衆議院

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第21号 平成17年6月30日(木曜日)

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平成十七年六月三十日(木曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    鈴木 淳司君

      園田 博之君    馳   浩君

      浜田 靖一君    早川 忠孝君

      古川 禎久君    松本  純君

      御法川信英君    宮下 一郎君

      山口 泰明君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    一川 保夫君

      市村浩一郎君    岩國 哲人君

      小沢 鋭仁君    大出  彰君

      古賀 一成君    中塚 一宏君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      橋本 清仁君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    山花 郁夫君

      石井 啓一君    谷口 隆義君

      塩川 鉄也君    山本喜代宏君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   斎尾 親徳君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   山下  泉君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三十日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     御法川信英君

  大野 松茂君     早川 忠孝君

  城内  実君     古川 禎久君

  馳   浩君     岩屋  毅君

  中塚 一宏君     橋本 清仁君

  古本伸一郎君     市村浩一郎君

  横光 克彦君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     馳   浩君

  早川 忠孝君     大野 松茂君

  古川 禎久君     鈴木 淳司君

  御法川信英君     浜田 靖一君

  市村浩一郎君     古本伸一郎君

  橋本 清仁君     中塚 一宏君

  山本喜代宏君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     城内  実君

  浜田 靖一君     井上 信治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君、日本郵政公社理事山下泉君及び日本郵政公社理事斎尾親徳君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君及び内閣府大臣官房長永谷安賢君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎拓君。

山崎委員 本委員会に上程をされております郵政民営化関連六法案につきましては、四月二十七日に国会に提出されて以来、その後、五月二十日に当特別委員会が設置されまして、五月二十六日から昨日までの間に、実に延べ九十時間を超える質疑が展開をされてまいりました。

 今までの記録を見ますと、国会史上最長の質疑時間を要しました特別委員会は、非常に昔懐かしの話でございますが、昭和三十五年の日米安全保障条約等特別委員会、有名な小沢一郎先生の御尊父が委員長をお務めになりました、小沢佐重喜委員長のもとで百三十六時間十三分という大記録がございますが、これは何しろ安保条約改定に関する委員会でございますので、大変な審議時間をおやりになったと思います。

 平成になりましてからは、今までの成立をいたしました案件の審議時間数といたしましては、金丸信君が委員長をお務めになりました税制問題等に関する調査特別委員会、これは平成以前でございまして昭和六十三年でございますが、これが九十六時間でございます。平成になりましてからは、成立いたしました案件で最長時間を記録いたしましたのは、私が委員長を務めました日米防衛協力のための指針に関する特別委員会、九十四時間が最長ではないかと存じます。

 今、二階特別委員長のもとで郵政民営化に関する特別委員会の審議が取り進められてまいりまして、先ほどの理事会でも中井筆頭理事が言われましたように、実に充実した審議を進めてまいりまして、このままでまいりますと百時間を超えることは必定という段階になってまいりました次第でございます。

 この委員会の審議の中で、初めごろでございますが、野党の委員が世論調査の結果をパネルにされまして御質問なさったことがございました。そのパネルの一枚目でございますが、私はずっとこのコピーを筆頭理事の席で机の中に入れて、時々引き出しては眺めてまいりました。

 それはどういうことであるかと申しますと、郵政民営化に賛成か反対かというクエスチョンに対しまして、民営化に反対はわずかに一五・七%でございますが、慎重に審議すべきというのが六〇・八%でございまして、これは六〇・八%の方々に本当に慎重な審議を重ねて御納得いただいた上で成立を図りたいと念願いたしまして、この長時間の審議に頑張り抜いてきた次第でございます。(発言する者あり)いや、そんなことはございません。眠るがごとく十分に、何しろ席が席でございますので、質問者の声は全部耳に入ってまいりますし、答弁者は目の前から答弁なさいますので、これも十分傾聴いたしました次第でございます。

 一般質疑だけで十五回を重ねてまいりまして、きょうが十六回目でございますが、大相撲で申しますと、既に千秋楽を超えた段階でございます。早く千秋楽をお迎えして、小泉総理と私の敬愛する中井筆頭理事との間で最後の大相撲の一番をとっていただきたい、その日の一日も早からんことを期待いたしているような次第でございます。

 そこで、余分なことを申し上げてまいりましたが、昨日、与党二党は、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案を委員長に理事会の席で提出させていただきました次第でございます。

 本日、その趣旨説明を行わせていただきたい旨、御提案をいたしましたのでございますが、野党側からまだ趣旨説明を聞く十分な心構えができていないという御趣旨のお話がございまして、一日も早くその機会が参りますようにお願いしたいと思いますが、あらかじめこの趣旨について御説明をさせていただきます。

 郵政民営化は、明治以来の大改革であり、国民生活とも深く関係していることから、制度設計に当たっては種々の不安感を払拭するものでなければならないと存じます。

 本委員会における議論におきましても、これまで同様、郵便局の窓口において、金融サービスが提供されることが担保されるのか、グループ経営を可能とするための株式の連続的保有が担保されているのか、民営化委員会による検証により、将来の社会経済情勢の変化に柔軟に対応することが担保されているのかといった懸念が示されたところでございます。

 これに対し、原案によってもきちんとした対応がなされることが政府の答弁によって明らかにされてまいりましたが、より一層その趣旨を明確化する必要があると考える次第でございます。

 本修正案は、これらの議論を踏まえ、郵政民営化に係る国民の不安感を完全に払拭し、懸念に対する対応をしっかりと担保するため、次のような修正を提案する次第でございます。

 以下、修正案の概要について、この機会に申し上げます。

 第一に、郵便局会社法案においては、郵便局が行う具体的な業務として、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきが規定されているところでありますが、本修正案は、郵便局が引き続き金融サービスを提供することが可能であることを明示するため、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として、銀行業、生命保険業の代理業務を例示することとしております。

 第二に、日本郵政株式会社法案においては、日本郵政株式会社は社会・地域貢献基金について一兆円に達するまで積み立てることを義務づけ、一兆円を超えて積み立てることについても禁止していないところでありますが、本修正案は、同基金について一兆円を超えて積み立てることができることを明確にするとともに、二兆円まで積み立てる場合には、一兆円までと同じルールで積み立てなければならないとすることにより基金の上積みを促すものであります。

 第三に、本修正案は、郵政民営化法案において、移行期間後、議決権等の面で連続的保有を可能とするよう、基準日などの議決権の行使に関する事項を郵便貯金銀行及び郵便保険会社の定款に必ず定めなければならない旨を規定するものであります。

 第四に、郵政民営化法案においては、民営化委員会が三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行うこととなっておりますが、本修正案は、内外の社会経済情勢の変化に柔軟に対応する趣旨をより一層明確化するため、「総合的な検証」を「総合的な見直し」に修正するものであります。(発言する者あり)

二階委員長 発言中、御静粛に願います。

山崎委員 第五に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に関し、地方公営企業法について所要の修正を行うものであります。

 以上が、本修正案の趣旨でありますが、政府におかれまして、与党のこのような修正案につきましてどのような受けとめ方をなさっておられるか、この機会にお伺いしたいと存じます。

竹中国務大臣 ただいまその趣旨を賜りました修正案の内容につきましては、政府・与党合意やこれまで政府が国会において答弁させていただいた事項について、その内容の明確化を図るなどのものであると理解をしております。

 政府としては、修正案が国会において可決された場合には、それに基づいて、郵政民営化の実施に向けた諸手続を進めてまいる所存でございます。

山崎委員 終わります。

二階委員長 次に、柳澤伯夫君。

柳澤委員 郵政民営化につきましては、関連六法案の内容が、先ほど山崎筆頭の御質疑にもありましたように、去る四月二十七日の政府・与党合意に基づいてまとまり、法案が同日国会へ提出されました。その後、五月二十日に当特別委員会が設置され、五月二十六日から延べ九十一時間余りにわたり、多面的に、かつ、掘り下げた審議が熱心に行われてまいりました。

 この審議の経過を顧みまして、我々与党は、改めて法案を検討し、法案の修正が適当であると認めた事項につきまして、原案の修正案をまとめ、これを昨日、委員長、理事会に提出いたしました。その内容は、ただいま山崎理事が発言いたしたとおりであります。

 しかし、この修正案に盛り込んだ事項以外の事項にも、この際、政府の考え方をただし、その方針を確認しておきたいものが二、三残っております。以下、私は、これらの事項を順次取り上げ、成立後の本諸法律の運用の上で法文になったと同じような重みを持つ文言になるという政府の御認識のもとで、政府の御答弁をいただきたいと思います。

 第一は、郵便局の設置が民営化後どうなるかという最も基本の問題です。

 本委員会でも、郵便局の設置基準についての省令案の提示が求められたり、過疎地の定義や都市部に対する考え方などについて議論が重ねられました。

 言うまでもなく、郵便局の存廃は、一部で論じられたように、郵便貯金銀行が郵便局会社との代理店契約に際し直接個別に差配する筋合いのものではありません。それは、郵便局会社がみずから営業所の配置をどうするかの郵便局会社内部の問題であります。

 そういう前提でお尋ねいたしますが、郵便局の設置について、政府の基本的な考え方をここで改めて明確にしていただきたいと思います。

竹中国務大臣 郵便局の設置につきましては、あまねく全国で利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえ、都市部も含め国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう十分な配慮がなされることが最も重要と考えます。

 このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけ、さらに省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するなど、きめ細やかな法制上の担保を行うこととしております。

 このような法制上の担保の趣旨を十分踏まえ、実際の郵便局の設置については、都市部も含め国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう適切に対応してまいりたいと思います。

柳澤委員 第二は、郵政グループ内での郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式保有をめぐる問題であります。

 政府・与党合意では、持ち株会社による二社の株式処分の最終段階において株主名簿ベースで株式の連続的保有が生じても差し支えないとされ、今回の修正案では、そのことを確実に可能にするための定款の定めを行うことが法的に義務づけられました。

 しかし、それはそれとして、この関連でもう一つ政府に確認しておきたいことがあります。

 民営化法百五条及び百三十四条では、二社の株式を完全処分した場合に加えて、まだ完全処分しない段階でも、政府が二社の対民間イコールフッティングが実現したと認め、決定をした場合には、二社に対する移行期間特有の制約が外れることになっています。そこで、この決定があった場合には、移行期間中であっても郵便局会社が二社の株式を取得、保有してもよいのではないか、取引関係の安定のために取引先の会社の株式を取得、保有することは通常の民間会社の間でもごく普通に行われており、そのことを考えれば、郵便局会社の場合も認められるべきではないかという点であります。

 この点について、政府の積極的な方向での見解をぜひ伺っておきたいと思います。

竹中国務大臣 お答え申し上げます。

 郵政民営化法案において、郵便貯金銀行、郵便保険会社株式について完全処分を求めている理由は、信用が決定的に重要である金融事業において、イコールフッティングを確保する観点から、国の信用、関与を完全に断ち切る必要があるとの考え方に基づくものであります。

 持ち株会社の一〇〇%子会社である郵便局会社が移行期間中に郵便貯金銀行等の株式を保有することは、郵政民営化法のこのような趣旨に反することとなるほか、そもそも持ち株会社の経営管理のもとに四事業会社を設置するという民営化の基本スキームの趣旨をゆがめることにもつながりかねないと考えております。

 ただし、イコールフッティングの観点から問題がないと認められた結果、御指摘の郵政民営化法第百五条または第百三十四条の決定がなされた後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、普通の保険会社となるわけであります。郵便局会社が特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により、密接な取引関係を有する郵便貯金銀行、郵便保険会社株式を他の民間金融機関の例と同様に保有することは可能であり、民間の慣行に照らしても問題とすべきことではないと考えられます。

 もとより、移行期間終了後は、郵便貯金銀行、郵便保険会社は普通の銀行、保険会社となることから、特殊会社としての性格を考慮しつつ、経営判断により他の民間金融機関と同様な株式保有は可能であり、その結果、株式の連続的保有の生じることは妨げられないというふうに考えております。

柳澤委員 第三は、郵便貯金銀行の預入限度額及び保険会社の保険金額の問題であります。

 郵貯銀行を例にとって申し上げます。郵便貯金の現行の限度額は、言うまでもなく、一千万円であります。他方、郵便貯金が完全民営化された後は限度額などというものは完全に撤廃され、預入金額は全く自由になるものと想定されます。ということになりますと、その両者をつなぐ移行期間はどうなるのか。民営化法百六条は、この移行期間中の限度額は政令で定めると規定しております。

 ところで、郵貯銀行をどのようなビジネスモデルで経営するかについては、現段階でも郵便貯金事業の内外で大きな関心を集めており、当委員会の審議でも何回か論議の対象になりました。これまでの政府からの御答弁は、基本的に経営者の判断によるというものでありました。もちろん、移行期間中の郵便貯金は、まだ完全に民間銀行と同じような自由ということにはなっていないのでありますが、当然、完全民営化後のビジネスモデルをにらんだものとなりましょう。

 そこで、この期間における預入限度額を政令で定めるに当たっては、政府の一存で決めるのではなく、やはりその時点における郵貯銀行の経営者の意見を聞く、あるいはもっと言えば、郵貯銀行の経営者が完全民営化後のビジネスモデルをにらんで発案した意見が政令制定の動因となるといったことがあってよいのではないかと考えます。

 移行期間中の預入限度をせっかく政令にゆだねることとし、その時点の状況のもとでベストの判断を行うこととした原案を高く評価しているものでございますが、それだけに、その判断への郵貯銀行の経営者の関与について、政府の考えをこの際ぜひお聞きしておきたいと思います。

竹中国務大臣 郵便貯金銀行の預入限度額については、郵貯、簡保の巨額な資金が無理なく市場に溶け込むよう、民間金融機関とのイコールフッティングの状況及び郵便貯金銀行の経営状況等を勘案して、民営化委員会の意見を聴取した上で、政令で定めることとなっております。

 このような透明、公正なプロセスのもと、郵便貯金銀行の預入限度額を改定していく制度的枠組みとなっておりますが、これに加えて、規制がより実情を踏まえた適切なものとなるためには、当事者である郵便貯金銀行の経営者の意見を十分に聴取することが重要であると認識しており、政府としても適切に対応してまいりたいと思います。

柳澤委員 ただいままでが、私ども与党がまとめました法案の修正本体、それからまた、いわば修正並みの、国会答弁による法の運用の指針を明らかにしてもらうための質疑でございました。

 これから先は、私が、長い審議、これは与野党の議員を通じて大変御熱心な、多角的な論点にわたっての審議がございまして、それをこの理事席から聞いておりまして、いささか少し気になったというような問題を若干取り上げさせていただいて、この際、政府側の見解をただしておきたい、このように思います。

 一つは、移行期にかかわる問題でございます。

 移行期につきましては、特に分社化が続いて起こるわけでございますから、まず、現行の公社の資産を適切に評価する、デューデリジェンスであります。それと、それを合理的に切り分けるということが決定的に重要であります。特に切り分けは、それがそのまま自己資本の額につながっていきますので、したがって、私ども政府・与党合意でも大変重視した自己資本の確保という問題につながりまして、この点非常に重要だ。

