衆議院

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第6号 平成21年3月26日(木曜日)

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平成二十一年三月二十六日(木曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 大野 松茂君 理事 岡下 信子君

   理事 岸田 文雄君 理事 七条  明君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 仙谷 由人君

   理事 園田 康博君 理事 大口 善徳君

      井澤 京子君    遠藤 宣彦君

      近江屋信広君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    亀井善太郎君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      佐藤  錬君    平  将明君

      玉沢徳一郎君    土屋 品子君

      土屋 正忠君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    冨岡  勉君

      中森ふくよ君    永岡 桂子君

      並木 正芳君    西本 勝子君

      宮腰 光寛君    矢野 隆司君

      泉  健太君    枝野 幸男君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      階   猛君    田島 一成君

      田名部匡代君    吉田  泉君

      田端 正広君    桝屋 敬悟君

      塩川 鉄也君    日森 文尋君

      糸川 正晃君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   参考人

   (一橋大学大学院法学研究科教授)         松本 恒雄君

   参考人

   (L&G被害対策弁護団副団長)

   (弁護士)        紀藤 正樹君

   参考人

   (日本生活協同組合連合会専務理事)        品川 尚志君

   参考人

   (日本女子大学准教授)  細川 幸一君

   衆議院調査局消費者問題に関する特別調査室長    島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     亀岡 偉民君

  中森ふくよ君     土屋 品子君

  田島 一成君     吉田  泉君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

  糸川 正晃君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     冨岡  勉君

  土屋 品子君     中森ふくよ君

  吉田  泉君     田島 一成君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

  下地 幹郎君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     土屋 正忠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 消費者庁設置法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第一号)

 消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百七十回国会閣法第二号)

 消費者安全法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第三号)

 消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出、衆法第八号)

 消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、午前の参考人として、一橋大学大学院法学研究科教授松本恒雄君、L&G被害対策弁護団副団長・弁護士紀藤正樹君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じております。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔、明瞭にお願いいたします。

 なお、念のために申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず松本参考人にお願いいたします。

松本参考人 おはようございます。松本でございます。このような発言の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。

 私は、三十五年余り、消費者問題の法律的な研究に取り組んでまいりましたし、最近十年ほどは、いわゆる企業の社会的責任という、法律の外側にある問題にもさまざまに関与してまいりました。そういう立場から、本日お話しさせていただきます。

 資料に沿ってお話しいたしますが、まず、消費者行政の歴史を振り返ってみたいと思います。

 一九六二年の三月十五日に、ケネディ大統領は、消費者の利益の保護に関する大統領特別教書というものを連邦議会に出しました。そこで、消費者の四つの権利というのを高らかに宣言いたしました。

 一方、二〇〇八年一月十八日、我が国の福田首相は、施政方針演説におきまして、その第一の柱に、「生活者、消費者が主役となる社会を実現する「国民本位の行財政への転換」」ということをうたわれました。何と四十六年の差がございますが、ともに両国の政治のトップがこういう方針を打ち出されたということであります。

 この間、一九六八年には議員立法によりまして消費者保護基本法が成立し、その後、二〇〇四年にはこれが改正をされまして消費者基本法ということになりました。

 さて、次に、消費者政策の手法と消費者行政のタイプということでございます。

 消費者政策の手法には、私は三つあると考えております。

 一つは、六〇年代の、ケネディの影響を受けて、そして六八年の消費者保護基本法によって枠組みがつくられたところの行政中心の消費者政策というものであります。これは消費者行政という言葉でまさに使われていたわけで、六〇年代には消費者政策という言葉はございませんでした。行政が何をやるかという話。

 これが、九〇年代に入りますと、民事ルールを重視するという考え方が強まってまいりました。製造物責任法が成立したのがこの時期であります。すなわち、司法あるいは裁判外の紛争解決を重視して、消費者を救済していこうという手法でございます。

 さらに、二十一世紀に入りますと、法律を使うのではなくて、市場に依拠した消費者政策というのが国際的にも国内的にも注目されてまいりまして、自主行動基準、CSR、あるいは基準・認証といった枠組みでございます。

 このうち、消費者行政にはさらに四つのタイプがあると考えております。

 一つは、規制行政であります。監督官庁が縦割りで規制をするというのが従来の主流でありました。事業者行政に付随して消費者行政も行う。横割りに規制ができる権限を持っているのは従来公正取引委員会のみで、非常に弱かったということであります。

 もう一つの消費者行政の柱が支援行政でありまして、これは、専ら地方の消費生活センターで相談、啓発を行ってまいりました。

 最近では、これにとどまらず、協働行政、食品の安全等のリスクコミュニケーション、あるいは、一昨日総会が始まりましたが、社会的責任に関する円卓会議という、各ステークホルダーが集まって共同の課題について議論しましょうというような動きが、消費者問題も含めて動いております。

 さらに、救済行政という、OECDの勧告でありますが、行政機関がみずから消費者救済に乗り出す仕組みもつくりなさいという動きもありますが、この点については日本は非常に弱いです。

 といった消費者政策、その中の消費者行政のいろいろなやり方があるという中で、消費者行政の一元化という議論が昨年から始まったわけです。そして、消費者行政推進会議の取りまとめあるいは閣議決定におきまして、規制行政と支援行政という、消費者行政の四つのうちの二つを主として取り上げて、一定の結論を出しました。

 その三つの柱。

 一つは、消費者庁を設置して、消費者の視点から政策全般を監視するための強力な総合調整権限、勧告権を付与する、法案を含む幅広い企画立案機能、表示、取引、安全に関する法律の所管、共管、既存の法律のすき間事案についての独自の権限を与えるといったことでありまして、これは、言いかえれば、政策立案と規制の一元化ということになります。

 二つ目の柱が、消費生活センターや事故情報データバンク、保健所、警察、消防、病院等の関係機関、企業、従業員等からの情報を一元的に集約、分析し、司令塔として、<1>で列挙したような対応を行うということでありますから、これは情報の一元化と言ってよいと思います。

 三つ目が、地方の消費生活センターと国民生活センターを、だれもがアクセスしやすい一元的な消費者相談窓口と位置づけ、全国ネットワークを構築し、代表的な窓口が三百六十五日、二十四時間対応できる体制を構築するということでありまして、これが相談窓口の一元化。

 一元化といってもいろいろあるわけでございます。

 そして、消費者庁の設置法案、整備法案が<1>に対応し、消費者安全法案が<1>、<2>、<3>に対応するという形になっております。

 次に、消費者庁設置による消費者行政の強化がされることの意義についてであります。

 消費者行政推進会議の第六回会議、四月二十三日におきまして、福田首相が冒頭に、次のような、消費者行政の一元化において守るべき三つの原則を指示されました。

 一つ目は、国民目線の消費者行政の充実は地方自治そのものであること、霞が関に立派な消費者庁ができるだけでは意味がない。二つ目が、行政組織の肥大化を招くものであってはならない、むしろ各省の重複や時代おくれの組織を整理することにもつながる。三つ目が、消費者行政の体制強化は、消費活動はもちろん産業活動を活性化するものでなければならない、消費者利益にかなうことは企業の成長をもたらし、産業の発展にもつながるという三つの原則です。

 これを私の言葉に置きかえますと、一つ目が地方重視ということでありまして、これは、消費者安全法案におきまして、消費生活センターの設置義務、あるいはその努力義務ということになっておりますし、法律外でありますが、第二次補正予算で一定の財政支援が行われたところです。

 二つ目の、行政の構造改革という視点でありますが、これは、従来、産業振興を目的とする主務官庁が縦割りで事業者行政を行う、それに付随的なものとして消費者行政が特に六〇年代以降行われてきたものを、消費者、生活者視線を重視した横割りの消費者行政に一元化しようというものでありますから、まさに行政を縦から横に変えるというパラダイム転換であります。これを今後進めていくことが必要だと考えております。

 三つ目が、ウイン・ウイン型、すなわち、事業者、消費者双方が得をするような消費者政策が重要だということであります。

 消費者行政を強化するとコンプライアンス不況が生ずる、行政不況が生ずるという声も一部ではございますが、本当にそうだろうかということであります。手法が間違っていればそういうおそれもありますが、そうでなく、目的がしっかりしており、手法が正しければ決してそうではない。不況だと言っていることは、従来得ていた不当な利得が得られなくなることをもって不況と言っているだけではないかというところがございます。

 そもそも、不公正な市場、安心できない市場が存在するということは市場規模を縮小させる、これは昨年の冷凍ギョーザ事件で明らかになりました。三千億円冷凍食品市場がしぼんだと言われております。消費者としては、だまされないために、あるいは害されないためにそもそも取引をしないという消極的な姿勢をとらざるを得ないという状況になると、ますます市場はしぼむ、風評被害でしぼむということでございます。

 誠実な業者が評価をされ、不誠実、欺瞞的な業者が淘汰をされるような状況をつくり出していくことが必要です。行政規制というのはその一つです。唯一のものではなくて、その一つの方法でございます。悪質な違反の場合に制裁を重くする、刑事罰あるいは課徴金というのが重要です。

 また、外からの規制だけではなくて、事業者に自主的に取り組みを促進してもらう、そして、そのような事業者が評価されるような仕組みをつくっていくということが必要です。

 百年に一度の金融危機、経済危機だと言われております。この危機の今こそ、消費者行政を強化して、内需拡大、安心できる国内市場の拡大に取り組んでいくことが不可欠だと思います。

 以上、政府案というのは、私は、基本的方向において支持できるものと考えております。

 ただし、消費者庁が設置された後、本当に、消費者庁に移管、共管される法律がきちんと運用されるんだろうか、あるいは、移管されない法律が既存の省庁できちんと運用されるんだろうか、さらに、司令塔機能が実際にどう働くんだ、こういったことをきちんとチェックして評価することが必要であります。また、地方への財政支援を一層工夫する必要があります。さらに、積み残した課題、まだまだ必要な法律や制度が存在するわけで、それを継続検討する必要があります。

 次に、民主党案について少し意見を述べさせていただきます。

 民主党案は、さきの4のところで述べましたところの(1)とか(2)とか(3)といった事柄をすべて否定するものだろうか。私はそうではないというふうに評価させていただいております。基本的には政府案と同じ方向を向いているんだと思います。

 さらに、民主党案は、特別職公務員として消費者権利官を非常に高ランクに位置づけられております。報酬額は、総理大臣の次、国務大臣より上という破格の位置づけをしておられるという点は、非常に意気込みを強く感じさせるところであります。

 次に、消費者権利院法案でございます。

 器は相当異なりますが、その精神において政府案とは異ならないのではないか。どちらも現状よりは前進である。どちらをとるかではない、どのようにしてよりよいものをつくり上げていくかということが一番の課題であります。こちらがいい、こちらがいいと言い張って、共倒れになって、だれが一番困るのか。国民、消費者です。

 異なるように見えるのはどこだろうか。器であります。中央の器と地方の器であります。

 まず、中央の器です。

 民主党は消費者権利院の設置を主張されておりますが、それでは、産業を所管するところの従来型の縦割り官庁以外の官庁が消費者行政をやってはいけないとまでおっしゃっているかというと、そうではない。消費者行政は事業者行政の枠から出てはいけないとまではおっしゃっていないと思います。むしろ「より消費者の権利擁護に資するためであれば、消費者庁の設置自体は否定しない」、「一部両立可能」というふうに明言を文書でされておるくらいであります。消費者庁ができるということは、現状より幾分か前進するにしろ、消費者の権利擁護が現状より後退するということはないはずでありますから、ここで言うところの「否定しない」、「一部両立可能」という要件は十分満たしているのではないかと思います。

 消費者権利官の機能は、北欧の、いわゆる議会オンブズマンと呼ばれている制度、行政監視機能を消費者行政に今限定して実現する、それに加えて、若干プラスアルファをしているというように位置づけられます。この機能を政府案における消費者政策委員会の機能に取り込んでいくということは十分可能ではないかと思います。

 消費者政策委員会というのは、消費者政策会議と名称的にも紛らわしいので、この際、消費者権利委員会というふうに改称するのも一つかとは思いますし、また、委員の数が、従来の国民生活審議会と余り変わらない多人数でございますから、これを、例えば食品安全委員会のようにうんと小人数にして、さらに常勤委員を一部含める、場合によっては、常勤委員については、国会同意人事として、権威をつけて十分な行動ができるようにするというようなことも考えられるかと思います。

 次に、地方の器でございます。

 消費生活センターあるいは地方の相談員を国の直轄化するということには幾つか問題があるという気がいたします。

 既に消費生活センターがかなり頑張っているようなところ、例えば東京都なんかですと、地方が育ててきたセンター、相談員を国に強制的に割譲させるということになって、これはかなり問題があるかと思います。

 また、身分だけを国家公務員として給与を十分保障するというのも考えられますが、かつての地方事務官制度、社会保険庁の問題のかなりはここにあったと言われている制度の反省をきちんとやらなきゃならないだろうと思います。

 要は、民主党案にしろ、あるいは政府案にしろ、相談員の養成、配置、待遇改善のための経費を国がどのようにして支援できるかということを問題にされているという点では共通であります。ここは、財務省とか総務省の官僚の方々が知恵を絞り国会議員の方が知恵を絞れば道は開けるのではないかというふうに、私は比較的楽観をしております。

 ただ、空白地区をどうするのかという問題がございます。

 この点については幾つか考えられます。一つは、必置義務化されている都道府県のセンターから巡回相談という形で定期的に回って埋めるということも考えられますし、あるいは国民生活センターの支局を空白地区に設置するというアイデアも考えられます。弁護士のゼロワン地域につきましては日弁連が公設事務所を設置しておるわけでありますから、こういう発想も考えられます。地方のセンターと国民生活センターは排他的なものではございませんから、重複して相談に応じるということは全然問題がないかと思います。

 以上、上記の政府案における消費者庁設置後の課題でありますところの、行政のチェックの必要性それから地方の財政支援の必要性につきましては、民主党案の精神を取り込むことによって解決することが可能ではないかと考えます。

 次に、消費者団体訴訟法案であります。

 消費者団体訴訟制度について、消費者契約法から切り離して独立した法律にするという方向には賛成いたします。

 次に、事業者が違法、不当に得た利得を吐き出させる制度が必要であるという点についても、私の従来の主張と一致する点でございます。ただし、利得を吐き出させる仕組みにはいろいろございます。研究者あるいは消費者団体関係者の意見を交えて、もう少しこの法案については議論を詰める必要があると考えております。

 例えば、行政機関が不当利得を吐き出させる方法として、課徴金とか、あるいは、まだ実現しておりませんが民事制裁金といった制度がございます。ドイツではこれらを消費者団体が行使するということが認められております。ただ、課徴金は国庫に入るという仕組みでございます。

 被害者が請求するものとしては、個人が請求する損害賠償あるいは懲罰的な損害賠償というのがございます。懲罰賠償はまだ日本ではございませんが。そして、その損害賠償は、被害者個人が請求する、あるいは消費者団体が行使する、あるいは行政機関が行使するというようなやり方が考えられます。民主党案は、これらの損害賠償を消費者団体が行使し、しかも、いわゆるオプトアウト型という、クラスアクションにやや近い形を想定されているわけで、これは一つのモデルではございますが、ほかと比べて十分検討する必要があると思います。

 さらに、私は、喫緊に必要なのは、偽装表示などのいわゆる少額多数被害、損害賠償を個人が起こすようなことはおよそ考えられないけれども、トータル、不当な利益が上がっているというようなものをいかに吐き出させるかということであります。悪銭身につかずという状況をつくり出すことが違法行為の抑止力として非常に大きいものだと考えております。

 この意味では、昨年の通常国会に提出されておりました景品表示法の改正案の中に不当表示に対する課徴金制度が盛り込まれていたわけでありますが、景品表示法の所管が公正取引委員会から消費者庁へ移管されるということに伴いまして、現在提出されております独禁法の改正案にも、また景品表示法の改正案にも不当表示についての課徴金制度がなくなっているという点は、私は非常に残念に感じております。この点につきましては、ぜひ実現していただきたいと思います。

 したがいまして、民主党案の精神は、上記政府案における消費者庁設置後の課題の三つ目、積み残し課題の継続検討の必要性について、より広い視野から、その他の課題も含めて検討することによって実現することができるというふうに考えております。

