衆議院

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第20号 平成17年6月29日(水曜日)

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平成十七年六月二十九日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      伊藤信太郎君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    奥野 信亮君

      金子 恭之君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    佐藤  錬君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    田中 英夫君

      谷本 龍哉君    西村 明宏君

      馳   浩君    早川 忠孝君

      古川 禎久君    松本  純君

      宮下 一郎君    山口 泰明君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      一川 保夫君    岩國 哲人君

      小沢 鋭仁君    大出  彰君

      岡本 充功君    川内 博史君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      園田 康博君    田島 一成君

      田嶋  要君    中塚 一宏君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      藤田 一枝君    古本伸一郎君

      山花 郁夫君    吉田  泉君

      若井 康彦君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    山本喜代宏君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  石野 秀世君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   永谷 安賢君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房参事官) 山本 茂樹君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          林  幹雄君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   津田 廣喜君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十四日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     保利 耕輔君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     小杉  隆君

  保利 耕輔君     今村 雅弘君

同月二十九日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     田中 英夫君

  大野 松茂君     早川 忠孝君

  城内  実君     西村 明宏君

  北川 知克君     伊藤信太郎君

  小杉  隆君     佐藤  錬君

  園田 博之君     金子 恭之君

  馳   浩君     谷本 龍哉君

  岩國 哲人君     吉田  泉君

  小沢 鋭仁君     田嶋  要君

  馬淵 澄夫君     園田 康博君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

  横光 克彦君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     北川 知克君

  金子 恭之君     園田 博之君

  佐藤  錬君     小杉  隆君

  田中 英夫君     古川 禎久君

  谷本 龍哉君     馳   浩君

  西村 明宏君     城内  実君

  早川 忠孝君     大野 松茂君

  園田 康博君     小宮山泰子君

  田嶋  要君     田島 一成君

  吉田  泉君     若井 康彦君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

  山本喜代宏君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     奥野 信亮君

  小宮山泰子君     岡本 充功君

  田島 一成君     小沢 鋭仁君

  若井 康彦君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     井上 信治君

  岡本 充功君     藤田 一枝君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 一枝君     馬淵 澄夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、各案審査のため、去る二十七日から二十八日までの二日間、第一班北海道、第三班佐賀県、昨二十八日の一日間、第二班新潟県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第二班中井洽君。

中井委員 新潟県に派遣されました委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、中井洽を団長として、理事石破茂君、委員大野松茂君、大前繁雄君、左藤章君、松本純君、一川保夫君、岩國哲人君、西村智奈美君、山花郁夫君、石井啓一君の十一名であります。

 このほか、近藤基彦議員が現地参加されました。

 会議は、昨二十八日、上越市のホテルハイマートにおいて開催し、まず、私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、新潟経済同友会専務理事事務局長水間秀一君、小千谷郵便局貯金保険課主任佐藤康二君、前守門村村長野村学君の三名から意見を聴取いたしました。

 その内容について簡単に申し上げますと、水間君からは、郵政改革は、我が国の財投改革の一環であり、構造改革の本丸であること、郵政民営化がなぜ必要であるかを国民にわかりやすく伝える必要があること、郵便貯金が果たしてきた役割をもとに新しいビジネスモデルを構築できる可能性があること、国民生活に多大な障害がなければ、将来的にはすべての会社を完全民営化する必要があることなどの意見が述べられました。

 佐藤君からは、地震に遭遇した中、郵便物や郵貯、簡保を夜を徹して守ったこと、道路が寸断されても地の利を生かして徒歩で運び、物資を届けたこと、震災による経験から、地域の人から愛され親しまれている郵便局は公社の中で発展させるべきであること、三事業一体だからこそ災害に対応でき、効率性も保っているので、四分社化では無理があることなどの意見が述べられました。

 野村君からは、民営化により、山村地帯、過疎地では郵便局の減少やサービスが後退する不安があること、旧守門村は老人が多く、郵便局員が配達の折に声をかけるなど密接な対応をしていること、すべて市場原理で改革を進めることは地方の切り捨てにつながると危惧していること、過疎地で銀行等のない地域では、郵便局が唯一の公的金融機関であり、将来に向けた安定維持が必要であることなどの意見が述べられました。

 次いで、各委員から陳述者に対し、被災地での郵便配達による苦労や教訓、配達をした動機づけ及び郵貯、簡保の非常取り扱いの考え方、公共施設建設で郵貯資金の貸し付けが果たした役割、郵政民営化の緊急性、法案の中で郵便事業及び金融のユニバーサルサービスを確保するために講じている担保措置の評価、民営化による経営の自由度と民間とのイコールフッティング及び民業圧迫に対する所見、中期経営計画の途中における郵政民営化についての評価、地域で集めた資金を地域に還元するための地域分割の考え方、郵便局での住宅リフォームやコンビニエンスストア事業に対するニーズの有無、中央省庁等改革基本法で「民営化等の見直しは行わない」としているにもかかわらず法案が提出されたことに対する所見、郵便事業会社への外資の侵食リスク、財投の入り口と出口を一体として改革する必要、民営化により郵貯の資金が民間に流れる見通しなどについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了いたした次第であります。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。議事録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催につきましては、豪雨の中、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに、深く感謝の意を表する次第であります。

 なお、豪雨のため、交通機関の遮断等により、委員川内博史君と意見陳述者新潟大学経済学部教授伊藤隆康君が出席できなかったことを申し添えます。

 以上、御報告いたします。

二階委員長 次に、第一班桝屋敬悟君。

桝屋委員 北海道に派遣された委員を代表いたしまして、団長にかわり、私から概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、二階俊博委員長を団長として、理事松野頼久君、委員園田博之君、北川知克君、坂本剛二君、桜井郁三君、馳浩君、五十嵐文彦君、伊藤忠治君、大出彰君、馬淵澄夫君、塩川鉄也君と私、桝屋敬悟の十三名であります。

 去る六月二十七日、現地において豊平郵便局を視察し、翌二十八日、札幌市の札幌プリンスホテルにおいて、いわゆる地方公聴会を開催いたしました。

 なお、この現地視察につきましては、地元紙で大きく報道されまして、伊藤忠治君を初め、写真で大々的に報道されたところでございます。

 会議は、まず、団長から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、社団法人北海道未来総合研究所理事長原勲君、渚滑郵便局総務主任村上一夫君、障害者の生活と権利を守る北海道連絡協議会会長片石松蔵君の三名から意見を聴取いたしました。

 その内容について簡単に申し上げますと、原君からは、郵便、貯金、簡保のいずれも民間で運営することが可能であること、居住形態に合わせた郵便局ネットワークの構築が重要であること、地域で調達した資金を地域で運用することが必要であることなどの意見が述べられました。

 村上君からは、地域行事への積極的参加やひまわりサービスの充実については地域との信頼関係により行っていること、民営化により採算の合わないサービスの切り捨てや地元郵便局がなくなることへの不安があることなどの意見が述べられました。

 片石君からは、障害者の立場から、民営化後も第三種・第四種郵便物の料金減免制度を維持することが必要であること、郵便局職員による点字図書の回収サービスなどのきめ細かなサービスが民営化により継続されるのかなどの意見が述べられました。

 次いで、各委員から陳述者に対し、民営化により公務員の身分でなくなることに対する郵便局職員の不安、民業圧迫と新事業の展開とのバランスにおける公正、透明なルール化の必要、四分社化に伴う消費税課税や口座維持手数料の徴収の可能性等による利用者への負担増の懸念、郵便局が民営化されることによる北海道の地域金融に与える影響、無集配の特定郵便局が簡易郵便局に切りかわることによる利用者サービスに与える影響などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了いたした次第であります。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。議事録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに、深く感謝の意を表する次第であります。

 なお、交通事情等の都合により、意見陳述者北海道大学大学院経済学研究科教授濱田康行君が出席できなかったことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 次に、第三班松岡利勝君。

松岡委員 佐賀県に派遣されました委員を代表いたしまして、団長にかわり、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、山崎拓理事を団長として、理事原口一博君、委員江藤拓君、柴山昌彦君、保利耕輔君、宮下一郎君、小沢鋭仁君、古賀一成君、中塚一宏君、中村哲治君、古本伸一郎君、谷口隆義君、横光克彦君と私、松岡利勝の十四名であります。

 去る六月二十七日、現地において、一日四便しかない第十八郵正丸に乗船して馬渡島に渡り、馬渡島郵便局を視察し、翌二十八日、唐津市の唐津シーサイドホテルにおいて、いわゆる地方公聴会を開催いたしました。

 会議においては、まず、団長から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序等を含めてあいさつを行った後、九州大学大学院経済学研究院教授堀江康熙君、佐賀県立女性センター・生涯学習センター顧問稲田繁生君、深川製磁株式会社代表取締役社長深川一太君、福岡市漁業協同組合玄界島支所運営委員細江四男美君の四名から意見を聴取いたしました。

 その内容について簡単に申し上げますと、堀江君からは、関西圏における局配置の実態は、顧客数を重視した展開がされていると思われる信金、信組と比較しても大差ないこと、預貯金規模から見た郵便局の経営効率性は低いこと、郵便貯金は運用面が脆弱であり、民間向け貸し出しの実施や商品設計に課題があることなどの意見が述べられました。

 稲田君からは、高齢化、過疎化の進展による一層の経済、文化の地域格差が存在すること、地方の赤字局は地域において重要な役割を果たしていること、三事業を一体とした経営を維持すべきこと、利用者利便に配慮した局配置の見直しは必要であることなどの意見が述べられました。

 深川君からは、経済界においても中央と地方の間には意識の差があること、官から民への流れは賛成であるが、郵政事業の民営化を急ぐ理由についての説明が不足していること、社会・地域貢献基金の存在は、企業のあるべき経営努力を軽んじるおそれがあること、利用者に安心感を与えている郵便制度を維持する工夫が必要であることなどの意見が述べられました。

 細江君からは、離島地域においては郵便と宅配便の両サービスの間には相当の差が見られること、福岡県西方沖地震の被災経験を通じ、非常時、災害時においても変わらない、郵便局の地域に密着した役割の重大性を実感したこと、民営化を急ぐメリット、民営化によりつくる社会の姿が見えないことなどの意見が述べられました。

 次いで、各委員から陳述者に対し、分社化の是非、公社形態を継続した場合の経営の先行きに関する所見、郵政事業の提供が公務員によりなされる意義、三事業以外にも提供している住民に対するサービスを維持する必要性、公社形態では効率性が高まらないとする理由、完全民営化会社に対する政府関与の方法などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了いたした次第であります。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。議事録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

二階委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班、第二班及び第三班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

二階委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君、内閣府大臣官房長永谷安賢君、内閣府大臣官房参事官山本茂樹君、内閣府大臣官房政府広報室長林幹雄君及び公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局次長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷本龍哉君。

谷本委員 おはようございます。自由民主党の谷本龍哉でございます。

 私は竹中大臣と同郷の和歌山でありますし、委員長も和歌山ということで、和歌山が三人そろうことはなかなか珍しいのでございますけれども、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 もういろいろな質問が今までありましたから、重なる部分もあるとは思いますけれども、まず冒頭に、そもそも論をいま一度お伺いしたいと思います。

 まず、民営化というものに対してですが、いまだに、公社のままで経営の自由度を高めて新たなサービスを提供可能にすればいい、こういう意見もまだ依然としてございますけれども、そうではなくて民営化だという部分をいま一度説明をお願いしたいと思います。

竹中国務大臣 谷本委員にお答え申し上げます。

 そもそもなぜ民営化かということでございます。公社は、これは、公共の目的を担保するために国の全額出資で設立されている特別の法人でございます。その業務範囲については、その設立目的を踏まえて、やはりおのずと一定の制限があるものというふうに考えております。民間企業が自由な経営のもとで実施しているような業務を公社という公的な性格の強い組織がもし実施するということになれば、その実施に当たりましては、やはり抑制的に考えざるを得ないというところがございます。

 また、そもそも郵政事業については、郵便、郵貯、簡保いずれの分野も、民間企業が自由な経営のもとで同様のサービスを提供しております。公務員でなければできない事業では決してない、民間による運営が十分可能であると考えているところでございます。民間にできることは民間にという小泉内閣のその構造改革の大原則に照らせば、民営化した会社が、市場原理に基づき、民間企業と同じ、同一の競争条件のもとで自由な経営を行いまして、新たな業務を実施する、それによって国民によりよいサービスを提供するようになることがやはり望ましいことであるというふうに考えております。

谷本委員 公社よりも民営化でサービスを広げるという話ですが、民営化論者といいますか、民営化した方がいいという意見の議員の中にも、こんなに急にやるのがいいのかどうか、しばらくは公社のままで改革を継続しながら、そして、上限を下げながら規模の縮小を図って、その後でもいいじゃないか、その方がいいんじゃないかというような意見もありますが、なぜ民営化かに続きまして、では、なぜ今やるのかという部分の説明をお願いいたします。

竹内政府参考人 お答え申し上げます。

 今のお話は、公社の経営改革の継続に加えまして、預け入れ限度額の上限引き下げによる段階的縮小を図った方がよろしいではないかと御質問だと思いますが、郵政事業の改革は、日本郵政公社に課されている官業であるがゆえの制約を取り払いまして、経営の自由度拡大によって、郵貯、簡保の資金、機能を市場経済の中で効果的、効率的に活用するとともに、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限有効活用いたしまして、国民や地域の利便性の向上をさせていくという方向で考えるべきものだと存じます。

 したがいまして、公社形態を維持したままでは、郵貯、簡保の残高の規模を縮小させるのみということになりまして、今申し上げましたような改革の成果は限定的にならざるを得ないものと考えておるところでございます。

 また、規模の縮小によりまして郵貯、簡保の役割を縮小させていこうという場合には、雇用への影響も問題になろうかと存じます。

 政府の改革案は、官があらかじめ適正な規模を決めまして強制的に規模を縮小させるというようないわば官主導のやり方ではなくて、民営化によりまして市場経済の中で適正な規模を実現させていくものでございまして、官から民への構造改革の進め方としては最善、適切なものと考えているところでございます。

谷本委員 こういうさまざまな、なぜ民営化か、なぜ今なのかという意見はいまだにたくさんありますので、やはり、国民に対しても含めて、しっかり説明をわかりやすくしていただきたいなというふうに思います。

 それと、これは四分社化をするということであるが、三事業一体で現在行っている経営の中で、これを四分社化することで効率性が失われるのではないか、そしてまた、現在のサービス水準が低下するのではないか、こういう不安感もいまだに大きな声としてあると思いますが、このことに対し、四分社化のメリットというものを説明をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 なぜ分社化なのか、なぜ四つに分けるのかという谷本委員のお尋ねでございます。

 今、郵政公社は、郵便の事業、窓口ネットワーク、そして郵貯、保険という、特性の異なる四つの機能を有しているわけでございます。この四分社化によりまして、一つの事業の損益状況が他の事業に影響を及ぼすことを未然に防ぐことができる、そして、各機能それぞれの専門性が高められる、機能ごとに効率的な経営が行われるようになる、その結果、良質で多様なサービスを安い料金で提供できるようになる、結果的に国民の利便性を高めることができるというふうに考えるわけでございます。

 より具体的に申し上げますと、第一に、特に金融システムの安全性の観点から、金融上の要因以外の要因によってこの金融システムの安定に影響が及ぶということは避けなければいけない、金融と商業を分離することが銀行法等金融法令に定める市場の一般的ルールであるというふうに思います。このため、民営化に当たっては、他の金融機関と同様にこのルールに服する必要があり、したがって分社化するものでございます。

 第二に、四つの機能に求められるサービスはそれぞれやはり異なりますので、分社化して各分野に特化していただいて、各会社が独自の事業展開を行うことを通じまして、それぞれの会社の潜在力が発揮されていくことが必要である。それが一段と発展することが、そうすることによってさらなる発展が可能になると考えております。

 第三の点としまして、それぞれの経営がこれは個別に評価されるようになることによりまして、やはり、良質で多様なサービスが安い料金で提供されるようになっていくと考えます。結果的にこれは、国民の利便性の向上が図られるということにつながるわけでございます。

 したがいまして、四分社化によって現在のサービス水準が低下することはない、むしろ、今申し上げましたように、各機能それぞれの専門性が高められて、機能ごとにその効率的な経営が行われるようになることによりまして、多様で良質なサービスを安い料金で提供することが可能になっていくというふうに考えているわけでございます。

谷本委員 今の点につきましても、この委員会のみならず、やはり国民の間に非常に不安感がありますので、これも、引き続きしっかりとしたさらなる周知、説明をしていただきたいというふうに思います。

 そもそも論の中で最後に一問ですが、この郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社、これは一般商法会社とすることになっておりますが、特殊会社ではなく一般商法会社にする、そこの理由を説明をお願いしたいと思います。

竹内政府参考人 お答え申し上げます。

 金融業務におきましては、信用も競争上決定的に重要でございます。郵便貯金銀行、郵便保険会社が民間銀行、民間保険会社と同一の条件で自由な経営を行い、より質の高い多様なサービスの提供を可能にするとの民営化の趣旨を徹底するためには、国の信用、関与を完全に断ち切る必要があるわけでございます。

 このため、両社につきましては、一定の政策目的を実施するための特殊会社とはせず、一般商法会社として設立した上で、その全株式を処分いたしまして、民有民営を実現することとしたものでございます。

谷本委員 このそもそも論につきましても、たくさん野党の方からもいろいろな声が上がっておりますが、まだまだ恐らく国民の間にも疑問がたくさんあろうかと思います。引き続き、みんなが納得できるような形で説明をしていただきたいというふうに思います。

 次に行きますが、次に、郵便局会社の経営の自由度の拡大とイコールフッティングに関する分野で一つ質問をしたいというふうに思います。

 この民営化に伴いまして設置される郵便局会社は、当然、現在の郵便、貯金、簡易保険、この三事業以外にさまざまな事業への展開というのが予想されます。例えばドイツでは、郵政民営化によりまして旅行業の分野に進出している、こういう話も聞いております。

 小泉内閣は、観光立国の実現を最重要課題の一つに掲げて、二〇一〇年までに訪日外国人の客数の倍増、訪日観光客一千万人を実現する、こういうものを掲げて、官民一体となって今キャンペーンを展開しているところだと承知をしております。総理のこの方針に賛同をして、全国旅行業協会あるいは日本旅行業協会、こういった民間の旅行業の方々というのも、協力を惜しまずに、今、観光関係者挙げて懸命に取り組んでいるところだというふうに思います。

 こういう流れの中で懸念をされることは、郵便局会社が窓口サービスの一つとして新規に旅行サービスに進出する、これは十分考えられることだと思いますが、御承知のように、現在の旅行業者の多くは、従業員が五人以下の中小零細業者というのが大半でございます。現状でも、激しい価格競争、あるいはインターネットでの旅行取引の増大、エアラインなどによる直販の増加、こういった影響を受けて非常に厳しい経営環境に置かれているというのが実情だというふうに思います。このような状況の中で、郵便局会社が全国二万四千七百の郵便局ネットワークをフルに活用して旅行サービス業に進出する、これは恐らく、今、現状の旅行業者にとっては非常に大きな脅威となっているというふうに考えます。

 郵政民営化の最大の目的は、当然経済の活性化ということでありますが、この郵政の民営化によって、逆に民間の旅行業者、これを圧迫し、民間経済の停滞を招いたのでは本末転倒になるのではないかというふうに考えますが、政府はこの点に対してどういうふうに考えられているのか。旅行業者の経営を不当に圧迫することのないような激変緩和措置を講ずるなど適切な措置を講ずるべきだと考えますが、これについて見解を伺います。

竹中国務大臣 谷本委員御指摘のように、民間の旅行業者の皆さん、観光立国、国の政策に本当によく御協力くださって、大変今頑張ってくださっているということを私も常々感じているところでございます。

 郵便局会社でございますけれども、この郵便局会社につきましては、郵便、貯金、保険といった従来の業務に加えまして、郵便局ネットワークという、これは大変重要な国民的な資産でございますから、この潜在力を十分に活用して、国民の利便性を高めるために、民営化当初から多様な新規業務への進出を可能というふうにしているところでございます。したがいまして、今、例としてお挙げいただいた旅行業、旅行業者代理業を営むことも、この郵便局株式会社法案上は、主務大臣に届け出ることによって可能であるという仕組みになっております。

 一方で、こうした新たな業務を営みます場合には、一般の企業と同様に、やはり各種の規制の適用を受けることになります。例えば、旅行業や旅行業者代理業を営む場合には、旅行業法に基づきまして、登録を受けた上で、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任することなどが必要になるわけでございます。

 そういう仕組みになっているわけでございますけれども、もう一点、委員が御指摘になった、その激変緩和措置が必要なのではないかという点、この点も重要であろうかと思います。

 この郵政民営化法案におきましては、まず、移行期は、郵便局会社が、これは郵政公社から引き継いだ人的、物的資産を活用するわけでございますから、他の民間事業者にはない優位性を持って事業を営むことが可能になるわけでございます。こうした点を踏まえて、同種の事業を営む事業者の利益を不当に害することのないように、つまり、同業の事業者に対して配慮義務を課すということにしております。同時に、民営化の進捗状況を郵政民営化委員会において検証するという形にしておりまして、経営の自由度とイコールフッティングのバランスの確保を図りながら民営化を進めていくように制度設計をしているところでございます。

 また、その後、移行期終了後でございますけれども、これについても、大企業である郵便局会社に対しては、中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律がございますが、この法律によって、中小企業者の利益を不当に侵害することのないよう、配慮義務が課されることとなります。

 こうした法制度に基づきまして、他の事業者との健全な競争が確保されることになるというふうに考えているところでございます。

谷本委員 この郵政民営化によってうまくいかないんじゃないかという意見もありますが、逆にうまくいき過ぎた場合に、やはり関連業種、本来の郵便あるいは貯金、簡易保険のみならず、これからは、新規に進出する可能性のある分野、こういうところで、今、逆に民営化会社ができることによって非常に圧迫されるんじゃないか、こういう心配が多数出ております。この点もしっかりと御認識をいただきまして、今、旅行業者を例に挙げましたけれども、本当に、旅行業に携わる方々、自分たちの仕事がなくなるんじゃないかという思いを抱かれておりますので、しっかりと激変緩和措置、あるいは、その業界が圧迫にならない、そういう施策を含めしっかりと考えていただきたいというふうに思います。

 次に、これは自民党左藤委員も質問されましたが、システムに関しまして、この郵政民営化とその情報システムの問題について少し質問したいというふうに思います。

 政府がもともと抱える情報システム、さまざまなコンピューターシステムについては、調達や運用の中に非常にむだが多いということで、三年ほど前から、自民党の中でも若手の議員が精力的に検証を行ってまいりました。当時、麻生大臣が政調会長でございましたからよく御存じのことと思いますが、この分野の問題については、参議院の方であったと思いますが、民主党の議員の方からもさまざまな指摘がありました。それに対して答弁されている麻生大臣の答弁を聞いておりまして、少し、そんなのもう三年前から自民党も中でしっかりやっているというような答えをしていただきたいなと思いながら、いつも答弁を見ていたわけなんですけれども、このシステムの問題、これは三年前からやってまいりましたから、各省庁に専門家、CIO補佐官をそれぞれ雇い、そしてまた、今、年間運用費十億円を超える三十六のシステムに関しては、それぞれ一つずつ刷新可能性調査を行い、そして、できるものから順次最適化計画を策定して実施に移す、こういう手順でこのシステムに関しては進めております。レガシーシステムという問題でありますけれども、これについて、先日、読売新聞に、年間で九百五十億円削減可能という記事が出ました。どこの資料から出たのかわかりませんが、現実にはもう既に二千億以上できるというところまで検証が進んでおります。

 こういう作業の中で、本来であれば、郵政も残っておれば対象になったわけですけれども、この郵政のシステム、例えば郵便貯金の郵便貯金オンラインシステムの場合には、六億二千五百万という莫大な口座を管理しておりますし、三十二テラバイト、三十二兆バイトという膨大なデータを保管しているという、政府の中に残っておれば最大のシステムということになるわけですが、これが今回、公社化、民営化の流れの中で我々の検証の対象からは外に出ていったということになります。

 この郵政のシステム、非常に細かいシステムを入れれば八十から九十ぐらいのシステムがあると伺っておりますけれども、これを、四分社化に当たって、二〇〇七年四月までにとりあえず暫定のシステムをつくる、それ以降また本システムに移す、こういうふうに伺っておりますが、これは本当に、この四分社化に当たって、まず暫定ということではありますけれども、円滑にこの巨大なシステムを移行することができるのかどうか、その点を御説明願いたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 郵政民営化に伴うシステム対応につきましては、郵政民営化情報システム検討会議というところで専門家の方に御検討いただいた結果、昨年十二月に、「適切な配慮をすれば、情報システムの観点からは、暫定的に対応することが可能である」という報告をいただいたところでございます。また、同報告を受けまして、郵政公社の方においても、「その指針に従い、今後全力を挙げて取組んでいく所存である。」という姿勢をお示しいただいているというふうに承知しております。

 したがいまして、郵政民営化に伴うシステム対応は円滑に行われるものというふうに考えておりますけれども、いずれにしましても、政府としては、公社と緊密な連携を確保して、万全を期すべく努めてまいりたいという所存でございます。

谷本委員 このシステムに関しては、万一支障がある場合には平成十九年十月一日まで延期するというふうなことが書かれておりますけれども、本当に間に合うのかなという不安は非常にあります。ですから、やはりこの分野、しっかりと早く前に進められるよう、当然これは法律が通らないとなかなかかかれないわけでございますけれども、非常に心配をしておりますので、しっかりとこれも見ていっていただきたいなというふうに思います。

 それから、システムに関しましては、今言いましたように、二〇〇七年四月までに暫定のシステムを組む、その後、本システムに移行する。これは、システムを検証していく中でいつも思うことでありますけれども、やはり、しっかりとした全体像といいますか、どういうものを最終ゴールにするのか、これをしっかり決めてかからないと、結局、非常に大きなお金がかかり、それがむだになってしまう。これがそれぞれの政府のシステムを検証する中でたくさん今まで出てまいりました。そういうふうになると困るという思いがありますので、この暫定システムそれから本システム、この間の一貫性というものをしっかり保ちながらこれは進められているのかどうか、最後民営化してしまえばそれは政府の関与しないところかもしれませんが、この移行期においてしっかりそれは一貫性を持っているのかどうか、お伺いしたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 システム対応につきましては、公社によって行われるものでございますので、その内容について確たることを申し上げられる立場ではございませんけれども、郵政民営化情報システム検討会議というところに提出されました公社資料によりますと、二段階のシステム開発ということを行うことに伴います作業量の増加というのは、大体五%弱にとどまっております。

 また、いわゆる暫定対応となりますのは、窓口の会社のシステム、それから財務会計のシステム、これは五社についてやります。それから郵貯の総合情報システム、この三つのシステムのみでございまして、その他の九つのシステム、これは、郵便情報システムとか簡保総合情報システムとか九つございますけれども、こうしたシステムは二〇〇七年四月までにすべての対応が行われるということでございますので、一貫性というものについては欠けるものではないというふうに理解しているところでございます。

谷本委員 確かに、民営化されればこのシステムについてはそこがすべて完了するということではあると思うんですが、この移行期において、そこが抱えている情報も、国民の非常に根幹的な、機微な情報がたくさんある、そういうシステムでありますので、民営化会社移行に際しまして、この情報システムの管理というのは非常に重要だというふうに思っております。

 その中で、これまたこれからシステムの調達をしていくわけでありますけれども、効率的な情報システム調達という観点から政府のシステムは今どんどん見直しをしているわけですが、民営化会社、この移行期において、これはもう民営化されるのだからすべてそちらに任せてしまうという形で行われるのか、それとも、何らかの形で政府としてそのシステムの調達に関しても効率化を目指して関与をしていくのか、その点をお伺いしたいと思います。

中城政府参考人 御指摘の情報システム調達を含めた調達一般についてでございますけれども、日本郵政公社は国の会計法令上の契約規定の対象外とされていることから、基本的には、現在においても、公社が自主的に定めた業務方法書等において効率的かつ経済的な調達が行われるように適切に運用されているものというふうに承知しておりますけれども、民営化会社後の調達につきましても、各会社の自主的な運用により、実態に適合した適切な調達が行われ、一般の民間会社と同等の調達手段が確保されるべきというふうに考えているところでございます。

谷本委員 わかりました。

 さらにそれに関してですが、現行は、これは別に縛りがあるわけではないと思いますけれども、郵政のシステムというのは、九割方、日本のベンダーといいますか会社がシステムもハードも占めているというのが事実だというふうに思いますが、外資系の企業も当然これに対しては興味を持っているところだというふうに思います。

 先ほども言いましたように、郵政公社が現在持っているいろいろな情報というのは、非常に国民にとって重要な、センシティブな情報がたくさんあると思います。それに対して、当然、個人情報保護法もございますし、いろいろな形でそれはガードはかかるんだというふうに思いますが、この民営化後の郵政分野の情報システムの調達に関しまして、外資系からどんどん参入してくる。それは歓迎だという立場であるのか、それとも、やはり国内でというような意識があるのか、これはWTOの協定等の適用の問題もありますが、その辺の考え方をお伺いしたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の情報システムというのはどこを指すかというのは、具体的にどういうふうな調達を指すのかというところは必ずしも明確ではございませんけれども、現在、公社は、WTOの政府調達協定の適用対象機関となっておりまして、基準額以上の調達を行う際には、WTOの政府調達協定に基づいた手続による調達を行うということが求められているところでございます。

 民営化後の各社は、民営化したことをもって直ちにWTO政府調達協定の適用対象から外れるというものではないため、仮に、御指摘の情報システムの調達がWTO政府調達協定の適用を受ける調達であるとすれば、適用対象を外れるまでの間は、同協定に基づいた手続により調達を行うということが求められるものというふうに承知しております。

 いずれにしましても、民営化後の会社に係るWTO政府調達協定に関する取り扱いについては、民営化の趣旨も踏まえまして、内外の関係機関と調整していくことになるというふうに考えているところでございます。

谷本委員 わかりました。

 このシステムの問題は、非常にまた重要な問題でもありますし、国民の生活に深く関係するものでもありますので、しっかりとした検証をしていっていただきたいというふうに思います。

 次に、郵政民営化委員に関する質問をしたいと思います。

 これは法律の中にも書かれてはおりますけれども、この郵政民営化委員、まず、どのような手順で選任されるかという点を説明していただきたいと思います。

中城政府参考人 郵政民営化委員会というのは、郵政民営化が、経営の自由度を拡大されること、それから民業圧迫がないことといったことの両面のバランスをとりながら推進されるように、また、行政の判断が有識者の中立的、専門的な意見を踏まえたものとなるように設立される機関でございます。

 そういう意味で、この委員というのは、郵政民営化法の第二十一条によりまして、すぐれた識見を有する者の中から内閣総理大臣が任命することとなるというふうに定められているところでございます。

谷本委員 この民営化に関しましては、準備期はもちろん、移行期においても、しっかり国会の側からも検証をし、さまざまな意見を出していくべきだと私は考えますが、この委員の選出に関しまして、総理が任命をするという形ではありますけれども、この民営化委員の活動に対して、それでは国会はどのように関与をしていくのかという点を説明を願いたいと思います。

中城政府参考人 国会の関与についての御質問でございますが、国会が郵政民営化について、民営化当初の各組織の発足の姿や民営化の進捗状況を的確に把握できるように、郵政民営化委員会が、法第十九条第一項第一号による三年ごとの検証結果というものに基づく意見、または第百六十一条第五項の規定によります承継の実施計画の認可というものに当たっての意見を述べたというときには、郵政民営化推進本部、これはその内容を国会に報告しなければならないというふうに定められているところでございます。

谷本委員 国会に対して報告という話でありますけれども、これは、だれが委員になるかも、この郵政民営化の流れを決める大きなポイントになると思います。こういうことも含め、できれば、本来であればもっと国会が関与をして、そしてこの流れをしっかりつくっていくということが重要だというふうに考えますが、今後その点も考慮していただきたいというふうに思います。

 時間は少しまだ余っておりますけれども、予定した質問は終わりました。

 最後に、通告をしておりませんけれども、簡単にでいいですから答えていただきたいんですが、昨日、自民党の方でも修正に関して話し合いがありました。こういった点についてどのように考えられているか、竹中大臣、一言よろしくお願いします。

竹中国務大臣 今現在、与党におかれましていろいろな議論がまだ進んでいるところだというふうに承知をしておりますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、非常に真摯に、熱心にいろいろ御議論いただいているというふうに承知をしております。

谷本委員 少し時間を残しましたが、以上で質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、田中英夫君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英夫でございます。

 竹中大臣を主にして、できるだけ私自身のいろいろ考えているところ、そして疑問に思うところをお聞きいたしたいと思っております。

 私自身は、実は、今公社として改革を進められているそのことを継続して四年間しっかりとやりながら、その上で、民営化とかまた公社のままとかさまざまなこれからの方法論について、いかにあるべきかということをきっちりと検証するという流れが一番今の時期にはいいんではないかという意味において、公社化法案というものを自由民主党の懇話会として出させていただいたその賛同者の一人でありますが、国会にはのっておりませんので、そういういきさつの中におる人間だというふうに思いながら、できるだけ理解ができることはやはりしていく、こういう意味でお聞きしたいと思います。

 民主党の皆さんから拍手をもらっていますけれども、別に民主党と連携しておるわけではありませんので、私の考え方にもしよかったら民主党がこぞって賛成をしてくれたらいい、こういうふうに思っております。

 そういう中でありますけれども、まず、先ほど地方公聴会の御報告がありました。それぞれ行っていただいた皆さん、出席していただいた皆さんには、その労を多としたいわけであります。先ほどの御報告ではよくわからないんでありますけれども、現地に行った人たちの委員の話等々を聞きますと、比較的、賛成論そして慎重論というものを委員を選んで出ているというはずでありますが、フィフティー・フィフティーというふうに考えると、やや、その中でもトータルが慎重論に流れておったやに、報道もそうですし、委員からも少しそのように聞いております。

 そういうことがこの法案審議の中にどのように生きていくのかというのは、もちろん国会の問題ではありますけれども、竹中大臣として、この地方公聴会の意見、こういうものについて、この公聴会というのが、政府の方としては、何のためにやって何の意義があるかという辺はいかがお考えでしょうか。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

竹中国務大臣 郵政の改革は、我々が考えております民営化は、やはり明治以来の大改革であると思います。かつ、国民の生活に非常に密着して、国民からも高い信頼を得てきた郵政の改革でございますから、やはり、国民一人一人にとって大変重要な、大きな意味を持っている問題であると思います。

 そういう観点から、地方公聴会におかれまして委員の先生方が、直接やはり国民の率直な声、期待もあると思いますし、御心配、懸念もあると思います。そういう問題についてやはり意見を集約していただいて、そして、そうした意見に基づいてさらに議論を深めていく。これは、政府にとっても立法過程においても大変重要なことであるというふうに思っております。謙虚に耳を傾けて、我々として説明しなければいけないこと、そういうことはしっかりと責任をさらに果たしていきたいと思っております。

田中(英)委員 今おっしゃっていただいたとおりであり、またそのようにお考えをいただきたいと思います。

 もちろん、提案している方は、その内容について報告を聞いて、政府側がそれですぐどうするというものではありませんので、国会としてそれがまたさまざまな附帯意見やふだんの意見になったときにそれを大切にしていただく、こういうことになるんだろうと思います。

 もう一つ、きのう、きょうの出来事と新聞の中で、この法案自身を何らかの修正といいますか変化をしていくことが、今日までの議論を正確にまた反映していくのに必要ではないかというような動きがあるというふうに聞いています。私も新聞報道なりしかわかりませんけれども、内容については、もちろん出てこなければわからないことでありますから、そんなことをお聞きするつもりはありませんけれども、本来、政府はこれが一番よい提案として出されているはずであります。

 そのあたりについて、そういう動きがあって何らかの修正提案があるというようなことについて、どのように今の時点で竹中大臣はお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、まさに今与党でいろいろな御協議をしていただいている中でございますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、いずれにしましても、今、非常に熱心に、真摯に、さまざまな角度から重要な御議論をいただいているというふうに思っておりますので、そのような議論を私どもとしてもしっかりと注視をしていきたいと思っております。

田中(英)委員 注視をしていきたい、こういうことで、そのようにしか言いようがないのかもしれませんけれども、要は、提案されたことによってこれだけの多くの議論があって、しかし、なおかつ民営化が必要であると政府提案ではおっしゃっておられる。

 そういう流れの中で、本来は、修正をすると変形をしてしまうというふうに当然政府は考えなければならないところであろうと思いますが、これが、進めるために何か修正のような話が出ておる。こういうところを、我々のようにそもそも論のところでさまざまな話をしている者には、極めて奇異に正直言って感じておるところでありますけれども、しかし今のお話ですと、何かやはり、トータルとして国会の意思であれば柔軟に考える、こういうふうにおっしゃったと理解していいんですかね。

竹中国務大臣 申しわけございませんが、先ほど申し上げましたように、まだ与党で御協議の最中でございますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、本当に熱心にいろいろな角度から御議論をいただいているというふうに承知をしているところでございます。

田中(英)委員 それでは、直接的な内容に対しての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、本来のそもそも論が先ほど谷本委員からもされておられましたけれども、やや同じような質問がやはり気になるのだなというふうに聞いておりました。そういう意味においては、やはり推進をしなければならないという意思も、そしてそこに、幾らか、どんな実際の結果が出るかなと心配をする向きもこの分野については大体集約されてきているのかな、こんな思いがいたしております。

 先ほど私が申し上げましたように、公社四年間の改革、その後にこれを速やかにもちろん検証して、どんな形であろうと改革を続けるということは当たり前のことでありますけれども、そういうことの中でこれを考えたらどうかというものにくみにしているという思いを今も持っておるわけであります。要は、それはあえて言いますならば、その先に民営化という議論が絶対にないと言っているわけではないわけであります。

 それならば、極めて具体的に言えば、ここの一、二年というものの時差ずれというものが、なぜ今そちらの、例えば、私の言ったようなそういう流れではいけないのかという意味において、これを今必ず成立させて進めていかなければならないという積極的理由というのは何なんだろうな、時間が何か間に合わないということがあるのか、そんなことを思ったりしながら、なぜなのかということをお聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 郵政公社の改革に関する田中委員のお考え、私も承知をしているつもりでございますし、勉強もさせていただいているつもりでございます。

 極めて根幹のところで、やはりなぜ今なのかという御質問でございますが、これもこの場でも答弁をさせていただいたことと重なるかもしれませんが、やはり、郵政を取り巻く環境が激変しているということなのだと思います。

 郵便に関しましては、一方でDM等々の大変な努力を行いながらも、トータルとして郵便の取扱量が二%から二・五%年々減っていく。これが十年続くと、本当に、三割とかそういう大きな減少になるということが懸念される。金融に関しましても、通信革命以上の速さで金融の技術革新が進んでおりまして、そうした中で多様な金融商品も開発される中、郵貯の残高、簡保の残高等々が減少を示している。

 一方で、国際物流に目をやると、アジアにおいて大変な成長市場が今隣にあるわけでございます。それに対して、国際的なインテグレーターと称する方々が、世界のマーケットが寡占化する中で、アジアのマーケットについても積極的に進出しようという姿が見られる。

 公社は生田総裁を筆頭に大変頑張っておられますが、そもそも中期経営計画そのものを見ても、環境は大変厳しい。そういうことが今、公社の周りに起こっているということではないかと思います。

 そうした中で、一方で、改革には大変時間がかかるという要素もございます。私たちも十年程度の移行期間を見ているわけでありますが、今後さらに環境の変化が予想される中で、移行のために大変時間がかかるという点も考慮して、やはり改革は急いで行う必要がある、そのように考えまして、今回の民営化法案を提出させていただいているわけでございます。(発言する者あり)

田中(英)委員 私が質問しますので、黙っておってください。

 質問の答弁に対しては、要は、いろいろなものが減少をしていく、事業ボリュームが減っていく、そのことが全体を成り立たすのに極めて厳しくなっていくんではないかというお話が今あったというふうに思うわけですね。

 それは必ずしも、数字的にどこまで激減したらどうなるのかということは、私もちょっと頭の中が大ざっぱなものですから余りよくわからないんでありますけれども、雰囲気として激減している、激減しているという話はあるんですが、しかし、どこまで行ったらその収支がひっくり返ってしまうとか、そういうものが確実に見えておらないだけに、何か、全体的に下がっていくということでもう民営化しなきゃならぬのだというところに結論が本当に行ってしまうのかなというふうに、正直理解ができていないわけであります。

 それともう一つは、特に郵貯、簡保の三百四十兆と言われるそういうものに対してでありますけれども、そのボリュームが余りに大きい、それで官で囲い込みをしてしまっている、だから、これを民間に流すことによってより経済活性化への道筋をつけなければならないという議論が、今もあるのか、かつてあっただけかよくわかりませんが、私の頭の中では今も残っておるんであります。そういう意味で言えば、減少していくというのは、別段、当然というか望む流れであるという、まあ収支の問題は別ですよ、ボリュームとしてはそういうことになるのではないか。今の状況で即民営に行くとか行かないの話はちょっと前にして、それでいいということになるんじゃないかな。

 それで、物流という問題については、物流に出て行くならばそれは今だという言い方はあるかもしれへんけれども、別に物流に出て行かなくても、郵便だけやっておったらいいんじゃないかという思いもあるわけであります。

 そして、十年間の移行期間というお話がございました。確かにそういうことが必要なんだろうと思いますけれども、まあ十年か九年か十一年かわかりませんけれども、それならば、その移行をしていくということのための今の民営化の踏み切りよりも要するに飛び込み、今の公社の中でそういうふうな方向にできるルール変えは何があるのかというふうに考えた方が現実的なんではないかな、このように思っております。

 今までは意見でありますけれども、特に金融について、少しその三百四十兆の運用ということについて、これが余りに官で囲い込みになっている。もちろん、もう今さら財投に行っているなんというようなそんな論議はないですけれども、どっちにしたって、その辺で民間の普通のようには流通しておらぬというところがよく議論になっておったような気がするんでありますけれども、その辺については、やはりこれは民間に、あえて言いますが、放出するという方が意義があるんだという見解でこの論理は成り立っているんでしょうか。ちょっとお教えいただきたい。

竹中国務大臣 今、田中委員からは、大きく二点についての御指摘と御質問があったかと思います。

 まず、将来の姿に関して必ずしもはっきりしないのではないのか、規模が縮小するとしても、それはむしろ、規模の適正な縮小に関してはよい面もあるのではないか、そのような御指摘であったかと思います。

 私どもは、そうしたことに関しまして、公社のままということではございませんが、業務が新たに拡大できない場合に今後どうなっていくかということを骨格経営試算で示させていただいております。その骨格経営試算によりますれば、やはり業務が、郵便の取扱量等々での低下を反映して経営が先細りになっていく。これは、数値的にどのぐらいの利益になるかということも含めてお示しをさせていただいておりますが、非常に大ざっぱに言いまして、骨格経営試算では、新規の業務をやれないような状況、公社という制約のもとでやれないという状況では、これが半分程度になる、さらには、金融環境がさらに変化して、今の長短スプレッド一・三%が過去平均の一%ぐらいに縮まるということがそれに加わりますと、公社全体の利益がほとんどなくなってしまう、そういう状況であるということをお示しさせていただいている問題でございます。

 やはりその意味では、経営の自由度を持っていただいて、他の事業にも可能な範囲で進出をしていただいて、そして経営の先細りを解消していただくということは大変重要なことだと思います。

 この考え方は、やはり、今公社にある資源をぜひ十分に活用していただきたい、資源を活用してほしいんだという考え、この資源の中には人的資源も入るわけでございますから、雇用にやはり深刻な影響を与えないような形でやっていきたい、そのような思い、そのような意味もその中には込められているところでございます。

 その上で二番目でございますが、資金の流れの、官から民に変えるその仕組み等々についての御指摘、御質問が第二番目にあったかと思います。

 今の公社には郵貯、簡保で三百四十兆円の資金が集まるわけでございますけれども、これは政府が集めたお金でございますから、やはりその資産運用はおのずと安全資産に限られざるを得ない。国債とか、今は仕組みは違っておりますが、かつては財投でございました。そうしますと、政府保証をつけて国が集めて国で使うという流れが、やはり公社のままではどうしても変えられない。その意味では、官から民にお金を流す、つまり、適正なリスクがとれるようなお金、民間の市場にお金が流れて、それが民間の企業、個人に使われて経済を活性化させていく、そのようなお金の流れの改革をやはり同時に実現していく必要があるというふうに考えるわけでございます。

 そのためには、もちろん、財投の改革、政策金融機関等特殊法人の改革、あわせて行わなければなりませんし、財政赤字そのものをできるだけ小さくしていくというお金の出口の話も必要でございます。お金の出口、お金の中間の経路、そしてお金の入り口、つまり、公的なお金の入り口であります郵貯の改革、そういうことをあわせて行っていくことが経済の活性化につながる道であるというふうに考えているわけでございます。

田中(英)委員 細かい議論はまた緻密な頭の人に任すとして、郵便事業をやっていて、要するに簡保と郵貯をやっていて、簡保、郵貯分も含めて、要はトータルで人件費も含めて収支が回っておる、そういう状況で今まで来ているわけですよね。今の議論は、それが、郵便を物流というのかどうか知りませんが、郵便とそして金融の部分も全体が縮小してきたら、そこで収支が合わなくなって経営がうまくいかなくなるかもしれない、いや、いかなくなるというシミュレーションがあるので民営化しなければならない、こういうふうに聞こえるんですけれども、それともう一つは、そういうネットワークのある資源というものを活用すべきであると。

 僕は、活用すべきであるとか、国家が今までにつくってきたシステムによっていろいろなものがありますよ。それは、民間と競争させたらしっかり勝てるような組織やノウハウや財産を持っておる分野というのはたくさんあるんですけれども、それを必ずしも全部民間にしてそんなところで競争せぬでも、要は、公益は公益の中にあることで持たせておくことの方が大事だと基本的には思っているわけです。ですから、三事業が縮小したって、それで僕は、正直言って、郵貯の金利がゼロであっても、そこに安全で安心な日ごろの簡単なポケット、要するに財布がそこにあるということの方がもっともっと大切だというふうに実は思っているわけです。

 私の首長経験からいいましても、今、合併が進んでおります。農協もそれで合併をしています、市町村合併と同時にというか並行して。本当にそれぞれのところにそういう機関がなくなってきている。その機関がなくなってきているのを、口では我々地方の首長でおったときに郵便局を利用する、利用すると言いながら、実際は郵便局の使い勝手もなかなかうまくなかった。ですから、そういうお互いルール調整はあるとしても、そこにそういう、逆に言えば公的に見た資産、資財というかが残っているという物すごく大きな意味があるんですよ。

 ですから、それは特殊会社でもいけるんやといえばそうなのかもしれませんけれども、私は、できるだけ今の形でどのようにいけるかということを前提にしながら、そして、それによって従来の郵政事業というものの枠組み、ルールを変えながら、どうしても変わっていかなければならないのは何か、このような思考ルートでやはり説明がされないと、先ほどの谷本委員の質問の中で政府委員の答弁も聞いていましたが、郵政民営化計画の方針によってと。それは、方針によってじゃなくて、方針が何で決まったのかとか、方針がいいのか悪いのかというのがそもそも論というものであって、方針から後で話をしたのだったら、それはあとはテクニック論しかない、こういうことになるわけでありまして、いかにもそういうふうに聞こえるわけです。

 最終的に、それならどうしてもこれが成り立ちにくいんだ、あえて言えば成り立たないという結論が出ているんだというのは、要は、郵貯のお金が、今までは財投で完全に安定的に差を抜いておった、こういうことがありますね。今は、この金利状況の中で、国債を持つことによって、なぜか危ういけれどもなぜか差を抜いておるというところがありますね。本来は、そういうふうには今後いけない。だから、民間の中で貸し出し等々も含めていわゆる市場経済の中に入れないと、実際に郵貯というものが、今後、安定的とは思わぬけれども、リスクも伴いながら、それが貯金や何かの利子を国民に返していくそういう利益、もしくは、あえて三事業一体でいえば、郵便の部分の不足もカバーするようなそんなものが得られないのではないかという、その郵貯の運用のところに何となく私は、いろいろ考えると最後の議論が返ってくるような気がするんです。大臣も、前に、今の国債の状況と一般市中金利、そしてお約束している金利とのこのかげんというものは、これは今の一時的なものであって、本来、基本原則的なものではないということをおっしゃっていましたし、僕もそれはそうだろうと思うんです。

 しかし、その先に立って、それなら、先ほど私の言いましたように、できるだけ今のものを壊しながら、それを何とかカバーしていく方法がないんだろうかという検討はどうなされたんかなということになるんですけれども、実はその中に、いろいろこの特別委員会の議事録等々を見ておりましたら、例えば、地方のリレーションシップバンキング、いや、もっと小さな第二地銀以下、以下と言うといかぬかもしれぬけれども、のようなところは、実際、このごろ預金が集まらへんのですね。実際、預金が集まらなくて、そっちはどっちかというと、預けてくれとこういうふうに言う。しっかりしたところは何ぼでも集まってくる。もう余り預けてもらわぬでもいいけれども、貸し先が必要なんだとこうなる。メガバンクは、だから小さいところまで貸しにいく。それで、小さなところは、本来はマンツーマンで目ききもできる、そういう能力というより人づき合いがありながら、なかなかそのバックの資金というものの中で金利勝負ができない、こういう状況がある。それを証券化することによって、証券を、郵政における郵貯、簡保、年金もそうでしょうけれども、そういうところが買って、また資金をそっちへ流してやって、そっちがまた貸し出し能力があるという、能力というか、そういう糸が零細企業とつながっているというところがより活性化していくというそんな意見を言われていた方もありますね。

 ですから、そんな方法論も含めて、今ここで言っておっても、もう一年ぐらい前の話かもしれませんけれども、本来は、そういう方法が実際に成り立たないのかというようなこともたくさん考えた上で、あく、あかんという話をしないと、なかなか本当の意味で理解が広がらない。いや、私自身に理解が広がっていないわけですから、広がらないんじゃないかなと、そう思っているわけです。ですから、その一点、本当に郵貯が要するに利幅がとれるのかと、簡単に言うたらそういうことなんですけれども、利益が得られるかという、そこに三事業が、あえて話を戻しますと、三事業のままでいけるのか、いやいや、それのためには民営会社やないといけへんのやという理屈になっておるのか、それしかないと思うんですが、私は三つでいけるんだ、いけるはずやというふうに思っておるんですけれども、そこのところの竹中大臣の御見解をお聞きしたい。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 今の田中委員のお話を改めて伺いまして、今、まさに今回の改革の極めて本質的な、特に金融的な側面からいいますと、コアの部分の御議論をいただいたというふうに思っております。

 民営化の必要性、これは、突き詰めればやはり金融の問題かと。私は金融だけであるというふうに申し上げるつもりはございませんが、ほかにもございますが、金融の改革の要素が非常に大きいということは、これはもう間違いない事実であろうかと思っております。

 その中で委員の御指摘は、以前私が御答弁させていただきました国債金利と預金の関係等々もある程度お認めいただいた上で、それでもほかにまだやる道があるのではないのか、そういう検討はちゃんとしたのかという、その意味では極めて本質的な問題提起であろうかと思います。

 今の金融の状況の変化の中で、まさに金融仲介のあり方が、これは郵政だけではなくて、世界じゅうで大変大きく今変化をしているということだと思います。郵政の観点から一つ明らかなことは、やはりこれからは、銀行業として、この大変大きな仕事の中で銀行業が大きなウエートをもう現実問題として占めているわけでありますから、そこで非常に大きな雇用も支えているわけでございますから、この活動を続けていく上では、しっかりとこの金融仲介のリスクをとったビジネスにやはり入っていかざるを得ないだろうというふうに考えるわけでございます。

 そのときには、当然のことながら、先ほど申し上げたように、公的な目的のために設立している公社ではおのずと制約がある。国の機関としてそういう新たなリスクをとるということをやっていきますと、民間とのイコールフッティングの問題等々さまざまな問題が出てくる。だからこそおのずと制約があるわけでございます。

 そういう観点からは、これをやはり突き詰めて考えて、いろいろな運用の仕方はあるかもしれません。しかし、それに関しても、やはり民営化をして、経営の自由度を持っていただいて、この難しい金融仲介の仕事、これはもう日進月歩でございますから、民間の英知でやっていただく必要があるのではないか。リスクをとれることにする、そしてイコールフッティングを確保する、そういう観点から、やはり、イコールフッティングに配慮しながら民間の経営の自由度を持っていただくことが唯一の解決策ではないのかというふうに我々なりに結論に達して、この法案を提出させていただいているわけでございます。

田中(英)委員 質問をしておる方が余り数字に強くないので、アバウトなことを言っていますので、お答えの方も大体雰囲気を伝えてもらっておるような気がするんですが、雰囲気同士で言うておったらちっともかみ合わへんというか、ベースのところはそうやなということになるわけですけれども、本当は、私は、そういう意味で、三事業一体化しながら縮小していっても、要は、郵便の命を税金で、郵便ということ、郵便局がその地域地域にあるというその意義合いを要は税を使わないで回していく、その上に、郵便貯金という手軽なセーフティーネット、家に置いておいたら火事になってたんすの中で燃えてしまうかもしれぬお金が預けられる安全な場所があるというその程度のことが、郵便事業のやはり一番今日まであった便宜性というか価値だというふうに思いますので、そういう意味では、そこへ話を戻せば、今のそれを経営していくということは可能であるんではないかなと実は思っておるわけです。

 具体的にちょっと聞いてみますと、郵貯と簡保で三百四十兆と言っていますが、銀行、都銀、地銀で四百九十兆ぐらいの預金量があるそうです。先に聞いておかぬと時間がないと思ったのであれしたんですけれども、貸し出しが三百六十四兆ほどだそうです。そして、国債に行っておる分も引くと、実際に今の銀行、メガから地銀以下皆足して三十五兆ぐらいが預金量から引くと残って、あと幾らかの何かに使われておる。そこへ、この三百四十兆のうち国債が、これが百六十四兆ほどありますけれども、それ以外の金をどう運用するんやというところに入っていったら、単に融資だけではない、証券にも回るでしょうし保険にも回るでしょうしという、いわゆる金を放出するという意味ではなるんでしょうけれども、銀行、保険会社ができるということで、それが金融上の運用をしていくとこういうふうに考えたら、銀行の融資だけでいうたら、今のところ三百六、七十兆の貸し出しをしているところにまだ二百兆もの余剰資金が流れ込む、こういうことになるわけですよね。うまくいったら小さいところは大変になる、うまくいかなかったら、民営化した郵貯会社というのが大変なことになるというような状況にあるんではないかなと、私はこう思っております。

 時間があれですので、もう一つ、ちょっとこれは本当にわからないので教えてほしいんですが、郵貯会社、簡保もですけれども、それを株式会社化して株を放出する、全部売るのや、こういうことになっていますよね。どないして売るんですか、それは。

 要は、そうやってやっていった、先に疑問を申し上げておきますが、だれが社長をするのかどうか知りませんが、今の日本は、一人で会社を起こすか、それか今ある会社というのは、ある程度のパーセンテージの株を持ち、そうした中でそれを中心とした人が経営者としておるという、静止的な状況でいえばそうなっておるんですけれども、今から一つずつを公募か何かで全部ばらけていって、だれが安定株主とか、まあ多数というのか、それが一〇%でも何でもいいですけれども、そういうものも何にもない中で全部放出してしまって、あるときに株主総会を開いたら、なら私が筆頭やという人間が出てきて、あっと思ったらそれが違う支配になっておったと。えらい漫画チックな、粗っぽい言い方ですけれども、私の頭ではそのぐらいしかわからぬのですけれども、これはどういうふうになるのかなと思っているんですが、教えてください。

竹中国務大臣 株の処分、放出の方法、そしてそのときの株主の姿、イメージ、経営者はどうなるのかというお尋ねだったかと思います。

 郵便貯金銀行と郵便保険会社の株式の処分につきましては、これは、売却規模が極めて大きくなると考えられますこと等から、やはり市場で売却することが基本になると考えられます。ただし、処分の方法としては、ブロックトレード、自社株買いといった売却でありますとか、委託者が議決権行使について指図を行わない有価証券処分信託等も含み得るところでありますから、これは、さまざま金融の手法を活用していくということであろうかと思います。

 また、この両社の株式処分でございますけれども、市場で売却することが基本になると考えられますが、具体的なこの株式の処分方法については、日本郵政株式会社のこれは経営者の経営判断によるものであります。処分の結果株主構成がどのようになるかということをしたがいまして現時点で想定することは、これは困難であるということを御理解いただきたいと思います。

 郵便貯金銀行と保険会社の経営者でございますが、設立当初は、これは、発起人であります日本郵政株式会社が決めることになります。そしてその後は、一般の商法会社と同様に、株主により株主総会において取締役の選任が行われることとなるわけでございます。

 具体的なお話はなかなか現時点ではできないわけでございますが、枠組みとしては以上のような枠組みになっております。

田中(英)委員 まあそうだろうと思うんです。移行期間のときには国の関与がありますから、そういう中で経営が続いていって、その最後のときに、完全に株が放出されたときにほんまの意味の民営化になる。民営化になったときには、それが、安定的なそういう意味での株式、安定的というと変ですけれども、どこかこの意図をしっかりと持った人がある一定数の株を持ちながら経営陣の中で中心的になっていけるというシステムが現実にできるのかと言えば、移行期間でうまくやるのやと言えばそうかもしれませんけれども、今まさにおっしゃったように、経営者の判断でどのようにして株を放出するかを決める、一方では、経営者は、何しろ最後までには全部売らなあかんということだけが言明されておる、こういうことでありますから、一方でいろいろな手法があるんでしょうけれども、私にはわかりませんけれども、しかし、せっせせっせと出していたら、だれかがそれをせっせせっせと買っていたら、あるときにふたをあけたら、ある一定の意図を持った者がそれを所有しておったということが起こり得るのではないかというふうに思うわけですね。

 そうすると、最初から、何もある程度の部分について、これは本来の民営化の趣旨がそうであるとおっしゃるのならば、そうできるようなそんな危うさを残す必要がなぜあるのか、なぜ一〇〇%売却にしなければならないのか。一〇〇%株式を売ってしまったということで完全民営化をやったんやと言うたら、そうか、一〇〇%売ったか、ようやったとだれが言うのか、だれに褒めてほしいのか。要するに、そこのところに私たちは非常に疑問を感じます。(発言する者あり)アメリカという話が出ていますが、必ずしもアメリカの年次改革要望書だけがどうだとは言いませんけれども、しかし、それにかなり沿った結果になっているなということは、当然私どもも思っております。

 そういう意味で、これはちょっとその辺の経営者の判断というよりは、それなら、一経営者としてこれを計画されている皆さんがもし入っていったら、来年、再来年のところから順番に放出していくんだろうと思いますけれども、最後までいったときに、この意図が確実に間違いなくある一定の株保有集約ができて、そして経営者としてそれができるんだというそんなルートというものを、ルートというか流れというものを一遍やはりきちっと考えておいていただかないと、どこかで、我々はルールをつくっているんだ、あとはやる方が考えたらええんや、こういうふうに言っていても、やられる方の方がそれは大変なんじゃないかなと私はそう思うわけであります。

 これはどこまで行っても疑問でしか残らぬと思いますので、今のそのルールにのっとって一つ思うんですが、郵政の民営化準備室というのがあります。そこの職員さんというのは公社の人間ではないから、これは民営化しても株式会社の方へは行きませんよね。だろうと思うんです。ですからいいかげんにしているとは言いませんが、何か自分たちは行かないところでルールをつくって、こっちで動く人間が動かされるようになっていっているというような都合があるんじゃないかなということで、これは、だからどうだというような心意気を聞く気もありませんけれども、ひとつ、公社として移っていく人たちのその思いというものを十分に考えてやっていただかなければならぬということを申し上げておきます。何かあればまた言っていただきたいんでありますが。

 そのときに、最後に質問ですけれども、国家公務員であった郵政事業庁の人間が、公社という名前で改めてこの間公務員として公社に雇われて、そして、なった途端に公務員は首や首やと言われておるわけでありますが、それはそれとして、このルールが決まったら、途端にその民営会社の一般従業員になる。今度は、金集めてこい、貸出先を探せとこういうふうに言われて、おまえ、能力ないなと言われたら、いわゆる事業上の正当な理由によって解雇されるという方法になるわけでありますが、そこらはルール的には問題ないのかということを質問として聞かせていただきたい。

 それで、もう時間がないのでもう一つ言っておけば、私は、地方の首長として、どうやって役に立たぬ公務員を首にするかというのに苦労してきました。この方法ができるんだったら、もうすべて事業のある部分のあるところを民間に移して、地方政府もですよ、それで、その後に経営者が入って、おまえは役に立つ、役に立たぬと言うてやっていったら、ああ、これは公務員を減らしていくのはいとも簡単なことだなと、本当は麻生大臣がおったら聞きたかったんでありますが、そういうことになるなと、ちょっと粗っぽいですが、思っております。

 ルール的に大丈夫なのかどうか、ちょっと教えておいてほしいと思います。

竹中国務大臣 委員の前半の御指摘で、やはり、公社の意向を十分に反映させるようにしていかなければいけない。そのような仕組みをつくっているつもりでございますが、運用におきましても、委員の御指摘を十分踏まえて実行に移していくように努めたいと思います。

 御質問の公務員の問題でございますが、これは、郵政民営化法案第百六十五条の規定というのがございます。この同法の施行のときにおいて、公社職員は新会社の職員となり、国家公務員の身分を離れることになるわけでございますけれども、これまでも、新組織への移行に関する法律において職員の引き継ぎが規定される場合には、その法律によって職員は国家公務員の身分を失い、新組織の職員として引き継がれるものと整理されてきたところでございます。国立大学法人化の際も同様の整理がなされてきたというふうに理解をしております。

田中(英)委員 時間が来ましたので終わります。

 ちょっと私の方の思いを述べながら質問しましたので、必ずしも頭の中はすっきりしていないんでありますけれども、少し今後の動きを見ながら、私自身もできるだけ理解をしたいとは思っていますが、ちょっとできかねておるという状況であります。

 それで、今の最後の、大学等が独法になった、だからということを、どこへ行っても、人事院でもそう言うんですよ。しかし、それはちょっと正直言って違うと思います。これだったら、建設省の中のどこかに橋梁建設事業団というのをつくって、そこの人間を全部そっちへ移して、次に株式会社にして、その人間の中でよさそうなのだけ残して、あかんのはつぶすとか、いろいろ人事的に非常にやりやすくなるなということだと思いますけれども、ちょっと、本当にうまくそんな移るのかなという疑問を持っています。そこだけは変なことにならないようにうまくやっていただきたいと申し上げておきます。

 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 委員長を初め理事の皆さん、そして各委員の皆さん、地方公聴会、大変お疲れでございました。既に八十五時間にもなる総審議時間になっておりまして、竹中大臣も大変お疲れでございます。(発言する者あり)さらに元気を出してやれということでありますから、頑張りたいと思っております。

 きょう、私、三十分議論したいのは、実は六月十五日にやる予定でありましたが、さまざまな事由から飛ばされてしまいまして、今日になったわけであります。質問する時間を得られたということを喜びながら議論したいと思っております。

 先ほどの同僚委員の議論にもありましたけれども、本日の私の議論は、目いっぱい公社の立場に立って、今回の郵政民営化法案というものを改めて考えてみたい。

 と申しますのは、私どもは与党の一員として法案策定作業にもかかわってまいりましたけれども、実現可能な改革でなければならない、この観点をずっと言い続けてまいりました。そういう意味では、公社、生田総裁、この後いらっしゃるようでありますけれども、総裁のお考え、お立場、まさに公社の総裁としてどういう気持ちで今この郵政民営化法案を見ておられるのか、どこに懸念を持っておられ、どうしたことに最大の関心を持っておられるのかということを念頭に置きつつ、そんたくをしながら議論をすることも必要だろう、こう思っておりまして、そうした観点から議論をさせていただきたいと思います。

 そういう視点で考えますと、民営化されるわけでありますから、まさに総裁が何度もこの特別委員会でおっしゃっているように、経営の自由度ということは、これは一方においてお求めになる、少しでも自由でありたいというのは、これはまた至極経営者として当然のお考えかな、こう思っているわけであります。民営化するのであれば、そのスタート段階から、今回、二〇〇七年から十年の移行期間がありますけれども、そのスタート段階から経営の自由度というものをできるだけ拡大したい、こうお考えになるのは、私は無理からぬことだろうと。

 もちろんそのために、当然ながら、大きな規模でありますから、リスク管理体制や審査体制があわせて整備されているということはもちろん必要でありますけれども、それを前提といたしまして、やはりスタート時点から適切な新ビジネスモデルが導入できるように、そうしたことも重要ではないかな、こう思っているわけであります。

 そういう観点で確認をしたいんですが、まず具体的に、郵便事業会社とそれから郵便局会社、スタート時からどうした新しいビジネスが取り組めるのか、具体的にどうなっているのか、確認をさせていただきたい。

 そして、その後、郵便貯金銀行、郵便保険会社についてもあわせて確認をさせていただきたい、このように思います。一つ一つお答えをいただきたいと思います。

西川副大臣 今、桝屋先生がおっしゃられましたように、スタート時点から経営の自由度を最大に拡大しろ、こういう話も理解はできるんでありますけれども、私どもは、民業圧迫の部分と、それからイコールフッティングの部分と総合的に勘案してこの法案をつくり上げた、ともにつくり上げた、そういう立場でお答えをする、こういうことになります。

 そして、郵便事業会社、郵便局会社でありますけれども、具体的にどのような新規事業に進出するかはすぐれて経営判断にかかわる問題である、こういうふうに考えております。これらの会社につきましては、郵便業務等その目的とされる業務の遂行に支障を及ぼすことのない範囲内で、目的外の業務を営むことができることとしております。民営化当初より、経営者の創意工夫を生かした自由な事業展開が可能となるような制度設計とはしている、こういう考え方であります。

 そこで、郵便事業会社、また郵便局会社でありますけれども、発足後直ちに新規事業を円滑に展開できるようにするためには、民営化前の準備期から具体的な事業展開のあり方等について検討を開始することが重要な課題である、こう認識をしております。

 このため、郵政民営化法案におきましては、将来の持ち株会社となる準備企画会社、日本郵政株式会社に当たるわけですけれども、これを民営化前の準備期に設立しまして、そこに将来の経営者となるべき者で構成される経営委員会を設置し、郵便事業会社や郵便局会社の民営化後の事業展開を含めた民営化の検討、準備を進めてもらうこととしております。

 なお、国際物流事業については、今後発展が見込まれる、そういう観点に立ちまして、特にアジア市場には欧米の四大事業者が進出を開始しておりますので、他の事業に比べてノウハウの吸収等の準備行為を早期に進める必要性、緊急性が高いことから、イコールフッティングの確保等の観点から、一定の制約を課した上で、出資及び出資子会社からの受託という形で公社時からの事業進出を可能とすることとしております。

桝屋委員 今お話がございました国際物流でありますけれども、準備期間中からもしっかり準備をしていけば対応ができるという御説明でありますが、法文をずっと見ておりますと、一定の制約のもとにと今副大臣がお答えになりましたけれども、まさに一定の制約。しかし、私は、今副大臣がお答えになったことは必要なことだとは思っているんですよ。何でもかんでも自由でいいとは思っていないんでありますが、しかし、これは、公社側といいますか、民営化される会社にとってみれば、何のための民営化なのかと思ってしまうぐらい、いろいろ一定の制約が大き過ぎるんじゃないか。

 最終的には総務大臣の認可ということになるわけでありますが、公社が申請をし、認可するに当たっては、今お話のあった準備企画会社あるいは民営化委員会の意見を聞かなきゃいかぬ。そして、同種の業務を営む事業者への配慮規定まで法文で書いてある。

 もちろん、民業圧迫という観点はすごく大事なわけでありますが、総裁がここで何度もおっしゃっているように、アジアを中心に国際物流というのは今がチャンスだ、こうおっしゃっているわけで、民営化された会社として本当に取り組むのにここまでいろいろハードルをつくられて、果たして本当に、法文上は、形式上は確かに取りかかれるというふうになっているけれども、実態として、これは本当に二〇〇七年から直ちに開始ができるものかどうなのか、本当に何のための民営化なのかな、こう思ってしまう節もあるんでありますが、副大臣、いかがでしょうか。

西川副大臣 今、民業圧迫もあっても早く出ていった方が、事業を制約なくやった方が意欲が発揮できるだろう、こういう考え方かと思います。

 公社の総裁も何度もここで申し上げているように、なるべく早く国際物流に進出をしたい、この考え方は私ども理解をしておりますので、すぐれて経営判断ではありますけれども、準備期の間になるべく早く対応ができるように、私どももそれを見守っていきたい、こう考えております。

桝屋委員 すぐれて経営判断だと言われると、本当に今回の改革が大きな成果を上げ得るのかどうかという観点で、私もいささか心配をしているわけであります。既に証券投資信託あたりの販売も可能になっておりますけれども、何度も言いますけれども、できるだけ早くという、これは当然の思いだろうと思っているわけであります。

 郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社、やはり金融サービスについては、二〇〇七年スタート時からやろうと思えば何ができるのか。いろいろできるところからやるんだ、シンジケートローンという、私は余り詳しくない、何度もここで出ておりますけれども、これは本当にできるのかどうか、スタート時から何ができるのか。一定の手続と多分おっしゃるんでしょうが、一定の手続というのはどういう手続、所要の手続というのは一体何なのか。ここも本当に民営化されたのかどうなのかという懸念を持ちつつ私は聞くわけでありますが、お答えをいただきたいと思います。

西川副大臣 同様のお話で、郵便貯金銀行そして郵便保険会社でありますけれども、何ができるのか、こういうことのお話でありますけれども、私どもの少し具体的なイメージを申し上げたいと思います。

 民営化後の郵便貯金銀行、郵便保険会社でありますけれども、具体的にどのような道筋で、これも同じなんでありますが、業務拡大を図っていくのは経営陣の経営判断による、ここは同じような考え方に立っています。そして、御指摘をいただきましたように、民営化委員会、そして主務大臣、金融監督当局のチェックによって順次新規業務に進出をしていく、こういうことになるわけであります。

 これ以上申し上げろと言われましても、すぐれて経営判断だということになりますと、私どももなかなかそこは申し上げにくいところでございますが、あくまでも一つを想定して申し上げれば、民業圧迫の度合いが少なくて、業務遂行能力の点でも、現在公社が行っている業務と親和性のある業務、運用対象、例えば郵便貯金銀行について言えば、ABS、私募債、そして先ほどお話が出ましたシンジケートローンといったような業務を手始めに順次拡大を図っていく、こういう考え方でございます。

桝屋委員 そのお答えを何度も聞いてきて、あえてきょうは重ねて、私は公社の立場から、では具体的に何が最初からできるのかなということを改めて聞いているわけであります。

 今、何度も御説明で言いました経営判断という話、それから、具体的に、できる限り早く準備企画会社あるいは民営化委員会、そうしたものを準備期間中から立ち上げて、検討や体制整備、そして主務大臣や民営化委員会、あるいは監督当局と相談をしながらやっていく、こういうことだろう、スタートは今やっているサービスからスタートだと。こういうことで、私は、本当に民営化というのはそんなに簡単なことじゃないんだな、新規事業なんて簡単にできることじゃないな、こういう感じを持っているんです。

 ただ、今の話の中で三つぐらい確認したいことがあるんです。

 一つは、民営化委員会と公社の総裁の権限関係。十八年四月に多分設置されるでありましょう民営化委員会と、それから、公社の総裁というのは十九年三月まで任期があるわけでありまして、総裁がいろいろなことをお考えになって、まさに今移行期間、あるいは二〇〇七年の準備期間も含めていろいろなことをやるときに、まさに意見が対立するようなことがあった場合、ここはどういう権限関係になるのか。この特別委員会で総裁のお取り組みは大変な評価があるわけでありまして、このお取り組みを続けていかれる上でいろいろなそごが出てきたりトラブった場合はどういう整理になるんですかということを確認しておきたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 民営化委員会設置後も、日本郵政公社が実施する業務というのは公社総裁が責任を持って遂行すべきものでございまして、民営化委員会が公社に対して直接意見を述べるということは予定されておりません。

 一方、郵政民営化の準備に関しましては、郵政民営化法におきまして、公社は、総務大臣の認可を受けて国際物流に進出できることとされている、それとともに、準備企画会社、これは持ち株会社でございますが、これが公社の業務、資産等の承継に関する実施計画を作成し、認可を受けるに当たって協力することが義務づけられております。

 これらの、国際物流進出のあり方や公社の業務、資産等の承継に関する実施計画というものは、民営化当初の姿を決めるものであるということでございますので、その認可に当たっては、主務大臣は民営化委員会の意見を聞かなければならない、こういう整理になっておるところでございます。

桝屋委員 私は、中城さんが説明されるといつも頭に入らないんでありますけれども、二つですね、公社はあくまでも、日本郵政公社法に基づいて実施する通常の業務は、総裁が十九年三月までは責任を持っておやりになる、こういう話。しかしながら、やはり民営化委員会の行う作業、事務と密接に関係してくるんだろうな、私はこう思っております。

