衆議院

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第2号 平成19年4月20日(金曜日)

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平成十九年四月二十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 大島 理森君 理事 河村 建夫君

   理事 小坂 憲次君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 中山 成彬君 理事 野田 佳彦君

   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君

      赤池 誠章君    赤澤 亮正君

      井脇ノブ子君    伊藤 忠彦君

      稲田 朋美君    稲葉 大和君

      猪口 邦子君    浮島 敏男君

      小川 友一君    小野寺五典君

      大塚  拓君    亀岡 偉民君

      木原 誠二君    坂井  学君

      清水鴻一郎君    篠田 陽介君

      鈴木 俊一君    田中 良生君

      平  将明君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中森ふくよ君

      長崎幸太郎君    西本 勝子君

      橋本  岳君    馳   浩君

      林   潤君    原田 憲治君

      平口  洋君    平田 耕一君

      広津 素子君    福岡 資麿君

      福田 良彦君    二田 孝治君

      馬渡 龍治君    松本 洋平君

      やまぎわ大志郎君    安井潤一郎君

      山内 康一君    若宮 健嗣君

      川内 博史君    菅  直人君

      北神 圭朗君    田島 一成君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      西村智奈美君    藤村  修君

      松本 大輔君    松本 剛明君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      石井 郁子君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           藤村  修君

   議員           田島 一成君

   議員           松本 大輔君

   議員           笠  浩史君

   議員           高井 美穂君

   議員           牧  義夫君

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣         菅  義偉君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣         高市 早苗君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     浮島 敏男君

  稲田 朋美君     土井 真樹君

  稲葉 大和君     坂井  学君

  猪口 邦子君     中森ふくよ君

  亀岡 偉民君     長崎幸太郎君

  木原 誠二君     平  将明君

  とかしきなおみ君   福岡 資麿君

  西村 明宏君     大塚  拓君

  原田 憲治君     橋本  岳君

  平田 耕一君     小野寺五典君

  二田 孝治君     小川 友一君

  安井潤一郎君     林   潤君

  田島 一成君     藤村  修君

  松本 大輔君     松本 剛明君

  笠  浩史君     菅  直人君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     田中 良生君

  小川 友一君     二田 孝治君

  小野寺五典君     平田 耕一君

  大塚  拓君     福田 良彦君

  坂井  学君     稲葉 大和君

  平  将明君     平口  洋君

  土井 真樹君     清水鴻一郎君

  中森ふくよ君     猪口 邦子君

  長崎幸太郎君     篠田 陽介君

  橋本  岳君     原田 憲治君

  林   潤君     安井潤一郎君

  福岡 資麿君     とかしきなおみ君

  菅  直人君     笠  浩史君

  藤村  修君     田島 一成君

  松本 剛明君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  清水鴻一郎君     赤澤 亮正君

  篠田 陽介君     亀岡 偉民君

  田中 良生君     広津 素子君

  平口  洋君     木原 誠二君

  福田 良彦君     馬渡 龍治君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     稲田 朋美君

  広津 素子君     井澤 京子君

  馬渡 龍治君     西村 明宏君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、一言申し上げます。

 去る四月十八日夕刻、民主党提出、日本国教育基本法案が本特別委員会に付託されました。この基本法案は、民主党提出の教育関連三法案の基礎となる法案であるとされ、民主党提出の三法案とあわせて審議の対象として扱ってほしいとの民主党の御要請を受け、理事会で審議対象と決した次第であります。委員各位におかれましては、お手元の日本国教育基本法案並びに趣旨説明を御参照願いたく存じます。

 なお、本基本法案は、平成十八年法律第百二十号で公布された現行基本法を廃止しようとするものであります。

 つきましては、お諮りいたします。

 鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案につきましては、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 日本国教育基本法案

    〔本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

保利委員長 ただいま議題となっております各案について議事を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、スポーツ・青少年局長樋口修資君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山成彬君。

中山(成)委員 おはようございます。自由民主党の中山成彬でございます。

 安倍内閣が最重要課題と位置づけます教育関連法案の審議がいよいよ始まるわけでございますが、法案提出に至りますまで、教育再生会議、中央教育審議会の先生方、本当に土日返上で御尽力いただきましたこと、改めて感謝申し上げたいと思う次第でございます。

 審議に入ります前に、去る十七日の夕刻、選挙中でございましたが、伊藤長崎市長が凶弾によって亡くなられました。助けを求める奥様の悲痛な声がブラウン管を通じて流れておりましたけれども、奥様の無念さ、悲しさを思うと胸が張り裂ける思いでございます。こういうことは絶対あってはならないことだ、このように思うわけでございます。

 そこで、安倍総理にお伺いいたします。このような暴力による政治活動あるいは言論に対する封圧、どのようにお考えか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 亡くなられました伊藤市長は、たまたま、私の地元、山口県長門市の御出身でもございまして、県会議員時代から存じ上げておりました。心から御冥福をお祈りしたいと思います。

 また、奥様初め御遺族の皆様のお悲しみあるいは憤り、察するに余りあるものがあると思うわけでございます。お悔やみを申し上げたいと思います。

 選挙期間中の凶行であり、これはある意味では民主主義に対する、まさに、断じて許すことのできない挑戦である、このように思う次第でございます。

 選挙期間中、候補者はさまざまな危険にさらされることもあるわけでございます。私も、選挙中、火炎瓶を自宅に投げられたこともあったわけでございますが、しかし、そういう暴力には決して屈してはならないわけであります。こうした暴力は断固として撲滅をしていくという姿勢で臨んでまいりたいと思います。

中山(成)委員 事件当日、テレビ朝日のニュースステーションに、犯人からの、この犯行をにおわせるような、告発文みたいなものが事前に届いていたというふうに報道されておりましたけれども、このようなものがもし事前に警察の方に知らされておれば、事件を防ぐことができたんじゃないかという意見もあるわけでございますが、報道機関の報道のあり方、姿勢について、総務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 お答えをさせていただく前に、実は、伊藤市長は全国の市長会の副会長を務めておられまして、私も何回となく会談をさせていただきました。そして、この六月の全国の市長会に、多くの市長の皆さんから推挙されて、市長会長に立候補することを既に表明いたしておりました。まさにこれからの地方自治を担う極めて大事な指導者でありました。私も大変残念で、心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 今の御質問でありますけれども、テレビ朝日によりますと、夜九時のNHKのニュースで事件の容疑者の名前を見た番組のスタッフが初めて抗議文に気がついたとのことであります。そもそも事前に警察に届けることができなかった、こういう報告を受けております。また、内容的にも、市長に抗議するという内容で、銃撃ということは一切触れられていなかったということであります。

 放送事業者の姿勢のあり方でありますけれども、一般論でありますけれども、人命にかかわるこうした事案については、人命を第一に尊重することは当然のことであるというふうに思います。そして、放送事業者にあっては、高い公共性が求められている、このことを自覚してこれから適切に対応していただきたい、こう思います。

中山(成)委員 さて、安倍内閣が内閣の最重要課題と位置づけます教育関連法案の審議が始まったわけでございます。安倍内閣が誕生して半年が過ぎました。もう半年かという気持ちもおありかと思いますけれども、その間、支持率がずっと下がり続けておった、しかし最近、やや下げどまっている、こういうふうな報道もあるわけでございます。

 私は、この間、安倍総理は、就任早々、中国、韓国を訪問して、国交正常化に道筋をつけられたわけでございますし、また、長年の懸案でございました教育基本法の改正も、それこそ五十九年ぶりに実現されました。また、これも長年の懸案でございましたけれども、防衛庁の省昇格も実現したわけでございます。さらに、憲法改正の手続法でございます国民投票法案も、先週、衆議院を通過して、今参議院で審議中でございます。このように、安倍内閣というのは、これまでの歴代の内閣ができなかったような重い課題を次々に実現しているわけでございます。

 私は、以前、総理に、支持率というのは気にはしなきゃいけないけれども、しかし支持率に左右されるような政治はしてはならないんじゃないか、信念を貫いてほしい、このように申し上げたこともあるわけですけれども、政権を担当されて半年、今のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私は総理に就任した際、戦後レジームから脱却をして、そして新しい国づくりをスタートする、美しい国をつくっていく、こう宣言をいたしました。

 昨年の臨時国会におきまして、教育基本法におきましては、約六十年ぶりの改正をなし遂げることができたわけであります。また、税制におきましても、道路財源、これは五十年ぶりの大改正であった、このように任じているところでございます。また、防衛庁につきましては、防衛庁を省に昇格させるという決定については、党においては、自民党においては、岸内閣のときにその方針を固め、そして池田内閣で閣議決定をしたわけでございますが、自来、長い年月できなかったわけでございます。これこそまさに、私は、戦後レジームから脱却をして新しい国をつくっていくための礎づくりではなかったか、このように思う次第でございます。

 こうした礎のもとに、皆様方と、また国民の皆様と相携えて、力を合わせて美しい国づくりに邁進をしていく決意でございます。

 また、外交におきましては、先般、温家宝総理が来日をされました。日中においては戦略的互恵関係を構築していくということで一致をしておりますが、主張すべき点は主張していく、我が国の国益を増進していく、そしてまた、世界の中で日本が何をすべきか、何をやっていくことが日本の、そして世界のためになるかということを明確に主張していく、そういう外交をさらに展開してまいる決意でございます。

中山(成)委員 しかし、それにしても、本当に内外ともに問題山積だな、こう思うわけでございます。

 国内におきましては、少子化対策、これも急がなきゃいけません。また、何より、今統一地方選挙で地方を回っておりますと、地方の活性化、これはどうしても力を入れていかなきゃいかぬということを痛感するわけでございます。

 また、国民に増税をお願いする前にできるだけ歳出を削減しようということで、公共事業あるいは医療、福祉の削減に力を入れているわけですけれども、現場からは悲鳴にも似た声が聞こえているわけでございまして、そういう意味では、歳出削減、財政構造改革といいますか、これも安倍内閣の大きな課題である、このように考えているわけです。

 しかし、まさにこの教育改革こそが、私は安倍内閣の最も大事な課題である、このように思うわけでございます。

 子供の成長、これは待ったなしでございます。スピード感を持ってやり遂げていかないかぬ、このように思うわけでございます。総理もこのことを十分自覚されて、教育改革ではなくて教育再生という強い言葉をお使いになっているわけでございますけれども、総理の教育改革にかける決意というものをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私が教育再生という言葉を使いましたのは、多くの国民が、教育は今のままでいいと思っていない、ほとんどの国民が何とかしてもらいたい、こう思っているわけでございます。一方、日本の教育というのは、これは江戸時代の寺子屋時代を見てみましても、世界の中でもすぐれた機能を持っていた。また、戦後の教育の仕組みにおいても、機会均等ということを実現したということにおいては、まさに、アジアの国々から、日本の教育のシステムを導入したい、このように仰ぎ見られていた時代も確かにあったのだろう、こう思います。

 その意味におきまして、我々は、教育を再生していかなければいけない。未来を担う子供たち、この子供たちの将来こそが、私たちにとって、政治において、最も将来について考えるべき課題であろう、こう考えるところでございます。

 すべての子供たちが高い水準の規範意識と、そして学力を身につける機会を提供していかなければいけない。だれでもが通うことができる公立学校の再生も、これは当然大切な課題であろうと思います。教育の場において、お金のある人たちのみが子供にいい教育を提供できるということであってはならない。これはまさに格差の再生産につながっていくわけであります。

 そういう意味におきましても、公教育の再生はもう待ったなしであろう、このように思う次第でございまして、私の美しい国づくりのまず根本、基本は教育であろう、教育の再生に全力をもって取り組んでまいる決意でございます。

中山(成)委員 私ごとになりますが、もう三年前になりますけれども、小泉総理のもとで、平成十六年の九月から十七年の十月まで、一年と一カ月私も文部科学大臣を務めさせていただきました。私も、それ以前から、日本の教育、それこそ地元宮崎の東国原知事じゃありませんけれども、どげんかせんないかん、何とかしなきゃいけない、そういう強い思いを持っておりましたので、就任早々「甦れ、日本!」と題しまして、私の教育改革の私案を発表いたしました。

 これは、頑張る子供、頑張る先生方を応援しよう、そしてチャレンジ精神に富んだ子供たちを育てよう、そういう思いでございましたが、その中に、いわゆるゆとり教育の見直し、あるいは免許更新制の導入、それから全国学力テストの復活、こういったものが含まれていたわけでございまして、今安倍内閣が進めようとしています教育再生、改革の中にこれらが取り込まれているということにつきましては、まさに我が意を得たりという感じがするわけでございます。

 安倍内閣は再チャレンジということを提唱されましたが、私は、初チャレンジといいますか、最初からチャレンジをしないような、そういう無気力な子供たち、ニートとかフリーターという若者たちがふえていることについて危惧を持っておりまして、これは何でかなと思っていましたが、これはやはり、学校現場におきまして、競争は悪だ、競争はさせちゃいけないんだ、そういう教育が問題だったのではないかな、このように思ったわけでございます。

 しかし、実社会に出ますと、これはまさに大競争の時代、国際的にも大競争でございますから、余り競争という言葉を使うといろいろ言われますが、切磋琢磨するといいますか、競い合う心、このように言いかえてもいいと思うんですけれども、そういったものが今の教育に求められている、私はこのように確信しているわけでございます。

 そういった中で、いわゆるゆとり教育というふうに言われているもの、これが長年続いてまいったわけでございます。私は、このゆとり教育の理念と言われております、基礎、基本はしっかり教えて、そして自分の頭で考え、判断して行動できる、そういう人間力のある子供たちを育てるんだという、この理念は間違っていない、こう思っているんですけれども、しかし、OECDの学力調査、あるいは先般発表されました高校生の学力調査等によりますと、どうも読解力とかあるいは応用力、ここに問題がある、こういうふうに指摘されているわけでございます。

 私は、このゆとり教育の発端となりました、いわゆる受験地獄、その中で、詰め込み、受験のための詰め込みというのはこれはいけないと思うんですけれども、人生のための詰め込みといいますか、そういったものは必要だと思うんですよ。

 どういうことかといいますと、私ども、もう本当に記憶力が大分弱くなりましたが、小学校、中学校のころを思い出しますと、本当にやわらかい頭でいろいろなことが吸収できたな、そう思うわけでございまして、そういう頭のやわらかいときに、例えば漢文漢詩あるいはすぐれた日本の詩歌、そういったもの、よく言われますが、「少年老い易く学成り難し」とかあるいは「李下に冠を正さず」、これは政治家にとって一番大事なことで、こういったことをしっかり覚えておくと、人生の折節に、いろいろな折々に自分たちを励ましてくれたり、あるいはしっかり規律を守ったりとか、ある意味では人生の同伴者にもなってくれるんじゃないかと思うわけでございます。

 そういう意味で、私はぜひ、人生のための詰め込みということで、特に小学校、中学校のころ、ともすれば怠けがちでございますから、しっかり鍛える。「国家の品格」で有名になりましたが、藤原正彦先生もたたき込めということを言われていますが、本当に繰り返し繰り返し基礎、基本を教える、すり込む、そういったことが必要じゃないか、このように私は思うわけでございます。

 義務教育の責任者でもございますけれども、安倍総理のゆとり教育についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ゆとり教育につきましては、まさに委員御指摘のとおりであろうと思います。

 そもそものゆとり教育の理念、考え方は、私は間違っていなかったと思います。やはり人間というのは基本的にはある意味ゆとりが必要ですから、物事を深く考える力、あるいはまた、幅広い知識を求め、そしてそれを学んでいくこと、好奇心を持って、いろいろなものになぜだろうと思いながら挑戦をしていったり、そういう知識を取り入れていこうという気持ち、そうしたことをむしろ慫慂するにはやはりゆとりというものも大切なんだろうと思いますが、それはまさに基礎的な知識、学力が身についての上のことであろう。また、そうでなければ、より深く学んだり、あるいはさらに幅を広げていくということもできないんだろうと思います。そのバランスであろうと思うわけでありますが、その理念自体は、私は決して間違っていなかったと思うわけであります。

 しかし、結果としてなかなかいい結果が出てきていない。つまり、子供の自主性を尊重する余り、結果として基礎学力が、どうも十分に身についていないという結果になっていたり、また、学ぶ意欲の低下につながってきてしまっているということでございます。

 そこで、教育再生会議から、これはやはり見直していくべきだろうと。つまり、教育指導要領の理念をしっかりと実現させていけるように、教育指導要領も見直しをしていくことも大切だろうという意味において、このゆとり教育を見直ししていかなければいけない。読み書き、今は、そろばんというか、計算ですね、読み書き計算、あるいは知識、技術、こうした基礎的なものはしっかりとある意味では教え込んでいくということを我々は責任を持って行っていかなければならない、このように考えております。

中山(成)委員 総理のお言葉をお聞きしまして、本当にほっと安心いたしました。

 私は、子供たちを国家形成のための貴重な、資源といいますか、人材である、そういう観点も大事ですけれども、せっかくこの世に生をうけて、もちろん、中にはハンディキャップを背負って生まれてきた子供たちもおりますけれども、そういった子供たちも含めて、やはりその子供たちが可能性を十分開花させながら、人生を幸せに送ってほしい、そのための土台をつくってやるのが義務教育の責任だろう、私はこう思うわけでございまして、このことにつきましては、伊吹大臣、よくよくおわかりだ、このように思っているところでございます。

 ところで、私は、在任中、教育改革を進めるにはまず現場を知ることだ、こう思いまして、スクールミーティングというのを提唱いたしまして、小中学校は全国で三万三千校あるそうでございますが、その一%をせめて自分たちの目で見ようじゃないかと、副大臣、政務官を含め、文部科学省の幹部たちも総動員いたしまして、学校現場を訪れました。全部で四百校近くを行ったと思うんです。私自身も四十校近くを訪問させていただきました。その折は大変学校関係者にお世話になりました。改めて感謝を申し上げたいと思います。

 いろいろな経験、いろいろな話を聞かせていただきまして、すばらしい取り組みをしているな、本当に先生方は頑張っていらっしゃるなと、頭が下がるような、そういう思いがございました。一方では、報告書のたぐいだとかあるいはレポートをたくさん出さないかぬ、もう忙しくて子供たちと向き合う時間がないんだと、こういうふうな声も聞いたわけでございます。

 その中で、特に先生方に強く訴えられたのは何かというと、やはり総合的な学習の時間でございました。導入されてまだ二年ちょっとしかたっていないころでございましたけれども、一体何をしたらいいのかわからない、あるいは、本当に一生懸命やろうとすると準備に物すごい時間がかかる、それよりも、国語、算数、そういう基礎的な教科にもっと力を入れたいんだ、こういう意見が聞かれたわけでございます。

 まだまだ導入されて日が浅いんじゃないか、朝令暮改ではないかという批判もございましたが、私は、育ち盛りの子供たちは一日一日がとても大事だ、そう思いまして、スピード感を持って教育改革をやらないかぬ、そういう思いがございましたので、事務方に、この総合的な学習の時間を検証してくれという指示を出したところでございましたが、その結果がどうなっているか。これは文科大臣、お答えいただけますか。

伊吹国務大臣 先生が文部科学大臣として御在任中に出された総合学習のあり方の見直しについては、現在、中教審で着実に審議が行われております。

 ただ、その間に、先ほど御指摘がありましたように、六十年ぶりの教育基本法の改正がありましたので、その改正教育基本法を受けて、学校教育法を現在国会の御審議にゆだねているところでありますので、これを踏まえて、教育として何を学んでもらうのかということを、もう一度新しい時代に合った新しい学びの内容を立法府でお認めいただいて、それに従って学習指導要領を直していきますので、その際に、今御指摘があった総合学習、これは先ほど総理が申しましたように、基礎的なことをきっちり学んだ上で、自分の興味のあることを自主的に調べさせるとか、それを実際に応用させるということですから、このことは間違っていないんです。いないんですが、なるほど、今御指摘のあったように、現場で戸惑いがございますから、基礎学力をしっかりした上で、どういう形でこれを運用していくかということを、しっかりと中教審の答申を踏まえて、今の御注意も参考にしながら、改訂をしていきたいと思っております。

中山(成)委員 もちろん中には本当にすばらしい取り組み、こういった取り組みをほかの学校にもしてもらいたいなというふうな例も見られましたので、そういったことも参考にしていただきたいと思います。

 教育再生会議でも、授業時数を一割増すんだ、こういうような提言もいただいておりますが、日本の年間の授業時数を見てみますと、小学校、中学校ともOECDの平均に比べて少なくなっております。特に国語と数学の時間が極端に少ないですね。このことを私は指摘したいと思うんです。

 ここに中学校の一年間の平均授業時数の調査がございますが、例えば国語、日本は九十六時間、一番多いのがフランス百六十三時間、六十七時間も差があるわけでございまして、OECD平均でも百四十三時間になっているんですね。平均百四十三時間、それに対して日本は九十六時間。数学については、日本が八十七時間、一番多いフランスが百四十四時間、五十七時間少ない。OECD平均でも百十六時間であります。理科につきましても、日本は七十八時間、一番多いのがイングランド百十八時間、OECDの平均が百七時間となっている。このように、本当に授業時数が少なくなっている。

 基礎、基本はしっかり教える。やはり繰り返し繰り返し教えないと、私たちの小さいころの経験でもそうですけれども、なかなか覚えられないんですね。ですから、そういう意味で、教科書も薄くなりましたが、授業時数までが薄くなっているということは、これは非常に問題だ、私はこのように思うわけでございます。

 そういう意味で、私は、ぜひ、学力の向上を図るためにも土曜日とか夏休みを有効に活用すべきじゃないかと、このことを在任中から何度も申し上げてきたところでございます。特に夏休みですね。夏休みに先生方は学校に行っているんですね。子供たちは登校していないのに、学校へ行っている。これはちょっとおかしいなと思うんです。民間の塾で、生徒たちが来ていないのに先生方がそこに座っていることはあり得ない。これは、まさに公立だから、公務員だからそういうことになるんじゃないか、こう思うわけでございます。

 先ほどの、例えば総合的学習の時間なんか、これは夏休みにまとめてやったらいいじゃないか、このようなことを考えるんですけれども、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 御指摘があったように、日本の授業時間、特に義務教育の授業時間は世界的に見て非常に短いというのはそのとおりだと思います。同時に、学習時間と学力との間の相関関係についてはいろいろな意見があることは先生御承知のとおりだと思いますが、現在においても、各教育委員会の自主的な判断によって、夏休みをどうする、あるいは朝の時間を少し早目にやる、いろいろな取り組みが行われております。

 私は、やはり、夏休み、冬休み、いわゆる長期休暇期間と言われるものの活用が、今御指摘のように一番大切じゃないかと思います。同時に、一週間の授業時間をふやすということも今後考えていかねばなりません。特に、先般の高等学校の学力の抽出調査でも、やはり残念ながら、日本語というか自国語の読解力、理解力というのは極端に日本はだめなんですね。ですから、このあたりの御指摘はしっかりと受けとめて、これから授業時間の問題も考えてまいりたいと思いますが、土曜日をどうするかということは、これはなかなか、私は、社会全体が今週休二日制に移行している中でどういうふうにするのか、特に、御家庭の御両親との触れ合いの時間は子供にとって非常に大切な時間ですので、この時間をどうとるかということも一つ念頭に置いて考えていかねばならないだろうと思います。

 いずれにしろ、今般お願いしている、特に学校教育法を立法府でお認めいただければ、今先生が御指摘のあたりの問題は早急に検討して、授業日数の増加の考えも、中教審にもそういう御意見は非常に多いわけですから、実現の方向で努力をしたいと思っております。

中山(成)委員 ぜひ国語の時間を充実させてほしいなと。何といっても一番、原点だと思うんですね。先ほど言いましたように、フランスはさすがに母国語を大事にしているなと。百六十三時間、飛び抜けていますよね。このことは大事なことだと思っています。

 基礎学力もそうですが、私はここで、日本の歴史教育について触れないわけにはいきません。

 今、安倍総理もいろいろと、本当に宸襟を悩ませているんじゃないかと、こう思うわけでございますが、今、アメリカの下院におきまして、日本のいわゆる従軍慰安婦の非難決議案が出ていまして、安倍総理に謝罪を求めているわけでございます。

 この案文を読んでみますと、本当にひどいことが書いてあるんですよ。日本の兵隊たちが若い女性を性的奴隷化した、そして集団的暴行、強制中絶、性的暴力を加えた二十世紀最大の人身売買である、だから総理大臣に、謝罪しろ、こういうことになっていまして、日本の国民の皆さん方は余りお知りになっていないかもしれないけれども、まさにそれがあるいは採択されるかもしれないという話になっているわけでございまして、とんでもないことだ、私はこのように思うわけです。

 そもそも、このいわゆる従軍慰安婦の問題、私たちは、余り口にしない、そういった気持ちがあるんですよ、お互いに思いやって。だけれども、国際社会において日本がそういうふうな非難を受けているということであれば、きょうはテレビも入っていますし、国民の皆さん方にもぜひ理解していただきたい、このように思うわけでございます。

 そもそも、この従軍慰安婦という言葉が、もともとなかったんですけれども、初めて出てまいりましたのは、一九八三年に吉田清治という人が、自分は済州島において慰安婦狩りをした、強制連行した、こういう本を書かれたんですね。それで、ある新聞が大々的なキャンペーンをいたしました。そして、それがひとり歩きしたんですけれども。不審に思った韓国の女性の、これは記者でございますけれども、済州島に行って実際調査したら、そういう事実はなかったということがはっきりしたわけです。それで、後には、この吉田清治さんという方も、実はあれはうそだったということを告白されたわけですけれども、これがひとり歩きをしている。これはまさに国際的な大きな問題になっているということを私たちは知らなければいけない。

 そしてまた、日本の弁護士が韓国に行きまして、だれか従軍慰安婦の訴訟をしませんか、こういう募集をしたんですね。ですから、この問題というのは、日本人がまいた種なんですよ、はっきり言って、日本人がまいた種。

 そして、私は日本の外交にも問題があったと思いますけれども、歴代その場しのぎの対応をしてきた、そのことが、今安倍総理の本当に胸を痛めていることなんじゃないか、このように実は考えるわけでございます。

 はっきりここで申し上げた方がいいと思いますけれども、私は三つのことを申し上げたいんですね。

 一つは、今は私たちは考えられませんが、当時は公娼制度というのがございました。いわゆる売春というのが、これは商行為として認められていたわけですね。そのことを私たちはまず知らなきゃいけません。

 二つ目は、この慰安婦と言われる方々、ほとんどは日本人だったんですね。日本の女性だったということ。

 私は、浅田次郎さんという作家、大好きなんでいつも読んでいますけれども、一番最近の、買いました本、これは「月島慕情」という本でございますが、最初にこういう文章がございます。

  明治二十六年の巳年の生まれだからミノと名付けられた。ふるさとの村には同い齢のミノが何人もいたが、一回り上にも大勢いたはずの同じ名前の娘たちは、ミノが物心ついたときにはみな姿を消していた。ひとつ齢上のタツも、ふたつ齢上のウノの場合もそれは同様だから、世代を超えた同じ名の娘はいなかった。

  雪がとけるころ何人もの人買いがやってきて、小学校をおえた娘たちを連れてゆくのだった。

  行先のほとんどは上州か諏訪の製糸工場だったが、とりわけ器量の良い娘は東京へと買われた。そういう娘は値がちがうから、果報だと噂された。

こういうふうな文章があります。

 私の郷土宮崎、ゴルフのダンロップオープンが開かれるシーガイアというところがございます。佐藤棟良さんという方がつくられたんですけれども、残念ながら、バブルの崩壊で外資の手に渡りました。四十近い、自分が手塩に育てたそういう会社も全部売られてしまった。

 その方から、この前、手紙が来ました。八十八歳になった、元気だ、しかし、自分が一生懸命やったあの施設がまだまだ赤字らしい、何とかみんなの力で観光宮崎を少しアピールしてほしい、そういうふうな思いでございまして、創業者として大変つらい思いをされたと思うんです。自分の育てた企業が買われてしまった。

 その文章の一番最後に、こういう言葉がありました。私は、小学校のときに同級生の女の子が売られていったことを忘れることはできない。多分、私は、佐藤さんの好きな女の子だったんじゃないかなと。このことを八十八歳にもなってまだ思い出している。そういう時代だったということを私たちは知らなきゃいかぬと思うんです。

 三つ目に申し上げたいのは、これは総理もしょっちゅう言っていられます、悲惨な境遇の女性たち、同情を禁じ得ないし、本当に大変だったんだろうと思うと。そのとおりでございまして、この言ったところにも書いてあります。苦界に身を沈めてなかなか逃れられないたくさんの方がいらっしゃったことも事実でございます。

 しかし一方で、そうでないところというのもあるわけでございまして、これはまさにアメリカの資料にあるわけですけれども、第二次世界大戦中、日本が占領したところを次々にアメリカが取り返していきました、奪い返していった。ビルマの戦線でアメリカの情報部が調べた記録が残っている。

 それによりますと、慰安婦の一カ月売り上げが千五百円、これを経営者と慰安婦で半々、五分五分で取っていた。だから、七百五十円、慰安婦の手取りだったと。当時、日本の一般の兵隊さんたちの給料というのは七円五十銭、軍曹が三十円だったそうでございます。七円五十銭と七百五十円、百倍の違いがあるわけですね。私たちの給料が今三十万とすると、三千万ですよ。やはり、こういうもうかる商売であったということも実は事実でございます。

 先ほど、日本の弁護士が韓国に行って、従軍慰安婦の訴訟をだれかしませんかと言って、手を挙げた方がいらっしゃいます。その女性の方は、実はもう一つの訴訟も起こしていました。これは何かというと、戦後、預金封鎖された、これを返してくれ、そういう訴訟でございました。その金額は、何と二万六千円でございます。二万六千円、当時の貨幣価値からいいますと、千円あると豪邸が建ったそうであります。だから、二万六千円というのはいかに大きな金額であったか。こういう事実もあるわけでございまして、そういったことも日本人としてしっかり知っておかないと、私は何を申し上げたいかというと、安倍内閣は、美しい国と言われます。この日本に住む私たちも本当に美しい日本人になりたい。学力も規範意識も大事です、しかし、気概を持たなきゃいけない、気力を持たなきゃいかぬ。そういう意味で、日本人同士、信義を大切にし、何といっても先祖を敬うことも私は大事だと思うわけでございます。

 本当に、大変な思いをされた女性の方々の尊厳を大事にすることも大事ですけれども、日本人の尊厳、特に、前の大戦で命を落とされたたくさんの兵士の方々、あるいは広島、長崎、さらに大空襲で命を落とされたたくさんの日本人、あるいは満州で百五十万の日本の方々が悲惨な体験をされた、そういったことについてもやはり思いをいたして、私たちは国づくりをしなきゃいかぬ。そういう意味で、ちょっと時間をとりましたが、申し上げたところでございました。

 そこで、伊吹文科大臣に質問いたしたいんですけれども、ことしは高校二年生の教科書の検定がございました。その中で、歴史教科書の中に、まだまだ従軍慰安婦とか強制連行という言葉が残っているんです。安倍総理、我々はずっと、この言葉を何とかなくしたい、なかったことが教科書にあるんだから、なくそうという運動をしてきて、幸い、中学校の歴史教科書からこの文言は消えました。しかし、高校にはまだ残っている。私は担当課に聞きました、どうして残っているのと。いや、小中学校と高校は違うんですと。何が違うのか。小中学校の教科書は無償だけれども、高校の教科書は有償だから、余り文科省としては強く言えないんだと。私はあきれました。

 検定制度というのはそういうものですか。有償、無償で違うんですか。お答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 文部科学省のどの者がそういう表現をしたのか、私は、そういうことは私の部下は言っていないと思いますけれども。少なくとも、日本という国は議院内閣制で動いているわけですから、今、自民党、公明党が政権を担っております。しかし、民主党さんが政権をとられる場合もあるでしょうし、共産党さんが日本の政権をとるという可能性も否定できないわけで、おのおのの政党のイズムでもって教科書を云々するということは、私は適当なことじゃないと思っております。したがって、先生御承知のように、教科用図書検定審議会という、客観的な判断をしていただく、学問的、中立的判断をしていただくところの判断を、家永判決においてもそうですけれども、文部科学大臣は尊重をするというか、その意見によって検定の合格を判定する。したがって、今回のことについても、安倍総理も私も、検定について一言の言葉を挟んだこともありません。政権が変われば教科書の内容が変わるほど日本は怖い国であってはならないと私は思っております。

 ただ、大切なことは、一方的な思想によって教科書の事実がゆがめられているということだけは正さなければいけませんから、書かれている内容について両論あるという場合は、両論を必ず併記してもらわなければならない、あるいは、一方的な記述はやめてもらわねばならない。そのことだけは、これから白紙の状態で学んでいく子供には、しっかりと中立的立場で教科書というものを客観事実に沿ってつくり上げていくということだと思います。

 いろいろ政治家の、特に最近の歴史を見る目は、政治家も日本国民も一人一人違うと私は思いますので、おのおののイズムによって批判をしたり、逆に、おのおののイズムによって検定結果を逆の意味でまた批判するということも、私はあってはならない。ですから、家永裁判においても、どのように判決は行われているかというと、学術的、教育的、専門的判断であるとされ、文部科学大臣は合否の決定は同審議会の答申に基づいて行われるものと。私はこれを忠実に理解し、実行してまいりましたので、両方の立場から批判を受けるというのは、私は、私の職責からいえば当然のことだと思っております。

中山(成)委員 戦後六十年たちまして、今まで封印されていたいろいろな記録等がだんだん出てきているんですね。それに基づきまして、いわゆる歴史研究家、その方々の研究も進んでおります。私は、そういう意味では、歴史的な事実、これを客観的に勉強してほしい、検定に当たられる方々が。私は伊吹大臣の立場はよく理解できます。ですから、文科省の職員も、そういう検定に当たられる方々も、本当に、そういう意味で、新しいいろいろな研究家の研究成果、こういったことについてもしっかり学んでほしい、勉強してほしいということを要望いたします。

 そして、安倍総理ぜひ、日本人というのはすぐ謝るんですね。謝ると、謝ったのに許さないのはけしからぬといってまた怒られるぐらいですけれども、国際政治においては、謝ったら、ではどうしてくれるんだと、賠償はどうするんだという話になるんです。我々日本人というのはそういう意味で本当にダブルスタンダードの中で生きていかなきゃいかぬなと、こう思うんです。

 しかし、言われたことについて違ったら反論しないとこれは認めたことになるわけですから、やはり美しい国は強くなきゃいかぬです。そういう意味で、これからも我々は、違うことについて、間違ったことについてはやはり反論していく、そういった勇気、強さも私は必要だと、このように考えているところでございます。

