衆議院

メインへスキップ



第4号 平成18年5月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年五月十日(水曜日)

    午後二時一分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大前 繁雄君

   理事 近藤 基彦君 理事 水野 賢一君

   理事 宮路 和明君 理事 松木 謙公君

   理事 松原  仁君 理事 池坊 保子君

      稲田 朋美君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    鍵田忠兵衛君

      河井 克行君    薗浦健太郎君

      中森ふくよ君    広津 素子君

      福井  照君    馬渡 龍治君

      山本 明彦君    北橋 健治君

      中井  洽君    西村智奈美君

      笠井  亮君    重野 安正君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   外務大臣政務官      山中あき子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  坂井 孝行君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題連絡・調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    江村 興治君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    山崎信之郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 辻   優君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          佐藤 宏尚君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     稲田 朋美君

  根本  匠君     馬渡 龍治君

  渡部  篤君     広津 素子君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     河井 克行君

  広津 素子君     渡部  篤君

  馬渡 龍治君     越智 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     中森ふくよ君

同日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     根本  匠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、北朝鮮をめぐる最近の状況について、政府から説明を聴取いたします。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 北朝鮮をめぐる最近の状況について御説明をさせていただきます。

 まずは、先月東京で行われた六者会合関係国による非公式接触について御報告いたします。

 四月九日から十三日までの日程で、東京にて開催された民間主催の会合である北東アジア協力対話及びその関連会合の機会に、各国の六者会合の首席代表などが来日いたしました。

 この機会に、日朝間では、三度にわたり、合計約五時間の協議を行っております。我が方からは、拉致問題について、北朝鮮側の誠意ある対応を要求するとともに、このまま、日朝関係も六者会合も進まない場合、日本国内の雰囲気はますます厳しくなることを説明しております。

 また、後ほど述べます横田めぐみさんの夫とされる人物に関するDNAの検査結果についても伝達しました。その上で、今回の検査結果を踏まえ、拉致問題の解決に向けて北朝鮮が誠意ある対応をすべきである旨改めて強く要求しております。

 これに対し、北朝鮮の金桂冠外務副相からは、自分は日朝関係の担当ではないが、話は本国に伝えることとしたいとの発言がありました。

 また、各国代表は、今回の機会を最大限に活用し、六者会合の再開につなげたいとの考えのもと、鋭意話し合いを行いました。

 しかし、一連の会合では、北朝鮮が六者会合出席の前提として、米国による資金洗浄対策の金融措置の解除に固執したため、関係国間の立場の隔たりが埋まりませんでした。

 次に、先月公表した、横田めぐみさんの夫とされる人物に関するDNA検査結果について御報告いたします。

 この検査は、昨年十一月に私が拉致被害者の御家族と面会した際、横田さん御夫妻より直接依頼されたものを受け、北朝鮮による日本人拉致事案の関連情報収集の一環として実施したものであります。

 具体的には、韓国政府の協力も得て、横田めぐみさんの夫である可能性がある韓国人拉致被害者五名の御家族から生体資料の提供を受け、これら資料と横田めぐみさんの娘であるキム・ヘギョンさんの生体資料とのDNA型を比較しました。

 その結果、四月十一日に、外務省から検査を嘱託していた国内の二つの機関のいずれからも、キム・ヘギョンさんと韓国人拉致被害者の金英男さんの家族の間に血縁関係が存在する可能性が高いとの回答を得ました。

 検査結果の判明後直ちに、外務省より、横田めぐみさんの御両親及び韓国側御家族に結果を伝達いたしました。また、韓国政府に対しても、改めて協力を要請いたしております。

 最後に、先月下旬行われた拉致被害者御家族の訪米結果について一言申し上げます。

 四月二十七日には、米国議会下院公聴会において、横田早紀江さんが拉致被害者の苦痛と御家族の悲痛な気持ちについて証言を行い、拉致がいかに非人道的な行為であるかを訴えました。

 二十八日には、早紀江さん及び御子息の拓也さんが、ホワイトハウスにおいてブッシュ大統領と面会をしました。大統領は、拉致問題について強い関心を示し、我が方の立場にさらなる理解と支持を表明しております。

 御家族の訴えは、大いに米国関係者及び米国世論の共感を得たと思います。また、四月三十日より訪米をした機会に、私よりも、チェイニー副大統領、ライス国務長官ほか米国政府関係者、さらにルーガー上院外交委員長ほか米国議会関係者に対し、御家族への対応に感謝するとともに、引き続いての支持を要請しております。御家族の今回の訪米を契機に、拉致問題の解決に向けた国際的な連携を一層強化すべく、外務省としても全力を尽くす考えであります。

 こうした一連の流れを踏まえつつ、政府としては、今後とも、対話と圧力という一貫した考えのもと、拉致、核、ミサイル等の北朝鮮との諸懸案の包括的解決に向け、関係省庁が一丸となって総合的に粘り強く取り組んでまいりたいと思っております。委員長及び委員各位の御協力をよろしくお願い申し上げます。

 以上です。

平沢委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官坂井孝行君、内閣官房拉致問題連絡・調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長江村興治君、警察庁警備局長小林武仁君、防衛庁防衛局長大古和雄君、防衛庁運用局長山崎信之郎君、外務省大臣官房参事官辻優君、外務省大臣官房参事官梅田邦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原委員 拉致問題、なかなかこの解決に見通しがつかないような状況が続いておりましたが、今回、連休前に、日本の拉致被害者家族会の方々がアメリカに参りまして、あちらの公聴会において拉致の問題について発言をした、韓国の拉致被害者の方もいらっしゃったわけでありますが。さらに、さまざまな米側の要人と会い、そして最後の段階では、アメリカの大統領であるブッシュさんと面談をした、こういったことであります。

 このことについて、安倍官房長官の御所見をお伺いします。

安倍国務大臣 今般、横田早紀江さんを初め拉致被害者御家族、また救う会、議連の方々が訪米をされました。そして、下院の公聴会で証言をされ、そしてブッシュ大統領と面談をし、拉致問題の深刻さ、いかに人権侵害が行われているかということについて訴えられたわけでありますが、これは、米国のみならず世界に対して、強い重いメッセージを発することになったのではないか、このように思っております。

 我々は今、対話と圧力の姿勢によってこの問題を解決しようということで努力をしているわけでありますが、その中で、国際的な圧力を高めていくという意味におきましては極めて有意義であった、このように思っております。

松原委員 私は、今回、拉致被害者家族の方々がブッシュさんに会ったというのは、北朝鮮に対するある意味で最大の圧力になるだろうという認識を持っております。過日、外務委員会でも麻生大臣にこのことは御質問をしたわけでありますが、まさにそういった認識を持っている。

 問題は、日本人の拉致問題で、もちろん、日本の国が中心でこの解決を果たし、できるなら日本の国で自己完結をしてこの問題の解決をするというのは、国家のプライドからいっても一番大事でありますが、見ようによっては、日本の国がこの問題に対してなかなか解決という糸口を見出さない中で、結局、日本ではないアメリカの方に行って、議会で、公聴会で発言をし、アメリカ大統領に会うということがこの問題の解決に大きな前進になる、それは事実そうなんでありますが、私は大変にそのことを評価しながらも、翻って、我が国はどうだったのかというふうに思わざるを得ないわけであります。

 このブッシュさんに拉致被害者家族会がお会いした経緯について、これは外務大臣でも官房長官でも、どちらからでも結構でありますが、どういう経緯でブッシュさんに会うところまで行ったのか、お伺いをしたい。

麻生国務大臣 御家族からの話を含めまして、駐日米国大使、シーファー大使等々からこの話についての直接の助言というものが、ブッシュ大統領に会った一番大きな理由の一つだろうと存じます。日本に来られた後、新潟に御案内する等々、段取りに至るまではいろいろさせていただきましたけれども、直接には、この助言というものがブッシュ大統領に一番大きかった、私どもはそういうぐあいに理解をいたしております。

松原委員 このシーファーさんという方は、ブッシュさんとは朋友だという話でありまして、あちらの野球の球団か何かを一緒にシェアしていた、そういう関係の方で、本当の朋友であると。

 そうしますと、このシーファーさんがいて、新潟に拉致の現場を見に行って、今度戻ったらブッシュさんに言っておくよ、こういう感じで、それは、それだけの人間関係の中でそういう話が伝わった。ある意味では極めて偶然の要素であって、ここにシーファーさんがいなかったら、このブッシュ会談というのは実現がこんな簡単にはできなかったかもしれないという議論はあるわけでありますが、私は、そういう偶然がなくたって、こういう議論は進めなければいけないと思うんですよ。

 安倍官房長官、何か御発言があれば、お願いします。

安倍国務大臣 日米のこの拉致問題に対する姿勢につきましては、クロフォードにおける日米の首脳会談におきまして、小泉総理から、拉致問題の重要性、深刻さについてブッシュ大統領に説明をいたしました。

 その結果、ブッシュ大統領は、その後の記者会見におきまして、北朝鮮によって拉致をされた日本人の行方が一人残らずわかるまで米国は日本を完全に支持するという、しっかりとした、強い、日本のこの拉致問題の解決に向けての姿勢に対しての共感と支持を表明したわけでございます。それ以来、基本的には、日米では同じ認識、同じスタンスでこの問題に当たってきたというふうに思っております。

 そして、その中におきまして、早紀江さんを初めとした被害者の御家族の方々が議会で証言する、また大統領と会ってじかに訴えるという場を設けるということについての重要性は、委員を初め我々も認識をしておりまして、そういう努力をしてきたわけでありますが、その間におきまして、やはり基本として、小泉、ブッシュ、この両首脳の認識が一致をしていたということは大きいのではないかというふうに思います。

 また、今般、私の方からも、また麻生大臣からも、シーファー大使にもお願いをいたしました。横田早紀江さんを初め拉致被害者の方々がいかに多くの日本人の同情を集め、また共感を集めているかということを米国側が理解しなければ、なかなか民間人の大統領との面談は実現をしなかったわけでございます。そのことをシーファー大使には十分御理解いただけたのではないか、また、その前のベーカー大使にも御理解をいただいていたのではないかというふうに思うわけでありますが、今般、シーファー大使も大変な御尽力をいただきました。また、私からも、クラウチ補佐官にも電話でお願いをしたわけでございますが、ホワイトハウス側も、この面会については十分に理解し、努力をしていただいたのではないか、このように思っております。

松原委員 私は、拉致問題がなかなか解決をしない理由というのは、後で質疑いたしますが、小泉総理が確かに突破口は開いた、しかし、その後、例えば横田めぐみにせ遺骨問題が一昨年発覚した後一年間、拉致専門幹事会が行われなかったというふうなことも含め、今の総理大臣のこの問題に対する冷淡な態度というものが、実はこの問題の解決を極めて困難にしているような気がしてならない。

 言い方によれば、私は、昨年一年間は拉致に関しては失われた一年間というふうに言っても過言ではないような気がしてならないわけでありますが、官房長官としての安倍さんにお伺いしたいのは、今回のブッシュさんと横田早紀江さんが会うという段取りの中において、それは従来のような会議は別にして、今回の件に関して、直接、小泉さんは何かアクションをとっていますか。

安倍国務大臣 今回のブッシュ大統領との面談、あるいは議会での証言等について、政府としても働きかけを、私も行ったわけでありますが、こうした働きかけを行うことについては、総理の御了解また御指示もいただいております。

松原委員 お立場は官房長官ですから、なかなか言えないんですが、麻生外務大臣も、そして安倍官房長官も、シーファーさんにも話をした。クラウチさんにも、安倍さんの場合は電話連絡をしたりしたのかもしれない。小泉さんが見えてこないんですよ。恐らく、今回のことに関して、彼は熱心にそれを実現しようと思って動いたとは、私は思っていないんですよ。少なくとも、余りにもこの問題に対しては、一昨年の一年間にしても、総理の対応というのは私には冷淡に見えてならないわけであります。

 実務的な話を、これは役所の方にお伺いしたいんですが、小泉さんは、この拉致被害者家族と三回、今まで会った経緯がありますよね。総理大臣は三回。三回、どういうふうな形で会ったか、もしわかれば、御答弁いただきたい。

梅田政府参考人 申しわけございません。今突然のお尋ねでもございますので、手元に資料を持っておりませんので、御勘弁願いたいと思います。

松原委員 三回なんですが、今回のブッシュさんが横田早紀江さんと御子息と一緒にああいうふうに会うようなフランクな会い方というのは恐らくしていないと思うんですよ。例えば一回は、北朝鮮へ行って、戻ってきて、あそこの、最初クローズでやると言ったのが、マスコミを入れてオンエアしてやったときに一回とか、総理はたしか三回ですよ。

 私は、やはりこの問題の解決を考えたときには、ブッシュさんというのはアメリカの大統領ですよ、アメリカの大統領がああやってホワイトハウスに呼んで、彼らと話をし、そして、北朝鮮はけしからぬと言う。それは言葉だけではあっても、それも一つの大きな圧力になる。そういった部分の努力を小泉総理はもっともっと果たすべきだったと私は思うんですが、きょうは小泉さんはおられませんから、これ以上言えませんけれども。

 そういった意味で、日本国民は、自分の生命、自由、財産を守る、まさに国が、夜警国家といえどもやらなければいけない要素を果たすために、日本ではなくて、もしかしたらアメリカの方が頼りになると思うようなことがあったら、それは国として成り立ち得ないと私は思っておりますので、この辺に関しては、小泉さんは小泉さんのスタンスがある、しかし、内閣としては一つの大きなくくりの中でやっているわけでありますから、決意を持って外務大臣にも官房長官にも頑張っていただきたいと思うわけでありますが、官房長官、御決意があれば、お伺いしたい。

安倍国務大臣 この問題につきましては、もう長い時間がかかってしまっているわけでありますが、これは松原先生も御承知のように、かつては、外務大臣にすら、局長にすら、御家族がなかなか会えない、そういう時代もあったわけであります。しかし、やっと小泉総理が突破口を開いて、五人の被害者が帰国をされ、また、その後、五人の被害者の御家族の八名の方々も帰国をすることができた。そして、新しい事実もわかってくる中にあって、我々もしっかりと御家族の方々の意を酌んで、一日も早い奪還を目指して全力を尽くしていきたい、この気持ちは総理も全く同じだろう、こう思っております。

松原委員 次に、かねての、例えばさまざまな委員会において、今警察の中には拉致対策室が外事課か何かにありますよね。しかし、内閣官房の中に、調整室とか支援室とかいうのではなくて、この問題を解決して、常設のスタッフを構える拉致対策室を、もうこの段階まで来たら、私はつくるべきだと思うんですよ。

 何で今までできなかったのかというのは、あのころは安倍官房長官もつくるべきだという方の論者だったと私は認識をしておりますが、なぜ今までつくらなかったかということを今さら問いません。しかし、ブッシュさんまで会った段階において、日本においてこの拉致の対策室、まあ特命チームというのはあるけれども、きちっとした拉致対策室で、常設のスタッフを入れてやるというのを、私はもうやるべき時期に来ていると思うんですが、御所見をお伺いしたい。

安倍国務大臣 機能としては確かに、委員の御指摘の機能を持たせるべきだと私も従来から主張してきているわけであります。しかし、現実に、現在の官房副長官を長とする拉致問題特命チームは、関係省庁、機関がそれぞれ、みずからの役割を果たしつつ、緊密に連携し、拉致問題の解決に向け全力で取り組んでおります。

 また、ことしからは、参加メンバーをほぼ全省庁に拡大いたしまして、情報の収集、集約や法執行の強化を図るために、情報収集会議や法執行班を設置し、ある意味では大変パワーアップ、バージョンアップをしているわけでありまして、委員が御指摘になられた機能を十分に果たしているというふうに思うわけであります。

 そういう意味におきましては、今後、この拉致問題特命チームを中心に、政府一体となって取り組む現在の体制をしっかりと機能させていきたいというふうに考えております。

松原委員 これは、官房長官、やはり小泉さんが拉致対策室をつくっちゃいかぬというふうなことをおっしゃっているんでしょうか。これをつくりたいと官房長官が言ったときに、小泉さんはつくっちゃいかぬと言うんですか。

 常設のそういう部署があるかないかというのは、これは、言葉では特命チームという響きも悪くないけれども、全然実態は違いますよ。総理はこれに対して、官房長官が見るところ、まだまだ恬淡としてその必要性を感じていないんでしょうか。お伺いしたい。

