衆議院

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第3号 平成19年4月23日(月曜日)

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平成十九年四月二十三日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 大島 理森君 理事 小坂 憲次君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 中山 成彬君

   理事 野田 佳彦君 理事 牧  義夫君

   理事 西  博義君

      赤池 誠章君    新井 悦二君

      井脇ノブ子君    伊藤 忠彦君

      稲田 朋美君    稲葉 大和君

      猪口 邦子君    浮島 敏男君

      近江屋信広君    大塚 高司君

      亀岡 偉民君    木原 誠二君

      坂井  学君  とかしきなおみ君

      西本 勝子君    馳   浩君

      平田 耕一君    藤井 勇治君

      松本 洋平君    御法川信英君

      盛山 正仁君  やまぎわ大志郎君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山内 康一君    若宮 健嗣君

      川内 博史君    北神 圭朗君

      田島 一成君    田嶋  要君

      西村智奈美君    藤村  修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   議員           松本 大輔君

   議員           田島 一成君

   議員           藤村  修君

   議員           牧  義夫君

   議員           笠  浩史君

   総務大臣         菅  義偉君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (規制改革担当)     渡辺 喜美君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室長)            田中 孝文君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     矢野 隆司君

  稲田 朋美君     新井 悦二君

  鈴木 俊一君     盛山 正仁君

  西村 明宏君     御法川信英君

  原田 憲治君     大塚 高司君

  二田 孝治君     近江屋信広君

  松本 洋平君     坂井  学君

  高井 美穂君     藤村  修君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     稲田 朋美君

  近江屋信広君     藤井 勇治君

  大塚 高司君     原田 憲治君

  坂井  学君     松本 洋平君

  御法川信英君     西村 明宏君

  盛山 正仁君     鈴木 俊一君

  矢野 隆司君     浮島 敏男君

  藤村  修君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     井澤 京子君

  藤井 勇治君     二田 孝治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 月曜日早朝から、委員各位におかれましては、御参集いただきまして、ありがとうございました。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革推進室長田中孝文君、総務省自治行政局長藤井昭夫君、文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、スポーツ・青少年局長樋口修資君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪口邦子君。

猪口委員 よろしくお願いします。私は自由民主党の猪口邦子でございます。

 私は教育研究職の出身でございますので、本日、教育再生等教育関連三法案につきまして質問いたしますことに特別の思いがございます。

 我が国は天然資源に乏しい国でありますので、教育は国と社会の発展の本質をなしてきました。それだけに、教育は国民社会の重要関心事項であると思いますので、安倍内閣の教育改革重点化の姿勢が、法案改正の所期の目的を超えて日本市民社会に内在する教育重視の思いや共感を改めて引き出し、行政や学校のみならず、社会全体で日本の将来世代に対する愛情や関心を高める契機になることを期待して質問いたします。

 二十日の金曜日に、中山理事と小坂理事の質疑で非常に大ぶりで大局観のある議論がなされましたので、私は、個別事項につき順次質問してまいります。

 まず、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正案についてでございます。

 これは、さきの教育基本法の改正とそこに至る国会質疑で明らかになった考え方、あるいは中央教育審議会答申等を踏まえまして、教育委員会体制の明確化や体制の充実、教育における地方分権の推進、国の責任の果たし方、さらに、私立学校教育行政についての改正を行うものであります。

 まず、教育委員会改革とは、これは私にとっても非常に重要であると考えておりますけれども、本改革案では、一条の二におきまして、地方教育行政の理念を、国との適切な役割分担及び相互の協力のもと、公正かつ厳正に行わなければならないと明記してございます。

 そして二十六条にては、レーマンコントロールの理念を反映して、合議制の教育委員会みずからが管理、執行すべき、そして、公権力の一部をなす教育行政官たる教育長に委任してはならない事項、これを規定し、そして二十七条において、学識経験者の知見を活用すること、また、その所掌事務の管理と執行状況につき点検と評価を行って議会に報告することを規定しています。

 さらに細かくは、五十五条の二で、市町村間で教育委員会の共同設置等を進めるなど、体制の充実を図る方法が規定され、さらに十九条では、指導主事を置くことに努めるということなど、具体的な改革ぶりといいますか、これを書いているわけでございます。

 私として、非常に実践的な内容であり、工夫があり、また、規定ぶりとして非常に思慮深いものがあると感じております。

 このように、教育委員会の体制を拡充していくこと、充実していくこと、これこそが教育と民主主義の観点からは重要であると思いますけれども、一部には教育委員会制度は不要であるという議論もございまして、大変懸念いたしております。

 そこで、伊吹大臣に教育委員会の機能の本質についてお伺いいたしたいと思うのですけれども、そもそも民主主義思想との関連におきまして、レーマンコントロールの理念の具体的な機関である教育機関、これはまさにレー・エデュケーショナル・エージェンシーと呼ばれるものであります。これは、教育には政治的に中立と独立性を確保する必要がある、そして、首長の指揮下にある教育行政責任者など行政の専門官ではなく、先ほども申し上げましたとおり、レーというのは公権力に属さない一般人という意味がありますので、首長から独立した、そのような一般の方の合議制の執行機関として教育委員会というのは発展してきたわけでございます。

 古くは昭和二十一年十二月の教育維新委員会の建議の文言を想起すれば、一般地方行政より独立し、民意を反映し、教育が時の支配勢力や一部の利益のためにならないようにすることを確保する機関として位置づけられているわけでありまして、事務組織は行政官などから構成されますけれども、その事務を指揮監督するのはレーマンでなければならない、つまり公権力から自由な一般人でなければならない、こういう考え方があります。

 民主主義の発展の中で生まれた、私としては、譲ることのできない考え方がこの教育委員会の制度の背後にきちっとあると考えておりますので、今回の政府案は、その教育委員会体制を責任体制も含めて充実させるという考え方のもとに今回の改正案が作成されていまして、これは非常に重要な点であると思います。

 また、私が今お伝えしました民主主義思想との関連におけますこの事項の重要性について、国会質疑を通じて日本社会に広く理解されることを私としては希望しておりますが、大臣のお考えをこの点についてお伺いいたします。

伊吹国務大臣 今、猪口委員がるるお述べになったことで、むしろ答弁は要らないんじゃないかと思うほど内容が充実したお話だったと思います。

 率直に言って、教育というのは、できるだけ党派性、イズムに支配されないように、おのおのが謙虚に自己抑制をしながらやらねばならない。まず一番そのことを心しなければならないのは、やはり内閣だろうと思いますね。だから、総理、私を含めて議院内閣制でつくられておりますから、自由民主党、公明党のイズムによって教育を左右することがないように、私は常に謙虚にやっているつもりです。

 それのチェック機関として、実は皆様方、国権の最高機関である国会がおありになるんですね。国会で指名をされた者が内閣総理大臣になっておりますから、これは、地方議会よりはるかに内閣のイズム的な教育への中立性というのは国の場合は担保されている。この国と地方との役割分担は、今先生がおっしゃったように、地教行法に書いてあるとおり、おのおの役割を分担してやっていこう、こういうことでございます。

 では、その国の決めた基準あるいは大きな大枠を受けて、地方の特色を踏まえながら地方自治の枠の中でやっていただく地方教育行政はどうなっているかということです。これは、先ほど来お話があったように、今度は直接選挙で首長は選ばれますので、総理と圧倒的に違う立場におられるわけですね。そこを担保するために、今おっしゃったような、中立的第三者より成る執行機関である教育委員会をつくっているわけです。

 それで、これがうまく機能してくださればこれはもう一番望ましいことなんですが、残念ながら、幾つかの社会現象として、言われたようないじめ、未履修その他、必ずしも十分に機能しているとは思えない部分もありますし、それから、やはり構成がどうしても名誉職的な感覚でとらえられる。これは私は間違っていると思います。ですから、役割を自覚していただくための研修だとか、教育委員会そのものの評価だとか、そういうことを今回ここへ入れてきているわけですが、一番大切なことは、やはり、教育委員を任命される首長、それからその任命を承認された議会、そして、動かしている予算の編成、承認、これも首長と議会なんですね。

 そのあたりを、地方自治の力をやはり十分発揮してその中立性を担保していただく、これがやはり基本であって、国がやむを得ざる関与をするということはやはり必要最小限でなければなりませんし、できれば関与しない方が私はよろしいと思っておりますが、関与が全くできないままに子供を犠牲にするということはできませんので、今回お願いしたのは、地方自治の枠の中で最小限のことをお願いしているということでございます。

猪口委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣が今おっしゃいましたとおり、同時に国としての最終的な責任は果たす、その方法についていろいろと工夫していかなければならないということ、これは、教育基本法の改正の議論の中で、国会での質疑を通じて大いに考え方として発展したものであると感じております。そして、それが今回のこの地教行法の改正に適切に反映されていると感じます。

 具体的には、例えば四十九条で、地方自治法の是正要求を行うこと、実質的に指示ができる規定ぶりとなっている。これは、例えば教育委員会が、明白な法令違反あるいは怠り、そういうことによって生徒の教育を受ける権利が侵害されるような場合においてはということと読み取りました。

 今、大臣はかなりお答えくださったんですけれども、地方に任せるべきことは地方に任せつつ、最終的には国が責任をとる、こういう役割分担といいますか、そのことにつきまして何かさらに付随することがありましたら、お伝えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 今先生がおっしゃったことでこれもすべてが尽きているわけですが、我が国の最高法規というのは、言うまでもなく憲法なんですね。

 それで、憲法の前文には、主権が国民に存することを宣言すると同時に、その国民の主権は正当に選ばれた代表より成る国会において行使されるということを言っているわけですから、国民主権の行使たる国会の議決、これが担保されない状況になった場合には、今回の地教行法によってお願いしている権限、それをすぐ行使するというのではなくて、その前に、現在持っている指導、助言、あるいは援助、こういうことをお願いして、それでもうまくいかない場合に、地教行法の規定でやるのか、それとも地方自治法の一般則でやるのか、この辺もまたいろいろ考えなければいけない、ケース・バイ・ケースだと思いますので、できれば教育委員会が十分その役割を果たしていただいて、地方自治の中で役割分担が行われていく。

 しかし、国会が決めた法律だけは遵守をしていただく。これはもう私学であろうが国公立であろうが、国であろうが地方であろうが、日本の主権の及ぶ範囲に住んでおられる方は当然憲法の規定によって行動していただく、これはもう当たり前のことでございます。

猪口委員 では、民主党の方に一つお伺いしたいことがございます。やはり地教行法に関することなんです。

 民主党案を私も勉強したんですけれども、今まさに大臣のおっしゃった指導、助言、援助、都道府県の教育委員会が行うことになっている部分が、民主党案ですとこれができなくなる可能性があるのではないでしょうか。

 それから、市町村に学校の管理、設置の責任はありますけれども、そこにおいて人事権も市町村に移すという規定ぶりとなっているというふうに私は理解したのですが、そうなりますと、特に人事権が市町村の単位でなされるということは、都道府県というのはかなりの広域を単位とした考え方でありますので、その人事におけます広域調整が今のところはできる体制でありますけれども、民主党案ですと、そういう広域調整の余地がなかなか少なくなってしまうのではないか。

 その結果、長期的にどういうことが可能性として生じやすいかなと考えましたところ、市町村間で教育の差、そういうものが発生することにならないか。つまりそれは、広域的に人事を調整することができないことからそういう問題が起きるのではないか。

 いろいろな組織がありますけれども、組織論の一般的な常識として、やはり、広域で多くの対象者を調整すれば調整の余地は当然ながら大きくなるわけですから、そのミクロの部分での差を解消しやすくなるというのが一般論だと思うのです。

 したがいまして、この部分についてはなかなか納得できないところが私としてあるので、ちょっとお伺いしたいと思います。

松本(大)議員 猪口委員にお答えいたします。

 まず、人事権の方でございますけれども、教職員の人事権が市町村単位で行われると人材確保に支障が生じるのではないかという御懸念についてでありますが、民主党案では、第四条四項において地方公共団体相互の連携協力規定を置いてございます。これによって、広域調整の仕組みを残しつつ、市町村に人事権を移譲するとしたところでございます。

 また、前者の、教育委員会に指導、助言、援助ができなくなるのではないかというお話ですけれども、まず、方向性において我が党案と政府案で根本的に違うと思っておりますのは、どこでレーマンコントロールをかけていくのか、どこで評価、監視を行っていくのかという点でございますけれども、一義的には、学校現場に主権を移譲していく、そして学校理事会において問題解決の即応性を高めていくということでございますので、まず、一義的には学校理事会でレーマンコントロールというチェックが働く。それでも機能しない場合には、今度は教育監査委員会というところが第三者的、市民オンブズパーソン的に評価、監視を行う。さらには、今度は、市町村に教育行政の責任が一元的になりますので、議会においてその追及も可能になってくる。教育委員長という隠れみのの存在を許さない仕組みになっておりますので、御指摘のような御懸念は当たらないものと考えます。

猪口委員 市町村間で連携といっても、それがなされる場合と、そういうことが行政的な一律の方法論としてなされにくい場合と、いろいろと出てくる危険性がありますので、やはり、教育は本当に教職員の資質によるところが大きく、もともと優秀な先生方を採用しているわけでございますけれども、長期的に広域調整をする中でさまざまな学校の多様なニーズにより的確にこたえる、そのようなことが最終的に児童生徒の利益に資することになるのではないかという印象を私は持っております。

 次に、今回の学校教育法の改正の中で、私は少子化担当大臣を務めた経験から、幼児教育についての規定がしっかりとしていることを非常に心強く思いますけれども、これは政府参考人の方でも結構なんですけれども、第一条の学校の規定順の見直しが行われまして、幼稚園を最初に規定することとしている。これは小さな変化のようで、今までは幼稚園が一番最後のところに規定されていましたけれども、この規定ぶりの変更について、文科省の方で込めました意味、あるいは、我々の教育基本法改正の中でいたしました議論がどういうふうに反映されているのか、お伺いできればと思います。

銭谷政府参考人 改正教育基本法におきましては、第六条で、学校は子供の心身の発達に応じた体系的な教育が組織的に行われなければならないというふうに規定をいただきました。また、十一条で、幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであるという規定がなされまして、幼児教育の重要性をお示しいただいたところでございます。

 一方、中央教育審議会におきましても、平成十七年一月の答申では、幼稚園などの施設と小学校との連携を明確化すべき旨、答申をされたところでございます。また、この三月の中教審答申でも、学校種の規定順を見直すよう答申をいただいたところでございます。

 以上のようなことから、今回の法案におきましては、幼児教育と義務教育の連携を推進し、子供の発達の段階や学びの連続性を確保する観点から、学校種の規定順につきまして、幼稚園を最初に規定するということとしたものでございます。