 最後に、あわせて消費者基本法の改正も、議会、国会として行っていただければと思います。すなわち、消費者基本法というのは、六八年に、もともと議員立法としてスタートをしたものであります。消費者庁の設置にあわせて、消費者行政の一元化の理念を体現した内容に改正することを期待いたします。例えば、守るべき三つの原則を法律に書き込む、あるいは、地方の消費生活センターについてはまだ消費者基本法には規定がございませんが、ここにも置くとか、あるいは、今後の消費者行政の強化のための工程表のようなものをうまく入れ込んでいただければ、大変今後の消費者政策に対して支えとなるのではないかと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 次に、紀藤参考人にお願いいたします。

紀藤参考人 私は、一九九〇年の弁護士登録の直後から、消費者被害の救済をまさに現場で行ってきました。そうした現場で感じる話をきょうは差し上げたいと思いますし、それが私のきょう呼ばれた役割だと思っています。

 一応の経歴をここで述べさせていただきますが、具体的には、二〇〇七年から二〇〇九年にかけて立て続けに摘発された投資被害であるL&G被害対策弁護団の副団長を務めるほか、近未来通信の被害対策弁護団の弁護団長、それから同種被害であるワールドオーシャンファーム被害対策弁護団の弁護団員等を務め、昨日も二回目の家宅捜索が行われた、霊感商法被害と評価できる神世界被害対策弁護団の弁護団長も務めています。いずれも刑事事件となっている被害者多数の救済事件を担当して、長年、被害者多数の、そして被害者救済の難しさを共有する弁護団に携わってきました。

 ほかにも例を挙げれば、一九九七年の経済革命倶楽部の弁護団、九七年のオレンジ共済被害対策弁護団、二〇〇二年の八葉物流の被害対策弁護団、一九九八年のココ山岡被害対策弁護団、二〇〇〇年の法の華被害対策弁護団などもやっております。いずれも摘発年次ですが、エル・アンド・ジーに関する朝日新聞の二〇〇九年二月五日付の夕刊報道によると、いずれの被害も過去十傑に入る消費者詐欺被害となっています。

 ちなみに、近未来通信では、朝日新聞の報道によると、三千人から約四百億円の被害、エル・アンド・ジーは三万七千人から約千二百六十億円の被害、ワールドオーシャンファーム事件については三万五千人から約八百五十億円の被害だそうです。ほかにも、霊感商法とも評価できる法の華については、二万二千人から九百五十億円の被害、ココ山岡事件というのは旧訪問販売法違反の被害と言えるものですけれども、約一万二千人から四百二十億円の被害と言えます。

 もちろん、当然ですけれども、通常の訪問販売の被害であるとか、キャッチセールス、マルチ商法などの悪徳商法とも評価できる被害であるとか、オウム事件や統一協会事件などの宗教にまつわる霊感商法被害、その他消費者被害全般について網羅的に取り組んでいます。

 このような事件に関して非常に難しいのは、まず被害者が間違いなく声を上げる必要があるということです。声を上げる被害者が出なければ、弁護士や、団体訴訟をつくっても同じことになってしまいます。

 この点、ちょっと注意する必要があるんですが、例えば、野田大臣が提案理由の中で、事故米穀、すなわち汚染米の話をされましたが、これは取引自体は企業間取引ですので、実際に被害を受ける末端消費者に民事ルールでの解決を期待することはそもそも不可能です。このような問題も消費者被害領域に属しますけれども、このような領域に関しましては、団体訴訟で救済をするといってみても、団体訴訟をする対象たる被害者がいませんので、まさに行政が解決するほかありません。

 また、同じく、野田大臣が提案理由の中で、食品の表示偽装について触れられていましたけれども、この種の被害も、先ほど松本先生が言われたような事案なんですけれども、これらの実態は、個々の消費者に対する詐欺行為ということが言えますけれども、個々の被害者に生じた被害はごくわずかということですので、民事ルールでは解決できず、その収益を被害者に返金する制度もないということで、まさに行政ルールで解決するほかありません。

 そのほか、個人情報流出被害事件というのも、そのほとんどは消費者被害事件ですけれども、私がTBC事件で裁判でかち取った金額はわずか三万五千円、一人当たり三万五千円です。これが過去の個人情報大量流出被害の最高額と言われています。通常は一万五千円とか一万円という被害しか認められません。この種のものを、弁護士が委任を受けて訴訟を起こすなんということは事実上不可能で、団体訴訟で仮に団体に報酬金を与える制度をつくったとしても、団体がみずから訴訟を起こすことも実際には非常に厳しいというのが実情です。

 それから、昨年からことしにかけて報道されていますけれども、マルチ商法に関する被害も、内閣府の調査ではほとんどが五十万円以下の被害です。このような事件も、救済のためには、被害者がほとんど泣き寝入りをしてしまいます。ところが、汚染米や産地偽装を犯した業者は、口々に、もうかったのでやめられなかったということをマスコミに話していました。実際には、こういったやり得を許す社会こそ問題だというふうに思っております。

 詐欺事案においては、そもそも本来的に、この種の違法収益はすべて被害者の財産で得られたものです。したがって、どういう形であれ、犯罪収益は、最終的に被害者に返すべき性質のものです。

 特に、近未来通信のような大量消費者被害事案の破綻悪徳企業においては被害回復財産すらないような事案があって、不正義性が顕著と言うことができます。この点は、一般的な救済手続がぜひとも必要で、国や民間が保有する、例えば税金とかあるいは銀行に眠っている預金であるとか、そういうものの違法収益からの被害者還付制度が必要となります。

 そして、このような悪質な消費者被害事案においては、より悪質な故意事案、犯罪事案ほど、逃げ足が速くて、最近では海外逃亡事案もふえてきているということです。

 現に、ワールドオーシャンファームの代表者も海外逃亡していたところですけれども、たまたま日本に帰ってきたときに逮捕されたということでうまく摘発できたんですが、近未来通信被害に関しては、社長の石井容疑者が、警察の強制捜査がなされる二〇〇六年十二月四日直前の十一月に中国に逃亡して行方が知れないという事態になりまして、そのため、近未来通信の被害よりも後発の被害であるエル・アンド・ジーあるいはワールドオーシャン事件と比較しても警視庁の捜査がおくれて、いまだに関係者の逮捕に踏み切れないという状況に陥っています。そのため、数万の被害者が困惑する事態に陥っています。この点、弁護団共通の意見なんですけれども、海外逃亡を防ぐ仕組みが必要で、この点も、行政的な手法が必要で、民民のルールではなかなか解決が不可能な問題です。

 それから、被害回復をしようにも、無資力であるとか財産すらないことがほとんどで、破産申し立てをするお金が積み立てられない。

 ちなみに、近未来通信やエル・アンド・ジー、ワールドオーシャンファーム事件では、破産申し立てをするために二千万から三千万円程度の保証金が要求され、実際にそのお金を集めなければ破産ができないという事態が起きていまして、この点も、民民のルールで単純に解決するという図式をつくっても、なかなか破産申し立てができないということで、結果的に被害回復が難しくなるというようなケースが生じています。近未来通信事件においては、破産手続で現在集約できている金銭はわずか二千万円というありさまで、被害回復はなかなか年々難しくなっています。

 我が国は、二〇〇四年六月二日に消費者基本法を施行しています。その三条には、「国の責務」として、「国は、経済社会の発展に即応して、前条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのつとり、消費者政策を推進する責務を有する。」としています。また、平成十七年の四月一日には犯罪被害者基本法が施行されています。その四条は、「国の責務」として、「国は、」「犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」としています。法の整合性の立場からは、国は、すべての法律、あらゆる法律を、この消費者基本法及び犯罪被害者基本法により見直していく責務があります。

 この点、福田康夫首相が、一昨年の百六十八回国会の所信表明演説の中で、一昨年十月なんですけれども、はっきりとこう述べていらっしゃいます。

  国民生活に大きな不安をもたらした耐震偽装問題の発生を受け、安全、安心な住生活への転換を図る法改正が行われました。成熟した先進国となった我が国においては、生産第一という思考から、国民の安全、安心が重視されなければならないという時代になったと認識すべきです。政治や行政のあり方のすべてを見直し、国民の皆様が日々安全で安心して暮らせるよう、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換し、悪徳商法の根絶に向けた制度の整備など、消費者保護のための行政機能の強化に取り組みます。

こう宣言されましたが、まさに、こうした立場は、犯罪被害者基本法や消費者基本法の立場を敷衍するもので、賛成できるものだと思います。

 ところが、現状、国や民間が保有する違法収益も含めて、被害者還付制度、違法収益の剥奪の制度が不十分です。例えば、刑事罰としての財産没収制度と被害者との関係など、一部の犯罪収益については被害者還付制度が制度化されていますが、国税と被害者の関係など、法制度が完備できていない部分が多数あります。ただし、個別法としては、先ほどの刑事事件の没収、追徴に関する犯罪被害財産の返金制度とか、振り込め詐欺救済法に見られるような、銀行口座に残されている犯罪収益の一部が被害者に還付される制度はつくられているところですけれども、まだ見直しが図られていない欠落部分も幾つかあります。

 その一つが国税ということになります。近未来通信事件やワールドオーシャンファーム、エル・アンド・ジー事件、いずれもそうなんですけれども、投資被害で得られた金額のかなりの部分は実は税金という形で、詐欺収益が国に納められます。それを還付する制度が具体的な法制としてありません。オウム真理教事件においては、オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例法というのができまして、これは平成十年なんですけれども、救済が図られていますが、一般の刑事事件、詐欺事件を含めた刑事事件にはこのような制度がありません。

 それから、銀行預金についても、振り込め詐欺事案だけでなく、すべての対象犯罪について、すき間のない統一的な法律が必要と考えます。

 米国では、そもそも不明口座については、三年で休眠口座化、五年で会計検査院が管理となる、厳格なルールがあります。その後国庫という流れが州法でも定められています。もちろん、この間、権利が証明されれば永久に還付される制度になっていますが、要するに権利者のいない口座はそもそも違法口座である疑いがあるということで、銀行に、この種の違法口座からの収益を時効取得させることは不合理ですので、最終的に国庫に帰属させる制度が合理的であると考えられています。

 また、行政罰としての課徴金制度と被害者との調整も必要です。違法企業に課徴金を課しつつ、これが被害者の救済に回らない制度となっているのも問題です。

 そして、これら制度が、省庁縦割りではなく、統一的な法として、被害者救済の観点から、一般的かつ横断的な法律が必要だと考えます。

 それから、米国であります、父権訴訟と言われている訴訟に関して少し説明させていただきますが、これらの訴訟も不可欠だと考えます。

 その理由は、先ほど言いましたように、昨今の食品の産地偽装や汚染米の事件に見られるとおり、民民のルールで解決できない領域が必ず最後に残るからです。それから、破産申し立てや保全といってみても、保全は、裁判所から、被害額の約三割ぐらいの保証金を積むことを要求されます。そうすると、百億円の被害に三十億円を積みなさいということは実際上不可能です。それから、破産申し立ても、実際にお金がない会社に、それから数千万も裁判所へ積むというのも実際上不可能で、まさに被害を回復できないボトルネック現象を起こしています。

 この種の訴訟には、行政的な行政官訴訟、いわゆる父権訴訟が必要だというふうに考えます。

 終わりになんですが、つまり、どのような法制をとるにしろ、民主党案にしても自民党案にしてもいいところがあるわけですけれども、違法収益を加害者から徹底的に剥奪して、それを被害者にきちんと返す制度がなければ、結局先ほど言った企業のコメントのように、やり得と泣き寝入りを助長してしまう社会となります。このことが、繰り返される消費者被害の原因となっています。詐欺被害を起こした業者は、一億円を宝くじで当てるよりも、人をだまして一億円を奪う方が簡単だというようなことを平気で言います。そういった発想というのは成り立たないということをはっきりさせる必要があると思います。

 ちなみに、米国で、休眠口座法に関しては、こういうふうなコメントが会計検査院のホームページに出ています。ニューヨーク州では現在数千億円の持ち主のない金銭を保管しています、この金はあなたのお金かもしれませんと広告しています。まさに休眠口座に埋まっている犯罪収益と疑わしい口座はニューヨーク州だけで数千億円ということは、結果的に、預金保険機構の公告もそうなんですが、すべての被害者が声を上げるとは限りませんので、余剰金が生まれる可能性があります。きちっと違法収益吐き出し法制ができると、まさに税金にも、国の国庫も潤い、かつ被害者も救済されるというウイン・ウインの制度ができるというふうに思います。

 長年具体的な消費者被害に携わってきた弁護士としては、被害者を掘り起こす作業というのは物すごく難しい作業で、その作業から、さらにお金を取り戻す作業はもっと難しいということで、ぜひとも消費者庁ないしはそれに類似する制度が必要だというふうに考えますが、同時に、この違法収益吐き出し制度に関しては絶対に必要な制度というふうに御理解いただいて法律の御審議をいただければというふうに思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

船田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 きょうは、松本参考人並びに紀藤参考人のお二人に大変貴重な御意見を承りました。私もメモをとりながら拝聴しておったわけでございますが、まだ承ったばかりで十分そしゃくし切れていない点があろうかと存じます。事前に皆さんがお書きになったものも若干読みましたが、そういったことを前提に少し質問をさせていただきたい。多少見当違いのことがあるかもわかりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に、私実は、国会議員に三年半前になったんですが、その前は、武蔵野市というところの市長を二十三年ほどやっておりました。そういう意味では、消費者相談とかあるいは相談業務を東京都とタイアップしながらやってきた立場で、まずその点から質問させていただきたいと思います。

 今回、消費者庁並びに民主党の皆さんが出した消費者権利院法案が出されて、大きなパラダイムシフトになるわけでありますが、実は、現場の感覚からいきますと、今、とりわけ紀藤先生がおっしゃったような深刻な例ということよりも、割かし軽微なケースが多いわけであります。

 例えば、武蔵野市、十四万足らずの市でありますが、平成十九年度の消費者相談の第一位が、出会い系、アダルトサイトであります。第二位が不動産の賃借で、いわゆる家賃をめぐるトラブルであります。第三位が、たまたまこの年が特徴だったんですが、外国語の会話教室、NOVAとかああいうものであります。それからフリーローン、サラ金、あるいはクリーニングの仕上がりがどうだ、電話サービス、工事、エステティックサービスなど、こういうことがずっとあるわけでありまして、確かに、一つ一つの事柄は非常に身近な問題でありますし、金額はそう莫大なものではないわけであります。

 もちろん、犯罪を犯す方という立場からとなると、今紀藤先生がおっしゃったように、非常に大きな膨大なお金になるわけでありますが、しかし、被害の一つ一つの受ける金額からいくとそう大したことないし、ある一定程度の見通しが立てば、まあしようがないかという感じになる性格のものであります。ですから、現場の消費者相談というのは、むしろ被害の予防に近いようなもの、あるいは二度とやっちゃだめですよといったような教育的なもの、こういう要素が非常に強いんだろうと思います。

 こういう角度で物を考えた場合に、話が前後して恐縮ですが、消費者庁案と、それから民主党の皆さんが提出した案の中には、非常に大きな特徴があるだろうと思います。その比較を今の例でお願いしたいわけです。

 例えば、消費者庁の場合には行政的手法が非常にとられているわけであります。同時に、民主党案では、準司法的な手法、またそれから父権的な訴訟も含めて考えられているようであります。

 一方で、消費者庁の場合には地方分権型になっております。民主党の皆さんのでは、約数千人の、これは三千人という説もあればいろいろありますが、四十七都道府県並びに支所をつくるわけでありますから、一万人は相談員ですよね、法律上は一万人以内、こういうふうになっておりますが、相談員の数が一万人以内という規定になっておって、それ以外の、いわゆる行政職の人数は書いてありません。しかし、この民主党の皆さんの法案によりますと、四十七都道府県に置いて、なおかつ支局を置く、こういうことがございますから、そうすると、ざっと見ても数千人単位、つまり相談員一万人以外の数千人単位の職員が必要になってくる、こういうことになるだろうと思っております。しかも、それが国家公務員の身分を要するということでありますから、非常に中央集権的なやり方であります。

 こういう、行政的な手法に対して準司法的な手法。あるいは、一方で地方分権、一方で中央集権。また、消費者庁は二百五十人前後というふうに想定されておりますが、片っ方では数千人プラス一万人と非常に重装備の格好になっているわけであります。

