衆議院

メインへスキップ



第10号 平成19年5月11日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月十一日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 大島 理森君 理事 河村 建夫君

   理事 小坂 憲次君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 中山 成彬君 理事 野田 佳彦君

   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君

      赤池 誠章君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    伊藤 忠彦君

      稲田 朋美君    稲葉 大和君

      猪口 邦子君    亀岡 偉民君

      木原 誠二君    鈴木 俊一君

      とかしきなおみ君    西村 明宏君

      西本 勝子君    馳   浩君

      原田 憲治君    平口  洋君

      平田 耕一君    二田 孝治君

      馬渡 龍治君    松本 洋平君

      やまぎわ大志郎君    安井潤一郎君

      山内 康一君    若宮 健嗣君

      川内 博史君    北神 圭朗君

      田島 一成君    田嶋  要君

      高井 美穂君    西村智奈美君

      松本 大輔君    森本 哲生君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      石井 郁子君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           藤村  修君

   議員           田島 一成君

   議員           高井 美穂君

   議員           牧  義夫君

   議員           松本 大輔君

   議員           笠  浩史君

   総務大臣         菅  義偉君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     平口  洋君

  若宮 健嗣君     馬渡 龍治君

  北神 圭朗君     森本 哲生君

同日

 辞任         補欠選任

  平口  洋君     猪口 邦子君

  馬渡 龍治君     若宮 健嗣君

  森本 哲生君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は来る十六日水曜日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美でございます。

 昨年十二月に、本当にもう六十年ぶりに教育基本法が改正されました。まさに、戦後教育の大転換期というべき教育基本法の改正であったと思います。

 我が国は、昭和二十年に敗戦という未曾有の悲劇から、廃墟から立ち直って、高度経済期を経て経済大国になりました。今や日本は、世界で第二位の経済大国でございます。しかし、その豊かになった経済発展の中で忘れられてしまったものがあったのではないか。占領政策とそしてまた敗戦によって切り捨てられた、そういった日本人のよき伝統だとか日本人らしさですとか公の精神とか道徳心とか、そういったものをもう一度教育の中に取り戻す、日本の伝統や文化そしてまた歴史をとうとぶ、そういった心をもう一度取り戻すというのが私は今回の教育基本法の改正の大きな核であったと思います。

 安倍総理が目指しておられる戦後レジームからの脱却に、まさに憲法改正そしてまた教育基本法の改正がありました。そういった意味からも、戦後レジームからの脱却の中核であるこの教育基本法の改正、教育再生は、日本の再生と同義であると思っております。

 きょうは、四十分という時間をいただきまして、まず民主党案について中心的にお伺いをいたしたいと考えております。

 民主党案の提出者に、まことに僣越な質問なんですけれども、私の本当に素朴な疑問をぶつけたいと思います。

 資料一をお示しいたします。私も、教育基本法改正特別委員会の委員といたしまして、前国会そしてまた前々国会で審議に参加をいたしました。この資料一によりますと、衆議院で合計百四時間十分、参議院で合計八十六時間九分、衆参合計で百九十時間十九分という長時間の審議を経て、教育基本法は六十年ぶりに改正がされました。

 民主党も、改正教育基本法案に対して対案として日本国教育基本法という、本当にすばらしい前文を書かれた、そういったものを提出されて、そして審議をいたしました。私も、前国会、前々国会のこの場の委員会で民主党の日本国教育基本法に対して質問もいたしました。そして、その結果、今回の教育基本法が改正されたわけでございます。言いかえますと、民主党が提出された日本国教育基本法案は、前回、前々回の国会の審議の結果成立することができなくて、そして今の教育基本法が改正されたという結論が出たわけです。

 また、この委員会では、本当に六十年ぶりに改正された教育基本法の教育理念を学校現場に生かしていこうということで、教育三法を改正するという法案が政府から提出されて、審議をしているところでございます。ところが、民主党は、いわば成立もしていない、言いかえると、長時間の国会審議の中で一たん否定されてしまった日本国教育基本法というものをもう一度出されて、そしてまたそれを具体化する法案を三本も提出されているのですけれども、大変失礼な言い方ではございますが、そのこと自体が、ナンセンスというか、非生産的ではないかと私は思うわけです。

 今回民主党が提出された日本国教育基本法と、前回、前々回で提出されていた日本国教育基本法、その内容を比べますと、私は、ほとんど異なっていない、一体どこが異なっているのか、その点も含めて、どうしてまた同じものを提出されるのかお伺いいたしたいと思います。

藤村議員 稲田委員にお答えいたします。

 今の質問の中で一つちょっと、言葉として、ナンセンスという言葉、これは、意味がない、ばかげている、こういうふうな訳になりまして、国会は言論の府であります、ここで審議をしようとするわけであります。それを冒頭からナンセンスと言われて審議をしろというのは、これはちょっと行き過ぎた言葉であると思います。私、学生運動、一九七〇年安保時代の人間でありまして、当時、大学と学生との議論で、学生の方からナンセンスという言葉が飛ぶと、そこから議論が進まないんですね。ですから、その言葉は私ちょっと気になったところであります。

 今おっしゃったように、我々の法案は今の経過を経て、昨年衆議院においては、我々の計算でいうと百六時間二十七分、参考人あるいは中央公聴会、地方公聴会、それから法案審議と。法案審議は多分七十八時間二十三分ぐらいやっていますので、それなりにしっかりと審議をした結果として、民主主義の世界ですから、当然多数決によって改定教育基本法が成立したということは、我々も認めるところでございます。

 ただ、今回の免許法とか学教法とか地教行法などについて我々の考え方を対案として示すに当たっては、やはりその基本法の部分からそれを前提としてくる部分が非常に多いわけですね。この対案を今回出していることで、この委員会審議もそれなりに活発な議論、我々に対しても質問をいただきながら、いいところもあるじゃないかというお声もあるわけですが、ただその対案の前提が、現行基本法の前提でいくと、やはりちょっと矛盾が生じます。

 そういう意味では、今回いわゆる日本国教育基本法というものをもう一度出させていただいて、これは保利委員長の御配慮もありましてこの委員会に付託をいただいたというふうにも聞いておりますので、これは、議論の一つのきっかけとしては正しいやり方ではないか。我々の基本の考え方をまずお示ししておかないと、この三法が、一体どこからどういうふうにこの考え方が来るのかと言われたときに、やはりそれを引いてこないといけないと思います。

 それから、具体の変更点につきまして、基本的に、昨年の衆議院で出したものを参議院で提出いたしました折に、衆議院での議論の中で我々も相当考えさせられた部分がありましたので、一つ、前文の四段落目の、「人材の育成」と書いていたものを参議院においては実は「人間の育成」に書きかえました。それから、一条に、これは衆議院で相当議論があったものですから、我々もやはりそれはきちっと入れた方がいいということで、第一条に「男女の平等を尊重し、」というのを加えて参議院で提出いたしました。

 その案を今回衆議院で提出するに当たって、衆議院法制局のチェックの中で、ルビとか漢字あるいは平仮名の使い方などを変えたものを今回出しているというところでございます。

稲田委員 お言葉なんですけれども、今回提出された附則の二条で「教育基本法は、廃止する。」というふうにあるんですが、私はやはり、前々国会、前国会と審議をした上で教育基本法が成立して、それをすぐに、それから参議院で少し訂正されたということですけれども、それ以降、補欠選挙で構成員は少し変わりましたけれども、衆議院も参議院も構成員がほとんど変わっていない中でもう一度同じものを提出されるということは、そして一たん成立した教育基本法を廃止するということを考えて法案を提出されるとすれば、あの教育基本法改正特別委員会の設置ですとか審議ですとか、また議決というのは一体何だったのかという疑問がわくわけでございます。

 ようやく六十年ぶりに教育基本法が改正されたわけで、そして教育の憲法ともいうべき教育基本法がようやく六十年ぶりに成立をしたわけです。いわば、新たな教育の一歩を踏み出したと言えると思います。

 私も、教育基本法の質疑の中でも、民主党と自民党と、協力していいものができればいいのにということで締めくくったことを覚えているんですけれども、だとするならば、さまざまな意見の違いがあって、審議をした上で、国会審議の結果成立した教育の憲法ともいうべき今の教育基本法をもとに、派生する他の法律について対案を出されて、そして真剣に議論をして審議をするというのが立法府に身を置く者の責任だし、それが議会制民主主義である、私はそのように思っております。

 昨日の質問、審議の中で、川内委員と大臣の審議があって、私は、大臣の答弁を聞きながら、すばらしい大臣だと、こういった大臣のもとで六十年ぶりに教育基本法が改正されて三法が審議されているというのは、私は日本の将来にとって本当に感謝したい気持ちになったんです。というのは、パブリックコメントの質疑ですとかいろいろな質疑の中で大臣がおっしゃったのは、この場が、本当にこの場が、国民の意見を聞いて、私たちが本当に有権者の意見を選挙区で聞いて、ここで真剣に審議する場なんだ、こここそが国民の意見を最も反映するそういった場なんだということをおっしゃって、私は、本当にすばらしい大臣だなと心から思ったんですけれども。

 そういった意味からも、私は、前国会で成立した教育基本法を基本として対案を出していただきたかったな、このようにまず疑問を申し述べた上で、大変失礼な言い方もあったかと思いますけれども、質問に入らせていただきます。

