衆議院

メインへスキップ



第6号 平成19年4月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 大島 理森君 理事 河村 建夫君

   理事 小坂 憲次君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 中山 成彬君 理事 野田 佳彦君

   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君

      赤池 誠章君    赤澤 亮正君

      井澤 京子君    飯島 夕雁君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      猪口 邦子君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      亀井善太郎君    亀岡 偉民君

      木原 誠二君    木原  稔君

      篠田 陽介君    鈴木 俊一君

      平  将明君  とかしきなおみ君

      中森ふくよ君    西村 明宏君

      西本 勝子君    馳   浩君

      原田 憲治君    平田 耕一君

      馬渡 龍治君    松本 文明君

      松本 洋平君  やまぎわ大志郎君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      若宮 健嗣君    川内 博史君

      北神 圭朗君    田島 一成君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      西村智奈美君    松本 大輔君

      柚木 道義君    横山 北斗君

      笠  浩史君    伊藤  渉君

      大口 善徳君    石井 郁子君

      保坂 展人君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           高井 美穂君

   議員           田島 一成君

   議員           藤村  修君

   議員           牧  義夫君

   議員           松本 大輔君

   議員           笠  浩史君

   総務大臣         菅  義偉君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   財務大臣政務官      椎名 一保君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君

   衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十七日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     浮島 敏男君

  伊藤 忠彦君     馬渡 龍治君

  稲葉 大和君     亀井善太郎君

  亀岡 偉民君     松本 文明君

  二田 孝治君     飯島 夕雁君

  松本 洋平君     石原 宏高君

  若宮 健嗣君     大塚 高司君

  田嶋  要君     柚木 道義君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     平  将明君

  石原 宏高君     松本 洋平君

  浮島 敏男君     木原  稔君

  大塚 高司君     若宮 健嗣君

  亀井善太郎君     中森ふくよ君

  馬渡 龍治君     伊藤 忠彦君

  松本 文明君     亀岡 偉民君

  柚木 道義君     田嶋  要君

同日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     赤澤 亮正君

  平  将明君     大塚  拓君

  中森ふくよ君     篠田 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     井脇ノブ子君

  大塚  拓君     二田 孝治君

  篠田 陽介君     稲葉 大和君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長藤井昭夫君、財務省大臣官房参事官香川俊介君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、高等教育局私学部長磯田文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋(要)委員 おはようございます。民主党の田嶋要です。よろしくお願いします。

 文科大臣とは、先日も決算分科会の方で質問させていただきました。その際はチャイルドラインのことでございましたけれども、教育委員会のみならず、ぜひチャイルドラインにも大きな御支援を賜りたいなと思っております。よろしくお願いします。

 また、先日は、児童虐待防止法の改正も衆議院を通過いたしました。やはり今回のこの教育三法とも非常に近接をした、子供に関するさまざまな取り組みが日本の国でいろいろと行われているということ、流れとして大変ありがたいことだというふうに私も思っております。

 そこで、きょう一時間、三法に関する質問でございますが、文科大臣、実は私、こう見えましても文科大臣のことは信頼をしていまして、一言で言えば、釈迦に説法でございますが、過ちを正すに遅過ぎることはないということでございます。大分いろいろな質問が続きまして、内心、大臣もいろいろ揺れる気持ちが今あるかと思うんですが、ぜひその辺をしっかり見詰めていただきたいなというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 官房長官には初めてでございますが、きょうの質問で、どのぐらい信頼できるかどうか、そのことを私自身も考えさせていただきたい。最初の三十分しかおいでにならないということでございますので、若干順序が入り繰りになりますが、冒頭、免許制度に関してお伺いをさせていただきたいと思います。

 いろいろな方から多く質問が出ておりますこの教員免許の更新制でございますが、まず官房長官にお伺いいたします。

 我が国にいろいろな免許制度というか、いわゆる資格制度というものがあるわけでございますが、まず、我が国のそういったさまざまな制度の中で、免許が、あるいは資格制度が更新制になっているものというのはどういうものがございますでしょうか。

塩崎国務大臣 ただいま御質問がございました、資格制度の中で定期的に更新制があるものはどういうものがあるのか、こういうことでございました。

 悉皆的に調べているわけではございませんけれども、更新制を導入して知識とか技能とかの確認を一定期間ごとに行っているものは、例えば、運転免許証はもう御案内のとおりであって、これは優良運転者五年、それから違反運転者三年などのインターバルで行われている。それから狩猟免許、これは三年でございます。それから、海技士、海の船舶の職員及び小型船舶操縦者、これは五年となっております。それからボイラー溶接士、これは二年となっております。

 このようなものが定期的に、更新制をとって、更新をしないといけないというふうになっているものでございます。

田嶋(要)委員 あるにはあるということですね。職業として、そういった更新制がとられているものは、今おっしゃったようにそれほど数としてはないわけでございます。そういった中で、今回、教員という、メジャーというか、大変人数の多い職業に関して更新制度を導入しようとされておるわけでございます。

 同じく官房長官にお伺いをしたいわけですが、この更新制を導入する、これまでも医師免許の話もいろいろ議論がございました。あるいは、昨年も建築士に関しても新聞の一面にばんと出て、その後、やっぱりやめるというような話もあったわけでございますが、これは私は大きな転換点になるかもしれないと思っておるんです。もし政府がこういうふうに、今回、非常にメジャーなというか、職業に関して更新制度を導入する、官房長官のお考えでは、これが今後、そのほかのいろいろな職業に関するいわゆる資格制度に関して、あるいは免許制度に関しての更新制を導入する検討の出発点になるというふうに御認識をされておりますでしょうか、官房長官。

塩崎国務大臣 今回、更新制にしようという議論が出てきたのは、やはり教員の質の問題、質をどうやって維持するかということで出てきたんだろうと思います。

 そういう意味では、先ほど、更新制をとっているものはどういうものがあるのかということでお答えをいたしましたけれども、質を確保する、その担保措置というか、そういうものをやっているものの中に、例えば公認会計士法、私も深くかかわったものでございますけれども、これはやはり「研修を受けるものとする。」というようなものがあったり、それぞれ自主規制団体というか団体が、例えば弁理士でもありますが、そういうところでも何らかの形で品質確保のための担保措置というものが行われているというふうに思うわけであります。

 したがって、今お尋ねは、今回、教員に更新制を入れた場合に、他の資格制度についても同じように入れるのかどうかということでありますが、これはもう、あくまでも、それぞれの法律に基づいて行われることであるとするならば、これは国会が国民の声をバックに考えることであって、それぞれいろいろな、今申し上げたような、資格によって、更新制を持っているもの、更新制はないけれども、品質を確保するために、維持するために何らかの仕組みを持っているもの、こういうものがあるわけでありますので、一概に、今回導入したから、政府として、ほかのものにもどんどん導入しようというようなことは考えておりません。むしろ、国民の皆様方がどう考えて、そして国会がどういう御意思を持つかということにかかってくるのではないかなというふうに思います。

田嶋(要)委員 今の御答弁でちょっとあれっと思ったんですけれども、冒頭に官房長官、質をどうやって維持するかというふうにおっしゃいましたが、といたしますと、教員に関しては、免許を更新しないと質は落ちていく、逆に言えば、免許更新制のない今は質は落ちてきているという結論ですか。そういう評価があったということですか。

塩崎国務大臣 これは、教育再生会議でも、あるいは中教審でもそうでしょうし、また、その他のあらゆるところで教員の質の問題についてはいろいろな意見が出ていたと思います。

 今回のこの制度も、やはり十年に一遍ということでありますけれども、その質を確保して子供たちにいい教育を与え続けよう、こういうことで考えられた制度ではないかというふうに考えております。

田嶋(要)委員 もう一度確認しますけれども、免許の更新制を導入していない今の状況では質が下がってきている。逆に言えば、先ほど、いろいろな担保の仕方がある、品質を担保する仕方はある、ほかの公認会計士の例を出されました、研修制度ですね。しかし、それは研修制度であります。今回、教員に関しては、免許の更新制、逆に言えば、免許に有効期限をつけるということを採用しなければ質を維持できないという判断があったということですね。逆に言えば、今、免許の更新制がないから質は下がっている、そういうことでよろしいですか。

塩崎国務大臣 できる、できないを言っているわけではなくて、やはりいい質の先生方に教育を子供たちに施してもらって、いい、将来を担う人材を育ててもらおう、その仕掛けとして、議論の末の考えられた仕組みではないかというふうに思います。

田嶋(要)委員 もう一度確認しますけれども、質が今下がっているという判断があったんですかということです。

 先ほど御自身がおっしゃった、私、この質問は予定していなかったんですが、質をどうやって維持するかということがあって、今回、免許の更新制を導入したいとおっしゃっているわけですね。ということは、免許の更新制を導入しなければ今後、質は下がるんだ。ということは、今の時点で、免許の更新制がないから質は下がってきているんだという反省のもとに免許更新制を導入する、そういうことですか。もう一度お願いします。

伊吹国務大臣 済みません、先生、お許しをいただいているので、法案の提出者として御答弁を申し上げたいと思いますが、教員の質というものはどういうものをもって判定するかというのは、これは人それぞれ、まちまちだと思いますが、多くの国民が現在の教育に対して持っている評価は、学校現場が必ずしも十分じゃないということは、多くの世論調査を見てもよくわかると思います。

 そこで一番大切な役割を占めるのはやはりよき教師であって、この先生方の質を担保するというのはいろいろなやり方がございます。研修をやることもあるし、自己研さんをされることもあるし、それはいろいろなやり方があるでしょう。今回は、十年ごとに研修を行うことと同時に、その研修結果の認定をやりますね、実施権者が。そして、それによってある程度の品質の保証というものがそこで、品質という言葉は先生に対して失礼かもわからないけれども、能力の検証というものが行われるというのが大切なポイントで、同時に、その検証の前提として、三十時間の研修、勉強をしていただく。

 だから、下がっているかどうかというのはいろいろな見方がありますが、多くの国民は、教師の資質を時代に合わせてブラッシュアップしてもらいたいという気持ちを持っていることは間違いないんじゃないでしょうか。

田嶋(要)委員 もちろん、今よりもさらにレベルアップしてもらいたいというのは常にあると思います。それはもう全くそのとおりですね。それと、一部やはり不適格な教員がいて、そういう方々が現場で大変目立っていて、私も現場で校長先生とかとお話しすると、本当にもうどうしようもない人がいる、それは正直言いますよ、皆さん。だから、その点はある。

 ただ、問題の出発点として、今回、今あるものをさらによくしようとする改革なのか、それとも、今どんどん悪くなっている質を上げよう、何とか支えようとしている改革なのかは、スタート地点の認識として重要な違いだと思うんです。

 昨日、おとといですか、免許更新制の関係で、この更新制というのはさらによくするためにどうするかというための手段だというお話がございましたが、官房長官の御認識はちょっと違うんじゃないかなというようなお言葉でした。質をどうやって維持していくかですよ。質をどうやって維持していくかということは、同じ水平線ですよね。そうすると、ないと下がっていくから維持するということですよ、何とか。そういう御認識に官房長官は今立っておるのかということですよ。くどいですか。もう一度お願いできませんか。要するに、免許更新制がなければ先生は今だめなんだ、どんどん質が下がっているんだということですね。

塩崎国務大臣 先ほど公認会計士などの研修制度とか、そういうのは質を維持するということでやっているということを申し上げましたが、それと同じ意味で言っているのであって、それは、では公認会計士の質が下がっているのかというと、そんなことを言っているわけではなくて、一般論としてどうやって質を維持していくのか。そして、一部、いろいろ問題がある先生がいるんだということを今先生も御指摘になられましたけれども、そういう人たちについても維持をしていくということは今回の制度でも可能になるわけでありますから、いずれにしても、一般論として、質はいつもきちっと維持をして、みんながやはり納得するいい先生がいい教育をやっていくということではないんでしょうかね。

田嶋(要)委員 文科大臣にお伺いしますけれども、そういうことで、教員の免許に関して更新制を考えられるということで、後ほど細かい話はお伺いしたいんですが、今回のこの制度の研究は二カ月前からじゃなくて二年前からやっているという御説明をきのういただきましたけれども、諸外国を見ますと、やっている国はほとんどないということですね。アメリカがやっているという話でございますが、そういった事例というのはよくよく検討されたんですか。

伊吹国務大臣 事例というのはどういう意味でしょうか、諸外国の事例という意味で理解して御答弁申し上げます。

 やはり、日本は日本の国のあり方で必要なものを政策としてとっていくということだと思いますし、官房長官が答弁したことも私が答弁したことも先生、決して矛盾はしていないんですよ。

 能力というのをどういうふうに判断するかというのは非常に難しいということを再三申し上げております。教員免許を取ったときの能力は変わっていなくても、時代の変化によってそれを判定する尺度が変わってくるわけですね。科学技術がこれほど広く進展をし、国際社会が変転目まぐるしいときには、十年前の知識というのは本当に、今十年前の知識を持っていれば、今もそれを持ち続けているけれども、それが今教員としてふさわしい能力であるかどうかというのは、時代の流れとともにそれをはかる尺度が動いてくるわけですから、それに合わせて、いい先生をきちっと評価していきたいということを言っているわけで、官房長官が申したことも私が申し上げたことも違うことを言っているわけではありませんし、諸外国のことはもちろん参考にしなければなりませんが、日本はやはり日本として一番いい制度を最終的に国会の御判断で適用していくということだと思います。

田嶋(要)委員 もちろん、それぞれその国の事情もあると思うんですけれども、しかし、どんな国でも、子供たちを教える、そういう課題が大変国にとって重要で、みんな悩んでいると思うんです。そういう中で、それぞれの国が免許の更新制、検討はしたけれども、ほとんどの国では採用されていないという事実も、私は、それは、そんなに差が出てくるのもおかしいような気もしますよ。いろいろな国の事情はあるにしても、やはり、いろいろな課題がある、本当に免許の更新制が期待するような結果をもたらすのか、そういうところがいろいろ議論された結果、アメリカを例外として、制度の更新制がないということですね。

 後ほど私質問いたしますけれども、私がいろいろほかの職業の免許の更新制も、ほかの国の状況を申し上げました。結論的には、免許制度とかあるいは資格制度というものに関して、教師とかお医者さんとか、そういったいろいろな職業、更新制が主流になっている職業制度は一つもないんですよ、それは。

 だから、そういう中で、日本も、お医者さんの議論も盛んにありました。その中でも、結局同じ議論なんですね。質を引き上げることなのか、それとも問題の人を排除するのか、同じような議論があって、やはり最終的には更新制じゃないだろうという結論に至っている中で、今回、毎年十万人以上に影響を及ぼすような制度を導入する。これはよっぽどの覚悟と慎重な検討が必要だと思うんですが、私は、そういう意味で、冒頭申し上げた、今からでも引き戻すことは遅くはないですよと申し上げているのは、私、大臣を信頼しておりますので、これは本当に後々後悔しますよ、これは後悔する、そのことを私申し上げたいというふうに思います。

 それで、ちょっと更新制の話に入る前に、総論的なスタートラインの、先ほどの先生の質の話もございますけれども、質問させていただきます。

 子供の学力ですけれども、この間の全国テストも、学力を調査したい、それから意欲を調査したい、そういうことでございますが、子供の学力が低下した、こういうことをよく言われます。それが教育再生の出発点の一つだと思うんですが、子供の学力が低下したという意味は、二つの見方が私はあると思うんですよ。一つは、ほかの国と比べて相対評価でどうか、それからもう一つは、日本という国の中において、過去から比べて今の子供たちがどうかという両方があると思うんですが、どういう事実認識に立っておられますか、大臣。

