衆議院

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第3号 平成17年10月7日(金曜日)

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平成十七年十月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 柳澤 伯夫君

   理事 山崎  拓君 理事 原口 一博君

   理事 馬淵 澄夫君 理事 桝屋 敬悟君

      赤澤 亮正君    井澤 京子君

      井上 信治君    上野賢一郎君

      越智 隆雄君    大前 繁雄君

      奥野 信亮君    片山さつき君

      北川 知克君    小杉  隆君

      佐藤ゆかり君    篠田 陽介君

      新藤 義孝君    関  芳弘君

      高市 早苗君    長崎幸太郎君

      丹羽 秀樹君    橋本  岳君

      馳   浩君    平口  洋君

      牧原 秀樹君    御法川信英君

      宮下 一郎君    矢野 隆司君

      荒井  聰君    石関 貴史君

      大串 博志君    大島  敦君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      中井  洽君    永田 寿康君

      長妻  昭君    松野 頼久君

      三谷 光男君    森本 哲生君

      笠  浩史君    石井 啓一君

      田端 正広君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      滝   実君

    …………………………………

   議員           仙谷 由人君

   議員           馬淵 澄夫君

   議員           大串 博志君

   議員           永田 寿康君

   議員           長妻  昭君

   議員           三谷 光男君

   議員           松本 剛明君

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  楠  壽晴君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月七日

 辞任         補欠選任

  北川 知克君     御法川信英君

  篠田 陽介君     丹羽 秀樹君

  石関 貴史君     大島  敦君

  中井  洽君     森本 哲生君

  笠  浩史君     小宮山泰子君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     篠田 陽介君

  御法川信英君     北川 知克君

  大島  敦君     石関 貴史君

  小宮山泰子君     荒井  聰君

  森本 哲生君     中井  洽君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     笠  浩史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第一号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第二号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第三号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第四号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第五号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第六号)

 郵政改革法案(松本剛明君外七名提出、衆法第一号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに松本剛明君外七名提出、郵政改革法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官楠壽晴君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君及び内閣官房内閣審議官篠田政利君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松岡利勝君。

松岡委員 おはようございます。自由民主党の松岡利勝でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 昨日の本会議に引き続きまして、いよいよ本日からこの特別委員会の審議が始まるわけでございます。まさしく世紀の大改革を目指しまして、その実現を目前にいたしました歴史的な大場面だと思っておりますが、そのような大場面に当たりまして自民党のトップバッターとして質問をさせていただきますことは、まことに光栄でございまして、大きな感動を覚えております。このような立場をお与えいただきましたその御配慮に対しまして、心から感謝とお礼を申し上げる次第でございます。

 そして、前国会以来、大変な御苦労でこの委員会の運営に当たっておられます二階委員長はもとよりでございますが、我が党の山崎筆頭、そして、現在は民主党の方は筆頭が原口理事でございますけれども、前国会におきまして筆頭を務められました中井先生初め関係の各位、それからまた政府側にありましては、小泉総理を先頭に、竹中大臣を初めとする関係閣僚の皆様方、そしてまた政府委員として終始本当に熱心に御答弁に当たられました方々に心から敬意を表しまして、質問に入らせていただきたい、このように思う次第でございます。そして、この上は、国民の圧倒的な支持を受けた、その形での今国会の開会でございます、一日も早い郵政改革の実現を心から念願をまずいたしまして、これから幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、私は、衆議院が可決をされ、それから参議院が否決をされ、そして解散・総選挙ということになったわけでありますが、この間におきまして、どうしてもしっかりと思い起こしていかなきゃならないことが幾つかあると思っております。

 私は熊本でございますけれども、熊本の地元の新聞であります熊本日日新聞の記者の方が先般来られまして、実は総選挙前に、参議院で否決された場合、そのような雲行きであったわけでありますが、その場合、熊本の国会議員の皆さんに聞いた、解散があるかないか。そのときに、間違いなく解散がある、そう断言したのは、松岡先生、あなた一人でした、こういう話がございまして、何でそういうことを思ったんですかと。

 私はそのとき、三つのことがあると。一つは、我が国の国会は二院制であります。衆議院で可決をし、参議院で否決ということになれば、これは国会が二院制、二つに割れるわけですから、国会で物事が決まらなかった、そうであるならば、これは主権者である国民の皆様に判断をしてもらうしかない、決めてもらうしかない、これが第一だ。

 二つ目は、これは小泉総理がずっと、総裁選に立たれたときから、そして今日に至るまで一貫して、そして前国会に提案されたときに、これは小泉内閣の最重要法案であり、かつまた小泉改革の本丸である、これが否決ということになれば、これは内閣に対する不信任、そうみなす、そうおっしゃっておったわけでありますから、不信任となれば国民に信を問う、これは当然の政治的な帰結であります。これが二つ目であります。

 そしてもう一つ、私は、これは絶対に解散をすべきだし、またそうあるべきだ、こう思った三つ目の理由は、我が国は議院内閣制でございます。与党が、与党の多数で内閣が出した法案をこの国会で通していく、その仕組みであります。したがって、これが与党の少数の方々によって野党と一体となって否決ということになれば、議院内閣制そのものの仕組みがこれは崩れてしまう、崩壊してしまう、こういうことであります。まさに政治は混乱であります。そしてまた、少数の人で物事が決められてしまう、これはやはり民主主義政治の崩壊でありますから、ここはもう解散しかないし、解散すべきだ、勝敗は別にしても、そう思ったのが私の断言をした考え方であります。

 八月八日の日に、私はそのような思いで官邸に行かせていただきました。それで小泉総理のお姿に接したわけでありますが、まさに冷静、泰然としておられました。そして、微動だにしない、そういう決意を私は拝見いたしました。言われましたことを今でも覚えておりますが、明確な理由を申された上で、そうなれば即解散を断行する、そして古い自民党をぶっ壊して新しい自民党をつくると。その後言われた言葉が本当に衝撃的でありました。おれは国民を信じている、本当にこの言葉に、私はやはり電流が走ったような、体が震えるようなそのとき瞬間的な思いをしたわけでありますが、そして否決をされ、そのとおり解散・総選挙ということになりました。

 そのときの状況は、これは民主党の方が圧倒的有利である、自民党は分裂選挙ですから、これはマスコミもこぞってそういう見通しを申しておりました。しかし、そういう見通しの中でも、小泉総理は断固としてこれは決行されたわけでありまして、断じて行えば鬼神もこれを避く、こういう言葉がございますが、本当に結果として見るとそのようなことであったという思いをいたしております。そして、まさに小泉改革、小泉自民党の申し子ともいうべき人たちがきょうこの後いっぱい質問に立たれますけれども、まさに新しい自民党ができて今日、今こういう状況でございます。

 そこで、そのような経過を振り返りながら、今改めていよいよ委員会審議が始まる、このような状況におきまして、私は、小泉総理の思いと、そしてまたこの改革をいよいよ実現していくんだという現時点においての考え方を改めて国民の前で示していただければと思う次第でございます。総理、よろしくお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 今まで、郵政民営化は国会におきましては暴論であると言われておりました。また、各党におきましても賛成者は極めて少なくて、全政党ほとんど反対派が多数の中でなぜ民営化を主張しているのかということで、私の郵政民営化論は暴論と言われておりました。いわば今までの常識から考えますと、郵政民営化が実現するというのは政界の奇跡だと言っても過言ではないと思います。

 一時はそのとおり、この法案は死んだかと思われました。参議院で野党の反対と自民党の一部の反対で否決された。普通だったらここで終わり、廃案。しかしながら、私は、長年、民間にできることは民間にという当たり前のことに賛成していながら、この郵便局の仕事だけは民間に任せてはいかぬ、公務員でなければできないんだという与野党の国会議員の考え方に納得できなかったんです。これを国民に、公に聞いてみれば、恐らく大方の国民は、郵便局は民間人で経営できる、役所にやらせなくても民間人でできると判断してくれるであろうと期待しておりました。

 私は、前から、この法案が成立しなかったら解散するとは公言しておりませんでした。ただし、それとなく、聞く人が聞けば、重大な決意をしている、そういう表現はしておりました。なぜならば、郵政民営化法案は小泉内閣の最重要課題である、これを廃案にするということは小泉不信任と同じだ。これを聞けば普通の人は、ああ、解散するんじゃないかなと真意をわかったはずであります。ところが、多くの人は解散などできるわけがないということで、ああいう結果になったのであります。

 しかし、今、ここに来て、一度死んだ法案を国民が生き返らせようとしてくれている、やはり郵政民営化は、民間人がやってくれる、民間に任せても大丈夫だという声があったからこそ、今回、自民党、公明党に圧倒的多数の議席を与えてくれたんだと思います。いわば、政界の奇跡を国民が実現してくれる段階に来た。この声を受けて、今まで反対した議員の方々も大分賛成に回ってくれるということを信じております。

松岡委員 改めて、お考え、また思いを示していただきました。ありがとうございました。

 そこで、私は、自分のまた思いを申し上げて恐縮でありますが、選挙、解散となりましたときに、八月の九日、私は後援会の役員幹部会をやりました。そこで言いましたことは、これは直観でありますけれども、この選挙は後になってみれば歴史的な大きな分かれ道になる選挙だと思うと。そのとき何でそんなことを思ったかといいますと、明治のことがひらめいたわけでありまして、やはり明治の時代、今総理がおっしゃいましたような奇跡をなし遂げたから日本はその後があった、こう思います。

 東洋の本当に島国で、小島で、鎖国をしておった日本が開国をして、世界の流れの中で開国をして、そしてよちよち歩きでスタートした。それから二十年、三十年、四十年、たったわずかそれだけの時間の中で、日清戦争に勝ち、日露戦争に勝ち、そして、世界の一等国、一流国という状況になった。

 何でそうなれたか、こう思いますと、それは本当に言葉じゃ言えないような、近代化の努力をした、改革の努力をした、私はそう思います。アジアで唯一最初の近代国家をつくった、こう言われております。特に、明治二十七年の日清戦争から三十七年の日露戦争までの十年間というのは、恐らく飲まず食わずで改革をやったんではないか、近代化をやったんではないかと思います。そして、これはまた物だけじゃなくて、人の改革もやった、こういうことでありまして、そういったことを思いますと、今、小泉総理が言っておられる改革を断行しなかったら二十一世紀の日本の将来はないんではないか、そう思ったからであります。

 そして、私は、政権公約で言いましたけれども、「なぜ改革が必要かというと、二十一世紀の日本が、子供たちの将来のためにも、世界やアジアの中で、他の国に負けない地位を占めるためには、何としても改革を成功させることが必要なんだ。その中で、郵政改革は、地方の郵便局をしっかり守りながら、グローバル化の中で、郵政事業を飛躍的に発展させ、経済の活性化や財政再建を目指すものなんだ」、こういったことを政権公約で申し上げ、ずっとそのことを言ってまいりました。

 そこで、竹中大臣にお伺いをするわけでありますけれども、私は、この郵政改革、改革の目標として、また目的として、中身として、いろいろ言われておりますけれども、その中でも、これはある意味では、国民経済にとって、また国民生活全体にとって、一大金融改革、そういう性格を持っているのではないか、このように認識をいたしております。

 といいますのは、やはり三百四十兆円にも上ります郵政のお金、今官だけでしかこれが使われていない。これを民間経済に弾力的、柔軟に大きく流していくことによって、もっともっと大きな経済の活性化、そして、ひいては財政再建、そういったことにつながっていく。そして、やはり財政再建なくしていろいろな政策は実行できません。こういったことを考えますと、まさに小泉総理がおっしゃっている改革の本丸、そういう意味なんだろう、こう思うわけでございます。

 竹中大臣から、今また改めて、その辺の基本的なことにつきましての御答弁をお願いできればと思います。

竹中国務大臣 松岡委員御指摘のように、郵政の改革、非常に多面的な改革でございますけれども、その中でやはり非常に大きな側面として金融の改革、お金の流れを変えるという重要な目的があるというふうに考えております。

 郵政が持っている金融資産は三百四十兆円に達します。これは家計から見ますと、家計の持っている金融資産のうちの約二六%がこの郵政を中心とする公的な部門に行っているということになります。しかし、これは政府保証をつけて国が集めているお金でございますから、国が集めている以上、政府保証がついている以上、安全資産でしか運用できない。安全資産ということになりますと、かつては財投の仕組み等々ございましたが、これも改革が進んでおりますので、基本的には安全資産、国債に運用されるということになる。

 したがって、国が政府保証をつけて集めて、国で国債という形で運用する、まさに国が集めて国で使うお金になってしまいます。これを民営化することによりまして、初めてこの資産の運用がしっかりと民間にも流れる、リスクをとれるお金になっていく。これは企業から見ますと、いろいろな形での融資を受けるということにもつながりますし、例えばABSとか、もっともっと多様な形での民間市場へのお金の流し方が民間の創意工夫によって出てくるであろうというふうに考えるわけでございます。

 したがいまして、やはりここを民営化するということが官のお金を民に流すという非常に重要な突破口になるわけです。しかし、重要な点は、これを急激にやると市場にショックが生じる。したがいまして、政府保証がついている古い勘定、旧勘定と新しい勘定に分けてそのショックを和らげるというようなきめ細かな工夫もしながら、民間にお金が流れるようにしているところでございます。

 もう一点、松岡委員が言及されました財政への貢献でございますけれども、我々は郵貯、簡保の株式を完全処分するということを念頭に置いております。その簿価だけで四・九兆円、五兆円になるわけでございますから、当然、簿価を上回る株式、株価で売却されることを期待しておりますから、その分だけでも非常に大きな財政への貢献になるというふうに考えております。

松岡委員 ありがとうございました。

 そこで、前国会でも随分、まだ説明が足りないとかいろいろ言われたわけでありますが、私は、今度の選挙を通じて全国津々浦々まで相当理解は行き届いた、そしてまた国民の皆さんにその点については十分御承知をいただいた、そう思っております。

 そこで、なおかつ前国会でやはり心配だと言われた点、その点についてちょっと確認をしておきたいと思うんですが、私は自分なりに整理をして、五つ、問題点といいますか議論があったな、こう思っております。

 一つは、田舎の地方の郵便局、特に過疎地等を初めとするそういった地域の郵便局は大丈夫か、こういうことでありますが、私は、大丈夫です、かえって安全になりました、今のままいけばどんどんメールがふえて郵便は少なくなって、そして、かえって今のままいった方が郵便局がなくなる可能性があるのに、今度はそういったところをしっかり守るという大前提での改革です、守るところは守りながら、より郵政事業全体を大発展させていく、そして国民のためにも大きな利益を上げていく、こういう改革ですと言ってまいりました。こういった設置基準の問題が第一点であります。

 それから、特定局長さんたちの身分なり立場なり、これはどうなるのか。これも大丈夫ですと言ってまいりました。ユニバーサルサービス、これも全国どこでも同じ料金でちゃんと届きます、これも申し上げてまいりました。そしてまた、郵便と貯金と保険の三事業の一体経営は可能かどうか。この点もそうです、こう言ってまいりました。また、それから、郵便貯金銀行や郵便保険会社が外国から乗っ取られるのではないか、こういったことを言う人もおりますが、それもしっかりしたちゃんとした対策がありますから大丈夫です、こう言ってまいりました。

 おおむね大体こういったことが心配された点だ、このように思っております。したがって、この点はしっかりと担保され保証されておるから大丈夫であります、こう言ってきたところでございますが、また改めて今国会で提出され直しましたこの今の法案につきましても、この点については大丈夫といったことを確認させていただきたい、こう思う次第でございますので、竹中大臣、よろしくお願いいたします。

竹中国務大臣 今、委員が明快におまとめくださいましたように、国民の安全、安心の観点から、設置基準さらには職員の立場、ユニバーサルサービス、一体的経営、それと敵対的買収への対応、いずれも極めて重要な問題であると認識をしております。

 一つ一つについて改めて答弁はいたしませんが、委員のお尋ねのとおり、今国会に提出しました法案は、民営化の実施スケジュールを半年延期するなど、前国会で御審議いただいた法案から若干の技術的な修正をしておりますけれども、骨格については変更しておりません。したがいまして、前の国会の法案の審議における政府側の答弁は、今回の法案にもそのまま当てはまるものでございます。当然、これをしっかりと遵守してまいる考えでございます。

松岡委員 最後の質問に参ります前にあと一つだけ、これは答弁は要りませんが、申し上げておきたいと思うんです。

 今また、政府系の金融機関の改革ということも大きく言われています。先週、園田先生も御一緒でしたけれども、熊本の中小企業関係の四つの団体の方々と意見の交換をいたしました。そこでその四つの団体の方々から言われたのは、早速その問題が出てまいりまして、自分たちの中小企業、中小商店街、そういった立場への金融を守るために、政府系の金融は一言で言えば守ってくれ、こういうことでありました。

 私が申し上げましたのは、それが、守ることと、よりよい金融、中小企業関係、商店街の方々にとってもっと合理的でもっと効率的な、そういう金融がどうあるべきかということの議論の方が先決であって、自分たちのために政府系を守ってくれというような、これは隠れみのになっちゃいけないし、本末転倒になってはいけない、そういったことを申し上げてきたわけでありますが、そういうやはり本質的な議論が必要だ、このことはちょっとここで言わせていただきたいと思っております。そういったことを私も申し上げてまいりました。

 そこで、そのことを申し上げた上で、これは最後の質問といいますか、私なりの民主党案に対する感想を申し上げたいと思うのであります。きょうは、民主党の方からも仙谷先生初め提出者の皆様方、本当に御苦労さまでございます。実は、きのうも我が党の石破議員の方から代表質問であったわけでありますが、これは本当に失礼なことを言うかもしれませんが、お許しをいただいて感想を述べさせていただきたいと思います。

 一言で言いますと、さきの通常国会において、民主党の皆様は、岡田代表を初めとして、改革は公社のままで行うべきだし、またそれで十分だ、民営化すべきでない、こう言っておられたと思いますが、今回の民主党の案は、民営化を目指す、そういう大きな方向になっております。

 したがって、これまた大変恐縮な言い方でありますが、例えて言いますと、きのうまでは黒だったものが何か百八十度変わってきょうは白みたいな、そんなちょっと思いを持ったものですから、どうなっているのかな、こう思ったのであります。また、よく見ますと、どうも白でもないな、何となく灰色がかっているな、相当中途半端だな、こんなような思いもいたしまして、こういう感想を持ったわけであります。

 このことにつきましては、きょう、先ほど申し上げました新しい自民党、そういう形で当選されてまいりました方々がこれから具体的な質問をされると思いますので、その点は譲りまして、総論的な感想を申し上げさせていただきたいと思います。言いっ放しじゃなんですから、きょう、私は三十分でぴたっと交代をすることになっておりますので、三十分の中で政府側と民主党さんに一言ずつ、本当に二分程度で感想を言ってもらえればと思います。

 我が自民党の中では、今の閣僚の中でも、人のことを悪く言ったり、何かそういうことを言うことについては一番苦手な人と言われております麻生総務大臣、どういう感想をお持ちか、一言、二分程度でお願いいたします。

麻生国務大臣 一番品のいいのに御指名をいただきましてまことにありがとうございます。松岡先生は思いのほか人を見る目があると思って、改めて敬意を表します。

 この民主党の案につきましては、基本的には、前国会までは対案をお出しになっておりませんので、出されたという点につきましては私は評価されてしかるべきものだと思っております。

 ただ、この内容を、ちょっと薄い紙で、何ページでしたか、読ませていただきましたけれども、このとおりに、大体要約みたいなものしか書いてありませんでしたけれども、利便性が向上するかねと思いましたのと、もう一つは、健全性が確保できますかね、あれで本当に。間違いなくつぶれず健全性が確保できますかねといったら、かなり疑問なしとしない。むしろ、かなり疑問が多いという感じが率直な感じでもあります。何となく、公社化のままですから業務範囲はかなり制約されるということにもなりますので、そういった意味ではどうかなと思っております。

 そういった意味では、自由民主党の案の方が一応そこらの分にこたえているという感じが率直なところでもありますので、私どもとしては、政府案の方と二つを比較して、これは完璧な案なんというものは存在いたしませんので、どちらがよりすぐれているかという話の上になりますので、そういった意味では、政府案の方がすぐれているのではないかなというのが、感想を述べろと言っていただくと、一分半であります、ありがとうございました。

松岡委員 もうあと二分になりましたので、その分を片山議員に譲りまして、その中でまた今のことの感想等、お話がございましたらお答えいただきたいと思って、私はこれで終わりまして、片山議員の持ち時間の中でまたひとつよろしくお願いしたいと思います。

 では、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

二階委員長 次に、片山さつき君。

片山委員 自由民主党の片山さつきでございます。何分新人でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私も、郵政民営化を突破口といたしました改革の続行に国民の御判断を仰いだ九月十一日の歴史的な選挙で、反対の候補者しかおられなかったところに、地縁も手がかりも全くなく、しかも公示の八日前に事務所を開きまして、毎日ただひたすら改革路線の政策を訴え、多い日には二千人以上の方と握手をさせていただき、一言一言を交わして、その方々の改革への民意に支えられて小選挙区を制し、今ここで質問に立つことができているわけでございます。まさに一票一票の重みを今ひしひしと感じております。

 特に、総理も入っていただきましたが、私の選挙区の浜松は、やらまいかの精神で、新しい産業、歴史を次々興して、たゆまぬ企業努力で厳しいグローバル競争、特にこの十年の厳しいグローバル競争を勝ち抜いて勝ち残ってきた土地柄でございまして、郵貯なんて、最近定額類似タイプの商品は銀行で売っているじゃないか、そして、スピードが大事なんだ、郵政民営化ぐらい、僕たちがリストラを一生懸命やっているのに、国がやらぬでどうすると、むしろ、背中を押されて、せかされて出てきたわけでございます。

 そして、この特別委員会の場に出てまいりました民主党案、先ほど先輩の松岡先生がおっしゃったように、大分、大きく今までの御主張と食い違っております。

 あれほど三事業一体でなければネットワークは崩壊と言っておられたではないですか。簡保は二年後に廃止、保険は分割・民営化、郵貯についても、一番の人気商品、百四十兆以上あるわけですが、定額預金は廃止する、これが大体定期に振りかわると思っておられるようですが。公務員の身分は何が何でも失わせてはいけないと多くの民主党の先生がおっしゃっておられましたが、それは非公務員。これは、若干なりとも今回の圧倒的な選挙結果の民意を受けとめていただいたのかなと思うわけではあります。

 政府案と決定的に違いますのは、この中心である郵貯、郵便はもちろんのことながら、郵貯が実質公社による一〇〇%官営。国の責務で行い続け、巨大な官を残し続けている案でございます。

 民間にできることは民間にの小泉改革路線からするといかにも中途半端な感じが否めないと思いますが、この案を出すに至られた基本理念の変遷について、まず民主党さんに伺いたいと思います。

仙谷議員 御質問をいただきましてありがとうございます。

 今片山委員がおっしゃられたことは、相当の事実誤認があるようでございます。

 きょう、私、マニフェストを持ってきておりますが、二〇〇三年、二〇〇四年、二〇〇五年とずっとマニフェストでこの郵政改革については、私どもは、機能的にまず金融問題と郵便事業の問題というのは分けて考えなければならないという立場に立っていたわけでございます。

 この郵政改革、ことしの郵政改革につきましては、これもまたホームページでゆっくりとごらんいただければいいわけでありますが、三月二十九日付で私どもの、民主党の「郵政改革に関する考え方」というのを出してございます。

 そこで、私どもは、まず政府の小泉郵政民営化法案というものは、先ほど灰色のお話がございましたが、民営化という白い服を着たものの、その体は限りなく黒に近い灰色の体のままであろう、そういうふうに現在も考えておりますし、そういうものだと思っております。

 私どもは、これを基本的に改革するとすれば、郵便事業、そして金融サービスのうち決済機能については、国民の側から見ますとこれは権利として保障し、確保しなければならない、それが国民の生活にとっての極めて重要なライフライン、インフラだろうという観点に立っておるわけでございます。

 それから、金融問題については、御指摘がございましたので、ここはこれからの、民主党案と政府案、小泉案が、どちらが現実的にマーケットとの関係においてよく妥当するかという問題になろうかと思いますけれども、先ほど竹中大臣もおっしゃっておりましたが、三百四十兆円というお金、そして、現在、郵貯が資金残高二百十兆円と言われているわけでありますが、その使途を見ますと、私の計算によりますと、郵便貯金の残高は二百十兆円で、二百三十四、五兆円が全部公的なところに回っている、公的なところに運用をされている、これをして運用というのかどうなのか。

 つまり、この大きな資金量をそのまま丸ごと運用できるのかどうなのか。政府のビジネスモデルも三十五兆円と言っておるわけでありますから、二百十兆から三十五兆円引くと、あとの分はどのように運用されるのか。これは全部、公的資金あるいは国債や公共団体等々に、あるいは特殊法人に回したこのお金をどのように引き揚げて、どのように民間に流すのかというのは我々はわかりません。そんな手品ができるのかどうかわからない。

 ここは多分、入り口の方もダウンサイジング、縮小を図る、預け入れ限度額を低減しながら、そして郵貯の残高の減少に応じて国債保有を減少させていくということがなければ、国債管理政策上も、つまり長期金利の問題もうまくいかないだろう、こういう立場に立っているわけでございます。

 もう一つは、このことが今までもたらしてきたむだ遣いの問題でございます。

 つまり、私の求めに応じて財務省からも資料が出てまいりましたが、丸々現金で約一兆円のお金が、一般会計からだけでも一兆円のお金が毎年毎年財投機関に流されております。地方公共団体まで含めると、多分三兆五、六千億のお金が、郵貯のいわば間接的な利子の支払い、簡保に対する利子の支払いとして三兆円ぐらい払われているんじゃないんでしょうか。

 この構造を変えるためには、入り口からも規制をしていかなければならないというのが私どもの考え方でございまして、そのために、今回のこういう郵政事業、それから資金の決済機能を、これは国家としてきちっと保持しつつといいましょうか、堅持しつつ、金融機能についてはダウンサイジングしながら、これから十二分に自由な活動もできるようなことを担保していく、そういうのがこの法案の理念でございますし骨子であるというふうにお考えをいただければと思います。

 それから、さっき松岡先生がおっしゃったことで多少気になるのでありますが、地域に対するユニバーサルサービスをちゃんと守ることができるということをおっしゃっておるわけですが、そのための地域貢献基金ということになりますと、これは三島JRに対する経営安定化基金と同じ運命をたどるのではないか。結局は、国民の間接的、直接的な負担が発生している。これは、現在の地域の問題、都市と地域の問題というものをよくお考えいただければというふうに思っております。

 以上であります。

片山委員 あくまで基本理念の変遷については明言を避けられておりますが、きのう本会議で、基本理念はこれでも変わっていないというようなお話もありましたので、それをおいおい追及させていただきます。

 原口理事、六月十五日に、簡保はだれでもどこでも利用できる国民のインフラ、小沢鋭仁議員は六月三日に、庶民の保険は国民の必要最小限の権利とおっしゃっておられますが、新規契約を二年後に廃止すると、無診査で入れる簡保はなくなるわけですから、いわゆる保険排除が起きるのではなかったんでしょうか。廃止すると、これは百八十度の転換となりますが、その辺を含めてもう一度明確にお答えいただきたいと思います。

仙谷議員 原口さんが委員会かどこかでそういうふうにおっしゃったのかもわかりませんが、それはある種の彼の懸念をその時点で表明したにすぎないんだと思います。私どもは、先ほど申し上げましたような観点から簡保事業というのは考えております。

 とりわけ、簡保というのは発足の当時から、いわば当時の言葉で言いますと細民のというふうに言われておりますけれども、いわゆる普通の庶民の方々の最低限の保障だ、こういう趣旨で、とりわけ民業補完として出発をしておるわけでありますけれども、現時点ではそこは、民間の生保会社とダウンサイジングをした上で競争していただくということの方が、国民の生命保険、自助によるある種の将来保障といいましょうか、そういうものにとってもふさわしい、こういうふうに考えているわけでございまして、これは従来から変わっておりません。

片山委員 それでは、保険について、簡保は二以上に分割するというが、その基準と、五年間でどのように株式を処分し切るのか、具体的な見通しをお聞かせいただきたい。

仙谷議員 まず株式の処分の方でありますが、これは政府案と同じように、これから市場動向やあるいは経営の動向を見ながら考えていくということになるんでしょう。

 それから、この二分割、これは二つとは限っておりません、二つ以上に分けていく。例えば私の個人的な、個人的な考え方を申し上げたらまずいから申し上げませんが、いわばこれはサイズの問題として、百十兆ぐらいですか、今簡保の資産というのは。これはやはり余りにも大き過ぎる。やはり適正規模というのがおのずから、簡保事業、生保事業を営むにしても、他の生保会社との関連、あるいは資産運用をなし得る一つの適正規模がおのずからあるのではないか。そこはこれからの、私どもの郵政保険会社出発後においおい考えていくということでもいいのではないか、こう思っております。

片山委員 今のお答えで非常によくわかったのは、詰まっていない面でございますが、これだけの大会社、当然東証一部上場にならないと売り切れないでしょうが、二〇〇七年十月からのビジネスイヤー、事業年度で八、九、一〇と最低三事業年度の経営指標が達成できないとできない。そして、資産査定、審査、IR、ロードショー、どんなに早くても二〇一一年からしか売り出しができないというのがプロフェッショナルな実現可能性でしょう。そうしたら、二〇一二年九月、民主党さんの期限、すぐ来てしまいますよね。一回で全部売るんでしょうか。実務をどこまで考えていらっしゃるのか、本当に大丈夫か。

 だから、政府案の十年というのは、そういう実務をきちっと考えたいいところなんですよ。こういうところも頭に入れずに書いておられる。政府が十年と言うから五年、足して二で割るのは簡単なことです。原口委員も六月十五日に、ただいまの話ですが、十年でもできないんじゃないかなとおっしゃっていたじゃないですか。また、既契約は今百十兆円、確かにこれからだんだん減っていきます、新規を受けないんですから。あえて分割するほど、だんだん減っていってもツービッグになるのかについての経営試算も今示されておりません。また、日本全国で入院率や疾病率、都道府県でかなり違っております。これを何であえて、対数の法則からいくと一まとまりにした方がずっと有利なのに、分ける理由があるのかも全くわからないということ。それから、地域で分けた場合、転居を何回も繰り返す方の利便性はどこにあるのかということの回答もございませんでした。

 こういった部分も含めて、次に郵貯について聞かせていただきます。公社の一〇〇%子会社で行われるそうですが、この会社の法的性格、商法上の会社なのか、また新たに法律を書いて特別会社にするのか。七百万円、五百万円に政府保証をつけるとおっしゃっている以上、相当な会計や財務のコントロールを期す必要があります。また、税金負担をどうされるのか。銀行免許は持ち株会社法上、郵便事業会社の一〇〇%子会社では当然持てないでしょうが。そのあたりもすべて明確にお答えいただきたいと思います。

馬淵議員 今御質問いただきましたが、まず仙谷委員から御説明をさせていただいたところの補足もさせていただきます。

 簡保のところに関しまして、先ほど私どもの議員からの発言についての御指摘ございましたが、それはまさに、与党の皆さん方の中で、その発言が翻るどころか、造反という形で、今回の国会の中での議論につながらなかった、こうしたことがある。まさに私ども、議員の発言、それと同時に、党としてはマニフェストでお伝えをしてきているわけですから、このマニフェストの中身をしっかりとごらんいただくということが肝要であるかというふうに思われます。

 そして、この簡保の二以上の分割についてでございますが、これも先ほど仙谷委員の方から御説明をさせていただきましたが、この二以上の分割、政府案は巨大な簡易保険会社を市場に生み出してしまう。これは総資産百二十兆円ですよ。百十兆円、百二十兆円という大変な規模の会社を生み出してしまうこと、これがどれほどに民業を圧迫していくかということを懸念すれば、まず市場においてダウンサイジングさせていくというのは、二以上の分割というのがまず最低限行われるべきであるということを私どもは申し上げているわけであります。

 そして、そのスピードの問題。改革には最もスピードが必要だとおっしゃっているのはこれは総理なんです。そして、我々も改革の競争を行おうと訴えてきました。国民の権利の保障、そして改革を推進する、官が行うべきことは官が行い、そして民が行うべきことは民が行うという明確な区分を行って改革のスピードを競い合う中で、この五年ということの年限がなぜ短いとおっしゃるのか。この五年の期限の中で、先ほど片山委員がおっしゃった上場の話がございましたが、上場だけではございません。この処分という部分に関しましてはさまざまな方法が考えられる。その中で、上場だけしか念頭に置かない、前提にされないというのでは、これはいかがなものかと思われます。

 そして、今御質問がございました郵貯の問題でございますが、この郵貯、公社の一〇〇%子会社という形になるわけでございますが、なぜ一〇〇%子会社になるのか。これに関しましては、まずどんぶり勘定で行うことをとめなければなりません。経営のガバナンスというものをはっきりさせていく、それが必要なんです。公社の一〇〇%子会社にすることによって、例えば、郵便貯金の会社で上げた収益、これはガラス張りの中でしかその利益というものを逆にトランスファーすることができない。このことを考えれば、ガバナンスの強化のためにはこれは明確に子会社化することが必要だということを私どもは申し上げています。今の政府案の中では、こうしたことをお考えになっていないと私どもは考えるわけでございます。

 そして、この個別法の関係でございますが、これに関しましては、私どもの郵政改革法案が成立後、その後郵便貯金会社法の新たな設置、これは個別法の、多分特殊会社法になると思いますが、これを法律を制定し、あるいは公社法の改正、こうしたことを行って個別の立法措置を行うという前提にしております。

 こうした形で、経営の見通しについてでございますが、昨日も私は本会議でも御説明をさせていただきました。この会社は郵便貯金会社として一〇〇%子会社となりますが、私どもは、定額貯金の廃止、これをもってダウンサイジングを図っていく、また、この定額貯金の廃止によってダウンサイジングを図ると同時に、限度額の引き下げというものを行ってまいります。限度額の引き下げを行うことによって、当然ながらこれも資金量が縮小されていく、この縮小されていく中で、その規模の中で十分に経営としては成り立つという試算を御提示させていただきました。

 こうした形で、民業圧迫にはならないこの新たな貯金会社の設立というものを私どもはお示しをさせていただいております。

片山委員 あくまでやはり特殊会社法を書かれるということで、非常に公的規制がはっきりしたものということがわかりましたし、民業圧迫をチェックする機関も置かれないようでございます。

 今御指摘のあった民主党の経営試算ですが、十年後の郵便貯金の経常利益は八百七十六億円になると書いてございます。政府の試算は以前から二千四百七十一億円、つまり政府の三分の一しかないわけですが、これでも百兆円規模の運用主体としては、金利が急変したら非常に危ういという議論が二千四百七十一億円のときから国会であったわけでございます。

 ですから、百四十兆円になるという政府の試算の中でも、このうち三十五兆円は貸し出しとか債権流動化商品とかリスクをとって運用して、三千億円以上のオーダーの利益を出していかないと経営が安定するとは言えないという議論をしてきたわけですが、そこに八百七十六億円を出してこられたわけでございます。これで長短金利差のみの運用をやっていくということで、イールドカーブが逆にでもなったら一気に吹っ飛んで大赤字になってしまうんです。

 また、郵便の方も、生田総裁が、このままではじり貧で、新しい業務の確保が不可欠と何度もおっしゃっているのに、新規の業務がほとんどなくて三百億円が入ってくる。しかも、きのうの本会議場では、それが減っていくのではなくてふえてくることもあるというような見通しを具体的な業務もなくおっしゃっていたようですが、なぜそのようなことが可能なのか、お答えいただきたいと思います。

大串議員 お答え申し上げます。

 今の質問の中で、我々の昨日申し上げたシミュレーション、それから、我々がきのう申し上げた収益の見通しに関する御質問がございましたけれども、特にその中で、金利が上昇した場合には、相当な、財務的には厳しい状況になろうというような御指摘がございました。

 それに関して申しますと、金利の上昇に関して、あるいは金利の低下に関して、金融機関として財務上成り立つような経営をしていくというのは、アセットとライアビリティーをどういうふうにマネージしていくかというALMの、資産と負債の管理をどういうふうにやっていくか、管理が今後どういうふうになるかということだと思います。

 我々の案では、貯金が今後どのような推移で移動していくか、それから資産側がどういうふうに動いていくかを想定した上で、きっちりとしたALMを行って、金利の上昇にも耐えられるようなALMの仕組みをつくっていくということだと思います。

 そして、金利の上昇が経営に大きな影響を与えるというのであれば、基本的には、政府案の郵便貯金銀行においても、定額貯金を維持し、かつ国債で運用するということであれば、金利の上昇局面において相当厳しい状況になるということは前々から言われていたことでございますし、我々の案は定額貯金を廃していくわけですから、よりALM的には適切な運用ができるようになるというものだろうというふうに考えております。

片山委員 基本的に、民主党案では政府保証をつけたものの運用なんですから、安全確実な国債並びに政府保証債しかできないんですよ。さらに、財投債を買わないということは、そのほかの政府保証の対象は、百兆円規模ですから、もう国債しかないので、官から民へではなくて、官から官へなんですね。

 しかも、二百十兆円を十年で百兆円へとおっしゃっているが、一枚目にある以外は、その具体的な、減っていく試算を出してはおられないようですが、きのう伺ったところによると、一九八九年には郵貯の限度額が五百万円だった、そのころに郵貯が百三十兆円ぐらいだったので、百三十と百だからそんなにおかしくないでしょうというお答えをされていたように記憶しておりますが、当時、一九八九年には国民金融資産、個人は一千兆円でした。今は一千四百兆円ありますから、比例的に伸ばしても百八十兆円は超えていないとおかしいんですが、いかにしてこの百兆円をつくるかというと、先ほどの十年を五年と同じで、二百兆を百兆ということを途中でおっしゃっておられたので、初めに半分にすることありきなのかなというふうに考えるわけです。

 いずれにしても、リスクをとれない運用で、長短金利のさやだけでは利益は出るわけがないのであって、これを補っていくということになれば、当然、ネットワークを維持していくということを法律上書いておられるから、万が一のときの赤字は税金投入で埋めるんでしょうというお話があって、きのうも本会議でそのようにおっしゃっておられましたが、赤字は税金投入で埋めるということでよろしいんですね。そうでないと、全国サービス保障といっても絵にかいたもちになります。また、民主党案には政府案にあるような地域貢献基金的な発想もございませんから、それしかやりようがないんじゃないかと思いますが、そこを確認したいと思います。

永田議員 片山先輩、お久しぶりでございます。

 十年ちょっと前、私が係員だったときに補佐でおられた片山先輩の前で御説明を申し上げたのを、私はきのうのことのように思い出しております。まさか、きょうこうしてこの席を挟んでお話をする機会があるとは夢にも思いませんでした。

 さて、なぜ百兆円になるのかという話ですけれども、確かに、おっしゃるとおり、百三十兆円から、国民の金融資産が一・四倍になったんだから、百三十兆円の一・四倍になるのが自然だと考えるかもしれませんけれども、しかし、その間、やはり日本の金融マーケットというのは大変高度に近代化されておりまして、ほかにも運用手段は幾らでもあるわけですよ。あるいは、間接金融から直接金融へという流れもどんどんどんどん加速されている。そういうことを考えると、当時とやはり金融環境は随分違います。

 実際、我々は百兆円というふうに考えていますけれども、そうならない可能性だって僕は本当にあると思うんですよ。しかし、そうなるのが妥当だと私たちは信じているし、また、そう考えるだけの合理的な理由もあるわけです。ですから、そこは、こういう前提、政府の骨格経営試算の考え方とそう変わらない前提を置いているわけですから、そこについて主計官とか課長補佐のように詰め詰めになってもしようがないんじゃないのかなというふうに私は思っています。

 また、税金投入はするのかという話でしたけれども、これは、やはり最小限の金融機能は全国民に対して提供されるのが国民の権利である。国民の権利というのは、裏を返せば政府の義務ということであります。ですから、そこについて、全国民に対して最低限の金融サービスは提供するんだということを決めた以上は、万が一、本当に長短金利差が逆転するようなことがあって赤字になるようなことがあったら、それは最終的には税金を投入せざるを得ないということは私たちも否定はしていないんです。

 加えて、郵便事業についても、私たちは今でも郵便事業が多少取扱量が減っても、そんなに赤字になるものじゃないと思っています。しかし、本当に最終的には赤字になるかもしれないんです。そのときには、無理やり郵便料金を上げてその赤字を補っていくよりは、やはり通信手段を安価に提供するという国民の権利、そして政府の責務というものを考えた場合には、当然そこは税金を投入してもいいんだというふうに思っています。