猪口委員 その規定ぶりの変更の趣旨が今後十分に生かされることを期待したいと思います。

 そこで、引き続き幼稚園のことなんですけれども、この二十四条に幼稚園の役割について規定しておりますけれども、これは、二十二条にも規定されている目的を実現するための教育を行うほか、いろいろな地域におけます幼児教育の拠点のような役割を幼稚園が今後果たす、そういう部分の役割も大きいのではないかと私はそう考えますが、この二十四条の規定ぶりはまさにそういうふうになっています。「幼児期の教育に関する各般の問題につき、保護者及び地域住民その他の関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うなど、家庭及び地域における幼児期の教育の支援に努める」という、幼稚園の、社会におけますあるいは地域共同体におけます役割の積極的な位置づけがなされています。

 大臣は、これによって具体的に幼児期の教育の支援が地域においてどういうふうに発展する可能性があるとお考えになりますか。幼稚園というのは今後どんな役割を、入園してきたお子さんたちに幼児教育を施すということを超えて、地域の中でどういう発展を機関としてしていくということを展望されますでしょうか。

伊吹国務大臣 ただいま参考人がお答えをいたしましたように、幼児教育にかかわらず、一般的には、学校と地域社会とそして家庭が協力をして子供のしつけあるいは学力の向上に取り組む、これはもう昔からごく当たり前の人間社会の常識ですね。その中で、やはり改正教育基本法に明記をいたしましたように、教育の原点は家庭であるということだけはみんながしっかりと自覚をしないといけないと思います。

 その上で、幼児教育においては、社会の変化等があって、必ずしも共働きのお母さんが子供といつも接するというわけではない。子供さんのしつけが昔のようにおじいちゃん、おばあちゃんもおられる家庭で行われるわけではない。そういう社会の変化もあって、幼児教育の一つの担い手である地域社会と、まあ御家庭も入ってくると思うんですが、に対する助言、援助をする立場として、幼稚園、それからあえて言えば保育園、この二つの役割はやはりこれから大変大きくなってくると思いますし、子供のころから、食事をするときは食料をつくっていただいた方に対する感謝の気持ちを植えつけるとか、自分たちの住んでいる地域はこういうことであるとか、こういうことは、御家庭で教えられるところが不足している部分を幼稚園で補っていく。

 今回は三つの法案をお願いしておりますが、今後、いずれ社会教育法その他の改正をお願いしなければなりませんので、これによって家庭教育あるいは社会教育の充実が相まって、地域ぐるみで子供を包んでいけるという状況を想定しているということでございます。

猪口委員 まさに大臣がおっしゃったとおり、家庭がまずは第一義的な責任がありますけれども、同時に、働きながら子育てをする家庭が多いわけでございますから、そういうことにも配慮する。地域全体での、安倍総理がよくおっしゃる、社会総がかりで教育を改善するという精神にのっとり、幼稚園段階の教育につきましても、幼稚園など、新たなる社会に対する支援型の働きかけの拠点として発展することを望んでおります。

 次に、特別支援教育に関してちょっと御質問したいと思うんですけれども、ハンディキャップのある子供に対して、インクルーシブな教育制度を含むさまざまな社会参画を促進する包括的な条約がこのたび国連で採択されまして、これは障害者の権利に関する条約という名前のものですけれども、国連総会、昨年十二月に採択されまして、ついこの間、三月三十日に署名のために開放されています。

 これは国際社会として非常に画期的な成果でありまして、条約の取りまとめをしたのが、議長国がニュージーランド国連大使で、これは、アジア太平洋地域の出身の方ということで、我が国も、とりわけ昨年八月の最終のアドホック委員会の会合では積極的な対応をもって条約の取りまとめに大きく寄与したと考えております。

 今回の学校教育法の一部を改正する法律案には実質的な変更はないと私は読みましたけれども、この条約の署名、批准に向けた我が国としての検討状況があると思うのです。この検討状況について教えていただければと思います。

銭谷政府参考人 障害者の権利に関する条約につきましては、文部科学省としても、条約の起草段階から交渉に積極的に参加してきた経緯がございます。可能な限り、早期に本条約に署名、締結できることとなるように、関係省庁と連携して検討を行った上、必要な取り組みを進めていきたいと考えております。

 具体的には、現在、署名、締結に向けまして、関係省庁、関係各課を構成員とする検討チームを設けておりまして、条文の解釈や国内法制度における実施措置を含めまして、必要な検討を進めているところでございます。

猪口委員 もう既に署名開放されていますので、ぜひ速やかに署名できることを、そして締結する日が来ることを希望いたします。

 次に、大学関係について質問申し上げたいと思いますけれども、今回の学校教育法の改正におきましては、八十三条二項で、大学についての機能がここ二項が新設として加わっております。その中で規定されている表現は、「大学は、」前項の目的があるんですけれども、それを「実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」ここが新しく加わった規定ぶりでございます。

 まず、その知見を広く社会に提供する、そして社会の発展に寄与する、学問は人間社会をよりよくするためのものであるという考え方がそこには明記されていると感じます。これは思えば当たり前のことのようにも思いますけれども、改めて法律に明記されたことは非常に適切だと思います。日本は先進主要国でありますので、社会の発展に寄与するといいましても、同時に、日本国内の社会だけでなく、国際社会の発展にも寄与するものと考えています。

 ですから、広く我が国の、もちろん国民社会を発展させるということは第一義的な目的であると思いますけれども、国際社会の共益に寄与する人材を育成すること、そして、そのような知的貢献を行う拠点と日本の大学がなっていくこと、これは世界の主要国である我が国の大学として当然であると思いますけれども、ここに言う、この法律の文言としての「その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」という場合のこの「社会」というものは、地域社会、国民社会、そして国際社会を含む広い概念であるという理解を私としてはしたいと思いますけれども、大臣のお考えをこの点についてお伺いしたく思います。

伊吹国務大臣 大学人である先生の御解釈どおりでよろしいと思います。

猪口委員 まことにありがとうございます。

 それでは、今後、日本の大学がより国際社会に開かれ、また知的な発信をし、そして日本人学生も含めて広く海外で学ぶ機会を獲得し、もちろん留学生も我が国を訪れというような活発な発展をしていくためには、いろいろな改善が必要ですけれども、このような新たな課題に向かうときには、政治の世界でもそうですけれども、やはりトップのリーダーシップはとても重要と思います。

 ですから、大学という組織の中を考えますと、もちろん現場の教職員が努力するという流れもあると思いますけれども、学長がリーダーシップを発揮して、海外の例えば有力な大学と連携強化を積極的に図る。そうでないと、個人の負担と能力によって自分が海外に留学するという道を開いていくことについてはなかなか限界がある場合が多いと思います。

 ですから、この際、近隣の中国や韓国の大学の学長たちも最近は非常に積極的に海外の大学との連携強化を図るリーダーシップを発揮していると聞いておりますので、我が国の大学につきましても、ぜひおくれをとることのないよう、そして、既に研究の面では広く貢献している部分がありますけれども、一層そのリソースを国際社会に効果的に提供できるよう、学長のリーダーシップ、教育そして研究両方においての国際連携に必要であると考えますが、ぜひ伊吹大臣にはそのように学長のリーダーシップを育成していただき、また、そのようなことを奨励していただき、指導していただきたいとお願いしたいところでございますが、大臣のお考えをお伺いいたしたく思います。

伊吹国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、先生の御解釈どおりで結構なんですが、同時に、外ばかり向かれては困りますので、これは生涯教育あるいは地域発展の拠点でもあるわけで、そういう意味での社会還元というものも当然念頭に置いていただいた上で、今おっしゃったような、学長が頑張れるような素地をつくっていく。例えば、単位の相互互換性を促進していくとか、大学の学生や教職員の短期留学の制度あるいは長期留学の制度、それから、国際的な大学間のセミナーの交流とか、だんだんこのごろ少し下火になっているというのは残念なんですけれども、海外の有力な大学のこちらへ出てきていただく流れの促進とか、あるいは研究者、学生の海外留学とか、そういうことは素地はつくっていきたいと私は思います。

 しかし、学問の自由とか、私学は建学の精神がありますし、国立は国立大学法人にしたわけですから、余り手とり足とりというのは本来の趣旨とは違いますので、大学人も、時によって国に頼り、時によっては自由を主張するだけではなくて、しっかりとやっていただきたいと思っております。

猪口委員 それでは、残余の幾つかの私のコメントのようなものをちょっとつけ加えさせていただきますけれども、金曜日の質疑を伺っていまして私としては非常に興味深く思いましたのは、自民党所属の中山理事、小坂理事両方とも、小学校の教育の部分につきまして、ネーティブスピーカーによる英語教育の小学生期からの重要性ということを議論されまして、私も、言うまでもなく、その考えを支持したいと思っております。

 よく比較に出されますフランスの国語教育のことでございますけれども、確かに国語教育を非常に重視しているわけですけれども、同時に、フランスにおいては、私が聞きましたところ、八歳から第一外国語、それから、場合によっては十二歳から第二外国語を教えるという規定となっているそうでございまして、臨界期の終わる前に外国語の能力を少しでもつけさせるというのが趣旨であり、それによって言語能力が、つまりフランス語能力がむしろ刺激されるんだというような説明を受けたことがあります。私はその部分の専門家ではありませんので、これは大臣のお考えにお任せいたしますけれども、私としてそういう希望がございます。

 それから、小坂前大臣が取り上げられました放課後子どもプランでございますけれども、これは少子化対策の観点からも大変重要な事業でございまして、働く母親のため、それから、学力低下が言われますけれども、その部分について、放課後で、さまざまな形で地域の力もかりながら補うこともできます。それから、義務教育期におけます家計の教育費についての税外負担、これを最小化できます。

 ですから、上手にこの事業を推進していけば、その中でスポーツの指導を受けたり補習を行ってもらったり、あるいは、いろいろな反復練習が特に低学年のころは重要でございますけれども、そういう手とり足とりの時間が家庭にも一般教科の中でもないとするならば、放課後のそういう時間を使うということもできますし、あと、よく子供たちはお習字、そろばんというおけいこに行くんですけれども、それも親が送り迎えする必要なく、学校の中で放課後やってもらうというようなことであれば、とても効率もよい。

 また、地域に戻ってくる退職者は、そもそも我が国のここまでの経済を支えた方々ですので、能力が高く、今後は、地域の中で将来世代のためにその能力を生かしていただきたいと思います。

 私としては、小学校は立派な施設がありますので、できるだけその中でという希望を持っていますけれども、まずは事業が広く受け入れられることも重要であると感じておりますので、ぜひ積極的な、この放課後子どもプラン、教育の面からも少子化対策の面からも、家庭と仕事のワーク・ライフ・バランスの面からも重要でありますので、大臣によろしく指揮をとっていただきますようお願いしておきたいと思います。

 何かコメントがございますれば、よろしくお願いいたします。

伊吹国務大臣 十分承らせていただきました。

猪口委員 では、私の質問は以上で終わります。今のところ、この法案につきましては、非常に適切な規定ぶりが多々なされていると私として認識しております。

 委員長、どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 猪口委員に引き続き、教育の再生という点について御質問申し上げます。

 この教育の再生は、全国民の望む、改めて言うまでもなく大きな課題でございます。安倍総理は、教育再生会議の初回会合冒頭のごあいさつの中で次のようにおっしゃっておられます。「すべての子どもに高い学力と規範意識を身に付ける機会を保障すること」、そして、「そのために、公教育の再生や、家庭・地域の教育力の再生が重要である」、全くそのとおりだと私も思います。

 現代は価値観が多様化をしております。教育に何を求めるのか、この命題は、つまるところ、それぞれの人の人生観、最終的には、幸福とは何かということにつながると私は思います。そうしますとこれは、国民一人一人千差万別でございます。総理の冒頭のこのごあいさつにありましたように、「高い学力と規範意識を身に付ける機会を保障する」、これは当然のこととして、これに加えて、芸術や文化、あるいはスポーツ、学力、平たく言えば、学校のテストのみで子供たちの可能性、こういったものに順番をつけてしまっている傾向については、今後さらに御議論を重ねていただきたいと思います。

 ありていに言えば、勉強はいま一つだけれども、あいつはスポーツは最高だ、あるいは絵をかかせたら右に出る者はいない等々、学校の勉強、もちろんこれが大事であることは私も当然承知をしておりますが、そこでも、やはりその物差しでは光が当たってこない子供たちにも別の尺度で光を当てて、この国を支えていただく大きな人材として育てていく必要があると私は考えます。

 そこで、まず冒頭、伊吹文部科学大臣にお伺いをいたします。

 この「高い学力と規範意識を身に付ける機会を保障する」、これは当然のこととしまして、さらに、多様化した価値観の中でそれぞれの子供たちの可能性を引き出す新たな時代の教育の実現に取り組んでいただきたい、こう思いますけれども、大臣の御意見をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 先般の国会でお認めをいただいた改正教育基本法の第一条は、まさに、先生がおっしゃったことを国会として私は承認をしていただいたんだと思っております。それによれば、人格の完成ということと、それから国家、社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成、これを教育の目的として掲げているわけですね。

 これを実現するために、第二条に具体的な目標として、幅広い知識と教養、豊かな情操と道徳心、健やかな身体、能力の伸長、自律の精神、公共の精神、伝統と文化の尊重云々ということが書かれております。

 したがって、社会全体がこういう教育の中で育っていった日本の教育を受けた人たちをどう評価していくかということにかかっているわけですね。ですから、学問だけが優秀な人を評価する社会があれば、これはやはり正していかねばならない。それから、経済の成長だけに貢献する人が立派な人だということであれば、これまた正していかねばならない。その評価する側の社会の人たちの価値観を直していくにはやはり百年近くかかるんですね。ですから、国家百年の計と言われるのはまさにそういうことだと思います。

 ですから、教育分野では、先生の御注意があったように、これから指導要領等を正してやっていきますが、その人たちが社会に受け入れられるような社会の評価をしていただく人たちを積み上げていくにはかなり時間がかかりますので、私たち一人一人が、戦後の経済成長万能、物質最優先という、これはその時代にはその時代の、物の乏しい時代の要請があったわけですけれども、今これだけ豊かになってきた日本社会においては、豊かさをどこに振り向けるかということ、これが、やはり政治に携わる私たち一人一人が考えて、国会で議論していかなければならないことだと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 私も、この日本という国に生まれて、非常に小さな国ですけれども、非常に優秀な国民性があると思います。その上で、さまざまなこの国の持つ可能性の花を開いていくためにも、今大臣からも御答弁いただいたように、さまざまな角度から光を当てて、より多くの人材を輩出しなければならないと思います。

 その意味で、具体的には、財政面を初めさまざまなバックアップが必要だと思います。私も、若輩者ながら、その点については全力で応援をしていきたい、そのように決意をしております。

 さて、この教育の再生、そのためになさなければならないことは山ほどございます。一方で、今、国会で行われている議論が、一部ではございますけれども、現場とかけ離れてしまっているのではないかと印象を持たれているのもこれは事実でございます。こうした国民の御懸念を払拭するために、今この場で行われている議論がつまるところ何なのか、立法府としてまず何をしようとしているのか、これを明確にしておかなければならないと思います。

