衆議院

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第10号 平成17年6月8日(水曜日)

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平成十七年六月八日(水曜日)

    午後一時六分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    坂本 哲志君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    西銘恒三郎君

      萩生田光一君    馳   浩君

      松本  純君    宮下 一郎君

      山口 泰明君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    一川 保夫君

      岩國 哲人君    小沢 鋭仁君

      大出  彰君    川内 博史君

      古賀 一成君    中塚 一宏君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      古本伸一郎君    馬淵 澄夫君

      山花 郁夫君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   法務副大臣        滝   実君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     坂本 哲志君

  大野 松茂君     萩生田光一君

  小泉 龍司君     西銘恒三郎君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     江藤  拓君

  西銘恒三郎君     小泉 龍司君

  萩生田光一君     大野 松茂君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君及び公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口泰明君。

山口(泰)委員 郵政事業懇話会に所属をしております自民党の山口泰明でございます。

 この郵政改革につきましては、だれもが一筋縄ではいかないと考えておりまして、小泉総理の並々ならぬ決意から一歩踏み出したと言っても過言ではありません。

 法案の取りまとめに奔走された竹中担当大臣、麻生総務大臣を初め、関係閣僚と与党の御担当の方には大変お疲れだと思います。

 私自身、党政調副会長の一人として身近で見させていただきまして、はた目にも、本法案提出に至るまでの与謝野政調会長を初め当理事である柳澤会長代理、また委員でもあります郵政関係合同部会の園田座長の御労苦は大変なものがありました。

 党内の郵政関係合同部会におきましても、都合三十三回に及び議論を深めてきたわけでありますが、もともと与党内にもいろいろな主張があり、与野党入り乱れて、花でいえば百花繚乱、いまださまざまな意見で埋め尽くされており、収れんされることなく現在に至っているのが現状ではないでしょうか。ここで、いま一度利用者である国民の側に立って、本当にこれでよいのか、大丈夫なのか、きちんとした判断ができるようにおさらいをさせていただきたいと思います。

 行き着くところは、なぜ民営化しなければいけないかのそもそも論になるわけでございまして、我が党においての関係部会も最後まで、民営化することによって国民にどのようなメリットがあるのか、民営化によって例えば郵便料金がさらに安くなるのか、目に見えないと国民の納得が得られない、あるいは、民営化することで結果的に国民の利便性が低下しないか等の、入り口での議論が大きな比重を占めていたように記憶しております。

 さはされど、過去二回、マニフェストに掲げ、選挙戦を戦ったわけでありまして、そろそろ国民の中にはこの郵政民営化について、総理の並々ならない決意もありますが、その必要性に理解を示しつつあることも事実であることも事実であります。しかし、なかなかいまだに、肝心かなめの部分でどうもしっくりこないというのが実情ではないでしょうか。

 先週金曜日に、九時から夕方の五時までテレビが入って、土曜、日曜、選挙区へ帰っていろいろな方と話をする機会がありました。多くの方々が異口同音におっしゃるのが、改革の必要性は何となくわかるけれども、なぜ民営化しなければいけないのかどうもよく理解できないとか、もう一つ、これが大事なんですけれども、うちの郵便局はなくならないでしょうねということであります。

 ここでまじめに働く二十七万余の郵政公社を管理監督、指導する総務省のトップとして、経済人としてもまれに見る経営感覚をお持ちの、次期総理の本命とも言われる麻生大臣に、ぜひ歯切れのよい得意の麻生節で、現在、素朴に疑問を抱いている多くの国民に、わかりやすい言葉で、なぜ民営化なのか、そのメリット、デメリットは何なのか、ぜひ、大臣得意のプラス思考で、国民が安心、得心できるメッセージをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 基本的には、山口先生の場合も商売をしておられた経験から、実業の世界から虚業の世界に入ってきておられますので、ですから……(発言する者あり)それは実業と虚業と言うじゃないですか、昔から。実業じゃないことははっきりしているんだから。だから、そういった意味で、商売をしてこられた関係でよくわかっておられるという前提でしゃべらせていただかないと、複式簿記もわからぬ人が世の中にいっぱいいますから、そういった方々の話と商売の話となかなか一緒にならないところがこの話を非常に難しくしているんだと思います。

 基本的には、やはり山口先生、郵便事業というものは、これはユニバーサルなサービスとしてやらねばならぬというルールがIPUによって決められておりますので、これはやらないかぬということになっておるんですが、それを取り巻いております環境は、郵便は年々絶対量が減っております。

 減っております理由の大きな理由は、多分、いわゆる少子高齢化とかいう人口減の問題も将来的にはさることながら、目先はやはり、いわゆるインターネットだ、IP電話だ、その他PC、PCというのはパーソナルコンピューターとか、iモードとか、いろいろな情報通信技術の進歩によって数量が減っておる。よく二%、二・五%と言っておりますが、あれはその他の分がふえてトータルで二・五ですから、実際はもっと減っておるという数字なんだと存じますが、そういうものが出てくる状況になると、長期的にはこれはかなり厳しいものになるであろうなということははっきりしているんだと思います。

 そういう状況の中にあって、それならば今のうちにしておくか、いよいよ赤になってからやるかというところが一番意見の分かれるところですが、国鉄とNTTの例を見るまでもなく、早く対策を打った、国際電信電話公社を初め、電電公社がNTTに変わった、こっちの方は技術進歩に間違いなく追いつき追い越して、今、少なくともブロードバンド世界の中においては世界最速、世界最低料金。あれが電信電話公社のままだったらいけたか、今どきまだ黒電話でこう回していることはないとは思いますけれども、少なくともそういうようなものは進歩に追いつけていたであろうかといえば、私は甚だ疑問だと思っております。したがって、早目に手を打つということが大事というのが、今というものの大きな背景だと思っております。

 そこで、民営化を仮にした場合において、デメリットとしてよく言われるところが、中井先生初め、私どものような地方はかなり人口減を抱えておりますが、埼玉と違いますので……(発言する者あり)だから、そういうところはよろしいのかもしれませんが、私らのところはかなり減っているところですから、そういったところに住んでおります者にとりましては、少なくとも景気のいいころと違って、地方の信用金庫、信用組合等々がなくなり、もしくは吸収され、支店が閉鎖され等々によって、金融関係の、いわゆる恩給の振り込み初め、いろいろなものができにくくなったところが過疎化し、かつ高齢化しているという状況に対応するのに、郵便局がなくなるのではないかということが一番御心配なんだという点が、今言われております、二点目に言われた点だと存じます。

 私どもは、これは、一番の考えないかぬところの一つとして思っておりましたので、少なくとも、郵便局は維持かつサービスをくっつけないかぬというところなんですが、銀行と金融、銀行関係、保険関係で言う金融を国が保証してやるというのであれば、これはいわゆる定額貯金等々をきちんと今までどおりやるというのでは民営化ということになりませんし、少なくとも国営銀行ということになりかねませんから、その分は、郵便局というものを運営するところとこちらのところとの間に、きちんとサービスが維持されるような保証がされない限りは、単に郵便局が残っても意味ないではないかという御意見なんだと存じます。

 私どもも全くそうだと思いますので、その点に関しましては、少なくとも元会社でありますこの郵便貯金銀行という、支店を全く持っていない、金だけ二百何十兆持っておる銀行と、支店だけ、郵便局として二万四千六百七十八の支店が今、現状ありますけれども、これとの間の、元請同士で少なくとも契約をして、きちんとその支店もやっていただけるという条件で代理店契約を結ぶということを考えました。

 そして、その結果として、例えば私のところの嘉穂町の山の上の方にあります郵便局は、今人口がどんどん減っておりますから、そういったところでは維持が、その点だけ見れば多分赤字なんだと思います。その赤字の分はその他の黒字の分で埋めるわけですから、全体としては赤字が一局、二局出てこようと、百局出ようと、その他の分で少々黒字でありさえすればその分は埋められるという形にしておきませんと、少なくとも契約自体のもとからいかなくなる、これがまず第一点です。そこを保証するための代理店契約を考えました。

 そしてもう一点の方として、支店を持っていないこちら側としてみれば、二百二十兆という資金の運用を考えないと、これは成り立たぬわけですから。今までは国として、定額貯金という名の政府保証のついたものがずっとあるわけですが、政府保証は平成十七年度からなくなれば、政府保証がないということになりますと、これは純減していくであろうと思われます。どれぐらい純減するかは予想の範疇で、予想でうかつにしゃべれませんけれども、減っていきますので、その減った部分は、私どもとしては、それは貸し出せる、自分でその金を使って資金を運用できる範疇以外預かるべきじゃないんです。預かった場合はもうからなくなりますから。

 したがって、少なくともそれを動かせる範疇でお金を借りる、預かる、そしてそれで運用するということになるんだと思いますが、その運用できる範囲は、少なくとも、私どもとしては極めて、今のままで何十兆円というようなお話がよくありますけれども、それが果たして可能かと。融資もしくは審査するだけの能力があるかといえば、私は、今の郵便局にあろうはずがないと思っております。

 その分は人様を、民営化された段階で人を採用して、融資をやってこられた方々で定年になられた方々、有能な方がその地域にいっぱいおられますから、その方々に対しては、どういう人が優秀だったか、特定郵便局長初め皆よく知っておられますので、その人たちがその人たちを雇って、そして融資をされる。また、信用調査能力等々は特定郵便局長さんよく御存じですから、そういったものも使われてやっていかれるというようなことを含んでやっていくということは、私どもは決して不可能ではないと思っております。

 ほかに、シンジケートローン、いろいろあろうと思いますので、何も特別、個人の貸し付けには限りませんから、そういったものもあろうと存じますので、私どもとしては、そこでやれるのではないかということだと思います。

 加えて、今、郵便というのは、二万四千六百七十八の支店と、少なくとも、職員で二十六万二千人、ゆうメイトが十一万七千人、足して三十八万九千人、正確には三十八万八千六百人なんですが、その人たちの持っております、いわゆるこれまでの極めて意識の高い、そういった従業員の意識というものは大事にしていかないと、何となく官だったから頑張った、しかし民だったら頑張らないというような話ではそれは困りますので、やはりきちんと組合等と、これは職員とまた組合員とは違いますけれども、全逓、今JPUか、全郵政、いろいろな方々がいらっしゃいますので、ほかにも組合はありますし、そういった方々ときちんと、民間になった後もやっていける、そういった一体感というものをどうしてもつくり上げるということは大事なところで、これはもう経営者の手腕によるところが極めて大きいとは思いますが、組織形態としても一体感が持てるか持てないかというのは従業員の意識として非常に大事なところだと思いますので、私どもは、その点もすごく考えたところでもあります。

 いずれにしても、民間になりました後、私どもにとって一番肝心なことは、私は、その民間会社が利益を出し得るか出し得ないかだと思っています。民間である以上、これは間違いなく利益を出さなければ成り立ちませんから、そういった意味では、いかに利益が出せるような体系、形態にするかというのが政治という部分に与えられた大きな部分であって、できる枠組みでないとわかれば、それの経営を引き受ける経営者がいなくなると思います。これは頑張ればやれるという組織形態につくり上げるというのが大事なところで、それまでが私ども政治家の仕事なんだと思ってこれまで努力をさせていただいて、それなりの目安が立ってこの法案を提出させていただく経緯になったというのが背景です。

 今考えられておりますのは、三つの事業のほかに、自由化されればいろいろな新しい事業ができる。その新しい事業というものの中に海外事業もあるでしょうし、いろいろなものもあろうと思いますが、それは十年間の間にいろいろ努力をされることもありましょうし、また、それまでの間にある程度準備をしておくことも必要であろうと思いますが、そういうものを一つ一つきちんと積み上げて新しい分野に商売として出ていくということが肝心なことなんであって、今まではできなかった、しかし、これだけの組織網とこれだけの優秀な人材を、物流を含めていろいろあろうと思いますので、そういったものをきちんとやっていくというような自由度が新たに与えられるということによって労働意欲がわく。少なくとも給与が上がるかもしらぬ、コストが下げられるかもしらぬ、それによって郵便の値段を下げ得るかもしらぬと、いろいろなことが考えられるのであって、これはかかって、それから後の経営能力とか経営の姿勢の問題とかいろいろなことが考えられるんだと思います。

 少なくともメリットと言わせていただければ、そういった新しい事業に出ていくことによって、将来のマイナス部分を補えるであろうと思えるのがメリットでありまして、デメリットとしては、いろいろな意味で、これまで何も考えずに、国に預けてあるんだから大丈夫だという感じだったものが、一千万円以上のものにつきましては、その分に関しましてはペイオフ等々のいろいろな問題がありますので、そういった問題というので、余りその種のことを考えずに預金してこられた、貯金してこられた方々に対して不安を与えているというところが問題なんであって、そこらのところは今後私どもは丁寧にきちんと説明をしていく責任があろうと思っております。

 大体申し上げられることは、物すごくこれだけ大きな四十万人近い人の会社の運営、経営をやった経営者、経験者は日本人にはいませんから、そういった意味では非常に大きな問題だと思いますので、私どもとしては、機能的にやっていくためにも、いろいろなことを考えてこの案を提出させていただいたというように御理解いただければと存じます。

山口(泰)委員 ありがとうございました。丁寧な御説明をいただきました。これからも、政府側としても説明責任については非常に国民の前にわかりやすく説明を心がけていただきたいと思います。

 さて、今後、郵政事業が先細りになるという意見もあるわけですけれども、改革すると将来は具体的にこうなるという姿を国民の前にわかりやすく示していくべきではないでしょうか。

 政府が昨年十一月に作成した骨格経営試算を前提にしますと、現状のまま推移すると郵政事業はじり貧になってくるのではないかと危機感を抱いております。私は心から心配する一人として申し上げるわけでありまして、その試算の正確性、正当性が果たして何を基調として出されたものであるのか、全く国民には知らされていないわけであります。郵政改革が国として日本経済の将来への予防的措置であるならば、なおさら数字的なものこそ説明が必要であると私は考えます。

 政府が出している民営化の収支見通しには、客観的な根拠に乏しく、信頼できないものではないかという声もあるわけでありますけれども、ここで明確にしていただきたいと思いますので、恐縮ですが、竹中大臣にもわかりやすく御説明をお願いします。

竹中国務大臣 山口委員の御指摘、いわゆる我々が出しております骨格経営試算、そして採算性に関する試算、それに対してきちっと御説明させていただくのは私たちの大変重要な役割だと思っております。先ほど麻生大臣から非常に丁寧な御答弁がございましたけれども、その枠組みを示して将来についての目安をつけるというのが大変重要なこの試算の役割だと思っております。

 委員からの御指摘でありますけれども、基本的な考え方がやはり重要なのではないかというお話であったと思います。

 まず、二つ、私たちは大きく示しております。骨格経営試算、これは昨年の十一月ですね。それと、ことしの三月の採算性に関する試算。

 これは双方とも、まず基本的な考え方でございますけれども、足元のベースの一つの経営の動向というのを、もちろんそれを踏まえて行っているわけでございます。先ほど麻生大臣からも郵便の取扱量が減っているというふうなお話がございましたけれども、例えば過去三年間の各種郵便物の売り上げの増減でありますとか直近の金利動向など、まさに公社の足元の動向をベースにして、そこからしっかりと試算をしていくというのが第一のポイントでございます。

 その上で、新規の業務を行わない場合はどうなるか、これは骨格経営試算というもので示しているわけでございますが、さらに加えて、今度は民営化をして経営の自由度を得て新たな業務を行っていった場合に、採算性に関する試算というのを三月に示しているわけでございます。

 その場合には、新規の業務に関しては、例えば市場の規模でありますとか手数料の水準など、これは一言で言えば民間準拠、民間の市場の動向に準拠した前提を置いて行っている。もちろん、そのときには、これは市場の動向で当然難しい問題もありますから、必要に応じて、各業種、各分野の専門家からのヒアリングも踏まえまして、前提を置いて、また公社の数字等々も参考にさせていただきながら、その数値を公表させていただいているところでございます。

 こうした数字の評価でありますが、これは将来のことですから当然難しいわけでありますけれども、専門家等々の意見も参考にしながら、信頼に足る試算であると私たちは認識をしておりますし、一部の専門家からそのような評価をいただいているというふうに承知をしております。

 これはまた、公社御自身も、新規のものについては、やはり公社においても目標とすべき利益水準であるという認識をいただいているというふうに承知をしておりまして、そうした点も含めて、枠組みを我々として固めて、その目安をしっかりと示す、そのような試算になっていると思っているところでございます。

山口(泰)委員 ありがとうございました。地元の声をちょっと聞きたかったのですが。

 このところ連日、基本的なことで取りざたされている例の中央省庁等改革基本法についてお聞きしたいと思います。

 郵政民営化は三十三条一項六号に違反しているという指摘が繰り返して行われているわけでありますけれども、ここで、三十三条一項六号の解釈をもう一度明確に述べていただきたい。

阪田政府特別補佐人 法令の解釈は、言うまでもないことでありますけれども、その規定の文理、すなわち文章の文法的な意味に即して、また、その規定が置かれている法令そのものの立法目的、あるいはその規定の置かれている趣旨等も参酌して、論理的で整合的なものとして行われることが求められるというふうに思っております。

 そういう観点から申し上げますと、昨日も官房長官がお述べになったように、問題の中央省庁等改革基本法三十三条一項六号の規定は公社化までのことを規定したものであって、公社化後の公社の組織のあり方を拘束するものではない。

 大変貴重なお時間でありますけれども、少しいただいて、その理由、そう考える趣旨を申し上げたいと思います。

 まず、文理の問題でありますけれども、御指摘の基本法三十三条一項六号は、その冒頭の部分、我々柱書きと申しておりますが、その部分で、「政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社(以下「郵政公社」という。)を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」と書いてあるわけでございます。その後に、第一号から第八号まで、ずっと八つの事項がここに言う方針として掲げられておるわけであります。

 第六号の「民営化等の見直しは行わないものとする」というのは、まさにこの一号から八号まで並んでいる中の一項なのでありますから、この方針、すなわち、郵政公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針であると理解するのが自然であります。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛にお願いいたします。

阪田政府特別補佐人 郵政公社発足後の郵政公社のあり方に言及したものとは解しがたいということであります。

 次に、その論理的解釈といいますか、目的論的解釈という観点から申し上げますと、中央省庁等改革基本法は、第二条の基本理念に示されておりますように、社会経済情勢の変化に対応して国の行政組織をより効率的なものに再編することを目的とするものでありまして、いずれの省庁に関する規定も、この法律で示された方針に従って再編された時点で法規範としての役割を終えるということが予定されておるわけであります。

 したがいまして、この法律の規定に従って設置、再編された省庁等の組織について、その後に必要に応じてさらなる改革を行うことを禁ずる趣旨の法律だというふうには到底考えられない。その中で、第三十三条第一項第六号だけが公社が設立された後のことを述べており、しかも、その組織形態を無期限に将来にわたって維持すべしとする規範であると解するのは、行政組織の改革を目指すこの法律の立法趣旨に照らしても適当ではないのではないかというふうに考えております。

 さらに申し上げますと、この規定につきましては、既に平成十四年の通常国会における郵政公社法案の御審議の中でも、その解釈をめぐって御議論があり、政府は、以上に申し上げたような解釈を、小泉総理や片山総務大臣などの答弁でも、また質問書に対する答弁書においても繰り返し明らかにされているところであります。(発言する者あり)

