衆議院

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第4号 平成17年11月17日(木曜日)

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平成十七年十一月十七日(木曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大前 繁雄君

   理事 近藤 基彦君 理事 水野 賢一君

   理事 宮路 和明君 理事 松木 謙公君

   理事 松原  仁君 理事 池坊 保子君

      小野寺五典君    鍵田忠兵衛君

      河井 克行君    木村  勉君

      鈴木 馨祐君    薗浦健太郎君

      根本  匠君    平田 耕一君

      福井  照君    松本 和巳君

      矢野 隆司君    渡部  篤君

      荒井  聰君    北橋 健治君

      西村 真悟君    西村智奈美君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 沓掛 哲男君

   内閣官房副長官      長勢 甚遠君

   内閣官房副長官      鈴木 政二君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   外務大臣政務官      伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  荻野  徹君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題連絡・調整室長)

   (内閣府拉致被害者等支援担当室長)        江村 興治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  菅  義偉君     河井 克行君

  高木  毅君     下村 博文君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     大前 繁雄君

  下村 博文君     松本 和巳君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     木村  勉君

  松浪 健太君     鈴木 馨祐君

  渡辺 博道君     平田 耕一君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     河井 克行君

  鈴木 馨祐君     矢野 隆司君

  平田 耕一君     渡辺 博道君

同日

 辞任         補欠選任

  矢野 隆司君     松浪 健太君

同日

 理事平沢勝栄君同月一日委員長就任につき、その補欠として赤城徳彦君が理事に当選した。

同日

 理事渡辺博道君同日理事辞任につき、その補欠として大前繁雄君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十一月一日

 一、北朝鮮による拉致問題等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事渡辺博道君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任及び私の委員長就任に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      赤城 徳彦君    大前 繁雄君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

平沢委員長 この際、麻生外務大臣、安倍内閣官房長官、沓掛国家公安委員会委員長、長勢内閣官房副長官、鈴木内閣官房副長官、塩崎外務副大臣、伊藤外務大臣政務官及び山中外務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 このたび外務大臣を拝命した麻生太郎であります。

 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たりまして、平沢委員長初め委員の皆様、理事の皆様方にごあいさつをさせていただきたいと存じます。

 北朝鮮をめぐっては、拉致問題を初め、核、ミサイルの問題などの諸懸案が存在し、その解決は日本外交の最優先課題であります。日朝平壌宣言に基づきこれらの諸懸案を包括的に解決し、北東アジアの地域の平和と安定に資する形での日朝国交正常化を実現することが政府の一貫した方針であります。

 拉致問題につきましては、生存者の帰国、安否不明の拉致被害者の方々の真相究明、拉致容疑者の引き渡しの実現に向け、全力で取り組んでまいります。

 核問題につきましては、六者会合の共同声明を踏まえ、北朝鮮による核放棄を迅速かつ着実に実現するため、引き続き関係国と緊密に連携しつつ最大限の努力を傾注してまいります。

 委員の皆様の御指導、御協力を引き続き賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。

平沢委員長 次に、安倍内閣官房長官。

安倍国務大臣 内閣官房長官の安倍晋三でございます。

 拉致問題に関し、平沢委員長初め各委員の方々の御指導、御鞭撻を賜りながら、官房長官として全力で拉致問題に取り組んでまいりたいと思います。

 御案内のとおり、先般約一年ぶりに行われた日朝政府間協議、またその後に行われた第五回六者会合において、我が国より、日朝間の懸案事項である拉致問題を解決することの重要性を提議いたしました。

 その際、安否不明の拉致被害者がすべて生存しているとの前提に立って、被害者の即時帰国、真相究明及び容疑者の引き渡しを強く求めると同時に、拉致問題に進展がなければ政府として厳しい対応を決断することになる旨、改めて伝えました。さらに、いわゆる特定失踪者の問題についても、改めて情報提供を求めました。次回の協議では、拉致問題についてしっかりとした進展がなければならないと考えております。

 また、帰国された拉致被害者とその御家族については、順調に日本での生活への対応や自立が進んでおられますが、今後とも、関係省庁、関係地方自治体とも緊密に連携協力して支援していく所存でございます。

 皆様方におかれましては、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

平沢委員長 次に、沓掛国家公安委員会委員長。

沓掛国務大臣 このたび国家公安委員長として治安維持の重責を預かることとなりました沓掛でございます。

 平沢委員長、理事、各委員の皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。

 さて、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たり、一言ごあいさつさせていただきます。

 北朝鮮による日本人拉致容疑事案は、国民の生命、身体に危機を及ぼす治安上極めて重大な問題であると認識しており、警察においては、その全容解明のため、所要の捜査や調査を最大限の努力をもって進めております。

 現在、拉致容疑事案と判断しているものは十一件十六人であり、警察においては、北朝鮮工作員、よど号のハイジャック犯人等、拉致に関与した三名について、逮捕状の発付を得て国際手配を行うとともに、北朝鮮に対し身柄の引き渡しを求めております。また、これら以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があることから、鋭意捜査や調査を進めております。

 警察においては、今後とも、拉致容疑事案の全容解明のため、関係機関と緊密な連携を図りつつ、警察の総合力を発揮して捜査や調査を推進していくこととしており、国家公安委員会としても警察庁を一層督励してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。

平沢委員長 次に、長勢内閣官房副長官。

長勢内閣官房副長官 内閣官房副長官の長勢甚遠でございます。

 平沢委員長を初め諸先生方の御指導、御鞭撻を賜りながら、安倍官房長官を補佐してまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

平沢委員長 次に、鈴木内閣官房副長官。

鈴木内閣官房副長官 内閣官房副長官の鈴木政二でございます。

 平沢委員長を初め各委員の先生方の御指導、御鞭撻を賜りながら、拉致問題に関する専門幹事会の議長としての立場から安倍官房長官を補佐してまいりたいと存じております。どうぞ今後とも皆様方によろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、塩崎外務副大臣。

塩崎副大臣 このたび外務副大臣を拝命いたしました塩崎恭久でございます。

 麻生大臣を補佐しつつ、拉致問題や核問題など北朝鮮をめぐる諸問題の早期解決に向けまして、全力を尽くしてまいりたいと思います。

 委員長を初め本委員会の皆様方の御指導と御鞭撻を賜りますように、よろしくお願い申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、伊藤外務大臣政務官。

伊藤大臣政務官 今般、外務大臣政務官を拝命した伊藤信太郎でございます。

 麻生大臣の御指導のもと、外務大臣政務官として、その職責を果たすべく全力を尽くしてまいる所存でございます。平沢委員長初め本委員会の皆様の御指導と御協力、御鞭撻を賜りますようによろしくお願い申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。

平沢委員長 次に、山中外務大臣政務官。

山中大臣政務官 このたび外務大臣政務官を拝命した山中あき子でございます。

 麻生大臣をお支えし、そして拉致特委担当政務官としての職責を果たすべく全力を尽くさせていただきます。平沢委員長初め本委員会の皆様の御指導、御教授を賜りますようお願いを申し上げ、就任のあいさつとさせていただきます。

     ――――◇―――――

平沢委員長 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、日朝政府間協議及び第五回六者会合について、政府から説明を聴取いたします。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 先般、北京において行われました日朝政府間協議及び第五回六者会合の第一次会合について御報告をさせていただきます。

 今月三日及び四日、約一年ぶりに行われた日朝政府間協議では、拉致問題を初めとする懸案事項や過去の清算等につき突っ込んだ意見交換を行いました。

 我が国にとって最優先の協議事項であった拉致問題につきましては、我が方から、生存する拉致被害者の早期帰国、安否不明者の真相究明、容疑者の引き渡しを改めて強く求めました。これに対し、北朝鮮側は、拉致問題は解決済みとの立場を維持し、拉致被害者に関する新たな情報の提供はありませんでしたが、日本側が引き続き拉致問題を懸案事項として提起することは理解をしている旨述べております。

 我が方からは、拉致問題に進展がなければ厳しい対応を決断することになると改めて伝え、横田めぐみさんのものとされる遺骨の問題等についても改めて説明を求めたところです。

 このような議論とともに、日朝関係全般を進展させる方法についても意見交換を行いました。その中で、我が方より、拉致問題等の懸案事項の協議、核、ミサイル問題等の安全保障問題の協議、過去の清算を含む国交正常化交渉という三つの協議を並行して進めるとの考え方を示すとともに、拉致を含む諸懸案の解決なくして国交正常化はないとの考えを改めて明確に説明し、お互いに検討を重ねていくことになりました。

 双方とも、今回協議は有益であったとの認識で、近いうちに、再度協議を持つ方向で調整することとなりました。

 また、今月九日から十一日まで行われた第五回六者会合の第一次会合では、第四回会合において合意した共同声明を履行するための最初の会合として、一定の前進が得られたと考えております。

 我が国は、三つの交渉分野を設け、全体を短期間で並行して進めていくとの作業指針に関する具体的提案を行いました。その基本的考え方は今回の会合後に出された議長声明にも相当反映されております。議長声明の中で、六者は、共同声明を履行するための具体的な計画、措置及び手順について作成することに合意したことが明記されました。

 六者会合の期間中、日朝間では、二度にわたり長時間の協議を行いました。その中で、我が方から、拉致問題解決の重要性を述べた上で、諸懸案の解決による日朝関係の進展が六者会合の進展に肯定的な影響を及ぼすこと、同時に、六者会合における核、ミサイルの進展が国交正常化の展望を容易にするとの考え方を強調しております。

 我が国としては、次回会合を早期に開催し、共同声明の履行するための具体的な計画を作成していくことを目指して突っ込んだ議論を行っていきたいと考えております。今後とも、引き続き、対話と圧力という一貫した考えのもと、拉致、核、ミサイル等の諸懸案の解決に向け、政府一丸となって取り組んでまいりたく存じます。委員長及び委員各位の御協力をよろしくお願い申し上げます。

平沢委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官荻野徹君、内閣官房拉致問題連絡・調整室長、内閣府拉致被害者等支援担当室長江村興治君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省国際法局長小松一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。トップバッターとして質問させていただきます。

 冒頭、このたび御就任されました麻生外務大臣、安倍内閣官房長官、塩崎外務副大臣、御就任おめでとうございます。そしてまた、そのトップバッター御答弁というところの質問をさせていただくことを大変光栄に思います。

 また、平沢委員長におかれましては、大変御専門の分野でもございます。すばらしい差配、御期待しております。

 まず、この質問に入る前に、冒頭、一問だけ外務大臣にお伺いしたいと思います。

 昨日行われました小泉首相とブッシュ大統領との日米首脳会談についてお伺いいたします。

 報道によりますと、会談では、在日米軍の再編問題、イラクに派遣されている自衛隊にかかわる問題、北朝鮮問題、拉致問題、アメリカ産牛肉の輸入再開問題など、多岐にわたるテーマについて話し合われたということであります。

 全体を通したトーンとしましては、首相の言葉どおり、世界の中の日米同盟という、それが一貫したテーマだと思いますが、先月末に在日米軍の再編にかかわる中間報告が発表になりました。

 これは、「日米同盟 未来のための変革と再編」というタイトルでありますが、単に沖縄の負担軽減や不要となった米軍基地の返還といった在日米軍基地の縮小を目指すものだけではなくて、冷戦終結後の米国の世界戦略に沿った米軍そのものの変革、いわゆるトランスフォーメーションの問題、このような大きな枠組みのこと、そしてまた、自衛隊のあり方、役割分担というかなり大きな枠組みでとらえるものと考えております。

 その最終報告は来年三月に発表されるということですが、初めに、この世界の中の日米同盟というテーマについて、昨日の日米首脳会談でどのようなことが話し合われたか、そしてまた、来年三月の最終報告策定までにどのような取り組みをしていくおつもりなのかをお伺いするとともに、拉致問題について話し合った内容についてもお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 世界の中の日米同盟、たしかマンスフィールドという大使のときだったと記憶しますけれども、日本とアメリカは世界で最も大事な二国間関係という表現がなされたと記憶しております。

 今、世界の中の日米同盟、間違いなく世界のGDPの約四割強を二国で占めているほどの大きな経済大国であり、太平洋を渡って、双方そこに、地理的な条件もそうであり、また、自由とか民主主義とか市場主義経済とか資本主義とか、いろいろな意味で幅広い分野において、私ども日本とアメリカという国は共通の価値観を有している、私はそう思っておりますので、その両国が協力をするというのは、この種の共通の価値観がさらに広まっていく上においても、私どもとしてはこの協力関係というのは意味の深いところだろうと思っております。

 いろいろな言い方があるんだと思いますけれども、こういった二国間が手を携えて、例えば貧困、例えばテロ、いろいろな問題があろうと思いますけれども、そういったものに二国間が協力をしてやっていくというのはこれは基本的には正しいのであって、アメリカ一国だけでできるわけでもありませんし、日本だけが資金を供給し続けるというだけでもいかないと思いますので、今後ともあらゆるレベルにおいて率直な意見交換がなされ、その基本的な価値観というものが共有されているというところが大事と思っております。

 拉致の問題等々につきましても同様に話が出されております。内容につきましては御存じのところもあろうと思いますので、この問題につきましては、アメリカとしてもこの問題は極めて重要な問題であって、核とミサイルが終わったから拉致の問題は置き去りにすることはないということであります。

小野寺委員 昨日の会談の内容ということでお伺いをしたのですが、恐らく言えないことも多々あるのかというふうに思いますのでここでとどめておきますが、この日米同盟があらゆる東アジアの問題、また北朝鮮、韓国との問題にとっても大きなキーワードとなりますので、ぜひ慎重な上での対応をしていただければというふうに思っています。

 それでは拉致の問題に入らせていただきたいと思います。

 今月に入りまして大きな動きがございました。先ほどから御報告がありましたように、北京での日朝政府間協議、そしてまた六者会合、第五回ですが、どちらにしましても、全体の流れとしましては、北朝鮮のかたくなな態度ということはそれほど崩れたというふうには考えられない、そしてまた、拉致問題については進展があったということも余り評価できるかなという状況にあると思います。

 政府間協議におきましては、拉致の問題の真相究明を求める日本側に対しまして、北朝鮮は拉致問題は解決済みだという姿勢を崩しておりません。協議は並行のままです。

 また、六者会合につきましては、我が国が提案しましたテーマ別作業部会の設置に基本的に合意したということはある程度の評価はありますが、拉致問題を含むとされる二国間関係においてのロードマップづくりということに関しては何ら具体的な進展は見られない、そういうことだと思っております。

 これらの報道を見て私どもつぶさに感じますのは、この拉致問題に関して北朝鮮が時間稼ぎをしているのではないか、そして、このまま拉致問題に進展がなければ、私どもはやはり大きな意味で経済制裁ということもかなり念頭に置くべきではないか。

 政府としてもそのような立場と私は考えておりますが、まず初めに、恐縮でありますが、この問題に長い間党の責任者としてもかかわってこられました安倍官房長官に、今官房長官としてのお立場、政府としてのお立場としても、この経済制裁の問題について、もし進展がなければ踏み込むべきであるという決意について変わらないのかどうかをお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 今から二十八年前の十一月の十五日に横田めぐみさんは拉致をされたわけであります。この二十八年間という歳月は、御家族にとっては本当に苦しい歳月だったというふうに思います。

 それぞれの拉致被害者の御家族にとって、また拉致された被害者の皆さんにとって、長い年月がたってしまった、これ以上余り我々は時間をかけるわけにはいかない、こう思っています。被害者の御家族の皆様は本当にそれぞれに御高齢になっているわけでありまして、一日も早い解決を目指していかなければいけない、このように思います。

 その中で、先般、日朝の協議が久々に再開をされました。日本側からは、生存者の帰国、そしてまた安否不明の拉致被害者の方々の真相究明、そして容疑者の引き渡しを我々は求めたわけでございます。今後、日朝の協議におきまして、拉致問題に進展がなければ我が国として厳しい対応を決断するということについては、先方に伝えているわけでございます。

