衆議院

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第9号 平成18年7月10日(月曜日)

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平成十八年七月十日(月曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大前 繁雄君

   理事 近藤 基彦君 理事 水野 賢一君

   理事 宮路 和明君 理事 松木 謙公君

   理事 松原  仁君 理事 池坊 保子君

      小野寺五典君    鍵田忠兵衛君

      河井 克行君    薗浦健太郎君

      根本  匠君    葉梨 康弘君

      福井  照君    松島みどり君

      渡部  篤君    荒井  聰君

      岩國 哲人君    藤村  修君

      太田 昭宏君    笠井  亮君

      日森 文尋君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山浦 耕志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  猪俣 弘司君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  富田 善範君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (海上保安庁交通部長)  枡田 一彦君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十日

 辞任         補欠選任

  山本 明彦君     松島みどり君

  渡辺 博道君     葉梨 康弘君

  中井  洽君     藤村  修君

  西村智奈美君     岩國 哲人君

  漆原 良夫君     太田 昭宏君

  重野 安正君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  葉梨 康弘君     渡辺 博道君

  松島みどり君     山本 明彦君

  岩國 哲人君     西村智奈美君

  藤村  修君     中井  洽君

  太田 昭宏君     漆原 良夫君

  日森 文尋君     重野 安正君

    ―――――――――――――

六月十六日

 一、北朝鮮による拉致問題等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、北朝鮮をめぐる最近の状況について、政府から説明を聴取いたします。安倍内閣官房長官。

安倍国務大臣 北朝鮮をめぐる最近の状況について御報告します。

 既に御案内のとおり、米軍からの早期警戒情報を含む諸情報を総合的に勘案した結果、五日未明より、七回にわたり北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、政府としては、関係省庁が一丸となって対応に万全を期すこととしております。

 政府としては、北朝鮮による今回の弾道ミサイルの発射は、極めて憂慮すべきものであると考えております。北朝鮮は、一九九八年八月にも我が国上空を通過するテポドン一号を基礎とした弾道ミサイルの発射を行っており、今回、我が国を初め関係各国による事前の警告にもかかわらず発射を強行したことは、我が国の安全保障や国際社会の平和と安定、さらには大量破壊兵器の不拡散という観点から、重大な問題であります。これは、日朝平壌宣言にあるミサイル発射モラトリアムに違反し、六者会合の共同声明とも相入れないものであり、また、船舶、航空機の航行の安全に関する国際法上の問題でもあります。

 既に、北朝鮮に対しては、我が国として厳重に抗議し、遺憾の意を表明しました。さらに、北朝鮮がミサイル発射モラトリアムを改めて確認し、それに従った行動をとると同時に、六者会合へ早期かつ無条件に復帰することを強く求めております。

 政府としては、今回のミサイル発射に対しては、国際社会全体としての対応が極めて重要であるとの観点から、米国を初めとする関係国との連携をあらゆるレベルにおいて進めているところです。これまでのところ、米国を初め、韓国、ロシア、フランス、英国、豪州、ニュージーランド、EU等の各国政府が、今回のミサイル発射を厳しく非難する声明を発出しております。

 さらに、政府としては、国連安全保障理事会において制裁措置を含む決議案を提出し、北朝鮮のミサイル発射に関する協議を行っております。今後の議論については、現時点で予断することはできませんが、我が国としては、安保理決議の形で、国際社会としての意思が明確に表明されるよう、関係国との連携を引き続き進めていく考えです。

 今回、北朝鮮は弾道ミサイルを発射したわけでありますが、我が国と北朝鮮の間には、従来より拉致問題及び核問題という大きな問題が存在し、特に拉致問題については、北朝鮮は誠意ある対応を示してこなかったところであります。

 これらの観点を総合的に勘案し、北朝鮮に対しては毅然とした厳しい対応をとる必要があると判断し、七月五日に公表したとおり、万景峰92号の入港禁止や人の移動の制限、また、北朝鮮の対応を含めた今後の動向を見つつさらなる措置につき検討するなどの措置をとることを決定しました。

 このほか、拉致問題に関する最近の動きといたしましては、南北離散家族再会事業の一環として、六月二十八日から三十日までの間、横田めぐみさんの夫とされる金英男氏と御家族が北朝鮮の金剛山において再会しました。その後、同氏が記者会見を行い、横田めぐみさんをめぐる事実関係に関しても証言を行いましたが、その内容はこれまでの北朝鮮側の説明と同様であり、我が方が示した疑問点や矛盾点を解消するものではありませんでした。政府としては、引き続き拉致被害者が全員生存しているとの前提に立って、すべての拉致被害者の方々の生還を求めていく考えです。そもそも、北朝鮮においては自分の考えをそのまま述べるということはできない、そういう環境の中での証言であるということをまず念頭に置かなければいけないと考えます。

 政府としては、今後とも、対話と圧力という一貫した考え方のもと、北朝鮮側が誠意ある対応をとるよう求めていく考えであり、北朝鮮の対応を含めた今後の動向を見つつさらなる措置につき検討することとしており、関係省庁が一丸となって取り組んでまいりたいと思います。

 委員長及び委員各位の御協力をよろしくお願いいたします。

平沢委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山浦耕志君、内閣官房内閣参事官猪俣弘司君、防衛庁防衛局長大古和雄君、法務省人権擁護局長富田善範君、法務省入国管理局長稲見敏夫君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省国際法局長小松一郎君、財務省大臣官房審議官青山幸恭君、海上保安庁交通部長枡田一彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。

 今回の北朝鮮によるミサイル発射というのは、北朝鮮という国がいかに国際社会の平和と安全に対する脅威であるかということを改めて証明した事案だというふうにも思うわけであります。しかも、拉致問題は依然として解決をしていない。こうした状況の中で、経済制裁を発動するというのは私は当然だというふうに思っておりますし、政府が先日、万景峰号の入港を禁止したということを評価したいというふうに思います。

 さて、経済制裁というときに、特定船舶入港禁止法に基づく船舶の入港禁止というものもありますけれども、もう一方で、外為法に基づく、例えば送金の禁止とか、もしくは貿易の制限というのもあるわけですけれども、官房長官に伺いますが、外為法に基づくところの経済制裁の発動は考えていらっしゃいますでしょうか。

安倍国務大臣 政府としては、今回のミサイル発射は我が国の平和と安全への脅威であるというふうに認識をしております。今回の事案を初めとする我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、諸般の事情を総合的に勘案して、今回発表した措置を決定したものでございます。

 今後の対応につきましては、安保理での議論、国際社会での議論や、また、ミサイル問題を初めとする今後の北朝鮮の対応ぶりを総合的に勘案して、必要に応じさらなる措置について判断をしていきたいというふうに考えております。

水野委員 国連安保理でいろいろと議論がされるでしょうけれども、もちろん、国連安保理決議というものがあればそれにこしたことはないわけです。しかしながら、二年前に改正をされた外為法によって、安保理決議がなくても、必要があれば我が国の単独の判断で経済制裁の発動というのは可能になったわけでございます。そういう点から、安保理決議があればこれはもちろんのこと、それがなくても毅然とした態度というものを、北朝鮮に対し、物や金の流れをストップする、そうしたことを前向きに検討していただきたい、そのように思っております。

 さて、万景峰号の入港禁止について伺いますけれども、入港禁止を発動するときには閣議決定を経なければいけないというふうに法律に書いてあるわけですし、今回も持ち回り閣議が行われたわけでございます。その閣議決定の中に入港禁止の理由も明示しなきゃいけないというふうに法律にあるわけですね。

 それで、お手元の資料に配らせていただいた官報がございますけれども、内閣告示第三号の中に「入港禁止の理由」というのも確かに官報に載ってございます。これを見ると、これはちょっと事実関係を確認したいので参考人で結構なんですけれども、ミサイル発射というのは入港禁止の理由に書いてありますけれども、拉致問題が触れられていないんじゃないかと思いますが、参考人、いかがでしょうか。

佐々江政府参考人 先生が今おっしゃられましたとおり、拉致問題という言葉自身はこの中に入ってはおりませんが、最後の方に、「今回の事案を始めとする我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、我が国の平和及び安全を維持するため特に必要があると認め、」「本邦の港への入港を禁止することとする。」といったように書いておりまして、当然のことながら、この中には拉致問題が判断材料の一つとして含まれているというふうに考えております。

水野委員 今、明示的に拉致問題は書いていない、そして、「我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、」の中で読み込めるというようなお話なんでしょうけれども、官房長官に伺いますけれども、拉致問題も今回の万景峰号入港禁止の制裁の理由に含まれるというふうに考えてよろしいですか。

安倍国務大臣 今回の制裁措置につきましては、閣僚の懇談会でも私が述べているとおり、また、累次の記者会見でも述べておりますように、今回のミサイル発射を契機として制裁を加えたわけでございますが、しかし、この制裁をするという決定に当たりましては、拉致問題において誠意ある対応をとってこなかった、そのことも当然総合的に勘案した中において制裁を決定したということでございます。