 なお、今、やじではありますけれども御指摘がありますので、あえて基本法第三十三条第一項第六号の規定を改めてなぜ置いたのかという趣旨について申し上げますと、郵政事業庁は民営化するのではない、郵政事業庁は民営化しない、国営の新たな公社にするのだということをしっかりと確認するための、いわゆる確認的な規定であると考えております。このことについても、郵政公社法案を御審議いただくに当たり、片山総務大臣などから御答弁を申し上げているところであります。

 こうした確認的な規定といいますのは、例えば例を挙げますと、行政庁に認められた立入検査の権限……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

阪田政府特別補佐人 この立入検査の権限が犯罪捜査のために認められたものと解してはならないというような規定、これがあるものとないものとございます。これは、なくても、当然にそれは犯罪捜査のためのものではないと解されておるわけでございますけれども、入念的に、改めて、これが犯罪捜査のために認められたものではないと書いているような例、そういう例に似ているかというふうに思っております。

山口(泰)委員 もうちょっとお聞きしますけれども、そういう解釈は当時から明らかにしていたのか。当時の郵政大臣の自見さんは当時から公社化で民営化はなくなったと言っていたような気もするのでありますけれども、そうすると、自見大臣は内閣不一致の見解を持っていたということか、ちょっと官房長官にお聞きします。

細田国務大臣 中央省庁等改革基本法第三十三条第一項六号の規定の解釈については、ただいま阪田法制局長官が申し上げたとおりでございます。

 そして、委員御指摘の自見大臣の御答弁でございますが、民主党の松沢議員の御質問に対するものと承知しております。

 当該答弁中、「私の言っていること」とありますのは、その直前の自見大臣と松沢委員とのやりとりの中で、自見大臣が「民営化等の見直しを行わないものとすることというふうに、これはもうはっきり法律に明記してあるわけでございますから、民営化の方向を目指すものじゃないというふうに私は思っております。」と御発言されていることを指しているものと思われます。「民営化の方向を目指すものじゃないというふうに私は思っております。」との自見大臣の御発言は、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものと承知しております。

山口(泰)委員 では、この問題で麻生大臣は、民営化法案など今回の六法案について、この解釈に関して何にも言えないのでしょうか、官房長官。

細田国務大臣 郵政民営化につきましては、竹中郵政民営化担当大臣がその企画立案と調整を担当することを内閣総理大臣から命じられ立案を行ったものであることから、郵政民営化法案の規定の解釈についての政府の説明は竹中大臣が答弁するのが適当であります。

 なお、郵政行政を所管する総務大臣は、法案成立後、主務大臣として法の運用、施行をする立場にあることから、そのような観点からの御質問については、当然、麻生総務大臣が答弁することが適当であると思っております。

山口(泰)委員 時間が過ぎまして大変申しわけありません。

 私は、やはり国民のだれもが抱いている、郵便局はどうなるかとの最も基本的な問いかけに、今後ともこの委員会の審議を通じて明確に得心できる姿を示していきたいことを重ねてお願いするわけであります。

 そして、率直な話、どのような形態、文書等であれ、やはり郵便、郵便貯金、簡易保険の郵政三事業一体が実質的に担保されないと、なかなか利用者には納得が得られないのではないかということを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

二階委員長 次に、左藤章君。

左藤委員 自由民主党の左藤章でございます。

 私は、小泉総理になって三回の選挙を見させていただきました。四年前の参議院の選挙、そして二年前の私の選挙、そして去年の参議院の選挙であります。それぞれ総理は、郵政民営化をするということで選挙をしました、自民党のマニフェストはちょっと違いましたけれども。衆議院のときは、辛うじて我が自民党は過半数をとることができました。昨年の参議院は四十九議席しかとれませんでした。過半数はたしか六十一であります。総理の言う郵政民営化というものが、本当に国民が理解をし支持を得たかというと、必ずしもそうじゃなかったのじゃないかな、私はこのように思います。

 そういう面で、いろいろな面でまだまだ国民から見て非常に理解ができていない、そして、お話もありましたが、時事通信のように、郵政を今国会で民営化しろというのは二〇%あるかないか、こういうことであることも事実であります。そういう面で、しっかりと我々は質問し、お答えをしていただきたい、このように思っております。

 それでは、質問通告をしていなかったので申しわけないのですが、竹中大臣、四分社化しますね。これをする理由、そして大臣よくおっしゃるリスク遮断、これについての御見解を明確に、端的にお願い申し上げたいと思います。

竹中国務大臣 四分社化の理由ということでございます。

 まず、郵政の仕事は、郵便、物を運ぶという仕事、そして銀行の仕事、保険の仕事、さらには窓口の仕事ですね、やはりかなり性格の異なる仕事を総合的に行っているというところだと思います。性格の異なっている、ノウハウの蓄積等々も違いますから、それぞれについてしっかりと専門性を高めて責任を持って経営していただくというのが、やはり経営を分社化するということの大前提なのだと思っております。

 同時に、今回の場合は、金融という非常に特殊な業種がその中に入っている。金融におきましては、特にほかの事業の影響が、損益の状況が金融に万が一にも及んで、そして金融システムが影響を受けるということがあってはいけないわけですから、そういう点からは、やはりそのリスクを、損益の状況が及ばないようにするためにしっかりとした仕組みが必要だということだと思います。

 銀行法の考え方もそのような考え方にのっとってつくられておりますし、現実問題として、非常に大きな事業会社と非常に大きな金融機関、銀行が同じ屋根の下に存するというのは、世界を見てもないわけでございます。金融市場の一般的ルールという観点からも、やはりそこはしっかりと分社化することによって、すべてがそれぞれ自立できるようにしなければいけないというのが基本的な考え方でございます。

左藤委員 今、世界にはないとおっしゃいましたね。銀行、保険会社がグループにあるというのは、EUはコングロマリット化しているんですね。これは竹中大臣、御存じですか。これはなぜですか。ありますよ。なぜないんですか。おっしゃってください。

竹中国務大臣 私が申し上げたのは、大きな金融機関と大きな事業会社が同じ屋根の下に存在しているのはないと認識しているというふうに申し上げたわけでございます。

 一方で、金融そのものは、総合的にサービスを行うようにしていこうという考えは、金融の考え方としてはございます。金融のコングロマリット化、さらには、ヨーロッパ等々では、委員御承知のように、いわゆるユニバーサルな金融サービスの考え方というのはあるわけでございますので、それはそれで世界の流れとしてやはり見ていかなければいけない一つの状況である。

 私が申し上げた、その他の事業と金融とのそういう区別、遮断でございます。

左藤委員 それでは、ちょっとシステムの件で御質問させていただきたいと思います。

 二〇〇七年の四月一日に民営化をします。そのときコンピューターシステムが本当に間に合うのかなというのが大議論になりました。そうしたら、半年おくれてもいいやないかというような話になって、延期ができるようになりましたね。これで間違いないんでしょうか。

 私どもは、いろいろな人に聞くと、それはちょっと難しいんじゃないか、このように私は聞いています。そして、どの程度できるんですかと言うと、何か知らない、六〇%ぐらい、何とかかんとかと言う。それはどういう点までいっておられるのか、それが一点。システムですから、一つ間違ったら、コンピューターですから動かなくなります。これは大変なことになります。手作業でするようなことになってしまったら大変なことです。そんなことは今できるわけないわけです。その辺のことが一点。

 もう一つ、会計年度が、もし半年おくれになりますと、新しいシステムのやつと旧システムのやつとが通期の中で半分ずつ分かれるわけですね。こういうやり方というのは普通あるんでしょうか。余計なコストがかかってしまって不合理じゃないでしょうか。この辺もひとつ郵政公社の方からお答えをいただきたいと思います。

生田参考人 システムの問題は、経営者という立場からしますと、経営の一番重要なツール、手段になりますので、初めから大変私は慎重に対応した問題であります。

 実は、本格対応というやつをやりますと、専門用語なんでしょうけれども、四千二百万ステップスという工程が要るんですね。これをこなすのには一体どのぐらいかかるのかというのをベンダーにいろいろ聞きましたら、大体、一番最短距離を言う人で三年で、IBMのように慎重なところは五年というような意見もありまして、それでちょっとシステム上無理じゃないのかなということを申し上げてきたわけであります。

 ただし、昨年の、いよいよその問題が大きく取り上げられましたときに、政府の方から、どうしても七年四月に民営・分社化したいというお話がありまして、結局、お話し合いの結果、加藤先生の検討会で見ていただく、こういうことになりました。その委員会では、再びベンダー等を呼びまして意見を聴取して、やはり本格対応はできない、三年ぐらいはかかるだろうという結論をお話しになったわけでありますけれども、政府方針として、にもかかわらず、七年四月に民営・分社化したいということで、逆転の発想で、それまでに間に合う発想でとにかく暫定的に対応してほしいという御要請がありました。

 暫定対応というのは大体、四千二百万ステップスのうちの千七百万ステップスぐらいになるわけなんですが、それに対しまして、私の方としましては、公社の方といたしましては、いつ民営・分社化するかというのは政府の御意思でお決めいただくことなんだけれども、それにはもちろん我々としては従う義務があると思いますけれども、同時に経営としての要諦はきちっと守らなきゃならないということで、そういう御要請であればそれはお受けするのにやぶさかではないけれども、やはり間に合わないことによる不都合が出る可能性がある。その不都合に対しては政府の方でひとつ責任を持っていただいて、必要に応じて法的ないしは行政的なセーフガードを張っていただくということになれば何をか言わんやで、そういうことならお受けいたしますということで決着を見たわけでございまして、既に公社と準備室の幹部間でどういうセーフガードが必要かという話し合いが今進んでいるところでございます。

 私どもとしましては、一たん決まった以上は、そういうふうに決まるのであれば、セーフガードを張っていただく前提で、その張っていただく幅をできるだけ少なくするように、暫定対応がきちっとできるように最善の努力をしていこうと思っております。

 もう一言加えますと、六カ月ずらしたら本格対応できるという問題じゃないんですよ。暫定対応をやるのにも一定期間の予備期間が要るんですね、要件を凍結してから。それが余り短くなると、例えば早い話が、この御審議が延びて、ずっとずれちゃうなんとなったら難しくなりますね。そういうときのいわば緊急対応の問題であって、六カ月延びたから本格対応できるものではない。本格対応するとすればまだ二、三年は余分にかかるということであって、暫定対応は暫定対応、セーフガードさえ張っていただけばできる、こういうことでございます。

左藤委員 本格対応が六カ月延ばしてもできないということになりますと、どこかの銀行みたいにユーザーが大変困るわけですね。これはしっかりやってもらわぬと大変なことになります。

 それと、これにかかわるコストなんですね。私、ちょっと聞きましたら、約千三百六億円、暫定で五百六十三億円、それから本格対応で八百三十九億円と書いてある。これは何が入っているんですかと聞いたら、ソフトだという。郵便局に行きますと、例えば我々の名前、左藤章なら左藤章というと、定額預金が何ぼ、ぱ・る・る、通常預金通帳があるかないか、それから簡易保険に入っているかなんか、こういうのが出てくるんですね。

 四分社化しますね。そうすると、それぞれのハードの問題、ソフトだけじゃなくてハードの費用がかなりかかると思うんですよね。これはどう計算しているんですか。よろしくお願いします。

生田参考人 まだ要件の凍結をしていないので、したがって、ビッドしていませんから正確な数字はわかりませんし、今余り確定的な数字を言いますと今度はビッドに影響するので慎重を期す必要があるのですが。だから、一つのイメージとして申し上げますけれども、四千二百万ステップス、本格対応をしていくためにシステム面でどのぐらいお金がかかるのかといいますと、多分、最低で二千億、非常にいろいろと詳しくやりますと三千億ぐらいかな。ちょっと波が大きくて済みませんけれども、そのぐらいの感じであります。そのうち千七百万の暫定対応にはどれぐらい要るのかというのは、先生おっしゃったハードを除いた部分だけで五、六百億という話なんですが、それでは済まないわけで、ハードを加えますと約一千億内外ぐらいになるだろうというふうにただいまのところ考えております。

左藤委員 だから、莫大な金がこれからかかるということは間違いないですね。

 それでは、次に伺いたいと思います。ちょっと竹中大臣、お願いします。

 大臣もいろいろ海外へ視察をして、それぞれの民営化された国の状況というのを見られたと思うんですね。よく私ら、一九八〇年代、ニュージーランドはすごいな、民営化してすごいな、こう言われたわけですね。総理がこの前ニュージーランドへ行ったら、赤いポストと青いポストが二つ並んでいて、青いポストがバッテンになりまして、これは何ですかと言ったら、民間で、つぶれました、こういう話で、総理がずっこけておられたんですが、こういうことを考えますと、どうなるのか。

 まず、ニュージーランドはなぜ失敗したんですか、どういうぐあいに大臣として検証なさっているか、教えてください。

竹中国務大臣 ニュージーランドでございますけれども、一九八〇年代半ばに発足しました労働党内閣のもとで、大変大胆な行財政の改革が行われた。これは、今左藤委員おっしゃられたように、当時大変注目を集めたというふうに記憶をしています。そして、その一環としまして、一九八七年に郵政の民営化が実施されて、そして、ニュージーランド・ポスト、郵便の方ですね、ニュージーランド・ポストそのものは、その後、着実な経営を続けているというふうに聞いております。

 その際、幾つか問題になるのは、ニュージーランド・ポストは、郵便、郵便貯金、電気通信を所掌します郵便電気通信省から分割・民営化されたわけでありますけれども、同時期にポストバンクとテレコムも分割・民営化された。そして両社は、当時の積極的な外資導入政策、ニュージーランド全体として非常に積極的な外資導入政策をとっておった、そのもとで、ポストバンクは一九八九年にオーストラリアの銀行に、そしてテレコムはアメリカの企業に買収されたというふうに承知をしております。

 そういうことがありまして、二〇〇二年になりまして、ニュージーランド・ポストは、郵便局窓口を利用した個人専門金融機関として、一〇〇%子会社のキウイバンクを設立して今日に至っている。当時の積極的な外資導入政策の中でいろいろなことがあって、それを補うための新しい政策もとられているということであると承知をしております。

左藤委員 今、大臣の言われたとおりですね。でも、おっしゃったとおり、二〇〇二年にはキウイバンクをつくったんですね。郵便局に貯金がなくなってまたつくり直した。これは明らかに失敗したということですよね。私はこのように思います。

 ドイツについてはどうでしょうか。私もドイツに行きました。このドイツはどうなるのか。

 これまた、ドイツ・ポストの問題、ポストバンクの問題が出ていますね。二万九千あった郵便局が一万三千になくなった。慌てて、これ以上ほっておいたらえらいことになるということで、政府がまた法律をつくって、数の規制をしたり、ポストバンクをドイツ・ポストの子会社にするなどしましたね。これについてはどうお考えでしょうか。

竹中国務大臣 各国の事例というのはいろいろな面があると思います。私たちは常に、よい面もあるし悪い面もある、両方から学ばなければいけないという姿勢でやっているところでございます。

 ドイツの事例でございますけれども、ドイツに関しましては、一九九五年に民営化に踏み切った。実はその前に、御承知のように東西ドイツの合併がありましたので、その時点で東ドイツの郵便局が入ってきたということで、郵便局の数がたしか三万ぐらいに一気にふえたという経緯がございました。それを整理しながら、実は、民営化以前の段階で一万六千ぐらいにそれを整理してきたというふうに聞いております。

 民営化の時点での郵便局の局数は約一万六千台であった。民営化によってその後も局数が減って、一万二千台になったところで、御指摘のように、法律的な対応がとられたというふうに聞いております。

 郵便局そのものに関しては、これはやはり私たちに一つの教訓を与えるところでありまして、そういうことも含めて、私たちは事前に設置基準を明確につくろうではないかと。設置基準、もちろん公社は今でもあるわけではありますけれども、私たちは、設置基準を明確につくって、そういう利便の減少がないように手当てをしているところでございます。

 ドイツの例としては、もう一つ、銀行の事例もあるかと思いますので、その点についてもぜひ申し上げておきたいと思います。

 ドイツの場合にも、ポストバンクを一度切り離したわけですね。これはもう完全に別の存在になった。しかし、その後、両社の対立等々あって、また専門家の分析によりますと、ポストバンクそのものの経営が、民間の新しい血が十分に入らないで経営そのものが行き詰まったという要因もあった。そこで、この民営化されたドイチェ・ポストがポストバンクをもう一度引き取る形で再建をして、それでよい方向に向かってきているというふうに聞いているところでございます。

 ことしの一月にドイチェ・ポストのツムヴィンケル会長が、郵便事業の段階的な自由化に対応した戦略的なビジネス展開について、日本で、官邸のコンファレンスで御報告されたわけでありますけれども、総じて顧客満足度が非常に高まっているということ、そして、金融等々についてもポストバンクを再生して、将来的には今保有している株を売っていきたい、そのようなお話をしておられたというふうに記憶しております。

左藤委員 ちょっと時間がなくなりましたのではしょりますけれども、ドイツの、この前日本に来られたEU議連の人に、なぜポストバンクを復活したんですかと聞いたんですね。そうしたら、州立銀行はたくさんあるんだけれども、やはり郵便局の中に貯金業務、金融業務がないというのは非常に困ったのでしたんだというお答えがあったことだけ言っておきます。

 それからもう一つ、物流の件についてちょっとお伺いしたいと思います。

 実は、物流の子会社を将来つくるとする、子会社とか海外へ出るということになると、提携したり、また子会社をつくったりする資本の自由ということが非常に大事になってくるんですね。ところが、これを見ますと、要するに、郵便事業会社は一〇〇%持ち株会社が持っているんですね。

 海外の例を見ますと、株式の交換、持ち合い、提携したら、例えばドイツ・ポストとやったとすると、持ち合いとかこういうことをやるんですね。これができないですね。これはどうお考えになられます。新しい事業を新しい会社が何かやろうとしても、スワップできないんですね。これではうまいこと資本提携ができるとは私は思えないんですが、いかがでございましょうか。

伊東(敏)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員が例に出されましたドイツ・ポストの場合にも、一九九八年に国際物流事業者であるDHLに出資をいたしまして、二〇〇二年には同社を一〇〇%子会社化しているところでございます。

 その意味では、今後の話ではございますが、出資をすることは可能でありますし、また共同出資という形での提携も可能だと思いますので、お互いに出資を親会社同士といいますか、本体会社同士が出資をし合うということは、確かに郵便事業会社は一〇〇%持ち株会社が持つことになっていますのでそれはできませんけれども、ドイツのような形とか、あるいは共同で子会社をつくるとか、そういう形での資本提携はできるものと考えております。

左藤委員 今のお答えですが、生田総裁、公社で今やろうとしているところもあると思います。どうですか。

生田参考人 お答えします。

 郵便分野を見ますと、毎年五、六%、普通郵便がどんどん減ってきますので、どうしても伸びる分野で伸ばしていって歯どめをかけなきゃいけない。それはゆうパックであり、ダイレクトメールであり、まだほとんど手がついていない、先生御指摘の国際、今大変力を入れてやろうと思っています。今、郵便とそれ以外の比率は九対一なんですけれども、あと二年で八対二に持っていく、将来もっと逆転していくと思います。

 現在公社で、率直に言いまして、国際事業ができる人材というのはまだ十分そろっていないので、海外研修にどんどん出していまして、約五十人ぐらい実務研修で、今人材の育成から始めているということなんですが、実はそろそろ具体的に手をつけておりまして、チャイナ・ポストとの友好協定をつくるとか、それから大きなインテグレーターとはみんな、将来の協力の可能性について話し合いをいたしております。

