衆議院

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第2号 平成22年3月15日(月曜日)

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平成二十二年三月十五日(月曜日)

    正午開議

 出席委員

   委員長 城島 光力君

   理事 稲見 哲男君 理事 大谷  啓君

   理事 熊田 篤嗣君 理事 長尾  敬君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      内山  晃君    北神 圭朗君

      黒岩 宇洋君    中津川博郷君

      福島 伸享君    松原  仁君

      本村賢太郎君    矢崎 公二君

      吉田おさむ君    笠  浩史君

      伊東 良孝君    高木  毅君

      永岡 桂子君    笠井  亮君

      中島 隆利君

    …………………………………

   外務大臣         岡田 克也君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     中井  洽君

   内閣府副大臣       大塚 耕平君

   外務副大臣        武正 公一君

   内閣府大臣政務官     田村 謙治君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     福島 伸享君

  小里 泰弘君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  福島 伸享君     下条 みつ君

  伊東 良孝君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

城島委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、中井国家公安委員会委員長・拉致問題担当大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中井国家公安委員会委員長・拉致問題担当大臣。

中井国務大臣 本日は、拉致問題の現状について御報告いたします。

 北朝鮮による拉致は、我が国に対する主権侵害かつ重大な人権侵害であります。政府としては、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府の総力を挙げて最大限の努力を尽くしてまいります。

 昨年九月、総理は、国連総会からの帰国直後に拉致被害者の御家族と面談され、御家族の切実な声を聞き、拉致問題の解決に向け積極的に取り組む決意を示されました。

 同年十月十三日、政府は、拉致問題に対する対応を協議し、生存者の即時帰国に向けた施策、安否不明の拉致被害者に対する真相究明及び拉致問題への戦略的取り組み等総合的な対策を機動的に推進するため、総理を本部長、私、拉致問題担当大臣、内閣官房長官及び外務大臣を副本部長とする新たな拉致問題対策本部を設置しました。

 同月二十七日、拉致問題対策本部第一回会合を開催し、事務局について、総務・拉致被害者等支援室、政策調整室及び情報室の三室体制とするとともに、特に情報関係について強化することとしました。このことを踏まえ、拉致問題対策に係る平成二十二年度の政府予算案については、総額十二億四千万と、情報関係予算を中心に大幅な拡充を図ることといたしております。

 政府は、これまでに十二件十七名を拉致被害者と認定しておりますが、これ以外にも、北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない事案があるものと認識しております。昨年十一月には、いわゆる特定失踪者の御家族にも直接お会いし、お話を伺いましたが、政府としては、関係省庁、関係機関が緊密に連絡を図りつつ、国内外からの情報収集や関連する調査、捜査を強力に推し進めるなど、全力で事実の解明に努めてまいります。

 政府は、また、関係地方公共団体とともに連携協力しながら、平成十四年に帰国された拉致被害者やその御家族に対し、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律等に基づいて各種支援策を実施しているところです。

 同法に基づき支給されている拉致被害者等給付金については、その支給期限が本年三月に到来します。拉致被害者とその御家族は、さまざまな困難を抱えつつも、地域の人々にも支えられながら着実に自立、生活基盤の再建が進みつつありますが、二十年以上の長きにわたって拉致されていたため、その生活基盤にいまだに脆弱な面があることは否定できないと認識いたしております。拉致被害者等支援法は、法制定時と同様、議員立法として、同給付金の支給期限の延長に向けた検討が進められていると承知しておりますが、私の立場からもよろしく御検討いただきますようお願い申し上げます。

 拉致発生後長い年月がたち、未帰国の被害者や御家族の中には御高齢の方が多くなっております。現在の膠着した状態の突破口を開き、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現しなければなりません。

 政府は、米国を初めとする関係国とも緊密に連携協力をしながら、新たに設置した拉致問題対策本部のもと、政府の総力を挙げて拉致問題の解決に最大限の努力を尽くしてまいります。

 城島委員長を初め、本委員会の理事の皆さん、委員の皆さん方の御理解、御協力をよろしくお願いいたします。(拍手)

    ―――――――――――――

城島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長尾敬君。

長尾委員 民主党の長尾敬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 拉致事件とは、いわば政治、行政の不作為によって行われた国際的な人質事件、テロであります。拉致事件の全面解決、いわゆる被害者本人の安全な救出と実行犯の逮捕並びに刑事的な裁きを受け被害者の民事補償をするという全面解決なくしては、日朝国交正常化はあり得ないと考えておりますが、同様の御認識として理解してもよろしいでしょうか。大臣、よろしくお願いします。

中井国務大臣 御趣旨は十分承知をいたします。

 ただ、小泉さんのもとで拉致被害者が一部帰国、その後家族が帰って、それから五年経過いたしました。この間の空白というものはまことに大きいものがございます。

 したがいまして、私どもは、まず情報を収集する、安否を確かめる、その上で全員御帰国をいただく、これに全力を挙げたい。ただこの一点だけであります。

長尾委員 ありがとうございます。

 この拉致事件ですが、それ以前に警察は、いわば国内で工作活動をしておった工作員の検挙、過去五十件、昭和五十二年以前、約三十九件あったというふうに聞いております。いわゆる拉致被害者の多くの方々は昭和五十二年以降ということになるわけで、そのときにしっかりと検挙された工作員を調べ上げておれば、拉致被害者あるいは現在四百七十人以上とも言われております特定失踪者、北朝鮮によって拉致されたという疑惑を排除できないでいるという方々が発生することはなかったという認識を持っております。

 ここで、今後の政府のあり方として、現代コリアの西岡力先生からのアドバイスもいただきながら、三つ指摘、あと御答弁を願いたいと思っております。

 まず第一には、国民世論の大きい小さいにかかわらず、政府は毅然とした態度で取り組むべきであるという、この対応を緩めてはならないと思っております。例えば、金丸訪朝の際、梶山答弁を受け、恐らく時の海部総理は警察から拉致事件についてのレクチャーを受けていたと思います。ただ、当時は世論が余り多くなかったということで、訪朝の際に拉致事件という言葉を口にしなかったという点では、この点をもって私は、政治、行政の不作為によって拉致事件が今日まで放置されたというふうに御指摘をさせていただきたいと思っています。

 二点目には、北朝鮮が拉致の問題を全面解決しなければ、日朝国交正常化はおろか、世界の中において孤立をしてしまうというような形での毅然とした態度をとるべきであると思っております。

 アメリカは北朝鮮に毎年五十万トンの重油を送った。しかし、パキスタンにはミサイルを送り、また逆に核を入れた。アメリカとパキスタンが同盟関係になったことでこれがばれた。アメリカは、いわばマカオ等々の個人金融財産に対して大変な経済制裁圧力を加えた。今、非常に厳しい状況であるというふうに思っております。朝鮮銀行も破綻し、また李明博政権も大きな軌道修正をするということで、ここで我が国も手を緩めることなく、圧力、圧力で加えていくべきであると思っております。

 そして、最後に、拉致被害者を安全にどうやって救出するかということについて、プログラムを用意していくべきであると考えておるのが三点目でございます。

 なぜならば、北朝鮮において内乱その他、特に金正日が死亡した場合に拉致被害者をどう安全に救出していくのか。韓国とアメリカとの間に五〇二九計画というものがあるようでありますが、その中に拉致被害者を救出するというプログラムが存在しているのかどうか。そして、我が国にとって北朝鮮有事において救出計画があるのかどうか、御答弁を願いたいと思います。

中井国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたように、委員と私どもは何も考えは変わりません。

 警察のことについていえば、私は今、国家公安委員長という立場でございますので、かつての警察の拉致問題に対する認識のあり方、捜査のあり方、これを批判するということは差し控えなければなりません。しかし、事件が起こった当時に、だれもが北朝鮮からの拉致なんということがあり得ると思っていなかった。ここに大きな落とし穴があったと思っています。

 この反省を含めて、私、就任以来、再三の捜査要求をいたしております。今日まで、特定失踪者と言われる人たちの中から、名簿に載っている人で五人、各地域、地方警察に拉致ではないかと相談している人の中で四人、実は元気で国内で見つかっておりまして、これはこれでいいことだと。こういうことを含めて、これからも徹底的に調査をしていきたいと思っています。

 また、金曜日、ナポリターノというアメリカの安全保障の長官が私のところにもお訪ねをいただきまして、このときにも拉致の問題を説明し、そして一緒にやってほしいとお願いをいたしました。韓国ともかつてない連携のもとにございます。そういったことを含めて、国内で毅然たる対応をしていくことが私の一番の役割だと考えています。

 三番目の救済の計画ということにつきましては、内閣の危機管理の面で検討がされていると聞いておりますが、具体的には私は承知をいたしておりません。そういう混乱の起こる前にとにかく救い出す、こういうことを含めて頑張っていきたいと思います。

長尾委員 ともかく、我が国は拉致を許さない、これを世界にアピールするためにも、場合によっては、国会議員二十人ぐらいで訪朝するような気概を持ってやっていくべきだと御主張申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

城島委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島です。

 本日は、外務大臣御出席でございますので、最初に二点ほど、岡田外務大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 ことしになってから、中国共産党の王家瑞対外連絡部長が訪朝をし、逆に北朝鮮の外務次官が訪中しております。また、米国では、北朝鮮問題を担当するボズワース特別代表も中国、韓国、日本を訪問し、日本では岡田大臣とも会談をされたとお聞きいたしております。これらの動きの中で、六カ国協議の再開準備が近いうちに整うのではないかと報道されています。先日、五日には、社民党の福島党首が会談いたしました程永華中国大使も協議再開の障害が除去されつつあるという認識を示しました。また、外務省の齋木アジア大洋州局長も中韓両国を訪問しておられますし、中国では六カ国協議議長とも非公式に会談すると伝えられております。

 もちろん、北朝鮮側が協議への復帰条件としている朝鮮戦争の休戦協定にかわる平和協定締結交渉の開始や、あるいは制裁解除に対して五カ国の同意が簡単に得られるとは考えていませんが、ことしになってからの関係各国の活発な動きを政府としてはどのように評価しておられるのか、また政府として六カ国協議の見通しをどのように立てておられるのか、お尋ねいたします。

岡田国務大臣 今委員御指摘のように、いろいろな動きがあることは事実でありますが、必ずしも楽観的には見ておりません。北朝鮮は、六カ国会合、六者会合再開に当たり、制裁の解除などを求めております。今委員御指摘のとおりであります。現在、六者会合の再開見通しについて、そういった制裁の解除ということを我々は考えておりませんので、確たる見通しを申し上げる状況にはないということでございます。

 制裁の解除のために必要なことは、北朝鮮が累次の国連安保理決議に定められた義務をしっかりと実行し、また北朝鮮による無条件での六者会合への早期復帰、二〇〇五年九月の六者会合共同声明の完全実施が必要であります。六者会合の早期再開と北朝鮮の核放棄に向けて、引き続き国連安保理決議の着実な履行を含め、米国及び韓国、さらには中国といった関係国と緊密に連携していきたいと考えております。

