衆議院

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第6号 平成17年7月8日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年七月八日(金曜日)

    午後一時一分開議

 出席合同会議員

   会長 与謝野 馨君

   会長代理 仙谷 由人君

   幹事 長勢 甚遠君 幹事 柳澤 伯夫君

   幹事 武見 敬三君 幹事 枝野 幸男君

   幹事 城島 正光君 幹事 小川 敏夫君

   幹事 坂口  力君

      伊吹 文明君    鴨下 一郎君

      鈴木 俊一君    田村 憲久君

      武部  勤君    津島 雄二君

      森  英介君    阿部 正俊君

      田浦  直君    中島 眞人君

      小宮山洋子君    五島 正規君

      中塚 一宏君    古川 元久君

      山井 和則君    朝日 俊弘君

      峰崎 直樹君    山本 孝史君

      井上 義久君    福島  豊君

      冬柴 鐵三君    遠山 清彦君

      渡辺 孝男君    佐々木憲昭君

      小池  晃君    阿部 知子君

      近藤 正道君

    …………………………………

   衆議院厚生労働委員会専門員            榊原 志俊君

   参議院常任委員会専門員  川邊  新君

    ―――――――――――――

合同会議員の異動

七月八日

 辞任         補欠選任

  武部  勤君     森  英介君

  丹羽 雄哉君     田村 憲久君

  片山虎之助君     阿部 正俊君

  横路 孝弘君     山井 和則君

  山口那津男君     渡辺 孝男君

同日

 辞任         補欠選任

  田村 憲久君     丹羽 雄哉君

  森  英介君     武部  勤君

  阿部 正俊君     片山虎之助君

  山井 和則君     横路 孝弘君

  渡辺 孝男君     山口那津男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 年金制度をはじめとする社会保障制度改革(国民年金の位置付け)について


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     ――――◇―――――

与謝野会長 これより会議を開きます。

 年金制度をはじめとする社会保障制度改革について議論を進めます。

 本日は、国民年金の位置付けについて、各党からそれぞれ十分以内で発言していただいた後、議員間の自由討議を行います。

 それでは、初めに各党から発言していただきます。

 まず、鴨下一郎君。

鴨下議員 自由民主党の鴨下一郎でございます。

 本日は、国民年金の位置づけ、こういうようなことで簡潔に申し上げたいというふうに思います。

 まずは、昭和三十年代の社会構造の変化、さらには就業構造、そして人口の動態、言ってみればこういうようなものの激変の中で、多くの先人たちの知恵で、改正に改正を重ねて皆年金を達成しまして、そしてさらに再編を繰り返して現在の国民年金制度が成り立っているわけでございます。

 この国民年金制度が今日どういうような役割を果たしているか、このことについてまず申し上げます。

 基礎年金は、現役時代に築いた生活基盤や老後の備え、さらには被用者年金の給付などとあわせて、老後の自立した日常生活を、言ってみれば下支える仕組みであるということでございます。さらに、基礎年金は、現役世代全体が高齢者世代全体を支える、全国民共通の世代間扶養、世代間の所得再配分の仕組みというふうにも理解できます。

 ただ、被保険者の中で、自営業者が減り、さらには厚生年金の対象外の低所得者が多くなっていることから、国民年金は論理的にはもう成り立たない、こういうような議論もあることは私も承知しておりますが、基礎年金を再編したことによって高度成長期の未曾有な変化に対応した、こういうようなことでございました。

 国民年金は、もともと、無業者を含むなど、言ってみれば低所得者が多い制度でありましたけれども、現在では、既に職業に関係なく、現役全体が高齢者全体を支える、こういう国民共通の制度になっているということをまず再確認しておきたいと思います。

 さらには、自営業者などである第一号被保険者にとっては、定額負担、定額給付の仕組みであります。現役生活からある意味で穏やかに引退をしていくというような、自営業者等の老後生活に対応する公的年金と言うことができると思います。

 制度創設時から、保険料を定額にするとかあるいは報酬比例にするとかという議論は先輩たちの議論の中にもあったようであります。ただ、国民年金は多種多様な国民を対象とするというようなことでありましたので、所得に応じた保険料の徴収が技術的に難しいという実際上の問題から、定額保険料、定額給付、こういうようなことで発足したわけであります。

 加えて、定額保険料は、ある意味で自立的に老後を設計できる層の意向に沿っているという側面もあると思います。それとともに、逆に低所得の方のためには免除制度があるわけでありまして、保険料を免除された期間は国庫負担相当分の給付が受けられる、こういうような制度になっているわけであります。

 また、サラリーマン世帯のグループにとっては、報酬比例負担、定額給付の仕組みであります。サラリーマン本人である第二号被保険者にとっては、定年等による引退後に年金以外の収入が少ない老後生活に対応するための、二階建ての公的年金の一階部分に相当するものであります。そして、保険料は報酬比例で基礎年金は定額でありますから、ある意味、低所得者の方々に手厚く給付するという所得再配分の機能を有しているというふうに思います。

 また、昭和六十年改正までは、サラリーマン世帯の専業主婦は国民年金が任意加入扱いとされておりまして、任意加入していなければ、自分名義の老齢年金や障害年金は受けられませんでした。それを改正して、サラリーマン世帯の被扶養配偶者である第三号被保険者にとっては、女性の年金権の確立というようなことで、大変意義があったというふうに考えます。

 ただ、残念なことに、最近、国民年金をめぐってさまざまな問題が生じ、今後の対応が迫られている、このことについては事実だと思います。

 まず、非正規雇用者の増加であります。雇用構造の変化に伴いまして、第一号被保険者の中でパート労働者等の非正規雇用者が大変増加しております。このような労働者の増加については、そもそも企業にとって、単に人件費を削減できるとか、使いやすい存在にされているとか、こういうようなことについては私は大変懸念をしております。我が国の将来を考えたとき、正社員との関係の整理を含め、中長期的視野に立った労働政策が重要だと思います。

 また、年金の問題として考えた場合には、このような労働者に対する企業としての責任をもっと明確にする必要があると考えております。

 給与所得者である非正規雇用者は、自営業者のような老後の生計基盤がなく、基礎年金だけでは十分とは言いがたい面があります。このため、二階部分を含めて所得保障する厚生年金の適用をこのような非正規雇用者に拡大することが極めて重要な問題だろうと思います。そうすれば、厚生年金は所得再配分の機能がありますので、低所得者のパート労働者であれば、標準的なモデル世帯と比べても、ある意味で高い所得代替率が確保される、こういうふうに考えております。

 もっと大上段に構えまして、全国民に所得比例の二階を設けるべきだ、こういうような御議論もあることは承知しております。ただ、保険料を多く負担するかわりに多くの年金を受け取るということを希望する自営業者もあるわけでありますけれども、そのためには、いわゆる三階部分の任意の仕組みが国民年金基金などを利用する使途として存在しているわけでありますけれども、逆に、強制的な二階部分の仕組みとして所得比例年金を望んでいる、こういうような第一号被保険者が多いとは私は思えません。

 私は、このような問題に取り組むことも重要でありますけれども、最も重要なのは、所得の低い給与所得者の年金をどうするか、これが国民年金にとって最も緊急性の高い問題だと考えております。

 次に、未納、未加入の問題です。

 若者を中心に世代間の不公平感が広がり、いわゆる損得論で保険料を納めないという人もいるのではないかと思います。もちろん、若い時期に未納、未加入だった人全員が将来無年金になると決めつけてかかるのは誤解もあると思いますので、申し上げます。

 いずれにせよ、与党では、未納、未加入を極めて重要な問題と受けとめております。我が党の鈴木議員からも前回申し上げました。公的年金は事業主負担がありますし、今後は国庫負担も二分の一に引き上がりますので、私的年金よりははるかに有利で頼れる存在であります。そういう意味で、多くの若い人たちに、この問題も含めまして大いに情報提供をしていくことが重要だろうというふうに思っております。

 さらに、若者たちの納付意識を喚起することが重要でありますけれども、逆に言いますと、与野党を超えた議論の中で、いかに年金そのものに対しての信頼感を高めていくか、これは私たちも、ある意味、胸に手を当てて考えなければいけない部分だろう、このように思います。

 最後に、まとめでございますけれども、先ほど申し上げましたように、いかに非正規雇用者や未納、未加入の問題への対応を図っても、生涯にわたって無業、低所得で苦しい老後を迎えるような方々が存在する、こういうことにつきましては、ある意味、避けがたい面がございます。この課題にどのようにこたえていくかということが、今後の年金制度を議論する上で非常に重要なテーマだと考えております。このような不安定な老後のケースについて、私としては、年金制度だけで対処するのはなかなか困難な部分もありますので、さまざまな個別政策を組み合わせていくことになるのではないかと思います。

 他方、厚生年金加入者約三千万人を初め、大半の現役世代は年金保険料を納めて自立した老後生活を設計していることを考えますと、現行の国民年金制度を廃止し、税方式の一階を設けることには必然性があるということについては疑問を感じているところであります。

 また、現に、社会経済がどんどん動き、高齢社会がこれからピークに突入しようとしている中で、今とは全く違う制度に何十年もかけて移行することが本当の国民の信頼を得る道なのだろうか、むしろ移行期に大きな混乱を引き起こすのではなかろうかということを心配しております。

 以上でございます。

与謝野会長 次に、山本孝史君。

山本議員 民主党の山本孝史でございます。

 国民年金は、昭和三十六年に、当時公的年金制度のなかった農業者や自営業者、主婦などを対象に発足をいたしました。それによって、すべての国民が年金制度に加入するという意味での国民皆年金が達成をされました。その後、昭和六十一年からは、いわゆる年金制度の一階部分を形成する、全国民共通の国民年金制度に再編されました。このとき、日本の年金制度は、各年金制度が縦に分立する形から、二階建て、すなわち横に積み上がる形になりました。

 この基礎年金は、どの年金制度に加入していても、その加入月数に応じて給付されるため、給付は一元化されています。しかし、負担の構造は、国民年金とその他の被用者年金とでは異なったままで放置されています。いわゆる年金制度の一元化は、国民年金の保険料を年金制度加入者間で、すなわち、国民年金の第一号被保険者、厚生年金、共済組合の加入者でもある第二号、第三号被保険者間で所得に応じて公平に負担する構造とすることを抜きにしてはあり得ないと思います。

 問題点について指摘をします。

 年金改革の最大のポイントは、鈴木俊一議員や田村憲久議員からの同様の御発言がございましたけれども、国民年金、基礎年金をいかに安定した制度とするかに尽きると思います。すなわち、将来さらに低年金者がふえるのではないかという危機感を持ってその解決策を講じることだと思います。