 現在のところ、公社法のもとでは、投資などを伴うことはできませんので本格的提携ができないんですが、今回の法的な措置をおとりいただきましたら、かなり早い時期に、率直に言いますと来年の四月一日にでも、ある程度形のある施策をお話しすることができると思うんでありますけれども、現在のところ、いろいろ話し合いの都合がございますので、具体的な名前等については控えさせていただきたいと思います。

左藤委員 アライアンスのために持ち株云々というのは当然出てくる話だろうし、そうすると、やはり持ち株会社が一〇〇%持っている必要はない、これも一つ考えなきゃならないところじゃないかなと私は思います。

 次に、社会・地域貢献基金についてお尋ねをします。

 一つの問題は、一兆円で足りるかということですが、よく出てくるのは二兆円という話。まあ実際はこの法案には出ていません、二兆円と。もし二兆円で足りなかったらどうなるのか。三兆円積むのか四兆円積むのか、こういう話になると、どこで、だれが判断して、どこからお金が出てくるのかというのが非常に聞きたいところであります。

 それと、二千局、六百万という赤字の補てんですね。これを言っていますけれども、いろいろ調べると、一万八千局のうち八〇%、約一万四千が赤字と言われるんですね。これは公社に調べてもらったらすぐわかる話なんですが、一体各局舎ごとにどうなっているのという話を聞きますと、これは三人局の例ですが、大体収入が一千六百万から一千七百万なんです、一局。支出はどうですかというと、人件費で二千百万、局舎料三百万、それからATMとかNTTコミュニケーションズに払うんでしょう、六百万。合わせて三千万なんですね。実に一千四百万赤字なんです。これが一万四千局あるんです。

 幾ら頑張っても、変な話ですが、局長さんが、うちの局舎料ただでいいですわ、自分の持ち物だ、こう言ったって、一千万円は赤字なんですね。そうするとどのくらいになるかというと、千二百億円の赤字なんですよ。それを逆算すると、大体一兆円の基金では足りない、何ぼ考えたって七兆円から八兆円は必要じゃないか、私はこのように思うんですね。

 それから、大臣、田舎の局が貯金とか簡保がなくならない、それはユニバーサルサービス、ネットワークがあるからなくならないとよく言いますね。それなら、何で普通銀行の支店がなくなるんですか。私らの町にお客さんみんないますよ、そこの支店があったところに。なくなっていますよ。私の近くに、一万三千人住んでいる小学校区があるんです。四つの銀行がゼロになりました。大阪市のど真ん中、住宅地ですよ。あなたのおっしゃる、ユニバーサルサービスがあるから支店はなくならない、それはおかしいと私は思いますね。

 それから、人口稠密局がなくなっても仕方がないなというふうに総理はおっしゃいました。これは郵政公社に聞きたい。丸の内にたくさん特定局がある。あれはみんな赤字ですか。必要だったからつくったんでしょう。もうかるからつくったんでしょう。これは一体どうなるんですか。これについてお答えをお願い申し上げたいと思います。

生田参考人 今手元に数字がないので、具体的に、正確に申し上げられないんですけれども、都会の場合は、率直に言いますと、ビルができるごとに特定郵便局を開くみたいな格好で、至近距離に結構たくさんあります。それで、全部赤字かなと思って私個人的にも調べてみたことがあるんですけれども、案外郵便局が多い割に客も多いんですね。だから、そういった意味では、必ずしも押しなべて赤字ということじゃなくて、赤字の局もたくさんありますけれども、赤字と黒字がまだら模様になっていると思います。それは慎重に見ていきたいと思っています。

竹中国務大臣 委員から三点御質問がありましたが、簡潔に、まず第一点の金額ですけれども、これは一兆円は法律で積まなければならない。しかし、その積み立てに上限を設定する必要はないというふうに考えておりますから、これは社会貢献、地域貢献の必要性に応じて、最終的には経営判断によりそれは積み増すことが可能であるという観点から、政府・与党の合意で、「二兆円に達するまで積立てを継続できるものとする。」というふうにしたわけでございます。これらに充てるためにはその売却益を充てるわけでございますけれども、銀行と保険会社の価値からいいまして、しかるべき額を積み立てることは、これは十分に可能な額であるというふうに考えております。

 一番重要な御質問は、二番目の、赤字局が何局ある、それで賄えるのかという、そこがやはり委員の一番の御心配だと思うんです。これは、先ほどの麻生大臣の御答弁もちょっと思い出していただきたいのでございますが、当然、全国二万四千の中には赤字のところも黒字のところもあります。それで、赤字のところがなくなるのかというと、黒字のところでカバーしてネットワーク全体を価値するから、赤字のところの収支をすべて補てんするためにこの基金を使うというわけでは全くないわけです。必要なのは、赤字の中で、特にネットワーク価値がなくなって、しかも金融の収支の差額を埋めるのに必要な場合にこれを使おうということでございますので、その意味でいきますと、これは我々が計算したようなシステムで十分足りるのではないだろうかというふうに判断をしているわけでございます。

 三番目。これは、銀行の場合はなくなったということでありますが、銀行は金融だけを行っているわけでありますが、郵便の場合は、まずユニバーサルサービスの義務を伴う郵便事業があって、それに関連する窓口業務だということで設置基準をつくっているわけでございますので、そこは銀行とは違うメカニズムで、少なくともこの窓口は、局は設置をされていくわけでございます。

左藤委員 もう時間がないのでやめさせていただきたいと思いますけれども、ただ、海外の事例とかいろいろ見ていますと、やはり三事業一体というのは、日本が誇るべき文化であり経営形態じゃないかなと改めて私は思います。その辺はやはりしっかり考えていただきたい。いろいろな方法があるかと思いますので、ひとつよろしくお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。昨日に続きまして質問させていただきます。

 社会・地域貢献基金の中で、きょうは、社会貢献業務についてまず質問させていただきます。

 郵便事業会社法の第四条第二項では、社会貢献業務とは、郵便事業会社が社会貢献資金の交付を受けなければ、役務の水準を著しく低下させることなく実施することが困難な業務、こういうふうに位置づけられております。

 郵便事業会社の立場で考えますと、この社会貢献資金の交付を受けるにこしたことはない、できれば受けたいということになると思いますけれども、この困難ということをどういうふうに判定をされるのか、これをまずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

伊東(敏)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の郵便事業会社法第四条第二項、社会貢献資金の交付を受けなければ、役務の水準を著しく低下させることなく実施することが困難、その困難性でございますが、この判定につきましては、郵便事業会社が提出をいたします社会貢献業務の実施に関する計画、これを総務大臣が認可する際に行われることになるわけでございます。

 例えば、第三種・第四種郵便物について具体的に申し上げますと、第三種・第四種郵便物に係るコストにつきましては、まず、その業務を効率的に実施していただきまして、できるだけコストを抑制した上で郵便の業務全体で収支を償うということが原則になっておりまして、この考え方は民営化後も引き続き維持しようということで制度をつくっているわけでございます。したがいまして、第三種、第四種だけで赤字でありましても、郵便事業全体で黒字の場合には基金の交付は考えていない、必要でないというふうに想定しております。

 では、どういう場合かということになりますが、郵便物数が大幅に減少いたしまして、郵便事業会社の経営努力のみによってはそのコストを賄えない、その結果、サービス水準が維持できない、さらに具体的に申し上げれば、料金に手をつけなければならないというような場合がその困難性に該当するというふうに考えているところでございます。

石井(啓)委員 今の御答弁ですと、郵便事業の全体の中で収支を償うことができずに値上げせざるを得なくなるようなケースが困難性ということですが、この郵便事業全体というのが、どこまでの範囲になるんでしょうか。

 といいますのは、郵便事業会社は、必須業務としては内国郵便、国際郵便をやられますね。その他業務として小包とか国際物流とかひまわりサービスとかいろいろありますけれども、この業務の中で、今おっしゃった郵便事業というのはどこまでの範囲を指していらっしゃるんでしょうか。

伊東(敏)政府参考人 お答え申し上げます。

 今度の新しくできます郵便事業会社というのは、これまでの公社の行っています郵便事業と異なりまして、郵便法に基づく郵便事業以外に、委員も御指摘ありましたように、物流とかその他の業務ができるわけでございますので、先ほど御答弁させていただきました全体で賄うというのは、郵便法に規定されているわけでございます。

 したがいまして、新しい郵便法、その中では、手紙、はがきを中心といたします、通常郵便物とこれまで呼んでおりますが、それが郵便法の対象になりますので、その範囲内で収支を賄って、それが賄えない場合、つまりは赤字が出る場合ということで考えていただければと思います。

石井(啓)委員 では、もう少し聞きますと、社会貢献基金としては、第三種、第四種の一部で六十億円まで想定していますけれども、そうすると、六十億円赤字になるというときにその満額出るということなんでしょうか。赤字額が六十億円に満たない場合は、それまでの範囲という考え方でしょうか。

伊東(敏)政府参考人 お答え申し上げます。

 六十億円というのは、盲人用郵便物、それから第三種の中の心身障害者用の定期刊行物ということで規定しているわけでございますが、それらを最大で試算いたしますと、それぞれ十億、五十億になるわけでございますので、それは最大値でございまして、基金の交付要件としては、六十億までいかなければということでは必ずしもないものと考えているわけでございます。

石井(啓)委員 それでは、この社会貢献業務で対象としているのが、第三種郵便のうち心身障害者団体の発行される定期刊行物、それから第四種郵便物のうち点字ですとかあるいは盲人用録音物等ということで、第三種、第四種のそれぞれ一部にしているのはどういう理由でしょうか。

伊東(敏)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど困難性の御質問の際にも申し上げましたが、この基金の交付の考え方は、基本的には郵便事業会社で経営努力をまずしていただくということが前提になっておりますので、三種、四種の中でもやはり経営努力をまずはしていただくというのが前提でございます。

 その際に、三種、四種の中で経営努力をしてもなおサービス水準の著しい低下が生じる場合、もっと端的に申し上げれば経営努力の限界があるものということで、委員の御指摘ございました盲人用郵便物、これは料金無料でございますし、心身障害者団体の発行する定期刊行物が他のものに比べまして非常に安い料金ということもございますので、経営努力にやはり限界があるだろうということで、この対象にしたわけでございます。

石井(啓)委員 先ほどの答弁の中で、最大六十億という答弁がありましたけれども、それは、今おっしゃった第三種の心身障害者団体の定期刊行物、第四種のうちの盲人用郵便それぞれが、合わせて今想定されるのが六十億ということであって、それが額がふえれば例えば七十億でも八十億でも、それはあり得るということですね。

伊東(敏)政府参考人 お答えいたします。

 基金の額を想定する際に、どのぐらいの必要性があるかというのを試算したわけでございます。私どもの試算といたしましては十分だとは思っておりますので、それを超えることは想定していませんが、絶対それを超えて出せないものなのか、制度的にはそういうものではございません。

石井(啓)委員 わかりました。出せないものではない、対象とする業務で困難性の判定がなされればそれは出される、こういうふうに受けとめさせていただきました。

 そういたしますと、第三種、第四種の中で、社会貢献業務の対象外のものもたくさん含まれているわけですね。例えば、第三種でいえば心身障害者団体以外の定期刊行物ですよね。それから第四種でいえば、通信教育用の郵便ですとかあるいは学術刊行物ですとか、こういったものについては提供義務を課しておりますけれども、これは社会貢献基金の対象にはなりませんが、確実に実施をされるんでしょうか。

伊東(敏)政府参考人 お答えいたします。

 今委員からも御指摘ございましたように、三種、四種につきましては、現在の郵便法と同様、郵便事業会社になりましてもその提供義務を課すことにしております。したがいまして、確実に実施される仕組みとしては、まずその義務を課すということが一点でございます。

 それから、今回、料金の規制緩和を行うわけでございますが、三種、四種の料金につきましては、これまで同様、総務大臣の認可を受けるということになっておりますので、その点からも、政策的低料金というものが確実に実施される仕組みとなっていると理解しているところでございます。

石井(啓)委員 認可を受けるということですけれども、先ほど答弁にありましたように、まず効率化するということが大前提なわけですね。効率化して、なるべく郵便事業全体の中で収支が整うようにする。ただ、その中で、効率化しても効率化の限界があるものについては社会貢献基金の対象になる。

 ただ、社会貢献基金を提供したとしても、そのほかのものがなかなか収支が整わないということになると、大臣の認可があったとしても値上げということになるんでしょうか。大臣、どうでしょうか。

竹中国務大臣 要するに、郵便でありますから、そもそも非常に広いところでユニバーサルサービスの義務を課しているわけでございます。その中に第三種、第四種というのが含まれていて、それについては、政策的な考慮から、料金についても主務大臣が認可するという仕組みになっているわけでございますので、今石井委員がおっしゃるのが、ちょっと非常に極端に解釈して、もう全体がそれでも料金が賄えないということになりますと、これは民営化であれ公社であれ、ユニバーサルサービス義務そのものが賄えないような料金設定になってしまっているということでございますから、その際は、公社であれ民営化された場合であれ、同じようにユニバーサルサービスをリザーブエリアできちっと賄えるような仕組みにしていかなければいけない、そういう対応策になるんだと思います。

石井(啓)委員 いずれにしろ、第三種、第四種という政策的に低料金を行っている、このことは現状のレベルの料金でやれるように最大限努力していただくということは間違いございませんね、大臣。

竹中国務大臣 まさにそういう趣旨でございます。

石井(啓)委員 では、続いて、この基金の全体のことに関して質問をさせていただきます。

 先ほども質問がございましたけれども、政府・与党合意においては、この社会・地域貢献基金については二兆円に達するまで積み立てを継続できるというふうにされております。ただ、これは法律事項ではなくて、持ち株会社の定款で定めるというふうにされています。

 ここで確認をしたいんですが、もともとの、ベースの一兆円の基金というのは法律上取り崩しをできない、原則として取り崩しをできないというふうにされていますが、一兆円を上回って二兆円までの部分、そこの部分の基金というのは取り崩しが可能なのかどうかということが一点ございます。

 それからもう一つは、法律で義務づけられている以上の基金を積むということは、これは持ち株会社の株を売却しますよね、株主にとってはそれだけ配当が少なくなるということになりますから、持ち株会社の株式売却価格の低下につながるのではないかということがございますけれども、この二点、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 二点御質問がございました。

 まず、取り崩し云々の話でありますが、まず基金につきましては、その金額が一兆円を超えるか否か、そういうことにかかわらず、これは、一たん基金に組み入れられるということになりますと、取り崩し禁止でありますとか使途制限等につきましては、当然法律上の規定が適用されるということになります。これが第一点目でございます。

 第二点目。そして、一兆円以上の基金の積み立ての場合の影響がどうなるかということですが、一兆円以上の基金の積み立てにつきましても、実は、政府・与党合意で次のように合意をしております。「一兆円の積立てを行うが、それが完了したのちにおいても、それまでと同様の規律ある配当のもとで利益の留保と運用益の確保に努め、それらを基金に組み入れることにより、総額二兆円に達するまで積立てを継続できるものとする。」そのようにされているわけでございます。

 したがいまして、一兆円までの積み立てと同様に、企業一般の配当の動向等を考慮して計算した額を積み立てるというふうにしておりますから、持ち株会社の配当性向を極端に損なって、持ち株会社の売却価格に著しい影響を受けるというようなことは想定されないわけでございます。

石井(啓)委員 それでは、ちょっと順番を変えて質問しますけれども、この一兆円の基金の積み立てというのがどれだけ難しいといいますか、可能性がどうなのかという話なんですけれども、そもそも、ベースの一兆円の基金というのはいつまでに積み立てなければいけないという期限は、法律上設定はされていませんね。ただ移行期間中に積み立てるということが想定をされております。

 これは、持ち株会社の配当を民間会社並みに確保した上で基金を積むということですから、事前のいろいろ説明によりますと、いや、預金保険料相当分を持ち株会社の方に出すからそれが十年間で六千億円ぐらいあります、あるいは、郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社の株式の売却益というのもあるということから考えれば間違いないでしょうということなんですけれども、本当に確実に積み立てることができるのかしらということがございますし、今の一兆円から二兆円の話も、ちゃんと配当した上でこれをまた積み立てるというのはなかなか大変かなというふうに思うんですけれども、その点いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 石井委員のお尋ねは、積み立てるとして、それの原資はどのように確保されるだろうかということだと思います。

 基金の原資として、規定では、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の売却益、配当収入等を充てるというふうにしているわけでございます。企業一般の配当の動向を考慮して積み立てるわけでございますけれども、それを積み立てたとしましても、骨格経営試算でありますとか同業他社の株式時価等を考慮すれば、移行期間が終了するまでに一兆円の基金を積み立てることは可能であるというふうに考えております。

 参考値として幾つか申し上げたいと思いますが、骨格経営試算を示しておりますけれども、骨格経営試算における資本の額、これは、郵便貯金銀行が二・五兆円、郵便保険会社一・四兆円ということで、両方合計で三・九兆円、これの売却益が入るというふうに考える。それと、これも骨格経営試算でありますけれども、四事業会社、持ち株会社から見ると四事業会社の十年間の税引き後利益の額というのは、骨格経営試算の累計を合計いたしますとやはり四兆円になる。

 それと、石井委員も御言及くださいましたけれども、郵便貯金銀行から持ち株会社に支払われる預金保険料、旧勘定の預金保険料見合いの交付金がございます。その額も十年で最大、これは金利フラットのケースでありますけれども、六千億円程度とありますので、そういうところから配当もしながら、利益動向も踏まえて、それで基金が積み立てられるということでありますので、そういうバックグラウンドといいますかベースを考えれば、一兆円という数字は十分に可能な額であるというふうに考えているところでございます。

石井(啓)委員 ちょっと質問通告していないので恐縮なんですけれども、この持ち株会社の株というのは、これは早期に政府保有割合を三分の一までにする、努めるというふうになっているんですが、いつから売却するかというのは、実は法律を読むとよくわからないんですね。これは経営者の判断なのかよくあれなんですけれども、売却する時期によって持ち株会社の配当利益というのが、国に帰属するのか、どこに帰属するかという話もございますし、それから、基金の積み立てが終わってから売却すれば、積み立て後の利益というのは基本的に株主の利益になりますね。だから、持ち株会社の株の売却時期とこの基金の積み立て等というのは、どういうふうに考えたらいいのかなと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。

竹中国務大臣 今の御質問はなかなか大変深い御質問で、要は、株式市場というのが将来のことをどの程度完璧に見通せるかどうかという御質問なんだと思います。もしも本当に完璧に見通せるのであれば、子会社の株を売ったとして、それが幾ら入るだろうか、売った金額が株式市場において確実に見通せるのであれば、そうすると、それを株で持っていようが売った後の現金で持っていようが価値は同じでありますから、その意味では株価に影響を与えないという独特の非常にシンク上の理論になるわけでございます。

 同じように、基金につきましても、基金を一兆円積み立てるということでありましたならば、そのことを、どの時点かで積み立てられるということを見越して、裁定取引的に頭の中でマーケットで計算されていれば、実はどの時点で売っても深刻な影響は受けないということになる。

 現実には、株式市場というのはそんなに完全予見はできませんから、その時々に非常に影響されるわけでありますので、いろいろな経営の御判断等々をいただくわけだと思いますけれども、いずれにしても、いつ売却するかというのは、そうした点も含めて経営の側で判断をされていかなければいけない問題だと思いますし、我々としては、できるだけ早期に売っていただきたい、これは持ち株会社ですね。

