訳) 市川さんにつきましては、私自身がたばこをもらって吸ったということがありますので確言ができますけれども、増元さんとかほかのことについては、増元さんも見ましたけれども、確言できるのはそれぐらいです。

松原委員 きょうは、増元さんの関係の方も、市川さんの関係の方も来られておりますから、恐らく今も北朝鮮で生きている、救出をしなければいけないという思いの中で今の安さんの発言を聞いていると思います。

 また、田口八重子さんは、これは、死亡したと北朝鮮が言っている後に生きているという話を教官から聞いた、これも間違いないですね。

安参考人(通訳) 我々の教官は、学生に意味もないような冗談は決して言いません。生きていると、確実にそう言いました。

松原委員 寺越さんは北朝鮮は拉致ではないと言っておりますが、私たちはこれは拉致ではないかと思っております。このことについて、同じように、工作部の先輩が寺越さんらしき人物を拉致したことを言っており、そのことに関して、安さんも、寺越さんは間違いなく拉致された、このように確信を持っておられますか。

安参考人(通訳) 私の教官が自分の口からおれが拉致してきたんだと言いましたから、私はそれを信じるしかないです。

松原委員 であるならば、北朝鮮側が言っているこれらのさまざまな事柄は全部うそである、こういうふうになると思いますが、これは全部うそであると安明進さんは思いますか。

安参考人(通訳) 北が認めているのは、日本にばれてしまって、最低限認めなくてはならなくなったことだけです。それを認めているので、そのほかの大多数についてはうそをつき通していると思います。

松原委員 日本に戻ってまいりました被害者の蓮池さんについてでありますが、安明進さんは、蓮池さんを後の金正日政治軍事大学の組織の中の講堂で見たと言っておりますが、それは事実ですか。

安参考人(通訳) はい。確かに金正日政治軍事大学の講堂で見ました。

松原委員 安さんは、このことについての自分の記憶には自信がありますか。

安参考人(通訳) 記憶に自信があります。

松原委員 もし蓮池さんがそこにいたとすれば、彼は他の拉致被害者や特定失踪者について多くの情報を持っていると思われますが、いかが思いますか。

安参考人(通訳) 当然、多くの人々について情報を持っており、それの証言も可能であると考えます。

松原委員 つまり、彼は、今まだしゃべっていない拉致被害者や特定失踪者についての多くの情報を、日本国内に戻っているわけでありますが、いまだにそれを胸の中にしまっていて、それは発表していない、公にしていない、本当はまだ彼はたくさんの情報を持っている、このように思われますね。

安参考人(通訳) 私はそう考えます。

松原委員 安さんも危険を冒してこうやって国会で証言しているわけでありますが、そういった安さんの立場から見て、何か蓮池薫さんに対してのメッセージがあったら、簡潔におっしゃっていただきたい。

安参考人(通訳) 蓮池さんは、自分自身は金正日政治軍事大学にいたことがないと言っているようですけれども、もちろん、当時は違う名前でした。朝鮮労働党直属政治学校というのが当時の名称です。

 私自身は、彼がそこにいたのを確実に見ています。そして、今現在、私は、北朝鮮を怖がらず、恐れず、日本の国民のために証言できることを蓮池さんにしてほしいと思っています。

松原委員 経済制裁は、そのメッセージ性において、また北朝鮮に対する我が国の毅然たる対応として、それは単に経済制裁の効果だけではなくて、政治的な意味もあって極めて効果があるとお考えですか。

安参考人(通訳) それは、政治的にはもちろん金正日自身の政治生命を絶つということにもつながりますので、非常に大きな効果があると思います。

松原委員 今、北朝鮮の国会議員が日本との間を自由往来しておりますが、許宗萬等を含む国会議員は、北朝鮮において、こういった拉致の問題も含め、さまざまな工作に関係をしている可能性はあると思いますか。

安参考人(通訳) 名前を一つ一つ挙げて、この人がこうだというふうなことを私は申し上げられませんけれども、彼らが関連があるのは確かです。

松原委員 そういった人物を、きょうは安さんに来ていただいておりますが、この委員会に参考人で呼ぶことは、日本の立場にとっては極めて有意義なことだと思います。ぜひとも、きょうはこの場では安明進さん、西岡さんに来ていただいたわけでありますが、今言った北朝鮮の国会議員の許宗萬を含む、そういった人物にもぜひ来てもらいたい。

