衆議院

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第13号 平成19年5月17日(木曜日)

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平成十九年五月十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 大島 理森君 理事 河村 建夫君

   理事 小坂 憲次君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 中山 成彬君 理事 野田 佳彦君

   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤池 誠章君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      伊藤 忠彦君    稲田 朋美君

      稲葉 大和君    猪口 邦子君

      浮島 敏男君    亀岡 偉民君

      木原 誠二君    木原  稔君

      木村  勉君    清水清一朗君

      鈴木 俊一君  とかしきなおみ君

      中森ふくよ君    西村 明宏君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      馳   浩君    原田 憲治君

      平田 耕一君    福岡 資麿君

      福田 良彦君    二田 孝治君

      松本 洋平君  やまぎわ大志郎君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      山本ともひろ君    若宮 健嗣君

      渡部  篤君    川内 博史君

      北神 圭朗君    田島 一成君

      田嶋  要君    高井 美穂君

      西村智奈美君    松本 大輔君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      石井 郁子君    阿部 知子君

      保坂 展人君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           高井 美穂君

   議員           田島 一成君

   議員           牧  義夫君

   議員           藤村  修君

   議員           松本 大輔君

   議員           笠  浩史君

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣         菅  義偉君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   衆議院調査局教育再生に関する特別調査室長     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     福田 良彦君

  稲田 朋美君     清水清一朗君

  稲葉 大和君     木村  勉君

  木原 誠二君     萩原 誠司君

  とかしきなおみ君   安次富 修君

  松本 洋平君     福岡 資麿君

  安井潤一郎君     木原  稔君

  山内 康一君     中森ふくよ君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     とかしきなおみ君

  木原  稔君     安井潤一郎君

  木村  勉君     稲葉 大和君

  清水清一朗君     稲田 朋美君

  中森ふくよ君     浮島 敏男君

  萩原 誠司君     渡部  篤君

  福岡 資麿君     山本ともひろ君

  福田 良彦君     赤池 誠章君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     山内 康一君

  山本ともひろ君    松本 洋平君

  渡部  篤君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)

 教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第九二号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外五名提出、衆法第三号)

 教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案(藤村修君外二名提出、衆法第一六号)

 地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(牧義夫君外二名提出、衆法第一七号)

 学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案(笠浩史君外二名提出、衆法第一八号)


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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案並びに鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案及び笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山中伸一君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 きょう一時間という時間をちょうだいし、大臣以下関係の皆さんにお尋ねをさせていただきたいと思います。

 質問に入ります前に、きょうの朝刊にも載っておった国民健康・栄養調査の結果、大臣も新聞をごらんになられたかと思いますが、一人で朝食をとっている中学生が四人に一人だというような厚生労働省が発表した結果が載っておりました。早寝早起き朝御飯、もう最近、随分地元のPTAなんかででも唱えている人たちが多くて、定着したかのように思われますけれども、データ的には、どうも一人で朝食をとるケース、朝食をしっかりとってくる数はふえてきている、一定の成果は上がってきているのかなというふうには思うんですけれども、残念なことに、一人で朝食をとっている子供の数は四人に一人、そんな数字が出てきています。

 できれば家族そろって食卓を囲んで、朝、一日気持ちよくスタートを切れることが何よりだというふうに思いますし、私なども、こうして単身赴任をしておりますと、子供が食事をしている様子を思い出しても、多分一人でばたばた食事をしながら、その用意とお弁当の準備を私の連れ合いが台所でやっているのかな、そんなふうに思い出したりしているわけであります。

 今こうして、福島のあの事件も含めて考えますと、やはり家族の中での対話が非常に少なくなってきている。その貴重な場が食事の団らんのひとときであることは言うまでもないと思いますが、この朝食を一人でとっている子供たちの数が依然減っていかない傾向、これをとらえて大臣としてどのようにお考えか、まず冒頭、お聞かせをいただけないでしょうか。

伊吹国務大臣 けさは先生の想定問答を読んでおって、私は朝食をとる時間がなかったんですが、再生会議で親学ということをいろいろ取り上げられて、それが話題になりましたね。私は、あそこで言っておられることはほとんど間違っていないと思うんですよ。ただ、そうできない人たちが大勢いる中で、おれたちはこうやった、私たちはこうやったからあなたたちもこうしなさいというのはちょっといかがかなと私は実は思ったわけです。

 朝、家族すべてで食事をとるのが理想で、できるのにそうしない親はやはり困ったものだと私は思いますね。ただ、夜勤の御家族もあるし、お母さんがいない御家庭もあると思いますから、できる状態にある親は、やはりできるだけ、自分がこの世に生み出した命について責任を持って育てていただく。これはもう先生のおっしゃるとおりだなと思いますし、我々政治家がやるべきことは、人にお説教を垂れるのではなくて、やはりそのような状況をつくり出していく努力をするということだと思います。

田島(一)委員 ぜひ、国民の範たるお立場でもいらっしゃいますので、朝食はしっかりとっていただきたい。私も、この質問をするためにかき込んで食事はとってまいりました。

 その一方では、中高年男性の肥満傾向がさらに強まっているという補足的なデータもございました。見渡しますと、メタボリック傾向の方もどうもいらっしゃるようであります。食育基本法というものもしっかり成立をした中であります。食事さえとればいいというものではない。さらには、その食事を通してコミュニケーションを深めていければ、最近にぎわしている、子供が親を殺すといったような悲惨なニュースもきっとなくなっていくのではないか、そんな気持ちがしております。

 しかし、国としてそれを強要する立場にあるかどうかは、これはいささか問題があると私も感じております。大臣と全く一緒であります。ですから、範としての大臣としての日ごろの食生活の充実、ぜひ私の方からお願いをしておき、質問に移らせていただきたいと思います。

 前回に引き続き、中途半端で終わってしまった質問の続きから入りたいと思います。教育実習の現状の問題点であります。

 現在の教育実習は約二週間から四週間というような実態であることは、前回の質問のときに指摘をさせていただいたところであります。わずか四週間という時間的な問題はあるものの、この期間中はやはり教科指導が中心となっていることは大臣も認識をいただいていると思います。

 ただ、その問題点として、私自身の経験談を申し上げたとおり、必ずしも目指そうとしている教科の指導をこの教科指導で受けられていない、そんな問題もあるんだということはぜひ調査を進めていただきたいし、それであったとするならば、悲劇は学ぶ学生たちだけでありますから、そういったことが今は絶対にないというようなことを示していただけるような調査をぜひ一方でしていただきたい、このことをぜひお願いしておきたいと思います。

 教科指導中心の教育実習ですから、その四週間の中で、学校の中で教育職員としてやらなければならない仕事の全体を実習として掌握できるかといえば、甚だ無理があろうかというふうに思います。

 ただでさえ教科指導以外の事務処理に追われる現場の先生方、そのことから、子供たちと向き合う時間がないという叫びすら届いている現状からすると、校務というもの、学校のありとあらゆる仕事を四週間という短い期間を使ってできる限り見て、聞いて、そして自分の体で体験していかなければならない、そんな貴重な時間だというふうに思うわけでありますけれども、残念ながら、実習校の判断で、教科指導以外の校務にかかわれるケースとかかわれないケース、そんなのがやはり混在しているように感じております。

 実際に採用されて教壇に立つまで、教育実習から随分ブランクがあいているということも考えますと、教育実習自体を見直すことこそやはり今の教育現場の改革につながるのではないかというふうに実は私は考えました。この五月末から六月にかけて、そしてまた秋、年に大体二回教育実習が行われているようであります。この春の五月、六月に教育実習を受けますと、せっかく現場の雰囲気を体で感じ取った学生たちが、うまくいって来年の四月に教壇に立つとしても、半年間は教壇からごぶさたをしてしまうという現状があるわけであります。

 果たして、研修期間として、研修時期としての意味が十分果たせているのかどうかという問題点を私は感じるわけですが、大臣、その点についてのお考えをお聞かせいただけますか。

伊吹国務大臣 何事もそうでしょうけれども、もちろん、その職につくまで、ある程度の研修をして、心構えを持ってその職につくわけですが、同時に、職についた中で日々先輩の教えを受けて研さんをし、そして、教員でいえば、十年をめどにして十年目の研修を受けるということですから、今のやり方の中で、あと、具体的な例について先生と政府参考人の間でいろいろ具体的なやりとりをしていただいて、委員の先生方にもそれを聞いていただきながら、直すべきところがあれば正していけばいいと思います。

 何事も完璧ということはありませんので、ある部分を直そうとすると、必ず、その部分は直るんだけれども他の欠陥が出てきますね。だから、教育実習をどの程度時間をとるのか、そうすると、あと教科をどのように扱うのか、あるいは将来的には四年で本当にいいのか、修士を教師の資格にするべきなのかということまで含んだ広範なやはり議論に移ってくるという大切な御指摘であると思って伺わせていただいております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 結論として現在のこの四週間の実習期間というのは十分足りていないとお考えだというふうに受けとめてよろしいでしょうか。

伊吹国務大臣 それは人それぞれじゃないでしょうか。何か、一年生で、突然当選してこられた人でも、もう五回、六回みたいな顔をして堂々たる発言をされる人もおりますし、何度当選しても私のようにおどおどしている者もおりますから。

 ただ、四週間というのはちょっとやはり短いかなという気はしますね。

 それから、研修の内容、これはやはりよく考えないといけないと思います。国会の議論は、私は答弁をしているだけじゃないんですよ。大切なことはきちっと事務局にメモをさせて、そして行政で対応できることは、いいことは、直していきたいと思いますから。

 今すぐどうこうするということをここで申し上げるわけにもいきませんが、貴重な御意見として承らせていただきます。

田島(一)委員 現在の教育実習というのは、実習校次第、実習校任せとなっているところがやはり大きいんですね。例えば、一般校に教育実習に出向く学生たちにしてみれば、ほとんどが自分の出身校に行っています。附属の学校に行かれるケースももちろんありますが、一般校へ行くと、いわゆる学校現場としてみれば日常業務に大きな負担となる。この現実も、やはり先生方から何度も聞かせていただきました。しかしながら、母校の出身者だから仕方がないなというような思いで、温かくなのか嫌々なのかは別にして、受け入れていただいている現実があります。

 実習校任せだ、実習校次第だというようなこの教育実習が教員免許状のカリキュラムの一つとして組み入れられているとするならば、これはやはりひとしくその内容についての厳しいチェックが入るべきだと私は思います。

 検討に値すると大臣もおっしゃっていただきました。そのことについては大変前向きな答えと私も考えておりますので、どうかひとつその中身について、各校それぞれ違いがある、カラーがあることは大変いいと思いますけれども、その内容に差があることについてはいささか問題だというふうに私も感じておりますので、どうかその点、よろしく御検討いただきますようにお願いをしたいと思います。

 さて、今回の教員免許状の関係ですけれども、政府案では、十年単位での免許更新制を導入するというお話でありました。例えば教育現場に立っていただいている先生方にしてみれば、日ごろの授業状況、また研究している中身、研修を重ねていらっしゃる中身を、十年ごとで免許を更新するんだということだから何の心配もないだろうというふうにお考えの向きの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、教育職員は、必ずしも教育現場に立つ人ばかりではありません。その一例が、教育委員会の事務局に出向をいただいている教育職員であります。今、教育委員会の事務局の職員、自治体によってもその比率はさまざまだというふうに思いますが、その大方が、学校教員が二年間ないし三年間といったスパンで、教育現場から離れて事務局の職員として教育委員会事務局部局に出向しているというケースがあります。

 まず、具体的な数字として、ぜひ事務方にお尋ねしたいんですけれども、現在、全国で教育職員の何%ぐらいが教育委員会事務局に出向をしているのか。もちろん、外郭団体の法人等に出ているケースがあるかもしれませんけれども、おおよそで結構です、教壇以外で仕事をしている教育職員は何人ぐらいいるのか、その数字を示していただけますか。

銭谷政府参考人 ただいまお尋ねのございました、教員が教育委員会の事務局において勤務するケースというのはあるわけでございます。例えば、教育委員会の課長等の管理職になるような場合とか、指導主事それから社会教育主事などの専門的な職員として配置をされる場合などがございます。

 その数でございますけれども、都道府県、市町村の教育委員会を通じまして教育委員会事務局に勤務をしている教員全体の人数ということはちょっと把握はしていないわけでございますが、教員が教育委員会に勤務している典型的なケースとしての指導主事について申し上げますと、指導主事は、都道府県教育委員会には現在約四千六百人おります。それから、市町村の教育委員会には約四千九百人おります。合わせまして九千五百人ぐらいの指導主事がいるわけでございますので、その多くは教員から教育委員会の方に来ている、こう思われるわけでございます。

 それから、社会教育主事でございますけれども、これは、国立教育政策研究所の調査によりますと、平成十七年の十二月現在でございますけれども、社会教育主事として最初に発令をされたその直前に教員として学校に勤務をしていた方、つまり教員として勤務をしていて社会教育主事に発令されたという方が約千五百人という数字は把握をしているところでございます。

 これらを合わせますと一万人を超えるわけでございますけれども、教員の数自体が、どこからどこまでをとるかにもよりますが、百万とか、国庫負担の対象なら七十万とか、そういう数でございますので、全体から見るとそういう状況になっているということでございます。

田島(一)委員 今挙がった主事の数だけでも、全体の約一%ぐらいが教育委員会事務局に出向している。主事だけですから、それ以外にも当然、課長職それからそれ以上の職で出ていただいている方もいらっしゃいますし、中には、前の文部科学委員会でも指摘をしたとおり、教育長の学校教員出身者が非常に多く占めている、ほとんどだというようなことも示したとおり、事務局に出向している教育職員の数というのはやはり相当に上ってきているということを今お示しいただいたところであります。わずか一%と見るのか、それでも一%いるというふうに見るのか、これはやはり大きいところがあります。

 実は、この教育委員会の事務局に出向している教員が、今回の免許更新制で心配をしている点が一点あります。十年目という節目にもし教育委員会事務局に出向していたとするならば、いわゆる更新の三十時間の講習で絶対的な不利が生じる、そんな声が上がっているんですね。教壇に立てない、立つことが物理的に不可能でありますから、一年や二年教壇に立たないということの不安が先立つ、そういうことを私は地元で聞いてまいりました。

 実際に教壇に立つことの間にブランクがあいてしまうと大変やりにくいということは、多分、経験値からしても、おっしゃる意味は私は理解をできますし、例えば、教育委員会事務局出向が解けて教育現場に戻る際にも、きちんと現場復帰ができるかどうか不安だという声も私も聞きました。

 そう考えると、十年目の節目にこういう事務局に出向しているということがもし起こったとするならば、すごく不平等が生じてしまうのではないかということも実は危惧するわけですけれども、その点についてどのような手を打たれるつもりなのか、お聞かせいただけますか。

銭谷政府参考人 まず、免許更新講習は、日々職務を支障なくこなして努力をされている多くの教員の方であれば、通常は、三十時間講習をしっかり受けていただければ修了できる、そういうものを予定しているわけでございます。

 ただ、十年目の更新の時期に、やむを得ない事由によりまして有効期間の満了の日までに更新講習の課程を修了することが困難であると認められるときは、免許管理者は、その者の免許状の有効期間を延長することが、改正免許法の九条の二の第五項におきまして可能になっております。

 そういうものに通常該当するのは、出産とか病気とか、あるいは海外勤務などによりまして教育現場を離れている人についてはこの規定が適用できるのではないか、こういうふうにまず思うわけでございます。ですから、現場に復帰する直前に講習を受けていただければ、いわば更新ができるということにもなるわけでございます。その辺の法の運用につきましては、今後、基準等をお示ししていくということになろうと思います。

 なお、教育委員会に出向している職員につきましては、先ほど指導主事の例をお示しいたしました。数としては、やはり指導主事で教育委員会に出向する方が、先ほど申し上げましたように多いわけでございます。ですから、指導主事につきましては、法の九条の二の第三項の規定によりまして、例えば他の教員を指導する立場にある職員ということで講習受講の免除の対象とするということも今検討しているところでございます。

 いわば、指導主事というのは先生方をむしろ指導する立場、あるいはいろいろな研修などでも講師を務める立場でございますので、指導主事については、常に最新の知識、技能というものを身につけた方がその任に当たっているということや、ほかの教員を指導する立場にあるということで、免除の方向で今検討しているということでございます。

田島(一)委員 今の答弁ですと、指導主事は免除する。では、それ以外の社会教育主事だとか、それ以外、主事でない立場の方についてはどうなるのか。

 例えば、現場復帰していただく前に免許の更新をしていただくとおっしゃいましたけれども、しばらくは現場に立っていなかったんですよ。ブランクがあったわけですから、そこで免許更新の手続をとるとおっしゃっても、これは絶対的に、現場に立ち続けている人との差が生じてしまうじゃないですか。それをどう埋めるんですかと私は聞いているんですよ。どうですか。

銭谷政府参考人 先生、まさに免許の更新講習は、自信と誇りを持って教壇に立っていただけるようにするために、教育に関する最新の知識、あるいは教育内容とか、あるいは教育方法とか、そういうものについての技能というのを、講習を受けていただいて、そしてその講習によってそういうものを身につけていただいて、そしてまた十年間の免許の更新ができる、こういうものでございますから、ペーパーティーチャーの方も実は内定をしたら講習を受けていただくわけでございますから、教育委員会で働いている方とペーパーティーチャーはもちろん全然状況は違うと思いますけれども、まさに講習を受けていただいて、そして修了の認定をしていただくということでよろしいのではないかと思っております。

田島(一)委員 現場に立つ先生方ででも、いわゆるストレスや肉体的な疲労から疾病になるというケースは何度もこの委員会の中ででも出てまいりましたが、実は、教育委員会事務局に出向したことがきっかけでそういういわゆる疾患になられるケースというのも間々あるんですね。私の地元でも実はありました。

 こういう現状は何から起こるのかなと考えたとき、教育職員を目指して採用された先生方は、教壇に立つことしか考えていなかった、ところが、地元の校長先生や教育委員会、教育長から、教育委員会の事務局に来てくれと説得をされて入られる、自分は本当は嫌だけれども、頼まれたから仕方がない、そんな思いで出向されているケースがほとんどだというふうに実は聞きました。

 自分から手を挙げて教育委員会事務局に進んで出向を申し出る人、これは本当にまれだという状況らしいです。学校教員として採用されたのにどうして机に向き合って自分は仕事をしなければならないんだろうかというように考える先生方もいるようですね。これは、現実問題としてぜひ受けとめていただきたいと思うんです。私は、その点についてどうこうまず言うつもりもありません。

 しかし、教育委員会事務局に出向してデメリットばかりかといえば、私は決してそうでもないと思うんですね。いわゆる学校という閉鎖社会で子供たちと向き合うだけではなく、社会人として、また、大人といいますか一般の方々と接する機会は、何よりも教育現場よりもずっと多いわけですから、人間の幅を広げるにはちょうどいい機会だというふうに私は思っているんですが、残念ながら、それを受け入れることができない教育職員もいるという現実があります。そういう方々が、またこの十年の免許更新制とあわせて余計におかしな方向に行かないかな、そんなことを実は危惧するわけであります。

 この点については運用の部分で相当配慮をされるだろうというふうにも思いますけれども、どうか、いろいろな現実問題が起こっているんだということだけはしっかり御理解と認識をしておいていただきたい、そのことをぜひお願いしておきたいと思います。

 次の質問に入りたいと思いますが、国立大学附属学校の実態についてであります。

 先ほど申し上げました教育実習の問題とも重複するところがあるわけですけれども、教員養成課程の大学にはすべてこの附属学校が設置されています。養成課程以外にも設置されているケースがあるわけですけれども、現在の国立大学の附属学校はまず何のために設置をされているのか、概念として整理をしたいので、冒頭御説明をしていただきたいと思います。

清水政府参考人 附属学校設置の目的というお尋ねでございますけれども、附属学校は、教員養成大学・学部等に附属して、まずは、大学学部の教育に関する研究に協力するということが一点目、そして学生の教育実習の実施に当たるということを目的として設置されております。

 そのほか、各附属学校それ自体として、それぞれの学校の研究課題を設定して、教材研究あるいは授業研究を中心とする研究活動を進め、そしてその成果を他の公立学校等に、地域の学校等に提供する、こういう役割を担っております。

田島(一)委員 授業研究、それからまた学生たちの教育実習の場という位置づけであるということを今御答弁の中でおっしゃっていただきました。

 附属学校における教育実習生に対する対応の状況について、前回の委員会でも私例示をさせていただきました。文部科学省からちょうだいした資料をもとにして御紹介をした、例えば北海道教育大学では、三人に二人はこの附属学校以外で教育実習を受けているという実態であります。今とうとうとお述べをいただいた目的は十分に達成できているという実態には今ないと私は考えます。

 附属学校における教育実習の意義は一体どこにあるのか、改めて御説明いただけますか。

清水政府参考人 お尋ねのことに関しては、在学する学生の教員養成という全体の位置づけの中で、まさに教員としての資質、心構え、あるいは授業その他にわたる学校教育活動全体の課題にどう実際に取り組んでいくかということがその目的であろうかというふうに思っております。

 ちょっと補足させていただきますけれども、附属学校における教育実習は、例えば長いところでは十週間、平均で六週間から七週間という形で行われております。つまり、在学中の全学年を通じてどう体系的に行っていくかという中で、例えば、長いところ、十週間の例でありますと、まず大学一年次で、児童生徒の様子を観察する、そういうセミナー的なものを二日やり、二年次において、これは公立学校でお願いしているわけでありますけれども、教科学習、生活指導のサポートを通して理解を深めるのを一週間、そして三年次で、免許法において必修として定められている教育実習を附属学校で実施し、四年次では、その成果を踏まえてみずからの問題意識に基づく調査研究を行う発展的なもの、これは附属、公立、それぞれを選択して行うというような形で、附属学校だけですべてを行うというのではなくて附属学校あるいは協力校等とあわせて、全体として体系的に教育実習を教員養成課程の中に位置づけよう、こういう形で活用されているというふうに認識しております。

田島(一)委員 生徒の様子を観察することから始まって、自分自身の課題を研究する、その舞台が附属学校だという御回答を今いただきました。もちろん、その状況の中で設置をされていることは目的の中にも盛り込まれている話であります。

 しかし、本当に学生たちが生徒たちの様子を観察したり自分たちの研究テーマを深掘りするステージとしてふさわしい舞台かどうかを、もう一度これは考えなければならないと私は感じております。

 前回の委員会での質問の折に、私は、参考資料として、進学教室が発行している私立、国公立の中学校の入試の偏差値の一覧表をお配りしたと思います。あの中で、国立大学の附属中学校は、押しなべて高い、一、二の偏差値を示す学校として位置づけられておりました。レベルが高い、いわゆる頭がよくなければ入れないという位置づけで今日の国立大学附属学校は一般国民にも認識をされているところであります。

 教員養成課程ではない大学の附属であります筑波大学附属駒場中学校に至っては、首都圏に限ってですけれども、私立の御三家と言われている開成、麻布等に並ぶ、もしくはそれ以上の難易度を示しているという学校になりました。ふたをあけてみると、いわゆる首都圏内の一番優秀な児童が集まってきている学校として今もなおあり続けています。

 それだけ優秀な子供たちが集まっている学校で、それ以外の教員養成課程でもそれに準じたような傾向が見られますが、優秀な子供たちばかりが集まっているところが、果たして子供たちの様子を観察したり教育の研究をしたりするステージとして本当にふさわしいのかどうか、この点をもう一度私は考えなければならないだろう、教育改革と言う前に、前提として、私は直さなきゃならないんじゃないかなと考えますけれども、いかがでしょうか。

清水政府参考人 御指摘の事例は、必ずしも、附属学校全体を通じての傾向であるのかどうか、いささか、若干疑念もないわけではございませんが、まず一般的に、いろいろ事例を挙げられたわけでございますけれども、学校で、いわゆる御指摘にありました偏差値というのは、ある意味ではどういう生徒が志望しているかという実態をあらわしているものだろうと思っております。

 附属学校は、先ほど申し上げましたように、筑波大学附属駒場高校でございますと例えばスーパーサイエンスハイスクールとか、そういう形で、いろいろな形で、実習生を受け入れるだけではなくて、スーパーサイエンスハイスクールの指定を受けて、先駆的科学技術者を育成するための中高一貫のカリキュラム研究、教材開発、そういう実験研究の性格を担ったりしております。

 それぞれの学校はそれぞれの地域において、歴史と申しますか伝統と申しますか、そういう形で、ある意味での評価、人気というのも非常にございます。そして、先ほど申し上げましたような実験研究校、教育実習校としての性格という部分で、その役割を恒常的に果たしていくために一定の学力が求められるという現実もございます。

 そういう意味で、一般的にとは必ずしも思いませんが、それぞれの地域内において比較的そういう学力が高いと言われる児童生徒が集まってくる可能性というのは否定できないわけでありますけれども、それは結果としてということであろうというふうに思っております。

田島(一)委員 局長、その答えはちょっと無責任ですよ。現実にその実態をつくっているのは学校側の責任じゃないですか。高等教育局としてそういう実態は仕方がないとおっしゃっているけれども、では、どうして入学試験というのを実施されるんですか、中学校で。抽せんだけにすればいいじゃないですか。

 試験科目をごらんになられましたか。算数の科目、確かに難問奇問はありません。しかし、あの制限時間の中ですべて解ける子供が本当にいるのかなと思うくらい、すごいボリュームですよ。一度ぜひ、いらっしゃる方々も入学試験の問題をひもといてみてください。中学校の入学試験ですけれども、本当にびっくりしますよ。しかし、それがほとんど解けないと入れない、九割以上解けないと入れないとすら評価をする進学教室なんかもあるぐらいであります。

 頭がよい子でないと入れないというのが国立大学の附属学校だとするならば、今スーパーサイエンスハイスクール指定校とおっしゃいましたけれども、スーパーサイエンスハイスクールは何も筑波大学附属駒場高校だけじゃありませんよ。ほかにも全国にいっぱい公立高校があります。どうしても国立の附属校でしなきゃならないというような問題では何もないんじゃないでしょうか。

 これだけ優秀な子供たちを集めて、エリート育成の研究実験だと堂々とおっしゃるならば、それも一つのあり方かもしれません、実験ですから。しかし、今、現実に附属校のある現状というのは、エリートを養成して東大に何人入れるかみたいな、そういう現状が結果としてやはり出てきている。それがあるから、多くの受験生たちは、私立へ行ける家庭の環境の人たちがどっと押し寄せてきてしまっている。こういう問題が起こってきているわけですよ。

 今に始まった議論ではありません。附属校のあり方については、中教審等ででもずっと議論を続けてこられましたけれども、結論が出ぬまま、ずっと先送りで今日まで来ました。教育改革とおっしゃるならば、こういう現実の問題を解決せずして、私はこれは教育改革と本当に言えるのかな、そう思うわけであります。

 もっと端的な例を申し上げましょう。今例に挙げました筑波大学附属駒場高校、中学校、ここは共学校ですか。

清水政府参考人 男子校であると承知しております。

田島(一)委員 国立の附属が男子校である必要性というのは一体何があるんでしょう。私、ひょっとしてと思って調べましたら、お茶の水女子大学附属学校、あそこですら共学なんですね。(発言する者あり)共学です。駒場については男子校ですね。

 なぜ、教育に関する実験研究のステージが男子校でなければならないのか、お答えください。

清水政府参考人 今お尋ねの学校について、男子校として、その経緯については今つまびらかにしていないところでありますけれども、基本的に、それぞれの附属学校の設置の経緯あるいは目的、大学とのかかわり方という中で、どういう学生をどういうふうな形で受け入れるかということは、それぞれ、大学のあり方として決定されるべきあれだと思っております。

田島(一)委員 おっしゃっていることが矛盾していませんか。附属学校は何のためにあるのかと私一番最初に聞きましたよね。その学校の建学の精神だとかなんとかというのは私学の話で、国立大学の附属学校についてはそれは通用するんですか。

 一番スタートはどういう経緯だったか、それぐらいやはり調べておいていただきたいと思いますし、なぜ男子校でなければならないのかというふうに聞いているんです。客観的にお答えください、男子校でなければならない必要性はあるのかないのか。

清水政府参考人 申しわけございませんが、今、筑波大学のその経緯について、私、手元に資料を持ち合わせておりませんので、また後ほどお答えさせていただければと思います。

伊吹国務大臣 附属中学校、小学校のあり方については、いろいろ過去の経緯があると思いますので、よく調べて御答弁をさせますが、あるいは先生のところへお伺いさせます。

 今は、先生、これも、いいことと悪いことがいつも必ず起こるということを私が申し上げているのは、こういうことだと思うんですが、親方日の丸的な感覚でやってもらっちゃ困るので、国立大学法人にいたしましたね。ですから、今は、建学の精神の私立と同じように、彼らは国家公務員じゃなくなっちゃったわけですよ。どういう形で学校を運営するかというのは、少なくとも現時点では彼らの判断にゆだねられているということです。

 ただ、文部科学省として、教員養成の学校に附属をしている小中高等学校のあり方について、エリート養成校であっていいということは、先生がおっしゃっているとおり、そういう答弁というのは私は適切じゃないと思います。

 ただ、私の子供の例ですから必ずしも一般論に当てはまりませんが、ほとんど小学校を持っておるわけですよ。今中学校のことをおっしゃいましたけれども。率直に言って、小学校のときの子供の偏差値や能力なんてわかりません、幼稚園から小学校へ入るときは。ですから、私の子供のときは抽せんだったと思いますよ、小学校へ入るのは。

 そして、小学校へ入った連中がほとんどそのまま中学校へ行けるというわけではないんですが、先生がおっしゃったように、中学校で入ってきた連中と下から入ってきた人との間に明らかに学力の差があるんですよ。しかし、小学校から来た者も、そういう人たちに刺激をされて、いろいろ努力をして、そして何とか水準的に追いついていくという人もいる。

 だから、必ずしも中学校から始まる進学の附属校であるという感覚だけでは論じられないと思いますから、中学校、高校に在学している人がどの程度下から来たのか、どの程度試験で入ってきたのかということも踏まえて、先生の今の御指摘もよく考えて、余り経緯だとか何か実験校だとかということだけじゃなくて、実態、もう少し一般庶民の感覚で附属校をよく見させたいと思います。

田島(一)委員 国立学校設置法の施行規則第二十七条、冒頭、何のために設置しているかというところをひもといていただいたと思います。やはり目的は、児童、生徒、幼児の教育、保育に関する研究に協力し、及び当該国立大学または学部の計画に従い学生の教育実習の実施に当たることを目的としているんですね。ですから、その教育研究について、男子校でなければならないという理由は示されなければおかしいわけなんですよ。優秀な子供たちを集めなければ研究にならないということを示せなかったらおかしいわけですよね。

 おもしろい例が一つあります。東京大学の教育学部附属学校というのがあります。ここは実は実験校として双子の研究に随分熱心に取り組まれていまして、双子の児童生徒を優先的にとる。といっても、実は不合格になる、抽せん漏れするケースもあるんですね。そういうふうにわかりやすい研究をされているのであるならば、附属学校としてのレゾンデートルはしっかりと証明されると思うんです。

 しかしながら、偏差値だけはやたら高くする。先ほど大臣は、抽せんでお子さんは入られたとおっしゃいましたけれども、筑波大学附属駒場でも、中学校については競争率八倍を超えれば抽せんにしますとやっていますが、八倍を超えることはありません。受けてももったいないからみんな受けません。ですから、抽せんが行われたのはここ近年一度もないんですよ。ですから、国語、算数、理科、社会の四教科の試験一発勝負になるんですね。