 昨年、学習指導要領で定められた科目及びその授業時間数を満たしていない、いわゆる未履修の問題、また、いじめによる自殺という余りにも痛ましい事件が発生をいたしました。いわば、こうした社会的な問題の発生を受けて、こうした事態を打開すること、加えて、ここまで粛々と議論を重ねてきた中教審の報告を踏まえ、さらに、官邸で行われている教育再生会議の議論も加味をして、特に、重要な初等中等教育に関する法律事項、これを改正しようとしている、これが今国会、この立法府での議論の中心だと私は考えております。

 こうした全体の大きな教育再生の議論の中で、今回の法改正の位置づけは私が今申し上げたようになると理解をしておりますけれども、文部科学大臣の御認識をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 未履修だとかいじめというのは決していいことではないと私は思いますが、あのことは、先生が今一番最初の御質問で言われた、日本人のやはり広い意味での劣化のあらわれだと思うんですね。これを直すというようなやや狭隘な観点で教育再生は私はとらえるべきではなくて、これは一種の病気として表にあらわれてきていること、したがって、今回、改正教育基本法を踏まえて、将来のために早急に直さなければならない仕組みについてとりあえずお願いをしているということでして、あと、なおなおお願いしなければならない法律あるいは予算、そして何よりも、教育に携わる者の、私を含め、現場の教師の方々まで意識を変えていかなければならないと思いますし、そういう大きな枠組みとして実はお願いをしている。

 慎重という言葉と、やることが嫌だから引き延ばすということは、やはり私は違うと思うんですね。慎重に、しかし急いで決断をしなければならないことは決断をする。決断が独断であってはならないから、国会に最終的にお願いをしている。現場を変えて、制度を変えて、これだけはできるだけスピード感を持ってやっていく。

 しかし、結果はなかなかそう簡単には出てこないと思いますが、私たちは、社会の病癖として出てきた個々の事象をモグラたたきのようにつぶしていくために法改正をお願いしているわけではございませんので、その点は、国家百年の計という観点から議員の先生方の御指導をお願いしたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 大臣のおっしゃっていただいたとおりで、今の時代はスピードも大変要求をされます。その上で慎重に審議もしなければならない。ともすると、要するに国民の皆さんへのきちっとしたアナウンスを行わないと、何となくかけ離れたこの東京の一角で、むしろこの領域の都合のいいように法律がいじられているといった印象も持たれかねないリスクも背負っておりますので、あらゆる機会をとらえて、ぜひとも国民の皆さんに理解をいただけるような説明をしていきたいと思いますし、そういったことがわかりやすくなるような質疑を繰り返していきたいと私も考えております。

 そこで、まず今回の法改正の中で、そうはいいましても、このいじめの問題の解決という角度から、大きな法改正の一つとして、今回、文部科学大臣の教育委員会に対する指示、これを可能にするということが盛り込まれております。この点については種々議論があり、平たく言いますと、これも国の関与の拡大だというような御心配の声も耳に入ってまいります。

 確かに、大臣の教育委員会に対する指示を可能にするだけでいじめがなくなるとは、到底もちろん思えません。大切なのは、現場で仕事をされる教師の方々、またそれをサポートする学校の体制あるいは地域の教育力というものをどう再生していくのか、何度も大臣からもお話しいただいているとおり、これが肝だと思います。ただ、この一連のいじめの問題の際に国として何ら法的に打つ手がなかった、この点の反省を踏まえて法改正をする、このように認識をしております。

 当然のことながら、大臣が指示をできるケース、これを限定すること、また、どこまでも地方自治としての最善の努力を促していくこと、これは論をまちません。

 では、今回の指示は今日までの地方分権の流れに逆行するものなのかどうか、国の関与の拡大なのかどうか、この点を明確にさせていただきたいと思います。

 地方自治法において、国が地方自治体に対して指示ができる場合を限定しているはずでございます。つまり、生命身体を保護する必要がある場合に限定をしていると私は理解をしております。だからこそ我が公明党も、ここまでの議論の中で、あくまでこの範囲に限って指示を認める旨を主張させていただいてまいりました。

 そこで、まず総務省の政府参考人に確認をいたします。

 地方自治法において、こうした生命身体を保護する必要がある場合に限り指示が可能になるとどこにどのように規定をされているのか、御答弁をお願いいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、地方公共団体の自治事務に対する国の指示のあり方につきましては、その基本原則を二百四十五条の三に規定しているところでございます。

 すなわち、同条の三の第六項に、国は、国民の生命身体または財産の保護のために緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合を除き、自治事務の処理に関し、地方公共団体が指示に従わなければならないこととすることのないようにしなければならない旨が規定されているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 さらに今回の法改正では、法律違反や怠りによって生徒らの教育を受けるべき権利が侵害されていることが明らかである場合は、文部科学大臣は是正の要求を教育委員会に対し行うことができるという内容になっております。これは、いわば未履修問題のような事象に対し対処するための法改正であると私は理解をしております。

 そこで、もう一度政府参考人にお伺いをいたします。

 今回、地教行法上で規定をされる、文部科学大臣から教育委員会への、今御答弁いただいた指示と、文部科学大臣から教育委員会への是正の要求、この効果の違いについて、できるだけわかりやすく御答弁をお願いいたします。

藤井政府参考人 お尋ねの、指示と是正の要求の効果の違いについてでございますが、指示は、指示された具体的内容にそのまま従う義務、これが地方公共団体に直接生じるというものでございます。これに対しまして、是正の要求については、地方自治法二百四十五条第一号のハに定義されているところでございますが、地方公共団体があくまでみずからの判断により是正措置の具体的内容を定めて、これを講ずる義務を負うこととなるというものでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 指示は、まさに言われたとおりに動く、是正の要求は、その是正の要求を受けて、個々、状況に合わせて具体的な政策を打つ、そういう違いだというふうに今御答弁をいただきました。

 そこで、総務大臣にお伺いをいたします。

 今回のこの地教行法の法改正にある、大臣からの教育委員会への指示、そして是正の要求、これは、どちらもあくまで地方自治法の基本原則を逸脱して国が関与をするものではない、現行法上こう結論づけられると思いますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

菅国務大臣 伊藤委員の御指摘のとおりでありまして、私どもは、地方自治事務について認められた関与の範囲内でこの指示と是正の要求が行える、このように理解をしております。

伊藤(渉)委員 明確な御答弁、ありがとうございます。これで私も、現場に帰って、御心配いただいている皆さんにはっきりとその旨をお伝えできると思います。

 もう少し時間がありますので、学校教育法等の改正に関連してお伺いをいたします。

 まず、伊吹文部科学大臣にお伺いをします。

 今回の改正で、学校における組織運営体制や指導体制の確立を図るため、幼稚園、小中学校等に副校長、主幹教諭、指導教諭、新たにこういった職を置くことができることとする、こう明示をされております。学校現場の取り組みとして、魅力ある組織運営や指導体制をつくる好機となるのではないかと私も期待をしております。

 そこで、できるだけ大臣の中にある具体的な、この法改正によって変わる現場のイメージ像について御答弁をお願いしたいと思います。

伊吹国務大臣 まず先生、どうなんでしょう、一般の会社においては、あるいは一般社会と言ってもいいと思いますが、先輩社員と後輩社員というのは、やはり、同じ社員であっても違うんじゃないんでしょうか。先輩の人は後輩の人を優しく指導して経験を伝える、そして、後輩はそれを受け入れて自分も成長していく。ところが職員室は、校長と教頭以外はみんな一緒だという雰囲気がありますね。

 ですから、今回、校長から任された校務をみずからの権限で処理することを職務とする副校長、それから、副校長や校長から任された校務の一部を取りまとめて整理する職としての主幹教諭、こういう職を設けて、これを給与上どういうふうに位置づけていくかということは非常に大切なことだと思いますが、いわゆるなべぶたというんですか、校長、教頭以外はみんな同じだというのではなくて、一般社会と同じような、指導ができる職員室にしていく方が子供たちのためにいいんじゃないか、こんなイメージを抱いて、同時に、その先生方が子供と向き合う以外の時間のことをかなりカバーしていただければ、子供と向き合う時間のとれない先生方も事務から解放されるということも考えているわけです。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、最後の質問に移ります。

 今大臣から御答弁いただいたように、この一連の官邸での再生会議の議論も踏まえて、要するに、学校という現場に、まさに企業的感覚でいけばマネジメントというか、そういうことを専門につかさどるこういったポストも設けていこう、そういうような印象を私持っておりました。これは当然大事なことで、そういったことをすることによって、子供たちに教育をする先生たちがまさにそのことに集中をできるんだろうと思います。

 ただ一点、こういったポストを設置するだけで、これも平たく言えば、人数がふえないと、役職がふえても、何か今までいる人の中でそれをやるということだけになると、なかなかこれは機能しづらいのではないかなと。

 これは難しい問題がさまざまあると思うんですが、今、給与法上の位置づけの話にも言及をしていただきましたけれども、最終的な現場にもう少しこういったマネジメントみたいなことを専門にやる人、教育をきちっとつかさどる人、要するに、少し人数をふやしていく方向に行かないといけないんじゃないかなと私は考える一人でございますが、この点について大臣の御答弁をいただきまして、私の質問を終わります。

伊吹国務大臣 これは実は、国会で最終的に決められた行政改革推進の法案がございまして、この中で教職員の定数も縛られていることは御承知のとおりです。

 ですから、教職員の負担を軽減していくというのは、この前も御答弁申し上げましたように、お金をつけて外へ出す、つまり外注ですね、従来であれば用務員さんのようなものはこのごろはもうほとんどガードマンでなされているとか、あるいはお金を若干つけて中へ引っ張り込む、つまり、ボランティアの人たちに少し肩がわりしてもらうというやり方と、それから、従来の感覚でいえば定数をふやしていく。しかし、いずれにしろこれは予算が要るわけですよ。それから法改正が要ります。

 ですから、法律、予算で決められていることは国会で変えればそれはきちっとできるというのが日本の仕組みですから、行革の観点、財政再建の観点からどのやり方がいいのか、我々も年末にかけて御議論をさせていただいて、いずれ御審議をいただかねばなりませんし、御審議をいただく前に、議院内閣制ですから、公明党、自民党を含めて与党との御相談がございますので、先生には、ひとつ今おっしゃった観点からぜひ応援をよろしくお願いいたします。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 ぜひともしっかり応援をさせていただきますことを申し上げまして、私の質問を終わります。

保利委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 先週金曜日から審議が始まって、初日は総理入り、テレビ入りということでございましたから、元文部大臣含めそうそうたる方々が質問に立ち、そしてまた、それぞれのお考えを御披露いただいた。先輩議員の皆様方のそれなりにいろいろな思いを拝聴させていただいて、私にとっては大変有意義な委員会だったと思っております。

 いわゆる従軍慰安婦のお話ですとかあるいは沖縄集団自決のお話まで出てまいりました。そしてまた、英語教育が必要なのかどうなのか、あるいは、その前にもっと国語力を向上させた方がいいんじゃないかとか、いろいろなお話が出ましたけれども、今週からはいよいよ中身の審議ということで、もう少し法案に沿ってのお話になろうかと思います。

 ただ、ここでもう一度思い出していただきたいのは、私どもの日本国教育基本法案、もう一回提出をさせていただいておりますし、先ほどの大臣の御答弁を拝聴いたしておりましても、国民そのものが劣化しているというお話も出ました。いじめや未履修に対する、必ずしも対症療法という話じゃなくてという意味合いでの御答弁だったと思います。そういった意味で、やはりもう少し掘り下げて、別に審議をおくらせる意味じゃなくて、きちっと議論のたたき台の部分から再確認をした上で、選挙も終わったことですし、ここで心静かに深い議論をしていければなと思うわけでございます。

 そこで、まず、そういった意味で、教育再生、あえて教育再生のための特別委員会を設置しての審議という位置づけだと思うんですけれども、私、文部科学委員会でも質問の中でちょっと申し上げたんですけれども、そもそも、再生という言葉そのものは、広辞苑を引いても、死にかかっているものが息を吹き返すんだという意味合いなんですね。

 大臣、今、国民そのものが劣化しているという表現もありましたけれども、どこが死にかかっているんでしょうか。そこら辺の問題意識のところから、できれば共有した上で審議が進められればいいと思いますし、まず、そこら辺の基本認識をお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 今先生がおっしゃったように、選挙も終わりましたし、まさにテレビも入っておりませんので、全国に放映されるときは、やはり一方的な主張に対しては反論をしませんと誤解を生みますので、私もいろいろなことを申し上げましたけれども、きょうは少し落ちついて、お互いに議論をぜひさせていただきたいと思います。

 劣化しているとか、何がだめだとかというのは、これは個人の価値観によって非常に違うと思います。だから、ここは謙虚にやはり議論をしなければなりませんし、教育の目的も、御党の藤村先生と私とよく議論をするんですが、日本の将来を担う人材をつくるのか、生まれてきた限り一人の人間として豊かに暮らせる人間をつくるのか、まあ答えは両方の間くらいに私はあると思うんですけれども、ここなんかもやはり党としてのイズムの違いによってかなり違うところだと思うんですね。

 安倍総理が教育再生とおっしゃっているのは、やはり人間として生きていく上の最小限のルールをしっかり守れるという国民をつくっていきたい、それから、国際社会の中でお互いに切磋琢磨していくときにおくれをとらないような基礎学力だけは身につける日本人であってもらいたい。それがどうも、目の前のお金だとかあるいは目先の選挙だとか、こういうことに目が移りがちなのは、必ずしも日本人が持つ価値観としてはいいことじゃないんじゃないかという意味で私はやや劣化という言葉を使ったんですが、これは私の考えでございますので、日本人一般についてはほかのお考えがあるということは、私は謙虚に受け入れたいと思いますし、御議論させていただきたいと思います。

 つまり、安倍流に言えば、そういう日本人が非常に少なくなってきているから、少しそこを取り戻すような、新しい命を吹き込むような教育のあり方にしたい。これはいろいろと政党により、個人により考えが違うと思いますから、最終的なそこの御判断は、やはりこれは憲法の規定によって、選挙によって決着をつけていかねばなりませんので、先生と私とがきょうこういう落ちついた議論をしているということの方をむしろ私はマスコミの人たちに報道してもらって、それを国民が判断されて、次の投票の機会である参議院のときにどちらの党をとっていくのかという判断をしていただく健全な国家になるような教育を再生したいということでございます。

牧委員 私も大体大臣と同じ考えだと思います。

 社会のため、国のためという座標軸と自己実現のための座標軸の中で、どの辺に教育の目的というか、そこら辺を置くのかという、まさにその辺のバランスの問題だと思うんですけれども、その中で、行為の規範それから学力の問題、大きく分けてこの二つが今問われていると思います。

 行為の規範については、単に社会性をもうちょっと身につけるというだけじゃなくて、もう少し私は深掘りした議論も後ほどちょっとさせていただきたいと思う。

 それともう一つ、学力について、これもやはり議論の前提として、同じ土俵で議論した方がいいと思いますので、ちょっと確認をさせていただきたいと思うんです。

 学力、そもそも学力というのは何なのか、学力低下を今しているのかどうなのか、であるとすればその原因は何か、そこら辺のところをちょっと大臣の御認識をお伺いしておいた方がいいかなと思うんですね。