 こういうことからして、私は現場にいてつくづく感じますのは、先ほど例にとりましたように、消費者相談とか消費者問題の現場というのは比較的、これを軽微と言えるかどうかは非常に微妙な問題なんですけれども、比較的、現場で、地域密着型で、近くに相談する場所があって、電話、または行って、面接が多いんですけれども、面接、こういうことになっております。ちなみに職員は、フルタイムが一人、嘱託が二人、そして週四日勤務する相談員が四人であります。こういう体制であります。大体標準的、若干充実しているかなという感じはしますけれども、いずれにせよ、同様なやり方であります。

 こういうふうなことを考えると、言ってみれば、地方自治のやり方で、比較的軽装備でやっていく方が実情に合っているんじゃないか。そして、被害の、問題の非常に深刻なものについては集中的、専門的にやるというやり方をやった方がいいんじゃないかという感じを持っているんですが、それぞれのお立場で御意見がありましたら。

松本参考人 まず、二つ目の方から先にお答えしたいと思いますが、相談についてどうなのかということであります。

 これは、相談をする側から見れば、身近なところに相談できる場があるということが一番重要なわけですから、それは別に、地方自治体が運営しているものでなければならない、国がやってはならないというふうな分け方はする必要がないんだろうと思います。やれるところはまずやっていただく。

 ただ、消費者関係の行政は地方の自治事務でありますから、地方が、本当に地方の住民のために我が自治体はここまでやるんだということで積極的に取り組まれるところは比較的前進をするし、そうではないところは進まないというところはあります。それは地方自治の怖いところでもあるわけですが、うまくいけば非常によくいく、うまくいかなければいかない。これは、どちらをとるかということで、一律国がすべてやるのがいいのかどうか、非常に政治哲学的な問題になると思います。

 したがいまして、私は、こちらの方がいいということはここでは申し上げませんが、ただ、地方でやれていないところがあるというのは事実でございますから、そこをどういうふうにして国が国の政策として支援していくのかということを考える必要があるんだろうと思います。

 それから、一つ目の、不当商法への対応の仕方が民主党案と政府案とで違うのかどうかという話ですが、大きく違うところは私は余りないと思うんです。

 民主党案も、既存の行政官庁は権限をそのまま持っているわけですから、きちんとやれば、法律があれば執行できる、やる気があれば執行できる部分があります。消費者庁法案も、既存の法律が、どこに権限が行くかという話ですから、やる気があってきちんとやれば動くわけですが、ただ、すき間がある場合、どの法律も適用できない。

 行政的な執行ができないような問題が発生してきたような場合にどうするんですかというところで、二つの法案はかなり違います。政府案は、消費者庁が、非常に暫定的な期間ですが、一定の行政処分ができるという案ですし、消費者権利院法案の方は、行政的な処分権はないけれども、かわりに、消費者権利官が原告となって裁判所に緊急の、仮処分的なものを要請できるということですから、そこはかなり違います。

 消費者庁の法案であれば、恐らく、行政処分が違法かどうかというところが問題になりますから、行政手続法のきちんとしたルールに乗っかってやれば、現行法上、そんなに問題はないと思いますが、消費者権利官が裁判所に対して、特定の法律が違法だと言っていない、特定の法律の根拠がない、訴訟を起こせるという根拠は権利院法案に置けるんでしょうけれども、保護される法益についての実体的な保護をする行政的な法律もないという中で裁判所に起こせるのだろうか、裁判所が果たして対応できるんだろうかという、これは非常に理論的な問題がございます。

 被害者の個人の法益、被害者が損害賠償を起こせるという状況のもとで、被害者が私に対する被害をやめろという差しとめの権利というのは一定認められる可能性があると思いますから、それを消費者権利官がかわりに行使する、父権訴訟的なものというふうに位置づければ理屈は通るかもしれないわけですが、非常に新しい制度だということになります。

 以上です。

紀藤参考人 紀藤はふだんから、その種の、いわゆる身近な法律相談である、インターネットにまつわる被害とか、それからクリーニングや賃借にまつわる被害相談であるとか、そういうのも相談に応じているところなんですけれども、この種の問題で、一番の問題はやはり少額被害なんですね。百万円以下の被害に関しては、弁護士に頼んで、そして訴訟を起こしたり、あるいは救済を図るということになると、被害者もペイしない、弁護士もペイしないという領域になります。

 この種の被害に関しては、どうしても消費生活センターとか行政の役割が、逆に言うと非常に重要です。弁護士に頼んで何か裁判的に司法的な救済ができないという領域については、司法ができないところは行政が補うというのが三権分立の原則だとすると、やはり、結局行政が補うしかないと思います。

 そうなると、まさに地方行政の充実であるとか国の行政の充実ということが問題になりまして、そこにおいては、民主党案と自民党案の大きな違いは、これははっきり申し上げますが、やはり予算だと思います。能力をアップさせるためには絶対に予算が必要、それから、予算がなければ人材がふえないということがありますので、その点は、民主党案というのは、先ほど松本先生が言われたような、ある種の本気度を感じるところで、やはり消費者被害救済の充実のためには、地方行政も含めた充実は一〇〇%必要不可欠。

 これがなければ結局少額の被害は防げないということになって、業者によく聞くんですが、これは悪徳商法をやっている業者ですね、クリーニング事故であるとか賃貸借とかいうのはもちろん消費者被害なんですけれども、そういった業者とは別のまさに悪徳商法をやっているような、数万円単位の被害を生み出すような業者は、結局、警察からも摘発されない、行政からもチェックされない、被害者からも泣き寝入りで事件化しないということで、長期間、長く、この種の数万円単位の被害だけで済ませておけばずっと続けられるというふうに述べているところです。ですから、やはり行政的な手法は必ず必要になります。

 それからもう一点、消費生活センターは、チャンネルの問題としてすごい重要なんです。

 どういうことかといいますと、被害者の方々も、通常の市民、国民の目線で救済を考えています。そうなると、ペイする事件は弁護士へ、ペイしない事件は、いわゆるチャンネルとして消費生活センター、無料の相談窓口としての消費生活センターということで、これは切り分けがなされています。ですから、国民生活センターの統計でなされている統計と、いわゆる弁護士会に来る相談ということの統計値は、おのずからチャンネルが違いますので、被害額も被害相談の質も異なってきます。これはチャンネルのすみ分けの問題なので、私は重要な問題だと思っています。

 ただし、残るのが実は子供、チャンネルを知らない子供の消費者被害に関してはずっと放置されている領域があります。特に未成年者の子供たちの相談です。

 この種の問題は、インターネットが登場して少し変わってきてはいますが、やはり未成年者に対しては、チャンネルを知らせる消費者教育が最も重要になります。今、消費者教育が十分でない結果、子供がどこに相談していいかわからない。子供は、親に相談すると親からしかられますから、みずから相談する窓口を自分の知識として知っておく必要があるんですけれども、その知識を持っている子供が少ないという問題があります。その点を御理解いただけると助かります。

土屋(正)委員 ありがとうございました。

 松本参考人がおっしゃった中で、私も意見として申し上げておきたいと存じますが、消費者の立場からすると、国でも地方自治体でも身近なところで気軽にできればいい、確かに御趣旨のとおりであります。しかし、実態は、住民からすると、身近なのは市町村役場であって国の機関ではないんですね。

 それはもう、社保庁、社会保険事務所の例を見るとよくわかります。武蔵野市も社会保険事務所ありますけれども、最近有名になったけれども、それまでは社会保険事務所がどこにあるかなんて全然市民は知らないわけです。ということでありまして、実は、社保庁と同じような、つまり、国の機関といっても、例えば武蔵野市なら武蔵野市にどかんと何十人も置けるわけではありません。ネットワークはやるとしても、せいぜい限られてまいります。そうすると、それはどこにあるの、こういうことから始まらにゃならないので、実は非常に難しい問題があるだろうと思っております。

 地方自治の仕組みというのは、自分たちの選んだ市長、自分たちの選んだ市会議員、こういうことに対する信頼感があるわけですから、その信頼感の上に乗って、なおかつ行政を進めるという方が私はいいんではないか。

 したがって、身近なところにあるといっても、認知度とか信用度が違うのでないかという気がいたします。

 それから、今、松本先生がおっしゃった、消費者庁は行政処分で、消費者権利院の場合には、訴えることはこの法律によってできるけれども、その訴えた結果として、その具体的な法益を特定の法律で規定していないときに、それを裁判所がどうやって認めることができるかどうかという、私はまさにここのところが、迅速性が達成できるかどうかということに非常に大きなことがあるだろうと思います。

 同じような発想で、地方自治体がオンブズマンの条例をつくって、一番最初は今から十七、八年前に川崎市がつくったわけでありますが、川崎市のオンブズマンは、いずれも裁判官とか検察官が最初就任いたしました。そこが世の中の期待を多く集めながらも、なおかつそれほどのことができなかったのは、まさに今松本参考人がおっしゃったような、いわゆる具体的なそれぞれの法律とどう整合性を伴うかということで、なかなかその処分性を持った行為ができなかったということがあるんだろうと思います。

 最近の事例についてはよくわかりませんが、いずれにせよ、今回提起されている問題は、従来の法体系と違って、個人の利益を行政庁が代弁できるのかどうか。父権訴訟なんかの場合は典型的にそうであります。今まで代位訴訟みたいなことはありましたけれども、例えば住民代位訴訟の場合には、市の利益を住民が代位する、株主代位訴訟の場合には、会社の利益を株主がかわって取締役に対して訴訟する、こういう代位訴訟になっていましたけれども、今回、父権訴訟になると、個人に帰結する利益を法に基づいた機関が代位訴訟する、こういうことになるわけで、こういう点についての法の安定性みたいなものについて、紀藤先生がきょうお配りいただいたのにさっと目を通しましたけれども、新しいジャンルとしてそういうものをきちっと確立するまでは今の法体系の中でうまくいくのかどうか、こういうことについてもし何かあれば、ここはぜひお聞かせいただきたいと思います。

 それから、少額被害をどうやって救済するかということでありますが、確かに、行政の役割、行政があっせんしたりあるいは電話一本入れるだけで被害がある程度防げるとか、いろいろなことがありますから、実質上、行政が、司法ができない迅速性を持って牽制的な役割を担っていく、こういう要素があるんだろうと思います。私も市長として、あっせんしたりいろいろなことが、建築紛争なんかであっせんしたりしたことがありますので、法に基づかなくても、任意の、いわゆる宅地開発指導要綱みたいなものでできるということがありますから、おっしゃっている趣旨はよくわかります。

 しかし、この場合でも、例えば消費生活センターの役割は非常に大きいんですが、地方自治の役割としてこれから強化していくのか、直轄的に予算をつけるか。私が言いたいのは、今の仕組みの中でもっと予算を強化していくという方向の方がより機能するのではないかという気がしますが、そういう点についてはどうでしょうか。

紀藤参考人 済みません、話すと長くなってしまいますので、できる限り短くしたいんですけれども。

 まず、父権訴訟ですけれども、この父権訴訟がなぜ団体訴訟よりもすぐれているかということにつきましては、やはり、団体訴訟は一種の民民のルールだからです。民民のルールだと、結局法執行がないところでの調査権限しかありませんので、基本的には情報収集の点でまず劣るというのが第一点です。

 第二点は、先ほど言いましたように、団体訴訟だけだと、両方あっても別に構わないんですけれども、団体訴訟だけだと結局司法に頼るということになりますので、司法は、先ほど言いましたように、迅速性や専門性、廉価性においてやはり行政に劣るということになります。

 破産申し立てに数千万、そして、保全はできるといっても、百億円を保全しようとすると三十億円の保証金というのが今の裁判所の基本的なルールですので、三十億円を団体に集めさせるというのは実際上不可能です。

 今、適格消費者団体で年間の予算というのは大体二千万円いくかいかないか程度で、一千万以下の適格消費者団体もあります。そのような予算でそもそも団体訴訟を遂行するというのは、認めたとしても、実際上、短期的にはほとんど不可能です。将来的に発展していけば別なのかもしれませんけれども、そういうことですので、行政が訴訟権限を持つというのは、既に告発権限は持っているんですけれども、告発権限の延長線上としてすごく重要なことだと思います。

 あと、さっき、直轄的か地方分権かという話があったんですけれども、私は、この辺はまさに政治の領域で、私が言うべきことではないというふうに思っておりますので、判断を留保しますが、いずれにせよ、複線ルールが絶対必要だと思います。

 被害者から見ると、すべての相談センターは並列的に見えているわけではなくて、一つが一縷の望みのように見えている状態なんです。そうすると、その一縷の望みのある状態が、ある一つのチャンネルにしかすぎないということになると、その情報が枯渇した被害者は救われないということになります。

 ですから、地方自治体も持ち、国も持ち、それから地方自治体の中でもありとあらゆるセクションが消費者被害ということでつながる、国に情報が来たものが消費者被害としてつながるという制度がすごく重要で、まさに消費者庁というのはそういう側面がありますし、地方自治体の消費生活センターや、地方自治体に何らかのそういう機能を持つということになれば、それは役割を持ちますし、それから民主党のいわゆる消費者権利院というのもそういう側面を持ちますので、私は複線のルールでいいと思っております。

土屋(正)委員 時間がなくなりましたので、少しまとめて意見として申し上げたいと存じますが、非常に重大な、今の日本の法体系に対するさまざまな問題点を提起していただいて、ありがとうございました。

 仮に、今紀藤先生がおっしゃったような、いわゆる司法的救済のためには、俗に言う手間暇がかかる、時間もかかる、こういうことを考えた場合に、例えば何らかの形で行政が父権訴訟をする、その場合に、それは権利官と言うか何官と言うかは別にしても、いずれにせよ、行政の責任者が父権訴訟するための、言ってみれば証拠集めとか、あるいは犯罪の予見性とか、被害がどのように拡大するかとかといったような、すごい達見と、熟達と、水戸黄門的力が必要になってくるんじゃないかというふうな気がいたします。

 また、その過程の中で、仮に、途中で、その権利官なりなんなりがやった場合に不作為の問題をどうするかといったような問題も出てくるんだろうと思います。

 非常に新しい分野であり、なおかつ既存の法体系の中ですり合わせが難しい部分だと思いますので、私らもぜひ両先生からもまたいろいろ学ばせていただいて勉強させていただきたいと存じます。

 時間が参りましたので、意見として申し上げます。

船田委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 お二人の参考人の方に私からも御礼を申し上げたいと思います。貴重な御意見、ありがとうございます。

 早速中身に入りたいと思うんですが、お二人とも消費者行政への長いかかわりを持ってこられたわけでありまして、とりわけ紀藤参考人は同じ山口の同郷でありますから、きょうお会いすることを楽しみに参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に松本参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど、参考人の時間が足らなかったんじゃないかと思うぐらい早口でしゃべられましたのでなかなか理解できなかったのでありますけれども、先ほどのお話の中で、消費者行政のありようとして、ウイン・ウイン型の消費者政策ということをおっしゃった。これは実に、今回の法制化の作業の中で非常に重要な視点をいただいたなと思っているわけであります。

 ただし、私も、本当は法律というのは少ないほどいい、法律というのは社会の最低のルールだし、なきゃないほどいいと思っている一人なんでありますけれども、参考人がおっしゃった、業界の自主的なルールでの取り組みももちろん最近は随分行われているわけでありますが、それだけでは決して十分でない、民民のルールだけでもどうにもならないケースがあると。したがって、行政規制あるいは法律による規制ということも必要だろうと思うんですが、私はそれは最低限ということでいいのではないかと常々思っているんですが、年々歳々法律はふえてくるわけであります。

 消費者行政を考えるときに、こうした民民のルールあるいは自主規制という世界と、それから行政による規制、このありようは今後どうあるべきなのか、参考人の御意見をまずお伺いしたいと思います。

松本参考人 法律が少なければいい、私も全くそう思います。教える立場として、少ない方が教えやすいということであります。

 ただ、例えば消費者問題に限定をいたしますと、昔のような狭いエリアで、顔のわかる者同士が取引をしているとか食べ物を買っているという世界であれば、変なことをすればすぐわかってしまうわけですから、法律は非常に単純なものであれば全く問題がなかったんだ。それが、だんだん市場が広くなってくる、一つの市場が広くなってくる、今ですと、まさにグローバルで、中国からどんどん品物が入ってくるという世の中ですから、そうなりますと、顔の見えない人がつくったもの、あるいは顔の見えない人と取引をする、形の見えないサービスを買うということになります。そうなりますと、やはりルールがしっかりしていないと、結局損をする消費者が出てくるということです。