 それからもう一つは、口座の整理とか限度額の管理がしっかり行われることが大事だというふうに私は思います。

 考えてみますと、確かに十二年先には、先ほど申したように、限度額などというものは撤廃されて、完全に自由な銀行になるわけですから、この間適当の限度額管理でいいじゃないかという考え方というか、そういうものも成り立たぬわけではないとも思うんですが、私は、スタート時における、私が今挙げた銀行などの企業体質の問題として、しっかりしたコンプライアンスのもとで適法な企業体制というものを構築した上で、その上で自由な企業になっていくということが断然必要だと思います。

 このことを指摘して、このこと自体ではなくて、私が気がかりだったことを一つ取り上げてみたいと思うんです。

 それは、郵便貯金の口座数が問題になった際でございます。五億六千万口座あります、こういうことでございました。これは、一億二千万余りの人口を擁する国民ということはだれも知っておりますので、五億六千万口座ということを聞いた途端に、いろいろな問題が、それぞれの頭の中にもやもやとしたものが上ったであろうということは想像にかたくありません。

 したがって、一口に五億六千万口座と言うわけですけれども、この内訳、貯金の種類ごとの内訳、定額貯金は一体どのぐらいあるんだ、通常貯金はどのぐらいあるんだということで、これをまず明らかにして、五億六千万が与えた若干ミスリーディングとも思うこの数字について、正確な掌握をしておくことが必要だと私は考えますので、この点、公社の担当者でもよろしいですから、正確な数字を教えていただきたい。

麻生国務大臣 今御指摘のありました五億六千万口座という言葉は、確かにおっしゃるとおり、一億二千七百万の人口からいったって四倍近くの数字ではないかという御指摘は正しいんだと存じますが、御存じのように、仮に定額貯金を十万円というのをいたしますと、これを五回預け入れしますと口座は五口というのが今のルールになっておるためにこういうことになっておりますので、今その整理を全部、昨日も御質問がありましたが、同姓同名等々ございますので、その作業の手分けは、手でやらないかぬものですから、スタートするまでにきちんとやるということでやっておりますが、細目は公社の方から説明してもらいます。

斎尾参考人 口座数の中身については今大臣の方からお話のあったとおりでありますけれども、その内訳を申し上げますと、通常貯金が一億一千八百万件、それから定額貯金が三億五千百万件、その他の貯金が九千五百万件でありまして、合わせて五億六千四百万件となっております。

 以上です。

柳澤委員 貯金の種類別の内訳でも、定額貯金が三億五千万口座、それから通常貯金が切り上げまして一億二千万口座ということでございます。

 そこで、定額貯金は三億五千万口座だということで、少し安心するというか、そういう感もなきにしもあらずですが、しかし、これにはいろいろな物語がありました。特に、税の優遇がとられていた当時の記憶ですけれども、新幹線貯金というようなものもありました。新幹線の駅前の郵便局ごとに非課税の貯金口座を持っていく。そういうようなことすら、当時私は税制を担当していましたけれども、そういうことを言われた記憶も実はございます。

 それから、現に三億五千万口座であっても、著名な日本のオピニオンリーダーの中にも、これはもう限度額をオーバーする口座が多いということを、あるいは一人別にいうと限度額をオーバーしている人が多いという何よりの証左だというような受けとめ方もあるようでございます。

 先ほど麻生大臣は、いやそれは違うんですということを言わんとして、定額貯金なるものの口座の勘定の仕方について若干言及されました。私も実は定額貯金の口座を持っている。普通の貯金通帳の格好をしていますね。その一番先に、いつ何どき幾らの定額貯金をしましたよと書いてあって、その次にもまた書けるようになっているんですね。

 こういうように、定額貯金の通帳がある、私の場合には柳澤伯夫と書いてある通帳があるんですが、そこに何行にもわたって定額貯金が一回、二回と記入されるという場合には、これは何口座ということになるわけでしょうか。これもちょっと事務当局から伺いたいと思います。

斎尾参考人 通帳一冊で最大二十四件預入が可能でありまして、一冊の通帳で二十四件ということになります。

柳澤委員 二十四件ありますと、同じ通帳でも、これは勘定の仕方、今の三億五千万の勘定の仕方では、一口座ということではなくて二十四口座ということになる、こういうことですね。こういうことによって、これは私は、こういう発表の仕方、こういう世の中をミスリードするような発表の仕方がよかったかという感じもしますけれども、我々はこういったことを客観的にまず把握しておくことが大事だと思います。

 通常貯金でございますが、通常貯金の問題につきましては、私は別途の問題を感じます。

 というのは、私ども、子供のころから郵便局には親しんでいて、例えば子供銀行などというのも、銀行ではなくて郵便貯金通帳でやった記憶がありますね。しかし、その子供のころ持っていた郵便貯金通帳というのは、今どこを捜しても、私の身の回りには、これはまあ身の回りの整理が不行き届きだということもあるかもしれませんが、しかし、大半の人は恐らくどこかへ行っちゃったという状況だろうと思うんですね。

 この口座はこの一億一千万の中でどのようになっているんでしょうか、これをぜひ伺っておきたいと思います。

斎尾参考人 郵便貯金は、通常貯金の場合、最後の取り扱いから十年が経過した日から睡眠貯金になります。この数が現在、千三百二十七万件ありまして、先ほどの件数の中にこれが含まれております。

柳澤委員 これは一億一千万、十年たつと睡眠口座ということになるけれども、やはりこれが今の、口座を尋ねられれば答える、その口座の中に含まれて、全然動かない貯金としてある一定のコストをかけて管理されている、こういうことでございます。これは永遠にこういうことが行われるわけでしょうか。

斎尾参考人 先ほど申し上げましたように、通常貯金の場合、最後の取り扱いから十年間何も取り扱いがなくて経過しますと睡眠貯金になりますけれども、さらにその後十年間何も解約がなければ、これは公社の収入というふうになります。ですから、二十年間残っていると思います。

柳澤委員 権利消滅という制度があるんだそうですね。そして、何のことはない、公社の場合には公社の収益になる、こういうことであるということでございます。

 これは国民によく、特に民間会社などになるに当たっては周知をしておくことが大事だろうと思います。権利消滅ということが起こるんですよということでありまして、こういうようなことをないようにする。そういうことであれば、口座そのものを廃止にするというようなことで、国民が無用な損失をこうむらないようにするということが非常に大事だというように私は思っておりまして、今回、移行期の問題としては、そういったことにも注力をしていただければ大変いいんじゃないか、このように思います。

 移行期の問題のその二でございますけれども、民営化委員会というものの運用のことでございます。

 移行期、新規事業をやりたいというのが公社の生田総裁などの強い願望でありまして、そのことはこの委員会でも表明をたびたびされたわけでございますけれども、他方、やはり今までの国営の時代あるいは公社の時代を通じて国の関与が非常に強かった。そうなると、特に金融の面での信用ということについては、これは大変大きな、いわばげたを履いた、そういう状況であったわけでございまして、この新規事業の認可ということと、経営の自由というか、経営の自由とイコールフッティングの条件というものとのバランスというものが非常に重要になることは、だれの目にも明らかでございます。

 実は、民営化委員会というのは何をやるかというと、私、きのう調べてもらったんですが、あの民営化法及び関連の六法案の中に、十九項目の権限を持っているということでございます。そのうち非常に重要なのは三つほどありまして、一つは、三年ごとの検証、民営化の進捗状況その他総合的な検証をする。この「検証」という言葉が、先ほどの山崎提案ではこれが「見直し」というふうになるわけです。これが第一。

 それから第二は、新規事業の認可ということに当たって意見の陳述をする。

 それから三つ目は、承継計画の認可ということで、これは、自己資本の充実ということを政府・与党合意でも強く迫って、我々書かせてもらったんですけれども、この自己資本の充実に直結する承継計画の認可。先ほど言った、資産の切り分け等をやって承継計画をきちっと立てるときの、そのことについて、民営化委員会はしっかり検討して意見を述べる。

 この三つ、非常に大事なんですね。この三つが非常に大事。

 このうち、私どもは、政府・与党の合意では何をしたかというと、最初に言った三年ごとの見直しについて、意見を言ったらそれを国会に報告してくれということを言いました。それから承継計画、これは自己資本の問題に直結する問題ですが、これについても、意見を言ったら国会へ報告してくれ、こう言っております。

 他方、では、新規業務の認可については国会との関係でどう言ったかというと、別段のことを言わないで、我々の方から、ぜひこの点については、かなり専門的なので民営化委員会の方々にお任せするんですけれども、そうであれば、非常に重要なことは、事前に透明なルールを公表しておくということが非常に重要になりますよと。もちろん決定をすればこれは公表されます。別に国会に報告するということではなくて、世間一般に公表するということになっていますので、我々としては、事前に発表された透明性あるルールと本当に経営委員会の意見がしっかり適合しているか、これをチェックできるわけであります。

 そういうふうに、国会のかかわり方ということに一定の差を設けたわけでありますが、いずれにしても、そのくらい重要な問題なんですね。政府・与党合意の間で我々が言った、透明性あるルールのもとでということは非常に重要なんですね。これについて、通り一遍の取り組み方では困るんですね。いずれ民営化委員会が自主的に決めることでありましょうけれども、政府はやはりこれをリードしなきゃいけない。この指導理念のようなものが今腹案としてありましたら、ここで明らかにしてもらいたい。

竹中国務大臣 民営化委員会の重要な役割について、改めて柳澤委員から御指摘を賜りました。

 委員御指摘のとおり、大きく三つの役割を果たす。その中の二つにつきましては国会報告をするわけでございますが、主務大臣が新会社の業務拡大等の認可を行う際に意見を述べること、これについては専門性を発揮していただきたい。そうであるがゆえに、そのことについてますます中立性、透明性が求められるという点、大変重要な点であると我々も認識をしております。

 この主務大臣による新規業務等の認可等に当たって意見を述べる民営化委員会について、判断の公正性、透明性を確保する、このために、民営化委員会が意見を述べたときはその内容を公表すべきことを法律上義務づけているところでございます。

 また、法律で定められた意見の内容の事後的公表以外にも、民営化委員会の運営の公正性、透明性を高めるための方策として、ガイドラインの作成でありますとか議事要旨等の速やかな公表が考えられると思います。民営化委員会の運営につきましては民営化委員会自身の御判断もあると思いますが、政府としては、委員会及び事務局の設置後、適切に関与して、その役割を果たしたいというふうに思っております。

柳澤委員 現在段階では、失礼ですが、今の竹中大臣の答弁程度の御答弁しかできないかと思うんですが、やはり私も金融再生委員会というものに、もっと深刻な問題を扱ったんですが、かかわりを持った者として、この事前のルールというものは非常に重要だというのが私の経験からも申し上げられることでございますので、ぜひ真剣なお取り組みをお願いしたい。

 次に、業務関係でございますが、お仕事の関係で、ちょっと三点ばかり、岩屋委員の質疑時間になりましたが使わせていただいて、御質疑をお許しいただきたいと思います。

 一つは、郵便です。

 郵便というのは、社会生活の中で非常に重要な証明機能というものを果たしておりまして、この証明機能というものをいろいろな社会の諸制度が活用しているということが実はあるわけでございます。

 専門家によると、この郵便の証明機能というのは大別して四つに分かれるそうです。一つは、内容の証明。二つは、引受時刻の証明。つまり、郵便局がいつその郵便を引き受けたか、この証明。それから、配達の証明。配達については、配達の時刻の証明というのはなかなかこれは言うべくしてとれないというので、とにかく配達しましたよという事実の証明。それから、たびたび問題になった特別送達というような司法上の一定の証明能力を持つ送達というものでございます。

 私は、内容の証明と特別送達は、非常によく検討していただいた結果、認証司制度あるいはみなし公務員制度というものに形が整えられたということを承知しているわけでございますが、問題は、この前、柴山委員の質問にあったことなんですが、ちょっと彼も時間がなかったものですから少なくなったんですが、特許法だとか鉱業法、これは先願主義ということで一刻が争われるんじゃないかと思います。

 それから、公職選挙法というのがあって、私もそういうことを当事者でありながら余りよく知らなかったんですが、出納責任者というものが届け出られると、その時点から選挙資金というものが集められるということで、それが遅くなれば選挙資金が集まるという立場にない、こういうことのようですね。

 それから、言うまでもなく、時効の中断というようなことで、これもまた非常に重要な我々の社会生活上の証明機能でございます。

 そういうような、内容証明、特別送達以外の引受時刻の証明だとか配達の証明というようなことについて、当然十分に御検討になられたと思うんですけれども、このあたりの検討の状況とその結論につきまして、簡潔に御説明をいただければと思います。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、内容証明や特別送達に限らず、引受時刻証明あるいは配達証明につきましても社会的に重要な役割を果たしているものと認識しております。

 御指摘ございましたように、引受時刻証明につきましては、郵便物の引受時刻を証明する特殊取扱でございまして、これも委員の御指摘にございました鉱業法においては、これにより証明された日時により鉱業権の設定に当たっての優先権が与えられる、あるいは公職選挙法におきましては、所定の届け出について、引受時刻証明として郵便局に差し出された場合には、その時点で届け出がなされたとみなされるなど、一定の法律上の手続において利用されているところでございます。

 ただ、御指摘の特許法につきましては、引受時刻証明の利用を求めているものではなく、書類等を書留郵便物で送付した場合には、その受領証により証明される差し出し日時に特許庁に到達したものとみなすという特例が設けられているにとどまるものでございます。

 それからまた、配達証明でございますが、これにつきましても、郵便物を配達した事実を証明する特殊取扱でございまして、道路交通法施行令あるいは自衛隊法施行令などにおきまして、一定の通知書や命令書を発送する際の手段として利用されているところでございます。

 私ども、これら特殊取扱の制度を民営化された郵便会社がどのように引き継ぐかということでいろいろ検討したわけですが、一点目の引受時刻証明につきましては、内容証明のように、内容文書について細かい照合等を行って証明するといったものではなく、単に何時に引き受けたかという時刻証明をするだけでございまして、いわば機械的な証明という性格を有するものでございます。また、この引受時刻証明を採用しております鉱業法におきましては、既に郵便以外の方法による送達も採用されているところでございます。

 また、配達証明につきましては、特別送達のように、どのように送達したかといった細かい事実まで証明するといったものではなく、単に配達したかどうかという事実を証明するだけであり、また、この配達証明を引用している他の法令におきましても、既に民間事業者による信書便による送達を制度として採用されているところでございます。

 つまり、各種特殊取扱の差異、またその取り扱いを採用している各種法令の趣旨、つまり代替手段を認めているかどうかとか、そういったことを踏まえまして、どのような手当てをすれば民営化された郵便会社が引き続きサービスを提供できるのかどうかということを検討いたしました結果、内容証明と特別送達につきましてはみなし公務員規定や郵便認証司の制度を設ける必要はございますけれども、引受時刻証明や配達証明につきましてはその必要はないと判断したところでございます。

 しかしながら、その二つの証明につきましても大変重要な制度でございますので、民営化会社が引き続き提供できますように、特殊会社として総務大臣の監督を受ける郵便事業会社の法定業務として位置づけてございますので、引き続きサービスが確実に行われるものと認識しているところでございます。

柳澤委員 慎重な検討をいたしたということで、その結論は法文にもあらわれているということでございます。

 ただ、柴山委員は、彼も法律家ですから厳密な検討をして、その結果、この二番目と三番目については、迅速性こそが命だという考え方をとっておるようです。したがって、引き受けをする人間の不在ということが非常に致命的な問題になり得るということを心配しておりまして、このようなことにならないような体制のしっかりした整備を望んでいるということを申しておきたい、このように思います。