 我々は、対話と圧力の姿勢でこの問題を解決していくという方針を決めているわけでございます。その中で、現在、核・ミサイル、安全保障の問題を解決するべく六者協議が開催をされておりまして、次回の会合を開くことも決まっております。そしてまた、次の日朝協議も開催されることが決まっているわけでありまして、その中でしっかりと北朝鮮にこの問題について誠意ある回答を求めていかなければいけない、また、北朝鮮側は誠意ある回答を示さなければならないということだ、こう思っています。

 いずれにいたしましても、最初に申し上げましたように、この問題について時間稼ぎを許すということがあってはならない。我々は、この問題について北朝鮮側が誠意ある対応を示さないのであれば、しっかりとした厳しい対応をとっていくことになる、こう思っております。

小野寺委員 ぜひ圧力と対話ということで、私どもは、やはりここまで問題が膠着している北朝鮮に対しては、ある程度の強硬な態勢をとることも必要ではないかというふうに思っております。

 麻生大臣にも同じくお伺いしたいと思います。

 今回のアンケート、これは救う会が行いましたが、七〇%の衆議院議員が経済措置の発動に対して賛成という回答を行っております。

 麻生大臣も、その問いに関しまして、拉致問題の解決なくしては国交正常化はないという基本姿勢に立ち、また、単独による経済制裁を発動する、その可能性も考慮し、制裁を発動することに賛成するというふうに答えていらっしゃいますが、その答えについて考えが変わっていないのか、お伺いしたいと思っています。

麻生国務大臣 いわゆる時間稼ぎの話が問題なんだと思っているんですが、私どもとしては、十一月三日、四日に行われたいわゆる日朝政府間協議においても、従来と同様、拉致問題の進展がなければこれは厳しい対応をとらざるを得なくなりますということを改めて伝えております。対話と圧力という話は、これはずっと一貫した基本であります。

 重要なことは、どのようなタイミングで、どのようなやり方でというところが、いかなる圧力が効果的に結果が得られるかという考え方なんだと思いますけれども、今、その問題につきましては、少なくともいろいろな形で、これまでも船の規制の話に始まり、少しずつ圧力というものが上がってきていることは十分に認識をしてもらっているところだと思います。

 ただ、初めに経済制裁ありきと言っているわけではありませんよ、そちらも解決をしてもらわない限りは、私どもとしてはそうせざるを得なくなっていくということだけはよく頭に入れておいてもらいたいという話を言っておりますので、今、どの段階で何をやるかということを、この段階で、この場で申し上げるというわけにはいかないという点につきましては御理解をいただきたいと存じます。

小野寺委員 ぜひ厳しい姿勢をとっていただきたい、それが国民そしてまた私ども与党議員の多くの願いだというふうに思っております。

 安倍官房長官にもう一つだけお伺いいたします。

 今回、拉致被害者支援法という法律、これは三年の時限立法ということになっております。この期限というのが来年の一月一日で三年を迎えるということになりますので、ひとつ見直しをしなきゃいけない。そしてまた、拉致被害者その他御家族の状況といいますのは、例えば進学であったり就職についても、変化していることが多くございます。

 この支援法の見直しについて政府はどのような検討をされているか、お伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 委員御承知のように、この支援法につきましては、給付を始めてから五年間、そして三年で見直しをするということになっております。この議員立法につきまして、私も当時、官房副長官としてかかわってまいりました。そして、この立法に基づきまして総合的な支援策をつくってまいりました責任者の一人でもございます。

 ことしの三月に正式に被害者の方々が日本での永住を政府側に伝えられまして、給付がスタートしたのはことしの四月からでございますので、まず、この四月から五年間、給付が続いていくということになるわけでございます。

 被害者の方々、また御家族の方々、帰国された後、御本人たちの大変な御努力もありまして、日本での生活に適応され、順調な歩みを続けられている、このように思います。この中でしっかりとこの支援法が活用されるよう、例えば、自治体とも我々は協力をしていく、また被害者の方々とも、御要望等々また御意見もお伺いをしながら、今後の対応について考えていきたい、こう思っております。

小野寺委員 しっかりとした対応をお願いいたします。

 私の質問は三十分でしたが、調整により二十二分となったということで、済みません、幾つか、はしょらせていただきます。

 十月二十九日の共同通信によりますと、中国は北朝鮮に対して総額二十億ドル規模の長期的な支援を準備しているということであります。また、韓国政府は今月二日に、来年からの五年間で北朝鮮に五千億を超える規模の支援計画ということを明らかにしております。

 このように、中国そしてまた韓国というのが六者協議の枠組みを超えて北朝鮮への援助ということを示しているということになりますと、この六カ国協議自体のあり方ということに非常に大きな問題になると思うんですが、このような両国間の動きということについて、この六者協議の今後の見通しのことも踏まえて、ぜひ、どういう対応をとるべきとお考えなのかを教えていただきたいと思います。

佐々江政府参考人 お答えいたします。

 今先生がおっしゃられましたとおり、韓国それから中国、それぞれの立場で、北朝鮮との経済関係につきまして、貿易・投資等々、むしろ北朝鮮を国際社会に積極的に引っ張り出すための一つの手段としてこれを進めようとしておることは事実でございます。

 そういう中で、この六者協議におきましては、先生御承知のとおり、我々の最大の目標というのは北朝鮮の核を廃棄させることであるということでございますが、それと並んで、ほかの五者がするであろう措置についても非常に一般的な形で書かれているわけでございます。これは、中身については全く決まっておらないわけでございますが、エネルギーや経済支援をする可能性について言及をしておるわけでございます。

 したがいまして、この六者の中で今後どういう形でそういうものがあるのかについては、現時点では全く白紙でございますが、当然のことながら、これは日本とかアメリカだけが北朝鮮との関係をどうするかということではなくて、韓国や中国自身がどういう経済関係をしていくかについても大きな論点の一つだというふうに思っておりまして、我々としては、この六者会合の全体の目標、核兵器廃棄という目標に資するような形で、そういう二国間の経済等の関係を韓国及び中国が考えていただく、これが重要であるというふうに考えております。

小野寺委員 この韓国、中国、すごく悪い言い方をすれば抜け駆けということを行われてしまいますと、今までずっと積み重ねてきましたこの六者協議というものが全く意味のないものになってしまうと思います。ぜひ外務大臣には、この問題に対して、中国、韓国にもしっかりとした枠組みの中で協力してもらうこと、それを強く言っていただきたいというふうに思っております。

 もう時間がありませんので、最後の方の質問をさせていただきます。

 この日朝政府間協議におきまして、今回、日本側は、拉致問題の懸案事項にかかわる協議、核問題の安全保障に関する協議、国交正常化交渉という三つの協議を並行して行うことを提案しました。

 家族会の皆様は、このような協議のやり方では、拉致問題というのが置き去りにされて、国交正常化、これが先行してしまうのではないか、そのような印象、不安を抱いておると私どもも思っております。そしてまた、そのようなことが絶対あってはいけないというふうにも考えております。

 政府としまして、拉致問題の解決なくして国交正常化はないということを改めて確認したいと思います。

麻生国務大臣 御懸念の点はわからぬわけではありませんけれども、そのようなことはないとまず最初にお断りを申し上げておきます。

 今回、全般的に、日朝関係は丸々一年間もとまっておりましたので、私どもとしては、これを発展させる方法としては、幾つかの問題を協議しないと、向こうからは過去の清算の話やら何やら言ってきておられるわけですから、私どもとしては、それに対して答えをせないかぬ。しかし、傍ら拉致の話も片づけてもらいますよ、ミサイルの話もという話をして、一つひっかかると全部がとまっちゃうということではなくて、少なくともいろいろな話を同時並行的にやっていかねばならぬのではないか。

 その点に関しましては、私ども、今御指摘のとおり、三つ、案を申し上げておりますが、この三つの協議というのは並行して進めるというのが前提条件、これははっきりしております。私どもとしては、核、ミサイル、拉致等々の問題の解決なくして国交正常化はあり得ぬということを申し上げておるのでありまして、交渉をするという話は、それは交渉した結果、妥結するしないは、先ほど申し上げた拉致とミサイルの話、核の話が解決しない限りは、国交が正常化することはありません。

小野寺委員 六者協議におきましても、例えば、ほかの核の問題その他解決して、最終的に拉致の問題だけが取り残されて、ほかの国の圧力によって日本もある程度の譲歩をしなければいけないというようなことは絶対あってはならないと思っております。まず、この拉致の問題が最優先、それを解決することがすべての正常化のスタートだというような意気込みで私どもも取り組むべきだと思っておりますし、また政府としても取り組んでいただきたい、そのように思っております。

 今回、いろいろな交渉過程の中で、例えば最近の米朝関係、先般も報道にありましたが、マカオにおきまして北朝鮮のマネーロンダリングとされる銀行の問題がクローズアップされ、そして、アメリカの対応に対して北朝鮮が大変過敏な反応を起こしたということもございます。

 恐らく、このような経済制裁以外にも、北朝鮮が行っているような、多くの、もしかして不法な行為ということが世界規模に広がっているとすれば、それを一つ一つ取り上げていくこと、それが、ひいては北朝鮮が音を上げるというか、締め上げるというか、そのような方向にも行くかと思っております。

 ぜひ、いろいろな角度で北朝鮮の問題を取り上げていただくようお願いいたしまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、福井照君。

福井委員 自由民主党の福井照でございます。二十分、短いのでお答えも簡潔にお願いしたいと思います。

 まず、冒頭、大臣からの報告もございました十一月三日、四日の日朝政府間協議における拉致問題に関する実質的な成果、建前は別としまして、実質的な成果の有無について伺いたいと思います。

 先ほどの大臣の御報告にもありましたが、今般、日本は改めて、生存する拉致被害者の即時帰国、安否不明者の真相究明、拉致実行犯の引き渡し、この三つを強く求めたけれども、北朝鮮側は拉致問題は解決済みとの立場を依然として維持したということ、そして拉致被害者に関する新たな情報提供が全くなかったということでありますけれども、これがもし仮に事実だったとしたら、非常に、まことに遺憾であるというふうに言わざるを得ません。

 他方、北朝鮮は、事前に非公式ルートを通じてゼロ回答ではないということを日本政府の関係者に伝達してきたという一部の報道がございました。今回の交渉中、北朝鮮側から拉致問題解決につながる何らかの提案は本当に全くなかったのかどうか、その真偽について齋木審議官の方からお答えをいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 先生が御指摘になられた最後の点、非公式のルートを通じて何か向こうから案があるという話は全くございません。事前にもそういう話はございませんし、また先方との協議の席上、そのような提案も含めて一切ございませんでした。

福井委員 ありがとうございます。

 というお答えでございますけれども、言えないこともあるということを本当に信じたいというふうに思っております。

 次に、同じ日朝政府間協議の中で、先ほど小野寺先生の方からも御質問ございましたが、改めて私の方からも御質問させていただきます。

 これが、とにかく拉致一本で来た戦術を三分野並行協議というふうに戦略、戦術を変えたというふうに私自身はとらえておりますので、その経過と、そして今後の戦略についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 拉致は解決済みという姿勢を崩さない北朝鮮をとにかく引っ張り込むんだということで、拉致、核・ミサイルそして過去の清算、この三つのテーマを並行して行うということで、一年ぶりに政府間の対話の継続を担保した、そして今後も対話を継続するということで日朝が一致したということについては、これはもう大きな成果であり評価をすべきだと思います。

 しかし、この交渉戦術の転換、逆に、今大臣は否定されましたけれども、拉致が置き去りにされるのではないか、三つ並行しているとはいいながら、拉致だけが解決しないまま二つのテーマが進んでいくということが本当にないのかどうか、これを重ねてお伺いさせていただきたいと思います。

 この三つの協議をバランスよく進行させる、あるいは、拉致にストレスを、非常に大きな重要性を私たちは置いているんだということを理解していただくための今後ともの戦略、そして決意について、審議官か局長の方からお答えをいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど外務大臣からの御答弁にも明確に言われていたとおりでございますけれども、私どもとしては、拉致問題の解決が日朝間の最重要の懸案事項であるという認識のもとに、その早期解決を先方に対してこれまでも迫ってきておりますし、またこれからも最優先案件として先方との間で交渉し解決を見出していく、そういう方針でございます。

 他方、この拉致の問題の解決と同様に、私どもにとっての懸念事項、懸案事項としては、核やミサイル、これが日本に対する大きな脅威として存在しているということもまた事実でございます。これについても、日朝平壌宣言で安全保障に関する協議を行うということが明記されておりますので、それについての交渉、協議といったものもやらなければいけない。

 それからまた、先方は過去の清算ということで、日本との間で解決を求めてきているさまざまな過去に関する話というもの、これも先方としては取り上げて解決を模索したいという立場でございますので、この三つをやはり我々としてはきちっと並行して協議して、解決を求めて、その上で、特に私どもとしては、先ほども申し上げましたけれども、拉致の解決、これがない状況の中で正常化交渉が出口を迎えるということは絶対ないという方針で今後とも先方と協議、交渉をやっていく、そういう方針でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 今の出口という言葉が非常にキーワードだと思います。出口戦略、つまり、拉致なしで国交正常化はないという出口戦略があるということを伺いまして、大変心強く思いました。

 しかし、先ほどもおっしゃいました、被害者家族の連絡会などから既に反発の声が上がっております。そういう心配があるということでございますので、改めて、協議の枠組みづくりだけに時間を費やすことがないように、そしてまた国交正常化交渉早期再開をにらむ北のペースにはまらないように、ぜひ、そういった出口戦略のもとで一層の御努力、御決断、そして戦略、戦術の立案をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、先ほど大臣の御報告にもございました、十一月九日、十日、十一日の第五回六カ国協議について御質問させていただきたいと思います。

 前回も御質問させていただきましたが、前回私が御質問させていただいたのは、第四回の六カ国協議、七月二十六日からの第一次会合の直前でございましたが、七月二十一日に御質問させていただきました。

 その際、六カ国協議の場をとらえて、日米韓の観点から、日米の観点から、そして日韓の観点から、それぞれの協力と理解を得て、そしてこの拉致問題の進展を期待するということで、各方面からプレッシャーをお願い申し上げたわけでございます。

 その後何が起こったかといいますと、休会期間を含めて二カ月のマラソン交渉となった協議では、米国が日本の立場を支持したものの、韓国と中国そしてロシアは冷ややかであって、そして、拉致問題は協議のイシューとはなっておりません。ならなかったわけであります。

 そして、再開後も、共同声明では最終目標の一つとされて、この再開が決定されたことは一つの成果でありますけれども、しかし、拉致問題というはっきりとした言葉として、タームとしての言及がなされなかったということは遺憾と言わざるを得ないわけであります。

 そこで、この期間中、二度にわたって長時間の日朝協議を行ったというふうにされますけれども、この報道が正しいのかどうか、そしてその内容はどうだったのか。言えないことも多いかと思いますけれども、特に拉致に関する何らかの進展があったのかどうか、そして次の日朝交渉の日程がどうなったのか、次回の六カ国協議再開の見通しがどうなったのか。

 そして、北朝鮮の立場としては、エネルギー問題、経済支援の成果を得たいわけですから、この拉致問題を何とか六カ国協議の場から切り離そうという思惑が深層心理上もそして戦略上も戦術上もあるわけですけれども、日本にとっては、この六カ国協議の枠組みをいかにうまく使うか、国際的な戦略、戦術、交渉上の場としていかにうまく使うかということについては一番重要な点だと思います。

 この六カ国協議という場をいかに利用するかということについての政府の決意について、佐々江局長の方から御答弁いただきたいと思います。

佐々江政府参考人 ただいま先生から、六者協議、その際における日朝の二国間協議、それからそれに関連して、別途日朝間で行われている交渉の全体的なことについてお話がありましたので、私の方からの所見を述べさせていただきたいと思います。