伊吹国務大臣 全く今先生がおっしゃったのと私は同じ認識に立っております。過去からの時系列としてどうなっているか。そのためには、いろいろ御批判もあったでしょうけれども、今回、全国統一学力テストをさせていただいているということです。

 同時に、国際比較は、よく引用されますOECDの調査等が行われています。しかし、それすら実はどういう基準でやっているのか。国際比較を見れば、数学、理科等はまだベストファイブに入っているようですが、自国語の理解力、読解力というのは今や毎年毎年評価が落ちてきて、今十四、五番目になっちゃっている。これすら、テストによってやはり少しずつ違ってくるでしょうから、考え方によって、批判をする側の立場に立てば、こういう観点から見ておかしいじゃないかということは、私は幾らもあると思います。

 ただ、国民が今の子供たちの学力を、あるいは御父兄の方が自分たちの子供の置かれている状態をどう考えておられるのかということを、やはり政治に携わる者は大切にやっていかなければいけない。各種世論調査を見ると、必ずしも満足をしておられる状況じゃない。

 そこで、内閣としては、いわゆる骨太の方針というものを閣議決定しています。ここまで経済財政諮問会議でやるのがいいかどうか、私は大いに疑問に思いますけれども、安倍内閣の前の閣議決定としては、二〇一〇年までに国際学力調査において世界トップレベルを目指すというのが、これは議院内閣制のもとで選ばれた内閣の方針なんですね。それを受けて、教育基本法で教育の現時点における新しい教育理念のようなものを、反対の政党はありますけれども、国会の議了を得た。それを受けて今回御提出している学校教育法は、その三十条の二項に、「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養う」ということを言っているわけです。

 きょうここへ出てくる前の記者会見で、この特別委員会の審議が始まったけれども、どういう印象を持っているかということを聞かれまして、後でファクスが流れるかもわかりませんが、やはりここでおっしゃっていただいたことを我々は注意深くお聞きしておりますし、そして、政府から来ておる者が逐一皆さんの大切な意見をメモいただいております。いずれ法律以下で処理していかなければならないもの、特に一番大きなものは具体的な学習の内容を定める指導要領ですね、これを決めるときには、やはり国会の御意見を参考にして私はやっていきたい。そのためには、随分実りのあるいい意見が出ているのをうれしく思っているというお答えをしているところです。

田嶋(要)委員 長い御答弁、ありがとうございました。

 全国テストは四十数年ぶりですから、私が先ほど申し上げた二つの比較という意味では、同じ我が国での経年的な比較は余りできていないんだと思うんですよ、毎年全国テストをやっているわけじゃないですからね。そうすると、学力が下がっているというのは、大臣おっしゃったとおり、ほかの国と比較した相対論ですね。読解力が下がってきている、それをもって学力を上げなきゃいけない。(伊吹国務大臣「国民の実感ですね」と呼ぶ)実感、ございますね。そういう中での認識、危機感だろうというふうに思います。

 それでは、そういったものに対して、今度目標の設定ですけれども、今大臣も少しおっしゃいましたけれども、学力を高めていく、まさにほかの国との比較においてトップレベル、ランクインするというか第三位までに入るとか、そういうことが要するに目標設定としては設けられておるという理解でいいですか。

伊吹国務大臣 大きなグローバリズムというか国際化の時代ですから、いつも藤村先生と議論しているときに言っているように、二つやはりあるんですよ。

 国際社会の中で日本が生きていくために、国際社会の流れに呼応して、日本が優位に立たなければならない、そのための人材をつくっていくという観点と、もう一つは、国際社会の中で、日本人としてアイデンティティーを持って、人間として幸せに暮らしていける一つの能力を持っていく、要するに、個と全体、どちら、多分答えはその真ん中あたりにあると思うんですが。

 だから、トップファイブに入るとかどうかというのは、それは数字上の結果であって、私は、国際社会の中でたくましく人間として生きていける日本人をつくるということが我々政治家の使命だと考えています。

田嶋(要)委員 もっともだと思いますけれども、それでも、ほかの国と比べてどうかということは、当然、事実として大変気にして、国の政策判断もその結果に大変影響を受けているということは言えると思います。

 それで、では、子供の学力に関してはそういうことですが、学校の先生の、教える側ですね、インプットというんですか、子供の学力とか意欲とかのもととなる部分に影響しますけれども、先生に関しては、国際比較で日本の先生はどうかとか、あるいは、過去の先生に比べて日本の先生は力が落ちているかという話は先ほどちょっと出てきましたけれども、内閣としては、先生が悪くなっている、落ちている、そういうことはないということをもう一度確認させてください。

伊吹国務大臣 これは一概に言えないと思います。

 それは、先ほども先生自身もお認めになっているように、困った先生もいるわけですし、私が申し上げたように、採用のときの能力は落ちていなくても、世間、時代の方が刻々と変わりますから、時代に追いつけていない先生もいるでしょうし、御自分で努力されてブラッシュアップをしておられる先生もいらっしゃるでしょうから、国として、やはり先生の免許を持っておられる職業としての先生をむしろ後押しをしていくというのが免許の更新制だというふうに私は理解しています。

田嶋(要)委員 そこで、同じそういった国際比較、ほかの国と比較をしてという面で、これもいろいろな折にいろいろな方が質問しておりますが、教育予算の話に少し触れたいと思います。

 官房長官、あともう時間がないようでございますけれども、行かれる前に一つ質問しますけれども、私は本当に、これは、小泉総理の答弁もございました、安倍総理の答弁もございました、それから文科大臣の答弁もございましたが、なぜほかの国に比べてこれほど対GDP比で教育予算が少ないのかということを再三質問させていただきました。それに対して必ずついてくる話が、過去十年、子供一人当たりには倍増させている、そういう話なんですよ。これは完全なはぐらかしですよね。要するに、さっき言った国際比較という横軸に対して、我が国の縦軸の話で切り返してきているわけですね。

 先ほど子供の学力に関して、ほかの国と比較してこれほど危機感を持っているというのであれば、私は、この日本という国が、最重要と掲げながら、言っているだけで、現実のお金の話を見ると惨たんたる状況だということになぜ危機感をもっと持たないのか。私は、民主党はそこから出てきていると思うんですよ、第三の法律というのは。なぜそういうことができないのかということにやはり矛盾を感じている、多くの国民が疑念を感じている、本気かと。最重要とおっしゃっているんですけれども、官房長官、いかがですか。

塩崎国務大臣 GDP比とかそういう数字は、いろいろな割り算とかあって、分母だ分子だ、いろいろなことがあって、多分いろいろな説明がつくんだろうと思います。

 大事なことは、危機感は、同じように先生も私どもも持っていると思います。つまり、教育をさらによくしていかないと日本の将来、なかなか大変だね、こういうことで同じ問題意識を持っていると思いますが、問題はトータルの、言ってみれば、中央、地方政府による教育支出の全体の数字だけを議論しているわけにもいかないだろうなということと、もう一つは、財政は、当然のことながら教育だけではなくていろいろな財政需要があるわけでありますから、それとのバランスをとって、子供たちの将来を考えるという意味においては、子供たちの負担というものも考えなければいけない。

 そういう中で、どういうふうなバランスをとっていきながら国家としての優先度をつけた政策に予算を配分していくのかということをやっているわけであって、単にGDP比だけで議論をしようと思っても、それはなかなか詰まった議論にならないんじゃないかなと私は思っております。むしろ中身が問題であって、そこのところをもう少し議論していくべきじゃないでしょうか。(発言する者あり)

田嶋(要)委員 よくわからぬというコメントがありますけれども、これは財務大臣に聞いているわけじゃないんですよ、官房長官に聞いているんですよ。

 だから、それは、お金はいろいろな予算の優先度をつける。優先度をつけなきゃいけないのはそのとおりですけれども、やはり最重要というのは一つしかないんですよ。だから私は、みんな教育が大切だと思っているのは当たり前ですよ。だけれども、ここまで来て、予算のいろいろな制約はあったとしても、なぜ民主党のようにもう一歩踏み込めないのか、基本法の方も、今回の三法も。

 それで、ちょっとお配りした資料を見ていただきたいんですけれども、一ページ目。

 これは官房長官に最後の質問ですけれども、要するに対GDP比の、これは再三、小泉総理のときから前原前代表も小沢代表も質問した、この間は松本政調会長も質問しました。それは、初等中等高等教育、日本が四・数%、ヨーロッパは六・数%、余りにも差がある。

 加えて、この間厚生労働省からいただいたこの資料ですけれども、初等の前の話も、皆さん、これはどう思います。この表、日本は一番左側ですよ。これは教育だけじゃないですよ、家族関係支出なんですけれども、これも対GDP比ですね。その上から二つ目の保育・就学前教育、これは教育ですよ。これは、次に私がお話ししたい幼児教育とかと関係する部分ですが、これを見ますと、やはり初等中等教育もお金をけちってきた。しかし、そこの根っこに当たる家庭教育とか、いわゆる子育て支援とか、私どもよく言っているのは、高齢者に対する支出に比較して十七対一とか二十対一。これまで、子供に対しては本当に力を入れていないのが日本の姿ですよ。私、愕然としますよ、こんな失敗をこれまでずっと続けてきたのか、それは教育ひどくなるわと。

 要するに、そこの認識が私は、どのぐらい危機感を持っているかということが政府から全然伝わってこないですよ。これは、私、予想どおりの結果ですよ、初めて見させていただきました。最近、フランスの合計特殊出生率が二に戻ったとか、そういう話がありますね。やはりそうだな、フランスはやはり力を入れているな。いろいろな項目の中で、就学前の教育もこれはひどいですよ。こういうデータはどの程度当てになるかとか、同じリンゴとリンゴ、ミカンとミカンで比較しているかと言われると私もわかりませんけれども、しかし、これはすごく、日本のこの十年、二十年、もう本当にここに関して大失敗だったと私は思うんですよ。

 これはどう思います、官房長官。就学前も、初等も中等も高等も、全部こういう状況ですよ。お金がないことが、お金がちゃんと回っていないことがやはり根本原因の一番大きいところじゃないですか。官房長官、もう一回お願いします。

塩崎国務大臣 御指摘のように、支出というものも一つの対策を示す指標だろうと思いますが、一方で、これはGDP比率なので、さっき言ったように分母がでかいということもありますし、それともう一つは、少子化対策なんかでも、では、各国のGDP比で見てお金を使ったところの方がいい効果が出ているのかというと、それも必ずしもそうでもないんですね。

 そういうことを考えてみると、やはり中身の問題をどう考えるのかということと、財政全体の中でこの支出を、どうバランスをとりながら重要課題に資源を割り振っていくのかというバランスであって、教育だけを取り上げて何でふやさないんだとだけ言われても、それはなかなか、予算全体のことでもありますし、また、予算の中における教育支出という面においてはそんなに見劣りしているわけではないということでありますから、これはやはり、先生、一緒にいろいろ考えて答えを探っていかなきゃいけないことだろうと思いますよ。

田嶋(要)委員 小泉総理以来、答弁はいつも一緒ですね。子供たち一人に対しては十年間で倍になってきた実績を示す、それはそれで事実ですよ。それは、財務省が出しているデータに基づいて同じことを繰り返しおっしゃっている。

 しかし、話をそうやってすりかえるところも含めて、最重要が泣きますよ、最重要が、これは本当に。もうみんな……(発言する者あり)本当に一緒に頑張りましょう。だから本当に、情況証拠はそろっているんですから。韓国はお金を使っているけれどもどうのとか、こういう個別事例はありますよ。でも、もうちょっとマクロで見てもらって、情況証拠はそろっているんですよ。例えば一クラスの子供の数とか、千人当たりの子供に先生がどのぐらいいるのかとか、そういう状況、どれを見ても、ないそでが振れない、要するに、予算がけちられていることがさまざまな弊害の一番の原因なんですよ。大変残念ですね、そこは。

 大臣、一言ありますか。

伊吹国務大臣 私は率直に言って、こう見えても先生を信頼しておりますから、バランスのとれた議論をしてくださると期待いたしております。今ずっと、るるおっしゃったことは、文部科学大臣としては非常にありがたい応援演説だと受けとめさせていただいております。

 最重要が泣きますとおっしゃいましたが、内閣の最重要政策と位置づけたのは安倍内閣なんですよ。安倍内閣の概算要求はこれからなんですよ。実は、昨年九月に安倍内閣が発足したときは、財政法の規定によって、八月三十一日に既に概算要求は締め切られておったわけですね。ですから、今先生がおっしゃっていただいたことは、私にとっては非常にありがたいことなんです。

 ただ、幾つかの点をやはり議論のために申し上げておかなければならない。それは、一つは、日本は人口に比してGNPが非常に高い国だということです。それから、GNPの中に占める公共支出の比率の非常に低い国だということです。それから、児童生徒の総人口に占める比率も非常に低い。それから、私立学校の比率が特に公教育において非常に高い国であるだけに、GDPと公共支出の数字だけを単純に比較して国際比較をするのはちょっとどうかなと。

 だから、ありていに一つ数字を申し上げれば、児童一人当たりの財政支出の数字はどうなっているかというと、アメリカが八千二百十一ドル、フランスが六千六百三十五ドル、次が日本なんですよ、六千二百四十七ドル、イギリスが五千八百三十一ドル、ドイツが五千四百十四ドル。

 ただ、最重要と言うのなら、私はやはり予算をもう少しふやすべきだと。そこを経済財政諮問会議でどうだこうだと言って絞ってくるというのは余り感心したことじゃありませんから、どこで選択と集中をやるかというのは、これはまさに政治のというか、国民の多数を得た与党の形成する議院内閣制のもとの内閣の責任ですから、私は、先生がおっしゃっていることに多く同意をしながら予算編成に臨みたいと思っております。

 しかし、そのことと同時に、公教育の中にある無駄を徹底的に省かなければ国民の御支持は得られないということは、これは民主党さんも同意してくださる。

 それからもう一つ、くどいですが、申し上げると、予算をふやすということはそれはそれで私も同意をいたしますが、やはり政策として提言をする場合は、その財源と、そして、それだけふやす場合はどこを削ってやるのか、削れないのならば国民負担をどういう形で求めるのか、それがあって初めて国家の政策となるんだということもあわせて、私は先生を御信頼しておりますから、御議論をしたいと思います。

田嶋(要)委員 日本が、前総理も今の総理もおっしゃっているように、一人当たりの子供の金額としては教育にも額をふやしてきている、そういうことは私は全然否定していないですよ。それも事実です。

 だから、いろいろな反論の仕方があるかもしれませんけれども、でも、子供たちの学力の低下というのは、国際的な比較のあの数字をもって、比較をもって、順位をもって危機感を持っているわけですよ。その根っこにある予算の配分の仕方ということで同じようなそういう数字を目の前に出されて、やはりもっと危機感を持たなきゃいけないと私は思いますよ、それは。もちろん、それは党派を超えて私は応援しますよ。お金をふやしてもらわないとこれはいけないと思います。

 それで、民主党の三法に一法、そういう法律がございますので、ぜひその精神をもう一度アピールしてもらいたいと思います。

高井議員 お答え申し上げます。

 田嶋委員の御指摘になった問題意識の考えを背景に本法案をつくりました。それが、今回提出した学校教育の環境整備の推進による教育の振興に関する法律案が、まさにそこに立法趣旨が、御指摘になったとおりのことを反映してつくられたものがこの法案でございます。