 なぜ低年金者や無年金者がふえると考えるのか、四つの問題点を挙げます。

 一つ。保険料のさらなる上昇です。昨年度までの一万三千三百円でも大量に発生している未納、未加入者が、この先、一万六千九百円まで国民年金保険料が上昇すれば、さらにふえるのは必至だと思います。

 二つ目。低所得者には免除制度を設けて配慮していると鴨下議員は述べましたけれども、免除期間中は減額された年金額しか給付されません。現行の免除制度は、低年金者を制度的に生み出す仕組みになっております。

 三つ目。二十五年以上保険料を納めないと、年金が一円も給付されません。

 四つ目。今回の年金改悪によって基礎年金にもマクロ経済スライドが適用され、四十年間加入しても満額で六万七千円弱でしかないものが、五万八千円弱まで実質価値が大幅に低下をします。

 基礎年金は老後の基礎的生活費を賄うものという考え方は既に放棄され、単に年金の加入月数に応じて一定の額を給付するだけの制度になっています。これでは意味のある年金額は期待できません。基礎年金額を意味のあるものにすべきだと思います。

 その際、改善策検討の前提となる二つの命題にまず解答を与えるべきだと思います。

 一つ。医療や介護保険制度での保険料負担や自己負担が今後さらにふえるのであれば、基礎年金額も増額しなければいけないと思います。年金を充実して負担能力を高めるのか、あるいは、年金はふえないけれども他の社会保障制度における負担もふやさないのか。どちらの道を選ぶのか、明確にすべきだと思います。

 二つ目。基礎年金の充実のためには二階部分の給付が薄くなることも受け入れざるを得ないのではないかと考えますけれども、国民全体の合意となり得るかどうかということです。

 具体的な改善策を、負担と給付の両面から述べてみたいと思います。

 基礎年金給付に要する財源の調達方法を変更すべきだと思います。三点指摘をします。

 一つは、現行の基礎年金制度では、鴨下議員が述べたように、現役全体が高齢者全体を支える仕組み、すなわち世代間の所得再分配が行われています。と同時に、被用者年金に加入している国民年金第二号、第三号被保険者間では、報酬に比例して保険料を負担し、定額で給付するため、現役世代内でも所得再分配が行われています。所得格差の拡大傾向を踏まえるならば、こうした世代間、さらには世代内での所得再分配機能をさらに展開して、国民全体で高齢者全体を支える仕組みとすることが考えられます。方法としては、年金目的消費税、累進性を加味することも可能だと思います。

 全体を廃止して税方式による一階を設ける必要があるのかと鴨下議員から御指摘がありましたが、国民年金制度を安定したものとするために、給付の所要額を変えずにその財源のあり方を変えることを提案しているのであることは、鴨下議員も御承知のとおりだと思います。

 二つ目。国民年金第一号被保険者は、現在、所得に関係なく定額の保険料を負担し、加入月数に応じて給付される仕組みであるため、低所得者には重い負担である一方、我々国会議員や医師、弁護士などの高額所得者には、負担逃れともいうべき状態が生じています。鴨下議員は、自営業者は所得に応じた保険料徴収が困難と言われますが、丹羽議員は、田原総一朗さんとの対談で、定額保険料から所得比例保険料に変えるべきだと主張されています。

 国民年金加入者が同時に加入している国民健康保険は応能負担を組み込んでいます。介護保険第一号保険料も、所得に応じた段階制となっています。国民年金第一号被保険者の保険料を、応能負担を組み込んだ段階保険料制度とすることも一案ではないかと思います。

 三つ目。被用者年金加入者は、報酬比例年金に相当する保険料と基礎年金に拠出する保険料を合算して納めております。これを分離してはどうでしょうか。

 雇用の流動化に伴って、第一号被保険者の構成は大きく変化をしてきました。厚生年金からこぼれ落ちてくる者を、鴨下議員は厚生年金に押し返すお考えを述べられましたけれども、雇用コスト削減に走る企業に対して、果たして有効でしょうか。企業には厚生年金保険料の二階部分の負担を求め、これまで企業が負担していた基礎年金相当額は、別途、消費税や支払った総賃金に応じた課税での納付を求めるのがよいのではないでしょうか。

 次に、給付面での改革案を四つ提示します。

 一つ目。マクロ経済スライドの基礎年金への適用を撤廃すべきだと思います。

 二つ目。全額税方式が採用できないというのであれば、免除制度による低年金者の発生という問題について、国民健康保険に倣って、保険料を負担できない人には税で保険料を負担する形に変えるべきではないでしょうか。すなわち、給付時に行っている国庫負担を、満額保険料を負担できない人への補足的給付を行う姿に変えるべきだと思います。そうすれば、すべての人に満額年金が給付されることになります。

 このことは、現行制度では高額年金者にも税財源による年金が給付されていることを改めて、税財源を低年金者に集中することになり、税と保険料の位置づけが明確になると思います。

 三つ目。基礎年金額は、老齢基礎年金にとどまらず、障害基礎年金、十八歳未満の子供を持つ妻やその子に対する遺族基礎年金額と同水準にセットされています。障害一級で九十九万三千百円、二級で七十九万四千五百円という障害年金額は、果たして妥当でしょうか。しかも、未納期間中だと無年金になってしまいます。現行の年金制度を老齢年金制度に特化して、障害年金は、介護保険制度において本人に対する生活費給付として組み込むことを検討してはどうでしょうか。

 四つ目。二階の廃止や民営化論にはくみしませんけれども、自助努力でみずからの年金額をふやせる、公的関与のある私的年金制度を用意すべきだと思います。受給権の保護を前提に、確定拠出型年金の抜本的拡充を図ることを検討すべきだと思います。

 最後に一言。前回も述べましたけれども、基礎年金番号を社会保障制度番号に展開することを提案します。例えば、一人に一枚ずつ配付される健康保険証に基礎年金番号が付されていれば、年金の重要性に対する国民の意識は飛躍的に改善されると思います。議員間で合意できる改革案があれば、本合同会議として積極的に提起すべきだと思います。

 なお、最後に付言しますが、民主党が提示している案は超抜本改革案に見えるかもしれませんけれども、やがてはそのような制度にならざるを得ないと思っております。そこに至る道筋はいろいろあると思います。それをみんなで検討しよう、そうした検討する場を設けようという意味で提案しています。このことをぜひ皆様にも御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

与謝野会長 次に、井上義久君。

井上議員 公明党の井上義久でございます。

 本日の議題であります国民年金の意義につきまして、意見を述べたいと思います。

 我が国の公的年金制度は、当初、民間サラリーマンや公務員などの被用者年金からスタートしましたが、国民の大半を占めていた自営業者や農林漁業者などは、こうした年金制度の支え合いの輪から取り残されておりました。しかし、長い老後生活の安定のためには、個人の貯蓄や私的な扶養では限界があり、公的年金が必要不可欠であるという考え方から、昭和三十六年に、被用者年金の対象とならない多くの国民のための公的年金として国民年金が創設されたことは、皆さん御承知のとおりでございます。

 具体的な制度設計に当たっては、さまざまな生き方や働き方をする国民を広く対象とすることを踏まえ、定額負担、定額給付の仕組みが採用されました。あわせて、低所得などによる一時的な負担能力の低下に対応するための保険料の免除制度が用意されました。

 その後、高度経済成長を経て、産業構造の転換が急激に進む中で、サラリーマンを初めとする被用者が急激に増加し、現役世代が加入する制度が国民年金から被用者年金へ急激にシフトしていくという形で、年金制度にも重大な影響を与えることになりました。

 すなわち、被用者年金では現役世代の支え手がふえて財政的に余裕ができる一方、現役世代の支え手が減っていく国民年金は財政的に不利な状況に置かれ、このような不公平を是正し、年金制度を社会経済の変化にできるだけ中立的なものにするために、従来の国民年金を再編する形で、昭和六十一年に基礎年金が創設されたわけであります。

 以上のような国民年金、基礎年金の成り立ちに照らして考えますと、その基本的な意義は、職業のいかんを問わず、全国民に共通する世代間の支え合いの仕組みを通じて、特に高齢期における生活の基礎的部分を支えることにあると思います。

 こうした位置づけから、基礎年金には、社会保険方式を基本としつつ、国庫負担を通じて国が一定の責任を分担することにより、所得再配分の要素がある程度備わっているということも指摘しておきたいと思います。

 次に、国民年金、特に基礎年金の仕組みについて、国民の間に幾つかの誤解があると思われますので、確認しておきたいと思います。

 まず、未納者の増加により、その穴埋めをするため、まじめに保険料を納めている自営業者の保険料負担がふえるとともに、民間サラリーマンの保険料負担にまでしわ寄せが生じるという誤解です。

 現行制度においては、未納者の増加による当面の収入減に対しては、法定されている保険料を引き上げるのではなく、積立金を取り崩すことで対応するとともに、長期的には、未納者には将来その分の年金が支払われないことにより、積立金の取り崩しは基本的に取り戻され、結果として年金財政にほとんど影響を生じない仕組みになっております。

 もちろん、国民皆年金の理念に立つ我が国におきましては、未納者の増加は、結果として将来の無年金、低年金者の増加を招くことにもなりますので、今後とも、未納、未加入対策や雇用対策の充実によって無年金、低年金の解消に全力を尽くすべきであることは、これまでも繰り返し申し上げているとおりであります。

 もう一点、国民年金の第三号被保険者制度について、専業主婦を優遇する仕組みではないかという誤解であります。

 現行の第三号被保険者制度のもとでは、世帯収入が同じであれば、共働きでも片働きでも、世帯単位で見た保険料負担と年金給付がともに等しくなることは、さまざまな試算でも明確にされております。すなわち、第三号被保険者制度は、年金の給付と負担の関係について、共働き世帯と片働き世帯の公平性を世帯単位で確保する仕組みと言えると思います。

 もちろん、年金制度を世帯単位で考えるべきか個人単位で考えるべきかという議論は、制度設計の根幹にかかわると同時に、現に存在する年金制度による所得保障の必要性にどうこたえるか、現状と比較して急激な負担増が生じるような見直しをどう考えるかといった現実の問題とも不可分なものです。

 例えば、仮に、第三号被保険者制度を廃止し、被扶養配偶者にも本人名義の保険料負担を求めることとした場合、事業主負担をどう考えるかにもよりますけれども、片働き世帯にとってはかなりの負担増になります。また、年金制度においてこのような見直しを行えば、健康保険制度における被扶養配偶者の取り扱いとの整合性をどう考えるかといった問題も生じてきます。

 いずれにしても、第三号被保険者制度のあり方については、こうした点を十分に踏まえながら、広い視野を持って慎重に検討を進めていく必要があるのではないかと思います。

 最後に、国民年金を含めた一元化の実現の可能性について、これまでの協議会でも述べてきたとおり、私どもは早急に具体的な検討に入る必要があると考えております。具体的な検討を行うに当たっては、幾つかの論点が考えられます。