水野委員 私がなぜこの問題を質問しているかというと、入港禁止の期間というのは半年間なわけですね。半年後にこれを延長するかどうかということを判断しなきゃいけないわけでございます。これは、ミサイル問題だけが今回の入港禁止の理由だとすれば、半年後に、一応北朝鮮もこのミサイルの発射というものは撃ち方やめというか中止をした、しかし、拉致問題は膠着状態のまま全く誠意ある対応が見られない、こういうことも十分あり得るわけですよね。そのときに、ミサイルだけが理由というのでは、ミサイルが撃ち方やめになったから解除しようというのでは、拉致被害者の家族の方々とか多くの国民の理解というのはとても得られないと思うんですね。

 半年後のことを質問するというのもなかなか難しいでしょうけれども、官房長官は半年後はさらにか要職についていらっしゃる可能性も非常に高いと思います。ミサイルの発射は終了したけれども拉致問題は全然進展していない、誠意ある対応が見られないというようなときには、安易に制裁を解除すべきではないというふうに考えますけれども、官房長官、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 先ほど答弁をいたしましたように、今回私どもが制裁を発動いたしましたのは、まさにこのミサイルの事案を契機としたわけでございますが、その制裁については、先ほど申し上げましたように、拉致問題に対して北朝鮮が誠意ある対応をとってこなかったということでございます。

 そこで、六カ月後についてでございますが、その際、このミサイル問題、また拉致問題、核問題等々を総合的に勘案して、解除すべきかどうかを判断していくことになるというふうに思うわけでございます。当然、六者会合においての対応、もちろん、拉致問題等を含む日朝の協議に誠意ある対応を示してくるかどうか、そうしたことも当然勘案してそのときの政府が判断することになる、このように思います。

水野委員 さて、引き続き万景峰号のことについてお聞きしたいと思いますけれども、万景峰号だけを今回入港禁止にしたわけですね。ほかの北朝鮮船籍の船舶というものの入港は今回は対象にしていないわけです。

 国土交通省に伺いますが、平成十七年の北朝鮮籍を持っている船の日本の港への入港の数と、そのうち万景峰号の数というものはそれぞれ何隻ずつでしょうか。

枡田政府参考人 平成十七年におきます北朝鮮籍船舶の我が国特定港への入港実績につきましては、七百六十九隻であります。このうち万景峰92号の入港回数につきましては、十四回でございます。

水野委員 今のお話を伺いますと、七百六十九分の十四隻だけが対象になったわけですね。パーセンテージでいうと、二%以下の船が対象になったというふうに言っていいと思います。逆に言うと、それ以外は野放しのままでございます。

 今は入港の数をお聞きしましたけれども、では、今度は財務省に伺いますが、対北朝鮮貿易額に占める万景峰号の占めている割合というのはどのぐらいでございましょうか。平成十七年の数字で結構です。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国と北朝鮮との間の貿易に占める万景峰号によるものの割合につきましては、万景峰号のみに係ります貿易統計というのは集計しておりませんが、新潟港におきます対北朝鮮の輸出量がこれにほぼ近い数字になっておるわけであります。

 この数字を使って申し上げますと、新潟港におきます平成十七年の対北朝鮮の輸出入額の合計でございますが、十一億五千二百万円。全国ベースで申し上げますと二百十四億一千九百万円でございますので、新潟港が占める割合でいいますと五・四%という数字になってございます。

 以上でございます。

水野委員 貿易額で見ると、万景峰号が占める割合が五%台という、逆に言えば九五%ぐらいが手つかずになっているというふうにも言えると思います。そういう点で、万景峰号という船舶だけに限ると、抜け道が多いという議論も当然あるわけですね。

 私は、それだけじゃなくて、もう一つ、筋からしても、個別の船舶、万景峰号だけを入港禁止にするというのは、緊急避難的な措置としてこれは理解しますよ、理解して支持はしますけれども、実を言うと、個別の特定の船舶だけをねらい撃ちにするというのはいま一つ筋が通らないのかなというふうにも思っているわけであります。

 何を言いたいかというと、万景峰号だけでなく、すべての北朝鮮船舶をとめる方が筋がいいというふうに思っております。なぜならば、個人の場合は、個人に人格があるわけですから、つまり、好ましからざる人物の入国を拒否するということはわかるわけであります。しかし、船舶というのは、別に船舶に人格とかそういうものがあるわけじゃないわけですね。

 つまり、船が悪さをするのではなくて、背後にある国家が悪さをしているわけですから、船の怪しさに着目して特定の船をとめるというよりは、国家の怪しさ、国家が犯罪行為を行っているわけですから、特定の船をねらい撃ちするというよりも、その国の船舶すべてをとめるということの方が、私は筋からしてもその方が通っているというふうに思うわけですけれども、官房長官、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 今回、我々が発動した制裁の根拠となる法律につきましては、水野先生を初め、勇気ある議員の皆様に議員立法でつくっていただいたわけであります。その法律がなければ、今回の事案に対しても、ほとんど私ども、こうした制裁措置をとることができなかったという意味においては、あのときに大きな決断をしたことは間違っていなかった、こんなように改めて思うわけでございます。

 そのときにも水野先生とも私ども議論をしたわけでありますが、万景峰号というのはまさにある意味でのシンボルにもなっているわけでありまして、万景峰92号は、我が国と北朝鮮との間に就航している唯一の貨客船であり、北朝鮮籍を有し、これまで我が国と北朝鮮との間の人的、物的及び資金的な往来において重要かつ象徴的な役割を果たしてまいりました。また、過去、ミサイル関連機材等の安全保障関連物資の不正輸出の手段や、北朝鮮工作員に対する指示、命令の経路として利用された経緯があるなど、北朝鮮当局との強い関係が指摘をされています。

 以上を踏まえ、同船の我が国の港への入港を禁止することは、北朝鮮の対応を促すための手段として有効であると判断したものであります。

 なお、同船以外の北朝鮮の船舶の我が国への入港については従来どおりの扱いとなります。

 今後の対応については、先ほど申し上げましたように、今後の北朝鮮の対応を見て判断していきたい、場合によってはさらなる措置もとっていかなければならない、このように考えております。

水野委員 私は、先ほど申し上げたように、好ましからざる船があるわけじゃなくて、好ましからざる国があるわけですから、その点は、全部の北朝鮮船というものを対象にするようなことを前向きに検討していただきたいというふうに思っております。

 外務副大臣にお伺いをいたします。

 日本が経済制裁をするときによく言われるのが、日本だけでやっても意味がないとか、もしくは、一方で中国や韓国が支援をしてしまうと抜け道になってしまう、そういうような議論というのがよくあるわけですね。

 今、国連の安保理でもいろいろ議論がされているわけでしょうけれども、特に中国の姿勢などは、日本がむちを、つまりあめとむちという言い方をするならば、むちを加えるのに反対というか慎重というか、それにとどまらず、むしろ支援をするということは、むちを加えるどころかあめを与えているようなところさえあるわけですね。このあめを与える、すなわち北を支援するというのは、日本が今圧力を加えようとしているときに、その一方であめを与える国があるというのは大きい問題だと思いまして、そういう動きというのは大いに問題視をしていくべきだ、毅然たる態度でそういうことに対しては臨むべきだというふうに思いますけれども、外務副大臣、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 水野先生御指摘のように、日本と北朝鮮との間の貿易が昨今は減ってきている中にあって、中国並びに韓国との北朝鮮の貿易量というのが最近飛躍的にふえているというのは御案内のとおりでございます。

 中国の北朝鮮に対する支援の規模とか内容というのは、そうはっきりは明らかになっているわけではありませんけれども、従来より、食糧とかエネルギーとか、こういった分野を中心に一定規模の支援が行われてきている一方で、また韓国についても、北朝鮮に対しては、最近数年間で、五十万トンの食糧支援及び三十万トン前後の肥料支援などが行われているということでございます。

 一方で、中国及び韓国が今般のミサイル発射を受けて北朝鮮に対する支援に関しいかなる措置をとるかというのは、報道ベースでは幾つか出ておりますけれども、まだはっきりしているわけではないわけであって、我々としては、両国のこれからの行動については注意深く見ていかなければならないというふうに見ております。

 いずれにしても、今お話しのように、経済制裁の趣旨が、抜け穴があるような状態の中でやるというのはよくないわけでありまして、北朝鮮に対する支援に関しては、ただ寛大に支援を行うということではなくて、北朝鮮から国際社会の責任ある一員としての誠意ある態度をどうやって引き出すのかという観点をきちっと押さえた上でやっていくことが大事で、事あるごとに日本からも、中国、韓国にはその点についてのこちらの懸念については伝えているところでございます。

水野委員 時間ですので、終わります。

平沢委員長 次に、葉梨康弘君。

葉梨委員 こんにちは。自民党の葉梨康弘でございます。

 私は当委員会の正規の委員ではございませんけれども、自民党内において、北朝鮮の人権法作成チームの主査をさせていただいたこと、それから六月の十二、十三日、自民党の拉致対策本部の訪韓団の一員として韓国の外務大臣にお会いしてきたこと、これを踏まえて、今、特定船舶の入港禁止の法案策定に携わられた水野委員からの質問がありましたけれども、これを受けて、北朝鮮が国際の平和に対する脅威であるという認識が今高まっている中で、やはり人権に対する脅威であるということを国際的な認識としていかなければならない、そういう立場から御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、官房長官にお伺いしたいと思います。

 先ほど、政府の報告から、金英男氏の会見についての見解がございました。これは、私自身も、北朝鮮が明らかな世論としての日韓分断をねらったものと考えられるわけなんですけれども、政府として、金英男氏の発言、これは対韓プレス、対日プレス、微妙にニュアンスが違うようでございます。具体的にどのような矛盾点、不審点があると考えられているのか。