 先生御承知のように、六者協議というのは、基本的には核問題を端緒としてできた枠組みであるということでありますけれども、協議の過程で、北朝鮮に対して核廃棄に持っていくためにいろいろな形で六者間で協議が行われてきたわけでございます。

 その過程で重要なことは、単に六者協議というのは核の問題で終わらせてはいけないということで、実はこの核の問題の後には朝鮮半島、北東アジア全体の安全保障の問題もあるし、その安全保障を考える場合には、当然、二国間の関係、日本であれば日朝関係、アメリカであれば米朝関係というものがそれなりに正常化していかないと、やはり本当の意味でのそこの安定、安全はない、そういう考え方に立って、この六者協議というのは、以前の狭い核だけという考え方からやや範囲を広げて今話し合いが持たれるに至ったということでございます。

 そういう意味において、六者協議の中で、米朝、日朝、特に日朝関係について、最終的なゴールでそこに入っているということが重要でございます。つまり、全体的な枠組みの中で日朝関係が進むということが描かれている。そして、進むためには日朝間の懸案を解決するということもうたわれているわけでございます。

 今、言葉が書かれていないというお話がありましたけれども、交渉上の経緯からいって、日朝間で懸案とは何かというと、六者全員が、それは拉致のことであると。もちろん、ミサイル、核、ほかの問題はございますけれども、日本が日朝間の懸案と言うときには拉致問題、そのほかもありますけれども拉致問題が中心的な課題であるということは、すべての参加国が知っていることだと思います。

 ですから、私は、そこにそういう文字が入っている、入らないということは、率直に言いましてそれほど重要なことであると思っておりません。問題は、その懸案を処理する中で北朝鮮が正面からこの問題に取り組むかどうかということが重要であるというふうに思っております。

 その意味では、実は、我々が日朝間で今度六者協議と別に交渉、政府間協議というものを立ち上げることに合意した、あるいは北朝鮮が応じてきた背景としては、やはり日朝間で、拉致問題も含めて、彼らは今のところ解決済みだという立場でございますけれども、しかし、この問題で日本と話をしていかないことには日朝関係も進まないし、あるいは六者協議においても日本が非常に厳しい態度をとって協力を得られないかもしれない、そういうことは北朝鮮の側の考慮として当然あったと思うわけでございます。

 したがいまして、我々としては、そういう北朝鮮の考え方、考慮、彼らの利害というものを念頭に置いて、それを全体の中でうまく利用しながら拉致問題の解決を図る、交渉によって図る、ここが重要であるというふうに思っているわけでございます。

 したがいまして、エネルギーとか経済の問題もその中に入っておりますけれども、我々としては、六者の中における対応というのも、日朝間の懸案、拉致問題の前進なくしてはそういうものに前向きになれないのだ、そういうメッセージを北朝鮮にしっかりと伝えていくことが我々の交渉上のてこを増すことになる、そういう考え方で日朝交渉に臨んでおります。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。コンプリヘンシブな御説明をいただきました。

 次に、国連の動きについて、ひょっとするとこれが最後の質問になるかもしれませんが、御質問させていただきたいと思います。

 まず、北朝鮮への非難決議案について御質問させていただきます。

 この十一月二日、EUとか日本が、北朝鮮の人権状況を非難する決議案を国連総会第三委員会に提出しました。北朝鮮への非難決議案というのは、ジュネーブの人権委員会で三年連続採択はされていたんですけれども、北朝鮮を名指しで非難する決議案が国連総会に提出されたというのは初めてであります。

 決議案は、拉致問題解決に向けた要求とかには触れておりませんけれども、そしてまた、採択されてももちろん法的な拘束力はないとはいえ、日本人の拉致事件を北朝鮮の組織的かつ広範で重大な人権侵害と、はっきり、それこそタームとして懸念を表明している。

 そして、百九十一カ国の加盟国から成る総会で採択されるということになりますと、北朝鮮に対する強い圧力となって、問題解決に向けた強い効果、大きな効果が期待されるわけでありますけれども、この拉致に関する国際世論も高まっている中で、本件決議の正式な採択を機に、我が国として、この拉致解決のための国連の場をどのように活用していくのか、具体的な展望、政府の見解について、これは局長になりますでしょうか部長なのでしょうか、御答弁いただきたいと思います。

神余政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在国連第三委員会に提出をされておりますこの決議は初めての決議でございまして、実はきょう、ニューヨーク時間で本日投票が行われるという予定になっております。したがって、あした未明、ないしはあしたの午前中には判明するのではないかと思っておりますけれども、なるべく多数の賛成を得ましてこれをぜひ通したいということで、最後の最後まで頑張っております。

 それでは、国連でこれがもし通った場合、通ることを希望しておりますけれども、どうするんだという御指摘でございますけれども、この決議をもちまして、我々としては、国際社会全体の声だということでさらに北朝鮮側に政治的圧力として活用させていただきたいと思いますし、またこの決議の中には、拉致被害者の即時返還ということも実は書かれております。これは人権委員会の決議を引いておりますので、四月の人権委員会の決議においてはそれが出ておりますので、それを完全に履行するということが入っておりますので、その点は確保されていると思います。

 同時に、北朝鮮の人権問題に関する特別報告者、ムンタボーンというタイの国際法学者、この人が北朝鮮に入れません。今現在出しております決議の中においても、この北朝鮮の特別人権報告者の入国を認める等々書かれておりますので、そういったことを通じて、さらに一歩一歩この問題について取り組みを進めていきたい、かように思っております。

福井委員 ありがとうございました。

 そういったアクションが書かれてあるということで、またさらに力強く思いました。

 では、同じような話ですけれども、北朝鮮の人権状況に関する報告書についても御質問させていただきたいと思います。

 国連は、九月二十七日に、北朝鮮の人権状況に関する報告書を発表いたしました。日本人の拉致問題を取り上げて、生存しているはずの拉致被害者の早期帰国について、日本の要求に効果的かつ迅速にこたえるということで、北朝鮮に対して五つの勧告を行いました。

 本報告書の審議中の十月三十一日、第三委員会で人権問題について我が国と北朝鮮との激しい応酬があった。ちょうどその日、私も別の会議、IPUの議員会議に出席しておりまして、大島大使と意見交換もさせていただきましたけれども、北朝鮮は、拉致は二国間の問題であって国連に持ち込むべきではないということで、日本と北朝鮮が何十分も応酬をした。そういうことがございましたけれども、報告書は、日朝が二国間で建設的に問題を解決できるようということで、二国間を国際社会が一致して支えるということの必要性を指摘しているわけです。

 今後、日本としては、このような国連での非難決議も含めて、人権状況に関する報告書も出たので、そして、ありとあらゆる機会をとらえてこの拉致への国際社会の理解、協力を取りつけるべきだというふうに思いますので、もう一度部長の方から、決議案とこの報告書を含めて、また国連において、国連の場でいかに活動していくか、その決意を聞かせていただきたいと思います。

神余政府参考人 ただいま御指摘のございましたように、実は報告書が出ておりまして、この報告書につきましては関係者の間でいろいろな意見交換の場があったわけでございます。北朝鮮と日本との間でやりとりがあったということは、そのとおりでございます。

 この報告書そのものは、報告として受け入れられたわけでありまして、この報告書と、それから、日本時間でいえばあした、この決議が通りますれば、この二つをもちまして、今後ともこの問題については国際的な声としてこれを活用して、さまざまな外交的な場で活用しながら外交努力を続けていくということになると思います。ぜひともそういうことで御支援を賜りたいと思います。

福井委員 ありがとうございました。

 ぜひ、国連の場でも、そして日朝バイでも、そして六カ国協議の場で、日米韓、日韓、日中、日ロ、ありとあらゆる場でこの拉致問題を強く御主張いただきたいというふうに思います。

 今、時間が終了してしまいましたので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。今後ともぜひ頑張っていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、渡部篤君。

渡部(篤)委員 自由民主党の渡部篤であります。新人ですので、よろしくお願いします。

 出身は会津若松市で、新潟県とはすぐ近くでありますので、日本海沿岸での拉致事件についてはいろいろうわさを聞いておりました。平成十年ごろ、街頭に出て、拉致被害者救出を求める署名活動等も行ってきました。当時、私は福島県議会議員でしたが、まだ北朝鮮が拉致の事実を認める前で、新聞、テレビ等マスコミも余り取り上げることがなかったためか、市民の関心も低く、反応も余りよくなかったのです。そんなことから、横田さん御夫妻を初め拉致被害者家族の皆さんの御苦労は大変なものだろうなと思ったことを今思い出されます。

 拉致は、国家主権の侵害であり、我が国国民の人権を無視した北朝鮮の国家テロだと思います。国家とは何かということに思いをはせるとき、国家には国民を守る義務があると私は考えます。政府は、今こそそのことを強く認識すべきと考えます。拉致問題を解決できるかどうかということは、北朝鮮という全体主義国家に対して、民主主義国家としての我が国がどのように対峙していくかということであります。つまり、日本という国家が試されているのではないかと思います。

 そこでお伺いしますが、さきに行われた日朝協議でも、拉致問題は解決済みであるということを北朝鮮は述べていますが、外務省は、国交正常化と拉致問題そして核問題という大きな課題を北朝鮮とどう交渉しているのか、具体的にお示しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今おっしゃったように、少なくとも、他国の国民を拉致するというのは明らかに犯罪であります。しかも、その犯罪を国家元首が国家犯罪として認めたという例も過去に例がないと思っておりますので、その点に関しましては、私どもも、この問題が極めて重大な問題であるという認識に関しましては渡部先生と全く考え方を一にいたしております。

 そこで、今、この問題につきまして、いろいろ、対話と圧力という基本的な考え方のもとで、諸懸案を解決してということで、今は日朝交渉をやっておるんですが、それについてどのようなということになりますので、少し時系列も申し上げねばいかぬところだと思います。

 これまで、主に日朝の直接の協議におきましてこの解決を図ってきております。先般、いわゆる日朝政府間協議というのが約一年ぶりで再開をされたのは御存じのとおりですが、私どもとして申し上げているのは、生存している拉致被害者の早期の帰国、真相の究明、そしていわゆる拉致した容疑者の引き渡し、この三つが基本的なところでありまして、この問題の解決がなければ、政府としては厳しい対応をとらざるを得ないという旨を伝えておるところであります。

 核問題につきましては、これは六者会合の枠組みにおいていろいろ解決が図られてきております。この九月の第四回になります会合で共同声明という形で具体的成果が得られて、過日の第五回の第一次会合でその実施に向けられた論議が始まっております。新聞等々に出ておるとおりであります。

 我が日本としては、引き続き他の関係国と緊密に連携をとりつつ、とにかくこの北朝鮮の核廃棄に向けた具体的な進展に積極的に努力をしていかねばならぬと思っております。同時に、日朝間において、北朝鮮の核、ミサイルの脅威の除去につきまして議論する必要があるとも考えておりまして、この点は、先般の政府と朝鮮政府との協議の場においても我が方より強く主張したところであります。

 今後の日朝協議のあり方ということですけれども、現在、拉致問題の懸案事項に関する協議、核、ミサイル問題のいわゆる安全保障に関する協議、そして国交正常化交渉という三つの協議を並行して進めるという方向はどうだという提案を私どもでいたしておりまして、日本側よりこれを提案し、今後検討が行われるところだと思いますが、近いうちに六者協議を含めまして再協議というのができると思っております。

 お断りしておきますが、だからといって、交渉という話と正常化というのは、正常化のための交渉であって、それは直ちに正常化を意味するということではないという点だけは、申し上げるまでもないとは存じますけれども、その点だけは御確認をお願いしておきたいと存じます。

渡部(篤)委員 そこで、日本の提案は国交正常化交渉と拉致問題を同時並行に審議していくということですが、そのことは拉致問題解決にとって本当にプラスになるのでしょうか。なぜ我が国政府は、日朝政府間交渉において、拉致問題、安全保障、国交正常化の三協議会の新設を提案したのでしょうか。また、なぜ今この時点で提案したのか、その理由をお聞かせください。

麻生国務大臣 今申し上げました考え方の基礎というものにつきましては、過去一年間にわたり日朝間におきましては対話が全く途切れておりました中で、北朝鮮にいわゆる対話をする場に出てくるということをしてもらわないと軌道に乗りませんので、北朝鮮を対話の場に引き戻すということにつきまして、日本としても、最優先に取り組むべき拉致問題を取り上げる協議の場というものを、相手が出てこないことにはどうにもなりませんので、そういった意味で、協議の場を確保するというものがまずあろうと存じます。

 北朝鮮は、従来より、日朝平和宣言の履行という過去の清算を特に重視してきております。したがって、九月に行われました第四回の六者会合の共同声明という中でも、日朝は、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとると明記されておるというところであります。

 こうしたことを踏まえまして、この過去の清算というものを取り上げるということにおきまして日朝正常化交渉を再開するということであって、拉致問題というものの、いわゆる懸案、対話を通じて解決する上でも必要なことであると私どもは判断をいたしております。私らだけでは、意見だけこだわって向こうが出てこなくなってはもう全然話が通じなくなりますので、そういった意味で、こういった提案をさせていただいております。

 いわゆる今述べました三つの案というものは、それぞれ同時並行して協議をするという方策でありまして、一つだけ飛び抜けて、ほかの問題が置き去りにされる、拉致の問題が置き去りにされるというような御懸念があろうかとは思いますけれども、そのような形での交渉の妥結というものはありません。

渡部(篤)委員 我が国政府が提案したとおりに、拉致問題、安全保障、国交正常化の三協議会が設置されたとして、バランスをとって協議すると外務省は言っておりますが、協議の優先度には違いがあるのではないでしょうか。いかがですか。

麻生国務大臣 もとより、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決なくして国交正常化の妥結はないんですが、この点、先般の政府間協議におきましても北朝鮮側に明確に伝えているところではありますけれども、最優先事項であります拉致問題の解決に政府として最大限の努力をしていくのは、これは当然のことであります。

 私どもとしては、いずれの協議におきましても、いずれの協議というのは三つの協議のことですが、三つの協議につきましても真摯に取り組んでいくというのは当然のことでありますけれども、今申し上げましたように、拉致問題の解決というものが優先順位として高いというのは当然のことであります。

渡部(篤)委員 それにしても、拉致問題は解決済みとの立場をとり続ける北朝鮮が、拉致問題に関する協議会の設置を受け入れる可能性があるのでしょうか。その可能性についてお伺いいたします。

麻生国務大臣 私どもとしては、先般の協議の中で、北朝鮮側が、日本側が引き続き拉致問題というものを懸案事項として提起するということにつきましては、向こう側も、解決済みとは言っても、日本側としてはこの問題は解決済みではないのだから、この問題については引き続き提起をするということに関しては向こうも理解を示しているところであります。

 したがって、予断を許すわけではありませんけれども、この三つの協議を並行して行っていくということは、拉致問題の解決のための協議の場というものを確保できると同時に、北朝鮮側にとっても、それなりに国交正常化交渉への可能性、過去の清算、いろいろなものを考えたときに、向こう側にとりましても、それなりのものを得られるのではないかということだろうと存じますので、私どもも拉致の問題を解決してもらいますけれどもというような話だと思っておりますので、そこのところは、優先順位という感じで言えば、お互いさま、優先順位が違うんだと思いますが、三つ一緒にならぬと解決、妥結、正常化ということにはなりません。

渡部(篤)委員 経済協力の規模及び内容を協議する場となり得る国交正常化に関する協議会の設置を我が国から提案したことが、北朝鮮に対し、我が国の交渉に臨む姿勢に関する誤ったシグナルを与えかねないと考えますが、外務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 先般のあの日朝政府間協議の中におきましても、諸懸案の解決なくして国交正常化はないという話を明確に伝えておりますので、こうした包括的な協議の枠組みというのを立ち上げるということになった場合でも、今申し上げた方針が変わるわけでは全くありません。