 例えばの話、ちょっと大げさな話かもしれませんけれども、明治維新後の日本の近代国家を築いた人たちというのは、江戸時代の教育を受けた人たちなわけですね。それも、地方におけるそれぞれの藩で、藩校で教育を受けた人たちで、その人たちが受けた履修科目というのは一体どんなものだったのかなと思うんですけれども、当然文部省もまだありませんし、もちろん学習指導要領もないわけですから、もちろん未履修もまたないわけですし、もちろん全国学力調査なんというのもあるわけないわけで、そういう中で育った人たちが維新後に、西欧のあらゆる社会のシステムから、あるいは自然科学、人文科学、物すごい勢いで吸収したということは、それなりにそういう吸収する力をそのとき培っていた、はぐくまれていたということだと思うんですね。そういった意味で、私は、そういう人たちの学力というのは非常に高かったと思うんですけれども。

 ちょっと大げさな話になりましたけれども、そういう大きな観点からでも結構ですので、いわゆる学力というのは何なのか、そして今、学力が低下している、さっき劣化という表現がありましたが、私、そっちの方がひょっとすると当たっているのかもしれないと思うんですけれども、ちょっとそこら辺のお考えを簡潔にお願いします。

伊吹国務大臣 今の先生の例えで言えば、第二次世界大戦に日本が敗れた後、国民は一種の虚脱状態にあったと思いますが、それを経済復興に至るまで担われた方は、戦後の教育を受けられた方ではないんですよ。これは、戦前の教育を受けられた方がリーダーとなって日本を今日ここへ持ってこられたわけですね。そして、戦後教育を受けた者がリーダーになり始めて、ようやく今いろいろなことが言われ始めているということは、私たちはちょっとよく考えておかなければならない。

 学力が何かというのは、先ほどもう御質問がありましたが、いろいろな見方があります。今回の学校教育法の改正案では、この前の改正教育基本法を受けて、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決させるために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことを重視するということは、これは三十条の二項だったと思いますが、書いてございます。

 あと、この態度の中で能力を身につけられるかどうかは、それはそのときの環境だとかいろいろなこともあると思いますが、少なくともその条件整備だけをするというのが政府のやはり責任だろうと私は思いますので、OECDの調査その他、これはもう専門家の先生に申し上げるまでもありませんが、数字だけで教育というのははかれませんが、数字上の判断からすると、世界の中で少しずつ日本の立場は落ちてきているということだけは確かだろうと思います。

牧委員 それから、もう一点確認をしておきたいと思います。

 学力低下という言葉だけじゃなくて、いじめですとかいじめによる自殺、あるいは不登校だとか学級崩壊だとか、教育を取り巻くいろいろなさまざまな問題が指摘をされておりますけれども、これらの問題が、今教員免許更新制の話が出てきておりますけれども、教員の資質に起因するものという御認識なんでしょうか、そこら辺のところをまず。

伊吹国務大臣 その部分がないとは申しませんが、一方的に責任をすべて教員に負わせて教員バッシングをすれば状況が変わるものだと私は思っておりません。それはもう、これだけ実質的に核家族化が進み、共働きになり、家庭と地域社会が崩壊をすれば、従来家庭と地域社会が担っていた教育力、しつけ力というものは、すべて雲散霧消しておりますね。そして、学校の先生にそのことが期待されて、同時に私たちも、やれ未履修の調査をしろ、いじめの調査をしろということも、これは大切なことだからお願いしているわけですが、同時に、都道府県教育委員会もまた市町村教育委員会も同じような調査をして、次々とデスクワークがふえてきている。その中で、先生方が子供と向き合う時間がなくて非常に困っておられるということは、私はよく理解しておりますし、昔のことを言うといけないかもわかりませんが、戦前は徴兵制の対象外になっていたとか、先生にはやはりそれだけの優遇措置が講じられておったわけです。

 ですから、給与だけの問題ではなくて、社会的に尊敬を受ける先生をつくっていく努力と相まってやはりやっていかねばならないので、今回の研修制も、先生方の資質を高めていただくためにやるわけです。そして、どうしても困った方は、どの社会にもおります、教師だけではありません、しかし、ほかの社会では、その人たちはやはりいろいろ手だてを講じて、困ったポストからは外されていくわけですね。そのことだけは、やはり教育の分野だけは例外だというわけにはいかないという認識でおりますので、学校の先生にすべて責任があるなんということは、毛頭、安倍内閣は考えておりません。

牧委員 基本的なお考えはわかりました。

 それで、今のお話でもよくわかるんですけれども、もちろん学校教育だけでは救済し切れない問題なわけですね。これは、繰り返しになりますけれども、社会全般のモラルの低下だと私自身も思わざるを得ないと思っておりますけれども、そういう中で、安倍総理が、せんだっても繰り返し繰り返し規範意識というお言葉を使われておりました。

 その規範意識についての、ちょっと言葉にこだわるんですけれども、その認識ももう一回確認をしておかなきゃいけないと思います。違った意味で使っているとこれはまずいものですから、規範意識とはそもそも何ぞやというところをちょっと教えてください。

伊吹国務大臣 何度も申し上げているように、五人いれば五人とも、その人の人生観、価値観が違いますし、政党によって政治の理念が違いますから、おのおのが持っている規範、あるいはおのおのが持っている価値観というものは違ってくると思います。ですから、このことについては常に謙虚でなければならないということは、私、再三申し上げております。

 人間は、自分のやることが常に正しいと思いがちですが、本当にそうかなと思う心は常に持っていないといけない。特に、物を変える場合は、ずっと長い間祖先の英知で積み上げられてきたものを変えるわけですから、たまたま、百年も生きない自分の情熱というものが本当にそんなに大きなものなのかなと考えた上で、なおかつ、説明責任を果たし、多くの人たちの理解を得て、初めて物事が変わっていく。その変わっていったことの積み重ねが現実なんですね。これが私は、保守主義、保守というものの基本だと思います。

 ですから、規範というのもいろいろあると思いますが、あえて言えば、人間として生きていく上で最低限身につけておかなければならないルールというか行動の様式、そして、これは、日本は日本的にこれを積み上げてまいりましたね。ですから、武士道とか商人道とか、宗教がないのになぜ日本人はあんなに規律正しいんだろうかとかよく言われる。これは国によって少しずつ違います。

 だから、一般論として言えば、人間として生きていく上での最低限のマナーを身につけるというふうに理解したらいいんじゃないかと私は考えております。

牧委員 教育基本法の議論のときにもたしかそういう話があったかもしれないんですけれども、そこら辺のところが、私、ちょっと大臣と考え方が違うんですね。もちろん、考え方がいろいろあっていいとおっしゃると思うんですけれども、保守主義だという表現を使われたので、私は、保守主義の観点に立てば、倫理だとか規範意識あるいは道徳という言葉に対して、最低限守るルールというんじゃなくて、もうちょっとポジティブな考え方をしてもいいんじゃないかなと思うんですよ。

 いみじくも価値観という言葉を使われた。これは私は正しいと思うんですけれども、物事の価値にはやはり序列があると思うんですよね。とうといもの、すばらしいもの、いいものから、取るに足らないものだとか、くだらないもの、あるいは嫌悪すべきもの、醜いもの、やはりあると思うんですよ、ある絶対のものが。これは宗教でも何でもないと思うんですよね。そのより高い価値を追求していく力を、いかに教育の場でその力をつけていくかということ、つまりは、本当の幸福を求める力をいかにつけていくかということだと思うんですよね。

 だから、私は、ちょっと教育基本法の問題にまでもう一回立ち戻って考えなきゃいけないと改めて思っているんですよ。やはり、これは、宗教的情操を涵養すると我が党の法案には書き込んでありますけれども、宗教についての一般常識と宗教的情操を涵養するということは、もうまるっきり次元の違う話なんですね。(発言する者あり)私どもは、やはり、そこまできっちりともう一回考え直さなければ、本当の意味での全体のモラルの低下というものは、どんな小手先の法律をいじくっても解消しないんじゃないかなと思うんですよ。

 ちょっと話は違いますけれども、私、小学校のときの五年生、六年生の担任の先生が宮沢賢治が好きで、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」の詩というか散文というか、これをクラス全員に覚えさせて、毎朝必ず繰り返すんですね。大体今でも私は覚えていますけれども、ちょっと自信がないのでここでは御披露しませんけれども。

 宮沢賢治という人は熱心な仏教徒というか、法華経、日蓮宗の熱心な仏教徒で、ただ、私も好きでいろいろ読んで、例えば「グスコーブドリの伝記」ですとか、ああいうのを読むと、これは仏教徒なのかキリスト教徒なのかよくわからないような、宗教一般的な普遍的な自己犠牲というか、そういった本当の幸せを求める究極の姿というか、そういうものが表現されているんだなと感じるんですね。これは、宗教教育といっても、特定の教義でもなければ、私はこういうところにやはり教育が踏み込むべきだと。

 前回の国会のときも、私、教育基本法の議論の中で、今の高校生、十代の人工妊娠中絶のデータをちょっと聞いたりしましたけれども、いっときの、まだ戦後の復興期よりは全般の数は減っているんですけれども、経済的な理由じゃなくてという十代の子たちの人工妊娠中絶の事例が逆にふえている、この事態についてどう思いますかというような質問もたしかしたと思うんです。例えばこういうことにも、これはもう悪だと言い切れる教育でなければ私は本来的な解決にならないと思うんですよ。その辺、大臣のお考えをお聞かせください。

伊吹国務大臣 私は、極めて言葉を選んで答弁をしているつもりでございます。先生の席に私が座って質問をすれば、私の価値観に基づいていろいろな意見を申し上げると思います。

 だから、先ほども、私は、日本には日本の人間として生きていくルールの積み重ねがあるということを申し上げてきました。だから、日本には日本のやはり倫理性とか道徳性というものがあるわけですよ。宗教も、ある宗教の方はこういう考えを持っておられる、ある別の宗教の方はこういう考えを持っておられるということがあっていいと思います。

 しかし、それらのやはり最大公約数を扱っていかなければいけない文部科学大臣としては、人間として最低限の、生きていく最低限のマナー、ルール、その中に先生の今御指摘になったようなことは普通は入るんじゃないでしょうか。私はそう思いますよ。

 人によって随分違いますから、御党の中でも、先生のお話を私は共感を持って聞いておりましたけれども、必ずしも先生と同じ考えじゃない方が結構おられますよね。先ほどそうだという不規則発言がありましたけれども、そうだとおっしゃっている政党が、沖縄で一緒に選挙で共闘を組んでおられた別の政党の方々は、全く先生と違うことをおっしゃるんじゃないでしょうか。

 だから、その辺の、国民すべての行政をやらねばならない文部科学大臣として最低限のお答えをしたと、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

牧委員 やや不規則答弁もございましたけれども、話を戻せば、ただ、大臣がおっしゃるような日本人独自の倫理観というか道徳観、今、それも失われてしまっているんじゃないかなと思うからこそ、私申し上げているんですね。どうでしょうか。

伊吹国務大臣 まさにそのとおりだと思います。それが失われていることを取り戻そうとして、教育再生をお願いしているわけでございます。

牧委員 わかりました。ただ、これは答弁必要ないですけれども、この法案がそれを取り戻す内容になっているのかなと、私は去年の教育基本法も含めてそう思わざるを得ないことは申し上げさせていただきたいと思います。

 時間がなくなってまいりますので、次へ進みたいと思いますけれども、去年の教育特における議論の中で、私ども、さまざまな資料を要求させていただきました。これからいろいろな議論を進めていく上でも、前回提出していただいた資料に基づいて質問させていただいたり、改めて拝見をしてちょっと疑問に思うところやら、もう少し追加の資料がいただきたいというような部分も、ずっと見ていくとまた出てきますので、順次、ちょっとその辺について、今後の質問の中でもさせていただきたいと思います。これはあらかじめ文科省の方にも通告をいたしておりまして、前回出してもらった資料の一からずっと三十幾つまで番号がついていますので、まず、その資料の一からちょっと入らせていただきたいと思います。

 わかりますよね。資料の一、前回出していただいた資料の一というのが、「「教職員の不祥事状況(飲酒運転、セクハラ、痴漢行為、カラ出張、などの犯罪行為)とその処分内容」に係る資料」ということで平成十二年から十六年までの資料を出していただいておりますけれども、これ、十七年以降の資料というのはまた出てきますか。

銭谷政府参考人 まず、先生お話しいただきました資料の一でございますけれども、これは、昨年、教職員の不祥事の状況とその処分内容について資料を提出させていただいたところでございます。実は、資料を提出いたしました後に、昨年の十二月二十六日に、平成十七年度分の教職員の不祥事状況とその処分内容の結果がまとまりましたので、それを公表しているところでございます。

牧委員 では、その資料もまた出してください。

 それと、この資料一に基づいて。これは処分の状況なんですね。懲戒とか訓告、諭旨免職などの決定がなされた者についての、その決定の結果の報告だと思うんですけれども、その報告の義務、各地方教育委員会からの報告だと思うんですけれども、その報告の義務に基づいてやっているのか、その根拠、それからその手順について、ちょっと簡単に教えてください。

銭谷政府参考人 教職員の懲戒処分でございますけれども、これは、任命権者であるところの都道府県、政令市の教育委員会が行うものでございます。文部科学省では、教職員の勤務の状況について把握をするために、毎年、各都道府県、政令市の教育委員会に、その前年の調査状況について、調査をお願いいたしまして、そして報告を求めている、それを整理しているというものでございます。

 ですから、処分自体は、都道府県あるいは政令市の任命権者である教育委員会の権限と責任において行っているということで、必ずしも私どもに報告しなきゃいけないというものではございません。

牧委員 処分決定前に報告があることもあるんですか。お願いしないと出てこないものですか。そこだけ簡単に。

銭谷政府参考人 これは、やはり処分決定した後に報告をしていただいているものでございます。

牧委員 こういった懲戒処分あるいは諭旨免職、こういう方というのは、一言で言えば、教師として、教員として不適格な人だったというお話だと思うんですけれども、その不適格な人というのと指導が不適切な教員というのはまた意味が違うと私は思います。これは、たまたまこのとき私どもが要求した資料が、不適格な教員の資料を要求したわけですけれども、指導が不適切な教員についての実態の認識というのはどういう認識があるんでしょうか。

銭谷政府参考人 ただいま先生御質問の件について、ちょっと整理をして申し上げたいと思いますけれども、先生の方にお出しをいたしました資料は、文字どおり、教員に非違行為、つまり違法な行為とか、あるいはもちろん交通事故を起こしたとかセクハラをしたとか、そういう非違行為があった、そういう教員についての処分の状況について御報告をしたものでございます。ですから、これはまさに懲戒の対象になる行為についての整理でございます。

 それから、ただいまお尋ねがありましたのは、指導が不適格な、あるいは指導力不足の教員についての状況ということでございますので、これは、大変言葉が正しいかどうかあれですけれども、普通に仕事をしていても、どうもその先生がやはり子供をしっかり掌握し切れないとか、あるいは教えている教科指導の内容に誤りがあるとか、こういったような、本当に指導力がないとか、あるいは教員としていかがなものか、こう思われるような先生、これがいわゆる指導力不足教員と言われている先生でございます。それにつきましても、私ども、それぞれの現在の教育委員会においてどういうふうに把握をしておるのか、そちらのデータは別途また把握をしているところでございます。