中島(隆)委員 非常に厳しい状況にあるということでございますが、鳩山総理は、拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決したいと述べておられます。その意味では、北朝鮮を六カ国協議のテーブルにのせることは、拉致問題を解決する上で非常に大きな意味を持っていると思います。六カ国協議の主要国が活発に動き出しているわけですので、拉致問題を抱える日本政府としても、積極的にイニシアチブを発揮していただきたいと思います。

 そこで大臣にお伺いしますが、さきにも触れたように、大臣は米国のボズワース特別代表と会談をされまして、齋木アジア大洋州局長も中韓を訪問されています。日本政府として、現状を打開し、拉致を含め諸問題の包括的な解決に向けての提案をどのようになされようとしているのか、諸問題解決に向けて今後どのように施策を進めていこうと考えておられるのか、お尋ねいたします。

岡田国務大臣 まず、日本政府としての基本的な考え方は、日朝関係については、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図るという方針であります。

 拉致問題については、一昨年八月に日朝間で合意があります。その合意に従って北朝鮮による調査のやり直しが早期に開始され、生存者の帰国につながるような成果が早期に得られるよう、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えでございます。

 現在、関係国との間でいろいろ意見交換も行っておりますが、六者協議復帰について先ほど私が申し上げた基本的考え方、この点については日本とアメリカと韓国、方針は完全に一致しております。そして、中国も同じ方向だというふうに理解しておりまして、しっかりと、そのことを前提にしながら、北朝鮮に六者会合への復帰を働きかけていきたいというふうに考えているところでございます。

中島(隆)委員 解決の前提は、六カ国協議を早急に開催するということが非常に緊急な課題だと思いますし、今申されましたアメリカ、韓国、日本、そして中国、こことの連携をさらに密にしていただいて、しかし拉致問題全面解決のためには、北朝鮮と日本、ここが二国間の中で日朝間の会合をつなげるためにどう対応するか、それも非常に重要な課題でございますので、努力をしていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、質問を終わります。

城島委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 きょうは、外務大臣に貴重な時間をいただきましたので、外務大臣に質問させていただきます。

 前回私も質問させていただきました、鳩山政権になりまして拉致問題に対して基本方針がはっきりしていないということに対して非常に危惧を持っているということを指摘させていただきました。今もいろいろな委員からもありましたように、北朝鮮というのは、圧力をかけると小出しに譲歩案らしきものは出してくるんですね。そういういわば瀬戸際外交というのが彼らの手段なんですよ。これは歴史的にはっきりしているわけですね。拉致問題については、私どもが政権を担っていたときから一貫して姿勢は、米国、韓国、あるいは中国、そしてロシアも我々の考え方を実は支持しているんですね。

 ただ、それだけではなくて、北朝鮮が平成二十年に、重油支援に我々は参加しておりませんでした、参加していないにもかかわらず、我々に対して、拉致問題に関して交渉を再開してもいいですよという意思を示したんですね。あのときには、総理大臣が交代をするとかいう政治的な要素もありましたので、結果として、調査とかやり直しが向こうの一方的な通知により中止になってしまったということは非常に遺憾ではありますけれども、制裁をして重油支援に参加をしていなくても拉致問題というものは交渉は進められるという証左なんですよ。

 だから、これからもぜひ、北朝鮮には、重油支援を受け取った後で、昨年は二度も実は核実験をしているというケースがあるんですね。ということは、何といっても重油支援そのものが失敗をしているということですよ。ということは、融和策では絶対成果が上がらない、やはり圧力なくして北朝鮮を動かすことはできないと思います。

 そこで、昨年、岡田大臣はアメリカを訪問していますよね。私も相前後して行っておりまして、中井大臣も御一緒でしたので、関係者から聞いておりますけれども、拉致問題に固執しているということを米国の複数の専門家から聞いたんですね。家族会の方と、帰国後では、そんなことは言っていないよと言っているようでございますけれども、一方で、現内閣でも、拉致問題にこだわり過ぎているんじゃないかと言う方が大臣に入っています。それから、拉致実行犯の釈放の署名をした人も大臣に入っているんですよね。こういうことからすると、拉致問題が本当に軽視されてしまうのではないかなという危惧を抱くのは私だけではないと思います。

 そこで、具体的に聞きます。

 六者協議が、今再開されるかどうかというふうな言及がございましたけれども、仮に再開をされた場合でも、拉致問題の進展なしには重油支援などの対北朝鮮支援には絶対に参加しないという政府方針を堅持していただけますか。このことについてお伺いします。

岡田国務大臣 まず、六者協議がそう簡単に再開されるものではないというふうに思っております。我々は原則を曲げるつもりはございません。したがって、一部報道はいろいろありますけれども、無条件に六者協議の場に戻ってくるということでなければ、例えば、制裁を解除しろと今北朝鮮が言っているわけでありますが、そういう状況の中では六者協議が開けるはずがない、そういうふうに考えております。

 そして、委員今御質問の件ですけれども、これは仮定の議論、つまり、六者協議が始まるかどうかというのがわからない状況の中での御質問というふうに受けとめさせていただきましたけれども、仮定の御質問にお答えするとしたら、基本的に我々は、この六者協議の中で、核の問題、ミサイルの問題、そして拉致の問題についてもきちんと解決を見出していく、そういうことがない限り本格的な支援というのはない、そういうふうに考えているところでございます。

古屋(圭)委員 今、要するに、拉致、核、ミサイル、包括的に解決して、特に拉致問題が進展をしない限り重油支援などに一切参加しないというふうに私は受けとめました。

 実は、大臣になられて、議事録をずっと見ておりましたら、拉致という言葉を言及したことが十回ございます。しかし、いずれもこれは、拉致、核、ミサイルの包括的解決をするという定型文言の一環として入っているだけなんですね。そういった意味では、この拉致問題に対してまなじりを決して取り組むという姿勢は残念ながらうかがえません。やはり総理も、あらゆる方策を使ってということは、対話と圧力という言葉も消えています。ということは、融和策もあるのではないかという危惧を持つのは私だけではないというふうに思います。ぜひ、その辺、心してかかっていただきたいと思います。

 また、各国首脳が総理大臣あるいは外務大臣と会談をする機会が多うございます。必ずこの拉致問題を入れていただきたいということを切にお願いしまして、私の質問を終わります。

 最後に一言、何かありましたらお願いします。

岡田国務大臣 今委員が言われた中で、対話と圧力という言い方がありますが、いずれも、私は、それは手段であって、大事なことは拉致の問題をしっかり解決するということだと思っております。

古屋(圭)委員 終わります。

城島委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 時間が限られておりますので、外務大臣に一問だけお尋ねします。

 私は、昨年十二月に衆議院の日中議会交流の一員として中国に参りまして、全人代の常務委員会の華建敏副委員長を初めとする主要な議員の方々と、日中間の懸案事項、特に拉致問題について、私の方から、中国としても重要な人権にかかわることだから、ぜひこれを応援してもらいたいとはっきり申し上げたんです。ところが、中国側の回答は、拉致問題は基本的に日朝間の問題であって当事者で解決してもらいたい、こういうスタンスをはっきり示されたものですから非常に残念でありました。中国の問題意識は、核放棄、改革・開放がメーンであって、残念ながら関心が低いということでございました。

 アメリカの方は、今、オバマ大統領は北朝鮮をテロ支援国家として再指定しないということを明確にされましたし、これも深い失望感が広がっているわけであります。そしてまた、日米関係は今、普天間基地移転問題、それからまた密約解明等で大きく揺らいでおるというふうに思います。

 その意味で、拉致問題に関して中国も当てにならない、また日米関係も溝ができつつある中で、どうやって拉致問題を解決していくのか。我々公明党から見ても、どうも自民党時代と比べても、鳩山政権、民主党は、組織としての行動になっていないんじゃないか。政府も党も拉致問題解決への動きが弱い、また拉致問題解決の優先順位が低いように見える。

 そこで、質問いたしますが、一つ、日朝交渉の主導権は政府なのか民主党なのか。二つ目に、日朝交渉の中で何をもって拉致問題の解決とするのか。三つ目に、北朝鮮は拉致問題の解決をおくらせることで何らかのメリットがあるのか、それとも早く解決したがっているのか。これらの三点を踏まえながら、岡田外務大臣の拉致問題解決の道筋と決意をお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 委員、いろいろ御指摘いただきました。

 アメリカでありますけれども、私は、アメリカ政府の拉致問題に対する関心というものは非常に大きなものがあるというふうに思っております。今までクリントン長官と会談をした三回、いずれも拉致の問題は議論になっております。そして、長官の方からも、拉致問題について、被害者に対する同情と、これを解決しなければいけないということに対する同意、そういったことが示されているわけでございます。

 さて、まず党か、それとも政府か。これは、もちろん党にも重要な役割を果たしていただく必要はありますが、我々日本国政府として、この拉致問題、中井大臣を筆頭に我々協力して、何とかこの鳩山政権のもとで解決していこう、そういう思いでございます。拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算した上で国交正常化を図るという基本的考え方に立っているところでございます。

 具体的には、なかなか北朝鮮、応じてまいりません。先ほど申し上げましたように、一昨年八月に、拉致の問題について調査をするという両国政府の合意があります。この合意をしっかり果たすように、そういう働きかけを今行っているところでございます。

 あわせて、六者協議に無条件で復帰をして、そしてその場で核、ミサイルの問題、あわせて拉致の解決についてもしっかり議論を行いたい、そういうふうに考えているところでございます。

竹内委員 事前に通告していますので、今お答えになっていないところだけちょっと確認をしたいんですが、北朝鮮はこの拉致問題を早く解決したがっているのか、あるいは小出しにして条件闘争としたいのか。この辺については、今ちょっと答弁漏れがあったと思うので。

岡田国務大臣 北朝鮮がどう考えているかということは、これは推測しかできませんので、私の立場でここで断定的に言うことは避けたいというふうに思います。

 ただ、言えることは、拉致の問題がしっかり解決しない限り、その先にある国交正常化とかあるいは本格的な経済的な支援とか、そういうものはないということであります。そういう中で、北朝鮮側として拉致の問題をしっかり解決しなければならない、そういう状況下に基本的にはあると私は思っております。

竹内委員 終わります。ありがとうございました。

城島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 岡田外務大臣に質問いたします。

 ことしは、日韓併合から百年の節目に当たる年であります。岡田大臣は、二月十一日の日韓外相会談後の共同会見で、日韓併合について、国を奪い、そして民族の誇りを深く傷つけることであったと述べられました。この発言に込められた大臣の思いを改めて伺っておきたいんですが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 この発言は、日韓外相会談後の記者会見で私が述べたものでございます。

 その前にもう一言ありまして、私は、日本人として自分自身日本人であることを誇りに思う、その考え方に立てば、日韓併合によって国を奪われ、そして民族の誇りを深く傷つけられた朝鮮半島の人々に対して、私はその気持ちがわかる、そういうふうに申し上げたところであります。

笠井委員 まさに今大臣が言われました被害者となった人々は、韓国だけじゃなくて朝鮮半島ということで、その立場に立って受けた影響というものを忘れてはならないとおっしゃったと。