 しかも、従来ですと事前規制中心で、いわば許認可中心でしたから、割とあいまいにやっていたところがありますが、事後規制を重視するという世の中になってまいりますと、やっていけないこと、やっていいことがはっきりしていない限り、事後的に処分をかけられないわけですから、そういたしますと法律の数がふえるというのはやむを得ないと思います。

 私、「消費者六法」という本をここ十数年間ずっと編集しているんですが、毎年分厚くなってまいりました。消費者法は非常に充実してまいりました。少しやむを得ないところかなと思います。

 もう一つは、規制のための法律はふえているんですが、他方で、消費者に権利を与える法律というのもやはりふえているということをお知らせしたいと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 それで、紀藤参考人にお伺いしたいんですが、今回の法制化に当たりまして、司法との関係ということで、中身に入る前に、ちょっと最近のトレンドで、思うことをお伺いしてみたいんです。いい機会でありますから。

 NOVAの事件とか貸し金の事件等で、司法が、いわば行政を先取りといいますか追い越すような、消費者保護を重視した判決を出しているということも続いているわけであります。これは、私が直接担当しております被爆者援護法なんかも、そんな司法の元気な姿が最近あるわけでありまして、立法府において心しなきゃならぬわけでありますが。

 そうした、消費者保護を重視した判決ということを司法がお出しになっている、どのようにそのことについて感じておられるのか、紀藤参考人にお伺いしてみたいと思います。

紀藤参考人 それはまさに後手後手だということだと思います。

 司法で判決が出ると言ってみても、実はその間、十年以上にわたる、日弁連や各弁護士会、そして消費者問題を担当する弁護士の取り組みがあります。

 例えばNOVAに関しましては、私は、NOVAが破綻するもう十年ぐらい前からNOVAの問題については問題意識を感じていましたし、自分の書籍でも、NOVAというのを具体的に実名を挙げて問題点を指摘していました。

 日弁連は、継続的役務、いわゆる長期間学校に行く際の、途中の、中途解約の問題についての意見書も、九〇年代の後半に既につくっていました。ところが、行政が何もしませんでした。そのために、NOVA商法と言っていいと思うんですけれども、NOVA商法がそのまま温存されて、最終的に司法でしか解決ができないというような事態に陥っていたということです。

 同じように、貸金業についても、貸金業規制法ができた当時、もう二十年以上ということになるんでしょうけれども、そのころからもう日弁連でも取り組んでいましたし、消費者問題を担当する弁護士も取り組んでいましたし、私は一九九〇年登録ということで、貸金業規制法よりも後の登録になるんですけれども、ずっと貸金業の問題をやり続けていて、昨今倒産した商工ファンドという会社があって、SFCGといいますが、その会社についても、九〇年代の初期から問題点については取り組んでいたんですね。

 ところが、結果的に、行政が何もしないので、結局、法律家として当然な主張を繰り返していたら、最終的に、司法が、行政がやらないところを補ってくれたというのが実情です。

桝屋委員 ありがとうございます。

 もう一点、重ねてお伺いしますが、むしろ遅きに失したような今回の法制化の作業ということになるのかもしれませんが、そうした認識に立ちますと、消費者行政の組織を新たにつくるという場合は特にどの点を留意しなきゃならないのか、どのような組織とすべきなのか。重ねて紀藤参考人にお伺いしたいと思います。

紀藤参考人 まさに法執行の問題だと思います。

 結局、今の国際社会も日本の社会も、資本主義社会を前提とした競争社会の中で、その前提にはルールがあるという、ルールの社会になりつつあるということだろうと思います。そのルールというのは、モラルではありません、いわゆる法律で定められた、法律に基づいた執行権限ということになると思います。

 ですから、この法執行権限がちゃんと行政の中できっちりできていなければ、最終的に司法でしか解決できなくなりますので、まさに後追いの司法で解決する、そうすると、数年、数十年という単位で被害を生み続けてしまう、結果的に破綻したときにかえって社会が混乱するという事態になっているというのが今の実情だと思います。

桝屋委員 では、続きまして、松本参考人にお伺いしたいと思うんです。

 法律の所管、今回消費者庁は、今法案が出ておりますが、二十九の法律を所管する、いわゆる消費者に身近な法律を所管するということなんでありますが、ここも随分議論があるわけであります。いやいや、それ以外にたくさんの身近な法律があるではないかということでありますが、とりあえず二十九ということであります。

 現場の消費生活センターの相談事案、この大宗は何とかカバーするということで二十九という法律になっているわけでありますが、この二十九の消費者に身近な法律を所管することについて、どういうふうに御見解をお持ちなのか、どういうことが期待されるのかということについてお答えいただきたいと思います。

松本参考人 二十九が多いか少ないかというのは、本当にそれぞれの立場の方によって意見が異なるんだろうと思います。消費者行政推進会議で議論しておりましたときでも、これしかないというような感じでは多分なかった、いろいろな考え方があって、しかしこれは必要だろうということであります。

 先ほども言いましたように、私、「消費者六法」という法律を編集しております。法律をたくさん載せておりますが、その中の、今回の消費者庁が直接所管しない大きなジャンルが、金融関係というのがございます。金融関係の消費者被害というのは確かに多いわけですが、金融は、消費者という性質の人のみを取引の相手方にするのではないというところがございますから、したがって、その中の消費者の部分だけを切り離して、分離してできるのなら可能でしょうが、それができないものについては基本的に金融庁の方にそのまま。ただし、それを消費者行政の観点からきちんと運用していただく。実際、金融庁は、大蔵省から独立して以降、非常にそういう姿勢を強くしているというふうに私は感じております。

 さらに、法律の、これは運用の問題でございますから、実際に消費者庁が発足をして、専管になった法律あるいは共管になった法律、合わせて二十九本について、どういうふうに本当にきちんとやっていけるのかというところを事後的に点検をした上で、だめならだめ、いいならいい、もっとふやしましょうというような議論をするというのが必要であって、今の段階で、はなからだめだとか、はなからすばらしいということは多分言えないのではないかなと思います。

桝屋委員 重ねてお伺いします。

 お伺いしたかったのは、消費者に身近な法律を今回消費者庁が所管をする、あるいは共管をするということで、どういうことが期待されるのかということを伺いたいわけでありますが、例えば消費者契約法のような民事ルールを所管するということ、これはどういう効果があるのか、重ねて御説明をいただきたいと思います。

松本参考人 恐らく、所管という言葉はいろいろな意味があるんだと思います。

 法律を執行する権限を持つという意味での所管もあれば、消費者契約法は別に執行という側面は、適格消費者団体の認定の部分は執行ということになりますが、それ以外の部分は民事ルールで、おっしゃったとおりでございますから、そこに関しましては、法律を改正するということにより、今でもそういう意味では国民生活局がかなりのところはやれたはずでありますが、当該法律についての改正等の発議がもっと積極的に行えるようになる、執行も伴う法律についてはみずから執行ができるということだと思いますし、直接所管しない法律についても、企画立案等については消費者庁が十分関与できるということになっておりますから、二十九本以外にも法改正等については影響力を行使できるだろうと思います。

桝屋委員 それでは紀藤参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどからさまざまな例を御説明いただきました。例えば利殖商法。元本保証、高配当、高金利ということで、このうたい文句で多くの国民が被害を受けているわけでありますが、健康食品の販売事業であるとか、もう枚挙にいとまがないぐらいであります。

 こうした事案に対して、どのような形で被害の未然防止あるいは拡大防止を図るべきか、これは大きなテーマでありますが、とりわけ消費生活センターの役割をどのように、先ほど、たくさんの窓口があっていい、こういうお話もあったわけでありますが、消費生活センターの役割という観点でもお答えをいただきたい、お考えを聞かせていただきたいと思います。

紀藤参考人 消費者被害の中には大きく二つあるということがまず前提にあると思います。それは、一つは、消費者にも一定の責任がある被害です。もう一つは、消費者が全く責任がない被害です。

 例えば、食品の偽装であるとかそれから汚染米であるとか、こういうのは消費者は全く見分けがつきません。利殖商法の中にも、エル・アンド・ジーとかワールドオーシャンファームと違って、近未来通信は、いわゆるサーバーというもので、IP通信というものを行っていましたので、そのサーバーが回線につながっていないということは通常考えられないというか、極めて巧妙な詐欺事件でありまして、とても一般の消費者で見抜くことはできない被害ということが言えます。

 要するに、程度問題ではありますけれども、被害の中には、一〇〇%に近い形で消費者に責任がないものと、消費者も一定の注意をすれば何とか防げそうなものとの二種類に分かれると思います。もちろん、そこには消費者教育の観点もクロスしてきますので、非常に複雑な様相を呈するということが前提なんですけれども。

 そうしますと、センターの役割としては幾つかあります。

 防げそうな被害あるいは消費者にも一定の責任がありそうな被害に関しては、やはり消費者教育であるとか啓発であるとか、そういったものが重要になりますし、この辺のルールはきっちり法律でも決めていただいた方が非常にいい領域だと思います。これは予防の観点から極めて重要です。

 消費者が全く気づけそうにない被害に関しましては、これはセンターの役割を中心に言いますと、やはり商品テストとか、そういう、ちょっと専門家から見たら疑わしいものに関して、専門家の立場から、いわゆる一般の消費者や国民の立場より早く見抜くための予算というのがすごく重要になるのではないかというふうに思います。

 それでも、例えば薬害であるとか汚染米であるとかそういうものを防ぐことはなかなか厳しいところがあって、これは私は、やった方の企業のやり得になっている法制をやはり何とかしないといけないというふうに思います。そこから得られた収益を全部吐き出しさせる、例えば談合で得られた利益を全部吐き出しさせるような法制が重要だと同じように、やはり、企業がもうけるためにやってしまいそうなものというのは、結果的にそんなことをやると企業が破綻するよというぐらいに大きな課徴金をかける制度が重要になって、その課徴金を被害者に返す制度が必要になるというふうに思います。国賠で被害者が勝っても、それは最終的に税金で補われているということを考えてみても、やはり企業から吐き出しさせる制度が極めて重要だと思います。

桝屋委員 ありがとうございます。

 そういう意味でも消費者教育ということが非常に重要だなと、今の紀藤参考人のお話を伺いながらも感じたわけでありますが、その前に、少額多数の被害、違法な利得に対して、それを巻き上げるという体制がなければ教育の前提ができませんよ、こういう御指摘かなと思うのでありますが、松本参考人に、消費者教育の重要性ということについて伺いたいと思うのであります。とりわけ、今計画をしております消費者庁でこの消費者教育にどのようにかかわっていけばいいのか、お考えがあればお尋ねしたいと思います。

松本参考人 消費者教育、非常に重要だと思います。単にだまされないために、あるいは危険な目に遭わないために必要だ、これは最低限必要ですけれども、現在求められているのは、そういう意味の最低限の消費者教育以上のものだと思います。

 二つ意味がございます。

 一つは、生活教育といいましょうか、家庭や学校における、普通の生活をするための知恵だとかいうのを身につけさせる力が少しずつ衰えてきているという現状があるかと思います。家庭や社会の教育力が衰えている中で、消費者のところだけ教育してもだめなのであって、市民として、あるいは国民として、社会の人間として生きていくための必要な常識とかいったものを身につけさせることが必要だろう。その中には、当然、狭い意味の消費者教育もあるだろうし、それ以上の、最近だと法教育だとか金融教育だとかいろいろな言葉が言われますが、そういったもろもろのものが入ってくるんだろうと思います。

 そして、先ほど私、ウイン・ウイン型の消費者政策という、市場を重視して、正直な人が損をしないような、誠実な業者が得をする、正直な消費者が損をしないような市場をつくっていこうと思うと、これは、事業者にもそういう自覚を持ってもらわなきゃならないし、消費者の方もそういう目で市場を見て、事業者を見て取引をしていく。自分が取引をすることが事業者に対して影響を与えるんだという観点、いい事業者を残すために私はこの事業者のここを評価して取引をするんだ、そういう観点からやっていけばよいスパイラルができるのではないかなと思っておる次第です。

桝屋委員 ありがとうございます。

 消費者庁が消費者教育に当たるにしても、単に消費者教育だけではない、全人格的な教育、そういう意味では政府を挙げて消費者教育に当たるという、その司令塔をこの消費者庁が果たす、こういうことかなと思っているわけであります。

 最後に、時間がなくなりました、被害者救済について議論したかったんですが、残念ながら時間がありません。最後に両参考人に伺いたいと思います。

 福田元総理の強いリーダーシップで始まった今回の一元化のための法律でありますが、先ほどからお話を聞いておりますと、与党・政府案それから民主党案、二つ出ておりますけれども、両参考人の話を聞くと、一歩前進のために何とかまとめてもらいたいという思いを聞かせていただいたんですが、二つの案を比べますと、これは与野党、政策合意ができるというふうに思っておられるかどうか、端的にお伺いして質問を終わりたいと思います。端的にお答えください。

松本参考人 私は、できると思いますし、してもらわないと国民は納得しないということであります。よろしくお願いいたします。

紀藤参考人 ぜひともやっていただきたいと思います。

 私は日弁連の立場でもあるんですけれども、日弁連もずっと消費者庁を求めてきて、今回、消費者庁を実現するということで、自民党側からこの発想が出てきたことに関しては非常に感謝しております。同時に、民主党からその対案としての案が出てきて、団体訴訟を早くつくる、そして、消費者権利院をつくるという案も、予算の点で非常に評価しています。

 ただ一点だけ。結局、消費者庁というのはまさに法執行機関なんです。そして、先ほど言ったように、基本法の観点から政府の施策を全部見直すという観点からすると、消費者庁が先にあるべきだと私は思っています。消費者庁があって、かつ民主党の案があればなお一層いいと思っておりますので、そういう意味でまとめていただけると、消費者弁護士としては非常に感謝にたえません。

桝屋委員 両参考人の思いを大事にして、この委員会、しっかり審議をしたいと思います。

 ありがとうございました。

船田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、大野(松)委員長代理着席〕

    〔大野(松)委員長代理退席、委員長着席〕

船田委員長 速記を起こしてください。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛でございます。

 本日は、両参考人、本委員会で貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。

 私からも質問させていただきたいんですが、私の方からは、主に違法収益の剥奪の関係のお話と地方の消費生活センターのあり方を中心にお話しさせていただきたいと思います。

 まず、違法収益の剥奪ということなんですが、私も、議員になる前に金融機関の社内弁護士をしておりまして、振り込め詐欺の被害者の方とよくお話をする機会がありました。当時、振り込め詐欺救済法がなかったものですから、振り込め詐欺の被害に遭った方が被害金を取り戻したいといっても、なかなかそれが難しかった。

 法案は、私も民主党案をつくったりして、昨年成立しました。今、振り込め詐欺の被害の救済については、振り込んだお金が相手先の口座、通常は犯人の口座と思うんですが、犯人の口座に残っている場合には回収できる、こういう仕組みにはなっておりますけれども、ただ、そこに残っていない場合、あるいは、そもそも被害者があらわれないような場合、多分救済されないだろうと思ってあらわれにくい、こういうお話もあるわけです。

 というような中で、今回我々は、被害救済の範囲をもっと拡充していく、充実していかなくてはいけないということで、今回の我々の案には被害者救済の仕組みも大胆に取り入れたということでございます。

 両参考人のお話を聞いていましても、その点についてはぜひ取り入れるべきだというお話だったかと思いますけれども、改めて、我々のような被害者救済の仕組み、これを取り入れる必要性について、お二人からお話をいただけますでしょうか。

松本参考人 被害者救済、被害者に損害賠償請求権がそもそもあるという場合に、被害者本人はいろいろな事情で行使が困難である場合に、かわりの団体なり政府がかわりに取り立てることがいいのではないか、これは、利得を保持させないという意味ではいいことだと思います。