 要は、優秀な子しか集めていないという現実を、先ほど申し上げた国立学校設置法の規則の第二十七条に違反しているんだということをしっかり文科省も認識をいただきたいんですよ。それをしないと、今申し上げたように、教育実習の実施もそうです、子供たちの様子の観察や研究についても何一つ、実態と乖離した研究しかできないということを私は認識をいただきたいんですね。

 一般の、それこそ公立の小学校や中学校で起こっているさまざまな問題が、同じように国立大学の附属学校で起こっているかどうか。以前、文科省で、大臣にお願いをして学校給食費の未納状況というのを調査していただきました。現場の先生には多くの負担をかけたのかもしれません。しかし、公立の学校では相当数が出てきて、結果、国立ではそういう問題はなかったですよね。それくらい家庭的にも安定をした人たちばかりが子供さんを送り込んでいらっしゃる。

 そして、受験となれば、東大に、それこそ六十人、七十人、八十人と現役で入っている。優秀だということは、それはそれで結論としていいことかもしれません。しかし、やはり入るための能力を持った人しか集めていないわけですから、これでは教育実習校として大学の研究に資することではないんだという現実をぜひ照らし合わせていただきたいし、この世の中は半分は男性、半分は女性です。それである中にもかかわらず今や男子校だということ自体が私はどう考えても腑に落ちない点でありますので、ぜひ、先ほど答弁いただいたように、もう一度この問題点をきちっと整理していただかなければならない。もっと言うならば、この問題を整理せずして、今の教育改革というのは本当に論ぜられるのかなとさえ私は思っておりますので、その点、ぜひ酌み取っていただきたい。お願いをしておきたいと思います。

 今回のこの附属学校の問題ででも今明らかにさせていただきましたが、なぜ国立大学の附属学校がこれだけ進学校化してしまったのか。これはもちろん、社会全体が受験に対して非常に過熱ぎみであることがその根底にあるのだというふうに思います。

 この過熱する受験競争の緩和という問題については、今始まった問題ではありません。平成八年の中教審の当時から議論を重ねられてきた課題でありますが、残念ながら、今なおこの過熱した受験競争が緩和されるということはないまま進んできています。本当ならば、国立大学附属学校などが先頭を切ってこの過熱する受験競争を緩和させる手だてをとらなければならない、そういう立場にあると私は思うのですが、逆にそれをあおっているような状況があるから、今、この附属学校の問題も取り上げさせていただきました。

 今回のこの教育基本法改正に端を発し、三法の改正、私よくよく考えますと、今の社会がいろいろと生み出してきた課題、例えば格差の是正とかも含めてなんですけれども、そういう問題の根底にあるものを解決せずして、教育三法の改正、教育基本法の改正だけで本当にこの世の中が住みよく、また豊かになれるのかな、そんな気持ちを改めてこの質問を考えながらとらえてきました。いいです、聞いてください。

 もちろん、教育に関するさまざまな問題は、大臣も御承知のとおり、私たちも、いじめによる自殺や家庭内におけるいろいろな問題、殺人事件等々、教育の果たす役割の大きさを感じながら今日まで議論を重ねてきたところであります。

 例えば、与党の方からも、教育改革全体を論じるときに、愛国心を盛り込むべきだ、そして、大学の九月入学制、また、社会奉仕活動を制度として導入しろ、そして義務教育年限の前倒しなどが議論をされているというふうに聞いておりますけれども、どれもこれも、実は法律で義務づけるような中身なのかなとさえ思えるものばかりだと私は思います。

 例えば九月の入学問題などは、これは、第二次中曽根内閣時代に既に臨教審で議論をされていた、二十年前の話であります。社会奉仕活動の制度としての導入も、諸外国でもう既に先駆的に取り入れられていますし、義務教育年限の前倒しについても、それこそ、幼保一元化という五十年来の課題が具体的に解決の方向を見出せないまま、前にも進んでいない状況があります。

 やはり、こうした課題を何とかすれば今の教育は立て直せるんだと短絡的に考える前に、私は、それこそ、小泉さんが残した財政改革や地方分権、規制緩和の後始末として、生じてきた格差是正が何より大切なのではないかなというふうに実は思っているところであります。青少年健全育成、この課題についても、それこそ、教育以前の社会全体の問題としてメスを入れていかなければならない課題だと思います。もちろん教育も、その担わなければならない重要な分野の一つだというふうには認識をしています。

 しかし、今前段に申し上げたように、受験に対して過剰な意識を持っているこの日本人の感覚、ここにメスを入れない限り、私は、この教育改革が完遂できることは不可能なのではないかなとさえ実は思っています。学校で成功すれば人間として将来も成功が約束されている、そんな意識を持って、日本の社会では学校が支配をしてきたと言ってもおかしくないような現状があります。受験競争はよくないと多くの方は語りますが、いざ自分の子供を見たときには、いい学校へ入ってほしいという自我がどうしても働いてしまいます。

 このような葛藤の中で、私たちも、親としてまた政治家として、教育とはいかにあるべきか、そして、今日の、学ぶということはどうあるべきかと議論を重ね続けてきたところでありますが、いまだに結論には私は至っていないように思います。学歴社会がどうあるべきなのか、また、この社会を構築している有能な人材そしてまた能力が別の分野ででもしっかりと自分の持ち味を発揮できる、バランスのとれた社会を構築したい、そう考える中ではありますが、残念なことに、今の教育は学歴社会を補強するばかりではないか、そんなふうに思えてならないのであります。

 まだまだこの議論が途中の段階で、私は、繰り返し繰り返し教育改革については大臣とまた与野党を超えて議論をしていかなければならないというふうに考えますが、先ほど引用した国立大学の附属学校の受験校化の問題も含めて、この学歴社会にメスを入れていかないと、私は教育改革は完成しないのではないかというふうに思います。

 学歴社会の現状、平成八年から中教審等ででもずっと議論をされてきましたけれども、今なお明確な方向には至っていない。一たんはゆとり教育という答えに導かれたところもありましたが、それがまた引き戻されるということで、結果的にいえば、子供たちが右往左往しているような、そんな現状にも私は見えてなりません。全体として教育が揺れ動いていると言われておりますけれども、果たして、この学歴社会という観点からとらえたときには何をやらなければならないとお考えなのか、大臣の御見解をぜひ聞かせてください。

伊吹国務大臣 今先生がお話しになったことは、私は、半分は現状認識として賛成です。しかし、小泉首相がやってきたことの後始末をしなければというお話がありましたが、まさにここで、多分先生の持っておられる政治的な理念と安倍さんや私が持っている政治的な理念が大きく違うんだと思います。

 それは、民主党という政党も、市場経済と民主主義というものを前提にして物を考えておられる政党だと私は思っておりますが、そうじゃない方も一部おられるのかもわからないけれども、しかし、その前提に立てば、市場原理と自由競争主義というのは、国家国民を幸せにしていく主義主張としてはやはりこれしかないというのが人間の歴史の証明なんですね。今、それでは社会主義や共産主義で、発展をして、国民所得が上がって、一人一人の可処分所得が上がって、豊かになった国というのは一つもないんですよ。

 ですから、市場経済、競争原理というのは、やはり人間の本性に一番合った仕組みで、これしかない制度なんだけれども、多大な欠点があるんです。どうしようもない副作用があるんです。しかし、これを使わねばならない制度なんですよ。どうしても避け得ない副作用があるからといって、社会主義、共産主義、計画経済をとった国で発展した国はやはりないんです。

 これを正していくためにどういう方法があるかというのは、常に、政治の理論の中で二つの対立する考えがあります。

 一つは、市場はやはり一番効率的に資源を配分する制度なんだけれども、しかし、効率とか利潤以上の価値を配分できないから、政府がそこへ積極的に入っていって、その欠陥を正していこうというやり方が一つありますよ。これは、ケインズとか、いわゆるリベラルという思想です。

 しかし、もう一つは、市場経済、自由競争というのは、これしかない仕組みなんだけれども、そこから出てくる嫌な欠点というものを人間の力によってこれを抑制していく。これがハイエクとか、いわゆる保守主義的な政治思想なんですね。

 小泉さんがとったのは、私は、あのときとしてはやむを得ない、バブルの後の効率的な金と物の配分としてはやむを得ない対処療法的劇薬を投与されたわけですよ。そこで今欠点がたくさん出てきている。その欠点を正すのは、やはり、負けたからといってもうこれで終わりだと思わない人間をつくる、勝つためには何をしてもいい、勝ったからといって偉いんだと思わない人間をつくる。そのために教育改革をやっているわけですから。教育改革というのは、まさに格差だとか何かが嫌な形で出てこないために、長い将来を展望しながら今この作業に取りかかっているということなのです。

 私は、リベラル的思想はとりません。リベラル的思想というのは、残念だけれども、大衆民主主義と一緒にこの制度をとった場合には、必ず票を入れてあげるからといって、一部の人が努力をした人の税金を簒奪していく制度ですから、私は、やはりその制度はとりたくないと思う。

 やはり、よき人間をつくって、そして市場経済と自由主義のやむを得ざる副作用を抑えていく。その結果が出てくるのは随分長くかかるかもわかりませんよ。だから、ここは、あるいは政府が介入して格差をどうしろとかああしろとかと、小沢さんの「日本改造計画」には、前には全く逆のことが書いてあったんですから。ですから、ここのところは、お互いの主義主張ですから、これは幾ら議論し合っても私は接点が出てこないと思いますよ。(田島(一)委員「学歴偏重について」と呼ぶ)

 学歴偏重をしないような人間から成る社会をつくらなければしようがないんでしょう。

田島(一)委員 冷静に議論をしたいなと私は思っております。

 やはり、価値観が多様化してきた、人生観も多様化してきたということを私たちは前提にしていかなければならない。そのために、もちろん職業観についても多様性を受け入れられるような、そういう人々をつくっていくことが大切だ。だからこそ、この学歴偏重に対して、受験競争に対しては危機感を覚えなければならないなというふうに私は思うわけであります。模範解答のつもりで言ったわけではないんですけれども、ぜひ大臣、現実から目をそらさない、そういう改革に私は着手をしていただきたいと思うわけであります。

 対処療法として劇薬をとおっしゃいました。確かに私もそんな印象を実は持っておりますが、その責任だけはやはりきちっととっていただくのが政府の責任だと僕は思います。その点はこれからいろいろな分野でまた議論をさせていただきたいと思いますので、時間が終わりましたから、これで質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党、横山北斗です。

 民主党は、教育再生に関して、教育の最終責任は国である、これを日本国教育基本法に明記しました。

 それで、教育に限らず最終責任を負うところがなければ問題は改善されていかないだろうということで、政府は、自民党は、あくまで教育委員会に教育の責任をというお考えのようです。しかし、その教育委員会が今しっかりと機能しているのかといえば、そうではない状況がある。そのために改正をするんだという運びになっているのだと思います。政府の改正案の中で、教育委員会について、果たしてそれがいい方向に行けるものなのかどうなのか、法案に問題があるのかないのかということで、問題が改善されていくのか、再生が進むのかということが大きく左右されてくると思います。

 きょうは、その点で、教育委員会ということについて、地教行法について、そもそもというところから質問をしていきたいと思います。

 まず、今回、改正案において、保護者の選任を義務化しようとしております。現行法においても、保護者の選任については努力義務の規定があります。平成十二年の教育改革国民会議の報告による提言を受けて、平成十三年の改正によってそれは定められました。

 この保護者選任の義務化ということをこれから質問していきますが、その前に、教育委員会とはどういうものなのか、教育委員にはどのような役割を期待されているのか、どういう人材が求められているのか、まずそこからお答え願いたいと思います。

銭谷政府参考人 教育委員は、地教行法の第四条第一項によりまして、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有する者のうちから任命されることとなっております。教育行政に深い関心と熱意を有し、大局的な立場に立って教育行政の方針や重要事項を決定し得る識見と能力を有することが必要であると考えております。

 今回の地教行法の改正案第十一条の第六項におきまして、教育委員の責務として、教育委員としてみずからが地域の教育行政運営について負う重要な責任を自覚すること、新設をする第一条の二の地方教育行政の基本理念に則して教育行政全般の運営が行われるよう配慮すること、こういったことを規定いたしまして、こういう任命をされた教育委員の方が合議制の教育委員会の事務執行にしっかりと当たっていただけるようにしたところでございます。

横山委員 それでは次に、教育委員の選任についてお尋ねします。

 教育委員は、旧教育委員会法のときは公選制という時期がありました。その後、現在は首長の任命制になっていますけれども、この教育委員選任のこれまでの歴史的な変遷についてお尋ねいたします。

銭谷政府参考人 教育委員の選任の方法については、ただいまお話があったとおりの変遷でございます。

 昭和二十三年に制定をされました旧教育委員会法におきましては公選制が採用されておりまして、教育委員の選任に直接民意を反映することができる選任方法でございました。反面、教育委員会の場に党派的な対立が持ち込まれたり、投票率が非常に低い場合に十分に民意を反映した選任がなされていないといったような批判もあったわけでございます。

 このため、昭和三十一年に、現在の地方教育行政の組織及び運営に関する法律が制定をされたわけでございますけれども、その際、教育の政治的な中立と教育行政の安定性の確保の観点から、この地教行法の四条によりまして、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命をするということになったわけでございます。その選任方法が現在に至っているわけでございます。

横山委員 それでは、その教育委員の現在の実態についてお聞かせください。

 今、二千弱程度の自治体がある中で、教育委員の数がどれぐらいいるのか、その平均年齢など、お尋ねいたします。

銭谷政府参考人 文部科学省では、二年に一度、地方教育行政調査を行っておりまして、直近のデータが平成十七年の五月一日現在のデータでございます。

 この平成十七年五月一日現在の状況でございますが、全国の、教育長を除きます教育委員の総数は、都道府県教育委員会が二百三十三人、市町村教育委員会が九千八百八十人、合わせまして一万百十三人という数でございます。また、これらの教育委員の平均年齢でございますけれども、都道府県教育委員会では六十・七歳、市町村教育委員会では六十一・七歳という状況でございます。

横山委員 この教育委員というのは非常勤の地方公務員という位置づけがなされておりますが、教育委員はほかにもさまざまな職を持った人たちで構成されていると思うんですけれども、どういう職業を持った人が多いのでしょうか。

銭谷政府参考人 教育委員の職業でございますけれども、まず都道府県の教育委員会について申し上げます。職業が医師、弁護士、大学教員、こういった職業の方が都道府県の教育委員会の委員のうちの四一・二%でございます。それから会社役員等という範疇に入る方が四二・九%でございます。それから無職の方が一四・六%でございます。

 一方、市町村の教育委員会の教育委員について申し上げますと、実は無職の方が割合としては一番多うございまして、三七・一%でございます。もちろん、それまでの間いろいろなお仕事をしていた方だと存じますけれども。次いで、先ほど申し上げました医師、弁護士、大学教員等の方が二〇・四%でございます。それから、会社役員等の方が一八・七%、それから農林漁業等を営んでいらっしゃる方が一三・八%。大体こういった職業についている方が教育委員になっているということでございます。

横山委員 それで、今回の改正案で、教育委員に保護者を含むことを義務化する規定を盛り込みました。それは、保護者を含んだ方が教育委員会の運営にとってより効果的であるということだからだと思うんですが、これを規定した趣旨について少しお聞かせ願えないでしょうか。

    〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕

銭谷政府参考人 先ほど先生からもお話がございましたように、平成十三年の地教行法の改正によりまして、現在、第四条第四項におきまして、委員の任命に当たりましては、委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないよう配慮をするとともに、実際に教育を受けておられる子供を持っておられる保護者の意向の把握に資するために、委員のうちに保護者が含まれるよう努めることとする旨の規定を設けたところでございます。

 今回の地教行法の改正案におきましては、さきの中央教育審議会の答申等も踏まえまして、この第四条第四項を改正して、特に、子供を今現に教育をし、また学校で、あるいはいろいろな場で教育を受けている子供をお持ちの保護者の意向ということがきちんと反映されるように、そういう趣旨から、委員の任命に際しましては、保護者が含まれるようにしなければならないということとしたものでございます。

横山委員 似たような質問になるかもしれませんが、その平成十三年度の法改正でも、既に保護者を含む努力義務が課されているわけですね。その努力義務の効果については、ではどうであったとお考えでしょうか。御意見をお聞かせください。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、保護者を教育委員に含めることが努力義務化されましたのは平成十三年でございます。その平成十三年の改正以降、都道府県、市町村の教育委員会における委員のうちに占める保護者の割合は増加傾向にございまして、努力義務の規定の効果があったというふうに考えております。

 ちょっとデータにわたって恐縮でございますけれども、数字をお話しさせていただきますと、都道府県の教育委員会の教育委員のうち保護者の占める割合でございますけれども、平成十三年は一〇・三%でございました。委員十人に一人は保護者であったということになろうかと思います。これが、平成十五年は一四・七%、そして平成十七年は一六・三%、六人に一人ぐらいになったということでございます。

 市町村の方は、平成十三年が一二・一%、八人に一人ぐらいの割合で委員の中に保護者の方がいらっしゃったわけですけれども、平成十五年が一三・八%、平成十七年が一四・五%、七人に一人ぐらいの割合になっているということで、保護者の方が教育委員に占める割合というのは増加傾向にございます。

横山委員 ということは、義務化しなくても、努力義務でも効果があったということなんでしょうか。それから、この保護者の委員に占める割合、今お聞きしましたけれども、今回の改正案でどれぐらい、では数字を上げていこうとお考えなのか、お聞かせください。

銭谷政府参考人 今回の改正は、各教育委員会におきまして、その教育委員に必ず保護者の方が含まれるようにするというものでございますから、今後、現在教育委員の中に保護者の方がいらっしゃらない教育委員会については、委員の改選の時期に当たりまして保護者の方を選任するというふうにしていただく必要があるわけでございます。まだ保護者の方が委員にいない都道府県、市町村もあるわけでございますし、今後、そういう市町村におきましては、あるいは都道府県におきましては、保護者の方を教育委員に選任をしていただくようになります。

 ただ、教育委員というのは、各教育委員会ごとに見ますと、大体五人あるいは六人という数でございますので、その五人ないし六人の中にお一人以上保護者の方が含まれているということを、私ども、今回の法律改正で実現していこうとするものでございます。

横山委員 市町村や県で保護者がまだ入っていないところのパーセンテージというのはわかるのでしょうか。お聞かせください。

銭谷政府参考人 これも平成十七年のデータでございますけれども、都道府県の教育委員会では、約三分の二の教育委員会で保護者の方が教育委員になっております。それから、市町村の教育委員会では、五割弱といいましょうか、四十数%だったと思います。保護者の方が教育委員になっている市町村は四十数%という状況でございますので、都道府県につきましては残りの三分の一、それから市町村につきましては、五割強の市町村におきまして、今後、教育委員の選任に当たりまして、保護者の方が任命されるようにしていただくということになるわけでございます。

横山委員 ということは、現段階で半分以下という状況の中で、平成二十年四月には一〇〇%にするということでしょうか。

 その場合の、文部科学省として、こういうふうに法律が変わったよと言うだけなのか、何かそれを下支えするような策があるのか、その点について、もしお考えがありましたらお聞かせください。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますが、教育委員会は原則五人の委員で構成をされ、今回の改正案は、そのうち少なくとも一人は保護者の方が委員とならなければならないという趣旨でございます。ですから、教育委員に占める保護者の割合というのは、おおむね二〇%程度ということにまずなるわけでございます。

 問題は、まだ保護者の方が委員になっていない都道府県、市町村についてでございます。

 今回の地教行法の改正案では、地方公共団体の長が教育委員を任命するに当たりましては、「保護者である者が含まれるようにしなければならない。」こういう規定ぶりにいたしております。任命するに当たっては、「保護者である者が含まれるようにしなければならない。」というふうに規定をいたしております。

 したがって、改正後の施行時に保護者が委員に含まれていないことをもって違法というものではございません。保護者を任命していない教育委員会におきましては、改正法の施行後、初めて委員が選任される際に保護者を任命することにする必要がある、こういう規定ぶりでございます。

 先ほど来御説明をいたしておりますように、平成十三年以降、保護者である委員の数は増加傾向にございまして、文部科学省としては、この地教行法の改正法案を国会においてお認めをいただいた場合には、保護者である委員の任命が適切に行われますように、各都道府県、市町村に対しまして、こういう改正が行われましたということの周知に努めてまいりたい、こう思っているところでございます。

横山委員 教育委員というのは相当な責務を課せられるわけですが、保護者ということが一つの要件になって、それをただ、一人は加えなければいけないということで、教育委員に、教育の責任があるという、それにふさわしい人材を確保できるかどうかということに関して、やはり人口の多いところとかそうでないところとかもありますけれども、そういうことも含めて、改正の際にもししっかりとした人が確保できなければ、それは違法だということになっていくのでしょうか。そういうことに対しての対策とか配慮とかはあるのでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げております教育委員の数についてのデータ等は、平成十七年の五月一日現在の地方教育行政調査のデータを申し上げているわけでございます。その後、御案内の市町村合併ということが急速に進んでおりまして、教育委員会の数も、実は随分今減りつつあるわけでございます。県は別ですけれども、市町村の教育委員会の数は。

 また、今回の地教行法の改正案におきましても、いわゆる市町村段階における教育行政の体制の強化ということで、一部事務組合等、その広域化、教育委員会の広域化等も規定を設けてお願いをしているということがございます。それぞれの市町村の教育委員会の地力をつけていきたい、つけていただきたい、こう私どもは思っているところでございます。

 なお、教育委員につきましては、先ほど冒頭に、委員にどういう方が任命されるかということは申し上げたわけでございますけれども、必ずしも教育行政の実際の運用について専門的知識や経験を有する必要はないわけでございまして、教育、学術、文化について識見を有する方、こういう方に教育委員になっていただくわけでございます。レーマンコントロールというふうな思想というのもその背景にございます。

 したがって、各市町村の教育委員会におきまして、規模の大小はまだあろうかと思いますけれども、その保護者の方に、これはやはり私は、適材というのは見出すことができるのではないか、こう思っておりまして、各地方公共団体に対しまして、適任者を見つけて教育委員に任命していただけるように、先ほど申し上げましたように、今回の改正後の法の趣旨というものについて周知をしっかりと行っていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

横山委員 保護者というときに、常識として保護者というのはどういうものだということはあると思うんですけれども、人材確保のために保護者の定義を変えると言ったら変かもしれませんけれども、こういう人も保護者みたいなものだというような格好でいうことはないのかどうか。実際に学校に子供を行かせている人が保護者であるということで、その点は、改めてお聞きしますけれども、よろしいわけでしょうか。

銭谷政府参考人 今回の改正案におきましても、保護者の定義を変えているということはございません。四条の四項に書いてございますように、保護者というのは「親権を行う者及び未成年後見人をいう。」ということでございますので、子供さんが教育を受けている、そういう方の保護者ということになるわけでございます。

横山委員 それでは、次の質問に行きます。

 改正案において、市町村教育委員会の事務局に指導主事を置くように努めなければならないとの規定が設けられております。

 まず、指導主事について、地教行法によりますと、「教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事する。」こうなっておりますけれども、指導主事が具体的にどのようなことをやっているのかについてお聞かせください。

銭谷政府参考人 指導主事につきましては、地教行法の十九条三項に規定がございまして、「指導主事は、上司の命を受け、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事する。」というのがその職務となっております。

 お尋ねの、具体的な仕事の内容でございますけれども、まず、一番典型的な仕事としては、教育委員会の計画に基づきまして、あるいは学校からの要請に応じまして、直接学校を訪問いたしまして、当該学校の教育課程の編成や学習指導、生徒指導などにつきまして、校長あるいは教職員に対しまして指導を行うというものが典型でございます。

 これは、今申し上げましたように、教育委員会の計画に基づいて訪問するのを、これを計画訪問というふうに称しておりまして、毎年、年度の初めに域内の各学校をこういう計画で訪問して、今申し上げたようなことを指導するといったようなことでございます。

 それからもう一つは、学校からの要請に応じて学校を訪問するというような場合、これは学校の方から、研修会をやるから指導に来てほしいとか、あるいは学校で今ちょっと問題が起きているのでアドバイスに来てほしいとか、いろいろなケースがあると思いますが、これを要請訪問というふうに称しております。これも、指導主事さんとしては大変大きな仕事でございます。

 それから、以上申し上げましたような学校訪問以外に、教育委員会の専門的な職員でございますので、各種の教員研修会の開催に従事したり、あるいは学習指導とか生徒指導に関する手引書等の作成に関与したりする、そういう仕事を行っております。

 この指導主事は、ちょっと長くなって恐縮でございますけれども、戦後できた制度でございまして、いわば指導助言という立場から職務を行うわけでございます。当時は、教育の世界に、いわば学校に、そういう専門職としての、感激を供与するといったようなことが、当時設けられたときの一つのキャッチフレーズであったというふうに記憶をいたしております。

横山委員 それでは、中教審の報告では、ずっと、指導主事の配置は教育委員会事務局の強化に必要であると提言されてきたわけですけれども、各都道府県の教育委員会、各市町村教育委員会への配置状況についてはどうなっているでしょうか。

銭谷政府参考人 指導主事の配置の状況でございますけれども、都道府県の教育委員会につきましては、地教行法の第十九条の規定によりまして、必ず指導主事を配置することとなっております。したがって、現在、すべての都道府県の教育委員会に指導主事が配置をされております。平成十七年の五月一日現在の数でございますが、都道府県教育委員会の指導主事の数は、合わせまして四千六百二十八人でございます。

 それから、市町村の教育委員会につきましては、大変残念ながら、すべての市町村に配置をされているというわけではございません。数としては、市町村の教育委員会の指導主事は四千九百三十三人おりますが、今申し上げましたように、配置をされていない市町村があるのも事実でございます。

 したがいまして、都道府県の教育委員会に配置をされている指導主事と市町村の教育委員会に配置をされている指導主事を合わせますと、現在、九千五百六十一人の指導主事が配置をされているということに相なります。

横山委員 小さいところには配置されていないということですけれども、先ほど言った市町村合併とかいろいろな過程を経て、人口別の配置率とかそういうようなことというのは今後決めていくのか、あるいは今でもあるのか、その点についてはお聞かせ願えないでしょうか。

銭谷政府参考人 指導主事の配置につきましては、都道府県、市町村の人口に応じて、あるいは子供の数に応じて、さらには教員の数に応じて何人、そういう配置基準というのは特段ないわけでございます。

 ちょっと実態で御説明を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、都道府県の教育委員会には、すべての都道府県の教育委員会に配置はされている。市町村について申し上げますと、人口三十万以上の市町村につきましては、これは、その教育委員会には、指導主事は一〇〇%の市町村に配置をされているということでございます。人口規模が三十万未満の市町村の教育委員会では、人口が少なくなるほど、指導主事の配置率、それから配置をした場合の一教育委員会当たりの配置の人数、これが減少するという傾向がございます。

 ちょっとデータだけ申し上げて恐縮でございますけれども、先ほど、三十万人以上は、すべての教育委員会に配置をされていると申し上げましたが、この三十万人以上の教育委員会の一教委当たりの指導主事の配置人数というのは二十・八人でございます。ですから、このぐらい指導主事がおりますと、各教科それぞれについて、あるいは、各領域と呼んでいますけれども、生徒指導とか進路指導とか、こういう分野にそれぞれ得意とする指導主事が配置できるということになるのかなと思います。

 それから、人口三万人以上三十万人未満が、平成十七年五月一日現在で、教育委員会数としては七百十三あるのでございますけれども、配置率は、指導主事がいる教育委員会は八割でございます。二割のところには指導主事がいないという状況でございます。

 そして、人口三万人未満の市町村になりますと配置率が二八・四%でございます。この教育委員会は、平成十七年五月一日現在で千五百九十七ございました。実は、町村合併等によりまして、この三万人未満の教育委員会というのは減少傾向にございますので、十九年度、また調査をするわけでございますけれども、町村合併等もあって、市町村における配置率というのは、これは改善はされる傾向にあるというのは事実かと思います。

横山委員 改善に期待するということで、中教審が議論の中で出していたような義務化ということは特別今後も考えないということでよろしいでしょうか。

銭谷政府参考人 今回の法律案の提出に当たりまして御審議をいただきました中央教育審議会におきましては、審議の過程で、市町村教育委員会にやはり指導主事を置かなければならないこととすべきとの議論がございました。ただ、小規模市町村の教育委員会の体制強化は必要ではあるけれども、やはり地方の自主性ということもあるので強制はできないんじゃないかとか、実態を踏まえ、配置についての条件整備、これをまずやるべきではないかといったような、こういう御議論もございまして、最終的に、答申におきましては、「市町村教育委員会は指導主事の設置に努めるものとする」という旨の内容になったということでございます。

 文部科学省といたしましては、この中央教育審議会の答申を踏まえまして、今回の地教行法の改正案の立案に当たりましては、市町村教育委員会がその事務局に指導主事を置くように努めることを明確にするということにはいたしたわけでございますが、市町村教育委員会に指導主事を置くことを義務化するということまではしなかったというものでございます。

横山委員 それでは、首長部局への指導主事の配置についてお尋ねします。

 昨年のあの必修科目の未履修の問題につきましても、私学を担当する首長部局に専門的な知識を持った職員が配置されていなかったということに問題の原因を求める声もあります。今回の改正案で、首長部局の求めに応じてのみ教育委員会が専門的事項の助言、援助ができるという、非常に回りくどい規定になっているように思うんですが、知事部局への指導主事の配置を義務化すればいいのではないかなと思ったりもするんです。それとも、これは法的に何か問題でもあるのでしょうか。

 なぜ義務化しなかったのでしょうか、お尋ねいたします。

銭谷政府参考人 私立学校も公教育の一端を担うものでございますので、国会が定めた法律を遵守いただき、必履修科目については履修をしていただくということは必要なこと、当然のことだと思います。法律が遵守をされない場合には、私立学校の所轄庁である知事部局におきまして、指導助言を行うなどきちんと対応していただく必要があると思います。

 しかしながら、実際には、実態としてはと言った方がいいかもしれませんけれども、知事部局における体制が整っていないということもございまして、ただいま先生お話がございましたように、今回の地教行法の改正案におきましては、第二十七条の二におきまして、私立学校の建学の精神にも配慮をして、知事が、教育委員会が有する学校教育に関する専門的知見を活用することができるように規定を整備したわけでございます。

 それに加えまして、総理からも御指示をいただきまして、知事部局に学校教育に関する専門的知識を有する者を配置するなど、体制の充実を知事に促すように御指示をいただいているところでございます。

 この職員の配置を義務化するということにつきましては、地方分権の観点等から、あるいは財政上いろいろ難しいこともございますので、私ども、通知等によりまして、知事部局への学校教育に関する専門的知識を有する者の配置を促しまして、私立学校が全国、全学校一律の法律上の義務を担保できるように努力していきたいというふうに思っているところでございます。

    〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕

横山委員 わかりました。

 それでは、次の質問に行きます。

 広域教育行政体制の推進ということについてお尋ねします。

 市町村は、近隣の市町村と協力して教育委員会の共同設置等の連携を進め、地域における教育行政の体制整備、充実に努める、文部科学大臣及び都道府県教育委員会は、必要な助言、情報の提供などの援助を行うよう努めるという規定が改正案に盛り込まれております。

 現在、広域的行政を行う手法として、一部事務組合、全部事務組合、広域連合、役場事務組合などがあるとされておりますけれども、それぞれの概略、現在その広域教育事務が行われている数などについてお答えください。