安倍国務大臣 この専門幹事会でありますが、この専門幹事会を改組いたしまして、いわば事務局的な形にもしているわけでありまして、そういう意味では、この問題に専任をして当たっていくということも行っているスタッフもいる中にあって、かなり私は機能が強化されているというふうに思うわけであります。

 もちろん、総理がそれをつくってはならないと言うことは全くないわけでありまして、先ほど申し上げましたように、情報収集あるいはまた法執行班という極めて強い意思と目的を持ったチームをこの特命チームの中にも置いたわけでございまして、これも、もちろん総理の御了解もいただいているわけでございますので、まさに政府一丸となって、総理以下、我々、この問題の解決のために、対話と圧力の姿勢で努力をしていきたいと思っています。

松原委員 今回、アメリカの公聴会に被害者家族会の方々も行かれて、サミットの議題、G8ですか、拉致問題を提案しよう、こういう話になっているわけでありますが、このことに対して日本としてはどのような対応をしているのか、御所見をお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 先月、拉致被害者家族会等の皆様が訪米をし、下院公聴会において証言を行った際に、人権小委員会委員長であるスミス下院議員より、拉致問題をG8サミットの国際的な場でも取り上げるべきだという発言がございました。

 我が国政府としても、拉致問題の一日も早い解決に向けて最大限の努力を尽くしていくという強い意思を持って対応してきているわけでありますが、対話と圧力の基本方針のもと、米国を初め世界各国との連携を一層強化し、G8サミットにおいてもこの問題が取り上げられるよう、議長国ロシアへの働きかけを含め、外交努力を尽くしていく考えでございます。

松原委員 今回ブッシュさんに会って、アメリカは金融制裁というある種の経済制裁を既にやっているわけでありますが、ライス国務長官、チェイニー副大統領と外務大臣はこの連休中会ってきて、その前にブッシュさんに会っているわけですね、拉致被害者家族会の横田早紀江さんと息子さんがお会いしている。

 そこで私は、ここまで来たら、腹としては、日本が北朝鮮に対して経済制裁というカードも発動を辞さないぞといったことも、当然、こういったライス国務長官やチェイニー副大統領さんとの会談で麻生さんは言っているんじゃないかなと、私は、半分というか、大いに期待して思っているわけでありますが、この中身をお話しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今言われましたように、四月の三十日、チェイニー副大統領、その翌日にライス国務長官等々その他米政府関係者、並びに議会の上院委員長等々との意見の交換やらやっておりますが、そのときに私の方から、米政府並びに議会関係者に対して、今回の公聴会のセット並びに大統領への面会等々に対していろいろ力をかしていただいたことに関しての御礼というのを申し上げております。

 引き続き、拉致に関する理解と支援というのを求めたところでありますが、私どもとしては、今回のブッシュ大統領との会見、面談、それが放映されて、世界にオンエアされるということは極めて大きな圧力になった、そう思って、いい会談だったと思っております。

 私の方から、この場において、特に経済制裁を発動するということを述べたことはありません。

松原委員 そろそろその可能性というか、秒読み段階、カウントダウンをしなければいけないのではないかと思っておりますが、一方において、今回、金英男さんの血液型のこともあって、共同戦線を張らなければいけない韓国でありますが、横田めぐみさんの御家族が韓国を訪れる際には面談をしないと統一相が言ったわけであります。

 極めて私は失礼な話のような気がしてならないわけでありますが、これは日本側が、横田さんはそれは求めていませんから、日本側の政府がそれを求めたという事実があるのかないのか、ないのにこういうことを言うというのは大変非礼だと思うんですが、御所見を、麻生さん、お伺いしたい。

山中大臣政務官 今月三日になりますが、イ・ジョンソク韓国統一部長官は、マスコミ関係者との会合におきまして、日本人記者の質問に対して、横田滋さんと会う計画はなく、必要もないと考えている旨を説明したというふうに承知しています。

 統一部長官の当該発言の真意は定かではありませんが、委員も御承知のとおり、韓国側によるDNA検査の結果はまだ出ておらず、韓国側としての具体的対応ぶりが定まっていないのではないかというふうに承知しております。

 いずれにせよ、今般、横田滋さんほか、家族、関係の方々の訪韓に関しましては、現在、具体的に準備を進めていると承知しておりますけれども、その主たる目的は、韓国人拉致被害者の御家族と日本人の被害者の家族の面談にあるというふうに認識しております。

 なお、拉致問題については、さきに訪韓した塩崎副大臣と潘外交通商部長官との間でも、日韓で連携強化をしていくということにつき意見が一致しておりますので、今後も、DNA鑑定その他の推移を見ながら、日本、韓国政府間での協力を推し進めていくつもりでございます。

松原委員 日本の場合は、自国の防衛も、自衛隊はあるけれども、アメリカに大変ゆだねているという議論がある。拉致の解決まで自国で解決できなくてアメリカにゆだねられ、そのことによってのみしか解決できなかった、こういうことになると、それは解決すれば、それはそれで、その部分はいいわけでありますが、国としての面目というのは極めて厳しくなるわけでありますので、その意味では、経済制裁発動を含め、日本が主体的に先に行動するということをぜひとも毅然とした外交の展開として目指していただきたい。要望申し上げまして私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、北橋健治君。

北橋委員 このたびの、御家族の皆様が訪米をされまして、アメリカの議会で証言をされ、大統領と面談をされた、この世界に対する発信、まことに大なるものがあると思います。

 今回の訪米に当たりまして御尽力をされたすべての方々に、まず心から敬意を表したいと思います。

 その上で、安倍官房長官に最初の御所見を承りますが、横田めぐみさんのお母さんは、証言の中で、家族を帰してほしい、帰さないなら経済制裁をと切々と訴えられました。あなたはどういう思いで聞かれたでしょうか。

安倍国務大臣 横田早紀江さん初め被害者の御家族の皆様方は、お子様方がそれぞれ北朝鮮にいるわけでございまして、その中で、もし経済制裁をして自分たちの子供たちに何か危害が加わったらどうしよう、そういうことも心配しながら、そういう悩みの中で、しかし、もうここまで来て、これしか道がないんだという思いで経済制裁をやってもらいたいということをおっしゃったんだろう、このように思います。

 私もそのように直接何回か言われたことがあるわけでありまして、そういう意味におきましては、大変その言葉は重いというふうに受けとめているわけでございます。しかし、私たちの目的は、これは早紀江さんも同じなんだろうと思うんですが、被害者を奪還することにあるわけでありまして、この結果を出すために対話と圧力の姿勢で今後も当たっていくしかない、こう思っております。

 経済制裁は最終的な圧力であるわけでありますが、それに至る過程においてさまざまな圧力があるんだろう、こう考えております。国際社会において北朝鮮にしっかりと圧力をかけていくということも大変意味のある圧力になってくる、このように思っております。

 そういう意味におきましては、今回の横田さんの議会での証言は強いメッセージになり、また解決に向けて国際社会を一致結束させる大きな力になったのではないか、このように思っております。

北橋委員 さまざまな圧力があるということについては後ほど改めてお伺いいたしますが、横田めぐみさんのお母さんの証言は重い、経済制裁をと切々と訴えられた気持ちは重い、そういうお言葉でございますが、これは国民の世論の趨勢でもあると申し上げておきたいと思っております。

 今、官房長官のお言葉の中で、外交的な、国際的な包囲網を築くという言葉がありましたが、この点について、外務大臣の御所見を順次承ってまいりたいと思います。

 まず最初に、私は、今回、ことし三回目の質問でございますが、国連総会の決議の重みについて外務大臣は語られました。私も同感であります。

 問題は、それを踏まえて、さらにステップを強く踏み出すことでございますが、そういった人権外交を国際的に強力に推進するために、お伺いするところによれば、人権の理事会なるものを創設する動きが国連内部にあると聞いております。日本は、こういった動きに対して、積極的に関与して、そして対応すべきであると思いますけれども、日本政府の対処方針をお伺いいたします。

山中大臣政務官 委員御指摘のように、ことしの三月に、国連の人権委員会にかわって国連人権理事会を設立するという動きになりました。

 日本は、これに対して、積極的に早期の設立に対して尽力をしてきましたとともに、この一カ月間でございますけれども、この委員になるべく選挙活動も実施してまいりました。在京でも、それからニューヨークでも、あるいはこの休暇の間のさまざまな外国出張の方々にもお願いするというような形で、昨九日、これはニューヨーク時間でございますけれども、この新しい人権理事会のメンバーに当選をいたしました。

 このような経過の中で、日本政府といたしましては、今後もこの新設の人権理事会の活動に積極的に参加していき、ある意味ではつくり上げていくことにも参加するとともに、世界の人権の保護そして促進に建設的な役割を果たしていくというふうに覚悟を決めて参加してきております。そしてまた、このことが拉致の解決にも寄与するものというふうに私どもは信じております。

北橋委員 この人権理事会におきまして、日本が積極的に関与し、その中で世界に対して発信を続けることはまことに重要な外交であると思いますので、しっかりと覚悟を決めて頑張っていただきたいと思います。

 さて、最近の中国、韓国の動きでございますが、六者協議は御案内のとおり中断したままでございます。先ほど外務大臣の非公式協議についての御報告を承りましたが、相変わらず北朝鮮側は誠意ある回答を寄せてきておりません。

 そういう中で、米国大統領が、このたび、横田さんたちと面会する場を通じてまして、不退転の決意を持ってこの問題にかかわってくるだろうと思います。日本とアメリカを中心にそういう動きが強まる中で、残念ながら、中国や韓国におきましては北朝鮮への経済援助が拡大しているのではないか、これが昨今の現状ではないかと憂慮するわけでございます。

 そこで、外務省にお伺いするわけでございますが、先般、武部自民党幹事長が訪中をされた際に、トウカセン国務委員にお会いになっておられます。唐国務委員は、この中で、拉致問題解決に向けて努力をするという発言があった、このように報道を聞いたわけでございますが、外務大臣はどのような報告を受けておられるでしょうか。その後、中国において拉致問題解決に向けての具体的な努力というものは見られるんでしょうか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 今月の一日に訪中をされた武部幹事長、トウカセン国務委員と会談をしておられた内容につきまして、私ども外務省としても承知をいたしております。

 会談の中で、幹事長の方から、拉致問題というのは日本にとっては極めて重要ということで、中国の一層の努力を求めるということを言われております。これに対して、トウカセン国務委員より、拉致問題での解決につき努力する旨の発言があっております。

 拉致問題の解決のためには、これは中国を含め、国際社会との連携協力というのは不可欠と思っております。したがいまして、政府としては、先ほどの国連初め国際社会において、あらゆる機会をとらえて、拉致問題に関する日本の立場というものの理解と協力を求めてきておるということであります。

 中国との関係におきましても、首脳会談、外相会談等々、拉致問題につきましては、これまで幾たびにわたりましてこういう問題があると提起をいたしております。中国におきましては、首脳レベルを含めて、拉致問題解決に向けた日本の立場についての理解と協力というものを表明しておられます。

 また、先月、外務省の今の副大臣をしております金田副大臣の方から、李肇星外交部長を表敬した際に、拉致問題の解決に向け一層の理解と協力を求めたというのが私どもの今やっておるところであります。

 いずれにいたしましても、さまざまなレベルで拉致問題の解決の必要性というものを北朝鮮側に理解してもらわないと、これが解決しない限りはほかは進みませんという点の理解というものが一番大事なものだと思っておりまして、この点に関しましては、中国と日本との間の拉致問題に関する意識につきましてはそごはなく、この解決に当たって中国が重要な役割を担い得る立場なんだということにつきましても十分な理解を得ていると思っておりますし、今後とも努力をお願いしていかねばならぬところだと思っております。

北橋委員 私は、岡田代表のもとで役員室長を務めておりました。当時から、北朝鮮のかたくなな姿勢を変えるために、中国あるいはロシアからの働きかけは非常に大事ではないかと執行部として考えておりまして、岡田代表団で訪中しましたときから、何度かにわたりまして朝鮮半島の責任者の方々とお会いをいたしまして、中国からの働きかけを民主党からも強く要請してきた経過がございます。

 その非公式の話し合いの中におきまして、中国側の気持ちとしては、何とか人道的な問題を解決しなければならないという理解は持っていらっしゃいましたが、六カ国協議の議長国としての立場もあり、六カ国協議を成功させたいという思いからして、日朝間の重要な懸案をストレートに正面から取り上げるのはどうか、そういう雰囲気も一部感じてまいりました。

 その二、三年の経緯を振り返りまして、私は、このたびの武部幹事長が引き出した唐国務委員の発言というのは極めて重い発言ではないかと思っております。ちょうど胡錦濤主席が訪米をされておられました。そして、その後に唐国務委員は訪朝されて金正日さんにお会いになっておりまして、そういった意味では、いよいよ中国が動き出しつつあるという、これは大変重要な動きだと自分は認識しております。

 そこで、一方において、中国、韓国は北への援助を拡大しているのではないかと言われている昨今でございますが、米朝間の対話も今デッドロックに乗り上げたままであります。アメリカは、マカオの金融制裁については譲歩はないだろうと私は思います。六カ国協議も中断したままであります。

 その中にありまして、議長国中国としても積極的に動いてもらわねばならない。そして、隣国中国から北朝鮮に働きかけることは相当の効果を期待し得るんではないか。そういった意味では、日本政府としても、この際、中国政府との間で本腰を入れてこの問題解決に向けての協力関係を深めていくチャンスではないかと思うのであります。

 御案内のとおり、日中間の懸案事項はたくさんあります。それは一つ一つ大事な問題ではございますが、拉致問題解決に当たって、中国が動き出しつつある、このチャンスを生かして、外務大臣としても強力なこの問題での日中の提携に踏み込んでいっていただきたいと強く要望するわけでありますが、御決意がございましたらお聞かせ願いたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆる第五回の六者会談という会合の次の会合、次のセッションにつきましては、北朝鮮の方からは、例のマネーロンダリングの話、資金洗浄の話という、直接この六者会合とは関係のない話を出してきて、いわゆる金融制裁の解除というのを前提条件で話をしようということから、早い話、六者会合への参加を拒んでおるということになっておる関係上、再開のめどは今立っておりません。

 私どもとしては、このような態度は、これは全く非建設的だし、関係ないんだから、北朝鮮は早期、無条件にこの会合には復帰すべきだというように言い続けておりますところです。

 政府としては、引き続きこれを具体的に進めていくんですが、このときに当たって、今北橋先生御指摘のように、議長国であります中国の役割というものは極めて大きい、これは私ども全くそう思っております。

 また、その前のところで、前段で、どれくらい支援をしておられるかわからぬというお話でしたが、人道的な支援と言われておりますけれども、その支援の内容が私ども第三者には全く透明を欠いておりますので、どのようなものが支援されておられるのか、私どもにも全くわかるところでもありません。

 したがって、日米外相会議、アメリカとの外相会議の中においても、私どもは、中国の役割は大きいから、アメリカとしても、これはぜひ中国と連携しながらこの話を進めてもらいたいという、それが必要なんだということをライス国務長官との間で意見の一致も見たところでもあります。

 いずれにしても、中国が北朝鮮との間で、これは経済関係というものは日本に比べてはるかに密でありますし、ここ数年、日本との経済関係というのは急激に北朝鮮との間は減っておりますけれども、逆に北朝鮮と中国の間はふえておりますので、そういった意味では経済関係の緊密さというのは深い分だけ、てことしても大きくなろうと思いますので、ぜひ早期再開に向けて力をかしてもらえるように、私どもとしても引き続き促していきたいところだと思っておりますし、中国に対しても、この点については重ねて要請をしてまいりたいと思っております。

北橋委員 ぜひその方向で頑張っていただきたいと思います。

 次に、日朝包括協議の今後の見通しについてお伺いいたしますが、第一回の包括協議の成果はどうであったか。民主党としては、極めて、成果はなかった、このように総括せざるを得なかったわけでございますが、ただ、その中で、拉致問題は重要な課題となっておりまして、今後、第二回目の日程がどうなるのかについては深い関心を寄せております。

 その場合、協議再開の前提につきましてお伺いしますと、日本政府側からは、北朝鮮に対して、誠意ある姿勢を示せ、そういう趣旨の発言を繰り返してこられた、こう聞いているわけでございますが、具体的に北朝鮮がどういうことをすることが誠意ある姿勢だと考えていらっしゃるのか、それを含めて、第二回の包括協議の日程の見通しについてお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、さきの日朝包括並行協議において、拉致協議、安全保障協議、国交正常化の交渉を三つやっておりますけれども、いずれも目に見える具体的な進展は得られておりません。甚だ遺憾だったと思っております。

