衆議院

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第3号 平成18年12月7日(木曜日)

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平成十八年十二月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 赤城 徳彦君 理事 遠藤 武彦君

   理事 上川 陽子君 理事 近藤 基彦君

   理事 高木  毅君 理事 大島  敦君

   理事 渡辺  周君 理事 高木 陽介君

      今津  寛君    鍵田忠兵衛君

      河井 克行君    木原 誠二君

      岸田 文雄君    薗浦健太郎君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      松木 謙公君    松原  仁君

      笠  浩史君    鷲尾英一郎君

      赤羽 一嘉君    笠井  亮君

      重野 安正君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (拉致問題担当)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    米村 敏朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     高鳥 修一君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     今津  寛君

同月二十二日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     高鳥 修一君

  松木 謙公君     西村智奈美君

  松原  仁君     菊田真紀子君

  重野 安正君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     薗浦健太郎君

  菊田真紀子君     松原  仁君

  西村智奈美君     松木 謙公君

  阿部 知子君     重野 安正君

十二月七日

 辞任         補欠選任

  漆原 良夫君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  赤羽 一嘉君     漆原 良夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する実情調査について、去る十一月十五日に福井県、二十二日に新潟県においてそれぞれ視察を行いました。

 この際、参加委員を代表いたしまして、その概要を私から御報告申し上げます。

 まず、去る十一月十五日に七名が参加し、福井県小浜市で視察を行いました。

 現地では、拉致被害者地村保志さんらの拉致現場、特定失踪者山下春夫さんの失踪現場を視察し、福井県警から説明を受けたところであります。

 次いで、小浜市役所で、地村保志さんから近況報告を含めたあいさつのほか、県や県警及び小浜市より、拉致問題のこれまでの経緯と帰国された拉致被害者、御家族に対する支援の状況、拉致及び特定失踪者事案の概要についての説明を受けました。

 地村さんからは、特定失踪者を含めた拉致問題の全面的解決について、また、特定失踪者家族や救う会福井等関係者からは、特定失踪者について政府の拉致被害者への早期認定等、特定失踪者問題に積極的に対応してほしい旨の要望をいただいたところであります。

 次に、去る十一月二十二日に十四名が参加し、新潟県新潟市で視察を行いました。

 現地では、かつて万景峰号が入港していた新潟西港を視察し、新潟県の港湾事務所より種々の説明を受けたところであります。

 次いで、拉致被害者横田めぐみさんの拉致現場を視察し、めぐみさんの足取りをたどりながら、県警からは事件についての説明を受けました。

 その後、新潟県庁で、拉致被害者の曽我ひとみさんを初め県や県警、救う会新潟からの拉致事件や特定失踪者についての説明、拉致被害者への給付金の支給の延長の要望等を聴取いたしました。また、特定失踪者の御家族からも、早期拉致被害者認定とともに拉致問題を全面解決してほしい旨の要望を書面でいただいたところでございます。

 曽我ひとみさんからは、北朝鮮に拉致されてからの悲痛な気持ちについてのお話があり、お母さんのミヨシさん、横田めぐみさんらのいまだ戻らぬ拉致被害者についても一日も早く日本に帰ってきてほしい旨の発言がございました。

 また、救う会新潟からは、この会長さんは、横田めぐみさんが通われた当時の小学校の馬場校長先生が会長をなさっておりますけれども、対北朝鮮制裁のさらなる継続と特定失踪者問題調査会の調査業務を政府関係機関に移管してほしい旨の要望を受けました。

 以上が、今回の二度にわたる委員会視察についての概要でございます。

 なお、両視察の詳細については会議録によって御承知願いたいと思います。

 最後に当たりまして、今回の視察に当たり、関係者各位に対し深く御礼申し上げるとともに、私どもも拉致問題の早期解決に向けて努力することを宣言いたして、報告といたします。

 お諮りいたします。

 ただいま御報告いたしました内容の詳細につきましては、これを視察報告書として本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小島委員長 引き続き、北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、警察庁警備局長米村敏朗君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君及び外務省大臣官房参事官梅田邦夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。

高木(毅)委員 おはようございます。自由民主党の高木毅でございます。

 今、委員長から先般の視察の御報告がありましたが、時間の都合もあって非常に簡潔に御報告いただきました。ぜひ両大臣あるいはまた岩屋副大臣にも認識を共有していただきたいというふうに思いますし、私も二カ所行ってまいりましたので、少し御報告をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、地村保志さんのお話をお聞きすることができました。いろいろとお話をいただきましたけれども、やはり印象に残ったのは、地村さんあるいはまた御家族の方は、我々は帰ってこられた、だけれども素直には喜べない、それはすなわち、ほかにまだ多く残された方がいるからだ、委員長からの報告もありましたけれども、ぜひ全面解決に向けて努力をしていただきたい、そういう言葉がございました。

 あるいはまた、曽我ひとみさんからはこういう話がございました。日本から何度かいわゆる代表団が北朝鮮を訪ねてきた、それをテレビで見ていて私を連れに来てくれたのだというふうに思って待っていたけれども、結局何にも自分の身辺には起こらずに代表団が帰っていってしまった、非常につらく寂しい思いをした、そういうようなお話もございました。

 あるいはまた小浜では、特定失踪者の山下春夫さんの失踪現場を視察させていただきました。これは視察した委員みんな同じ認識だというふうに思いますが、いろいろなところを見て、あるいはまた家族の方からお話をお聞かせいただいて、これはもう拉致されたに違いないという確信を持って帰ってまいりました。

 私の地元福井にはほかにもいらっしゃるわけでございますけれども、そういった方たちも必ずや拉致されたんだというふうに私は思っております。ぜひそういったことも御認識いただいて、本日の御答弁をお願いしたいというふうに思います。

 また、めぐみさんの拉致現場も見てまいりました。夕方六時半ごろだそうでございますけれども、三人のいわゆるバドミントン部の友達と仲よく家路につくわけでございます。坂道でありますけれども、途中でお友達の一人が家路に別れていった、しばらく歩いてもう一人の女の子が左の方へ折れた、そしてめぐみさん一人が自分の家に向かったわけでございます。夕方暗くなったころだと思いますけれども、バドミントン部の練習を終えて、まさにラケットを持って、きょうの練習はきつかったとか、あるいはまた、私も涙が出そうになりますけれども、きょうの御飯は何なんだろうとか、そんなようなことを思いながら寒い道から温かい家に急いで行ったわけでありますけれども、その途中で何と北朝鮮の工作員がいきなりやってきて連れ去ってしまった、そういう状況でございます。

 私は、ずっとこんなことがあっていいのかというふうに思っておりましたけれども、改めてその現場を見て、北朝鮮に対する憤りを強く持って、そして視察委員とともに、何としてでもこの拉致問題を解決しなければならない、そういう強い思いで帰ってきたわけでございまして、両大臣あるいはまた岩屋副大臣におかれましても、ぜひそういう認識のもとにこれからお取り組みをいただきたいというふうにお願いをする次第でございます。

 それでは、質問をさせていただくところでございます。

 九月二十六日に安倍政権が発足をいたしました。安倍さんといいますと、副長官の時代からいわゆる小泉訪朝に同行して、もちろん小泉前総理もしっかり頑張っていただきましたが、拉致問題に関してはずっと以前より真剣に取り組んでいただいて、国民の期待もあるいはまた被害者家族の方々の期待も非常に大きいわけでございまして、そうした方が内閣をつくって国民の期待も非常に大きくなっているというふうに思います。

 そうした中にあって、拉致問題対策本部を政府の中に設けていただいて、官房長官がその担当大臣ということになったわけでございます。

 きょうは初めての委員会質疑でございますので、ここで改めて、官房長官の拉致担当大臣としてのこれからの拉致問題に対する決意、心構え、あるいはまた現状をどのように認識しているか、そういったようなことをお聞きしたいというふうに思います。

 そしてあわせて、実は私の地元からも、特定失踪者に関してでありますが、四回にわたってそれぞれ当時の副長官に、二〇〇三年からことしの十一月まで、ことしは中山補佐官にでございますけれども、三十九万九千人の福井県民の署名を渡しているところでございます。

 現在、それだけではなくて、拉致の問題の解決に向けての署名だとか、あるいはまた特定失踪者の問題についての署名等もたくさん来ているというふうに思いますけれども、その署名の重みというものもぜひ認識をしていただきたいわけでございますが、その辺についてもあわせて質問をさせていただきます。

塩崎国務大臣 高木先生から、今回拉致問題担当大臣になった覚悟のほどをということで、今御質問がございました。

 今お話がありましたように、安倍総理は、もうかねてからこの拉致問題について、みずからの問題として、また国家の重大な問題として取り組んでこられました。

 今回、安倍内閣が発足をいたしまして、拉致問題の担当大臣というものを初めて設けた、そして、対策本部をみずから本部長になってつくって、今その体制固めをしているところでございますが、政府を挙げての対応をとる、こういうことで、これからの歩みを進めるわけでございます。

 私は、担当大臣としてこの問題にどう取り組むかということでございますが、まず第一に、この拉致という問題は、今正式に認定をされた方々が十七人、うち五名が戻ってこられただけでありまして、まだまだそのほかに特定失踪者もおられるという中で、本当に国家の主権を侵す重大な問題だと思います。

 にせ札問題などがよく国家主権との絡みで言われますけれども、にせ札が国家主権を侵すのはもちろんでありますけれども、拉致問題はまさに人そのものを拉致してしまう、それも日本の国内でやる、そういう信じがたいことでありまして、本当に我が国の国民の生命と安全にかかわる重大な問題だと思っていますし、拉致問題の解決なくして国交正常化なしということだと思っています。