 また、最後の質問でありますが、私としては、来てもらいたいということをメッセージで言うこと自体、意味があると思います。安さん、どう思いますか。

安参考人(通訳) そのとおりです。それは、金正日本人に対しての圧力にもなりますし、悪魔である金正日に協力している者たちに対する圧力にもなり得ると思います。

松原委員 どうもありがとうございました。

赤城委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 もう時間がありませんので、早速入らせていただきます。

 まず冒頭、西岡参考人にお尋ねをします。

 西岡参考人は二〇〇一年の三月に、亜細亜大学アジア研究所というところから、「朝鮮総聯の対北朝鮮送金と税金問題」というレポートを出していらっしゃいますが、その中で、日本の税務当局と朝鮮商工会が、要は税務については団体交渉をして、税金をまけてもらっている、減免してもらっている。そして、それをまけてもらって、要は潤沢になった資金が北朝鮮に流れているんだ、このようなことを書かれておりますけれども、この点について、まず冒頭、事実関係を教えていただきたいと思います。

西岡参考人 そのとおりの事実関係を確認しております。これが朝鮮総連が出している冊子であります。そこに、朝鮮語ですけれども、五項目の合意を国税当局としていると、このページに書いてあります。

渡辺(周)委員 つまり、これは朝鮮総連と日本の税務当局の話し合いの結果、このような合意があった、そしてそのような優遇措置が結果的に北への送金という形になっている、こう考えてよろしいですか。

西岡参考人 私は、国税当局からも情報を得ておりますが、総連が話し合いをしたという時期に、実際、総連の幹部と国税当局の間で話し合いがあったこと、それも社会党の国会議員の議員会館の部屋であったということまで確認しております。

渡辺(周)委員 これは、現在もまだこうした優遇措置が続いている、このように考えていてよろしいでしょうか。

西岡参考人 北朝鮮及び朝鮮総連は、続いていると言って宣伝をしていることは間違いありません。

渡辺(周)委員 この点については、また改めて、別の委員会あるいはこの委員会等でも議論をしたいと思います。

 それで、安参考人、先ほど冒頭にも触れられましたけれども、こうして日本から送られた工作資金あるいは工作装備、こういったものが供給されているというふうにおっしゃられました。北の工作員養成に使われているという実態あるいはこの事実を何か御存じでしたら、お答えいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 日本からの工作資金が入ってくるということは、例えば昔の三池淵号、今は万景峰号と言われていますが、それを通じて多くの資金が入ってくるということ、そして例えば私どもが使っている装備、船のレーダーなどが挙げられますが、五十マイル用、二百マイル用、百マイル用とありますが、これは日本の古野社というところで製作されているものであります。

 そして、ロラン受信機、アクアラング社がつくっている潜水服、潜水装備などもすべて日本製です。そして、無線通信機、ナショナル製の無線も多かったですし、コンピューター、私どもが使っていたものも、画面が例えば日立といったものもありました。ですから、工作機関で使われているすべての装備は、九〇%が日本製だと考えていただいて結構です。

渡辺(周)委員 つまり、これはどういうルートで北へ渡っているのか。いろいろ、万景峰号であるとか、あるいは第三国を経由していろいろ送られていると思いますけれども、今、経済制裁という政治判断を下さなくても、今ある、現行行われていることをさらに厳しくやるだけで、かなりの北朝鮮のこの工作活動をとめる効果があると考えてよろしいですか。今、現状できることとして。

安参考人(通訳) はい。日本から北朝鮮に工作装備を送らなければ、やはり工作機関としては、装備などによる混乱を来し、工作活動を中断せざるを得ないでしょう。

渡辺(周)委員 これは非常に重要な意見で、なかなか政府は経済制裁の決断ができません。だとすれば、今、我々が、現在行われていることを厳しくする、あるいはとめるということによって、かなりのダメージを与えられるというふうな御意見だったと思います。

 こちらがほほ笑めば北もほほ笑む、こちらが我慢すれば北朝鮮がいつかはこたえてくれる、こちらが心を開けば、向こうも、北もいつかは心を開いてくれる、こんな日本型の美学は通用しないだろう。私たちはかなり厳しい姿勢を示さなければいけないと思います。