 現在のところ、誠意ある対応等々、北朝鮮側に対応の兆しというものを感じられませんし、したがって、次回協議開催の見通しも今現在立っておりません。

 引き続き政府としては、これまでどおり対話と圧力を基本として進んでいきたいと思っておりますが、この拉致問題につきましては、基本的には御存じのように三つであります。生存しておる、私どもはそう思っております。拉致をされた方々は死亡ではなくて生存しておるという前提に立っておりますので、生存者の即時帰国。二番、真相の究明。そして、拉致をしたと思われる容疑者の引き渡し。この三点を強く求めてきております。

 この三点につきましては、これは北朝鮮側の方から納得ある態度がなされなければならぬということだと思いますので、いずれにせよ、この三点が基本ということで対応をこれまでもしてきておりますし、これからもこの三点を基本として対話と圧力という形で継続をしていかねばならぬと思っております。

北橋委員 対話と圧力というお話があり、現在見通しが立っていないということでございますが、非公式なこのたびの四月の六カ国協議の内容を仄聞するところによりますと、日本側からいろいろと拉致問題に発言をしても、子供の使いじゃありませんけれども、本国に伝える、そういうことを言っておりますし、そしてまた、報道を通じて、また日本がいろいろなことを言っているという感じで、正面から取り上げている、真剣に耳を傾ける雰囲気は、少なくとも日本国民には全く見えてまいりません。

 そういう中で、対話をするというのは一体どういう意味があるんでしょうか。およそ相手の方が真摯に、この日朝包括協議等におきまして、北朝鮮側の態度をしっかりと述べてくるということもないし、言いっ放しであり、そして会う人は子供の使いのようなことを繰り返している。そういう中で、一体いつまでこういう状態を続けるのかということにもなるわけです。

 その前に、圧力という言葉が再三出ておりますので、この際、この問題について現時点での政府の考えをお聞かせ願いたいと思います。

 圧力といえば、私どもは経済制裁だというふうに思い浮かべますが、政府の答弁では、それは最終的なツールであると答えております。そして、いろいろなさまざまな圧力があるというのは、これまでの御答弁によりましても両大臣から出ておりまして、何でも鈴木官房副長官のもとにことし発足したチームにおきまして、情報収集とあわせてもう一つ、法執行チームというところで作業をかなり突っ込んで行っていると聞いております。

 その検討の経過について、安倍官房長官、どういう報告を受けているかお尋ねしたいわけでございますが、私の理解では、ここのチームでは、現在ある関係法令のもとで、圧力につながっていくような具体的な措置のあり方について検討されていると聞いております。こういう検討項目は何でしょうか。それを含めて官房長官にお伺いいたします。

安倍国務大臣 政府は、拉致問題の解決に向けまして、北朝鮮に対しまして対話と圧力の姿勢で臨んでおりまして、その一環として、本年三月十三日に開催された拉致問題特命チームにおきまして、拉致問題を解決する上で必要な情報の共有、分析を図ることを目的とする情報収集会議及び厳格な法執行を通じ北朝鮮に圧力をかけていくことを目的とする法執行班を設置いたしました。

 新設した二つの組織における検討事項についてでございますが、それは適宜報告を受けておりますし、私の方からも指示を出しているところであります。その内容につきましては、これはインテリジェンスや調査、捜査にかかわる問題であり、明らかにすることは差し控えたいというふうに考えているわけでありますが、基本的には、今ある法令を駆使いたしまして、また法令を適用していく人員を、しっかりと厚い人員でこれは対処していくということも含めて、しっかりと対応しているわけでございます。

 その中におきまして、これをやっている、あるいはこれをやるということを今ここで申し上げますと、それに対応、対抗もする措置がなされる可能性もあるわけでありますので、その中身につきまして一々ここで公表することは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

北橋委員 さまざまな圧力について検討しているが、この場では述べられないという御趣旨でございます。

 それでは、こういう聞き方をさせてください。まだ実行していない項目があるんでしょうか。

安倍国務大臣 幾つかの項目については既に実行しているわけでございまして、これにつきましてはそれなりにというか、私はかなり大きな効果を上げているというふうに認識をしておりますが、さらにまだまだ我々としては、これは検討している項目もございますので、これから実行することも可能な項目もあるのではないかというふうに考えております。

北橋委員 対話と圧力ということでございますが、現在の日朝間における実態というのは、めぐみさんのにせ遺骨を返してきて、それから余りにも多くの時間が流れ過ぎてしまいました。この間、時折、報道によって日朝間のいろいろな、あるいは六カ国協議等におきまして国民は一縷の期待をつないできているわけでございますが、およそ、北朝鮮側の姿勢を報道で見る限り、日本が対話を続けようにも、この問題では全くらちが明かないというふうに国民ももう感じていると思うのであります。

 今、長官のお話では、まだ未実施の圧力につながる項目は、オプションはあるんだということでございますが、一体いつまでこういう状況をお続けになるんでしょうか。

 ことしの九月には自由民主党総裁選があって、新内閣が発足するやに聞いておりますが、最後通牒という形で北朝鮮側に日本の意図を伝える必要はないんでしょうか。ことしの秋までに総理あるいは主要閣僚が訪朝、あるいは向こうのトップとお会いになって、対話と圧力ということでございますが、一体いつまでこういう状態を続けていくのか、やはりそういう政治的決断はこの小泉内閣においてされるべきではないのかと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 北朝鮮においては、この問題を解決しなければ北朝鮮の未来はない、北朝鮮が抱えている経済的な困難、食料の問題、こうした問題を解決するためにはこの拉致問題を解決しなければいけない、あるいはこの問題を解決しなければ事態はもっと悪くなっていくということをしっかりと認識させなければ、なかなかこの問題の解決は難しいんだろうと思うわけであります。

 要は、金正日委員長以下、北朝鮮の体制が、この拉致について政策を変えて、すべてをしっかりと解決していくという判断がなされなければならないわけでございます。そのためには、我々、しっかりと、今の段階では圧力をかけながら、他方、対話によっても最終的には解決を図らなければいけないわけでありますから、このバランスが大切ではないかというふうに思うわけでありまして、我々としては、さらにこの国際的な圧力、包囲網をしっかりと構築しながら、北朝鮮に、この拉致問題を解決しなければ結局北朝鮮という国自体がなかなか立ち行かなくなるというふうに、これを認識させるために、さらに全力を挙げていきたい、このように思います。

北橋委員 訪朝の予定はないということですね。

麻生国務大臣 現時点において、総理、閣僚の訪朝予定はありません。

北橋委員 アメリカ合衆国におきましては、脱北者六人を初めて北朝鮮人権法に基づいて受け入れるということが報道されているわけであります。今回の大統領の深い同情を持って御家族の方にお会いいただいて、私は、不退転の決意を固められたろうと思います。

 この問題につきましては、国際的な包囲網を築くという意味におきましても非常に重要な段階に来たと思っております。

 そういった意味で、今後とも、政府における国際的な包囲網を築き上げていく、しっかりと北朝鮮に対して意思を伝えていく、この努力を要請するとともに、やはりめぐみさんのお母さんが切々と訴えられた、帰してほしいと。二十八年であります。帰さなければ経済制裁をと。これは、めぐみさんのお母さんだけではない。私は、良識ある、心ある国民世論の大勢である、欠けているのは政府の決断ではないかとさえ思えるわけでございます。その点での十分な御検討をお願いして、私の質問を終わります。

平沢委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 新潟市民、県民は、この拉致問題の解決まで、この問題の存在は一日たりとも忘れることなく、最後まで頑張りたい、その決意でおります。

 横田早紀江さんがアメリカで下院の公聴会で証言をされたということも大変大きなニュースでございました。非常に議員の皆さんの心を打った、そんな演説であったとお聞きをしております。

 ぜひとも、政府関係者の皆さんにはその心情を受けとめていただいて、引き続き一歩も引かない強い姿勢でこの問題の解決に当たっていただきたい、そのことを強く心から要望いたします。

 そこで、私は今回、この通常国会でのこの委員会での質問、三回目になりますけれども、前回、時間切れになりまして、麻生外務大臣との議論が途中になっておりました。

 私は、日中、日韓、やはりトップ同士の関係をしっかりと構築する中でこの問題解決に向けての構図をつくり上げていく、そのことが大切なのではないかと申し上げたんですけれども、外務大臣は、この問題に関する限りは共通して頑張っておりますと、そんなにトップ同士の話が拉致問題の解決を妨げているということにはならないんだというふうに御答弁をされたかと思っております。

 確かに、いろいろな事実を拾い集めてみますと、人権担当大使、設置をしていただきました。韓国にも訪問してくださっていたり、あるいは小泉総理がタイの首相と、あるいはロシアのプーチン大統領と拉致問題について議論をしたりというようなことがあるわけでありますけれども、私は、やはり依然として、トップ同士の関係が良好であれば、拉致問題の解決に向けてさらに力強いタッグが組んでいける、このように信じているものでございます。

 さて、先般、谷内外務次官が日中外務事務次官会談に臨まれました。このとき、出発する間際に発言されたのを私も聞いておりましたけれども、対話をもっといろいろなレベルでやっていく必要があると思っているし、そういう意味では外務大臣の会談も重要だというふうに語っておられたかと思います。

 懸案事項を協議するために今月末の外相会談の実現を働きかけるというふうに言っておられたわけでありますけれども、外務大臣、事務次官がそういうふうに発言されていること、承知をされていると思いますけれども、外務大臣会談が実現される見通しはございますでしょうか。

麻生国務大臣 日中の外務次官におきます日中総合政策対話、第五回というのが、去る七日から九日にかけて、戴秉国外交部次長の生まれ故郷である貴州省で開催をされております。

 そのときの中の会話の一端として、日中双方で外相会談というものの可能性を探求しようじゃないかという話になったということで、具体的な日程調整に入ることになったというところが今の段階でありまして、今後、具体的な議題等々をこれから詰めていくことになろうと思いますが、拉致問題はその中の大きな議題の一つになろうと存じます。

西村(智)委員 次に質問しようと思っていたこともあわせて御答弁いただきました。ありがとうございます。

 ぜひ会談の実現に向けてやっていただきたい。この中で拉致問題もしっかりと議論ができるように、外務大臣としてもそういうお気持ちであるということは今理解できましたので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 さて、そういたしますと、どうでしょうか、外務大臣、この外相会談で拉致問題を話し合うことは大臣御自身も大事なことだというふうにお感じになっておられるかと思います。前回の私の質問で、トップ同士の関係が足を引っ張っていることはない、そういう認識を大臣は答弁されたわけですけれども、そういたしますと、やはり関係が良好な中で拉致問題解決に向けて力を合わせていきたい、そういうふうにやっていけるというふうに大臣は今の認識としてお持ちだというふうに考えてよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 関係が良好であった方がやりやすいのではないかと言われたいんですか。ちょっとおっしゃりたい意味の要点がよくわからなかったんですが、関係が良好な方が話がしやすい、それはそうですよ。良好な方が話がしやすいのは、それは普通の話なんであって、ただ、良好じゃない場合でもやっていかないかぬところが難しいのが外交だと存じます。

西村(智)委員 続いて、アメリカとの関係について伺っていきたいと思います。

 今回、横田早紀江さんがアメリカの議院で証言をされたことは、大変強いメッセージを世界に発しました。

 ただ、アメリカの政府自体は、私が承知しておる限り、拉致問題について本格的な対応を検討してきたことはなかったのではないかと承知をしております。これから実質的な連携策を日本とアメリカとの間で見出していけるかどうかが大きなかぎであるという指摘があるわけでありますけれども、これは官房長官にお伺いをいたしたいと思います。通告はしておりませんが、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

 安倍官房長官、横田御夫妻と面会されたときに、世界じゅうに強いメッセージを発したというふうに発言されたそうですけれども、今後このメッセージをどういうふうに次のステップにつなげていくか、そのことが重要であるというふうに考えております。そのための戦略をどのように描いていらっしゃるのでしょうか。これは官房長官に伺います。

安倍国務大臣 先ほど御質問の中で、日米が協力してこの問題を包括的に解決していこう、そういう連携がとれていなかったのではないかという御指摘もございましたが、それは全く違うんだろうというふうに私は思うわけでございます。

 総理が初めて訪朝した後、この拉致問題がいかに重要な問題であり深刻な問題であるかということを米側に私どもも説明し、アメリカ側も十分に理解をしたわけでございまして、その結果、クロフォードの首脳会談において、ブッシュ大統領から、北朝鮮によって拉致をされた方々が一人残らずその行方がわかるまで日本の立場を完全に支持する、ここまで言い切った首脳というのはブッシュ大統領ただ一人だろうというふうに思うわけであります。

 その後、日米は連携をしながら、対話と圧力によって解決をしていくということでも一致をしているわけでございまして、まさにそういう意味におきましては、日米はこの拉致問題について一緒に解決をしていくということでは完全に歩調をそろえていると言ってもいいのではないか。

 また、この拉致問題が解決をしなければ米朝間の問題もすべて解決をしたことにはならないともはっきり言っているわけでありますので、そのことも申し述べておきたい、こう思うわけでございます。

 そこで、今回、その文脈の中で、横田早紀江さん初め被害者の御家族の方々等がブッシュ大統領と面会をし、また下院の公聴会でも証言をしたわけでございますが、このメッセージは広く世界に伝わったというふうに思っているわけであります。

 国連の場におきまして人権理事会もつくられ、日本もその理事国となったわけでございまして、国連の場におきましても、早速この拉致問題について取り上げ、しっかりと北朝鮮に対して強い決議なりメッセージを発していく、そして国際社会において、北朝鮮にこの問題を解決しなければならないという包囲網をさらに構築していかなければいけない、このように考えています。

西村(智)委員 その意気込みは大変結構だというふうに思いますけれども、私が伺いたいのは、では具体的にどうするのかということでございます。

 五月一日に2プラス2で共同声明が採択されました。北朝鮮によるすべての不法な活動や拡散の活動を中止することをその共同声明の中では要求しておりますけれども、どういうことの活動の中止を求めているのかというような具体的な中身の記述はございません。

 また、五月の三日には、麻生大臣、ライス国務長官とお会いになったそうで、イランや北朝鮮の核開発阻止へ国際社会の結束を強める方針を確認し合った、そして横田さんがブッシュ大統領と会ったことにも謝意を表明されたという報道でございますけれども、具体的に、ではどうするのかということが見えてこないわけでございます。

 外務大臣、今後、何をアメリカ政府に対してどういうふうに働きかけていかれるのでしょうか。六月には日米首脳会談も予定をされておりますけれども、そこに向けての具体的な内容についてもあわせて伺います。

麻生国務大臣 相手のある話ですから、どれが最も効果的かというのは、なかなかこちら側からではわからないところだと思います。

 拉致という単語が、アブダクションというんですけれども、これが国連で正式に採択された例は過去一回もありません。これは日本の物すごい外交努力の成果です。ほとんど評価されませんでしたけれども、国際的には、アブダクションという言葉が正式に国連総会に残ったというのは初めてのことであります。これも大きな圧力の一つだと存じます。テレビにブッシュ大統領が横田早紀江さんと並んで出たのも大きな圧力になったことも確かだと思います。

 いずれの場合も、北朝鮮側からの反応は、翌日出てくる反応が今日に至るまでゼロというのは、明らかにその効果が大きかったということを証左していると私どもはそう思っております。

 経済制裁等々いろいろあろうとは思いますけれども、私どもとしては、少なくとも、そこに人質という形になっていて、拉致された方々は生きているという現実で対応しております。亡くなっているという前提で対応しているわけではありませんので、拉致されている方々が生きたまま帰還されるということが、私どもにとっては置かれている非常に大きな命題でありますから、私どものやれる程度というのはおのずとある程度限定されているということも理解をしていただかないといかぬところだと思います。

西村(智)委員 官房長官にお伺いをいたしたいと思います。

 六月に予定されております日米首脳会談、総理はどのように臨んでいかれるのでしょうか。

安倍国務大臣 どのようにというのは、拉致問題についてですか。拉致問題については、まずサミットの場でしっかりと取り上げていきたいというふうに考えているわけでございまして、そのために今、議長国であるロシアにも働きかけを行っているわけでありますが、サミットの場で取り上げるに際しまして、当然、米国の協力も必要となってくるわけでございます。