 北朝鮮はこの間、不誠実な対応を続け、そしてまたミサイル発射、さらには核実験、こういうことで、世界の流れからまさに逆行しているようなことをやり続けているわけでありまして、北朝鮮の対応が今のところ変化の兆しがうかがわれないということは大変我々としては残念なことであるわけでございます。

 対話と圧力という基本的なスタンスの中で、北朝鮮に対して、引き続き、拉致被害者の全員の無事帰国、そしてすべての拉致被害者の安全を確保して直ちに帰ってもらうために、我々は強くこれからも求めてまいりたいと思っていますし、本部ができたわけでありますから、十分な体制でもって真相の究明から実行犯の引き渡しについても強く求めていきたいと思っています。

 それから、私もこの間、拉致被害者の家族の皆さん方、あるいは特定失踪者の関係者の皆様方ともお会いをしてまいりましたけれども、それぞれ三十年から時間がたって、御高齢にもなってこられているわけでありますので、一刻の猶予もない、そんな気持ちで、これから担当大臣として頑張っていきたいと思っております。

 先般、松本京子さん、新たに拉致認定をいたしましたが、それ以外の特定失踪者の問題についてもこの本部では正面から取り組んで、しっかりとやっていきたいと思っておりますので、高木先生を初め委員の先生方にもまた御協力を願いたい、このように思うところでございます。

高木(毅)委員 署名のことについては御言及をいただけませんでしたけれども、多くの署名が集まっているというふうに思いますので、国民の強い気持ちとして受けとめていただければそれで結構かというふうに思います。ありがとうございました。

 次に、官房長官、引き続きお伺いをいたしますけれども、拉致されたこと、あるいはまた長い間放置されたままになっているということ、これはどこかに責任があるんだというふうに私は思います。ところが、その責任の所在というところがいま一つはっきりしないというのもこの問題がなかなか進まない一つの要因だというふうに考えておりますけれども、官房長官は、この拉致問題の責任というものがどこにあるというふうにお考えでございましょうか。

塩崎国務大臣 一義的には、まず、この拉致を起こした北朝鮮に責任があるということを明らかにしておかないといけないと思うわけであります。その後も誠実な対応をとってこないということについて、我々としては強く抗議をしなければいけないと思います。

 しかしながら、一方で、二十年、三十年たって、まだ我が国に戻れない、北朝鮮で帰国を待ち望んでいる方々がおられるという状態についての責任については、やはり我が国の国民に対して、そしてまた生命と安全に対して責任を負う政府として、これを重く受けとめなければならないと思っております。

 私は、自民党の中で、外交部会長というのを二〇〇〇年から二〇〇一年にかけてやっておりました。当時から、安倍晋三代議士が、当時は議員でありますが、本当に地道に取り組んでいましたけれども、当時と比べて、今の政府がこうやって拉致問題の対策本部をつくるというところまできたということは、これまでの力の入れ方が十分ではなかったのではないかということを私も反省を込めて思うわけであって、この間、私も映画「めぐみ」を十一月の二十三日に見てまいりましたが、こうしたことを国内外にやはり強く訴えかけながら、無事奪還の運動を行って実現を図っていくというのが我々のこれからの責任のとり方ではないか、このように思っているところでございます。

高木(毅)委員 もちろん、今回、政府の中に対策本部をつくって、政府を挙げて取り組む、言いかえるならば、政府全体の責任でやっていくんだというようなことだというふうに思いますけれども、あえてお聞きをいたしますが、その政府の中ででも、あえて言うならばどこが責任をとる、そんなようなお考えは、責任をとるというか責任があるのかということについてはいかがでございましょうか。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、私が政府の対応ぶりに接したのは外交部会長をやっているときでありました。それから、今までの変遷を見てみると、どこということはなく、この問題をここまで力を入れることなくやってきたというのはやはり政府全体の問題であろうと思いますので、今度は政府全体が無事奪還に向けて行動をしっかりとっていくということが大事なんだろうと思います。

 先ほどの署名の重みについて高木先生からお話がありましたが、私の地元でも署名を街頭などでよくやっておられますし、そういう運動、特定失踪者は愛媛県に三人おられるわけでありまして、そういうことを含めて政府を挙げてやっていくことがこれからの責任のとり方ではないかと思います。

高木(毅)委員 それでよろしいかなというふうに思いますが、全体で責任をとる、いかにもいいようでありますが、逆に責任の所在がばらけてしまうというようなことにもなりかねないと私は思います。ですから、あえてお聞きをしているわけでございますが、官房長官の御答弁からすると、政府一体だけれども、それぞれの機関がすべて責任をとるんだ、持つんだというようなことかなというふうに解釈をさせていただきましたので、全体ではあるけれども、それぞれの機関がまたそれぞれに責任を持って対応していく、そういったようなことをぜひお願いしたいというふうに思います。

 次に、外務副大臣に一つお聞きをしたいというふうに思います。

 今、多分、この日朝間、二国間での協議というのはなかなか厳しい状況だというふうに思います。もちろん制裁というのもかけておりますので、言うならば、そういったことは織り込み済みといえばそれまでかもしれません。

 そうなってくると、当然六者協議というものが非常に重要視されていくわけでございますけれども、まだその見通しも難しい状況ではありますが、外務省の六者協議における拉致問題の取り組み、あるいはまた副大臣としての決意というものをはっきりさせていただきたいというふうに思います。

岩屋副大臣 北は、拉致問題に加えて、ミサイルの件に関しても、あるいは核の件に関しても、全く誠意ある対応をとってきていないということについては、私どもも大変遺憾に思っておりまして、先生おっしゃるとおり、この六者会合の場で具体的な成果が上がらなければいけないというふうに考えておりまして、その方針で、今、鋭意関係各国と連携をとっているところでございます。

 私どもは、当然、拉致被害者が全員生存しているという前提に立ちまして、すべての拉致被害者の安全確保と即時帰国、真相の究明、拉致実行犯の引き渡しを強く求めていく決意でございまして、六者会合というのは、ただ開けばいいということではなくて、麻生大臣が累次にわたって申し上げておりますように、具体的な成果が上がらなければ意味がない、そのためにどういう交渉の場を設けるべきかということをめぐって、米国はもとより、韓国、中国、関係国と今鋭意連携を強化しているところでございます。

高木(毅)委員 今、副大臣から具体的な成果が上がるようにというお言葉をいただきまして、意を強くいたしております。なかなか開くのも難しいような状況でありますけれども、一回一回が大事でございますので、具体的成果というものを一回一回上げるように、目に見えるような格好で進めていっていただきたいと強く要求をするところでございます。

 続いて、国家公安委員長に一つお聞きをさせていただきたいというふうに思いますけれども、小泉前総理の訪朝から約四年三カ月たったわけでございますし、あるいはまた、被害者の帰国については「最大限の努力をする」とうたわれておりますいわゆる支援法というのができて、間もなく四年たつわけでございます。

 拉致問題にしてもそうでありますけれども、特定失踪者、先ほど松本京子さんの話が出ましたけれども、四年で二人しか認定できておりません。二〇〇五年の四月に田中実さん、そして先日の松本京子さんでございます。もちろん認定するのは内閣総理大臣でございますけれども、先ほど申し上げた支援法の中には、「関係行政機関の長と協議するもの」というふうにあるわけでございます。

 私は、もちろん関係行政機関はいろいろな機関があるというふうに思っておりますけれども、警察というものがその最たる機関ではないかというふうな思いを持っております。松本京子さんの場合も、最終的には、警察御当局の本当に一生懸命頑張っていただいた捜査あるいはまた情報収集のかいがあって認定をされたわけでございます。

 そうしたお立場から国家公安委員長にお聞きをするわけでございますけれども、さっき申し上げたとおり、なかなか認定が進んでこない、委員長として、なぜ進まないのか、あるいはまた現在の捜査の状況、こういったところについてお聞きをいたします。よろしくお願いいたします。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 北朝鮮による拉致容疑事案につきましては、警察は、これまでのところ十二件十七名と判断をいたしているところでございますが、このほかにも、北朝鮮による拉致事件ではないかと告訴や告発をされた事件が三十七件、拉致の可能性が排除できないとする届け出や相談を九百件以上受理いたしているところと承知いたしております。

 警察は、こういう事案に対しましても、御家族や関係者の心情に配慮しながら、あらゆる予断を排除して、所要の捜査、調査を行っているものと承知をいたしております。

 他方、議員御指摘のとおり、こうした事案の多くは関連情報や証拠がほとんど残されておらず、その解明に長時間を要しているものがありまして、歯がゆい思いをお持ちになるのは理解できるところでございますが、事案の重大性にかんがみまして、警察の総力を挙げて、所要の調査、捜査を今後も粘り強く進めていくよう警察当局を督励してまいりたい、このように考えているところでございます。

高木(毅)委員 よく事情はわかるわけでございますけれども、本当にそういった事案が起きてから二十年、三十年、あるいはそれ以上たっているわけでございまして、もうこれ以上捜査をしても、もちろん捜査をしていただいている方に失礼な話かもしれませんが、どれだけやっても、時間的な問題もありますし、新たな証拠や情報というのはさほど得ることはできないのではないかなと実は私は思っているところでございます。