 ただ、利得をさせないようにする方法は幾つかあるわけで、そのような中で、政府が執行するのがいいのか、団体がいいのか、クラスアクションがいいのか等、あるいは、金額によっても、個人でも十分できるケースもあるわけですから、そのようなものについてまで団体訴訟ということで、オプトアウトが果たして適切なのかとか、そういったことはもう少し詰める必要があると思います。

 私は、絶対必要なのは少額多数被害と言われているもので、絶対に、一人一人による権利行使はほとんど期待できないたぐいのものについて、それをまとめて行使する仕組みが必要であろうと思います。

 それから、損害額が必ずしも被害者サイドからは立証できないけれども、加害者サイドからは不当利益がきちんとわかるというようなたぐいの収益もあるかと思います。独禁法が課徴金というやり方を取り入れているのは、どちらかというとそういう観点を重視しているのではないかなと思いますから、そういう、損害を取り立てるという発想以外の形の不当利益を吐き出させる方法というのも考えていいのではないかと思っております。

紀藤参考人 恐らく、民主党案の保全のルールについての意見ということで承りますけれども、紀藤は、先ほどから繰り返しますように、民事ルールでできない領域があるというふうに考えています。ですので、団体訴権を認める、あるいは保全を認めるという制度をつくってみても、結果的に民民のルールではできない領域は行政がするしかないということが確実に残るというのが一つの問題意識です。

 それから、米国でも団体訴訟に近いものとしてクラスアクションという制度がありますけれども、これは父権訴訟、行政が行う訴訟と両立して行われています。

 それから、ヨーロッパでは団体訴訟というものがありますが、日本のように、先ほど言いましたけれども、例えば消費者機構日本という、まあ七つ適格団体があるんですけれども、そこの年間の予算というのは二千万に足りない予算です。政治家の皆さん、収入が二千万に満たない予算で、人を雇い訴訟を起こし消費者のために救済するというのは、僕は正直言って絵にかいたもちだと思います。

 ヨーロッパでも、団体訴訟でまともに機能している消費者団体というのは、各ヨーロッパの国に数個、要するに十とか二十という単位ではありません。総予算が億単位を超えないと、かなり厳しいというのが実情です。ですので、消費者団体を育てるという発想をしなければ、この問題は解決しないと思います。

 それから、先ほど課徴金の話が出ましたけれども、父権訴訟なり団体訴訟なりあるいは権利院が保全する制度なりつくるとしても、最終的には、この問題は、被害者、被害額と切り離して、いわゆる罰金あるいは課徴金と同じような発想をしないと、なかなか法制度として法整合性がとれないと思います。

 結局、例えば表示の問題で、詐欺として取り上げれば被害者が出るけれども、不正競争防止法違反で取り上げると被害者が出ません。そのため、表示の問題として不正競争防止法に基づき課徴金をかけても、結果的に被害者は浮かばれません。

 ですので、課徴金を取った場合でも被害者に返す制度というものが必要と同じように、この問題は、違法収益吐き出しの制度は、単純に代理訴訟というものではなくて、あるいは代理権限で違法収益を吐き出させるものではなくて、国が課徴金ないし罰金と同じようなものとして吐き出させたものを最終的に国が認定する被害者に返す制度というふうに考えた方が法制度的にはわかりやすいというふうに考えています。

階委員 確かに、課徴金の制度を充実させて被害回復を図れるようにするというのも検討課題だと思いますけれども、一方で、今紀藤先生が取り組まれているような、いろいろなエル・アンド・ジーの問題とかワールドオーシャンファームの問題とかありますけれども、ああいったものが、やはりお話を聞いていますと、予納金の問題であるとか、そもそも回復するための原資が散逸していたりとか、そういう問題があるわけです。

 我々は、やはりそこをまず解決する必要があるだろうということで、何をやったかというと、消費者権利官の方で迅速に悪徳業者の財産を保全できる、しかもその予納金は要りません。それから、その財産を前提にして、その後、適格消費者団体が損害賠償を求める訴訟を団体訴訟で起こすわけでございますけれども、その際に資金援助をして適格消費者団体を支援していく、また、訴訟の資料の提供とかそういうこともやっていくということで、そういう民事の救済手段を、今まで手が届かなかったところを我々が手当てした、こういう位置づけでございますので、そういう仕組みもこれは絶対必要なんだと思うんですね、課徴金とかそういう問題のほかに。これはいかがでしょうか。紀藤先生、お願いします。

紀藤参考人 私は、民主党案を批判しているように見えて実は批判していなくて、制度としては、米国に父権訴訟とクラスアクションがあるように、ヨーロッパに団体訴訟とオンブズマン制度があるように、これは別に両立して構わないというふうに思っていますし、それから、オンブズマンをとっている法制の中でも消費者庁をつくっている国もありますので、別段これは矛盾しないというふうに思っています。

 矛盾しない制度である以上、消費者のために何が必要かと考えると、私は、消費者の立場で考えると、まさに両方あってもいい、これはなぜ矛盾するのかと逆に思うぐらいで、あってもいいと思っています。

 ただ、予算の問題、地方行政の問題はかなり意見が違うので、ここについては先ほど言いましたように政治的な問題だと思いますので、あえて意見は控えますが、いずれにせよ、消費者権利院ができて行政を監視する制度というのも、それはそれで重要な柱だと思います。

 ただ、行政を監視する対象としてのいわゆる消費者庁というのは、先ほど言いましたように、消費者基本法と犯罪被害者基本法ができた以上、行政をもう一回見直して縦割り行政の弊害をなくすという意味では、消費者庁はむしろ見直しの中から出てくるべきものであるし、ただ、その消費者庁がだめなときに監視する制度としての消費者権利院というのも、重要な柱だというふうに思っています。

階委員 両方大事だということで、ただ、お二人のお話を聞いていますと、どうやら、両方大事だとは言いつつも、消費者庁がベースになるべきだというふうにお聞きしたわけでございます。

 ただ、我々は、なぜ消費者権利院という内閣の外に置く行政組織が必要かといいますと、それは、内閣の中にある組織であると、そもそも官庁は業者の保護、産業育成ということを目的としておりますから、利益相反が起きやすいんじゃないか。徹頭徹尾消費者の立場に立った活動というのはできないんじゃないかということが一つ。

 それから、内閣の下に置くということになりますと、権限をどうするかという縦割りの問題、権限をどうするかという問題と、その権限を割り振った結果、また新たなすき間が生まれ、そこにどこが対応するんだというような問題も出てくるということで、我々は、むしろ内閣の外に置いた方が、その点については消費者の目線に立った監視ができ、かつ権限の分配という面倒な話も起きなくて、極めてシンプルかつ効率的に消費者行政を運営できるんじゃないかというふうに考えるわけですけれども、お二人から簡単にその点についてコメントをいただけますか。

松本参考人 二つ理由をおっしゃったかと思います。

 一つは、官庁はそもそも産業保護、産業行政だけをやっているんだからだめなんだ。そこに関しては、恐らく消費者庁を設置しようという理由と全く同じであって、産業育成行政の付随物としての消費者行政を切り離して独立させないとだめだということですから、全く同じ方向を向いているんだと思います。

 二つ目の、内閣の下に置くと権限の問題があってまたすき間ができるからと。すき間を埋めるというのが消費者安全法で、埋めるといっても短期間にとめられるだけという非常に限定的なものではありますが、その間にしかるべき立法とか手当てをきちんとさせようということですから、消費者庁は横割りの立場からなるべく広目に権限を集めて、それでもまだ来ていないものも当然あるわけですけれども、その上ですき間については消費者庁がということですから、新たなすき間が出るということにはならないと思います。

 なるとすれば、緊急の措置をしたのに国会がきちんと動かなくて、そのすき間を埋める立法をしないということですと、たしか数カ月で効力がなくなりますから、すき間が今度は恒常的に顕在化するということになるかと思います。

 したがって、内閣の下にあるから権限の問題が起こってうまくいかないということは、それだけではないんだろうと思います。内閣がやる気があるのかないのか、総理大臣がやる気があるのか、各省所管大臣がやる気があるのか、そして役人にきちんと指導をして徹底させるリーダーシップをとるのかどうかというところだろうと思います。

 その点からしますと、民主党はもともと、政治主導で、役所の中に国会議員を送り込んでということをマニフェストにされているわけですから、民主党政権が実現すれば、もうじきする可能性が大きいわけですけれども、そうなれば、まさに内閣というのは非常に立派な内閣になるということを期待しておりまして、消費者行政のために総理以下頑張っていただけると。消費者行政担当大臣には最もすぐれた方が就任されるでしょうから、そうすると、内閣の下にある方がよいことができるようにも私は思えまして、そうであれば、消費者権利院のようなものは、外からしりをたたくしか動いてくれないような内閣のときには必要だ、そうでない場合であれば、もう少し小ぶりの、国民の声をきちんと届けてチェックをするという感じでも十分なのではないかなと思います。

 ただ、行政全般を監視するいわゆる議会オンブズマンのような制度は、私は必要だと思います。それは、消費者行政のみに限定する必要はないと思うんです。社会保障の問題、年金の問題、国民の不安はいっぱいございます。そういったことについて、議会オンブズマンとして行政をきちんと監視、チェックする機能は、ぜひ何らかの形で実現していただきたいと思います。

紀藤参考人 理屈の問題として、やはり法執行機関というのは必要だというふうに思います。ですから、消費者庁がなければ、法執行機関がないところに監視と言ってみても、やはり法執行機関がまず先決問題ではないかということです。

 それからもう一つは、歴史的な観点からです。

 ヨーロッパでオンブズマン制度をとっている国は、最初にオンブズマンをつくったんですけれども、それでは結果的にうまくいかず、結局ノルウェーもスウェーデンも消費者庁をつくりました。フィンランドは消費者庁がありませんけれども、消費者庁がないと困るというふうなことをオンブズマン自身が言っているような状況にあります。

 ですので、歴史的に見ると、オンブズマンができ、それでは不十分なので消費者庁ができるというような歴史をたどるというのが恐らく実情だと思いますので、つくるなら最初から十分なものをと思いますので、法執行機関をつくってオンブズマンということであればともかく、オンブズマンだけをつくってしまうというのは、やはり私は不十分だと思います。

 あと一点だけ、ごめんなさい。

 ただし、自民党案でも抜け落ちがあります。消費者安全法は、さっきは抜け落ちがないという話だったんですけれども、重大事故に関しては、いわゆる投資被害を外していますので、抜け落ちがありますので、ここは消費者権利院がないと抜け落ちの監視ができません。去年の十一月に出した日本弁護士連合会の意見書でこの抜け落ち部分は指摘しておりますので、もし修正案を出されるのであれば、消費者安全法の十七条の抜け落ち部分をぜひ指摘していただきたいと思います。

階委員 両方必要だということで承っておきます。

 あと、地方のお話ですけれども、地方の消費生活センター、相談員を国の直轄化にすることは問題だというふうに松本参考人はおっしゃっていました。

 これは、まず、国へ強制割譲するというふうに書かれていますけれども、これはちょっと誤解でありまして、我々は、ナショナルスタンダードをどの地域においても実現するという観点から、消費生活センターについては、今あるところはそのまま活動していただく、ないところを中心に地方権利局を設けて、また支局を設けて、全国津々浦々に消費者行政を行き渡らせよう、消費者行政は、どうしてもそういう行政の弱いところではびこるということもあるものですから、全国津々浦々にそういうものを行き渡らせようということです。

 あと、相談員を国家公務員にするということですけれども、これは、地方に任せておりますと、どうしても財源の問題もありまして、なかなか相談員の方の処遇が改善されない、また雇いどめということも起きるということで、専門知識の涵養も図れないということで、我々は、やはりここは十年の身分保障で公務員化する、かつ再任もあり得べしということにして、相談員のレベルアップ、処遇改善を図っていくということでございます。

 この点についてはいかがお考えでしょうか。両参考人、お願いいたします。

松本参考人 第一点の、既に地方の消費生活センターが存在しているところについてはそのままであって、存在しない、私が最初のときに発言させていただきましたいわゆる空白地帯についてのみ国が直接そういうセンターを設置するんだということであれば、私が法案を誤解していたんだということになります。

 それであれば、私は、一つのやり方として挙げさせていただきました、例えば国民生活センターの支局を空白地帯、何十万人かの地域でそういう相談窓口がないというようなところについて重点的に置いていくというのは一つ考えられると思います。ただ、それは、地方のレベルをアップするということ、やはりそういう努力も続けながら緊急措置としてやるということになるんだろうと思います。

 それからもう一つの、国家公務員にするということは、処遇を改善することが主たるねらいにあるのであって、国家公務員かどうかそのものではなくて、国家公務員化しないと処遇改善できないからだということだとすれば、本当に国家公務員にしない限り処遇改善できないのかどうか、つまり、予算がつけられないのか、国の支援が全くできないのかどうかという話に換言されるわけで、私は、行財政の仕組み自体は余り詳しくございませんから、ここは何か手法があるのではないかなというふうに期待をしているところであります。

 それと、国家公務員になる立場の相談員の方から、この点についてはぜひ意見を聴取されるのが、これは不可避だろうと思います。そして、相談員と一緒にセンターで行政事務を行っておられる地方の行政職員の方の意見もやはり聞く必要があると思います。センターとしてきちんと運用しているわけですから、相談員のみが国家公務員になってというので果たしてうまくいけるのか。

 そして、センターは相談だけをやっているわけではございませんで、消費者啓発のための出前講座だとか、あるいは商品テストをやっているところもございますし、多様な活動を行っているわけでありまして、その中の相談部分だけを別待遇にするのがいいかどうかについては、地方でぜひヒアリングをしていただきたいと思います。

紀藤参考人 私、短く言いますけれども、一点だけ抜けていました。

 消費生活センターは、確かに実情は各都道府県で予算措置も含めてばらばらで、特に地方自治体でも市町村においてはないところがかなり多いので私は問題だと思っていますので、今の民主党の御意見には賛成する部分もたくさんあると思います。

 ただ、一点だけ、消費者センターというのは、特に都道府県の消費者センターに関しましては、都道府県知事と所管が一緒になっていますので、いわゆる警察との連動が非常にしやすいという面があります。都道府県の消費生活センターに来た相談は定期的に都道府県警に、会議があってそこで情報交換されていまして、特にその地方で問題があるような消費者被害に関しては、都道府県の消費生活センターと都道府県警が連動して捜査を行い、調査を行い、そして摘発に至るというケースが実はたくさんあります、地方には。それを国の直轄事業にした場合に、そういう連動がうまくいくかどうかという問題が若干懸念されます。その点も御配慮いただければと思います。

階委員 我々も消費生活センターの方からお話を伺いますと、やはり国の所管になってしまうと、国の直轄になってしまうと、地域の実情が反映されにくいんじゃないかということを伺っておりまして、我々は、法案の中で、地方の消費生活センター、こういったところと消費者権利院あるいは地方の支局は連携してちゃんとやっていきましょうということを条文に設けまして、そこは大切なところだと思いますので、ちゃんとやっていきたいというふうに考えております。

 きょうは本当に貴重な御意見を伺いました。お話を聞いておりますと、やはり我々の考え方というのも非常に御理解いただけている、御賛同いただいている部分も多いんじゃないかと思いまして、また今後ともいろいろと御指導いただければなと思います。

 どうも、きょうはありがとうございました。

船田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 両参考人には貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 早速ですけれども、質問させていただきます。政府案に関連しまして、消費者政策委員会の機能の問題について両参考人にお伺いしたいと思っています。

 消費者庁の運営に消費者の意見が直接届く透明性の高い仕組みとして設置をするということですけれども、どういう機能が発揮をされることになるのか、これまでの国民生活審議会とどのように変わってくるのか、また、とりわけ消費者行政への監視、そういった機能というのは果たせるのかどうか、その辺についてこの仕組みがどうなっているのか、それぞれ御意見を伺わせていただけないでしょうか。

松本参考人 最初のところでも発言させていただきましたが、消費者政策委員会の機能という部分については、従来の国民生活審議会とどこが違うんだと。私自身、ここが画期的に違うというほど大きく違いはないような印象を持っております。

 ただ、独自の事務局を持つということで、ある程度独立して調査審議ができるスタッフが下に張りつけられるということになりますから、従来よりはより活発な審議調査ができるだろうと思います。