銭谷政府参考人 ただいまお話のございました地方公共団体の事務の共同処理の方式につきましては、地方自治法に規定をされているわけでございます。

 まず、一部事務組合でございますけれども、これは地方自治法の第二百八十四条の二項に規定がございます。この一部事務組合は、地方公共団体が事務の一部を共同処理するために設ける特別地方公共団体でございます。平成十八年五月一日現在では、教育事務に関しては、この一部事務組合は百五の組合が存在をいたしております。

 どういう一部事務を行っているかということでございますけれども、内容としては、例えば学校の共同設置管理とか、あるいは教員研修などを事務組合をつくってやるとか、あるいは学校給食などについてこういう一部事務組合でやっている事例が多いわけでございます。

 それから、広域連合でございますけれども、これは地方自治法の第二百八十四条の三項に規定がございます。この広域連合は、地方公共団体が事務の広域的な処理のために設ける特別地方公共団体でございますが、これは、平成十八年五月一日現在で、教育事務に関しては、この広域連合というのは存在をしておりません。

 それから三つ目に、機関の共同設置でございますが、これは地方自治法の二百五十二条の七に規定がございます。これは、複数の市町村が共同して教育委員会などの執行機関を置くというものでございます。これも、教育事務に関しては、機関の共同設置は一つ事例がございます。岐阜県の笠松町と岐南町、この二つの町が羽島郡二町教育委員会というものを共同設置しているという例が、これは平成十八年五月一日現在の話でございますが、あります。

 それ以外、先生からお話がございました全部事務組合、これは地方自治法の二百八十四条の五項、それから役場事務組合、これは地方自治法の二百八十四条の六項に規定がございますけれども、これらの組合が組織された実際の例はないというふうに承知をいたしております。

横山委員 改正案ではこの広域教育行政の推進の規定が盛り込まれておりますけれども、今回、このような規定を新たに設けた理由、趣旨について、もう一度確認をしたいんですけれども。

銭谷政府参考人 先ほど来お話をさせていただきましたが、例えば教育に関する専門的職員である指導主事一つを取り上げてみましても、まだ指導主事が配置されていない市町村があるなど、市町村における教育行政体制、特に小規模な市町村における事務局体制というのが極めて脆弱であるということが課題になっております。一方で、市町村教育委員会の果たす役割は大変大きいものがありますし、今後も強まるわけでございます。

 こういったことから、中央教育審議会におきましては、市町村の教育委員会に対しまして、市町村において広域事務を処理できるようにする旨提言をいただいているところでございます。今回の地教行法の改正案の第五十五条の二におきましては、市町村は、近隣の市町村と協力して地域における教育の振興を図るために、教育委員会の共同設置などの連携を進め、地域における教育行政の体制の整備充実に努めるものとするということで、市町村における教育行政体制の強化という観点からこのような規定を設けたものでございます。

横山委員 今回の改正案全体を見た限り、大規模な地方公共団体に対して、この点では有利な事項が数多く盛り込まれているように思われます。例えば教育委員の数の弾力化については、人口が多く、人材が豊かな自治体が有利だと思われますし、指導主事の配置も、財政的に豊かな自治体の方が配置しやすい。教育委員会の評価についての学識経験者の知見の活用についても、そういう人材が多いと思われる大きな自治体の方が有利なのではないか。

 そういう点で、小規模市町村が広域教育行政体制というものを受け入れれば教育委員会の弾力化や活性につながるというようなイメージがありますが、この点についてはどうお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 市町村の教育委員会の規模の大小にかかわらず、それぞれやはり特色ある教育行政を展開している教育委員会はあるわけでございますが、概して申し上げますと、小規模な市町村におきましては、やはり事務局体制が脆弱であるということが課題であると思っております。

 そのため、複数の市町村が共同して教育事務を処理することによりまして、例えば、専門的職員の配置が一層可能となって学校への指導が充実するなど、教育委員会の機能の活性化ということにつながるものと考えたわけでございます。そのため、今回は、市町村が教育委員会の共同設置等の連携を進め、教育行政の体制の整備充実に努めるものとする旨の規定を改正案に盛り込んだところでございます。

 もちろん、小規模なところで特色ある教育行政をやっているところはありますけれども、概してやはり事務局体制は脆弱ではないかというところが、私ども課題として持っているわけでございます。

横山委員 広域行政体制というのは、ごみ集めとか消防とかで今まで成果を上げてきたと思います。教育について、それと同等にとらえることができるかどうかというのはまた難しい問題だと思いますけれども、今の説明で、納得というか、推進よりはむしろ市町村の任意に任せた方がいいかなと思うんですけれども、理解はいたしました。

 それでは、大臣、ちょっと質問通告していないことなんですが、私、今のこの教育委員の話を聞いていて、もう以前お答えになったかもしれません。素朴な疑問なんですけれども、首長が教育委員を任命する、そして議会の承認で決める。そうすると、首長が任命して、その首長派が多数派の議会がその教育委員を承認するということであれば、民主党に対して、首長が、そういう特定のイデオロギーを持った人によって教育行政がゆがめられないようにと前言われていましたけれども、結局、同じことなんじゃないですか。

 今までの話を聞いていて、むしろ、リーダーを直接選んでいる、民意を受けて選ばれた人のやる方が、そうでない人たちがやるよりもよりいいような気がするんですけれども、その点についていかがお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 内閣は、国民の負託を得た多数党の連合である、公明党、自民党の連立内閣になっておりますが、国会は、民主党さんをも含めて、やはり民意の縮図という形で、我々も厳しく質問を受けるときもありますし、いや、言っているとおりだといって野党からも御支援を受けるときもあります。つまり、議会というものはやはり、先生、多数の党の思うとおりすべてなるものじゃないんじゃないでしょうか。

 ところが、首長は、直接その人が選ばれるわけですから、やはり議会というものがいかに機能するかということが一番大切なことであって、議会で多数を決めたからすべてそのとおり物事が決まるなどということは、国会でも自民党や公明党はやっておられないと思いますけれども。

横山委員 わかりました。

 最後に、この教育委員会のことにつきまして、あと二分ぐらいで、大臣に、これがきちんと責任をとれる体制として整備していくという点についてのお気持ちをお聞かせ願って、私の質問を終わりといたします。

伊吹国務大臣 今、実態に即したいろいろな御確認だとか御意見をいただきまして、私も、今後のために大変勉強になりました。

 改正教育基本法は、教育委員会にすべてを任せているということではなくて、国と教育委員会が協力をして、教育の国家介入にならないように、また地方だけで、国家的なバランスがとれないような事態にならないようにというのが、今の改正教育基本法の本来の趣旨ですから、今の御注意等も拳々服膺して、しっかりとやらせていただきたいと思います。

横山委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 しばらく速記をとめてください。

    〔速記中止〕

保利委員長 速記を起こしてください。

 これより内閣総理大臣出席のもと締めくくり質疑を行います。河村建夫君。

河村(建)委員 自由民主党の河村建夫でございます。

 教育関連のこの三法も、いよいよ総括質疑、締めくくり質疑のときを迎えました。

 四月十七日に本会議で趣旨説明が行われ、そして議論を行い、そして、この委員会そのものは、総理をお迎えいたしまして四月二十日から始まったわけでございまして、安倍総理、きょうは大変御苦労さまでございます。二度目、総括へお越しをいただきました。

 この間、きょうの議論を含めますと、五十七時間二十分になるわけでございます。約一カ月。さきの臨時会における教育基本法が五十五時間余りでございますから、それをはるかに超える、熱心な議論が行われたわけでございます。

 また、最大野党であります民主党側からも対案をお出しいただきまして、この問題を含めても議論を重ねてきたところでございます。極めて紳士的な議論が行われたと思っておりまして、野党側の野田筆頭理事を初め、皆さんの御努力にも私は心から敬意を表したい、このように思っております。

 また、伊吹大臣、そして塩崎官房長官、また菅総務大臣、三大臣におかれましても、粘り強く、辛抱強く、これまでの議論、真摯に対応していただいたこと、ありがたく思っております。

 さて、極めて限られた時間でございますから、きょうはせっかく総理にお見えをいただきましたから、この教育三法全部について触れるわけにいきませんが、私の感ずる主要な視点について二、三お伺いをしながら議論を進めたい、このように思います。

 まず私は、安倍総理が、これからの日本の新しい国づくりを考えるときに、やはりその原点は教育にある、この思いを強くされまして、小泉総理から受け継いだ教育基本法の成立を図っていただいたということ、そして、改めてみずから内閣に教育再生会議を設置された、そしてみずからもその議論に参加をされた、これは非常に大きいことだと思います。そして、教育再生会議が、やはり社会総がかりで教育再生をやるべきだと、一つの大きな方向に向かって議論を重ねておられるところでございます。

 昨年十月にスタートして以来、今日、いよいよ二次報告をお出しになるというところまで来ておるわけでございますが、まず、総理がこの再生会議を持って、そして教育再生にかけられたこの思い、同時に、これまでの議論、また、この特命委員会もこれまで議論を重ねてきておりますが、それを横に見ながら、教育再生に向かっての手ごたえといいますか、そういうものをお感じになっておるのではないかと思いますが、まずそのあたりから、総理のこれまで取り組んでこられた教育再生にかける思い、熱意、そのあたりを語っていただくとありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、この特別委員会におきまして、大変御熱心な、そして意義深い御議論を展開してこられましたことに対しまして敬意を表したい、こう思う次第でございます。

 私も、政治家になりまして以来、地元で、あるいはいろいろな地域で、とにかく何とか教育を改革あるいは再生してもらいたい、そういう切実な声を耳にしてまいりました。

 この戦後六十年間、随分、社会、家庭、大きな変化があったわけでありまして、子供たちのモラルや学ぶ意欲の低下、あるいは家庭や地域の教育力が低下をしてきた、こういう指摘がなされてきたわけであります。

 そういう中におきまして、やはり私は、すべての子供たちに高い水準の規範意識を身につける機会を、そしてまた、高い水準の学力を身につける機会を私たちは保障する、こういう義務を果たしていかなければならないのではないだろうか。その観点からもう一度教育全般を見直していく。変えるべきことについては勇気を持って大胆に変えていく。もちろん、守るべき点については守っていく、また、守るべき点について守るためにも改革は前進させていかなければならない、このように認識をした次第でございます。

 そして、この教育の再生、改革のためには、やはり社会総がかり。学校だけではなくて、地域も親も、そして、例えば企業もそうなんですが、それぞれがみんな当事者意識を持って、責任感を持って取り組んでいくことが大切であろう、こう考えたわけでございます。そして、高い見識を持った方々に参加をしていただいて教育再生会議を立ち上げ、御熱心な議論をいただいたところでございます。そういう中におきまして、この教育三法、提出をさせていただきました。

 また、昨年、教育基本法を改正したわけでありますが、この改正教育基本法にのっとって、道徳あるいは公共の精神、こうしたものも学校の現場において子供たちに教えていくということも極めて重要であろう。そのためにも、この教育三法、ぜひとも成立をさせていただきたい、このように思う次第でございます。

河村(建)委員 この議論がここまで進んだということも、やはり総理の強いリーダーシップがあってのものだ、私ども、そのように、総理の思いに対して、この法案を通すことによって教育改革、教育再生を一歩でも二歩でも進めていきたい、その思いを強くいたしておるところでございます。

 さて、教育再生会議でいろいろな議論がされたこと、我々、新聞紙上で見たり説明を受けたりしながら横で見ておるわけでありますが、この中で一つ話題になったことに、親学の話が出ておりました。

 実は、教育の原点がやはり家庭にあるということ、これはもう紛れもない真理でありまして、これは、我々の議論の中で、教育基本法の中にもきちっと第十条で、父母その他保護者といいますか、一義的に子供の教育については責任があるんだということを明確にいたしておりますし、子供たちが自立できるように、あるいは生活習慣がちゃんとつくようにしなければならない、努力しなさいということとあわせて、国も地方もこれに対して支援をするということを明確にいたしておるところでございますが、その中で、親学問というお話が出てまいった。私は、それを聞いていて、ごく自然の皆さんの思いであろうと。

 これは、再生会議であろうと、あるいはいろいろな議論をしようと、ここに行き着く第一義的なものでありまして、私も、文部科学行政、総括政務次官、副大臣、大臣と約三年余りタッチをした中で、地方に行き、全国を回ったときに、最後の結論は、やはり親たるもの、そういう教育の必要性を強く私も感じたところでございまして、こういう一つの方向づけが出たということは、私は、それを国が命令して何とかではなくて、共通の認識としてそういうことを持つということ、改めて持つということ、これは大事なことだというふうに思います。

 授乳するときは子供の目を見なさいと。余計なお世話だなんて書かれた新聞もありましたけれども。実は私自身、妻の母親が、妻が授乳しているときにテレビを見ていて、すごく怒っていました。ちゃんと子供の目を見なきゃだめじゃないのと言ってやっていた。これは自然なんですね。そういうものが三世代交流の中で受け継がれてきた。

 そういうものが今は少し欠けている。それに警鐘を乱打するということは非常に私は意義のあることだ、こう思っておりまして、ぜひ、この親学問といいますか、そういうことをこれからも奨励する意味で、きちっとうたっておかしくはないと私は思っておりますし、あわせて、家庭における教育の習慣、あるいは、悪いことをしてはいけませんよとか、そういう徳育的なこと、これはもう喫緊の課題だ、こういうふうに思っております。

 総理、再生会議の議論を通じてこういう議論が出てきたということについて、どういうふうに感じておられるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この教育については、学校現場にだけ責任がある、あるいは任せてはならないと思いますね。やはりこれは社会総がかりで取り組んでいく。特に、改正教育基本法の中にも盛り込まれておりますように、保護者、親の責任、占める位置、極めて重要なものがある、このように思うわけであります。親と保護者、そして、それを支える地域社会、やはり親や地域社会が重要な役割を担っているんだということを意識していただいて、そしてその役割を果たしていただくことも大切であろう、このようにも思うわけであります。そしてまた、損得を超える価値という中において、家族のきずな、愛情というのは、私は大変とうといものだろう、こう思うわけであります。それを子供たちが認識していく上におきましても、やはり家庭がどういう役割を、そして親がどういう役割を担っているか、また子供たちに接しているかということも大切なんだろう、こう思うわけであります。

 私も、子供のころ、よくおやじやおふくろに怒られたわけでありますが、おやじなんか政治家でございましたから、ほとんど家にいない中にあって、たまに帰ってきて怒るので、非常に不愉快だなと、頭にきたこともあるわけでありますが、今から思えば、ああして怒ったのも親の愛情なんだなと、しみじみ思い出すわけでありますし、また、母親は、おやじの選挙を手伝いながらも、一生懸命私たちを育てていたという中にあって、やはり親子の愛情というか、そういうきずなが生まれてくるのも事実なんだろう、こんなようにも思うわけであります。

 規範意識や家族、地域教育再生分科会、これは第二分科会でありますが、ここで中心的に家族や子育ての大切さについて熱心に議論がなされています。保護者、いわゆる親学とも言われておりますが、子育ての大切さを御両親や保護者の方々に訴えていくことも大切であろうと。そうしたことにつきましては、第二次報告に向けて今検討が進められている、このように承知をしております。

河村(建)委員 安倍総理、すばらしい家庭教育をお受けになったと私も拝察いたしますし、昔から子供は親の背中を見て育つといいますから、私も同じ選挙区でもございましたから安倍晋太郎先生もよく存じておりますし、また、おじいさんの岸信介先生もよく存じております。そうした中で今日の総理があるんだということを、私も思いをいたすわけでございます。

 今回、教員免許法の改正も行うわけでございますが、やはり家庭だ、次に来るのはやはり先生だ、これが皆さんの気持ちなんですね。国民は、教員の質の高いものを求めておるわけでございます。教育現場も緊張感を持って教育に当たってもらう、そういう意味で、教育の質の向上から教員免許法の改正を行うわけでございます。

 また、安倍総理は、小中高まさに一貫教育をお受けになってきておるわけでありますが、やはり印象に残る教師というものはあると思いますね。

 私ども、安倍総理と共通の認識は、我が山口県、防長には松下村塾、吉田松陰先生の教育というのがある。私も、吉田松陰先生のような先生がいかにたくさん生まれるかということではないか、こういうことも絶えず言っておるわけでありますが、松陰先生のあの感化力といいますか、そしてみずからの努力、そういうもの、そしてまた塾生に対する公平感、差別をしない目で、そして子供の特質を見抜く。特に初代総理大臣伊藤博文公に対して、あの十九歳のころの伊藤俊輔に対して、この子は政治家に向いている、あの言葉では周旋屋と書いてありますが、そういうことを既に喝破しておられる。

 こうした感化力、教育力、洞察力、こういうものをこれからの教員に求めていかなきゃならぬわけでございますが、安倍総理の教師像というものがあるのではないか、あって今日の思いをいたしておられると思いますが、その辺について、ちょっと簡単にお話をいただけますか。

安倍内閣総理大臣 ただいま河村委員がお触れになりました吉田松陰先生でありますが、これはお互いに長州人として尊敬をしているわけでありますが、吉田松陰先生が教育について残された言葉の中で、学は人たるゆえんを学ぶなり、まさにこれは、人格形成をしていくということこそ学問である、このようにおっしゃっております。そして、本当にわずか二年余りの間に数多くの優秀な人物を育てたわけであります。

 これは、特定の人物のみを教育するということではなくて、吉田松陰先生のもとに集まった人たちすべてに対して、熱意を持って接していったということではないか、このように思うわけでありまして、吉田松陰は次のようにも述べています。人々、とうときもののおのれに存在するを認めんことを要す。つまり、人々にはすべてとうときものがある、先ほどおっしゃったように、伊藤俊輔にも周旋の才ありと。

 それはまさに将来の政治家としての才能を見抜いていたわけでありますが、それぞれにすばらしい才能を発見しながらそのよさを認めていく。やはり、自分に何かいいところがあるか、これは自尊心にもつながっていくわけでありますし、克己心にもつながっていくんだろう、このように思うわけであります。やはりいい先生にめぐり会えることができるかどうか、私は極めて重要だと思います。

 私の小学校のときの担任の先生、野村先生という方でありまして、今九十を迎えられて、今でもお元気でありますが、卒寿の会には本当に当時の生徒みんな集まってくるんですね。この先生がいつもおっしゃっていたのは、子供たちはスターですと、こうおっしゃっていたんですが、すべての子供たちを私は信じているよ、このメッセージを常に出されていたことを私は思い出すわけであります。

 すばらしい先生にめぐり会うことができるかどうか、その子にとっては、これは将来にわたって大きな影響を及ぼすことになるわけであります。そういう意味におきましては、教育は人材であり、すばらしい先生をこれから育成していくことは極めて重要であろう、私はこう考えております。

河村(建)委員 教育現場の教師の皆さんにもすばらしいメッセージをいただいたというふうに思います。

 限られた時間、迫ってまいりましたので、もう一つ。

 内閣として、今日、教育再生にかけるならば、やはりこれはどうしても、教育予算を目に見える姿で確保するということ、このメッセージが必要ではないかと私はこれまでの議論を通して思っております。そして、今回のこの委員会の議論を通して、参考人質疑、公聴会、ずっとやってまいりましたが、その中で、この指摘に対して最も拍手が大きかったし激励が大きかったのは、これは超党派、皆さんそういう思いを強く抱いておられるということが確認できた、まさにこの委員会の結論であろう、こう思っておるわけでございます。

 これは、過去に、教育を政権の最重要課題に加えたイギリスやアメリカ、フランス、いずれも教育予算が削減された例はないわけでございまして、我が国の財政再建、二〇一一年までにまさにプライマリーバランス、基礎収支を戻す、この考え方、私も今、党の政策責任者の一翼を担っておりますだけに、このことも大事でありますが、事教育予算ということになると、いささかこれを考えていく必要がある。特に、私は、教育再生会議の中にもそういう提言がされることを期待しておりますし、これからされる教育振興基本計画の中にもこのことを織り込まれてしかるべきだ、こう思っておるわけでございます。

 行革推進法あるいは骨太の方針というもので一つのかんぬきがかかっている面がありまして、財政当局からも強いブレーキもかかっておる、この中ではありますが、教育再生が最重要課題ということであれば、総理はここのところは御再考いただく大きな課題であろうと思いますが、現時点での総理の御所見をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員から御指摘をいただきまして、大変重要な御指摘である、このように認識をしております。

 私も、教育改革、教育の原点にさかのぼって改革を進めていく、あるいは再生を進めていくこと、これは私の内閣の最重要課題であって、そして、それをもって教育新時代を開いていきたい、このように考えております。

 そしてまた、教育の中におきましては、先ほど申し上げましたように、人材、優秀な教員を必要数確保していくことが重要であります。

 もちろん、一方、これは小泉内閣以来、総人件費の改革あるいは行政改革の推進も必要である、こう思います。その中で、例えば事務処理等の外部委託やボランティアの活用等を考えながら教育力を増していくことも重要である、こう思っています。

 来年度の教育予算につきましては、教育再生会議及び経済財政諮問会議等における議論も踏まえながら、効率化を徹底いたしまして、めり張りをつけて、真に必要な教育予算について財源を確保してまいりたい、このように考えております。

河村(建)委員 時間も来たようでありますが、あわせて、今の総理の御答弁を受けながら、実際に実行部隊は文科大臣でございます。伊吹大臣の所見もお伺いしておきたいと思います。

伊吹国務大臣 総理のおっしゃったとおりに、しっかりとやらせていただきます。

河村(建)委員 どうもありがとうございました。

 まさに国民の期待がここにかかっております。どうぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、鈴木恒夫君。

鈴木(恒)委員 自由民主党の鈴木恒夫でございます。

 総理、お疲れさまでございます。また、三大臣も御苦労さまでございます。

 私は、持ち時間が二十分足らずでございまして、四十分ちょっと前には終わらなければなりません。教育三法をめぐる議論を、ちょっと違った視点から質疑をさせていただきたいと思っております。

 教育基本法の改正を六十年ぶりになし遂げて、私はこの作業に最初からかかわってまいりましたので、それを受けてのこの教育三法、第一歩でございますけれども、感無量の感で審議に臨んでおります。非常に真摯な議論を民主党の方々を初め野党の方々もしてくださいまして、いい議論が続くなと、私は本当に感謝をしたい気持ちでおります。

 まさに、安倍総理が誕生して教育再生をおっしゃられてから百家争鳴の感があります。私は、国民みんなが教育というものをもう一度しっかり見詰めて議論をしていく、一歩でも二歩でも前へ進む、それが大事だと思っております。もちろん百点満点の教育改革というものはありませんけれども、百里の道もまさに一歩からでございまして、その一歩を今踏み出そうとしていることは本当に感謝の一語でございます。

 私は、まず総理に伺いたいのは、二、三日前の夕刊の社会面を見て愕然といたしました。例の会津若松の母親の首をかき切ったというあの事件。そして、子供ポストですか、ここに三歳の男の子が届けられたという二つのニュースを初めとして、社会面は本当に殺伐たる報道に埋まっておりました。日本社会の劣化と言ってもいいかもしれません。戦後六十年たって、日本の美風はすっかり失われてしまったんじゃないかと、私は嘆かわしい気持ちでおります。決して私は自虐的にとらえているのではありません。しかし、明らかに日本の文明の質が変わりつつある、こういうふうに私は思って、これに対応してどう教育で日本を立て直すか、これが我々の一番大きな仕事だと思っております。

 例えば、あの母親を殺した少年、わけのわからぬことをまだ言っておるようでありますが、今、環境問題が非常に大きなテーマになってまいりましたけれども、化学物質は子供の頭脳に影響があるとさえ言われておりますし、もちろん先ほどから議論のあります家庭の崩壊、地域力の低下、さまざまな文明の変化があります。その中で、どうやって教育を再生するか。

 この間、私は学校現場に行きまして、校長先生に、今の小学生に一番欠けているものは何ですかと聞きましたら、タイセイですとおっしゃいました。タイセイ、何ですか、タイというのはと言ったら、忍耐の耐の字です、耐える力がない、こうおっしゃっておりました。

 さまざまな問題を抱えております日本の社会。例えば、マスメディアの問題もあります、IT化も進みます、外国との競争も進みます。こうした中で、総理が言われる教育再生。

 私は、これは本当に問題提起のしづらい問題なんですけれども、家庭のあり方として、離婚の問題があります。総理は、「美しい国へ」の中で、この離婚の問題を大胆に触れられております。私は、離婚がいけないとか悪いとかということは言いません。しかし、総理、御存じと思いますが、二〇〇五年で日本の国内での離婚件数は二十六万二千件であります。二十年前から比べて十万件ふえました。

 総理もここに、「美しい国へ」の中で、「家族が崩壊しつつある、」「離婚率が上がり、」云々と書かれている。実は、「私の父親の安倍晋太郎も、」私は晋太郎先生は毎日新聞政治部の先輩記者でございますから尊敬しておりますが、「生まれたときに両親が離婚して、父」云々と書かれています。「現実問題として、少年院に収容されている少年たちの九割近くが、家庭に問題を抱えている」と言われます、こう書かれています。

 重ねて申しますが、離婚がいいとか悪いとかじゃありません。しかし、二十六万件の離婚家庭で、うち子供がいた家庭が十六万件あります。そのうち八〇%が子供を母親が引き取っている。この子供たちをどうやって守るか。例えばこれも、教育の、文部科学行政とはちょっと違うんでしょうけれども、大きなテーマだ。あえてきょうはこういう発言をさせていただきました。

 この間、山谷えり子特別補佐官に、再生会議で家庭を問題にするときに、離婚の話をされたことがあるんですかと言ったら、山谷さんは、いや、全然どなたもおっしゃいませんと、こうおっしゃいました。

 私はやはり根源的な議論がまだ足りないと思いますが、総理、これらも含めて、教育再生へのこれからの総理の取り組まれる大枠、そして進め方、御明示をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 鈴木委員は大変根源的なお話をされた、このように思います。

 子供のモラルの低下あるいは学ぶ意欲の低下ということを最初申し上げたわけでありますが、そもそも地域や家庭における教育力が低下をしているのも事実であります。そして、社会において、いわば離婚率もふえてきた。しかし、その傾向を変えるかどうかということではなくて、その中で、やはり子供たちにとって必要なものをどうやって我々は確保していくかということも重要ではないだろうか、このように思うわけであります。子供たちがそういう中において問題を抱えているのであれば、すぐにそれに対して対応できるという体制をとっていく必要がある、こう思います。

 教育再生会議の中で私も話をいたしました。だれも後ろには置いていかない、問題を抱えている子供たち、問題を抱えているから、あるいはなかなか学校の授業についていけないからといって、その人たちを置いていく、捨てていくということは私たちは絶対にしないということをはっきりと申し上げているわけでございます。きめ細かな対応が必要なんだろう。ですからこそ、この六十年間の変化をよく見据えながら、現在、そして未来に向けての新たな仕組みをつくっていく、そういうことを私たちは今やろうとしているわけでございます。

 だからこそ、だんだん失われてきた家庭や地域の教育力、失われてきたもの、そこで恐らく培われたであろうもの、いろいろなものがあるんだろうと思います、その中で恐らく道徳観とか公共の精神が教えられていたかもしれない。しかし、これは現在ではやはり学校でも教えていくということも必要でしょうし、あと、それぞれが当事者意識を持っていく。保護者もそうですし、また学校はもちろんそうなんですが、例えば情報をどんどん流している、社会の一翼を担っている企業においても、教育について責任感を持っていただくということも大切なんだろう。

 まさに社会総がかりでこの教育再生に取り組んでいかなければいけない。そして、それによって教育新時代を開いていきたい。そして、その結果、すべての子供たちに高い水準の規範意識と、そして学力を身につける機会を我々は保障していきたい、このように思っております。

鈴木(恒)委員 ありがとうございます。

 冒頭に、少し違った視点から質問をさせていただくと申しましたが、私は、競争が非常に厳しくなってきた社会の中で、お金の問題というものを少し取り上げてみたいと思います。

 総理、御記憶をたどっていただきますと、ライブドアの堀江貴文社長が脚光を浴び始めたときに、朝日新聞でございますが、二〇〇四年にインタビューを受けて、そのインタビューが載りました。インタビュアーが「おカネで計れないような価値を広めたいとは思いませんか。」こう問うと、それに対してホリエモンさんは、「それに何の意味があるのか、逆に教えてほしいですよ。世の中、おカネで買えないものはないし、おカネの前ではすべて平等なんです。」これは平等なんでしょう。しかし、「おカネで買えないものはないし、」こう言っている。

 私は、この発言で、あっ、これだと、日本の一番大きなテーマになってくるよと思いまして、後でこれをエッセーで書きました後に、その事件が発覚したわけであります。

 私は、このホリエモン君の、あえて君と言いますが、の主張を目にしたときに、かつて経団連会長であった土光敏夫さんという人のことを思い出しました。私は、政治記者が長かったんですけれども、いっとき経済部の記者をしておりまして、土光さんのお宅に随分伺いました。御存じのように、東芝を再建し、石川島播磨も再建し、見事な経団連会長の職責を全うされた目刺しの土光と、うちでは目刺ししか食わないというから。お宅に伺うと、東芝の社長さんであるのに冷暖房器具なんか一切ない。古びた蛍光灯が一本あって、そこで一生懸命物を読んだり書いたりされている。自分の給料は、横浜の鶴見でございますが、自宅の前にある母上がつくられた学校にほとんど寄附されている。お金で買えないものはないんだよという今日のホリエモン的な発想とこの土光さんのあった姿を私は思い浮かべて、やはり考えなきゃいかぬと思ったんです。

 そこで、時間がないのであれですが、お金と人間のあり方というものをどうやって教育現場は教えているのかと思いまして、少し調べてみました。

 今出ております学校教育法第二十一条の第一号に、「規範意識」という言葉が出てまいります。「学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力」云々に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことと第一号にございます。十号まで教育の目標が掲げられておりますが、お金に関することと読めるのは、この「規範意識」だけなんです。

 さらに、私は、文科省を督促いたしまして、現実の学習指導要領の中でどういうことをお金に関して教えているんだと調べましたところ、わずかに、小学校一年生の学習指導要領、道徳の中で、「物や金銭を大切にし、」と書いてあるのが唯一あるだけであります。

 伊吹大臣、伊吹大臣が書かれたこの「シナリオ」という本の中に、大臣はこう書かれていますね。「戦後の経済発展があまりにも早すぎたために、成熟した人間としての抗体をもたぬまま成長したこと、つまり、金儲けのためには法律に反しないかぎりなにをしてもいいのだ、競争に勝てば結果オーライという、精神的未成熟のなかで助長されてきた社会的価値観にあるとわたしはかんがえる。」、こう伊吹大臣は見事に看破されております。しかるに、学習指導要領には、お金と人間のあり方に関する記述は一切ありません。

 そこで、総理でも大臣でも、二人にでもお答えいただきたいんですが、これで学校教育法が改正されますと、中央教育審議会に議を諮って指導要領の改訂に入ってまいります。お金と人間のあり方というものについて、総理、何か子供に教えていかなければならないと思いますが、いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 私も常々申し上げてきたわけでありますが、この戦後六十年、振り返ってみまして、我々は、敗戦の中から見事に経済大国に発展してきたわけであります。その中においていわば損得という価値に価値の基準がやや偏ってきたのではないか、そういう気がするわけであります。この損得を超える価値、家族愛とか、あるいは地域や国に対する愛着、愛情であるとか、そしてまた、人のために何かすること、その重要性、そういうことを、私は、ややないがしろにしてきたのではないか、そんな反省もあるわけであります。だからこそ、教育基本法を改正するに当たりまして、公共の精神、道徳、自律の精神等々を明記してきたわけでございます。