 そうした中で、一つ、この工作資金にも関連しますけれども、いわゆる覚せい剤、それからにせ札、こういうものが日本を含めてあらゆる国に持ち込まれている。これはどのようなシステムでつくられて持ち出されているのか、この辺について御存じでしたらお答えいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 北朝鮮は、麻薬やにせ札を国ぐるみで組織的に党の指示によってつくったりしています。そして、二〇〇〇年初めまでも、三号庁舎の方では、工作機関に先駆けて、日本とか東南アジアの方に大量の麻薬を販売していました。そして、その証拠として、二〇〇〇年に南の海で南浦連絡所所属の船が麻薬の取引をしていたところ、日本の攻撃を受けて沈んだことがあります。

 しかし現在は、三号庁舎の方で、やはり日本への侵攻そのものに備えて非常にそういった作戦を強化しているので、どういったルートを通じてでも、何としてもやはり日本に入り込もうとしています。

 失礼いたしました。もう一度言います。

 日本が警備を強化しているので、三号庁舎のみならず、北朝鮮の保衛部とか保衛司令部などを通じても日本に入り込もうとしています。

渡辺(周)委員 保衛司令部から入り込もうというのは、これは海上で来るのですか、それともどこかの国を経由して来るのですか。例えば覚せい剤ですね、麻薬。

安参考人(通訳) 最近は北朝鮮の船舶に対する警備が非常に強まっているので、ロシアのマフィアと組んで、ロシアを経由して北海道を通じて入ってくるというふうに聞いております。

渡辺(周)委員 非常にそれはショッキングな話で、かなり日本も海上を警備しておりますが、そうなると、新しいまたこれは判断を、新たなルートとして考えて、重大にこれは考えなければいけないなと思います。

 それからもう一つ、にせ札なんですが、大変緻密なにせ札が韓国の国内で出回っている。例えばドルですね。これなどは北朝鮮の技術でそこまで精密なものがつくれるのだろうか、どこかの国の技術支援があるのではないかと思いますが、その点についてはいかがですか。

安参考人(通訳) 私がどの国かということを正確に把握することはできませんが、北朝鮮が非常ににせ札を上手につくるということは把握しております。

渡辺(周)委員 ぜひこの点については、また何かわかっていれば改めて教えていただきたいと思います。

 時間もございませんので、あと二点お尋ねをしたいと思いますが、先日、先般日本に帰国をした平島さんという方が、日本に帰ってこられてしばらく生活をしておりましたけれども、突然思い立ったように北朝鮮に中国経由で帰ってしまいました。こういうことを考えますと、だれかがこれはメッセージを送って、つまり、朝鮮総連が平島さんにたび重ねてメッセージを送ることによって、結局帰国せざるを得なかったんじゃないか。これは北の謀略ではないかと思いますが、このことについて、このニュースを知っていましたら御感想を聞かせていただけますか。

安参考人(通訳) はい。そのニュースについては正確に知っております。また、私は個人的に少し被害者でもあります。

 北朝鮮の北部の地域の方では、日本と直接電話通話をしたりします。そういった電話を通じて、日本にいる脱北者たちに脅威となるような行いを十分にやることができます。

渡辺(周)委員 つまり、そうした人たちが次なるターゲットをねらって、平島さんが持っているであろう情報をもとに、また北朝鮮への帰国を促すという危険性が高いというふうに考えておいてよろしいですね。

安参考人(通訳) まず、平島さんが北朝鮮に行って英雄のように扱われるわけですから、ほかの人たちも誘惑を感じると思います。また、平島さんは日本にだれだれがいたという情報を持っているわけですから、北朝鮮に子供を置いてきた人たちはやはり恐怖を感じていると思います。

渡辺(周)委員 もう時間がありません。

 最後にもう一度安明進さんに伺いたいと思いますが、今回の六カ国協議でまさに露骨な拉致外しを、北朝鮮を含めた国々、アメリカ以外の国々はしてきます。

 ここでやはり我が国が経済制裁を発動して、あるいは先ほど申し上げた厳しい北への現行の法制を強化することによって、これは我が国独自で本当に進んでいかなければならない。