 今ちょっと手元にないんですけれども、私の記憶では、いわゆる各都道府県、政令市の教育委員会において指導力不足というふうに認定をしている先生は、年間、大体五百人前後いらっしゃったと思っております。(牧委員「各都道府県」と呼ぶ)はい、合わせましてです。各都道府県、政令市合わせまして、全国で五百人ぐらいいらっしゃったと思っております。

牧委員 ちょっとそこら辺、もう一回整理しておいていただきたいのは、今のは全部合わせて五百人ぐらいというお話だったんですね、指導力不足の。そうじゃないんですか。ちょっともう一回。

銭谷政府参考人 現在、各都道府県におきまして、平成十七年度において指導力不足教員として認定をした数は、五百六名でございます。ただし、これはそれぞれの県がそれぞれの考え方に基づいて認定をしておりますので、判断基準その他はいろいろあるわけでございます。

牧委員 判断基準はいろいろあるというお話ですけれども、文科省としての判断基準というのは何かあるんでしょうか。大臣のお考えでもお聞かせいただきたいと思います。

 例えば、私、高校のとき、今だから言えるんですけれども、高校の生物の先生がほとんど生物の授業をしないんですね。家永裁判の話ばかりするんです。だから、厳密に言うと、私、生物は未履修かもしれないんですけれども、そういった先生というのはやはり問題があると思うんですね、今だから言えますけれども。

 だから、そういうのもひっくるめて、文科省としての、指導力不足あるいは指導が不適切な教師というのはこういう人だという、何かガイドラインというか、あるんでしょうか。

伊吹国務大臣 これはもう、先生は専門家ですから、こんなことをるる私が申し上げるまでもないんですが、今回の教員の免許の法律は、二つの法律が一緒になって一つの法律として構成されているわけでして、一つは、資質を高めるための免許の研修その他ですね。それからもう一つは、教育特別公務員法に分限その他の手続をきちっと定めているわけですから、もちろん両々相まって教師の質を高めていくということなんですけれども、何が指導力不足かということは、この法律をお認めいただいた段階である程度の基準を示さなければならないと思うんです。

 まず、一番大切なのは、やはり評定権者である校長の評定だと思いますね、日々見ておられるわけですから。ですから、基礎的な知識、今おっしゃった教えるための基礎的な知識が十分あるかどうかということ、生徒児童を把握できるかどうかということ、それから日常の職務専念義務等に違反していないかどうかということ、そういうことをしっかりと見きわめて、評定をまずしっかりしてくれということを言わないといけないと思いますね。その基準に従って出てきた評定というのは、現在の教育行政のあり方からいうと、文部科学省が指定をしてだれが不適切教員だということは言えないと思います。

 ですから、先生がおっしゃったように、ある程度の運用の基準、判断のルールみたいなものを地方にお知らせして、そして学校長の評定をやはりしっかりとさせる。多分、家永裁判のことばかり言っていた人は、評定はそんなに悪くなかったから生き延びられたんじゃないでしょうかね。それじゃ困るわけですよね。ですから、そういうところはきちっと、ルールだけはお示ししたいと思っております。

牧委員 時間がなくなってまいりましたので、せっかく行革担当大臣までおいでいただいていますから、ちょっと途中を飛ばして、せっかくですので質問させていただきたいと思います。

 今回、地教行法の改正に際して、いろいろな議論があったと聞いております。政府案と私ども民主党案とはかなり違うものでございますし、ただ、規制改革・民間開放推進会議なんかの議論を聞いていますと、何か、どちらかというと、骨子だけ見ると我が党案に近いような感じがするんですけれども、どんな議論があって、その後政府案がこんな形になってしまったということについての感想もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 規制改革会議においては、御案内のように、私が着任するはるか以前から、もう何年も前からこの教育問題を論じてまいりました。教育委員会の問題についても相当積み重ねた議論をしてきたわけであります。

 その延長線といいますか、そういった議論を踏まえて、教育再生会議の第一分科会の報告が出た後、二月十五日に教育委員会制度の抜本見直しに関する見解を明らかにしたところでございます。それに基づいて、二月二十三日にこの見解を補足する考えを公表いたしました。いわば伝家の宝刀と教育再生会議の方でおっしゃっている非常時対応、これについては、国による一定の担保措置は必要としつつ、国の権限の強化は必要最小限とすべきである、こういう観点から見解を示したものであります。

 最終的には、総理が威令を行われまして、教育再生会議の結論と規制改革会議の結論と、両方の主張を実に見事に整理された結論を出されたものと考えております。

牧委員 ちょっと、見事に整理されたのかどうかはまた議論の分かれるところだと思いますけれども、いずれにしても、規制改革会議と教育再生会議、また中教審における議論と、そこら辺がばらばらなんですよね。ちょっとそこら辺のところは、やはり私も整理をしなければきちっと議論に入れないと思います。

 実際に、去年の十月二十六日の官房長官の会見でも、とにかく各教委の対応を批判したというお話が翌日の新聞にも出ております。各教育委員会は、虚偽の報告を許していた、いじめや未履修の問題で十分な監督ができていなかったという批判をされているわけで、そこら辺の真意というか、その同じ日かどうかはわからないんですけれども、官房副長官もきょうお見えになっておりますけれども、まさに我々が主張してきたような、文科省があり、人事権者があって、設置者があって、学校の現場、この四重構造で責任の所在があいまいだ、それがすべての物事の原因だという発言もされているんですよね。

 そこら辺からして、今回の法案とその発言がどう結びつくのか、そこら辺のところをちょっと、見事に整理されたというお話ですけれども、どのように見事に整理されたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 未履修の問題についての教育委員会のことについて私が申し上げたことは、教育委員会に対して虚偽の報告を行っていたということであって、まず第一にそれは学校が悪い、一義的には学校の責任であるということを申し上げたわけでありますけれども、一方で、未履修であるということを見抜けなかった、報告が上がってきても見抜けなかったということがまず一つですよね、教育委員会の問題は。もう一つは、どうも一部の教育委員会の関係者の中には、その事実を知っていながら放置していたと言われてもしようがないようなケースがあったということで、この教育委員会が役割を果たしていないんじゃないかということで、私はちょっと、虚偽の報告を許していたという状態は、それは監督がきちっとできていなかったことだということを記者会見で申し上げた、こういうことであります。

 さっきの、見事に整理したという、見事というのは形容詞でありますから、それは判断の問題でありますけれども、さっきの渡辺大臣からの答弁はこういうことだと思うんですね。

 教育再生会議の第一分科会が、教育委員会についての国の関与のあり方について指摘をした。ただ、それが比較的、例えば、文科大臣は是正のための勧告を行い、なお改善が見られない場合には是正の指示を行うことができることとするとこの教育委員会について書いてあるんですね。すると、この是正のための勧告あるいは是正の指示というのが余り明確ではないものですから、どこまで関与するのかよくわからないということで、伝家の宝刀ならばともかく、どうなんだろうかという問題提起を規制改革会議がして、そして中教審でこの議論が行われて、今回のように、まさに伝家の宝刀的な関与はやはりやるべきではないのかという結論が中教審で出た。そういう意味において、整理がされたということではないかなというふうに思うんです。

 いずれにしても、教育委員会という制度がありながら、その役割を教育委員会が果たしていないケースがたくさんあって、未履修は、学校の数の上でも生徒の数の上でも、約一割のところでこういう問題があったということでありますから、当然これは整理をされなきゃいけない問題であった、こういうことだと思うんですね。

牧委員 私が申し上げたかったのは、規制改革会議にしろ教育再生会議にしろ、せっかくの提言をして、かなりさま変わりしたものになったのであれば、もう一回意見を述べるなり、もう一回フィードバックさせて議論するなりした方がやはりいいと思うんですよね。

 というのは、例えば今回、四十九条、五十条で是正の要求だとか是正の指示とかありますけれども、今官房長官お話あったように、学校段階やら、あるいは教育委員会の段階やら、事情は複雑ですけれども、いずれにしても、法令違反だとか怠り、怠りの大半は、私、報告義務を怠る怠りが多いと思うんですよね。これが上がってこないことには、それは伝家の宝刀も何も、私は全く無意味なものだと思うんですよ。言っている意味、御理解いただけるでしょうか。

 そこら辺のところを申し上げたかったので、せっかくの御意見をもう一回もうちょっときちっと議論してほしかったな、そうすれば多分我が党案に近づいてくるんじゃないかなと思ったものですから、あえて申し上げさせていただいて、質問を終わります。

保利委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 昨年の六十年ぶりの教育基本法の改正という大きな教育の根幹にかかわる議論の中でも、随分、今、牧委員の方からも指摘があった教育の行政のあり方、あるいは私どもが強く主張しております、財源をどうやって拡充していくのか、そういう骨太な議論が行われて、きょうは、先ほど大臣が落ちついてということをおっしゃっていましたので、私も何度か質問の機会があると思いますので、きょうは落ちついて、最も我々民主党と政府の考え方の分かれる点と、あと後半は、今回の法案の中で非常に結構なことが盛り込まれている部分もあるので、その点について確認をさせていただきたいと思います。

 それで、この委員会、連日、総務大臣にもせっかくおいでいただいておりますので。

 大臣とは何度か別の機会に議論もさせていただいたんですが、今、牧委員から地教行法の教育委員会のあり方についてのお話がありました。私どもは、もう言うまでもなく、やはり分権の観点を大事にしていきたいという中で、今教育委員会に対する問題意識は恐らく我々も政府も一緒だと思うんですね、ここ一番のときに役割を果たしていない、あるいは形骸化をしている点が多々あるんじゃないかということで。ただ、それをどういうふうに解決していくのかというところが、方向性が違っていると思うんです。

 今、牧委員からもありましたように、規制改革会議あるいは地方制度調査会、そして教育再生会議の議論の中でも、むしろ、私ども民主党と同じように、教育委員会を廃止して、首長さんにしっかりとその権限を持っていく、ただ、任せっ放しというわけにはいかないので、監査委員会を別途新設していくというような考えに近いのかなというような議論もこれまであったと思います。

 規制改革会議の中でも、国と教育委員会の関係について、地方分権等の流れに逆行する形で国の権限を強化し、文部科学省の裁量行政的な上意下達の弊害を助長することがあっては断じてならない、大臣指示、勧告といった形は極力避け、むしろ、教育委員会自身がみずからの努力で進化していける環境づくりをサポートすることに国は注力すべきであり、あくまでも教育に関する国の権限を強化するということのない制度設計とすべきであるというような見解が、本年二月にも、二月十五日でしたか、示されております。

 そういうことを踏まえて、総務大臣として、今回の地教行法の改正案、必要最小限とはおっしゃいましたけれども、教育委員会に対する国の関与が明記されたという点についてどのように考えておられるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。

菅国務大臣 安倍内閣の最重要課題の中に地方分権も当然含まれておるわけでありまして、私ども一番気をつけましたのは、国の関与というのは、自治事務、これについて認められた関与の範囲内、このことについて、私は、総理の指示のもとに文科大臣や官房長官と話し合いをいたしました。そういう意味で、教育再生と地方分権というのは両立できているんじゃないかなというふうに思っています。

笠委員 改めてちょっとお伺いしますけれども、ということは、今回のこの改正案、総務大臣としてのお立場からすると、言葉はなんですけれども、この程度であればそんなに、教育の分野に関する地方分権の視点というもの、それが損なわれるものではないというような認識でおられるということでよろしいでしょうか。確認をさせてください。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、自治事務の認められた中の範囲であるというふうに私ども考えておりますし、地方六団体の皆さんからも、そのことについては評価をいただいています。

笠委員 わかりました。一方で地方自治法がある中で、それとの整合性を含めてかなり検討されたんじゃないかと思うんです。

 ここで改めて文科大臣に、教育委員会への関与というものを、必要最小限かどうかは別としても、そのことを今回入れるに当たった一番の、今やらなきゃいけないんだという理由について、まずお伺いをいたしたいと思います。

伊吹国務大臣 よく、いじめ、あるいは学校現場が荒れていること、あるいはまた、未履修という問題があったからというふうに報道されたり御質問を受けますが、私は、それは一つの現象面のことだろうと思うんですね。

 一番大切なことは、やはり、国会というものが日本国の統治の一番トップにいるわけです。もっと上にいるのは国民なんですよ。国民主権で我が国は動いておりますから、その国民の意思と違うことが学校現場で行われたときに、それが国会の意思どおりにいかないことを直すすべがなかなかない。そのことと社会現象が絡まり合って出てきているのが、いじめにおける教育委員会の対応だとかどうだとかというような表現になってくるんだと思うんですが、私は、最終的に、だから、民主党さんの御意見も随分我々は参考にしながらやっているんですよ、笠先生。国がある程度責任を持たねばならない。

 しかし、国が責任を持たなければならないという法律になっておりながら、地方自治体の長に教育権を渡して、それが政治によって、選挙によって左右されないように監査委員会を置く。その監査委員会の構成だとか何かが今度はどういうふうに担保されるのだろうかとかいろいろ考えた上で、やはり、国が責任を負うという民主党の御意見も念頭に置きながら、必要最小限の関与をやっていくという方が、いろいろなことを考えると現実的じゃないか。地方に渡した場合はすっきりいくように見えるけれども、危険があるなという観点から、今回、こういう法構成でお願いをしたということでございます。

笠委員 そこは、大臣とはこれまでも議論させていただきましたけれども、国の最終的な責任、要するに、私どもが日本国教育基本法案で打ち出している、明確にしております責任の持ち方というものの考え方が、やはり我々と政府とでは違うということと、まさに、地方自治体もそうなんですけれども、私どもは、学校理事会をしっかりと各学校に設置して、そこで本当に地域もかかわっていただく中でやっていただくというようなことを、先ほどうちの松本委員の方からも、答弁者が午前中に答弁しておりますけれども、似ているようで、やはり根本的な考え方が違っていると思うんです。だから議論になるんでしょうけれども、その点は、また改めてお伺いをする機会があればやりたいと思います。

 それで、幾つかちょっと具体的に、今回のこの政府案について、地教行法、この改正案についてお伺いをいたしたいと思います。場合によっては、政府参考人の方でも結構でございます。

 まず、先ほど牧委員からもありましたけれども、第四十九条の、教育委員会の法令違反や怠りによって生徒等の教育を受ける権利が侵害されていることが明らかである場合に、文部科学大臣は地方自治の是正の要求を行うということになっているんですけれども、具体的にはどういうケースを、法令違反というのはわかるんですけれども、特に怠りというのは、どういうことを想定されているのか。例えば、過去にそういうことをやっておけばよかったというような例があるのか。そういったことを含めて、何か具体的な想定されている例をちょっとお話しいただければと思います。