 業務関係のその二は、特に金融絡みの問題でございますけれども、これは伊藤信太郎議員の情報の視点からの質問でございました。

 私も、聞いておって、非常に彼が情報の専門家としていろいろな問題を指摘してきたことに耳を傾けさせていただいたんですが、要は、今は単一の事業体ですから、郵便局の窓口の職員がこの仕事をあるときはやる、銀行の仕事をやる、それから次のときは郵便の仕事をやる、また別のときは貯金の仕事をやるということで、そういうような仕事に必要な情報、あるいは仕事に絡んで受け取られる情報というのは全く一身に備わっちゃっても何も問題がないということなんです。ところが、今度分社化が行われるときに一体どうなるか、そういう考え、分析であったわけです。

 私はここで、ちょっと時間が迫っていますから余り長話はしませんが、これまでも、普通の方々がそれぞれ会社の職員になっちゃうと、もう仕事が、貯金は非常に暇だけれども、郵便は物すごく忙しいけれども手伝ってやれないんだみたいな、そういう今までとは違った、労働の融通性みたいなものが失われるというようなことを言っておられる方もいたわけですが、さすがに伊藤さんはそういうことは言わない。これはもう今までどおりできるんだと。しかし、今までどおりできるということが、分社化ということが背景に出てくると、これは情報のいわば行き来において個人情報の保護が確実に保護されるかどうか、担保されるかどうか、その問題が別途起こってしまうんだという指摘であったわけであります。

 そこで、これについて一体どういうふうに考えるんだ。あのときの御答弁は、データベースを完全に業務ごとに分離させるのでまあ大丈夫だと言ったんですが、伊藤委員は、いや、それでは、一番の問題は、コンピューターが分離した程度ではできない、人間の頭脳に入った情報の分別をどうするか、その中のファイアウオール、チャイナ・ウオールをどうするかというような点だということで、実に鋭かったんです。

 私は、この質問、そのときは非常に感心して聞いたわけですが、ただ、実際の事業を考えますと、金融の、特に信用リスク関係の問題が一番シリアスな問題になると思うんですが、現実には窓口で接触するあるいは受けとめるということは少ないのかなという感じ、余り私の意見を言いませんが、こういう観点から、もうちょっとその点、しっかり担保できるということについて、政府側は答弁しておくべきだと私は思います。

細見政府参考人 十分なお答えになるかどうかわかりませんが、お答えさせていただきたいと思います。

 民営化後の郵便局会社は、個人情報保護法上の個人情報取扱事業者ということで、利用目的をできるだけ特定した上で、その目的の達成に必要な範囲内で個人情報を取り扱うという義務を負うわけでございます。郵便局会社が郵便事業会社、郵便貯金会社、郵便保険会社から受託した業務を管理することとなる個人情報についても、それぞれの業務ごとの利用目的に沿って利用する必要があって、それ以外の目的に利用することは、新たに本人の同意等の所要の手続をとらなければ基本的に許容されないということでございます。

 この点につきましては、現在の日本郵政公社におきましても、独立行政法人等の個人情報保護法第九条第一項によりまして、個人情報を利用目的以外の目的のために利用することが禁止されているということでございまして、公社は、郵便、貯金、保険の業務ごとに個人情報の利用目的を明示して、郵便局で個人情報の流用を行わないように内部取扱規定を定めて管理をしているということでございます。

 分社するからそこは変わってくるというよりも、現行の公社法の中におきましても、それぞれ分けて取り扱いをしなければならないという規定になっているということでございます。その意味では、郵便局の職員が保険のためにとった情報をもって貯金を勧誘するということは、原則として利用目的を逸脱することになるということであると思います。その意味では、形式的には同じということであると思います。

 郵便局の職員が、郵便局において、郵便、貯金、保険を含む複数の受託業務に関する個人情報を取り扱うことに対する個人情報保護法上の懸念につきましては、郵便局会社が、個人情報保護法第二十一条に基づきまして、従業員の必要かつ適切な監督を行う必要があるということでございまして、具体的には、個人情報の漏えいの防止、利用目的制限の遵守、職員の教育訓練等の安全管理措置を講ずる必要があるというふうに考えております。このような安全管理措置を講じて受託業務ごとの個人情報の利用目的制限を遵守しているということであれば、個人情報保護法は郵便局の職員が複数受託業務を取り扱うということを許容しているというふうに考えていると思っているところでございます。

 なお、民間におきましても、同様な例はあるというふうに理解をしております。

 また、分社化に伴いまして、郵便局会社が郵便貯金会社、郵便保険会社、郵便事業会社から委託を受けて営む業務となることによりまして、委託元との間で利益相反が発生するのではないか、こういう問題もあろうかと思います。個人情報保護が問題となった指摘につきましては、郵便局会社みずからが個人情報取扱業者として個人情報保護法上の義務を負うことに加えまして、個人情報保護法二十二条は、委託元の会社に対しても、委託先の会社において個人データの安全管理を図られるよう必要かつ適切な監督を行うことを義務づけております。郵便局会社と委託元との間の受委託関係におきましては、この義務を遵守するために必要となる個人情報の安全管理措置を盛り込まれるということになると考えておりまして、こうした契約内容を郵便局会社が遵守するということによりまして、受託業務について個人情報の保護の徹底が図られるというふうに考えているところでございます。

 いずれにせよ、民営化後の郵便局会社が個人情報保護法や受委託契約に盛り込まれた安全管理措置を遵守するということによりまして、個人情報の保護に万全を期する必要があるというふうに考えているところでございます。

柳澤委員 ちょっと早口だったので、速記の方も大変だったと思うので、後で、ここのところは非常に重要ですから、速記録の整備には遺憾なきを期してもらいたい、こう思います。

 最後にちょっと、大変恐縮なんですが、もう一問だけにいたしますのでお許しいただきたいと思うんですが、これまで保険のことは割と議論が少なかったと思うんですね。実は、自民党の党内の議論では保険が結構論議されました。これはどういうことかというと、簡保はどうなるか、簡保は存続できるのかという問題でございます。

 簡易保険というのは、もう皆さん御承知のとおりでございますけれども、一般の保険とは異なるビジネスモデルに立っているということを言っていいと思います。要するに、広大な保険母集団が存在していまして、それに対して比較的低額な保険金額を保障するということによって、いわば大数の法則が支配するビジネスということでこれが成り立っているという考え方であります。

 他方、一般の保険というのは、私は下世話な話を保険の会社の経営者から聞いたことがあるんですが、民間の保険会社というのは、保険に入れてくださいといって加入の申し込みがあるような保険者は一切お断りするのが保険会社の一番大事な点です、こういうことなんですね。つまり、そういう人は質の悪い方であるというまず一つの先入観がなければ、どんどん危険な人たち、つまり母集団の劣化が起こってしまう、こういうことでございまして、そこはおよそ簡易保険の世界とは違うビジネスの原理原則が働いているということのようであります。

 これが、しかし今度、保険会社ということになって、簡易保険というビジネスモデルが成立しなくなる、成立する条件が失われるかというと、私は、そうではないだろう、こういうように考えているということ。もちろん一般の生命保険の方にも進出できるかもしれませんけれども、そのことがあるからといって、簡易保険のビジネスモデルが非常にダメージを受けるということはないと私は考えるわけです。

 この点について、本当はもうちょっと深く突っ込んだ議論が必要だと私も思うんですけれども、とりあえず、今どういうふうに政府がお考えかということを明らかにしておきたいと思います。

竹中国務大臣 簡易生命保険事業でございますけれども、これは、日本郵政公社法や簡易生命保険法等の法律に基づきまして、加入限度額が設けられたもとで、無診査、職業による選択を行っていない生命保険商品を提供しているわけでございます。

 民営化によってこれらの法律は廃止されます。民営化後の郵便保険会社は、一般の生命保険会社と同様、保険業法の適用を受ける生命保険会社となります。どのような生命保険商品を提供するかは経営判断にゆだねられるということに相なるわけでございます。

 しかしながら、この郵便保険会社でございますけれども、ここは、これまで郵便局を通じて培ってきました地域の顧客基盤でありますとか、職業による加入制限がないこと、そして、小口、無診査保険といったビジネスの特徴、まさにビジネスモデルの特徴といいますか事業の強み、これを生かして、民営化後もこうした事業の骨格が大きく変わることはないというふうに考えております。

 柳澤委員は、ビジネスモデルがだめになるという意見はあるが自分はそうではないと思っていると。我々もそのように考えているということでございます。むしろ民営化後は、郵便保険会社の経営判断に基づき、民間企業としての創意工夫により多様な商品、サービスの提供が可能となりますので、利用者の利便が一層高まるということを期待しているわけでございます。

柳澤委員 終わります。

二階委員長 この際、南野法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。南野法務大臣。

南野国務大臣 昨日の私の答弁中、山花議員お示しの資料の記載内容につきまして言及した部分につきましては、あえて答弁の必要がない事項について述べたもので、おわびして撤回させていただきます。

 続きまして、昨日の私の答弁について、補足して説明をさせていただきます。

 一般論といたしまして、差別的取り扱いにつきましては、合理的区別か否かで差別か否かを判断いたします。差別表現につきましては、その対象者が特定されている場合には人権侵害に当たる場合がありますが、特定されない場合には、原則として人権侵害には当たらないと考えます。もっとも、表現としては一般的な体裁をとっていても、対象者が事実上特定される場合には、特定個人に対する人権侵害となり得る場合があります。さらに、このような厳密な意味での人権侵害に当たらないとしても、不当な差別的な取り扱いを助長させるおそれが大きい場合には、これが差別助長行為として許されないものと考えております。

 個々の事案の判断は、以上の考え方に基づいてなされるものと考えております。

 昨日の私の答弁は一般論をお答えしたもので、山花議員お示しの資料自体についての判断を述べたものではない点を御理解いただきたいと存じます。

二階委員長 次に、岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋毅でございます。

 この重要法案の審議に際しまして、質問の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。残念ながら、もう三十分を切ってしまいましたので、予定しておりました質問は全部できないと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 既に九十二時間ですか、御熱心な、専門的な御議論が続いてきたと思いますので、ほとんどの論点については出尽くしておるのかなというふうに承知をしております。したがいまして、私は、細かい話ではなくてざっくりとした話で、担当大臣の御見解を伺いたいと思います。

 まず、中長期の国家経営ビジョンをどう描いているのかということをお聞きしたいと思うんです。

 というのは、今なお国民は、日本の将来と郵政民営化がどういう関係にあるのかということが、なかなか得心をしていただいていない点があろうかと思います。そこの説明ができないと国民の皆さんの御理解はいただけないということだろうと思います。

 先般も最新の国債発行残高のデータが発表されまして、国民は強い衝撃を受けていると思います。国も地方も合わせると一千兆円になんなんとしている、このままのペースでいくと二〇二五年ぐらいには二千兆円になるという試算もある。これを解決する方法は当たり前に考えて二つしかないわけで、要は、収入をふやして支出を減らすという以外にはない、それ以外の方法で解決しようと思えば国民の資産を取り上げるか紙くずにしてしまうしかない、正攻法でやっていくしかない、こういうことだろうと思います。

 私は、小泉政権のこの間の経済のかじ取りの運営をされた竹中大臣は評価させていただきたいと思います。理由は単純明快でございまして、結果が出ているからでございます。バブル崩壊の後、経済もようやく持ち直して、昨年は一・九%の成長をした。さまざまな指標も改善しつつございます。不良債権も減ってきた。

 私は、しかし、ここから先まだ、展望のあるビジョンを国民に示す必要があると思うんですね。例えば、一%の成長を三十年複利で繰り返せば、三十年後にはGDPは七百兆になる、二%だったら九百兆になる、三%できたら千二百兆になる。まあ千二百兆というのは無理かもしれませんが、しかし、一千兆円のGDPがあれば、税収は大方一〇%ですから、百兆の税収がある。行革を徹底的にやって体を絞り切れば、六十五兆から七十兆でやっていける国にすれば十分おつりが来る、こういうことだろうと思うんですね。

 だから、私は、悲観論がちょっと多く続き過ぎておって、会社の社長が毎日朝礼で、あしたからこの会社の売り上げが減るぞ、従業員も減らすぞ、あんた方、給料も減らすぞ、それでも借金はふえ続けるぞ、いつ倒れるかわからぬけれども覚悟してくれなんという演説をしておったのでは出る元気も出ないわけでございまして、心配するな、ついてこい、こういうことを言うのが政治の構想力であり、ビジョンだと思うんですね。ビジョンというのは実現するまではほらなんです。そういうことだと私は思っております。

 そういう意味で、例えば三十年という区切りでいうと、竹中大臣はこの国の経済をどういう形に持っていこうとされているのか。予測ではありません、目標をどう設定されておられるのか。その中で今回の郵政民営化ということはどういう意義を持っているのかということをわかりやすく説明していただきたいと思います。

竹中国務大臣 岩屋委員から励ましをいただき、また今回、長期の観点から、ビジョンを踏まえて政策を論じるべきである、その中で郵政をどのように位置づけるのか、大変重要な御質問をいただいたことに感謝を申し上げます。

 まずビジョンでございますが、これはいろいろなビジョンがあるのだと思います。そうしたことも踏まえまして、先般、内閣府では、日本のいろいろな分野での最先端の方六十名に集まっていただきまして、八カ月間の時間をかけていただいて、このビジョンについての取りまとめを行っていただきました。基本的には、そのビジョン、我々も意識を共有しておりまして、そういう中で私たちなりに郵政民営化を位置づけているつもりでございます。

 そのビジョンは、二〇三〇年を目標に置いて、したがって正確には二十五年後ということになりますが、次のような大まかな姿が描かれるというふうに私自身も思っております。

 それは、改革を続けないと、つまり一九九〇年代と同じような低い経済パフォーマンスを甘受してしまえば、日本の世界の中における存在感というのはもう極端に低下をしてしまう。しかし、ここ一、二年に見られるような形で改革の成果を出していけば、そしてさらにデフレを克服していけば、日本の経済は世界の中で従来にも増して存在感を示すことができるし、具体的に、岩屋委員が御指摘のGDP成長についても、二〇三〇年には、GDPでいいますと相当の成長率をとらえることができる。成長率としては一・五%の成長率が可能である、人口減少のもとでもそのような成長が可能である。そして、一人当たりの実質GDP、一人所得は二%の実質成長が可能になるということでございます。これは十分に可能な射程圏であろうというふうに思っているところでございます。今のは実質のGDPの数字でございます。

 ただし、それを実現するための最大のポイントとして、次のようなポイントがあるかと思います。

 それは、人口が減少する中で、生産性を上昇させるということと所得を上昇させるということの間での好循環を実現することである。やはり厳しい競争の中で、民間の活力を最大限生かして生産性を高める。生産性を高めることによって一人当たりの付加価値が高まるわけですから、付加価値が高まって所得が高まったものを、さらに新たなあすへの技術、あすへの資本という形で投資をしていく。そのためにはお金の流れも変えなければいけない。それで、投資をすることによってさらに所得が拡大し、生産性が拡大する。その生産性と所得拡大の好循環をつくっていくことが、これはもう唯一、私たちが目指さなきゃいけない基本的な道であるということも示されているわけでございます。