 大臣は、会談後の共同会見で、まさにおっしゃったような痛みを覚えている被害者の気持ちを決して忘れてはならないと強調されたわけですが、しかし、実際にはそれに逆行する問題が起こっていると私は思います。それが、拉致問題を理由にして高校の無償化の対象から朝鮮学校を除外するという問題であります。

 全国に十校余りある朝鮮学校で学ぶ生徒は、朝鮮籍だけじゃなくて、むしろ韓国籍の方が多く、またその大半は、日本の植民地支配のもとで徴用などでやむを得ず日本に渡った方々の子孫であります。それだけに、この問題は韓国側でも大きな関心を呼んで、鳩山政権の動向に注目が集まっております。ソウルでも、三月四日に、韓国挺身隊問題対策協議会など韓国の約五十の民間団体が集会を開いて、朝鮮学校を高校無償化の対象に含めるべきだとする声明を発表しました。日本による植民主義の清算を心から望む世界の人々は、今回の高校無償化法案をその試金石として常に注視していると指摘をしております。

 岡田大臣が表明されたように、日本政府には、植民地支配の反省に立って、将来にわたって隣国と友好関係を築く努力が求められており、在日の方々への政策、それから朝鮮学校への政策というのはその重要な分野のはずだと思うんですが、そのことはいかがでしょうか。

岡田国務大臣 高校の実質無償化に関する法案における専修学校、各種学校の対象範囲については、法案において、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものを高等学校等就学支援金の支給の対象とすることとされており、外交上の観点で判断するものではございません。今後の国会における審議も踏まえつつ、あくまで文部科学省において適切に判断されるものと理解しております。

笠井委員 実際には、近隣諸国、韓国なんかからもそういう声が上がっている。まさに冒頭に大臣が言われたような、植民地支配の反省に立って友好関係を築いていくということになれば、この中でも大事な問題になっていると思うんです。

 きょう三月十五日にも、ジュネーブの国連の人種差別撤廃委員会が、対象から朝鮮学校を除外するのは人種差別撤廃条約違反に当たるとして、日本政府に改善を勧告する見通しともされております。まして、朝鮮学校が北朝鮮と関係があると、拉致問題に責任のない子供たちに報復まがいのことをすることになれば、これは論外だと私は思います。日朝平壌宣言の立場にも反することになると、これは外国にも影響を及ぼす問題だと思います。

 そういう点では、しっかりとした結論を出していただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

城島委員長 外務大臣はここで御退席いただいて結構でございます。

 質疑を続行いたします。古屋圭司君。

古屋(圭)委員 引き続き質問させていただきます。

 まず、私は、ちょっと城島委員長に御質問をさせていただきたいと思うんです。この委員会のルール上、委員長に質問はできないというルールはございませんので、あえて聞かせていただきたいと思います。

 委員長は、ことし二月、金正日の生誕を祝う朝鮮総連主催のパーティーに出席をされたというふうに聞き及んでおります。そこで祝辞を述べられたということであります。一議員が行くことに私はとやかく言うものではありませんけれども、やはり委員長という公的な立場で行かれているということで、これはいかがなものか、私はそういうふうに思います。

 それに先立って、昨年の十二月には横田さんの御自宅に御訪問された。中身は、キム・ヘギョンさん、ウンギョンさんとも言われますけれども、に会いませんかという趣旨のお話をされたそうですね。

 実は、このことは、もうキム・ヘギョンさんの問題が表に出てから何度もそういうことを言われていた。しかし、横田さんは、これによって拉致問題が簡単に幕引きをされては困るということで、ずっと断り続けているんですね。その心中を察するときに、やはりそういった横田さんの過去の問題からしても、いわゆる北朝鮮の片棒を担いでいるんじゃないかという誤解のそしりは免れなくなると私は思うんですよ。

 こういった行動はぜひ慎重にしていただきたいというふうに私は思いますけれども、この点についての委員長の御見解をお伺いします。

城島委員長 あえて申し上げますが、総連の方は、出席したことは事実でありますが、祝辞を述べたようなこともありませんで、名刺を渡してすぐ帰りました。だから、滞在時間は三十分ぐらいだと思います。報道にあるような内容は一切行っておりません。

 それから、今ありました横田御夫妻に会ってという話でありますが、定期的にお会いしていますが、その内容は、この場ですから、あえて私は名前は申し上げませんが、元自民党の議員の方からのそういう手紙がありましたということを私にお話しになったことであって、私が話したことではありません。中身は全然違いますから、それははっきり申し上げておきます。

古屋(圭)委員 私が申し上げたいのは、委員長という立場でございますから、やはり公正中立な立場で運営をしていただく、特に、こういう拉致問題という極めてセンシティブな問題がある立法府の責任を担っているわけですから、ぜひ行動は慎重にしていただきたいという要求でございます。

 もう答弁は結構です。

城島委員長 いや、もちろん、そういうことでありますので、私は、中立の立場で拉致の委員長というのは常に意識しておりますから、そういう関係のところには公平に対応しています。

 それから、もう一度申し上げますが、一部そういうネット上で流れているのは私も知っておりますが、ヘギョンさんに会わないかと言ったのは私ではありませんで、そういう手紙が来たということを私にお話しになったことであります。これは事実が全く違いますから、名誉にかけてきちっと申し上げておきます。

古屋(圭)委員 ヘギョンさんの問題は、ここに別に証拠があるわけではないので、これ以上私は言及しませんが、やはり、委員長の立場で朝鮮総連のパーティーに出かけるということ自身がやや軽率な行動だったのではないか。一議員の立場で行くのは全く問題ないと思うんですよ。やはり、それだけはきちっとわきまえていただきたいということを申し上げながら、次の質問に移ります。

 まず、中井大臣にお伺いします。

 高校無償化法案、先週、衆議院をあんな形で通過して非常に残念で、ほとんど消化不良、議論不十分ということでありました。

 私どもは、この問題は、まずルールに照らしても、要するに、客観的、普遍的なルールに基づいて、高校の課程に類する課程を置くものとするかどうかということをチェックして決めるということですけれども、文部科学省は、その判断をする機能もなければ、国交がありませんからチェックのしようがないということでありますし、なおかつ、北に対して私どもは制裁をしているということで、我が党としては、朝鮮高校への支援はすべきでないという結論を出しました。

 一方、中井大臣はたびたび、朝鮮高校の無償化は適用すべきでないというような趣旨の発言をされておられます。これがきっかけで世論の注目を集めたということでありまして、そういった意味で、勇気ある発言であって、私は評価したいと思う。

 確かに、これは中井大臣の担当ではありませんけれども、朝鮮高校への支給はすべきかすべきでないか、まず中井大臣としてのお考えをお聞きしたいと思います。

中井国務大臣 自民党さんにおかれましては、委員会の質疑で消化不良という思いがおありの中、部会をお開きいただいて、無償化すべきでないという応援のエールをお送りいただきましたことを感謝申し上げます。

 資料的には、朝鮮人学校がどうだこうだということについて、一方的なことではありますが、私の手元にないわけではありません。また、長年いろいろなことを聞いておりますので、思いもございます。しかし、私は拉致担当大臣として、川端大臣に、国を挙げて制裁をしている時期に、その国民感情を考えてこれはお控えなさるべきだ、こういうことを言いまして以来、終始一貫、それを申し上げております。何も態度は変わっておりません。よろしく御理解のほどお願いいたします。

古屋(圭)委員 担当大臣としては至極当然、かつ、ぶれのないお答えだったというふうに思います。

 私も全く同感でして、朝鮮学校は朝鮮総連の支配下にあって、金正日の指示をダイレクトに受けています。そして、今度の法案は、実は、直接本人であるとか家族に支給されるのではなくて、代理受領なんですね。代理受領ということは、朝鮮高校が受領する、すなわち朝鮮総連が受領する。では、果たしてそのお金がちゃんと真っ当に教育に使われているのかどうか、これはチェックのすべがないんですよ。

 我々は、今北朝鮮に対して制裁を科しています。すなわち、一円の税金も放り込んでいないんです。これをもし認めるということは、我々の税金を一年間に二億四千万円放り込むということになるわけでありまして、そういった趣旨から、私は決して民族差別をしようとか教育差別をしようということを是認しているわけではありません、国の基本ルール、要するに、国家が定めた基本方針にこれは反するものであって、しっかりそれは対応していただきたい。

 何か聞くところによると、第三者委員会をつくって調査をする、これこそ逃げ以外の何物でもありませんよ。政治主導を標榜している民主党らしくない。やはり、しっかり中井大臣が指導力を発揮して、はっきりこれは言うべきじゃないでしょうか。私は、強くそれを申し上げたいというふうに思います。

 さて、次の質問ですけれども、去年、私、新しい政権になって、三つの基本方針のうち一つが抜けてしまいましたよねということを指摘させていただきました。それは、これは昨年のパンフレットですね。日本政府は北朝鮮に対して次のことを要求し、一番、すべての拉致被害者の安全確保と速やかな帰国、二番、真相究明、三番、拉致被疑者の引き渡し、要するに実行犯の引き渡しですよね。この実行犯の引き渡しについては、よど号ハイジャック事件の犯人を帰すということでお茶を濁されたらかなわないからこれは削ったんだと、私はこれは理屈にならないと思うんですけれども、そういうことでありました。

 新しいパンフレットを見たら、これは一番目、二番目も全部抜けているんですね。すべての拉致被害者の安全確保と速やかな帰国、真相究明、この二つは入っていたんですよ。なぜこれまで抜いちゃったんですか。

中井国務大臣 私、これは初めて見ておりまして、抜けているということも何もわかりません。

 私は担当になりましてから、すべてこういうことをつくるのをとめました。それは、入札等で非常におかしなやり方をやっている、非常に単価が高い、しかも効果がない。ポスターを含めてとめております。

 私は、この三月になって、パンフレットとポスター三種類を年度内に許可いたしました。また、放送も、今まで野党時代に私が申し上げておりましたように随契をやっておりまして、非常に高い短波の放送契約でございました。これも入札を行っていただくということで、ついこの間スタートを許可したばかりでございます。

 大変恥ずかしい話ですが、これについて私は十分承知をしておりませんので、帰って調べます。

古屋(圭)委員 いや、パンフレットは、全国民が見る極めて重要な媒体なんですよ。政府方針が一応変わった。私は、最後の拉致被疑者の引き渡しも、重要な外交カードをみずから放棄するようなものですから絶対賛成はできないですけれども、新しい政権でやる。百歩譲ったとしても、こういうものが出ていながら、担当大臣が全然承知をしていない。これは、印刷が高くかかるからどうだこうだとは全く次元の違う話なんですよ。やはり、しっかりこれは対応していただきたいということであります。

 こういうところが、本当にこの政権は、中井大臣自身は一生懸命活動をされていると思います。しかし、組織を挙げて、政府を挙げて本当に対応しているのかというときには、答えは疑問符がつかざるを得ない。例えば、閣議決定をされた拉致対策本部のペーパー、十月の十三日ですよね。その中で、関係省庁会議を置くということになっておりますけれども、その後、こういった会が開かれたり対策本部が開かれたという形跡がどうもないようであります。ホームページを開いて見てみましても、二十一年、十三日の設置以降、全くリニューアルをされておりません。