 また、あの協議の中で、最優先課題として拉致の問題を取り上げて、我が方としても、いわゆる生存している拉致被害者の早期の帰国、真相の究明、容疑者の引き渡しというのを改めて強く求めたところでもあります。

 したがって、拉致問題の解決に関する日本の姿勢につきましては、北朝鮮側に誤解をさせるようなことはないと存じます。

渡部(篤)委員 今般の日朝協議でも、北朝鮮は拉致問題に関しては解決済みという態度をとり続けており、今後も北朝鮮が解決済みという態度をとり続けるならば、対話と圧力ということを考えても、経済制裁しかないと思うのであります。

 この拉致問題を風化させることは絶対にできないのです。制裁の効果がないという声もありますが、私は、政府の姿勢を示すことが必要だと思います。外務大臣、経済制裁をされたらどうですか。

麻生国務大臣 北朝鮮との諸懸案を解決していくための政府の基本的な態度というものは、対話と圧力、これはもう私どもとしてはずっと言い続けたところなので、今言われましたように、大事なことは、どのようなタイミングで、どのような方法で、どのような圧力をかけるかというところが、拉致問題解決のために一番効果があるのは何かということなんだろうと存じます。したがいまして、核問題をめぐる交渉とか駆け引きとかいろいろありますけれども、こういったさまざまな状況を見きわめつつ、これは検討していかねばならぬところと思います。

 私ども、経済制裁としては、厳しい対応というものは圧力の一つとして可能な手段の一つとは思っております。ただ、まず経済制裁ありきというわけではないと存じますけれども、いずれにいたしましても、対応というものは、今後圧力の部分につきましても検討していかねばならぬ。そういったことがないように向こうが対応してくれるのが最も望ましいとは存じますけれども、そうなった場合はいろいろな対応の仕方がまた出てこようと存じます。

渡部(篤)委員 先日行われた北朝鮮問題をめぐる六カ国協議では、議長声明は、次回開催の日程も、共同声明の履行に具体案を出す作業部会の設置や直接の言及もなく、むなしさを覚えます。

 そこで、改めて確認しておきたいことがあります。拉致問題の解決とは何かということです。

 九日に、安倍官房長官は、日朝交渉で最大の焦点になっている日本人拉致問題について、すべての日本人の生存者を北朝鮮側が日本に帰したとき、初めて拉致問題が解決されたと言えるとの認識を表明されました。その上で、拉致問題を解決しなければ日朝間の問題は解決しないと強調されましたが、外務大臣も官房長官と同じお考えなのかどうか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 政府間の中の意見の不一致を期待されているのかと存じますけれども、さようなわけではないと存じます。

渡部(篤)委員 私は、国交正常化は拉致問題を解決してからだと思うのですが、拉致問題の解決とはどのようなことを言うのか、内閣官房長官及び外務大臣の認識をお聞かせください。

安倍国務大臣 お答えをさせていただく前に、渡部議員、地方にあってずっとこの問題に取り組んでこられましたことに改めて敬意を表したい、このように思います。

 拉致問題の解決とは、すべての生存者の日本への帰国でございます。すべての生存者の日本への帰国がない限り、拉致問題は解決をしないということでありまして、日本と北朝鮮との間の問題の解決にはならないということであります。

 また、米国も、日本の拉致問題が解決をしなければ、いわゆる米朝関係も解決をしないということも述べていることをつけ加えておきたいと思います。

麻生国務大臣 今、官房長官の答弁にもありましたように、先ほどと少し重複するかもしれませんが、北朝鮮側に対しましては、生存している拉致被害者の早期帰国、真相の究明、そして容疑者の引き渡し、この三点を強く求めております。

 今後、北朝鮮が誠意ある対応というものを行って、真実が明らかになり、正確にはさらに明らかになりということだと存じますが、すべての生存者が帰国ということにならない限り、拉致問題が解決することはないと考えております。

渡部(篤)委員 ここで、拉致問題の解決なしに国交正常化はないとするならば、すべての日本人の生存者を北朝鮮が日本に帰して初めて拉致問題は解決ということですね。日朝間の基本である、拉致問題の解決なくして国交正常化なしの原則をもう一度確認させてください。

安倍国務大臣 我々は今、北朝鮮に対しまして、すべての拉致被害者の早期帰国、そして真相の究明、また容疑者の引き渡しを要求しております。このすべての要求が満たされて初めて拉致問題が解決をした、こういうことになるわけでございます。

 我々は、この拉致問題というのは、日本にとって、日朝間の問題としては最重要課題である、こう考えています。当然、この問題が解決をされない限り、日朝の正常化はない、これはもう言うまでもないことである、このように思っておりますし、我々の意思は先方には伝わっている、このように考えています。その上で誠意ある対応を求めたい、こう考えております。

麻生国務大臣 日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルというもの等々の諸懸案というものがいわゆる包括的に解決し、そして日朝正常化というものを実現するとの日本の基本方針というのはずっと一貫をしておると存じます。

 今、拉致問題の話を特に言われましたけれども、日本の国民の生命と安全というものに直接かかわります重大な要因、問題であろうと存じます。したがいまして、政府として、日朝間政府協議また六者会合等々あらゆる機会をとらえて、北朝鮮側に対して、今申し上げた問題の解決に向けて、これはかなり迅速さを要求されると思うんですね、引き延ばしなんというのではぐあいの悪いことになろうと思いますので、迅速かつ納得のいく対応というものを引き続き強く求めていくという点で全く一致しております。

渡部(篤)委員 ところで、北朝鮮の核問題を協議する六カ国協議と、拉致の問題を扱う二国間協議は、同時並行的に行っていくと思いますが、拉致問題が解決されていないのに、仮に、核問題が決着し、我が国に経済協力を求められた場合、拉致問題の解決なくして国交正常化なしとする我が国は、北朝鮮に対し経済援助を行ってはならないと考えますが、外務大臣の認識をお伺いします。

麻生国務大臣 六者会合を通じまして、仮に、核問題、ミサイル問題が解決されたとしても、その時点で拉致問題が解決されていない場合、日本として国交の正常化ということは当然のこととしてできないのではないか、条件が違うわけですから。したがって、日本として北朝鮮に対して本格的な経済協力をすることはありません。

渡部(篤)委員 もう少し質問したかったんですが、時間がないので端的にまとめますが、とにかく平和を守る、そのためには正義やモラルには目をつぶる、たとえ日本国民が不法に拉致されて国家主権が侵害されても外国と対立する主張はしてはいけない、日本の平和がすべてだ、相手がいかなる国であろうと、外国と正面を切って対決することは何としても避けるべきだ、そういう考えが今政府に私はあるような気がします。

 あの安倍官房長官が日本の国民は日本の国家が守る、私は感動しました。やはり国民はこの国家が守らなければだめだ、そのことを述べて私の質問を終わらせていただきます。

平沢委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 この拉致特別委員会が設置されましてから、毎回のように質問をいたしておりまして、政府からも御答弁をいただいておりますけれども、この拉致問題に関しましては、いまだ何ら進展を覚えませんことを国会議員としてじくじたる思いがいたしております。でも、それは同時に、私が思っております何倍も何十倍も拉致家族の方々が焦燥感を持ちながら見守っていらっしゃるのではないかと思います。

 麻生外務大臣、安倍官房長官のもとで、新たなる進展が、もちろん相手があることですからこちらが思うようにはいきませんけれども、進展がなされますことを切に願っております。

 昨日、私の住んでおります京都で、小泉総理とブッシュ大統領による日米首脳会談が行われました。今回の首脳会談は、日米両国の結束ぶりと世界の中の日米同盟を内外に強くアピールすることに重点を置いたものではないかと思います。

 小泉総理は会談後の記者会見において、日米関係が緊密であればあるほど、中国、韓国、アジア諸国においても国際社会においても良好な関係を築くことができると述べられました。

 私は、総理のこのお言葉は、すなわち、日米関係の緊密化は我が国と北朝鮮との関係改善にも寄与する、こういうことではないかと思っております。

 確かに、ブッシュ大統領は首脳会談の中で、北朝鮮による日本人拉致問題について懸念を共有していると述べられて、それは大変私ども国民にとって心強く響きました。

 実際に、これまでもアメリカは、例えば昨年十月に成立した北朝鮮人権法の中で、人道支援以外の支援の実施について、北朝鮮政府によって拉致された日本と大韓民国国民に関するすべての情報を完全に開示すること、拉致被害者が家族とともに北朝鮮を離れ母国に帰国する完全で真の自由を認めることを要件として挙げるなど、我が国が進める対話と圧力のうち、圧力を補完する役割を担ってきたのではないかというふうに思っております。

 北朝鮮による核問題についても、アメリカが六者協議の当事国として、北朝鮮の核放棄を早期に実現するため懸命に取り組んでいます。今回の会談でも、北朝鮮に対して核開発の完全放棄を求める重要性を日米間で認識し合っておりますけれども、今後においても両国の連携をより強化し、北朝鮮に対して柔和な、時折ちょっと甘いのかなというような姿勢を見せる中国、韓国などの溝を埋めつつ、核の完全放棄を早期に実現すべきというふうに考えております。

 今後とも、拉致問題、核、ミサイル問題を日米間におけるさまざまな機会の中できちんと取り上げ、両国の共通認識を進化させていく必要がさらにさらに私は必要ではないかと思っております。

 麻生外務大臣にお伺いしたいと思います。

 政府は、日朝関係の改善に対して米国が与える影響をどのようにお考えでしょうか。そして、今後とも、アメリカへの協力をどのように依頼していかれるおつもりかをお伺いしたいと存じます。

麻生国務大臣 昨日十六日に行われました日米首脳会談におきましても、これは北朝鮮の問題についてもいろいろ議論がされておると知っております。少なくとも、小泉総理からは、日米関係がきっちりしている間に北朝鮮の問題も考えた方がよりよいのではないかということは、記者会見でも述べられたとおりのところだと思っております。核の問題とあわせまして、拉致の問題を解決する必要というものを日米が一緒になってやるというのは、私は、方向として正しい方向だと思っております。

 また、ブッシュ大統領の方からの記者会見におきましても、拉致問題につきましてはかねがね共感をしているということが述べられておりますし、日本の立場を支持するということにつきましても、また北朝鮮の人々の置かれている状況についてもいろいろお話があっておりますけれども、本件の解決が必要であるということはもうはっきりしておりまして、ただ、これはアメリカだけでできるわけがありませんので、アメリカといたしましても、六者協議の枠組みの中で解決を図っていこうという旨は述べられたように思っております。

 少なくとも、良好な日米関係というものを維持した上で、私どもとしては、拉致問題、核問題、ミサイル問題等々、北朝鮮をめぐるいわゆる諸懸案というものを解決し、促進していくということが必要なんだという認識を共有しているというように思いますので、昨日の会談におきましては、それが改めて認識が共有されたというように理解をいたしております。

池坊委員 安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

 十月十七日、小泉総理は靖国神社に参拝されました。御就任以来、たび重なる靖国神社参拝が日中、日韓関係に悪影響を与えていることは否めない事実ではないかと思っております。そして、日中、日韓関係がぎくしゃくしていることを米国政府も懸念を持って見詰めております。

 今回の日米首脳会談でブッシュ大統領は、中国を今後この地域の大きなプレーヤーと位置づけ、小泉総理に中国観をお尋ねになりました。これは、米政府内にある日中対立への懸念を念頭に、関係改善に期待感を示されたものではないかと思うのです。

 小泉総理が首脳会談後に、日米関係がよければよいほど、中国、韓国、アジア諸国を初め世界各国と良好な関係を築けると語られました。この日米関係の重要性というのは言うまでもございません。ただ、けさの朝日新聞には、「日米さえうまくいけばすべて大丈夫というのは思考停止に近い。」ということが書いてございました。これは極論だというふうに私は思っておりますけれども、小泉総理の戦没者にかける熱いお心は私もよく理解はいたしておりますけれども、日本のアジア外交に悪影響を与えている状況にかんがみ、日本国内からも慎重な意見が出ていることは事実でございます。

 我が党の神崎代表は、十月の靖国神社参拝に関して、まことに残念だと述べられて、総理として、靖国参拝を危惧している国民の皆さん、さらにアジア諸国の国民に対して、なぜ今回参拝されたのか、真意はどこにあるかをしっかり説明していくことが大事だと語られました。

 私、心に残りましたのは、ブッシュ大統領が日本を訪れられる前の記者会見でこんなことを述べていらっしゃいます。過去の幾つかの出来事の結果、大きな緊張を招いていることはわかる、日米も一時は不倶戴天の敵だったが今では友人だ、過去を忘れることは難しいが可能だと述べていらっしゃいます。これは、日中、日韓が未来志向の話し合いを通じて過去を克服していく努力、その重要性を示されたのではないかと思っております。

 小泉総理は、このブッシュ大統領の御発言をどのようにお受けになったのかなというふうに私は考えておりますけれども、安倍官房長官、このようなことを踏まえながら、今後どのような態度というか、行動をとっていらっしゃるかということをちょっとお伺いしたいと存じます。

安倍国務大臣 ただいま池坊先生から靖国参拝についてのお話がございました。ことしの八月の十五日にも二十万人を超える方々が参拝をされました。一年間、数百万人の方々が参拝をされます。我が国のために殉じた方々に手を合わせ、そして御冥福を祈る、また敬意を表する、そういうお気持ちで参拝をしておられるんだろう、こう思います。小泉総理も私も、その中の一人でございます。

 そして、各国において、そういう方々に対して敬意を表するということは普遍的に行われていることであろう、こう思うわけでございます。インドネシアのユドヨノ大統領とお目にかかったときにも、私が靖国をめぐる問題について御説明をいたしましたところ、一国のリーダーがその国のために戦った兵士のために祈るのは当然のことであるというお話でございました。

 総理は、不戦の誓いの気持ちのもと、国のために戦った方々の御冥福をお祈りするために参拝をしておられる、このように承知をしております。そのお気持ちをこれからも誠意を持って中国、韓国に説明していくことが大切だろう、こう考えているところであります。

 また、米国がこの小泉総理の参拝に対して懸念を持っているということは当たらないんだろう、私はこう思うわけであります。日米はかつて戦った関係ではあったが、今はその関係を完全に克服しているということを米国側は述べたわけでありまして、米国側は、総理の例えば靖国参拝について何も言っていないということも含めて、克服をしたということではないか、こう思うわけであります。

 いずれにいたしましても、東アジアとの関係は極めて重要な関係であるということは当然政府として認識をしているわけでありまして、良好な関係が構築をされるよう最大限努力をしていきたい、こう考えています。その中におきましても、日米の関係というのは極めて重要な二国間関係であり、安全保障の上においても、外交の上においても、まさに基軸であろう、こういうふうに認識をしております。

池坊委員 日韓、日中関係は、拉致問題を含め、今後の日本の行く末に大きな影響を与えるものではないかと思いますし、靖国参拝はそういう意味では微妙な問題を含んでいるのではないかと思います。私ども公明党は、国立追悼記念碑をぜひ建立していただきたいというふうに心より願っております。

 今回の十一月三日、四日、一年ぶりの日朝政府間対話が北京で行われました。この国交正常化部会の位置づけについて、麻生外務大臣にお伺いしたいと思っております。

 この対話の中で、三つのテーマの部会が設置されました。日本人拉致問題、国交正常化、核・ミサイルなどの安全保障問題でございます。一つのテーブルに着くためにはこのようなことも必要なのかなというふうには思っておりますけれども、向こうから何の積極的な誠意ある回答が得られなかったにもかかわらず、これは日本から提案したものでございます。私は、今この時期にどうしてこのような提案がなされたのかなというのがちょっと腑に落ちないのでございます。