 ところで、そういう国際化といいますか、どうも日本人というのは井の中のカワズみたいなところがあります。なかなか国際化になじみにくい。その中で、私は、ぜひ英語教育について、これは大臣にお願いしたいんです。

 以前、シンガポールに行きましたとき、あそこは高校を卒業するとき高校卒業認定の試験があるそうですけれども、三カ国語がその中に入っているというのですね。

 先ほど私は国語の重要性を言いました。国語には本当に力を入れなきゃいけませんが、この国際化社会においては、やはり英語はどうしても若いうちに、特にネーティブの先生方に耳から、口から教わることが一番大事なことじゃないか、こう思うんですけれども、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほど先生から、日本の国語の大切さがお話しされました。

 フランス人というのはフランス語を大変大切にしておりますね、おっしゃったとおり。私は苦い経験があるんですが、私はフランス語が堪能じゃありませんので、パリで英語でフランス人に話しかけたんですよ。そうしたら、すばらしいオックスブリッジ・イングリッシュで、私はフランス人なので英語がよく話せませんと、英語でぴしゃっとやられた経験があります。

 今、まず美しい日本語をしっかりと学ぶ、これはやはり小学校では私は基本だと思います。現在の学習指導要領には、自国の文化、歴史をマスターして、進んで国際感覚を養うという言葉の中で英語教育が行われているわけです。ですから、ネーティブスピーカーのような人で、各国の言葉、いろいろな表現がある、そしてそれによって各国いろいろな生き方がある、こういうことを小学校から十分学んでいただいたら結構だと私は思いますが、いわゆるアルファベット的な文法的英語を小学校から教えることがいいかどうかについては、これはやはり日本語の習熟度と合わせて、授業時間が限られておりますので。

 私の経験からしても、余り早く英語を学んだ人が、必ずしも大きくなってから英語がうまいとは思わないですね。この辺のことも少し参考にして。しかし、国際感覚を身につけるということだけは、例えばおはようという言葉でもいろいろな表現があるんだということをしっかりと耳から学んでいく、そして自分も話せるぐらいのことは小学校でやってもよろしいんじゃないでしょうか。

中山(成)委員 まさに、小さいころから英語に、英語だけに限りませんが、そういう外国語に体でもってなじんでいくというのは大事なことだということは御理解いただいたと思います。

 時間が余りありませんので、二つほど、政府案と民主党案の違い、これについてちょっと御質問いたしたいと思うんです。

 学校現場を回ってみまして、やはり教育は人なり、教師力を高めていくことが一番だと、このように本当に思いましたけれども、先生というのは学校を卒業して先生になるとずっと先生なんですね。だから、ついついマンネリになってしまう。ですから、日々研さんを積むんだ、きのうよりきょう、きょうよりあした、子供たちに教える教え方もうまくなりたい、子供たちから本当に親しまれる先生になる、そういう努力をしてほしい、こういう気持ちでございまして、そこで免許更新制というのを私自身も提唱したわけでございます。しかし、実際、実施に当たってはなかなかこれは課題があるなということも事実でございまして、いろいろ苦労されているんじゃないかなと、このように思うわけですけれども。

 民主党案では、まず、十年ごとですけれども、百時間、政府案は三十時間ですね。しかし、三十時間でも大変だと思うんですね。大体、年間十万人ぐらいが講習を受けることになるんじゃないですか。だから、そのコストをどうするかとか、あるいは場所をどうするんだ、校舎をどうするんだ、授業に穴はあかないかとか、いろいろな問題があると思うんですけれども、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 このことは本会議でも民主党の野田筆頭理事から私に御質問がありまして、私はお答えしたんですが、民主党の御提案なすっていることが現実に可能であれば、百時間というのは三十時間よりいいに決まっていると私は思います。問題は、授業に穴をあけないように長期休暇の期日を利用しながらどこまでやれるのか、それから、百時間ということに対する財政負担がどの程度要るのかというようなことを考えますと、私は、野田先生にお答えしたように、いいことなんだけれども、実現可能性が、財源的あるいは人事管理上可能なのかなという気がいたします。

 ただ、別の立場からいうと、三十時間で十分なのかという批判も当然できるわけでして、したがって、まず三十時間の内容を充実させて、そして民主党の皆さんの御意見も審議の中で伺わせていただいて、内容をしっかりとつくって、いや三十時間で足りないということなら、四十時間にするか、あるいは内容がこれでよかったという御評価を受ければさらに内容を磨いていくか、少し国会審議を私は大切に聞かせていただきたいと思っております。

中山(成)委員 ぜひこれから、その制度構築に当たっては、いろいろな意見等を聞きながら進めていただきたいと思います。

 もう一つの民主党案との違いというのは、教育委員会制度ですよね。

 教育委員会制度のあり方につきましては、私たち自民党もずっと議論をしてまいりました。そして、例えばいじめ問題の対応で見られたように、いろいろ問題はあるけれども、改善すべき点はあるけれども、しかし、教育の中立性、継続性、安定性という面から見まして、教育委員会というのは必ず各地方公共団体に置くべきだ、こういう結論を出したわけでございます。政府案もそうなっているわけでございますが、文科大臣としてどう考えられるか、お聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 基本的に、教育というのはやはり国民の意思によって私は行われるべきだと思っております。したがって、国民の意思は、憲法上正当な選挙で選ばれたその代表をもって主権というのは行使されるわけですから、国会が決めたことに従って粛々と行われる、これがまず原則だろうと思います。

 ただ、先ほど来申し上げているように、日本の統治のあり方というのは議院内閣制をとっておりますので、政権を持っている政党の思いだけでこれをやってはいけないという自戒を常に私は持ちながら文部科学大臣を務めております。であるからこそ、地方の実情その他を勘案しながら、地方に実際の実施権限をゆだねている、これが教育委員会制度だと思います。

 民主党案では、教育委員会、中立的な第三者機関としての執行機関である教育委員会の権限を自治体の長にお渡しになるということになっているわけですが、自治体の長というのは、安倍総理がおられて失礼ですが、各議員が選んでいるという総理ではないんですね。直接選挙で選ばれる大統領的選挙なんです。この選挙には、いろいろな各政党が候補者を応援して、知事は民主党の知事が勝ったとか自民党の知事が勝ったとかいうわけですから、特定の政党の色がやはり出てくる可能性があるわけですね。

 であるからこそ、それをチェックする議会というものもしっかりと地方自治の力を発揮してもらわなければならないけれども、同時に、教育委員会も中立的立場でしっかりとやってもらわねばならない。ここの機能が、必ずしも地方議会の機能と教育委員会の機能が十分発揮されていないところに、いじめの問題だとか未履修の問題だとかいうことが起こってきている。

 ですから、私はやはり、教育委員会を再生して、教育委員会にしっかりやっていただくという形で地方での政治的中立を担保していきたい、その方が現実的じゃないかと考えて今回の御提案をした次第です。

中山(成)委員 ぜひ教育委員会、例えば教育長が先生上がりである、だからついついなれ合いになっているとか、そういうようないろいろな弊害もあるわけですから、そういったところにもしっかり目を配ってこの教育委員会制度についても改革をしていかないかぬ、こう思っております。

 時間がなくなりましたので、最後に二つほど、これは陳情になりますが。

 一つは、学校栄養教諭ですね。せっかくこういう制度をつくりました。まして、最近のいわゆる生活習慣病、こういったもの。子供たちが、もう最近肥満がふえている。あるいは、スナック菓子と清涼飲料水だけで塾に行くとか、そういう意味では本当に子供たちの食生活が乱れているというような話もあります。ぜひ、この学校栄養教諭をもっともっとたくさん配置していただくように大臣の方からもお願い申し上げたいと思います。

 最後が、先日も地元の市長から陳情がありましたけれども、地元の救急病院、ここを、どんどん大学の方から先生方が引き揚げられてしまって、もう本当に救急医療が不可能になりつつある、これでは地域医療が崩壊すると。これは全国どこでも実は発生しているわけでございまして、これは、何といっても研修制。どうしても都市部の民間病院での研修を受けたい。まあ、気持ちはようわかるんですけれども。そういうことから、地方の大学の医学部附属病院におきまして医師不足を生じているわけでございます。

 これは、市とか県だけではとても対応できません。ぜひ国の力、国の援助が必要だ、こう思うんですけれども、ぜひこの辺のところは文科大臣だけでは済みませんので、厚生労働大臣とも力を合わせてよろしくお願い申し上げたいと思います。

 時間がなくなってしまいましたが、今回の教育再生、とても大事なことでございます。ぜひ充実した審議をしていただいて、それこそスピード感を持って教育改革に当たっていただきますように心からお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、小坂憲次君。

小坂委員 自由民主党の小坂憲次でございます。

 私の前任者でございました中山元文部科学大臣の後に、大臣の順番のごとくまた質問の順番を与えていただきまして、このような機会を得ましたことにまずもって感謝を申し上げたいと存じます。

 私は、今回の学校教育法を初めとした教育再生三法案の提出をひたすら心待ちにいたしておりました。と申しますのも、小泉内閣の最後の文部科学大臣といたしまして、昨年の通常国会で、六十年ぶりの教育基本法の提出大臣として、その立場を与えていただきましたので、何とか成立させたいと思っておりましたが、残念ながら時間切れで継続審議になり、安倍内閣発足とともに、伊吹文部科学大臣によりまして、昨年の臨時国会でこの教育基本法を成立していただきました。

 教育基本法が成立すれば、次なるステップは、これを現場にどのように適用していくかということでございます。このような中で、安倍総理が、教育再生こそ安倍内閣の最重要課題である、このように述べられたことは、私にとって我が意を得たり、まさに国民の期待するそのものであると思っておるわけでございまして、安倍内閣の支持率が向上し安定をしてくる、このようになるのは、これは、安倍総理が常に教育こそ最重要課題とその主張を貫いておられることが国民に理解をされ、その期待の中に、安定した政権のもとでしっかりとした改革をやってほしい、この期待にほかならない、私はこのように考えております。

 そういった中で、この学校教育法を中心とした審議の冒頭に、私は、若干哲学的な論争になるかもしれませんが、教育とは何かということについて私なりの見解を述べ、また、総理と文科大臣の御意見を賜りたいと思うわけでございます。

 私は、教育というのは、人類が人間としての長い営みの中で得た知恵あるいは知識、そしてまた文化というものを、これを人として生まれた我々が継承し、そして、そこの中に新たな知恵や知識を加えてまた後世へつないでいく、そういったことを学んで、みずからの周りの環境、自分を取り巻く環境、存在と言った方がいいかもしれませんが、そういったものと調和してともに生きていく力、そういうものを身につけさせることであろう、こう思うのであります。

 自分を取り巻くものというのは、大きな外側からいえば、宇宙かもしれません、あるいは地球であります、そして国家であり、地域であり、家庭であると思います。生まれた人間の側から見れば、家庭というのは基礎的な、最も身近な、自分を取り巻く環境であり、地域であり、そして国家、世界、地球と広がっていくわけであります。

 とするならば、私は、まずもって自分の一番身近な存在に対する、家庭というものの重要性をそれぞれ人間として認識をしていくことが必要だと思っております。最近、この家庭を初めとした自分を取り巻く環境あるいは組織、国家といったもの、こういったものに対する帰属意識というのがどうも希薄になってきたんではないかな、少なくとも、私が子供のころと比べても大分希薄になったように思います。そのことが、今日、教育を再生させようとするときに一番考えなければならないことになってくるのではないか。

 すなわち、家庭における生活を規律する、生活習慣の規律、そしてまた地域社会における、その地域社会との調和、また地域社会の教育力、そういったものを再生させることがやはり教育の再生につながっていく。地域力、地域社会の力、コミュニケーション力というものがやはり人間を育てる大きな力を持っていると思っているところでございます。こういった自分を取り巻くものを大切に思い、そしてそれを自然に愛するようになること、これが、やはり今私どもが教育として心がけていかなければならないものの一つだろうと思っております。

 教育基本法にあります義務教育の目標は、すなわち今回の学校教育法における義務教育の目標になってくるわけでございます。改正教育基本法の内容を受けた、より明確、具体的なものとなっていくことを、私どもはこの審議の中で明らかにしてまいりたいと思っております。そもそも、この義務教育の目標の明確化というのは、そこにお座りの保利元文部大臣が持論として常におっしゃっていたことであり、私もそれを学ばせていただいているところでございます。

 私は、この帰属意識が希薄になったことを正し、家庭を大切に思う心、そして愛する心、また近隣を愛し、地球を愛する心となっていく、そういった流れをぜひこの教育再生の中で実現していただきたい、そのように思っております。

 ただ一方、家庭や地域、国といった、自分が帰属するものを大切にし、愛する心を持つことは重要でありますけれども、学校における指導において内心の自由を侵害してはならないということは、私も教育基本法の審議の中で答弁としても申し上げましたし、これは重要なことだと思っております。

 学校教育法の義務教育の目標においてこれらがどのように規定をされているのか、また、ただいま申し上げました教育とは何かについて、総理並びに伊吹文部科学大臣の御所見を賜れば幸いであります。

安倍内閣総理大臣 昨年の臨時国会で成立をいたしました改正教育基本法、これはまさに、小坂文部大臣、伊吹文部大臣の合作であろう、このように思うわけでありますが、教育の再生は、我々が国民からまさに期待されている、そして今やらなければならない、これは私の確信であり、信念でございます。

 その中で、ただいま委員が御指摘になった、我々が何に帰属をしているかということでございます。

 人間は一人では生きていけないわけでありまして、自分が何者であるのか、そして何に帰属をしているのか。何に帰属をしているかということは、先ほど申し上げましたように人間は一人では生きられないわけであって、両親がいて家族がいて、そして自分をはぐくんできた環境があります。地域の人たちもいるでしょう。そして国もあり、そしてまた連続の中での長い歴史や伝統また文化というものもあるんだろう、このように思います。

 そうしたことに思いをいたすことは、これは自分が帰属するものへの愛情、愛着であり、そしてまたその中から、やはり公共の精神の大切さ、自律の精神の大切さということにも初めてつながっていくということではないだろうか、私はこう考えるわけでございます。

 そういう中において、教育基本法、新しい教育基本法の中においては、いわゆる道徳心とともに、国や地域を愛する心、愛する態度を涵養するということが明記されているわけでございます。そして、当然また、家庭、家族の意味、意義も明記をしているわけでございます。学校教育法の改正案におきましても、義務教育の目標として、新たに、家族と家庭の役割の基礎的な理解を養うことや、我が国と郷土を愛する態度を養うことを明確に規定しているわけでありまして、学校における指導の充実を図ってまいりたい、このように思います。

 いわば、当たり前のことを当たり前にしっかりと教えていくということではないか、このように思います。

伊吹国務大臣 保利元文部大臣を初め、私の前任者である小坂先生に至るまで、まさに、教育基本法の井戸を掘ってくだすった方々であって、最後に、私は締めくくりに水を飲む立場になったわけでございますが、これから実は、その水を使って、いかに日本の子供たちを元気な子供につくり上げていくかという大きな本質的な作業が待っているわけです。

 今おっしゃったことは、教育についてよく言われる二つの面を的確にあらわしておられると思います。一つはやはり、ありていに言うと、日本が将来において活力ある国として発展をして、そしてそれを支える品性ある国民として、日本が世界に評価される国民をつくるんだという観点がもちろん一つあります。しかし同時に、一人一人がこの世に生をうけて生まれてきた限りは、自立した個として、個人として生きていける人間をつくるんだという二つの考えが教育には常にあるわけです。

 これは必ずしも対立した概念ではなくて、先ほど総理が申しましたように、家族の一員であり、社会の一員であり、会社の仲間であり、日本の国民であり、地球、世界の一人である。自分のわがままを言えば自分の乗っている船が沈むんだという観点は常に持っていなければならない。しかし同時に、自分の乗っている船の船長の一存で、必ず、個に対して、このように動かなければならないという命令をするということについては、常に謙虚でやっていくということだと思います。

 ですから、私は保守主義的な考えをとっておりますが、保守主義の考えの原点は、自分が今考えていることが、長い間かかって祖先が積み上げてきた経験、実績から見て本当に正しいんだろうかという謙虚さを常に持ちながら現実を考えていくということに尽きると思うんですね。ですから、先生の御指摘になっている、まさに、しかし内面に立ち至っちゃいけないよとおっしゃったのは、そういうことだと思います。

 ですから、この二つは拳々服膺しながら、小坂大臣が御提案になった法案を汚さないように頑張りたいと思っております。

小坂委員 ありがとうございます。すなわち、我々は、我々を取り巻くものによって生かされているということをしっかり認識しながら生きていくことだと思っております。

 さて、学校教育法の改正案で示されました義務教育の目標を各学校において実現するためには、具体的な教育内容が定められる学習指導要領のあり方が重要でございます。今後は学習指導要領の早急な改訂が期待をされるわけでございますけれども、現在、中央教育審議会で学習指導要領全体の見直しが進められていると理解いたしておりますが、今後どのようなスケジュールで改訂を行うのか。

 そしてまた同時に、もう一つあわせてお伺いしたいのは、新しい学習指導要領ができれば、当然、教科書もそれを踏まえたものに改訂をされる必要があるわけでございますけれども、前例によりますと、学習指導要領の改訂後、教科書の編集に一年、そして検定に一年、そしてまた採択に一年、そして印刷をして現場に出てくるのは四年目ということになります。

 いかにも、このスピードの時代に、改訂をされて、それが現場に行くまでに四年もかかってしまうというのは、これはどうも私はおかしいと思っておりまして、私の任期にあるうちにも、なぜこんなにかかるのか、これを短縮することをぜひともやってもらいたいということで、中でも、検定に一年というのは、全面改訂の場合もありますけれども、その場合であっても、できたものから次から次へと進めていけば一年を短縮することは可能であろうし、また、採択に一年というのも、これも長過ぎる。これも合わせて、両方で一年に短縮することも可能であれば、トータルで三年になる。さらに縮める努力をすればいろいろと方法もあるだろうということで、検討を現場に指示してまいりました。

 そういったことで、あわせて、この短縮に関して文部科学大臣の御意見を賜れば幸いであります。

伊吹国務大臣 先ほど中山委員からも御質問があり、大臣のときの御指示も中教審に出ていたわけでして、さきの国会で教育基本法が改正をされましたので、その教育基本法だけで学習指導要領という大臣告示を改正するには、私は、やはり少し謙虚で慎重でありたい。ですから、学校教育法を立法府の御審議にゆだねているというのはそういう意味でございます。

 この学校教育法が立法府でお認めをいただければ、特に基礎的な知識の確実な定着、それからそれを活用する力、先ほどの総合学習ですね、それから、総理から、やはり我が内閣の思いとして日本人にぜひ確立をしたいという御指示を受けている規範意識の確立、こういうものを、学校教育法を受けて、各学校種、つまり小学校から高等学校までの間にどういうふうに割り振っていくかという学習指導要領を今中教審で御審議いただいておりますが、しかし、立法府でこの法律を認めていただけないのに行政府が勝手なことをするというのは日本の統治のシステムからはできませんので、この法律の成立を待って中教審の最終的な答申をいただきたい。ぜひスピード感を持って御可決いただければありがたいと思っております。

 それができますと、その内容に従って教科書がつくられる、そして学校現場への通知が行われていくわけですから、教科書の作成あるいはその検討についても、今御注意があったようにスピード感を持って達成をして、教育の最終的な効果が出てくるのは、私は、ここにいる者ほとんどがこの世にいなくなってからだと思いますけれども、しかし、むしろ安倍内閣としてやらねばならないことは、その素地だけは必ずつくり上げるということでございます。

小坂委員 今後の学習指導要領の改訂に当たりましては、学力の向上というのはその一つの大きな目標になるわけでございます。

 今月の二十四日に、四十年ぶりになりますが、全国学力調査が実施をされることになります。この調査は、私の前任者の、当時の中山文部科学大臣が諮問されまして、答申を受けて、私がこの具体的な実施についていろいろと議論をさせていただきました。

 この調査を学力向上にしっかり生かすことが大変重要だと思うわけでございますけれども、また、学力を向上させるためには、単に調査するだけではなくて、それから得られた現状に対する認識を、新たな効果的な教育手法や、あるいはICT、いわゆる情報技術を活用して進めていくことが重要であると私は思っております。

 実は昨日、私は、北京で開催をされましたガバメント・リーダーズ・フォーラム・イン・エージアという会議で基調講演のために、トンボ返りをしてまいりました。

 同フォーラムには、日本から、教育再生会議のメンバーでもあります陰山英男先生も行っておられまして、お話をいろいろとしてまいりましたけれども、陰山先生の持論であります、学力向上のためには早寝早起き朝御飯、それからまた読み書き計算の反復学習、百升計算、あるいは脳トレーニング、また特に欠かせないのは読書である、そして漢字学習も非常に脳の活性に役立ち、また知能の発達を促すということをおっしゃっておられますし、私もそれは事実であろうと思っておる者の一人でございます。

 ICTの活用の重要性について、私も基調講演の中で述べてまいりました。

 総理は、教育再生、そして教育こそ内閣の重要課題とおっしゃっております。ぜひともこの機会に、教育予算の充実を図るとともに、こういったICTの機器、例えば電子白板、黒板と言わないで、白いので白板と言った方がいいのかもしれません、また、タブレットPCというような、コンピューターの画面に手書きしたものがそのまま認識をされ、それが、例えば漢字の書き順とかそういったものが、コンピューターによって指導を受けて、下手な、教え方が余り上手でない先生よりは機械の方が的確に教えてくれるということもこれからあるのかもしれませんが、そういったことにも使えるような機器が出ておりますし、また、先生が使っているパソコンの画面をプロジェクターで生徒が同時に見て学習をするというようなこともやはり効果的な学習方法の一つだと思っております。

 こういった新たな学習方法や、ICT機器の活用のための予算の充実並びに活用について、総理並びに文部科学大臣の御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私も全く小坂委員と同感でございまして、二十一世紀の産業革命と言われるIT、ICT技術の登場において、我々はこの技術を活用していくことができるかどうか、これはまさに日本の将来がかかっている、私はこのように思うわけでございます。

 当然、教育の現場もそうである。まさに教育の現場こそ、未来を担う子供たちでありますから、この新しいICT社会に順応していく、また、このICTを活用してよりわかる授業を展開していくことは当然大切であり、私たちは取り組んでいかなければならない、こう認識をしているところでございます。平成十八年に策定したIT新改革戦略においても、ICTの活用による学力向上を重要な目標の一つに掲げているところでございます。

 ちなみに、陰山先生が、試験的に全国で幾つかの地域で、学力の向上を目指して、先生が言っておられる早寝早起き朝御飯等々を活用して学力の向上を図っておられるわけでありますが、そのどこででも顕著な成果が出てきているところでございます。河村理事の地元でも、小野田でも、短期間のうちにそのような成果が出てきているということでございますから、我々は着目をしていかなければならない、こう思っておりますし、教育における予算もやはり充実を図っていかなければならない、こう考えているところでございます。

伊吹国務大臣 ただいま総理がお答えしたことですべてが尽きていると思いますが、特に、先ほど中山理事からも御質問があったような、外国語の教師ですね、確保が非常に難しいような場合は、今先生のおっしゃったような電子的なメカニズムを利用するということは非常に私は有効だと思います。諸外国、特にアメリカ、イギリス等とそう遜色のないところまで私は来ていると思いますが、もう一歩、追い越すぐらいの勢いで、ひとつ御指摘を受けとめてやらせていただきたいと思います。

小坂委員 私も、実は講演の中では、日本は、努力している目標を掲げ、その達成に邁進をし、着実に実績を上げている、こう講演したのでございます。

 ところが、その後、ビル・ゲイツさんと対談をする機会がございまして、二人で話をしている中で彼から言われたことは、なぜそんなに日本はパソコンの教育における活用がおくれているのか、もしかするとアジアで真ん中より下の方だ、むしろおくれている方に入っているんじゃないだろうか、こういう指摘を受けました。

 私は、ビル・ゲイツさんに提案をしたのは、これからぜひともビル・ゲイツさんにやってもらいたいのは、アジアやアフリカや、これから開発途上、発展途上にある国々の子供たちに、我々、もう既に次のステップへ進んでいる国の古いコンピューターを、いわゆる福祉として、ODAとして供給をして、そしてその国の語学学習、国語の学習やあるいは勉強に役立てるような、そういうエードをしてほしい、それを、最近のオペレーションシステムというのは非常に重いものですから、メモリーとかそういうのをたくさん食ってしまいますが、もっと軽いもので、そういった国の、電力が少ないところでも使いやすい、そういう環境をつくって提供するような、そういうことをマイクロソフトの力ならできるんじゃないかということを提案したわけでございますが、それに対して返ってきた言葉が、それにしては日本の教育現場のコンピューターの使用率が非常に低い、こう言われてしまいました。

 私も、事実、昨年の四月に、キャンペーンとして全国に訴えたことは、やはり、交付税になって地方に行っても、その受け取り手がICT活用による教育というものに認識がないと、それがコンピューターに化けないで別のものに化けてしまうということになりますので、それを非常に強く感じたわけでございます。

 この点について、総務大臣もきょうはおいででございますから、当時、私は竹中大臣と二人でビデオに登場しまして、今後はやはり教育現場にはそういうものが必要だ、交付税をしっかりその方面にも使ってください、こう言ったのでございますが、いかがですか。特に通告はないですけれども、総務大臣の御意見を伺えれば幸いでございます。

菅国務大臣 私どもは、交付税の計算の中で、しっかりと、そうしたICT分野、教育機材、そうしたものが入っているということを都道府県の財政課長会議等で説明をさせていただいておりますけれども、さらにこのことについてはしっかり対応させていただきたいと思います。

小坂委員 さて、ただいま伊吹大臣から、英語教育でもICTの活用が考えられる、そのとおりでございまして、ネーティブな発音を同じレベルで全国あまねく提供しようとしたら、まさにこれはICTの活用が一番適していると思います。

 ところで、その英語教育なんでございますが、先ほど中山大臣がお話しになっておりました。私も、英語教育の必要性を説いている者の一人でございます。私が申し上げているのは、脳科学の面からいっても十二歳が言語脳の臨界期だ、すなわち、それ以前に学んだものはいわゆる母国語として認識をされ、そして身についていく、しかし、その臨界期を過ぎると、その認識がなかなかしにくくなって、翻訳脳というふうに移ってしまって、これは別の外国語を翻訳しながら認識するということで、ワンステップふえてしまうんだという意見も聞いたことがございます。私は、これを科学的に実証することが必要だと思っておりますし、今、その科学的な立証はかなり進んでいると思っております。

 私は、日本人全員にべらべら英語をしゃべれということを言うつもりは毛頭ございません。そしてまた同時に、日本語の大切さはだれよりも感じている。丁寧語、敬語、これもしっかり使えるような日本人を育てていくことは必要である、そのように思っております。しかし、日本語の学習がもしおろそかになり始めているとしたら、それをしっかりさせること、国語の学習力をしっかりつけることは当然のことでありまして、それと、英語を学んだからそれがおろそかになるかということとは別の問題であると私は考えております。すなわち、柔軟な子供の脳は、複数の言語をあたかも母国語のように認識して把握することができると私は信じております。

 欧州の、EUの皆さんというのは三カ国語を学んでいかなければなりません。英語、ラテン語とは全く違うような、フレミッシュというような、フィンランド人の言葉もありますし、あるいはいろいろな言葉がありますが、英語と、そして近隣の語学と、三カ国語はいわゆる小学校の段階からみんな学んでおります。先ほどの三カ国語の話は中山大臣もおっしゃいました。

 私は、英語をコミュニケーション手段として使えるようになる子供をやはりつくっていきたい。コミュニケーション手段というのは、文法がわからなくてもいいんです、書けなくてもいいんです、耳から入ったものをオウム返しにして相手に通じた、その通じたという喜びを味わわしてほしいんです。それが語学学習の基礎、好奇心を養うことにつながって、その次のステップへ行けると思うからであります。

 私は、「国家の品格」をお書きになった藤原正彦先生が反対をされていることも知っております。

 しかし、英語の学習というのは、我々は少なくとも三年から六年、みんな英語を学んでいるはずなんですよ、日本人は。なのに、どうして英語にこんなコンプレックスを感じたり、あるいはしゃべれない国民がこんなにできちゃったんですか。これはやはり、私は、答えは一つ、教え方が悪い、これしかないんだと思っておるんです。であれば、違う教え方を研究すべきだ。その一つが、やはり小学校から英語活動をすること、英語に親しむこと。

 中教審の答申でも英語教育の必要性を説かれ、そして、この英語学習というもの、英語活動等の学習を進めることを言っております。これは、課程として教えることは必ずしも必要ではない。すなわち、課程というのは、成績をつける、ランクをつけて評価をするということである。そうではなくて、評価はしなくても授業の時間としてしっかり持って、そして、そこにおけるコミュニケーションとしての楽しさを子供に学ばせてほしい、私はこれが必要だと思っております。

 隣の韓国、中国を初めとしたアジアの諸国は、英語学習を強化し、国際社会に互角にディベート、議論のできる国民を育成し、そして送り出して、自国の政策を反映しようとしております。そういう人間が出てくること、その下地をつくることはやはり必要であろうと思っております。全員がべらべらしゃべる必要もないです。しかし、学びたいと思った人の基礎をしっかりつくっておくこと、これは私は教育として必要なことだと思っておるわけでございます。

 国際会議に出るとよく感じます。日本の代表は通訳を必ず連れてまいります。他の参加者は、中国であれ韓国であれ、英語で会議に参加をしております。どうしても通訳を使いますと一周おくれの議論になってしまいます。相手がもう既に済んだ議論を、通訳を通じて聞いた日本の参加者は手を挙げてもう一回そのことを述べる、議論が少し引き戻されるわけであります。しかし、みんな、国際社会でありますから、当然協力の精神で聞いてくれます。しかし、お昼休みや休憩時間にそのテーマをまたそれぞれ英語で直接話し合っている人たちの輪にはなかなか入れない。ともすると、日本の主張している政策は反映しにくくなってくるという結果になるわけでありまして、そういったことを私は考えるところでございます。

 この結論については、ぜひとも御理解を賜りたいということにとどめさせていただきたいと思います。

 さて、最近の、いじめや子供の自殺の問題あるいは子供の安全に関する問題など、学校には組織的に対応しなければいけない多くの問題が山積をいたしております。今回の政府が提案をしました学校教育法の改正案では、副校長、主幹教諭及び指導教諭の職の設置が規定をされております。どのような趣旨で新たな職を置くことにしたのか御説明をいただきたいとともに、文部省が実施をいたしました教員実態調査では、教員は、子供たちの教育に携わる、かかわる業務以外にも、調査統計や教育委員会への報告書の作成など、いわゆる学校事務業務も同時に行っております。

 高等学校には、学校教育法施行規則の第五十六条の三で事務長を置くことが義務づけられております。一方、小中学校には事務長が置かれておりません。小中学校に事務長を置いて学校の事務を担当する体制を強化すれば、教員の事務業務の負担が軽減をされまして、教員が子供たちと向き合う時間をつくることができ、そして、最大の課題でありますこの教育再生にも資することになると考えるわけであります。この点につきましてもあわせて大臣の御所見を賜りたいと思います。

伊吹国務大臣 もう小坂委員に申し上げるまでもないことだと思いますが、社会が大きく変わってきて、これは豊かな社会の宿命のようなものだと思いますけれども、核家族化が進んで、そして共働きという現実があって、同時に、そのことが地域社会の形成を非常に難しくしておりますから、従来の家庭と地域社会の教育力、しつけ力というのは極端に今低下をしておりますね。それがすべて学校に期待をされているという重荷をまず学校の先生は背負っているわけです。それにプラスをして、先ほど来おっしゃっていた事務の負担その他いろいろございます。

 一方、一番大切なことは、御指摘のように子供と向かい合う先生であってもらいたい。そうすると、先生の定員をふやすのか、あるいは、少し、先生がやっている仕事を外部にアウトソーシングして出していくのか、あるいはボランティアのような方々に学校の中へ入っていただいてやるのか。いずれにしろ、予算と人が要るわけですね。

 その中で、今回、学校教育法でお願いをしている副校長、これは校長から任された校務をみずからの権限で処理する職務。それから、校長から任された校務の一部を取りまとめて整理する職務として主幹を置いている。こういうところへ事務の仕事をできるだけ集中して、その他の先生は子供と向かい合えるようにしようという、現在の人員と予算の中で工夫をしたやり方なんですね。

 これだけで私はすべてが解決するとは思ってはおりません。ですから、事務長を置くとか、こういうやり方も大切だと思います。これは、総務大臣がおられますが、単費でやってくれる能力がある、財政力がある自治体もあるんですけれども、大部分のところはなかなかそこまではいかない。ですから、行革法で教員定数は縛られておりますから、これをどうするのか。それから、骨太の方針で義務教育国庫負担金等の削減の流れが決められておりますから、これをどうするのか。そういうこともあわせて最終的には考えなくちゃいけないことなんです。

 とりあえず、現在与えられている制度の中で、担任の先生をできるだけ生徒と向かい合わせるための仕組みとして法律上お願いをしていきたい、こういうことでございます。

小坂委員 事情は私もわかりますけれども、やはり、教育こそ最重要課題と掲げる安倍内閣としては、総務大臣もおいででございますけれども、定員の強化または予算の充実をあわせお考えいただきまして、事務長を置いて、新たに設けられる主幹教諭及び指導教諭もやはりそれぞれ生徒と向かい合う時間が必要でございますので、事務長のような形でこれに取り組むこともぜひとも御一考いただきたい。お願いを申し上げておきます。

 さて、今回の改正案には、学校による積極的な情報提供が規定されておりまして、学校が保護者や地域の方々に積極的に情報提供することは、学校、家庭、地域の連携を強化する上で極めて重要なことであると考えております。

 その具体策として、放課後子どもプラン、これは、私が文部科学大臣のときに当時の川崎厚生労働大臣あるいは猪口少子化担当大臣と相談をして創設したものでございますけれども、その趣旨は、従来から文部科学省が実施をしてきた、空き教室を使った地域子ども教室と、厚生労働省が実施しております放課後児童クラブ、いわゆる学童保育を、一体的にあるいは連携して実施することによって両事業を充実発展させようというものでありました。

 お金のある家庭、すなわち経済的な余裕のある家庭は塾に子供を通わせられるが、経済的な余裕のない家庭は塾にも子供を通わせることができないという格差を生まないように、こういった場において、いわゆる二〇〇七年問題で大量退職される中におられる、すばらしい知識をお持ちの方あるいは教員のOBの皆さんに現場へ出ていただいて、こういった活動を支援していただきたいというプランでございます。