伊吹国務大臣 四十九条によってどういう場合に是正の要求をするかということは、これは、おのおのの事態に即してケース・バイ・ケースで判断をしなければなりません。これは当然、文科大臣が責任を持って判断をするわけです。しかし同時に、その際には、非公式に、当然、私が文科大臣であれば、慎重を期して総務大臣と御相談をした上でやるということは、これは行政のテクニックですよね。

 ただ、そういう答弁だけでは笠先生の御希望にかなわないと思いますから、少し私なりに考えていることを申し上げますと、国会で決められた法律の一部である告示によって学習指導要領がなされておりますね。そこで、未履修の状態の学校があるにもかかわらず、それを教育委員会が放置していたような場合は、これは明らかに法律違反の事態になりますから、文部科学大臣は具体的な是正の内容を付して是正要求をする。

 あるいはまた、今、学力テストが行われようとしておりますね。例えば、教育委員会が実施を決定した国の学力テストが妨害によって行われないというような事態を教育委員会が放置しているようなケースとか、もちろん、学力テストを受けるか受けないかは教育委員会が独自にお決めになったらいいことですが、しかし、国がやろうと言ったことをやると決めたのに、それを妨害されて、そのまま受けられないようなケースを放置しているというようなケースは、私は、今回の是正要求の対象になる一つの例ではないかと。

 ただ、ケース・バイ・ケースで、それに当たる場合においても、教育委員会の傘下の一部の学校だけがそうなのか、すべての学校がそうなのか、あるクラスでできなかったのか、ケース・バイ・ケースでやはり判断をしないといけないと思います。

笠委員 それでは、ちょっと確認なんですけれども、今二つ、例えばの、想定される例としてお話しいただいたんですが、特にこの怠りですね、法令違反は非常にわかりやすいんですけれども、この怠りというのは、ちょっと私もすとんと落ちないんですね。だから、これは、文部科学省の中において、文部科学大臣のその時々の基準によって判断をされるということになるわけでしょうか、これは怠っているということが。これはあくまで文部科学大臣なので、その点、ちょっとお伺いをできれば。

伊吹国務大臣 ですから、先ほど申し上げたように、ケース・バイ・ケースだと申し上げたと同時に、私は常に、教育の行政というのは謙虚に、公正中立でなければならないということを申し上げているように、だから、一つの傘下の教育委員会において国会で決められた法律が履行されていない状態が一般的に野放しになっているのか、一つの学校で野放しになっているのか、学校の中のあるクラスでどうしてもそういうことができないのか、これはよく考えないといけないと思います。

 率直に言えば、教育委員会に是正の要求をする限りは、一般の有権者というか主権者がなるほどと思われるものでなければならないでしょう、それは。ですから、これは、これから国会でも、是正要求をすれば、それは間違っているぞというおしかりを受けたりして、試行錯誤で積み上げていくものだと思いますが、基本は、できるだけこれは使わない。

 そして、何よりも大切なことは、地方自治の力にゆだねる。これは先生と一緒なんですよ。ただし、教育委員会、教育委員を任命された首長と、それを承認された議会と、そして日々の活動をチェックすべき地方議会がまさに試されているんですね。試されていて、お手上げになった場合にどうするのかという議論ですから、我々はかなり慎重に運用するというのが、少なくとも私の気持ちでございます。

笠委員 やはり、一体どういうときにそういう指導が来るんだろうか、あるいは是正要求が来るんだろうかというのは、かなり心配されている方もおられると思うんですね。それで、ちょっと、あえてきょうは幾つかお伺いしたいんです。

 今大臣が、できるだけ使わないようにと。私も当然のことだと思うんですけれども、一般有権者がなるほどなと、それぐらい大きなニュース、例えば、昨年、未履修の問題が大変社会的な、大きな問題になりましたね、そういったケース、マスメディアでも報じられるぐらいの話じゃなければこういったことは実態としては行われないんだということなのか。

 例えば、現場で生徒等の教育を受ける権利が侵害される。先ほどの学力テストの話もそうですけれども、実際は学校現場で起こる話ですね、これは。ということは、例えば学校が文科省に対して、今回こういう規定ができたことで、直接、大変なんだというようなことを言っていくような窓口をつくるとか、そこまでやって知るのか。それとも、メディアとか社会的にいろいろ報じられる現象に限ったことだから、大きなことに限っているんだから、そういったところで表ざたになり、問題化して、それを受けて動き出すというようなことなのか。そこあたりがよく私も整理がつかないもので、ちょっと教えていただければと思うんです。

伊吹国務大臣 これは、民主党さんも含めて、どういうことにしていくかというのは、お互いに、またいろいろな場がありますから、話し合って積み上げていくべきことだと思いますけれども、是正の要求あるいは指示というものを出す前には、当然、現行の法制のもとで援助とか調査とかいうことが行われるわけですよ。そうすれば、当然、日本のマスコミですから、みんな報道しますよ。報道した上で、国民的な議論が起こってくると思います。

 ですから、その状態でやっていくわけであって、それから、もうこれは先生には釈迦に説法ですが、学校現場には、この法改正を行ったからといって文部科学省は口出しはできませんよ。だからこそ、学校が文部科学省に何か直接言ってくるということは、現在の教育行政からいえばあり得ない。これはもう先生よく御理解の上での御質問だと思います。

笠委員 私は、先ほどちょうど牧委員も申し上げたように、その怠りというのがなかなか上がってこないと。教育委員会が当事者でしょう。なかなか、自分が怠っていることを怠っていますと言うことはまずあり得ませんから、そういう意味で、あえて、やはり現場で実際にそういった問題を抱えたときに、例えばそういった声を何か吸収するような手段でもあるのかなというようなことで、法的には別ですけれども、ちょっとお伺いをしたわけでございます。

 それと、もう一点は、五十条の方の、緊急に生徒の生命身体を保護する必要が生じと。これは、さらに緊急時ですよね。これは、何か伝染病が発生するとか、そういうことなのか、例えばどういうケースを想定されてのことなのかを、あわせてまたお答えいただければと思います。

伊吹国務大臣 これもまあケース・バイ・ケースで、例えば伝染病のお話は、先生、当然されました。伝染病が蔓延し始めて、予防のために学校を臨時休業しなければならないのにしていないとか、こういうケースだと思います。

 いじめについて言えば、いじめにより生命身体の保護が明らかに必要な学生がいるにもかかわらず、教育委員会が加害生徒の保護者に対して当該生徒の出席の停止等を命じない場合とか、被害を受けている子供を守るためにやるべきことをやらないようなケースですね。これはもう是正の要求では間に合いませんから、即座に指示を出すということです。

 したがって、教育委員会が言ってこなければわからないというのは、一つのロジックとしては私はよくわかります。しかし、未履修の問題もいじめの問題も、教育委員会は一つも言ってこなかったんだけれどもあれだけ大問題になったんですよ。日本という社会は、ある意味じゃ非常にやりにくい社会、チクりの社会ではあるんだけれども、同時に、極めて健全な社会であるということも前提に私たちは物を処理していったらいいんじゃないかと思います。

笠委員 まさに緊急時ですから、学校が、先般、あってはならないような事件がアメリカの方では起こりましたけれども、ああいう事態になったら、もうこれは警察が入っていく話なんで、ちょっとケースは違うとは思いますけれども、まさにこういうときは、国がどうとかよりも、文科省と教育委員会と学校と、緊急時であれば、瞬時に一体となって協力して現場の解決に、対応に当たっていくということですから、わざわざなぜ、ちょっと同じような書きぶりで、多分、法令違反や怠りを待ってやる話では、あえて緊急ということを書いておられるのであれば、私は、これは必要ないんじゃないかな、法律違反や怠りによってというような、ちょっとこれは別の次元の話なんじゃないかなというような気がしております。

 それと、大臣、今ちょっと大臣の方から、例の未履修の問題のときのことがあったので。

 こういうことをすると同時に、あのときに、私、文部科学委員会でも御指摘をさせていただいたんですけれども、実は、去年報道される前から、兵庫県とか熊本県とか、過去にあったわけですよね。実はそれも、当時はマスコミで報じられていた。しかし、そのときに、文科省がしっかりと調査をしようということにならなかった。その文科省の感度というものも高めていただかないと。あわせて、何でもかんでも教育委員会、学校ということではなくて、その点については改めて、むしろ、しっかりと大臣の指導力を発揮していただくべく、お願いを申し上げたいと思います。

伊吹国務大臣 過去に何度か未履修の問題があって、そして、これも投書があったりなんかしてわかったわけですが、それの是正を文科省が当該教育委員会あるいは当該県に対してやったわけです。しかし同時に、他の教育委員会についても、その当時はやはり尋ねておったわけですね。尋ねておったけれども、十分な答えが今の権限の中では出てこなかったということで、残念なことの繰り返しになっていました。

 ですから、何年かに一度ずつ調査依頼をするという感性がなかったということは、先生の御指摘を甘んじて受けねばなりませんが、同時に、議院内閣制のもとで文部科学省に対していろいろ質疑をしていただく国会の役割もまた大切なんですね。今回は、野田先生を初め御党の皆さんが積極的にこのことに対して質問してくださり、我々もまたそれにこたえて調査をした結果いろいろなことがわかった。これが大切な日本の統治のあり方だと私は思いますから、我々も感性を持ってやらせていただきますが、どうぞ厳しく行政を監視していただきたいと思います。

笠委員 資料の方をちょっとお願いいたします。資料を提出させていただきたいと思うんですが、次に、学教法の改正案の、主に学校評価の部分についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、議員になってちょうど三年半になるんですけれども、最初から文部科学委員会におりまして、実は、当選して間もないころから何度か、この学校評価の仕組みというものは大事なんだ、しっかりとそれをもっと整えていくべきだということを委員会の中でも取り上げてまいりました。

 そして、もちろん学校の評価というのが、日々学校がどういう状況にあって、あるいは実際にどういう教育が営まれているのか、これは現場のいろいろな、地元で学校の皆さんとお話ししたり、あるいは保護者の皆さんとお話ししても、自分のところの学校が果たして、これは単に学力という、勉強できるできないというだけじゃなく、他の学校に比べてどういうレベルにあるのか、あるいは社会的ないろいろな経験もする、あるいは校内暴力があるやないや、そんなことも含めて、特に公立の学校の場合、不安を抱えられている保護者の方もおられます。ですから、学校の評価と同時に、やはり公表をしていく、結果を関係者、保護者の皆さん方にお知らせしていくということは、これは非常に重要なことだと思います。

 私たちも、あえて日本国教育基本法案の中で、第四条の第四項と第五項の中で、学校の評価そして情報公開をしっかりとやっていくんだということを、これは政府案にはちょっとなかった規定でございますけれども、盛り込ませていただいたのは、もう御存じのとおりだと思います。

 そこで、まず大臣に、学校評価と情報公開をあわせてしっかりと積極的に進めていくべきと考えておられるのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。

    〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕

伊吹国務大臣 この点は、もう先生と私は別に意見が違わないと思います。第三者評価、自己評価、それから同時に教育委員会も、これは序列化をするという意味での評価は必ずしも適当なことじゃないと私は思いますが、ある程度やはり、国民の血税を使って設置をし、教職員を動かしているわけですから、行政の上部機関による評価もまたこれは大切ですね。

 今回の改正案の四十二条では、学校による自己評価が義務化されたことは先生もう御承知のとおり。これについて公表をしていくのは、残念ながら現在のところまだ六割ぐらいですよね。何のために自己評価したかわからないですよ、公表しなければ。これを保護者に知らしめるための手順、手続のようなものは四十三条に今回書いておりますので、引き続き、やはり、自己研さんをし、自己評価をし、国民の血税をこういう形で使っているんだ、そしてこれだけの効果を上げているんだということは、単に御父兄、保護者だけではなくて、納税者にも理解してもらうべき事柄だと私は思っております。

笠委員 今、大臣の答弁の中にも一部あったんですが、この資料の一枚目の一番目のところで明らかなように、これは文科省の方で平成十七年度の間に調査をされたものなんですが、確かに、自己評価の実施率というのは、実施状況というのは九七・九%。とりわけ小中学校は九九・七%行っている。あるいは高等学校も九九%ですから、もうほとんどすべての学校で行われていると言っていいんだと思います。ただ、この公表状況となると、若干上がってきたとはいえ、まだまだ五八・三%、六割を切っているという状況。

 公立学校については、まあ私学というのは建学の精神がございますから、公立の学校についてはやはり公表の義務化をしていくくらいのことをしてもいいんじゃないかということを私は考えておるんですが、大臣、この公表について、もう一つ、今後の、どういうふうに具体的にこの公表率を高めていくために取り組んでいかれるのか、その義務化も含めてちょっとお答えをいただければと思います。

伊吹国務大臣 まず、公表するためには、学校の自己評価が一定のルールに従って同じ基準で評価される必要があると思います。したがって、まず、定着をさせて、そして基準をしっかりと同じ基準にして、だから手続のようなことを今度は四十三条に書いておるわけですから、いずれこのあたりは、当然のこととして、義務化というとちょっと言葉がいかがかと思いますが、全学校がそれを公表されるように持っていきたいと思っております。

笠委員 今大臣がおっしゃった、どういう一つの中身、手続及び内容にしていくのかということ。一定のルール、基準というのは大事だと思うんですけれども、実は、この自己評価の中身について、一〇〇%近い公立の学校がやっているものの、私が実際に聞いていても、中には、自己評価やれということで、要するに、別に公表しなくていい場合ですよ、公表しなくていいんだったら、実際、先生たちの職員会議でそういうことを議題にしたものをまとめたり、反省会であったり、あるいは内部アンケートみたいなことで評価をしたという、形だけのもので済ませているケースも実際に私も伺っています。恐らく、そういうケースがあると思うんですよ。

 逆に、公表しているところは、そんないいかげんなことをしていたら許してもらえませんから、それは保護者だって関係者だって、これは、ちゃんと評価だったら評価を、しっかり自己評価をしなさいと当然指摘をされるわけですよね。だから、努力義務であれ、しっかりと公表というものについて積極的に行っていけるようにしていかないと、一定の自己評価のあり方というものを定めていくということであれば別でございますけれども、例えばそこあたりが、いろいろな学校単位であったり、あるいは教育委員会単位であったりしてもいいと私は思うんです、別に一律、一緒じゃなくて。ただ、そのときに、公表、情報公開はしっかりとしなさいよということをやはり明確にしておくことが大事なのではないかというふうに思っておるんですけれども、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 評価の基準等は文部科学大臣が定めることになっておりますから、いいかげんな基準にならないように、今の御指摘も受けてきちんと定めたいと思いますし、我々も、それを促していく、自己評価を促し、公開、公表を促していくということは当然いたします。

 しかし同時に、学校の設置者であり運営主体である者たちを、地域住民の代表として管理監督をしていただく人を常に監視していただいている地方議会が、学校評価をしないとかあるいは公表しないなどということをおのおのの地域ごとに許さないという自治であっていただきたいと私は思いますね。

笠委員 公表のあり方とか、あるいは序列をつけるとか、そういうことになれば、そこはまた、序列をつけたりというのは確かに先ほど大臣がおっしゃったように慎重であらなければならないけれども、少なくとも保護者やあるいは地域住民に対して、その町の公立の学校ですから、やはりその学校の情報を提供していくというのは、これはまず当たり前のことだと思います。