 まさに、御指摘になったとおり、公教育の教育力を向上させるためには、やはり学校の環境整備をよくする、力を注ぐということが何よりも大事だと思っておりまして、そのためには何といってもお金がいろいろとかかります。

 そこで、具体的には、少人数学級の拡大とか、習熟度に応じた指導を行う体制を整えたり、いじめ問題に対応できるようなスクールカウンセラー等も配置したりするのに、いろいろ対象は広範囲に及びますけれども、何分、これにもいろいろとお金がかかるわけでございます。それを担保しようという意味でこの法案を提出させていただきまして、我が党の、民主党の今回提出されております日本国教育基本法案第十九条に基づいて教育財政の充実を明記しておる、これが理念を具体化したものでございますので、ぜひ、それこそ党派を超えて御賛同いただきたいなと思っております。

田嶋(要)委員 こういう言葉がありまして、昔はおらが町でピアノがあるのは小学校だけだった、今は自分の町でクーラーがないのは自分の小学校だけだった、そんなような話があるんですけれども、私もそれを実感するんですよ、学校に行くと。本当に予算が回ってきていないな、設備を見てもそう思いますよ。パソコンがない、クーラーがない、そんな話、よくあるじゃないですか。本当に、そこは国民の皆さんが、どちらの案が決意を示しているかというのは評価してもらえると思いますよ。

 それに、先ほどお配りしたこの資料、要するに、義務教育の小学校からの話じゃないんですよ、これは。もっと根っこのところ、まさに学力以外に、大臣がおっしゃっている意欲の問題、それからしつけとか規範意識とか、そういうことも含めて、私は、小さい子供たちのところをどうするかということが本当に重要だと思うんです。

 数字は物語っている。日本はすごく、残念ながら、ほかの国に比べたら、完全にこれは手を抜いたとしか言えないですよ、相対論として。数字がふえてきたというのはだめなんです。やはりほかの国と比べてまだまだ力を入れなきゃいけない。先ほど二つおっしゃった最初の話、グローバルな話として、やはりほかの国との関係を見て力を入れていただきたいと思うんです。

 そこで、時間が減ってきましたけれども、幼児教育に関してこういった問題があるんです。

 三法と直接関係しないんですけれども、今、日本の幼児教育というのは、幼稚園があって、保育園があって、五%ぐらいの子供たちがどちらも行っていないわけですけれども、こういった惨たんたる状況がある。私はこの部分をこれから本当にさらにしっかりとやっていただきたいというふうな思いがあるんですが、どこが幼児教育をしっかり担っていく役割を持っているのか、大臣の御認識をいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 これは、先般の国会で議了いただいた改正教育基本法第十条に書いておりますように、子供の教育について一義的に責任を有するものは、当然、父母等の保護者、すなわち家庭であります。再三私が申し上げているように、その意識を全父兄が持ってやはりやるべきだ。ただ、社会の変遷とともに、核家族化になったり、あるいは共働きになったりして、一〇〇%父親や母親としての役割を果たせない人もおられるという現実は、私はよくわかっております。

 ですから、同法の十三条にはどう書いているかというと、学校、家庭及び地域住民その他の関係者が相互に連携し協力することが必要であると書いてありますから、今先生がおっしゃった義務教育前の幼児教育、つまり保育園、保育所、幼稚園、あるいは認定こども園ですか、そういうものの役割は大きくなってきますから、そこへどの程度の予算を割いていくかということも、先ほど来の御指摘の流れの中にあることだと思います。

田嶋(要)委員 安倍総理も著書の中で、学力よりも、回復させるというか、レベルアップしていくのに時間がかかるというか、取り戻すのに時間がかかるのがしつけの問題だというようなことを言っていまして、私もそこに関しては同じ問題意識がございまして、なおかつ、やはり今、学校教育の中で起きているさまざまな問題は、実はその一つ手前の家庭教育の問題だというのは多くの方が指摘する。根っこは親の問題だということを多くの方が指摘して、再生会議でも親学なんという議論が今されているわけですね。

 そういう中で、まさに幼児教育の部分は、予算の重点配分を含めて、例えばフランスのように初等教育に含めていくやり方もあります。日本のようにお役所が二つに分かれて何だかぐちゃっとなっている状況というのは、余りほかの国では見ないですよ。子供政策省を設けることも含めて、やはりもっとここに力を入れないと、今この三法でやっていこう、あるいは教育再生でやっていこうとしている根本的なところの解決にはつながっていかない。要するに、狭い見方をして義務教育の部分の話をいろいろ議論していてもだめで、もっとその一つ手前のところをやっていかないといけないという問題意識を私は強く持っておりますので、よろしくお願いします。

 残された時間で免許更新制のところについてお伺いしますけれども、おととい、高井委員の質問に対しての大臣答弁でも、要するに、悪い教師を排除するのが目的ではなくて、レベルアップだ、教員の質の向上ということが導入の目的だということでお伺いをいたしました。しかし一方で、五回も六回も落ちていると、これは分限になるというようなこともおっしゃっておるわけです。

 もう一度確認をさせていただきたいんですけれども、結果としては、この更新制によって不適格教員の排除も行われるということでいいですね、本来の目的はそこになくても。

伊吹国務大臣 不適格教員の排除というものは、これは地方自治法上の分限によって行われます。これは日本の法制度です。

 研修というのは、先ほど申し上げているように、レベルアップ、ブラッシュアップの目的のために行っています。だから、何度も何度も研修をやって、そしてその認定を受けられないということは、それをもって排除をすることではなくて、そのことを参考にして自治法上の分限が発動されるということです。

田嶋(要)委員 もうちょっとそこを確認ですけれども、そのことを参考にしてということは、今回導入しようとしている更新制の制度と、既存の不適格教員に対する人事管理の制度がございますね、その結果として分限という形もあるわけでございますが、その両者というのがどのようにつながっていくということですか。もう少しお願いします、参考にしてという意味ですけれども。

伊吹国務大臣 これは、私がここで答弁をするのは非常に不適切というか、日本の法構成上は非常に不適切だと思います。

 というのは、教員の任命権を持っているのは教育委員会なんですね。ですから、今の教育公務員特例法においても、不適格教員については、分限を発動できる規定はあるんですよ、校長の認定その他を参考にして。教育委員会においては、そのことを非常にうまく利用して、教育長の判断でうまくやっておられるところはたくさんあります。しかし、ありていに言うと、組合との関係だとか教職員の相互の人間関係とかいろいろなことがあって、それがうまく発動できないところが多いんです。

 ですから、今回提案しているのは、私は、高井先生の御質問に、鋭い、なるほどよく見ておられるなと申し上げたのは、まさに先生が最初御質問になったように、免許の法律はブラッシュアップする法律になっておりますが、同時に、教育公務員特例法をあわせて一本の法律として改正をお願いしているわけですね。教育公務員特例法の中では分限の手続その他について改正をしている、手順をお示ししている。

 ですから、研修の結果そのものがすぐに分限に結びつくわけではありません。それは教育委員会の人事権の範囲の中でいろいろ御判断になるわけで、だから、このことで何度も認定を受けられない人だけがだめ教師として分限の発動になるわけじゃなくて、従来どおり、評定権者の判断その他で分限の対象になる人も当然出てくるでしょう、それは。ですから、これは各教育委員会の判断ということになりますが、一つの判断材料になるということはあり得ることじゃないかということを申し上げているわけです。

田嶋(要)委員 それでは、この更新制度なんですけれども、導入をするとどのぐらいの予算が必要だというふうにお考えですか。これは、先生お一人お一人が自己負担ということじゃないですよ。この制度導入、あるいは毎年どのぐらいの予算が必要なんですか。

銭谷政府参考人 免許更新制の導入に当たりましては、免許更新講習の実施に要する経費、それから全国的な免許管理システムの導入に要する経費、その他必要な広報の実施等に係る経費、こういった経費が必要になるものと認識をいたしております。

 このうち、免許更新講習の実施に要する経費は、法をお認めいただきました後、仮に年間十万人程度の教員が受講するといたしまして、一人当たり三万円前後を要すると仮定をした場合、毎年三十億円前後の負担が生じるということが見込まれております。

 なお、全国的な免許管理システムの導入あるいは必要な広報の実施等に係る経費については、額等についてはまだこれから考えていかなければいけないと思っております。

田嶋(要)委員 まだよくわかっていないというか、どのぐらいコストがかかるか見えていないということですかね。

 一つお伺いしますけれども、免許取得後十年以上経過した現職の先生方、そういう方々というのはいつ免許更新になるかというのを教えてください。

銭谷政府参考人 免許状を授与されましてから十年以上経過をいたしております現職の教員の最初の免許更新講習につきましては、法の附則の二条三項に規定をいたしておりますけれども、その現職教員の方の生年月日に応じまして、講習時期は文部科学省令で定めるということにいたしております。

田嶋(要)委員 ちょっとよくわかりませんけれども、自分がいつ免許の講習を受けなきゃいけないかというのは今の時点では全然わからないことですね、そうしますと。そういうことですか。どういうことですか。

銭谷政府参考人 法の施行後、省令を定めまして、その省令の中で、免許取得後十年以上経過している現職教員の更新の時期というのは、それぞれの先生方から見て明らかになるというものでございます。

田嶋(要)委員 だから、全然今の時点ではわからない、そういうことですね。

 こういった方々が、もちろん大勢おるわけですけれども、どうやって周知をしていくかとか、これは忘れちゃったらもうアウトなわけですから、二年間のあれはありますけれども。そういった周知とかでこれは大変なコストがかかってくると思うんですけれども、言ってみれば、その辺は全く今把握はされていない、そういうことですね。違いますか。

銭谷政府参考人 先ほども申し上げましたが、法の成立後、文部科学省令を定めるわけでございまして、その省令の中で、その先生の生年月日に応じて更新の時期を決めますから、これにつきましては、いつ生まれた方はいつ講習の時期ですというのははっきりするわけですので、それは私どもきちんと周知、広報できると思っております。

田嶋(要)委員 それこそ、うっかりして忘れてしまったらもう失効していたというようなことが最初は起きてくるんじゃないかなというふうに思いますね。大臣、何か、そんなことはないんですか。

伊吹国務大臣 これは、おのおのの研修の基準をこちらが、文部科学省が決めますが、各教育委員会単位で、教員養成学校その他が研修の実施をするわけですから、それは先生、必ず教育委員会が通知をいたします。我々だって、自動車の免許のときだってみんな通知が来るじゃないですか。だから、そんな、忘れていたから受けられないなんというようなことは絶対にしないように、各教育委員会にも通知をいたしますし、それは大丈夫です。

田嶋(要)委員 ちょっと時間もなくなってきましたけれども、もう一つは、この免許更新講習に関しまして、九条の二の三項というところに受ける必要がないケースというのが入っておるわけでございますが、これはどういうことを想定した規定なのかということをお伺いしたいと思います。

 それから、これは大変恣意的な判断の危険もあると思うんですが、その点はいかがですか、大臣。

伊吹国務大臣 各教育委員会の評定が恣意的だと言ってしまえば、すべてそれはそういうことになりますが、役所の人事であれ、どこであれ、優秀か優秀でないというのは、自分は優秀だと思っているけれども人は評価してくれないとか、そういうことは多々あると思いますけれども、一般論として言えば、やはり優秀教員として表彰を受けた人とか、今我々がやっておりますが、全国で初めて優秀教員として文部科学大臣表彰をことしから実施しましたが、そういうものを受けている人。ちょうど自動車の免許証でいえば、優秀ドライバーは五年だとか無事故の人は五年だとか、そうじゃない人は三年だとかありますから、そういうことを想定しているということです。

田嶋(要)委員 ぜひ、くれぐれも客観的な基準ということを強調させていただきたいというふうに思います。

 それともう一つ、いわゆるペーパーティーチャーの関係でお伺いをしたいわけでございます。

 今、多くのペーパー、四百万ぐらいですか、おいでだということで、今は多くの方が臨時で学校の教育のところに雇われて支援をしていただいている、県費あるいは市費で応援をしていただいている、それは多くの市長さんもそのようにおっしゃっておるわけでございます。その辺の大変機動的な、言ってみれば教える方々のニーズを、弾力的に受け皿となっているのはこのペーパーティーチャーの存在だと思うんですが、この更新制を導入することによってそこが大変スムーズにいかなくなるのではないか、そういう懸念も出ているわけですけれども、大臣、そこに関してはどのようにお考えですか。

伊吹国務大臣 まず、今先生の御指摘になったような方もおられますけれども、総じて言えば、予備校の先生をしておられるときに教員免許を持っているよとかという方もたくさんおられます。ですから、とりあえずは、経費の問題等もありますから、まず、学校現場で子供と接していただいている方々についてこれをやって、そして、その効果が出てきて、先ほどのお話じゃないけれども、諸外国も日本の例に倣おうなどというようなことになってくれば、ペーパーティーチャーの問題についても含めていくかどうかは、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。

田嶋(要)委員 今、ペーパーティーチャーがいろいろな臨時採用ということで大きな役割を持っていると私は思いますけれども、この制度によって、そこが大変目詰まりを起こすのではないかなという印象を持っております。

 いずれにいたしましても、大臣行かなきゃいけませんので、私も終わりにいたしますが、冒頭申し上げた、引き返すなら今だということをもう一度申し上げて、これは本当に、更新制が絶対どんな職業にもだめだとは申しませんが、私はこれはよくないと思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、来る五月八日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査の参考に資するため、来る五月九日水曜日、山形県及び福岡県に委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 午前中に引き続き、この教育再生法案について質問したいと思います。

 午前中は田嶋委員が予算の話をされましたが、私も、引き続きちょっと予算関係の質問をしたいと思います。こういうふうになれば、何か民主党の文教族の続出という感じがあるかもしれませんが、そんなことはなくて、ちゃんと大所高所から議論をしていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 昨年、臨時国会で、教育基本法の方ですね、特別委員会で伊吹大臣ともあるいは官房長官とも議論をさせていただきました。そのときに、去年の七月七日、閣議決定をされた骨太の方針二〇〇六、この制約のもとでこれから予算要求があるというような議論をさせていただいて、文部科学大臣として一生懸命予算要求をしていくというような言葉もいただきましたが、一方で官房長官の方は、それはもう閣議決定で決まっている話で、こんな、骨太の方針を変えるわけにはいかないというような発言もありました。

 これはもう過去の話ですのできょうは何も申し上げませんが、要は、その骨太の方針、今資料にもお配りしておりますが、皆さん御案内のとおり、今後五年間、去年からいえば五年間の歳出削減の国家予算の姿をあらわすものだということであります。

 それで、一番目の丸にありますように、「文教予算については、子どもの数の減少及び教員の給与構造改革を反映しつつ、以下の削減方策を実施することにより、これまで以上の削減努力を行う。」、二つ目の丸を見ると、これにより、今後五年間、人件費を除いて、名目値で対前年度比プラス〇・一%以下に抑制することを基本とするというような縛りがあったわけでございます。

 それで、文部科学大臣もその中で大変御苦労されたというふうに思いますが、実際、この平成十九年度の文教予算、もう大分前に審議されたわけでございますが、この姿についてどうなったかということを御説明いただけますでしょうか。満足できる姿になったのかどうか、それもあわせてお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 御承知のとおり、閣議決定があり、それから国会が議決をした行政改革の法案がありますから、行政府としてはその中で動かなければならない。これは、日本国憲法の当然の制約のもとで我々はやっているわけです。