 その上に立って、いわば経済、お金との関係についても、やはり学校の現場において、これは損得を超える価値もあるんだという上において教えていくという必要があるのではないか、その価値を教えていかなくて、損得だけになれば、やはりお金ですべてが解決できるという結論に至ってしまうのではないか、こんなふうに思うところでございます。

鈴木(恒)委員 私は、きょう、一冊、ちょっと珍しい本を持ってまいりまして、総理、これを御存じでしょうか、「日本一短い「母」への手紙」。今、もうこの装丁の本はなくなっております。差し上げます。私しか持っておりません。何冊も持っております。

 この中にこういう母親の手紙を、糸川さんがいらっしゃいますが、糸川さんの生まれた福井県の丸岡町、稲田さんもそうですけれども、それがコンクールをやって、いい手紙を載っけてあるんです。その中にこういうのがあるんです。六十七歳の男の方が、「学問は貯金と同じと言ってくれたお母さん お好きな薔薇を贈ります」と言っているんですね。つまり、金じゃないよ、学問だ、貯金より学問ということを母は言った。

 もっとおもしろい、家庭教育の話で、こういうのがあるんです。今、評価は五、四、三、二、一をやっているところは少のうございますが、昔は五、四、三、二、一。「2ばかりの通知表。「家鴨が並んで可愛いよ」 母よ、あなたの心を忘れない。」こういう母親なら絶対に、二をとったって立ち直っていく子供の家庭がここにあると私は思うものですから、きょうは持ってきました。総理、後で差し上げます。

 それで、最後に、大臣に御答弁をいただきますが、今のお金と人間のあり方を、学習指導要領にどう取り込まれるか。

 もう一点、先ほど河村さんの質問に総理が、財源を確保しますとおっしゃってくださいました。これは非常に重たい言葉でございまして、もう来年度予算の編成が始まる上で、私は、総理、五〇%アップぐらいのつもりで教育予算を組んでいただきたい。そのくらいの決断でいかないと、今こそ米百俵だと私は思っておりますから、ぜひお願いしたい。

 そこで、財源を確保すると言ってくださいましたから、大臣、四十分までの間に、何を頭に置いて予算編成に当たられるか、端的にお答えいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、予算編成のことについては、総理から、必要な財源は確保するという御答弁が先ほどありましたので、私は、総理の意を体して努力をさせていただきますとお答えしたわけです。

 まず考えられるのは、やはり国会での御議論で何が議論になっていたかということでしょう。それは、生徒に向かい合える先生の時間をとるということ、それから、社会が尊敬できるだけの、やはり社会的な評価を得られる、あくせくしなくてもいい、しかしそのかわり、みずからも大切な子供を、日本の将来を預かっているという気持ちを持ってやっていただける先生をつくっていく、その待遇をどうするか。

 また、あと高等教育その他のことはありますが、私は、やはり高等教育は、幼児からの教育があって初めて高等教育というのはあるわけですから、初等中等教育についてもう少し意を用いるということではないかと思っております。

鈴木(恒)委員 前回、総理に質問をさせていただきましたときに、私は、教育基本法ができ上がったので、国民運動的な教育改革を起こそうではありませんかと申し上げました。それで、フレーズとして、人に優しく自分に強く、これならだれにも異論がないだろうと。どんな思想、どんな団体、企業、個人、だれにも異論がないだろうと。人に優しく自分に強く、これを私はこれからいつも胸に抱きながら教育の問題に専心してまいりますので、どうぞ御指導をいただきたいと思います。

 終わります。

保利委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 今回、初めて私は安倍総理に御質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、教育の目的ということについて、教育再生会議第一回の席上で、総理は次のようにおっしゃっておられます。志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることであると考えている、また、教育再生の最終的な大目標として、すべての子供に高い学力と規範意識を身につける機会を保障すること、そして、そのために、公教育の再生や、家庭、地域の教育力の再生が重要であると考えている、このようにおっしゃっておられます。そのとおりだと思います。

 その上で、教育の目的について、私はその奥底には子供の幸福という観点が極めて重要であると考えておりますが、まず初めに、総理にこの点についての御見解をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 教育の目的でありますが、教育の目的というのは、やはり、一人一人の個性や能力を可能な限り調和的に発展させることによって、子供たちが将来に向けて夢や希望を持って、そして豊かな人生を送っていくことができるようにしていくということではないだろうか、常に子供たちが将来に夢や希望を持っていく、そういう人生を歩んでいくことが、私は、これがすなわち幸福な人生なんだろう、こう思うわけであります。

 また、こうしたことを通じて、私は、志ある国民を育て、ひいては品格ある国家の形成につながっていく、このように申し上げているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 また、教育という観点で、子供にとって最も大切な教育環境、これは教師であると思います。

 よい教師の条件について、教育に大変造詣の深い香港中文大学劉学長という方がいらっしゃいますが、その方が次のようにおっしゃっておられます。学生一人一人に対して教え方を合わせることができる人、一つの教え方ですべての学生に合うとは限りません、また、教師は自分の体験をもとに教えるべきです、さらには、何よりも長い目で生徒の将来を考えるべきです、忍耐強さもよい教師の条件の一つですと話をされております。

 この教育再生の中でも核、肝となるのが、教師、先生方への応援体制をどう整えていくかというふうに考えておりますけれども、では、その目指すべき姿について、よい教師とは、すばらしい教師とはどういうものなのか、この点についても総理の御所見をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 先ほど河村先生との議論の中で、私の体験についてお話をさせていただきました。

 私は、例えば小学校のときに三回、担任の先生がかわったんですが、最初、一年生のときは、明治生まれの先生で吉田寅彦先生という、今でもよく覚えているんですが、大変厳格な、厳しい、ひげを生やされた、相当お年を召した方なんですが、大変厳しい先生ではありましたが、いわば規範意識を植えつけられたような、そんな気がいたしました。その後には、大変若い先生、当時は若い先生で、星野慶二先生という方は大変楽しく授業をされまして、学校が楽しいな、そんな思いが今でも心に残っております。その後、野村先生という方に教わったわけでありますが、とにかく子供を信頼する、これが先生の信念でございまして、この信念によって私たちも先生を信頼したのではないかな、こんな気がするわけであります。

 教育は人なりということでありますが、教師は子供たちに極めて大きな影響を与えるわけでありまして、その後の人生も大きく左右するというふうに私は認識をいたしております。そのため、教師には、まず職務に対する使命感や誇り、そしてまた子供たちに対する教育的な愛情を持っていただきたい、そしてまた教職に対する強い情熱、責任感を持っていただく、その上で、子供を教えるという教育の専門的な、専門家としての確かな力量を持っていることが求められるのではないか、このように思いますし、また、子供たちを引きつける、そういう人格的な、人間としての魅力も大切な要素ではないかな、このように思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今、総理の答弁の中で、子供を信頼するということをおっしゃっていただきました。まさにそのとおりだと思います。

 私も、自分の実体験で、私の子供のころはまだ、平たく言えば殴られることがありましたので、いろいろな先生から殴られました。決して優等生ではありませんでした。そんな中で、殴られて本当に涙の出る先生と、殴られてやはりどうしても腹が立ってしまう先生と、自分の体験の中ではそんな記憶があって、その根底は、やはりその先生が自分のことを信頼してくれていたのかどうか、そういうことにかかわっているのかな、今答弁をお聞きしていて、そう感じた次第でございます。

 今回の法改正では、現場の先生方の応援の体制を整えるために、法的に、副校長等の体制の整備、この門を開き、また先生の新たな研修の場も十年に一度設けようとされております。また、現場からは、先ほど来ありますけれども、何はともあれ人をふやしてほしいとの声も少なからず聞こえてまいります。

 私は、この教育再生特別委員会の中で、地方公聴会の一環として、福岡市立博多小学校、また富山市立桜谷小学校を視察させていただき、現場の先生方との懇談の機会もいただきました。耳に残ったキーワードは、学校の多忙化ということでございました。私ももともと民間企業で勤めておりましたので、正直申し上げれば、多忙化しているのは学校だけじゃない、こんなふうに心のどこかで感じておりました。どんな業種でも、少子高齢化の中で、また労働力が減少する中で、従来よりも少ない人数で従来と同等の仕事を遂行していかなければならなくなってきている、そう思います。

 しかし、現場を見させていただく中で、さらに学校、地域、家庭という関係の中で、学校での生徒に対する教育のみならず、家庭、保護者への配慮、こういうことが大きなウエートを従来よりも占め始めている、そういうことは再認識せざるを得ませんでした。

 例えば、ある先生は、学校での子供たちの様子を毎日写真におさめ、それを保護者の皆さんにお知らせしている、こういう努力をされている先生もおられました。

 また、ADHD、多動性障害をお持ちのお子さんが二人いる約四十人弱の授業では、特別支援員、こう呼ばれるもう一人の先生がこの二人の面倒を集中的に見ながら、授業を進めておられました。ちなみに、この二人の子供たちは、幼稚園あるいは保育園のときには、マンツーマン体制で対応をしていただいていたお子さんだと後でお聞きをいたしました。

 長々と申し上げましたけれども、児童の減少以上に、先生の数は現行法では減らしていく、少なくともそのような努力をお願いしているわけですが、その上で、さらに学校、地域、家庭という関係の中で、学校、ひいては先生方の役割、これはふえてきているという実態をしっかりと改めて認識する必要があるのではないかと思いました。当教育再生特別委員会で質疑を通して、また現場を見せていただいて、私が考えるに至ったことについて、総理に率直に御報告を申し上げます。

 そこで、まずは、基本姿勢として、日々どこまでも一生懸命仕事をしておられる現場の先生方の応援をするという姿勢を堅持しつつ、さまざまな方法で、人員の増加も含めた、教育現場の具体的な応援体制、これを国が先頭に立って表現していくことが必要と考えますけれども、総理並びに伊吹文部科学大臣にお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 教育におきましては、社会が複雑化していく中で、また家庭や地域の教育力が低下をしていく中で、学校現場は確かに大変なんだろうと思いますし、先生が負わされている事務量というのも相当ふえてきている、私もそのように認識をしています。

 大切なことは、今後、先生が生徒と向き合う時間を確保し、またふやしていくということではないか、中身を充実していくということではないだろうか、このように思います。それによって、教育の質を高めていくことができる。

 その観点から、ただいま委員が触れられましたように、今回の改正におきまして、いわば組織として教育を支えていく、そういう観点から、副校長及び主幹教諭による組織力を充実していく、あるいはまた学校の事務量の軽減、そうしたことを進めていく必要がある、そうした取り組みを進めていきたい、このように思います。

 また、教育再生を実りあるものとするためには、教職員配置のあり方や、まためり張りをつけた教員給与体系などについて検討していかなければならないと考えています。一方、簡素で効率的な政府を実現するために、教員も含めた総人件費改革など行政改革の推進も必要であります。

 これらの点も踏まえながら、教育の質を高めていくために、先ほど申し上げましたように、徹底的に効率化を図っていく、そしてめり張りをつけて、真に必要な財源につきましては必ず確保していきたい、このように考えております。

伊吹国務大臣 今御指摘のあったことは、先ほど、河村委員、鈴木委員からも同様の御指摘がございました。行政改革推進法の五十五条は、今先生がおっしゃったように、少子化ですから子供の数が減っていきます、その子供の数を上回る教員の数を減らせと書いてあるわけですね。これをどう考えるか。

 そして、学校現場で何が起こっているかというと、地方の交付税を算定する基準としては四十人学級なんですよ。しかし、小学校の場合は大体二十六人ぐらい、そして中学校は三十人で平均で組まれています。そうすると、四十人一度にぽっと一つの学校で学級が減りますと、これは子供の数に応じて先生を減らしていくというのはできるんですよ。しかし、あるところの学校では八人、こちらの学校では六人、こちらの学校では七人というトータルとしての子供の減り方に合わせて教師を減らしてしまうと、クラスは減らせないわけですから、そこにいろいろ問題が起こってくるわけですね。これは社会学で言うところの集合の誤謬というので、全体としてはなるほどと思うんだけれども、個々におろしていくとどうもうまくいかないな、個人個人にはいいことだけれども、全体としては困るなという現象が今起こっているわけですね、教師の数については。

 ですから、先ほど総理が御答弁を申し上げましたいろいろなやり方を組み合わせまして、先生の御指摘にこたえられるように工夫をしてみたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、家庭、地域の教育力の再生という観点から御質問をいたします。

 未来の宝である子供たちをみんなで協力して育てていこう、こうした美しい教育の連帯の心を社会全体が共有すれば、子供たちの可能性はますます開けていくと確信をいたします。家庭、学校、地域が一体となって我が子のごとく愛情を注げば、その土地の未来は必ず輝いていく、そのように考えます。子供たちの可能性を開きいくためという目的が社会全体の共通目的となる、教育の連帯の心が重要であると私は考えます。総理の掲げる、社会総がかりで教育再生をというテーマも、同じ趣旨、同じ意味での目的に立たれたものと私は理解をしておりますが、改めて御所見をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 教育再生について、学校や先生たちだけに責任を押しつけてはならない。もちろん、先生また学校は極めて重要であります。しかし、それと同時に、やはり家庭や地域、社会総がかりで教育を再生していく、そして教育においては当事者なんだという意識を持つことが大変重要であろう、私はこのように思うわけであります。その中でも、やはり家庭や地域、家族、ふるさと、これはすばらしいものだ、こういう認識を持つ上におきましても、家族や地域が教育力を発揮していくことも大切であろう、我々はそのための施策を講じていく必要もある、こう考えているところであります。いわば社会総がかりで教育再生に取り組み、教育新時代を開いていきたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 ここから少し具体的な質疑に移らせていただきます。ここまでも私はこの委員会の中で再三確認をさせていただいた内容でありますが、最後に改めて確認をさせていただきたいと思います。

 昨年起こったいじめの問題、こういったものなどの解決に向けて、今回、大きな法改正の一つとして、文部科学大臣の教育委員会に対する指示を可能にするということが盛り込まれております。この点については、当初、国の関与の拡大だというような批判も耳に入ってまいりましたけれども、当委員会の質疑の中でこの点は明らかになってきたと理解をしております。

 すなわち、地方自治法において、国が自治事務に対して指示ができる場合を限定しております。具体的には、国民の生命、身体または財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等、国が必要と認める場合に限定的に可能となっている。だからこそ、我々公明党も、ここまでの議論の中で、あくまでこの範囲に限って指示を認める旨を主張させていただいてまいりました。

 さらに、この自治事務についての是正を行う指示については地方自治法上の規定はありませんで、その関与のあり方については、二百四十五条の二、関与の法定主義に基づき、別に法律またはこれに基づく政令にゆだねられております。この考え方に基づき、指示のあり方について地教行法に明定をされたと理解をしております。

 すなわち、今回の地教行法の法改正はあくまで地方自治法の範囲内であり、決して国の関与の拡大ではない、こう現行法上結論づけられると考えます。これも当委員会で再三確認をさせていただきましたが、改めて、この点について総務大臣の明確な御答弁をお願い申し上げます。

菅国務大臣 伊藤委員の御指摘のとおり、今回の指示につきましては、自治事務に認められる関与の範囲内であります。そして、今具体的な例を申し上げました。個別法で自治事務における指示に係る規定を設けることができるもの、このようにされておりまして、今回の改正案というのは、教育委員会に対する文部科学大臣による指示は、生徒等の生命、身体の保護のため緊急の必要がある場合、これに限定をされておりまして、既に現行法の中では、例えば警察法だとかあるいは感染症予防法などにおいて、指示ができるもの、このようにされておりますので、地方自治法の定める関与の基本原則を逸脱して、国の関与を強めるものではありません。

伊藤(渉)委員 明確な御答弁、ありがとうございます。

 時間が参りましたので、最後に現場から寄せられた声を伊吹大臣にお伝えして、終わりたいと思います。

 この委員会、大変に国民の関心も高く、さまざまな質問、要望が私のもとにも寄せられてまいりました。その中でやはり一番心を痛めたのは、いじめの問題でございました。

 地元愛知県のある御家庭では、お母さん、この方はパートの勤めだそうでございます。御長男は大学を受験する受験生、そして次男の方が知的な障害をお持ち、そして長女の方がやはり高校受験に向けて勉強している、こういう四人家族でございまして、この長女の方が中学でいじめに遭い、種々努力を重ねましたが、仕方なく今年度より転校をして、毎日このお母様が車で送迎をしながら他校区の学校に通っている、こういうものでございました。

 いじめをなくすことは、当然、最重要でございます。その一方で、起こってしまったいじめ、このいじめを受けて困っている人へのケアということも非常に大切な観点ではないかと改めて感じました。

 そこで、文部科学大臣にお伺いをいたします。

 いじめの撲滅とケアという観点から、どうしても我が国の制度設計は、ありていに言えば、完璧を目指し過ぎる嫌いがあると思います。その結果、学校現場では、いじめの事実をできれば公にしたくないという力が働いてしまっているんじゃないかと思います。そうではなくて、いじめは必ず起こるもの、こういう認識に立って、まず、文部科学省として、悪い情報こそ吸い上げるという姿勢を持ち、そうした子供たち、または家族に対するケアということにも力を入れていかねばならないと考えますが、伊吹文部科学大臣の御答弁をお願いいたします。

伊吹国務大臣 私も、先生が今御指摘になったような姿勢でいじめという問題に対処をするように文部科学省の職員にも指示しておりますし、いじめがあるから悪いのではなく、いじめを隠すのが悪いのであって、むしろ、いじめを発見してうまく処理するのがいい学校だと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 どこまでも現場の力を重視し、現場の力の無限の可能性を信じて頑張る先生方をサポート、育成するという角度からさまざまな制度設計をすべきということを最後にお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

保利委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 「教育再生は内閣の最重要課題」であると総理は施政方針演説でおっしゃっておりました。官房長官をお務めになられた小泉内閣ですけれども、その小泉内閣では、米百俵の精神ということが言われていました。

 しかし、実際その小泉政権下で文教予算がどのように推移をしたのかということを、私、教育基本法の特別委員会で文科省に尋ねたことがあるんですね。そのときの答弁では、「二〇〇二年度、平成十四年度でございますが、五兆五千九十一億、二〇〇三年度、平成十五年度は五兆二千二百三十八億、二〇〇四年度、平成十六年度は四兆八千三百六十五億、二〇〇五年度、平成十七年度は四兆三千九百五十九億、二〇〇六年度は、平成十八年度でございますけれども、三兆九千二百六十一億円でございまして、この五カ年における減額は一兆五千九百七十六億円でございます」という答弁でありました。

 米百俵を掲げた小泉政権で、五年間でおよそ一・六兆、これは率にすれば三〇%弱の国の教育予算カットということでありますけれども、教育再生を内閣の最重要課題だとおっしゃっている総理は、この小泉政権下における国の教育予算の大幅カットについてどのように受けとめていらっしゃるのか、まず御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま小泉内閣の五年間の教育予算についてお話がございました。

 国の文教予算は、確かに、一兆六千億円、約三割、正確に言いますと二八・九%ですかの削減ということになっておりますが、しかし、中身をよく見てまいりますと、三位一体の改革により一兆三千三百五十七億円、これは国から地方に移った人件費ということであります。そしてもう一つは、人事院勧告によって、これはデフレ経済下にあった中において、人事院勧告等によって三千百九十二億円減ったということでございます。

 そういうことでございまして、こうした影響額を除けば、むしろこれはほとんど同水準を確保している、このように申し上げてもよろしいのではないか、こう考えるところでございます。

 平成十九年度の予算におきましては、問題を抱える子供の自立支援や教育相談体制を充実、そして全国の学力・学習状況調査の実施や放課後子どもプランの創設、公立学校施設の耐震化の推進等、必要な予算額を計上しているところでございます。

 今後とも、真に必要な教育予算は確保していかなければならない、このように考えております。

松本(大)委員 まず一点申し上げておきたいことですけれども、国から地方に移ったんだ、三位一体の部分が一兆三千三百億だ、こうした影響額を除けばということですが、この影響が甚大である、これを除いて考えることはできないというのが、通常、地方の受けとめ方ではないかなというふうに私は思いますし、それこそが、小泉政権下における三位一体改革のまずさだったのではないかと私は思います。

 実際、総理、施政方針演説では、「地方公共団体間の財政力の格差の縮小」ということをおっしゃっているんですね。これは、税源は移したけれども、その税源たるや、やはり偏在しているじゃないか、総額では幾らだけれども、それは地方に一律に割り振られるわけじゃないよということを恐らく指しているんではないかなというふうに私は思います。

 実際、文科大臣自身が、これはたしか二月、岩國委員との質疑の中で、いいことをおっしゃっているんですよね。

 義務教育国庫負担金というものを二分の一の国の補助で、残りを地方が御負担になってやっておりました。しかし、三位一体、地方分権だということで、税源を地方自治体に渡し、これを三分の一にいたしましたね。ということは、結局、東京に財源を渡したということなんですよ。そして、東京に財源を渡して、国の義務教育国庫負担金は二分の一から三分の一、つまり六分の一減っちゃったということですよ。ですから、例えば島根県あるいは出雲市は大変苦しくなっていると私は思いますね。

  だから、地方分権という限りは、やはり地方の財源を均等に補てんしなければならないわけですから、この地方分権ということの大きな何か美しい言葉があれば何でも財源を渡したらいいのかということは、少しやはり各党考えていくべきことだと私は思っております。

僕もおっしゃるとおりだと思うんですね。だからこそ、総理は先ほどそうおっしゃいましたけれども、三位一体改革の影響を除けばそんな大したものはないんだということでしたが、この三位一体改革の影響こそがまさに激甚であるということなんですね。

 そのことによって一体何が起ころうとしているかというと、私、ちょうど第二次ベビーブーマーなんですが、私が小学校、中学校に入学したときに、教員の大量採用というのが行われています。たしか、今、教員の四割以上が四十五歳以上の方ではないかというふうに思います。今後、地方で教職員の大量退職の時代を迎えると、ただでさえ厳しい財政状況なのに、この退職手当の負担が厳しい地方財政の状況をさらに圧迫していく。これがやはり、国が教育予算をカットすること、これによって地方と家計にツケが回っているということの最大の弊害ではないかなというふうに思います。

 加えて申し上げるならば、これは何度もこの委員会でも取り上げてまいりました、あるいは教育基本法の特別委員会でも取り上げてまいりましたけれども、国と地方を合わせた公財政支出といいますか、教育に対する公財政支出、これはまだ、わずか三・五%ですよ。国際平均でいえば、OECD平均は五・二%。まだまだ足りないという水準なんですね。

 こういったことをやはり思いをいたしてほしいというふうに思いますし、なおかつ、これはあえて、私なかなか総理と意見交換させていただく機会がないものですから、あえて申し上げますけれども、総理の御執心の憲法、「行政権は、内閣に属する。」という規定がありますよね。つまり、総理は、国の義務教育の根幹を危うくしかねない政策に拍車をかけ続けた政権の中枢にいらっしゃった。官房長官だったんですよ。ですから、これから何とかしますという答弁だけでは、到底、過去の政権における政策決定の連帯責任を負うべき立場として、私は許されないと思いますよ。

 総理は、闘う政治家ということをたしか標榜されていましたよね。闘う政治家なんであれば、どうして、小泉政権下で官房長官でいらっしゃったときに、いや、ちょっと小泉さん、これはやはり間違っていますよ、この方向性はと、方向転換をなぜ進言されなかったのか。闘う政治家なんであれば、私は非常に残念だと思うんですけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げました予算でございますが、確かに、五年間、約二九%近く減っているわけでありますが、しかし、先ほど申し上げましたように、三位一体の改革、それと人事院勧告、その部分をのければ、約五百六十億円ほどこれはむしろふえていると言ってもよろしいんではないか、こう思うわけであります。

 そこで、三位一体の改革の議論の経緯については、地方がこの三位一体の改革を進めてもらいたい、この義務教の国庫負担の部分についても、これは地方に任せてもらいたい、こう主張してきた結果においてあの三位一体の改革を行ったわけであります。交付税、税源の移譲、そしてまた補助金、この三位一体の改革でありまして、国としては、あの改革を行った際には、当然、税源の移譲と交付税で措置をしているわけでありまして、その中において、各地方もその責任を果たしていくということは当然であろう、このように思っております。

松本(大)委員 質問に答えていらっしゃらないと思いますね。なぜ総理に、方向転換すべきだと。教育再生を今うたっていらっしゃるんですから、教育再生を。だとすれば、教育は最重要課題とおっしゃっているんですから、前政権で国の教育予算をどんどんどんどんカットし続けてきた、その政権のまさに中枢にいらっしゃったわけですよ。闘う政治家なら、やはりそこは方向性違うよと方向転換を進言されるべきではなかったんですかと申し上げているわけで、そのお答えをください。

安倍内閣総理大臣 それぞれの内閣がそのときに要請された使命を帯びているんだろう、こう思いますね。

 小泉総理が登場したときの状況を考えれば、日本の経済は大変がけっ縁の状況であった、かつ大変な借金を背負っていた。このままどんどんどんどん借金をふやしていっていいのかどうかという中において、構造改革を進めたわけであります。そして、思い切った歳出の改革を行っていった。そして、小泉総理は、いわば消費税を上げない、徹底的に歳出をカットしていくという大きな目標を立てたわけであります。そういう大きな目標を立てた中において、いわば聖域なしですべて見直しをしていく、これはみんなでとにかく今は借金を減らしていくことに汗を流そうということで全力を尽くしたわけであります。

 そして、それと同時に、そのことが日本の財政の健全性を世界に示すことになって、日本の経済また財政に対する信頼をつなぎとめていくことにも私はつながった、このようにも思うわけであります。構造改革の結果、経済は好転をしてきた、こういうことでございます。そのときの内閣が背負っていた使命をまずは全力で忠実に果たしてきた、私はこのように思います。

 そして、私は、総裁選挙に出るときに、次に私が内閣の責任者になったときには、暁には、やはり教育再生に全力をかける、このように申し上げてきたわけであります。ですから、私の迎えた最初の国会において教育基本法を改正し、そして今回この三法案を出しているわけでございます。その中におきまして、従来から申し上げておりますように、真に必要な教育の財源は当然確保していかなければならない、このように申し上げているとおりでございます。(拍手)

松本(大)委員 辛抱強く御答弁いただいていることに私は非常に感謝したいと思います。やはり、総理と意見交換させていただけるというのは本当に刺激的な体験だなというふうにつくづく思います。

 あえてもう少し突っ込みたいんですが、再生というのは、この委員会でも取り上げられたように、死にかかっているものを回復させるという意味でありました。「創りあげたい日本がある。」というポスターもあったわけですけれども、私は、そうであるならば、壊してしまった責任というものもやはりあわせて考えていかなければならないんじゃないかなというふうに思います。これはイラクも同様です。

 子供の道徳について口やかましくおっしゃるのであれば、子供の道徳、子供の道徳と、この基本法の特別委員会からずっと来ているわけですが、であるならば、大人や国家が示すべき道義的責任というものについて、私はもう少し謙虚であるべきだと思いますね。教育予算を大幅にカットし続けてきた政権の中枢にいらっしゃった、その内閣として連帯責任を負っていらっしゃる立場からの反省というのは、私は少なくとも感じられませんでした。

 そして、もう一点申し上げたいこと。先ほど、聖域なき構造改革、思い切った歳出カット、大変な借金を背負っていたというお話をされていました。確かに厳しい財政状況にある、そのとおりでしょう。民間平均給与が八年連続下落を続けている中で、皆さんのお支払いになられた大切な税金については一円たりとも無駄遣いしないんだ、この姿勢については私どもも自民党に劣るものではないと思っているわけでありますけれども、ただ、問題は、財務リストラというものにはやはり優先順位というものがあるんじゃないかと私は思うんですよ。

 民間企業で財政状況が厳しくなった会社、まず真っ先にすることは何ですか。これは、社長を初めとした経営陣の待遇の見直しですよ。役員報酬の削減、経営陣の待遇見直し。その上で、今度は遊休不動産、遊休資産、不稼働資産、こういったものを売却していく。本業とは無関係なゴルフ場投資を行っている、社用車という名義でなぜか高級外車がある、社宅というふうに資産計上されているのに、なぜかそれは豪華なおうちで、実は社長一家が住んでいる、こういったものについては売却をして、有利子負債を圧縮していく。そういったすべての経営努力をやり尽くした後に、最後の最後に切り込んでいくのが私は人材への投資だと思います。

 翻って、我が国はどうなのかということであります。

 まず、議員年金、国庫負担は七割にも達している。その批判は高かった。しかし、与党の賛成多数でこれは事実上温存されました。天下りはどうでしょうか。我が党の……(発言する者あり)今、不規則発言が飛んでいますが、結局、十年以上経過したベテランについては温存されたじゃないですか。これは事実上温存法案ですよ。

 それから、天下りはどうですか、天下りは。民主党の要請で、衆議院が最近調査結果を発表しました。二万八千人もの中央官僚OBが独法や民間企業などに天下っている、四千六百カ所もの団体に天下っている。そして、その団体に対して四兆円もの補助金がつぎ込まれている。事業発注を含めれば約六兆円。たしか一兆八千三百億だったと思いますが、その事業発注のうち、何と一・八兆が随意契約なんですよ。つまりは、調達コストの見直しは全く行われていない。

 国家の経営陣、待遇の見直しは全く行われていないんですよ。にもかかわらず、本来最後の最後に手をつけるべき人材に対する投資、既得権への切り込みが不十分なままに、ここに手をつけていった。このことについては、私は、国家経営のあり方として根本的に間違っていると思わざるを得ません。そのツケを負うのは家計であり地域ですよ。そのことについて、私は、反省の弁が聞けないというのは、大変国家経営者、宰相として残念だと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、教育予算については、平成元年から見れば、子供一人当たりに対しての公財政支出は五〇%増になっているということはまず申し上げておきたいと思います。

 そして、先ほど来申し上げておりますように、総体としては減らしてはいないんですよ。五年間に減らしたというのは、三位一体の改革の中で、責任が国から地方に移った、それに対しての財源措置もしているということであります。そして、デフレ経済の中で、給料が下がっていく中で人事院勧告を正しくやった。上がっていけば上がっていく、これはそういう自明の理ではないか、こう思うわけであります。その中で、それ以外の政策的経費については、むしろ五百六十億円プラスになっているということは申し上げていたとおりであります。

 それ以外について、我々は、予算について、やるべきことはやっていると思います。例えばいわゆる公共事業について、地方も大変だったんだろう、このように思うわけでありますが、当初予算と補正予算と合わせていけば、これは、この六年間の中で十四兆円が七兆円になったわけでありまして、我々は大幅な削減を行ったということは申し上げておかなければならない、このように思うわけでありまして、やるべきことはやっている。

 先ほど、特殊法人等々の例も挙げられたわけでありますが、特殊法人についても、廃止統合あるいは独法化することによって、約、一年間にそこにつぎ込んでいた予算、一兆五千億円、我々はカットすることに成功したわけであります。この改革をやっていなければ十年間で十五兆円使われていたお金を我々はカットした、こう言ってもいいのではないか、こう思うわけであります。

 公務員制度の改革についても、これは相当の強い抵抗のある中、我々は今この改革法案をまとめたわけでございまして、やるべきことをやる中において、とにかくスリムで効率的な筋肉質の政府をつくって、よって国民の負託にこたえていかなければならない、このように考えているわけであります。

松本(大)委員 三位一体改革を除けば変わらないんだという、その、まず冒頭のやりとりがすれ違ったまま、やはり全然その溝が埋まらないんですが。

 さっき私、いい答弁だったなというふうに御紹介した、伊吹文科大臣の、結局東京に財源を渡したということなんですよと。この御認識をどの程度本当に持っていらっしゃるのかな。やはり、こういう認識が欠如されているから、国の教育予算のカットに対して思いが至らないのかなというような気がして残念でなりません。