 例えば、手紙が一通二百円も三百円もかかるような郵便料金だったらどうしますか。ラブレター一通出すのにも困るような環境じゃないですか。そうしたら、どうやって少子高齢化の時代に恋愛をしていくんですか。携帯メールの方がいいと言うかもしれないけれども、携帯電話の方が手紙よりもずっとずっと値段が高いんですよ。それを考えたら、やはり一通八十円とか五十円でラブレターが出せるというのは、僕はいい制度だと思いますよ。それを維持するために税金を投入するのは、僕はそんなに悪い話じゃないと思っています。ほかにも税金をもっともっと削るところがあるじゃないですか。そっちに手をつけるのが僕は先だと思うのです。

 以上です。

片山委員 永田委員、主計官説明どうもありがとうございました。

 そして、ラブレターのために税金投入をするという大変若々しいお考えでございましたが、この民主党の試算、最後のページなんですけれども、最後のページの左の下の表、資産のところ、二百五十兆円の資産が百三十七・五になると書いてあるんですが、ここの内訳が全部ブランクなんですね。

 今のお話を聞いていると、国債運用をこれまで以上にふやすとも言えないし、かといって、急激に減らしていくことによって国債管理政策が成り立たないところをこれ以上説明を求められても困るしというところでブランクなのかなと思っておるわけでございますが、永田委員は確かにかわいい後輩ですが、それ以上の説明はもう求めないことにいたしまして、ただいままでの答弁です。

 簡保の民営化は、その実現性に極めて技術的な困難が多い。そして、郵貯は実質一〇〇%官営で、民業圧迫のチェックもない。そして、規模の縮小と事業の制約をがちがちにかけているために、経営指標が非常に弱い、吹っ飛ぶような利益しか想定できない。そして、郵便ネットワークの維持には明確に税金投入とおっしゃっている。これが今の民主党案です。

 これについて、長年御苦労されて、私の選挙の応援に浜北に入っていただきました竹中大臣、どうぞ、お考えを伺いたいと思います。

竹中国務大臣 片山委員の今の御質問は、本当に我々が不思議だなと思っていることを的確に御指摘してくださっているというふうに聞いておりました。

 三点申し上げたいと思います。

 まず、民主党の案についてはよくわからないところが非常に多いということです。それを象徴的に示しますのは、私たちが法律だけで五百九ページのものを明確にお示ししているんですが、民主党の法律案は十ページでございますので、私たちに比べて二%の情報量しか提供をしてくれません。

 したがいまして、片山委員、大変御苦労なさって、推察をされていろいろ御質問されたわけですが、やはりしっかりとした政策論争をするためにはしっかりとした情報を提供していただきたい。制度設計はこれから考えるというようなものではなくて、しっかりとした制度設計を踏まえた、まさに対案を今後ぜひ闘わせたいものだというふうに思うのが第一点でございます。

 第二点。私は、やはり民主党の案は大きな政府であるというふうに思います。我々の試算によりますと、これは慶応大学の跡田教授の試算ですけれども、我々の案を進めていきますと、二〇一六年、家計の金融資産に占める政府のウエート、これは主として国債でありますけれども、五%ぐらいになる。したがって、家計の資産に占める政府のウエートは五%なわけですが、これは、民主党の案だと、私がラフに計算したところ、やはり一〇%ぐらいになります。したがいまして、民主党は私たちに比べて二倍の大きな政府の案であるというのが第二の点でございます。

 第三の点でございますけれども、やはり大変大きなリスクを抱えているということでございます。

 我々は、骨格経営試算の中で、今、長短のスプレッド、長期と短期のスプレッドが一・三%あるけれども、これがもし過去の平均値の一%に下がるだけで郵政全体の利益はなくなってしまうというふうに申し上げましたが、それに加えて、簡保を切り離すというようなことをやりますと、これも私のラフな試算でありますけれども、民主党案によると、郵便貯金銀行は二〇一六年に二千億円程度の赤字になるというふうに思われます。二千億円程度の赤字になると何が起こるかというと、郵政の大体二万人の給料が支払えなくなるということです。さもなくば、これは税金投入ということになるわけでございますけれども、もし二万人の給料が払えないということになりますと、これは特定局の三分の一が閉鎖に追い込まれるというようなリスクもはらんでいるということではないかと思います。

 その意味では、情報量が二%しかない、政府の規模は二倍である、そして大きなリスクを抱えているというのが私なりの印象でございます。

片山委員 ありがとうございました。

 公社の色合いは極めて濃く、官から民への姿が不十分なこの民主党案につきまして、最後に総理の御所見を伺って終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 対案を出されるということはいいことだと思います。しかし、この対案というのは、前国会で、公社のままで改革できるじゃないかと民主党は言っていた、政府案を盛んに批判して、株式会社化は改革ではないと言っていたのに、どう変わっちゃったのかなと。そして、三事業一体でなければだめだと政府案を批判していたのに、今度の対案は分離している。だから、民主党も随分変わったなと思っております。

片山委員 ありがとうございました。

二階委員長 次に、佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 さきの通常国会におきまして、参議院で郵政民営化関連法案が否決、廃案となりましたので、それを受けまして小泉総理は、郵政民営化は避けて通れない改革の本丸であり、我が国の改革の流れをとめてはならないという断固たる御決意のもとに衆議院を解散されました。こうした選挙において御選出いただき、そしてここに登院することとなりました私におきましては、郵政民営化の実現、そして、さらには構造改革の一層の推進こそが自分自身の使命と受けとめているところでございます。

 同時に、野党第一党の民主党が政府の民営化法案に対案を提出し、両法案を並行審議する運びとなりましたことは、日本の民主主義にとりましても画期的なことであり、ぜひこれを〇五年体制の慣例として定着させ、五五年体制に逆戻りをしないよう願うわけでございます。この並行審議の初日に質問に立たせていただくことは大変な光栄でありまして、責任重大でございます。

 こうした観点から、民主党提出の郵政改悪法案につきまして、以下……(発言する者あり)郵政改革法案につきまして、法案提出者に御質問申し上げます。

 まずは、経営試算につきまして御質問が先に出ておりましたので、その点から始めさせていただきます。民主党の郵政改革法案で目指しておられます郵政公社と郵便貯金会社の経営の健全性についてお伺いいたします。

 議論に入ります前に、まずは、民主党対案の経営試算におけます郵便貯金会社のブレークイーブンポイント、すなわち損益分岐点の貯金残高をお示しいただきたいと思います。御回答は一言でお願いいたします。

馬淵議員 お答えさせていただきます。

 この損益分岐点、これは、残高は今現在で七十五兆円程度と考えております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 七十五兆円という数字はやや意外でもございます。実際に政府案に基づいて経営計画の対案が出されたというふうに理解しておりますが、そのもともとの政府案に基づきますと、民営化の骨格経営試算では、貯金残高の損益分岐点はおよそ百兆円程度と試算されております。

 これをもとに民営化の政府案と民主党の対案を比較いたしますと、まず、政府案では、二〇一六年度末時点で百兆円であると見られます損益分岐点を上回って、約百四十兆円の貯金残高が見込まれるため、同年度に約三千七百億円の経常利益が確保される計算となっております。

 しかし、民主党の対案におきましては、同じ一六年度末の貯金残高は、まさしくこの骨格経営試算をもとにしますと、損益分岐点と見られます百兆円まで縮小するとされております。にもかかわらず、千二百億円の経常利益を見込んでいる背景、損益分岐点というのはそもそも利益がゼロになる点でありますが、にもかかわらず、千二百億円の経常利益を見込んでいる背景には、この利益のほぼ全額の千百億円が預金保険料を支払わないことによって捻出される利益であるからであります。まさに政府保証をつけることによる補助が行われているわけでございます。

 また、窓口業務と郵便事業を合わせた、対案におけます郵政公社としては、窓口委託料を〇・五%と、政府案の〇・三五%よりも高目に設定することで一六年度の経常利益を辛うじて黒字にしているわけであります。要するに、政府案の水準に委託手数料を低目に合わせて設定すればそもそも赤字に転落するため、それを避けるために、貯金会社から親会社であります、対案における郵政公社へわざわざ高目の手数料を支払って、そして損失補てんをする構図になっているわけであります。

 民主党対案では郵政公社の独立採算はほど遠く、かつ、貯金会社でさえも預金保険料を支払わないことによる利益捻出で成り立つという、いわゆる公的依存型の制度の温存になっているわけであります。将来的に金融環境が変化すれば直ちに赤字に転落する体質であることは間違いございません。

 政府保証や税金投入で制度全体を維持せざるを得ない民主党のいわゆる実質的な国有銀行存続法案の構想は、今後の財政再建期の我が国の国民利益に本当にかなう構想なのでしょうか。御見解をお願いいたします。

馬淵議員 まず、基本理念のところをしっかり御理解いただかないといけないと思います。

 私どもは、官で行うべきは官で、そして民で行うべきは民での切り分けを明確にする、それは国民の権利の保障のためにその切り分けを行うということを基本理念に掲げております。その上で、郵便貯金会社、私ども、公社の一〇〇%の会社で今回設立を予定しているわけであります。先ほど御指摘の部分で、この私どもの試算についてのお話がございました。

 これについては、政府が今日まで私どもに説明をしてきた骨格経営試算の原単位、それをもとにして算出をしております。その中で、試算の中身に関しては、当然ながら、市場の動向等を考えて、これは政府と必ずしも一致するとは限らない。私どもが訴えております郵便貯金会社において、経営の判断において試算の中身に関してはその区分が行われるわけでありますから、これをそのまま一致させてお考えになるのはいかがなものかと思われます。

 そして、まず何よりも、今御指摘の部分で、先ほど竹中大臣の中でも我々の試算に対しての御批判がございましたが、それは全くもって私ども心外だと言わざるを得ません。

 と申しますのは、この骨格経営試算における原単位、当然ながら、さまざまな一般的指標、数値、これについては、私どもは十日前に準備室の方に御提示をいただくようにお伝えをしておりました。しかし、この準備室への御提示のお願いを、これを出してこられたのはけさの二時半でございます。こうした形で、恣意的に数値を私どもには明らかにさせない中で、私どもは最低限わかり得る範囲の中で試算をしている。こうしたことで、これをためにする議論をされるというのは果たしてどうなんでしょうか。私どもは、今あるものからしっかりと明確にお伝えをすることが責務であると考えてお示しをしてきたわけであります。

 そして、今佐藤議員が、私どもの試算が破綻をする、金利の上昇局面等に破綻するとおっしゃっておりますが、きょう出てきた資料の中には、政府の運用益は私どもが想定するよりも高く設定をされている、言いかえれば、金利の上昇局面等が起きれば、逆に破綻を起こすのは政府案なわけです。このことの矛盾も踏まえて、十分によく御理解をいただいて、私どもの案、こうしてお出しをしておりますこの郵便貯金会社の損益、これを御判断いただきたいと思います。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 確かに、民主党の対案の経営試算を拝見いたしますと、政府の骨格経営試算にかなり基づいておりまして、実際のところ、修正を加えられましたのはごくわずか、二点ほど。手数料金額、これが〇・五%、先ほど申しましたように、政府の〇・三五%から、委託手数料を無理やり移転するために〇・五%に設定してあるという点、その結果発生します消費税額が上がるという点、租税の点等々、ごくわずかしか手を加えていないという実態もございますようです。

 要するに、政府の骨格経営試算そのままを丸のみした試算結果で、余り深く分析された注意深い試算結果とは見受けられない状況でございます。

 また、金利上昇期、当然ながら政府の骨格経営試算でも金利は一定と想定しているというふうに理解しておりますが、ただ、政府案にはストレステストというのも行っておりまして、ストレステストの結果、金利が上昇した場合には、ある一定の範囲内では収益が出せるという結果になっております。

 このようなレンジを置いて前提を置くのが生きた市場経済に対する対策であり、それに対しまして、民主党の対案では一つのシナリオしか提示されていない。これは極めて危険なシナリオではないかと申し上げざるを得ないと思います。

 次に、民主党案がおっしゃっておられます、資金を官から民へ確実に流しますという点についてお伺いさせていただきたいと思います。

 対案で提唱されております預金の預入限度額を五百万円にすることによって、郵貯の貯金残高は、現在の約二百十兆円から五十兆円程度しか少なくならないというふうに言われているわけでございます。政府が強制的に残高をそぎ落とすわけでございますが、いわゆる五十兆円の減少幅では、現行の残高に対してわずか四分の一しか実は縮小効果がございません。しかも、貯金会社は、政府案とは対照的に国有のまま存続することになっております。

 したがいまして、依然として巨大な公的金融機関を温存する民主党案でありまして、官から民への資金シフトを実現することがとてもできるとは思われませんが、いかがお考えでございましょうか。

長妻議員 お答えを申し上げます。

 我が党の案は、預け入れ限度額を五百万円に引き下げるということで預金量を百兆円にするということでございます。

 この根拠というのは、先ほども申し上げましたけれども、一九八九年、預け入れ限度額が五百万円だった当時の資金量が百三十兆円だった、そして我々は定額貯金を廃止します、それらもろもろのシミュレーションをして百兆円ということを申し上げております。

 多分、佐藤委員のお立場と我が党の考え方が根本的に違う点があるというふうに考えておりまして、先ほど公的制度の温存というようなお話がありましたけれども、我々は、この郵貯銀行を公的なものと公的じゃないものに分けて、公的なものはあくまで国の責任でやる、一〇〇%の子会社でやる、こういう位置づけです。

 過疎地をいろいろ調べますと、過疎地のお年寄り等々の方々は、やはり郵便局、何でそこになきゃいけないかというと、金融なんですね。例えば、お孫さんにお金を仕送りする、公共料金の振り込みをする、あるいは年金を受け取る、あるいは通信販売の振り込みをするということで。郵便配達事業は全部の郵便局でやっているわけでございませんので、郵便局自体は、郵便配達は、多少郵便局が過疎地になくなっても配達は担保されるということでありますが、必要なのは決済機能なんです、為替等々の。我々は、決済専門銀行として国の責任で残していく、これは公的な制度として金融機能を残していくということで一〇〇%の子会社にしているということでございます。そして、プラス、五百万円を下回る定期の貯金もそこにつけていくということでございます。

 そして、お金を市場に流していくというのが我々の案の根幹なんです。

 今は一千万円です、預け入れ限度額は。それを五百万円に下げると、当然、五百万円以上預金をされている方々は、満期まできちっとお金は持っていただきます。その満期が過ぎた場合、五百万円を超える方は、申しわけないけれども、次に預けるときは五百万円を超えるお金を預けられない。つまり、五百万円を超えるお金が預金者の皆様のもとに戻るんです。預金者の皆様の御判断で別の民間金融機関にお金が流れるということで、確実に官から民にお金が流れるのが我が党の案でございます。

 そして、何よりも我々が重視していますのは、民業圧迫なんです。政府のこの巨大な、もうければいい、先ほど利益のことをずっと言われておりましたけれども、どんどんもうかって肥大化して果たしていいんでしょうか。三つのリスクがある、この大きな銀行。世界で最も預金量が大きい銀行はどこか。もう金融の専門家だから御存じだと思いますが、みずほフィナンシャルグループです。七十兆円なんです。世界一の預金量。それの二倍、三倍のばかでかい、政府の小泉法案では、世界一の預金量の二倍、三倍のばかでかい銀行が東京の、日本のど真ん中にできる。これが経営危機になったら、税金で、投入されて助けられます。そしてこれが……(発言する者あり)いや、民間会社でも、一般の民間の都銀が破綻したときにどんどん税金で助けられているじゃないですか。そして、仮にそれが成功したとしても、これは民業圧迫になる。また民間の一般のメガバンクの不良債権がふえていくということで、非常にリスクが高い。

 我々は、リスクを低くして最低限の国の責務の銀行業務をやる。そして、お金はお返しして、皆様からそのお金を民間の金融機関に流していただく、そういう理念で事を進めておりますので、御理解をいただきたいと思います。

佐藤(ゆ)委員 御回答ありがとうございます。

 残念ながら、満期後に五百万円まで貯金の限度額を下げるとおっしゃられております。それによって、市場、官から民への資金の流れの移動が達成できるというふうにおっしゃっておられますが、実は、先ほど御回答の中で、竹中大臣がおっしゃられておりましたとおり、個人の金融資産の内訳を見ますと、公的な部分の資産がかなり民主党案では残されるというのが現状ではないかと危惧されます。

 詳細を申しますと、個人金融資産、今約千四百兆円あるというふうに言われておりますが、金融資産のうち郵貯、簡保、個人向け国債を合わせました現時点での公的債務の個人による資産保有は、大体全体の二六%程度と申し上げられると思います。これが二〇一六年度になりますと、政府の郵政民営化案に基づきますと、このシェアが大方五%まで低下することになります。

 これに対しまして、公的金融機関として維持する民主党案では、貯金の残高縮小、五百万円までの預入限度額を勘案いたしましても、個人の公的資産の保有は一〇%程度までしか下がらないというのが現状でございます。民主党案の、官から民への改革、預入限度額の半減をうたってはおりますが、それとは裏腹に、実はやはり大きな国有銀行のお墨つきを与えるものであると見てよろしいのではないかと考えられると思います。

 次に、財投債と公債についてお伺いさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

二階委員長 長妻昭君。

長妻議員 いや、今おっしゃられた点というのは非常に重要な点だと我々も考えております。

 公的な資金が国債の購入に向かっていく。この郵貯、簡保、平成十七年度で国債に百七十五兆円のお金が行っている。財投債、むだな独立行政法人、特殊法人へのお金が、十二・五兆円も皆様のお金が向かっていく。これは出口で絞るということも重要でございますが、一番重要なのは、国債の発行をなくせばいいんですよ。国債の発行を抑えるというのが重要なんです。国債を発行すればどこかが買います。郵貯が買わなくても民間銀行が買います。外国が買います。買わないということはありません、これはもう専門だから御存じだと思いますが。

 そういう意味では、私は、小泉総理が国債発行枠三十兆円を守るんだ、この公約を出したときは内心拍手しました。しかし、舌の根の乾かないうちに三十兆の発行枠を破ったじゃないですか。これを、制限を、もとから絞るということが一番民間に金を流す最も有効な手段だと私どもは考えておりまして、この三十兆円枠を撤廃してしまったときに、総理は我が党の菅直人議員の質問に、いや、そんな公約守らなくても大したことないと。でも、私はこれこそが、国債発行枠を抑えるということこそが改革の本丸だと思うんです。そういう意味では、入り口も断っていただくということもぜひ御理解いただきたいと思います。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 国債発行額を抑えるということが、今後の我が国の財政再建路線にとりまして極めて重要なことであることは間違いないと思います。私も全く同感でございますが、ただ、民主党の対案で具体的にお示しされております五百万円までの限度額の低下によって、国債発行額がその施策そのものによって下がるとはとても思われません。

 その理由といたしましては、民主党対案では財投債と公債の区別の言及がなされておりますが、ここの点がかなり疑問があるのではないかと危惧されます。それについて若干申し上げます。

 民主党案で禁止いたします財投債の購入についてですが、理由としましては、特殊法人のむだ遣いの仕組みを変えて出口改革につなげるため、そのために郵貯会社と保険会社による新規財投債の購入の禁止を掲げているというふうに理解しております。

 しかし、これは金融の常識とも言えるわけですが、公債も財投債も実は政府の信用を裏づけに発行されているものでありますから、市場価値としてはどちらも同格の公債でありまして、実際問題として、その両者を市場の中で経済価値で識別することはほとんどできないというのが現状であります。民主党が制度的に、法的にどのように財投債と公債の区別を加えようとしても、市場ではほぼ同じ条件で経済観点としては出回るというのが一般常識でございます。

 ところが、郵貯会社と保険会社では実質的に公債だけを購入する仕組みになるため、財投債を買わなくなります。ですから、郵貯と保険会社の資金は国債に回るということによって、国債市場の改革には、万が一財投債と公債の区別ができたとしてもつながらないというのが第一点目だと思います。

 それから、財投債を郵貯会社それから保険会社が買わなくなるために、財投債に対する一時的な需要は減りますが、その結果、財投債の市場変動によって価格が下がり金利が上がるという効果が起こります。その結果、購入方針に縛りのないむしろ民間の金融機関が、同じ政府の信用裏づけのもとでやや金利が上がった財投債をより多く購入するという運用のシフトが起こってくるのは当然でございます。その結果、価格が高い国債の購入をむしろ手控え、結果として、市場全体の動きとして見ますと、郵貯会社が公債のみの購入にシフトすれば、民間の金融機関はその分だけ公債購入を減らして財投債をより多く運用するためのシフトをする結果、市場全体として財投債に対する資金の流れというのはそれほど変わらず、結局、民主党案で言われます財投債の発行額すらも抑制することができないというのが市場原理ではないでしょうか。すなわち、公債と財投債の単なる法的な区別では、主張されている事実上の出口改革につながる施策には全くならないと申し上げられると思います。

 この点を踏まえまして、もう一度、公債と財投債の区別について、その方針と所見をお伺いしたいと思います。

大串議員 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、現在は普通の国債も財投債も、全く同じように通常の発行形式の中で発行されております。すなわち、例えば何千億円という発行がある月、ある週になされたときに、買う側の人は全くそれが、どこにお金が行くのかを知ることができず、発行された後に官報において、今回発行された何千億の分のこれだけの分が一般の国債、残りのこれだけの分が一般の財投債でしたと後から聞くわけです。すなわち、現在の仕組みをもって見ると、財投債にどれだけの資金を自分が投入しているのかがディスクロージャーの観点から全く明らかになっていない、投資家の観点からいって明らかになっていない、そういう仕組みになっております。

 これに関して、我々はこれをはっきりして、財投債に投資しているんだということをはっきりわかってもらう。そして、今財投債は、発行され始めて百二十兆円を超える多額の規模になっております。こういうふうに多額の規模になっていて、自分の買っているものがそうなんだということが明らかにわかってもらえるようになる、ここに一つの意義が見出せるんじゃなかろうかと思っております。

 そして、財投債に関しまして、これまで郵貯資金は毎年の発行額の三割から四割、多いときは五割近い額を郵貯資金が引き受けてきております。この郵貯資金が、金輪際財投債を引き受けませんというふうに制度的にしてしまうこと、これが財投債の引き受けに対してかなりの規律を与えるであろうという観点からこのような制度にしたところでございます。

佐藤(ゆ)委員 御質問いたしました質問について余りお答えいただけませんでしたので、結局のところは、やはり民主党案におけます官から民への改革、資金の流れの改革は、具体的な施策なく、抽象論ではないかと考えざるを得ないと思います。

 次にもう一つ、官から民への観点でお伺いしたいと思います。

 そもそも、民主党案は政府案と異なりまして、郵便貯金会社は郵政公社が一〇〇%出資する政府の孫会社になっております。すなわち、政府保証が残るために民営化の概念とはほど遠いわけですが、実質的な国有銀行の温存を宣言するものでもあります。

 また、先ほど片山委員への御回答で、民主党側から、政府が一〇〇%出資することでむしろガバナンスが向上するというような御回答もあったかと思います。むしろ、今の時代におきましては、五十年前の護送船団方式の欠陥点から、時代の流れとしては政府に頼るガバナンスではなく、市場の規律によりガバナンスを上げていくという方向性に改革が向いているのではないかと考える次第でございます。そのために民営化の概念は極めて重要と考えまして、実質的な国有銀行の概念、これをどう解釈するべきか、やはり国民の利益の観点から考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 民主党の実質的な国有銀行の構想では、その運用上、リスクをとることができないため、一層国債運用に集約せざるを得ない制度設計になっております。民主党さんが言われるような資金が地方金融機関や中小企業に回るという形での官から民への資金の流れというのは、国債市場への運用の集約化でむしろ期待できないのではないかとまず考えざるを得ません。

 それから同時に、政府案では、民へのトータルな制度的な移行によって競争を促し、そして収益力を維持する精神が貫かれる一方で、民主党案では、政府保証があって国債運用が中心で、利ざやの確保というのができない設計になっております。民主党案では、政府保証のもとで預金保険料を支払わないことによる無理やりの利益の捻出や郵政公社と貯金会社の間での利益の移転が必要になるなど、民主党が目指されておりますそもそもの独立採算性もとても望めない設計になっております。

 こうした収益力の格差はさきの民主党案の経営試算でも明らかになったとおりでありますが、経営が行き詰まった先の将来的な国民負担に対してやはり懸念が起きるわけでございます。官から民への移行は見せかけだけで、さりとて自律経営もできない自己矛盾だらけの制度に実効性があるとは思えませんが、この点、国民負担の点についてはいかがお考えでしょうか。

永田議員 お答えを申し上げます前にちょっと一言、質問の仕方について、私の感じたこと、三十秒だけ言わせてください。

 どうも先ほどから、民主党の案が成り立たないんじゃないか、お金がもうからないから成り立たないんじゃないかということをお役人が持っている数字をもとに試算されて、そういう議論をしていますけれども、そういうことは、はっきり言ってちょっとひきょうだと思いますね。数字はやはり役所が占有しているわけですし、それをもとに我々は試算をしたわけですから、それに対して、いやいや、ほかにも幅を持った分析をしなきゃいけないとか、そういうやり方というのは僕は余りフェアじゃないと思っています。

 そして、政治家の議論なんです。いいですか、政治家というのは主計官でもなければエコノミストでもないんです。ですから、政治家の考え方として、理念として、私たちが一番申し上げたいというか、強調しているのは、国民の権利として、最低限の金融サービスを提供することは政府の責務であるということを何度も申し上げているんです。先ほど片山先輩にも、同じ質問があったので同じような答弁をいたしましたけれども、結局、人が違っても質問は同じなんですよ。これでは、新しい人がいっぱい入ってきたかもしれないけれども、古色蒼然とした自民党とどう変わるのか、私は本当に疑問に思いますね。

 そして、いいですか、理念を語り合うのが政治家なんです。ですから、理念を私は申し上げているんです。国民の権利として最低限の決済性の預金は持つんだ。政府の孫会社だ。当たり前ですよ。そして、国民の権利として安全確実な預金あるいは決済機能というものが提供されなければならないと私は思っているわけですから、自由にリスクのある資産運用ができないのは当たり前じゃないですか。そして、リスクがない運用をするんだから、預金保険を払わないのは当たり前じゃないですか。安全確実で少額な、そういう運用手段あるいは預金手段があるというのは僕は当たり前のことだと思っています。

 消費税を上げていって家計が傷ついたらどうするんだと聞かれたら、いや、それは株でもうければいいんだとどなたかおっしゃったかもしれないけれども、そういう考え方とは違うんですよ。みんながみんな、リスクをとってもうけたいと思っているわけじゃないんです。最低限のことはリスクなく運用し、預けていきたい、そう思う人たちにこたえたいという理念を私たちは持っているんです。

 その理念に対して、自民党はどういうふうに考えるのか、要らないと考えるのかどうか、それを語り合うのが政治家というものですよ。主計官やエコノミストとは違うんですから、そういう骨太の大枠な理念を語り合う場にしましょうよ。ぜひそういう質問をしてください。

佐藤(ゆ)委員 最後に、時間が来ましたので、官から民へ資金の流れを変える、今お答えいただきました民主党の案につきまして、改革の本丸として、官から民へ、本来の資金の流れの改革を唱えられます小泉首相の所見をお伺いさせていただき、終わらせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 民主党の皆さんの答弁を聞いていますと、批判することにはなれていても批判されるとかっかする点においては、少しは勉強になったんじゃないかなと思っております。

 公社化のままで改革できると今まで言っていたわけですが、これはやはり国民の考えを見ると、民営化できるという判断でまずいな、それで簡保は民営化しようということで。しょっちゅう私批判を浴びています、中途半端な改革じゃないかと。まさに民主党案は、公社なのか、国の保証があるのか、民営化するのか、どっちなのかわからない中途半端な案だと思っております。

佐藤(ゆ)委員 総理、どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正です。

 新人で質問させていただけることを大変感謝しております。よろしくお願いをいたします。

 本年八月十日まで日本郵政公社で郵便事業に携わっていた経験に照らしまして、郵便事業を中心に、民主党案が現実的な選択肢となっているかなどを検証させていただきたいというふうに思います。

 政府案は、政府の基本理念であります小さな政府、民間にできることは民間へ、官から民へ、あるいは地域の郵便ネットワークの維持発展、そういった基本理念、これを実現するためにぜひとも民営化が必要という基本的考え方に立っております。その一方で、大改革ゆえに当然生じる国民の皆様や郵政公社職員の皆様が抱くさまざまな不安を解消するために、基本理念、これを変えない範囲で、曲げない範囲で、政策立案の技術を駆使してさまざまな工夫を施したすぐれて現実的な案となっております。

 私は鳥取二区で全く知名度のない新人として選挙を戦いましたが、まさに私がこの法案の内容を説明すると、乾いたスポンジが水を吸収するように、物すごい勢いで理解が深まりました。そして、選挙に勝つことができたわけであります。この法案の中身というのは、きちっと理解を得られれば絶大な国民の支持が得られるというふうに確信をしているところでございます。

 今回、大分変節について、民主党が立場を前国会と変えられたということについていろいろ御議論がありますけれども、私は、そこはもうほとんど自明のことでありますので、百歩譲って、それは選挙の結果そうされたということで理解をします。その結果出てきたものが内容次第ですぐれていれば、それはそれで一つのあり得る選択肢と私は考えるところであります。しかしながら、私はその内容も大問題であるというふうに認識をしております。

 政府案は、郵便事業の将来見通しがじり貧である、こういう認識に立って、民営化を前提として早期に経営の自由度を拡大する、手おくれになる前に国際物流事業への進出といったことによる新たな収入源を確保して、将来的にも地域の郵便ネットワークを健全な財政基盤のもとに維持していこう、こういう案であります。このためにも郵便事業の民営化が不可欠である、こういう立場でございます。

 これに対し、昨日の本会議において、民主党案のベースとなる郵便事業の将来見通しについての考えが示されました。郵便事業の売り上げ減少は長くは続かない、こういうお考えでございました。そして、さらなる経営合理化をすれば、二〇一六年といった中長期においても公社形態のままで十分独立採算が可能というものでございました。

 そこでまず、民主党の提案者にお伺いしたいと思います。

 郵便事業の将来、特にいわゆるじり貧の見通しについての認識をお聞かせください。特に、郵便事業の売り上げ減少は長くは続かない、さらに言えば、それで出る赤字は大したことはない、こういう御答弁がございましたけれども、これについてお伺いをいたします。

永田議員 郵便事業はこれからじり貧になるのか、どこまで利益が下がり続けるのか、そうした見通しについてというお話でありましたけれども、基本的には、じり貧だと言い始めたのは政府なんですよ。その政府が、じり貧を回避するために、ほかの業態もどんどんどんどん侵食していって利益を出していく、それによって赤字を補てんしようという法案を出してきたわけですね。ですから、じり貧だと言っている人と、じり貧だから改革しなきゃいけない、民営化して民業を圧迫して収益を上げていかなきゃいけないと言っている人が同じ人なんですよ。

 ですから、僕は、こういう法案を提出している政府がじり貧だという主張を展開したくなる気持ちはよくわかります。しかし、果たして、現実的に考えて、そういう郵便がどんどんどんどん減っていくという見通しが本当に正しいのかどうか、やはり政治家の見識で見てみなければならないと思っています。

 私はアメリカに二年間留学をさせていただきましたけれども、そのときやってくる手紙というのは、企業からのダイレクトメールがいっぱいあるわけですよ。あるいは、表面は何か自分の息子がどこか失踪しちゃったから、この子いないのというふうに写真を入れて、表面はそれを刷って、裏面は企業のダイレクトメールになっているとか、そういう手紙がいっぱい来たわけですよ。こういうサービスを提供できるというのは、僕はアメリカの郵便制度というのは本当にすごいなと思いました。

 実際、今取り扱っている郵便の多くは、恐らくは企業が出しているものが大半なんじゃないかと思います。個人が季節のあいさつとかラブレターとか、そういうものを出しているのは確かにあるかもしれないけれども、そういうものばかりでもなくて、やはり企業が携帯電話の利用明細とかクレジットカードの利用明細とか、そういうものを出す方が多いわけですよ。これから企業活動が活発化していけば、そういうような郵便というのは当然ふえてくる余地もあるわけです。

 人口は減ります。人口が減るからその分だけは確かに郵便は減るかもしれない。だけれども、それを越えて経済活動が活発になっていけば、当然底を打つ可能性はあるんですよ。ですから、そういう現実もぜひ見据えていただきたいなというふうに思います。

赤澤委員 郵便事業の売り上げは、電子メールとの競争などの理由で、ここ数年、毎年五百億円ずつ、パーセントでいえば毎年二、三%ずつ減少しております。

 今、永田議員おっしゃったように、ダイレクトメール、これについては我々も当然問題意識を持っております。郵政公社も、平成十五年から、公社発足以後ダイレクトメールを一生懸命やっております。にもかかわらず、数年前まで二兆円あった売り上げが既に一・八兆円に急減しております。あと十数年で半減しかねない状況であります。これは産業革命にも匹敵するような情報技術革命、すなわち電子メール、そしてこれから本格化する電子決済、これの普及という社会あるいは経済の構造的な大変換に伴う、技術革新に伴う売り上げの減少であります。この傾向は今後長く続くものと確信をいたします。

 永田議員の答弁によれば、景気が回復すれば手紙がふえる。それはそのとおりかもしれませんけれども、では、景気がまた悪くなったらどうするんですか。将来にわたって、きちっと郵政公社の採算が成り立つようにしていく、景気のいかんにかかわらず成り立つというふうに持っていくのが政治の仕事だろうと私は理解をしております。

 その一方で、離島、過疎地域を含め、全国あまねく郵便サービスを提供する義務を負っている公社は、その事業規模を簡単に縮小できません。コスト削減努力にも大きな制約があります。民主党のお考えになるほど経営合理化は簡単ではないことも指摘をさせていただきたいと思います。

 そこで、生田総裁にお伺いをいたします。

 郵便事業の将来見通しに関する御見解をいただきたいと思います。

生田参考人 まず、赤澤委員とこの席でこうやってお目にかかるのを、大変うれしく、誇りに思います。持ち前の御見識と人を引きつける大変なお人柄で立派な政治をしてくださることを期待します。

 お答えします。

 郵便事業は、公社化のときに、約五千八百億円の債務超過と構造赤、毎年赤字という状況で引き継ぎました。私はやはり郵便事業はほかからの補てんではやってはいけないと思います。郵便事業として黒字構造にして、国民負担なく、すなわち料金の値上げ等なしにユニバーサルサービスを維持していくということのために努力すべきと思いました。幸い、初年度に二百六十三億円、次年度に二百八十三億の黒字を出しましたけれども、これは瞬間的に出したので、構造は赤であります。

 そこで、なぜ赤かと考えますと、生産性の低さもありました。これはJPS等で今改善しております。それよりも、売り上げの九〇%ぐらいを占める郵便のところが、Eメールとの競争で毎年五、六%減ることであります。そこで、ゆうパックとかダイレクトメールとかいうふうなもので努力してきておりますが、全部差し引いてもやはり二、三%減るというのが現状。このままいきますと、相対取引ができないというふうな規制、それから直接関係ある部門以外には投資が難しいというふうな規制、国際郵便事業と投資ができないというふうな規制で、骨格経営試算が示しますとおり、先行きは、利益も売り上げもどんどん減ってかなり厳しい経営状況になる、国民負担なしに自律的にサービスを維持していくというのは経営上困難ではなかろうか、こんな感じでおります。

 そこで、私どもの努力の一つとして、いろいろなことをお願いしておりますが、せめて、世界から見ますと三周おくれぐらいの国際郵便事業について、少し前倒しで事業を始めさせていただきたいということで、それが今回の法案の一部として入っていることを大変評価させていただいております。

赤澤委員 私は、今の生田総裁のお話もいただき、質問を続けさせていただきたいと思います。

 私は、郵便事業の将来見通しについて、民主党案の郵便事業に関する部分の致命的な欠陥を見ます。真に日本国の、そして日本国民のためになる立法を行うためには、立法対象についての正しい認識を持つことが絶対に必要であると考えます。

 日本郵政公社と政府・与党は、郵便事業の将来見通しが公社形態のままではじり貧であるという認識、そしてそこから生じる危機意識を長らく共有しております。これが郵政民営化法案の出発点にございます。しかも、この点は、さきの通常国会の審議過程で再三明らかにされている点であります。いまだにこの点についての認識不足が残っているのはまことに残念であります。

 率直に申し上げれば、民主党案の郵便事業に関する部分、立法対象についての認識を誤っているため、出発点にも立てていない法案という感じがいたします。民主党案は、出発点を誤っているため、将来、国民生活に重大な影響を及ぼす可能性が大である点も、あわせて指摘をしておきます。

 昨日の本会議で、民主党は、郵便事業に関する見通しが万が一悪い方に外れた場合は税金の投入により国が郵便事業を支える旨、明確な答弁がありました。きょうもそういう答弁を繰り返されております。郵便事業のじり貧の将来見通し、これに照らせば、民主党案では、改革の絶好の機会を逸し、手おくれとなり、将来的に、郵便事業を支えるため、多額の税金を投入せざるを得なくなる可能性が大であります。これが小さな政府でありましょうか。大きな政府にほかならないと私は思います。

 次に、改革のスピード感について、政府案と民主党案を比較させていただきたいと思います。この点にも典型的に、民主党案が出発点を誤っていることの弊害が出ていると考えます。

 政府案は、郵便事業の将来見通しについての危機意識、これのもとに、改革の機を逸しないよう、手おくれにならないよう、民営化に先立って前倒しで公社の国際物流事業への進出を認めるというスピード感あふれる改革、すぐれて現実的な案となっております。

 この背景には、中国市場を初めとするアジアの物流市場の勢力図がここ一、二年で決まりかねないという現状認識もございます。民主党案で、その附則の中で、今後二〇〇七年九月末までの約二年間を費やして、公社の行う国際貨物運送に関する業務のあり方を検討する、こういうことになっておりますけれども、これでは、政府案と比べてスピード感に欠ける上、郵便事業の健全性あるいは地域の郵便ネットワークの維持、この確保の見通しが立たなくなると考えます。特に、民主党案では、国際物流事業への進出の最後のチャンス、これを逸する可能性が極めて大きいと確信をいたします。

 そこで、再度、生田総裁にお伺いいたします。郵政改革に求められるスピード感について、そのお考えを聞かせていただきたいと思います。

生田参考人 お答えします。

 政党間の政策について私がストレートにコメントするのはいかがかと思いますが、御質問でありますから、経営者ということで、全くニュートラルであります、思ったとおりをある程度話させていただきます。

 先ほど触れましたように、黒字構造化への大きな柱というのは、信書のところももちろん重要です。ですが、それに加えて、市場分野にあるダイレクトメールとかゆうパックとか、ほとんど手がついていない。先ほど申し上げましたが、いわば世界的に見ますと、日本の国際分野への進出というのは、グラウンドでいえば三周から五周ぐらいおくれているわけですね。そこに出ていって、ほかの海外の事業会社のように、やはり一定の仕事をするというのが不可欠だろうと考えております。

 国際分野に限っていいますと、世界は、アメリカのフェデックス、UPS、オランダのTNT、それからドイツのDHL、四社に、ほとんど世界地図は、経済地図は色塗られておりまして、彼らは今、抜けているアジアに猛然と入ってきておりまして、日本にも来ている。我が方は、法律で禁じられていますから、海外には事業展開としては何もできていない。その結果、日本発の法人が出しているエクスプレスサービスだけを見ても、それしか我々はやっていないんですけれども、何と我々はもう三位でありまして、ドイチェ・ポストが二九%、フェデックスが二六%、我がジャパン・ポストは一八%というていたらくでありまして、今、一生懸命歯どめをかけている。公社になってから大体歯どめがかかりましたが、歯どめをかけているところであります。

 最近、ドイチェ・ポストは、五十五億ユーロ、七千五百億円かけて英国の最大フォワーダーのエクセルを買収しましたね。これで世界で断トツの物流企業になります。七千五百億。ちなみにこの資金はどこから出たか。親会社であるドイチェ・ポストが子会社であるドイチェ・ポストバンクの株を売った売却益でやっているわけであります。これは、地域貢献基金の関連があるのであえて一言触れましたけれども、その資金でやって強くしているわけであります。そういうことで、どんどん押してきている。

 国際問題についていいますと、自民党案がどうの民主党案がどうのこうのというよりも、経営者の観点からいいますと、これだけおくれているんですから、もう失うべき時間はないと思います。

 スピード感というお話でしたが、実はスピードがなかったんですよ、何もなかったんです。だけれども、気がついたら後はもう一気呵成にやはり海外に出て、これは日本国内の民業圧迫にも何もなりません、国際市場に応分に出る努力をするということでありますから、一刻も早くできるような仕組みにしていただきたいと思っております。

赤澤委員 一言で申し上げれば、民主党案では手おくれであります。公社が国際物流事業に進出できるころには、アジアの物流市場のふたが閉じているということにもなりかねません。出発点、すなわち立法対象についての認識を誤り、危機意識が欠如した状態で法案をつくるとこのようになるという悪い例が民主党案であると私は考えます。