 まず、今回の民主党案で大変不思議なことは、学校教育法に民主党の日本国教育基本法の前文の崇高な教育目標を具体化しようという改正案が出ていないところなんです。

 この点は、私も改正教育基本法の審議の中でも質問をしていたんですけれども、なぜ前文に書かれていて本文にないのか。前文には法的拘束力がなくて本文にはあるのに、どうしてその前文の民主党の大変崇高な理念が本文に出てこないのか。そして、それがまた、せっかくすばらしい前文の理念を、学校教育法という学校現場に生かす法律の中に具体化する法律をどうしてつくっていらっしゃらないのか。その点についてまずお伺いいたしたいと思います。

藤村議員 私どもも、日本国教育基本法に基づいて、それに関係するいわゆる教育関連の法律案というのは、今後順に見直していくという手続がやはり必要だと思っております。

 今回、教育基本法というのは中心的理念を定めたもの、それから、その中でやはり一番大きな、それにつながる学校教育法という改正も当然我々は視野に入れて検討を開始したところでございます。ですから、当然、前文からつながる教育の目標というのは、今度はむしろ学校教育法にそれぞれ書き込むというのは私どもも賛成でありまして、例えば、小学校において心身の発達に応じて初等普通教育を施すという目的のもとに、この目的を実現するために目標をずっと定めていく。それは、我々の基本法の前文、お褒めをいただいておりますが、そこから連なるものであると考えております。

 ただ、実は、学校教育法というのがやはり一番大きな教育の法律、具体的な法律でありますので、我々、それを変える、これは安倍総理もおっしゃる戦後レジームの転換というとらえ方で言ってもいいんですが、学校教育制度、つまり六・三・三・四という学制改革、このことも今や視野に入れて、まさに戦後レジームというものからの脱却を考えるならばそういう大改正が必要だと考えております。今回我々は、中教審などという巨大シンクタンクもない、政府もない、そういう中では、学制改革も視野に入れた制度改革を現在検討しているところでありますが、時間的には間に合わなかったというのが正直なところであります。

稲田委員 民主党案の前文の、美しいものを美しいと感ずる心ですとか、日本を愛する心を涵養する、祖先を敬い、子孫に思いをいたす、伝統、文化、芸術をとうとぶというのは、本当にすばらしい、美しい文言でございまして、前総理である小泉総理も、なかなかいいというふうに褒めていらっしゃったと思います。また、そういった考え方は、実は、政府が提出した改正教育基本法の目標とも重なるものでございます。

 そういった意味からしますと、今回政府が提出しております学校教育法の中に、教育の目標についていろいろと、改正教育基本法に基づいた、規範意識ですとか公共の精神ですとか、生命、自然を尊重する精神ですとか、伝統、文化を尊重するとか、そういった共通する目標を入れたわけですけれども、その改正については民主党も賛成である、このようにお伺いしてよろしいでしょうか。

藤村議員 今回の政府提出の学教法の義務教育の目標ということで、改定教育基本法の二条から連なるものというとらえ方でこのように書かれていることは十分理解できます。

 ただ、私自身は、一読して本当に、違和感を感じない、いいことばかりが書いてあるということはそのとおりでありますが、(一)から(三)で、語尾が、「態度を養う」という言葉がそれぞれ四カ所ぐらい出てくるんですね。この「態度を養う」というのは、昨年種々議論があったように、本当に態度を養うでいいんだろうかということはやはり熟考すべき問題だと思いますし、我々は、先ほど申しましたように、私どもの前文から連なる、それぞれの学校種によってつくるかあるいは義務教育を一くくりにするかなど、今後の検討課題である、こういうことでございます。

稲田委員 その点については、まさに共通の認識でございます。

 次に、教育予算のことについてお伺いをいたしたいと思います。

 民主党は、教育予算を拡充せよということをおっしゃっておられまして、そして、公教育の財政支出はGDP比率で先進国最低だ、そのことが原因で公立学校の教育力が低下していて教育の格差が生まれている、このようにおっしゃるわけでございますけれども、私は、教育というのはお金をかければいいというものでもないと思うわけです。

 今回の教育基本法の改正は、戦後六十年の経済発展の中で失われてきたものを取り戻すということで、いわば拝金主義の対極にあるような、そういう考え方でございます。また、歴史を考えましても、吉田松陰の松下村塾でも、そして適塾でも私塾なわけで、私塾なんというのは全然お金もかからないわけで、お金をかければ教育がよくなるというのは、私はちょっと違和感を覚えるわけでございます。

 GDP比で教育予算を考えるということなんですけれども、社会保障とか、何でもそうなんですが、GDP比ですべてを考えるという考え方についても、私は大変違和感を感じるわけです。大体、日本はGDPが大きいんです。また、小さな政府なんです。小さな政府の中で、小さな政府か大きな政府かということも無視してGDP比で教育予算を考えたりするということについては、私はいかがなものかと思います。

 また、GDPということを言うのであれば、日本はGDP比で一四九%もの債務を抱えている債務大国、先進国で、追随を許さないような債務大国でございます。こういったことを全く無視して、GDP比で議論するのはいかがなものかと思います。

 もちろん、教育再生について、予算をつぎ込むということは、それが重要なことは私もわかっているんですけれども、それは将来の我が国を担っていく子供たちをどう育てるか、子供たちのためにということであるとすれば、将来の子供たちに債務のツケを回すということもやはり考えないといけないということを私は思います。

 そういう意味で、民主党提案者にまずお伺いいたしますけれども、GDP比で教育予算を考えるということの意味、それをお伺いいたします。

藤村議員 昨年の五月二十六日にも稲田委員から今の趣旨と同じような質問をいただいて、そのとき稲田委員はやはり、でも教育にはお金をかけないといけないということはしっかりとおっしゃっていただいて、非常に賛同するところでございます。

 非常に身近なことでいえば、一家の家庭の家計がいいところはやはり教育にもお金をかけて、いい教育がある程度受けられという、これはよく言われる話であります。それと同様に、国のGDP、国内総生産というもの、それをなし遂げているのは人であります。企業は人なりというとおりでもあります。そういう意味で、その人が、きょうまでいい教育を受けられたことによって人が発展し、そしてまさにGDPを伸ばしてきたというのも事実でございますから、人に、教育にお金をかけるということとGDPとは、やはり十分に関連があると思います。

 また、我々は基本法十九条二項において、「国内総生産に対する教育に関する国の財政支出の比率を指標として、教育に関する国の予算の確保及び充実の目標が盛り込まれるものとする。」としておりますのは、つまり、指標が必要ではないか。今、指標というのは、ことし幾ら、何%ということよりはむしろ、十年前こうであった、経済がこれだけ大きくなってきた、でもちゃんと教育費もそれに伴って比率は変わっていないというのは、ふやしてきたということになりますよね。

 これはつまり、一つは時間軸で比較ができるということ。もう一つは空間軸で、先進諸国はどうなのかというときに、OECD平均がGDPで今四・七%ぐらいと言われております。日本は今三・一%だと。さっき経済大国のことをおっしゃいましたが、アメリカでいうと五%ですから、やはり日本は当面アメリカに何とか追いつきたいという、その指標として必要ではないか。日本は今三・一%であります。

 ですから、これはあくまで指標という考え方であって、ではこれをどのぐらいにするのか、これは、今おっしゃったような財政の問題も十分に勘案しながら、国会での御意見を聞いて検討することが必要であると思います。

稲田委員 官房長官にお伺いいたしますけれども、財政再建も安倍政権の非常に重要な課題だと思います。この財政再建と教育再生、教育予算の問題に関連して、どのように取り組んでいくかについてお伺いいたしたいと思います。

塩崎国務大臣 先生おっしゃるように、安倍内閣、教育再生が極めて重要な、最重要課題だということは申し上げているわけでございます。だからこそ教育再生会議もつくり、そしてまた、今回のように、大変なスピードを持って教育基本法に続いて三法を御議論いただいている、こういうことでございます。

 しかし一方で、長期債務残高が国、地方合わせてGDPの一・五倍にも達しているというこの問題をどうするのかということについても、安倍内閣としても正面から取り組んで財政再建も図らなきゃいけないということで、昨年、骨太二〇〇六という中で歳入歳出一体改革というのをもう既に明示して、これを安倍内閣としても踏襲しながら、その中でどうやって教育を再生していくのかということを今いろいろな場で議論しているわけでございます。

 いろいろな議論を今この場でもいただいておりますけれども、やはり増額ありきが先に来る議論はいかがなものかなという感じがいたしております。何で今このような問題が教育の分野で起きてしまっているのか、そして真に教育の質を高めるための予算というのは一体どういうものなのかということで、やはり中身を精査しながら、何でこういう状況になっているのかというところのきっちりした分析を持って、与えられた財政の状況の中で最大限の配慮をしながら、教育の再生に当たるというのが安倍内閣としての基本ではないのかなというふうに思っているわけであります。

 どこかだけ突出して支出をふやすというわけにはなかなかまいりませんが、教育の再生の問題については、財政再建とセットでやはり考えていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。

稲田委員 伊吹大臣にお伺いいたします。

 私も、教育予算について一定のGDP比を決めてこれを政府として数値目標にするというのは、ちょっと乱暴ではないかと思っているわけです。

 しかし一方で、今官房長官もおっしゃいましたけれども、何というんですか、予算についてもめり張りをつけるということがある。そして、予算をかけている教育の内容についても精査する。例えば、教員の給与について、頑張っている教員とか能力の非常に高い教員について優遇をするとか上乗せをする、反対に、そうではない教員については優遇は少し控えるとか、今の教育予算のどこに無駄があって、そして質を高めるためにはどういったところに予算をつけたらいいのかということも重要なのではないかと思っているんですが、そういった教育予算についてのめり張りについて、大臣の御見解をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 先ほど来、民主党の提出者と先生の間で御議論がありましたように、日本は人口に比例してGDPの非常に大きな国ですよね。であるからこそ、世界第二位の経済大国になったわけです。それから、若年層が非常に、残念なことに、少子化で少なくなってきておりますね。それから私学のウエートが圧倒的に高いということを考えますと、日本人が教育に使っているお金という感覚と公的な教育費のGDP比率というのは少し違うと思うんですね。ですから、それを全体として考えておかないと、教育力というのははかれない。