 こういうところからして、やはり組織として本当にちゃんと取り組んでいるんだろうか、政府としてこの拉致問題というのを最重要課題の一つとして取り組んでいるんだろうか、これは多くの国民が疑問を持つところだというふうに思います。

中井国務大臣 今、事務方に確かめましたところ、昨年、古屋委員から、三番目が入っているじゃないかと御指摘をいただいて、私も削らせますという答弁をしたと思いますが、それを受けて勝手に変えたようでございます。しかし、私はその変えた中身を承知いたしておりませんので、つくらせ直しをいたします。

 ただいま御指摘をいただきました、組織として云々ということにつきましては、私もじくじたる思いを持ってこの半年を過ごしてきたところでございます。私は、拉致担当大臣になりまして、拉致担当事務局というのがきちっとあって、拉致専門に働くのが何十人もおると聞いておったわけでございますが、入りましたところ、全部兼務であります。そして、ばらばらのところにおる。本当に拉致の問題を今日まできちっとやってきたのか、専門でやってきた者はだれだと聞いても、結局わからない、こういう状況の中にございました。

 私は、そういう意味で、それらをすべてチェックし直して、情報収集、安否確認、そして救出、これらに絞ってやっていかなければ、この五年間の空白を到底取り戻せない、このように考えて、今、組織を改編し、そしてすべての出版物の停止を解除しつつ、新しい方向で努力をしようといたしているところでございます。

 したがいまして、従来からのやり方におなれの皆さんから見れば、中井一人で空回りしているんじゃないかとおしかりもいただくことは重々わかりますし、また役所の中で、旧来の方がやりやすかったということを言う人もたくさんいるんだろう、このようにも承知をしております。しかし、それはもうだめ。とにかく、税金を徹底的に節約する中で、集中して情報収集、安否確認、このために頑張るというところでございます。

 城島委員長に対して御質問もありましたが、城島委員長も、いろいろな機会にいろいろな情報を得ては、私のところへ、これはどうだ、あれはどうだと確認を求めてこられております。私は、ありとあらゆる情報、どんな情報もほったらかしにしない、追跡する、この思いのもとで頑張っておりますので、御理解、御協力のほどをお願いいたします。

古屋(圭)委員 情報収集をして分析をする、これは政府として当然のことであります。今までやっていなかったかといったら、そんなことはないというふうに思います。それは中井大臣と同じように……(中井国務大臣「委員長」と呼ぶ)ちょっと、私今質問しているんだから。質問優先ですよ、これは。委員長、続けてよろしいですか。

城島委員長 はい、どうぞ。

古屋(圭)委員 続けさせていただきます。

 やはりそれは当然のことなのであって、しかし一方では、十二億円ですか、今度の、二十二億円ですか、情報収集の経費として増額をした。私は、前回もこれは評価していますよ。こういったことはしっかりやっている。評価しているところは評価しているんです。

 しかし、今申し上げたように、基本方針という、だれが見ても当たり前のものがそっくりそのまま抜けて、そしてこのパンフレットもこうやって抜けている。御本人が、大臣、責任者が承知していない。ということは、もう一回再印刷するということですよ。ということは、またコストがかかる。コストがかかるからいろいろ印刷しなかった、しかし結果として、再印刷することによってコストがまたかかってしまうんですよ。矛盾しているじゃないですか。やはりこの辺はしっかりチェックをしていただきたいというふうに思います。

 そして、それに関連して、三つの基本方針のもとに、六つの対応方針というのが御承知のとおりあります。それぞれ、私、あえて今読み上げさせていただきます。

 一番、北朝鮮側に対し、すべての拉致被害者の安全を確保し、直ちに帰国させるよう引き続き強く求めていく。また、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しについても引き続き強く求めていく。これが一番ですよ。この一番最後の、拉致実行犯の引き渡しは削られましたけれども、すべての被害者の安全を確保、私はこれは当然のことだと思うんですね。なぜこれが対応方針から消えてしまっているのか。

 もう一項読みます。現在、政府としては、北朝鮮に対して、人道支援の凍結措置であるとか万景峰号の入港禁止を含む措置、北朝鮮のミサイル等に関する資金の移動禁止の措置、すべての北朝鮮船舶の入港措置、すべての品目の輸入禁止措置等々をやっている。それで、これについても、北朝鮮の状況によってさらに検討していくということ。これは至極当たり前のことなんですよ。それがどうして対応方針から消えちゃっているんでしょうか。

 三番目の、現行法制度の中での厳格な法執行を引き続き実施していく。これも当然のことですね。

 とりあえず三つを言いました。なぜ、こういうものをあえて消さなきゃいけないんでしょうか。私はそれが理解できないんです。対外的なメッセージとして、要するに拉致問題に対しての取り組みが甘い、こういうふうに言われても仕方がないんじゃないでしょうか。

中井国務大臣 古屋先生は何もかも御存じの中でおしかりをいただいているのだと思いますが、従来の政府がやってきた、当たり前じゃないかというお言葉でございますが、その当たり前のことが当たり前にされてこなかった。

 例えば、私は拉致担当大臣になりましてびっくりいたしましたのは、従来のデータがない、どこにデータがあるんだ。お一人お一人のことも含めて、どこにもない。警察に言いますと渋々出てくる面がある。あるいは、拉致対策本部の中に所属している職員が持っている、どこかへ消えちゃった。こんなのばかりでございまして、どこか一カ所にまとめられて、きちっと分析されて、使われた形跡は残念ながらありません。こういったことをきちっとやるだけでも膨大な作業だということを含めて、私は、今からでも遅くないから、やり直しをしていくべきだと考えております。

 同時に、現行法制下で厳格な法施行を引き続き実施していく、こう言いますが、本当に厳格に例えば制裁をやっているのかということを含めて、抜け道だらけではないか、私は残念に思っています。そういう意味では、昨年、サッカーファンの皆さんには申しわけなかったけれども、東アジア女子サッカー選手権の北朝鮮チームは入るべきではないとあえて申し上げたところでございます。

 そういったことを含めて、役所に任せておいたらできなくなってしまう、わからなくなってしまう、こういう今の拉致の対策の現状を憂えて、できる限り集約して集中してやっていく、このことを思って行動いたしております。四月一日からは体制ができますので、十分御理解をいただきながら頑張ってまいりますので、御指導のほどをお願いいたします。

古屋(圭)委員 今の答弁を聞いておりますと、例えばこの対応方針の四番ですね、対策本部、今もありますね、つくっています。対策本部を中心に、拉致問題に関する情報を集約、分析し、解決に向けた措置の検討を迅速に、これは中井大臣が今まさしくやろうとしていることじゃないですか。我々もやってきた。確かに、それが不十分だという御指摘を今いただいています。だったら、さらにそれを加速するために、これを外す理由は私はどこにもないと思うんですよ。

 それからもう一つ、現行法制度下での厳格な法執行を引き続きということでありますけれども、これも、厳密な法執行がまだまだ不十分であったということですよ、反省を込めて言うならば。ということは、この項目だって、外してしまうということは余りにも不自然じゃないでしょうか。

 私は、今の御答弁を聞いていても、この二つ、そう思います。

中井国務大臣 あえて外すとか外さないじゃなしに、私どもの機動化、簡略化した本部で、やることを集中的に決めて取り組んでいるわけでございます。

 古屋さん、それほど前のものが立派でよかったというのなら、あえてお言葉を返して悪いが、解決しているわけじゃないですか。何にも解決してこなかった、五年間、ここにみんなの苦悩があるわけです。岡田君の答弁でも、本当に私は、外務省としてはああいう答弁しかできないのだろうと思っています。

 そういう意味で、私は担当大臣になりまして、北朝鮮全般のことを担当しているわけでもありません。拉致問題の解決のための突破口を開け、こういうことでありますから、私自身、古屋先生なんかと一緒に長年関心を持って取り組んできたことでもありますから、それでは喜んでお引き受けさせていただいて、私なりのやり方でやらせていただく。これが、独断専行だとか、前のやり方を踏襲していないとか、おしかりをいただいてもそれは仕方がない。私なりのやり方で前進を図る、そして、一年たっても二年たっても何も見えてこないというのなら、そのときにはおしかりをいただいてもやむを得ない。それまでの間、どうぞ温かい目で御理解を賜りたいと思います。

古屋(圭)委員 私は、中井大臣が何にもしていないなんということは全く言っておりません。非常に熱心に取り組んでいただいているということは、前の委員会でも私は評価をさせていただいております。しかし、ややもすると、やはりこういう問題は、個人プレーはさることながら、組織として、政府として一体になって、信頼関係を持って取り組んでいくということが相手国に対するプレッシャーにもつながるわけであります。

 そういった意味からすると、私は、この六項目というのは、今まで確かに十分にやり切れていなかった。しかし、今、全く五年間動いていないと言いますけれども、必ずしもそうではないじゃないですか。我々が圧力をかけたときに向こうが少し譲歩の反応をしてきたり、現実にそういうものがあったわけでありまして、やはりこの中身が少しずつではあるが前進をしている、決して後退をしていないということは、中井大臣も、一緒に同志として拉致議員連盟で活動したときにも、そういう認識は持っておられると思いますよ。

 確かに中井大臣は、新たに大臣になられて、前のやってきたこういうペーパー、決まり事をそっくりそのまま受け継ぐのは腹の虫がおさまらないという気持ちはわかります。それは非常にわかりますよ。だけれども、そういういわゆる私的感情を国家の基本的な政策の中に入れてしまっては、私は国が立ち行かなくなるんじゃないかなという気もするんです。

 例えばもう一つ、五番、特定失踪者に係る事案を含め、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に関する調査を引き続き全力で推進していく。新たに拉致と認定される事案があれば、北朝鮮側に対してしかるべく取り上げていく。

 これは、先日、参議院の白眞勲議員の質問でも、中井大臣はこのことについて少し踏み込んで答弁をされておられますね。現に、新内閣になってからも特定失踪者の皆さんと会談をしています。前政権のときにもそれをやりました。やはり、限りなく黒に近い、拉致されたものに近い皆さんも、千番台リストと言われているように、たくさんいらっしゃるわけでありますから、そういったものにしっかり取り組んでいくということは、これは今の方針と変わっていないと思うんですよ、中身。にもかかわらず、これまで外してしまっているということ自身、私はちょっと理屈が通らないのではないか。

 要するに、今申し上げましたように、前の政権がやっていることは全部おかしいというのは、私はちょっと納得がいきません。私は中井大臣を大変尊敬しております。なぜか。それは、私は、中井大臣は真の保守主義者だと思うからであります。やはり、保守主義というのは、守るべきものは守る、守るために改革をしていくということでありまして、評価されるものは、敵、味方であってもしっかりいいものは踏襲をしていく、不十分なものは改革をしていく、改良をしていく、その中から新しいものが生まれていく、こういうことじゃないでしょうか。