 そうしたことも含めまして、しっかりと日米同盟のきずなを確認することによって、こうした拉致問題についても、しっかりと両国で、お互いに同じ認識を持って前進をさせていく、少しでも、一歩でも二歩でも前に進めていくために協力をしていくということが大切ではないか、そのことを日米の首脳会談の場において、さらにこれは同盟を進化させていくということが必要ではないか、私はこう思っているわけでございます。

 また、北朝鮮の行っているさまざまな不法な活動につきましては、日米では常に情報の交換を行いながら協力をしているということも申し添えておきたいと思います。

西村(智)委員 引き続き官房長官にお伺いしたいと思うんですけれども、ほかの国からの拉致被害者も大勢おられるわけでございます。横田めぐみさんの夫とされる方が韓国人の男性である可能性が極めて高いということがDNA鑑定の結果明らかにされました。ぜひ日韓で足並みをそろえてこの問題に取り組んでいけないかというふうに考えているところでございます。

 韓国政府も拉致問題については取り上げてくれるようになってきておりますし、四月の二十一日から開催されておりました南北の閣僚級会談では、韓国の統一相が、北朝鮮による韓国人拉致を取り上げて、問題解決に進展があれば経済協力の意向を示すなどという演説を行っております。

 また、横田めぐみさんの夫である可能性が高まっている韓国人男性の問題についてもその南北閣僚級会談の中で議論が行われて、北朝鮮側が調査中であるというふうに答えた、そのような報道もあるわけでありまして、これはもうかなり動きの出ていることだというふうに思っております。

 金大中前大統領が北朝鮮を六月に訪問する予定もおありでありますし、韓国の盧武鉉大統領も南北の首脳会談には前向きな意向であるということでございますが、こういう状況の中で、日本政府といたしまして、ほかの国の政府と、とりわけ韓国政府とはもっと連携を図って拉致問題の解決に向けて進んでいくべきではないかというふうに思いますが、官房長官に伺います。

安倍国務大臣 今委員がお話をされた南北での拉致問題についての話し合いでございますが、韓国の有力紙は、政府にもう少ししっかりとした態度でこの問題を取り上げるべきであるというふうに論評していたと承知をしているわけでございますが、これは、韓国が置かれている立場、日本が置かれている立場、それぞれ違うわけでございます。

 完全にこの問題で一致をするということについてはなかなか難しい課題もあるわけでございますし、今委員が御指摘をされたように、この問題を解決すればさらに援助をするというアプローチを韓国がとっているわけでありますが、我が国は違うわけであります。かつては日本もそういうアプローチをとった結果、なかなか成果が出なかったのが現実でございます。私も、この問題、十年来かかわっているわけでありますが、その中で、現在、我々は対話と圧力という姿勢で対応しているということでございます。

 大切なことは、まずしっかりとお互いが持っている情報を共有すること、そして認識を一つにすることが大切ではないかというふうに思うわけでありまして、アプローチにつきましては、これは、それぞれの国の事情もあるということもお互いに理解する必要はあるのではないかとも思うわけでありますが、そういう意味におきまして、現在、日韓関係におきまして情報をお互いに共有するという努力をしているところであります。

西村(智)委員 先ほど北橋委員の質問の中にもありましたように、また松原委員の指摘にもありましたように、私も、どうもこの間、拉致問題に関する総理御自身の姿勢がいささか消極的になっているのではないかというふうに思うものでございます。

 実際、拉致問題解決について、四月の十八日ですが、みずからの任期中にこだわらず、できるだけ早い方がいいというふうにお述べになった。つまり、任期中の解決には必ずしもこだわっていないという意向を示されたようでございます。また、次の訪朝のことは今検討していないというようなことでございますし、被害者の御家族の皆さんに会ったのはもう二年前ですか、総理が二度目の訪朝を行った後の面会が最後であると思っております。

 総理が突破口を開いてくれた拉致問題の解決に向けての道であるからこそ、やはり私は、ここはもう一つ総理の積極的な解決に向けての行動、これが必要ではないかというふうに思いますけれども、官房長官、どうでしょうか。総理の拉致問題解決に向けた姿勢、これをどのようにごらんになっているか、そしてまた、今後総理に何か進言される御予定はあるか、任期中にもう一度御家族の方々とお会いになる予定はおありかどうか、伺いたいと思います。

安倍国務大臣 私は、むしろ北朝鮮にとってこそ、小泉総理の任期中にこの問題を解決して、日朝国交正常化をして、国を立て直していく、そのチャンスがこの任期中にあるんだろう、北朝鮮こそそう考えるべきではないだろうか、こう思うわけでございます。

 我々も、一日も早くこの問題を解決しなければならない、こう考えているわけでございますが、しかし、この問題の解決というのは、すべての拉致被害者が帰国をするということでございまして、それ以外に私たちは一切妥協するという考え方はないわけでございまして、すべての拉致被害者の帰国をもってこの問題は解決をするわけでございます。

 総理が訪朝することによってすべての拉致被害者が帰国するのであれば、当然、それは総理も直ちに訪朝を考えるんだろう、こう思うわけでありますが、なかなか、北朝鮮は、現段階ではそのように政策を思い切って変えていくという決断をしていないわけでございます。

 ですから、私どもは、先ほども御答弁をいたしましたように、この問題について、やはりこの問題を解決しなければ北朝鮮が抱えている問題を解決できない、この問題を解決すれば日朝国交正常化も果たすことができるし、国際社会からも受け入れられ、北朝鮮はしっかりと国民に対しても食料が供給でき、経済を立て直し、立派な国になっていく、そういう道を歩むことができるわけでございますが、その判断を促すように我々も対話と圧力の姿勢で今後とも臨んでいきたい、こう考えているわけであります。

西村(智)委員 総理の姿勢が今はっきり見えているかどうかということを、ぜひこれは客観的にも見ていただきたいと思います。私たちの立場からいたしますと、やはり総理は少し、この問題、積極性に欠けるのではないかと私は思っております。

 そこは、官房長官としての安倍官房長官の政治決断もまた私たちは見ていかなければいけないというふうに思いますし、引き続き、積極的に、力強く、引かない姿勢で問題解決に向けて取り組んでくださること、これは強く要望いたしまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 私は、まず最初に、先回の横田早紀江さんによるアメリカ議会証言の意義と成果について安倍官房長官に伺いたいと思います。

 一昨年の横田めぐみさんのにせ遺骨問題以来、北朝鮮の開き直りもございまして、この拉致問題は遅々として進展がございませんでした。家族の方々のいら立ちも大きいと思いますし、それとともに、かかわってまいりました私どもにも同じようないら立ちがございます。

 その中にあって、私は、多少の進展を見たのかなと思っておりますのは、先回の委員会でも質問させていただきましたけれども、三月の警視庁公安部による日本国内の北朝鮮関連団体に対する強制捜査です。この成果として、辛光洙容疑者に対する国際手配が行われるなど、日本側からの圧力が強まってまいりました。この強制捜査は、やや停滞感の強かった拉致問題に久方ぶりに活を入れたのではないかと私は思っております。

 と同時に、やはり一番大きな活路を見出したかなと思えるのが、私は、四月二十七日の米国議会における証言、そしてこれに続く二十八日の横田めぐみさんのお母様横田早紀江さんのブッシュ大統領との会見ではないかと思います。少なくともこれは、大きな進展を見る一歩になったと私は考えております。

 横田早紀江さんはもう古希でいらっしゃいます。でも、拉致被害者の親としてはまだ若い方だ、頑張らなければならない、私は、この抱負の中に、拉致問題の深刻さ、そして一日も早い解決が急務であるということをあらわしているのではないかと思っております。

 安倍官房長官は、四月二十八日の記者会見で、米議会での証言は世界に発信することで意義は大変大きい、国際社会で拉致問題を解決しなければいけないという圧力がしっかりとかかっていくのではないかとお述べになっていらっしゃいます。と同時に、最善の努力をしなければいけないと強調されました。

 政府は、今回の横田早紀江さんの米国におけるその意義と成果についてどのような認識を持っていらっしゃるのか、また、その成果を今後どのように拉致問題の解決に生かしていこうと思っていらっしゃるかを伺いたいと存じます。

安倍国務大臣 横田めぐみさんの御両親、早紀江さん、滋さんは、めぐみさんが失踪して、何とか自分たちの手で捜し出そうと努力をされ、そしてその後、どうやら拉致をされたらしいということがわかった後、なかなか世の中も動かないという中にあって、では実名を世の中に発表しようかどうかということで大変悩まれたわけであります。実名を出すと、もしかしたら危害が加えられるかもしれない、そういう中で思いとどまっていたわけでありますが、しかし、このままでは事態が動かないということで、まさにある意味では腹をくくって実名を公表され、国会でも取り上げられたわけであります。

 そして、この横田さんたちの決断によって、めぐみさんが十三歳で人生を北朝鮮に奪われたという残酷な現実が日本国民の知るところとなり、この問題に対しての関心が一気に高まって今日に至ってきたということなんだろう、こう思うわけであります。

 そこで、さらに世界の人々に知ってもらいたい、特に人権について、これは世界が共有しなければいけない基本的な価値であるという認識を持つ米国において、この問題を多くの国民に知ってもらうという中で、今回、下院で証言をされ、そして大統領とも面会を果たされたわけでございます。

 早紀江さんは入念な準備をして行かれたわけであります。もうお年でありますから、大変肉体的にもつらい旅行だったのだろうと思いますが、証言の寸前まで、しっかりと自分の力で訴えて何とか娘を取り戻したいという気持ちで、本当に夜も寝ないで何回もある意味では練習もされたというふうに伺っております。

 やはりその早紀江さんの口から発せられた言葉は極めて力強く、多くの人たちの胸を打ったというふうに私もその場にいた人たちから聞いておりますし、何人かの議員の方々は目に涙を浮かべていたということだと思います。そして、この声は確実に世界に広がっていったわけでありまして、これは、まさに国際社会においてこの拉致問題が理解される上におきましては極めて意義深かった、このように思うわけでございます。

 我々も、政府としても、ここまで早紀江さんたちが頑張られたわけでありますから、しっかりとこのお気持ちを受けてこの問題の解決に全力を尽くしていきたい、このように思っております。

池坊委員 次に、拉致問題に関する、次にサミットを控えております国際社会との共同行動についてお伺いしたいと思います。

 横田早紀江さんは、議会証言に先立ち、二十五日、ワシントンで米国議会下院のスティーブ・チャボット議員と面会されました。このチャボット議員は、大変に北朝鮮の拉致問題にも関心を示していらっしゃいますし、横田早紀江さんと新潟県にも御一緒にいらしたことがあると伺っております。このようなことがいつまでも続いてはいけない、一日も早い解決に向け協力を惜しまない、チャボット議員からはそういう言葉があったというふうに聞いております。

 二十七日の議会証言において、早紀江さんは、今安倍官房長官がおっしゃいましたように、拉致問題の経緯や現状を説明され、本当にそれはそこに参加している人々の胸を打った。山中政務官から伺ったお話ですけれども、通訳の方々の協力もあった。ただ単に通訳をするのではなくて、横田早紀江さんの痛みや苦しみを我がこととして共通認識をして通訳なさった、それがやはりとてもみんなの心を打ったんだ。私は、本当にいろいろな方々の協力があって、そこにいらした方々の胸も打ち、そして賛同を得ることもできたのだというふうに思っております。

 チャボット議員は、早紀江さんとの会見後、議会やアメリカのメディアに必ずや衝撃を与えるだろうと予測されました。具体的には、米下院の国際関係委員会のクリス・スミス委員長は、七月上旬にロシアのサンクトペテルブルクで開かれるサミットで、ブッシュ大統領が北朝鮮の拉致問題を主要議題として取り上げるよう提案すると語られました。また、下院のアジア太平洋小委員会のジム・リーチ委員長も、スミス委員長の提案を支持した上で、拉致は日本だけの問題ではなく世界全体の問題だと述べるとともに、米国議会関係者の協力的なアクションを引き出すことに私は成功したのではないかというふうに考えております。

 これを受けて、安倍官房長官も、五月九日ですか、北朝鮮による日本人拉致問題を七月のロシアにおけるサミットの主要議題として提起する考えを明らかにされました。世界に対して拉致問題の重要性を訴える力強いメッセージが出された、米国を初め各国との連携を一層強化し、問題解決に全力を傾注していく、サミットでも取り上げられるよう外交努力を尽くすと、大変力強い発言をしていただきました。

 ただ、この新聞にも書いてございますように、ロシアは北朝鮮の立場に理解を示しておりますから、各国の理解を得るのはそう簡単な話ではないという気がいたしますけれども、それに向けてどのような御認識で向かっていらっしゃるかを再度伺いたいと思います。

安倍国務大臣 今回の早紀江さんたちの訪米、また下院での公聴会の結果、人権小委員会の委員長であるスミス下院議員より、拉致問題をG8サミット等の国際的な場でも取り上げるべきだ、こういう発言がございました。

 今までも、小泉総理がサミットの場で拉致問題について発言もしておりますし、また、文書でも拉致問題が書き込まれたこともあるわけでございますが、今回のG8の場においてしっかりとした議題として取り上げられるよう、我々も努力をしていきたい。そのためには、議長国であるロシアへの働きかけを行っていかなければいけませんし、サミットメンバーの国々にも理解を得るべく努力をしていきたい。また、フランスは何と言っても人権の国でございますから、フランスにも働きかけをし、イギリス、ドイツにも働きかけをし、さらには、今回会談をしてくれたブッシュ大統領にも、小泉総理とともにこの問題について発言をしていただくようにお願いをしていく等、努力をしていきたい、このように思っております。

 サミットの場でしっかりと取り上げられることは、さらに強力なメッセージを国際社会、そして北朝鮮に対して発することになるのではないか、このように思っております。

池坊委員 二十八日にブッシュ大統領と横田早紀江さんが会うことができた、これは大変意義深いことだったと思いますが、それに関しては、多くの方々の協力がやはりあったと私は思います。特に、北朝鮮の拉致問題を担当していらした齋木駐米特命公使、そして何よりも安倍官房長官、そういう方々の御努力の成果だというふうに私は考えております。

 安倍官房長官も麻生外務大臣も、大変拉致問題には一生懸命力を尽くしていらっしゃいますが、これは小泉総理のもとにいらっしゃるお二方ですから、お二方が頑張っていらっしゃるということは、とりもなおさず総理のもとで、総理の意向を酌んでというふうに私は理解しております、組織というのはそういうものだというふうに感じますから。

 そういう意味では、総理もいろいろな場において、自分の出るべきとき、あるいは指示するべきとき、そのようなことを考えていらっしゃるというふうに私は思っているところです。ですから、この問題に関しては、政府が一貫して、みんなが全力で立ち向かっているという認識を私は持っていきたいというふうに考えております。

 そのとき、これはシーファー駐日大使の努力もあったと思いますし、直接安倍官房長官も働きかけをなさったというふうに、私は、新聞情報ですけれども、くまなくそういうものは手にし、読んでおります。

 その中で、私が大変、一言、心に残りましたのは、ブッシュ大統領が早紀江さんに対して、国の指導者が拉致を奨励するというのは心ないと言って北朝鮮の金正日総書記を改めて批判したこと、そして、こんなお忙しい大統領に私どものことでと言ったことに対して、ブッシュ大統領が人間の尊厳と自由について話せないほど忙しくはありませんと答えられたということが私は大変心を打たれたんですね。

 これは本当に人間の尊厳と自由の侵害、つまり基本的人権の侵害としてとらえるべきだというふうに私は思うんです。日本は拉致の当事国です。ですけれども、アメリカは当事国ではないと思うんですね。だけれども、これは許せないと思うのは、人間の尊厳と自由が侵される、基本的人権が奪われるということが許されないんだという認識に立っているんだと思うんです。

 私は、拉致問題というのは、もちろん第一義的には自国民の保護です。そして、主権の侵害ととらえるべきではありますけれども、これから国際社会の協力とか連携を求めていくためには、普遍的な価値である人間の尊厳と自由、これが侵されているんだ、そういう新たな切り口というのが解決の道にもしかしたら結びつくのではないかなというふうに思うのですね。ですから、これでいろいろな各国に働きかけていただきたいというふうに私は考えておりますが、そういう見方からの働きかけというのはいかがかと安倍官房長官の御意見をお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 国連の場におきましては、昨年、総会におきまして採択をされた北朝鮮の人権状況決議におきまして、国際社会が人道的観点に立って人権状況の改善を北朝鮮に促しております。我が国がこうした文脈の決議において拉致問題への明示的言及を提案し、共同提案国として決議の採択に積極的な外交努力を行ったわけであります。