紀藤参考人 消費者政策委員会に関しましては、はっきり言って、まだ未定稿というか、予測ができないというか、特に目新しいものがあるのかと言われたら、意見を直接述べるというものでありまして、今の国民生活審議会がほとんど私は実際上機能していないと思うんですけれども、そういう意味から見ると、斬新な部分としては少ない部分が大きいんじゃないかなと思います。

 その最大の理由の一つに、委員が十五人という、やはり規模が大き過ぎるということがあります。具体的な実動委員会ということになると、委員は五人程度で十分じゃないかと思います。

 それは、消費者権利院法案だとたしか五人程度になっていたと思うんですけれども、そのぐらいでなければ、委員が十五人もいるとまとまらないと思いますので、もし政策委員会を具体的な実動委員会のようなものにしていくのであれば、十五人という数は、最高裁判所の裁判官が十五人いることを考えても、やはり余りにも大きくてまとまりに欠くというのが私の意見ということになります。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて松本参考人に伺いますが、いわゆるすき間案件の対処の方法についてですけれども、少し論点整理といいますか、政府案と民主党案、両案における特徴点ですね、長所と短所といいますか。このすき間案件の対処方法についての両案のポイントについて、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

松本参考人 そんなに変わらないと思います。

 ただ、法律論的に、民主党案の方が、従来なかった仕組みですから、議論の余地はいっぱいあるんだろう、それが実現するなら、非常にユニークな、新しい制度として意味があると思います。しかし、やろうとするところは基本的に同じです。

 ただ、民主党案は、すき間には限らないんだというところを強調されているところがあって、そもそも民主党案では権利院には何の権限もないわけですが、本来の権限のある官庁が動かない場合にも、権利院がその種の訴訟を起こして何かできるということをたしか強調されていたかと思います。そこは、政府案ではすき間に限定しているわけですから、違いがあると思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて、両参考人に違法収益の剥奪に関連してお尋ねしたいと思っています。

 先ほども幾つかお話もありましたけれども、民主党案では、今回消費者団体訴訟の法案が提起をされて、それでの対応ということになるわけですけれども、政府は今回この問題を先送りしているわけであります。

 違法収益の剥奪の必要性というところでは一致しているんでしょうけれども、先送りをした理由といいますか、何が課題となっていたのかという点を論点整理するとどんなことがあるのか。その点について、先送りした理由といいますか、何が課題として考えられていたのかということについて、お感じのところをそれぞれの参考人からお聞かせいただけないでしょうか。

紀藤参考人 とりあえず、最大の理由は、やはりやる気の問題だと思います。

 やはり、立法機関と官僚の問題というのは永遠の課題だと思います、行政と立法機関というのは。行政官僚が持っている先例性とか法律の縦割り的な発想であるとか官民の区別であるとか、そういうものに立法機関がまさに挑戦する問題だと思います。ですから、立法機関が立法すれば、それは法整合性の立場から全体の法体系が変わるということを意味しますので、それはぜひとも法体系の問題として考えていただきたいと思います。

 それで、特にいわゆる昔流の法律家に一番多いのは、行政法と私法との峻別です。いわゆる公法私法峻別論という議論がありまして、国と市民との関係と市民、市民との関係は峻別しないといけないというような考え方がまず一つ基本にあります。ですから、違法収益の吐き出し制度というのは、まさに国が民間にかわってやる制度ですので、これは民民のルールに国が関与するということで、特に精神的なあつれきが多いという領域でありまして、特に反対があります。

 ただし、そういった反対を押し切って、犯罪被害者基本法ができ、犯罪被害者が刑事司法に参加するルールができ、犯罪被害者が損害賠償を刑事事件の中で請求していくルールができてきたということで、実は、二十一世紀以降、ヨーロッパでは当たり前のルールが、官民峻別論あるいは公法私法峻別論を打破する形で、日本の古い法体系を打破する形で成立してきたという歴史を考えると、この違法収益吐き出しは、ほかの国ではやっている制度であるわけですから、公法私法峻別論だけでははかれないということで、別途のルールとして当然にできる制度と私は考えていますので、ぜひ立法機関で、古い法律家の、古い頭の人たちにだまされないで、ほかの国でやっている制度ということで、法律をぜひともつくっていただきたいなと思っております。

松本参考人 紀藤参考人のおっしゃったことと基本的に近いことでありまして、一つは、やる気があるかないかだろうし、もう一つは、伝統的な法律になじまないんだという議論がいつも新しい制度を導入するときには出てまいります。差しとめについて消費者団体に権利を認めるという法律をつくるときにも、相当そういう点で、従来なかった、我が国の法律になじみがないからという議論がございました。そこを何とか乗り越える努力をしていかないと、なかなか難しい。

 特に政府提出立法の場合には、非常にかたい法制局を突破しなきゃならないわけですから、それを説得するためにきちんと研究を徹底的にしないとだめだというところがございます。

 その点、議員立法はもう少し緩やかに大胆な発想を取り入れることも可能ですから、議会の方でそういう新しい発想を取り入れた法律を制定されることはよろしいかと思いますが、ただ、やはりちょっと先まで詰めた上でやっていただかないと、うまくいかないということにもなりかねないかと思いますが、その点はよろしくお願いいたします。

塩川委員 ありがとうございます。

 紀藤参考人に、違法収益の被害者還付制度の必要性のことで。

 お話の中でも、国税との関連のことがございました。過去、豊田商事事件やジー・オー事件などで還付事例があるということも伺っているんですけれども、ここでも、個別事案ごとに国税庁の胸先三寸で還付が決められているのは行政の統一性の観点からも不合理だというお話がございました。

 その還付事例の具体的な内容、特徴をお話しいただきたいのと、あと、法制度とすればオウム真理教に係るものがあるんですけれども、それがどういうものであって、これを本来包括的な制度として行うべきだというところに教訓として生かせるもの、考えていることがありましたら、関連して御説明いただけますか。

紀藤参考人 国税の制度は、ジー・オーの事案も豊田商事の事案も、いずれも詐欺で摘発された事案ということになります。詐欺で摘発された事案に関しては、その詐欺で認定された企業から得られた税金というのは基本的に違法収益という、当時は違法収益という発想じゃないんですけれども、得られた利益は、いわゆる犯罪で得られた収益がいわば国庫に帰属しているという状態ですので、それを是正するという立場から、国税というのは税の中立性という議論をよくしますけれども、これも税法の古い学者の意見で当然あるわけですけれども、それを打破して、いわば国税庁が詐欺で得られた収益はやはり被害者に返すということで、豊田商事事件で初めて先例をつくり、その後、ジー・オー事件で先例が生かされた。

 今、ワールドオーシャンファームでも、エル・アンド・ジーでも、近未来でも、同じようにこの税金を返すという制度をやってほしいということを国税に申し入れているところです。

 ちなみに、近未来通信は、二千万円しかいわゆるお金がないんですね。二千万というのは破産管財人の報酬金で全部消えてしまう金額ということで、基本的にはゼロなんですけれども、ゼロだとすると、国税からの還付金というのがすごく重要になる。実は還付金だけでも三億円ぐらいあるというふうに考えられます。

 ですので、これは被害者にとっては極めて重要なお金なんですけれども、二つの問題点があって、基本的に刑事事件で詐欺で立件されないものに関しては国税は返さないという方針であるということです。詐欺で立件されるかどうかは、そのときの時代情勢によって、警察の胸先三寸で決まる面があります。ですので、だれが見ても詐欺事案に関しても、詐欺で立件されない限り国税からは還付されないということになります。

 それから、破産手続がなされなければ破産管財人がつきませんので、そもそも還付する対象がありません。ですから、破産申し立てができず、単に破綻したというような事案に関しては、この国税からの還付ができない、そして被害者が泣き寝入りになるという実情があって、最近では、和牛預託商法でふるさと共済牧場というのが破綻したんですけれども、これは二百億円を超える被害があったケースなんですが、結局、破産申し立ての予納金が集められずに、被害者がそのまま泣き寝入りになったというケースがあります。これも恐らく、破産できれば、詐欺で摘発されておりますから、国税の還付金という問題が生じたと思うんですけれども、それがそのまま泣き寝入りになっているという事案があります。

塩川委員 時間の関係で、地方消費者行政に関連して幾つかお聞きしたいと思います。

 今、消費生活センターの弱体化の問題などもございまして、地方消費者行政の予算が大幅に減少しているということがあります。いろいろお話を伺っておりましても、啓発や未然防止の予算がそもそも大幅に削られているですとか、消費者団体への補助金もどんどん削られていくという中で、現場の最先端の方が一番御苦労されている事態が生まれているわけで、消費生活相談員の方は新聞も本も買えない、読めないというような状況にも至っているということが挙げられています。

 そういう点でも、相談員のレベルアップの障害にもなっているわけで、本来、相談業務にしてみても、支援行政としても充実が求められている、被害状況などの新たな問題も多数起こってきている点で、なぜこんなふうに後退してしまったのかなというのは率直なところ思うわけですけれども、その要因について、松本参考人にお伺いいたします。

松本参考人 いろいろ考えられると思います。

 一つは、地方自治体、地方でありますから、首長さんがどれだけやる気があるのかというところに、地方の場合は予算配分等で差がつくわけですから、やる気のない、余り関心のない首長さんの自治体であれば、そもそも最初からそういう相談員も置いていないし、置いていたとしてもほかの必要性が出てくればすぐになくすということになりがちである。トップがどうかによって変わるというのが、地方自治のいいところでもありますし、怖いところだろうと思います。

 さらに、地方の消費生活センターや相談員がきちんと法律上位置づけられていなかったことというのも一つ大きな影響があるのではないか。すなわち、全体として税収等が減る、交付金が減る中で、全体の減る中で、地方のさまざまな行政需要にどれだけの予算、どれだけの人を割くかということを地方のトップは考えていくわけですが、その際に、法律的な根拠がない部門の場合ですと減らすターゲットにされやすいというところが一般的にはあるんじゃないかと思います。

 当該消費者行政をやっている部門がこれは重要なんだと言っても、別に法律が何もそういうことを求めているわけでもないんだからということで、自治体内部の財政当局に対して強く主張ができないということ。地方全体の予算の減少以上に、消費者行政の予算減少がそれ以上に出ているということの主たる原因はそこにあるのではないかなと思われます。

 その点については、今回消費者安全法によって少し手当てがされたので、精神的な規定といえば精神的な規定ですけれども、若干の改善が図られるのではないかなと思われます。地方のトップの方の意識を改善する、それから消費者行政を担当している方々の発言力を高めるという効果があっただろうと。

 ただ、それでも地方全体の税収が減っている中でどうするんだということでありますから、その分、国が何らかの支援をする必要があるのではないかと思います。

塩川委員 あと、特に広域あるいは専門性を担うような都道府県における消費者行政ですけれども、必ずしも行政権限が十分に機能していないんじゃないのかということをお聞きすることがあります。

 先ほど紀藤参考人もおっしゃいましたように、警察との連携がしやすいという側面もあって、例えば東京都などではかなりそういう点では取り組みがあるというふうにお聞きしているんですけれども、それが全体のものとなっているわけではないのだろうと。中には、相談員に対して、情報収集するだけでいいんだ、救済にまでそんなに努力しなくてもというようなスタンスがかいま見えるような行政側の対応があったりとか、県の条例があっても、この条例をそもそも周知していないとか、その条例を使わせようとしないとかいう話なども相談員の方から伺う機会がございます。

 こういった現状について、今回の両法案などでの対応はどうなっていくのか。消費者行政の拡充という点で、都道府県の機能をどう生かしていくのかということについて、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。お二方にお願いします。

紀藤参考人 地方の消費者行政については、行政組織と非常に不可分にかかわっているという関係で、私は、ちょっと先ほどから意見をできる限り控えていたんですけれども、もう繰り返し聞かれますので、自分の意見を開陳します。

 まず、地方自治体での消費者行政については、都道府県と市町村ということで、場所的な二重行政になっているという面があります。どちらに行けばいいのかというのは、地元の人にとっても、どちらに行ってもいいということなんですけれども、県の出先があれば県の出先に行くというのが恐らく普通だと思います。

 そういう中で、県の消費生活センターの出先があるところにわざわざ市の消費生活センターを置く意味は、確かに市の方にはないということになりますので、結果的に予算が減る、あるいは、地方自治体はほとんどが人口減で苦しんでいますので、人口減の中で、できる限り自治体に住んでいらっしゃる方の生活を支えながら、かつ二重行政を防ぐという意味で、どんどん消費生活センターが削られていくといった歴史をたどったというのが実情だろうと思います。

 それで、これを改善するにはどうするかということなんですけれども、実は相当難しいのではないかというふうに思います。私は山口県出身なのでよくわかるんですが、やはり田舎で人口が減っていって、県全体でも百万人ちょっとの人口しかないときに、さらにこれから生活重視といっても、なかなか予算の関係で難しいんじゃないかという実情にあるところで、やはり国の予算がある程度行くような仕組みをつくらないと、地方自治体で頑張ってくださいねといっても、高齢者が多い、子供はほとんどいない、働き手がほとんどいないような都道府県だと、実際には極めて難しいのではないか。

 そうなると、最終的に、地方自治体と中央との関係は、今の日本がまさに象徴的なんですけれども、ナショナルミニマム的な発想をしなければどうしようもないんじゃないかな。日本のどこに住んでも、最低限同じ程度の行政サービスは受けるという発想をしないと難しいんじゃないかな。地方自治体だけに任せていたら、破綻する地方自治体も出る中で、ナショナルミニマム的な考え方がなければやはりやっていけないような自治体も出てくるんじゃないかなということを懸念すると、国の役割も大きい。

 ですから、民主党の考え方というのも、地方のことを考えると、十分に理解できる面もあります。

松本参考人 今の御指摘は、恐らく、法律の問題というよりは、やはり予算措置をどうつけるのかというところが大きいんだろうと思います。

 それで、第二次補正予算で百五十億円の基金が各都道府県に出されて、各都道府県、さまざまな企画を考えて、三年間で使い切るということをやっているはずです。ただ、直接的な人件費には充てられないので、それを何とかしてくれというのが各自治体からの要望です。

 ただ、二次補正の別の費目、ちょっと正確な名前は忘れましたが、何たらかんたら活性化交付金というものがあって、それは各自治体が自由に使えるお金である。その中で、消費者センターの相談員を増員したり、職員を増員したりしている自治体も既にかなり出てきているということを聞いておりますから、国が一定のお金を出し、そして自治体の首長が意識してきちんと取り組む、それによってかなり改善されてくるんだろう。取り組まない首長がいる自治体は、次の選挙で落選するんだというぐらいに消費者の意識が高まらないと、これはうまく回らないかもしれない。そういう意味で、消費者教育というのは市民教育だと思います。

 以上です。

塩川委員 最後に、松本参考人に、ほかの方からも御質問ございましたけれども、地方消費者行政の拡充のために、マンパワー、こういった人件費の手当てというのはどうしても必要なわけですけれども、国の支援方法としてどのような方法が考えられるのか、そういう点で、国も国会も知恵を出してという話もありましたけれども、先生もぜひ知恵を出していただいて、何か工夫があるのじゃないかと先ほどもおっしゃっておられましたが、その辺で何か示唆するようなものがもしありましたら、簡単で結構ですけれども、いかがでしょうか。

松本参考人 はっきり言って、私はこの分野の知識はほとんどございませんから、わかりません。

 自由に使えるお金を交付するとほかの目的に使われるから、目的を絞って国がお金を出すという形にできれば、地方の行政だけれども国からの支援で動くということになるんでしょうが、そういうのが、何か建前上、今はだんだんできなくなってきているという話を聞きます。そこが何かうまくいかないものだろうか。消防とか警察と並ぶセーフティーネットとしての消費生活センターということでうまくいかないだろうか。これは、自治体の首長の方が意識をすれば変わるはずなんです。私のところは消防署は要らないんだなんという首長がいたら、次の選挙は恐らく通らないはずなので、そういうふうになれば、国が一々縛らなくてもいいのかもしれないです。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 どうも紀藤先生、しばらくぶりでございます。

 きょうは、お二人とも、大変お疲れのところ恐縮でございます。

 最初に松本先生にお伺いをしたいのですが、先生のレジュメといいますかメモの中で、消費者行政には四つのタイプがあるんだということをおっしゃった上で、現在の消費者行政の一元化に関しては規制行政と支援行政が中心である、そういう意味では協働行政と救済行政が非常に弱いのではないかという御指摘だと思います。