 今の説明で簡単にはすとっと落ちていないんですが、もう一つ、あらかじめ設立される準備企画会社と公社との権限関係、これはでは一体どうなるんでしょうかということも改めて整理をしていただきたいと思います。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 準備企画会社設立後も、日本郵政公社が日々実施する業務、公社がある間の日々実施する業務というのは、公社が責任を持って遂行すべきものということでございます。

 他方、民営化の準備につきましては、民営化に先立ち準備企画会社というものを設立することになっておりまして、その設立後はこの会社が一義的に、みずからの会社の将来像、そして民営化後の経営や財務のあり方の検討等民営化の準備を進めるということになるわけでございます。しかしながら、民営化の準備に当たりましては、郵政事業の現状を最もよく知っている公社の協力というものは不可欠でございますので、公社及び準備企画会社が緊密な連携のもとで準備を進めていく必要があるということでございます。

 このために、郵政民営化法では、例えば、公社及び準備企画会社等公社を承継する組織の双方とも、民営化の施策が確実かつ円滑に実施されるように必要な取り組みを行う責務を有すること、それから、公社の業務、資産等の承継に関する実施計画を準備企画会社が作成するに当たっては公社の協力を義務づける規定、それから、公社の準備期間中の国際物流進出については、総務大臣の認可に当たり、準備企画会社に意見を聞くことを義務づける、このような規定を設けているところでございます。

桝屋委員 どっちにしろ、今、公社がそれに協力をする立場だと。法文でそう書けば本当に協力ができるかと。私は、きょうこの話題は、公社の立場に立てば、生田さんの立場に立てば、この特別委員会でお話しされたように、できるだけ早く新規業務、とりわけ収益性の高いビジネスに手をつけたい、こう思うわけでありまして、では、その思いがこれからの準備期間の中で具体化されるかというと、私は、協力関係と言われましたけれども、例えば、民営化委員会の五人のうち、どういう人がなるかによりますけれども、その総裁の思いとまるで違うベクトルで検討される。端的に言うと、これはもう、新規事業をやりたいということと、いやいや、ちょっと待ちなさい、それは民業圧迫ですよという、まさに二つのベクトルがぶつかり合うわけでありまして、そういう意味では、私は、そんな簡単な話ではない。今までのこの郵政民営化法案の策定作業を見ておりましても、私は、大変なことだな、簡単にできるのかな、こう思っているわけであります。

 そこでもう一点。まさに民業圧迫という観点、それから新規業務の拡大という観点、このバランスをどうするかということで、民営化委員会、五人をだれがやるのか、総理がお決めになるんでしょうけれども、だれがなるかということも極めて大事でありますが、なった人によって恣意的にその二つのベクトルがどちらかに傾いても困るわけでありまして、そこはまさに公正、透明さが確保されるということが必要であろうと思っておりまして、民営化委員会の一部委員の恣意的な判断で左右されるようなことがあってはならないんだろうと。そこは同種、同業の業界の方々も一番気になるところでありますし、公社の総裁だって気になるところでありますが、竹中大臣、このまさに公正、透明さ、郵政民営化委員会の判断基準というものをどう担保されるのか、お伺いをしたいと思います。

竹中国務大臣 桝屋委員御指摘のように、この郵政民営化委員会、大変重要な役割を果たします。したがいまして、そこの一部の委員の恣意的な判断に左右されてはならないとおっしゃいましたけれども、そうなっては絶対いけないわけでございまして、そのようなことにならないような幾つかの仕組みが必要だと思います。

 民営化委員会は、この郵政民営化が経営の自由度が拡大されること、しかし民業圧迫がない、この両面をバランスをとりながら推進できるようにする、また、行政の判断が有識者の中立的、専門的意見を踏まえたものになるように設立される、そういうことを任務としている機関でございます。主務大臣が新会社の業務拡大等の認可を行う際に意見を述べることになっております。そして、三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行い、その結果に基づき、本部長に意見を述べること等の権限を付与されているわけでございます。

 主務大臣によります新規業務等の認可等に当たって意見を述べるこの委員会、民営化委員会については判断の公平性、透明性を確保する必要があることは、これはもう言うまでもないことでございます。このため、民営化委員会が意見を述べたときはその内容を公表すべきであるということを法律上義務づけているところでございます。

 また、法律で定められた意見の内容を事後的に公表する以外にも、民営化委員会の運営の公正性、透明性を高めるための方策として、例えば、ガイドラインの作成でありますとか、議事要旨の速やかな公表等々が考えられるところであろうかと思っております。民営化委員会の運営につきましては民営化委員会自身の御判断もあるというふうに思いますことから、政府としては、委員会及び事務局の設置後、ぜひ適切な関与を行ってまいりたいと思っております。

桝屋委員 竹中大臣、通告はしておりませんが、本音ベースで伺いたいんです。

 生田総裁は、二〇〇七年からできるだけ新しい事業を開始したい、こう思っておられるのでありますが、私は、さっきから言いましたように、経営者として当然の思いだ、こう思っておりますが、大臣、二〇〇七年から、この民営化された会社、それぞれ、国際物流も含めて、金融サービスも含めて思い切り新しい事業ができますよ、こうおっしゃるのか、いや、そこは慎重にいきましょうねという御姿勢なのか、大臣の本音をちょっと聞かせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 今後の新規業務等々については、今申し上げたようなしっかりした枠組みをつくっておりますから、この枠組みを適切に運営していくということが必要だと思います。

 その上で、こういった、今申し上げたような枠組みをつくるに至った経緯でございますが、桝屋委員もお話しになられているように、やはり、生田総裁御自身、経営の自由度を持って新しいことをやっていくことが必要だ、特にその準備を早くしたいんだと。これは経営者として大変よく理解のできる、重要なポイントだと思っております。そうした生田総裁との話し合いも踏まえまして、かつ、政府の中でもよく話し合いを関係部局といたしまして、その結果、各組織の設立時期というのも早目早目に行えるような仕組みをつくっているところでございます。

 郵政民営化委員会は平成十八年の四月一日、準備企画会社、経営委員会は公布日以降六カ月以内で政令で定める日ということでございますので、そういった制度そのものも、今申し上げたような経緯のもとでつくられている、そしてその精神でこれが運用されていくようになる、そのように御理解を賜りたいと思います。

桝屋委員 残された時間が限られておりますが、最後に、基金のあり方でもう一回確認をしておきたいと思います。

 もう蒸し返しはするつもりはありませんが、基金のあり方そのものはいろいろな議論が実はあったわけでありまして、そもそも、金融の二つの子会社の株式売却益、これはもともと持ち株会社のものじゃないか、持ち株会社の経営判断でさらなる新規業務などへの投資に充てたい、こういう議論もあったわけでありまして、配当にしたって、そこは判断は一体どこがするのかという議論もあって、本来は、持ち株会社に積むんじゃなくて、もっと別のところに積んだ方がいいという議論もあったことも私は記憶をしております。それから、金融の子会社の株式売却益を基金の原資とするとなると、その分経営の自由度というのは損なわれるわけでありまして、そういう観点。

 さらには、基金の役割という趣旨を考えますと、まさに地域貢献活動、これは政府が、ぜひやってもらいたい、こう判断をしているわけでありますから、そういう意味では、基金の税制について、これも随分議論もいたしましたが、交付金については税の手当てはしているわけでありますが、基金を積むことについても、今この基金の規模について一兆円とか二兆円とか議論がありますが、これは税金を払って残った部分で積みなさいよ、どうぞと。財務省あたりは、幾ら積んでもいい、こう言われるわけで、さっきも言いましたように、積むのは決してうれしいわけではない、当事者からすると。そういう意味では、基金の役割ということを考えると、無税で積み立てるということも検討されてしかるべきではないか、こういう議論があったわけでありますが、大臣に、最後、その一点、確認をしておきたいと思います。

竹中国務大臣 一点とおっしゃいましたが、会社の外側につくるべきではないかという議論と……(桝屋委員「それはいいです。税の方」と呼ぶ)それでよろしゅうございますか。

 税の方について、これは、経営の自由度が損なわれるんだ、それとの関連で、社会的な、公的なことをやるんだから、税制についても無税になる必要があるのではないかと。

 御承知のように、これはいろいろ議論をしてきたところでございます。この基金の積み立ては、持ち株会社の利益の一部を内部留保としてみずからの会社内に積み立てるものである、そして、積み立てに関して非課税という特別措置を講じるとすれば、それは他の民間企業とのイコールフッティングに反することとなるということから、措置を講ずることは適当ではないというふうに判断をされているわけでございます。

 一方で、これも委員もう御指摘でございますけれども、この基金については、持ち株会社が郵便事業会社、郵便局会社に交付する資金については、これは寄附の額には含まれないようにする、損金算入することを認められるように、そういう措置はしっかりと講じているところでございます。

桝屋委員 時間がありませんからもう言いませんが、きょう柳澤先生がいたら嫌な顔をされると思いますが、ここは、私は、今竹中大臣がおっしゃったのはわからぬこともないんでありますけれども、やはり基金の性格というものを考えていくべきだろう、そういう意味では、税制でさらに検討されてしかるべきではないか、こう思っているということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、松野頼久君。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 冒頭、私は非常に不思議でならないんですけれども、国会法で定められた当委員会の中で全く採決だとか修正だとかいう議論が出ていないにもかかわらず、多くのマスメディアがそのことをきょうは報道しています。なぜこういうことが起こるのか。

 私は、当委員会がこの郵政民営化に関して議論をするべきでもありましょうし、また法案のことを議論する場所だと、唯一の場所だと私は思っておりますけれども、なぜか当委員会以外でこういう議論が出てくるということに対して、ぜひ、委員長、注意をしていただきたいということを冒頭お願いする次第でございます。

二階委員長 当然マスコミその他で私も承っておりますが、私たちが仮に修正という場合には、理事会または当委員会に修正案を提出した段階が修正協議でありまして、今までは自由民主党の中で協議をされているものと承知をいたしております。

 質疑を続行してください。

松野(頼)委員 政府・与党は一体でございます。ぜひ、そういう議論が起こるのであれば、本来、法案を出す前に部会でしっかりと諮っていただいてから提出をしていただきたい。これは四月二十七日前に行われるべきものではないかというふうに私は思っております。

 そこで、郵政民営化の担当大臣とおっしゃっています竹中大臣、法案の修正はされるんですか、修正案は提出されるんですか、お答えください。

竹中国務大臣 政府としては、いろいろな協議を重ねて、ベストであるという思いで法案を提出させていただいております。しっかりと引き続き御説明をさせていただきたいと思っております。

松野(頼)委員 ちゃんと質問に答えてください。修正案を当委員会に提出されるんですか。

竹中国務大臣 政府としてそのようなことを考えているわけではございません。議員修正の場合は、これは立法府の権限に属する話でありまして、政府としてお答えする立場にはないと思っております。

松野(頼)委員 では、確認でございますが、閣法としてはお出しにならないわけですね。

竹中国務大臣 閣法としては、今のものをベストのものと考えて提出をさせていただいております。

松野(頼)委員 しっかりと確認をさせていただきました。

 それでは質問に入らせていただきますが、今お配りしている資料の一をごらんください。これは、六月六日、当委員会における山花議員に対する竹中大臣の答弁でございます。

 冒頭、中央省庁等改革基本法三十三条に絡みまして、野田大臣、八代大臣の答弁について、お話等いろいろございましたが、それぞれの御発言は承知しておりますが、政治家としての御信条といいますか、信条をお話ししたものだというふうに思っておりますというふうに答弁をされました。

 それで、わあっと委員会がなって、次に答弁をもう一度されました。これらの答弁は、条文の法的な解釈について政府の見解として述べたものではないと理解しているわけでございます、このように答弁をされました。

 そしてその後、もう一度訂正をされて、それぞれの御発言についてお尋ねでございますが、それぞれの御発言は郵政大臣の職にある政治家としてお考えを述べられたものというふうに考えておりますと、これももう一度修正をされました。

 最終的には、私の発言は不適切であり、撤回をさせていただきますということで撤回をされたんですけれども、その後、理事会でも、この野田大臣、八代大臣、そして自見大臣に対する答弁に対して、竹中大臣がこの大臣答弁をどのようにとらえられているのかということの、この後の精査はできておりません。

 この場でもう一度お伺いしますが、竹中大臣として、過去の郵政大臣の、将来にわたって民営化をするものではないというふうに答弁をされたことに対して、その大臣答弁について竹中大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。

竹中国務大臣 私の見解は、さきに官房長官が代表してお答えになったものと同じでございます。これらの大臣の御発言は、いずれも、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものと理解しております。

松野(頼)委員 ちょっとよくわからないんですが、政府としての見解なんですか、それとも、大臣としての政策の見解を述べたものだから、その後その大臣答弁が変わってもいいということですか、どちらでしょうか。

竹中国務大臣 これは当時の大臣のという意味ですね。

 これは、今申し上げましたように、いずれも、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものと理解をしております。

松野(頼)委員 そうすると、将来にわたって民営化をするものではないということを中央省庁等改革基本法の三十三条の一項六号で当時定めているわけですよ。それと今行われている当委員会の民営化の議論というのは、大臣答弁だけを追っかけていくと、全くそこで変更がないままに、全く立場が変わっちゃっているわけです。

 ですから、この当時の大臣答弁に対するしっかりとした方向転換をした時点というのは一体いつなのか、これは私たちわからないわけですよ。それで竹中大臣に、当時の大臣の発言に対してどういう見解をお持ちなのかということを伺っているんですが、この大臣の答弁というものは一体、法的拘束力をどのように持つのか、このことをちょっと教えていただきたいと思います。

細田国務大臣 この点については、何度もお答えを申し上げておりますが、基本的に、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号は、郵政事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定しておりますが、これは、公社化までのことを規定しているものであって、公社化後のあり方を拘束するものではない、こういうふうに政府として最終的に見解を統一しておるところでございます。

松野(頼)委員 今、中央省庁等改革基本法について伺っているのではなくて、その当時の主任大臣が、将来にわたって郵政公社をもって打ちどめである、将来にわたっても民営化をするものではないという解釈を三大臣がされているんですよ。その三大臣の、大臣としての発言について私は伺っているんです。

 もう一回お答えください。

細田国務大臣 歴代の郵政大臣の御発言については、いずれも、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものと理解しております。

松野(頼)委員 そうすると、法的拘束力はないんですか。

阪田政府特別補佐人 御指名いただきましたので、答弁をさせていただきます。(発言する者あり)

二階委員長 内閣法制局長官の答弁につきましては、後ほど理事会で協議をいたします。

 松野頼久君、質問を続行してください。

松野(頼)委員 これは、私は金曜日に内閣法制局に対して、大臣の国会答弁の法的拘束力はどうですか、これはペーパーで出してください、これは一般論で結構だと言ってお願いをしているんですけれども、ナシのつぶてなんですよ。それで、今になっていきなり答弁をしてくる。これは本当にけしからぬ話だと思いますよ。ちゃんと丁寧に、私は、その解釈をまず一回してみてくれ、委員会の場でばたばたやるのは嫌だから一回解釈をしてきてくれということをお願いしているにもかかわらず、それは全くしていないわけですから、どうか委員長、これは注意をしてください。

 そして、官房長官、もう一度伺いますけれども、大臣の委員会における公的な発言、答弁はどのような法的な拘束力を持つものなのか。それと、これは当然のことながら、内閣としての意思を縛るものではないんですか。

細田国務大臣 各委員会あるいは本会議等で閣僚が答弁申し上げる内容とかあるいは意見については、これは極めて重いものであります。したがって、そのときの大臣も、それぞれのお考えあるいはお立場、その省の政策等に基づいて御答弁になっていることは確かだと私は思います。

 しかしながら、今の内閣におきましてこのような法案を出させていただき、その根拠はさまざまなこれまでの法令にも違背しない、新しい一種の行政改革の大きな柱としてお出し申し上げている、こういうふうにお考えいただきたいと思います。

松野(頼)委員 全然お答えになっていないんですけれども。

 要は、今回のこの中央省庁等改革基本法に関しても大臣の答弁にしても、将来までずっとそれを、新たな立法行為だとか新たな答弁をきちっと総括していれば縛るものではない、これは私は思います。ただ、その大前提として、新たな立法行為をしたり新たな答弁として総括をしたりということをしなければ、これはずっと続いていくものなんじゃないですか。ですから、それで聞いているんですよ。委員会における大臣の答弁の法的拘束力とは一体どういうものなんでしょうか。もう一回お答えください。ちゃんと答えてください。

細田国務大臣 先ほどもお答えしたとおり、閣僚の答弁は極めて重いものであります。しかしながら、立法府におかれては立法権が当然ございます。そして、政府においても、必要な法改正、法改正といってもその法律はすべて国会でお決めになったものでありますから、法改正というのは、それを変えなければならないと判断して、また立法府にお願いしておるわけでございますから、そのような必要があると判断したということはまた新しい判断でございます。

松野(頼)委員 大臣というのは行政府の長なんですよ、これはもう十分おわかりだと思いますけれども。その行政府の長が、将来に向けても民営化をするものではないという、歴代三人の当時の郵政省の長がそういうことを言っているんです。それは当然、内閣としての意思だと思うんですね。当時の内閣の意思なんですよ。そこを一回総括しないで、いきなり民営化の法案を出してきたという手続に私は非常に憤りを感じているんです。

 そこで総括をすればいいですよ。それは、その法律にしても答弁にしても生涯縛るものではない。それは時代時代で変わるかもしれない。ただ、そのときにはきちっと一回総括をして、当時はああいう答弁をしたけれども、時代が違ったので、今度は民営化をするべきなんだという総括をしなければいけない。その総括がないままに今回来ていることに、私はおかしいのではないかというふうに言っているわけです。

 今回、その総括はありましたか。私の覚えている限りでは一つも答弁ではありませんけれども、ありましたでしょうか。

細田国務大臣 平成十四年にも小泉総理大臣が答弁しておられます。そして、昨年来、郵政の民営化については、新しい民営化の検討をするということで閣議決定もしておりますし、方向を定めておるわけでございますから、もちろん内容的には立法府が御承認いただかなければならないわけでございますが、このように方針を、民営化ということでお願いしたいということをお願いしておるわけでございます。

松野(頼)委員 最近久しく出てこない言葉でありますが、行政の継続性というのがよく言われておりました。当然のことであります。継続はずっとしているわけです。その大臣の答弁がある限り、一回その大臣の答弁を撤回しない限りは、その大臣の答弁は行政府の長として、その省の意思として続くわけですよ。(発言する者あり)いや、それは続くんですよ、当然。ですから、それで大臣の発言の法的拘束力というものを聞いているんです。もう一回はっきり答えてください。

細田国務大臣 世の中いろいろ変化をしておるわけですし、必要な行政が何かということの価値観とか目的が変わってくるわけでございますから、それでは、私自身が個人情報担当大臣のときに答弁として何を申し上げたかというと、野党からも強い御要請があって、これは個別業法によって今後いろいろな面で担保しなきゃならないというようなことに対しては、確かにそういう検討をすることが今後は非常に大事だ、こうお答えしているんですが、だんだんこの個人情報保護についての違反行為が重なってきて、それだけでは、業法単位ではだめだということになると、また新たな立法のあり方は総括的にどうあるべきかということを今行政の方でも検討し、あるいは各党間でも検討をしておるわけですね。

 そのように、やはり時代が進むとともに、一たん確定した考え方もそれぞれに変わっていくということは当然ありますし、まさに法改正というのはほとんどそういうものの塊であると言ってもいいようなものではなかろうかと思っております。

松野(頼)委員 そうすると、今これは新聞で読む限りですけれども、この民営化法案の修正案が出ると新聞には書いてあるんです。その新聞によると、大臣答弁で担保するというふうに書いてあるんですね。結局、大臣答弁でここのところは担保するという箇所が何カ所か新聞で読む限り見受けられるんですけれども、では、それも時代とともに状況が変われば何の総括もないままに担保が外れちゃうということですか。

細田国務大臣 ちょっとその問題は、まだどういう考え方が与党から提出されるかということが明確でございませんので、お答えを控えさせていただきたいと思います。

松野(頼)委員 一般論として伺っているんです。大臣の答弁は時代とともに変わっていくというふうに今おっしゃっているわけですが、では、例えば主任大臣がそのまま、例えば竹中大臣と言われても、これは民営化が終わるといなくなっちゃうんですよね、主任大臣じゃないので。ですから、非常にここは、僕は随分予算委員会の中でもやらせていただきましたけれども、主任大臣がいないという状況の中でこの法案がつくられているので、本当にこれはよくわけがわからない。

 結局、前は、公社法のときには郵政大臣というものが答弁をされました。でも、それがずっと続いていながら竹中大臣という、要は、内閣法三条の二項に明記されている、行政事務を分担管理しない大臣の存在を妨げることはできないという、非常にあいまいな文言でつくられている大臣がこの民営化法案の主任大臣ですといって今やられているわけですよ。そうすると、竹中大臣のポジションというのは、民営化が終わるともうなくなっちゃうんです。そうすると、大臣の答弁で担保するという、これが僕はどうも整理できないのできょうは伺っているんです。

 大臣の答弁云々ということを、一般論でいいんですけれども、もう一度、それは中央省庁等改革基本法三十三条の部分と、これから起こるであろう、私は起こらないと思っているんですが、そういう事象に対して大臣答弁で担保をされるかもしれないという部分に関して、その整合性をどうかちょっとお答えいただきたいと思います。

細田国務大臣 三十三条一項六号の解釈問題については、総理大臣の答弁、あるいは法制局長官その他の方々の答弁によりこれは完全に統一されております。

 それとまた別個に、それぞれ委員会でそれぞれの担当大臣の御発言があったということは確かでございます。議事録のとおりでございますし、それぞれの思いあるいは御判断があったと思っておりますが、法解釈の面では、私どもは政府で統一見解をしておるわけでございます。

松野(頼)委員 余りこれをいつまでもやりたくないんですが、当時の政府の意思、今の政府としては統一してこの見解なわけですね、当時の橋本内閣のときには統一してあの見解だったわけですね。では、そういうことの整合性はどうなんでしょうか。

細田国務大臣 それは、文書で理事会の方にも御提出させていただいておりますように、三十三条一項六号の解釈は明確でございます。

松野(頼)委員 単なる考え方を述べられているというふうにおっしゃっていますけれども、基本法の条文の解釈について、大臣の答弁は時代によって変わらないものなんじゃないですか。だからこそ私たちは、何十年も前の議事録を引っ張ってきて、それで、こことここはそごがないか、これは行政が一貫されているかということをずっと苦労して追っかけているわけですよ。それが、いきなり、総括がないままにずるっと同じ法案に対しての立場が逆転をしてしまうということですと、これは本当に大臣の答弁というものが意味がなくなっちゃうんですよ。

 解釈について大臣の答弁が時代によって変わっていいんですか。いいのか悪いのか、それをお答えください。

細田国務大臣 まさに、当時も橋本総理の答弁、小里担当大臣の答弁もございますし、それは重々御承知のとおりでございますから詳しくは申し上げませんけれども、やはり今回は、民営化、四分社化という政策、大政策を法案化したものを御審議をお願いしている。それはもちろん今までのものとは違うわけでございますから、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

松野(頼)委員 委員長、余り時間をつぶしたくないので。ちゃんと質問に答えてください。大臣の答弁は時代とともに解釈が変わっていいのか悪いのかなんですよ、総括がないままに。お願いします。

細田国務大臣 同じ法律のもとでは、大臣が答弁したことは、内容によりますけれども、当然責任を持ってこれは解釈され、あるいは国会に対する姿勢を明らかにしたものだと考えております。

 ただ、私どもは、それを基本的に、全般的に今ある法案をすべて改正いたしまして、民営化する法案を御審議をお願いしているわけでございます。

松野(頼)委員 ぜひ答えてください。時代とともに変わっていいのか悪いのかを聞いているんです。もう一回お願いします。

細田国務大臣 いろいろな法案をお願いするときに、例えばそのときの改正法案に基づいて大臣は答弁しておりますから、恐らくそのときの法案に基づいて御答弁していると思います。しかし、その後にまた改正案をお願いするときには、そういう審議があり法律ができたけれども、次にまたこの法案をお願いしたいということで、最高の機関である国会に審議をお願いしておるわけでございます。

 全体的にこれは、民営化、四分社化等々の内容でお願いしたいということでございます。しかもこれは、郵政公社というものを今、現にある法律の考え方をすっかり変えて民営化をお願いしているわけでございますから、その民営化がいいのか悪いのか、こういう議論はもう当然行われておりますけれども、そういう観点で御審議をいただきたいわけでございます。

 それは、大臣のその時々の判断あるいは答弁がどれだけの重要性を持つのかということでございますが、当然重要なものでございます。その時々の政策判断等でおっしゃったものでございますが、今我々が提案しておりますものは、それを超えて、民営化をぜひ実現するようにお願いしたいということを申し上げているわけでございます。

松野(頼)委員 答弁が本当によくわからないんですけれども、これは非常に重要なポイントなんですよ。過去の三大臣の答弁をこれだけないがしろにしているという事実と、これから起こるであろう事象ということにおいて、非常にこれは重要なポイントになるんです。

 大臣の答弁がそれほど意味のないものならば、それはそれで結構です。私は、最高裁判所の政府控え室にも聞きました。大臣答弁というのは裁判において使う場合もあれば使わない場合もありますなという答えでしたから、私が思うのに、多分それほど法的な拘束力というのはないんですよ、ないんです。だからこそ、この三十三条の三大臣の答弁がありながら、平気で総括をしないままにこういう答弁をされているという現実があるんですけれども。

 果たして、では、これから大臣答弁で担保をされるという幻が、それで納得をされるものなのか、ものじゃないのか。ということは、三年後、五年後に、違う内閣ができました、いや、郵便事業は公社ですよ、前から言っていることじゃないですかということがいきなり委員会で起こった場合に、そのときにもうこういう議論を繰り返したくないわけですよ。ですから、委員会における大臣答弁の法的な拘束力だとか、また行政をどれだけ縛っていくのかということは、本当に一回しっかりと総括してもらいたいと思いますよ。

 でなければ、大臣答弁で担保されるというのは、これもまた何か誇大広告みたいな話で、全然担保されていないじゃないですか。将来にわたっても民営化はしないと三人の歴代大臣が言っているのに平気でこういう議論をしている委員会が今あるわけですから、まして、細かい政省令だとかいろいろな部分が大臣答弁で担保されるかというと、私はされないと思いますよ。こんなはっきりとした大臣の答弁が、将来も民営化をしないということに対して、これだけないがしろにされている現実を、どうかしっかりと見ていただきたいと思います。

 いつまでもこれをやっていてもしようがありませんから次に入りますけれども、同じ案件でございます。

 これは、先ほどから小里長官の答弁を出せとかいう声が上がっていますが、そうじゃなくて、これは内閣審議官が、行革特別委員会、同じ小里大臣が答弁されているところで答弁をされているんです。坂野さんと書いてバンノさんと読むらしいんですけれども、この三十三条に関して、「今回の新たな公社への移行をもって民営化を含むその他の組織形態へ移行すべく見直しを行わない、そういう意味だと私どもは理解をいたしております。」これは内閣審議官の方が答弁されているんですね。これが平成十年。そこから、今度は小泉総理が引用している津野内閣法制局長官の答弁まで、ここも総括がないままに、津野長官は、民営化等の見直しを行う旨を定めているものでございまして、公社化以降のことまでも規定したものではないというふうに解されているわけでありますと。

 これは両方とも行政官の発言を並べてどうか読んでください。これで公社化後のことだと私は言えないと思いますよ。ぜひ答弁してください。

細田国務大臣 委員御指摘の小里大臣及び坂野政府委員の発言については、中央省庁等改革基本法三十三条一項六号は、郵政事業について国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定しているが、これは公社化までのことを規定しているものであって、公社化後のあり方を何ら拘束するものではないとする政府の見解と異なるものではないと承知しております。

松野(頼)委員 では、私の資料の二に書いてあるその坂野さんの答弁、平成十年五月七日の坂野さんの答弁についてはどうでしょうか。これはどのように理解されますでしょうか。

細田国務大臣 坂野氏の答弁は、「行革会議の最終報告に至ります過程で、与党の協議結果を踏まえてこれを最終報告とし、そのまま基本法に盛り込んだものということでございます。」それで、「与党協議を通じまして今御指摘の事項が盛り込まれたわけでございますけれども、これは、今回の新たな公社への移行をもって民営化を含むその他の組織形態へ移行すべく見直しを行わない、そういう意味だと私どもは理解をいたしております。」とありますが、これはまさに私が申し上げたとおりだと思っております。

松野(頼)委員 これはどう考えても日本語が違う意味で理解されているんじゃないかと思います。どうかこれを読んでください。しっかり読んでください。これは行政の役人の人の答弁なんですよ。ここから、平成十年からいきなり平成十四年、十七年と飛んじゃっている、ここの空白のことを私は言っているんです。

 いずれにしても、この議論をずっと続けていますけれども、まただれか同僚がやるかもしれませんけれども、最後に竹中大臣、もう一回さっきの議事録の精査に関して、過去の三主任大臣であります郵政大臣の答弁、今の主任大臣なのか法案担当なのか、ここは非常にあいまいですけれども、今の郵政民営化担当の大臣としての答弁を、これを踏まえて、このときの、過去の主任大臣の発言はどういうものだったのかという見解をもう一度示してください。

竹中国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。また、これは官房長官の御説明のとおりでございますけれども、その当時の大臣の御発言は、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものというふうに理解しております。

松野(頼)委員 では、次に行きます。

 資料の四を見てください。

 同じ、さっきおっしゃっていた小里国務大臣、今度は、公務員の身分について、三十三条一項八号でこのようにおっしゃっているんです。公社に移行したときの、その郵政公社の公務員の身分は国家行政組織法の対象外に置くんです、いわゆる総定員法の対象外でありますよと。これは行政機関に関する職員の身分に関する法律でございますけれども、いわゆる総定員法と言っていますが、これの対象外なんですというふうに言っているんです。

 今回何か、四十万人の公務員が民間人になると、今回初めて民営化によってなるようなことを宣伝されていますけれども、実は、公社化法のときに小里大臣がこのように答弁をされて、今の郵政公社の職員はもう公務員の総定員数の外になっているんです。ですから、四十万人の公務員とおっしゃっている部分はこのときに既にもう外に置かれているんですけれども、これを読まれてどういう感想ですか。

竹中国務大臣 国家公務員、これは、定員管理の対象外になるという趣旨の御答弁を小里大臣、当時はしておられるんだと思います。そういうことを小里大臣はおっしゃって、定員管理の外であるということであると思います。

松野(頼)委員 いやいや、そうじゃないんですよ。

 今回の一つの民営化のキャッチフレーズは、四十万人の国家公務員が民間人に、民間人になるかどうかは本当にここの議論でもよくわからないんですけれども、まあみなし公務員。でも、これはまさに平成十年のときに、今言っているみなし公務員と全く同じような身分に公社の職員はなっているんじゃないですか。違いますか。今竹中大臣がおっしゃっているみなし公務員と、公社のときの法律の総定員数の枠外に出たこととどう違うんでしょうか。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、定員管理の外には出ていた、しかしながら、国家公務員法が適用される公務員であるわけでございます。これは、郵政公社も国家公務員法で言う公務員に当たるわけでございます。みなし公務員というのとは根本的に違っております。

松野(頼)委員 ちょっとこれは議論が違うような気がしますけれどもね。

 では、例えば、国共済には残るんですよね。この間僕が、骨格経営試算の中で、では民間人になるんだから、今度は雇用保険を払いますよね、雇用保険料はどういうふうに算定をされているんですかと言ったら、骨格経営試算の中に入っておりませんという答弁だったんです。

 ですから、純粋な民間人ですよ、民間人ですよ、みなし公務員ですよと言われても、共済は国家公務員共済であり、雇用保険は払う想定に全くなっていないという状態の中で、郵便認証司とかみなし公務員とかいう議論が出ていますけれども、私は十分今の公社の職員の身分と同じ状態だと思いますよ。なぜこれをあえて変えるんでしょうか。答弁してください。

竹中国務大臣 重要な点は、国家公務員法で言う公務員になるかならないかという問題だと思います。民間でできることは民間でやろう、国家公務員でなくてもできるではないか、そういう観点から、国家公務員法で言うところの公務員では今回なくなるという枠組みをつくっているわけでございます。

 その場合に、国共済には残るのかと。これは、まさに従業員の待遇をしっかりと不利が生じないようにしようという観点から、過去の三公社のときもそうであったように、経過期間としてそういう形を残そうということでございます。

 したがって、これはあくまでも、今回、国家公務員法で言うところの公務員ではなくなる、そして、時間をかけて国共済の問題も解決をしていきたいという問題でございます。

松野(頼)委員 では、ちょっと流れと変わるんですけれども、伺います。

 今回、郵便貯金会社、郵便保険会社というのは一〇〇%民間になるんですよね。これは間違いありませんね、イコールフッティングだという。そのときに、マラケシュ条約というのを大臣、御存じでしょうか。政府調達に関する協定というのがあるんですけれども、このマラケシュ条約だと、十万SDR以上の物品に関しては随意契約をしてはならない、一般競争入札にしなければいけないという国際条約が実はあるんです。

 例えば、これはWTOの関連なんですけれども、では、今回民営化されました、一〇〇%民間と同じですと言った郵便貯金会社、郵便保険会社が、このマラケシュ条約の想定の縛りをかけられるか、かけられないかということ、これはどうなんでしょうか。

竹中国務大臣 現在、郵政公社はこのWTOの政府調達協定の対象機関でございます。これはよく御承知のとおりでございます。基準額以上の調達を行う際には、WTO政府調達協定に基づいた手続による調達を行うことが求められる。

 それで、民営化された後でございます。

 民営化後の各社が、民営化したことをもって直ちにWTO政府調達協定の適用対象から外れるというものではございません。このために、調達が、仮にWTO政府調達協定の適用を受けるような調達、これは金額とかあるわけでございますが、であれば、適用対象から外れるまでの間は、同協定に基づいた手続による調達を行うことが求められるというふうに承知をしているところでございます。

 この民営化後の新会社に係るWTO政府調達協定に関する取り扱い、これは重要であると私も思っております。それについては、民営化の趣旨を踏まえて、内外の関係機関と調整をしていくことになるというふうに考えております。

 ちなみに、NTTやJRの例がございますが、NTTグループ各社やJR各社につきましても、政府調達の対象機関から除外されることで、他民間企業と同様、迅速に調達の実施が可能となる等の理由によりまして、適用除外の申請を行っているところでございますが、現状はまだ認められるに至っていないというふうに聞いております。

松野(頼)委員 ですから、私が聞いているところですと、多分この郵便貯金会社や郵便保険会社は、一般の銀行、一般の保険会社と比べて、要は、十万SDRというと大体一千三百万とか一千五百万以上の部分、五、六百万なんですけれども、一千五、六百万以上の資材を買おうとしたときには、普通の銀行はここに発注しますよということでできるんですけれども、これは政府調達の協定に縛られる銀行と保険会社ができるんですね。これは全く、そこの部分はイコールフッティングじゃないんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

竹中国務大臣 イコールフッティングができるように、これは国際的なお話し合いでございますから、そういうことが実現できるように、政府としては一体となって努力をするということがまず重要であろうかと思います。そうしたことも含めまして、経営の自由度とそのイコールフッティングのコインの両面のバランスを、実際には民営化委員会等々の議論を通しまして、しっかりとバランスをとっていくということが必要であると思っております。

松野(頼)委員 これもお答えいただけないようなんですけれども、多分WTOは、もし日本国内で竹中大臣が、これは民有民営だ、完全民営化会社だ、銀行法の中に入って、今ある既存の銀行と全く同等の競争をするんだよと言っても、海外はそれは認めないと思うんですよ。今これから民営化される郵便貯金会社や郵便保険会社が、全く私たち、国内で、今大臣が説明をされているような完全民営化の会社だというふうに私は認めないと思いますよ。

 JR、NTTは若干その株をまだ国が持っているということでありますけれども、これはWTOに、今回は株を全部売り切るんだと、ここもいろいろ聞くところによるとどうなるかわかりませんけれども、今の大臣の発言で全株売却するんだということであった場合に、WTOはどのように判断をされますかということを聞きましたか。

竹中国務大臣 これは今後のしっかりとした交渉、話し合いということになろうかと思います。

 いずれにしても、私たちの考え方は、今松野委員は、これは民営化したといっても海外では認められないよ、海外ではというか市場でどう評価されるかという趣旨だと思いますけれども。そのためにも、株式の全額処分を期限を切って義務づけて、そして一刻も早くいろいろな義務から外れていただく。同時に、政府の関与をなくすることによって、市場から、世界から、これは民間の機関である、そういうような信認をいただけるような状況をつくりたいと思っております。

松野(頼)委員 きょうの答弁として、全株処分をされるわけですね。もう一回、今確認させてください、全株処分。

竹中国務大臣 我々の御提出させていただいている法案におきまして、株式、持ち株会社に対して郵便と保険会社の全額処分というのを義務づけるという形にしております。

松野(頼)委員 では次に、今のマラケシュ条約、今回の政府広報にかかわる随意契約に入りたいと思いますが、今言ったようにマラケシュ条約というのが実はありまして、それを受けて、政府調達に関する政省令というのが国内でも定められています。

 また、別の法律で、会計法においても、これは、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合」、これは資料五です、きちっと書いてあります。これ以外は随意契約をしちゃいけませんよと。

 今度は、これを受けて、この間も議論が出ていました予決令というのがありまして、予決令も、「契約の性質若しくは目的が競争を許さない場合又は緊急の必要により競争に付することができない場合」、これ以外は随意契約をしちゃいけません。

 まだあるんです。国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令、いわゆる特政令と言われているものなんですけれども、これも、「他の物品等をもつて代替させることができない芸術品又は特許権等の排他的権利に係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、」これ以外は随意契約をしちゃいけないということが定められているんです。

 今回、これのどれに一体当たるとして随意契約をされたんでしょうか。

永谷政府参考人 今回、この場で私の同僚から何回も随契の理由を申し述べてきたと思うんですけれども、緊急性それから企画の斬新性ということで御説明させていただいていると思います。

松野(頼)委員 これは緊急性に関しては、この間、政府として契約の日付をずらしたことはお認めになりましたよね。その上でまだ緊急性だとおっしゃるんですか。

永谷政府参考人 国会が始まる二月の初めまでにPRしたいというのが一つの目標でございまして、その時点までにどうしてもPRするということで、今回、この契約について非常に、紙自体も、今回の折り込み配布に使う紙も通常在庫のない特定の規格であるということで……(発言する者あり)ええ、特定の紙を使っております。千五百万部の用紙を加工するには……(発言する者あり)

二階委員長 答弁中は御静粛に願います。

永谷政府参考人 これは北海道の製紙会社にあらかじめその用紙の確保をお願いする必要があるということでありました。

 そういうことで、製紙会社から各地の印刷所への用紙の、海上でありますとか陸上での輸送、これに二週間ぐらいかかりますし、それから各地の配送センターに持ち込むのに一週間ぐらいかかるということで、トータルでひと月ぐらいかかる。そうすると、逆算しますと一月の初めの時点でこれを発注する必要があったということであります。

松野(頼)委員 では、政府広報室が紙を確認したのはいつですか。

永谷政府参考人 紙の確認がいつであったかということでありますけれども、確認行為を実際したのかどうか、ちょっと私、今の時点でよくわからぬですが、いずれにしても、一月の下旬には印刷にかかっておりますので、その時点までには紙を調達したんだということであります。

松野(頼)委員 これは私が言うのは変ですけれども、行政の中で、紙の確認というのは仕様書というのを、要は予定価格を決定する前に仕様書というのを必ずつくるんですよ。そのときに、紙の材質はどれで、物量はどれで、出演されるタレントさんはほかの相場に比べて適正であるかとか、紙の値段は相場に比べて適正であるかとか、こういうことを見るのが仕様書なんです。

 今回、私が確認したところ、仕様書はありませんと言っていましたよ、ありませんと。いつ紙の確認をしたんですか、今おっしゃるように。

永谷政府参考人 十二月二十八日に実質的な契約の合意をしておりますので、そのプロセスに至るまでの間に確認しております。

松野(頼)委員 では、十二月二十八日の段階で印刷業者が紙を押さえていたということですか。それは違うんじゃないですか、今までの答弁と。

永谷政府参考人 私は、十二月二十八日までに印刷業者が紙を押さえていたということは申し上げておりません。

松野(頼)委員 いや、それはおかしい。紙を押さえなきゃいけないから慌てて契約をしてくれと言っていたというふうに今まで答弁されていたんじゃないですか。

 そうすると、十二月二十八日の段階で、紙をもう押さえていて、見たというふうにおっしゃるわけですか、政府広報室が。それは今までの答弁と随分食い違っているんじゃないですか。

永谷政府参考人 紙の種類については、二十八日の段階で、こういう特殊な紙を使うということで合意があったんですけれども、実際その紙自体を押さえたのは、一月六日に仮押さえをしたというふうに伺っております。

松野(頼)委員 これも私の受けている説明と違うんですけれども。二十八日、これは御用納めの夕方、口頭で来たということだったんですね。山本参事官そのほか三名の方が、大森会計課長のところに、御用納めが終わった後、夕方、口頭で、こういう会社と契約をしたいという、これもちょっとおかしな話なんですけれども、これをもって実質的契約というふうにおっしゃっていたんです。

 そのときに紙を持ってきたということは、じゃ、その業者の方が、その当日に紙を持って訪問されているんですか。この出していただいた流れと全然違うんですけれども。

永谷政府参考人 十二月二十八日の段階で、どういう紙を使うかとか、あるいはどういう企画でもって対談をやってもらうかとか、あるいはどこに配布するかとか、そういう部分は決めておりますけれども、紙自体を押さえたのは、先ほど申し上げましたように、一月六日に仮押さえをしたというふうに伺っております。

松野(頼)委員 これは少なくとも、そういうことが起こらないように仕様書というのをつくって、それをもとに予定価格の決定をするんですよ。それをしていないわけでしょう、今回。だから、それが適正な価格なのかどうなのかということが全くわからないわけですよ。

 本来であれば、仕様書を提出させて、その仕様書に基づいて予定価格の決定をされるんです。この予定価格の決定をされたのはいつですか。

永谷政府参考人 予定価格を決めたのは、二月の初めだったと思います。

松野(頼)委員 時間が参りましたので、一たんこれで終わります。

二階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松野頼久君。

松野(頼)委員 先ほど昼の理事会で、内閣法制局長官の答弁というのが、もう一度再答弁をしていただいて、大臣発言に対しての法的拘束力というものについて、先ほどちょっとがちゃがちゃとなったので、もう一度答弁をしていただけますでしょうか。済みません。

阪田政府特別補佐人 どうも、御指名いただきましてありがとうございます。

 先ほど私が申し上げましたことを、繰り返しになりますけれども、憲法六十三条後段には、御案内のように、国務大臣は、答弁または説明のため国会に出席を求められたときは出席しなければならないということが義務づけられている。これは、当然、出席した以上、誠実に答弁をし、かつきちんと説明をするという責任を負っている。だから憲法上の責任としてはしっかりあるというふうに思っておりますし、また、先ほど官房長官がお答えになりましたように、こういう規定の有無にかかわらず、国会における大臣の答弁というのは大変重いものであるというふうに思ってはおります。

 ただ、しかし、それでは具体的にそれに法的な拘束力があるかというのが委員の御質問であろうかと思いますけれども、これは法律でも政令でもないわけでありますので、そういう意味で、それが一般国民をあるいは内閣をそれ以後覊束するというような意味での法的拘束力というお尋ねであるとすれば、それはないというふうに申し上げざるを得ないと思います。

松野(頼)委員 どうもありがとうございました。

 この答弁は非常に重いものだと。今まで私も随分答弁を拾ってきたんですけれども、これに関して政府が正式な解釈をしたことがなかったので、非常にいい答弁だと思いますので、残させていただきます。

 続きまして、先ほどの随意契約につきまして、この随意契約の理由についてちょっと伺いたいと思うんですが、資料の五を見てください。落札者の公示というところがあるんですが、先ほど官房長が御答弁された緊急性ということではなくて、排他的権利の保護というのがこの随意契約の理由になってございます。それで、この排他的権利の保護というのは、先ほど幾つか会計法とか予決令とかを読み上げさせていただいた一番最後の、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令の中に同じ文言が出てまいりますので、多分ここからお拾いになって、これを理由としたものではないかと思います。

 今回の政府広報のこのチラシが排他的権利の保護に当たるのかという問題なんですけれども、この政令によりますと、「他の物品等をもつて代替させることができない芸術品又は特許権等の排他的権利に係る物品」ということが書いてあります。官房長、この広告というものが排他的権利の保護に当たるんでしょうか。

永谷政府参考人 この調達で採用しました企画書が排他的権利に該当するというふうに考えております。

松野(頼)委員 ここに、一般競争参加資格審査申請書、要は、いわゆる業者登録のペーパーがございます。これはフォーマットでございますけれども、まず、この会社は業者登録はされてありませんでした。そして、この業者登録の中に、「広告・宣伝」等という、三〇一号という丸がついているんですね。ですから、広告、宣伝のたぐいはこの排他的権利の保護には当たらずに、一般競争入札、指名競争入札の中に私は入ると思いますけれども、それぞれ、例えばテレビの番組にしてもポスターにしても、これしかないと言えばこれしかないんですよ。

 ただ、それを認めていたらば、これを全部排他的権利の保護ですよと言ったらば、同じポスターは世の中に二枚ないわけでありまして、当然、ここの政令で決められているように、特許権、芸術品、例えば油絵とかはもうそれ一枚しかありませんね、世の中に。また、特許権というのも当然それ一つでございますね、特許を持っているのは。そういうものに対して排他的権利の保護だということで随意契約を認めているというのはわかりますが、広告のたぐいにこの排他的権利の保護を本当に認められるのかどうか、ここをちょっとお答えください。

永谷政府参考人 企画案は企画書という形で提出されるわけですけれども、この企画案がほかに例のない優秀なものであるということを認めて採用することにしております。

 したがいまして、提出された企画書は他のもので代替できないものであり、企画書という著作物の利用行為には、著作権という排他的、独占的権利が著作者に与えられていると解釈しております。

二階委員長 永谷官房長、できるだけ答弁近いところで。副大臣のそばへ。

 松野頼久君。

松野(頼)委員 そうすると、広告は全部これは随意契約でもいいということになるんでしょうか。マラケシュ条約はそういうことを規定していますか。答えてください。

永谷政府参考人 随意契約理由は、提案された企画が非常にすぐれているということ、それから緊急性を挙げております。

 政府調達に係る官報公示は、企画が非常にすぐれているということを優先的に考えて、排他的権利の保護という形にしております。

松野(頼)委員 会計検査院の方に来ていただいているんですけれども、今、話を聞かれて、果たしてこれが随意契約の理由になるのかどうかというのを、感想で結構ですからお答えください。

 例えば、過去に広告で随意契約に関して指摘したことがあるかないかで結構です。

森下会計検査院長 お答えいたします。

 契約の方式が随意契約であるということについてそれが適切であるかどうかという判断は、やはり、具体的な事情を十分調べた上でないと判断ができないものでありまして、これは、私どもこれから十分調べていきたいと思いますけれども、この場ではまだ判断をいたしかねる段階でございます。

 それから、広告について過去に何か指摘した事項がそういう契約の方式についてあるかということでございますが、私の記憶の範囲内では、ございません。

松野(頼)委員 この、広告物を随意契約にしていいという答弁は、非常にこれは重い答弁なんですよ。

 官房長、本当に、まず少なくとも緊急性というのはこの落札者の公示にはないわけですから、排他的権利の保護を理由にして随意契約をされているということは確かですね。これは、広告物が当たるのか当たらないのかというところに入ってくるわけです。今後の政府広報百億の予算にかかわってくる問題ですから、これはどうかしっかり答弁してください。

永谷政府参考人 先ほどから何回も同じことを繰り返して恐縮でありますが、企画書という著作物の利用行為には、著作権という排他的、独占的権利が著作者に与えられるというふうに私どもは解釈しております。

松野(頼)委員 著作権は発生しないんじゃないですか、企画書には。もう一回答えてください。

永谷政府参考人 提出された企画書は、ほかのものでは代替できないというものであります。したがいまして、企画書という著作物には、著作権という排他的、独占的権利が著作者に与えられるというふうに解釈しております。

松野(頼)委員 そうしたら、広告のコンペというものがなくなるんじゃないですか。もう一回答えてください。

永谷政府参考人 同じことで恐縮でありますけれども、企画書という著作物には、著作権が著作者に与えられるというふうに解釈しております。(発言する者あり)

二階委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。松野頼久君。

松野(頼)委員 では、その問題は今調べていただくということで、次に参ります。

 官房長、この予定価格はいつ決定されましたか。

永谷政府参考人 二月の上旬に正式な予定価格調書を作成しております。

 ただ、今回の折り込みチラシの企画制作でありますとかあるいは印刷等に係る費用を事前に積算して、スリード社からの見積額は市場価格と乖離したものではないというふうに判断したところであります。

 それで、代替性のない企画制作費につきましては、一概に高い、安いで判断することはできないのですけれども、代替性のある印刷費、折り込み配布費につきましては、物価資料等の市場価格、参考資料をもとに積算して、スリード社の見積書は妥当性があるというふうに判断しております。

松野(頼)委員 ちょっとこの答弁はひどい答弁じゃないですか。この予定価格と見積書の金額は違うんですけれども、予定価格に書いてあるのは値引きをしていない分の金額であって、この会社から出てきたものをもとにしていないということはあり得ないんじゃないですか。値引き前の金額がここに書いてあるんですよ。別途積算したら、全く同じ金額になるわけですか。この答弁はちょっとひどいんじゃないでしょうか。

永谷政府参考人 概算金額の提示があった後、政府広報室で、類似の例であります「にっぽんNOW」の特集号の経費との比較から、概算ではありますけれども、折り込みチラシの配布契約に係る経費を試算し、十二月二十八日の時点で、おおむね妥当な金額であるというふうに判断しております。予定価格調書をその時点でつくっていたわけではないんですけれども、今申し上げましたような趣旨で概算的な予定価格というのを持っていたというふうに考えております。

松野(頼)委員 では、予定価格の変更の手続はとりましたか。

永谷政府参考人 二月の上旬に正式な予定価格調書を作成しております。

松野(頼)委員 予定価格と見積書の金額が違うんですよ。その場合に、見積書の金額と予定価格の間にちょうど値引き分の差があるんですね、約五百万。ということは、予定価格の方が高く出ていますので、もしこの予定価格で落札をされた場合には、お金が足りなくなってしまうわけですよ。だから、再度予算要求を五百万円分しなきゃいけないんです。そうやって準備しておかないと、予定価格で落ちちゃった場合には、その五百万予算が足りなくなりますから、役所内ではそういう手続が必要なんじゃないですかということを言っているんです。それをしましたかという話です。

永谷政府参考人 予定価格の範囲内で契約できたというふうに思っております。

松野(頼)委員 これは逆じゃないでしょうか。高く予定価格が設定された場合に、落札を高くされた場合に予算が足りなくなるわけですから、予算の追加手続というのをとらなきゃいけないんですよ。西川副大臣、横でうなずいていらっしゃって、多分よくおわかりだと思うんですけれども、その手続がなされていなければ、この予定価格がそのままいっていることはおかしいんじゃないですかということを聞いているんです。その手続をされましたか。

永谷政府参考人 業者からの見積もりを参考にしながら、ただし、ほかに競争できるような部分については、チェックをして予定価格をつくっております。その範囲で契約をしているということであります。

松野(頼)委員 だって、さっき仕様書もないとおっしゃっていたじゃないですか。通常、仕様書をつくって、予定価格を決めて、もしその予定価格と見積書に変更がある場合には、ちゃんと追加予算の手続をとるなり減額予算の手続をとるなりということで、その入札の場合の予定価格というのは非常に厳密なものなんですよ。それは私が説明することもないような内容であって、だからこそ、この落札者の公示のところに、要は、予定価格、空欄になっているんですよ。落札価格は書かれているけれども、予定価格の変更手続をとっていないものですから、ここが空欄になっているんです。それが手続をとっていない一つの証拠だと思いますよ。予定価格と落札価格がこんなに違っていたらおかしな話になるわけですから、あえてここを空欄にしているんじゃないですか。

永谷政府参考人 今回の契約自体は、予定価格の範囲内であるということは御理解いただきたいと思います。

 それから、この落札者の公示の紙について予定価格の欄が空欄になっているという御指摘であります。ここについては、これまでのこの公示において、私どもの契約について予定価格というのはすべて載っけていないという扱いになっております。その根拠は、先生がお出しのこの十の資料の一番下のところにございます「国の契約に係る予定価格の事後公表について」ということで、「一、」のところに、「当該契約の予定価格を公表したとしても他の契約の予定価格を類推させるおそれがないと認められるものについて」「公示と併せて行う」というふうに書いてございます。

 私どもの契約では、例えば白書のPR誌とか、何かそういうような広告をやるものですから、そういうものをこの予定価格で公示しますと、それがほかの契約の予定価格を類推させるということで、これは入れていないということであります。

松野(頼)委員 多分そう答えられるだろうなと思って、丁寧に、今答えられた政省令を上につけてありますけれども、その下をごらんください。「国の契約に係る予定価格の事後公表について」、蔵計八七七号というこういうのが出ているんですよ。その「一、」では、「予定価格の公表は、」「落札者等の公示と併せて行うこと。」その「二、」に関しても、「事業に支障を生ずるおそれがないと認められるものについての予定価格の公表は、適宜の方法で行うこと。」いずれにしても、予定価格は事後公表しなければいけない、こういう通知があるんですよ。これを全く無視して、公示のところに、予定価格を空欄にして公示しているという、これは一体どういう理由なんでしょうか。

永谷政府参考人 まさに今先生が御指摘になりましたこの「国の契約に係る予定価格の事後公表について」の「一、」の、傍線、縦線が引いてある前に、「他の契約の予定価格を類推させるおそれがないと認められるものについて」と書いてありますよね。私どもとしては、ここでの予定価格の開示というのがほかの契約の予定価格を類推させるということで、これまでは予定価格というのはすべて載っけていない、そういう扱いにしております。

松野(頼)委員 だって、随意契約の理由では、排他的権利の保護だ、こんなものはほかにないからこれに契約をしたと言っているわけじゃないですか。今度、予定価格の公表になったときには、ほかのものを類推させるから、類似物の価格を類推させるから公示しなかったんだ、全く矛盾したことを同時におっしゃっているんですよ、今。

 もう一回答えてください。

永谷政府参考人 今回の折り込みチラシの件については、全く中身とかやり方について独創的であるということは、そうであります。

 ただ、我々としていろいろな広報とか何かをやっていくわけですけれども、別に、折り込みチラシみたいなことをこれから先にやる可能性はありますよね。そういうことを念頭に置いたときに、この予定価格の開示というのがそっちを類推させることになっていくんじゃないかということで、ここは今申し上げたような取り扱いをさせていただいているということであります。

松野(頼)委員 いや、それはさっき言っていることと全くばらばらのことでありまして、さっきは、著作権にもかかわるから競争入札はなじまない、要は、広告物は競争入札じゃなくていいようなことをおっしゃっていましたけれども、では今度、価格の事後公表になりましたらば、このものを幾らと決めるとほかのものを幾らと類推されるから予定価格の公表ができませんと。そんな類推されるものならば排他的権利の保護には当たらないじゃないですか、全く違うことを同時におっしゃっているのはおかしいんじゃないですかと申しているんです。

永谷政府参考人 同じ答えをして恐縮でありますが、先ほどから申し上げているように、今回のスリード社との折り込みチラシの件については、その緊急性なり独創性なりということを理由に随契を結んだということであります。

 個々の落札者の公示の文書で予定価格を書いていないということについては、そこで我々として予定価格を開示するということが、私どもがやっている仕事の種類というのは非常に似通っていますよね。今回のこのスリード社との契約みたいなことが、同じものがまた出てくるとは思わないんですけれども、類似の折り込みチラシみたいなことをやる可能性はあるわけですよね。そういうことで、予定価格というのは、これまでのところはすべて開示しないというやり方でやってきております。

松野(頼)委員 いや、この答弁は本当に私はひどいと思いますよ。

 では、ちょっと逆に伺いますけれども、この特例政令の中で、要は随意契約をしてもいい「特許権等」、「等」にこれは著作権が入るのか入らないのか。入るというふうな解釈ですね。

永谷政府参考人 おっしゃるとおりであります。入るというふうに解釈しております。

松野(頼)委員 そうすると、では、広告物はこれからすべて随意契約でいいということですね。これはガットの事務局にも確認されていますか、何十億のものでも何億のものでもいいと。十万SDR以上の金額は、政府調達にかかわって、広告がそうならば、本当はマラケシュ条約の中で広告は除外されているんじゃないですか。ガットに確認されましたか。

永谷政府参考人 今の時点で、ガットに確認したかどうかというのはちょっと私は知らないんですけれども、千六百万以上の契約については、基本的には一般競争入札をするということでありますよね。それで、WTOの規定の中で、特許権等の排他的権利の場合には随意契約ができるというふうになっていますよね。私どもとしては、今回のこのスリード社との契約というのは、まさにこの特許権等の排他的権利に該当する、その保護に該当するということでやっております。

松野(頼)委員 さっき官房長は、予定価格の意味をどうもおわかりじゃないんですけれども、本来、一般競争入札及び指名競争入札の場合の予定価格というのは、今回は、予定価格を事前公表をしないという願い書を出されて事前公表をしていないわけですけれども、通常は、事前公表をして、それで入札をかけるわけですよ。ですから、予定価格が一億六千何百万という数字であれば、そこまで入札をかけてくる可能性があるんですね、限りなく一億六千万に近いところに。ただ、稟議書を回されて予算措置をされている金額は一億五千何百万という、見積書に準じた数字しか予算措置をされていない稟議書の判こしかないわけですよ、皆さんの役所の中で。ということは、もしも事前公示をしたとしたならば、一億六千万まで札が入っちゃう可能性があるんですよ。だから、逆にお金が足りなくなるんです。

 さっき、予定価格の中だからいいんですよみたいな答弁をされていたんですけれども、そこは全くその入札制度を理解されていないことであって、逆にお金が足りなくなるから、公示をした瞬間に追加予算の稟議書というのを回さなきゃいけないわけですよ。だから、足りなくなるんです。一億六千で札が入っちゃった場合に、予算措置をしている金額が一億五千万だったらば、一千万足りないから追加予算の措置という稟議をしなきゃいけないんですよということを言っているんです。

 だから、これは稟議をされたんですかということを聞いているんです。もう一回答えてください。

永谷政府参考人 いずれにしても、予定価格の範囲内での契約であります。

松野(頼)委員 いずれにしても、もう時間が参りましたので、またこのことは時間があったらやらせていただきますけれども、今回の一連の私はこの契約を見ていて、業者さん云々というのは私はある意味じゃ気の毒だなと思っているんですよ。ただ、政府とか国とか行政が、きちっと、それも行政の中の行政なんですよ、内閣府というのは。そこはやはりきちっとさせて、要は、透明性を高めた契約というものが私は求められているというふうに思いますので、あえて法的な質問をさせていただきました。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 昨日、地方公聴会がございまして、私は新潟の方に行ってまいりました、第二班ということで。

 新潟に行った趣旨というのは、被災地ということで、震災の後であっても、御自身が被災をされたような郵便局の方々も、その翌日からもう郵便などを配達されているというような話を聞いたわけでありますけれども、その被災地という趣旨で行ったというだけではなくて、現地に行きましたところ、そこは前島密公の生誕の地であるというようなお話も伺いました。帰り、大変な豪雨に見舞われまして、長野経由で帰ってまいりましたが、前島密公の涙雨かな、こんなふうに感じ、また、自民党の総務会は何か修正案が通ったような報道が流れたら、今度、東京にもその雨がやってきているということではないかと思います。

 きのう、地方の方々のあるいは現場で働いている方々の声を聞きまして、やはり今回の法案、随分問題があるのではないか、改めてその思いを強くしたところであります。

 ところで、ちょっと今スリード社の話が続いておりましたので、法務大臣、せっかくお越しいただいていますので、通告はしていないんですけれども、法務大臣は、人権の擁護というのは非常に政府としても重要な職責であると私は思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

南野国務大臣 人権擁護問題というのは大変重要な問題であると思っております。

山花委員 法務大臣、今までの議論をお聞きになっておられないかもしれないので、ちょっと事情がわからないかもしれませんけれども、一般論としてお伺いしますが、IQの低い方をターゲットにして広報を打とうというような話があると、余り私は愉快な話ではない、人権問題ではないかと思うんですけれども、感想がありましたらお願いいたします。

南野国務大臣 それは先生、どういう意味か、その事の流れがわかりませんので、ちょっとお答えできません、申しわけありません。

山花委員 一般論としてということで聞いているんですけれども、つまりは、ある企画があって、IQの高い層と低い層というのをグループ分けして、その低い層をターゲットにして広報を打とう、宣伝しようというような企画というのは、私は人権上問題があると思うんですが、その点、所見があれば、いかがでしょうか。

南野国務大臣 いまだに先生のお申し出になっておられる意味がわかりませんので。人間であれば、全部これは人権問題として大切な問題だと思っております。

山花委員 ここに、先日、当委員会で五十嵐委員から配られた配付資料があって、済みません、全体にはお渡しをしていませんけれども、郵政民営化の広報の合意形成コミュニケーション戦略というものがありまして、有限会社スリード社からそのプレゼンをされたときの資料であります。

 IQという縦の軸がありまして、上の方がハイ、下の方がロー。IQ軸ローというところ、ここに、具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣閣僚を支持する層、この層にフォーカスした徹底したラーニングプロモーションを勉強しましょう、こういうことが必要であるというようなプレゼンがされているんですけれども、私はこれは人権上好ましくない話ではないかと思うんですけれども、人権について大変重要な仕事だと御答弁された法務大臣の所見をいただきたいと思います。

南野国務大臣 今のお話をお聞きするだけで、私は的確なお答えは申しかねると思います。

山花委員 これが人権問題ではないということにはならないと私は思うんですけれども、ごめんなさい、これは通告していなかったので、よくよく考えていただきたいと思います。まだ国会の会期は随分ありますので、また改めてこの場でお聞きする機会があろうかと思いますので、御検討いただければと思います。(発言する者あり)では、今、現物があるようですので、今ちょっとごらんいただいて、その間、ほかの方に質問していたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

二階委員長 どうぞ。

山花委員 それでは、久々に質問に立ちまして、ちょっと気になっていたことが随分前からあったんですけれども、機会がなかったので、きょうこの機会に質問をさせていただきたいんです。

 今回のこの郵政民営化の議論なんですけれども、これはいろいろな方が、アメリカの年次改革要望書であるとかあるいは構造障壁イニシアチブに沿う形で推進されているのではないか、そういう指摘をしております。当委員会でもそういった議論がありました。

 竹中大臣、「昨年の四月二十六日から現在まで、郵政民営化準備室がアメリカの政府、民間関係者と十七回面談を行っている」と答弁をされておりますけれども、これは間違いないでしょうか。

竹中国務大臣 室長からそのような報告を受けております。

山花委員 渡辺準備室長、お越しいただいておりますけれども、竹中大臣からその面談を行うに際して何らかの指示を受けていらっしゃいましたでしょうか。

渡辺政府参考人 国の内外を問わず、いろいろな方々からお話を承って、それから、私どもの考えていることを伝えるというのが準備室の当然の役割でございますので、大臣から特段に御指示があったとか、そういうことではございません。

山花委員 指示はしていない、指示は全くされていないんですか。

 それでは、相手方に対してこういう方針であるというようなことを伝えるに際しても、それは大臣には了解はとっていないということですか。

渡辺政府参考人 前回お話し申し上げたと思うんですが、十七回のうち十回私がやりました。そのうち七、八割方は昨年の九月十日以降であります。したがって、九月十日には基本方針が定まっておりました。総理大臣からは、基本方針に忠実に制度設計をせよ、それから透明性を持ってやれ、一貫性を持ってやれという三つの原則が示されておりますので、当然、私どもとしては、その範囲内において相手の意見を聞く、我々の考えを伝えるという作業をしてまいった次第であります。

山花委員 ただ、この六月七日、当委員会での質疑のときの答弁が非常に気になるんです。その中で、「財務省、USTRそれから公使、随分いろいろな方がお見えになりました。そして、一貫しておっしゃっていたことは、英語流で言いますと、レベル・プレーイング・フィールドをくれ、これが完成するまでは新商品を出すべきではないというお話でございました。」ここから先です。「私は、相手方には一貫してこういうことを申し上げています。そういうことを決めるのはあなた方ではないし、私でもない。これは郵政民営化の委員会がそれを判断するのであって、法律上、民営化委員会の御判断に従う話であるので、そこまでに話をしておきましょうということに一貫しております。」一貫して郵政民営化の委員会が判断するんだと説明しているようですけれども、この郵政民営化の委員会というのは、一体何ですか。

渡辺政府参考人 十回のうち七、八割方は九月十日以降だと申し上げました。それを縮めて申し上げましたので、表現ぶりも郵政民営化委員会という言葉と、それから郵政民営化の委員会という言葉と、二つをたしか言っていると思います。

 郵政民営化の委員会という中には、九月十日に基本方針が決定をされた、監視組織だと思いますが、そういう言葉も交えて御説明をした次第で、そこが経営の自由度の判断とイコールフッティングを判断するんであって、あなた方から言われたからどうだ、それから、我々が恣意的にそういうものを決めるわけではないということを申し上げた次第です。したがって、その時点で、もう話はここまでにしておきましょう、それ以上入っても意味がないですよということを申し上げた次第であります。

山花委員 竹中大臣、私は今の答弁、大変不愉快な感じがするんですけれども。つまりは、去年の九月以降だという話ですけれども、基本方針は定まっていたかもしれませんが、民営化委員会というのは別にできたわけでもありませんし、監視委員会だとかいろいろおっしゃっていますけれども、私たちは、法案が出されてから、まだこれは衆議院ですら法律が通ったわけでもありません。何で役所の人が大臣の指示もなく、決まってもいない、あたかも法律がもう通った後を前提にするかのようなことを、対外的にですよ、国内問題であればこれは答弁訂正してくださいで済む話かもしれませんけれども、対外的に一貫してお話をされている。問題ではありませんか。

竹中国務大臣 いろいろなやりとりがあったんだと思いますが、基本的には先方に対して政府としてどういう方向で考えているのかと、基本方針を九月十日に決定しているわけですから、その基本方針の考え方はこう、こういうことでございます、そういう説明をされたのだと思います。

山花委員 基本方針ではしかしそんな話になっていますか。郵政民営化の委員会が判断するんですか。違うんじゃないですか。総理大臣や総務大臣の許可が必要なんじゃないですか。どちらにしても、随分粗っぽいことを言われているということだと思うんですけれども。

渡辺政府参考人 恐縮ですが、十回全部を事細かに御説明するだけの時間的余裕はございませんでしたから縮めて申し上げました。ですから、「郵政民営化の」と「の」が入っていると思います、最初のところは。監視組織というのはそういうことをするんだというのは九月十日の時点で既にはっきりしていたわけでありまして、ここにいろいろなものがゆだねられるということは閣議決定しているわけですから、それをどなたに対してもきちんと御説明する、相手に誤解を与えたり、要らぬ期待を抱かせないというのも、説明者の責任であろうかと思っております。

山花委員 しかし、法律を議決するのは国会ではないんですか。政府で方針で決めても、では、国会は修正しない、そういう前提で対外的に話をされると。今いろいろ報じられていますけれども、後で国会が修正するといっても、何か総理は実質的には全然こんなのは修正というほどのことじゃないんだと言っているようですけれども、議会というのはそういうものだというのが役所の方の認識だ、そういう趣旨の答弁ですか、今のは。

渡辺政府参考人 私、申し上げたかと思うんですけれども、基本方針に沿って制度設計をするというふうに先ほどもたしかコメントしたと思います。そういうことを伝えたわけでありまして、当然立法府が法律案を審議し、でき上がったものに最後は内外ともに拘束をされるわけですから、そこは抜かりなく相手方に伝えております。

山花委員 では、六月七日のこの答弁は訂正されるということですね。

渡辺政府参考人 今私がここに数回立って御説明したことで当日の答弁と差はないと思いますが、私はそう考えておりますけれども。

 もう少し詳しく申し上げれば、あなた方からいろいろなことを言われてやる話ではない、我々が決めることではない、これからまた議会で法律案を審議するんでしょうからということも伝えておりますので、したがって、話はそこで打ち切りということを申し上げているわけですから、相手方に対してミスリードをするようなことは一切しておりません。

山花委員 しかし、ちょっとそうは読めませんよ。この間も、私、聞いていて何だろうと思ったんですけれども、今言われたように、前段のところはそのとおりだと思いますよ、あなた方でもないし私でもない、そこはいいんですけれども、「これは郵政民営化の委員会がそれを判断するのであって、法律上、民営化委員会の御判断に従う話であるので、」と言っているじゃないですか。全然今の説明とは違いますよ、それは。撤回するんですね。

渡辺政府参考人 九月以降の半年以上の話を縮めて申し上げているのであって、ですから、前段は監視組織の話です。後段はもう既に法律案ができてからの話でもありますので、ここはたしか、法律上、民営化委員会の判断に従うと。

 前段は、郵政民営化の委員会、これは英語流に、多分向こうは訳しやすいと思って、オーガナイゼーションじゃなくてコミッティーだかコミッションだか、そういうことを言ったと思いますけれども、そういう趣旨でありまして、その時間の長さの間で、一つの意図というか意思をお伝えするときにこういう用語を使ったんです。

 ちなみに、ちょっと、この議事録の中に、私の表現ぶりをきちっととらえていらっしゃらなかったのかどうかわかりませんが、「そこまでに話をしておきましょう」というくだりは、話はそこまでにしておきましょうということでありますので、その点は念を押させていただきます。

山花委員 ちょっとこれは、私はどうも釈然としないんですけれども、この議事録について、理事会に諮っていただきたいと思います。

二階委員長 後に理事会において協議いたします。

 山花郁夫君。

山花委員 それでは、ちょっと中身の話に移りたいと思います。

 昨日の地方公聴会で、民営化には賛成だとおっしゃっておられた方からも、外資の規制がないとするとちょっとどうかという懸念の表明がございました。これはもう既に一度議論はさせていただいておりますけれども、今回の商法の改正等によりまして、これは法務大臣にお答えいただきたいんですけれども、外資だからといって、株を買っちゃだめよ、こういう話にはならないという趣旨で、商法はそうなっているということでよろしいですね。

南野国務大臣 先生がおっしゃるとおり、外資だからだめよということはないと思います。

山花委員 つまり、もう既に議論はさせていただいているとおりだと思いますけれども、いわゆる敵対的な買収と言われるようなケースであっても、一般的なルールから逸脱するようなものについて、つまりは株主の利益を大きく損じるとか、そういったケースであればそれは阻止することができるけれども、株主の意向というのが非常に重視されるというふうに私は理解しているんですけれども、この点について、改めてもう一度御答弁いただきたいと思います。

南野国務大臣 では、済みません、御報告申し上げます。

 先生御指摘のとおり、郵政の民営化によって設立される株式会社は、きょう法案を通していただきましたので、会社法に基づく株式会社であると承知しておりますので、企業価値を損なう敵対的買収、これに対しましては、その買収者が外資であるか否かにかかわらず合理的な防衛策を講ずることが認められるべきであると考えますけれども、他方、企業価値を向上させる敵対的買収に対しましては、現経営陣が自己の保身を図るために防衛策を講じるようなことがあってはならないということでございます。

山花委員 つまりは、これまで竹中大臣を初め、今後いろいろこういう懸念があるという表明をしても、そこは経営判断だからという答弁が非常に多かったと思いますけれども、経営者だけではなくて、株主側からの意向というのも非常にその経営を左右するわけでありまして、そういった意味で、この外資の問題というのは非常に私は大事なことではないか、このように思っております。

 ところで、郵貯銀行とか郵便保険会社につきましては、これも議論があったところですけれども、全株の処分、一たん全株を処分するという話になっていると思うんですけれども、この趣旨をもう一回改めて御答弁いただきたいと思います。

竹中国務大臣 金融業、銀行、保険におきましては、何といっても信用というものが非常に大きな重みを持ちます。その際に、国の関与がある、国家というのはやはり絶対的信用を持っているわけでございますから、そういった意味での国家、信用が重要な部門においては、国の信用、関与を完全に断ち切る必要があるというふうに考えるわけでございます。そうした観点から、この民営化の趣旨を徹底させる意味でも、両社は特殊会社としないで一般商法会社として設立した上で、その全株式を処分するということ、持ち株会社は移行期間中に銀行、保険会社の株式を完全に処分しなければならないというふうにしているところでございます。

山花委員 国家的な保証という話ですけれども、ということは、郵貯銀行、郵便保険会社というのは破綻をする可能性がある、そういう趣旨で理解してよろしいんですか。

竹中国務大臣 一般の銀行として銀行法の適用を受けるということになります。

山花委員 政府は、一般の銀行、特に大きな銀行についても、破綻をすることがあって、それは自由競争原理の中でしようがない、市場原理のもとでしようがない、こういう認識なんでしょうか。