 そういう中で、先ほど実質成長率のことを申し上げましたが、デフレを克服して名目成長率もさらに高めていくことになれば、これは財政赤字等々の関連では名目成長率が大変重要でございますが、それについても、もちろんさらなる努力が要りますけれども、それを、まず二〇一二年ごろにプライマリーバランスを回復して、その後も国債の残高を下げていくような努力をしていくことによって、マクロ経済のバランスをしっかりととっていくことができる。

 高齢化が進んで貯蓄率は減るわけでございますが、このビジョンによれば、二〇三〇年の時点で、日本は財・サービスの取引は赤字になっている可能性がありますが、それでも所得収支が十分ありますので、対外的な経常収支は黒字を続けているであろうというような姿も描かれているところでございます。

 いずれにしましても、そういうビジョンの中で、それを今に引き直して考えると、とりわけ重要なことが二点示されていると思います。そして、それらがやはり郵政民営化にもつながってくることであると思っております。

 第一の点は、所得と生産性の好循環を実現するために、やはり民でできることは民で、地方でできることは地方で、そういう原則、改革をしっかりと進めていくということ、これを怠ることはやはり厳しいシナリオに将来日本を導いていくであろうということ、これが第一点でございます。

 第二の点は、そうした中で、とりわけここ一、二年の選択が日本にとっては極めて重要であろうということでございます。

 これも専門家の方々、いろいろな観点から御議論をいただいておりますが、FTA、EPA等いろいろなアレンジが対外的に進むであろう。そういうものに日本が後からもし入っていくならば、それは大変コストの高いものになる。先にそういった仕組みづくりをリードすれば、日本にとってのコストはそうでない場合に比べて低いものになる。また、財政の改革、お金の流れの改革等々も、後になればなるほどその効果は低くなるし、負担は大きくなる。その意味で、ここ一、二年の改革が極めて重要である。

 民間でできることは民間で、そしてそれを早くやる。私は、郵政の民営化というのがやはりその意味で改革の本丸であり、シンボルであり、何としても実現しなければいけない重要な課題であるというふうに考えているところでございます。

岩屋委員 そのビジョンの方向性については、私も全く同感でございます。どう考えても、郵政事業が集めた三百五十兆という巨額な資金が国民経済のど真ん中に座っておって、それが非効率な公的セクターに注ぎ込まれているということは、私は、不健全な姿だろうと。やはりこれはどうしても変えていかなくちゃいけないことなんだろうというふうに了解をしているところでございます。

 最初は私は、公社は丸ごと民営化でいいんじゃないか、看板をかけかえて、とにかく会社にするんだ、とにかく民間人にするんだということでいいんじゃないかと思っておりました。生田総裁初め職員の皆さんの御努力で黒字決算もしていただいているし、国民が心配されない形で、まずは会社にするということでいいんではないかと当初は思っていたのでございます。ただ、業態も違えば当然業法も違うというのが一緒の会社というわけにはいかぬだろう、リスクもある程度遮断をしなくちゃいかぬだろうということで、分社化するという方向が出てきた、こういうことだろうと思います。

 国民の皆さんは、民営化して公社をばらばらにしたときに、国民レベルでいうと、一番心配されておられるのは、果たして郵便局のネットワークは維持してもらえるのかな、これまでどおりサービスは一体的に受けられるのかなということに尽きていると思うんですね。

 私は、こんな心配は解消してあげればいい、このように思っているわけでございます。それがための、先ほど山崎先生あるいは柳澤先生から御説明があった修正案というものが出てきたんだろう、このように思うわけでございます。問題は、果たしてこの修正案でその御心配が解消できているかどうかというところにあるんだと思います。

 第一は、ネットワークが維持できるかということでございますが、これは、設置基準によっても、あるいは地域貢献基金を上積みするということによっても、私は、ある程度担保されるんだろう、このように見ております。

 第二には、三事業が一体的にサービスされるのかという点でございますが、これは、安定的な代理店契約というところからさらに一歩踏み込んで、きちんとその旨を法律に義務づけるということでございますから、これも担保されたと見ていいでありましょう。

 第三には、果たしてそれぞれの会社が本当に成り立つか、大丈夫かということでございますが、これも、株式の持ち合いが認められるということでございますので、間接的ではありますけれども、ある程度の一体的経営も可能になっていくということだろうと思います。

 したがいまして、今回の、今出されております法案修正案で、ネットワークとユニバーサルサービスは担保してくれるのかなという国民の期待には大方こたえられるのではないか、逆に言うと、国民の心配事は大方解消されていると理解していいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 先ほど伺った修正案の内容につきましては、政府・与党合意やこれまで政府が国会において答弁させていただいた事項について、その内容の明確化を図るものなどであるというふうに理解をしているところでございます。

 岩屋委員から、まず、ネットワークが維持できるのかというお尋ね等々ございましたので、全体としてどのような仕組みになっているかということを改めて申し述べさせていただきたいと思います。

 郵便局の設置、すなわちサービスの拠点を全国に確保するということは大変重要なことでございます。この設置については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえまして、都市部も含め国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう十分な配慮がなされることが重要でございます。

 このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するということを法律上義務づけるわけでございます。さらに、省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定する、そうしたことを含め、きめ細やかな制度上の担保を行うということとしております。

 このような法制上の担保の趣旨を十分踏まえまして、実際の郵便局の設置につきましては、都市部も含めて国民の利便性に万が一にも支障が生じないように適切に対応してまいりたいと思います。

 もう一点、岩屋委員は、三事業のサービスについて、それが全体としてどのように担保されるのかということ、やはりそれも国民は大変懸念しているんだという御指摘がございました。

 このサービスについても、郵便局において、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として営むことができる業務のうち、銀行業、生命保険業の代理業務について例示するという考え方が示されているというふうに理解をしております。そういう意味では、郵便局会社の業務としての位置づけの明確化をより一層示すということであろうかというふうに理解をしているところでございます。

 金融サービスにつきましては、もう既に御承知のように、移行期間を十分にカバーする長期の代理店契約があることがみなし免許付与の条件になります。また、万が一にもネットワーク価値が低下するような場合が生じた場合には、地域貢献、社会貢献の基金を活用できるということで、もう仕組みも準備をしております。

 そういう中で、こうした拠点を確保することに加えて、全体としてしっかりとしたサービスを提供するような仕組みになっているというふうに考えているところでございます。

岩屋委員 時間がなくなってきたので、簡潔にお尋ねをしたいと思います。

 私は、今回の修正案の方向で結構だというふうに思っているんですけれども、しかし一方では、それだったら、何のことはない、準官業の巨大な企業ができて民業を圧迫するだけではないか、こういう御批判が必ず出てくるんだろうと思います。

 ただ、明治開闢以来百三十年の歴史をこれからつくり変えるわけでございます。なかなか一遍にはいかないというふうに了解しておいた方がいいのではないかと私は思うんですね。国鉄の負の遺産だってまだ国が背負っているわけでございますし、NTTも、当初はなかなか競争政策というわけにはいかなかったけれども、だんだんに競争環境を整えてきて経済の活性化につながってきている。

 まずは、国民に心配をかけないで民間会社にする、そこから徐々に新規サービスを軌道に乗せていく、もしそれが民業の不当な圧迫につながっていくということであれば、適宜これを正していく、そういう考え方で基本的にいいんではないかな、私はこう思っているんですが、今回の修正案は事実上の官業の温存であり、民業の圧迫につながるではないか、こういう批判に対してはどのようにお答えになりますか。

竹中国務大臣 まさに岩屋委員のお使いになった言葉で、競争条件を整えていくという御趣旨のお話がございましたが、その点が最も重要なことであろうと思います。経営の自由度を持っていただくということが、何といっても民営化の最大の眼目でございます。しかし、経営の自由度であればこそ、民間とのイコールフッティングにしっかりと配慮しなければいけない、そのような配慮を十分にしているところでございます。

 とりわけ、よく議論になるのはやはり金融業務であろうかと思いますけれども、金融業務においては信用が競争上決定的に重要であるわけですが、郵便貯金銀行、郵便保険会社については、全株処分するまでは政府出資の形で国の信用、関与が残るということ、そして規模が巨大であるということ、これも重要なポイントになると思います。また、一般事業会社を子会社に持つ持ち株会社の傘下に置かれるということが特例的に認められている。これは、一般の金融機関には見られない優位性を持っているというふうに考えるわけでございます。

 このため、今回の枠組みでは、持ち株会社に対して、移行期間中における郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の完全処分義務を課している。そして、郵便貯金銀行、郵便保険会社の業務範囲については、移行期当初は公社と同様の業務範囲からスタートをしていただいて、経営の自由度とイコールフッティングのバランスをとって、一方で民業圧迫とならないよう、他方で経営が順調にいくよう、民営化委員会の意見を聴取の上、透明、公正なプロセスのもと、段階的に業務拡大を図っていくというふうにしているところでございます。

 こうしたことを中心に、今岩屋委員がおっしゃった競争条件をしっかりと整えていくという仕組みを用意しているつもりでございます。

岩屋委員 五分を切りましたので、残念ながらあと一問になろうかと思います。

 それぞれ分社化された後の会社の展望について聞きたかったんですが、郵貯銀行について、麻生大臣それから伊藤大臣にちょっとお尋ねをしたいなと思います。

 当初は、運用のスキルを身につけるということはなかなか難しいのだろうと思うんですね。貸し出しに出ていくという話がございますが、教育ローンとか住宅ローンというのは家計を見ていればいいので、それはそう難しくないのかもしれませんが、会社を見ていくということになると、これはかなりのスキルが必要になってくるんだろうと思います。

 ただ、私は、郵貯銀行には将来そういう能力をぜひとも獲得していただきたいと思うんですね。やはり日本の金融のバリエーションというのは非常に少ない。担保を出して銀行から借りるか、無担保でサラ金から借りるかしかない。テレビで一番多いコマーシャルはサラ金のコマーシャルでして、ひところ、私がうちに帰ると、子供たちがサラ金のコマーシャルソングを大合唱している。頼むから外でそんな歌を歌うなよ、こういうふうに言ったわけでございますが、ぜひそのすき間を埋めていくということをやってもらいたい。全国二万五千のネットワーク、地域の人のこともよくわかっている、この資産をぜひ使ってほしい、こう思っておるわけでございます。

 麻生大臣には、経営者としてのキャリアからしてどういうふうにお考えになるか、また伊藤大臣、担当大臣としてどういうふうにお考えになっているかを聞いて、質問を終わりたいと思います。

麻生国務大臣 金を貸すときの最大の条件は、取り返せるということだと思います。取り返せない人は金を貸しちゃいかぬ、基本だと思っております。金を貸しているのは一応、名目上、債権に立ちますけれども、取り返せなかったら不良債権ということになりますので、金を貸すという絶対条件は、取り返せる当てのある人に貸すということでしかだめなんで、取り返せる当てがないなら最初からやらない方が正しい。基本的にそういう前提で金貸しというものをやらないかぬものだと思っております。

 したがいまして、今、地方に根を張りました、百数十年にわたって、親子何代その地域で、麻生家の長男はだめだけれども次男は大丈夫とか、あそこのじいさんはええけれどもばあさんはどうだとか、もう全部知っておるわけですから、郵便局の人たちは。そこに何十年いて、転勤なしでずっといるんだから。恐らく人のうちの冷蔵庫の中まで知っておるんじゃないかというぐらい詳しい人がいて、お孫さんがそろそろ入学祝いですね、おじいちゃん、入学祝いに何とかというローンを組みましょうかというようなことは、それは小口で実にこの人たちを上回る情報網を持っている人はいないと思えるぐらいだと思いますので、そのノウハウをいかに利用するかというのは非常に大事なところであって、先ほど、銀行かサラ金かという、その中間として地域にというところは、私どもは、非常に大事な職業、商売として伸ばしていく、いわゆるその間に入り込む非常に大きな要素がそこにあると思っております。

 それを見切るだけのノウハウはどうかといえば、それは、いろいろな方々、退職された方々でまだ元気な方がいっぱいおられますので、その人たち、その地域に根差してもう退職しておられる方々をリクルートするなり、その人たちがこちらへ移ってこられるなり、いろいろな方法が考えられると思います。何も急に、今さら何百億とか何兆円という話じゃありませんので、手間をかけて、きちんと人をリクルートする、育てるというようなことをやっていって、時間をかけて今言われたような方向で事を進めていくべきものだと考えております。

伊藤国務大臣 委員が御指摘をされましたように、公正な競争環境の中で多様で良質な金融サービスというものが提供される、そのことが活力ある金融システムというものを構築していく、その中で郵貯銀行が期待される役割というものは非常に大きいものがあるのではないかというふうに思います。

 民営化後の郵便貯金銀行につきましては、これは竹中大臣から何度となく説明をされているように、民営化委員会の意見を聴取の上、主務大臣により、透明、公正なプロセスのもと、段階的に業務というものが拡大されることとなっているわけでありますけれども、新規に業務を拡大する際には、それに応じたノウハウ、スキルが必要となりますが、どの業務についていかなるタイミングで進出をしていくか、これは基本的に経営者の自主性と創意工夫によるものと考えます。

 新規業務に必要となるノウハウ、スキルにつきましては、あくまで一般論として申し上げれば、例えば貸し出し業務につきましては、融資審査、与信管理、そして債権回収等の体制整備が必要になるものと考えられ、職員に対する研修やあるいは当該業務分野に専門性を有する人材の採用等の方法を通じてそのような体制整備を図ることになるのではないかと考えております。

岩屋委員 終わります。

二階委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、まず初めに、敵対的買収防衛策についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回のこの法案は、持ち株会社、これは三分の一超は政府が持つということでありますけれども、いずれにいたしましても、三分の二近くは売却をされる見通しでございます。また、郵貯銀行、保険会社も完全売却というようなことになっておるわけであります。

 ちょうど昨日が三月決算法人の株主総会集中日でございました。また一方で、参議院で新会社法が可決、成立をいたしました。来年の春からこの会社法が施行されるということでございます。

 現行の株主総会の昨日の状況を見ておりますと、やはり、あのニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビとの間の買収劇、これから本格的な買収、MアンドAの時代が来るのではないかということで、各企業とも、現行商法で十分防衛策ができるものですから、総会に持ち込んでやっておられたようであります。中には、株主の利益を低下させるということで株主総会で否決をされたところもあるようでございますし、可決、採決をされたところもあるようでございます。いずれにいたしましても、民間企業、上場企業には非常に関心の持たれておるところでございます。

 そんなことで、この新会社法は、買収対価の柔軟化ということ、また三角合併というのがあるわけであります。

 買収対価の柔軟化というのは、今まで、例えば合併をしますと、被合併会社の株主に対して合併後の会社の株を割り当てるということになっておったんですが、これを現金で、キャッシュアウトで払い切ることができるというようなこと。また、親会社の株を子会社が持って、その子会社が買収したときに親会社の株を割り当てるということもできる。海外の企業が日本の子会社に親会社の株を持たせて、まあ持っておるわけですけれども、買収をする際にこの親会社の株を割り当てるというようなことになりますと、最終的に三角合併ということになるわけで、いわばこの新会社法はそういう意味において買収をしやすい状況下に置かれる法律だということもあり、三角合併を一年延長しようではないかというような動きが出まして、最終的にはそのようになったわけでございます。

