衆議院

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第1号 平成19年6月15日(金曜日)

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平成十九年六月十五日(金曜日)

    午前九時十五分開議

 出席委員

  財務金融委員会

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      伊藤信太郎君    石原 宏高君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      萩山 教嚴君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      御法川信英君    小沢 鋭仁君

      楠田 大蔵君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    三谷 光男君

      横光 克彦君    吉田  泉君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

  法務委員会

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 武田 良太君 理事 棚橋 泰文君

   理事 早川 忠孝君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      奥野 信亮君    笹川  堯君

      清水鴻一郎君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    三ッ林隆志君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    山口 俊一君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    中井  洽君

      横山 北斗君    神崎 武法君

      保坂 展人君    滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   法務副大臣        水野 賢一君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   池上 政幸君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  富田 善範君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    柳  俊夫君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 電子記録債権法案(内閣提出第八五号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより財務金融委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、電子記録債権法案を議題といたします。

 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川忠孝君。

早川委員 自由民主党の早川忠孝でございます。

 電子記録債権法についての実質的な質疑がきょうから行われるということであります。大変重要な法案の審議だと考えております。

 ただ、この法案の審議に先立って、法務大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、大変遺憾な事態が発生をしております。それは、朝鮮総連の土地建物をめぐってのいわゆる仮装売買事件、これは日弁連の元会長あるいは法務省の公安調査庁の長官の経験者、言ってみれば、法の執行に当たるべき最高の責任者の方々が国民から疑惑の眼で見られるような事件に関与したという報道がなされております。

 まだ家宅捜査等が始まった段階だということで、個別事件についてこの委員会で詳細を取り上げることは大変差し控えるべきことではあると思いますけれども、しかし、司法に対する信頼を大きく損なう事案であることは間違いないところであります。厳正な捜査を遂げていただき、法と証拠に基づいた処分を早急に行っていただかねばならないと考えてございます。

 法務大臣のこの事件についての現時点での所感をまずお伺いしておきます。

    〔伊藤委員長退席、七条委員長着席〕

長勢国務大臣 御指摘の事件そのものについては、事案も明確ではございませんので、申し上げることはございませんが、ただ、元公安調査庁長官の方に関して申し上げれば、既に退職されておられまして、個人的な行為ということではあるとは思いますけれども、今先生御指摘のような御懸念を持たれる方も多いわけでありますから、公安調査庁長官であったというお立場も考えて配慮をされた行動をとっていただければよかったかなというふうに思っております。

 ただ、いずれにしても、長官であったこととこの問題とは具体的には関係はないんだろうとは思っております。

早川委員 いずれにしても、これについてはいわゆる強制執行免脱の疑いも指摘をされているところでございますので、十分捜査を遂げていただかなければならないと思います。

 ただ、法律の専門家においても、しばしば法の解釈、適用について軽率な判断をしがちであるということの一証左になるのかもしれないと思いながら、この電子記録債権法について、きのう夕刻、きょうの連合審査会の開催ということを聞きまして、十五分で質疑をするという割り当てになりました。これは大変困難なことであります。

 そこで、これは法務当局にまずお伺いをしておきたいんですけれども、この電子記録債権法の提案に至るまでの経緯、さらにはこの法案がどんなことを目途としているのか、この意義について、まず当局者としての御説明をお願いいたします。

寺田政府参考人 御説明申し上げます。

 中小企業を中心といたしまして、企業の金融ということに非常に注目が集まっているわけでございますけれども、御承知のように、我が国におきましては、金融における最も身近な手段というのは手形における金融であったと言われてきているわけでございます。

 ところが、これが紙媒体であるということなど、さまざまな厄介な問題がなお内在しているということになっておりまして、特に電子的な取引が盛んになってまいりました昨今においては、その利用というのは急速に減少いたしております。現に事業者の手形の残高は、平成二年当時は七十兆を超えておりましたけれども、最近では三十兆と半減しているわけでございます。

 それで、どういうことになっているかと申しますと、むしろ売り掛け代金でありますと、代金債権そのものを担保にしてお金を借りる、こういう金融の方法がとられるようになってきているわけでございますけれども、他方、債権そのものを担保にするということになりますと、これは当然、指名債権としての譲渡の手続等、さまざまな厄介な問題がございます。そこで、これらの問題をより便利な方法にしようということで、やはり電子的な媒体を利用するのが最も新しいやり方であろうということで検討が進んできているわけでございます。

 経緯といたしましては、平成十五年のe―Japan戦略以降、IT戦略本部の決定でこのことがテーマとして取り上げられまして、私ども法務省と経済産業省、金融庁において、電子債権法制という名のもとに、整備に向けた検討が行われてきたわけでございます。

 平成十七年の十二月に電子債権に関する基本的な考え方を三省庁で取りまとめまして、法務省といたしましては、平成十八年の二月に法制審議会にこのテーマの諮問を行い、それで平成十九年、本年の一月に部会での決定を得た後に、総会で二月に要綱の答申を受けて、この法案の提出に至っているところでございます。

早川委員 私自身が司法試験の勉強をしたのがもう四十年ぐらい前になるのかなということで、古い法律知識が現在の激しい社会変動の時代にはなかなか通用しなくなっている、こういうふうに実感をするところであります。

 そういうところで、金銭債権について、その取引の安全を確保することによって事業者の資金調達の円滑化等を図る、その観点から電子記録債権制度を創設するためにこの法案が提出された、こういうふうに理解をしているところであります。

 事業者の資金調達の円滑化を図る目的で提出されたということにつきましては、そうすると、現行法における金銭債権を活用した資金調達の手法に何らかの問題点があるということだろうと思いますし、またこの法案を成立させることによって、この問題点がどのように克服されることになるのか、これは法務大臣から概要について御説明をお願いしたいと思います。

長勢国務大臣 現行法のもとでは、金銭債権を活用して資金調達をしようということになりますと、取引先に対する売り掛け債権等の指名債権を第三者に譲渡するか、あるいは取引先から手形を振り出してもらって、これを第三者に譲渡するかということになるわけであります。

 しかしながら、指名債権の譲渡ということになりますと、その性格上、そもそも譲渡の対象となる指名債権が存在をするかどうか、また他人に譲渡されたりしていないかというような、金融機関等の第三者が確認をするのに手間とコストがかかる、またそのような手間をかけても、同一の債権が二重に譲渡されるリスクですとか、あるいは譲渡人に対する人的抗弁が譲り受け人に対して主張されるリスクというようなものがあるという問題があるわけであります。

 また、手形についても、手形が紙媒体を利用するものであるということですから、盗難や紛失といったリスクがある、また手形の作成、交付あるいは保管のためにコストがかかるという問題点があるわけであります。

 これに対しまして、電子記録債権では、このような指名債権譲渡や手形にまつわるリスク、コスト、これを削減することによって、金銭債権を活用した資金調達を行いやすくするということを目的とするものでありまして、例えば、電子記録をすることを電子記録債権の発生や譲渡の要件とすることによって、債権の存在と帰属をはっきりさせるとともに、二重に譲渡される事態が生じないようにして、債権の存在、帰属についてのリスクや二重譲渡のリスクを排除できるようにしておるわけであります。

 また、記録原簿への電子記録によって、電子記録債権の発生や譲渡をすることができるようにして、手形の作成や交付に要するコストを削減し、電子債権記録機関という信頼できる第三者が債権に関する電子データを管理することにより、盗難や紛失のリスクを回避することができるようにしておるというふうに、メリットがあるというふうに考えております。

早川委員 そこで、金融担当大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、大臣は法曹出身でありますので、法律制度の運用については非常に通暁されていると思います。ただ、この新しい制度の中では、結局、電子記録債権制度の記録機関の信頼性をどうやって確保するのかということと、それから、電子記録システムの安全性とか信頼性、これについて、やはり運用に足りるような程度にまで信頼性、安全性が確保されなければならない。

 この二点について、どんなことをお考えになっているのかということについてお答えを賜りたいと思います。

山本国務大臣 御指摘のとおり、記録機関というのは、権利の内容や帰属を定める記録原簿を取り扱うわけでございます。信頼の置ける者が電子債権記録業を行う必要があることは申し上げるまでもございません。今現在の紙によるリスクや、あるいはそのほかの手形、小切手等のリスクをそのまま引き継ぐということであってはなりません。より信頼性の高いものにならなければ、この法目的は達成できないというように思っております。そのため、記録機関におきましては、指定の際に記録機関の業務遂行能力を審査するということをやらせていただきまして、一定の財産的基礎を求めております。

 次に、公正性、中立性の確保、他業の破綻リスクの遮断等の観点から、兼業を禁止しております。また、報告徴求あるいは業務改善命令等の必要な検査監督を行うというように仕組んでいるところでございます。

早川委員 いずれにしても、インターネットを利用してのこういった電子記録債権というものについての安全性の確保のためには、やはり記録の改ざん、要するに、ハッカーによるコンピューターへの侵入を初めとした外部からの不正アクセスの防止、あるいは情報漏えい等を防ぐための内部管理体制の構築などのセキュリティー対策を十分構築する必要があると思っております。

 時間でありますので、こういったことについてしっかりと対処をいただきたいという要請をして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

七条委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 電子記録債権法につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど、電子記録債権制度の創設の背景、立法事実についてお話をいただきました。そこで、この電子記録債権制度の創設によって、経済的にどのような活用がされていくのか。特に中小企業にとりましては、これを使い勝手のよいもの、そして安価で安心できる、そういうものにしてもらいたい、こういう要請が強いわけでございます。やはり中小企業がこれを活用できるということは経済的なインパクトも大きいわけでございまして、そのあたりにつきまして金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 現在、事業者の手形残高については、先ほど民事局長がお答え申し上げましたように、平成二年で七十二兆が、平成十七年になりますと三十一兆。しかし、事業者の平成十七年の売掛金は二百一兆円でございまして、いわば決済に手形がもはや使われない時代が来たというわけでございます。それにかわる新しい決済システム、そして能率のいい、信用性の高いものということが当然中小企業の取引等の活力となるわけでございます。