 それからもう一つ、午前中、田嶋先生ともやりとりをさせていただいたように、昨年の予算要求は小泉内閣の予算要求なんですね。その中でできること、つまり、二・七六の人件費の削減を安倍内閣のもとでは十九年度予算では行わないとか、つまり勝負を二十年度に持ち越したということですね。その他いろいろなことをやった中で、補正予算と合わせますと、厳しい歳入の状況から見ると、ある程度、安倍総理としては内閣として配慮をされたという印象は持っています。

 ただ、今後、教育を本当に再生していくためには、今お願いしている法律にさらに加えて、今後、社会教育法その他の法律を直していかねばならないということ。それから、私を含めて、現場の教員の皆様もすべてやはり従来の意識を改めて、何が必要かという意識改革をしながら取り組むということ。それから三番目には、やはり田嶋先生もおっしゃったように、予算ですよね。だから、従来の中の非効率を排して、そして、それでもなお足らざるときは必要な予算措置と人員措置を講じなければ私はやはりだめだと思います。

 もちろん、バランス論がありますから、内閣として行政を預かっている限りは、財政再建と経費の配分をどうするかということ、それから、歳入をどのように確保しながら国民に御説明していくかということ、そういうことのバランス論の中で、選択と集中をやる場合は、最優先の課題と言っている限りは教育に集中をするというのが私は内閣のあり方だろうと思っております。

 しかし、いろいろなこれは立場がありますから、私も精いっぱい努力をいたしますが、最後は、国会に責任を負うのは内閣として負うわけでございますので、私一人が負うわけではありませんから、努力はいたしますが、先ほど田嶋先生がおっしゃったように、党派を超えてぜひ北神先生も応援をしてください。

北神委員 平成十九年度、大体満足された、そこまでいっていないわけですか。要するに、具体的な姿、さっきの骨太の方針でいけば、〇・一%以内に抑制をする、大体その姿になったというふうに思うんですが、その内容についてはどうでしょうか。

伊吹国務大臣 二・七六を減らすということはとりあえず食いとめて、今後の概算要求の時点から議論をするということにしたとか、大学の私学助成費が減額になっても、あるいは大学交付金が減額になっても、それは科学技術の競争的研究資金の増額でその部分を補っているとか、人間は、それは希望するとおりにならなきゃ満足しないということならこの世は成り立たないわけですから、いろいろな制約の中で最大限の努力をしたということであって、それは満足しているかしていないかといえば、満足はしていないというのが正しいんじゃないですか。

 しかし、いろいろな制約の中で最大限の努力をしたという、ある意味での到達感はあったということでしょう。

北神委員 ありがとうございます。

 私も見させていただいて、率直に申し上げて、その骨太の方針の制約の中でかなり工夫をされたと。いわゆる教育予算の政策的な経費の部分を重点配分して、この部分に関しては四%以上の伸び率を確保しながら骨太の方針の条件をクリアして、一応全体としては〇・一%以内にとどめたという意味では、私、実は一定の評価をすべきだというふうに考えているわけでございます。

 しかし、今のこの骨太の方針にありますように、このまま放置すれば、今後五年間、この〇・一%の伸び率を保てない。それ以下に抑えないといけない。これはやはり、今回は工夫できてかなり知恵を絞られたと思いますが、これを五年間も続けるというのは、教育再生という割には、正直、看板倒れになってしまうおそれがあるというふうに思います。

 それで、実際、この骨太の方針の、国立大学運営費の交付金とか私学助成予算についても大体マイナス一%を基本とするとか、教科書予算についても効率化を図るとか、奨学金予算についてもいろいろ見直しをするとか、こういったいろいろな条件が決められてしまっている。もちろん、ことしもまた骨太の方針の議論をして新しいものを策定するというふうに思うんですが、幾らことしの十九年度予算みたいに工夫をしても、やはり全体の枠という限界が厳しく課せられている。これは、大臣おっしゃるように小泉内閣のときのお話であって、私が見ている感じでは、小泉内閣というのは、基本的には財政再建というものを非常に重視してきた。その目的のためには民営化とか規制緩和とかそういったものをやったし、公共事業というのもかなり削減をしてきた。そういった政治をやってきたというふうに思います。

 安倍内閣は、私が個人的に期待しているのは、そういう消極的な、言ってみれば無駄遣いを省くとかそういったことだけではなくて、むしろ積極的に打って出る、成長なくして財政再建なしとか、あるいはこの教育再生とか、そういったものを私は期待すべきだというふうに思っているんですね。

 これは、安倍内閣だけではなくて私たち民主党も、今回の提出している法案あるいは日本国教育基本法の法案も、基本的にやはり、教育というものから日本人の活力というものを引き出して、それで経済の活力、社会の活力、そういったものも引き起こして、その過程の中で、もちろん歳出の削減もあるし増税もしなければならない、でも、やはり活力というものが前提になければ、財政再建というものもなかなか道遠しだという考えを持っているわけであります。

 ですから、きょうは別に私は予算の要望とかそういうことをやっているつもりではなくて、まずは、経済財政諮問会議というこのハードルをいかに変更していくかということをやはり考えていかないといけないというふうに思っているわけでありまして、決して抽象的な漠然とした話ではなくて、これは実際、骨太の方針をことしも決められて、そこで各分野の予算の伸び率をある意味では規定するわけですよね。それで、その範囲内でしか予算編成を行えないような、私に言わせれば、今はちょっとおかしな意思決定過程になってしまっている。しかし、これは現実そういう運営の仕方をしているということでございます。

 ですから、そういったことを踏まえて、去年は小泉内閣のもとで骨太の方針を決めた。だから、その方針に基本的に従っていろいろ創意工夫をして、十九年度の予算を確保した。おっしゃるように、ことしがやはり勝負だ。ことしの経済財政諮問会議のこの骨太の方針の議論に当たってどのように対応されるのか、お聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 これは、経済財政諮問会議の担当大臣も来ておりますので後ほどお聞きをいただきたいと思いますが、まず先生、小泉内閣の経済政策の評価は、ある意味では先生は御評価になっておっしゃったのかもわかりませんが、私はもう少し積極的に評価をしたいと思うんですね。

 小泉内閣が発足したときは、御承知のように日経平均は七千八百円ですよ。そして実質成長率はマイナス二%。それをやはり、市場原理主義に立ち戻ることによって、資源の効率的配分を促進しながらやっとここまでやってきたということがあるから、昨年は、率直に言って自然増収に随分恵まれたから財政再建という道ができたわけでしょう。だから、今後とも成長だけで財政再建ができるかどうかというのは、これは先生も財務省におられたからよく御理解なすっていると思うし、もっと言えば、では、インフレを促進して財政再建を完成したら国民はそれで幸せかというと、戦後の膨大な軍事予算を国債で賄った後の昭和二十年代前半の日本経済を考えると、生まれておられなかったかもわからないけれども、それはどうだろうということは、やはり政治家としてはつらいけれども、考えておかなければいけませんね。

 その前提で、確かに骨太の方針と言われるもの、これはしかし閣議決定ですから、国権の最高機関である国会で決めていただいた法律だって国会にお願いして修正をするわけでしょう。ですから、そのときそのときの政治のリーダーシップがどこにあるのかということによって内閣としての予算編成の重点が行われるし、閣議決定は、むしろこれは行政内部の決定ですから、時代の変遷と合わせて直すことがあれば直す、立法府にお願いしなければならないことがあれば立法府にお願いする。そのときに、何か言っていた方針をすぐ変えたじゃないかだとかどうだとかと言って野党もそういうことの揚げ足をとらない。そういうところに本当のいい政治ができてくると私は思うんですね。

 だから、お互いに力を合わせて、どこに選択をし集中をするか。ただし、そのことは、小泉内閣が今までやってきた非効率を排除するということの上にやっとここまで来ているということだけは我々はよく理解をして、その上にさらに、非効率があれば進んでこれを排除するという気持ちは失わないようにして、先生のおっしゃっていることへたどり着くべきだと思います。

北神委員 小泉内閣、いろいろ評価はあると思います。そういう話をされたので私の考えを言いますと、公的支出というものを削減して、確かにある意味で民間に、言葉が悪いかもしれませんが兵糧攻めをして、リストラというものを追い込んでいった。たまたまそこでアメリカと中国の景気がよくて、そこで需要が喚起されてきたというのが恐らく今の経済成長の原因であって、小泉さんというのは、消極的な政策の効果はあったかもしれませんが、そこはいろいろ議論があるというふうに思います。

 それで、そういういろいろな大所高所から答弁されているけれども、私がお聞きしたい質問にぜひ答えてほしいのは、経済財政諮問会議で今回どう対応されるのかということです。

伊吹国務大臣 この前も経済財政諮問会議の担当の大田大臣に呼び出しを受けまして、そして臨時委員として御意見を申し上げておきましたが、削減をする場合の効率というのを何をもってはかるのかというのは、市場を超えた価値を扱っている社会保障とか教育の場合はその判定がやはり非常に難しい。ですから、単に、経済成長を促進するものは効率的な支出であって、そうじゃないものは非効率だという判断は私はとらない。

 そして、あと、選択と集中をやって内閣の方針として決めた場合は、これは大田さんが差配を振ってくださることだけれども、安倍内閣としての閣議決定をしなければならない。これはもう政治としては当然のことです。

 ただし、財政再建という立場を考える閣僚もおりましょう。それから、なるほど、いいことなんだけれども、民主党も、では、そのどこを削減してふやす財源を持ってくるのか、それが無理であれば、どういう形で国民負担を求めるべく国民を説得していくのかという作業の集積の上に骨太の方針の変更ということをしないと、いいもの取りの、選挙目当ての耳ざわりのいいことを言うだけでは政治になりませんから、そこのところがやはり内閣としての苦しいところだと思いますので、内部では私は私なりの、先生とよく似た主張はさせていただきたいと思っております。

北神委員 ぜひその方向で対応していただきたい。

 それで、経済財政諮問会議というのは、伊吹文部科学大臣は臨時委員として出席をお許しもらっているということでありますが、なぜか、諮問会議なのに総理大臣が座長だ。これも組織論的に私は非常におかしいというふうに思うんです。要するに、普通は、諮問をしてその答申をもらう。自分が座長だったら、ある意味では一緒に議論しているわけですから、だから組織論としておかしいが、実際にそういうふうになってしまっている。

 そういった中で、官房長官も今司会進行役を、もうされていないんですか。ああ、大田大臣がされているんですか。塩崎官房長官、本当は考え方が似ているはずなんですけれども、どうもすぐ逃げるんですよ、この議論になると。それでは、官房長官は総理の名代として内閣のまさにかなめでありますから、そういった意味で、経済財政諮問会議に対してどう対応していくのか、お聞かせ願いたいと思います。

塩崎国務大臣 まず第一に、教育に関しては、基本法を去年の臨時国会で上げ、そしてまた今三法を御議論いただいているということで、大変重要な政策課題だということは何度も言っているわけでございます。

 骨太の方針についてはこれから議論を詰めていくわけでありますけれども、少なくとも、去年の骨太二〇〇六の中で、歳入歳出の一体改革ということで、今お取り上げで、資料も配られていることが決まりました。あのときももうさんざん議論をして、本当にそれぞれに関心のある国会議員やお役所を挙げて大議論をしてああいう形になって、国家財政を踏まえながらそういう形になっているというわけであります。

 しかし、小泉内閣といえども、それは安倍内閣も継承して、政府は連続性があるわけですから、それを受けて今度二〇〇七をお示しするということになるので、我々としては、安倍内閣として、もちろん自分たちの内閣としての考え方をこれから詰めていくわけで、まだ何も詰まっているわけではありませんが、基本的には、さまざまな要素を考慮しなければいけない大きなフレームワークを示すのがこれは骨太方針であって、当然、財政再建なくして成長なし、あるいは成長なくして財政再建なし、これは両方そうなんだろうと思うんですが、そういうことも考えながらこの重要な教育を考えていこうということになるわけで、教育だけを考えていくわけにもいかない。

 一方で、教育をおろそかにすることもあり得ないということで、これから非常に苦しい選択をしなければいけないということですが、大事なことは、やはり、国家全体を考えた政策をパッケージとしてお示しをするということが一番大事なことだと思います。

北神委員 苦しいという感じがよく今の答弁に出ていたと思います。

 それで、大田大臣が今度経済財政諮問会議の担当だということでありますが、さっきからの議論を聞いているというふうに思います。要は、国家の観点から何が一番いいかということですが、私は本当に、安倍内閣が看板に掲げているだけではなくて、我々民主党も、教育こそが今一番求められていることだ、まさに、どういう日本人をつくっていくのかがどういう日本をつくっていくのかというものにつながっていく話であって、このいわゆるグローバル時代の中で、いかに自分たちがどういう価値観を持って、どういう感性を持ってこの競争に臨んでいくのかという極めて大事なことだというふうに思っているわけでございます。

 そういった道徳的な、精神的な面だけではなくて、経済論からいっても、教育というものは、ここ十年、二十年、アメリカとかイギリスの経済政策を見ていると、極めて重視されている部分であります。

 ですから、そういった点を踏まえて、最後には総理大臣と大田大臣がその財政諮問会議の議論をお決めになるというふうに思うんですが、その辺、今の一連の議論を聞いてどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思います。

大田国務大臣 今、経済財政諮問会議では、成長力の強化それから歳出歳入一体改革、この両方に正面から取り組んでおります。

 成長力をつけていくという意味では、今先生がおっしゃいましたように、まさに人材が何より重要であります。人材というのが長期的な経済成長の礎であると思っています。短期的な意味の経済政策ではなくて、長期的な意味でいいますと、最も大事な経済政策であろうというふうにも思っております。

 ただ、その一方で、子供たちの世代に大きな負担を残さないということも重要です。したがって、限られた予算の中で、これらの文教予算も含めて、どうやっていい歳出構造をつくっていくのかというめり張りが何より重要です。

 そこで、骨太二〇〇七に向けましても、総理のリーダーシップのもとで、歳出全体のめり張りをつけながら、文教予算を含めてあり方を議論していきたいと考えております。

北神委員 今、経済成長の最も大事な部分だという力強い言葉をいただきましたので、ぜひ、その方向を踏まえて取りまとめていただきたいと思います。

 私も、何も財政再建をないがしろにしろということは、全くそんなことを言うつもりはなくて、ただ、まさに内閣府が昨年の秋ぐらいに分析を出されていまして、アメリカの財政再建の分析をされているわけですよ。

 それを見ると、大体一九九二年ぐらいに赤字がGDP比で四・七%ぐらいあった。それを大体二〇〇〇年までに黒字でGDP比で二・四%ぐらいまで改善をした。その要因分析ですね。歳出削減、増税、そしていわゆる経済成長による自然増収、これを見ると、大体赤字の改善幅がGDP比で七%ある。そのうち三%が自然増収による改善なんです。かなり大きいんです。あとの四%はもちろん歳出削減と増税ですが、その歳出削減の中の大半を占めるのが国防費の削減だったんです。これが非常に大きかった。

 ですから、そういったことを考えると、皆さんの話を聞いていると、財政再建も一つ大きな柱だ、経済成長も大きな柱だというふうに言われているんですが、これはいろいろ議論はあると思います。さっきは、経済財政諮問会議のいわゆる政策的な縛りの話をさせてもらいました。これはできるだけ安倍内閣として取っ払ってもらいたい、あるいは緩めてもらいたい。もう一つは、経済学者のケインズも言っていますが、利権よりももしかしたら考え方、思想の方が長い間我々に物すごい影響力を及ぼして、間違った方向に導いてしまうかもしれない。