 そんなことで、現行商法でも対応できますが、今度の会社法も念頭に入れて買収の防衛策を考えていかなければならないということで、日本経団連もそのようなこともおっしゃって、企業価値研究会というところで、経済産業省と法務省が一体となりまして、この買収防衛策について検討を重ねてまいったわけであります。昨年の九月からスタートいたしまして、五月の二十七日に指針が出てまいりました。企業買収の防衛策の指針が出てまいったわけであります。

 この指針を見ますと、大きくは買収の方法が、ライツプランといいまして、典型的なのはポイズンピルといいますけれども、現行の株主に対して新株予約権を付与しておく。それで、敵対的買収者が出てきたときに、ある一定の割合になった場合に、定款においてこの新株予約権を新株に転換するというようなことで、そうなりますと相対的に敵対的買収者の比率が下がるわけでございますから、買収対抗策になり得るということ。

 またもう一つは、黄金株と言われるようなもの。これは、数種の株式を一応発行するということを定款に決めて、その中で、黄金株、拒否権つき株式、この株式があると、これが拒絶されると採決できないという非常に強力なものでございます。

 このようなことを大きくは二つ提案しているわけであります。またそれも、株主総会で決議をする場合と、取締役会、内部で決議をする場合と、二つあって、このような組み合わせでやったらどうか、こういうようなことでございます。

 それで、本論に戻るわけでありますけれども、今回の民営化後の会社、郵貯銀行、保険会社、これは完全売却。この上にある持ち株会社が三分の一超を持っているということは、株主総会の特別決議には対抗し得るということで持っておるわけでありますけれども、しかし、過半を握ろうと思えば、過半は売却されるわけですから、それも可能なわけでございます。仮に持ち株会社の支配権を握られるということになりますと、持ち株会社を中心としたグループ全体の方向が決められてしまうというようなことになりかねないわけでございまして、そうなりますと、大変問題になるんだろうと思います。いろいろな観点で問題になってまいります。

 そこで、今回のこの法案が審議されておるわけでありますけれども、民営化後のこの三社につきまして、敵対的買収防衛策というものを念頭に入れてやっていらっしゃるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。

竹中国務大臣 MアンドAの話、これは会計の御専門家でいらっしゃる谷口委員、大変お強い、お詳しいところだと存じます。

 今回の郵政民営化後の新会社に関連して申し上げますと、これは商法、会社法の一般的な規定を活用して、そして敵対的買収に対する防衛策を講ずるというふうに考えているところでございます。

 これは、そもそも民営化の趣旨にかんがみまして、今般の法案において特別の措置を講ずるのではなくて、一般の民間企業と同様に商法の規定を活用して防衛策を講ずるべき、そういう考え方に基づくものでございます。

 ただ、これはもう、まさに今委員御指摘くださいましたように、一般的な規定を適用する、この一般的な規定が今非常に大きく動いて社会の関心を集めている、そういう中にあるという点であろうかと思います。

 これも御指摘くださいましたが、五月二十七日に経産省、法務省がガイドラインを発表した。そして、このガイドライン等を参考にしつつ、東京証券取引所が今後、上場基準、開示基準のルール化を予定しているというふうに聞いていますが、現在、そういった意味での幅広くルールづくりが進められている過程にあるというふうに認識をしております。

 このため、郵政民営化後の新会社における買収への防衛策についても、今後、さまざまなルール整備状況でありますとか投資家の反応等も勘案した上で、最終的には、新会社の設立の際に、経営判断のもと、最も有効かつ適切と考えられる方策を講ずることになるというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

谷口委員 私は、この防衛策をぜひ講じていただきたいと思うわけであります。

 それで、もう一つお聞きしたいんですが、最近、外資に対する脅威論が出ております。竹中大臣、この外資脅威論に対してどのようにお考えなのか、御所見をお述べいただきたいと思います。

竹中国務大臣 一概に外資脅威論と言われる際も、いろいろな方のお考えがあるんだと思います。日本も海外に投資をしている、海外も日本に投資をする、そのこと自体は決して否定されるべきものではない。その内容が敵対的であるのか、経営の安定をもたらすものなのか等々、そういう観点から総合的な議論が求められているというふうに思っております。

谷口委員 これは大変重要な問題でございますので、一般論としてではなくて、今大臣がおっしゃったように、大変重要な問題としてとらえてやっていただきたいというように申し入れをさせていただきたいと思います。

 次は、先ほど柳澤先生の問いに対して大臣がお答えになりました、都市部における設置基準でございます。

 それで、先ほどの答弁を聞いておりますと、過疎地においてはきめ細やかな法制上の担保をとり、行うことといたします、これは非常に重要です、ユニバーサルサービスですから。先日も私、地方公聴会に行きましたけれども、やはり地方の皆さんの郵便局に対する思いというのは、また果たしている役割というのは非常に重要なものがございます。

 一方で、都市部を、従来から私の党が申し入れをしておりましたけれども、今の答弁ぶりで申し上げますと、国民の利便に万が一にも支障が生じないよう適切に対応してまいりたいと思いますということで、これは配慮をしていただいておるんだろうと思いますが、担保がないんですね。私はこの担保をぜひやはり配慮していただきたいと思うわけでありますけれども、竹中大臣、御意見、お考えをお願いいたしたいと思います。

竹中国務大臣 この点につきまして、特に都市部の郵便局の設置につきましては、谷口委員初め公明党の先生方にもいろいろ御心配をいただいて、その上で、郵便局の設置については、都市部を含めてあまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するということを規定する。そして、都市部も含め国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう十分な配慮がなされるということを我々自身、最も重要だと考えてきたわけでございます。

 これは、あまねく全国において利用されることを旨として設置するという法律上の義務づけに加えまして、省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定する。さらに、利用者の利便の問題でありますとかその位置の問題につきましても、今の公社における設置基準と遜色ないものをしっかりと設置して、その上で、申し上げていますように、都市部も含め国民の利便性に万が一にも支障が生じないように適切に対応してまいりたいと考えるところでございます。

 これらの措置によりまして、都市部においても必要なネットワークはしっかりと維持されるものになるというふうに考えております。

谷口委員 都市部は都市部で人口が集中しておりますし、私も都市部選出の国会議員、衆議院議員でありますけれども、過疎地もそうでありますけれども、やはり我が国全体に高齢化が進んでおりまして、国民の利便性という観点からも、今現存しております郵便局というのはやはり廃止してもらっては困るという思いが非常に強いわけでありますので、ぜひそういう観点で、今大臣おっしゃったわけでありますけれども、万全の体制でやっていただきたいということを強く申し入れさせていただきたいと思います。

 それと、先ほどこれもちょっと柳澤先生の方がお触れになったんですが、今回、六つの法人ができるわけですね。持ち株会社があって、それにぶら下がった形で四社があって、あと承継法人がある。この六社に現行郵政公社の資産をどのように切り分けていくのか。

 これは非常に重要な問題で、準備段階、準備期に経営委員会で承継計画をつくられてこのようなことを検討されるんだろうと思いますが、これはある程度の方向性を政府として決めていく必要があるんだろうと私は思うんです。もうその人たちに任すんだということじゃなくて、一つの基準なり方向性なり、これは私は必要なのではないかと思いますが、現在どのようにお考えなのか、お伺いをいたします。

竹中国務大臣 承継計画を定めるわけでございます。ここは大変重要であるという御指摘はそのとおりでございます。その承継計画を決めるに当たりまして、まず基本方針を主務大臣を中心に政府が決めることになっております。基準、方向という意味では、基本方針においてしっかりと議論を決定するということになろうかと思いますが、お尋ねでございますので、大まかな方向についてお示しをしておきたいと思います。

 郵政民営化法におきまして、承継計画の定めるところにより、日本郵政公社はその資産及び負債を新会社に出資するということになります、これは現物出資する。そして、承継法人に承継させることになる。民営化に当たって、日本郵政公社により行われた業務を円滑に新会社に承継するためにその財産を出資するということ、これは当然必要なことでございます。

 そして、新会社等は日本郵政公社の資産及び負債をそれぞれ継承して、これは資産が計上されて、負債が計上されて、その差額が新会社の資本金になるわけでございますから、承継する財産の価額というのは、国民共有の財産であります日本郵政公社の財産の出資という観点から、しっかりと評価をしていくということが必要だと私たちは思っております。適正な評価を経て新会社に移転されるべきであるというふうに考えます。

 そして、現物出資の目的である財産については、これは会社法の規定においても、御承知のように、適正な評価を要するというふうにされているところでございます。このため、この法案においては、日本郵政公社が新会社等に出資等をする資産及び負債の価額については、時価を基準として、評価委員がその評価方法及び価額を決定するというふうにしているところでございます。

 これは基本方針等々の中の評価の部分に焦点を当てておりますけれども、そのような仕組みの中でしっかりと資産の切り分けを実行していきたいというふうに思っております。

谷口委員 これも重要な問題でありますので、問題が起こらないような形の資産の切り分けをお願いいたしたいと思います。

 次にお伺いをいたしたいのは、基金ですね、社会貢献基金、地域貢献基金。この基金が持ち株会社で設けられるわけですね。これは、その下の会社、完全民営される郵貯会社、保険会社の売却益また配当を原資にして基金に積み立てられる。

 まず初めにお聞きしたいのは、売却益はすべて基金に積み立てるのかどうかということですね。まずそのことをお伺いさせていただきたいと思います。

 これは、要するに、持ち株会社の収益とならないで、いわば拘束された形になるわけですね。そういう観点で、売却益はすべて基金に積み立て、目標としている一兆円、二兆円という話がありますけれども、それまでに至るまではすべて売却益は基金に積み立てられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

竹中国務大臣 すべて積み立てるのかというお尋ねでございますけれども、この政府提出法案では、基金に関して、一兆円であれば資金交付に充てる運用益が不足することは基本的にないというふうに考えるわけでございますが、お尋ねしている点についてお答えしますと、企業一般の配当の動向を考慮して政令で定めるところにより計算した金額を一兆円に達するまで積み立てなければならない、そのように規定をしているわけでございます。

谷口委員 今竹中大臣がおっしゃったように、まず初めに配当を念頭に入れて、一般企業がどの程度の配当をなしておるのかということで配当率を決めて、その残余を積み立てるということなんだろうと思うんですね。まさに、次に私、そのことをお聞きいたしたいと思っておったわけです。

 株の売却益が基金に積み立てられるということは、一般的に売却益は、所有している株の売却益ですから、剰余金に入るわけですね、当期の利益に入るわけですが、この剰余金は拘束されている剰余金でございますから、勝手に使うわけにはまいりません。ですから、これは配当の原資にするわけにはまいりませんから、一体どうなるのかということをお伺いしたいということを思っておったんです。

 今大臣がおっしゃったのは、まず配当政策といいますか配当率を決めて、社外流出、いろいろありますけれども、配当をしなければなりませんから、一般企業と同等の配当を行った結果、残余を基金に積み立てるというようなことなんだろうと思うんです、今の御答弁は。

 最近はどうも、先ほど株主総会の状況等お話をさせていただきましたけれども、株価を上げなきゃいかぬということで、かなり配当率が高くなっているわけですね。配当率は利益と相関関係がありますね、当然ながら。ある程度収益性が上昇したときにはある程度の配当をしていかなきゃいかぬというような相関関係があるわけでありますけれども、そのときにどのように考えればいいのか、お伺いをいたしたいと思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、まず利益が、これは売却益ですけれども、利益が上がる。そのうち社外流出されるものもございます。もちろん税金もその中の社外流出でございますけれども、配当もあるだろう。そして、そうでないものが内部留保をされる。内部留保にもいろいろあるわけで、その内部留保の一つの重要な項目として、この基金への積み立てというのがあるということだと思います。

 御指摘のように、株価の動向等々から、経営者としてはこれは大変重要な判断だと思いますが、これはもうすごく長い議論のあるところだと思いますけれども、配当するのがよいのか、内部留保をするのが、本当に企業価値を高めるのにどちらがよいのか。これはもう極めて総合的な判断であろうかと思います。ただ、昨今の状況、やはり配当という形で、利益を留保するのではなくて実現していくことが、ある程度はやはり株主の評価を高めるということも事実であろうかと思います。

 そういう観点から、企業の一般の配当の動向を考慮して、株主の利益も念頭に置きつつ、基金の積み立てを行っていくということ、そういうことになろうかと思います。当然、そういう中で、持ち株会社の株価に悪影響を与えないような、そういうマネジメントをしていく必要があると思っております。

谷口委員 わかりました。

 その次に、ちょっとシステムの問題をお伺いいたしたいわけであります。

 私、以前にこのシステムの問題をお聞きしたことがございまして、郵政民営化情報システム検討会議報告書というのがありまして、ここの結論として、二〇〇七年四月分社化について、管理すべき一定のリスクが存在するとしても、制度設計や実際の制度運用において適切な配慮をすれば、システム全体の観点からは暫定的に対応することが可能であるというようなことを報告されておりまして、現に今、郵政公社の方は、二〇〇七年四月一日を目指して、暫定的にシステムを構築されておられるということを前回お聞きいたしたわけであります。

 それで、何点かのシステムリスクがありますよということをそのときに申し上げました。例えばバックアップができておるのかどうかだとか、何点かのリスクが伴うわけで、そのリスクに対する対応を講じていかなければなりません。幾ら暫定的といえども、それがダウンしてしまって動かないということになってくると、これは大きな問題でございますから。

 それで、このシステムリスクについて今どういう対応策が講じられておるのか、お伺いをできればと思っております。

山下参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、暫定対応ということになるわけでございますが、暫定対応と申しましても、郵貯の勘定系システムの大幅改修を含めまして、全体で八十五前後のシステムを同時に改修することになります上、開発規模が全体で一千七百万ステップス、四万二千人月程度にも及ぶ、文字どおり大プロジェクトでございます。これを二十カ月前後という限られた期間の中で実行するわけでございますので、公社といたしましては、これまで経験したことのない大きなリスクに向き合うことになります。

 こうした暫定対応プロジェクト実施に伴います具体的なリスクでございますけれども、主として三つを想定しております。

 その第一は、仕様決定に関するリスクでございます。今回のプロジェクトは国として決定されるものでございますので、公社だけでその仕様を決められるわけではございません。したがいまして、今後、政省令などによる外部仕様の決定がおくれますと、必要な開発期間が確保できなくなるリスクがございます。

 二つ目は、短期開発に関するリスクでございます。四万二千人月にも及ぶ大規模開発をかなりの短期間で行わなければなりませんので、例えば、総合試験で大きなバグが見つかるというようなことがありますと、不測の事態が発生した場合には対応する時間的な余裕がございません。二〇〇七年四月までに開発が間に合わなくなるリスクがございます。

 三つ目は、完成システムの品質に関するリスクでございます。つまり、できる限りのプロジェクトマネジメントを行って開発を行ってきましても、不測の事態が発生した場合には、必要な時期までに十分な品質確認が得られないリスクがございます。仮に十分な品質確認が得られないまま新しいシステムを稼働いたしますと、システムトラブルを引き起こし、お客様に御迷惑をかけるということになります。

 これらのシステムリスクに対してどう対応しているかという御質問でございますが、まず第一の仕様決定に関するリスクにつきましては、情報システム検討会議フォローアップ会合というところで、準備室と公社との間で連携を密にしていくことが重要だと考えております。そうした連携強化によりまして、外部仕様の決定に関係する政省令の内容等、政府にお決めいただく事項につきましてできるだけ早く情報をいただきまして、システム開発をスケジュールどおり進めていけるように努めてまいりたいと考えております。