 この学童保育関係の皆さんの中には、これは学童保育の、いわゆる児童クラブの機能を低下させるのではないかという懸念をお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、私どもは、それは間違いだ、誤解であるというふうに申し上げたいと思います。文部科学省及び厚生労働省は、関係者にこのような懸念を持たれることのないように、十分連携して関係者に説明を行い、むしろ児童クラブで提供する空き家あるいは場所が見つからない場合に、学校の空き教室を積極的に提供して経済負担も軽減するなどの方法を講じていただいて、両省の予算の有機的な活用をしてこのプランを全国に広げていただきたい、このように考えておりますが、今後の取り組みについて大臣の御決意を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 これは小坂大臣時代の大変いい仕組みだと高く私自身も評価をさせていただいております。

 金を持っている保護者の子供が塾へ通うという以上に、先ほど申し上げたように、核家族と少子化のもとでは、授業が終わった後、子供はひとりぼっちで居場所がないんですね。これがやはり子供の将来にとって一番私は望ましいことではないと思うので、ここで、お母さんがパートやお仕事から帰ってこられるまでの間の居場所を持って、共同生活を送り、規範意識を持ち、学びをし、体験学習をしていく、これは非常にいいことで、私はすばらしいことだと思っています。

 確かに、自治体によっては、教育委員、教育長が非常にやり手のところは教育委員会の方が先に出ちゃったり、保育の方々からは不満が出たり、児童館の方々から不満が出たりするという実情をよく私も伺っておりますし、現地も私は見に行ったことがあります。

 ですから、今御注意があったようなことが起こらないように、特に厚労関係の地方自治の流れと文部科学関係の地方自治の流れがセクショナリズムに陥らないように、児童が主役なんですから、そのことをしっかりと事務局にも申し渡してございますので、よく両省協力をして、児童生徒のためにいい組織をつくりたいと思っております。

小坂委員 だんだん時間も迫ってまいりましたので、次の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正案について若干質問したいと思います。

 今回の改正案では、都道府県知事が私立学校に関する事務を行うことに当たりまして、教育委員会に対し助言または援助を求めることができることとされております。教育委員会の専門的知見を私立学校行政にも活用するということは大事なことでありまして、さらには、国立大学附属学校との連携も進めるべきと考えております。

 例えば、具体的な例として申し上げますと、現在、警察や関係機関から得た不審者情報、犯罪情報などを、携帯のメールあるいは電子メール等を活用いたしまして公立学校に伝える仕組みを構築している教育委員会もあるわけであります。しかしながら、このような情報について、教育委員会は、公立学校に提供はするけれども、私立学校あるいは国立の附属学校の父兄から要望された場合には、これを提供する仕組みにはなっておりませんと言って断ったような事例がございました。私は、これについてぜひとも是正してほしいと言って、今はもう是正をされてきたと考えております。今後、こういったことをしっかりやっていただきたいとまずもって思うわけでございます。

 同時に、地教行法の改正に当たりましては、昨年秋以来、いじめ問題や高校の未履修問題における教育委員会の対応が問題の背景としてありまして、国の権限強化かそれとも地方分権かという二者択一的な論調が見られたところでございます。しかし、国の責任と地方自治というのは対立的にとらえるものではなくて、むしろ、地方分権を進めるためにも最後は国がしっかりと責任を果たすという担保が必要でありまして、今回の改正内容についても地方自治を侵害するものではない、このように考えているわけでございますけれども、この点につきましてどのように認識をされているか、総務大臣の御所見を承りたいと存じます。

菅国務大臣 今回の地方教育行政法の改正は、いわゆるいじめ問題への適切な対応など、内閣の最重要課題であります教育再生、この実現に向けた関係法令の一環であるというふうに思っていますし、私どもとしては、自治事務について認められた関与の範囲内である、こう考えております。

 改正案では、教育委員会に対する文部科学大臣による指示は、生徒等の生命身体の保護のため、緊急の必要のある場合に限定されている。あるいは、是正の要求についても、教育を受ける権利の侵害がある場合に限り、文部科学大臣が教育委員会に対して講ずべき措置の具体的内容を示して行う、このようにされております。

 いずれにしろ、内閣の最重要課題であります教育再生と地方分権、これは両立をし、この二つとも強力に推進できるものと考えております。

小坂委員 これも言っておけばよかったんですが、総務大臣おいででございますので、先ほど中山大臣からもありましたけれども、栄養教諭については、私も食育基本法の代表提案者として、食育問題の推進のために、学校における栄養教諭の役割というのは非常に重要だと思っておりますので、定員等でぜひとも御配慮を賜りたいとお願いだけ申し上げておきたいと思います。

 さて、今回の審議に当たりましては、民主党の提案者から提出されております。民主党に一件お聞きしたいことがあるわけでございますが、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、この法律案を見させていただきますと、教員免許に関しまして、現在教員の養成というのは、短期大学から大学院まで、それぞれの大学が、その特徴を生かした多様な教員を養成することを基本としているわけであります。一方、民主党案では、教諭の免許状を修士の学位を有する者にのみ授与することとしておるわけでございます。

 現在、教育学系の修士課程の定員は、国、私立大学合わせても四千六百人程度しかございません。平成十八年の教員採用数は、公立学校だけでも二万二千人以上であるわけでございまして、特に幼稚園教諭につきましては、多くの学生が短期大学相当の二種免許状を取得して採用され、そして、幼稚園教諭の場合は約八割が短大卒でございますが、わずか数年の在職で退職しているのが実態になっております。

 こういったことをかんがみますと、この御提案は一つの考え方としてはあり得る提案と思っておりますけれども、また、私は、民主党の提案者の皆さんはそれぞれに、私が教育問題についてまじめな議論をするに大変ふさわしい皆さんだ、ぜひとも議論をしたい、こう思っている皆さんでございますので、そういった皆さんの御提案として配慮したいとは思いますが、現実性からすると、余り現実的な提案とは見えないように思うわけでございますが、提案者の御所見を伺いたいと思います。

藤村議員 小坂委員とは教育に関して大半の意見が多分一致しているところでございますが、小学校における英語教育は正反対の意見を持っております。

 今御質問の件は、全部修士にして現実性があるのか、あるいは幼稚園も修士なのか、多分そういうお問い合わせだと思います。

 現在、御承知のように人材確保法というのが動いておりますが、これは、約三十数年前にできた法律で、議員立法でありました。その当時、自民党の中でも慎重に検討されたのが、人材確保法と、もう一つ、教員は修士にするということをその三十数年前から実は考えられた経緯がございます。私どもの大先輩から伺いました。そういう意味では、やはり教員が本当に子供たちの一生を左右するぐらいの大きな影響力を与える人材であるからには、高いレベルの能力を持っていただきたい、資質を持っていただきたい、これはもう共通したところだと思います。

 今、人数を挙げておっしゃったので、私も人数で申しますと、今回の政府提出の法案の中で、更新制度が十年ごとに、これは毎年やることになりますが、約十万人の方を三十時間程度、認定した各大学等にまさに修了認定してもらう。そういう意味では、最初は、これは本当に現実的にできるのかなと思いました。ただ、いろいろ聞いている中で、だんだんに現実化してきたわけです。

 そのときに気がついたのは、あれは、毎年、三十時間程度やるんですが、土日とか夏休みですよね。でも、そのための体制というものは、何といっても、場合によっては教員の免許を取り上げるわけですから、非常に慎重に、十分な体制が必要。となれば、その体制を利用したら、ひとつこれは十分にできるのではないか。今、全国、各都道府県単位でおおむね教員養成学部がございます。そこに大学院を設けるという形をとり、かつ、私どもの修士の課程は、一年間はそれぞれの学校に全部張りついて実習しますから、大学にはおりません。そういう意味で、現実的に可能だと思います。

 もう一つ、先ほどの最初の方の話で、小坂委員の本当に持論だと思いますが、インターネットあるいはパソコンなど、IT、通信技術が飛躍的に発達しているわけです。テレビ放送もデジタル化が進められております。これからの時代は、大学院に全員が通学し学ぶという従来の形態ではなくて、通信教育あるいはオンデマンド授業等の活用により、全国どこにいても最先端の研究成果を学ぶことができ、最新の知識を得ることが可能な時代になっているのだと考えます。

 例えば学習障害、発達障害など、近年認知度が高まったものであり、研究は年々深まり、進んではおりますが、全国的に専門家、研究者がどこにでもいらっしゃるという状況ではない。そのことを考え合わせれば、通信、オンデマンド授業の活用による学びは個々の学習者のニーズにこたえる就学形態であろうと考えております。具体的には、例えば文科省の特別な学校法人である放送大学、これも活用するのが一つ考えられるのではないか。

 また、幼稚園教諭についてのお尋ねでございますが、実は、このところ、幼児教育が非常に大切だということはもう皆さんおっしゃいます。今、小一プロブレムといいまして、小学校一年生で授業が成り立たなくなったりしている。こういうことからも、やはりこれは、小一プロブレムのことも考えまして、幼児の心理発達等に関する豊富な知識を有した上で小学校での教育のことも理解している教員が専門的で豊富な知見を持って幼児教育に当たってこそ、子供たちはすんなりと小学校のスタート地点に立てることになるのではないでしょうか。

 ですから、幼稚園が短大でいつまでもいいということをまずお考えではないと思います。やはり幼児教育ほどより高いレベルの教員を充てるべきだ。我々は、幼と小学校が同じ初等免許でございます。そういう意図を持って、現実に可能な案と考えております。

小坂委員 藤村提案者のお答えの中で、私も、障害者の学習支援としてICTの活用は大いにすべきだと思っております。しかしながら、今おっしゃった形で教員養成をするというのは、その枠組みをつくるのにやはり今すぐにはできないという点において、二年でできるかどうか、それはなかなか難しい問題でありますが、実現性においては、これ以上の批判は慎みますが、よくお考えをいただかなきゃなかなか難しいなという印象を持っていることだけは重ねて申し上げたいと思います。

 さて、残り時間が数分でございますので、最後に総理に、今回の教員免許更新制につきまして一言お伺いしたいと思っております。

 この更新制は決して不適格教員排除のために導入するのではなくて、むしろ教員の質を向上させるための前向きな制度だというふうに私はとらえるべきだと考えております。その時代その時代に必要とされる新たな知識をそこでもう一度確認をし、そして、教員としての心構えをもう一度初心に返って持っていただくということが一つの効果として期待をされるところであります。その中にはICTの活用能力、そういったものも含まれるかもしれません。

 こういったことについて、まずもって、更新制の本来の意義というものについての総理の御認識を伺いたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 教員免許の更新制でありますが、まさに教育は人材、人であろう、このように思うわけであります。

 子供たちの将来、人生に極めて大きな影響を与える先生は、常に変化している世界の価値観あるいは知識、技術、いろいろなものがあると思いますが、その最先端のものをしっかりと身につけていくという努力をしていただかなければならないと思います。また、教育の技術につきましても、今小坂委員が指摘になられたような、ITを活用していく、ICTを活用していくということも重要なんだろう、このように思います。

 そのように、最新の教育の技術あるいはいろいろな科学の技術や変化していく価値観等を先生方はしっかりと身につけていくということが大切であって、そしてその上において、この免許制度を導入することによって、そういう必要なことを身につけていくということにやはり私はつながっていくと思うわけでございます。免許制度を更新していくことによって、その都度、最先端のそうした技術、知識を身につけていくということにもつながっていく、こう思うわけでございまして、そのことによって先生方がみんな自信を持って、そして、子供たちやお父さん、お母さんからも尊敬を受けながら授業を行っていく、指導していくということになるのではないか。

 これは何も先生方をたたこうということでは全くないわけでございます。つまり、先生方に自信と誇りを持って教壇に立っていただこうという制度である、むしろこのように先生方にはとらえていただきたい、こう思うわけでございまして、十年に一度の、資質、能力を刷新する前向きな制度として教員免許更新制の導入が私は絶対に必要である、このように認識をしております。

 なお、もちろん問題のある先生方が全くいないというわけではございませんが、そういう先生方については教育公務員特例法において対処していく、そういう考えでございます。

小坂委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わります。

保利委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 安倍内閣の最重要課題、教育の再生に関する特別委員会で教育三法の審議がいよいよ始まりました。私どもも、公明党としても全力で取り組んできただけに、この審議、ぜひとも充実したものにしていきたい、このように思っている次第でございます。

 その前に、教育三法提出の契機となりました昨年秋の教育基本法の審議の過程で、いじめの問題、それから未履修の問題がございました。このことについて若干確認をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、いじめの問題でございますが、これはさまざまなケースがあるというふうに言われております。それぞれのケースについて、まず初期段階といいますか、ルールをきちっと守るように促す、それから人間関係を修復するようにさせる、次に出席停止など処分をする、犯罪として処罰をする、それから精神病理学上、医学的な観点の治療を行う、原因や状況に応じてさまざまな対処の仕方があると思います。

 総理はよく社会規範ということについておっしゃられることが多いんですが、この社会規範というのは、まさしく人間社会、人間の集団における行動に関するルールだというふうにとらえておりますが、これは大変重要なことだと思っております。

 例えば、規範の遵守を促すには、まず、ルールとなる具体的な行動、これがどういうことなのかということをきっちりと示しながら各学校でそれを実践していく、こういうことが大事なことではないかと思っておりまして、私ども、党の教育改革推進本部で各地を現場からの教育改革ということで回っております。

 茨城県の筑西市ですか、下館中学校の君を守り隊というグループがございます。また、これは私も行ってきたんですが、千葉県の市川市、市立の南行徳中学校に、オレンジリボンキャンペーンという自主的ないじめ対策の組織がございます。これは、生徒会を中心に、私はこれからいじめませんというときに、リボンを生徒会からいただいてつける。一遍にはいかないんですが、よく考えた末に、自分は自信があるという人はリボンをつけて、それは学校内だけじゃなくて、通学の途中でもそれをつけてやっている。しかし、僕は自信がなくなったといったらまた返すケースもあるというふうに言っていましたけれども、いずれにしても、自分で考えて自分で決意をしてそういうことをやる、生徒みずからの自発的な取り組みだというふうに伺っております。

 このような取り組みに対して総理の御意見をちょうだいしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 いじめは絶対に許されない、いじめを撲滅していかなければならない、このように思うわけでございますが、その中で、子供たちに規範意識を身につけさせていくことは極めて重要であろう、このように思います。

 この規範意識というのは、そういう、ルールを守っていくということは、ひいては自分を守っていくことにもつながっていくことになるということも教えていかなければいけない。

 これは、もちろん先生や親や地域で教えていくということも大切であります、もちろん社会総がかりでやるということも大切でありますが、今先生がおっしゃったように、いわば子供たちが自主的に取り組んでいくことも極めて私は重要であろうと。そのことによって、なぜいけないかということをみずから考え、そして学びながら、自分たちで実践をしていく、そしてその結果についても、自分たちがそれぞれその結果に対してある意味では責任を負いながら進めていくということでありますから、大変私は理想的ではないか、このように思うわけでございます。

 いろいろな取り組みがあるわけでありまして、実践例として先生が挙げられた下館中学校でございましたか、そこの学校も実践例の中に入れさせていただいているわけでありまして、そうした成功している取り組みを全国の学校で活用していくということも私は大切ではないかな、このように思うところでございます。

西委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 もちろん、生徒が自主的にやっているとはいえ、それを支えてくださっているのは学校現場の先生方だということはよくわかっておりまして、また、全国各地でいろいろな取り組みをぜひともお願いしたいと思います。

 ともすると、これまでのいじめの対応というのは、心の教育、それから意識を変えていこう、こんなことで、どちらかというと精神主義的な主張が多かった、また抽象的、スローガン的な主張が多かったように思いますが、今、先ほど一から五点、対処方法を例示としてお示ししましたけれども、やはりそれぞれのケースに応じて冷静に対処するということが大事ではないかというふうに思っております。

 そのためには、それぞれのケース、それぞれの段階に応じたシステムづくり、体制づくり、このケースではどこがどういうふうにしてこのことに対して対処していくのかということがこれからは大事になってくるのではないか、こう思っておりますが、総理の御意見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 このいじめの問題については、ある一つのパターンがあることもありますが、それぞれのケースによってはいろいろな事情がある、このように思います。ですから、そうしたケースに応じて対応を考えていくというのは、これは至極当然のことであろう、このように、私も全く委員のお考えと同じでございます。

 児童生徒の規範意識を醸成するため、いじめに関する決まりや対応の基準を明確化し、全教職員が一致協力して指導を粘り強く行う体制をまずつくっていく。そしてまた、いじめられた側といじめた側、双方の保護者と緊密な連絡、情報交換を通じて、必要に応じて第三者機関の協力も得ながら、信頼関係を構築していく。そしてまた、いじめる児童生徒に対しては粘り強く指導を行うとともに、出席停止等の措置も含め毅然とした対応をとるよう、学校と教育委員会の連携体制を強化する。もちろん、この出席停止等に至るまではさまざまなステップがあるというのは当然のことであるということは申し添えておきたいと思います。

 犯罪行為の可能性がある場合には、学校で抱え込むことなく、警察の協力を得て対応することも必要だと思います。必要に応じて、医療機関などの専門機関との連携を図っていく。専門家を必要とする場合にはやはり専門家と連携をしていくということが大切だろうと思います。私は、今申し上げましたような対応が必要だろうと思います。

 このように、いじめ問題に対しては、学校を挙げて、一致協力をして体制づくりをしていくということに努めていかなければなりません。と同時に、教育委員会や地域社会とも緊密に連携をして、さまざまな状況に対して直ちに対応していく、そしてきめ細かく対応していくことが大切である、こう考えております。

西委員 先ほど総理の方から第三者機関等についても言及をいただきましたけれども、私どもも、第三者機関、例えばオンブズパーソンだとか、そういうところの現場も行ってきて、いろいろ御意見を伺いました。担任の先生は、いじめる方もいじめられる方も当事者同士ですから、どちらの意見を聞くといってもなかなか判断が難しいということもありまして、そういう第三者機関も各地で今設立されようとしておりますが、その辺に対する御支援もよろしくお願いをしたいと思います。

 続いて、未履修問題についての状況を御報告いただきたいと思います。その後、補習の状況、それから関係者の処分の状況など、どういうふうに結論的になったのかということを、役所の方からで結構ですので、お願いをいたします。

銭谷政府参考人 まず、未履修問題につきまして、未履修のありました高等学校におきまして最終年次に在学をする生徒に対する未履修科目に関する授業の実施状況でございますけれども、未履修科目のあった六百五十六校の高等学校等におきましては未履修科目の授業が実施をされているところでございます。その際の授業の実施形態でございますけれども、平日の始業前あるいは終業後の実施などに加えまして、四割の学校では長期休業期間中などにおきまして実施をされているところでございます。

 それから、未履修問題にかかわる処分の状況でございますけれども、公立高校の未履修問題は四十三の都道府県、市で判明をしているわけでございますけれども、平成十八年度中にこれらのすべての都道府県、市におきまして関係者の処分が行われ、公表されているところでございます。

西委員 承知しました。

 未履修問題が昨年、特に教育基本法の特別委員会において大きな議論となったわけですが、このときに、入学試験、これは履修している生徒と未履修の生徒との間で不公平になる、こういう議論が盛んに行われました。しかし、よく考えてみますと、高等学校は普通科だけじゃございませんで、職業高校の生徒さんもいらっしゃいますし、そもそもカリキュラムそのものが同じというわけではないわけです。

 そういう意味で、基本的に不公平といいますか、違う時間数の授業を、例えば数学でも、受けている状況の中で同じ入試を受ける、こんなことは当然のこととして行われているわけでございます。ですから、入学試験、大学入試で平等とは何かというのはなかなか、公平にやるというのは何かというのはなかなか難しい問題をはらんでいるなというふうな感想を受けました。

 さらに、大学入試に関しては、学習指導要領とそれから検定の教科書というものがありながら、実際、入試問題をつくっているのは、これは大学の先生ということで、高校教育について必ずしも精通しているわけではない、そんなところにもギャップが存在するんではないかというふうに思っております。

 公平さを確保するということ、それから未履修問題ということを考えるときに、大学入試にかかわる根本的な問題、このことについてどうあるべきかということを議論していかないと、この問題の本質的な問題には至らないんではないかという考えを私自身は持っているんですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 単に高校の未履修問題だけではなくて、今小学校から起こっていることは、最後はいい大学へ入りたいということに原因があると思います。

 今、未履修について先生がおっしゃったことは、高校卒業生としては最低限ここまで身につけてもらいたいということを、国会の議決に従って我々が指導要領をつくって、各高等学校にお示ししているわけですから、これはこれでやはり守ってもらわないと困るわけですね。

 一方、大学の入試の選抜というのは、もちろん高等学校の学習指導要領ということも参考にはしてはおられると思いますが、むしろ大学教育に対応できる能力があるかどうかということを大学の学問の自由の範囲の中でお考えになっている。ですから、そこの二つの間にそごを来している。これはもう先生の御指摘のとおりなんですね。

 ただ、この二つを同じにしてしまえということになるかどうかは、これはかなり難しい問題を含んでいると私は思います。ですから、共通一次というようなこともありましたし、大学の学生選抜のやり方については、いろいろな方式が考えられると思います。

 しかし、いずれにしろ、子供たちが基礎学力を落ちついて身につけて、そして、規範意識をしっかりと持った子供であるという教育ができるような大学入試でやはりあってもらいたいと思いますので、今先生から御注意があったことも踏まえて、もろもろ、中教審でも大学のあり方を検討していただいております。再生会議も大学改革ということを今積極的に取り組んでいただいておりますので、その中で、今の御指摘も一つの課題として検討をしていただくことを今進めているというところでございます。

西委員 ありがとうございます。

 私も、ギャップと申し上げましたけれども、どういう形がいいのかというのは、実はまだ模索中でして、大学は大学の思いがおありになるんでしょう。しかし、受験する方は受験する方の思いも、高校側としての思いもありますし、そこをどう整理されるかということは、またきちっとしたところで御議論をいただきたいと思っております。

 それの延長線なんですが、学力、入試対策ということだけを考えてみますと、一般的には公立学校は、有名私学、さらには塾、こういうことになってまいりますと、入試対策という面では、これはなかなかハンディがあるんだろうというふうに思います。

 そんな意味で、学習塾は、大学入試合格という唯一の目標を掲げて、そして進路情報、大学情報、入試情報、勉強方法、それから参考書の情報など、徹底して情報収集、分析をして対策を立てるというわけです。講師はもちろん、これは成績が上がらなければ交代、こんな状況の中でやっている現状の中では、公立の高校というのはなかなか、それ一本で勝負するというにはハンディがあるんじゃないかという分析を私はしております。

 しかしながら、公立学校は、比較的安い費用でおおむね立派な教育をやっていただいておりまして、幅広く国民に教育の機会を提供する、こういう面ではしっかりと役割を果たしている、基本的にはそう評価していいと思っております。しかし、一部の学校、それから先生方にやはり問題があるということは指摘されることでもあります。

 保護者の要求にこたえて、公立学校も学力の向上を目指すことは当然必要なことだというふうに思っておりまして、そういう意味では、先ほども議論がありましたように、また、昨年の特別委員会の席上でも、参考人としておいでになった方々、現場の先生もおっしゃっていましたけれども、授業に専念できる環境をつくることがやはり必要ではないか、こう思っております。必要な事務職員を配置し、また事務量自体の削減ないし軽減、これはやはり本格的に切り込んでいかなければいけない課題ではなかろうかと思います。

 それから、最近、お聞きすると、文部科学省の職員が学校に先生として派遣されるというケースが出てきた。これも、現場を知ってほしいという私どもの意見にぴったりと合うことなんですが、例えば、大規模校の副校長、教頭など、この事務の担当として現場に行っていただくということもあってもいいんではないかな。そのことによってまた現場の実情を把握していただく。教育者としての現場とスタッフとしての現場。もちろん副校長じゃなきゃいかぬというわけじゃないんですが、現場に派遣をして実情を学んでくる、こんなこともあっていいんじゃないか。

 さらには、事務量の削減のために、現状把握の上で、研究会なんかを設けて、具体的にこれを進めていくということがあってもいいんではないかなという気持ちを持っているんですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 全くそれは先生がおっしゃるとおりだと思います。

 公明党はかねてから現場主義ということを非常に大切にしてやっておられますので、文部科学省も、私から指示をいたしまして、特に1種で採用になった諸君にはできるだけ、教員免許を持っていませんとこれはなかなか難しいんですね、現場の体験をさせるようにさせておりますし、また、今後事務のいろいろな分野の体験もさせればいいと思います。

 先ほど中山理事がおっしゃったように、何よりも、我々政党政治から現場へ入っている者も、東京だけではなくて、東京というのは割に財源的に恵まれておりますので、東京だけ見て全国のような誤解をしてもいけませんから、全国的なものもよく見て、そして事務の軽減をどうしたらいいのか。

 今回お願いしているのは、教頭の複数配置とか、副校長とか主幹教諭の新設のようなことをお願いしているわけですが、できる中で言うと、各学校に教育委員会がお願いしておられるものをできるだけ絞っていく。我々も、未履修だとかいじめの調査だとか随分いろいろ、立法府から言われてお願いをしたわけですが、これもできるだけ絞っていくということですね。そして同時に、事務を一緒に処理していただく共同化とか、まず、予算そして定員の問題にかかる前に、そういうことをやはり最大限やる、それから同時に、現場の先生がここまでやっておられるから少し予算をふやしてほしいということが、これは国民の理解を得なければできませんので、少し積み重ねをして、今教えていただいたような方向でやっていくということだと思います。

西委員 東京と地方の見方にまで言及していただいて、私どもも、ヒアリングして全くそういう実感を持っております。教育委員会の体制なんかも東京の二十三区とほかのところとは全く違うということがよくわかりましたので、ぜひとも積極的な施策をお願いしたいと思います。

 続きまして、ちょっとここで実例を挙げさせていただきたいと思うんです。

 私は和歌山県の広川町立津木中学校というところを卒業したんですが、私が卒業した後、この学校は大変活躍しておりまして、一昨年末に第四十九回日本学生科学賞で内閣総理大臣賞を受賞いたしました。前の内閣かもしれませんが。

 実は、現在、この中学校は生徒数が全校で二十二名でございます。その二十二名の学校が二十年来、田舎のことですから、蛍の研究をずっと続けているんです。全校が一丸となって、総合学習で蛍の研究を続けてきて、今回こういうふうに表彰されたということでございます。もちろん、観察は夜ですから、保護者の皆さんも積極的に子供たちに付き添っていただいて、結果、立派な成果を出したということなんです。

 ここで立派なことは、まず彼らは、自分たちで不思議なこと、これ不思議だな、これどうなってるんかなということを自分たちで考えて、そして、先生と相談しながら、どういうふうにしたらこれが解明できるんだろうかと。まず仮説を立てて、手段を考えて、そして、ではこういうふうにしようと相談して、各地で観測をして、そしてそれを持ち寄って、一定の結果を出す、こういうことをずっと続けてきて、毎年テーマを変えて今まで進んできております。

 その中でわかったことは、私もこれを聞いておもしろいなと思ったんですが、蛍は大体十日ぐらいの命だと。一斉に光るんですね、空で。一斉に光るのは雄です。雌は、草場のこういうところで勝手にと言ったらおかしいけれども、ばらばらに光っているんです、ばらばらに。それは、限られた命の中で効率よく交尾をするために最も男女の見分けがわかりやすいというか、そういうこともあるんでしょう、真っ暗やみでのことでございますから。そういう効率的な交尾をするということなんじゃないかということでございます。

 そういうことだとか、蛍の一生はどういうふうになっているのかとか、基礎的なことをずっと研究して積み上げてきた成果でございます。私の子供もそこにお世話になったんですが。

 今現在、学力の低下、それから二極化ということが言われておりますけれども、文科省も、これは両方大事、学力も大事、それからゆとり、いい意味でのそういう総合学習的なことも大事というお考えだと思うんですが、この学力の低下ということについては、私は、やはりしっかりとした検証が必要ではないかと思っております。

 根拠と言われているのが国際学習到達度調査、これがいわゆる発端だと思うんですが、読解力の順位が下がった、先ほどからも議論がありました。この事実だけをもってもう学力の低下と判断して、ゆとり教育に問題がある、こういうふうに断定するのはまだ早いのではないかと私自身は思っております。理科の教育なんかでは基本的に学力が維持されているように思いますし、学校週五日制の影響で実験なんかが減ってきたということは気にはなっておりますけれども、調査では、科学のことについては学力は維持されているというふうになってきております。

 少なくとも今の段階では、これは学力の低下という問題よりも、はっきりと明らかになっているのは、児童生徒の学習意欲の低下ということがより一層深刻になっているのではないかというふうに思っております。私が田舎の学習の状況を説明申し上げたのは、やはり興味を持ってそのことについて一生懸命に解明しようとして、そしてそれがわかったときの喜び、これはどんな教科でも同じだと思いますが、そういうこと。まず、それぞれの教科に取り組んでいく学習意欲ということの重要性を申し上げたかったわけでございます。大臣の御所見を賜りたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、どんなに能力があって、そして頭がよくても意欲がなきゃだめなわけで、これは先生おっしゃるとおりだと思います。

 したがって、先般改正していただいた教育基本法を踏まえて、今回お願いしている学校教育法の三十条には、今まさに御指摘になったように、「主体的に学習に取り組む態度を養う」ということが明記されております。そのためには、子供たちに目標を持ってどういう達成感を持たせるかとか、あるいは知的好奇心を持たせるかとか、進んで応用する力や興味を持たせるかとか、これをどう教え込むかということがやはり一番大切なポイントだと思いますので、学習指導要領の改訂に当たっては、今先生からお話しになったようなことを踏まえて、教え方あるいは学習の内容等について中教審の工夫を期待したいと思いますし、また我々も、国会でこれはやりとりをしているだけではないんです。ここで民主党を初め野党の皆さんがおっしゃっていただいたことも中教審に必ずお伝えしております。そういう意味で、この審議を私は非常に大切にしたいと思っておりますので、きっといい答申を中教審が出してくれるということを期待しております。

西委員 先ほどの話ですが、津木の集落は、生徒たちがたくさんの蛍を長年にわたって繁殖させておりまして、もう蛍の季節になると大勢の人たちがその蛍を観賞に来るというところまで、土地ぐるみで子供の教育とそれから、社会の再生とまで言うのはおこがましいですけれども、そういう状態になっていることを申し添えておきたいと思います。

 それから次に、教育再生会議のことについて、少し総理にお伺いをしたいと思います。

 政府は、民主的に定められたルールによって一定の範囲内でもちろん権限を行使するという自由がございます。したがって、中教審などでも、担当する範囲、何々について諮問いたしますというふうに普通は大臣は具体的なことを諮問されるわけですが、一方、教育再生会議は、どちらかというと教育全般ということでしょう、いろいろな途中の議論が出て、結論らしきものが出てまいっておりますけれども、その位置づけそれから事務範囲というのがあいまいだ、ほかの審議会等における内容とは違うんじゃないかというふうな気が私はしておりまして、そういう意味では、その議論の過程というのは、テーマがそれぞれ広いものですから、より透明性が求められてしかるべきではないか、こう思っております。

 そういう意味で、本会議でも他の委員から発言がありましたけれども、公開にすべきだ、私もそれは賛成でございます。しかし、そうもいかないということであったとしても、要旨ということだけでは、どういう理論構成でどういう結果が出たのかというのが余りにもわかりにくいものですから、せめて議事録の公開等でやはり補うということが最低限必要ではないかというふうに思っておりまして、そのことについて総理の見解をお聞きしたいということが一点と、それからまた、今後、教育振興基本計画の策定など予算に関する問題についてもこの再生会議で議論が行われることになるのかどうか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 教育の問題というのは、これはいろいろな要素があるわけでございまして、私は極めて幅広く検討しなければいけないと。言ってみれば、役所においても、これは文部科学省だけに限らない、このように思います。ですから、教育の再生のために幅広く御議論をいただく、英知を結集していく必要があるという中において、すぐれた見識を持った方々にお集まりをいただきまして、二十一世紀の日本の教育にふさわしい、教育再生に資する御議論をいただいているところでございまして、第一次の取りまとめ、すばらしいものをまとめていただいた、このように思います。

 これは、閣議決定によって設置をされたものでございますが、しかし、当然、そこでどういう議論があったということについては、国民の皆様には知っていただかなければならない、これは、教育を再生していく上において何が必要か、どこが論点か、そして私たちは何をやろうとしているかということを御理解いただくためにも当然、内容の公開、これはもうマストである、このように思っております。ですから、記者ブリーフィング、議事要旨のみならず、議事録も公開をしているところでございまして、ですから、この議事録にはそこで議論があったことはすべて出ているということでございます。しかし、それを同時中継的に行うかどうかということは、これはまた別の問題でございまして、ここはやはり、自由な雰囲気の中で議論したいという委員の方々がおられれば、その委員の方々の御意見を尊重するのは当然のことではないか、このように思っておるところでございます。

西委員 続きまして、地教行法の内容についてちょっと御質問を申し上げたいと思います。

 つまり、知事部局と私学、それから教育委員会との関係でございます。

 最終的に整理された内容については存じ上げております。基本的に私学制度というのは、これは私学の自主性を尊重するということから成り立っている制度で、知事部局と私学各学校との関係は、今回の改正では基本的には変わらないという結論を前提にして、知事部局ないしは知事が教育委員会に必要なことについて助言、援助を求めることができる、こういう改正になるわけでございます。しかし、もともとの私学の自主性ということについて配慮するという意味から、知事が教育委員会に助言、援助を求める際には私学側と協議を行うということを要請したいというふうに思っております。また、施行のときにはそのことを通達できちっと明確にしていただきたい、こう思います。

 さらに、具体的な内容について。専門的な事項について助言、援助ということなんですが、透明性、公平さを確保するために、具体的な何らかの基準があった方がいいんじゃないかと私自身は思っておりまして、その事項、ポジティブリストでもネガティブリストでも結構なんですが、そういう文書等でこういう内容についてやりとりをする、それ以外の項目についてはまた私学とそれぞれ相談するというような、私の具体的な提案なんですが、もう少しそういうこともあっていいんじゃないかというふうな気持ちでおるんですが、大臣のお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほどの御質問で後半の部分、まだお答えをしておりませんで、失礼いたしました。

 教育再生会議におきましては、教育再生に関する検討項目の一つとして、教育再生に必要な財政基盤の確保についても検討しております。

 教育振興基本計画については、教育再生会議での提言も踏まえながら、中央教育審議会において具体的な計画策定の検討が行われ、最終的には政府として決定していくことになるということでございます。