 救済の方は後でまた改めてお伺いしたいと思うんですが、協働行政としての側面を充実するというのは大変重要だというふうに私も思っております。例えば、政策委員会もそうかもしれませんけれども、情報の分野とかいうところで、本当に消費者団体であるとか消費者が積極的に、能動的に関与できるといいますか参加できるといいますか、そういう形をつくっておくことが望ましいのではないかという思いがあるんです。

 そういう意味で、協働の分野ということでいえば、この消費者庁設置関連法の中で、どこをどう補強していったり、あるいは強化していくかということになるんでしょうか。これは今なのか後なのかということもありますけれども、先生のお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

松本参考人 協働行政というのは、法律を執行するというたぐいのものではなくて、いわば、企業、消費者、行政が、その二者あるいは三者が協働して何かに取り組む場を設定するという、何か一般的な行政とでもいうのでしょうか、そういうものですから、消費者庁設置法案の中に書き込むとしてもかなり一般的な規定の仕方になると思いますが、何か手がかりになるような規定が置ければいいかと思います。

 食品安全基本法ですと、食品安全委員会の任務としてリスクコミュニケーションというのが書かれておりましたが、たしかその部分は消費者庁の方に今回移ってくる、リスクコミュニケーションの方は消費者庁がたしか担当するという切り分けになっておりましたから、その点についてはどこかに手当てがなされているはずで、それはいわば法律に基づく一種の協働行政だと思います。

 それ以外に、事業者の自主規制を促進するために、消費者と事業者の間での話し合いの場を設けるといったようなこと、あるいは、信頼できる事業者かどうかを判別するためのマーク制度のようなものの普及に努めるとか、そういったいろいろな、非法律的な、いわば自主規制促進的な事柄がいろいろあるかと思います。

日森委員 ありがとうございました。

 引き続きになりますが、これも私も大変重要だと思って、消費者庁が設置をされて横並びの官庁になるだけでは、本当の意味で消費者行政が前進するということにはならないだろうと。これも先生のレジュメの中で、行政の構造改革というのが当然必要なんだという御指摘がございました。

 これは、横割りでの消費者行政として一元化をするんだということなんですが、消費者庁自身は、手足は主に既存の各省庁で働いてもらうという格好になるわけで、そうすると、消費者庁以外の既存の省庁のまさに意識変革も含めたものがないと、消費者庁お任せよという話で終わってしまうのではないかという気がしているわけです。この構造改革、各省庁がパラダイム転換を当然していかなきゃいけないわけで、具体的にはどのようなことをお考えになっているのか。

 例えば、消費者団体などでは、各省庁の評価の項目に、消費者に顔を向けた、目を向けた行政がちゃんと行われているかというようなことをきちんと入れて評価の対象にしていくとかいうようなことも考えなければいけないのではないかということや、あるいは、消費者庁から指示があった場合、それを義務としてきちんと果たしていかなきゃいけないことを制度的に決めておくことも大事なんじゃないかとか、いろいろな意味で、この消費者行政を一元化で一体的にやっていくという意味では、本当に構造改革が必要なんだというふうに思うんですが、先生の方では、何か具体的に各省庁に、こんなふうに改革すべきではないのか、求めるべきものがあったら、教えていただきたいと思います。

松本参考人 消費者行政の一元化という点で、私、一ページ目から二ページ目にかけて、三つの一元化というのを挙げました。政策立案、規制の一元化、情報一元化、相談窓口一元化と。

 今回、情報の一元化と相談窓口の一元化はかなり進んだと思います。政策立案と規制の一元化については、例えば規制関係は、所管法律はわずか二十九じゃないか、全然一元化じゃないじゃないかという御指摘はあるだろうと思います。そういう意味では、身近な部分についてのみ消費者庁として積極的に関与できる状態にし、ただ、政策立案については、消費者にかかわる限りはかなり関与できる、広くなっているというところがございます。

 したがいまして、直接消費者庁が執行するのではないような法律、あるいは執行の部分については最終的に各省庁の出先に任されているようなものについて、本当にちゃんと消費者庁設置法の精神に基づいて各省庁がやってくれるのかどうかというのは、実際に運用してみないとわからないところでありますから、そこについての事後的なチェックを、きちんとした第三者機関といいましょうか、消費者政策委員会でも消費者権利委員会でも結構ですが、そういうところがやるということ、それがセットでないとこの改革はうまくいかないだろうと思います。

 それから、消費者庁以外の行政官庁でありますが、農水省の事故米問題というのが昨年非常に大きくクローズアップをされまして、有識者会議ができて、一定の結論が出ておりますが、一番大きいのは、ミニマムアクセス米の輸入総販売元が農水省であり、その販売ルートを監視するのも農水省、ともに出先の食糧事務所でしたかがやっているに近いということで、プレーヤーとアンパイアを同じ人が兼ねるというのはそもそもできないこと、利益相反なわけですから。

 そういうような観点から、各行政ともに、業を振興するための行政、あるいは、みずからビジネスっぽいことをやる行政の部分と、それから、それのコンプライアンスといいましょうか、法律をきちんと守っているかどうかをチェックする部分というのは、少なくとも省内できちんと分けてもらわなくちゃならないし、できれば別の官庁がそこをチェックするというような仕組みの方が、より透明性の高い行政になるんじゃないかなと思っております。

日森委員 紀藤先生、突然で申しわけないんですが、いろいろな課題に取り組んでいらして、行政の対応の遅さということにじくじたる思いをお持ちになったこともたくさんあると思うんですが、そんな御経験を踏まえた上で、今、消費者庁ができるということが前提なんですが、できた段階で、各省庁に変わってほしいというような具体的な思いか何かがおありでしたら、教えていただきたいと思います。

紀藤参考人 これだけは言っておきたかったんですけれども、こういう問題をやっていると、弁護士はもうかるんじゃないかみたいな、何かうがった見方の論調を雑誌社で書いているところがあるんですけれども、そんなことは毛頭も考えていなくて、現場でやっている弁護士はみんな疲弊しているというのが実情なんですね。やってもやってもやっても次から次に被害者が来て、そして自分の時間がどんどんなくなって、私は毎日十二時以前に事務所を出ることはほとんどありません。そういう実情で、活動を続けていても被害は減らないんですね。

 被害が減らない理由というのは、結局、繰り返す加害者がいるということと、それからだまされる被害者がいるというこの二つに尽きるんです。そうすると、繰り返す加害者を減らして、そしてだまされる被害者を減らすということの問題に尽きますので、そういう意味では、消費者教育とかが極めて重要だし、違法収益吐き出しが必要だし、それを形づくる制度設計が必要だというふうに思っているわけです。

 今回、民主党が生活者政党と名前を挙げ、頑張っておられることもわかっていますし、それから、自民党政権の中で福田康夫さんが、先ほど言われたように、生活者の立場、国民の目線で考えるということを積極的に言われたということは、本当に感謝にたえなくて、もう涙が出る思いなんですけれども、その中で、消費者庁ができれば期待することは、生活者目線で、消費者の目線ですべての行政が変わっていくことだというふうに思います。

 検察庁も、やはり消費者基本法ができてから目線が変わりました。あるいは、基本法ができる以前から、次第に目線が変わってきました。やはりそういうことを踏まえて考えると、警察、検察庁と言った方がいいかもしれませんが、各警察も含めてなんですけれども、同じように、消費者庁ができれば目線は次第に変わってくると思います。

 その中で、絶対につくってもらいたいのは、何個もあるんですけれども、大事なルールとしては一つあると思います。それは、コンプレイント制度に認められるような、九十日ルールとか、六十日ルールとか、一カ月ルールとか、要するに、申し入れがあったら一定の期間で判断する、結果を出さないといけないルールをつくることです。できるかできないかをはっきりさせてもらう、できないならできない、できるならできるとはっきりさせてもらうルールをつくっていただきたいと思います。

 例えば、児童相談所に児童虐待の通告をすると、四十八時間ルールということで、二日以内に何らかの結論を出さないといけないというルールがあります。それと同じような制度を行政各位につくってもらいたいと思います。

 例えば、情報公開制度で情報公開を求めても、六十日ルールとか九十日ルールがありませんから、いつまでたっても情報公開の結論が出ないということもしょっちゅうあります。

 行政というのは、自分たちに不利益な制度というのは全くつくらないので、要するに外圧でしかつくりませんので、ぜひとも立法機関の方で、規則とかそういうものでもいいと思うので、ルールを決めてもらいたいな。そういうものがあれば、消費者庁や消費者権利院ができても、結果的に機能していくんじゃないかな。人の問題はもちろん重要なんですけれども、やはり制度設計の問題が非常に重要だと思います。

日森委員 ありがとうございました。

 続いて、松本先生にお伺いしたいんですが、政府案の最後のところで、A、B、C、三点挙げてございまして、チェックの必要性ということについてお触れになっておりました。

 私どもも、相当な権限を持ったチェック機関か組織か、そういうものが当然なければならないと思っているんですが、できればこれは消費者庁設置と同時にセットするのが実は望ましいんじゃないかという思いもあるんですが、あえて先生は設置後だというふうにされておられるんです。

 これは何か、先ほど、紀藤先生の話で順序の話が、あれは僕は知らなかったんですが、オンブズマンができた後に消費者庁をつくってきたという過去の歴史があるという話を聞いて、ああ、そうかという気もしたんですが、松本先生の方で設置後というふうにされた思いが何かありましたら、教えていただきたいと思います。

松本参考人 ここの部分は、民主党案を考えに入れないで政府案についてのみ評価していけばどうなるのかという流れでありますから、政府案は意欲的にいろいろやろうとしているんだけれども、本当にこの仕組みで動くんだろうか、うまくいくんだろうかというのは、すべての国民がやはり注目していることでありますから、そこをきちんとチェックする仕組みが不可欠だろうと思います。

 その上で民主党案の発想を取り入れればどうなるんだろうかなというのが次の展開でありますから、消費者政策委員会を、例えば消費者権利委員会という形に名前を変えて、紀藤参考人もおっしゃったように人数もうんと絞って、きちんと議論をして動きやすい形にした上で権限を行使してもらうという形で二つの案を合体するというのは十分考えられるし、魅力的なプランだと思います。

日森委員 ありがとうございました。

 救済のところで、またちょっとお二人にお話を伺いたいと思うんですが、不当利得を吐き出させる制度については、それぞれお二人の参考人ともに、やるべきだというふうにおっしゃっておられましたけれども、これについては、法律家の中でもあるいは法務省の中でも、いろいろ異論もあるというふうに聞いています。

 それから、クリアしなきゃならない課題も現実問題としては出てくるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺について、お二方から御見解をそれぞれ順次お聞きしたいと思います。

紀藤参考人 この点は、ぜひ米国の実情を視察に行ってもらいたいと思います。行政は当然、自分たちでお金を出してやるわけですけれども、立法機関の方でもぜひ視察をお願いしたいと思います。

 その際、重要なのは連邦です。アメリカは、州と国ということで二つの行政機関を持っています。父権訴訟は州にもありますし、連邦にもあるわけです。ところが、州の父権訴訟は、法律の根拠に基づかない、いわゆるコモンロールールに基づいて行われているもので、歴史的に州の権限として認められたという制度なんですね。ですから、日本の制定法主義に合わないという意見、まさに対抗してしまいます。

 ですけれども、アメリカという国は、連邦全体のことについては、これは法律で定めないと州の権限と矛盾してしまいますので、連邦は法律をつくって運用しているんですね。FTC法、いわゆる父権訴訟や違法収益の吐き出しを認めているFTC法は、これは制定法なんです。ですから、日本の法制度とそれほど矛盾しません。ですので、ワシントンにあるFTCをぜひ訪問していただきたいというふうに思っております。

 私は、去年FTCを訪問した訪問記をきょう資料で配付していますけれども、FTCは、日本に消費者庁ができたときのため、あるいは消費者問題を担当するセクションができるようというか、できてもらいたいということも含めて、国際部というのを数年前につくりまして、各国の消費者行政の取りまとめないしは連絡調整役をやっているセクションが既に置いてあります。

 消費者庁がない国というのがもうほとんどなくなってきている実情ですので、国際的連携をとるという意味でも、消費者庁、消費者庁大臣というのが重要なんですが、そういうところで連動をとっていただければ即座に対応するというふうに私はFTCの担当者から聞いております。

松本参考人 なかなか難しい問題でありますが、考える論点としては、例えば損害賠償をきちんとさせるということを中心に組み立てるのか、それとも不当な利得を保持させないというところを中心に組み立てるのかというのがあります。

 また、その場合の法律を執行する者はだれと考えるのか。消費者団体にさせるのか、それとも行政にさせるのか、あるいは、組織犯罪処罰法に基づいて犯罪収益として没収をしたものを警察が分配するという仕組みもありますから、あれをもっと拡張するというのも考えられるわけでありますから、そういった幾つかの選択肢の中でどれが一番いいのか。

 これは恐らく、被害のタイプによってどのやり方が一番適切かというのが変わってくる可能性があると思いますから、そういったことを含めてもう少し広範に、民主党の案も一つでき上がったものでありますから、これも一つの重要な選択肢として、もう少しほかの案も含めて検討をするのがおもしろいのではないかと思っております。

 私は、先ほども言いましたが、とりわけ少額多数被害、例えば不当表示で一人十円だけ損をしたんだけれども、企業は一億円もうけているといった場合に、これは損害賠償型では機能しないです。つまり、十円の損害を一人一人の被害者に返すための費用は恐らくすごくかかるわけですから、そういうのが果たしていいのかどうか。

 それなら、適格消費者団体が、その種の少額多数被害についてはみずから消費者のかわりに損害賠償の請求ができて、それは適格消費者団体の活動資金に充てられる。しかし、その資金の使途については透明性が一〇〇%確保されていなければならないということで厳しく縛りをつけるというような形でつないでいけば、資金の全くない困っている適格消費者団体がもっと活発に動けるようになる。そういうようなことも一つ考えられるのではないかと私は思っております。

日森委員 終わります。どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、お二方の参考人、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 私は最後の質疑者でございますので、忌憚のない御意見をいただければというふうに思っておりますし、思い残したことがございましたら、またおっしゃっていただければというふうに思います。

 お二人の参考人にお尋ねをしたいんですが、今、消費者や生活者を主役とする社会の実現、あるいは消費者の立場に立った行政の確立、こういうものを目指して、政府案そして民主党案というものが議論されているわけですけれども、これからの消費者行政、これが社会全体の中でどういう位置づけで、そしてどういうような理念のもとで、どんな使命を果たしていくべきなのかということ、まずこの大原則についてお尋ねをしたいなということ。

 それから、近年、紀藤先生は本当にさまざまな新しい形の消費者問題にお取り組みでもいらっしゃいますけれども、行政の問題とともに法の不備、こういうものが指摘されているところでもございます。我が国の消費者法において最も欠けている点はどういうところなのか。

 これはお二人の参考人からそれぞれお伺いしたいというふうに思います。

松本参考人 まず、消費者行政の使命は何かと、非常に大きな御質問をいただいたと思います。

 私、そもそも、消費者行政に限らないで、国家はなぜ必要なのか、政治はなぜ必要なのかということを最近考えておりまして、いろいろ必要なんでしょうけれども、突き詰めれば何かというと、国民の安全を守る、それから国民を豊かにする、この二つに集約されるのではないかなと思います。

 そういう意味で、国民の安全を守るという点、これが消費者行政の一つに当然つながってまいります。安全、安心して暮らしができる状態をつくるために国が何をやれるのか、これが消費者行政です。

 豊かにするという点は経済政策だとか雇用政策といったことだろうと思いますが、最近のような経済危機の中で、不況だ、雇用がどんどん破綻してきて失業者がふえている、しかし、社会保障のセーフティーネットもうまく機能していないというような状況で、消費者、国民は、現在の自分が食べるものについても不安を持っているし、将来の生活についても不安を持っているわけであります。これをどうするんだというのが政治の役割だし、それを執行する行政の役割だろうと思います。

 そしてもう一つ、その安全、安心ということと並んで重要なのが、それに加えて、消費者というのは、単に物を消費して生きていく、そういうものじゃなくて、もっと生きがいを持って、世の中をよくしたいということで活動しているわけです。