 これは、国交正常化部会の内容と国交正常化プロセスについて、それぞれ大臣はお考えがあってのことだと思いますけれども、それについてちょっとお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、約一年間、日朝の政府間協議というものがとまっておりましたので、今般の協議に当たりましては、今後ともこの種の話は片方だけではどうにもなりませんので、いわゆるテーブルに着くというところがまず第一だろうと存じます。

 そういった意味で、私どもとしては、少なくとも北朝鮮側の方は過去の清算ということをいろいろ言っておられるわけなので、これに対しては、日本の方からとしては、これはいわゆる日朝平壌宣言というのに従って今後誠実に議論をしていこうではありませんか、また対応していく用意もありますという旨を説明しております。

 したがって、日朝関係の全般をとにかく進展させる、とにかく再開して動かすということにつきましては、私どもの方から、先ほど申し上げた三つの点、今御指摘になりました三つの点というのを協議を並行して進めていくということにしないと、拉致の話がない限りは全然あとは何もないというのでは、またまた没交渉でずっとということではいかがなものかということを考えました。私どもとしては、いわゆる拉致以外に二つの話を持ち出して、核の話とそれから国交正常化の話というものを出してきて、正常化の話の中には例の過去の清算というところがその中に入ってくるんですが、私どもはそういった案を提示して、向こうとしても話に乗ってきやすいような、協議の再開に応じやすいような話を設定しない限りは、何とはなしに、双方とも没交渉のまま時間だけ経過していくというのはいかがなものかということだと思いましたので、私どもとしてはこの三つ目の案も提案をさせていただいております。

 ただ、そのときに当たりましても、申し上げるまでもなく、お断りしておきますが、この三つは同時並行ですよ、この問題がなければ全然だめですという話を向こうに申し上げて、アメリカのヒル代表初めそれぞれの他の関係諸国も、この案にはそれなりの、いい提案ではないかという感触を私どもは得ているところではあります。

 アメリカの方も、同時並行であっても、言っておくがこの問題は、例えば向こうは三つのほかに軽水炉の問題等いろいろありますので、アメリカは軽水炉だけ先になんということはないのよ、全部これは一緒にやらなきゃだめという話で、優先順位をきっちりつけようという話をしております。

 そういった意味では、私どもの一つの提案として申し上げたのであって、行き着くところの答えは、何度も申し上げておりますように、この拉致の問題含めて、とにかくこの解決なくして正常化交渉はあっても正常化はしませんということである。

池坊委員 軽水炉の問題は前回でも私は質問させていただきましたけれども、軽水炉を含めて三つのテーマ、同時並行的に協議されますけれども、今おっしゃいましたように、拉致問題が完全に解決されなければ国交正常化はあり得ないという御答弁でございましたので、大変これに私は安心いたしました。

 北朝鮮に対する経済的圧力について、安倍官房長官にお伺いしたいと思っております。

 例えばさまざまな、前回でも前々回でも私は質問させていただきましたけれども、北朝鮮産のアサリなどの海産物の産地表示の厳格化とか、あるいは船舶保険の加入義務の強制など現行法制度を厳格に実施した結果、既に北朝鮮に対して経済圧力というのがじわりじわりとかかっていることは事実だと思っております。

 日本と北朝鮮の貿易額は、二〇〇〇年に四億六千万ドルございましたのが、四年には二億五千万ドルになりました。五年には二億ドルまで落ち込んでおります。ですけれども、日朝貿易額がゼロになったとしても、北朝鮮は経済的に深刻な状況に陥るかというと、これだけで全く深刻な状況に陥るということは言いがたいのではないかというふうに思っております。ですけれども、何にもしなくていいということではございません。

 安倍官房長官は、先日の日朝政府間対話の前に、北朝鮮に拉致問題で誠意ある対応がなければ、いろいろなことを考えることになるとおっしゃって、北朝鮮に対する経済制裁の発動を視野に入れた発言、私はそのように受け取りました、をなさっていらっしゃいますが、このいろいろというのはどういうことなんだろうかと私ちょっと気になりました。

 現在の日朝貿易状況、北朝鮮の食糧事情を考えますと、全く違った切り口での新しい経済制裁、すなわち特定船舶入港禁止法、あるいは改正外為法を発動することを意味しているのでございましょうか。

 我が国が単独で行える効果的な経済制裁にはどういうものがあるのか、もし安倍官房長官がお考えでいらしたら、それをお伺いしたいと存じます。

安倍国務大臣 昨年の通常国会で議員立法により可決をされました外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律、及び特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法は、我が国の平和と安全の維持のため特に必要があると認める場合には、我が国政府の判断によって送金や輸出入の規制、特定の船舶の入港の禁止等を実施することを可能にするものでございます。

 まず、こういう手段がございます。これにより政府に対して新たな手段が付与された、このように認識をしております。こうした手段があること自体、北朝鮮に対して一つの圧力、こうなっているというふうに思うわけであります。

 これ以外にも、いわゆるあらゆる法令の中において、その法令の的確な運用において結果として圧力がかかっていくということもある、こう考えているわけであります。

 一々それは何かということをここで申し上げることは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでありますが、要は、北朝鮮がこの拉致問題について誠意ある対応をとれば、我々は何もいわゆる経済制裁を目的としているのではなくて、拉致問題を解決したいという考え、その一点のみでありますので、北朝鮮側が誠意ある対応をとれば我々はこういう手段について考える必要がなくなる、こういうことではないか、こう思います。

池坊委員 時間が参りました。

 北朝鮮が誠意ある態度をとることがあるのかどうかということも一つの懸念でございますし、とらせるためにはどうしたらいいのか、これは日本独自でやる方法もございますし、あるいはアメリカ、あるいは日中、日韓の関係の中で後押し、協力連携をとりながらやらなければいけないというふうに思っております。命がかかっていることでございますので、これに関して私ども、ともに政府も国会議員も力を合わせながら良好な進展に向けて頑張っていけたらというふうに願っております。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 民主党の松木謙公でございます。

 安倍官房長官そして麻生外務大臣、御就任おめでとうございます。ただ、おめでとうと言いながらも、大変な重責だと思うんです。官房長官は本当に大変なお仕事、私も藤波孝生官房長官の秘書をやっていましたので、朝は本当に指一本一本を一生懸命起こさなきゃ起きられないぐらい非常に大変な仕事というふうにも聞いております。そして、麻生外務大臣、余りお役人さんの言うことを聞いて外遊をどんどんすると、日付変更線を越え過ぎると体が悪くなる、こんな話もありますので、ぜひお二人とも体を大切にして頑張っていただきたいなというふうに思っております。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 日朝交渉と六者会合、二つのことが続いたわけですけれども、拉致問題に対して進展があったのかどうか、端的にイエスかノーかでお答えください。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 今回、二日間、日朝政府間協議をやりましたけれども、一年ぶりの協議ということで、いろいろな問題を取り上げました。時間のほとんどを、二日間合計で十二時間ぐらい先方とやり合いましたけれども、私どもが一番要求しておった拉致問題についての先方に対する説明要求、これに対する回答は残念ながら我々が満足する形ではございませんでした。

松木委員 進展がほとんどなかった、こういうことだというふうに思っております。

 この拉致問題というのは、平成九年の二月に、我々の先輩である西村先輩が予算委員会で平成九年の二月三日に初めてこの問題を国会で出した。そして、小泉総理大臣が北朝鮮に行った、もうそれからも三年たっているんですね。随分と時間がたっているわけですけれども、なかなか解決の糸口が見えてこないようです。今回の交渉で要するにほとんど発展もなかったということなんですけれども、じゃ、次は何を目指すんですか、齋木審議官。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、私ども、一年近く、政府の実務者同士がテーブルに着いていろいろなやりとりをすることができないままに時間が過ぎたわけでございます。一年ぶりに会って、こちらは当然最重要の案件であるところの拉致について我々の要求をぶつけたわけでございますが、残念ながら我々が納得いくような回答はなかった。

 これで終わりだというふうには私どもは思っておりませんし、先ほど来御答弁の中で申し上げておりますように、我々としては、いろいろと知恵をもちろん絞りながら、先方を対話の場に引きとめながら、どういう形でこの拉致の問題の早期解決を迫っていくかということをいろいろ考えております。

 三つの並行協議というのもその一つでございますけれども、先方がこれに乗ってくるかどうかはまだわかりませんが、先方にとっても話をしたいと思っている場を設けることによって、我々としては、この拉致問題の交渉をさらに前に進めて解決を模索したい、こう考えておるわけでございます。

松木委員 マスコミ等に、対話ができたのは有意義であったという話もされているようですけれども、これは対話をしているだけじゃどうしようもないので、やはり現実に拉致被害者を戻す、そういうことが一番大切なわけですよね。

 齋木さんはずっと交渉に当たっているわけですけれども、拉致被害者の方々、元気なのかな、あるいはそうじゃないのかな、どういうふうに感じましたか。それをちょっと言ってください。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 御案内のように、日本政府として認定しております拉致の被害者の方々、十一件十六人ということでございまして、そのうちまだ五人の方々しか日本に戻ってみえておりません。残りの方々、私どもとしては、先方が説明するような説明内容では全く納得できないということで、改めてきちっと説明をするように、そしてまたその前提として、私どもは当然、納得いかない以上は、皆さん生きていらっしゃるという前提で交渉しておりますけれども、一体いかなる状況のもとに置かれているかということにつきましては、私ももちろん個人的に、それぞれの方々が置かれている状況を想像しながら、心を痛めつつ、一日も早く日本に戻してさしあげたいという気持ちで交渉してきておるわけでございます。

松木委員 生きて、元気だと思っているということだというふうに思いますけれども、全然話は進まないわけですよね。そもそも、宋日昊さんという方がどの程度北朝鮮で権限を本当に持っているのかどうか、これも何か私は怪しいような、そんな気がしているんですけれども、ぜひ頑張っていただきたいなというふうに思っております。

 そして、次は安倍官房長官にちょっとお話を伺いたいというふうに思っています。

 官房長官は、二〇〇五年の二月五日に、もちろんまだ官房長官になる前ですね、宮崎県の講演の中で、経済制裁について今月中にも発動すべきだと。さらに、二〇〇五年の七月十九日には北朝鮮への圧力は経済制裁しかないと御発言なんですけれども、私も同感なんです。もうそういう時期に来ているんじゃないかなというふうに思っております。

 そして、経済制裁しても、きくのきかないの、いろいろなことを言う人がいます。ただ、そういうこともあるかもしれないけれども、大切なのは、私は、日本が本気でこの拉致問題というのは怒っているんだということを意思表示としてやるにも、非常にこの経済制裁というのは大切ではないかなというふうに思っております。

 独立国家である日本が自国の中から人をさらわれたわけですからね。これを助けもしない、そういうことにはならない。そして、国民の皆さんは税金を払っているわけですからね。これは当然国が威信をかけて、そして何としてでも戻していただく、これがもう当然のことであって、そしてそれを国民は黙って見ている。そして、自分たちがこうなったときにどうなるんだろう、政府は我々のことをしっかり助けてくれるんだろうか、そういうことも心配しながら注視をしているというふうに私は思っております。

 二月五日、今月中にも発動すべきだということであれば、今はもう、とうに十一月なわけですよね。もうやってもいいんじゃないかなというふうに私は思っておるんです。しかし、そこはそこ、またお立場も変わればいろいろなことが変わらざるを得ないこともあるでしょう。しかし、それでは、拉致被害者の家族の方々は今の官房長官を非常に信頼しているわけですから、残念に思うんじゃないかなというふうに私は思っています。ぜひここら辺を御答弁いただきたい。

安倍国務大臣 我が国は、昨年の十一月の第三回の日朝実務者協議を通じて、北朝鮮側から提供された情報、物証一般について、昨年の十二月に我が方が精査の結果を伝え、強く抗議を行って以来、北朝鮮側に安否不明の拉致被害者に関する迅速かつ納得のいく対応を求めてきたわけでありますが、その後、北朝鮮側からは全く対応がないという中にあって、誠意のない対応であれば、当然、今委員がおっしゃった経済制裁を考えなければいけない、経済制裁を実行ということを、私もそう発言をしてまいりました。

 そして、そうした圧力の中にあって、北朝鮮側は日朝交渉の再開に私は応じてきたものだ、このように思っております。まさに対話と圧力によって解決をしなければいけない。しかし、私たちは、圧力が目的でもないし、対話が目的でもない、問題は拉致問題を解決することである、このように考えています。

 そして、十一月の三日、四日に行われた日朝の政府間協議において、改めて、生存している拉致被害者の早期帰国、そして真相の究明、そして容疑者の引き渡し、当時の容疑者の引き渡しについては、私が本部長を務めておりました自民党の拉致対策本部においても、既に判明をしている、警察が認定している容疑者の引き渡しは強く求めるべきだと主張してきたわけでありますが、政府もこのことを強く主張したわけである、こう思います。

 そして、その場におきまして、拉致問題に進展がなければ、いわば政府として厳しい対応を決断するということを先方に伝えたわけでございます。国民の世論が厳しくなっていくということを伝えたのではなくて、政府として厳しい対応を決断することになる、こう伝えたということでございまして、今後、何とかこの問題を早期に解決をしなければいけない。時間稼ぎは許してはならない。

 先ほどの質問に私がお答えしましたように、被害者の方々、また被害者の方々の御家族にとっては大変な困難な日々を送っておられる、そして被害者の御家族の皆様はだんだん高齢化しておられる、年をとってきておられるわけでありまして、何とかお元気なうちに被害者の方々と御家族をお引き合わせしたい、この思いで今努力をしているわけでございます。

 その中で、どのタイミングでこうした厳しい対応をとっていくかということについては、ベストなタイミングを考えなければいけない、こう考えているわけであります。要は結果を出すことが大切であろう、このように思います。まさに、この日朝の交渉が再開をされまして、こちら側から三つのトラックについての話を進めていこうという提案をし、先方からその提案に対する答えが返ってくるのを今待っているわけでございます。

 また、六者会議も先般開かれ、また次の六者会議が開かれる、できるだけ早いタイミングで開かれるということも合意をしているわけであります。その中で総合的に判断したい、こう思っております。

松木委員 わかりました。

 しかし、今やるのはまだベストなタイミングじゃないというふうに官房長官はお思いのようですけれども、二〇〇五年の二月五日には今月中にも発動すべきであるというふうに言ったわけですから、ちょこっと慎重になっちゃったのかなという感じもしますけれども、それはしようがないでしょう。当然、やはりより重責のあるお仕事についたわけでございますので、それは仕方ないというふうにも思います。しかし、ここはぜひ頑張っていただきたい。

 要するに、また次、また次、こうなっていったら何も意味がないわけですよね。先ほど官房長官が言ったとおり、この問題というのは拉致被害者が戻ってこそなんですね。対話すること、制裁すること、これが目的じゃない、そうですね。そうであるならば、今度の交渉で動かない、こういうことがはっきりわかったときに、では経済制裁をするということに決めてしまったらどうでしょう。そうするとなかなか外交交渉というのはしづらいですか。ちょっとだけ。

安倍国務大臣 北朝鮮側もいわば我々がそういう強い意志で臨んでいるということはだんだん理解をしてきている、こう思います。次回の日朝協議において誠意ある対応を当然彼らは行わなければならない、こう考えておりますが、今の段階ですべて、こうなればこうするということをむしろこの場で申し上げるのは適切ではないだろう、ある程度の選択肢の中で、また北朝鮮側も考えるという中において最良の結果が出ることを望みたい、こう思っています。

松木委員 頑張ってくださいね。

 こういう政府間のいろいろな交渉をしているんですけれども、結局はうまくいっていないというのが現状だと思うんですけれども、私は、この拉致特別委員会というのは、ここで話をするだけじゃなくて、やはりアクティブにいろいろな活動をするべきだというふうにも思っておりまして、例えば中国に行って交渉を我々自身がするということがあってもいいような気がします。そこら辺は、麻生外務大臣、どういうふうに思われるでしょうか。