 子会社の銀行と保険については十年で完全処分ということを、これはそういう形で法律では枠組みを与えているわけでございます。

石井(啓)委員 それでは最後の質問をさせていただきますけれども、この社会・地域貢献計画の策定というのがいつから行われるのか、民営化移行期間においても、この基金からの支出があるのかどうか。これまでの質疑によると、通常は移行期間はないのかなというふうに思うんですけれども、あるとすればどういうケースがあるのか。この点、最後に確認をさせていただきます。

竹中国務大臣 社会・地域貢献基金の策定はいつから行われるか、支出はいつからかということでございますが、郵便事業会社、そして郵便局株式会社は、それぞれ、民営化初年度から三事業年度ごとに、この三事業年度を一期とする社会貢献計画、そして地域貢献業務計画を定めて、総務大臣の認可を受けることになります。したがって、策定は初年度から行われるということになります。

 どのように活用されるか、使われるかということでございますけれども、現在、公社の預金・保険事業はともに黒字でございます。また、移行期においては、郵便貯金銀行及び郵便保険会社に対する免許に当たりまして、御承知のように、安定的な代理店契約、そして保険募集の委託契約があることを条件としますので、引き続き郵便局でこの預金や保険のサービスが提供されるということになると考えられる。したがって、移行期に金融サービスの提供のためにこの社会・地域貢献が大規模に活用されることはないだろうというふうに想定をしております。

 また、第三種、第四種の郵便につきましても、今御議論をいただきましたけれども、郵便の業務全体の料金収入の中で今賄っているところでありまして、今の経営状況を考えれば、これは直ちに資金の交付を必要とする事態が発生することは、これは想定しがたいと思っています。

 しかしながら、各社の経営環境が民営化当初より著しく変化するような場合、そしてサービスの水準が著しく低下するような事態が発生する場合には社会・地域貢献計画を活用して対応することができるというのは、これは当然のことでございます。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

石破委員長代理 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党・無所属クラブの古賀一成でございます。

 きょうは、私にとりましては第一回目の質疑をさせていただくわけでありますけれども、まず……(発言する者あり)

石破委員長代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

石破委員長代理 速記を起こしてください。

 古賀君。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

古賀(一)委員 やり直します。民主党・無所属クラブの古賀一成でございます。

 意気込んで立ちましたけれども、大臣がおそろいでないということで、ちょっと最初つまずいたような気がいたします。本当に、これからよろしくお願いします。緊張感を持って、国民のために議論していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 さて、私、この法律についていろいろ、まだ勉強は不足しておりますけれども、読み、人の意見を聞いてまいりました。今まで長い間法案を見てきましたけれども、これほど、実は、全体のイメージがわかない、しかし法案が扱っている中身がこれほど大きいものはない。そしてまた、法案がもう出て審議が始まったのに、何と与党の方から根本的な制度設計について疑義が出る、そういう質問が続いておる。この法律が通ることを前提にした詳細にわたる質問は、先ほどの石井さんじゃありませんけれども、公明党の方は盛んに聞いておられますけれども、与野党を通じて、制度についての根本的な疑念がこれだけ出されている法律は、私はかつてないと思っております。

 これは今後十分に慎重な議論の中で、やはり国民のために、しかも、これは下手をすると、この三百五十兆円の行く末というものは、日本経済、日本の金融の崩壊というか破綻につながる危険性だってあるわけであります。これは委員長に申し上げますけれども、先ほど私は、きょう第一回目の質問と言いましたけれども、二回も三回も四回も本当はやるべき。私の後には、まだ一回も質問をしていない人が十数人おります。本当の徹底した論議というものを尽くすことが国会の責務であるということを痛感いたしておりまして、まず、その心を披瀝したいと思います。

 それで、我々、この審議に入る前に、審議拒否というようなことで、いろいろ言われました。しかし、こういう闘いには二つあると思うんですね。私は、これは民主主義の闘いだったと思うんですよ。

 我々がもらったあの膨大な法律というのは、与党ではありませんから、突然もらった。六分冊をいただきました。そして、調べてみても大変わかりにくい、説明する内閣官房を中心とするお役所の方々も、疲れ果てているのか何か知りませんけれども、本当に信念を感じない。そういう中にこの法案をいただいてきたわけでありますけれども、ずっと問題になっておりますいわゆる基本法の問題、政省令が多過ぎるじゃないか、あるいは合意つきの修正を前提としているのではないか。これは、審議に入ったら、私は、これは強行採決だと。年金もやってきた、道路公団だってそうです、いろいろなものが今まで強行採決で審議を途中で切られてきたという前提がある。したがって、民主主義のデュープロセスというもので我々は闘うという意味で、その入り口において、この審議に入る前にあの闘いをしたんだろうと思うんです。

 でも、今はもう審議に入っていますから、これは中身の闘いというか、中身を我々は追求していくという立場にあるわけですけれども、しっかりと、国民にとってわかるような、まして我々国会にとって十分納得できるような説明をぜひお願いいたしたいと思います。

 それで、これは質問通告はしていませんけれども、ちょっとお聞きしたいのであります。

 前回の年金で、実はあれだけの法文のミスが後で見つかったという事実が、ほんのこの前ございました。私は、かつて若いころ立法をしていました。あのころは本当に、各省合い議をし、しっかりと読み合わせをし、ほかの制度との整合性を微に入り細に入り調整しながら慎重に、国会に出す法律は重要だということで出してまいりました。

 ところが、これだけの法律が、寄り合い世帯の内閣官房で早急につくられたというところに、私は大変な疑念を、心配を持つわけでありますけれども、もしこれが、後でいろいろな精査をしていく段階で、単なる誤字脱字じゃないですよ、引用した政省令が合わなかったであるとか、あるいはもっと大きな話として、制度がこの法文を突き合わせれば成り立たないとか、私は、いろいろなことが出てくるのではないかと実は心配をしております。

 国会の権威にかけまして、年金法のときはああいう形になりましたけれども、今回も、法案ミスがぞろぞろと出てきた、後でわかった、こういうことであれば、私は国会の権威にかかわると思います。もしそういうことが後で判明した場合には、これは、廃止法をつくって、再度きちんとした法律としてもう一回出し直すべきだと私は国会議員として思いますが、これについて、担当大臣である竹中大臣の、そういったことが判明した場合にどう措置されるかについての御所見をお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 御審議をいただくに当たりまして、しっかりと正確に法案をつくらなければいけないと心がけて準備室一同一生懸命やってまいりました。ぞろぞろ出てくるような状況だったらどうするんだと。ぞろぞろ出てくるようなことにならないようにしっかりと対応したつもりでございます。仮定でどうなったかというのはちょっと私の立場ではお答えしづらい問題でございますけれども、そのようなことがないように対応してきたつもりでございます。

古賀(一)委員 それは、もちろんですね。すべての法律にわたってそうおっしゃるんです。

 ところが、今まではそういうチョンボというか、そういうのはなかったんです。しかし、小泉総理になってからの拙速、小泉総理の激しい思い込みを説明が十分になされないままに官僚の皆さんが受けて法律をつくらされる、そういう中に、現に年金だってあったじゃないですか。後ほど申し上げますけれども、私は道路公団のあの民営化スキームというのも、本当に十分なすり合わせがなかったと今深く反省をしている。本人もしているような感じもしますけれども、そういう声がある。

 だから、仮定の質問ということじゃないんです。それはもちろん仮定の質問ですよ。でも、あったときには責任、そして法案を出し直すかどうかということを、これは仮定の質問だから答えられないというような代物ではないと思います。これは、国会という最高の議決機関において責任を負う立場からいっても明確にしておくべき問題でありまして、再度そのお約束をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 ぞろぞろミスが出てくることのないように準備室一同力を合わせて法案を提出させていただいているつもりでございますので、何とぞよろしく御審議を賜りたいと思います。

古賀(一)委員 これは答弁になっていないと思うし、えらい慎重だと思いますよ。

 わかりました。それならば、私は先ほど冒頭申し上げました、我々の国会の責任においてそれを、もちろん修正をする権限はあるわけでありますから、十分な、逐条審議でもいい、国会をまたがってもいい、年度を越してもいい。本当に、今のように、ないはずだとおっしゃる。でも、あった。そういう実態からいうならば、我々国会が逐条審議でもするぐらいの慎重な、結局、責任を我々国会は負うという話だと私は受けとめますので、今後審議がどういうシナリオでいくのかわかりませんけれども、今の大臣の答弁をもとに、我々国会が、この委員会が極めて重要な責務を担ったというふうに受けとめさせていただきたいと思います。

 それでは、質問に移りたいと思います。

 今申し上げましたけれども、小泉総理、きょうはお見えでございませんけれども、道路公団にしてもこの郵政事業民営化にしても、ある面では二十年来の彼の思い、それが今法案として審議されておるわけであります。

 まず、民営化第一号の道路公団民営化について、私も思うところたくさんございますし、国土交通委員会で小泉総理がお出になったときに私も質問をしました。極めて答弁は抽象的であったように思いますけれども、これについて、民営化の担当大臣という辞令ではございませんけれども、実質上、民営化担当大臣であります竹中大臣に、道路公団民営化について十分であったか、そういうものについて御感想をひとつお聞かせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 古賀委員は旧建設省で、この分野に大変お詳しい大先輩であると思います。

 担当大臣云々ということがいろいろ委員会でも話題になっておりますが、道路関係四公団の民営化については、これは国土交通省の所管事項であったということでありますから、所管外のことについての私のコメントは差し控えるべきものと考えます。

 あえて政治家として意見を、信条をとおっしゃいましたでしょうか、申し上げれば、公団方式に対しては、例えば、これは不採算路線の建設に歯どめがかからないのではないかとか、高コスト体質が直らないのではないか、非常に国民から見てわかりにくいファミリー企業との関係があって、それが不明朗、不透明である、さまざまな御批判とか御指摘があったというふうに承知をしております。

 そのような問題、国民からの疑問、そうしたものを解決する上で、やはり、公団のままで改善していくよりも、民間でできることは民間でやるという小泉内閣の大原則のもとで民営化をする、つまり、市場の規律を取り入れる、ないしは民間の経営規律、ガバナンスを取り入れる、そのような改革であったというふうに私は理解をしております。

古賀(一)委員 この問題は本論ではありませんから、詳しくは言いませんけれども、今の大臣の答弁の構図というのは、今度のこの郵政事業民営化と全く一緒なんです。

 今おっしゃったのは、不採算路線がある、ファミリー企業についても問題が多い。では、その部分の改革、改善、これをやればよかったんです。ところが、結局それは、民でできることは民でやればいいというスローガンのもとに、一挙に、いわゆる制度としては有料道路制度というその制度を全部ぶっ壊して民営化をし、実は、今から申し上げるような結末になったんです。これは、この郵政事業民営化についても、本末転倒ではないか、あそこの部分を改善すればよかった、何でここまでやったんだろうという議論が必ず私は今後起こると思う。

 したがって、その反省を込めて、ちょっと大ざっぱなところだけぽんぽんぽんと言いますと、道路公団について言えば、何が結局民営化によって得られたのかといえば、基幹的公共財たる高速道路が営利の民間会社に手渡されたということなんです。民営化の論理を突き詰めれば、東名高速道路が将来外国資本の手に渡ってもおかしくないというその道を開いたんですよ。私は大変おかしな制度に変わったものだと思います。

 償還後は、あれは特別措置法ですから、基本法の道路法上からいえば無料化されるべきこの国民の財産たる高速道路が、事実上私は永久有料になったんだと思います。

 三番目、借金と利用者負担金で早く高規格な道路をつくろうというこの高速道路制度であったわけでありますけれども、つまり、税金がないから有料道路システムでやろうと、税金は投入せずに世界銀行から借り、民間から借りて高速道路をつくって、料金でお返しして、最終的には国の財産として無料化しようというこの制度が、何とこのどさくさに、三兆円に上り、直轄、新直轄という制度。税金がないから苦労してここまで努力してきたのに、道路公団が悪いとなって道路公団を廃止することによって、何と税金そのものでやる事業を公団から三兆円国が引き取ったんです。これは本末転倒です。何のために、苦労して公団法をつくり、特別措置法をつくって、有料道路という苦労までして、してきたのか。それを、苦労をあざ笑う結果になったんです。

 あと幾つもありますけれども、こういう、結果、ふたをあけてみれば何だったのかと。一番大切なものを失って、枝葉だけが修正されて何かかち取ったように思うけれども、結果として何のためだったと、私はこういう中に今この法案はあると思うんです。だから、与党の自民党の皆さん方からも、まだわからぬ、ここは疑念だという根本問題が今なお出ておるわけでありまして、私は、この法律というものは、本当に慎重審議とともに廃案で、もう一度スキームから考え直すべきものだと信じて疑いません。それを指摘しておきます。

 それでは、本題に入りたいと思います。――いや、これは大変重要な問題だと思うんですよ。それで、今までずっと出ていますけれども、生田郵政公社総裁にまずお聞きしたいと思います。

 どうしてもわからないのは、フェーズ1、郵政公社になってうまくいっているという話はせんだってもございました。今この段階で、郵政公社、何が問題で、これまで改善点としてこういう努力をしてきた、そして、その限界はどこにあるという話が当然あるんだと思うんですね。これについて、今の郵便事業及び郵政公社自体の今なお抱える問題点、そして改善してきた点、それを、大ざっぱで結構ですよ、国民にわかるような部分、枝葉はいいです、ひとつ御披露いただきたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 二〇〇三年四月の公社スタートに伴いまして、意識と文化の改革、それから、新しい価値観を創造しよう、これを合い言葉にしまして取り組んでおりまして、経営の三つのビジョンを掲げています。

 一つは、真っ向サービスと言っておりますが、要するに、サービス業として、全国のお客様、すなわち国民によりよきサービス。それから二に、赤字構造の郵便も何とか立て直して、公社を挙げて健全な経営基盤をつくるということであります。三番目が、職員が将来展望と働きがいを持てる職場にしようということで、これの達成に現在努力中であります。

 一番の真っ向サービスにつきましては、まだまだむらはありますけれども、いろいろと顧客満足度を高める運動、CSも進んできておりまして、一定の御評価をいただいているかと思います。

 二の赤字構造の郵便を黒字にしてというのも、普通郵便が毎年五、六%減るものですから苦戦はいたしておりますが、他の部分でできるだけ頑張りまして、平成十五、十六と、両方とも多少なりとも黒字を達成したというところまで来ております。

 金融関係につきましても、一応表面上健全に推移をしてきておりますが、現在のところ、公社法による大きなビジネスモデルの制約によって、将来展望が難しいという点がございます。

 それ以外にも、公社化になったということで、現在、複式簿記でやっておりますが、なかなか各郵便局、二万四千七百全部聞いてというところにはいかないので、どうやって複式簿記の企業会計基準を達成するかというのを今推進委員会をつくりまして、来年の九月末までに完成するというふうなこともやっておりますし、その間、職員は、組合と十分話し合い納得を得まして、二十八万一千から二十六万二千に一万九千人下方調整したというようなこともあります。

 それで、何が難しいかということになるわけでありますが、総じて申し上げますと、郵政事業だけを過去の実績と縦系列で絶対評価していきますと、大きく健全化の方向に向かっていることはこれは事実なんでありますが、市場におきまして同業他社と相対比較すると、三事業とも利益率というふうなこと、すなわち企業の健全性におきまして、大変厳しい状況にあります。

 郵便は、公社法のもとでは国際的な仕事ができない、本当の周辺以外は投資もできない、相対取引ができないというふうなハンディキャップがあります。それから、郵貯、簡保はビジネスモデルにつきまして極めて厳しい制約を受けておりますから、市場そのものがどんどんどんどん進化していっているのですけれども、その進化に合わせてビジネスモデルが変えられないのですね。だから、いかにお客様がこういう商品を出してくれ、我々は郵便局とやりたいんだからとおっしゃられても、市場に合うような商品がとれないというふうな困難がございます。

 現在のところ、そういった公社法の枠組みの中におきまして、限界はありますが一生懸命改善努力をいたしておりますが、かなり天井感が出つつあるというふうなことで、その辺が一番ネックであろう、こういうふうに考えます。

古賀(一)委員 公社の方も公社になってから、郵政事業も公社になってからいわゆる改善の向きがあった、とりわけ人員削減が赤字解消、黒字化への最大の要因ではなかったかと思うんですね。

 ところが、ではこれは民営化しなければならないのか、事業庁だったらできないのかというと、実はこれを阻んでおったのは何かというと、これを聞きますと、一番郵政公社になってよかったのは何か、企業体質の改善に役立ったものは何かと聞きますと、まず、大蔵省、今の財務省の予算統制から解放された。つまり、人をやめさせるにも結局退職金がない、予算がない、人員は切れない。つまり、財務省の統制下にあったものだからいわゆる人員削減の準備ができない、こういうことで、実は人員削減が進まなかったんです。

 企業会計を導入する。今は財務省だって、公会計は全部、実はどんぶり勘定というかいわゆる大福帳というか、単式簿記でやっておるわけで、国そのものがそうですから。これが、先ほどのように公社化によって民間並みに企業会計制度、複式簿記を導入した。これも別に民営化しなくたって、国だってできるんですよ。

 それともう一つは、総務省の定員管理という中で、実はこれがなかなか難しかった。でも、これは、やればいいんじゃないですか、進めていけばいいんじゃないですか。

 だから、今まで役所が縛っていた、国が縛っていたことが解き放たれて、改革の緒について、改善を現に見てきたというこの段階で、二年目の段階で、私は、民営化というのに一気に行くのは、イメージがわかないんです。

 私は、なかなか本人から言えないんでしょうけれども、総裁、公社の民営化推進、民営化も必至だ、避けられないと。公社でもやれるのではないか、そういう思いはございませんか。

生田参考人 お答えします。

 先生御指摘のように、公社化になって、それ以前から比べますと、かなり自由度がふえたんです。経営の自由度もある程度ふえましたし、簡保の「ながいきくん」のように、ビジネスモデルも多少認めていただいたものもある。だけれども、やはり物すごく大きな公社の法の枠組みがあるわけですね。

 ただ、その枠組みの中でも、枠組みの中で一生懸命努力してきているんですけれども、まだ改善すべき余力があるんですよ、余地が残っているんです。その残っている余地を今一生懸命きわめようとしているのが、この平成十七、八年のフェーズ2でございまして、その後、本当に事業の健全性を求めるとなれば、二つの道があるのかなと思います。

 このまま公社法のままでもしずっと延びたとしますと、これは骨格試算が示しているように、確実に大きな縮小に、三年や五年は大丈夫ですよ、だけれども十年ぐらいのスパンで考えると縮小に、規模も利益も小さくなって、非常に難しい。これは雇用にも関係してくると思います。

 だから、二つの道があると申し上げたのは、一つは、民営化は確かに思い切った、ずばっとした改革であって、経営の自由度もビジネスモデルの自由度も飛躍的に増すからいいだろうと思うし、もう一つは、公社化でいくのであれば、そのままでいくのであれば、公社法を改正していただいて、経営の自由度とビジネスモデルの自由化をやっていただかないとなかなか経営は難しい、かように思います。

古賀(一)委員 では、竹中大臣にお伺いをしたいんです。

 今、公社法の改正という話がございました。これは、民営化に当たって、もちろん総理大臣もああいう方針で突っ走ったりありましたけれども、いわゆる担当大臣、あるいは政府として、公社化のさらなる改善、公社法改正というメニューを真剣にどこまで御議論になったんでしょうか。その経緯をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 郵政民営化の基本方針を昨年九月に取りまとめました。たしか半年ぐらい、非常に長い時間をかけて諮問会議で議論をいたしましたが、その際に、やはり公社のままでの限界がどういうところにあるのか、その限界を踏まえて民営化のメリット、同時に公共的な性格をどのように保つか、そういうような観点で、基本方針の議論を進める初期の段階で集中的な議論を我々のもとでやらせていただきました。