 もちろん、崇高な魂を持って教育をやれば、萩に行ってわかるように、松下村塾の建物の中でも立派な日本人が出てきたということは確かなんですが、しかし、やはりある程度の待遇をしっかりとして、一般の方々より世間的に尊敬も受け、そして先生自身もみずからを磨いていただくということにならないと、やはりいい子供は育てられないと私は思います。

 ですから、めり張りということでいえば、私は大きく言って三点あると思うんですが、一つは、今の学校現場の状況を見ると、家庭が残念ながら実質的に崩壊をして、地域社会が機能を非常に低下させているという状況で、ほとんどの重荷は学校の先生に寄せられている。それから、これだけメディア社会になりますから、次々と調査や資料の提出を要求されるわけでしょうから、我々も心しなければならないんですけれども、子供と向き合う時間が非常に少ないですね。ですから、少しその教師の重荷を、負担を下げてあげるためには、教師の数をふやすのか、職員の数をふやすのか、あるいは事務的なものを外部へ出すのか、ボランティア的な人に、お金を少しつけて、中へ入ってきていただくのか、いずれにしろ、そのあたりの人員に関するお金が少し要る。

 それから、地方公務員よりずっと優遇して教師を確保してきたんですが、今や、教師の勤務実態を見ると、かなり超過勤務が過重になっている。それだけの超過勤務をもらっておられる地方公務員と対比した場合に果たして優遇されておるのかということは、しっかりと見きわめないといかぬと思いますね。それで、トータルの予算を大体考えた上で、努力をした教師とそうじゃない人との、先生も先ほどから非常に言葉を選んで質問しておられるなと思ったのは、優遇するという言葉と、優遇の度合いを抑えるという表現を使っておられますね、やはりそういう配慮をしながら教師の予算の体系をもう一度見直す。この二点が初等中等教育の大きなポイントだと思います。

 あと一つは、大学ですね。今、大学の運営交付金とか私学の助成費を減らして、すぐにもうけ仕事に結びつく研究開発の金をふやせという流れがありますが、本当は、どんなにメスさばきが立派な医師が出てきたり、立派なお薬を投与する先生がいたとしても、患者に心の平安を与えない医師というのはやはりだめだと思うんですね。どんなに法律の専門家であっても、源氏物語も読まずに、男女の機微がわからずに離婚調停されたら困っちゃうという問題がやはりあるんですよ。

 ですから、リベラルアーツというのか、歴史だとか古典だとか、こういうものの厚みをある程度持っている、それは必ずしももうけ仕事には直結しないけれども、もうけを超える価値を人間社会に与えていく、こういう知識人を輩出するというのが私はやはり大学の本来の役割の一つだと思うんです。だから、大学の運営交付金をどうするかということは、よく考えなければならない。

 この三点を安倍内閣としてどう判断をしながら政策のプライオリティーを考えていくか。同時に、おっしゃっている財政再建の問題もありますし、社会保障の問題もあります。とかく議論は、一部だけをとって、いいことだけを言って変える、そうすると、変えるとそこはよくなるんだけれども、必ず副作用が出てくるわけですね。だから、行政を預かっている者は、効果と副作用を必ず考えながら予算のプライオリティーを決め、そして改革を進めていかなければならない、そんなふうに考えております。

稲田委員 大変勉強になりました。私も、源氏物語を読まなければならないという気持ちになったところでございます。

 総務大臣にお伺いをいたしますが、資料二、三で教材費の措置率などを出しておりますけれども、地方がきちんと教育にお金を使っているかどうかということを担保するということも重要なのではないかと思うわけですけれども、教材費などを見ますと、国から地方への財源付与があるにもかかわらず、実際にはその目的に使っていない場合もある。福井なども、図書費も教材費も余り使っていないんだなということがこれでわかったんですが、使っていないけれども、しかしふるさと福井、選挙区である福井は非常に公教育はいいんです。ですから、それはどういう関係にあるのかななどと思いながら、この表も見たんです。

 各自治体が教育支出をきちんとその目的に使っているかどうかということを担保する取り組みも必要なのではないかと思いますが、その点、総務大臣の意見をお伺いいたしたいと思います。

菅国務大臣 教材費だとか図書購入費、これについては、昭和六十年度の一般財源化以降、毎年度、文部科学省と私どもの間で協議を行って、所要の経費を地方財政計画に計上して、地方交付税の基準財政需要額に算入をいたしております。

 さらに、地方交付税法において、国は交付税の使途を制限してはならない、こういうことに実はなっておりまして、その使途については、それぞれの地方公共団体にゆだねられているところであります。

 しかしながら、地方公共団体との会合の席においては、私どもは必ず、教材費、図書購入費の経費について、地方交付税措置の内容を周知してきておるわけでありますから、さらにこうしたことを徹底していきたいというふうに考えております。

稲田委員 地方自治、地方分権は必要ですし、交付税の役割からすればそういうこともわかるんですけれども、教育に使われるべき予算は、やはりきちんと地方公共団体で教育に使っていただきたいな、このように考えております。

 次に、国と地方の関係についてお伺いをいたしたいと思います。

 民主党案では、国はいざというときの国の責任を果たすということをおっしゃっております。また、民主党案は、教育委員会を廃止するという非常に大胆な案を出されて、私も本当にびっくりいたしました、確かに、戦後レジームからの脱却という意味かなと。

 地方自治、地方分権という言葉がずっと先歩きするんですけれども、地方自治とか地方分権というのは、それ自体に普遍的な価値があるというものでもなくて、私も二十五年前に憲法の教科書で地方自治は民主主義の学校というふうに習いましたけれども、例えば基本的人権の尊重とか国民主権ですとか、そういった普遍的な価値とはまた若干ニュアンスが違っていて、地方分権になじむものとなじまないものがあって、例えば外交ですとか国防ですとか教育というのは国がきちんと枠組みを決めて、しかし、教育というのは非常に身近なもので、学校現場ですとか地域ですとか家庭ですとか、そういう身近なものなので、国が大枠を決めた中で、やはり地方の弾力性というか、そういうものを認めていくという方向が必要であると思っております。

 そういった意味で、私は、民主党が教育委員会を廃止するというのはすごいなと思ったんです、実は。しかし、思いましたけれども、その後が悪いんです。教育委員会を廃止して、それを首長に渡すということになりますと、全く国の教育方針とはかけ離れて、首長の政治理念ですとか政治信条によって、全くてんでんばらばらな教育がなされるのではないかというふうに危惧をいたしております。

 まず、大臣にお伺いをいたしたいんですが、そういう私の問題意識を踏まえて、教育委員会というものを、民主党とは違って、今回も維持をするということなんですが、その教育委員会の意義についてお伺いをいたしたいと思います。

伊吹国務大臣 昨日、民主党の北神先生が、戦後レジームからの脱却ということ、そしてその持つ政治的意味、それからそれを法制化してきた場合の地方の事務のあり方について、大変整理をされたいい御質問をいただいて、私自身も随分勉強になりました。

 ですから、極端なことを言いますと、戦前のように、教育権を国が持って、国が教育をすべて扱う。だから、例えば民主党でも一部の方は、私たちが教えていただいた西岡先生などは、義務教育は、教員は国家公務員にしろという一つの考えがあります。それから、アメリカのように、あれはユナイテッドステーツですから、州ごとに教育権を渡してしまっているという両極端があるんですよ。日本の場合は両方が相協力してということですが、民主党の案からすると、美しい前文には、教育権は国にあると書いてあるわけです。しかし同時に、それを実行する教育実施権は知事にゆだねると。そして、きのう、藤村提案者と北神先生との間に、やはり、それが地方自治事務なのか、国が法的に受託をお願いするのかというところで、ちょっと党内調整が必要なのかなと思うような御意見がございました。

 ですから、私は、今まで地方の首長の意見で、率直に言って、いろいろそういう意見が出てくる首長がおられるんじゃないかなという危惧をしましたけれども、それが担保されているのは、合議制の、議会承認を得る教育委員会があるからだというふうに私は評価をして、そして、これを前提にしながら、万一の場合に、地方自治事務の範囲内で国が関与をできるようにお願いしたいというのが今回の法案でございます。

稲田委員 ありがとうございます。

 昨年のいじめ自殺とか、そして未履修の問題などを見ておりますと、教育委員会が必ずしもその役目を果たしていない、それが今回の地教行法の四十九条、五十条の改正になって、こういった是正とか指示を文部大臣の方からできるということは、私は、一つの国の責任のあり方であって、こういった条文をつくらない民主党案は、どうやって国の責任を果たすのかということが非常に疑問なんですが、質問の時間も終わりましたので、最後に一言だけ。

 本当にすばらしい教育基本法ができて、教育三法も審議をされておりますけれども、単に法律ができたり、そして学校がよくなるというだけではなくて、私はやはり家庭教育というのが非常に重要であって、私自身も、国会では立派なことを言っているけれども、家では子供のしつけはどうなっているんだと言われないように、思春期の子供二人を育てている母親といたしまして、家の中でも規範意識ですとか、しつけですとか、食育ですとか、そういった問題をきちんと教育してまいりたいと思っております。