 その点につきまして、最後に我が国の国民に対してメッセージを送っていただければ、それを伺いまして質問を終わりたいと思います。

安参考人(通訳) 北朝鮮に対する経済制裁というのは、悪魔金正日への脅威であって、二千万人の北朝鮮住民を生かす道であることをどうぞ正しく御判断ください。

渡辺(周)委員 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず冒頭に、お二人の参考人、西岡参考人そして安参考人、本当に困難な環境の中で、それぞれ国籍は異なっておられますけれども、これまで国家テロと真っ正面から闘ってこられたお二人の勇気に、心から敬意とそして感謝を申し上げたいというふうに思います。

 また、きょう、お暑い中傍聴に来ていただきました横田早紀江さん初め傍聴の皆さん、本当に御苦労さまでございます。

 時間がございませんので、核心からずばりと御質問させていただきたいと思います。

 調査室でつくっていただきました参考資料の中で、西岡参考人が安明進参考人から伺った、こういうことでお話をされています。七六年ごろ、金正日が、工作員現地化の教育のために現地人を連れてこい、こういう命令を下して、以後拉致が本格化したというふうにされている。最初はむやみやたらに連れてきたんだけれども、精神的、思想的な理由で使えない人もおり、そこで日本国内の協力者に頼んで人の選定をしてもらった、このように西岡参考人がおっしゃっておられるんです。

 安参考人に直接きょうお伺いしたいと思うんですけれども、ここで言う日本国内の協力者というのはいかなる人物、いかなる組織であるのか。そして、人の選定というのはどのような形で行われたのか。この二点についてお伺いしたいと思います。

安参考人(通訳) 日本において北に協力活動を行うことのできる者というと、まず北の工作員、それからまた、総連に属する人の中で、北に家族、親戚がいるために人質をとられた形となって、北の命令を受けたら断れないという人々がそうした活動を行うこともあり得ます。それからまた、工作員の中にも、自分で実際に何かの行動に出るのではなく、日本国内の犯罪者などに金を渡して何かをさせるということもあるであろうと私は確信をしています。

 それから、拉致の対象者についてなんですけれども、北側がこれからも日本国内で拉致を続けていこうとするならば、余り騒ぎが大きくならないような人を選ぶと思います。その人選、どのような対象者を選ぶかということの方針が変わった当時、私は現場にいたわけではありませんので確実にはわかりませんけれども、当然考えることは、親戚縁者などのない人、つまり、いなくなっても余り一生懸命探す人がいないような人、それから目立たないような性格でひっそりと暮らしているような人であろうと思われます。

長島委員 西岡参考人、何か補足するところはありますか。

西岡参考人 拉致には、ですから二つのタイプがある。ゴムボートが海岸にあってすぐ乗せられていったのはむやみやたらに選ばれたケースではないか、そして海岸以外のところからおびき出されたケースは協力者がやったケースではないか、そのように私は見ております。

長島委員 先ほど、清津の工作機関の連絡所がまだ解体されていない、現存している、こういうお話がありましたけれども、今もなお拉致行為というのは日本国内で継続され、しかもそれに対して協力をしている日本国内にいる人たちも引き続き現存しているのか、その点の観測を西岡さんにぜひお聞きしたいと思います。

西岡参考人 韓国に侵入するため、あるいは海外で韓国に対する工作をするために拉致をしていたわけですが、韓国の状況が先ほど来議論してきたような状況なので日本経由の比重が低くなっているということを考えると、日本に対する、麻薬とか覚せい剤、資金や装備をとるとか、あるいは在日米軍基地や自衛隊の監視とかいうことはありますが、拉致を今しているかどうかについては、今もできる状態にあると思いますが、私は、最近は余りないのではないかと判断しています。

長島委員 今、もちろん拉致の問題は大変深刻であります。そして、私たちは韓国の拉致被害者の方々とやはり連携をとっていかなければならない、こう思っているわけですけれども、韓国国内、先ほど来お話がありましたように、大変な親北の傾向、先ほどの西岡参考人の言葉をかりると、政治的、思想的に真っ二つに分かれている、こういうことであります。