 それから、さっき、公務員制度改革も相当な抵抗の中で行われたというふうにおっしゃっていましたけれども、これは、今週火曜日、本会議で趣旨説明を行われた天下りバンク法ですけれども、国家公務員法改正案、これについては、結局、これまでは各省庁が行っていた、各省庁ごとに行われていた再就職のあっせんを、今後は天下りバンクが一手に引き受けるというものにすぎないじゃないですか。しかも、今ある二年間の天下り禁止期間すら撤廃をされる。これは、天下りの原則自由化、全面解禁法案ですし、こんなことでは談合や随契の温床はいつまでたってもなくならない、既得権への切り込みは非常に甘いなという感想を、率直に申し上げて思わざるを得ないわけです。

 総理は、「改革の炎を燃やし続けてまいります。」と、非常に格好いい言葉だったんですね。なんですが、ちょっと今回のこの国家公務員法改正案を見ている限り、相当な抵抗があったとおっしゃいますが、こういった官庁や抵抗勢力の反対に遭って、今や改革の旗印はすっかり炎上してしまったという方が私は近いんじゃないかなというふうに思いますね。

 ちょっといつまでやっていても……(発言する者あり)見方の違いじゃと言われましたが、いや、これは大事な法案なんですよ、これは法案関係なんですよ。今回我々は、教育環境整備法案というのを出しているんです。これは法案関連質疑なんです。

 それで、総理との溝が全然埋まっていないのは残念なんですが、法案に関連するという意味で、民主党の提出者にも聞いてみたいと思います。

 これ、今回……(発言する者あり)いや、文科大臣には質問していませんから、文科大臣には質問はしていないですから。文科大臣とは、また文部科学委員会の場で、しっかりと胸をおかりして挑んでいきたいなというふうに思います。(発言する者あり)いや、聞いていないんですから、私の質疑時間なんですから。

 民主党の提出者に伺います。

 国は、小泉政権下においてはとりわけですけれども、国の教育予算というものをカットして地域と家計にツケを回した。今後は、家庭、生まれ育つ家庭の経済格差やあるいは居住地の違いによって、その子供の受ける教育環境に格差が出てくるかもしれないというおそれが出ているわけですね。こういった状況に対してどのように受けとめていらっしゃるのか。

 先ほど来、総理の答弁に対しておっしゃりたいことがあれば、それもあわせていただくとしまして、今回提出をされていらっしゃる法案の中身とねらいについて御答弁をお伺いしたいと思います。

高井議員 けさほどの質疑からも、自民党の河村委員それから鈴木委員、伊藤委員とも、今回の教育予算の充実のためには、何といっても財源措置が不可欠だというような御答弁がございました。もちろん、私どもは、法案の趣旨として、今回また新たにちゃんとした形で法文化いたしたわけでございます。

 教育における国の責任というのは、水準の確保、機会の均等、そのために教育予算の充実が、財政措置が不可欠であるというふうに考えております。我々が提出しております日本国教育基本法案、この中で、十分な教育予算を確保するために、第十九条と第二十条におきまして、教育の振興の基本計画の策定と予算の確保の義務を定めております。

 具体的に申し上げますと、少人数学級の充実や習熟度別に応じた教育指導などのために必要な教職員の配置、それから学校施設の耐震化、これは最近国会の中でも大変に問題になっております。それから空調設備等の配備、それに加えてスクールバスの運行の実現、それから将来の就職の指導などをするスクールカウンセラー等の配置など、こうした環境整備を行うために、何といっても予算の確保が必要でございます。

 その趣旨を明確にするために、民主党として、学校教育の環境整備の推進による教育振興に関する法律案を提出しております。立法者の意思として、今申し上げたような内容を法律の条文に具体的に書き込んでおります。

 私は、教育というのは、合理化、効率化という言葉が最もなじまない分野だというふうに考えております。総理が持たれております経済財政諮問会議において、これは二〇〇六年の基本方針の中に、「文教予算については、子どもの数の減少及び教員の給与構造改革を反映しつつ、以下の削減方策を実施することにより、これまで以上の削減努力を行う。」というふうに明記されておりますが、先ほど来の答弁をお聞きしますと、これも方針を変えていただけるのではないかというふうに期待を申し上げたいところでございます。

 そして、先ほど来のこの教育特の委員会での質疑を、私もずっと質問に立ったり聞いたりする中で、与党の皆様に、私どもが出しているこの法案、賛成していただけるのではないかと強く確信をいたしました。ぜひ、否決することなく賛成していただきたい、皆様に御理解を求めたいということを申し上げたいと思います。

松本(大)委員 政治の意思として、未来への投資については惜しみなくしっかりと確保していくんだという力強い御答弁、明確な御答弁だったというふうに思います。ぜひとも、与党の皆様にも、我が党が提出をしておりますこの教育環境整備法、御賛成をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

 いや、私はきょう、本当に総理とのやりとりができると思って、楽しみで来たんですよ。大臣、次回文部科学委員会でたっぷりと胸をおかりしますから、きょうはちょっと、もう私みたいな若造の議員が総理とやりとりさせていただくことなんてめったにないんですから、ちょっとこれはぜひ大きな度量を示していただきたいなというふうに思います。

 時間の関係もありますので、法律に従って議論をしろというお話もありますので、免許の見直しについてお話を進めたいと思います。

 子供にとって教師こそが最高の、最も重要な教育環境であるという点については、私たち、多分与野党間で意見が一致しているんじゃないかと思うんですね。総理も本委員会の答弁でまさにおっしゃっていらっしゃいましたけれども、教育はまさに人材、人でありますと。おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、そうであるならば、やはり、今のように二週間から四週間の教育実習、言ってみれば、言葉はちょっと適切ではないかもしれませんが、お客様のような形で、二週間から四週間の教育実習でよしとするのではなくて、そもそも、しっかりとした教育実習の中で、一体全体自分は教師に向いているんだろうかという適性をみずから判断されたり、あるいは、実際にこれから教壇に立つに当たって自分に欠けているところは何だろうなとしっかり認識をしていただいたり、そういう期間を十分に設けていく。入り口の段階、つまりは養成段階にやはり手をつけていくべきではないかという立場に私たちは立っているんですね。

 そもそも、教壇に自信と誇りを持って立てないような方はつくらない、教壇に立たせない、こういった、教員養成、入り口の段階に手をつけていかなければ、政府案のように、十年ごとに三十時間の講習を受けていただいて、そして修了しなければ認定をしないというだけの免許更新制では、私は、今求められているような教員の資質の大幅な向上ということは図れないのではないかなというふうに思いますが、教育はまさに人材、人であるとおっしゃった総理の御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、委員が御指摘になったように、教員の研修課程を充実させていくということはこれは課題であろう、私もそのように思います。

 よく例として挙げられるフィンランドにおいても、先生の方々は修士を出ておられるということであります。しかし、他方、日本におきましては、短大、学部、修士、それぞれの課程で教員が現実には養成されているという現状もありますし、現在の修士課程のいわば定員の数と、必要とされる教員の数、これが大きな乖離がある中において、一足飛びにそちらに行くということはなかなか難しいのが現状であろう、こう思います。

 その中で、我々政府・与党としては、まず、現実にできる限り、今委員がおっしゃったように、人材、子供たちを教える大切な教師、この人材を育てるための仕組みをより向上させていきたい、その結果、教育の質を向上させていきたい、こう思います。ですから、免許制度の改革だけではなくて、大学の教員養成課程の改善充実を図っていかなければならない、私もそのように認識をしています。

 そこで、教員養成の段階で教員に必要とされる基礎的な資質能力を養うことができるように、教員養成カリキュラムの改善や、より高度の専門性を備えた教員を養成する教職大学院制度、これは平成二十年までにということなんだろうと思いますが、その創設を行うこととしております。

 今後とも、教員免許更新制だけではなくて、これに加えまして、こうした施策を実施することによって質の高い教員の確保に努めてまいりたいと思います。

松本(大)委員 教員の研修課程を充実していきたいという方向性については賛成されているというふうに、私たちとそんなに方向性においては違いはないのかなというふうに受けとめましたが、だとすれば、現状はこうなんだからなかなか変えていくのは無理があるよねというような御答弁ではなくて、戦後レジームからの脱却とおっしゃっているんですから、これは思い切って、抜本的に、もう入り口の段階から、根本から変えていくんだという気概を見せていただければ、内閣の最重要課題、そのとおりだなというふうに、見ていらっしゃる国民の皆さんも納得をされると思うんですが、残念ながら、できる限りというようなことで、一歩踏み込んだ改革にはなかなか及び腰なのかなという気がいたしました。

 総理は、ことしの施政方針演説で、たしか福沢諭吉翁の言葉を引かれて、「出来難き事を好んで之を勤るの心」というふうにおっしゃっているわけでありますから、なかなか今のシステムでは難しいかもしれないけれどもというようなことはおっしゃらないで、ぜひとも、ここにあるとおり、困難なことをひるまずに前向きに取り組んでいただきたいなということを申し上げておきたいと思います。

 もちろん、民主党の提出者にもこれから聞きます。

 今、総理からはそういう御答弁だったんですが、私は、やはり入り口の段階、教員養成段階に手をつけない限りは、これは抜本的な教員の資質能力の向上には資さない、余りにも今回の政府案は小粒な微修正にとどまっているのではないかな、腰が引けているのではないかなという気がするんですが、今の総理の御答弁をどのように受けとめられていらっしゃるのか、今回の提出法案の中身、それからそのねらいも含めて、提出者にお伺いします。

田島(一)議員 お答えをいたします。

 松本委員が御指摘いただいたように、教員全体の資質を向上していくためには、入り口、いわゆる教員養成課程での改革が何より重要だという観点から、私ども、今回のこの免許法の改正案を取りまとめさせてもらいました。

 今し方お尋ねをいただいたとおり、私どもは、養成段階、今現在は四年間の学士ですけれども、さらにもう二年間ないし三年間、修士課程を加えて、大学院の修士という資格を持った上で教壇に立っていただく、そういうことを盛り込んだ免許制度であります。

 ただ二年間学べばいいというだけではなくて、しっかりと一年間は現場で教育実習を積んでいただくということを課程として盛り込みました。その一年間は、今日の教育実習が二週間から四週間と御指摘いただきましたけれども、おっしゃったように、お客様的な存在で学校現場に入るのではなく、例えば学級の副担任のような位置づけで、しっかりと子供たちの教科指導も、そしてまた学校運営等もしっかりと見、聞き、そして、自分が本当に教師として向いているのかどうか、自覚と、そして自信を深めてもらうためのそういう課程としてこの修士課程をしっかりと盛り込んでいきたい、そんなふうに実は考えております。

 今し方総理は、前向きな御回答をいただいたかのように私も最初は受け取ったんですけれども、結果的には、政府としてはいろいろな条件が整わないから困難だというふうに、しりすぼみのようなお答えだったというふうに思います。今回、本当に教員の資質向上を図るとお考えであるならば、私は、今松本委員がおっしゃったように、入口の段階、教員養成課程での抜本的な改革をしなければこの国の教育の質の向上にはつながらない、そう考えておりますので、ぜひ御賛同いただきたいと思います。

 以上です。

松本(大)委員 私のつたない説明ではなかなか総理に民主党案のメリットというのはあるいは伝わらなかったかもわかりませんが、今提出者から御説明をいただいて、お聞きになられていたと思いますが、これはやはりいい案だなというふうに思われませんか。

安倍内閣総理大臣 もちろんこうした政策には理想があって、こういう到達点に行きたい、そういう気持ちはありますね。これは社会保障の世界においてもそうです。しかし、それには財源も必要ですし、大学の、教職養成のための修士課程を新たに創設していくための財源も必要でしょうし、そしてそれを教えていく先生の体制もつくっていかなければならないということもあるわけであります。そういうことも総合的に勘案しながら、また、修士を修めた結果等々もよく、それ以外の先生との比較等も十分考慮しながら進めていく。

 これはやはり現場が混乱して結果を生み出せないのであってはならない。我々は責任を持つ立場でありますから、責任を持つ立場としては、今私どもが考えている案は最善であり、先ほど一歩踏み出していないというお話でございましたが、我々は十歩ぐらい踏み出してはいる、このようには思っているところでございます。(拍手)

松本(大)委員 私は、踏み出す方向が全く違っているんではないかというふうに思いますね。我々は正しい方向に向かって百歩も千歩も踏み込んでいるというふうに申し上げたいと思います。

 財源も必要ですしとかというようなお話もありましたけれども、「出来難き事を好んで之を勤るの心」、「困難なことをひるまずに前向きに取り組む心」とおっしゃっているんですから、「内閣の最重要課題」だというふうにおっしゃっているんですから、ぜひとももう少し前向きな御答弁をいただきたかったというふうに思います。

 どちらの免許制度改革が実際本当に学校現場に資するのかということは、これは今テレビをごらんの国民の皆様が判断をされることだというふうには思いますけれども、我々は、あくまでも入口段階、養成段階に手をつけていく、大幅な資質向上を図っていくということを改めて申し上げたいと思います。

 次に、地教行法関連の質問に移ります。

 いじめや未履修の問題では、学校現場やそれから教育委員会の隠ぺい体質、不作為ということも大きく取り上げられました。昨年も、教育基本法の審議の際に多くの痛ましい事件もありました。報道がありました。北海道の滝川の事件、岐阜の瑞浪市の事件、それから福岡県の筑前町の事件、本当に痛ましい事件が多発をしたわけであります。学校や教育委員会がなかなか自殺といじめとの因果関係を認めようとしないというような事実もありました。それから、北海道の事例に至っては、これは教育委員会ですけれども、遺書のコピーを受け取っておきながら上司に報告をしていなかった、そして、あろうことか、それを紛失していたというような信じられない事実もあったわけであります。

 これは個別の事例だけではありません。きょうお配りをしております資料に、右下にページ数を振ってございますが、七ページ目です。右下、七ページというふうに振ってございます。これは内閣府が行いました、学校制度に関する保護者アンケートというものであります。これを見ますと、今いじめに遭っていると回答した保護者においては、「教員・学校・教育委員会はいずれも対応してくれなかった」という回答が二五・七%を占めている。つまり、今現在いじめに遭っていらっしゃると回答した保護者で、教員、学校、教育委員会がいずれも対応してくれなかったというところが何と四人に一人もいらっしゃったということであります。

 こういった学校や教育委員会の、ある意味では機能不全といいますか不作為について、総理はどのように受けとめていらっしゃるのか、御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 いじめの問題、あるいはまた未履修の問題がございました。現場でこうした問題に対して適切に対応してこなかった。現場の問題また教育委員会の問題は、確かに、今委員がおっしゃったように、そういう問題はあった、私もこのように認識をしております。

 子供たちに教えるべき規範意識が教育委員会にも欠けていたのではないか、このように思うわけでございまして、そういう意味におきましては、教育委員会を指導する立場にあった文部科学省についても、問題の兆しや広がりをとらえ切ることができなかったという観点からは反省すべき点もあった、このように思うわけであります。

 調査等をしたときの、いじめと自殺の因果関係等について、それをなかなか認めなかった、あるいは、いじめが起こっていることすらなかなか認めない。これは、やはり、いじめはどの学校にもどの子にも起こり得る、それをむしろ隠すことがこれは恥ずかしいことであって、問題であって、問題が起こったら適切に対処していかなければいけない。そういう観点から、政府としても、直ちに、いじめについて、いじめを認めたら対処するように、そして報告するように指示をしたところでございます。

松本(大)委員 かなり総理には激しく突っ込ませていただいているんですが、今文科省にも反省すべきところはあったという御答弁については、私は率直に評価をしたいというふうに思います。教育委員会にも問題はあったけれども、文科省にも反省すべきところはあったという点については率直に評価したいと思います。

 その上で、ぜひお尋ねしておきたいことがあります。少なくとも、これは学校現場ということではないかもしれませんが、教育委員会については、今から二十年以上も前にその問題点が指摘をされております。

 お手元にお配りをしております資料の三ページ目、右下にページ数を振ってございますが、三ページ目、これは中曽根元総理のもとに設置をされました臨教審の答申であります。一枚めくっていただきますと、上の段に「(2)教育委員会の使命の遂行と活性化」とあります。議事録にちょっと残しておきたいものですから、引用させていただきます。

 「近年の校内暴力、陰湿ないじめ、いわゆる問題教師など、一連の教育荒廃への各教育委員会の対応を見ると、各地域の教育行政に直接責任をもつ「合議制の執行機関」としての自覚と責任感、使命感、教育の地方分権の精神についての理解、自主性、主体性に欠け、二十一世紀への展望と改革への意欲が不足していると言わざるを得ないような状態の教育委員会が少なくないと思われる。」五行飛ばしていただいて、傍線を打っておりますけれども、「一部の非活性化してしまっている体質を根本的に改善していくことが不可欠である。」

 これは既にもう今から二十一年前ですよ。二十一年も前に臨教審でもって、既に、まさに今皆さんお読みいただいて、ああ、これ今の、昨年も大きく問題になった、いじめ、未履修でクローズアップされた教育委員会の体質そのままじゃないか、変わっていないじゃないかとお感じになられたんじゃないかと思うんです。二十一年も前に既に臨教審でこういった答申が出されておきながら、「体質を根本的に改善していくことが不可欠である。」と答申を受けておきながら、それを二十一年間にわたって放置してきた。結果として、今日のような事態を招いてしまった。

 先ほども御紹介したように、今現在いじめを受けていると回答された保護者の二五・七%が、教員、学校、教育委員会はいずれも対応してくれなかったというような不満を持っていらっしゃるわけであります。いじめを原因とした自殺も多発をしました。

 この二十一年間、このときの答申に対して真摯に受けとめて対策を講じてこなかったことというのは、放置をしてきた不作為の責任というのは、私は極めて重いのではないかと思いますが、政府や文科省の責任について、総理の御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、今までの経緯をお話しいたしますと、確かに、ただいま委員が御指摘のあったように、昭和六十一年の臨教審答申の中にはそうした記述があるわけであります。この答申を受けまして、教育委員会の活性化を図るために、教育委員、教育長に適材を得ること及び教育委員会の運営、地域住民の意向の反映についての改善充実という努力をしてきたわけであります。

 地方分権の推進や社会の変化に伴って、教育における地方自治の強化のために、平成十一年には教育長の任命承認制度を廃止して、平成十三年には教育委員の構成の多様化や教育委員会会議の原則公開等の制度改正を行ってきたわけであります。

 しかしながら、そうした中においても、先ほど御指摘があったようないじめの問題に対する対応等々の問題があったのは事実でございます。

 このいじめの問題につきましては、我々、直ちに取り組むことができることとして、二十四時間の電話相談体制を全国統一のダイヤルで実施しています。多くの子供たちに相談をしてもらっているわけでありますし、またスクールカウンセラー等の充実も図っています。

 こうしたことを行いながら、と同時に、国としても、こうした未履修やいじめの問題等に対する教育委員会が機能不全に陥っている事態にあって、教育委員会がしっかりと責務を果たせるよう指導助言等を引き続き行っていかなければならない。国も責任感を持って行っていくわけでありますが、万一の場合には、やはり国が最終的に教育に対して責任を果たしていく仕組みをつくっていくことも大切であるという観点から、教育委員会に法令違反や事務の管理、執行に怠りがあって子供の教育を受ける権利が侵害されている場合には、文部科学大臣が措置の内容を示して是正の要求を行うことができることとしたわけであります。そしてまた、子供の生命に直接危険が及ぶような非常事態に際しては、文部科学大臣が対応を指示できる、指示するということにしたわけでございます。

 今後とも、国や教育委員会による適切な役割分担のもとで、保護者の皆さんが安心して子供たちを学校に送り出せる、そういう体制を築いていかなければならないと思っております。

松本(大)委員 今御答弁をお伺いしておりましたが、これまでさまざまな努力をしてきた、構成の多様化もしてきたんだとおっしゃいますが、やはり臨教審の提言の「体質を根本的に改善していくこと」という対処方針ではなかったのではないかなと思わざるを得ません。

 いじめや未履修について、今回これを原因としてというか、それを立法事実にするような形で文科省の権限強化が図られているわけですが、確かに学校現場や教育委員会の隠ぺい体質、不作為というものも、機能不全、適切に機能していなかったということも問題なのかもしれませんが、一方で、文部科学委員会や教育基本法特別委員会でも再三指摘をされたとおり、やはり文科省の認識の甘さ、対応の甘さ、感度の悪さ、これについても大いに問題であったということが明らかになっているわけですね。

 未履修については、これは、後で時間があればやりたいと思いますけれども、文科省自身の大学生に対する調査で、世界史の未履修が一六%いるということがわかっていたんですね。過去に四県でもって未履修も発生していた。そのうち一県は、文科省の方が出向して教育長を務めていらっしゃったんです。前例踏襲の役人が前例に当たらなかった。しかも、中には再発した県まであったんですね。これはやはり、文科省の感度の鈍さというよりも、資質がかなり欠けているんではないかなというような思いすら私は抱くわけであります。

 いじめの問題についても、これも後で触れたいと思いますけれども、九九年度以降七年連続ゼロ件と。この同じ期間内に、九百人以上の方が、小中高校生が亡くなっている、そのデータは集計されているんですが、いじめを主因とする自殺はゼロ件であったと、その報告をうのみにされていた。やはり、もう少し健全な懐疑心といいますか、持たれるべきではなかったのかな、その感度の鈍さというのは大いに責められるべきではないかなというふうに思います。

 したがって、教育委員会もあるいは学校現場も問題があった、しかし、だからといって、国の権限強化、そのような文科省の権限を強化することで学校現場が改善していくと期待をされている方は恐らく少ないのではないかなというふうに私は思います。

 では、民主党はどうするんだということなんですけれども、我々は、まさにこの教育委員会制度を根本的に改めていくということであります。

 さっき引用させていただいたアンケートにもあったとおり、今現在いじめに遭っていても、その保護者の方が「教員・学校・教育委員会はいずれも対応してくれなかった」という回答が二五・七%を占めている。つまり、私、やはり問題だと思うのは、今の教育システムでは、保護者や地域住民というのは教育サービスの一方的な受け手にすぎない。学校現場がおかしい、教育現場がおかしい、ここをこう変えたいと思っても、その気づきや発意が還元されていくというかフィードバックされていくような仕組みが制度的に担保されていないということではないかなというふうに思います。ですから、私どもは、ここにメスを入れていくということであります。

 今回提案をしている一例を挙げますと、これは学校理事会ということでありますけれども、公立学校に学校理事会というものを設置いたします。ここには保護者や地域住民の方にメンバーとして参加をしていただく。その上で、校長先生などとともに学校運営に参画をしていただくんですね。

 先ほどのいじめの例でいえば、学校や教育委員会や教員が対応してくれないという場合には、この場合、別の保護者、保護者仲間の方が当然この学校理事会にメンバーとしていらっしゃるわけですから、この保護者仲間の方に、いや、担任の先生に言ったんだけれども、どうも学校内で情報共有されていないんだ、動きが悪いんだということを相談されることによって、この保護者代表の方が学校理事会の場でこの問題を取り上げる。校長先生、こういう問題が起こっていますよ、御存じですか、担任の先生にはその保護者の方はおっしゃったというんだけれども、どうも対応していただいていないようですよと。このことによって校長先生はそれを知ることになる。そうなれば、次の学校理事会の開催時には、では、あの話はどうなりましたかと進捗状況について管理することも可能になっていくということであります。

 つまりは、こういった形で、学校理事会という形で、責任ある担い手として保護者や地域住民の方に入っていただくことによって、問題が発生したときの即応性を高めていく、現場の気づきを生かしていく、隠ぺいや先送りを許さない、こういう制度設計に今回改めようという提案です。

 一方で、今回の政府案、残念ながら、私はこれは参考としてつけさせていただきましたけれども、資料一の、右下のページでいうと一ページですが、一九八六年の臨教審の答申と教育再生会議の報告というのは大部分似通っているんですよ。問題意識の点、委員長、教育長をどうするんだという話、教育委員をどう選んでいくんだという話。申しわけないですが、これはちょっと、もう既に二十一年前に提案されていたことのいわば焼き直しといいますか、少なくとも、控え目に申し上げて、新鮮味に乏しい御報告だったのではないかなというふうに思います。

 結果として、今回政府提出の地教行法改正でも、二十一年前の臨教審の答申と比べて目新しい点といえば、国の権限を強化する。先ほど総理からも御答弁がありました。そしてもう一つは、教育委員会に対する評価制度を導入するという程度かなというふうに思います。

 こういった政府案では、保護者の方が、地域住民の方が、やはり学校現場や行政、お上がうまく取り計らってくれることをひたすら期待するしかない、一方的なサービスの受け手にすぎない。その結果、何度も御紹介させていただいていますが、いじめを受けているのに教員や学校や教育委員会がいずれも対応してくれなかったという不満は、これは少なくとも迅速に解消していくことは私は困難であるというふうに思うわけであります。

 ぜひとも我々が提出をしております民主党版の新地教行法に御賛同いただきたいというふうに思うんですが、私は提出者でありますのでちょっと何か質問ができないということでありますので、私が御紹介をさせていただいたということであります。

 なぜ、政府案で、教育委員会システムが現行のシステムがそのまま温存されてしまえば学校現場の改善に資さないのか、文科省の権限を強めるだけでは恐らく改善には資さないだろうなというふうに私が思っているかといいますと、先ほど来御紹介していますとおり、やはり文科省の認識や対応の甘さ、言ってみれば隠ぺい体質や不作為というのは、私は、教育委員会や学校現場と同様に、文科省もある意味では似たり寄ったりではないかなというような感を率直に申し上げて持っているからなんですね。

 先ほど来申し上げたとおり、いじめによる自殺は七年連続ゼロ件でありました。お手元の資料にもつけましたが、右下のページで十一ページ。十一年度から十七年度まで毎年百件以上の小中高生の自殺があったんですが、この中でいじめによる自殺は一件もなかったという認識を文科省はされていた。学校現場や教育委員会から上がってくる報告をうのみにされていたというわけであります。

 ただ、このことについては国会審議でも大きく取り上げられまして、再調査というものが行われております。一月十九日、子どもを守り育てる体制づくり推進本部というところに文科省から再調査の結果が提出をされて、記者会見等が行われているというお話でありますけれども、この再調査の結果について、この子どもを守り育てる体制づくり推進本部の本部長でいらっしゃいます池坊副大臣にお伺いしたいと思います。

池坊副大臣 今の御質問にお答えいたします前に、教育委員会が余り機能していないというお話でございました。確かに至らない点もあるかと思いますが、私が住んでおります京都は、保護者と地域とがしっかりと連携をとって、教育委員会は活性化いたしております。ですから、地域による格差があるのではないかというふうに思っております。教育委員会がしっかりと機能しているところもあるということはお認めいただけたらというふうに思っております。

 そして、その中にございまして、今の御質問にお答えするならば、平成十一年から十七年までの間は、学校からの自発的な提供によってゼロということでございましたが、マスコミの情報とかあるいは保護者の訴えによって、これはいじめによる自殺ではないかということで、四十一件調査をいたしました。その中で、一件は、警察による、事故と判定いたしましたので、四十件について再調査いたしました。

 そのうちの、いじめを受けて自殺をしたかもしれないというのが十四件ございまして、そのうちの三件は直接的ないじめによる自殺であった。それから六件は、直接的な自殺ではないけれども、それは原因の一つであろうと言われておりますので、私どもは一月十九日、第五回の子どもを守り育てる体制づくり推進本部の中でそれを発表いたしまして、プレスにもそのような記事を発表いたしました。

 いじめによる定義も見直しましたし、また、今までは一点によって自殺の要因を決めておりましたが、いじめというのは複合的なさまざまな問題があると思っておりますので、家庭不和、進路の問題、いじめ等、選択的方法をとるようにいたしております。

松本(大)委員 時間が終了しちゃったのでまた次回に回しますけれども、今おっしゃっていただいたような再調査の結果が白書にないんですよ。以前、野田委員が未履修の話を取り上げられていましたけれども、人の命がかかっているこの再調査です。二件はいじめが主因の自殺だった。しかも、そのうち一件は、大きな問題になった北海道の滝川の事例ですよ。それをこの白書に載せない。一方で、教育再生会議の方は、役人の前例踏襲を破って、ことし一月なのに特出しをしている。

 都合のいい情報は積極的に広報する、しかし、都合の悪い情報については載せない。こういう隠ぺい体質については私は大いに問題がある、こんな文科省の権限を強化したところで、学校現場の問題解決には資さないということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

保利委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、こうして安倍総理にまたこの委員会においでをいただき質疑をさせていただけるということで、大変ありがたく思っております。

 昨年、ちょうど一年間にわたって教育基本法の改正をめぐる議論、そして改正基本法に基づいて、今度、これからいよいよ現場をどうしていくのかというようなことの議論に参加をさせていただいておるわけでございますけれども、この教育三法案についてもかなりこの委員会の中で、本日も最後の質疑が行われているわけですが、お互いに同じ問題意識を持ちながら、そして我々も対案を示しながらの議論を行っているわけでございます。

 後ほどその点について具体的にお伺いをさせていただきたいと思っておりますけれども、ちょっとこの教育関連三法案の審議の前に、せっかくの機会でございますので一点だけ総理に確認をさせていただきたいと思います。

 総理は、ことしの四月二十一日からの靖国神社の春の例大祭、真榊を内閣総理大臣安倍晋三ということで供えられたということが報じられておるんですけれども、この点についての事実関係だけお答えをいただけるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は、国のために戦い、傷つき、そして亡くなられた方々に対する尊崇の念、そしてまた御冥福をお祈りする気持ち、それは持ち続けていきたい、このように申し上げてきているところでございます。

 他方、この靖国神社にかかわる問題がいわば政治問題化され、そしてそれが外交問題になっているわけであります。国のために戦った方々に対する私の気持ちを表することが、いわば政治的に利用されたり、あるいは外交問題にさせていきたいという方々にも利用されるという状況の中においては、これはむしろ、私の真意としては、そういうことによって結果として外交的な影響があるのであれば、それは、例えば靖国神社に参拝したしない、あるいは真榊料を私が出した出さない、お供え物を出した出さないということについては申し上げない方がよろしいのではないか、このように判断をしているところでございます。

笠委員 私は、ここで総理が靖国神社に行かれるのか行かれないのか、その是非を議論するつもりはございません、きょうの機会に。

 しかしながら、確かに昨年、総理は行ったのか行かれないのか、官房長官時代ですね、例大祭で行かれたのか、それはわかりませんけれども、そのことを政治問題化させたいという思いではなくて、なぜこの真榊を供えることについて、この神社を参拝したかどうかじゃないですよ、このこともやはりあいまいにしないといけないんですか。

 私は、このことぐらいはしっかりとお認めになって、この神社新報においてももうちゃんと出ていますよね、これは靖国神社でも配ってあるんですけれども、総理が奉納されたということが報じられているので、別にお認めになっても何ら構わないと思うんですよ。ここまでごまかさないといけないんですかね。もう一度お答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、私はごまかすとかごまかさないということを申し上げているわけではないわけでございまして、私の気持ち、これはまさに私の精神、気持ちの問題であります。そして、国のために戦った方々に対する私の気持ちを表明するのであって、これは決して私の政治的な意思表示ということとは別の話であります。

 だからこそ、むしろそれはもう申し上げる必要はないのであろう、このように私は判断をしているところでございます。

笠委員 私は、ちょっと今のは納得できないですね、やはり内閣総理大臣という名前でこの真榊を奉納されているわけですから。私はそのことを悪いと思わないんですよ。むしろ、いいじゃないかと。