 二つ目の短期開発に関するリスクに関しましては、スケジュール管理を徹底いたしまして、必要な試験期間を確保し、予期せぬトラブルが発生した場合にも必要最低限の対応ができるような体制整備、準備をしてまいりたいと考えております。

 三つ目の完成システムの品質に関するリスクにつきましては、不十分なシステム品質のまま稼働を開始してシステムトラブルが発生した場合には、国民生活に重大な影響を及ぼしかねないリスクにつながりますので、公社一体となりました強力なプロジェクトマネジメント体制を構築しまして、ベンダー各社との密接な連携のもと、品質管理、スケジュール管理を徹底いたしまして、必要な品質を確保できるよう全力を挙げてまいりたいと考えております。

谷口委員 万全の体制でやっていただきたいと思います。

 ちょっとさっき聞き忘れたことがございまして、これでもう終わりたいと思いますが、基金を持ち株会社で持つわけですが、一兆円なり二兆円なり、かなりの大きな金額になります。この預入先は郵貯銀行を想定されているのか、民間金融機関を想定されているのか、それをお聞きいたしまして、終わりたいと思います。

竹中国務大臣 基金を積み立てたとして、その運用をどうするかというお尋ねでございます。

 日本郵政株式会社法第十三条第六項におきまして、「会社は、総務省令で定めるところにより、確実かつ有利な方法により基金を運用しなければならない。」としているところでございます。したがって、その基金の運用ルールについては、具体的には総務省令に規定されることになります。

 いずれにしても、基金は、社会、地域にとって必要なサービスを確実、安定的に提供する仕組みでありますから、大変重要でありますので、運用の失敗による基金の減少が生じないように、また一定の運用利回りが確保できるように、通常、国債等々が当然想定されるわけでございますが、そういったものを踏まえて、確実かつ有利な方法としていくというふうに考えております。

谷口委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

石破委員長代理 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 公聴会に先日、行ってまいりました。皆さん大変お忙しい中を、陳述人の方に来ていただいて、貴重な御意見を賜りました。その場で、国会の質疑でしっかりと活用させていただきたいという約束をしてまいりましたので、まずその件から入らせていただきたい、こう思います。

 まず、これを見ていただきたいんですね。私は佐賀に行ってまいりました。第三班でありますが、四名の公述人の方にいらっしゃっていただきました。

 まず、九州大学の堀江先生。これは賛否は、金融の問題だけに特化して言わせていただきます、こういうことでありましたので、全体としては三角かな、これは私が個人的につけさせていただきました。しかし、その金融のところも、民営化をした場合に、郵便貯金の資金運用面が課題になる、今のいわゆるノウハウでは民間金融機関としてはやっていけないだろうと。後ほど申し上げますが、金の使い方として、国債にリンクしたような形でのまさに集め方をし、使い方をすべきだ、こういう言い方をおっしゃっていました。同時にまた、資金規模は縮小をすべきだろう、こういうことでありまして、民主党の意見とほとんど同じだなと実は思って聞いておりました。ちなみに自民党の方の推薦で来ていただいた公述人であります。

 それから二番目の方が、佐賀県立女性センター・生涯学習センター顧問、稲田さんという方でありまして、これは私どもが御推薦を申し上げた方ですが、ここにありますように、賛否は反対。郵便局は高齢化と過疎化が同時進行する地方の不可欠な生活拠点だ、競争にさらすのは避けてほしいと率直な御意見の陳述がありました。

 それから三番目は、深川さんという陶磁器をつくる会社の社長さんでありますが、いわゆる同友会の代表、こういうことで御出席になられたようであります。これも自民党の、与党の皆さんの御推薦人でありました。しかし、与党の推薦人の方でありますが、同友会はいわゆる中央では民営化のある意味では旗振りをして急先鋒でありますが、地方にいる私としては反対でありますという言い方をまず冒頭なさいました。それから、具体的な意見として、民営化は地方の、特に中小金融機関に打撃を与え、中小企業に打撃を与える、そういう理由が述べられておりました。

 それから四番目は、玄界島支所の運営委員、細江さんという方で、これは私どもの御推薦でありました。

 ちょっと玄界島の字が、もしお手元にお配りしている資料が海になっていたら、世界の界に直していただきたいと思います。

 細江さんは、地震の被災者の避難先にも配達、貯金引き出しにも対応してくれたと。いわゆる住所がなくて被災地に集まっているわけでありますが、そこにもしっかりと対応してくれた。顔がわかっているから、例えばそこのセンターにいる人たちのところにも確実に郵便が伝わる。それから、車を出してくれて、貯金や何かの業務もやってもらった、こういう話でありまして、公的機関としての役割が大きい、ぜひこれはこういう公的機関として残してもらいたい、こういう強い要望でありました。

 ということで、見ていただきましたように、四名の方、最初の堀江さんだけは若干三角という私の判断をしましたが、いわゆるほとんどの意見が反対であります。

 御承知のとおり、これはもう何度もこの会でも出ておりますが、地方議会あるいはまた県、市、町、村等々からもそういう反対の署名が入っているのは、もうこの会でも何回も議論になりました。これを見られて、まず竹中大臣、どう感想をお持ちになりますか。

竹中国務大臣 小沢委員初め委員の先生方には、各地に行っていただいて、大変貴重な御意見を吸収していただいているというふうに思っております。地方でいろいろな御意見があったと伺っております。反対の方もおられました。賛成の方も、そういう御意向もあったというふうにも聞いております。

 ただ、いずれにしましても、特に地方の場合、私も地方出身者でありますから特に思うわけでありますが、やはり郵便局の設置等々を中心に大変御心配があるというのは、これは事実であろうというふうに思っております。政府としてはそういう心配がないようにしっかりと制度設計をしたつもりではありますが、そういう心配を抱いておられる国民の皆さんは依然として少なくない。引き続き我々としてはしっかりとこの法案の趣旨を説明してまいりたいと思います。

 また、地方議会から民営化に慎重な意見を多くいただいているということも承知をしております。これらの要望も、やはり郵便局がなくなるのではないか、郵便局のサービスが低下するのではないかといった不安によるものと思いますけれども、この郵政民営化を実現する上では、そのようなことが生じないように国民の利便性に配慮するというふうにしておりますので、その趣旨を御理解いただきながら、しっかりと実行、実現に努めていくというのが我々の役割だと思っております。

小沢(鋭)委員 素直に国民の意見を聞いていただきたいな、こう私なんかは思うわけでありますが、しかし、なかなか説明が行き届いていないんだ、そういった説明が行き届けば不安がなくなるのではないか、こういう大臣のお話でありましたが、そこのところは、説明不足だからだめなのではなくて、まさに認識が間違っていて、政策手段が間違っているから国民は不安を抱き、納得していないんだということを後ほど明らかにさせていただきたい、こう思うところであります。

 麻生大臣にも、先ほど申し上げたように、今の郵政公社に対する期待あるいはまた評価というのは高いのですね。麻生大臣は、それをある意味では今まで運営されてきた、そして最後の大臣になるかもしれない、そういう立場ですよ。これだけ国民の期待がある、それを実際に運営されてきたその大臣として、こういった国民の意見を聞いて、感想をぜひ聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 地方の、山梨もそうでしょうけれども、私どものところもかなりな山間部を抱えていますので、市町村合併に伴い、いわゆる役場、村役場、町役場がなくなる、それにかわるものとしての郵便局もなくなるのかというような御不安というものはかなりあちらこちらにあると思います。私どもの場合は、郵便局長に会って個別に話をしてみたり、いろいろさせていただいておりますので、今特にどうという騒ぎが起きているわけではありませんけれども、今小沢先生が指摘されたような不安というものがあるのは事実。

 加えて、少子高齢化というのがそれをさらに加速しておる現状というのは確かにございますので、いろいろな意味で地方の方の場合は、情報が不足しているという点と、地方における郵便局の位置というものが都会におけるものと違って、いわゆるそこにいる特定郵便局局長という人の人柄、それまでの培ってきた人脈等々によって、その地域におけるいわゆるコミュニティーの中心的存在としてその人がいるというような点等々は、いわゆる地方社会というものを定着させていく、安定させていくのに大きく資するという事実はもう間違いない事実だと思います。

 これが民営化された後、そういったような機能、目に見えないノウハウ、そういったものがいかに維持されていくかというのは重大な問題だ、私もそう認識いたしております。

小沢(鋭)委員 今の大臣の御認識は、そのとおり、私も全く同感であります。特に、市町村合併が進んで、今現時点ではいろいろな役場も、数は、いわゆる過渡的な時期ですからなくならないんでしょうが、いずれそれは少なくなっていくだろうし、そういったときに、まさに公的機関であれば、郵便局が合併の役場のある意味では代替もこれからしていけるじゃないか、こういう話も民主党はずっと提案をしてきたところでもあります。

 それからまた、特定局長さんたちのいわゆる人的な資質における社会的な貢献というんでしょうか、地域を安定化させていくのに郵便局というのはやはり大きな役割があるんだ、ある意味では社会的なあるいは政治的なそういった役割の重要性というのは、今大臣に触れていただいて、本当に聞いていただいている郵便局の人たちは喜ぶだろうな、こう思っています。

 なぜこれは、頑張っておれは持続させていくんだ、こういう話にならないんでしょうか。

麻生国務大臣 今、これはたびたび、この百時間ぐらいの間にいろいろ議論をされたところだと思うんですが、基本的には、郵便物の信書が年間約五%弱ぐらい減っている、ゆうパック等々で二・五%、六%ふえて、トータルで約二%から二・四、五%の間の絶対量が減っておるという状況をずっと続けていかれるであろう。さらに、Eメール、インターネット等々の新しい通信情報技術が進歩する等々によってそういう郵便配達される対象物の絶対量が下がってくるということが、結果として郵便局全体の営業を厳しくする。

 今は、二年間だけを見れば、これまでのいろいろな部分を合理化という形によって吸収はされたんだと思いますが、今後ともその合理化の効果が、毎年何百億かを稼ぎ出すだけのものが続けられるであろうかというと、この点に関しては、郵政公社におられる方も含めて、疑問という状態であるならば、いよいよだめになってやるのか、ある程度余力がある間にやるのかというところは、これは経営判断の違いなんだと思います。

 今言われましたように、民でやらなきゃいかぬところと官でやらなければならぬところの間に公でやらなければならぬという部分が存在するのは確かなんだ、私もそう思っています。官民の話ばかりみんなされますが、その間のパブリックセクターという公の部分というのが忘れられているような感じがします。

 いずれにいたしましても、今言われましたように、郵便配達等々、また恩給などの受給を含めまして、そういったようなものがきちんと維持されるということは大変大事なところでありますが、その公の部分を維持しながら、かつ、民をいかに、活力とか合理化できるというものを取り入れて、結果として郵便というシステム、ユニバーサルサービスというものがきちんと維持できるかというのを考えていった場合に、今の公社のままでできるかというのと、民でやった方がいいのと、これは意見の分かれるところだと思うので、このところは、意見がそれぞれいけば、これは結果論で待つしか方法がないんだと思います。

 いずれにいたしましても、今申し上げたような背景が、民にして分割という方向、話になっていった背景だと存じます。

小沢(鋭)委員 公の重要性はおっしゃっていただいて、しかし、背景、こういうことでありまして、なかなかこのままではやり切れないのではないか、こういう御意見だったろうと思います。

 ちょっと順番を逆にして、これは後ほど最後に申し上げようと思っていたんですけれども、私の試算です。前からこの委員会に提出してくださいと何度もお願いして、公社のままで推移したときの数値計算が出されていませんと。

 それで、今も麻生大臣もおっしゃいました、それからまた後ほど明らかにしますが、なぜ民営化なのかというときに、公社でやっていけない、こういう話が出てきているんですね。しかし、後ほど説明しますが、私の計算だと、少なくても、二十年間延ばしてみましたが、三事業一体であれば、いわゆる二〇二六年で三千四百億、もちろん郵便は真っ赤になりますが、そういう試算、後で申し上げますが、やれるんだと私は思っているんです。

 数字を出してくれと言いましたけれども、公社も一回も出さない、準備室も出さない。理事さんの御説明だと、そういう数字はできません、こういう御説明だったんですね。だから、私なりに数字を試算させていただきました。後ほど説明いたします。

 問題は、たまたま麻生大臣もそうおっしゃっていただいたように、本当にやっていけるのかどうかという話になっちゃったんだけれども、これは大臣、不思議なのは、小泉総理は二十年前からずっと言っているんですよ。二十年前からずっと言っていて、公社のままではというか、そのころはいわゆる国ですね、国のままではやっていけないという議論を言ったことは小泉さんは一度もないんですよ、ずっと。私、ずっと振り返って、いろいろな、所信表明とかあるいはそういったものを後ろに戻って調べてみました。

 例えば、直近でも、平成十五年の九月九日、自民党総裁選挙の所見発表演説会での小泉演説。郵政民営化の理由は、地域の活性化、一等地にある郵便局の活用、それから、郵貯、簡保があるから財政投融資があり、特殊法人の活動が行われている、いわゆる行革論ですね、こういう話はありますけれども、やっていけないという説明は一つもない。九月の二十六日、総理施政方針演説。これは、郵政民営化の理由は一言も触れていない、こういう話。平成十六年一月の十九日、総理施政方針演説、じり貧論なし。最大の課題は、郵貯、年金を財源とする財政投融資を通じて特殊法人が事業を行う公的部門の改革、こういう行革論ですね。平成十七年一月二十一日、総理施政方針演説、じり貧論なし。

 これは、じり貧論というのはいつから出てきたか、こういうことなんです。(発言する者あり)私もこの審議を聞いていながらいろいろなところでやじを飛ばしていましたが、要は、結論が先にあるんですよ、この小泉さんの民営化という。それは私は、さきの質問の中で、二十年前の流行でありました、ファッションでありました、小泉総理の政治的アピールの道具でありましたと。それをすべて皆さん方が最後になって後づけ後づけで来ているわけですよ。それをちょっとはっきりさせておきたいと思います。

 じり貧論が最初に出たのは、今、同僚議員が後ろで言っていただきましたように、自民党政調会長の与謝野さんがNHKの「日曜討論」でおっしゃっています。それが最初かどうかわかりませんが、おっしゃっています。ここでこう言っているんですよ。私は竹中さんに申し上げたんですが、竹中さんたちが国会でやっている答弁というのは、自民党の中にもわからない、多分国民にもわからないんじゃないですか、やはりこの説明は世間にほとんど通用しないと。

 竹中大臣、与謝野さんから言われたことがありますか、テレビでこう言っているんですけれども。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 その番組は私も見ておりました。

小沢(鋭)委員 では、与謝野さんから直接竹中大臣にこの説明じゃ通用しないという話がありましたか。

竹中国務大臣 よく記憶しておりませんが、郵政民営化の利点とか必要性についていろいろな御議論をしておりますときに、与謝野政調会長なりの御意見は賜ったというふうに記憶をしております。

小沢(鋭)委員 一つずつ少しはっきりさせていきたいと思いますが、小泉さんは今まではいわゆる財政投融資制度を一番問題視していたように私は受けとめています。改革の本丸、こういう言い方をするのも、財政投融資は行革のまさに本丸なんだ、こういう言い方をしてきたように思います。この問題認識は我々も全く同じなんです、全く同じなんです。ただ、問題は、これを改革するための政策手段として、郵政民営化というのは全然見当外れなんです。いわゆる課題として、問題意識は我々も賛成。財投あるいは財投機関、行革、それがまさに改革の本丸だというのは賛成。しかし、では、その政策手段がこの郵政の民営化ですかといったときに、私はそれは違うと思う。