 そこで、拉致容疑事案と判断する警察のいわゆる三要件というのがあるわけでございますけれども、よく特定失踪者の救う会が言っておりますいわゆる拉致された可能性を排除できないもの、そういう文言があります。いわゆる拉致された可能性が極めて高い事案、なかなか三要件を、情報、証拠によって完全に満たすことは非常に厳しいわけでございますので、私はそろそろ、まあ、そろそろ、時期、そういう問題ではないかもしれませんけれども、拉致された可能性が極めて高い事案というものを認定するときではないかと私は思っております。

 といいますのは、もちろん、特定失踪者、拉致被害者もそうでありますけれども、家族の方というのは、まずはやはり帰ってきてほしい、取り返してほしい、そう思っています。だけれども、それが無理ならば、消息をはっきりさせてほしいんだという思いがあります。

 そして、もう一つあるのは、言葉にあれをせずにはっきり申し上げますけれども、高齢でございます。亡くなることももちろんあるわけでございます。そうしたときに、認定もされていないという状況では、言うならば死んでも死に切れない。もしきっちり認定をしておれば、不謹慎な話でございますけれども、自分たち家族が亡くなった後もきっと政府は力を尽くして取り戻してくれるだろう、そういう思いで亡くなられるというのは変な言い方でありますけれども、そんなようなことにもなるのかなというふうに思うんですね。

 ですから、家族の方々のお年なども考えて、私は、少し要件というものを緩めるなりして、認定というものの作業を進めるべきだというふうに思いますが、これは官房長官がよろしいでしょうか、では、官房長官、ぜひそのスタンスをおとりいただきたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

塩崎国務大臣 高木先生の今のお話、お気持ちは当然よくわかるわけでありますが、拉致被害者の認定というのは、いわばこれは法律用語であって、支援法に基づく認定、こういうことだろうと思うんです。

 今先生がおっしゃったのは、拉致された可能性が極めて高い事案ということについてどう考えるかということで、それについての認定というお話を今されたわけでございます。

 認定という言葉になると、やはりこれは、関係省庁、機関による捜査、調査の結果をもとにして、北朝鮮当局によって実行された拉致行為の有無を判断基準として行うことにしているわけであって、そのような判断に至らないものを、たとえ今おっしゃった拉致された可能性が高い事案であったとしても、認定自体は容易にはなかなかできないのではないのかなというふうに考えているわけでございます。

 そもそも、何をもって拉致をされた可能性が高いのかの判断基準を作成することは、なかなかこれはそれぞれのいろいろなケースがあって、あいまいな基準のもとで万一間違った認定をした場合の結果を考えてみると、現在の認定制度自体の信頼性を損なってしまうんじゃないかということを我々としては考えるわけであって、そうなると拉致問題の解決自体にも影響を及ぼす可能性が懸念をされるわけでありまして、したがって、拉致の認定基準の見直しについては、やはり相当慎重に考えざるを得ないんじゃないかなというふうに考えているわけであります。

 一方、もちろん政府としては、いわゆる特定失踪者の御家族が本当に長年お帰りを待ちわびて不安を感じておられることは理解をするわけであって、今後とも、拉致の可能性を排除できない事案の解明にはそれぞれ全力を挙げていきたいと思っております。

 この間の松本京子さんのケースでも、実は捜査に関して、やはり相当時間をかけて、緻密なそして粘り強い捜査をやった結果、ああいう判断に至ったわけで、それを可能性が高いということだけで認定するというところまでいくには少し危険性もあるのかなということで、拉致問題対策本部において、引き続き、特定失踪者の皆さん方についてはコミュニケーションをしっかりとりながら、相談等に応じてきめ細かな対応を打っていきたいと思いますし、ことしの補正予算、来年の本予算、そういったところでもそういったことに対応できるような予算組みをしていきたい、このように考えているところでございます。

高木(毅)委員 もちろん、認定という作業、そういったようなものなんだろう、そういう性格のものだろうというふうには認識をいたしておりますが、しかし、先ほど申し上げたとおり、先般、小浜で視察をいたしました山下春夫さんの場合、こういうところは、もちろん拉致された証拠というものは確かにないかもしれませんけれども、状況から考えたら、これはどう考えたってというふうに思わざるを得ないわけでございまして、ほかにもそういった事案はたくさんあろうかというふうに思います。

 この場ではもう時間もありませんので申し上げませんけれども、私は、この定義も非常に難しいのでありますけれども、先ほどもちょっと申し上げたような事案で、認定ではないけれども、準認定のような、そういった定義というか概念というものは何とかならないのかなということも実は考えておりまして、これはまた次回にさせていただきたいというふうに思います。

 時間がないわけでございますけれども、先ほど官房長官は、間違えて認定するわけにはいかないという話をいたしました。もちろん、それはそうだというふうに思います。だけれども、間違えて認定するのも非常に責任は重いかもしれないけれども、本当に拉致事件なのに、拉致事案なのに認定をしない責任の方が私はさらに重いと思うわけでございますが、その点について、官房長官、いかがでございましょうか。私はそのような認識を持っております。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたように、今、拉致認定というのは慎重に、間違いなく北朝鮮によって拉致をされたということがわかったときに認定をしてきているわけであります。

 もし間違ってやってしまった場合のことを考えると、今のように準認定みたいなものをつくったらどうだというお話でありますが、お気持ちはよくわかるのであります、したがって、それは認定というようなものと少し違うジャンルの中で考える、そういう性格のもので考えるというならば少し別かもわかりません。

 しかしながら、国家として、政府として、これは北朝鮮による拉致だということを準認定したとしても、それでももし間違ったらその結果はどういうことになるのかというのは容易に想像できるわけであって、我々としては、間違いない認定、判断、そしてそれによっての政府としての強い姿勢というものを示しながら無事の奪還というものを図っていくということが大事だろうと思いますし、認定制度そのものが、あるいは政府の拉致に対する考え方そのものの信頼性というものに、本当に根底から覆すようなことが起きてしまったときのことを考えると、そこはやはり確実なものを認定していくということが私は大事なんじゃないかなというふうに思っております。

高木(毅)委員 私なりに、また引き続き、準認定というようなことについても勉強、研究をさせていただきたいというふうに思います。

 実は、もう時間がなくなっているのでお聞きできませんけれども、副大臣、今週末フィリピンでASEANプラス3が行われるわけでございますけれども、ぜひその場でもこの拉致問題というものを十分アピールしていただきたいということをお願いだけさせていただきます。

 それから、北朝鮮人権法というのがさきの国会で成立をしたわけでございますけれども、これは官房長官に、御答弁は結構でございますけれども、十日から十六日まで北朝鮮人権週間になるわけでございますが、ぜひこの機会を通じて広く国民に対しての啓蒙等をやっていただきたいというふうに思います。

 ちょっと簡単に、この件についてはどのようにお考えか、ちょっとだけ、時間がないので恐縮でございますが、お願いします。

塩崎国務大臣 今お話がございましたように、北朝鮮人権法に基づいて、十二月の十日から十六日、北朝鮮人権週間ということで、積極的な啓発活動を政府としても展開していきたいと思っております。

 今までは政府が主催をするような集いというものがありませんでしたが、今回は政府の集いもありますし、それから私自身が主催するレセプションというのもやります。それから、海外からも関係者、つまり人権活動家とか、あるいは外国の拉致被害者本人、家族、こういった方々を政府が招聘するというようなことで、幅広く大勢の方に御参加をいただいて、この問題をしっかり知っていただく、そういう努力の場にしていきたい、このように思っております。

高木(毅)委員 ありがとうございました。

 ただ、国民はほとんど知らないと思います。ぜひよろしくお願いをいたします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

小島委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 今の高木委員の質問を聞いていまして、まさに同感でございます。私も、民主党の拉致対策本部の事務局長という立場で、先般、官房長官には申し入れをさせていただきました。いわゆる特定失踪者の認定を早くせよということも申し入れました。

 私も、先月十五日、二十二日と二回、福井、新潟に行かせていただきました。ある日突然忽然と家族を失った方の、御家族の思いを聞いてまいりました。まさに高木委員と同感であります。

 県警の方ともお会いをして申し入れました。それは、いろいろな捜査をこれまでやってきた、やり切っているというふうに私は判断をするわけでありまして、今この方々から新しい情況証拠、現場へ行きましたけれども、ではそこで、事件からもう二十年、二十五年たっているところで新たな事実がわかるか、新たな物証が出てくるか、新たな証言が出てくるかといったら、これは非常に可能性としてはほとんどないだろう、もう既にやってきて、やり切ったことの上で、さらに新しいものを集めてくるというのは現場の県警の方にも限界だろう。

 ひょっとしたら当時いた方もその場にいらっしゃらないかもしれない中で、私どもは、間違いを恐れて、結果としてそれで北朝鮮に間違ったメッセージを送るんじゃないか、それ以外の拉致の事件の解決に対して悪い影響を与えるんじゃないかというような趣旨の御答弁ございましたけれども、私は逆で、二十年間も三十年間も日本の政府からは何も言ってこない、日本の政府だってこの問題について半信半疑なんだと北朝鮮側は受けとめるわけですね。

 NGOの特定失踪者調査会の方々がこの問題を幾ら声高に叫んだところで、日本の国内で一部反共和国のプロパガンダをしているNGOがいるけれども、日本政府はいまだ半信半疑だ、だからいまだにこのことについては何も言ってこないじゃないかという誤ったメッセージを北朝鮮に送るということを非常に恐れるわけであります。

 私は、今高木委員もおっしゃいましたけれども、結果、間違えていたということで、実は何かの事情で蒸発してどこか別のところにいたんだ、しかしその方がどこかで生きていることがわかったら、それはそれでハッピーなことじゃないかというふうに思うわけであります。