 本日は、どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、井澤京子君。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。

 まずは、伊吹大臣、菅大臣、連日長時間にわたります委員会質疑、大変お疲れさまでございます。私も、二十分という貴重な時間をいただきましたので、早速始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、現在、教育再生会議の委員でもあります京都市の教育委員会の門川大作委員長が昨年五月三十日の衆議院教育基本法に関する特別委員会におきまして、参考人としてこんな意見陳述をされていらっしゃいました。その中で、かまど金の精神ということをおっしゃいました。

 これは、明治維新で都の地位を失った京都が大変な危機を迎えたときに、先人は、子供さえしっかり育てば未来は明るいということで、子供のいない家庭も含めてかまどのある家庭が子供の教育にお金を出し合い、その資金で明治二年に日本初の六十四の地域制小学校を創設、運営されたことを称する言葉でございます。学校、地域、家庭の連携や、地域の子供は地域で育てるといった公の精神をいうものです。明治維新という変革期の中で、先人たちの高い志は現代においても引き継いでいかなければならないと思います。このかまど金の精神を改めて私たちも見習う必要があると思います。

 このようなことから、京都市では、三十人学級の実施と子供たちのための京都式少人数教育を積極的に推進したり、また、保護者、地域が学校運営に参画する学校運営協議会を設置するなどして、かなり先進的なさまざまな取り組みを行っておられます。

 きょうの質問は、私と同じ京都御出身の伊吹大臣に、京都の教育の取り組みを紹介しながら、御質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、学校教育法改正案についてお伺いいたします。

 最近は、特に子供たちの規範意識の低下が指摘され、道徳教育の充実は大きな課題であると思います。今回の学校教育法の改正案の義務教育の目標においても、規範意識や公共の精神などが新たに規定されていることは、現場の取り組みを推進していくためにも極めて重要なことであると思います。

 京都市では、道徳教育について市民も一緒に取り組もうということで、元文化庁長官であります河合隼雄先生が座長になられ、京都市道徳教育振興市民会議が平成十三年に発足され、丸三年にわたり議論を行い、何と二万人を超える市民の方々からアンケートをとり、家庭、地域、教育での取り組みを盛り込んだ「しなやかな道徳教育を!」というメッセージを取りまとめられ、現在、家庭、地域、学校が一体となった取り組みを推進されております。これは、スローガンにとどまらずに、具体的な方法論に基づいた取り組み、実践事例だと思います。

 私が今取り組んでおりますことで、いじめ、不登校、引きこもりなどの家庭の問題から立ち直った保護者などで組織する、家庭からの教育再興プロジェクトというのが四月八日に設立されました。私はその発起人の一人として、教育関係者の方々や全国の保護者の方々からいろいろとお話を伺いました。子供の教育をすべて学校に任せる教育姿勢、学校教育に対する過剰干渉、親の愛情のかけ違いなど、あらゆる問題から、教育の根幹は家庭にあるということを直接肌で感じております。私は、家庭や地域との連携が学校における子供たちの道徳教育を充実する上で欠かせない非常に重要なことであると思います。

 京都の取り組みへの感想も含め、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

伊吹国務大臣 ちょっと、地元同士で余りやってもいけませんのですが。

 この前の改正教育基本法の第二条の教育の目的には、先生がおっしゃったように道徳心を養うということが書いてございまして、そして十三条に、学校、家庭、地域住民、相互の連携協力のもとにという条項がございますから、今御指摘になったことは大変重要なことだと思います。

 京都の場合は、確かに教育委員と教育長に人を得たということもあります。しかし同時に、京都は爆撃を受けなかったので、非常に古いおうちがたくさん残っています。それから、伝統産業が多うございますので、家業の継承というのがあって、三世代の御家庭が非常に多い地域です。ですから、どちらかというと地域社会が残っていて、家庭がかなり残っておりますから、先生がおっしゃった崇高なかまど金の精神とか、地域、家庭、学校の連携という気持ちは大切にしなければならないんですが、京都のような、ある意味では特殊な、爆撃も受けずに、伝統産業が多く、家業の継承が多い地域をすべてのところに当てはめて、できていないのはけしからぬじゃないかということはちょっとなかなか難しい。ですから、そういう現実を踏まえながら、京都のいいところをどういうふうに定着させていくか、これが行政を預かっている者のやり方だと思います。

井澤委員 今、京都ということで発言がありましたように、京都のような伝統と文化を生かした教育づくりがぜひできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、学校教育法関連で、幼稚園に関してお伺いしたいと思います。

 引き続きまた京都市の話になりますが、ことし二月に「子どもを共に育む京都市民憲章」というのを定めました。この制定の経緯は、京都の町というのは、地蔵盆や各地域のお祭り、行事に象徴されるように、子供を大切にするという文化を長く持ち続けています。全国に先駆けて小学校を創設し、また、地域住民が参画して地域社会を基盤にした子育てと人づくりを担う自治の精神から、子供をはぐくむ喜びを感じ、親も育ち学べる取り組みを進めること、また、子供を見守り、人と人が支え合う地域のつながりを広げることなどをうたっているという憲章内容になっています。

 今までの審議の中でも、家庭や地域の教育力の低下がたびたび指摘されております。家庭や地域の教育力の再生を図る上でも、子供がまず最初に学び、友達をつくるという幼稚園に対する期待が高まっているように思います。

 そこで、今回の法案ではどのような改正を行い、幼稚園教育について今後どのように取り組まれるのか、文部科学大臣の御見解をお伺いいたします。

伊吹国務大臣 先ほど来から議論になっておりますように、家庭や地域社会の教育力が、率直に言うと、社会の変遷で非常に落ちてきている。学校に、その重荷が教師の肩にほとんどかかっちゃっている。それを、現実を踏まえながら、少し学校の先生の重荷を地域と家庭でもう一度担い直そうじゃないかという流れが一番最初に先生がおっしゃった流れですね。

 そして同時に、教育基本法の精神に今回新たに書き加えたように、本来、教育の原点は、おっしゃっているとおり、やはり家庭なんですよ。ところが、家庭が核家族化し、同時に共働きということになりますから、一〇〇%昔のようなしつけ力を発揮できないという状況のときに、幼児期をどこで受け取るかということになると、やはり幼稚園、保育園ということになると思います。

 ですから、学校教育法は、これは文部科学省が所管しておりますけれども、必ずしも文部科学省所管のものだけを対象にしたものではないんです。全日本の広い意味での教育の基本法ですから、保育園も加えて、あるいは地域社会の御協力も得て、幼児期に家庭が果たしていた、地域社会が果たしていた役割を幼稚園が果たしてくださる。また、小学校の授業が終わった後、帰る場所のない子供たちには放課後子どもプランという形で、これも幼稚園、保育園あるいは児童館が地域と協力してその役割を果たす。

 ですから、古きよき時代に返れといったって現実には返れない中で、そのところをどう補っていくかというのが今先生の御提案でしょうから、当然その方向で我々も今行政を進めているということです。

井澤委員 ありがとうございました。

 次に移ります。

 今回の教育公務員特例法についてでございますが、指導が不適切な教員の人事管理の厳格化を図るとされています。そのような中でも、また京都の話にもなりますが、昨年の二月に、京都市の教員の評価に関する調査研究協力者会議という報告がありました。その中で、教員評価の改善充実というのを図られた報告があります。その結果、京都市では、教員評価の取り組みがきちんと実施されるように管理職が個々の教員の状況を正確に把握し、きめ細かい指導を行うことができるようになったという内容です。これに加えまして、現場をよく知っている校長が、指導が不適切であると疑われる教員を早期に把握して指導を行うことが可能になりました。速やかに適切な対処、指導を行うことが可能になったということです。

 指導が適切な教員への迅速な対応が教員の評価には有効になると思われます。民間企業の人事管理ではありませんが、今後どのような人事評価が必要なのか、評価後の指導、育成についても大臣にお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 現場の教職員の任免は、基本的には教育委員会にゆだねられているわけですし、その評定権は校長先生にあります。したがって、ここに文部科学大臣が介入するということはございません。しかし、大きな枠組みとしては、再生会議には、研修をもってだめ教師を排除するという御意見もあったようですが、私はやはりこれは分限でやるべきものであって、研修というのは教師の質を高めるためのもの、そして結果的に何度研修をやっても研修の受講ができない場合は分限の一つの理由になるということで、基本的にはやはり現場の校長先生の評定を大切にしながら、教育委員会がどのような人事管理をやっていくか。これは、今お願いしている法律が通らなくてもできるんですよ、やろうと思えば。それはしかし、人を得なかったり。なかなかやはり大変ですよね、自分が一緒に仕事をしている人を分限にかけて免職するというのは。だから、勇気がないというのか、子供がその被害者になっている。京都は割にその辺は御指摘のようにしっかりやったということです。ですから、今回そういうことがやりやすいように促す条項を教育公務員特例のところに入れたというふうに御理解いただいたらいいと思います。

井澤委員 今御指摘がありましたように、現場を知っている校長先生と教育委員会がしっかりと取り組んで人事管理をしていただきたいと思います。

 時間が限られておりますので、最後の質問に移ります。

 教育公務員特例関係についてもう一問お伺いいたします。先ほども申し上げましたが、問題のある教員に対して厳格に対処するということは当然であり、最近よく教員による犯罪などもニュースになっているようでございます。しかし、そういった教員というのはほんのごく一部であり、大半の先生方は、金八先生ではありませんが、日々子供たちのことを考え、子供たちと向かい合い、黙々と努力をし、一生懸命頑張っておられるわけです。私は、こうした先生方にももっと光を当てるべきではないかと常日ごろから感じております。