 また、我が国は、昨九日、国連総会において、人権理事会の理事国に選出をされました。今後、同理事会の活動を通じて、国際社会が北朝鮮の人権問題の改善を求めていくよう働きかけ、その中で拉致問題の解決を強く訴えていきたい、こう考えております。

 加えまして、齋賀富美子人権担当大使も、拉致問題の早期解決に向けまして、その深刻さを国際社会に訴えております。本年三月には、ブリュッセルにおきまして、北朝鮮の人権問題に関するNGO主催の国際会議及び欧州議会の公聴会に出席をいたしました。また、今月十日からは、ノルウェー・ベルゲンにおきまして、北朝鮮の人権・難民問題に関する国際会議に出席をいたします。今後とも、国際社会の理解と協力を受ける努力を続けながら、しっかりと国際的な包囲網をつくっていかなければいけないというふうに思うわけであります。

 それと同時に、今先生が御指摘になった基本的人権という我々が共有する価値のもとに、この問題にも取り組まなければいけないというふうに思うわけでありますし、また、それぞれの国は、この問題についてどう考えているかというのは、人権についてどういう認識をその国が持っているか、ある意味では試されることにもなるのではないか、私はそんなようにも思っているところであります。

池坊委員 今安倍官房長官がおっしゃいましたように、まさしくこれは人権、人間の命、尊厳をどういうふうに考えるかという大きな価値の問題だと思いますので、ぜひ、そういう人権問題だということで広げていただきたいと思います。

 拉致問題にかかわっていない国にとっても、それは普遍的な人間のとうとさというか、そういう大きな問題なんだ、意義なんだということをわかってほしいというふうに強く願っております。

 最後にちょっと視点を変えます。

 辛光洙の国際手配について警視庁に伺いたいと思います。

 三月三十日の特別委員会において、私は、三月二十三日に実施された警視庁公安部によるいわゆる朝鮮総連の傘下団体でございます在日本朝鮮大阪府商工会に対する強制捜査について質問させていただきました。

 その中で、強制捜査の目的をお尋ねしたところ、政府からは、証拠品の分析や国内協力者、いわゆる北朝鮮工作員のネットワークに対する捜査を継続することで、事件の主犯格である辛光洙を初めとする被疑者に対する国外移送目的拐取等の立件を視野に入れて捜査を継続するとともに、さらなる拉致容疑事案の解明に向けて努力していくというような答弁がございました。

 その成果の一つとして、私は、四月二十四日の辛光洙容疑者に対する逮捕状請求と、四月二十七日の警視庁を通じた国際手配になったというふうに考えております。辛容疑者については、既に地村保志さん夫婦拉致容疑などで国際手配中ですけれども、新たに原敕晁さんの拉致容疑が追加になりました。

 三月の強制捜査ではさまざまな証拠物件が押収されていると思いますけれども、強制捜査の成果を国民に示す意味からも、強制捜査の結果によってどのような事実が新たに明らかになったのか、その結果、辛への逮捕状請求、国際手配へ至ったのか、また、日本国内における北朝鮮ネットワークについても新たな情報が入手できたのか等々、もちろん、これは捜査中のことですし、これからの捜査に関係しますからおっしゃれないことの方が多いかもしれません。

 でも、こういうことをたとえ一部であっても情報公開することは、国民の理解を深めると思いますし、また海外に対しても、こういうことをやっているんだということの発信になると思いますので、できる範囲のことでよろしいですから、ちょっと伺いたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 本年三月の二十三日に警視庁公安部が原敕晁さん拉致容疑事件に関し、国内関係先六カ所に対する捜索を実施いたしまして、関係資料を押収するなど、所要の捜査を行いました。本件の主犯辛光洙及び共犯金吉旭に対する一連の容疑を裏づけるだけの証拠が固まりました。御指摘のように、四月二十四日、同人らに対する逮捕状の発付を受け、国際手配等の手続を行いました。

 委員御指摘の点については、何分捜査の具体的な事項に関する事柄であるためコメントは差し控えさせていただきたいのでありますが、こういった一連の拉致容疑事案の捜査過程におきまして、やはり、これらの北朝鮮による日本人拉致容疑事案というものが、多くは我が国に対する深い知見を有する工作員が中心となって敢行された、また、国内にはそういった工作員、また工作員の工作を可能とする支持基盤が存在していたということが明らかになっております。

 こういったまだはっきり実行犯を断定できないような関連事件もあるわけでございますが、引き続き、こうした工作員ないしは工作員の支持基盤を中心とする北朝鮮工作員ネットワークの解明というものを私どもも鋭意強力に推進してまいる所存でございます。

池坊委員 そちらのお立場も考慮して、おっしゃれないでしょうねと言いながらの質問でしたけれども、全く靴の底から足をかいているみたいで、何か余りはっきりしたことを言っていただけないのはしようがないにしても、もうちょっと何かあるんじゃないのというふうに申し上げたいところですけれども、それは了といたしましょう。

 もう時間が参りました。私がいつも本当に毎回ここに質問に立っておりますのは、一国会議員であるとともに一子供の母親として、もし自分の子供が拉致されたらどうであるだろうか、そういう意味では、横田早紀江さんの痛みと苦しみを我が子と分かち合う、そういう思いでいつも質問に立っております。

 その中にあって、国会議員として何ができるのかということをいつも私は考えておりますが、公明党は自民党とともに、四月二十八日に、特定船舶の入港禁止や北朝鮮への送金停止など経済制裁を通じて北朝鮮に一層の圧力を加えるための北朝鮮人権法案を国会に提出いたしております。私は速やかにこれが成立されますことを願い、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。質問の機会をありがとうございます。

 初めに、実は質問の順番をちょっと変えまして、官房長官、公務でちょっとお立ちになるということを伺っております。初めに一つだけお伺いしたいと思っております。

 今回、サンクトペテルブルクのサミットで拉致問題を取り上げる努力をされるということは、従前からの答弁でお伺いをしておりました。ぜひ最善の努力をお願いしたいと思っております。

 そこで、実は、金英男さんのお母さんであります崔桂月さんですが、報道によりますと、五月二十七日に日本を訪れて、二十八日に予定されている日本の拉致被害者家族の皆さんの集会に参加されるというふうに伺っております。このほか、日本滞在中には、めぐみさんの両親らの拉致被害者関係者との面談、それからいろいろな予定があるというふうに伺っていますが、日本政府として何らかの対応をするお考えがあるのかどうかお伺いしたいと思っております。

 もちろん、先方崔さんの御希望が最優先でありますが、今回の横田早紀江さんの訪米に倣い、日本の外務省など関係省庁訪問などがセットされれば非常に有意義なことであるというふうに考えております。

 韓国の拉致被害者の御家族は我が国以上に厳しい状況に置かれていると思っております。韓国の御家族の訪日の機会をとらえ、日本政府のしかるべき地位の方が対応し、苦しい胸のうちをお聞きすることは、我が国拉致問題を自国民保護の問題に限定しないで、国際社会共通の人権ととらえて、人権問題の解決という道筋で韓国人被害者の救出にも並々ならぬ関心を持っていることを内外に示すこと、そういうアピールになるのではないかと思っています。

 また、視点を変えますと、崔さんは横田めぐみさんの義理のお母さんにもなります。もはや日本人拉致被害者の関係者の一員として受け入れるべきではないかと思っておりますが、崔さんの訪日の際、官房長官は会う用意があるのか。また、ブッシュ大統領が横田早紀江さんの会見に応じたことを想定し、できれば小泉総理がお会いになることが我が国の拉致問題への取り組みについて大きな意義と考えますが、政府として家族会と調整されるお考えがあるのかどうかお伺いしたいと思っています。

安倍国務大臣 金英男さんのDNA鑑定の結果、拉致は国際的な広がりを持っているということがはっきりしたわけであります。また、ジェンキンスさんが書かれた「告白」という本の中でも、タイを初め他の国々の被害者についての記述がございます。

 私も、他の国々、例えばタイの被害者の御家族が来日をされた際にもお目にかかっているわけでございまして、金英男さんのお母様である崔桂月さんが今月下旬に訪日される際にも、政府を代表して二十九日の朝にお会いをする予定でございます。そして、その結果は総理にも報告をしたい、このように考えておりますし、国際社会においてしっかりと被害に遭った国々が連携をしていくことが重要ではないか、このように考えております。

小野寺委員 韓国統一相の発言について後で触れますが、憤慨を持って思っている日本人はたくさんいると思います。ぜひこの問題について最善の取り組みをお願いします。

 どうもありがとうございました。

 それでは、早速、問題の質問の方に入りたいと思います。外務大臣、失礼いたしました。

 この拉致問題、いろいろな課題がございますが、幾つかの転機が今まであってきたと思います。

 一つは、九七年、安明進氏の証言を契機に、拉致被害者の御家族が結束しまして家族会が結成されました。これが、それまでのなぞの失踪事件が拉致問題として広く認知された一つの機会だと思っています。

 また、二つ目は、二〇〇二年の小泉総理の訪朝によりまして拉致問題が正式に日朝間の最重要問題と位置づけられたときと思います。

 そして今回、第三の一つのきっかけとなったのが、横田めぐみさんのお母様早紀江さんがブッシュ大統領と会見しまして、拉致問題解決を訴えられまして、これが拉致問題は人権として国際社会の大きな課題となった、そういう一つのきっかけになったんではないかと思っています。

 今回の横田早紀江さんの訪米に当たっては、私は政府におかれてもかなりの努力を尽くされたと思っています。そしてまた、ブッシュ大統領との会見ということ、これは大きな成果になりますが、あれ、もしかして政府として一つの考えがあったのかなと少し思ったのは、実は、横田早紀江さんの訪米に対しまして、山中政務官初め政務官を同行させたというふうに伺っています。

 私も経験がありますが、通常こういう形での同行というのは、恐らく何らかの確証があって、今回は政府のハイレベルの方を同行させたんではないかと思うんですが、この三十年近い拉致問題の歴史の中で、今回の訪米というのはかなりの成果があり、またこれに関しては、政府として相当の取り組みを実は水面下ではしていたんではないかと私は思っております。

 ぜひ、この訪米に至る経緯とそれから成果についてお伺いしたいと思っています。

麻生国務大臣 今、小野寺先生、この十五年間ぐらい、一九九一年のあの際ぐらいですか、一番直接のあれになりましたのは。あの家族会というのは確かに大きな事件だったと思いますし、また、小泉訪朝のときに、やはり国家元首が国家犯罪を認めるというのもこれまで例が一つもありませんでしたから、その意味では、金正日という人によるこの話というのは極めて大きなもので、これは国家元首が認めるというのは過去に例がありませんから、その意味でも大きかったと思っております。

 今回のブッシュ大統領と横田早紀江さんとの会談というのは、テレビに映し出される画像とそれによる波及効果の方が極めて大きかったという意味においては、これは確かに大きな成果だったと思っています。先ほど民主党の方の御質問の中でいえば、圧力という意味において、これは極めて大きな成果につながるものだと思っております。

 これに至るまでの経緯は、私どもとして、外務省としては、これまでの長い間、ブッシュ・小泉という個人的な関係に端を発して、拉致の話から始まり、ブッシュという人の性格、またシーファーという人との関係などなど、いろいろ、情報をもとにして、総合的に組み立てて、新潟に足を運んでもらう等々の時間とあれをかけて、ことしに入ってから特にそういったことをさせていただいたんですが、結果として、ブッシュ大統領の部屋の中で面談というところまでは自信があったんですけれども、その後、ブッシュが記者の前でしゃべるというところは、全く私どもの予想を超えておりました。

 あそこから先は、多分横田早紀江という方の力のなせたわざだと思っておりますので、段取りするところまでは確かに認めますけれども、それから先の、記者を二回に分けて部屋の中に入れて、写真を真ん中に自分で置き直して、みんなで、ここに置くと記者に見えるから等々の話をしておりますけれども、ああいうところは、間違いなく横田早紀江という人の訴える力が大きかったからだと思っております。

 議会に入りまして、山中政務官等々、やはり女性、言葉に不自由がないなどなど、いろいろ私どもの持っております人材として同行に最も適切と思っておりましたので、あれに詳しい山谷えり子を一緒にということで、二名同行という形で、総理、官房長官と話をした上でさせていただきましたけれども、結果としてはよかったと思っております。

 いずれにしても、こういうのは、出るのはほんの一瞬ですけれども、そこに至るまでのいろいろ工作、手間暇、また終わった後の成果等々は、一瞬の、努力が報われるか報われないか、非常に大きなところだと思いますけれども、今回は成果がそれなりのものが得られたと思っております。

小野寺委員 一部の報道で、今まで私の認識では、米国の下院で証言するというところは伺っておりましたが、ブッシュ大統領との面談というのは、実はその時点でもある程度計画の中に入っていたということを今改めてお伺いして、多少驚いております。

 やはり、きょう山中政務官おいででありますが、二人の政務官が同行していくということはそれなりの確信があって行かれたということなので、今回、外務省の働きというのは私は正直言ってすごいなと思います。お母さんの、早紀江さんの熱意ということがさらにそれを強くしたというふうに伺っております。

 また先般、私ども、五月の一日、二日にワシントンに行きまして、当時、公聴会を主宰していただきました下院議員、そしてまた米国の国務省また関係者ともいろいろな話をしてまいりました。本当にブッシュとの会談というのは、ブッシュが早紀江さんを親しげにお母さんと呼んだということを含めて、その場にいた方々からいろいろ臨場感あるお話をいただいております。

 そういう中で、今回、この御家族の皆さんと御同行されまして、そしてまたそれぞれの場面場面で実際にいらっしゃった、きょう山中政務官おいでいただきましたので、少しその辺の経緯、ぜひ詳しくお聞かせいただければありがたいと思います。

山中大臣政務官 ただいま麻生外務大臣からおっしゃっていただきましたように、今回、人権担当の外務大臣政務官、そして特命チームの一員という立場で、横田早紀江さん初め拉致家族の皆様と同行させていただきました。

 簡単にその全体の経緯を申し上げたいと思います。

 まず、一番最初から申し上げますと、横田早紀江さんは、大変体が痛い状態ですけれども、それを全部見せないで、この旅程を全部こなされたという、その意思の力というのにまず一つ大きな感動を覚えました。

 そして、先ほどからお話に出ていない、まず国防総省のことからちょっと申し上げたいと思います。

 国防総省に伺いましたときは、実はローレス副次官あたりとお目にかかれるだろうと思っておりましたところ、イングランド副長官が出ていらっしゃいました。この日は、ラムズフェルド国防長官は御存じのようにイラクに行っておりましたので、これは副長官ということではなくて、ラムズフェルド国防長官代理という形でイングランド副長官が出ていらっしゃったんですが、皆さん、青いリボンを胸にして、そのときもう既にしていらしているんです。国防総省というイメージと全く、本当にそれがぴったり合うのかなというような配慮が随所に見られました。

 イングランド氏は、私も長年の友人でしたから、大変いい方だというのはわかっていたんですが、御家族の話を一人ずつお聞きになった最後に、御自分から、まず写真を撮りましょうということで、家族と一緒に写真を撮られました。その後、翌々日の公聴会に間に合うように、引き伸ばしした写真を用意なさって、一人一人の家族に、横田早紀江さん、あるいは市川さん、そういう名前をお書きになって、自分のメッセージを書いて、サインしたものを公聴会の前に必ず届けよと。そして、公聴会頑張ってください、そういう心遣いをして、その写真を受け取った御家族の方たちは、ああ、アメリカの国防総省の方たちが私たちを応援してくれているんだ、そういうお気持ちになったというのがそばにいて大変強く印象づけられました。

 そして、公聴会のときですけれども、先ほどの中で、皆さんが涙を流したというのは、横田早紀江さんが、亡命した工作員の証言として、娘が工作船の暗い船底に閉じ込められて、お母さん助けて、お母さん助けてと壁をかきむしりながら連れていかれたというところを話したときに、日本語のわかる人はもうそこで涙がいっぱいでしたが、議員の方々がそれに対して非常に大きく感動をなさったのは、先ほどちょっと理事懇のときに私が申し上げました、スーザン古森さんというアメリカでの支援者の方がずっと付き添って、早紀江さんの気持ちを全部わかっていて、お母さん、マザー、ヘルプ・ミー、マザー、セーブ・ミーと、違う言葉を使って助けて助けてを言いました。そのときにも下院の議員の方たちが涙しているのが見えまして、会場自体がしいんとなりました。