伊藤国務大臣 そういう認識は持っておりません。金融システムの安定性というものを確保していくということは金融行政にとって極めて重要でありますので、そういう意味からしますと、私どもは、検査、監督を通じて適切な金融行政を展開することによって金融システムの安定性というものを確保していかなければいけないというふうに考えております。

山花委員 いや、検査とか監督をしても、でも、ここのところ、公的資金というか税金を注入して資本増強を図るようなケースもあるわけじゃないですか。つまり、民間の銀行でもつぶさない。つまり、監督をしたりとか検査をしたりとかしても立ち行かなくなるケースというのは当然あり得るわけでして、そうなのかなと思って見ていると、いや、資本増強するというようなことをされているので、一般の理解としては大きな銀行は政府はつぶさないという方針だというふうに理解されているように思いますけれども、違うんですか。

伊藤国務大臣 健全性を確保していくということは極めて重要であります。そのために、今まで健全性の問題については不良債権問題というものが金融システムの安定性という観点からしますと極めて大きな問題でございました。

 したがって、この問題を解決していくために、金融再生プログラムに基づく各施策を展開して、そして不良債権比率というものが低下をし、金融システムに対する信頼性というものが主要行を中心として回復をしてきたところでありますし、また、地域の金融機関につきましても、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムを通じて、その健全性の確保に向けてのさまざまな取り組みが行われてきたところであります。

 私どもといたしましては、今後も検査、監督を通じて、早目早目に金融機関の健全性の状況というものを把握して、そして早目の対応をしていくということが重要であるというふうに考えておりますので、そうした観点から、金融システムの安定性というものを引き続き確保していきたいというふうに思っております。

山花委員 端的にお答えいただきたいんですけれども、一般の銀行というのは、市場経済ですから、破綻することは、それは幾ら頑張ったってあり得ると思うんですけれども、それを政府の方で破綻させないという方針があるのか、あるいは破綻してもいたし方ないと考えておられるのか、どちらなんでしょうか。いろいろな検査を通じて頑張りますと。頑張りますというのはわかりますけれども、頑張った結果としてそうならないケースというのはあるわけで、その場合にどうですかということを聞いているんです。

伊藤国務大臣 重ねてのお答えで恐縮でございますけれども、私ども金融行政の目的というものは、預金者を保護し信用秩序というものを確保していく、このことが金融行政に与えられた使命でございますので、そういう観点からいたしますと、金融機関の健全性を確保していくために、検査あるいは監督というものを適切に行って金融システム全体の安定性というものを維持していく、そのための金融行政というものを展開させていただいているところでございます。

山花委員 お答えいただけていないんですけれども、つまり、それは政府として当たり前のことだと思いますよ。ほっておいて、破綻しちゃいました、はい、それまでよなんというような政府があったら、それはちょっといかがなものかと思いますし、しないようにいろいろ事前にやるということは、それは当然のことだと思います。

 先ほど委員内からも指摘がありましたけれども、りそな銀行に対して二兆円の資本増強を行った、あれは破綻したからやったんじゃない、あれは破綻する前のものに対して資本増強したんだという政府の説明だったと思いますけれども、つまりは、破綻を回避するためにはそういった税金を使って一般の銀行を救済するというのが今の政府の方針であると理解をしてよろしいでしょうか。

伊藤国務大臣 まず、りそなのケースでありますけれども、これは破綻をしたわけではございません。資産超過となっている状況の中で、預金保険法百二条に基づいて、そして、金融システムを守るために、信用秩序というものを維持していくために、危機というものを回避していくために、法律に基づいた適切な対応というものをさせていただいたということでございます。

山花委員 りそなのケースはそういう破綻のケースじゃないですよねということはお断りした上で聞いているんですけれども、りそなでなかったとしても、他に破綻した銀行というものが過去には存在するわけですが、そうしたケースにおいて今まで預金者の預金というものが、とりわけ一千万円以上の預金が保護されなかったというケースはあったんですか。

伊藤国務大臣 今までは守られております。

 ことしの四月一日から委員も御承知のとおりペイオフというものを全面解禁させていただきました。したがって、これからは金融機関にとりましても、やはり預金者の選択、そうした選択の上で緊張感を持って経営の健全性というものを確保していくということが極めて重要であります。そして、私ども金融行政としても、先ほど御説明をさせていただいているように、早目に認知をし早目に対応していく、そうした行政を通じて金融システム全体の信頼性を確保し、健全性というものを引き続き維持していきたいというふうに思っております。

山花委員 余り質疑が深まらないんですが、何が言いたいかというと、つまり、竹中大臣は全株処分の理由として国の信用が背景にあるというようなことを断ち切るとおっしゃるんですけれども、民間の銀行だって、これまでだって相当税金を突っ込んで預金者保護ということでやってきているわけですし、これから先の話は今あったとおりかもしれませんけれども、過去には実際政府保証があったのと異ならないような運営がされてきているじゃないですか。ちょっとそういった意味から説明の妥当性には疑問を感じるんですけれども。

 それはさておくとして、全株売却することが民営化の趣旨として必要なんだという話だとすると、移行期間後も株式保有というものを禁止しないとその趣旨に反するんじゃないですか。今までの議論の中で、いや、買い戻しもできますとかなんとか言うんですけれども、政府の信用をなくすという意味からすると、一回普通の銀行になるんだとおっしゃいますけれども、一たん普通の銀行になった後また買い戻しちゃったら、もとに戻っちゃうじゃないですか。何でこういう制度になっているんですか。

竹中国務大臣 まず、義務として課しているのは完全売却ではなくて完全処分でございます。完全処分を義務づけているわけでございます。その後については、これは通常の銀行になるということでありますので、それ以上の特別の規制は課さないということに相なります。

 これは今後、郵便局会社等々、郵政がどのようなビジネスを展開していくかにもよりますけれども、もしもその中で、通常のビジネスの慣行に沿うような形で、取引先との一定的、安定的な関係とか、そのような観点からほかの銀行と同じような形でその保有をするということは、これは商慣行としてはあり得るわけでございまして、そういうものを特別に、ここだけは持ってはいけないという形で排除することはないというような考え方に基づいているわけでございます。

 それ以降は、一般の法規のもとで、特殊会社としての制約は、これはこれとして当然あるわけでございますけれども、一般の民間の金融機関と同様の形での株式の取得を妨げるものではない、一般的なルールを超えて殊さらに規定するものではないという趣旨でございます。

山花委員 全株売却をしないと、一般の銀行とは同じにならないという認識なんですか。銀行法の世界でいえば、五〇%処分すれば、それで普通の銀行になるんじゃないですか。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、金融の業務においては信用が競争上決定的に重要でございます。郵貯銀行、そして郵便保険会社が民間銀行、民間保険会社と同一の条件で自由な競争を行っていただきたい、そしてより質の高い多様なサービスの提供を可能とする、これが民営化の趣旨でございますから、これを徹底するためには、やはり両社は特殊会社ではなく一般商法会社として設立して、そしてその全株式を処分して、国の信用、関与を完全に断ち切るということが必要であろうかというふうに考えております。そういう観点から、持ち株会社に、移行期間中にこの銀行、保険会社の株式を完全に処分しなければならないというふうに我々は考えているわけでございます。

山花委員 私、東京の出身の議員なんですけれども、石原都知事が肝いりで新銀行東京というのをつくりまして、あれは東京都が株式一〇〇%出資をしているんですけれども、あれは普通の銀行じゃないという御認識ですか。

伊藤国務大臣 新銀行東京も、これは銀行法の適用を受けている銀行であります。新銀行東京は、東京都の政策判断として、中小企業金融への総合的な支援を図る目的で設立された、いわば実質的な政策金融機関という性格を有しているところであるというふうに考えております。

山花委員 つまり、普通の銀行なんですか。

伊藤国務大臣 先ほども答弁をさせていただいたように、銀行法の適用を受けている一般の銀行でございます。

山花委員 つまり、麻生大臣とも地方分権の議論はこれまでさせていただきましたけれども、中央政府が出資しているか、地方政府が出資しているかというだけの違いでありまして、新銀行東京が銀行法上の適用を受ける普通の銀行だというのであれば、一〇〇%全株処分しなければ普通の銀行にならないという説明はおかしいんじゃないですか。竹中大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 これは政策判断の問題だと思います。今伊藤大臣から御答弁がありましたように、新銀行東京の場合は、東京都の政策判断として、中小企業金融への総合的な支援を図る、そういう目的で設立した、いわば実質的な政策金融機関という性格を有している。一方で、郵便貯金銀行について、国の政策判断としてこれは民営化するのでございまして、政策金融機関にするものではない、これはまさに政策の判断の問題でございます。

山花委員 その話と関係ないんじゃないですか。政策判断であるということと、何で全株処分が必要かという話は別に結びつかないんじゃないですか。

竹中国務大臣 政策判断として民営化をする。政策金融機関、特別の政策的目的を持ったそういう政策的な金融機関にするわけではない。そうすると、まさに民営化でございますから、一般的な金融機関、民間金融機関と同じように、やはり信用を背景にするわけでありますから、そこにやはり絶対的な信用を持っている国の関与を断ち切らなければならないというふうに我々は考えているわけであります。

山花委員 それがちょっと、必ずしも納得はしていませんけれども、それが本当だとすると、私は恐ろしいことだと思うんですよ。つまりは、三百五十兆からのお金を持っているところが、これからは国の政策的な判断がタッチできなくなってしまう、そういう銀行ができ上がってしまう。三百五十は郵貯、簡保を合わせた額ですから、郵貯ですともうちょっと少ない額だと思いますが。では国は、これから郵貯銀行あるいは郵便保険会社、特に郵貯銀行ですけれども、政策的な誘導とかそういうことはもうしない、できない、そういう話ですか。

竹中国務大臣 これは、民有民営、完全になって、移行期が過ぎた後は銀行法等々の適用を受ける、関係法令の適用を受けるわけでございますから、その一般法令の適用を受ける中で、その中には、当然金融システムの安定とか自己資本比率、いろいろな政策的な判断の基準がございますけれども、そういうものは適用されるわけでございます。銀行法等一般法令の適用を受ける、その中で政策は関与をするということでございます。

山花委員 いずれにしても、私は、そういうことであるとすると国とのかかわりがちょっとまだ釈然としないんですけれども、では、仮に一般の銀行になるんだという話でもう一回聞きますけれども、政府として郵貯銀行を破綻させないという方針を持っているわけではないんですね。つまり、一般の銀行と一緒である、破綻はさせないという方針は持っていないということでよろしいんですね。

竹中国務大臣 一般の銀行として完全民有民営の後は銀行法の適用を受ける、その中で、金融システムを担う非常に強固で利用者の利便に資する金融機関になっていただきたいと思っているわけであります。

山花委員 希望的観測を述べられるのはいいんですけれども、いいというか、余りよくはないんですが、方針として、破綻させないという方針を持っているのかいないのか、この点はいかがですか。

竹中国務大臣 我々としましては、シミュレーション等々で、民有民営化の利点を十分に発揮していただいて、健全な経営を行っていただけるものというふうに思っております。

山花委員 ちゃんと答えていただきたいと思います。

 そういう方針でやっていただきたい、それはそうでしょうよ。当たり前の話であって、リスクの話をしているのであります。郵貯銀行というのを破綻させる方針、破綻させる方針というのはあり得ませんけれども、破綻させないという方針を今の時点で、今の時点でというか、政府としてそういう方針は持たないということでよろしいんですか。

竹中国務大臣 銀行法が適用されている銀行、これは金融庁に本来お答えいただくべきことかもしれませんが、政府としては、金融庁としては、どの銀行も破綻させないように、そして金融システムをしっかりと担わせるように、そのような検査、監督をしていくわけでございます。

山花委員 それは、一般の銀行もすべてそうだということだとすると、結局、郵貯だろうが民間だろうが、隠れた政府保証があるという話は同じじゃないですか。さっきの話とちょっと違うんじゃないですか。民間の銀行も要するに政府として保証する、いざとなれば。そういうことですか。

竹中国務大臣 国の関与云々というのは出資を通した関与を断ち切るという意味でございます。

山花委員 だから、そうだとすると、買い戻しは認めちゃまずいんじゃないですか。論理的に一貫しないじゃないですか。

竹中国務大臣 これは一般の金融機関になるわけでございますから、一般の金融機関がそうしているような範囲で、特殊会社としての性格を踏まえ、また、銀行法、独禁法等々の枠組みの中で一般企業と同じようにしていただく、それ以上の追加的な規制はしないということを申し上げているわけでございます。

山花委員 政府保証については、私はちょっと、やはりおかしな話であるということは、これ以上やっても堂々めぐりのようですから、指摘だけさせていただきたいと思います。

 その上で、今、政府の保証が背景にあるという話でしたけれども、以前はリスク遮断ということも言われていたような気がするんですが、この説明はもう撤回されたんですか。

竹中国務大臣 そもそもなぜ四分社化するかということに関して、四分社化の理由、幾つかございますけれども、その一つの理由として、一つの事業の損益が他の損益に影響を及ぼさないようにする、そのような趣旨の答弁も、けさもさせていただいたかと存じます。

 その意味では、リスクを遮断するという意味での分社化は必要でありますし、その精神でこの枠組みをつくっております。

山花委員 金融担当大臣にお伺いしたいんですけれども、金融審議会の第一部会報告というのが平成十二年の十二月二十一日に出ておりまして、「銀行業等における主要株主に関するルール整備及び新たなビジネス・モデルと規制緩和等について」「昨今、いわゆる異業種による銀行業への参入の動きが本格化するとともに、」という話で、「このような新たなビジネス・モデルが追求されるひとつの大きな理由は、金融サービスの提供者が異業種として銀行業へ参入することにより顧客基盤や店舗ネットワークの共有を通じてシナジー効果を得ることが期待できるからである。」こういうような報告がされていると思うんですけれども、そうであるとすると、何で分社化して、要するにシナジー効果というのをなくしてしまうような制度設計にしてしまうんですか。

伊藤国務大臣 金融審議会の報告においても、そのリスク遮断に対する考え方を捨てているということではありません。

 これは、異業種の方々が銀行業というものに参入をしていく、その垣根というものを低くしていく、その規制緩和の考え方というものをしっかり検討していく必要があるのではないか、そうした観点の中での議論でございます。

 今、委員の御指摘は、すべての垣根がなくなって、そして金融業があらゆることと一緒にできるのではないかという点で御質問されているのだとするならば、そうではなくて、それぞれのリスク遮断というものは銀行経営の健全性あるいは業務の適切性を確保していくに当たっては極めて重要なことでありますので、そうした観点について私たちの考え方が変わっているということではございません。

 今回の四分社化につきましても、それぞれ郵貯銀行そして保険会社は、それぞれの銀行法、保険業法の適用を受けることになるわけであります。

山花委員 そのリスク遮断の話なんですけれども、例えばソニー銀行とかアイワイバンクなどは、銀行と事業会社との関係に資本関係がありますよね。ソニー銀行でいうと八四%の出資があるということなんですけれども、これでリスク遮断ができているんだとすると、結局さっきの話に戻るんですけれども、全株処分しなければいけないという話は、どうもそこはつじつまが合っていないように思うんですが、そこはどう説明されるんでしょうか。

伊藤国務大臣 今のようなケースの場合にも、これは銀行法あるいは銀行持ち株会社に対する規制というものがございまして、その中で健全性でありますとかあるいは業務の適切性を確保していくための措置というものが講じられているわけであります。

 ですので、そうした意味からいたしますと、委員からしますと、完全処分をする必要性の問題に絡めて御質問が出ているのだと思いますが、今回の場合には、完全処分をしていくのは、やはり民有民営を実現していくプロセスとして完全処分というものを求めているわけであります。その後、株をまた持つということについては、これは一般の、今の業法の中で認められている範囲内で持つことを認めていくということでありますので、そこは二つ性格の違うものだというふうに先ほど竹中大臣が御答弁をされましたが、私どもも同じ認識でおります。

山花委員 今の説明ですと、銀行法上の問題だということであれば、五〇%まで処分すれば、現行の銀行法上も問題ないんじゃないですか、つまり、全株処分するというのは何でですかということになってしまうんですけれども。いかがでしょうか、銀行法上の規制ということでいえば。

竹中国務大臣 全株処分しなければいけないのは、さきの御説明に立ち戻っていただきたいのでございますが、国の関与を断ち切るためです。国という絶対的信用の関与を断ち切るために、国の関与を断って、そしてそこで民間と同等のスタートラインに立っていただいて、後は民間の一般法規の適用の範囲でやっていただく、そのような制度設計をしているわけでございます。

山花委員 国の信用が残ると言うんですけれども、郵貯銀行とか郵便保険会社には政府保証をつけているんですか。つけてないんでしょう。

竹中国務大臣 二〇〇七年四月以降に入ってくる新しい新勘定といいますか新預金には、政府保証はつきません。

山花委員 それをちゃんと政府が説明すればいいだけの話で、暗黙の政府保証だとか何だとか言われますけれども、結局、それをちゃんと説明した上で五〇%まで処分すれば銀行法上も問題はないはずですし、論理的には、全株処分するというのは説明としておかしいのではないでしょうか。

竹中国務大臣 何度も申し上げますが、国の関与を一たん断ち切って、民間と同じ条件になっていただく、そしてその後は、民間と同じ法規の中で行動をしていただく、それが今回の制度設計でございます。

山花委員 結局、いつまでたっても同じ話になるんですが、例えば、郵政事業を民営化したドイツですけれども、ドイツ・ポストは、ポストバンクの株式をすべて処分するという方針を持っていたんでしょうか。その点は御存じですか、ドイツ・ポストについて。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

竹中国務大臣 必要がございましたら、さらに詳細な御報告をさせていただきますが、少なくとも、ドイツの郵政の場合は、持ち株会社という形ではなくて、銀行も物流も、国から独立してといいますか、ぶら下がっていた、そのような形だったというふうに記憶をしています。その後、いろいろな経営が必ずしもうまくいかなかったとかいうこと等があり、ポストバンクをドイツ・ポストが傘下におさめた、そしてそれを今売っていっている、そのようなプロセスであるというふうに理解をしておりますが、ちょっと急なお尋ねでございますので、詳細の必要がございましたら、さらに調べをさせていただきます。

山花委員 細かなことを言うつもりはないんですけれども、少なくとも、ドイツ・ポストはポストバンクの株式を全部、一〇〇%処分しようという話にはなってなかったんですよ。つまり、何が言いたいかというと、ドイツにおいて、民営化の一つのモデルだと思いますけれども、リスク遮断とかデファクトの政府保証みたいな問題というのは、それでも起きてなかったということだと思うんです。つまり、民営化するということが直ちに一〇〇%処分をするというのが、必ずしも絶対的な常識ではないという話だと思います。

 もし国の信用が残るということが問題だというのであれば、政府が保有する持ち株会社の株式というものを全部処分してしまえば、郵貯銀行への出資があったとしてもこれは問題がないはずじゃないですか。そこで切れると思うんですけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 今のような形をもし仮にやるとすれば何が残るかといいますと、その場合、まさにリスクの遮断ができていないという問題が引き続き残るということでございます。

 まず、金融の場合は、ほかのビジネスと違いますので、特にほかのビジネスからのリスクをやはり遮断するということと、国の出資等々を通した関与をなくしていく、この二つを両立させることが、制度設計上私は大変重要であるというふうに思っております。

 特にもう一点、ドイツのことを委員が言われましたので、あえてドイツとの比較をさせていただくと、やはり日本の場合、非常に巨大な事業会社と巨大な金融機関が今同じ屋根の下にある、ここがやはり世界的に見ても非常にまれなケースであろうかというふうに思います。ポストバンク、資金量、定かではございませんが、円に直して約八兆円から九兆円ぐらいの資金量であったかと思います。日本の場合、郵貯だけで二百数十兆、保険を合わせて三百四十兆でございますから、これだけ大きな金融機関、そして郵便事業を行っている巨大な事業会社、これをやはり分けるということ、かつ、銀行については国の関与をしっかりと断っていくということ、これが制度設計の根幹であると考えているわけでございます。

山花委員 聞けば聞くほどよくわからなくなってしまうんですけれども。つまりは、巨大な二つの会社があってそこのリスクを遮断しようというんですけれども、例えば銀行という視点でいうと、別にソニー銀行に恨みがあるわけでも何でもないですけれども、よっぽど親会社の方が巨大で銀行の方が小さいというのであれば、親会社の経営の影響をちいちゃな銀行が受けてはこれは大変なのでリスク遮断をしましょうという話は、それはそれで理解できますけれども、両方巨大だったら、そこでリスク遮断して、一体何を恐れているのかという話であります。

 また、今まで私たちがこの委員会で聞かされてきたいろいろな骨格経営試算だの何だのということでいうと、とてもバラ色の話ばかり聞かされておりまして、郵便だってこれからうまくいくし、郵貯銀行だってうまくいくし、郵便保険会社だってみんなうまくいく、こういうふうに聞いていたわけですから、何のためにリスク遮断だという話だ、このように思います。この点については、どうせまた同じような話になるでしょうから答弁を求めませんが、そのことは指摘をしておきたいと思います。

 さて、きのうの公聴会でもう一つ地方の方が言われていたので、やはり中央省庁等改革基本法の三十三条の話、これはおかしいではないかということを言われた参考人の方がいらっしゃいました。もう午前中の質疑の中でも取り上げられたようですけれども、この点について、私、いまだにまだ納得をしていないんですけれども、官房長官の説明ですと、当時の法制上の責任者は小里さんであって、その他の大臣については法制上の責任者ではない、こういう説明だったということでよろしいんでしょうか。官房長官、確認をさせてください。

細田国務大臣 当時の法案自体の責任者が小里行革担当大臣であったということを申し上げたことはございますし、小里大臣の答弁の中からは、紛れのあるような表現は一切ございません。

 そして、三十三条一項六号につきましては、公社化後のあり方を拘束するものではないということを我々政府は統一見解として有しております。

山花委員 中央省庁等改革基本法の三十三条の第一項及び第十七条の七号というのがあるんですけれども、一々お配りはしておりませんが、割と有名な話ではないかと思います。

 第十七条というのはどういうことを規定しているかというと、「郵政事業について、次に掲げるところによること。」イで「郵政事業に係る企画立案及び管理を所掌する一局を内部部局に置くこと。」ロで「郵政事業の実施に関する機能を担う外局として置かれる郵政事業庁は、この法律の施行の日から起算して五年を経過する日」括弧書きがありますけれども、「の属する年において、第三十三条第一項に規定する国営の新たな公社に移行すること。」こういう条項がございます。

 この間さんざん議論をさせていただいてまいりましたけれども、平成十年の四月二十八日の委員会で、自見国務大臣、小里国務大臣が答弁をしている、当時の議事録でいうと二十九ページのところからが随分と議論になっておりましたけれども。

 恐らく官房長官は法制局の人に手伝っていただいて答弁書をつくられているんだと思いますけれども、だまされないでほしいんですよね。事実関係で誤認があると私は思うんですよ。

 というのは、その前の二十八ページなんですけれども、今指摘をしました三十三条一項と第十七条七号に関して、松沢委員が「それではちょっと話を進めますが、」ということで、「郵政事業庁はその後、新型公社に移行するということですけれども、二〇〇一年に郵政事業庁ができ上がります。」ちょっと長いので読み上げませんが、中略をさせていただきまして、「郵政公社が立ち上がるのは、郵政事業庁ができて二年後の二〇〇三年なのか、それとも二〇〇五年なのか、ここをはっきりしていただきたいと思うのです。」

 この条項をどう読むんですかという質問に対して、小里国務大臣はこう答えています。「これは郵政大臣の方からお答えいただくのが本当かと思いますが、御指名でございますから申し上げます。」ということで、この条項、三十三条の話については郵政大臣がお答えいただくのが本当かと思います、こういうことを言っているじゃないですか。小里さんは、これ何、うそをつかれたということですか。

 つまり、事実関係として、確かに説明としては、法制上の話としてはそういうふうに解釈できますという今までの答弁というのは、それは一つの解釈としてあり得るでしょう。しかし、実際の委員会の運営はそういうふうにはされていなかったという証跡がここに当時の議事録で残っているわけです。それを聞いてどうですか、今までの考えを撤回していただくということにはなりませんか。

細田国務大臣 今、何か、資料の何ページ、何ページと言われたのが、ちょっと、いつの議事録、議事録ですね、それは。(山花委員「議事録です」と呼ぶ)ちょっと後でお見せいただきたいと思いますが、私どもは、あくまでも行革基本法の担当大臣としての答弁はきちんとしておられます。その過程での御発言があったのかもしれませんが、ちょっとよく、詳細、拝見したいと思います。

山花委員 つまり、ちょっと読んでいただくとしてですが、その日の議論は、法制、三十三条の一項及び十七条の話について松沢委員が質問しているんです、これはどういうことですかと。総務庁長官という形で指名をしたので小里総務庁長官がお立ちになられて、その上で、本当であれば郵政大臣が答えるべき話であると言った上で答弁をされている。まさにその日の流れの中で、当委員会でももうさんざん出てきました、この点についてどうなんだと松沢委員が言ったところを、自見郵政大臣が、いや、これは将来的には民営化を行わないんだと答弁しているわけです。

 つまりは、この質疑の流れの中で自見さんの答弁が出ているわけですから、中央省庁等改革基本法の第三十三条の一項六号についても、郵政大臣の責任において政府見解を自見国務大臣が表明したと見るのが私は当然のことだと思います。

 もし、まだ読まれているようでしたら、南野大臣、先ほどの、ごらんいただいていたことについて御答弁いただけますでしょうか。

南野国務大臣 突然のお尋ねなので、ちょっとびっくりいたしましたが、IQの問題ですか、広告の。

 これをしっかり今見せていただいたんですけれども、まず最初に申し上げるのは、合理的な理由のない区別というのが差別であろうかなと、これは一般論でございます。人権侵害であると思いますけれども。合理的な理由のある区別は人権侵害には当たらないのではないかというふうにも考えております。

 さらに、この示されておるペーパーですけれども、私はこの記載が合理的であるかどうかということは承知しておりませんので、ペーパーが人権侵害に当たるかどうかというお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一番下のところには、これは「徹底したラーニングプロモーションが必要」だと書いてある。これは、理解できるからラーニングさせようという趣旨であれば、というふうにも思いますし、このIQの略は何の略なのか、アイデンティティーが、クオリティー高いか低いかというのか、知能が高いと低いというのか、これの括弧にこう書かれていないので、それはちょっとわかりませんが、ここに「主婦」などと書かれていますので、そういう問題については……(発言する者あり)

松岡委員長代理 山花郁夫君。

山花委員 いや、ちょっと、今の答弁は私はおかしいと思いますよ。もう一回答弁してください。

南野国務大臣 合理的な理由のない区別というのは差別であります。これは人権侵害であると思います。合理的な理由のある区別は人権侵害には当たらないと考えております。

 お示しのペーパーでありますけれども、私は、この記載に合理的理由があるのかどうか承知いたしておりませんので、このペーパーが人権侵害に当たるかどうかというお答えは差し控えさせていただきます。

山花委員 その合理的な区別かどうかというのは、それは法のもとの平等の憲法十四条の話をされているんだと思いますけれども、それは法のもとの平等の話ですか。

 つまり、知的レベルによって区別をしようという話ですよね。それは本当に、あるグループをターゲットとして、精神的な損害を与えるリスクがあるという話だと思いますし、ましてや、それは東京には配られていないんですよ。地方を選んでいっているわけで、いわばそのチラシが配られた方、ごらんになった方は、IQが低いんですよと言われているに近い話なわけです。そんなことで本当にいいんですかということです。もう一回答弁してください。

南野国務大臣 個別的な、具体的な事案につきましては、人権侵害となるか否かということについては申し上げる立場にございません。一般論として申し上げれば、これが特定個人を誹謗中傷するなど、特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらないと考えております。

山花委員 いや、法務大臣、ちょっと、私は法務委員会を離れていましたけれども、そんなひどい答弁をされると思いませんでしたよ。

 つまり、特定個人じゃなくたって、人権侵犯事件というのはあり得るわけですよ。だって、部落差別というのはそういうものでしょう。あるいは、有名な判例がありますよ、大阪人はけちだというような表現が侮辱罪に当たるかどうかとか。そういう話ですよ。つまり、特定のエリアを選んでIQの低い層にラーニングプロモーションをやりましょう、こう言っているわけですから、今の特定個人だからどうかという話は取り消してくださいよ。

南野国務大臣 お答えいたしますが、個別的、具体的な事案についてはお答えいたしかねます。(発言する者あり)

松岡委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松岡委員長代理 では、速記を始めてください。速記を起こして。

 山花郁夫君。

山花委員 先ほど、法務大臣の答弁では、特定の個人に対する侵犯ではないので、合理的な区別というか不合理な差別には当たらないという答弁だったように聞こえましたけれども、それは撤回していただきたいということを申し上げているんです。

南野国務大臣 個別具体的な事案についてはお答えできないということが一つでございます。

 もう一つ。先ほど申し上げたことは一般論として申し上げたということでございますので、一般論として申し上げれば、それが特定個人を中傷誹謗するなど、特定個人の人格を攻撃するようなものでない限り、人権侵害には当たらないと考えるということでございます。

山花委員 今の答弁は大問題ですよ。法務大臣、もうあなたを本当に不信任決議を出すぐらいの話ですよ。特定個人じゃなければいいんですか。あなた、今、人権擁護は大事だとか言って、部落差別とかそういうのは特定個人じゃなくて地域でしょう。それを個人じゃなければいいなんて、そういう答弁はやめてくださいよ。

松岡委員長代理 法務省、ひとつしっかりと定義を整理して答えてください。法務大臣。南野法務大臣。(発言する者あり)

 速記をとめて。

    〔速記中止〕

松岡委員長代理 速記を起こしてください。

 いま一度、法務省においてきちんとした整理をして、その上で答弁をしてください。

 では、他のことについて引き続き質疑を続行してください。山花郁夫君。

山花委員 谷垣財務大臣にお伺いをしたいと思うんですが、中央省庁等改革基本法が問題になったときの、当時、科学技術庁長官でいらっしゃいました。

 参議院の行財政改革・税制等に関する特別委員会というのがその法律を審議する委員会だったわけですが、覚えていらっしゃるかどうかわかりませんけれども、六月三日の委員会でのことです。清水澄子さんから質問をされまして、これは中央省庁等改革基本法でいうと法の十二条の話になります。十二条五項というのは、当時の原子力安全委員会をどういう形にするかという話だったと思うんですが、ちょっとごめんなさい、私も見てから発言をします。「原子力委員会及び原子力安全委員会は、内閣府に置き、その機能を継続するものとする。」と。聞こえましたか。(谷垣国務大臣「聞こえました」と呼ぶ)

 そういう条項について、清水委員は、「次に、この省庁再編の中で、原発の安全規制と放射性廃棄物の管理をどのように続けていくのかについて、総務庁長官にお尋ねをしたいと思います。」と。総務庁長官に聞きますという話で、「科学技術庁は今度文部省と統合するわけですが、この際、原子力推進とこの規制の任務を明確に分離すべきだと考えますが、総務庁長官はこの問題についてはどのようになさろうとされておるんでしょうか。」と質問をしたのに対して、恐らく谷垣さんが横から手を挙げたんでしょう、「今、清水先生は、」ということで、谷垣さんがこの問題についてお答えになっています。「今までは、確かに先生御指摘のように、安全委員会の事務局というのは科学技術庁の中にあったわけでございますが、今までも私は、それが必ずしも独立性を損ねるということにはならずに、安全委員会は安全委員会として独立に仕事をやってこられたと思っておりますが、今回は事務局を内閣府のもとに置くと。」

 またその後、清水委員から質疑があって、小里さんがその後また出てきて、「大筋におきまして、谷垣長官の方から御説明申し上げたとおりでございますが、ただいま議員の方からお聞かせいただきましたことも参考にしながら対応してまいりたいと思います。」ここでまた、質問者から指名されてもいないのに、また「○国務大臣(谷垣禎一君)」というのが出てきて、「ちょっと今の総務庁長官の御発言に補足をさせていただきますと、先ほど申しましたように、内閣府のもとに安全委員会がある。その下で、いわゆる行政庁として教育科学技術省と経済産業省が一次チェックをする、それで安全委員会は二次審査をしていくということになっております。」と。

 まさにこれは、当時の中央省庁等改革基本法の法制上のことについて御答弁されているように私は見受けられるんですが、当時のことを御存じの数少ない今そこの席に座っておられる閣僚の方だと思いますが、こういった答弁は、やはり法制上のことだからということでかっちりと、今とまた少し役所の分担も違ったでしょうし、そんなにかっちりと分けて、法制上のことについて本当に小里さんだけが答弁されていて、その他のことについては、将来の見通しだとか、そんな形で答弁されていたんですか。つまり、こういう議事録を見たんですけれども、どういうおつもりで答弁されていたんでしょうか。

谷垣国務大臣 ちょっと当時の記憶がはっきりいたしませんので、ただ、省庁再編の中で、原子力行政あるいは原子力安全行政、そういうものをどう持っていくかというのは当時かなり議論された問題でございまして、私も科学技術庁長官として、省庁再編の法律を担当しておられる小里大臣とは個別にも何度も議論をした記憶はございます。

 ただ、そういう中で、やはりかなり原子力安全行政は専門的、技術的に組み立てられておりますので、多分、多分といいますか、私の方がというと小里大臣には失礼ですけれども、私の方がずっとその問題をフォローしていたということは当時もあったわけでございますので、そういう関係から、私が、別に横からしゃしゃり出たわけではありませんが、多分、委員長から指名をしていただいたので答弁をさせていただいたんだと思います。

山花委員 手も挙げずにいきなり委員長が指名することも恐らくはないんだと思うんですけれども、ただ、議事録の形ですので推測しかできません。

 お伺いしたいのは、そういったことなのかなと思いますけれども、これは、条文上こういうふうに書かれておりますが、今後どういうスタンスでやるんですかという質問に対して答弁されているんですけれども、これは当然、担当する国務大臣として、つまり科学技術庁長官としての立場で法律的なことについて答弁をされたのではないんですか、違うんですか。

 要するに、一政治家としての信条なのか、あるいは将来的な見通しなのか知りませんけれども、そういうことを述べられたのか、この法律ではこう書いてありますけれども、それはこういう意味ですと法制上のことについて答弁されていたんじゃないんですか。

谷垣国務大臣 政治的な判断というよりも、やはり技術的なお答えをしたというふうに記憶して、記憶はよくないんですけれども、多分、今のを伺うと、そういうことだろうと思います。

山花委員 必ずしもそうでもないと思うんですが、ただ、事務的なことについての答弁だったとすると、まさに法制上のことについて答弁されたという話なんじゃないんですか。政治的な判断については小里さんがやっていたかもしれないけれども、技術的なことでということで言うとすると、民営化するだなんだという大方針は総理が述べられるんでしょうけれども、その法制上の技術的なことを今竹中大臣が答弁されているような話で、技術的なことを述べられたということは、まさに法制上のことについて国務大臣として御答弁されていたんじゃないんですか。

谷垣国務大臣 こんなことなら、もう少し事前によく言っていただいて、当時の記憶も、議事録もよく見てくればよかったんですが。今突然のお尋ねですが、これは十二条五項ですかね、そこに一行だけ書いてあるんですが、相当多方面にわたる制度の整理の中で、恐らくその内閣の中で私が一番この問題については通じておりましたので、そういう制度のあり方といいますか、そういうことに関して当時の整理していた考え方を申し上げたんだろうというふうに考えております。

山花委員 別に細かなことで意地悪をしようと思ってはいないんですが、つまりは、そういうときに答弁をされたのは、やはり政府を代表して答弁されたのではないのですかということなんですよ。つまり、そういう立場で答弁をしている以上は、それが政府として、つまりその分野に関しては専門的にやっている大臣なわけですから、政府を代表していたんじゃないですかということなんです。

谷垣国務大臣 原子力委員会、原子力安全委員会、これは今内閣府でございますが、当時は科学技術庁のもとにあったわけでございますので、もちろん安全委員会等は独立の機関でありますけれども、科学技術庁のもとにありましたので、この法律が通るまで所管をしている立場として申し上げたんだろうというふうに考えます。

山花委員 なかなか、後でそれが利用されないようにということなのか、慎重な御答弁ではあるんですけれども、官房長官、先ほどの質問にそろそろお答えいただけますでしょうか。

細田国務大臣 議事録の御指摘の二十八ページの中で、小里国務大臣が松沢議員の質問に対して、「これは郵政大臣の方からお答えいただくのが本当かと思いますが、御指名でございますから申し上げます。」と言っている中身をよく拝見いたしますと、「二〇〇一年に郵政事業庁ができ上がります。先ほど総務庁長官がおっしゃいましたように、その二年後の二〇〇三年には公社化かということですが、これははっきりしないのです。我が党の池田委員が先日質問させていただいたときに、二〇〇三年なのか二〇〇五年なのか、これは最終答申を決める中でも相当議論があったと思うのですが、郵政公社が立ち上がるのは、郵政事業庁ができて二年後の二〇〇三年なのか、それとも二〇〇五年なのか、ここをはっきりしていただきたいと思うのです。」という質問に対する答えでございます。

 確かに、郵政公社ができ上がって、その後の問題というのは、郵政公社を新たにまた所管をいたします郵政大臣の問題であるというふうに考えておられると思います。

 政府としては、私は、小里大臣が同じ答弁の中でお答えになっているように、これは、ざっくばらんに申し上げてという以下の、同じ松沢議員へのお答えは、かねてから申し上げているような、この一項六号が公社化をするに当たっての考え方であるという見解のとおり小里大臣が述べられておりますので、私は、そのことが政府の見解であると申し上げたいと思います。

 もちろん、自見大臣の答弁等がございますのはよく承知しておりますが、私は、先ほど竹中大臣がお答えになったとおり、その時点における郵政大臣としての将来的な見通し、あるいは政策のあり方についてのお考えを述べられたものと理解しております。

山花委員 その点、まだ納得がいかないんですけれども、ただ、少なくとも官房長官、今まで答弁されたことで非常にまずいことを再三おっしゃっておられるんですよ。

 六月七日の当委員会で、「内閣法制局は、国会でも何遍も、既存の法律、憲法を含むあらゆる法律の解釈を、政府としてどのように考えているかということをただし、国会からもただし、そしてそれに対して有権解釈を出す責任ある役所であります。」

 私は大変びっくりしたんですけれども、私、衆議院の憲法調査会の幹事も務めさせていただきまして、自民党の委員の方からも、何かあたかも内閣法制局が有権解釈をするような、こういう今の運営はおかしいと皆さんおっしゃっていましたよ。

 そして、この日、もう一回言います。もう一回細田さん、「有権解釈をする権能のあります内閣法制局長官に、」さらにもう一回言っています。「政府の行為が憲法に合っているのかどうか、その解釈権は、政府としてやったことについて内閣法制局長官が一義的に法文を解釈するという権能がありますから、」どういうことですか、これは。

 内閣法制局というのは、内閣法の十二条第四項、「内閣官房の外、内閣に、別に法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる。」事務方なんですよ。

 今読み上げました六月七日の答弁、これは撤回をしていただきたい。そしてまた、こんなのを議事録に残したら将来大変ですよ。ぜひ議事録から削除していただきたいと思います。何か釈明できますか。

細田国務大臣 内閣法制局長官があらゆる委員会に出席を要求されて、その場でさまざまな解釈を述べてきたということは事実です。与党、野党ともに、法制局長官、この点についてはどう考えるんだと。それで、こうでございますということを政府を代表して答弁してきたことは事実でございますので、私は、本来、内閣法制局の意見というのは政府部内で権威のあるものとしてしんしゃくされ、また国会においても、政府として統一した見解を述べるような場合には内閣法制局長官がその任に当たることもあるということで、そのような事情を指しておるわけでございます。

 もちろん国会は立法府でありますから、立法の本当の真意はどうであるかということは国会の権能に属していることは承知しておりますが、政府はしばしば、どう解釈して政府としては行動しているんだということを国会からも御質問を受け、あるいは政府としても法制局第一部などには照会をして、我々の、政府の行政の内容についてはこういうことでこうしておりますということをお答えしておる、このことを指しておるわけでございます。

松岡委員長代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松岡委員長代理 速記を起こしてください。

 山花郁夫君。

山花委員 先ほど、法務大臣の答弁について、時間が欲しいということですが、お待ちしておりましたけれども、その点、いかがなりましたでしょうか。

松岡委員長代理 この点につきましては、改めまして、法務省の方でしっかりした整理をして、その整理に基づき理事会で協議をさせていただきます。そのようなことで山花委員には御理解をお願いいたします。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

山花委員 それで、ちょっと今、理事の方が協議されていたんですけれども、今の官房長官の答弁、私はやはりまずいと思いますよ。

 つまり、今まで、だってこの間の答弁というか、これがこのまま議事録に載って、将来これを見たらというか、私今見てもたまげますけれども、要するに、「有権解釈を出す責任ある役所」であるとか「有権解釈をする権能のあります内閣法制局長官に、」こういうのは撤回していただかないと、何をおっしゃっておられるのか。つまり、今も長官いらっしゃいますけれども、何かちゃんと……。

 かつて内閣法制局長官は、この点について、「もちろん、私どもは、裁判所においても、あるいは国会におきましても、そしてまた国民におかれましても、尊重されるような内容であるように日ごろ努力しているわけでございますが、法律上の制度といたしましては、そのような拘束力があるわけじゃございません。」とはっきりと、細田さんがそこまで言われる法制局が、そういう役所じゃないと言っているんですよ。

 だから、こんな、さっきみたいな答弁とか、あるいはこの六月七日の時点での議事録を残すことは非常に好ましくないと私は思います。そのことを指摘いたしまして、委員長、その点、理事会で協議をしていただきたいと思います。

二階委員長 追って理事会で協議させていただきます。

山花委員 では、終わります。

二階委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうもまた質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 昨日、三班に分かれまして、各地に地方の公聴会を開催されたわけであります。したがいまして、地方の声がちゃんと中央に届かないと、公聴会を開く意味がありません。開くだけ開いて、声を聞くだけ聞いて、それがどのように反映されるか、恐らく、公述をなさったそれぞれの皆さんは今注目をして、この中央での、国会での議論をまさにごらんになっておられるというふうに思いますので、その意味で、私からは、公述人の皆様がいろいろと示唆に富んだお話をいただいたことを中心にお伺いをしてまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、過疎地における郵政という意味では、恐らく与党の先生方も、まさにそういう選挙区から出てこられている方を中心に、今回の法案に対しましては大変な不安な思いでいらっしゃることだと思います。その意味で、今、与党内の調整が大変難航されておられるんだということだと思っていましたが、どうも調整がついたというような報道がありまして、私たち委員としては全くその事実を知る由もないんですが、あの公聴会をしておられるタイミングで一体何が行われていたのかなという思いでいっぱいであります。そういう憤りも少し訴えながら、地方からいただいた声をお伝えしたいと思います。

 まず、高齢社会それから過疎が進んでいる地域における民営化の事業性を検討する上においては、そこでキーワードになりますのが、独居老人や、あるいは、周りにコンビニもなければ何もなくて、本当に郵便局しかない、そういう地域の中で過ごしておられる方も多数いらっしゃるわけであります。そういう意味では、いわば、都会に出ていった自分の子供やお孫さんがどこかで納めた税金によって地方を支えているという、形を変えた公的な部分、パブリックを実現しているようなものの一つに、その代表に郵便局があるんじゃないかという思いであります。

 いただいた声の中には、独居老人は郵便さんが回ってきたときに声をかけられて涙する、その郵便さんに対しお子さんやお孫さんが、里帰りしたときに、日ごろ自分の親御さんやお年寄りが世話になっていますと逆にお礼を言うという、涙なくして語れないような話ばかり多数いただきました。

 例えば、私たちは佐賀班だったんですが、九州の第三班だったわけですが、一日四便の船で、天気次第によっては欠航になります。そういう中で、離島暮らしの皆さんにすれば、郵便さんがなければ日ごろの暮らしが全く成り立たないという窮状も聞いてまいりました。年寄りや病人は船に乗れない、うねりの中を一体どうやって船に乗せて対岸まで、本土というんでしょうか、九州まで運ぶのかと。そういう意味では、離島の中で日々の暮らしが営まれているという話も伺ってまいりました。

 さらに、佐賀県では、振り込め詐欺を未然に防いでいる大変な事例が全国でも屈指のものがあると伺いました。これは、郵便さんが気をつけて、いや、おじいちゃん、おばあちゃん、これはここに振り込んじゃお孫さんのあれとは違うんじゃないのと言うことによって未然に防いでいる。これは、公的な部分、パブリックな部分を、都会に出ていったお孫さんやお子さんがそちらで納めた税金をもって交付税が賄われて地方が賄っているんですが、郵便局の場合は、自分たちで賄ってそれをやっているわけですから、そういう意味では親のすねをかじらずして親孝行している、これが郵便局のまさに実態ではないかなというふうに思うんですね。

 それで、さらに、こういうつつましい地方の生活を行政が支えてほしい、これは公的セクターに求められる、官ではなくて、公という文字の、パブリックの方の要素を大変強く訴えられる声もありました。

 さらに、玄界島からお越しになった、そういう意味では山崎筆頭の御在所になるんでしょうけれども、そこから漁師の方も意見公述をなさっておられました。地震に際して郵便局のありがたみを感じた、九電体育館というんでしょうか、そこに避難をなさっている間も、体育館に住所がない、そういう住所がない避難所暮らしの中で、顔を見ながら、全国から届いた親戚や知人からのそういう志やあるいは励ましのお便りを一つ一つ配ってくれた、それは、その翌日からすぐ立ち上げてそれをやってもらったという話も伺いました。これは、顔を見て行う郵便だからできるんだ、所地番の郵便がもちろん原則ですが、それを乗り越えて、顔で成り立っている郵便である、そういう話までいただきました。

 以上のような声を整理しますと、過疎地における郵便事業というのは、職員が公的なセクターを担う公務員だからできるんじゃないか、これは皆さんの声でありました。

 例えが少しあれかもしれませんが、ちょっと個別個社の名前は控えないと、でも、わかりづらいので言いますけれども、セコムの格好をした警察官ではこれは警察官じゃないですよね。これは、公務員たる警察官があの格好をしているから警察官なんですよ。そういう意味では、この公的なセクターである郵便局の皆さんがそういうパブリック、公の要素を担っておるという意味において、まさに公務員という立場の中で信頼ができるんじゃないか。郵便さんが立ち寄って、おじいちゃん、元気かと肩をさすってくれる、そのさすっている手が公務員でなければ安心感がない、これはまさに地方の声であります。

 そういう意味では、ぜひに、郵便局、これは過疎ですよ、過疎地における、そういう島嶼だ半島だ中山間地、こういうところにおける郵便さんの公務員でなければいけないという公的セクターの問題と、全国一律のサービスを維持していかなきゃいけない、さらには、お金を預けているという中でそういう人でなければいけないという声が大変寄せられたことを、ここに担当の大臣にお伝えをするわけであります。

 そこで、担当大臣にお尋ねをするわけですが、今のような意見の公述を我々委員は賜ってきたわけでありますが、総理は、官から民へと言われておられます。これは、民間にできないと思う人の理由がわからない、そういう答弁さえもなさっておられました。官から民へ、これは、サービスの向上、それから税金を納めてくれる、ただし、民間にできない部分で国民がどうしても必要だという部分は、これは考えますと総理は答弁されました。これはたしか御党の野田議員への答弁かと思いますが、これは一体どういう部分なんでしょうか。これがまず質問の一つでありますし……(発言する者あり)ここででは区切らせていただきます。

 総理は、これは何を指してそこまで思い切っておっしゃられたのか。これはまさに郵便局のことを言っておられるんじゃないかなとさえ思ったんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 まず冒頭、古本委員から大変貴重な御指摘、御報告をいただいたというふうに思っております。

 直接の御質問は、総理が国とおっしゃったのか公とおっしゃったのか、やるべきことはやるというのは一体何を意味しているのか、そういう御質問であろうかと思いますが、ちょっとその具体的な議事録の前後関係を見なければいけないとは思いますが、基本的な認識を申し上げますと、郵政の民営化に当たって、例えば、物流業は民間でもやっている、銀行業は民間でもやっている、保険業も民間でもやっている、その意味で、民営化する、公務員でなければできないことではないでしょうというのが基本的な考え方だと思いますが、しかし同時に、やはり、官がしっかりとその公的な役割を今まで果たしてきた部分については、民間になってもその公的な機能を果たすように今回の郵政民営化を制度設計している。

 具体的な例として、幾つかあると思いますが、あえて二つ申し上げたいと思います。

 一つは、やはり過疎地の郵便局の設置については、これをしっかりと、やはり過疎地は特別だ、特別の配慮が要るという言い方をよく総理もなさいますが、そういうことを設置基準の中に、過疎地については、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの現状を維持するという旨を明確化する、それは一つの非常にわかりやすいあらわれであろうかと思います。

 もう一つは、郵便、郵政が今担っている、独居老人の御紹介等々もございましたけれども、幾つかの公的なサービスがございます。第三種・四種郵便もしかり、また、地域における必要な地域密着型のさまざまなサービス、そういうものもしっかりと地域貢献、社会貢献としてできるような仕組みをつくった。その仕組みは、幾つかありますが、一つわかりやすい例は基金でございますが、そういうものも含めて、古本委員がおっしゃる公的な機能を引き続き民営化後も果たせるように、そのような制度設計をしているという点であろうかと思います。

古本委員 そうしますと、総理が言われる官から民へというのは、人の官から民を指しているのか、事業の官から民を指しているのか、これはどちらになるんでしょうか。

 なぜこういうことを聞くかというと、問題意識は、民間部門、それから公的セクター、これを少し切り分けて、その公共性ということと、それから、収益というんでしょうか、採算性という問題を少し見たならば、これは、民間企業の中でも公共性のあることをやっているところはあるんですね、パブリックですから。これはいいですね。民間であれば、これは市場主義ですので、収益を出していかなきゃいけない。さらに採算も見ていくだろう。ところが官公部門は、これは公的なセクターですから、公共性のある仕事がある。ところが収益は、これまで上げなくていい。そうですよね、利益は上げなくていい。ただ、採算性は度外視してやっていいのかどうか、これは議論があると思うんです。したがって、官から民へと言う総理の中で抜けているのは、採算性を度外視してでも守らなきゃいけない公的セクターがあるんじゃないかと。

 これは、言い出すんであれば、警察業務や出入国管理業務やあまたのそういった公的セクターの業務について、これは採算性がとれているのかどうかとぎりぎりやらなきゃいけないことになるわけですよね。これは国民の直感的なものとしてのことも含めて、大変採算性を度外視してでも、自分たちの安心、安全な暮らしを守ってほしいという部分については、税を投入してでもやっていっていいわけですね。ところが、郵便局は税は投入していないわけであります。そういう中で、さらに国民の安心、安全な生活を支えているわけであります。

 そのことを考えますと、これは官から民へという中で、単に公務員でなければならないという意味がわからないんです、総理はよくこういう感じでおっしゃいますけれども、あれは、事業のことは総理は余り言っていないんですね。公務員という切り口で言っているんですよ。したがって、事業の公共性を突き詰めていきますと、事業は公共性はあるんですよ、郵便局事業というのは。そのことを担う人が公務員でなければいけないかどうかということを言っているんですが、最前から申し上げているとおり、郵便さんにとらの子のお金を預け、その人が特別送達の郵便も運び、さらにおばちゃん元気かねとお話をし、さらに振り込め詐欺も未然に防ぎ、これはもう半ば町の駐在さんの役割を半分担っているぐらいのことをやっているわけですから、これはまさに公的セクターなんです。公的仕事なんです。これを担う人が、官から民へ、一律に論じられる話じゃないんですね。

 これはもとより、三事業一体の話を無理やりに四つに分けようとするあつれきがこういうところに出てきている。これは与党の先生はみんなわかっている。それを今進めようとなさっている中で、官から民へというのは、再度お伺いしますが、事業の部分を指しておっしゃっているんですか。その際に、郵政の公的事業のパブリック性の部分ですね、公の部分はこれはないとおっしゃっているんですか、総理は。総理というか大臣ですよ、二人三脚でやっておられるんですから。

竹中国務大臣 御質問は、官から民へと言うとき、人なのか事業なのかという御指摘、御質問かと思いますが、ちょっと哲学的な部分もあるかと思いますが、あえて私なりの理解を申し上げさせていただきますと、これはやはり、事業そのものが民間でできる仕事、つまり市場の競争の中でしっかりやっていただける仕事、これがやはり非常に大きなウエートを占めているであろうというふうに考えるわけでございます。

 先ほど言いましたように、物流業としては民間でできる、銀行業としては民間でできる、つまり、市場の中でできる性格の仕事なのではないのかと。したがってそこは、民間の競争と自由な経営、自由な経営と民間の競争、イコールフッティング、そしてもう一つは、民間の企業のガバナンスという問題もあるんだと思います。

 民間企業で一兆円の利益を上げている企業も御承知のようにあるわけでございますから、よく御存じの企業があるわけでございますから、そういう市場での競争をしっかりやっていただこう。しかし、事業の中には、まさに委員御指摘のように、市場だけでは解決できないものもこの郵政の中には明らかに含まれております。それが大変重要だということは我々も認識をしております。非常にわかりやすい一丁目一番地でいいますと、郵便業のユニバーサルサービスということになろうかと思います。

 今、委員は、採算性を度外視してもやらなきゃいけないことがある。全国一律に郵便事業を行うということは、これは採算の悪いところについてもきちっとやっていただくということですから、まさにそれに当たる。しかし、今そういうことを民間の中でも行えるような仕組み、これはいわゆるリザーブエリアをしっかりつくるとか、そういうやり方もあるわけでございます。何といいますか、市場の中ではできない仕事の一つとして郵便局の特別送達等々もあるだろうと。それに関しては、その資格の制度等々も組み合わせてこれをやっていく必要があるのではないか。

 そして何より、銀行と保険は完全な民有民営を実現していただきたいわけでございますが、持ち株会社と郵便事業会社と郵便局会社は、これは何らかの形で政府の関与が残る特殊会社になるわけでございます。したがって、特殊会社としての性格、そして、先ほど言いました資格制度等々も組み合わせて特別送達等々も行うようにしたい。恐らく、官か民かというのは一かゼロかというオール・オア・ナッシングではなくて、私はやはり、民間のウエートが、非常に性格が市場競争のウエートが高い、したがって、民間企業としての原則を維持しながら、部分的にそこは公的な仕事が担えるような制度設計にしていく、それが基本的に求められている思想であろうかと思います。

 その意味で、そういう仕事を行うに当たっては、公務員法が適用される公務員ではなくて、民間の方になっていただく、そういう考え方であるというふうに御理解を賜りたいと思います。

古本委員 大臣、わかっておられてわからないふりをするというのもなかなか大変だなと思うんですが、大臣も、和歌山という大変な、どちらかといえばそういうところにいらっしゃったわけですから、郵便さんに世話になったという記憶はあるはずですよ。その郵便さんが公務員でなければ安心できないと言っているんです、地方の皆さんは。

 それが、もうこれは議論がずれていますけれども、官から民へという言葉の中に実は事業軸と人軸というのがあって、それをごっちゃにした中で、総理は官から民へというわかりやすい言葉で世論をそういうふうに喚起なさるんですけれども、そこはきっちり整理しないと、早晩、こういう郡部の皆さんの実感からいうと、御党からだんだん心が離れていきますよということも含めて申し上げているわけですよ。

 それで、今、事業のそういう民間が担っていけばさらに広がりが出るだとか、そういう中で特殊会社であるということもお話がありましたが、公的な部門を担っている特殊会社というのはたくさんあります。そういう中で、これは民営化したからといって必ず利益が出て、そしてモラルも維持されて、社員、職員と言った方がいいんでしょうか、すばらしい会社になるんでしょうか。

 きょうは国土交通大臣にもお越しをいただいております。先日来報道が出ておりますが、例の橋梁談合の問題です。たしか去年でしたね、道路公団の民営化の法律が通ったのは。まさに、民営化されてこれからですと言われたような、今竹中さんが言われたような話が一年前にあったんですよ、これは。民営化されたら、本当に市場経済のもとにさらされて、すごくよくなるんですという話を、るる、当時の石原前大臣から聞きましたよ。そこでまたぞろ飛び出したのがこの橋梁談合じゃないですか。これは、今いろいろな調査も進んでいるというふうに聞いていますが、少なくとも、きょうの報道によれば、公取は二十九日、独禁法違反で刑事告発したと出ていますよ。

 道路公団は十月にたしか民営化が控えておられますね。そういう中で大変多くの方が再就職なさっています。といいますのは、我が党は天下り禁止法案を提出していて、そのことをもって今回の議論の一つの柱に、郵政の民営化も含めての柱にということをずっと主張しているわけです。この天下りこそが、あまたの公的セクターが俗に言うむだ遣いをしていることの元凶じゃないんですか。

 これ、実にきのうの委員会でも指摘があったというふうに伺っておりますが、二カ月以内に再就職した人、国交省から百九十八名、うち八十名が二カ月以内の再就職。道路関係四公団、延べ百三十名、うち八十四名がまた二カ月以内に再就職。それで、さらにこれは、大臣、きのうもごらんになっているでしょうけれども、天下り先リストでいけばもう露骨ですよ。それぞれの地域整備局と直結した会社に行かれています。これ、郵政新会社もまたぞろこんなことになるんじゃないでしょうねという不安があるんですね。これをさらに言えば、民間会社になれば民から民ですから、もう我々国会の手から離れるんですよ。いやいや、それを待ち望んでいるんだというならこれはまた別ですよ。

 これをまず国土交通大臣、国土交通大臣からごらんになっているこの郵政民営化、もうずっと座っておられます。そろそろ御発言いただいた方がよろしいかと思いますので、ぜひ、この橋梁談合、結局、十月ですよ、わずか数カ月後には民営化を控えんとしているこの会社においてこういうことが起こっているわけですよ。竹中大臣に何かエールがあればお願いしたいと思います。お気をつけになった方がいいという点があれば、お願いをしたいと思います。

北側国務大臣 まず、国土交通省直轄の橋梁工事に続きまして、本日、日本道路公団が発注いたします同じく橋梁の工事につきまして、公正取引委員会から先ほど告発がございました。また、検察当局も公団等に対しまして強制捜査に入っているという連絡を受けておるところでございます。

 こうした入札談合等の不正行為というのは、これは断じてあってはならないことでございます。今回の件につきましては、規模も大変大きく、また、業界ぐるみと言われても仕方がない、そのような異常な事件、極めて遺憾であるというふうに言わざるを得ないと思っております。

 直轄の事案につきましては、既にもう指名停止等をさせていただいているわけでございますが、きょうの告発を受けまして、さらに指名停止の追加措置を速やかにとらせていただきたいというふうに思っておるところでございます。

 特に、公団への強制捜査があったということについては、これは非常にゆゆしき事柄でございまして、言われているような公団OBの関与が今回のこの受注調整にあったとしたならば、これは、本当にとんでもない、極めて遺憾な事柄だと言わざるを得ないというふうに考えております。

 国家公務員の再就職の問題につきましては、国家公務員法または人事院規則でさまざまルールが定められているところでございます。先ほど、委員の御指摘ございました国交省から再就職をしている事例につきましても、これは国家公務員法並びに人事院規則の手続に乗っかって、ルールに従ってなされているものであるというふうに考えております。

 ただ、公団のような特殊法人から営利企業への再就職ということについては、規制が今ないわけなんです。もちろん、一方で職業選択の自由というのがあり、また、公団等で培ってきた技術や能力というものを民間企業に行って発揮をしていくということが一概にだめだということにはならないと思いますが、ただ、国民の目から見て疑惑を持たれるような、不信を持たれるような、そういうことがあってはならないわけでございまして、今回、この公団OBの関与というのが、仮に言われているような事実関係があるとするならば、ここは、再就職のあり方も含めて、人事制度、また公団としての内部規律等につきまして、これは検討していただく必要があるというふうに私は思っているところでございまして、公団の側もそのように受けとめていらっしゃるというふうに私は考えているところでございます。

 先ほどの連絡によりましたら、道路公団の方でも再発防止に向けての検討委員会を設置するというふうにも聞いておるところでございます。ことしの十月に民営化を控えているわけでございまして、再発防止策を早急に取りまとめていただいて、一刻も早く国民の信頼を回復しなければならないと私は考えておりますし、その旨公団の方には伝えているところでございます。

 郵政民営化との関係をおっしゃいましたが、道路公団の今回の問題、これは、まさしく特殊法人である道路公団として起こっている事案でございます。ただ、委員のおっしゃっているとおり、十月に民営化が迫っておりますので、その民営化までにやはり早急に再発防止策、それは、先ほど申し上げた人事制度または内部規律のあり方、そういうことも含めましてしっかり再発防止策を取りまとめなきゃならないというふうに考えているところでございます。

古本委員 今、大臣から今後の方向も含めてお話があったわけですが、印象に残ったのが、国民の目が見ている、やはり疑惑の念を持たれてはいけない、それはきっちりそういうことをやっちゃいけないんだと、本当にいいお話をいただいたと思うんですね。

 他方、先ほどまで議論をしていた、同僚議員がやっていました随意契約の問題、これなんかも、まさに国民の疑惑の目がこれを注目していると思います。これは理事会資料ですから皆さんも見ているんでしょうけれども、排他性のあるデッサンだと言われているこれに本当にそれがあるんだろうか等々は、もう先ほど来、るる議論がありましたので私からは控えますが、少なくとも、今回の同僚議員がずっと指摘をしてきていますこのIQの問題も含めてこういうことが公に出ると、恐らく国民の皆さんはがっかりすると思います。すごくがっかりすると思いますね。

 そういう意味で、こういうことをすべて委細承知をした上で、政府広報の責任者である官房長官はスリード社にこのことを発注されたのかどうか、この契約に対する責任について確認をするわけであります。こういうIQのことも大変残念なことを書いておられたり、本当にこんなデッサンが排他性があるんだろうか等々を含めて、このプレゼンテーションがあった上で契約がなされているわけでありますから、この契約は、政府広報の責任者である官房長官として承知をしてこのことを進めていったのかどうか、その事実関係だけ確認を念のためさせていただきたいと思います。

細田国務大臣 個々の広報等の契約については、専決処理によりまして、それぞれ担当広報室長あるいは会計課長を初めとする担当者に任されておりました。そして、この国会委員会の審議等を通じていろいろな経緯があったことを知ったわけでございますが、よくいろいろ聞いてみますと、契約自体のこの意思決定をするに当たって、遡及をするなどの問題点もこれあり、厳正に執行できますように、特に広報予算も非常に額が大きいものですから、これは、民主党議員からもかねてから運用改善について強い御提案があり、改善をしつつあるところではございますが、一層今後ともしっかりと対応してまいりたいと思います。

古本委員 会計法に照らしても、それから排他性あるいは緊急性、午前中来ずっと議論をしていたどの法律に照らしても、これは合法とは思いにくいですね。この議論をやってもまた繰り返すでしょうから、とりあえずここで切りますが、おおよそ合法行為とは認められないということは指摘をしておきたいと思います。

 その上で先ほどの談合の話に戻るんですが、結局これは、本質的な問題として、公的セクターが、WTOの縛りもありますが、競争入札制度に甘んじて原価と闘うという意識がない中で、丸投げをしてきて予定入札価格を設定し、その結果の過不足が発生しても、先ほどの松野先生の御指摘があったように、えいやで穴埋めをするかのごとく、もう要はやりたい放題の結果としての公的セクターにおける税金のむだ遣いがあるんじゃないですかと、こういう話であります。

 談合問題ですが、発注者が即受注者に天下るというのは、これはもうまさに官製談合ですし、その際、落札率九七%という報道が出ていますけれども、これは神わざですよ。これはもっともっと原価と闘えば、どの橋梁かはわかりませんが、仮に百億かかる橋梁をかけるときに、実はそれは九十億でかけられたといったら、差額の十億でまた別の道路がつくれるじゃないですか。国民はそういうことを多分思っていると思うんですね。橋つくるなと言っていません、道路つくるなと言っていません。原価と闘って下げた分をもっと求める公的セクターに使ってほしいと思っているんですよ。

 その意味では、取りやすいところから取るという所得税増税を政府税調とはいえ発表され、谷垣大臣、いろいろとこの郵政の民営化の話をしていく中で、公的な部門で官から民へ移すことによって見えざる郵政の負担がなくなると言われますが、これは見えざる郵政の負担というのはないんですよ、税金を投入していないわけですから。さらに、官から民へ行くことによって資金がフローするようになる、民に流れるようになる、いろいろないい点を述べておられますが、谷垣大臣の目からごらんになって、今回民営化すれば変動費は減るというふうにごらんになっていますか。郵政事業の変動費です。

 変動費というのは、固定費が、人件費やあるいは固定資産税や法人税や消費税を今回払わなきゃいけなくなりますね、まあ政府案が通ればですが。こういう固定費を下げようというのもこれはなかなか限界がありまして、いわゆる官製談合でずるずるべったり、やりたい放題で国民の税金をむだ遣いしている部分がまさにこれは変動費ですよ。物品の販売ですよ。あるいは役務の提供ですよ。要するに、調達行為においてこういうことが発生しているんですよ。

 今回、民営化のスキームを、他方、所得税を上げようじゃないかという片棒を担いでおられる谷垣大臣がどうごらんになっていますか。取りやすいところから取り、取ったものをどんどんだだくさに使ってしまえ、これじゃ国民の納得は絶対得られませんね。

 今回の郵政民営化のスキームにおいて、谷垣大臣の目線でごらんになって、私が今申し上げた変動費も、特に調達部門において、いい仕組みだな、これならきっと官から民にすることによるメリットはもう一二〇%出るなとごらんになっておられるのかどうか、御所見を求めます。

谷垣国務大臣 まず、取りやすいところから取るとさっきから何度もおっしゃった点については、直接私に今そのことを答えろというお問いかけではないのかもしれませんが、やはり私は、今回、中間報告でありますけれども、社会構造やあるいは働き方、家庭のあり方、みんな変わってまいりましたので、所得税体系というのもどこに問題があるのかということを見直していかなきゃなりませんので、そういう意味で網羅的に問題点を出させていただいて、これをもとにどうしていくかというのはこれからの議論でございます。

 ですから、取りやすいところから取るというのは、すぐ何も言いませんと委員の御主張をそのまま受け入れたように思われますので、とりあえずそれだけは申し上げさせていただきます。

 その上で、今、変動費が安くなるかどうかということでございますが、私、実はそこのところを細かく見ているわけではありません。ただ、郵政民営化して、当然今おっしゃったような点が改善されるということを期待しておりますし、そういう面が出てこなければ、私は、民営化したということの一つのメリット、ほかにもいろいろメリットはあると思いますが、大きなメリットが生きてこないというふうに考えております。

古本委員 ありがとうございます。

 竹中大臣、今、徴税責任者である、所得税増税も辞さずという政府税調のその責任者である谷垣さんから、しっかりやれよとこういう話がありましたが、今回の民営化案で、この変動費が下がるスキームというのは骨格経営試算を見れば載っていますが、調達という観点で少し絞って見たならば、どういう工夫がなされているんでしょうか。

 というのは、これは早晩、午前中松野委員が指摘したとおり、WTOの縛りを受けて、結果として競争入札をせざるを得ない。これは特定の価格以上になるかどうかあるんでしょうけれども。いや、そうじゃないんだと、民営化させたメリットを一二〇%引き出すためには、ここを体を張ってでもこれの除外対象になるように、そして、こんなわけのわからない随意契約でもう苦労はさせない、そういう意味では、ちゃんと相みつでA社、B社とって、原価を改善して、そして、本当に国民のためになるいいメーカーを養生していってそこへ発注する、そこの発注から漏れたところは次は頑張れよということで育てていく、これで初めて系列というか下請さんが育っていくんだと思いますけれども、そういう仕掛けが郵政民営化すればできるんでしょうか。その仕組みをお伺いするわけであります。

 たしか、郵政公社の現在の発注高は八千億と聞いています。物をつくる産業じゃない中にあって八千億というのは、看過できない大きな数字だなと思います。変動費の下げ代は大変大きいなと思います。

 原価と闘う上においては、何か新しいことを起こすときがチャンスです。そういう意味では、新規での事業を立ち上げる今回は大チャンスです。その今回において、どれだけ現状から下げるかという見込みを持っているか、もくろみを持っているか。これ、新しい民営化委員会、経営が考えてもらうんですと言ってもらっちゃ困るんです。そこも含めて考えておかないと、今回の話は渡せませんから。

 御所見を求めます。

竹中国務大臣 まず、骨格経営試算というのは、委員御承知のように、これは趨勢的な動きをマクロ的に把握するということで、一つ一つのコストの積み上げ、例えば、これをどのように調達してどのような仕組みでやっていくか、これはそういう性格の試算ではもちろんないわけでございます。

 我々としてやはり一番大きく期待をしておりますのは、また見込んでおりますのは、民間企業には民間企業のガバナンスというのがあります。これは厳しいガバナンスだと思います。競争をしている中で例えば温情的な天下りのようなことをやっていきますと、これは非常に厳しい市場の淘汰を受けるわけでございますから、そういう厳しい競争条件の中に早く入っていただくというのが、これは何よりものガバナンスであり、それが結果として、さまざまな工夫を通して、今御指摘のようなその変動費を低下させていくということにつながっていくんだと思います。

 我々としては、そういう観点から、やはり、できるだけ早く純粋な民間、これは郵貯、簡保でございますけれども、銀行と保険に関してはできるだけ早くやはり純粋な民有民営になって、厳しい民間のガバナンスのもとに入ってほしい。そして、持ち株会社と、その下にあります郵便事業会社、郵便局会社についても、これはできるだけ早く持ち株会社に対する政府の保有を下げて、その三分の二の部分に関しては民間のガバナンスが入るわけでありますから、そこをやはり強く発揮していっていただくということではないかと思っております。

 御指摘のように、八千億、これはもう大変大きな数字でありますので、この試算の中では、例えば郵便等々については、事業量が減る場合でも、人件費一円あたりの生産性が低下しないようにしていただく、そういう前提を置いているわけでありますけれども、ぜひ、厳しい競争条件の中でそのような成果、いや、それを上回る成果を実現していっていただきたいというふうに思っております。

古本委員 今回、民営化に伴ってシステムの変更をなさったりなさいます。大どころの発注でいけば、例えば大きな局舎をやりかえたり、あるいは新事業の中で建屋を、駅前の再開発とか、大阪とかそういう中央局の一等地ですから、そういうことも御計画なさっている。これはまさに、原価と闘うネタがもうごろごろ転がっているんです。

 ところが、松野委員の指摘の、WTOの縛りを受けちゃうと、頑張り代がないんですよ。予定入札価格という、いかようにでもなるという、先ほどの少し理解に苦しむ答弁が続いていましたが、やはりその縛りを外してさしあげないと、民になったことのメリットというのは出ないんですね。その結果が、今御案内のとおり、NTTやJTやJRを初め各社が、今はもう大分少なくなってきていますとはいえ、当初縛りを受けて、それをずっと引きずって苦しんできた部分であるわけですよね。

 今回、これだけ無理をしてやるというからには、それぐらい体を張ってやりますと、やるというのは、外務省とタッグを組んでこれはしっかりやりますということぐらいの決意を言わないと、おおよそ原価と闘える体制にこれはならないですよ。絶対にならない。そんな生易しいものじゃないと思いますね。またぞろ競争入札で縛られちゃったら、また今回のような談合になりますよ。むしろ公社のままの方がよかったという話になりますよ。

 だからそのところは、大臣は決意があるんだったら言っていただきたいと思います。きょうは特に生田総裁も来ておられる。そういう意味では、大臣が体を張って町村さんとこのことについてはやるということであれば、その部分に関しては一定の意味合いはあるなというふうに思うんですが。

竹中国務大臣 生田総裁とお話しする中でも、とにかく民営化のやはり一番重要なポイントは、経営の自由度を持つことである、それが早くできるようにしなければだめだということを、生田総裁の生のお言葉として何度も私自身も伺っております。そして、それを反映させるような幾つかの仕組み、例えば準備企画会社を早目につくるとか、そういうことも含めてしっかりと対応させていただいているつもりでございます。

 御指摘の政府調達協定の適用の問題でございますが、これは今非常に強い御指摘もいただいておりますし、私としても、担当大臣として全力で取り組む所存でございます。

 何といいましても、この郵政民営化は内閣の最重要課題だというふうに我々申し上げている。そして、それを実現するために郵政民営化の推進の本部というのをつくる。その本部長は総理大臣でございますが、ここにはすべての閣僚が入ります。担当の、直接交渉に当たられるのは外務大臣になられるのかもしれませんが、全閣僚も入りますので、まさに内閣一丸となって、自由な経営をしていただけるような条件を整える努力をしたい。WTOの問題に関しましても、私自身も担当大臣として全力を尽くしたいと思います。