 安参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど来西岡参考人がおっしゃっていた、真っ二つに分かれていて、ただし保守派を中心に、かなりそういう今の盧武鉉政権に対してフラストレーションを感じている人たちがたくさん韓国にもおられる、そういう人たちと私たち日本政府は、あるいは日本の心ある人たちは連帯をすべきだ、私も全く同意見なんです。同時に、先ほど質問にお答えする中で、韓国の政界に対する工作、あるいは政官界に対する工作と言ってもいいと思うんですけれども、そういう工作もかなりの密度で進行している。

 一説には、もはや保守派も何もなく、韓国の国民はもうあちら側に行ってしまった、もう我々が連帯する相手もほとんどいないんだというような意見も聞かれるんですけれども、韓国の国内と日本とを行ったり来たりされている安参考人の実感として、まだまだ韓国の国民は捨てたものじゃないというような、そんな観測を持っておられるのか、率直なところをお聞きしたいと思います。

安参考人(通訳) 今現在、韓国の国民は北の正体について知り始めている、しっかりとした知識を持ち始めているという段階にあるんですけれども、むしろ一部の政治家の方がその反対方向に走っているという状況です。そうしたことが太陽政策である、北をソフトランディングさせる方向であるというふうに韓国政府は言っているんです。

 しかしそれは、実際には悪魔を生き延びさせるということに直結することでありまして、北朝鮮二千三百万の人民に苦しみをなめさせ続けることだと思います。そしてまた、それは、韓国が莫大な国防費をいつまでもいつまでも使い続けなければならないということでもあります。

 そうした北側の実情というものを韓国民に正確に知らせる役割を担うべき韓国のマスコミ、放送局などのトップの方にも、実は左傾化した人々が非常に多いんです。ですから、今は韓国民に真相を知らせる方法さえなくなりつつあります。そうしたマスコミの中でも比較的真実を伝えようと努力している朝鮮日報、東亜日報などのマスコミに対して、露骨な圧迫が加えられるような状況です。

長島委員 韓国の国内は大変深刻な状況だというふうに思っておりますが、その韓国とアメリカと、やはり、先ほど南方三国同盟というお話がありましたが、核、拉致、ミサイル、この三つを包括的に解決するためには、この三国の連携がどうしても必要だと思うんですね。

 昔、九八年、九九年、元国防長官だったペリーさんを中心にペリー・プロセスというのがあったと思うんですが、あれは基本的には核やミサイルをターゲットにしていましたけれども、やはりこの拉致の問題、人権の問題で日米韓が連携をとっていく必要がこれから出てくるというふうに思うんですが、そこで一つかぎを握るのが中国の動向だと思うんですね。

 ちょっと中朝国境の脱北者の状況についてお尋ねをしたいというふうに思うんですが、まず一つ、事実の問題として、把握をしておられればお答えいただきたいんです。

 国境付近に、三十万人と呼ばれているぐらいの脱北者の方たちが中朝国境におられるというふうに数字がありますけれども、今、その脱北者の数が大体どのぐらいなのか。それで、その方たちの数というのは毎年ふえてきていると言われておりますけれども、実態はどうなのか。それから、その方たちの生活環境、衛生状況といったものはどんな状況なのか、もし御存じであれば安参考人にお答えいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 北朝鮮を脱出して、今現在中国に入っている人が何人いるかということは正確にはわかりません。彼らは隠れて暮らしているんですから。

 しかしながら、昨年十一月に金正日にまで上がった報告書があるんですけれども、会寧という場所の場合、それによりますと、女性はみんな中国の方に逃げてしまった、だから電信柱と男だけが残っているというような報告が金正日に昨年上がっています。

 それからまた、北朝鮮の警察関連の団体、保衛部などが、住民のうちでの行方不明者が七万人に上っているというようなレポートを作成したということもありますけれども、正確な数はわかりません。

長島委員 その数はともかくとして、相当悲惨な生活状況にあるというふうに言われておりますし、あの地域はたしか朝鮮族の人たちがたくさん住んでおられる。その朝鮮族の皆さんと、恐らく韓国の国民の方々も相当程度連絡があろうかと思うんですね。その状況に対して、韓国の国民がいわば人道、人権の観点から立ち上がっていくというような、そういう傾向は実際あるのかどうか、これが一つ。