 文部科学省では、昨年度初めて文部科学大臣表彰を行ったと伺っておりますが、京都市でも平成十四年度から全国に先駆けて、熱意あふれる教育活動を実践されている教員を、年齢、経験年数、校務分掌等の要件にとらわれずに、若手からベテランまで幅広く表彰を行っています。何とその数は五百名から六百名という数に達し、教員のさらなる意欲を喚起し、人材育成を図っておられます。やはり、教育の現場はもちろん、授業を受ける子供の立場に立って、今回の改正により前向きな教育行政というものをもっと考えるべきではないかと思います。

 そこで、国においても、総務省の頑張る地方応援プログラムではありませんが、頑張る先生応援プログラムなど、優秀な教員を応援するための取り組みをより一層推進するべきではないかと思います。伊吹大臣にお考えをお伺いいたします。

伊吹国務大臣 先生が今おっしゃっていただいたように、多くの教員は本当にまじめにやっておられると私は思います。

 ですから、今お話があった教員の表彰、それから十年三十時間という研修の受講を優秀教員については免除するというやり方、それから、何より、先ほど稲田先生の御質問にもありましたように、めり張りをつけた給与のあり方、こういうことを中心に、やはり先生が社会的に尊敬を受ける存在であるようにつくり上げていかねばならないし、また先生方も、それにこたえていただくように、みずからを磨いていただかなければならないと思っております。

井澤委員 ありがとうございました。

 子供たちから尊敬を受けるあこがれの先生が一人でも多く生まれることを、私も期待しているところでございます。

 きょうは、京都市の教育行政に対する取り組みを中心にして質問をさせていただきました。この教育再生の効果が出てくるのは、数十年先ということになると思います。まず教育の現場が一新されて、必要な予算を十分につけていただき、今回の教育法の改正が日本の未来を担う子供たちのための改正であるということが子供たちにも伝わるように、この議論を子供たちにも伝えたいという思いを含んで、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

保利委員長 本日午前十一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時二分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 前回質問させていただいたときに、免許の更新制について伺うつもりでおりましたが、時間切れになってしまいました。きょうは、その免許更新制についてから伺っていきたいと思います。

 学校現場に多くの問題、課題があるということは私も承知をしておりますけれども、これまでも免許の更新制は大変多くの時間を使って議論されてきましたが、改めて考えますのは、学校現場の課題や問題点を改善する、そのための方策として第一に免許の更新制の導入が発案されたところに私はいささか違和感を覚えるところでございます。

 実際に、私も地域で保護者の皆さんや子供さんたちにいろいろ話を聞くことがあります。中にはやはり、少し、こういった先生からは担任に持たれたくないというような声も一部聞かれますけれども、実際に多くの子供たち、そしてまた保護者の皆さんが望んでいるのは、むしろ学校の先生なりと向き合う時間をたくさん欲しいということではないかと思っておるんです。

 ですので、この免許の更新制というのは、多くの子供や保護者の皆さんのそういった思いからいたしますと、本当に急いで導入すべきことなのかというふうに考えます。この制度の導入については、しっかりとした実証的な検証、そしてまた議論が必要だというふうに考えております。

 先日、参考人の方から、この委員室にお越しいただいて、この免許の更新制についていろいろ御意見を開陳していただきました。大変興味深い御意見もいろいろありましたけれども、現場の先生方が非常に忙しくて、また、ここのところ、いわゆる教育改革が矢継ぎ早に進んでいっているために現場の先生がついていけない、そういう声があったと承知をしております。参考人の方も紹介されておられましたけれども、約八五%の小中学校において、教育改革が余りに速過ぎるので現場がついていけないと感じている、こういうふうな紹介もありました。

 実際に、教育現場の改革というのは、ほかでもない、現場を担当する人たちの実践によってその成否というのが左右されるわけでありますから、現場の納得を得ながら進めていくことが、これが肝要だというふうに思っておりますけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 まず免許更新制でございますけれども、このねらいは、教員が最新の専門知識や指導技術を身につけるとともに、自信と誇りを持って教壇に立って、社会の尊敬と信頼を得ていくために重要な意義を持つ制度としていきたいというふうに思っているところでございます。

 ただいま、現場の先生方は大変お忙しい、それから、子供と向き合う時間がもっと欲しいといったことにこたえられているのか、それからさらに、現場の先生方のいわば改革が速過ぎるといったようなことにどうこたえていくのかというお尋ねがございました。

 私ども、現在、現場におられる先生方が、やはり、勤務時間について見てみますと、子供と直接的にかかわる時間のほかに、学校の運営にかかわる業務、あるいは調査の、あるいは報告書の整理といった時間がかなり多いということは、私どもが行いました教員の勤務実態調査でも把握をいたしております。

 そういった問題については、私ども、今後、児童生徒の指導に先生方が直接かかわる時間が持てるように、副校長、主幹教諭、指導教諭といった、組織としての学校の力を充実させる施策でございますとか、あるいは業務のアウトソーシング、あるいはボランティアの方の御協力を得ることとか、さらには定員の問題についても今後よく考えて、できるだけ先生方が子供と向き合えるようにしていくということは必要なことだと思っております。

 また、改革につきましては、免許更新制も含めまして、積極的に学校の先生方にその趣旨をお伝えし、十分に御理解をいただいて実施できるように工夫をしていきたいというふうに思っているところでございます。

西村(智)委員 いろいろなアンケートも、学校現場それからその周辺の団体などでは行われているようであります。教職員の方の大体九割が子供たちともっと一緒に過ごす時間が欲しいと感じている。また、子供たちの方でも、これは何年か前のテレビ番組の意識調査でありましたけれども、理想の先生ってどういう先生ですかとアンケートをとりますと、多くの子供たちは、しっかりとコミュニケーションをして子供たちの心が理解できる先生であるというふうに答えております。保護者の方にとっても同じような傾向はあらわれているわけですね。

 ところが、実際は、局長今御答弁あったように、大変学校の先生は忙しいし、そしてまた、これまでにも意見開陳がありましたけれども、非常に健康状態に不調を訴える先生方が多いというふうに伺っております。全職業で平均される健康状態で不調を訴える方々の、およそその三倍ぐらいが教職員の比率であるというふうに言われておりまして、この三倍というのは極めて高い数値だというふうに思うんですね。

 こういった状況の中で、本当に免許更新制度によって、保護者や地域の方々そして子供たちが望んでいるいわゆる学校の先生というものに近づいていけるのかどうか、本当にこの制度で近づいていけるのかどうかということについて、改めてもう一回伺いたいと思いますけれども、これについてはいかがでしょうか。

伊吹国務大臣 学校現場が非常に忙しくて児童生徒に向き合う時間が少ないということは、先生がおっしゃるとおりだと思います、現実としては。ですから、再三ここで御答弁申し上げているように、忙しさを、アウトソーシングして外へ出して、お金をつけて外へ出すか、ボランティアの方をお願いして、少しお金をつけて中へ人を入れてくるか、そうでなければ正攻法で、行革の法案を改正して予算を大幅にふやして人員増をするか、三つの方法があると思います。

 それはそれで私は努力をしたいと思いますが、同時に、これは各新聞社それから通信社がやった世論調査を見て、私は、私の思っていた以上に免許の更新制について賛成という意見が多かったと記憶しています。

 ですから、やはりしっかりした先生に児童生徒に向き合って教えてもらいたいということを御父兄は当然考えておられるんだと思いますから、そのようにやりたいと思いますし、十年間に三十時間という時間をとっちゃうと児童生徒に向き合えない、時間がそれだけとられちゃうからという御質問は、むしろ十年間に百時間の研修をとっておられる御党の提案者にもひとつぜひ聞いていただきたいと思います。

西村(智)委員 我が党の案は、今行われている十年研修を再編するというだけですから、今行われている十年研修に新たにつけ加えるというものではありません。ですので、どちらがより多くの時間数そして負担がかかるかといえば、それは明白であろうと私は考えております。

 それで、先ほど伊吹大臣は、免許の更新制の導入に当たっては、想像していたよりも賛成する人が多かったようである、意識調査でそのような印象だったというふうに述べられました。

 これは主観ですから、受けとめですから、私がそれについて、いや、それは思ったより少なかったでしょうと言っても始まらないわけでありますけれども、私が改めて申し上げたいのは、つまりは、この免許更新制というのは、その主体となるのが現場におられる学校の教職員、教員であります。そういった現場が納得して、そして動く仕組みでないと、これは制度をつくったはいいけれども、実際にその中身がうまく機能しないおそれがあるのではないか、こういうふうに考えているわけなんです。

 また、負担がふえるということも、それは御懸念には及ばないというふうに言われましたけれども、実際に十年研修に加えて新たに更新研修が行われるということになりますと、授業などでやはり穴のあくおそれというのはあるのではないかというふうに考えております。これについてはどのようにお考えになっていますか。

銭谷政府参考人 まず、免許更新制によります免許更新講習について御説明を申し上げますと、改正免許法の第九条の二第三項の規定によりまして、免許更新講習は、免許状を授与されてから九年目から十年目までの間に三十時間受講していただくというものでございます。

 一方、十年経験者研修は、教育公務員特例法第二十四条第一項の規定によりまして、公立学校の教員に正式採用された後の、在職期間が十年を過ぎた後に受講していただくというものでございます。