 そこで、ここの一枚目の資料の三番目、外部評価の実施状況というもの、ちょっときょうはこれも取り上げさせていただいております。

 外部評価、これは平成十七年度からで、五一・五。ちょっとわかりにくいんですが、一番下です。これまでは外部アンケートも一緒になっていたので、御存じのとおり、もう八三・七%行っているよと。しかし、外部評価と外部アンケートというのは全くその意味合いが違うんだということで、明確に外部評価というものの基準を、一つの定義を定めて平成十七年からとってみると、五一・五%。つまりは、外部評価をやっているのは今、半数くらいである。

 そして、さすがに外部評価を実施している学校の公表率というのは約七〇%で、随分、自己評価に比べればやはり公表している率が高い。当然、外部の評価を受けるということは、学校を開いている。しかも、外部の方に学校をしっかりと見て観察をしてもらって、そして評価をしていただくということだから、当然、その姿勢からも、結果についても公表していくことを前提に考えておられるところが多いんだと私は思っております。

 そしてもう一つ、第三者評価という問題があるんですが、第三者評価を実施するとなると、これは恐らく、学校と直接の関係はないけれども、より客観的な専門家による評価ということになると、これはかなり、国もバックアップして大きな制度設計のもとにやらないと実際にはなかなか難しいと思うんですね、一気にやるというのは。

 同時に、やはり学校の関係者、保護者、あるいは地域住民、そういった方々ぐらいが、しっかりと自分たちの学校を外部評価として評価をして、授業も見て、あるいは学校の中身も見て、内容も見て、そして評価していくという中で、改善されるべきは改善され、また学校の運営に生かされていくというのが本来のあるべき姿で、いきなり第三者評価の義務づけまでいくということは、ちょっといかがかなと私は思っております。

 そういう中で、今、外部評価というものをしっかりと、このことも、あるいは自己評価に切りかえてもいいと思うんですけれども、そういうコミュニティースクールも今推進をされているような状況でございますから、我々のように学校理事会をつくれば、当然、そこできちんと評価をし、あるいは外の方にも入ってきていただいて、しっかりと常にそういうことを行っていくということになるんですけれども、この外部評価の実施率というものを高めていくというようなことについてはどのように今後検討されていくのか、お答えをいただければと思います。

    〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕

伊吹国務大臣 まず、先生がおっしゃったように、自己評価をきっちりとして、そして、すべて一〇〇%それを公表していく。その場合に、本来役割を果たすべきは、第三者的な行政機関である、我々でいえば教育委員会なんですね。そこがやはりしっかりとそのことを評価し、自己評価を評価して見定めていくということがまず大切だと思います。

 外部評価のイメージはいろいろありますが、御党の提案の学校理事会というのは、どういう人たちがどういう基準で選ばれるのか、地域の有力者に対して教員がどういう態度で接していくのかとか、あるいは監査委員会的なものがどういう構成になり、だれが任命をし、知事や自治体の長との関係はどうなるのかとか、いろいろそこは、私は、率直に言うと、それが第三者評価だというのはちょっと怖いなという感じがしております。

 これは賛成反対いろいろありますので、いずれ、共産党さんがこの議論を聞いておられれば、当然民主党の提案者に御質問があると私は思いますが、その辺はなかなか、序列化を避けながら評価をしていくということは考えながらやっていきたいと思っております。

笠委員 大臣、私が言ったのは、第三者評価というのはちょっと外部評価とは違う定義で言っておりますので、第三者評価は本当に、学校関係者じゃなくて、例えば、恐らく都道府県とか市町村とかが主体になって行っていかざるを得ない評価だと思うんですよね。それをもし導入するとしても、そういうのは毎年やるとかよりも、例えば三年とか五年に一回ぐらい、将来的に、私はそういうのが必要なくてもしっかりと学校が運営されていけばいいと思うんですけれども、必要だとしてもそういうイメージなのかなと自分の中では思っております。

 それで、きょう、この二番目の資料で、公立学校における自己評価結果公表率と、同じく外部評価実施率というもの、これは全部文科省が調べてあるんですよね。

 私の方で、公表率、外部評価の実施率それぞれの、都道府県別の率の高い順の上位ベストテンと低い順のベストテンをそれぞれ抽出して、また政令市についても書いているんですけれども、やはり京都はすごいですよね。両方一〇〇%なんですね。これは、大臣も我が党の北神委員も。私は、コミュニティースクールも今京都が最も学校数が多くて、積極的に取り組んで、まさに地域と家庭とそして学校が一体となって協力して、問題点も含めて共有しながらしっかりとやっていこうという仕組みになっているんだと思うんですよ。これはやはり見習って、全国、こういう形にやっていくべきだと私は思うんです。

 余りにも後ろ向きなところと前向きなところが結構あるんですが、これをせっかく調査されているんですけれども、こういう公表率であるとか、あるいは外部評価の実施率が低いところ、これはどういう原因でこういうふうになっているのかという分析をされているのかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。

銭谷政府参考人 自己評価の公表の状況、あるいは保護者による外部評価の実施の状況について、都道府県間あるいは政令市間で差があるのは先生お話しのとおりでございます。

 これは、それぞれの地域のいろいろな事情があるわけでございますけれども、先ほど先生からもお話ございましたが、自己評価につきましては、まだ自己評価の内容が公表できる状況まで整理をされていないとか、あるいは教員間の反省にとどまっておって公表できるまで十分熟していないとか、そういった事情を挙げる県が多いように受けとめております。

 それから、保護者の外部評価の実施が進まない理由の一つとしては、これは話がめぐるわけでございますけれども、学校に関する情報が十分に保護者に公表されていないので、逆に保護者による外部評価がなかなか実施できないといったような事情があるというふうに考えられるわけでございます。

 自己評価の結果の公表と保護者などの外部評価の実施を進めるというためにも、学校の情報公開、それから学校と保護者の共通理解を進めるということが各地域において大事だと私ども思っておりまして、実は昨年三月に、義務教育諸学校における学校評価のガイドラインという参考資料を私ども策定いたしまして、こういった状況についていろいろと資料を提供して、自己評価の公開あるいは外部評価の実施ということを促しているところでございます。

笠委員 本当に、逆に言うと、幾つかの学校で、評価は大いに結構なことだという学校も多いんですよ。評価というと、何か人からチェックを受けるような、でも、やはり評価を受けるということは、評価という言葉は褒められるという意味でもあるわけですから、そういったいい例なんかもいろいろと、特に京都や広島では一〇〇%行われているわけですから、恐らく一〇〇%になった経緯はそれぞれ違うとは思うんですけれども、そういったこともあわせて、やはりいろいろなケースをいろいろと知らせてあげるようなこともやっていただければと思います。

 それで、ちょっと時間がなくなったんですけれども、本当は、この後、教育免許法の改正案について幾つか質問したかったんですが、一点だけちょっと私お伺いしたいんです。

 今度、十年ごとの免許の更新制ということで講習を課すわけですね。もう大臣御存じのように、現在義務づけられている十年者研修、法定研修があるわけですけれども、これについては、ある意味、周期が、全く重なるわけじゃないけれども、同じような時期にやらざるを得なくなってくるので、このことについては、例えば、法定研修の方をなくしていく、そういうお考えがあるのか。あるいは、そこまでいかなくても、やるやらないも含めた判断を任命権者にゆだねてもいいんじゃないかなと私は考えておるんですが、その点をちょっと最後にお伺いいたしたいと思います。

伊吹国務大臣 これは私は先生と少し違った感じを持っております。

 というのは、現行の十年の研修は、どちらかというと、自分が学校現場で教えて、この分野で自分はさらに得意分野をつくって伸ばしていきたいという人たちに行っている研修なんですね。今回お願いしている資質向上というのは、一般的に、すべての人たちを対象として、教員免許を持って現場に立っていただく限りは、必要最低限の、時代の変遷に合った知識があるかどうかということを確認し、さらにそれを向上させていくための制度ですから、もちろん、運用の状況を見ながら、今御提案、御注意があったような、かぶさってくる部分があれば工夫はしたいと思いますが、これは本来は別のものだと私は理解しております。

笠委員 時間が参りましたので、終わりますけれども、また教員免許については改めて議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 きょうは、地方教育行政の問題について、法案の重要な核心的な内容でもございますので、少しお尋ねをいたします。

 総務大臣においでいただきましたので、御答弁いただければと思いますが、まず、戦後の教育委員会制度につきましては、当時、文部科学省が発行した文書、当時は文部省ですけれども、文書を見ると、なかなか興味深いことが書いてあります。

 これは一九五二年の教育委員会設置の手引なんですけれども、このようにあるんですね。公選制の教育委員会制度は、教育行政の地方分権を行うために昭和二十三年十一月に発足したと。それで、このように説明しています。市町村に教育委員会を置くこともさることながら、従来、都道府県の当局が担当していた事務、すなわち市町村立の小学校、中学校、高等学校職員の人事や教育内容取り扱いといった事務が、市町村に教育委員会を置くことによって、都道府県当局の手を離れ、市町村教育委員会にゆだねることになるだろうというふうにあるんですね。

 ですから、やはりここには徹底した教育の地方自治、地方分権という方向がこのように示されていたと思いますが、このことは確認できるでしょうか。

菅国務大臣 私も今、教育の地方分権というのは、それは当然求められることだったと思っています。

石井(郁)委員 ところが、こういう考えで当初発足しましたけれども、一九五六年、今日の地方教育行政法ができておりますよね、それで公選制の教育委員会はもう廃止になりました。また、教育長の任命承認制になり、教育委員会の権限縮小という形で、任命制の教育委員会制度というものが実施されてきたというところだと思うんですね。私は、こういうところが、今、教育委員会のあり方が問題になっているわけですけれども、教育委員会の自主性、主体性に欠けるような事態、あるいは硬直化というような事態を招いているのではないかと思うわけです。

 より具体的にというか、今の法案とかかわって伺いたいと思いますが、一九九九年に地方分権一括法が審議されて、教育長の任命承認制というのは廃止されました。そのときなんですけれども、文部科学大臣の地方公共団体の長、教育委員会に対する権限、その権限というものは具体的に何が廃止されたのか、措置要求などがどう変わったんでしょうか、このことを説明いただきたい。そしてまたその理由も述べていただければと思いますが、総務大臣、いかがですか。

菅国務大臣 この一括法において、教育長の大臣による任命承認制が廃止をされました。また、大臣の包括的な指揮監督権が廃止され、地方自治法に定められる関与の基本原則に基づいて関与が行われる、そういう形の中で地方分権が推進された、このように考えています。

石井(郁)委員 そう変わったわけですが、なぜそのように変わったのかという理由を御説明いただければと思ったんですが、どうでしょう。

菅国務大臣 やはり、地方の分権を推進し、教育は地方にもしっかり責任を持ってもらう、そういう意味でこういうことになったと思っています。

石井(郁)委員 大臣の御答弁では、やはり最初から教育の地方分権という原則、必要性ということが強調されたというふうに理解をしております。

 きょうはさらに具体的なことで伺いたいんですけれども、資料を配付させていただきました。見ていただきたいんですけれども、これは文部科学省から教育委員会の教育長などへの十年間の出向状況をまとめたものでございます。予算委員会への提出資料によってこれは作成いたしました。

 見ますと、千葉県では、教育委員会の教育次長ポスト、これは文科省の出向組の指定席ですね。広島県、ここでも教育長が長年の指定席になっています。今年四月からは教育次長の席に出向している。香川県もそうです、二〇〇四年まで教育長が長年の指定席です。佐賀県もそうですね。教育次長、副教育長がポストになっています。裏には、市段階の教育委員会も見てみましたけれども、市教委のレベルでは、教育長、教育次長へ出向が極めて多いわけですね。どうでしょうか。

 大臣、これは文科大臣にお聞きしたいと思います。やはり教育長とか教育次長は教育委員会の中心的ポストだと思います。また、教育行政の執行者でもあるわけですよね。この十三年間を見ても、六県の教育長、次長ポストに出向者が集中しています。なぜこういうことになっているんでしょうか。この御説明、いただけますか。

伊吹国務大臣 それは先生、地方自治体の要請があったからではないでしょうか。

石井(郁)委員 もし地方自治体の要請があっても、国として、文科省として、それはちょっと困るということは言えないんですか。

伊吹国務大臣 それは、要請があって地方自治のお役に立つということであれば、我が方の人繰りに支障のない限り、協力を申し上げるというのは筋だと思います。

 私が大臣になりましてからも幾つかのポストのお申し出がありましたけれども、そのポストには行かすべきじゃないとか、そのポストにはちょっとうちには適当な人がいないとか、いろいろな判断をして、お互いに合意の上でやっているんだと思います。

石井(郁)委員 文科大臣はそのようにおっしゃるわけですけれども、しかし、私のいろいろ聞く範囲では、やはりそこが文科省の指定ポストになっていると。だから、自動的に次々と出向者が出ているということじゃないですか、この表自身が示しているのは。そういう点でいうと、だれがどうこれを要請したかはおいておいても、私は、こういう事態というのは、まさに文科省が地方へのいわば天下り先にして、やはり文科省なりの教育行政を進めるポストに置いているということになるわけですよ、結果としては。そうならざるを得ないということだと思うんですね。

 そういう点でも、これは大変重大な問題だというふうに思うんですが、地方行政との関係でいいますと、先ほど総務大臣も、地方分権、教育の地方自治ということは必要だというか大切だという原則として述べられましたけれども、これはまた最高裁の学テ判決を引き出すわけですが、教育に関する地方自治の原則が採用されているという問題について、これは、戦前におけるような国の強い統制のもとにおける全国的な画一的教育を排す、それぞれの地方の住民に直結した形で、各地方の実情に適応した教育を行わせるのが教育の目的及び本質に適合する、そういう観念に基づくものだ、だから、この地方自治の原則が現行教育法制、これは残念ながら改悪された教育基本法のもとですけれども、重要な基本原理の一つをなす、これは疑い入れないというふうに述べているところです。

 だから、教育の地方自治の原則あるいは地方分権、何度も申しますけれども、ということから見ると、こういう執行部への出向及び指定ポストというのは私は好ましくないと思いますが、その点で、総務大臣、きょうは官房長官にもおいでいただいていますので、いかがでしょうか。御見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 例えば横浜市で、教育長、今の資料にありましたけれども、文部科学省からの方でありましたけれども、これは、やはり地方自治を行う中で、市長の強い意欲の中で要請をしたというふうに私は聞いておるところであります。

塩崎国務大臣 もう釈迦に説法でありますけれども、改正教育基本法に、国と地方公共団体の間で適切な役割分担をすることが明定されているわけでありまして、教育委員会制度というのは、基本的には、地方分権の考え方にのっとってできているものであります。国は教育の機会均等などあるいは全国的な教育水準を確保する責任を負っていますし、地方は地域の実情に応じて実際に教育を実施するという役割と責任を負っているわけであって、地方分権を推進することは当然大事でありますけれども、一方で、仮に地方が十分な責任を果たせない場合に、国民の権利を守るために必要な関与を国が行うということで、教育基本法にも役割分担が書いてあるわけであります。