 ですから、靖国神社に参拝するしないのこの問題を政治問題化させたくない、中国やあるいは韓国に対するアジア外交をどうしていくという中で、総理自身のこれは決断でございますから。しかし、そこでぎりぎりの判断の中で今回真榊を奉納されたんじゃないかということで、私は、そのことを認めても何らおかしくない、堂々と、そうですよと言っていいんじゃないかと。そのことをもう一度改めてお伺いをいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、はっきり申し上げておきたいことは、国のために戦った方々、亡くなられた方々、命を落とされた方々に対する尊崇の念を表していく、これは当然のことであろうと私は思っているわけでございます。と同時に、私は内閣を預かる者として、いわば外交そして日本の国益に大きな責任を持つ者でございます。その中においての判断であるということでございます。

笠委員 私も、野党の議員ではございますけれども、国益は同じように大事だと思っております。ですから、このことをこの委員会の質疑を通じて、何も政治問題化させようとか揚げ足をとってやろうとかそういうことではない。ただ、私は、安倍総理がまさに闘う政治家を掲げて、美しい国をつくるというのであれば、やはりこのぎりぎりの判断の中で、しかもそれが、みずから言わなくても、そういうことで多くのマスコミに尋ねられたときに、そのことは率直にお認めになっていいんじゃないかな、そのことを御指摘させていただき、教育のこの三法案の本題の方に入らせていただきたいと思います。

 先ほど来我が党の松本委員の方からも話があったわけでございますが、総理は先ほど、我が党案よりも十歩政府案は先を行っているというようなことをおっしゃったわけでございますけれども……(発言する者あり)前よりもね。

 ただ、私は、本当に教育基本法の議論以来、例えば教員の質をしっかり高めていくことや、あるいは教育行政のあり方で、国あるいは地方公共団体等々の責任の所在をやはり明確にしていかなきゃいかぬじゃないかとか、同じ問題意識の上に立ってこの議論を行ってきたと思うんです。

 ただ残念なのは、この委員会を通じて行われた議論、あるいは参考人の皆さん、地方公聴会に私も出かけさせていただきましたけれども、そこで聞く議論の中で、やはり多くの方が問題意識は共有している。ただ、今回出てきた三法案というものが、例えば教員の免許の更新制というのが、これは研修、講習をしっかりと十年ごとにやっていくよと、これは大事なんですよ。ただ、それだけではやはり足りないんじゃないか。これは中教審の中でも、これまでも、免許の、教員の養成過程の問題、あるいは採用過程について、本当に今のやり方でいいのかどうか、そこを一つ総合的にパッケージとして提案をしてほしかった。

 というのは、現場の皆さんのお話を伺っていても、先ほど総理も、これからその点についても取り組むということをおっしゃっていただきましたけれども、やはり、一部だけをつまみ食いしたように先に出てくると、現場の皆さんはわからないわけですね。じゃ、ただ単に自分たちの負担だけがふえていくんだろうかとか。やはり、そういったことで、私は、先延ばししろとかそういうことじゃなくて、何でそんなに慌てたようにこの三法案を出してこなければならなかったのかということが納得できないわけですね。

 それに、例えば、教員の質の向上に加えて、学教法の改正の中でも、副校長あるいは主幹ポストというものなどを置くことができる。これは、地方公聴会の中でも、あるいは参考人の中からでも、それを置くことはいいんだけれども、その分、教科を教える現場の先生たちをちゃんと確保してもらえるんだろうか、今の先生たちにもっと負担がかかるんじゃないか、やはりそういう不安を抱えていられるわけですよ。ですから、そういうことについて言えば、本来は、教員の量というもの、どうやってそこを補っていくのかということもあわせて三法案を出していただいて、この委員会で議論をすべきではなかったのかな、私はそのようにまず冒頭に申し上げたいんです。

 これは総理にお伺いをしたいんですけれども、やはり、もっと骨太の案をしっかりとつくり上げてから、そして国民の皆様に見える形でこの国会で議論をしていくというようなことの方が本来いいんじゃないか。総理は、ちょっとそこのところを焦っておられるのか、あるいは、参議院選挙へ向けて、何としても何か一つ教育の実績をつくらないといけないというようなことなのか。その点について、総理の思いをお聞かせいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 まず初めに、委員が、私が政府案は民主党案より十歩進んでいるのではないか、こう発言したとおっしゃったのですが、今よりも十歩進んでいると。民主党よりも十歩進んでいる、こんな僣越なことは私は申し上げていないわけでございます。

 そして、その中で、教育改革、教育再生については、これはもう国民の皆様から直ちに手をつけてもらいたい、こういう要請が強いのは委員もよく御承知のとおりなんだろうと、このように思うわけでございます。我々は、こうした国民の強い要請を受けながら、まさに、私たちの内閣の使命は教育の再生に取り組んでいくことである、こう認識をしているわけであります。ですからこそ、最初に臨時国会で教育基本法を改正し、そしてこの国会に間に合うようにこの三法案をつくり、提出をさせていただいたわけでありますが、しかし、それは決して拙速ではない、このように思うわけでございます。

 まずは、昨年の教育基本法の改正につきまして、十分な御議論をいただきました。そして、本年一月の教育再生会議の報告や三月の中教審の答申を受けて、緊急に必要とされている教育制度の改革、改正について提出をしたものであると思います。そしてまた、この三法案につきましては、以前から中教審においてもずっと議論がなされてきたことであり、むしろ、なぜもっと早くやらなかったのか、このようにも要請されていた、こう思うわけでございます。

 もちろん、教育の改革については、この三法案だけではなくて、これからまだまだやるべきことはたくさんあります。その中でも、再生会議で今、第二次報告に向けて議論がなされているわけでありますが、今後とも、さらに教育の質を向上させていくためにも、今回民主党から対案が出たことは大変よかったと思います。建設的な議論を重ねながら、我々も、皆様方の御意見にも耳を傾けながら、よりよい仕組みをつくっていきたい、このように思っております。(拍手)

笠委員 できることはやっていくということは、やはりこれは今まで本当に怠慢ですよ。もう中教審でさまざまな問題点が出ていて、今もうはっきり申し上げて、教育再生会議の中で出てきている意見というのは、これまでのいろいろな議事録を拝見すると中教審の中でも出てきているような内容でございますよ。

 ですから、総理がそうやって、これまでむしろ遅過ぎたぐらいだ、急ぐんだというのであれば、逆に、この教員の質を高めていく問題だって、養成過程のこともあるいはその採用のあり方についてもセットで出していただくことの方が非常にわかりやすいわけですよ。問題点も明らかになりますし。やはり一つ一つつながっていく話ですよね。もうただ単に更新と研修だけ、これだけでもう教員の質の確保ができるというのであれば、私は、それが政府の方針だとおっしゃるのであれば、それはこれでいいんでしょう、この政府案で。しかし、どうもそうではないという認識は我々も共有できているので、これはいたずらな現場の混乱を招かないためにも、やはりしっかりと総合的な政策というものを打ち出すのが本来の教育再生のあり方じゃないかというふうに思うわけです。

 そこで、伊吹文部科学大臣、お待たせをいたしました。一点お伺いをしたいと思うんですが。

 教育再生会議、これは安倍総理が、教育再生へ取り組む、自分のもとにしっかりと助言をしてもらう機関をつくるんだということでこれを設置して、そこでの議論を受けて今回の三法案が出てきたと思うんです。ただ、何を法案化するか等については、当然文科大臣も入っておられるわけですけれども、どうも、中教審で積み上げてきた議論があるにもかかわらず、この再生会議が登場して、そして、何か見切り発車的なものに拍車をかけていったような気が物すごくするわけですよ。

 再生会議のそもそものあり方については、文部科学委員会などで私も議論をさせていただきました。当初は大臣も率直に、首をかしげながら、苦しい答弁をされておりましたけれども。大臣、また五月末にですか、教育再生会議が二次報告を行うというんですけれども、要は、この教育再生会議で何かが決められて提言が行われたことを受けて法案化したり、あるいは制度を、国会の議論が必要ないものもあるでしょう、そういったものを実際に改革を進めていくということがこれからの安倍内閣のこの教育再生での取り組みという認識でよろしいんでしょうか。

伊吹国務大臣 まず、随分焦っている、急ぎ過ぎだ、全体像を示してからというお話がありましたけれども、大いに急いでやらねばならない教育の現状があるときに、例えば、おなかがすいているときにメニューをみんなそろえてから、それではおはしをとってくださいというわけにはいかないでしょう、それは。急ぐものからやはり、おなかがすいているときは、目の前にあって、最初に処理しなければならないものから手をつける。

 だから、再生会議は、いつも先生にも御答弁をしているように、安倍総理が自分の教育再生のためにいろいろな意見を聞きたいということで、閣議決定をもってつくった組織なんですよ。だから、政治的な意味は非常に大きいです。しかし、教育というのは、笠さんと私と安倍総理と、みんな少しずつやはり教育観というのは違うと思います。だから、いろいろな国民の方の意見を聞かねばならない。その国民の方の意見を聞く一つの大きな場として再生会議というものがあると私は考えています。

 ですから、そこで出てきたものを、最終的に安倍内閣として総理が決断をされて、こういう形で法律化してくれと言われたので、私はそれを受けてやっているわけでして、むしろ、再生会議の第一次提案どおり方向性がなっているものは余りないですよ。今までの継続性とか、しかし再生会議のアイデアも入れながら、それを法律的に組み上げていく。もちろん与党と、一番怖い大島座長がおられますから、それはよく相談をしてやっております。

 そして、こうして何よりも今ここで、国民の代表である皆さん、国権の最高機関にお諮りをして、そして決めてやっていくというのが、日本の統治の仕組み、憲法の規定しているところです。

笠委員 私が今申し上げましたのは、まさに今大臣が、再生会議は幅広く聞いていく中の一つであると、確かに政治的な総理の思いはありましても。だから、重いものであるわけですよ。しかしながら、それが決定したからそのとおりに必ずしもなるとは限らないし、やるわけではないということを、確認を改めてさせていただきました。

 であるならば、私は、これは、実は自民党の馳委員がこの審議入りのときの本会議の中でも求められておりましたけれども、議事録を公開するのか、それとも、議事を公開しないのであれば、本当にこれは安倍総理の一つの私的な、いいじゃないですか、総理に対してアドバイザーがたくさんおられて、同じような考えを持った方々にいろいろな意見をいただくのは。ただ、マスコミに対しての発表の仕方が非常にこれはまずいと思うんですね。

 ですから、きょうも午前中議論がありましたけれども、先般の親学の問題についても、確かに中身はいいですよ。しかし、それぞれの委員の方の思いで、それを何か、さも押しつけていくような、それを、国会のこの委員会の中で、あのときには大臣が否定をされました。そうすると、今度の報告からは少し表現を変えていくとか。否定というのは中身の問題じゃないですよ。要するに、押しつけ的にものをやることじゃないんだというようなことを大臣が素早く答弁をされましたので、恐らくその影響もあったんでしょう。だから、非常に混乱しているように見えるんですよね、再生会議での議論というものが。

 ですから、今、国会でこうやって、せっかくまとめ上げて政府が出してきて、我々がまた民主党としての対案を示して、本来ここでの議論というものが、伊吹大臣がいつもおっしゃっているように、国権の最高機関としての議論というものと、何か官邸でにぎやかな、無責任とまでは言いませんけれども、一人一人のメンバーではなくて、無責任にブリーフをする人たちがいたずらな混乱を招いているということについては、少し私は運びというものを考えていただきたいし、本当にブリーフなんかせずに議事をすべて公開する、それをまた国民の皆さんにも見ていただく。ただ、議事録というのは一カ月とかおくれてですからね。だから、総理、やはりそういう運営のやり方というものを少し考えていただいた方がいいかと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この議事につきましては、記者ブリーフィングをして議事の要旨を説明して、そして議事録をすべて公開しています。要は、やっている最中を実況中継的にそれをすべて公開するかどうかということでありますが、しかしそれは、やはり自由な議論がしにくいという側面もあるわけでありますし、むしろ、そこで逆に一部だけが報道されるという懸念というのもないわけではないですよ。ですから、そういう意味において、しっかりと冷静に見ていただけるように議事録は文書で公開をしているということではないか。

 当然、この再生会議の皆様も、広く、見識のある方々に集まっていただきまして、そしてスピーディーに取り組んでいくという必要があると思います。そして、私も入って、文科大臣も入っています。その中でまじめに責任感を持って議論をしているということも申し上げておきたい。

 そして、いろいろな議論を呼んでいます。私は、むしろ議論を呼ぶ議論をしていただきたい、このように言っているんです。タブーを恐れずに議論をしていただきたい。だから、論議を呼んでいるのは当然事実。むしろ私の望むところであろう。皆さんに議論をしていただく、そして、注目をしていただく中においてこの第一次案を取りまとめていただいたわけでございます。

 そして、できたものについては、当然与党は与党で審査をしていただき、そして、何といってもこの国権の最高機関において国民の代表たる皆様方に御議論をいただいている、こういうことではないかと思います。

    〔委員長退席、小坂委員長代理着席〕

笠委員 今総理が、まさに国民的な議論を呼び起こしていくためのタブーなき議論を大いにしてもらいたいということであるなら、これは本当にリアルに、しっかりと、だれもが傍聴できるような形の中で。恐らく委員の方々も、私はあの顔ぶれを見ていますと、だれかがいるから言えないなんというような方を選んではおられないと思いますよ。

 だから、逆に言うと、一部のブリーフのやり方等々によって変な誤解を受ける。これは、委員の中の方でもやはりオープンにすべきと言う方もおられるわけですから、もし本当に国民的な議論を、我々政治家だけじゃなくて、国民に向かってそういうことを、この教育の議論、まさに総がかりの、教育再生をやっていくんだ、そのための一つのきっかけなんだと言うのであれば、ぜひこれは、総理あるいは官房長官に、今後このあり方というものについては大いに考えていただければと思います。

塩崎国務大臣 この公開の問題につきましては、再生会議のメンバーの皆様方で随分たくさん議論をしていただきました。

 一次報告が終わって、二次報告に向けて議論を始められるときもまたこれを議論して、いろいろな議論があったことは今笠先生がおっしゃったとおりであって、その中で、その場の公開というのはとりあえず今回も見送ろう、そのかわり議事要旨を出して議事録を出すということで、ちゃんとそれはもう皆さんに、公開なるからこそ、それをもってきてここでいろいろな御質問を承ったりするわけでありますので、それは再生会議のメンバーの中でガバナンスとして決められたことでありますので、そこはそれで尊重していただきたい、こう思います。

笠委員 一点だけ申し上げておきますけれども、むしろ私、再生会議のメンバーの方々も、その議論というものが広くそのまま伝わって、また反発もあるでしょう。あっ、それはいいことだと、いろいろな国民の反応もあると思うんですね。またそういったことを受けながら議論していく方が非常にいいんじゃないかと私は思っておりますが、私は、それは御提案ということで、次に移らせていただきたいと思います。

 安倍総理、昨日、党首討論でも小沢代表が、この「美しい国へ」、私も読ませていただいたんですけれども、この中で、イギリスのサッチャー首相による教育改革というものを総理が「教育の再生」のページの中で大変高く評価をしておられます。一九八八年の教育改革法について、具体的にはそういうことだと思うんですが、サッチャーが一九八八年の教育改革法をつくることによって教育改革を断行していく、どの点を評価されているのか、そのことをまずお述べいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私が自由民主党の幹事長代理であったときに、教育の改革、再生のための視察団を英国に送りました。山谷えり子さんや古屋圭司さん等々に行っていただいたわけでありまして、その報告書の中に、一九八八年のサッチャー首相の改革、この改革自体はサッチャー首相が始めて、メージャー首相が引き継いで、そしてさらにブレア首相によってある意味では洗練化されていったという側面もあるだろう、こう思っているわけでありますが、この一九八八年の教育改革法によって、国定のカリキュラムの策定がなされた。そして、全国の学力テストの導入の検討がなされました。実際に学力テストを実施したのはメージャー政権でございますが。そして、学校選択を拡大し、また学校裁量の拡大など、そうした施策を通じて教育水準の向上を目指す教育がいわばかなり大胆に行われた。

 大胆に行ったがゆえに、もちろん教育現場では大変な抵抗もあり、それなりの混乱もあったということは承知をしておりますが、ここがやはりイギリスにおける教育改革の原点ではなかったか、このように認識をしております。

笠委員 総理、もう一点、今の点に関してお伺いをしたいんですが、総理の教育再生にかけていくこれからの政策、あるいはこれまで行ってきた中で、イギリスのサッチャー首相による、その後、メージャー、ブレアと引き継がれるわけですけれども、このイギリスの教育改革というものは参考にされているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、サッチャー首相の持った問題意識ですね、あの本の中でも書いてありますが、公教育を再生していかなければいけない、子供たちの学力が低下をしている。事実、大変な低下をしていました。そして、当時は、イギリスにおいても教職者の組合との関係もあっただろうと思います。そしてまた、教育の内容等について、いわばバランスのとれた教育が、例えば歴史教育においての、行われているかどうかという問題意識を持った。この問題意識について私も共有したところでありまして、その点も、本に書いてあるとおりでございます。そして、その中におきまして、今申し上げましたような改革に手をつけた。また、改革においては、特に教育の分野においては強い意思が必要であるという点も、私は大変参考になったところであります。

笠委員 二〇〇四年秋の、先ほど総理は自民党の調査団とおっしゃいましたけれども、この英国調査団は、実は私も松原仁議員とともに、これは超党派で、先般元気に復帰をされました平沼赳夫先生のもとでの調査団だったんです。私も二〇〇四年の秋に行ってまいりました。

 確かに、どの国の制度が一番いいんだとか、そういうものはそこと一緒にすればいいんだというような、そんな簡単な問題ではないでしょう。ただ、私がそのときに感じましたことは、まあ確かに当時のイギリスは、イギリス病と言われる、今の日本どころじゃないですね、それぐらい本当に深刻な状況の中で、まさにサッチャー首相が改革を断行する。

 今総理がおっしゃったようなこともあるんですけれども、それまではイギリスというのは、まさに国定のカリキュラム、日本の学習指導要領に当たるものもなかった。それも現場に任せていた。これじゃ大変なことになるじゃないかということで、国の、国定によるカリキュラムをしっかりとつくって、そして、あわせて学校を評価し、そして、それを情報公開していくという仕組みを整えた上で、やはり学校の現場に物すごく権限と責任を持たせたんですよね。学校の校長と、そして学校の理事会、まさに予算権、人事権、これまでもすべて持たせたことによって公教育が再生した。

 むしろ、私は、その後者の方、前者については、そのときも言われましたけれども、実は、当時の英国が、イギリスが、日本をモデルに、日本の学習指導要領、こういったものをモデルに改革をしたわけですね。ということは、我々が学ぶものがあるとすれば、サッチャー首相の行った政策の中から学ぶことができるものがあるとすれば、やはり学校現場に権限を渡していくということをしっかりと考えていかなければならないんじゃないかと思っております。

 そういう意味においては、私どもの民主党案の方が、ある意味では、そういったイギリスのサッチャー首相からブレア首相まで引き継がれてきた教育改革の一つの側面を取り入れているものであるのかなという気がしております。

 そこで、民主党の提出者にお伺いをいたします。

 昨日、総理の小沢代表との議論をちょっと聞かせていただきましたけれども、国と、それと地方公共団体、教育委員会、この責任と権限をどうするんだというところまで行くんですけれども、学校現場に権限をどうするんだという話がきのうもちょっと出てこなかったわけです。

 あえて私どもは、学校現場に理事会を設けて、そして、しっかりとその権限も明確にしていこうということを、これは日本国教育基本法をつくったときからそのことをしっかりと明記させていただいております。その意味について、あるいは、なぜそうしていくのか、それが必要なのかということについて、法案提出者にお伺いをいたしたいと思います。

牧議員 大変いい質問をしていただきまして、ありがとうございます。

 今回、先ほど安倍総理の答弁の中でも、いい対案を出してもらって、いいとは言わなかったかもしれませんが、対案を出してもらって、活発な議論になってよかったというお話がございましたけれども、ただ、私ども、今御指摘があったように、この私どもの法案というのは、昨年提出をさせていただいた我が党の日本国教育基本法案、これにのっとって、その中でも重要な柱の一つである国と地方との責任分担、この部分をなす私どもの法案でございますから、対案というつもりでこれを出したというよりも、我が党の日本国教育基本法案の中の一つのパッケージとして今回提出をさせていただいたというふうにまず御理解をいただきたいと思います。

 そして、今御指摘のあったお話でございますけれども、私どもは、教育現場におけるさまざまな問題に、国の権限をただ強化する、国が関与できる仕組みをつくることによって、果たしてそれが本当の解決に結びつくのかということには、これはつまり政府案ですね、これに対しては非常に疑問を持たざるを得ないし、国民がこういった方向性を望んでいるとも思いません。

 なるだけ現場主義、現場主権と言った方がいいのかもしれませんけれども、即応できるそういう仕組みをつくるためには、私どもの法案の中では、学校理事会を設置して、ここが学校の運営そのものを権限と責任を持って行うという仕組みをつくったわけであります。

 ついでに申し上げれば、教育行政については、首長が責任を持ってその行政をつかさどるということもはっきりと明記をさせていただいたところでございます。本当の意味での問題解決には、やはり、きちっと現場が権限と同時に責任も持つという体制をつくってこそ、この問題、さまざまな問題に対処できると思っております。

 先ほどの安倍総理のお話の中にも再三出てきた、国民総がかりというお話がございました。確かに私たちは、この教育問題、国民総がかりで取り組まなければならないという気持ちは、もちろん同じ気持ちを持っておりますけれども、ただ、総がかりが、本当に責任の所在がわからないということになってしまってはいけない。そういう意味合いで私どもは今回の新地教行法案を提出させていただいた次第であります。

笠委員 私もやはり、今答弁者から話がありましたように、伊吹大臣がまさに御出身の京都、本当に最先端ですよね。地域で、地域の力で、そして学校現場に権限を、今の法体制の中でコミュニティースクール等々を進めながら取り組まれている。そういう地域が本当に今たくさん出てきているんですね。全部無責任に渡すということじゃないですよ。しかし、全体として、国が最終的な責任は負うものの、あるいは評価もしていく仕組み、あるいは環境づくりということは国が責任を負わなければなりませんけれども、具体的に、自分たちの地域の公立の学校をどうやって運営していくのか、あるいは今問題があるんだったらどうやってよみがえらせていくのか、そういったことがもっとできるような制度の検討を、学校現場の、学校の権限というものを今後明確にしていく考えがあるのかどうか。

 これはちょっと、その思いを安倍総理にお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 学校の現場にできる限り権限を移していくという方向性については、私も賛成でございます。現場に権限を移すと同時に、現場には当然責任を持っていただかなければなりませんが、何といっても、やはり現場のことを一番よくわかっているのは現場の校長先生初め先生方であろう、こう思うわけでございます。

 ただ、すべての権限を現場に移せばよいわけではないというのは当然のことでございまして、教育の格差が広がっていくということに対する懸念もございます。そうしたことを慎重に踏まえて制度設計は行っていく必要があるのではないかと思います。

 しかし、方向性については、現場に権限を移譲するということについては、基本的に賛成でございます。

笠委員 やはり教育行政で、あともう一点。

 随分この委員会でも、イズムの問題ですね。民主党としては、今の教育委員会というものは問題である、形骸化しているから、むしろ首長さんに。先ほど提出者からありましたけれども。この点について、再三再四大臣から、政治的な中立性が保たれないんじゃないかと、そのことを逆に指摘されたわけでございますけれども、きょうは最後の審議でございますので、ちょっと提出者から、それは大丈夫なんだ、どうやって担保していくのかということを改めてお伺いしておきたいと思います。

牧議員 これまでの議論の中で、伊吹大臣から、首長に教育を任せちゃって大丈夫なのかと。あたかも、エキセントリックな市長が出てくると、その人によって教育が物すごく大幅に左右されてしまうという懸念を大臣からいただいておりましたけれども、私ども民主党案では、学校運営は現場主義、そして、学校行政、教育行政の責任は首長が責任を負うと。この首長というのは、もちろん主権者である国民から選ばれた人であります。国民の審判を仰いで出てきた人が首長であり、その首長は常に議会に対して、そして議会を通じて市民に対しての説明責任を負うものでございます。その意味でも、私は十分その公正性、公平性というものは担保されると思います。

 さらに、私どもの民主党案では、教育委員会にかわる教育監査委員会という委員会を設置して、この委員会の設置の要件についても、例えば政党に所属する者が二分の一以下であるとか、そういった要件をきちっと備えて、この教育監査委員会が中立公正な目で市長の教育行政を監査するという仕組みをとっておりますから、そういった御心配は当たらないと思います。

 そもそも、例えばこの国会も、国民の皆さんに選ばれた国会議員が来て、その多数党が議院内閣制ですから与党になって、自由民主党の総裁が総理になって、総理が任命した文部科学大臣がこの国の教育行政の責任者であるわけですから、地方で選ばれた人は信用できなくて、では、国会で議院内閣制のもとで出てきた人が信用できるという言い方は、私は地方軽視であり、乱暴だと思います。

笠委員 中立性というものに配慮をしていくということは大変大事なことですけれども、私も、本当にイズムが全く入らないということが本来あり得るのかというと、それはなかなか難しい。しかし、それが非常に抑制されたものでなければならないし、なるべくそれで偏向するようなことがないように、どう担保していくのかということはもちろん考えていかなければならないんですけれども、今のを、恐らく国民の皆さんがどのような判断をされるのか。(発言する者あり)いや、これについてはもう十分文科大臣とは議論させていただきましたので、次に移らせていただきたいと思います。

 この地教行法の改正案の中で、先ほども議論ありましたけれども、例えば、未履修の問題であるとか、あるいはこれまでのいじめが原因とされる、あるいは原因の子供たちの自殺の問題等々が起こった中で、とりわけ教育委員会あるいは学校の校長を含めたその責任論というものが展開され、そのことについて、どうやってその子供たちを守っていくのかというもとで今回の議論も行われていると思っております。

 そこで、先ほど松本委員の方が若干触れたわけでございますけれども、やはり大事ですよ、教育委員会をどうしていくのか、あるいは学校の現場。ただ、やはり文部科学省は、これはもう本当にこの組織自体を見直していかなければならないと私は思います。その責任というものも非常に大きい。先ほど総理がその点についても思いを述べられました。

 そして、伊吹文部科学大臣も先般、たしか感性ですか、ちょっと足りぬと。でも、本当にこれは感性の問題じゃないですよね。構造的に、どのように組織を、今後内部の体制というものを変えていくのかということについて、文部科学大臣が、今具体的にこうするということじゃなくても、変えていく必要性があるんだと、これは単に一人一人が感性を磨けという問題じゃないという御認識を持っておられるのか、それとも感性だけの問題である、自分がにらみをきかせておけば大丈夫だというレベルでの話なのか、その点について、大臣にお答えをいただければと思います。

伊吹国務大臣 先ほど先生が、私の出身の京都市の教育委員会のことをおっしゃった。そして、現場へかなり権限をおろして。つまり、これは人を得ればできるんですよ。御党の質問者もいろいろそういう趣旨で御質問になっています。だから、教育長と教育委員に人を得ればできるのと同じように、文部科学省は、ちょっとうるさい大臣が来て大変だと思っていると思いますが、徐々に直していきますから。

笠委員 まさに人だと思うんですよ、逆にね。これまでの教育行政をずっと日々厳しい大臣のもとで頑張っておられる今の官僚の皆さんも、私は皆さんがそれぞれ頑張っておられると思います。ただ、やはり教育を預かる文部科学省だから、例えば人材の採用あるいは育成、養成、これは教師の質を高めると同じぐらい、私は今後取り組んでいかなければならない大きな課題じゃないかなと思っています。

 それで、お伺いしたところ、ことしから初めて若手の職員の学校現場への派遣というものを大臣が始められた。私、そのことは評価します。ただ、遅いですね、これも。私も委員会で、余りにも現場を見ていないんじゃないかと。確かに、教育長として行ってみたり、いろいろな形で出向していくというケースはあっても、本当に今の公立の学校の現場がどうなっているのかということを知った人材がやはり省の中におられるということが、当然、今後、この三法案にしても、成立をすれば、その後いろいろな具体的なことが省令の中で定められていくわけです。やはり私もいろいろな地域の皆さんから話を伺っても、学校現場のみならず、文部科学省の評判というのは悪いですよ、本当に。別に大臣の評判が悪いとかそういうことじゃなく。何かやはり、我々の現場のことを知ってくれているんだろうか、そういう意識ってあるんですね。これは我々も謙虚に、また我々に対する目もそういう目で見られているんだと思います。

 しかし、やはりこの役所というものをもう少し、教育の責任者でございますので、この人材の育成というものについて、お二人の方が今度静岡と香川のそれぞれ中学校に一年間派遣されるということでございますけれども、もう少し枠をふやして、そしてそれぞれの、それこそ十年の免許制もあるんですから、若い人に限らず、少しスキルアップもしていただく、新しい今の現場、十年前とは随分変わっているでしょう、そういうのも見ていただく。

 それを拡大していくような方針があるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。

伊吹国務大臣 文部科学省の職員だからといって特例的に教壇に立たせるというわけにはいかないんですよ、これは法治国家ですから。免許を持っていないとだめなんですね。だから、採用の際にも、教員の免許を持っている人あるいは特別免許的な扱いのできる人、こういう人をやはり考えて採用をするとか、そういうことも含めてやっていく必要があると思いますし、何よりも、私の部屋にも書いてあるんですが、森有礼さんが、文部省の本来の責務はということ、これは国に教育権のすべてが集中していた明治に書かれたものですから、このとおりやるというわけにはもちろんいかないんですけれども、ここに書いてある日本の将来を担う人材、先ほど来、例えば田島先生がおっしゃったように、格差の問題を解決しなければ教育再生ができないんじゃなくて、教育再生というのはまさに格差の問題を生じさせないためにやっているわけですから、そういう使命感を持って私以下全員がこの問題に取り組むという決意でやりたいと思います。

笠委員 その方向で本当に力を発揮していただければ。

 それで、一点だけ、これは私の提案でございますけれども、採用に関しても、例えば、社会人として五年、十年経験があるとか、あるいは教職員としての経験があるとか、何か一般的な、そういうしっかりとした経験をした方を手厚く採用をしていくというようなこともいいでしょう。文部科学省に関して言うと、特に教育に携わられる方々に関して言うと、総理、そういったことも今後この教育再生の中でお考えいただくことはできないでしょうか。これは私の提案でございます。

    〔小坂委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 採用については、いろいろな経験をした方々が役所で行政を行う、これは御提案としても傾聴に値する、このように思います。

 しかし、私は、決して、文部科学省の人たちが特別悪かったということではないんだろう、このように思います。

 確かに、いじめの問題や未履修の問題が起こったときに、学校の現場あるいは教育委員会が適切に対応してこなかった、その中にあって、文部科学省が適切な指導を行ってきたか、こういう反省はあります。だからこそ、今回、教育委員会の責任、権限等々について明確化したわけであります。その機能も充実化した。そして、教育委員会が適切な対応をしなかった場合においては、国も指示や是正の要求ができるようにした。それは、国も権限を持ったけれども、大きな責任を持った。この大きな責任を持ったということを自覚して、文部科学省の皆さんにも当たってもらいたいと思います。

 役所において、いろいろな問題、いじめの調査の結果等々の問題でありますが、これは役所全般に言えるかもしれませんが、間違いがない、いわば無謬性を非常に大事にし過ぎるんですね。やはり、人間だったらうまくいかないこともありますし、間違っているということもある。ですから、それは、間違っていることは謙虚に認めて、直ちに対応していくということが求められているのではないか、私はこのように思いますし、もう既に文部科学省も、今までの点を反省しながら、検討、検証しながらしっかりやってもらえる、私はこのように確信をいたしております。