 やはりここまでやり尽くしたわけですから、北朝鮮に拉致された可能性が捨て切れないというネガティブな言い方ではなく、恐らく北朝鮮に拉致されたんであろうという形で、私たちは、日本人が失踪して、どう考えてもその理由のない蒸発をした方々に対しては何らかの形で大くくりにしてでも、やはり政府としての、まさに準認定という言葉を使われましたけれども、そういう形で、ぜひこれから御検討をいただきたいなと私からもあえてこれは申し上げさせていただきたいと思います。

 さて、まず最初、ちょっと通告にはございませんけれども、これまで北朝鮮の拉致のみならず、ことしに入って七月のミサイル発射、そして先般十月の核実験という中で、これを受けて、我が国としてさまざまな制裁措置をとってまいりました。

 この制裁措置の効果について、官房長官、どのように御認識していらっしゃるか、その点だけ今、できれば副大臣にも伺いたいと思いますけれども、どのような変化があらわれているかということについて、この制裁の効果について、現状、どのような御認識を持っているか、ございましたら、ぜひ御発言いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 まず冒頭に、渡辺先生にはこの拉致問題に関しまして大変力を入れてお取り組みをいただいていること、改めて感謝を申し上げ、先般、中井先生を初め民主党の先生方にも御要望書をちょうだいいたしました。重く受けとめて、しっかりと対応してまいりたい、このように思うところでございます。

 今お話がありました北朝鮮の対応といいましょうか、どう考えるんだということでありますが、我々としては、七月のミサイルにおいても、あるいは今回の核実験においても、国連の場での制裁の決議をする際の原動力になったということがまず第一点、そして、核実験の際には、国連の制裁が決められる前に、日本の方が先に追加制裁を決めた。

 では、そういうことがどういう効果が出ているのかという御質問でありますけれども、端的に出ているのは、今回、六者協議が始まるように方向性としてはなってきて、今中身を詰めているところであります。具体的な成果が出なければいけないということで中身をきっちり今詰めつつありますが、まずこういうところに、大きな意味で日本の制裁プラス国際的な強い包囲網で圧力をかけていくことについて、北朝鮮がどう思っているかということが感じ取れるのではないかなというふうに思っています。

 それから一方で、今回の六者には日本は来なくていいよ、こういうふうに北朝鮮は言っているわけであります。それは、やはり日本が毅然たる態度で一貫してこの間臨んできているからこそ、そういうことを言っているわけであって、しかし、我々は六者の、北朝鮮と日本を除いた他の四カ国とはしっかりと共通の認識を持ちながら、こういったことにも関係なく、六者の場で北朝鮮に対してしっかり言うべきことを言っていく、そういうスタンスでやろうと思っておりますので、そういったところに効果は十分出てきていると思いますし、また、これから確実に具体的な成果を得ていくということが大事であって、成果が出ない限りは引き続き制裁を続けていかなければならない、このように考えております。

岩屋副大臣 ただいま官房長官からもお答えがございましたけれども、例えば、北朝鮮からの輸入をとめております。百五十億円規模で、いかにも小さいように見えますけれども、恐らく北朝鮮の経済というのは我が国の百分の一、あるいはもっと小さいという経済でしょう。そういうことからすれば、この輸入禁止というのもじわりじわりと効いてくる、私はこう思いますし、輸出は禁止しておりませんが、事実上、船も出入りしてはいけない、人も出入りしてはいけないということであれば、そこにも影響も及んでくると思いますし、日本だけではなくて、国際社会の国連決議一七一八に基づく制裁というのは、北朝鮮にじわりじわりとダメージを与えていくに違いないと思っております。

 北朝鮮の国内事情は必ずしもつまびらかではありませんが、なかなかこの冬も食料事情等々厳しいと聞いておりますので、そういう中で六カ国協議にも出てこざるを得ない。そこで、何らかの具体的な成果をやはり我々としてはきちっと上げていくということを目標に努力をしていきたい、こう思っております。

渡辺(周)委員 後ほど質問しようと思っているんですが、北朝鮮が夏の水害の影響、あるいはさまざまな制裁措置によって、大変国内の食料事情を含めて厳しいのではないかというかなりウオッチャーからの指摘もあるわけであります。

 だからこそ、追い詰められた金正日は、六カ国協議で核保有国として出席して、核保有国としてとにかく交渉したい。その上において、スーパーノートと呼ばれるにせ札をつくって、このにせ札というのは、これはもう通貨テロですから、国家の基軸通貨を精巧なものをつくって、とにかく世界にばらまくことによってまさに国家主権を侵害しようとしている、これは二国間交渉をやる上での、恐らく北朝鮮側は核保有、体制保証を認めさせるかわりにそれは放棄するというようなことを交渉材料としてくるんだろうとは思いますけれども、この米朝二国間協議、さきの中間選挙の結果を受けてアメリカ国内の世論も変わってきた。

 先般、ボルトン国連大使も辞任をするということが発表されたわけでありますけれども、まず、そういうアメリカ国内の変化をどのように外務省はとらえているかということ、北朝鮮政策に何か変化はあるのかということが一つ。

 それから一つ、この六カ国協議の中で核保有論議をされると、今までの北朝鮮問題、我々からすると日朝問題だったものが、核という問題が出てくることによって、これは非常に北朝鮮対ワールドワイドな、世界の安全保障問題になってしまうということになると、拉致の問題というのを議論していく上で、先ほど日本は来るなというような北朝鮮の暴論、暴言がありましたけれども、先ほども言及されましたが、その中で、核を持たせないということの一つの条件の中で、これ以上もう日本にあれこれ言わせるなという北朝鮮も当然思惑があるわけでありますので、そこについてやはり歴史の歯車が大きく動こうと、歴史の歯車が動くかどうかわかりませんが、外交交渉が大きく動くときに何か片隅に追いやられるようなことがあっては絶対いけない。

 かつて、余談かもしれませんが、ソ連によって大韓航空機というのがサハリンの上空で撃墜をされました。当時のレーガン政権、シュルツ国務長官は当時のソ連に対して非常に厳しい言葉を浴びせたわけでありますけれども、その後、米ソ冷戦が終わりました。アイスランドのレイキャビクで米ソの首脳が握手をして、今やもうロシアは西側の一員となった中で、あの事件とは一体何だったのか、真相は解明されぬまま、何か歴史の海底の藻くずと化してしまったのではないか。

 つまり、大きな歴史が動かされるときには、どこかで小さな犠牲が、小さなとは言いませんけれども、世界の大きな中からいくと、この問題が小さなこととして追いやられてしまう、そういうことが決してないように、この六カ国協議にぜひ日本としての存在を示していただきたい。

 この問題はとにかく核の問題と同格で扱っていただきたいと思うわけでありますが、その点につきましてどのようなお考えを持っているか伺いたいと思います。

岩屋副大臣 今渡辺先生からボルトン国連大使の退任についてのお話がございましたけれども、これは、御承知のように、上院で了解を得ることができなかったことに基づく人事だろうというふうに思っておりますが、米国が、北朝鮮に対する対処のあり方について、それによって国連の舞台において態度が変わってくるということはあり得ないというふうに私ども考えておりまして、米国はまた拉致の問題についても極めて我が国と認識を共有していただいている、こう思います。

 もう一つ、渡辺先生が今、六カ国協議の中で核の問題ばかりやっていると、ともすれば拉致の問題が埋没するのではないかという御懸念だと思いますが、そういうことがないように、我が国としては米国を初め関係各国と緊密に協議をしております。

 拉致の問題に対する決意については、さっき高木先生とのお答えで申し上げましたけれども、被害者全員が生存しているという前提に立って、この問題を必ず成果を上げるべくこれからも努力をしていきたい、こう考えているところでございます。

渡辺(周)委員 六カ国協議に復帰をするということが実現するかどうかは北朝鮮のこれまた交渉戦術の一つだと思いますけれども、私が聞いている中では、かなり北朝鮮の状況は苦しい。この冬を越えるにはまたさまざまな餓死者が出るのではないかというようなかなりのウオッチャーの見方もあるわけであります。

 そんな中で、先般、少々時間がありませんからはしょりますけれども、アメリカと韓国が金正日政権が崩壊したときの一つの概念行動五〇二九というものを来年の末までに策定をするんだ、これは、北朝鮮で何かいわゆる偶発的なことが起きた、五つに例示されています。

 一つは北朝鮮でのクーデターや内戦の発生、次が北朝鮮政権が核兵器やミサイルなどの統制権を失った場合、三つ目が大量の脱北者の発生、四つ目が開城や金剛山、いわゆる南北交流事業でやっている事業が何らかの形で人質にされて、韓国人人質が大量に発生した場合、あるいは大規模災害が起きた場合に、そういう意味での、いわゆる武力の行使ではないけれども有事と呼べる、これは極東の非常に、北朝鮮の体制崩壊が起こる場合に、アメリカと韓国がこの対応策を具体化するというような報道が一斉に韓国発でされたわけでありますけれども、この点について日本の政府はこの事実、事実ということで認識しているかどうか。

 そして、その場合に、北朝鮮がまさに今のような状況が起きた場合には、韓国が、国境を接している韓国でありましょうけれども、当然我が国にも大変な被害が及ぶ、大変な影響を受けるわけであります。そういう事態については、当然この米韓の考え方に対して日本としてコミットしているのかどうか、その点について伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今新聞報道にもございます、米韓で北朝鮮の政権に何かあった場合に関するシミュレーションが行われているという報道があったことは我々もよくわかっているわけであります。