伊吹国務大臣 今先生からの御質問は、私学、特に高等学校以下の私学と知事部局、教育委員会との関係だと思います。

 それで、先生が整理していただいた御理解で今回の法律はできておりますので、御理解どおりでテレビをごらんの国民の方々も理解していただいて私はいいと思います。

 一つ大切なことは、私学にはやはり建学の精神というものがあって、これは尊重しなければならないということは言うまでもありません。しかし同時に、私学といえども、公教育の一部を担っておって、国民の血税である私学助成費というものを受け取っておられるわけですから、国民の代表である国会でお決めになった学習指導要領その他については、これはやはりきちっと守ってもらわないと困るんですね。

 ですから、知事部局が私学は所管しておられて、公立学校は教育委員会が所管しております。ただ、実態的に見ると、知事部局は私学助成費の配分をしていらっしゃいますけれども、学校教育法に基づく学習指導要領がどこまで担保されているかということを見きわめるだけのスタッフを置いていないというような実情はかなりあるわけです。そういう場合は、知事部局として教育委員会の意見を、知事さんが助言や何かを頼むという道を今回開いた。

 知事さんがどういう形で私学に関与していかれるかは、これは私学の納得を得なけりゃいけません、建学の精神というのがありますから。ですから、きょうは公明党として先生の御意見を承らせていただきました、午後から民主党さん初め各野党の御意見もあるでしょうし、成立までいろいろな角度から御意見があると思いますので、今の西先生の御指摘も一つ大切なポイントですから、どういう形で通知をしていくのかということは、御議論を聞かせていただいた上で、建学の精神を侵すことのないように対応したいと思います。

 同時に、この法律ができ上がるときに総理から総務大臣と私にございました指示は、地方分権、地方自治という建前がございますから、知事部局においてむしろ自主的に、そういうことが守れるように指導主事やそういう方を配置するように促すようにという御指示をいただいておりますから、この点とあわせて、児童生徒が、私学と国公立で教える内容が違うということにならないように努力をさせていただきたいと思っております。

西委員 明確なお答え、ありがとうございました。

 前提として知事部局の方の専門家の充実ということ、これは本会議でも総務大臣からもお話があったとおりだと思いますので、その点、またよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次いで、免許更新制度について、講習の開設者、これは「大学その他文部科学省令で定める者」ということで、開設者となり得る教員養成課程を持っている大学、これは現在幾つあるのか、教えていただきたい。

 それから、教員数、それらの養成課程を履修している学生の数、これはどのくらいなのか。

 それらの大学で、教員数も多分そう多くないので、既に現行の学生の教育に手がいっぱいだという現状だというふうに思います。既存の教員養成課程を持つ大学、新設される教職員大学院大学、それから都道府県教育委員会の主催の講習、それぞれどの程度の割合で講習を受けることになるのか、また十分実のある講習になるのかということについて、これは役所の方で結構ですので、お願いをいたします。

銭谷政府参考人 まず、教員免許の課程認定を受けている大学でございますけれども、四年制大学で五百七十大学、短期大学で二百八十大学、合わせまして八百五十大学でございます。大学院はこの四年制大学の数の中に含めております。

 そこで教えている教員の数等でございますけれども、大学でございますので、教職課程専任の方、それ以外の方、いろいろ取りまぜておりますので、実数につきましては少し精査をして御報告をしなきゃいけないと思っております。大きな大学では教職課程担当が数十名おりますし、小さなところでは十名以下というところもございます。

 それから、更新講習の開設者でございますけれども、御指摘のように、既存の教職課程の認定大学、教職員大学を初めとする大学院のほか、都道府県教育委員会等も開設可能と考えておりますが、私どもとしては、基本的には、教員養成を行う課程認定を受けた大学が中心になって開設をしていただきたい、こう考えております。

 講習の質を確保するため、講習内容、修了認定基準の明確化や国の個別審査によってこういった開設の認定などをしていきたいというふうに思っているところでございます。

西委員 続いて、このことに関連して。

 都市部の先生、比較的便利なところに職場を持っている先生、また比較的大学の近くにいる先生、そういう方は講習には非常に便利で、機会に恵まれると思うんですが、逆に、山間部それから離島等、不便なところに勤務地を持っている先生もたくさんいらっしゃると思います。そういうときに、働きながらですので、この講習はそれぞれの地域でどういうふうな形で講習をされるのか、それから通信制なんかはお考えになっているのかということをお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 お話のございました山間部や離島などの僻地につきましては、やはり更新講習の受講の利便性が悪い地域もあろうかと存じます。

 このため、このような地域に在住する教員の方の更新講習の受講機会を適切に確保できますように、夜間や週末における講習やサテライト教室の開設による講習の実施、あるいはインターネット等の多様なメディアを活用した遠隔教育、通信教育の実施、こういった弾力的な履修形態について検討してまいりたいと思っております。

西委員 もう一つ具体的な例を申し上げたいと思うんですが。

 これは総理か大臣かにお渡ししていると思うんですが、これは群馬県のある学校の先生の学級通信でございます。一年間に百号の手書きの学級通信を出していらっしゃる。どうして知ったかというと、実は私の女性秘書の恩師でございまして、その先生からいただいたもので、お許しを得てお渡しをさせていただきました。

 これを出していただくのもすごいんですが、この中で、例えばこれは一月の十一日の学級通信ですが、これから三学期です、具体的に三学期の目標をつくりましょうと。小学校五年生のクラスです。日ごろは教室でつくっているんですが、きょうは帰ってお父さん、お母さんと一緒につくりなさい、こういうことで、具体的な注意を書いています。お手伝い頑張るでは行動が見えてこないので、そういうときは、お手伝いのふろの掃除を行うとか部屋の掃除は週何回行うと具体的に書くように指導をしてください、こういうことが細かく書かれております。

 さらにおもしろいのは、二十五年前にも私こういうことをやりましたと。三学期の目標を決めなさい、こう言って、そのときに嫌々書いた人たちで、もう嫌々だけれども、じゃ、おれは花の世話をして卒業までにチューリップを咲かせるよ、こう言った人が、今、二十五年後には花の栽培をやっておりますと。やはりこういう長年の経験があって初めてこういうことが言えるのかなと。子供たちにも親にも、やはり自信を持って子供の教育に取り組めるという、こういう紙面がございます。

 次の日の紙面は一月の十九日なんですが、「今 運命の分かれ道」。何かというと、分数の話です、割合の話です。これは、三メートルは五メートルの何倍ですか、三メートルを一と見ると二メートルは幾つになりますか、こういうことを聞いているんですが、これは何かというと、何を基準にして何をはかるかということをきちっと今わかっておかないと先々全然算数がわかりませんよという警告を、ここで具体的な事例を通して述べているんです。

 この先生は、お聞きすると、子供が学校でこうしているということと同時に、親御さんも一緒に、子供について今どういうことがわからなくなっているのかとか、具体的にこれをどういうふうに、先ほど総理の規範ということもそうなんですが、こういうふうに取り組ませてあげたらいいということを、学校と家庭とをうまくつないで、子供を中心にしてやりとりをしているというのが私は大きな特徴ではないかと思います。

 今回、指導教諭という形で新たな職が展開されていくことになるんですが、この先生はどうかというのは別にして、ちなみにこの先生は、教頭にも校長にもなりません、一生現職、教諭で頑張ります、こういうふうにおっしゃっているそうですが、こういうすぐれた先生が存分に活躍してくださる場をつくっていくことが私は大事だと思っておりまして、この指導教諭の存在が周囲によい影響を及ぼして、そして公教育の質を向上させていくことを大変期待しております。

 そこで、学校のレベルを上げるために、少なくとも教員何名当たりに一人ぐらいの指導教諭が配置されることが望ましいと考えているのか、そして実際には各学校に数名というような感覚でいいのか、また、公立学校の進学校には優秀な教員が現実に集められている傾向が多いんですが、一校に集中するということになる可能性もあるのかどうかというようなことがちょっとお聞きをしてみたい内容でございます。

 いずれにしても、これを契機にして、すぐれた先生が活躍できて、そしてその影響がすべての学校に行き渡る、こういうことを切に希望したいと思っております。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 今総理が持っておられたのを私も拝見しまして、先生のお話も伺って、すばらしいことだと思いますし、またすばらしい先生だと思います。

 とかく学校現場の教員室は、先輩も後輩も同等だという雰囲気が割にあるんですね。一般社会では、やはり経験を積んでいる先輩社員が新しく入ってきた新米の社員を温かく指導してあげる、また新人の方々も謙虚にそれを受けられるというのは、これは一般社会では当たり前のことなんです。今回、それにふさわしい方を指導教諭ということにしたい、そして、そういう方々を中心に、経験のある、子供に向き合える学校の先生をつくっていきたい。

 ただ、今の教育行政の仕組みからいうと、何人置けというのは、ちょっと文部科学省は率直に言うと言えない立場なんですね。これは設置者である都道府県教育委員会が決めること。ただし、成功事例等を共有して、そして文科省としては、やはり年功序列だとかいろいろな圧力ではなくて、本当にふさわしい人を選んでいただくように各教育委員会にお願いをしていく、こういうこと。それで、今先生がおっしゃった、これなんかは非常に立派な成功事例ですから、こういうものを各教育委員会で共有していただけるように、私どもで努力をしたいと思います。

西委員 ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりました。民主党の方に一問お願いをしたいと思います。

 昨年の特別委員会における民主党提出案の日本国教育基本法をベースにした、ある意味では基本的な理念、きちっと筋の通った考え方に基づいてでき上がった大変立派な対案だというふうに私は思っております。

 その上で、専門免許状の取得要件についてお伺いをしたいと思います。

 八年以上の実務経験を経た上で専門免許状というのが付与されるというふうなことになっておりますが、その八年ということの意味が一つです。

 それから、首長は専門職大学院に行く機会を与えるよう努めるというふうになっておりますけれども、現実にはなかなか、財政面の制約、家庭の事情、地理的条件、さまざまな理由が予想されているというふうに思います。だれもが受けられる可能性があるとはいえ、意欲があってもなかなか機会に恵まれないということもあって不平等ということが心配されるんですが、この点についての提案者のお考えをお聞きしたいと思います。

藤村議員 西委員には、基本法を初めとすることに関して御評価をいただいたことに感謝を申し上げます。

 まず、八年の実務経験、このことでありますが、御案内のとおり、今公立学校の先生の場合は初任者研修等ありまして、これは法定されていますが、その後三年研修、五年研修とくる。このあたりでそれなりにいわば実務を経験してきているので、八年というのは、現場での問題認識も持ち、教職大学院において学び直しをすることにより教職大学院での研さんの実が上がる、その辺の年数かなというのが一つ。

 もう一つは、私どもも一般免許状について十年ごとの講習と修了認定、この制度を設けておりますが、八年の経験を積んだ後に九年目かあるいは十年目に次のステップ、専門免許状を取得していただく一年間をちょうど設定できるときになる。そうなりますと、十年の講習も必要なくなるわけです。専門免許になりますと十年ごとの講習が必要ありませんので、そういうことからも八年というような一つの考え方を持ちました。

 もう一つ、家庭、財政、立地など、一般や専門免許を取るための教職大学院へ行くのに不平等はないか、こういうことであります。

 まず、一般免許と専門免許の両方に共通する立地ということで、これは先ほど政府委員もちょっと答えていましたが、僻地やいろいろな地域でも、いろいろな考え方を御披露されました。あるいは先ほどもちょっと申しました、IT社会でございますので、まさにそのITを十分に活用したオンデマンドの研修あるいは通信教育、そして先ほども申しましたが、放送大学というものも一つ活用の対象になるのではないかなどということで、これは発達障害とか学習障害など近年認知度が高まったものが、研究は進んではいるものの非常に研究者も少ないわけですから、そういう大事なものはこういう通信できちっとやれるということもあろうと思います。ですから、居住する地域によっての不平等というのは、これらIT社会の発展によって相当解消されると考えております。

 また、専門免許の取得希望者に関して大学院進学のサポート、これは西先生とも過去一生懸命やってきた奨学金の制度、法科大学院も奨学金制度を設けていますし、これはやはり本当にきちっとした奨学金制度というものが非常に必要になってくると思います。

 それとともにまた、私ども別途提出の学校教育環境整備法において、教職員の配置について目標水準と達成の目標年次を定め、教員の数の拡充を計画的に行うこととしております。また、対象者が順次大学院に行くことができるよう教員の任命権者が計画的に人事を行うことが必要であり、先ほどおっしゃった法律の第五条で任命権者は専門免許の授与を受けることができる機会を与えるよう努めなければならないとしているのはそのような内容でございます。

 それらのことで、我々は、不平等が生じない、そして家庭にも影響を与えないようにできるだけ専門免許を多く取っていただきたいということをぜひこれは政策としても誘導したい、このように考えております。

西委員 お考えはよくわかるんですが、なかなか、これだけの大きなシステムを導入するということにすぐに行くのかなというのが若干心配な面でございます。平等で、本当に力のある人が専門職の立場を得るという仕組みをつくっていく、これは大事なことですが、そういうことと地理的なものとの関連性とか、思うように一年間という期間をそれに割けるかどうかというのは、かなり難しい問題ではないかな。理想的には私も賛成でございます。そういうことは前提の上でございますが、そういう感じがいたします。

 きょうは初回で、時間が参りましたので、これで終わらせていただきますが、これからもまた熱心な議論をさせていただきたいと思います。

 以上で終わります。

保利委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。菅直人君。

菅(直)委員 総理が最も重視される教育再生に関する、本格的に議論が始まるということで、私も民主党の質疑者の一人として、きょうはこの場所に出てまいりました。

 本題に入る前に、先日の、大変痛ましい、長崎市長銃撃、そして亡くなられたという事件であります。今聞きますと、何かまた銃に絡む事件が発生した、そういうニュースも入ってきているようでありますが、特に、政治家に対して、近くは加藤紘一議員の家が放火される、少し前ですが、我が党の石井紘基議員が刺殺される、いずれも、その政治活動に関連してそうした被害に遭っている、大変痛ましい事件であります。

 私たち、本当に民主主義というのは、選挙で勝ち負けは、これはいたし方ありません。あるいは、こういう場の、言論でやり合うのは、これは当然であります。しかし、暴力、特に銃を使っての暴力によってその行動を抑えられる、阻止される、殺されるなんということはあってはならないわけでありまして、まさに民主主義に対する重大な挑戦だ、このように受けとめなければならない、このように思っております。

 総理は、当初、これに対して、厳正な調査、真相究明ということを言われた。その後いろいろと言われているようですが、当初の談話では十分にこの問題の重大性に対する総理の決意が国民の皆さんに伝わっていない、こういうふうに感じます。

 改めて、総理に対して、この長崎市長射殺事件の、大変な大きな問題に対する総理の御見解をまず冒頭お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 お亡くなりになられました伊藤市長は、私の地元の出身者でもあり、県会議員時代からよく存じ上げておりました。改めて衷心より御冥福をお祈りし、そしてまた、奥様初め御家族の皆様のお悲しみはいかばかりかと察する次第でございます。

 私がこの事件を秘書官から聞きまして、それは、十分後に直ちに、警察の所管でありますから、警察に対して、徹底的な真相の究明をするように、捜査をするように、このように指示をしたわけでございます。その指示を出して、そして、その中でコメントが求められる中、秘書官が私の指示をいわばコメントとして出したということであります。もちろん官房長官からは、いわば安倍政権としての、これは、こうした暴力に対する意思を含めて政府としての意思を表明しているわけでございまして、最初の私の声明がどうであったかとか、それは私は、申し上げれば、言いがかりだろうと思います。こういうことについてそういうことをお互いに言い合うというのは、極めて私はある意味では不謹慎ではないか、こんなようにも感じるわけでございます。

 そこで、私は午前中にも申し上げましたように、選挙期間中のこうした凶行、これは、まさに選挙というのは民主主義の根幹でありますから、許せないことであります。

 私も、選挙期間中、深夜に火炎瓶を投げられたことがあります。しかし、その後なかなかこれは捜査が進みませんで、もう一度さらに自宅に投げられたことがあるわけでございます。そういう意味におきましても、やはり選挙期間中というのは候補者は身をさらすわけである、常に危険がある、そういう状況も我々認識をしなければならないわけでありますが、しかし、決してそうした暴力に屈することがあってはならないわけであります。

 断固としてこうした暴力は絶滅、根絶をしなければならない、闘っていかなければならない、このように思っておりますし、現在も統一地方選挙が続行中でございますから、警察当局に対して、しっかりと安全を図りながら万全の体制をとるように指示をしているところでございます。

菅(直)委員 言いわけにならないように、総理に国民の皆さんに決意をお述べいただきたいと機会をお与えしたつもりだったんですが、それを言いがかりと受け取られるのは大変残念であります。

 いずれにいたしましても、こういった問題が、絶対数でふえているかどうかわかりませんが、やや何か雰囲気として、そういった、発言や行動に対して見えない圧力を感じることもあります。

 私も、我が家の周りを宣伝カーが回ったこともありますし、いろいろなことを経験しておりますけれども、そういう中にあって、少なくとも、暴力によるそういう言論封殺、政治家の行動封殺だけは、だけはというか、それを象徴的にあらわしているわけですが、そういうことがないように総理にも全力をお挙げいただきたいと重ねて申し上げておきます。

 そこで、本題に入りたいと思います。

 教育再生ということを総理はまさに大きな旗に掲げられております。我が党の野田議員の質問にも本会議で答えられておりますけれども、総理が教育再生と言われるときに、何が大きな問題と考えておられるのか。

 一般の皆さんにとっても私にとってもそうですが、学力の低下とかいじめとか、本当に多くの課題があります。そういう多くの課題の中で、今の教育がそのままでいいと言い切れる人はほとんどいない、何らかの改革が必要だとほとんどの人が思っていると思います。そういう中において、総理が、特にこういう点が問題だからこういう点を変えていきたいんだ、教育再生ということの総理の基本的なお考えをお聞きいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現在の教育の状況については、いじめの問題もありますし、また、未履修の問題もございます。また、子供たちの学ぶ意欲が低下をしているという指摘もありますし、また、家庭や地域の教育力が低下をしてきているということもある、このように思うわけでございます。そしてまた、学力の低下も指摘されているわけでありますし、また、子供たちの規範意識、道徳心の問題、さまざまな指摘があるわけであります。

 これは、菅委員も山口県の出身でございますから御承知かと思いますが、吉田松陰先生は、学は人たるゆえんを学ぶなり、このようにおっしゃっておられます。つまり、人として身につけるべきことを身につけていく、これこそが教育であろう、このように思うわけでございます。そしてまた、それぞれ人間はいろいろな可能性を秘めているわけでありまして、そうした可能性を引き出していく、そうした教育が行われることも求められている、このように思うわけでありますが、どれが問題でどれを解決すればいいということでは私はないんだろう、このように思います。

 私が申し上げておりますことは、すべての子供たちが高い水準の規範意識、そして学力を身につける機会を保障していくということに尽きるわけでございまして、いわば、多くの子供たちが今塾に通っているわけでありますが、塾に行くというのは出費がかさみます。また、私立に行かせなければという風潮も蔓延しているわけでありますが、しかし、いわば公立学校において、先ほど申し上げましたように、高い水準の規範意識、そして学力を身につけることができるようにしていかなければいけない、これも教育再生の目的の大きな柱の一つでございます。

 こうしたこと、教育については社会総がかりであらゆる課題に取り組んでいくことが私は大切であろう、このように考えているところでございます。

菅(直)委員 規範意識さらには学力、こういう言葉が中心的に今総理の口から述べられたと思います。

 総理は、総理になられる直前に出されたこの「美しい国へ」という本の中で、「教育の再生」という項を設けて、かなり詳しく述べられておりますよね。

 その中で、最初に引かれているのは、イギリスのサッチャー政権のときのことで、「一つは自虐的な偏向教育の是正、」これはサッチャーさんがやったという意味で総理が評価をされ、また同じような表現ですが、歴史教育において、「自虐的な歴史教育」を、これは敗戦国に特有のことだと思っていたら、イギリスでもそういうものがあったということを言われて、「長い間のイギリス病が、敗戦国シンドロームに似た感性を教育界にはびこらせたのかもしれない。」こういうふうに書かれていますよね。

 つまり、総理が「教育の再生」という項の最初に触れられたことは、まさに、イギリスの例をとりながら、日本においても、自虐的な偏向教育というものがあってそれを是正しなきゃいけない、自虐的な歴史教育というものがあってそれを是正しなきゃいけない、これが総理の第一の課題というふうに、これを読む限りそう受けとめられるんですが、そのように理解してよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず申し上げなければいけないわけでありますが、人間は一人では生きられないわけであります。人間が生まれ育っていく上においては、多くの人たちの愛情があり、そして、多くの人たちから助けられて人間は成長していくわけでありまして、人々が成長していく中にあって、はぐくまれていく家庭があり、地域があり、環境があり、そして国があるわけであります。そういうものに対するまなざしも私は極めて重要ではないだろうか、このように考えました。

 そうした中において、それと同時に、この歴史の連続性の中にあって自分が存在をしているということもあるでしょう。つまり、長い歴史や伝統や文化というものに対するまなざしも必要であろう、それを尊重する気持ちも大切ではないか、こう思うわけであります。

 そして、この戦後五十年、六十年の中において、歴史や伝統や文化、そしてまた、自分が生まれ育った地域、郷土そして国に対する敬意、温かいまなざしということが、私はかなり、むしろないがしろにされてきたという点もあったのではないかという私の問題意識があるわけでございます。

 そういう私の問題意識もあったわけでありますが、まさに、その中で、昨年、約六十年ぶりに教育基本法が改正をされたわけであります。日本の文化や伝統を尊重する、そうしたものを培ってきた、はぐくんできた郷土や国を愛する態度を涵養していくということをしっかりと教育の中に入れていく。これは、教育基本法を改正する中において、まさに新しい理念として入れられたわけである、こういうことでございます。

菅(直)委員 私も、前半の部分は全く同じ考えです。人間は一人で生きているわけではない。もちろん、親、祖先、そして生まれた地域、郷土、国。しかし、さらに広げて言えば、世界があり、四十六億年の歴史を持つこの地球という存在があり、今、環境問題などでは、地球が人間が住めない星になるのではないかという大変強い危機意識を私は持っておりますが、やはり、国を越えた、そういったことについてもぜひ触れていただきたかったな、こう思います。

 その中で、地域、郷土、国ということについてややないがしろにされてきた、そういう率直な感想を今総理が述べられました。そのことが、この本で述べられている、先ほど申し上げたイギリスを例にとっての、自虐的偏向教育の是正とか自虐的な歴史教育を是正する、そういうこととつながっている、こう理解してよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、世界とか環境とかおっしゃられたわけでありますが、政府の改正教育基本法の中にも、先ほど私が申し上げたフレーズの後に、国や郷土を愛し、そして国際社会に対して貢献していく態度を涵養するということが書いてありますので、申し添えておきたい。もちろん、自然に対する、これを尊重する気持ちということも当然私どもの新しい教育基本法の中には書いてあるわけであります。

 教育においては、午前の討論の中で伊吹文部大臣が答弁をしたように、一定のイズムにのっとった教育が行われてはならないわけでありまして、これはあくまでもバランスをとっていくことが大切だろう、こういうことでございます。その中で、私は、本を書いた当時は、いわば歴史というものについては、やはりいろいろな角度から見ていく必要もあるという認識においてそうした記述をしたわけであります。大切なことは、バランスがとれていることが大切であろう、このように考えるところでございます。

菅(直)委員 そこで、今、沖縄の皆さんが大変怒っておられることがあります。

 それは、まさに今おっしゃった六十年前の戦争で、沖縄の皆さんは、米軍の上陸の中で、県民の四分の一あるいはそれ以上の方が命を落とすという大変悲惨な体験をされました。その中で、集団自決ということがあちらこちらで起きて、そのことが、従来は、軍の指示あるいは命令による集団自決という形で教科書に載せられていたということでありますが、それが検定の中で外されるということになってきた。これに対して、これはきょうの沖縄タイムスでありますが、沖縄タイムスの中では、軍の命令だったということを、軍命ということを、実際に体験した人々がいろいろ証言されている、そういうきょうの新聞がここに、手元にあります。

 この検定の過程について、どういう議論があったのか、説明を、大臣でもどなたでもいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほども総理が答弁をいたしましたように、議院内閣制で日本の統治は行われているわけですから、自民党、公明党が政権を持っているときに、自公の大臣あるいは自公のイズムで教科書が決められるということはありません。また、菅さんが総理になられてもそういうことをやってもらっちゃ困るというのは、これは日本の仕組みです。

 したがって、私がこのことにお答えするというのは本来極めて不適切だと思いますが、家永裁判以降の検定のあり方というのは、教科書に対する客観的な専門家の調査によって、両論あることを一方だけ書くということはやらない、あるいは自分のイズムでもって書くということは認めない。

 ですから、客観的な記述になっているかどうかということだけをやっているわけで、今の御指摘についていえば、私は検定結果ということに介入をしておりません。その結果を後で教えてもらっただけですが、集団自決に対して軍の関与がなかったとは書いていないんですよ。あったということについてはいろいろな説があるから、そこのところは中立的な記述にするということだけであって、あったとか全くなかったとか、そういうことは一切書かれていない、そういう議論が行われたということでございます。

菅(直)委員 四年前の検定では軍の命令というものが記述されていて、今回それが、検定で意見が付されて、そして修正された。それが間違いないとすれば、前回と今回、どういう根拠でそれの判断が変わったんですか。

伊吹国務大臣 これも、根拠について私がお答えするということは、私は検定内容に立ち至っているということですから、本来不適当だと思いますが、検定の後、先生の御質問と同様の質問が幾つか国会でありましたので、そのプロセスを事務当局に、つまり検定審議会の事務局を務めている文科省の課に伺ったところ、その後、御承知のように、そうではないんだという裁判を起こされている方もあり、その裁判の中で両方の御意見があった、だから一方に偏った記述をするということは避けるべきだという検定意見があったということでございます。

菅(直)委員 そこが大変問題なんですよね。

 この問題に対していろいろな方がコメントされていますが、比較的まさに中立的と思われる立場でコメントされている中で、沖縄の新しい知事がコメントされていますよね、個人的にはちょっと疑義を感じると。つまり、当時の全体状況から判断すべきではないか、仲井真知事はこういうふうに言われております。

 当時の客観状況、つまり、昭和二十年の三月、米軍が上陸してきた時点で沖縄は完全な軍政下にありました。そして、軍、官、民、共生共死、つまり、軍人と官僚と民間人はともに生きともに死ぬ、そういう考え方が徹底をされておりました。そして、当時の、やめてはおりますが、陸軍大将であった東条英機大将が戦陣訓の中で、生きて虜囚の辱めを受けるな、このことを軍人に対して徹底をしていた時代であります。

 また、自決された多くの方は、手りゅう弾によって自決をされております。その手りゅう弾は、軍が持っていたものが何らかの形で多くの県民に渡されて、それによって自決をされております。それ以外の手段の方もおりますが、それによって自決をされております。

 こういう全体の状況から見れば、軍政下にあって、いろいろな事例があるでしょう、島や、沖縄のいろいろな場所がありますから。その中で、部分部分でどういう指示が明示的あるいは暗示的にあったかは別として、トータルとしては、共生共死、ともに生きともに死ぬんだ、玉砕なんだ、徹底抗戦なんだ、その中で、最終的に、自決をされた人が、軍から配られた手りゅう弾で命を落とす。これが軍の命令あるいは軍の指示によるものでないとなぜ言えるんですか。

 一つの裁判が行われていることは知っています。まだ結論は出ておりません。また、その裁判は、個別のある軍人が何を言ったかというところでの議論だと聞いておりますけれども、この沖縄の集団自決という問題は、裁判になったところももちろんありますが、裁判に関係のない地域でも、かなりの規模で起きたと言われておりまして、そう考えると、イズムに影響されるべきでない、総理もそう言われ、伊吹大臣も言われますが、このことを推し進めたグループは、たしか自由主義史観研究会という方が一生懸命だと思いますが、総理、この代表の藤岡さんという方は御存じなんじゃないでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 知っていることとそれは全く関係ないんじゃないですか。だれを知っているかということを一々この委員会で私が答えるのに何が意味があるんですか、この教育三法案と。(発言する者あり)

菅(直)委員 いいですか。総理が割と切れやすいのは聞いていましたが、きょう午前中、中山さん……(発言する者あり)きょう午前中の中山さんが質疑をされましたよね、従軍慰安婦について。従軍慰安婦について中山さんもされておりましたけれども、この問題を取り上げている中心的なグループの、教科書をつくる会の副会長で、また、今申し上げた自由主義史観研究会の代表で、その方は、何度か中山さんや、あるいは中川政調会長のもとにいろいろと陳情されているので、一つのイズムを持った方だと思うんですよ。

 私はそれが悪いと言っているんじゃないですよ。一つのイズムを持った方だと思うんですよ。何回も言いますけれども、それが悪いと言っているんじゃないんです、いろいろなイズムがあっていいんです。

 問題なのは、しきりと伊吹大臣あるいは総理までが、イズムに左右されないバランスだと言われるから、バランスがとれた判断がされているんですかということをお聞きしたくて、総理、こういう方を御存じですかと言った途端に、何でそんなに切れなきゃいけないんですか。

 もう一度お聞きしますが、この方とお会いをされて、従軍慰安婦とかあるいはこの沖縄の集団自決について、陳情を受けられたり、あるいは議論をされたことはありませんか。

安倍内閣総理大臣 まず、切れたという、いきなり決めつけは失礼ですよね、それは。だれが考えたって。私は菅さんより切れにくいと思いますけれどもね。はっきり申し上げておきますけれども。

 そこで、藤岡さんはこの検定には全く関係ない方ですから、検定に全く関係ない方について、知っているかどうかということをこの委員会で聞くのは全く無意味な質問だな、こう思い、そう申し上げたところでございます。

菅(直)委員 これは委員長にもお聞きしたいんですけれども、イズムについて、イズム、つまり主義主張が、いろいろな方があるのは当然だし、あるいは政治家は当然持っているんですよ、いろいろなイズムを。

 ただ、総理や文科大臣自身が、イズムに左右されない、バランスをとったということを言われたから、そういう強烈なイズムを持った方の主張をお聞きになったことがありますかと聞いたら、何でそれを聞いちゃいけないんですか。なぜそれが全く議論がないんですか。教科書問題というのはこの委員会で取り上げちゃいけないんですか。教科書をつくる会というのは、教科書問題でまさにこの自虐史観のことを追及しているグループなんでしょう。

 ですから、そういうことを何で、聞くことがおかしいという総理の答弁は、私はこれはちょっとおかしいと思いますが、委員長、いかがですか。

保利委員長 私からお答えすべきことではないと思いますので、再度御質問願います。

伊吹国務大臣 委員長の御指名なので、お答えをいたします。

保利委員長 ちょっと待って。

 伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 きょうはテレビも入っていますから、菅先生、やはり冷静に、そして、検定というのはどういう仕組みで行われているかということをテレビを見ておられる方に誤解のないようにお話をいただきたいということを総理は言っているんです。つまり、藤岡さんであれ、あるいは教科書をつくる会ですか、そういう方はこの教科書検定調査会と何の関係もありませんよ。そのことをいかにも結びついているように一般の方におっしゃるからおかしくなってくるのであって。

 教科書検定調査会というものは全く中立的な立場で御判断をされて、そして、その御判断について、家永裁判以降どういう判決があり、どういう運用をしているかというと、文部科学大臣の諮問機関として、教育的、学術的専門家である教育職員、学識経験者を委員とする教科用図書検定調査審議会が設置され、文部科学大臣の合否の決定は同審議会の答申に基づいて行われているということであって、藤岡さんとかなんとかの歴史の会だとかという方に、私も、総理、総理は、それは総理になる前にお会いになっていたかわかりませんが、教科書検定については一度も我々は会ったこともありませんし話したこともありません。

菅(直)委員 それでは、少し話の角度を変えて申し上げてみます。いいですか、先ほどのことです。

 先ほど申し上げたように、当時の沖縄の全体状況を考えますと、軍から渡された手りゅう弾で自決された方が大勢いたということが、軍の関与があったかなかったかについては両説あるから中立的な形に表現をするようにしたという担当者からの説明を受けたと、先ほど伊吹さん、たしか正確に言えばそう言われましたね。

 しかし、軍の関与があったかなかったか両説あると言われましたが、今申し上げましたように、私の知る限り、あるいは沖縄の体験者が知る限り、当時の状況を知る限り、個人が手りゅう弾を持っていますか、一般民間人が手りゅう弾を持っていますか。軍が持っている手りゅう弾が何らかの形で一般の人たちに配られて自決をしたときに、軍の関与がなかったという主張が、それは主張する人がいるかもしれませんが、主張が成り立つとは思えませんけれども、聞いておられる皆さん、いかがですか。

伊吹国務大臣 聞いておられる方がどういう判断をされるかは、聞いておられる方にまずゆだねたいと思います。

 まず、菅さんは、それじゃ、自決をされた方はすべて軍の強制によって自決をされた、そしてすべて……(発言する者あり)いやいや、ちょっと待ってください。だから、すべて手りゅう弾で自決をされたと言い切れないでしょう。だから、先ほどから言葉を選んでうまく言っておられますよ、多くの方はとか、ある地域ではと。

 だから、今回の、私が直接関与しているわけではないけれども、専門家が言われたのは、軍の関与がなかったなんて一言も言っていないんですよ。軍の関与がすべてあったということではないということを言っているだけなんですよ。だから、一方に偏った記述はしないんだというだけのことです。

菅(直)委員 今また伊吹さん、うまく言葉を継ぎましたね。すべてという言葉を入れましたよね。しかし、今度の検定は、別にすべてということを言っているんじゃありません。沖縄でそういう歴史的事実があったかなかったかという検定なんです。軍が関与してそうした集団自決があったかなかったかということなんです。

 それは、そのケースが一件であったか百件であったか、あるいは、いろいろな形の自決があった中で、それが一割であったか五割であったか、それを聞いているんじゃないんです。すべてであったかどうか、それは私も、すべてというのは一般的にあり得ないでしょう、すべてという言い方は。現実に、手りゅう弾がなくて、かまや他のものでお互いに殺し合う形で自決したという報告もありますから。

 しかし、軍が関与した、そういう形での集団自決があった。今、文科大臣がすべてということを言われた。逆に言えば、すべてではないけれども、少なくともそういう事実があったということを半ば含んでおられます。それならちゃんと認めるべきじゃないですか。なぜそれを、四年前まで認めた検定を変えられたのか、その根拠をお聞きしているんです。