 公社は、発足以後、生田総裁のたぐいまれなリーダーシップのもと、中期経営計画、アクションプランによる並々ならぬ努力、これで二年連続で郵便事業の黒字を計上しております。将来に関するじり貧の見込みを踏まえて、現状で最大限努力した上で、一刻も早い経営の自由度の拡大、これを渇望しております。

 実際に公社で働いていたからこそ実感として申し上げられることですが、民主党案のように、この重要な点について、判断を政治が回避して検討先送り、政府に丸投げするようでは、将来の経営の自由度の拡大に期待し、いわばそれを前提として、現行の公社制度のもとでの可能な限りの改革、これに日々邁進しているやる気にあふれた郵政公社職員の士気を大きく損なうと私は確信をいたします。

 そこで、民主党の提案者にお尋ねをいたします。

 民主党案、これは、二つ以上設立される郵政保険会社の設立基準でありますとか、郵便事業、郵便貯金事業の経営の自由度の拡大、これは今お伺いした点であります、あるいは、公社による郵便貯金会社、郵便保険会社の株式の保有のあり方、極めて多くの重要な課題に関する検討を政府に丸投げをしておられます。

 重要な政治判断を回避して検討にいたずらに時間を費やし、それも、多くの重要な課題について今後約二年もの時間を費やし、かつ、政府に丸投げする、これは一体なぜですか。これまで十分な検討の時間があったのに、なぜ具体案を法案に盛り込まないのでしょうか。対案とは名ばかりで、中身の全く詰まっていない、率直に申し上げれば検討のしようもない法案を提出してまで改革をおくらせようとするメリットは何ですか、お伺いいたします。

長妻議員 お答えを申し上げます。

 改革が遅いという御指摘でございますけれども、我が党の案は、二〇〇七年から、その五年後に、簡保完全民営化、そして郵貯銀行も、基本的には民営化、一〇〇%政府が株を持つということでございますが。政府案は、ある意味では十年ということで、民営化のスパンでいえば我が党は半分短いということと、先ほど御指摘いただきました利益、全国ネットワークが維持できないんじゃないか、こういう御指摘でございますが、我々も、政府の骨格経営試算の試算を参考にさせていただきますと、公社は二〇一六年度に三百億円の利益が出る。

 そして、やはり赤澤委員と我が党の立場が決定的に違いますのは、我が党は、最低限国がやらなきゃいけない責務を公社に担わせる。何でもかんでも進出して、どんどんもうければいいんだということではございません。

 私は、民業圧迫ということを考えるときに、今度の政府案は、コンビニ化して、そこで住宅リフォームからあるいは銀行業から、あるいはあらゆる株取引も含めて、コンビニは、例えばセブンイレブンでも全国一万店舗しかございません。その二倍以上の郵便局がそういうところにどんどん進出していくことによって民業圧迫になる、これを非常に懸念をしております。

 そして、世界に目を転じますと、この先生御指摘の民営化でございますけれども、結局、郵便事業で株を民間に放出しているところというのは、ドイツとオランダ二カ国のみでございまして、しかも、そのドイツ・ポストは、一九九〇年に二万九千二百八十五局郵便局ございましたが、これが十二年後の二〇〇二年度には一万二千六百八十三ということで、三分の一に郵便局が減っております。九〇年には三万局ありましたフルサービスの直営局が二〇〇一年度には五千三百三十一局ということで、かなり激減しているんです。理由としては、これはもちろん、地方の不採算店を削減した、地方サービスを削減した、郵便局の跡地を売却した資金で何とか利益を出している、こういうことでございまして、一概に民営化すれば過疎地の郵便局が保てるということにはならない。これは我々は、最低限、国の責務を考えた上での検討を加えております。

 ちなみに、この日本では郵便局が、これはもう先生御存じだと思いますけれども、二万四千局の郵便局のうち過疎地に三割もございます。過疎地の定義というのは、これは過疎地法とかいろいろな法律がございますけれども、そして皆様の近くには、郵便局以外も、今までは農協や漁協の信用事業をやっていた店舗がございましたが、この店舗を見ますと、平成九年、三千五百九店舗、これは過疎地だけでございますけれども、農協の店舗、これが平成十四年度には二千六百四十三店舗ということで、過疎地の農協の店舗も二四%も減っております。

 どんどんどんどん信用事業の店舗が減って郵便局だけ残る、こういう状態になったときに、国の最低限の責務として、最小限、最小限、最小限の利益をたくさん出すということを考えるのではなくて、最小限の利益を出して、そして維持をしていく、あとはもう民間に自由にやっていただく。政府案では、半官半民の独占企業がさらにばんばん利益を出していくということでは、民業圧迫に当たってしまう。

 そして最後に、我が党案の法律の御指摘もございましたけれども、我が党の法律では、第九条に、公社は今まで以上に役職員数のリストラをしてください、そして何よりも、かんぽの宿とかメルパルクとかいろいろなリゾート施設ございます、むだな施設、これも全部売却するというのを法律の中で入れております。

 そして、もう一つは天下り禁止、これは、道路公団の民営化、十月一日になりましたけれども、新会社に公団の役職員がどんどん横滑りをして、取締役が天下りに占められておりますけれども、我が党案では、この郵政事業の子会社である郵便貯金あるいは簡保、あるいはファミリー企業等々には天下りを禁止するというのも第九条に入れているわけでございまして、そういう徹底した合理化を進めた上で、我が党としては、維持できる、こういう結論でございます。

赤澤委員 特に今のお答えについては、私としては、その経営合理化、おっしゃっていたこと、非常に現実的ではないなというふうに感じます。

 人件費を削ろうとしても、全国津々浦々、郵便を配達しなきゃいけない、そういう義務を持っている郵政公社について、そんなに簡単に人件費、郵便局舎といったものを削れるものではありません。非常にマイナーな点で経営合理化の努力をしても、それによって中長期的にいい見通しを持てるというものでないのは、先ほどの生田総裁の答弁にもあらわれているとおりでございます。そのことについても、ぜひ御理解をいただきたいというふうに考えます。

 私は、民主党の対案も大事だと思いますが、それ以上に重要な点についてお伺いをいたします。

 それは、さきの選挙で国民の絶大な支持をいただいた政府案の実施段階において、郵政民営化関連諸法が導入する制度に魂を入れるということでございます。

 これまで、日本の将来にとって欠かせない数々の改革、これをなし遂げてこられた小泉総理、竹中大臣のチーム、郵政民営化を推進する上で手抜かりはないと私は頭では理解をしておりますが、ごく最近まで公社に身を置いていた身としては、お尋ねせずにはいられない点がございます。

 現在、公社において、生田総裁という希代の名経営者が、来るべき民営化を前提に大車輪で経営改革をしております。中期経営計画、アクションプラン、こういったものに基づいて、売り上げが五百億円ずつ毎年減る郵便事業において二百億円を超える利益を立て続けに上げておられます。これはもう離れわざに近いと思いますけれども、この生田総裁の強力なリーダーシップのもとで、現在、郵政公社全員が奮い立って改革に邁進しているところでございます。

 そこで私の懸念は、現在、非常な高速で改革にばく進中の公社と、来年一月に立ち上がるそういう予定の準備企画会社、この両社の間でいかにして整合性、連続性のとれた形の運営、これを維持していくかという問題でございます。現在の公社の改革の勢い、職員の士気の高さ、こういったものをいかにして新会社に円滑に移行できるか。郵政民営化に魂を入れられるかどうかは、ここが分かれ目であると私は考えております。

 最有力な一案として、二〇〇七年十月以降、あるいは四月以降かもしれませんが、民営化後の郵政関連法人のかじ取りについて個人的には消極的な見解を示しておられる生田総裁に、場合によっては経営委員として準備企画会社へ御参加いただくことも含めて、経営委員の人選、準備企画会社の運営について細心の注意を払う必要があると私は考えております。

 そこで総理に伺います。

 これまでの生田総裁率いる公社の経営改革のための奮闘ぶり、これについてどのような評価をされておられますか。あわせて、民営化を成功させるために、生田総裁による経営改革の精神、これにこたえて全力を挙げている公社職員の士気の高さ、これが民営化後の各社に途切れることなく継承されるよう、経営委員会委員の人選などにおいて十分な配慮、これがなされることが決定的に重要であり、そのことこそが、郵政民営化に、その政府案が構築する、現実的かつすぐれた制度に魂を入れるということになると考えますが、総理の御見解をいただきます。

小泉内閣総理大臣 郵便局の仕事をよく理解されて現場の体験をされてきた赤澤議員ですから、的確な御指摘、または、これからの民営化会社に対する懸念等おありかと思いますが、おかげさまで、生田総裁というよき指導者を得て郵政公社も、民営化しなきゃならないという意識改革がはっきりとしてきたと思います。かつては、何とか民営化を阻止したいという状況から、このままではじり貧になる、さらに悪化する前に将来の展望を見出そう、また、やればできるという意識改革に持ってきたのは、生田総裁の指導力のたまものだと思っております。

 特に、民間の経営者からいわゆる公務員の仕事の分野に入ってきて、また、この郵政公社の労働組合というのは、もうかなりいろいろな面で強力なんです。まあ、いろいろな面でというのは余り言わない方がいいと思いますけれども、そういういわゆる公務員の意識改革というのは大変だったと思いますね。

 しかし、もう既に今の段階では、公社のままで、公務員のままでこの事業を続けていくという状況にはないということを悟ったと思います。やはり民間の経営感覚を入れていこう、民間の企業に太刀打ちできるような、そして将来、税金投入されないように、収益を上げられる企業として成り立たせていくためにはよほどの覚悟が必要だということだと思います。

 そういう点から、今回の政府の郵政民営化法案は、今の公社の方々の雇用という面についても十分配慮している、同時に、民営化したら郵便局がなくなるんじゃないか、郵便局のサービスが機能しなくなるんではないかという面においても配慮をしている法案であります。いわば、ある面においては、民営化賛成論者からも民営化反対論者からも、不安のある点にどういう対応をしようかという両方の配慮をした案なんです。

 そういう国民の郵便局のネットワーク、これを資産として考えて、今後民営化の意識を持って利益を出してもらう、会社としてやっていけるような体制を整えてきたのが今回の法案でありますし、今後、新しい経営委員会の役割も非常に大きいと思います。

 ただ民営化すれば発展するということではありません。国の、役所の仕事であろうが民間の仕事であろうが、経営者の優劣によって大きく違ってまいります。そういう点から、生田総裁の卓越した経営手腕、これが生かされるように、今後も、経営委員会の人選なり将来の幹部、首脳の体制など、十分、御指摘のとおり配慮していかなきゃならないと思っております。

赤澤委員 最後に、民主党案について再度コメントいたします。

 郵便事業に限らず、全体として見ても、民主党案は基本方針の羅列のみであります。基本方針を実現するための法律上の措置が求められるような重要かつ困難な政治判断、これは軒並み政府に丸投げをして、不完全なものとなっております。改革の先送りとのそしりを免れないというふうに考えます。

 すべての重要課題について政府案への対案を用意するという前原代表の立派な御決意にもかかわらず、私はこれは評価をしておりますけれども、郵政改革に関する今回の民主党案、残念ながら、対案という名に値しないものと私は考えます。したがって、対案を用意するとの最初の試みはあえなく失敗したのではないかというのが私の見解でございます。

 対案とは名ばかりの今回の民主党案にこだわることなく、これを直ちに撤回して、政府案の実現に協力することこそ、むしろ現実的な対応として評価に値すると考える点を指摘いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 私も通常国会でこの委員会の委員として審議に参加をいたしまして、百九時間の審議に及びました。また、たびたび質問をいたしましたので、法案の成立というのを強く期待しておりまして、参議院本会議で否決されたときは本当に残念でございました。このたび、総選挙を経て、再びこの委員会で法案審議が始まるということは、大変個人的にも感慨深いものがございます。

 そこで、まず総理に、この郵政民営化法案の再度審議が始まった、この件についての率直な御感想を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 郵政民営化の基本的な考え方に関して、公明党は率先して民営化に賛成という基本方針を示していただきまして、これまで法案づくりにもかかわり、協力していただいたこと、感謝申し上げます。

 おかげさまで、一度国会で廃案になった郵政民営化法案がこうして、選挙の結果、国民の多くが民営化は賛成だ、必要だという声にこたえて、この民営化法案が今審議されて、成立に向けて進んでいるということは、今まで公明党の力強い御支援があったからであり、そして同時に、今、多くの国民の期待にこたえて、自民党もこれに向けて、民意を尊重しようという形で、協力体制ができてきた。さらに、反対していた野党の民主党までが、前国会の、公社のままで改革、十分だ、株式会社じゃ民営化できないと言っていたのを転換していただいて、やはり公社のままじゃだめだということで、何とか、協力したくないけれども協力しなきゃいかぬとか、それも何だかおもしろくないなといいながらも、この民営化の流れは避けられないなという形になってきたということは、やはり選挙というのは大きな意味があったなと思っております。

 これから、しっかりとした民営化の方向というものを維持して、国民の心配のない、今の郵便局のネットワークサービスを維持し、発展させていくような形でこの民営化の実現を期したいと思っております。

石井(啓)委員 総選挙の際に、この郵政民営化を私説明いたしますと、有権者の皆様のやはり最も関心が高かったことの一つは、自分たちの身近にある郵便局が果たして存続するのかどうかという点でございました。郵便局の設置が今後どうなるかということでございます。

 設置基準につきましてはこれまでもたびたび御説明があったところでありますけれども、国民の皆さんの不安を払拭していただくために、きょうはせっかくテレビ、ラジオで中継がございますので、郵便局の設置基準について、改めて御説明をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、国民の皆様、地元の郵便局のことを大変やはり御懸念であるということは我々も十分に承知をしております。

 まず、そこで、郵便局の設置につきましては、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づける、そしてさらに、省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とするということを規定することとしているところでございます。もちろん都市部についても、国民の利便性に支障の生じることのないよう、十分な配慮をする考えでございます。

 省令の内容でございますが、今、過疎地につきましては、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持するということを申し上げたところでございますが、加えまして、地域住民の需要に適切に対応することができるよう設置されていること、これが第一。第二、いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置されていること、そして第三に、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されている、そういう基準を定めることを考えております。

 過疎地の定義でございますけれども、過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域、離島振興法の離島振興対策実施地域、沖縄振興特別措置法に定められる離島、奄美群島、小笠原諸島、半島振興法の半島振興対策実施地域、山村振興法の振興山村を定める考えでございます。

 また、都市部におきましても、先ほどの三つの基準、地域住民の需要に適切に対応することができるよう設置されていること云々という基準が適用されるわけでございます。

 そのような措置によりまして、万が一にも国民の利便に支障が生じないように十分に配意して、この大切な郵便局のネットワークを国民の資産としてしっかりと維持していきたいと考えております。

石井(啓)委員 将来的に、郵便局の設置に関して、合理的な範囲での改廃、整理統合というのは当然あろうかと思いますけれども、今答弁がございましたように、万が一にも国民の利便性に支障が生じないようにする、この点が最も重要であると思います。

 したがって、この点について、改めて総理に確認をいたしたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 これから民営化された際に、郵便局の機能、利便、支障ないように対応をしっかりせよということだと思いますが、今、公社のままでも、それは、ある面においてはふえるところもあるし減るところもある。民営化になれば、人口の動態、あるいは、新しい機能も我々が想像できない分野から提供される時代が来るかもしれないということを考えますと、すべての郵便局がそのままであるということはあり得ないです。当然、あるところには、なくしても機能は維持できるところもあるでしょうし、あるいは、民営化されたから減るというのじゃなくて、ふやすところも出てくるでしょう。そういう柔軟な体制をとれるのが民営化の一つの利点でありますから。

 しかし、この郵便局というものは国民の資産である、ネットワークをしっかりと維持して国民の利便性に支障を来さないような対応を法的にも措置しておりますし、これからの経営者にも、そのようなことについては十分配慮することによって収益を上げられる体制をつくっていただきたいと思います。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 続いて、郵便局は存続したとしても、郵便局のサービスが縮小するのではないか、こういう心配もございました、特に貯金、保険のサービスでございますけれども。

 今回の法案では、いわゆる全国あまねく郵便局において金融サービスを行うという金融のユニバーサルサービスについては、法律上の義務づけはございませんけれども、いろいろな工夫によって実質的に確保されていると思います。

 一つは、郵便貯金銀行または郵便保険会社に銀行あるいは保険としてのみなし免許を与える際に、郵便局会社と長期一括の代理店契約あるいは保険募集人契約、これを義務づける。あるいは、万が一にも民営化した後に不採算の郵便局で金融サービスが難しくなった、こういう際には社会・地域貢献基金の活用を行う。あるいは、完全民営化後も株式の持ち合いを妨げないということによりまして一体的な経営を可能とする。こういうことによって、事実上金融サービスが維持できるような工夫がされているというふうに理解をしております。

 ところで、この国会におきまして銀行法の改正案が提出をされておりまして、銀行の代理店業務の規制緩和が行われるという案が提出をされています。これが成立いたしますと、いろいろな業務を行っている方が、今後銀行代理店に参入することが可能になる。例えば、百貨店ですとかスーパーですとか、あるいは、場合によってはコンビニですとかガソリンスタンドですとか、いろいろなところが銀行代理店業務をやれるようになるんですけれども、そうなりますと、郵便貯金銀行と郵便局会社との長期一括契約というのがきちんと更新をされるのだろうか、そういう担保はあるのか、この点について、一点確認をさせていただきたいと思います。

 もう一つあわせて確認いたしたいのは、社会・地域貢献基金でございますけれども、法律上は、積み立ては一兆円までが義務づけられておりまして、二兆円までは一兆円までと同じルールで積み立てる、こういうことになっていますが、これは政府・与党合意等々の経緯から考えて、この社会・地域貢献基金は事実上は二兆円まで積むことになるんだ、こういう理解をしておりますが、その点についての確認もさせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 二問御質問いただきましたが、まず、最初の銀行法を改正するということに絡みまして、郵便局の窓口で郵便貯金銀行等々のサービスが安定的に提供されるのかという点でございますけれども、これは基本的には、もう委員御自身がいろいろ御紹介くださいましたように、長期安定的な代理店契約を結ぶ、基金も設けてしっかりとその維持を図る、さらには経営の判断に応じまして一体的な経営を可能としている等々、幾つもの担保があるわけでございます。

 銀行法の改正そのものは、実は郵政民営化とは別の問題としまして、規制緩和の観点から今国会に法案が提出されているものと承知をしておりますので、これは銀行法の改正いかんにかかわらず郵便局会社としては銀行代理店になることができる、そのような仕組みをとっております。

 いずれにしましても、これは郵便局ネットワークを広く民間金融機関に開放するという意味、ほかにもまたネットワークが代理店業務を行って競争に参入してきまして、そして市場を活性化するという効果があるというふうに考えております。

 郵便貯金銀行、郵便保険会社というのは、設立の時点では少なくとも自身の営業店舗を持たないわけでございますから、郵便貯金銀行、保険会社、そして窓口の双方の利害を考えますと、想定されるような長期安定的な契約というのが安定して続いていくというふうに私たちは想定しているわけでございます。

 二番目の基金の積み立てでございますが、我々は、基金一兆円あれば資金交付に充てる運用益が不足することはないというふうに基本的には考えております。しかしながら、政府・与党の間でのさまざまな議論を通しまして、基金の積み立てに上限を設定する必要はないだろう。したがって、必要がある場合、経営の判断に応じて二兆円まで積み立てを継続できるということにしたものでございます。

 また、そうする場合には、これは株主との関係も生じ得るものですから、一定のルールのもとでしっかりと積み立ててくださいということも法律で規定しているわけでございます。

 基本的には一兆円あれば足りるというふうな判断をしておりますが、必要に応じまして二兆円までの基金の積み立てというのも安定的に行われるような仕組みにしているわけであります。

石井(啓)委員 それから、総選挙の際によく聞かれた質問があるんですけれども、郵便貯金銀行、簡易保険会社が外資に乗っ取られるんじゃないか、買収されるんじゃないか、こういう主張をされるところがありまして、そういう心配はないんですかという質問がよく聞かれました。

 その主張の中身を聞きますと、かつて、長期信用銀行が破綻をしてリップルウッド社に買い取られた、そのことを取り上げて、外資に買収をされる、こういう主張でありましたけれども、そもそも今回の郵政民営化は、郵便貯金銀行、簡易保険会社の経営の健全性を確保するものであって、破綻するという可能性はほとんどない。そういうごくわずかな可能性を取り上げて外資の買収云々というのは、私は、針小棒大な主張であって、杞憂にすぎない、こういうふうに思いますけれども、いかがでありましょうか。

竹中国務大臣 旧長銀との関係で御懸念がある、そういう声があると。私もそういう声は承知をしております。しかし、そういうことが生じないように、やはり二段階でしっかりと制度設計をしているつもりでございます。

 まず、何といってもこの郵便貯金銀行と保険会社、金融二社がしっかりと財務の健全性を保って、安定的に経営されていくこと、それがやはり基本であるというふうに思います。

 これに関しましては、銀行法、保険業法が適用される、そして、監督当局が、その厳しい民間のALMとも絡めてしっかりとチェックをしていくという仕組みにしております。

 したがいまして、新規の業務を展開していく場合にも、当初は民間とのイコールフッティングを図りながら民営化委員会が適切な意見を言う、そして監督当局がしっかりとチェックするという健全な業務運営体制をとるようにしておりますので、我々としては、その体制をしっかりと運用していくという決意でおります。

 それに加えまして、より個別のと申しますか、外資に対する懸念、敵対的買収に対する懸念等々についても、法律的な枠組みは整っているというふうに考えております。

 まず、金融二社は、銀行法、そして保険業法の適用を受けますので、これは外国資本を含めて、内外の資本を問わず、同社の二〇%超の株式を取得する場合には内閣総理大臣の認可が必要になります。株主として適正かどうかというチェックがそこでしっかりとなされるというわけでございます。

 また、敵対的買収につきましては、会社法の一般的な規定を活用して防御策を講ずることとしております。これは、民営化の準備の段階で、どのような規定を活用するのが最も有効であるかということをしっかりと判断して、我々も適切な関与をしていきたいと思っております。

石井(啓)委員 ここで、政策金融改革について一問お尋ねしたいと思います。

 この郵政民営化というのは資金の入り口の改革に当たる、こういうふうに言われております。それとあわせて、資金の使い手、資金の出口であります特殊法人あるいは政策金融機関の改革が重要なわけであります。

 特殊法人につきましては、ことしの十月一日に道路公団が民営化をいたしましたように、相当進められてきております。政府系金融機関につきましては、先行して住宅金融公庫の改革が行われておりますけれども、残る八つの政府系金融機関については、この秋改革が行われるということになります。

 この政府系金融機関につきましては、私、やはり民業補完に徹する、それで、真に必要な分野に限定をして、その業務を圧縮していく、こういうことが必要かと思いますので、現在担っている一つ一つの分野について、果たして本当に政策金融として必要なのかどうか、きちんと検証するということが重要だというふうに思っています。

 その上で、きょうは、特に中小企業金融について申し上げたいのでありますけれども、なかなか民間の方も、中小企業金融、細かい融資というのは余りやりたがらないというところもございますし、景気が悪くなるとすぐ貸し渋り、貸しはがしに走るというようなこともありまして、実は先日予算委員会で竹中大臣にもうお伺いしたんですけれども、海外でもやはり中小企業に対して政策金融というのは相当な配慮が行われている。こういった点からいきまして、円滑かつ効率的な中小企業金融の確保についてはぜひ御配慮をいただきたいと思います。総理の御答弁をお願い申し上げます。

小泉内閣総理大臣 政府系金融機関の統廃合を含めた改革、これから進めていくわけでありますが、一度機関というものができますと、全部必要だからできたんだ、廃止する必要はないという主張が必ずなされるんですけれども、できるだけ簡素で効率的な政府をつくる、民間にできることは民間にということに賛成ならば、やはり官の分野の金融機関も民業の補完に徹しようということから進めていかなきゃならないと思っております。

 また、中小企業金融におきましても、実際、厳しい資金需要のときに民間の金融機関は貸してくれないという声が各地域においてあります。そういう中でも、真に必要な資金の供給について、政府機関が必要か、あるいは政府が支援することによって民間金融機関でもできるんじゃないかという点もあると思います。

 そういう点も含めてよく検討して、現状維持がいいことではない、現に住宅金融公庫も廃止しようとしたときには、こういう住宅金融公庫、民間が貸してくれない、だから絶対必要で、廃止するなんてとんでもないという強い反対論も起きましたけれども、結果的に、やろうと思えばできて、むしろ、かつての住宅金融公庫がやっていた商品というものは、民間の金融機関が十分やっている、そして廃止することができたということを考えれば、できないできないという主張は、いざ廃止、統廃合が出てきますと強くなりますから、それだけを聞かないで、もっと全体を見て、民の補完であるという観点からこの政府関係機関の改革に進んでいかなきゃならないと思っております。

石井(啓)委員 私どもも、特定の役所が陳情するから廃止しない、そういうことは一切考えておりませんで、あくまでも必要な機能を残すという観点からこの政策金融改革に臨んでまいりたいと思います。

 残る時間、政府案と民主党案との違いについて質問させていただきたいと思います。

 民主党案では郵貯の預け入れ限度額を引き下げていくということが最大の特徴でありますけれども、来年度中に一千万円の預け入れ限度額を七百万円に引き下げる、再来年の十月一日以降はさらに五百万円に引き下げる、こういうことであります。郵政公社の方のデータによりますと、現状で、七百万円超の預金残高は約二十四兆円、五百万円超の貯金残高は約五十兆円あるということでありますけれども、預け入れ限度額を引き下げることによって何万人の預金者に影響するのかということが一つ。

 そして、こういうふうに強制的に引き下げるという措置が本当に実現ができるのかどうか。その実効性についてはどうなのか。まず民主党の提出者、続いて竹中大臣にお伺いしたいと思います。

三谷議員 大変いい御質問をありがとうございます。

 まず、何万人の預金者に影響が出るのかという御質問ですが、郵政公社の資料によりますと、五百万円超の預金者は千六百万人いるということですので、千六百万人の方々に影響が出るということになります。

 また、実現性ということですが、これは我が党案を御採択いただければ、そのまま実現できることになります。

 補足をいたしますと、そもそもこの預け入れ限度額ですけれども、もともと三百万円でした。これが八八年に五百万円に上がりまして、また九〇年には五百万から七百万に、そして九一年、七百万から一千万に引き上げられてきたという経緯がございます。そもそも、このようになし崩し的に引き上げられたことこそ問題だというふうに考えています。

 我が党案におきましては、預け入れ限度額を引き下げるといいましても、その経過措置についてきちんと考えております。

 例えば、現在、一千万円の定額貯金がある場合、満期の到来までは、これは有効ということになります。二〇〇七年十月一日以降に満期が到来した場合には、再び郵便局に預け入れられるのが五百万円までということになります。その残りの五百万円については、民間金融機関に預け入れいただくことになり、あるいは個人向けの国債を購入していただくなり、その他の方法で運用をしていただくことになりますが、我々が考えているのは、まさに、できる限り国民の資金を官から民へ、官から市場に流していく、こういうことを考えておるわけでございまして、まさに郵貯からあふれ出たこういう資金が、地域の民間金融機関を通じて、地域の中小企業などに貸し出されて地域経済が活性化する、まさに生きたお金になるという意味では実効性があると考えておるわけでございます。

 以上でございます。

竹中国務大臣 まず、限度額を引き下げることによる影響でありますが、これは一部、今御答弁もございましたが、公社資料によりますと、預入金額が七百万円を超える預金者というのは千七十六万人でございます。全預金者の八・六%になります。そして、五百万円を超える預金者は千六百二万人ということで、預金者の一二・八%ということになります。したがいまして、預入限度額を引き下げた場合に、一千万人を超える預金者が預けがえなどの対応を余儀なくされるというふうに想定をされます。

 民主党からは、限度額引き下げに伴います経過措置の内容とか、限度額超過者に対する取り扱いが具体的にどのようになるか、法案の形で具体的には示されておりませんので、その影響を詳細に見通すのは私たちとしても困難なわけではございますが、まず、各預金者の限度額管理上、経過措置分を別枠で管理するというようなことが当然必要になると思いますけれども、公社において相応の、それに伴うシステム対応が必要になると思います。また、限度額超過者の大幅な増加に伴いまして、預金者に対する通知、減額措置等の公社の事務が増加するということも想定されると思います。その意味では、預金者に不便になるということと、相当の事務負担が生じるのではないかなというふうに思われるわけでございます。

 民主党案では、このスケジュールに関しまして、我々と同じ平成十九年十月一日から新設する郵便貯金銀行に預金業務を承継するというふうにしておりますけれども、今申し上げたようなシステム対応、事務負担の過重な負担を勘案しますと、スケジュールどおりに実施することができるのかどうか、これは極めて困難なのではないかという印象を持っております。

石井(啓)委員 実は私もそう思っておりまして、一千万人以上の方に預けがえをしていただく、これは一人一人に手紙で連絡するんでしょうけれども、応じない方はどうするんだろうか。強制的に国債に振りかえたりとか、投資信託に振りかえたりするということはできないわけでありますから、これは戸別に訪問してお願いをしていくのだろうか。そういう実務を考えると、なかなかこれは困難かなというふうに思っております。

 きょうは生田総裁にお越しいただいておりますので、当事者である郵政公社から見まして、この民主党案というのが、経営の健全性の確保とか職員の雇用への配慮とか、あるいは利用者の利便性の向上等から見てどのように評価をされているのか、最後にお伺いしたいと思います。

生田参考人 お答えさせていただきます。

 両党から出していらっしゃる案に私の立場で個別具体的に、余りきちっと具体的なことを申し上げるのはいかがかとは思いますけれども、私の性格で、経済財政諮問会議でもどこでも、経営をやっている人間としての理念は割合ストレートに言わせていただいてお許しいただいているので、そういった観点で、一般論、原則論的に申し上げたいと思います。

 数字も検証していないので大変御無礼かと思いますが、私は、こういういろいろな具体論というものは、今おっしゃったようなことは、基本理念あるいは基本的な考え方にすべてよるわけで、それがはっきりすれば、あと具体論はそれと整合的に出てくるものと考えております。

 そういった考えでいきますと、少なくとも移行期におきまして、さっきから御議論になっているように、全国の郵便局で、郵便のみならず金融二事業も、決済機能のみじゃなくて、現行のメニューで現行レベルのサービスを維持して国民の生活インフラを守るべきなのか、あるいは、もうそれは要らない、ほころびが出て不便が出ても忍びなさいというふうな、どっちを基本的にお考えになるのか。

 それから二番目で、もしそれが、要らないんだ、もう不便が出てもしようがないという立場に立つとすると、説明責任が出てくると思うのは、国民の利便性が損なわれるのにはどう考えるのか、どう対応するのか。

 それから、経営は確実に悪化してまいります、ずっといろいろな事業を縮小しますと。その経営の悪化というものはどうするのか。税金でやるのかどうか。

 それから、かなり大幅な雇用調整が必ず出てまいります。この雇用の問題。何分、三十八万人いますから、半端じゃないんですね、数が。だから、これは公社の雇用というよりも、日本国の雇用の問題だと思います。そういう雇用の問題をどうするのか。

 日本国の経済は、民営化すれば活性化に役立つし、縮小すると逆だと思うので、その辺はどうするのか、こういうことになりますし、もしそういう基本理念で、生活インフラを守るのが必要である、こういう考えになるならば、それなら、民営化して、市場原理に照らして、市場で努力させて活性化して、自律的にやらせて、適度な競争も生みながら、経済も活性化するし雇用も刺激して、維持されていくというふうな方法をとる。

 あるいは、官のまま、公社のままとしまして、それでも生活インフラは守る。その場合は、民業圧迫等の声を抑えて大きく規制を緩和して、あたかも民間のようにやらすか。それが民業圧迫でできないのであれば、非常に苦しくなってくる経営というものをどう考えるのか。国民負担をやるのか。

 この辺の選択肢の問題になるので、その辺がきちっと整理されれば、あとは具体論はずるずるっと出てくる、私はそう考えております。

 上記の観点から、率直に言わせていただいて、民主党の出していらっしゃる法案を検証しておりませんが、数字的な、読ませていただいた限りでは、貯金の限度額の強制的な引き下げとか定額貯金の廃止とか金融分野の縮小、これに加えまして、現在何とか黒字構造にしようと必死の努力をしている赤字構造の郵便、国際物流分野の経営の自由度の拡大というのも、二年間ぐらいかかるということで、道筋がはっきりしないというようなことで、総じて市場とのかかわりが見えないので、その辺はどうなのかな、諸問題があるな、こう思います。

 経営者としての感覚で申し上げますと、これらは、大きく国民の利便性、生活インフラである郵便局ネットワーク維持の問題、それから事業経営の見通しの問題、はっきり言って苦しくなると思います。国民負担の関係、経営として極めて重視している雇用、これは私は一番心配です。雇用はどうするのかというようなことになってくるので、冒頭に触れました基本理念に立ち戻りまして、基本理念に沿って諸問題をどうお考えなのかを伺って、それで、いろいろ対策をお持ちなんだろうと思います。その辺もパッケージで伺ったら一つの評価が出てくるのではないのかな、部分的に具体的な問題だけを伺ってもちょっと評価申し上げるのは難しいのかな、こう思います。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、田端正広君。

田端委員 公明党の田端正広でございます。

 私は、少し視点を変えて、民営化についてお伺いしたいと思います。

 実は、一九九九年十月五日というのが、今から六年前ですが、公明党と当時の自由党、そして自民党、自自公連立政権が発足した日にちでございます。私は、この連立政権に関して、特にこのスタートに際しての連立政権合意文書の中に直接かかわった問題がありまして、西暦二〇〇〇年を循環型社会元年と位置づけて法制定をするという一項目がありました。そして、自由民主党といろいろ激論を交わしましてこの法律を二〇〇〇年の通常国会でぎりぎり成立することができまして、そして、その後、循環型社会形成基本法に基づいた日本の新しいリデュース、リユース、リサイクル、三Rイニシアチブの社会が今誕生しつつある、こう思っております。

 そして、今、小泉総理がもったいない運動ということをいろいろ言われまして、そういった意味でも、国際社会の中でも日本の循環型というものが非常に認められるようになりつつあるのかなという意味で、非常に思い入れを持っているわけでございます。

 実は、連立に参画する際に、私たちは大変悩みました。それまで反自民で来たわけでありますから、自由民主党との連立ということで。そのときの私たちの結論は、まず政治を安定させる、そして経済を安定軌道に乗せて、次に新しい社会システムを築いていこう、こういうことで、当時、政調会長をやっていた坂口さん、公明党の坂口力さんと自由民主党の政務調査会長、池田行彦さんとの間でも、まず政治の安定を実現した上で、経済を安定軌道に乗せ、さらに新しい世紀を支える社会経済のシステムを構築する、合意文書の中にもそういう一文があります。

 当時、一九九七年、八年というころは、経済に対する、金融に対する大変な不安が渦巻いておりました。日産生命保険が破綻し、あるいは山一証券が破綻し、北海道拓殖銀行、さらには日本長期信用銀行、あるいは日本債券信用銀行の破綻などが相次いで起こって、そういう状況の中での連立政権のスタートとなったわけであります。

 そういう意味で、今日、振り返ってみますと、当時の、まず政治の安定、そして、それによって経済を軌道に乗せる、そして、次のステップに移るという私たちの決断は誤りではなかったということをしみじみと今感じているわけでございます。

 そういう意味で、今回の選挙においても、自公連立政権あるいは自公に対する国民の支持が集まったかなという思いがいたしますし、また、きずなもさらに一段と深まったという思いがいたしますが、そういう流れの中でこの郵政民営化という議論になってきているわけでございまして、その点について、連立政権と経済の安定、そして新しい次の改革へのステップという意味で、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 自由民主党と公明党が連立政権を構築してから、非常にお互い、政党は違うといっても、信頼感をしっかりと醸成してきたと思います。おかげさまで、さまざまな改革を軌道に乗せて、今ようやく経済の情勢も民間主導で回復傾向に来ている。

 特に、公明党の主張であります、これからの将来の経済を考えると、むだを省いていこうと。特に、税金のむだ遣い、行政改革、これについて極めて熱心に推進してこられた。今回の民営化の法案に対しましても、率先して、基本的に民営化賛成という方針をいち早く打ち出していただいたということは、この民営化法案の成立に向けて大きな一つの原動力になったと私は大変感謝しております。

 さらに、特に社会保障に熱心に取り組んでこられた。年金、医療、介護、坂口厚生労働大臣の時代におきましても、あるいはその前から、しっかりとした、国民生活を安定したものにするためにも、社会保障制度は長く持続できる制度にしなきゃいけないということで、極めて社会保障制度改革に熱心に取り組んでいただいた。今また、年金、医療、介護、そのような点につきましても最も熱心に取り組んできているのが公明党であり、これから、培ってきたその信頼の上に、さまざまな改革に協力していける基盤が今回の選挙でもできたのではないか。

 当初は、果たしてうまくやっていけるかなという危惧の念も一部にはありましたけれども、何回か選挙を重ね、数年たち、お互い足らざるところを補っていこう、すべて同じでないのは当然である、相違は相違として認めながら、協力できる分野はたくさんあるんだから、その協力できる分野に向かってお互いの信頼関係をさらに築いていこうじゃないかという基盤がしっかりとできたということは、今後の経済の活性化のためにも、さまざまな改革を進めていく上においても、大変大事な自民党、公明党の連立体制である。これからもこの連立の基盤をしっかりとお互い維持できるように、信頼感を持ってさまざまな改革に取り組んでいきたいと思っております。

田端委員 大変丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 竹中大臣は、当時、九九年は、まだ慶応の先生であられたと思いますが、その後、小泉内閣の発足に伴って入閣されて、特に不良債権の処理あるいは金融再生プログラム等を通して大きく日本の経済のかじ取りをされて、そして今日に至っているわけでございます。経済の安定ということがやはり大きなベースになって、それで初めてこの郵政の民営化という流れに私は結びついたんだと思いますが、経済財政担当の大臣として、あるいはまた郵政民営化担当の大臣として、そういった流れの中での御所見をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 改革を進めることは経済の安定につながる、そして、経済が安定化してきたからこそ改革をさらに加速できる。まさに改革と経済の安定、発展というのは、そういう意味でのプラスの好循環をもたらすものだというふうに思っております。

 当初、改革をするというふうに言いますと必ず各論では反対が出るわけでございますけれども、まさに自民党、公明党、与党のしっかりとした御理解と御協力をいただいて、改革が何とか進みつつあるという状況であろうかと思っております。

 具体的には、小泉内閣が発足しました二〇〇一年というのは実は大変厳しいマイナス成長にあったわけでございますけれども、それが今、日本の潜在成長力を上回る年率二%ぐらいのところで推移するようになったということ、御指摘のありました不良債権比率、ピーク時は八・四%あったものが今二・九%に下がってきたということ、規制改革の進展、そして倒産の水準の低下、失業率もピーク時の五・五%から四・三%になる、そういった結果があらわれていると思います。

 であるからこそ、こうした経済の安定を踏まえて今しっかりと改革を進めていくことが重要である、その中核に郵政の民営化、まさに本丸があるというふうに認識をしております。

田端委員 そこで、その郵政民営化についてでございますが、四日に提出された民主党の案というもの、いろいろ先ほど来議論のあったところでございますし、また、さっきは生田総裁からも、経営者の感覚としては少し現場的には厳しいというふうな御意見もあったところでありますが、民営化というものに民主党の皆さんが一歩踏み出されたという意味で、私は評価したいなと思います。しかし、これまで言ってこられたこととの整合性、食い違っている部分、そういった点については、なお今後少し検証していかないと、余りにもちょっと粗削り過ぎるんではないかなという印象を持っております。

 それはそれとして、政府の今後のあり方としても、これはぜひ経営の自由度というものをより拡大していくこと、民間の創意工夫、知恵というものを生かして発揮できるような、そういう環境をつくっていく、そして、より質のいいサービスというものが国民に提供される、こういう流れがどれだけ今後できていくかということになろうかと思います。

 そこで、お手元に資料が行っているかと思いますが、これは日経新聞の九月三日付から引用させていただいてつくったものでございます。

 二十年間における官業の民営化によって国の収入はどういうふうになったかという一つの流れでございますけれども、NTT一社を見ても、株式の売却で十三・九兆、配当収入一兆円、租税収入六・八兆円で、二十一兆七千億、NTTグループだけでもこういうことになっているわけでございまして、JR三社、東、西、東海ですが、これが六・五兆、そしてJT、日本たばこですけれども、二・二兆円、この三つを合わせて三十・四兆円という大変な金額でございます。