 それで、十年研修につきましては、受講の期間というのが、おおむね校内で二十日間、校外で二十日間、合わせて四十日というのが標準的な姿でございまして、私どもが行いました実態調査でも、校外の受講というのが大体十八日前後ということになっております。これは、時間数にいたしますと百時間を超える時間ということになっているわけでございまして、現在、十年を経験した公立学校の教員の方はこの十年研修を受けていただいているということでございます。免許更新講習の三十時間に比べますと大変多い時間ということになろうかと思います。

 なお、教員について今考えてみますと、公立学校の場合、免許状を授与されて、それから採用までの間に、実は数年のギャップがある方が多いのが実態でございます。免許状を授与されて、すなわち大学の学部を卒業されてすぐ採用される方は採用者の二五%程度でございまして、七五%の方は数年たってから採用されているということで、その点でも、免許更新講習の時期と十年経験者研修の時期というのは少しずれる方が多いということは言えようかと思います。

 それから、授業に穴があくのではないかというお話でございましたけれども、この免許更新講習というのは、土曜日、日曜日あるいは長期休業期間中の受講ということが基本でございまして、平日の授業への影響はほとんどないというふうに考えているところでございます。

西村(智)委員 いつでしたでしょうか、同僚議員が、例えば部活のときの手当の話をどなたかされたと思うんですよね。一日千二百円ですか、非常に低額だと。額はともかく、今局長は、土日そして長期の休業期間にその研修を行うことになるので授業などの穴はあかないというふうに言われました。私が伺ったのが、授業に穴があくんじゃありませんかと伺ったのでそういう御答弁だったと思うんですけれども。

 それではということで、冒頭私が申し上げた、いわゆる教職員の忙しさや健康状態ということからいたしますと、土日や長期休業期間中に研修を受けなければならないということになりますと、ちょっと伺いますと、夏休みなんかはいろいろ部活の大会シーズンだったりするんだそうですね。そうすると、そちらの方も手が離せないし、しかし研修もかぶってくるということになりますと、一体これはいつ本当に研修を受けることができるんでしょうか。また、新任研修なんかは非常に過密ですし、若い先生に学級担任なども任せたいというふうに考えても、実際にそれもままならない、そういう声もあるわけなんですけれども、一体この研修、いつ受けることができるんでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、免許更新講習は、免許を授与されてから九年目、十年目、この二年間で三十時間受講していただくということになるわけでございます。ですから、長期休業中、もちろん学校の先生方は、部活の指導があったり、あるいは一学期のお仕事の整理の仕事とか、いろいろあることはあると思いますけれども、これまでも研修のために随分夏休みはお使いになっているわけでございますし、現に十年研修は、夏休みを中心に二十日間近い研修を、正式採用になってから十年を経た先生が受けているわけでございますから、先ほど言いました二年の間に時間を差し繰りして受講をするということは、これは私は十分に可能であるというふうに考えております。

 なお、土曜日、日曜日、こういうときを使う、こういう受講の仕方もあるわけでございますので、三十時間免許更新講習を受講していただきまして、新しい知識、技能というものをしっかりと身につけていただいて免許を更新していただく、そのことがまた、保護者や国民の間から、本当に自分たちの先生はきちんとこういう更新を修了して立派な先生だということにむしろなるのではないかなというふうに思っております。

 なお、免許更新講習は十年ごとでございますので、十年研は十年を経た後の時期だけでございますけれども、免許更新講習は十年ごとに講習を受けていただくというものでございます。

西村(智)委員 政府側の答弁を今伺いました。九年目、十年目で土日などの時間をやりくって研修制度を受けてくれということなんだそうでありますけれども、先ほど大臣、その着席の席から、民主党の方が負担になる案じゃないかというような発言がちらっと耳に入りました。民主党のこの研修制度に対する考え方、それについて、一体本当にどういう考え方でこの民主党の提案をされたのか、その点について一点伺えればと思います。

藤村議員 法定の研修で、先ほど御説明あったように、いわゆる教育公務員の場合には、初任者研修とそれから十年研修というのが法定研修であります。十年研修については、さっきの説明のとおり、それなりのしっかりした研修が行われているということ。

 そこで、我々は、この十年法定研修を、まさに十年ですから、教員に、教諭として正式になって十年目に研修を行うのが十年研修で、ちょうどその時期に、我々は、研修をしっかりと、国が内容的にも定め、そしてその修了認定をするという形で、政府の提出している三十時間の更新研修と仕組みとしては似ております。

 ただ、時期として、さっき局長言っているとおり、実は、今回の政府の免許法による更新研修というのは、教員になって三年目の人あるいは四年目の人、五年目、非常にばあっとあります。我々の方は、あくまで教員になって十年でまさにリニューアルをしていただく。次は二十年があります、もちろん。

 かつ、内容的に、まず三十時間を、まさに十年間の大きな進展に基づく一般的な教養、これは合同で、つまりどこかで集まってきちっと、大学等も利用するということですが、残り七十時間については、うち四十時間を教科研修、これは、いわゆる今のIT社会ですから、Eラーンという、まさにITを利用して自宅ででもできるようにしたい。それから、さらに三十時間について、実際の模擬演習ということで、これはやはり実際の現場で研修していただくというわけです。

 トータル百時間を想定している中では、今の十年講習というものとほぼ一緒かあるいはそれより少ない、特にEラーンを利用すれば出っ張っていく時間はうんと少なくなるのではないかな。我々は負担をそれ以上にふやすということではないということは御理解いただけると思います。

西村(智)委員 負担を今以上にふやすということではない、明快な御答弁をいただきました。

 大臣、やはり、今ある研修制度をこのように活用することによって、形骸化されてきたと言われる研修制度、これはもっと充実を図っていくことが可能なのではないかと思うのです。その方が先決ではないかというふうに考えますが、その点についてどうお考えなのかということ。

 いずれにいたしましても、研修制度というのは、やはり学校がよくなって、そして教員や保護者、そしてまた地域の皆さんが協力をしていくという中で実現されるということであれば、これはもう本当に一緒に協力をしていきたいという思いだろうと思うんですね。ぜひ、多くの方々の、国民の、特に現場の納得が得られるような形でこの教員免許更新制そしてまた研修制度というのは具体化を進めていくべきだろうというふうに考えるんですけれども、この点についての見解を伺います。

伊吹国務大臣 まず、現在の十年を超えた人たちに受けていただく研修というのは、どちらかというと、自分の専門分野、自分の得意とする分野に磨きをかけて、新しい知識を吸収していただくということを主眼として行われています。今回提案をいたしております、教職についてからの研修ではなく免許を持った人たちの十年研修というのは、御承知のとおり、再三答弁しておりますように、新しい時代に沿った全般的な知識をもう一度確認する、同時に、生徒を把握する技術その他についてのその時点での確認をさせていただく、こういうので、少し研修の性格が私は違うと思っております。

 それから、現場の意見を聞いて物事を決めなければいけないというのは、それは当然、いろいろな事柄を処していく場合の一つ大切な視点です。しかし同時に、組織全体の意見を聞く場合に、例えばスイスの一部で行われているような全有権者の全員参加の民主主義もあるし、代表制の民主主義もあるし、あるいは国民の意見を聞きながら国会でつくった制度でお願いするという意見もあるわけで、現場の意見を常に聞いてそのとおりしなければならないという意思決定の仕組みは、むしろ組織体では極めて例外で、そのことだけで物事を決めるとすれば、やはり現場の意見に引っ張られます。

 現場の意見は極めて大切なものですから、十分その点は聞かせてやりますけれども、聞かせてやるというより、我々が研修の実施権者じゃありませんから、各教育委員会に聞いてもらった意見を我々がもう一度再聴取して基準は決めていきたいと思いますけれども、現場が納得しなければ物事を決めちゃいけないということだと、やはり集団の意思決定というのはうまくいかないのではないかと思います。

 これは、おのおのの人の持っている民主主義に対する考え方の違いだろうと思いますから、これ以上先生と議論しても、先生は私の意見に反対だろうとおっしゃいますから、これは、先生の御意見は御意見として承らせていただきます。

西村(智)委員 いえいえ、私は、この研修制度そして更新制に実際に主体となってかかわっていくのは現場の先生であるわけで、そこの実践によってこの研修制度そして免許の更新制の成否が決まっていくことになっていくので、そこの納得を得られるような形で進めていっていただきたいと申し上げております。そこのところは強く要望しておきたいと思います。

 続いて、学校教育法について何点か伺いたいと思っております。

 今回は、教育基本法の改正を踏まえてこの学校教育法も何点か改正がなされておりますけれども、まず第一点目に伺いたいのは、今回、義務教育の目標に関する規定が明確化されております。

 この間、教育基本法の特別委員会でも話題になってきましたのは、いわゆる子供の学力の問題だったというふうに、一つにはそれがあったというふうに承知をしております。今回、学教法の中で義務教育の目的、目標を規定することが子供の学力の向上にどういうふうに影響していくのか、そしてまた、義務教育の目標の達成状況についてどういう方策で明らかにしておこうとしているのか、伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 今回御審議をお願いいたしております学校教育法の改正案におきまして、第二十一条に義務教育の目標という規定を設けてございます。これは、教育基本法の五条に義務教育の目的というものが規定をされまして、それを受けて義務教育の目標というものを学校教育法に規定したわけでございます。

 この学校教育法における義務教育の目標というのは、教科等の教育内容の大枠を規定するものでございまして、教育基本法に規定をされている教育の理念と、具体的な各教科等の内容を定める学習指導要領をつなぐ役割も果たすものでございます。