 電子記録債権は、手形、売り掛け債権、貸付債権など、さまざまな金銭債権につきまして、その流動化に活用されることが想定されていることは御承知のとおりでございます。特に手形の代替や売り掛け債権の流動化、これは中小企業者の資金調達環境の整備の上で大変重要だというように認識しております。金融庁といたしましては、より多くの中小企業に利用されるよう環境整備に努めてまいりたいというように考えるところでございます。

大口委員 この制度を見ますと、流通性の確保ということでは手形法と非常に類似した形になっております。善意取得の規定、人的抗弁の切断、そして支払いの免責等々でございます。ただ、この流通性を制限する規定も置かれております。また、消費者保護という観点からの規定もあります。また、任意的記載事項、こういうものも認められておりまして、そういう点で手形法とこの電子記録債権制度とは違いがあるわけでございます。その点につきまして法務当局からお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 御指摘のとおり、電子記録債権の特色といいますのは、特に手形に対する特色でございますけれども、流通はいたすものの、そのあり方というのは非常に多様なものが考えられるわけでございます。指名債権がベースにはなっておりますけれども、それから切り離された独立の債権。しかし、どうしてもさまざまな取引の実情というものを反映した債権のあり方というのがあり得るわけでございます。電子媒体でございますと、手形とは異なりまして、いろいろな記載というのも比較的自由にできる、そういう環境のもとに置かれますので、むしろそういう多様な債権というのをここで記録の世界に取り込んでいこうというのが非常に大きな趣旨でございます。

 そこで、今委員も御指摘になりました人的抗弁あるいは善意取得の問題でございますけれども、今申し上げました多様な用途というのを前提にいたしますと、流通を高めるという意味ではこのようないわば流通保護の規定が必要でございますけれども、他方、こういうものを必要としないような債権もこの制度には乗っけていこうということでございますので、そういった趣旨で、消費者保護のような側面も取り込んだ制度のあり方を組み立てていこう、手形におきましても指図禁止手形というのがございますけれども、それをより広範に、そういう多様性というのを認めていこう、そういう趣旨でございます。

 電子記録債権の譲渡記録を制限するということも同時に認めることにいたしておりますが、これも同様の趣旨でございまして、原則的には多くの機関というのは譲渡を自由にするという方向に向かうと思いますけれども、そうでないものをここで必ずしも制限する必要はないということで、こういうものも電子の世界に取り込める、そういう制度の仕組みをとっているわけでございます。

大口委員 手形の場合は手形交換制度というのがあり、また支払いを怠った場合は不渡りという形で銀行取引停止処分というものがあるわけですね。そこで、ネッティングあるいは取引停止処分というような制度の仕組みを今回の電子記録債権制度においては考えておられるのか、これは金融庁にお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 手形交換制度は、銀行取引停止処分によりまして不適格な参加者を排除することで手形の円滑な流通の確保をする民間のルールでございます。電子記録債権に関しまして、手形交換制度と類似の民間ルールを導入することにつきましては、民間のニーズ等を踏まえ、電子記録債権の実践的な活用方法をにらみながら、利点、問題点のバランスに配慮した十分な検討が必要であろうというように考えております。

 金融庁といたしましては、実務者と十分意思疎通を図りながら、こうした民間ルールの策定につきまして適切に今後対応してまいりたいと考えるところでございます。

大口委員 次に、民法の契約理論との関係でお伺いをしたいと思います。

 電子記録債権の発生、譲渡等につきましては、本来であれば当事者の申し込みに対して承諾という当事者間の契約があって、そして記録機関に対する請求というような手続的なものがある、民法の一般の理論からすればそういうふうに考えるわけです。ところが、今回の法制度におきましては、当事者間の申込者に対する受託、こういう当事者間の契約というものは要らない、とにかく電子債権記録機関に対する請求は、義務者と権利者双方からあれば、それで電子記録債権というのは発生し、譲渡し、また保証あるいは質権の設定等ができる、こういうことになっているわけです。

 民法の契約理論と今回の制度の設計との関係性、いろいろ法制審議会でも議論があったと思いますが、整理して、なぜこのようにしたのか、極端な場合は義務者だけの請求でもいいという考えもあったようでございますけれども、今回こういう制度設計にしたということの理由についてお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この制度を仕組む上では、民法の契約理論との調整というのは一つの重要なポイントでございました。言ってみれば、民法の原則にのっとれば当事者間の合意、契約がなければ債権というのは発生しない、そういう契約理論でございますし、他方、それを要求いたしますと非常に不便で手続が煩瑣になるということがございますので、この間をどう調整するかということでございます。

 法制審議会でも、それを別に契約上の合意というのを必要とするという意見としないという意見と分かれておりましたし、それぞれの中にも債務者の立場をどう見るか、債権者の立場をどう見るか、いろいろ意見が分かれておりましたが、非常に錯綜したために、中間的な試案を作成いたしました際は、いずれの案も御提示していわばパブリックコメントにかけたわけでございます。

 その場合に、結果はいずれの意見にもそれぞれ賛成がございまして、これは先ほど申しましたような便宜と原理というのをどう調整するかというそれぞれのお立場によるというように思われます。

 その後、審議を続けましたが、その折り合い点といたしまして、結局、両方の意思表示は必要だけれども、それは記録機関に対する意思表示がそれぞれ必要で、それが合致すれば記録債権というものが発生する、そういう構成にしようということにまとまったわけでございます。

 民法の原則からいたしますと、当事者双方の意思表示というのはどうしても必要かなというのが最終的な結論でございましたし、ただしそれを別個とするまでもなく、結局のところ、登録機関を介してそれぞれの合意ができたと解すればそれほど契約理論との乖離というのも大きくない、こういうところから中間的な考え方にまとまった、こういう経緯があるわけでございます。

大口委員 次に、これは主務大臣が一定の財産的基盤のある株式会社に対して電子債権記録機関の指定を行う、こういうことでございます。ただ、この電子債権記録機関というのは社会の公器でありまして、秘密の保持、情報セキュリティー、本人認証、こういうことでやはり厳格な管理体制というものが必要になってくるわけですね。

 そこで、この指定に際して、どの程度のセキュリティーレベルを求めるのか。FISCの指針等、いろいろ参考にされるんでしょうけれども、それこそペンタゴンレベルなのか、それともインターネットバンキングの最先端レベルなのか、どういうレベルが要求されるのか。そして、業務執行体制についてはどのように体制が整ったならば指定できるのか、これについて金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 電子記録債権は、記録原簿によりまして権利の内容や帰属が定まるわけでございます。このため、記録機関は、セキュリティー水準の確保に努めることが大変重要でございます。不正アクセスやウイルスを検知、遮断するためのファイアウオールの設置、システムダウン時のバックアップ体制の構築、記録機関内部での情報管理体制の整備、適切な本人確認の体制整備等々の対応を図っていただくことが必要でございます。

 また、そのほかの業務遂行の視点から申し上げれば、例えば、債務者の二重払い防止等のために、職権による支払い等の記録が確実に行えるような金融機関との連携体制の構築が必要でございますし、法令等の遵守のための内部管理の責任者を配置するなど、適切な人的構成の確保といった体制が整備されていないとならないわけでございます。

 これらにつきましては、記録機関の指定申請時に業務規程等の審査を通じまして的確にチェックするとともに、業務開始後におきましても日常の検査監督を通じて適切にフォローしていくというような制度にしておるところでございます。

大口委員 利便性だとかコストの面等も踏まえながらいろいろと検討されていくと思いますが、どうかそのあたりについてはしっかりと基準をつくっていただきたいと思います。

 次に、ハッキング等によって不実の電子記録がなされた場合や権限のない者の請求に基づいて電子記録がされた場合に、電子債権記録機関が損害賠償責任を負うわけでございます。それにつきまして、不法行為の原則を変えて、過失のないことを機関が証明しなきゃいけない、証明責任の転換を図ったわけでございますけれども、その趣旨、理由について法務大臣からお伺いしたいと思います。

長勢国務大臣 まず、今おっしゃったようなハッキングなどによって電子記録が改ざんされる、あるいは何らの請求もないのに電子記録がされるというような場合、また、機関によるミスのために本来とは違う記録がされるというような場合には、電子記録を真実の内容に訂正する義務を電子債権記録機関に負わせております。

 また、このような不実の電子記録がされたことによって損害を受けた者にとっては、身に覚えのない電子記録がされた原因を把握することさえ困難でありますし、そもそも機関は記録原簿を適切に管理する責任を負っておるわけでありますので、より厳格な責任を負うべき立場にあります。

 そこで、不実の電子記録がされた場合には、電子債権記録機関は、過失のないことをみずから証明しない限り、損害賠償の責任を免れないということにいたしております。

 他人に成り済まして電子記録の請求がされた場合や代理権のない者によって請求がされた場合においても、電子債権記録機関に厳格な損害賠償責任を負わせるということにしております。この場合にも、電子債権記録機関は、電子記録の請求が適法にされているかどうかについて適正に確認した上で電子記録を行う業務を担っているのでありますから、電子債権記録機関の側に過失がないことをみずから証明しない限り、損害賠償責任は免れないということにしております。

 このように、より重い責任を機関に負わせることで、この制度そのものの信頼が損なわれることのないように法制上も配慮しておるところでございます。

大口委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 民主党の楠田大蔵でございます。

 本法連合審査におきまして、既に法務委員会所属の先生方から質問がございました。特に法律的な観点からの質問が多くあられたと思いますが、私自身は、かつて住友銀行に所属をしていたということもありますので、そうした金融の観点といいますか、実際にこの制度自体を導入して、こうした制度が根づくのかどうか、もっとはっきり言えば、業態として成り立つものかどうか、もうけるものであるのか、そうした観点から話を伺ってまいりたいと思います。