 これは、そういう意味では、非常に安定的な収入といいますか、財政再建に大きくつながっていくことになろうかと思うわけでございますけれども、この数字を見て、総理はどういうふうな思いで、今後、郵政の民営化というものをお考えになっているんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 かつての官業が民営化されたことによって国の収入がふえたという、極めてわかりやすい表だと私は思います。これだけ見ても、民間にできることは民間に、財政に貢献する、財政再建の一助になるというのが極めて具体的に出された数字だと思います。

田端委員 それで、NTT等を一つの先例として郵政の場合考えていけば、郵政だけでも自己資本が六兆幾らかになるというふうに伺っておりますけれども、将来、郵政の政府保有株を放出した場合の売却益というものは十兆円ぐらいになるんではないかという意見も聞いております。こういう経営の自由度を拡大していくことによって、次の大きな財政改革、金融改革に大変大きくつながっていくんだろうと思います。

 そして、この税収にしても、二〇〇七年から十年間で、法人税、法人事業税、固定資産税、印紙税等、約四兆三千億円ぐらいに上るということが既に報告されているところであります。こういう民間の経営の自由度というものの大事さといいますか大切さ、そしてそれが国民の生活につながるような、国庫に入ってくるという意味で、例えばさっき総理がおっしゃったような福祉とか年金とか医療とか教育とか、そういう財源にもつながっていくわけでありますから、そういう意味では、この株式というもの、あるいは税収というものが大変大事かなと思います。

 そして、資料の二枚目を見ていただきたいと思います。JRを見ても、駅ビル、駅前店舗等の事業によって、それぞれのJRの合計で、十四年、十五年、十六年と年々収入がふえておりまして、十六年度で七百十三億円という収入になっているわけでございますが、そういう多角経営といいますか、民間が活力を生かして、そして頑張っていけば、どんどんそういうふうになっていく。

 あるいは、JTなんかも、たばこに関する環境は非常に厳しくなっているんですけれども、二〇〇五年三月期決算が過去最高の営業利益であったと言われております。それは、飲料食品事業で自販機網を完備しまして、そして安価で売ることによって非常に収益を上げている。あるいは医薬品事業で、新しく開発をしまして、高脂血症薬というもので外国の大手メーカーとライセンス契約を結んで非常に収益を上げている、こういう企業努力というものがそういう形で出ているんだということがこういったところにもあらわれているわけでございますけれども、竹中大臣の今後民営化に対する御所見、思いをお聞かせ願いたいと思います。

竹中国務大臣 民営化において我々が期待する最大のものは、まさに委員御指摘のような形での経営の自由度の確保、そして発揮、その中で民のダイナミズムを思い切り発揮していただきたいということでございます。具体的に、これは経営者にしっかりと御判断をいただきたい。

 我々は、できるだけ自由に展開できるように、しかし、イコールフッティング、民間との対等な競争も配慮しながら自由にやっていただこうということでございますが、例えば郵便局株式会社につきましては、従来以上に多様な金融商品の提供、販売というのが考えられるでしょうし、また、さまざまな物品販売というようなものが考えられるのだと思います。

 郵便事業の会社に関しましては、これは国際物流を含めまして、まさに国内外の物流事業について非常に総合的な産業として、企業として成長していっていただきたいという思いがございます。

 郵便貯金銀行につきましては、今公社が行っている業務と比較的近いといいますか、親和性のある業務から運用を拡大していっていただいて、例えば私募債でありますとかシンジケートローンとかといったものを手始めに、信用リスクをとれるビジネスにも拡大していっていただきたい。そして、何より地域密着型の業務を展開していただきたいと思っております。

 そして、保険会社につきましては、少額保険商品に関するノウハウをこの会社は持っているわけでありますから、そのノウハウを生かした保険の販売等々で収益を上げていただきたいと思っております。

 我々が本年三月に作成しました採算性に関する試算によりますと、こうしたことを、新規事業をすべて行った場合には、民営化四会社の税前の当期利益の合計は一兆円強というふうにも試算されておりまして、これはあくまで一つの可能性ではございますが、ぜひその可能性を求めて頑張っていただきたいと思っているところでございます。

田端委員 ありがとうございます。

 次の資料を見ていただきたいと思いますが、これは東京の中央郵便局の写真でございます。もう一点は大阪の中央郵便局でございます。いずれも一等地といいますか、東京駅、丸ビル、新丸ビルの横に中央郵便局がありますし、そして大阪の場合も、今、西梅田が一番大阪では進んだ町になっておりますが、その一丁目一番地にあるわけでございます。

 周りのビルが非常に高くてここだけが五階、六階という感じでありまして、そういった意味では、これらも非常に資産の有効活用という意味でこれから大きなテーマになるんだろうと思います。民業圧迫ということは、これは細心の注意を払わなければなりませんが、しかし、こういうことも、資産の活用という意味では、ぜひ大きくこれは民間の知恵を生かしていただいて頑張っていかなきゃならないのかなという思いがしております。

 そこで、実は去年の九月に、私、ドイツに行かせていただいたときに、ベルリンの郵便局を視察しました。コンビニと併設している郵便局、あるいは単独の郵便局、それぞれ見せていただきましたが、大変活気に満ちて、人の出入りも頻繁にあったというイメージでございました。

 そのときに、ドイツの民営化を実現させたと言われているヴォルフガング・ベーチェ元郵政大臣にもお会いをいたしましていろいろ懇談させていただきましたが、そのときにこのベーチェさんの言っていた言葉で大変記憶に残っている、印象に残っていることは、日本が民営化する場合に一番大事なことは国民の理解をどれだけ得るかということに尽きる、こういうお話でございましたが、まさに私は、これから具体化していく場合にその言葉が当てはまるんだろう、こう思います。

 一つは、先ほど来議論もありましたが、郵便局ネットワークが本当に十分に、きちっと国民の皆さんに不安なく、安心していただけるような流れをつくれるのかどうかということが一つでございます。

 それからもう一点は、二十六万人のこの職員の方々が本気になって、よし、やろうという気構えが出てくるような、そういう細心の配慮を払った方向が生まれていくかどうか、この二点に尽きるのではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 国民の理解と協力、これは不可欠だと思っております。だからこそ、今回、総選挙によりまして多くの国民がこの郵政民営化の必要性を理解してくれた。この声を受けて、きっちりと国民の、サービスを提供できる、利便性の向上に資することができるような郵政の民営化を実現していかなきゃならないと思っております。

 さらに、今まで公務員から今度は民間人になって、新しい事業を産出できる基盤ができるわけです。今までの決められた仕事以外にどのような創意工夫を発揮していくか。これは意識改革していただかないと、今やっている以外に国民の必要な商品なりサービスを展開できない。やればできるんだという気持ちを、民間の企業会社の社員と同じような認識を持っていただく必要があると思っております。

 今ちょっと写真を見せていただきましたけれども、これは東京の中央郵便局と大阪の中央郵便局でしょう。ビルの谷間ですね。いかに貴重な土地を有効活用していないか、見ただけですぐわかりますね。これが民間会社になれば、経営者の創意工夫、知恵によってはいろいろな事業ができるわけですから、これは楽しみだと思いますね。そういう眠っている資産というものをどう生かしていくか、これも、民営化を成功させるということを考えると、大変重要なことだと思っております。

田端委員 私は、二〇〇三年九月から一年間、麻生大臣のもとで仕事をさせていただきましたが、この民営化ということを考えるときに、私はもう本当に、民営化で成功したといいますか、すごく発展したのは携帯電話だなということをしみじみ今感じております。

 かつては電電公社一社で独占といいますか、七万二千円の電話債権を買って電話を引いた、そういう時代から、今もう全くさま変わりいたしました。民営化と規制緩和によってここまで変わるかという思いがいたします。携帯だけで全国で九千万台だそうですから、小学校の子供さんまで持っている時代になりました。

 そして、電話もファクス等いろいろ多機能になりましたし、そして、今度は携帯が来年からデジタルテレビの放送も開始するということでありますから、いよいよ今後、携帯を軸にして、また新しい一つのステップに入るのかなという感じがいたします。

 それで、かつて電話が東京―大阪三分間四百円だったのが今八十円ぐらいになっていますし、アメリカ―日本間千五百円だったのが今百八十円ぐらいになっていると思いますが、値段は安くなる、そして使い勝手はよくなる、便利になる、大変なことだと思います。

 それで、今、この携帯を中心に電話通信産業の経済波及効果は三十兆円だそうですが、麻生大臣は、次は今度ユビキタス社会だ、こうおっしゃっているわけで、二〇一〇年ユビキタス社会ということになれば、八十五兆円ぐらいというふうに目算されているようでありますけれども、そういった意味で、この携帯を軸にした電話通信産業という世界がもっと大きく広がっていくのだと思いますけれども、この民営化という意味の一つの例として、大臣のこの今後の思いをお聞かせ願いたいと思います。

麻生国務大臣 今おっしゃられましたように、昭和五十八年、電電公社だった時代には、東京―大阪、平日の時間が四百円。それが今、八十円と言われましたが、さらに進んで、IP電話だとこれは八円ぐらいでいくと思いますので、そういった意味では、ひとえに電電公社が民営化された部分と、技術進歩がたまたま相まったところも多々あるという意味で、民営化がすべてというのは少々図に乗り過ぎているところもあると思いますので、そこは、その点を控え目に見積もっても、利用者にとっては極めて利便性を高めたという点においては、これは間違いない事実として言えると思っております。

 ちなみに、日本の場合は、ブロードバンドというものから今ユビキタスというところまで進みつつありますが、ブロードバンドだけで多分世界最速、お値段は世界最低というところまで来ましたので、これは皆、規制の緩和ということによって競争が導入された結果だと思っておりますので、いろいろな意味で刺激を受けて競争というものが進んでいくんだと思います。

 ユビキタスというものは、少なくともこの技術進歩を利用して、今、障害者、心身障害者、要介護者が健常者と同じように一緒に生活でき得るであろうか、もしそれができるのであれば、間違いなくこのICTと言われる情報通信技術の進歩に負うところが極めて大きいのであって、私どもとしては、その情報通信技術というものをいろいろな形で利用するということを進めておりまして、これはいろいろな意味で、誤解を恐れず言えば、あの国土交通省ですら、ICTを使って要介護者が自宅から飛行機に乗るまで全く介護を要さないで行けるようなシステムをつくろうというようなことで、これを猛烈に利用しておられるというところでありまして、これは役所間でも我々よりはるかに進んでおるところもあるのではないか、正直、考え方がすごい、そういう利用の仕方をいろいろ考えられるところがすごいなと思って、大変勉強にもなりましたし、刺激も受けました。

 私どもとしては、この技術を、今これは乗りおくれるか乗りおくれないか境目だと思っておりますので、これが開けますと、今おっしゃったような非常に大きなマーケットというものが、その技術によって附帯して起きてくるマーケットが非常に大きなものになり得ると思っておりますので、そちらの方に私どもとしても全力を挙げて、次の大きな要素になり得ると思っております。

田端委員 ありがとうございました。

二階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。きょうは、どうかよろしくお願いいたします。

 先ほどの、ちょっと午前中の議論を聞いておりましたら、どうも、私ども民主党が対案を出させていただいて、けしからぬ、けしからぬ、だめだ、だめだと。特に、政府案はこんなに分厚いのに民主党案は十ページしかないのがけしからぬと、そこまでついにけしからぬようになったのかなというふうに思っております。ただ、私どもも、前原新代表になりまして、重要法案にはなるべく対案を出し、そして、どちらの案がいいのか、改革を競い合おうじゃないか、こういうことで私どもは出させていただいておりますので、どうか真摯に受けとめていただいて、議論をしていただければ大変ありがたいというふうに思います。

 総理、八月の八日に衆議院を解散されました。気づきますと、何かあっという間にきょうになっておりまして、多くの皆さんがほとんどこの夏の記憶がないのではないかと思います。

 そして、私は非常に疑問に思ったことがございます。というのは、郵政民営化法案が否決をされたのは参議院であります。そして、衆議院では五票差で可決をされております。ですから、総理は郵政民営化法案を否決することは小泉内閣への不信任だというふうにおっしゃったんですが、衆議院は可決をしていますので、信任をしているんです。参議院は否決をしましたので、まあ、参議院に不信任案というのはありませんが、参議院で不信任をした。ですから、衆議院で通過をした法案が参議院で否決をされて衆議院を解散した、これは多分、テレビをごらんになっている国民の多くの皆さんも非常に違和感を覚えたのではないかと思います。

 これは通告はしておりませんけれども、ちょっと一言、なぜそういう解散をされたのかということをお答えいただければありがたいと思います。

小泉内閣総理大臣 最重要法案と内閣が言っている法案が、衆議院で通過したけれども参議院で否決されて廃案になった場合、これを不信任だと受けとめて解散するというのは、常識的には考えられませんね。それは認めます。異例中の異例であるということは認めます。

 しかしながら、政治的な判断というのはありますね。憲法上の行為という、その手続はきちんと踏んで、しかも衆議院で民主党が内閣不信任案を上程されたわけですから、そのときは、内閣不信任案を上程されたということは不信任か……(松野(頼)委員「出していないよ」と呼ぶ)知らないようですが、調べてください。出しているんです。衆議院の本会議が開催されたとき、内閣不信任案を上程したんです、提出したんです。それを受けて解散に踏み切ったんですから、これは法律的には何ら問題ないと思います。

 ただ、政治的な判断として、それは問題だというのはわかります。しかしながら、結果を見ますと、国民もこの選挙に関心を持って、郵政民営化の問題というものもよく理解され、演説の大きな争点になり、そして四年間の小泉内閣の実績、方針を踏まえての判断だと思います。

 いろいろ、こういうことがあったらどうなるんだという話がありますけれども、衆議院で通過して参議院で否決されて解散ということはめったにありませんよ。まさに、まれに見る解散・総選挙だということは認めます。

松野(頼)委員 今お答えをいただきました。

 そして、もう一つ伺いたいのは、今回の選挙、ずっとテレビで報道されていましたように、衆議院で造反された方三十数名にいわゆる刺客を送ったということでございます。それは党の決定ですから、どういう形になるのか、御自由だと思いますが、そうすると、けさの新聞にも出ておりましたが、参議院の造反をした、反対票を投じた方に対してはどういう処分をするのか、このことについてぜひお答えをいただければと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、今回の選挙において、郵政民営化賛成の候補者しか公認しないという方針のもとに、三百選挙区に賛成の候補者を立候補させるよう努力いたしました。その際に、衆議院と参議院は別なんだから、参議院は選挙がない、議員構成は変わらない、だから、賛成の候補が多く当選してきても、参議院で民営化に反対を投じた議員の中には、何回でも否決してやると言っていた方もおられました。しかし、選挙が終わってみますと、もうくるっと変わっていますね。これが選挙の大きな意義だったと思いますね。やはり民意を尊重せざるを得ない。

 私は、選挙中にもこういう話をしたんです。自民党の中に確かに反対論者はいますけれども、国民も反対していると思って反対している人もいる、だからこの選挙で国民に聞いてみたい。皆さんが、賛成、反対、両論ありますけれども、議席ではっきり、賛成論者に対して投票して、賛成論者、自民党、公明党の議席が過半数を得れば、これは、国民は民営化に賛成だという意思を議席の形で示してくれるから、そうすれば、参議院で反対していた議員も必ず今までの反対論を変えてくれる、そう思って選挙しているんだということを私は訴えたんです。

 それでも、そんなことないと言っていた人がいましたけれども、いざ結果を見ると続々、反対した人たちがもう賛成、賛成、変わっちゃった。これがやはり選挙の大きな意義だったと思いますね。

松野(頼)委員 ちょっとつけ加えて伺いますと、では、前回、解散前に反対をされた方は、今度賛成すればいいということでございますか。

小泉内閣総理大臣 これは今後、郵政民営化法案が採決される場合にどういう態度をとるかによっても、処分がどうなるかというのは多少変わってくるのではないかな。それは、自民党にはちゃんと党紀委員会とか手続をとらなきゃならない面が多々ありますので、また個人によって対応も違います。その点はよく見て、党内においてきちんと処理されると思っております。

松野(頼)委員 それでは、法案に入らせていただきます。

 午前中の質疑の中で、竹中大臣が民主党の案は大きな政府だというふうにおっしゃっておりました。竹中大臣に伺いますが、今この日本の国のあり方というもの、これは大きな政府ですか、小さな政府ですか、お答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 大きい小さいというのは、言うまでもなく、絶対的な判断基準があるわけではなくて相対的な評価だと思います。委員のお尋ねは、その意味では、世界の中で見て日本は大きいか小さいかというお尋ねかもしれませんけれども、そうであるならば、例えば、全体の中に占める公務員の数等々でいうと、御承知のように、日本は公務員の数そのものが決して大きいわけではございません、むしろ非常に小さい部類に入ります。政府の支出の規模そのものを取り上げましても、これもGDPないしは国民所得の比率等々ではかりますと、比較的小さい部類に属しているということになります。少なくともOECDの中では下から何番目かという部類に属します。

 しかし、今度は資産サイドに目を移しますと、資産負債に目を移しますと、御承知のように、国債の残高というのは、これはもう先進国の中で飛び抜けて高い、その意味では大きな政府だということだと思っておりますし、また、資産負債のバランスシートの大きさを見ましても、アメリカの大体五倍ぐらいのバランスシートを日本政府は持っておりますから、やはり大きな政府という側面を持っております。

 我々としては、余り絶対的な水準で大きい小さいと言うことは意味がないと思いますので、総理も国会で答弁されましたように、やはり今よりも小さくしたい、さらに可能性を求めて小さくしていきたい、そういう姿勢で政策運営に当たらなければいけないと思っております。

松野(頼)委員 私は、財政とか税制を見ると、一般会計八十二兆、特会で約二百数十兆という規模を考えますと、GDP五百兆の中に占める国が関与する官の部分のお金というのは、これは明らかに私は大きな政府だと思っています、財政的に見ると。

 ただ、そういう前提の中で、今回この郵政の民営化をすると、大臣、選挙中も随分おっしゃっていました、郵政民営化をすると小さな政府になるというふうにおっしゃっていましたけれども、一体、郵政を民営化するとなぜ小さな政府になるのかというのをお答えいただきたい。

竹中国務大臣 これは、公社という国の機関でいわゆる郵便等々の業務を行う場合と、民間の企業でその業務を行う場合と、もう当然に政府の大きさは異なるということ、これはもう自明のことであろうかと思います。

 特に、日本郵政公社の場合は従業員が国家公務員でございますから、常勤で二十六万人の国家公務員、これが民間人になるわけであります。国家公務員の数全体、日本で九十数万人でありますから、国家公務員の数が郵政民営化によって一気に約三割減るということになるわけですから、これは、先ほど申し上げました公務員という観点から見て、この郵政民営化は小さな政府をつくるということになります。

 また、資産の運用、資産の規模等々から見ましても、今、国が集めて国で使うという形で大きな官のお金の流れができているわけでありますけれども、これが民のお金になるわけですから、民のお金になるという意味では、そのお金の流れという観点からも、官が縮小して民が大きくなる。これも、民営化によってそれが実現されるというのは自明のことであると思います。

 先ほど私が少し引用させていただきましたのは、我々の政府の政策を実施していきますと、そして骨格経営試算に示されたような姿になりますと、今、家計の、つまり個人、家計の金融資産の中で、千四百兆円の中で、官が管理しているもの、これは郵便貯金とか国債が今二六%あるわけですけれども、これが郵政民営化によって五%に下がる、そういう試算が専門家によって示されております。

 先ほど申し上げたのは、民主党も小さくしようという努力をしておられるのは私も承知をしておりますが、民主党のおっしゃるような形が実現しても、この比率は五%ではなくて、私の判断では一〇%程度である、これは佐藤委員も御指摘になられましたけれども、その意味では私たちの方が小さな政府であると認識をしているということを申し上げたわけでございます。

松野(頼)委員 選挙の最中に、二十六万人の公務員が民間人になると。確かに身分は民間人になるかもしれませんが、テレビをごらんになっている皆さんにぜひ御理解をいただきたいのは、この二十六万人の公務員は、身分は公務員でありますが、この給料は一銭の税金も入っていないわけであります。ですから、財政的に見ますと、二十六万人の公務員が民間人になったからといって支出が助かるわけではありません。

 そしてもう一つ、本当に小さな政府をつくるというふうにおっしゃるのであれば、やはり郵貯の預金量、約三百四十兆の郵貯、簡保の預金量をどうやってマーケットに流すかということを私は考えるべきだと思っています。

 といいますのは、今回の政府の民営化法案、ずっと、前の国会でも百十時間、私も審議に加わらせていただきました。この三百四十兆の郵貯、簡保の資金、集める入り口は政府案では確かに民間になるんです。しかし、資金の流れは、ずっと大臣も答弁をされていたように、この新しくなった郵便貯金銀行、郵便保険会社でも、新たに国債を買うというふうに答弁をされているわけですから、資金の流れは官から民に行かないんです。

 ですから、私どもは、この郵政民営化をしても決して小さな政府になるわけではないということをずっと申し上げているわけでありまして、形は確かに株式会社になります、集める入り口は官から民になります、しかし、資金の流れはまた民から官に移るんじゃないでしょうかという議論をことしの二月の予算委員会の中でも竹中大臣とやらせていただいたように、私は、本来、GDP五百兆に対して、一般会計、特会、そして財投まで含めれば、以前に堀内先生が本会議の中で言っていらっしゃいましたが、五百兆のGDPのうちの三百五十兆が一般会計、特別会計、財政投融資で、官のお金である、これをいかに民に流すかが大きな政府から小さな政府への転換点だと。私は全くそのとおりだと思うんですね。

 ですから、この官から民に資金の流れ、資金の流れというのはちょっと私は正確ではないんではないかというふうに思うんですけれども、ぜひ、民主党の案はここで資金の流れはどうなっているのか、ちょっと答弁をしていただけますでしょうか。

長妻議員 お答えを申し上げます。

 民主党案では、何しろ郵貯、簡保の資金を市場に流していくということを大前提としている案でございまして、基本的に形態も、郵貯銀行は民営化、株式会社でございます。その中で、基本的に預け入れ限度額を段階的に五百万円に下げる。現在一千万でございますので、その差額を預けておられる方は、基本的には満期までは持っていただきますけれども、その後お返しをして、その方の御選択で民間に流していくということでございます。

 そして、何よりもむだ遣いの温床が、私どもは財投債であるというふうに考えております。この財投債と申しますのは、特殊法人や独立行政法人、いわゆる天下り団体を資金面で支える国債の一種でございますけれども、これを郵貯、簡保の資金でばんばん買っておりまして、今年度、財投債、郵貯・簡保資金で十二・五兆円また購入する予定になっております。これがむだ遣いのところに流れるということで、我が党の案では、財投債は一切購入は認めないということで、縮小した民営化の郵貯銀行は財投債は一切買えません。そういうことでむだ遣いをやめさせる。

 そして、法律にも、第十三条で「特殊法人等の改革」というのも我が党の郵政改革法案に今回入れさせていただいておりまして、この不良債権の実態を明らかにする。今まで政府は、財投債あるいは特殊法人、独立行政法人に流れたお金、これが不良債権がどのぐらいあるのか一切明らかにしておりませんでしたけれども、この法律によって明らかにして、すべて不良債権を処理していく。

 今現在、ちなみに、この特殊法人や独立行政法人に税金が毎年八兆円流れております。そういう意味では、その税金が利息の補てんにも使われているということで、このむだ遣い体質をなくしていくということが我が党の案のポイントでございます。

松野(頼)委員 竹中大臣、どうでしょうか。新しい政府案の中で、新しくできる郵便貯金銀行、郵便保険会社で国債は買われるんですか、買われないんですか。

竹中国務大臣 松野委員お尋ねの、公社なのか株式会社なのか、そこに入ったお金がどのように運用されるのか、今まさに松野委員はその点を問題にしておられるわけですが、今の民主党案の御説明は、これは財投債等々と峻別するかどうかはともかくとして、公社である以上は安全資産でしか運用できないという制約がございます。安全資産とは何かというと、これは要するに国債であります。したがって、この機関に入ったお金はほぼ間違いなく国債で運用される。したがって、民には全く流れません。民に流れるお金は民主党案ではゼロ%である、これは明白であると思います。

 一方で……(発言する者あり)いやいや、ダウンサイジングするというのは入り口の話ですから、それは混同しておられるわけですよ。ダウンサイジングを入り口のところでどれだけするという議論はまた別にいたしましょう。しかし、入ったお金がどれだけどこに運用されるかについては、一〇〇%国債で運用されるというのが民主党案であるというふうに理解をしております。

 一方で、私たちの案は、これは民間の銀行になっていくわけでありますから、信用リスクをとるような形、これは融資もありますでしょうし、シンジケートローンに参加するものもありますでしょうし、債券の購入もあるでしょうけれども、そういうものに徐々に流していく。それで、当面十年ではその四分の一ぐらいを民間に流していくということを考えておりますので、これは時間はかかります。しかし、民営化することによって初めて民間のリスク資産に運用できるという道が開かれるわけでありまして、ここが決定的に違うところであるというふうに私は理解をしております。

松野(頼)委員 その議論も随分、前の委員会でしましたけれども、では、一体幾らまでの限度額の融資をいつからスタートされるんですか、新しい銀行では。

竹中国務大臣 それはまさに、民営化された銀行がどのようなビジネスモデルをとって考えるかということに尽きます。

 ここは、私たちは民営化をしようとするわけですから、民営化をするというのは、民間の経営に任せてしっかりとやっていただこうというわけですから、あらかじめ官が、役人や政治家が、ここだけの企業にこれだけの枠をつくって貸しなさいとか、貸し付けはこれだけで住宅ローンはこれだけでこのようにしなさいとかというような、ビジネスを規定するということは毛頭考えておりません。

 ただ、骨格経営試算では、経済の変化も踏まえまして、四分の一程度、三十五兆円程度が何らかの形でそういった信用リスクビジネスに入っていくということを想定して算出をしているわけでございます。

松野(頼)委員 いや、大臣、今、御自分で貸し出しをされると言って、では貸し出しはどういうイメージでされるんですかと聞くと、それは新しい会社ですから国が決めるわけにはいかないと。こうやって、今回の選挙のときも、新しくできる郵便貯金銀行、郵便保険会社そして窓口ネットワーク会社等々の民営化された後の新しい会社のイメージが全くわかないんですよ。例えば、新しくできる銀行は上限二百万の銀行なのか、それとも十億でも二十億でも貸し出すような銀行をつくるのか、いざそこの中を質問すると、全くそこは、いや、これから考えるんですと言って、新しくできるこの法案に沿った銀行のイメージが全く出てこないというのが現実なわけであります。

 ですから、もう一回、もし今イメージがあるならば、テレビをせっかく見ている皆さんがいらっしゃるので、どういうイメージの金融機関ができるのかというのをどうか答えていただきたい。お願いします。

竹中国務大臣 松野委員、今の御質問は、私はおかしいと思います。なぜならば、では簡保についてどのように民主党案はお考えなんですか。簡保については、これを民間に売っていくわけですよね。民間に売っていって、その後どうなるかということに関しては、骨格経営試算と我々も同じだというふうに試算としてあらわしておられるじゃないですか。これは何を意味するかというと、私たちと同じように、民営化された簡保については民間の経営者に任せて、それ以降どういうふうな形でどのような保険を売り出すかということを皆さんも想定しておられないわけですよ。それは皆さん御自身が、民営化される簡保に関しては、これは民間の経営に任すということを認めて、私たちの骨格経営試算と同じだというふうに民主党の試算で言っておられるわけです。

 私たちは、繰り返し申し上げますけれども、これは民間の経営によってしっかりと判断されるものである。しかし、経営が成り立つかどうかについては、これはしっかりとした想定を置いて、経営が成り立つということを確認している。そのための骨格経営試算はお示しをしている。これ以上のことについて、ビジネスモデルの詳細について、経営者がお決めになることを縛るような発言を政府の関係者が制度設計の段階で申し上げるということは想定をしておりません。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ、大臣、違う。

 民主党案は民主党案で今説明をしていただければいいと思うんですけれども、要は、民主党案は新しい簡保はたしかつくらないんですよね。ですから、その新しい簡保のイメージというものではなくて……(発言する者あり)

 では、ちょっと答弁してください。

永田議員 簡保と郵貯というのは、今回の民主党の改革案でも大きな改革をするわけですけれども、ちょっと、全然質の違う話をしているということをここで申し上げたいと思います。

 というのは、簡保というのは、民主党案でも、新会社をつくって、そこに既存の契約を引き継ぎながら、移行期間は当然ありますけれども、基本的には自由な設計をして、新しい保険を開発して売っていくことも当然認めているわけですね。保険というのは、保険商品を開発して、それを販売して、入ってきたお金を運用して、また保険の給付金に充てていく。こういう、昔から、要は民営化する前も民営化した後も同じことをやるわけですよ。

 しかし、銀行は違うんですね。銀行は、今までは、集めたお金を融資するといっても、運用するといっても、基本的には国債などの安全資産しか運用できないし、融資をするといっても特殊法人や独立行政法人で融資するしかないわけですよ。しかし、政府案では、これから民営化したら直接民間部門に融資をすると言っているんです、きのうまでやっていなかったことをあしたからはやると言っているんです。であるならば、あしたからやるのはどのような基準でどういう融資をする銀行になるのかということを説明するのは、これは立法者の意思として当然言っていかなければならないことだと思っています。

 ぜひその点を説明していただきたいと思います。

松野(頼)委員 ですから、細かくどこまで縛るということをしなくてもいいんですよ。ただ、どういうイメージの銀行ができるのか。

 というのは、郵便貯金法というのは廃止をされましたね。新しくできる郵便貯金銀行は一般の銀行法の中に入るわけです。今の段階で一般の銀行法には、上限、貸出限度額を縛った銀行というのは法律の中には書き込まれておりませんから、政令でしょう、法律の中には書き込まれておりませんから、では、全く自由な、十億でも二十億でも銀行の判断で貸せる銀行ができるのか、それとも、三十五兆円の枠をとった部分で、新しくできる郵便貯金銀行がそれによって一体どれぐらいのイメージの貸し出しをするのか、預け入れ限度額はどうなのか、これも今回も法案の中には政令事項で書き込まれているわけですよ。郵便貯金会社法の中では政令事項になっていて、中身が全く見えてこないわけです。

 ですから、その中身をある程度イメージで出していかなくては、有権者なり国民の皆さんが、新しくできた民営化された銀行が、ではどういうイメージのものなのか、全くわからないわけですよ。ぜひそれを答弁してください。

竹中国務大臣 まさにそのイメージを骨格経営試算でお示ししているわけでございます。

 法律等々で明確に明記しておりますのは、この郵便貯金と簡易保険の生命保険会社につきましては、これは民営化の時点は公社と同じ業務からスタートする、このスタート時点をまず明確に示しております。そして、十年以内に完全な民有民営を目指す。つまり、株式を完全処分して、そしてまさに銀行法、保険業法等々が適用される完全な民間の銀行になる。その間も銀行法、保険業法はもちろん適用されます。しかし、これは移行期間ということで、つまり、実際に政府の出資が残っておりますから政府の影響力があるということで、そこは制約的に、まず公社のベースからスタートして、順次業務を拡大していく。そして、順次業務を拡大して、どのように拡大していくかのイメージは骨格経営試算でお示しをしているわけでございます。

 すなわち、今の仕事と親和性の高い、例えばABSの購入でありますとかシンジケートローンへの参加でありますとか証券化されたものの購入、そういうものを含みますけれども、そういうものを、一方でどの程度政府の関与がなくなっていくのか、どの程度民間機関とのイコールフッティングが実現していくのかということをきめ細かく専門家が集まる郵政民営化委員会において調査審議していただいて、その意見を聞きながら主務大臣がしっかりと認可をしていくという形をとる。最終的に、この完全民営化が実現される十年後には、総資産のうちの四分の一程度がそうした比較的親和性の高いものから入っていった信用リスクビジネスとしてしっかりと成立している、そのようなイメージを私たちはお示ししているわけでございます。

松野(頼)委員 なるべく、テレビが入っているので、国民の皆さんにわかりやすい、一体どういうイメージの銀行ができるのか、上限設定があるのかないのか、三百万なのか五百万なのか、それとも上限設定は無限なのか、全く一般の銀行法の中に入るような、都銀と同じような銀行ができるのかできないのか、どうかそこのイメージをやはり国民にしっかり伝える必要があると思いますよ。

 骨格経営試算にはそれは全く書いてありません。法律の中にも、政令事項になっていて、そこも全く私たちの前には出てきておりません。一体どういうイメージの銀行ができるのか、もし貸し出しをダイレクトにするというのであれば、それはどうか説明をしていただきたい。でなければ、国民の皆さんが、民営化をされた後の姿というのが全く見えないんではないでしょうか。

 どうかもう一回答弁してください。

竹中国務大臣 先ほどは与信についてお尋ねがありましたので、私は親和性のある信用リスクビジネスということで御説明をさせていただいたわけですが、今、松野委員の御説明はむしろ受信の側で、限度額を設けるのかどうかというのは預金受け入れの話でございますから、これについては……(松野(頼)委員「貸し出し」と呼ぶ)いや、三百万なのか云々というのは、これは受信の話ですね。

 これは、公社と同じ枠でありますから、一千万円からスタートする。そして、十年の後には完全な民間会社になりますので、これは枠がなくなる、無限大になるわけでございます。

 それで、再び与信の側、つまり貸し出し等々については、最終的にはこれは民間の企業になるわけですから、何の制約も設けないという形に十年後には相なるわけでございます。しかし、その間、どのような形で業務を拡大していくのかというのは、経営の判断もございますし、一方で、これがちゃんとした信用リスクの管理体制が整っているかどうかということは、その間も金融当局はしっかりとチェックをいたしますし、民間とのイコールフッティング、特に、規模は大きいですから、民間の金融機関を圧迫しないのかどうかということに関しては郵政民営化委員会でしっかりとチェックをしていきますし、そういう中で、民間の経営者の意思をできるだけ尊重するような形でビジネスモデルが決まっていくわけであります。

松野(頼)委員 今のは、一般の銀行法の中に入るので貸し出しに対する制限はない、それでよろしいですか。新しくできる、十年後に、まあ何年後にできるかわかりませんけれども……(発言する者あり)では、自由な銀行ができるということでありますね。

 それと、もう一回伺いますが、例えば民営化元年、要は二〇〇七年の十月一日、今の水準でいきますと、約五十二兆から五十三兆の流動性預金というものが新しくできる新会社の預金に入るわけです。当然、その預金者の方に利息を約束しているわけですから、これを運用しなければなりません。この初年度の五十二兆から五十三兆、今の水準が維持されたとしたら、この運用というのはどのようにされるつもりですか。

竹中国務大臣 資産負債の管理のシステムに関しましては、これはもう以前から何度かまた御議論させていただきましたが、いわゆる政府保証がついている旧勘定と、そして新しい銀行に入ってくる新勘定、これがまず両方峻別されるということになります。そして、政府保証のついた旧勘定に関しましては、独立行政法人管理機構でしっかりと保有される。しかし、それも再び特別預金という形で銀行に預けられまして、一括したALMを行うということを考えております。

 したがいまして、例えば二〇〇七年十月一日の時点で、九月三十日に比べて資産運用が突然変わるというようなことは想定されません。従来と同じような形で一括して運用する。これは、今までも一括した運用のノウハウを持ってやってきたわけでございますので。そういう中で、先ほど言いましたように、新しい預金が入ってくるとともに、その運用に関しては、徐々に、十年かけてしっかりと、完全な自由度を得るまで、いろいろな親和性のあるものから入って、信用リスクビジネス、貸し付け等々に入っていくわけでございますので、今の御質問の趣旨が、二〇〇七年十月時点での運用がどうなるのかということでございましたら、これは一括して従来と同じ形のALMがとられます、資産負債の管理がとられますので、その時点で資産負債の構成が大きく変わるということは想定されないということであります。

松野(頼)委員 そうすると、大体、国債に向かうということですね。

竹中国務大臣 我々は、時間をかけて徐々に、市場のショックを吸収しながら、十年かけて完全な自由を得ていただくということでありますので、その翌日から急に新しい特別の資産に向かうということはないと思います。

 最初は、今までと同じような形で国債、だからこそ、国債の市場にもショックが生じないような仕掛けにしているわけです。そして、徐々にしっかりと、それが信用リスクをとって、民間の市場にも入っていくような制度設計をしているわけでございます。

松野(頼)委員 多分、今回の選挙で国民の皆さんは、官から民に、三百四十兆の資金がどうも民営化をすると民間にどおっと流れてくるというようなイメージを持たれたと思うんですが、少なくとも二〇〇七年の十月一日にできます郵便貯金銀行に入る新勘定、流動性預金プラス新しい預金というもの、これはほとんど国債に回るということでしょう。そしてまた、その国債に回ると、おのずから、財投債というものはこの世に存在しないらしいですから、財投債に回り、特殊法人に回るというところであります。

 ですから、どうか、資金の流れが官から民にではなくて、資金の入り口が官から民にというふうに説明をしていただいた方が私は正確なのではないかというふうに思います。もちろん三十五兆は貸し出しによって流れるんでしょうけれども、本当の意味では……(発言する者あり)いや、本当のことを言った方がいいですよ、それは。三十五兆ぐらいしか、市場に、官から民に流れる部分はないんですよ。そこはちゃんとやはりきちっと説明された方がいいと思いますよ。

 では、民主党案ではどうでしょうか。

長妻議員 お答えをいたします。

 その前に、先ほど竹中大臣から我が党案に対して若干誤解がございまして、我が党の郵貯銀行は一〇〇%国債なんだ、運用なんだというのは、これは間違いでございまして、当然、外債あるいは地方債等々ももちろん買います。

 ただ、基本的に、先ほどの言い方で言いますと、我が党の案は預金量、資金量を絞るということでございまして、そういう意味では、国債の絶対的な購入金額というのは政府案よりも減るというふうに考えております。

 そういう意味では、政府の案は、まさに巨大な銀行をつくって預け入れ限度額一千万を撤廃するわけでございまして、幾らでも国債を買う原資がどんどん膨れ上がる、今は百七十五兆円でございますけれども、それよりもさらに国債を買えますということもございますので、まず、国債はもとから断つ、発行を断つということが先決だというふうに考えております。

松野(頼)委員 今まで、どうも経営形態の議論が多くありました。あと、利用者の立場から、民営化されたらどうなるのかというところをちょっと幾つか伺いたいと思います。

 例えば、郵便貯金法の第一条にはこう書いてあるんです。これは民営化の法案が通れば廃止をされるようでありますが、この法律は、郵便貯金を簡易で確実な手段としてあまねく公平に利用させることによって、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする、こういう文言が郵便貯金法の第一条にございます。

 その福祉の増進を目的とさせるという、ここから引っ張った運用が、多分、ATMの無料サービスだとか口座維持管理手数料がゼロであるとかいうことが行われていると思うんですけれども、この第一条が、要は、郵便貯金法自身が廃止をされ、新しくできる郵便貯金会社法を見ても、福祉だとか、公共の、国民生活の安定性とかいう言葉は全く入っていないんです。そうすると、当然、株主がいるわけですから、利益を追求する銀行ができてくるということになると思います。

 そういう状態の中で、今、民間の銀行、金融機関が口座維持管理手数料ゼロというところはありません、二十万以下ならあるかもしれませんが。そういう状況の中で、口座維持管理手数料及びATM無料サービスという、だれもがあまねく利用しているこの低利の料金というもの、これは一体どうされるのか、どうされないのか。これはユーザーにとって非常に心配事だと思います。お答えください。

竹中国務大臣 金融市場の状況は、日進月歩、すさまじい勢いで変化をしているというふうに認識しております。その中で、金融機関、一時は大変不良債権等々を抱えて苦しい時期がありましたが、ようやく正常化に向かう中で、しっかりと、厳しい競争の中で、それぞれ顧客を大事にしたビジネスモデルを展開しているというふうに承知をしております。

 私どもは、そうした形で、市場経済の中で民間の健全な金融サービスというのが提供されていくというふうに考えているわけでございます。むしろ、郵政が民営化されて、それが競争市場に入ってくることによって、ますます競争が建設的で厳しいものになって、その中で、住民を、預金者を大切にしたよい商品が提供されていくというふうに考えております。

 今委員の御指摘で、口座維持手数料ゼロのもの、これは民間でも御承知のようにございますし、また、手数料についても無料にしている銀行もございます。これはもういろいろです。むしろ私たちは、こういった非常に大きな規模の銀行、今、国営で行われているわけですけれども、民間市場の中で健全な競争を重ねることによって、その市場競争の中で顧客のサービスが向上して、民間の金融市場において、非常に適切な、また顧客本位のサービスが提供されていくというふうに考えております。