 少なくても、例えば二〇〇一年に財投改革というのを我々は行いました、国会の責任で行いました。今、御承知のように、いわゆる貯金の資金も保険の資金も直接財投機関には流れない仕組みになっています。そうですね。それは逆に言うと、郵政の資金が全くなくても、財投機関が存在して、それを本当にやるんだという政治的判断があれば、幾らでも国債で調達できるということです。

 谷垣大臣にお尋ねしますが、そういった財投機関への調達、まあ過渡的ですから、その過渡的な部分の引き受けはまた別ですよ、一般的な制度論として、いわゆる国債を発行して資金を調達する。郵政のお金かどうか、財務省はそれはわかるんですか。

谷垣国務大臣 小沢委員がおっしゃいましたように、今は財投と郵政の集めたお金の、昔のような郵貯は全額預託義務というのは平成十三年度に切りましたので、直接の関係はありません。

 そこで問題は、今財投を回している財投債の中で、どこが、どの部分が郵政でやっていただいているかということを明確に区別する道はありません。それで、現在は、小沢委員もおっしゃいましたように過渡期でございますから、今まで預託していただいたものをお返しする資金繰りの一部として引き受けていただくことをやっておりますが、これは基本的に平成十九年度で終わるわけでございます。大体そういう形になっております。

小沢(鋭)委員 これは竹中大臣は百も承知の議論ですよね。ですから、小泉総理が、いわゆる行革の本丸が財投、財投機関である、あるいは行革の本丸がそこだ、だから郵政民営化は必要なんだという話の論理は一つ全くそこで断ち切られているんですよ。そうでしょう。だから、本当に二十年前はそういう議論が通用したんです。もう古臭い、時代がもう変わった、もうそれは昔の議論だというのは、まさにそういうことを我々は言っているんですね。

 もう一つ、小泉総理のいろいろな発言を調べてみると、これは政治家としては私大変勉強になるんですよ、小泉総理のいろいろな発言というのは。(発言する者あり)一言で言うと、ごまかしごまかしという言葉がありましたが、ごまかしとはなかなか公には言えないのかもしれないけれども、いわゆる一般的真実と思われることを言うわけですよ。いわゆる民間にできることは民間にというのは典型的な例です。民間にできることは民間に、これ以上のことというのはほとんど所信表明でも言っていないんですよ。そういう一般的真実と思われることを声高に叫ぶ。

 それからその次は、国民感情に直接訴えてくるんですよ。四十万人の国家公務員が必要なんですか、こう来るわけですよ。まあ、確かにうまい。しかし、これも最近は引っ込めてきちゃったんですね。公務員バッシングを引っ込めた。なぜかというと、だって、郵政の職員たちというのは、いわゆる公社になった時点で特別に付与した、ある意味では特別に付与された公務員身分ですよ。税金は一銭も使われていません、年金も一銭も使われていません。国民が、例えば公務員、官僚といって、後ろにもいっぱいいるけれども、優秀な人たちが多いんだけれども、そういう人たちを何とかしなきゃいかぬと思うのは、仕事もしないで高給をもらって天下りができる、そういう官僚はだめだ、こう思っているわけですよ。そういう一般論を、小泉さんはそういう感情に直接訴えるわけですよ、四十万人も国家公務員が必要なんですかと。

 私はテレビを見て驚いたんだけれども、朝のテレビのキャスターが、四十万人国家公務員が必要か、こう言っている。そうだよな、一人当たり五百万円の年収だとしたら、四十万人掛ける五百万で二兆円、二兆円の税金が浮くんですよ、皆さん、こうテレビで何とかもんたという人がやったんですよ。僕はびっくりしていすから転げ落ちそうになったけれども、これはまさに我々が問題視している政府PRの、何とかが低い人に向かっての働きかけ以外の何物でもないじゃないですか。

 今のこの話、大臣、どうですか。これは本当に、まさにいわゆる公務員バッシング、これは依然としてまだされるんですか。

竹中国務大臣 今、小沢委員、たくさんのことを御指摘くださったわけでございますが、まず、財投改革が、財投の預託の制度がもう間もなく終わる、その意味でこの問題は解決しているという趣旨の御発言だったかと思いますが、それについては、私たちはやはり公的な資金の流れの改革という一貫した議論をずっとさせていただいているつもりでございます。これは決して古い新しいの問題ではなく、やはり公的な資金は、入り口から入って、そして途中、財投預託が終わるということはマーケットを確かに通るわけです、そこは大きな改革なわけです。しかし同時に、出口としての政府系金融機関もある。この政府系金融機関の規模も縮小する、間に市場を通す。同時に、入り口においても、政府が直接集めるないしは政府保証をつけた形で集めるというのではなくて、そこもやはり民営化していかなければいけない。これは私は、やはり古い新しいというよりは、一貫して求めていかなければならない方向であろうというふうに考えるわけでございます。

 あと、税金の投入をしていないと。ここは確かに御指摘のとおり、一部に誤解があるというのも事実だと思います。ただ、これに関しても専門家の間ではさらにいろいろな議論がございまして、これもこの場で何度か御議論を賜りましたけれども、システム全体としては、例えば政府保証、保証に見合う預金保険料は支払っていない、税金を支払っていない。そういう意味での見えない負担というのがあるというのも、これは専門家の指摘ではあるわけでございますので、そこの議論はきちっとしていかなければいけないと思います。

 決して公務員バッシングとかそういうことではなくて、機能の問題として、日本の市場経済を活性化していくための議論を引き続きしっかりとしていかなければいけない、私自身はそのように思っております。

小沢(鋭)委員 では、少なくても、四十万人掛ける五百万円、二兆円の税金が浮きますというのは、これは完全な間違い、当たり前のことですが、それでいいですね。

竹中国務大臣 その番組の御発言はちょっと承知をしておりませんが、それはそういうことではないということでございます。

小沢(鋭)委員 それで、あと公的資金の流れ、公的資金というのをつけなくても、三百四十兆の資金の流れ、これが大事だというのはそのとおりだと思います。ずっと我々もその議論をしてきました。しかし、大臣、その資金の流れというのを民営化という丸投げだけで済ませちゃうんですか、あるいは民営化をしなければ資金の流れというのは変えられないんですか。

竹中国務大臣 資金の流れを官から民へ、ここはもう小沢委員もきちっと重要だというふうにみなしてくださっている。それを今後どのように実現していくかというやり方については、これは幾つかのやり方があるのかもしれません。私たちは一貫して、今の郵政が持っている資源をぜひ活用して、これは国民的資源であるから活用する、そして、そこに働いておられる皆さん方の雇用もしっかりと重視、配慮をする、その中で官から民への流れをどのように実現できるかということの現実的な解決策を議論しているつもりでございます。

 それについて、では何をやるか。先ほど、入り口、中間、出口、すべての改革が必要だと申し上げました。出口の改革、一番やらなければいけないのは、やはり最終的な資金需要のレベルで政府の資金需要を減らすことでございます。つまり、財政赤字を適切に管理して、国債の発行額は大きくならないようにしていくということが必要なことでございます。同時に、公的な機関の資金需要としては、これは政府系金融機関等々もございます。この政府系金融機関については、今後三年間で改革して、その残高をGDP比半分にするというようなことに向けて、今行っております。そして入り口では、やはり郵政の民営化を行わなければいけない。

 今申し上げたような仕組みをトータルで実現したい。プライマリーバランスを回復する。そういう中で、どういう姿になるかということに関しては、慶応大学の跡田教授が、私たちの、政府のシナリオに合わせて、資金の流れがどのように変わるかということを試算しておられるわけでありますけれども、それによれば、今申し上げた、郵政の民営化を行って、政府系金融機関のシェアを下げて、そして財政赤字、プライマリーバランスの回復を実現していく、このシナリオをたどれば、今家計の資産の中に占める官のウエート、これは約四分の一でございますね、二六%。これを二〇一七年には五%に下げられる、そして民間負債についても一九%から六%に官のウエートを下げられる、そのような試算が示されているところでございます。

小沢(鋭)委員 今大臣にお聞きしたのは、それは民間に丸投げをするという今の姿で、ほかに方法はないんですか、こうお尋ねをいたしました。

 いろいろ知恵はあると思っています。民主党も幾つか提案もしてまいりました。今の公社の中でも十分やれる話があると思っています。ほかの方法は考えられたんですか、民営化をする前に。

竹中国務大臣 経済財政諮問会議におきまして民営化の議論を始めるに当たりまして、ほかの選択としてはどのようなものがあるか、そして民営化をするに当たっても、どのようなやり方があるか、非常に広範な議論を行って、それで今回の法案に到着をしております。

小沢(鋭)委員 その諮問会議での、そこの部分の、いわゆる民営化しかあり得ない、あるいは民営化がベストであるというところをぜひ端的に示していただきたいと思います。

 ここは、先ほど私が申し上げたように、小泉さんの民営化ありきなんですよ。それは二十年前はある意味ではそれなりの根拠があった議論。小泉さんの、総理のまさに政治的パフォーマンスの道具。それがあって、その方がたまたま権力を握って、そして、御本人がおっしゃっていましたから私が言っても失礼じゃないと思いますが、異常な執念でやる、こう言った。そこにテクノクラートの皆さんたちは、テクノクラートとしてそういった案を後づけでつくった。私も何人かの皆さんと話をしていますが、この民営化は日本のためにならないよと私が言ったときに、それは我々のレベルではなくて国会で議論してください、我々は指示があったらそのためのプランをつくるんです、こういう意見でした。

 それはやはり民営化ありきなんですよ。なぜほかの方法を、では、ほかの方法は何を考えられましたか。

竹中国務大臣 民営化の議論をする一番出発点として、諮問会議のスタッフで、なぜ民営化なのか、なぜ民営化がいいのかという議論の確認の整理をさせていただいております。そういう中で、当然のことながら、諸外国では民営化していないところもある、それはどうして民営化をしていないのか、日本とどこが違うのか、民営化している国はどういう国であり、そこはどういう選択、経緯をとっているのか、そのようなさまざまな基本的な調査と議論をさせていただきました。

 大原則は、民間でできることは民間でということでございますが、その結果として、何度か答弁も申し上げさせていただきましたが、マクロ経済のレベルとミクロの経営のレベルと消費者の利便のレベル、それぞれでやはり民営化をすることが必要である、その意見の私たちなりの頭の整理をしたわけでございます。

小沢(鋭)委員 今おっしゃっていただいたような話が、与謝野さんからすれば、とても国民に対しての説得力がないぞ、こういう話になるわけですよね。

 それで、諸外国のケーススタディーもされたということですが、私は、繰り返しませんが、さきの質問で、イギリスで三百五十万人の金融口座を持たない人が出てきた、そして財政資金を使ってまた新たないわゆるネットワークの構築をする羽目に陥った、ドイツもそうだ、ニュージーランドもそうだ、そういう話を申し上げた。

 そして、いわゆる幾つかの、こういうことでありますが、例えば、その幾つかのというのは数は多くないんですよ。言っておきますけれども、万国郵便条約に入っている中で、これは百を超える国が参加していると思いますが、民営化している国というのは恐らく一けたじゃないでしょうか。そのあたり、それだけ、ではもしわかる方がいたら。わからなければいいです、通告していませんから。わかる方がいたら。

竹中国務大臣 ちょっと急なお尋ねでございますので、正確かどうかあれですけれども、個別に申し上げますと、株式会社という形にして民営化しておりますのは、オランダが一九八九年、ポルトガルが……(小沢(鋭)委員「数だけでいいですよ」と呼ぶ)十二カ国であるかなというふうに承知をしております。

小沢(鋭)委員 十二あるかどうか。済みません、通告していないのでそこはあれですが、百を超えるまさに条約加盟国があって、その中のそういう数だと。少ないんですよ。なおかつ、同時に、そういった国々が今申し上げたように失敗をしてきている。ここに「自由化先進国の憂鬱」、イギリスの例があります。これは私の「郵政民営化は必ず失敗する」というボイスの論文ですが、これも海外事例も出させていただいております。

 ですから、そういった意味では、必ずしもその案だけではなかったはずなんです。しかし、民営化という小泉さんのそれでスタートした。もう後戻りできない。そういう話の中で、これだけ国民の皆さんたちが納得できない、こういう話になるんじゃないですか。これは説明不足じゃないんです。説明不足じゃなくて、まさにそれは認識の間違いだから、最初から違っているので、後づけの講釈だから国民が納得しない、自民党の皆さんたちの中にも納得できない人たちがいる、これは当たり前なんです。与謝野さんが言っているとおり、とにかくそんな説明じゃ通らない。これはどうですか、大臣。

竹中国務大臣 郵政の民営化は、明治以来の大改革でもあり、また国民の生活に直結した郵便局にかかわる改革でありますから、国民の皆様方の間には大変多くの御意見があると思いますし、またそれなりの御心配もあるというふうに思います。

 しかし、そうした中で、あえて申し上げさせていただければ、これはいろいろな世論調査もございますが、世論調査で、賛成か反対かというふうな調査、最近のものを見ましても、やはり反対に対して賛成の方がかなり上回っているという状況も、これは一つの統計上の事実であろうかと思っております。

 私たちは、引き続きこの趣旨、そしてその懸念に対しては、しっかりとそれをカバーするような制度設計を行っているんだということを引き続きしっかりと説明させていただいて、より広い御理解と御賛同をいただきたいというふうに思っているところでございます。

小沢(鋭)委員 それで、なぜ今郵政民営化か、こういう話に戻らせていただきたいと思います。

 これは二月の十七日に政府が出したペーパーですね。さっきからるる申し上げているように、財投の話がだめになった、公務員バッシングもだめになった。今、ある意味でいうと、この中でも竹中さんが盛んに言っていた話はこの話ですよ。麻生大臣もおっしゃいました。本当にやっていけないんですか、こういうことでありまして、そして私の方は、公社における資料を出してください、こう申し上げた。

 これは二月の十七日に出てきて、突然なんですよ。さっきのNHKの「日曜討論」は二月の十三日。それから竹中大臣が、これを政府・自民党検討委員会で、じり貧論、こう呼ばれているようですが、じり貧論が出てきた。先細り論。歴史が浅いんですよ、この議論は。大変歴史が浅い。

 まず、私が出していただきたい、公社のままで推移したらどうなるかという数字はなぜ出せないんでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 まず、ぜひ御説明させていただきたいと思いますが、私は先ほど、この改革の意義というのは、マクロ経済的な意義、そしてミクロの経営という観点からの意義、利用者利便の意義、その三点を申し上げておりますけれども、これはもう諮問会議で当初から議論されていることでございます。決してミクロの経営上の問題が急に出てきたわけではございません。

 これはぜひ諮問会議の議事録も御確認いただきたいと思いますが、特に、例の座長をしておられました田中直毅さんが、郵政のネットワークの劣化というのが非常に厳しいものがあるというようなことで、だからこそ早い改革が必要だ、経営上大変問題があるんだというようなことの御指摘を何度もその諮問会議でしておられて、私たちは、マクロ的な経済活性化、金の流れを変える、そしてミクロ、経営の先細りを食いとめる、そして消費者の、利用者の利便を高める、そのことは一貫して実は最初から議論をさせていただいているところでございます。