 一つは、パート労働者などの非正規労働者の取り扱いです。

 現在、厚生年金が適用されていない非正規労働者は、国民年金の第一号もしくは第三号被保険者となっております。このうち、第三号被保険者に対しては、国民年金を含む一元化により、新たに本人名義の負担を求めることになります。また、これらの非正規労働者を雇用する企業にも新たな負担を求めることになります。こうしたことについて関係者の合意を得られなければ、単なる机上の空論に終わってしまうわけであります。

 また、国民年金を含む一元化であっても、被用者の保険料は労使折半とし、被用者でない者の保険料は全額本人負担とするなどの区別は必要ですから、被用者として扱う者の基準を定め、その範囲を特定することも不可欠だと思います。

 もう一つの論点は、自営業者や農林漁業者などの取り扱いです。

 国民年金を含む一元化により、自営業者などにも被用者と共通な所得比例の負担と給付の制度体系を適用する場合には、単に所得捕捉の問題だけでなく、給与所得と事業所得では、諸経費の取り扱い一つをとっても、所得の意味合いそのものが異なる中で、それらを一律に扱うことができるのかどうか。さらには、被用者に対する年金保障という位置づけから労使折半の負担とされ、そのことも踏まえて設定されている被用者年金の給付と負担の枠組みをそのまま自営業者などに適用することが適当なのかどうかというような疑問があります。これらに対する明確な答えがなければ、議論を先に進めることはできないと思います。

 これ以外にも、被用者年金の統合の問題などさまざまな論点があり、本合同会議において具体的な議論を進め、我が国において公的年金の一元化が、現実、可能かどうかの認識をまず共有しなければならないのではないかというふうに考えております。

 前回の会議で、民主党議員の方からも、「一刻も早く民主党案を俎上にのせていただいて、現状に合った年金制度を議論していただきたい」という発言もありました。そこで、例えば民主党案を俎上にのせて、国民年金を含む一元化の実現可能性について個別具体的な検討を早急に行うことも一つの方法ではないかというふうに思いますので、このことを提案申し上げまして、冒頭の発言を終わりたいと思います。

 以上でございます。

与謝野会長 次に、小池晃君。

小池議員 日本共産党の小池晃です。

 国民年金の位置づけについて発言をいたします。

 先日発表された厚生労働省の二〇〇四年国民生活基礎調査では、いわゆる高齢者世帯、六十五歳以上の高齢者のみ、または十八歳未満の未婚者が加わった世帯、この数は過去最多の七百八十七万世帯、十年間で約二倍にふえております。

 中でも、高齢者世帯の平均所得金額が十年ぶりに三百万円を割り込んで二百九十万九千円、前年比マイナス四・五%。平均所得額は年々低下しております。最も高かった九八年で三百三十五万五千円ですから、この八七%にまで減っております。中でも、年間所得百万円未満の世帯が九八年には一三%だったのが昨年調査では一五%に、百五十万円未満の世帯が二五%から三〇%へと、低所得世帯の比率がふえております。

 注目すべきは、収入が公的年金、恩給のみという世帯が六四・二%に達し、これは十年前は五四・一%でした。政府は、高齢者の収入は年金だけではないと繰り返しますが、実態は、年金だけが頼りという方がふえてきております。老後の生活保障を担う公的年金の役割が極めて大きくなっております。

 こういう中で、国民年金は法律上どのように位置づけられているでしょうか。

 国民年金法の第一条に「国民年金制度の目的」がございます。ここには、「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」としています。憲法二十五条第二項、国の生存権保障義務を規定したものでございます。

 ちなみに、厚労省のホームページでは、「基礎年金は、老後生活の基礎的部分を保障するため、全国民共通の給付を支給するもの」とされております。

 この目的に照らして、現状の国民年金の水準はどうでしょうか。

 基礎年金満額でも月六万六千円です。国民年金のみ受給者九百万人、この平均受給額は四万六千円であります。女性は四万五千円です。三万円未満の受給者が百十三万人おられます。そのうち、一万円未満の方が六万人、二万円未満の方が二十三万人もいらっしゃいます。三万円台という方は実に二百八十一万人であります。実態から見れば、まさに国民年金だけでは到底生活ができない。法律上の位置づけと実態がかけ離れているというのが事実であります。底上げが緊急に求められるわけであります。

 ところが、政府はこの間、介護や医療などの分野で高齢者の負担増を進める、その一方で年金カットを行ってまいりました。とりわけ昨年の年金改悪で、マクロ経済スライドという形で生活水準すら下回る実質切り下げを行ったことは、まさに国民年金法に違反するものだと言わざるを得ません。基礎的消費支出すら下回る状態になっております。

 同時に、すべての国民が加入する制度とされていますが、その点での実態はどうでしょうか。

 二〇〇二年の国民年金被保険者実態調査で、公的年金加入対象者七千八十万人のうち、第一号被保険者二千二百七万人、未加入者が六十三万人です。国民年金保険料の未納者は、二年間完全未納で三百二十七万人、一部未納が二百十二万人。受け取る年金額が大幅に減らされる免除者が三百七十六万人です。その後の調査でも未納者、免除者は増加を続けておりまして、低年金、無年金者が今後さらにふえていく危険は否めません。国民皆年金が崩壊しつつあるというのが現実の姿であります。

 こうした中で、どのように国民年金の水準を引き上げていくのかということは緊急の課題になってきているというふうに思います。

 私どもの提案は、何度か繰り返しておりますが、速やかに最低保障年金制度を実現するというものでございます。厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台として、全額国庫の負担による一定額の最低保障額を設定して、その上に、それぞれの掛金に応じて給付を上乗せする、いわば定率の国庫負担を定額の国庫負担という形にしていく改革であります。当面、その最低保障額を月額五万円からスタートさせて、安定的な年金財源を確保しながら引き上げを図るという性格の提案です。

 なお、この間、国民年金の引き上げの財源に消費税を充てることの議論がされてまいりましたので、その点について一言申し上げたいと思います。

 生存権を保障することを目的に給付されるのが、基礎年金、国民年金です。その財源として消費税を充てるということが果たして許されるのか。消費税の増税というのは、まさに高齢者の基礎的生活を破壊するものであります。生存権保障に逆行する税制であります。

 例えば月額五万円の基礎年金の方、これでは到底生活できません。働くなり預貯金を取り崩すなりしてさらに五万円追加して、月十万円で生活しているとする。消費税負担は、現在、税率五%で月五千円ということになりますが、一〇%に上がれば、当然、倍の一万円の負担になり、年間十二万円で、生活費一カ月分以上が税金で消えるということになります。これで果たして生存権が保障できるのか。

 しかも、低所得者に負担のより重くのしかかる消費税に社会保障の財源を頼ると、大きな矛盾が生じるということもあります。

 今例に挙げたケースでいえば、基礎年金の国庫負担が二分の一になったとして、税金から二万五千円が負担されることになります。税率一〇%だとすると、同じ人から一万円、いわば年金国庫負担の四割が消費税で取り上げられるということになるわけです。これが税率二〇%になれば二万円、年金の国庫負担の八割が消費税で取り上げられるということになってまいります。もちろん、無年金者も消費税は取られるということもございます。

 繰り返しになりますが、国民年金法の第一条、日本国憲法二十五条第二項の理念に基づいて国民生活の維持及び向上に寄与するという目標に照らしても、消費税を財源とすることは、国民年金法にある国民年金の位置づけに相反するものであるということを最後に申し上げて、私の発言を終わります。

与謝野会長 次に、阿部知子君。

阿部(知)議員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日のテーマは、国民年金とはということになっておりますが、先ほど来皆さんお話しのように、人としてこの社会に暮らす最低の生活の保障ということであるという一致は、皆さんの中にもおありだと思います。

 昭和三十六年、いわゆる国民皆年金とともに国民皆保険を目指して制度が発足したわけですが、国民年金は、その当時から、常にすべての人をカバーできるようにという歩みの連続ではありました。そして、今日この場で論議されようとしております国民年金に関しては、一九八六年段階で制度横断的に一元化されました基礎年金部分について、現在、果たしてそのようなあらゆる人の暮らしの保障になっているのかどうかという点での疑義が大きくなってきたからであると思っております。

 冒頭、実は先回の合同会議で、最後に田村議員から、我が党の案を取り上げての御質疑をいただきました。取り上げていただけたことは大変にうれしいです。ただ、一番最後でございましたので、私の方からお答えをすることができませんでしたので、このことに答えながら、しかし、かなり本質的な部分にかかわる問いであったと思いますので、きょうは述べさせていただきたいと思います。

 田村議員からの御質問は、社民党の案は、保険料を払うだけの所得のある方が保険料を払わなくても最低保障年金を受給できると考えてよいのかということが一点と、その場合に、ミーンズテスト、資産調査をするのかという二点でした。これを民主党案と比較されて、保険料を払うだけの所得がある方が払って、なおかつ最低保障年金をもらえるのが民主党案であるという田村議員の御指摘でありました。

 まず、我が党に対しての御質問については、社民党案は、保険料を払っているかいないか拠出性を問わず、当然基礎年金部分を、我が党は基礎的暮らし年金と呼びますが、我が国にお住まいになっているという一定の居住条件を満たせば受給できるということで、その年限等々についてはまだ細かな検討はしておりません。なお、二階建て部分の保険料はいわゆる所得比例でございますので、基礎的暮らし年金にプラスする形で受給できますので、この部分の保険料を支払っていない方は当然所得比例の二階建て部分は受給できないという制度設計になっております。

 また、ミーンズテストにおきましては、社民党案では、一定の所得以上の方については、いわゆる基礎的暮らし年金の税金で負担する部分が減額される仕組みが組み込まれております。これはカナダと同じ方式でございます。ちなみに、税方式を採用している国は多数ございます。例えば、デンマーク、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでございますが、その中でミーンズテストを行っている国はオーストラリアだけでございまして、税方式を採用したら必ずミーンズテストをしなければならないということでもないと思っております。

 ただしかし、現実に所得が現在多い方については、この基礎的暮らし年金の税金部分の保障は減額をさせていただきます。また、前回の田村先生の御理解のように、もしも民主党案が保険料拠出を前提にさらに税部分の基礎年金をもらう仕組みであるとすると、それは国民には二重の負担となる設計と思えますので、この点についてはまた民主党の皆さんの方からも踏み込んで御答弁があることを期待します。

 今この会議に求められていることは、一般論を超えて、どんな制度設計を具体的にしていくかということにありますので、田村議員の御指摘には本当に再度深く感謝いたします。

 さらに、坂口議員からの問いかけの中に、保険料、税方式、どちらがよいかという御論議がありました。これも一点、論議を前に進めるものと思いまして、お答えさせていただく形で、私どもは、基礎的年金部分は税方式がよいという観点に立っております。