松野(頼)委員 それともう一点、郵便振替法というのがございます。この郵便振替法も廃止をされるというふうに思いますが、この第一条でも、この法律は、郵便振替を簡易で確実な送金及び債権債務の決済の手段としてあまねく公平に利用させることによって、国民の円滑な経済活動に資することを目的としている。やはり公共の福祉というものをうたっているんですね。

 この法律からはねたというか、この法律から引っ張った部分の運用が、要は、十円で引き落としのサービスというのを実は今郵便局でやっているんです。例えばガス、水道、電気料金、公共料金、これが郵便振替法に基づいて、年間約五十億回使われている、ユーザーがいるサービスなんですけれども、十円で毎月定期の、案外少額の金額を引き落とすというサービスを行っています。そしてまた、これは振替法ではないのですが、公社独自でやっているサービスとして、例えばお子さんの学校の給食費だとか軽微な授業料の定期的な引き落とし、これも十円でやっているというサービスがございます。

 例えば、民営化をされて株主がいる、そういうことになりますと、当然、利潤を追求することが株主の目的となってくるわけでありますから、こういう場合に対して、こういう低利な、公共的な責務を担ったサービスというのはこれから維持されるのかされないのか、ここを大臣、答弁していただければありがたいと思います。

竹中国務大臣 これまで公社は、特に民間部門が十分に育っていない段階で、国の資本蓄積の力でネットワークを張りめぐらせて、そして全国一律の非常に貴重なサービスを提供してきた。これは公社の、郵政の歴史的役割として私も大変大きなものがあったと思っております。

 しかし、今の為替の例も、送金の例もそうでございますけれども、今民間の企業が、そうしたかつてはできなかったようなネットワークを張るということをもう十分に行えるようになっている。それは物流、郵便においてもしかり、金融においてもしかりであると思っております。

 そうした中で、民間で代替的なものがかなり十分そろっているという中に加えて、今回、郵政が民営化される。そして郵政自身も、銀行や保険については株主がいて、そのしっかりとしたガバナンスの中で当然利潤を上げていかなければいけないということになります。

 しかし、この郵政の銀行、保険会社のビジネスモデルというのは、これはもう言うまでもなく、非常に地域密着型で顧客のサービスを大切にするような、そういうビジネスモデルであるというふうに思いますので、そういうところは、まさにこれまでの強みを生かして、今までのような形での安価な住民本位のサービスというものが、ビジネスの判断としても、経営の判断としても、当然提供されていくことになるだろうというふうに私は想定をしております。

松野(頼)委員 多分、一般の民間の金融機関では十円で毎月定期に引き落とすというサービスはありません。これはもう全くありません。ですから、こういうサービスが残るのか残らないのか。

 ぜひ、民主党案、先ほど中途半端というふうに言われましたけれども、これは公がやるべきところ、民がやるべきところという仕分けの部分で、私は、このサービスは、ある程度公共の福祉を考えたり、特に過疎地地域を考えた場合に、非常に公が担ってもいいサービスではないかと思いますけれども、どうか、こういうサービスが民主党案だと残る理念があるのかないのかというのをちょっとお聞かせいただければありがたい。

大串議員 お答え申し上げます。

 民主党の案は、まず民と官の役割をきっちりと確定し、峻別し、そして官の分野については国が責任を持ってやっていく、そういう考え方に基づいてやっております。

 したがって、貯金の分野におきましては、為替あるいは少額貯金といった津々浦々を通じて国が責任を持って提供すべきサービスについては、国が責任を持ってきっちり規定された上でやっていく、そういう案になっております。

松野(頼)委員 多分、郵便局に預けられている方々と、一般の都銀なりメガバンクに預けている方々の、私は、実は資金のイメージが全く違うんではないかと思うんですね。

 例えば、郵便局に預けていらっしゃる方が、シンジケートローンで私の預けているお金を運用してもらいたいとか、リスクの高い、そのかわり利回りはいいけれども、リスクマネーで運用してもらいたいとかいう思いで郵便局に預けていらっしゃる方というのは非常に少ないんではないかと思うんです。

 逆に、安い公共的なサービスを受ける、そのかわり利息は安いかもしれないけれども、それが大きくなってふえなくても構わないから、安心して、そして近所で預けられる、こういう公共的な部分を担う意味を持って預けられている方が私は多いのではないかというふうに思っております。

 もちろん、これは断定はできることではありませんけれども、郵便局に集まっているお金の性質と、一般の銀行に集まっている、メガバンクに集まっているお金の性質というものは、やはり少しそこは考えられてもいいのではないかというふうに思っております。

 そしてもう一つ、要は、社会貢献業務というのがあります。今回、この社会貢献業務、まず、この対象になるものというのは一体何なんでしょうか。

竹中国務大臣 社会貢献、まさに今、郵政自身が社会貢献の業務を行っております。第三種・第四種郵便等々がその典型でございますけれども、ほかにひまわりサービス等々のサービスも行っております。

 この社会貢献の対象でありますけれども、具体的に我々が考えておりますのは、第三種・第四種郵便のうち、社会福祉の増進に寄与する郵便の業務、これは心身障害者団体が発行する定期刊行物でございますとか盲人用の点字や録音物等々を考えております。また、被災者の救援または社会福祉の増進に寄与するための郵便料金の免除、さらには、郵便の業務等の遂行に支障のない範囲内で総務大臣の認可を受けて行う業務のうち、被災者の救援または社会福祉の増進に寄与して、かつ、この民営化された会社以外には当該業務を実施する者がいない業務、これはひまわりサービス等々が当てはまる場合があると思っておりますけれども、そういうものを社会貢献業務の対象というふうに考えております。

松野(頼)委員 あと、その予算規模は大体どれぐらいを見込んでいらっしゃいますか。

竹中国務大臣 年間六十億ぐらいの資金の交付を考えております。

松野(頼)委員 そうしますと、この社会貢献業務、今、郵政公社が行っている不採算の業務というのが実はあるんです。これは、公共的なイメージ、公共的な性格を持っているからあえて不採算な業務を行っているということなんですけれども、例えば一般三種という業務があります。これは八十一億円の赤字事業です。そして新聞の郵送、これも百十五億円の赤字の事業であります。四種の通信教育、これも十三・五億円の赤字事業。また学術、これは小さいですけれども、一・六億円の赤字事業です。

 要は、こういう公共的なサービス、これは郵便法の第一条でも書いてありますけれども、公共的なサービスを担うという責務の中からこういう赤字事業が行われていると思うんですけれども、例えば、具体的に、新しくできた郵政事業株式会社法の四条の二項においては、会社が営む業務について、三種のうち、社会福祉の増進に寄与する郵便の業務、それと四種の一部、福祉的なもの、これが社会貢献業務の定義となっているんですが、今おっしゃった八十億ですかの中では今の赤字事業というのは吸収できないんですよ。この場合に、例えば、一般三種八十一億円の赤字事業、新聞の配達百十五億円、これは残るのか残らないのか、これも教えていただきたいと思います。

竹中国務大臣 まず、委員、郵便の事業というのは、そもそも、いわゆるユニバーサルサービスの義務がございますから、離島等々に届けなければいけない。この離島に届けるという行為そのものは明らかに不採算でございます。しかし、その不採算なものも含めてユニバーサルのサービスをぜひやっていただかなければいけない、そのことを法律で私たちは義務づけているわけであります。

 そこで、そうした不採算なものを実施するに当たりまして、どこかである種独占的な利益を得て、そこで、よくリザーブエリアというふうに言われますが、そういうもので得た利益をもって、そしてしっかりと不採算の部分もやってくださいよ、なぜならば、郵便事業全体が社会的な意味を持っている作業なんですから。実は、第三種・第四種郵便につきましても、その大宗はその中で本来やっていただくものであるというふうに考えております。

 もう一度言いますが、ユニバーサルサービスの義務の中でやっていただけるものだというふうに認識をしております。

 しかしながら、それでも実は第三種・第四種郵便の中で社会福祉の増進に寄与するものに関しましては、これは利用者の負担能力等々を勘案しますと、経営努力をしてもなおサービス水準の著しい低下が生ずる場合等々、そういう場合があり得るので、だから特別にこの基金の交付の対象にしようというふうに考えているわけでございます。

 現在の郵便法の規定におきまして、第三種郵便物につきましては、これは新聞、雑誌等の定刊物を対象にしているものでありまして、第四種については、今言いました、盲人用の点字等々ございますけれども、これは民営化後もこの対象は変更しませんで、引き続きその提供を義務づけるということにしております。ただし、それは広い意味でのユニバーサルサービスの義務の中で義務づけるということを考えているわけでございまして、その中で特に、今申し上げましたように、負担能力等々の関係で非常に厳しいだろうと考えられる社会福祉の増進に寄与するものに限定して基金を交付する、そういう仕組みにしております。

松野(頼)委員 ですから、基金から飛び出た部分はどうするんですかということなんです。

 要は、ユニバーサルサービスの中で吸収すると言われていますが、この資料は準備室からいただいた資料でありまして、それぞれの事業ごとの収支というのがちゃんと計算してあるんですよ。ですから、こういう数字に基づいて不採算の事業ごとに収支が出ているわけですから、この赤字の事業で基金で補えない部分に関しては存続するのかしないのか。もし存続をした場合には、株主はそれに対してどう思うのかということをお答えいただければありがたいと思います。

竹中国務大臣 そのことを先ほどお答えしたわけでございます。これは、不採算のものも含めまして、そうしたサービスを提供する義務を課しているわけです。これは民営化された後も課すんです。これは先ほど言いましたように、民営化後もこの対象、第三種、四種の対象は変更せず、引き続きその義務を、提供を義務づけることを課します。そこを、先ほど離島のサービスを例に出したのは、離島のサービスも、別に第三種、四種ではありませんけれども、同じように不採算だけれども、提供する社会的な責務を負っていただくわけです。それをリザーブエリア、別のところでしっかりと利益を稼ぐシステムを残しておいて、それでやっていただく。

 それで、株主云々のお尋ねがございましたが、これはまさにそういう義務を負った民間会社です。義務を負った民間会社というのはたくさんございます。これはJTもそうでありますし、NTTもそうでございます。そういう義務を負った、一定の義務は果たしていただく、しかしその他は民間の企業としてしっかりと民間活力を発揮していただく。我々は、そういう形で特殊会社として郵政会社、郵便事業会社等々を設立しまして、しっかりと公的な役割を果たしながら民の活力を導入していくという制度設計をしているわけであります。

松野(頼)委員 では、民主党案ではどうでしょうか。

 私は、例えば、株式を売却しないという状況の中で、そこで官と民の切り分けというものがきっちりできていると。今の場合は、株主もいるけれどもこういう公共的な義務も課すという、一般の民間商法上の株式会社の分類でいくと非常にわかりづらいという会社ができているんではないかというふうに思う。もちろん、あるのはあるんですよ。ただ、あえて完全に民営化ですよというイメージをつくる中ではなくて、非常にわかりづらいのではないかと。だったら、なぜこういう民営化をするのか。

 私は、そもそもこの民営化という話、成田国際空港も民営化をされました、道路公団もこの十月の一日から民営化をされました。ただ、民営化といって、一般の株式会社とはやはり違う性格を持つという、これが非常に私はわかりづらいと思うんですね。株主の利益、要は利潤を追求するというのが株式会社の宿命であります。そして、一方では公的なサービスを持つという、この二つの間で一体どういう形の会社が運営をされるんだということに対して、非常にわかりづらい部分が私は残るんではないかと思います。ぜひそこは民主党案でちょっと答えていただければありがたい。

大串議員 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたように、民主党案では、国が責務として行うべき官の事業に関しては国が責任を持って行うという考え方に立っておりまして、郵便貯金法あるいは振替法、為替法に基づいて行われている社会貢献活動については国が責任を持って行っていくということになっております。

松野(頼)委員 あともう一つ、利用者から見ると、要は、近くの郵便局が存続をするのかということなんですね。

 郵便局株式会社法の二条の二項で、郵便局とは郵便窓口業務を行うものというふうに今回の政府案では説明されているんです。そして、これはちょっと複雑なんですけれども、今度は、窓口業務の委託に関する法律第二条というところで、その窓口業務とは何ぞやということが説明をされているんです。そうすると、郵便物の引き受け、郵便物の交付、要は受け付けと配達ですね、そして切手の販売、これが窓口業務ですよということを言っているんです。ここに郵貯、簡保というのは全く出てこないんです。

 ということは、これは前の国会で委員会の中でも議論をされていましたけれども、郵貯、簡保を扱わない郵便局というのが存在するのかしないのかなんですよ。どうかそこを答えていただければありがたいと思います。

竹中国務大臣 郵貯、簡保を扱わない郵便局はあるのかということでございますが、ございます。

 郵貯を扱わない郵便局は約五百局ぐらいあったというふうに承知をしておりますけれども、簡保を扱わない郵便局もございます。これは主として簡易局等々を想像していただければわかりますが、正確に数を申し上げます。預金を扱わない郵便局は五百二十九でございます。保険を扱わない郵便局は千三十七でございます。これは要するに、農協等に郵便を委託しているところは、農協はみずから預金業務をやりますから郵便貯金は扱わない。そういうところが五百局ございます。

松野(頼)委員 そういう委託事業以外に、例えば十年後、この民営化が完成したときに、要は、郵便貯金、保険、これは一括代理店契約をするのかしないのかというところで、随分前の委員会の中でやりとりがあったと思うんですが、要は、郵便局、さっきの定義ですと、窓口業務が行われるのが郵便局ですよというふうに設置されているんです。

 ずっと大臣も、郵便局はなくなりません、なくなりませんというふうに選挙中もおっしゃっていました。ただ、一般の人の描いているイメージの郵便局とこの法律に規定をされている郵便局のイメージが違うんです。

 というのは、大臣、この法律の中で読み取れる郵便局というのは、郵貯、簡保を扱わないのが郵便局ですよと言っております、郵便局の定義では。そこに、郵便局が一括して金融会社と代理店契約を結ぶか結ばないかによって、郵便局が郵貯、簡保を扱えるか扱えないかということが決まるわけですが、そういう将来にわたって、要は、全体で二万四千七百のうちのほとんど全部と契約をするのか、それとも一行ずつ契約をしていくのかによって、郵便局の存在ができるかできないのかというのが決まるわけです。そこのところ、どうか正確に答えていただければありがたいと思います。

竹中国務大臣 御指摘のとおり、郵便局というのは、郵便窓口業務を行う営業所であるというふうに今回定義をしております。郵便局では、したがって、郵便窓口業務、まさに郵便書留を引き受けたり切手を売ったり、そういうことはもう義務としてやるわけでございますが、その他の業務はやることができる業務ということになりまして、貯金や保険業務というのは、やることができる、行うことができる業務の中に含まれております。

 しかし、現実には、郵便局、特にこれは特定郵便局等々の、一般の特定郵便局をイメージしていただいたらよろしいかと思いますが、そういうところの仕事というのは、三分の二とか七割が郵便以外の業務、つまり郵便貯金の業務なんです。したがって、現実問題として、私たちは、これは金融の仕事でありますので、国が介入してユニバーサルなサービス、一律の提供義務は課しませんけれども、国民の利便性も考えまして、実体的にこうした利便のあるサービス、金融サービスが続けられるような、実効性のある仕組みをつくっているというのが今回の制度設計でございます。

 その仕組みとしては、委員も言及くださいました、まず、移行期間を十分にカバーする長期の業務の代理店契約というのを結んでいただく、それでその間は十分にカバーをされます。そしてその後も、当然のことながら、これは委託する側と委託される側のまさに利害が一致しますから、インセンティブの問題として利害が一致しますので、こういう契約は私たちは当然続くであろうというふうに考えておりますけれども、それでも問題が生じるような場合、過疎地の最前線の小さな郵便局等々でネットワークの価値が低下してくるような場合が生じた場合には、これは基金を使って金融のサービスが地域貢献として提供できるようにしようという仕組みをつくっている。そして何よりも、経営判断として一体的な経営が必要であるならばそういうことができることも可能にしているということで、まさに金融であるから法律上の義務は課さないけれども、実態として実効性のある金融のサービスが、利便が国民に提供されるような仕組みをこの法律体系の中でつくっているわけでございます。

松野(頼)委員 どうか、国民の利便性、特にそれに配慮した運用をしていただければありがたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵澄夫でございます。

 私、この総選挙、いわゆる小泉台風の中、私の地元の奈良一区も造反という名前をつけられた方もいらっしゃる中で、私も必死の戦いの中で奈良一区からはい上がってまいりました二期生でございますが、本日は、初めてテレビ中継の中で、また総理出席ということでの御質問をさせていただきます。どうか総理に、しっかりとした大きな議論、政治家としての理念の、そうしたお話をさせていただければというふうに思っております。

 私、地元で、今奈良というふうに申し上げましたが、私自身、一番下は幼稚園、上は高校生の六人の子供の父親でございます。そして、私自身は、その六人の子供と家内と、そして私の両親、実は家内の両親も一緒に暮らしておりました。今は家内の母だけとなり、十一人家族で奈良で暮らしておるわけであります。

 この家庭の中で、まさに子供とおじいちゃん、おばあちゃん、そして働く私たち担い手、三世代の家族の中で、子供たちは、それこそおじいちゃん、おばあちゃんからお年玉をもらって、小銭を一生懸命貯金箱にためていく。こうして貯金箱がいっぱいになると、歩いて近所の郵便局に持っていく。その近所の郵便局では、顔見知りの局員のおじさんがそれをしっかりと計算して、通帳につけてもらえる。子供ながらに、郵便局にお金を持っていく、おじいちゃん、おばあちゃんからもらったお年玉をしっかりそこに持っていって、ためていく。子供が通帳を見てうれしそうにしているというのは、ある意味、おじいちゃん、おばあちゃんからはかわいく映るかもしれませんが、お金ばかりがすべてじゃないよというようなことも私は言いながら、しかし、こうした日常生活、実はどこでも目に見えるような光景ではないかというふうに思います。

 おじいちゃん、おばあちゃんは年金を郵便局にとりに行く。孫にお小遣いをやるための年金からまさにお年玉まで、お年玉から年金までの郵便局のその位置づけ。私の住む場所は決して過疎と呼べるようなところではないかもしれません。しかし、そこでも十分にその地域の金融インフラを担っているという、庶民の経済ライフラインという郵便局の位置づけ、これがまさにこの日本の中で郵便局に対する多くの国民の思いではないでしょうか。

 そして、さきの国会で、私もこの郵政民営化の特別委員会の委員として、その審議の中に参加をさせていただきました。私どもの同僚の安住議員、総理も御記憶にあるかと思いますが、あすなろ村という政府のつくった紙芝居に対して、「あすなろ村の惨劇 そして誰もいなくなった」という副題のついた紙芝居をこの委員会でも皆さんごらんいただいた場面があったと思います。

 あの「あすなろ村の惨劇」を受けてか、その後、大きなさまざまな場面で、あちこちで近未来の物語というものが語られております。インターネット等のブログと呼ばれるその中身を見ますと、「メガ郵貯の復活」などなど、こうした近未来を想定した具体的なストーリー、小説などが書かれている。一つや二つだけではありません。

 そうした中を見てみますと、イメージとして具体的に、民営化された郵貯では、窓口の対応は確かに一見改善されたように見えるが、以前のように親近感がなくなり他人行儀になってしまった。あるいは、子供やお年寄りが来ても機械的な対応なのに、前にはなかった高額預金者専用のお得意様カウンターではお茶を出して投資信託の説明をしている。あるいは、お年玉を貯金した通帳を開くと、口座維持手数料という見なれない印字とともに子供の貯金額が減ってしまっている。休日にMDを買おうとしてATMから貯金をおろすと、手数料が取られてしまっているというようなことが起こるのではないかと、あちこちのメディアの中で近未来を想定するストーリーが語られています。

 さて、こうしたことがもちろんこの委員会の中でも議論をされてまいりましたが、総理、今私が挙げたような心配というものは果たして杞憂なんでしょうか。ぜひ総理の御感想をまずお聞かせいただけませんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 時代が変わり、人も変われば、当然さまざまな分野の事業が変わってまいります。今と同じような状況が将来もずっと続くということは断定できません。

 同じ郵便局においても、さまざまなサービスが展開される、今では想像できないような商品やサービスが展開されるところもあるでしょうし、あるいは、今までの郵便局、身近な、歩いていけば行けるという郵便局がなくなるということも否定はできません。

 しかし、我々としては、郵便局というネットワーク、全国津々浦々にある郵便局のこの機能というものは財産である、資産である、そういう受けとめをして、この郵便局ネットワークを民営化後も維持、発展させていこうという設計のもとにこの法案を提出しているわけであります。

 どの地域においてどういうサービスが行われるかというのは、今後の経営者の判断、あるいは国民のさまざまな要望にどうこたえていくかということにもよると思いますが、郵便局に限らず、現状のまま将来維持されるのかというと、それは随分変わってくるであろう。飛脚の時代から、今の物流、交通。馬、かご、自転車、自動車、新幹線、飛行機、ロケット。固定電話から携帯電話。この進歩というのは、百年前だれが想像したでしょうか。

 そういうことを考えますと、現状維持だということを断定できる人はいないと思います。さまざまな変化、それにどう対応していくかということが我々に課せられた責務じゃないでしょうか。

馬淵委員 私は、現状維持が必ず守られなければならないということを申しているのではありませんが、今、私が先ほど例示したブログの小説などに見られるように、未来において私たちが守らねばならないものを失ってしまうのではないか、そうしたおそれがないかということに対しての御感想を求めたつもりでございました。

 安住議員の紙芝居のときには総理はこのようにおっしゃっておられますね。悲観論からは未来への挑戦はない。このこと自身は、この言葉だけをとればまさにそのとおりであるかもしれませんが、しかし、今回のこの民営化の法案の審議の中で繰り返しここでも議論をされている、まさに国民の当然の権利として持っているこの金融の社会権あるいはインフラ、これを本当に私たちがしっかりと守れるのかということ。

 つまり、私自身は、この金融排除ということに対して、しっかりとこの国会の中で国民にわかる議論としてお伝えをしていかねばならない。どのようにそれを防いでいくのか、そして一方で、我々が提出をしている法案の中でそれをしっかりと担保する、その御説明をさせていただきながら、政府案が果たして本当に果たすことができる責務を私たちに示しているのか、それをこの委員会の中でお伝えいただけたらというふうに思っております。

 さて、さきの国会の中では、参議院での審議に移って、そしてその中では、私どもの同僚の櫻井議員から総理に対して、この金融排除の問題について御質問をされました。

 その中で、アメリカでは、約一千百万世帯が銀行口座を持てないという現実がある。そして、国営の金融機関のないアメリカにおきましては、口座手数料を取られるために低所得者が銀行口座を持てないという現実があります。我が国でも口座手数料を取るという銀行もふえておりますが、預金残高が五十万円以下の場合には、ある外資などは二千百円の口座維持手数料を取っているという例もございます。

 そして今、未曾有の低金利時代、いわゆるゼロ金利時代でありますが、今後、金利の上昇局面等々を考えますと、当然ながら少しでも高い金利をつけようとして、いわゆる小口の金融に対しては厳しくその環境が激変していく可能性がある。現在は銀行よりも低く抑えられている例えば郵便局の振り込み手数料等、こうしたものも引き上げられる可能性が出てくる。

 今小泉総理が進められているとおっしゃっている構造改革、この中で一体何が今起きようとしているんでしょうか。私は、今の金融の状況を考えていくと、それはまさに所得格差の拡大ということがこの構造改革とおっしゃる中で起きている。そのときに切り捨てられてしまうという部分がどこにあるのかということを私たちはしっかり見定めなければならないのではないでしょうか。

 貯蓄なし世帯、これは昭和六十二年には五%以下だったものですが、平成十五年には二〇%以上にもなっています。一方で、高額の貯蓄をしているいわゆる富裕層の割合もふえております。つまり、貯蓄なし世帯の増加、そして高額な貯蓄の富裕層、二極化が進んでいる中で、金融排除、金融社会権と呼ばれるような私たちの権利、これはどういうものかというと、だれもが簡単にその口座を維持することができる、それは年金の受け取りであったりあるいは決済性であったり少額の貯蓄であったりする、こうしたライフラインとしての金融を本当にしっかりと守ることができるのか。

 総理、今回の民営化法案の審議の中で、総理は胸を張って金融排除は起こらないんだということを明言されることはできますでしょうか。明確にお答えをいただきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 金融サービスができるような設計を、今回もこの郵政の民営化法案の中にしているわけであります。それはどのような形で行われるかというのはさまざまな金融機関によって違うと思いますけれども、今回の郵便局のいわゆる金融サービスについては、今までの機能が維持されるようなさまざまな措置をとっております。

竹中国務大臣 基本的な考え方は今総理の御答弁のとおりでございます。

 ちょっと事実関係だけ、担当大臣として申し上げたいんですが、金融排除というのを今委員おっしゃられました。私自身もこれは重要な問題であると思いますが、基本的な定義としては、多分何らかの理由によって口座を持つことのできない者が多く存在するというふうな状況だと思います。

 では日本はどうなのかといいますと、やはり日本においては、一般的に口座維持手数料がない普通預金口座でありますとか各種料金の口座からの自動引き落とし等々が十分普及しておりますので、現状でアメリカ、イギリスなどで見られるような金融機関の口座を保有しない方々が多く存在する状況ではない、現状認識としては、私はそのように認識をしております。

 もう一つ、アメリカ等々の状況がよく引用されるわけでございますが、アメリカは確かに、そういうグループが存在して社会問題化しているというのは事実だと思います。しかし、しからば、では口座を持っていない方がどうして口座を持っていないのかというアンケート調査等々によりますと、口座手数料が高いからだというふうに答える人は一割でございます。あと、重要な部分、五割は預金を持つことのメリットを感じないということでございますので、競争等を通じて、口座手数料が云々だから金融排除が広がるということでは必ずしもないというふうに認識をしております。

 将来の問題として、これは常に政府としては気を配らなければいけない問題であるという認識は持っております。

馬淵委員 竹中大臣から今御指摘をいただきました部分、そして、今の御答弁の中には、将来においては当然ながら十分に考慮しなければならないということがございましたが、実は、その将来においてということを考えたときに、さきの国会審議の中では、竹内内閣官房審議官が金融排除の問題に関してはこのような御答弁をされておられます。民営化後の郵便貯金銀行におきましても、もちろん、経営判断により、商品、サービスの多様化に応じてさまざまな手数料が設定されることになりますが、郵便貯金の性格からして、民営化後によっても、利用者利便の向上が図られる、引き続きそれにふさわしいような手数料設定が行われると期待しているところでございます、このようにおっしゃっておられます。

 この期待しているという、これは、今私が申し上げているのはまさに国民の権利なんですね。権利の話をするときに、今、国会の答弁の中では、期待しているというそんな言葉で済まされている。果たして本当に国民の権利を守るということに対して政府は明確な意思をお持ちなんでしょうか。

 その点に関しまして、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは、日本の地域のさまざまな要望は違うと思いますが、今回の法案の設計にしても、地域でそのサービスが必要だという声にこたえるような基金を積み、制度を持っておりますから、そういう意味において、期待していると。法律で義務づけなくてもそのようなサービスが展開されるような、そういう環境をつくっていくのがこれからの日本の社会で大事なことだと思っております。

馬淵委員 それを明確に法律の中で規定しているかということを私は問題にしていきたいと思っております。

 その前に、今アメリカの問題では、大きな社会構造の違いがあるというお話もございましたが、現実には、私は、先ほど申し上げたように、その社会構造の問題があるアメリカ型のモデルを、今小泉総理の構造改革は実はその方向に向かっているというようなことはないのかということをお尋ねしたいと思っております。

 過日、アメリカの南部を襲いましたあのハリケーン・カトリーナ。車もお金もなく、逃げることができなかった貧困層の方々の悲惨な姿がテレビにも映し出されました。ごらんになった方もたくさんいらっしゃるかと思います。市場原理によって富裕層が生み出され、その一方で生命すら切り捨てられる、大変厳しい市場原理の社会の姿を象徴するものであったかと思います。

 総理は、総理の語るところの構造改革によって、この国を、我が国を、アメリカ型の市場経済社会、市場原理で切り捨てられる地方やあるいは小口、個人といったところ、こうした社会をつくっていこうと果たしてされているんでしょうか。この基礎的な金融サービスを享受する、国民の権利として、人が人らしく生きる権利として、基礎的なサービスを官が責任を持って行うというこの立場を果たして総理はおとりになろうとされるでしょうか。

 よって立つところの違い、実は、我が民主党が、我々が提出させていただいた法案との違いはこの部分にあるのではないかと思います。

 私どもは、官が行うべきは何か、そして民が行うべきは何かということを明確に切り分けるということを前提に今回の郵政改革法案の提出をさせていただきました。官が行うべきは、まさに小口の決済であったり、あるいは少額貯蓄、あるいはその少額貯蓄によって連動される個人向けの小口融資。これは、個人のライフライン、金融社会権として守られるべきものであるから官が守るんだ。これを民間に開放することによって果たしてこれらのユニバーサルサービスを本当に維持することができるのか、そこに対して大きな疑問を持っております。

 まず、法律の部分ではなく、総理にお尋ねをしたいのは、この私たちが考えている、よって立つ部分、国が守るべきもの、これは金融社会権なんだと明確に私たちの法案にはその理念を盛り込みました。総理、今回まさに小泉改革の本丸だとおっしゃっておられるこの民営化法案の中に、そのような理念が、私たちが申し上げているような理念が盛り込まれているんでしょうか。

 総理、この部分についてはっきりとお答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、アメリカ型社会と日本型社会、違うと思いますが、別にアメリカ型社会を目指しているわけじゃありません。市場経済を重視するという意味におきましても、アメリカもありますし、ヨーロッパもあります、日本もあります。民主主義制度といっても、同じ投票が行われても、イギリスでもドイツでも日本でもアメリカでも選挙制度は違います。また、金融サービスのみならず、社会の役割、国家の役割、年金、医療、介護、こういう社会保障制度、これまた制度としてはありますが、アメリカと日本とは違います。そういう官の分野で国がやらなきゃならないことをしっかりやっていく。

 同時に、大事な点は、企業に対してあるいは社会に対して、個人に対して、法律で義務づけないとやらないという考えにならないような社会にしたいと思っております。法律に義務づけないとサービスは展開できないのか、いい商品は提供しないのか、私は違うと思います。日本の社会が発展してきたのは、各企業がそれぞれの創意工夫を発揮して、知恵を出して、どういう商品を売ったら国民に喜ばれるか、どういうサービスを国民は必要としているのか。いずれも今、国民が必要としている、喜んでいる商品なりサービスは、国が法律で義務づけているわけじゃありません。

 まさに民間活力を発揮する、民間こそがこの社会の担い手だ。それを役所として、どれが必要かという点について、必要な最低限の国がやるべきことは当然あると思いますが、できるだけ、法律で義務づけなくても、多くの国民が必要としていけるような、さまざまな分野で民間の人が活躍している環境をつくるのが政治として大事な役割ではないか。

 私は、そういう意味において、アメリカ型社会を目指している、一郵政法案の視点からそこまで邪推するのはちょっと飛躍的過ぎるんじゃないでしょうか。

馬淵委員 総理は論点を少し大幅に動かされているような気もするんですが、私は金融社会権について申し上げております。金融排除の問題について、アメリカ型の社会ということを例示させていただいたわけであります。

 総理、今大変なお言葉をいただいたわけですが、政治で、いわゆる法律で縛らなくてもというお言葉がございました。さきの国会でも、実は総理は参議院の委員会で、金融サービスの提供、これについてこういう御見解を述べられています。政治家というのは、法律になくても、法律で義務づけなくても、地域の声をよく聞いて、そして行政に働きかけるというのが政治家の重要な役割の一つだと思いますと。これは聞き方によっては、私は、法律を軽視するような大変な発言だなと思うわけであります。そしてまた今も、法律で縛ることなく、民間の知恵やあるいは活力によってそうしたことがなされることが望ましいとおっしゃっていますが、ならば、なぜこの法律案を今ここで審議しているんですか。

 今おっしゃっているのは、私は、金融社会権について、金融排除の問題について、まずお尋ねをさせていただきました。これを官が行うべきかどうか、この一点を私たちはしっかりと理念として持って法案を提出させていただいた。しかし、政府の法案の中にはこれは明示されていないんですよ。この政府の法案、ここでは官でなければできないことは何なのかという議論が置き去りにされて、そしてこの政府の法案、郵便事業に加えて、決済、少額貯蓄、これらのユニバーサルサービスというもの、これらを法律で義務づけるということをなぜおやりにならないのか。

 これについて御見解をお尋ねします。

竹中国務大臣 政府がいろいろなことを義務づけるということに関しては、私たちは極めて抑制的でなければならないと思います。

 理由は、義務づけるということになりますと、例えば、金融排除をするために何かの金融サービスを必ずだれかに、どこかの主体に提供させなさいということになるわけでありますけれども、その場合は、その義務を果たすための仕組みも同時につくってやらなければならなくなる。そこで何らかの独占を認めるとか、ないしは問題が起きた場合にはそれは税金で補てんしますとか、結局そこに政府が介入して、その結果として大きな政府になっていくというのが通常のパターンであろうと思います。

 したがって、どうしても政府が介入しなければいけない場合というのは私はあると思います。それに関しては当然政府はしっかりとした役割を果たすわけですが、金融排除に関しましては、冒頭で申し上げたように、日本においてそのような形の社会問題があるとは認識をしていないわけであります。もしそういう社会問題があると認識したならば、これは何らかの対策を打つのは政府の責任となるでしょうが、ここは、現状の認識として、私たちはそのような問題があるというふうには認識をしていない。したがって、政府が何らかの形での義務をつけるということは抑制的に考えていかなければならないというふうに思います。

馬淵委員 問題が起きてから対応するのではなく、現在我々国民が持っている権利として守らねばならないという議論をなぜこの国会の中でしようとしないんですかと私はお聞きしているんですよ。この国会の中でも、議論として、官がすべきは何かという議論を置き去りにしてしまっている。私どもは、だからこうして対案の中で明確に理念を指し示しているわけなんです。

 この金融社会権の問題、金融排除は、確かに大臣がおっしゃるように、アメリカのような大きな階層の違いというのはないとおっしゃるかもしれないが、しかし現実には、小泉構造改革、小泉さんがおっしゃる、総理がおっしゃるその方向の中で、格差が拡大しているという実態があるじゃないですか。その中で、なぜ、問題が起きていない、問題の認識がないからそれを義務づけないんだという、これは私には全く理解ができない。

 いや、むしろ私どもは、スタンスとして明確に、官が行うべきものは何か、国の責務で行うべきものは何かを明確に国民に問う、この姿勢が必要ではないか、こうお尋ねをしているわけであります。問題が起きてから、何かが、社会現象として認識しなければならない切迫した状況が起きてから対応する、それこそまさに後手後手の政府の動きではないですか。改革を進めるならば、一歩先んじて、何を守るべきかの議論を行って、その上で、今申し上げたような義務化、法律での明確な義務づけをするという議論がなされるべきではないんでしょうか。

 総理、今私が申し上げたことに対して総理の御見解をお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 私は、金融サービスにおいてそのような義務づけをする必要はないと思います。そのようなサービスを受けられない点についてどうサービスを提供するかは、まさに民間の競争によってなされるべきものだと思っております。

馬淵委員 基本的に、こうしたスタンスの違いというのを逆にしっかりと私はこの委員会の中で明確にさせていただきたいというふうに思います。

 我々民主党は、国民の権利として国が守るべきもの、国の責務として保障すべきものというものに対して、郵便事業と、そして今申し上げた金融社会権、小口の金融のインフラというものをしっかりと明確に区分して掲げている。これが私どもの案です。

 しかし、これに対して、総理のお答えでは、いや、それは民間の中で競ってもらえばいいんだというお話でありますが、民間の中で競えば、これはやがてサービスとして成立するかどうかわからなくなるということ。では、なぜ今、公があるんですか、なぜ民があるんですかということ、そもそもこの議論がなされていないままに民営化が進められようとしている、私はこのように感じてなりません。今回再提出された法案、この再提案された法案の中、結局はこうした議論がなされないままに終わってしまう、そんなことのないようにしっかりと私どもは対案を出させていただきました。

 さて、今、金融排除の問題ということで、単なる悲観論では切り捨てられるべきものではないということを私はお伝えさせていただいたわけでありますが、今、竹中大臣からは、外国の例ということで、これも、この国の国情とは違う、それも当然ながら理解できます。

 しかし一方で、我々が今こうして政治の世界で法律論、立法論を闘わすときに大事なことは、まさに社会学の世界、実験はできないんです。私は技術屋です、理科系を出て、そして技術屋として社会人になりました。技術の世界では、まさに自然科学の世界では、実験というものを行って、その自然の法則というものをつかみ取ることができます。しかし、社会科学では実験ができない。かつて壮大な実験だとおっしゃった大臣もおられましたが、そんなことがあってはならない。

 ならば、何に学ぶべきか。まさにこれは我々の、人類が今日まで築き上げてきた歴史です。歴史に学び、あるいは他国、諸外国、先人たちの事例というものに学ばねばならない。その意味では、外国の事例というものについては十分な検証と見識を持って対応していかねばならないと思っています。

 これももうたびたびこの国会の中でも議論されてまいりましたが、イギリスでは、一九六九年に郵便電気通信省から郵便電気通信公社そして国民貯蓄庁が分離され、そして八一年に郵政公社が独立、八七年に郵便窓口会社が設立されました。しかし、民間金融機関の地方支店の閉鎖が加速する中で、約三百五十万人の銀行口座を持たない方が生まれ、社会問題となった。これを受けて、ブレア政権下では、郵便局がコミュニティーで果たす役割が再評価され、ユニバーサルバンクの設立と基礎的金融サービスの提供、民間金融機関との連携の拡充等、こうした提言がなされ、郵便サービス法が制定され、全株政府保有の英国郵便会社が設立されました。

 また、よくこれも竹中大臣が事例として語られた部分もあったかと思いますが、ニュージーランドの問題。ニュージーランドでは、八七年に郵政事業がニュージーランド・ポストとポストバンクの二つの全株政府保有の特殊会社に分離された。八九年にポストバンクは民間のANZ銀行に売却され、その子会社となった。その後、外資系銀行の手数料値上げや相次ぐ支店の閉鎖によって国民不満が高まり、二〇〇一年、政府はニュージーランド・ポストの子会社としてキウイバンクを新たに設立し、金融のユニバーサルサービスを提供することになった。

 こうした諸外国の例、まさに先人に学ぶ、この事例を見ても、私どもは、こうした環境の中で国が守るべき責務というものは何かということを極めて明確に示しているものではないかと考えるわけでありますが、きょうこうしてテレビで国民の皆さんにお伝えをさせていただいているわけですから、改めて竹中大臣、この事例に対してどう評価をされるか、お伝えください。

竹中国務大臣 委員おっしゃるように、諸外国または私たちの歴史の経験から学ぶという姿勢は大変重要であると思います。しかし、その場合に、まさに歴史にイフはないわけでありますから、そこにもしもということはないわけでありますから、そこの中にある特殊事情等々をしっかりと峻別して、我々が学べることと学べないことをしっかりと峻別する、まさにそこが我々の分析力であり、洞察力であると思います。

 イギリスの例でありますけれども、イギリスは、これはやはり、現実問題として、金融排除が社会問題化していたという問題があったと思います。それに加えまして、多数の方が銀行口座を保有していないところで、実は二〇〇三年四月に、社会給付金や年金の受給者が、これは郵便局でこれまでは為替等によって給付金を受けるやり方をしていたんですが、原則として口座にその給付金を振り込むというふうに急に変わったものですから、口座を持っていない方がどのようにして給付金を受け取ったらよいかという非常に特殊な問題が生じた。そこで、口座を持たない受給者は新たに口座の開設の必要が生じて、さまざまな措置がとられたというふうに認識をしております。

 この点、先ほど言いましたように、現実問題として、金融排除の問題が生じているというふうには考えられない日本の事例とはやはり異なっているものであるというふうに思います。

 ニュージーランドの例であります。これもいろいろな形でよく引用されるわけでありますが、ニュージーランドの場合の最大の問題は、郵政改革の問題ではなくて、銀行行政の問題であったというふうに認識をしております。

 ニュージーランドの銀行のほとんどすべてがオーストラリア等々の銀行に買収されて、つまり、資本の持ち主が外国に行ってしまった。これは、繰り返し言いますが、郵便の問題ではありません。郵政の問題ではなくて、銀行行政全体の問題としてそういう問題が生じたので、まさにナショナルフラッグのといいますか、国の資本の銀行をどうしても持とうということになった。そのときに窓口として郵便局を活用しようということが話として出てきて、これはキウイバンクという形で設立に至ったわけでございます。これは決して郵政の事情でそのようになったということではないと認識をしております。