 教育委員会に関する点については、国の関与については、先ほどの質問にも私お答え申し上げましたけれども、やはり伝家の宝刀的に、国が限定的に出ていくということを今回定めさせていただいているというふうに理解をしております。

石井(郁)委員 地方分権一括法で教育長の任命承認制というのが廃止になった、これはやはり地方分権ということを守っていくために必要な措置だったと思うんですが、今、実態を見ますと、大変、まさに、教育長というポストに文科省から役人が行っている。これが果たして国の権限の強化につながらないのかといえば、そうではないというふうに思うんですね。こういう点は大変重大だということを申し上げて、この問題は引き続いてこれからも本委員会での審議に入ると思いますので、今日はここにとどめたいと思います。

 それで、私はずっと前回も問題にしておりますけれども、全国学力テストのことにつきまして、またもう一つお尋ねしたいことがございますので、最後に伺います。

 まず、小学校はベネッセコーポレーションです、中学校はNTTデータが実施しますが、このそれぞれの企業には幾ら支払われることになっていますか。今年度の予算で結構です。

銭谷政府参考人 平成十九年度実施の全国学力・学習状況調査の実施に係る民間機関への委託経費でございますけれども、平成十九年度予算におきましては、約四十三億九千七百万円でございまして、それぞれ、ベネッセコーポレーションには約二十二億、それからNTTデータには約二十一億九千五百万、委託費として支払うことといたしております。

石井(郁)委員 私、その後、大変重要なことがちょっとわかりましたので。この額自身も大変高額だというふうに思います、これは国費として支払われるわけですから。

 そこで、このベネッセの教育研究開発センターがこういう雑誌を発行しているんですね、ビュー21という雑誌ですけれども。これを見ますと、この中には文部省の役人の皆さんが、そうそうたるトップクラスの方々が登場されて、学力調査はこういうポイント、こういうことをやりたいんです、ねらいはこうですと。これは銭谷さんですよ、ここに登場されているのは。一番新しいのは銭谷さん。だから、これを見ると、ずっと、毎号でもないけれども、この三年間だけ見ても相当な方々が登場されているんですね。これはまるで文科省の公認の機関誌のようですよ、本当に。どうなっているんでしょうか。

 それで、もうちょっと時間がありませんので言いませんが、二〇〇四年には、小学校版に大槻教育課程課長、それから中学校版には関生徒課長、それから森本参事官等々ずっとありまして、二〇〇五年、山中大臣官房審議官等々ずっと出ています。なお、最後には、二〇〇六年の小学校版には、これは、文科省の全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議がありますね、その座長の方が登場されているんですよ。どうなんでしょうか。

 もう時間ですけれども、私は、こうして見ますと、ベネッセ、委託先はもう早くから決まっていたようなものじゃないですか。特定の受験産業に、まさに受注する先に文科省のトップクラスの役人の方々がいわばこういう形で登場する、こんなことがあっていいでしょうか。これは一言、大臣、御答弁ください。

伊吹国務大臣 率直なことを言って、私はベネッセというのがどんな会社か全く知らなかったんですよ、文科大臣になるまでは。そして、文部科学委員会で先生が御質問になったことと同じことを、私のところへ書類を持ってきたときに私は言ったんです、これは受験産業じゃないかと。ここへやらせるということについては、よほど厳密な契約書をまずつくって、変なことをしたら刑事訴追をするということまできっちり書き込んでおかねばならない。契約については、厳密な競争入札でやっているのかどうなのかということもチェックをいたしました、これは。

 しかし、その後、何か全国学力テストを利用して、これも先生が御指摘になったように、事前にうちのものを受けたらいいなどというようなことを、これを商売としてやっているなどということは、私は、企業としては決していい企業じゃないなという印象を率直に言って持っております。

 ですから、今後こういうことのないようにということは厳重に申し入れをさせましたし、職員と当該企業とのいろいろな関係については、私はこれからきっちりと、ここから季節のごあいさつのようなものが来ても受け取っちゃいけないぞとか、そういうことは厳しく私から言ってございます。

石井(郁)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 大臣、言いますか、一言。ではちょっと簡単に、初中局長。

保利委員長 簡単にお願いいたします。

銭谷政府参考人 全国学力・学習状況調査における委託する民間機関の選定についてお話がございましたが、これは、幅広く公募をし、企画競争形式によりまして、外部の専門家から構成された審査委員会の適正な手続を経て決定をしているものでございます。

石井(郁)委員 どうも、時間を超過しましたが、この答弁は文科委員会でも私はお聞きしたところでございますが、大変重大な問題をはらんでいるということを申し上げて、きょうの質問を終わります。

保利委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党、保坂展人です。

 伊吹文科大臣に一点だけ。これは細かい数字ではありません。文部科学委員会の中で、あるいは理事会で、サッカーくじ、totoが大変不振だ、助成金も出ない状態になっていると。そして、これは立法当初、宝くじ並みに射幸心をあおらない、ギャンブルとはなかなか言えないものでございますというのが当時の文部省の説明だったんですが、当たりやすくして。去年、四億から六億ということで、次の当せんは、出ると六億円という最高値になるかもしれない、こういうことで大変心配をしているわけですね、いろいろな意味で。つまり、青少年への影響という意味でいえば、いよいよ出やすくなってきた時期だろうというときに、どうも文科省からは資料が出てこない。これはもう、七年の契約を長期にわたってしてしまっているんですね、直営方式ということで。

 こういう資料をしっかり出して国会の判断あるいは議論に資するという指示をきちっとしていただけませんか。

伊吹国務大臣 いわゆるサッカーくじというんですか、これは議員立法でできた法律で、我が党だけではなく、当時の野党の皆さんも提案者になっておられる法律です。

 私自身の意見を聞かれれば、そのときに、射幸性のあるものをスポーツの世界に持ち込むのはどうかなと私自身は思っておりましたが、そういう形でできた。そして、その後、仕組みを見てみると、収益からスポーツに対する補助をしているわけじゃないんですね。売り上げの一定比率を補助に出している。ですから、このことがいいかどうかを含めて、内容についてはかなり詳細に検討してみないといけないという気持ちは私は持っております。

 まだ国会にどういう形で申し上げるかというところまではいっていないんですが、当然、決算として法定上提出しなければいけない書類については国会にはきちっと提出していると思っております。

保坂(展)委員 これは、当時の議員立法にも国会への報告義務がちゃんと明記をされておりますし、また、これまで政府が千九百五十四億出資して、もう二百四十九億円の欠損が出ている。また、国債や地方債を担保にして百十億円の借金もしているということで、ぜひ資料を精査したいと思います。

 今石井委員が質問をしていた学力テスト、いよいよ始まるわけですが、私、契約書を先般取り寄せてみました。取り寄せてみたところ、大臣、よろしいでしょうか、今初中局長が答弁されたのは平成十九年度の金額なんですね、四十三億円。これを見ると、つまり、四月一日からとあって準備段階の日付がないので、これはどうなっているんだとさっき聞きましたところ、それは別にありますということで、質問の二分前に届いたんですね、今文科省から。

 大臣にこれは伺いますけれども、議員から資料の要求があったときに、学力テストで民間委託ということで、どういう契約になっているのか契約書を出してほしいということに対して、普通なら、これは準備段階、実施段階の両方出すのが筋じゃないですか。いかに。

伊吹国務大臣 先生から御要求があったのは、いつの段階で、どのような文言、文言というか御要求を正式にされたんでしょうか。

保坂(展)委員 私は、学力テスト実施に当たって二社に民間委託をしていること、つまり、契約をしているわけですから、その契約書と仕様書と見積書などがあれば出してほしいと。実は、仕様書と見積書は来ていないんですけれども、契約書だけは来たんです。つまり、今年度の実施段階のものはあるんですね。

 私、指摘させていただければ、今年度の契約は四月一日から三月三十一日までなんですね、今年度ですから。ところが、契約をしている日というのは四月二日なんですね。こんなことってあるだろうか。一日くらいいいじゃないか、こうはいきませんよね。

 これは、四月二日をもって契約書としての効力を会計法上発揮しているわけであって、その前の行為というのはどういうふうになっているんだと。問題をつくったり、もうやっているわけですよね。いわゆる準備段階から実施段階に向けた契約書が、今初中局長が答弁した四十三億円じゃないですか。この契約書の日付を見ても、ちょっと納得できないなというふうに思いますよ。

 私はきちっと要求しているので、そういう要求をすれば、ほかの省庁は、その事業プログラムについての去年とことしのを持ってきますよ。

伊吹国務大臣 まず、今の御質問の中で、誤解のないように申し上げておかないといけないのは、問題をつくってということは、民間企業にはやらせておりません、こんなことをやらせたらえらいことになりますから。これは間違いのないように、ひとつ御訂正をいただきたいと思います。

 それから、契約について、前の段階からとかどうだとかということはいろいろあったと思いますから、お互いに資料要求はこれとこれというふうに丁寧におっしゃっていただかねばならないし、こちらも誠実に対応するということが、これは行政府と立法府の信頼関係からいって当然だと思います。

保坂(展)委員 では、初中局長に伺いますが、このNTTデータとベネッセとの両四十三億円の契約は四月二日から着手されたんですか。そして、間もなく実施が可能なんですか。

銭谷政府参考人 全国学力・学習状況調査についての委託先との契約でございますけれども、平成十九年度につきましては、四月二日が契約の締結日でございます。これは、平成十九年度は年度開始日四月一日が行政機関の休日に当たるために、当省が委託契約を締結する際に、四月一日を契約期間に含まなければ業務上支障がある場合、契約期間は四月一日からとし、契約の締結日は四月二日としているという事情によるものでございます。

 それから、このベネッセとNTTデータにつきましては、平成十八年度も委託契約を結んでおります。これは、契約日付は平成十八年の七月十八日から平成十九年の三月三十一日まででございます。

 平成十八年度における民間機関への委託経費は、調査準備事業費といたしまして、ベネッセコーポレーション、NTTデータ、それぞれ約九億円でございます。

保坂(展)委員 これは、先週、余裕を持って資料請求しているものでございますから、今、少なくとも十八億円分の契約書がこの私のファイルの中に来ていなかったということは非常によくないと思います。

 もう一回初中局長に聞きますけれども、準備段階の契約と実施段階の契約があるのはわかりました。四月二日でなければ日付が行政上難しかったというのもわかりました。そうすると、今年度実施の契約書に書かれていることは、四月二日から実行されたんですか、それとも、それ以前から、さかのぼって実行されていたんですか。

銭谷政府参考人 この平成十九年度の契約は、本年度実施をしていただくものについて契約をしているわけでございます。調査の実施は、明四月二十四日が調査日でございまして、その後、回収とか採点、こういったようなことを、ことし、ベネッセとNTTデータにやっていただくわけでございます。

保坂(展)委員 私の意見を言えば、これは、この種の大事業ということを、そんなに、四月二日を発端にしてなし遂げるなんということはできやしないんですよ。ですから、これは一月なりあるいは昨年の十二月なりに、実態上、こういう中身にかかわる作業はスタートしていたというふうに見るのが当たり前で、日付もそこにしたらいいというふうに思いますね。

 一点、このNTTデータの契約、四月二日のを見ると、一番後ろに再委託という金額が七億六千八百三十五万ついているんですね。これは、事業を遂行していて、いろいろ足りなくなったので追加するのが再委託かなと思ったら、そういう意味じゃないんです。最初から再委託しているんですね。

銭谷政府参考人 このNTTデータの委託事業における再委託というのは、NTTデータが教育測定研究所というところとまた再委託を結んでおりまして、そこが問題の採点等をかなり行いますので、そのための契約がこの中に入っているということでございます。

 なお、先ほど来の先生のお話を伺っておりますと、四月二日から一気にということでございますけれども、そうではもちろんなくて、先ほど申し上げましたように、平成十八年の七月に、私ども、企画競争契約によりまして業者を、小学校、中学校、それぞれの委託業者として選定をし、以後、両社がそれぞれ、小学校のシステム開発、中学校のシステム開発等を行って準備を進めてきたものでございます。

保坂(展)委員 これは恐らく、国と民間業者の契約がどこの省庁でもそういうふうになっているのは、この前は最高裁の問題をずっとやりましたけれども、実際の契約書が作成される、締結される日付をもってこれは効力が出るんですよね。会計法上も明記されている。つまり、それ以前は未契約状態ということになってしまうんですね。

 ですから、今、初中局長が答弁しましたけれども、それぞれの事前準備の十八億円分があるんだからいきなりではないと言うんだけれども、そうすると、その四十三億円分は四月二日以降一気に使わなきゃいけなくなるんです、厳密に契約書をきちっと解釈するならば。そこは会計法にのっとってきちっとやってほしいんですね。いかがですか、大臣。

伊吹国務大臣 まさに日本の財政法、会計法にのっとった処理をしているわけですよ。それはなぜかというと、年度区分の原則と歳入歳出集中の原則というのがあるんですよ。だから、決められた年度の歳入と歳出は、当該年度、つまり四月一日から翌年の三月三十一日までのものはその年度にきちっと計上して、そして予算として国会の御審議をいただき、その結果をその年度に区分して国会の決算の承認を得るわけです。

 ですから、それは、先生がおっしゃっているように、この年度区分の原則というのを崩せば実態に合うようにいくんですよ。それはよくわかります。しかし、それをやっちゃったら予算統制ができないからこういう仕組みになっているということは、理解してやらないと役人どももかわいそうだと思いますよ。

保坂(展)委員 私が言っているのは、資料請求があったら、その準備段階のものも出すべきであるし、それから、再委託、言われていますよね、結構大きな金額ですよ、その再委託にかかわる資料も出すべきではないかということ。これは、規範意識ということを御提示されているので、文部科学省自体も規範意識を持ってやってほしいということです。

 最後に、ちょっと官房長官に伺いますけれども、坂本龍一さんがお友達ということで音楽に明るいかなと思っているんですが、フジロックという若い人たちが大勢集まるフェスティバルがあります。御存じないようですが、十万人が集まるんですね。雨が降っても雷が鳴っても、整然として列を崩さず、三百人以上の人がごみを片づけている、ボランティアで。これを見て海外のアーティストは物すごく驚くんですね、日本の若者というのは何でこんなに整然とやっているんだろうかと。だから、この規範意識という意味で、どうでしょうか、どういうふうに感じておられるかということを一言いただいて、終わりたいと思います。

塩崎国務大臣 そのフジロックというのは行ったことがないものですからよくわかりませんが、日本人も捨てたもんじゃないというときもあります。一方で、やはり、法律ではない、いろいろな社会のルールなどがありますが、それが守られないというのはそこここに見られるわけでありますから、今御指摘のようないい点はさらに伸ばし、欠いているところはもう一回再構築をしていくということが大事だという意味で、やはり規範意識は皆きちっと持った方がいいんじゃないか、こういうことじゃないでしょうかね。

保坂(展)委員 時間ですので、続きはまた聞きたいと思います。

保利委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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