伊吹国務大臣 何度も申し上げているように、すべてのことについて軍の関与があれば、ということが真実であれば、そのような教科書ができるんですよ。だけれども、すべてあったか、すべてなかったか、どちらでもないから、一方的な記述はよくないという検定をされたんだと私は理解しております。

 菅さんも、もう十分よくおわかりになってテレビの前でうまくお話しになっているんですよ、すべてのとか、あらゆるところと。

 だから、今回は、全くなかったなんということは一言の検定意見としても付されておりませんよ。だけれども、全くあったということもないということなんですよ。

菅(直)委員 四年前にどういう表現、あるいは、今回も、申請段階での表現と検定後の表現が書かれておりますが、検定前の表現にも、すべて軍の関与があったとかということを書いた検定前の段階の文章はありません。すべてなんて書いた検定前の文章はありません。いろいろな表現になっておりますが、そういう事実があったということが触れられているわけで、何もすべてだと言っているわけじゃありません。

 それを、すべてとは言えないから今回からはだめですよというのは、何らかの判断が変わったと見ざるを得ないんですが、どういう理由で変わったんですかということを私はお聞きしているんです。

伊吹国務大臣 何度も申し上げておりますが、すべてなかったということもなければ、すべてが軍の強制によって行われたという記述もないわけであって、今お話しになったように、軍の強制があった一部においてはとかという教科書になっていますか、従来の教科書が。なっていないんじゃないんですか、従来の教科書は。だから、誤解を生む表現はやめようという検定結果が出たということですよ。

菅(直)委員 では、これは総理にもう一度、当時の全体状況の見方について御意見を聞きたいんですね。

 昭和二十年の初頭といえば、私、小沢代表と硫黄島に九月に行ってまいりましたが、硫黄島が玉砕をした直後に当たるんでしょうか、その時代であります。あそこでも、最後にごうに残られた多くの方が自決をされております。これは全員軍人ですよね。そういう当時のことであります。ですから、仲井真新沖縄知事は、こういうことに対してちょっと疑義を感じる、当時の状況全体を考えると関与がなかったと言えないんじゃないかということを示唆されています。

 そこで、先ほど申し上げました、当時、軍、官、民、共生共死という考え方で、軍人に対しては、捕虜になるぐらいなら死ねという指導が行き渡っていて、かつ、軍から手りゅう弾が何らかの形で何人かには配布されて、そして集団自決ということが起きた中で、やはり総理、軍の関与があったというのが自然の見方じゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの質問の続きでもあるわけでありますが、私がいろいろな考え方を持っておられる学者の先生方と総理である今も会うのは、当然これは自由だろうと思っておりますが、総理になってからは藤岡先生にはお目にかかっておりませんが、当然それは菅さんだってお認めになるだろうな、このように思います。

 もしそれで、菅さんが意図している問題点があるということであるとすると、この教科書の検定そのものにその意見を持って私が介入をしたということになれば、それはそうかもしれない。しかし、全くそんなことはないわけであって、全くそれはあり得ないわけでございます。私も伊吹大臣もそうであります。

 何か雰囲気とすると、菅さんは、間違っているから積極的に介入してそういうことをするべきだとおっしゃっているように伺えるわけでありますし、菅総理が実現した際には、御自身のいろいろな事実認定においてどんどんこれは介入されるんですか、私はこのようにお伺いをしたい、このように思うわけでありますが、教科用図書検定調査審議会において、専門家がこういう事実認定において議論をして、そして、どういう意見をつけるかということを決めているということでございます。それがすべてではないでしょうか。

菅(直)委員 総理は最近なかなか攻撃的になって、私が聞いたことには答えないで、私が総理になったときにはこうするだろうなんということまでわざわざ言っていただいているんですね。

 私がお聞きしたのは、検定に関与したかしないか、あるいはしたんじゃないかなんということを私は一言も言っていません。そんなことは一言も言っていません。

 そうではなくて、総理自身、大変歴史に、特に太平洋戦争の戦前戦後の歴史にある意味では詳しいから、あるいは非常に関心があるから戦後レジームの脱却、そういう言い方をされているんじゃないんですか。ですから、その戦後レジームの脱却という中に、戦後レジームと言われるものの中に、あるいは従軍慰安婦の問題、あるいは軍関与による集団自決の問題。昨日、文芸春秋を読んでいたら、その中で総理が対談をされておりますけれども、少なくともその相手の方は、岸元総理のそういう責任を否定されると思った、それこそが戦後レジームの脱却じゃないですかなんということを相手側が言われておりましたけれども。

 つまりは、総理が考えられている沖縄戦の見方について、総理御自身の見解を私は聞いているんです。検定の関係を聞いているんじゃないんです。例えば、今言われたように、沖縄の知事はそういう言い方をされました。

 総理自身も先日沖縄に行かれたじゃないですか。残念ながら、沖縄に行かれたけれども、この問題は一言も触れられませんでしたよね。私は宮古に行きましたけれども。総理は、沖縄に行って、沖縄戦の、この沖縄の人たちが非常に関心を持っていることに触れられませんでした。総理自身は、沖縄戦においてのこういう歴史的な事実についてどのように考えられているのかということを、総理自身のお考えを聞いているんです。私が総理になったときのことまで心配していただかなくても結構であります。

安倍内閣総理大臣 今、沖縄の補欠選挙について、私の演説について触れられましたが、まさに沖縄の選挙があるからこんな議論をされているんですか。違いますよね、もちろん。それは違うと私は信じたい、このように思うわけでありますが、それは全く別の話だろう、このように思いますよ。

 しかもこれは、いわば史実がどうであったかという議論であって、総理大臣がそういうことを一々ここで言うべきなんでしょうか。それは専門家が議論し、調査し、そしてその上で意見をつけることではないですか。私が一々そこで判断できるんであれば、教科書の検定を私が一人でやるということになるじゃないですか。そうでしょう。そうではないんです、そうあってはならないから、イズムとは離れたところにおいて、先ほど申し上げましたような審議会において、冷静沈着な、そして学識に裏づけされた議論をすべきであろう、このように私は思うわけでございます。(拍手)

菅(直)委員 選挙をやっているときに、選挙にかかわる地域の問題を国会で取り上げるのは大いにやるべきじゃないですか。何でそれがやっちゃいけないんですか。選挙の中で、例えば米軍再編の問題を、米軍再編の問題を、沖縄に大変かかわりのある問題を、ではなぜ議論を避けるんですか。逆に言えば、沖縄の人たちが一番関心を持っている問題を、地元で選挙があるならば言えばいいし、国会でも取り上げればいいし、なぜそれがおかしいんですか。私はそれを封殺する方がよっぽどおかしいとまず思いますよ。

 それから、歴史的な事実に対して総理がいろいろ言うのはいかがなものか、いかがなものかと。しかし、総理は、従軍慰安婦の問題で、参議院の我が党の議員の質問に対して、狭義の強制はなかったけれども、広義の強制はあった、そういう答弁をみずからされているじゃないですか。歴史的な事実に対して、質問に対してみずから答えられているじゃないですか。この場所では、私が聞いたら、そんなことを答えるのはいかがなものか。ダブルトークじゃないですか。

 つまりは、自分が都合のいいときだけは私の考えですと言って答えながら、あるいはこういう本で述べられながら、都合が悪いときになると、いえ、それは答えるべきことでない。これはやはり、政治家としては本当にひきょうな態度と言わざるを得ませんね。いかがですか。(拍手)

安倍内閣総理大臣 ひきょうな態度というのは、それは失礼ですよ、余りにも。菅さん得意の、すべてをごちゃごちゃ混同させて一つのイメージをつくっていくという論法が今回も明らかになったということは、私はまずはっきりと申し上げておきたいと思います。(拍手)

 強制性等々については、先般の審議の中において、かつて外政審議室長が調査したことの内容において、私は、これはこういうことであったという解説をしたにすぎないということでございます。それは今までの政府の答弁にのっとっていることでございます。

 そして、今私が申し上げていることは、教科書検定のまさに中身であって、その教科書検定の中身それぞれについて、私が、こうするべきだ、ああするべきだと言うことをまさに菅さんは私に求めていて、それはできませんよということを申し上げているわけであります。

 そして、選挙については、選挙をやっておりますから、選挙で課題になっていることについてここで議論をすることは結構ですし、私も逃げてないし、菅さんの質問に答えているわけでございます。しかし、沖縄で私がどういう演説をしようと、それは私どもの方針であって、私の演説を聞いた方々にどうだったかということを恐らく聞いていただければいいんだろう、このように思いますよ。

 その中で、しかし、この教科書検定ということの議論については、これはやはり冷静に話さなければいけませんねということを、党派性を持って、ましてや選挙に結びつけてやってはいけないということを私は申し上げているわけであって、教科書検定というのは、これはだれが総理であろうと、だれが文部大臣だろうと、専門家が、専門的な見識に裏づけされた方々が議論をして、それは事実を一つ一つよく調査あるいは検討しながら、そして最終的にいろいろな意見をつけていくということが私はあるべき姿であろう、このように思います。(拍手)

菅(直)委員 総理は、結論的には、この沖縄の大変重大な歴史的な事実について、一切その見方も述べられないで済ませられたということなんでしょう。

 そこで、少し範囲を広げて、もう一つだけ申し上げておきます。

 私は、総理が総理大臣に就任された最初の予算委員会で、村山談話や河野談話について一応確認の質問をいたしまして、総理は、それを個人的にも踏襲すると言われました。

 私は本当に、この村山談話、河野談話、もう十年を少しさかのぼって出された二つの談話でありますが、これでほぼこういった問題は国際的にも解決済みになったと当時理解をいたしておりました。ですから、もう改めてこの問題をこちらからぶり返す必要はないし、相手もその線で大体納得をされたと、当時私も自社さ政権の中にいて感じておりました。

 それが、また十年以上たってこの問題が、例えばアメリカ国内においても大きな問題になっているというのは、私は何か、この自虐史観ということを言い募ることで、わざわざ解決済みの問題に再び火をつけた、少なくともそういう政治的な効果を、だれが意図的にやったかやらなかったかは別として、そういうことになっている、こう見ているんですね。

 総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 それは菅さんの見方であって、私はそのようには考えておりません。

菅(直)委員 何ですか、では、どういうふうに見られていますか。

安倍内閣総理大臣 それは関係ないということだと思います。

菅(直)委員 関係ないというのは、例えば従軍慰安婦の記述についていろいろな議論があったことと、例えばこの河野談話の問題と、今アメリカでいろいろ議論になっていることは関係ないと言われるんですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、何によって惹起されたかということを菅さんがおっしゃったので、それが直接関係あるとは私は思っていない、こういうことでございます。

菅(直)委員 いや、私、それはちょっとびっくりしましたね。

 よく皆さんが批判されるときに、アメリカのあの議決を出されている人が、何か聞かれたら、いや、河野談話に書いてあるじゃないですかと言われたということをもってよく批判される方がありますが、河野談話とかあるいは村山談話とか、あるいはそれをめぐる議論と、今のアメリカで問題になっている議論がなぜ関係ないんですか。関係があるから大変な問題になっているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 菅委員は何を聞きたいというのか、私はよくわからないわけでありまして、では、何と何が具体的にどう関係があるというのか、私はお伺いをしたい、このように思います。

菅(直)委員 私は、一番最初に申し上げたと思うんですね。つまりは、河野談話とか村山談話というのは、もう十年以上前、私も自社さ政権の中にいた時期もありました。そういう中で、もう一応その二つの談話で国際的にこういった問題が解決済みだというふうに、国際的にも国内的にも見られていたのに、それが改めて火をつける形になったことが、この「美しい国へ」の中にも書いてある自虐的偏向教育というものを何かあげつらって、それを変えなければといった議論が、結果として、せっかくもうおさまっていた問題に再び火をつけることになったんじゃないですかと。

 これをお聞きしておられる方は、私の質問の中身をよく理解していただけると思うんですよ。それを総理が、いや、全く関係ありませんと言うと、何で関係ないのかなと。

 そういうことをお聞きしているんですけれども、御質問、理解していただけましたか。

安倍内閣総理大臣 私の答えをよく理解していないのはそちらだと思いますよ。だから、それとはかかわりがない、このように申し上げているわけであります。

菅(直)委員 私は、総理はこれからどういう評価を歴史的に受けられる総理になるかわかりませんけれども、せっかく、中国、韓国の関係を大変改善されたという意味では、私も、総理になられた直後のいろいろな行動については一定の評価をいたしております。しかし、それが、総理の地金ともいうべき持論が出始めた中でだんだんと怪しくなっているんじゃないかということを心配申し上げて、今のことを申し上げたところです。

 そこで、最後に、時間があともう少しですので、この「美しい国へ」の中にもう一つ、教育の中で、誇りという言葉をよく総理は使っておられます。私も、日本の国に誇りを持っておりますし、生まれ故郷山口にも誇りを持っておりますし、誇りというものは大事だと思っております。

 特に、私は、新渡戸稲造さんの書かれたこの本の中に一つの章がありまして、「名誉」という段があります。その中で、新渡戸稲造さんは、「廉恥心は少年の教育において養成せらるべき最初の徳の一つであった。」と。笑われるぞとか体面を汚すぞとか、そんなことをやって恥ずかしくないのかというような言葉が、少年に対する正しき、まさに総理の言葉を使えば規範を持った行動を促す、そういうものであったと。

 ですから、本当に、日本の持っている歴史的なたくさんの財産があります、文化的なたくさんの財産があります。そういうものを大事にする中でいえば、一つの例ではありますけれども、この百年以上前に書かれた「武士道」の中に盛り込まれた、子供に対する、そういった、誇りを持たせるという形で自分たちの行動の規律を守らせる、そういったことをもっと重視すればいいと私は思うんですね。

 他の国との関係で自虐だとか自虐でないというところで、何かこう自分の国だけがいいんだということを植えつけようとするよりも、本来日本があるべき考え方をきちっと書いたものはたくさんあります。そういうものを大事にしていくことが私は重要だと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私の本を読んで、私がこの国だけがいいんだなんということを言っていると思うんであれば、もう少し国語力を鍛えていただきたい、このように思うわけでございます。読解力を鍛えていただきたい。私はそんなことを全く書いておりませんから、念のため。どうか今晩、もう一回読んでくださいね。

 そこで、新渡戸稲造氏が書かれた「武士道」の中には、例えば、仁。相手の――よく私の言うことも聞いてくださいよ、私も菅さんのことは聞いていますから。その中で、相手のことを重んじる、仁を大切にする、あるいはみずからの欲に打ちかつ克己という気持ちも大切にする、こういうことが書いてありますね。いわば教育にとっては大切なことがさまざま書かれている、このように思うわけでございます。

 そして、私が、みずから育ったこの日本、また郷土に対して、静かなる矜持やまた誇りを持つべきである、こういうことを申し上げたのは、やはり自分の生まれ育ったこの郷土や国のことをまずよく知るべきである、そしてそれに対する愛着を持つこと、これは真の国際人にもつながっていくことであって、相手を尊重することにもつながっていく、そういう意味のことも私は申し上げているわけであります。そして、その中で、みずから自分の国に誇りを持つということは、やはりこれは日本人として外国に行って恥ずかしいことはしてはいけないという気持ちになっていくはずだということも書いてあるはずであります。であるからこそ、世界に対して貢献をしていくという気持ちにも当然つながっていくのではないか、このことは申し上げておきたい、こう思う次第でございます。(拍手)

菅(直)委員 私についての国語力について御注意をいただきましたので、総理も私の質問を十分理解するだけの国語力を持っておられて言っているんだろうと思いましたが、残念ながら、必ずしも私の質問に十分にはお答えをいただいていないので、その言葉、あえて総理にもお返しをしておきたいと思います。

 そこで、もう少ない時間ですが、最後に、実は私、一度、杉並にあります和田中学に出かけまして、学校というものについていろいろと藤原校長ともお話をいたしました。

 校長が言われている中で、非常に感心、そうだなと思ったのは、従来、教育というのは学校と地域と家庭でそれぞれ分担していたのが、残念ながら、今や地域の教育力、さらには家庭の教育力が大変落ちてしまっている、それを全部学校が担うのは今の体制ではとても難しい、そこで、和田中学校では、地域本部というものをつくられて、地域の皆さんが、例えば芝生の、校庭の草刈りをするというのを一緒になってやるとか、あるいは、土曜寺子屋というのをつくって、本来なら家庭の中でお父さんやお母さんが子供の宿題を見てやるということができにくい今の時代に対して、逆に、土曜日、三分の一か半分ぐらいの生徒が自発的に来られたようですが、私が行ったのは土曜日でしたが、そういう補習のようなことを学校の施設を使ってやっている。

 まさに、そういう意味では、学校と地域と家庭というものがそれぞれ補い合う、あるいは、それが不足した場合にそれにかわる手だてをどのようにしていくのか、このようなことを、私も現場の中で話を聞きながら、すばらしい努力だなと思いました。

 そういった意味で、どちらの法案ということを超えて、私は、学校と地域と家庭というものがこうあるべきというよりも、ある意味では、こうなっているんだからそこをどうやって補っていくか。それが果たして、今の政府が言われている法案の、例えば教育委員会を、国の指導を強めるというような方向がいいのか、それよりも、逆に、まさに、PTAに限りません、必ずしも子供さんがその学校に行っていない地域の人たちも交えた地域的ないろいろな、学校あるいは学校を含む地域の教育力、力を強くしていく、そういうことを判断できるために、私は、そういった地域というものを大事にし、あるいは、家庭は単純に大事にできないとすれば、それを補うものをどうするか、こういう考え方を持つことが重要ではないか。

 最後に私なりの考え方の一端を申し上げて、そろそろ時間ですので、質疑を終わりたいと思います。(拍手)

保利委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 私ども民主党の教育の考え方の基本的な部分を菅代表代行からお話をさせていただきました。

 まず、民主党の提出者の方にお伺いをしたいと思います。

 民主党は、今回、教育力向上の三法案ということで提出をしておりますが、まず最初に、民主党の免許法について、今の教育の実情、教員を取り巻く環境、学校現場の課題というのをどういうふうにとらえて法案を作成したのか、その特色と、また、政府案との差異でお話をいただくべきことがあれば、その点について御説明をお願いいたします。

田島(一)議員 お答えいたします。

 私ども、まず、教育は人であるという観点に立たせていただいて、今生きる子供たちをいかに豊かに育てていくか、そのためには優秀な人材を教育界に集めなければならないという視点から、現状の問題点にぶち当たりながら、法案作成に取り組ませていただきました。

 残念なことに、今の教育の現状を見ますと、大多数の教員の皆さんは献身的に子供たちのことを考えて取り組んでいただいているとは思うんですが、先日、文部科学省も四十年ぶりに教員の勤務実態調査をされたところですけれども、その調査結果でも明らかなとおり、罹患者も随分ふえてきている、教師が現場に立てないというような、そんな問題も随分明らかになりました。

 かなり夢や希望を持って、難関を突破して教職につかれた先生方だったと思いますが、現実との大きな乖離に御苦労いただいている。そう考えたとき、やはり私たちは、優秀な先生方を、どんな困難があっても教壇に立っていただける人たちを集めることが何より大切だろう。

 そういうことから、まず、豊かな人間性、そして卓越した指導力を養成するために、教員課程、今は四年間の履修でございますけれども、それを、プラス二年間の、大学院の修了を加えるという形にさせていただきました。もちろん、その二年間の大学院の中では、一年間の現場実習をしっかりと経験していただくということを盛り込んだ中であります。四年制大学から二年間の大学院修了を加えた中で教員の職についていただく。それで、その後八年間の実務経験を積んでいただいた方には、さらに教職大学院で一年間学んでいただき、その後専門免許というものを取得していただくというふうに流れをつくりました。

 免許状には、それこそ政府案が示しているように、十年間というような有効期限は設けておりませんけれども、原則として免許授与後十年ごとに講習を受けていただいて修了を認定する、そして、専門免許をお取りいただいた方にはこの十年ごとの講習は免除するというような形にさせてもらっております。

 あえて差異を申し上げるとするならば、今、このように教壇に立てないという先生方がふえているこの現状を、とりあえず政府の方は十年後に何とかしましょうというような内容になっておりますけれども、私どもは、教壇に立てない先生方を生まない、つくらないという、入り口の段階で政策として打ち出させていただいたわけでございますので、そのような形で御理解をいただけたらと思います。

松本(剛)委員 私どもの教育の課題に向けての、また今後のあるべき姿というのをしっかりと形にさせていただいたと思っております。

 後ほど、順次、総理また伊吹大臣にも御所見を承っていきたいと思っております。

 私もインターネットの辞書ではなぜか気が短い議員というふうに書かれておりますが、総理が重厚でなくなりますと国を愛する心の涵養にもよくないと思いますので、しっかりとした議論をさせていただきたいと思います。

 続いて、民主党の地教行法について、やはり今の教育の現場の問題、また課題のとらえ方などを御説明いただきたいと思います。また、政府案との考え方の違いについてもよろしくお願いをいたします。

松本(大)議員 お答えします。

 今、教育現場では、教育格差の問題、いじめ、不登校、それから子供を取り巻く痛ましい事件の続発など、さまざまな問題が起こっており、こういった問題の解決、改善が求められているところであります。

 しかし、きめ細やかな対応が必要な問題であっても、今の教育行政では、国が学習内容を決める、都道府県が教職員の採用や人事を決める、市区町村が学校の管理運営を行うといった形で、責任の所在が三位ばらばら、たらい回しが起こるという実態がございます。また、地方自治体においても、教育の予算編成といった教育財政については首長が決める、しかし教育行政は教育委員会が行うという形で二元行政の仕組みが残っており、こういった仕組み、実態を改善していくことが今の学校現場、それから教育行政に求められる課題ではないかというふうに考えております。

 そこで、こういった現状、課題を克服するための本法律案を臨時国会に提出したわけですが、今回改めて、いわゆる学校教育力向上三法案の一つとして再提出をしたところでございます。

 続きまして、その内容、特色でございますけれども、まず第一に、今現在責任の所在が不明確であるとされております教育委員会については廃止をする、そして、その事務については地方公共団体の長に移管をする、第二に、地方公共団体に新たに教育監査委員会を設置しまして、地方自治体の長に移管する事務の実施状況につきまして必要な評価、監視を行い、その改善のために勧告を行うことができるとした点、さらに第三に、各地方公共団体が設置する学校ごとに、保護者、それから地域住民、校長等から構成される学校理事会を設置しまして、学校の主体的、自律的な運営を行うことを可能としている点等であります。

 なお、政府提出の地教行法改正案でありますけれども、現行の教育委員会制度を初めとした仕組みがそのまま温存される形となっておりまして、果たして責任の所在が明確になるのかどうか不明でありますし、また、いじめや未履修の問題では、教育委員会が適切に機能していなかったということに加えまして、学校現場の閉鎖性、それから文科省の認識と対応の甘さというところも指摘されたはずでありますけれども、果たして国の教育委員会に対する関与を強めるだけで有効な方策となり得るのか、疑問に思うところであります。

 民主党は、学校の教育力向上を目指しまして、教育問題の責任の所在を明確にするという前提のもとで、教育再生を図るために、本法律案を提出したところでございます。

松本(剛)委員 それでは、三法案の最後、民主党の教育環境整備法についての御説明をお願いいたします。

笠議員 この三法案の最後の、私どもの教育の環境整備のための法案なんでございますが、今日、教育現場のいろいろな問題を考えるときに、昨年来の例えば教育基本法をめぐる審議の中でも、あるいはけさほど来のこの国会での議論の中でも、やはりこれを現実的に解決していこうとしたら、どうしても教育の予算というものがかかる、お金がかかるということは、これはもう恐らくは、党派を超えて同じ考えをお持ちの方が多いんだと思います。

 ただ、残念ながら、そうした中で、我が国の教育費、GDPに占める公財政支出の割合というものが、先進国で今最低の水準である。あるいは、たびたび御指摘もさせていただいておりますけれども、家計費に占める教育費の割合、負担というものは、逆に最高水準になっている。こうした現状をやはりしっかりと変えていかなければならない。そうしなければ、今、経済格差が、つまりは、親の収入によって子供たちの学びの機会、この機会の格差というものを生んでいる状況もございます。

 私ども民主党は、大学に進学をしたいけれども、残念ながら経済的な理由からそれがかなわないお子さんたちもたくさんおられるわけですね、そういう人たちにはすべて、例えば奨学金の制度を受けられるようにしよう、これまでもそういった教育の政策を提案してまいりました。

 特に、公立学校の教育力をこれから向上させるためには、やはり学校の環境整備に力を注いでいかなければなりません。多様な教育の機会の提供、あるいは少数学級を実現するにしても、これは学校の先生たちの質とあわせて、量、つまりは数を確保していくことは重要なことになってまいります。

 そういう中で、いじめの問題が深刻化する、そういうときに、スクールカウンセラー、これが有効であるということも明らかになっており、各学校に配置をすることができないか。あるいは、耐震化の整備というものもおくれているわけです。けさほどの議論でもございましたけれども、IT化、ITを活用するサポートの体制を整えていく、こういったことについても予算、お金がかかっていく。

 我々は、人づくりへの投資をもっと十分に、しっかりとやっていこうということで、この国会にも再提出をさせていただいておりますけれども、日本国教育基本法案の中で、教育予算というものをしっかりと確保していく、これを充実させていくということを明記し、そして、この理念を実際に具体化したものが本法律案でございます。

 政府案との差異という御質問がございましたけれども、まさに、政府の今回の教育関連三法案の中には、この我々の教育環境整備法案に対応する法案というもの、規定というものもございません。私たちは、教員の数も削減し、あるいは教育予算を今削減しようとしている政府に対して、しっかりと教育にはお金をかけていく、その公財政支出を高めていくんだということで、今回の法案を提出させていただきました。

松本(剛)委員 順次、テーマに沿って聞きたいと思いますが、本会議での質疑、それからきょうの午前中の与党の方々との質疑をお聞きしても、小坂前大臣を初め、何人かの方が予算の話に触れておられました。大変重要なテーマであるというふうに我々は認識をして、これをやはり一つの政治の意思として形にあらわすべきではないかということで、今回の法案を提出させていただきました。ここまでの議論を聞く限り、間違いなく御賛同をいただけるのではないかということを前提に、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 今の教育に対する公財政の支出、これは教育基本法の議論でも何度か大きなテーマになりました。これをごらんいただきたい。お手元に資料もお届けしていると思いますし、何度も既にごらんいただいたところもあると思いますが、残念ながら、先進国の中で日本はやはり公財政の支出は少ないというふうに認識せざるを得ないのではないかと思います。また、国の支出の中における構成比も、この五十年間、ちょうど自民党政権の五十年間で、やはりじりじりと下がってきたのではないかというふうに、数字を見る限り言えます。

 実は、ほぼ一年ほど前に当時の小坂大臣と議論をさせていただいたときも、その認識に基づいて、今後の政治の意思を示していただきたいというふうに申し上げたんですが、そのときは、「今後とも教育に対する予算というものは十分に確保していくべき」ということで、「今後とも」をとる気はないかということで御議論をさせていただきましたが、「今後とも」のままでありました。

 きょうの質疑を聞く限りは、やはり本音は「今後とも」ではなかったのかなというふうに思っておりまして、ぜひここは、従来の、いわば役所の用意をした延長線ではなくて、きちっとした政治の意思としてどうするかということをお示しいただきたいというふうに思います。

 そこで、総理にお伺いをしたいと思います。

 国際的な水準からやはり低い、これはOECDの統計でありますから、そういうふうに世界からも見られているのではないかと思います。また、ここのところ低下をしてきたと言わざるを得ないと思いますが、これについて、やはりそういうことだというふうな御認識でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 このOECDの対GDP比については、確かにそういう水準になっている、このように思います。しかし一方、予算の中での配分の比率ということであれば、必ずしも低い水準にはなっていない、こういうことでございますから、これはまさに行政のサービスと負担全体について国民的な議論をしていく必要があるだろう、このように思います。

 生徒一人当たりについては、平成元年以降、教育への公財政支出は五〇%増、こういうことになっているというふうに思うわけでありますが、しかし、現場の先生方あるいは父兄の皆さん方の声を受ければ、もっともっと充実をしてもらいたい、こういう声があるのも私も十分に承知をしているところでございまして、教育予算の内容の充実は重要である、こう考えておりますし、また、今後、効率化を徹底していくことと同時に、めり張りをつけながら、真に必要な教育の予算については財源を確保していかなければならない、こう考えております。

 そして、何といっても、私も、教育の再生を私の内閣の最重要課題の一つとして位置づけております。それを念頭に取り組んでいかなければならない、こう考えております。

松本(剛)委員 伊吹大臣にもお聞きをしたいと思います。

 本会議でも、来年度の予算編成に向けて議員各位の御協力をということでお話があったと思います。予算を確保するということは、今総理も負担のことをおっしゃいましたが、国民に負担をすぐに求めるという前には、ストレートに言えば、ほかのものを切ってでも教育を重視するというやり方があるというふうに思います。

 我々の場合、やはりそこが一番今大事なところではないかというふうに思っているわけでありまして、そして、そのことをきちっと示すためには基本法にも書くべきだと思い、我々は日本国教育基本法に書きましたし、それを受けた法律が必要だということで今回提出をさせていただきました。

 予算についての伊吹大臣のお考えと、法律として出すことについての御所見をお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 これは、先生のお父さんの松本十郎先生に私も大蔵省時代御薫陶を受けたことを、もう一度ここで申し上げなければなりません。

 それは、今まさにおっしゃったように、一国を預かる政府を形成する政党の場合は、必ずつじつまの合った話をしなければならないんですよ。ですから、教育の予算は、私はふやすべきだともちろん思っておりますよ。思っておりますし、また、その条件を整えていかねばならない。これがやはり与党としてつらいところなんですよね。

 ですから、教育予算をふやせばいい、法律に書けばどこかから財源が降ってくるというわけではない。だから、先ほど総理も申し上げましたように、教育は安倍内閣の最重要課題の一つですから、選択と集中をそろそろ、一律的なカットというのは小泉内閣のときで済んできていますから、これを今度どこに選択と集中をやるかということがまず一つありますね。

 その場合に、どこを減らしてどこをふやすんだと。これは民主党もどう考えておられるのかということを、きょうはテレビもありますから、例えば公共事業費を減らすのか、しかしそれ以外に、農業はすべて価格差補給をするとかいろいろおっしゃっているから、私は随分お金が要ると思いますよ。そのお金をどこから持ってこられるのかという議論も含めて、やはり全員で私は教育予算を充実していくというのが筋だと思います。

 これを法律に書くかどうかは、これは結果的に予算で国会の承認を得るのか、法律で国会の承認を経るのか。つまり、財政法に書いてあるように、支出をする場合は、あるいは国民に負担をさせる場合は必ず国会の議決を経なければならないんですから、どの形態でやるのか。法律に書いて、あと予算編成の中でさらにそれをやっていくという形は、私は、国会に対して二重の授権をとるということになりますから、どちらがいいのかということは、これは政策の進め方の問題だと思います。

松本(剛)委員 私どもももちろん、政権を国民の皆さんに負託いただけないかというふうに問うているわけでありますから、予算についても、今おっしゃった農業の話、それから子供たちの児童手当の話、そして教育の話について試算をさせていただいています。私どもが考えている事業をすべて展開しようと思えば、おおむね十七兆ぐらいの予算がかかるというふうに考えております。

 他方で、しかし、今回も緑資源機構の中で出てまいりましたように、天下りそれから公共事業の調達の方法を改めるというだけでも、二けた兆円近いお金を出してくることが国と地方を合わせれば十分にできるわけで、その地方が削減をした分をどのように整理していくのかということであります。きょうはあれでありますが、またそういった内容についてもしっかりとしていただきたいというふうに思っております。

 その中で、今あえて法律のことを触れさせていただきました。そして、政治の意思というふうにお話をさせていただきました。これまでも公共事業について、五カ年計画とか法律とかあらゆる形で出され、やはりそれが一つの政治の意思として、直接はそうではない、仕組みはそうではありませんが、結果として予算に反映をされてきたという事実があります。

 これからの時代、やはりせめてこれまでの公共事業並みに教育の予算をしっかり格上げするべきではないかということで、我々、これも計画を立てての、計画的な予算のいわば積み上げというのを提案させていただいているわけでありまして、これについて御賛同いただけないかということについて改めてお聞きをします。

伊吹国務大臣 まず、きょうはテレビが入っておりますから、国民の皆さんに誤解のないように申し上げなければならないのは、緑資源公団その他の事業の規模というものは、一般会計の税金ではありませんよ、先生。これはすべて、借入金あるいは財投債、財投機関債から出ているお金であって、今教育に要るお金は、国の一般会計の財源をどう見つけ出すか、あるいは地方のその分の負担をどう見つけ出すかという議論をしなければなりませんので、政府関係機関を合理化すれば一般会計のお金がふえてくるという誤解を国民の方に与えるというのは、私はちょっとアンフェアだという気がしますね。

 しかし、同時に、予算をふやさなければいけないというのは、私は文部科学大臣ですから、当然先生のお考えと御一緒です。だから、どこを削って、どこの教育予算に集中するのか。それができないのならばどれだけの国民負担を求めるのか。これがやはり政権担当をする能力のある政党の議論の仕方なんですよ。ですから、ここのところをはっきりと詰めていきたい。

 だから私は、安倍内閣として、総理がしっかりとした考えを持っておられたら、法律にあえてそういうことを書かなくても、きちっとした予算編成ができると思っております。

松本(剛)委員 文科大臣の答弁としては、私としては非常に残念であります。

 というのは、やはり教育に、子供たちのことにまずお金をかけるんだという意思から、それであれば、公共事業にしても、今政府がやっている事業にしても、今の天下りの問題なども、特別会計とおっしゃいましたけれども、全体からすれば、一般会計から補助金が出ているものもあるわけですよ。ですから、そこはきちっとお話を申し上げなければいけませんし、その上で我々は、やはりまず子供たちにお金をかけるべきだ、だとすれば、ほかのものはどこから順に我慢をしてもらうのかという発想をしているわけですよ。今の大臣のお話を聞く限り、お金があればやるよというふうにしか聞こえないわけであります。

 公共事業の法律を出させていただいたのも、あの当時は恐らく公共事業について強い意思がそれをもって示されていたわけですよ。ですからそれが確保され、おのずとそのしわ寄せがほかの案件に結果としてはいっていたと私は考えているわけです。ですから、安倍内閣において教育が最重点課題であるというのであれば、この議院内閣制のところにおいてそのぐらいの法律案を、今回の法律案をお読みいただいたと思います、そんなに乱暴なことは何も書いてありません、きちっと計画的に教育の予算をふやそうということを書いてあるだけなんですから、御賛同いただけるのではないかというふうに思っております。