 ほかの国の事例もいろいろあろうかと思いますけれども、そういった特殊事情と、かつ、我々がその中でも学べることというのをしっかりと峻別したいと思っております。

馬淵委員 それぞれ国々の事情があるという御説明もいただきましたが、果たして今回、政府の提示するその法案の中で、私が申し上げているのは、金融排除、まさにこの金融社会権の問題でありますが、将来の問題として懸念はあるが、現実の問題としてはまだないんだということで、これが置き去りにされているということが、果たして本当に国民の望むその姿であるのかということを私は懸念を感じざるを得ません。

 さて、そもそもこの郵政民営化法案でございますが、なぜ私どももこうして改めてこの理念から繰り返し繰り返しお伝えをしているかといいますと、結局は、政府が示す民営化法案、公が行うべき仕事も民で行うとしながら、当然ながら、そうすると利益を上げることが難しくなっていく、だからそこは、ある意味、基金を設けるであるとか、また政府が再度株を買い戻す等々といった、半官半民であるかのような形をあいまい、おぼろげにちらつかせながら、一体どちらが本当の姿なのかがわからない。これが私は、この今回の政府の民営化法案、明確な理念が見えないという、その御指摘をさせていただいた大きな部分でございます。

 そして、郵政公社の部分におきましては、やがて公社では立ち行かなくなると言って、じり貧論を展開されてこられた。これはさきの国会でもそうでした。このままでは成立しないから民営化するとおっしゃいながらも、一方で、民営化をさせていけば、当然ながら巨大な銀行やあるいは巨大な保険会社が誕生する、民業圧迫をする。民業圧迫をしてしまって、一方で、その会社に対してはある程度の規制が必要だということで、株式の持ち合いも認める。常に、官なのかと問われれば民だと答え、あるいは民の会社かと問われれば官も関与するということを、形の上で取り繕いながらの法律であると私は感じております。

 まさに、半官半民なのか、あるいは民なのか官なのかわからない会社を明示されてきた、その政府案に対して、私どもは、繰り返し申し上げているように、郵便事業、あるいは金融排除を防ぐ金融社会権に関しては、しっかりと官の関与において守る、そして民間に完全に明け渡す部分に関しては、簡易保険、これらは廃止をして、郵政保険会社を設立し、完全に民営化をしていくと、明確な切り分けを申し上げてきた。政府案というのは、まさに私どもとは全く正反対の、そのどちらかわからない、いずれかわからない姿であるとしか私は言いようがないと思っています。

 かつて源頼政が射抜いたと言われる伝説の怪物、頭は猿、胴はタヌキ、尾は蛇、手足はトラに似ていると言われるぬえ、このぬえのような化け物が今回の郵政民営化法案、政府案にほかならないと私は思いますが、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 民間にできるものを民間にやっていただいて、そして、国民が必要とするようなサービス、これに遺漏なきを期すという、極めて広範な国民の要望にこたえた、いい案だと思っております。

馬淵委員 総理はこれを、もう二度目の提出でございますから、それはいい案だとおっしゃるのかもしれませんが、私どもの対案を示したこの姿勢というのは、明確に官と民を切り分けるというこの一点、これが政府案と大きく違うということを繰り返し申し上げさせていただいております。

 さて、民でできることは完全に民に任せるというのが私どもの考えであり、官と民を切り分けるということでありますが、郵貯については、定額貯金のようなもの、これが民間でできることに変わりつつあるということで、これは民間に任せてもう官では行わないんだというのが我々の案でございます。

 それに対して、十年たっても株式の持ち合いを認めて、政府の関与が残るかもしれない特殊会社、そして、定額貯金どころか、民ができる事業をどんどん行っていくという、民業を圧迫する郵便貯金会社、この政府案の民営化法案の。簡保についても同じことが言える。こうした中で、民業を圧迫するというおそれ、これにつきまして、我々の案は、極めて市場親和性が高い、このようにマスコミの論説等にも御評価をいただいております。

 そこで、官から民へという言葉をいつも総理はお使いになられますが、私どもは、本当に市場にゆだねるならば、官から民へではなく、官から市場にという考え方が重要だと思っておりますが、これに対しては、総理、いかがお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 簡保は民営化して、そして郵貯は縮小していこうという案だと思うんですけれども、簡保はサービスは必要ないという考えなんでしょうかね、簡保も金融サービスですから。しかしながら、政府の案というのは、郵貯銀行、それから保険銀行、そして郵便局で貯金も保険もサービスできるような措置をとっているわけです。

 そして、株式の持ち合いということもありましたけれども、民間会社になるんですから、ほかの民間会社と同等なんですから、ほかの金融機関の株を買ってもいいのに、新たな民間金融機関になった郵貯の株、簡保の株、買っちゃいけないと言う方がおかしいでしょう、そこをいけないと言う方がおかしいんですよ。その辺をどう考えるんですか。誤解しているんですか、あえて。無理やり誤解してくれなくてもいいんですけれどもね。

 民営化されたら当然なんです、全然おかしいことじゃないんです。民間でできることは民間にやってもらおう。そして、ただただ、地域のいろいろな要望があるでしょう、今の法案というのは。そして、地域の要望にもこたえるような措置をつくって、同時に、今でも官業圧迫なんです、今の公社でやる場合は三事業しかできないんですから。それを、民間になれば三事業以外の事業まで展開できる。そこで収益を上げてもらって、利益を上げるような会社になってもらって、税収にも貢献してもらおう、財政にも貢献してもらおう。

 それを一挙にはできませんよ。私、十年間で民営化する、株式を完全処分すると。そうしたら、前、原口さんの質問で、十年、拙速過ぎると。そうしたら、今度は五年で処分しちゃうんだから。十年で拙速と言ったら、五年じゃ何なんですか、これは。議事録を見ればわかりますよ。十年で拙速過ぎると言っていた民主党が、五年で完全処分しろと言うんだから、今度は。拙速じゃなくて何と言うんでしょうかね、これは。拙速過ぎると言っちゃいけないか。

 だから、そういう公社のままでいいと言った民主党が、今度は公社のままじゃできないということで民営化を打ち出してきたわけでしょう。そういう点は評価しますよ、変わったことはいかぬとは言いませんから。よく、やはりこの大事な、長年社会に根づいた郵便局のネットワークをもっと民間に発展させていくことによって、民間のよさと、そして国民が不安に思っている、郵便局のサービスがなくなるんじゃないかという不安にこたえた、極めてよく配慮された法案であるということを御理解いただきたいと思います。

馬淵委員 私は、巨大な民間会社ができるから問題である、こう申し上げているわけですよ。官の関与が残る、そして、これは当然、今おっしゃるように、民間会社になったら株を持てるじゃないかというお話ですが、こんな巨大な会社が突然登場することに問題がある、市場を圧迫する、民業を圧迫すると申し上げているんです。

 これに対してのお答えじゃなく、一方で、同僚議員のかつての説明に対しての言葉をまた取り上げておられますが、私どもが訴えてきているのは、明確な区分と、そして民業を圧迫しないサイズへ、いかに官としてコントロールしながら、市場に対して適正な公正な形でリリースをしていくかということです。

 今の総理のお話は、大きな大きな官のまま、官の規模のまま、民間に市場開放して、市場にほうり出してしまう、それがどれほど民業を圧迫するかということに対する総理の御見解とは私は全く思えない。今、お話しをいただく中で、明確にこの理念の部分で私どもの法案と違うわけでありますから、国民の皆さん方には、しっかりとこの中継なりあるいは今後の歴史的な評価を見ていただく以外にありません。

 さて、そうしたスタンスの違いを確認させていただいた中で、官から民への資金の流れについて、もうあと余り時間もございませんが、お尋ねをさせていただきます。

 我々は、この資金の流れについては、まず郵貯の預入限度額を引き下げるべきであると主張してまいりました。三百万円だった限度額を、五百万、七百万そして一千万と、わずか三年間の間で引き上げてこられました。大幅に引き上げられたこの期間、ちょうどバブルの真っ盛りの時期でもございました。

 この引き上げてきた金額、限度額が一千万円になった九一年、百五十兆であった郵便貯金、これらの資金量が九九年度末には二百六十兆まで膨れ上がっております。こうした郵便貯金の大変な積み上がりというもの、この中で、私どもはまず、この三年間に引き上げた預け入れの限度額というものを引き下げることによって、民にそれこそ直接お金を戻すことができるではないかということを申し上げてきました。

 そして、なぜ二百六十兆にまで膨れ上がったかというと、これはもちろん目標預金というものが、国民の中に持っておるその貯蓄性向の中で目標貯蓄額が上がっていった等々の御説明もありましたが、金融不安、各金融機関が大変な危機に瀕したときに、安心、安全ということで資金が流れてきたといったものもございました。その流れの中で、二百六十兆、今二百四十兆、二百三十兆と言われております、こうした資金量に膨れ上がっている。

 これを政府案では、民営化してお金を民に流すというふうにおっしゃっていますが、なぜ限度額を引き下げることが、今度は、逆に言えば、政府の中ではそれができないのかということ。限度額を引き上げるのを三年でやられたわけです。しかし、引き下げがなぜそんなに困難なことなのか。まず、ここに対しての明確な理由というものをお答えいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 私たちの基本的な考え方は、これは民間企業になっていく、民間企業として大変厳しい資産と負債の管理をしなければいけないわけでありますから、そうした中で、厳しい経営と厳しい市場の環境の中で、その中でまさに最適な規模が実現されるというふうに考えるわけでございます。政府が最適な規模はこれだけであるというふうに、計画経済ならそういうことになるんだと思いますが、私たちは市場経済の中におりますから、そこは政府が決めるべき問題ではないというふうに思っております。

 いずれにしましても、私たちは今、公社の現状から出発して、二〇〇七年十月には現状から出発して、そして適宜、経営の自由度と、そして市場のイコールフッティングのバランスをとりながら、きめ細かなハンドリングをしていこうというふうに考えております。

 ただ重要な点は、民間企業になるということは、二〇一七年においては、これは完全に自由になりますから、いわゆる限度額というのは無限大になるわけであります。その意味では、一千万から出発して、どういう経路を通っていくのが最適かというのはいろいろな御議論があろうかと思いますけれども、最終的にはこの限度額は無限大になる。そういうことを念頭に置いて、できる限りその市場の中で私たちは最適な規模を実現していってもらいたいし、それは可能であるというふうに思っております。

馬淵委員 最も簡単に官から民にお金を流せる方法であるということに対しては、いや、それは官がコントロールすべきではないとおっしゃっている。そして、これだけのエネルギーをかけながら法律を制定して民にすること、先ほど松野委員の質問にもありましたように、単にそれは、官から民にお金が流れるのではなく、入り口が変わるだけではないかというお話もさせていただいていた。

 民に流すのであれば、限度額を引き下げるということ、これを公的なコントロールというふうにおっしゃいますが、一番効果的な方法ではないんですか。なぜそれをしようとせずに、百九時間、この議論はいいですよ、百九時間の議論も構いません。しかし、簡単な方法として、国民のだれもが、なぜそれをしないのかということに対しては疑問を持つと私は思うんですね。今のお答えではその十分な御回答になっているようには思えない。

 そして、もう一点お聞きをしていきたいと思います。

 一千万円、今、限度額がそのように設定されているわけでありますが、これが、二〇〇三年度、金融庁が定額貯金、定期貯金等々大口の通常貯金を対象に行った調査で、七十九万人、約二兆一千億円の限度額超過が判明するなど、郵便貯金の名寄せが不十分であることが指摘されています。この名寄せに関しては、平成十六年度ですか、一次名寄せとして始められたというふうに御報告を受けております。

 この名寄せについて、少し状況をお聞きしたいと思います。郵政民営化、このことを言う前に、まず手をつけられるこの名寄せについて、具体的に状況をお答えいただけますでしょうか。

生田参考人 お答え申し上げます。

 名寄せといいますか、郵貯の限度額管理につきましては、公社スタート以来、最重要課題のうちの一つである、こういうふうに考えまして、真剣に取り組んでおります。

 その結果、昨年の一月、十六年一月にシステム改造が完成いたしまして、定額と通常とあわせて把握できる、やっとシステムが完備いたしまして、名寄せをそれ以来加速度的にやっているということでございます。それで、限度を超えている方には、それに抑えるように、今努力中です。

 これに加えまして、昨年の二月から、入り口でもチェックできるようにということで、窓口での定額貯金などの預け入れのお申し込みをいただくときに、限度額超過となるかどうかあらかじめチェックする。こういう制度とダブルでやっている、こういうことでございます。

 その結果でございますけれども、昨年の三月の時点で、超過数が約三百八十一万人で、超過金額が約七兆一千五百億ということであったわけでございますが、ことしの九月、出たばかりです、ことしの九月中旬現在で、超過者数は約百六十三万人まで減少いたしまして、超過金額は一兆五千百億円、ここまで一応減少してきております。

 減ったとはいえ、巨額な額であるということは十分理解しております。引き続き減額に取り組んでまいりますが、来年の三月末までには全部クリアいたしまして、少なくとも、超えている方には減額してくださいという強い御要請を出させていただく。本当にやっていただくかどうかは、ちょっと相手があることですけれども、強い御要請をしていく、こういうことでございます。

 ただ、一言だけ触れておきたいのは、これはもう大変な作業でございまして、システムでやっても、案外、同名同姓とかいっぱい出てくるんです、四十万人も出てくる。これをシステムで割るわけにいかないんです。今やっているこの作業の中でいいますと、約四十万人出ました同姓の方たちを同姓同人か同姓異人か見分けるのは、実は、個人情報が非常に重要な時代でもあり、マニュアルになるわけです。ただし、やらなきゃならない。これをやった結果、約六、七%の方が同姓異人であるということで作業に入れるわけなんですが、そういう作業に相当手間取りますので、何でシステムができたのにすぐやらないんだと御疑問に思われるかもわかりませんが、もう少し時間がかかる、こういうことでございます。

馬淵委員 今の総裁のお話では、三百八十一万人が百六十三万人まで減ったんだというお話でありますが、結局、限度額の拡大のところは、たった三年間でどんどんどんどん枠を広げていく。そして、限度額を超えたことに対しては、これはシステムが大変だ、なかなか名寄せも、中でも大変だ。そして、この先は限度額の撤廃もある。結局、この今の仕組みの中でいうと、まさに、先ほど来話をさせていただいていた財投債、国債の購入をよりしやすくしている方向に単に誘導していただけとしか言いようがない、私はこのように感じます。

 この国債、財投債の購入につきましては、私どもで出した法案の中には、財投債の購入禁止ということを改めて法律の中に明言いたしました。

 かつて、大蔵省理財局の要請によって、八八年、九一年といったこの時期にまさにちょうど満期となったその資金の流れがどこに行くか。これを、国債を購入するために、吸い寄せるために、短期間の間にその限度額を引き上げ、さらにこれから先は限度額の撤廃を考える。一方で、超過に対しての取り組みというものはなかなか遅々として進まないというお答え。私から見れば、これは国債管理政策の根本の部分を置き去りにして、こうした吸い上げのマシンの部分だけを強化しているように見えて仕方がありません。

 さて、こうした財投債、国債の購入については、私どもは明確にこの区分を行って、財投債の購入の禁止も法案の中に盛り込みました。時間も最後の方になってまいりましたが、この問題に関して総理にお尋ねをしたいと思います。

 これも昨日の本会議でも御指摘をさせていただきましたが、四年間で百二十兆円もの財投債を発行してこられた小泉総理、この財投債の発行というものが、そもそも、赤字を垂れ流す特殊法人、独立行政法人に資金を流し続けているということがかねてより指摘をされてきた。そして、その流れをとめるのが、特殊法人、こうしたものの改革であるということ、これも総理は明言をされておられます。そして、さきの予算委員会の中でも、我が党の前原代表から指摘をさせていただいた特別会計の問題も、これもぜひとも取り組まねばならない課題だとおっしゃった。しかし、総理がこの四年間の中で訴えてこられたこうした改革については、実は、実行がなされていないからこのような状況が発生しているのではないんですか。

 私どもは、こうした特殊法人への改革に対して、特別会計という仕組みからしっかり見直さねばならないということをかねてよりお伝えしてきました。かつての塩川元財務大臣が、母屋でおかゆをすすりながら離れですき焼きを食っておるという名言を吐かれたその場面は、我が党の上田清司議員の質問に対してでありました。総理もそのときにおられて、そしてその後、財政審での取り組みを指示された。しかし、相変わらず変わらない。この出口の改革、この部分に関して何一つ変わらないという現状が放置されているからこそ、私どもは財投債の購入禁止ということをしっかり明記させていただいています。

 まず総理が、この間の予算委員会でも、取り組まねばならない、改革競争をやろうとおっしゃっているにもかかわらず、これに対してしっかりとしたリーダーシップを持って、何ら改革が進んでいないからこのような状況が生まれているということの御認識をぜひお聞かせいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 就任以来、大きく進んでいるんですよ。かねてからの主張である特殊法人の出口の改革だけじゃだめだ、入り口の郵政民営化、中間の財政投融資、総合的に考えなきゃだめだということで、今まで道路公団民営化を初め特殊法人の独立行政法人、そして今、郵政民営化が実現しようとしている。

 財政投融資の融資額も、私が政権を担当して四年間で大幅に減ってきています。強制的に買うなということではなくて、今後、市場が判断しますから、買わなければもう活動は縮小していかざるを得ないんです。それは、今後のどういう活動をするか、特殊法人の考え方いかんであり、あるいは、成り立たなかった場合には国でやらなきゃならないというものも出てくるでしょう。全部は廃止できないかもしれない。しかし、今のように、財投債なり引き受けてくれるから、どんどんどんどん引き受けさせて、いわゆる財投債を拡大していったり財政投融資の融資額を増大していこうというその流れは完全にストップして、縮小傾向にあるんです。そのための郵政民営化なんです。

 強制的に買うなと言うよりも、もう民間が、この独立法人なり特殊法人がそのような投資価値がないといったら買いませんよ。そこがこれからの金融改革で大事なんです、国が強制的にやらない。その一番大事なのが郵政民営化なんです。民間にどういう資金が行くかというのを政府は決められません。そこは民間が考えるんです。

 今、言われましたね、官の肥大化。典型的な例が郵貯の限度額の引き上げなんですよ、簡保の限度額の引き上げなんです。

 五百万以下が半分以上にもかかわらず、限度額をどんどん、七百万に引き上げる、一千万に引き上げる。零細の貯蓄じゃないんです。役所の、もう本性といいますかね、必要がなくてもどんどん肥大化していくのが行政なんです。このいい例が、今までの郵貯の限度額引き上げであり、簡保の限度額引き上げだったんです。それを根本的に改革していこうというのがこの郵政民営化なんですよ、資金を流すという。

 私は、そういう観点から見れば、この財投債の問題も、財政投融資の問題も、この郵政民営化によって大きく将来望ましい方向に変わると思っております。

馬淵委員 総理は、改革が進んでいる、今特殊法人改革も含め進んでいるというふうにおっしゃいましたが、総理が就任以来、百二十兆の発行という財投債、そして相変わらず、同僚議員が指摘をさせていただいている道路公団等も初め、さまざまなその問題は後を絶ちません。

 ぜひこうしたことに関しては今後国会の中でしっかりした審議を行い、そして、今のお話の中では、民に任せることによってすべてが解決するという、その相変わらずの小泉マジックのような、呪文のような言葉をお唱えになられますが、私自身は明確に、今後この国会の中で、特殊法人改革も含め、我々がしっかりとした議論を重ねて、国民にわかりやすい説明をしていかねばならないということを申し添え、最後に、我々民主党の案が、金融社会権という、まさにお年玉から年金までを守る、金融排除をしっかりと除去していく理念に基づいた対案であることを申し添え、総理がおっしゃっている、民間でできることは民間でという言葉の本当の意味は実は私どもの案にあるのだということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井聰でございます。

 総理、総理と議論をするのはなかなか機会がないんですけれども、三年前、平成十四年の五月の二十一日、本会議で総理に対しまして、郵政公社法の政府提案に対して私がこう申し上げました。預け入れ限度額の引き下げなど、郵貯、簡保を適正規模にしようとの改善の方向が政府案には見当たりません、総理の見解をお示しくださいという私の質問に対して、総理は直接お答えいただけませんでした。

 また、そのときには信書法の提案もあったかと思いますけれども、郵便事業の新規参入についてこの法案ではできないではないですか、そういう提案については、総務大臣に強くその指示をするという御回答がありました。その後、それがなされているとは思われません。

 さて、今回、そういうような問題意識から、総理に約一時間、質問をさせていただきますけれども、ただ、この郵政民営化法案にかかわる質疑に入る前に、私が非常に関心を持っている、また非常に心配をして憂慮していることについて、ひとつお聞かせください。

 それは、新聞などにも出ておりますけれども、ことしもまた総理は靖国神社に参拝されるという新聞記事が出ておりました。毎年行っているわけですから、ことしも行くのかなという思いはありますけれども、しかし、これが引き起こした日中関係、日韓関係あるいは東アジアでの外交的な緊張というものの影響は極めて大きいものがあろうかと思います。

 私は、拉致問題を十年ほど前から手がけておりますけれども、この拉致問題なども、結果的には、中国かあるいはロシアの協力を得なければ問題の解決というのは非常に難しいのではないかというふうに思っております。総理が靖国神社に参拝をするということのために、私は、東アジアの中での孤立感を日本は深めている。その結果が、安全保障理事会での理事国入りを非常に難しい状況に落とし込んでしまっている。

 もともと外交というのは、なるべく味方をたくさんふやして、これは選挙と同じですね、今回、内政では味方をたくさんふやしたようですけれども、外交面でもそれと同じことだと思うんですけれども、なかなか味方をふやせていないというのが実情ではないでしょうか。

 この点について、ひとつお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 日本は孤立など全然していません。だからこそ、ドイツ、インド、ブラジル、協力して、多くの、百カ国以上の賛同を得ながら国連改革に臨んできたわけであります。

 結果的に、常任理事国入りというものに対しては、このそれぞれの国に対して賛否両論があって実現しておりませんが、この協力態勢を得る段階で、今後の国連改革において多くの成果なり前進があったと見ております。もとより、六十年間できなかった改革ですから、難しいのは承知しております。

 靖国参拝の問題につきましても、靖国参拝しなければ中国が日本の常任理事国入り賛成かというと、それはわかりません。この靖国の問題につきましては、もうあえて議論はいたしませんが、日本としては、ASEAN初めアジア諸国、協力しておりますし、中国、韓国、ロシア、北朝鮮の問題でも、六者の協議、協力、緊密な連携をとりながら、これからの正常化を目指しております。

 もとより、私自身、日本が孤立しているどころか、日本に対する期待が大きい、そういう中で、日本の果たす役割を国際社会の中でしっかり果たしていきたいと思っております。

荒井委員 総理、実は私、一九八六年に中国に行きまして、胡耀邦さんにお会いをいたしました。一九八五年に中曽根さんが靖国神社問題で中国との関係が非常に大きなあつれきを生じ、一九八六年に幾つかの民間のミッションが中国に行って、その修正をしよう、そういう動きが非常に強くなったときでありますが、結果的には、一九八六年から中曽根さんは靖国神社参拝をとめました。

 しかし、そのとき引き起こした日中関係のあつれきというものが、結果的には中国の内政の非常に微妙な部分に触れたがために、中国はその後、日本との関係を、極めて密接な胡耀邦さんの政治姿勢が変わっていったというふうに私は理解をしています。

 今回も中国の内政がそのように変わりつつあるのではないか。本来、経済関係でもあるいは政治関係でも、その関係を深めようという姿勢を当初とっておられたように思うんですけれども、最近の関係は非常に心配、憂慮しているというふうに考えてございます。

 さて、それでは郵政問題に入りたいと思います。

 ところで、郵政問題を議論するときにいつでも、我が党の議員も議論しておりますけれども、アメリカの対日年次改革要望書、この第一項にのっとって改革をやっているんじゃないか、こういう私たちの党からの質問がございますね。それに対して、小泉総理は、いやいや、その対日要望の前から郵政民営化というのはやっているんだということで御回答があるんです。

 しかし、私は、今回の小泉総理や竹中大臣が進めておられるこの郵政民営化問題に関して、アメリカのニューヨークやあるいはイギリスのロンドンの金融界が非常にはしゃいでいるというか、あるいは非常に関心を持っているというか、非常に民営化促進ということを後押ししているというような印象を持っております。そしてまた、それを受けるかのように、ブッシュ大統領も必ず日本との対日交渉のときにはこの郵政民営化に言及をしているという話もございます。

 どこの国のリーダーも、その国の利益、国益というものを考えて外交交渉をしたり、あるいはさまざまな交渉をする、これはもう当然なことであります。しかし、それを受ける受け手側の方が、それに一方的に押されているというような印象を与えるとすれば、私は、大変マイナスだと思うのであります。

 郵政民営化問題というのは、日本の国益に本当の意味でつながっているのか。多くの国民は、これはひょっとするとアメリカの国益につながっているんじゃないかと心配をする人もおられるわけです。私は、これははっきりと、担当者あるいは総理が、これは日本の国益であってアメリカのそのものではないということを言明しなければならないし、それを説明しなければならないと思うのであります。

 数年前に長期信用銀行が破綻いたしました。数兆円の公的資金を導入しながら、結果的にはアメリカの外資系資本に買収をされました。また、日本政府もそれを認めたわけであります。この点に関して、多くの日本の国民は、これはうまくやられたんじゃないかと思っている人もたくさんいるということです。そんな二の舞にならないのかという暗い気持ちが私はこの郵政民営化の背後にやはりあるんだと思いますよ。それをしっかり説明していただきたいと思います。

 総理にお願いをいたします。

小泉内閣総理大臣 民営化に対してそういう悲観的な見方をされるから、今回の選挙で民主党は大幅に議席を減らしたんだと思います。荒井議員の言うような印象、考えを私は全く持っておりません。

 郵政民営化は日本の経済活性化に資する。アメリカのためにやっているわけではなくて、アメリカが期待するのはむしろ日本経済の活性化でしょう。日本経済が活発に、かつての自信を取り戻してほしい、日本を魅力的な市場にしてほしいということから来る期待だと思っております。

 私は、外資警戒論をとりません。むしろ、日本経済がこれから発展していくためには、外国の企業にも日本の株式をどんどん買ってもらうような、魅力ある市場にしていかなきゃ日本の発展はないと思っております。

 私は、アメリカが郵政民営化の必要性を言うまでもなく、もうかなり前から民営化の必要性を説いておりました。日本経済の発展にとって不可欠だと思っているからであります。

 民営化をやっても何ら変わりはないよということを言いますけれども、何で変わりないんですか。まず、公務員、二十六万人もの常勤公務員が民間人になる、これで大して変わりないんですか。これほど公務員が民間人になる改革はないじゃないですか。短時間の公務員、四、五時間働く公務員を入れると十二万人ぐらいいますから、三十八万人の国家公務員が民営化によって全部民間人になる。こんな改革を今までやったことありますか、ないですよ。

 今の郵便局、公務員のままやれと民主党は言っています。選挙後ちょっと変わったけれども、選挙前は。選挙前までは、民営化の必要はないといって反対しましたよね。それは郵便局の仕事を役所がやった方がいいということでしょう。民営化になれば三事業に固定する必要はないんですよ。(荒井委員「今アメリカとの話を私は聞いているんですよ」と呼ぶ)言っているんですよ。アメリカのためにやっているんじゃない、日本のためにやっているんだということを言っているんですよ。必要性を説けと言うから必要性を説いているんです。

 民営化と公社と、変わらないどころじゃない、大きく変わる。公社のままだったら今の三事業しかできないんですよ。民営化になれば、三事業以外の国民に必要なサービス、事業が展開できるんです。なおかつ、将来、株式を売却していけば株の売却収入も入るでしょう。そして、今は法人税等優遇されている、免除されている。これも、収益のある、今の郵政公社が民間会社になってくれれば法人税なり固定資産税なりを納めてくれます。これが、何にもならない、公社と変わらないと何で言えるんですか。こんな変わる大改革ないじゃないですか。

 結局、私が総理になるまでは、もう郵政公社の、公務員の既得権を守りたい、守りたい、みんな反対だったじゃないですか。一部の既得権の公務員の身分を守ろうということで、みんな反対だった。国会まで否決した。こんなことで本当に民間にできることは民間にできるのかといって、解散・総選挙をぶったんですよ。国民は見事な、賢明な判断をしてくれたじゃないですか。反対していた連中も今、全部賛成に回っちゃった、自民党の中では。これほど今までやったら、自民党からやじが起こったんですよ。今、やじは一つも出ない。参議院なんというのは、衆議院解散けしからぬ、衆議院で多数の議席を得ても参議院で何度でも否決してやると言った、反対していた議員も、くるっと態度を変えて、もう賛成しますですよ。これほど大きな改革はないんですよ。

 これをねじ曲げて、国民の民意も尊重しないで、相変わらず、日本はだめだ、だめだ、そういう悲観論からは民主党は立ち直れないですよ。民主党も、自民党のいいところは見習おう、協力すべきは協力しよう、そうすることによって、また自民党とかわって政権をとれるかもしれない、そういう政党に私は早くなってほしい。私は、民主党のいいところはどんどん取り入れていきます。

荒井委員 今は、前の馬淵君も話をしていましたけれども、郵政公社の職員というのはみなし公務員なんですよね。みなし公務員で、お金は出ていませんよね、一般会計から。そういうところを誤解されるような言い回しで、公務員だ、公務員だという言い方というのは違うんじゃないですか。人事院でいう公務員と、いろいろな公務員の定義はあるんですけれども、それには入っていないと思いますね。

 さて、今総理が今度の選挙で大変お勝ちになったわけですから鼻息が荒いのはよくわかりますけれども、しかし、今度の総選挙、総理自身は郵政民営化の国民投票だと言って解散・総選挙をやられたわけです。それからいけば、郵政民営化に反対だと言って選挙を戦った人の総得票数と賛成だと言って戦った人の総得票数はほとんど変わらない。あるいは、総得票数では反対派の方が多かったんですよ。だから……(発言する者あり)選挙制度を利用しただけですよね。そういうことでの余り強気の発言は私はどうなのかなというふうに思います。

 さて、民営化というのは株式会社になることですよね。株式会社というのはだれのものか。これは去年、ホリエモンさんがニッポン放送の株の買収やあるいはフジテレビの買収の話からよく話題になりましたね、株式会社はだれのものか。株式会社は結局、株主のものなんですよ。株主に配当をするということが最大の使命なわけですよね。

 そうすると、今度の民営化というのは、本当に株主に対して利益配当をするということだけに、それを最大の目的としたそういう民営化会社なのかどうなのか。これと郵便事業が今進めているユニバーサルサービスというものとは相矛盾しないのか。

 ユニバーサルサービスというのは、全国どこでも同じ料金だよということですね。全国どこでも同じ料金であるならば、郵便事業だって本来、民営化されれば、九州に出す料金と東京都内で出す料金が同じでいいのかという議論は当然出てきますよ、会社の中で。ユニバーサルサービスを規定することによって全国一律の郵便料金にする、それが、この郵政民営化の中で議論されているユニバーサルサービスというものであると思うんです。そうならば、私は、ユニバーサルサービスというものを追求していくならば、なかなか民営化は難しい。利益を追求するという、その民営化の障害になるのがこのユニバーサルサービスの問題だと思うんです。

 私は、今度の政府の提案というのは完全民営化ですから、三分の一の株式保有をするんですか、むしろユニバーサルサービスを取っ払う、そして株主に利益配当をすることこそ本来の民営化だということを、そういう法律にする方がすっきりしてきれいだ。

 そういう問題と、それから私たちは、そうではない、やはりユニバーサルサービスを守るためにはこれは国営でやらなきゃならない、国営に近い形でなければならないんだというふうに整理をするのか。私は、そういう今回の法律の違いがここに出ているんだと思うんです。

 これについては、民主党それから竹中大臣にそれぞれお聞かせください。

竹中国務大臣 御答弁させていただきますが、まず、先ほどちょっと先生がおっしゃったみなし公務員、公社の職員はみなし公務員ではございません。これは国家公務員法上の国家公務員、公務員でございます。

 それで、けさほどから随分といろいろ議論になっているわけでございます、官と民の仕分けという言い方もいろいろされますが、実は我々は、官と民というのが、マルかバツか、一かゼロかというような対立概念だとは考えておりません。

 これはNTTをごらんいただければわかるわけでありますけれども、NTTというのは明らかに民間の会社でございます。しかし、これは通信のユニバーサルサービスの義務を負っております。民間の会社だけれども、ある一定の義務を負うという会社は日本じゅうにもたくさんございます。NTTはそういった形での、今回の郵政会社もそうですが、特殊会社でございますが、例えば、電力会社等々も、これは業法によって一つの縛りを受けて、そして民間会社としてやっている、もちろん上場もしている、そういうものはたくさんございます。

 したがいまして、ユニバーサルサービス義務と株式会社が相矛盾するということは全くないと考えております。現実問題として、民営化されたドイツ郵政、そしてオランダ、イギリス、すべて民間の株式会社でありますけれども、ユニバーサルサービスの義務を負っております。

 私は、むしろ、政策の議論を今後幅広く進めていく上で、こういうゼロと一ではない、マルかバツかではない、そういう柔軟な発想が大変重要であろうかと思います。ちょっと発想を広げれば、実はNPO、NGOなんかもそうだと思いますし、PFIも同じだと思いますし、これは官か民かという、そんなゼロか一かの峻別ではなくて、よいところを取り入れて、そしてある程度の公的な義務を負いながらしっかりと民間の活力を発揮していただこう。まさに私は、これは世界の政策論の潮流であるというふうに思います。

 今回も、したがいまして、公的な、社会的な機能を多く担っている日本郵政株式会社、郵便事業株式会社そして郵便局株式会社は、何らかの形で政府の関与が残る特殊会社としている。しかし一方で、政府の関与を排除しなければいけない金融、銀行と保険会社については、当初から商法の一般法人として設立をしている、特殊会社ではない。そのような形で制度設計をしているわけでございます。

 重ねて、したがいまして、公的な機能を負うということと、株式会社、民営化ということは、むしろ世界の潮流なのであって、それは矛盾するものではないということをぜひ御理解賜りたいと思います。

永田議員 まさに公的部門の仕事というものは、やはり公的な負担においてそのコストを賄いながらやっていく。公的な負担を求めながらでもやっていく価値のあるものを公的サービスと呼んでいるわけでありますけれども、この郵政においても、全国あまねく一律に公平な郵便サービスを提供するという部分、非常に象徴的だと思います。

 そして、よくよく見てみると、地域によっては、本当に黒字が簡単に出るところもあれば、どうしても赤字になってしまう部分もある。では、その赤字になってしまう部分を一体どういう性格のお金で賄っていくのかという考え方が民主党と与党案では全然違うということです。

 自民党案では、どんどんどんどん業務を拡大して、お金もうけをして、その分本当に新しい仕事を開拓していけるんだったらいいんです。先ほど、JTは画期的な薬をたくさん売り出して大もうけしているという話がありました。では、郵便局は薬をつくるんでしょうか。そういう新しいものをつくってもうけていけるんだったらいいんですけれども、実際政府から出てくる話というのは、何か住宅リフォームを取り次ぐとか金融商品の販売を取り次ぐとか、そういう取次業務ばかりですよ。それに価値がないとは言わないけれども、非常にそういう安直な方法で価値を生み出そうとしているので、そうすると、それは同じようなことをほかの人もできるわけですから、ほかの人がやっている仕事を奪っているにすぎないんじゃないか。つまり、ほかの人がやっている仕事を奪うことによって全国サービスを展開するためのコストを賄おうと言っているわけです。

 私たち民主党はそうではなくて、いわゆる郵便は、例えば、出す人も郵便の便益を受けているんだけれども、受け取る人も便益を受けているんです。つまり、潜在的に手紙を受け取る可能性のある人はみんな郵便サービスの恩恵を受けているんです、国民全体がそういう主体なんです。であるならば、このサービスを維持するのは税金で賄うのが筋であろう。もちろん税金のお世話にならなければそれが一番いいんです。そういうふうに制度設計はしてあります。しかし、最後の最後でどうしても困った場合、ほとんど考えられないぐらい困った場合ですけれども、その場合には税金の投入も拒否しない、こういう構造になっているわけであります。

荒井委員 株式会社というのは、一番もうけるやり方というか行動は、大体、損しているところを切っていく、あるいは利益の上がらないところは閉めちゃう、これがやり方ですよ。今ダイエーは一生懸命再建をしようとしていますけれども、非採算部門のところ、もうからないところは今一生懸命閉めようとしていますよね。これが株式会社の資本の論理だと思うし、また、それがなされなければ民間会社、株式会社のメリットは私はないんだと思うんですよ。

 そういうことが今回の民営化の中で、政府の提案している法案の中で、そういうものというのはしっかりと機能できない形になっている。本当の意味でもうかるのかということをあいまいにしたまま、そしてそれを、後でまた議論しますけれども、社会貢献基金といったような形で補うような仕組みをつくっておられる。これはなかなか工夫したなというふうに感じますけれども。

 ところで、民営化というのは、私は、競争が働く、それによって初めて効率が出てくる、効果が出てくるんだと思うんですね。ところが、郵便事業の場合には、これはクロネコヤマトは撤退しちゃった。撤退というか、入らなかったんです、もう入れないと言ったんです。つまり、郵便事業の場合には競争は働かないということですよ。競争が働かないところでどうやって効率を競い合うのか。それは私は、極めて難しいと。

 よく国鉄民営化の話をされますね。国鉄民営化が成功したのは、国鉄という会社は、会社というか特殊法人は、最初から私鉄と同じ業務をやっていたわけです、経営形態だけ変えたわけです。私鉄と競争すればいいんです。あるいは、国鉄を分割することによって、西日本と競争する。そういう競争原理が働いたから民営化はうまくいったんだと思うんですよ。

 しかし、ここはどうなんですか、これは。私は、もしもやるんだとすれば、地域分割の方がはるかに競争原理が働くのに、どうして全国一本の民営化にしたのか。これじゃ競争原理は余り働かないじゃないですか。

 これはどうですか、竹中さん。

竹中国務大臣 民主党の案でもし地域分割の案をお出しになるんでしたら、ぜひお示しをいただきたいというふうに思いますけれども、地域分割、例えばどういう場合に地域分割をするのがよいかというのは、いろいろな考え方があろうかと思います。

 しかし、郵便事業、郵便局のネットワーク、これはまさにネットワークを活用した事業でございます。ネットワークを活用するときには、やはりできるだけ、このネットワークを活用するという意味では、地域で分断をしない方がよいというのが一つの考え方であろうかと思います。もちろん企業の適正規模というのもございますから、適正規模を考えて、今後どのように運営していくか。これはしかし、経営の判断の中で私はしっかりと対応していただければよろしいかと思います。

 いずれにしましても、今、例えば実際の物を運ぶ物流事業というのは、小包においては既にすさまじい競争になっているわけでございますし、宅配便等すさまじい競争になっているわけでございますし、信書に関しては、これは先ほどから何度も出ています、ユニバーサルなサービスを義務づける。それを義務づけるための一つの、コインの両面として、信書に関するある種の参入の規制を設けているわけですが、それでも、特定信書に関しては、既に現在、百社を超える事業者が参入して競争しているわけでございます。一般信書に関しても、今後はそのような競争が促進される可能性は十分あるというふうに考えておりまして、私たちも、この競争条件をしっかりと見ながら、競争を促進するような形で民営化のメリットを生かしたいというふうに考えております。

荒井委員 総務大臣、いいんですか。信書便法の改正というのは検討されているんですか。

麻生国務大臣 町村合併が進んだというのは御存じのとおりですので、その意味では、従来でいきますと、三千二百の市町村の郵便局等々の話に対して、人口比で〇・五、一・〇、一・五、二・〇と、あれは割り振りができております、千人当たりに立てますポストの数が決められております。

 しかし、今回、いわゆる町村合併が進んだ形で、これを基本的に見直さないかぬ部分が出てくるということも十分考えておくべきではないかということで、先々日でしたか、予算委員会の総理の答弁に基づいて、総務省の中でこのことに関してもう一回見直す必要ありといって、既に郵政行政局に対して大臣通達を出して、調査をしてみろ、もう一回調べてみろ、これだけ町村合併が進んだという前提でもう一回考え直してみろという話はしてあります。

荒井委員 次に、郵政民営化に至る大きな原因というのは郵貯、簡保の肥大化にあったわけですけれども、これについて民主党にも答弁をいただきたいんですけれども、どうして郵貯、簡保がこのような肥大化になったのか。さっき馬淵さんも御質問の中に若干ありましたけれども、なぜこれほどの肥大化につながっていったのか。

 北海道の北洋銀行という銀行は、北海道でも一番大きい銀行ですけれども、貯金残高五兆円ですよ。郵便貯金は、最大のときは二百六十兆、簡保を合わせると三百四十兆という巨大な資金が集まったわけです。集まる過程において、私は、三年前の郵政公社法案のときに、預け入れ限度額を下げるべきだという主張をさせてもらいましたけれども、なぜ政府は巨大化するのをそのままほうっておいたんでしょうか。