 米韓がやっていることについて、我々として、政府として正式なコメントをするのは差し控えたいと思いますが、当然のことながら、我が国としてもあらゆる事態に対応できるように常時準備をしておくということが国家として当然のことでありまして、その中にあって、同盟国たる米国との連携をどういうふうにするのかということ、あるいは遺漏がないようにどういう対応をすべきかということを我々が考えて、常日ごろから準備しておくことは当然のことだと思っています。

 そのためにも今回の拉致問題対策本部というものができているわけであって、そういうところでも、どういうことが必要なのかということも我々は常時あらゆる事態を想定しながら考えていこうということでもございます。

 ただ、具体的にどういうことをやっているのかということは、その中身についてはちょっと申し上げるわけにはまいりませんが、しっかり、ふだんからの準備というのが大事だということは間違いないと思います。

渡辺(周)委員 以前、どこかの委員会で、ワールドカップサッカーがたしか北朝鮮で、結果としては北朝鮮のサポーターと観衆の暴動によって北朝鮮で試合が開催できなくなって、無観衆試合がどこか第三国で行われたときに、あのとき私は国会で質問したんです。

 大量の日本国民がサポーターとして行って、邦人保護が、外務省は国交がないからできない、その場合、選手やサポーターをだれが一体守るのか。これは、外務省として邦人保護という、国民を守るということを果たせないではないかということを質問しました。結果的に、サッカーの試合自体がなくなったものですから、そのような心配をしなくてよかった。

 そのときに、たしか政府の答弁の中で、北朝鮮は西側の国と国交を持っている。ヨーロッパの各国と一時期、一九九〇年代に国交回復を随分急ぎました。イギリスであるとか、あるいはドイツであるとか、イタリアもそうですかね、何カ国か西側の国と国交を結んでいるから、そういうときには、そういう国にも当然連携を密にして邦人の保護を求めなきゃいけないだろうというような旨の答弁がありました、ちょっと正式に覚えていませんが。

 私は何でこういうことを申し上げたかといいますと、北朝鮮と国交を結んでいる、我が国とある意味では価値観を同じくする西側の国に対して、北朝鮮が崩壊をしたときに、やはりこちらから事前に情報を提供しておく。

 先般、福井で地村さんとお会いをしたら、地村さんが、私に対して何も言っていないというふうにマスコミ等から批判がされているけれども、自分自身が知る限りのことについては私はかなり話しているつもりです、話しましたというようなことをおっしゃっていました。これは多分、恐らく、捜査上の今後のことや、外交交渉の一つの武器として表に出せないことがあるのは百も承知でございます。

 それをつまびらかにせよとは言いませんが、例えば、拉致された日本人が北朝鮮のここの招待所にいるのではないか、日本人と思われる人たちが働かされているのはここではないか、日本人が働かされているのここではないだろうか、こういう情報を、今いらっしゃる日本に帰ってきた方々、あるいは北朝鮮から逃げてきた脱北者の方々、最近よくテレビでも元軍人やら元工作員やらいろいろな方々が出てきますけれども、こういう方々から集めた情報を日本政府だけじゃなく当然西側のほかの国にも持って、もし北朝鮮が崩壊したときに、やはりそこに救出に行ってくれ、あるいは、こういう情報を持って何かのときにはここで救ってくれ、つまり、それをお願いしておくべきじゃないかなと思うんですね。

 どなたかおっしゃっていましたけれども、北朝鮮が崩壊したときには自衛隊の特殊部隊が平壌に行って救出するんだと言っていますけれども、確かにそういう部隊も後続として行くことは必要でしょうけれども、現実問題、おり立ったって右か左も、何がどこにあるかわからない、通りの名前も地名もわからない中で、どうやってその北にいるまさに同胞を救うのかということについては、今北朝鮮と国交を持っている西側の国々、大使館を持っている国々、恐らくその中には情報機関の人間、ひょっとしたら特殊な任務を負っている方もいるでしょう。ぜひそこで、我々として事前から情報を共有して、何かのときには救出に行ってほしいということをやはり私は今から準備しておくべきだろうと思います。

 それから、もう一つつけ加えますと、あるウオッチャーの方と会いましたら、そこにいらっしゃる西側の外国人の方というのは、実はユダヤ系の方が多いんだと。なぜかといいますと、イスラム圏に対して北朝鮮が武器の輸出あるいはさまざまなテロ物資を出すことに対して大変目を光らせている。つまり、実はイスラエルの脅威となるような国々に対しての監視の意味でもあるという指摘もあります、これはあるウオッチャーが言っていましたけれども。

 そうであるならば、例えばイスラエルであるとか、あるいはユダヤ系の組織と、北朝鮮の国内にいる人たちに対して、日本の拉致問題の認識を持っていただいて、北朝鮮の国の中で招待所がここにある、こういうところで何かにせ札をつくっているのではないか、あるいは日本語教員をしているのではないか、対南政策のための軍事基地があるのではないか、こういうところに日本人がいる可能性があるということを、やはり私たちは、持っている情報をある意味では共有しておく、いずれのときかには協力してもらうという体制が必要ではないかと思います。

 政府としてはそんなことはわかってやっているよ、言えないけれどもやっているよとおっしゃるのかもしれませんけれども、その辺について何か御認識を持っていらっしゃったら、何か御答弁いただければ、ぜひ、官房長官、そして副大臣にも。

塩崎国務大臣 今先生おっしゃったように、我々としては、あらゆる情報を持っていなければ的確な対応というのはできないんだろうと思っております。

 今回、拉致問題対策本部をつくらせていただきましたが、ここの中でも、情報分析のセクションをつくって、もちろん企画立案という、では、どういうアクションをとっていくんだということも、今までにはなかったセクションとして立ち上げているわけであります。そういう中で、今先生御指摘ございましたが、あらゆる情報を持って、我々としての目的である全員の無事奪還に向けて何ができるのかということを今考えつつある、そして企画をしつつあるということでございます。

岩屋副大臣 ちなみに、北朝鮮と国交を有する国々というのは百五十四カ国ございまして、当然、外務省として、北朝鮮問題に関する意見交換を行ってきております。

 私は、きのう、欧州安全保障会議、OSCEという会議に行ってきたんですけれども、メンバー国五十六カ国、日本は協力国として呼ばれておりまして、スピーチの機会がありましたので、核、ミサイルはもちろんですが、特に拉致を強調して訴えてまいりました。それから、二国間の、バイの協議でも、拉致問題に関する関心をさらに持っていただきたい、それから情報を提供していただきたいということをお願いしてきております。

 ヨーロッパでは、英、独、イタリアを初め四十七カ国と北朝鮮は国交を持っております。アジアでは、中国、インド、インドネシアを初め十八カ国と持っております。我が国は、欧州、アジア地域において北朝鮮と国交を持っている国には全部国交を持っておりますので、先生の御指摘は全くそのとおりだと思いますので、引き続き努力を続けてまいりたい、こう思います。

渡辺(周)委員 時間がなくなります。本当ははしょる前に聞きたかったんですが、北朝鮮の国家体制崩壊の兆しというのは日本政府としてどう認識しているのか。これは前段で聞かなきゃいけなかったんですけれども、ちょっと時間がないもので飛ばしてしまいました。

 それについてお答えにくいかもしれませんけれども、米韓がこういうシミュレーションをし始めたという中で、日本として北朝鮮の国家体制崩壊の兆し、これについては現状どう御認識しているのか。官房長官、いかがですか。

塩崎国務大臣 そういう判断はやはりインテリジェンスにかかわる問題で、国家としてどういうふうに判断をしているのかというのは差し控えたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 多分そうお答えになるだろうと思ったんですけれども、いずれにしても、そういうパターンを、いろいろな可能性を考えて、していくのではなくて、しているということでないと、もう既にそういうことはやっているんだというふうにぜひ言っていただきたかったと思います。

 さて、もう時間がありませんので、ちょっとまとめて伺います。

 その中で一つ、大量の難民が発生した場合、海を渡って日本にやってくるというよりも、まず、例えば瀋陽の日本領事館、駆け込みがありましたけれども、大勢の脱北者が詰めかけることになるだろう。北朝鮮人権法によって、帰国の実現に最大限の努力をするということを国の責務として明記をしたわけでございます。ところが、今、瀋陽の領事館は、脱北者の方が何名かいらっしゃって、実はもうここはいっぱいなんですね。

 例えば、こういう方々から、人道的に支援をすることはもちろんでありますが、この中からいろいろな新しい情報が入ってくる、脱北者ルートから今たくさんの拉致に関する情報も当然得られるわけでありまして、安明進が北朝鮮から逃げてきたからこそ、横田めぐみさんの存在がわかったわけであります。

 我々としても、やはり脱北者の保護、そして脱北者からの情報収集ということも大変大きなインテリジェンスだと思いますが、一つには、こうした現場と本省で、これは外務省ですか、どういうことを考えているのかということ、それから官房長官には、その数が大量に難民として発生した場合も当然シミュレーションしているかどうかということについて、まとめて伺いたいと思います。

 答弁、簡潔にお願いします。

岩屋副大臣 先生御指摘の脱北者の問題につきましても、人権法の趣旨を十分に踏まえて、外務省としてもしっかり対応していきたいと思っております。

 どういう想定をしておるかということについてはちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、あらゆる事態を想定して、適切に対処できるように準備をしているところでございます。