古賀(一)委員 これは、きょう深く聞いてもまた同じ答弁になると思うんですけれども、これは後ろからも話が出ていますし、これまでも出てまいりました、いわゆるビジネスモデルというか、全体のものについて、やはり、どうもまず民営化ありきという中でシナリオが進んで、本当の意味で、ゼロベースで、本当に客観的、中立的立場から、いわゆるフィージビリティーというか将来の姿というか、そういうものは検証されていないと私たちは非常に心配をいたします。この懸念を言い、これも今後深くこの委員会の場で詰めていく、そのための資料も今後いただいていくということを、きょうは第一回目ですから、まず私の方から申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私は、今度の改革のスキームで、おかしいな、不思議だなと思っていた一点がございます。それは、民でできることは民でというその例のキャッチフレーズのほかに、出口、入り口論であります。いわゆる特殊法人ほか財投機関が、体質が甘い、むだ遣いが多い、不採算事業に膨大な金を使っているというところで、だからその改革のために、まず金を集めている郵貯を改革するのが先だという議論でこれは始まった感じがするんですね。総理もしょっちゅうそうおっしゃっていますよ。

 では、特殊法人あるいは公団、そういうもののむだをなくすんだ、こういう話が出てきながら、実はこのスキームには、財投改革、各種公団にいろいろなお金が長年にわたって渡されてきましたけれども、これについての改革の議論というのがぽこっと抜けていると思うんですね。もちろん、私たちが、政府からいただいた、内閣官房からいただいた資料は法案と若干の表紙みたいなものですから、資料は、あと衆議院の調査局ですよ。調査局もこの法案のために膨大な資料を集めておられますよ。ただ、これにもぽこっと、いわゆる財投と赤字各種法人がどういう実態で、財投はどこに幾ら配分をしてきた、それが不良債権としてどれだけあると見込まれる、そういう議論が全く私は抜けていると思います。

 これは、今までの政府案の最大の問題。表看板に上げながら、実際議論になっているのは、郵便局は何ぼできるんだ、大丈夫か、そういった議論。問題の本丸、いわゆる公団に財投資金がどう流れ、今どうなっているか、それがこの改革によってどうなる、今後どうするという議論がこのスキームから抜けておると私は思います。

 それで、この点について、こうやゆする人もおるんですよ。出口のむだが問題の本質ならば、出口の正常化、適正化をまずやるべきだと。当然のことだと思う。不良債権、融資の焦げつきで責任を問われるべきは銀行なんでしょうか、それとも融資を受けた企業なんでしょうか、それともお金を銀行に渡した預金者なんでしょうか。ひとつ、これは財務大臣、どうお考えになりますか。

谷垣国務大臣 最初に、古賀委員の御質問を始められる時刻に遅参いたしましたことをおわび申し上げたいと思います。

 今、古賀委員の御議論は、要するに、郵貯が集めた金を財投で緩んで使ってきたことが一番の問題ならば、まずそこをやらなきゃいけないじゃないかという御質問だと思います。これをお答えするには、やはり平成十三年に私どもも財投改革に取り組みまして、平成十七年度、ちょうど三年たったものですから、また今度見直しといいますかやりまして、そのことを申し上げなきゃいかぬと思うんです。

 平成十三年度にやりました以前の財投、これはもう釈迦に説法でございますが、郵貯等からの資金を資金運用部へ預託するということを義務づけまして、それを原資として中小事業とかあるいはいろいろな社会資本整備等に活用する、ある意味では大変よくできた制度だったと私は思っております。政府の景気調整機能の一端を担いながら、我が国の経済発展に相当これは役立った面が過去確実にあったと私は思うんですね。

 ところが、今委員の御批判のように、要するに、財政政策上のニーズよりも、増大するその資金の運用ニーズを優先させて、それで決定されて、特殊法人等の財投事業の肥大化を招いたのではないか、こういう御批判がありまして、それは事実当たった部分がやはりあったと私も思います。

 そこで、平成十三年度に、郵貯等の預託義務はもう廃止して、債券、つまり財投債であるとか財投機関債を発行して、マーケットの規律のもとで真に必要な資金を集めるようにしようと。もちろん現在も、これはちょっと後で経過措置については申し上げますが、まずそれが一つ。

 それからもう一つは、その財投機関についても、今までの手法だけでは足らないだろう、こういうことで、いわゆる政策コスト分析というような手法を導入したり、あるいは、先ほど、公的機関はみんな単式簿記で、どんぶり勘定だとおっしゃいましたけれども、貸出先の特殊法人等、こういったところにも民間準拠の財務諸表を導入しよう、そこできちっとそこの財務内容も分析してやろうというような手法を導入して改革しまして、民業の補完性であるとかあるいは償還の確実性というようなところをきちっとやろうということが平成十三年度の改革でございます。

 そこで、まだ実際は財投債等を郵貯が引き受けているではないか、それは確かにそうでございまして、経過措置として直接引き受けが今行われております。ただ、これは郵貯等の預託金が今現在まだございますから、それを順次返していかなきゃなりません。その払い戻しは基本的に平成十九年度までにお返しするということでありますが、その平成十九年度末をもって、この直接引き受け、これももう原則的に終了するということでやっておりますので、これはあくまで過渡期の措置でございます。

 その結果、財投の規模は、ピーク時、これは平成八年度四十・五兆ございましたけれども、現在はその約四割の十七・二兆というところまでスリム化してきております。平成十七年度の財投計画では、特に特殊法人等向けにつきましては、ピーク時が平成七年で三十一・七兆でございましたけれども、その三分の一の十一・三兆にまで圧縮してきておりまして、これをどう見ていくかはいろいろ議論があると思いますが、私は、相当真に必要な部分に絞り込まれてきた形になってきているというふうに思っております。

 それから、先ほど申しました、平成十三年度にその改革をやりまして、毎年毎年その方針でやってきましたけれども、平成十七年度で、今までやってきた成果をもう一回きちっと見直そうということで、財政制度等審議会ですべての財投事業について総点検を行っていただきまして、特に財投残高で大きなウエートを占めておりましたのが住宅金融公庫でございますが、これについて、民間でももう取り組んでいるという直接融資であるとか、そういうものを廃止しよう、それから、都市再生機構、これもニュータウン事業から撤退するというような抜本的見直しを行いまして、改革を進めてまいりました。

 ですから、今後とも、真に必要な需要、これはやはりまだ財投の必要な事業もあると思いますので、的確に対応しながら、対象事業の重点化、効率化というものを進めていきたい、こういうふうに考えて、財投改革、今後とも推し進めるつもりでございます。

古賀(一)委員 今、財務大臣の方から、流れについて口頭で御説明をいただきました。

 しかしながら、これが私はあくまでも一番重要なポイントの一つだと思います。財投改革の内容は、先ほど言いました十三年度の話はありますけれども、その後、財投債、財投機関債、そして累積、そして各公団に出している。だって、銀行には、不良債権だ、要注意債権だとやっているわけですから、理財局そのものは、これまでの各公団、それに貸している残高とともに、それがどういう評価を受けるかも、この際、私ははっきりと明示すべきだと思うんですよ。そしてこの委員会に出して、これは一番重要な基礎資料だと思うんです。

 だって、特殊法人の赤字体質が悪いからこの大民営改革をやるんだというキャッチフレーズですから、その部分、ぜひ資料として、細かく、ここにメモはありますけれども、わかりやすい資料を文書で私は委員に提示すべきだと思いますので、ぜひ理事会でお諮りをいただきたい、そして明示していただきたいと思います。よろしいですか。お願いします。

二階委員長 後刻理事会で協議いたします。

古賀(一)委員 その中で、私は、ちょっと、ぱっと一つの思いつきで財務省に資料要求をいたしました。膨大な資料をきのういただいたんですけれども、その趣旨は、過去二十年間の各財投機関からのいわゆる要求ですよね、要求は幾らだったか、それに対して、理財局、つまり当時の大蔵省、今の財務省がどれだけの査定をしたか。要求といわゆる査定、いわゆる閣議決定ですよ、大蔵省の決着額ですね。当初ですよ、補正は含みません。

 その資料をちょっと見たんです。いただきました。通常ですと、これだけ財政の厳しい折ですから、要求以上に一般会計予算がつくことはない、それが普通であろうと思うんですが、小さい字で皆さん見えませんけれども、私も見にくいぐらいの小さい字なんですけれども、百数十にわたる組織につきまして、財投計画の当初計画額が要求より上回った。つまり、要求よりも査定がついた方が多かった。もっとわかりやすく言えば、大盤振る舞いを理財局がした年度とその公団名、組織名がここに書いてございます。この黄色いところがそうなんです。結構あるんです。

 一番目立つのが……(発言する者あり)そうです、要求以上につけているんです。要求以上につけたのがこれだけあるんです。石油公団、これも昭和六十一年から幾度にもわたりましていわゆる要求以上の配分がなされております。国営土地改良事業特別会計も五カ年度にわたりありまして、住宅金融公庫、公営企業金融公庫も、平成四年から十三年にわたり、毎年のように要求額よりもいわゆる査定が多かった。それから道路公団についても、首都高についても、阪高、本四についてもございます。

 つまり、これもいろいろ背景には事情が私はあると思うんですよ。あると思うけれども、少なくとも、各省が概算要求で要求した以上に、これだけの公団、事業団等々、特殊法人にわたり、これだけの年度にわたり、これだけつけているというのは、やはり特殊法人が赤字体質を持っていたというよりも、もちろんそれもあるんですよ、それは否定しません、でも、それを支え、助長したのは、それは、だって、郵貯を預かって、巨額のお金を強制預託で預かって、さあ、これをどうするべえ、どこに貸そうか、我々、官の世界でこれをいわゆる融資し消化しなきゃならぬという、そこに私は特殊法人問題、その本当の原因の一つがあったんじゃないかと思うんですよ。

 大臣、この点、御認識ありましたか。御反省はありませんか。

谷垣国務大臣 私も、古賀先生から御質問をいただくというので、いろいろ過去の事例も調べてみまして、確かに古賀先生よく知っておられるはずでございまして、古賀先生が建設省におられた当時にも、要求いただいたよりも余分につけたというようなこともございました。

 それで、これは確かに、今おっしゃったような事情もあると思うんです。年度によって、当初要求額よりもつけたのが大きくなっているというのは幾つか事情がございます。

 典型的な事情を言いますと、地方公共団体等については、要求段階では算定の基礎となる地方債計画がまだ未確定なんですね。したがって、財投額も未確定のまま要求が出てくる。それで、最後になると、やはりもとよりふえるということが確かに今までございました。それから、要求の時期以降に経済対策を打とうと、特にバブルがはじけて以降そういうことが何度かございまして、そこで、その結果、要求額よりもふえてくるということがございました。

 そこで、平成十三年に、やはりそういうことの反省を踏まえて改革をしたわけでございまして、それ以降、今委員がおっしゃるような例はなくなっております。ただ、若干ないわけではないのは、組織改正等に伴いまして、水資源公団のように組織が変わったものについては、組織の変更に伴う数字上の、見かけ上のものはございますけれども、実質上、要求を超えてつけているということはもうなくしているわけでございます。

古賀(一)委員 先ほど資料の要求をお願いしましたけれども、この点も、今大臣が平成十三年度の財投改革と、それはそれで一つの前進でしょう。しかしながら、私は、この郵貯問題のバックに、いわゆる郵便局の皆さんが、明治以来、明治五年から集めてきた国民の、しかも取っておきの財産というものを強制預託によって預かって、理財局が、これはほとんど各省折衝、予算説明でも、一般会計のように詰めてやりませんよ、内示の日に、突然、わあ、二千億要求していたのに二千三百億円もついたぞ、それでチョンですよ。

 この前、竹中大臣は、財投計画もちゃんと国会においてかかって審議をいただいておりますと言いますけれども、これには載っているんでしょう、予算書には。ただ、実態から見れば、やはり一般会計予算の新規政策だ何だかんだで、もう財投はまさに、予算編成内示の日にと言ったらちょっと大げさかもしれませんけれども、つかみ金のようにプラスアルファで、要求額にアルファがついてぼんと配分されてきた事実があるんですよ。

 つまり、ある面では国民のこの貴重な預貯金が、ブラックボックスの中で、しかも、小さな財務省理財局という中で勝手に使われてきた。私は、郵便貯金制度あるいは郵政事業全体を見直してというよりも、まず内閣官房に、財投、財政投融資の配分の基本方針とか、そして、実際、配分の会議とか、もちろん、長期的には比率を管理するとか、そういうことはやろうと思えばできたわけですよ。それを全然せずに、もう政治家も国会も、あるいは要求した各省庁から見てもわからないようなブラックボックスの中で、突然査定でぼんと大盤振る舞いが来て、そして、数年たってみれば、あの公団もけしからぬ、あれもむだ、これもむだ、では入り口をとめろ、こういう話に大ざっぱに言えばなってきているんですよ。この中枢の財投配分のところ、今改革の途上だとおっしゃいましたけれども、私は、その程度の認識ではこの体質は変わらぬと思います。

 竹中大臣おられますけれども、ぜひこれは、これだけの資産、今、日本の経済は強いものはもう二つしかないんですよ。貿易黒字そして個人金融資産があるということをもって、世界一の借金、国債の格付だって辛うじてということになっているんですよ。これが崩壊したときに、私は貿易黒字だって危ないと思いますよ。あと何年もつだろうか。貿易が赤字になって、世界一の借金がさらに膨らんで、この個人金融資産がどこにさまよい始めるかということになったときに、私はもう日本は大変なことになると思う。本当に大変なことになると思う。それを心配しているんです。

 したがいまして、今回、郵政事業民営化というスキームの中で、三百五十兆円が恐らく減っていくんでしょう。減って、民間金融機関に流れて、そして競争社会でうまくいくというイメージで物をおっしゃっていますけれども、実際はそうならない。国債の暴落はあるかもしれぬ、今でも民間の金融機関は貸しはがし、貸し渋りをやっていますよ、そういう中にこれが行われるわけで、これは私は、財投関係の話、とりわけ特殊法人と財投の関係については、先ほど申し上げました資料ができ上がった後、徹底した審議、質問をさせていただきたいと思います。それは予告編として今から申し上げておきたいと思います。

 それで、次に、たくさんまだ残っておるんですけれども、先ほどもちょっと一部ございましたけれども、これも資料要求になるかもしれませんけれども、民営化のコストという議論が次にあると私は思うんです。

 先ほど、コンピューターの設計費及びシステム改築といいますか、その話がございまして、二千億、場合によっては三千億というすさまじい、高いコストの話が出たわけでありますけれども、そのコンピューターシステムのみならず、これだけの改革でありますから、それでは済まない、本当に多くの民営化のコストがかかるんだと私は思うんです。これについて、どういう試算をお持ちでしょうか。

竹中国務大臣 古賀委員の、民営化に当たって必要となるコストでございますけれども、やはり大きくシステムコストというのがあると思います。

 このシステムコストについては、これは民営化、分社化に係るシステム対応に限って申し上げますと、先ほどから話題にもなっておりました郵政民営化情報システム検討会議、これにおいて公表されました日本郵政公社の資料というのがございます。それによりますと、二〇〇七年四月までに行うものに要するコストは約五百六十億円というふうに試算をされております。その後の本格対応には約八百四十億円、これは管理会計システム構築の経費百億円を含むということでございますが、それを合わせますと、合計で約千四百億円になるということでございます。

 もう一つ、コストという意味では税の負担があろうかと思います。骨格経営試算によりますと、租税につきましては、初年度、二〇〇七年度、これの総額が約四千九百億円になります。うち法人税が約三千百億円でありまして、郵便貯金銀行と郵便保険会社の窓口手数料に係る消費税は約七百億円等というふうに試算をされております。また、生命保険契約者の、例の保護機構ですね、それの負担金として約十億円というふうに試算されている。

 もう一点、これは、預金保険料、民間の銀行になるということで政府の保証が外れて預金保険料が発生するわけでありますが、その預金保険料につきまして、一定の前提に基づいて試算をすれば約四百億円というふうに見込まれております。

 大きなところで、以上がコストであろうかというふうに思います。

古賀(一)委員 先ほどの、コンピューターの関係でたしか二千億、場合によっては三千億というふうに私は聞いていたと思うんですね。二千億という数字ははっきりと聞いておりましたけれども、今の竹中大臣のお話だと、ほっておいても六百億、下手すると千六百億違うと。先ほどのお話でいうと、生田総裁は三千億でも足りるのかなという心配を持ちながらの答弁だったように私はちょっと聞いたんです。

 えてしてこの手の話は、国会で説明した話、最初計算した話と違いまして膨大になる、いわゆる設計費あるいはコンピューター購入費、プログラム費が出てくるのが常でありますから、この点は明らかに、これは何か数字が大幅に違うんですけれども、どちらが正しいんでしょうか。

 私は、総体としてのコストがこれだけかかると。それは、本四公団とか、あんな、最初は一兆円、それが二兆円というのでは済まないんですよ。まさにそういうことを問題にした今の改革なんですから。

 どうぞ。今の矛盾点をどうお考えになりますか。

生田参考人 お答えします。

 多分、どっちが正しいという問題ではないんじゃないかなという気がするんですが。さっき暫定対応に竹中大臣が五百六十三億とおっしゃったんですが、私は一千億と申し上げたんです。五百六十三億というのは、これは検討会議説明のときの開発費、要するにソフト、ソフトの費用が五百六十三でして、これは私も同じ数字を持っているんです。それにハード、ハードの費用がこれは抜けているんですよ。だから、ハードの費用が、足して言えば約千億ぐらいになるのかなと。

 それで、本格対応ということになると、暫定対応プラス本格対応ということで、さらに多分千四百億は少なくとも要るだろうということになっておりまして、それを足しまして、またハードを足しますと、二千億から三千億、これは交渉事ですから数字が揺れますから、大きく波を打たせて申し上げたので、多分、竹中大臣の場合は、そのハードの費用がほかの部分に入っているんだろうと私は推察いたします。

古賀(一)委員 それで、これは、これも一つの問題点だと思うんですよ。

 二千億から三千億という話がありましたけれども、恐らく、まだこれは実態、このシステムを官房なり考える段階で、ここまで心が及んでいないと思うんです。

 ただ、一部、言っておきますけれども、これだけの新しい需要があるんですよ。どこそこがもう手をつけるんじゃないかといううわさすらあるんですよ。それで、これが二千億から三千億も膨らむとか言ったら、とんでもない話ですよ。

 私は、これは、まず資料で、要望がありますから後でまた言いますけれども、ぜひ資料で、ここの国会の場で、民営化のコストはこれですというのをこれはやはり出すべきだと思います。大臣、ひとつ、今の前提です。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、私が御紹介しましたのは、これは日本郵政公社の資料でございます。日本郵政公社がシステム検討会議の際にお出しになっている資料でございまして、二〇〇七年四月までのシステムコスト等々、ソフトのコストでございます。その他につきまして、必要がございましたら、可能な範囲でもちろんお出しをさせていただきます。

古賀(一)委員 いや、だから、それは必ず、これは恐らく、今後とも、徹底した議論があるという前提で……(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 古賀一成君。