 財政再建と経済成長というものが、要するにどっちかしかとれないというような発想なのか、あるいは経済成長というものが財政再建の一つの重要な前提なのか、その辺の考え方の整理をやはりしないといけないと思いますし、私は、ずっと経済産業委員会でも議論していて、安倍内閣でそこが詰め切れていないんじゃないか、何となく、経済成長も大事だし教育も大事だ、でも財政再建も大事だから、厳しい財政事情の中でちまちまとちょっとずつふやしていくというような発想にしか聞こえないんですよ。

 それよりももう少し、きょうの資料の二枚目にもありますが、ブレアがイギリスで登場したときなんかは、何を公約に掲げるのかと聞かれたときに、教育、教育、教育、一にも二にも三にも教育だというように教育を非常に力強く主張された。このイギリスのGDP比ですが、教育費の支出を見ると、伸び率はかなり大胆にふやしていっている。

 これはもちろん、いろいろな事情があって単純に比較できないのはわかりますが、めり張りをつけるというふうに大田大臣もおっしゃりましたが、それは、今までの単に財政の枠内でできるだけ頑張りますよという話よりは、発想の転換で、歳出削減も大事、増税も大事、そして、これはもちろん伊吹大臣がおっしゃるように簡単なことではない、全体を見て、どこを削ってどこをふやすかということを考えないといけないけれども、やはり、この発想の部分も私は変えていかないといけないんじゃないかと。あるいは皆さんは、いや、違うんだ、ある意味では別々の目的であって、これら両方を追うことはできないんだと。昔ありましたね、小渕内閣か何か、二匹のウサギを追う者は一匹も得られず。そういった発想だったら、これは従来型の今までの発想なんですよ。

 でも、ブレアがいろいろなところで言っているように、あるいはクリントンも財政再建を果たしましたが、大田大臣がさっき言われたように、教育というものは経済成長の一番の推進力なんだ、ですから、そこにある程度選択と集中で公的資金も入れていかないといけない、そういう発想なのか、その辺の考え方の整理というものをぜひ聞かせていただきたいんですが、どうでしょうか。

大田国務大臣 経済成長と財政の健全化というのはまさに車の両輪で、経済成長が財政健全化に不可欠であると同時に、財政健全化なくして経済の長期的な成長もない、持続的な成長もないと思っております。

 したがって、この限られた予算の中でどうやって質を高めていくか、歳出構造の質もそうですし、教育の質を高めていくということも重要だと考えております。そのために今の教育改革の議論というものもあるのだろうと思います。よりよい教育を目指して実現していく。

 先日の諮問会議でも安倍総理から、やはり予算の原則はしっかり守っていく必要がある、どこかで予算をふやすときはほかの予算を減らしていくという予算の原則は守っていくことが重要であるという御発言がありました。

 これを踏まえて、経済成長と財政の健全化、この両立をあくまで目指していくというのが安倍内閣の姿だと考えております。

北神委員 もうこれでこの議論は終わりたいと思いますが、やはり、二つの目的があって、それぞれをバランスを持って追うという話だというふうに思います。それは、そういう考え方もあるかもしれませんが、やはり成長なくして財政再建なし。そこで歳出歳入改革とか何かついちゃっているのが、今の、安倍総理も言われたように、そこはやはり限界じゃないかなというふうに私思っております。

 要するに、イギリスとかアメリカの経済政策というのを見ていると、やはり教育と研究開発というところは、これは市場が失敗するところなんですよ。あるいは市場が解決できないところなんですよ。こここそがやはり公的資金が一番必要とされているところだというふうに思いますので、そういった考え方もぜひ研究していただきたいというふうに思います。大臣。

伊吹国務大臣 ありがとうございます。

 先生がずっと今述べられたことは、確かに、教育、研究開発、それから社会保障の一部、それから安心、安全、この辺はやはり市場経済ではなかなか資源配分がうまくいかない分野ですから、それはよく心得てやります。

 そしてもう一つ、今の議論でやはり少し抜けていることというか、野党としても民主党さんに考えておいていただきたいことは、今の人的支出それから研究開発支出が経済成長に結びつくまでのタイムラグと、それから、自然増収というか、税収が上がることによって財政の国債依存率あるいはGDP比の国債残高を抑えていくというところには、もし今先生がおっしゃっているような方策をとれば、かなりタイムラグが生じてきます。その間にもし野党が、そんなこと言っているけれども財政の改善は進んでいないじゃないかということを言い出したら、この話は頓挫しちゃうんですよ。だから、そこはお互いによくベースを一致して、合理的な議論を協力して進めたいと思います。

北神委員 私も今、党の経済産業委員会の方でいろいろ議論をしております。そういった考えというのをやはり私は取りまとめていきたいというふうに思っています。

 でも、いつも大臣の話を聞いていて、野党もどうというふうに言っていますけれども、私はいつも思うのは、今回もちゃんと対案を出して、私は誇りを持ってこの対案は審議させてもらっていますが、基本的に、政権与党が権力を持って、権限もあり、そしてその裏である責任もあるわけですから、我々がまじめに対案を出すわけですから、余りにも安易に、では民主党の対案はどうなんだ、それは政権与党として、権力を持って権限と責任を持っている立場としてはそれを安易に言ってはいけない。やはり、まずは自分たちが批判を聞いて、正しければそれは直す方向でいく、それで、正しくなければそれは反論したらいいわけですから。

伊吹国務大臣 おっしゃるとおりでしょう。

 しかし同時に、マニフェストというものは、結果的に、マニフェストに書いたことについて権力の座に着けなかったからできないということであれば、マニフェストを有権者にさらしながら選挙をしていくときに、政権をとった者は常にその検証を迫られますけれども、政権をとらない者は検証を迫られないのが当たり前だというのは、これはやはり、有権者に対するマニフェストを示した限りの責任はあるということは、もう北神先生がよくおわかりの上でおっしゃっているという理解で今の御批判は受けとめます。

北神委員 それは当然、我々野党もそういった緊張感を持ってやっていかないといけないというふうに思います。

 それではちょっとわき道にそれますが、次の質問に移りたいと思います。

 これは、また批判めいたことを言いますが、小泉・竹中改革の残滓である民営化騒ぎの一環として、政策金融改革というものが今議論されている。その中で、国民生活金融公庫というものが、ほかの政策金融機関と統合されて新しい日本政策金融公庫というものができる、こういう法案がきのう衆議院の本会議でも可決されたわけでございます。

 これは財務省、財務大臣政務官にお聞きしたいというふうに思いますが、今回の法案において、官から民という発想で国民生活金融公庫の教育ローンというものがありますよね。これはかなり充実したもので、これによって学校に行けるとか入学できるとか、そういった重要な役割を果たしているものがありますが、今回のいわゆる改革の中で、この教育ローンというものの所得制限というものを低める、要するに縮減するというような話が出ております。一体どういう見直しを行われるのか、お聞きしたいというふうに思います。

椎名大臣政務官 先生から四問御通告をいただいておりまして、初めに、今回の政策金融改革において、国民生活金融公庫で担ってきた教育ローンが縮減対象となっているが、どのような見直しを行うかということが一点でございます。

 御指摘の教育資金貸し付けにつきましては、日本政策金融公庫、新公庫への移行に当たって、低所得者の資金需要に配慮しつつ所得制限を引き下げるとされております。この旨が行革推進法に定められたところでございます。

 今後、教育資金貸し付けにかかわる所得制限引き下げの検討を進めるに当たっては、見直しによって新公庫からも借り入れを受けられない層が生じてしまうことのないよう、十分考慮することが重要と考えております。

 二問目は、国民生活金融公庫の教育ローンの所得制限は一律で九百九十万円とされているが、例えば子供二人を大学に入れるとなれば、家計負担がかなり大きい。国を挙げて少子化対策が必要である中、また教育の再生を図る観点からも、見直しに当たっては、このような一律の基準とはせず、子供の人数を踏まえた基準とすべきではないかという御質問がございました。

 このことに関しましても、公庫の教育貸し付けの利用対象者からも、子供の多い家庭ほど……(北神委員「それはちょっとまだしていない」と呼ぶ)そうですか、先ほど入っていたように思いましたので。

 では、とりあえず失礼します。

北神委員 何か本会議みたいな感じでありますが、まだ質問していないので。要は、もうそこまで言っちゃったんだったらすぐそこに行きますが、国民生活金融公庫の教育ローンが縮減される、これはもちろんいろいろ見ないといけないけれども、教育再生というものを掲げている中で、これはもちろん文部科学省直接の話じゃないけれども、財務省の話ですが、やはりこれは、いわゆる教育格差がいろいろ言われている中で一つの非常に大きな役割を果たしてきている。平成十七年の一番直近の数字を見ると、利用者が大体十七万人ぐらいいるわけですよ。

 こういったものを、単に官から民という発想でこれを縮減するというような法案がきのう衆議院で可決されちゃったわけですよ。こういうものを多分内閣の中で見られていないというふうに思うんですね。要するに、財務省というか、行政改革の観点だけでこういうことが推し進められてきちゃっている。

 これはもちろん、だから絶対だめだということではないんですが、今度、その所得制限が九百九十万円というものを引き下げろという話になっていまして、これは恐らく、彼らは、国民金融公庫、これを何か改革をしないといけない、中小零細企業もあるし支援者もいるし、これはなかなかどうしたものかというときに、では、教育ローンぐらいちょっとそこにメスを入れようかというような話があって、それで結局所得制限を下げるという話になったというふうに思うんですよ、経緯としては。

 所得制限は、これはもう去年の行革推進法で決まっちゃっているんですね。ですから、これはもう逆戻りするわけにはいかないんですが、さっき大臣政務官が質問を先取りされて答えられましたが、要は、今の融資基準というのは子供の人数が全く考慮に入っていないわけですよ。子供が三人いようと一人いようと同じ条件で貸し出しを行っている。しかし、これはやはり、子供が多ければ多いほど、少子化対策の観点からいっても、教育再生の観点からいっても、教育費が多ければ多いほどその融資条件というものを緩やかにするという発想もあり得ると。

 現に、現行の制度の中でもそういった声が上がっているわけでございますから、今もう政務官が言われたように、所得制限を下げるのは法律上決まっちゃっているからしようがないけれども、ぜひともその基準の中に子供の人数というものをやはり入れてほしいということをお願いしたいというふうに思います。それで、そういうふうに検討されるという今の答弁だったということでございます。

 官房長官、どうですか。内閣全体を見渡している者として、文部科学省直接の話じゃないけれども、やはりこれは、教育格差が今広がりつつある中で非常に重要な機能だ。ですからやはり、教育ローンというものを借りたい人にとってはちゃんと借りられるような見直しというものを行ってほしいというふうに私は思うんですが、お考えはどうでしょうか。

塩崎国務大臣 今、先生御指摘のように、行革推進法でこの政策金融については定まっているわけで、そのときは政策金融のあるべき姿という観点から、やはり、官でなければできないものは官でやるけれども、民でできることは民でやってもらう、ですからできるだけ政府のやる仕事を縮小していこうということは、多分、大蔵省にもおられた先生ですから、よくわかると思います。

 しかしながら一方で、先生御指摘のように、教育が大事だと。特に所得制限の上限を下げるということになったときに、今政務官からお話があったように、民でできるんだったら民から借りればいいわけですけれども、それも借りられない、そして政府系金融からも借りられないというようなことが起きてしまったら元も子もないということになるわけですから、その政令をこれからつくらないかぬということで、現在、具体的に見直しの水準を把握するための調査をやっています。

 ですから、今、子供の人数とかいろいろ御指摘になられましたけれども、どういう実態になっていて、どういうふうな下げ方をするとどういう影響が出るのかというのを多分念頭に入れながら調査をこれ進めているところだろうと思うので、一つの政策にはその目的がある、一方で別の政策目的が害されるおそれがあるというところをどうバランスをとっていくかということで、やはりいずれの政策目的も実現しないといけないということで、そこはぎりぎりの調整をしていかなきゃいけないんじゃないかなと思っております。

北神委員 ありがとうございます。

 調査をされているというのは私も知らなかったので、ぜひともそれをやっていただいて、おっしゃるように、民間にも救われない、政府系金融機関にも救われないような人たちを救うのが一番教育再生に資するというふうに思います。まさに教育格差で、教育を受けたい、でもその財政的な力がない、そういった人たちに手を差し伸べるというのが私は極めて大事だというふうに思いますので、内閣全体でバックアップをしていただきたいというふうに要望を申し上げたいと思います。

 三つ目の論点に入りたいと思いますが、これは地教行法の話でありまして、総務大臣にもお聞きしたいんです。

 いつも聞かれて、もう答弁されるのも嫌になっておられるというふうに思いますが、少し我慢していただいて、地教行法四十九条の話で、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の要求を行うということが規定されております。これは地方自治法で認められている自治事務への国の関与の範囲内に入るかどうか、お聞きしたいと思います。

菅国務大臣 今回のこの法案の改正について、地方六団体の皆さんとかいろいろな方から私どもにいろいろな話がありました。その中の私どもの考え方は、自治事務に認められる関与の範囲内に入るかどうか、それが地方の皆さんにとっても地方分権の中で極めて大事なことでありますから、そういう意味では、今北神委員の質問のことはその中に入る、こういうものであります。

北神委員 これは、法的根拠を見てみると、地方自治法の二百四十五条の五に依拠している。ある意味では、今回の法案に規定していなくても、この是正の要求というのは地方自治法上できるわけですよね。

 ただ、少し違うのは、地方自治法の方は是正の内容というものを何も伝える必要はない、単に是正の要求をする。しかしながら、今回の地教行法というのは、その是正の内容というものを、ある意味で義務として縛りつけ、文部科学大臣に要求しているようなそんな条文になっているというふうに思います。

 これは、多分皆さんの説明では、むしろこれは文部科学省を縛っているんだ、ちゃんと是正の要求の内容を決めないといけないという説明かもしれませんが、もう時間がないのでちょっと説明させてもらいますと、でもこれは、ある意味では、例えば未履修の問題でも、単に未履修の問題を解決しなさいと是正要求をするのと、いついつまでにこのような形でこういうことに配慮しながら是正をしなさいというのと、結果としては、効果としては、地方自治体、教育委員会に対して縛りがより強くなる。この解釈でよろしいんですか。

伊吹国務大臣 ただいま総務大臣が御説明になったように、例の地方分権一括法で、国と地方との関係は、本来の自治事務とそれから法定受託事務と二つしかなくなっちゃったわけですね。ですから、自治事務の範囲の中で行われるということは、これはもう我が省も総務省も、内閣として全く同じ考えでやっているわけです。

 先生はさすがによく見ておられるとおりで、自治法による従来の是正要求だと、是正を要求いたしますけれども、どうこたえるかは自治体の自由なんですよ。しかし今回は、是正の具体的な内容を示すという、地方自治法上の是正なんだけれども、その手順というか手続的なものを示して、同時に、そのことを、教育委員を選任された自治体の首長と、そして承認をされた地方議会に通知をすることになっているわけです、その是正の具体的内容を。法案はそうなっています。