伊吹国務大臣 先ほどから公共事業についてというお話がありますが、それは道路整備五カ年計画だとか港湾整備何カ年計画ということを言っておられるわけですか。(松本(剛)委員「臨時措置法もあります」と呼ぶ)措置法もあります。

 そして、これは先生、政権を担うことを目指しておられる政党ですから、しかもそこの政策の責任者ですから、十分これらを勉強していらっしゃると思いますが、一応の計画を立てて、閣議で決定をして、しかし毎年の予算の査定によってそのことを実現していくということは、みんなついていて、これは閣議決定で行われているわけですね。ですから、当然、振興計画というものをつくるわけですから、これを閣議決定を安倍内閣としてして、そして国会にも御報告しなければなりません。そのときにぜひ御賛同いただいて、力を合わせて教育の予算をふやしていくということじゃないでしょうか。

松本(剛)委員 どうお聞きをしても、反対する理由がないのではないかというふうにしか思えません。ぜひ賛成をしていただきたいというふうに思っています。

 少し各論に入らせていただきたいと思います。

 形態としては……(発言する者あり)少しお静かにしていただけませんでしょうか。教育者でいらっしゃった方ではないかというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 教育は、あえて分類すれば、形態としてはある種のサービス業だというふうに言えると思います。何を申し上げたいかといえば、提供される一人当たりのサービスの質掛ける量が提供される内容になるというふうに理解をしてもいいのではないかと思います。

 そうなりますと、質の問題というのもいろいろな形で今議論をされていますが、先にまず数の問題、定数の問題ということについて少し議論をさせていただきたいと思います。

 実は、自公政権では昨年、行政改革推進法というのをお決めになって、その中で、わかりやすく言えば、これから子供の数が減りますが、そして当然減るのに当たってその割合で教員の数は減るんですが、行政改革だからその割合以上に減らしましょう、このように法律で、それこそ法律でお定めになりました。数をやはり確保すべきではないかというふうに思っております。

 伊吹大臣は先般の本会議で、総理も厚い決断を、アツイというのは手厚いの厚いという字が少なくとも議事速報では振られておりましたけれども……(伊吹国務大臣「ホット、ホット」と呼ぶ)ホットの熱いでよろしいですか。では議事録をお直しいただいた方がいいと思いますが、手厚いの厚いになっておりましたけれども、いずれにせよ、その趣旨は、定数の問題というのはしっかり考えるべきだ、こういうお話だというふうに思います。

 実際に、これは大臣の署名がありますけれども、文部科学白書、これの中の定数の部分についても、第七次の定数の計画というのが終わった後、第八次の計画というのは、いわばそこで中断されている状態なわけですね。これについて、文部科学白書を見る限り、これは八次をやるべきだということだけれども、行政改革のこともあってとなっていますが、この中には減らすべきだという話は余りはっきりとは書いてない。法律で決められたことを、文部科学省としても方針を変更されるべきだとお考えであるとすれば、やはりこの行政改革推進法の条文は見直すべきときに来ているのではないでしょうか。いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 今回でも、例えば地方分権一括法の中の一部を地方自治法の範囲の中で直すことについては、安倍内閣の中で調整をして、そして地教行法の改正案として国会にお願いしているわけですね。ですから、将来、法律というものは国会の御承認を得られれば直せるわけです。先生の御認識は全く間違っておりません。今のままの法律では人員はふやせませんよ、率直に言って。

 しかし、どういう表現がいいんでしょう、例えば、教師の子供と向き合う時間をたくさんとろうとすれば、人員をふやすというやり方が一つありますね。それから、今教職員がやっている仕事をアウトソーシングというか、外へ予算を伴って出すというやり方もありますね。それからボランティアの方、特に団塊の世代の方々をボランティアとして、本当に申しわけないけれども、心ばかりの予算を差し上げて、中へ入れてきて補助していただくというやり方もあります。

 ですから、いろいろなやり方があるんですが、私は、私の気持ちとしては、若干やはり従来の法律に手を入れないと、今安倍内閣が最優先課題の一つという、総理のそれこそホットな思いというものを実現するのは難しいんじゃないかなという気が私自身はしております、率直に言って。

 しかし、同時に、財政再建とかいろいろな要素を政権を預かっているという立場の者は見ながらやっていくわけで、最終的に内閣が法案を国会へ出すわけですから、私は、最大限の努力をして人員をふやしたいというのが私の文部科学大臣としての責任だと思っております。

松本(剛)委員 内閣におかれては、基本的には法律を遵守していただくことが職務であろうと思いますが、法案の提出権もお持ちであります。しかし、我々議員も法案の提出権を持っておりまして、今提出をさせていただいている民主党の教育環境整備法においては、今の行政改革推進法の条項は削除をすべきだということで盛り込ませていただいております。

 実際に、教育再生会議の議論の中でも、議事録、要旨でありますけれども、拝読をする限り、何人かの現場を預かっている方々からは、この定数の問題について、決まっておるのか知らないけれどもというような前提で議論が出ています。一言で言うと、今の形のように減らされるという決定についてはいかがなものかというふうに解釈できる意見が出ているというふうに私は理解をしております。であれば、今法案についてもお話がありましたけれども、民主党の方から既に出させていただいているわけでありますから、ぜひそれについて内閣で真摯に御検討をいただきたいというふうに思います。

 総理、よろしいですか、総理におかれても、本会議で、総理の内閣の伊吹大臣が、熱い決断をしてくださることを期待している、ここまで言われたわけですから、期待におこたえになる気はありませんか。

安倍内閣総理大臣 私が決断をするときにはいつも熱い気持ちで決断をいたしているわけでありますが、しかし、やはりこの教育という大切な課題については、私も最重要課題だ、このように申し上げております。

 しかし、もちろんまず予算増ありきではありません。教育の質を高めていくために、何をどうすればいいか、そして、どこにどう予算を配分するべきか、あるいはこれは効率化を図れるということを、さらにやはりじっくり検討していく必要があるだろう、私はこのように思います。この検討の上において、真に必要な財源は必ず確保しなければならない、こう考えております。

松本(剛)委員 総理、教員の定数の話をお聞きをさせていただいております。

 これは総理が官房長官時代の法律でありましたから、行革推進法ですね、かかわりがないとは言いませんが、安倍内閣として教育をやはり最重点に置くという方針を改めて据えられたのであれば、見直していただくという決断も一つの決断だというふうに私は思っております。この条文については、我々、当時の委員会の審議のときから問題にしてまいりました。

 予算という話でありますけれども、子供の数が減ることは、残念ながらしばらくは現実であります。それに伴って減るだけでも予算はおのずと減るわけですね。それよりさらに上回って減らさなければいけないというような縛りをかける必要はないというふうに思いますけれども、総理、もう一度、その点について、その縛りはやはり要らないということをここでおっしゃっていただいたらいいと思いますが。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣においてもこの行革についてはしっかりと進めていかなければならない、こう考えておりますし、それはもうすべての分野において行っていかなければなりません。

 しかし、その中で、教育においては、これは先ほど伊吹大臣が答弁をされましたが、やはり、子供たちをまさに教育していく先生方の人材をちゃんと確保していくということは大切でありますが、その中でいろいろな工夫ができないかということで、一例として、向き合う時間を維持するためには、事務的な仕事については少しほかの人にやってもらえないか、あるいはボランティアの方々を利用することができないか、そういうことも考えながら、あるいは、さらに教員の質を向上させていくことによって教育力を増していくことがどれぐらいできるかということを、まずは、我々、取り組んでいかなければならない課題である、このように考えるところでございます。

松本(剛)委員 総理、すぱっと言ってしまわれたらいいんですよ。小泉の内閣のときは、私は官房長官ですから女房役としてその方針に従ったけれども、安倍内閣になったら、私は教育重視だから変えるところは変えるんだ、この一言を言ってしまえばいいわけですよ。おっしゃる気ありませんか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、私も前の内閣の官房長官ですし、自民党と公明党の与党内閣が続いている以上継続性もありますが、しかし、総理がかわっていますから、当然そこで大きな方針転換、あるいは、時代時代の状況に合った対応ということをやるのは当然であって、私は、何も前のときの状況にこだわっているわけではありません。しかし一方、行政改革は進めていかなければいけないというのも、私の内閣ではこれは変わりはないということでございます。

 ですから、まずは先ほど申し上げましたようなことに取り組んでいった上で、さらにこれは検討していく課題であろう、こう考えております。

松本(剛)委員 それでは伊吹大臣の熱い期待にまでは余りこたえ切れていないんではないかという気がいたします。我々、だからこそ、きちっと政権交代をした方が話がわかりやすいんではないかというふうにも思いますが。

 もう一つ、関連して、人材確保法についても、実はこの行革推進法に書いてあります。そして、我が党の日本国教育基本法を策定されました我が党の西岡参議院議員は、この人材確保法については深くかかわってきたわけでありますし、人材確保法に基づく教員の給与の実態についても、過去の推移をずっと調べてまいりました。ある時期は確かに相当しっかりと優遇をされていたというふうに言えると思いますが、現状では、本当にこれで優遇をされているのかと言っても過言ではないと思います。

 先ほど超過勤務の話もありましたが、教員の場合は、いわば調整手当という形で整理をされています。ある意味では、総理はもうお嫌いになったか、まだお好きか知りませんが、ホワイトカラー・エグゼンプション・システムと同じような仕組みに逆に言うとなっているわけであります。この人材確保法についても廃止をする、これは行革推進法の総人件費のところで廃止をするというふうに書いてある以上は、これは廃止してさらに減らすんだというふうに普通は読まざるを得ないというふうに思います。現在の状況が優遇をされているかどうかかなり微妙な状況に来ている中で、さらにこれを削るんだという意思が少なくとも行革推進法に示されていますが、これについてもきっちりめり張りをつけるべきではないんでしょうか。

 教員のそれぞれの評価であるとか給与体系についてはいろいろな議論があることは承知をしていますけれども、法律の言うとおりやるとすると、総人件費、そして多くの信頼を得ている教師に対して、このままでいけば一律にさらに減らすということをせざるを得ないということになってくるという状況が、教育を重視する内閣のあるべき姿だとは私にはどうしても思えない。

 民主党は、この条文を削除すべきだということで教育環境整備法に記載をさせていただいていますが、御賛同いただけますでしょうか。

伊吹国務大臣 まず、先生、先ほどの行革の法律について言えば、考えは、私とこうしてお話ししていて、そんなに変わらないと思いますよ。しかし、あれを法律として出していることに御賛同いただけるかと言われると、財源だとか何かの話は一体どういう前提でお話しになっているんだろうなとか、詰めないといけないところがたくさんあるということなんですね。

 今の人確法については、私も先生と同じ思いを持っております。それは、免許の更新、いわゆるだめ教師の方の排除、厳しくやればうまくいくという考えが私は少し強過ぎると思います。失敗をしないからマスコミは取り上げないけれども、黙々と努力をして、いじめによる自殺を未然に防いでいるような教師はたくさんおられるんですよね。こういう方々の給与が実態的に優遇されているかどうかはかなりの検証が要ります。

 であるからこそ、安倍総理は、昨年暮れの十九年度予算編成のときに、既定方針になっていた二・七六%のカットについて、これを十九年度予算ではやらないという決断をされたわけですよ。ですから、二十年度予算でこれをどうするかということは予算編成の問題であると同時に、法律がかぶっているところには法律の手当てをしなければならないし、そして同時に、何よりも大切なことは、実態的に優遇されているのかどうなのかということの調査を今させております。

 つまり、一般の地方公務員がどの程度の超勤をなさって、どの程度の超勤手当を受けておられるのか、教員がどの程度の超過勤務の実態にあって、それに見合うだけの上乗せがなされているのか、その調査を今ずっとしております。これを踏まえて、二十年度予算編成の中でぜひ議論をしなければならないテーマであるということは十分認識をいたしております。

松本(剛)委員 超勤の話は、既に何度か調査をされて、三十時間を超えるような数字も幾つか出てきているというふうに思います、教師について、一定の期間ですけれども。そこはどういうふうに見るかというのはいろいろなあれですけれども、文科省の方からも、また一般の地方公務員については、超過勤務手当の支給実態からすれば、平均すれば十時間ぐらいという数字も一つ出てきている部分もあります。ですから、詳細な調査というのはまだ必要かもしれませんけれども、概略の大体の感触というのは既に大臣もおつかみになっていることだろうというふうに思いますから、ぜひそのようにしていただきたい。

 そして、あえて何度も法律のことを申し上げますのも、今の議論を聞いている限りでは、国民の皆さんからしたら、私と大臣と余り違いがないように見えるわけです。ただ、我々は、やはりあの法律をきちっと変えろと申し上げている。大臣は、今まだ、変えるということまでは明言をされていないわけであります。やはりきちっとわかるように、極端に言うと、こちらで生きている法律と大臣の言われていることが、今の段階ではどこかでぶつかるわけですよ。

 ですから、教育の再生の特別委員会なわけですから、ここでやらずしてどこでやる、こういう話だというふうに思いますから、そして、政治家伊吹大臣がここで、よしわかった、この法律は出す、もしくは、民主党のこの部分については少なくとも賛同する、こう言ってしまえばいいわけでありますが、まあ、まだ自民党と民主党というこだわりがおありかもしれませんから時間のかかることだと思いますので。ただ、理由をお聞きしている以上は、反対をする理由はないということを確認したと思います。

伊吹国務大臣 それは先生、先ほど来何度も申し上げているように、「日本改造計画」を書いて、党首になったら全く違うことを言えるということとは違うんですよ、法律と予算で動かしているということは。

 ですから、国民負担を求めるのなら、それだけの国民の理解を得なければならない。あるいは、どこかの予算を減らすのなら、今その予算のサービスを受けている人の了解をとらねばならない。これが政権を担っていない政党の気楽さと政権を担っている政党のつらさなんですよ。(松本(剛)委員「委員長」と呼ぶ)

保利委員長 ちょっと待ってください。

伊吹国務大臣 ですから……(松本(剛)委員「その言葉はちょっと撤回していただかないと」と呼ぶ)いや、ちょっと待ってください、話しているから、話しているから。

 ですから、我々は、必ず財源を見つけない限りは、すぐに御賛同するということは言えないんですよ。だから、取り消せとおっしゃるのなら、どこでどの部分を減らして、どういう財源をもって今の法律を出しておられるのかをテレビの前で国民に話してあげてください。

松本(剛)委員 我々は、今の予算を何割も減らすということに対してきちっと確保をせよと言っているわけであって、今の財源で十分に賄えるわけであります。

 ですから、まず第一に、一年前の方針を、行革推進法の方針を総理は時代に合わせて変えるとおっしゃったんですよ。それを、何年も前の我が党代表のことを言って、気楽という表現だけは撤回をいただきたいということだけ申しますが、いかがですか。

伊吹国務大臣 自分の著書で書いていることと今その方がおっしゃっていることが全く違うということと、政権を担っている、法律、予算で動いている者の立場は違うんですよ、それは先生。

 ですから、今、率直に言えば……(発言する者あり)いや、だから、率直に言えば……。

 では、出しておられる法律の中で、どの部分でその財源をつくって、どこを減らして、それで受益を得ている人にどういう説明をするか。いや、それをやらないのなら、どの部分で負担を求めて、どういう増税の法案を出すのかということとセットにならなかったら、政策にならないんじゃないんですか。

松本(剛)委員 教職員の定数を子供が減る以上に減らすことについて、我々はまずストップをするべきだというふうに申し上げているわけであります。

 その予算については、既に今の予算よりもはるかに削るという話であって、そのお金を、では逆に、政府として削ったお金をどこへ持っていくおつもりなのか、お聞きをいたします。

伊吹国務大臣 それでは伺いますが、このままの財政の状況でよろしいと御党は、特に政策の責任者は考えておられるんですか。つまり、今生きている者が、負担をしている税以上のサービスを受けて、その後の処理を次の世代に回していくということについて、世代間の不公平があるのかないのか。

 財政再建もしなければならない、そして教育の充実もしなければならない、そういういろいろなもののバランスの上に政権運営というものは成り立っているということを私は再三申し上げているわけです。

松本(剛)委員 先ほどまでの議論で、定数の行革推進法の条項について、大臣の本会議での答弁そして人確法についての答弁、今のここでのやりとりで、これはやはり直すべきだという趣旨のことをおっしゃったわけですよ。だったら直そうじゃないですかというふうに申し上げているわけです。そこを急に財源の話を持ってこられる。

 我々も、必要な財源はしっかり確保すべきですし、財政再建についてもきちっと行うべきでありますが、わけのわからない人材バンクで天下りを公認しているような暇があるなら教育にお金をかけるべきだという議論にここでなってしまうわけですよ、そういうおっしゃり方をすると。そういうやり方をおやりになる。

 最後は、ですから、民主党の出したものには賛成できないというのであれば、もうそういうふうにはっきりおっしゃった方がいいというふうに思いますが、先ほどまで聞いておられる国民は、少なくとも、人確法の問題それから定数の問題、この行革推進法に書いてある二つについては明らかに、見直しが必要であるというニュアンスのことを、少なくとも本会議でもここでもおっしゃったわけですよ。ですから、そのことを確認させていただき、それに対するきちっとした手当てを、法律が残っていれば、見直しが必要なものが残っていればやはりだめなんですよ、これを直すべきだということはいかがですかというふうに申し上げているんですよ。

伊吹国務大臣 先生は御自分で少し気が短いと書かれているとおっしゃいましたが、お父さんは随分気の長い方でしたから、ごゆっくりお話しいただいて結構だと思います。

 私は、先生のおっしゃっていることに反対をしているわけじゃないんですよ。ただ、予算編成というのはこれから概算要求をして十二月末にやるわけですから、今この段階で民主党の出しておられる法案に賛成していただいたらどうですかとおっしゃったから、それはにわかにはできないと。財源の問題の手当ても考えなければならないし、それはこの年末までの間に、私たち政権を担っている者として十分検討をさせていただいて、お答えをこの国会へお出しするということじゃないんですか。今、それができていないのに、法律にすぐに賛同しろ賛同しろとおっしゃっても、それは無理というものだと思いますよ。

松本(剛)委員 法案をお読みいただいていないのかなと思います、残念ながら。書いてあることは、その条文の削除と、計画的に今後の振興計画を立てるということが書いてあるわけでありまして、それを、おっしゃったように、ここで答弁をするだけなのか、法律としてきちっとした政治的意思に出すのか。しかも、片っ方、ここでは答弁でおっしゃるけれども、厳然として法律という形で今まだ行革推進が残っているわけですから、この問題をクリアされるのかしないのかということをお聞きしていたわけであります。

 今までせっかく教育に対する非常に真摯な大臣の態度が見えましたが、最後になってやはり財政優先の態度が出てこられたのかなと思って、大変残念に思います。(発言する者あり)馳議員、大変恐縮ですが、教育者ですから、やじはほどほどにしていただくようにお願いをしたいと思います。

 もう一つ、教育委員会についても、時間が限られていますから、お聞きをしたいというふうに思います。

 私たちは、首長に責任を持たせるべきだというふうに申しました。(発言する者あり)ちょっと、お静かに。よろしくお願いいたします。

 伊吹大臣の答弁でも、これは教員の処遇についてだと思いますが、教育委員会が今でもやる気と決断を持てばできるといった趣旨の答弁をされました。まさにそうだと思いますが、きちっと責任を持つということが、やる気と答弁をするというのに一番ふさわしい。我々は、やはり直接住民から責任を問われる首長に責任を持ってもらうということが望ましいと思っているわけです。

 もちろん政治的中立の問題というのはあります。しかし、このパネル、お手元に資料でもお届けをしていますけれども、直接住民に責任を負う。そして中立の問題は、我々は教育監査委員会というのを間にかませることで確保していきたいというふうに思っています。つまり、中立とそれからやる気、決断の問題、責任の問題というのは両立させなければいけない。当然、やり方はいろいろあると思います。今の政府の案の形は、基本的に今の教育委員会がある意味で独立している。あえてこの間にバツを入れさせていただきました。もちろん、任命権とか、かかわりがゼロとは言いませんけれども、基本的に独立しているという前提で今の仕組みが組み立てられているというふうに私は理解をしております。

 それで、今おっしゃったように、やる気と決断をするには、やはり責任を持てる態度が一番望ましいというふうに思うんですが、これについての御所見を、大臣ですか、承りましょうか。

伊吹国務大臣 今先生がおっしゃった、独立しているというのはどこに対して独立しているという意味なんでしょうか。

 私は、民主党案はある意味では非常に、失礼ですが、矛盾をしているんじゃないかと思いますよ。というのは、教育の最終責任は国にあるということをおっしゃっているわけですね。御党の文教政策の大御所であり、我々もその方が自民党におられたときにいろいろ教えていただいた西岡武夫先生は、義務教育の教員は国家公務員にしろという主張をずっとしてこられた方です。ですから、私はそれは一つの筋の通った考えだと思うんですよ。一方でその大前提があって、しかし、今現在教育委員会が担当している仕事を今度は地方自治体の首長にゆだねるという構成になっているわけですよ。

 ですから、国に最終的な責任があるんだけれども、地方自治体の首長が、現在教育委員会が持っている教育の執行権を維持される。ですから、私どもは、教育の中立性ということに対しては、先生はきちっと手が打ってあるとおっしゃいましたけれども、これはなかなか私は難しい問題を惹起すると思いますよ。

 そして、監査委員会の構成も、どういう形の構成になるのかということからすると、これは地方の有力者だとか何かの意図もいろいろ入ってくるだろうし、首長がどういう形で監査委員会を選ぶのか。そうすると、必ず最終的には地方議会をかまされるということになると思いますよね。地方議会の承認を経なければならないとか、そういうことになってくると思う。

 だから、今の制度であっても、地方自治の力が一〇〇%発揮されていれば、未履修でもいじめでもあれば、自分たちが任命をした教育委員会、自分たちが承認をした教育委員会が法違反をしているということに対して、議会が一〇〇%機能していれば、私はそれで十分機能できるはずだと考えているんですよ。

 ですから、首長というのは、先生は手が打ってあるとおっしゃったけれども、直接選挙で選ばれる行政の執行者であるだけに、その首長を推薦した政党のイズムというものが教育の実施にかなり出てくるというデメリットは、私は否定できないと思っております。これは、見解の相違とおっしゃられれば、それはそれで、考えが違うと思いますから、仕方がないことだと思います。

松本(剛)委員 残念ながら、根本的な部分で、選挙で選ばれたということに対する民主主義の認識と、それから各地方の分権ということについての認識が違うのではないかというふうに思わざるを得ません。

 これもごらんをいただいたらおわかりいただけるように、最後は国の部分はきちっとつながってくるわけですから。

 先ほどイズムの話をされました。菅代表代行との議論も、いろいろな御感想がおありだろうというふうに思いますが、ある意味でイズムの問題に近い議論もあったわけであります。

 選挙でしっかり選ばれた地方自治体が、地方だから今おっしゃったように一〇〇%機能していない、当てにならないと言ってしまえば、もう話は始まらないわけでありまして、何でも上から統制をするということそのものが、私から申し上げたら官の発想ではないかという気がいたします。

 私も民間の会社に勤めているときに、こういう……(発言する者あり)お静かに願えますか、自民党の皆さん。本当にこれだけ大事な議論をしているときに、そんなに冗談半分で笑えるような方というのが真剣に思えませんけれども。

 私も民間の企業にいるときに、ある取引先の会社が二つの大手のメーカーに部品を納めておりました。片っ方の大手メーカーは事細かく指図をしてくる、片っ方の大手メーカーは仕様と納期しか言ってこない。やはり現場としては、仕様と納期しか言ってこないところに対して一生懸命いいものをつくるわけですね。結果としては、その二つの大手メーカーのうち、一つはその後再建会社になりました、一つは世界トップの企業に今なっているわけであります。

 やはり、人にどう頑張ってもらうかというときに、きちっと分権の形でそれぞれ頑張ってもらうというのが民の発想であって、上から押しつけていくというのが官の発想だというふうに思います。

 今回は、今までなかった、いわば文部科学省からの命令なり要求権を復活されたわけですね。私は、焼け太りという言葉は、言葉のもともとの意味からしたらそうしょっちゅう使うべき言葉ではないというふうに思いますけれども、いじめ、未履修をテーマに、そのことの権限を取り戻すというのは、言うなればどちらにも責任があったような話ですし、文部科学省がやっていた時代に、もとの仕組みがあった時代にいじめがなかったのかといえば、そうではない。未履修の発端も、ゆとり教育の仕組みとかいうのは、発信源は言うなれば文部科学省の方針であるわけですから、文部科学省にさえ取り戻せば全部がうまくいくんだというような発想は違っているというふうに思います。

 ですから、教育委員会についても、もう一度、住民が直接目を向ける形というのをしっかりつくっていただき、我々は、最終的には学校理事会という形でしていただくべきだというふうに思っています。

 もう時間がなくなりました。あわせて、菅代行も申し上げましたが、我々の、地域を大切にするということは、突き詰めていけば、バウチャーとか市場原理というものと、やはりこれも先ほどの法律の矛盾と一緒で、当たってくるということもあえて申し上げさせていただいて、御所見があれば承って、私の質問を終わりたいと思います。

伊吹国務大臣 地方を大切にするということは、私は菅さんと意見が全く一致したなと思って聞いておりました。今も文教行政はそういう形で進んでおります。

 それから、むしろ、先生がおっしゃった細かに一々というのは、銀行管理をしているわけじゃありませんから、それは銀行が融資先を細かく見ているというのとは違って、自由は全くあるんですよ。あるんだけれども、議会が最後の、地方自治の力が発揮できない場合に、放置できない場合のことを今回書いているわけで、上から統制的にだとか、そんなことは全くありません。

 だから、きょうはテレビですから、国民の皆さんがどちらの主張が正しいかをよく見て、理解をしていただければそれで結構だと私は思っております。

松本(剛)委員 変える必要がないところだけ変えられているんではないかと思いますが、その感想を述べて終わります。

保利委員長 次に、藤村修君。

藤村委員 民主党の藤村修でございます。

 私は民主党の教育力向上三法案のそれぞれの提出者でございますのでそれには質問ができませんので、きょうは、政府提出の三法に対する質問を中心に教育の問題を考えさせていただきたいと思います。

 まず、安倍総理も、なかなか、格差社会だということを、きょうまでは、もし格差があればというふうな前提でいつもお答えになっておりました、このところは割にきちっと格差というものを認識いただいて、いろいろな分野で格差社会ということを多分御発言もされているものと思います。

 私は、きょうは、教育における格差ということをまず最初にテーマにしたいと思います。

 今、景気がよくなった、全体的には長期に景気が上昇していると言える中で、どうも国民的実感はやはり、そうなのかな。それは、何より所得が伸びていない、こういうことだと思います。

 いわゆる家計の所得は、六年前の小泉政権発足当時を一〇〇としたときに、今も実は一〇〇弱ぐらいでありますから。実は、極端な例でいいますと、私ども大阪でございますが、大阪のタクシーの運転手の皆さんの平均の所得が、小泉政権スタートのときに一〇〇、今現在五七、八になっております。半分に近く、非常に厳しい状態でございます。

 この問題はちょっとここの委員会でやる話ではないんですが、つまり、所得が今相当、職種によっても業種によっても本当に大きく差が開いてくる中で、家計の所得の差が子供の教育にもやはり当然影響してくる。きょうの朝、安倍総理は、裕福なうちの子たちがいい教育を受けるだけではいけない、ということは、逆に返せば、所得が低い家庭でも、特に義務教育、ちゃんと教育が受けられる社会を、これは国がやはり責任を持つ、こういうことであろうと思うんです。

 安倍首相に、まず冒頭、教育の分野で格差があれば、それはどういう種類の格差があるんだろうということを、御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、冒頭申し上げておかなければいけないことは、私、格差がないということを申し上げたことは一回もないわけでありまして、格差は常に世の中には存在する。そして、その格差が、不公平な結果生まれた格差であってはならないし、そして我々の許容できない格差になってはならないし、そういう方向で拡大してはならない。また、格差が固定化してはならないということを申し上げたわけであって、格差があればというのは、表現の中で使ったレトリックの一つであるというふうに御了解をいただきたい。

 そこで、時代がどういう時代になろうとも、教育において、両親の収入によって子供たちが受けることができる教育に格差が生じてはならない、これはまさに私はそのとおりだろう、こう思います。

 そして、教育の場において格差が発生するということはどういうことかといえば、親の収入の結果によって子供が受けることができる教育の水準が決まっていくということであれば、これは格差になってしまう。そしてまた、住んでいる地域において、その地域の自治体の状況によって提供できる教育の水準に差が出てくるとすると、これも格差であろう、こう考えるわけでございます。

 こういう格差が生じないようにしていくことは我々の責任である、このように思います。

藤村委員 今二つ挙げていただきました。一つは、親の所得や家計の状況で子供が受ける教育が差があってはいけない、あるいは受けられなくては困るということ。それから、住んでいる地方自治体の財政状況、これで、地方と、あるいは大きなところとで大きな格差があってもいけない。こういう二つを挙げていただいたので、その二つを順に一つずつ、ちょっと具体的に問題にしたいんです。

 その前に、今の格差問題で、安倍首相が常に再チャレンジという言葉をおっしゃっている。つまり、ニートとか、そういう今の若者の中で、もう一回ちゃんとチャンスを与えるという、このことは私も大事だと思います。

 ただ、実は教育という分野は最初のチャレンジであります。生まれて、幼児教育、小学校、中学校、まさにこれは最初のチャレンジ、今やもう高校まではほぼ全入に近い状況でございますので、高校までの普通教育において、今の二つの理由で差があってはならない、最初のチャレンジに差があってはならない、このように考えるわけでございます。

 一つ、まず具体的に、保護者、親の所得や家計状況での格差の問題で、実は今は、両親がいてちゃんと収入があってという、そこにも差があるわけですが、一方、いわば親を亡くした子たちがあります。これは、いろいろな理由で、事故であるいは病気で親を亡くし、遺児の家庭になっている。その遺児の家庭が、今、高校へも進学がままならない、非常に厳しい状況になっている。その原因は、一つはやはり、今の方針の中で、遺児年金のカットとか児童扶養手当のカットとか生活保護の母子加算カットなど、政策的な部分での影響もあります。

 ですから、そういう部分で、特に親を亡くして、あるいは母親一人で、母子家庭で、しかし頑張って、高校へも、できれば大学へも行きたいという人たちの希望をかなえる、これが今民間の事業で、あしなが育英会、あしながおじさんの募金運動がございます。このあしなが育英会というところで、全国的に今それなりに知られ、そしてそこで、たくさんの方々が高校の奨学金あるいは大学の奨学金を受けていらっしゃいます。

 このあしなが育英会に対しましては、実は安倍総理は非常に、陰徳というのか、陰ながら応援をしていただいております。ここの育英会というのは、原資は募金です、国民的募金です。昨年の十月、募金運動が始まったときに、この募金運動の学生たちのメンバーと安倍総理は面談いただいて、大変激励をいただいた。本当にありがたかったと言っております。また、昨年十二月には、世界の遺児、これは日本だけじゃない、世界の遺児の絵の展覧会、これにも安倍首相は御出席をいただいた。そういう意味では、非常に御支援をいただいていることに、私は、そのメンバーというか、学生時代からその運動に取り組んだ一人として、ここで御礼を申し上げたいと思います。

 そこが今、一つ壁を持っています。というのは、中学三年生の人たちに、来年高校へ行くにはこういう奨学金制度がありますよという広報の問題、ところが、ここに、その壁というのは、個人情報保護法という問題が非常に大きく今影響しております。

 これはちょっと順番を変えますが、個人情報保護法について、担当は高市大臣でございますので、まず、今、個人情報保護法が、内閣、国民生活審議会の個人情報保護部会ですか、ここで、来年が見直しの年になるということで、見直し論議がされているということでございますが、個人情報保護法の少し過剰反応、我々も時々、特に選挙において名簿が出てこないとかいうのも今非常に影響しているんですが、一般的にいいますと、例えば町内会で町内会の名簿がつくれない、連絡網がつくれない、あるいは民生委員の方々からも、市町村から提供されていた高齢者情報が法施行後は提供しにくくなり、されにくくなり、学校では、今学校の緊急連絡網ができないという声もたくさんあるし、ちょっと極端なところは卒業生名簿がつくれない、こういうこともあるのを私も耳にしております。

 つまり、個人情報保護法というのは、本来は、こう書いてありますね、目的のところに。「目的」、一条ですが、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」ですから、この目的に対して、やや過剰反応というんですか、あれもだめこれもだめみたいな動きが今非常に多くある中で、この状況を今どう審議されているのか、まずそのことだけ前提として伺いたいと思います。

高市国務大臣 藤村委員御指摘の点と同じ問題意識を私も持ちました。

 就任早々に、個人情報保護に対する国民の意識は確かに法施行後高まってきましたし、それぞれ企業でもお取り組みは進んできていると思うんですが、ただ、必要なときに、例えば人の命を守ったり身体財産を守らなきゃいけないときに必要な情報がとれない。火事のときに、高齢者の方ですとか障害者の方の情報が消防団にすら伝わっていない、また、伝えられないと思い込まれているというようなケースも多く耳にしましたので、まず、内閣府内で、国民生活局に対しまして、過剰反応の問題にきっちり取り組むようにという指示をいたしました。

 それで、昨年でしたら十八年の二月なんですけれども、現在関係省庁で、個人情報の保護に関係する省庁の連絡会議というものを持っております。その中で、いわゆる過剰反応への対応を含めて申し合わせを行いまして、内閣府の中でも、皆さんに判断していただきたいように方針を示しまして、各省庁で今お取り組みをいただいているというところでございます。

 また、内閣府のホームページでも、一般の方が、わからない、迷ったというときに見ていただけるように、QアンドA形式で、こういった場合は情報の提供は大丈夫ですよといったような形で掲載をさせていただいております。

 これを、必要に応じて適宜見直しもしていく、各省庁の取り組みについて改善もしていく、こういった申し合わせになっております。

藤村委員 具体的には、安倍首相に聞いていただきたいのは、全国の中学校の三年生の方々に、今、民間のあしなが育英会、これは広く一般の方の募金が集められて、それを奨学金で出す高校奨学金、その予約制度を、全国の中学校に、こういう制度があります、ですからおたくの中学校で母子家庭で困っている人があればぜひ名簿を下さいということになるわけですね。やはりそこへ通知するわけです。

 すると、これは、個人情報保護法ができる〇四年までが二千七、八百、三千ぐらいの名簿をちゃんと出していただいていたのが、二〇〇五年四月に個人情報保護法施行となりますと、すぐに、〇五年は一千四十六、〇六年は四百三十六。この表をたしか資料としてお出ししています。がた減りになった。