 その理由ですが、いわゆる社会保険方式では、現在起きておりますような保険料の未納、無保険者の発生を避けられないという現状もございます。国民年金の未加入、保険料の支払いの未納、あるいは専業主婦や学生の問題は、これらすべて、税方式にすれば、拠出性を問わないということにおいて解決いたしますし、現在、未納、未加入、免除者等々が約四割、この基礎年金の国民年金部分の一号被保険者の四割となっておるということは、やはり制度設計が根本から考えられなければならない事態だと思っております。

 ちなみに、基礎年金に社会保険方式を採用している国にはイギリスとオランダがございますが、そうであっても、基礎年金部分で定額制を採用している国は日本だけでございます。基礎年金で定額の国民年金保険料負担ということは、逆進性が著しく強くなっておりまして、低所得の負担が重く、また、このことが未納、未加入につながっているという現状も無視できないと思います。しかも、現行の国民年金は収入のない方でも保険料を課すということで、それが免除という形になっても、免除者ばかりがふえていくという制度設計は諸外国には例がございません。

 いま一点、少子高齢社会では、賦課方式の保険料のみに頼れば、当然若年層に過重な負担となり、制度的に無理が生じております。このことは既に各議員御指摘でございますし、少子高齢化という避けがたい現状を、しっかりと若い人たちとの連帯の仕組みをつくるためにも、基礎年金は税負担でということが今求められていると思います。

 さて、過去にそうしたことを検討した経緯があるかどうかですが、一九七七年の社会保障制度審議会の建議の中では、皆年金下の新年金体系といたしまして、基本年金は全額国庫負担で運営し、その上乗せ部分として社会保険年金を置くというような御意見が多数ございました。しかしながら、この建議の後には、検討を重ね重ねているうちに、いつの間にか税方式から保険方式に変わり、しかも、定額保険料という前代未聞の形に決着いたしました。

 だがしかし、八六年の年金改革は、先ほど言いました制度一元的な年金の仕組み、基礎年金部分を設けたことと、女性の年金権、これは不十分でありますが、第三号被保険者として主婦たちの年金を確立したことと、障害者基礎年金の導入などにおいて一定の評価はされると思います。

 しかし、現状、それが空洞化しておることは先ほど来述べ、特に納付率においては、八五年までは九〇%台を維持していたものが、八六年のこの制度改革以降、八〇%台に落ち込み、十年たって九七年には七〇%、二〇〇〇年を越して六〇%台でございますから、これは、いかにも当初の制度設計の問題も考え直してみなければなりません。長期不況によるリストラが増加し、厚生年金加入者が抜け、この方たちが、約五二%が国民年金に流れてこられる。非正規雇用の増大、また定額負担部分が重い、そして社会保険庁の収納方式が市町村から移されて、また八・一%も下落、非常に厳しい状態が続いております。

 現在、国会では、障害者の基本的な所得の保障問題が論じられ、熱い論議が繰り返されておりますが、障害も高齢もひとしく皆だれもが抱えるリスクで、そのことに政治は強い意思を持って、皆年金で臨むのだという政治的意思こそが今十分に論議されるべきで、拠出性云々以前に、あるいは、あえて言えば、未納、未加入問題以前に哲学の問題にかかわってくると思います。

 最後に、我が党の財源について述べさせていただきますが、ミックス税方式という形で、法人税、所得税、そして企業の社会保障税をきっちりと基礎年金部分に組み込むということに考えております。

 法人税は今やアメリカよりも低く、所得税も、所得格差増大時代に所得再分配機能を十分に果たしておりません。なかんずく、企業の社会保障税は、もしこれを全額消費税に転嫁いたしますと、憲法二十七条の、本来、労働は権利であり義務であるという社会の骨格の中で、働く人々を使っている企業の社会的責任がどこかに消えてしまうと私は思います。

 そうした観点から、以上の税制の見直しを行っていただき、なお、消費税についても検討の余地はあると思いますが、順番は後者に位置するものと考えておりますので、よろしく御審議のほどお願いいたします。

与謝野会長 これにて各党からの発言は終わりました。

    ―――――――――――――

与謝野会長 引き続き、議員間の自由討議を行います。

 一回の発言は三分程度で、会長の指名に基づいて、所属会派と氏名を名乗ってから行ってください。

 なお、発言時間の経過については、三分経過時と、その後は一分経過ごとにブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、御発言のある方は、お手元のネームプレートをお立てください。

古川議員 民主党の古川元久でございます。

 きょうは、国民年金の位置づけということで、前回と並び、国民皆年金制度と言われる現行の公的年金制度の根幹部分についての議論をしておるわけでございますけれども、各党からの意見をお伺いしておりまして、今回、我が党の山本議員からは、我が党が示した案は案として、いろいろとそこに至っていくまでの段階的なところでの提案というものもさせていただきました。

 ぜひここは、私は、この合同会議の場で、考え方の基本として共有の認識を持ちたいなと思うのは、これからの日本の社会、今直面している数々の問題も含め、そしてこれから二十年、三十年後にあらわれてくるであろう、今の数字から見えてくるものを含めた現実社会において、国民の皆さんがどういう年金制度を望んでいるのか、どういう制度であれば国民皆年金と言える制度として存続ができて、そしてまた、その制度に対して国民がみんな自発的に参加できるような、そういう信頼できる制度になるのか、そういう考え方の基本がなければならないんじゃないかなというふうに思っております。

 そういう中で、あるべき姿として、私ども、民主党案を一つの形として提案させていただいたわけでありますけれども、そこに至っていくには、いろいろな方々から御指摘をいただいておりますけれども、いろいろ、今の現行制度あるいは現実社会の問題というのがあります。

 私は、政治家がやらなければいけないことは、今のそういう現実の問題、今の現状ではこういう問題がある、今の制度上では、例えば労使折半の保険料の問題をどうするのか、こういうところが問題がある、では、その問題を理想的な形の制度にしていくためにはどう乗り越えていくのか、その乗り越えるための工夫と、それを乗り越えるという政治的な意思を示すということがやはり大事なことじゃないかなというふうに思っています。

 例えば、今申し上げました労使折半のあり方で申しますと、企業の負担のあり方として、本当に、現行のような、年金の保険料あるいは健康保険の保険料のような、そういう労使折半というあり方が、今後ともこれがいいのかどうか。

 与党の方々は、今の厚生年金を拡大していくということで考えておられるわけでありますけれども、非正規雇用の労働者に厚生年金を拡大していく、一時間でも働いた人、その人にまでも厚生年金を適用するということであればそれはいいのかもしれませんが、例えば、どんどんと下げていって、週二十時間までの人とか十時間までの人というふうに区切れば、当然、今の状況の中でいえば、そして企業の置かれている立場でいえば、どんどんと労働をもっともっと細切れにしていくということも起きかねないわけでありまして、そういうことを考えると、根本的に、今のような労使折半という形で企業に負担を求めるのがいいのか、あるいは、山本議員も申し上げたような、別の形で企業に対しては負担を求めるというあり方も考えられるのではないか、ぜひそういうことまで含めた議論をしていく。

 現状が問題があるからということで、その問題を乗り越えられないからということで、そこで思考を停止するんじゃなくて、では、その問題を乗り越えるためには、思い切った、根本的な制度改革も含めた、どういうふうにしたらいいのか、ぜひそういう議論をしていきたいというふうに思います。

 以上です。

坂口議員 自民党の先生方、札を上げておみえになりますが、私、先にやらせていただいてよろしゅうございますか。

 最も基本的な考え方としまして、自助、共助、公助という考え方がございますが、まず自助があって、共助があって、そしてピラミッドでいえば一番上に公助があるという考え方に我々立っております。中には、公助が一番下で、真ん中が共助で、一番上の小さいところが自助だ、こういうお考えもあるわけでありまして、連合の笹森会長さんが社会保障の会合の中でそういうお考えを出されて、そこは少し違うのではないでしょうかという議論があった。

 私たちは、やはり自助というものが一番下にあって、共助、公助、こう積み上がっていくのではないかと思っております。そこが共有できるのかどうかということが、一つ基本的な考え方としてあるのではないかというふうに私は思います。

 阿部議員が今お触れになりましたことをお聞かせいただいて、確かに阿部議員がいつもおっしゃいますように、国民年金の中で、いわゆる未払いの人たちは自営業者ばかりではありません。自営業者が大体二五%前後になっていて、そして三五%ぐらいは、それが、完全雇用の方も含めてパートの方も含めて、何らかの形で働いてはいるんだけれども、しかし国民年金に入っているという方が三五%ぐらいおみえになる。その残りはいわゆるニートその他でありまして、今そういう振り分けになっている。

 それで、その三五%の何らかの形で働いておみえになる方は、これはどこで線を引くかということがあると思いますけれども、パートの方の線の引き方は難しいですが、井上議員からも先ほどありましたけれども、どこかで線を引いて、やはり厚生年金なりそういう年金に入っていただかなきゃいけないんだと思うんです。しかしそこは、パートもいろいろですから、残ってくるところはあるというふうに思います。

 それで、問題は、ニートその他の働く意欲のない人、そういう人にも将来は税で全部年金は見てあげますよ、こういうふうな形にするのが社会の形成上いいのかどうか、そこには私は疑問を持つ一人でありまして、そうしたことをどうお互いに認識していくかということを、少し議論を重ねていくことが必要ではないかというふうに私は思います。

 山本議員の御発言につきましては、先般私ここで、一つの考え方として検討していいのではないかということを申し上げたところでございます。

中島議員 自民党の中島眞人でございます。

 前回は、公的年金の問題について論議をし、ほとんどの委員から、公的年金の必要性、そういう問題についての共通認識が得られたと思います。

 きょうは、山本議員の発言を聞いておりまして、大変私どもも山本議員の発言については共鳴する部分が多々ございます。特に、今後の医療、介護等の問題等も含めていく中で年金のあり方というものを考えていく、これは、私どもが常に今まで言い続けてきた、年金だけを取り出すんじゃなくて、医療、介護という社会保障全体の問題の中で年金という問題も考えていかなければいけない、そういう一つの問題に触れたことであって、私どもは、非常に山本議員の発言に、保険料の上昇の問題、低所得者の免除の問題、二十五年以上掛けなければならないというふうな問題点が多々あるという認識は共有しております。

 ただ、私は、若干さっきから、よく御党の党首が御発言をなさる言葉が非常に重くのしかかってくるんですけれども、御党の岡田党首は、一階部分については全額税方式にして年金目的消費税を活用する、こういう発言が非常に強く私どもの頭の中にも入ってくるものですし、国民もそういうふうな認識を受けているだろうというふうに思います。