 まず、今回の件で私自身思い出しましたのが、手形制度。支店に勤めている時代、この持ち出しを手形交換所にしていくわけでありますが、そのとき、さまざまな裏書であるとかそういうものをチェックして出していく。膨大な事務の中でもなかなか大きなものでありまして、そうしたものが今回の電子債権を導入する際に劇的に変わっていくのかなというイメージを少し持ったところでありますが、しかし、今回の制度全体としての大きな像というのは少しまだ私は見えにくい、見出しにくいと考えております。

 まず、成り立つためには、債権者、債務者、また金融機関等、すべてにメリットがないといけないと思っておりますが、今回、この制度を導入するにおいて、債権者、債務者、金融機関等、プレーヤーのメリットがどういうものであるかをまずお答えいただきたいと思います。

    〔七条委員長退席、伊藤委員長着席〕

寺田政府参考人 まず、メリットの点でございますけれども、私の方からまず債権者と債務者の関係について申し上げます。

 従来ですと、債権者、債務者の間で債権の譲渡を行うということになりますと、一つは指名債権としてそれを譲渡する。その場合には、しかし、指名債権が本当にその権利者の手元にあるのか、あるいはそれはそうでないのかということの調査が必要でございますし、その譲渡の手続そのものも、これは通知、承諾というような、紙のベースでございますけれども、非常に厄介な手続が必要でございました。この電子債権はそういう手続を飛び越えようというものでございまして、一面ではそういう面で手形に近づくわけでございます。

 他方、では手形の側から見ますとどういうメリットがあるかと申しますと、手形の発行をする場合にはあらゆる意味でコストがかかるわけでございます。保管のコストもかかりますし、もともと手数料的にもコストがかかるという面もございます。税の面でもございます。そういうさまざまなコストがあるために、先ほども金融担当大臣の方から御説明がありましたように、手形の利用というのは急速に縮小しているわけでございます。

 手形のもう一つのデメリットは、どうしても手形というのは流通に置くのに定型性というのを要求いたしておりまして、しかもそれは紙ベースでございますので、言ってみればワンパターンの譲渡の仕方、債権のあり方しかないわけでございます。

 ところが、この経済社会において非常に複雑になっておりますので、債務者だけでなく債権者も非常に多数にわたる、それがいろいろな約束をする、そういったものをすべてしょい込んだ上での債権譲渡というのはできないものだろうかというようなニーズもまた一方であるわけでございます。それでは手形では不便でございますので、そういった意味で、債権者、債務者それぞれにとって、この取引環境というのがこれで改善されるということは言えようかと思います。

楠田委員 いや、私が一番聞きたかった、金融機関等、こうした決済のシステムの中で組み込まれていくところのメリットというのはどうですか、そこは抜けていたと思いますが。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 電子記録債権制度は、電子的手段を用いました商取引、金融取引の発達を踏まえまして、金銭債権につきましても電子的な管理、譲渡の手段を整備いたしまして、事業者の資金調達環境を整備するために設けるものでございます。

 金融機関にとりましては、こういった制度を整備するのにはそれなりのコストもかかるところでございますけれども、一方におきまして、現在の経済システムの中でこのような新しい手段を創設していくということかと思います。

 この点につきましては、既に有価証券につきましてはペーパーレス化が行われているわけでございますが、今般、さらに有価証券以外の手形あるいは指名債権等の機能を踏まえました新しい電子記録債権制度ができ上がることによりまして、全体の我が国の経済のインフラの整備に貢献するものと考えているところでございます。

楠田委員 その説明の中で、私も金融機関におりましたが、今回、電子債権記録機関というのが、兼業も禁止をされている、そして複数設立することが可能、乱立する可能性もある。そうした中で本当に金融機関のようなところにいかに協力をしてもらえるのかなということが非常に見通しが悪いんではないかと思っているわけであります。

 その中で、少し視点を変えまして、債権者、債務者、中小企業の方に要求があるとも聞いておりますが、実際にこの制度を必要としている人たちは、そもそもこうした売り掛け債権、運転資金を早目に手元に置きたい、そうした中小企業の方ですから、健全な大企業の方はこうしたシステムを余り利用しないのではないか。また、企業間信用に頼るような、従来、手形を使っていたようなところ、そしてその手形のコストにさいなまれている人たち、そうした方々が使われていくのかという印象でありますけれども、そうした町の中小企業のいわゆるおじさん、おばさんのような方々がこうした電子化のシステムにそもそもなじむものなのか、この点に関してはどうでしょうか。

 例えば、こうした制度を使うためのインフラ設備のために何らかの財政的措置、公的支援のようなものを考えるのか。この点はどうでしょうか。

三國谷政府参考人 電子記録債権の利用あるいは記録機関の設立、この記録機関の方のコストがかかるかと思いますけれども、これはまさに民間の経済活動の中で自由に判断されるべきことであると考えております。金融庁といたしまして、そういった金融機関の設立等につきまして、その支援のための予算措置を講じることは想定しておりません。

 一方、利用する側の利便性の問題でございますけれども、相当今、電子的な、インターネットを含めましていろいろな手段が確立してきておりますので、国民全体がそれを利用するということではございませんけれども、これを利用するインセンティブをお持ちの方はさらにそういったものの利用に習熟しながら、この制度の普及につながっていくことを期待しているところでございます。

楠田委員 それでは、こうした制度をそもそも導入するにおいて、普及活動であるとかそうしたインフラ整備等も必要だと思いますが、こうした点に関して、政府としてのコスト、予算化はどれぐらい考えているか、この点をお聞かせください。

三國谷政府参考人 システムの整備等につきましてどれだけのコストがかかるか、今具体的な計算が私どもとして手持ちにあるわけではございませんけれども、基本的には、システムでございますので、固定コストとランニング費用というものがあろうかと思います。この固定的な部分につきましてはある程度一定のロットがあるわけでございますが、それから先のランニング費用というのは、実際の利用との見合いで総体的なコスト感が出てくるのかと思います。

 いずれにいたしましても、いろいろな団体等におきまして、この辺のコストの軽減あるいはランニング費用の縮減も含めましたビジネスモデル等につきまして、現在検討を進めているものと承知しております。

楠田委員 たびたび、法案審議の際に多い答えになってきていますが、大事な国会での質疑の際に、具体的なイメージがまだでき上がっていないという答えを平気でされるケースが多くなってきているんじゃないかと思っております。

 その中で、確たる数字として出しやすいものとして、我が方の部門会議でも出ておりましたが、印紙税収というのが今一兆円の収入であると伺っております。そのうち、そもそもある手形制度においてどれほどの印紙収入が現時点であるのか、この点をお聞かせください。

三國谷政府参考人 印紙収入、税収そのものの数値につきましては、これは財務当局の所掌でございますので、私どもとして申し上げることは知り得る範囲ということでお許しいただきたいと思いますが、印紙税収入は平成十八年度予算で五千百十億円と承知しております。

 ただし、これは手形に係る印紙代だけではなくて、例えば不動産譲渡契約書、消費貸借契約書、それから預貯金通帳など、他の課税文書に係る印紙税収入が含まれているところでございます。したがいまして、その内訳ということで、その一部がこの手形に係るものと承知しております。

 なお、この制度が導入されましても、既存の手形制度は残るわけでございます。この手形がどの程度また電子記録債権の方にシフトしていくかといった点につきましては、今後の推移によるわけでございます。そういった意味で、そのうちの一部なりがこちらの方に移動いたしますと印紙税につながるということで御理解を賜りたいと存じます。

楠田委員 財務当局、ちょっときょうはお招きをしていませんでしたので、後日に譲りたいと思いますが、まず、この件に関しまして的確なコスト、まず制度導入において、確実に手形制度は続くとしましても、印紙税収、手形を使う量というのは確実にこの制度によって減るわけでありますから、印紙税収も従来の手形にまつわる部分が大部分減る。これによって、当然我が国の税収に対する影響も大きいわけでありますから、この制度導入において、当然こうしたコスト計算はしていただきたいと思っておりますので、委員長、ぜひこの点において理事会で資料を出していただくように、これからの見通しも含めて要求させていただきます。

伊藤委員長 ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

楠田委員 それでは、具体的な話に移ってまいりたいと思います。

 今回、電子債権記録機関と呼ばれるものがこの制度で新たに誕生をするわけであります。これに申請をして、指定をしていくということでございますが、この言葉、言葉といいますか、制度として、指定という制度にしている点と、この指定の基準というものをお答えいただけますか。

三國谷政府参考人 いわば、電子媒体を使いましたいろいろな記録管理ということは、これは現行法でも可能なわけでございますが、今回は、この法律によりまして、例えば、記録によりまして債権内容を定める等の特別の法的効果を付与するわけでございます。指定をすることにより、指定された機関のその記録原簿というのはそういった一定の法的効果が付与される、そういった意味で指定、そのための指定ということでございます。

 なお、この指定の基準でございますけれども、やはり、財産的基礎、人的構成等々の適正化が必要でございます。例えば、財務基盤につきましては、破綻回避やシステム投資能力の確保等の観点から、五億円を下回らない資本金、純財産額を求めることとしているところでございます。

 また、セキュリティーにつきましても、不正アクセス等に対するセキュリティーの水準の確保、システムダウン時のバックアップ体制の構築、記録機関内部での情報管理体制の整備、適切な本人確認の体制整備などの対応を求めることとしているところでございます。

楠田委員 事前の通告で、主税局の事務方の方が間に合われたということですので、先ほど委員長に要求しました印紙税収の部分をお答えいただけますか。この制度導入において税収がいかに変動していくかも含めて、お答えください。

佐々木政府参考人 まず、印紙税収の全体の実績でございますけれども、近時、約五千億でございまして、十八年度の予算、補正予算で五千百十億を計上いたしております。

 印紙税はさまざまなものにかかりますので、その中で手形に係る印紙税分という内訳につきましては実績をとっておりません。ただ、非常にこれは大まかなことを申し上げて、現在どうかというのはよくわかりませんけれども、およそ二割程度が手形に係るものではないかと言われております。