塩崎国務大臣 難民が発生した場合、どういう対応を日本ができるのかということになると、いろいろな役所にかかわってくる問題がたくさんあります。今先生御指摘のような準備もしなければいけないということもあって、政府を挙げて、これは絶えず、あらゆる状態が起きてもいいようにということで、連携をとって検討しているところでございます。

渡辺(周)委員 それでは、最後の質問になりますけれども、そうした場合、例えば、日本が、北朝鮮にいる我々同胞に向けて「しおかぜ」がメッセージを送り続けているわけであります。

 もし国家が崩壊するようなこと、北朝鮮国内ではわからないけれども、国際社会から見てこれは状況がおかしいというときに、当然何らかのメッセージを発信しなきゃいけない。多分、国内にいても、情報統制されていて、あるいは情報が混乱していて、何が起きているかわからないという方々に対して、やはり我々はいち早くメッセージを送らなければいけないわけであります。

 今ももちろん、拉致された日本人の方々にメッセージを送り続けております。だからこそ妨害電波が北から出されているわけでありまして、これは大変な効果を有しているだろうと思います。まさに、電波による日本からのメッセージというのは北朝鮮に大変なダメージを与えております。

 そして、もし、万が一北朝鮮が崩壊するときには、これは大変な命綱になるだろうというふうに確信をしているわけでありますけれども、この「しおかぜ」に対しての支援について、当面、本部としてどう考えているのか、最後の質問を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 先般、拉致被害者の御家族の皆様方あるいは特定失踪者の御家族の皆様方とお話をしても、この「しおかぜ」に対する、あるいは北朝鮮にいる被害者の皆様に対する発信というものが極めて大事だということを皆さん一様に言っておられました。

 政府としては、このような情報発信には、やはり強化をどんどんしていこうじゃないかということで今検討しているところであります。周波数の確保とか、あるいはNHKの送信所の施設の利用とか、そういうようなことをいろいろ考えておりまして、調査会が運営をしている今の形のままで直接補助金を出すことはなかなか難しいということで、では、どうやったら実質的な、効果のあるサポートができるのか、そういうことを今検討中でございまして、先生の御指摘については、正面からとらえて対応してまいりたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 とにかくこの問題については、対話と圧力と言われますけれども、圧力を背景にした対話でなければ効果はあらわれない。今政府が取り組んでいる、残念ながら生ぬるいという部分もございますけれども、我々も、建設的な提言をしながら、ぜひこの問題の解決に向かって取り組んでまいりたいと思います。

 終わります。

小島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭に小島委員長から視察報告があり、また、既に高木、渡辺委員からも発言がありましたけれども、私も福井、新潟の調査に参加をいたしまして現場に立ち、拉致被害者の地村保志さん、曽我ひとみさん、また特定失踪者の御家族の話も直接伺って、県、市当局や県警等の関係者の説明も受けて、改めて、一刻も早い拉致問題の全面解決をという思いを強くいたしました。そのために日本政府が果たす役割、そして外交努力が非常に大きい、いよいよ重要になっているということで、幾つか質問したいと思います。

 まず初めに、六者会合の問題、先ほど来ありましたが、塩崎官房長官に伺います。

 前回、七月十日の当委員会で、ミサイル問題直後でしたが、質疑があって以降、さらに北朝鮮による核実験という暴挙が行われた。これに対して、国際社会は、国連安保理決議一七一八に基づいて一致結束をして、そして平和的、外交的に解決をする努力を重ねてきた。その結果、具体的な日程はまだ未定ということでありますが、北朝鮮を含めて六者会合の再開で合意するところまでようやく来たということだと思います。

 中国、韓国、ロシア、米国と、いずれも関係国が一様に再開そのものについては評価、歓迎をして、ライス米国務長官は、十一月中の開催合意に至らなかったもとでも、先月三十日だと思うんですが、この再開というのは既定路線だ、そして、次回協議の準備をしており、準備に時間がかかるのであれば、時間をかける価値があると。まさに急がば回れというような思いなのかなということで、腰が据わっているなと私はある意味思いました。

 そこで、日本政府として、現時点での六者会合の再開の見通しと、関係国との協議状況はどうなっているか、さらに官房長官は、この協議再開が核問題それからミサイル問題とともに拉致問題の解決にとってどんな意義があるというふうにお考えか、答弁をお願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 米中朝の話し合いの中で、六者会合を再開するということが決まった、このこと自体は歓迎すべき動きだろうというふうに思っています。先般もまた会合が北京で行われました。しかしながら、再開の時期が決まっていないわけであります。

 では、それをどう考えるのか、どういう見通しなのかということでありますけれども、今、ライス国務長官の話を引用されておりましたけれども、やはり中身が大事であって、ただ再開をする、あるいは、核保有国として北朝鮮が帰ってくるなんということは我々としては断固として阻止せないかぬ。したがって、この間、ハノイでAPECの際に、米韓日の六者会合の代表が集まって、非核化の問題について、具体的な措置について、どういう条件が必要なのかということを議論したわけであります。それを北朝鮮に対して説明して、その中身を固めた上で再開をしようということなんですが、その中身について合意が得られなかったということで、まだ時期が決まっていないということになっています。

 しかし、これからさらに努力を重ねて、中身のある、具体的な成果の上がる六者会合を再開するということが大事でありますから、そういう意味では、中身のないままに急いで開くという姿勢は私たちはとるつもりはありませんが、できるだけ早く、具体的な成果が得られるような六者会合の再開を実現すべく、最大限の努力をしてまいりたいと思っています。

 もちろん、再開されたときには、我々としては、この拉致の問題というものを正面から取り上げるつもりでありますし、他の六者の仲間の国々もそれについては賛同をしてくれているところでありますので、引き続き努力をしてまいりたい、こう思っております。

笠井委員 北朝鮮の非核化という問題とあわせて、拉致問題にとってもいい枠組みだという認識で言われているんだというふうに思います。

 政府は、拉致問題の解決のために国際社会の理解を求めることを重視してきたと思います。そこで、国際社会の理解と、そして連携強化ということで重要な舞台になるのは国連というのがあるわけですけれども、その動きについて岩屋副大臣に伺いたいんです。

 国連では、昨年に続いてことしも既に、総会の第三委員会で、日本人拉致問題に言及した決議が採択をされた。そして、そういう動きがさらに進んでいるというふうに思うんですが、この表決の状況とことしの決議の特徴、それから、総会全体でもこれから決議が採択になるという見通しだと思うんですけれども、その見通しと、その決議の意義をどう見ているか。それから、あわせて、ことし三月に設置されて日本が理事国になりましたが、国連人権理事会など、今後国連への働きかけをどう強めていこうと考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。

岩屋副大臣 先生御指摘がありました国連の総会第三委員会においてどういう状況であったかということでございますが、我が国がEUと協力して作成、提出した北朝鮮の人権状況決議、これは昨年より多数の支持を得て採択されたところでございまして、賛成九十一票、反対二十一票、棄権六十票ということでございました。

 決議の中身がどうだったかということでございますが、これは先生も恐らく資料をお持ちだと思いますが、昨年よりも内容が強化されております。

 ポイントの一つは、拉致問題が国際的な懸念事項であるということが明記されている。それから、他の主権諸国家の国民の人権を侵害するものであるという文言も追加されております。それから、北朝鮮に対し人権関連決議の履行を要請するための国際的連携強化が必要であるという文言も追加をされておりまして、昨年よりも強化をされた内容になっているということでございます。

 それから、本会議ではどうかということでございますが、ただいま、ありとあらゆる外交シーンを通じて、総会本会議での採択に向けて努力を継続しているところでございます。

 それから、御指摘のありました人権理事会につきましては、我が国としては、今後とも国連の場において適切な形でこの拉致問題を含む北朝鮮の人権状況を積極的に取り上げていきたい、この理事会の場を通じてさらに運動を強化していきたい、こう考えております。

笠井委員 拉致問題を初めとして核問題及びミサイル問題などの諸懸案を解決する上で、日朝間の包括協議という枠組みがあるわけですけれども、ことし二月に第一回が行われて、そして、目に見える具体的な進展が見られないままになっている。麻生外務大臣も、この間、六者会合と日朝協議というのは車の両輪のようなものだということで言われて、相互に補完し合う形でいくことが重要だという趣旨を繰り返されてきました。

 その後、北朝鮮によるミサイル発射とそれから核実験という暴挙が強行されて、現時点では、まず六者会合の再開の中でのことだというふうに日朝間のことも思うんですけれども、副大臣に端的に伺いますが、この日朝包括協議の再開の位置づけと見通し、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

岩屋副大臣 先生御指摘のとおり、二月の協議においては、拉致の問題を含めて、いずれの問題も進展が見られなかったわけでございまして、大変私ども遺憾に思っております。また、四月では、北東アジア協力対話、これは民間レベルでしたが、この日朝接触がございましたけれども、ここでも進展が得られなかったところでございまして、正直、次回協議開催の見通しは今のところ立っておりません。

 ただ、官房長官からもお答えがありましたように、対話と圧力という基本方針で、私どもは何も対話の道を閉ざしているわけではございません。圧力をかけながら北朝鮮と対話をし、拉致の問題を解決していくというのが基本方針でございますから、粘り強く取り組んでいきたい、こう思っております。

笠井委員 最後になりますが、今対話と圧力で粘り強くという立場だというふうに言われたわけですが、官房長官、日朝間の拉致問題などの諸懸案を包括的に解決して国交正常化に向かっていこうということで、日朝平壌宣言という方向があるわけですが、これは昨年九月の六者会合の共同声明をもって、日朝間の合意にとどまらず、やはり六者会合の合意という国際的な裏づけを持つに至っている問題だと思います。