 だから、その辺は、ぜひひとつ岡田党首にも、山本議員のような、現行の年金制度の中にそういう問題点があるんだ、こういう問題を一つ一つ解決していく、そういう各党間のいわゆる話し合いというか協調というか、そういうものをやっていこうというような姿勢に、岡田党首の発言まで私が拘束する必要はありませんけれども、ひとつ御期待をしたいと思っております。

 さらに……(発言する者あり)うちの総裁は総裁で、これはあれですけれども、事年金の問題でございますから。

 特に私、幹事の皆さん方にお願いをしたいのでありますけれども、前回の公的年金の問題について、ほとんどの議員がこれを共有したと。きょうの問題の中にも、山本議員の発言、我が党が常々考えて、私なんかも考えている問題の提起がございます。そういう問題、例えば国民年金を含めた一元化の問題等についても、私は、ひとつやれる部分からスタートをしていくという作業に入っていくことも必要ではないのか、こんなふうに思えて、幹事の皆さん方に御要望を強く申し上げておきます。

 特に、ある部分、この国民年金制度が発足した当時は全くあり得なかったパートという一つの層は、これが二〇%、二五%を占めている。この方々をどういうふうに年金という一つの枠組みの中でいわゆる救っていくのかというような問題は、これは各党共通な認識として、早急にでも取り組めるんではないのか。

 それと、常々申し上げておりますように、厚生年金と共済年金の一元化というふうな問題、やれるところから手がけていく、一つだめだから全部だめだということでなくて、やれるところから手がけていく、そして国民の信頼を得ていくという形をぜひとっていただきたいということを強く要望申し上げまして、私の意見といたします。

佐々木議員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 先ほど来、消費税の目的税化ということが議論になっておりまして、民主党さんの方からも再配分との関連で年金目的消費税というのが提起をされ、また、報道されるところによりますと、自民党の若手議員でつくる財政改革研究会、柳澤政調会長代理が座長を務めておられるということで、何か与謝野会長の呼びかけで二月末に発足したということも報道されていますが、ここで、福祉目的税として消費税の増税の検討あるいは社会保障費の歳出削減、こういうことが議論されていると聞いております。

 これはどう考えたらいいのか。つまり、年金にしろあるいは福祉にしろ、それを目的とした消費税の引き上げ、あるいは消費税の目的税化という考え方ですね。私は、この枠組みに入ってしまうとどういう問題が起こるかというのを考える必要がある。

 つまり、年金にしろ福祉にしろ、これをどんどん充実させたい、これは国民の願いでありますが、それをやればやるほど、消費税が連動して引き上がってしまうということになります。あるいは、消費税の引き上げは嫌だ、こうなりますと、年金も福祉も抑制しなければならない、こういういわば最悪の事態に陥るのではないか。あるいは、これに似たような発想は、骨太方針の中で、成長率を勘案して社会保障費を抑制するという発想もありました。

 これらの議論は、私はやはり本末転倒ではないかと思うわけです。つまり、なぜかというと、まずは、年金というものをどうするのか、あるいは福祉をどうするのか、この点をはっきりと制度設計をして、国民の期待にこたえるというのがまずは必要であって、そのためにどのような財源を確保するのかというのはその次の議論として出てくるわけであって、何か最初から連動させるという議論はいかがなものかというふうに思うわけであります。

 現に、税制の問題でいいますと、何も消費税だけではない。法人税、所得税、一体これをどうするのか。我々は、法人税でいいますと、これは余りにも低過ぎると。つまり四二%から三〇%に下がった。あるいは、高額所得者の最高税率は下がりっ放しであると。

 国民全体が支えるというのであれば、なぜ低所得者にのみ負担が行くような税を引き上げるのか、ここにやはり問題を見なければならぬわけであって、私は、今のこの議論というものはもっと総合的な角度から検討しなければ、単純な消費税目的税化には賛同ができないということを申し上げておきたいと思います。

阿部(知)議員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 先ほど坂口議員からお尋ねのありました問題について、特に公助、共助、自助という考え方、こういう割り振り方自身の問題はちょっとあると思いますが、しかし、もし皆さんがそういう形で論じられるのであれば、このことに基づいて少しお話を申し上げさせていただきたい。

 先ほど、私は、現在この国会で障害者自立支援法案が審議されておるということをお話しいたしました。障害者にも応益負担を、定率負担を求めるこの法案は、当然その前提として、障害者の所得保障ということが前段にございます。これは、冒頭の鴨下議員のお話でも、これから年金の厚さをどのくらいにして、そこから御自身が医療や介護に払っていくイメージで行うのか、それとも現物で医療や介護が全部給付されるのかという、大枠をまず論じないといけない問題と思います。

 私どもの少子高齢社会は、実は同時に、障害のある方が多数ともに生きていく社会でございます。現在の人口の約五%という政府側集計の障害者数は、実は、いろいろな障害をきちんと集計いたしますと二〇%にも及ぶと言われています。そうした時代であるからこそ、そして私どもは、一人一人が権利としていろいろなサービスを利用していくということの方がやはり人間的と思いますので、その前提には所得保障があり、ゆえに基礎年金部分を厚くしていこうという考えが成り立つわけです。

 そして、その場合の企業負担ということを、これは民主党の皆さんと自民党の皆さんの中間くらいにうちの党はあるのかなと思いながら聞きましたが、私どもは、消費税というものの逆進性等々を考えると、まず手をつける部分は、総人件費に対して企業が負担するある意味で社会保障目的税であると思います。この総人件費にかけている国というのもございまして、それが、今雇用中立的でない我が国の年金制度、保険料が上がれば上がるほどみんな厚生年金を脱落していく制度に対して一定の歯どめになりますし、その部分を基礎年金部分に入れるということで御検討をいただきたいし、現在でも入っておるわけですから、その采配をどうするかというあたりは、皆さんと統一の俎上で話せるものかなと思いました。

 そして最後に、女性の年金問題で一言つけ加えさせていただきますが、女性も今長い人生を生きるようになり、八十五歳を超えれば、実は今のパートの方でも、厚生年金に加入している方が総体の生活保障額は多くなるという集計です。女性の平均年齢、とうの昔に八十五歳を超えました。このことから考えても、私はやはり、ここは私どもと自民党の皆さんの共通点ですが、パートの方の年金加入を早急に検討していただきたいと思います。

 以上です。

枝野議員 まず、先ほど中島先生から、やれるところからというお話がありましたが、私は反対であります。つまり、今までやってきているのが、年金制度はその時代時代の状況の変化に応じてびほう策的に継ぎはぎをしてきた結果として不公平や矛盾が生じている、それが国民の年金不信につながっている、これが今の状況であると思います。その一番のあらわれが国民年金に出ていると思います。

 全体像としてどうあるべきかということについての絵柄をきちっとかいた上で、そのモデルに向かってロードマップとして一個ずつやっていくということはあり得ると思いますが、とにかくできるところだけやりましょうということを積み重ねてきた結果が今の状況であるというのが我々の認識ですので、我々はそういう立場に立ちません。

 やれるところからということでやるならば、それは与党だけで勝手にお進みください、過半数をお持ちなんですから、そういうお話であって、我々は、全体像の組み直しをちゃんとやるべきで、全体像の組み直しをやるためには、これは政権がかわるたびに全体像の組み直しはできませんから与野党を超えてやっている、今そういう状態ですので、そこの認識をきちっとお持ちいただきたいというふうに思っております。

 それから、まさに継ぎはぎだらけということで、先ほど来、国民年金がパートの問題のようにとらえられている。それも大きな問題ですが、実は自営業者という概念自体が全く変わっている。

 つまり、スタートラインのときには、資産があって定年もない自営業者の皆さんというのが前提だったわけですが、もはや自営業者の中にかなりの比率で、事実上資産はないに等しいし、そして高齢化によって、どんどん改修費用をかけられるわけではないしということで、実質的には定年があったりする人と余り変わらないという、低所得、低収入の自営業者という人たちの比率が非常にふえてきているということも実態としてあるわけでして、それは既にパートなどの話だけではない。自営業者の中の低所得層をどうするのかということも深刻な問題であるということであります。

 そして、国民年金制度が今の時代に全く合っていないというのは、やはり定額制は根本的に間違っているということだと思います。

 要するに、自営業者は資産があって定年がないから、だけれども、何も年金がないのはサラリーマンと比べて幾ら何でもなんだから、ちょっとぐらいつくっておきましょうというレベルでスタートした。その当時はよかったかもしれないけれども、まさにパートの人が入ってきたりとか、低所得の自営業者という人たちの比率が非常に高まっているという状況の中では、生活基盤を支えますという話になっていくわけですが、このときに定額制というのは、まず保険料負担の段階で、定額制の負担は消費税以上に逆進性が大きいわけでありまして、低所得者にとっては何じゃらほいなという話になるわけですね。

 逆に、自営業者の中にも一部は、もちろん資産もあって収入も多くてという人がいます。この人にとっては一万三千幾らの保険料は大した額ではないでしょうが、逆に、こういう五万円、六万円の年金に対してほとんど魅力を感じないという自営業者の層の人たちにとっては、これまた定額という国民年金制度に対する魅力は感じないわけですね。

 高収入を得ている人にとっては、将来ある程度の大きな額の年金を受け取れるということでないと年金制度に対する魅力はない、低所得者にとっては、それに応じて保険料が低くないと払えないということでありますから、国民年金という制度を、どういう形にしろ、今の国民年金に入っている人たちに対しても保険料を定率で納めてもらう、その納めた保険料に応じて将来の給付の額が変わってくる、こういう概念にしていかない限りは、やはりこの人たちの未納、未加入といいますか、年金に対する期待度あるいは信頼度というものは高まりようがないのではないか、そういうふうに感じております。

 我々の一元化というのも、そこは、国民年金のところも定額制ということでは成り立ち得ないよねというところが一つの出発点にあるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 以上です。

津島議員 この合同会議が始まりまして、与野党が率直に話し合って、一歩でも二歩でも国民のために前進したいと思っている中で、先ほどから御指摘もありますけれども、例えば野党第一党、民主党さんの偉い方々のお話を聞くと、党首はこう言われた、別の方はこう言われたというようなことで、これはどうなるものか心配しておりましたが、きょうの山本さんのお話、それから古川さんのちょっとしたお話、時間的に短い話でありますが、お話の中から、これは我々話し合えるかなという気持ちになってきたのであります。

 つまり、基本的に、いろいろ問題はあるけれども、話し合って改善すべきところからやっていこう、こう言われたので心が明るくなったところ、枝野さんから、いやいやそうではない、これはもう我々としては一つの姿を描いたんだから、そのイメージに合わないものはひとつ与党だけでやってくださいと。