 もう一つ、最後に伺いたいのは、これは西岡参考人に伺いたいんですが、中国政府が、結局、脱北、命がけで自由を求めて出てこられた方々を不法滞在者ということでそのまま強制送還しているわけですけれども、これは中国も批准をしている難民条約にももとる行為だというふうに思っているんです。その辺のところの西岡参考人の解決策といいますか、お考えを最後にお伺いしたいというふうに思います。

 まず、安参考人から。

安参考人(通訳) お話にありましたように、脱北者がどれほど悲惨な生活をしているか、直接自分の目で見た韓国人は、彼らのために何かをしようと考えます。しかしながら、公的には、韓国の政府機関が脱北者をもうこれ以上受け入れたくないという立場になってきています。

西岡参考人 我々は、北朝鮮は制裁をして圧力を加える対象だと長島先生も先ほどおっしゃいましたけれども、脱北者の問題については北京政府も圧力を加える対象だと思います。彼らは、自国の人権問題があるので、北朝鮮の人権問題に触れられたくないと思っている。

 これは体制の問題ですから、自由民主国家ではない独裁体制に対しては、やはり圧力を加えて、人権を守れと強く言うべきだし、人権を守らない国が国連の安保理事会の常任理事国でいいのか、我々は日本と交代したらいい、そういうことまで言うべきではないかと私は思っています。

長島委員 どうもありがとうございました。

赤城委員長 次に、菊田まきこ君。

菊田委員 民主党の菊田まきこでございます。

 本日は、西岡先生、そしてはるばる韓国からお越しをいただきました安明進さん、御両人から意見陳述をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私の出身は新潟県であります。新潟は、拉致被害の現場となり、万景峰号が入港するところであります。横田めぐみさん、曽我ひとみさんのお母さんの曽我ミヨシさんは、拉致されたまま、いまだ帰国できずにおります。特定失踪者として認定をされました藤田進さん、大沢孝司さん、後藤久二さんも新潟県民です。

 今、新潟県庁の敷地には、拉致問題の解決を求める大きな横断幕が掲げられました。そして、来月十日には、北朝鮮への経済制裁を求める一万人国民大集会が新潟市で開催される予定で、自民党、公明党、そして私たち民主党も、救う会新潟の皆さんと協力をしながら、ただいま準備を進めているところでございます。

 私たち新潟県民は、県知事を先頭にして、横田めぐみさんたちの救出と拉致問題の完全解決のために力強く行動していることをぜひここにお集まりの皆様方に御理解をいただき、さらなる御支援を冒頭お願い申し上げたいと思います。

 それでは、時間が限られておりますので、私の質問は、万景峰号についてお伺いをしたいと思います。

 ちょうど、きょうの朝八時三十九分に、万景峰号が新潟港へ入港いたしました。これでことしになりまして八回目の入港となります。

 私は、まず安明進さんにお伺いをします。万景峰号は、表向きは貨客船だとされていますが、金正日政権の拉致などを行う工作機関とも関係があるのではないかと一部では言われております。この船は北朝鮮にとって一体どういう位置づけの船なのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 今お話のあった万景峰号というのは、前の三池淵という船があったんですけれども、それと同じ位置づけでありまして、もともと統一戦線部、工作部に属する船です。

 万景峰号の船長というのは、一応、船長という名前の人はいますけれども、その人が実際の船長というよりは、そのバックで指揮をする指導船長というのがいるんですけれども、それは統戦部、統一戦線部の方の人間です。

菊田委員 ただいま大変衝撃的な発言がございましたけれども、この万景峰号に乗ってくる船長、表向きの船長と実はそうではない船長がいるということ。それから、統一戦線部の人間ということは、先ほどから質疑の中に三号庁舎という発言がありましたが、これはまさに金正日が命令者であり、指揮をとり、そして責任者であるこの三号庁舎の所属であるということと理解してよろしいんでしょうか。そして、それがけさ新潟港に入った万景峰号の事実、現状なのでしょうか。もう一度確認させてください。

安参考人(通訳) はい。確かに三号庁舎の参謀部が日本に入ってきた船を指示しています。

菊田委員 もし差し支えなければ、その根拠をお示しいただけますでしょうか。

安参考人(通訳) 三号庁舎に所属している船であるということを私が確信している理由は、私が日本で、ある協力者の協力のもとに、万景峰号に乗っている人間の写真を見て確信を持ちました。私が出ました金正日政治軍事大学の第十五期の先輩が、南浦連絡所というところにもともとはいたんですが、その船に乗っています。