 また、同じく学校教育法の改正案の第三十条の第二項におきまして、基礎的な知識及び技能を習得させた上で、習得した知識、技能を活用して課題を解決させるために必要な思考力、判断力、表現力等をはぐくむ、そしてその際に、主体的に学習に取り組ませるといった、指導上重視すべき点についても明確化しているところでございます。

 こういった義務教育の目標の規定そして指導上重視すべき点、これらを踏まえまして、今後学習指導要領を改訂して、確かな学力の育成を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

 なお、学習状況の把握ということにつきましては、文部科学省としては、学力・学習状況調査の結果なども踏まえながら、その実情の把握と改善に取り組んでいくこととしているところでございます。

西村(智)委員 非常に漠とした答弁をいただきましたが。

 義務教育の目標に新設された項目あるいは見直しされた項目、改正学教法の第二十一条以降に書かれております。これは、改正された教育基本法を受けて自動的に見直された項目であるというふうに理解してよろしいのでしょうか。

銭谷政府参考人 学校教育法の改正案の二十一条の義務教育の目標は教科等の教育内容の大枠を規定するということは、先ほど答弁をさせていただいたところでございます。

 今回、この義務教育の目標を規定するに当たりまして、基本的な考え方といたしましては、一つには、現在、小学校と中学校、それぞれにつきまして目標が規定をされております。小学校の目標、これが八項目ございます。中学校の目標、これが三項目ございます。この現在の小学校、中学校の目標をまず基本にするというのが第一点でございます。

 そして、第二点といたしまして、改正教育基本法の二条で新たに明確にされました理念の中で教科等の教育内容の大枠として示すべきものを加えるという考え方で、整理をして十項目にしたところでございます。

 なお、その際、これまでの中央教育審議会の答申などにおきまして、これからの義務教育において重要と考えられると指摘されたものを新たに規定をしているものもございます。

 以上でございます。

西村(智)委員 その新たに規定されることになったというのは、どういう事項になりますか。

銭谷政府参考人 まず、改正教育基本法の二条で新たに明確にされた理念の中で今回加えられておりますものは、ちょっと例示で恐縮でございますが、「公共の精神」、「生命及び自然を尊重」、「我が国と郷土を愛する態度」などがございます。

 それから、これまで中教審答申などにおきまして、時代の変化等を踏まえまして、これからの義務教育において重要と考えられると指摘されたものとして、今回新たに文言を入れたり規定をしているものとしては、「家族と家庭の役割」、「情報」、「読書」といったようなものがございます。

西村(智)委員 そういたしますと、改正教育基本法第二条の中にあります「公共の精神」、生命の尊重、生命の尊重についてはまた後で伺いたいと思います。私はこれは入っていないんじゃないかと思うんですけれども、後で伺います。それから「我が国と郷土を愛する態度」、そういったものが入ったということなんですけれども、そういたしますと、例えば、改正教育基本法の第二条第三号、「男女の平等、自他の敬愛と協力」などは、これは入っていないわけですね。これはなぜ入っていないんですか。

銭谷政府参考人 ただいまお話のございました改正後の教育基本法二条に規定をされております「個人の価値を尊重」あるいは「男女の平等、自他の敬愛と協力」、こういった内容につきましては、実はこれは、改正前の教育基本法にも規定をされていたものでございます。ただ、改正前の教育基本法にも規定はされていたわけでございますが、先ほど申し上げました現行の学校教育法の小学校、中学校の目標には明示的には規定をされていないものでございます。

 今回の義務教育の目標は、現行の小学校、中学校の教育の目標に、改正教育基本法におきまして新たに明確にされた理念を加えるということを先ほど申し上げましたけれども、そういう観点から、個人の価値の尊重や男女の平等、自他の敬愛と協力というのは、文言としては、学校教育法のこの義務教育の目標の中には規定をしていないというものでございます。

西村(智)委員 新たに規定されたものであるから今回学教法の中に入れたということなんですけれども、そういう線引きでよろしいんでしょうか。

 今回の教育基本法の改正のときには、新しい時代になったので、新しい時代に対応するために新しい教育基本法をつくります、こういう説明だったわけですよね。大臣、そうですよね。そうだといたしますと、時代が変わって、これは文科省の認識ですよ、私たちの認識は違いますが、新しい時代になって新しい教育基本法ができたんだから、学教法の中でもそれをやはりしっかりと入れる必要はあったのではないかと思います。

 この線引き、私は納得できません。新しく入ったから新しく入れました、これでは納得できないんですけれども、これは、線引きはどういうふうに、本当にそういう説明でいいと思っていられるんですか。

銭谷政府参考人 先ほど来御説明を申し上げておりますように、学校教育法における義務教育の目標というのは、教科の大枠等を示す、いわば教育内容の大枠を示す目標ということになるわけでございます。そして、具体的には、学習指導要領等でさらに各教科等の目標、内容として深められていくというものでございます。

 繰り返しになりますけれども、教育基本法と学習指導要領をつなぐという役割をこの学校教育法は担っているわけでございます。したがいまして、教育基本法にございます文言すべてを同じように書くというものでもございませんし、学校教育法にないからといって教育基本法にはあるわけでございますから、学習指導要領の中では、当然これは取り上げられてくるものはあるわけでございます。

 そこで、今回の考え方としては、従前の、改正前の教育基本法に文言があって、現在の小学校、中学校の目標に規定をされていないものはそのような扱いをした。それから、新たに教育基本法に加えられました、規定をされました事柄については学校教育法の方で明示をするようにした、こういうことでございます。

 なお、具体的にちょっと申し上げますと、例えば「個人の価値を尊重して、」というのは、これは従来の教育基本法にももちろん規定はあったわけでございますけれども、これはむしろ教育全体で一貫して対応していかなければいけない事柄でございますし、学習指導要領以下でこれはまた、義務教育の段階でもそのことは当然指導していくということになります。

 それから、「男女の平等、自他の敬愛と協力」ということにつきましては、規定ぶりとしては、学校教育法の規定の中にも「協同」ということが規定をされております。「協同の精神、」という規定がございまして、その中で従来から読み込んでいたと私ども理解をしておりまして、今回の義務教育の目標においても引き続き「協同の精神」等は、これは規定をしておりますので、その中で読み込み、もちろん学習指導要領以下で、こういう「男女の平等、自他の敬愛と協力」の趣旨というのは義務教育の中で実施をされていくということになるわけでございます。

西村(智)委員 ここはやはり論理構成の弱いところだと思います。前段の方では、学教法と学習指導要領以下がセットでその内容を決めていくんだというふうな御答弁でありながら、後段の部分では、いや、「公共」のところは全体で読めますですとか、「協同」で男女の平等などというのも含みますというふうにおっしゃっておられる。やはりちょっと論理的にその線引きは弱いんじゃないかと私は思っているんです。ここのところはもう少し聞いていきたいところであります。

 例えば、自他の敬愛と尊重でありますけれども、これはどう読んでも第二十一条の目標の中には入っていない、読めないと思うんですね。

 ただ、思い出してみていただきたいんですが、教育基本法の議論をしているときに、いじめ、未履修、そして自殺自死、この三つが学校での大きな問題として議論をされておりました。いじめによる自殺などが多発したということから考えますと、やはりこの自他の敬愛と尊重というのは学教法改正の中でしっかりと重視されなければならない項目であったかというふうに思うんですけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、改正前の教育基本法の中にも「自他の敬愛と協力」という文言はあったわけでございます。そして、現在の小学校の目標それから中学校の目標には、この「自他の敬愛と協力」という文言は今規定をしていないわけでございます。

 そして、今回の学校教育法の改正におきましては、従来の教育基本法に規定がありまして、現在の学校教育法の小学校、中学校の目標に規定をしていないものは、それはそれと同じ扱いをしたということでございます。

 そして、学校教育法の目的、目標というのは教育基本法と学習指導要領をつなぐものでございますから、具体的には、学習指導要領におきまして、例えば道徳の中で、他人といたわったり助け合ったりするという中で、自他の敬愛と協力ということは、教育基本法の精神を踏まえて、きちんと指導するということになっているわけでございます。(発言する者あり)

西村(智)委員 ですから、論理的にやはり弱い。それは、こちらの方から発言がありますけれども、やはりつなぐのが弱いんですね。それであれば、目標の中に書いた方がよりすっきりするのではないかというふうに考えるわけなんですけれども、大臣、この点については大臣はいかがお考えですか。

伊吹国務大臣 私、ちょっと今、率直に言って、初中局長の答弁を聞いていて、いや、それは少しわかりにくいなと思いました。現行のものに書いてあるから今回のものには書かないというのは何の説明にもなっていないんじゃないでしょうか。

 こういうことだと思うんです。

 先般の国会でお願いをした教育基本法は、義務教育基本法ではないんですよ、教育基本法なんです。だから、単に文部科学省が所管をしているすべての部分をカバーしているだけではなくて、ある意味では、社会教育あるいは自然環境保全、食育、そういったあらゆる部分の、日本の教育すべてに関する憲法と言われるのはそういう理由からなんですね。

 その中で、今回お願いをしている学校教育法の義務教育部分は、先ほど来政府参考人が申し上げているように、教育基本法の精神あるいは教育の目標を踏まえて、義務教育として教えるべき項目を列挙している。だから、当然、基本法に書いていない読書の尊重だとか何かということも具体的に記述されている部分もあります。そして、それをさらに明確化して学校現場へおろしていくのは、いわゆる告示である指導要領だ。