笠委員 私は、本当に今頑張っておられる皆さんがだめだとか、そういうことを言っているのではない。ただ、公立の学校がこれだけ多岐にわたってある中で、さまざまなことが起こっている。

 だから、本来であると、これは私の個人的な考えなんですけれども、大体、文部科学省と、省庁再編のときに一緒にしたこと自体が。本来、教育は、官邸のもとに教育中央委員会ぐらいをつくって、しっかりと特化していくというぐらいの改革を進めるべきじゃないか。再生会議じゃなく中央教育委員会ぐらい、本当にそれぐらいのことをやっていってもいいんじゃないか、とりわけ人づくりというもの、教育というものを最重要課題に掲げていくのであれば。これは我々も同じ思いでございますから、そのことを申し上げておきたいと思います。

 それで一点、先ほど来、この委員会で、本当に教育予算というものについてはしっかりと拡充していこうよということ、このことについては、これはもう与野党問わず、ここにおられる皆さん、もう本当にコンセンサス、合意ができていると思うんです。

 そして問題は、これから、先ほど来総理も、しっかりと、真に必要な教育予算というものについては、やはりめり張りのある、今度は概算要求から安倍内閣としての予算というものを今度初めて組まれるわけですから、そのことについては、きょうの力強い総理と文部科学大臣の御答弁がありましたので、その結果というものをしっかりと私も見させていただきたいと思います。

 一つは、教育の格差という問題。これが固定化していくと、総理もおっしゃっていますね、親の経済力によって、あるいは地域の経済力によって学ぶ場というものがなかなか、その場というものの機会が、この機会の平等というものが保たれなければいけないんだ、その機会というものはしっかりと守ってあげなきゃいかぬと。

 その中で、これは再三再四私どもが求めておることなんですけれども、私、きょうは主に義務教育の話が多かったわけですが、とりわけ高等教育、これについても、大学に行きたい、学びたいという人たちは、本当にみんなが行けるようにしてあげたい。そして、私自身も高校、大学と、奨学金をもらって、それで卒業いたしました。本当にありがたい国だなと思います。

 そういう中で、これは何度か私ども指摘しているんですけれども、今、国際人権規約の例の第十三条二項の問題ですね。高等教育の漸進的な無償化状況の批准を、いまだに日本がこれを留保しているわけですね。百五十カ国を超える中で、批准していないのがルワンダとマダガスカルと日本だけなんです。

 私は、やはりこれは、国連からもなるべく速やかにやってくださいよという要請も、昨年、たしか六月か何かを期限に頼みますよというようなこともあったと思うんです。ですから、安倍総理が教育というものを最重要課題として位置づけるのであれば、この高等教育、学ぶ機会を保障していこうという意思を国際社会に向かって、あるいは、本当に一番大事なのは、これから日本の大学へ行こうあるいは他の高等教育を受けたいと思っている子供たちに夢を与えられるように、ぜひ批准をするように御決断をいただけないでしょうか。総理、よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、奨学金制度については、我々もぜひこの奨学金制度を充実させていきたい、こう考えておりますし、また今までも充実をさせてまいりまして、平成九年から十九年度の十年間において貸与人員は約八万人ふえております。また、事業費におきましても八百六十三億円ふえているわけでございますし、また、笠委員のような有為の人材を育てるために有益に使われている、このようにも思います。

 かつて西鉄ライオンズの稲尾投手が高校を卒業して西鉄と契約をして契約金をもらったとき、その足で、契約金でもって自分が受けてきた奨学金を返したという話を私も聞いたことがあるわけであります。

 そこで、国際人権A規約の高等教育無償化の条項についてでありますが、無償化の際の財政負担の問題や、また高等教育段階に進学しない学生との負担の公平性の見地から、また高等教育において私立学校の占める割合が大きいために、私立学校を含めて無償化の方針をとることが困難であることから、留保をしております。

 しかしながら、家庭の経済状況によって就学の機会が奪われてはならない、私もこのように思うわけでありまして、教育の機会均等を図っていくことは極めて重要であろう、またそれは私たちの責務である、こう認識をしています。その観点から、奨学事業等を通じた支援を一層充実させていきたい、努めていきたい、このように思っております。

笠委員 総理、これは、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」ということで、何もこれを批准したからすぐに無償化しろということじゃないわけですよね。現に、この百五十カ国以上の中には、奨学金制度で充実をさせていくとか、それはいろいろなやり方があるわけです。

 ただ、やはり、なぜ日本だけがこれを批准できないのかということ、私、これがどうしても納得できないんですよ。今、財源の問題だとか公平性とか。何も大学に行くだけがすべてじゃありません。しかし、大学で学びたいという人たちが学べるような環境をつくってあげることということですから、その留保する理由というものは、私は、どうもそれじゃ説得力がない。

 ですから、安倍総理のときにやりましょうよ、ぜひとも。もう一度お願いをいたします。

安倍内閣総理大臣 日本という国は、こういう条約を批准する際は極めてまじめにやっております。

 御承知のように、アメリカはそもそもこの条約を締結しておりません。また、ドイツ、イギリスも、締結をして批准をしているんですが、実際はその後有償化になっているということもありまして、日本は、国際的な約束は、したからには守らなければならないという観点から、厳密にこれは考えていかなければならない、このように思っております。

笠委員 時間が迫ってまいりました。

 総理、では、日本がこれを批准して、モデル的な国になればいいんですよ。まさに教育文化立国として日本が範を示していくと、国際社会に向かって一つのメッセージにもなると私は思うんです。ですから、よその国がどうこうではなくて、本当に批准をして、まじめに日本はそのとおりにしっかりと学びの機会を保障していく、それこそが教育再生ではないかということを申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

保利委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 まず、文科省にお聞きをいたします。

 新教育システム開発プログラムというのを進めていると思いますけれども、説明していただきたいと思います。

銭谷政府参考人 新教育システム開発プログラムは、義務教育の構造改革を進めていく際のさまざまな教育課題につきまして、客観的なデータ等を収集、検証することを目的として行う調査研究事業でございます。平成十八年度から実施をいたしておりまして、研究テーマを四点ほど設定した上で、そういうテーマについて研究をしたい各団体を公募して、そして研究委託をしているものでございます。

石井(郁)委員 日本青年会議所が提案団体となっている地域の力による学校教育の実践と検証というのが、文科省の新教育システム開発プログラムに採用されています。文科省事業として全国で実行されようとしているんですけれども、この事業には幾らの予算がついていますか。

銭谷政府参考人 日本青年会議所の、地域力による学校教育実践と検証という事業につきましては、委託額の上限が百三十五万円とされたところでございます。その範囲内で、契約の締結に向けまして、現在手続を進めているところでございます。

石井(郁)委員 れっきとした文科省の委託事業として行われているわけでございますけれども、この事業について、ホームページで見ますと、このように書いてありました。

 このたび、「誇り」、これはDVDのアニメーションなんですけれども、日本青年会議所が作成した歴史教材を用いた近現代史教育プログラムが、文部科学省の研究事業に採択されました、この認可を契機に、全国の青年会議所メンバーが積極的にこれらのプログラムを実践していただき、市民意識変革へ邁進されることを心より願いますというふうにあるんですね。

 だから、みずから行ってきた運動が文科省の研究事業、調査事業といいますけれども、採択されたということが宣伝されている。そして、これは全国の中学の総合の時間などで近現代史プログラムをやるというふうに言われているんですね。

 このプログラムというのは、ただDVDを見せるというだけではないんです。上映後、子供たちにグループディスカッションを行わせる、そこに青年会議所のメンバーの方々が入って議論をリードする、それで自分たちの論点を徹底しようとするものでございまして、ことし二月から六月にかけて、既に全国で百カ所近く行われているというふうに聞いています。実際にもう既に行われている学校もあるわけです。

 文科省は、この実態を把握していますか。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、新教育システム開発プログラムは、文部省が定めました四つのテーマのうちから、研究をしたいという団体が公募に応じて申し込みまして、テーマを決めて事業を委託して実施していただいているものでございます。十九年度では、採択件数は七十六件ございます。

 この四つのテーマをちょっと申し上げますと、学校運営と教育条件整備、学校運営の裁量拡大、地域に開かれた学校運営、新しいタイプの自律的な学校運営、この四つのテーマの中から、そのテーマの幾つかを選択して申し込んでもらうわけですけれども、今お話しの日本青年会議所の研究は、地域に開かれた学校運営というテーマの中で研究、実践をしていただいております。

 それで、この研究は、地域の人材が学校の求めに応じて教育活動に参画をするという際に、有意義な活動を行うために必要なノウハウや留意すべき事項などを検証することを目的といたしております。

 私ども、当該団体が作成をした教材の内容等を評価した上で調査研究を委託しているものではございません。むしろ、そういう外部の人材が学校に来て学校の教育活動に参画をする場合に、どういう留意事項が必要かということを実践的に検証していただくという意味で、事業委託をしているものでございます。

石井(郁)委員 しかし、その中身は、近現代史プログラムということをもって学校でいろいろな実践をしているということがあるんですね。

 そこで、総理に伺いますが、この「誇り」というアニメーションのDVD、御存じですか。

安倍内閣総理大臣 存じ上げておりますが、まだ私も見ておりません。

石井(郁)委員 たしか総理は、このDVDなんですけれども、青年会議所会頭の方と対談をされて、昨年の十二月ですけれども、そこで渡されて、ぜひ教育再生の参考にしたいというお返事をされたと思うんですが、それは間違いありませんね。

安倍内閣総理大臣 突然そのときの会話を持ち出されて、私もよく覚えておりませんが、青年会議所の皆様が、教育再生また教育に大変熱心に取り組んでおられる、また、そういうDVDをつくられたことに対しまして敬意を表したことを記憶いたしております。(発言する者あり)

石井(郁)委員 それはしっかりこの雑誌にあるんです。「誇りある日本国を創るために」、総理大臣安倍晋三と池田佳隆日本青年会議所の会頭、この対談の中から私は見せていただきました。

 私は、このアニメーションのDVDを実際に見て、びっくりしたわけでございます。きょう、これは実物なんですが、「誇り」というタイトルになっているんですね。カバーには靖国神社が入っているんですよ。靖国神社です。

 それで、シナリオも私はきちっと読みました。このシナリオも、これもホームページにありますから、「誇り」なんですけれども、ここにもちゃんと靖国神社がしっかり入っております。こういうものでございます。

 ストーリーなんですけれども、こういうものになっているんですね。若くして戦死して靖国神社に祭られている青年が現代にあらわれる。自分の子孫である女子高校生と一緒になって、一緒に靖国神社に行かないかと誘うんですね。日本の行った戦争を大東亜戦争と呼んで、大東亜戦争は自衛のための戦争だった、愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したい、そういうものだったとその高校生に教えるわけであります。朝鮮などについては、日本は国を近代化するために道路を整備し、学校を設置したというだけで、日本の侵略、加害の歴史については一言もありません。植民地支配という言葉も一言もありません。そして、主人公の女の子がアニメの最後の方で、靖国までの道を歩いたあの日、あの日からほんの少しだけ周りの景色が変わったような気がする、こういうふうに言って、アニメを使って、これで結局、子供の心にすっとこういう特異な戦争観が入っていくという、周到につくられたアニメだと私は言わざるを得ません。

 だから、靖国神社の戦争観を子供に刷り込むための教育プログラムと言っていいと思うんですね。私は、靖国DVDだと言わなくてはならないと思いますけれども、総理は、今お聞きになった限りではどう思いますか。

安倍内閣総理大臣 それは、共産党の視点からこのビデオを評価されているんだろうと思います。

 あのときには会頭にそういうふうにお話しをしたかもしれませんが、まだ私は詳しくよく見ておりませんので、また時間ができたらよく拝見させていただきたいな、こう思っています。

石井(郁)委員 私は、今のお話の限りで、これを共産党の視点だと言われるのは本当に心外ですね。とんでもないですよ、総理。どこからそんなことが言えるんでしょうか。

 つまり、あの戦争を、自衛のための戦争だ、アジア人の解放のための戦争だった、こういう指摘でいいのかということを言っているわけでございまして、それは、総理、一九九五年の村山総理大臣の談話はどうですか。戦後五十周年の終戦記念日に当たっての談話。言うまでもありません、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」中略しますけれども、「疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」私の言っていることは村山談話そのものじゃありませんか。では、村山談話が共産党の視点だというんですか。全くおかしいですよ。

 それで、伺います。

 安倍総理は、村山談話を継承するということは表明されていますよ。これは、総理そして政府の立場だというふうに思うんですね。そういうことからしますと、先ほどのこのDVDの歴史教育プログラムというのは全く違うんじゃないんですか。それが、文科省が受け入れた事業となって学校で普及するというようなことは政府の立場と相入れないんじゃないですか。そのことを伺っているんです。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私が申し上げましたのは、そのDVDの解説においては、石井議員は共産党に属しておられますから、それは恐らく石井さんはその立場で解説をされたんでしょう、こう申し上げたわけでございます。別に共産党の立場ということは、それが悪いということでは全くないわけでありまして、それぞれの党の人たちはいろいろな立場があるんだろうと。ただ、私はそれをまだ自分の目で確かめておりませんから、何とも申し上げようがない、こういうことでございます。

石井(郁)委員 確かにしっかり見ていただきたいと思います。本当に見ていただきたいと思います。そして、ちゃんとシナリオもございますから、これ見ていただきたいと思います、読んでいただきたい。

 私はその中を御紹介したわけです。それがどうして共産党の立場なんですか。御紹介しただけですよ。だから、そういう言いがかりみたいなことはやめていただきたい。(発言する者あり)そのとおりですよ。(発言する者あり)いや、文科大臣はまだ。私は今総理に伺って、総理は見ていらっしゃらない。だから、ぜひ見てください。その上でしっかりと考えていただきたいというふうに思います。

 それで、重ねて申し上げますけれども、このDVDでは、要するにアジアの人々を白人から解放しただとか。侵略と植民地支配については本当に一言もないんですから。これは後で確かめてください。一言もない。そういうものでございます。ですから、村山談話の踏襲、継承というんだったら、その言葉を行動で否定するということになるわけですよ、これは。だから、極めて重大なことだというふうに思うんですね。

 さて、学校教育の問題でも、やはりこれは文科大臣に伺っておかなくてはいけませんので続けて申し上げますけれども、日本の政府は、過去の日本とアジアの問題について学校教育でどう取り組むのかということについての基準を持っているはずです。

 一九八二年の官房長官談話がございます。そこにはこのようにあります。「日本政府及び日本国民は、過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んできた。」これは、日韓共同コミュニケ、日中共同コミュニケとして実っているわけでございますけれども、この精神は、我が国の学校教育、教科書の検定に当たっても当然尊重されるべきものという立場なんですね。

 そうしますと、今、ある団体ではありますけれども、子供たちに、学校に、こういう靖国神社という異常な歴史観を宣伝している神社に行くことを勧めているわけですよ。戦争は自衛のためだ、アジア人解放のためだ、そういう歴史観を教え込む事業を学校の授業で行うということは、こういう政府の立場に照らしても、本当に成り立たないんじゃありませんか。

 私は、こうした事業委託は直ちに撤回をして、また、上映活動をしようとしていますから、やめさせるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

伊吹国務大臣 先生、どうなんでしょう、先生が最も嫌われることは、特定のイズムあるいは思想を押しつけるということじゃないんでしょうか。ですから、日本は国定教科書制度もとっておりませんし、文部科学省がこれを補助対象として選択したときも、この内容を検閲して補助金を出したわけでは私はないと思います。

 あと、これができたものについて、各学校にこれを持って各団体が授業をなさる際に、当然、各学校が判断をされれば、そういうものは教材としてお使いになる学校もあるでしょうし、ない学校もあるでしょうが、私が校長であれば、使いません、それは。

 だから、日本というのは、つまりそういう国だということです。特に近現代の歴史の判断は、見る人によっていろいろ立場が違います。総理が申し上げたのも、いろいろな立場での判断があるということを申し上げているのであって、一つの判断ですべてを押し切る、割り切る、そうでなければ学校現場では何も話させないという怖い国であっては日本はならないと私は思います。

石井(郁)委員 私は、文科大臣の御答弁は問題のすりかえだと思います。やはりやってはならないことなんですよ、こういうことは。だって、政府の公式見解。

 そして今は、歴史認識、戦争認識については厳しく問われているときじゃないですか。そしてまた……(発言する者あり)もちろんそうです、教科書の採択基準もあります。村山談話を踏襲するという見解もございます。

 そういうことからして、全くまさに一方的な価値観を持ち込んで。しかも靖国神社の歴史観ですよ、これは。靖国神社を賛美する歴史観を子供たちの中に持ち込むという問題なんですよ。こういうことはやってはならないことだということはやはりはっきりさせるべきだと私は思うんです。それは決して大臣が言うような、一般的にどういう思想も自由だという話とは全く違う話ですよ。そこは私は厳しく申し上げておきたいと思います。

 今、こういう事態がもうわかったわけですから、今後文科省がどのような対応をとるかを私はしっかり見ておきたいというふうに思います。

 私は、安倍内閣が、美しい国へ、また、戦後レジームの脱却ということをスローガンにしていらっしゃるわけですけれども、これは、教育基本法を変えたことがまさにそのことだということを、昨日でしたか、おっしゃったと思いますけれども、まさに教育基本法は、戦前の国家主義や軍国主義の体制を反省して、その教育を反省してできたのが教育基本法でした。その教育基本法を変えるということは、これは普通に考えても、やはり、戦後の大事な民主主義や人権や平和の理念を否定することにつながっているんじゃありませんか。

 ですから、私は、この美しい国というのは、やはり戦前のレジームが美しかった、そういうことを言いたいのかなと言わざるを得ないわけであります。

 それで、安倍内閣はそのようにして教育基本法を変えました。そして今、学校で具体化をするために、今回、学校教育法を改悪しようとしているわけです。先ほど文科大臣言われましたが、私は逆に、本当に、特定の価値観を国家が子供や国民に押しつけるということは憲法に違反するものですけれども、まさに、安倍内閣が今、国家主導で教育に介入をする、こういうことを押しつけようとしている中身というのは、この靖国DVDにあらわれたような戦争観、こういうものが中心になっているんじゃないかということをやはり言わざるを得ませんし、戦前型の価値観そのものだというところに私は今回の法案の決定的な問題があるというふうに考えているところであります。

 もう時間ですので、そういう法律は国民は絶対に許さないということを強く申し上げまして、私のきょうの質問を終わります。

保利委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 安倍総理に質問をいたします。

 教育をよくしたい、いいものにしたい、これは多くの人の願いです。ただし、教育再生会議が半ば前のめりになりながらいろいろなことを言われている。内容については相当異論がこの委員会でも巻き起こりました。

 端的に伺いますが、親学の提言、こういうものが出されるだろうと言われました。例えば、保護者は子守歌を歌い、赤ちゃんのひとみを見ながらおっぱいを上げる、こういう提言。しかし、提言自体の緊急アピールは出されていないですね。どういうことになっているんでしょうか。総理としての見解を問います。

安倍内閣総理大臣 教育再生会議においてさまざまな議論を行っています。先ほどの論議の中でも申し上げましたが、むしろ議論を呼ぶようなそういう論議を展開してもらいたい、こう思っているところであります。

 教育の再生については、これは学校の現場や先生たちだけに責任を背負わせるのではなくて、これはもう、保護者、両親や家族や、そしてまた地域、社会全体で取り組んでいかなければならない問題であろう、こう考えているわけでございます。

 かつては、大家族、二世代、三世代同居という家族がたくさんありました。その中において、これは親から子に受け継がれていった子育てにおける知恵や工夫やあり方、あるいは地域において守るべき規律やモラル、そういうものが家族や地域の中で、そうした教育に対する支援がなされたと言ってもいいんだろうと思いますし、伝承もあったんだろう、こう思うわけでございます。

 そういう中におきまして、やはり昨今、家庭において、例えば、お母さんが子供をたんすの中に入れてパチンコに行って、子供を死亡させてしまったという事件がありましたね。こういう事件が実際に起こっているわけでありまして、従来であれば、おばあさんが言ったり、近所のおじさんやおばさんがいろいろと授けたであろう知恵や守るべき規範やあり方等々について、これは提言をしていく必要もあるのではないか、こんな議論もあったんだろう、このように思います。

 新聞ではいろいろと先走っていろいろなことが、憶測記事が出ていますが、これはよくあることですね。第二次の取りまとめにおきましては、そうしたことも含めての議論の結果について盛り込まれていくんだろうな、このように私は承知をいたしております。

保坂(展)委員 端的にお答えいただきたいんですが、お答えいただけなかったので。

 子守歌、そして母乳でというのは、これは一般論で言えば、それはいいことでしょう。しかし、中には、母乳が出ないということで悩んでいらっしゃるお母さんもたくさんいて、そこに踏み込むような提言という内容はいささかレベルが低いんじゃないか。いろいろな人がいろいろな悩みを持ちながら暮らしていることについて思いをいたすべきではないかということなんです。

 また、これは新聞によると、母乳が出なくても抱き締めるという、こういう案も出ているやに聞きます。これも私はおかしいと思いますよ。

 では、母乳が出ないから抱き締めないなんという人がいるのか。

 つまりは、母乳が出る出ないなんということを、教育再生会議の親学の提言が国民の個人個人の領域について踏み込んで言うこと自体が、総理、おかしいんじゃないですか。だから先送りしたんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 その細部の議論については、私は出ておりませんからよく承知をしておりませんが、しかし、先ほど私の申し上げましたような観点からさまざまな議論が行われているんだろうな、このように思います。

 そして、例えば赤ちゃんに授乳させるときのことについても、授乳をさせるについてこういうことがいいのではないかという提言がもしなされたとしても、それは決して、母乳が出ない方について、それがおかしいとか言っていることでは全くないんですよ。そこは物すごく論理の飛躍が意図的にあるのではないかな、私はこんなような気がするわけでありまして、もっと素直に物事をとらえる、こういう姿勢も大切ですよ。

保坂(展)委員 総理は、素直に真っすぐお育ちになって、いろいろなことで悩んだり苦しんだりしている人に果たして目配りできているのかということを私は言っているんです。

 この親学の提言でも、例えば、思春期からは自尊心を低下しないようにするなんというのもあるんですね。なぜ思春期からなんだと。

 昨今、いろいろな事件が起こりますよ。マスコミ、世論が沸き立つような衝撃的な事件が起こります。その御家庭を見たときに、いや、あんなに、あいさつもできて、しっかりしていて、親子関係もいいように見えていたのに、なぜなんだということが言われますけれども、思春期からでは遅過ぎるんですよ。乳幼児の時期に、それこそ抱き締めたり、赤ちゃんを受けとめるということが、自分はこれでいいんだ、まさに自己肯定の基盤をつくっていくということが自尊心の芽生えであって、思春期からなんということを言ってほしくない。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 保坂委員、ちょっと待ってくださいよ。まだ第二次答申が出てないじゃないですか。結論が出ていないんですよ。

 その過程で、委員がいろいろな発言がありますよね。その発言は、発言された委員によく聞いていただかないと。私がこれでと決めたわけではないんです。その過程の発言について、今一々ここでどうだこうだと言われるのは、これはおかしいと思います。もう少し忍耐力を持って、この第二次答申が出るのを見ていただいて、その上で御議論をいただければと。

 今の段階では、まさに議論をしている最中でありまして、今おっしゃった思春期、乳幼児、突然そんなことを言われても、私はわかりませんよ、それは。

 ですから、それは今まさに専門家の中において、見識を持った方々が議論をされている、このように思います。

保坂(展)委員 総理、答えていないんですよね。

 これは、親学の緊急アピールを出すというふうに言っていたんですよ。言っていたけれども、それはやめになったんですよ。そのことはどういう事情だったんですかと。

 だって、総理が呼びかけて教育再生会議をつくっているわけでしょう。ですから、そこはどうだったんですかと聞いているわけで、そのことに対して答えていないじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 いわゆるこの親学の緊急アピールが、事実、まだ今出ていないですよね。それが事実なんですよ。あとは、保坂さんは報道を通じて知っているだけじゃないですか。報道は常に正しくはないんですよ。(保坂(展)委員「そんな言い方しちゃだめですよ」と呼ぶ)正しくないんですよ。

 結果としては、ですから、まず第二次答申において出てきたものを見ていただきたい、このように思いますし、私もすべての会議に出ているわけではないですよ。私の出るのは全体会合だけに出ているわけでありまして、第二分科会、分科会がやっているものに私は残念ながら出ておりませんから、そこでどういう御議論があったということについては、今詳細について私は申し上げることはできない。

 もちろん、報告は受けていますよ。報告を受けておりますが、しかし、今まさにミクロの議論をされております。私どもが申し上げるのは、つまり表に出したものについて、これから発表するものについて、ぜひそれは御議論をいただきたい、このように申し上げることは私は当然であろうと思いますよ。

保坂(展)委員 ちゃんと教育再生会議の議論をオープンにしていただいて。まさに国民の皆さんも一体どういう提言なんだと議論になっているわけですから、今こういうことを話し合っているんだということをオープンにしていただければ議論ができるわけですよ。マスコミ報道、これしかもうないわけですから、マスコミ報道に出ているものしか現在ないわけですね。

 総理に続けて伺いますが、教員免許更新制ということが導入されますね。現職の教員の方は、やはり講習を受けてもらわなければいけない。でないと、講習を修了しないと免許は失効してしまうわけですね、教壇には立てないという制度。

 そしてまた、四百万人を超えているペーパーティーチャーという方がいらっしゃいます。教員免許を持っているけれども、学校の教壇には立っていないという方です。将来、教員が大量に退職していく時代になりますね、これから。学校の教壇にいろいろな人が立つ可能性を開いておくという意味では、この教員免許を持っている教壇に立っていない方たちも、今回の制度変更で免許は失効してしまうんですね。いわば、教壇に立つ資格を失ってしまう。しかし、それは教育委員会が内定します、そして、学校に来てください、手続を踏めばもう一回生き返るんですよというのが文科省の説明なんですが、教壇に立つ人たちが非常に狭くなってしまうんじゃないか。

 そして、こういう免許更新制、これは、アメリカの一部の州を除いてはありませんよ。ヨーロッパの各国も、総理がモデルにしているイギリスも終身免許ですよ。そういう意味で、現場の教員たちを非常に窮屈にさせ、そして免許証を持っていて教壇に立っていない人たちを遠ざける、そういうことになりませんか。

安倍内閣総理大臣 私は、むしろ逆なんだろうと思うんですね。我々は、先生方、教師の皆さんに自信と誇りを持って教壇に立っていただきたい、こう考えているんです。ほとんどの先生方は、まじめに教育に取り組んでいる、真摯に教育に正面から取り組んでおられる、こう思います。

 今回の更新制度は、まさに皆さんに自信と誇りを持ってもらおう、そのためにも、十年に一度、資質能力を刷新していくということが大切だろう。研修を受けることによって、新たに能力を身につけていく、知識を刷新していくことによってこれは尊敬を集めることにも私はつながっていくんだろうと思います。

 そこでまた、ペーパーティーチャーの件ですが、教員免許状取得後、長期にわたって教育現場には触れていない方々であって、この方々こそ、むしろ、ある意味では不安を持っておられるんだろう、こう思います。ですから、そういう皆さんには、教員になる時点で更新の講習を受講していただいて、最新の知識と技能を身につけていただいて、そういう機会ができるわけですから、そして、それを身につけていただいた上において、自信と誇りを持って教壇に立っていただくことになるんだろう、このように思います。

 これは当然、子供たち、また子供を持つ親の皆さんにとっても、いわばペーパーティーチャーの方々に、このように最新の知識を身につけていただいて、講習を受けて教壇に立って自分たちの子供を教えてもらいたい、こう望んでいると私は確信をしています。

保坂(展)委員 ペーパーティーチャーの方が最新の知識を受講しようとしても、更新できないんですよ。教育委員会の内定がないと、この講習を受けることができないんですよ。おかしくないですか。

安倍内閣総理大臣 これは当然、今申し上げましたように、ですから、講習を受けて、そして内定をされて、その後先生になっていく。つまり、長い間教育の現場に触れていないんですから、当然そういう講習を受けてもらう。講習を受けることによって、いわばペーパーティーチャーと言われた方々だって、自信を持って教育現場に立つだろう。そして、お父さん、お母さんたちも、長い間触れていなかったということに不安を持たずに、これはちゃんと研修を受けられたんだな、このように思って、信頼感も増していくのではないだろうかな、私はこのように思っています。

保坂(展)委員 私は、教育行政の迷走だと思いますよ。

 教員免許を持っていない方も、社会で幅広い経験を積んだ場合は特別免許状という形で教壇に立ってもらおう、これは五年から十年だったんですよ、最初。これは取っ払いました、その期限を。もっと幅広くしましょうということですよ。

 しかし、今回、そういう人たちも含めて、教育委員会の内定がないと受講もできない。こうやって狭めていくということは、これから大量に、今四十八歳が頂点ですよね、教員の年齢構成比でいうと。どんどん退職をしていくという中で、狭めてしまいませんかと言っているんです。

安倍内閣総理大臣 これは、現場において新たな先生の任用の必要が高まってくれば、私は、当然認定されていく、こういうことになっていく、そしてその上で受講していただく、こういうことになっていくのではないか、こう考えております。

保坂(展)委員 実は、教育の一番の問題というのは、私は格差の問題だと思っています。この格差の問題というのは、安倍総理御自身が言っているように、いわゆる親の所得や生活の環境によって子供たちの進路がおのずから決まってしまう、運命づけられてしまう、こういう格差社会はいけないということを総理自身が言っているじゃないですか。

 学力の問題で言うと、日本の子供たちは二通りに分かれてしまっているんですね。比較的成績がいい子供たちの山、もう一つは、手前で、成績では低い子供たちの山。この低い方の子供たちをどうやって社会的に公教育が支えるかというのが最大のテーマじゃないですか。

 前回それを聞いたときに、早寝早起き朝御飯の励行でうまくいくというふうに答えられましたけれども、しかし、そんな簡単なことじゃないと私は思っているんですね。ここに対して教育改革を言うなら、塾に行く、あるいはいろいろな形で教育費にお金をかける余裕もない、そういう子供たちを社会が、公教育が支援していくという強い政策を出すべきじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 私は、親の経済状況によって格差が生まれてはならない、もちろん格差が広がってはならない、こう考えておりますし、そのように申し上げてきました。

 先ほど私、早寝早起き朝御飯、それでこの格差が解消されるなんということは全く言っておりません。いわば学校で取り組んで成果を上げたものがあればそれをみんなで共有していこう、この一つの例として取り上げたわけでございます。

 そして、親の格差によって子供たちの就学の機会が奪われたりすることのないように、また学力の差が出てくることのないように我々も努力をしていく、これは当然のことであります。その中におきまして、だれでも通うことができる公教育を再生していく、我々は、そのためにも公教育をぜひとも再生したい、こう考えているわけであります。

 このため、公教育を再生すると同時に、経済的理由によって就学困難と認められる児童生徒に対する就学援助や奨学金事業に取り組んでいかなければならないと思っています。政府としては、平成十九年度予算において、教育の機会均等の確保を図るために奨学金事業の充実を図っているところでございます。

 また、今後とも我々は、学校の現場において、あるいは子供たちの間において、こうした親の経済力によって格差が生じないように全力を尽くしていきたい、このように思っております。