 それからまた、万景峰号が北朝鮮の統一戦線部に所属している船舶であるということについては、韓国の情報部も資料を持っています。これについては、だれもこれを否定することはできないと思います。総連の人だってこれにノーとは言わないでしょう。

菊田委員 万景峰号に乗っていた人が、安明進さんが工作員をやっていたときの先輩の工作員が乗っていた、乗っているということですね。大変驚きました。

 それでは、貨客船というのは実は表の顔で、これは言うならば、工作員が乗っている工作船と言うことができるのではないでしょうか。この万景峰号は、どんな目的を持ち、またどのような任務で来ていると考えられますか。ことしで八回目の入港というふうに言いましたが、年に二十回から三十回の割合で新潟には入港している現状でございます。お答えいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 貨客船ということになって、人や貨物を運ぶということになっていますけれども、その背後には邪悪な目的が隠されています。いまだに三号庁舎に対して日本から多くの資金を運んでいっています、工作用の資金となるものを。それからまた、工作員に対する対日活動の教材となる日本の本なども持っていっています。それからまた、日本の新聞や雑誌などに出ている記事、情報を総合して、これから先、日本に対してどのような戦略をとるべきかという方針を立てるための情報なども運んでいます。

菊田委員 あなたは、万景峰号が北朝鮮と日本の間をこのように自由に往来していることを、そしてまた、これからも往来することをどのように考えますか。

安参考人(通訳) 北朝鮮の工作機関所属の船が自由に日本に入ってくる、北朝鮮の参謀部の人間が日本に入ってくるということについて、私は、どうしてそんなことが起こり得るのか理解できません。日本は、北朝鮮を相手に交渉を行おうという立場で、実際に交渉も行っているのに、今現在、こういうふうな状況であるならば、最初から交渉にならない。負ける交渉ではないでしょうか。

 私、個人的に率直に申しますと、悪を生き残らせる行為であると考えます。

菊田委員 それから、先ほど先輩議員の質問の中に、にせ札とか覚せい剤、麻薬というお話がありましたけれども、こうしたものがこの万景峰号に搭載をされて運び込まれているということがあるのかないのか、お聞かせをいただきたいと思います。

安参考人(通訳) 今現在は、万景峰号が日本当局の厳密な、厳しい取り締まりのもとにある、監視を受けておりますので、そうしたものをこれに載せるようなまねはやはりしないと思います。もちろん、過去においては万景峰号ににせ札や覚せい剤が載せられていたという直接的な証拠はありません。しかしながら、日本に入ってきている工作員などを通してそういうことがあったであろうということがわかります。工作員の交換など、人員交代などはしていたと思います。

菊田委員 ただいま工作員の交換という話がありましたけれども、もう少し詳しくお話しいただけますでしょうか。

安参考人(通訳) 船舶が入港中に、船舶が入ってくるときには船員として船に乗って入ってきて、潜水服を着て船の下に潜ってしまって、それで日本にもともといた工作員と入れかわるという方法もあります。そしてまた、今よりも前、昔はもっとすごく取り締まりが緩くて、二十四時間の自由時間が船員にも許されていたので、自由に入れかわるということもできました。

菊田委員 私の質問の時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきますけれども、大変ショッキングな発言、しかし安さんから具体的にお話をいただきまして、大変ありがとうございました。

 かつて、この新潟からこの万景峰号に乗って、地上の楽園と言われた北朝鮮に多くの新潟県民が渡っていったわけでございます。しかし、本当にそこに渡った人たちが幸せに暮らすことができたかどうか、それは今を見ればすべてがわかるわけでございまして、また私たち今県民を挙げて横田めぐみさんの救出のために一生懸命活動しておりますけれども、その同じ新潟で、このような工作行為を見過ごすようなことを平然と続けていってよいのかどうか。私は、改めて政府に対して、しっかりとした経済制裁を行い、また万景峰号の入港拒否を訴えてまいりたいと思います。

 きょうは、大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。これで質問を終わります。

赤城委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 安参考人、それから西岡参考人、きょうは本当に御苦労さまです。