 しかし、早紀江さんの証言は自分の娘さんのことだけで終わったのではなくて、一番最後に、世界各国から拉致されたすべての被害者の方たちを助け出し、これからの人生を自由の地で過ごさせてやりたい、ひどい人権侵害に苦しんでいる北朝鮮の人々も助け出してあげなければなりませんという、全体に配慮した言葉で締めくくったわけで、個人的なことだけの訴えではなく、全体の人権、それから世界各地の人たちのことへ思いをはせたという、この早紀江さんの証言というのが皆様の感動を誘ったわけです。

 即、人権国際活動の委員会のスミス小委員長が、先ほどから述べられましたG8サミットに何とかこれを提案したいということをその場でおっしゃいました。その後、ハイド氏という外交問題委員長のところへ全員で伺ったときに、ハイド委員長にスミスさんが、私がそういうふうに提案したけれども、これからもし日本の議員の方たちといろいろな接触があるとしたら、私が全部窓口になってやっていいですかということをハイド委員長に確認して、そして、ハイド委員長はぜひそういうふうにやってくれというようなことで、この議会の証言の後のフォローアップもそういう形で終わったわけでございます。

 ブッシュ大統領との面談のときに、横田早紀江さんは、お嬢さんが、めぐみさんがいなくなって、どこへ行ったかわからないときに、頭が変になりそうなときがあったと私におっしゃいました。そのときに、実は私はクリスチャンになったんですと。ところが、ブッシュ大統領のお顔を見た途端に、聖書の上に手を置いて宣誓しているブッシュ大統領のテレビの画面がすっと頭に浮かんだそうで、ブッシュ大統領も宣誓をなさったけれども、私もクリスチャンですとおっしゃって、そこから人間の尊厳とか自由とかというお話になったようです。

 そして、そのめぐみさんの写真を見せたときに、彼女はここにいないけれども、ここにいることにしましょうと言って、間に置いてあった小さな机にブッシュ大統領がみずから写真を飾って、それが皆様報道でごらんになった、新聞に写っている横田めぐみさんの写真、そういう経過で置かれたものです。

 最後に、出るときに、大統領がハグというか、温かく抱きしめた。予想外のことだったので、早紀江さんが私に、言葉はわからなかったけれども、マム、何とかと言った大統領のニュアンスが、お母さん、頑張りましょう、そういうふうに言ったように思えましたということを語っていらっしゃいました。

 先ほどから、官房長官、外務大臣がおっしゃったように、これは長い間の御家族の苦しい中で耐えてきた忍耐と、それからそれを支える会、また議連の方々、そしてアメリカにいる支援者の方々、それに官房長官、外務大臣、外務大臣の督励を受けて本省そして大使館も全力でお手伝いしたわけですが、シーファー大使を通しても米国の要人の方々にこの拉致の現状をよくわかっていただけた、これが一つの成果だと思います。

 二つ目は、核の問題のみならず、拉致の問題においても人権の問題においても、米国と日本が協力して、一糸乱れぬ団結の姿勢が示せた、これは世界に対する、大変大きな国際的な圧力というふうに考えております。そのほかに、情報の交換もし、多分議員のこれからのいろいろな交流も続くと思います。

 さまざまな面での日米の協力というのがここで一つの段階を迎えたと思いますけれども、私どもみんなが望んでいるのは、北朝鮮が、今回のブッシュ大統領あるいは米国の議会での御家族の証言、これを通して、拉致問題というのは避けて通れない問題であって、真摯にきちんと対応するというふうな認識を持っていただければ、我々の言う対話、真の意味の対話というものを実現できる。その圧力として、国際的な圧力として今回は大変大きな意味があったと思いますし、もう一つプラスして申し上げさせていただければ、やはり母の心、母の思いというのが世界を動かしたかなというふうに私は感じております。

 以上でございます。

小野寺委員 大変臨場感あるお話、そしてまた御苦労さまでありました。これが一つの大きなきっかけになること、それを確信しております。

 今までお話がありましたように、確かにアメリカというのは、例えば北朝鮮の核開発問題を話し合う六カ国会合の参加国の中では、拉致問題の重要性について最も理解を示してくれていました。我が国唯一無二の同盟国として、拉致問題解決へ向けた協力を惜しみませんでした。

 しかし、どちらかといいますと、これまでの対応というのは、精神的な支援というんでしょうか、北朝鮮によるマネーロンダリングに関してマカオの銀行に事実上の経済制裁をかけたような実力を伴う行動が余り多くなかったということは認めざるを得ません。ですから、今後いかに強制力を伴う対北朝鮮政策を拉致の分野でも実行してくれるか、あるいは一緒にしていくかということが問われることになります。そういう意味では、横田早紀江さんの熱意がブッシュ大統領から前向きな発言を引き出したということは大変重要だと思っております。

 伝えられるところによりますと、ブッシュ大統領は拉致問題解決への働きかけを強めたいというふうに言ったということでありますが、政府としましては、この発言を受けて、米国政府が、これまでの支援に加え、どのような追加的な協力をする可能性があるのか、どう考えているのか、また、それを引き出すために政府としてはどのような取り組みが必要であると考えているのか、そのことについてお伺いしたいと思っています。

 ちょっと長くなったので、要点をお話ししますと、せっかくこうして横田早紀江さんがブッシュの心を開きました。アメリカと協力して、さらなる強い態勢でこれから北朝鮮に向かっていかなければいけないと思いますが、政府としては、アメリカとどのような協力関係をとっていくのか、また、どのような働きかけをしていくのか、そのことについてお伺いしたいと思っています。

麻生国務大臣 今後、日米連帯をどうやっていくか。

 基本的には、私ども今回の中で、やはり自国の民が拉致されているという状況ではありませんので、そんなに自分のものとして感じている人はなかなかいない、それが普通だと思いますが、今回、アメリカ大統領のああいった対応、また政府、議会関係者の対応等々がアメリカ全部に広まっておりますので、この種の問題に対しては、小野寺さん御存じのように、アメリカの場合は殺人より誘拐の方が罪が重たいですから、その意味では、北朝鮮というものの話ではやはり最初はどうしたってミサイルの話、核の話がほとんど主だったと思いますけれども、この拉致の問題も非常に大きな問題としてざっと上がってきて、それは日本だけの話という雰囲気ではなくなった。

 また、DNAの鑑定を日本が出して、これはどのみち韓国も、もうちょっと後になるだろうと思いますが、出た段階では、これは韓国側も今まで拉致というものを正式には余り認めていませんでしたから、認めざるを得ないということになってきますと、これは韓国側としてもこの問題について正面から向かわざるを得ない等々、いろいろな形で痛みを共有していくことになりますので、連携は非常にとりやすくなってくると思っております。

 そういった意味で、ちょっと具体的なところまで今きちんと詰めているわけではありませんけれども、少なくとも今回の、六月に開かれるであろう日米首脳会談、またその後に開かれますG8のサミット等々、いろいろな場でこの拉致の問題というものが大きく取り上げられ、現実としては、これは十二カ国でしたか、ルーマニアを含めて十二カ国今拉致されているということになっております。ちょっと正確なところを知りませんけれども、十二カ国ということになっておりますので、何も日本と韓国だけの話ではないということになってこようと思いますので、広がりを見せ、結果として拉致された方々が無事に生還、帰還できるというようなところまで持っていきたいものだと思っております。

小野寺委員 ぜひ、せっかくのこのきっかけを大きなものにしていただきたいと思っています。

 また、脱北者の受け入れをアメリカ政府がこの時期に表明したということ、それもまた一つのあらわれではないかと私は感じております。

 さて、少し突っ込んだお話を伺いたいんですが、実は先般、五月の一日、二日、先ほどからお話をしましたが、ワシントンでアメリカ政府の政策責任者とお話をする機会がありました。その際に先方から出たお話です。

 マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアにつきましては、資金の凍結ということ、これは大きな問題ということで報道もされておりますし、このことに対して、北朝鮮の関係者あるいは金正日は非常にナーバスになっているというふうにも伺っています。

 一面、これは資金の凍結、お金を凍結されたんで困ったなというような印象を持っているんですが、実は私どもが先方から聞いた話は少し違っております。この銀行の資産の凍結に当たりまして、実は資料も一緒に押収しているということです。約九十箱の資料の中に数千枚の資料が実は押収物件としてあって、現在これを分析しているということです。

 この分析については、ことしの夏の終わりごろには全体像がつかめるんではないかということなんですが、現段階で確証を得ているという内容としまして、北朝鮮による政府が関与したにせ札づくりの証拠をつかんでいる。それから、マネーロンダリングの金融機関でありますが、これが中国そしてロシアの銀行にも広がっている、この確証をつかんでいるということを明確にお話をされていました。

 まず、このような状況について、日本政府として何らかの情報を得ているのか、あるいは情報の共有をしているのか、お伺いしたいと思っています。

麻生国務大臣 九月の十五日に、マカオにありますバンコ・デルタ・アジア、通称BDAというところで、いわゆる資金洗浄の懸念がある金融機関ということをアメリカは認定をしております。これは結構大変なことでして、これを認定されますと、他のアメリカの銀行とは取引が不可能になりますので、資金の決済ができなくなるということを意味しております。

 これをとったときに、アメリカの政府の説明によりますと、いわゆる北朝鮮の機関及び政府の関連企業等々、二十年以上にわたっていわゆる金融サービスをバンコ・デルタ・アジアはやってきたという資料になっておるということでして、日本として、この話は一定の無視できない影響を北朝鮮に与えたことだけは間違いないと思っております。

 これがどういうことを受けたかというと、少なくともそれを聞いて、ほかの金融機関、アメリカの金融機関以外の金融機関というのもいっぱいありますが、そこもBDAとの取引は自粛したというのが、もうスイスの銀行を初め幾つも出ております。そういった報道がかなり出てき始めたので、さらに大きな影響を与えたことも事実であろうと存じます。

 したがいまして、日本としても、これは資金洗浄というのは明らかに不法活動、金融取り締まりの違反でありますので、法令というものにのっとってきちんと対応するというのが基本的立場でありまして、これは金融庁等とも同じであります。

 さらに、この不法活動に対して、これは国際的にもっとやっていかないかぬということになろうと思いますので、関係各国、これは特に金融機関というものを主に扱っておりますヨーロッパ関係もそうなんですが、こういったところも含めて、いわゆる決済ができないということは商売をいろいろやっていく意味で非常に大きな不便というか、非常に不都合を感じさせるものでもあります。これは大きな圧力になろうと思いますので、そういった意味で、緊密に意見交換等々をやっていかねばならぬということで、これはアメリカとはかなり連絡はできております。

小野寺委員 恐らく、政府としても何らかの確証についての情報共有はしていると思います。特に国家が絡んだにせ札づくりの証拠とか、それから、ほかにも中国、ロシアの銀行が関与している証拠とか、そういうかなり広範囲にわたる犯罪と言えるものについて、もし確証があるのであれば、当然このことに関して、資金の凍結ということだけではなくて、国としての国際的なあり方を問われるような証拠ですので、北朝鮮が、バンコ・デルタ・アジアに関しての制裁解除を六カ国協議への復帰の条件とか、あるいは米国への制裁解除のために中国に行って仲介をとってほしいとか必死になっている、そういう意味合いというのは何となくわかるのかなというふうに感じております。これは、北朝鮮に対しては大変な圧力になると思います。

 また、日本の中にも同じような資金洗浄の状況がもしあるとすれば、当然、日本の国内でこういう証拠をつかまえれば、それはまたすごく大きな圧力になっていくのではないかと思っています。

 我が国は、既に、特定船舶の入港阻止法など幾つかの対北朝鮮の制裁法案をつくっていますし、また今回も、北朝鮮人権法案も提出されております。圧力のいろいろな準備はしておりますが、残念ながらまだ、小泉総理の訪朝以来三年半以上もこういうだらだらした状況が続いております。

 そろそろ本当に、制裁という意味ではかなり有効な、効果のあるものをつくっていかなければいけないと思いますが、こういういわゆるマネーロンダリングの証拠をつかむということ、あるいは、アメリカが現在つかんでいるような証拠について、日本も協力してさらに捜査を進めていくというような、いろいろなことを踏まえて、北朝鮮に対しての今後の圧力のかけ方について再度お伺いしたいと思っております。

麻生国務大臣 基本的には、北朝鮮に限らず、マネーロンダリングというのは明らかに不法でありますから、これは警察もしくは金融庁の対象事件ということになります。

 いわゆる無記名初め、今は麻薬の話から何からいっぱい、ごろごろ週刊誌やらに載っている話等々を含めまして、いろいろな問題が、どれが北朝鮮で、どれが何とかで、どれが何だか、私どもではよくわからないぐらいいろいろありますけれども、少なくとも、BDAの話に関して言わせていただくと、調査がきちんとでき上がった段階で、もう少し整理をした上で、日本に関係するところ、しないところをきちんと整理しなきゃいかぬところでもあろうかと思いますが、そういったものをきちんとした上で、私どもも法にのっとって対応していかねばならぬと思っております。

小野寺委員 恐らく、こういう金融機関からの証拠固めというのが北朝鮮にとっては一番痛いところをついている、そういう状況なのかなと感じますので、これは、きょうお呼びしておりませんが、ぜひ、日本の捜査当局も、このマカオの事例あるいはアメリカ政府がとっている手法というのを十分検討していただいて、国内でもこういうことがないのか、まずそういう犯罪の撲滅、そしてまた証拠固め、そういう中から大きな圧力ということにつながっていければというふうに思っています。

 もう一つ、拉致問題に対して、同じく拉致被害者がたくさんいらっしゃる国であります韓国の対応について、少し私自身、最近の報道ではいかがなものかなと思うことがございます。

 それは、先ほど来の質問でも何件か出ておりますが、韓国統一相の発言のことです。五月三日の発言ですが、金正日総書記が日本人拉致を認めたことなど、これまでの北朝鮮の対応について日本は過小評価していると日本を批判している、こういう発言をされています。

 もちろん、拉致の問題というのは間違いのない犯罪行為でありまして、これを、多少日本に対していろいろな発言をしたといっても、日本が金正日を評価するなんということがとてもこの状況ではできるはずもないのに、それをあえて韓国の統一相がお話をされているということですが、政府としてこの統一相の発言についてどのような見解をお持ちか、他国の話ですので言いにくいとは思いますが、あえてお伺いしたいと思います。

山中大臣政務官 イ・ジョンソク統一相なんですけれども、先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、全く御家族と会う意思がないというようなことは御本人から申し述べたわけではなくて、記者会見において、日本の記者側から会う意思があるかどうかというふうに聞かれた、そこの場で、会う意思はない、会う予定もないということを述べたというふうに承知しております。

 いろいろな韓国の事情があると思いますけれども、一つには、DNAの鑑定に関しまして、まだ結果が出ていないわけですが、少なくとも、日本がDNAの鑑定を出したことによって韓国をある意味で後押しして、そしてDNAの同じ検査をするというところまで来ておりまして、まだもう少し時間がかかるようですけれども、その結果を見てから多分韓国政府としては具体的に、どのような対応をするのかということを本当に決めるのではないか。その意味では、少し時間の余裕を見てあげるということは必要だというふうに思います。

 しかし、私どもは、やはり日本と韓国は同じ被害者を持っておりますし、そしていろいろな意味で協力していかなければいけませんので、今回、ブッシュ大統領が横田さん親子にお会いしたのみならず、実は、皆さん覚えていらっしゃるかもしれません、脱北のハンミちゃん、その家族、それから脱北者の韓国の方も一緒にお会いになっているんです、両側で。

 私は、ブッシュ大統領が、家族の気持ちになって一緒に頑張りましょうと言ったその気持ちを、韓国の、今回は政府レベルはだれも来ていませんでした、ですから韓国の拉致被害者の方はとても大変だったと思うんです。日本は、先ほどありましたように、官房長官、外務大臣の御配慮で私どもおつきすることができたんです。ですから、これを韓国の方に一つのてことして、同じレベルまで韓国も持っていってくれるように、家族の気持ちになって今後とも努力したいというふうに思っています。少しお時間がかかるかと思います。