 これはつまり、親、おやじが亡くなって母子家庭も大変多いわけですが、やはりまず日常の情報になかなかうまくアクセスできていない、そして、だからそういう制度があるのにまたそれを利用できない。本当に二重の損失になっておりまして、このことについて、個人情報が、明らかにこの〇五年四月からがたっと落ちた、個人情報保護法、本当にこの一点に尽きるのではないかと思うので、この点についてちょっと所感を述べていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先生がずっとかかわってこられたこのあしなが育英会が多くの遺児に勇気を与え、そして支援をしてこられた、そしてまた、それをずっと支援してきた藤村先生に大変敬意を表したい、このように思う次第でございます。

 私の内閣の副長官の下村副長官も交通遺児でございまして、彼は、中学から高校に進学する際、この育英会の奨学金の存在を知らなかったわけでありますが、先生から言われて、そういう奨学金があるから君も高校に行けるよと言われて、この奨学金のおかげで高校に行き、そして奨学金のおかげで大学に進んだわけであって、この奨学金制度、あしなが育英会があったからこそ現在の下村官房副長官は存在する、こういうことではないか、こう思うわけであります。

 そこで、この個人情報保護法との観点において、やはりまだまだ知らない交通遺児の方々、御本人が知らないということも、下村さんも知らなかったそうでありますから、そういう例はたくさん恐らくあるんだろう、このように思いますので、そういう広報活動についても、我々もお手伝いできるならばお手伝いをしていきたい、こう思うわけであります。

 また、個人情報保護法との観点においては、あらかじめ生徒本人から適切に同意を得ること等により、学校が、奨学団体を含め第三者に対して生徒の個人情報を提供することは可能であるということでございますから、学校等はむしろ積極的に、許可をとった上において、個人情報保護ということで過度に萎縮することなく、育英会とも連携をとりながら、多くの遺児たちを支援してもらいたい、このように思います。

藤村委員 あらかじめ生徒の云々というときに、それがなくても、この法二十三条で、「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」ただ、次の場合を除くということで、「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要」であってという条項もございます。ですから、こういう民間の育英団体等、つまりは、本当に個人の利益になる、そしてそれを知らなかったことで大変また損失があるというふうな、そういう善意の団体等についてこの規定が適用できないものかどうか。

 これは担当大臣ですかね。

高市国務大臣 この個人情報保護法二十三条第一項三号でございますけれども、ここにあります「児童の健全な育成の推進」に関して想定しているものは、例えば、児童生徒の問題行動について児童相談所や学校などが連携して対応する際に、これらの機関が問題行動に係る児童生徒の情報を交換する、こういった場合ということになっているんです。

 今御指摘の、民間の育英団体が中学校に対してというときに、児童の了解がとれたらこれで何の問題もないんですが、どうしても、例えば遺児であることを知られたくないというようなことで了解がとりにくい、こういう場合にどうするかということでございます。実は、これは個人情報保護法制定時には、ちょっと、了解がとりにくいケースも含めてということでは、想定していなかったケースであるということを正直に申し上げなければなりません。

 これは、今後関係省庁と連携をいたしまして、実態を十分に踏まえた上で、どういった形で対応できるか、委員の御指摘を踏まえて検討させていただきます。

藤村委員 文科大臣にも、簡単なコメントで結構でございます。かつて、実は文部省時代には、文部省の添え書きといいますか、全国の中学校に、こういう制度があるからぜひ協力いただきたいというようなことを出していただいたこともございました。ただ、今、個人情報保護法の問題は検討していただくということですから、ぜひ御協力をいただきたいと陳情をしたいと思います。

伊吹国務大臣 法律の所管大臣において適切に対応していただくのが筋だと思いますが、「児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難」なときという、この本人の同意を得るのが困難だというのが、同意を求めたけれども嫌だと言ったのか、もう物理的に多くてとても無理だという法解釈なのか、この辺は少し問題があると思います。

 しかし、いずれにしろ、あしなが奨学金のような団体が悪用するとは思えないんですよ。しかし、善意でやったことが結果的にアリの一穴になって個人情報が変なことに使われるということがあると困りますから、それを担当大臣は今後の検討課題に譲られたんだと思いますから、何か行政的に添え書きをすればそういうものを限定的に出していただけるというようなことであれば、私どもは幾らでも協力させていただきます。

藤村委員 先ほど安倍総理は下村官房副長官の名前も挙げていただいて、私は、彼は学生時代からずっと関係がある、知っている人ですから、大変協力をいただいていること、また今後も協力をしたい、こういうことで、感謝申し上げます。

 次に、もう一つは、住んでいる場所の財政状況というか、これは破綻した自治体において、夕張市の話であります、義務教育の責任を引き続き担わせ続けることというのが相当苦しくなるのではないかと想像するわけです。

 そこで、憲法二十六条のひとしく教育を受ける権利を、まあ夕張市の場合と言ってもいいんですが、そこの義務教育において損なっていないだろうか、こういうことを、これは文部科学大臣にお答えいただきましょうか。

伊吹国務大臣 後ほど総務大臣からお答えがあるのが適切だと思いますが、一般論として言えば、先生御承知のように、教職員の給与は国と都道府県でこれを負担しておりますし、授業料は義務教育は無償でありますし、教科書も無償の供与をしているという状態でやっているわけですね。

 ですから、基本的には、地方自治というものの権利を主張する場合は、必ず失敗をしたことに対する義務が伴いますので、であるからこそ、議会の機能というのは極めて大切なんですね。

 夕張に任せておくだけではなかなかうまくいかないだろうという御判断が今ありましたけれども、総理からもいろいろ御指示があって、総務大臣がわざわざ現地にごらんに行かれて、教育等の部分についてはやはり総務省として最大限の協力をしようというお気持ちを私も伺っております。文科省としては、もう補助金はほとんど地方へ行っちゃって、三位一体で、どんがらのような役所になりましたけれども、若干残っている、例えばスクールバスの補助とか、こういうものを使って、もし学校が統合されるような場合には対応したいと思っておりますが、総務大臣は大変温かい配慮をしておられると思いますので、総務大臣から御答弁をお許しいただければと思います。

藤村委員 今文科大臣がお答えいただいて、教員は北海道で手当てする、義務教育国庫負担費三分の一がある。

 ただ、夕張市の今年度、この四月からスタートした年度の予算で、その中に教育費という項目がありまして、ここが、前年度からいうとマイナス五三・八%、平成十八年度より半分以下になっている。この教育費は、それは市が管理者として出す教育費で、例えば小学校就学援助費とか、中学校管理業務費とか、中学校校舎維持費等々と細かくあります。ただ、去年まで一〇〇だったのが、ことしからとにかく市の負担が五〇になりましたというと、それは明らかに義務教育のサービスが下がっている、こう言えると思いますね。

 ですから、義務教育においてはそういうことがないような手だてを、総務大臣及び文科大臣から御答弁をいただきたいと思います。

菅国務大臣 夕張市の再建につきましては、総理から、お年寄りと子供には十分配慮するように、そういう指示を受けまして、私、昨年、夕張を訪問してまいりました。

 今委員が御指摘のように、十九年度の予算でありますけれども、教育は三億七千四百万円、五三・八%減少しております。その中で、小学校費、中学校費は九千七百万、三二・三%減であります。

 主な要因は、市単独の事務職員や給食職員の五人の減少、あるいは、今後学校統合を視野に入れておりますので、新たに工事請負費だとかあるいは修繕費、これは当然減少しておりますし、清掃委託料の節減等であります。特に、小学校は四百十四人で今七校あるのでありますけれども、最終的に一校か二校に統合する、あるいは、中学校は二百四十二人で四校ありますけれども、これは一校に統合する、そういうことであります。

 こうした経費の減少というのは、効率的に事務を行っているほかの地方自治の団体、公共団体等参考にしながら、学校の管理費を中心に歳出の削減を図っておりまして、児童生徒の教育そのものの内容水準の低下にはつながらないものであります。そうしたことも、北海道から私は報告を受けております。

 したがって、義務教育をしっかりと受けることができるように、これからも配慮していきたいと思います。

    〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕

伊吹国務大臣 今総務大臣からもお答えをしましたが、六億九千万円という、三億七千万の減になっております。これはもう先生がおっしゃったとおり、予算だけ見ると五三・八%という大変な教育水準の低下なんですが、このうち、小学校費、中学校費というのは九千七百万なんですね。あと、社会教育と文化団体等への補助、これが二億二千七百万の減になっております。

 ですから、将来の統合を前提としてクラスの統合その他をやっておりますので、状況を見ながら、私どもの手持ちのお金で何かお手伝いできることは積極的にやらせていただきたいと思っております。

藤村委員 ぜひとも、教育の再生の特別委員会ですから、夕張は本当に再生しないといけないわけで、総務大臣及び文科大臣が本当に協力連携を深められて、適切な対処、対応をしていただきたいと思います。

 次に、政府提出の教育職員免許法一部改正、この点に絞ってきょうは質問をさせていただきます。

 政府の免許法一部改正、これは、端的に、簡単に言ってしまえば、教員免許状に十年の有効期間を設けて、そして十年ごとに三十時間程度の免許状更新講習を実施し、そして修了した者に免許状の有効期間を更新する。実は、免許法に関してはこれだけの法律の改正であります。これは一応、中教審答申を踏まえてということでございますが、昨年七月に出された中教審答申においては、実は、教員養成課程のことをやはり相当細かく答申されておりますが、ここには今回全く手がつかなかったということでございます。

 これは何か検討はされたのか、いや、今後改正案をまた出されるのか。教員養成課程のこと、一番大事なことですが、このことについて文科大臣の御見解をお示しください。

伊吹国務大臣 教員養成については、もう藤村先生に申し上げるまでもなく、絶え間なくやっておるわけですね。

 そして、今御指摘があった昨年七月の中教審の答申では、まずカリキュラムを改善していく、教職実践演習の必修化、それから教員養成を行う大学に対する、教える内容についての是正勧告、あるいは認定の取り消しの制度化等をしっかりやる。

 何よりも大切なことは、これは先生が御努力もいただいておるわけですが、二十年度より教職大学院をつくるわけですから、ここでこれらが相まって、ひとつ教員の養成に手厚く対応していきたいということを考えておりますので、特に目新しく今回どうするというのではなくて、着実に不断の努力を重ねているという点の御理解をいただきたいと思います。

藤村委員 ですから、今回の法律は、十年ごとの更新講習、修了認定、認定されなければ失効する。あるいは、現場の教員でない人も、今後免許を取る方は、教員免許というのは十年で有効期限があるから失効する。

 私どもも実は、この考え方で、そこだけが違う点です。私どもは、免許を与えて、別に、現場で教員でない人が一生自分は免許を持っているという、これは誇りと自覚というんでしょうか、そういうものは、十年たったからそれで失効ですと言わなくてもいいんじゃないか。

 必要なのは、現場の先生方にちゃんと十年ごとに更新講習が必要なんであって、今、現状でいいますと、いわゆる免許保有者は五百二、三十万人ぐらいです。現場で教員をしている人は百十万人程度ですから、残り四百万人超の人は別に何も、しかし、免許を持っていることがむしろ誇りと自覚といいますか、あるいは、親として子供を育てる、そういう立場でも自分は教員免許を持っているんだと言えますよね。

 そういう意味では、わざわざ十年の有効期間を設けるというところが実は私どもの案と違う点でありますので、この点、どっちがいいのか御判断いただきたいと思います。

 ただ、この更新制度導入の基本的な考え方が、中教審から示されている「教員として必要な資質能力は、本来的に時代の進展に応じて更新が図られるべき性格を有しており、教員免許制度を恒常的に変化する教員として必要な資質能力を担保する制度として、再構築することが必要である。」、この答申を踏まえて今回出されたのを確認だけさせていただきます。

伊吹国務大臣 今、先生、これは確かに免許を持っていて十年現場にいる人を対象にしていますが、しかし、現職教員でなかった免状の所持者、いわゆる今のお言葉で言えばペーパーティーチャーについては、更新の講習を実行できないから有効期間が過ぎた時点で一たん免許が失効しても、新たに教職につくという場合に研修を受けられれば、そこで免許は復活するわけです。ですから、いつでも自分は教壇に立てるという誇りをお持ちいただけるということは、私は間違いないと思います。

 ただ、これはやはり予算の問題その他もありますので、まず、やはり教壇に立って児童と向かい合っておられる方々の資質の向上というのか、十年ごとの新しい研修による能力維持をしていただきたい、そこは全く同じ考えでございます。

藤村委員 今答弁されたので、例えば、今後の免許者が十年で失効します、それは、決して学校の教壇には立っていないけれども、塾の講師をしている、こういう場合、たくさんあると思うんですよね。その人は、わざわざ現場の教員になるんじゃないけれども、塾の講師の一つのステータスとして免許を持っているんですよ、でも十年たったらなくなりましたというのではちょっと困るんじゃないかなという現実的な問題を一つだけ提起しておきます。

 次に、私さっきちょっと読み上げました中教審答申、「教員として必要な資質能力は、本来的に時代の進展に応じて更新が図られるべき」という、あと続きますが、ここの「教員として」というところを、例えば医療従事者の医師、医師について、医師として必要な資質能力は、本来的に時代の進展に応じて更新が図られるべきもの、こう読んだときに、これは厚生労働大臣に伺うんですが、至極当然だと思いますが、いかがでしょう。

柳澤国務大臣 お医者様、これは我々の健康、生命に直接関連する職業でございまして、その能力、資質というのは我々の生活にとって重大な影響がある、これは申すまでもないわけです。したがいまして、安心した医療、それからまた国民から信頼される医療ということを考えたときには、まさに、時代の進展というか、日進月歩の医学的知見というものに常に通暁していなければならない。

 そういう意味では、中教審の答申であるそうですけれども、教員以上に、常に自分の知見というものを一番今日的なものにしておかなければならない、そういう意味で自己研さんに努めていなければならない、そういう性質の職業であることは間違いないということでございます。

藤村委員 今回の中教審答申は、確かに、教員免許更新制の導入ということでの基本的な考え方を示されたんですが、これは、私、非常に大きな範囲に今後及ぶ。今厚生労働大臣は、これを医師というふうに読みかえても、それは非常に重要なことだとおっしゃいましたので。

 では、この医師の免許制度については、更新制度、時代の進展に応じて更新が図られるべきということで検討をされているんでしょうか。今後どうなるんでしょうか。

柳澤国務大臣 私は、ただいまは、医師たる職業というもののある意味の条件を申し上げたわけでございます。

 それでは、しからばすぐにそれが免許の更新制というところに結びついていくかといえば、それは必ずしもそうでないわけでございまして、先ほどの答弁でも申し上げましたように、お医者様というのは、常に自己研さんに努めている、あるいは情報の受け手として、常に一番最新の医療技術あるいは医薬の情報をしっかり受けとめていなければならない、そういうことでございます。

 したがいまして、例えば、今の医療の世界でどういうことが行われておりますかといいますと、まず、最寄りの医師会では生涯教育制度というようなことで資質の向上に向けた取り組みが行われておりますし、また専門医の制度としては、各学会において更新の取り組みというものも行われているということで、いわば、それぞれの関連する団体が自発的にこうしたものを積極的に進めて、国民の期待にこたえられるような医療水準の維持というものに努力をしているということでございまして、それが直ちに医師免許制度の更新制の問題に結びついているわけではない。

 もちろん、この更新制ということについて御意見があることはよく承知いたしておりますが、そういったことを考えるに当たっては、非常に多くの問題について、これをこなさなければならないということで、私といたしましては、先ほど来申しているような、今、自己研さんあるいは各先生方の属する団体による自主的な取り組みというもので、十分、今日的な、常に新しい知見の吸収に努めるという体制は維持できているものと考えております。

藤村委員 私どもも、十年ごとの免許更新制度と言える十年講習修了認定という制度でありますが、このたび踏み切ったわけであります。

 今、厚生労働大臣のお答えは、しかし医師については自己研さん、そしてそれぞれの団体による研修。それを言いかえますと、教員についても自己研さんあるいは地方教育委員会の研修とで、同じように言いかえられる。

 となると、これはしかし、今回教員の免許制度更新に踏み切ったことは実は非常に大きな社会的な影響になるということを我々は少なくとも政治的に踏まえた上で、この制度を実施していくんだという覚悟がなければならないと思います。

 教員も、この前の政府答弁を聞きましたときに、いわゆる国家資格というふうにおっしゃいました。国家資格と言われている中には、医療従事者で、今の医師や歯科医師や看護師や薬剤師や云々、それから弁護士、これも国家資格、あるいは隣接法律職では海事代理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士云々、あるいは会計では公認会計士、工業系では技術士、技能士、危険物取扱者等々。

 ですから、これは内閣全般にわたる免許制度更新というものの本当にきっかけというか皮切りでありますから総理大臣に聞かないといけないんですが、この国会、この内閣で教員の免許制度更新を導入する、大変大きな一歩を踏み出すわけでありますから、その他国家資格とされるさまざまな免許制度の更新制度について今後どのようにお考えになるのか、御意見をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、資格といってもさまざまな資格があるわけでありまして、ただいま委員が御指摘になったように、いろいろな資格、国家資格も存在をするわけでありますが、各資格の性格に応じまして資格者の能力の維持向上のための措置がとられるべきものである、こう考えているわけであります。資格制度が適切に機能するためには資格者の質の確保が重要であることは言うまでもありませんが、今後も、社会経済情勢の変化等も踏まえて、資格者としての能力が担保されるための取り組みを進めてまいりたい、こう考えているところであります。

 まずはこの法、まずは、我々は、教育再生という中にあって教員の免許更新制、おおむね国民の皆様からは御理解、御支持されている、このように理解をしているわけでありますが、子供たちの将来、未来に極めて大きな責任を有する先生方にまず免許制度を更新するということによって、さらに誇りと自信を持って教壇に立っていただきたい、このように思います。

    〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕

藤村委員 一つ、さっき飛ばした質問がありまして、でもこれが最後の質問になろうと思いますが。

 それにしては、今、教育再生につながるというふうにおっしゃった教員の免許更新制度が、しかし、それだけでは再生と言えるのかな。このたび出された法律案の提案理由説明で、免許制度のことの部分だけを読みますと、「学校教育の成否は教員の資質、能力に負うところが大きく、」なるほど、そのとおりだと思います。「このため、教員が、社会構造の急激な変化等に対応して、最新の知識、技能を身につけ、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得られるようにする必要がある」。ただ、免許制度、十年更新だけで、教員が社会構造の急激な変化に云々してまさに自信と誇りを持ってというほど言えるのかな。

 やはり、教員制度そのものを、これは安倍首相が時々おっしゃる戦後レジームからの脱却というわけですから、今までの教員制度のまさに養成の部分から見直す、考え直す、ここに手をつけないと、これが我々の法律でございますので、そこのところを我々の法律として今回提出し、政府と同様の十年講習修了認定という部分は確かに入れましたが、何より教員養成課程に手をつけないというか、入り口のところとさっき答弁者が言っておりましたが、これでないと教育の再生というほどのものではないんじゃないかと私は思うんですが、これは文部科学大臣、担当大臣からの答えになるかと思います。

伊吹国務大臣 御提案は非常にいい御提案だと思います。野田筆頭理事から、私が文部科学委員会でどうもその方がいいなという顔をしていたという御質問をいただいたほど、なるほどいいなと一瞬そういう顔をしたのかもわからないんですが、率直に言うと、今のこの民主党さんの案だと、教員のローテーションというか、定年でやめていく人たち、それからその経費、先ほど御党の政審会長とお話をしたように、そういうものを総合的に考えながらフィージブルに動いていくかどうかということをやはり我々は考えなければいけないんですね。

 御提案になっていることは、私は、それができれば一番結構なことだと思いますが、現実との間のバランスをとりながらやっていくということになると、一瞬いいことだなと思った顔がやはり曇ったというのが私の率直な感想でございます。

藤村委員 私、きょう午前中の答弁でちょっとお答えしたとおり、昭和四十九年当時に人材確保法ができたわけですね。先ほども名前が出ておりました、当時、自民党の文教の中心のメンバーであった我々の先輩が、実はその当時、人材確保法というのと並行して教員の修士を考えたそうです。三十年以上前です。

 その後のこの時代の、三十年を経ているわけですから、これは確かに現実性の部分でいろいろ詰めないといけませんが、お金もそれなりにかかってくるでしょうが、自民党の中で人材確保法と教員修士を考えられてから三十数年たっている、それをむしろ我々が、今回は野党から提出しているわけですから、本当に真剣にとらえ、考えていただくことを望みまして、終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 安倍内閣の教育改革の柱の一つである学力テスト問題で質問をいたします。

 全国一斉の学力テストが、来週、四月二十四日実施されることになっております。小学校六年では算数と国語、中学三年では数学と国語、全国すべての学校ですべての児童生徒が受けることになっているわけでございます。

 そこで、まず総理に伺いますが、この学力テストは何のために行われるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 義務教育につきましては、全国どの地域においても一定水準の教育を受けることができるようにし、そして、その成果を把握、検証して、これに基づいて改善を行う仕組みが必要である、私はこう考えております。

 全国学力・学習状況調査は、児童生徒の学力や学習状況を把握して、そして分析をし、教育指導の改善、向上を図ることを目的としています。これによって義務教育の質の保証が図られるものである、私はこのように考えています。

石井(郁)委員 そこで、この学力テストの結果は公表し、また、学校に順位をつけたり、ランクをつけたりすることになるのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 全国の学力・学習状況調査においては、個々の市町村名や学校名を明らかにした結果の公表は行いません。そして、学校間の序列や過度の競争をあおらないように、十分我々は配慮をしなければならない、こう考えています。

 一方、教育再生会議の第一次答申で提言をされておりますとおり、各学校が説明責任を果たすために、保護者に対して自校の学力や学習状況とその成果や改善計画を説明することは重要であろうと思いますし、また、規制改革・民間開放の推進に関する第三次答申においては、調査結果については、学校ごとの教育施策や教員自身の指導方法の改善に資する資料として活用すべきとしているところであります。これらの答申の趣旨を踏まえまして、調査結果による学校のランクづけではなくて、それぞれの学校が自校の学力等の状況を把握し、向上させることを促していく必要はある、こう考えています。

石井(郁)委員 調査結果の公表は行わないということは御答弁されたと思います。

 ところで、総理は、御自身の著書「美しい国へ」の中で、全国的な学力調査を実施し、その結果を公表するべきであるというふうに書かれています。結果を公表するということは総理のお考えではありませんか。

安倍内閣総理大臣 私は、申し上げましたように、この学力テストは、全国の学力の水準を把握して、そしてまた改善を図っていくためのものであって、ただ、もちろん調査をやるだけでは何の意味もなさないわけでありますから、その調査の結果を各学校に伝えていくということは当然大切でしょうし、また、父兄の皆さんが、一体自分の子供が通っている学校はどうであろうということになれば、それは当然知ることができるということになるのではないか。しかし、最初に申し上げましたように、ランクづけ等々をするのはふさわしくない、こういうことでございます。

 私が公表と申しましたのは、結果がどうであったかということを学校あるいは父兄が知ることができるということは重要ではないか、こう考えたところでございます。

石井(郁)委員 ランクづけをしないということですが、やはり、公表するということはランクづけにつながるということなんですよね。ですから、総理は、やはりこの中でお書きになっているということは、今の取り組みと違っているというふうにはなりませんか。また、これは撤回すべきではないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国全体と、また都道府県では公表しておりますから、そういう意味では、私の趣旨にのっとって公表、そういう意味での公表は行っている。つまり、都道府県がどうなっているということについてはしているわけでございまして、ですから、個々の学校においてはそういうランクづけは行っていない、こういうことでございます。

 要は、最初に申し上げましたように、御両親が、自分のお子さんが通っている学校はどういう状況にあるのかということは知ることができる、それは極めて大きなことであって、であるならば、やはり工夫をしてもらいたいということにつながっていく、そしてみんなで改善の努力も行っていくことは十分に可能ではないか、こう考えております。

石井(郁)委員 都道府県や市町村がどのように行うかということと国がどうするかということは全然おのずから別なことでありまして、今、国の対応をお聞きしているわけでございます。

 なぜこのことをお尋ねするかといいますと、これは二〇〇五年の十二月、規制改革の民間開放推進会議第二次答申ではこのように述べております。全国的な学力到達度調査について、「学校に関する情報公開の一環として学校ごとに結果を公表する必要がある。」ということを明確に述べていますね。それから、先ほども総理がお触れになりましたけれども、教育再生会議でもそういう議論をしているところであります。

 結果を公表するということと学校選択制ということとがリンクされて議論されているわけでございますのでお尋ねしているわけでありまして、総理は、この答申部分は否定されるのでしょうか。また、国として結果は公表しないということは断言できますか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたのは、国として、国全体と都道府県の状況については公表いたします。これは公表するということで私は申し上げたわけでございまして、いわば都道府県の状況については、個々の学校がどうなっているかということではなくて、例えば神奈川県はこういう状況になっていますよと、神奈川県全体については公表する。あるいは、国全体についてはどういう状況になっているかということは公表するわけでありますが、学校ごとのランクづけはしないということでございます。これも申し上げておかなければならない。

 しかし、これは何のためにこの学力テストを全国でやっているかといえば、それは、やはりそれぞれの学校で学力の状況が落ちていれば、その改善の努力をする。いい学校があれば、そのいい学校でやっていることをそういう学校にさらに活用してもらうということは十分に可能であろう、こう思うところでございます。

 また、規制改革・民間開放の推進に関する第三次答申においては、調査結果については、学校ごとの教育施策や教員自身の指導方法の改善に資する資料として活用すべき、このようにされているところでございます。

石井(郁)委員 確認をしたいんですけれども、個々の学校がどうかということをお知らせするということは当然だと思うんですが、最初の御答弁では、市町村名、学校名を明らかにした結果の公表は行わないということだったと思うんです。そこははっきりしていますよね。

安倍内閣総理大臣 それははっきりしておりまして、個々の市町村名や学校名を明らかにした結果の公表は行わない。しかし、先ほど申し上げましたように、国全体や都道府県の状況については発表する、こういうことでございます。

石井(郁)委員 私はそのことを確かめたわけでございまして、個々の市町村名、学校名は公表しない、それはやはりランクづけにつながるからなんですよ。そのことと総理がお書きになっていることとは違うんじゃないですか。矛盾していませんか。ここはいかがですか。どちらが正しいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ですから、私が書いたことは、まず、四十年間行われていなかった全国の学力調査を、テストを実施する。そして状況を把握し、それを学校に対して、あるいは学校を通じて父兄に対して公表していく。そして全体を把握しながら、それを改善に生かしていくことが大切ではないか。それが全く行われなかったわけでありますから、それをやっていくべきであろう、こういうことでございます。

 それと、私は独裁者じゃありませんから、私が言ったことを全部やるということではなくて、当然、教育再生会議の中でいろいろな議論を経た中において決めていく。そして、さらに党においての御議論をいただいて法律にしていく、こういうことでございます。

石井(郁)委員 結果は一切公表しないということは断言されませんでした。だから、将来の方向としては、やはり非常にあいまいな御答弁だったなというふうに思うわけです。

 そこで、何が問題かと申しますと、教育再生会議では、先ほども触れましたけれども、学力テストの結果を公表する、学校選択の判断基準にするということが述べられているんですね。そういう議論がされているということを私は問題にしているわけでございます。だから、テストの結果を公表する、そして学校選択制がリンクするということになりますと、学校教育、子供たちがどんな状態に置かれるだろうかということなんです。

 既に多くの自治体でもうテストが行われています。そして、公表されているところもあるわけですよ。

 東京の場合ですと、幾つか聞きますけれども、やはり点数を上げたいということのためにテスト対策が横行する。過去の問題集、過去問といいますが、ドリルなどのテスト漬けの毎日だ。子供たちはやはり追い立てられている、土曜日も夏休みもテスト対策で追われている。大阪のある市でも、テスト漬け、評価漬けにさらされている。学力テストの結果が悪くてお父さんに叱責された小学生が、学校に行きたくないというふうに言ったことも聞いています。学校ごとの平均点を発表するわけですから、部活動で学校ごとの試合が行われますので、あなたのところは最低だと言われたり、それからまた、学校の中では、あなたがいるから成績が下がるんだと言われたりして、やはり子供たち、深く心は傷ついているわけですよ。

 総理、こういう問題、どうですか。子供たちからやはり学ぶ意欲を奪うようなテスト漬けになっている。この問題についての実態をどうお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 この全国学力テスト以外にも、テストというのは恐らく学校でやっているんだろうと思いますよ。そこで私もおやじに随分怒られたことがあります。先生は優等生だったから、そういう経験がないかもしれませんが。

 しかし、全国のテストについては、これは、それをそれぞれの氏名で序列を発表するわけでもありませんし、学校の序列を発表するわけでもないということを申し上げておきたい、このように思います。

石井(郁)委員 私どもは、学力テストは、児童生徒の学力や学習状況を把握、分析すること自体は必要だというふうに思っております。ただ、問題は、その目的を達成するために全国一律のいわば悉皆調査、こういうことが必要なのかという問題なんですね。数%の抽出調査で十分ではないのかというふうに思います。よく言われる学力世界一のフィンランド、これは五%の抽出調査で行われているわけでございます。だから、これで十分ではないのか。全員参加となると、必ず学校や子供たちのランクづけにつながっていく、こういう問題はやはり見ておかなきゃいけません。

 そこで、一つ、学力テストに参加しないことを表明している愛知県の犬山市という自治体がございます。注目されていますので、ちょっと紹介したいと思うんですね。

 なぜ学力テストに参加しないのかという本も出されておりますけれども、そこでは、勉強は競い合いではなくて学び合いによってつくものであるということです。そうすることで、子供たちがやはり教え合うことで考える力をつける、人と人とが助け合うことを学ぶ、こう言われています。それからまた、難しい教科は一クラス十五人程度だ、丁寧に教えている、結果として成績も上がっているということであります。

 どうでしょう。こうした犬山方式というのを支援することが政府のやるべきことではないのでしょうか。総理、伺います。

安倍内閣総理大臣 この全国学力・学習状況調査については、今先生が御指摘になった犬山市教育委員会を除いたすべての教育委員会が参加をすること、こうしているわけでありまして、犬山市は極めて例外の例ということは申し上げておかなければならない、こう思います。

 同市の教育委員会においては、教育についてさまざまな取り組みを行っているようでありますが、その成果を全国的なかかわりの中で把握、検証する必要があるのではないか、こう考えております。

石井(郁)委員 二十四日に予定されていますこの全国一斉学力テストは、昨年と今年度、両年度含めて予算は九十五億円にも上っています。今述べましたように、子供たちをやはり非常に傷つける学校序列化につながりかねない、私はこういう一斉学力テストはやめるべきだと思います。ましてや、学力テストとリンクさせて児童生徒が集まる学校には予算を重点的に配分するということも議論されているやに聞いておりますので、こういうことは断じて行うべきでないということもこの機会に強く申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、次の問題なんですが、この一斉学力テストの実施に当たりまして、さらに重大な問題が生じております。

 総理、このテストは、学力テストだけではなくて、児童質問紙、生徒質問紙、そして学校質問紙が配られ、記入することになっていることは御存じでしょうか。きょう資料をお配りいたしましたけれども、昨年の予備調査で配られ、実施されたものであります。

 小学六年の児童質問紙にはこういうふうにあります。「みなさんの学校や家での勉強や生活の様子についてたずねるものです。」「回答用紙に、学校名、男女、組、出席番号、あなたの名前を書いてください。」ということになっているんですね。

 それで、この項目でございますけれども、例えば「学習塾では主にどのような内容の勉強をしていますか。」、学校の勉強より進んだことをやっている、よくわからない内容もやっているというようなこと。おけいこごとはどんなことに通っておりますかとか、携帯電話で通話、メールはどのくらいしていますか等々がありますね。

 それからさらに、家庭の状況を聞くこともありまして、「あなたは、家の人と次のようなことをしますか。」と。当てはまるものを右の中から一つ選んでください。「朝食をいっしょに食べる」「いっしょに外出をする」「いっしょに話をする」「いっしょに運動・スポーツをする」というところで印をつけることがあるんです。こういう質問項目が小学校で九十二項目です。中学校で百十一項目ございます。

 総理、こういう質問も入っているということは御存じだったでしょうか。

安倍内閣総理大臣 二十四日に実施する全国学力・学習状況調査において、教科に関する調査に加えて、こうした児童生徒や学校に対する質問紙調査をあわせて実施するということは承知をしております。これによって児童生徒の学習意欲や学習方法、学習環境や学校における指導方法に関する取り組み等の現状を把握することとしているということではあります。

 また、この質問紙調査の結果と学力との相関関係の分析を通じて、国や各地方自治体、各学校がそれまでの教育指導や教育施策を十分に検証して、その改善につなげていくことが重要である、こう考えております。

石井(郁)委員 個人名を書かせるわけですから、個人情報の収集ということになりますね。しかも、これは学力テストの調査の目的を超えているんじゃありませんか。生徒の個人情報あるいは家庭生活情報を引き出そうとしているわけでしょう。私は、このような情報をとるのであれば、本人及び保護者の同意が必要だというふうに思うんですね。では、保護者の同意は得ているんでしょうか、お聞きします。

伊吹国務大臣 先生、先ほど来、るる総理から御答弁申し上げておりますように、今先生がおっしゃった生活習慣その他の調査の結果と本人の学力のあり方というのは、これは日本の教育のために大変大切な要素なんですね。それを把握した上で、これから教育委員会はどういう形の指導をしていくか、どういうふうに児童を教育していくかという大きな公益のためにお伺いしていることであって、決して何か個人の情報だけを把握するためにやっているわけではありません。

 したがって、まず個人情報の取得に当たっては、先ほど来、高市大臣も藤村先生の御質問に答弁をしておりましたように、あらかじめ本人に利用目的を明示することは求めておりますが、保護者の同意までは求めていない。それから同時に、今回の調査では、その利用目的について実施要領を公表しておりますから、どういう調査の内容なのかということはもう十分御理解をいただいていると思います。利用目的を生徒本人にも十分理解してもらうように説明をしろということは、教育委員会と学校に文部科学省としては連絡をいたしております。

石井(郁)委員 私は、今、個人情報との関係で伺っているわけです。これは本人の同意を得なければならないと法律上なっています。通知をしている、広報しているということとは全然別の話です。同意を得ていないということですよね。

 そうすると、これは法律の十六条でも、あらかじめ本人の同意を得ないで、そういう利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないとしているわけですから、私は大変問題だということをまず指摘させていただきます。ここは非常に問題です。これは民主主義の基本のルールにかかわる問題ですから、私は大変問題なことをされているということを強く申し上げておきたいと思います。