 そのうち、今回の法案によりましてどれだけ電子記録の方に移行するかということでございますが、実際、金額として五千億の二割のうちの一部ということになろうかと思いますけれども、現在のところ、それは正確にはわからないということでございます。

楠田委員 先ほどの委員長への要求が、正しいといいますか、やはり必要であったと思います。

 こうした制度導入において、予算措置はどれだけあるかというのももちろん重要でありますけれども、この制度が成り立ち、利用者の方に利便性があるというものでないと、そもそも法律をつくる意義がないわけでありますから、先ほど申しました、印紙税収の手形にまつわる部分がどれぐらいのもので、そして、この制度を導入するにおいて、これからどういう影響を及ぼしていくのか、税収の低下につながるのか、この点に関してもぜひ試算をして、提出をしていただきたい。それがなければ、この法律を実際に議論していくことも難しいのではないか、そうした指摘をさせていただきたいと思います。

 時間も迫ってまいりましたので、最後に、今回の件で、銀行でいえば、当然、当座預金等を銀行に開設して、それによって最低限の信用力があるところをプレーヤーにしていくということでありますけれども、今回のこの制度において、電子債権記録機関に加入する際、そうした審査をどのようにしていくのか、この点に関してもお聞かせください。

三國谷政府参考人 この電子記録機関につきましては、現実の取引が適正に行われるよう、当然のことながら、そのシステム管理も含めまして、そういった債権、債務者等につきましての本人確認等をするなどの確認体制整備に努めてまいりたいと考えております。

 ただ、一方で、当然のことながら差別的な取り扱いをしてはならないわけでございまして、そういった公平性と、それからこの制度の信頼という、そういったものを両方考慮しながら、制度の適正な運用に努めていくものと考えております。

楠田委員 時間も参りましたので、そうした個別具体的な点に関してはまだまだはっきりしていないところが多い、不渡り制度の点も先ほど質問もありましたけれども、今回の件で不適格な参加者を排除するという制度も、まだまだこれからの議論の途上にあるのではないかと思っておりますので、徹底審議を続けてまいりたいと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。民主党の大串博志でございます。

 電子記録債権法でございます。IT化が進み、ペーパーレス化が進む中で、まず冒頭に、この法律に対する私の考えといいますか態度を明らかにさせておいていただきますと、私自身は、この電子記録債権というものが、手形そして売り掛け債権に関して、IT化の中でなっていくことに関しては賛成でございます。これは方向としてなっていくことは、例えば株券のペーパーレス化、そして社債についても、振替機関ができて、ペーパーレスの中でのコスト削減、流通性の向上というものが図られております。そういう観点からして、手形という制度、そして売り掛け債権という制度にペーパーレス化の流れを入れて、流通性を高め、信頼性を高めていくという方法自体は、私は賛成でございます。

 ただ、私自身、若干の感想として覚えていますのは、電子記録債権法が仮に成ったとした場合に、本当に電子記録された債権というものが普及していくかという点に関しては、まだ見えない点が私は多いんだろうと思います。ひょっとしたら時間が相当かかっていく可能性もあり得るというふうに思っています。

 その理由とするところは、法律はここに定められて提案されているわけでございますけれども、具体的な制度設計の中でこれから確定していかなきゃならない点が極めて多いんじゃないかというふうな気がしております。具体的な制度設計の中で決めていくこと、見えていくこと、あるいは自然と見えていくこと、これが見えてきて初めて、どのくらいの利用度があるのかというのが見えてくる、そういう仕組みじゃないかと思っています。その中で、また新たな課題みたいなものも出てくるんじゃないかというふうに思っているわけでございます。

 そういう観点から、確認の意味も含めて、きょうは質疑をさせていただければというふうに思います。

 大きな論点から小さな論点、具体的な論点までいろいろありますので、まず、ちょっと大き目の論点のところから話をさせていただければというふうに思います。

 まず、この電子記録債権の成否を決めるのは、私は、何といっても、この法律の中に定められている電子債権記録機関だと思います。これがどれだけ、効率性のある、かつ信頼性のある、あるいはコスト面でも利用可能な利便性のあるものになっていくかという、ここが私はかぎだというふうに思っています。ところが、この法案の中からは、その電子債権記録機関というもののイメージがまだはっきりわいてこない。先ほどの審議で、少しずつその辺が出てきておりますけれども。

 まず金融大臣にお尋ねしたいのですが、この電子債権記録機関、どういうふうなイメージを持っていらっしゃるのか。どういう主体がこれをやっていくであろうと考えていらっしゃるのか。そして、例えばどのくらいの数が出ていこうとするであろうと考えられているのか。この辺に関してのイメージをお聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 記録機関は、電子記録債権の権利の内容、帰属を定める記録原簿を取り扱う機関でございます。財産的基盤など、一定の要件を満たした株式会社を指定するというように考えております。

 具体的に参入する者について申し上げますと、現時点で考える限り、現在、全銀協におきまして、記録機関のあり方についての議論が進められております。金融機関が担い手となる可能性が強いわけでございまして、全銀協加盟等々の金融機関の皆さんがこの記録機関の担い手となることにおいて、我々は、当然、ここを予定するわけでございます。

 また、電子記録債権を利用する際の手数料ということを申し上げますと、記録機関の経営判断により決まるわけでございます。記録機関の取り扱う電子債権の量とシステムの開発費あるいは維持コスト費、そうしたものとの見合いであろうというように思います。現在の手形利用に係る諸経費など、さまざまな要因を考えた上で、より利便性の高いものというような視点から手数料が定められることになるというように思っております。

大串委員 ありがとうございます。今お話がありました、全銀協においてあり方の議論がされていますと。

 特に突っ込んでお尋ねしたいんですけれども、全銀協においてあり方の議論がされているということであれば、イメージとしては全銀協の方々が、全銀協というのは、御案内のように、銀行という業態の方々が幅広く名を連ねていらっしゃいます。若干漏れている方もいらっしゃいますけれども、かなり幅広く銀行業界の方が入っていらっしゃるということですね。預金取扱機関が全部入っているわけじゃないですね。ところが、これは電子債権記録機関というものが成り立っていくとすると、恐らく預金取扱機関にかなり広がっていかなければならないものだろうという感じがしています。

 ちょっと突っ込んで聞かせていただきますと、全銀協の方があり方の議論をされているということであれば、例えば、全銀協という業態の方で一つのボディーの電子債権記録機関がつくられていくイメージなのか、それとも、個々の金融機関の方が入っていかれるイメージなのか。あるいは、預金取扱機関の中でも各種業態がございますね、メガと言われる方もいらっしゃれば、地域の金融機関もある、あるいは信金、信組もございます。そういうふうに業態ごとになるのか。その辺のイメージは、もう少し突っ込んで聞かせていただくと、どうでしょうか。

    〔伊藤委員長退席、七条委員長着席〕

山本国務大臣 電子記録債権の利用ということを考えました場合、民間のニーズにこたえて複数の記録機関が設立されることが望ましいと思っております。競争という観点からとサービスの向上という視点から、複数が望ましいわけでございます。

 したがいまして、全銀協加盟の各金融機関が共同で記録機関を持つということもありましょうし、また、一金融機関が子会社化という形で持つ場合も想定されるだろうというように思っておりますが、いずれにしましても、複数の記録機関が競争していただけるということが大事なことであろうというように思っておりまして、まず、民間の経済活動の中で、ほうはいとして自由にこれがつくられていくということが望ましい姿であろうというように考えております。

大串委員 先ほどお話もありましたように、これから電子債権記録機関の具体的な内容というのは固まっていくんだということでございました。

 先ほど申しましたように、私は、この電子債権記録機関のあり方というのは、制度がうまくワークするかどうかにおいて、かなり決定的な位置づけだと思っていますものですから、この点がこれから決まっていくという点に関しては非常に私も関心を持って見ざるを得ないというふうに思っています。

 そして、今おっしゃいましたけれども、複数の参入があった方が競争があってよろしいということでございますけれども、なかなかそこは、これまたプラス、マイナスがあるところだと思うんですね。社会のインフラという点から考えると、共通フォーマットみたいなものをつくっていった方が社会全体としてはコストが下がる。そういう意味からすると少数の参入の方が望ましいということになりましょうし、確かに、競争、サービスの向上という観点からすると、ある程度の複数参入が必要になってくるという、両方のプラス、マイナスがあろうと思うんです。

 一般民間企業の議論の結果、自然とできてくるであろうという態度、行政側としてはそういう態度だと思いますけれども、果たして本当にベストミックスができてくるのかというところは、実は私は、ここは、論理的な道理といいますか、民間企業の判断に任せると、先ほど申し上げた効率という観点と全体の競争という観点、こういうプラス、マイナスを両方踏まえたベストミックスが本当に出てくるかというと、必ずしもそこはないんじゃないかと思うんですね。ここが非常に大きな問題といいますか、確認しなければならない点として残っているんだと私は思うんです。

 そこが残っている点から、またもう少し電子債権記録機関の問題に関して掘り下げさせていただきますと、電子債権記録機関は、業務としては、非常に公平性、公正性、中立性を保ったものでなければいかぬということになっております。先ほど来、公平性、中立性を保つためにいろいろな仕組みを考えていらっしゃるということがありました。基本的には、監督検査の体制をつくっていく、そして兼業は禁止するんだということ、株式会社でなければいかぬ、財政的基盤を有すると、基本的によくいろいろな法令の中でも見られる規制でございます。

 公平性、中立性という観点からすると、よく言われるのが、兼業を禁止しているから公平、中立性には非常に配意しているんだという議論をよく今回の説明の中でも聞きます。しかし、私があれっと思ったのは、例えば銀行が一〇〇%子会社の電子債権記録機関をつくったとしましょう。そういう場合によく行われるのは、取締役、マネジメントに人が送られます。取締役、マネジメントにどっと人が送られて、かつ一〇〇%子会社であったとすると、これはかなり一体性が高いというふうにみなさざるを得ない。そういう観点から、銀行法なんかでも、特にシェアの高い子会社に関しての規制、特別な規制なんかも、銀行のように公益性の高い業態においてはありはします。