 委員のお尋ねの経営の、公社のままでいけばどうなるのかということの数字でございますが、私たちは、骨格経営試算という中で、現状と同じ事業を続ければどうなるかというような形で、分社化はしておりますけれども、事業を同じ形にすればどうなるかということを示しておりますので、その中で、トレンドとしては、方向としては御理解をいただけるものであるというふうに思っているところでございます。

 御承知のように、その骨格経営試算に加えて、これは利益が十年ぐらいで半分になるということで、先ほどの小沢委員の試算もぜひ私たちも勉強させていただきたいと思いますが、方向としてはよく似ているのではないのかなというふうに思いました。加えて、金融環境が変化して長短スプレッドが縮小した場合は利益全体がゼロになる可能性がある、そのようなことも骨格経営試算では御承知のとおりお示しさせていただいているところでございます。

小沢(鋭)委員 ですから、その骨格経営試算をベースに、しようがないので、私は自分の試算をしてみました。骨格経営試算というのは、いわゆるネットワーク会社が入っちゃっていますから、そこがよくわからないのと、それから二〇一七年までしかありませんので、もうちょっと先まで延ばしたらどうかな、こういう話で二十年間の試算をつくったんですね。

 大前提は、収入収益はまさに骨格経営試算の収入、収益を前提にしました。細かい話はまた後ほどデータを出しますからあれですが、基本的に収入、収益は骨格経営試算の収入、収益をやりました。それから、費用に関しましては、十六年度決算をベースにして、そして、例えば郵便事業は人件費、物件費が毎年一・一%ずつの減少をしておりますので、そういった話をある意味ではトレンドとして延ばさせていただきました。収益に関しては、一七年以降は骨格経営試算のトレンドをそのまま使って延ばしました。そういう基本的な発想でつくった資料がこれです。

 先ほど申し上げましたように、二〇二六年で三千四百十七億円の三事業全体としての利益が出ます。それから、郵便業務の損益はこういう話になります。当然、こういう話で赤字になります。それから、郵便貯金。先ほど、スプレッドの問題がある、スプレッドが狭まる、こういう話がありましたが、郵便貯金業務の損益はこういう形になります。二十年先の二〇二六年は一千二百億円の黒字になりますが、かなり収益は減少します。保険は当初、骨格経営試算でも最初のところで伸ばしていますので伸ばしまして、その後、ここから、ピークを下げたところは下降線をそのまま継続させました。これは、三差のところが私どものところでは詳しいデータがあり得ませんので、そのまま傾向を延ばさせていただいたということでありますが、一応、二千五百億のいわゆる黒字になります。それで、トータルで三千四百十七億円の黒字になります。

 これは苦労してつくったんですけれども、こんな話は、ある意味では政府あるいは公社の方でやっていただくとしたらすぐにでもできる話なんだろう、こう思っておるんですが、これを出せないというのは、出したら黒字で行けるじゃないか、二十年後も黒字だったらやれるじゃないか、公社だから別にもうけなくていいので、赤字で真っ赤っかに三事業全体でなっちゃったら困るけれども、まあ、やれるんだったらいいじゃない、こういう話があるから出せないんだろうと私なんかは邪推をするんですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、私たちは骨格経営試算をお示ししております。骨格経営試算の数字と今の委員の数字と、ちょっと今、急に突合しているところでありますので、正確に後でもっとよく勉強はいたしますが、少し違うようでありますが、傾向としては余り変わらないという数字になっておりますね。

 私たちは二〇一六年度まではこれを出しているわけでございます。これをトレンドで延ばすということでありますと、トレンドで延ばすということは御指摘のとおりできるわけでございますが、こういう十年を上回るような予測というのがどの程度確度があるのか、そのようなこともやはり考えなければいけないのだと思っております。

 そういう観点から私たちは、これは委員の御指摘、この紙によっても、私たちによっても、骨格経営試算によっても、やはり中期的に先細りというのは否定できない、そういうことを骨格経営試算で私たちは示している。さらに金融の要因を加味すると、さらに先細りというのは非常に明白になる。そのことを私たちが説明できる範囲で十分に説明させていただいているというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 今、十年先からその先を延ばしてもなかなか意味がない、こういう話でありますが、それはもうそのままそちらにお返しをして、要は、やっていけないので転ばぬ先のつえだ、こういう話をずっとこの委員会で言っているわけですよ。それはどうなんですか。今後、そういう先細り論はもう一切封印をしていただけるんでしょうか。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げておりますように、郵政民営化の趣旨、意義は、マクロ経済的な観点からメカニズムを変えること、そしてミクロ、経営をしっかりとしていくこと、そして利用者利便を高めること、これは変わりません。むしろ私自身は、公社のままではやはり先細りが大変厳しいということを小沢委員御自身のこの資料がお示しになっているというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 先細りはしていくんですけれども、これは民主党的に言うと、十分民主党の主張している話と一致していくんですよ。三事業は、公社だから、株式会社じゃないから、民間じゃないから、別にもうからなくてもいいので、それで貯金がダウンサイジングになっていく、それから保険もダウンサイジングになっていく。郵便は赤字だけれども、三事業一体だから、それで全体として黒字で、税金も一切投入しないで、今後とも、少なくても私の試算では二十年間はやっていける、こういう話ですよ。

 だから、これが何で先細り論だから今やらなきゃいけないのか、こういう話になるのか、私はわかりません。さっき申し上げたのは、マクロ政策や何かの観点で云々という話は、そこは横に置いておいてくださいと。経営的な視点で、先細りで、だから先細りは確かに細っていくんですけれども、やっていけませんという、では、そこは封印をしていただけますか。赤字で、例えばもう税金を投入しなければやっていけない状態になるということはありませんと。そこはどうですか。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げておりますように、我々は、骨格経営試算とその後の試算において、骨格経営試算では先細りだ、それに加えて、金融環境が悪化したときには利益がゼロになりますよということを示している。その金融環境が悪化するという非常に脆弱な基盤の上にあるということは、これは否定しがたい事実であろうと思っております。

 加えまして、私たちが郵政民営化を議論するのは、このミクロの問題に加えて、重ねて申し上げますが、マクロの話、そして消費者利便の話、そういう問題があるということでございます。

小沢(鋭)委員 今の大臣の話は全く説得的でなくて、民間金融機関でもいわゆる金融情勢の云々という話は全く同じことですよね。

 少なくても、この十年、ずっと民間金融機関が、これだけ問題が起こって、逆に言うと、郵貯・簡保資金から救済をしているんですよ、民間金融機関を。民間金融機関を救済しているんですよ。だから、民間に任せればすべてうまくいくというのは、余りにも単純な市場原理至上主義としか言いようがありません。

 それで、大臣は私のさきの質問のときに、市場あるいは資本主義に対する考え方が違うかもしれません、こうおっしゃいました。私もずっとその後考えてきております。あのとき私が申し上げたのは、庶民の金融、そういうジャンルがあっていいんです、こういう話を申し上げました。国民貯蓄銀行、こういうジャンルがあっていいんですと申し上げました。大臣は、一般の銀行、一般の保険、こう常に答弁でおっしゃっています。私が言うような国民貯蓄銀行、そういった金融、そういうものは今後存在しないんでしょうか。

竹中国務大臣 委員は恐らく、海外等でも金融排除の問題が御承知のように大変重要になっておりますから、そういう問題が日本で生じないのかという御質問かと思います。

 これは将来の政策判断の問題でございますから、今の時点でコメントをすることはできませんが、基本的に、日本の場合、やはり金融の、民間の金融についてもそれなりのネットワークが確保されていて、かつ、今回郵政が民営化された後も郵便局がしっかりと設置され続ける、そして、そこで地域貢献基金の活用も含めて金融サービスが提供されるという仕組みをしっかりと確保するつもりでおりますので、一部のヨーロッパの国等々で見られるような極端な金融排除が起こるような状況ではないと私は思っております。

 しかし、これは将来の金融行政上の御判断の問題でございます。郵政の民営化の制度設計に当たりましては、今申し上げたような現状認識に立って、サービスがしっかりと行われるようにしているつもりでございます。

小沢(鋭)委員 安定的な代理店契約だとか基金とか、そういうお話がありましたが、私はこの前も、それは国が保証するユニバーサルサービスではない、こういうふうに申し上げました。

 大臣は常に、ユニバーサルなサービスとか、あるいはまた、これは全然別件ですが、一体的なとか、「的」とか「な」とか、そういうのを大変うまく使うんですが、もう一回端的に聞きます。では、今言った庶民の金融というようなジャンルに対して、国が保証するようなユニバーサルサービスというのは必要ないとお考えですか。

竹中国務大臣 国が保証するユニバーサルサービス、よくUSOと言いますが、ユニバーサルサービスのオブリゲーション、義務を課す。国がある金融機関に課すのか、そういうユニバーサルサービスオブリゲーションというのを明示的に課している、そういう事例は、先進工業国では通常はないというふうに思います。これはやはり郵便と銀行、金融サービスの根本的に違うところだと思います。

 しかし現実には、先ほど申し上げましたように、一部のヨーロッパの国で金融排除の問題が出てきていて、それに対してさまざまな個別の対応をしている国もあるというふうに承知をしておりますが、それはいわば金融行政上の一つの政策判断であり、日本の場合、日本の民間金融機関と、そして今の郵貯が完備しておりますので、そのような問題が生じていないというふうに思っておりますが、これは将来の政策判断として考えられるべき問題だと思います。

小沢(鋭)委員 もう一回端的に聞きます。

 ヨーロッパでは、そういった金融排除や何かに対応する、国が保証するようなサービス業務もある。しかし、この法案で国が保証するユニバーサルサービスというのはあるんですか、ないんですか。これはないというふうなのが私の理解ですが、それでよろしいんですね。

竹中国務大臣 郵政の金融業務にユニバーサルサービスの義務は付しておりません。しかし、同時に、そのサービスが実態的に提供されるように、金融行政の枠組みの中で、みなし免許の条件として長期の契約を求める、ないしは社内の社会貢献として基金を活用できる仕組みをつくる、そのような形での配慮をしております。

小沢(鋭)委員 国が保証するサービスはないというふうに理解をいたしました。それでいいかどうか。

 それから、例えば、では今回、貯金会社、保険会社が、安定的な代理店契約ですから、自分のところはもう経営していけない、あるいは私が社長になったらもうそんなところは嫌だ、自前のところでやる、別な自前の店舗でやりますと言ったときに、国が強制的にそれでもやりなさいと言うことはできないんですね、言えないんですね。

 その二点、確認させてください。

竹中国務大臣 まず、これは郵便局会社がもう嫌だと言った場合にという趣旨でございますか。

小沢(鋭)委員 貯金会社、保険会社が、もう嫌だ、代理店契約を結ぶのはもう嫌だ、自分の自前の組織でやります、こういう話をもし判断したとしたら、国が強制的に、いや、それでもやりなさいと言う仕組みにはなっていませんね。

竹中国務大臣 基本的には、まず、移行期間を上回る十分な代理店契約の存在を義務づけておりますから、その期間に関してはその業務が継続されるということになります。

 その後、委員のお尋ねは、もし仮にすべて郵貯銀行が自前の店舗を持ったらということでございますが、そういう二万四千の拠点を放棄してみずから拠点をつくるというのはなかなか考えがたいことではあるというふうに思いますので、私は、やはりこの相互補完の関係は続くと思っております。

 しかし、それでも銀行がやめたいと思う理由は、手数料がちゃんともらえないからでありますから、手数料が払えない分、その分基金を活用して、しっかりとした手数料が払えるような、そういう社会貢献の仕組みを今度は郵便局会社の方につくっているということでございます。

小沢(鋭)委員 私はとにかく、庶民の金融に関しては、国がしっかりと保証するという制度があっていいと思っておりますのと……(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 銀行が手数料をもらう、こういう話を先ほど大臣されましたが、そこは違いますね。

竹中国務大臣 銀行が手数料をもらうというのは言い間違いでございます。受け払いの手数料の水準について、銀行と局会社でうまく合意ができない、そういう場合に委員御指摘のような問題が起こりますので、そういった場合には、社会貢献としてその基金が活用できるという趣旨でございます。正確さを欠いておりまして申しわけありませんでした。

小沢(鋭)委員 終わりますが、先ほども言いかけましたけれども、やはり国が最小限保証する、そういった庶民金融のサービスがあっていいと私は思っておりますし、今の制度だと、最初の十年とか、そういう話はそうかもしれませんけれども、将来的に何にも保証がない。恐らくヨーロッパで起こってきた事例というのはすべてそういうことだというふうに申し上げて、国民にとって大変なやはり生活破壊だという話を申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

二階委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時二十二分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対し、山崎拓君外二名から、自由民主党及び公明党の二派共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山崎拓君。

    ―――――――――――――

 郵政民営化法案に対する修正案

 日本郵政株式会社法案に対する修正案

 郵便局株式会社法案に対する修正案

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山崎委員 ただいま議題になりました郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 郵政民営化は、明治以来の大改革であり、国民生活とも深く関係していることから、制度設計に当たっては種々の不安感を払拭するものでなければなりません。

 本委員会における議論においても、これまで同様、郵便局の窓口において金融サービスが提供されることが担保されるのか、グループ経営を可能とするための株式の連続的保有が担保されているのか、民営化委員会による検証により、将来の社会経済情勢の変化に柔軟に対応することが担保されているのかといった懸念が示されました。

 これに対し、原案によってもきちんとした対応がなされることが政府の答弁により明らかとなっておりますが、より一層その趣旨を明確化する必要があると考えられます。

 本修正案は、これらの議論を踏まえ、郵政民営化に係る国民の不安感を完全に払拭し、懸念に対する対応をしっかりと担保するため、次のような修正を行うものであります。

 以下、修正案の概要を申し上げます。

 第一に、郵便局会社法案においては、郵便局が行う具体的な業務として、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきが規定されているところでありますが、本修正案は、郵便局が引き続き金融サービスを提供することが可能であることを明示するため、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として、銀行業、生命保険業の代理業務を例示することといたしております。

 第二に、日本郵政株式会社法案においては、日本郵政株式会社は社会・地域貢献基金について一兆円に達するまで積み立てることを義務づけ、一兆円を超えて積み立てることについても禁止していないところでありますが、本修正案は、同基金について一兆円を超えて積み立てることができることを明確にするとともに、二兆円まで積み立てる場合には一兆円までと同じルールで積み立てなければならないこととすることにより基金の上積みを促すものであります。

 第三に、本修正案は、郵政民営化法案において、移行期間後、議決権等の面で連続的保有を可能とするよう、基準日などの議決権の行使に関する事項を郵便貯金銀行及び郵便保険会社の定款に必ず定めなければならない旨を規定するものであります。

 第四に、郵政民営化法案においては、民営化委員会が三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行うこととなっておりますが、本修正案は、内外の社会経済情勢の変化に柔軟に対応する趣旨をより一層明確化するため、「総合的な検証」を「総合的な見直し」に修正するものであります。

 第五に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に関し、地方公営企業法について所要の修正を行うものであります。

 以上が、本修正案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。

二階委員長 これにて各修正案についての趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

二階委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案及び各修正案審査のため、明七月一日金曜日午後二時及び来る四日月曜日午前九時の両日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明七月一日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十八分散会


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