古本委員 その上で、民営化した際のその効果を最大限引き出せるスキームになっているかどうかということを引き続き聞くわけですが、実は、昨日の公聴会の中で、与党の方で招聘なされた公述人が述懐されていました。金融に対してでありますが、規模に関する効率性の問題は、ユニバーサルサービスからいえば当然に低い。したがって、今はあまねく全国にということで、今回もその設置義務を郵便局株式会社に負っていただく。ところが、これは他の地銀や地元行と比べても、その効率というのは芳しくない。これは、いずれは店舗削減等の、局削減等の効率化が求められるでしょうと、こう言われました。全国に配置するわけですから、そういうことになると。

 そうしますと、島の皆さんには郵便局しかないんです。郡部の皆さんは郵便局を頼っておられる。これはもう皆さん御存じのとおり。そうしたときに、結果として、効率性が落ちた金融事業は切るのか、こういう話になるんですね。

 今回の民営化法案の中で、郵貯と簡保について、これは今後とも郵便局の業務としてやるんだと明記をされるんでしょうか。できる論ではなくて、べき論として、これは業務としてやるんですというふうに提起をなさるんでしょうか。具体的に言えば、郵便局株式会社法になるんでしょうか、これの四条の業務の範囲であります。その業務の範囲のところに、銀行、生命保険業務、これができる。できるんじゃないんですよ。郵便局の第一項の方ですよ。「目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。」の方に入るのかどうか。

 これは入らないと、まさに与党が呼んだ公述人が懸念されたとおりのことが起こるんじゃないですか。つまり、効率性の落ちた郵便局における金融業務についてはこれはカットされていくと。法律に書かれるんでしょうか、書かれないんでしょうか。

竹中国務大臣 まず、郵便局の設置をしっかりと行う。そして、郵便局で、国民にとって、地域にとって意義の大きい金融・保険サービスが実体的に継続されるような仕組みをあわせてつくっていく、そのような制度設計にしているわけでございます。

 郵便局の設置についてはもう繰り返しませんが、特に今は離島の話をされました。過疎地については、法施行の際現に存するネットワークを維持することを旨とするということでございますので、この省令は守っていただく。それで、その省令を守っているかどうかにつきましては、これは民営化委員会の三年ごとの検証の問題もありますし、総務大臣の一般監督権限の及ぶ問題でもございますので、そこはやはり省令をまずつくって、それをしっかりと守っていただいて、拠点を確保するということが第一になります。

 その上で、我々は、金融にはユニバーサルサービス義務は課さないわけでございますが、地域の住民に資する業務として、実体的にそれがしっかりと担保されるような仕組みを考えているつもりでございます。

 例えば、みなし免許を出すに当たって、銀行でいえば、長期安定の代理契約が存在するような形でみなし免許の条件とする等々をまず第一に確保する。それ以降についても、両社のそのビジネスを展開する中でしっかりとそういう関係は続くというふうに想定はいたしますが、それでも、万が一にも過疎地の最前線等々でそういう金融サービスが担保されないような場合には、地域の声を聞きながら、地域貢献のサービスとして基金を活用して、それが行えるような仕組みをつくっていく。そのような仕組みを我々としては今回用意しているつもりでございます。

 金融のユニバーサルサービス義務は課しませんが、国民生活にとって重要なそういったサービスは実体的に確保できるような仕組みをつくっているということでございます。

古本委員 ほかに金融機関のないところに住む人の立場というか思いというのは、大臣、お考えになったことありますよね。そう信じています。

 もしそうならば、他の金融機関とのそういうネットワークを組んでもいいという仕掛けになっていますよね。前回、私が質問した際に、郵便局株式会社が他の銀行の窓口になっていいかどうか。少し整理しますと、郵便局株式会社は、今回、兼業を内閣府令でやれるようにして、横でコンビニか物産展か旅行業者と言っていましたけれども、やりながらこっちでバンキングができるようにしますね。

 他方、では大臣、そこでお伺いするんですが、UFJさんや三井住友さんや、ああいう都銀が、あるいは地銀でもいいですよ、九州の鹿児島銀行とか、そういうところが郵便局と代理店契約をこれはできるんですか。

竹中国務大臣 基本的に、さっき言いましたように、長期安定的な契約を結ぶことを郵便貯金銀行に義務づけておりますけれども、これは決して独占排他的な契約を求めているということではございません。郵便局会社がみずからの意思で、経営判断で他の金融機関の代理業務を行うということを妨げるものではございません。

古本委員 妨げないということなんですよ、そうでないとイコールフッティングにならないですから。

 そのイコールフッティングでいえば、そもそも、そうやって来てくれる銀行があるならいいですけれども、ないところはどうするんですか。さらに、来てくれたとしても、早晩、結局は、郵便局における郵貯銀行の委託契約は先細りになっていくんじゃないんですか。例の委託契約収入料というスキームがこれで崩れていくんじゃないですか。

 つまり、郡部というか、そういう過疎地における、郵便局しかないんだという皆さんが頼りにしている郵便局の金融業務が非常に不採算になってきてもう厳しくなってきたら、郵貯銀行としては、そこから引き揚げて、委託手数料を結ぶのは大変ですから、年間八千億ですから、だったらどこかの民間銀行にお願いをしたいというふうにしたときに、民間銀行のATMに置きかわっていくんじゃないですか。結果として、これは設置を法律にうたわないことの悪さが出てくるんじゃないですか。つまり、郵貯が郡部においてはなくなってくるんじゃないですかという懸念がありますね。

 そうならないために、やはりこれは法律に書くべきなんじゃないですか。第一項の、目的を達成するために次に掲げる業務、これは窓口業務と印紙の売りさばきしか書いていないですよ。ここになぜ銀行と保険と書かないんですか。お答え願えますか。書かない理由をお答え願います。

竹中国務大臣 書かない理由ということでございますが、基本的に、提供しなければいけないという義務を課す、これは、郵便で言うユニバーサルサービス義務と同じような意味で義務を課すということになりますと、その義務を果たすことを保証するための何らかのシステムを用意しなければいけない、義務が果たせないような場合には、政策的に何かを介入してそれを支える仕組みをつくらなければいけない、これはもう表裏一体であるというふうに思います。

 そういうことをもし金融機関にするならば、政府が何らかの介入する余地を残すという意味で、金融の自由な活動、政府の関与を極力やはりなくすべきであるという、金融部門の民営化の趣旨に反してくるであろうというふうに考えるわけでございます。その意味で義務は課さない。

 しかし、実態として、先ほど和歌山のことも御紹介いただきましたけれども、まさに山間部なんかもそうでありますけれども、金融のサービスを欲しているところというのは実はたくさんあるわけでございます。その点で、それが実体的に行える仕組みをつくっているという点を二点申し上げたいと思います。

 まずは、郵便局会社と郵便貯金銀行の間で一括契約が長期安定的に結ばれるということです。そこは、先ほど古本委員は、コストがかかるから金融業をやりたくないというところが出るかもしれないというふうにおっしゃいましたが、私たちは、その点に関しては、ネットワーク価値があって、これは東京と大阪だけで機能しても意味がないわけでございますから、そのネットワーク価値がある以上、やはり、一括して契約が結ばれるであろうということを基本的には想定しているわけでございます。

 しかし、それでもネットワーク価値が一部で低下をして、そういう委員が懸念するような事態が生じた場合には、その場合には、まさに地域の声を聞きながら、地域の声を反映させるということを仕組みの中に、法律の中に位置づけながら、地域貢献計画としてその金融サービスを実施する、そして、それを保証するための基金を設ける、そういう仕組みを二重三重の形で用意しているわけでございます。

 どうして義務化しないのかと、しかし同時に、それが実体的に担保されるような工夫をしている、その点について申し述べさせていただきます。

古本委員 さらに、その公聴会で出た与党推薦の陳述人はこうも言っていました。ノウハウのない郵貯というのは結局運用面が心配だ、民間貸し出しをして、資金が本当にフローしていくかというときに、貸し付けの査定能力も含めて非常に心配だ、したがって、スコアをつけての機械的な貸し出しもするんだ、そういうことまでおっしゃっていました。したがって、そういう貸し出しをすると、それは消費者金融の貸し出し方と一緒で、リスクをとって貸し出すことになる、結局、その家計の安全資産がリスクマネーへと流れていくんじゃないか、こういうことを与党推薦の公述人が言っておられた。

 大臣、けさからの議論の中で、官から民へという中で、公社の縛りを解くことのメリットとして、リスクマネー、リスクをとるお金の資金運用ができるということをずっとおっしゃっていました。効率化していかないと、不採算の赤字店を埋めるために黒字店で生まれた利益を全体で吸収する、これは民間でもそうですよね。もとより、利益が出なきゃそれはできなくなるわけでありまして、そういう意味で少し確認をするわけですが、公社を民営化する目的について再度お尋ねします。

 これは、公社のままではリスクマネーに入れられないということの理由を聞くわけですね。公社のままでリスクマネーに入れられたならば、これはそのままでもいいわけですよね、民営化しなくてもいい。このことのフィージビリティーというのは検討されたんでしょうか。

 もう少し申し上げると、竹中さんはこう答弁をいつもなさるんですよね。けさもずっと言っていた。公社は公共の目的を担保するんだ、全額出資の国の法人である、業務範囲に制限がある、したがって政府保証のあることをやる、これはさらには国民負担を回避することになる、いわゆる取りつけ騒ぎが起こらないように、ペイオフを含めて国民負担を回避する観点から安全資産に運用しているんだ、これを取ってさしあげないことには資金が運用しないんだということをもう再三再四理由に言っているんですが、ときに、先日の全銀協の方だったかと記憶していますが、預金保険機構に入るコストというのはたしか二千億と言われました。〇・〇八で、〇・一みなしで約二千億円。今回、公社を民営化することによるランニングコスト、これは、固定資産税や法人税、あまたの税が新たに加わって、消費税もそうです、負担をしていくことの過不足を比較したならば、どっちが得かという話になってくるわけですね。違いますか。

 公社のままで預金保険機構に入る、この方法というのはなぜとらないんですか。とれないんですか。そうすれば、少なくとも民営化のメリット、公社ではだめなんだと言っているその理由というのは成り立たなくなると思うんですね。そういう検証をきっちりなさっているかどうか。その上で、今言われた、そういう離島の皆さんが、つましい地方の生活をわかってほしい、おれたちのお金をそういう危険なものに回さないでほしいと言っている皆さんの思いを踏みにじってまでもやらなきゃいけないということをぜひ御説明をいただきたいわけです。

竹中国務大臣 直接のお尋ねは、公社のままで金の流れを変えていく、民間でも使えるような形に持っていく、そういうことの検証を行ったのかということでございますが、諮問会議におきまして基本方針の議論を始める段階でこれはもうさまざまな形の議論を内部でし、その意味では検討をしております。

 まず、公社のままでリスクマネーにできるかどうかについては、やはり二つの側からの議論が必要なんだと思います。それは、それを預けている国民、預金者の側、そして、その背後にある国民全体の問題であろうかと思います。

 国がお金を預かっている、国がお金を預かってそれを運用するわけでございますから、これは預金保険云々にかかわらず、それを運用するという意味においては、そこでやはりリスクが発生をいたします。預金保険に入っても、運用する際のリスクを逃れることはもちろん金融機関としてはできないわけでございます。したがって、それを運用するに当たって、さあそうすると、その運用によってリスクをではだれが負うのかと。これは国の機関でありますから、やはり最終的には国民が負う、そういうことにならざるを得ない。だから、国民の側から見た観点が一つあろうかと思います。

 もう一つ、リスクのあるビジネスというのは、これはまさにビジネスですから、今度は国がそのような運用をしてくるということになりますと、一方で、そこのマーケットの中で同じような行動をとる民間企業の言い分というのがやはり出てくるのだと思います。民間企業からすると、私たちと同じことを国がやっていると。国というのは、いろいろな意味で強い信用力を持って、強い力、大きな存在感を持っていますから、それは同じことを国とやらされるのはかなわないなと。それは民間企業としてのやはり立場もあろうかと思います。

 したがって、リスクをとって資産運用する、つまり、民間と同じような行動をとるためにはやはり民間と同じような競争条件になっていただかないと、これは、日本の市場経済の中で困る方がたくさん出てくるということなのではないかと思います。

 国民の側、そして、マーケットにおける競争相手といいますかライバルの側、そういう観点からしましても、やはり公社のままでどんどん拡大していくというのはなかなか無理があって、民間と同じ条件に立っていただく、民営化が必要であるというふうに考えるわけでございます。

古本委員 要は民営化ありきなんでしょうね。

 それで、この法律論、さらに、こういう資金を回していくというフィージビリティーを考えても、これは、確かに資金運用した結果のその運用損については負えないというのがありましたが、一番大きな政府保証というのはペイオフですよね。そういう意味では、元本をきちっと保証して、一千万という、今郵貯は上限を引く中でそれを守っているということですが、では聞きますけれども、これは、今の郵政事業になるから麻生大臣になるんでしょうか。例の名寄せ帳の問題がありますね。これは、一千万上限という中で今郵便局というのは口座は幾つあるんですか。このよく言われる口座というのは、例の、証書で引きかえでやっているという人も含めれば人口より多分多いはずですと言われていますね。そういう中で、一千万の上限の中で何人かがそうやってやってきているという問題がある中で、この問題が解決されて民営化の準備に入っているんでしょうか。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

麻生国務大臣 予告をいただいていなかったので数値まで全部詳しく知っているわけではありませんが、昨年の二月以前というときに、貯金事務センターにおいて名寄せを実施してきたところですけれども、限度額超過となる預入の排除というものがやっと可能になってきた、データベースがきちんとでき上がったということです。

 そういうことだと思いますので、限度額を一層的確なものにするために、手作業で、いわゆる同姓同名、同名異人の分は機械じゃできませんので、同名異人の分の預入チェックを今実施しているというところで、超過状況約二百三十万人と言われておりまして、引き続きこの貯金銀行等、いわゆる限度管理というのをやらないかぬことになろうと思いますので、そういったものを引き続き実施していくことになるんだと理解をいたしております。

古本委員 要は、そういう民営化をしていくんだと言われるんであれば、さまざまな準備、先ほど来申し上げている、原価もきちっと変動費を下げていくようにするのかとか、消費税が新たにかかるようになったときにその対応をどうするのかとか、さらに、そもそも口座自身がどうも国民の人数より多いぞ、これはどうなっているんだ、その整理もしていかなきゃいけない等々、まさに民営化に向けてのインフラ整備というのが、条件整備といった方がいいんでしょうか、要件の整備というんでしょうか、まだ整っていない中で極めて拙速に今回の議論が進んでいるわけなんですね。

 それで、公社でだめな理由、先ほどの資金の運用もそうですが、さらにお伺いをするわけですが、効率的な分野に公務員で本当にこういう資金運用ができるんだろうか。正しく言うと、総理はこう答えているんですね。「公務員で本当にこの資金運用が効率的な分野に提供されるのか。」こういう言い方もしています。ここでもまた公務員というのと、公共事業という事業の部分と人の部分を、混同して使われているのか意識をして言っておられるのかこれはわかりませんが、少なくとも、民間なら必ずこれをやれるかという保証はないですよ。民間も危ない話。したがって、いかに原価を下げていくかとか、あるいは、本当に効率的にやるというなら談合もしちゃだめですし、そういう悪い話ばかりですよ。そういう体質を変えていくということが大事だと思うんです。

 その際、麻生大臣、そういう意味では通告していませんけれども、この件では大臣ともかつて議論をした記憶がありますので再度聞くわけですが、郵政公社のこの二十何万人、ゆうメイトを入れれば四十万、この人たちだけが悪い悪いの議論はして、本丸の三十三万人はどうなっているんですか。つまり予算定員の対象者ですよ。ここにいる人たちですよ。さっきからわけのわからない答弁でずっとやっている人たちですよ。この問題を解決しないと、郵政の皆さん浮かばれませんよ。

 それで、これは何よりも、いわゆる定削計画の中で郵政公社の皆さんというのはもうごそっとネグってきているんですよね。かつての八十万人国家公務員がいたという時代から、昭和四十二年、八十九万人いた、四十七年、沖縄復帰時九十万までいって、それから、平成十二年の省庁再編で五十万一気にネグっているんですよね。その五十万の大どころの二十八万人が郵政公社じゃないですか。もう予算定員の対象外ですよ。公社で、自助努力で、まさに稼いだ分で自分たちを賄うということがもう成り立っている。改革の本丸は三十三万人の方じゃないですか。ここの議論を、大臣、この際、三十三万人を必ずやるんだ、刺し違えてでもやるんだ、一緒にやるんだということを言わないと、この郵政公社の人は絶対浮かばれませんよ。問題はこの三十三万人ですよ。そこからさらにぶら下がっている地方の人たちですよ。

 そこで、これは少なくとも、前はたしか純減の、例の生首とかいろいろな物騒なお話を大臣おっしゃっていましたが、そうじゃなくて、純減の話じゃなくて、やはり効率化なんです。八十兆の予算を、義務経費がありますからそこは別としても、三十三万人で単純に割れば、一人の机当たり二億強あるじゃないですか。この二億強の机を、自分のこの机を一億九千、一億八千と下げていこうという努力をした人ほど褒めてもらって評価してもらうという仕組みにしていかないと、これは変わりませんよ。使い切った者が出世する、局長になっていく。談合して、天下りポストを確保してきた官房課長が次の何とか長になる。大臣もこれはおかしいと思っておられるでしょう。ここに必ずメスを入れるから、郵政のみんな、これ、刺し違えで一緒に今回はあれしてくれと言うならまだわかりますよ。その議論は全くないですね。

 お答え願います。というか、麻生さんの御決意を伺いたいですよ、私は。

麻生国務大臣 予告が全然ありませんので、いきなり決意だけというお話ですから、決意の方だけ。(古本委員「生首の話じゃないですよ」と呼ぶ)余り世間で通じない単語は使わない方がいいと思いますが。そういった意味では、なるべくわかりやすくしゃべらなければいかぬという御説だったので、私の方も、努めてわかりやすく、オオクチバスと言わずに、ブラックバスの方が通用するならブラックバスと言うようにするんですが、片仮名もなるべく使わないようにしているので。

 今のお話ですけれども、基本的には、公務員というものは、まず最初に頭に入れておいていただかないかぬのは、日本の国家公務員の数の絶対量は、いわゆる税金で飯を食っている人、これは自衛隊、警察官全部突っ込みで、千人当たりでいきますと先進国の中では一番低いということだけはまずこれはお互いさま知っておかないと、日本の国家公務員はいかにも数だけいっぱいいて、ろくでもないような話とイメージは違いますから、そこのところだけははっきりしておきましょうね。前提条件を一緒にしておかないと話が込み入っちゃうから。

 その上で、三十三万人のうちのやり方を、今までと違って、今までは現業部門がありましたから、現業部門を減らしてきてかなり大幅に減らしたことは確か。だから、現業部門は確かですが、問題は、いわゆる残り三十三万人の方は、ほとんど現業の部門にいられない、最近の言葉で使われなくなりましたが、ホワイトカラーというんでしょうか、そういった形の部分が残っている。その部分をどうするかという話で、この話は、基本的には経済財政諮問会議の結構大きな話題になってきております、事実。

 ただ、私どもが最も数字の上で純減目標という言葉を正式に使うことになるんですが、問題は、数字をどうするかと言われると、去年、刑務所が三つふえた、そして警察官は三千数百人ふえております。そういったのは、ふえる方はどんどんふやせふやせと大合唱、治安が悪い。傍ら、減らせと言われると、減らすのは一万人減らしたけれども、ふえたのが八千人ふえたんじゃ、実質減ったのは二千人ということになりますので、数字を入れるのは、先生、これはなかなか難しいんですよ、私どもの正直なところを言って。

 だから、純減にすると言って、過去数年間、間違いなく純減していますから、そういった意味では、基本的には、数は減らしていくという方向に関しては私どもも覚悟を決めて、地方公務員の場合は、もっと団塊の世代の採用が極めて多い比率になっておりますので、そういった状況にもありますので、地方公務員はもちろんですけれども、そういった形で、私どももきちんとした純減目標という言葉を使って対応させていただくことであります。

 郵便局と刺し違えるという言葉も何となく適切かなという気がしないでもありませんけれども、こっちだけ言われる割には、そっちが使う言葉は結構激しい言葉を使われますので、うかつに乗ると、そこだけこっちも言葉じりをつかまれちゃかなわぬなと思っていますので、丁寧に説明せぬと危ないから、だから今丁寧に説明した結果、長くなったということだと御理解ください。

古本委員 大臣、上手に議論をすりかえないでください。私が伺っていますのは、三十三万人の削減というのは、自然減の退職減とかそういうのを待たないと、公務員で身分保障されているんですから、これは無理ですよ。そうじゃなくて、だったら、八十兆をこの三十三万人で割れば、単純計算で二億幾らの机に座っていることになるわけですから、これはその人の人件費じゃないですよ、事業費として持っているわけですから、これをいかに効率的にやるかということの仕組みをつくっていかないと変わらないじゃないですかということを言っているわけですよ。座っている机の問題ですよ。

 それで、大臣、もう一点追加しますと、郵政の皆さんというのは、少なくとも税金は入っていないんですよ。自分で自分の机たちを賄っているんですよ。ところがこの三十三万人は、血税で事業を賄っているんですよ。その人たちがまたぞろ橋梁談合に関与しているんですよ。これがおかしいと言っているんですよ。

 またぞろその人たちが、定削したとしてもまた張りつけられるでしょう。また張りつけられるんですよという会社に天下っているんですよ。正しく言えばそういうことですね。今告発された会社に天下っているんです。(発言する者あり)公団の職員、それから国交省からもでしょう。国交省から百九十八名行っているじゃないですか、大臣。きのう二時間もやっているんですから……(北側国務大臣「今回のことは関係ないでしょう」と呼ぶ)いや、委員長、大臣はやじらないようにお願いします。

石破委員長代理 閣僚席、御静粛に願います。

古本委員 ということは、これはもうみんなわかっているんですよ。なのに、今回、郵政公社だけをつるし上げちゃって、悪いんだ悪いんだ、これはおかしいですよ。そのことを私は言っているんです。

 済みません、もう時間が少なくなってきましたので、そこで、では国土交通大臣、御答弁の舞台をつくってさしあげますので。

 思い切って、では国土交通株式会社をつくったらどうですか。まずそれをやる方が先ですよ。これは本当に冗談じゃないです。国民の声ですよ。年間六兆円も七兆円も公共予算を使って、またぞろこんな話が飛び出して、いやあ国土交通大臣、御立派ですと国民は思っていませんよ。まず国土交通株式会社をつくってくださいよ。御答弁願います。

    〔石破委員長代理退席、松岡委員長代理着席〕

北側国務大臣 委員は公共事業をどうとらえていらっしゃるか私よくわかりませんけれども、公共事業というのは、これは私どもの生活にとっての基盤をつくる仕事をしているわけでございます。それをすべて民間でやれなんというのは、それは無理な話でございます。また、安全、安心というのを確保していく、国民の生活の安全、安心を確保するというのが国土交通省の大きな役割でございまして、それが本当に民間でできるのか、そこはぜひ委員もよく考えていただきたい。

 それと、きょう問題になっているのは、これは道路公団のOBの方が、道路公団が発注をした事業について受注調整をしていたのではないかという疑いを持たれているわけです。道路公団のOBのことなんですね。だから、一切合財、国家公務員の天下りの問題、これは私は全然問題がないとは言いませんよ、課題があると思います。しかし、今回の問題と一緒くたにして議論するのはいかがなものかということでございます。

古本委員 いや、国交省から百九十八名、うち八十名が二カ月以内に再就職とこれはありますよ。それで、道路関係四公団から延べ百三十名、うち八十四名が退職後二カ月以内、決して間違っていないと思いますけれども。PC橋梁会社二十三社、国交省から百三十三名、うち五十六名が二カ月以内に再就職とあるじゃないですか。

 それで、公共事業を何ととらえているかとありましたが、公的な事業とそれを支える人が公の人でなきゃいけないかどうかというと、橋梁の設計は、実際は何々建設のエンジニアが設計しているでしょう。それを技官が検修印を押すために二重の作業をしているだけじゃないですか。それで、その建設マニュアルというのは、技官の人たちが何十年も前につくったもので営々と続けられているんじゃないですか。その建設マニュアルのおかげでどれだけみんな苦労しているか、それで、そのおかげでどれだけみんなもうかっているか。これはおかしいですよ。

 公共工事を何ととらえているかという議論は、もうやり出したら何時間でも欲しいですからきょうは控えますけれども、それは大臣、さっきの冒頭の話からいけば、この郵政の事業に関していえば、極めてパブリック、公の要素が強いんですよ。なおかつそれは、赤いバイクに乗ってくる人は公務員でないと安心できないと島の人が言っているんですよ。それにこたえなくてどうするんですかと言っているんですよ。

 ところが、橋の設計は、どこかのゼネコンの、どこどこ大学工学部を出た、大学院を出た人の設計で十分安心できるじゃないですか。これは官がかいた設計でないと安心できる橋じゃないとだれが言うんですか。この違いは大きいんですよ。それを承知の上でおっしゃるものだから、こういうふうに申し上げるわけです。

 最後に、したがいまして谷垣大臣、事ほどさように、私はどうも大臣に聞きたくなるんです。向こう十年で三百兆のやはり国債を発行していくというのは、今回のこのスキーム、前回お伺いしましたが、やはり破綻をさせる話ですよ。出口の話をきゅっと締めてきて初めて、入り口でみんなも苦労してくれと言って、国民もそして郵政の職員も納得がいくというものですよ。ここの改革をせずして、いや、これは財政需要がありますから発行していくんです、さらにその受け皿に、ありがたいことに郵便銀行株式会社がもう法律で縛りが入っちゃっている。受け皿になるしかないんですよ。主たるプレーヤーになるんですよ、なる。

 そういう中で、この問題を解決せずして、取りやすいところの所得税を増税して取るなんて、これは東京都議会議員選挙真っただ中で、幹事長もびっくりという感じで忠告なさっていましたが、これはえらいですよ、えらい。サラリーマンや給与所得者から取る。与党の皆さんの支持基盤も、それは農家の方や漁業の方が多いと思いますけれども、その人の息子さんやお孫さんは今やサラリーマンですから、これは厳しいですよ。

 そんな話を、片や、三百兆国債を発行しますとこの間おっしゃった。そして、入り口のところでいけば、これだけ郵政に苦労して、公社の人に苦労させる。これは大臣、少なくとも財投機関、これを改革していって出口も締める。何よりも、こんなわけのわからない談合が起きて、九七%落札率みたいな話をやめて、国民の税金、百億の橋を九十億でかければ、十億新たに道路が別途つくれるんですよ。だから、そういう話を、財務大臣、しっかりやるからと言うなら私はこの話わからぬでもないですけれども、全くわからない。

谷垣国務大臣 明晰な委員の御発言ですけれども、さっき三百兆と言っておられましたね。三百兆というのは何でしょう。

古本委員 向こう十年で国債残高が三百兆ふえるじゃないですか。

谷垣国務大臣 むしろ今のお話は、国債のお話ももちろん関連してまいります。これはもちろん、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスをとるということで我々やっておりますけれども、国債発行額を圧縮していく努力というのは当然やらなきゃいけません。先ほど、八十兆で三十三万人と言っておられるから、多分、総務大臣じゃなしに私への御質問かなと思いながら実はあのとき聞いていたんですが、それはこれからも徹底的にやらなきゃならないと思います。

 それで、委員のおっしゃっているのは、さっきちょっと聞いておりますと、出口の財投の話だと思うんですが、財投は、この前も御答弁したかもしれませんが、最盛時は四十兆ぐらいございましたのが、今は十七兆ぐらいに圧縮してきているわけですね。これで全部圧縮し切ったかどうかはまたこれからも検証していかなきゃなりませんし、いろいろな議論があると思います。

 それから、今は郵政に、過渡期の、今まで預託を受けた分をお返しするのを、いわば見返りのような、財源調達のような形で財投債をお引き受けいただいていますが、この財投債をお引き受けいただくのも十九年度で終わるというのは今度の法律にも明記しております。そうすると、今、こういうふうに民営化するけれども、引き受けざるを得ないんだとおっしゃいましたね。そういう仕組みというのは今回なくしていくということになっているわけです。

 それで、十九年度以降は、財投債、本当に受けられるのか、時計を気にしておられますからもう細かいことは申しませんけれども、これはもう民間だけでほぼ引き受けられるようになると私は考えております。そういう点でやはり金の流れは大きく変わる。

 もちろん、これだけ国債も発行していただいておりますし、民間金融機関にも国債を受けていただいておりますから、しばらくはやはり国債を引き受けていただくということは現実にはあると思います。特に、過渡期においてはいろいろな手だてをこの法律にも入れていることは御承知のとおりでございますけれども、民営化したときは、民間機関の原理に従って御判断をいただくべきことだと思っております。

古本委員 いや、それこそ谷垣大臣らしくないですよ、らしくない。これは、今回の民営化法の百九条にもはっきり書いていますよ。国債以外の投資、要するに、新たにリスク投資していこう、国債以外のことをやろうと思うと、持っている株の比率を下げないとだめでしょう。政府持ち分を下げないとほかは買えないじゃないですか。国債を買えと書いてあるじゃないですか。(谷垣国務大臣「いや、書いてないよ」と呼ぶ)いや、書いてますよ。ちょっとこれは残り少なくなりましたので、次回にでは譲りますが、国債を買わなきゃいけないというスキームになっていますよ。なっています。

 それで、最後に一点だけ。委員長、今回、公聴会で地方の声を大変聞いてきました。郡部、島の話を聞いてきました。他方、都会の郵便局は切るという話になるんですね。これは、都会の郵便局の公聴会をぜひ開いていただきたい、御検討いただきたいということを申し上げて終わりたいと思います。

 今、都議選の真っただ中ですが、実は、都会の郵便局が切られるということに気づいていない都民の皆さんが大変多くいらっしゃいますので、その意味でも、ぜひ都市部での公聴会、委員会はまだまだ始まったばかりでありますので、そのことを強くお願い申し上げまして、終わります。

    ―――――――――――――

松岡委員長代理 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、政府参考人として財務省大臣官房長津田廣喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松岡委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松岡委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 昨日、政府・自民党は法案修正で合意したと言われておりますが、まだその内容は提案されておりません。提案された後に、内容についてはじっくり議論をしたいというふうに思います。

 そこで、きょうは、報道されている範囲で幾つか確かめておきたいことがあります。

 まず、金融のユニバーサルサービスがこの修正でどうなるかという点です。

 報道されるところによりますと、郵便局会社、窓口ネットワーク会社の業務範囲に、銀行業と生命保険業の代理業務を例示するとされております。業務として、郵貯、簡保を例示するということでありますが、これで一体何が変わるのかという点です。

 竹中大臣は、ユニバーサルサービスは義務づけないと答弁をしてきた。この修正でユニバーサルサービスの義務づけになるのかどうか、まずここを確認したいと思います。

竹中国務大臣 与党においていろいろな御議論がなされているというふうに聞いておりますが、その具体的な内容につきましてコメントする立場にはございませんので、答弁を差し控えさせていただきます。

佐々木(憲)委員 政府はこの修正について合意をしたということじゃありませんか。

竹中国務大臣 与党の中で今いろいろと議論をされているというふうに承知をしております。

佐々木(憲)委員 小泉総理はいいものができたと言っているんじゃないですか。竹中大臣はどうなんですか。

竹中国務大臣 いろいろなことが検討されているというふうに承知をしております。

佐々木(憲)委員 では、内容について聞きますね。

 郵貯、簡保を例示するということが仮に行われる場合、これはユニバーサルサービスを義務づけることになるのか、それともならないのか、この点、内容について伺います。

竹中国務大臣 その仮にというのがどういうものであるかちょっと承知をしておりませんので、コメントは控えさせていただきます。

 政府としての、今の我々が提出させていただいている法律の考え方は、法律上ユニバーサルサービスの提供義務は課さないものの、銀行、保険会社に対してみなし免許を付与するに当たりまして、最低限移行期間をカバーする長期安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを免許の条件として付することにしておる。このような免許条件により、銀行、保険の郵便局会社への業務委託が長期にわたり担保される。また、必要な場合には基金が活用できるような仕組みにする。それが、今の、政府が提案させていただいております、政府の法案の内容でございます。

佐々木(憲)委員 法律上ユニバーサルサービスは義務づけられていない。その義務づけられていない部分は、今回変えないわけでありますね。要するに、例示するだけなんですよ。窓口会社は郵貯、簡保をやることができる、だからやらなくてもいい。何も変わらないじゃないですか。

 次に、社会・地域貢献基金、二兆円まで積み立て可能とするということも、四月の政府・与党合意の内容で、全くこれは変わらない。

 それから、郵政民営化委員会が三年ごとに行う検証を見直しに修正する、これも言葉上の問題で、実態は余り変わらない。

 では、グループとしての一体経営という点ではどうか。

 昨日の修正合意を見ますと、完全民営化後も持ち株会社が郵便貯金銀行と郵便保険会社の株主に与えられる議決権を連続的に保有する規定を二社の定款に盛り込むとされている。確かに、定款に盛り込むというふうに書いているところは新しいけれども、これも四月の政府・与党合意の内容どおりであります。その内容が法案に盛り込まれているという答弁ですからね。

 こうなると、国の関与をしっかり断ち切ると言ってきた竹中大臣の答弁と食い違うんじゃありませんか。いかがですか。

竹中国務大臣 重ねて申し上げますが、今まだ与党でいろいろな御議論をいただいているというふうに承知をしておりますので、具体的なコメントは控えさせていただきます。

佐々木(憲)委員 無責任ですね。この合意が、政府と自民党、総務会で一応、多数決だとはいうんですね、それで決められたと。きょうじゅうにもそれが法案として提出される。小泉総理は、いいものができた、こう言っているわけです。それについて何も答えない。今議論中、議論中じゃないよ、法案ができているんじゃないか、もう既に。でたらめだよ、そんなのは。

 したがって、完全処分は名目だけでありまして、郵貯銀行については、当委員会で公正取引委員会に対して私がただしました。答弁では、グループ内の資金取引で他の事業者に著しい影響を与えるような銀行は規制の対象になるけれども、そうでなければ対象にはならないということでありました。

 そこで公取にお聞きをします。

 郵便保険会社の場合はどうなるか、どういう考え方で対応をすることになるのか、お聞きをしたいと思います。

伊東(章)政府参考人 お答えいたします。

 独占禁止法第九条の関係ということでございますけれども、郵便保険会社との関係につきましては、まず、議決権保有比率が二五%以下であれば、独占禁止法九条の観点から問題となることはございません。

 他方、二五%を超える場合につきましては、これは郵便貯金銀行の場合も同様でございますが、都市銀行や大手保険会社等の大規模金融会社と同等の影響力を有することとなれば、資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいことにより、国民経済に大きな影響を及ぼし、公正かつ自由な競争を妨げるおそれになる場合、法律で禁止する要件でございますけれども、それに該当し、九条に違反するおそれがあるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 要するに、郵便貯金銀行の場合と同じで、大銀行や大手の保険会社と同等の影響力がある場合には独禁法の対象となり得るけれども、そうならない場合には対象にならないということであります。

 そこで、伊藤大臣にお聞きしますが、独禁法の対象にならないとすれば、どのような規制を受けるかという点です。この点について確認をしたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 保険業法上のお尋ねだと思いますが、保険持ち株会社となるためには内閣総理大臣の認可が必要となりますが、一般事業会社を子会社として保有する場合には、認可の前提として、一般事業会社を子会社保有するための承認要件を満たすことが必要となります。したがいまして、完全民営化後の日本郵政株式会社が郵便保険会社の株式の五〇%超を保有する場合には、郵便局株式会社、郵便事業株式会社を子会社とすることについて承認要件を満たした上で、保険持ち株会社としての認可を得られれば、保険業法上、郵便保険会社の株式を一〇〇%まで保有することが可能となります。

佐々木(憲)委員 要するに、五〇%まで保有可能というのが一般規定でありますが、承認を受けた場合には一〇〇%まで可能であると。そうなると、政府が三分の一超の株式を保有する持ち株会社の実質子会社ということになりまして、しかも相当親子関係の濃密な、そういう子会社ができる。

 竹中大臣、こうなると、断ち切るということにならないです。一〇〇%処分といっても、株式処分信託とか自社株買いも可能でありますから、つまりそれは見せかけだけなんです。実質子会社が可能になる、こういうことじゃありませんか。

竹中国務大臣 何度か御答弁をさせていただいておりますが、金融、国の信用、関与を断ち切るという意味で、一〇〇%完全処分の義務を課して、民間と同じスタートラインに立っていただくということがまず大変重要であるというふうに考えております。

 郵政会社及びその子会社が、資産運用の一環として、普通の銀行、普通の保険会社となった郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を取得するということにつきましては、特殊会社としての性格も踏まえて、独禁法そして銀行法等の一般な規制の範囲内で行動をしていただく、それ以外の特別な規制を課す必要はないと考えるわけでございます。

 日本郵政株式会社及びその子会社が、その業務として銀行業または保険業に資本参加するために株式を取得するような場合には、独禁法、銀行法等の一般的な規制のほかに、それぞれの特殊会社法に基づく主務大臣の認可または届け出が必要になります。資本参加の必要性や本来業務への支障の有無等を総合的に勘案して、主務大臣が適切に判断をするということになります。

佐々木(憲)委員 長々長々答弁したけれども、質問に答えていない。

 同じスタート台に立つことにはならないんじゃありませんか。イコールフッティングというふうにならないでしょう。国の関与が三分の一ある持ち株会社のもとに、実質子会社として存続できる。実質的に、連続的保有が可能になる。しかも、それは、保険の場合は五〇%から一〇〇%までのところも持てる。銀行は五〇%まで持てる。何が国の関与を断ち切るんですか、これで。全然言っていることと実態が違うんじゃありませんか。

 ですから、私は、法案の修正点として報道されている内容というのはいずれも、これは実質的には出されてから審議をじっくりやりたいと思いますけれども、いずれも法案の内容を変えるものじゃないということははっきりしました。サービス切り捨て、国民の資産を日米の金融資本に食い物にさせるという本質は全く変わりません。こんな修正で採決を強行するなどというのはとんでもない、絶対反対だということを述べておきたいと思います。

 では、次に、政府広報についてお聞きをしたい。

 折り込みチラシの企画を持ち込んだのはスリード社だと、先ほども少し議論がありました。ターゲット戦略というのは、ここにありまして、これはスリード社とオフィスサンサーラというところが共同で提案をした「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」というものがここにあります。これは実質的に著作権はサンサーラなんです。

 この中で、広報の対象をどう絞るかを提案しております。その際、国民をA、B、Cの三つの階層に分けていまして、A層は、「エコノミストをはじめとして、基本的に民営化の必要性は感じているが、これまで、特に道路公団民営化の結末からの類推上、結果について悲観的な観測を持っており、」「批判的立場を形成している。」これがA層。C層は「構造改革抵抗守旧派」だというふうに書いてある。この中にもおられるかもしれないけれども。このAとCはターゲットにしない、B層に絞るというふうにしているわけです。

 B層とは何か。主婦層、子供、シルバー層を中心とした階層。このB層にターゲットを絞って郵政民営化の必要性を浸透させることが二月に行われた広報戦略の眼目だった、そういうことですね。

林政府参考人 お答えいたします。

 企画案の表現につきましては一部不適切な部分があるかもしれませんが、構造改革や経済に関する理解度には国民各層の間に差があるので、国民から信頼をかち得ている著名人との対談による、お役所言葉ではなく、わかりやすい言葉で広報する必要がある、そういう提案と受けとめてございます。

佐々木(憲)委員 要するに、B層にターゲットを絞った戦略は事実上お認めになったわけですね。

 重大なのは、この階層の位置づけなんですよ。「最も重要な点は、郵政の現状サービスへの満足度が極めて高い」と書いておるのです。B層というのは、郵便局はいいものだ、こう思っている階層だと。「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」とされている。しかも、重大なのは、この階層はIQがロー、つまり低い階層とされている。

 先ほど法務大臣が、アイデンティティークオリティーなどというでたらめな言い直しをしました。そんな言葉はありません。インテリジェンスクオーシェント、つまり知能指数のことであります。その証拠に、この中に書いてあるんです。括弧をして、EQ、ITQと書いてある。つまり、同じ意味だと書いているんです。EQとは何かというと、教育指数です、エデュケーションクオーシェント。ITQとは、ITクオーシェント、つまりIT指数。それが低いから、ウエブではなく折り込みチラシという手段になる、こういうことになるんです。

 これは、だれが見てもそういう戦略だということはもう明らかなんですよ、これを見るだけで。そういう「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要」と書いてあるんです。要するに、小泉内閣を支持しているが、IQが低く、インターネットを使わず、郵便局に満足している、そういう階層にターゲットを絞って徹底的に民営化の必要を浸透させよう、上から教育してやろうという考えなんです。

 竹中大臣に聞きます。これは余りにも国民を愚弄した戦略ではありませんか。そう思いませんか。

竹中国務大臣 以前に御説明をさせていただきましたが、今御指摘の書類は、これは業者がつくったものと思われますが、これは政府の書類ではございません。業者がつくったものと思われます。

 事務方からそれについて私が説明を受けたこともございません。事務方としては、広報について国民の疑念や皆様の疑念や懸念にできるだけ効率的、効果的にお答えできるようにいろいろなことを考えて、バナー広告等も、折り込みチラシの配布等々いろいろな広報のパッケージを考えたというふうに聞いております。

佐々木(憲)委員 だから、私はこれを紹介したんです、聞いているか聞いていないかは、それは別として。こういう戦略というものは国民を愚弄した戦略じゃないのか、そう思いませんかと聞いているんです。考え方を聞かせてください。

竹中国務大臣 民間の企業の企画書でございますから、私はコメントをする立場にはございません。政府としては、そのような話を政府の中でしたという事実もございません。

佐々木(憲)委員 これは実際に採用して、竹中さんは出ているじゃないか、これに。こういう形で、「郵政民営化ってそうだったんだ通信」。しかも、十二月二十八日七時七分の谷部氏のメールの記録を見ると、「大臣の意向として確認できた点は以下の通りです。」「コンテンツを竹中大臣と対談者との対談で形成する→OK」「対談者候補・交渉の優先順位は下記の通りとなりました。」テリー伊藤氏などの名前が書かれている。

 だから、これは大臣の意向が明確に、そういうものだ、そういう戦略に沿ってテリー伊藤氏が選ばれてやられたということは明らかじゃありませんか。これは、幾らそんなもの否定したって、現実にやられているんだから、その企画のもとで採用して実行したんでしょう。あなたは、自分でその中に出ているじゃないですか。

 次に、財務省に確認したい。

 政府が物品・サービスを調達する場合に、契約が確定するのはどのような条件がそろった場合でしょうか。

津田政府参考人 今の御質問に直接私の、主計局の話ではないかと思うんですけれども、かつてお答えしたことがあるかもしれませんが、契約を全部当事者で署名をすることによって成立するのが恐らく一般的かと思います。

佐々木(憲)委員 全くそのとおりで、会計法二十九条八の2に、「契約書を作成する場合においては、契約担当官等が契約の相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。」となっているわけであります。

 そこで、一月十二日に、スリード社から決裁文書に必要な見積書が提出されております。その後、見積書の内容について詰めた上で決裁に回した。決裁が終了したのはいつですか。

林政府参考人 お答えいたします。

 二月八日でございます。

佐々木(憲)委員 本来なら、二月八日以降、つまり、決裁がおりて初めて契約ができるはずです。それなのに仕事だけは進んでいる。一月六日に用紙の調達などを行っていた、手配をしていた。だから、つじつまを合わせるために、契約書には十二月二十八日という虚偽の日付を書き込んだ、そういうことになるんじゃありませんか。

林政府参考人 私、今回のこの委員会でいろいろお答えしてきております本質でございますけれども、十二月二十八日に実質的な契約合意がなされていた、そこで、そこに合わせて書類を整備するために精査をする、そういうようなことをして、それが二月八日までということでございます。

佐々木(憲)委員 契約が確定するのは、契約書に署名し、判こを押して初めて契約が確定するんですよ。契約が確定していない、配布先も決まっていない、金額も決まっていない、しかし仕事だけはどんどん進んでいる、そんなでたらめなことがありますか。これはまさに公文書の事実上の偽造というべきものであって、こんなことをしたら税金を使う仕事はめちゃくちゃになる。竹中大臣、どう思われますか。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 個別の契約に関して、私は決裁権者ではございませんので、どのような経緯であったか、詳細は承知をしておりません。政府の担当部局において、時間的制約、予算的制約、人的制約の中で適切に対応しているものと思います。

佐々木(憲)委員 適切に対応なんかしていないじゃないか。こういうでたらめなことをやったら、国民の税金を使う仕事というのはめちゃくちゃになりますよ。実際に契約をした日と日付が全然違う。そんなことをあっちこっちでやっているんですか。それが正常なんですか。本当にめちゃくちゃだ。

 次に、スリード社についてお聞きしたい。

 昨年十二月二十四日二十三時三十分に出された政府広報室からのメールにはこう書かれているんですね。全く新しい、どこの馬の骨だかわからぬところと契約することに決める場合は、それ相応の責任をとっていただく必要があると書いているんです。随意契約を結んだスリード社というのは、どこの馬の骨だかわからぬ会社だと言われている。

 中川大臣にお聞きします。

 政府として初めてスリード社と契約をしたのは経済産業省、このものづくり白書に盛り込まれた十五ページの調査研究で一千万円の契約がされております。スリード社とは初めて契約するんだから、当然信頼の置ける会社かどうかを確認したと思いますが、どのような審査を行いましたか。会社概要、決算報告書、登記、こういうものを確認したんですか。

中川国務大臣 御指摘のとおり、平成十六年度のものづくり白書に関する調査を経済産業省としてスリード社に委託しております。これは、平成十六年九月以降、当該調査の受託先の検討に着手し、スリード社に委託する方針を固めました。これは随意契約でございます。これは、いろいろな基準に基づきまして、スリード社に仕事をさせるということが適切だということで、約一千万円の委託契約を結んだということでございます。

佐々木(憲)委員 私が聞いたのはそんなことじゃないんです。会社概要、決算報告書、登記など、必要な書類の審査を行ったのかと聞いているんです。

中川国務大臣 具体的に、通例、相手方の組織概要、決算報告書、主な事業実績等の提出を求め、事業活動の状況を確認するなどして受託能力を審査した結果でございます。

佐々木(憲)委員 では、登記を調べたんでしょうか。契約書の住所、当然、登記されている住所ですね。――早く答えろ。

中川国務大臣 事務方からきちっと答弁させればいいんだと思いますけれども、事務方の出席が得られませんでしたので、私から申し上げますが、きちっとした面談の上でやらせていただいているということでございます。

佐々木(憲)委員 いや、登記されている住所が契約書の住所ですかと聞いているんですよ。

中川国務大臣 登記されている事務所と実際にやっている事務所と別でございますけれども、その実際にやっている事務所で確認をしているということでございます。

佐々木(憲)委員 私は、これは非常に問題があると思うんです。要するに、登記を調べていないんでしょう。登記簿をとってそれを、登記簿というのは簡単に言うと会社のいわば身分証明書なんです。そこに書かれている会社の住所というのは、その人が住んでいる、その会社が現にある、本社があるところが登記に書かれているんです。それがきちっとそういう会社と契約をする、その住所が書かれた契約書に署名し、判を押すというのは当たり前じゃないですか。何でそれと違うことを書いているんですか。そんないいかげんなことをやっているんですか。

中川国務大臣 登記簿は制度上要求されておりませんけれども、今こうやって事務方と、こういうふうにやっているとおり私自身もわからない部分がいっぱいある。したがって、きちっと佐々木議員の御質問に改めてお答えをしたい、先ほどからこうやってやっているとおりでございまして、余り格好いいことじゃないんで、きちっとお答えしたいと思っております。

佐々木(憲)委員 では、これは具体的に調査をして、後で委員会に報告してください。

中川国務大臣 委員長、理事会の御判断にお任せしたいと思っております。

佐々木(憲)委員 私はこの登記を調べたんですね。そうしましたら、つまり、政府広報がやった契約書というのがあるわけです、これはもう委員会にも理事会にも出されているんです。それで、ここに書いている住所の登記簿を調べたんです。それで、これを出したわけです。そうしましたら、現在、この会社法人は見当たりません。つまり、神保町にあるという、そう言われている、契約書に書かれている住所、これを調べたら見当たらないんですよ、これは実際に。そういういいかげんな、しかも、先ほどの答弁だと、登記簿をとっていない、添付していないと。登記簿を調べたという答弁はなかったです。つまり、肝心なところを調べていないんです。この会社は一体どういう身分のものなのか、どこに住んでいてどんな人なのか、どんな会社なのかわからない。

 そこで、委員長、この調査の結果と関係書類、つまり、契約書、登記簿、すべて理事会に出すように言ってください。

二階委員長 後刻理事会で協議をいたします。

佐々木(憲)委員 では、政府広報室の林参考人に聞きますが、六月十四日にこう答弁しているんですね。スリード社と契約をすべき、私どもはスリード社の登記、会社概要、決算書を審査いたしましたとこの委員会で答弁しました。契約書に書かれているスリード社の住所というのは、登記されている住所と違うんじゃありませんか。

林政府参考人 お答えいたします。

 スリード社と契約するに当たりましては、登記、会社概要、決算報告書等の提出を求めたところでございます。これを通じまして、同社が会社として存立要件を満たしていると我々は判断いたしました。

 それから、登記簿上は江東区に本店が所在しているとされておりますが、実際の営業活動は千代田区神田で行っているということを承知しております。

佐々木(憲)委員 通常なら登記簿を調べて、それを提出させたんでしょう、審査をしたと言ったわけだから。何の審査をしているんですか、実際に。そこに書かれている住所を契約書に書くのは当たり前でしょう。それも調べていない。こんなことも確認しないで一億五千万という巨額の契約書を結んだ。でたらめじゃないか。

 この点も含めて、引き続き今後追及するということを述べて、きょうはこれで質問を終わらせていただきます。

二階委員長 次回は、明三十日木曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十七年六月二十八日(火)

二、場所

   札幌プリンスホテル

三、意見を聴取した問題

   郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 二階 俊博君

       北川 知克君   坂本 剛二君

       桜井 郁三君   園田 博之君

       馳   浩君   五十嵐文彦君

       伊藤 忠治君   大出  彰君

       馬淵 澄夫君   松野 頼久君

       桝屋 敬悟君   塩川 鉄也君

 (2) 意見陳述者

    社団法人北海道未来総合研究所理事長      原   勲君

    渚滑郵便局総務主任   村上 一夫君

    障害者の生活と権利を守る北海道連絡協議会会長 片石 松蔵君

 (3) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   中城 吉郎君

    内閣官房内閣参事官   籠宮 信雄君

     ――――◇―――――

    午前九時二分開議

二階座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院郵政民営化に関する特別委員長であり、今回の派遣委員団団長の二階俊博でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当札幌市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の園田博之君、北川知克君、坂本剛二君、桜井郁三君、馳浩君、民主党・無所属クラブの松野頼久君、五十嵐文彦君、伊藤忠治君、大出彰君、馬淵澄夫君、公明党の桝屋敬悟君、日本共産党の塩川鉄也君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 社団法人北海道未来総合研究所理事長原勲君、渚滑郵便局総務主任村上一夫君、障害者の生活と権利を守る北海道連絡協議会会長片石松蔵君、以上三名の方々でございます。

 なお、本日出席を予定しておりました北海道大学大学院経済学研究科教授濱田康行君につきましては、交通事情等の都合により出席できないとの連絡がございましたので御了承願います。

 それでは、原勲君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

原勲君 それでは、座ったままということでございますので、このままで話をさせていただきたいと思います。

 本日は、こういう機会を与えていただきまして、大変ありがたく感謝申し上げたいと思っております。短い時間ではありますが、私の意見を述べさせていただきます。

 私、郵政とのかかわりをちょっと申し上げますと、もう何年か前、郵政省の時代でございますが、郵政省の職員の方々の研修をかなり長くやっておりました。そのとき私が話をした内容というのは、管理職、一般職を含めまして、要するにビジネスのあり方についてでございまして、私が話をすることがあったということは、つまり、郵政の職員の方々が既にビジネスマインドを習得するということに非常に一生懸命だったというふうに理解しております。したがいまして、そういう意味では、郵政が現在の公社に変わりさらに民営化に進んだとしても、職員の方々に基本的にビジネスマインドが不可欠であるという認識は浸透していくのではないか、そういうふうに考えております。

 そういうことでありますが、私は今回、民営化につきましてお手元に簡単なメモを差し上げております。それに基づいてちょっと説明をさせていただきます。

 私は郵政事業の民営化は不可欠、必然性が非常に大きいというふうに理解しております。第一には、現在の郵便、貯金、簡保のいずれも民間で運営可能と書いてありますが、少なくとも私はベターだというふうに考えております。つまり、基本的には、民間でできることは民間でという考え方に対応できるものだというふうに認識しております。

 ただ、幾つかこれに対してコメントすべきことがあるとすれば、これは私の基本的な考え方でありますが、この民営化につきましていろいろ議論がありまして、民間企業であるから利潤を最大化していくことが目的だというふうに掲げているわけでありますが、この際重要なことは、利潤を最大化するにしても、基本的には顧客志向といいますか、顧客あっての企業活動であるということが基本だと思います。同時に、その結果生み出された利潤というものは、企業や投資家以外に社会的にも還元されていくということが一つの基本的な考え方であります。

 つまり、当然企業であっても社会的責任がある。今回、社会貢献基金等々の考え方がありますが、私は、それは当然の考え方だというふうに理解しております。この点につきましては、従来の郵政事業はかなりビジネスマインドは高かったというふうに申し上げておりますけれども、まだ不十分でありまして、今後民間企業になることによって改善が進むというふうに考えております。

 例えば、郵政事業を見ておりまして、私はコストプラス法と言うんですけれども、非常に問題があったわけです。最近は非常に競争が激しくなりまして少なくなったわけでありますが、例えば、集配回数が減っていく、コストの関係から見て集配回数が二回あったのを一回に減らすということが行われたわけであります。しかし、集配回数を減らしながら一方で料金を上げるというようなことが行われたわけですね。これは、事業としては顧客を全く無視した考え方になるというのは当然のことでありまして、そういうことについて認識が非常に足りなかったというように私は思っております。

 それから、北海道の立場で申しますと、現在、民間のいわゆる郵便会社といいますか小包等の事業サービスを行っている会社もまだ改善されていないわけであります。北海道に送られてくる荷物というのは、大体、基本的には即日あるいは翌日ということになっておりますが、物によっては一日おくれというのがあるわけです。雑誌は二日おくれというふうなことが最近メディアでも報道されていますけれども、当日発売された雑誌は北海道には当日届かないというのが現状でありますし、それから、当然、海外に行きまして、成田から発送される手荷物その他が一日おくれてくる、時には二日もおくれてくるというようなことがあります。

 それから、現在各地でインターネットが発達しておりまして、産地から直送ということが普通になっておりまして、産地に注文して商品を取り寄せるんです。しかし、これは民間が運んでいるのが今主体なんですけれども、もちろんゆうパックその他はありますが、これも当日着くはずのものあるいは翌日着くはずのものが届かない、実際発送した方は約束どおり届いていることになっているんですが、現実においては届かないということがあります。

 北海道から発送された荷物というのは大体予定どおり輸送されているんですが、帰り荷がおくれてくるというのは一体何が原因なのか、私はまだメカニズムそのものを解明していないんですけれども、そういう意味で非常にサービスが悪いという問題がありまして、今後こうしたことについて民間事業に転換することによって改善されていくということを期待したいと私は思います。

 なお、郵便事業につきまして、ユニバーサルサービスが言われておりまして、これは基本的に当然と思います。しかし、世の中は非常に大きな変化がありますし、特に北海道におきましては、広域に散在して居住するという形態ですから、なかなかサービス、ネットをそのまま維持するということ自体も大変だと思います。

 しかし、今申し上げたように、今後の北海道を考えますと、かなり居住形態が変わっていくだろうと思うのですね。多分、一般的には集落散在型から、端的に言ってしまいますけれども、集落集積型の、つまり、あるところにある程度の人々が集積して住むという形態に変わっていかざるを得ないのではないかというふうに思っております。

 したがって、そういう時代の態様に合わせた郵便ネットワークの考え方が必要なのであって、現在の居住形態を前提にしたままのネットワークでいいのかどうかということについて、私は考慮すべき必要があると思うのです。逆に言うと、都市の方は、ネットワークの拠点を少し減らしていくというような考え方がありますけれども、現在のコンビニ等の考え方からも、果たしてそれでやれるのかどうか、それが妥当なのかどうかということも慎重に配慮すべきだ。

 いずれにせよ、社会経済全体が変動していますから、それに合わせたネットワークのあり方というものを慎重に検討しながら事業の展開をやるべきであるというふうに思っております。これは一点目に関する問題です。

 二点目は、地方でできることは地方でに対応ということでありますけれども、これは特に従来の貯金、簡保を通じた財投資金への流用、それから多額の国債購入の不透明性、これはほとんどだれもコントロールできないというシステムの中で不健全性が拡大していったということであります。三百五十兆という多額の資金が国債に流れていく、これは国民自身が認識していない状態のままそういうところに運用されているというようなことがございまして、極めて大きな不健全性が拡大しているという懸念がございます。

 この問題を考えるに、私はやはり、基本的には、第二の国鉄にならないということが必要だと思うのですね。国鉄は三十兆円の負債を抱えて継承会社が整備基金を持たなければならないというようなことになりましたけれども、それと同じような状態に現在郵政はなっておらないわけですから、その意味ではプラスでありますけれども、今の段階で方向転換をするというのは私は不可欠であるというふうに思います。

 いずれにしましても、郵貯に集まった資金がほとんど官に偏在し、それがむだに使われている、かんぽの宿と言われるような変な、むだな金が、不要にもかかわらず活用されるというようなことが行われてはならないと私は思うわけです。

 こうしたことを前提にしまして、この中央集中かつ官に資金が集中するところから、これを地方でできるだけ活用する体制が必要である、こういうふうに考えるわけでございます。

 結論的に言いますと、したがいまして、地方で調達した資金をできるだけ地域で運用する方向を考えていくべきである、これは地域分割の考え方でありますが、分社化がいいのか地方の事業部体制がいいのか、ともかく、基本的には、そうした地域に基本的な視点が、政策的にも地域が判断できる体制が必要であるというふうに思っております。

 北海道経済は、現在のところ、御案内のとおり非常に停滞しておりますが、その要因の一つは、現在の地域金融機関が非常に停滞をしているということにも原因があるわけであります。したがいまして、今後の民営化後の郵貯会社等は、資金供給だけではなくて、こうした地域経済を活性化する知恵、言葉をかえて言えばシンクタンク機能、これは地元の信用金庫が、一昨日新聞でこうした考え方で地域の金融機能を果たしたいと言っておられるものを申し上げているわけですが、そうした資金のみならず知恵を供給可能にしていくということが非常に重要だと思います。

 つまり、北海道経済の活性化のために、この新しい地域に重点を持ったそうした会社が参加していくということですね。特に、自治体の再編というのが、先ほど申し上げたように多分必然でありますから、そうした再編に対して知恵を持って参加していく、あるいは、ともに地域社会の人々と連携をとりながら工夫を図っていくということが必要だと思います。

 いずれにせよ、民営化するということは、そうした活動を活発化させていくことが基本でありまして、従来の形態のままじり貧状態になることを避けていくためにも不可欠であると私は判断するわけでありまして、早急に民営化法案が成立されることを望みたいということを申し上げたいと思います。

 以上で私の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

二階座長 ありがとうございました。

 次に、村上一夫君にお願いいたします。

村上一夫君 紋別市から参りました村上一夫です。郵便局で外勤の仕事をしております。よろしくお願いしたいと思います。

 まず最初に、当郵便局の事業概要についてお話しした方がよいかと思いますので、述べさせていただきたいと思います。

 私が働いている渚滑郵便局は、道東のオホーツク海沿岸のほぼ中央に位置した紋別市というところにあります。紋別市の人口は約二万七千人であり、昨年同期と比べますと、約五百六十人、二%の減少となっております。基幹産業は漁業と酪農が主で、毎年一月末から二月にかけて流氷が漂着しまして、二カ月間ほど海は流氷で覆い尽くされ閉ざされてしまいます。流氷砕氷船ガリンコ号といえば御存じの方もいるかと思います。

 私の勤めている渚滑郵便局は、この紋別市の北西にありまして、受け持っている人口は二千四百八人、世帯数が千六十戸です。職員数ですが、内勤は局長を含めまして四名、外勤四名、非常勤、言うならばパートの方ですが、五名、そして委託者、請負ですね、一名の計十四名であります。

 当局は、集配特定局といいまして、郵便の集配や営業、貯金、保険の営業の三事業すべての仕事を全職員が担当しなければなりません。しかし、その分、お客様にとってみれば、職員全員がお客様の要請におこたえできるという利点があります。一人の職員がお客様のところへ訪問すれば、郵便、貯金、保険に関するすべてについてお客様のニーズにおこたえすることができるというわけです。

 特に、当局は、現在全国で利用されているふるさと小包、御存じかと思いますが、このふるさと小包の発祥の地であります。地場産業である海産物や農産物を年間約七千個もの小包として全国に発送しております。とりわけ、北海道でとれたものを新鮮なうちに食べられるということで、利用者の方から大変喜ばれており、地場産業の発展に少しでも貢献できればと日夜頑張っているところであります。

 次に、そんな日常の仕事の中で、今の郵政民営化法案に対しまして、お客様からあるいは町の人からいろいろな質問や不安の声が出ておりますので、現場でお客様とじかに接する立場の一人としまして意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、お客様からの声で多いのは、民営化になったらどうなるの、何が変わるのという疑問です。これには、ただ漠然とどういうふうに変わるのかという人と、もっと具体的な不安を持っている人に二分されると思います。

 例えば、後者の方でありますけれども、今加入している簡易保険はどうなるのか、郵便料金は今のままなのかなどなど、実際今の制度がどう変わるのか、また、今のサービスが今後も受けられるのかといった疑問を持っている方も少なくありません。さらに具体的な例としては、例えば、私が保険の勧誘で訪問した際に、郵便局も民営化したら民間の保険会社のように破綻することもあるのと聞かれたことがありまして、返答に困ってしまったことが何度かありました。裏を返せば、国営であるから安心だということではないでしょうか。

 次に多いのは、民営化されれば郵便局は減るの、あるいは、渚滑の郵便局はなくならないんでしょうなど、郵便局自体がどうなるのかという不安です。主婦の方の意見では、民営化になったら困るわねとか、郵便局がなくなったら不便だわという声を多く聞きます。

 この地域に住んでいるお客様にとって金融機関といえば、郵便局と信用金庫の二カ所だけです。隣の町に行けば郵便局だけしかありません。もしその二カ所のうち郵便局がなくなったら不便だという意見が出てくるのは当然であります。そして、郵便局がなくなってもよいという意見は、少なくとも私の知り得る限り聞いたことがありません。

 政府の法案として、過疎地の拠点維持に配慮するとなっているようでありますが、一体それは何年後までなんでしょう。確かに、民営化後数年間は法案どおり拠点維持に配慮されても、いずれは採算がとれない郵便局から廃局になっていくのではないでしょうか。

 特に、地域の生活と密接につながっている郵便局が、不採算地域だからといって撤退したり、唯一の金融の窓口が失われることになれば、そこの生活を営むことができなくなるおそれがあり、地域社会の崩壊にもつながりかねません。既に確立され機能している郵便局ネットワークを維持することが前提になければならないと考えますし、それを可能とするためには、三事業が一体で運営されることが不可欠であると考えます。

 次に、もう一つ、私としても最も切実に感じている意見が地域の中にあります。それは、なぜ民営化しなければいけないのとか、なぜ今のままではいけないの、あるいは、小泉さん、なぜそんなに民営化にこだわるの、また、今のままで何も不便はないですよ、民営化して本当に日本がよくなるの、もっとほかに手をつけなければならないことがあるんじゃないのなどの声が多いということです。

 かつて、小泉首相が郵政大臣のときに郵政民営化論を唱えました。そのころ、郵政事業が独立採算であるということが国民の皆さんに余り知られていなかったために、民営化は国の財政再建のため何となく仕方がないのかなくらいにとらえられていたと思いますが、ここ数年の民営化問題で、郵政事業は国の税金を全く使っていないし、公務員でありながら職員の給料も切手などの売り上げから支払われているということをテレビや新聞で知り、ではなぜ民営化なのという疑問が生じてきているというのが実態ではないでしょうか。

 政府広報によれば、次のとおりの記述があります。若干長いので途中省略させていただきますが、郵政民営化により、良質で多様なサービスの提供を可能とすることで国民の利便性を最大限に向上させると同時に、資金効率を向上させることを通じ経済活性化につなげることを目的としたとありますが、本当にそうなるのでしょうか。国民の皆さんは、それが理解できないから今のままでよいと感じているのではないでしょうか。

 さて、次に、我々職員が行っている業務や営業以外での地域貢献について触れたいと思います。

 一つには、地域行事への参加であります。参加の仕方は各局、地域によってさまざまな形があろうかと思います。お祭りや盆踊り大会に参加したり、町内の自治会やPTAの役員を引き受けたりといったことです。そこに住んでいるのだから当然と言われるかもしれませんが、職場の中で、地域活動には積極的に参加しましょうと声かけを行っているということであります。

 また、過疎の町の小学校の運動会では、児童や保護者が少ないために、郵便局の職員が出なければ競技にならないというようなところもあります。競技参加はもちろん、お世話係としても協力させていただいているというのが実態であります。郵便局の職員さんは若い人が多いので助かるよと感謝されますので、大変やりがいがあります。

 もう一つは、少子高齢化時代への郵便局の役割という点でお話しさせていただきたいと思います。

 冒頭で述べましたとおり、当局区内の世帯数は千六十戸ですが、そのうちいわゆる老人世帯は百二戸でありまして、全世帯数の約一〇%です。さらに、そのうちほとんどが独居老人世帯で、何と九十四戸に上ります。

 当局では、月一回、郵便局便りというものを発行しまして、これを全戸配布、つまりすべての家庭と事業所に配布しているわけです。もちろんこの局便りには、業務についてのお知らせや営業の宣伝といったものが書かれています。この局便りの全戸配布の日に、外務職員が独居老人宅だけにはただ置いてくるのではなくて手渡しをしながら訪問します。何か変わった様子がないか、病気をしていないか、困っていることはないかということを尋ねて歩くわけです。この活動はもう十年以上続いております。今のところ、訪問の中での事故などは幸い何もなく済んでおりますが、この活動は、ひまわりサービスの一環としまして今後も続けていきたいと思っております。

 時には、きょうは体調が悪いので、貯金通帳に振り込まれた年金を受け取りたくても郵便局に歩いていけないのでお願いしたいなどという例があります。可能な範囲でのサービスはしていかなければならないと思っております。民営化になれば、採算に合わないこのような活動は果たして続けていけるのでしょうか。

 次に、行っているサービスに道路情報提供というものがあります。外務員が集配業務の途上において道路の損傷等を発見したときに、その旨を市の方に情報提供を行い、迅速な道路補修など地域の道路事情の危機管理に役割を果たしております。

 そのほかに、子ども一一〇番というものがあります。これは、郵便局周辺が通学路となっていることから子ども一一〇番の指定事業所となり、何か危険な目に遭ったお子さんが駆け込む場所として提供しております。さらに、外務員が毎日地域を回っていることにより、防犯対策にも効果を上げております。

 最後に、ワンストップサービスについては皆さんも御存じのことと思いますが、これは、郵便貯金や簡易保険の相続の手続のときに必要となる戸籍謄本など、地元では取り寄せのできない書類を郵便局から直接請求することが可能なので、大変便利であり、次第にお客様に浸透しつつあると思います。

 ただいま御紹介した何点かのサービスのうち、ワンストップサービス以外については無料で行っているサービスであります。これらの施策は、地域の皆様との信頼関係により行っているものであります。

 以上、郵便局の仕事に携わっている者として、お客様からいただいている意見や不安の声、また私どもがいかに地域に愛される郵便局として長年取り組んできたのかをありのままにお伝えいたしました。

 郵政事業はまだまだ改善しなければならないところが多くあるとは思いますが、利用者の皆様の多くに国営のままであるべきという思いがあることを知っていただきたく意見を述べさせていただきました。

 ありがとうございました。

二階座長 ありがとうございました。

 次に、片石松蔵君にお願いいたします。

片石松蔵君 私は、障害者の立場でこの郵政民営化問題について述べてみたいと思います。

 私は、障害者の生活と権利を守る北海道連絡協議会の会長をしています。私どもの団体、構成人数大体六千名ほどで、障害者団体、それぞれ小さい団体が多いわけですけれども、その家族団体や支援団体などで構成されています。また、HSKと申しまして、北海道身体障害者団体定期刊行物協会という団体をつくって、小さな障害者団体が機関誌を発行するための、第三種認可を受けるための団体をつくって、そして機関誌を発行しています。公社化になったときも、私たちは第三種・四種郵便を残してほしいということで、北海道の郵政局にもそれから総務省にも陳情したわけですけれども、そのときに非常に多くの障害者の人たちが声を寄せてくださいました。

 重症性筋無力症の人はこのように述べています。機関誌だけが頼りだ、行動に著しい制限があって移動できない、その私たちにとって機関誌が会員と会員、所属団体とみずからを結ぶきずななんだと切々と述べておられました。このように、機関誌をきずなとする障害者の人たちはたくさんおります。そして、それを支えているのが、安価な値段で機関誌を送れるこの第三種郵便制度にあると私たちは考えています。

 したがって、民営化になったらこの制度はどうなるんだろうと非常に不安でなりません。確かに、大丈夫だよという話も時々聞くんですけれども、大丈夫だよといっても、民間会社は利益が出なければ過疎の郵便局だって減らすわけでしょうから、したがって、こういう安い郵便制度は廃止の憂き目に遭うんじゃないかというふうに思えてならないという声をぜひ伝えてほしいなどと私に夕べも電話がありました。

 それから、私は、見ても御存じのように全盲でございます。したがって、読書は点字の本を読む、あるいはテープを聞く、そのことによって知識を得ています。今ここに持ってきているのは、かの有名なハリーポッターです。盲学校から借りてきたんですけれども、この原本一冊が、点字の本にしますと、こういう本が七冊になります。実はきのう、私の行きつけの雑貨屋さん、そこは宅配便の取り次ぎもやっていますので、そこで、もしこういう本を三冊東京まで送るとしたら幾らになるか、仮にゆうパックで計算してもらいました。そうしましたら九百円です。

 点字図書館というのは津々浦々にあるのではなくて、全国に七十館しかありません。ですから、私たちは、どこかに読みたい本があれば、全国どこの図書館でも手紙を出して借りるわけです。そうしますと、これを借りるのに九百円かかる。そして送り返すのにまた九百円かかる。千八百円払って本を読む、これは大変なことになります。したがって、私は、第四種郵便制度も本当にどこまで保障されていくのだろうということでの不安があります。

 実は、今ITが随分発達しまして、我々の仲間にも、パソコンを駆使して読書をする人たち、それからインターネットを検索して必要な知識を得る人たちがたくさんいます。でも、それは、必要な知識を得るための資料として取り寄せる部分についてはいいのですが、読書をするということで利用しようとすると、余り今の状況ではいいとは言えません。音声で読み上げてくれるわけですけれども、どうしてもそこには機械音の不自然さがあって、長い間聞いていると疲れを生じます。ロボットのような声で読むわけですから、そういうことになるわけです。

 さて、点字図書の問題でいえば、もう一つ、郵便局ならではのサービスがあります。それは、もしも私たちが本を読み終えて返そうと思っても近くに局がない、あるいは局があってもなかなか自分では歩いていけない、そういうときにどうするかといったら、読み終えたので本を回収に来てほしいと郵便局に電話をかけます。そうしたら来てくださいます。借りるときも無料で送り返すときも無料の本をとりに来てくださいます。本当にありがたいなと思って私たちも利用している制度です。これがどうなるんだろうという不安を持っています。

 さて、次に、郵便局を金融機関として利用する場合どうなんだろうということでいいますと、私の知り合いに、七十歳になる女性の方がやはり全盲でおります。この人は今年金生活をしていますので、毎月、生活費をおろすときに郵便局に行かないで電話をかけます。生活費が必要になってきたのでおろしてくださいと。そうしますと局員が来てくださいます。そして、そこでのいろいろやりとりはあるんです、通帳を局に持っていって、そしてきちっと処理して返してよこすということがあるんですけれども、そういう意味で、郵便局に行かないで済むというサービスを、これももちろん無料で受けています。それで、その人がやっていることを知って、三年前から、札幌の東区の光星地域の団地に住む視覚障害者の人たち数名に広がった、利用者の枠が広がったという話をされていました。

 続いて、そのときにさらに郵便局がしてくださっているサービスの中に、二カ月に一回、希望すれば点字でお金の出入りの明細を記入したものを送ってくれるということがあります。これは、銀行でいえば今みずほ銀行さんがやってくださっているというふうに伺っていますけれども、郵便局であれば、全国これは希望すればあまねくやっていただけているわけであります。