 それで、この実施が、特に採点、集計などが、小学校はベネッセです、中学校はNTTデータが行うことになっております。ともに受験産業であります。こうした調査を民間の受験産業に丸投げするということに、今大変国民の間で不安が広がっているわけですね。

 既にベネッセから、こういうことが行われているんです、各学校の学校長、学力調査担当先生あてにこういうものが配られております。これもきょう資料で皆さんに配付させていただきました。こうなっております。ベネッセの総合学力調査小学校版というものですが、こう書かれております。「小学校六年・中学校三年生を対象とした全国学力調査が本年四月二十四日に予定されておりますが、ベネッセコーポレーションの総合学力調査を学校様独自でもご実施頂くことで以下のことを実現できます。」と。四月五日から始まっているんですね。一人につき七百円で行うと。こうなると、これを受けた方が点数が上がるんじゃないかという感情は働きますよね。

 私は、文科省が行うことを見越して学力テストに先行してこういう企業が売り込みを図っているということが果たして許されるのかという問題、重大問題ではないのかと総理に伺います。もう時間がありませんので、総理に。

伊吹国務大臣 簡単にお答えします、あすの赤旗に私が本人の同意を得ていないということを認めたと書かれると困りますから。

 御本人には説明をし、御本人が同意をするから受けておられるということだけは御理解ください。

安倍内閣総理大臣 全国学力・学習状況調査は、調査問題の発送、採点等の一部作業について民間機関に委託して実施することといたしています。そして、その際、委託先に対しては、本調査を受託した事実や受託によって得た成果を不正に利用して営業行為を行うことがないよう厳しく対処することが必要である、こう認識をしています。文部科学省においては、このことを委託契約書において明記をして厳正に対応していると聞いております。

石井(郁)委員 実は、事態はそうではなくて、政府は厳正に対処しているとおっしゃいますけれども、このベネッセの方は販売活動というのは問題ないと引き続いて行っているんですよ。こういう実態がございます。

 それから、伊吹大臣がおっしゃいましたけれども、実施するということと、本当に本人の同意を得てやっているのかというのは別なことですから。本人の同意は、恐らく各学校、いろいろまだまだされていない、あるいは教育委員会もいろいろ困ったことがおありだろうというふうに思うんですね。文科大臣のそういう答弁で終わらすわけにはいかないと私は思っております。

 本当に、もう時間が参りましたけれども、学力テストをめぐっては非常に重大な問題がございます。引き続き教育三法の審議の中でも検討していかなきゃいけないということを申し上げまして、質問を終わります。

保利委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 安倍総理に伺いますが、総理は、教育再生、再生という言葉を意識して使われているんだと思います。中曽根内閣の時代あるいは小渕内閣の時代に教育改革と言われましたね。改革という言葉は前内閣で大分使われました。ただ、再生という言葉に私はちょっと違和感を感じるところがありまして、教育というものがかなり危機に瀕していて、ぎりぎりのところに来ているか、それを超えたか、こういう状況認識なのか。私自身の認識は、いろいろな問題はあるけれども修復が十分可能である、こういう認識なんですが、再生という言葉の総理なりの意味づけについて伺います。

安倍内閣総理大臣 私は、教育改革という言い方もする場合もありますが、基本的には教育再生、こう申し上げております。

 近年、子供たちの学ぶ意欲や学力が低下をしてきている、こういう指摘があるのは事実であります。そして、いじめの問題やあるいは未履修の問題がありました。今のこの教育の状況を何とかしなければならないというのは、多くの国民の一致した認識ではないだろうか、このように思うわけであります。

 しかし、もともと日本というのは、教育においてはすぐれたシステムを持っていて、成果を上げている、こう自負もしていましたし、評価もされていたのも事実であります。現在でも、多くの途上国から、ぜひ日本の教育の仕組みを自分たちも学びたい、こういう声があるのも事実だろう、こう思いますし、また、江戸時代にも寺子屋の制度が機能していたのも事実だろう。それがその後の明治の発展にもつながっていった、こう言われているわけであります。

 そういう意味におきましては、もともとそういう資質があり、そういうすぐれた仕組みを持っていたわけでありますから、今このようにいろいろな問題を抱えているけれども、必ずまた世界に冠たる日本の教育と言われるときが来る、そしてそういう日本にしていきたいという思いを込めて、教育再生、こう申し上げているわけであります。

保坂(展)委員 今言われたいじめの問題あるいは未履修の問題、これは前回、教育基本法の審議のときに問題になりました。約半年前になりますか、私は、総理に、あるいは文科大臣に、九九年以降、いじめの自殺のケースがゼロであるという文部科学省の報告、これはちょっとおかしいんじゃないかと。総理からも、これは、おかしかった、おかしいのではないかというふうに受けとめる、こう答弁をもらいました。

 そして、文科省でその後、私もとりあえず取り急いで、報道などにある、九九年以降、いじめが理由と思われるケースについて提出をいたしました。それを中心に調べていただいたということなんですが、こちらの方のパネルを用意しました。

 文部科学省の追跡調査の結果が一月に発表されました。自殺した児童生徒へのいじめがあったケースが十四件という、やはり相当あったなという印象をまず持ちましたけれども、その後を見ていくと、いじめが主たる理由としているものについて三件、いじめが主たる理由ではないが理由の一つとして考えられるもの六件、いじめが自殺の理由とは考えられないものが三件、いじめが自殺の理由と考えられるか否かが不明であるというものが残り二件、こういうデータが報告されました。

 私は、率直に言って、文科省に意見を言いました。というのは、これは相当前に亡くなっているケースもあるんですね、この十四人の方々。もう一回再調査をしてみたら、いじめが理由だったというふうに認められた方が三人ですが、いじめはあったんだけれどもほかの理由だった、いじめが理由だったけれども主な理由じゃない、こういういわば再調査の報告というのは遺族にとってどんな思いだろうかということを御意見しました。

 やはり、その後の新聞記事などを見ると、文科省の再調査、確かにあったけれども、結局、市の教育委員会や県の教育委員会がかつて調べたことを踏襲しているじゃないか、この程度なのかという声も遺族からありますね。これは、文科大臣、どういうふうに受けとめますか。

伊吹国務大臣 先生からもいろいろお話があって、そして、今の法体系からいくと文部科学省において直接調べるわけにいきませんので、各教育委員会に調査をお願いした。

 従来は、御承知のように、いじめによる自殺があるかということを聞いていたわけですが、複数の回答を可能とする調査票に変えたわけですね。そして、その結果、先ほど来保坂委員がおっしゃったように、幾つかの回答が出てきたという、そのことをありのままに御報告したということでして、ありていに言えば、気の毒に子供が自殺に追い込まれる状況というのは極めて複雑で、それは必ずしも一つの理由ということは特定できないことはもうよく御承知のとおりですから、いろいろな選択肢をつけて伺ったわけです。だから、いじめかどうかわからないというのはまさに回答どおりの公表をしているわけで、いじめによって亡くなられたんだということを無理に発表するというわけにはいかないんじゃないでしょうか。

保坂(展)委員 半年前に私の方は、いじめ自殺ゼロだけれども、友人との不和とか、あるいは世の中が嫌になる厭世、こういう数字が大変多かったんですね。ですから、これはもう一回調査するべきじゃないかということを申し上げました。

 総理にお聞きしますけれども、今回、再調査の中で、実は、きもい、うざい、あっちへ行けと言われながら、学校生活のさまざまな場面でそういうことがあった、それから、意味もなく本人の名前が呼ばれたり、からかわれたり、話しかけても無視をされたり避けられるというようなことがあったという、その子のケースですけれども、結局、学校問題で友人との不和ということを今回の文科省の再調査ではまた挙げているんですね。

 私は総理に根本の姿勢について伺いたいんですが、各県とか市の教育委員会にも問題があったと思いますよ、いじめ自殺ゼロというふうにしてきたのは。しかし、文科省にもやはり問題があったんじゃないか。つまりは、いじめ自殺ゼロという、本当にそれが事実であればいいですよ。しかし、事実ではない。ゼロとしておけば問題がないんだ、そういう事なかれ主義がやはり文科省にもあったんじゃないか。その点についてはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆる、この調査については、教育委員会から上がってきているものを文部省が取りまとめて発表しているということでございます。その結果を見れば、これは少しおかしい、こう思わなきゃいけないわけでありますが、しかし、それは意図的に文科省がゼロにしていたということではなくて、集計の結果であった。しかし、これはおかしいのではないかという感覚を持つのは、これは必要ではないか、このように思います。

保坂(展)委員 去年のタウンミーティングの議論で、松江市というところに住んでいる方が、どうもこのゼロという統計はおかしいと。そして、文科省までわざわざ上京して、ゼロじゃないんじゃないでしょうか、警察庁の統計ではこれだけ亡くなっていますよ、統計を警察庁とすり合わせてくださいねと言って、また、タウンミーティングも自分は出たい、そのことを文科大臣に直言したい、こういうふうなことを言ってきたという方にも私もお会いしました。

 文科省として、今回、法案の中で、それこそ是正だとか指導措置をする、こういうケースとして、いじめなどを放置して何ら策をとらない場合というのを伊吹大臣挙げられていますけれども、逆に、文科省自体がそういうことをしているときは、では、どういうふうにこれは考えるんですか。

伊吹国務大臣 文科省自体がそういうことをしているということは、現在の日本の教育の体系からはあり得ないんですよ。文科省が学校現場を指導したりあるいは教育委員会に直接指導するということはできないんです。

 ですから、先生が先ほど来、隠しているというようなことは、これはやはり、学校の先生も、いじめということがあると、自分が責任を問われる、校長も学校として問われる、教育委員会もそういうことを問われる、そういう調査結果が重なり合って文科省へ出てきた。

 総理が御答弁したように、それがおかしいじゃないかという感性が文科省になかったということは、私は御答弁をしていたと思います。特に、松江の方も、私がもちろん大臣になる前のことなんですが、お見えになったときに、そこまでおっしゃっているんならもう一度調べてみましょうかという気持ちがやはり必要だったんだろうということは、前の臨時国会で教育基本法のときに私から申し上げたとおりです。

保坂(展)委員 先ほど午前中も議論で取り上げられていましたが、文科省と国立教育政策研究所の生徒指導センターの取組事例集が出ております。読んで大変ためになったというか、日本の学校、頑張っているなというふうに印象を持ちました。

 これは、例えば、先ほど午前中もありましたけれども、子供自身がいじめに向き合い解決する、それで、先輩から後輩にそれを継承していって、相談に乗っていく、そういうことをずっと続けている事例もありましたし、図書室とか、こういうところを一つの拠点にしていろいろな話ができるような努力をしていくだとか、あるいはオンブズパーソンだとか、なかなか言えないから、カードを使って、ここに書いてもらおうとか、非常に多種多彩な取り組みがございます。

 総理に伺いたいんですが、教育再生会議では、出席停止であるとかあるいはぶれのない不寛容な指導、こういうことで厳しく事に当たっていこう、いじめということについて、これをそういう形でしっかり抑えていこう、こういうメッセージは大分出たと思いますが、ここの事例にあるような、子供自身の力で、子供たち自身が育ち合っていじめそのものに取り組んでいくなんというようなことを、もう少しメッセージを放っていただいていいんじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 いじめに対してはさまざまな取り組みが必要であろう。ですから、私が申し上げておりますのは、社会総がかりでこれは当たっていこう。いじめがあれば早期発見をしていくことが大切であって、そしていじめをなくしていくことが大切であろう。ですから、今保坂委員がおっしゃったように、子供たちの取り組みも当然これは大切であり、そうした取り組みも我々広げていくということも大切ではないか、こう思っております。

 国としても、二十四時間いじめ相談ダイヤルをつくりました。これは今までと違いまして、一つの電話番号に統一をいたしまして広報して、そして深夜も休日も行っているということでございまして、二月で五千七百二十二件、そして三月では一万二千六百八十八件、相談がございました。多くの子供たちに相談をしてもらっているわけでありますが、本来であればこの数は少ない方がいいわけでありますが、しかし、今多くの子供たちが悩んでいる中にあっては、この電話にぜひとも電話をしてもらって相談をしてもらいたい、このように思います。

保坂(展)委員 イギリスにあるチャイルドラインという民間で運営する二十四時間フリーダイヤルの相談の窓口がありますが、これも日本で広がっております。こういうものにもぜひ光を当てていただきたいと思います。

 いじめというと、やはり原因、背景があるんだと思います。その中で、安倍総理も本に書かれていらっしゃいますが、本の中に書かれていることに、大分私と意見違うなという感じが多かったんですが、ただ、教育における格差の再生産はいけないという記述については、まさにそのとおりだというふうに思いました。

 そこで、こういったデータがあるんですけれども、これはお茶の水女子大学の耳塚先生が八千人の小学生、中学生、高校生の調査をされたデータです。

 上の方は、これは大都市の近郊中都市における塾に通っているかどうかのデータなんですね。通っていない子は青色で、三十点から四十点のところにピークが来ている。そして、通っている子の方はピークが九十点以上に来ているんですね。事実として、この調査によれば、塾ということが子供の学力なり得点というものを相当左右しているということがわかります。

 その下の方は、年収ベースで、小学校六年生の算数の学力の平均値をとったときにどのくらいなのかというデータでありまして、五百万未満の方が四十一・九点、その次、七百万までが四十二・九点、さらに七百万から一千万が五十四・四点、一千万以上だと六十五・九点ですね。こうやって、約四十点から六十五点という差が出てきている。

 どの親から生まれて、そしてどんな環境で育つのか、子供は選べないわけですね。恐らく教育の場における例えば学力の問題でも、学力の統計を見ても、平均点のところがちょうど下がっていて、二こぶ形といいますか、低い方とやや高い方にピークが来ている、そんな統計も出ております。これがやはり最重要で取り組むべき課題なんじゃないでしょうか。総理の見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 両親の収入の多寡によって子供が受けることができる教育の水準が影響されてはならない、このように思います。そのためにも公教育を再生していくことが大切であって、公教育はだれでもが受けることができる教育であるわけでありますから、ですから、公教育の再生こそ教育の再生であろう、こう思います。

 その中で、公教育においても塾に通っている子とそうでない子に差が出ていると、今資料を見せていただきましたけれども、しかし、全国でいろいろな取り組みを公教育の場においても先生方がやっていて、それによって子供たちの学力がみんなが平均的に上昇しているという例もあるわけでありますから、それをどんどん全国に広めていくということも大切だろう。

 先ほどの午前中の質疑の中で申し上げましたけれども、再生会議の陰山先生が幾つかの学校区において実施をして、いわば早寝早起き朝御飯も含めた取り組みによって、極めて短期間のうちに顕著な成果を上げているわけでございます。それはもう、塾に通っている子もそうでない子もみんな同じように上がったわけでございまして、点数が低かった子がよくなったわけでありますから、そうした取り組みを全国で展開していきたい、このように思います。

保坂(展)委員 この教育の格差においては、例えば得点の上の方の階層、エリート層、これをどんどん伸ばしていくことによって下の方も引っ張っていくという考え方もあるかと思いますけれども、しかし、多分、塾については経済的な要因で行くことができない、難しいという場合が多いと思います。とすれば、まさに公教育の場で底支えをしていく。一人一人丁寧な学習指導を、なかなか勉強が難しいな、わからなくなっているなという子供たちに対してやはり集中的にそこを押さえていく、その姿勢が非常に必要だと思いますね。その点について、総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 ある意味では、実証に基づく科学的なアプローチも含めて丁寧な指導をしていくことが必要であって、先ほど申し上げましたように、早寝早起き朝御飯を励行するだけで確実に学力が向上していくという結果も出ています。それは家庭状況等ももちろんあるわけでありますが、しかし、近所の方々、地域の皆さんの協力を得てそういう環境をつくっていくということも不可能ではないわけでありまして、それとまた、いわば百升計算も含めていろいろな学習方法を取り入れながら成功している例があるわけでありますから、そうした例をこれから、数多くそうした例が、恐らく陰山先生だけではなくていろいろな取り組みでうまくいっている例があるでしょうから、そうした例を各学校で実行していくことが大切ではないかと思います。

保坂(展)委員 中には、家庭に事情があって、むしろ自分一人で幼い兄弟の面倒を見ているというお子さんもいます。なかなか自助努力だけでは学習面で発展が難しいというときに、それこそ公教育がしっかり底支えをする。そのためには、今の先生の数、それでいいのか、あるいは、一斉授業だけではなかなか理解できないという場合に、その努力をぜひするべきだということを申し上げておきたいと思います。

 最後に、先ほど菅委員の方からもありましたけれども、沖縄戦の集団自決について、総理自身の御見解はなかったんですけれども、沖縄戦の集団自決について、日米双方で二十万人亡くなっています。そして、沖縄県出身の軍人や軍属の方は二万八千人が亡くなっている。住民はといえば、九万四千人亡くなっている。こういう悲惨な実態があるんですね。

 沖縄戦、そしてなかんずく集団自決について、総理はどう認識されていますか。

安倍内閣総理大臣 沖縄におきましては、日本で唯一地上戦が戦われたわけであって、多くの島民の方々が亡くなられた、本当に悲惨な出来事であった、このように思うわけであります。

 そして、教科書の検定につきましては、菅委員と議論したときに申し上げたとおりでありまして、この教科書の検定につきましては、専門家の方々が審議会において検討した結果においてこれは検定意見がつけられたということを承知しているわけでありまして、個々の検定について、総理である私とか文部科学大臣が、何か発言をしたり影響力を行使するということはあってはならないのではないか、このように思います。

保坂(展)委員 あえて、検定ということは、私、聞いておりませんので。

 もう一点、沖縄でいろいろな方にお会いすると、どの方も、自分の親族の方あるいは兄弟が亡くなっているという方が多いわけですね。戦争中は、玉砕あるいは自決といって、赤ん坊まで亡くなっているという事実もありますから。赤ん坊が自分で亡くなる、自決するということはできない。強いられた集団死とも言われています。手りゅう弾を二発渡されて、一つは敵に投げろ、もう一つは自決せよと。

 こういうことで、軍から渡されたというようなことを外形的に見た場合に、やはり軍と集団自決との関係はあったんじゃないかと思いますが、そこはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 そうした個々の事実等々については、これはまさに専門家が静かな環境の中で議論をしていくことであろう、このように思いますし、また、検定については、先ほど申し上げましたように、我々が口出しすべき事柄ではないということは申し上げておきたいと思います。

保坂(展)委員 文部科学省が記者発表のときに配付した資料が、沖縄戦における主な著作というリストでございまして、最近の著作はないんですね。ですから、最近の状況でいえば、沖縄集団自決冤罪訴訟という、この訴訟が起きたということだけで、これはまだ事実調べの途中だと聞いています。これで学説が出てきたというのはいささかおかしいんじゃないか、冤罪という言い方も非常におかしいと思いますが、大臣、いかがですか。

伊吹国務大臣 裁判については、原告と被告があるわけですから、原告の冤罪という言葉を一方的に使って記者発表をしたということは、私は不適当なことだと思います。私にもちろんそのことは報告しておりません。また、教科書の検定について、結果だけを私に報告するように申してあるのは、先ほど総理がおっしゃったような、政治の介入を排除するための姿勢を示したものです。

 それ以前には、両説の著作がたくさんあります、率直に言って。しかし、今回、初めて司法の場にそのことが出されて、そして司法判断を求めるという事態になっているわけですから、従来の両説の、多分、文部科学省の事務局が説明をした著作をすべてひもといていただくと、両説が記述されていることはよくおわかりだと思いますが、であるからがゆえに、一方の説だけをとるということをやってはいけないというのが検定意見だったと思います。

 ですから、軍の強制がなかったということではありません。あるいは、軍の強制ばかりがあったということでもないということを検定意見は言っておられるんだと思います。

保坂(展)委員 私も、沖縄に行ってよくお話を聞いてきたいと思います。

 終わります。

保利委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党・無所属の会の糸川正晃でございます。

 私も、昨年の教育基本法の改正のときも委員として、この教育問題についてさまざまな議論をさせていただきました。約六十年ぶりに教育基本法が、安倍総理の悲願であったと思うんですが、改正をすることができたのではないかなと思うんです。ただ、その中で、いじめの問題、未履修の問題、私が教育基本法の特別委員会でも質問させていただいたんですけれども、中学校の未履修問題、これは大臣がしっかりと指導していただいて、この間の予算委員会でようやく結論が出てきたものであったわけでございますが、非常にさまざまな問題がこの教育という問題にあるということがわかったのかなというふうに思います。

 そこで、安倍内閣は、教育再生、これを重点政策として掲げられておりまして、昨年の十月、教育再生会議を立ち上げられたというふうに思います。そこは総理が座長でいらっしゃるというふうなことでございますが、この教育再生会議は、本年一月、第一次報告を公表されました。緊急対応として、教育職員免許法の改正、それから地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正、学校教育法の改正、これを提言されておられます。

 今回の法律案、これは基本的にその提言に沿ったものであるというふうに考えてよろしいのか、安倍総理の認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になった教育再生会議において、第一次報告において緊急対応として、教育職員免許法の改正、そして地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正、学校教育法の改正が提言されたところでありまして、私から教育再生関連三法案を今国会に提出するよう指示をいたしたところであります。

 これを受けまして、文部科学省では、中央教育審議会において集中的な審議を行い、三月十日に、答申「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」が取りまとめられたわけでございます。これは御承知のとおりだと思いますが。

 これらを踏まえまして、三月の十二日に、私から、官房長官、文部科学大臣、総務大臣に対し、三法案に関する具体的な指示を行いまして、今回の法案の提出に至ったものであります。

 今回の三法案は、再生会議の提言に基本的に沿ったものでございます。

糸川委員 一方、同じ政府の組織である規制改革会議からは、教育再生会議の提言、特に教育委員会への権限、これについては異論を唱える声があったということでございますが、政府内部の意見対立が表面化したものであり、これは閣内不一致ではないかなというような意見もございます。

 内閣の最重要課題であり、安倍内閣の肝いりで発足した教育再生会議の提言、これへの政府内からの異論、規制改革会議の一連の行動、こういうものは、内閣として統一した方針がとられていないんではないかなというようなことが疑われるわけでございますけれども、総理は、この一連の行動についてどのようにお考えになられているのか、また教育再生会議との調整についてどのように指導力を発揮されていらっしゃったのか、認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 いろいろな審議会がございます。審議会というのは、いわば閣内の閣僚の意見が違っているということとは違うと思いますが、規制改革推進会議は、これはまさに規制をなくしていく、あるいは改革をしていくという観点からいろいろなことを見ているということであります。そして他方、教育再生は、まさに教育を再生していく、すべての子供たちに高い水準の規範意識やそして学力を保障しなければならない、こういう観点から議論を重ねていくわけでありまして、さまざまな角度から教育についてはいろいろな議論がなされているということであります。例えば、大学、大学院の改革につきましては、イノベーション25からも総合科学技術会議からも議論が出ています。それは、それぞれの角度からいろいろな意見が出てくる、こういうことでございます。

 ですから、時には一つの審議会とは違う議論が出る、まさにいろいろな異論があるということではないか、このように思うわけでありますが、そこで最終的には私がこれは判断をして、それで決まって法律が出ているわけでありますから全く問題はない。しかし、結論に達するに際しましては、いろいろな角度からいろいろな意見が出て、慎重に深い議論をしていくことが私はむしろ必要ではないか。しかし、一たん方向を決めれば、私は、総理として最終的な責任を持って判断をいたしますから、その時点においては、政府として、またもちろん与党も一緒なんですが、同じ方向を向いていくということになると思います。

糸川委員 教育再生会議、これは今後五月に第二次報告をされる、十二月までに第三次報告をまとめていくという予定を聞いておりますが、その後につきましても、法改正を要する事項が提言されれば今回のように立案作業というのを行うことが想定されるわけでございます。

 今後、どのような分野のどのような政策について検討をしていかれるのか、これは、総理、座長でいらっしゃいますから、現段階で想定されているものについて、その方向性を明らかにしていただきたいと思うわけでございます。これは総理にぜひ。

伊吹国務大臣 先生、まずちょっと間違いのないようにしておかねばならないのは、再生会議が何か提案をしたから法改正をするわけじゃないんです。再生会議の提案以外のものでも法改正はいたします、必要なものは。そして、それは、議院内閣制ですから、当然与党との協議があって、最終的に行政の長としての総理の御判断と政権与党の総裁である総理の御判断があって、そして最終的には国権の最高機関である立法府にそれをお尋ねするわけですから、再生会議がすべてのことを、法改正のイニシアチブをとるわけじゃありません。

安倍内閣総理大臣 そこで、再生会議においては、現在、第二次報告に向けて議論を行っております。徳育の推進、学力の向上、そして大学、大学院教育の改革、そして家庭、地域、企業など社会総がかりの教育などについて、具体的な方策を精力的に議論していただいているところであります。

 具体的には、例えば徳育に関しては、体験、奉仕活動の推進、また学力に関しては、ゆとり教育見直しの具体策、そして大学、大学院に関しては、国内外に開かれた入学者選抜、そしてまた社会総がかりの教育に関しては、放課後子どもプランの展開など学校と地域の連携、そうしたことについて、具体的な具体策についても鋭意検討をしていただいているところでございまして、今後、会議での審議に基づきまして、第二次報告、第三次報告が取りまとめられて、それらの提言について、制度改正が必要な場合などは中央教育審議会等での検討を踏まえつつ、内閣を挙げて教育再生に取り組んでいきたい、そしてもって教育新時代を開いていきたいと考えております。

糸川委員 先ほど文部科学大臣、我々は教育再生会議の意見だけではないというふうにおっしゃられましたが、今回のこの教育三法はこの会議の提言に沿ったものであるということからお話をしたわけでございまして、基本的にはどこからでも、我々も立法府でございますので、ここからも意見を発すこともございますし、内閣から出ることもございますでしょう。そういう中で立法をしっかりと議論しておるわけでございますので、そこだけは一点申し添えておきます。

 では、大臣にお尋ねいたします。

 改正教育基本法、これにつきまして、各個人の有する能力、これを伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養う、これは第五条第二項でございます。こういう義務教育の目的が規定されたことを踏まえまして、本改正案では、新たに義務教育の目標に関する規定が明確化されております。

 このように義務教育の目標を規定することが子供たちの学力の向上にどのように影響していくのか明らかにしていただきたい。また、義務教育の目標の達成状況について、政府はどのような方策により明らかにしていこうとされているのか。

 これは、大臣、あの当時、私が中学校の未履修をお聞きしたりいたしましたね。中学校、まさか必修科目の設置を行っていない学校はないだろうと思っておりましたら、私立の学校が行っていた、約一〇%の学校が行っていた、こういうことがございまして、今後どのように影響をしていくのかということも含めて明らかにしていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、糸川先生にもさきの国会では大変いろいろ御議論をいただいて、立法府の意思として教育基本法が改正になりました。そこに教育の目標というのが書いてあったわけです。

 ですから、それを義務教育の場で具体化していく作業が実は学習指導要領、そしてそれを支えていくのが教育行政、そしてそれを現場で生徒と向かい合って教えていただくのが先生、この三つのあり方を変えていこうというので、とりあえず急いでいる三つの法案をこの国会にお願いしたということです。

 ですから、本来、立法形式としては、告示である学習指導要領を中教審に諮りながらつくるということも一つ可能なんですよ。しかし、学校教育法というものを基本法と学習指導要領の間にかますことによって、これをもう一度立法府の御審査を受けて、広い国民的視野から教育目標を認知していただいて、中教審の議を経て学習指導要領をつくっていきたい。

 これは、新しい時代に合う教育のあり方というものがずっと変わっていきますから、総理が何度も申しておりますように、規範意識を身につける、同時に基礎学力を向上させる、そういうことを細かく学習指導要領に、今回学校教育法の改正をお認めいただければその目標に従ってつくっていきます。これを学校現場で教えていくということによって教育内容を刷新し、新しい時代の新しい教育をつくり上げていくという手順になると思います。

 また、先ほど来の未履修の問題等も含めて、それができているかどうかということですね。ですから、それは、地教行法の改正等もありますけれども、同時に学校評価というものが非常に大切になってまいりますので、従来では努力義務であったものが、今度は学校評価というのは義務づけ規定になっております。ですから、学校も、やはり法律で決められたことをきちっと実行していくということを監視される立場になり、評価される立場になりますから、両々相まって、よき先生のもとでいい日本人をつくり上げていくということを安倍内閣は目指しているわけです。

糸川委員 外部の評価の義務づけ、これについても今後あわせて検討していく必要があるなというふうに考えます。

 次に、地方教育行政の組織及び運営に関する問題についてお尋ねいたしますが、地方教育行政の中心である教育委員会、これが今まで果たしてきた役割と、今まで、大臣も教育基本法を改正する中でさまざまな問題点についてもうお気づきになられたんじゃないかなと思います。

 今回のこの法改正に当たりまして、どのように評価そして検討されてきたのか。特に、今後、今回の改正によりまして、教育委員会の抱えているさまざまな課題を、どのような点を改善することができるのか、また、本改正の効果についてお答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 これは教育だけを考えるわけにはいかなくて、やはりいろいろな観点から行政というのは考えていかなければなりませんので、先ほど来お話ししておりますように、やはり特定政党のイズム、あるいは特定の首長のイズムが出るというのはそう私は感心したことじゃないと思いますので、国が直接関与せずに、中立的な教育委員会をその間に置いている。そして、教育委員会も、今度は都道府県教育委員会と市町村教育委員会とが関与しているという形で、特定の価値観が教育の現場へおりていくまでに幾つもの関門を置いているわけですね、中立的に。しかし、そのことが逆に、効率的にできない、あるいは非常にまだるっこいという御批判があるのは、私はよく存じています。それのバランスの上に行政というのはやっていかなければならない。

 ですから、今回一番大切なことは、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会がしっかりとした使命感を持って責任を果たしていただくということをどう担保していくかということを考えたわけです。ですから、一番の原点として、大切なことは、地方教育委員を任命されている首長、それからその承認を与えられた議会、これが、地方自治の本来のあり方に照らして、常に教育委員会を監視、評価していただくというのが本来の地方自治のあり方なんです。

 ですから、大部分のところは、私は、地方自治の力を十分理解し、また評価して、そこにゆだねたいと思いますが、万一、未履修の問題とかいじめの問題のように、動きがとれなくなった場合に国が最終的なお願いをしなければならないという条項を今回設けたということですから、この条項に頼りながらやっていくということよりも、地方がやはり地方自治の力をしっかりと果たしていただくということが大切なのです。

 この法案をつくるときに、総理から総務大臣と私に御指示があったのは、私学についてもしっかりやるように、そういう、指導主事を知事部局に置くように促してもらいたい、これは地方自治がありますから。それから同時に、教育委員会について、こういう是正や何かを行わざるを得なくなった場合には、地方議会にもその内容を必ず通知するようにという御指示をいただいておりますので、法律とは別に、この法律が成立をすれば、地方自治の力をもう一度御確認いただくような通知を総務大臣がお出しいただく、あるいは私からもお願いするということになると思います。

糸川委員 なぜ今の質問をしたかといいますと、私が、中学校の未履修を質問させていただいて、そして総理に質問主意書を出させていただいたときに、返ってきたものは、小学校、中学校の設置者は国でなくて、これを回答するに値しないというような回答が返ってきたわけですね。

 そういう中から、委員会の中で大臣が、では調査しましょうと言って、調査をした。ところが、私にその調査の結果が出てきたのは、ことしの予算委員会で出てきたわけでございます。その間というのは、大臣が各教育委員会にどういう履修状況なのかということを質問して、そこからまた情報が下におりていって、また上がってくるんですよ、非常に時間がかかるんですよという答弁をいただいたんではなかったかなと思います。

 そういう時間を余りにもかけ過ぎますと、これを法に反映させることがなかなか難しくなるのではないかなということで、やはり時々刻々とこういう変化というのはあるわけです。

 大臣、ここに「教育委員会の法令違反や怠りによつて、緊急に生徒等の生命・身体を保護する必要が生じ、他の措置によつてはその是正を図ることが困難な場合、文部科学大臣は、教育委員会に対し指示できる」、こういう規定です。これは緊急に生徒の生命身体を保護する必要が生じたときというのは、指示できることにするんじゃなくて、もう指示しなきゃいけないんですから、必ずスピーディーにやっていただかなきゃいけない。この法律がどれだけのものになるのかというのは、これは今後また見きわめさせていただきますけれども、しっかりと取り組んでいただかなければならないというふうに思います。

 最後に、地方自治の中で、自治体内の内部の協力体制、先ほどからおっしゃられましたけれども、教育委員会が首長部局との連携を行うということを言われておりますけれども、自治体内部の協力体制のあり方について、政府としてどのようにお考えなのか、伊吹大臣の所見をお伺いしたいなというふうに思います。

 地方教育行政の組織のあり方の中で、教育委員会、これは財政支出を伴う事項については首長部局と連携をとることになっておるわけでございます。今回の改正案の第一条の二によりますと、国との適切な役割分担、相互協力というものが規定されております。ですから、そういう観点から、自治体内部の協力体制のあり方について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 これは総務大臣がお答えになる方が適当かもわかりませんが、まず、先般来、先生から再三御指示があったんだけれども、なかなか中学校の義務教育が出てこなかったのは、教育委員会じゃないんですよ、むしろ私学の結果がなかなか出てこなかったわけです。私学は知事部局にお願いした。だから、総理から先般そういう御指示があったということなんです。

 あと、都道府県の教育委員会と、それから市町村の教育委員会、政令市を別にすればありますね。ですから、私たちは、今回の指示だとかどうだとかということは、都道府県の教育委員会にもできますし、市町村の教育委員会にもできるわけです。しかし同時に、今度は都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会にも指示をすることが可能になります。

 そういうことを踏まえて、予算編成権は、やはり予算の集中、統一の原則というのがあって、幾つも幾つもの予算を地方自治体がつくるわけにいきませんから、知事部局で統一をしている。それを審議するのは議会である。ですから、その分では、知事部局に対する要求官庁に教育委員会はなりますけれども、教育の流れとしては、まず国会があって、国会で決められたものが我々のところへおりてきて、そして我々がお願いしている大きな枠組みを地方にお願いする、その中で、地方はそれに従いながら予算配分をしてやっていただく、こういう流れではないかと思います。

糸川委員 もう時間がなくなりましたので質問を終わりますけれども、大臣、これは総理も、また、教育の問題は最重要課題というふうに先ほどから大島先生もおっしゃられておりますので、しっかりと議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る二十六日木曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十三日月曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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