 委員会として行ってみる、こういうことも、結局、政治家が動かなきゃ、これはやはり役所の方々だけでやっていても交渉はなかなかうまくいかないような、そういう気が私はするんです。ぜひ、外務大臣が行くなりでもいいし、私はかばん持ちで行ってもいいですし、何でもいいから、とにかく行動をしていかなきゃ何も動いていかない。ですから、ぜひそういうことも頭の中に入れた方がいいんではないかというふうに思いますけれども、外務大臣はどうでしょう。

麻生国務大臣 二国間だけではなくて諸外国にこの問題を広く訴える、これは国連に限らず、今言われる御提案は決して間違っていないと思いますが、北朝鮮には議員がいませんから。だから、その意味では北朝鮮と直接はなかなか難しいということだろうと思うんですね。

 そういった意味では、私どもとしては、ぜひ、いろいろな形で諸外国の議員との交流というものは、拉致問題というのは、これは国家犯罪を犯したということを国家元首が認めたという多分最初の例ですから、その意味では重要性というものは十分に理解をされ得るところだと思いますし、そういったいろいろな形での各議員さん方の努力によって、先ほど佐々江局長の方から申し上げましたように、いろいろな形での国連での数がだんだんふえてきている。

 きょう十一月十七日、現地時間できょうまたありますけれども、それでも少し数が前よりはふえてきているというような感じになってきているんだと思いますので、いろいろな形で、二国間だけではなく諸外国からも圧力がかかるというのはすごく大事なことだ、私どももそう思います。

松木委員 ぜひ我々も大いにお役に立ちたいというふうに思っておりますので、また委員長さんとも話をしていろいろなことも考えていきたいなというふうに思っております。

 時間がありませんので、もう一つだけお聞きします。

 特定失踪者問題調査会というのがありまして、荒木さんという方が代表をやっております。前回のこの委員会のときも私は聞いたんですけれども、この方々が一生懸命お金を寄附をいただいて、そして短波放送とかそういうことをやって、そして拉致されている人たちに訴えかけをしている。

 これは非常にお金がかかる、こういうことに対して国のいろいろな補助とかそういうことができないのかという話を前回も聞いたんですけれども、相手のあることですのでという話でした。この間荒木さんに会ったときに、それはお金をもらえるのならもうぜひ、ありがたいな、こういう話もありましたので、そういうことがどういう形かでぜひ、お助けをいただけるのかどうか、ちょっとお答えをいただきたいなというふうに思います。

安倍国務大臣 私も荒木さんとは親交がございますし、荒木さんのやっておられるこの会が大変大切な仕事をしておられるというふうに思っております。また、大変な仕事量ですし、費用の面においても大変御苦労されているということも承知をしております。

 と同時に、この調査会の活動は、民間の任意団体としての活動ということであって、自主性を尊重することが重要であるというふうに認識をしておりまして、政府として調査会という団体に対して資金援助的な支援を行うことについては慎重に検討せざるを得ない、こう思っておりますが、荒木さんがやっておられるこの調査会が果たしている役割は大変大きいと思いますし、曽我ひとみさんも政府が認定をした拉致被害者ではなかった、ひとみさんのお母さんもそうであったということからかんがみれば、特定失踪者の中にも拉致被害者の方々が含まれている可能性は十分にあるというふうに認識をしております。

松木委員 最後に、ぜひ、官房長官は荒木さんと仲がいいはずですから、よく話を聞いてやってください。ぜひお願いします。

 それで、資料を一つ出したんですけれども、横田めぐみさんではなかろうかという写真が、写真週刊誌だとか、あと夕刊紙ですか、そういうものにちょこちょこと出てきております。これは、当然これがそうなのかどうかは全くわかりませんけれども、ぜひここで一つだけお願いなんですけれども、こういうこともばかにはせず、しっかりと役所の皆さんの方で調べるなりなんなりということはしていただきたいということを申し添えて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 新しい官房長官、また新しい外務大臣が御就任をされたところで、私はこの拉致問題に新たな進展が生まれることを大変に期待している一人でございます。まず冒頭、官房長官にお伺いをするわけでありますが、昨年の十二月に、お話がありました横田めぐみさんのにせ遺骨問題ということが明らかになりました。

 当時の官房長官は細田さん。大変に遺憾である、迅速かつ誠意ある回答がなければ、言外に経済制裁を含むというか、経済制裁という制裁発動をする、こういった御発言が私はあったというふうに認識をしておりますが、現状においてはこのことについてはいまだに発動されていないわけであります。同時に、このときに、昨年の十二月に専門幹事会が行われたわけでありますが、その後いまだに開かれていない状況が続いているわけであります。

 私は、このことに関して、細田さんが少なくとも一年前に、まだ十一カ月といえば十一カ月でありますが、一年前にこういったことを発言し、そして拉致被害者家族の方々は、その半年たったときに議員会館の前で座り込みをしたわけであります。炎天下でありました。

 そして、この十二月で一年を迎える。私はもはや経済制裁を発動するべき時期が完全に来ているんだというふうに認識をしておりますが、このことに関して、今回官房長官をお引き受けになるに当たって、小泉総理大臣から何らかのお話がございましたでしょうか。

安倍国務大臣 小泉総理は、この拉致問題を含めて、核、ミサイルの問題等々を包括的に日朝間の問題を解決する上においては、今まで同様、対話と圧力の姿勢において判断をしていくということでございました。

 また、いわゆる経済制裁の問題についても、これはまずいわゆる経済制裁ありきではなくて、拉致問題を解決するということが肝要であって、その目的のために総合的な判断をしなければならないと総理はお考えである、このように思います。

 その上で、我々も、対話と圧力の姿勢において、再び北朝鮮側が誠意ある対応を示さないということであれば、厳しい対応ということも当然考えていかなければいけない、こう思っています。

松原委員 細田さんは迅速かつ誠意ある対応がなければということを言ったわけでありまして、この迅速という言葉の普通持つ意味からいけば、それはもうどんなにいっても一年というのは長過ぎるわけでありまして、ということは、細田官房長官はあの段階で経済制裁を、少なくとも一年ぐらいの間に北朝鮮から誠意ある回答がなければ発動するという決意だったと私は認識をしているわけなんです。

 しかるに、北朝鮮側は、にせ遺骨問題は日本のでっち上げだ、こういうふうな反論をしてきて、それに対して専門幹事会が行われないまま今日まで来てしまっているということは、私は、外交の問題として、官房長官がああした発言をしても、結局その発言は意味を持たない発言であると。

 北朝鮮は、日本の官房長官を含め政治家が何を言っても無視して時間稼ぎをすれば大丈夫だ、こういうふうな認識を持ってしまう。もし一年たって経済制裁の発動を、これだけ北朝鮮側が誠意ある対応をしない中で日本が発動しないならば、昨年の十二月の細田官房長官の発言は、むしろ私はない方が北朝鮮に対してはメッセージとしてよかったと思うわけでありますが、この点も踏まえて、私は再度、経済制裁発動に関しての安倍官房長官の思いを聞きたいと思います。

安倍国務大臣 北朝鮮側は迅速な対応をしたというふうには全く思っておりません。その中で、委員を初め、北朝鮮に対してしっかりとした経済制裁をかけるべきだという発言があり、主張があり、世論も厳しい主張の中で、北朝鮮側は先般日朝交渉の再開に応じてきたんだろう、こう思うわけであります。

 その間、先方は全く対応してこなかったわけでございますが、そういう厳しいこの日本の対応の中で、北朝鮮側は日朝協議に応じてきた。そして、その後六者会合も開かれ、六者会合の場においても日朝の協議の場が持たれたわけでございます。そういう中にありましては、我々は次なる日朝の協議でしっかりと北朝鮮側が誠意ある対応をすることを待ちたい、こう思っています。

 基本的には、私自身の気持ちは全く変わっていないということも申し上げておきたい、こう思う次第であります。

松原委員 私は、迅速かつ誠意あるというこの日本語の意味するところからすれば、一年たって十二月になったらもう限界点だということを、やはり日本の政府はきちっと北朝鮮に言うべきだろう。やはりどこかで期限を設定して、改正外為法の発動をするぞということをするべきだと思うんです。

 私は、結論からいけば、小泉総理大臣のやる気にすべてがかかっている。改正外為法を実行する場合にも、そのための準備、どういうふうに具体的に改正外為法を発動するのかというさまざまな準備のための事務的な作業が進んでいるということが北朝鮮に伝われば、それは強烈なメッセージになると私は思うわけであります。

 そこで、具体的な話を二つお伺いしますが、官房長官は、官房副長官が直接は議長でありますから専門幹事会は官房副長官の範疇にありますが、官房長官として官房副長官に対して専門幹事会を早期に行うべきだということを指示するおつもりがあるかどうか、お伺いいたします。

安倍国務大臣 当然、体制がかわりましたので、できるだけ早い機会に専門幹事会を開くように指示をする予定でございます。

松原委員 同時に、拉致問題に関しては、かねてから非常に我々は拉致対策室、拉致問題の対策室、解決をするための対策室を内閣の中に設置してほしいということを言ってきたわけであります。当初の、今から何代前ですか、福田官房長官はこれに対して余り前向きではありませんでした。

 しかし、安倍官房長官は拉致対策室をつくる必要性、調整室は調整室でありますが、拉致対策室をつくって、四六時中このことを専門にやる部署があるということを内外に宣明することは、日本の政府として遅過ぎた当然の原理だろうと私は思っておりますが、この拉致対策室をつくることに関して、安倍官房長官の決意を承りたいと思います。

安倍国務大臣 先ほどの御質問の専門幹事会をいつ開くかということでございますが、この新しい体制の中で開くことを検討するようにということは、もう既に鈴木副長官に指示をしてございます。具体的な日程については、早急にということでさらにもう一度指示をしたい、こう思っております。

 政府は、拉致問題を日朝間の諸懸案の最優先課題と位置づけ、日朝国交正常化に関する関係閣僚会議のもとに、官房副長官を長とする拉致問題に関する専門幹事会を設置し、内閣官房、警察庁、法務省、公安調査庁、外務省そして厚生労働省、総務省、文部科学省、国土交通省等関係省庁、機関がそれぞれみずからの役割を果たしつつ、現在緊密に連携して拉致問題の解決に全力で取り組んでいるところでございますが、本年四月の一日には拉致被害者・家族支援室を拉致問題連絡・調整室に改組し、拉致問題について内閣官房としてさらに一体となって取り組んでいくということにいたしたところでございます。

 拉致問題の解決のためには、それぞれの省庁がみずからの役割を果たしながら、必要に応じ内閣官房が各省の調整を行う現在の体制が現状では最も望ましいのではないか、こう思っておりますが、当然、我々官房がリーダーシップをとって、各省庁との連携を密にしながらこの拉致問題の解決に当たっていきたい、こう思っております。

松原委員 もう安倍官房長官よくわかった上での御発言だと思いますので、調整室ではなくてやはり対策室を早期に立ち上げる、もう遅きに失しておりますが、つくって、この問題、何が何でも自国民を取り返すという決然たる姿勢を鮮明にしていただきたいということを心より御期待して、お願いを申し上げます。

 そして、外務大臣にも幾つか質問をしたいわけでありますが、前任であります町村外務大臣は、北朝鮮に対する軽水炉提供に関し、場合によったら拉致問題と別に切り離し、さまざまな支援があるかのような発言を、非常に微妙でありますがいたしておりましたが、この場できちっと、この軽水炉問題を含めいかなる日本の北朝鮮に対する支援も、この拉致問題の解決がない限りあり得ないということを改めて言明をしていただければと思っております。

麻生国務大臣 この日朝平壌宣言に基づいて、拉致、ミサイル等々、核の話やら何やらで、いわゆる懸案を解決した上で日朝国交正常化を図るという政府の方針というのは、これは一貫しているんだと存じます。

 今軽水炉の話が出ておりましたけれども、これは、北朝鮮の核の廃棄が実現する前、いわゆる査察、IAEA、FTA、いろいろな条件がありますから、そういったものをきちんとしない限りは、これは軽水炉の提供などというものが我が国の方から対応すべき具体的な課題になることはあり得ません。

松原委員 当然、拉致問題の解決がなければこれもあり得ないということでよろしいですね。

 そういう中で、北朝鮮側が日本政府に対して戦前のいわゆる補償問題を今挙げてきているわけであります。北朝鮮側の主張するところでは、八百万人を超える朝鮮人ですか、朝鮮の方々が強制連行されたというふうなことを言っておりますが、まず、この強制連行という事実に関してどのような認識を持っているのか。

 さらに、北朝鮮側は、その中でまた二十万人の北朝鮮の婦女子、韓国女性が拉致をされ、慰安婦として送り出された、こういうふうなことも北側は言ってきているわけであります。アメリカの保守系の政治家の発言の中にも、日本は、十三歳のめぐみさんを拉致したことに対して怒るのはわかるが、それ以上にたくさんの北朝鮮の女性を日本は拉致し、連日これを性的に苦しめてきた、こういったことを言っている記事もあるわけであります。

 これに対して日本政府の反応は、既にこのことについては謝罪をしている、もしくは、この北朝鮮側が言う数字はかなり大げさな数字であるというふうな反論しかしていないわけであって、中身に対しての反論をしていないわけであります。

 私は、この問題に対して麻生外務大臣がどのような御認識を持っているのか。そして同時に、北朝鮮が日本に賠償のことを言ってきているわけでありますが、当時において北、いわゆる韓半島は日本の国内であったわけであって、賠償という言葉も極めて不適切であろうと思っております。強制連行に関して言えば、日本国内における徴用というものが先に行われていたわけであって、国内的な問題としてのいわゆる徴用の一環だったわけであって、彼らが言う議論というのはレトリックからして私はおかしいと思っておりますが、このことについての麻生大臣の見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 まず、当時の朝鮮半島との関係につきましては、生まれられる前だと思いますけれども、よく御存じのとおりでして、少なくとも我が国と戦争状態にあったわけではありません。パスポートは日本のパスポートだったわけですから。したがって、その意味からいくと、いわゆる賠償という問題は生じないという点を三番目に言われましたけれども、そのとおりだと私も思っております。

 それから、いわゆる強制連行の話がよく出てきておりまして、これまでも国際会議の場等において北朝鮮の側からいろいろこの話が出ておりますけれども、こうした主張に対しては全く根拠がない。したがって、その確証たる数字というものは、いわゆる誇張されたものであって、根拠が全くないのではないかと私どもはずっと反論をし続けてきております。

 二十万人の従軍慰安婦の件につきましても、同じように、これまで二度にわたって調査結果というものを公表いたしております。その中で、発見されたと言われる資料の中に、いわゆる慰安婦というものの総数を示す数字はありません。したがって、数字を確定することが困難、そう考えております。客観的に根拠を欠いておると思いますので、二十万人の話も認めがたいと思っております。

松原委員 同様の見解、認識について、これは極めて日本の国の名誉にかかわる問題でありますから、官房長官の御所見もお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 戦前、我が国における徴用は、昭和十三年に制定された国家総動員法四条に基づく国民徴用令により実施されたものであり、朝鮮半島においては昭和十九年九月から実施をされた、こういうことでございます。

 当時の朝鮮半島と我が国の関係に関し、政府としては、平成七年の内閣総理大臣談話や、本年の戦後六十周年を踏まえた小泉内閣総理大臣談話等で表明してきた反省とおわびの気持ちにいささかの変更もないわけでありますが、当時の朝鮮半島は我が国と戦争状態にあったわけではない。本件を含め、いわゆる賠償や補償の問題は生じてはいないということでございます。