 今回、コムスンの問題がございました。処分を受けて、では、その業務をどうするのかといったときに、子会社に譲渡するということに関しては、これは相まかりならぬという社会的な声もあり、それはやってはいかぬということになったわけですね。

 だから、おのずと考えてみると、ある業態とそれに対する一〇〇%子会社、そして、そこにマネジメントなんかがどっと送られたりすると、かなりこれは一体性が高いと言わざるを得ないし、かつ財産的基盤のところも、今回五億円という財産的基盤の基礎を置いていただいていますけれども、リスクの遮断という面においても非常に危なっかしいものが出てくるかもしれません。

 ですから、私は、一〇〇%子会社に関する規制、資本関係に関する規制が弱いんじゃないかというふうな気がしているんですけれども、この点に関して、大臣、いかがですか。

山本国務大臣 記録機関は、先ほど申し上げましたように、権利の内容、帰属を定める記録原簿を取り扱う、信用、信頼の置ける者が電子債権記録業を行ってもらわなければなりません。

 このため、記録機関に専業義務を課すという形で公正性と中立性を確保しております。さらには、本法案の中で、記録機関の役職員の秘密保持義務を定めておりますし、不当な差別的取り扱いの禁止も定めておりまして、公正性と中立性をこれで担保しているところでございます。また、仮に、記録機関が銀行の一〇〇%子会社であった場合、こうした記録機関の公正性、中立性も確保されるもの、こう考えているわけでございます。

 そう考えまして、この記録機関の公正性、中立性を保ちつつ、さらには日常的に検査監督を行ってまいるわけでございまして、そんな意味では、一〇〇%子会社でありましても、その記録機関が、何か、子会社であるがゆえに中立性、公正性をゆがめるということは、私の方といたしましては、この仕組みからすればそういうことはないというように考えております。

大串委員 今、検査監督もしっかりやっていきますので一〇〇%子会社でも問題ないということでございましたけれども、それでいいますと、では、検査監督体制はどうなっていくのかというところも議論しなきゃならないと思うんです。

 検査監督の規定がございます、業務改善命令の規定もあります、指定の取り消しもあります、その他のいろいろな規定もございますけれども、この検査監督は、具体的に、どこがどういうふうな体制で行うんでしょうか。

三國谷政府参考人 この法律を成立させていただいた後に施行準備期間等がございまして、この制度が動き出しますのはまたタイムラグがあるわけでございますが、現在、金融行政全体として、検査監督に限りませず、さまざまな需要が出てきております。毎年毎年の予算要求等の中で私どももその拡大に努めてきているところでございますが、一方で、かなり厳しい制約のもとでの要求であることも事実でございます。

 しかしながら、私どもといたしましては、これは大変重要な機関でございますので、所要の体制をしっかり整備いたして対応してまいりたいと考えております。

大串委員 ちょっと具体的にお尋ねさせていただくと、先ほど大臣は、どれくらいの数の参入になるか、まだはっきりしないとおっしゃっていましたけれども、どのくらいの数が参入するか、はっきりしない中で、今、具体的には、監督に対する人員の手当てみたいなものはしっかり行われているんでしょうか。これは確認的な意味で、ちょっとお聞かせいただければと思います。

三國谷政府参考人 今回の個別の電子債権記録機関の監督は、現時点というよりも、施行の段階でございますので、それまでの体制整備ということになろうかと思います。

 現時点で、一般論といたしまして、検査監督の体制ということでございますけれども、私どもといたしましては、大変厳しい定員事情でありますが、その中でやりくりしながら一生懸命職員が頑張っておるということで御理解賜りたいと思います。

大串委員 検査監督がかかる新規制度をつくる場合には、これはいつも悩みなのでございます。どれぐらいの参入があるか、よくわからない中で検査監督の体制をしいていかなければならない。ですから、最初のスタートオフの段階は非常に難しいんですね。

 一年半のうちに電子債権記録機関が登場してくるわけでございますけれども、一年半と申しますと来年の秋。来年の秋というと非常に遠いような感じがしますけれども、例えば、定員、予算を要求して予算をとってというサイクルを考えると、定員を要求して予算を要求するということを今やらなければいけないんですね。この夏の定員要求、予算要求の中で反映させて、それを来年の春に獲得する。来年の春に獲得して、それから大急ぎで検査監督に関するマニュアル等々を、それと同時並行的につくるんでしょうけれども、つくった上で、職員の方々になれていただいて、その期間も必要ですから、かつ、地方にも検査監督を行っていただくとすると、地方にも検査監督のなれを行っていただく期間も必要でございます。

 そういうことを考えると、一年半という期間は、実は長くはないんですね。もうまさに今から始めなければならない、そういう課題でございますので、どれだけ参入があるかわからない中でも、きちっと監督ができるように体制整備の方をお願いしたいというふうに思う次第でございます。

 それともう一つ、法務省の方にも私は付言しておきたいと思うんです。

 法律は共管でございます。共管でございますから、処分を打ったりするときには、これは当然、金融大臣、法務大臣、両方の名前で処分が打たれるわけでございます。そういう観点からすると、監督は金融庁を中心としてやるんでしょうけれども、法務省も監督の任ありという責任関係が生じてきます。

 ですから、私が最近危惧しているのは、法務省においても、いろいろな監督を行う機関といいますか法律といいますか、これはふえてきています。監督を行うというのは、実は非常に行政的には難しい。もちろん、行政すべて難しいわけですけれども、難しい職務でございまして、金融庁がやる監督をきちっと受けとめて、それが処分に値するかどうか、あるいは適当かどうかというのを法務省としても判断できる体制を法務省側においてもきちっとつくっていただかなければならないということを私の意見として申し添えさせていただきたいというふうに思う次第でございます。

 その他、私、法務大臣にもいろいろ法律の具体論のところを聞きたかったのでございます。

 この法律の具体論のところ、例えば、不実記載、権限のない者による請求において、過失責任とされていますけれども、本当にそれで法的安定性が保たれる仕組みになるのかどうかとか、あるいは、債権債務の消滅に関しまして同期的取り扱いがきちっとできるかどうか。特に、銀行間送金で行われる場合にはかなり速い同期的取り扱いが保たれるんでしょうけれども、例えば代位弁済や相殺、混同などで債権がなくなる場合には、本当に一瞬のうちにきちっと情報伝達されるかどうかというような点についても、それが本当に適当な制度になっているかどうか。これがこの制度が使われるかどうかを大きく左右するんじゃないかと思いましたものですから、その辺もお尋ねしたかったんですが、ちょっと時間がなかったもので、そこは割愛させていただきます。

 最後に、もう一回金融担当大臣にお尋ねしたいのは、今回、この制度の利点の一つは、債権の流動化が進む、中小企業の資金調達なども進むという点であると思います。債権の流動化、これは実はこの問題だけにとどまらないんですね。より広い観点で、銀行が持っている債権も含めて直接金融を進めるためには、あるいは市場型の間接金融を進めていくためには、債権の流動化全体を進めていかなければならないと私は思っています。

 金融庁において、債権の流動化を進めていくプロセス、これはどういうふうになっているのか、今後どういうふうに進められるおつもりなのか、この点について御説明ください。

七条委員長 時間が過ぎておりますから、簡単明瞭に。

山本国務大臣 貸出債権の流動化につきましては、金融機関における与信リスクの分散、適切なポートフォリオの構築など、金融機関におけるリスク管理の高度化等の観点から意義が大きいと考えられてきております。

 このような観点から、例えば次のような取り組みを進めてきたところでございます。

 主要行に対しましては、リスク管理高度化計画の策定を求めた際に、与信集中リスクやオフバランス化に関する取り組み方針等を策定するよう要請しております。十七年六月でございます。上記計画の実施状況を含めまして、銀行のリスク管理の状況につきまして定期的なヒアリングを実施しております。

 また、貸出債権の流動化を進めていくためには貸出債権市場の活性化も重要と考えておりまして、これにつきましては、日本ローン債権市場協会、JSLAが貸出債権のプライシング情報の公表を行うなど、民間主導の種々の取り組みによりまして市場が発展してきております。

 貸出債権の流動化の具体的な進め方につきましては、個々の金融機関が適切なリスク管理のもとで自主的に判断すべきものでございますが、金融庁といたしましては、引き続き、上記の取り組み等を通じまして貸出債権の流動化促進を進めてまいりたいと考えているところでございます。

大串委員 電子記録債権の制度がしっかり根づくような具体的制度設計をしっかり行っていただきたいというふうに思う次第でございます。

 終わります。ありがとうございました。

七条委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 きょうは、電子債権の取引の問題の前に、先ほど早川委員からも質問がありましたけれども、朝鮮総連本部の取引に関して、まず法務大臣に伺いたいんです。

 これは、公安調査庁の元長官が監視の対象であったところのものを買っているということで、まず一つ伺いたいのは、公安調査庁の内部的に、この長官の方が、部長だったり現場にいた時代や何から、そういうのもさかのぼって、不適切な行動がなかったのか、あるいは、今内部的にどういう調査をしているのか。また、していないのだとすれば、これは今後必ずしてもらわなきゃいけないことだと思うんですけれども、今の進捗状況をまず教えてください。

長勢国務大臣 御質問は、この元長官についての調査ということでございましょうか。(高山委員「現役時代の過去にさかのぼって、どういう行動があったのか、不適切なことがなかったのか」と呼ぶ)

 在職中には、そのような交友関係はなかったものと承知をしております。退職後の交友関係は私どもでコメントできませんが、記者会見では、総連の幹部と会ったのは今回が初めてですというふうに述べられたと承知をいたしております。