保坂(展)委員 最後に一問聞きます。

 これは、勉強になかなかついていけない子供たちに対して教員を加配し、そこに財源をしっかりつけるというふうに言ってほしかったんですね。

 端的な例ですが、我々は超党派で児童虐待防止法という法律をつくりました。大変な数の通報があって、子供たちが保護されています。そして施設で育っています。総理、いいですか。そして、児童虐待で、社会の手で、国の手で保護された若者たちが高校を卒業して進学ができるのかというと、ほとんどこれは進学できるような状態ではない。勉強できる環境とか、資金的なものも非常に困難です。こういうことをしっかり社会が支えるということを具体的に一つ示すことも改革なんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 最近、養護院等の施設に預けられる子供たちは、いわば、親によって捨てられるというよりも、虐待された結果という子供たちが多いのも事実であります。そうした子供たちが大学に進学する際、委員が御指摘になったような経済的な困難があるのも確かに事実だろう、このように思います。

 我々も、そうした事実を真正面からしっかりと見据えながら、こうした中において進学を希望する子供たちの希望をかなえることができるように努力していきたいと思っております。

保坂(展)委員 最後に、学校がうまくいっていないということを余り内閣が強く言い過ぎてはいけない、自虐的になってはいけないということを申し上げたいと思います。頑張っている教師や親や生徒もたくさんいるということを、改めてそこに不信の根を持つような、内閣の旗振りである再生会議の言動はちょっと問題があるということを申し上げて、終わります。

保利委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党・そうぞう・無所属の会の糸川正晃でございます。

 この委員会では、ここまで一連の質疑、それから参考人質疑、地方公聴会それから中央公聴会を通じまして、教育現場における本法律案に対するさまざまな御意見というのを聞いてくることができました。

 その中で、特に十五日の参考人質疑におきまして、私が京都市の教育長に質問させていただきましたら、どういう質問かといいますと、本法律案で足りないところは何があるのかということをお聞きしました。そういたしましたら、教育予算の充実、それから財政上の支援、これが足りないんだという明快なお答えをいただきました。昨日の公聴会におきましても、各公述人から、教育にかける予算というものは国がしっかり手当てすべきである、こういう一致した意見も述べられております。また、これは各地におきましても、法案への賛否というものを別にいたしまして、ひとしく現場から上がってくる声であります。

 政府は、教員の給与の国庫負担率の削減、それから行革推進法における教員の定数の削減、こういう方針など、教育再生の理念とは逆方向の厳しい措置をとってきたのではないかなというふうに考えます。財政再建との両立については非常に困難な課題ではありますけれども、教育再生、これは安倍内閣の最重要課題である、これは安倍総理がしっかりと述べられておるわけでございます。

 そこで、本日は尾身大臣にお越しいただきましたので、予算を預かる財務大臣として、教育の重要性、これをどのようにお考えになられて、その財政措置の必要性について今後どのような方針をお持ちか、ぜひお伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 将来の人材を育てる教育は、我が国の将来にとって極めて重要な課題であると考えているわけでございます。

 他方、平成元年度以降、生徒一人当たりの教育への公的支出は一・五倍になっております。また、教職員の数は一・三倍になっております。それにもかかわらず、教育をめぐる問題は深刻化していると言われているわけでございます。したがいまして、必ずしも教育の予算をふやせば教育がよくなるものではない。重要なことは、むしろめり張りをつけて、真に教育の質を向上させるような予算をきちっと重点的に措置することであると考えているわけでございます。

 安倍政権にとりましても、今のお話のように、財政再建は教育改革と並んで極めて重要な課題であるというふうに考えております。そういう中で、私ども、財政改革の基本的な方針は維持しつつも、まず歳出ありきということではなしに、真に教育の向上のために必要な予算はしっかりとつけてまいりたいと考えております。

糸川委員 大臣、現場の声が、足りないものは何ですかと言ったら、お金ですと、これの一点に尽きるわけです。予算が足りないんだという声がいろいろなところから聞こえてくるわけでございます。

 それを踏まえて、では、総理にお聞きしたいと思います。

 総理は、教育再生を最重要課題だというふうにおっしゃられておるわけでございます。今までの審議の状態というのも少しは聞いていらっしゃるのではないかなと思うわけでございますので、この現場の声、これをどのように受けとめられて、そして、教育予算の確保について今後どのようなリーダーシップを発揮するおつもりなのか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま財務大臣は、財務大臣ですからああいう財政をにらんだ答弁になるのは当然のことであって、財務大臣がそれぞれどんどん出すと言ったら、これはもう国の財政は大変なことになる、このように思います。

 ただ、財務大臣が答弁した中において、子供一人当たりの公共の財政の支出については、これは五割ふえている、そして教員も三割増になっているということであって、しかし、その中においても教育をめぐる状況は厳しくなっている、こう指摘があるのも事実です。ですから、例えば三十年前の状況と今を比べてみると、三十年前の方が、例えば予算等についても今よりも厳しいのは事実でありますし、学級においても、これは今よりも先生一人当たりの生徒の数も多かったのも事実だろう、このように思うわけであります。

 一人当たりの公共支出については伸ばしてきたのも事実ということは申し上げたわけでありますが、しかし、そこで、やはりその中において、家庭やまた地域の教育力が低下をしてきている、世の中も複雑になってきている中において、子供たちもいろいろな悩みを抱えていて、そういう悩みにも学校の現場でこたえなければいけないという負担がふえてきたというのも私もよく承知をしているところであって、しかし、その中で、ではどこに予算を使えばいいのか。とにかく予算をふやせばいいということではなくて、どこの部分に真に必要な財源を確保しなければならないか、予算を投入しなければいけないかということを当然検証していく必要がある、こう思います。

 もちろん、今、財政再建も行っております。ですから、当然効率化も徹底しながら、めり張りをつけて、真に必要な教育における財源は確保していかなければならない、こう考えております。

糸川委員 総理のお考えと基本的には私も同じなんですが、総理、教育再生というお言葉を使われている以上、これは喫緊の課題だということは重々御存じのようでございますので、先立つものがなければ地方の教育というものが成り立たないと言っている声もあるということをしっかりと聞き届けていただいて、財務大臣は財務大臣の意見だということだけではなくて、ぜひ内閣でその声を上げていただきたいというふうに思います。

 次に、教育。これは基本的に子供たちのためにあるわけでございます。子供たちが社会の一員として生きていくために必要とされる基本的な知識、これを習得して、みずからの生き方、これを自分自身で選択できるようにしてあげるということが教育の基本的役割ではないのかなというふうに思うわけでございます。

 ただ、この点、未履修問題に象徴されますように、最低限必要とされる基本的な知識、これを定めました学習指導要領が現場において必ずしも十分守られていなかったということも明らかになったわけでございます。地方公聴会、そして昨日の公聴会におきましても、御意見の中で、指導要領が実態にそぐわないんだ、それが原因なんだというような指摘もございました。その弾力化というものが必要ではないかというような意見もございます。

 そこで、総理が、今回のこの教育再生三法を通じて、子供たちが身につけるべき最低限の知識、ナショナルミニマム、これを確保するために今後国としてどのような対応を図っていくおつもりなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は、教育再生に当たりまして、すべての子供たちに高い水準の規範意識そして学力を身につける機会を保障しなければならない、このように申し上げてきました。

 このため、学校教育法の改正案におきましては、義務教育の目標等を定めまして、基礎的な知識の習得や、思考力、主体的に学習に取り組む態度など、育成すべき資質や能力等を明確化いたしました。

 そしてまた、学校教育法の改正を踏まえて、今後、授業時数の見直し等を含めた学習指導要領の改訂を行うことといたしています。

 また、このような教育内容の充実のほか、今回の三法案におきましては、副校長の設置など学校の組織運営体制及び指導体制を強化していく、そしてまた教育委員会の責任体制の明確化や教育に国が責任を負える体制を構築する、そして免許更新制の導入などによって教員の資質の向上などを定めています。

 これらが一体となって、高い学力と規範意識を確実に定着させる教育の実現を図っていきたいと思っております。

糸川委員 これは伊吹大臣に、もう何度も私も聞いておりますけれども、また改めてお聞きしたいと思うんです。

 文部科学大臣が、今回のこの法改正を受けた学習指導要領の改訂に際して、地域の実情に合った弾力的な運用について、そういう声に対して今後どのような対応をとられるのか、それから指導要領の実効性をどのように担保されるおつもりなのか、お伺いさせていただきます。

伊吹国務大臣 今先生の御質問にございました、実態に合わないという意味が、どういう意味なのか。これは、その地域に即した教育ができないという意味なのか、受験のためにうまくないぞという意見なのか。私は、後者はちょっとやはりそれは本末転倒の議論だと思いますよ。

 今総理が御答弁申し上げたように、特に高等学校の卒業生は、全国一律、ここまでは私学であろうと何であろうときちっと学習をしてもらいたい、それが日本の高校を卒業した人の基礎的な学力であるということを、国会でお決めいただいた学校教育法に従って告示をしているわけですから、その中での工夫をしていただくということは、カリキュラムの編成権は校長にありますから、これは私はよろしいと思いますが、入試に不便だから何やってもいいということは、金もうけるために何やってもいいのとよく似ていて、私は、未履修の問題というのは、ある意味では受験のライブドア事件だというふうに思っているんですよ。

 ですから、そこはやはりきちっと守っていただく中でいろいろな創意工夫をしていただくことについては、大いにバックアップはいたしたいと私は思います。

糸川委員 ですから、大臣、それは私もよくわかっているんですが、昨日の公聴会でも、この未履修の問題はどうして起きたと思いますかということをお聞きしましたら、現行の受験制度が問題であるのではないか、こういうふうな指摘もあったわけでございます。

 そういうことをしっかりと踏まえた上で、今後の学習指導要領を変えていく中で、大臣として、じゃ、学校に守らせていくんだというその担保というのをどのようにしていくのかということを御質問したわけでございます。

 では、もう一問、未履修のことについてお尋ねさせていただきます。

 このナショナルミニマムの確保に関連いたしまして、これは私学の問題について特にお伺いしたいと思いますが、未履修問題、これは私学の割合が高かったわけでございます。大臣先ほどもおっしゃられましたが、私学に学ぶ子供たちの学ぶ権利が侵害されているという解釈が若干私はできるわけでございますが、その防止策が果たしてこの法律案でしっかりと担保されて確保されているのかどうか、こういう疑問もあるわけでございます。この点は、文部科学大臣には以前質問させていただきました。ですから、本日は総理の認識をお伺いしたいと思います。

 総理は、私学における適正な教育の確保に関しまして、文部科学大臣、それから総務大臣に対しまして、地方自治の本旨というのを大切にしながら、知事部局において必ず法律が守られるような体制をつくるべしという指示を行ったというふうに聞いております。具体的には、総理の指示がこの法案にどのように反映されたと考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

 指導主事等の教育の専門家を知事部局に置くといった指導がなされるということでございますが、これは財政的な支援等、これを考えないと、地方自治の名のもとに、実効性が確保できないのではないか、こういうようなおそれもあるわけでございます。そこで、子供たちの教育を受ける権利を確保するという観点から、私学を所管いたします知事部局の強化のあり方について、総理の御決意というんでしょうか、これをお伺いしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 私立学校といえども、公教育の一端を担っているわけでありまして、これは委員も同じ考えなんだろう、このように思います。

 国の法令に基づく適正な教育が行われるよう、私立学校の自主性を尊重しながら、私立学校に関する教育行政の充実を図っていかなければならない、私はこのように考えているわけでありますが、このため、今回の地教行法の改正において、知事が教育委員会に対して学校教育に関する専門的な助言、援助を求めることを可能にするとともに、知事部局に専門的知識を有する者を配置するなど体制を充実するよう、総務大臣と、そして文部科学大臣に、確かに私は指示をしたところでございます。

 政府としては、このような施策を通じて、知事部局の体制の充実を図り、子供たちの教育を受ける権利を保障していきたい、こう考えています。

糸川委員 もうほとんど時間がなくなってまいりました。

 総理にもう一問お聞きしたいと思うんですが、今回の規定について、条文上は、市町村の長がその議会の議決を経て行うものとされまして、市町村議会が当該議決をする際には、市町村の教育委員会の意見を聞かなければならない、こういうようなことになっておるわけでございます。首長のイニシアチブが非常に大きくなっているというふうに考えられます。また、市町村と都道府県の移譲に関する協議についても、教育委員会の間で行うのではなくて、市町村の長と都道府県知事という、首長同士での協議となるわけでございます。

 そこで、教育分野におけます都道府県と市町村の分権の推進に関しまして、国の果たす役割について、総理の御認識をお伺いしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 教育基本法におきましては、国は全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図ることが規定をされています。教育に関する基本的な制度の枠組みの制定を行う役割と責任が国にはある、このように思います。そして、国は、この役割と責任を踏まえて、都道府県から教育の実施主体である市町村や学校に権限を移譲する方向で取り組みを進めることが重要であります。

 今回の地教行法の改正におきまして、このような考えのもとに、市町村から都道府県に事務の移譲を要請することを可能とすること、そして、都道府県教育委員会が同一市町村内の県費負担教職員の転任を行う場合は、市町村教育委員会の内申に基づいて行うことなどを盛り込んだところでございます。

 このように、いわば国と都道府県、そして市町村、それぞれの役割を定めているところであります。

糸川委員 私がこの衆議院における質問の最後の質疑者でございました。

 これは理事会で話もしておりましたけれども、この教育再生はこれがまだスタートでございます。尾身大臣、ぜひ予算のところもしっかりと御検討いただいて、この国の礎になる子供たちのために、しっかりと尽くしていただきたいと思います。

 終わります。

保利委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより各案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。小坂憲次君。

小坂委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提出の学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対して、賛成の立場から、また、民主党提案者の教育に対する熱意には共感をするものの、民主党提出の四法律案に対して、反対の立場から討論をいたします。

 内閣提出の教育再生関連三法案は、教育現場のさまざまな問題の解決に向けて、改正教育基本法において示された新しい時代の目指すべき教育の姿を踏まえ、緊急に必要な制度の改正を行うものであります。

 賛成の理由の第一は、学校教育法等の一部を改正する法律案において、改正教育基本法の理念のもと、義務教育の目標を新たに定め、各学校種の目的等を見直すとともに、学校に置くことができる職として新たに副校長等を設けること等について規定されたことであります。このことにより、教育新時代にふさわしい学力と規範意識を児童生徒に身につけさせるとともに、組織としての学校の力が強化されるものと考えます。

 賛成の理由の第二は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案において、地方における教育行政の中心的な担い手である教育委員会が、より高い使命感を持って責任を果たすとともに、国と地方の適切な役割分担を踏まえつつ、教育に国が責任を負える体制の構築について規定されたことであります。また、私立学校に関する地方教育行政の充実に係る規定が設けられたことであります。このことにより、教育委員会の立て直しを図るとともに、法令違反状態に国が責任を持って対応できることになるものと考えます。

 賛成の理由の第三は、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案において、教員が、社会構造の急激な変化等に対応して、最新の知識、技能を身につけ、自信と誇りを持って教壇に立つことができるようにするとともに、指導が不適切な教員に対しては毅然と対応するため、教育職員の免許の更新制の導入及び指導が不適切な教員に対する人事管理について、必要な事項の制度化について規定されたことであります。教員の資質向上こそが教育再生のかぎを握っております。今回の改正により、教員全体への信頼性を高め、全国的な教育水準の向上を図ることが可能となるものと考えます。

 以上のように、教育再生関連三法案は、改正教育基本法の新しい理念を踏まえ、安倍内閣が目指す教育再生を実現するための具体的な制度の改正として、喫緊に措置する必要があるものであると考えています。

 本教育再生関連三法案につきましては、本国会において五十七時間を超える慎重な審査を行ってまいりました。その際、三回の参考人に対する質疑、四カ所の地方公聴会、さらに中央における公聴会を行いました。特に、地方公聴会においては、学校現場を視察するなど、教育の実態把握にも努めたところであります。これらを通じ、与野党が相協力して充実した審議が行われてきたものと考えております。

 資源の乏しい我が国においては、人材こそ国の宝であり資源であります。また、教育は、この国の将来を左右する国政上の重要課題であります。私としては、どの子供にも豊かな教育をという基本的な考え方に立って、国際社会の中で活躍できる心豊かでたくましい人づくりを目指すことこそ教育再生への道と考えております。今回の改正がその一歩となることを確信して、賛成の討論といたします。(拍手)

保利委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 私は、民主党を代表して、政府提出の教育再生関連三法案に反対、そして、民主党提出の日本国教育基本法案及び学校教育力の向上三法案について賛成の立場から討論を行います。

 教育の重要性を考えると、安倍総理が教育を内閣の最重要課題に掲げたこと、それ自体は大いに評価できることであります。ところが、昨年の教育基本法の改正に引き続き、今回の教育再生関連三法案の中身は、当初の意気込みに比べて、余りにも貧弱で中途半端であると言わざるを得ません。

 これに対し、民主党の日本国教育基本法案と学校の教育力を向上させるための三つの法律案は、子供たちにとって高い教育水準を確保するために、中身の充実した体系的な法案になっております。

 具体的に、教員免許制度については、政府案は、教員の養成段階には何にも手を加えることなく、ただ単に、今の教員免許状に十年間の有効期間を設け、三十時間程度の免許の更新講習を行うだけの、まことに不十分なものとなっております。この程度の内容で、本当に教員の資質や能力が実質的に向上するのでしょうか。極めて疑問であります。

 これに対し、民主党案は、普通免許については、現在の四年制大学修了から、一年間の教育実習を含む二年間の修士を修了した者に免許すること、また、教職についた者がさらに実務経験、専門的な教育を受ければ、今までにない専門免許を取る道を新たにつくるなど、教員の養成段階において大幅な資質向上を図っていく内容となっております。民主党案こそ、まさに教員の現場感覚と使命感を涵養するための効果的な提案であり、政府案とは雲泥の差があるものと考えております。

 次に、地教行法改正案については、昨今のいじめ、未履修問題への対応をめぐり、教育委員会のあり方が大きな議論となりました。安倍総理の肝いりで設置された教育再生会議においても、この一月の報告で教育委員会の抜本的な改革が大きな課題として取り上げられ、総理も、戦後レジームの転換だと大見えを切っておられました。

 ふたをあけてみれば、政府案は結局、教育委員会を残しているではありませんか。そして、その体制の微修正を図ろうとしながらも、一方で教育委員会に対する国の関与を強めております。また、市町村の教育委員会の共同設置を可能とすることにより、さらに地域の住民からかけ離れた教育行政を許すことになってしまいました。どうも政府案では、国と地方と教育委員会、さらには学校現場や地域社会の関係が整理されていないのではないかと疑わざるを得ません。

 これに対し、民主党の日本国教育基本法案及び地教行法案は、国の最終責任を明確にしつつ、地方自治体が設置する学校において地域の住民に身近な学校理事会を設けることにより、現場のことは現場に任せて、学校主権の確立を図るものであります。民主党案こそが、国と地方の責任の所在と役割分担を明確にしつつ、地域住民との連携を可能にする抜本的な改革案であることは、火を見るよりも明らかであります。

 政府の学校教育法等の改正案についても、昨年の教育基本法の改正にあわせ、義務教育の目標の手直しを行っております。しかしながら、教育基本法の改正に倣って学校教育法を見直すのであれば、本来は、六・三・三の学制改革も視野に入れた幅広い検討が必要だったのではないでしょうか。また、民主党の学校環境整備法案は、国の教育に全力で取り組むために必要な教育予算を戦略的に確保するものとなっております。こうしたことを考えると、教育がまさに最重要課題であるからこそ、本来は、もっと十分な時間をかけて、内容の深い体系的な議論を行ってから法案を提出された方がよかったのではないでしょうか。

 以上、るる申し上げてまいりましたが、政府の教育関連三法案には、今申し述べたたくさんの問題があり、断固反対。民主党提出の日本国教育基本法案及び学校教育力の向上三法案こそが、今後の日本を支える子供たちのために、教員の現場感覚と最も大事な使命感を涵養し、教育行政の責任の所在と役割を明らかにし、財政面を初め学校現場のさまざまな課題を解決する大胆な力強い一歩になることから、民主党案に賛成の立場を表明し、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております政府提出の教育関連三法案に対して賛成の立場から、民主党法案に対しては反対の立場から討論を行います。

 子供にとって最大の教育環境は教員であります。その意味で、教員の資質をどう向上させるかは、教育政策上非常に大きな課題であります。政府提出の改正法案ではこの課題に対応していることが、賛成の第一の理由であります。現在、学校現場にいる教員には、コンピューターや携帯電話などITへの対応、発達障害や特殊支援教育への対応を初め、いじめ、不登校、学級崩壊等、新たな課題や難しい課題が突きつけられています。教員免許更新の講習は、新しい時代、状況に即した知識や技能を身につける機会を教員の方々に提供するものです。

 賛成の第二の理由は、いわゆる不適切な教員への対策を講じている点であります。大多数の教員の方々は、本当に一生懸命教育に取り組んでおられます。しかし、一部には問題のある教員もあり、そうした教員が教壇に立つことは、児童生徒によい教育環境を提供しているとは言えません。今回の改正案では、不適切な教員の認定について、手続や研修の法的な位置づけ、認定基準を明確にするなど、公正な認定手続等を確保する内容となっております。

 第三の理由は、副校長、主幹教諭とともに、指導教諭という新たな職が設けられていることです。現場のすぐれた教員が指導教諭として処遇されるということになります。この指導教諭の設置は、周囲によい影響を及ぼし、学校のレベル向上に大きく貢献するものと大いに期待しております。

 賛成する第四の理由は、学校評価を推進し、保護者等が学校の諸活動について理解し、的確に参画できる情報提供が図れるようになる点であります。学校評価については、文部科学大臣が実施手続や公表のあり方について定め、学校評価の項目は各学校において設定されます。教育内容が改善される、教職員の意識改革が進む、保護者、地域からの協力を得られるなどのメリットが期待されます。

 昨年秋、いじめによる自殺問題や未履修問題の対応をめぐる、国、教育委員会や学校のあり方について、さまざまな議論がありました。改正案では、地方分権の趣旨を尊重しながら、必要な最小限度の範囲で、国の指示など関与を規定し、国の責任を明確にしました。そして、教育委員会の責任の明確化や教育委員会の広域化など、地方の自主性を促す内容となっております。また、私立学校に対する教育行政のかかわりについても、知事部局の充実を図る一方、私立学校法の趣旨を踏まえ、私立学校の自主性、独自性を尊重しながら、知事が教育委員会から専門的事項について助言、援助を求めることができる体制が法律で明確になりました。こうした点が賛成する第五の理由です。

 一方、民主党法案では、教育における国と地方の責任や教育行政事務の位置づけがあいまいであること、すべての教員資格を大学院修士とすると、教員ではなく一般企業へ就職することとなった場合に大きなハンディとなること、教育の中立性が確保できるかどうか疑念が払拭できないこと、学校教育環境整備計画の概要や財源対策など判断の前提となるものがはっきり示されていないこと、これらの理由などから、民主党の案については反対いたします。

 法改正を契機として、教育に携わる教員及び教育行政の担い手である教育委員会が、国民、住民にさらなる信頼を得るよう、関係者の皆様には一層の御努力をいただき、私どもも、よりよい教育環境の整備に全力で取り組むことを申し上げ、政府案に対しては賛成、民主党案に対しては反対の討論を終わります。(拍手)

保利委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の教育三法案に反対の立場から討論します。

 まず、学校教育法等の一部を改正する法律案は、我が国を愛する態度や規範意識などの徳目を義務教育の目標にし、それらの態度を養うことは、時の政府が掲げる特定の価値観を子供たちに強制し、憲法が保障する内心の自由を侵害するものです。また、副校長や主幹、指導教諭などの設置は上意下達の教員組織をつくり上げ、教師集団の自主的で自由な教育活動を阻害し、教員の目を子供より上司に向けさせるものです。文部科学省主導の学校評価で学校の教育活動を管理し、国による統制へ導くなどの問題点もあります。

 次に、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案は、教員の免許状に十年の有効期間を定め、講習修了を免許更新の条件とするもので、教員の身分を不安定なものにし、ILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告に反します。官製講習の押しつけは、現場の教員が切実に求めている自主研修を困難にします。指導が不適切な教員の人事管理の厳格化を行えば、教員に対する大きな圧力となりかねません。子供たちに向き合う時間が欲しいとの現場の切実な声にこたえず、さらなる多忙化と管理を押しつけるやり方は許せません。

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案は、是正の要求で、新たに文部科学大臣が指示できるよう条文化することで、地方教育行政及び学校への国の関与を強化するものです。日の丸・君が代の実施も是正の対象としており、学習指導要領、教育振興基本計画を押しつける手段に使われることは明らかです。教育行政における国と地方の関係を、指導助言から指示命令関係に変質させるものとなりかねません。また、教育の地方分権、地方自治に逆行し、教育委員会の活性化につながりません。

 昨年改悪された教育基本法を具体化し、国、文部科学省の権限強化、教育の統制を強めるための教育三法案は、廃案以外にありません。

 このように我が国の教育の根幹を定める教育三法案をわずかな審議時間で採決することは言語道断であり、国民は徹底審議、慎重審議を望んでいます。公聴会、参考人質疑を通して、与野党を問わず、三法案に懸念や問題点が多く指摘されました。さらなる審議を要求し、反対討論とするものです。

 なお、民主党提出の法案については、賛同しかねることを申し添えます。

保利委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社会民主党・市民連合を代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 まず申し上げたいのは、今回の三法案が、昨年末の教育基本法改悪の強行を受けた、極めて拙速かつ政治的な立法だということであります。教育をめぐる問題は多発をしております。教育改革は待ったなしの課題であること、これは異議がございません。しかし、官邸主導で設けられた教育再生会議の議論を受けて、中央教育審議会は土日返上の突貫審議を行い、わずか一カ月で答申をしています。十分に審議が尽くされたととても言えない状態です。しかも、今国会中の三法案成立、こういう立法スケジュールを優先したものであった、逆算だったということは明らかであります。教育に関する制度設計は、厳に公正かつ中立的でなければならず、一内閣の意向で左右されるものであってはなりません。国家百年の計である教育制度を、このように拙速かつ政治的なスケジュールで変更することは断じて許されないのであります。

 まず、学校教育法改正では、新たに義務教育の目標が規定され、我が国と郷土を愛する態度を養うことなどが目標とされています。教育基本法改正の審議の際も再三議論したことでありますが、このようないわゆる愛国心の規定は、偏狭なナショナリズムの蔓延、あるいは個人の内心の自由に対する踏み込みにつながるおそれが極めて大きいと考えます。また、校長、教頭、副校長、主幹教諭、指導教諭などを設けて、教職員の中のヒエラルヒー、階層化を図ろうとしています。今求められていることは、教師が子供に向き合う時間を確保し、教師のモチベーションや質を高めるための運営能力の向上であり、管理職層を厚くしてピラミッド形の体制を強化し、教員集団を分断していくことではありません。学校評価を導入し、学校間の競争をあおり、格差が拡大され、子供そっちのけの上目遣いの教師をふやして、教職員への管理統制を強める学校教育法改正は、教育現場の窒息状況に拍車をかけるものと言わざるを得ません。

 地教行法改正は、地方自治法に規定されている是正要求を新設し、指示をする権利を国が持つことによって、国による管理をさらに強化するものであります。教育の中立性と教育行政の安定性の確保を目的とした教育委員会の制度の否定にもつながりかねず、地方分権の理念と根本から対立するものであります。

 教員免許法改正によって、教員免許が十年ごとの更新制となります。本来、教員免許は教員となる資格の問題であり、教員として勤務するかどうかは人事管理の問題であります。任命権者による教員の採用、養成、研修などの人事行政、管理の不備の問題を免許の問題と一緒にするもので、全くの本末転倒であります。既に教員志望者の減少の兆候があらわれており、公教育からの人材の流出も懸念をされます。教育公務員特例法改正による人事管理の厳格化も、任命権者の恣意的な運用が行われるおそれが強く、賛成できません。

 今必要なことは、教育現場への国の管理統制を強化し教師を圧迫することではなく、教育へ資源を重点配分し、教師が子供と向き合うゆとりをつくることであります。本教育関係三法案は、まさに拙速であり、教育を破壊するものにほかならないということを申し上げたいと思います。

 なお、民主党提案の各法律案には、その立法に当たって、真摯な姿勢に共感をしつつも、免許更新制を導入することや教育委員会の民主的再生などについての見解が異なることから、残念ながら反対させていただきます。

 最後に、一カ月前、衆議院本会議で趣旨説明がなされて、連続の審議で与野党合意のない採決を急いでいる。大変残念に思い、遺憾に思います。採決はするべきでないということを申し上げて、終わります。

保利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより採決に入ります。

 まず、鳩山由紀夫君外五名提出、日本国教育基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、藤村修君外二名提出、教育職員の資質及び能力の向上のための教育職員免許の改革に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、牧義夫君外二名提出、地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、笠浩史君外二名提出、学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、ただいま議決いたしました内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案の各案に対し、鈴木恒夫君及び西博義君から、自由民主党及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木恒夫君。

鈴木(恒)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たって、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 副校長等の新たな職の設置については、その職務と責任に応じた処遇や定数の改善に努めること。

 二 学校教育を振興するため、教職員定数と教育予算の一層の拡充に努めること。

 三 大学が国際社会をはじめ広く社会に貢献できるよう、必要な支援に努めること。

 四 文部科学大臣が地方教育行政の組織及び運営に関する法律による是正の要求や指示を行うに際し、首長は教育委員会に対して支援等を行うこととすること。

 五 知事が都道府県教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言・援助を求める際には、私立学校と協議するものとし、教育委員会は私立学校の自主性を尊重すること。

 六 私立学校が全国、全学校一律の法律上の義務を担保できるよう、知事部局に学校教育に関する専門的知識を有する者を配置するなど体制の充実を促すこと。

 七 教員免許更新制の円滑な実施に向け、教員及びその他の免許状保持者等に対して制度の十分な周知を図ること。

 八 免許状更新講習の受講負担を軽減するため、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討するとともに、へき地等に勤務する教員のための講習受講の機会の確保に努めること。

 九 大学における教員養成課程の見直しなど、養成・採用・研修を通じた教員の質の向上に努めるとともに、現職研修と免許状更新講習との整合性の確保、特に十年経験者研修の在り方について検討すること。

 十 教員に優れた人材を確保するため、教員の顕彰制度の充実、人材確保法による教員給与の優遇措置の改善及びメリハリある教員給与体系の実現に努めるとともに、教員の多忙化の解消及び教育の充実のため、教職員定数の改善、事務の外部委託化並びに外部の専門家及び地域人材の活用に努めること。

 十一 児童等に対する指導が不適切な教員の認定に当たって、任命権者による公正かつ適正な認定が行われるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、各案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

保利委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

保利委員長 各議案の議了に当たり、委員長として一言御礼のごあいさつを申し上げます。

 去る四月十三日の当委員会設置、四月十七日の本会議趣旨説明を経て、四月二十日から当委員会での実質審議に入りました。

 この間、連日の審査に与野党理事、委員各位には熱心に御参加いただき、また、真摯かつ真剣な質疑をしていただきました。ここに委員長として衷心より御礼申し上げます。

 また、議案提案者である大臣初め政府側、さらに民主党案提案者各位、参考人、公述人の皆様、また、国会職員の皆様には、それぞれ適切に対応していただきましたことに心から感謝を申し上げます。

 国民の注視する教育再生の課題が当特別委員会で議了の運びとなりましたことは、皆々様の御協力のたまものであり、委員長として重ねて心からの感謝の念をささげる次第であります。ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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