 また、数字の問題におきましても、ただいま麻生外務大臣からも答弁をいたしましたように、北朝鮮はこれまでにも国際会議の場において、我が国が八百四十万人の朝鮮の人々を兵力や労働力として連行したと主張しているが、我が国としては、こうした北朝鮮側の主張に対し、そのような数字は大きく誇張されたものであり、根拠のない数字である旨、反論を行っているわけでございます。そして、こうしたことを挙げることによって拉致問題について責任がないということには全くならない、こういうことでございます。

松原委員 私は、このことに関して既に謝罪をしているとか、このことについて数字が違うという議論だけではなくて、根本的なこのことに関する、中身の問題も含めて、彼らが言っていることの真偽を明らかにすることは、我々のまさに名誉のために極めて重要だと思います。そのことを今後また麻生外務大臣には違う委員会でも質問したいと思っておりますが、ぜひとも日本の国の名誉をきちっとするために、これから努力をしていただきたいと思います。

 そうした中で、もう一回安倍官房長官にお伺いするわけでありますが、もちろん結果として日本の拉致被害者を取り戻すということは当然必要であろうと思っております。しかし、先ほどの我が党の松木議員との議論もあったんですが、経済制裁をする、国家主権が侵されたことに対して国家意思の発動をするということは、極めて重要だろうと私は思っているわけであります。

 したがって、この問題の解決を目指して発動をするのでありますが、日本の国として、主権の発動としてどのタイミングで経済制裁を発動するのか、もしくは日本の国の主権の発動として他の方策があるのか、このことについてお伺いいたします。

安倍国務大臣 北朝鮮側に圧力をかけるということにおいては、昨年立法されましたいわゆる経済制裁を可能にする法律だけではなくて、あらゆる法令を厳格に適用することによって北朝鮮に対しての圧力をかけてきた、このように考えているところでございます。

 対話と圧力の姿勢によって何とか結果を出したい、こういう思いで今我々は日朝の交渉に当たっているわけでございますが、我々、北朝鮮側に対する圧力の手段ということについてはいろいろな手段がある、このように認識をしております。この手段をいつ、どこでやるかについては、その時々のタイミングを適切に判断してやらなければいけない、それはあくまでも北朝鮮の対応による、こう思うわけでありまして、次回の日朝の会合においてしっかりと北朝鮮が誠意を持って対応することを強く望みたい、こう思っています。

松原委員 時間がなくなってまいりましたが、北朝鮮に対して経済制裁をすると北側からミサイルが飛んでくるからやめた方がいいとか、そんな話があるわけでありますが、こういうことに対しての官房長官の御所見もちょっとお伺いしたい。

安倍国務大臣 昨年、北朝鮮に対する経済制裁を可能にする種々の法律を国会で審議すると、あるいは立法するとミサイルが飛んでくるのではないか、そういう議論があったわけでありますが、結果としては飛んでこなかったということである、こう思うわけであります。

 この問題についてどういう可能性があるかということについては、詳細に述べることは差し控えさせていただきたいというふうに思うわけでありますが、いずれにいたしましても、我々は、そういう言辞がなされたとしても、そういう言動に影響されることなくやるべきことをしっかりとやっていきたい、こう考えています。

松原委員 とにもかくにも、これから北朝鮮に対してきちっと言うことを言う。机の下での交渉をしても進まない国でありますから、国際社会に日本もこういったことをやるんだということを明確にはっきりと表明しながら闘っていただきたい、このように思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 おととい十一月十五日は、横田めぐみさんが十三歳で拉致されてからちょうど二十八年の日でございます。部活から帰る途中の中学生が拉致されたということで、大変残酷なことでございます。この拉致された地点は、私の選挙区、新潟一区でございまして、新潟市民の一人としても大変大きな心の痛みを持っているところでございます。

 おとといは、地元マスコミの主催によりまして、「忘れるな拉致 一一・一五県民集会」というテーマで、本当に会場がいっぱいになるくらいの市民、県民の皆さんが集まって、横田さん御夫妻の講演を聞き、そして、いわゆる特定失踪者と言われます方の御家族の方、あるいは横田めぐみさんの同級生だった方々からもメッセージが聞かれまして、一日も早くこの問題を解決したい、解決しなければいけない、その決意をまた皆で確認し合ったところでございます。

 私も、新潟から選出していただいておる国会議員の一人としても、この問題にしっかりと取り組んでいく決意であることをこの場をかりて表明させていただきたいと思います。

 まず、今回の日朝協議についてお伺いをさせていただきますけれども、今回は約一年ぶりの日朝協議の再開となりました。七月に佐々江局長からの呼びかけがあって、それに応じて九月十八日ですか、北朝鮮側から日朝交渉の再開に合意がされたということでございますけれども、たびたび言及されておりますとおり、今回の協議では、日本側から提案がなされた。

 つまり、一つは懸案事項に関する協議、二つ目として安全保障に関する協議、三つ目として国交正常化交渉、この三つの協議を並行して進めていくということで提案が行われ、そして日本側の考えとしては一番目と二番目の解決なしに三番目はないんですよと表明したということでございました。北朝鮮側は一たん持ち帰って検討することとしておるということでございますが、今後の協議の見通しについて伺いたいと思います。

 この委員会での議論も、私も聞いておりますけれども、かゆいところをかくのに宇宙服の上からかいているような感じがいたしまして、政府がどのような方針でこの協議に臨んでいこうとしているのかがなかなか明確に見えてまいりません。ぜひ国民の前に、とりわけ御家族の一日も早い解決をと願うその心情を思うときには、本当に御家族の前に明確な対案を示してほしいと思うものですけれども、いかがでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃいましたとおり、先般の日朝の実務者間の協議の場におきまして、今後どういうことで日朝関係の進展を図るかというやりとりの中で、私どもの方から、三つの場を設けてそれを同時並行で進めていく、また拉致問題、これは日本にとって最重要の案件であるから、この拉致に関する協議、つまり懸案事項の協議というのは拉致を中心とするものでございますけれども、これの進展、決着、これが一番優先する、これの決着がない限りは過去の清算を中心として議論をする正常化交渉の出口も決着しないんだということも、改めて強く先方に対して説明したわけでございます。

 そういうボールを向こうに投げて、戻ってまいりまして、先方にとっても恐らく過去の清算の話し合いをする場というものを設けること自体は決して悪い話ではないと思いますが、まだボールは向こうにございまして、我々としては早期に向こうの回答が来ることを期待しておりますし、また要すればこちらから回答の督促を行う考えでございます。

西村(智)委員 ぜひ、政治的な判断ということで大臣の方からお答えをいただきたいということでお願いをします。

 さてそこで、このように三つの議論を並行して行っていきましょうということで提案があったところだそうですけれども、一番目の懸案事項に関する協議、これは括弧して拉致問題等と書かれております。この意味するところ、指し示すところは何なのかということについて伺いたいんです。つまり、政府認定に係る拉致被害者の方々以外にも拉致されたという疑いが極めて濃厚な失踪事案が、三十四件三十四人ですか、あると言われておりますけれども、この1の拉致問題の中にいわゆる特定失踪者の問題も含まれているという認識なのかどうか、そこを伺います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 政府が認定しております拉致事案は十一件十六人でございます。それ以外にも拉致をされた疑いが濃厚な方々というのがおられるであろうということは私どもとしても推測しておりますし、またそういう前提で日朝の協議の場では、今回ももちろんでございますけれども、去年実務者協議をやりましたその場におきましても、具体的な名前も挙げながら、先方に対してこういう方々を捜して日本に戻すようにということも申し入れております。

 拉致の認定を行った方々とそうでない方々、これは一義的には、捜査当局、警察当局の方でさまざまな証拠等も集めてそこでしっかりと認定をするということが前提になっていると思いますけれども、私ども外交当局といたしましては、認定が追加的になされたものにつきましては、当然、先方に対して早く帰国を実現するようにということで申し入れてまいります。

 また、先ほど来の繰り返しでございますけれども、そういう認定がなされていない方々につきましても、我々としましては、もしそういう人たちがまだそちらにいるのであれば早急にこちらに帰すべきであるということも続けて申し入れていく、そういう方針でございます。

西村(智)委員 認定が追加されてということが非常に気になるんですけれども、大臣、いかがですか。ここに、拉致問題等の中に、拉致されたという疑いが濃厚な失踪事案、この方々三十四人も含まれるという認識という理解でよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 今、齋木の方から答弁がありましたように、田中実という名前がその中の一つに挙がっていると思いますけれども、証拠として私どもは確たるものがありましたので、それを新たに拉致被害者として認定をしております。その他の方々に関しまして、残り三十数名につきましては、まだ証拠が確たるものができ上がっているわけではありませんので、私どもとして拉致被害者として確たる認定をしている段階ではございません。

 しかし、この拉致被害者等の懸案事項に関する協議という中で、私どもとしては、疑いが特に強いと言われる方々が多いと存じますので、そういった方々については情報を引き続き求めていくのは当然のこととして、今後の交渉の中にその問題が含まれていくものだと存じます。

西村(智)委員 時間が極めて短いので少し飛ばしてまいりますけれども、改めて私、日朝平壌宣言を読み返してみました。そこで、この宣言主体と申しますか、この宣言の中にはたびたび双方という言葉が出てまいりますけれども、これが一体何を指しているんだろうかと改めて疑問に思ったところでございます。

 日朝平壌宣言にサインをされておるのは、日本側は小泉総理大臣。仄聞するところですと、大臣は、後、任期延長はしないというふうな報道でございます。

 仮の話でお答えになりにくいということはもう百も承知でお伺いするんですけれども、仮に次の総理になった場合、次の総理はこの問題を引き継ぐのかどうか。本当に、前に進めるための具体的な方針が聞きたい、そういう意味でお伺いをしておるんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 ここに言う双方とは、基本的に日本国と北朝鮮ということを指しておると存じます。

西村(智)委員 次の質問ですけれども、今回また、先ほどの松原委員の質問にも出てまいりましたが、拉致問題に対応する専門担当セクションの必要性ということについては、たびたび議論がこの委員会でもされたというふうに承知をしております。

 それとは別なんですけれども、アメリカのレフコウィッツ北朝鮮人権問題担当特使がこのたび、自分の仕事のカウンターパートナーとして、日本にも人権問題を担当する高位の、位の比較的高い人権担当官がいた方がよろしいという発言をされたという報道がございました。

 これから恐らく、きょうちょうど採決が行われているそうでございますけれども、国連の動きも非常に活発になってきておりますし、また韓国、こちらでも、認定されている拉致被害者はもう五百人近い、四百八十六人ですか。そしてまた、今回は新たに、タイでの拉致被害者がいるのではないか、いたということが拉致被害者の手記などから明らかになっておりますけれども、そのようなところとの対応を含めて考えますと、やはり日本にもこういう高位の人権担当官の設置が必要ではないかと思いますけれども、この点について今どのようになっているんでしょうか。

安倍国務大臣 我が国といたしましても、北朝鮮における人権状況には多大な関心を払ってきたところであります。今後とも、国連人権委員会、また多国間及び二国間の協議の場においてこの問題を提起していきたい、こう考えております。

 政府としては、引き続き、拉致問題の解決を含む北朝鮮の人権状況の改善に向け、効果的な方策を検討していく予定でありますが、北朝鮮の人権問題を専門的に所掌する高官を、また大使を任命するということについては、米国で新たに任命された北朝鮮人権問題担当特使の活動状況を参考にしながら検討していきたいというふうに考えています。

西村(智)委員 検討するというときには、大抵、期限をある程度頭の中で決めてやられることだというふうに思いますけれども、どの程度検討されて結論を出されるんでしょうか。

安倍国務大臣 期限を決めるかどうかということについてはその事柄によるんだろう、こういうふうに思うわけでありますが、今御答弁いたしましたように、米国の特使がどのような活動をしているかということをよく検討する必要があるんだろう、そして我々もそのカウンターパートをつくる必要があるかどうかということを考えなければならない、このように思っているところであります。

西村(智)委員 何といいますか、時間が区切られないもどかしさ、非常に遅々として前に進まない、そんな感じをきょうの質疑を通じて改めて私は持ちました。

 とにかく、私たち国民の目の前に、そして一日も早いこの問題の解決を願っている人たちの前に具体的な方針をきちんと示していただき、もう絶対に後戻りはしない、この問題を少しでも前に進めるという決意で取り組んでいかれることを強く要望いたしまして、残念ですが時間が参りましたので私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井聰でございます。

 初めに、麻生外務大臣、安倍官房長官、御就任おめでとうございます。特に安倍官房長官は、この北朝鮮拉致問題について深い理解と関心をお持ちですからこの職につかれたわけですので、重大なる決意でぜひ解決に向けて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 私は、この委員会は初めてでございますので基本的な御質問をさせていただきたいと思いますけれども、その前に、拉致問題にかかわり合いを持ちましたのは、十年ほど前に、横田滋さん、この方は私の高校の先輩であり、かつ横田滋さんのお父様が私の高校の恩師でもありました。そんなことで、横田さんが拉致問題に関して街頭での署名活動を始めるときに、私たちの高校の同窓会がそれを率先して応援するということを十年前に始めました。それが、この拉致問題が社会問題化する、私もその当時はそんな認識は余り持っていなかったんですけれども、きっかけになったと思います。

 そのときの横田滋さんの心情は、政府のどこへ行っても、あるいは外務省に行っても、政治家に頼んでも、一切拉致という問題は存在しないんだといったような、そんな対応で、全く自分たちの心情というものを理解してくれなかったと。これは御夫妻で議論したと後で話を聞かされましたけれども、街頭で社会運動というか社会活動をするのは、むしろ横田めぐみさんにとって不利な状況になるのではないかということで随分お悩みになったということです。しかし、日本の政府が何もしてくれない、日本の政治が何もしてくれないならば、自分たち家族がその先頭に立つ以外ないではないかという決意をして、街頭に立ったということでございます。

 私、今でもこの感情は余り変わっていないんじゃないかと思うんですけれども、この家族会の心情といったものについて、特に安倍官房長官、今どのように認識をされているのか、お聞かせください。

安倍国務大臣 横田めぐみさんは二十八年前の十一月の十五日に拉致をされたわけでありますが、このめぐみさんの件につきましても、西村議員が国会で取り上げ、日本社会が問題を共有するまではなかなか顧みられなかったわけでありまして、その中で大変な孤独な闘いをしてこられた。自分たちが頑張らなければ娘や息子は帰ってこないとの思いで、みずからの仕事や生活も犠牲にしながら頑張ってこられたんだろう、こう思うわけであります。

 その中で、例えばめぐみさんの実名を出す際に、あるいはほかの方々もそうなんですが、もし実名を出すと、結果としてかえって子供たちに危害が及ぶのではないだろうか、そうずっと悩んでこられたというふうに伺っております。しかし、もう時間がないじゃないか、このまま時間が過ぎていけば結局この問題はうやむやになってしまうかもしれないという中で、本当に苦渋の決断、腹をくくって名前を出して、国民の皆さんとともに運動を展開しようという決意をされたということなんだろうと思います。

 そして、その闘いは今でも残念ながら続いていくということになってしまったわけでありまして、我々政府としても、何としてもこの御家族の皆さんの声にこたえていきたい、それはこの問題をしっかりと解決することではないか、このように思う次第であります。御家族の皆さんは、恐らく、この怒りを国も政府もともに分かち合ってもらいたいということではないだろうか、このように思います。

荒井委員 国家というのは、あるいは政治というのは、国民の生命と財産を守るという基本的な機能、それが機能していなければ、国家が存在しているということにはならない。先ほど松木議員が税金を払っているんだからと。まさしく税金がその対価なわけですね。この生命と財産が現実に守られていなかったわけですよね。

 しかも、二十八年前に拉致をされて、わかったというか、そういうことが社会問題化したというのは十年前。私は、これは平沢委員長に聞いた方がいいのかもしれないんですけれども、当時、三十年ぐらい前から二十数年ぐらい前までは、日本の治安はまだまだ、警察力はかなり機能していたと思うんです。