 もう一つ、最後にサービスの部分でいえば、私たちにとって本当に歩く道しるべになる点字ブロック、調べてもらいました。北海道郵政公社の状況を調べてもらいましたら、普通局七十三局中七十三局に点字ブロックが敷設されています。それから、特定局、千百二十かな、うち八百九十二局に点字ブロックが敷設されています。当然、そういうところは手すりもついていますし、階段もスロープの部分もつくられていて、お年寄りや足の悪い人たちにとっても使いよくなっています。そして、局に入りますと、銀行よりも小さいこともあって、日ごろ来るお客さんの名前を覚えてくださっていますので、私であれば、ああ、片石さん、何の用ですかとか、声をかけていただけるわけです。

 私たちは、小さい局でもこうやって残っているからそういうサービスが受けられるので、もし小さい局が民営化の中で減っていったら、局がだんだん大きくなる中で、こんなサービスを受けられるのだろうかという不安を持っています。

 最後に言いますと、国鉄それから電電公社がJRになりNTTになったことでいえば、国鉄がJRになったことで本当にふえてきたのが無人駅だと言われています。それと、私たちにとってみれば、人が少なくなって、列車に乗るときにホームに人がいない、とても不安です。列車というのは大体ホームが島のようになっているわけですから、両わきが非常に怖いです。そういう意味では、民営化になればやはり利潤追求になっていくということの中でそういうことが起きる。

 それから、電電公社がNTTになって、そして競争原理が働くようになったときに何が起きてきたかといいますと、各電話会社のお客さんの争奪戦が始まっているわけです。実は、私は、その争奪戦の中で大変な被害を受ける寸前までいきました。

 どういうことかといいますと、現在私はNTTの加入者なんですが、職業別の電話帳に私の片石治療室という企業名が載っています。ところが、その民間の電話会社に移ったことによって、その企業名が十月に発行される電話帳のタウンページから削除されるということがわかったわけです。そうしますと、これは仕事ができなくなるということで、その電話会社を通じて、何とかNTTの電話帳に載ることができないのかというふうに聞いたんですが、だめだということで、また新加入した電話会社から抜けてNTTに戻って、ようやく十月の電話帳の発行に間に合う、名前が載るということになったわけです。

 ということは、営業マンはどういうふうに言われているかといいますと、そのことによるリスクは教えられずに、入ることで割り引きされることだけをお客さんに言うように、悪気はないのかもしれないけれども、そういう指導をされて利用者を訪問するわけです。そういう意味では、利益を追求するのが企業だし、社会的責任も負わなければならないというんだけれども、営業マンも、ノルマに追われれば、そういうことよりも、やはり一つでも成績を上げたい、そういうことに走らざるを得ないということで、私は営業マンをそのとき恨まないことにしたのであります。

 郵政が民営化して金融部門にも参入するということの中で、やはり今、安心、安全というふうに思って私たち小口のお金を預けている、そこがどうなんだろうかという不安が公社のときもあったけれども、より不安だという声が寄せられていたので、ここに紹介した次第です。

 以上です。

二階座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二階座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳です。よろしくお願いいたします。

 郵政民営化関連六法案の審議については、国会においても各党の皆さん方から深い見識のもとに大変大きな論争が巻き起こり、報道等を通じて、皆さん方には御心配とあるいは御意見がたくさんあるということも理解しております。そんな中で、きょう、陳述人の三名の方、また傍聴の皆さん、報道の皆さんが参加して、地方公聴会において法案の今後の審議により有効、有益な意見交換ができることを期待して、私はいろいろとお伺いをしたいと存じます。

 私は、民営化に賛成する一人として、二点、やはり公的部門から民間の部門に資金の流れが行かなければならないなという点と、全国二万四千七百と言われておりますネットワーク、また郵便局の職員の皆さん方の質の高さ、こういったインフラがあればこそ、三事業以外の事業にも進出をし、そして国民の利便性をより一層高める、こういったサービスの新たな展開にも期待しているものでございます。しかしながら、法案を審査し、こうして現場の声を伺うと、こういったところはどうかなということをたくさん感じますので、そういった点を中心にお伺いしたいと存じます。

 まず村上さんにお伺いいたしますが、今、村上さんは公務員ですよね。組合員であるかどうかとか、そういうことは聞きませんが、公務員でなくなることの不安ということを、まず村上さん自身のこれまでのお仕事に対する使命感の高さ、毎日のお仕事のつらさ、これを振り返りながら、完全に民営化される十年後には公務員ではなくなるという一つの現実を突きつけられたときの不安とか、あるいは意見がありましたら、どうぞおっしゃってください。

村上一夫君 今まで三十年近く仕事をやってまいりまして、最初に就職するときにも、公務員であるということが、やはりここに勤めたいなと思った理由の一つでもありますし、若いころからずっとお客様に対応しながら、それから近所の奥さん方、小さいときから知っているおばさん方からも、ああ、いいところに勤めたねと、うちの母親にもそういった言葉がありましたし、自分自身も、ああ、私の一生の仕事はこれなんだというふうに決めたという経緯があります。今現在もそう思って、自信を持って仕事をしております。そして、先ほども私が述べたとおり、地域の皆さんに少しでも愛されるセールスパーソンとして、そして郵便局として一生懸命努力しているつもりでございます。

 正直言って、本当に公務員でなくなり、一般の会社員といいますか、そういうことになれば、処遇だとか年金だとか、そういったいろいろな面で非常に不安に思うのは間違いのないところでございます。公務員から一般の会社員になったからといって、極端に給料が下がるとかそういったことはないのでしょうけれども、今のこの地域活動だとか地域貢献だとかいったものがもしかしたらできなくなるのではないかな、やはり利益追求といいますか、それが優先されて、外務員としての活動の幅が狭くなってしまうのではないかなというのを一番気にしております。

 以上です。

馳委員 引き続いて村上さんにお伺いいたしますが、今の法案で政府の方針どおりに進めば四分社化ですよね。しかしながら、渚滑郵便局内では、郵貯の業務、簡保の業務、郵便の集配事業、窓口のお客様への対応、一つの局内でやっておることに恐らく民営化後も大きな変化はないと思われますから、そういった意味で、今の感想で結構ですから、渚滑郵便局一つの局内でこういう四分社化をして、この業務を円滑に進めていくことに対する不安とか、どうしたらいいんだろうかなというふうな不安とかありましたら、おっしゃってください。

村上一夫君 ただいまの四分社化という関係につきましては、今は三事業一体でということになっております。しかし、やはり今の段階でも、例えば郵政公社の方針だとか業務の指導だとか、そういった通達といいますか、そういうものが各事業それぞれ別々のところから来るものですから、なかなか三事業の整合性といいますか、それがちょっとまだうまくいっていない面が多分にありまして、それを我々としましても何とか整合性を保ってほしいというふうに上申はしているんですけれども、なかなかうまくいっていないところがあります。

 それが、ましてや四分社化になりますと、今度はもっとさらに、一つ一つの事業に対して別々のところから指示だとかそういった指導が来ることになれば、仕事の内容が今よりもっと多様化するのではないか。私、余り勉強しておりませんので、具体的なこれからの郵便局としての事業がどういうふうになっていくかというのはちょっと見えておりませんけれども、それを一番の心配事としております。

馳委員 個人情報保護法という法律が施行されまして、これを郵便局の業務に当てはめて考えますと、今現在三事業一体ですから、お客様の貯金に関する情報、保険に関する情報、日々窓口業務における情報、また、集配、外勤に出ておられていただく情報といったものを恐らく局全体で共有し合いながら、お互いにそれを営業の努力目標にも当てはめながら、いわゆるノルマの達成とかそういったこともありまして、恐らく郵便局一体となって努力しよう、当然売り上げにも貢献しよう、こういったことから、労使関係も調整されるのではないかと思われますが、個人情報が四分社化されるとどうなるかという不安についてはお考えになったことはありますか。

村上一夫君 今、個人情報保護法が施行されまして、職場では本当に戸惑っているところであります。やはり、今までは自由に職場の中でパソコンで作業して、例えばフロッピーディスクをそのまま机の中にしまったり、そういったことも今後できなくなって、必ず施錠のできる場所にしまう、そして、枚数のチェックだとかそういった管理も、責任者との受け渡しも、一々数字をチェックして、枚数をチェックして行うというような大変な作業に今なっております。

 今確かに先生のおっしゃられたとおり、三事業、すべての個人情報、私の郵便局の場合は、一つの局ですから共有し合って有効に利用させていただいたわけですけれども、今後、本当に四分社化された場合にそれがどういう扱いになるのか。具体的には、郵政の方から管理者は指導を受けていると思いますが、これから徐々に管理者からまた我々の方に説明はあるかと思いますけれども、本当に仕事がしづらくなるのではないかなという不安は十分に持っております。

馳委員 引き続き、村上さんに。

 いわゆる抱き合わせ営業ですね。定期貯金、定額貯金、普通貯金、保険、あるいは、この季節ですとお中元も間近ですから、こういったことの営業努力目標、あるいは、先ほどここは発祥の地と言われましたけれども、ふるさと小包の個数の目標達成、いわゆる抱き合わせ営業といった形で村上さんは日々されていますか。

 つまり、四分社化されて郵便貯金銀行、保険会社となれば、これらはいわゆる他業禁止と基本的にありますから、あれもこれもと抱き合わせで営業してノルマ達成ということはしちゃいけなくなるのが基本なわけですね。

 今現在、村上さんは外勤でしたよね。声かけ運動とか地域貢献の業務に従事しながら、営業について抱き合わせてあれもこれもと提供することは実際にあるわけですか。ちょっとお伺いしたいと思います。

村上一夫君 先ほども申しましたとおり、一人の職員がお客様のところに訪問すれば、すべての業務、三事業についてお客様から要望があった、またはニーズにこたえることができると言ったとおり、例えば、我々多訪問と言っていますけれども、少しでも多くのお客様に会わなければならない、そうでないと商品も買っていただけない、または保険に加入していただけないというのがありまして、多訪問、多面接、それを基本にふだんセールスしております。

 ですから、例えば、貯金だけで行くとか、保険だけで行くとか、郵便のふるさと小包の販売だけで行くとなれば、お客様のところに行くねらいというのですか、それが絞られてしまって、訪問するきっかけが非常に少なくなってしまいます。ですから、このお客様のところは例えば郵便だ、ここは保険、ここは貯金だなと、最初の切り出しとして何を話題にお客様のところへ訪問するかということを決めてというか、お客様に合わせた目的で訪問するようにしております。

 ですから、例えば切り出しのきっかけとしてのふるさと小包を販売に行く、そしてその話の中で、実はね、こんな保険に入っているんだけれどもというような話がお客さんから出た場合、やはりそれにこたえなければならないという面がありますので、今抱き合わせと言われましたけれども、我々は、総合担務といいまして、すべての業務を、お客さんのところへ行って、お客さんのニーズに合わせて、いろいろ品をかえてお話しするということであります。

馳委員 営業努力目標の話について引き続き村上さんにお伺いしますが、私、もともと高校で教員をしておったんですが、教え子も村上さんと同じように外勤をしておりまして、日曜日に会いまして、どうだ、民営化、国会で議論しているけれどもと意見交換しましたら、先生、民営化とか公社化云々よりも、ノルマがきつくて大変なんだ、馳さん、頼むからお中元を幾つかとってと言うから、じゃ二十件ぐらいとってやるから持ってこいと。本人は真剣ですよ、生活がかかっているというふうな意識もありますからね。

 いわゆる営業努力目標というのは、どんな仕事についても、やはり目標を設定して、それに向けて努力をするし、効率化にも努力をするというのは当たり前だと思うのですが、こういう営業努力目標がいわゆる処遇にも反映される、あるいは職場の空気にも影響する、なかなか負担になる、こういったことの不安とか不満というのはありますか。

村上一夫君 営業努力目標のお話でありますけれども、私が郵便局に採用になったころは、今ほど営業に関して力を実は入れていなかった、特に郵便に関しては全くそういうものはありませんでした。

 しかし、例えば、郵便物が、小包がなかなか個数的に伸びていかない、そして宅配業があちこちに出てきまして、そちらの方へ流れていくという過去の事実がありました。それを何とか阻止しようというか取り戻そうということで、このままでは郵政から郵便というものがなくなってしまうのではないかということで、郵便の営業というのが初めてそこから生まれてきたわけです。貯金、保険についてはもともと営業でした。

 そして、ふるさと小包をうちの郵便局で、地元の人が、遠く離れた東京だとか大阪に行ってしまった人にふるさとの味をもう一回思い出してもらおうということで始まったのがこの営業であります。そうこうしているうちに、いつの間にかこのふるさと小包というのが全国に広まっていったわけです。そのころ、本当に地元では公務員が農家のところへ行ってイモだとかカボチャを箱詰めしているということが非常に珍しがられたといいますか、テレビ局からも取材に参りました。そういったことで、我々は、何かやれば、商品についてアイデアを出せばうまくいくこともあるんだなということで、営業の喜びといいますか、そういうものも感じております。

 確かに、今先生が言われたとおり、ノルマというものは大変厳しく、やっているうちにいつの間にか数字だけに走ってしまうこともあります。ただ、やはりその中で、お客さんから少しでも、この間送って、喜んでいたよ、喜ばれたわという言葉を聞けば、その厳しさが喜びに変わります。それから、例えば保険でいえば、満期になったときに喜ばれる、入院したときに入院給付金をもらって大変喜ばれる。貯金でいえば、今はちょっと利子が少ないですけれども、昔は大変利子が高かった時代がありましたので、こんなに利子をもらってよかったわ、もっと積んでおけばよかったというような声を聞いたときに、ああ、やはり自分はやっていてよかったな、ノルマはつらいけれども、やはりそういった喜びもあるということで、日々与えられたノルマを達成するように努力しております。

馳委員 先ほど片石さんから、障害者の立場から、郵便局や職員さん方に対する信頼と、今後とも引き続き応援してほしいという切実なる声をいただきました。これは当たり前だと思うのですね。とりわけ過疎地域における社会的弱者、独居老人、高齢者世帯、障害者の皆さん方に対して、もしかしたら、毎日来てくださる郵便局の職員さんがある意味では社会との唯一の接点であることもあり得るわけですね。

 私は、こういった全国二万四千七百のネットワークを活用し、ある意味では住民自治を補完する、行政を補完する役割としての郵便局の職員さん方の質の高さというものは評価されてしかるべきであると思っていますし、今後とも、できる限りそのサービスが反映されていかなければいけないと思っておりますが、これは実は、片石さんよりも村上さんにお伺いしたいのです。

 恐らく、村上さんも日々の業務の中でそういった方々と接することが多いと思います。当然それが営業に結びついてもいいんですよ。いわゆる採算には結びつかなくても、そういう信頼関係こそが最終的な郵便局に対する信頼に結びついていき、採算につながる、こういう考え方もできると私は思うのですよ。

 そういった観点から、村上さんなりに、ふだん障害者の方々や独居老人、高齢者世帯、こういった方々との地域のおつき合いの中で感じていることをおっしゃっていただきたいと存じます。

村上一夫君 ただいまの御質問でございますけれども、私の渚滑という地域は、障害者の方というのは余り数的にはおりません。障害者と触れ合うということは余り機会がないわけでありますけれども、先ほど申しましたとおり、独居老人、それから普通の老人家庭は百世帯に上ります。

 先ほど言いました局便り配布の中では、今のところ、何か病気をしていたとか、御老人が倒れていたとか、そういうことはありませんでしたけれども、ほかの、例えば積立貯金の集金に行った際に、御夫婦の方でしたけれども、おばあちゃんが倒れて、おじいちゃんがどうしたらいいか右往左往して何もできないで震えていたということがありまして、そのときに私が、おじいちゃんどうしたのということで、救急車を呼んであげたということがありました。残念ながらそのおばあちゃんは亡くなってしまいましたけれども、そういったことで、ちょうどお盆期間中でありまして、だれも訪問する人もいない、そして、息子さんたちもお盆でお墓参りで遠くに出かけてしまってだれもいなかったということで、多分あのときは本当にだれも訪問する人があのままではいなかったと思います。

 郵便局は当然、お盆だろうが何だろうが集金もしますし配達もします。そういったことで、私がたまたま集金に行ったときにそういうところにぶつかって、残念ながら亡くなりましたけれども、後でその息子さん方から大変感謝された。名前を私は言わなかったのですけれども、後からわざわざ、郵便局の人というのはだれが来てくれたのかという問い合わせがありまして、私のところまで来てお礼を言っていただいたという経緯があります。

 そういったことはしょっちゅう、年間一、二回はあります。そういったときに、やはり私は郵便局員としまして、何とかその方を落ちつかせてその対処をするということを心がけております。

 それから、先ほども何点か地域活動についてお話ししましたけれども、やはり、貯金や保険に入ってもらったときと同じように、何かをしてあげたときに喜んでいただける声、顔を見るのが一番私にとってやりがいがある。別に、だからといって、貯金をしてくれたとか保険に加入してくれたとかじゃなくて、単なる地域の住民の一人として何かをしてあげたときに喜んでいただけるということが最大の喜び、それが今国営であり郵便局という後ろ盾があってできるのではないか、これが民営化になったらなかなか難しいのではないかというふうに感じております。

馳委員 その最後の部分なんですね。私も、民営化に賛成の立場から、民営化を前提に今までずっと村上さんに現場の御苦労、お話を伺ってまいりました。村上さんやまた片石さん、いろいろどういう形になるのかなと思っておられる不安や不満がより解消されるような内容の法案にすべきであろうなというふうに私は思っております。

 原先生にちょっとお伺いしたいのですが、私、実は先週末に商工中金の支社長にお話を伺ったのです。彼は以前北海道にいたらしいんですよ。そして、拓銀の破綻の後の都市銀行の冷たさ、とりわけ、そのときの地銀や信組、信金の本当に献身的なお取引先とのおつき合いの状況、いろいろな話を伺いました。

 私は、最近の金融状況からかんがみて一つ大きな心配があるのは、先ほど原先生がおっしゃったように、公的資金を民間にも流していきましょう、そして地域にもシンクタンクとしての機能を持ちましょう、その拠点として何よりも重要な役割がありますという御趣旨に大きく賛同いたしておりますが、今なかなか貸出先も見つけられない状況ですよ、さて、これに郵貯の資金、簡保の資金が参入してくるとなるとまさしく民業圧迫ではないのか、あるいは、それだけの貸し出しをする、融資をする審査機能、能力、こういった職員を確保できるのか、こういった心配が実はあるわけなんですよ。

 国全体のことをいえば、確かにMアンドAによってよみがえった企業は大都市には多くございますし、これは地方においても、そういった形になって企業の活性化が図られればよいなという抽象的な話はできますが、実際にこうやって北海道に参りましても、貸出先が本当にあるのかな、対応できるのかな、そういうことのやはり不安を感じます。この点に関して、原先生の御見解をお伺いしたいと存じます。

原勲君 先生の御懸念は、全く私もそのとおりだと思います。つまり、現時点におきまして、有効な貸出先が北海道のような停滞している地方経済を持っているところにあるのかとおっしゃいますれば、それはなかなか現実的には難しいというのはおっしゃるとおりだと思うのです。

 先ほど私も申し上げました。つまりこれは、釈迦に説法で申しわけないのですけれども、鶏が先かあるいは卵が先かではございませんが、事業者の側から見ますと、つまり金融機関あるいは郵便事業、郵貯事業をやっている立場から見ますと、つまり、先ほど申し上げたように、地域社会を顧客と考える、顧客がこういう状況だから、したがって顧客に対応できないというような、ごく簡単に言えばそういう理屈になるわけですね。

 しかし、事業というのは、御存じのとおり、いかにして顧客を創造していくかということが基本的な考え方だという面もあるわけです。つまり、状況がこうだからやむを得ないというような判断をしましたら、まず北海道の金融機関はほとんど成り立たない。何も郵貯だけじゃなくて、他の金融機関もほとんど成り立たないということになりますし、それからさらに言えば、金融機関だけでなくて、いろいろな大型店というのが北海道に今参入しておりますが、これらもほとんど成り立たない、こういうことになるわけです。

 しかし、実際のところを申しますと、いわゆる一般的な意味での過疎地と言われるようなところにおきましても大型店は進出していますし、このことのよしあしはまた別にしまして、地元の大型店とも言えないような中型店なども進出しながら地域社会に貢献していくというようなこともあるわけなんです。

 つまり、私が申し上げたいことは、まず、非常に今の問題は大問題なんですけれども、やはり現在の金融制度そのものに問題があるのじゃないかと思っております。つまり、地域金融というのはどういう役割を果たすべきかということについて、例えばリージョナルバンキングシステム等の地域金融政策というのはありますけれども、もとをただせば、日本の金融政策、つまり大手の金融機関に対する政策が、そのまま地方の中小の金融政策にいわばほとんど右に倣えの形で実は制度的に設計されていまして、地域の創意性というのか創造性とかいうものは生かせない、そういう問題が一つあります。

 それからもう一つは、悪いんですけれども、基本的にはやはりビジネスをやるのは人間の知恵なものですから、つまり、これまでの日本の金融機関というのは本当の意味で知恵があったのか。拓銀の破綻の問題をおっしゃいましたけれども、これは、北海道という地域性に問題がある、マーケットに問題があるだけじゃなくて、やはり拓銀の経営に問題があった、マネジメントに問題があったわけでありまして、あるいは、拓銀の、大変恐縮なんですけれども、結局、経営をやっていく、あるいは活動をやっていく皆さん方がどんな考え方で顧客を創造し、地域を発展させていこうとしていたかというところに問題が私は根本的にはあると思うのです。

 つまり、結論的に言うならば、先生のおっしゃった、地域が疲弊しているということですね。したがって、そういうところに民間の事業というものは参入できないということだけではなくて、疲弊している地域を、先ほど申し上げたように、どのようにして発展させるか。

 先ほど、お話の中で、自治体と協力して、あるいは自治体がやっていることを補完的に事業として行う、サービスをやるということをちょっとおっしゃいましたけれども、金融の機能においても、地域の小さな企業を育てたり、あるいはベンチャービジネスを新たにつくり上げたり、そういうことをやっていく、そういう能力が要求される。ただし、では、そういう能力は今ありますかと先ほどおっしゃいました、これまで培われていますかとおっしゃった。私は、率直に言ってこれはちょっとわかりません。しかし、そういう能力を持たなければ、やはり民間の事業として、あるいは社会的使命を持った事業体としての、例えば郵貯事業一つとりましても、それは成立しないのだ、そういう覚悟で知恵を生かすような、あるいは人材を育成するような創意工夫をするのがビジネスである、私はこういうふうに考えるわけであります。

馳委員 ありがとうございました。

二階座長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 きょうは、三人の意見陳述人の方、本当にお忙しい中ありがとうございます。貴重な御提言、御意見を賜りました。心から感謝を申し上げたいと思います。もう一人の意見陳述人の方がおいでにならないことは大変残念なのでありますけれども、三人の方と有意義な議論をさせていただきたい、このように思っております。

 御案内のとおり、委員長からも話がありましたけれども、この郵政民営化法案、実は四月の二十七日に国会に提出されまして、野党の皆さんからは随分遅いというふうにおしかりを受けたわけでありますけれども、今日まで既に七十七時間ぐらい議論を重ねてまいりまして、与野党を超えて今さまざまな角度からの議論が行われている。そうした中で、きょうこうして地方公聴会が行われるわけであります。

 先ほどからお三方の御意見を拝聴しながら、大変に我々も考えるところがあるわけであります。順次、重ねてお伺いをしたいと思います。

 私ども与党が進めておりますこの民営化法案、小泉総理の構造改革の一環として今日まで取り組んでおられる。国会の中は随分いろいろな声があるのであります。与党、野党を超えてあるわけでありますけれども、私ども公明党は、三度の国政選挙あるいは二度の総裁選挙を、まさにこの郵政民営化ということを旗印にされて一直線で来られている総理でありますから、その方向性については、原則反対はしない、賛成ですよ、こう申し上げ、なおかつ、さまざまな懸念があります、実際の民営化に当たって郵便局のサービスが低下するようなことがないようにしっかりと議論していきたい、こんな姿勢で今日まで七十数時間議論をさせていただきました。

 最初に、原陳述人に伺いたいのであります。

 実は、公社になりまして、生田総裁になって、懸案の郵便事業も黒字になりましたし、大変な取り組みをされておられる。中には、公社のままでいいではないか、あるいは、公社というのは四年ごとに経営計画を立てているわけだから、そこできちっと評価をして、それからでもいいではないか、こういう声も国会で随分出ているところでありますが、まさに、生田総裁になられてからの大変な取り組み、そうした取り組みをどのように評価されておられるのか。先ほど、さらに改善をする、改革をしなければならぬ点もある、こうおっしゃいましたけれども、それがまさに民営化への道なんだという御主張だろうと思うのでありますが、そのあたり、改めてお伺いしたい。

 特に、先ほどの北海道の着荷の一日おくれの話は、私は北海道でないものですから、そこは本当に何とかならないのかなと思いながら、さらに突っ込んだ御意見があれば伺わせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

原勲君 ただいま先生からお話の、公社が大変努力をされて経営的にも改善されているというお話は、私もそのように受けとめております。

 ただ、それでは民営化になぜ移行する必然性があるのかというお話だと思いますけれども、結局、公社である現状では、政府の関与というのは避けられない。事業報告も全部義務づけられていますし、当然のことながら、株は全部政府所有ということになるわけですね。

 民営化の一番大きな問題点の一つは、先ほども申し上げましたように、矛盾している現在の郵貯資金の運用の仕方を含めまして、極めて不透明な政府あるいは行政のいわば介入及びいろいろな関与があるということにあると思うのです。これが非効率あるいは不正を発生させる要因になっているわけであります。

 したがいまして、現在の案によりますと、民営化によりまして、郵貯やあるいは保険につきましては全額いずれは民間に開放するということになっておりますし、ネットワークの一部や郵便事業につきましては、一時的に政府が持ち株を所有するということになっていますが、民営化を徹底させるということになりますと、いずれこれも民間に開放していくことになるのかもしれないというふうに理解しております。

 そうすることによって、いわば民間の創意工夫というのがいたずらに、いたずらにと言うと大変語弊がありますが、政治家を初めとしていろいろな方々の介入がなされることによる、先ほど申し上げたように、国鉄等を初めとする過去の苦い体験というものをやはり脱却すべきだというのが私の基本的な考え方でありまして、したがって、これは早期にやはり民営化に取り組んでいく。公社においてもある程度の機能は果たし得たわけですが、ただいま申し上げたように、民営化を積極的に進めていくべき最大の理由がそこにあるというふうに理解しているところであります。

 先ほど私が申し上げたこと、北海道では一日おくれか何日おくれかの配送が現実にあるということを、ちょうどいい機会なものですから皆さんに知っていただきたい、多分多くの方々は御存じない。日本では北海道と沖縄だけなんですよ。

 これは、輸送距離が長いということもありますが、これも先ほど言ったようにコストプラス法なんですよ。費用がかかるから、結局その分はディレーとして輸送するということになっているのですが、これは全く理屈から見ておかしいわけです。発送する方は、つまり荷物を集める方は即時に行われており、逆に言うと、空荷でそのまま帰ってしまうというようなこともあるわけです。どういう保管体制で、なぜそういうシステムになっているのかということは、生産者や発送者自身、荷主はわからない。実際わからないのです。なぜこういうことにならないのかと私も実際連絡をしてみたわけですが、いや、そんなことになっているんですかという現実があるわけです。これは実は民間事業者であってもそうだということなんです。

 ですから、まだ非常に不十分なところがあるのでありまして、そういう点について、私は、ふるさと小包も、荷主さんあるいは輸送、配送を願う方々との関係において競争しながら改善して、顧客にこたえていくということをぜひ民営化の過程で考えてもらいたいということを申し上げたつもりであります。

桝屋委員 ありがとうございます。

 今、原陳述人がおっしゃいました、公社化のみではなくてさらに次の段階に一日も早く、こういう御意見でございますが、そうはいいましても、三百四十兆を超える大きな塊であります。あるいは二万四千七百という郵便局、このサービスをこれから民営化するということになるわけで、御案内のとおり、二〇〇七年から移行期を経てということになっております。私は、この移行期というのは、公社化以後のことよりもさらに大変難しい局面だろうと思っております。

 やはり、国会でも随分議論が出ておりますが、公社の枠を外れて新規事業を取り込もうとすれば、形が大きいものですから必ず民業圧迫という声も出てくる。民業圧迫と、そして、民営化し新しい事業に取り組んでいくというこのバランスをいかにとっていくかということは実は大変に難しい課題、これをうまくやらないと、二〇一七年までの移行期で大きな失敗をするだろう、私はこう思っております。

 そうした中で、公明で透明なルール化ということを私たちは強く主張しているわけでありますが、原さんの御意見がありましたら伺わせていただきたいと思います。

原勲君 先生の御懸念、全く私もそのように考えております。大銀行が一つできるということになりますね。北海道においてもそうした大銀行が登場する。

 先ほど申し上げたように、どういう形になるのかというのは、北海道の場合、支社でいくのか、あるいは、別会社で、JRのように、JR北海道がありますから、今のところこれで成功していますから。しかし、北海道の財政力とか地域経済の情勢がありましたから、あのときも基金を積んで、北海道は基金のかさ高というのがかなり多かったというのは御存じのとおりなんですけれども。そういうことでもやるか、私のような考え方を持てばそういうことになるんですが、その辺はちょっと今のところ、よく法案の中では理解できない部分があるんです。

 ともかく、今民業圧迫とおっしゃいましたけれども、要するに民間企業が一つできるということですね。では、その民間企業は、二者択一というか、択一というよりも、ちょっと二つのことが違った意味でとらえられていまして、つまり、先ほどおっしゃったように、民間企業になって成り立つのかということと、民間企業になって、強力で巨大な民間企業が地域経済や地域の他の金融機関を圧迫するというのは全く違ったことを一緒に議論しているということになるわけですよ。これは想定の問題なわけです。

 したがって、そういう全く違った状態をどのように理解するかということが問題なんですが、私は、いずれにせよ、民間である郵政の現在の各事業が、すべて郵政事業で賄える、分社化されたすべての事業が、地域金融一つとりますと、郵貯だけで、保険だけで北海道の事業をすべて賄えるということにはとてもならないと思うのですよ。これはもうネットワーク事業なんてまさにそうなんですよね。

 先ほどからお伺いしていて、大変御努力されているのはわかりますが、これは郵貯と関係ありませんけれども、地域の過疎問題をすべて郵便局のネットワークをやっていらっしゃる事業の方々に任せてしまうというようなことはとても無理だと思うのですね。つまり、何を言いたいかというと、私は、さまざまな形で連携が要ると先ほど申し上げたわけですね。

 ですから、中小の金融機関、それは信金でありあるいはさまざまな地域金融機関、中小の金融機関はたくさんあるわけです。こういうところといかにして連携をしながらというのは絶対出てくる問題だと思うのですよ。ここの分野は信金が担うとか、あるいは信託、クレジットバンクが担うとか信用組合が担うとかいうようなことをやらざるを得ないんじゃないかと思うのですよ。つまり、さまざまな形でそういうことが、現実に活動が展開されていく形の中で生まれてくるものだと思うのですよ。

 つまり、少なくとも、事業の展開の過程でうまくいかないところは必ずどこかで補完していかなければなりませんし、あるいは競争によって自己の担う部分をふやしていかなければならないというような問題は出てくるのであって、結論から言うと、今の想定の問題というのは、想定は幾らでもできるけれども、余りにも幅が多過ぎて、実は右へ行くんだとか左へ行くんだ、必ず圧迫するんだとか、必ずこれは衰退するんだ、先ほど言ったように、そういうのは私は極論だと思うのです。そうじゃなくて、現実的に、民営化の中で地域経済全体が発展するように、相互に工夫しながら、連携を踏まえながら、そして競争していくという非常に現実的なやり方を、先生がおっしゃった意味でいえば、いわば移行期間の過程の中でさまざまな試みを行うというようなことが起こってくる。

 それは、くどい話で恐縮ですけれども、郵政側の活動だけではだめなんですよね。自治体もそうですが、北海道なら北海道の他の金融機関も郵政のそういう活動に対応して、どのような展開をするかということをお互いに、さまざまな形で協力をしたり戦略的な展開の方向を模索していくというようなことを現実にやっていかなければならない問題じゃないかというふうに私は思っております。

 以上です。

桝屋委員 地域経済全体の中でという原さんの御意見、拝聴させていただきました。

 ただ、一気に地域分社というのは、今三事業一体でやっているものを四分社化するだけでも、このコスト増をどうするかとか、いや、やはりそれぞれの専門分野に特化して市場の中で生きていけるようにしなければならぬ、そうした議論をしているわけでありまして、ただ、そうした展開の中で、原さんの言われたこと、改めて私どもの視点として考えてみたい、このように思っております。

 一点だけ気になりますのは、先ほどおっしゃった言葉の中で、郵政サービスが現在の居住形態に対応する形のままでいいのだろうかということ。これは郵便局の設置にもかかわる、我々も非常に関心のあることなのでありますが、どうなんでしょうか、郵便局の配置のあり方についても、今の郵便局のネットワークについても新しい状況の中で見直していく必要がある、こういうふうにお考えになっているのでしょうか。簡単で結構でございます。

原勲君 そう簡単ではない問題だと思うのですね。

 それは、つまり、現状の居住形態の中で、例えばネットワーク会社をどう配置するかというのは、今ある案で結構かというふうに思うのですね、現状を維持しなければなりませんから。

 ただ、私は居住形態は必ず変わると思っているわけです。例えば、二〇三〇年の北海道経済をちょっと今考えているんですけれども、恐らく、今五百七十万ぐらいですけれども、百万人ぐらい北海道は減るんですよ。札幌も減るんですけれども、全道的には現在七割が過疎地でありますが、これが相当過疎化が進んでいくということになります。

 だから郵政とか、それから、今人口の問題だけで見られませんが、日本全体の財政とか行政全体のあり方を見なければなりません。私は今ちょっと道州制の問題なんかに関与しているのですが、そういうものを設計しなければ、設計というか、新しい変化に対応していかなければならないと思うのですよ。

 少なくとも行財政規模はどのぐらいで、人々がどういう形で住まわなければならないか。そのときに若干、人々が今の生活をそのまま守るんじゃなくて、ある程度この居住形態を変えていかざるを得ない。現在の居住形態では、現在の受益も確保できないという問題が発生するんじゃないかというふうに私は思っているわけです。

 そういう変化していく状態に合わせていかないと、郵便ネットワークの拠点を、現在のいわばすべからくあまねく平等なサービスを維持するために、現状に合わせるネットワークをまず形成する、これはこれでよろしいんですよ、教科書的にはよろしいんですけれども、変化していくときにも、全部今は拘束して、最後に残るのは、いわば、先ほどから話が出ているように、顧客のいないところにネットワークの拠点だけが残るというようなケースだってあり得る、私はそういう懸念も持っているわけです。

 やはり、全体として地域経済を発展させるといっても、現在あることだけじゃなくて、ある一定の規模のところで地域経済全体をいかにして発展させるかという考え方があって、その拠点の中にネットワークの存在というのが生かされていくように、そういう対応の仕方をするというふうに私は考えております。不十分ですけれども。

桝屋委員 ありがとうございました。

 では、時間も限られております。村上陳述人にお伺いしたいと思います。

 きょうはありがとうございました。たくさん伺いたい点がありますが、本当に現場でお取り組みをいただいていることに敬意を表したいと思います。現状をしっかり聞かせていただきました。その上で、時間もありませんから一点、郵便局の設置基準についてお伺いをしたいと思います。

 今、原さんとの議論でも出ましたけれども、郵便局の設置については、今度の民営化法案の中で、全国においてあまねく利用されるように、こういう法律の構成は変えない、そして、今、与党、野党の中でも議論をしておりますが、過疎地においては、やはり現在の郵便局ネットワークは維持しよう、現在の水準を維持しようということになっておりまして、与党の合意の中では、加えて、都市部だって過疎地と同じように、そのニーズ、生活環境の利便性という観点から守らなければならぬ地域もあるではないかというようなことで、そこはそういう合意をして、利便性に配慮しようということになっているわけであります。

 問題は、政省令がどういうふうに規定をされるのか。法律は今法案が出ておりますけれども。そう考えますときに、今二万四千七百ある郵便局が、過疎地にあります七千はまず維持するんだろう、こういう概念が出てくる。それ以外については、総理も、いや、それは必ずしも維持するとは限らない、減ることもあると。我々もそういうふうに思ってはいるわけですけれども、であればこそ、やはりそのときの地域環境といいましょうか、利用者の利便ということを考えなければならない。そうしますと、私どもは、過疎地だけでいいんだろうか、そこの書きぶりは相当考えなければならないのではないか、こう思っているのであります。

 今の二万四千七百の郵便局が、過疎地の七千という概念とそれ以外に分かれるということについて、村上さん、現場の職員として何かお考えがありましたら聞かせていただきたいと思います。

村上一夫君 今の先生の御質問でありますけれども、大変難しい問題だと思います。私の方から申し述べていいのかどうかさえもちょっと、無責任な回答になってはまずいんじゃないかなというふうに思います。

 ただ、個人的な考えといたしましては、とりあえず、地域の今言った七千の局の確保ということをお聞きしましたので若干安心いたしましたけれども、それにしても、先ほどの陳述の中で言いましたとおり、そういった法案で決まって、最初は、何年かはそれでやっていっていただけるんだと信じておりますけれども、その後、それこそ何十年もたったとかそういったころに、またやはり採算がとれないからなくしていくということが、民営化になったときには今よりは確実にあらわれてくるのではないかなというふうに思っております。

 それから、それ以外の局ですね。それ以外というのは、要するに都会の、町の中の郵便局ということでしょうか。

 今、都会というか大都市の方では、例えばデパートの中にも郵便局があったり、駅の中にも郵便局があったり、多種多様に郵便局の形態というものがあると思います。やはりそこは、利用者にとって、利用頻度といいますか、頻度と言ったらちょっと言葉は悪いですけれども、利用者にとって利用しやすい形での配置基準というのですか、そういったものをきちっと検討して見直していく必要があるんだろうと私も思います。例えば、企業が集まっている町と住宅街だけの町とでは、やはりお客様の層も違うだろうし、そういったことも勘案して設置基準を見直していくべきだと私も思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。

 なかなかお答えにくいことを伺ったかと思いますが、全国にあまねくという表現のみで、あとは政省令に規定をするということで本当にいいのかどうか、実は私どもも大変悩みながら今国会の審議をしているということを申し上げたかったわけであります。

 もう一点、村上陳述人にお伺いしたいのですが、特別送達あるいは内容証明等について郵便認証司という新たな資格を用意しよう、まさに郵便に課せられた公的な証明の力といいましょうか、そうしたものを確保するために新しい資格をというふうに今法律構成はなっておりますけれども、この新しい資格制度についてはどのようにお感じになっておられるのか。簡単で結構でございます、御意見を聞かせていただきたいと思います。

村上一夫君 ただいまの御質問ですけれども、私、ちょっと勉強不足で、その資格制度、投資信託でしたか、そういった資格が新たにできたことは承知しておりますけれども……。

桝屋委員 内容証明あるいは特別送達をまさに郵便局にお願いしているわけでありまして、その認証事務のために新たな資格を、こういうことになっているのであります。

 これを現場の皆さん方はどうお感じになっているのかなということをちょっと、いや、なくてもいいんじゃないかという声も結構議論でありまして、郵便認証司という表現で法案には入っているのでありますが、その件について特段御意見があれば伺いたいと思います。

村上一夫君 現在、内容証明とか特別送達については別に支障なく、窓口でやはりそれに精通した職員が対応しまして、一局に一人は必ずいるようになっておりますので、特段の資格というものは私としては必要ないのではないかなというふうに思います。

桝屋委員 ありがとうございました。

 では、最後に片石陳述人にお伺いしたいと思います。

 三種、四種、点字郵便物あるいは心身障害者の団体の定期刊行物につきましては、本当に懸念を表明されまして、片石陳述人、我々も国会で随分やりました。総理にも伺いまして、総理はきちっとやる、このように御答弁されました。小泉総理の言うことですから、かえって心配になるかもしれませんが、明確な御答弁がありました。

 私は、片石さんが、恐らくこの国会で、一つは郵政の民営化法案、もう一つは、まだ採決されておりませんが、障害者自立支援法という法律、これでガイドヘルパーが一体どうなるんだろうか、皆さん方が長い間かかって築き上げられた社会参加の大事なツールが経済主義の中で後退するのではないか、こういう御懸念をお持ちではないか、こう思っておりました。

 私どもも、国会の審議の中で、三種、四種、とりわけ社会貢献基金の具体的な積み上げの数字であるとか、本当に大丈夫なのかということを何度も議論させていただいているわけであります。総理は、しっかりやっていくんだ、こうおっしゃっていましたが、片石陳述人、さらに御懸念でございますでしょうか。我々、頑張りたいと思っておりますが、最後に御意見を伺いたいと思います。

片石松蔵君 公社化になるときに、郵便法の中から盲人用の郵便物が削除されたことを私たちは知っています。それで、そのとき、これが物すごく不安の材料だったんですね。私は、本当にこれをきちっと保障してくださるというのであれば、この民営化法案の中に、やはり四種郵便それから三種郵便も明記願えないかなというふうに思います。

 というのは、民営化されればされるほど、ある意味では福祉を追求する考え方と利益を追求する考え方と反するわけですから、そして、どちらかといえば、それは民営化なのだということで隅っこの方に押しやられる考え方になっていくので、そこをやはり担保するためには、法律にやはり明記することではないのかなというふうに思っています。

桝屋委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

二階座長 次に、大出彰君。

大出委員 こんにちは。民主党の大出彰でございます。きょうは、お三人の方、大変ありがとうございます。

 私は、民営化には反対でございまして、まだ国会の方で、特別委員会で一回しか質問しておりませんで、中央省庁等改革基本法三十三条一項六号、初めの部分を質問しただけで、そろそろ採決されそうになっているということで大変憤っておるわけでございます。

 私、この民営化というのは、ばかなことをやっているなと実は思っております。こんなことをやっている暇があったら、世界の物流革命に対応して高速道路を即無料にすればいいんだというふうにまず思っていたりするんですね。

 そんな観点の中で、民営化を凍結して、そして高速道路を無料化して、銀行から企業がちゃんとお金を借りられるようにして、私たちの懸念である、将来不安のあるところの社会保障をしっかり整備して消費に回るようにというふうなことを考えているんです。どうもこれを考えたときに、郵政民営化というのはどちらかというとカモフラージュでして、金融庁さんと財務省さんがはかっているなという感じがするんですね。

 というのは、四分社化をしなくてもいいのにすることによって、消費税が取れますね。七百三十五億円と言っているんですね、〇七年度に。これは、要するに国民の皆さんから取るわけですから、手数料に上乗せされるわけですからね。ああ、そうだな、消費税が取られるなというのがまず最初にわかるわけですね。

 それと同時に、持ち株会社の持ち株を売りますね。そうすると、それで財務省にお金が入るから、財政再建だということで財務省の方に行っちゃうわけですね。この持ち株会社というのは、本来は総務省が管轄していたわけですが、ずっと長い間、郵政というもので国民の財産になっているわけですよね。だから、考えてみると、その売れたお金が財政再建の方に行っちゃうと、国民の皆さんが知らないうちに税金を払ったようなことになるのかなと思うわけですね。

 話の途中なんですが、そこで、一つは村上さんに確認をしたいんですが、例えば貯金で、総合口座、ぱ・る・るか何か持っていまして、ATMで日曜、祭日に引き落とすときは無料ですよね。それからもう一つ確認したいのは、ATMで振り込もうとしたときは百三十円ですよね。窓口だったら百四十円ですね。今、うなずいていますのでそうだと思うのですが、それが例えば東京三菱なんかだと、四百二十円ぐらい振り込み料を取られたりするんですね。

 これが、気がついてみると、要するに郵貯法という法律は廃止しちゃうわけですから、福祉の拡充みたいなことはないわけなんですよ。そうしますと、私は、多分ATMの無料だったのも当然料金を取ってくるだろうと思いますし、さらに、今みたいな振り込み手数料も、百三十円というわけにいかなくて四百二十円を取るだろうと思います。もっと考えてみると、金融排除みたいなことが言われていますが、口座を維持する、要するに、ある程度貯金をしていなければ、例えば二十万円以上貯金していない方からは口座を維持するために二千円取りますよみたいなことが起こってくる可能性を秘めているわけですね。

 そうすると、考えてみると、民営化だといいながら、結局、今まで無料だったり、あるいは負担しなくてよかったものを、税金以外の形で負担をしなければならないなということが起こってくるんだと思うのですね、トータルで考えてみると。

 それで、結局金融庁さんはどうなったのかなと思うと、郵貯、簡保は金融庁さんの所管になるわけですね。金融庁、財務省の方は将来そこに天下るんではないかなと考えたりするわけですよ。さらに、当然金融庁さんが郵貯、簡保の監督をいたしますから、そうすると金融庁さんたちの人数が多分ふえていくんだろう、こんな感じもするんですね。

 それで、当然、郵貯、簡保、特に郵貯の方は株式会社になりましたら預金保険機構にお金を出さなければいけませんよね。そうすると、今、銀行その他の金融機関の不良債権を処理していますが、当然そっちにも使うのだろうなと思います。さらに、国会で質問しても、官の側は不良債権はないとおっしゃるんです。国だって不良債権があるだろうと言うと、ありませんとおっしゃるんです。私は、これは官の側の不良債権もこの機に隠してしまおうとしているのかな、こんなことを考えるわけなんです。

 それは、第一回目は要するに財投改革だったはずなんですね。ところが、現実には、これで運用は自由ですよといいながら、二〇〇一年に一回幕引きをしているわけです。今回が第二回目の幕引きになるのかなというような思いで見ているという、ちょっとうがっているというふうに思われるかもしれませんが、そんな思いなんですが、皆さん、今の私の考えについてどのような御意見をお持ちかをお聞きしたいと思います。

 原さんからお願いいたします。

原勲君 私の方に最初に回ってくると思わなかったんですけれども。

 今おっしゃった先生の御意見で、一つは、民営化されれば、重要な問題として、当然のことながら税金の支払いを行う。これは、消費税であろうが事業所得税であろうが、そういう民間企業としてはあるべき形に変わる。これがなければ、なぜ民間企業なのかということが問われるわけです。だから、そこら辺がイコールフッティングと言われているもので、私に言わせれば当然だと考えるわけです。

 それから、おっしゃった問題ですけれども、先ほどから出ておりますように、御存じのとおり、国民は、公社ですから、国家ではないといいましても、国が経営しているから安全だということで多額の貯金を行っている。簡保を含めて三百五十兆ですね。この三百五十兆、本当に大丈夫かという問題があるわけです。安心、安全だと思って貯金していたわけですね。ところが、これが先ほどの財投の話だけじゃなくて、大幅に国債に回っているわけですよ。財政赤字のいわば補てんに使われているという問題があるわけです。

 私は、先ほどおっしゃられたような意味では、こういう財政問題というのは政府の責任だというような観点ではなくて、現在の財政赤字を拡大していって、しかも安心だと思っている国民自身の預金が、もしかしたらそれが支払い不能になる、そういう懸念だって実際はあるわけですよ。国債の暴落というような問題、これは予測したくないことでありますけれども、これだって懸念の問題になってくるわけです。

 ですから、いずれ財政再建も図らなければならないわけであって、それにある程度今加担をしている郵貯やあるいは簡保の資金のあり方というものを改革していくというのは私は当然だと思うのです。財投問題だけではなくて、今のような国債のあり方、政府の政策のあり方を改革していくということが実は基本的にあるのであって、先生おっしゃるような意味で、民営化をしない立場で、税負担が今までは軽くなっているじゃないか、負担がふえるんじゃないかというような問題以上の危機的な状態というのが実は裏に隠されているんじゃないか、その問題を解決するということが民営化のもう一つの柱になるんじゃないか、私はそういうふうに考えるわけでございます。

大出委員 では、村上さん、お願いします。

村上一夫君 ただいまの先生がおっしゃったことが、まさに国民というか利用者の皆さんの考えている不安な面ということだと思います。

 例えば、貯金、ATMを使用したときに手数料が取られていない、それが取られるようになるんではないか。それから、今度は法人税を納めなければならないということになりますと、これは結局、利用している料金に上乗せしていって利益を上げなければならないというようなことにつながっていくのではないだろうか。

 それから、郵貯、簡保の制度の改革といいますか、よい方に改革するのは当然やっていただかなければならないと思いますが、それは民営化しないとできないんですかというふうにしょっちゅう言われます。公社のままでいろいろな制度を改革していけばいいんじゃないですかというふうに感じているのがやはり実態ではないかと思います。私自身もそういうふうに感じております。

大出委員 片石陳述人、どのような御意見でしょうか。

片石松蔵君 私、この郵政民営化問題を考えているときに、先ほども申し上げましたように、私どもにとって物すごく行き届いたサービスがされています。

 先ほど、千百二十かなと特定局の数を言ったんですけれども、今調べましたら千百四十の局がありましたので訂正いたします、そこに点字ブロックがついているということも含めまして。それと、郵便局のあるところの交差点というのは、都市の場合、音響式信号機がついています。ここもバリアフリー化を目指すことに本当に努力されています。

 私はそのことを考えたときに、利用者にとっては、民営化すれば競争原理が働いてもっと全体のサービスがよくなるよと言われるんだけれども、民営化したら郵便局のサービスがこれよりも後退していくということもあわせて懸念されている中で、一体民営化というのは何なんだろうとますますわからなくなっていく、そういうふうに感じるんです。そんな感想を持っています。

大出委員 ありがとうございます。

 私も同じように思っていまして、郵便局の簡易保険のホームページを見てみたんですね。そうしたら、その簡易保険のホームページには点字でも載っているんですね。ああ、点字でちゃんとこういうふうになるんですよとお知らせがしてあるんだなというのがわかりまして、これが民営化されたらこういうことをやってくれるのかなと実は心配になりました。

 なぜ心配するかというと、今度の法案というのは、昔のように、郵貯法、簡保法のように、例えば郵便法だと、「この法律は、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。」と書いてあるわけですよ。ですから、先ほどおっしゃった点字等の第四種、三種の話の場合には、こういう目的、今でもこれは残っていますから、今度の場合これが残っているから、これに沿ってやろうとすると、第三種、第四種は何とか残るかなみたいなことは考えられるんですね。

 ところが、簡易生命保険法は何て書いてあるかというと、今度はこれを削るんですよ、今はあるんですよ。「この法律は、国民に、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営により、なるべく安い保険料で」と書いてあるんですよ。「なるべく安い保険料で提供し、もつて国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」これが簡易生命保険法なんですが、今度はこれは廃止ですからね。つまり、こういうことをしませんということは、先ほどの点字みたいな形で簡易保険はこういうものですよというサービスがなくなる可能性が当然あるわけですよ。

 そんなことはありませんと政府はいろいろなことをおっしゃるんですが、郵貯、簡保が株式会社になったということは、一般の銀行になったんですからねとおっしゃるわけですね。そうすると、ちょっと移行期間でも守られるかどうかわかりませんが、移行期間後は間違いなくこういうことはしないだろう、そういう法案なんだということです。政府はやはりずるいんですね。はっきり、実はこうなっちゃうけれども、しようがない、我慢してくださいと言うのならわかりますが、そうではないと思うのです。

 この辺については、原陳述人、どのようにお考えでしょうか。

原勲君 先生が御懸念される面はないわけではないと私は思います。現状のサービスが、民間企業の立場になった場合に果たしてすべて確保できるかどうかということは懸念の材料になると思います。したがって、現状で言われているミニマムなサービスの維持というような問題等は当然現法案の中にも組み込まれているというふうに思っております。

 ただ、現行の簡保法あるいは貯金法もそうですが、先ほどちょっとおっしゃいました、あまねく平等はともかくとして、なるべく安くとか、それから国民にとっての福祉の実現とか、それは確かに国営とか公に近い事業というのは当然そこのところをうたうのだと私は思うのですが、民間事業も実は同じ。先ほどちょっと触れたつもりなんですけれども、顧客サービスあるいは社会に対する貢献というのは、事業というのはみんな同じ。

 最近、キャピタル・キャピタリズムみたいなものが盛んに言われておりますが、そんなことだけではない。企業価値を高めていくということが株式の価格を引き上げていく、株主に対して貢献するということはあると思いますけれども、事業に関係するいわゆるステークホルダー全体に対してどのように貢献するかというのは、私はずっと長く事業をやる者に対しては言われ続けてきたことだと思っておりまして、確信を持っているわけです。大きな企業であればあるほどソーシャルレスポンシビリティーというのはすごく重要なわけでして、ちょっと悪いのですけれども、JR西日本がよくつぶれないものだと私は思っているわけです。

 そういう非常に重要な問題について、事業者としては完全に責任があるわけですし、存在価値がなくなる可能性があるんだというようなことを考えながらやっていくのが、民間であろうが公共であろうが同じことなんだというふうに考えなければいけないし、そのことを徹底して自覚しないと存在できない、こういうことになるのではないかというふうに私は理解しているわけでございます。

大出委員 そうあってほしいと実は思っておりまして、バブルの前あたりの企業が、企業の社会的責任と言っていたころはよかったんですよ、はっきり言いますと。非常に社員たちにも温かい企業だったんですね。日本式企業と喜ばれていたんですね。ところが、今のようにかくも変わるものかと思うような、実はそこの部分で、だから私は官業が民業の補完ということが重要なのだと思っておりまして、郵貯、簡保というのは地方に行けば行くほどセーフティーネットになっていると思っているのですね。官業が民業の補完というのは、民間のメカニズムに任せると失敗もするし倒産をすることもありますね。そのときに、補完する作用として、セーフティーネットとして必要最小限度であるというのが今までの郵貯、簡保だったんだと私は思っているんですね。

 それと同時に、たまたま日本だけが郵便事業というのを支えるために、郵貯、簡保というのをくっつけて、肥大化したのがちょっと問題なんですが、くっつけてやってきたというこのビジネスモデルというのは、今日本が少し経済的に調子が悪いものだから自信をなくしていますが、核となる部分の必要最小限のセーフティーネットでありネットワークというものは、本当は自信を持って守ってよかったのではないかと思っているんですね。

 というのは、諸外国の例をずっと見ていると、単純民営化したところはみんな失敗しているんですよ、はっきり言いますと。フランスとカナダは公社のままなんですね。カナダは同じように、日本みたいに民営化等の見直しは行わないというのがありまして、見直していないんですね。カナダの場合には、自分のところの郵便モデルみたいなものを、売り出すわけじゃありませんが、コンサルタントをやったりなんかするような、それは自分のところのシステムに自信があるからなんですね。

 それから、私は、三百五十兆も黒字になっている企業であって優良企業だ、郵便事業自体も世界的にこのサービスは誇れるものだと思っています。それなのに、日本の経営すら不良債権にしている政府が、この優良企業を、先が長いから民営化するというのは成り立たない、説得力にも欠ける、そういうふうに思っていまして、その片棒を担いでおられるのが竹中さんだと私は思っています。

 先ほど、企業が銀行から金を借りられるようにしろというのは、私の仲間に聞いても、やはり貸しはがし、貸し渋りがありまして、何をやっているかと思ったら、銀行から金を借りないんですよ。それでどうするかといったら、労働分配率を下げまして社内留保にしておいて、それで設備投資しているんですね。でないと銀行につぶされちゃうからというわけです。要するに、本来なら民間中心の信用創造機能というのがなければいけないんですが、それが壊れているわけです。何でかなと思ったら、竹中さんのあの金融再生プランじゃないか、ハードランディングし過ぎて、それで信用創造機能がなくなっているのではないかと思っています。

 ですから、そこをちゃんと企業が金を借りられるような体制をとるべきだ、そして、一番問題な年金から始まった社会保障というものをしっかり整備して消費に回るようにしろ、先ほど言った高速道路無料化というのは当たり前なんですが、そういうふうに思っているところでございます。

 どうでしょうか、諸外国でうまくいっていないというのを、アルゼンチンもそうですし、ニュージーランドもそうですね、その辺のところはどんなふうに御感想をお持ちか、原さん、お願いしたいのですが。

原勲君 私は、郵便事業の中で、今おっしゃった郵貯、簡保を含めて、つまりそういった貯蓄に関する事業をこれだけ抱えてやっているところは、日本が最もウエートとしては大きいわけで、これはほかのところと単純に比較できないと思うのですよ、まず第一に。郵便事業を中心にして補完的に貯金事業をやるとか、そういうのは御存じのようにあります。ありますけれども、これほどの巨大な資金需要というか貯蓄業務をやっているというのは我が国だけであります。

 そこで、民営化は成功していないんじゃないかという話ですけれども、それぞれの国の事情によって、アメリカの場合なんかは貯蓄業務というのは非常に少ないですから、ほとんど郵便ですから、だからこれは国営でやるとか、そういう考え方があります。イギリスは現在は特殊会社なわけですね。私もイギリスに一年ぐらいいたんですけれども、見ていまして、郵便が中心ですからさまざまなサービスをやっています。それから、郵便事業そのものを雑貨店と共同してやるとか、新聞配達店と共同してやるとか、そういうことをやっているのがイギリスの現状だと思いますが、貯蓄とかそういう業務については非常にウエートが小さくて、必ずしも今すぐこれを民営化するメリットがない、そういう状況だと思うのです。

 そこで、私は先ほどから申し上げているように、なぜ民営化をしなければならないかというのは、やはりいびつな、巨大な資金をいわば調達している、例えば日本人の貯蓄は一千四百兆あると言われていますが、その大体二五%が郵貯になっているわけです。それが先ほどから出ているように、今までは財投を中心にして、現在は国債に非常に多額に活用されているということ、これが問題なわけですね。これをやはり改善しなければ、いわば本当の意味で有効な資金の活用もできなくなる。

 もっと言うと、有効な活用というのは、先生御存じのとおり貯蓄・投資バランスというのがあるんですよ。貯蓄・投資バランスで見ますと、日本は過大な貯蓄を抱えているんですよ。投資に対して民間の部門でもう過大な貯蓄です。その一方で投資が非常に小さいわけです。その分を今のところ財政が担っているんですよ。それでバランスしているんです。

 もう一つは輸出に行くんですけれども、大体十兆ぐらいが輸出超です。それから、財政がマイナス八十兆。五十兆が民間貯蓄部門の貯蓄超です。ですから、四十兆が財政の赤字超です。そういうふうになっているんです。それでバランスがとれているんですよ。とれているんだけれども、実際に財政部門の赤字が膨大になってきている。単年度ではバランスはとれているけれども、財政部門だけ見たら非常に極端な赤字になっているということで、しかもこれは国民全体に対して、非常に懸念を持たせるような状態で財政赤字が積み重なっている。これは釈迦に説法ですけれども、そうなっているんですね。

 ですから、財政に依存できない構造というのはもう明らかなのでありまして、実際は、貯蓄超過よりも、むしろいかにして投資に持っていくか。貯蓄・投資バランスから考えましても、そういう問題が一番大きな問題だと私は思います。

 したがいまして、貯蓄超をもたらしている要因というものを、しかも政府部門にそれが集中して財政赤字をふやしていく、そういう構造というものは変えていく。民間投資が中心になっていく経済に向かっていくという根本的なフィロソフィーのもとで郵政の事業の民営化という問題を考えていくというのがやはり本筋なんだろうというふうに私は考えている次第であります。

大出委員 そういうふうにおっしゃいますが、逆に言うと、郵貯、簡保のお金があったからこそ、今まで、例えばバブルの後の不良債権の問題でもそうなんですが、経済がこけないで済んだという面もありますね。

 それと同時に、今現在がどうなっているかというと、民間の金融機関が国債を買っているわけですよね、現実には。同じくらい買っているわけですよ。民間の資金需要というのがなくて、毎年五%ぐらいずつ国債がふえていくわけですね。そうすると、国債を買うということは、民から官にお金が行っているわけですよ。郵貯、簡保、年金も、郵貯、簡保が民になるわけで、また民から行くわけですよ。民から民だというけれども、流れは変わらないわけです。

 一番今度のことでずるいのは、最初の民営化する理由が、肥大化しているからという話がじり貧化に変わりまして、肥大化の部分は変わらないので変えないんですよ、全然。官から民に流れているのかといったら、全然流れていないわけです。もともと官にお金が行けば民に流れてくるんですが、最初に標語で言われている官から民というのは全然なくて、民から官、民から官だけが成り立っている、要するに何にも変わっていないというのが今度のことだ、ここを直すべきだと言っていることは直さないでやっているというふうに私は思っております。

 時間が来てしまいました。もう少し皆さんと議論をやりたかったんですが、時間でございますので、終了したいと思います。

 大変ありがとうございました。

二階座長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 きょうは、この北海道で地方公聴会、皆様方にもお出ましいただきまして、大変よい機会を与えていただいたと思っております。

 さて、きょうのお三方の陳述人の方々に御質問させていただきたいと思うのですが、まず原陳述人にお伺いをしたいと思います。

 原陳述人は、北海道経済の実態をよくごらんになり、そしてまた研究等もなされてきたということでありますが、私自身も、事業会社の経営という形で市場に接点を持ってまいりました。

 そこで、今回の郵政民営化の問題、そもそもこの民営化ということが、陳述人の言葉にありました、民でできることは民でということで、いわゆるバラ色という理想に向かって、民でできることは民でやることによってすべてが解決するといった、そうした修飾がなされているような気がしてならないと私は思っております。むしろ、今回のこの民営化を考えるにおいては、いわゆる競争原理のもとですべてが解決すると短絡的に考えられているのではないか。

 私は、経営者として、常にQCD、つまり、クオリティー、コスト、デリバリー、これらが適正になるということが最も重要であるということを命題としてまいりました。こうした品質や原価や納期、これらがそれぞれ、品質は高く、コストは低く、そして納期は短くといったサービスやあるいは物の提供ということによって、市場の参加者のビヘービアというのはある一定の方向性を持つ、この方向性のことを今回民営化という言葉で称しているような気がしてならないんです。

 実は、市場のメカニズムということを考えれば、この方向性に合致したものは何かといえば、いかに市場にゆだね、市場が判断するところに任せていくのかということである。言いかえると、民営化ではなく市場化ということが本来のこの問題の本質にあるのではないかというふうに思っています。今回、この市場化という観点を考えますと、果たして民がすべて解決できるのかというと、私はそうではない部分もあると思っています。

 これも興味深いデータがあるんですが、アメリカのインディアナポリスで、二十世紀最後の奇跡と言われた行財政改革という例がございます。当時、九〇年代、財政赤字に苦しむインディアナポリスで、行政の活性度を劇的に変貌させる方法として、いわゆる民営化、プライベタイゼーションではなくて、市場化、マーケタイゼーションということを打ち出したことがあります。市場化ということで官と民を競わせる、これをやっていく中で結果として出てきたことは、いわゆる業務の入札や効率化などを図るということで出てきたことは、官が今までお役所仕事、あるいは、言葉は悪いですけれども税金泥棒、こんな表現がされていたのが、潜在的な、人材の優秀な能力というものが引き出されて、結果的には官がさまざまな分野で民を凌駕する、そうした結果が生まれたということがございます。

 このように、こうした例はたまたまだということもあるのかもしれませんが、しかし私は、まさに市場にゆだねる、その市場化という問題の本質に合致した方法だったのではないかというふうに思うわけであります。こうした市場化という観点をお考えいただいたときに、民に任せることがすべての問題の解決になるということではないということについて原陳述人の御意見を伺いたいと思いますが、端的によろしくお願いいたします。

原勲君 今先生がおっしゃったことに私は賛成というか、おっしゃるとおりだと思うのですね。すべてが市場経済になじむものではないというのは、もうおっしゃるとおりだと思うのですよ。

 つまり、よく言われるように、公共財と言われているものがあります。例えば軍事の問題、防衛とかですね。その範囲はいろいろ考え方によって違いますけれども、どうしても公共財として政府が税で賄うべきものというのはやはりあると思います。

 だから、公共財とそれから市場の財、私的財ですね、この間に幾つかのものがあると思いますけれども。問題は、民でできるものは民でというのは、要するに、どちらかというと今までは公共財化していたものを私的財化するということなんですよね。私的財化することが、民でできるものは民でということで、その対象が郵貯であったり簡保であるということは、私は適正だというふうに思うのです。郵貯や簡保を公共財化する必然性というのは、今日の時点ではない。

 かつてはあったかもしれない。日本全体が非常に貧しい時代で、人々の貯蓄を安全に確保しなければならないし、それを国が責任を持って運用しなければならないという時代がありましたということで、そこには合理性があったわけです。しかし、現時点であるのかということが問題なわけでありまして、私は、現時点ではない、しかも、官がやることによって起こってきた肥大化したいろいろな問題、さまざまな矛盾というのは、先ほどから議論されていることに尽きるんだというふうに思うわけです。

 要するに、あまねく平等という問題が、果たして今日、いわば郵貯や簡保に、あるいは郵便ネットワーク事業にすべて対応できるものかどうかということを考えることがまず一つと、それから、もう少し極端に、ちょっとアクセントをつけて申し上げると、いわば、先ほどの議論のように、かつて非常に貧しい時代において、どちらかというと、あまねく平等という観点から、本来は民でやれたかもしれない、まあ、その時点ではやれなかったと思うのですけれども、民でやってもおかしくない事業を官がやってきたというふうな考え方も成り立つのではないか、ちょっとつけ足しになりますけれどもね。それを、現時点においては、いわば直すといいますか、基本的な視点に置きかえていくということであります。

 話が堂々めぐりで申しわけありません、最終的に申し上げますが、先生がおっしゃったように、官から民へという格好になればすべてそれは善だということを言っているわけではない、善ではないということだけは間違いなく先生のおっしゃるとおりだというふうに思っております。

馬淵委員 そこで、原陳述人、北海道の経済ということをごらんいただいているわけですが、失業率が全国水準を上回るという深刻な状況であるこの北海道、その道経済は、振り返りますと、先ほど来も話がありました、北拓、北海道拓殖銀行の破綻等、地域金融という点においては北海道経済に大きな傷跡を残したという経緯がございます。

 そして現在、道内のデータを見ますと、金融機関店舗数というのは三千三十七、そのうち郵便局が千五百五十六となっておりまして、数だけで見ると半分が郵便局ということになります。こうした郵便局がいわゆる民営化されていくといった場合に、地方経済、地域金融に与える影響ということについて、先ほどのお話の流れの中で、原陳述人、どのようにお考えでしょうか。これも端的にお答え願います。

原勲君 先生がおっしゃった数字、そのとおりだと思います。つまり、これは長年の北海道の経済の問題の中心なんですけれども、北海道というのは、言ってみれば資金の調達地域でありまして、運用地域でなかったということですね。現在においても運用されないということです。要するに、預貸率がある意味では非常に低いという状態にあるわけです。それはもう紛れもない事実でありまして、経済的停滞が原因で運用できないという現状を生み出している。

 ですから、まさに郵便局などというのは調達の最たるものでありまして、最たるものとちょっと極端に言いましたけれども、これは自治体その他にも貸し付けが現在かなり行われていますけれども、基本的には全部これが中央に吸い上がっていく、民間の金融機関も同じ、そういう構造がずっと続いているわけです。この構造が変わらない限りは、北海道経済は絶対よくならないのです。

 それは、最終的には民間の事業活動をやっている者の責任ではあるんですが、私は、先ほど申し上げましたように、地元の金融機関においても責任があると言っているわけです。いかにして地域経済を活性化させるかという問題について、要するに金融機関としての努力が足りないわけです。それは現在の金融システムやあるいは金融行政にも問題があるのかもしれないわけですよ。

 しかし、いずれにせよ、そういういろいろな原因はあるかもしれないけれども、ともかく、北海道経済を活性化させるために、金融が主体的に地域経済を発展させて、運用して、そしてそれが十分成り立つという状況をつくってこなかったというのは事実なのでありまして、郵政の民営化を機会に、郵政がそういう活動の担い手になっていくんだ、大きなそういう役割を果たすんだということになってもらいたい。そうしないと、結局は、民営化そのものは北海道にとっては結果的にはメリットが出てこないかもしれないな、そういうふうに考えているわけです。

馬淵委員 今、郵便局はいわゆる調達で、そもそも道内におきましては運用そのものがもう停滞してしまっているんだというお話でありました。

 私も、今のお話を伺って思うのですが、結局は、経済の活性化というのは、そもそも事業者そのものがどういった形で資金を調達して、また事業に投入していくか、経営者がどのような積極的なビヘービアに移っていくかということが最も重要である。今まで三千幾つのうちの半数の金融機関があった。しかし、その金融機関が十分担い手となれなかったかというと、そうではなくて、事業者側の問題であるということの御指摘だったというふうに理解をします。

 そうしますと、果たして、民営化によって地域の郵便局が民営の金融機関になっていくことが本当に道経済にプラスの方向を与えるんだろうか。私は、先ほども原陳述人の御意見にもありました、むしろ金融行政に根本的な問題があるのではないかという気がしてなりません。

 私も、国会の活動の中で、地域金融については特別な配慮が必要である、例えば、これも米国の例でありますが、地域再投資法、いわゆるCRA、これらを参考にした金融アセスメント法案等々を、常任委員である財務金融委員会の中でも必要性を訴えてきたわけであります。

 こうした地域金融の問題というのは、実は、民営化したからどうかなるということよりも、むしろ、その地域の金融としてお金をいかに流していくかという金融行政の問題である。この郵政の民営化が、まさに民でできることは民だということで移していくことですべてが解決するのではないという端的な例ではないかと考えるわけですが、これについても端的にお答えいただけませんでしょうか。

原勲君 先生のおっしゃることに全く賛成ですね。そのとおりだと私は思います。したがって、郵政の民営化のみならず、金融行政そのものの見直しというのは当然パラレルに行われるべきだという考え方に賛成で、先生がそれについて懸命に御努力されているのであれば、ぜひパラレルにその活動を展開していただきたいというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げたように、しかし、現実の問題、郵政の民営化の問題が今焦点ですからそこだけ申し上げますと、そういうことを含めて、今御議論ありますように、地方分割といいますか、そういうことを私は主張したいわけです。つまり、地域に対して責任を持った民間郵便事業というか、郵便貯金事業あるいは保険事業というのがまず考えられてしかるべきだというのはそういう発想から来ているわけです。地域に対して責任を持つ金融機関としての民営事業という問題をやはりぜひ入れていただきたいというふうに、私は最初の段階で陳述申し上げた次第であります。

馬淵委員 それと、今の御意見は賜りましたが、先ほど、原陳述人のお言葉の中では、社会的責任の部分で、集荷、着荷というお話がございました。

 そこで、今度は村上陳述人に御意見を伺いたいんです。

 先ほど、原陳述人は、社会的責任がどうしても不十分である、十分果たせていない状況ではないかという御指摘があったわけです。村上陳述人は、渚滑の郵便局、いわゆる紋別という地域性、これは大変極寒の地である、私はこういうふうにお聞きしておるわけです。その極寒の地で、厳しい自然環境の中で事業を行うという場合に、民間企業がそれを行おうとすると、先ほどの集荷、着荷の問題も含めて、予想される困難、どういう厳しい状況でやられているかということの実体験も踏まえて御意見を述べていただけませんでしょうか、村上陳述人。

村上一夫君 ただいまの先生の御質問であります。

 今、確かに、我々の地元紋別市は、オホーツク海に面しているということもありまして、特に冬期間については非常に厳しい気象条件の中での業務ということになっております。特に路面状況だとか積雪のぐあいだとか、前は雪が冬期間通して平均的に降っていたものが、なぜか最近は一度にどんと来るというような気象条件に変わっているような気がいたします。

 それと、相変わらず路面の氷結状況ですね。特に、スパイクが禁止されてから、スタッドレスだけで乗用車については作業していますし、オートバイについては、チェーンを履かないと全く作業ができないという状況です。到底ゴムタイヤだけでは全然仕事にならない、そういったことであります。

 しかも、そのチェーンも、ずっと凍っていればいいんですけれども、やはり天気のよい日には路面が解ける、解ければチェーンが減る、ワンシーズンに三回ほどは必ず履きかえなければ切れてしまうということで、そういった経費ですね。

 それから、公社になって変わりましたけれども、自動車の税金等、公社の前は免除されていたということもありまして、公社になってからは払っております。

 そういった経費の面からも、やはり民間になれば、当然利益追求ということで、車両の配備だとか防寒着の配備だとか、それから除雪の関係だとか、そういったものがやはり全部経費として計上されて利益が少なくなるのでなかなか難しくなるというような考えが出てくれば、大変なことになってくるのではないかなと思っております。

 ですから、やはり今のままでも経費節減ということで、我々も、なるべくオートバイについては簡単な故障は自分たちで直す、自主整備をする。講習会等を開いてまでしてやっているわけです。やはり若い職員はその辺はなかなかできませんので、私の方からこういうときにはこういうふうに整備するんだよという指導もしながら、もう本当に我々はそういった中で苦労して経費の節減に努めているのを知っていただきたいなというふうに思います。

 ですから、やはりこれから民営化されれば、そういった面もなお一層、多分私の想像としては厳しくなるというふうに思っております。

馬淵委員 まさに、私が先ほど申し上げたコストの部分で大変な厳しい状況が起きる。民間の企業の中で、先ほど申し上げたようにコストを抑えなければならぬ、利益最大化を目指す中では、こうした現場の、厳しい自然環境の中の局では大変難しい状況が生まれるのではないかという御示唆だと思います。