 その後、北朝鮮によってミサイル発射とそれから核実験強行という重大な事態があったわけですが、そのもとでも、安倍総理は答弁の中で、平壌宣言というのは両国の約束だ、そして、生きているからこそ、この趣旨、精神に反して行動している北朝鮮側がこの精神に戻るべきだ、この文書に北朝鮮が戻ってくれば、まさに国際社会に受け入れられる国になるし、この文書に戻って行動していけば、結果として日朝の国交が正常化する、その道に戻ってくるように我々はさらに北朝鮮を促していきたいんだということを言われています。

 現時点での日朝平壌宣言と六者会合の共同声明とこの有効性について、その到達点に立った上での力強い外交努力という点について所見を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 総理の答弁の中にあるように、日朝平壌宣言と共同声明、昨年の九月の共同声明でありますが、これが、この核実験、ミサイル発射によって北朝鮮が違反をしている、これは間違いないことだと思うんです。しかし、ではこれでそれぞれが無効になったか、それはやはり違うのだろうと思うんですね。総理がおっしゃっているように、やはりそのまま約束は約束でありますから、北朝鮮がその原点に立ち返って、それぞれやるべきことをやっていかなければならないということでありますから、当然、共同声明、そして日朝平壌宣言に従って、核兵器あるいはミサイル計画、それから拉致問題、こういった問題に正面から北朝鮮が取り組んで解決をしていくという中にあって初めてさまざまな諸問題が解決をしていくのではないか、こういうふうに考えております。

笠井委員 政府としてもしっかり努力をしていただきたいと思います。

 終わります。

小島委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 官房長官にお伺いいたしますが、まず、外務大臣の核兵器発言についてでありますが、この発言と北朝鮮に対する我が国の外交姿勢という関連についてお伺いしたいと思います。

 外務大臣の核兵器発言は国是たる非核三原則を揺るがすもの、我々はそういう懸念を従前から主張してまいりました。対外的にも我が国の政策について誤ったメッセージを発しかねない、そういう点でも見逃せない、このように言わなければなりません。

 しかも総理は、そういうたび重なる外務大臣発言について、この間、注意したという話は全然聞いていないわけでありまして、そのことが諸外国から我が国の本音はとの不信を抱きかねない、そういう懸念を持ちます。ひいては、今後のアジア外交に非常に目に見えないバリアをみずから張ることにもなりかねないのではないか、こういう懸念を持つわけでありますが、その点について官房長官の見解をお伺いしたい。

塩崎国務大臣 麻生大臣の御自身の弁明というのが当然あったと思いますけれども、政府としてどう考えるのか、こういうことであろうと思います。

 我が国が核兵器を持たない、非核三原則、持たない、つくらない、持ち込まないということで非核三原則というこの原則は、歴代の内閣が何度も何度もはっきり表明をしてきたことであり、また、安倍総理もこれを明確に発しているところでございます。

 したがって、先ほど誤ったメッセージを送るのではないか、こういう話でありましたが、少なくとも我々としては、歴代の内閣でこういう政策をとり続けるということを、安倍内閣になっても同じように、非核三原則はもう大原則ということで守り続けるということを宣言しているわけでありますから、アジアの諸国を含めて、国際社会に対して十分これは周知徹底されているのではないかというふうに考えておりますし、また、あしたからフィリピンで一連の会合がありますけれども、こういった会合においても、安倍総理からそういった面についての正しいメッセージというのは発し続けてまいりたいというふうに考えております。

重野委員 それでは次に、安倍内閣の今後の北朝鮮外交の基本は何かという点についてお伺いいたします。

 北朝鮮が核実験をした、そのことに対して、外務大臣の発言あるいは自民党の役員の同様な発言がなされました。それに対して、今私は重ねて申しますけれども、総理は何らコメントされておりません。こうなると、結局、核を持つ、バランス・オブ・パワーという言葉がありますが、それを外交原則としているんじゃないかというふうに見られても仕方ないんじゃないかということを私は懸念するわけですね。その点についてはどうなんですか。

塩崎国務大臣 それはもう、先ほど非核三原則について政府としてどういうふうに考えているのか申し上げたとおりでありまして、繰り返し申し上げるようなことでもないというふうに思います。

 いずれにしても、北朝鮮が核を保有するということは許されないことでありますので、日朝平壌宣言の原点、そしてまた六者会合の中で出てきた共同宣言、こういったものに基づいて、核の問題、拉致の問題、ミサイルの問題、正面から取り上げて、対話と圧力という原則の中で目的達成に向けて邁進をしてまいりたい、このように考えております。

重野委員 核問題は、いわゆる六カ国協議の最大のテーマであります。また、日朝包括協議にとっても三本柱の一つであります。にもかかわらず、その柱の一つに関連して我が国が、しかも交渉の当事者であります外務大臣が、核兵器保有に言及し、総理から何らの注意も受けない。となれば、六カ国協議において我が国はどのような位置を占め得るのか、また日朝協議についての展望をどこまで切り開けるのか、こういう点について私は本当に重い懸念を持っておりますが、重ねて官房長官の見解を賜りたい。

塩崎国務大臣 日本の非核政策については繰り返し申し上げません。もう原則ははっきりしておりますし、安倍総理もはっきり言っておりますし、また自由民主党の総裁としても、自民党の中で、そういったものを正式な場で議論することはあり得ない、こういうふうに言っているわけでありますから、誤ったメッセージはないと思っております。

 そして、北朝鮮のさまざまな問題については、今のような外務大臣の発言に関して六者の中での立場はどうなんだ、こういう話でありましたが、我々、六者の中で、北朝鮮以外の五者はしっかりと連携をして、お互いに緊密な連携をとりながら、今、所期の目的達成のために中身を詰めているところでございますので、引き続きその努力を続けていきたい、このように考えております。

重野委員 同じ答弁になっていますが、私は、やはり今、六カ国協議が緒につくかどうか、さらには北朝鮮との関係がどうなるかという重大な時間帯になっておると思うんですね。そのときに、私は、やはり核に対する閣僚の発言というものについては、きちっと抑制的でなきゃならぬという立場に立ちます。

 その点について、官房長官も、今後こういうことがたび重なって発せられないように、きちっとそこら辺の統制というのか、統制という言葉は不謹慎かもしれませんが、徹底を図ってもらいたい、このことがこの国の国益に合する、私はこのように思っています。

 以上、質問を終わります。

小島委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 新潟の鷲尾英一郎でございます。

 拉致の特別委員会では、私は初めて発言させていただきます。

 まずもって、私、横田めぐみさんが通われていました新潟市の寄居中学校というところには、中学校時代から何度も足を運んだところでございます。そしてまた、物心ついたときから、新潟の海、浜辺を夜一人で歩くな、夜一人で歩くと、ずた袋をかぶせられて北朝鮮に拉致されるぞということを、昔から新潟では、これはもう十五、六年も前から言われておりました。幸いにも、私が物心のあった折には、その小さい世界の中では拉致された方々というのはお見えになりませんでしたが、そういううわさが流れるほど、現地の方では北朝鮮が犯人じゃないかという、ある意味確信めいたものがあったんだ。それについて、やはりもっともっと早く対処できなかったのか、これが私、非常に残念でなりません。

 先日、委員長を初めとしてほかの委員の皆さん方と、福井県そして新潟県の特定失踪者の方々、そして、拉致被害者であられた地村さん、曽我さんとお会いする機会がありました。曽我さんは、いつ迎えに来てくれるんだろうかということを北朝鮮にとらわれの身となった身の上で考えておったということでございます。拉致被害者の皆さんは今もそういう思いで北朝鮮でとらわれの身になっている、このことを、行政そして立法、強く受けとめて、全力でもって奪還をしていただきたい、そして、していきたいということを冒頭申し上げたいというふうに思います。

 さて、岩屋副大臣、ちょっとお時間がないということですので、まずもって岩屋副大臣の方に御質問させていただきたいと思います。

 アメリカでの対北朝鮮政策、変化の兆しが見えておったということが、先ほど渡辺委員の方からも質問があったと思いますが、一方で、目を転じますと、六者会合の再開に向けて、中国は活発に今北朝鮮の説得に乗り出しておる。核実験をやったときも、すぐトウカセンさんを派遣したり、非常に積極的である。他の関係国とも当然協議を積極的に行っておるところでございますが、政府はこうした中国の動きというのをどのようにとらえておられるんでしょうか。特に、六カ国協議の議長国としての中国との連携というのは当然重要であるというふうにお考えになっていると思いますが、そこの御見解をお願い申し上げます。

岩屋副大臣 まず先生、冒頭、米国のことをお触れになられましたが、私どもとしては、選挙の結果がどうあれ、米国の北朝鮮政策に変更はないというふうに認識をしておりますので、そのことは冒頭に申し上げておきたいと思います。

 それから、今、中国の動きについてお話がございました。確かに、中国側の働きかけによりまして、十月末及び十一月下旬に、北京で六者会合の米中朝の首席代表レベルの協議が行われるなどいたしまして、中国は議長国でございますから、六者会合の再開に向けて積極的に努力をしていただいている。このことについては、日本としては評価をさせていただいているところでございます。