    〔七条委員長退席、伊藤委員長着席〕

高山委員 これは本当に、何というんですか、捜査対象というか監視の対象ですか、ずっと見ていて、それでそこと逆に仲よくなってしまうということであると、我が国は本当に公安がきちんと機能しているのかという重大な問題だと思いますので、しっかり調査をしていただきたいし、また、緒方さんや土屋さんといった人も、一応呼んで話を聞かなきゃいけないなと思いますけれども、その前にちょっと伺いたいのは、この総連本部の問題で、緒方さんのところや土屋さんのところに今東京地検が捜査に入っているわけですけれども、これはどういうことで捜査に入ったのか、教えていただけますか。細かいことなので、参考人の方でも結構ですけれども。

小津政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 捜査の進捗状況とかを教えてくださいということではなくて、何が問題で東京地検が入っているのかということをはっきり教えていただきたいんですけれども。

小津政府参考人 繰り返しで恐縮でございます。捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございまして、お答えを差し控えさせていただきます。

高山委員 大臣、これはもう新聞報道もすごくされていますし、また、総理も随分これを問題にして、非常に不愉快だというようなことがあって検察も迅速に動かれたのかどうか、その辺はわかりませんけれども。

 大臣にこれは伺いたいんですけれども、この件に関して官邸からどういう指示がありましたか。

長勢国務大臣 この問題に関して、私に特段の指示はございません。

高山委員 これはどういう経緯で、物すごい速さで、問題が顕在化してからもうその次の日には捜査をしているということで、随分迅速な捜査だなと思うんです。

 これは新聞報道によれば、朝鮮総連の本部が目黒区のとある会社に登記が移されていたということなんですけれども、これは後々金融担当大臣にも伺わなきゃいけないと思うんですね。要するに、債権の執行の免脱に当たる問題かとも言われておりますので。

 これは登記を移しているわけですけれども、一体どういう点が問題なのかというのを刑事局長に伺えますか。

小津政府参考人 具体的な案件につきましては、捜査機関によって収集された証拠に基づいて判断される事柄でございますので、この具体的な案件においてという御趣旨でございますれば、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

高山委員 ちょっと余りにも、これはほとんど与野党一致して問題を解明しなければいけないところを、どうして法務当局が答弁拒否されるのかわかりません。

 では、二、三確認だけさせてください。

 これは報道によれば、虚偽登記の疑いということで、電磁的記録公正証書原本不実記載の容疑で捜索したということですけれども、こういう容疑で今捜索しているということで間違いないですか。

小津政府参考人 ただいまの点につきましても、先ほど申し述べたのと同様で差し控えさせていただきますが、御指摘の構成要件は、刑法百五十七条一項の犯罪ということでございまして、公務員に対し虚偽の申し立てをし、登記簿、戸籍簿その他の権利もしくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ等々の行為をした者は、五年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処するという構成要件でございます。

高山委員 これは余りにも、法務当局もきちんと答弁していただけませんし、また、ちょうどきょうは財務金融と法務の連合審査ということもありますし、この問題は、朝鮮総連本部をそういうふうに虚偽登記することでRCCからの債務を免脱しようという、どうもそういう動きも見られるということですので、この元公安調査庁長官の緒方氏や土屋公献氏を参考人要求したいと思うんですけれども、委員長、お取り計らいをお願いします。

伊藤委員長 ただいまの件については、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

高山委員 この朝鮮総連の問題は、法務当局は余りにも、元公安調査庁長官と総連本部の不適切な関係について答弁していただけないので。

 つり革広告で見たんですけれども、長勢法務大臣と何か不適切な関係があるというような記事がありましたので、その点に関しても少し質問させていただきたいと思うんですけれども、私的なことに関して余りこちらで聞くのもあれですので、まず、二、三確認させてください。

 これは法務省に伺いますけれども、この記事によると、長勢大臣の御自宅が九五年当時からずっと登記がされていませんというような報道があったんですけれども、現在、長勢大臣の御自宅、どのような登記の状況になっているのか。特に土地と建物がどういうふうになっているのか、事務方から答弁をお願いします。

寺田政府参考人 大臣から伺っているところによりますと、今の御指摘の土地建物というのは、富山県の魚津市大字石垣村字西福寺三十三の建物と石垣九十四の土地でございますけれども、土地につきましては、もちろん表題部も登記はされてあるわけでございますけれども、現在、所有権の移転登記が平成五年に、平成二年の相続を原因として大臣名義でされているわけでございます。

 他方、建物の方は、表題部に木造草ぶき平家建ての構造の建物が表示されておりまして、所有者としては長勢次郎四郎氏、これは大臣によりますと祖父に当たられる方のようでございますけれども、登記がされておりますが、これはあくまで表題部の登記にとどまっているところでございます。

高山委員 大臣、これは今の東京地検なんかも登記の問題で随分捜査が入られているみたいなんですけれども、御自宅は今は不実の登記の状態になっているのか、それとも、これは適正な現況を反映したものになっているのか、ちょっと御説明願えますか。

長勢国務大臣 私の土地の上に建物が建っているわけですが、ずっと私が子供のときから住んでおった実家でございますが、父から相続を受けたものでございます。

 当然、私としては、土地も建物も私が相続協議において相続しておりますので、登記手続も終わっておるものと思っておりましたし、何か、かつて新聞でも取り上げられたことがあるということで、そのときも、間違いのないようにというふうに指示をしたつもりでおりましたが、その後、私自身が十分な確認をしていなかったために、今民事局長が答弁をしたような状況になっておることは、まことに申しわけないことだと思っております。

 今、状況がこういうことであることが判明しましたので、至急、当然の登記の手続をとるように指示をしておりますので、その作業をさせていただきたいと思っております。

高山委員 大臣、余りに私もこういう細かい、重箱の隅をつつくような話もしたくないんですけれども、今回、この総連本部、これは国策捜査で一点突破でいく場合には、かなりこういう細かいところもついていくこともあるようですので。

 大臣の御自宅の問題は、この朝鮮総連の本部と同じような不実記載の罪に問われる可能性はあるのでしょうか。これは大臣に御答弁願いたいんですけれども。

寺田政府参考人 余り具体的な問題に立ち入って論ずるのは差し控えたいと思いますけれども、今委員が御指摘になりました不実の登記といいますのは、自分に権利がないのに権利があるという形での登記をされるということだと承知しております。

 他方、今の大臣の富山の建物の問題は、表示登記においては実態を示した表示登記をしなきゃならない。例えば、増築があれば増築をしなきゃならない、あるいは変更があれば変更しなきゃならないということの登記が怠られているかどうかという問題だというふうに理解をいたしております。

 この問題は、仮にそのようなことがありましたとすれば、十万円を最高とする過料の制裁がございます。

高山委員 大臣、小さい問題だなというふうに御自身はお考えかもしれませんけれども、これは十二年も前から指摘されていることですので、この際にぜひ適正な状態に戻していただきたいというふうに思います。

 それと、もう一つ不適切なものが週刊文春によれば出ているんですけれども、この中に、悠遊興論塾というんですか、NPO法人が出てくるんです。これはどういう団体ですか。

長勢国務大臣 私の仲間の人たちで設立した、東京都の認可を受けている団体と承知しております。

高山委員 この「悠遊興論」という機関紙のようなものを、私、今持っているんですけれども、大臣、これは、ふだん、どういう活動をされているNPO法人なのか、大臣からもう一度御説明願えますか。

長勢国務大臣 私が運営しているわけではございませんが、月一回勉強会をして、また、月一回機関紙を出しております。仲間うちで日ごろ意見交換をしておる、こういう活動をしているように承知しております。

高山委員 この機関紙によれば、NPO法人悠遊興論塾入会、御支援のお願いというところがありまして、「「悠遊興論塾」は長勢甚遠氏を名誉塾頭とし、」というようなことが書いてあるので、てっきりこれは先生の団体なんだろうなというふうに私は思っていたんです。

 この点に関してまず一つ伺いたいんですけれども、このNPO設立に関して、長勢先生本人や、また、長勢先生の事務所の方が内閣府に何か問い合わせやお願いをした、こういうことはありますか。

長勢国務大臣 私はしたことはありませんが、設立するに当たって、皆が、必要があったらしたかもしれません、それは私は知りませんので。私は、内閣府に相談することは何もありませんから。

高山委員 これは会費を取ってどうも政治的な活動をしているようなんです。

 もう一度はっきり伺いたいんですけれども、長勢事務所の方からも、内閣府に対して、このNPO法人設立に関して何らかの働きかけはなかったということですか。なかったらなかったで、断言していただけますか。

長勢国務大臣 なかったと思いますが、私が指示したことは全くありませんから。わかりません。しかし、事務所としての仕事と関係ありませんから、多分することはないと思います。

高山委員 これはNPOなんですけれども、どうも、週刊誌報道によればですけれども、活動のほとんどが長勢先生の政治活動を支えるような形になっているんですね。そうすると、これは形を変えた事務所費問題だな。

 要するに、政治家の資金管理団体はいろいろな経費について五万円以上の領収書をつけるということになっていますけれども、NPOという形でお金を集めて、それが事実上政治活動に使われているようであれば、これは形を変えた事務所費問題だなということで、しっかり聞いていかなきゃいけないなというふうに思って、私、質問させていただいているわけなんですけれども、最後、内閣府にちょっと伺います。

 NPO法人というのが政治活動をやることに関して、何か規制はありますか。

堀田政府参考人 特定非営利法人活動法によりますと、NPO法人の行う活動が、政治上の主義を推進し、支持し、またはこれに反対することを主たる目的とするものではないこと、特定の公職の候補者もしくは公職にある者または政党を推薦し、支持し、またはこれに反対することを目的とするものでないこととしております。また、同法人は、これを特定の政党のために利用してはならないというふうな規定がございます。

高山委員 今の内閣府の説明にあるように、NPOが余りそういう政治的な動きをするというのは、私は問題だなというふうに思っております。

 ですから、これはどういう関係にあったのかということはなかなかまだわかりませんけれども、もうきょうは時間が参りましたので、これで質問は終わります。

伊藤委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私も、この「悠遊興論」というニュース、長勢大臣が名誉塾頭ということで、昨年のグランドアーク半蔵門での望年会でも、人情なくして人権なし、こうあいさつをされたと書かれております。さらに、十二月の二十九日、大変暮れの押し迫ったときに、第一回ゆうゆうコンペというゴルフコンペを開催された、法務省からは秘書官が参加をした、こう書いている。