 また、訪韓団として訪韓いたしましたときに、韓国政府に対しても、金英男氏と御家族との面会状況、今後の面会予定等について、どんな情報提供、情報提供してくださいということを私どももお願いしてまいった経緯がございます。韓国政府からどのような情報提供を受けているのか。官房長官から見解を承りたいと思います。

安倍国務大臣 今回の金英男氏とそのお母様を初め御家族との再会については、日韓が協力をしてDNA鑑定をした結果、真実として浮かび上がってきたというふうに思います。

 私も、羅鍾一大使初め、韓国側と昨年から情報交換等もし、またいろいろな依頼もしてきた結果、DNA鑑定においての協力ができた、このように思うわけでございますが、北朝鮮の意図が日韓の分断ということであるにしろないにしろ、私どもといたしましては、横田めぐみさんが死亡したとの北朝鮮側の主張は受け入れることはできないわけであります。

 日本と韓国では置かれている立場やアプローチは異なる面もあるわけでありますが、ただいま委員が御指摘になったように、拉致問題は人権、人道問題であるとの観点に立って、問題の解決に引き続き努力をしていきたいと思います。

 金英男氏の発言に対する矛盾点、不審点としては、次のような点がございます。

 まず、金英男氏本人が北朝鮮へ入域した経緯について、ボートで漂流していた際に北朝鮮の船に助けられ南浦港に到着した旨説明し、拉致ではないと強調している点は、韓国政府の従来の主張と矛盾しているものと考えます。

 そして、二番目には、幼少のころに階段から転落して頭を打って以降脳に疾患を患っていたとの説明は今までにないものでありますが、これは、めぐみさんが子供のころに階段から転落し頭を打ったことはあるものの、診察の結果特段の問題はなかったとの横田御夫妻の説明と矛盾をしております。

 韓国政府から金英男氏とその御家族の面会状況についても情報提供は受けておりますが、外交上のやりとりに関するものであり、その内容についての公表は差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、今後の面会予定として、金英男氏のお姉さんである金英子氏が二日の記者会見において、北朝鮮が招待すれば八月に北朝鮮に行って再び会いたい旨述べているというふうに承知をいたしております。

葉梨委員 官房長官も記者会見で述べられておりますけれども、北朝鮮という国内においての記者会見でございますし、また、金英男氏の今の御職業というのもございますので、どこまで信憑性があるかという問題はやはり当然あるだろうというふうに思います。

 そして、水野委員からの先ほどの質問で、今回の経済制裁措置というのが、単なるミサイルだけではなくて、拉致問題もその視野に入れた形で経済制裁を行ったという御答弁が官房長官からございました。ところが、私も見てみますと、最近の北朝鮮、日本ではなくて北朝鮮自身の当局の立場というのが、これは拉致問題とミサイル問題を絡めた形で動いているというのは明らかじゃないかなというふうに思います。

 といいますのは、七月の四日に日本人記者団を平壌に招待して、そして翌日の朝にテポドンを発射し、そしてその後、五日ですけれども、まさにこちらがミサイル問題でわんわん騒いでいるときに招待所、火葬場を記者団に見学させ、そして六日には今の金英男氏との会見を日本人プレスに対してセットし、そして七日に、官房長官も大変記者会見でも反発されましたけれども、宋日昊日朝交渉大使、これの会見を日本人のプレスに対してセットし、そして七日にはめぐみさんが入院されていたとされる病院を公開する。

 そして、あわせて、今我々が、ミサイル問題として、外務省の方はいろいろとやられている、この動きとまさに絡める形で日本人記者団を平壌に呼んで、そして、拉致問題はいかにも解決したんだ、解決したんだということを主張している。それはまさに北朝鮮当局が拉致問題とミサイル問題をあわせて考えているのかなというような印象を私自身は持っております。

 そこで、宋日昊大使の発言、声明に対しては、これは北朝鮮の外務報道官の声明とほとんど一緒なわけですけれども、官房長官も記者会見で反発されたところなんですけれども、このような、拉致問題とそれからミサイル問題、これを北朝鮮当局が絡めて考えるという姿勢、これに対しても我々としてはしっかりした対応をとっていく必要があるだろうというふうに思います。

 特に、ミサイル問題についての強硬な北朝鮮の声明については、やはり国際社会を挙げてしっかり圧力を強化していかなきゃいけない。それから、拉致問題について、既に解決済みである、今になって日本人記者団に対して何か情報公開をしているポーズをとるという姿勢については、従来の、これまでの長い交渉の中でいかに北朝鮮当局が不誠実な対応をとってきたかということを、日本国民だけではなくて中国、韓国の政府にもしっかりと伝えていく、そして国際社会にも訴えていく、そういったような必要があると思います。

 このような最近の北朝鮮当局の動きについての官房長官としての御見解を承りたいと思います。

安倍国務大臣 拉致問題について言えば、金英男氏にめぐみさんが死亡をしているということを裏づけるかのごとくの証言をさせているわけでございますが、北朝鮮にいる限りにおいては真実を話すことはできないということは、日本に帰国を果たした拉致被害者の方々が一様に述べておられることでございます。つまり、自由な意思に基づく発言はできないということでありました。そこはやはり忘れてはならないんだろう、こう思うわけでございます。

 その中で、我々、この拉致問題も極めて重要な問題であり、また今般のミサイル問題も許すことのできない挑発である、こう考えているわけでございます。こうした一連の北朝鮮の動きに対しましては、しっかりと、国際社会による一致協力した連携による圧力も必要である、こう考えております。

 拉致問題につきましては、このミサイル問題が起こる以前から、例えばサミットの場においてしっかりと議題として議論をしていく、あるいは国連の人権理事会においても提議をしていく、また国際社会に対して積極的に、この問題の深刻さ、人権問題からいかに重要な問題であるかということを日本が発信をしていくということを進めてきているわけでございますが、今回、このミサイルの発射事案において、安保理においての議論ということに進んできたわけでございます。

 私どもといたしましては、対話と圧力の姿勢で今後とも臨んでいくわけでありますが、この圧力については、国際社会の圧力、これも大きな力になるだろう、そのための努力をこれからも重ねていきたい、こう考えております。

葉梨委員 今、国際社会というような問題がございましたが、六月の十三日に私どもが潘基文外務大臣とお会いしたときも、当時はまだミサイルの話になっていなかったわけですけれども、人道問題について日本やアメリカが北朝鮮に対して強い態度をとるのは理解できる、しかしながら、韓国は北朝鮮に対して支援を行うことによって、圧力と支援が補完する形で北朝鮮における人権状況が改善できるんだというようなことを外務大臣が言われておりまして、私ども、大変温度差を感じたことを覚えております。

 やはり国際社会として、今官房長官がおっしゃられたような、人権問題についても対話と圧力という姿勢で北朝鮮の人権状況にかかわっていくんだということを世界的なコンセンサスにしていくことが、韓国等の態度についても、現在の外交姿勢についても影響力を持ってくるようなことになるんじゃないかと思います。

 したがいまして、こういった人権問題について、対話と圧力、これを国際的なコンセンサスというふうな形にしていくための御努力について、外務副大臣から御見解を承りたいと思います。

塩崎副大臣 今回のミサイルの一件で、太陽政策のあり方が問われるとともに、中国、ロシアのこれまでのやり方がどうだったんだろうかということが厳しく問われているんだろうと思います。

 拉致問題も同じであって、今官房長官から答弁がありましたように、この問題についても、北朝鮮の人権問題の解決のためにはやはり国際的な連携と協力が必ずなければいけないということで、これまでも、今お話があったように、いろいろな場で政府としては国際的な訴えかけをしてきました。

 例えば、先般の小泉総理の訪米のときには、横田めぐみさんの関係でブッシュさんが兄弟に会っていただいたりとか、お母さんに会っていただいたりというようなことを受けて、ブッシュ大統領にみずから総理が訴えた。それから、麻生大臣もこの間、外相会談、G8がございましたけれども、このときにも議長声明の中に、拉致を含む北朝鮮の人道上の問題に対する国際社会の懸念に北朝鮮が対応することを求めるメッセージをきちっと盛り込むことになりました。

 それから、今お話がありました人権理事会がありましたけれども、山中政務官の方から、第一回の人権理事会、六月にございましたけれども、国際的な連携の強化を呼びかけるとともに、去年の十二月に国連総会で、我が国が各国と協力しながら北朝鮮の人権状況決議を採択まで持っていったということもございます。

 今後とも、国際社会との連携と協力を図りながら、一日も早い問題の解決に向けて最大限努力をしていくつもりでございます。

葉梨委員 それでは、最後に質問いたします。

 ミサイル問題で窮地に陥った北朝鮮が、今申し上げましたように、この拉致問題についていろいろとアクションを起こすことによって日韓世論の分断を図っていくということは容易に想像ができることです。これに対しては、一つには日本国民自身がこの拉致問題を風化させないこと、さらには、拉致の被害者を国民にしている諸外国に対してもいろいろな訴えかけをかけて国際社会の世論を喚起していくこと、これが大事だと思います。