古賀(一)委員 このように、さっきの財投の議論もそうなんですけれども、一番肝心なところというのが視野に入っていない。視野に入っても積み上げられていない。

 大臣、私はやはり、その二つのそういう面で、この法案は準備不足で説明が不十分だと思うんですよ。

 この点について、先ほどの矛盾も含めて、再度説明をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 私どもがシステムを検討する際に公社から御提出をいただいてそれで把握しております数字は、二〇〇七年四月までに合計約千四百億円ということで、その数字でございます。

 先ほどの生田総裁は、今後そのハードをさらにどうしていくかとか、いろいろなことをまだ御検討中で、その意味で、数字がひとり歩きしていくとよくないけれども、めどとしてということで、そうしたことについての数字をお挙げになったものだと思っております。

 システムコストとしてシステム検討会議に公社が提出された資料、私どもが把握しておりますのは合計で約千四百億円。

 以上でございます。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。(発言する者あり)

 改めて、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 審議を続行します。竹中国務大臣。

竹中国務大臣 コストにつきまして、公社の方からまとめて答弁をしてもらいます。

生田参考人 暫定対応に仕切ってまずお話ししたいと思うんですけれども、暫定対応のところは、加藤先生の検討会議のときに数字を出してお話し合いをしているんです。そのときに、五百六十三億というのが暫定対応に伴う開発費、ソフトの費用だ、そういうリマークつきでそういう数字を出しておりまして、これは竹中大臣と私どもも共有しているわけであります。ハードについては、その時点ではまだ、検討会議の段階では詳しい話し合いは行われていない。

 その後、本格対応。これは、七年の後、まだ二年ぐらい要ると思うんですけれども、その本格対応の四千二百万ステップス全部やるのに幾らかかるのかというのは、その後引き続き、今日もまだ検討中の段階でありまして、実は、法案が決まらないと、何を発注したらいいのだという、開発要件の凍結ができないものですから詳しい金額をとるわけにいかないわけなんです、何を開発するかというのができない。だけれども、アバウトでいいから幾らぐらいかかるだろうという話し合いを今公社でしておりまして、それをベンダーと話している直近のところで、一番最近のところで、彼らがおおよそこのぐらいかなという数字をラフに足していくと、低く見積もっても二千億ぐらいだろうし、波が大きくて申しわけないけれども、これは余り数字を言うとまた次の交渉をするときに深く関係があるので、余り幅は狭められないんですけれども、二千から三千に波を打って、おおよそその範囲に入るのかなということを申し上げたわけで、これは実は新しい数字といいますか準備室と打ち合わせていない数字ですから、竹中大臣はお持ちではないと思います。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

古賀(一)委員 今の話を聞きますと、要するに、まだ、この民営化コストという非常に重要な数字が、当時のあの時点で幾ら、大臣にはまだその後の動きはわかっていないとかそういう話で、ないんですよ。私は、これは法案を出す前提として効率化を、財政のこの問題に端を発して民営化するといったら、今度コストは百億、十億、二十億じゃないですよ、ウン千億というオーダーの数字がすり合わせがない。また、積み上げが十分でもないと思いますよ。政府とのあれも十分でない。公社だけの問題じゃないですよ、公社プラス今度政府としてもっと別の民営化コストもある。

 大臣、これは、公社だけの、さっき公社総裁に振られましたけれども、それだけでない民営化コストはあると思うんです。大臣として、では、今はないけれどもいつまでにこれを確定する、今後きちっとした資料を出すというところを、大臣の方からこの場でお約束いただければ。大変基本的な重要な数字ですから、大臣の約束をいただきます。

竹中国務大臣 これは、常に、企業でありますからいろいろなことをさらにさらに考えて、現在進行形で、今総裁がお話しになられたように、計画を具体化して、そして交渉も行ってやっておられます。我々としては公社とよく相談をして、コストとして出せるものをぜひしっかりとお示ししてまいりたいと思います。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 古賀一成君。

古賀(一)委員 では、再度大臣にお聞きしたいと思います。

 これは、先ほど来ずっと問題になっておりました骨格経営試算の話とも絡むんですけれども、何せ額が大変大きい話でありまして、しかも初期段階で必要なものであります。これまでの説明も十分じゃなかった。ひとつ次回、確定した、しっかりとした責任を持てる数字を委員会にきちっと次回までに出すということをお約束いただきたいと思いますよ。

二階委員長 理事会で協議させていただきます。

古賀(一)委員 それは、やはり大臣の方からもう一回はっきり、本来出すべきなんです。今あるべきなんです。それがないと……(発言する者あり)今ずっととめろという議論もありましたけれども、審議は延々と、十分に今後与えられるんでしょうから、私は、それをしっかりと次回出すということで答弁を、大臣からの約束をお願いします。

竹中国務大臣 公社ともよく御相談をして、お出しできるものはお出しをいたします。また、骨格経営試算との関係についても、わかりやすく御説明をさせていただきたいと思います。

古賀(一)委員 お出しできるものはという何か縛りを言われましたけれども、これは責任を持てる正しい試算、あのときは暫定でしたというようなことではだめです。しっかりと責任ある数字を出していただきますようにお約束いただいたものと理解します。

 では、これで私の質問を終わります。

二階委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 この郵政民営化特別委員会、初めての質問となりますが、同僚議員からたびたび、この民営化法案に対してのさまざまな問題点、質疑をさせていただいております。この委員会でもたびたび審議が紛糾する、そんな場面でございますが、きょうは、五大臣の方々に今この場において答弁をいただくということで御出席をいただきましたが、もう一つ、私、冒頭加えておきますのは、きょうは滝法務副大臣にも御出席を求めております。これは、副大臣の出席を認めたということではなく、滝法務副大臣に直接お尋ねしたいことがあったということを御理解いただきたいというふうに思います。

 まず、今システムの話もありましたが、私もこれについては後ほど御質疑をさせていただきたいと思うんですが、たびたび審議が紛糾する、こういった状況、いかに法案がでたらめであるかということだと思うわけでありますが、この法案のでたらめさ、我々がこの議論に参加して以来たびたびこのことが、民主党だけではなく、与党の議員の方々の質問も加えて繰り返しあぶり出されています。

 とりわけ昨日は、官房長官の御答弁、法案の提出権については中村議員が、同僚の議員がこの法案提出権について憲法の教科書をかざしてまで御指摘をさせていただいた、官房長官のお答えが右に左にとぶれたというそんな印象を国民の多くの方はお感じだったんじゃないでしょうか。

 さて、法案の提出権についてなんですが、当然、内閣からの提出ということは昨日議論されましたが、もう一つ、議員からの法案提出という問題がございます。

 これは、国会法の五十六条で議員の法案提出権というのは担保されております。二十名以上の議員の同意、あるいは予算に関連する法案であれば五十名以上、こうした議員の法案の提出権というのがあるわけでありますが、つい先ごろ、自民党の郵政事業懇話会の綿貫民輔前衆院議長、元幹事長でもおられます、綿貫会長が去る三日に、政府の郵政民営化法案とは異なる内容の日本郵政公社改革法案を衆議院の事務局に提出されました。

 これは、前議長であり、自民党の元幹事長、要職におられた綿貫議員が対案をお出しになられたということでありますが、まず、きょうは衆議院の事務総長にもお越しいただいております。この法案がどのような状態にあるか、また、これがどういう経緯だったかをお答えいただけますでしょうか。

駒崎事務総長 お答え申し上げます。

 去る六月三日の午前十時過ぎに、綿貫先生ほか二名が事務総長室に法案を持参されましたが、所属会派の機関承認、自民党の場合には、幹事長、総務会長、政務調査会長、国会対策委員長の承認なんですが、これがございませんでしたので、仮預かりといたしました。その旨、河野議長にも御報告いたしました上、昨七日の議院運営委員会理事会で取り扱いを御協議いただきましたところ、従来どおりの取り扱いをすることとなり、不受理となった次第でございます。

馬淵委員 綿貫議員ほか二名の提出を受けた、そして、それを仮預かりし、昨日の議運でこれを不受理という決定をされたと今御説明がありました。

 先ほど申し上げたように、国会法の第五十六条を見る限り、法案提出に党の承認が必要という明文規定はございません。これについて事務総長、どういうことの御判断かということを、これは事務総長の事務的なことで結構ですから、お答えいただけますか。

駒崎事務総長 お答え申し上げます。

 自由民主党幹事長からは、党四役の承認のない議案を受理しないようにとの文書を受けてございます。それから、他の会派につきましても、国会対策委員長等の承認を得て議案は提出されてございます。

 この慣例は、昭和二十七年の第十三回国会に当時の自由党が初めて行ったものでございますが、昭和三十一年に日本社会党がこれに倣い、昭和三十八年以降は議員提出議案のすべてが機関承認を得て提出されております。

 機関承認のない議案が事務局に提出されようとしたことは幾度かございましたが、議院運営委員会理事会における御協議の結果、正式受理に至った例はございません。

馬淵委員 今お答えいただきましたように、こうした慣例が、これは先例でなく、先例集にも載っていないんですね。慣例なんですね。先ほど御指摘ありました自由党の増田幹事長、昭和二十七年ですから随分昔のことですけれども、この幹事長からの文書が出された。そして、これはその後、自由民主党から、総選挙後あるいは幹事長交代のたびに文書が提出されている。党四役の承認がない、機関決定のないものについては受理するなという文書が出されている。そして、確かに、その後、各党もこれらに倣ってということであるようであります。

 こうした文書が出された後に、先例でもない状況である。これはいわゆる慣例でありますから、特にこの慣例については確立された慣例、このように国会の議運の議事録の中にも記されています。古い議事録でありますが、昭和四十六年、当時の海部委員が、確立された慣例ということでこれを守るべきだ、このような御指摘はあるわけでありますが、私は、こうした法案を受理しないということ、これは大変不当な、議員の法案提出権の侵害ではないかと思われます。

 そして、これに対しては、当然ながら前向きな協議、これに対しては前向きな検討ということがなされなければならないと思いますが、きょう、官房長官にお尋ねをしようと思ったんですが、官房長官は今記者会見の時間となられて出られました。

 これについて事務総長、事務的な立場でいらっしゃいますが、どのようにお感じかということをお答えいただけますか。

駒崎事務総長 機関承認を得ていない議案の取り扱いにつきましては、今後、議会制度協議会等の場で協議されることもあろうかと考えてございます。

馬淵委員 これは、昨日も議運の中で、議会制度協議会の中の議論ということが、議運の委員長からもあるいは我が党理事等からもお話が出たというふうに聞いております。

 さて、私が指摘したいのは、この国会法の問題、このことについてではありません。つまり、今回、与党自民党から政府提出法案という形で郵政民営化法案が出されました。しかし一方で、前議長が、元幹事長が、それこそ反対の法案を提出されているというこのちぐはぐさであります。

 この日本郵政公社改革法案は、三事業一体による効率的経営でユニバーサルサービスを維持する、そして、財務、会計、人事などへの政府の関与を必要最小限度とするなどが柱で、政府案とは真っ向から対立する内容である、こういう法案が出されている状態。

 これは、それこそ前議長、この方は、当然ながら不受理になるということは当然御理解された上で出されたんだと思うんですが、こうした法案が出されているちぐはぐさ、まさに党内調整がなされていないということを如実に示すものであります。この党内調整がなされていない状況、そしてそんな状況の中で出された法案、与党内の、政府内での未調整、これも実は一方で起きているのではないかということを続けて指摘させていただきたいというふうに思います。

 さて、よく政府の中で郵政民営化の成功例として出されるのは、ドイツ・ポストの例であります。このドイツ・ポストの例は、たびたび総理やあるいは担当大臣、これを御指摘されています。政府が郵政民営化の手本としているドイツ・ポスト、郵便会社が、郵便局会社あるいは急送会社、物流会社の株式を一〇〇%、金融会社の六七%、これらを保有することで一体的な経営を行っている、これによってこのドイツ・ポストは大変経営がうまくいっている、このように理解されています。

 さて、この持ち株会社、今回の郵政民営化の中では、持ち株会社ということが一方の概念として出されています。この持ち株会社である郵政株式会社が、郵便貯金会社あるいは郵便保険会社、これらの株式についてどれぐらい持つことができるか、たびたびこの委員会の場でも議論が繰り返されています。そして、それに関しては竹中大臣、繰り返しの答弁の中で、まずは一たんは完全売却をされて、そして一般商法会社とした後に株式を購入するということは関係法令の中で可能である、このようにおっしゃっています。

 さて、この関係法令、銀行法や保険業法、独占禁止法等の現行のルールの中で、最大で何%まで保有することができるんでしょうか、お答えいただけますか。

竹中国務大臣 銀行法等々については、また金融担当大臣からあるかもしれませんですけれども、銀行法での何%まで持てるか、持つかどうかはもちろん判断でございますが、法律の枠組みについてのお尋ねだと思いますので、銀行法によりますると、これは他社による銀行株式の取得、これは五%以下の議決権保有に関しては規制はございません。五%超二〇%未満の議決権保有に関しましては、これは届け出制でございます。二〇%以上の議決権保有については、これは認可制となります。そして、五〇%超の議決権保有は、これは銀行持ち株会社の他業禁止に抵触しますので、不可ということに相なります。

 それと保険業法、保険の方でありますけれども、五%以下の議決権保有は、これは規制がございません。五%超二〇%未満については届け出制、そして二〇%以上については認可制、五〇%超の議決権保有でございますけれども、純粋持ち株会社による保険会社の子会社化というのは承認制になっています。そして、一般事業会社による保険会社の子会社化というのは、これは行うことができません。不可になっております。

 最後に、独禁法でございますけれども、銀行及び保険会社の株式については、三特殊会社合計で二〇%超の議決権を保有する場合、これは独占禁止法第九条ガイドラインに抵触する可能性があるということだと理解をしております。

馬淵委員 つまり、今のお話ですと、独禁法が一つのガイドラインとして株式の保有を制限している、このように理解をしていいということでしょうか。お答えいただけますか。

竹中国務大臣 今申し上げましたように、それぞれのケースによって、銀行法、保険業法、そして独占禁止法につきましても、先ほどちょっと、二五%超の議決権を保有する場合には独占禁止法等々にも抵触する可能性がある、先ほど申し上げたとおりでございます。

馬淵委員 先ほど大臣、二〇%とおっしゃいましたが、それは二五%、誤りということですよね。はい。(発言する者あり)では、もう一度確認しますよ。きちっと訂正していただけますか。

竹中国務大臣 独占禁止法につきまして、前の前の答弁で数字を言い間違えておりますが、三特殊会社合計で二五%超の議決権を保有する場合には、独占禁止法第九条のガイドラインに抵触する可能性がある。二五でございますので、訂正させていただきます。

馬淵委員 つまり、二五%までという独禁法の規定が一番厳しく制限している数字となると理解いたします。

 さて、一体経営ということがドイツのドイツ・ポストでは広く成功のかなめだと言われているわけでありますが、こうした、例えば今回日本の民営化の法案の中に語られている連続的保有、すなわち再度株を買うことが可能だという場合に、二五%を超えて株式を保有するということができるようにするには、すなわち別の法案の提出、あるいは法案の改正ということが必要になるということだと思いますが、その理解でよろしいですか。

竹中国務大臣 独禁法の適用につきましては私が判断する立場にはございませんが、先ほど申し上げましたような一般法令が適用される、その範囲で行っていただかないと、これは法律の違反になるということだと思います。それぞれの法律の適用、解釈について私が申し上げる立場にはございません。

馬淵委員 今、この法案を改正すべきかどうかというのはわからない、自分の所管ではないというお話であったかと思いますが、本日は滝法務副大臣にも御出席をいただいております。滝法務副大臣は、今竹中大臣にお答えいただいた答弁と異なる御見解をお持ちのようなんですが、いかがでしょうか。滝法務副大臣、御答弁をお願いしたいと思います。

滝副大臣 法務省の所管ということではなしに、個人的な意見として私がホームページにいろいろ、自民党が政府に要望案を取りまとめる際に議論がありましたので、その状況をホームページに掲げました。それを馬淵先生がいち早く見ていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 さて、今の独禁法の問題でございますけれども、私は今の竹中大臣と意見を異にするとは思っていないんです。私もその中で、要するに、一体的経営というけれども、問題は、日本の場合にはドイツと違って郵便貯金会社を親会社たる持ち株会社が一体的に持つ、全部売却した後であっても持つということは難しいですよ、それは、二五%を超えますと今おっしゃるように独禁法に引っかかるわけですから、このままではいけません、したがって、一体的経営を確保するためには何らかの手段が必要でしょうという議論を自民党の中でやっていますということをホームページに掲げたわけでございまして、そういう意味では余り変わらないと思います。

馬淵委員 今、滝さんがみずからホームページのことを御指摘いただきましたが、私、見させていただきまして、喜んでいただいてありがたいと思うんですが。

 この滝さんのホームページの中にはっきりと書いておられますね。ドイツの一体的経営が大変功を奏したと、しかし、日本ではそれがなかなか難しいと。先ほどのこのガイドラインの話です。そして、グループ経営によって全体として資本力を発揮しようとする、これがドイツの成功例だということでありますが、「このような民営化では日本の郵政事業はいずれ消えてなくなる」、このように滝さんはっきりおっしゃっておられます。

 そして、なぜ日本でできないのかといえば、独禁法の運用ガイドライン、これで親会社が金融事業とそれ以外の事業を子会社として保有するグループでは金融子会社の株は二五%を超えて保有できないからと。「従って法律でそれらを認める条文をつくれば良いのですが、政府は法案を修正せずに、政令や省令で対応しようとするところに無理があります」、こうはっきりおっしゃっているじゃないですか。

 これは、先ほどの竹中大臣がおっしゃっている方向とは、私は全く方向、見解が違うと思いますよ。滝さん、どうお考えですか、お答えください。

滝副大臣 この問題は、したがって、今後の中で、今の竹中大臣が、一体的経営ができる、こういうようなことをおっしゃっているわけでございますから、その中でどういうふうに考慮されるかということだろうと思いますし、私はドイツの例をホームページに引かせていただいた、こういうことでございます。

馬淵委員 いや、例を引いたんじゃなくて、御自身の意見をしっかり述べておられるんですよね。そして、それは個人の御意見というふうにおっしゃっていますが、そうじゃない、副大臣として、大変要職の立場で述べられておられるわけですよ。

 そして、副大臣として、ホームページに載せるということは、反復、複数回、しかも大変たくさんの方々に見ていただくという、そこに発信されているんです。これは副大臣としての発言じゃないですか。

 そして、もう一点、明らかに副大臣としての御意見だというところが、このホームページの中にも散見されます。

 綿貫民輔前衆議院議長が主宰する勉強会、これに出席しましたというのが載っているんですね。そこに出席されたということで、これは四月七日ですか、四月七日の勉強会、九十六人参加されたというこの勉強会に出席をされた。

 これに対して、個人として参加というお話ではありません。このホームページにはこういった一文が載っています。四月七日の勉強会には、これは綿貫前議長が主宰する郵政民営化反対派の勉強会のことですが、この勉強会には「副大臣クラスで唯一滝実代議士が出席しました。」こう書かれているんです。

 いいですか、わざわざ「副大臣クラスで唯一」と書いています。これは、裏を返せば、副大臣が反対派の集会に出席したことに意味があるということを御自身が述べられているんですよ。

 これは全く政府内での見解が違うということを明らかにしています。竹中大臣、どう思われますか。

竹中国務大臣 私は、担当大臣として、今の法案がベストだと思い、そのことについて一生懸命説明をさせていただいております。いろいろな御意見は当然あると思いますが、政府・与党の合意を踏まえて今回の法案を提出させていただいております。