 ということは、そこまで具体的に是正の要求をした場合に、本来、地方自治の枠の中で議会がどう反応してくださるかということをまず期待をしている法案なんです。

 ですから、おっしゃっているとおりの御理解で私は正しいと思います。

北神委員 わかりました。

 そして、もう一つの地教行法の五十条、これも地方自治法上に基づいているんですが、ちょっとその整理が法制的に違う。時間がないからもうお聞きしませんが、五十条の方は、要するに関与の法定主義という考え方から、四十九条の場合は、ほっておいても是正の要求というものが地方自治法上できていたけれども、この五十条の指示、こっちの方は、ちゃんと個別の法律を設けなければその権限というものが付与されないという理解だというふうに思います。これでよろしいんでしょうか。

菅国務大臣 そのとおりです。

北神委員 となれば、今まで私も委員会でのいろいろな議論を聞いておりまして、国の関与が強まったんじゃないかというような議論があって、一回、西村委員に対して伊吹大臣が、そのようにみんなにとってもらわなければ困るんだよ、そのためにこの法律をつくるんだよというふうにおっしゃりましたが、それはあくまで認識論の話でして、では、法的に国の関与が強まったかどうか。結論を申し上げると、強まったというふうに私は思うんですよ。

 というのは、地方自治法上の関与の範囲内、これは侵していません。逸脱をしていない。しかしながら、そこで潜在的に認められていた権限というものを、今回、五十条で具現化して、文部科学省と教育委員会との関係においては国の関与というものが強化されたと、この理解でよろしいんでしょうか。

伊吹国務大臣 これは、ただいま総務大臣がお答えになったように、他の法律においても、例えば、生命に関係するような厚生労働省関係の法律にも同じように個別法にこの規定はございます。そういう意味では、一般法から特別法に移ったという意味では、先生の御理解でよろしいと思います。

北神委員 では、国の関与がやはり強まったと。私は別にそれはだめだとか言うつもりはないんですが、どうも、ずっと議論を聞いていると、なかなかそこがはっきりしていなかったので。強まったと思うんですよ。というのは、今回の改正がなされなければ、今までこの指示という権限はなかったわけですから。一般法上はもちろん潜在的にはあったわけですが、そこをある意味では政策判断で文部科学省としてやはりこれは必要だ、教育委員会に指示する必要は、場合によっては、いじめの問題とかそういうときには必要なんだということで新たに法定されたわけですから。

 要するに、地方分権法が平成十二年に成立してから今までの間は法定する必要性を感じていなかったわけですよ、文部科学省は。それを今回、いじめの問題を機に、やはりこれは場合によっては指示をしなければならないから、地方自治法上に基づいて法定をした。

 したがって、今までに比べて教育委員会に対する国の関与は明らかに強まったというふうに思いますが、どうでしょうか。

伊吹国務大臣 先ほど来総務大臣がお答えになっているように、まさに潜在的にその権限はあったということは、先生もおっしゃっているとおりなんですよ。ですから、文部科学大臣としての国の権限は明確になったということであって、国の権限がトータルとして強まったという理解には私は立っておりません。

北神委員 国の権限が強まったとは私も思いません。でも、文部科学省対教育委員会の権限は強まったというふうに思いますが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 これは強まったと考えるのか、いざとなった場合に国として持っているものが法制上明確になったと考えるのか、この法解釈の問題だと思います。

北神委員 法解釈の問題と言われると法制局が来ないといけないかもしれませんが、これは常識的に考えたら、やはり文部科学省の教育委員会に対する関与が強まった。それで、法的な議論をおいておいても、効果としてはこれは現実には非常に強まった。これは、ある意味では民主党の案もそういう考え方が入っているわけです。ですから、私は別にそれでだめだとかいうふうに申し上げるつもりはないんですが、この委員会の中には多分そういう方もいると思いますし、そこをやはりはっきりさせないと議論が進まない。大臣は、議論が進んでほしくないからそこをあいまいにされているかもしれませんけれども。

 それで、私、これを勉強している中でちょっと不思議に思ったのは、今回、地教行法の四十九条ですか、これは、要するに機会の均等というものを確保するために是正の要求をする、これは極めて例外的に、限定的に使われるという、これも大臣の答弁でもありました。

 しかし、考えてみると、この資料の一番最後のページにありますが、教育基本法の「第三章 教育行政」というものがありまして、第十六条、これも今回改正されたものでありますが、第一項の方が、国と地方公共団体の役割分担、協力の話が書いてある。それで、第二項に国のある意味では責務が規定されているわけですね、「全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。」と。

 考えてみたら、これは、国が教育の機会均等の責任と権限があるわけですね、基本法上。しかしながら、なぜ、今回の地教行法第四十九条でこんなに恐る恐る気を使いながら機会均等のために是正要求というものを考えないといけないのか。これは私、正直答えがわかりません。(伊吹国務大臣「それは簡単なことだ」と呼ぶ)ああそうなんですか。ではどうぞ。

伊吹国務大臣 それは先生、国会がお認めになった。今先生が引用された十六条の一項ですね。教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところによって行われるべきものであって、教育行政は、国と地方自治体との間の適切な役割分担及び相互の協力のもと、公正かつ適正に行わねばならないというのがまず一項にあるわけですね。ですから、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力というのをどう考えるかということです。

 ですから、二項に書かれている、国は、全体としての例えば枠組みを決めて指導要領をつくっていく。しかし、同時に地方自治体は、それを受けて、学校の設置者であり人事権者であるという今までの積み上げがあるわけでしょう。その積み上げをどういうふうに直していくか、現実のいろいろな失敗だとか何かを見ながら直していくかという作業を今回やっているわけで、恐る恐るとか何かということは全くありません。必要なことを率直にやろうとしたということです。

北神委員 いや、恐る恐るというのは、四十九条の地教行法の話をしていまして、要するに大臣も、いや、できるだけ地方自治の自浄能力を尊重したい、だから、この四十九条を発動するときには極めて限定的、例外的な場合に限るというような答弁をされているわけですよね。

 でも、その四十九条の是正要求の目的というのは、教育の機会均等を確保するためなんですよ、条文を見ると。でも、その機会均等というのは、そもそもこれは国の責任と権限なわけですよ。それがなぜ限定的に、だから要するに、機会均等を是正するというのは当たり前の国の権限と責任なわけですよ。今の大臣の説明だったら、いや、一項で国と地方公共団体が役割分担をしている……(伊吹国務大臣「教育行政」と呼ぶ)教育行政については。

 でも、それはどういうふうに役割分担しているかというと、二項と三項で分かれていると私は読むんですよ。二項で、国は全国的な機会均等と教育水準だと。三項で、地方公共団体は地域における教育の振興、その地域の実情に応じた教育に関する施策を策定する、そこに役割分担というものを規定している。そうであるならば、その機会均等というものは国の責任であり権限であり、地方公共団体のものではないと。

 でも、今までの地方分権の流れの中で教育というものは自治事務だというそういう整理をされていて、そこでややこしくなっているんですよ。これが自治事務でいいのかどうかというのは議論の余地があると思うんですね。これを整理せずに、多分、戦後のGHQが、国の関与というものをできるだけ排除したいという中で、これは私の推測ですけれども、そこで自治事務というものに入れられてしまった。ああ、そうじゃないんですか。まあ後で聞きますけれども、そういった流れの中で自治事務というものがあって、国の責任と権限というものがそこでミスマッチがあって、それで、今回わざわざこの四十九条で、国の本来の責任と権限である機会均等の確保というものを、例外的に、恐る恐る教育委員会に是正の要求をするというようなおかしな話になっているんじゃないかなと思うんですが、どうでしょうか。

伊吹国務大臣 これは、戦後の教育行政と、それから、平成十一年の地方分権一括法の改正が行われたときに初めて地方自治事務になったんです。それまでは団体委任事務でしたからね。ですから、本来はやはり国の要件であるというふうに、GHQがというんじゃなくて、むしろ従来考えていたと思うんですよ。ただし、十一年までの方向性は、是正要求権を持っていたのは当時の文部大臣だけだったんです。その他の是正要求権は一般職の中で行われていたわけです。

 だから、その整理をしたときに、これを地方自治事務にするのがいいかどうかについては、先生がおっしゃるとおり、当時の議事録を見ると、いろいろな意見が各党から出されております。だから、そこが一つのポイントであることは確かだと思いますが、多分、横にいらっしゃる石井先生は先生と全く違ったお考えを持っておられると思いますよ。

北神委員 わかります。私も不勉強なので、勉強して、また機会があればぜひ質問させていただきたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 伊吹大臣からはいろいろと問題を振られておりまして、それはそれとして、また御質問の機会もあろうかと思います。

 きょう、私は、教育職員免許法の一部改正案について御質問をいたします。

 今、教員は、二〇〇二年に定められた教育公務員特例法によって、十年たつと十年経験者研修を受けなくてはなりません。これは二〇〇二年二月の中教審答申を受けてのものでございましたが、そのときに、このようにありました。「現時点における我が国全体の資格制度や公務員制度との比較において、教員にのみ更新時に適格性を判断したり、免許状取得後に新たな知識技能を修得させるための研修を要件として課すという更新制を導入することは、なお慎重にならざるを得ない」と。更新制を導入するかわりに、新たな、教職十年を経過した教員に対する研修の構築として十年経験者研修が打ち出されました。

 平成十五年度より実施に移されておりまして、四年が経過したわけでございますが、まず、この間、これはどういうことだったのか。全体をお伺いしたいこともありますが、とりあえず、平成十七年度、何人がこの研修を受けていたのか、研修時間、あるいは校内研修、校外研修それぞれ、何時間、どのような研修内容で行われたのか、ちょっと御説明ください。

銭谷政府参考人 まず、平成十七年度の十年経験者研修の研修者、研修を受けた人の数でございますけれども、小中高等学校等で一万五千五百八十八人でございます。研修日数の平均でございますが、校内研修が十八・七日、校外研修が十七・九日ということになっております。

 校内研修でございますけれども、これは、校内において、実際に研修を受ける方が授業を行って、先輩から指導助言を受けたり、あるいは先輩の授業を見て学んだりする授業研究、あるいは教材研究が中心でございます。

 それから、校外研修は、主として夏季休業期間中に、都道府県の教育センター等におきまして、指導主事やベテランの先生を講師といたしまして、いろいろな模擬授業とか教材研究などを通じた研修を行っているというものでございます。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

石井(郁)委員 今御答弁いただきましたように、校内研修、校外研修、この日数を合わせますと、合計三十六・六日、約一カ月強になるかと思います。

 今回の免許更新制の研修で、この十年経験者研修、すなわち免許更新制にかわるものとしてこれは導入されたわけですが、その研修と、今度は本格的な更新制ということによる三十時間の講習、これが併存することになるわけですね。教員も十年前後というのは、大変忙しい、学校の中核的な存在でもあろうかというふうに思います。

 免許更新制の講習は十年度未満で行われるんですね、三十時間。これは、どういうふうになるのか、休日とか長期休暇期間中にやるのかということがありますけれども、三十時間受ける。十年を超えると経験者研修を受けるというふうになるわけで、しかも、その期間は一カ月を超えるということでございまして、そうすると、何か研修が屋上屋を重ねている、現場は混乱するのではないかというふうに思いますが、この点はいかがでございますか。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話ございましたように、免許更新制における免許状の更新講習は、改正法案の第九条の二第三項の規定によりまして、免許状を授与されて九年目から十年目までの間に受講するものでございます。一方、十年経験者研修は、教育公務員特例法の二十四条第一項の規定によりまして、公立学校の教員に正式採用された後の在職期間が十年を過ぎた相当期間の間に受講するということになっております。十年目までに行うのが更新講習でございまして、十年を過ぎて行うのが十年経験者研修ということになります。

 ただ、現実には、免許状の授与から採用に至るまでの間に数年のギャップがある方が近年では七割以上という状況になっております。つまり、すぐ採用されないで、二、三年してからいわゆる正式教員になるという方が最近は七割ぐらいだ、こういうことでございます。

 それから、更新講習と十年経験者研修は、その趣旨や目的のみならず、受講の時期も異なるわけでございます。それから、免許更新講習や十年経験者研修の校外研修につきましては、先ほど申し上げましたように、長期休業期間中の受講が基本でございますので、中堅の先生が受けるわけでございますけれども、平日の授業への影響は余りないということが言えるかと思います。

 それから、免許状の更新講習、これは十年ごとに更新が行われるわけでございますけれども、十年経験者研修は、十年過ぎたときに行われて、以後は、当然ですけれども、ないという違いもございます。

 私どもとしては、免許状更新講習それから十年経験者研修、この二つの研修については、趣旨、目的が違うということで、十年経験者研修は今後も必要だと思っておりますけれども、今後の運用状況を見ながらいろいろな工夫もあるのかなとも思っております。

石井(郁)委員 そういういろいろ、形式的というか、説明はできるかと思いますが、私は、本当に現場は大丈夫なのかなと。いずれにしても、十年前後で二度の研修という場面に当たる教員もいることは確かですよね。しかも、十年というと本当に学校の中心的なメンバーでございますし、今学校が、いじめ問題や非行、そして、とにかく学力問題ということでは本当に相当な御苦労、そしてまた深刻な問題を抱えているという中にありますと、その中心の方々が教育現場から一たん離れるという事態になるわけですよね。こういう引き離すというようなことがいいのかという問題としてはいかがですか。

 私は、こういうことは、本当に現場にどんな影響が、そして、混乱が生じないのかということをお尋ねしたのですが、その辺はいかがですか。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、十年経験者研修の校外研修も、免許更新講習につきましても、いずれも長期休業中を中心として、つまり、夏休み中を中心として行われるというものでございますので、一学期、二学期、三学期といった授業のあるときに学校運営に支障が大きく生ずるということはないと思っております。

石井(郁)委員 本当に社会状況、また時代は刻々と変わっております。今回の免許更新も、十年でリニューアルするんだということが理由として出されましたが、これは、いかにも十年というのは長過ぎる。十年一昔ですけれども、長過ぎるという感じがありますし、感じというか、こういうことが理由になるのはいかがかというふうに私は思っておりますが、これは本当に時代に合わない提案だというふうに思います。

 本当に今、教員は、日々新しいことにぶつかり、また新しいことを吸収し、そして教育実践に当たらなければいけない。そういう意味では、私は、教員の研修というのは本当に日々必要なんだというふうに思います。それを保障するのが自主研修だと思うんですね、あるいは校内研修でもあっていいと思うんですけれども。

 そのことで申しますと、教員の力量向上のかぎというのは、やはり自主研修の保障にあるというふうに思うんです。

 これは、一九六六年に採択された、ILOの、ユネスコの教員の地位に関する勧告というのが有名でございますけれども、そこではこのようにあるんですね。教員の仕事は専門職とみなされるべきである、この職業は、厳しい継続的な研究を経て獲得され持続される専門的知識及び特別な技術を教員に要求する公共的業務の一種であると。私は、これは本当にそのとおりだというふうに思うんです。だから、継続的な研究を経てというように、そういう継続的なまさに自主研修というのが保障されなければならないというふうに思います。

 ところで、質問は、文科省が昨年七月から十一月にかけて教員の勤務実態調査を行っております。その暫定集計を発表していますけれども、きょう私、配付資料にもしておりますが、小学校の場合で、通常期の授業時間、授業の準備の時間及び校内研修時間というのをちょっと言っていただけますか。

銭谷政府参考人 文部科学省が、昨年の七月から十二月まで、全国の小中学校から毎月各百八十校程度無作為抽出をして教員の勤務実態調査を行いまして、現在、十一月分までの暫定集計が終了しているところでございます。