 当然、社会的責任を全うしようという思いで一生懸命やっておられるにもかかわらず、今のような御努力の中で、それでも現実には、集荷、着荷のずれの問題などが起きてくるという御指摘がありましたが、こうした厳しい環境の中での今の局の対応、これが民営化されれば、市場利益を高めるということで競争力が増して、よりサービスが高まるということよりも、むしろコスト圧迫によってサービスの低下ということが起きるのではないかという村上陳述人の御意見だったというふうに私は理解をするわけであります。

 ならば、さらにもう一歩突っ込めば、この紋別で、先ほど、地域には二つしかない、信金と郵便局しかない、隣町には郵便局ということでありました。こういったところで、先ほどのようにコスト圧迫がある、サービスの低下が想定される。設置基準、これは一・一キロに一つとかいう話がありますが、全国あまねくの中の平均の数値でありますから、現実にはもっと過疎の地域は散在している。その中で今、大変失礼なお話ですが、渚滑の郵便局がなくなったとした場合にどういう状況になってしまうんだろうかということ、これをそこの住民の方の立場で、端的に御意見として御指摘いただけませんでしょうか。

 時間もなくなりましたので、村上陳述人のその御意見をもって、私の質問とさせていただきます。お願いいたします。

村上一夫君 ただいまの先生の御質問でございますけれども、確かに今、我々の地域、渚滑の地域には、信金さんとうちの郵便局の二つの金融機関があります。信金さんの方は、紋別本店の渚滑出張所というふうになっておりまして、本当に小さな窓口ですね。銀行員が三名、そのうち女性が一人ということです。

 渚滑の場合は企業が結構多いんですね。というのは、海岸沿いに車のディーラーがずっと並んでいるんです。これは、渚滑と紋別の間で、たまたま渚滑の方にあいた土地があるのでずっとディーラーさんが建ち並んでいるということでありますし、それから、大きな企業としましてはよつ葉乳業という工場があります。小さな町の割には結構そういった企業も存在しているということで、信金さんも、やはり利用価値があるということで出張所として店を構えているということになっております。

 しかし、やはり今、紋別の人口がもうほとんど過疎化の一途をたどっているということでありますから、そういった企業もこれからどんどん少なくなっていくだろう。そうなれば、当然信金さんだってやはり撤退せざるを得なくなるといった状況も出てくるだろう。

 現に、五年ほど前ですか、農協のAコープの金融部門が渚滑にありまして、農協が合併したという原因もあったんですけれども、やはり利用価値がないということで早々に引き揚げたということもあります。それで二つになってしまったわけです。

 そういったことで、信金さんが引き揚げて、そして郵便局もなくなったということになれば、本当に、渚滑の町のお年寄りだとかふだん車をお持ちでない方、バスだってそんなに紋別の市内まで頻繁に通っているわけではありません。ましてやJRは、紋別は市でありながらないわけであります。平成元年ぐらいに最終的に廃止になりました。そういったこともありますし、交通の便も、紋別の市内まで行くとなれば大変不便である。そういったところで金融機関が一つもなくなってしまったということになれば、本当にお客さんはどうなるんだろう、私も、想像してみますと、本当に恐ろしい感じがします。当然みんな紋別市内の方に移り住んでいくのではないか。渚滑の過疎化がさらに増すのではないかというふうに感じております。

 ですから、やはり何とか、せめて郵便局一つでも最終的に残していただいて、少しでもお客様の生活のお役に立てればいいかなというふうに感じております。

馬淵委員 ありがとうございました。

二階座長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうはお三方に貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。特に、北海道の実情に即したそれぞれのお話というのは、国会の審議に当たっても大いに役に立つものと信ずるものであります。

 その上で、片石陳述人に何点かお伺いをいたします。

 片石陳述人の方から、三種・四種郵便物の意義、値打ちということでお話がございました。この点で、ぜひともこういう制度をより改善する上でどういうことが求められているのか、そういうことをぜひお聞きしたいと思っておるのです。

 といいますのも、お話の中で、機関誌というのが会員と会員を結ぶきずなとなっているというお話がございました。私も障害者団体の方からお話をお聞きする中で、こういう障害者団体の方が発行しておられる会報というのが、会員の方にとって、生きていく勇気を与えてもらうものになっている、人間らしく生きていく糧となっているというお話がありました。

 当然のことながら、私、今回の郵政民営化に反対であります。といいますのも、公社法の際に、四種点字郵便物などについて無料の規定が外されて、いわば大臣答弁で無料が担保されているという形で現状は維持されている。これが民営化で、採算性重視の中で、本当にこういった制度が維持されるのかという懸念を強く持っているからでもあります。

 何よりも、郵貯法などにもありますような、金融のユニバーサルサービスだとか、また、そもそも国民のサービスを基本的に維持する、そういう義務づけそのものが外されるという中での民営化に強く懸念を持つものであります。

 そういう意味でも、こういう三種、四種についてはしっかりと守り抜いていくということが求められていると思うわけです。現行の制度の上でよりよい三種、四種の制度にしていく上で、こういう改善点があるのではないか、こういうことで、日ごろお感じになっていることなどがありましたら、御示唆いただければなと思っております。

片石松蔵君 私たち、点字を多くの人たちに理解してもらうために、対訳式と申しまして、同じ紙に点字と普通字を印刷したものをつくるんです。その場合には、認められていまして、点字と同じ扱いで配達されます。

 ところで、その地域地域の考え方の中に、対訳式という印刷方法をとらないで、点字と普通字で同じ文章を送ることがあります。これは、点字の中身を家族にもよく理解してもらいやすいようにということでやるんですが、その場合に、東京だったらほとんどこれが認められないで、全部開封して中身を見て、普通字が入っているからだめだよというふうにおしかりを受けます。北海道でもおしかりを受けないで出せるところがあります、同じものならいいよということで。そこら辺は全国一律にやれるようになればいいなというふうに、私だけでなくていろいろな視覚障害者団体の方たちが述べています。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点、片石陳述人にお伺いいたします。

 先ほどのお話の中でも、郵便局と民間金融機関や民間の宅配業者との違い、そういう中での郵便局の利便性のお話もございました。また、民営化したJRやNTTと比較をして、民営化への不安の声というのもいただいたわけであります。

 こういう点で、視覚障害以外の障害をお持ちの方などの体験や経験を踏まえてでも結構なんですけれども、何か具体的な事例として、いろいろ心配に及ぶような思いというのがありましたら、この機会に御紹介をいただければなと思っております。

片石松蔵君 肢体障害の重度の方なんですが、大体こういう人たちというのはなるべく公共機関の近くに住む努力をしまして、そこにある公営住宅に入居するために何度でも申し込むんです。そういう人たちのそばに特定郵便局がありまして、そこに行くんですけれども、その人からじかに言われて、まあ団地があるからなくならないと思うけれども、もしも、これは北九条というんですけれども、北九条郵便局がなくなったら私はどうしたらいいだろうというふうに言っていまして、この人もまた当然、手も不自由なものですから、目が見えるというだけではだめで、自分で字が書けないものですから、したがって、そこの部分も代筆などをしてもらいながらお金をおろすということがやられています。

 だから、そこら辺は、その地域の人のことをよく知っている郵便局の職員の方だからこそできるわけで、そういう意味でのことが民営化の中で本当に担保されるのか不安だということを訴えられました。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて、村上陳述人にお伺いいたします。

 採算性重視の民営化ということでのいろいろな不安ということが当然起こるわけであります。現行の公社のもとでも、人員の配置などで常勤の方がかなり減って非常勤の方に切りかえる、特定局などでもそういう例が全国にあるかと思います。そういう中でやりくりをしながらのお仕事だと思っております。

 それが、民営化をした場合において、分社化の心配というのも当然あるわけですけれども、過疎地の郵便局を維持されるといっても、それが現行のままで維持されるかどうかという不安は当然あります。金融サービスがあるのかという問題も当然あります。

 私は、無集配の特定局が簡易郵便局に切りかわるんじゃないか、そういう懸念というのを強く持っているわけです。かつて、総務庁の勧告などでそういう指摘などが行われた。これ自身は私は問題だと思っておりますけれども、何よりも、本来特定局が果たしてきた役割が本当に簡易局で置きかえられるのか。もちろん、現行の簡易局の持っている積極的な役割というのは当然あると思うのです。しかし、特定局を簡易局に置きかえるようなことが、働く皆さんにとっての問題と同時に、あわせて住民の皆さんへのサービス等の点でどういう心配があるのか、お感じになっていることをお聞かせいただければなと思っております。

村上一夫君 ただいまの先生の御質問でありますけれども、確かに、今、無集配特定局に内勤しかおりません。外勤はいない。そして、人数も小規模な郵便局でありますけれども、それがやはり過疎化に伴って、今までは統廃合だとかそういったものがなされてきまして、本当にここ十年間でも、我々の地域でも簡易局にかわったところが何カ所かあります。

 そういったときに、先ほども顧客情報の関係が出ておりましたけれども、本当に業務の内容が次々と矢継ぎ早に変わっていく。もうころころ変わっていきますので、それに追いついていくだけでも、我々勉強するだけでも大変です。貯金の制度にしてもそうですし、御存じのとおり、本人確認法というものができまして、これについては本当にお客様に煩わしい思いをさせているわけでございます。

 そういったことで、法律も変わるし、それに伴って我々の制度も業務の内容もどんどん変わっていく。我々がこんなに苦労しているのに、簡易局の職員さんもよくそれについていっているなと感心しているんですけれども、それが、今後さらに民営化、そしていろいろなそういう形態が変わっていけば、知識不足といいますか、そういったことからくるお客様へのサービスの面で、低下というんですか、迷惑をかけたりそういうことがあってはならないなというふうに私は感じております。

 先生、大変詳しいようで、本当に今は非常勤化ということで職員の数が減らされて、そして、そこをパートで埋めていくという形が今大変多くなってきております。それはやはり人件費の削減ということからきているとは思いますけれども。

 そういったことで、やはり非常勤となれば知識も我々よりはどうしても劣っているということで、お客さんに迷惑をかけることも多々あるということなので、それだけはこれからしてはならないなというふうに感じております。やはりそういったことで民営化されないように、何とか我々としては願っているところです。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 村上陳述人と原陳述人にあわせてお伺いしたいと思います。

 北海道における公的セクターの役割についてどう考えるかという問題なんですが、私もことしの一月に、北海道の札幌以外の幾つかの地方の首長さんのお話を伺いました。町長さんや村長さんにお会いする中で、ある町長さんは、国鉄の分割・民営化で地方は切り捨てられた、過去の歴史を見れば民営化の先に何があるかは明らかだ、こういう声を上げておられました。国会にもたくさんの地方議会の意見書が寄せられております。北海道からは、道議会はもちろんのこと、市町村議会で百九十六。ですから、九割の地方自治体の議会から、この郵政民営化に反対あるいは慎重な審議を求める声が上がっております。

 そういう中で、例えば沼田町議会の意見書などを拝見しますと、今まで官業から民業に転換したNTT、JRなどは、採算不能を理由に、企業の省力化により大変不便を感じました、民営化をされれば弱者は一層住みづらい地域となります、社会に対する貢献度の高い郵便局の仕事が民営化とならぬよう強く希望するものです、このような意見書を出されております。

 実際、金融機関におきましても、過疎地においては過去六年間で二五%民間金融機関が店舗を減らしております。そういう中で郵便局は維持をしている。そういう点でも、金融サービスで果たす郵便局という公的セクターの役割は大変大きいのではないかと思っております。

 そういう点で、この北海道においていわゆる公的セクターの役割、機能が求められているときなのではないか。そういう位置づけをとったときに、郵便局の民営化をどうお考えになるのかをお二方にお伺いしたいと思います。

村上一夫君 ただいまの先生のおっしゃるとおりだと私も思います。

 特に、私の先ほどの陳述のとおり、過疎化といいますか、お客様としても、こういった地域に郵便局があって、そして郵便局が国営であるから安心ということがやはり現実問題としてあると思います。そういった地域的な役割というものも、今までいろいろ活動をしてまいりましたけれども、今後さらに一生懸命やっていきたいと思っていますし、またやっていかなければならないと思っております。

 やはり、地域の人にとっては、郵便局は国の機関だ、そして職員も親しみやすい人ばかりだ。そして、なるべく地元に住もうということで、地元に基本的には住んで、そこから通っているということでありますから、地域と一体となった、そういった業務にしても活動にしても、これからはなお一層大切になっていくのだろうというふうに思っております。

原勲君 公的セクターの役割が北海道の場合はもっと強くなるのではないか、求められているのではないかというお話ですが、公的セクターに過度に依存しているのが北海道であると私は考えております。

 今、北海道のGDPが大体二十兆、二十一兆に近いんですけれども二十兆とお考えいただいていいと思いますが、財政の部門というのが大体八兆なんですよ。公共投資が三兆あります。政府消費支出が五兆ある。極めて財政の依存度の高いところでありまして、その分だけ公的セクターに過度に依存していると思います。残念ながら日本何番手かの状態になっていて、それが財政事情の悪化とともにということなんですけれども、現在のじり貧構造が持続しているということでありますので、むしろ公的セクターからいかにして脱却するかというか、基本的な考え方としては、北海道民全体の問題ですけれども、いかにして自立していくか。自分のことは自分で考えろ、まずそういう精神が基本になっていくような地域社会というか、地域経済は特にそういう構造が求められるのではないかというふうに考えておりまして、それを最近ずっと主張しております。

 それからもう一つ、沼田の例で、公的セクターの問題で、JRだってNTTだってサービスが低下しているのではないかというお話がありました。その面はあるのかと思いますが、もう一方、私が直接JRなりNTTなりのサービスとか、その後の姿を見てみますと、以前よりは少しましかなという感じは、ましかなというのは大変言いにくい話で、よくなったかなと思いますが、依然として、やはり一種の、極端な言葉で言えばDNAといいますか、やはり旧国鉄的発想とか旧電電公社的発想というのがサービスの節々に実は見られるわけです。これは採算性の問題ではないと私は思うのです。

 例えば、大変悪い例で申しわけないんですが、コンサルテーションが必要だとか、いろいろなサービスが積極的にお客様に求められる。前よりはよくなったんですけれども、果たしてこれが本当のコンサルテーションかと思うようなことがあります。そういう例は、たくさんあります。

 つまり、なかなかそこから脱却できない。民営化されたのなら、民間企業というものはどうあるべきかということを基本的にやはり踏まえた企業活動を早く展開してもらいたい、そう思います。

 したがって、郵政の場合も、民営化された後、現在の間違ったといいますか、非常にビジネスライクでなかった側面というのが残るかもしれないので、早くそういうところから脱却して、本当に、地域の人々に、顧客に積極的なサービスができるような、そういうビジネスマインドを定着させていくということの方がむしろ必要なのだというふうに私は申し上げたいと思います。

塩川委員 ありがとうございました。

二階座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

 これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の新潟県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十七年六月二十八日(火)

二、場所

   ホテルハイマート

三、意見を聴取した問題

   郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 中井  洽君

       石破  茂君   大野 松茂君

       大前 繁雄君   左藤  章君

       松本  純君   一川 保夫君

       岩國 哲人君   西村智奈美君

       山花 郁夫君   石井 啓一君

 (2) 現地参加議員

       近藤 基彦君

 (3) 意見陳述者

    新潟経済同友会専務理事事務局長        水間 秀一君

    小千谷郵便局貯金保険課主任          佐藤 康二君

    前守門村村長      野村  学君

 (4) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   竹内  洋君

    内閣官房内閣参事官   諌山  親君

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

中井座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院郵政民営化に関する特別委員会派遣委員団団長の中井洽でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 新潟県におきましては、昨年七月の集中豪雨、十月の新潟県中越地震により、多数の方々がお亡くなりになり、甚大な被害が発生しました。委員会を代表いたしまして、心から哀悼の意を表しますとともに、被害者の皆様に心からお見舞いを申し上げ、また被災地の復旧復興が一日も早くなされることをお祈りいたします。

 さて、皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当上越市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、豪雨の中、また御多用中にもかかわらず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の石破茂君、大野松茂君、大前繁雄君、左藤章君、松本純君、民主党・無所属クラブの一川保夫君、岩國哲人君、西村智奈美君、山花郁夫君、公明党の石井啓一君、以上でございます。

 なお、本日参加予定の民主党・無所属クラブの川内博史君は、交通事情により到着がおくれております。

 また、現地参加議員として、自由民主党の近藤基彦君が出席をされております。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 新潟大学経済学部教授伊藤隆康君、前守門村村長野村学君、新潟経済同友会専務理事事務局長水間秀一君、小千谷郵便局貯金保険課主任佐藤康二君、以上四名の方々でございます。

 なお、伊藤隆康君は、交通事情により到着がおくれております。到着次第御意見をお聞きすることとし、議事を進めます。

 それでは、水間秀一君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

水間秀一君 私は、新潟経済同友会専務理事の水間と申します。ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 お手元に、私の本日お話し申し上げたい内容が四項目ほど書いてあるのがございます。それをごらんいただきたいと思います。

 まず、東京の経済同友会では、二〇〇一年四月、郵政民営化を公約に掲げました小泉総理が就任された折に、日本経済活性化のために取り組むべき課題として、郵貯、簡保を初め、民間でもできる官営事業の廃止というようなことを挙げられました。それ以来、いろいろな意見を表明していることは既に御案内のとおりでございます。しかし、新潟の経済同友会というのは、東京の経済同友会と必ずしも同じ意見ではないといいますか、独立した存在でございますので、その辺をまず御理解願いたいと思います。

 まず、現状の新潟を見てみますと、先ほど中井先生の方からお話がございましたように、やはり、昨年発生いたしました中越地震による被害、これからの復興ということが一番の関心事になっているのではないのかなと思います。また、あわせまして、新潟県の地域力の向上ということが最大の課題であるというふうに思っております。

 その意味では、今回の郵政民営化の議論というものにつきましては、どちらかといえば、全国同様にやや関心度が低いというふうに私自身としては感じておる次第でございます。また、新潟経済同友会におきましても、この分野につきまして、特に問題を取り上げ、そして意見表明をするということにはまだ至っておりませんし、組織的に取り組んでいるわけではございません。まず、この点を御理解いただきたいと思います。

 さて、本題に入りたいと思います。

 まず一番の、郵政改革は、単に日本郵政公社を民営化する問題ということよりも、我が国の財政投融資改革の一環であり、行財政改革や特殊法人の改革などと連動して、国の形を変えるという構造改革の本丸であると言えるのではないかということでございます。これは、簡単に言いますと、小さな政府の実現ということになるかと思いますが、こういうことが言えるのではないかと思います。

 私は、日本の財政が持続可能な状態にはないというふうに思っております。国と地方を合わせた長期の債務残高は、国内総生産、GDPの約一・四倍、今では約八百兆円弱に達して、国家財政はまさに危機的な状態にあるということが言えますし、そう言わざるを得ないという状況にあると思います。

 こうした先進国最悪の財政状態を招いたその原因に、金融と財政が一体となった日本独特の仕組みがあり、それを支えた道具が、いわゆる郵政の国営金融事業というべき郵便貯金と簡易生命保険だったと言えるというふうに思います。

 郵便貯金や簡易生命保険は、消費者にとっては大変便利な貯蓄手段であり、政府には使い勝手のよい財政資金の調達手段であるというようなことも言えると思います。その商品は、政府保証の安全性、これまでの定額貯金に代表される有利性、あるいは全国どこでも利用できるという利便性といった民間にはない特性を備えておるわけであります。

 こうして集められた巨額の資金というものが、財政投融資という形でいろいろな会計を通じて公団、事業団その他に流れ、その結果、一部に不良債権が発生しているという事実もあるのではないかと思う次第であります。

 民間金融機関であれば、あらかじめリスクに見合った金利を求めたり、あるいは引当金を積んだり、すなわちコストを払って、回収に向け全力を挙げ努力する次第であります。しかしながら、財政投融資のお金が特殊法人から返済されない場合など、政府保証により国民の税金でその穴を埋めるということになるわけでございまして、結果、財政赤字がふえるという構図になっているというふうに理解しております。

 こうして、この国営金融事業の規模は、郵貯、簡保の合計で今や三百五十兆円ほどに上っております。民間の四大メガバンクあるいは四大生保の合計額に匹敵する、まさによく言われる池の中のナマズというふうな、非常に巨大な金融機関になっているわけであります。そして、国債発行残高の約二五%の百二十兆円を保有する郵政公社は、最大の国債投資家でもあります。しかしながら、財投改革で郵便貯金、簡易保険から財投機関への自動的な資金の流れは断ったわけでございますけれども、いろいろな形で実態的にこの仕組みがもし温存されるとすれば、政府の借金の膨張には歯どめがかからず財政危機が拡大し、もし金利上昇などがあれば経済全体をむしばむ、そういう危機に今あるのではないかという認識でございます。

 財政投融資の改革というのは、本来は、資金の入り口である郵政事業改革と、資金の出口である公団、事業団、特殊法人向け改革と一体化して進める必要がある、そういうことが重要であるというふうに思いますが、まずは、出口改革に先駆けて入り口の改革が重要であり、それが郵政改革であるとの認識を持っております。

 郵政民営化で資金の流れが官から民に変わることで、本改革の大きな意味があるのではないかというふうに思っております。官によりむだに使われてきたお金を、民間として、適切なリスクとリターンを判断するメカニズムを導入、活用することによって、最適な資金配分が起きるようになって、官の中にいわば閉じ込められていた資金が生きたものとなりまして、これが日本経済の活性化につながるものと思っておるわけでございます。これがまず、私の申し上げたい第一の点でございます。

 それから二番目の点でございますが、郵政民営化の重要性が国民にはよく見えていないことが問題なのではないか。ここで政府にお願いしたいのは、郵政民営化がなぜ必要なのかを、わかりやすく、繰り返し国民に伝えていただきたいということでございます。

 これほど重要な問題であるのに、国民にはなかなか十分に理解されていない、ここが問題なのではないかというふうに私自身は思っておるわけでございます。なぜなんだろうか。これはなかなかはっきりと表面には出てこない問題であるからだというふうに思います。

 今、現実に、日本郵政公社の生田総裁のもとで、日本郵政公社は、民間の経営手法を大胆に取り入れまして、お客様のサービス向上運動に取り組んでおられます。そして、郵便事業の黒字化も達成されました。現に、皆様も、郵便局の窓口に行かれたときには、随分印象が変わったなというふうにお感じになることと思います。私自身もそうでございます。接客態度などを初めとして、非常に改善がなされ、驚くべき変革であるかなと思っておる次第であります。また、こんなに便利な、また安全、安心な郵便局をなぜ競争原理の中に入れなければならないのという意見が多いのも事実であろうかと思います。

 しかし、先ほど申し上げたところとも関連しますが、郵便貯金、簡易保険で集められた三百五十兆円もの大変大きなお金が、いろいろな特別会計を通じて、公社、公団、特殊法人などへ流れていることを、そしてまた、一部それが不良債権化していたりすることを明らかにして、資金の流れをわかりやすく、根気強く説明してほしいというふうに考えるわけであります。

 経済同友会では、いろいろな行財政改革を検討する部会がございまして、そこでは私ども新潟も参画しておりまして、その行財政改革のことを勉強すればするほど、実はわからなくなっているというのも現実であります。非常に会計がわかりづらい。しかし、それをよく精査していけばわかるんでしょうけれども、なかなか現実にこれを理解することは非常に至難のわざでございます。いろいろな数字を見てもよくわかりません。

 こういったことをやはり国民に理解してもらうということも非常にまた大事なことだと思っておりますし、そうしたことによって、国民がこの郵政改革の重要性というものをもう一度よく理解していただけるものと考える次第です。改革の原動力というのは、やはり国民の正確な理解からまずスタートするのではないでしょうか。ぜひ、この点につきましても、国会審議を通じて十分な御説明をお願いしたいというふうに考える次第でございます。

 以上が二番目の問題点、私のお話ししたいことでございます。

 それから、三番目の問題に入ります。

 ここは、いわゆるイコールフッティングということを申し上げているのでございますが、民間との競争条件は同一にすべきだけれども、果たして同一フィールドで共存可能かという心配があります。しかし、郵政がこれまで果たしてきた役割をもとに、新しいビジネスモデルを構築することもまた可能ではないのかなという問題提起です。

 例えば、郵貯銀行、銀行部門。既存の金融機関でも、現状はオーバーバンキングというふうなことがよく世間では言われます。銀行の数が多過ぎると言われており、銀行では既存融資先の取引確保などの競争は大変な厳しさをきわめております。例えば、新規設備資金のニーズなどは、キャッシュフローの範囲内でとどめようとしている傾向がお客様の中ではございます。

 このように、金融機関を取り巻く環境は極めて厳しい中で、たとえイコールフッティングで参入してきても、熾烈な競争が起きて、プライスのダンピングが起きて共倒れになることはないのかなということも、心配な面はあります。これは、企業金融だけではなくて、個人の金融の部分についても同じことが言えるものと思っております。

 民間金融業界では、新しい資金ニーズを求めまして、顧客のニーズの把握に懸命で、さまざまな商品を開発してまいりました。商品開発をめぐり競争が起き、国民のニーズにこたえられるなら、これはプラスのメリットと考えることができます。そういう意味では、これまでの厚いお客様とのお取引、これは郵便局、郵政の中で行われてきた厚い取引があります。その中から、生活に根差した情報をたくさん有しているはずだと私は思っております。そこで、新しいビジネスモデルを郵貯銀行は構築することもできるものというふうに私は考えるということでございます。

 したがいまして、この点、心配もありますけれども、現実に同じフィールドで検討することによりまして、さまざまな新しいビジネスチャンスが生まれてくる可能性もあるということを一つ申し上げたかったわけであります。

 四番目は、将来はすべての会社を完全民営化する方向に向かうべきであるというのが考え方でございます。

 郵貯とかあるいは簡保の会社の株式の完全処分義務は、極めて重要な話であるというふうに考える次第です。これは、国の関与が残ることにより、民業圧迫の懸念があるということとつながります。少しでも政府の出資が残っている状態では、国民は、万一経営上の問題が起きても、いずれ政府が助けてくれるだろうという暗黙の政府保証をどうしても感じてしまうと思います。これでは、民間とのイコールフッティングにはならないのではないでしょうか。すなわち、郵貯あるいは簡保への資金の流れは変わらない。この資金の流れを変えて経済の活性化を図ろうとすることが大事だとすれば、やはりこれは重要な話になると思います。

 また、完全民営化までは、イコールフッティングと業務拡大のバランスにつきましては、郵政民営化委員会とか、あるいは中立的な監視委員会などで十分にこれを見ていくことが必要なのではないかと思います。

 将来、国民の生活利便に多大な支障がないというふうに判断すれば、郵便あるいは窓口会社も完全民営化した方がよいのではないかというふうに考える次第です。いずれも、政府関与をできるだけなくして、民間の業態としてやっていっていただきたいというふうに考える次第であるわけです。

 以上、非常に簡単ではございますけれども、最後に、私のこのレジュメの表題にもありますように、よりよい郵政民営化のためにぜひ十分な国会審議をお願いいたしまして、私の意見の陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

中井座長 ありがとうございました。

 次に、佐藤康二君にお願いいたします。

佐藤康二君 私は、小千谷郵便局で外務の仕事をしている佐藤と申します。よろしくお願いいたします。

 このような機会を与えられましたので、私の思いを述べさせてもらいます。

 私の勤務する郵便局は、昨年発生をした中越大地震の被災地であり、私の家も半壊という市の認定を受けた被災者の一人でございます。このような貴重な場をおかりして申しわけありませんが、改めて、全国の皆様からいただいた温かい激励と支援に対し、被災者の一人として心より御礼を申し上げたいと思います。

 十九年ぶりの豪雪の雪解けとともに、より悲惨な現状が確認できる中、復興に向け頑張っている毎日です。

 郵便局の現場では、どうして今、唐突に民営化なのか、だれのため、何のためか全く理解できません。さらに、地域のお客様に、何で民営化するの、郵便局は残るよねとか聞かれても、全く答えようがありません。今回の理念なき郵政民営化法案に反対の立場と、被災した多くの郵便局が、そして職員が、この困難な状況を地域の人たちと一緒に乗り越えてきた様子を訴え、意見として申し上げます。

 今回の地震での被害は、マスコミ等で報道されているように、家屋の倒壊、道路の陥没、寸断、がけ崩れ、通信の不通、そしてライフラインの崩壊と、まさに言葉では言い尽くせない被害状況でした。

 速達、書留、小包配達の途中に地震に遭遇した職員は、帰局ができず、軽四輪の中でお客様の大切な郵便物を守りながら翌朝まで過ごしました。寸断された真っ暗な道路状況の中、郵便物を局に持ち帰り、施錠のできない局舎でお客様の大切な郵便や貯金、保険の書類を守るため、駐車場で一夜を明かした職員も多くおりました。

 全職員が被災者にもかかわらず、自分も助けが欲しい、救援物資が欲しい、それなら同じ被災者も同様に思っているはずだ、郵便が届くなら被災者に物資を届けようと、当局からの呼びかけと職員の自発的判断で、非常勤職員も含めて翌日から出勤し、めちゃめちゃになった局内を片づけ、翌二十四日から配達を再開しました。窓口も二十六日から再開をしました。

 私自身、地震の当日は夕食を食べたかどうか忘れるほどのパニックでした。八日間車の中で寝泊まりをし、まさに洗髪や入浴すら考えられない状況でしたが、余震もあり、自宅の後片づけもままならない中で、郵便局の仕事に従事することが地域の人に役立つことだと考え、精いっぱい頑張りました。

 道路が寸断され、通勤できない職員、通勤に何時間もかかる職員は、自分の居住地の郵便局に勤務をすることが英断され、熟知している地の利を生かした仕事がされました。道路が寸断されているところまで郵便物を運び、寸断箇所は徒歩で運び、何としても物資を届けたいと努力をしました。地震後、直ちに被災地への輸送ルートを探し、郵便物を輸送した中越郵便輸送の職員の貢献が、翌日から仕事ができた大きな要因と言えます。

 そして、郵政公社の本社、支社を初め多くのところから、小千谷局のみでも延べ六百二十一名からの業務応援をいただきました。小包は平常時、一日平均八十個です、地震後は平均二百八十五・六個、書留は平均百六十通が五百二十三・五通にふえました。ライトを照らしながらもその日のうちに被災者に届けることができたのも、迅速に応援体制を組めた現状の弾力的形態だからだと思っています。

 全国の逓信病院からの応援もありがたかったです。精神的な怖さは体験をした人じゃないとわかりません。職員はもとより、地域の皆さんをも逓信病院は診療してくれました。

 一方、同じ事業の民間宅配の対応は、十月二十五日月曜日に被災地エリアからの荷物発送を停止し、同一エリアへの全国からの荷受けを断るとの発表を行いました。その後、道路等の回復に応じて取り扱いエリアを拡大しましたが、最終的に宅急便の荷受け制限全面解除は十一月十日水曜日でした。郵便局と比べて十六日間取り扱いが停止をされました。

 これらが、地震の際、対応したごく一部です。職員が一丸となって、自分が頑張ることで市民を勇気づけようと決意し、業務を遂行したのです。

 お客様からは、「夜は車、昼は車庫の中での生活、そんな中でゆうパックは早く届き、その支援物資がとても役に立った」「地震直後は何も情報がこない。いろんな噂が飛び交いとても不安な毎日だった。そんな中でも郵便はやけに早く届く。勇気づけられた」「民間宅配は一週間も受付をしないのに郵便局は翌日から対応してくれた」「簡易保険の相談にもテキパキと対応してもらった」「避難所に居ても家は鍵が掛からない、貯金のことも相談にテキパキ対応してくれた」「避難先まで探して書留や郵便を配達してくれた」「私達は局員さんからの元気な声かけを毎日のパワーにしている」。これらの声が寄せられました。

 職員のすべてが被災者ですが、自宅の片づけもままならない状況の中、職員一人一人が郵便局員としての誇りを持って頑張ったからです。

 また、道路状況や住民の避難状況、独居老人、高齢者の安否等を配達時に確認し、把握し、対策本部に通報したことも大きな寄与です。郵便局は重要なライフラインの役割を果たしたと思っています。

 今回の震災による経験から、地域の人に愛され、親しまれる郵便局、地域の役に立つ郵便局としてこれからも公社の中でより発展させることが大切と感じました。民営化されれば、会社の経営判断に任され、利潤追求は避けられず、今回のような地域に対するサービス提供はできないと思います。

 郵便局は地域の中の中心です。三事業一体だからこそ、今回の災害に対し対応できたのです。田舎には二人局、三人局が多く、一人が三つの仕事をする中で効率性を保っています。したがって、四分社化はまず無理があり、現実的ではありません。地域のインフラを守るためにも、官でもない民でもない現行の公社形態でさらに発展、努力することが大切だと訴え、意見とします。(拍手)

中井座長 ありがとうございました。

 次に、野村学君にお願いいたします。

野村学君 私は、ただいま御紹介をいただきました魚沼市前守門村長の野村でございます。

 日ごろ、郵政事業の各般にわたり格別の御尽力を賜り、感謝申し上げます。このたび、公述人として意見を述べさせていただくことを光栄に存じております。

 さて、現在衆議院において審議されております郵政民営化法及び関連法案の制定について、私は長年、県下でも有数の豪雪地であり、また典型的な過疎、中山間地と言われてきた守門村の行政を預かってきた立場から、長い歴史の中でこの郵便局が地域に果たしてきた大きな役割とその実績を顧み、また、公的機関として村民が役場と同じように愛着、信頼を持って接し、幾多の恩恵を受けてきた郵便局でありますので、この郵政民営化の問題に私どもの地域の住民は非常に敏感になっておりますし、心配もいたしております。民営化になれば、民間企業と同様に当然収益を重視するようになる、採算のとれない山村地帯の郵便局は現在より規模が縮小され、またサービスが後退するのではないか、過疎地は統合され、なくなるのではないかと、大変深刻な、また不安な気持ちで見守っております。

 これらの実態と、郵便局が地域に貢献してきた実績等を訴え、中山間地域、過疎地域にとって郵便局の存在は大変重要な位置づけがなされてきているということを申し上げていきたいと思います。

 こうした意味で、現在審議されております法案には、もっと国の責任において施策しなければならない分野が多いと思いますので、十分審議を尽くしていただき、修正を行い、国民の大多数が支持できる形で成立を期してほしい、そういう立場で意見を述べさせていただきます。

 郵政事業の歴史につきましては、御承知のように、記録によりますと、我が国の近代的郵便制度の誕生は、明治四年、前島密の創意工夫により、東京―大阪間を三日と六時間、郵便料金は全国一律、この世界においても冠たる日本の郵便制度を、明治四年という維新の混乱している黎明期にいち早く立ち上げ、しかも料金は全国一律にした。これは国のどこの地域に住んでいても平等ということでありますから、当時の国民は非常に驚きとともに歓喜したことと思いますし、また国民の国家意識も非常に高揚したと思います。私は、このように、維新当時の指導者は世界に目を置き、全国の統一、近代化のために、常に全体知に立って英断されてきたことに深く頭が下がります。

 私どもの豪雪地帯山間地集落は、昭和五十年代の後半になって除雪道路がようやく整備されてきたというのが現実であります。それでも、大雪になりますと、除雪が間に合わず孤立することがあります。そのような中でも、郵便物は、村から応援の人夫を出しても努力をして届けてきました。除雪道路が整備されるまでは、郵便夫が峠の雪道つけでもありました。郵便屋さんが朝九時ごろ出発する時間に、ほかの地域に用のある集落の方々が集まって、一緒に雪の峠を越したのであります。いつも郵便夫を頼りにしておりました。

 豪雪の状況を簡単に紹介いたしますと、今冬は、中越地震に追い打ちをかけて、十九年ぶりの豪雪でありました。守門村では役場の位置で計測しております。役場というのはどこの町村でも大体中心の平地にあるわけでございますが、そこの最高積雪が、ことしは非常に春雪が多くて、三月十五日、最高積雪は三メートル六十三でございました。消雪が五月六日であります。

 ちなみに、この十九年前の昭和六十一年には最高積雪が、これは三月一日でございましたけれども、四メートル四十二であります。四メートル以上の積雪になりますと、すべての機能が失われる状況になるわけであります。もちろん道路除雪もなかなか大変でございますし、国道だけ最優先で除雪をいたします。早朝三時に一斉に除雪隊が出て除雪を始めるわけでありますが、どうしても辺地の道路までは短時間には除雪できません。また、四メートル以上になりますと、機械除雪したのが全部周囲に積み上げられますから、大体道路は七メートルぐらいの雪のかさになるわけでありますし、どこのうちでも屋根雪その他が一斉に降りますので、大変混乱してくるわけであります。そうした豪雪地帯の冬の雪との闘いというのは非常に大変であります。

 それから次に、高齢社会、高齢者福祉の状況について申し上げます。

 旧守門村の人口は今約五千人になっていますが、六十五歳以上の高齢者の比率は三五%強であります。現在であります。年々二%ぐらいずつ高くなってきております。したがって、合併した六つの町村には特別養護老人ホームがそれぞれに設置されております。これは、広域的にそれぞれ福祉協議会をつくりまして、計画的に、どこの町にことしはつくる、ことしはどこの村につくる、そういう形で整備をしてきたものであります。

 また、ひとり暮らし老人家庭も非常に多くなってきておりますし、村の大半が老人だけの家族でもあります。これも郵便局員の方々から、近くに配達の折に声をかけていただいたり、住民と密接な対応をされてきております。

 特に、高齢者の方々は、郵貯、保険、年金の支払いは大半の人が郵便局を利用しております。車に乗る人が少ないので、村の患者輸送バス等に乗ったり、歩いたり、冬場は本当に大変な状況であります。先般、六月十六日に用がありまして郵便局に参りましたが、お年寄りの方々が大勢で、私は用を足さずに帰りました。なぜこんなににぎわっているのだろうか。これは年金支払いの翌日だったからでありました。

 高齢者の皆さんは長い歴史の中で郵便局と一体になった生活をしてきておりますので、車には乗れないし、郵便局と診療所が遠くなることが一番心配だと言っております。郵便局までこの村からなくなればもうここに住んではいられないと極端な発言をする人もあります。

 また、こういった山地では診療所を維持していくことが非常に重要であります。村は非常に力を入れておりまして、診療所に対して患者バスを設置いたしまして、どこの地域からも二回ぐらい回る形をとらせてもらっておりますが、こういうのを利用するとかそういうことで、郵便局というのは本当に診療所、役場と同じように大変重要視しているわけであります。

 また、私の村も含めまして、今ほどもお話がございましたように、この地域全体が中越大震災の大きな被害を受けた中心地でもあります。それぞれの町村の郵便局員も、余震の続く危険な中、役場職員とともに昼夜兼行で災害対策に当たっていただき、また村でも、地震発生当時、約三千人の方々が学校等の施設や車の中で避難生活に入りましたが、局員も村職員と一緒になって安全避難の指導に当たっていただきました。その活動記録集も発行され、その勇気ある姿が写されております。感激とともに感謝の念でいっぱいであります。

 すべて市場原理で改革を進めるということに、地方は大変危機感を持っているわけであります。

 我が国は、高度成長期が進んでおります昭和四十年代には、一億総中流時代と言われ、所得格差の少ない国になりました。しかし現在は、大都市を中心に成長を続け、過疎地帯は、誘致工場は撤退し、農林業は後退し、少子高齢化は進み、厳しい環境が続いているのが現状であります。過疎の農村部の所得は著しく低下していると考えております。

 財政の厳しい時代に入りましても、最低限の文化生活を過疎地域と言われる地域にも保障していくというのが国のあり方ではないでしょうか。やはり、均衡ある発展を理念として、行政の光を公平に当てることが重要であると思っております。環境問題で山を守ることも、水資源の涵養や空気の浄化等多面的機能を持つという中山間地域の農業についても、地域で今幾ら努力してもやっていけない部分があるわけであります。こういうことについては、環境問題とか、やはり国全体の大きい問題点でございますので、国からいろいろの支援をすることが必要である、こんなふうに私は考えております。

 郵政の民営化についても、過疎地で銀行等の金融機関のない地域、唯一の公的金融機関であった郵便局は、地域住民が最も頼りにしている機関でもあります。将来に向けて安定維持が可能になるよう修正を加え、国民の合意が得られる形で成立を期するように最善の御尽力をお願いしたいと思っております。

 明治維新に制定した郵政法の精神が今日まで輝き続けてきたように、これから百三十四年後になって、すばらしい改革であったと高い評価を得られるように、議員各位の一層の御尽力をお願いし、意見陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

中井座長 ありがとうございました。

 以上で三人の意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中井座長 なお、伊藤陳述者の到着をお待ち申し上げますが、その間、委員各位からの質疑を行いたいと思います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。

大野(松)委員 座ったままで進めさせていただきます。

 自由民主党の大野松茂でございます。

 陳述人の皆様方には、貴重なお考えをお示しいただきまして、まことにありがとうございました。

 殊に、新潟中越地震の大災害から八カ月が経過いたしておりますが、被災者の皆さんに心からのお見舞いと、そして早期復旧復興に当たりました関係皆様方の御苦労に対しまして、心から感謝を申し上げる次第でもございます。

 初めに、佐藤陳述人からもお話がございました中越地震に関連してお伺いをいたしたいと思っております。

 十月二十三日に震度七の激震に襲われて甚大な被害が発生いたしましたこと、ただいまもお聞きをいたしました。被災者の皆さんの恐怖感は、まさに想像を超えるものがあったろうと思っております。道路や鉄道、電気、ガス、そして水道、こうしたライフラインが各地で寸断をされて、住民の皆さんは恐らく絶望感さえお持ちになったんだろう、こうも思います。

 郵便局の皆さんは、日ごろから、市町村行政と連携をいたしまして、さまざまな貢献活動をしていただいております。実は私も市長の経験者なんですが、その中で、貢献活動についても承知をいたしておりますし、感謝もいたしている立場でもございます。住民の安全を守る防災協定、子ども一一〇番、道路情報提供、あるいは土砂災害協定、ひまわりサービス、こうしたことが地域で郵便局の皆さんによって展開をされております。言うなれば、こうしたことの一つ一つが住民の皆さんとの厚い信頼関係を築いておられるんだ、こうも思っております。

 このたびの地震に際しましても、ただいまお話をお伺いいたしましたように、郵便局の皆さんは、日ごろからの取り組みの経験を発揮されて対応されたんだろう、このようにも思うわけでございますが、現実には、例えば、一番頼りにもなることでもございますが、郵貯や簡保の非常扱い、こうしたことに対しても、恐らく多くの皆さん方に喜ばれて対応していただいたんだと思います。

 今回のこうした大きな地震に遭遇されて、そこで得た郵便局ならではの教訓といいますか、何かお聞かせいただくことがございましたら、お願いいたします。

佐藤康二君 貯金は、スペース号というのがすぐ参りまして、その場で扱いもありましたし、簡保に関しても、非常取り扱いということで、証書がなくてもお支払いをしたり、あるいは、大分死亡者が出たわけですけれども、新聞でのものを現認して急遽取り扱った、そういう取り扱いもしてきたところでございます。

 私も貯保の外務員なんですけれども、やはり今回は、避難所生活が圧倒的に皆さん多いわけでございます。したがって、満期のお金ですとか貯金を、やはり現金を家庭に置くことが非常におっかないわけでございまして、そういう部分では、支払いを待ってくださいとか、局にもう少し保管をしておいてくださいとかというお客様が随分おられました。

 私ども貯保の貯金の関係では、救援物資がかなり行き届きますと、そんなにお金が必要ないという状況が出てきますので、扱い量そのものがふえたという状況はないんですけれども、やはりこれからが、皆さん方が一番復興の中で大変お金が必要になってくるということで、これからそういう部分での対応が忙しくなってくるんだろうなというふうに思っています。

 それとあわせて、救援物資も今、神戸のときと違いまして、非常に早いわけであります。したがって、できるならば、やはり被災をされた方は、電話が通じますと、書留というか現金を、見舞いをしてくれるのなら送っていただきたいという要望のもとに、そういう意味では現金書留の扱いが非常に多くなってくるというのがやはり特徴だったんじゃないかというふうに思っています。

大野(松)委員 野村陳述人にもお聞かせいただきたいと思っておりますが、今お話にもありましたように、魚沼市の誕生の直前でもありまして、この災害は大変な御苦労が伴ったんだろうと思っております。

 守門村の村長さんというお立場の中で、今郵便局とのかかわりもちょっとお話をいただいたところでございますが、日ごろから、郵便局とのいろいろな援助協定といいますか、支援協定といいますか、そういうものも既に結んでおられたんだろうと思いますけれども、そういう中で、行政が期待したとおり郵便局には動いていただけたのかどうか、ちょっとその点をお聞かせいただきます。

野村学君 今ほどの件でございますけれども、率直に申し上げまして、私どもは郵便局と本当に一体になって、今までも災害の関係だとかそういうことについてもいろいろ協定等を結ばせていただいておりますし、また、年に二回ほど郵便局の幹部と村の幹部が懇談会を開きまして、いろいろな問題点をお互いに交換して、お互いに協力できるものとか、あるいはまた、郵便局の方で、講演会をやるとき、村がいろいろやるときに、講師を紹介してくれるとか、それに若干資金を出してくれるとか、そんな関係で、まさに村の行政と一体な形で今まで大変御尽力をいただいてきております。本当に感謝しております。

大野(松)委員 郵便局もそうですし、役場も、ともに職員の皆さん自身が被災者であった、こういう状況の中で、迅速にしてまた果敢な対応をされたということだと思います。

 郵便局は、よく言われることでございますが、地域とともにある郵便局、このように合い言葉に言われるわけでありますが、こうした緊急時にまさに信頼のネットワーク、安心のネットワークの機能を示されたこと、それがまたこの信頼の何よりのあかしであろうと思っております。それぞれのお取り組みに心から感謝を申し上げますと同時に、郵便局の存在を住民の皆さんに強く印象づけたもの、このように思っております。本当にありがとうございました。

 郵便局そのものが、この百三十年という歴史の中で、地域住民とまさに一体として今日の歴史を重ねているわけでありますから、まさに、地方における郵便局のお取り組みというものは私どもも一層期待をするところでもございます。

 こうして、郵政の事業というのは、行政、財政、金融、財政投融資、あるいは通信、物流、幅広く関係しております。それだからこそまた、民営化は改革の本丸中の本丸、こう小泉総理は叫ばれるのだ、こう思っております。

 小泉総理が郵政改革に着目したのは一九八〇年代でありますから、郵政民営化について、二十年を超える長年にわたっての主張でもあります。以来、官から民へ、民でできることは民で、こういう方針のもとで、小泉総理は並々ならぬ熱意と情熱を持って取り組んできたもの、このように私たちは認識をしております。

 しかし、先ほどもお話がございましたように、民営化につきましては、さまざまな疑問や不安、懸念をお持ちの方々がおられることもまた事実でございます。

 実は、自由民主党におきましても、昨年の十月以降、総務部会、財政金融部会、国土交通部会の三部会から成る郵政合同部会を立ち上げまして、三十三回にわたって議論を進めました。また、総務部会と郵政政策小委員会が合同会議を持ちまして、これも十回を超える議論でございました。しかも、時には深夜に及ぶこともしばしばございまして、激しい議論を重ねてまいったところでもございます。この郵政民営化の特別委員会も、もう既に国鉄改革のときのたしか七十六時間を超えたものとお聞きをいたしております。

 そこで、水間陳述人にお伺いをいたしたいと思っておりますが、過去の国鉄改革や電電公社の民営化は、なぜやらなければならないかという理由がだれの目にも明らかであったために、大多数の国民の支持のもとで民営化が行われたという経緯がございます。しかも郵政事業は、三事業とも現在までのところ、その経営は順調でありまして、黒字経営を続けております。郵政公社に移行して二年しかたっていないところではありますが、その上におきましても、総裁以下役職員の皆さんが一丸となって、目に見える経営改革を行ってきております。

 だからといって、このままでよいのか、このままでいいとは私は思っておりません。人口減少社会など将来への課題も極めて多い、加えて、先進諸国の状況を見ましても、準備に相当の期間が必要とされて対応いたしております。ドイツでも、一九九〇年代に民営化の準備が始まりまして、完成するのは二〇〇八年の予定となっております。国民の関心が低いのになぜ民営化を急ぐのか、こういう声もありますが、私は、将来のために今求められる決断だ、こう思っております。

 先ほども御披瀝をいただいたところでございますが、こうした考えの中で、水間陳述人のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。

水間秀一君 私は、今のお話につきましては、なぜこの民営化が必要なのかということにつきまして、国民の間でまず十分な理解にまだ至っていないような気がいたしますということで、十分な理解を求めることが必要であるということは先ほどお話し申し上げました。

 まさに、現実の郵政の仕事、郵政公社の仕事そのものを見れば、黒字化になったり、かつての国鉄のような時代とはやはり比較はできないと思います。しかし、私が先ほどお話し申し上げたように、このままの状況を我が国が続けていって果たしていいんだろうかということの素直な疑問からスタートしております。すなわち、資金の流れをやはり変えていきたいということからの主張なわけです。

 先ほどドイツのお話が出ました。ドイツでは東西のドイツの融合とか統合という話があって、東側の方にたくさんの郵便局があったとか、いわゆる統合によって郵便局の数も減ったというふうな事実もあろうかと思いますけれども、あれは諸外国の一つの例としては参考にはなろうかと思いますけれども、日本の国の場合には、先ほど来お話がありますように、地域に密着したインフラストラクチャーとしての郵便局のあり方ということは、十分に私もやはり評価すべきだろうと思います。

 しかし、この業務をなぜ官でやらなければいけないのかというふうな素直な疑問も、一つには私自身は持っておるわけであります。今の仕事を、官でなくて民でもできるんじゃないかなというふうな立場に一つは立っております。

 ちょっと先ほどのお話に戻りますけれども、郵便局の今回の民営化の必要性というのは、目に見えないがゆえに国民の理解をいまいちまだ十分に得られないという現実を、やはり私どもとしても直視したいし、その辺、理解を進めていく必要があるというふうに考えております。

大野(松)委員 いわゆる民業圧迫ということなんですが、引き続きお聞かせいただきたいと思います。

 民営化には大事な要件として経営の自由度ということがあります。一方で、巨大な国営の金融機関を民営化いたしますれば民業圧迫になるのではないかという懸念がございます。経営の自由度と同時に、民間とのイコールフッティングのバランスをとって、そして民業圧迫にならないようにすべきである、こういう声も強く出ております。このことについてはどうお考えでしょうか。

水間秀一君 ただいまの点につきましても、例えば民営化後の会社に対しても経営の自由度を与えるべきであるという御主張は、私はそうすべきだというふうに思います。

 そうであればこそ、私、先ほどちょっとお話し申し上げましたが、郵便局さんは地域でのインフラの一つでございまして、地域住民の皆様といろいろな生活のステージごとに非常に密着したお取引を継続されてきておられるということだと思います。したがって、先ほどの震災のときのようないろいろな対応ができた。ということであると、そこにはいろいろな商売のチャンスがたくさんあるはずです。そのチャンスが、今までは官でやっていたのである程度規制がされていたわけですから、そこを自由化、規制を外すことによって自由度を認めるということにすべきだと思います。

 しかし一方で、民間側からすれば、やはりそこには競争の条件というものをイコールにしておくべきだということでございますので、先ほどの、官の関与をできるだけ少なくすることによりそれを達成し、そして、新しい郵政についても、その自由度もあわせて達成するということでいいのではないかと考えます。

大野(松)委員 今のお話にもあったんですが、膨大な郵貯・簡保資金、官のお金が民のお金になるということです。

 郵貯は世界一の金融機関でありまして、日本の四大メガバンクの合計よりも多くの資金量を持っております。また、簡保につきましても、契約額は日本最大の生保会社の三倍の規模がある、こう言われているわけであります。郵政民営化によって、それが民間のお金になる道が開けることによって、日本の経済ももっと元気になる、こうも言われております。

 本当に資金の流れが官から民に流れることができるのかという疑問の声もまた一方では聞かれるわけなんですが、現実に、地方経済の活性化、この上で、資金の流れはどうあったらよいのか。また、こうした資金の流れをどのように期待されているのか。その点について、お考えをお聞かせいただけますか。

水間秀一君 ただいまのお話につきましては、これは、現実的には非常にいろいろなファクターを考えていかなければならないと思います。私自身、今ここですぐアイデアは何かというふうに御質問されても、ちょっと適当なお答えが見つかりません。

 しかし、一つだけ私が申し上げたいのは、地域で集められた郵貯の資金、これがやはり地域で使われることが大事だろうと思っておりまして、そのための還流の方法をいろいろとこれから考えていかねばならない。それは、例えばで言えば、郵貯で集まった資金が、一般の民間銀行との協調融資とか、そういうふうな形で回ることも一つはありましょうが、しかし今、現実、正しい回答は何かとお尋ねになられましても、私としては、残念ながらお答えを持っておりません。申しわけありません。

大野(松)委員 地方にどういう活力をそれで呼び戻すかということも大事なテーマだと私は思っております。

 野村陳述人にもちょっとお尋ねしたいんですが、従来、市町村では、公共施設の建設に当たりまして、地方公共団体の郵貯資金、簡保資金貸し付け、こういう制度がありまして、それぞれの市町村の行政の中では大きな財源的な裏づけを持っておったわけでありますが、このことについては、野村陳述人はどういう思いをお持ちですか。

野村学君 私どもの学校建築、それから健康センターの建設、そういうときに郵貯の資金を活用させていただきました。そうすることによって、またそこの施設の人たちが、郵便局といいますか、またそのありがたさといいますか、そういう形の中で本当に効率的に利用させていただきまして、感謝しております。

大野(松)委員 時間がなくなったんですが、それぞれの皆さん方のお立場から御発言いただきました。私はやはり、今日までの議論の中から、国民の皆さん方の御理解をさらに進めて、この改革を進めていくべし、こう思っているわけであります。

 佐藤陳述人、今まで公社の中でもさまざまな改革が進んでいるわけなんですが、郵便局の現場で、民営化を進めていくということを、あえて今、現場で、民営化というものに対する職場の皆さんの不安といいますか、それは何なんですか。率直にお聞かせいただきたいと思います。

佐藤康二君 私自身が考えることは、今、やはり公社になって、四年間まずやってみるということで一生懸命努力をみんなでしてきているわけであります。その結果がまだ中途なかで、急にこういう形で出てきたこと自体が、まさに、一職員として全くわからないということが一番大きい部分だろうというふうに私自身は思っております。

大野(松)委員 改革に伴うさまざまな痛みというもの、これはどんな改革を進めていく上でもやはり乗り越えなければならないことであろうというふうに思っております。

 率直に陳述人の皆さん方から御意見をいただきましたことをさらに大事にしながら、この法案成立に向けて私どもも努力してまいります。ありがとうございました。

中井座長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。座らせていただいて質問させていただきます。

 まず、陳述人の皆様には、きょうは、お忙しいところ、また大変な雨の中お越しをいただきまして、私からも感謝申し上げたいと存じます。

 また、新潟県の皆様は、昨年、豪雨災害あるいは中越地震で大変な災害を受けられました。心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げたいと存じます。

 先ほど、この委員会が始まる前に、お昼の時間に川上副知事さんがごあいさつにお見えになって、この上越市というのは郵便の父である前島密翁の生誕地であるということを教えていただきまして、私は知らなかったんですけれども、きょうこの場で地方公聴会をやっている、大変えにしがあるなというふうに感じた次第でございます。

 まず、野村陳述人にお伺いをいたしたいと思います。

 幾つか御心配の点をおっしゃっていただきました。民営化になると、採算のとれない郵便局が規模を縮小するのではないか、サービスが低下するのではないか、統廃合をするのではないかという心配があると。また、高齢者の皆さんが、これまで郵便局と一体となっていた生活を送っていらっしゃいましたから、郵便局と診療所が遠くなることが一番心配だという、まさに生活に根差された御心配をお伺いさせていただいたと思っております。

 そこで、法案を作成する経過の中で、いわゆる過疎地における郵便局をいかに維持するかということで、さまざまに検討されておりまして、この法案の中でも幾つかの工夫がなされておりますので、その点についての御評価を伺いたいと思います。

 まず、郵便局の設置の基準をどうするかという点でございますが、法案では、「あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならない。」というふうに規定をしておりまして、具体的には総務省令でこれを定めるというふうになっております。

 政府も総務省令の案を国会に提出されまして、どういう案かといいますと、郵便局の設置基準として、「会社は、過疎地については、法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨として次に掲げる基準により郵便局を設置するものとする。」ということで、この法律を施行する際、現実に存在する郵便局のネットワークの水準は維持します、特に過疎地においては。これを総務省令で明示するということをまずされております。

 したがって、これがきちんと守られれば、まず、この法律を実際に施行するときに存在する郵便局はそのままその水準は維持される、設置基準として維持されるということになろうかと思います。

 さらに、サービスということで、特に貯金、保険の金融サービスがどうなるかということが一番御心配のことかと思いますけれども、これにつきましても、法律あるいは政府・与党合意の中で幾つかの対応がなされております。

 一つは、二〇〇七年に民営化がスタートをいたしまして、二〇一七年から完全民営化するわけですが、その十年間は移行期間というふうに言っておりますけれども、まず、民営化が始まるときに四分社化するわけですが、郵便貯金会社、郵便保険会社に対してはみなし免許を与える、まだ完全な民間の銀行、保険会社にはなっておりませんので、みなし免許を与える。そのみなし免許の条件として、郵便局との安定的な代理店契約を結ぶということを条件にする。

 当初は、移行期間十年間ということだったようですけれども、その後、移行期間十年間を超えて郵便貯金会社と郵便保険会社が窓口会社と安定的な代理店契約を結ぶということをもってまずサービスの維持を図ろう、さらには、民営化が始まりまして、仮に、採算性の面から貯金とか保険サービスの維持が困難になる場合には、社会・地域貢献基金から郵便局の会社が資金交付を受けて、これによって過疎地等の採算性の悪い郵便局における金融サービスの提供を確保するようにしていくということも工夫されております。

 この基金の規模も、法律上は一兆円積み立てるというふうに義務づけをしておりまして、これは政府・与党の合意では二兆円まで積み立てることが可能であるということをもちまして、金融サービスも維持していこう、こういう工夫をさせていただいているところでございます。

 したがいまして、こういうことがきちんと実行されれば、先ほど野村陳述人が申し上げたような御心配はかなりの分解消されるのではないかというふうに思っておりますけれども、この点、いかがでございましょうか。

野村学君 今ほど御説明いただいたように、私どもも、今、法律的な中で、そのことは一応理解しております。理解しておりますが、現状を考えた場合に、例えば、先ほど冬の状況を若干お話し申し上げましたが、本当に効率の悪いところを、遠い地域までそういうものを本当に運んでくれるか、そういう、だれが考えても本当に大変な効率の悪いところまで郵便関係が配らなければならない、そういうようなことが、やはり民間になった場合には、効率性がどうしても出てきて、数少ないところまで、遠いところまでというようなのができなければ、一日ぐらい置くとか、端的な例を挙げれば、そういうことだと思います。

 利益を追求していく形の中では、法律で幾ら攻めても、民間は競争でやはり経営をしっかりとやっていかなければならないわけでありますから、協定だとかそういうこと、本当に大事なことでございますけれども、基本的には、私は、そういった過疎地域にすべて残ってもらいたいとか、そういうことでなくて、やはり窓口的、そして金融関係が本当に安定して利用ができる、そういう規模のものを全部なくさないで残してもらいたいというのが一般の人たちの気持ちだと思いますし、またそこへ住む人たちは、自分たちの効率性が大変悪いということで、やはり民間になればどうしても郵便局は撤退するというような、そういう心配が一番大きいわけでございます。

 ですから、今の政府のお考えの、そういうことがきちんと本当に長い期間にわたって実行していただければ、これは全く不安が解けるわけでございますので、いいわけでございますので、ぜひそういう精神をきちんと私どもはお願いしたいということと、本当に過疎地域は大変広い地域でございますので、そういう中で高齢化が進んで、そこにぽつんぽつんと行かなければならないことは、だれが考えても非常に非効率でございますので、そういう心配が私どもにある、こういうことでございます。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 まず、郵便につきましては、民営化しても、いわゆる全国津々浦々郵便を届けるという義務づけを郵便事業会社に引き続き課しておりますので、その点についてはどんなところでもこれはやるということは間違いございませんので、その点については御安心をいただきたいと思います。

 それから、過疎地域でも金融関係のサービスを引き続き維持してほしいということでございました。

 先ほど御説明申し上げましたように、いろいろな工夫がなされておりますので、それをしっかりとやるということが重要かと思います。野村陳述人がおっしゃったような、いろいろな御心配がまだまだあるということも私ども踏まえて、御心配が解消されるように、いろいろな場面でやはり説明をしていかなければいけないなというふうに改めて思った次第でございます。

 続いて、佐藤陳述人にお伺いをいたしたいと思います。

 昨年の中越地震の後、御自身も被災者であるにもかかわりませず、御自宅の後片づけも後回しにされて、郵便局の業務に従事することが地域の方に役立つということで、本当に献身的におやりになっていたということを伺いまして、本当に私どもも感謝申し上げますし、また感動いたしたところでございます。

 特に、民間の宅配便が被災エリアで配達を中止する一方で、郵便局がすぐに配達を再開される、窓口業務も再開されるという形で、本当に地域の皆さんに役立ったということをお聞きしまして、改めて本当に郵政公社の皆さんが頑張っていただいたなということをお聞きした次第でございます。

 ところで、今も申し上げましたとおり、民営化法案の中でも、郵便事業会社につきましては、引き続きいわゆるユニバーサルサービスを義務づけておる、全国津々浦々郵便を届けるというサービスを義務づけておるということから、貯金会社、保険会社については、将来的には完全に株式を処分して完全民営化をするという一方で、郵便事業会社と郵便窓口会社につきましては、将来とも政府の関与が残る特殊会社という形での民営化になっております。

 具体的に申し上げますと、郵便事業会社、郵便窓口会社は持ち株会社の一〇〇%子会社、その持ち株会社の株式については処分をしますけれども、将来とも政府は三分の一の保有義務をかけているということになりますから、将来的にも政府の関与は残るという形になるわけでございます。

 こういった形で、特殊会社という形での民営化となりますけれども、そこでお伺いしたいのは、こういう形態での民営化であれば、先ほど陳述をしていただいたような地域における公共サービス、地域の方にお役に立てるようなサービスも引き続きやっていただけるのではないかなという期待があるわけでございますけれども、その点、佐藤陳述人、いかがでございましょうか。

佐藤康二君 そういう会社が最終的にどういう形になるのかというのは、私は余りにも高度過ぎてわからないんですけれども、やはり今私らが考えているのは、特定局は今三事業一緒にやっているわけであります。午前中に郵便配達をし、午後から貯金、保険の仕事をやっているわけであります。ですから、私は、その三事業を一緒にすることがやはりユニバーサルサービスを維持し、地域の人に信頼をされることになっているんじゃないかというふうに思っているわけであります。

 ですから、会社がそういうふうに、確かに政府が保証するんだかもしれないですけれども、現状、こういう形で分割をされるということは、やはり私はサービスの低下は免れないんだろうなというふうに思っています。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 ここのところは、三事業一体であることが地域の方の信頼を得ているということは、確かにそうかと思います。ただ、今回、四分社化したといたしましても、窓口会社としては、貯金あるいは保険のサービスも代理店あるいは保険募集人という形で委託をされるわけでございますね。したがって、住民の皆さん、国民の皆様に対しては引き続き、郵便のサービスも貯金のサービスもあるいは保険のサービスも、郵便局で一体となってこのサービスが提供されるという形は現状とは変わらない、恐らく変わらないということになると思います。

 ただ、心配なのは、先ほど野村陳述人がおっしゃったような、いつまで、将来とも貯金サービスや保険サービスが過疎地でも本当に維持されるのかどうか、ここが最大の御心配の点かと思いますので、それについては、先ほど申し上げたようなさまざまな工夫をする中で、過疎地の郵便局においても金融サービスが維持されるような形でしっかりと、法律が成立したとしても、私どももここはきちんと見守っていかなければいけないというふうに考えております。

 では、水間陳述人、恐縮であります、ありがとうございます。

 水間陳述人のお話の中で、官から民への資金の流れ、これが変わるということが大きなこの郵政改革の意義だということで御指摘いただきまして、私も全くそのとおりだというふうに思っております。なおかつ、改革の原動力は国民の正確な理解だという御指摘も本当にそのとおりだというふうに私も思っております。なかなか、郵政民営化、幅広いテーマを抱えておりますし、私も有権者の皆様とお話をしても、なぜ民営化が必要なんだということがまだ十分理解されていないということは私も感じます。

 特に、資金の流れというのは、おっしゃるように、財政投融資というのはなかなか説明するのが難しゅうございますから、そこの資金の流れを理解していただくというのは簡単なことではないと思いますけれども、簡単に言えば、今まで郵便貯金あるいは簡易保険という形で国民の皆様から集めたお金がほとんど官の分野に投資していた、それが民間の分野にもお金が流れるようにするんですよというふうに説明をしますと、初めて、ああ、そうなんですかというふうに御納得いただく方もいらっしゃいまして、そういった面でのより丁寧な説明というのは私も本当に必要だというふうに思っております。

 ところで、お聞きしたいのは民業圧迫の点なんですけれども、この点については、御心配しなきゃいけないというところと、いや、そんなに心配しなくていいと、両面あろうかと思いますので、両面の御質問をしたいと思います。

 まず、心配なんだという面での御質問なんですが、水間陳述人、第四銀行にお勤めというふうに伺っていますので、地域金融機関の実情はよく御承知かと思います。特に、巨大な規模の郵便貯金会社が完全民営化されると、地域金融機関との競争ということでは大変厳しいということが容易に想像されるわけでありますけれども、その点、いかがかということ。それから、先ほどお話の中で、地域で集めた資金を地域に還元するということがやはり必要なんじゃないかと。実は、国会で参考人で加藤寛先生をお呼びしたときに同じことを加藤先生がおっしゃっておりまして、地域で集めたお金を地域で還元するためにも、将来的には郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社は地域分割が必要なんだというふうな御指摘もございました。この二点、まずお伺いしたいと思います。

水間秀一君 まず最初の、地域金融機関との競争の激化ということにつきましてお答えします。

 間違いなくやはり競争の激化は起きるものと思います。これは、まずもって、現在の地域の金融の構造といいますかメカニズムというのを見ると、資金の需要サイド、つまり企業あるいは個人という需要サイドと、それから資金を供給する金融機関、いわゆる供給側と需要側のバランスが今崩れている。

 先ほどちょっとお話ししましたけれども、昔であれば、昔という言い方は正しくないかもしれませんが、資金の需要が結構強いときには金融機関は割と簡単に融資ができました。しかし、今、先ほどお話ししたように、キャッシュフローの範囲の中でしか設備投資をしなかったりするような世界では、需要そのものが非常に少なくなってきているわけです。したがって、金融機関の貸し出しのボリュームというのはなかなか伸びていないというのは、皆様御案内のとおりだと思います。これは全国的にもそうですし、地域でも同じですね。

 個人の分野におきましても、今、金融機関は個人を結構ターゲットにしていろいろな融資戦略を練っていますけれども、そこには逆に今度競争が、供給側の方の事情でいろいろな銀行がそこへまた貸し出しにいこうとするわけですから、そこでもやはり需給のバランスが崩れているわけですね。

 そういう構造が、これは新潟だけではなくて全国的にあろうかと思いますけれども、そういったところに新しい金融機関が登場して、イコールフッティングだとはいいながら参入してくるということは、これはやはり大変な競争の激化につながるんだろうと思うわけでございます。

 しかし、私も先ほどちょっとお話し申し上げましたが、例えば、郵便局さんがこれまで地域の皆様といろいろなお取引をやっておられて、いろいろな生活のサイクルも大変よく皆さん存じ上げているんじゃないかと思うんです。そういったところで、資金の需要発掘に対しては非常にたけていらっしゃるかもしれない、あるいは、今までのような既存の融資メニューではなくて、新しい融資商品も開発できるかもしれないということで、むしろ、競争は厳しくなるけれども、また新しいビジネスチャンスが発掘されてくることもあると思いますので、心配だけれどもやはりそこはやっていくべきではないかなというふうに思うわけでございます。これが最初のお答えでございます。

 それから、地域で集めた資金を地域で使えるように地域分割してはいかがかというお話は、私はちょっと地域分割というところまで頭がまだ回りません。イメージとしては、やはり大事な話でございまして、地域の資金の循環が、その地域の中でぐるぐる回ることによって活性化するということは自明の理なんですけれども、そこに至るまでもう少しやはりステップが必要なのかなという気がしておりまして、とりあえずは今の民営化をまず推し進めていって、そして、そこである程度形が見えた段階で、分割会社なりをまた考えていくことの方が現実的ではないかなというふうに思っております。

 以上です。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問、もう一度水間陳述人にお伺いしますが、今の民業圧迫という面で、そんなに心配要らないんじゃないかという、今度は逆の面での御質問なんです。

 実は、政府の方で骨格経営試算というのをやっておりまして、郵便貯金銀行で申し上げますと、民営化開始時点で大体二百二十兆ぐらいの資産だろう、それが十年間で少しずつ減りまして、二〇一七年、完全民営化時点では百四十兆円ぐらいに減るだろうというふうに予想されています。その百四十兆円のうち、約四分の一の三十五兆円をリスク資産の方に回す。リスク資産というのは、貸し付けだけではなくて、資産担保証券ですとかシンジケートローンだとか、あるいは株式ですとか、いろいろな形かと思います。

 この三十五兆円という規模は結構大きな規模ですから、私も、これは本当に民間の銀行の融資先を奪うようなことにならないのかということで質問しましたところ、二〇一七年、十二年先には、日本のGDPが現在の五百兆から大体七百兆から八百兆ぐらいに広がっているということがまず想定にあると。その上で、今確かに企業はキャッシュフローの中で投資をしていますけれども、そういう大きな経済になってくれば、大分金融状況も変わって資金需要も相当出てくるであろう、であれば、民間の貸出先も奪わずに、郵便貯金銀行がリスク資産を持つことも十分可能だ、こういう答弁がございました。

 確かに、十数年先どういう状況になっているかわかりませんけれども、今のような金融状況がこれから十年も続くということは、逆に日本経済にとっては大変なことでありまして、ぜひそういうふうに好転をしてほしいなとは思いますけれども、その点、水間陳述人、いかがでございましょうか。

水間秀一君 今のお話にもございましたように、十年先を見ることは非常に難しくて、私自身も、銀行のまさに経営者ではないわけなので、ちょっと何とも申し上げられませんけれども、三十五兆円規模のリスク資産がふえてくるということは、やはり大変なボリュームであることは間違いないと思います。

 では、どういうメニューでそれを構成するのかということは、非常に議論がまた出てくる問題だと思います。民営化したから、さっきの経営の自由度ということを追求しなければならないということからすれば、その経営者が決めていくべきことなのかもしれませんが、僕がちょっと心配なのは、果たしてそういうことをやっていける人材がそろっているのかということが非常に心配です。

 つまり、個人の分野については、生活者、郵便局を御利用される方々のいろいろな実情は御存じだろうと思いますけれども、例えば企業ファイナンスとかということになってくると、ちょっと話は別だろうと思いますので、経済の規模の拡大も果たしてあるかなということも疑問ですし、今のお話につきましては、必ずしもそう絵にかいたようにはならないんじゃないかなというのが私個人の考え方でございます。

 以上でございます。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

中井座長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 きょうは、お三方の意見陳述人の方、大変貴重な意見をありがとうございました。

 私は、今の政府提出の郵政民営化関連法案については反対の立場であります。ただ、五十年後、百年後まで今の経営形態でいいのかどうかということは全くわかりませんが、少なくとも郵政公社をつくってスタートさせたときには、とりあえず四年間やってみようじゃないか、四年間やってみて、中期経営計画というのを立ててもらって、それを報告していただいて、その上で、もし問題点などがあれば、経営形態も含めてということになるのかもしれません、中身についてはわかりませんけれども、その時点で議論をするということだったと思っていたんですけれども、今回こういう形で提出をされているということについては、私も余りよく理解ができないところでございます。

 お三方それぞれに意見を伺いたいんですけれども、もともと、中央省庁等改革基本法の三十三条の一項の六号で、公社をつくるという措置によって「民営化等の見直しは行わない」、こういう条文が入っておりました。先ほど、佐藤さんも、恐らくそれに関連するのかなという御意見がありましたけれども、今回はその基本法の条項はそのままにして提出をされているわけです。

 法制上のことについての意見を求めているわけではございませんで、「民営化等の見直しは行わない」、結構これは当時も報道もされておりましたし、有名な話のような気がしますし、その後郵政大臣等がそういった発言をされていたということについて、当時あるいは今現在どのように受けとめられているかということについて、お三方それぞれ御意見をお聞かせいただきたいと思います。

水間秀一君 私は、今のお話のいわゆる郵政公社をつくって四年間見てみようではないかということについては、残念ながら、済みません、そういう十分な理解をちょっと余りしておりませんでした。