滝副大臣 今、馬淵委員から、四月七日の綿貫研究会のお話がございました。これは、結果的には郵政民営化に反対をする人たちが多く結集していると思いますけれども、私は勉強のために出たのでございまして、当日も、むしろ私は、後藤田正晴先生がここへ来て講演をされるということでございましたので、後藤田先生の、ある意味ではもうお年でございますから余り聞く機会がございませんので、そういう意味でここへ出させていただきました。

 それから、時間をとって恐縮でございますけれども、今の独禁法の問題は、私の意見でございますから。

馬淵委員 いずれにせよ、御自身で、ちゃんと副大臣として出席したと。そして、しかもこのホームページの見解というのは、明確に政府の方針と違うことを述べているわけですよ。

 この副大臣の意見に対して、竹中大臣、どうお考えですか、もう一度。この政府の中の、確認しますけれども、滝副大臣は政府の一員ですよね。昨日からこのことを、ずっと続けてこの議論が出されているわけですよ。かつての大臣の発言、いや、かつての話じゃないですよ、今、現のこの政府の中で見解は一致していないじゃないですか。かつての話じゃなく、今の政府の話なんですよ。竹中大臣、お答えください。どうお考えですか。

竹中国務大臣 私はこの法律を担当させていただいておりますが、内閣は連帯をして、そして政府・与党一体となってこの法案を提出させていただいて、またその成立に全力を尽くしたいと思っております。

馬淵委員 いや、今の話は、だから、お答えになっていませんよ。滝副大臣の言っていることと先ほど竹中大臣が御説明したこと、一致していないじゃないですか。だから、これに対してどうなんですか。竹中大臣、もう一度確認しますよ。

竹中国務大臣 どこが一致していないのかちょっとよくわかりません。当然いろいろな御意見がありますが、内閣は連帯をして、そして政府・与党一体となってこの法案に取り組んでいるところでございます。

馬淵委員 いいですか、繰り返し言いますよ。この滝さんの主張というのは、このままではもう郵政の民営会社、郵政事業はいずれ消えてなくなりますよ、こう明確におっしゃっているじゃないですか。連帯するとおっしゃっているけれども、副大臣としての立場で、先ほど申し上げたように、この綿貫勉強会に出て、そして、その綿貫勉強会は反対法案を出しているんじゃないですか。政府・与党案に対する反対法案を出しているその綿貫勉強会に参加している。まさに、政府内での一致が見られない行動じゃないですか。これは、国民が見れば、そう思いますよ。いかがですか。

 このことに対して、先ほど来、竹中大臣は、自分の所管で、連帯するとしかお話しになられませんけれども、今、繰り返し申し上げているように、滝副大臣の見解と竹中大臣の見解は違っているんですよ。政府内で一致されていない。そして、法案も出されているじゃないですか。これに対して、竹中大臣、閣内不一致だということを、私、よくわからないとおっしゃるので、説明を今しました。お答えいただけませんか。

滝副大臣 基本的に、綿貫勉強会のお話がございましたけれども、綿貫勉強会は、郵政民営化反対の集団ではないんです。もともといろいろな人を集めて意見を聞く、こういうことでございまして、当日も、先ほど申しましたように、後藤田先生の話があるから行ったのでございます。

 ちなみに、余計なことでございますけれども、一つだけ紹介させていただきますと、後藤田正晴先生は、いずれは郵政民営化になるだろうということをその中でおっしゃっているので、この人の意見は、郵政民営化に対してある意味では中立、そういうような意見として私は承ってまいりました。

馬淵委員 では、そっち方なので、竹中大臣、先ほど来、私は、滝さんの見解と竹中さんの見解、これは全く一致していないと思うわけですが。

 では、論点を変えてというか、見方を変えれば、この二五%、これは結局は、一番のガイドライン、この株を持てる数値の限界だということになるわけですよね。これを超えて持つにはどのようにしたらいいんですか。

竹中国務大臣 独禁法について、私は独禁法を受け入れておりますので、ちょっと御質問の意味がよくわかりません。

馬淵委員 受け入れる、受け入れない、それは現行の法律があるわけですから、これを受け入れない大臣なんかいないですよ。

 だから、この二五%というガイドラインがこれは前提じゃないですか。となれば、大臣、株を持てる、連続的保有というときに、独禁法の改正というのが前提になるじゃないですか。なぜこれに対して政府は法案の準備がないんですか、あるいは、政府はどう考えているんですか。二五%以上持たないんだという前提にしているんですか。

 では、大臣、何%まで買い戻すということが可能か、そのつもりがおありなのか、お答えいただけませんか。

竹中国務大臣 可能かどうかでありますけれども、基本的には、経営者がどのように判断をされるか、それが一般法令の枠組みで受け入れられるかどうか、そういうことだと思います。

馬淵委員 一体経営が担保されるように連続的保有という制度をつくったとおっしゃっていますけれども、結局、株をどれぐらい持てるかというのがポイントなんですよ。

 これについて大臣は、一体何%まで、実際にその会社が持とうとするかというのは経営者の判断だとおっしゃっていますけれども、少なくとも二五%未満までしか持てないわけですよね。これは二五%までなんですよ。この二五%という数字、どういう意味かおわかりですよね。当然ながら、三三%を超えなければ特別決議にかかわらないわけです。

 この三三%未満の数字、二五%というのが、本当に今回の一体経営として最適な数値だと大臣はお考えなんですか。独禁法のガイドラインの二五%と、今回の民営化の中での連続的保有、一体経営を担保する数値として最適な株式持ち分比率が二五%だということを竹中大臣は言明されますか。

竹中国務大臣 何が最適かとおっしゃいましたが、十年後の民間企業の経営で何が最適かということは、これは経営に判断をしていただくというのが私たちの基本的な姿勢です。政府が何が最適かを判断することはいたしません。

 そもそも一体的経営というのは幅広い概念で、その中で、資本を持つということがどのくらいの意味があるか、これも重要な経営判断。資本をある程度持ちたい、資本は余り持たないで別の形で一体的経営を保つのか、それも経営の判断でございます。

 私たちは、経営の判断を重視して今度の枠組みをつくっております。

馬淵委員 経営判断とおっしゃいますけれども、何%かというのは重要なんですよ。

 経営判断でこの持ち分比率を上げることはできないじゃないですか。二五%で、現行、独禁法のガイドラインでこれを超えて持つことはできないじゃないですか。経営判断で持てるのは二五%未満なんですよ。

 大臣、だから、一体経営、一体的経営をおっしゃるならば、ここの部分に対して、法案の修正、独禁法の改正なり、それを出さなきゃおかしいじゃないですか。経営判断できないじゃないですか。二五%の線は変わらないじゃないですか。

 大臣、どうですか、お答えください。

竹中国務大臣 政府・与党の合意では、各会社の持ち合いについては、「持株会社の下でのグループ経営を可能とするため、移行期が終了した後は、特殊会社としての性格を考慮しつつ経営判断により他の民間金融機関と同様な」、つまり一般法令の枠組みの中で株式持ち合いを可能とするということを合意しているわけでございます。

 繰り返し言いますが、そのときの経営の判断、そして一般法令の中で、これは普通の企業と同じなわけですから、一般法令の中で判断をしていただくということになります。

馬淵委員 一般の会社と同じじゃないんでしょう。だって、これは、ユニバーサルサービスを含め、一体経営、一体的経営ということを前提にするというのが、与党の中での修正の協議の中で出たんでしょう。だから、株を買い戻す云々がそこに盛り込まれたわけじゃないですか。今のお話だと、ただ一般会社なんだと。一般会社なら、買い戻しなんか要らないじゃないですか。おかしいじゃないですか。

 大臣、今のお話、おかしいですよ。もう一度、私の質問に答えてくださいよ。

竹中国務大臣 私は今、政府・与党合意を読ませていただいたので、これがおかしいと思うかどうか、私たちはおかしいと思わなくて、こういう合意をしたわけでございます。

馬淵委員 結局……(発言する者あり)

二階委員長 審議を続行いたします。馬淵澄夫君。

馬淵委員 では、もう一度確認しますよ。

 経営判断といっても、二五%未満しか買えないじゃないですか。経営判断として、それこそ特別決議に至るような、あるいは経営側がその会社に対して支配力を持てるような株式を持とうとする場合には、経営判断の問題じゃなく、これは法律の問題なんですよ。一体的経営をおっしゃるならば、この法律の修正、改正を出さなきゃだめじゃないですか、大臣。

 これに対してどうなんですか、独禁法の改正ということはなぜ視野に入らないんですか。お答えください。

竹中国務大臣 持ち株会社のもとで、それのグループ経営を可能にするために、移行期が終了した後は、特殊会社としての性格を考慮しながら、そして経営判断によって他の民間金融機関と同様な株式持ち合いを可能とする、そしてその結果、株式の連続的保有が生じることを妨げない。私が申し上げているのはそういうことでございます。

 民間金融機関と同様な株式持ち合いでございますので、独禁法を含む一般の法令のもとでそのような仕組みをつくっているということでございます。

馬淵委員 この一体的経営で功を奏したドイツ・ポスト、先ほど申し上げたように、政府保有が六割以上、こうした形でまさに一体的経営がなされて、さまざまな変遷を経ましたが、ドイツ・ポストの今日がある。今、この民営化の中で、一体的経営という言葉だけが単に躍っているんですよ。今のお話であれば、二五%未満までしか株は持てない。その中で一体的経営、どこまで影響力を及ぼせるのか。もし本当に、連続的保有をわざわざ与党内の協議の中で決めて、一体的経営までを担保するということであるならば、この独禁法の改正が前提になければなりません。

 これを明らかにできない竹中大臣の御答弁をお聞きしますと、実は、これは、記者会見などで三、四%などという発言があったというふうに聞いていますが、三%、こうした数値だと発言は聞いていますが、その程度しか実は頭にない。本当に緊密な経営を実現しようとするならば、当然ながら、株式のある一定割合の保有というものが求められます。それが二五%を超えるということも十分視野に入れて、独禁法の改正というものを今回の法案提出の中に盛り込むべきである。しかし、それができないということが、いかに拙速にこの法案をつくっているかという証左であるかと思います。

 大臣、この独禁法の改正ということは、今後一切視野にない、視野にあるのかないのか、これをもう一度確認します。

竹中国務大臣 独禁法を所管しているのは私ではございませんので、独禁法についてはいろいろな御議論があろうかと思いますが、郵政民営化との関連でそれが問題になるとは現時点で思っておりません。

馬淵委員 今、この問題につきまして、大臣から御所管でないというお答えでありました。しかし、滝さんにもきょうお越しいただいておりますように、実際にはこの問題が、副大臣としてお立場上このことを考えると大変大きな問題であるという御懸念を政府内の一員の方もやはりお持ちなわけです。これについて、十分、竹中大臣、よく耳を傾け、また今後の協議の中ではっきりとさせていかねばならないということを私は加えさせていただきます。

 時間が余りありませんので、先ほど来混乱を招きましたシステムの話を少しだけさせていただきます。

 システムの開発というものは、当然ながら、この民営化においては重要な問題であります。私は、実は、まさにこの政治の世界に入るまで、二〇〇〇年までは民間の大阪の二部上場、ゼネラルという会社におりましたが、そこで役員をしておりました。会社経営に携わる中で、最終の私の職務は情報システム本部長、いわゆるCIOでありました。そして、会社のいわゆる業務改革の前提の中で、システムの導入、システムの大幅な全面変更、まさに統合であります。このシステムインテグレートと、そしてもう一方で、分社化によるシステムの分割、これらの仕事を私自身はやってまいりました。

 そこで、お尋ねをさせていただきたいと思うわけでありますが、今回、このシステム開発に対しての懸念というのは早々に出されていました。そして、そのシステム開発の懸念は、昨年の十二月二日付でありますが、郵政公社から、二〇〇七年四月に向けての暫定対応に関する日本郵政公社の基本的考えという文書が出されています。ここには、そのシステムの対応を暫定対応と本格対応という二つのフェーズに分けて行うというその中で、郵政公社は、「経営に責任を持つ公社の立場からは、「選択可能なオプション」とすることには無理があると判断している。」このように書かれています。

 そして、これらを受けて、その後の協議の中で、半年間の期限延長も含めて、また、現行のシステムの改修レベルということをその暫定対応としてする、このように政府案の中でも固められたというふうに理解をしています。

 さて、今回のこのシステム開発でありますが、このように基本的考え方の中で、その開発の最終的な期限に間に合うかどうかということが大変危惧をされているわけでありますが、その危惧の中で、まず、これは数値的なことですのでお答えをいただきたいんですが、これは先ほども御発言ありましたが、再度繰り返しになりますが、今回のこのプログラム開発、少なくとも、どれほどのステップ数が今回想定されているんでしょうか、お答えください。

生田参考人 お答えします。

 ステップ数としましては、本格対応まで、全工程で約四千二百万ステップス、そのうち暫定対応でやろうとしているのが千七百万ステップスでございます。

馬淵委員 大変な規模であります。これだけの規模は、少なくとも国内最大級のプログラム開発となることだと思われます。

 さて、こうしたプログラム開発を行う上で、業務のフローというものはどこで決めておられますか。お答えいただけますか。

生田参考人 民営化されるとすれば、その前提での業の区切りといいますか間仕切り、まず容量の間仕切り、組織の間仕切り、要員の間仕切り等ですね、これは基本的な政府の御方針にのっとって、準備企画会社というんでしょうか、将来持ち株会社になるところが一応形としては基盤になりまして、それに、これから立ち上がるんでしょう、経営委員会等も入りまして、その中で具体的に取り組んでいくことになるだろうと考えております。

馬淵委員 現時点における業務のフロー、今ステップ数をおっしゃいましたけれども、現時点における業務のフローというのは、今どういう形で進められていますか。これ、公社の生田総裁の方がよろしいんでしょうか。お答えいただけますか。

生田参考人 フローという意味が、大変申しわけないんですが、私、正確に把握できないんだけれども、どういうふうに仕事を区切りながらやっているかという意味にもしとらせていただくとすれば、極力、公社スタート以来、三事業というものを自立的にやるために、事業総本部というのをつくりまして、きちっと分けて、そのおのおのが独立採算的に行えるように、業務のフローといいますか、仕事を取り進めております。

馬淵委員 今回のプログラム開発といいますかシステム開発は、二〇〇七年四月に暫定的にシステム対応する場合のスケジュールというのが出されております。これを見ますと、二〇〇五年の六月から業務設計というフェーズに入って、そしてその後、概要設計となっているわけですが、今総裁のお話ですと、公社発足時からやっているけれどもというレベルの話でありました。

 しかし、民営化ということが前提になった場合に、業務フローというものが非常に重要なポイントになります。

 システム開発というのは、単純に、ではコンピューターのプログラムをつくってくださいという話じゃありません。まず、システムをつくる上では、現行の業務プロセスがどういうものであるかということの徹底的な検証が必要です。そして、その業務プロセスの検証の上に、再度それをどういう形で新しい業務プロセスに改善させていくかという、業務改革の手法が取り入れられなければなりません。

 そして、この業務改革、あるべきその仕事はどういうものなのか。これはツー・ビー・モデルと一般に、システムの世界では言われますが、では、今回、この業務プロセスのツー・ビー・モデルは一体何なんだ。このツー・ビー・モデルを実現させるためにはどういったフローが必要になるのか。そして、その業務フローを決定する上では、必要な帳票、これはどういうものがあるのか、それをすべて明らかにしていって、単にプログラムをつくっていくという話じゃなくて、業務そのものの改善、改革が同時並行になります。

 ところが、今のお話を伺っていますと、公社の発足から、民営化が前提になった、今回のような四社分割というような話にはなっていないはずです。つまり、今のお話ですと、二〇〇五年の六月から業務設計が始まると言っているけれども、実際にはやっていないという話ですよ。

 そして、この業務設計の工程を見れば、三カ月、この期間で行うとなっていますが、全業務を、現実のフローを全部チェックして、帳票も確定させて、さらに業務プロセスの改革を行う、これは三カ月やそこらでできる仕事じゃありませんよ。この進め方というのがそもそもおかしいじゃないですか。これに対して、明確な御答弁をお願いします。

竹中国務大臣 馬淵委員はCIOでいらっしゃって、まさに実務にたけていらっしゃると思います。私は実務の点は存じ上げませんけれども、今御指摘のような点も踏まえまして、そういう点が必要であるからこそ、このシステム検討会のメンバーには、例えばトヨタのCIOの天野さんでありますとか、今御指摘にありますようなシステム開発経験のある、またこのプロジェクトマネジメントで日本の第一人者である宮田東大教授等々に入っていただいて、詳細な設計をしていただいた、議論をしていただいたというふうに承知をしております。

 今公社でどういう、今おっしゃったような意味での実務について、私は詳細に今この場でお答えできる立場にはございませんが、今御指摘のような点も含めて、結論として、適切な配慮をすれば、システム観点からは、暫定的な対応をすることは可能であるというような結論をいただいたと思っております。

 いずれにしましても、できるだけやはり早くそれに取っかかれるようにしてさしあげるということが大変重要だと思っておりますので、そのためにも、ぜひとも法案の御審議をよろしくお願いしたいと思います。

馬淵委員 いや、大臣、おかしいんですよ。今総裁は、公社発足時から業務の見直しを図ってきたというふうにおっしゃっていますけれども、公社発足時は、四社分割などの民営化なんという前提はないんですよ。だから、この民営化の業務フローをどういうふうにつくっていくかというのは、実は、今なされていなきゃいけないんですよ。それができていないんですよ。できていないということは、今申し上げたように、これらの工程表の中では到底間に合わない。この工程表は、今それを行っていないというのは、このシステム開発のレベルから見れば、できないということを示しているのと同じ話なんですよ。大臣はお答えできないと今おっしゃいましたが、これについて、本当にシステム開発の立場から見れば、できないものをできると言っている、そして、民営化になれば後はとにかくぼろぼろ状態でもいいから走ればいいというでたらめなシステム開発をやっている、私はそういうふうにしか見えないんです。

 このことについて、質疑の時間がもうありませんが、大臣にもう一度確認をさせていただきます。

竹中国務大臣 馬淵委員の専門的な御指摘、しっかりと受けとめたいと思います。

 まず、このシステム検討会議には公社のCIOもオブザーバーとしてお出になっておられて、今おっしゃったような点も踏まえて、しっかりと公社としては実務的な対応をしておられると承知をしております。

 なお、このシステム検討会議の検討結果について、公社は、この指針に従い全力を挙げて取り組んでいく所存であるというふうに表明をしてくださっておられますので、公社のCIO、総裁を中心に、今のような問題が生じないようにしていただく。私たちの方は、しっかりと法案の御説明をしてその前提条件を整えさせていただく、その努力をいたします。

馬淵委員 今の御答弁では不十分であります。この委員会の中で、先ほど来、システムのコストの問題もありました。そして、中身の問題につきましても、この後、この委員会の中で明らかにしていただきたいと思います。

 残余の質問、他党の方々がいらっしゃいますので、私はここで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 先日の質疑で、私は、骨格経営試算についてお聞きをしました。先ほどの古賀議員の質疑に関連をして最初にお聞きをしておきたいんですが、情報処理システムに関する費用でありますが、大臣は先ほど、公社と相談して出したいというふうにおっしゃいました。ということは、まだこれは決まっていないという数字であります。先ほどの答弁では、ソフト面で五百六十三億円、ハードは、そのほか合わせて一千四百億というふうにお聞きしましたが、その他関連費用、これは一千億か二千億か、よくわかりません。つまり、決まっていない。