小野寺委員 ありがとうございます。

 次の質問に答弁していただきまして、統一相のけしからぬ発言というのは、一つは金正日について日本は過小評価しているという発言、次に、今から質問しようと思ったのが、まだオファーをしていないのにもう、会う必要はない、会う考えはないという統一相の二つの発言について、私としては、非常に無礼だなというふうに感じております。

 だからこそ、今回、崔桂月さんが日本にいらっしゃるときに政府の高いレベルの方にお会いしていただきたいとも思っておりますし、先ほど官房長官の答弁で、二十九日でしょうか、もう既に会う予定を入れているということですので、それは政府としての対応をしっかりされているなと思いますし、ぜひ総理にもお会いしていただきたい、そういうふうに考えております。

 最後の質問ですが、今回、この拉致問題の一つの解決といいますのは、小泉総理の二〇〇二年の電撃的なあの北朝鮮訪問ということがそのきっかけであったということは間違いないと思っています。ですが、この問題、もしかしたらパンドラの箱をあけて、そしていろいろな形で今努力をしていただいていますが、小泉総理の任期というのは今の状況ですと、あともう残り四カ月余りということになります。この状況ですと、現在の北朝鮮のかたくなな姿勢というものを考えますと、拉致問題が急転直下解決するということはそうそう想定しにくいのかなというふうに思っています。

 ですが、早紀江さんの御年齢あるいは家族会の皆さんの御年齢を考えても、もう一日でも早くというのが私ども国民の共通の考え方でもあると思います。残り四カ月の間に一歩でも二歩でも前進させる必要があると思いますし、また、それは小泉総理の責任だというふうにも思っています。

 ぜひ、小泉総理退陣までの間に、少しでも明るい光が見えてくるような努力をするべきだと思いますが、最後に、政府の決意をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 二度にわたる訪朝の結果、間違いなく、日本人拉致を認めて謝罪させ、加えて八名のいわゆる拉致被害者の帰国の実現等々、これは小野寺先生が言われるように大きな成果だった、少なくとも、これまで何かうやむやになっていた部分が物すごくはっきりしております。しかしながら、わかっているだけでも被害者十一名ですかね、例の千番台は別にして十一名ということになっておりますので、そこらの方々の帰国はいまだ実現をしておりません。

 また、拉致問題というのは、明らかに、日本という国の国家の主権と、いわゆる国民の生命財産といったものに直接かかわる重大な問題でもありますので、政府としては、一日も早い解決に向けて最大限の努力をしていくのは当然でして、今外務大臣をいたしておりますけれども、この職責をきちんと全うしていかないかぬところだと、その意味においてもそのように感じております。

小野寺委員 強い決意、ありがとうございました。

 質問を終わります。

平沢委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自民党の稲田朋美でございます。

 先ほど小野寺委員からの質問に対して、山中政務官の方から、横田早紀江さんのアメリカでの公聴会の様子、またブッシュ大統領との面談の様子をお聞きして、本当に感動いたしました。山中政務官の、母の力がアメリカを動かし、また世界を動かしたというお言葉を本当に私はうれしく聞くことができました。ありがとうございます。

 私にも十三歳の娘がおります。毎日、朝元気に中学校に出かけまして、そしてまた元気に中学校から帰ってくる。それが幸せと感じないぐらいの日常になっておりますが、そんな中で、もし娘が中学校から帰ってこずに、クラブ活動も終わっているのに本当にどうしたのかなと思って学校へ迎えに行って、もうクラブ活動は終わっていてママさんバレーが始まっていて、そして心配になってずっと捜して、それでも娘がいなかったとしたら、そしてそれ以来二十年間、忽然と娘が手元に帰ってこないとしたら、二十年目にして娘が北朝鮮にいるということがわかっての道中で、先ほど山中政務官おっしゃいましたように、お母さん、助けてと言いながら北朝鮮に運ばれたということを知りながら、また九年間娘を救出することができなかったとしたら、そういったことを考えまして、横田早紀江さんが、めぐみさんがいなくなった日に、暗い新潟の海を見詰めて、どんなに悲しくて、どんなに不安で、どんなに苦しかったか、また、それからずっと二十九年間もの間、娘を救出できないでいるということがどんなに苦しいのか、愛する娘を救えないというのがどんなにつらいことなのかということを考えますと、同じ母親として、決して私は人ごととは思えないのでございます。

 めぐみさんを初めとした被拉致日本人がいまだに救出されずに北朝鮮で置き去りにされ、私たちの救いを待っていらっしゃる。このような同胞に対する人権侵害、究極の人権侵害を放置しているということ、また、見て見ぬふりをして何も行動しないとすれば、それは私は政治家としても、また同じ日本人としても、決して許されないと思っております。

 同じ日本人に対する人権侵害、また私たち自身に対する人権侵害、そして日本国に対する主権の侵害であると思います。外国に拉致され、北朝鮮に拉致された同胞を救うことすらできなくて、一体、何のための人権擁護、何のための人権大国なのか、また何のための防衛なのか、そしてもっと言えば、一体、何のための国家なのかという気持ちでいっぱいでございます。

 私たち政治家一人一人が、また政府関係者、そして関係省庁の一人一人、そして日本人の一人一人が、この拉致問題というのを自分自身のことであると受けとめて、そして救出に向けての何らかの行動を起こすことなくして、この拉致問題を解決することはできないのではないかと思っております。

 先ほどから、横田早紀江さんのアメリカでの成果については御回答がありましたけれども、改めて外務大臣にお伺いいたします。

 外務大臣は、昨日、新人の勉強会にも来られまして、もうこの拉致問題は、単なる日本国内の問題、日本と北朝鮮の問題ではなくて、世界の中で解決していかなければならないものなのだということをおっしゃいましたけれども、この米国での成果を踏まえられまして、これからどのような方向で外交に生かされるのでしょうか、その点についてお伺いいたします。

麻生国務大臣 先ほど小野寺委員からの御質問に答弁を申し上げましたように、これは日本、韓国以外にも、全部で十二カ国の国々の人々が拉致をされておるということになっております。したがいまして、私どもの知っているタイとかルーマニアとか、お目にかかったこともありますけれども、そういった方々の話を伺っても、これは間違いなく、バイの話ではなくて広がりを見せておる、わかっておるだけで十二カ国ですから。そういう状況になったというのが一点。

 もう一点は、今度のブッシュ大統領との会談などなどによってこの話が一挙に広がっていく、またG8サミットなどで、いわゆる国際的な場でこの種のものが話題として、アブダクション、拉致というものが取り上げられていくというような形は、これは間違いなく当該国にとりましては非常に大きな圧力になっていくだろうと思います。

 私どもは、基本的にはそんなに難しいことを言っているのではないのであって、拉致した人を帰してくれ、これが一番基本ですから、そういった問題に関して、例えば北朝鮮は韓国の拉致というものをいまだ正式に認めてはおりませんから、正式に認めたというのは多分日本だけということになっておりますので、そういう意味では、これまでそれなりの成果は上がっていると思います。

 しかし、さらに、生き残っておられる方々、生き残っているという前提で申し上げていますが、生き残っているという前提で話した場合に、その方々、生存者の奪還というのは、帰還させるというのは、これは至上、優先順位の一番高いところですから、そこの部分につきましては、引き続き我々としては、北朝鮮に対してこの返還を求め続けていかねばいかぬ。これは粘り強くやる以外に、これは国家の背骨が問われているみたいな話ですから、きちんとやり続けていかねばならぬ大事なところだと思っております。

 幸いにして広がりを見せつつあるという形になっておりますので、向こうとしてもいろいろ対応を迫られてきている、対応を迫られつつあると感じていると思いますけれども、実際的に、最後にきちんとした形で帰してもらって、それで初めて決着ということになろうと思いますので、そういう点、今後とも、これでよかったよかったという話じゃないんであって、これからさらにという話をしていかなきゃならぬということだと思っております。

稲田委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。

 それでは、警察庁にお伺いいたしますが、警察庁の発表では、北朝鮮による日本人拉致容疑事案については十一件十六人ということでございますけれども、実際にはもっと多いと言われております。警察は、拉致被害者の数をどの程度というふうに推定されているのでしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 警察がこれまでに判断いたしました拉致容疑事案は、十一件十六名でございます。また、これらの事案以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると見られるところから、現在、鋭意捜査、調査を行っているところでございます。

 また、北朝鮮による拉致事案ではないかという告訴、告発、これが三十六件四十名を受理し、現在、所要の捜査を実施しているところでございます。さらに、拉致の可能性が否定できないとしてなされた九百件以上の届け出、相談に対しても、御家族や関係者の心情に配意しつつ、所要の捜査、調査を行っているところでございます。

 そうした中で、十一件十六名以外にもこうした事案があると判断するに至れば、警察として、そのものを適時適切に明らかにしてまいる所存でございます。

稲田委員 拉致の可能性があると申し出がある九百件のうち、一体何件程度が蓋然性が高いというふうに認識されているのでしょうか。

小林政府参考人 先ほど申し上げましたように、警察がこれまでに判断した十一件十六名以外の北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案、所要の捜査をしているところでありますが、こうした事案につきまして、これまでに収集した証拠や事実によっては、北朝鮮による拉致容疑事案であると現在のところ判断するには至っておりません。公表はしていないところでございます。

稲田委員 では、相当程度あるというふうにお伺いいたしておきます。

 内閣官房にお伺いいたしますが、平成十八年の三月八日、今回、資料もつけておりますけれども、参議院予算委員会において、特定失踪者三十四名のリストを北朝鮮に渡したと外務大臣がお答えになっておりますけれども、いつ、どのような機会に、どういった趣旨で、どのようなリストを渡し、また、その後このリストについてどういった進展になっているのでしょうか。

山中大臣政務官 これまでも累次の日朝の会議において、拉致被害者というふうに認定されている方以外の可能性についても北朝鮮側に対して情報提供を求めてまいりましたが、昨年十一月の日朝政府間協議において、特定失踪者問題調査会によって、拉致された疑いが濃いとされているいわゆる千番台リストの掲載者も含む三十数名のリストを我が方より北朝鮮側に伝達いたしました。その上で、北朝鮮への入境の有無、あるいは入境していた場合の生活状況などについて調査をするようにということを求めております。情報があれば提供するよう求めております。

 ことしの二月の日朝包括並行協議において、我が方より当該リストを再度提示いたしまして、改めて関連情報の提供を求めました。これに対して北朝鮮側は、我が方から関連の情報があれば、それらの者の調査を行う旨回答してまいりました。

 こうしたやりとりを踏まえまして、三月三十一日に、北京の大使館ルートを通じて、特定失踪者問題調査会のホームページに掲載されている情報あるいは既に公表されている情報などを集めまして、北朝鮮側に提供いたしました。改めて北朝鮮側にその調査を早急に実施することを要求しております。北朝鮮側からいまだ我が方に対しては回答はございませんが、本国にきちんと伝達するという旨の回答は得ております。

 このような状況でございますので、私どもも、これからも北朝鮮側に対し、拉致被害者と同様、特定失踪者に関する情報の提供を早期に行うよう改めて重ねて求めていく、そういう段階でございます。

稲田委員 お聞きしますと、何回かにわたってリストを渡して情報も提供しているけれども、誠実な回答がないというふうにお伺いいたします。

 次に、警察庁にお伺いいたしますが、曽我ひとみさんの拉致については北朝鮮側から明らかにされたわけですけれども、警察は、曽我ひとみさんの失踪を当時どのように認識されていたのでしょうか。新潟県警は当時、拉致ではないというふうに認識されたとも聞いておりますけれども、その点はいかがでしょうか。

小林政府参考人 北朝鮮による曽我ミヨシさん、ひとみさん親子の拉致容疑事案につきましては、警察は昭和五十三年八月十二日に両名が行方不明になったとの通報を受けました。翌日の十三日に、通報を御親族から受けた後に、管轄の警察署員が地元住民らとともに付近の捜索を行っております。しかし発見に至らず、また、佐渡島という地理的な状況にかんがみまして、当日及び翌日のフェリーの乗船名簿等を確認するなど、事件、事故の両面から所要の措置を講じたところでございますが、当時の段階では、大変残念ながら、北朝鮮による拉致容疑事案と判断するまでの情報、証拠等の入手には至らなかったと承知しております。

稲田委員 それでは、現在、政府では、拉致被害者が北朝鮮の国内のどこにいるかについての情報収集について、一体、どの部署がどういった形で責任をとって調べていらっしゃるのか、その点についてお伺いいたします。

坂井政府参考人 お答え申し上げます。

 政府におきましては、拉致問題の解決に向けまして、官房副長官を議長といたします拉致問題特命チームのもと、関係省庁、機関が緊密に連携しつつ、拉致問題に関連する情報の収集を行い、それら情報の共有、分析を行っているところでございます。

 今後とも、拉致問題特命チームを中心にいたしまして、先生御指摘の拉致被害者に係る情報も含め、拉致問題に関する情報につきまして政府一体となって収集、分析を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

稲田委員 そうしますと、特定のどこかの部署が責任を持っているということではなくて、特命チームが全体として情報収集に当たっているとおっしゃるのか、それとも今から当たるとおっしゃっているのか、ちょっとその点、確認したいんですが。

坂井政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、その情報の収集につきましては、外務省あるいは警察庁、公安調査庁それぞれの、その他の役所も含めまして、さまざまな方法によって情報を収集しておるわけでございますが、政府といたしましては、それら情報について、拉致問題特命チームのもとに一元的にこれを集約して拉致問題の解決に生かしていく、そういう体制をとっておるということでございます。

稲田委員 一月から、拉致問題特命チーム、専門幹事会に防衛庁が加わっておりますけれども、なぜ今まで防衛庁は加わらなかったのか。また、防衛庁はどのような役割をこの特命チームの中でされているのでしょうか。

江村政府参考人 お答えいたします。

 専門幹事会でございますけれども、平成十四年九月に日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議が設置されましたけれども、そのもとに、拉致問題は緊急かつ重要な課題であることにかんがみまして、拉致問題に関する基本方針を策定し、実際に必要となる種々の事務を調整することにより、拉致問題に関する政府の取り組みの円滑かつ効率的な実施を確保するため、官房副長官を議長として、平成十四年九月に拉致問題に関する専門幹事会として設置されたものでございます。

 こうした経緯から、本件に特に深くかかわっております内閣官房、警察庁、法務省、公安調査庁、外務省、厚生労働省、各省庁の局長クラスを構成員といたしまして専門幹事会を開催してきたところでございますけれども、この間、必要に応じ議長が指名する者も拉致問題専門幹事会に参加してきておるところでございます。

 さらに、北朝鮮による拉致問題は政府一体として取り組むべき重要な問題であるという認識のもとに、本年一月二十七日、十九回の拉致問題専門幹事会より、構成員を宮内庁を除く全府省庁というふうに拡大いたしまして、この二月からは通称といたしまして、専門幹事会を拉致問題特命チームというふうに呼んでおるところでございます。

 以上のような経緯から、現在、防衛庁には拉致問題特命チームの一員として御参加をいただいているところでございます。

稲田委員 私の質問に答えてほしいんですけれども、私の質問は、要するに、外務大臣もこの問題は国家の主権を侵害された問題だというふうに認識されていますし、では、どうして防衛庁が今まで加わらなかったのかというその理由を聞いているわけです。

 また、加わって以降、防衛庁は一体どういう役割を果たされるのかという質問をしているわけで、特命チームの設置の経緯だとか構成だとかを聞いているわけではありませんので、時間もありませんから、質問に対して答えていただきたいと思います。

江村政府参考人 お答えします。

 今まで入っていなかった理由といたしましては、先ほど申しましたとおり、設立された当時の専門幹事会の取り組むべき課題に特にかかわりが深い、先ほど申し上げましたような省庁が中心として加わってきたというところでございまして、それを政府全体として取り組むという観点から本年になって見直したということが、これまで入っていなかったという理由でございます。

 防衛庁に果たしていただく役割ということであれば、拉致問題専門チームにおきましては、それぞれの省庁がそれぞれの所掌事務の中でこの拉致問題の解決に向けて取り組むということでございますので、防衛庁の所掌の範囲で拉致問題に貢献できる分野を検討していただき、さらに御参加をいただいているということでございます。

稲田委員 そういった政府の姿勢自体がこの問題をここまで長引かせているのではないかというふうにも思います。やはり、防衛庁という国の安全保障を守る庁が、一体どういう役割をされるのかという点についてもきちんと認識していただきたいと思います。

 その上で、自衛隊の持つ情報収集能力を北朝鮮内における拉致被害者の特定などに使うということは当然だと思うんですけれども、これまでそれはなされてきたのか、また現在なされているのかについてお伺いいたします。