 法務省官房長に伺います。

 この望年会やゴルフコンペに参加をした法務省関係者はほかにいたのでしょうか。

    〔伊藤委員長退席、七条委員長着席〕

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 同行いたしました事務担当の秘書官からの報告によりますと、御指摘のゴルフコンペには、同秘書官以外の法務省職員は参加していなかったものと聞いております。

 望年会については、ゴルフコンペの後の会でございますか。(保坂(展)委員「違う違う」と呼ぶ)失礼しました。

保坂(展)委員 これは後ほど調べてもらうとして、大臣に伺いますが、赤坂にあったクラブ「醍醐」は、NPO法人悠遊興論塾から七百万円から八百万円の家賃が支払われていると報じられております。

 大臣、このNPOは会費制だというふうに聞いておりますけれども、一体何人ぐらい会員がいて、年間どのぐらいの収入があるのか、収入が物すごく多いのかどうなのか、それをお答えいただきたいんです。収入は、報道によれば一千万というふうにあるんですけれども、それだと一千万円の会費収入のうちほとんどが、そういう懇親などをやるそのクラブ「醍醐」という、こちらの家賃に当たっているというのは、公益性から見てこれはNPOと言えるのだろうか。名誉塾頭という立場なので、お答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 この悠遊興論塾は個人会員と寄附会員がおるようですが、そこの具体的な収支はわかりません。

 今、クラブとおっしゃいましたけれども、もともとあった居酒屋が閉店をした後、そこが仲間のたまり場になっておって、その方々がNPOをつくったという経過ですので、その方々がそこを利用するために、今、何といいますか、それを借りる契約をしておるというふうに聞いておりますので、その家賃を払っておるということになっておるというふうに聞いております。

保坂(展)委員 先ほど高山委員から、事務所費の問題と関連するんじゃないかという話が出ましたけれども、大臣、ここに、例えば、労働省出身でいらっしゃいますから、法案の動きであるとか中身であるとかについて、厚労省の幹部をこのクラブ「醍醐」の後の、今のNPOが借りているたまり場に呼んだことはありますか。法務省関係者はどうですか。

長勢国務大臣 先ほども御質問がありましたけれども、これは全く私の政治活動のためにやっているわけじゃなくて、仲間の方々で皆楽しくやっていて、非常にみんな、いろいろな問題点について議論をしております。私の記憶では、先般は医療過誤と刑事問題とか、そういうような問題を勉強させていただいておるという場でありまして、私も会員ですから、そこにいますから、みんな忙しいですからね、会いたいと言われたときに、そこにいるからと言って、来られることはあります。

 それから、法務省の方々も、報告を急にしなきゃならぬというようなときに来てもらったことはあると思います。

保坂(展)委員 この「悠遊興論」を見ると、第一回ゆうゆうコンペは埼玉県のゴルフ場で行われて大変寒かったとあるんですが、表彰式は、クラブ「醍醐」の後のたまり場、ここで行われたとあるんですね。優秀賞からブービー賞まで出て、参加賞として、法務省作成の裁判員制度のDVDが全員に配付されたとあるんです。

 官房長、これは、だれが持ち出して、どういう位置づけで配ったんですか。

池上政府参考人 御指摘の裁判員制度広報用DVDにつきましては、あらかじめ関係部局から事務の秘書官が受けとった上、当日携行したものと報告しております。

 お尋ねのDVDにつきましては、法務省、最高検を初めとする検察庁等で、裁判員制度の効率的、効果的な広報に資する場合には、広く国民の皆様にお渡ししております。広報効果が高いと認められる場合は、回収を予定しないで差し上げることもあると承知しております。

保坂(展)委員 では、NPOが、何かボウリング大会とかいろいろやるときに、法務省に連絡してDVDをくれと言うと、秘書官が持ってくるということなんですかね。

 官房長に伺いますが、この「醍醐」というところに、御自身、行かれたことがありますか。どういう雰囲気の場所ですか。

池上政府参考人 大臣に対して報告等の用務のため、伺ったことはございます。(保坂(展)委員「個人的に行ったことはないんですか」と呼ぶ)

 個人といいますか、そういうことを兼ねまして、大臣にお目にかかるため、伺ったことはございます。(保坂(展)委員「どういうところですか」と呼ぶ)

 場所については先ほど大臣が述べられたとおりで、いろいろな方々が議論等をしているところであると認識しております。

保坂(展)委員 厚生労働省の幹部や法務省の幹部が大臣に御説明に上がるみんなのたまり場というのはあるんでしょうか。これがNPOなんでしょうか。

 大臣に伺いますが、「悠遊興論」九号というのがあるんですけれども、これは公益性のあるNPO法人なんですよね。公益性を掲げているからNPOなんですね。そうすると、このバックナンバー、活動の一切の資料を私どもに提供していただけますか。

長勢国務大臣 先ほど言いましたように、そこは、別に今は店の形になっていませんで、みんなが集まって、酒を持ってきたりつまみを持ってきて歓談をする場所としてみんな楽しくやっておるわけで、ここは、別に私がお役所の方々に来てもらうためにやっているわけではないので。

 たまたま私もそこに仲間として行っておりますから、時間の都合があるので、私がそこにいるからおいでいただくことがあるということであって、それは皆さん忙しいですから、会うときにどういう場所で会うかというのはいろいろなことがあるわけで、その一つにすぎないと思っております。

 それから、NPOの提出については、私が責任者じゃございませんから、今、申し上げかねます。

保坂(展)委員 大臣、大臣規範に抵触していたということで、これは申しわけなかったということで、やめる手続をされているんですよね。違うんですか。このNPO法人の名誉塾頭という形であっても、無報酬であっても、これは閣議決定に反するということで、今そこから抜ける手続をしているんじゃないですか。そう聞いていますよ。

 である以上は、そのNPO、皆さんの仲間なんですから、このニュースくらいはちゃんと出してくださいよ。

七条委員長 時間が来ておりますから、簡単明瞭に。

長勢国務大臣 届け出違反はちょっと不手際でしたので、届け出をいたしました。したがって、みんなから名前を貸せということですから貸しておっただけのことでありますので、今届け出をいたしました。

 それから、資料の点については、それは私が判断することではありません。

保坂(展)委員 名誉塾頭だった方が、これはNPOですよ、公の目的を掲げたニュースも提出できない。到底納得できませんね。

 終わります。

七条委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 法案について伺います。

 今回提案されている電子記録債権というのは、これまでの指名債権や手形債権とは異なる、新たな債権類型だと言われております。その対象となる範囲をまずお聞きしたいんですが、どのような対象を電子債権に含めることができるのか、これをお答えいただきたい。法務大臣。

長勢国務大臣 電子記録債権は、その発生の原因となった債権とは別個独立の金銭債権ですので、原因とされた債権が何であるかを問わず、当事者の請求に基づき発生記録をすることによって、発生することができるということになります。

    〔七条委員長退席、伊藤委員長着席〕

佐々木(憲)委員 すべての電子債権ということですが、そうなりますと、例えば、金銭債権がすべて含まれるということですが、銀行の融資あるいはサラ金、商工ローンの融資、これも対象になるということですね。

寺田政府参考人 これは、厳密に申しますと、既存の債権とは切り離された形で新たに記録をすることによって債権が発生する、こういうことでございますので、およそ原因がなくても、極端に申し上げれば、債権としては発生するわけでございます。

 ただ、委員の御指摘は、多分、原因となるところがどういうところにあるにせよということでございましょうから、そういう意味では、おっしゃいましたローン債権等が原因となって電子債権が発生するということはあり得るわけでございます。

佐々木(憲)委員 この電子記録債権の目的ですけれども、ある銀行の主任調査役の方がある雑誌に書いています。こう言っているんですね。流動性の極めて高い電子債権という新たな法制度が創設され、その対象にローン債権も含まれることによって、ローン債権譲渡に対する心理的抵抗感が払拭され、ローンの売買が普通のこととして社会的に容認され、促進される、こう言っているわけです。

 大臣も大体こんな考えですね。

寺田政府参考人 先ほど申しましたように、法律構成上は原因債権とは切り離された形になっているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、どういう原因で債権をつくるかということは、これは当事者にゆだねられているわけでございます。

 他方、では、他の面でのいろいろな規制がおよそあり得ないかというと、それはいろいろな行政上の規制でなさっていただくわけで、債権の構成としては特に制約は設けない。ただし、たびたび御議論になっていますように、この電子債権記録機関というのは多様なものがございますので、その機関によってはどういうものを受け付ける、どういうものを受け付けないということはあり得るわけでございます。

佐々木(憲)委員 対象として、金銭債権であれば何でも含まれる、原因は問わないということであります。そして、債権の流動化が促進されるということになりますと、さまざまな問題が発生するのではないか。私はこれは慎重に扱わなければならないというふうに思っております。

 例えば、人的抗弁の切断というふうになっておりますが、一体これはどういう意味でしょうか。これまでの債務者の権利がどう制約されるのか、お答えいただきたい。

寺田政府参考人 これは手形の法律関係で既にある概念でございまして、ちょっとA、Bという形で御説明させていただきますと、Aが債権をBに譲渡するという場合に、そのBというのはAの立場をそっくり受け継ぐのかそうでないのかということが問題になるわけでございます。仮に、そっくり受け継ぐということになりますと、Aは債権関係上のいろいろな制約というものを受けているのに、Bはそれをそっくり受けるのかどうか。受けるということになりますと、債権を受け取ったのに、意外に、例えば契約が解除になっていたとか、同時に、抗弁権があったというようなことで、債権を十分に満足できないことがある。そこで、人的抗弁を切断して、前の人がいろいろ言っても、新しい債権者はそういう制約を受けないことができる、こういう流通上の便宜を図っている概念でございます。