 したがいまして、この北朝鮮人権法、この間のこの委員会でも通していただきましたけれども、この運用に支障なきを期していただくこと、それから関係各国に対する訴えかけ、これをしっかりやっていただくこと、これを最後に三ッ林法務政務官と塩崎副大臣から一言ずつ御見解を承りたいと思います。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 北朝鮮当局による人権侵害問題につきまして、国民の認識を深めますとともに、国民世論の啓発を図るため、北朝鮮人権侵害問題啓発週間を中心としまして、ポスターの作成、講演会の開催など、各種啓発活動に努めてまいります。また、関係各省庁とも連携を密にして取り組みを推進していきたいと思っております。

塩崎副大臣 今、北朝鮮による拉致の被害国というのは約十二カ国あるというふうに私たちは認識をしているわけでありまして、これまでも、日韓の間では五月の外相会談で、それからタイとの間では、五月にカンタティー外務大臣が来ましたけれども、そのときに官房長官と麻生外務大臣も話し合いを個別に持ちましたし、それからレバノンとの間では、政府関係者等との間で拉致被害者の消息に関する照会などを行っております。

 一方で、安倍官房長官とそれから鈴木官房副長官が、先月、拉致被害者が存在する可能性のある国も含めた関係十九カ国の各国駐日大使との意見交換会も行われてまいりました。

 したがって、今葉梨議員からお話ありましたように、北朝鮮側に直接私どもが働きかけるだけではなくて、国際社会からの一致した強いメッセージを出すということが大事であろうと思います。そして、先ほどお話のありました、議員立法で成立いたしております北朝鮮人権侵害問題対処法、これにあります特に年次報告については、きちっと政府としても前向きに対応していきたい、このように考えております。

葉梨委員 北朝鮮人権侵害問題対処法は、外務省、法務省だけではなくて、関係省庁が多岐にまたがる問題でございます。しっかりと連携をとって運用、それからいい施策を進めていただきたいということをお願い申し上げまして、私からの質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 弾道ミサイルについて安倍官房長官にお伺いいたします前に、塩崎外務副大臣に一つだけ質問させていただきます。

 六月二十九日に拉致被害者横田めぐみさんの夫である金英男氏が北朝鮮で記者会見されました。その間にいろいろ矛盾点が出てきて、全くこれは事実ではないというふうには思っておりますが、ただ、一つだけ外務省に確認をしたいと思いますのは、遺骨を渡したときに外務省にそれは公表しないとの確認書をとったのだというふうに言っておりました。ほかの問題は、確かに、小さいときにけがをしてその頭のけがで病気になったとか、あるいは遺骨の中に他人のが入ったんだというようなことは事実ではないと思いますけれども、これは外務省が絡んでいる問題ですので、このような事実があったのかなかったのか。もしなかったならば、外務省はきちんとそれについて反論をすべきであるというふうに考えます。

 また、外交は水面下でいろいろと行っていくことも多いと思います。これがもし水面下でそういうことの話し合いがあったのならば、それはそれで国民はこのことに対しては注視しておりますから、きちんとやはり説明をすべきではないかというふうに考えておりますので、そのことについてお伺いしたいと存じます。

塩崎副大臣 平成十六年十一月の第三回日朝実務者協議、この際に、今、金英男という名前になっておりますけれども、キム・チョルジュンと当時は言っておりましたが、このキム・チョルジュン氏とのやりとりの中でこのようなことがありました。

 先方、キム・チョルジュン氏から、遺骨については横田めぐみさんの御両親に直接渡してもらいたい、そして、政府より、対外公表しない、さらに、これを書面に明示しない限りは本件骨片を引き渡さない旨、先方が強く要求をいたしました。これに対して外務省のサイドで、拉致問題の真相究明のためできる限り多くの物的証拠を現地にて収集すべきという基本的な立場から、本件の骨片は横田さん御家族にお渡しをし、基本的には公表しないという我が方の考え方をキム・チョルジュン氏に伝えたことは事実でございます。

 ただ、その後に、一行、薮中氏を初め外務省の代表が平壌滞在中に、北朝鮮側の外務省関係者に対しまして、我が方より、本件骨片については横田さん御家族にお渡しをするということにするけれども、御家族の意向を踏まえて対外公表する可能性があることを明言し、北朝鮮側もこれに異を唱えなかった、こういう経緯がございました。そこで、代表団の帰国後、日本に戻ってきた後、横田さん御家族の御了解を得て、政府部内における検討を経た上でこの事実を公表したものでございます。

池坊委員 わかりました。

 それでは、安倍官房長官に弾道ミサイルについてお伺いしたいと思います。

 小泉総理は一貫して、弾道ミサイルが発射されました後も、対話と圧力ということをおっしゃっていられます。でも、私は、結論から申し上げると、対話と圧力を並行して行っていくときはもう過ぎたのではないかというふうに思っております。圧力というと、力のないものに理不尽に力を与えるのが圧力ですが、理不尽なのは私たちじゃなくて相手方なんですね。それに対して、異常な相手方に対して、正常な関係に戻すための正常な行為を私たちは積極的にするべきではないかというふうに思っているわけです。

 共同通信の調査によれば、八〇%の国民が何らかの圧力をするべきではないかと賛意を示しております。国民は不安と危機感を抱いております。こういう状況の中にあってどのような対話と圧力の展望をお持ちでいらっしゃるのか。リーダーというのはやはり国民の不安や危機感を払拭する毅然とした姿勢で臨まなければいけないと思いますので、その点について政府の御見解を安倍官房長官にお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 今回のミサイル発射に対しまして、日本として制裁を決定いたしたわけでございます。拉致の問題につきましても当然勘案をした結果であるわけでありますが、我々、この拉致問題を含め、核問題、ミサイル問題、こうした問題を解決するために対話と圧力の姿勢で対応してまいりました。

 対話をしなければ最終的な解決ができない、これは当然のことでありますが、残念ながら北朝鮮が誠意ある対応を示さない、あるいは正常な対話を行わないということであれば、そう促すべく圧力をかけざるを得ないという中において、先ほど来答弁させていただいていますように、国際社会においての圧力を高めていくための努力を行ってまいりました。また、現行法制の中で、法の厳格な執行という形での圧力もかけてきているわけでございます。

 いわゆる法にのっとる経済制裁等の圧力は最終的な圧力、こう考えてきたわけでありますが、先般のミサイル発射に際しまして、我々は、万景峰号の入港を禁止する、あるいはまた日本にいる北朝鮮の国会議員の再入国を認めないという措置を行うことといたしたわけでございます。

 今後、こうした国際社会の厳しい声また日本の対応に北朝鮮がどうこたえていくか見ながら、また国連安保理等国際社会の動きや北朝鮮の対応ぶりを総合的に勘案しながら、見ながら、今後の、場合によってはさらなる措置について判断をしていきたい、このように思っております。

池坊委員 対話と圧力、言葉としては大変いいと思いますけれども、どのような対話がなされたのか、そしてその対話の結果どのようないいことがあったかというこの結果を見ますと、今や対話なんか何にも意味がないんじゃないか、この言葉がむなしく私は響くと思いますので、その辺はぜひお考えいただきたいというふうに思っております。

 先ほども出ましたけれども、北朝鮮船舶の全面入港禁止が今こそ必要なんじゃないかというふうに思います。安倍官房長官は、北朝鮮の対応を見て総合的に勘案するとおっしゃいました。確かに、先ほどおっしゃいましたように、万景峰号は北朝鮮のシンボリックな船ではあります。シンボリックな船だからこれだけ入港を禁止するということは、私たちがしている制裁はシンボリックなことのみであって、何か大したことないんだなと。きめ細やかに、もっともっと全体にわたって制裁をするということでなければ、私は余り意味がないんではないかというふうに思っております。

 七月五日、政府は、我が国の当面の対応ということで九項目を発表されました。特定船舶入港禁止特別措置法というのがあるわけですから、これは私は、すべての船、先ほども自民党の方が国の問題だとおっしゃいました。これは国と国の問題です。ですから、私は、大きい船であろうが小さい船であろうが、漁船であろうが貨物船であろうが、すべての北朝鮮の国旗を掲げている、すべての北朝鮮に籍を置く船は入港を禁止すべきというふうに考えておりますので、その辺については先ほども御答弁が多少はございましたが、お伺いしたいと存じます。

安倍国務大臣 今回、万景峰号を入港禁止にするという措置をとったわけでございます。こうした措置ができるのも、先ほど申し上げましたように、議員立法においてこうした制裁を可能にする法律が成立したからでございます。

 この法案を出すか出さないかというときにも、いろいろな議論がございました。当時は、五人の拉致被害者は日本に帰国を果たしていたわけでありますが、八人の御家族はまだ北朝鮮に残されたままでありました。こうした法案を提出することによって、こうした法案を審議することによって、また国会で可決することによってむしろ家族の帰国が遠のくのではないか、一切対話ができなくなるのではないか、こういう声もあったわけでございますが、しかし、その中であえて、ある意味では戦略的にこの法案の審議を行い、さらに通過という方向に向かっていったわけであります。

 その中で、北朝鮮は小泉総理の訪朝を受け入れ、結果として八人の方々は日本に帰国することができたというふうに思うわけであります。これこそが、まさに対話と圧力のコンビネーションによる外交的な勝利ではなかったか、こう思うわけでございます。