 私は、そういう意味からしても、この六項目を外してしまうというのは本当に問題があるな。むしろ、それだったら、では、この六項目が違うんだったら、新たな六項目なり追加項目なり、何か考えていただきたいと思います。

中井国務大臣 御指摘ではございますけれども、私どもは、役人の人に文書をつくらせない、私どもでやる、そして拉致対策本部も、総理、外務大臣、官房長官、私、この四人でやる。従来は全閣僚でございます。そういったことを含めて、政治主導で決定をし、行動しようといたしております。役所が動いて、その上で追認をするというようなやり方では、到底この拉致という問題は解決していかないんだろう、こういう思いの中で、四人で今まで以上の連携をとって拉致問題に対応いたしております。

 したがいまして、外務省、外務大臣からは、拉致に関する言及があったときには、すべての問題について私のところへ報告が上がってまいっております。従来はこういったこともやられていない。また、私自身が得た情報の中で極めて大事なことにつきましては、外務大臣、官房長官にたびたびお目にかかってお伝えをして、一致結束、同方向、こういったことでこの問題に今取り組んでいるわけでございます。

 役所におきましても、ようやく、こういうペースや姿勢といったものを理解いただいて、今組織的に私どもをサポートしている、こういう状況にありまして、組織が動いていない、組織がサボタージュをしている、そういったことについてはもう全く心配をしていない。ただ、古屋先生の御指摘を十分胸に畳んで、おしかりをいただかないように、それらの文言にも配慮をしながら頑張ってまいりたい、このことを重ねて申し上げます。

古屋(圭)委員 対策本部の十月十三日のペーパーでも、関係省庁連絡会議、これは大臣とか副大臣とか政務官、政治家が任命されているんですね。こういうものも稼働していないんですよ、現実には。政治主導とおっしゃるなら、やはりこういうものを頻繁に開いて、活動している、そういう姿を見せるべきじゃないでしょうか。ホームページが十月の十三日以来、一回も更新をされていないなんということがないように、ぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 時間がありませんので、最後に一つ。

 あした、拉致被害者支援法が議論されるようでございます。私ども自民党としても、これは、もう一年前から党の特別委員会の中に小委員会をつくって、そして実際に拉致被害者の家族にもお目にかかって詳しくヒアリングをして、まとめさせていただきました。ちょうどことしで五年の期限が来ます。私どもとしては、超党派でこれも対応するのがいいだろうということで大塚副大臣にもいろいろ御協力をいただきましたけれども、十年間延長するということで私たちは対応させていただきたいというふうに思っております。そのことについては、あした、御議論、そして御採決がいただけるものと予測をいたしております。

 いずれにいたしましても、大臣、そういう六項目がこういうことならば、新しい項目なりなんなりをやはり出して、高らかに宣言をするという必要があると思いますよ。それも何にもなくて、全部自分はやっているんだ、やっているんだだけでは、私は中井大臣は信頼していますけれども、そういうわけにはいかないんですね、国民の皆さんあるいは世界から見れば。先ほど大臣に質問したときにも、首脳会談で必ず入れてくださいよと言っても、そのことについてはほとんどお答えがなかったじゃないですか。

 やはり、そういう意味からしても中井大臣が頑張っていただいて、拉致問題を政府の最重要課題として、解決に向けてまなじりを決してやっていただく。強く要請して、終わります。

城島委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内でございます。

 先ほどに引き続き質問をさせていただきます。

 最初に、北朝鮮の経済状況についてお尋ねをしたいと思います。特に、現在の国連安保理による制裁の影響とその後のインフレの激化、昨年十一月に実施したデノミの失敗とその状況、また、本年一月に国家開発銀行を設立したと言われておりますが、その実効性などについて、まず報告をいただきたいと思います。

武正副大臣 竹内委員にお答えをいたします。

 北朝鮮の経済状況についてはさまざまな情報に接しておりますが、食料事情を含め、北朝鮮経済は依然として厳しい状況が続いていると承知しております。

 制裁の影響に関しては、我が国の北朝鮮との輸出入禁止措置や北朝鮮船籍の入港禁止措置など、これまで実施してきた各種措置を通じて、我が国と北朝鮮の間の人、物、金の往来は相当程度縮小しております。北朝鮮の厳しい経済状況をあわせ考えた場合、北朝鮮に対して一定の効果を及ぼしていると認識しております。

 北朝鮮は、昨年十二月一日よりデノミネーション措置を実施、ただし、北朝鮮当局は公式にはデノミ実施を対外発表しておらず、また、その成否についても一切発表していないため現状は必ずしも明らかではありませんが、デノミ実施は失敗するとの見方が有力であります。日本や韓国の一部報道では、デノミ実施が失敗に終わり、内部で混乱が生じているとの見方も出ております。

 最近、北朝鮮は第三国からの投資誘致等をねらいとする内部機関を相次いで設立、強化するなどの活動を活発化しております。その一環として、国家開発銀行の設立、及び大豊国際投資グループの活動強化に乗り出していると承知しております。

 政府としては、今後とも、各国との情報交換や脱北者を含む関係者から話を聴取することを含め、北朝鮮内部の状況に関する情報の収集に取り組んでいく所存でございます。

竹内委員 ちょっと委員長にお願いがあるんですが、何か隣で大きな叫び声等があると大変私も質疑に混乱を生じますし、また集中できませんので、ちょっと指導をお願いしたいんですが。

城島委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

城島委員長 速記を起こしてください。

 竹内君。

竹内委員 次に、今御報告ありましたように、北朝鮮の経済状況は非常に厳しいという状況がよくわかりました。

 次に、金正日総書記が近々中国を訪問するとの情報があるわけでありますが、それによって北朝鮮が六カ国協議に復帰する可能性があるのかどうか。また、北朝鮮は復帰の条件として、国連安保理による制裁解除、休戦状態の朝鮮戦争を終結させる平和条約の締結などを要求しているとの情報もありますが、これらのことは事実でありましょうか。お答えください。

武正副大臣 金正日国防委員長の訪中の可能性については、報道等の情報があるのは承知しておりますが、その一つ一つにコメントはしないということでございます。

 北朝鮮は、六者会合への復帰や非核化措置の実施に絡めて、制裁の解除や平和協定の締結を求めております。したがって、現在、六者会合の再開見通しにつき、確たることを申し上げる状況にはございません。

 制裁の解除のために必要なことは、北朝鮮が累次の国連安保理決議に定められた義務を遵守すること、また、北朝鮮による無条件での六者会合への早期復帰、二〇〇五年九月の六者会合共同声明の完全実施が必要であります。

 六者会合の早期再開と北朝鮮の核放棄に向けて、引き続き国連安保理決議の着実な履行を求め、米国及び韓国、さらには中国といった関係国と緊密に連携をとってまいります。

竹内委員 六者協議へは無条件復帰が前提だと外務省はおっしゃるんですが、大臣も先ほどおっしゃっていたんですが、いろいろ情報では、北朝鮮が六カ国協議に復帰すれば日本を含む五カ国は新提案を共同で行う方向だ。しかも米国、アメリカはその内容として、朝鮮半島の非核化、平和条約締結、対北朝鮮経済支援の三点を同時に実現させるということを言っているという情報があるわけでございまして、この点について先ほどの答弁のままでいいのかどうか。その辺、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。

武正副大臣 北朝鮮問題に関して、六者会合に係る取り組みを含めて、米国や韓国や、さらには中国といった関係国とふだんより緊密に連携をとるということでございまして、今委員御指摘の個別具体的なやりとりの内容については、関係国との関係もあり、明らかにすることは差し控えたいと存じます。

竹内委員 この辺は大変皆さん御関心があると思うんですよ。先ほどの自民党の古屋委員の質問の中でも、まさか無条件と言いながら重質油を出すというようなことを決めているんじゃないだろうなという質問だったと思うんですけれども、私どもも、先ほどのとおり、やはり無条件復帰だ、これが前提だと思いますので、その辺は間違っても変な方向にならないようにぜひお願いしたいというふうに思います。

 次に、中井大臣にお伺いしたいと思います。

 私どもとしても、北朝鮮による大量破壊兵器関連物資の拡散を防ぐことが世界の平和のために極めて重要なことであるというふうに考えておりまして、そのためには、国連決議一八七四号に基づいて既に国会に提出されているいわゆる貨物検査法、これには政府提出の閣法と自民党などの野党提出の衆法との二つがあるわけでございますが、これを早急に採決して成立させることが重要であるというふうに思っております。

 私どもの意見としては、自民党等野党提出案のように、自衛隊の役割を明記した方が北朝鮮に圧力になるというふうに考えますが、所管外ではございますけれども、中井大臣のお考えを承りたいと思います。

中井国務大臣 おっしゃるとおり所管外ですので、このごろ所管外のことに口出ししてはおしかりをいただいておりますので、中身までお答えをさせていただくことは御遠慮させていただきたいと思っています。

 私は、古屋先生の御指摘ありました真の保守主義ではないですが、民族主義者でございますから、いろいろな思いはございます。しかし、一日も早く国会でいい話し合いをしていただいて、検査法の法案を通す、これらも含めて北朝鮮に対する制裁、包囲、こういったものをきちっとやっていく、これが大事であろうと考えています。

竹内委員 この辺は重要なことだと思っておりまして、先ほどの最初の民主党の長尾委員も圧力が大事だということをおっしゃっていましたので、そういう意味では、早くこの貨物検査法を成立させないといけないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 高校無償化の方については、先ほど、所管外ですけれども、お話ありましたけれども、貨物検査法については割合自重されているのはやや残念だなというふうに思った次第であります。

 いずれにしても、この問題につきましては民主党の皆さんの御協力もお願いしたい、拉致問題につきましては引き続き超党派でというふうに思います。

 それから、次の質問でございますが、中井大臣にお伺いいたします。

 金賢姫元工作員の日本への招致を準備されているという情報があります。そのねらいと実現可能性についてお尋ねしたいと思います。

中井国務大臣 彼女が、昨年五月、日本政府の調査の方々に新たな御自身の経験を語られたという報道がついせんだって韓国で行われました。私はこれを初めて知りまして、早速調べましたところ、確かに調査が行われ、また、従来と違う横田めぐみさんのことについて証言をされていたことがわかったわけでございます。先ほど古屋議員の御質問に答えて、情報を集めて、分析して、使っていないと申し上げた一例だと私は考えております。

 したがいまして、これをもとに横田さん御夫妻や御家族の方にも確かめましたところ、ぜひ生の声を聞きたい、話を聞きたいと強い御要望がございました。

 国内の法的な問題、韓国の諸情勢等々難しいことがかなりございますので、慎重に対応しなければならないと思っておりますが、現在、韓国政府にこの可能性について問い合わせをしていることは事実でございます。

竹内委員 ということは、大臣としては実現したいと。しかし、その可能性は今まだわからないということでいいんでしょうか。

中井国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

竹内委員 引き続き中井大臣にお尋ねします。

 政府としては、昨年末に北朝鮮難民救援基金の、名前は挙げませんが、民間人三人の方を拉致担当大臣の直属参与として起用する人事を固めたが、平野官房長官の意向でいまだに凍結されているという報道ですが、これは事実でしょうか。また、その理由はどういうことでございましょうか。