佐々木(憲)委員 これは、債務者の側から見た場合と債権者側から見た場合と全然違うわけです。例えばAという銀行がありました。その銀行が、Bという中小企業に例えば一千万円融資をしていた。銀行Aがその債権を電子債権化して、Cという会社に売った。債務者であるBは、その借金を、Aという銀行ではなく、Cという会社に払わなければならない。債務を払わなければならない。このBという中小企業の債務は、銀行から別な会社に移ってしまうわけですね。

 電子債権に変わりますと、このようなことが容易に行われる。つまり、債権の流動化であります。以前の関係というのは、これは切断される。債務者は、ローン返済の相手がAからCに移る、銀行からCという別な会社に移りますので、相手が銀行ではなくなるわけですよ。

 そうしますと、債務者は、いや、自分は銀行と取引しているんだ、銀行から借りたんだ、返す場合も銀行に返したい、こういうのは当然出ますよね。銀行と取引したいんだ、こういうことは可能になるんでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど来申し上げておりますが、この債権の発生には、最初に記録ということが必要になって、それで今言ったような法律関係が生じるわけでございます。

 その記録をする際には、記録の請求がございまして、その記録の請求は債権者と債務者の双方でなさねばならないわけでございますから、債務者の方としては、この制度に乗っかった以上は、そういうことがあり得るということを予期される、そういうチャンスがあるわけでございますので、債務者にとって特にそういうことが御負担にはならないだろうというように考えているわけでございます。

 ただし、一般の消費者の方がそういうことを御理解いただけるかどうか疑問でございますので、債務者が個人の場合にはこの人的抗弁の切断はないという制度の仕組みをとっているわけでございます。二十条の第二項の第三号でございます。

佐々木(憲)委員 消費者の場合はそういうことになっているのは聞いているんですね。しかし、中小企業の場合、会社の場合はそれを適用されないわけであります。

 先ほどの答弁で、債務者は予期されると言いましたが、例えば、電子化された債権を銀行が別な会社に売りました、売ってよろしいですかということを中小企業に確認をとるんですか。

寺田政府参考人 確認をとるかと申しますと、これは実際はどういうやり方をされるかさまざまでございましょうけれども、現在の債権譲渡でも、当然債務者にはそういう債権譲渡があり得るということは知らされるわけでございます。この制度の場合は、むしろ債権のこういう電子的な形での譲渡があり得るということを、記録をする際に債務者の方が知らなければ制度に乗っからないわけでございますので、そういう意味では、当然了解というのが何らかの形では必要になるということになるわけでございます。

佐々木(憲)委員 では、その場合、電子債権化されては困ると借りた側が言う、それは認められますか。

寺田政府参考人 債務者側が請求をされないということに最終的にはなるわけでございますので、当然そういう意味での拒否をできる立場におありになるわけでございます。

佐々木(憲)委員 次にお聞きしたいのは、政府はリレーションシップバンキングというのを盛んに提唱しておられます。金融庁の解説資料によりますと、このリレバンというのは、長期継続する関係の中から、借り手企業の経営者の資質や事業の将来性等についての情報を得て、融資を実行するビジネスモデルである、こういうふうに説明しておるわけですね。

 地域経済においては、銀行と中小企業の関係というのは長期にわたっております。債権の流動化が促進するということになれば、この関係というのは簡単に切られてしまうという危険性があるわけです。銀行は債権回収をそれでしやすくなるでしょうけれども、融資を受けている中小企業の側からしますと、これは別な会社から過酷な取り立てだけ受けるということになってしまう危険性があると思うんです。

 先ほど、消費者保護の観点から、債務者が消費者であった場合は人的抗弁は切断されない、しかし中小業者の場合はそれは切断されるということになっているわけですから、基本的には電子債権化、結構ですよ。

 しかし、よく考えてみたら、全く予期しない不利益を受ける、つまり、銀行と取引をしていたのが、別な会社に売られてしまって、取り立てだけが来る。本来、銀行というのは、中小企業の状況をよく判断し、その経営者の能力を評価し、その会社の将来性ということを判断して融資を続けていく、あるいは、今は経営は厳しいけれども、将来可能性があるということで、当面は債務の支払いの繰り延べをしながら経営を支援していく、これが本来のあり方であり、またリレバンの理念だと思うんです。

 どうもこの電子債権化ということになりますと、それが希薄になり、否定される傾向になっていくのではないかというふうに思いますが、大臣、この点はどのように対応されるんでしょうか。

山本国務大臣 おっしゃるとおり、リレーションシップバンキングの理念は、事業会社と各金融機関とが、その密接かつ長期にわたる関係の中で、融資についての債権債務関係については、理解ある発生、消滅の仕方をしていただくというのが基本理念でございます。その意味におきましては、一見、電子記録債権によっていわば流通の安全というような形での法整備がやられていることについては逆行するような姿になっているのではないかという先生の御指摘は、なるほどそういう見方もあるのかもしれないと思いました。

 しかしながら、逆に言えば、この電子記録債権制度というのは、事業者の資金調達環境を整備するために創設するわけでございまして、電子記録債権を利用したからといいまして、契約の当事者が変わるわけでもございません。

 例えば、仮に金融機関が不良化した電子記録債権を流動化する場合には、監督指針できちんと示されておりまして、債務者等を圧迫し、またはその私生活もしくは業務の平穏を害するような者に対して貸付債権を譲渡していないか等、原債務者の保護に十分配慮するということが一つ。これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明を行うことというように監督指針で書いてございます。

 このように、金融機関が業務を行っていく上で、借り手である中小企業の資質や事業の将来性に配慮するという精神は、新たに制度化が図られる電子記録債権を利用する場合におきましても、引き続き重要であるというように考えております。

 現在でも、手形における決済システムも同様でございますし、場合によれば、リレーションシップバンキングの自由契約の中で、電子債権の発生関係について、電子記録債権にしないというような取り決めも自由でございますので、その意味におきまして、御心配はないように監督してまいる所存でございます。

佐々木(憲)委員 電子記録債権化しますよと融資先の中小企業に銀行が言う、それを拒否するのは自由だとおっしゃいましたが、現実には、これは力関係が全然違いますので、融資する銀行が非常に強いわけです。したがって、電子債権化するのに反対なら今後融資は再検討しなきゃいかぬとか、あるいは、そんなことを言うなら高い金利を払えとか、そういう危険性があるので、債務者の側のそういう権利という問題を十分に考えなきゃならぬ、その点では、これはマイナスだと私は思っているんです。

 さて、次に、少し話題をかえますけれども、障害者の問題をお聞きしたいと思うんです。

 政府は、総理を本部長として障害者施策推進本部を設置しております。山本大臣も長勢大臣もそのメンバーでございます。二〇〇三年から二〇一二年まで、障害者基本計画というのがつくられておりますが、それに沿って重点施策として五カ年計画が実施されております。今年度でそれが終了しますので、来年度、新たな五カ年計画というのが策定をされます。

 そこで、金融庁として、障害者の方々の金融におけるバリアフリー、この点についてお聞きしたいんですが、まず、銀行の障害者対応について数字を確認したい。今、障害者対応ATMがあります。銀行の業態別で、障害者対応になっているATMの台数、全体に占める比率、これはどうなっているでしょうか。

佐藤政府参考人 視覚障害者対応ATMの設置状況でございますが、本年五月に実施いたしました平成十九年四月末時点の状況でございます。

 都銀につきましては、ATMの台数が約二万二千九百台、うち視覚障害者対応ATMの設置台数は約九千七百九十台、ATM全体に対する視覚障害者対応ATMの設置比率は約四三%となっております。

 また、地銀につきましては、ATMの台数が約三万九千五百台、視覚障害者対応ATMの設置台数が約七千九百二十台、比率は約二〇%となっております。

 また、第二地銀につきましては、ATMの台数が約一万三千五百台、視覚障害者対応ATMの台数が約千五百八十台、比率は約一二%となっております。

佐々木(憲)委員 金融庁がこの調査を始めた当初は、二〇〇四年五月でございました。当時は、都銀、地銀、第二地銀しか調査がありませんので、都銀、地銀、第二地銀それぞれについて、障害者対応ATMの増加台数、それから設置比率、当時の比率と比較してどうか、これを聞きたいと思います。

佐藤政府参考人 当初調査をいたしました二〇〇四年五月時点と比較いたしますと、都銀につきましては、設置台数で約六千三百三十台の増加、設置比率で約二八%ポイントの増加、一五%から四三%に上昇しております。

 地銀につきましては、設置台数で約四千八百三十台の増加、設置比率で約一二%ポイントの増加、これは八%から二〇%への上昇でございます。

 第二地銀につきましては、設置台数で約一千百四十台の増加、設置比率で約八%ポイントの増加、これは四%から一二%への上昇でございます。

佐々木(憲)委員 もう時間がありませんので終わりますけれども、ATMの設置台数というのは、障害者対応というのはなかなか、当初は低かったんですけれども、私も国会で取り上げましたし、また金融庁も指導を強めて、全体として前進をしてきていると思います。

 ただ、使いにくいという当事者のいろいろなお話もありますし、また銀行のバリアフリーということから考えますとさまざまな問題が残っておりますので、その点については引き続き議論をしていくつもりであります。

 最後に、ちょっと一言だけ。法務省として、法務大臣、今後障害者に対してどのような姿勢で行政を進めていくか、基本的な考え方だけ簡単に答弁をお願いしたいと思います。

伊藤委員長 質疑時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

長勢国務大臣 法務省の人権擁護機関において、昭和五十六年度から、「障害のある人の完全参加と平等を実現しよう」を人権週間の強調事項として掲げ、この人権週間を中心に年間を通じて各種の講演会、座談会あるいは啓発活動を実施しておりますし、また、仮に障害のある人からの人権相談があった場合には、人権侵犯事件としての調査を開始するなどの適切な措置を講じておりますので、今後ともその方向で進めてまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。

伊藤委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午前十一時十九分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 電子記録債権法案は財務金融委員会議録第二十号に掲載


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