 そうした中で、この万景峰号をとめるということ自体も、これは、長い間拉致の問題にかかわってきた方々にとっては、ある意味では、何とかそれはとめてもらえないだろうか、目の前でこのシンボルである船が堂々と往来するのは、拉致問題を横に置いてそういう現実があるということは耐えられない、そういうお話を私も随分承ってきたわけでありますが、今般、まさに今まで拉致問題に対して誠意ある対応をとってこなかったということも勘案しながら、今回のミサイル発射の事案を契機として制裁を加えたわけでございますが、今までのかつての政府の姿勢からすれば、これは思い切った制裁措置であると言える、このように思うわけでございます。

 今後、さらにほかの船舶に対して同じような措置をするか、あるいは物や金の流れをどうするかということについては、我々はあらゆる選択肢を持っているということでございます。今後、国際社会での議論、安保理での議論の動きを見ながら、また、北朝鮮がどう対応してくるかということにおいて追加的な措置を検討していきたいというふうに考えております。

池坊委員 対話が成功し継続していったならば、なぜテポドンは発射されたのだろうか。発射されたということは、対話がもう終わった、途切れたということではないのか。だとしたら、次のことを私たちは考えなければいけないのではないかというふうに私は考えております。

 先ほどもちょっと質問が出ておりましたけれども、対北朝鮮制裁関連法案は特定船舶入港禁止特別措置法だけではございません。改正外国為替法もございます。私、毎回毎回この委員会で質問させていただいておりますけれども、これを発動する必要性があるのではないかというふうに私は考えております。

 それで、一国だけではだめだよ、大した効果がないのではないかとおっしゃる方もございます。でも、してみなければわからないし、私たちが今必要なことは、堅実な積み重ねが必要なんだというふうに思っております。北朝鮮と取引のあったマカオの銀行のバンコ・デルタ・アジアに対しても、マネーロンダリングに関与したといってアメリカの金融機関が取引禁止を命じました。その結果、北朝鮮の政権中枢に大きな打撃を与えたことは私たちの知るところです。そして、それによって北朝鮮は大変困っているからこそ、六者協議への出席を制裁解除の取引材料にしているんだと思うんですね。現実にこれは効果が上がっているんです。

 ですから、これはセットとしてやはりやらなければいけないことではないかと私は思うんですが、この発動を見合わせたというのはどのようなお考えでなさったかをお聞かせいただきたいと思います。

安倍国務大臣 経済制裁において、またこうした制裁措置においては、まず国の意思をはっきり示すという意義があると思います。今回、そういう意味におきまして、このミサイル発射に対する、そしてまた、今までの北朝鮮の拉致問題等々をめぐる対応について日本はしっかりとはっきりと国家の意思を示したということだ、こう考えております。

 それとまた、いわば制裁と効果の話でございますが、私は、制裁には効果があるという主張をずっとしてきた一人でございます。経済制裁においては、かつての南アフリカのアパルトヘイト政策、あるいはリビアの核をめぐる政策を変えることにつながったのは、いわばこうした制裁であろう、このように思うわけでございますし、また、いわば北朝鮮政府の中枢に流れていくお金であるとすれば、これは、たとえ額がそれほど大きな額でなくても、当然大きな効果があると考えるべきではないか、私もそのように述べてきたところでございます。

 また、貿易量において、それは数%と言う人がいるわけでございますが、世界との貿易量が相当大きな額になっている国であれば、数%落ちたところで大した問題ではないと思うわけでありますが、しかし、もうまさにぎりぎりの経済の状況の中で、さらにはがれ落ちていく額が数%であったとしても、それは、経済に与える影響、政権に与える影響は相当大きいと考えるべきではないだろうか、こう思うわけでございます。

 経済制裁、余り効果がないと言う人は、また、そういう人のほとんどは、経済制裁に反対の人が大体そういう議論をしているのではないかというふうに私は推察をするわけでありますが、いずれにいたしましても、私ども、今回の制裁措置が今の段階では適切であるという判断をいたしております。そして今後、北朝鮮の対応を見ながら、さらなる措置について検討していきたい、このように思っております。

池坊委員 安倍官房長官の大変心強い御見解を伺いまして、政治家として、そして国民の一人として、ちょっと安心いたしました。

 国民は今不安を抱いております。危機感を持っているんです。国の第一義的になすべきことは、国民のそういう不安を払拭することだと思います。何もしないで手をこまねいて見ているというようなことであっては、私は国民の信頼を得ることはできないと思いますので、どうかこれに対して毅然とした対処をしていただきたいと願って、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 今回、北朝鮮がミサイルを発射したということを受けまして、経済制裁、万景峰の入港制限というものが行われたわけでありまして、私は、これは日本の外交史上、恐らく後世において、大きな評価と、また、あのときに日本の外交は変わったという転換点になるのではないか、このように思っております。

 また、国連において、安保理決議において、日本が、拘束力というか、場合によっては軍事的なものも含む、こういった制裁案を出している、妥協しないで出しているという姿は、従来の日本外交になかった骨太のイメージを与えるものであり、私自身はそれを評価したいと思っておりますが、幾つかそうした中で安倍官房長官に質問したいと思います。

 一つは、今回、経済制裁を科すということで万景峰の入港制限をしたわけであります。先ほどのお話の中で、その理由として拉致も入っているということを官房長官はおっしゃったわけであります。私は、逆に言えば、拉致問題に関して進展なくして万景峰が入港制限を解かれるということはあり得ない、このことについて明確に答弁をいただきたい。

安倍国務大臣 今回の制裁発動について言えば、先ほど申し上げましたように、北朝鮮のミサイル発射を契機として制裁をかけたわけでございますが、しかし、それは今まで拉致の問題について誠意ある対応をとってこなかったということも勘案して制裁をしたのでございます。

 六カ月間の入港禁止を科したわけでございますが、今後、六カ月間の中において、このミサイルの問題、そしてやはり拉致の問題についても、当然、北朝鮮がどういう対応をとっていくか、どういう誠意ある対応を示すかということも勘案しながら、そのときに判断をしなければならない、このように思います。

松原委員 もう少し明確にお答えいただきたいわけでありますが、今回万景峰の入港制限をした。半年後に拉致問題の側において何ら進展がなくて、仮にミサイル問題が解決をされたという判断でこれを解除するならば、その瞬間に拉致問題は飛んでしまうと私は思うわけであります。

 したがって、科したときの直接的な原因はミサイルがあった、しかし、それまでの間に、水がこぼれるように、さまざまな要因があってコップから水がこぼれたんだ、この万景峰の入港制限をしたんだ。したがって、くどいようでありますが、拉致問題についての進展がない限り万景峰の入港制限は解除しないと明確に御答弁をいただきたいと思います。

安倍国務大臣 拉致問題について、松原議員もずっと長い間取り組んでおられることに対しまして本当に敬意を表したい、このように思うわけでありますが、まさに、そうした取り組みをしてこられた方々にとって、拉致問題が解決をされていないにもかかわらず万景峰号が入港を繰り返してきている、そして、人や物を自由に、これを運航し運んでいるということに対して複雑な気持ちを持っておられるということは、私も十分に承知をしているわけでございます。

 そして、その中で、今回ミサイル問題が発生し、そしてこのミサイル問題を契機として、しかし、そうした今までの拉致問題に対する北朝鮮の対応ということを考慮に入れてこの判断を行った。

 ですから、六カ月後にミサイル問題だけが進展を見た中において解決をするかどうか、それはそのときの判断だろうというふうに思うわけでありますが、しかし、基本的には、この制裁の理由はミサイルだけではなくて拉致問題であるということははっきりと申し上げておきたいと思うわけでありますし、その六カ月後の段階において、そのときの政府が当然この拉致問題も解決しているかどうかということを勘案して判断することになるのではないか、私はこのように思います。

松原委員 くどいようですが、私は余りくどく聞きたくないんですが、拉致問題の進展がない限り解除しないという認識でよろしいですか。

安倍国務大臣 この判断については、制裁をかける、解除をするということは、まさにある意味、時の政府がフリーハンドで外交的な手段として、カードとして活用していくというものであろうというふうに思うわけでありまして、ここで私が六カ月後の政府のすべてのそうした判断を縛るわけにはいかない、こう思うわけでありますが、基本的には、そもそも、この発動の原因そのものに拉致問題が含まれているのは、それはもう累次私が申し上げてきたとおりであります。

松原委員 そのときの内閣、キャビネットの手足を縛らないというのはわかります。であれば、安倍官房長官が内閣の中枢にいる場合は、拉致が進展しない限りは解除しない、そう言っていただければいいんですよ、そう思っているんだろうから。言ってください。

安倍国務大臣 六カ月後のことまで私が今断定的に申し上げることは残念ながらできないわけでありますが、この制裁措置を科した理由の一つに、これは繰り返しになりますが、拉致問題について誠意ある対応をとってこなかったということにおいて制裁を科したわけでありまして、これが六カ月後に北朝鮮がこの拉致の問題でどういう対応をとっているかということは、当然、制裁を解除するかどうかの判断材料の一つにはなる、このように思います。

松原委員 今の発言で、私は、拉致の問題の進展がない限り解除しないという決意を読み取りましたので、よろしくお願いしたい。きちっと対応していただきたい。

 実際は、さっきの水野さんの発言にもあったけれども、明示的に拉致という言葉が入っていないわけですよ、今回。こういう制裁を発動するときに、やはりどこかで拉致という言葉を私は入れるべきだろうし、きょうはこの委員会で拉致を含むということを官房長官の発言で議事録には載っけているわけでありますが、やはり拉致という言葉を明示的に入れるように強く要望しておきたいというふうに思います。