 そこで、申し上げますが、年金の……(発言する者あり)後で訂正したらいい、あれなら後で訂正してくれ。

与謝野会長 また後で発言の機会があります。

津島議員 年金の話について、基本的な問題は、昭和三十六年からずっと実施をされておって、それぞれの世代の方、それぞれのグループの方がこれに参加をしているんですよ。それで、非常に権利意識について意識の高い枝野弁護士ですからおわかりのとおり、国とそういう人たちの間では、過去の年金問題について既に一つの権利義務関係ができ上がっているの。だから、白紙に物を書くようにこうこうこうあるべきだということを一挙にやれるはずがないんだよ、グループによって、年金をめぐった関係がそれぞれ違うわけだから。だから、基本的には、一つ一つやれるところからやる以外にこれはないのであります。これは私の意見であります。

 そこで、二つ御質問をいたしたい。

 一つは、年金の問題と社会保障の問題なんだが、例えば生活保護との関係で、一体、保険料が払えないような方へのいわゆる年金の対応をどうしたらいいか、これは非常に悩ましいところであります。下手をすると、保険料を払っていない方にも年金が来るということになりますと、それなら保険料を払う必要ないじゃないかという社会風潮にすぐなっていくことを私は恐れているわけであります。

 それから、裏から言えば、いわゆる所得格差を減らすという社会的要請かもしれませんが、社会政策の要請をどこまで公的年金に入れられるかという問題もございまして、この点についての御意見を伺いたいと思います。

 最後に一言だけ、佐々木憲昭さんから、私たちの内部の議論についての新聞報道を受けていろいろコメントございましたけれども、責任者の一人として申し上げますけれども、私たちの考え方は、去年の税制改正大綱に書いてあるもの以上でも以下でもございません。

枝野議員 津島先生ともあろう方が、今の発言、二つ、非常に心外でありますので撤回をしていただきたい。

 一つは、私が申し上げたのは、全体像についての共通認識をつくっていくことが先であるぞということを申し上げたので、別に民主党の案でなければ絶対だめだなんて申し上げていないし、この間の発言の中で何度もそのことについてもお話を申し上げてきています。

 ところが、それを勝手に、全体像についてまずは議論すべきだという話を、民主党のイメージじゃないとだめだと言っている話に勝手に転化する、こういう議論の仕方をしているからこの会は進まないんですよ。

 せっかく建設的に前回と今回の途中までやってきているのに、またこれじゃないですか。筆頭の幹事、何とかしてくださいよ。こういう議論をしているから話が進まないんですよ。せっかく本質的な議論から、全体像をどうするのかということで、共通認識ができるところから順番に積み重ねていっているのに、また途中で間を飛ばして、またこちらの話の揚げ足をとるような勝手に曲解した発言をする。これで信頼関係ができるはずないじゃないですか。ちょっと、そこのところをいいかげんにしてほしい。

 それからもう一点。先生は昨年の委員会なども知っているはずだし、民主党案をよく御存じのはずで、過去債務問題はちゃんと過去債務として、それは原則として、約束を守った上でしっかりとお払いをしていく、その上で将来分についてどうしていくのかということをちゃんと分けてやるという話はこの場でも何度も申し上げてきているし、我が党案にはっきりと出ている話を、何か過去債務の部分を全部チャラにしてやりますだなんというようなことを津島先生が本当に思っているとは思えないので、だとすると、勝手に曲解をして、これまたおかしなキャンペーンをする。

 どちらも撤回をしていただかないと話が進まないです、こんなことをやられていたら。

与謝野会長 皆様方の冷静な御議論をお願い申し上げます。

伊吹議員 お互いに建設的に話をしなければいけませんから、ちょっと不規則発言はあれにしてもらいたいと思うんです。やはり幹事間で、どういうニュアンスの発言があったかというのは、少し議事録を見て、そして穏やかに話されたらいいと思います。

 国民年金の位置付けという題になっていますが、国民年金という言葉を使うのは、法律的にこうなっていますが、私は余り適当じゃないんじゃないかと思います。どちらかというと、雇用主、つまり二分の一の保険料を持ってくれる人を持っていない人の基礎年金という表現がいいんじゃないかと思います。

 思い出すのは、昭和六十一年ですから一九八六年に年金の大改正がありまして、このときに基礎年金という言葉が導入をされました。したがって、厚生年金の中にも、国民年金相当の基礎年金の給付と、そして国民年金の年金保険料相当の定額の支払いが含まれているんです。この定額の保険料を取り出して基礎年金勘定というところで統一的に運用されている。

 であるからこそ、当時は、大企業のサラリーマン、部長だとか重役の人の年金給付の四分の一に、厚生年金に入れない八百屋のおじさん、おばさんの汗水垂らした所得税が補助金として入っておったんですよ。これが改められて、国民共通の基礎年金というものであるから、国民共通の税を三分の一入れるということになったわけですね。

 ですから、私は、ここの部分で既に年金は一元化されているのであって、雇用主を持っている人と持っていない人、つまり保険料の負担が倍になる人と保険料の負担が二分の一で済む人の保険を一緒にするというのは現実問題としてはなかなか難しいんじゃないかと思います。

 しかし、民主党の言っておられる案に私が考えておる案は非常に近いんですよ。基礎年金の部分を極めて大きくとってそこに税を入れていく。そして、例えば四分の三という税を入れれば、無年金の、所得が低いから年金料を払えないという方は、先ほど津島議員がおっしゃったように、年金の世界で処理するのかあるいは福祉の世界で処理するのか。そうすると、生活保護費の給付を年金の保険料の四分の三を少し下回ったところに置いていくというようなやり方をすれば、そして所得制限を四分の三の部分にかけていくということを考えると、私は民主党の提案しておられる案とそんなに大きな違いはないと思うんです。

 峰崎先生がこの前、税の専門家である伊吹には云々というお言葉がありましたが、四分の三までというなら四分の四までとおっしゃったんですが、これは税の問題とは何の関係もないんですよ。要するに、社会保障に対する個人の信条、政党の政治理念にかかわることなんですね。

 フランスの哲学者のアランが、福祉というのはみずから努力をして得る心の平安という言葉を吐いておりますが、我々自由民主党は、やはり自助努力をすることによって、若干の保険料を払うことによって世代内、世代間の助け合いに入った人に給付というものはあるべきなので、そうでない人は、共生社会の原理として税で助けていくべきだ。

 だから、基本的に私の考えていることは民主党案とそんなに違わないと私は思いますし、古川さんがさっきおっしゃったように、一時間、二時間という人を雇用主のいる方へ入れるのか、あるいは三十時間の人を雇用主のいない方へ入れるのか。これはどちらでも、話をすればできることだと私は思うんです。

 ただ、その前提で、この前、岡田さんが党首として出てこられたので私は質問をしたんだけれども、意図的なのか時間がなかったからかわからないが、お答えをされなかった。それは、最低保障年金というのは消費税で財源を確保しておりますから、この部分がありますから無年金というのは生じないんですということを再三おっしゃるのだが、二階建ての部分の保険料を払わなければ一階建てはもらえないのか、それとも、二階建ての保険料部分を払わなくてももらえるのかということをやはりはっきりさせておかないと、これは社会保障の分野の話なのか福祉の分野なのかわからないので、この前伺ったんです。

 答えていただけなかったので、上がっておりますから五島さんでも小宮山さんでも、峰崎さんでも、ぜひ答えてもらいたいと思います。いや、お互いに相談しなくても、民主党案として決まっているんだから、峰崎さんからぜひ教えてください。

小宮山議員 今の点については、これまでのいろいろなものをお読みいただければよくおわかりいただけるのではないかと思っています。

 それで、国民年金の位置づけということで本日議論をしているわけですから、先ほど枝野さんが言われたように、やはり全体像を組み直して、多くの人たちが納得できる公平な国民年金のあり方についてぜひ建設的な意見交換をして、その全体像を決めた上で、順序を追って実現をしていくような話の組み立てをぜひしていただきたいと思っています。

 その点でいきますと、いつも女性の年金の話でまた恐縮ですけれども、先ほど井上議員が、世帯単位で見れば専業主婦が優遇されているのは誤解だという言い方をされましたけれども、今のままの制度でいいのだということではなくて、現実問題としてやはり働き方も家族のあり方も変わってきているわけです。夫婦に子供二人という世帯ではなくて、今世帯の数も二・六人になってきています。だから、そういう中で、今あるべきものをどうすればいいかということで、今までのでよいのだと言っていたら議論は前に進まないのではないかと思っています。

 それで、以前に伊吹議員の御指摘があったとき、その後の回で私も申し上げましたが、これはあくまでも専業主婦の分も夫が払っているというのは確率計算なので、実際はそうではないというところが問題なのですから、そこをどうするかということをいたしませんと、別に専業主婦の価値を否定するわけでは全くありませんが、専業主婦ではない共働きの女性だって家事もしているし育児もしている、私自身もそうですけれども、そうしたことの中の不公平感があるということなわけですね。ですから、そこをどうするかという前向きの議論をぜひしていきたいというふうに思っています。

 結局、夫が払っているのではなくて、夫の制度の中の、単身の人も一人親の人も共働きの人もサラリーマンの妻の分を出している、そこは明らかに不公平なわけです。現に、このような形になる前に、任意加入で七割は専業主婦も国民年金に自分で入っていた。その人たちは今でも自分で払いたいと言っている人がたくさんいるんですね。それはやはりおかしいと思うからそうなのであって、そこはぜひ建設的にどう変えたらいいかという話をしていきたいと思っています。

 これからは労働力も確実に下がっていくわけですから、働きどめをするというようなもったいないことをしないで済むように、また、社会保障の財源も少ないわけですから、きちんと、働きたいだけ働けて、その人がそれに見合った保険料を払っていくという形に改めていくのがよいと思います。

 それともう一点、先ほど坂口議員が、ニートは働かない、その人たちに払うのはいかがなものかというお話がありました。これは、働かないだけではなくて、今の就業構造が変わってきていて、大学を出ても五人に一人は正規の職につけないというような、雇用の受け皿の方が縮小しているという問題もあるので、働かないだけではなくて、働けないということもあるわけですから、そういう雇用のあり方のところもきちんと見据えた上で、多様なライフスタイル、それから変化をしてきている世帯の構造に見合った、多くの人が納得できる持続可能な形になるように国民年金の位置づけもしっかり議論をしていきたい。

 そのためには、再三申し上げている国民年金一号の構成比そのほかのデータをきちんと真ん中に置いて議論をぜひしていきたいというふうに思います。

五島議員 先ほどからお話があるわけですが、国民年金の問題での議論ということになりますと、今伊吹議員がおっしゃったように、確かに、今のさまざまに分かれております年金制度の中で、基礎年金という形で国民年金が唯一統合されている部分であることは間違いない。ところが、その統合されている国民年金、基礎年金が実は財源的に見た場合に一番不安定であることも、これまた間違いのない話です。