大古政府参考人 防衛庁からお答えさせていただきます。

 防衛庁は、平素より、我が国の防衛等に必要な情報の収集、分析を実施しております。それで、必要な情報については、内閣官房を初め関係省庁と迅速、適切な共有を図っているところでございます。

 ただし、個別具体的な情報の運用について申し上げることは、我々の情報能力を明らかにすることになりますので、従来より答弁を差し控えさせていただいているところでございます。

 いずれにしましても、お尋ねの拉致被害者の問題に関しては、防衛庁として、今後とも最大限協力に努めてまいる所存でございます。

稲田委員 非常に抽象的なお答えなのでよくわかりませんけれども、よろしくお願い申し上げます。

 また、では、この特命チームの情報収集会議になぜ防衛庁が入っていないんでしょうか。

坂井政府参考人 お答え申し上げます。

 情報収集会議でございますが、去る三月十三日に拉致問題特命チームで設置をされたものでございまして、拉致問題の解決に必要な情報の収集、集約という観点から、拉致問題に特に関係の深い、内閣情報官、警察庁長官、公安調査庁長官、外務省事務次官をメンバーとして発足をしているものでございます。

 御指摘のとおり、防衛庁につきましてはメンバーには入ってございませんけれども、防衛庁につきましては特命チームのメンバーでございまして、防衛庁の収集された必要な情報につきましては、特命チームの会合あるいは個別の報告、さまざまなチャネルを通じまして政府として一元的に集約をして活用を図っているところでございまして、今後とも、緊密な連携を図りつつ、その活用に努めてまいりたいというふうに考えております。

安倍国務大臣 現状では今御答弁したとおりでございますが、防衛庁の情報本部のこの機能は極めて高い機能があるわけでございますので、委員の御指摘も踏まえまして、情報本部の機能をどのように活用していくかということを検討したい、このように思っております。

稲田委員 ありがとうございます。

 それでは、防衛庁に続けてお伺いいたしますが、三月八日の参議院予算委員会の額賀長官の答弁において、北朝鮮の体制崩壊時における邦人の保護についてですが、「外務大臣の要請を受けて、輸送が安全であるという条件の下で」というふうに答弁されているんですけれども、安全であれば自衛隊が行く必要はないと思います。これまで拉致されて長期間にわたり苦しんでいた国民が救いを求めているときに、一体、放置することが許されるのでしょうか。

 こういった状況に立ち至ったとき、防衛庁としてはどのような対応をされるつもりなのか、また、そのような場合を想定して訓練だとかシミュレーションをされているのか、その点についてお伺いいたします。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 在外邦人等の輸送に当たりまして、輸送の安全が要件とされておりますのは、派遣先国の空港、港湾等におきまして、輸送の安全が確保されない場合にあえて救出等を実施すれば、やはり、輸送対象である邦人に事故等が起こることにもなりかねず、在外邦人の安全確保というそもそもの目的を達成することができなくなりかねないということでありまして、いわば、任務遂行上当然のことを規定したものであるというふうに考えています。

 具体的には、例えば、紛争地域で安全でないから任務を行わないという話ではなくて、もっと具体的に申し上げると、在外邦人等の輸送の対象国において紛争が生じて、航空自衛隊の在外邦人の輸送に当たる航空機が滑走路が破壊されてなかなか使えないとか、そういう、どちらかといいますと物理上の安全が確保されているかどうかということが一つの要件というふうに我々は考えております。

稲田委員 いや、半分しかお答えになっていないと思うんですけれども、そういった北朝鮮の崩壊に備えて訓練とかシミュレーションは行っていらっしゃるのかどうかという点についてお伺いいたします。

山崎政府参考人 我々は、北朝鮮という特定の地域を前提にはしておりませんが、百条の八に基づきまして在外邦人等の輸送を任務としておりますので、その任務を遂行するために、平時から訓練を実施しております。

 例えば、例を挙げますと、昨年十月、海上自衛隊の自衛艦隊が館山沖におきまして、輸送艦一隻それからヘリコプター五機を用いまして、在外邦人等を艦内に収容するための連続離発着訓練とかを行っておりますし、さらに本年の四月でございますが、陸上自衛隊の第一ヘリコプター団が木更津の駐屯地におきまして、輸送ヘリコプター四機を用いて、在外公館から邦人を引き継いで、それから入国手続に至るまでの一連の行動に関する訓練等を行っております。

稲田委員 そういった一般論はどちらでもいいんですけれども、横田早紀江さんも、おぼれている人がいればそれを助けるんだという、そういった気概を持った自衛隊でないと日本国民もやはり安心できないなというふうに思います。

 次に、原敕晁さんの拉致についてことしの三月二十三日に強制捜査が実施されたということですけれども、そもそも、北朝鮮の工作員である辛光洙が原さんを拉致したことは、もう既に、六十年に死刑判決を韓国で受けていらっしゃって、その判決の中に書いてありますし、また、その後の国会の質疑の中でも明らかになっております。

 そのときにもう既に明らかになった事件についての日本国内での強制捜査がなぜことしなのか。場合によっては国の不作為責任というものも生ずる場合もあると思うんですけれども、なぜこのように長期間、放置しておられたのかどうかは知りませんけれども、時間がかかったのかについてお伺いいたします。

小林政府参考人 いわゆる辛光洙事件につきましては、大変複雑な経過をたどったわけであります。若干長くなりますが、申し上げます。

 昭和六十年に、韓国当局が国家保安法等違反でこれを検挙し、この事案が発覚したのであります。我が国警察は、同年六月の事案の発覚以降、直ちに韓国に捜査員を派遣いたしまして、間接的ではありますが、辛光洙に対する事情聴取を実施しております。韓国当局と所要の情報交換等を行うとともに、関係書類の提供を受けるなど、鋭意その当時も捜査を行っております。

 その後、辛光洙らは韓国の裁判手続に付されまして、本件主犯の辛光洙につきましては、死刑判決が確定、その後、例のソウル・オリンピックの恩赦ですか、無期懲役に減刑されておる。そういったことで収監されていたものでありますが、我が国警察は、収監中におきましても、同人らに対する事情聴取の実施について韓国当局に要請してまいったところであります。

 ところが、いわゆるミレニアム恩赦によりまして、平成十一年十二月に、辛光洙が釈放されました。翌平成十二年九月に、北朝鮮に送還するという事態になりましたため、この際も、韓国当局に対し、同人の身柄の引き渡しの可能性について打診を行っております。

 その後、警察は、国内におきまして、原敕晁さんに対する背乗り部分、成りかわりの部分につきましての捜査を継続いたしまして、平成十四年八月に、本件の主犯である北朝鮮工作員辛光洙による免状等不実記載、入管法違反等による逮捕状を取得いたしまして、国際手配等の手続を行ってきたところでございます。

 こうした中、さらに、最近になりまして、三つほど状況の変化が起こってきた。一つは、韓国の裁判手続において作成された公判調書の証拠化の可能性に係る最高裁の決定がなされました。それから二点目は、平成十四年九月の日朝首脳会談におきまして、北朝鮮が拉致行為を自認してまいりました。それから三点目が、関係者の供述等により、拉致被害者が北朝鮮に連れていかれた後の状況がかなりの程度明らかになった。

 こういった状況の変化が生じましたことから、本年三月二十三日、本件拉致事案そのものの全容解明に向け、国内関係箇所に対する捜索を実施し、その後、四月二十四日になりまして、本件主犯辛光洙及び共犯者金吉旭に対する逮捕状の発付を受け、国際手配等の手続を行ったところでございます。

稲田委員 もう質疑時間がないので、最後に一問だけ官房長官に聞きたいんですけれども、官房長官は、政府の北朝鮮政策である対話と圧力という中で、一体、北朝鮮に対話する意思があるというふうに認識されているかどうか、そしてまた、拉致問題の解決に当たって、中国の姿勢というものについてどのようにお考えかについて、簡単にお伺いいたしたいと思います。

安倍国務大臣 北朝鮮に対しては、対話を必要とされる状況に持っていかなければいけない、そのために圧力をかけなければ、残念ながら、彼らは、対話をし、そして誠意ある姿勢を示そうとしない、こう考えております。対話をしなければならない、そう考え、そして政策を変えて、誠意ある対応をしよう、こう北朝鮮が考えるように、我々としてはとるべき圧力をかけていかなければならない、このように考えております。

 また、中国の北朝鮮に対する考え方でありますが、中国は北朝鮮に対しては極めて大きな影響力を持っている、このように考えております。その影響力を使って核の問題を解決するために六者協議をセットしているわけでありまして、仕組みとしてはこの仕組みしかないんだろう、こう考えているわけでありますが、その中で、やはり拉致問題についても、中国側の理解を得るべく努力をしなければいけない。

 しかし、そのためには、人権感覚が、残念ながら、日本と同じ人権感覚、また自由というものについての感覚があるかどうか、そういう問題点もあるかもしれない、このように思うわけでありますが、私どもといたしましては、北朝鮮と日本との拉致問題を解決するということが、結果として、中国にとっても、中国の国益にも資するという状況をつくっていかなければならない、このようにも考えております。

稲田委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど来、横田早紀江さんたちの訪米の結果について明らかにされてまいりましたが、私も、この間の一連の動きの中で、拉致問題の一刻も早い解決がいよいよ求められていて、そして、その中で日本政府の役割が極めて重要になってきているということを痛感いたしております。

 前回の当委員会で麻生大臣も、極めて重要な政治文書と言われた日朝平壌宣言を基本に、北朝鮮に対して粘り強く協議を働きかけること、そして、そのためにも第二回の日朝包括協議の再開を促すことが大事になっていると思います。安倍官房長官は、対話と圧力ということで、前回の委員会でも、国際社会の理解を求めるとともに、国内において厳格な法の執行を行っていくということを強調されました。

 そこで、まず外務省に伺いたいと思います。

 国際社会の理解を求めて連携を強化していく上では国連が重要な舞台になると、先ほどもありました。昨年十二月の国連総会決議でも日本人拉致問題に言及されて、去る三月には、新たに国連人権理事会が設置をされる。そして、日本時間で本日、日本が理事国に選出されて、外務大臣も談話を出された。六月には第一回会合が開かれるということでありますが、日本政府として、国連に対してどのような働きかけを行っているか。これまでのことも含めて、端的で結構ですが、整理して、スタンスというか働きかけについて、日本の政府の国連に対する働きかけ、現状等、これまでやってきたことを答弁願えますでしょうか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 国連総会におきまして昨年十二月に北朝鮮の人権決議が採択されたのは今委員の御指摘のあったとおりですが、それ以前にも、人権委員会におきまして、北朝鮮の人権問題についての決議というのは何回か採択されております。それにつきましても、日本は、EUなどと非常に緊密に協力をして対応してきております。

 それからまた、理事会が今回できましたけれども、この六月に活動を開始するわけでございますが、国別決議というのが新たな理事会でできるかどうかという問題は今後の課題になっておりますが、仮にその決議をやるということになれば、また欧米諸国と協力をして、この問題、特に拉致問題がその決議の中に入るように活動していくということになろうかと思います。

 以上でございます。

笠井委員 続けて、外務省梅田さんに伺っていきたいと思うんですが、拉致問題解決のためには、とりわけ、近隣諸国である中国、韓国などとの連携、理解と協力が不可欠であることは言うまでもありません。累次、質疑もありました。

 それで、去る五月一日に訪韓された塩崎副大臣が、潘基文外交通商相と会談をして、拉致問題解決に向けても話し合ったということでありますが、具体的にどのような内容、やりとりがあったのか、また、それを踏まえて日韓両政府間で今後どのような連携を図っていくつもりか、その点はいかがでしょうか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 一日午後に会談が行われましたが、塩崎副大臣の方から、拉致問題に関連しまして、南北閣僚会議の実施、それから、我が国の拉致被害者御家族や脱北者の訪米を受け、今後、日韓の情報交換、それから捜査当局間の協力、韓国側のDNAの検査などにおいて具体的に協力を進めていくことを提案いたしました。

 これに対しまして、潘長官からも、既にDNAの検査については日本から協力と情報を得ており、これは非常に感謝をしています、こういう具体的な協力を通じて日韓でさらに協力を進展させていきたいと思います、本件は人道的問題であって、韓国としても協力していきたい考えである、そういった趣旨の回答がありました。

 いずれにしましても、副大臣と潘長官の間で、日韓で連携協力を強化していくということで意見の一致がありましたが、これを踏まえまして、今後具体的に、状況によって具体的な協力の中身というのは変わってくるかと思いますが、さらなる協力の具体化を進めていきたいと考えております。

笠井委員 麻生大臣、安倍官房長官に伺いたいと思います。

 日朝間の拉致問題などの諸懸案を包括的に解決して国交正常化に進もうという日朝平壌宣言の方向というのは、昨年九月に採択された六者会合での共同声明をもって、日朝二国間の合意にとどまらず、六者会合の合意という国際的な裏づけを得るに至ったというわけであります。このもとで、拉致問題での国際社会の支持と協力連携を一層強固にして、あらゆる機会を通じて力強い外交努力を尽くすということがいよいよ重要になっていると思います。先ほど来ありました。

 この間も、麻生大臣は日米外相会談でこの問題を取り上げられた。安倍官房長官は、横田さんらの訪米で、米国のみならず世界に対して拉致問題解決の重要性を訴えるメッセージが発出された、政府としては、世界各国との連携を強化して外交努力を尽くすというふうに表明をされております。私、大事なことだと思うんです。

 そこで、この間の平壌宣言、共同声明という到達点に立った上で、力強い外交的努力ということについての現時点でのそれぞれの御所見と今後の取り組み、こういうふうにやっていきたいということについて伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 拉致問題解決のためには、ただいま委員が御指摘になられましたように、国際社会との連携や協力が不可欠でございます。政府は国際社会に対し、あらゆる機会をとらえまして、拉致問題に関する我が国の立場を説明するとともに、理解と協力を求めてきております。特に、二国間での首脳会談、外相会談において、拉致問題解決の重要性について幾度にもわたりまして提起をしてきております。

 最近では、小泉総理は、今月四日のスウェーデンのパーション首相との会談において、拉致問題の解決に向けた協力を求めました。ちなみに、スウェーデンは北朝鮮と国交を持っておりまして、大使館も持っているということでございます。

 後ほど麻生大臣も答えられると思いますが、麻生大臣も、先月のポーランドのメレル外相との会談、また先般の訪米の際にも、利害関係者に我が国の立場を支持するよう要請をしてきたわけでございますし、また人権担当の齋賀大使も、人権担当大使として、各国の理解を求めるための努力を鋭意行っております。

 G8の外相会合、首脳会合や東アジア首脳会談を初めとした多国間の国際会議の場でも、拉致問題の解決の重要性に対する国際社会及び各国の理解を求めるべく努力をしております。

 昨九日の国連総会におきまして、我が国は人権理事会の理事国に選出をされました。昨年十二月の国連総会では、北朝鮮の人権状況決議が採択をされております。六月より活動を開始する人権理事会や総会の場において、北朝鮮の人権問題を一層積極的に提起をしていく考えでございます。

 また、近々開催されますサミットの場においてもしっかりと議題になるよう努力をしていきたい、このように考えております。

 また、六者協議のメンバー国につきましては、もう既に、従来からこの問題の重要性について理解を求めるべく努力をしてまいりました。

 今後とも、国際社会の理解と協力、そしてそれを力に、この問題を解決するために全力を尽くしていきたい、このように思っております。

麻生国務大臣 今、官房長官言われましたように、この種の問題を解決する、拉致問題というようなかなり、十二カ国に広まっている話ですから、そういった意味では、国際社会との連携とか協力というのは、これは絶対不可欠と思っております。したがいまして、なるべく多くの国々に同じような痛みをという感じを持っていただかないと、なかなか協力も取りつけにくいと思っております。

 今までは何となく、六者協議でも、日本と北朝鮮だけの話だろうがという話でずっと来ておりましたので、そういった意味では、今度のDNAの話にしてもアメリカ大統領との話にしても、間違いなく、六者のうち三カ国は知見を共有することになったと存じます。

 したがいまして、この種の話は、なるべく輪を広げていって、ぐっといかない限りは、とにかく国家元首が命令しちゃうような国と対応するわけですから、これは生半可なことじゃいかぬのであって、粘り強くやっていくというのが大変大事なところだと思っております。

笠井委員 終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.