 そして今、国連では、日本の提案した決議に向かってさまざまな議論がなされているわけであります。この国連における決議が、中国、ロシア、この問題に対して消極的な二つの国が、棄権をしてくれるのか、賛成に回ってくれるのか、反対するのか、それはカードはいろいろとあるわけでありますが、これがどういう形であろうと、私は、妥協しないで我が国の決議案を通していただきたい。

 仮に反対があったとして、私は妥協するべきではないと思いますが、官房長官のお考えをお聞きしたい。

安倍国務大臣 日本といたしましては、拘束力のない声明ではなくて、決議にするべきである、このように考え、提案国となっているわけでございます。幸い、米国を初め八カ国の国々が共同提案国になることを了承しているわけでございますし、また多くの国々が賛成をしているわけでありまして、これはまさに国際社会の常識に沿ったものであり、良識なのだろう、このように思うわけでございます。

 さらに、中国あるいはロシアに対して働きかけをしていきたい、このように思うわけでありまして、要は、国際社会において北朝鮮に対して決して間違ったメッセージを発してはならないのであって、こうした行為は決して国際社会は受け入れることはできないという強いメッセージにならなければならない、このように考えております。

松原委員 つまりは、今回の決議については妥協しない、日本の国としては妥協しない、最後までこれを通す、こういうことでよろしいですね。

安倍国務大臣 日本が主張していることは、これはまさに、ある意味、今後地域の平和と安定、国際社会の平和のために国際社会が発すべき言葉である、このように信じているわけでございまして、ここでしっかりと国際社会がその意思を示すことは極めて重要であろう、多くの国々がそれに賛同しているという姿を見せることは極めて重要であるというふうに考えております。その中で、私どもといたしましてはこの決議を採択するべきである、このように考えております。

松原委員 これは決議でありますから、拒否権を持つ国が拒否権を発動する可能性もゼロではない。私は、そうした場合も含めて、やはり先ほどから議論があるように、改正外為法というのがあるわけでありまして、従来は我が国の外為法は国連安保理決議等があった場合に行うという、しかし、それがなくてもできるようにしたのが改正外為法であります。

 私は、この国連の決議の行方と絡んで、当然、我が国としては、場合によっては改正外為法の発動に向かって、この国連の決議の流れいかんでは我が国は単独でも行動するべき事態というのは想定されると思いますが、官房長官の決意をお伺いしたい。

安倍国務大臣 今後の国連の決議に向けての議論の行方もある、このように思うわけでありますが、それと同時に、北朝鮮の対応によっては、当然追加的な措置も考えなければならないというふうに思うわけでありますし、その際、例えばそれが日本だけになるのか、有志の国々と一緒にそうした対応をとっていくことになるのか、それはまさに今後、北朝鮮のこの問題に対する対応いかんではないか、このように思います。

松原委員 実際、その場合、例えば送金停止というふうなことも極めて現実的に行われなければいけないと思っております。今、日本国内にいる方々の中で、北朝鮮に、ある意味で関係があって、送金せざるを得ない人もたくさんいる。実態は、どうも本当は送金したくないけれども、送金せざるを得ないような追い込みがある、こういう話もあるわけであります。

 私は、今回、送金停止のような措置がとられるならば、それは今の金正日体制に対して強烈な打撃を与えることになる、多くの意味においてこの拉致問題の解決にインパクトがある、このように思っておりまして、ぜひともこの改正外為法発動は、国連における決議の行方も含めながら準備をしていただきたい、このように思うわけであります。

 そして、もう一問、時間がありませんが、参ります。

 再入国の問題、禁止ということが言われているわけであります。北朝鮮の国会議員、この方々に関して再入国を禁止するという措置を発動したわけでありますが、今回、いわゆる入港制限とともにこの再入国禁止を、とりわけその他の経済制裁ではなくて再入国禁止を発動した理由について、官房長官の意見を伺いたい。

安倍国務大臣 この再入国の禁止については、万景峰92の入港禁止措置とあわせての制裁措置として発動をしたわけでございます。

 北朝鮮への制裁措置において、我が国への入国制限を行った北朝鮮当局の職員には、北朝鮮政府当局、国防委員会、内閣、人民軍等の職員のほか、北朝鮮のすべての活動を領導する立場にある朝鮮労働党の党員及び職員も含みます。また、最高人民会議の代議員及び職員も北朝鮮当局に含まれるわけでございます。

松原委員 この再入国禁止は、これはもう時限的にいつごろまでに解除するということはなく、当面は永続する、こういうことで理解してよろしいですか。

安倍国務大臣 つけ加えますと、この入国禁止の中には、北朝鮮の国会議員も、北朝鮮を渡航先とした我が国への再入国は原則として認められないということになっております。

 今回の事案を初めとする我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、諸般の事情を総合的に勘案した結果、今回の措置をとることにしたわけでありますが、今般の制裁措置に至る段階において、拉致問題も当然、誠意ある対応をとってこなかったということは先ほど申し上げたとおりでありまして、判断材料の一つでございます。

 今後の対応につきましては、北朝鮮がどう対応してくるかということについて我々は判断をしていきたい、このように思っております。

松原委員 あともう一点だけ。

 日朝平壌宣言が事実上骨抜きになってしまっている、こう思うわけでありますが、これについての官房長官の御所見をお伺いしたい。以上で終わります。

安倍国務大臣 今回のミサイル発射につきましては、ミサイル発射のモラトリアムに反しているわけでありまして、平壌宣言に反しているというふうに考えております。

 一方、我々は、北朝鮮がこの平壌宣言を有効とする以上、また、その精神を尊重していくというふうに言っている以上、この平壌宣言は有効である、このように考えているわけでありまして、その中にあって、北朝鮮が、平壌宣言の精神にのっとって、このミサイルの問題についてはモラトリアムを確認する、あるいは拉致の問題についても全面的に解決するという判断をすることを促していきたい、このように思っております。

松原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 民主党の松木謙公でございます。

 安倍長官、どうも御苦労さまでございます。相手が何せ、ならず者国家、これはもう本当に大変なお仕事でございます。ぜひ、我々も一生懸命頑張りますので、お互いに頑張っていきたいというふうに思っております。

 今までいろいろなお答えをされています。まず、私、思うんですけれども、この委員会を北朝鮮の人たちは見ていると思いますか。長官、この委員会を北朝鮮は見ている、そう思いますか。後からにしても今にしても、どっちでも結構です。

安倍国務大臣 当然、今まで北朝鮮は日本での国会での議論あるいは政府の記者会見等々は注視している、こういうふうに思いますし、また特に、ミサイル事案の直後であるだけに、この委員会でどのような議論が行われるかということについては、それはしっかりと注視をしているのではないか、このように思います。

松木委員 そうであれば、この委員会も、北朝鮮に対して、我々日本はそう簡単に折れないんだぞということのいいメッセージを出す、そういう機会でもあるんではないかなというふうに私は思っております。

 先ほど、入港禁止の問題で、委員の中から、当然、拉致が動いていなければ入港禁止を解除すべきじゃないというお話がありました。それで、そのときの判断であろうというお話も長官の方からありました。いろいろな話が今まであったんですけれども、例えば、今回の万景峰号の入港禁止は、これは拉致も関係しているんだぞ、こういう話もありました。こういうことは、要するに、北朝鮮の人たちに、ふざけるな、我々はやるときはやるんだぞといういいメッセージになると私は思うんですね。

 そういう意味で、長官がさっき言った、そのときの判断であろうというのは、我々は肯定的に、要するに否定的じゃなくて肯定的に受け取っているということを松原委員も言いましたけれども、そういうことでいきたいというふうに思いますけれども、よろしいですか。

安倍国務大臣 私の答弁は、先ほど来申し上げておりますように、今回の制裁措置については、ミサイルの発射を契機としたものでありますが、今までの北朝鮮の拉致問題について一切誠意ある対応をとってこなかった、こういうことも勘案した上で総合的に判断したわけでございます。

 当然、半年後にどういう対応をとるかということにつきましては、我々が発動したときのこの要件等々を勘案した上で総合的に判断することになるだろう、このように思います。

松木委員 はい、わかりました。

 それでは、ちょっと質問をかえてみたいと思います。

 ミサイルの発射だとかいろいろなことがあったわけですけれども、この拉致問題、公式的に、日本政府が十一件十六人、そして北朝鮮が今拉致を認めている方々が十三人いるということなんです。もちろん横田めぐみさんの問題というのは当然象徴的なことなんですけれども、そのほかの方々のことも実はまだ何の解決もついていないわけです。ぜひ、これを機会にもう一度、明らかではあるんですけれども、もう一度記憶の喚起をしておきたいなというふうに思っております。

 それで、私がちょっといろいろと数字的に調べてみたことがあるんですけれども、北朝鮮の当局の方は、十三人の方を拉致したということを認めているわけですね。そして、十三人のうち、帰国されたのが五人ですね。そして、そのほかの八人は亡くなられた、こういうことを言っているわけでございますけれども、これをよく見てみますと、私今四十七歳なんですけれども、非常に私の年に似通った年齢の方が拉致されたりしているんですね。そして、松木薫さんなんというのは私と同じ松木でございまして、本当に他人事には思えないわけでございます。