 しかも、今後の日本における労働状況を見ていった場合に、ここはますます不安定になる可能性がある。先ほど坂口先生も御指摘になりましたけれども、フリーターとかニートというような存在が増加していることも一つであります。また、失業者がやや減ってきたとはいえ、所得がなくなったことによって、定額負担の保険に入るということがその人たちにとって非常に大きな負担になっているという客観的な事実もございます。

 また、今御議論があるように聞いておりますが、ホワイトカラーエグゼンプションなどといったような働き方が入ってきた場合に、現実問題として今度は、ホワイトカラーで比較的高額の所得を取っているサラリーマン世帯が実際上は自営業者扱いになってしまう可能性がある。そういうふうなことを考えた場合に、今の国民年金制度というのは決して安定した制度であるとは言えないと思います。

 そこで、年金制度というのは、保険料を払っている、だから云々というふうにおっしゃるわけですが、皆保険制度である以上は、それぞれの皆さんがそれぞれの能力に応じてこの財源をつくっていくしかないということから考えれば、民主党が主張しております年金消費税制度というのは十分に説得力のある問題であって、少なくても、現在の国民年金制度に比べると、保険料の面において逆進性は緩和される内容であるというふうに私は考えております。

 問題は、これを一元化するために国民年金制度をどう安定化させるかということと、もう一つは給付の水準をどうするのかということ、そして、年金制度の存在そのものに対して、国民に対してどういうふうに信頼を取り戻すのかという問題に尽きるのだろう。そして、二階建ての部分とおっしゃいますが、もし年金消費税制度という形でいくとすれば、あくまで形は税の世界でございますから、高齢期の高額な所得のある人、高額な資産のある人に対しては一部御遠慮いただくということは当然あるんだろう。そういう意味においては、我が党の案というのは決して問題があるとは私は思いません。

 もう一つ、坂口先生なんかの御指摘にもありますので一言申し上げますが、自助と共助と公助の関係、この問題については個別のケースにおいて検討すべき問題で、社会保障制度一般を通じる原則にすると、とんでもない間違いが起こると思います。

 今阿部さんも御指摘になっておりましたが、障害者自立支援法を議論しております。生まれつき障害を持ち、資産形成の時期も得ることができなかった人と、例えば介護保険との比較の議論があるわけですが、成功した、しないは別としても、一応働く時期においてそのチャンスに恵まれた人、それを同じような原則でやっていくということになりますと、社会保障といいながら、より弱者に対しては非常にむごい社会になるということを御指摘申し上げておきたいと思います。

峰崎議員 伊吹先生から前回に引き続いてお話しいただきましたので、その点についても後でお答えしたいと思うんですが、実は前回お互いにやはり再確認しておけばよかったなと思うのは、公的年金の必要性という点では認識は一致した、しかし、国民皆年金という制度、これをお互いに確認できたんだろうか。

 今もちょっとお話がありましたけれども、冒頭、井上議員の方からあったお話をずっと聞いていますと、どうも、未納者の増大への対応というのは積立金の取り崩し等で対応している、それは余り問題ないんだ、だから財政的な観点から見るとこれは問題ないんだ、こういう話になるんです。

 先ほど来もう何回もこの間議論してきたように、国民年金制度が本当に今の社会構造の変化に対応し切れていないぞと。その意味で、この点は、いかに皆年金というものを、国民年金制度を充実させていくかというところにやはり焦点を絞って改正もしなきゃいけないんじゃないかということを提起してきたわけですから、今ニートの問題などもございましたけれども、そういう意味で、我々としては、そこにどういうふうに対応していくのかということは非常に重要な点じゃないんだろうかなというふうに思っているわけであります。

 さて、税のところが出てまいったわけでありますが、消費税の扱いの問題に関して、実は共産党さんからはかなりいつも御指摘を受ける。あるいは、かつて私自身もそうだったかもしれませんが、日本の社会の中で本当の意味で実効税率で見た場合、実効税率ですけれども、五百万円の層とか七百万円の層とか、一千五百万とか三千万とか、これはいわゆる表面的なフローで夫婦二人でどのぐらいの税率かというのは出てまいります。そうじゃなくて、金融所得とかさまざまな所得があって、それらを合算してみて総合所得という建前で見たときにこの実効税率がどうなっているのかということについて、残念ながら日本には余りきちんとした統計がありません。

 だから、私は、もしかすると消費税の方が、税を水平的に納めているということもあると同時に、垂直的に見ても、むしろそちらの方が公平に納めている公算が強いんじゃないか。ただし、これは十分なデータがありませんから、わかりません。しかし、そういう意味で、そこのところはまさに総合課税というか、所得というものをきちんと捕捉しなきゃいけませんね、こういう観点から、納税者番号制度というさまざまな仕組みをつくって、そこのところをきちんとやりましょう、我々はこう提起をしているわけです。

 その点に関しては、実はきょう、公明党の井上先生、看板を上げられていますから反論があったらまた後でいただきたいんですが、所得というものを二種類に分けていらっしゃった。つまり、自営業の所得とそれから勤労所得。

 これは確かに、ドイツなんかの年金の場合に自営業者とそうでないのを分けていますから、そういう分け方が一般にあっていいんですが、そこで私が大変気になっているのは、年金について今おっしゃったような所得についてもし分けるとすれば、例えば公営住宅に入るときの入居基準、これは所得です。そうすると、その所得は勤労所得と自営業者の所得を分けているんだろうか。あるいは、私どもが大学に入るときに奨学金というのがあった。そのときにも、奨学金を受給するときの所得というのは自営業者の所得と勤労所得というのを分けたんだろうか。そこは分けていないんです、現実にほかの社会保障給付においては。

 だから、国民年金だけなぜこうして分けなきゃいけないのか、この点は、今のお話をずっと聞いている限り、そういう二種類の分け方をすること自体は、私は、ではそういうことが前提なら、ほかの社会保障もそれで分けていかなければ一貫性がないのではないか。

 その点で、やはりここは、先ほどおっしゃった経費認定の問題など、私もそれなりに、自営業の方の所得といわゆるサラリーマンの所得の捕捉の問題というのはより厳密に追求しなきゃいけないと思うんですが、そこのところは一貫させていただきたいなというので、一つ提起をしておきたいと思います。

 もう大分時間が来ましたので、伊吹先生のお話は多分山本先生が後であれしますので、そちらの方に譲りたいと思います。時間が来ましたので、終わります。

坂口議員 小さい話ですから余り時間をとってはいけないと思うんですが、フリーター、それからニートのお話につきましては、私はフリーターまで含めているわけではなくて、フリーターの中にはさまざまな人もいますから、それこそ働きたいけれども働く場所のない人たちもいるわけで、ここは非常に努力をしてあげなければいけないところですし、また、常勤と同じような働き方をしておる人に対しましては、厚生年金の中に入れるようにしてあげるということが大事ではないかというふうに思っています。

 ただ、ニートの方は、働く意欲もないんだし、また勉強する気持ちもないという人たちをこの中に入れておるわけでありますから、この人たちに対してはまず働くことの大事さを教えてあげなきゃならないので、働く意欲がないからというので、その人たちも、働く意欲がなくても将来はちゃんと見てあげますよというふうに言ってしまうのはいかがなものかというふうに私は思っているということを申し上げておる。

 それから、自助、共助の話を申し上げたものですから、少し五島先生もこだわっておみえになりますが、これは基本的な全般についての考え方でございますから、障害者の方もいろいろでございます。お生まれになったときから障害者の方もおみえになるわけで、その皆さん方が資産形成ができていないことは事実でございますし、そういう皆さんは皆同じように支払ってくださいよというわけにはいかない、それはそのとおりだというふうに思っております。しかし、最近は、障害者の中にも、税金を払うことができるようになろうという障害者の皆さん方もおみえになるわけでありますから、その自助努力というものはやはり高めていくことが基礎として大事ではないかということを私は申し上げているわけであります。

 それから、三号被保険者の問題でございますが、これは井上議員からまた話があると思いますけれども、全体の流れとしては、世帯単位か個人単位かという問題を決着していかなきゃならないわけで、流れとしては個人単位という方向でどうしたらそうなるかということを考えていかなきゃならぬのだろうと私は思っております。

 三号被保険者の人の負担をどうするかとなると大変大きな問題で、私が申し上げるよりも連合の皆さんにお聞きをいただいた方がいいんですが、これは今日を迎えるに当たって歴史的経緯というものもかなりあって、三号被保険者をつくるときに御主人の保険料をある程度少なくして、そして三号被保険者というものをつくり上げたというような経緯もあるようでございます。そうしたことをどう考えるかというようなこともございますし、だれがこれを負担していくかということもある。

 保険料であれ、税であれ、三号被保険者の皆さん方の分を出していただくということになりますと、年金財源としては非常にプラスになるんです。年間一兆五千億ぐらいふえると私は聞いたと思っています。これはかなりなプラスになるわけで、そうすると、それだけふえれば全体の保険料をどうしたらいいかという話にもまたなってくる話だというふうに思っております。なかなか難しい問題を含んでいる問題ですけれども、ここも決着していかなきゃならない問題だという、問題意識は持っておるということでございます。

田村議員 伊吹先生からも、このことを再度確認しようという話もありましたので、確認をさせていただきたいと思います。

 要は、最低保障年金と報酬比例年金といいますか、この二つがある。ただ、これは多分一本立てなんだろうと私は認識させていただきます。ですから、これに対する保険料を払っていない場合は、当然のごとく、所得のない方々、少ない方々の所得保障年金、これももらえないということであるのか、それとももらえるということであるのか。これを岡田代表にこの間お聞きさせていただいたときに、岡田代表からお答えがなかった。私は、もらえないというふうに主張されておられるんだろうと思います。これを再度一点確認させていただきたい。

 もしそうであるならば、実は、今も我々と基本的な違いはそうはないなと。あるとすれば、一つは、それは定額制か定率制かという部分。それから、こちらが基礎年金、また民主党さんは所得保障年金と言われておりますが、こちらは全部、一応税が二分の一入るわけですね。民主党さんの場合は、所得の少ない方々に限って全額税になるという話だと思うんですが、ここの割合が二分の一と全額という部分と、所得のある人とない人によって出るか出ないか、ここの違いがある。それからもう一つは、世帯単位なのか、今言われたそれぞれ個人単位なのか、こういう違いがある。

 だから、ここを整理していけば、かなり考え方としては共通認識を持てる、そういうふうに私は改めて感じさせていただきました。

 ただ一点、先ほど枝野先生がおっしゃられた中で、自営業者も所得の低い人たちがいる、これをどうするかという議論は、これは実は私は永遠のテーマで頭を悩ませておるんですが、所得が低いとはどの程度なのか、どの所得なのか、二十万なのか十万なのか。