 民主党と、これは竹中さんがいいのかな、総務大臣ですか、それぞれお願いを申し上げます。

長妻議員 お尋ねにお答えをいたします。

 特に、先ほど総理からもお話がございましたように、預け入れ限度額を三年間で急激に上げて、一千万円まで上げた。その背景には、やはり国債、財投債、この消化をスムーズに進めたい、こういう政府の思惑があったやに考えております。

 そして、今回の郵政の問題の本質的な問題としては、おっしゃられるような、郵貯・簡保資金をどうするのか。政府が巨額のお金を持つとろくなことがない、使い込みされてしまう。日本で一番巨額な金がこの三百三十兆円の郵貯・簡保資金、第二位が年金積立金の百五十兆円の資金。この年金積立金の資金は、厚生労働省に持たせたためにグリーンピアなどで使い込まれたというのは周知のとおりでございますが、このリスクを防ぐために三百三十兆円のお金をソフトランディングして民間に静かに流していこう、このリスクマネーの問題だというふうに考えておりまして、我が党としては、そういう意味でも、規模を縮小に縮小して、最低限必要なサービスをする。

 そして、簡保も巨大でございます。日本生命が四十兆円の資産規模のうち、簡保が百兆円、日本生命の倍以上でございますので、これは、分割して民営化をするということで、そのリスクマネーを民間に流す、縮小して民営化をしていくということでこの問題の解決を図りたいというのが我が党の一つの目的でもございます。

麻生国務大臣 何でふえていったか。システムがよかったんだと思いますね。基本的にはそうだと思いますよ、システムが悪ければふえませんから。

 私は、問題は、集まったことよりは、その集まった金を少なくとも財投とかそういった政府系のものにしか使えないというシステムが問題をこれだけ大きくしたんじゃないのかという一つの面は忘れちゃいかぬところだと思いますね。それが一つです。

 もう一つは、やはりこのシステムというものをやっていくときに、三百とか五百とか、先ほど原口先生が言われたとおり、あの数年でずっと三百、五百、七百、千とふえていったという時期なんですけれども、ちょうどバブルの時期と多分重なっているんだと思って、ちょっと今数字はここにありませんので、大体そういうように思いますけれども。

 今、民主党の方々が縮小を毎日していくんだという話をしておられましたけれども、私は、会社の経営をやったことのある人だったら、会社を少しずつ少しずつ小さくしていくことによって会社の社員の士気を高めるなんということは、ばかばかしくてやれませんな、そんなこと。社員にはそんなことできません。したがって、少しずつ大きくしていこうとするのが、社員のモラルを高め、労働意欲を高めるというので、組合としては当然のことだ、私はそう思っていますので、大きくしていくのは当然だ、私はそう思っております。

 もう一つは、やはり郵貯にかなり金が偏って集まったのは、あのころは多分、金融のバブルが飛んで、民間金融の信用が落ちた分だけ郵貯に寄ったというのが大きな背景だったんじゃないのかなと分析をいたしております。

荒井委員 ちょうどそのころ、私は北海道にいましたけれども、北海道拓殖銀行という銀行が破綻をいたしました。これが都市銀行の最初の破綻だったと思います。それ以降、多くの都市銀行あるいは長期信用銀行などが破綻をしていったわけですけれども、このとき、多くの人が金融不安に陥るんじゃないかということを非常に心配したんですね。結果的には、信用不安の大きな影響はありませんでした。

 このときのセーフティーネットの役割を果たしたのは、私は、郵便貯金だったんではないか。そして、都市銀行の信用不安が出るような銀行預金が、セーフティーネットという観点から郵便貯金に流れていった、それなりの役割を果たしたんだと私は思うんです。そういう観点が、私は、郵便貯金に対して過小評価されているんではないかという感じを持っています。

 ところで、民主党にお聞きしたいんですけれども、限度額を引き下げる、一千万円が七百万になる、五百万になる。これは意外と家庭の主婦に人気がないんですよね。私の家内なんかも、何で民主党は下げるんだ、こうよく批判をされます。ところで、おまえさん、幾ら郵便貯金を持っているんだと言ったら、三百万しかない、こう言うんですけれども、だけれども、何となく損した感じになる。それは多くの誤解を私は与えているんだと思うんですけれども、その点について、もう少し詳しく説明していただけますか。

大串議員 限度額の引き下げでございますけれども、限度額の引き下げにつきましては、趣旨としましては、先ほど御説明のありましたように、全体の規模を縮小するというのが一つの目的でございまして、その具体的なやり方につきましては、午前中にも答弁させていただきましたように、経過措置を設けまして、満期の来た分から例えば縮小をしていくというような形での、できるだけスムーズな移行を果たしていきたいというふうに考えております。

荒井委員 結局、郵貯、簡保が巨大化して、金融市場を乱すような、そういうことのいろいろな原因となったのは、私は、当時の政府の政策の失敗、やはりそれが大きかったんだろうというふうに思いますし、また、それを引き下げる、郵貯、簡保というのは民間事業の補完事業ですから、そういう補完事業としてスタートしているわけですから、その原理原則に立ち返れば、何度もその機会があったんだと私は思います。それを見過ごしたということが大きかったんじゃないかということを私は指摘いたします。

 ところで、郵政民営化のこの流れというのは世界的な流れであって、私は一九九三年に議員になりましたけれども、その当時から、財政改革あるいは行政改革、そしてその象徴である郵政民営化というのが大きな流れになっていました。

 よくその象徴とされているのが、当時、ニュージーランドでありました。多くの人がニュージーランドに行政改革の実態を視察に行かれたと思います。たしか小泉総理もそのころニュージーランドに行かれたんじゃないかと思います。このニュージーランドの行政改革なり郵政改革は、たしか一九八〇年代の後半に始まったと思いますけれども、一九九〇年代前半には、もう既にこのニュージーランドにおける郵政民営化は失敗してしまった。オーストラリアの銀行にほとんど買収をされてしまって、いわゆる地域金融の排除という現象が起きて、国民の中から大きな不満が出てき、結果的には、二〇〇〇年に新たな銀行をつくらざるを得ないという事態に立ち至ったはずであります。

 さらには、英国などの例も今話をしましたけれども、英国も、やはり一九八〇年代後半に郵政の民営化という議論が大きく沸き起こったやに承知をしております。

 同様にドイツも、一九九〇年代の前半だったと思いますけれども、三事業の分離、そういう大きな事業をやったはずであります。しかし結果的には、三万あった郵便局がどんどんどんどんなくなって一万幾らになってしまい、政府が慌てて貯蓄銀行を、ポスト、日本でいえば郵便局ですね、郵便会社の一〇〇%子会社にしたんだと思いますけれども、そういう形で、郵便局との間に上下関係をつくることによって郵便局を減らさない、そういうシステムをとらざるを得なかったということであります。

 翻ってみますと、今度の政府の提案というのは、一九九〇年代あるいはニュージーランドがやった当初の案と非常によく似ている。三事業を分離してそれぞれ独立させて、民営化会社として運営をしていく。しかしその後、約七、八年か十年ぐらいかけて、それが大きなミスであった、大変ないろいろなそごが生じてしまった。その国その国の事情はあるでしょうけれども、結果的には、郵便局を守るあるいはユニバーサルサービスを守るというために、あるいは地域金融の金融排除ということが起きないようにするために、郵便局と貯蓄会社というのを大きなリンクにしたということがこの間の流れだったと思うんです。

 私は、民主党の案というのはこの流れにあると思います。最後は結局こうなっちゃうんじゃないかと。だから、政府の提案している三事業分離というのはかなり古い制度設計なんではないかというふうに思います。

 このあたり、竹中大臣と民主党にそれぞれお聞きさせてください。

竹中国務大臣 先ほども御答弁させていただいたんですが、諸外国の事例に関しましては、その特殊事情と、それとは別に、一般化して学べることというのをやはりしっかりと峻別しなければいけないと思います。

 ニュージーランドに関して、失敗だったという御評価だったと思いますが、ニュージーランドの郵政について、つまりニュージーランド・ポストについては、民営化をして、その後も着実な経営を続けているというのが実は一般的な評価でございます。

 ただ、ニュージーランドの場合は、その同時期にポストバンクとテレコムも分割・民営化をされた。そして両社は、当時の積極的な外資導入政策、当時ニュージーランドは非常に積極的な外資導入政策をやっていたわけでございますけれども、その結果として、オーストラリアの銀行にポストバンクが買収された。そして結果的に、積極的な外資導入政策の結果、大手五行が外資に独占されたということから国内資本の銀行が求められたということですので、これは郵政民営化が失敗であったということではなくて、むしろ、当時の外資導入政策、それで銀行の所有者がほとんど外資になってしまったというところに問題があったというのが私は一般的な評価であろうかというふうに思います。

 ドイツにつきましても、これは、一〇〇%成功、一〇〇%失敗という事例はないわけで、いろいろな評価は当然あろうかと思いますが、よく言われる、三万あった郵便局が民営化によって一万二千になった、これは事実に反します。

 つまり、九五年に民営化されますけれども、まず、東西ドイツが合併されて、それで三万ぐらいに急にふえたというのは事実です。これは、東ドイツが入ってきたから三万にふえた。しかし、民営化の時点で、九五年に民営化ですから、その時点で既に一万六千まで下がってきているわけですね。民営化になってから減ったというのは一万六千から一万二千幾らぐらいまでのところでありますので、三万から一万二千に下がったのは民営化によるというのは、これは事実に反するということでございます。

 ただ、私たちは、ドイツの事例から学べることはあると思っております。それは、設置基準について十分な定めがドイツの場合はなくて、そして余りに減ってきたので、その後、設置基準をつくったというのがドイツの事例であろうかと思います。であるからこそ、私たちは最初から設置基準をしっかりとつくって、ドイツから学べるところは学んで、そしてしっかりと対応していこうというふうに考えているわけでございます。

 ドイツの場合は、国際物流等々でむしろ非常に成功して、今活発な活動をしているという評価が専門家の間では一般的ではないかと思っております。

荒井委員 結局、どこの例を見ても、最後は、ポスト、郵便会社が貯蓄会社を持つような形でなければうまくワークしない、そういうふうに私は理解しているんです。なぜならば、日本の郵便局もそうですけれども、小さな郵便局の恐らく七割から八割ぐらいは貯蓄、金融関係でコストを出している。だから、貯蓄関係あるいは金融関係が抜けてしまえばその郵便局はもたないということを意味しているわけですよね。

 結局、先ほど資本の論理の話をしましたけれども、株式会社というのは利益を追求するわけですから、もうからないところは委託契約は結ばないでいこう。委託契約を結ばなければそこの郵便局の金融からの利益は生じないわけですから、つぶれていくというのが、私は、ドイツの事例だし、各国の事例だと思うんです。

 そこで、政府の案では工夫はしていますよね、そこのところ。どうやって工夫をしているかというと、社会・地域貢献基金という基金ですよ。この基金をつくることによって、経営委託、金融の窓口委託をしろということで、ポストと貯金、金融とを結びつけよう、そういう仕組みをつくったんだというふうに思います。

 このやり方、農林省の補助金とよく似ているんですね。だれかに何かをどうしてもやらせたいというときに、補助金を与えてやらせる。しかし、あのウルグアイ・ラウンドのとき、六兆円の金を使ったんです、農林省は。六兆円の金を使って、そして、国際市場にたえ得る強い農業をつくろう、農家をつくろうということで、六兆円の金を使ったんですが、結果的にはそれは失敗したんですよ。補助金というのは、最後は資本の論理に負けるんですよ、企業の論理に負けるんですよ。一時はいいですよ、一時はいいですけれども、それを永続的にということはできないんですよ。

 今度のこの社会貢献基金というのは一体どういう仕組みになっているのか、だれがつくるのか、どういうふうにお金を回していこうとしているのか。ここの部分について、私は、ユニバーサルサービスを守るために、郵便局を守るためにということで大変工夫をしたところだと思うんですけれども、実はここにいろいろな問題があるのでないかというふうに私は思っています。

 これについていかがでしょうか、竹中さんと民主党それぞれ。

永田議員 補助金政策によく似ているというのは、私も同じ感覚を持っていました。

 国土交通大臣、実は私、役人時代に運輸省に出向をしたことがあります。そこでは運輸施設整備事業団という特殊法人を担当していました。この特殊法人は、簡単に言ってみれば、国鉄の承継法人、なれの果てであります。つまり、JRと非常に仲のいいおつき合いをしていました。

 本当はきょうこの答弁に触れないつもりだったんですが、ほかの議員から、ちょっと同じ観点で問題視されていた方がいらっしゃったので御披露申し上げますけれども、私が役人時代、六年間を過ごした中で、最も嫌な仕事があのときの決裁でした。

 JRは、本州三社はもうかっているんです。しかし、北海道と四国と九州、あと貨物、赤字になるんですね。赤字になることがわかっていたから、その経営を助けるために、赤字を補てんするために、経営安定化基金という基金をやはり積んでいるんです。この経営安定化基金、これを何とか運用して利益を稼いで、そして赤字を補てんしなさいというのがこの基金の本旨であります。

 現在どうなっているかというと、この経営安定化基金、何と八〇%が政府の関与のある運用の仕方をしているんです。私が決裁を起案したのはまさにこのお金の運用でした。既に民営化された法人だったのに、そこに対して、私が担当していた運輸施設整備事業団がお金を借りたんです。市場では絶対にあり得ないような高金利でした、四%を超えている金利です。一九九六年とかそれぐらいの時代です。そして、この四%ということは、市場金利よりもずっとずっと金利が高い、差額が出てくる、それをどうやるか。どこかに負担をツケ回したんですね。どこに負担をツケ回しているか、私は今は申しませんけれども、うちの法人は、あの特殊法人は、月末の資金繰りが一切困っていなかったにもかかわらず、一千百億円を超えるお金を借りたんです。これは最終的には国民の負担になったんです、この金利の差額の部分が。

 今回も同じことが行われようとしていると私は疑いません。基金を積むというのは、形を変えた補助金を入れるのと同じことなんです。ですから、荒井先生がお感じになった、補助金のようなものだとおっしゃったのは、まさにそのとおりだと思います。こういうインチキは私は絶対にやめるべきだと思います。

 以上です。

竹中国務大臣 今永田議員がこういうインチキはやめるべきだという発言をされたのを聞いて、大変驚いております。なぜならば、民主党の案にも同じような仕組みがあるからでございます。

 民主党の案、「公社は、郵政保険会社の株式の処分により得られた収入の一部を、過疎地域等の郵便局の維持に活用することができるものとする。」これは民主党の案ですね。民主党は、補助金であると認識して、インチキだと認識して、この案をお出しになっているということなのだ、そういう御説明になるのだと思います。

 私どもは違います。これは補助金ではございません。補助金というのは、政府が意図を持って政府から公社等々に出すわけですが、これはそういうものではございません。これは株式の売却益でありますから、公社の中で完結しているお金であります。かつ、これは国が命じてやらせるものではございません。社会貢献計画自体が、実はこれは経営の判断によって、経営者の判断で社会貢献が必要だという場合につくられるものになっています。もちろんこれは主務大臣のチェックはございますけれども、その意味では、実はこれは経営者の判断がまず最初にあるということになります。

 荒井委員のお尋ねは、まず原資は何かということでありますが、基金の原資は、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の売却益、配当収入等を充てることにしておりますけれども、企業一般の配当の動向を考慮して積み立てたとしても、骨格経営試算や同業他社の株式時価等を考慮すれば、移行期間が終了するまでには一兆円の基金を積み立てることは可能である。まず、原資については、そのように確保できるというふうに考えております。

 そして二番目に、基金の運用方法でございますけれども、これは法案では、「会社は、総務省令で定めるところにより、確実かつ有利な方法により基金を運用しなければならない。」というふうにしているところでございまして、この運用ルールについては省令により規定されることになりますけれども、いずれにしましても、この運用の失敗による基金の減少が生じないよう、また一定の運用利回りが確保できるよう、国債等確実かつ有利な方法とする必要があるというふうに私どもは考えております。

 交付の判断の基準でありますけれども、社会貢献業務とは何かということにつきましては、社会福祉の増進に寄与する第三種・第四種郵便物等に係る業務のうち、基金の交付を受けなければサービス水準を低下させるというもの、また地域貢献業務については、地域住民の生活の安定の確保のために必要であること、郵便局以外の者による実施が困難であること、そうしたことを要件にするということを考えております。そして、その計画の適正性は、主務大臣が計画の認可を行う際にチェックをするということでございます。

 交付の仕組みの最後に、交付の効果でございますけれども、この地域、社会にとってその実施が真に必要なサービスを確実かつ安定的に実施することがこれによって可能になるというふうに考えております。

荒井委員 しかし、基本はやはり、本社あるいは窓口ネットワーク会社が郵便貯金会社に対して交付をしていく、そして委託契約を結ぶように奨励をしていく、そういう性格だということは変わらないですね。

 民主党、今同じものがあるじゃないかというふうに言われましたけれども、いかがですか。ちょっと短く答えていただければ。

長妻議員 お答えを申し上げます。

 我が党の案は、縮小して、決済機能、これは必要だということで、これはあまねく一〇〇%の子会社で実行するということでございます。

 今回、政府案と比較して非常にわかりにくいのが、まさに荒井議員が御指摘された政府案の問題だと思いますが、郵政民営化準備室にお話を聞きますと、結局、例えば首都圏だけの郵便局と郵貯銀行が契約するということも理屈ではあり得るということでございまして、すべてあまねく郵便局で決済機能を政府の郵貯銀行が実施するというのは経営判断だ、あくまで経営判断だということでございますので、これを明確にすると、その違いがはっきり本来はわかるというふうに考えております。

荒井委員 今度のこの郵政民営化、郵政改革の本当のねらいというのは、やはり特殊法人改革、あるいは特殊法人改革にどういうふうに結びつけていくのか、そして特殊法人のむだをどういうふうに明らかにし、それを削減していくのかということが本来のねらいだと思うんですね。

 その特殊法人改革について、現状、今どうなっているのか。新聞でも、いろいろな政府系金融機関を一つにするんだというような総理の発言があったというお話もございますけれども、その現状は今どうなっているのか。そして、それによって、特殊法人改革、道路公団の改革のように高コスト構造がそのまま持ち込まれるような、そんな民営化であっては私はならないと思うんですけれども、そこのところは、どういうねらいで、どういう効果を今期待しているのか。その進捗ぐあいなどについて御説明ください。

竹中国務大臣 公的な資金の流れの入り口に郵貯、簡保の問題がある、そして出口に特殊法人がある、そしてそれらを全体として改革していくんだということを我々も重ねて申し上げているつもりでございます。

 この出口の特殊法人の改革につきましては、既に、特殊法人等整理合理化計画の対象百六十三法人のうち、百三十六法人について、廃止、民営化、独立行政法人化等の見直しを行う等、改革の成果が上がってきているところでございます。

 また、平成十七年度の財投の編成におきまして、特殊法人等が行いますすべての財投事業の財務の健全性につきまして、民間準拠の財務諸表も参考にしながら総点検を行いました。その結果、特殊法人向けの財政投融資額はピーク時の三分の一程度に既に圧縮をされているところでございます。

 今後さらに、その中心になります政策金融機関の改革に取り組みます。政策金融機関の改革につきましては、平成十四年に経済財政諮問会議におきましてその基本的な考え方をお示ししておりますけれども、民業補完に徹する、そうすることによって、貸し出しの残高について、将来的にGDP比で半減するという明確な目標を掲げているところでございます。経済財政諮問会議におきまして、十一月を目途に、政府系金融機関八機関について、そのあるべき姿の実現に関する基本方針を取りまとめる予定でございます。

荒井委員 私は、この民営化議論を通じて、政府案と民主党案というのは基本的な理念にやはり大きな違いがあると。

 金融のセーフティーネットというものは必要なんだ、そういう考え方に基づいて、少額にはするけれども、もともと郵貯というのは民間の補完的な事業として成立していたわけですから、少額というのは理にかなっているわけで、なるべく少額にして、しかし地域金融を排除しないような、国民の利便性を確保する、そのために郵便事業とリンクをさせていく、そういう形として制度設計をされたものだというふうに理解します。

 これに対して、竹中さんが中心になっておつくりになったんでしょう、この三百四十兆という巨大な資金をとにかく独立させて、マーケットで自由に動けるような、そういう制度設計にしていく。そのときに幾つかの過疎の郵便局が倒れると困るので、地域貢献基金という不思議なものをつくったというふうに理解をしていますが、これについては、私は、なかなかうまくいかないのではないかという懸念を表明して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党・無所属クラブの大島でございます。

 きょうは午前中から皆さんの審議を聞かせていただきまして、なかなかテレビを見ていらっしゃる方には難しい議論が多かったのかな、なかなか郵政民営化というのは理解するのが難しい法案であるなという気持ちがいたしております。

 まず最初に、やはり国民の皆さんが一番知りたいのは、きょうは簡易保険を中心に質問をさせていただくんですけれども、まず、今入っている簡易保険がどうなるかということについては、国民の皆さん、非常に関心を持っていらっしゃることと思います。

 今、全日本の世帯の半分の方、二軒に一軒の方が簡易保険に入っていらっしゃいます。その簡易保険が民営化されるに当たりまして、簡易保険についてはさまざまな利便性があります。例えば、簡易保険の割引という制度がございまして、団体割引ですと、月掛けの掛金、これが六%ほど安くなるんです。これは金利に直すと非常にいい金融商品でもあるわけでございます。

 したがいまして、今入っている簡易保険が、例えば、二年間はこの六%部分の割引率が適用され、そしてそれ以降はその割引率が適用されないのか、あるいはされるのか。そのことはやはり、国民の二軒に一軒が簡易保険に入っていますので、非常に関心のあるところかと思います。

 その点につきまして伺いたいと思います。竹中大臣、お願いいたします。

竹中国務大臣 大島委員の御質問が、今既に契約しているものについて民営化の後どうなるかという趣旨でございましたならば、これはもうそのまま引き継がれるということでございます。郵貯と簡保の管理機構に引き継がれるということになりますけれども、契約者から見ますと、同じようにそれが再保険として保険会社に行きますので、実は、窓口では何ら変わりなく、今までと同じように受け取るべきものは受け取れる、支払うべきものは支払うということになりますので、利用者に関しては何の不便もおかけしないということであろうかと思っております。

 保険料の割引の話が、今後、新規のものについてどうなっていくかということでございますれば、これは、一般の生命保険会社の例を見ますと、保険料の割引につきましても、現行の簡易保険と同様の団体割引を行っている例もあるというふうに承知をしております。委員は保険の仕事に直接携わられていたということで大変お詳しいかと思いますけれども、その意味では、今後は経営者の判断ということにはなりますが、民間企業としての創意工夫によりまして多様な商品、サービスの提供が可能になるということで、健全な競争を通して利用者の利便が高まることを期待しております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺いますと、今の既存契約のものにつきましては、もちろん機構に移行後も同じような料率に基づいて契約が続いていくと。

 割引のお話なんですけれども、これは、地域ごとにいろいろな団体がございまして、例えば自治会とかあるいは会社とか、それぞれの団体で六%の割引があるわけなんです。皆さん、簡易保険に入っていらっしゃる方は、非常にこれはメリットがあるということで入っていらっしゃるんです。先ほど麻生大臣が、非常にいいシステムだから簡易保険がたくさん集まったと言うのは、こういうシステムがたくさんあるわけなんです。

 ですから、例えば、簡易保険の月払いを一年間で支払った場合はどのくらい割引になるかというと、コンマ三五カ月分割引になるんです、大体三%ぐらいが割引になるわけです。これが一般の生命保険会社ですとコンマ八%ですから、三%とコンマ八%、どちらが料率がいいかというと、簡易保険の方に流れてしまう。例えばこの六%というのも、非常に加入者にとっては利益のある魅力的な商品なのが簡易保険だと私は考えているわけなんです。

 したがいまして、その点というのが、これから機構に移って、そして十年以内に完全に民営化したときに、今の契約についてもこの割引率が残るか残らないかというのは、今の資金がほかのより有利な金融商品にいくかどうかの結構大きな論点かなと私は考えておりまして、その点について、もう一度、竹中大臣から御答弁いただければ幸いでございます。

竹中国務大臣 ちょっと個別の商品設計、料金の話になりますと、私ではなくて生田総裁にお答えいただくべき問題かもしれませんが、幾つかのすぐれたシステム、確かにあるというふうに承知をしております。

 これは、それが既に契約条件の中にそういうものが入っているものであるならば、当然それが続けられるだろうということを申し上げたわけでございますが、それ以降の新規の、新たな判断を要するものにつきましては、これはまさに今までと同じような地域密着型のよいサービスをするという強いインセンティブを持って経営者は取り組まれるというふうに思いますし、同時に一方で、今までのそうした有利な待遇というものが、税を免除されているからそれが可能であったとか、もしもそういうことであるならば、そういうものは是正されていくということもあり得るというふうに思います。

 個々の商品設計についてちょっとお答えする能力がございませんけれども、一般的な考え方については以上のようなことであろうかと思います。

大島(敦)委員 簡易保険という制度はやはり国民に非常に根づいた制度でして、本当に二軒に一軒の方が簡易保険に入っていらっしゃる。そして、家庭によっては、何本も簡易保険に入っていらっしゃる家庭もあるかと思うんです。その信頼というのは非常に厚いと考えておりまして、その信頼をつくってきた郵便局員さんのこれまでの努力というのは非常に大きいものがあったかと考えております。ですから、保険の内容はともかくとして、郵便局員さんを信頼して簡易保険に入ってきた、そういうこともあるかと思うんです。

 プラス、先ほど私が申し上げましたとおり、割引率が極めて高い金融商品であるということがより多くの顧客あるいはお客さんを集めてきた。例えば、金融危機のときがございました、金融危機のときに簡易保険あるいは郵便貯金の利率がどうだったか。私もその当時金融業界にいましたから、高いんですよ、一般よりも。市中の銀行とか市中の生命保険会社よりも、運用利率あるいは金利が高いんです。そうすると、やはりどうしても簡易保険とかあるいは郵便貯金の方に預けがえをしているということがあったかと思うんです。それで、これまでは非常に多くのお金が簡易保険、郵便貯金に集まってきたという、その経緯は私はあるかと思っているんです。

 それが今後、そのメリットがなくなったときに、私は、簡易保険とか郵便貯金のそのメリットがなくなったときに、皆さんそこから、簡易保険とか郵便貯金から出ていらっしゃる方が非常に多くなってくるなと。今回も皆さんの試算を見させていただいたんですけれども、本当にこれまでどおりでいくのかなと非常に疑問に思ったわけです。

 そこで、論点をもう一つ変えますけれども、きょうの朝の議論からずっと聞いておりまして、自然と貯金とか保険が集まるという話を皆さんされているわけですよ。会社をつくれば自然と保険が集まってくる、会社をつくれば自然と貯金が集まってくる、そんなに甘いものじゃないと思うんです。

 ですから、今回の郵便保険会社ですか、本当にその募集人、今回の試算ですと四千人と伺っているんですけれども、これは本社機能だけ四千人持っているんであって、保険募集人あるいは代理店営業マンは窓口会社、郵便局会社の方が請け負う、そういう理解でよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 今の委員のお尋ねは、民営化された後、各社への具体的な職員の帰属がどうなるかというお尋ねでございますけれども、これは、主務大臣がまず基本計画を作成するわけでございますが、その基本計画に従いまして、新会社の経営陣となる経営委員会がどのようなビジネスモデルをつくるか、どのようなビジネスモデルで運営していくかということを決めていただいて、それを勘案しながら承継計画において定めるというふうにしております。したがいまして、日本郵政公社の保険外務員の帰属についても、その承継計画において経営者の判断が十分に反映されるような形で定められるということになります。

 私どもの骨格の経営の試算は、これは各社が成り立つかどうかを確認するための試算でございますので、基本的には、今おっしゃったように、保険会社には直接販売員は帰属しないで、対顧客サービスは窓口会社に帰属する。しかし、その分ちゃんと手数料を払います。手数料を受け取って、そこから窓口会社で人件費を払いますという形になっておりますけれども、計算上は、もし経営者の判断で、販売員はこちらの保険会社に帰属するという判断を経営者がされているのであるならば、その分勘定は変わってまいりますけれども、全体としての収支に影響を与えるものではないというふうに思っております。

 繰り返しになりますが、これは、ビジネスモデルを勘案しながら経営委員会が承継計画において定める、その中で決められるということでございます。

大島(敦)委員 生命保険会社の本当の価値はどこにあるか、これは販売ネットワークなんです。金融危機のときに、外資の方たちが日本の生命保険会社を幾つか買収されました。なぜ買収したかというと、その販売ネットワークが欲しいから買収するわけなんです。金融商品じゃないんです、保険会社の価値は。保険を売る人たちが価値なんですよ、保険業界は。

 ですから、今回のこのビジネスモデルで、保険募集人、どうしてこういうことを私が言うかというと、皆さんが入っていらっしゃる自動車の任意保険は自然と入りに行くわけです。自動車を買えば、強制保険のほかに任意保険に入らなくちゃいけない、これが自動車の保険。

 生命保険は若干それとは違うんです。健康な人にも入ってもらわないと成り立たないのが生命保険なんです。ですから、健康な人は、今私もそうですけれども、皆さんもそうですけれども、保険に入るというニーズ、需要はないんですよ。そこに営業マンとかあるいは営業ウーマンが行って、将来いろいろとリスクがありますから、現在もありますから入ってくださいと言って、保険商品を買うわけなんです。

 したがいまして、今回のビジネスモデルの中で郵便保険会社に販売募集人をつけないとしたら、私はこれは成り立ち得ないと思うんです。販売募集人がいて、保険会社が販売募集人に対して一生懸命売ってくれよということで、ようやく対数の法則が、きょう午前中出てきましたけれども、多くの人が入っていただいて経営が安定する、これが生命保険会社の経営の基本だと思っています。

 ところで、伊藤金融担当大臣に伺いたいんですけれども、突然で申しわけないんですけれども、募集人を置かない生命保険会社というのは日本であるんでしょうか。

伊藤国務大臣 ございます。

大島(敦)委員 どこでしょうか。

伊藤国務大臣 外資系で、インターネットで保険を販売されているところがございます。チューリッヒ等がそうしたことに該当するのではないかと思いますが、事前に質問の御通告をいただければ正確にお答えをさせていただきたいと思います。後ほど資料をお届けさせていただきたいと思います。

大島(敦)委員 日本でも共済組合等がございますよね。おっしゃるとおり、県民共済、都民共済等、共済組合は募集人を置かない保険会社なんです。しかしながら、経営は非常に小さいわけなんですよ。多くは、例えば日生さんですと、五万人の募集人を置かれてしっかりと営業努力をされる。それはごく一部の保険会社でして、やはり募集人を置く。特に、今回のようにヘッドクオーターだけで四千人もいる会社、四千人を食べさせていく保険の募集というのは、インターネット通販とか共済組合の仕組みでできるとは思えないんです。どうやってその保険を日本のマーケットの中で売り込んでいくのか。

 これは今、簡易保険については全体のボリュームの一〇%ぐらいという話を伺っています。でも、それは上限一千万円だから一〇%ぐらいなわけです。これが、民営化して上限が外れて、五千万円の死亡保険金あるいは一億円が売れたときにどうなるか。

 日本の保険市場は今、徐々に小さくなってきているんです。人口が減ってくる、高齢化してくれば、生命保険業界は小さくなっている。もう一つ、アメリカと比べて日本人は二倍入っているんです、死亡保険金の大きさが。非常に保険の好きな国民、これだけ社会保障が充実している中で二倍の保険に入っているということは、これから保険業界は伸びるよりも徐々に小さくなっていく業界なわけなんです。その中で、本社機能が四千人いる会社をどうやって維持していくのか。

 その点について御所見をいただければ幸いでございます。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、どういう人数配置にするかというのはわかりません、これは承継計画の中で決まることでありますので。我々は、骨格経営試算というのはあくまでも全体として成り立つかどうかをチェックするためのもので、便宜上の切り分けをしておりますが、それがよいかどうか。大島委員が御指摘のような判断を経営者がされて別の切り分けをする、そういう可能性も十分ございます。

 これは、人事管理の問題とか従業員の帰属意識の問題、いろいろな要因が絡んでくると思いますので、そこは承継計画の中で何が最もよいのかということが経営者によってしっかりと判断をされていくというふうに思っております。

 私自身は、どのような形で引き受けをするのが一番よいのかということに関して、お答えできるような十分な見識を持っているわけではございません。

大島(敦)委員 募集人のいない保険会社、多分、五十人とか百人ぐらいで運用、本社機能は十分にマネジメントできるかと思います。四千人も要らないです。本当に少人数で、商品開発とシステム運用でしたら大きな人数は要らないんです。ですから、今回、郵便保険会社を市場で、マーケットで販売するということは、私は、保険会社にいた人間として、十年後、なかなか売れるのかなという危惧を覚えております。

 その点について、生田総裁、現場で会社を経営しながら、運営しながら、保険のことについても非常に深い見識がございますと思いますので、保険募集人と郵便保険会社の関係について、御意見を賜れれば幸いでございます。

生田参考人 お答えします。

 基本的なことは竹中大臣がきちっとおっしゃっているので、すべては、おっしゃったように、政府作成の基本計画に従って、準備企画会社、その経営委員会が承継計画で決めるということで、その前提でお話しさせていただきます。私的な考えになるかもわかりません。

 まず、骨格経営試算の四千人ですけれども、これは準備室の方で、各社の収支を出すので、一定の前提を立てて、後は機械的に計算されたので、一つのイメージだと思います。そうなるということではない、四千人、一つのイメージ。それが合っているかどうか。

 実態は今どうかといいますと、今実態は、生命保険、簡保は利益が出ているんですけれども、それで成り立っているということを意味するんですけれども、本社に四百人、支社に六百人、それからいろいろな審査などをします簡保事務センターに二千人で、約三千人が郵便保険会社に移行する本社部分に今いるので、それが今四千人と書かれている、こういうことになるわけですね。だけれども、トータルでは今でも利益が出ているんですよ。

 そこで、では新しい会社は何をやるのか。旧勘定と新たな契約が入ってくるので、それを一本で総括的に管理していくという仕事で、仕事の量は減りません。かえってややこしくなると思いますね。

 それから二番目に、今度は民間で、市場に出るわけですから、市場において適格であり、それで評価されなきゃならないということで、ガバナンスやコンプライアンスを強化しなきゃならない、リスク管理が厳しくなる、引き受け等の能力を持たなきゃならない。それに多少は新ビジネスモデルが入ってくると思います。できれば入り口から多少はやらせていただきたいと思っています。

 そう考えると、現在以上に仕事量はふえると思います。だから、準備室がやった四千人というのは、イメージではあるんだけれども、比較的いい線を行っているイメージではないかというふうに私は感覚的に感じ取っております。

 さらに、さっきの外務員がどうかというお考えなんですけれども、これは今回、銀行もそうですよ、普通みんな民間は一本なものを、生保も、ここを引きちぎるわけですから、それだけに、表裏一体でやる、両方合わせて一本と考えていいのではないかな。したがって、働けば、郵便窓口会社ももうかるし簡保会社ももうかる、両方がもうかる仕組みというものを契約の内容あるいは料率の契約でやっていくことはできると私は思うので、基本的に問題はないと思っております。

 ただし、生保というのは専門性それから特殊性が相当ありますので、それと、全然手をつけない人たちだけが本社でずっと仕事をするというのはやや問題が出るのかなと私は思っておりますので、一定量、そんなに多くなくてもいいんです、一定数の外務員は直轄というふうなことで窓口にも配置して、そこと一緒に働くことによって本当の堅実経営をやった方がいい。ただ、本当の一定量ですよ。そういうふうに考えておりまして、事務局に、そのように準備室と打ち合わせを今してくれていると思うんですけれども、そういう検討をさせている、こういうところでございます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 郵便保険会社については、やはり営業力というのが、新しい保険に入ってもらうということが私は非常に必要だと思っている。その点について、生田総裁は、郵便保険会社と郵便局会社が表裏一体となって運営することによって、販売員と一体となってやるから大丈夫だという御発言だったと思います。

 ところで、この郵便局会社は、郵便保険会社以外の商品、あるいは民間の大手さん、あるいは外資系の保険会社、あるいは新しく入ってきた保険会社さんの商品も、代理業務あるいは募集人としてその商品も扱えるという話を聞いているんですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 我々が提出しております民営化法の百三十条の規定がございます。これは、郵便保険会社が生命保険業のみなし免許を受ける条件としまして、業務の健全、適切かつ安定的な運営を確保する基盤となる生命保険募集人への継続的な業務委託を行うということを義務づける形になっているわけでございます。

 これを受けまして、具体的には、保険会社と郵便局株式会社の間で募集委託契約を締結することになるわけでありますが、その具体的な内容については、法律上、特段何か制限を加える、制約を加えるということはしておりません。契約当事者のそれぞれの経営判断に基づく相対交渉によって定められるということになります。

 したがいまして、排他独占的なことが義務づけられているとか、そうでなければならないとかというようなことではなく、そこは経営の判断に基づいて、相対交渉によって決めていただいたら結構だということにしております。

大島(敦)委員 私は、今回の政府の民営化の中で、郵便局会社、このネットワークが一番強いところだと思っています。このネットワーク会社を使って、今竹中大臣がおっしゃったように、あらゆる生命保険の商品の代理店あるいは募集人ができるということだとすれば、これは日本で一番強い生命保険の代理業が営める組織になっていくかと思います。

 ですから、そのときに、完全民営化したときに、郵便保険会社の商品が魅力的じゃなければ、会社の存続のために他社商品も扱うということも考えられると私は考えるわけなんです。ですから、今、この郵便保険会社の人数、規模について、これから二年間で御検討されるかとは思うんですけれども、本当にその存続も含めて十分な検討を行わないと、結局十年後に、日本郵政会社が市場から救うために郵便保険会社の株を買うということも起こり得ると思っているんです。

 ですから、ここのところは、きょうの午前中の議論も、郵便局にお金を預けていらっしゃる方、郵便局の保険に入っていらっしゃる方、この買っている、預けている人、あるいは保険に入っている人の論点が抜けているわけです。そして、もう一つは、保険を売っている人の論点も抜けているわけです。

 これまで、私は、今回の郵政民営化で、郵便局員さんは本当に被害者だと思っています。一九八五年のプラザ合意以降、本来、小泉首相がおっしゃったように、民営化は正しかったと思う。その後もずっと政府は、郵便貯金を集めろあるいは簡易保険を売れということで、営業圧力をずっとかけ続けた結果なんですよ。そして、もう一つは、先ほどの金融危機のときに金利を見直さなかったから余計お金が集まってしまったというのが、今のこの郵政民営化の三百四十兆円の中身だと私は思っているんです。

 ですから、これまで二十年間、一生懸命貯金と保険を集めた郵便局員さんは、私は、政治の不作為による被害者だと思っているんです。これまで一生懸命集めてきたのに、私たちの仕事が正しくなかった、これだけ苦労して雨の日も雪の日もお客さんを回って保険を集めたのに、私たちの仕事は結局何だったのかというのが、今の郵便局員さんの怒りだと思うんです。そのことを私たち政治家はしっかりと認識して、今回、郵政民営化を進めなければいけないなと私大島は考えています。

 最後なんですけれども、最後の前に一問だけ、小泉首相に、郵政の職員の方の雇用の安定について、一言、もう一度お言葉をいただければと思います。手短にお願いをいたします。

小泉内閣総理大臣 質問の前の最後の点については、同感の点が多いんですよ。政府はやらなくていいことをやってきたんです。だから民営化を私は主張していたんですが、この雇用の問題については十分配慮していかなきゃならない。これは、しっかりと雇用は守って、そして収益が上げられるような会社にしていかなきゃいかぬと思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 その点は、私たち政治は、職員の方だけは、しっかり雇用は、これは政治の不作為ですから、守らなければいけないなと私大島は考えています。

 最後なんですけれども、民主党の法案提出者の方から、きょうの審議を踏まえまして、御意見があれば伺わせてください。

馬淵議員 きょう御審議をいただいております郵政改革法案、私どものこの理念を明確にお示しさせていただきました。国民の権利の保障、これをしっかりと訴える安心の改革である。そして、国の責務を明確にして、官から市場へと資金の流れをはっきりさせていく。さらに、むだ遣い、まさに税金のむだ遣いと言われていくようなその部分に対して、特殊法人改革等に対しての徹底的なメスを入れていくという、その大きな道筋を示す、こうした理念に基づきまして改革法案を今回御提示させていただきました。

 この民主党の改革法案について皆さん方の御理解を深めていただき、そして今日、この国会に提出されました政府法案に対して、我々のスタンスがいかに国民の目線から見た新たな郵政事業の見直しにつながっているかということをしっかりと御認識いただきまして、私どもの法案に対して、しっかりとした国民の皆様の御理解をいただきたいというふうに思っております。