 この暫定集計を見ますと、小学校の教諭の勤務について申し上げますと、例えば昨年の七月の状況で申し上げますと、小学校教諭は、平日の一日当たりの勤務のうち、授業をしている時間が三時間五十一分、それから授業の準備の時間が四十四分、校内研修が七分ということになってございます。これは、文字どおり一日当たりの平均でございます。

石井(郁)委員 きょうお配りしたのは、私どもの党が予算委員会の要求資料として求めたものでして、今お話しの教員勤務実態調査の暫定集計より文科省が作成していただいたものでございます。

 今御答弁いただきましたけれども、本当に、授業の準備というのは四十五分、しかも校内研修時間が七分というのは大変驚きですし、それから合計の勤務時間、これはもうずっと小中通して十時間を超えています。これは一日の平均です。それで、ここには載っていませんけれども、月の残業時間というのは九十時間と言われているんですね。だから、過労死ラインをはるかに超えている。これが教師の平均的な勤務実態でございます。

 以前、文部省の国会答弁でも、授業一時間に当たっては一時間の授業準備が必要だと。これは大体合意されているところだということがありました。そういう答弁からしても、実態は、もうはるかにそういう準備時間がないという現状だと思います。

 私は、教員の力量の向上というふうに言われるわけですから、だとしたら、今、このような多忙な状況から教員を解放することだし、教員にもっと自主的な研修、その自主研修という中身は本当にいろいろあると思うんですね、一人でやる部分もあるけれども、校内で同僚といろいろ議論し合うということも含めて、研修の時間を保障する、授業の準備時間を保障する、これが必要ではないかというふうに思いますが、この点、大臣はいかがでございますか。

伊吹国務大臣 先生からこういう御質問があるというので、私は、けさ、文部科学省の役人が書いた答弁というかメモを見ていて、余りにもそもそも論が多過ぎるので、こんなものはだめだよと言って書き直させたんです。

 実態は、先生がおっしゃっているようなことがあると思います。ただ、超過勤務が九十時間というのは、私は、そこまであるのかなと。これは訂正して、私の感覚では、それはないと思いますが。

 では、どうするのかといえば、先ほど北神先生の御質問にもありましたけれども、やはり、人数をふやしてあげるか、そうでなければ、いろいろな、生徒に向き合える以外の事務的な時間を、外部でやってくれる人にお金をつけてその仕事を頼むのか、あるいは若干のボランティア的経費を計上することによって教員OBだとか地域の方を学内へ入れてきて分担していただくのか。それからもう一つは、やはり、仕事のやり方、我々も最低限の資料作成要求にとどめねばならないし、都道府県教育委員会も市町村にとどめねばならないし、市町村もまた学校現場にとどめねばならないというようなことをあわせてやっていかなければいけない現状にあるなという認識は私は持っております。

 ですから、先ほど北神先生の御質問にもお答えしたように、私は私なりに、ひとつできるだけの努力をしてみたいと思っております。

石井(郁)委員 今大臣の御答弁からも、これはもう、一日の勤務時間、そして内容等も非常に過密だ、過重だということは言えると思うんですね。

 きのうも参考人質疑の中で勝野参考人が言われていましたけれども、やはり教師は子供と向き合っていい授業をしたいということなんだけれども、そのことができない、それに専念できない、このことが一番の悩みになっているわけです。その悩みがやがて、本当にこの教師の仕事を続けていけるだろうかということにもつながっているわけでありまして、私は、本当にこの問題の解決というのが抜本的に求められているということを述べたいと思うんです。

 その上で、もう一つの問題点は、この間の教員の病気休職者数、精神性疾患による休職者数、これは相当の数に上っております。私も時間がもうありませんので、きょう、もう一枚の配付資料でございますけれども、これを見ていただけたらわかると思いますけれども、右肩上がりで病気休職者数がふえています。十七年度は平成四年度の約倍です。精神性疾患による休職者数は四倍近くになっているわけです。

 ここには、今出ているようなストレスなどの心の病、ストレスというのは、やはり教育の本来の仕事ができないということの悩みだと思うんですよ、まあ、いろいろとあると思うんですけれども。ですから、やはり教員の職場状況というのを本当に改善しなきゃいけない、それから超過勤務の状態の改善をしなくてはいけない、このことが求められていますけれども、このことについても、大臣、いかがでございますか。短くで結構です。

伊吹国務大臣 本来、そのあたりの対処をどうするかというのは、教育委員会によってもいろいろ事情も違うでしょうし、学校現場によっても違うでしょうから、先生のおっしゃったような、結局、忙しいということがやはり一番大きな原因だということをおっしゃっておりますから、先ほど私がお答えしたような努力を、私もやらねばならないし、各教育委員会もやらねばならないし、学校現場も考えてもらわねばならない。みんなで力を合わせて、生徒に向き合える時間を少しでもとっていくということだと思います。

石井(郁)委員 もう一問だけお願いします。

 昨日でしたか、私の質問で、指導が不適切な教員の定義のことをお尋ねいたしまして、そこには精神性疾患者は含まれないということを答弁されたと思いますが、これは改めて確認できますね。短くどうぞ。

銭谷政府参考人 精神性疾患などの心身の故障によるものであって、病状が回復せず、今後も職務遂行に支障がある場合や長期休業を要する場合には、指導改善研修の対象とするのではなくて、医療的措置によって対処すべきでございまして、任命権者におきまして適切に分限処分の対象とするべきものと考えます。

石井(郁)委員 私の質問に答えていないんですよ。

 不適切教員の定義には含まれない、先日もそう答弁したと思いますけれども、別な角度からそれを答弁されているので、その定義に含まれるか含まれないか、これだけです。はっきり言って、イエスかノーかで。

銭谷政府参考人 指導が不適切な教員の定義には入りません。

石井(郁)委員 それでいいです。

 最後に、それだったら、不適切教員の定義に含まれているところがあるんですよ、いろいろ県によって。福島、大阪、六府県が入っています。これは正しくないということが言えますね。これだけ最後にお聞きします。

鈴木(恒)委員長代理 銭谷局長、短く。

銭谷政府参考人 私が承知しております限りでは、精神性疾病等が明らかな場合には、各県とも医療的措置を講ずることとして、いわゆる指導改善研修の対象とはしていないと承知をいたしております。

石井(郁)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

鈴木(恒)委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 伊吹大臣に、教員免許のことについて伺っていきたいと思います。

 例えば、国会議員年金の制度も変わりましたね。十年を超えた方については相当残り、十年に満たない方については全くなくなった。こういうような形、これは例がいいのかどうかわかりませんけれども、いろいろな制度を変えるときに、激変緩和措置であるとか経過措置的なものがよくとられます。

 今回、現職の教員に対して、教員免許を所持されている方についても、文部科学省がグループ分けをして、ここのところで更新講習を受けなさい、これに来なければだめですよ、こういう制度をとることについて、私は、少なくとも、十年というふうに決めているのであれば、十年間は一定の猶予を置くとか、そういうことを考えなかったのか、この点について説明をしていただきたい。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

銭谷政府参考人 今回の免許更新制は、国公私立を問わず、学校に在職をする教員がその時々で必要な知識、技能を確実に身につける、そして資質をリニューアルするということがねらいでございます。

 そこで、免許を取得いたしまして十年以上経過をいたしました現職の先生方につきましては、この先生方が当分の間、我が国の公教育の中核的な担い手として多数の子供の教育に当たるというわけでございますので、この先生方について今後十年なり長期にわたって更新制を導入しないということは国民の期待に沿えないものと考えて、この先生方につきまして、それぞれ生年月日に応じて更新講習を受けていただくということにしたものでございます。

保坂(展)委員 これは大臣に伺いますが、いわゆるベビーブーマー、団塊の世代の大量退職がもう既に始まっているわけですね。私が気になるのは、定年退職まであと二年とか三年とかわずかな期間を残している方が、こういう講習ということで、相当すり切れるぐらい頑張ってやってきた、かなり疲れもたまっている、あるいは家庭的に介護を抱えていて大変だとか、いろいろな事情があると思いますが、これが退職の促しになってしまうようなことはないのか。私は、あると思うんです。こういうことをきっかけに、じゃ、退職をしようかというふうに考える方がやはり幾分出てきてしまうんじゃないかな、しかし、それはどうなんだろうかということを考えてしまうんですね、教員不足ということも惹起しているわけですから。いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 教員不足という現状は、定数がどうあるかということとむしろ関連があるので、今いる人がどんどんやめるから教員不足が生じるなどということは私はないと思いますね。

 ただ、後ほど、必要であれば参考人から御説明させますが、現在、十年を超えた方については、十分の一ずつの研修を予定、十年研修を予定しているわけですから、そのことが負担になって教師をおやめになるというのは、私は、そういう考えはとりません。

 それから、一度研修を受ければ、仮に二年後に退職するとしても教員免許は一応あるわけですから、その教員免許をお使いになって、例えば、教員免許があるからというわけではないけれども、教員免許を持っているということによって非常勤のお仕事におつきになったり、あるいは、いわゆる塾の教師におなりになったりという場合の大切な要件として動くわけですから、私は先生がおっしゃっているようなことは生じないと思いますが、数字の上でもし何か御心配であれば、参考人から答えさせます。

保坂(展)委員 これは懸念として申し上げているわけであって、燃え尽きる寸前の方が相当多いということもあります。非常にオーバーワークであるということもあります。

 もう一点、ペーパーティーチャーの問題を伊吹大臣と議論したいんですね。

 これは、教員免許を持っている方、四百万人以上いらっしゃるんですかね。何十年前に取った方や、つい最近取った方までいろいろいらっしゃるでしょうけれども、教員免許を持っているという方が、今回、免許更新制だと。それは学校の中の教員の話かなと思っていたら、とりあえず教員免許を持っている人全体の話であるということですね。例外じゃないですよと。そのペーパーティーチャーも更新講習を受けてもらって、更新をしなければ、免許としてはすぐに教職に立てるものではありませんよというふうに変わるわけですよね。(伊吹国務大臣「いやいや」と呼ぶ)では、そこを答えてください。

伊吹国務大臣 今回、十年講習を受けるのは教職に立っている人たちです。ですから、ペーパーティーチャーの人たちでも、教職に立ちたいときはこの講習をお受けにならなければならないということです。

保坂(展)委員 余り認識は違っていないんですね。そういう認識なんです、私も。ただ、教員免許としては、その講習を受けない状態であれば教員免許は一たん失効する、そして、今大臣が言われるように、またやりたいのであれば講習を受けてくださいよという話ですね。

 しかし、その講習を受けるという条件として、内定というものが前提とされているというのはおかしいんじゃないかと私は思うんですね。

 つまり、教育委員会の内定を手にしている人は講習が受けられるわけですね。しかし、そもそも、特別免許状をつくったりして社会の幅広い部分から教員の人材を集めてこようというこの間の趣旨からいえば、教員免許を持っている人は、この更新制そのものについて私は疑問がありますけれども、しかし、こういう制度をつくるのであれば、内定がなくたって、これは費用の問題はあります、それは自己負担がいいのかもしれないですけれども、講習を受ければ教員としていつでも教壇に立てますよというふうにしておいた方が、幅広く有用、多彩な人材確保になるんじゃないですか。

伊吹国務大臣 今保坂先生がおっしゃったような考え方もあるでしょう。しかし、同時に、受け入れの体制の問題、経費の問題その他を考えて、現に子供と向き合う人たちにまず研修を受けてもらって進めていく、現実的にはそういうやり方もあるでしょう。だから、これは選択の問題だと思いますね。

保坂(展)委員 そうすると、大臣がおっしゃるのは、とりあえず最初は、内定が決まっている方、これから新しくなる方と、十年講習ですかね、十年目の方、ここにやっていく。それから、ずっと教員をやっていた方についても講習をやるんですね、今の答弁だと。幅広い人材を得ていくという立場からは、内定条件がないと講習を受けられずに更新ができないという状況は、将来は変えてもいいと考えていますか。

伊吹国務大臣 まず、効果を検証して、そして予算、受け入れ体制。

 それから、まあ先生と私がちょっと基本的な認識が違うのは、免許を持っている人が受ける権利があるという御主張だと思うんですよ。私どもは、学校現場で生徒に向き合ってもらっている先生には受けてもらう義務があるという立場に立っているわけです。

保坂(展)委員 そうすると、相当昔の話、あるいはつい最近の話でも、教員養成課程で教員免許というものを取った、これは終身であるというふうに思って取っているわけですよね、その人たちは。自分はすぐには教員にはならないけれども、いつかなるかもしれない、将来何かのときに役に立つかもしれないと思って教員免許を持っているわけですよね。それに対する一種の不利益変更じゃないですか。(伊吹国務大臣「いや、そんなことはない」と呼ぶ)いやいや、だから、教員免許を持ち続けていたいという人にはその道を、教育委員会の内定というふうに考えたら、今、管理職で仕事が忙しくてとてもそういうわけにいかないが、あと二年、三年たったらそういう気になるかな、そういう選択肢を残しておきたい。何せ教員免許が失効するということに対して、それは何とか有効にしたいと思う人が出てくるのも、日本は資格社会ですから、私は必ずしもそういう価値観じゃありませんけれども、しかし資格というものを大変重んじている人も多いですから、そういう意味では、そういう道を残しておいてはどうかというふうに指摘しているわけですよ、ペーパーティーチャーについて。

伊吹国務大臣 いや、だから、今の先生のお言葉をかりれば、教員になりたいと思っている人は、教員になるチャンスをつかまれたら研修をお受けになればいいわけで、何ら不利益にはなっていないと思いますね。

保坂(展)委員 私は、どうも幅広く社会全般から教員のなり手を集めていこうということとちょっと矛盾をしているのではないかと思います。後で、さらに掘り下げて議論をしたいと思います。

 きょう、ちょっとペーパーを配らせていただきましたが、学力テストの予算問題で初中局長に伺います。

 先日、石井議員には四十三億円と答弁されていたように聞いております。しかし、私への説明でわかったのは、準備段階で十八億円用意していたと。これは、合わせると六十一億円ですね。それで、何かテレビを見ていたら、七十億円なんて放送しているんですね。

 これは、どれが正しいんですか。本当は幾らなんですか。トータルで言ってください、準備段階から。

銭谷政府参考人 去る四月の二十四日に実施をいたしました平成十九年度の全国学力・学習状況調査の事業全体に係る経費は、平成十八年度予算における準備経費が二十九億二千二百万円、十九年度予算における実施経費が四十八億二百万円でございまして、合わせて七十七億二千四百万円でございます。

 それで、このうち、民間機関への委託経費は、十八年度に十七億九千九百万円、十九年度に四十三億九千七百万円、合計六十一億九千六百万円でございまして、この数字を、先日、委託経費のお尋ねがございましたので、石井先生に答弁したものでございます。

保坂(展)委員 その民間の部分に対して、ちょっと契約書の一部をお配りしていますけれども、大分変わった契約書なのかなというふうに思うんです。

 例えば、この十七条には、「甲は、必要があると認めるときは、」「委託費の全部又は一部を概算払することができる。」全部払ってしまえるよという契約ですね。次に、余ったら返せよ、こういうことも書いてありますね。

 さらに、ちょっと気になっている部分が、次のページを見ていただくと、「その他の事項」というところで、四に「甲は、乙が保有するシステム等を委託事業の適正な遂行の観点から」とありまして、このシステムを利用するときに利用料を払うというふうにちょっと読めるんですが、この点についてどういう考え方をしているんでしょうか。トータルな予算の中に入っているのか、別途、NTTデータについて、こういったプログラム、こういうものの使用に対してその都度料金を払う、こういうことになっているのかどうか。