 この方々、亡くなられたと言われている八人の方、この方は大体二十代ないし三十代の前半ぐらいで亡くなられたという話になっておりまして、これは非常に、確率的に考えても本当にひどいことなんですね。十三人のうち八人が亡くなられているということは、死亡率でいくと六二%になるんですね。拉致された平均年齢が二十六・八歳、経過している年数が二十七・四年、平均年齢が五十四・七歳、この方が六二%亡くなっている、こういうことになるんですね。

 しかも、久米裕さん、曽我ミヨシさん、田中実さん、どっちかといえばこの中では高齢の方なんですけれども、この三人の拉致は一応今のところ認めていないということを考えると、今生きているとしたら、この方々の平均年齢というのは、ちょうど安倍長官と同じ五十歳ぐらいということになります。

 そして、五十歳から五十九歳までで亡くなる日本人としてのデータというのが実はあるんですね。これが、千人いたら大体三人ぐらいということなんですね。そして、亡くなられたと言われている方々は大体二十代で亡くなっている方が非常に多いんですけれども、二十歳から二十九歳での死亡率というのがあるんですけれども、これは日本では平成十六年度で一万人いたら四人だというんですね。

 ところが、御存じのとおり、十三人中八人の方が亡くなられている、こういう発表を北朝鮮はしているわけでございますね。これを長官、どう思いますか。

安倍国務大臣 今までの北朝鮮の説明には、納得のいかない説明、また矛盾点が多々あるわけでございます。ただいま松木委員から死亡の平均年齢が極めて低いではないかという御指摘がございました。二〇〇二年訪朝した後に、先方が伝えてきた調査の結果の死亡者の死亡時の年齢等、また原因等を見た際にも、私も当然その不自然さを感じたわけでございます。

 また、例えば、死亡したと言われた方々あるいは生存を果たした方々は、基本的にはどちらも皆さん家族一緒ということになります。奥さんが生きていれば、御主人も生きていて子供も生きている。だんな様が生きていれば、奥さんも生きていて子供も生きている。一方、奥さんが亡くなっていると言われていれば、御主人も亡くなっていて子供も死んでいるか子供もいないか。つまり、基本的には一家みんな丸ごとである。唯一の例外がめぐみさんであると言ってもいいと思うわけであります。

 つまり、そこにも極めて私は不自然さを感じていたわけでありますが、いずれにいたしましても、北朝鮮側から得た情報、物証には多くの疑問点、矛盾点があり、その後新たな情報提供はなく、北朝鮮側の対応は納得いくものではない、こう考えております。

 政府といたしましては、安否不明の拉致被害者がすべて生存しているとの前提に立って、拉致問題の解決のために北朝鮮に対して生存者を直ちに帰国させるよう引き続き強く求めていきたい、このように考えております。

松木委員 官房長官、このほかに特定失踪者と言われる方々も実は何百人もいるんですね。

 そして、ここにちょっと杉浦官房副長官が言ったお言葉があるんですけれども、拉致家族の生存者は家族全員が生存しているが、北朝鮮が死亡と言う方々はほとんど四十代以下で死亡し、子供がいないことになっている。極めて異常なことだ。生命保険会社に調べさせたら一兆分の一の確率だった、こういうことも杉浦副長官も前に言われていますね。

 要するに、本当に、どう考えても、この十三人の方のうち八人の方が亡くなっているというのはおかしいんですよね。そういうことを北朝鮮というのは平気で言っているという国なんですね。本当に許せないということしか言いようがないようなことなんでございますけれども、ぜひ、これ、その上またミサイルを撃ったり、いろいろなことをしているわけですからね。昔、日本が、ちょっとやはり、いろいろな意味で対応が甘かったことがかなりいろいろと影響もしているんじゃないかな、僕はそういうような気がしております。

 そして、今、また、これはミサイルの方がクローズアップされて拉致のことがちょっと横に追いやられるようなことがあると、またこれは困るというふうに私は思っておりますので、ぜひ、そういうふうにはならないように、しっかりと拉致のことも含めたことでやっているんだ。先ほど、今回の入港のことの制裁なんかにはそのことも含まれているというお話もありましたので、そうはならないとは思いますけれども、ぜひ、そこら辺をお気をつけいただきたい。やはりこれは、拉致問題というのは絶対風化させてはいけないんですね。ぜひ、そこら辺の長官の御意思をもう一度お聞きしたいというふうに思います。

安倍国務大臣 この拉致問題について言えば、これはまさに、多くの日本人が拉致をされ、まさにその人生を奪われたわけであり、許すことのできない犯罪行為であり、人権に対する重大な侵害であり、そして国の主権に対する侵害でもある、このように思うわけでございまして、この拉致の問題が解決されなければ日朝の正常化はないということでございます。

 この方針は今後とも変わることはないわけでありますし、また、この問題を風化させないためにも、しっかりとこの委員会でも御審議をいただきたい、このように思います。

松木委員 最後に、多分これを北朝鮮が聞いているということも含めて、解決をされていない方々、北朝鮮が拉致と認めたのは十三人、帰ってきたのが五人、そして八人の方は全員死んだというふうに言われております。

 この方々、横田めぐみさん、田口八重子さん、市川修一さん、増元るみ子さん、原敕晁さん、有本恵子さん、石岡亨さん、そして松木薫さん、これだけの方がまだまだわからないわけです、北朝鮮にいて生きているのかどうなのか。長官、何か北朝鮮に対して一言言ってやってください。これを最後にします。返せと言ってくださいよ。

安倍国務大臣 我々日本としては、拉致被害者全員が生きているということを前提に今後も交渉をしていきたい、このように思うわけであります。

 拉致被害者の生存者が全員帰国を果たすまで、この拉致問題は解決をしたとは言えないということであります。この問題について北朝鮮がしっかりと判断をしなければ、北朝鮮が現在抱えているいろいろな問題、経済の問題あるいはエネルギーの問題、食糧の問題、これを解決することはできないということを北朝鮮は認識をしなければならない、このように思います。

松木委員 この問題は与党、野党ありません、みんなで一生懸命解決に向かって努力をしていきたいということを一言つけ加えて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 るるありましたけれども、北朝鮮による拉致問題とともに、今、ミサイル発射問題がまさに重大な局面であります。我が党も、直ちに志位委員長談話を発表しまして、国際ルールと国際的取り決めを無視した北朝鮮によるミサイル発射に厳しく抗議いたしました。

 北朝鮮の外務省報道官は、先週六日になってミサイル発射の事実を初めて認めましたが、自衛的国防力強化のための通常の軍事訓練の一環だなどと主張して、今後も継続すると表明しております。さらに、どのような国際法や日朝平壌宣言、六カ国協議共同声明のような合意にも拘束されないとか、こんな弁明をしております。北朝鮮の宋日昊大使は、七日、日朝平壌宣言に違反しないなどとも言っております。

 そこでまず官房長官、この北朝鮮側の弁明は、事前通告という国際ルール、日朝平壌宣言を初め国際的取り決めに明らかに反して、国際社会に背を向ける無法さを際立たせる態度であって、私、到底通用しないと思うんですけれども、長官の所見を伺いたいと思います。

安倍国務大臣 一般論といたしまして、国際法上、弾道ミサイルの発射自体が禁止されているわけではありませんが、今般の弾道ミサイル発射は、北朝鮮自身が日朝平壌宣言で約束したミサイル発射モラトリアムに反するものであります。特に、核開発を進める北朝鮮がそうした大量破壊兵器の運搬手段を有することは、我が国の安全保障に脅威となるのみならず、国際社会の平和と安定に対する挑戦と考えます。

 北朝鮮のこうした挑発的な行為は、非常に遺憾であり、また、北朝鮮が国際社会の責任ある一員として行動していないことを示すものであります。さらに、ミサイル発射を継続する可能性すらほのめかしていることは、糾弾されるべき発言と考えます。

 北朝鮮によるミサイル発射は、北朝鮮の一層の国際的孤立につながるものであり、失うものは大きいということを理解させるべく、国際社会としても一体となって厳しい対応をとる必要があると考えております。

笠井委員 まさに、今長官言われたとおり、北朝鮮がこういう態度を続けるなら、一層の国際的孤立を深めるだけだ、深めざるを得ないことは明らかだと思います。

 今回の北朝鮮の行為について、周辺諸国も事前通告がなかった問題を厳しく批判しております。北朝鮮側は、この批判を言語道断と切って捨てておりますけれども、公海を航行する艦船や航空機の安全のために、ミサイルなどの発射に当たって、関係国に通報をするというのは、まさに当然の国際ルールだと思うんです。

 そこで、外務省に伺いますが、船舶の安全を管轄する国際水路機関、IHOと国際海事機関、IMOが一九九一年十一月に採択した決議は、事前通告の一つにミサイル発射を挙げております。また、国際民間航空条約、シカゴ条約は、危険を及ぼす行為は事前通告が必要と規定しております。また、国際海洋法条約は、軍事演習などを行う際には、他の国の利益に妥当な配慮を払うことを定めていて、IHOやIMOの決議やシカゴ条約は、この規定を具体化したものとされております。

 北朝鮮は、このIHOやIMOの決議に参加をし、そしてシカゴ条約に加盟しているのかどうか、それから、事前通告をしなければ、そういう点でいえば、国際法上の違反行為となるのは明らかだと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