 しかし、では今なぜなのかというか、唐突な感じがするということについては、私なりの考え方を申し上げますと、今回、二〇〇七年四月にスタートして、移行期間が十年間という期間が設定されています、二〇一七年でしたか。それを考えたとき、非常に長いなという感じを、実は正直言って持っています。つまり、財政事情の悪化ということを考えたり、我が国のいろいろな構造改革全般の見直しをしていく中で、十年間というスパンはちょっと長過ぎるという感じがしておりますので、そういう意味では、唐突というよりも、逆に申しますと、やはり今手をつけなければならないんだろうかなというふうな感じを持っております。

佐藤康二君 私も、確かに公社になるときにこのことをずっと聞いてきました。したがって、私らは、やはり四年間精いっぱい黒字に頑張らなきゃならぬということで、それも特に短期間でやろうということで、二年間のうちに頑張ってきた経緯があります。それは、それなりに職場は本当につらく厳しい状況で頑張ってきたわけであります。まず、そのことはわかっていただきたいというふうに思っています。

 それで、私は、実は最初の原稿を書いたときに、この部分についてかなり辛らつに書いたのでやめたんですけれども、これは法律ですよね、決まっていることだと思うんです、はっきり言わせてもらうと。それを何ら改正もない中で出してきているわけですから、私は、法を犯しているのじゃないかというふうに自分なりに理解しています。

 私らの職場では、今、コンプライアンスですとか個人情報ですとか、これは非常に厳しいです。これを破ったら処分ですよ。では、どうして皆さん方は処分にならないんですか。申しわけないですけれども、生意気なことを言って悪いんですけれども、私はそう思います。

 特に、私も子育てをしてきたときに、子供には、法を守りなさいと、ちゃんとしたそういうことを私は教えてきたつもりでいます。ですから、そういうことからいうと、ちょっとそこのところは、私は非常に解せないでいる一人です。

野村学君 私は、山の中の行政を預かってきた、そういう立場で、いろいろの面で、改正だとかそういう中で、やはり国も地方も財源が少なくなってきておるから、わかりますけれども、すべての改革が辺地にしわ寄せされてきているというような感じを全体に受けております。

 したがいまして、日本郵政公社になる時点でもやはり不安を持っておりましたし、また、村民もそのように不安を持っておりました。しかし、そう変化がなく、しかも今までなかったサービスが出てきたというようなことで、また住民が大変安心しているわけでありますが、今度は本当に民営化になると、繰り返して申し上げますけれども、やはり地形条件や何かが大変な状況の中でありますから、郵便の配達やそういうものだってそうだし、特に金融関係なんというのは、民間であればやはり顧客の大勢いる地域に、利益性からいって、効率性からいって、ウエートが移るわけでありますから、どうしても最終的には切り捨てられるのではないか、こういう不安が常にあります。

 そういうことで、全体からして、新しい時代には、金融関係やそういうものについても当然市場原理を取り入れた形の中で、しかも民がやれるのは、そしてほかに影響がないのは、やはり新しい時代に沿ってやるということは私は必要だと思いますけれども、それと一緒になって、今の改革を、私ども、被害妄想かもわかりませんけれども、何か地方にしわ寄せがすべて来ているという感じを受けますので、民営化が本当に実施されれば、またもそういう不安が出てきた、こういう感じで受けとめているわけであります。

 したがいまして、先ほどいろいろ御説明もいただきましたので、そういう不安のことが、きちんと残って、しかも将来につながっていくということであれば、これは納得ができると思いますし、またそれについても、私はきちんと皆さんにわかるように、わかりやすく国民に知らしめるような努力をきちんとやっていただいてお願いしたい、こんなふうに考えております。

山花委員 水間さんにお伺いしたいんですけれども、今回、政府から出されているこの民営化法なんですが、郵便局などを株式会社化するに当たって、特に外資であるからだめだというような仕組みにはなっていないわけです。

 私も外国資本がすべていけないと言うつもりは全くありませんけれども、ただ、特に金融なんかの世界では、外資の会社というのはなかなかシビアなことをされるのかなという印象を非常に持っているんです。お金の流れを変えるということ一つとっても、余り楽観論というか、例えば地方で集めたお金を地方でやろうじゃないかといっても、シビアな株主だったら、そんなことしないでもっともうかるところに投入すればいいではないかという話が優先するような気がいたしますし、何といっても、極めて一般論からすれば、企業というのはやはり株主利益に奉仕するというのは大変重要な価値だと思いますから、そういった視点からいたしますと、外資から侵食されていくリスク、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

水間秀一君 ただいまの御質問は、郵便会社に外資が入ってくる可能性をどう考えるかということでございましょうか。そのように考えた場合は、これは私の個人的な考えでございますけれども、郵便事業というものはやはり国の基幹事業であるというふうに、国の基幹事業であるとは、では何で官から民へなのだという、ちょっと矛盾しますけれども、やはりこれは日本国にとって大事な仕事であると思いますので、外資が入ってくることにつきましては、私は否定的な見解を持っております。

 外資が入ってくれば、すべて合理的に判断をする、それこそネットワークを採算の合わないところは排除しというふうなことがまかり通るかどうかはわからないわけでございますが、やはり重要な仕事である、重要な業務である、重要なインフラであるというふうに考えるとすれば、これはやはり日本の国の中でやっていくべきものだろうと思います。

山花委員 もう一つあるんですけれども、民間との競争条件を同一にすべきであるという御意見をおっしゃっておられるんですけれども、私は、郵便局などが集めたお金の流れをもうちょっと多様にすべきではないかというのは、それは大いにあってしかるべきだと思いますが、そのことが直ちに経営形態の話に結びついてしまうというのはちょっと理解がしがたいところがありまして、例えばバブル経済のときに郵便のお金が民のお金だったらどんなことになっていたかと思うと、それは恐ろしくてしようがないという気がします。

 つまり、やはりある程度すみ分けがされているということはそれなりに意義があるのではないかなと思うんですけれども、もし本当に民間との間の競争条件を全く同一にということで考えるのであれば、過疎地などに郵便局の設置などを義務づけるという議論は、私は、おかしなことではないかと思いますし、逆に同一にするということであれば、銀行なども過疎地にも出店を義務づけるということにならないと一貫しないのではないかと思うんです。

 今、政府案は、ある局面では、いや、過疎地でもこういうふうにしますから大丈夫ですよという話があるんですけれども、そのことと、競争条件は同一にすべきだというのは、そこまでの御意見なんでしょうか。それとも、やはり一定程度郵便局については違った役割を果たしてもらった方がいい、そういう御意見なんでしょうか。いかがでしょうか。

水間秀一君 いわゆる競争条件の同一化を図らねばならないということについては、一つには、政府関与がなくなること、それからもう一つは、民営化になった後、税金の負担とか、そういったものが当然にして新しい会社形態から出てくること、税金の支払いが起きなければならないというふうなことで考えております。

 そして、後の過疎地への出店との関連で申しますと、確かに、合理的に考えたら、いわゆる市場原理という言葉が正しいかどうかはよく存じませんけれども、過疎地に義務づけをするということは余り合理的ではないかもしれません。しかし、いわゆるインフラとしての存在意義ということを考えれば、先ほどのお話があるように、やはりその村、町にはなくてはならない存在であるということがまず重要であって、そこから先に、お取引先がいらっしゃるわけですから、その方々のニーズにおこたえしなきゃならぬということからすれば、それは重要なことである、なければならない。

 しかし、反面、では話をちょっと視点を変えまして、都心部へ行きますと、新潟なんかもそうですけれども、郵便局があちこちにたくさんありますね。百メーター、二百メーターぐらい行く中に郵便局が一つ、二つあったり、たくさんありますけれども、あれは合理的に考えるとちょっと過剰ではないかなというふうに思います、合理的かどうかはあれですけれども。

 つまり、ある部分は非常に集中、いっぱい存在していて、さっきのお話にある、過疎地で必要なところは、そこはもうからないからやめるということであってはこれは意味がないわけで、いわゆるネットワーク会社として存在していくのであれば、当然過疎地で赤字になることだってあるだろうと思います。しかし、それをやることによって、全国あまねくユニバーサルサービスを提供しているんだということが担保されるわけだと思いますから、そういう視点で考える必要がある。

 つまり、過疎地での展開はそれなりに必要であると私は思いますし、一方で、都心部とか集中している部分については、やはり何らかの経営的な判断でもって整理整とんしていくということもまたあわせて必要があるんじゃないかなというふうに思います。

山花委員 今のお話に関連して、またお三方にお伺いしたいんですけれども、ただ、収支を見てみると、都市部は結構集中しているじゃないかという今の御意見だったんですけれども、集中していても、割とそういうところというのは黒字なんですよね。割と近くにあるんだけれども両方の局とも黒字で、むしろちょっと離れるとやはり赤字だったりするという状況がありますから、ちょっと今の御意見については私は必ずしもどうかなと思っているんです。

 その上で、今回、民営化した上で、新しい会社が住宅リフォームのあっせんをしたりだとか、あるいはコンビニエンスストアで二百億ぐらい稼ぐんだとか、こんなような話があるんですけれども、大体郵便局の近くにはコンビニエンスストアがあったりしますし、佐藤さんに、本当にそんなことができるとお考えでしょうか。現地の立場から御意見をいただきたいと思います。

佐藤康二君 私は、コンビニがやれるところは、それで採算がとれる部分はやっていってもいいと思っています。

 ただ、私どもみたいに過疎に来た場合は、先ほど申し上げましたように、やはりお年寄りたちの憩いの場になっていたり、いろいろあるわけですよね。あるいは、もっと考えるならば、医療といいますか、これから老人がふえていくわけでありますから、そういう施設との融合性というのだって当然考えていっていいわけです。それは、自治体と協力をしてやっていけばまたできることだろうというふうに思っています。

 ですから、今のままの状況でも、そういう意味では、考えていけば、コンビニもありますし、そういう状況で幾らでも仕事の幅は広げていけるというふうに私は思っています。

山花委員 野村さんは首長経験者だということもございますけれども、そういった地域で、郵便局でコンビニエンスストアをやってほしいというような住民の意識というのは感じますでしょうか。いかがでしょうか。

野村学君 私どもの地域は、高齢化したり人口が減ってきておりますから、コンビニ自体がないわけであります。したがって、そういうのを郵便局がやるとしても、それこそ経営とかそういうことは全くできないわけでありますから、そういう意味では、私は、私どもの地域のところでもってコンビニサービスとかそういうことは必要ないというふうに考えておりますし、またできない、こう思っております。

山花委員 水間さんにお伺いしたいんですけれども、私も実はコンビニエンスストアで四年ぐらいアルバイトしていたことがあるので実情はよくわかっているつもりなんですけれども、多分、郵便局にやってくれと言っても、それはなかなか大変でして、お弁当とかそういう賞味期限があるものは、二日、三日の賞味期限じゃないですから、恐らく土日もずっとあけていない限りは、ああいった店舗というのは成り立たないんですよ。

 実際、今回、こういうビジネスモデルとしてコンビニエンスストアなんというのを政府が言っていますけれども、チェーンストア協会とか、そういったところから勘弁してくれという声は聞いたことがないんです。やはりそれは実際無理だと思われているんじゃないかと思うんですけれども、この点、それを代表する立場ではないかもしれませんが、御感想とか、おありでしたらお願いいたします。

水間秀一君 非常に難しい質問でございまして、すぐには正しい答えが見つからないと思いますが、郵便局さんにコンビニエンスストアの経営をしなさいという理解はなかなか難しい、現実にはやはり難しい点があるんじゃないでしょうか。

 それよりも、今コンビニエンスストアで取り扱っているいろいろなチケット類とか、例えばアルビレックス新潟のチケット販売とか、各種プレイガイド的なものとか、そういったものというのはできると思いますね。その他、いろいろな商品券とか、たくさんあると思いますけれども、そういったものを私は今までイメージしておりました。コンビニエンスストアはちょっとイメージしておりませんでした。

山花委員 時間が押してきましたので、最後に佐藤さんにお話をお伺いしたいんですけれども、私、ちょっと日付は忘れてしまいましたが、ことしの一月の十何日かにこちらの方にお邪魔しまして、小千谷の方に被災地の視察に行ってまいりました。

 仮設住宅などが並んでおりまして、たしかその日ぐらいから雪がすごくなりまして、大丈夫ですかと聞いたら、二メートルぐらいまでの積雪にはこの屋根は耐えられるから、新潟といったって二メートルも降ることはそうそうありませんよと言っていたら、その日二メートル以上降ったという日だったんです。その仮設住宅にもやはりちゃんと一つ一つポストがついていまして、地元の人も、町中を見ると、久々に教科書で見るような絵だねなんということをおっしゃっていましたが、そういった仮設住宅だとかそういうところにも、やはりそういう大変なときでも、郵便局の方々は、赤いバイクが走っていましたから、届けられているんだろうなと思っていたんです。

 今回、十九年ぶりという豪雪だったということで、先ほどもいろいろ貴重なお話をお伺いしましたけれども、特に、そういった仮設住宅だとか、あるいはそうやって避難している方のところに郵便物を届けたりであるとか、あるいはお金の面でいろいろ工面して、工面というとちょっと言葉が適切じゃないかもしれませんけれども、非常取り扱いをするというような御苦労などがあろうかと思いますけれども、そういったことについてもう少し膨らませてお話を聞かせていただきたいと思います。

佐藤康二君 御質問が、今現在なのか、被災直後といいますか仮設ができたばかりの状況なのか、ちょっとどちらの話をすればいいのかわからないですけれども、仮設にお入りになった方々、私どものところも竹沢の皆さんですとか山古志の皆さんも一部入っておられるんですけれども、今までかぎをかけたことなんかなかった。それで、私、ちょうど行きましたら、これはどうやってかぎを閉めるんだろうかねとおばあちゃんが言うんですね。今まで私はかぎなんか家にかけたことはないと。やはりそれだけかなり仮設の生活というのは大変なんだなというふうに今思っているところです。

 豪雪のときは、本当にもう雪のやり場がないんですね。平家ですから、それ以上に雪があるわけですので、もうどうしようもないという状況だったと思っています。私どもも、その場所までは何とか雪の上をバイクで行くんですけれども、一軒一軒配達、もう道がないですよね、正直言って。ちょっと雪がしただまれば何とか除雪はできるんですけれども、そういう意味では本当に仮設に入っていらした方は大変だったろうと思っています。やはり結露が物すごくひどいんですね。それで、入られてすぐ玄関で、どこが居住区分でどこが玄関か、大分昔よりはよくなったそうですけれども、そういう感じが大変だと思っています。

 それから、あと、そういう意味で、郵便局はそれぞれ、山古志の郵便局、なかったんですけれども、長岡ですとか、私どものところにもその職員が来て、やはり山古志の皆さんには竹沢の局の皆さんが一番いいんですね。私どもが行ってもだめなんですよ。やはり顔の知っている局員さんが行って初めて、安心をして戸をあけてくれるし、みんな用を足してくれるんですね。小さなところに行けばなおさらそうだなというふうに思いました。

 そんなところでよろしいでしょうか。

山花委員 ありがとうございました。

中井座長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党・無所属クラブの西村智奈美でございます。

 きょうは、意見陳述人の皆さん、雨の中お越しいただいて、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私は新潟県第一区選出でございますので、昨年の七・一三水害から一〇・二三の地震、そして十九年ぶりの豪雪と、本当にまさに地元の議員の一人として見させていただいてまいりました。

 やはりこの新潟県にとって今一番重大なテーマは、一年間のまさに災害年からいかにして復興していくかということではないかというふうに感じております。私は新潟市でございますけれども、上越新幹線が不通になりまして、その間、新潟市内が受けた経済的な打撃、これは非常に大きいものがございました。ですから、今は、まずはこの災害からの復興を全県挙げてどうやって進めていくかということが大事なテーマであろうというふうに感じております。

 そこで、今回の郵政民営化法案でありますけれども、この通常国会、五十五日間の延長までいたしまして、政府・与党の皆さんで何が何でも通すんだ、こういうようなことで進められておりますけれども、一方では、国民の皆さんからの関心はまだまだ低いところにあるんだろうと思っております。

 いろいろな世論調査を見ましても、郵政民営化よりは、例えば、年金制度の改革ですとかあるいは景気の回復ですとか、昨今話題となっております少子化対策、家族を大事にしてきたと言われる新潟県でもとうとう一・三人台に入ってまいりましたので、それをどういうふうに回復していくか、そういうテーマについて政府がもっと積極的に取り組んでほしいという声が多いんだろうというふうに思っております。

 こういった中で出されております今回の郵政民営化法案について、その優先度といいますか、皆さんお一人お一人が感じておられる優先度、優先順位ですね、これはどのようなものなのか、お一人ずつお聞かせいただければと思っております。

水間秀一君 私の陳述の中で、やはりこの優先度は必ずしも高くない。私も、今、西村さんがおっしゃったことと同じで、新潟県の現在の最大のテーマは何かといえば、震災からの復興である、創造的復興であるということが非常に大事であるというふうに思っておる者の一人でございます。

 しかし、さはさりながら、それは大事なことではありますが、あわせて、やはり郵政民営化という問題、民営化をしなければなりませんか、どう思いますかというふうな質問、アンケートなどをとると、例えば、ほかの社会保障の問題、それから外交の問題とか財政の問題とか特殊法人改革とか、今この国にはいろいろなテーマがあります。そのテーマの中で郵政民営化問題はどの程度のプライオリティーを置くんですかというようなことを質問しますと、これはやはり低い回答しかないんだろうと思います。しかし逆に、民営化は大事だと考えますかというふうな問いかけをすると、結構多くの方が、大事だろうというふうにお答えになるのではないかなというふうな気もしております。

 そういう意味では、アンケートや問いかけというのは非常に大事でありまして、もう少し、やはり国民が民営化の重要性を知り得るような問いかけをまたやっていくことも大事なのではないかなと思っておる次第ですので、関心度は低いが、しかし必ずしも、低いことがこの重要性を認識していないということにはならないというふうに、非常に申し上げにくいというか表現がしにくいんですけれども、そんな気もしております。

佐藤康二君 私は、被災地の立場から申し上げますと、小千谷市の場合は、市民ワークショップというものを立ち上げて復興計画をつくっているわけでありますが、その中にもぜひ郵便局も入っていって、これからの中の方向性を出していくべきだという持論は持っているところです。

 今、私の家自身もそうなんですけれども、直したくても業者さんがいませんし、正直言って、工賃から始まって材料費がどんどん高騰していく一方であります。ですから、仮に二百万の見積もりをしてもらったとしても、まあほぼその倍かかると思ってやらなければならない。今、そのぐらいやはりみんながシビアになっているわけであります。

 ですから、この民営化の話とすれば、私が仕事に行くと、おまえさん方、大変だのと言われます。でも何でなんだろうかのということも言われます。ですから、私とすれば、今のままでいいというふうにほとんどの方は思っていらっしゃるんです。それ以上に、今、復興のために何をしてもらいたいのか、何をしてくれるのかの方が私どもの小千谷市にとっては非常に切実なんじゃないかというふうに思っています。

野村学君 私は、先ほどから繰り返して申し上げましたように、新しい時代の中で、やはり基本的には大事なことがたくさんあるわけでございますから、これは大事だと思いますけれども、今のこの時点で、優先度、こういうことになればぐっと私は下であります。

 以上です。

西村(智)委員 水間さんにお伺いをしたいというふうに思います。

 財政投融資も預託制度がなくなったということは御理解、御認識をいただいているようでありますし、出口の方の改革も、非常に遅々としたスピードながら始まりつつあるということは御認識だというふうに思います。実際この財投改革が行われて、実態でうまくいかないところがあるかもしれないので郵政民営化だというようなおっしゃり方をされたかと記憶しておるんですけれども、いま一つ理解ができないところでございます。

 出口が先か入り口が先かということなんですけれども、結局、入り口の方を絞ったところで、出口の方が、蛇口があけっ放しであれば、どうしたって水の量の総額を確保するために必ずどこかから持ってこなければいけないということになってまいりますから、そのために、では、果たして郵政民営化なのかということが、どうも論理が、つながりが悪いように思うんです。

 私は、入り口の方もあわせてでございますけれども、出口の方をやはりまず最初に改革していくべきだ。この前も会計検査院の報告でも出ましたけれども、四百三十億円ですか、まだこの国はむだ遣いをしているというような報告も出されましたし、そちらの方を先にやっていくのが先で、郵政民営化はそういう点から優先度はやはり低いのではないかというふうに考えておりますけれども、いかがですか。

水間秀一君 今の出口論と入り口論ですけれども、私が先ほど申し上げたかったのは、入り口であるこの郵政事業改革と、出口の公団、事業団、特殊法人関係の改革というのは、本来、一体化して進めるべきである、本来は一体化して進めなければならないというふうに僕は思っております。しかし、その次の段階として、私が申し上げたのは、出口改革に先駆けて、入り口の方が先になることが必要だというふうに申し上げました。

 したがいまして、そこをどのように考えるかということですが、確かに出口の改革も必要ですが、それも今やらなきゃいけないことですけれども、入り口のところに何も手をつけておかないと、お金が入ってくるという仕組み、つまり、従来のチャネルから入ってきて、それが出口の方へ向かっていく、その入り口から出口へ向かうときに、本来ならば、適切なリスクをちゃんと認識し、リターンを考えて、判断してお金が回っていくというふうなメカニズムというのがそこで働くべきであるというふうに僕は思っているわけです。今のシステムというのはどうもそれがうまく回らない。つまり、出口でお金が必要だから、入り口に入ってきたお金をそのまま使っちゃうというふうな考え方に私はいるわけです。

 したがって、そこのところが、今御質問で、どうもよくわからなかったというお話になろうかと思います。ですので、最適な資金配分とかあるべき姿というのは、やはり今入り口のところで改革を起こさなければ、それでそこで正常な資金の流れをつくらなければ、メカニズムがちゃんと動くようにしなければ、出口の方にそのままお金が行ってしまうという今の流れを変えることはできないという立場から申し上げました。

西村(智)委員 もう一点、水間さんにお伺いしたいと思うんです。

 震災後、国あるいは地方自治体の方からの公的融資制度ができたというふうに承知をしておりますけれども、これはそちらの方で準備をした枠がありますけれども、それの消化率が非常に低く、二〇%くらいであるというふうに承知をしております。セーフティー資金の方は、これは六割から七割くらいということなんですけれども、もう一点わからないのは、官から民へお金を新たに流すというその論理であります。

 官の方に閉じ込められているお金を民間に流すといったときに、実際に民間の方はそれを借りていない、あるいは借りたくても借りることができない、こういう状況ではないかというふうに思いますけれども、新潟の経済状況を見まして、今、例えば潤沢に資金があったときに、需要側と供給側のバランスは今後どういうふうになっていくと見通していらっしゃるのか、それを伺いたいと思います。

水間秀一君 ただいまの御質問について、官から民へお金が回るようになったときに、果たしてそれが最終資金需要者にうまく還流していくかどうかという問題だというふうに理解いたしますと、その点は、私も先ほど触れたつもりですが、やはり資金の需給バランスは、今後新潟県において、では大きく改善していくかどうかということを考えますと、現状の経済状況を見たときに、それは必ずしも楽観視はできないというふうに考えております。

 したがいまして、需給バランスは相変わらず低調なものが続くということを私としては考えるわけでございます。そうなりますと、官から民にお金の流れが変わるとしても、新しい資金ニーズをつくらない限り、先ほどお話し申し上げたかもしれませんが、これは既存の金融機関もそうですし、それから新しく郵貯銀行となる皆さんも、そのことを踏まえて新しい資金ニーズをつくり出さなければ、つくることによりそれを消化していくということを申し上げたいと思います。

 そういう意味では、まだこれから新しく融資マーケットを開拓していくという考え方を持っているわけでございます。

西村(智)委員 佐藤さんにお伺いしたいと思います。

 先ほど山花委員が、郵便局のあいているスペースでコンビニをつくったり住宅リフォームをあっせんしたりというお話を言及していらっしゃいましたけれども、骨格経営試算及び採算性に関する試算、これは政府の方が資料として先般出したものでありますけれども、ここにおいて示された事柄でございますが、加えて第三分野の保険商品を、合計二百三十万件の新規の契約を第三分野においてとる、それで手数料を収入とするというような試算が出ておったんです。

 これは、現場で今保険業務をやっていらっしゃる佐藤さんから見て、そして仮に、郵政民営化されて十年が経過して、そして完全民間業者ですということになったときに、佐藤さんはどうされますか。この二百三十万件の新規の契約のためにどういうことをされるのか。これは実現できると、全体の中でのほんの一部ということにしかならないでしょうけれども、どんなふうにこれを見ていらっしゃいますか、この見通しについて。

佐藤康二君 ちょっと難しい質問で、私自身、ちょっとわからないというふうにお答えしておきたいと思います。

西村(智)委員 現場の皆さんの声を聞かずに出した試算であるということが明らかになったかと思います。

 もう一点、佐藤さんにお伺いしたいんです。

 先ほど、震災直後から、御自身の家も半壊されていたにもかかわらず、すぐに郵便局の業務の方に行かれたというようなお話が紹介されました。本当に頭の下がることであります。普通でしたら、自分の家が被災しているときには、家族の心配をしたり家の片づけをしたりということを最優先にしたいんだろうと思うんですけれども、佐藤さんをそういうふうに郵便局の仕事にと向かわせたものは一体何だったんでしょうか。そしてまた、郵便局で働いていらっしゃるほかの皆さんも同様に、皆が、自分の家のことはともかくということで郵便局の仕事に向かわれたのか。皆さんを向かわせたものは何だったのか。お話しいただければと思います。

佐藤康二君 何だったのかと言われると、これといったものはきっとないと思いますけれども、やはり、そこに郵便物があって、義援物資があって、私ら、それはどうしても届けたいという、その責務がみんな一番大きかったんじゃないかというふうに私は思っています。

西村(智)委員 責務というお言葉がいただけました。

 時間がなくなってまいりましたので、水間参考人に最後、もう一点お伺いしたいんですけれども、水間さんは、第四銀行在職中にニューヨーク支店の方にも行かれておったという御紹介がありましたが、ニューヨーク支店長でいらっしゃいました。

 先ほど、ドイツの郵便局が民営化されたということの御紹介がありましたけれども、実際に、ドイツの民営化は、今いろいろな問題点があるということで、本当に見直しが行われているところだそうです。つまり、一度は国営から民営化を志して切りかえたんだけれども、余りにも問題点が多いので、実は今、もう一度国営に戻そうかというような議論が行われているのだそうでございます。

 そして、アメリカですけれども、日本政府に対して年次改革要望書をアメリカの政府から日本政府に毎年提出されておりまして、その中で、日本の郵政公社の民営化については大きな期待と関心を持っているという一文が繰り返し繰り返し出されているわけですけれども、そのアメリカにおいては郵便局は国営であるということでございます。この理由ですとか背景、なぜアメリカは郵便局を民営化しないのか、水間さんの御見識の中でお答えをいただけませんでしょうか。

水間秀一君 大変、お答えできない問題で、確かにニューヨークには住んでおりましたが、なぜ国営なのかということですか。いや、ちょっとお答えできるべき回答がございません。申しわけありません。

西村(智)委員 野村さんに一点伺いたいと思います。

 野村さん、一番最初の陳述のときに、国の責任においてやるべきことをきっちりと修正点に盛り込んでいただきたいというようなお話をされたかと思いますけれども、その後、実はこういうふうにもおっしゃっておられたかと思います。どうしたってやはり民営化された企業は経営者次第だということでございますけれども、野村さんのお考えになっていらっしゃる郵便局というのは、どちらの方向で考えていらっしゃいますでしょうか。

 つまり、私の考えですけれども、修正しても、やはりこれは民営化されるということになる以上は、株主の意向がどうしても強く反映されることになってまいります。六月の下旬は株主総会が各地の企業さんで開催されておりますけれども、だんだん外国人の株主の比率が大手の企業においても高まっている、株主で外国人の占める比率が五〇%を超えるところが既にあるということでもございますし、経営者は株主の意向を無視して経営はできないというふうな状況がどんどん強まってきておりますけれども、それでも野村さんは、民営化でも修正点だけきちんとやられていればよろしいというお考えなのかどうか。具体的な修正点を挙げずにお伺いするのは大変恐縮ですけれども、一点伺います。

野村学君 私は、できれば郵便局については民営化でなくて、やはり過疎地帯等を考えた場合にはどうしても民営化になじまない、基本的には私はそういう考え方を持っておりますが、先ほどもいろいろ説明を受ける中で、そういうのはみんなきちっと法律的にやっていくんだというようなお話もいただきましたので、そういう意味では、ぜひすべての人が理解できるように、本当に皆さんが納得するような形で進めることであれば、いいんじゃないか、こんなふうに考えております。

 それは、言葉の上ではそうだけれども、私は、そういう不安は常にありますので、ぜひ不安のないような方向で十分審議して御決定をいただきたい、こういうことでございます。

西村(智)委員 最後に一点、同じく野村さんにですけれども、首長経験者としてお伺いしたいと思います。

 今、郵便局で、住民票を初めとするワンストップサービスが行われておりますけれども、仮にこれが民間の会社になった場合に、民間人の方にそういうワンストップサービスの委託、これは果たして任せることができるとお考えでしょうか。

野村学君 私は、その点は大丈夫だ、こんなふうに考えております。

 今、いろいろ個人情報だとかいろいろな面で問題点も出ておりますけれども、そういう面で、きちっとしておりますので、これからは、やはりどこでもとることができるような方向に来ております。私どももそういう方向で合併等の、それぞれ話し合って、そういう形で今後切りかえていかなきゃならぬという考え方でございますので、私は問題ないと思います。

西村(智)委員 終わります。

中井座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 本日御出席をお願いいたしておりました伊藤隆康君は、豪雨による交通遮断のため、御出席いただけなくなりました。皆様方に御報告申し上げますとともに、伊藤隆康君に謝意を表します。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、豪雨の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに派遣団を代表して厚く御礼申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました地元関係各位に対しまして、心から感謝申し上げますとともに、本日の豪雨による被害の出ませぬようお祈りを申し上げ、お礼といたします。

 これにて散会いたします。

    午後三時四十七分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の佐賀県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十七年六月二十八日(火)

二、場所

   唐津シーサイドホテル

三、意見を聴取した問題

   郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 山崎  拓君

       江藤  拓君   柴山 昌彦君

       保利 耕輔君   松岡 利勝君

       宮下 一郎君   小沢 鋭仁君

       古賀 一成君   中塚 一宏君

       中村 哲治君   原口 一博君

       古本伸一郎君   谷口 隆義君

       横光 克彦君

 (2) 意見陳述者

    九州大学大学院経済学研究院教授        堀江 康熙君

    佐賀県立女性センター・生涯学習センター顧問  稲田 繁生君

    深川製磁株式会社代表取締役社長        深川 一太君

    福岡市漁業協同組合玄界島支所運営委員     細江四男美君

 (3) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   伊東 敏朗君

    内閣官房郵政民営化準備室企画官        西口 彰人君

     ――――◇―――――

    午前九時二分開議

山崎座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院郵政民営化に関する特別委員会派遣委員団団長の山崎拓でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当唐津市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただき、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の松岡利勝君、江藤拓君、柴山昌彦君、保利耕輔君、宮下一郎君、民主党・無所属クラブの原口一博君、小沢鋭仁君、古賀一成君、中塚一宏君、中村哲治君、古本伸一郎君、公明党の谷口隆義君、社会民主党・市民連合の横光克彦君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 九州大学大学院経済学研究院教授堀江康熙君、佐賀県立女性センター・生涯学習センター顧問稲田繁生君、深川製磁株式会社代表取締役社長深川一太君、福岡市漁業協同組合玄界島支所運営委員細江四男美君、以上四名の方々でございます。

 それでは、堀江康熙君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

堀江康熙君 それでは、私の意見を述べさせていただきます。

 私は、大学では専門が金融論でございますので、この場では、郵便貯金の民営化に限定したお話、それを中心にしたお話ということで御報告させていただきます。

 報告内容につきましては、三点ございます。

 第一点は、郵貯の店舗の配置でございますけれども、都市部では民間の金融機関と大差がありません。小都市部でかなり存在感がありますが、これが金融機関としては非効率となっている要因となっているのではないかというのが第一点でございます。

 第二点は、現状では郵貯の経営効率性は、これを計測しますと、民間の金融機関と比べると高くありません。もし民営化した場合には、相当のリストラを実行できるかどうかというところがポイントになります。

 第三でございますが、貯蓄者は非常に安全な資産を選好する、これは変わりません。

 ただし一方で、郵貯が民営化した場合に資金運用のノウハウが果たしてあるのか、その問題があります。これが一番大きな問題であります。

 以下、順に従って申し上げたいと思います。

 お手元に表を差し上げてあると思いますので、二枚目のところから申し上げたいと思います。九州というのはちょっとできませんでしたので、関西圏で以前分析したことがありますので、関西圏の例で店舗の配置ということを申し上げたいと思います。

 関西圏を例にした場合に、平成十一年の時点ですけれども、六十三の信用金庫、信用組合、地域に密着した金融機関がございます。四十八の信用金庫、十五の信用組合でございますけれども、店舗数が千六百四十一カ店あります。この各店舗について、店舗の周辺、七百五十平米になりますけれども、その七百五十平米以内に存在する金融機関の数を計算しました。

 下の図、四とページが打ってございますけれども、四のところには、そのうち、同じ業態であります信用金庫、信用組合の店舗数と、縦軸には郵便局の数を示してございます。これを各金融機関一店舗当たりで図示しております。黒い四角が大阪府に所在する信用金庫、信用組合の場合、それからプラスの字、十字になっていますのは、市街地人口で二十万から百四十万人、京都、神戸、尼崎といったところに所在します金融機関の場合、それから白い四角がその他に所在する場合でございますが、この三つに分けて下で図示させていただきました。全体としまして、当然ながら郵便局の数は多い、四十五度線よりも上側にありますから、これは多いということを意味いたします。

 ただ、ここで特徴が二点ございます。

 一つは、信用金庫、信用組合の店舗の展開で非常に似ているということでございまして、果たして顧客数を重視した展開であったのか、大都市部で特にそうでございますが、大都市部では必ずしもそうじゃなくて、顧客数を重視した展開であったのではないか。そういう疑問が一つ出てまいります。

 もう一つは、その他の所在、つまり、いわゆる地方都市等でございますが、地方都市等では、白い四角でごらんいただけますように、明らかに郵便局が多いわけですが、ただ、少ないところもあります。そういう意味では、これが非効率の原因となっているのではないかということを、関西圏という形で例として見させていただきました。

 その次のページでございますが、郵政公社、特に郵便局に限定した場合の郵政公社、郵政公社のうちの郵便局の部分だけですが、その効率性はどうかという問題でございます。地域に分割するかどうかというのは、現時点では将来の経営陣の課題だというふうになっていると思いますが、現時点で、今地域ごとに分割した場合、競争する相手は、規模から見ましても地域の銀行、特に規模が大きい地方銀行が競争相手となると思います。

 ここでは九州地区を例に、地域に分割した場合の預貯金の規模を指標として比べてみました。これは平成十三年度のベースでございます。預貯金残高を横軸にとりまして、縦軸には効率性をとっているわけですが、効率性の指標としては職員の数、店舗の数、それと預貯金の残高、両者の関係から経営効率性を算出しているわけでございます。この場合、法人税がない、住民税がないといった特権、この場合には六千億ぐらいございますが、これは控除しております。

 九州地区の場合どうかとなりますと、下の図にあります。横軸には預貯金の残高を描いています。これは大数表示でございますけれども、横軸に預貯金の残高を描きまして、縦軸に規模の効率性を描いたものでございまして、上に行けば行くほど効率が高いという格好になります。一番高いところが一・〇という形で表示しております。

 一番高い金融機関、この計算で出しますと福岡銀行となりますが、特徴がありますのは、郵政公社は規模は明らかにかなり大きい。非常に離れていますけれども、効率性はかなり劣る。効率は四番目だということになります。ほとんど鹿児島銀行と余り変わらないような状態でございます。そういう意味では、規模に関する効率性はかなり低いということ、これは確かにユニバーサルサービスを提供するということで、民間が店舗を持たない地域にも活動しているということをあらわしているというふうにも考えられますが、ただ、民営化した場合には効率性の点でかなり問題が出てくることは避けられません。

 ただ、店舗、職員を削減するという必要がありますが、そうしますと、店舗の整理というのは、最大の長所としての利便性を失うということになります。この図で試算いたしますと、効率性を高めるために、同じような効率性を持つ、郵貯の預金残高の規模で効率性を持つためには、店舗の七割以上、人員では八%ぐらい削減しなければならないという結論が出ますから、それは非常に難しいということになります。効率性を達成するためにはかなり努力が必要であろうということになります。

 それは、ただ効率性の問題でございますので、まだ対応が可能かと思いますが、問題は運用面にあります。郵貯の非常に大きな問題は運用面なんですが、県別に見ますと、預貯金に占める郵貯のシェアは非常に高い、これは皆様御承知のとおりだと思いますが、二〇〇四年の三月、去年の三月時点で見ますと、都道府県の預貯金のうち、郵貯がトップという都道府県は、四十七都道府県のうちの三十三ございます。トップの地域銀行、地銀を上回っているというケースが非常に大きいんです。これがよく取りざたされますが、私は、問題となるのは、そういう資金の吸収面、預貯金の面ではなく運用面だと考えています。

 郵貯の大きなメリット、民営化した場合の大きなメリットは何かとなりますと、それは、民間向けの貸し出しが始まる、そうしますと、民間向けの資金の供給量が増大して金利が下がる、それに伴って生産活動が活発化する、経済が拡大していく、そういう可能性があるではないかということが指摘されています。

 ただ、その場合の問題が二つあります。

 第一点の問題は、従来は郵貯で国債をかなり購入していたわけですが、国債の購入が減少する。国債の購入が減少しますと、需要がないわけですから金利が上がる、長期金利が上がる可能性がある。この点をどうするのかというのが第一点でございます。

 第二点、これがもっと大きな問題なんですが、郵貯には債券購入以外の運用のノウハウがほとんどないのではないか、貸し出しが果たしてできるのかという問題でございます。

 民間の金融機関の場合、地域銀行が得意としますのはいわゆるリレーションシップバンキング、今金融庁でかなり推薦しているといいますか宣伝しておりますが、リレーションシップバンキングというやり方でございまして、長いつき合いの中で情報を得て貸し出しを行っていく、相手を知って貸し出しを行う、リレーションシップバンキングというふうに言われているものですが、これは郵貯の場合は非常に難しい。期間が短い、人員が少ないということになりますから、非常に難しいということになります。店舗当たりの人員が少ないという意味です。

 そういう意味では、リレーションシップバンキングではなくもう一つの行い方、トランザクションバンキングと一般に言われていますが、特にその中でもスコアリングモデル、スコアをつけて、自動審査的な要素を重視して貸し出す、こういった方法にならざるを得ない。これは従来から消費者ローン等では行われているやり方でございますが、こういったスコアリングモデルにならざるを得ない。

 このスコアリングモデルは何かとなりますと、ある程度のリスクを織り込む、信用リスク、倒産を織り込む、それから回収困難を織り込んで貸し出す。金利も高くなります。これを始めますと、不良債権が増加する可能性が非常に高くなります。こういった問題が非常に大きい。これにどう対処するかということになります。

 ただし、家計のニーズは何か。最後のページになりますけれども、家計は元本保証のある安全資産を選好する、これは今後も変わらないのではないかと思います。これは金融危機を乗り切るときには、九〇年代の後半、金融危機が発生しましたが、それを乗り切るときには非常に大きな結果を発揮した、郵貯が信頼されたということは事実です。しかし、今後もそういう状態が続けられるかどうかという問題があります。ただ、家計の方では引き続き安全資産を選好するという要素が非常に強い、これは否定できません。郵貯に集まる資金というのは、当面は使わない、使用予定はない、しかし、信用リスクのない安全な金融機関として家計が託している、そういう資金であります。そうしたニーズにこたえる商品は引き続き提供していくことが必要だということになります。

 運用ができないということと家計の安全資産へのニーズ、この両方をどうあわせていくかということになりますと、最後のところになりますが、資金運用面でやはり課題が残る。私の一つの考えでございますが、郵便貯金の受け入れというのは、今後は通常貯金、つまり、普通預金ということになりますけれども、それだけにしてしまう、この運用は政府の短期証券等に限定する、貸し出しは一部にとどめてしまうというやり方が考えられます。定額郵貯あるいは定期預金となるかもしれませんが、こういったものは受け入れを中止する。そのかわりに、個人向けの国債販売に切りかえていく。従来も、定額郵貯と申しますのは、形を変えた個人向けの国債というふうにも考えられたわけです。

 実際上はそういう機能をしていたわけですから、それは直接個人向けの国債として販売していくということが考えられます。もちろん国債となりますと、金利が変動する、あるいは元本の変動が当然あり得ますから、元本の変動を小さくするような対応、つまり、期間の工夫あるいは金利上の工夫、変動金利国債の種類を多様化するとか、そういった対応は当然必要だと思います。

 ただ、この方法を行いますと、私の結論としましては、郵便貯金につきましては通常の貯金だけに限定して、あとはその規模を縮小していくのが一番望ましいのではないのかというのが私の意見でございます。

 以上でございます。(拍手)

山崎座長 ありがとうございました。

 次に、稲田繁生君にお願いいたします。

稲田繁生君 私は、地方の視点から自分の考え方を述べさせていただきたいというふうに思います。

 最近、地方におりますと、都市部と地方の経済、文化格差がむしろ広がっている、そういうふうな感じがいたします。それは、地方で高齢化と過疎化が同時に進行しているからではないかと思います。例えば、六十五歳以上の高齢者の比率は、九州では、福岡県以外は全県二〇%台に乗っております。私どもの佐賀県は、十六年三月末で二一・七三%、鹿児島県になりますと二四・二四%。全国平均は一九・二四%ですから、完全な超高齢化社会が既に地方には到来しているわけでございます。

 過疎化の特筆すべき現象は、独居老人や高齢者夫婦が多いことでございます。つまり、高速交通システムとか情報化、IT社会から取り残されたお年寄りが数多く存在しているわけでございます。このことを考えずに郵政民営化を論じることはできないというのが、私の考え方でございます。

 佐賀県内には二百六の郵便局がございます。このうち特定局が百五十三局、その九〇%は赤字ではないかと見られております。つまり、市場原理からすれば、撤退や統合は避けられない局がほとんどというのが実態でございます。

 ところが、その赤字の特定局はその土地でどんな役割を果たしているか、これを具体的にやはり知る必要があろうかというふうに思います。郵便局は地域住民にとって、空気であり、水のような存在でございます。生活のよりどころであり、地域のコミュニティーセンターや防犯あるいは福祉連絡所でもございます。

 時事通信社の世論調査によりますと、全国で二万四千七百ある郵便局ネットワークを今後どうしていくべきと考えますかという問いに対して、六二・八%が、郵便局は地域生活に不可欠なので基本的に維持されるべきだという答えでございます。それに、過疎地の郵便局だけは何とか維持しなければという答えが九・六%ございますから、合わせると七二・四%が現状維持を訴えております。九州各県は軒並み七〇%台で、鹿児島県は七八・一%でございます。

 少し具体的にお話を申し上げたいと思いますが、佐賀県神埼郡の山村に脊振村という村がございます。ここは、人口二千人足らずですけれども、三十七人の独居老人が住んでおられます。用事がなくても局員が立ち寄って声かけをいたします。寂しいお年寄りは涙を流して喜ぶそうでございます。盆とか正月に都会から帰省してきた息子さんや娘さんが郵便局にお礼にやってきてくれるそうです。徘回老人を捜したり、空き家にたむろしている子供を補導するなど、子供一一〇番の役割も果たしております。

 それから、その近くの佐賀郡富士町の北山地区というのがございます。これはダムのあるところですけれども、ここは高齢化率四〇%台のところでございます。約二百人の高齢者が年金の受け取りに偶数月の十五日には郵便局にやってまいります。朝早くから局にやってくる高齢者たちは、久しぶりに会う仲間たちと話が弾むそうです。郵便局サロンなんですね、この地域の。

 バス停の近くにあった公衆電話がなくなりました。これは、競争原理によって民営化されたNTTさんがなくしていった公衆電話ですね。これも市場原理なんです。郵便局にやってきたお年寄りが、電話を借りて家族に迎えの車を頼んでおります。それから、トイレもお客さんが借りやすいようにしましたし、バリアフリーもございます。これがまたお年寄りに喜ばれております。

 それからもう一つ、九州は離島が多いのが特徴でございます。長崎県が五十五、鹿児島は二十七、佐賀でも七つの島がございます。全国で三百九の離島がございますが、うち百十三、つまり三六・六%は九州でございます。

 その離島の生活拠点の一つに漁協がありますけれども、今日、その漁協の経営環境が極めて厳しい。郵便局と漁協では、いわゆる全国ネットワークとそうでないとの違い等、島民の信頼度合いがやはり違うんじゃないか、そういうふうに受け取っています。

 きのう先生方においでいただいた馬渡島、ここは二百十三戸、五百五十人が住んでいるところでございますけれども、郵便局に雨戸があるのを見ていただいたかと思いますが、これは台風のときの住民の避難所になるわけです。ここから郵便局がなくなれば、船で呼子や名護屋まで行かなければならない。名護屋まで三十五分、呼子まで五十分、片道八百円の船賃、これもばかになりません。それから、一日四便ですので、向こうでの待ち時間も大変でございます。きのうも海がかなり荒れたようですが、天気次第で欠航もありますし、体の不自由な人には船での往復はちょっと無理でございます。

 それから、島の先生の給与は二十一日にきちんと郵便局の口座に振り込まれます。郵便貯金は全国どこの局でも出し入れできますから、町の病院に入院したり、息子さんの家に行っても、最寄りの局で用を足すことができます。子供銀行の役割も果たしておりますし、文字どおり、安心、安全、安定といった存在でございます。

 近くの小川島の簡易局の局長さんが亡くなって局が三カ月ぐらい閉鎖されたときがございましたが、全島民が署名運動をして局の開設を訴えました。

 都市部でも高齢者はたくさんおります。ここでも心配がないわけではございません。郵便局が間引きされたり撤退を余儀なくされたら、そこに住むお年寄りは生活面で大きな不便を味わいます。スーパーが郊外に進出して近くの店が閉店に追い込まれております。車に乗れない高齢者は、途端に食事の準備にも支障を来すわけです。佐賀駅の構内に進出した生鮮食料品中心のスーパーが、わずか八十日で閉店いたしました。これが競争の現実でございます。

 こういうつつましい地方の生活には、行政が支えになって競争を入れないでほしいというのが率直なこの人たちの訴えでございます。つまり、この人たちは競争に耐えられる力がない生活弱者でございます。したがって、撤退だけではなく、統合や縮小も住民にとって重大な問題でございます。

 保険、貯金合わせて三百四十兆円。この多くが、老後の生活のためとかあるいは孫の学資にといった、庶民の感覚でためた貴重な国民の財産でございます。郵政民営化はアメリカによる日本改造プログラムの一環と言われておりますけれども、日本で活動するアメリカ系保険会社にとって、百二十兆円もの簡保は大きな魅力でしょう。つめに火をともすようにしてためた庶民の財産をそんな危険にさらしてよいものかというふうに思います。それよりも何よりも、地方の生活拠点である郵便局を守り、維持することこそ、行政の大きな課題であるはずです。

 政治は妥協の産物と申します。法案の修正はぜひやっていただきたいのですが、三事業を分けるのは避けるべきだというふうに思います。三事業が同じ屋根の下で、相乗効果を発揮しながらバランスをとって事業が進められている現状を崩すのは、どうも得策ではないというふうに思います。地方の局を見ていて、そのことは痛切に感じます。

 郵便しか関係のなかった利用者が、貯金や保険に関心を持って職員に相談します。はい、わかりましたと応対してくれます。局長や代理は利用者の生活コンサルタントでもあるわけです。それが、別々の会社になって、もうかるところ中心の経営になったらどうなるのかという素朴な疑問がわいてくるのは当然でございます。

 また、ぜひやっていただきたいことは、局配置の見直しです。利用者がさらに便利になるように、不便なところにある局は移転すべきだというふうに思います。例えば、奥まったところにある局あるいは駐車場がほとんどないところなどでございます。

 それからまた、ほとんどが赤字と言われる保養センター、ここは、かつては普通局の局長さんのいわゆる天下り先だったように思いますけれども、赤字ではどうしようもない。この際思い切って見直して、温泉つきという利点を生かして、有料の老人施設として活用した方がよいのではないかというふうに考えております。

 市町村合併と郵政の関連も大切です。市町村合併は地方行政のリストラでございます。周辺部分は少なからず影響を受けると思います。その場合、ワンストップサービスの拡大など、積極的な行政とのタイアップが必要になってまいります。

 最後に申し上げたいのは、小泉総理の執念や悲願で政治の方向を誤らせないよう、国会議員の方々の勇断を期待して、私の陳述を終わります。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

山崎座長 ありがとうございました。

 次に、深川一太君にお願いいたします。

深川一太君 おはようございます。深川製磁の深川です。

 私は、経済同友会と経営者協会のメンバーであるためにここへ出席していると思います。ある意味では大変微妙な立場におるんですが、特に、地方財政委員会に私も出席するんですが、その中でやはり一番私が感じますのは、基本的には東京とその他なんですよね、地方ではなくて。東京があってその他、こういう形ですね。だから、ある意味で、御存じのように、経済同友会の代表幹事である北城さんは、この民営化の促進にメンバーの一人として一番頑張っておられますので、その大親分が同友会の一つのかじ取りとしていろいろなことを新聞等でおっしゃっている中で、私の立場としては、北城さんの考え方も踏襲しながら、地方の現状も踏まえて話し合わなきゃいけないという大変微妙なところで、一つ間違えると、何か妙な踏み絵をしているような感じがして、どうも座っているのも妙な感じなんですが、私の意見を述べさせていただきます。

 今回のいわゆる郵政の民営化というのは、小泉総理がいつもおっしゃっている官から民へ、それから民業にできることは民にやらせようと。要は、小さくても効率的な政府をつくるんだということが基本的な、一貫したいわゆるスローガンですね。そのもとにやっておられて、我々もそのたびに、金融改革から始まって地方財政という形で、絶えず大変高き山を登らされました。そのたびに、汗どころか仲間を失うこともたくさんありました。

 ただ、目標が正確にあって、この地点に行けば日本は必ずよくなるんだよと。ということは、全体として七百兆もあるいわゆる債務を未来にただ置き去りにするわけにいかないという悲壮な覚悟のもとでやっておられたので、それについては私も大変賛成するところなんですが、ただ、今回の郵政の民営化というのはどうもちょっと合点がいかないところがある。その合点がいかないというところを、お話しさせていただきたいと思います。

 先ほど一番最初に言いましたように、私は経済同友会のメンバーでもありますけれども、経済同友会というのは各個人が自由に発言をしていいということで、同友会の総意じゃありませんので、ここのところは間違えないようにしてください。

 まず、今回の問題で、小泉さんがおっしゃっている官から民へ、民間にできることは民間でやるようにという、もう本当に決まり文句でおっしゃっている中で、やはり一番問題なのは、民営化したときに一番困るのが、現状の、経営している地方の産業ですね。ここが一番打撃をこうむるんではないかという警戒感を持っております。

 本来ならば、確かに四十万人、二十七万人ですか、という公務員制度も含めて国の改革はどんどん進んでいくんでしょうけれども、その結果として、いわゆる民業、先ほどお話がありましたけれども、地方の金融機関もようやく安堵している、ようやく峠を越えたかなという環境です。その中で巨大な銀行とか保険会社が出てくるということは、やはり相当、セーフティーネットとか、よく言うイコールフッティングをしいても、恐らくそれはとめられない。

 要するに、市場の競争原理というのは非常に残酷で、我々は経営者として身を置いているんですが、会社はだれのためにという形になってくるんですが、よく今事故がある、事件が起きるのは、最終的には、経営者の資質ももちろんあります、ただ経営者というのは、我々学校で勉強しているときに、やはり利益の追求というのが、もうこれが一つです。利益の追求ということなくして会社というのは存続いたしません。そういう意味では、今後、民営化されるごとに利益の追求をどんどんどんどん推し進める形になろうかと思います。

 その中で、最初に私、申しましたように、東京の巨大企業は恐らくそう大きな被害はこうむらないと思います。ただ、八割の中小企業というのは、地方においては、目に見えないというよりも、目に見えるところも含めて相当大きな、経営の困難に立ち向かう気力を失うような、要するに、企業がいろいろな業態をやっていく、しかも、私は郵便制度に反対しているわけじゃないんですが、特に疑問に思っているのは、今度私は資料をちょうだいしてびっくりしたんですが、地域貢献基金ですか、いわゆる地域貢献の資金を用意しているんだと。会社でひもつきというのは絶対ないんですよ。こういうことをやれば会社じゃないんですよ。それをあえてやるということは、やはりちょっと無理しているなと。

 その他は、もちろん最初申しましたように、これだけの長期負債がある中で、債権がある中で、やはり財政改革をしていかなきゃいけないことはよくわかっているんですが、ただ、会社というものを少し軽んじられているんではないかというのはそこにあるわけですね。

 会社というのはもともと、四つに分割するとかなんとかということは別として、会社その一つずつが明確なフィロソフィーを持たなきゃいけないんですね。私の会社はこういう会社だから、今後こうやって成長するよということを、一番大事なのは、ステークホルダーである従業員にまず話さなきゃいけないんですよ。従業員に、うちの会社はこうだから将来こうなるよ、だからついてきてくれという話を明確にしなきゃいけないんですね。それを怠って、ただ今後こうなるよというのはやはりお上の考え方だし、経営というのは、最終的に会社をつくるということは、当然廃業することも含まれているんですね。

 会社というのは未来永劫ありません。驚くことは、郵便事業というのは百三十年続いているわけですね。我々はせいぜい百十年ですよ。株式会社では、やはり今二百年、三百年ということはありません。それはやはり会社を経営していると、あしたはだめになるかなというような、絶えずそういう危機感でやっております。そうなると、もし会社が非常に厳しい状況にあるときに、特に我々は伝統産業なんですが、よく有田焼というのは褒められます。まあ、世界でも冠たる有田焼、こうおっしゃいます。今、有田焼は非常に危機に瀕しておりますが、だれも助けてくれません。もうこれはつぶれるに任せる以外にないんですよ。

 要は、企業努力をしなきゃいけない。この企業努力というのは、先ほど申しましたように、国が何らかの交付金を与えてその会社を存続させるということはフェアではないと私は思います。だから今回、その他の事業体に関しては、今の国の状況からして、やはり民営化というのは避けられない方向だと思います。

 ただ、私は、郵便事業に関してはちょっと稲田さんもおっしゃっていましたけれども、地方の現状を見れば、やはりこれが開放されればそこにセブンイレブンみたいな形の業態ができてくる。そうすると、既存のセブンイレブンも勝てないと思いますよ。そういうものが、ましてや三ちゃんでやっているような小さな小売店はもうあっという間につぶれるという形になっていく。ただ、それも今回は企業目的が正確に見えてこない。確かに書いてあります、いろいろと目的は。ただ、フィロソフィーじゃないんですよね。これが存続するためのこういうサービスをしますよという、いわゆるサービス目的なんですね。それではないということをやはり我々は企業家として思います。

 一番最後になりますが、何度も申し上げて申しわけないんですが、やはり企業原則に基づくということであれば、イコールの競争原理をすべて導入するということなくして、企業を立ち上げるというふうに簡単に考えてほしくないと私は思います。あえて言わせてもらえば、小泉さんの改革は、私は、ここまでは、いろいろな意見もあるでしょうけれども、成功したと思います。ただ、郵政に関しては、ちょっと時間が足りないのかな、もう少し郵便制度ということをまじめに考えれば、もうちょっといろいろな一工夫があるのかなと。

 私の会社がちょうどきのう、ミラノに店を出しました。帰ってきた社員に聞けば、ミラノにイタリア・ポストというのがありますが、信用できないよと。これは民営化されているんですね。信用できないよ、スイスのポストの方がいいよと。スイスのポストは宅配してくれるそうですよ。こういうことがボーダーフリーの中で起こってくると、本当の意味で、やはり信用も含めて、従来のいわゆる郵便制度の安心感というのが守れるのかなと私は思います。

 代表幹事には大変申しわけない発言をしているんですが、恐らくこれが終わった後に何と言われるかわかりませんが、本当に東京というところと地方は全く違うということは、認識しないといけないと私は思います。

 以上です。(拍手)

山崎座長 ありがとうございました。

 次に、細江四男美君にお願いいたします。

細江四男美君 皆様、おはようございます。

 私は、ことしの三月二十日に発生しました福岡県西方沖地震で甚大な被害を受けました福岡市西区玄界島から参りました細江四男美と申します。

 この場をおかりいたしまして、一言皆様へお礼を申し上げます。

 地震発生以来、全国の皆様から心温まる多大な御支援や激励をいただいていることに対しまして、島民を代表いたしまして、心から感謝を申し上げます。厚く御礼申し上げます。

 島の状況は、皆様の御期待にこたえるべく、島民挙げて復興に努力しておりますが、今なお、時折、余震が襲っている状況下でございます。もちろん、私たちも精神的にも物質的にも厳しい状況にあることには変わりありません。それでも、仮設住宅が建設され、島での生活が再びできるようになり、島民は昔の平穏な生活を一日も早く取り戻そうと前向きに頑張っているところです。

 さて、こうした状況の中、本日、衆議院郵政民営化に関する特別委員会の地方公聴会が開催され、地方に住む私どもの意見も聞いていただけるとのことですので、離島で、しかも思いも寄らない災害に見舞われた地域に住む者の立場から、現在、国会で論議されている郵政事業の民営化に向けた意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、昭和三十年に玄界島で生まれ、ずっとこの島で育ってきました。島には公的機関と呼べるものは郵便局と漁協しかなく、中でも郵便局は、小さなころから正月にもらったお年玉を貯金しに行ったり、また学校からの帰りに水を飲みに行ったりとか、何かにつけて気軽に立ち寄っておりました。そうしたこともあって、郵便局は、私にとりましては地域に密着した、あって当たり前の存在でした。

 ただ、今回の地震を経験して、改めて、郵便局の存在がこんなに大きく、ありがたく、そしてその必要性をまざまざと痛感させられました。というのも、地震が発生する前から玄界島でも宅配便が進出してきていましたが、郵便局は、郵便物を初め荷物を毎日きちんと家まで配達してくれるのに対しまして、宅配便は、荷物が着くとその旨の電話が家にあり、その家の人が宅配便の取扱所までとりに行く、そんなふうになっております。また、宅配便は、つい最近まではその電話代を荷物をとりに行ったときに取るなど、あくまでもうけだけしか考えていないなと思ったからです。それでも両方利用されている方もおりましたが、皆さんが自分のニーズに合わせてうまく利用していました。

 それが、皆さんも御承知のとおり、地震の発生と同時に、私どもは、九電体育館の方に避難生活を余儀なくされました。約二百世帯近くの家族が体育館の中で寝起きをともにしなければなりませんでした。もちろん、私の家族もお世話になりました。避難者全員の顔と名前など、とてもわかりません。ましてや、体育館の中ですから、住所などありません。

 そんな中でも、郵便局の方々は、心配した親戚や友人からの手紙や荷物を、避難したその翌日からきちんと一日も休まず届けてくれました。そのとき届けられた手紙や志に島民の皆さんがどれだけ励まされ心強く思ったことか、言葉では到底言いあらわせないほどでした。本当にありがとうございました。こんなときにふだんと変わらないサービスは、民間の方では、到底やってもらえないというより、できないと思うんですね。

 その郵便配達の方が言っていましたが、私はもう何年もこの仕事をしているんです、島の皆さん一人一人の顔が私はほとんどわかりますよと言っておられました。島の世帯数は二百二十八世帯で、毎日二百通ほどの郵便物が島に届いていると聞いています。今、玄界島の郵便局には三名の職員の皆さんがいますが、その方たちがいたからこそ、今回のように、顔で配達する、災害時でもきちんと必要な情報の提供やお世話ができる、そんなシステムができ上がっていると私は考えております。

 しかも、その方たちは、ふだんから、郵便物を配るだけではなく、いろいろな相談事や話し相手、地域のコミュニティーの場としての役割も十分果たしております。郵便局が民営化されたら、こうした災害時における今回のようなサービスや、住民との心と心をつなぐ安心のかけ橋としての機能が続けられるのか、私には不安でなりません。

 今回の地震で、私は、まさか私たちがこんな避難生活をするとは思ってもいませんでした。そして、今は、日本じゅうどこにいても、いつ私たちと同じような経験にさらされるのかわからないと思います。それで、ふだんから皆さん方が準備しておく必要があると思います。つまり、災害時や非常時でも被害に遭った方々の生活を守る、そのシステムが必要であり、その上で、公的な機関としての郵便局の果たす役割は大きいものと思います。そうした視点からも郵便局の民営化を考える必要があるのではないでしょうか。

 しかも、聞くところによると、郵便局のこうした運営には税金は一切使われておらず、自分たちの自助努力によって、もうかるところがもうからないところをカバーしていると聞きました。株主のために会社のもうけを最優先させなければならない民間が、こんな不効率なシステムやサービスを残してくれるのでしょうか。私は、常識的に考えてもできないし、また、しないと思います。

 避難生活を余儀なくされたとき、郵便局にはいち早く、移動郵便車でしたか、臨時郵便局を開設していただき、貯金の引き出しサービスなどが受けられるようにしていただき、本当に助かりました。あの地震のときは、ほとんどの方々が着のみ着のままで体育館での生活となりました。多大な御支援もありましたが、細々とした日常品はみずから購入しなければならない状況にありました。しかし、私たちは、どこに行ったらお金がおろせるのか、皆目見当もつかない状態の中で、避難した翌日に、日本郵政公社が、移動郵便車といいますか、それを体育館そばまで配置していただき、ふだんと変わらない金融サービスが利用でき、みんな大変感謝していました。あの移動郵便車は大変高いんでしょう。こうした対応も、民間になった場合、本当にできるんでしょうか。

 そして、何よりも不安なのは、島の郵便局がなくなってしまうのではないかということです。先ほども述べたように、離島においては、だれもが利用できる金融機関は郵便局しかありません。玄界島においては、漁協があり、約八割の漁業関係者は郵便局とほぼ同様の金融サービスが受けられますが、漁業関係者以外の二割の方は、郵便局がなくなれば、基本的な金融サービスが受けられない事態が想定され、島には住めない状況になるのではないでしょうか。これは玄界島だけの問題ではなく、ほとんどの離島で同じような事態が出るのではないでしょうか。

 離島は、これといった産業もなく、近海漁業の衰退とあわせ、採算を基本とするアクセス手段の後退や撤退、公的機関の廃止という悪循環により、人口の流出と高齢化の進展という課題を常に抱えています。現在、人が住めなくなった離島はたくさんあります。こうした状況は、現在話題になっている領土問題にも大きな影響を与えているのではないでしょうか。玄界島でも、郵便局の撤退は、漁協を利用できない二割の島民の死活問題です。将来必ずみんなが安心して笑顔で暮らせるもとの玄界島にしようと必死の思いで懸命な復興に向けた努力を続けている私たちにとりましては、この郵便局の民営化問題は、違った意味で私たちに大きな不安を投げかけています。つまり、住宅などが復興しても、人が住めない島にだんだんなっていくのではないかという不安がぬぐえないのです。

 私は、今、なぜ政府が、小泉首相が郵便局の民営化を急ぐのか、そして民営化してどういう社会をつくろうとしているのか、正直よくわかりません。今の郵便局は赤字でもないと聞いています。小泉首相も参加して二年前に郵政省を日本郵政公社に変え、四年間の経営目標を立てさせて努力中と聞きました。私は島しかわかりませんが、郵便局のサービスは一段とよくなっております。

 今、郵便局を民営化してこの国にどんなメリットがあるのか、全く見えません。私も、小さな島ではありますが、日本の国を支えている一国民の一人です。どうか、一層慎重な議論を尽くされ、いつまでもふるさとのこのきれいな島に安心して住める政治を、改革を進めていただくよう切にお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。

 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

山崎座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山崎座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎と申します。

 陳述人の皆様方には、本当に率直な御意見、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。

 私自身は、長野県の中山間地域を多く抱える選挙区の出身でございまして、常々、地域を元気にすることによって日本を再生させたい、そういった思いで政治活動に取り組ませていただいております。

 中山間地や過疎地におきましても、今、農協やさまざまな機関の合併が進みまして支所が少なくなるなど、さまざまな変化が起きております。いろいろな地域で郵便局が地域の唯一の金融サービス拠点だというようなところも多くなってきておりまして、私自身も、その果たしている役割は非常に大きいものがあるというふうに考えているところでございます。

 また、昨日は、離島における郵便局の現状について勉強させていただくという趣旨で、他の委員の先生方とともに馬渡島に渡らせていただき、馬渡島郵便局を訪問させていただきました。そこで、正規職員二名の方、そういう体制の中で、地域の皆様の生活基盤となるサービスをしっかり提供していくんだ、そういう強い決意のもとで頑張っておられる局長また局員の方々の姿に触れまして、大変に感銘を受けたところでございます。

 また、馬渡郵便局自体は無集配の特定局でございますけれども、郵便の配達は二人の島民の方が受託をされて、配達を行っておられるということをお聞きいたしました。先ほどお話にもございましたけれども、一方、民間の宅配会社の荷物につきましては、一社については、先ほどのお話のとおり、配達は港のセンターまでしか行わないで、電話で連絡をして、その連絡を受けた方が港にとりに来るというシステムをとっている。それから、もう一社の方は、郵便小包という格好に切りかえて、郵便局から受託した郵便業務をされている島民の方が実際、家の方まで配られる、こういったシステムをとっているんだということをお聞きいたしました。民間の物流事業自体も、最後はこの郵便ネットワークがなければ成り立たないんだという現場を見させていただきまして、そういったことを実感させていただいたところでございます。

 この郵政民営化の議論を通じまして、私自身は、郵政公社がスタートして二年、さまざまな改革に取り組まれて大きな成果を上げていらっしゃる、郵政公社の改革を中期経営計画が終了するあと二年後まで見届けてから、その時点で改めて、さらにどういう改革が必要なのか、議論するのが望ましいのではないか。また、業務拡大の柔軟性を確保するために、民営化するということがどうしても必要だという判断がされる場合でも、三事業一体で株式会社化するという形をとるべきではないかという立場で、委員会でも議論させていただいてまいりました。

 以上を踏まえまして、これまでの委員会における議論、それから昨日の現地視察等々踏まえまして、幾つかの点について陳述人の皆様方に御質問させていただきたいと存じます。

 まず、先ほど述べましたように、日本郵政公社が発足して二年余りでございまして、さきの決算発表でも当初の計画を上回る収益を上げるなど、効率化も進め、数字の面でも大きな成果を上げられていると私自身認識しております。また、サービスの面でも、真っ向サービスを掲げてお客様志向の徹底が図られるなど、さまざまな点で改革が行われてきたと一般的には言われております。

 一方で、まだまだ改革の余地があるのではないか、むしろ、こうした日本郵政公社の限定的な役割に閉じ込めておかないで、もっといろいろな役割を期待したいという意見もございます。主に民営化推進という立場ではこういった、もっと自由に、今の資産、ネットワークを生かして国民に豊かなサービスを提供すべきだという論が中心になっているように思います。

 ちなみに、今回の民営化法案に伴いまして、三月に出されました採算性に関する試算によりますと、全国の集配局四千八百局では、株式仲介でありますとか投資信託を販売するとか、また普通局千三百局では、生命保険、変額保険、損害保険を販売したり、いわゆるコンビニのような物品販売をする、また住宅リフォームの仲介を行うとか、こういったいろいろなことをもっと郵便局にやってもらったらどうかというようなプランが示されているところでございますけれども、逆に、一つ一つ詰めていくと、本当にそれができるのかということで、その実現性について疑問視されている業務もある、こういったところで議論百出の状況でございます。

 そこで、陳述人の四人の皆様方からお一言ずつ、現在の日本郵政公社になってからの改革の成果、その評価と、郵便ネットワークを通じて今後どのような業務やサービスを展開していくべきか、こういったことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。堀江陳述人から順次お答えいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

堀江康熙君 今宮下先生の方から御質問いただいたんですが、郵政公社になってからどう考えるかということなんですが、私が先ほど申し上げましたように、一番大きな民営化上の問題というのは最後に申し上げた点で、資金の運用をどうしていくかというところが一番大きいと思います。

 これまでいろいろな試みが行われているということは、確かにそれは評価できる点ではありますけれども、ただ、貸し出しまで民間の金融機関と同じように、郵貯で集めた資金を貸し出しに回せるのかどうかという点につきまして、私は一番疑問が残っております。私は、そこまででございます。済みません。

稲田繁生君 私は、いわゆる郵政公社が今やっていることに対して、国民はある程度の評価をしているんじゃないか、そういうふうに思うわけです。

 つい先日、共同通信が電話世論調査をやっていましたけれども、今国会で何が何でも成立させなければならないというのは七二%が否定的であるということ、これ一つを見ても、郵政公社をそれなりに評価して、そして、これから先、改革の方向をじっくり考えていっていいんじゃないか、いわゆる拙速を避けるべきだ、そういうふうに国民は理解しているからだというふうに私も思っております。

 つまり、郵政公社の職員の給与が公社の事業収入で賄われている、いわゆる税金は使われていないということ。それと、公社ができて、生田総裁という民間から来られた方をトップに、かなり効率を目指していろいろ、人員も減らしていらっしゃるし、そしてまだ三年目ですね。そういうことからいって、今なぜ、拙速という批判を受けながらやらなければならないのか、これを国民が理解していないし、理解できないといった点にあるのではないか、私はそういうふうに思っています。ですから、今の郵政公社のサービス等々、私は十分評価できるんじゃないか、そういうふうに思います。

 それからもう一つは、これから何を郵政公社はやっていくべきかということを、やはり地域住民、そういった方々の声を十分聞いて、そして、ここ二、三年ぐらいの間に方向性を打ち出していく必要があろうかというふうに思います。

 私、先ほどちょっと陳述の中で申し上げました郵便局の配置の見直しとか、あるいは赤字を抱えている施設の対応、そういうようなものも含めて、いわゆる前向きの姿勢でさらに改善を進めていく。そして究極的には、やはり住民の不便、住民にしわ寄せが来ないような郵政行政を維持していただきたい、そういうふうに思っております。

深川一太君 最初の公社については、もう単年度黒字ということで明確に答えが出ています。それと、総裁になられた何カ月か後にちょっと生田総裁自体のお話を聞くことがあったんですが、その中で総裁が、公社の一番の資源というか資産は人だよ、こうおっしゃったんですね。非常に優秀な人がいるということで、もう既に会社のいわゆる準備は整っているんだろうと思います。だから、公社としては、本当にこの二年間成功したというふうに評価していいものだと思います。

 それからもう一つ、どういうものを求めるかですか。それはちょっと私、とんちんかんな考え方だと思うんですが、会社というのはもともとだれのものかということをまず選定しなきゃだめですね。だから、何をやるんだと一発決めて会社をつくるというのは非常に乱暴なやり方で、まず会社というのはだれのものなのか、例えば地域の人のためなのか、それとも従業員のためなのか、株主のためなのか、そういうことをやはりよく考えて、そして設立した後にビジネスモデルの話をやはりそこでするという、順番が狂っていると思いますね。いろいろなことをやるというのは、それは本当にニュービジネスの方たちと余り変わらないと思いますね。基本的には、やはり百年企業を建てるんだという気持ちでやれば、まずコアをどうするかということを決めなきゃいけないと思うんですね。

 以上です。

細江四男美君 私は、現在の郵政公社に対しましてほぼ満足しております。

 以上でございます。

宮下委員 ただいまは、現在の郵政公社の姿については皆様方大変高く評価されているということだったと思います。

 一方で、なぜこの時期に民営化を考えていかなければならないかという論点の大きな点は、この大きな事業、現在は二十七万人プラス非正規の職員の皆様を含めて、先ほどお話がございましたように、国からの財政支援等々をしないで独立自営でやっていってくださっているわけですけれども、これから金利の動向等々、景気も若干上向いてきて、金利がもう少し大きくなってくると、預金金利も引き上げざるを得ない。国債のみの運用との利ざやで、主に金融部門で利益を上げているわけですけれども、ここの利益も縮小していくだろう。そういうことで、このまま続けていけば将来的に赤字に陥るかもしれない。こうした、将来的に赤字に陥る可能性がある以上、民営化によりまして、公社に課されていた業務の制約から解放して、既存の民間企業の皆様方との競争を通じまして、その持てる能力を最大限に発揮してさまざまな事業を展開する方が、結局、国民負担もないし、さまざまなサービスの提供を通じて国民の利便の向上にもつながるんではないか、こういったことが言われております。