中井国務大臣 こういう特異な問題でありますから、幅広い御経験を有される方々のお力をかりるべきだと考えて、制度的にはつくり上げ、何人かの方の御推薦を申し上げておりますけれども、必ずしも全員認められているという現状ではありませんので、私ども、それぞれ四人の大臣の中で話し合いが行われている状況でございます。

 しかし、この人たち以外も含めまして、数多くの民間の方々が私ども役所を訪ねていただきまして、いろいろなアドバイスあるいは情報分析等、お伝えをいただいております。これらを一つ一つ、役所の組織と相談しながら、今追跡調査をして、格別不自由ではないとは思っております。

 しかし、これからいよいよ新体制をつくろうというわけですから、一日も早く官房長官ほかの御理解を得て人材登用の道を開いていきたい、このように思っております。

竹内委員 このような状態を放置しておくのは好ましくないと私どもも思いますので、早急に解決をしていただきたいと思います。

 最後に、一言だけ。

 先ほど、中国へ行って中国の意見を聞いたということを言っていましたけれども、そのときに中国がこんなことを言っていました。基本的には日朝間の問題なんだけれども、他の国のこれまでの経験を参考にして、この問題をできるだけ早く解決をする、機が熟したものから一つ一つ解決してはどうか、こういうことを向こうは言っておりました。これらのことも参考にしながら、ともどもに考えてまいりたいと思います。

 以上で終わります。

城島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 中井大臣に質問いたします。

 先ほどもありましたが、大臣は二月十七日の政府・与党の拉致問題関係政策会議などの機会に、朝鮮学校を高校無償化の対象にするかどうかの問題をめぐって発言をされてきました。その趣旨はということで先ほど御答弁があって、国を挙げて制裁しているときに、国民感情を考えて、すべきでないということでありました。

 この問題では、所管の川端文部科学大臣が二月二十三日の記者会見で、中井大臣に対して、この対象については、外交上の配慮や、あるいは教育の中身に関してのことが判断の材料になるものではない、拉致があるから対話と圧力みたいな政策判断の中にこの問題が入るものではないとはっきり申し上げてありますと述べられております。これは川端大臣です。こういうことではないんでしょうか。

中井国務大臣 私は昨年十二月に川端さんに申し入れをしたことは事実でございます。その後、一、二度、いろいろな機会に、川端さんから、文科省にお任せをいただきたい、こういうお話がございました。

 川端さんは、旧の民社党時代の仲間でもありますし、親戚筋にも当たりますし、いろいろなことがございますので、信頼をして、お任せを申し上げているというところでございます。

笠井委員 朝鮮学校というのは、私が申し上げるまでもなく、もともと在日の方々が子供たちに朝鮮語を学ばせるために、戦後各地に設立をした国語講習所を母体につくられた。朝鮮籍の生徒が四六%、韓国籍がそれを上回って五三%、日本国籍の生徒もいる。国公立大学を含む大半の大学が受験や入学を認めているわけでありますね。カリキュラムを見ましても、朝鮮史や朝鮮語の授業を除いて、日本の学習指導要領に準拠したものをとっている。また、都道府県に教育内容を届け出ているということでありますから、先ほど来、国交がない国という話があるんですが、私は現に日本にある学校だ、問い合わせればわかることじゃないかと思います。

 川端文科大臣は二月二十三日の会見で、授業の中身も、こんなことを教えている、あんなことを教えているというけれども、それは対象の判断とは思っていない、高校に準ずる教育がされているかどうかということに集約されているというふうに述べられているわけであります。

 そこで、中井大臣、子供の学ぶ権利というのは基本的に差別なく保障されるべきものだと思います。核開発や拉致問題で北朝鮮に制裁を与えていることを理由に朝鮮学校を無償化の対象から除外するということになれば、こうした問題と何の関係もない生徒たちにも制裁を加えるということになっちゃうんじゃないでしょうか。いかがですか。

中井国務大臣 韓国籍の方や日本籍の方がおられるということも聞き及んでおります。しかし、全部が全部ではありませんが、例えば、北朝鮮籍からお父さんが韓国籍へ変わられた、しかし学校はそのままだ、こういう方もおられるわけでございます。また、韓国籍の方は日本の学校へお通いの方がたくさんいらっしゃる。そういう中で、語学等、母国の言葉を学びたいということで行っていらっしゃる。私はそれについて何も言っていません。

 日本人が海外で日本人学校をつくる、日本からお金を送る、みんなでお金を集めてやる、そういうことだと思うんですね。それを他の国の政府も邪魔はしていない。日本も何の邪魔もしていません。ただ、国家としてお金を出すのはどうかと申し上げておるのであります。

 しかも、個人個人に出すのじゃなしに、学校単位に出していくというやり方でどうなんでしょうかということも知った上で、余り細かく言うのは僕の役割じゃありませんから、資料を出せと言われたら幾らでも持っていますが、それは言うべきことではないので、拉致担当として、拉致問題がある中でどうでしょうかと。

 大上段からお面一本、これだけでございます。

笠井委員 朝鮮学校の生徒たちのことで言われましたが、朝鮮籍の比率というのは、北朝鮮籍じゃない朝鮮籍ですけれども、これが四六%で、韓国籍が五三%ということであります。

 問題は、大臣が、国を挙げて制裁しているときということで、それを理由にしてこの問題について発言されている。結局、そういう大臣の考えというのは、北朝鮮に制裁措置を続けてはいるけれども、拉致問題に進展が見られないために、さらなる強硬姿勢を示すために、新たなカードとして朝鮮学校を除外すると見られても仕方がない話になってくる。これは外交に絡めるべきでない性格の問題を絡めるということによって、逆に、私は拉致問題の解決に向けて障害をもたらすことにならないかという危惧が出てくるのも当然だと思うのです。

 朝鮮学校の生徒たちは、これまでもいわれのない偏見と差別を受けてまいりました。北朝鮮が二〇〇六年にミサイル発射や核実験、これはもうとんでもないことですが、これを強行した際にも、そのときに朝鮮学校の生徒らに対する嫌がらせ事件が頻発をして、脅迫、暴行、傷害、無言電話など、その件数というのは当時警察庁が把握できたものだけでも八十件に上ったということであります。

 大臣は国家公安委員長として、そうした事実は当然御存じですよね。

中井国務大臣 当時、残念なことに、そういう言動が日本の社会のあちこちにあったということは承知をいたしております。

 また、私は一九四二年生まれでございます。四六年まで中国におりまして、郷里へ帰りました。小学校、中学校時代、いろいろなことがあって、日本人の厳しい思いというのが、彼らにはなかなかつらいことであったろうなという記憶も確かに持って育っております。

 しかし、これらに対して、日本人はたび重なる援助、また朝銀系統に対して一兆四千億以上に上る税金の投入等々含めて、随分いろいろな面で配慮してきている。同時に、特別永住者として、投票権以外は全部同一に扱ってここまで来ています。

 そういう意味で、私は拉致という問題が起こっていることを本当に情けなく、残念に思っています。これを一刻も早く解決をしてもらう、このために日本人が当然とるべき行動をとる、当たり前のことだと考えています。

 今回の問題が起こって、制裁を強化しようという中で申し上げたのではなく、私は前々から、野党時代からこれらの問題について言及をしてきておりまして、終始一貫、変わらずに来ている。こんなことがそう大した圧力になるとも思っていません。

笠井委員 拉致問題の解決は当然のことでありますが、これが問題になっているときに、当たり前のこととして言われたというような形で言われること自体が、私は、拉致問題と高校無償化問題を殊さら結びつけるような発言というのが人権侵害を助長しかねないことになる、そういう性格の問題でもあると思うんです。

 時間が来たので終わりますが、韓国の新聞ハンギョレ、三月十一日付の社説は、友愛に基づいた東アジア共同体という鳩山総理の夢が国内外へ共鳴することを望むなら、朝鮮学校の学生たちに対する授業料支援はもちろん、植民地支配の現実的遺産として残っている在日同胞への各種差別を撤廃しなければならないと厳しく指摘をしております。

 鳩山総理は、日韓の首脳会談で、過去の歴史を直視する勇気を持っていると言われたわけです。その立場からも、朝鮮学校を対象から除外しないというしっかりした判断をすべきことを強く指摘して、質問を終わりたいと思います。

中井国務大臣 御指摘は承ってまいりますけれども、委員が先ほど外務大臣にも御質問をいただきました人権で、国連人権条約等に違反をするじゃないかというお話がございます。だけれども、北朝鮮は国連安全保障理事会でここ十年ぐらい人権抑圧国だという宣言を受けて、これを早く直せと強く国際社会の中で非難されているのではないでしょうか。

 そういうこともきちっと御判断を賜りたいと私は考えておりまして、子供さんの学ぶ権利、子供さんの教育の均等、これは日本におって一度も阻害したことはなしに今日まで参りました。今回も何も阻害するわけではありません。ただ、日本の税金をつぎ込まない、こういうことだけじゃないでしょうか。

 あそこにおられる学校の先生方はどこに所属しているかとか、ありとあらゆることをわかっていますけれども、僕はあえて言わない。あえて言わない、こういう立場から発言しているということも御理解ください。

笠井委員 私どもは、拉致問題を厳しく批判して、これの解決のためにやっているのは人後に落ちません。最も早く交渉をやってきたと思っておりますけれども、人権をおっしゃるなら、こういう問題を絡めるべきではないということを私は申し上げているので、そのことだけは申し上げておきたいと思います。

城島委員長 次に、熊田篤嗣君。

熊田委員 民主党の熊田篤嗣です。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 国民の生命と安全を守ることは、国家の最も基本的かつ重要な役割だと考えます。そういった意味からいっても、拉致問題解決は我が国にとっての最重要課題の一つだと考えます。

 しかし、この数年、拉致問題解決への歩みは大きな進展を見せてくることができませんでした。関係者及び国民の皆様の中での閉塞感ばかりが募っていく状況であったと思います。それだけに、昨年の政権交代は、事態打開への大きな転換点として期待されたはずだと思います。関係者の皆様も年を重ねていっている中で、もはや一刻の猶予もない。こういった中で、私はこれまでの経緯におけるポイントを振り返りつつ、今後への展望をお伺いしてまいりたいと思います。

 まずは、これまでの経緯のところでの確認をさせていただきたいと思いますが、北朝鮮による拉致問題が大きく進展したのは、二〇〇二年九月十七日の小泉訪朝による日朝首脳会談であったと思います。このときに、北朝鮮は初めて公式に日本人拉致を認め、日本政府が調査を求めていた十三人に対し、四名生存、八名死亡、一名は入国確認できず、そういった旨を伝えてまいりました。その後、日朝平壌宣言が署名されたと確認しておりますが、しかし、例えばこの八名死亡でございますが、この時点では、あくまで先方からの一方的な伝聞であり、確固たる裏づけはなかったのではないかと思います。それは、その後、日朝実務者協議を通じて得た情報や物証が信憑性がなかった、ここからも明らかだと思います。