 例えば二十万と考えた場合、これは月々です、ボーナスありませんから。二十万と考えた場合、言われておられる一五%という保険料、もしそれがそのままだったら、そのまま掛けた数字、これは三万ですよ。三万というのは、実は国民年金の保険料よりも高いんです。もらえる金額がどうなのか。これは具体的な話がわからない。多分、民主党案というのは、所得の多い人たちに厳しくて低い人たちに優しいと思いますから、もちろん、国民年金の六万六千円よりは多くもらえるんだと思うんですが、三万に対して幾らもらえるか。

 また、所得の多い方々の所得代替率は今の政府案よりもぐっと低くなるはずなんです。それは幾らなのか。ここがまだ具体的にお教えいただかないものでありますから、今の現行案との比べようがまずない。こういうものもぜひとも出していただければ、いろいろな対照の中でどちらがいいのかという議論が、どういう方法がある、中間をとるという方法もあるかもわかりません、こういうことが考えられるのではないのかな。

 一方で、所得のない方々を本当にどうするのか。ここは実は哲学の部分がかなり入ってまいりまして、それを所得保障年金で最低金額は守ってあげるという考え方なのか、それとも所得のない方々をそこまで見るのが本当にいいのかどうか。これは哲学なんだと思います。つまり、高齢者の今の生活保護にいかれておる方々が、これはミーンズテストも受けて、本当に所得がないから、国民の貴重な税金をそこから出して、この方々をお助けさせていただいていると考えているのであります。

 民主党案でいくとするならば、全員が入ったと仮定して、全員が入れるというのは、歳入庁を使えば一〇〇%保険料をとれますよ、これはできるかできないか別にしまして、多分そういう考え方なんだと思うんですが、そうであるとするならば、この場合は、その後の老齢者になってからの所得や資産、こういうものがあっても、実はこの年金制度で、生活保護のかわりに、一定金額はどうぞ自由にお使いくださいとお渡しされるお金になるんだと思います。ここの考え方をどう整理するのか。

 こういう細かい部分を詰めていけば、かなりの深まった議論がこれからできるのではないのかなと思いますので、ぜひともこれからそういう議論をさせていただければありがたい。よろしくお願いいたします。

山本議員 要は、おっしゃっているように、基礎年金の財源をいかに確保するかということと、所得比例年金とどう組み合わせるかということで、皆さん御発言の中でいろいろな姿があるんだというふうに思います。

 私は、きょう申し上げたのは、定額の保険料がまず問題であるという共通認識に立てるならば、その定額の保険料をどう変えるかということだと思います。

 そのときに、例えば段階保険料もあるじゃないかと申し上げましたし、所得比例の保険料ということもできるんじゃないかというふうに丹羽先生もおっしゃる。あるいは、消費税という考え方もありますね。企業が負担している部分をどうするか、外形標準課税のようなものもありますね。いろいろな形の、どう組み合わせるかという問題であって、単一、全部消費税でなければいけないかどうかというのは、それはいろいろな議論ですねと。ここも皆さんで御議論し合えばいいんじゃないでしょうか。

 ただ、今の定額保険料はやはりまずいんじゃないかという認識に立てるかどうかだというふうに思ったわけです。先ほど中島先生に申し上げたのは、そういう共通認識がどこまでまず深められるかということを一つ一つ確認したらどうだろうということを申し上げているわけです。

 自民党の皆さんがおっしゃる、年金を払えない人をどうするかとか、所得のない人をどうするかというこの発想は、社会保険制度を前提とした立論の立て方なんですね。それでは救えない人はいっぱいいるわけです。

 ニートの人たちをどうするかとかおっしゃるんだけれども、この国で暮らしている限りすべての人は何らかの貢献をしている人だ、したがって、老後の生活の一定給付は受ける権利があるというふうに私は考えます。だから、それは社会保険方式じゃなくて、きっちり税方式で、一定部分は保障するべきじゃないだろうかということを申し上げているわけです。

 被扶養者という考え方をどうするかということなんですが、介護保険のときも、あるいは国民年金がスタートしたときも、個人単位でスタートしておりますので、被扶養という考え方はないんですね。ですけれども、社会保障制度を見ておりますと、この被扶養、世帯単位にどんどん戻りつつあるというのが今の姿で、残念ながら、私は、やはりせっかくやり始めたのだから個人単位を目指すべきじゃないだろうか、理念的にはそう思っております。

 私たちが提示したのは一制度二給付なんです。したがって、未納、未加入は出ないという前提でこの制度をどう設計していくか。そのときに、今おっしゃっておられる社会保険庁の改革問題で、私たちは歳入庁の設置ということを申し上げたわけだけれども、企業が賃金を払うときに、源泉徴収して所得税を取る、同様に、この二階部分の社会保険料を徴収することは可能である。納税のあるなしにかかわらず、所得のある人はすべて申告するというような形のことを考えていくべきではないのだろうかなというふうに私は思っております。

 田村さんはいつも数字、数字とおっしゃるのだけれども、これはちょっと乱暴な言い方かもしれないけれども、政治家としては、どういう制度に改革していくべきかということをまず考える。それについて数字を入れるのは厚生労働省の仕事だと私は思います。そのときに、こういう形にしたらどうだろうといろいろな形を、一番いい制度はこうだということを考えるところにあるのであって、もちろん、こちら、大まかな数字は提起はしますけれども、最終的には、制度設計を、数字を入れられるのはやはり厚生労働省のお仕事だろうと私は思います。

井上議員 まず、小宮山さんから御指摘がございました。その前に、読めばわかるというようなことではこの議論は成り立たないので、やはり国民に理解されるようにこの場できちっと議論し合うことは非常に大事だと思います。特に、田村さんの御指摘は私もそのとおりだと思っているので、別な機会で結構でございますから、ぜひ答えていただければと思います。

 まず、第三号被保険者の件、先ほど坂口さんからもお話がございました。私は、専業主婦が優遇されているのじゃないかという誤解を指摘したわけであって、この制度がいいということを言ったことは一度もございません。私は個人的には、やはり個人化すべきだろうというふうに思っていますけれども、ただ、それに当たっては、現行の給付制度というのもありますし、負担の問題もありますし、かなり慎重な議論が必要だろうということを指摘したのであって、現状がいいというふうに言ったことはございませんので、ぜひ誤解のないようにお願いしたい、こう思います。

 それから、峰崎さんからお話がございました。一つは、これも、未納、未加入がふえるとまじめに払っている人の負担がふえる、あるいはサラリーマンの負担がふえるということについての誤解を誤解として申し上げたのであって、財政的にはそういうことは生じないような仕組みになっているということでございます。

 ただ、冒頭の発言の中でも指摘しましたように、未納、未加入は将来の無年金者に結果としてはつながるわけですから、そこの対策をどうするかということはしっかり取り組まなければいけないということを指摘したのであって、先ほどのような言いぶりは極めて心外でございます。

 それからもう一点、何か所得に違いがあるというふうにおっしゃいまして、私は、所得に違いがあるとは言っていません。これは負担と給付の関係ですから、自営業者の皆さんにも今の被用者年金の皆さんと同じような負担と給付の制度を適用する場合には、事業所得と給与所得については、これは所得捕捉の問題だけではなくて、例えば控除のあり方も基本的に違うわけですから、そこを踏まえて、同じ給付と負担との関係でコンセンサスが得られるかどうかということをきちっと検討しなければいけない、こういうことを申し上げたわけで、所得に違いがあると言ったわけじゃございません。そこのところもぜひ誤解のないようにお願いしたいと思います。

柳澤議員 私、先ほど佐々木憲昭議員の方からメンションがありました私どもの研究会の論点整理、これについて若干説明しておきたい、こう思って、挙手というか挙札をさせていただきました。

 私どもの考え方というのは、研究会の使命が財政改革ということでしたので、すぐれて財政の観点から問題を見たということが大前提でございました。そして、なぜその中で消費税というものについて、ほかも取り上げていますけれども、ある一定の方向を考えて論点としたかということでございますけれども、これは三つほど理由があったということで申し上げておきたいと思います。

 それは一つは、その前の政府の骨太の方針について、我々、いろいろな論議をしたわけですけれども、社会保障の伸びについて一定のキャップを考えるというような、必ずしもそれが原案としてもそのとおりであったかどうかはともかくとして、そういうことが大変な論議を呼びまして、そういう考え方は直接とらないということで一応の決着を見たわけであります。そのときに、私ども、財政の方から考えたときに、確かに伸びについて、特に毎年度のGDPというようなものにリンクをさせていくというのは適当でないだろうということでございました。

 しかし、そもそも社会保障全体の経費、そこに回すべき財源が、日本経済の持っている経済力と何の関係もないということは絶対あり得ない、これは根っこからの話でございます。そういう意味で、それでは根っこからの経済力をはかるメルクマールとして、やはり一つ消費税というのはあるかもしれない。そういうことで、社会保障と消費税というものを一つのテーマとして考えていた、これが反映したということでございます。

 二つ目は、これは後でちょっと申し上げますけれども、年金の財源として消費税というものを具体的に考えた税制改正大綱の検討項目というのを我々は持っています。それに対しては、政府税調の石さんなんかもこれについてちょっとメンションしていますけれども、消費税の引き上げというものを一つ年金の財源だけで考えられたのでは困ります、これはやはり財政再建と一緒に視野に置いて考えてもらわなきゃ困りますというような発言もあります。

 これに対して、そういう面は確かにあるのではないかというようなことで、局限して、あの税制改正大綱でうたったような消費税の引き上げというものを、すぐれて基礎年金の二分の一の国庫負担増のところにだけリンクさせて考えていかれるということに対しては、やはりここはもうちょっと広い視野を持つべきではないかということを言っておかなければならないんじゃないか。これが二点目の論点。

 それから三点目は、年金のことに関係するわけでございますけれども、これは今、我々の研究会では、津島顧問それから伊吹顧問でございます。こういう方がちゃんと入っておりますので、また、私のような相当の年配の者が座長をしているわけですから、決して若手の無責任な論議というふうには受けとめていただきたくないわけでございますけれども、いずれにせよ、この問題についても……(発言する者あり)いやいや、ちょっと待ってくださいよ。

 それで、これも伊吹さんのようにいきなり四分の三にしようというような意見もあるし、津島さん、税制調査会長として仕切った二分の一という考え方もあるということです。それで、民主党のように、全額だけれども高額者は外すというような考え方もある。このあたりのことについても私どもはよくよく考えてみないといけないぞということがございます。

 加えて、やはり年金については、社会保険方式というものについて、これを完全に捨て去れるものかどうか。報酬比例部分については当然考えるわけですが、基礎年金と言われる部分についても本当に捨て去れるものかどうかということについて実はございまして、それらの三点ぐらいの問題意識から、あそこに今言ったような、先生御案内のような表現を加えたということでございます。

与謝野会長 それでは、時間も参りましたので、本日の自由討議は終了することにいたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時散会


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