 一方、今回のシステム、仕組みについて慎重論を持つ、私も含めてですけれども、本来、郵政事業は利益を追求することを目的にするべきではなくて、むしろ民業の補完機能を果たすべきではないか。先ほど、宅配業者の皆様のドア・ツー・ドアの最終的なサービスは郵便局が民間を補完する格好で成り立っているわけですし、典型的にはこういうことも含めて、民間にできない部分、最後の最後のところを支える公的な部分としてやっていくことが必要なのではないか。そのためにも、できれば公社のままで改革をする、または、民営化するとしても政府がきちんと責任を持つ格好で、株式会社化しても政府が株をある程度持ち続けるような、特殊会社として赤字にならないように配慮をしながら、民業圧迫にならないように限定的に業務拡大をしていけばいいんではないかというような考え方がございまして、これは基本的な哲学ともいうところで、大きな争点になっているところでございます。

 堀江先生には、経済学者という立場で、やはり日本経済活性化のためにはさまざまな規制を撤廃して自由にやった方がいいのだという考え、または、やはり公的な立場を維持して民間との共存を図っていくことを中心に考えるべきだ、この二つの考え方についてどのようにお考えでしょうか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

堀江康熙君 ただいまの御意見につきまして、私の考えを述べさせていただきます。

 最初にお断りしましたように、やはり私の場合は金融中心ということでお答え申し上げたいと思いますが、二つほど先生の方からお話が、どちらの方を重視するのかというお話だったと思いますが、私の場合には前者でございます。活性化するために規制を撤廃していくべきではないのか。

 特に私が申し上げたいのは、確かに公的なものは必要だというのは私もよく理解しておりますが、ただ、今は郵貯の残高というのが非常に大きいわけです。そういうものが果たして存在する必要があるのか。あるいは、もう一つは、そうしたものが運用できるのか。

 先ほど金利のお話がございましたが、今は確かにいろいろな特権があります。特権によって、例えば預金保険料も払わなくてもいい、あるいは税金等も納めなくてもいい、そういう形になっておりますが、そうしたものを除きますと、かなり利益が小さくなるのも事実でございます。そうした状態のもとでお金を集めて運用が果たして可能なのか、従来のように債券だけの運用でよろしいのかというのが私の基本的な立場なんです。

 そうしますと、運用はやはり、先ほどもちょっと陳述のところで申し上げましたように、運用が非常に難しいのではないのか。債券運用するだけであれば、民間が、例えば個人が直接買いまして、国債を直接買って自分で保有するのと変わらないのではないのかという、そこが一番大きなポイントなんです。郵貯という形を一回通して、それで運用していくのはどういう望ましい点があるのか。結局は、それは郵便局全体を存続するためのものでしかないのではないのか。

 もちろん、郵便局の存続というのは別の視点では非常に大事だと思うんです、今、ほかの方からもお話がありましたけれども。大事だと思いますが、ある意味では、金融面でそういった形で利益を上げて、それでという形が果たして望ましいのかということにつきましては、私は、金融という立場から見た場合には非常に大きな疑問があります。それはやはり、活性化のためにそういうことをなくす、あるいは間接的に、一回、資金を貯金という形で受け入れてそれを運用するという形ではなくて、直接運用した方が国民的には利益になるのではないのかというところが私が一番申し上げたい点です。

 それともう一つ、その関連で、先ほど申し上げましたように、そもそもの運用のノウハウは、債券はあるかもしれません、債券はあると思います。しかし、貸し出しについてはないわけですね。運用しようとすると、必ず債券でしか運用できない。もちろん、十数年先になって完全に民営化するといいますか、そうなったときにまでノウハウはないのか。これは努力する、あるいは民間の金融機関の方を例えば新たに雇用されて、そういう形でノウハウを蓄積することも全くできないというわけではありません。それはできますけれども、現在の日本経済の状況から見た場合に、地域の金融機関というのはかなり預金超過なんですね。貸し出しが全然できない。

 これは長い歴史があります。例えば、高度成長期以来そういう状態になっているわけですが、民間に、例えば地方交付税交付金あるいは大企業の本店、本社、東京での資金調達、そういう形で集まった資金が地方に流れてくる。それが地方の金融機関にお金が入ってくる。一方で、地方の金融機関は貸し出しができない。要するに、大企業がない。

 それを結局どうしていたかと申しますと、中央のコール市場で都市銀行等にお金を回していたというのが実態でございますので、そのメカニズム自体が本来は問題である。地域の金融機関は自分のところで貸出先を見つけていく、そういう努力をすべきだった。しなかったというのが事実です。それが現在のメカニズムといいますか、こういう状態になった一つの大きな背景だというのは私は否定できない、積極的にそれを主張したい点です。

 郵貯の場合には、それではこれから新たに貸出先を地域で見つけられるのか。私の場合は地域で行うという形で、中央でということでは必ずしもありませんので、地域の企業に、あるいは地域の個人企業でももちろん構いませんですが、貸し出すことができるのかとなると、そのノウハウがない。そうすると、かなり難しいのではないのか。

 やはり活性化のためには直接的に、個人向けの工夫された国債、元本の保証までは難しいと思いますけれども、元本保証というのは金利が変動した場合の元本保証ですね、そこまでは難しい。もちろん最終的な、償還になるときに元本保証されるのは、これは当然のことですが、途中の段階で価格が変動します、国債の場合には価格が変動しますから、その段階での保証は難しいですが、なるべく元本の変動が小さくなるような、不利にならないような、キャピタルロスが出ないような商品、国債を発行して、それを工夫して個人向けに販売していく。もちろんそれは、郵便局が販売する、あるいは通常の金融機関が販売するというので構わないと思うんですが、そういう形で販売していって、郵便貯金自体は規模が小さくなっていく、そういう方向に持っていくべきなのではないかというのが先ほどからの私の主張でございます。

 そういう意味では、先生の御質問にお答えしますと、確かに公的な立場というようなものは非常に大事だ、これは私も理解していますが、もう一つ、それよりも日本経済全体のことを考えた場合には、活性化のためにはやはり小さくしていくべきではないのかというのが私の基本的な考えでございます。

宮下委員 ありがとうございます。

 次に、深川陳述人にお伺いをしたいと思います。

 今回の民営化法案について非常に大きな論点になっておりますのは、公社を民営化する場合に、大きく分けまして、郵便と窓口ネットワーク、そして貯金、保険の四つの会社に分割をするということでございまして、これに対して、やはり三事業一体で民営化するとしておりますね、三事業一体でやるべきではないかという議論の大きな対立がございます。

 今回の法案のとおり、四分社化すべきだという論拠につきましては、まず一つは、一般の事業会社、郵便事業とかそういった事業ですね、それと金融会社のリスク遮断をしっかりするためにも分社化はどうしても必要だということ。

 それからもう一つは、分社化によってそれぞれが専門的な会社になるということで専門性が高められるだろう、それから経営責任の明確化が図られるだろう。こういった論点から、やはり四つに切るのはどうしても必要なんだというふうな政府側の立場がございます。

 一方で、三事業一体でいくべきだという論理の方は、やはり本当に、郵便局、地域では少ない人数でやっていっていただいて、一人が何役もやっていっていただいている。そういう面で、効率性が図られている部分もあるし、シナジー効果もある。

 それからまた、今回、四分社化で、特に貯金とか保険の金融会社が、将来的には完全に持ち株関係が失われて一般の商法上の会社になる、こうしますと、なかなか、郵便局会社で金融サービスをきちっと提供できるかどうかというリスクが高まるということもありますし、それから、そもそも四つに切るということでシステムが間に合うかというのも大議論になっておりますけれども、数千億円のコストもかかる。また、金融機関が窓口会社に業務委託という格好で、本来、支店を持たない会社、新しい会社ができて、それを郵便の郵便局会社、窓口ネットワーク会社に業務委託をする格好で預金を集めてもらうとか、そういう格好をとっているわけですけれども、その委託手数料に、初年度で大体七百億円ぐらい、消費税もかかるんじゃないか。

 こういった分社化することによるコストとか、きちっと金融サービスが提供できるかどうかがいま一つ不明確。先ほど出ました地域貢献基金があるから大丈夫だろうという話もあるんですけれども、そこら辺が不安定化する。そういったコストとかリスクが高まるので、やはりこれをばらばらにしてしまうのはどんなものかという大きな考え方がございます。

 経営者の感覚として、これについては、やはり四つに切るべきである、ないしは、一体のまま租税負担をする、預金保険機構に入る、政府保証を外す、こういったイコールフッティングの条件を整えてやればいいのではないかという、それは大体どっちの方が望ましいというふうにお考えでしょうか。

深川一太君 恐らく一番嫌な質問ですね。

 基本的に、目的は何かというと、要するに、国の取り分の、いわゆる法人税の免税だとか、それから保証料を取らないとか、そういうものが年間一兆円ぐらい発生すると言われていますよね。それと、やはり先ほどお話ししました三百五十兆円の行方ですね。それが国民に見えない財投へ行っているということを何とかしたいということが、多分、会社のシステムを変えるときに四つにしようというときの基本的な発想だと思いますね。だから、今おっしゃったように、そこのところは、多分ここから先は正直言うと、政治の問題かなと。

 純然たる会社ということを考えた場合に、まず、やはり相互に、巨大化した企業が、いろいろな銀行が、巨大バンクができ上がりましたけれども、なかなかうまくいかないという面がいまだにあるんですね。だから、会社というのは、そこまで大きな、巨大なものを運営できるということは、トヨタみたいによほど歴史的な背景がない限りはなかなか難しいというのは一般的に言えます。だから、ある意味では、四つに分割した方が、経営上は、やはりそれに適した経営者が当たりますから、当然それは、その方が面倒見がいいという環境にはなるかと思います。

 ただ、今回やはり問題になっている、最初に申しました、資金の行方をどうするかということが政治的にどうなんだろうということをやはり正確に決めないと、最終的にそこのところで議論をしていくよりも、要は、それを断ち切るんだというふうにまず最初に決めるのかどうかということが、例えば私は、決めてしまってその流れを断ち切ったからいいかということでも、まだよく精査しなきゃいけないという立場なんですね。やはり、今の日本の経済の、ある意味では必要悪になっている部分もあるんですね。

 だから、そこのところも精査しながら、最終的には、やはり政治的な判断をまずやってしまって、その上で、一番問題は、一番最後の部分の窓口業務のところだと思います。あとは、先生方おっしゃいますけれども、既にビジネスモデルがありますから、あとはもう取ってつけたようなビジネスモデルばかりですから、恐らく四つやってしまえば最後の部分が一番厳しいのかなと。また、先ほど申しましたように、そこに交付金をつければ、もうこれは会社の体をなしません。いずれにしても、そこのところが難しいのかなと思います。

宮下委員 時間が参りましたので、そろそろあれですけれども、一言だけ最後に申し上げさせていただきたいのは、昨日訪問させていただきました馬渡島には郵便局と漁協の二つの金融窓口があったわけでございます。細江陳述人がおっしゃったように、皆さん、やはり郵便局も非常に頼りにされているということでございまして、今回の民営化論議の中で、中山間地や離島にも農協や漁協の店舗があるので、そういう地域では必ずしも郵便局が金融サービスを提供しなきゃいかぬというような義務を課す必要はないんじゃないかという主張も見られておりました。これに対して郵便局の浦丸局長さんは、やはり漁民の大半の方が漁業に携わっている以上、漁協の存在が重要ですけれども、漁協だけでは住民の要望にこたえられない、特に、全国にネットワークを持つ金融機関として郵便局の存在が欠かせないというふうに話されておりました。私も、まさにそのとおりでございまして、郵便局が金融面で果たしている役割、今後もしっかりと維持されるように、この法案、修正すべきは修正すべきだなというふうに考えていることをお伝えして、質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山崎座長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、四人の陳述人の皆様、本当に貴重な御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございました。

 特に、最後におっしゃっていただきました、玄界島から来られました細江陳述人、震災の状況また震災後の復興状況についておっしゃっていただいたわけでありますけれども、私ども、これを全力で支援していきたいと思います。ぜひ頑張っていただきたいと思うところでございます。

 私は、先ほどの宮下先生と違いまして都会選出の国会議員でございまして、大阪市内の選出でございます。それでまた、新大阪駅を選挙区といたしております。そんなこともございまして、今回のこの郵政民営化の議論の中では、過疎地の問題は、また後で申し上げますけれども、非常に重要な問題であります。また、都市部もいろいろな問題があるので、慎重にお扱いいただきたいということを申し上げておるわけでございます。

 全国あまねく見ますと、二万四千七百の郵便局が、大体一・一キロで一局というような形になっておるようでございますけれども、都心部に参りますと、三百メーターだとか二百メーターの間隔で郵便局があるというようなところもあるわけであります。これもすべて、考えますと、利用者の利便のこと等がございましてそういう設置基準になっているんだろう。そういうことで、都市部においても、この設置基準を非常に簡単に変えてもらったら困るということは申し上げておるわけでありますけれども、設置基準といいますか、現行の設置状況でございますけれども、そういうように申し上げておるところでございます。

 本日、四人の陳述人の皆様からお伺いをいたしたその状況を、私、聞いておりましたけれども、基本的には、地方の視点で郵便局が果たしておる大きな機能のことをおっしゃっておられて、この郵便局を地域の中心として、先ほどの細江陳述人のお話では、一つしかない郵便局がコミュニティーセンターになっておるし、そこに行けば皆さんとお話もできるしというような、地域の中心拠点というようなことをおっしゃっておられたわけであります。そのあたりが若干都市部と異なるところではあるわけであります。

 それで、本来のお話に戻るわけでありますけれども、郵政民営化の議論が出てまいりまして、私どもも党内でいろいろ検討いたしたわけでございます。郵政は御存じのとおり三事業、郵政公社は三事業をやっております。郵政事業と、また郵貯、簡保というこの三事業が中心であります。この中でも郵便事業というのはユニバーサルサービスでございますから、先ほどからおっしゃっていただいておりますように、どんな山村であっても、過疎地であっても、郵便を届けなければなりません。これは、火事だとかどうだとか言っているような問題ではないわけであります。

 そういう意味において、この審議の状況を見ておりますと、全国七千二百二十の過疎地の郵便局は、省令に書き込んで、これを従来どおりに維持するというようなことをおっしゃっていただいておりますけれども、まだ、やはり皆さん方におかれては、大変な不安を持っていらっしゃるんだろうというように思うわけでございます。

 これ以外の、さっき申し上げました金融サービスと申しますか、郵貯、簡保のところは従来から、これを民営化したらどうかという意見があったわけでございます。今までは、郵貯で集めた資金を財政投融資で運用するといったようなことでやっておりました。いわば民間部門に流れない、政府部門の中で還流しているというような状況があったわけであります。最近は自主運用ということになっておりますから、財政投融資のところも年々減っておるわけであります。

 しかし、その郵貯の持っている資金、簡保の持っている資金を、では一体どこで運用しているのかといいますと、これはまさに先ほど堀江陳述人がおっしゃったように、大変バラエティーに富むような、市場原理に基づくような運用のしぶりにはなっておりません。これはまさに国民の皆様も、本来、金融というのはハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンで、やはり高いリターンをとろうと思えば高いリスクが必要だという、これは一般的な金融の原理であります。

 ところが、やはり国民一般には、先ほどおっしゃいましたが、安全資産選好というのがあって、政府が政府保証をして一千万の範囲内でこの資金は元本保証しますよ、ですから、預けていただいたら、これは民間金融機関なら経営破綻をする場合もあるけれども、そういうことにならないですよ、こういうようなことでどんどん集まるといったようなことになっておったわけです。この郵政公社の、先ほども出ておりましたけれども、損益状況等々を見ておりますと、これは生田総裁御自身がおっしゃっているんですけれども、もう数年するとやはり、郵政公社の三事業のうちの収益の柱でございます郵貯も収益が圧縮されるだろう、こういうようにおっしゃっておられるわけでございます。

 それとまたもう一つは、さっき申し上げましたように、政府部門に還流しておる、今はもう出ておりますけれども、まだまだ大きな分野において民間部門のところに流れておらないところを、やはり民営化させていくという方向は一つの流れではないかということを、私どもはいろいろ話し合ったわけであります。

 しかし、その場合にも、やはり気をつけていただかなければいけないということで、これは竹中大臣もおっしゃっておるわけでございますが、五原則というのがあります、民営化を行う場合の五原則。

 一つは、経済の活性化にこの民営化が沿うものなのかどうか。またもう一つは、今構造改革というのをやっております。金融システムもそうでございますし、この構造改革全体の流れに沿うものなのかという整合性の原則というもの。また、国民の利便にこれが配慮されたものなのか、こういうような利便性の原則。また、今の郵便局ネットワークが十分活用されるものなのかという資源活用原則。五点目は、この郵政職員の方、二十七万人強いらっしゃいますけれども、このような方の雇用を守ることができるのかという雇用配慮原則。この五つの原則があるわけでございます。

 この五つの原則に沿った形で民営化を進めていくということであれば、だんだんこれから、今のような状況が続いてまいりますと、私は、この郵政公社全体の収益が圧縮されるようにならざるを得ないのではないか、こういう観点で、この民営化に賛成という立場で今申し上げておるわけであります。

 そこで、四人の陳述人の皆さんにまず初めにお伺いをいたしたいわけでありますけれども、先ほども出ましたが、若干角度を変えまして、郵政公社が今後とも、現状の経営のやりぶりで維持していけるのかどうか。これは、仮に維持していけないということになれば、公社といっても政府と一体ではあるわけでございますから、国民の負担、最終的には政府が負担して国民の負担になるということになるわけでありますけれども、そういう観点から、四人の陳述人の方にまずお伺いをいたしたいと思います。

堀江康熙君 御質問は、済みません、公社の形で……。

谷口委員 今、現状の公社のやりぶり、経営のやりぶりがございます。私が特に言いたいのは、金融の方の状況が、今後、現状の経営のやりぶりが収益を圧迫し、最終的に国民負担となるようなことはないと考えていらっしゃるのかどうかということでございます。

堀江康熙君 現状のやり方でということでございますね。(谷口委員「そうです」と呼ぶ)

 私は、先ほどもちょっと触れたかもしれませんけれども、金利情勢いかんだということになりますが、今は量的緩和政策で金利が非常に低い状態ですが、今後、例えば金利が上がってくるような状態になった場合に、郵貯に支払われる金利と、例えば国債等の債券で受け取る金利との差が変化してくる可能性があります。そうしますと、採算が悪化する可能性もないとは言えないと思います。と申しますか、あると思います。

 それで、もう一つは、今後とも現在の状態を維持していけるかどうかというお話だったと思いますが、私は、現在のように郵便貯金という形で、特に定額郵貯的な形で資金を集めていった場合に、それがまた運用といいましても、結局は債券、公共債を買うという形になると思うんですが、そういう状態で果たして今後も可能なのか。

 それはやはり活性化という面では望ましくないのではないのかというのが私の考えでございますし、構造改革、今後改革していくという場合に、金融面でも郵貯の存在が非常に大きい。大きいからいけないということは必ずしもないんですが、それが、市場原理に基づいての資金という意味でですけれども、公共性というのは別にしまして、資金という面で、確かに市場メカニズムに基づいて配分が行われているのが一番望ましいわけですが、それが果たして維持できるのかどうかということについては、私は大きな疑問があります。

 以上でございます。

稲田繁生君 郵政公社が今後とも現状のままで維持していくことができるかどうかということは、私もこれは全く知識不足でございますけれども、やはり厳しいものがあるのではないか、そういうふうに思います。したがいまして、やはり当面二、三年の間に、今後の問題について十分、外部の意見を聞きながらも煮詰めていく必要があるのではないか。

 それともう一つは、できないとすれば国民の負担になる。国民の負担になるということは税金をつぎ込むことですが、やはり何のために行政と官があるのか。先ほども申しました生活弱者とかそういう人たちを救うためには、行政が最小限の資金をつぎ込むこと、これはやはり必要なのではないか、最小限ですね。今のところはやっていませんから非常にいいわけですけれども、そういうことが出てきてもやむを得ないのじゃないかというのが、地方にいて思うことでございます。

 それからもう一つは、郵貯にお金を預けている人というのは、投機のために預けているんじゃなくて、いわゆる安全、安心のために預けているわけですので、そういう面での運用は、預けた人の、お年寄りとか地域住民の気持ちに合った運用をしていく、そういう努力も必要なのではないかな、そういうふうに思っております。

深川一太君 公社が今後やっていけるかどうかというのは、基本的には公務員制度もかかわってくるんですよね。やはり今、人件費に対しては、柔軟性が基本的にはない中で経営を強いられる、それが欠点ですけれども、プラス面があるんですよね。それはいろいろな、保障にしても、先ほど言った免税にしても、税金がかからないということが非常に大きい。法人税を払わなくていいというのは非常に大きいです、金融界にとってみると。払いたいんですが、払いたくないという気もありますからね。

 それからもう一つは、やはり公社がもしこのまま、非常にこういう有利な状況の中で民業と競争すれば、恐らく公社が勝っていきますよ。ここのところが、イコールフッティングという部分が、民業はどれくらい抵抗するか。ヤマト宅急便がちょっと裁判を起こしたりしていますね。ああいうことが今後起こり得るだろうと思いますし、そういう条件、もし全くそういうことを構わず、公社だけよければいいという考え方であれば、今、とても有利な環境かなと私は思っています。

 以上です。

細江四男美君 私は、専門的な知識はよくわかりませんけれども、やはりとにかくもっと議論を尽くして、いろいろな方に幅広く意見を求めて、国民の皆さんが納得できるような形にしてもらいたいと思います。

谷口委員 ありがとうございました。

 今、四人の陳述人の皆さんにお話をいただいたわけでありますけれども、深川陳述人は、お伺いをいたしますと、同友会等の、経営をやっていらっしゃるという立場でのお話も先ほどあったわけでございます。

 今の陳述の内容でおっしゃったように、今、郵政公社は、おっしゃるように民間企業とは少々異なっておりまして、法人税も負担しておりませんし、あと保険料だとか印紙税だとか、こういうのを負担しておらないで、特に法人税の負担をしておらないというのが民間企業と違うところで、やはり競争原理に立った方がいいのではないかという考え方もあるわけでございます。

 先ほど、冒頭の深川陳述人のおっしゃったことの中に、やはり経営というのはこれを継続するかどうかが一番大きな問題なんだ、ゴーイングコンサーンといいますけれども、これができるのかどうかというところが一番大きな問題で、一方で、やはり郵政公社というのは、そういう意味では、まだ政府の肩にかかっておるところがあるわけでございます。経営というのはゴーイングコンサーンが必要なんだという裏には、やはり経営の緊張感というのがある。この緊張感というのは、私は非常に重要なのではないかと。

 今も、国会審議の中で、生田総裁はいろいろなことをやっていらっしゃいます。もう一生懸命やっていらっしゃって、私はそういう意味では、大変評価をするところでございますけれども、そういう緊張感という観点で、深川参考人、どのような御意見をお持ちか、お伺いをいたしたいと思います。

深川一太君 先ほどちょっと申し上げましたけれども、公社というのはあくまでも守られた企業であって、会社という組織ではありません。会社の組織というのは、基本的にはマーケットに見張られ、それからもっと大事なことは、企業会計基準に乗るということです。今、公社の場合は、引当金がありません。退職金の引当金もありません。やはりそういうものがないという中で、例えば減損処理もやらなくていいと。

 今、インターナショナルな会計の中で、企業家は、いろいろな意味で縛られながら、緊張感というのを絶えず持ちながらやるわけですね。そういう意味では、先ほどちょっと話をしましたのは、公社自体がいわゆる企業として存続するために、便利かどうかというのは、やはり一番便利ですよ、今は。ただ、やはり今後、そのために国民がどれくらい負担をしなきゃいけないかとか、そういうことが問題として発生してくるかと思うんですね。

 それと同時に、先ほど申しましたように、私が一番警戒するのは、競争原理のもとで出発をしていない会社と競争するということは、民間企業はもうとても太刀打ちできません。そういう意味では、緊張感のある同じ土俵の中で公社が、ある意味では民営化というものを図りながらやっていかなければ、もし事業拡大はいけませんよということになれば、多分じり貧になると思います。そういう意味では、緊張感を強いた会社にしていった方が私はいいのではないかと思います。

谷口委員 ありがとうございました。

 私は、三年か四年前に与党の証券活性化プロジェクトチームというのに入りまして、どうも株式市場が低迷しておりまして、何とかやらなきゃいかぬ、経済の回復を図っていかなければならぬ。株価が低迷しますといろいろなところに影響が出てまいりますから、株主総会のあり方から、いろいろやったわけです。

 最近の株主総会の状況を見ておりますと、個人株主が大分ふえてまいった、こういうような状況のようでございますが、一方で、大きな立場で、これは堀江陳述人が金融の専門家でいらっしゃいますのでお伺いをいたしたいわけでありますけれども、我が国の金融資産が約一千四百兆円ある、このように言われております。このうち、郵貯が二百二十兆円で、簡保が百二十兆円、大体三百四十兆円、四分の一程度がこの郵貯、簡保で占められている、かなり大きなシェアであります。

 そうすると、主要国の家計の金融資産の保有状態が一体どうなっているかという表があるわけであります。これを見ますと、日本は、資産総額一千四百兆円のうち、五四%が現金預金で所有していらっしゃるわけです。ところが、アメリカは一三%、イギリスは二六%、ドイツは三五%、フランスは三〇%と、このように我が国が飛び抜けて現金預金を保有していらっしゃる、いわば貯蓄率の高い国であります。

 この貯蓄率が高いということがいいと言う人もいらっしゃいますし、これはよくないのではないか、貯蓄率が高いということは、消費にも向かいませんし、投資にも向かっていないということになるわけでありまして、経済全体から見ると、これはやはり投資に回してもらいたいということがあって、貯蓄から投資へという流れを促進するように、我が国の政治の議論もそういう方向で今進めておるわけであります。

 そのような大変貯蓄率が高い、これを一体どのように考えればいいのかということについて、堀江陳述人に御意見をお伺いいたしたいと思います。

堀江康熙君 その前に一つお断り申し上げますが、日本はそういう意味で現金預金の保有比率が非常に高い、これはおっしゃられるとおりで、一つの大きな特徴であります。ただ、貯蓄率という言葉は、私が考えますのには、先生のお言葉は、現金預金の比率だということでお使いになっていらっしゃると思うんです。通常は、貯蓄率の場合には、例えば債券を持ったり株を持ったりするのも全部貯蓄率に入ってしまいますので、そこはちょっと違う定義でお話しになられた、違うといいますか、別の定義でお話しになられたんだというふうに判断させていただきます。

 私がいわゆる現金預金の比率が高いことにつきましてどう思うかということですが、これにつきまして、私は、二つ問題が、問題といいますか特徴があったんだと思うんですね。我が国には二つの特徴がある。

 一つは、私のあれにも書きましたけれども、最後のページに書きましたが、我が国の場合には、家計の安全資産志向といいますか、安全性を重視するという志向が非常に強かったんだと思うんですね。これが第一点、非常に大きな点だと思います。

 それから、銀行の預金、及び、今先生がお話しになられたように、当然ながら今問題になっていますいわゆる郵貯、このウエートが非常に高い。これは、元本が保証されている部分が非常に大きい、あるいは過去には銀行がこれまでつぶれなかった、そういったことが大きく影響しているということがあります。あるいは、証券不況が過去にありましたので、そういうときに懲りたということもあるのかもしれません。

 第一点は、安全志向が非常に強いという、これは我が国の大きな特徴で、なぜこれがあるのかということにつきましてはさらに考えなければいけませんけれども、一つは、我が国の場合には、ほかの商品がない、つまり、マーケットで預貯金以外の商品が少ない、購入できる商品が少ないということがあると思うんですね。それはもちろん、株式投資もあります。ほかの商品もいろいろあるではないのかという反論がすぐ出ましょうけれども、私が申し上げたいのは、そうした商品は、専門家、その道のプロの人が使うのには非常に有利かもしれない。あるいは、非常にお金が余っている方が、少しそういうこともやってみようか、リスクがあるけれどもリターンも高い、そういう商品にも乗り出すということは十分考えられます。

 しかし、余りお金がない方が、では預貯金にかえて、あるいは預貯金は少し持ったのでもう少し違うものを持ちたい、ミドルリスク・ミドルリターンといいますか、ある程度リスクはあるけれどもそんなに大きなリスクはない、しかしリターンは預貯金よりも高い、こういった商品を持とうと思っても、そういう商品が従来はなかった、これが非常に大きな問題であります。

 ミドルリスク・ミドルリターン、例えば、最近出てきました商品では投資信託でそういう商品がありまして、最低限の保証が、保証と言うのはおかしいですが、ロスが一定の割合にとどまる、そういう商品もあるようですけれども、そうした商品が今後たくさん販売されますと、状態が多少は変わるかもしれません。

 ただ、私が思いますのは、安全性を志向するというのはいけないということでは全くない、これは私が強調しておきたい点です。日本の国民にとって、非常にこれは大きな財産だと思うんですね。要するに、私が経済学を分析した限りで考えましたのは、結局は、家計という自分の家ではリスクは余りとりたくない、しかし、仕事の上ではリスクをとる、こういう、ある意味ではフェーズが違うといいますか、立場が違うことに応じて活動してきたんだと思うんですね。

 そういう意味で、安全性を重視しているのはいけないということでは全くない、それは我が国の国民性だということを申し上げたのは、国民性というのはそういう意味です。別に自分の家計でまで、ロスといいますか、リスクをとりたくない、そういったところは安全なものを使いたい。もう一方で、仕事の場ではリスクを随分とっているということが一つあると思うんですね。

 もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、そういったふさわしい商品がなかったということでございまして、これはもちろん、一つには、証券というものに対する理解がない、あるいは証券会社がとにかく売買させるということを目的で売っていたというふうにも言われております、私は確信があるわけではありませんけれども。商品の販売方法にも問題があった、あるいは商品の販売の種類といいますか、そういうことに非常に大きな問題があった、それで現在のような状態に至っていると思いますので、もしこれを変えるという必要があるとすれば、新たな商品を開発して、それを教育を含めて国民に周知徹底していくという努力は必要だろうというふうに思います。

 以上でございます。

谷口委員 今先生のおっしゃった中で、このいただいた中で見ますと、非常に限定した形で資金運用をやればいいのではないかという提言があって、通常貯金のみで、運用の方は政府短期証券に限定したらどうかというようなことなんですが、例えばこの通常貯金は、政府保証をつけたというような、安全資産選好という観点でいきますと、やはり民間と同じように、今ペイオフが始まっておりますから、必ずしも一〇〇%返ってこないということはあるわけです。

 先生のおっしゃっているのは、この通常貯金は政府保証をつけた形でないと、貯金が集まるということにならないかもわかりませんが、これはどういうようにお考えでございましょうか。

堀江康熙君 お話しの点でございますが、通常貯金のみとするというふうに私が書きましたのは、量という問題もありますが、別の観点もあると思います。

 まず、先生の御質問にお答えしますと、当然ながら、私の考えでは、郵貯で今後引き受けるものについては、民間と同じく一千万までの元本保証という、当然そこの範囲に入るということでございまして、そういう意味では、通常貯金で受け入れる場合にも一千万円までの限定保証ということになります。ただ、通常貯金で一千万円以上預ける方は余りいらっしゃらないかもしれないというふうには思っています。

 なぜ政府短期証券等に運用を限定するかという問題ですが、やはり貸し出しについてはかなりリスクがあるということで、政府短期証券といったようなもので運用せざるを得ないといいますか、それ以外の運用方法は余りないので、もちろん、今後努力すれば別でしょうけれども、相当な努力が要るという意味で、ここで例として出させていただいたということでございます。

谷口委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきますが、先ほど細江陳述人のお話の中に、玄界島の郵便局の方は人の顔で配達をしたということに、大変私、感銘を受けたわけでありますけれども、やはりそういうような観点は忘れてはならないということで、この議論を進めてまいりたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

山崎座長 次に、中村哲治君。

中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 四名の意見陳述人の皆様におかれましては、本日、大変有意義なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 私が意外に感じましたのは、与党の推薦の陳述人の方であっても、この郵政民営化法案に対しては非常に慎重な意見を持っていらっしゃるということでございます。ということで、私はこの法案に反対の立場でおりますが、どういうふうに聞いていこうかなと、正直悩んでいるところでございます。

 私がこの立場に至った経緯を少しお話しさせていただきますと、私がもともと国会に来ましたのは、ある参議院議員の政策担当秘書で採用されたときでございました。その参議院議員は郵政民営化はやるべきだという立場でおりましたので、私も最初は、郵政はやはり民営化した方がいいのではないかということを考えておりました。

 しかし、二〇〇〇年の衆議院選挙で私が当選させていただいて、その後、公社化法にもかかわりました。その中でいろいろなことがわかってきまして、実はこの公社という形が郵政三事業にとってはベストの形なのではないかということを私は考えるに至りました。

 まず、一番大きな理由は、郵貯、簡保が集めたお金が財投に流れていって、それが非常にむだ遣いされているという点については、財投改革によって解決が一定されているということでございます。よく、出口を絞るために入り口を絞るんだということがありますけれども、このことは、郵政特別委員会の参考人の方がおっしゃっていたように、同じ理屈を言うのであれば、銀行の不良債権の発生は預金者が悪いと言うのと同じことでございます。つまり、もう市場化されていて市場で調達するということになっているわけですから、市場から調達した資金をいかに効率的に使うのかというのは、これは、公社の問題ではなくて財務省の理財局の問題である、そういうふうに整理ができるのではないかというところがまず一点であります。

 それから、経営形態について、公社というのは実はどういう形態なのかと申し上げますと、公社化法でも議論させていただきましたが、実は、これは国有の民営会社と言っていいと私は思っております。よくマスコミでも、民営といえば株式会社化であるというふうに考えておりますが、民間企業というのは営利企業ばかりではありません。営利企業というのは、原則的にというか、一番大きな形としては株式会社がありますが、非営利企業がたくさん日本にもあります。ある種、公社というのは、国有非営利法人という形態で経営されているということが言えると思います。

 その証拠に、先ほど深川陳述人が、この改革というものは公務員制度とも関係してくるとおっしゃっておりましたが、実は、公社の公務員形態というのは、普通の公務員とは違います。能力給が導入されておりまして、普通の一般職の公務員の給与法は適用されない形で実は運営されているんです。そういったこともなかなか知られていない。

 それは当然なんですよね。公社化されてから、中期経営計画、まだ四年のうちの半分の二年しかたっていない。そして、その評価もこれから二年後に国会に報告され、審議会で評価の議論がされるということですから、こういった事実に関しても国民にまだまだ知られていない。その中でされているということに私は危惧を覚えております。

 今まで私、公社であるべきという理由を簡単に整理してまいりましたけれども、そこで、きょうの質問に移らせていただきたいと思っております。

 まず、堀江陳述人にお聞きいたしたいと思います。

 きょう堀江陳述人が説明いただいたペーパーは、実は、これは民主党の考え方とほぼ一緒でございます。郵貯、簡保の問題は巨大な資金量に問題がある、だから、一番大事なことは資金量を徐々に減らしていくことではないかという点において一致しております。さらに、私がもう少しかみ砕いて説明をさせていただきますと、資金量を減らしていくためには、完全民営化をやって経営者の判断でさせるのではなく、公的関与が残る公社の方が、強制的に、また段階的に資金量を減じていくことができるということだからでございます。

 そして、堀江陳述人がおっしゃった点について私も共感しておりまして、ある意味、ぱ・る・る、総合通帳で個人向け国債を買えるようにすればいいのではないか、私はそのように思っております。

 預け入れ限度額は今一千万円ですけれども、これを徐々に下げていったとしても、決済機能だけきちっと維持されれば、地域の人たち、地方の人たちのニーズを満たすことができます。一時的に多額の資金が必要になったとしても、個人向け国債を担保にして、同じ総合口座ですから担保にできるわけですよね、そこで、個人向け国債を担保にしてお金を借りることができれば、預け入れ限度額というのは実は大きく下げることができる。今は一千万ですけれども、これを段階的に五百万、三百万、私は、普通の生活者の日々の決済、クレジットカードの決済ぐらいであれば、百万円ぐらい、将来的にですよ、今突然やるとなると、これがまた国債の管理の問題が出てきますので、すぐにはできませんけれども、そういった形ができるのじゃないか、そのように考えております。

 以上申し上げたとおり、実は、堀江参考人がおっしゃっている内容を前提とすれば、企業形態としては、民間の銀行形態ではなく、公社形態の方がしやすいのではないか、私は、堀江参考人のお話をお伺いしてそのように考えたのですが、堀江参考人、いかがでしょうか。

堀江康熙君 では、私の考えを申し上げさせていただきます。

 私の考えは非常に極端なもので、だれも賛成していただけないと思っていたんですが、御賛成ということでしたので、非常にありがたくお受けします。

 ただ、公社形態の方がよろしいのではないのかということにつきましては、果たしてどうかというのは、経営の効率性、全体としての効率性という問題で、先ほど緊張感というお話が少し出ましたが、そのところで、公社ですと、税金がない、あるいは預金保険料もないということになります。

 もちろん、先生のお話のように、一千万円じゃなくて徐々に下げていくんだということになりますと、保険料は安くなる可能性は確かにあります。ただし、そうしたものがない状態で、公社形態の中で行うのが果たして経営の効率性を保っていけるのかどうかということについては疑問がありますので、やはり民営化して、そういったいろいろな、純粋の民間の金融機関と同じような土俵に立って、その上で行っていく。

 そうしますと、結果的には、貸し出しができませんから、お話のとおり、やはり個人向け国債にならざるを得ない、あるいは限度額も小さくても構わない、そういう形になると思いますが、効率性を保つ、そういう意味での緊張感というのは効率性ということになりますけれども、効率性を高めるということであれば、やはり企業形態としては、公社の形態そのままではという疑問が私は残ります。

 以上です。

中村(哲)委員 ありがとうございます。

 それでは、さらにお尋ねをさせていただきたいんですけれども、株式会社化することによって効率性が高まるとおっしゃっているんですが、公社ではなぜ効率性は高まらないのでしょうか。

 と申し上げますのは、公社になって中期経営計画の中で、今、生田総裁は、改革は早く進めた方が傷も少ない、効果も上がるということで、四年間を二つの期間、フェーズ1とフェーズ2に分けて経営をされてまいりました。そして、フェーズ1の時点において、中期経営計画で目標とした数字をほぼ達成することができた。これは、総務大臣も認めていることでございます。

 ある意味で、民間出身の経営者に来ていただくことによって、実際のデータとしては効率性が上がってきている。現実的には、データとしてはそういう結果が出ているわけですね。公社でなぜそれでも効率性が担保できないのか、それについて御説明いただけますでしょうか。

堀江康熙君 先ほど申し上げたこととも重なるかもしれませんが、確かに、現在、公社のままで効率化が進んでいるではないのか、お話しのとおりだと思うんです。今まで相当低かったのが高くなってきている、それは、確かに私も否定するわけでは全くありません。

 ただし、それは、あくまでも公社という、民間とは違う形のもとでの効率化でしかないというか、収益が上がってきていると申しましても、それは民間と同じ土俵の上に立った上での収益ではないというのが先ほど申し上げた点でございまして、つまり、税金をどうするんだという問題、あるいは保険料の支払い、これは相当あるわけですね。民間ですと、この規模ですと二千億ぐらいは払わなきゃいけない、それから、法人税も数千億払わなきゃいけないという状態ですが、そうしたものを全部織り込んで果たして同じように今後やっていけるのかという問題なんです。

 結局、今の金利情勢だと収益が上がるじゃないか、確かにそのとおりですが、今の状態をそのままに将来まで延ばすということはまずできないわけですので、そういう意味では、緊張感をより高めるために、あるいは民間に比べたら、言葉が過ぎるかもしれませんけれども、ある意味では特権なんですね。特権を外した場合に初めて効率が上がるかどうかということが言えるのだろうと思うんです。私が疑問があると申し上げたのは、そこのところでございます。

 以上です。

中村(哲)委員 効率が上がるということと、国に対して法人税を払う、預金保険料を払わなくてはいけないというところの論理関係が私はよくわからないんです。払えば効率的になるのであれば、国鉄の債務の整理のために、今まで、利益の中から郵政事業は一兆円提供しています。

 負担の問題というのと効率性というのは必ずしも直につながるわけではないと考えるのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

堀江康熙君 ですから、私が申し上げたのは、効率性が上がっていることは、全く否定するわけではありません、そういうことはお話しのとおりだと思います。ただ、申し上げたのは、今後効率を上げていくために、民間と違う部分についても外していく必要がある、それがより効率を上げることにつながるのではないのかということで申し上げたんです。

 要するに、民間と比べてメリットがある状態が続きますと、その分だけ収益が上乗せになっている、それがなくなることが、将来的には緊張感を増してくるのではないのかということで申し上げたわけです。

中村(哲)委員 陳述人に余り詰めた話をしない方がいいのかもしれませんが、もうかった中から法人税を払うことと、もうかる前に間接的な補助があるということを、ひとつ分けて考えていただいた方がいいのではないかと思っております。

 ここに関しては、時間がたってしまいますので、さらに違う観点から堀江参考人に伺います。

 私は、堀江参考人がつくっていただいた最後のページのところ、資金運用の一つの課題、一つの考え方とお話しになっているところでございますが、このような考え方を、それでは、銀行において、全く一般の銀行になっているにもかかわらずこういうことをさせるというのは、どういうスキームがあるのか。

 私は、公社であれば公的関与が残るので、ある種民主的プロセスにのっとった形でこのようなことを実現させていくということは手続的に可能だと考えましたので、公社の方がよろしいのではないでしょうかということで申し上げたんです。

 しかし、そうではなく、完全民営化をされて一般の銀行になっているにもかかわらず、先生のおっしゃっているような考え方を導入するということになると、一般の民間企業になっているにもかかわらず、政府が特殊会社としてこれを規制しないといけないということになりますので、今の政府案とも違う考え方になります。

 そういった意味で、今回のスキームでこういうことが可能なのかどうか、その辺について伺いたいと思います。

堀江康熙君 済みません、ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんですけれども。

中村(哲)委員 では、もう一回説明させていただきたいと思います。

 公社であれば公的関与が及ぶので、先生がおっしゃったことというのは、公的関与のもとで実現することが可能だと思います。しかし、完全民営化された銀行というのは、こういったことをだれが拘束させることができるのかということに関しては、今の法案であれば、完全民営化ですから、こういったことをさせることは全くだれにもできないわけです。

 そうなると、法案を修正して、民営化するんだけれども、ここは特殊会社としてこのような形で規制をかけるということなのかどうなのか、そこの考え方を整理させていただきたいんです。

堀江康熙君 承りました。わかりました。

 私のは、もちろん当然ながら、法律の条文まではちょっと踏み込んでおりませんけれども、一般論としてどうかということで申し上げているわけでございます。

 その前のページにありますように、運用面に問題がある、通常の貸し出しが非常に難しいということですから、これは、株式会社になった場合に、では行った場合にどうなるのかという意味では、大きな問題が残るだろうということでは、お話しのとおりになるかもしれません。ただし、そのために特殊会社あるいは公社の形にしておくのがいいのかどうかについては、先ほど申し上げた観点からでは疑問があるということで申し上げております。

中村(哲)委員 ありがとうございます。

 堀江陳述人のお話を私なりに整理いたしますと、完全民営化では、恐らくおっしゃっていることはできないということだと思うんですね。特殊会社にするのか郵政公社のまま残すのか、どちらかしか方法はないということですよね。そこの判断については、政治の現場が、どちらを選ぶのかというのは判断すべきである、そのように整理をされているのかなと思ったんですが……(堀江康熙君「いや、それは違います」と呼ぶ)それでは、違うとおっしゃるのだったら、もう一度、完全民営化された銀行にこのような縛りをかけるということが、現実的にだれがどうすることによって可能なんでしょうか。

堀江康熙君 私が何回も申し上げていますのは、要するに、株式会社化して完全民営化した場合に、貸し出しをするということは非常に難しいのではないかということまで申し上げているわけです。では、そのための手続をどうするかということについては、私は特に触れてはおりません。それは認めます。ただ、そのために公社の形で残すのがいいのかということについては、疑問があるということで私は申し上げているだけでございます。

 そういう意味では、これは、公社じゃなければできないことではないのかということではありません。民営化した場合に、結局貸し出しができない、結局は、定額的なものは受け入れなくなっていくということは十分あり得るわけです。

中村(哲)委員 堀江陳述人、私の言葉が失礼であるなら申しわけなく思っておるんですが、私はそのようなことを申し上げているわけではなくて、資金運用面のこういった課題があるという中で、政府短期証券に限定するということをさせるのであれば、それはだれかがさせないといけない、完全民営化した会社でそういったことをさせるプレーヤーがどなたかいらっしゃいますかという、そこを一点聞きたかっただけなんです。今、公社形態、特殊会社形態という話をしているわけじゃなくて、完全民営化した場合に、そういう強制力をかける仕組みというのがございますでしょうかということをお聞きしたかったわけでございます。

堀江康熙君 御趣旨はよくわかりました。

 私がここで政府短期証券等に限定するというのは、こういうことをさせなさい、あるいはしなさいということではない、必ずしもそういうことではないんです。結果的にそうならざるを得ないだろうという意味で、ここに書いているわけです。初めからこれにすべきだということでは必ずしもありませんので、こういった運用方法をいろいろ探してみても、結果的にそういった証券等になってしまう、そういう意味では、これに限定されてくるんじゃないか、限定した方がいいんじゃないか、そういう議論で書かせていただいたわけです。

中村(哲)委員 ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりましたので、堀江参考人にはまだ聞きたいことがあったんですけれども、深川参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 意見陳述をしていただいた中で、東京の巨大企業は今回の民営化では影響を受けないだろうが、八割の中小企業にとっては相当大きな影響があり、経営が困難になるのではないかというお話をしていただいたと聞いております。

 そこで、この民営化によって地域金融機関がどのようになって、その影響で地域企業にどのような影響があるのかということだと思うんですけれども、その点についてもう少し詳しく説明していただけませんでしょうか。

深川一太君 ちょっと質問があったんですが、今、基本的にはオーバーバンクなんですね、地域の銀行というのは。しかも、今おっしゃるように、公社もしくは政府にとって、当然十年間は、かなり甘いというか、生存させるためのいろいろな手を打たれると思いますね。そういう環境の中で、いわゆるイコールフッティングの問題で非常に厳しい経営を強いられる地方銀行が出てくるのではないか。

 そうなりますと、今、地方銀行というのは、まだまだ不良債権が終わっておりません。その査定も、上場企業がほとんどありません。ということは、金融庁が調べてもなかなかわかりにくい部分がかなりあるんですね。そうなりますと、余りいい言い方ではないんですが、自転車操業をやっている企業というのはかなりあります。そういう部分で、こういう問題が出てきますと、当然、預貯金がそちらに吸収されますね。そうすると、今の地方銀行というのは、ほかから資金を取り入れるだけの能力は、そうチャンスは多くないだろうというふうに考えるのが普通だと思うんですね。今でも目いっぱいだと思います。その中で分配ですから、そうなると、その分配にやはり四苦八苦するのではないか。

 また、今、いわゆる都市銀行が地方に向かっております。非常に率もいいですし、そういう都市銀行に挟まれ、かつ、政府系の金融機関があり、今回のことがあれば、かなり厳しい環境になるのではないかなというふうに思っております。

中村(哲)委員 まさに、今、深川陳述人がおっしゃった理由が、私たちが今回反対している理由の一つであります。巨大独占企業を今回の民営化をてこにつくってしまうのではないか、そのことについてのおそれが私たち民主党にはあります。

 次の質問に移りますが、先ほど深川陳述人が最後のところで、郵便制度の安心感、それを維持するためのフィロソフィーが今回の民営化される会社には見えないという趣旨のことをおっしゃったと私は理解しております。

 果たして、民営化形態、株式会社形態で、今の郵便局が持っている安心感、機能を維持できるフィロソフィーのつくられ方というのは可能であるのかどうか、それについてもし御意見がいただけるようでしたら、お答えいただきたいと思います。

深川一太君 大変難しい問題だとまず基本的に思います。私が先ほど申し上げたのは、郵便局だけではなくて、会社をつくるというときにフィロソフィーが必要だという話をしたわけですね。

 当初私が話しました中で、今回政治の中で最も難しいなと思われるのは、やはり財政改革待ったなしという環境であることは間違いないですね。その中で出てきた金融改革があり、地方財政改革があり、最終的にこれへ来たという中で、やはり郵便局を分社化していくということは、方法論としてはとてもいいと思います。

 ただ、最後の四つの中で、やはりどうしてもその中に、非常に優秀な企業と非常にこれから苦労するだろうなという企業が当然出てきます。その中で、もし三つが民営化をされるなら、何とかして四つ目のところに完全なフィロソフィーをつけて、交付金なしでもやっていけるということをやはりやっていかなければ、きょう陳述人の方が何人かおっしゃっていましたけれども、どんなブランド力の強い会社よりも、やはり国なんですよね。これは、残念ながらそういうことなんです。

 あえて言えば、郵便局が端々までなくても、ヤマト宅急便はどこまでも運ぶと言います。ただ、これも、会社の都合というものがやはり優先していくんですね。多分、ヤマト宅急便は三分の一ぐらいが赤字だと思います。それで、今後、減損会計の中で果たして耐え得るのか。

 そうなると、やはり当然そういうところを切っていかなければ、私は宅急便の社長じゃないのでわかりませんが、そういうところを切らざるを得なくなってくることが考えられます、危険性もあります。そうなると、何とか一工夫して、今の郵便局という形態を何らかの方法で、もっと安心でき得る方法論で、民営化が一番いいんですが、何か方法がないのかなというのが私の考え方です。

中村(哲)委員 時間が参りましたので、まだまだたくさん聞きたいことはございましたけれども、終わります。

 ありがとうございました。

山崎座長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうは、陳述人の皆さんそれぞれから貴重な意見を拝聴いたしました。

 私からは、まず稲田さんにお伺いをするわけですが、郵便局が福祉、防犯の連絡所の役割も担ってきた、それから、まさによろず相談の憩いのサロンとなっている等々、郡部あるいは島嶼地域、離島地域の現状をつぶさにお伝えいただいたと思うわけです。

 そこで、きょうは公聴会という場でこうやって一列に並んでいますけれども、ふだんですと、この一列が与野党向き合ってけんけんやっているわけであります。恐らく、九州、地元からいろいろな先生方も来ておられまして、もしかしたら反対の一枚岩になっているんじゃないかな、そういう思いさえする中でありますので、大変僣越でありますが、総理が使っておられるフレーズあるいはそういうものを通じながら、改めて少し確認したいわけです。

 なぜそういう方々が公務員でなければならないんだとよく総理はおっしゃるんですが、例えば、私の選挙区でいけば、愛知なんですが、郵便局の方を郵便さんと言っています。郵便さんが来てくれては肩をさすってくれたりして帰っていくそうです、郡部のおばあちゃんのところに行ったりして。そのさすってくれる手が公務員の手と民間の人の手じゃ違うんでしょうか。これは、公務員でなければいけない理由をちょっと教えていただきたいんです。

稲田繁生君 私は、公務員でなければいけないとかというふうな考え方とは別に、やはり公がやらなければならない、いわゆる行政がやらなければならないものが今の郵政の中にはあるんじゃないのかな、そういうふうに思っているわけですね。

 例えば、民間企業でほとんどもうかりもしないようなところに郵便配達に行って、しかも、郵便配達の途中に独居老人のところに寄って声かけをするとか、そういうことが果たしてできるだろうかというふうに思うんですね。その温かさといいますか、これは非常に大事なことで、独居老人一つとってみましても、例えば新聞が、きのうのも入ったままになっている、ここはやはり危険信号だというふうに見なきゃいかぬ。だから、場合によっては、新聞の配達所と郵便局がタイアップしてそういう危険を防止しているようなところがあるわけですね。だから、私は、今の郵便局員さんは公社の職員ですけれども、そこに住んでいる住民は、役場の職員とはまた違う、県庁職員とは違う視点で見ているのじゃないか、そういうふうに思っているわけですね。

 だから、そういう点で、私は、やはり今の公社にプラスして、今の公社の方々が、三つのSといいますか、スピード、サービス、スマイルというか、こういうような考え方をもっと強く持って、そして地域住民にサービスをしていく、そういう姿勢を地域住民は求めているのではないか、そういうふうに思っています。

古本委員 では、続きまして、細江陳述人からもお伺いしたいわけであります。

 まさに顔を見て配達をしてくれた、要するに、顔を覚えている。これは、顔を覚えているという行為は、個別個社の名前は控えますが、たとえ宅配の方でも、島に住みついてずっと、そこのじげの人というんでしょうか、生え抜きの人じゃなくても、記憶力のいい人なら覚えられるかもしれませんね。名前と顔が一致する、所地番も一致する。それがなぜ公務員でなければならないんだと総理はおっしゃっているんですね、おっしゃっているんですよ、小泉さんは。これはどういう御感想をお持ちになりますか。

細江四男美君 郵便配達員さんと宅配便さんの違いでいいんですか。(古本委員「いいです」と呼ぶ)

 私の島の場合は、うちの集配の方はもう長年この仕事をしていますから、島の至るところを回って、もちろん、島の住民でもありますから、それはもう顔を覚えることはできます。できているからそういうふうになっているんですけれども、宅配の方は、うちには漁協の方を窓口として、そこに一括して船便で送ってくるわけですね。そしてそれを、取扱所のところに集まった分を、先ほど私が言ったように、電話連絡で、何々さん来ていますよと係の人が連絡してくるんですね。それは、やはりどうしても、私たちこんなふうな離島ということで、宅配便の会社の方が来たら、採算性とかそこら辺もあって、一括して送ることしかできないからそうなるんでしょうね。

古本委員 ありがとうございます。

 これは仮定をするわけですが、恐らく、宅配便の方が、今は、港に置いてそのままとりに来なさいよという、そういう意味ではその先の配達をしていないということなわけですけれども、仮に、お宅を訪問して、おばちゃん元気かねと肩をもむとか、私の在所ではもちつきにも参加する郵便さんもいます。要するに、そこまで手伝ってくれと頼んでやってもらっているんですけれどもね、男手のないところでは。

 要は、そういうことが宅急便の人じゃいけないんですかと聞いているんですね。要するに、公務員だから安心できる何かがあるんじゃないですかと私は聞いているんです。もっと言えば、それは、何となれば、皆さんのとらの子のお金を預けている機関の人だからなんじゃないんですか。その人らがまさに真心サービスでいろいろなことをしてくださっているから、いいんじゃないんですか。

 稲田参考人に重ねてお伺いします。

 もう一度言いますけれども、今総理は、何で公務員でなければいけないんだ、こうはっきりおっしゃっているんです。そのことについて、まさに現場の声があればお聞かせいただきたい。

稲田繁生君 私は、何で公務員でなければいけないのかという質問自体がちょっと何かピントが外れている、そんな感じがいたします。

 公社の職員と、それから例えば、民間の宅急便の方々との違いは、いわゆる宅急便というのは、恐らく、時間に追われてとにかくばたばたしているんじゃないかというふうに思うんですね。幸い、特定局あたりの職員さんにすれば、いわゆる配達、集配の途中に独居老人のところに寄れるゆとりといいますか、そういうものもある。そのゆとりが地域住民のいわゆる信頼をかち得ているんじゃないかということと、それから、やはり一番信頼を得ているのは、とらの子の貯金を預けている、あるいは年金の出し入れをそこで偶数月の十五日には必ずやっている。

 そういうことの信頼感があるわけで、公務員と民間ではどうだとか、そういうようなことではなくて、今の公社の実態がそういうことを可能にしている、そういう解釈をしています。

古本委員 ありがとうございます。

 かつては、特定局長の方々が非常な特権的な世襲になっているだとか、あるいは簡保の旅行のときに御夫妻で事前の調査と称して行っているとか、実は住んでいる皆さん方から見ても、おかしいな、ちょっとこれはやり過ぎだなと感じている部分は多分あったと思うんですよ。これは、総理が言われている小さな政府とか官から民へという、これからいくと、まさにそういう話は当たりますね。ところが、今は公社になって、もうそんなことはやっていませんよ。やっていないんです。したがって、政府が今指摘している部分については、少しずつ、あるいは大胆に改革は進んでいると思うんですね。

 公社になって、ああ、現場は変わったぞという実感は何かありますか、細江さん。

細江四男美君 私の見る限りでは、別にそれはないと思います。

古本委員 ちょっと私の質問の仕方がまずかったかもしれません。

 かつては、郵政省の時代は、俗に言われている、今、いろいろな税金のむだ遣いやらが指摘されている中であって、まさに、例えば簡保のそういう旅行に行くのにも、事前の企画、調査だとかと称して夫妻で行っていたとかが散見されたわけですよね。そういうことは公社になってからはもうやっていませんよね。やっていないんです。ということは、いろいろと変わってきたなという、何かあるんじゃないですかと聞いているわけでありますが、お願いします。

細江四男美君 ちょっと私、よく……。

古本委員 済みません。

 では、稲田さんに。同じ質問です。

稲田繁生君 公社になってからはっきり線を引いたように変化したというふうなことはないかもわかりませんけれども、ここ最近、非常に郵便局の皆さん方がサービスがよくなって、きめ細かいサービスを住民の方々にやっていただいているということは、もうはっきりしていると思いますね。そして、保険にしろ貯金にしろ郵便にしろ、いわゆるその垣根を越えてお互いに相乗効果を発揮していらっしゃる、それは、よくなってきたな、そんな感じがいたします。

 それと、やはり地域住民とのつながりといったようなものもより密接になってきている。だから、今これをどうして変えなければならないのかというふうな感じがするわけですね。

 それは、先生おっしゃったような、かつては、特定局の幹部が云々とか、そういうことが全くなかったとは言えないでしょうが、今はそういうことはまずないし、非常にガラス張りで住民の信頼も得てきているのではないかと、私が郵便局を見た範囲では思っております。

古本委員 そこで、深川陳述人に少しお伺いするわけですが、郵便局のステークホルダーという部分があったんですが、要は、切手を張って投函した人、それから郵貯に預けた人、簡保に加入した人、これがまさにお客様であり、第一のステークホルダーだと思うんですね。

 このことは、実は公的セクター全体に言えることなんですね。郵政公社だけがそうなんだということじゃなくて、国土交通省だってそうでしょうし、最近何かユニホームをつくったみたいですけれども。すべてのセクターがそういう緊張感を持ってやっていかなきゃいけないという意味では、郵政公社だけの議論に終わらせてはいけないと思うんですね。

 その意味で少しお伺いするんですが、今回の郵政の民営化案における、いわゆる財投機関に対する出口の改革というのは十分に示されていると思われますか、経営者としてお伺いします。

深川一太君 まず、何度も言っていますように、やはり規制緩和ですよね。要は、最終的には、今おっしゃっているようなことは、公社である限り、もともと財政改革というのは金融改革から始まったわけですけれども、その中で相当の会社がリストラしているんですよ。今、行財政改革をやっていますけれども、これもやはり相当リストラしなきゃいけないんですね。そのときに絶えず問題になるのが公務員制度なんですよ。

 だから、今おっしゃったように、公務員でなくちゃいけないとか公務員でもいいよとか、そういう話ではなくて、要は、どうしてもそこに柔軟性が生まれないんです、企業として。非常に言い方はまずいんですが、やはりリストラにさらされるという緊張感があるからこそ、労使が一生懸命やるんですね。

 そこで、今は、例えば組合がストをするということはほとんどありません。どうしてかというと、もうかった分をどう分配するかということを労使でよく話し合っているからです。それは、金融改革の前はありませんでした。やはり親方日の丸です。たとえつぶれてもお金を取るんだというような印象でしたね。

 そういう意味では、今度の改革のそもそも論ですけれども、やはり最終的には、今の財政改革の中で三百五十兆円と言われているものをどういうふうに扱うかということの軸足からやはり外れてはいけないんじゃないかと思いますね。その他は影にすぎないと思いますよ。余り大したことはないです。要は、そこをきちっとやってしまわない限りは、これを今、政治の皆さんたちがやり抜くんだということを国民に示さないと、ここを政争の場にして、何らかの形で、どちらがどうだということではなくて、今、我々企業家から見れば、大変失礼なんだけれども、やはり公務員制度に手をつけられないという、何か何とも言えない弱さがありますよね。

古本委員 細江さんの住む島にコンビニはありますか。(細江四男美君「何ですか」と呼ぶ)コンビニエンスストアというんですか、個別個社の名前はこういう場でよくないんですが、ローソンとか何とかイレブンというのがありますか。

細江四男美君 いえ、そんなものはありません。うちの漁協で経営している、漁協ストアといいますか、それだけです。

古本委員 では、同様に、稲田さんの御近所にはコンビニはあるんですか。

稲田繁生君 はい、あります。

古本委員 先ほど深川参考人は、郵便局でコンビニをできるようになると、セブンイレブンがかなわないとおっしゃいました。ところが、実態は、かなうもかなわないも、コンビニがないわけですね。大体、そういうものがない島もある。片や、同じ九州でも事情は違う。

 一方で、コンビニに銀行の代理店をやらせてほしいと金融機関が当然言うでしょう。ところが、今回の法律改正では、郵便局は郵貯銀行の代理店をやれますけれども、他の銀行はコンビニに代理店をお願いできないわけです、兼業禁止の縛りがかかっていますので。そういう意味では、今は極めて不公平な法案になっています。

 では、稲田さん、今後、コンビニに銀行が来ましたというときに、郵便局の銀行に行くのか、コンビニの横に何かちょっと窓口を開いた銀行、まだ法律上はこれはできませんけれども、もしできたならばという仮定の話で、どちらに行かれますか。

稲田繁生君 やはり住民の信頼度合いが違うと思うんですね。コンビニの窓口のところにお金を預けに行くのと、郵便局に直接行ってお金を預けるのでは、特に中高年にとってみればいわゆる安心感というのが違うというふうに思います。だから、コンビニがやる仕事というのは、おのずとある一定線に限定されてくるんじゃないのかなというふうな、そんな感じがしないでもないです。それはもう憶測です。

古本委員 本日いただいた現場の生の声をあす以降の国会の場に生かしてまいりたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

山崎座長 次に、横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 きょうは、四人の陳述人の皆さん、それぞれのお立場からの貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 まず、堀江公述人にお聞きしたいと思います。

 堀江さんは、郵貯が民間向け貸し出しに乗り出すと、資金供給量がふえて金利が低下、これが生産活動の活発化に結びつく可能性もと、いわゆるプラス的な御意見を申されました。ここに資料に書かれていますが、本当にそうでしょうか。

 民間金融機関は、これまで郵貯や簡保が多くのお金を集めた結果、市場にお金が回らなくなっていると主張してきたわけでございますが、現在は、銀行がお金を集めても、先ほどお話がございましたように、預金超過に陥り、融資先に困り、そして大量の国債を購入したり、しまいには消費者金融にお金を回している、これが現状でもあろうかと思うんです。

 これが民営化によって資金規模の大きい郵貯や簡保が貸し付けを始めれば、地方の中小金融機関は大打撃をこうむりかねないと思うんですね。これは、ひいては中小企業にしわ寄せを押しかぶせ、そして生産活動にむしろ悪影響を与える、そのようなこともあり得ると思うんですが、いかがでしょうか。

堀江康熙君 私が、七ページですか、八ページ目に書かせていただいたのは、郵貯が民間向け貸し出しに乗り出しますと、資金供給量がふえて金利が低下、活発化すると申し上げたんですが、これは、そういう可能性も指摘されていますということでしかありません。ここに書きましたのは、あくまでも可能性です。うまくいけば、民間向けの貸し出しがふえて金利が下がるんではないのか、それは生産活動の活発化につながる。

 もちろん、その場合には、競争が厳しくなります。それは事実です。ただ、民間から郵貯に資金が流れたという話は限界的な話でございまして、従来も限界的な話でございまして、特に地方といいますか地域では預貸率は常にかなり低かったという、現在も低いわけですが、低いというのは事実です。そういう意味で、もし郵貯が貸し出しをするということになれば、そういう可能性もありますというだけの表現でございます、この二のところは。

 むしろ問題はその後の三、四、特に四番だということで申し上げてきましたので、それは、可能性があるという、二番目の、供給量がふえて、貸し出しがふえて生産活動が活発化するかもしれないというのは、あくまでも、うまくいけばそういう効果が働きますという、それだけの話でございます。それ以上のものではありません。

 むしろ問題は、その場合には国債をだれが買うのか、あるいは、本当に貸し出し自体のノウハウがあるのかという、そちらの方が私は、問題であります。

横光委員 私は、郵便局の特徴、これは、一つは郵便におけるユニバーサルサービス、そしてまた、金融面においては、顔の見える金融機関、つまり、国民の貯金箱という印象が非常に強いんですね。これからの郵便局は、そういった特徴をもっと生かした独自の未来ビジョンを描いていくことがこれから重要だと思うんです。

 例えば、メガバンクは大企業に融資する、地銀や信用金庫は中小企業に、そして郵便局は、これまでの金融機関がカバーできないような、そういったできなかったビジネスチャンス、さらには、地方公共団体そして個人への融資を担当するというふうにビジョンを描いて、これまでどおりの国民の利便性を維持する必要があると思うんですが、その点はいかがでしょうか、堀江参考人。

堀江康熙君 今のお話は、確かにごもっともなお話でございます。メガバンクは大企業で、地域の金融機関は中小企業、確かにそうなんですが、現在、地域の金融機関が行っていますのはどういう状態なのかということをちょっと申し上げたいと思うんです。私の研究の主たる分野でもありますので、申し上げます。

 地域では、従来の企業については資金需要がない。それで、どのようにしているかと申しますと、コール市場ではもう運用ができない、国債も、腹いっぱいといいますか、かなり危険な状態まで買っているということですから、東京でシンジケートローンを購入する、あるいはシンジケートローン、いわゆる貸し出しですが、それに参加するということが行われております。現に、地方銀行、地銀につきましては、地元での貸し出しが伸びていないんです。減少しているところが非常に多い。これが大きな問題になっています。

 そういう意味では、地方銀行の対応はどのようなものかといいますと、二つありまして、一つは、先ほどもちょっと先生からお話がありましたような、新しいビジネスをやろうとしている企業に対する貸し出し、それから個人向けの貸し出しに今力を入れています。これは事実なんです。それについては商品の発売も相当なものに上っておりますし、実際に金額も増加しています。

 ただ、これにつきましては、ちょっと書きましたけれども、従来の貸し出し方式とは違います。これはリレーションシップバンキングと、先ほども申し上げましたのですが、長いつき合いの中で情報を得る、そういう貸し出しではございません。つき合いがないところに貸すわけですから、それはどうしてもスコアをつけて、新たに評点をつけて、それに応じて金利を高くして貸すという形になるわけです。

 その場合に、前提となりますのは、一定限度のリスクがある、ロスが出るということですので、それで、同じようにもし郵貯銀行が民営化した場合に、貸し出しをする場合に果たして大丈夫なのか、これについてはかなり懸念がありますということを申し上げたいと思います。

 以上です。

横光委員 ありがとうございました。

 稲田陳述人にお聞きいたします。

 稲田さん、地方に住む利用者の立場からの御意見だったと思うんですが、とりわけ高齢者対策が民営化によって危ぶまれると。地域住民にとっては、もう郵便局は今や空気、水であり、生きていく上にはなくてはならない存在にまでなっておるという御意見でございました。そして、三事業一体であるべきだというお話でございます。

 三事業が一体でやれる、しかもそういった状況であるから、三事業以外のさまざまな住民の利便に貢献するサービスがやられているわけですね。ワンストップサービス、ひまわりサービス、あるいは災害発生時における地方公共団体との協力、いろいろなことでサービスを提供している。その中に一つ、国際ボランティア貯金というものがございます。

 稲田さん、非常にボランティア活動に造詣が深いということを伺っておりますので、ちょっとお聞きしたいのが、このボランティア貯金制度。これが今回の法律によって、寄附の委託に関する法律が廃止されるんですね。つまり、法的な根拠がなくなってしまう。これは、貯金の利子の一部を寄附して海外援助事業に資するという非常に評価の高い制度なんですが、これが民営化になってしまいますと、どうなるのか、非常に心配である。

 さらには、私、いろいろ思うんですが、例えば郵便局で最近非常に多いのが、お年寄りから金をだまし取るおれおれ詐欺とか振り込め詐欺。こういうのが多発しておるんですが、佐賀県では非常に多くが未遂に終わっているそうです。一番防いでいるのは郵便局だということで、つまり、郵便局の皆さん方がお客さんのことをよく知っておるから、振り込み先がお孫さんの名前と違う、もう一遍確かめたらといって防いだ、そういうことが非常に多いということです。

 つまり、郵便局が住民の生活や安心の場にもなっている。先ほどお話ございましたように、一人一人の顔、名前を覚えているというのが非常に大きいわけでございますが、そういったさまざまな、いわゆる三事業以外にも地域住民にプラスになるサービスをやっている。

 もう一つつけ加えれば、佐賀県の山間部の方では、古川知事が佐賀新聞に載っているのを私、読んだことがあるんですが、佐賀県の山間部では新聞配達が大変で、郵便局がかわりに配達している実態がある。ここまでやっているわけですね。民営化でそういったサービスがちゃんと担保されるのか、非常に心配でございます。

 要するに、三事業以外にもさまざまなサービスをやっている、このことについて先ほどからお話しされておりますが、改めて、そのサービスの意義、そして必要性というものをお聞かせいただければと思うんです。

稲田繁生君 私は、このサービスの意義、必要性は大いにあるというふうに思います。

 ボランティア貯金にしても、ボランティア貯金はいわゆるお金を預けた人が納得ずくでやっているわけですね。だから、今私が思うのは、利子が少なくなって、実は十年前に私はラオスに現地視察に行ったことがあるんですけれども、そのころはその利子で行けたわけですね。ところが、今はもう利子がほとんどなくなって、その金額もがたっと減りましたけれども、これはやはり、利用者のささやかな善意ですから、ぜひ残しておいていただきたいなと思います。

 それから、いわゆる振り込め詐欺の防止ですが、今先生御指摘のとおり、やはり顔を知っているし、局員が不審に思うたら、これはばあちゃん、ちょっと考えなさい、私が連絡してやるからというようなことでやってくれる、だから、それが未遂に終わっているということ。

 そのほか、やはり地域住民の数多くに、子供から大人まで、子供はやはり、子供銀行のよりどころは郵便局にしていますから、非常に幅広い層が郵便局に親しみを持っているし、利用しているし、郵便局もその活動のすそ野を広げている。それは、やはり今の特定郵便局の配置ぐあいとシステムがそうさせているわけで、これを何でもかんでもいわゆる効率一辺倒でやってしまったら、どうなるのかということでございます。

横光委員 ありがとうございました。

 深川陳述人にお伺いいたします。

 深川さんは、イコールフッティングの必要性を訴えながらも、都会と地方の立場の違いも考えねばならないとか、いろいろな非常に微妙な、中間的な御意見も聞かされました。

 であるならば、例えば、郵政公社のままでできるだけイコールフッティングに近づける、つまり優遇性を排除していく。例えば非公務員化にする、あるいは、現在も国庫納付金を納めるようになっておるんですが、これを税としてしっかり納める、さらに預金保険料も納める。こういうふうに、公社のままで改革をして、制度設計を変えて自由度を高めていく、そして現在のサービスを維持する、こういったことも考えられると思うんですが、その点、深川陳述人はいかがお考えでしょうか。

深川一太君 私も、そういう道があるのかなというふうに考えてもみたんですけれども、やはりイコールフッティングの問題でなかなか難しいところがあるんですね。例えば一般の企業の会計基準を取り入れないままで、今は当然取り入れないですよ、公社のままですと。そうすると、最終的には退職金の引き当てはしなくていいんですね。企業は、一〇〇%今引き当てをしなきゃいけないんですね。この額というのは大変多いですよ。こういうものを最低でも、今七年ですか、そういう中で、やはり企業はどうしても引き当てに追われていくという状況なんですね。

 そういう意味では、かなり公社というのはやはり恵まれた環境にあるということは、一般企業から見たらそうですね。だから、本当に、例えば公社はそういうことをしないで一般的な企業会計でやるよということになれば、公社という必要はないわけですね。だから、郵便局のあり方というのは、今いろいろと横の陳述人の方も言っていらっしゃいますけれども、私も、地方へ行くと、いろいろな役割というのは非常に大きいものがあると思います。

 ただそれだけに、どうしても、一般企業との競争をあのままでやらせるのは不可能だと思いますね。

横光委員 ありがとうございました。

 細江陳述人、本当に切々と郵便局の必要性をお訴えになられました。かねてから、郵便局は地域に密着した、あって当たり前の存在である、それが、被災を受けてからさらにその認識を強めたという御意見でございました。

 民営化されたら、災害時、非常時の、住民の心と心の安心のかけ橋がなくなるのではないかというお話をされましたが、まさに被災した人でなければわからない、重みのある御意見だと私は思っております。本当に、民営化のプラスの面、マイナスの面それぞれあるわけですが、とりわけマイナスの面では、地方であり高齢者で、いわゆる社会的弱者であるということにもなりかねません。なぜ小泉総理が民営化を急ぐのかわからないという御意見でございましたが、それは恐らく、多くの国民の等しい意見であろうと思っております。

 ちょっと質問したかったんですが、時間が参りました。ふるさとのきれいな島に安心して住める、そういった政治をという御発言でございました。そういった御発言をしっかりと胸に受けとめながら頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

山崎座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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