 また、この日朝平壌宣言では、今後このような遺憾な問題が再び生じることがないよう適切な措置をとることは確認をしていますが、既に起きてしまった拉致に対する具体的な言及が宣言の中にありませんでした。本来はこの時点で、これまでの拉致事件に関しても、しっかりとした抗議あるいは今後どうするかという確認なりが文書にあってしかるべきだったのではないかと思います。

 そういった意味で、武正副大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 当時、小泉総理、前政権のことですから答え切れない部分もあるかもしれませんが、金正日、国防委員長の立場でサインしていたと思いますが、から伝えられた拉致被害の状況に対する裏づけがないままに、なぜ日朝平壌宣言、そのまま安易に署名をしてしまったのでしょうか。

 そして、もう一点、この平壌宣言ですが、真っ先に、一番目に、二〇〇二年十月中に国交正常化交渉を再開することをうたっています。しかし、実質的には、第十二回の正常化交渉、本会議が物別れに終わり、その後も再開をされていません。この対応は、少なくとも拉致問題の包括的な解決へとつながってないというのが現実だと思います。

 そこで、もう一つお伺いしたいんですが、これも前政権のことでありますが、今さらではありますが、日本政府はなぜ正常化交渉を軌道に乗せなかったんでしょうか。そもそも拉致問題解決への道筋をあいまいにしたままで平壌宣言にサインをしたのは、時の総理だったはずです。そのことを踏まえれば、まさしくこの後の正常化交渉、拉致や核のことも包括的に踏まえて行うべきであったという見方もあったのではないかと思います。

 そういった意味で、最初のボタンのかけ違え、あるいは対応のまずさがあったのではないかと思いますが、そのあたりに対しての所見をお伺いできないでしょうか。

武正副大臣 熊田委員にお答えをいたします。

 この二〇〇二年九月、日朝首脳会談そしてまた日朝平壌宣言の署名以来の経緯、そしてまた、六者協議が二〇〇八年十二月から再開をされていないといったことも含めて、その原点というか、その発端がこの日朝首脳会談にあったのではないかという御質問でございます。

 この間の経緯をちょっとお伝えさせていただきますと、改めて振り返ってみたいと思いますが、二〇〇二年九月十七日の日朝首脳会談において、北朝鮮側は、拉致被害者による家族との面会及び帰国への便宜を保証すると約束。これを受け、政府は、生存しているとされた拉致被害者の詳細な人定確認及びその他の被害者の方々に関する情報収集等を行うべく、二〇〇二年九月二十八日から事実調査チームを派遣し、生存しているとされた拉致被害者と面会。この後、日本政府からの要求に応じて、同年十月十五日、拉致被害者五名が帰国いたしました。その後、二〇〇四年五月二十二日の日朝首脳会談の結果、拉致被害者の御家族計八名が日本に帰国。

 以降、政府としては、北朝鮮側に対し、拉致被害者の即時帰国、安否不明の拉致被害者に関する真相究明等を強く求めてきた結果、二〇〇八年八月の日朝実務者協議において、北朝鮮側が調査委員会を立ち上げ、調査のやり直しを行うことで合意をし、二〇〇八年八月の合意に従い、北朝鮮による調査の早急なやり直しが行われるということ、この点が重要であるわけですが、実際にそれが行われていないといったのが現状でございます。

 また、今日朝平壌宣言についての御指摘がございました。この平壌宣言の中に、直接的な拉致という言葉が明記をされていないことは当初から指摘をされているとおりでございまして、こうした平壌宣言でありますけれども、政府の方針としては、この平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイル、包括的にこの懸案を解決し、日朝国交正常化を実現するというこの政府の方針には変わりはございません。

中井国務大臣 大変難しい御質問をいただいたと考えております。

 小泉さんが思い切って平壌へ飛ばれて、五人の方を拉致として帰された、またその二年後に家族の方もお帰りになったということは本当に大いに評価すべき決断であり、行動であったと僕は思っています。しかし、おっしゃるように、あの平壌宣言はそこで幕引きを図っているんじゃないか、私どもはこのことを強く危惧いたしました。また、核、ミサイルのことについても書かれているわけではありません。たびたび予算委員会等で質問をして、拉致は打ち切りになったんじゃないかということを同僚議員等が追及したわけでございます。

 小泉さんはああいうお方でございますから、よく見てくださいよ、眼光紙背に徹すれば読めるでしょう、こう言って終わりでしたから、そんなので読めるわけはないんだと僕は当時から思っておりましたが、これが当時は通ったわけでございます。いまだに外務省も平壌宣言ということを言わざるを得ない。

 そういう中で、もう解決したじゃないかと北に言われる。ようやく日本は、骨を出させ、それは骨が違うという中で、それでは調査委員会をつくってくれというところまでこぎつけた。針の穴を通すような難しい交渉をやっているんですね。僕は個人的にはあの平壌宣言というものに対する全然違う認識をしていますし、私どもの手元には生存者がきちっといらっしゃるという情報も集まりつつあるわけでございます。

 したがって、これらをもとに突破口を開いて、従来の経緯は経緯、そして、これからも六カ国協議、六者協議の中での議論は議論としながらも、何とか救う道がないか、これに全力を挙げる、こう考えておりまして、前のやり方と違うとか整合性があるとか、そんなことはもうアウフヘーベンしてやっていくんだという思いが私の率直な感想でございます。

 今ここで、小泉さんがどうだったこうだったということを言ってどうなるのかなという気もいたします。あのときは帰国じゃなしに、一時帰還でございました。一時的に観光旅行みたいに日本へ帰すんだというのが北朝鮮の対応でございました。それを超党派の議員連盟やら、御家族の会の方もみんな頑張って、帰さない、こういうことで盛り上がった。このことが当時の内閣も縛った。非常に難しい判断を続けてきたと僕は思っています。

熊田委員 ありがとうございます。

 今、大臣のお言葉にありましたように、過去の経緯を簡単に押さえるつもりが長くなってしまいましたが、経緯は経緯として押さえながらも、これから拉致問題を解決することこそが私も最も大切なことであると思っております。そういった意味で、過去の部分で少し振り返らせていただいたわけでございますが、現実にはどうしていくか。

 しかし、問題解決というには、この問題、当然相手がある問題でございます。相手との交渉なしには最終的な結論は得られないと思っています。そのためには、考え得るあらゆる手段を排除すべきではない。大切なことは、対決ありきではなく、拉致問題の解決、これこそが最も大切だと考えます。そういった意味で、しっかりとしたビジョンなしでの場当たり的な対応になってしまえば、真の解決にはつながらないと思います。

 そこで、中井大臣にお伺いしたいと思いますが、どんな圧力をかけるかとか、そういった一つ一つの手段ではなくて、解決のためのロードマップ、いわゆる中井ビジョンとでも言えるようなものをぜひお聞かせいただきたいと思います。

中井国務大臣 せっかくのお尋ねですが、相手がああいうお国でございますから、こっちでどんな計画を立てようと全然関係ないわけです。だから、私どもは徹底的に調査して確実な情報を持つ、同時に、ありとあらゆるチャンネルを使う、こう思っております。どんなお話であれ、どんな動きであれ、無視することなく私どもは対応していく。

 これを外務大臣、官房長官、総理にもお願いし、また拉致対策室の役所、そしていろいろな情報を私どもを助ける意味でお寄せいただく皆さん方にも申し上げているわけでございます。徹底的にこれをやって、そしてどんな話し合いのシグナルでも見逃すことなくやっていきたい、しかし制裁は制裁で毅然としてやっていくんだ、こういう方針を貫いていきたい、これが現行でございます。

熊田委員 あらゆる状況に応じた中で、とにかく拉致問題解決が私も最優先だと思いますので、こういった手段ありきではなく、大臣おっしゃられたように、すべての状況に対応する中でぜひ進めていただきたいと思います。

 もう一点だけお伺いさせていただきたいと思います。

 このたび、拉致被害者の支援に関する法律の延長が審議されることになりますが、大切なことであり、しっかりと行わなければならないものだと思います。しかし、あくまでこれは被害者の皆さんの奪われた時間への補償ではなくて、支援で我が国政府が行う対応です。

 こういった対応に加え、将来的に北朝鮮に賠償という形で求める、こういったことなどのお考えはあるんでしょうか。

武正副大臣 熊田委員にお答えいたします。

 政府としては、先ほども触れましたが、一昨年八月の日朝間の合意に従い、北朝鮮による調査のやり直し、これが早期に開始され、生存者の帰国につながるよう、成果が早期に得られるよう、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えでございます。

 損害賠償の問題については、安否不明被害者の一日も早い帰国に向けた取り組み等に与える影響等も考慮しつつ、今後総合的に検討すべきと考えております。

 ただ、一般的に、国際法違反行為から発生する国家責任を解除するための措置としては、原状回復、陳謝、違反者の処罰、再発防止の確約と並び金銭賠償も含まれ得る。したがって、我が国が国際法違反行為について北朝鮮に対し金銭賠償を請求することは可能であるということでございます。

熊田委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたのでこれで終わりになりますが、何とぞ拉致問題解決、くどいようでございますが、これが第一という思いでぜひ進んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

城島委員長 次に、大谷啓君。

大谷(啓)委員 本日は、御質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 昨年の夏の政権交代以来、中井大臣が拉致問題担当となったということで、ある意味この問題解決に向けて大きな進展があるんじゃないか、そういう期待感が非常に高まったと思いますが、実際は先ほど古屋委員から御指摘があったとおり、この半年間、なかなか具体的な動きが見えてこない。そういう中で、拉致被害者の御家族の皆さん、また本当に失望感が広がっている、そういう状況が今の現実ではないかなというふうに思っております。

 被害者家族の高齢化も進んでおりまして、また拉致認定されていない特定失踪者の疎外感、焦燥感も広がっている。私のところにも何名かの方からお手紙をちょうだいしたりお電話をいただいたりしているような状況でございまして、私は本委員会として、しっかり拉致問題の早期解決に向けて具体的な動きを示していく必要があろうかと。

 先ほど来の答弁で、中井大臣のしっかりとした揺るぎない決意、この問題を解決しよう、その決意については十分認識したところでございますが、今後の政府の動きを中心に御質問させていただきたい、そのように思っております。

 まずは、拉致問題対策本部のあり方でございます。

 昨年の十月に、鳩山総理を本部長とする本部が設置されました。先ほどの答弁でも、なかなか本部の中での組織をつくっていくのが難しい、そういうお話もございましたが、実際、前政権下での本部のあり方と新政権での本部のあり方、どう違う点があるのか。また、なかなか問題解決がこれまで図れていない中、過去の取り組みに対してどのような評価をし、その評価を踏まえて今後どのような新しい取り組みをしていこうと考えていらっしゃるのか。この半年間の動きも含めまして、改めまして御答弁をお願いいたします。

中井国務大臣 半年たちまして、本当に御家族の方々のお気持ちを思うとき、先ほども申し上げましたけれども、じくじたる思いもございます。一刻も早く、一日も早く、突破口が開けて、解決への道が明らかになるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いをいたします。