 引き続き、さらなる御支援をいただきたいというふうに思いますが、補助の部分を大串提出委員からも一言加えさせていただきます。

大串議員 我々の法案は、先ほどお話がありましたように、国民の権利保障、それから、官から市場へということをしっかりやっていくことにありますけれども、そのために、組織形態として、公社の下に一〇〇%子会社の郵貯会社を置き、そして保険については分割した上で売却をしていくというような形をとっております。

 あわせて、財投債の引き受けの禁止を入れて、しっかりと官から市場への資金の流れを確保するとともに、さらには、公社の役職員を非公務員化し、そして天下りを禁止するという国民の目線に立った改革の内容も入れております。

 真の国民のための改革となる、そういう案を自信を持ってつくったつもりでございますので、御審議のほど、よろしくお願いいたしたいと思います。

大島(敦)委員 きょうはまことにありがとうございました。

 やはり、政治の不作為、あるいは私たちがこれまで重ねてきたことをしっかりと清算すること。もう一つは、郵政民営化の案には絶対というものはないかと考えております。よりよい知恵を出しながら、よりいい民営化を進めていくことを民主党の皆さんにお願い申し上げまして、私大島からの質問を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 小泉総理は、参議院で郵政民営化法案が否決された後、この民営化に賛成か反対か国民に聞きたいということで、衆議院を解散し、総選挙を行いました。国民の判断を仰ぐ以上、正確な事実をきちんと説明をするというのがフェアなやり方だと思うわけです。果たして、そうだったか。

 例えば郵政公社の職員について、小泉総理はこう説明をされました。行財政改革のために公務員を減らさなければならない、郵政事業には二十六万人もいる、警察官は二十五万人、自衛隊は二十四万人だ、外務省職員は六千人にすぎない、だから郵政事業の公務員は民間人にすべきだ、こう言われてきたと思うんです。

 そこでお聞きしますけれども、郵政公社の公務員を民間人にしたら、それで幾ら税金が節約されるんでしょうか、総理。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 幾らとは、数字はわかりませんけれども、まず、民営化することによって公務員の身分ではなくなるということによって、これは今まで郵便局の事業で、その収入によって給料は払われていたわけでありますけれども、それは特殊法人等にも使われていた。特殊法人等で赤字が出れば、それは税金で負担しなきゃならない。本来、郵便局がいわゆるもとの融資事故だとすれば、特殊法人等のいわゆる不良債権というものに対する処理というのは、郵便貯金していたとか、あるいは簡易保険入っていたとか、一体で財政投融資から考えれば、そっちに負担を回さなきゃならないんだけれども、それはやはり政府保証ですから、それはできません。そこで、税金で補てんしていたわけですね。

 なおかつ、公営ですから、法人税等を免除されています。こういう点は見えない負担ですね。本来、民営化されていれば、民間の会社になっていれば、そういう負担はしないんですよ。そういう見えない負担ということになれば、私は、公務員がやっている限りは税の免除もある、あるいは郵便貯金から財政投融資から特殊法人、全体の問題があるからこそ、これを民間に開放すべきだと言っているわけでありまして、直接税金で郵便局の職員の給料が支払われていないように見えるけれども、これは政府保証があるんですから、いかなる場合にも何かあった場合には税金で補てんせざるを得ないということでございます。

佐々木(憲)委員 直接税金が入っていないかのように見えるとおっしゃいましたが、直接税金は入っていないんです。郵政事業というのは独立採算制で、これはもう皆さんお認めになっているとおり。

 ですから、公務員とおっしゃいますけれども、郵政公社二十六万人、これは税金はここに直接入っていないんです。警察官二十五万人、自衛隊二十四万人、外務省職員六千人と総理おっしゃいました。その数は、税金がこのように入っております。しかし、郵政公社の職員には税金は一円も入っていない。これはもうこれまでもお認めになった点であります。

 それを民間人にすると。民間人にするから、何かあたかも、税金が入っていないのに税金が入っているかのようなイメージで、そうすれば、要するに財政が助かる、そういうイメージを振りまいてきた。

 つまり、郵政事業、まず独立採算制だ、これはお認めになりますね。独立採算制であると。郵政事業は独立採算制なんですよ。竹中さん、そうでしょう。これはもう今までおっしゃったとおり。

小泉内閣総理大臣 それは、郵便事業だけを見れば独立採算制でありますけれども、郵貯、簡保一緒なんです、郵政というのは。その資金がなきゃ運営できないんです。全部特殊法人につながっているんです。一見、税金払っていないようだけれども、特殊法人等入っているところについては、郵政の国営事業がある限りずっとつながっているんですから、財政投融資と。だから、結局、その赤字の部分は税金で補てんせざるを得ないんです、背景を考えると。そして、法人税も払わないでいいんです。そういう面において、見えない国民負担があるということにおいて、これは全然間違っていることじゃないんです。

佐々木(憲)委員 それはかなり無理ですね、その説明は。郵政事業は独立採算制で、そこに税金は一円も入っていない。これは政府自身が、竹中さんが六日の本会議の答弁で、郵政事業は独立採算で経営されておりまして、税金は投入されておりません、このようにはっきりおっしゃった。ですから、その郵政事業が民営化、職員が一般人になっても、つまり公務員じゃなくて民間人になっても、そこに税金は入っていないんですから、何の節約にもならない。

 だから、そういうことを意識的に言わないというのは、それは作戦だったと思うんですね。そういうところに税金が入っていないということを言わずに、ともかく民営化すれば小さな政府になると。結局、税金がそこに入っていないということを言わないでやるものですから、何かそれをやると節約になるかのような、これは全く事実と違う。

 法人税が払われていないと言うけれども、そういう仕組みなんですから、もともと。何もそれは見えざる負担とかいうふうに、見えざる負担なんというのは、別に見えないわけですから。実際に見えないんだから、払っていないんだから、負担じゃないんです、それは。負担じゃないんです。そういう仕組みになっているんだから。そうでしょう。

 結局、こういう事実を語らないで選挙をやった。結果として、議席の上では自民、公明が過半数を占めた。肝心なのは得票だ。小選挙区では、与党と賛成派の無所属が四九%、民営化法案に対してですね。野党と反対派無所属、これは五一%。郵政民営化法案についての国民投票だったとしたら、これは賛成四九%、反対五一%、民営化は否決されたんじゃありませんか。

小泉内閣総理大臣 これは、郵政民営化が最大の争点でありますけれども、同時に、小泉内閣四年余にわたる今までの成果、実績とこれからの方針、含んでいる選挙だと思っております。

 そして、選挙制度において、今小選挙区で、たしか比例の票を入れると多いんじゃないですか。比例の自民党と公明党票、比例を足すと多い、全部の政党よりも。

 だから、それぞれの選挙制度において、第一位が当選するんですから。その第一位が過半数をとらないとそれは民意ではないと言ったら、市長とか知事、どうなっちゃうんですか。比較一党で、そうして選挙制度で比較の第一党が当選するという制度になっているんですから。(発言する者あり)今回は、国民投票でなくて解散・総選挙です。最大の争点が郵政民営化賛成か反対かなんです。そこで結果的に議席で、賛成の候補者の自民党、公明党候補に国民が圧倒的多数をやったから、みんな一位かそこらで入って、圧勝させてくれたわけです。

 ですから、これが民主主義じゃないと言ったら、総意思じゃないと言ったら、イギリスだって、票は多くても、議席で少なかったら政権はとれないんです。大統領選挙においても、国民投票で票は多くても、選挙人の数が少なかったら大統領になれないんです。

 そこで、今回の選挙制度におきましても、常に一位が当選するのは事実でありますが、過半数をとれなきゃ当選できないという制度じゃないんです。一番大事なことは議席なんです。議席で今野党が多くなれば、こっちの席に座っているんですよ。国民は、議席で、圧倒的多数の議席を自民党、公明党に与えて、政権。これはもう制度だから仕方ないんですよ、そういう選挙なんですから。

佐々木(憲)委員 比例代表も含めても、決して賛成派が圧勝したと言えないですよ。反対派の無所属候補は比例代表には出ていないですからね。

 問題は小選挙区の方ですよ。小選挙区の方にいわば刺客を立てて、国民に郵政民営化法案に賛成か反対か意見を聞きたいと。つまり、そこで賛否を問うたわけです。なぜ四九%の得票なのに多数を占めるか。それは、小選挙区という制度の問題点がここにあるわけです。

 例えば、三人の候補者が立っていた。賛成は一人だった、反対が二人いた。賛成の人は四〇%をとった、反対の二人はそれぞれ三〇%をとった。こういう場合は四〇%でも通るわけです。六〇%の反対という国民の意思はそこで無視される。これが小選挙区制の特徴なんです。つまり、国民投票でいえば、六割が反対しても全く逆の人が通っていく、こういう形になるわけですね。

 ですから、こういう選挙制度の特徴というものが民意をゆがめた、そういう形で、いわば虚構の多数派だ、こういうふうにはっきりと言わなければならない。

 だから、例えば東京新聞の社説もこう書いているんですよ。「自公合わせても小選挙区で五割を切り、比例ですら五割そこそこ。この事実を勝者も敗者も銘記すべし」「国民の支持率よりもはるかに水ぶくれした三分の二勢力と強腰の首相が、国民支持を錯覚して独裁に陥らないことを願わずにいられません。」私はこのとおりだと思うんです。

 国民に、先ほどのように、独立採算、そして職員に税金が入っていないという真実を語らず、選挙制度のからくりで多数を占める。だからといって、民営化法案が国民に支持されたというふうにはならないということを私は指摘しているわけであります。

 では、なぜ国民の半数が郵政民営化法案を支持しなかったか。それは、総理自身も所信表明演説で言われているように、民営化によって郵便局がなくなるのではないか、郵便局で貯金や保険を扱わなくなるのではないかという不安があるから。その根拠は、やはり法案そのものの中に私はあると思います。だから、総理は法案の中身についても本当に説明してきたのかということが問われるわけです。

 国民は、郵便局というのはどこでも貯金それから簡保を扱っていると思っているわけですね。それは一体どうなのか。

 法案をこういうふうに整理してみますと、今、郵政公社では、現在の郵便局、これは、郵貯、簡保、郵便、すべてあまねく提供するという義務があります。郵便貯金にも、あまねく公平に利用される、こういう義務づけがあります。

 ところが、提案されている民営化法案は、郵便局にも、郵便銀行や簡易保険会社にも、このようなユニバーサルサービスの義務づけはないわけです。ここにありますように、義務づけはされていない。これは、法律上、事実ですね。

竹中国務大臣 法律上、郵貯、簡保の義務づけをしていないというのは事実でございます。これは金融である。私たちはまず民営化しようというふうに考えているわけでありますので、金融を民営化する以上、国家の関与を排さなければいけない。したがって、その裏返しとして国の義務づけは行わない。しかし、結果としてその利便が国民にしっかりと行き届くように、長期の代理店契約でありますとか基金でありますとか、さまざまな工夫をして、結果としてそうしたサービスが継続できるような制度設計をしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 結果としてそのサービスが行き届くような設計をしていると言うけれども、法律上義務づけがないんですから、これは行き届かないんですよ。

 では、それが行き届くと言うなら、はっきり義務づけをすると書いたらどうですか。なぜ書かないんですか。

竹中国務大臣 私たちは民営化をするんです。厳しい経済状況の変化の中で、民営化してこれを乗り切っていこうという強い意思を持って民営化を行います。民間企業にする以上、国の義務づけはできるだけ小さくしなければならない、そのような中で、そのような意思で制度設計をしております。

佐々木(憲)委員 結局、郵便局で簡保と貯金を扱わなければならないという義務がない。個々の郵便局で扱うかどうかは、これは経営判断になる、こういうことですね。

 そうなると結局どういう結果になるかというと、もうからないところも一緒につなぐ金融ネットワーク、それをつくることも可能だ。つまり、すべての国民にあまねくそういうサービスを行うという、そこも可能である。しかし、もうかるところだけつないでネットワークをつくるということも可能になる。経営者もいろいろですから、経営者によってそういうことをやる。つまり、国民のサービスを十分に保障しなくてももうかるところだけやればいい、そういうことになるんじゃありませんか。

竹中国務大臣 私たちはそういうことにはならないというふうに考えております。それは、郵便局の二万四千のネットワークには、ネットワークとしての価値、ネットワークバリューがあるというふうに考えるからでございます。

 例えばクロネコヤマトをとってみても、ヤマトもネットワークですから、クロネコヤマトの営業所一つ一つを見ると三分の一は赤字なわけです。しかし、そこに経営者があらわれて、黒字のところだけ残して赤字のところを排除するか。これは全体としてのネットワークの価値があるから、そういうことはしないわけであります。経営者もいろいろでありますが、正しい判断をする経営者であるならば、そのような判断をするというふうに考える。

 しかし、それでも万が一にもネットワークの価値が低下するようなところが過疎地の最前線で出てくると困るから、そのときのために基金を設けて、しっかりとそうした地域貢献のサービスとして事業を続けられるようにしよう、そういうような制度設計にしております。

佐々木(憲)委員 これは義務づけなければ、こういう今までの公社のようにきちっと法的な義務づけがなければ、これは経営者の判断ですから、それはしないと言っても、あなたが今勝手に思っているだけの話で、実際の経営になったら、ここは採算がとれない、赤字だからこれはいいんだ、切り捨ててもいいんだ、こういう判断も成り立つわけです。

 私が言っているのは、金融のユニバーサルサービス、一体これはどうなるかということです。郵便局がなくなるという可能性もある。しかし、残った郵便局に行って貯金をしようとしても、この郵便局では扱っておりませんからどうぞお帰りください、こういうことも発生し得るということであります。

 実際にドイツは、民営化後、三分の一の一万二千の郵便局、この一万二千の中で九千しか金融サービスをやっていないんです。四分の一に当たる三千の郵便局では扱わない。日本でいったら、六千の郵便局が郵貯、簡保を扱わなくなるのと同じであります。そういう危険性があるんじゃありませんか。

竹中国務大臣 ドイツの銀行、ポストバンクは、たしか資金規模九兆円ぐらいの銀行であったと思います。二百数十兆の郵貯とは経営の規模ないしは社会における存在感が根本的に違うわけでありますので、これはドイツのポストバンクと比べるのは適切ではないというふうに思います。

 日本は、現状でも五百程度郵貯を取り扱っていないところはございますけれども、我々は、地域の中で、地域貢献として、ほかの金融機関も地域にはない、どうしてもここでやらなければいけない、郵便局でやっていただかなければいけない、しかしネットワークの価値が低下して困ったというような場合、そういう万々が一の場合に備えて基金まで用意をしまして、しっかりと必要な地域には必要な金融サービスが提供されるというような仕組みをつくっております。

佐々木(憲)委員 ドイツの場合は、規模の問題を言いましたけれども、規模の問題じゃないんです。規模が大きかったら完全で、小さかったらやらない、こんな話じゃないんです。つまり、義務づけがあるかないかということで一番決定的な違いが出てくるわけですね。

 それから、基金の話をしましたけれども、基金を幾ら置いても、問題は、存在している郵便局がその郵便局で郵貯、簡保、これをやるかどうか、これは義務づけがないわけですから。したがって、郵便局があっても郵貯、簡保をやらないというところだって出てくる。

 こういうふうに、今の政府の案でいいますと、義務づけがなくなる郵便貯金、簡易保険、これが国民の不安というものを法律上招いているわけですよ。法案上こういう形になっているということなんですね。何でこんなことをするのか。私は、国民は決してこんなことを望んでいない、こんな法案をつくってくれと言っていないと思うんです。一体だれの要求なんだと。

 ここに昨年の十一月に出された日米財界人会議の共同声明がある。何と書いてあるか。郵貯、簡保が日本人一般にユニバーサルサービスを提供し続ける必要はなく、本来的には廃止されるべきである、こう書いてあるんです。

 つまり、国民が不安を感じること、不利益だということを国民が要求するわけはないわけであって、結局、要求したのはアメリカで、金融のユニバーサルサービスをなくす、こういうことで、いわば、アメリカと同じ、まあ総理はアメリカと違うんだと言いますが、結果的にアメリカの言うとおりになっているんじゃないですか。

 ですから私は、これは国民の不安をただただ広げるだけであって、こんな郵政民営化の法案というのは廃案しかない、こういうふうに思うわけであります。

 アメリカがこのような主張をしてきた、このことは事実だということはお認めになりますか。

竹中国務大臣 まず、先ほどドイツのポストバンクの規模、九兆円程度と思うと申し上げましたが、最新のデータでは十一兆円程度でございます。

 アメリカの関係でございますが、アメリカは、いろいろな形でいろいろなことを議論しているということは承知しております。できるだけ透明な形で議論をしてくれ、民間とのイコールフッティングを重視してくれ。しかし、これは決してアメリカだけが言っているわけではなくて、国会の中でも与野党、先生方皆さん言っておられるし、新聞の社説でもみんな言っていることであります。

 しかし、その中でアメリカが保険について例えば言っておられること、具体的に言っておられることとしては、完全な民有民営が実現するまで、つまり、十年の移行期間を経過するまでは新たな新商品の販売を認めるなというふうにアメリカは言っておるわけでございますけれども、これは、我々の制度設計はもうその点において全く異なっているわけです。私たちは、公社の業務の範囲から出発をして、できるだけ早く経営の自由度を持っていただいて、民営化委員会の意見も聞きながら新規の業務も認めていくということでありますから、アメリカの言いなりとかそういうことは、もうその一点を見てもこれは全く違う。

 そもそも私たちは、アメリカの意見を聞いて民営化をしているのではなく、小泉総理はアメリカが要求するはるか、はるか以前から民営化を主張してこられたわけでございます。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 アメリカが言うはるか以前からと盛んに言いますけれども、その法案を作成する過程あるいは基本方針をつくる過程、ここでアメリカの節々の意見というものが反映しているわけです。

 例えば、昨年八月に開かれた保険協議ですね。ここでアメリカが主張した点、その後内閣の設計図には米国が勧告していた内容を盛り込ませた、こういうふうにアメリカ自身が、我々の要求が通ったんだ、盛り込んだ、こういうふうに言っているわけでありまして、いろいろな意見があると言いますけれども、基本的にはアメリカと日本の金融資本の要望に沿って今回つくられた法案だということは明らかであります。

 したがって、我々はこういう法案は直ちに廃案にするしかない、このことを主張して、質問を終わります。

二階委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正であります。

 まず最初に、総理に確認をしておきたいんですが、それは、郵政職員について民営化法百六十七条で、「承継会社のいずれかの職員となるものとする。」こういうふうに書かれておりますけれども、このことは、現在の郵政職員の全員が、本人の希望もあると思いますけれども、全員が承継会社に雇用される、こういうふうなことを確認したんだというふうに受け取っていいですか。

小泉内閣総理大臣 この法案を作成する以前から、雇用に配慮する、これはもう原則ですから、そういう点については十分配慮した上での法案であります。雇用には随分配慮しております。

重野委員 それでは質問に入りますけれども、およそ、郵便に十二万人、窓口十三万五千、貯金会社八千、保険会社四千、こういう割り振りが言われておりますが、これは十一月の骨格経営試算なりで試算している採算モデルの重要な前提あるいは要素と考えますが、この点についても、竹中大臣、確認いたしたいんですが。

竹中国務大臣 骨格経営試算についてのお尋ねでございますが、まず、雇用そのものはしっかりと確保される、そしてどのような形で新会社に帰属していくかということは、これは承継計画の中で今後判断をされていくという問題でございます。

 骨格経営試算では、採算、収支の確認をするために、幾つかの前提を置きましてその人員を配置して収支を計算しておりますけれども、その中で委員の御関心は、雇用がちゃんと守られるのか、数字の計算上、不都合は生じていないのか、そのことの御確認であろうかと思います。

 民営化後につきましては、人員の多い郵便事業会社及び窓口ネットワーク会社の総人件費につきましては、年率一・一%減少していくという前提を置いております。これは、郵便物そのものが一・一%程度減少していくというふうに考えておりますので、人件費一円当たりの生産性が変わらないようにしてもらいたい、したがって、物数が減る分、人件費は一・一%程度削減してもらいたいということでそのような前提を置いているわけでございます。

 職員数の変化等について具体的な設定を行っているわけではございませんけれども、公社職員の年齢構成等を勘案いたしますと、毎年平均しまして全体の約二・五%以上の職員が退職するというふうに考えられます。したがって、二・五%ずつ人員が減っていく中で、生産性を保つために人件費を一・一%下げてくれということでありますので、これは自然減の中で達成できる努力目標であるというふうに考えております。

重野委員 そこでまた総理に聞きたいのでありますが、総理が四日の参議院予算委員会で、民間企業の郵便事業への参入条件について、参入しやすい環境をつくるべきだ、郵便ポストについて十万本が固定される必要はない、こういう発言をされております。

 まず、その発言について確認したいことと、これは、間違いないとすれば、いわゆる信書便法の改正という部分に触れる問題である、このように私は受けとめるのでありますが、発言の意図について総理の見解をお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 信書便については、全国的な展開がなされていない、地域的なサービスはかなりの会社が参入しましたけれどもね。そこで、どうしてかと問いただしたところ、参入の障壁が高い、いわゆる十万本のポスト等ですね。

 そういうことから、できるだけ民間にできることは民間、民間がやりたいという仕事については開放していくべきだという考え方から、今後民間が参入しやすいような、規制を緩和した方がいいんじゃないか、その一つが十万本というポストだ。これを幾らまで下げれば、何万本まで下げれば民間が入ってこられるかどうか、これはよく検討しなきゃならない問題だと思っています。

重野委員 この十万という数字は、何も積算根拠がなくて十万という数字が出ているわけじゃないですね。これは、この間の法案審議あるいは公社ができる段階での法案審議の中でも大変問題になった事項なんですね。人口割りだとかいろいろな基礎を積み上げて、それに一定の係数を掛けていくというふうな、非常に複雑な計算方法の中から積み上げた数字がこの十万。これはやはり、今政府が考える、ユーザーたる国民の期待にこたえるためには、この十万という数字は必要な数字だ、こういう結果の数字だと私は受けとめている。

 今、総理の発言は、それが民間の参入の障害となっているのであれば、これはやはり低くしたらいいじゃないか、これはちょっと私は本末転倒ではないか。それを利用する国民の利益という観点あるいは便利さという観点、そういうふうなものが最優先をされるべきであって、それに参入する企業が参入しやすいようにこれを低くしていくというのは私は聞けないんじゃないか、このように思うんですが、総理、どのように考えますか。

小泉内閣総理大臣 公社側、役所側の立場に立つとそういう議論が出てくるんですよね、競争は嫌だから。今までも、宅配便が参入する場合も、何とか参入させないという役所側の抵抗があった。しかし、民間側の努力もありまして、宅配サービスを民間がやり出したら、もう我々の想像を超えるような今は宅配サービスの恩恵を国民みんな受けている。だから、役所の立場に立てば、できるだけ独占形態でいたいという気持ちはわかりますけれども、国民の利便を考えると、競争というのはサービス競争になりますから、宅配サービスだけじゃありません、信書便についても、民間ができるということだったら、参入しやすいような条件なり障壁を下げてもいいんじゃないか。

 現に選挙でも、候補者のパンフレットを配るのに、郵便局を使うとあれは百四十円だったのかな、民間の宅配サービスは八十円だった。同じパンフレットを郵送するのに、こんなにどうして違うのか。あの今回の九月十一日の選挙中に初めてわかったことですよ。ああ、やはり民間はすごいなと思ってね。だから、選挙区によっては、百四十円を一万通有権者に――百二十円、百二十円だ。百二十円、一万通有権者にまこうとした。郵便局だと百二十万かかる。民間は八十円、八十万。四十万助かった。民間でやった方がいいと言う人がいましたからね。

 こういうように、余り独占分野、役所が独占しないで、民間のサービスが参入できるんだったら、今後、検討課題かなと思っております。

重野委員 総理の言っていることを聞いていると、いわゆる信書便法という法律をつくった政府の最高責任者としては、私はちょっと聞けないなというような感じがするんですね。

 そもそもこの十万という数字が、先ほども言ったように、何の根拠もなく出た数字ではないんでしょう。これは、責任を持って政府があの法律をつくるときに出した数字じゃないですか。

 では、その後、政府の中においてはそういう議論が政府の中の部内の議論としてなされているんですか、担当大臣。

麻生国務大臣 今、重野先生おっしゃるとおりに、あのときの記憶もおありでしょうが、政令都市、人口十万人以上の都市、町、二万五千人から十万人、二万五千人以下、過疎地、それぞれに五段階に分けて、政令都市は〇・五、それでずっと切っていきまして、そして過疎地は千人当たり約二本ということになりまして、結果として九万九千四百五十六本、丸くして約十万という数字が算出された、その経緯は参画されておられるので御存じかと思います。

 そういったことがもともとの背景でしたけれども、その背景というのは、ユニバーサルサービスというものを確保するということをやらないと、人口密集地のいいところだけをとって、それで過疎地の方の配達は郵政公社に押しつけるというような形をとられると、これはいいとこ取り、クリームスキミングという言葉があのとき使われましたけれども、そういった形になった。

 それを防ぐために考えたというのがあのときの経緯、それはもうおっしゃるとおりなんですが、今考えておかないかぬということは、町村合併が進みまして、今、人口十万人以上という町に住んでいる人の人口、日本じゅうの約六四%は人口十万人以上なんです。これが町村合併の進んだ結果なんです。五万人以上で、約八一%が人口五万人以上の市に住んでおられるというのが実態になってきますので、そういった意味では、この比率のもとの数字が変わってまいります。そのことも考えて総理の発言があっておりますので、私どもの方としては、昨日、この点を勘案して検討するようにということで事務方には指示をしておりますが、基本は、ユニバーサルサービスの確保というのが大前提というのはもうはっきりしております。

重野委員 今、大臣も言いましたように、自治体再編の真っただ中にあります。自治体の数も大幅に減っています。だけれども、そこの地域の風景というのは変わっていないんですよ。私は大分県ですが、私の選挙区、二区なんというのはもう過疎地ばかりですから、集落が五軒とか六軒、しかも一軒の間が百メートル、二百メートル離れている、そういう形なんですよね。だから、今総務大臣が、そういう一自治体の人口の数というのは随分大きくなりましたよね。そういう変化はあるんだけれども、郵便を配達するという側に立ってみれば、その地域の形状というのは何ら変わりがないわけですから、その点は十分考えておかなきゃならぬ点だ。

 そこで、ちょっと視点を変えますけれども、そういうふうになりますと、いわゆる現行信書便法における参入条件というものが、私は今の一つの前提になっていると思うんですね。その前提が壊れるということになると、私は、大臣が六月八日に、この骨格経営試算というのは信頼に足る経営試算だ、こういうふうに答弁をされておりますけれども、そうなると、ちょっとそこら辺は変わってくるんじゃないですか。

 今の十万というところで競争相手がいない、これを低くして競争相手が仮に出てくる、そうなったときに、大臣の言う試算というのはそのことを前提として試算されているんですか。今の十万ということを前提に試算が組み立てられているんじゃないですか。それが、ハードルが低くなって仮に競争相手が二社、三社入ってくるということになったときのデータというか、数は変わってくるんじゃないですか。そこら辺が想定された骨格経営試算になっているんですか。どうですか。

竹中国務大臣 骨格経営試算の基本的な考え方というのは、現状を出発点といたしまして、そして、今後の変化を織り込んだ形でマクロ的な方向について試算を行う、そしてその収益性を確認するというものでございます。したがって、それが、ポストが十万本なのか五万本なのか、そのような特別の参入障壁に係る変数がこのような試算に入っているということでは全くございません。

 我々は、民営化を考えるに当たりまして、ユニバーサルサービスを義務づけるわけでございますから、それについては、当面、現状の、いわゆるリザーブエリアといいますか、参入の仕組みを前提としております。

 しかし、一方で、この参入障壁に関しましては、民営化するにしてもしないにしても、どちらにしても、競争を促進するという観点から常に不断に見直して、できるだけ競争的にしなければいけないという観点から議論を進めなければいけないと思っております。総理の御趣旨は、まさにそのような形で不断に見直していけということであるというふうに認識をしております。

 万が一にもそういうことが行われた場合に収支はどのように変わるのかというお尋ねでございますれば、これは、新たに市場の開拓が行われて市場自体が拡大するというような面、さらには生産性が競争によって向上するという面、つまりよい面もございます。一方で、収益を競争が厳しくなって下げるという面もある。つまりプラスマイナス両面がありますから、それが変わったことによって具体的にどのような影響を収支が受けるかということを現時点で見直すのは、これは困難な話でございます。

 いずれにしましても、骨格経営試算は、今申し上げましたような、方向性を確認するという観点から行っているということ、そして一方で、民営化するにせよしないにせよ、不断に競争条件をしっかりと見直していかなければいけない、その気持ちでやっていかなければいけないということ、その両面をぜひ御理解賜りたいと思います。

重野委員 もう時間もなくなりましたけれども、最後に、そのような公社を取り巻く環境というのはより一層厳しさを増してくるのではないか。まして、今の大臣の話にあるように、一つの例として十万という数字に私は固執するわけでありますけれども、そこも変えなければならぬというふうな流れもあることが明確になってきましたね、検討させているという話ですから。今でも郵便物の数が毎年二%あるいは二・五%減少している、これは大臣の答弁の中でそのように言われていますよね。今後さらに減少が加速する、こういうふうな話である。その上で、今言う規制が緩和されていくということ。

 結論的に申しますと、今の日本郵政公社の職員の非公務員化と同時に、その数を冒頭に総理は確保するというまずお話がございました。そういう流れの中で、もう一度その点についての確認をして終わりたいと思います。

竹中国務大臣 競争条件が今後変化していくということはあり得ることだと思います。競争が激化することによって競争相手がふえるという、経営から見ると厳しい局面と、一方で、生産性向上、市場の拡大というプラスの面が両方ある。したがいまして、これはまさに競争であります。

 そうした中で職員の雇用をしっかりと確保していくということは、これはもう民営化に当たって法律上しっかりと定めていることでありますので、そうしたことを経営的に可能にするためにも、民営化を早期に実施して経営力をつけていただく。まさにそのためにも、雇用をしっかりと確保するためにも民営化が必要であるというふうに考えております。

重野委員 終わります。

二階委員長 次に、滝実君。

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 時間の制約もあるものですから、最初に、この法案に対する基本的な姿勢だけを意見として開陳させていただきたいとまず思います。

 私は、民営化そのものは評価をいたしているわけでございますけれども、この法案は、敵対買収、そういうものの対象になりやすい、そういう危険をはらんだ法案であるということを終始考えてまいりました。今もその考え方には変わりはありません。なぜかというと、郵貯あるいは簡易保険、膨大な資産を保有している、その割には予定されております発行株式数が大変少ない、そういうようなことを感じております。

 解散前の特別委員会における準備室の説明では、発行を予定している株式は全体で七・六兆円、そして郵貯銀行が二・五兆円、郵便保険ですか、これが一・四兆円、こういうような説明を準備室がここで堂々と最後に開陳されました。恐らく確定的な数字ではないというふうには思いますけれども、そういうようなことを前提にして考えますと、保有資産の割には大変株式が少ない。ということは、簡単に乗っ取りをされる、あるいは支配権を行使される、こういうことだろうと思います。

 朝方、竹中大臣は、金融機関については二〇%を超える株式の保有については許可が要る、こういうふうにおっしゃいましたけれども、そういう許可があっても、二人、三人でパートナーを組んで、水面下で株主総会で共同行為をとれば、簡単に支配力は行使できるわけでございますから、私は、そういう意味で相変わらずこの問題は全く無防備だというようなことを考えております。

 さて、郵便貯金の国債の運用につきまして財務大臣にお尋ねをしてまいりたいと思います。

 総理も竹中大臣も、資金の流れを官から民へ、こういうふうにおっしゃっているのでございますけれども、少なくともこの数年来、郵便貯金が保有している国債がウナギ登りにふえている、これは事実でございます。平成十三年度以降十九年度まで予定をされております郵貯における買い取りと引き受けの額が、恐らく百五十兆を超える国債を引き受ける。それも、財政融資資金から直入で受けるわけですね。市場を通さずに受けるということが、平成十一年の十二月の大蔵大臣から郵政大臣に対する申し入れによってやられている、こういう実態でございます。

 その辺のところの事実関係をまず財務大臣にお尋ねをしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、滝委員御指摘のように、平成十三年度、預託義務が廃止されて以来、そういった返却資金の運用を、自主運用になりまして、大変国債の保有が大きくなっているということは事実でございます。数字を申しますと、平成十二年度末、預託金が百八十九・七兆でしたが、国債は二十五兆、それに対して十六年度末は、預託金は七十九・四兆ですが、国債は百十二・六兆でございます。

 そこで、郵貯が保有している国債には、十九年度までの経過措置、さっきおっしゃった件ですが、引き受けている財投債も含まれておりますが、ただし、財投改革後の平成十三年度以降、経過措置として、郵貯が引き受けた財投債の額は、郵貯に対して払い戻した預託金の額の半分以下という数字でございまして、全部財投債に充てられているわけではありません。

 それで、これはもう委員よく御存じでございますが、郵貯等への預託金の払い戻しを行う原資を市場から調達した場合の市場へのショックを勘案してこういう経過措置をとっているわけでありますが、平成十九年度末をもって基本的に終了する、こういう形でございます。

滝委員 平成十一年のときの申し入れにつきましては、既往の貸付金のほかに新規の貸付金についてもこれに準じた配慮をいただきたい、こういう申し入れがついていますけれども、これについては、今後はしない、こういうことでしょうか。

谷垣国務大臣 先ほど申しましたように、平成十九年度末をもってこの直接引き受けは終わりとする。それで、これは今度の法案の中にもそういう趣旨が書き込んでございます。

 そして、平成二十年度以降の財投債の発行に関しましては、現在、市中発行は大体十二兆ぐらいでございますが、財投を非常に見直して圧縮してまいりましたので、今後とも、もちろんそのときそのときの財投をどうしていくかにもよりますが、市中引き受けをするのが大きくふえていくという状況ではないと思っておりますので、大体市中で消化できる、こういうふうに考えております。

滝委員 財政融資資金に対する貸付金がゼロになれば、資金からの直入ということはあり得ないと思いますから、そういう意味ではそれで一応遮断されると思いますけれども、決して押しつけにならないように、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そこで、既往の貸付金についての今の国債の引き受けですけれども、いわば旧勘定、新勘定に区分した場合に、旧勘定にこれがどっと入っているわけですね。したがって、最近では、引き受けるについても、二年物、三年物、十年物というふうに細かく刻んで、預金の取り崩しに対応できるような配慮をしていただいているようでございますけれども、しかし、万が一ということになった場合に、これは対応できないんですね。

 そこで、竹中大臣は力説されておりましたように、旧勘定と新勘定と分けるんだと言っても、分けたら今度は収拾がつかない、こういうことだろうと思います。その結果が、旧勘定のものをあえて今度は、法律ではよくわかりませんけれども、恐らく郵貯銀行なり簡易保険にもう一遍資金運用させるんだろうと思うのでございますけれども、そういった点について、財政当局としてどういうような認識をお持ちなのかをお聞きしておきたいと思います。

谷垣国務大臣 確かに、旧契約分については、国債等の安全資産をその契約以上に持ってやるようにということになっておりまして、その運用につきましては、旧勘定、新勘定一緒にして運用するということになっておりますが、今委員が御指摘になりましたように、民営化前に預けられました定期性の郵便貯金等については、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継させまして、機構はその運用資産を郵貯銀行等へ特別預金、再保険というような形でやっていくということになっておりますが、こういうスキームで郵貯銀行等は旧契約分を含めて資産を一括運用する。

 こういう形で、旧勘定分、十年、だんだん完全な民営化に向かっていくわけでございますが、やはり私ども、これだけ大量に国債を発行しておりますと、マーケット等に不測の影響を与えるようなことがあってはいけない。今申しましたように、いろいろそのための分散等もしているわけでありますが、十年かけてマーケットへの影響等を考えつつ民営化へ移行していく、そして、国債等の消化も、私どもも十分その間のいろいろな動向を吸収できるというような形になっているのではないかと評価しております。

滝委員 先ほど一番最初に申しましたように、いずれにいたしましても、郵貯銀行にしましても、郵便保険会社につきましても、発行株式が大変低い。したがって、仮に、この間の村上ファンドじゃありませんけれども、四割ぐらい株を取得すれば相当な支配力を行使できる、そういうような金融の世界でございます。

 したがって、仮に、郵便保険の方でございますけれども、二つぐらいに分割するというようなこともこれからの問題としてあるようでございますけれども、いずれにいたしましても簡易保険の方は、かなり少額の資金を用意すれば相当大きな保有資産をコントロールできる、こういううまみがあるわけでございます。

 そういたしますと、国債を大量に持っているそういう機関がそういう投資集団の手に落ちるということになりますと、かなり国債の価格に影響してくるんだろう、こういうことが懸念されるわけでございますけれども、そういった点について、財務大臣としてどういうふうにお考えになっているかをお聞きしておきたいと思います。

谷垣国務大臣 この点に関しましては、先ほど、滝委員が竹中大臣の答弁を引用されましたけれども、二〇%を超える場合には、内閣総理大臣、実際は金融庁、金融担当大臣ということになると思いますが、その認可が必要という形になっておりますので、その中で、経営の安定性といいますか健全性についてはチェックが行われるということになると思いますし、それから、敵対的買収に関しましては、これはもう滝委員が一番お詳しいわけでありますが、新しい会社法の中の規定によって対応していくということになるのではないかと考えております。

 いずれにせよ、私どもとしては、国債の安定的な消化、マーケットの安定的な運用というのに不測の動きがあることは避けなければなりませんので、そのためにまず私どもがやるべきことは、第一に国債の信認を確保していくということであろう、こういうふうに思っております。

 時間の関係もございますので、簡単に答弁をさせていただきました。

滝委員 敵対的買収に関連する防御策は、実効の防御策は二つしかないんですよ。一つは非公開にすること、もう一つは発行済み株式を多くすること、これしかないんです。会社法で決められているものは、時間稼ぎの間にいわば和解に持ち込もう、そういう調整の時間的余裕を与えるにすぎないというのが実務界の定説でございますから、したがって私は、この郵便保険あるいは郵貯についても、発行済み株式をどう設定するか、これが一つのポイントだろう、こういうふうに思っておりますので、その辺のところを配慮してお決めいただいた方がよろしいかと思います。

 最後に、生田総裁にお尋ねをしたいと思います。

 たびたび生田総裁は、国際物流という問題について意欲を燃やされているわけでございますし、既に東南アジアを中心にして具体的な準備をされているように思うのでございますけれども、その辺の状況がうまくいくのかどうか。

 私の仄聞するところによりますと、最初、郵政公社を前面に出して何とか中国市場に潜り込みたいと言っていた物流会社も、一抜け、二抜けというような今状況だというふうに聞いておるんですけれども、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 郵便事業、非常に苦しい状況にございまして、公社化後二年黒字を出しまして、五百五十億は減したんですけれども、今でも五千二百三十五億の累積債務、おまけに、構造的には赤字であります。

 私といたしましては、民営化を控えまして、郵便事業の黒字構造への改革というのは、これはもう本当に重要なことであるので、私の重い使命だと認識しております。赤字構造のまま民営化というような状況では、会社が成り立たないし、私も許されないことだと思っております。

 そのためには、ゆうパックとかダイレクトメールで頑張るわけでありますけれども、いまだ余り手がついていない国際事業というのも、黒字化への潜在的な柱の一つだと思っております。

 八月に法案がもし通っていたとすれば、二〇〇六年四月、前倒ししていただいていますから、来年の四月に実行に入れるということをめどに、この秋にもプランを発表させていただきたいと思っておりました。けれども、御承知のような状況でございますので、いろいろ交渉しております相手先には、誠意を尽くしまして、幸い非常に相互信頼関係がありますので、円満裏に今中断の状況であります。

 今回、法案の取り扱いが決まりましたら、直ちに、予定を変えずに来年の四月に実行に移れるように、駆け足で、全速力で準備を進めていく。それで、できたら年内にもそのプランを公表させていただきたい、こう思っております。

 中国ももちろん考えていきたいと思いますし、アジアも考えたいし、容易ではありませんが、ここをやらないとやはり郵便事業は成り立ちません。努力するつもりでおります。

滝委員 ありがとうございました。

 これは大事な問題でございますから、極力御尽力をお願い申し上げたいと思います。

 最後に、国債の運用に関連しまして申し上げましたけれども、基本は、資金の官から民へというのも大事でございますけれども、日本の国債管理をどうするかということも、これはある意味ではそれ以上に大事な問題でございますから、そこのところは十分に御配慮をいただきながら、そして郵便貯金が成り立つようにお願いを申し上げておきたいと思います。

 終わります。

二階委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十分散会


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