銭谷政府参考人 二点お尋ねがあったかと思います。

 まず最初の点でございますけれども、委託契約書に記載をされている契約金というのは、これは上限額でございまして、実際の支払い金額は、契約書に記載されている契約金額を上回ることはないわけでございまして、そして、委託先に対して、今先生お話しのように、概算払いということを行うことを契約上実施いたしております。

 例えば、十八年度委託費について申し上げますと、概算払いをした上で、事業が、十八年度というと三月三十一日で終わるわけでございますので、これから現地調査を行い、事業完了報告書及び証拠書類等を十分に精査の上で最終の支払い金額は確定をするわけでございます。ですから、概算払い額が、確定をした支払い金額を超えた場合は、その委託費の返還を求めるということになります。

 それから、もう一点お尋ねありました、プラットフォーム等の利用料というのは、これは全部契約金額の中に入っております。これ以上の委託金額はございません。

保坂(展)委員 時間も余りないので、一番最後に、文部科学省が持ってこられた、NTTデータ及び、これは再委託という形で旺文社系の研究所に採点等をいろいろ頼んでいる、こういう経費ですよというのがついてきたんですね。これを見ると、研究職員一式七千百五十万円とか、非常に大ざっぱであって、何もよくわからないという経費でございます。

 伊吹大臣に、私がなぜこういうものを出して言うのかという意図だけお伝えしておきます。

 これは、まずこういった公的な契約をして、そして見積もりなりその内訳というものは、これは企業秘密にかかわる明かせない部分は幾らかあるかもしれません。しかし、おおむねは出していただくというのが筋なんですね。これについて、これ以上ないのかということを随分やりとりしたんですが、これ以上出せませんということでしたけれども、出せないんだとしたら、これしかないんだとしたら、積算できないわけですね、文部科学省は。だから、そんなわけないでしょうと言ったら、一応出てきました。

 まだ、それは細かい字で書いてありますから精査をしておりませんが、私が非常に気にしているのは、例えば、NTTデータが、知的著作物ということでプログラムあるいはいろいろなシステムを開発しますよね、今回の学力テストで。そうすると、そのNTTデータと文科省との契約でNTTデータでしか回っていかない仕組みができて、つまり、来年も再来年も、もしこれが続いていくんだとしたら、事実上、随意契約の更新また更新というようなことになってしまう危険があるのかなと思って指摘をしているわけです。

 その点について大臣の所見を。

伊吹国務大臣 御指摘はごもっともですが、この契約の内容を、少し先生も細かく見ていただいて、我が方でももう少し細かく分析をさせます。

 私が文部科学大臣に就任したときは、もうこの事業は始まっておりましたけれども、このことによって得られるデータその他の所有権は文部科学省にあるということを明確にしておけよということを指示してありますので、そのあたりがどうなっているかというのは契約書を細かく見てみないといけませんが、先生の御懸念はごもっともだと受けとめて、私もそういう指示をしたということでございます。

保坂(展)委員 これについては、契約書を見る限り、そうでもない表記があるので、私もよく読んでみます。文科省の方でも、大臣、よく検討してください。

 終わります。

保利委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 前回に引き続きまして、大学関連の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、国立大学法人の運営費交付金についてお伺いをしたいと思います。

 今後の大学のあり方に関連しまして、教育再生会議は、五月の第二次報告で国立大学法人に配分される運営費交付金の削減方針の見直しを提言する、こういうような報道があるわけでございます。その中で、教員数と学生数、これを前提とした一律的な配分ではなく、評価に基づく配分が必要であるというふうにしておりまして、研究に対して与えられる特別教育研究経費、これを初めとする交付金のあり方に対して、研究内容を評価し、それに基づいて配分する新たな仕組みを求めておるわけでございます。

 一方、財務省は、四月十七日の経済財政諮問会議で、国立大学法人への運営費の交付金、これの配分方法に競争の原理を導入するなどの大学改革案というのを提案して、これを六月に策定する骨太方針に盛り込むことを目指すというふうにしております。

 両者は、その目的におきまして、予算確保とそして予算削減という方向性は相反するように見えますが、いずれも、評価に基づくめり張りのある配分を行うべきという、この主張で軌を一にしておるわけでございます。

 この運営費交付金制度のあり方について、現場研究者の不安、こういう声も聞こえてくるわけでございますので、文部科学省としてこれらの意見に対する明確な方針を示す必要があるのではないかなというふうに考えますが、大臣、御所見はいかがでしょうか。

伊吹国務大臣 国立大学の運営補助金と私学助成費も、私は同じような立場で論じないといけないと思いますが、効率的とか評価とかということの基準が何かということは、先般来、ここで北神先生ともいろいろお話をしたように、非常に私は難しいと思うんですよ。だから、学生の数だとか教員の数だとかというのは、そういう一つの経常的な配分になっているというのは、まさにそういう理由だと思います。

 だから、事後的な評価をいろいろするのも結構だと思いますし、経済財政諮問会議がいろいろな観点からおっしゃるということも、私は、現状から見ると理解できないことではないと思うんですが、これはすべて国民の税金ですから、だから、悪平等のようなことでいいかげんに使われるということは困るんですよ。

 しかし、だからといって、効率というのは一体何だといった場合に、部外の市場の要請にこたえるものが効率であったり、経済の成長にこたえる研究開発的なものが効率であったりという評価でありますと、結局、リベラルアーツの厚みだとか、基礎研究だとか、人文科学というものに対する国家的な評価というのは非常に下がってしまうわけですね。

 だから、これは、要はバランス論になってくると思うんですが、私は、経済財政諮問会議に呼び出されて行ったときは、経済成長に資する大学のあり方ということであれば、それに資することが効率であるという考えを私が文部科学大臣をしている限りはとりませんということは申し上げました。

 それは、非常に大切な要素であるということは、一つ認めます。それは、教育基本法には、研究開発とそれから教育と社会還元という三つの目的を国会が決めているわけですから。だって、国会で議決したわけですから。だから、その中で研究開発、しかも市場と直結するような研究開発だけを取り上げて決められるというのは、国会の意思とは違いますよということを明確に申し上げてきたということです。

糸川委員 大臣、それはもうぜひ、この研究の部分というのは、研究者の不安の声というのは徐々に徐々に聞こえてきているわけですから、教育再生という中で縛ってはいけないわけですよね。だから、特に大学の研究機関というのは伸ばしていかなきゃいけないわけですから、予算を削減する方向ではなくて、評価ももちろんあるでしょうけれども、どの時点で評価をするのかというのはまだ明確になっていませんので、ぜひ大臣の方針として明確にしていただいて、大学の研究内容、こういうものもしっかりと評価をしていただきたい。

伊吹国務大臣 総論としては、先生と私とそんなに意見が違わないと思いますが、経済財政諮問会議なども、トータルを減らせということは必ずしもおっしゃってはいない、また、従来はそうだったかもわからないけれども、ことしの骨太の方針は、どうするかは、先ほど官房長官がお答えしたように、まだ何も決まっていないんですよ。

 問題は、運営交付金という形で交付をするのか、それとも競争的資金という形で交付をするのかという議論がもう一方にあるということなんです。だから、競争的資金という場合も、人文科学系も競争的資金の中に当然入らないと困りますよということを私は申し上げているわけです。つまり、RアンドDみたいなものばかりが競争的資金の対象ではありませんよと。事実、競争的資金と言われるものの中の約二五%近くは人文系なんですね。これを縮小して科学技術系のものだけふやせというわけにはいかない。

 それからもう一つは、それ以外の大学交付金、運営交付金と言われるものを減らすかどうかについては、その内容をかなり精査してもらわないと、講座が立ち行かなくなったりと。

 結局、これは地方交付税と一緒なんですよ。基準財政需要みたいなものを置きながら配っていますけれども、配ったら後は自治体の長の予算編成にゆだねられるのと同じように、大学法人の理事者の学内の予算配分にゆだねられてしまいますから、そこのところが妙なふうにいびつにならないようにということを私は常に心配しながらやりたいということです。

糸川委員 ありがとうございます。

 大臣、今、文部科学省で、予算配分を重点化して、すぐれた教育を特に支援するために、例えば、特色ある大学教育支援プログラム、それから現代的教育ニーズ取り組み支援プログラム、科学技術振興調整費、科学研究費補助金、こういうものが、幾つかの競争的資金の配分、これを行っているわけですね。同時に、各大学の教育研究基盤、これを支える運営費交付金、これが配分されておりまして、両者でこのバランスを図る取り組みを展開している、こう理解されるものであるわけです。

 これに対して、教育再生会議等の議論、これは、運営費交付金も評価に基づいて配分しようとするものでございまして、文部科学省で、基盤的経費とそれから競争的経費のバランスについて、では大臣がどのような見解を持っているのかということを一点お聞きするのと、それから、国立の大学法人を所管する文部科学省として、財務省それから教育再生会議の議論に引きずられるだけではなくて、大学の最低限の運用に必要な予算と成果に応じて配分される予算のバランスについて見解を積極的に示していく必要があるんじゃないかなというふうに感じます。この二点について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 例えば十九年度で、いわゆる国立大学法人運営交付金というのは、御承知のように一兆二千億ありますね。その他の主な競争的資金と言われるものは約三千億なんですよ。このバランスをどうするかということが一つありますが、同時に、国立大学運営交付金と言われるものの中にも、例えばきのう先生が取り上げられたような鳥取大学のいろいろな試みとか、こういうものも、運営交付金の中で措置されるものがあります。

 だから、各大学の特色に応じて配分されるものと、多くは、講座数とか学生数とか教師の数だとかというので、これは設備投資もしなければならないし、給与も払わねばならないし、もちろん自分で外部から資金を調達する能力がある大学もありますよ、あるいは学費で取っているところもありますけれども、これはみんな合わせてやるわけですよ。だから、ちょうどこの運営交付金というのは、先ほど来申し上げているように、地方財政における自主財源と交付税の関係とよく似た関係になっているわけですね。

 要は、しかし、最終的にそれをどういうふうに使っていくかというのは、一つ一つの科目を特定して、例えば一兆二千億の内数として、特別教育研究経費というのが八百四十億あるとかいう部分以外は、ほとんど、算定基準はありますけれども、大学の運営の、理事会の、大学内の予算配分権に属することになってくるわけです。ですから、そこを絞れ、絞れということになると、ちょうど自主財源のない地方自治体が困り果てているのと同じ状態になると困るので、そこだけは、私は最低限のものは確保したいという気持ちは強く持っているということです。

糸川委員 運営費交付金の話をきょうはしているわけなんですけれども、これは平成十六年度から始まった運営費交付金の削減と、そして、競争的に配分される資金の増加、これが、財政基盤の弱い大学、それから強い大学、この格差、これを拡大する方向に働いてしまうんですね。また、さらに、予算のめり張りづけ、めり張りのある予算の配分を行えば、地方の小規模な大学の経営を圧迫することになるわけです。これは、すなわち、大学間の格差の拡大、それから大学の淘汰につながるものでありまして、地域における就学機会の減少、それから地域間格差の拡大、こういうことにつながっていくのではないかなというふうに思います。政府として、このような格差拡大を助長する政策方針について、大臣はどのように思われるのか。

 それから、政府として、各大学の寄附金、委託金、そして事業収入等の自主財源の確保のための体制整備を支援する必要があるというふうに感じておりますけれども、ここの支援のところについての政府の取り組み、これについてお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 最初の御質問については、地方の大学、小規模な大学は特色が出せないんだとか、おれたちはどうもうまくいかないんだから補助に頼るんだという前提でのお話は、やはり困ると思うんですね。地方の大学であっても、きのう先生がおっしゃったように、特色を出す大学はあるんですよ。それをむしろ促進しようとしてやる余り、本来基礎的に大切なことまで切り込まれちゃ困るなというのが私の立場だということを言っているわけです。

 ですから、教育の格差を生まないように地方も努力をしてもらわないと困るんですよ、小さな大学であっても。そして、特色を出されれば、必ず大学運営交付金の中から私たちが責任を持って措置しますから、そういう大学には。

 それから同時に、外部から入ってくるお金その他については、税制上のことも考えなければならないけれども、同時に、産官学の一体感をつくり出して、自分たちの研究開発を大学外へ出していくかわりに、どういう形でその対価としての研究資金を集めてこられるのかというのは、まさに大学の能力が問われるところでもあるんですよ。

 ですから、そういう前提で御質問になっていると思いますが、私の誤解でなければいいんですけれども、地方の大学は力がないから何とかせいということになってしまうと、大学改革はやはり進みませんから。

糸川委員 大臣、私もそれは先日、鳥取の例を挙げさせていただいたわけですけれども、一生懸命頑張っている学校がある、これはいいことだと思うんですが、学んでいらっしゃる学生さんにとっては、大学がどういう方針を持っているかということまではわからないわけで、学んでいらっしゃる方々、そしてまたこれから学ぼうとしていらっしゃる方々に、何か、あなたのこれから行こうとしている学校が頑張らないから悪いというようなことにならないように、これは、しっかりと大臣の力を発揮してやっていただきたいという希望でございまして、努力しない学校だから悪いんだという形での切り捨てじゃなくて、取り組んでいただきたいなという趣旨だったわけです。

 いいです、もう余り時間がないものですから。

 最後に一問。今のに関連すると、学生の支援についてやはり質問しなきゃいけないわけで、我が国では、長引くこの不況の中、家計に占める教育費が上がってきてしまっているということが報告されております。親の経済格差が、子供の学力格差、そして子供の代での経済格差につながる。格差の拡大が、こういう連鎖の中で懸念されておるわけです。

 日本学生支援機構が行う奨学金事業では、基準を満たす希望者全員に貸与することを目的として平成十一年から有利子奨学金の抜本的拡充が行われたため、貸与人員というのは年々拡充されております。一方で、無利子貸与人員数というのはほとんどこれは変化していないわけです。

 高等教育の機会均等の観点から考えますと、無利子、有利子の奨学金の適正な規模、これは検討する必要があるのではないかなというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 無利子、有利子のバランスをどうとるかということになれば、これは、例えば、諸外国のように民間のスカラシップがある国と、日本のようにほとんどそういうものがなくて学生支援機構に頼っているところとでは事情が少し違うと思いますが、学生の立場からいえば無利子がいいに決まっているでしょう、それは。当然でしょう。

 だけれども、無利子というのは、これは国民の税金です。一方、有利子というのは、財政投融資資金ですから、これはある程度利子を付して返してもらわないと、マネーフローが回りませんから、国家として。ですから、今、最低限の、努力をして、できるだけ有利子よりも無利子がいいとは思いますけれども、それは国民負担やその他の関係から、現状が精いっぱいだということだと思うんですよ。

 だから、今後、できれば、有利子を減らし、無利子をふやしていきたい、これはもう担当の大臣としては当然のことです。財務大臣や何かの立場になればまた別のことを言うと思いますけれども。

糸川委員 大臣、ありがとうございます。

 私は別に、有利子がいけないとか無利子がいいとか、そういう話でなくて、政府として今後どういう方向に持っていきたいのか。その中で、大臣が無利子をふやしたいという意向があるということは、これは大きなことなわけですから、所管大臣として、しっかりその方向に向けていっていただきたいなと思います。

 終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次回は、来る五月七日月曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.