 私、最初に安参考人にお伺いいたしますが、私たちは、拉致問題において、北朝鮮政府の特殊機関の調査への介在が全容解明の重大な障害となっているというのを繰り返し指摘をしてまいりました。安参考人は、金正日政治軍事大学で特殊工作員として教育訓練を受けてこられたわけですが、その北朝鮮の特殊機関、これはどういうものなのか、そして現在の日朝間の拉致問題解決の交渉についてどんな影響を与えているのか、詳しく説明いただけたらと思います。

安参考人(通訳) 工作機関と言われている三号庁舎というのは、北朝鮮で最も莫大な予算を使い込んでいる機関であります。そして、私が卒業した金正日政治軍事大学というのはスパイ養成学校でありまして、日本の脅威となる、また国際社会で糾弾しているテロを支援することができる人たちを数千人と養成している機関であります。

 そして、先ほどの御質問はどんな機関かという御質問だったと思うんですが、余りいい例ではないんですけれども、私の能力をもってして、例えば手元に一万円があり、そして日本のスーパーマーケットに入ったとします。スーパーマーケットと薬局に入れば、あらゆる工作に必要なものをすべて買い込むことができますし、爆弾もつくることができます。

 そして、爆弾をつくった後に、それをどの装置に入れたらより効果的に破壊力を増すか、どのように仕掛けたらいいかということも十分承知しておりますので、私が本当に決心さえすれば、死傷者をたくさん出すようなこともできます。しかし、私はそれを悪いことだ、悪だと考えているので、決してそういうことはいたしませんが、そうした能力を持った者が数千人と日本に入国してきた場合、また悪いもくろみを持って来た場合どのようなことが起こるか、想像できます。

 しかし、そういった人間が二人、韓国に侵入したときに、韓国は三十万人の大軍をもってして三カ月捜したにもかかわらず、最終的には見つけることができませんでした。そういった同じ出来事が日本で起きた場合、日本がいかに不安に陥り、経済損失が大きいかということは容易に想像できます。

赤嶺委員 今特殊機関についての御説明があったわけですが、それで、現在、拉致問題について日朝間で交渉が進められているわけです。その拉致問題についての交渉に当たって、今、安参考人が御説明された特殊機関、これはどんな影響を与えているとお考えですか。

安参考人(通訳) 全く残念といいましょうか、もどかしいというのは、北朝鮮の拉致問題の交渉の主体というのは北の外交部ではあるわけなんですけれども、でも、実際は工作部署があり、そこで行っていたわけです。ですから、本来なら彼らがその工作をしたということを認めるのが筋だと思うんですけれども、そういうことはあり得ないと思います。彼らが自分たちの工作部に損害になるようなことをするとは絶対思えません。

赤嶺委員 今、交渉に当たっている外交部というお話もありましたが、そこで、これは安参考人、それから西岡参考人、お二人に伺いたいんですが、この拉致問題の交渉を進めていく上で、私たちは、北朝鮮側の交渉担当者を、いわば特殊機関にも真相解明のメスを入れることのできる十分な権限と責任を持った人物にかえて、交渉の質を抜本的に強化するということを日本政府は強く求めていくべきである、このように考えているわけですが、お二人の参考人はどういう御意見でしょうか。

西岡参考人 その共産党の主張は、金正日を政権から外せという主張とイコールだと思います。金正日が三号庁舎の責任者ですから。

 金正日をも査察できる人間が個人独裁国家の北朝鮮にはいないということで、御意見は、論理としては正しいと思いますけれども、つまり、それはアメリカのブッシュ政権よりもっと強い反金正日的な意見だと思います。

安参考人(通訳) 私のように、工作機関で働きながらも自由世界主義のことをよく知っていて、金正日が悪だということをよく知っている先輩、後輩が北朝鮮にはまだ数千人います。ですから、いつかそのうちのだれかが金正日政権を打倒してくれるのではないかと信じております。

赤嶺委員 時間が参りましたけれども、私たちはその拉致問題も対話を通じて、交渉を通じて、粘り強く進めていくべき、そして両国間には日朝平壌宣言もあるわけですから、今後も対話による解決、そして交渉の障害になっているものを取り除くという形で、障害を克服していくという形で、粘り強く進めていきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

赤城委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十一分散会


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