 もう既に御承知だと思いますが、私どもの拉致対策本部は四人の大臣でこれを形成いたしました。今までは全内閣閣僚ということでございました。しかし、この閣僚の席に着いておりますと、いかに全閣僚寄っての会議が難しいかということが痛切にわかります。したがいまして、機動的に対応できる、また個人的に大臣同士で決着できるということで四人の大臣で本部を形成いたしました。

 事務局等はまた別の対応ができるようになっておりますが、今のところ、法的に新たな発想をしたり、制裁を新たにやったりということを考えているわけではありませんので、事務局は会合をやらずにここまで来ているわけでございます。

 それから、先ほどもお答えいたしましたが、二十数人の職員がおるということになっておるわけですが、四人を除きましては全員兼務でございまして、私はいまだに、恥ずかしいことですが、どこの部屋にいるかも知りません。したがいまして、私の部屋に呼んでいろいろとやっておりますが、ようやく定員の問題やら、あるいはその他の調整の問題が決着をいたしまして、四月一日から、二人を除いて全部拉致対策本部専従、こういう体制をつくらせていただきました。そして、情報室というものを設けて、徹底的に情報を集めて、分析して、追跡する、この仕事を果たしていきたいと考えております。

 前政権におきましては、国民に対するPR、それから喚起、あるいは拉致被害者の方々の面倒といいますか御要求に対しておこたえをしていく、こういう意味では極めて丁寧におやりいただいていたと考えております。これらの点は私どもも踏襲してやらせていただいて、国民挙げてのバックアップの中で成功を求めていきたいと考えています。

大谷(啓)委員 ありがとうございます。

 今の国民に対するPRという意味では、やはりこれだけ時間が経過している中で、最近若干国民の関心も薄れてきているのではないか、そのような懸念を持っておりまして、引き続き、ぜひ国民に対しての啓発、そういう活動をお願いしたい、そのように思っております。

 あと、もう一点は、特定失踪者に関する取り組みでございます。先ほど大臣の方から、きめ細かに情報を集めている、捜査している、そういうお話がございました。今本当にマスコミが注目しているのは、やはり政府が認定しております拉致被害者、そこにほぼ集中しているような状況でございまして、五百名近い特定失踪者に合わせて、政府としてしっかりと取り組んでいく必要があるのではないかというふうに思っております。

 捜査上のことですので、なかなか細かい部分まで御答弁はいただけないかもしれませんが、この特定失踪者の問題について、何か具体的な取り組み、政府としての説明があるのであれば教えていただきたいと思います。

中井国務大臣 特定失踪者の方々からは、早く認定をしてほしい、また一刻も早く取り戻してほしい、こういう御要望があることは御承知のとおりでございます。

 ただ、認定をいたしますには極めて条件の難しい要件が三つ置かれておりまして、これをどうするかというのは非常に頭の痛いところであります。警察も含めて、方法が何かあるかということを検討していただいているところでございます。

 同時に、先ほど申し上げましたように、各県、長官を通じて再度の調査というお願いをいたしまして、この六カ月間で九人の方々の御健在が確認をされた。特定失踪者の会の方々からは、あるいはまた御家族の方からはそのたびに陳謝のお言葉がございますが、僕は何もそんなのはいいんだ、元気で見つかればいいじゃないか、こう申し上げているわけでございます。これからも徹底的に調査をしていきたいと考えています。

 なお、五、六人につきまして極めて有望な情報が入っていることも事実でございます。従来、二件ほどは、これはガセだということで放置された形跡もございます。これらの経過を踏まえて、この五つぐらいの事案をきちっと追っかけていきたい、このように考えております。

 特定失踪者全体をごそっと認定するとか、そういうことはなかなか難しいことだ、これは実感をいたしております。

大谷(啓)委員 拉致認定にさまざまな要件があって、大変厳しい要件があることは十分理解しております。政府としてのこれからの取り組みの中において、それぞれ差が出てくる部分はあるのはいたし方ないと思うんですが、御家族のお気持ち等もございますので、全体として、政府としてどう取り組んでいくのか、ぜひそのあたりをしっかりとお示しいただきたいというふうに思っております。

 あと、先ほども質問がございました、あの大韓航空機爆破事件の実行犯である金賢姫元死刑囚の証言についてのお話でございます。

 中井大臣の方から、こういった証言があったというお話をいただきましたが、私はこれはある意味一つの大きな糸口になる可能性があるというふうに思っておりまして、しっかりと韓国政府との交渉も含めて取り組んでいただき、また、この案件をどのようにこれからの解決の糸口にするのか、しっかりと御検討いただきたいというふうに考えておりますが、大臣の所見を改めてお伺いいたします。

中井国務大臣 特定失踪者の件は、御意見ありましたように、これからも徹底的に調査をしてまいります。ただ、御家族の方へ、こういう情報があってあなたの御兄弟は調査していますとか、なかなか言いにくい。もし言ったとしたら、すぐマスコミに報じられて、センセーショナルなことだけが出て、事実確認ができなくなってしまう。こんなことを含めて、御不自由をおかけいたしております。おわびを申し上げるところでございます。

 金賢姫さんの件につきましては、どこまで真相究明に役立つかどうか、あるいはまた、彼女は昨年五月ににわかに横田めぐみさんに会ったことがあると言い出したことはなぜだろうとか、いろいろなバックの調査も私どもはしているところでございますが、しかし、家族の会の皆さん方は熱心に、お招きをしたい、こういう御要望でございますので、私もその価値を認めて、ぜひ出てきてほしい、日本へ来てほしいとお願いをいたしております。韓国政府も大変慎重でございます。また、我が方でも、入国に際しての法的な問題あるいは旅券法違反の問題等、クリアしなきゃならぬ問題もございますので、慎重に対応して何とか実現ができるようにやっていきたい、こんな思いでおります。

大谷(啓)委員 お時間が来ましたので、以上で質問を終わらせていただきますが、この問題解決に向けては中井大臣のリーダーシップが非常に重要だと思いますので、ぜひ今後も取り組みの方をよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

城島委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社民党の中島隆利でございます。

 もう拉致問題につきましては、これまでの質疑等、中井大臣の決意も述べておられますので、一言だけお願い、要望をしておきたいと思います。

 というのは、拉致問題は、今までの議論のとおり、核問題、ミサイル問題の包括的な解決が最終目標ではございます。その前提として、六カ国協議を、いかに一日も早く会議を成立させるか、開かせるかということでございますが、今までの質疑、討論の中で明らかなように、六カ国協議も非常に難航しているという状況にございますし、アメリカや中国の見解も、やはり日朝の二国間の協議の促進を、こういう意見が出されているということをお聞きいたしました。

 今熊田議員からもありましたように、私は、拉致問題の最終解決といいますか前進は、日朝の二国間の協議をどういう形で足がかりをつくるのか、それが非常に重要ではないかというふうに思います。平壌宣言なり、あるいは二〇〇八年の調査のやり直し、この確認をされたといっても、全く土俵に乗れないという状況でございますが、しかし、この六カ国協議と並行的に、二国間、日朝の実務者協議を何とか足がかりをつくって前進させる努力に全勢力を注いでいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。

 それでは、次に質問したいと思いますが、今回法案になっております、拉致被害者の支援の給付金の支給期限は三月で切れるわけでありますが、この問題に対しまして、昨年、大塚内閣府副大臣が帰国された拉致被害者の方々と直接お会いになりまして、給付金支給を含めて、被害者の支援のあり方について意見交換されたとお聞きいたしています。

 そこで、被害者の皆さん方からどのような支援策を求められておるのか、具体的に、内容については発表が非常に難しいと思いますけれども、お話しできる範囲でひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。

大塚副大臣 中島委員にお答えを申し上げます。

 確かに、昨年十月の十二日に新潟に参りまして、蓮池さんと曽我さんにお目にかかりました。また、十一月の七日に福井の方に参りまして、地村さんともお目にかかりました。

 それぞれいろいろなお話を承りましたが、お伺いをしました目的は主に二つでございまして、一つは、最近のお暮らしぶりなり、あるいはお困りになっている点がないかどうかを確認させていただくと同時に、今御下問のありました支援法の今後のあり方について御意見を承りました。それぞれお立場が違いますので、若干それぞれのニュアンスの違いはございましたけれども、多くの方々が、この三月で支援法が切れてしまうことについては大変御不安を感じていらっしゃるということでありました。

 また、その御不安の内容というのは、御家族の実情によって差がありますので、詳細はここで申し述べることは避けさせていただきますが、お子さんの中には少しまだ日本語に御不安のある方とか、あるいはお仕事上、より安定したお仕事についている方、そうでない方、いろいろいらっしゃいますので、それらのことを総合いたしまして、政府としても、この支援法を何とか延長させていただけないものかというような気持ちは持っておりましたが、今議会の方で、議員立法で御議論いただいているようでありますので、皆様方からお伺いした御意見を反映した、政府、議会としての動きになっているものではないかというふうに考えております。

中島(隆)委員 今のお話の中でも、非常に不安を持たれている、この支援についての新たな法案成立に期待がかかっているということでありますが、昨年の七月ですか、前政権時代に、拉致問題対策本部関係省庁対策会議支援分科会というのが中間報告を出されております。そこで、給付金制度の延長に関して、帰国された被害者の家族、今お話がありましたように、生活基盤再建をめぐっていろいろな状況が違う。そういう状況の中で、給付金の支給制度も被害者と家族の状況に考慮した制度に中身を充実してほしい、こういう要望が出ていたということでございます。

 そこで、今回、議案が出ておりますけれども、単なる延長ではなくて、それら被害者の皆さん方の要望、そして中間報告で出された法案の中身の改善、これについてどのように考えておられるのか、お尋ねしてみたいと思います。

大塚副大臣 法案の中身自体は議会で、議員立法で御検討いただいていることでございますので、私が申し述べる立場ではございませんが、まず被害者の皆さんの御要望は、今の支援法の支援の水準そのものについて不十分だというような御認識はございませんでした。ただ、三月で切れるということに関して、何とかならないものかという御要望がありましたので、もし議会の方でこれを御延長いただけるということであれば、そのこと自体でかなりの御希望は満たせるものではないかと思っております。

 一方、被害者の方々のそれぞれの御事情はさまざまでありますが、それなりに支援法を活用されなくても自立をされる見通しの立たれる方もいらっしゃるようでございますので、今回、できるだけ被害者の方々のそれぞれの御事情を反映して、支援法の適用について個人個人の御判断を反映できるような形にしていただければ、なお一層御本人たちの御希望に沿うものと思います。

中島(隆)委員 それでは、この問題について御要望申し上げておきますが、今答弁されましたように、支援は帰国されて家族が生活の基盤をつくられるということが最終の目標でございますし、そのためには該当自治体あるいは地域の皆さん方の支えが必要だというふうに思っております。

 そういう面では、今後の支援策、今回国会で議論して可決の方向に向かいますけれども、可決後はそういう支援策もぜひ被害者の皆さん方に、該当地域の自治体とも連携していただいて、強化をしていただきたいと思います。

 以上、終わります。

城島委員長 次回は、明十六日火曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時八分散会


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