 しかし、あの時期に相当な数、密入国して、不審船で来て、そして連れて帰るというような、そんな無法なことがたびたび行われていた、これを治安当局は捕まえていなかったのかどうか。そういう認識は余りしていなかったというのは、私は物すごく不思議というか、日本の警察というのはそのときからもうだめになっていたのかなというぐらいの気持ちがあるんですけれども、それは一体、きょうは警察庁をお呼びしていないから、だれか答える人がいたら答えてほしいんですけれども。

 と同時に、そういう事案は外務省に伝えていたのかどうか。そういう懸念があるよ、そういう疑惑があるよと伝えていたとすれば、いつごろ警察当局は、治安当局は外務省に対して、これからいろいろな形で北朝鮮と、その当時だってやっていましたよね、北朝鮮との外交交渉というのは。こういう懸念があるよということをいつごろ伝えたのか。あるいは、全然伝えなかったのか。伝えられないでさまざまな外交交渉をやっていたのかどうか。そこのところ、どうでしょうか。外務省と、それから警察庁がいれば教えてください。

佐々江政府参考人 これは、むしろ警察当局の方でお話しをいただいた方が適切かと思うものですが、私も九〇年代の後半に担当の課長をしておりましたので、多少は経緯を知っている者としてお話をさせていただきたいと思いますが、率直に言って、この問題について警察当局の方は非常にいろいろ調べておられたと思います。しかしながら、これがはっきりと北朝鮮がやったものだというふうに断定するまでに相当の時間がかかったということは事実であろうというふうに思っております。

 と申しますのも、これもいろいろな形で断片的に、例えば九〇年代初期に行われました日朝国交正常化交渉のときに、既に特定の方の件についてはそういう可能性があるんではないかということで問題提起をされておりましたけれども、これがかような形で、つまり組織的に大変広範囲に行われているという事実が極めて明確になって浮き上がってきたのは、私は九〇年代の後半のころであろうというふうに思いますし、特に九七年の春に、家族の会あるいは超党派の議連というものができたあたりで、この問題というのが一挙に、やはり組織的にかなり広範囲に行われるということについての多くの人々の認識というのが深まったと思います。

 外交当局も、その過程で、個別の事案について当時警察当局とお話をしていたと思います。しかし、その時点でかくほどまでに広範に行われていたという認識があったかといえば、残念ながらそこまでは至っていなかったということが実情であったというふうに思っております。

荒井委員 私は、そのほかに、外務省の姿勢として、北朝鮮との国交正常化をするというのは外務省にとって大変大きな業務なわけですよね。その大きな業務に障害となるようなことについては、なるべく軽視をするとは言わなくても、なるべく大きなものとして扱いたくないという心情が働いちゃったんじゃないか。

 しかし、拉致問題というのは国家の基本にかかわる問題だというその認識が僕は外務省に少な過ぎたんじゃないだろうか。ここまで大きくなると、実際は外務省はそうは思っていなかったんじゃないか。ここに、拉致問題が大変大きな形で広がる、あるいは広がるのを放置したある種の政府の責任があるんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、外務大臣、どうですか。

麻生国務大臣 金大中という人が拉致られたことがありましたでしょう。覚えておられますか。これも白昼堂々、東京の都内のホテルからいきなり大統領候補が拉致られたという、韓国のKCIAによってなされたであろうと予想される事件がありました。

 まことに国家主権を侵害したふざけた話だと当時思った記憶がありますけれども、今言われましたように、あの話も、何となく言いにくいまま、いろいろ抗議はしたものの終わったという経緯があったと記憶いたしますので、何となくこの種の話になるといま一つ、なかなかあり得べからざる話がいきなり白昼堂々と行われると、かなりたじろいだ部分もあったというような感じがいたしますので、私も今、外務省が特にこの問題だから避けていたというわけではなくて、何となくこの種の話にはいま一つ腰が引けていたかなという感じが、私どももそう思いますけれども、当時の世論とか当時の雰囲気が何となくそんなものだったのかなという感じが、正確な記憶ではありませんけれども、そんな感じがいたしております。

荒井委員 拉致問題を解決するのには、日朝の二国間だけでは大変難しいというのははっきりしたわけですね。私は、今度の三分野で並行協議をやるというのは、これは大丈夫かな、そういう懸念をちょっと持ちます。

 というのは、拉致問題が最大の懸案であって、ここを解決しない限りそれ以降は絶対進まないよと言う方がはるかに強かったわけで、しかも今までそれを言い続けてきたわけですけれども、今度は三分野並行だというと、これは拉致問題は少しレベルが下がったのかねというメッセージを私は伝えているような気がして仕方がないんですよ。

 これは外務省の一つの戦略ですので、外交の一元化ということもありますから、そこについては私は深くこの場で議論をしようとは思いませんけれども、そういう懸念があるということ、誤ったメッセージを伝えているかもしれないですよということを申し上げておきます。

 ところで、北朝鮮が六カ国協議に応じてくる、あるいは二国間の協議にもある程度応じてくる、そういうきっかけといいますか、そういう状況というのは、私は、やはり北朝鮮を含むマルチのいろいろな圧力が働いた。特に、国連での人権委員会やあるいは国連総会で北朝鮮の人権問題について各国からかなり批判が出てきた、これは私は物すごく大きなことだったんではないか。

 こういうふうに、北朝鮮外交、北朝鮮との交渉をやる場合には、二国間だけじゃなくて、多国間をどうやって巻き込んでいくのか。本当は、多分、中国とロシア、韓国なんだと思うんです。この三カ国にさまざまな形で拉致問題の解決のために協力してもらうというのが絶対必要だと思うんですけれども、今どうも韓国や中国との関係は非常によくないですから、そういう議論はなかなかできないのかもしれませんけれども、これはやはり多国間、多国を巻き込んでいく、国連の場や、あるいは今度の日米交渉や、あるいは日韓交渉などでも、それを必ず向こう側に協力をしてもらうように要請をし続けるということが絶対必要だというふうに思うんです。

 最近、拉致問題については、拉致された被害国が、マレーシアだとかあるいはタイだとか、多国に及んでいるということも新聞などで入っているわけですから、そういう国も巻き込んで、この拉致問題をどういうふうに多国で支援をしていくというか、圧力をかけていくのかという戦略を組むべきだと思うんです。

 ところで、外務大臣、高木徹さんという方の書いた「戦争広告代理店」という、これはベストセラーになった本なんですけれども、「情報操作とボスニア紛争」という副タイトルがついています。このボスニア戦争をボスニアという国に有利なように導くのにどのぐらい広告、広報が大事だったか、そのためにどういう手法を用いたのかということを克明に書いてある本なんですね。

 私は、特に国連外交なりあるいは多国間の拉致問題に関して圧力を強めようとしたならば、この本を絶対読んで、そしてこの本の意味しているところ、国際世論をどういうふうにつくり上げていくのかということをもっと強固に日本の外交戦略としてやるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 世論操作をする上で広告が極めて有効な手段であることは、ヒトラーの使いました広告、宣伝相をまつまでもなく、過去何十年かの間いろいろな形で使われたところでもあります。また、湾岸戦争のときに油だらけになったいわゆる海鳥の写真が大きく取り上げられて、これがいろいろな意味でこの戦争というものの話の本質とはかなり違ったところで打ち上げられた。そういった意味で、広告としては結構大きな効果があることは、私もそう思っております。率直なところです。

 したがって、今そういったものを使うかどうかは別にいたしましても、私どももそういった効果が大きいということは十分配慮して、特にテレビというものの影響力がこれだけ大きくなってくると、今言われたような点につきましては、役人は広告、宣伝というものは最も不得手とするところでもあろうと思いますので、今の点は一つの案として考えねばいかぬところだと思いますが、直ちにどうのこうのという段階で考えているわけではございません。

荒井委員 日本国内で広告をやれというんじゃないんですよね、拉致問題はもう十分日本国民は理解をしているわけですから。これをどうやってアメリカやヨーロッパ、人権に関心を持っている国々に訴えていくのか。これはニューヨーク・タイムズに広告を出すのだって、大きな広報戦略、日本としての広報戦略ですよ。そういうことを考えるべきではないですかということを申し上げたわけです。

 最後に、今六カ国協議が進んでいますけれども、これは最後はどこかで決着がつくんでしょう。それで、ついたときに、先ほどどなたかおっしゃっていましたけれども、軽水炉の建設とかそういうような話し合いが、その次に、どういう形で経済協力するか、資金協力するかというような話が具体論として出てくるんだと思うんですけれども、そのときに、この拉致問題が解決していない、だけれども六カ国の方は締結しちゃった、こういう状況になったときに、日本は資金を提供する状況に追い込まれかねない状況が出てくるんだろうと私は思うんです。

 それで、それは絶対やらない、できない、日本国としてはそこは絶対踏み込まないという決意をどこかでやっておかないと、私は、日本の外交戦略というか外交交渉上、極めて難しい状況に追い込まれてしまうと思うんですけれども、ここはいかがでしょうか、外務大臣。

麻生国務大臣 ライス国務長官とのバイの会談でも、同じようなことで、アメリカ側からこれは五つ出ているんですけれども、その中で軽水炉の話が出ておりますが、優先順位をはっきりしようと。同時並行とあと優先順位だと。それで、きちんと全部しない限りはやらないということを向こうも確認しておりますので、今御懸念の点はよくわかりますけれども、そのようなことはない、そう思っております。

荒井委員 終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、北朝鮮問題は平和的な交渉で解決すべきということを繰り返し主張してまいりました。

 今回、日朝の政府間協議が一年ぶりに再開をされたわけですが、この協議では拉致問題や過去の清算など双方で突っ込んだ意見交換が行われたと外務省は発表しているわけです。対話継続も合意されているわけですが、今後の進展を図る上で、まず外務大臣、今回の日朝の政府間協議をどのように評価しておりますか。

麻生国務大臣 昨年の十一月ですから約一年ぶりの再開となった今回の協議でもありますので、これまで全くナシのつぶてというか没交渉であったところが、少なくとも、拉致問題を初めとする懸案事項等々、過去の清算など、双方の持っております関心事項につきまして突っ込んだ意見の交換が行われたということは、私は評価すべきものだと思っております。

 私どもの方としては、拉致問題に関して、御存じのように三点、即時返還、真相の究明、いわゆる実行犯、容疑者の引き渡し等々を強く求めたところでもありますので、向こうは解決済みという話ですけれども、私どもとしては、とんでもない、日本側としては少なくともこの拉致問題を懸案事項として今後とも議題にのせるということに関しては北朝鮮側も理解をしているところであろうと存じます。少なくとも私どもとしては、日朝平壌宣言に従って、今後この問題に関して、向こう側の清算の話、こっち側の拉致の話、ともにこれはきちんと対応していかねばならぬと思っております。

 したがいまして、私ども先ほどいろいろな方々の御質問にも答えておりますとおりに、私どもとしては、今回、三つの協議を並行してやるという話を持ち出して、向こうもそこに出てきて、次の協議に間違いなくつながったと思っております。しかし、今おっしゃるように平和的にお話し合いはさせていただいておるということなんだと思いますが、少なくとも私どもは、核とかミサイルとかいうような話の、いわゆる私どもが提案している三つの、拉致、核・ミサイル、そういった問題がきちんと解決しない段階で国交正常化はあり得ないということで申し上げ続けてきております。

赤嶺委員 国交正常化まではいろいろあると思うんですが、協議が継続されるきっかけになったと。

 そこで、その拉致の問題についてもうちょっと伺いたいんですが、例えば、北朝鮮側の代表は今回の協議において、拉致問題に関する我々の立場はすべて御承知と思うと言いながら、むしろ我々が日本に多くの質問をしたいと述べているわけですね。

 それで、今回の日朝協議で日本側は、横田めぐみさんのものとして北朝鮮が提供した遺骨が別人のものだったという問題で、日本側の鑑定結果についても詳細に説明した、こういう報道になっているわけですが、むしろ我々が日本に多く質問をしたいという協議前のこれらの発言というのは、まさに鑑定結果についての日本側の説明、これに対して北朝鮮側はいろいろ疑問を提起したと考えるわけですが、この点はいかがですか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 二日間の協議の相当部分というか、大半は拉致問題に関するやりとりでございました。我々は、先刻来申し上げているとおりの要求をすべて、改めて先方に対してぶつけました。また、去年の十二月の二十五日に日本政府の見解として北朝鮮側に伝達したその見解についても改めて言及しながら、我々としての疑問点、不審点というものを当然ぶつけたわけでございます。

 この一年の間に先方もいろいろな情報収集を恐らくしたのだと思いますが、日本のDNAの鑑定の水準というかやり方とか、そういったことについても、いろいろとどうも研究、分析もしてきております。したがって、横田めぐみさんのものとされる遺骨のDNA鑑定の件につきましても、我々の方からいろいろと問題提起をいたしましたが、先方からも日本のその鑑定結果に対する先方なりのさまざまな意見の開陳というものがございました。

 残念ながら時間が十分に、それ以上の突っ込んだやりとりを、この問題だけでやるわけにいかなかったものですから、またこれは機会を次回見つけてより詳細にやりとりをしようということで、この件についてのやりとりを終えたわけでございます。

赤嶺委員 報道によりますと、DNA鑑定の問題で双方の意見が違うと。違うのであれば、DNA鑑定の専門家を日朝の協議の場に参加させたらどうかという日本政府の考え方もあるやに聞いているんですが、そういう提案はされたんですか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 私は、協議に臨むに際して、DNAの鑑定、日本の鑑定の結果についての説明は、十分に勉強した上で先方にいろいろと日本の見解を伝えました。また、向こうは向こうで、向こうは外務省の宋日昊アジア担当副局長ですけれども、この一年の間にさまざまな勉強をして、向こうの疑問点についてはいろいろと述べておったわけでございますけれども、一通りもちろんやりましたが、我々は専門家ではないということをお互いに認識しつつ、もう少し突っ込んだお互いのやりとりというものを、場合によっては専門家も交えてやる、その意味についてはお互いに認め合いつつ、その点についても検討を重ねていこうということになったわけでございます。

赤嶺委員 もう時間がかなり迫ってきたわけですが、齋木さんは今回の協議は有益だったと述べられ、北朝鮮の側も今度は国交正常化交渉再開にとって有益だったと思うとそれぞれ感想を述べられているわけです。これは恐らく、日本側が提起した今後の日朝間の協議の三つの枠組み、これに大いに関連があるんじゃないかと思うんですが、その三つの協議をそれぞれ提起した理由について述べていただきたい。

 それから、これは外務大臣にも伺いたいんですが、その後、六者協議が行われました。六者協議は今休会中になっているわけですが、前段でやはり米朝間のいろいろな問題もあったというぐあいに報道をされております。米朝の信頼関係を築くという上で日本がどんな役割を果たそうとしているのか、この二点、最後に質問いたしたいと思います。

麻生国務大臣 今回は、三日間という極めて限られた期間でもありましたので、共同声明というものの実施に関する基本的な考え方、指針につきまして、具体的な討議を行っているということだと存じます。

 各国から出されました、例えばアメリカから五つとか日本から三つとか、いろいろ各国間の率直な意見交換というものは、私どもは、今後の共同声明を実施していくに向けた議論をさらに推し進めていく上で有効なものだと思っております。

 もちろん、各国間で隔たりもありますけれども、今回の協議では、例えば作業部会というものにつきましては明確な合意は得られませんでした。しかし、作業部会を通じて、専門家の知見も活用しつつ、そして今のお話もありましたが、実施計画をつくっていくこと自体につきましては六者共通の認識が得られたということは大きかったと思っております。

 日本としては、次の協議というのを早期に再開するとともに、計画作成に関する議論というものを具体的に進める必要があると考えておりまして、引き続き、米韓と連帯いたしまして、議長国であります中国とも協力しつつ、準備作業というものをさらに進めていかねばならぬと思っております。

赤嶺委員 終わります。

平沢委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会


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