 こういうことですから、立法政策というか、立法論として書いておいた方がいいという御判断も当然あって構わないと私は思いますし、最後は、教育基本法の精神に反することが書かれている場合は、これは少なくとも我々は国会へ提出できない法案である、学校教育法は。そういう位置づけになっていると私は理解しておりますから、先生の御指摘も立法政策としては一つの考え方であろうと思います。

 しかし、それは、立法者の意思として、先ほど政府参考人が申し上げたような法案でお願いをするというのが政府の考えです。

西村(智)委員 大臣、でも、一番冒頭にわかりにくいとおっしゃいましたよね。わかりにくいんですよ。今までに書いてあったものだから入ったとか……(伊吹国務大臣「入ってないと言っている」と呼ぶ)ですね。

 結局、この第二十一条に挙がっている項目が、どういう線引き、どういう基準で入ってきたのか、そして、どういう基準で入らなかったのかということについては、やはり明確にその判断基準を示していただく必要があるというふうに私は思っています。読めるものがあるとか、読めないものがあるけれどもそれは義務教育についての目標だからいいとか、いろいろおっしゃいましたけれども、それについては明確な基準があるべきだと思いますけれども、局長。

保利委員長 文部科学大臣。西村さん、いいですか、文部科学大臣から先にちょっと。

伊吹国務大臣 ちょっと先ほどの答弁で、あるいは政府参考人の言っていたのを私が誤解して答弁をしたかもわかりませんので、後ほど参考人に確認していただいて結構ですが、旧教育基本法には確かに自他の尊重というのはありますが、現在の学校教育法は、十八条の一号から八号までを見ると、「学校内外の社会生活の経験に基き、人間相互の関係について、正しい理解と協同、自主及び自律の精神を養うこと。」というのが書いてあるので、現在の学校教育法には自他の尊重という言葉はありません、だから今回もそれをあえて入れなかったという趣旨のことを参考人が言ったというふうに理解すると、なるほどな、よくわかったという気はいたしました。

 私が誤解していたかどうかをきちっとわかりやすく御説明するように。

銭谷政府参考人 実は今申し上げようと思っていたことを大臣の方からお話をしていただいたわけでございますが、現行の学校教育法の小学校の「目標」の中に、十八条第一号に「協同、自主及び自律の精神を養うこと。」という規定がございます。それで、今回の義務教育の目標でございます二十一条の一号に「自主、自律及び協同の精神、」「を養うこと。」という規定がございます。ですから、この「協同」という言葉は、これまでもございましたし、新しい学校教育法の義務教育の目標の中にも入っている。

 これは、先ほど来先生がお話をされておられます教育基本法の「自他の敬愛と協力を重んずる」といったことに非常に深くかかわって、ここで受けていたということになるわけでございますので、先ほど来私が、それは前も申し上げたと思いますけれども、改正教育基本法で改正以前の教育基本法と同じ文言がまた使われているというものについては、特に、今回学校教育法における義務教育の目標規定において、従来の小学校、中学校の目標規定の文言について余り変更はしていないということで申し上げたわけでございます。

 そのかわり、新たに今までの教育基本法に加わった教育の目標というものについては、これは学校教育法の義務教育の目標で受けるように規定するようにした、この二つの考え方を先ほど来申し上げているわけでございます。

西村(智)委員 受けると局長おっしゃいましたけれども、受けるという言葉はくせ者だと思いますよ。ごめんなさい、くせ者と言うとまた大臣に何か言われてしまうのでしょうか、大丈夫でしょうか。

 現行法の第十八条の一号で、ここで本当に自他の敬愛と尊重、これが、では読めるわけですか。これまで国会審議でそういう議論はありましたか。では、私は議事録を調べてみます。第十八条一号、ここのところで本当に自他の敬愛と尊重という意味合いが含まれているのかどうか、読めるのかどうか。ここは、しっかりと調査をし、またいろいろな研究者なりから話を聞いてみたいと思いますが、読めないと思うんですね。読めないというか、受けていないと思うんですよ、ここはそもそも。

 そういたしますと、それをまた第二十一条の第一号に持ってきたということなんですけれども、これはやはりストレートには読めない、書けない。やはり第二十一条の目標というのは、なぜこういう書き方になったかということは、極めてあいまいなままであるというふうに今この時点でも言わなければならないと思います。

 それで、一つ一つ項目を見ていくと、本当にたくさん伺いたいことがいろいろあるんですけれども、ちょっと残念ながら時間も迫ってまいりましたので、一点だけ伺いますが、第四号、「家族と家庭の役割、」というのが、これが全く新しく入ってまいりました。今まで、読書が新しく入ったじゃないか、そういう議論はあったと承知をしておりますけれども、第四号、「家族と家庭の役割、」というのが新しく入ってきたわけなんですけれども、これは全く新しい項目だという理解をさせていただきます。

 その上で伺うんですけれども、これは、何か特定の家族像あるいは特定の家庭内の様子、それを指すものであってはならないというふうに考えるんですけれども、この点、確認させていただいてよろしいですか。

伊吹国務大臣 ちょっと参考人の立場からはなかなか答えにくい、極めて価値観にかかわるところですから、私からお答えしたいと思いますが、特定の家族観について、これが正しいとか正しくないということを想定しているということは、私は適当なことじゃないと思います。

 ただ、法治国家でありますから、現在日本の国会が国民の総意としてつくっている方向性のもとでの家族というものはこういうものであるということは教えなければならないと思います。

西村(智)委員 えっ、それは何ですか。法治国家としてその方向性を形成するための家族、家庭であっていただきたいというのは、それはどういう意味ですか。

伊吹国務大臣 いただきたいとは一言も申し上げておりません。

 日本の民法が想定している家族というものはこういう方向性になっているという事実は教えなければならないと申し上げているんです。

西村(智)委員 いや、そういたしますと、では、それは特定の家族や家庭の姿というものを指しているということになるのではないかと思うんですが、どうでしょうか。ぐるぐる回るみたいですが。

伊吹国務大臣 全くそうならないと思いますよ。法律がそういうことを想定しているということは明確に申し上げなければ、だって、法律というのは国会が決めている日本のルールなんでしょう。それはこういうものであるということは言いましょう。しかし、それがいいとか悪いとか、それはおのおのの方々の判断なんじゃないんですか。おのおのの方々の判断について、どちらが正しいとか正しくないということを教えるということは想定していないということを申し上げているんです。

西村(智)委員 一番最後の文章だけいただいておきます。要するに、どちらが正しいか正しくないかを教えるということはないということですね。

 その前段の、民法が指し示している方向というあたりが少しわかりにくかったんですけれども、それについてはちょっと後で、また別の機会で大臣と議論させていただければと思っております。

 目標の項目に関連するものといたしまして、現行法第二十条で「小学校の教科に関する事項」というのがございましたが、これが改正されて、改正法第三十三条に変更されているんです。先ほど、局長の答弁だったでしょうか、教科等の教育内容というふうな文言があったかと思うんですけれども、細かい話になって恐縮なんですが、現行法の第二十条、「小学校の教科に関する事項」というものが、これが改正法第三十三条で「小学校の教育課程に関する事項」というふうに変更になっております。

 それぞれ何を指し示すのでしょうか。また、この改正の意味について伺います。

銭谷政府参考人 現行の学校教育法の二十条は、「小学校の教科に関する事項は、」文部大臣がこれを定めるという規定でございます。今回の改正案では、第三十三条で、「小学校の教育課程に関する事項は、」文部大臣がこれを定める、こういう規定になってございます。

 ここの、現行の学校教育法第二十条において用いております「教科」という意味は、各教科に加えて道徳、特別活動、総合的な学習の時間を含めました学校の教育計画である教育課程を意味するものとして使われております。

 学校教育法に関します解説書でも、「本条の「教科」は、」、これは現行の学校教育法二十条の「教科」という意味でございますが、「本条の「教科」は、教育の目的及び目標を達成するために「児童がどの学年でどのような教科の学習や教科以外の活動に従事するのが適当であるかを定め、その教科や教科外の活動の内容や種類を学年別に配当したもの」という意味の教育課程と同義に解するのが妥当である。」ということで、本条の「教科」は教育課程と同義に解されております。

 そういうことから、今回の改正案は、その趣旨を明確にするため、「教科」を「教育課程」に改めるというものでございます。

西村(智)委員 ここの教科ということについては、いわゆる学界の中ではまだやはり議論のある点ではないのかなと思うんですね。今局長が御紹介になったのは何でしたか、解説本ですか、解説本ではそのように書かれているということなんですけれども、学界の方などでは、いわゆる教科とそれから教育課程というのは別のものであって、教育課程の中には、いわゆる助言や指導基準ですとか、それからそこで教えるべき内容ですとかその順序までも含むというふうに理解をしておるというものもあるようなんです。

 これは、そうしますと、改めて伺いたいんですけれども、「教科」から「教育課程」に変わった、文言が変わったということで、実質的に、例えば教科目名それから時間数、教える内容、その順序などを決定する権限が文部科学大臣により強く付与されるということではない、そういう理解でよろしいですか。

銭谷政府参考人 ただいま先生がお話しいただいた御理解で結構でございます。

 最高裁の判決でも、学習指導要領自体が全体として見て中学校の教育課程に関する基準の設定、こういう言い方をよく使っておりまして、つまり、今の二十条は「教科」という文言ではございますが、教育課程というのと同義に使われてきておりましたので、今回、そこをわかりやすく教育課程という言葉に変えたというだけのものでございます。

西村(智)委員 時間になりました。学校評価の点について質問したかったのですが、また民主党提出者にも質問したかったのですが、次回に機会をいただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 次回は、来る十五日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.