 ただ、何も私どもが置いてきぼりになっているわけではございませんで、実は緊密に連携、連絡をとらせていただいておりまして、議長国である中国は議長国としての責任を果たすべく、今努力をしていただいている。私どもとしては、関係各国、もちろん中国も含めて、緊密に連携をして、会合の再開に向けて最大限の努力をしていきたい、こう思っています。

鷲尾委員 続きまして、韓国に目を転じますと、北朝鮮が核実験を行ったにもかかわらず、現在もなお金剛山プロジェクトや開城プロジェクトという観光事業、実質的には北朝鮮に対する資金援助の意味を帯びているのではないかというような意味づけもなされている事業ですが、こういうある意味実質的な支援を継続している韓国というのは、国際的に我々が連携をしながら安保理決議をしっかりと履行する、履行して北朝鮮に圧力をかけていくということが今の関係当事者各国の態度であるべきだと思うんですが、これに対して、こういう関係各国の態度に、ある意味、反しているのではないかというふうに思われる側面もあるわけです。

 六者会合を通じた北朝鮮問題の解決という意味において、韓国ももっともっと共同歩調をとるべきであって、こういうような実質的な資金援助みたいな事業についても、正直申し上げてこれはまずいんじゃないかというふうに私なんかは思うわけですけれども、政府側はどういうふうに思われているのかということを御答弁をお願いしたい。

岩屋副大臣 韓国の動向に対する先生の御質問ですが、韓国は、北朝鮮の核実験実施の発表直後に盧武鉉大統領が北朝鮮を厳しく非難しております。また、国連決議一七一八号は、韓国はメンバー国ではないんですが、共同提案国となっております。したがって、韓国にしてみると、北朝鮮の核実験ということに対しては非常に厳しい態度で臨んでいるというふうに私どもは承知をいたしております。

 それから、先生御指摘の金剛山観光、開城の工業団地開発事業についてですが、我が国は韓国側から、これらの事業の取り扱いについて慎重に検討しているという説明を受けております。日本からは、こういう説明を踏まえて、韓国の自主的判断を尊重するというふうに外務大臣からも申し上げておりますが、もちろんその心は、まさしく慎重に検討してもらいたいということを申し上げているのでございますが、最終的には韓国が自主的に決める事柄でございますので、そういう表現にとどめているということでございます。

鷲尾委員 韓国では、特に最近、三八六スパイ事件というのが起こりまして、産業界、政界に広く、金正日を一心に思うという意味で一心会ですか、組織が広がっているという事件が摘発されておりますし、そういう意味でも日本の立法府は大変に懸念をしているということを政府側に申し上げたいというふうに思います。

 もう一点でございますが、核実験後にできた国連決議の一七一八号ですけれども、一七一八号は、これは当然、北朝鮮に対して、核兵器を廃棄します、すべての国連加盟国に大量破壊兵器及び奢侈品の輸出禁止措置を求めているということでございますが、改めて、こういう国連の制裁というのが金正日体制に対してどういう影響を及ぼすのかというところも、政府側としてどうとらえているのかということを御答弁願えたらと思います。

岩屋副大臣 国連決議一七一八号に従って各国がその措置を実施していけば、今後、政治的、経済的に、金正日体制に少なからぬ、あるいは相当な影響を及ぼしていくというふうに私どもは考えております。

 他方、北朝鮮がどうなっていくかということについては、先ほど官房長官の御答弁もございましたように、インテリジェンスに関することでございますので、我が方の見方を今申し上げるわけにはいかないというふうに思っておりますが、北朝鮮の人事の動静とか、後継者をめぐる動きでありますとか、そういうものを注意深くウオッチしていかなければいけないと思っております。国連決議一七一八に基づく各国の制裁が、だんだんと、じわじわと北朝鮮体制にダメージを与えていくに違いないというふうに考えております。

鷲尾委員 岩屋副大臣、ありがとうございました。

 続きまして、質問をかえまして、今度は内閣官房に対する質問に移りたいと思います。

 せんだって福井県と新潟県を視察した折に拉致被害者の方がおっしゃっていたことの一つに、被害者支援法について、非常に主体的に語る、積極的に語るというわけではないんですが、この支援法が当然今改正なされているわけでございますが、このことについても言及がございました。

 資料をいただきまして、現在では、帰国被害者等の前年の恒常的な所得が五百八十万円を超える場合においては五百八十万円を超えた分の二分の一に相当する額を給付金から減額するということで、以前よりも若干改正をされまして、所得の急激な激変が及ばないような格好で制度づくりが今なされておるというところでございます。

 拉致被害者等に対する支援、これは今、要するに五百八十万という一つの基準があるわけですけれども、この支援の拡充というのは、その拉致被害者である特に地村さんなんかは、当然、定年もあるし、定年後に対する備えもないという話を我々にしてくれました。それで、自分たちの方から積極的に支援のお願いをするということは当然できないし、もちろん拉致被害者の帰国を最優先に対応していただきたいという思いもある、思いもあるけれども、やはり、もし支援の拡充があれば、それは本当にうれしいという話を我々にしてくれたわけでございます。

 そういうことを踏まえて、この支援法自身のできるだけの拡充ということも考えていかなければいけないんじゃないかなというふうに思っておる次第でございますが、この点、官房長官はどういうふうにお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 今、鷲尾議員の方から、本年行われた改正の中身について御説明もいただいたわけでございますが、ちょうど支援法が施行になって三年たったところでございました。ということで、被害者の皆様方への給付金に関して改正を行ったところでございます。

 我々としては、政府としては、引き続き、この現行制度のもとで、帰国被害者の御要望を常時聞きながら、尊重して、効果的、重点的な支援策の実施に努めていかなければならないんじゃないかと考えております。

 拉致対策本部ができて、家族の皆様方あるいは特定失踪者の家族の皆様方などとのコミュニケーションが非常に強くなって、太くなってきておりますが、特に拉致認定を受けた方々に対する支援をする支援法、この問題については、特に、帰国をされた被害者の置かれた状況、何人かにお会いいただいたということでありますけれども、それぞれのお立場があって、子供さんの状況とかいろいろなことがありますので、必要に応じた支援というものを絶えず考えていきたい、このように考えております。

鷲尾委員 被害者の方々から直接、支援の拡大をお願いするということができにくいということも念頭に置かれた上で、連携を密にとっていただきながら、そういう支援の方向性を考えていただけたらというふうに思います。

 続きまして、せんだって十一月十七日に松本京子さんについて拉致されたという判断に至ったわけですけれども、警察からの資料においては、特定失踪者である松本京子さんに対して、ゼロベースでもう一度捜査を徹底的に洗い直した。捜査をしましたところ、新たな証言、証拠が得られた。新たな証拠が得られたので、拉致というふうに判断することに至った。拉致という判断に至ったので、政府側にその報告を上げて、拉致認定に至ったという話を伺っています。

 これはもう高木先生からも御質問あったと思うんですけれども、当然、その特定失踪者の方々というのを拉致認定するということについては、確たる証拠が必要になるという捜査上の要請があるのは私どもも認識しているところですけれども、福井そして新潟と視察した折に特定失踪者の家族の方から言われたのは、何とかして認定してくれ、当然拉致に違いないというような状況は、もうなっているんだ、情況証拠はあるんだ、そういう中でも何とか拉致認定していただけたらありがたいというふうに我々も御家族の方から言われました。非常にその思いは理解できるところです。

 そこで、新たな証拠というのは、拉致被害に遭われてから十年、二十年とたっているわけでございますから、捜査を洗い直すといってもなかなか限界があるのではないか。捜査上限界がある中で、では、捜査上拉致というふうに判断されない中でも、特定失踪者が逆に拉致被害者であるということを政府として認定することができないかというふうに思うんでございますが、この点、官房長官、どういうふうに思われますか。

塩崎国務大臣 今、鷲尾先生の御質問、お気持ち、それから高木先生、渡辺先生、それぞれから、特定失踪者について早く認定をしろ、こういうことを御指摘いただきました。お気持ちは、私どもも同じだと思います。

 しかし、もう一つ言わなきゃいけないことは、やはり制度とか、人間もそうですが、信用とか信頼というのは、築き上げることは非常に時間がかかって手間のかかることでございます。一方で、その信用、信頼を壊すことは、一つ何かあればそれですべてが崩れるということにもなりかねないわけであって、もし万々が一、認定をした後にそうじゃなかったということがあった場合のことを想定しますと、他の、今でも十七人のうちの十二人がまだお帰りをいただいていないわけでありますが、その方々が、では本当に拉致なのか、拉致被害者なのかというところの信頼性においても、またその信頼性が崩れてしまう可能性があるわけでありますので、我々としては、やはり確実に固めた上で認定をしたい、そのかわり、そう認定したからには徹底的にその問題の解決に向けて北朝鮮に対話と圧力で向かっていきたい、こう考えているわけであります。

 松本京子さんのケース、今お話がありました。もちろん捜査の中身でありますから申し上げるわけにはまいりませんけれども、もう既に証拠等々は出尽くしているだろう、こういうお話がよく指摘されるわけでありますが、必ずしもそういうことではなくて、やはり今回のケースでも、ここまで詰めないと認定ができないというところまで警察当局が頑張って、そして頑張った成果が出たがゆえに今回認定ができたということでありますので、その点については、気持ちは十分私もわかりますが、その認定をするという国家をかけた信頼、信用を崩さないように、この運用については確実なやり方をとっていきたい、このように考えております。

鷲尾委員 質問時間がなくなりましたので、最後に、その捜査も、警察庁そして外務省、そのインテリジェンスをどう使うかとかも含めて、国家として総力を挙げてやっていただきたいという旨を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十四分散会


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