塩崎副大臣 まず、事実関係でありますけれども、国連海洋法条約には北朝鮮は入っておりません。それから、IHO条約、IMO条約、シカゴ条約、これにつきましては、北朝鮮はいずれも締結をしております。

 今御指摘の点でありますけれども、それぞれの条約についてまた申し上げますけれども、基本的には、極めて国際法上問題のある行為を今回犯したというふうに考えるべきだと考えております。

 我が国としては、今般のミサイル発射に関して、北朝鮮からの適切な事前通報はなかったという認識をしております。そして、国際法上、以下のような問題があるのではないかというふうに考えているわけでありますけれども、今の公海の自由につきましては、国連海洋法条約には入っておりませんが、慣習国際法、慣習法ですね、この上では、公海の自由は、他国の利益等に妥当な考慮を払って行使するというふうにされていて、今回のミサイル発射は、漁業活動等も盛んに行われている日本近海でありますから、関係者への適切な事前通告なしに行われたものということで、他国の利益に妥当な考慮を払ったものとは到底言いがたいというふうに思います。

 それから、シカゴ条約との関係では、ミサイル発射に当たって、北朝鮮からの事前通報は、何ら確認されていない、我が国を含む民間航空機の航行の安全に対する重大な危険を発生させるものだ。したがって、国際航空における飛行の安全を増進するとのシカゴ条約の基本的な目的に照らしてみて、極めて問題があるということです。

 IMO、IHO条約の関係で、先生から今九一年十一月に総会決議があったと、これは、世界的航行警報サービスに関する指針が定められておりますけれども、これを採択したわけであります。この決議は、船舶への安全情報や航行警報の伝達のために、各国の関係当局が、海上の安全に影響ある事態を当決議により海域ごとに指定された調整国に対して通報することなどを求めていて、今回の海域でいきますと、日本が調整国になるわけであります。

 この決議は、法的な拘束力は実はないのでありますけれども、今回のミサイル発射が関係者への適切な事前通報なく行われて船舶の安全を脅かしたことは、この決議との関係でも極めて問題があるというふうに考えられます。

笠井委員 今ありましたけれども、北朝鮮の態度というのは、まさにみずからが加わっている国際ルールをも無視する行為にほかならないと思うんです。

 そもそも北朝鮮は、日朝平壌宣言やそれに先立つ二〇〇〇年の米朝共同コミュニケでミサイル発射の凍結を約束しておりました。それを主権国家として合法的権利の名で覆すことには何の道理もないと言いたいと思うんです。私は、問題の核心は北朝鮮がこれら国際社会のルールを守るかどうかという点にある。

 そこで、最後に官房長官に伺いたいんですが、北朝鮮の外務省報道官は、六カ国協議の共同声明で公約したとおり、朝鮮半島の非核化を対話と交渉を通じて平和的に実現しようとする我々の意思は今も変わりがない、こういうことも述べております。

 そうであるなら一層、北朝鮮は、こうした無法な行為を中止して、国際ルールと日朝平壌宣言というのを遵守しなければならないのは当然だと考えますが、この点がいかがかというのが一点。

 もう一点は、現在、国連安保理事会で協議がまさに山場を迎えております。この問題では、いずれにしても今大切だと思うのは、国際社会が一致して、北朝鮮に対して、六カ国協議に速やかに復帰して、その場で外交的解決を図ることを強く求めていくということだと思うんですけれども、これがどうか。

 この二点について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍国務大臣 北朝鮮側に朝鮮半島の非核化を対話と交渉を通じて平和的に実現する意思があるのであれば、六者会合に早期かつ無条件に復帰すべきである。また、核問題のみならず拉致、ミサイル等の諸懸案の包括的解決に向け、日朝平壌宣言を遵守し、誠意ある対応をとるべきであり、そうでない限りは、北朝鮮は国際社会の責任ある一員とは言えない、こう考えます。

 我が国としても、北朝鮮との間で対話の道を閉ざす考えはなく、六者会合の共同声明の履行を通じ、また平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし、国交正常化を図っていくとの方針に変わりがないわけでありますが、現状では、残念ながら、対話を通じた懸案の解決を図るために、圧力となる措置を講じていく必要がある、こう考えております。

 また、国連安保理における北朝鮮への対応においては、現在、関係国の間で協議が行われており、依然として予断を許さない状況でありますが、我が国としては、安保理において決議の形で国際社会としての意思が表明されるよう、引き続き関係国と連携を進めていく考えでございます。

 我が国としても、北朝鮮との間で、先ほど申し上げましたように対話の道は閉ざす考えがないわけでございますので、しっかりとこの拉致、核、ミサイルといった諸懸案を解決していく。先ほど申し上げましたように、そうした問題を解決して正常化を図っていく、この方針をしっかりとこれからも堅持していく、そういう考え方でございます。

 いずれにいたしましても、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的解決なしには国交正常化はないわけでありまして、これらの懸案の解決のためには北朝鮮の誠意と責任ある対応が前提になる、このように考えております。

笠井委員 終わります。

平沢委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 北朝鮮のミサイル発射問題、これは、もうるる言われているように、ミサイル発射のモラトリアムを決めた二〇〇二年の日朝平壌宣言、これに明確に違反をするというふうに思いますし、先ほど来議論がありましたように、種々の国際法にも違反する行為であります。極めて遺憾であり、私どもも強く抗議をし、糾弾をしたいという立場でおります。

 同時に、この解決は、これも議論がございました、六カ国協議の枠組みをしっかり守って、とにかく日米はしっかりときずながあるということですから、むしろ韓国、中国、ロシア、こことしっかり連携をして解決の道を探っていくというのが基本的な方向だろうというふうに私どもは考えています。

 しかし、そこで、先週の金曜日に、北朝鮮の宋日昊日朝国交正常化交渉担当大使、これが記者会見を行いまして、ミサイル発射は日朝平壌宣言に違反しないというふうにおっしゃったようです、日朝平壌宣言に違反しないと。

 私どもはそう思っていないのですが、最初に官房長官にお伺いしたいと思うんですが、政府は、今回の北朝鮮のミサイル発射によって日朝平壌宣言は同国によっていわば破棄された、こう認識をしているのか。また、政府は、今回のミサイル発射によって日朝平壌宣言に政府自身が今後拘束されずに物事を進めていくことができるというふうにお考えになっているのかどうか、これを最初にお聞きしたいと思います。

安倍国務大臣 日朝平壌宣言は、拉致問題を含む諸懸案を包括的に解決し国交正常化を図ることが北東アジア地域の安定と平和にとって重要であるとの基本原則に立ち、日朝両首脳が署名した政治的に極めて重みのある文書であります。

 今般の北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、日朝平壌宣言にあるミサイル発射モラトリアムに違反した行為であり極めて遺憾であるということであります。

 我が国としては、対話と圧力という基本的考え方に立ち、日朝協議や六者会合を通じ、日朝平壌宣言を全体として履行することが、北朝鮮との間の諸懸案を解決し日朝関係を前進させる上で最も効果的な方法であるというふうに考えております。引き続き、北朝鮮による同宣言の履行を強く求めていく考えであります。

日森委員 時間がありませんので、もう一点だけお聞きをしたいと思いますが、拉致問題につきまして、報道によりますと、韓国政府当局者、六月三十日に、めぐみさんの拉致問題の解決に向けての日本政府との連携については、情報は共有するが政策協議はしない、日本政府が処理することだというふうに述べているようです。

 私ども、この拉致問題を一刻も早く解決しなければならないという立場で物を申し上げたいんですが、日韓の間で相当のずれがあるというふうに判断せざるを得ないんです。もちろん、包括的に解決していくわけですから、六カ国協議あるいは国際世論に訴えていくということは基本的に大事になると思いますが、しかし、その中でも、日韓両国の密接な連携といいますか、これは不可分な課題じゃないかという思いがあるんです。

 日韓両国政府において、この問題をめぐってそごが生じるというのは、非常に大きな障害になるというふうに考えているわけです。したがいまして、このそごを克服していくというのは実は日本政府の重要な責任ではないのかという思いがあるんですが、今後、具体的にどのような形で日韓連携をつくっていかれるのかどうか、これは官房長官にお聞きをしたいと思います。

安倍国務大臣 拉致問題に関しまして日本と韓国で置かれている立場やアプローチにおいて異なる点があるのは事実でありますが、日本も韓国も拉致問題を人道的な問題ととらえていることには何ら変わりがないわけでございます。

 先ほども答弁をいたしましたように、DNAの検査、鑑定におきましても、日韓双方が協力をし合ったからこそ、こうした真実に突き当たり、そして、離れ離れになっていた家族が再会を果たすこともできたのでございます。

 しかし、繰り返しになるわけでありますが、人道問題というとらえ方は一つでありますが、ただ、この問題に対する姿勢、アプローチは、残念ながら両国の間には違いがあるわけでございます。しかし、我々は、この問題について、この問題が解決をしなければならない、そして対話と圧力の姿勢でいくということ、この方針を変えるわけにはいかないわけでございます。我々のこうした方針については、韓国側にも理解を求めていきたいというふうに思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、今後、情報を提供し合い、なるべく現状の認識について話し合いをしていくということについては、これからも進めていきたい、こう思っております。

日森委員 終わります。

平沢委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十五分散会


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