 この数字というのは、骨格経営試算の中に含まれているものなのか、それとも、それとは別の数字なのか、まずそこをはっきりさせていただきたい。

竹中国務大臣 先ほど御答弁いたしましたように、この数字について、公社と御相談しながらお出しできるものを詳細にお出しするということ、そして、骨格経営試算との関連についても整理をして御説明申し上げますと先ほど御答弁させていただきましたけれども、そのようにさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 いや、骨格経営試算の関連を整理するとおっしゃいましたが、入っているのか入っていないのかということを聞いているんです。最初から、情報処理システムの極めて膨大な費用について入れているのか入れていないのか、そのぐらいははっきりしないと骨格経営試算にもならないんじゃありませんか。

竹中国務大臣 これは、以前松野委員から御議論をいただいた問題と類似しているのでございますが、あのときはたしか、人件費の中の内数として社会保障関連が、福利厚生がどうなっているかということで、それは別建てでは計算しておりませんという御答弁を申し上げました。

 その問いについては、IT関連費用として物件費の中に年間約三千億円のものを計上しております。それと同じような形で、三千億円という形で、概算としてこのIT関連費用を計上させていただいております。

佐々木(憲)委員 ちょっと今の説明がよくわからないんですが、骨格経営試算の中に入っているということですか。

竹中国務大臣 松野委員に対する御答弁で、最初混乱がありまして、それで後ほど訂正をさせていただいた、正確に言わせていただいたわけでございますが、それはそれでおかせていただくといたしまして、今の問題に関しても同様で、個別の積み上げとして計算しているわけではございません。しかし、その三千億というオーダーのIT関連費用を骨格経営試算の中で計上させていただいておりまして、その中で……(発言する者あり)いや、ちょっと、よく聞いてくださいよ。(発言する者あり)いや、違います。千四百億円の見積もりがあるわけでございますが、年々これは、毎年三千億オーダーの、ちょっと年々の変動は今記憶しておりませんが、IT関連費用を計上させていただいておりますので、その内数として読めるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 骨格経営試算の中に含まれているという話でありました。

 それならば、その具体的な数値を後で出すと言っているわけですから、正確な数字を出していただきたい。(発言する者あり)

二階委員長 ちょっと、着席をお願いします。

 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 入っているということでありましたので、では、入っているなら、それを正確に後で出していただきたいということであります。

 次に、私は、長短スプレッド一%の場合の試算で、郵便貯金銀行の二〇一六年の利益ということを前回お聞きをして、六百億円の赤字になるというふうにお答えになりました。

 配付資料の一を、最初のページを見ていただきたいんですが、この配付資料で、これは準備室の資料ですけれども、二〇一七年以降の試算の前提が右側に示されております。この場合、長短スプレッドが一%、そして貯金・保険残高が横ばい、こういう前提だということです。

 そうなりますと、これは当然、六百億円の赤字が五年間続く、これは二〇一七年から五年間という試算をやるというふうに聞いておりますが、五年間赤字が続く、こういうことですね。

竹中国務大臣 この期間に関して、五年間ございますが、そこに示されておりますのは五年間の平均値でございます。

佐々木(憲)委員 平均値としますと、五年合計しますと三千億円の赤字である。これに対して、公社が続いた場合は、国庫納付金を差し引いても三千四百六十億円の黒字になる。要するに、郵貯銀行では郵便局はなくなっていくが、公社ではなくならないということが起こり得るということが明らかになったわけであります。

 それでは、五年間、それぞれの年度の数値、これを出していただけますか。

竹中国務大臣 委員は今、この資料をお配りになっているわけですよね。これで二〇一七年の試算ということでございますが……(佐々木(憲)委員「五年間」と呼ぶ)ちょっと待ってください。二〇一七年以降の試算を出しておりますのは、骨格経営試算、昨年、一番最初に出してもらった骨格経営試算と、その後の新規業務十割、八割達成部分について、この三つのケースについて、今お配りになった前提で出しております。

 それで、その後委員が言われた利ざやの縮小のケース、悪化のケースについての後年度の試算というのは行っておりません。これは行っていないんです。したがって、今言われたように、その後赤字がどう拡大するのかということについて試算がございませんので、ちょっとお示しできる数字はございません。

佐々木(憲)委員 早速、それを試算して提出していただけますか。当然じゃないか。

竹中国務大臣 ちょっと、試算に要する体制等々もございますけれども、そもそも、利ざやを縮小していって、それで民間のまま、ゼロになって、その後当然これは悪くなっていくわけですから、そういうことの試算値を出すことの意味というのが一体どのようにあるのかなというふうに思います。

 我々は、現実にこうなるであろうということについて、ないしはこの可能性がある、可能性があることについて後年度の試算をしているわけでございますので、ちょっとそのような試算を行うということは我々としては考えておりません。

佐々木(憲)委員 二〇一七年以降の試算、前提はここに書いてあるけれども、一体どういう数字になっていくのか、五年間。二〇一六年までは出すけれども、それ以外出さないというのは、これは認められませんよ。延長して出せばいいじゃないですか。約束してください。

竹中国務大臣 ですから、これは可能性のあるケースについて、私たちはその先について試算をしているわけでございますので、その後、非常に極端な仮定で、利ざやがどんどんどんどん縮小、さらに縮小していくというようなケースについての試算を行うことは考えておりません。

佐々木(憲)委員 いや、利ざやの縮小じゃないでしょう。長短スプレッド一%、過去平均一%で試算しているわけでしょう。一%の試算を出せばいいんじゃないですか。これは縮小するんですか、今後五年間は。

竹中国務大臣 いや、私が申し上げておりますのは、当然、利ざやが縮小してくれば、それなりの対応策というのを企業としてはとるわけでありますので、そういうことを想定しないで、単純にトレンドを延長してどうなるかというような試算を行うことは考えていないということでございます。

 あくまでも、私たちが出しておりますのは、新規の可能性がある、それをさらに後年度についてどうなるかということを確認するためにその長期の試算を行っているわけでございますので、試算の目的とか前提の妥当性とか、そのような観点から我々は幾つかのケースについて試算を行っているわけでございます。

佐々木(憲)委員 これは全く私は納得できないです。

 試算をする前提というのは多少複雑になるでしょう。しかし、当然それを出すというのが議論の前提じゃありませんか。つまり、途中十年間の経過措置を通じて、最終的には十年後、つまり二〇一七年以降完全民営化が行われる、その場合こうなりますよという試算がなければ、民営化法案なんというのは審議できないんじゃありませんか。

 委員長、理事会でこの数字を出すように協議をしていただきたい。

二階委員長 追って理事会で協議をいたします。

 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私はきょうほかの質問をする予定でありましたが、ちょっと時間がたってしまいましたので、少しだけになってしまいますが、あとは続きでやります。

 先ほども出ていましたけれども、株式保有と独禁法の関係です。この点は、政府と自民党の間でも大きな議論になりました。どうも結論がわからない。

 提案されているスキームは、持ち株会社である郵政会社が、当初一〇〇%持っていた株式を十年の間に順次処分して、完全に処分し終える。その後、民間企業として郵貯・保険会社の株式を買い戻すことができる。その場合、どの程度まで株式保有が許されるかという問題であります。

 持ち株会社が郵便局会社という事業会社を傘下におさめている場合、保有できる郵貯株式は何%まで可能か。

 配付資料の二を見ていただきたいんですが、これは、今まで竹中さんあるいは準備室が説明をしてきた資料です。ここには「株式保有に関する一般的規制について」ということで、銀行及び保険会社の株式については、日本郵政、郵便事業、郵便局の三社合計で二五%超の議決権を保有する場合、独禁法に抵触する。要するに、二五%以上の株式保有は独禁法上できないと説明している。

 公取の見解を聞きたい。竹中さんは、これは担当ではないとおっしゃいました。では、担当の公取、この説明をしていただきたいと思います。

伊東(章)政府参考人 お答えいたします。

 独占禁止法は、株式の取得、保有について幾つかの規制をしているわけでございますけれども、御指摘の点は九条の関係ということでございますので、その点に絞ってお答えをさせていただきます。

 独占禁止法の九条は、特定の会社を中心とした企業集団、会社グループの事業支配力が過度に集中することとなることを禁止しているところでございまして、九条に該当するか否かの判断に当たっては、まず、会社グループにどういう会社が含まれているのかということを見ることになります。この点につきましては、五〇%超の議決権を保有しているいわゆる子会社のほか、議決権保有比率が二五%超で、株主順位が第一位であるという場合も実質子会社ということで見ることとしているわけでございます。こうして会社グループに含まれる会社が特定された後、これらの会社グループが事業支配力の過度集中に該当するか否かということを判断することになるわけでございます。

 そういう意味で、九条の観点から何%株を持てるかということになりますと、これは、はっきり申し上げられますことは、二五%以下、そういう意味では、実質子会社でもない、二五%以下であれば問題がない、こういうことにまずなるわけでございます。

 次に、大規模金融会社と大規模な事業会社が同一のグループに含まれる場合を一つの類型として、過度の経済力集中の場合としてガイドラインで示しております。

 これは、独占禁止法そのものが、資料にもあったと思いますけれども、事業支配力の過度集中を三つの類型で定義しておりまして、ガイドラインはそれを受けたものでございますけれども、法第九条でこのような類型が禁止されましたのは、戦前の財閥におきまして大規模金融会社がその核となっていたこと、あるいは、戦後のいわゆる六大企業集団の中にも都市銀行がグループの中心となっているものがある、それから、金融会社の融資を背景とした影響力等々を考慮して立法されたものでございまして、ガイドラインはそのことを前提に、大規模金融会社について、都市銀行程度の規模を有するものとして十五兆円超と記載しているところでございます。

 郵便貯金会社等につきましては、このような立法の趣旨を踏まえて、実態も見て判断すべきというふうに考えておるところでございます。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、続きはこの次にやります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、特定局長を初め全郵政職員の雇用と労働条件についてお尋ねしたいと思います。

 郵政三事業に携わる方々の身分保障、これは、経営形態というものがはっきりしないで長い間非常に不安に駆られてきたわけですが、それが、あの平成十年の一九九八年、中央省庁等改革基本法によって、新たな国営の公社で、国家公務員としての身分を特別に付与するということになって、方向性が決まった。そして、それを受けて、郵政公社法で国家公務員とするということが定められたわけでございます。以来、郵政三事業に携わる皆様方、郵政公社の皆様方、懸命に三事業のサービスに今日まで頑張ってきたわけでございます。

 その国家公務員と定めたこの郵政公社法を提案し、成立させたのはだれですか。小泉総理大臣なんですね。小泉内閣なんですね。その小泉内閣が、今度は、国民が今なお大きく望んでもいないこの民営化によって約四十万人の郵政公社の職員を、今またもや不安のどん底に陥れようとしているわけでございます。

 そこでお尋ねいたしますが、電電公社あるいは旧国鉄と違って、郵政公社の場合は国営の冠がわざわざつけられた。そして国家公務員の身分を特別に付与、特別というものがついた。こういった理由や意義についてどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 いろいろな経緯があったと思いますが、基本的に、お尋ねは国家公務員である特別の理由ということだと思いますが、これまでのいろいろな歴史、またこれまで果たしてきた役割等々も踏まえて、また例の内容証明郵便とか、さらには裁判所の特別送達とか、そういった業務も踏まえまして、そのような経緯になったというふうに承知をしています。

横光委員 つまり、今のお答えのように、非常に公共性が高い事業であるということ。

 総理は、民間でできることは民間にと声を大にしておりますが、民間にできないことは公社でと、そういった思いで、この新たな国営という文言あるいは特別に付与するという形で、国家公務員として今頑張っているわけでございます。

 では、この公社の職員が国家公務員であることによって、何か不都合や問題点が生じたんですか。公務員の身分を剥奪して民間人となることによって、どのような効果やメリットを期待しているか、この二つについてお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 まさに公社、そして国家公務員であるがゆえの制約は何かというお尋ねだと思います。

 基本的には、公社全体としていろいろな見えない負担があるという議論は一方でございますが、民間でできることを公務員でやる必要があるのか、そういう一般的な御批判は一方であろうかと思います。

 その上で、公務員の身分を離れることによるメリットとしましては、例えば創意工夫とか、まさに労働のインセンティブ等々、やはり柔軟に、人事考課等々にも、給与なんかにも反映させていただいて、さらに働く方々の創意工夫が経営に生かされ、そしてそれが職員の待遇の向上にはね返っていく、そういうメカニズムをつくり出し得るというのがやはり一つのメリットだと思います。

横光委員 今の御答弁のような内容を、では、国家公務員では実現できないんですか。今給与のことをおっしゃられましたが、この公社の職員の人件費はこれは税金ではないわけですよね、もうおわかりのように。いわゆる三事業の、郵政事業の収入によって賄われている。これは、もっと言えば、つまり給与体系は半ば民間会社と同様の体系と言ってもいい。

 また、公社が発足して、四年間の中期経営計画、これを二年間で前倒しして二万人の人員の削減に郵政公社、また職員の皆さん方、一体となって努力してきた。公社という公共性と企業性を兼ね備えた事業体への移行を義務づけられた、その前の郵政事業庁、この時代も一万人削減に努力している、この時代を含めますと、何と三万人も減員に努力してきているわけです。

 つまり、公務員の身分を持っていても、公社の中で公社を成功させよう、そういった思いで労使ともに一生懸命、血のにじむような努力をしてきたじゃないですか。それを今回まさに急転直下、法律一本でこういう事態に今なろうとしている。

 公社の経営陣と職員のこういった努力をどのように評価されておりますか。

竹中国務大臣 公社の皆さん、特に生田総裁をお迎えになられてから、総裁のリーダーシップもこれあり、本当に地域に密着した、地域に愛されるサービスを提供された。やはり正直、国民の間で公社に対する信頼感、皆さん方の仕事に対する評価というのは私は高いというふうに思っておりますし、私も、先般の決算に見られますように、大変頑張っておられるというふうに認識をしています。

横光委員 今の認識のように、どこにも問題点がない、むしろ非常に高い評価をされている。それが今回、問答無用という形に今なろうとしているんですね。今おっしゃられたように、本当に地域に密着してやってきたわけですよ。

 あの新潟の大震災で、あのときの状況でもおわかりのように、自分の家も被災しているにもかかわらず、本当に地域のために大変な御苦労をされた。地域に密着しているからこそ、民間業者のほとんどがサービスをストップした、でも郵政公社、郵便だけはちゃんと配達された、そういった公的な、パブリック精神が非常にあったわけですよ。そういったパブリック精神、そして全体のために奉仕するという気概があるからこそ、私は、そういったことができると。

 しかも、これが何の説明もなく、あるいは今言われたように高い評価をされている、そして何の大きな支障が生じたわけでないにもかかわらず、小泉内閣が身分を与え、今度は身分を奪おうとする、こういうことに私は非常に強い疑問を感じているわけでございます。

 そもそも、国家公務員の身分を法律一本で民間人に切りかえることができるのかどうか。例えばドイツの民営化の場合は、株式会社公務員という概念を確立して、民営化された企業においても公務員身分の職員をそのまま保持する、保持できるという選択制をとったりしたこともあります。また、我が国の地方公営企業の経営形態の変更の場合も、民間に移行するケースだけでなく、公務員として首長部局に異動するケースもあります。

 いわゆる国家公務員という、試験で採用された公務員として働いてきたわけですから、いろいろな思いがあると思うんですね。民間人になることには納得できない、あるいは公務員身分を持ち続けていたい、さらには公務職場をあっせんしてほしい、いろいろな思いがあると思うんです。こういった本人一人一人の意思をやはり私は尊重すべきだと思うんですが、このような声にはどのようにおこたえになりますか。本人の希望とか選択権についての御見解をお聞かせください。

竹中国務大臣 職員の方々の立場に立って、そうしたことを十分に配慮しなければいけないというのは、これは五つの基本原則、十五年十月に定めた中でも、配慮原則として我々は真っ先に掲げたわけでございます。

 そういうことを受けまして、まず雇用に関して、これは郵政民営化法案の第百六十五条で、公社解散の際に公社に所属する職員は、承継計画の定めるところに従い、いずれかの新会社の職員になる。まず、雇用をしっかりと確保、保障する。

 そして同時に、待遇のお話を今委員されましたが、民営化に伴う職員の待遇につきましては、職員に不利益を生じさせないという観点から幾つかの配慮を行っております。

 四点、手短に申し上げたいと思います。

 新会社の職員の労働条件に関する事前の団体交渉及び労働協約の締結を可能としております。第二に、新会社の職員の労働条件を定めるに当たりましては、公社での勤務条件に対する配慮を、これは義務づけとしております。そして、新会社における退職手当の支給に当たっては、公務員時代の在職期間を通算することとしております。また、民営化後も当分の間、国家公務員共済組合制度を適用する。

 そのような形での配慮をしているところでございます。

横光委員 今御答弁のように、確かに百六十五条では雇用の継続というものは言われております。しかし、どの会社の職員となるかの通知は二週間前までにすればよいとなっており、どこの会社になるのか、あるいはどこの勤務地になるのか、不安なまま過ごすことになるわけでございます。席は確保したが、沖縄から北海道に行ってくれということもあり得るんじゃないか。

 郵政職員は、先ほど言いましたように、地域に密着しているからこそ、私は、その地域で高い能力や意欲が生かされると思うわけでございます。

 ですから、この民営化のプロセス、これを見ますと、最後は、いわゆる新会社の承継計画次第ということになると思うんですが、その前に、承継計画のもととなる政府の基本計画、ここにおいて、政府の責任で、職員の希望の尊重やあるいは地域雇用優先など、雇用についての考え方をしっかり盛り込むべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 この法律の精神を体して、しっかりと政府としては対応していくということ、これは当然のことであろうかと思います。

 配慮されなければいけない勤務条件としては、例えば公社時代の給与のほかに、勤務時間や勤務場所というのは当然に入ります。そして、従事業務とか休息、休日、休暇に関する事項等も、これは労働基準法十五条にあるような要件は当然満たされなければいけないというふうに思っているところでございます。

 本人の職業上、生活上の不利益に十分に配慮しまして、これは適切に決定していかなければいけないと思っております。

横光委員 つまり、承継計画の前の政府がつくる基本計画の中で、今のようなことを、私が申し上げたことを配慮するということでよろしいんですね。今、そういう御答弁でよろしいですね。

竹中国務大臣 基本計画に掲げる問題については、これは、承継会社等の資産、債務等、権利義務あるわけですが、同時に、承継会社に引き継がせる職員というのも、ここに掲げる基本的な事項になりますので、この法律の精神を体して、政府としては適切に対応していきたいと思います。

横光委員 先ほど、百七十一条で賃金、労働時間その他の労働条件というものはしっかりと明示されているということでございます。それは確かにそうです。しかし、雇用という大前提の文言がそこには入っていないんですね、百七十一条には。民営化された後の将来の雇用についても、不安が生じないような保障を明らかにすべきと私は思っているんですが。

 いずれにいたしましても、郵政三事業の改革に当たっては、国民、利用者はもとより、関係当事者の理解と納得を得ることが私は必要だと思いますし、関係労働組合やあるいは特定郵便局長の皆さんと真摯に話し合って理解を得る努力をしていただきたい、このように思っております。

 では、きょうはこれで質問を終わります。

二階委員長 次回は、明九日木曜日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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