 例えば、環境に関心を持っている消費者が非常にふえているわけで、そういった社会的な意識を持って社会に参加し、市場に参加していく消費者を育てていくという、消費者教育の課題なんでしょうけれども、これも消費者行政の非常に大きな課題だと思います。

 消費者市民という言葉を昨年の平成二十年版の国民生活白書は使いました。単なる消費者ではなくて消費者市民なんだと。消費者市民を育てていくというのも消費者行政の大きな使命だと思います。

 以上です。

紀藤参考人 一つは発想だと思います。

 発想の転換がすごく重要で、その発想の転換をまさに立法府が今したということになると思います。それで、した発想を各行政府に生かそうとすると、やはり立法の使命は非常に大きいなと。立法機関の役割はどんどん大きくなって、いわば行政の監視装置としての役割はすごく大きいんじゃないかというふうに思います。

 もう一つは人です。やはり行政のトップに立つ人がよくなければ、結局、行政はよくならないということになります。

 消費者庁ができたときに、担当大臣はどんな人がなるのか、消費者庁長官にどういう人がなるのか、それから、消費者政策委員会の委員長にどういう人がなるのか。消費者権利院ができたときには、権利院の院長はだれがなるのか、極めて重要で、ここに消費者視点、生活者視点の発想がない人がなれば、結局、具体的な装置はつくっても実現が難しくなると思います。ですから、人の選び方も含めてこの問題は極めて重要だと思います。

 では、トップにいい人ができたら動くのかと言われたら、多分、官僚が動かないとだめだと思うわけですね。そうすると、やはり今ある官僚をただ使うだけでいいのかという問題もかなり残りますので、装置をつくっても、結果的に、いい人、いい発想の人、両方が組み合わされないと難しいと思います。このあたりも、既存の装置を前提としてつくる以上はどうしても難しい面もあるかもしれませんが、ぜひ、人材、選出も含めて御検討いただけると助かります。

糸川委員 ありがとうございます。

 今、紀藤参考人が、例えば消費者政策委員会、こういうもののどういうような人選、構成がいいのかということも考える必要があるということをおっしゃられました。

 松本参考人が、いろいろなところで御意見を述べられていらっしゃいますけれども、望んでいらっしゃるというんでしょうか、私だったらこういう人選がいいんじゃないかというふうに思われている人選であったり構成というもの、何か御意見をお持ちでしたら、松本参考人に参考までにお聞きしたいんですが。

松本参考人 消費者政策委員会の人選ということでございますか。

 消費者問題について見識の高い人というような感じでくくるしかないんじゃないかと思いますが、その中で、もう少しジャンル的に分けていくとすれば、弁護士だとかあるいは研究者だとか、それから企業で実際にいろいろなことをやっていて定年でやめられた方なんかもおもしろいんではないかと思います。

 そういう多様な人材、しかし消費者問題については非常に見識が高い方、そして外から不当な圧力で影響を受けないような方をうまく人選して、自由闊達に議論していただくことが必要かと思います。

糸川委員 この消費者政策委員会というところが、これはかなり重要な位置づけになってくるんでしょうけれども、高い見識だけの方がいいのか。例えば、一般的に、主婦で通常の生活を営んでいらっしゃるような方の方が突拍子もない考え方を持っていらっしゃるとか、一般の方が気づいていても、逆に高い見識をお持ちの方が気づかなかったり、当たり前だろうといって見過ごしてしまっているというようなところで見つかったりするんではないかなと思うんですけれども、これは、紀藤参考人、そういう方も人選の中に入っていくというのも一つの方法かなと思うんですが、いかがでしょうか。

紀藤参考人 私は、先ほどから言いましたとおり、人数が十五人は余りに多いということがまず前提にあります。十五人ということは、結局何もやれないにかなり等しいという感じがします。

 民主党案を参考にするという観点、民主党案は五人ということですので、やはり五人、せめて七人とかその程度じゃないと、具体的な意見を出すという場面では物すごく議論が錯綜してしまって、十五人をまとめようとすると、結局、それについている官僚の人たちが、こういうのがいいですよということで持ってきた文案をそのまま採用してしまうということに恐らくなるんじゃないかな、今の国生審の答申なんかを見ていてもそう思える節がありますので、きっちりとやはり人数を限って、実際の実動の委員を入れてもらいたい。その方が主婦なのは別に構わないと思います。

 それから、さっきも言ったように、長官と院長が物すごく大事な人選だと思うんですけれども、私、これはもうはっきり申し上げますが、やはり日弁連の消費者委員会の推薦枠をつくっていただきたいなと。消費者問題対策委員会の先生方の中で長年やっていらっしゃる方は、簡単に言うと、過激に流れず、自民党の御意見も民主党の御意見も聞き、我慢ができ、しかも調整もでき、きょうお配りした消費者問題対策委員会の設立の内部の関係も私の論文に書いてありますけれども、やはり百五十人も委員がいますので、長年やっていらっしゃる方はそれぞれすばらしい方が多くて、そして人の意見が聞けない方はそもそも委員会にずっといられませんから、そういう意味ではそういう人たちはほとんどいません。

 だから、ぜひ消費者委員会の枠をつくっていただいて、日弁連の消費者委員会の枠として消費者庁長官ないし権利院の院長の枠をつくっていただければ、責任を持って送り込みたいと思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 今、紀藤参考人の御発言の中にも、先ほどの質問の中にあったんですが、例えば、これから消費者庁法案というのができ上がっていって、消費者対策がいろいろできてくると思うんですけれども、紀藤参考人が弁護団を務められていらっしゃる例えばエル・アンド・ジーの問題とか、次々とやはり、消費者の団体訴訟とかこういうのが起きてくるんですよね。

 例えば、国民生活白書によると、年間の消費者の被害額というのは三兆円とか、悪徳業者によるものですよ、こういうようなことで、どんどん出てきてしまうので、例えば消費者庁をつくって、今から起きる問題には対応できるかもしれませんけれども、では、消費者に対してお金を返すのをどうしたらいいかとか、そういうことは考えることができるかもしれませんが、被害に遭わないようにするためにまずどういうふうにしていったらいいのかということもアナウンスしなければ、結局後手後手に回っていってしまうと思うんですね。

 例えば、悪徳につながるのかな、では、エル・アンド・ジーに似たようなケースとか、近未来に似たようなケースとか、オーシャンファームとかああいうものに似たようなケースとか、やはりそういう事例で対応して、早目早目に被害を拡大させないように入っていかないと、結果、また被害額がふえてしまう、また訴訟になるということになると思うんです。

 害悪な企業と優良な企業との差別化というのはなかなか難しいところがあるんですけれども、ただ、正直言いまして、そういうところをしっかりと突っ込んで検査、調査、そういうものをしていかないと、この消費者被害というのは縮小しない、恐らくなくなっていく方向にないのではないかなというふうに思うんですが、この点について松本参考人と紀藤参考人にそれぞれお伺いしたいんですが。

松本参考人 今のはどちらかというと悪質商法的な問題について特に御質問だと思うんですが、悪質商法、とりわけ紀藤参考人が挙げられたようなのはほとんど、もうかりますといってお金を出させるという商法、利殖商法ですから、これは人間性に依拠した商法で、やはり人間というのは欲がある、おいしい話はないと言われていても、自分のところに来ると、あると思ってしまって信じてしまうというところがございます。だれも信用しない人というのはいないわけで、そういう人間性につけ込む商法です。ですから、これは根絶は不可能だと思います。

 ただ、そういうことはさせないような環境をつくっていくということは少しは可能かと。つまり、早くそういうのを見つけて摘発をする、差しとめをする、あるいは、制裁を非常に重くして、そんなことでもうけても、後で全部吐き出す上にさらに吐き出さなきゃならないんだから損をするんだぞという状況をつくり出せば、悪質な人がそういうことをやらなくなるだろうと。

 それとあわせて啓発というのも必要ですが、啓発だけでは絶対に防げないと思います。

 したがって、適切な規制と事後的な制裁というのをきちんと働かせることが重要かと思います。

紀藤参考人 今の質問はいろいろな人からよく聞かれるんですけれども、私はこういうふうに答えるようにしています。

 どんな人でも、どんな専門家でもライフサイクルの中でいろいろな時期がある。例えば、紀藤は今は消費者問題の専門家かもしれませんが、当然、年をとれば、今のように働くことはできなくなるし、それから老眼が進んで本を読むこともできなくなる。そして、場合によっては老人性の痴呆的な問題にも陥る。そうすると、人間は子供のときから年をとるときまでずっと専門家ではいられない。ところが、悪徳商法を行う業者は常に入れかわり、常にその日一番おいしいと思っている手口を生み出して、その時代時代で変わっていく。そうすると、被害に遭わない方策をどんなに勉強しても、結果的に、交通事故のように被害に遭うことはライフサイクルの中では必ずある、あるいは起こる可能性がある。

 ですから、この問題は、勉強することも大事なんだけれども、特に、被害に遭ったときにどこに相談していいかという窓口を的確に知ることが最も大事だろうというふうに言っています。

 それを事前の知識、事後の知識と私は言っているんですけれども、事前の知識は確かにいろいろな手口を知ることなんです。でも、事後の知識としては相談先を知ることなんです。ですから、自分は知っているかもしれないけれども、各家庭で例えばお米屋さんや酒屋さんの電話番号を書くように消費生活センターの電話番号を書いておけば、子供だって自分からかけられるし、そういう知識を知らない人だって普通に家庭にあれば電話をする気になるということで大事なのじゃないかということを、いつも、常日ごろ言っています。

 そういう意味では、とにかく相談窓口を周知徹底するということが重要で、国民生活センターに相談がどんどん集まるようになったのも、まさに国民生活センターが知られてきたということに尽きると思います。

 あと一点、済みません。

 米国では談合がほとんどないと聞いています。それは、課徴金で談合で得られた利益はほとんど吐き出させた上に、さらに大きな課徴金をかけるということで、割に合わないという発想が企業に進んだからだと言われています。

 同じように、結局、この問題というのはもうかるから続ける。刑務所に十年入っていたら一億円がプールされていると思えば、人をだまして十年入る方が一億円の宝くじよりも楽なんですよ。簡単に言うと、一億円をためるのは、人をだまして十年入ったら、まあ実際の詐欺というのはほとんどが三年から五年なんですね、組織的詐欺でも十年ぐらいの話なので。一億円をためるためには十年入るだけで済むと思うんだったら、宝くじを十年買うより得だというのが彼らの発想なんですよ。

 そういう人たちから、とにかく犯罪を繰り返させない方法は、違法収益を吐き出させる以外に手がないんですね。だから、ここを重々考えていただきたいなというのが私がいつも思うところです。大体二、三年で一億というのが彼らの発想ですから。

糸川委員 ありがとうございます。

 相談先をしっかりと周知徹底していくということと、やはり制裁をしっかりと重くしていかないとやり得になってしまうということですね。ですから、そこはしっかりとしていきたいと思うんです。

 紀藤参考人に、日森先生なんかも先ほど質問されていましたけれども、では、例えば課徴金を取った、もしくはもうけたお金を取り上げたということにして、被害者へ還付するということに対して、還付の方法というのも、これもまた難しいところもあると思うんですね。一つだけの事例で返すよということだったらわかりやすいのかもしれませんけれども、幾つかの詐欺を重ねているような会社ですとか、そういうケースの場合は還付というのは非常に難しくなってくるのかなというふうに思うんです。

 先ほどの松本参考人の御発言のように、どこかにプールをしてそこの活動資金にするとかということも一つの手段かもしれませんが、この還付の方法について、何か御意見がございましたらお聞かせいただけますでしょうか。

紀藤参考人 今メモが入りまして、きのうのワールドオーシャンファームの求刑は主犯で十五年、その他は三年半から四年ということなので、組織的詐欺の場合は十年を超えるケースはたまにあるんですけれども、ほとんどの詐欺事案は三年、五年、本当にその程度で、刑罰が軽いという問題もあるんですけれども、やはり違法収益を吐き出させないと、刑罰の軽さを補って余りあるということになると思います。

 それで、今の質問は、既に制度としては組織犯罪処罰法にいわゆる没収、追徴規定というのがあって、刑事事件の没収、追徴規定があって、その没収、追徴をした財産に関しては犯罪被害財産ということで犯人から剥奪して被害者に還付する制度が、平成十八年の十二月一日から施行されているという制度が一つ参考になります。

 それから、振り込め詐欺救済法、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律とえらい長いんですけれども、この法律が昨年の六月二十一日から施行されて、銀行の口座に残されている犯罪収益の一部が被害者に還付される制度がつくられているのはもう御承知おきのとおりだと思うんですけれども、基本的にはそれに類似する制度を、省庁縦割りじゃなくて、いわゆる国に集めた上で、それを被害者と認定できる人に返す制度をつくるべきだというふうに私は思っています。

 これはなぜかといいますと、結局、犯罪類型ごとに、あるいは縦割り行政の所管官庁ごとに、この種の違法収益はいろいろなところに、いろいろな部分で埋まるんですね。先ほど、国税にも埋まっているんですね。

 それから、ほとんどの不明預金、いわゆる匿名預金のたぐいになってくると、だって、利用者がもう何十年もあらわれない預金というのは、いわゆる犯罪収益である可能性が極めて高いんですよ。要するに、逮捕者が匿名口座をつくって、他人名義の口座をつくって、そして自分は刑務所に十年行って戻ってきたときにそれをおろすというようなことで、埋まっている預金である可能性がすごく高いんですね。

 そういう預金であるとか、国税であるとか、銀行口座の振り込め詐欺ではっきり明々白々わかるものとか、それから今の犯罪被害者財産もそうなんですけれども、すべてはやはり一つのところの窓口に入れて、そこから分配するという仕組みをつくらないと、何かだんだんこれで各省庁に権益が出ていく感じなんですね。結局、一種の利権になっていって、そこで分配するための予算が必要になって、分配するための人があってと、だんだんこうなっていくので、やはり予算の重点配分のためにも、一つのところに集めて、そしてそこで分配する。

 ちなみに、米国では、会計検査院がその不明口座の分配金を行っているんですね。日本は、会計検査院というのはそういう側面はありませんから、日本では難しいでしょうけれども、消費者庁というのができれば、消費者庁でそれを集約するという仕組みはできるんじゃないかなと私は期待しています。

糸川委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

船田委員長 以上をもちまして午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用中のところお越しをいただき、また大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、御礼申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の各案審査のため、午後の参考人として、日本生活協同組合連合会専務理事品川尚志君、日本女子大学准教授細川幸一君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔、明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをお願いしたいと思います。

 それでは、まず品川参考人にお願いいたします。

品川参考人 御紹介いただきました、日本生協連の品川と申します。

 本日は、こういう機会をつくっていただいて本当にありがとうございます。

 私ども、全国の生活協同組合の連合会でございます。生協と申しますのは、一つは、組合員、メンバーのさまざまなニーズを事業体を通じて実現するというところに一つの機能がございまして、そんな意味では、日常、流通事業というふうなことで事業を行わせていただいております。

 ちょうど一年余り前、冷凍ギョーザという問題を私どもの事業の中から発生させることになり、重篤な被害を及ぼしたり、それから、今日の国民の食品に対する安全、安心に大きく傷をつける一つにもなったというふうなことで、大変深くおわびをしなければなりませんし、その後、現在もずっと続けておりますけれども、私どもの事業の中でそうしたことが二度と起こらないように、品質保証体系の再整備、再構築ということに全力を挙げているところでございます。

 もう一方で、生活協同組合は、全国の消費者の方々がメンバーになって構成するという団体でございまして、そういう意味では、消費者組織という性格も持っております。現在、ことしの三月末で二千五百万を超える方々が日本生協連を構成するメンバーというふうなことでございます。そんな意味では、長らくいろいろな意味で消費者問題に携わり、消費者行政のあり方等についてもいろいろなかかわりを持って進めてきているというのが、私どものもう一方の仕事というふうなことでもございました。

 そんな中で、特に日本の消費者問題、消費者行政ということでいいますと、西暦二〇〇四年の年に、それまでの消費者保護基本法が消費者基本法というふうに改められて制定された。この法律は、日本で初めて消費者の権利を法定するという法律でございましたし、消費者行政のあり方が、それまでの消費者保護ということから、消費者の権利を認めた上で、消費者の権利がきちんと擁護され、その主張ができるように行政は消費者を支援する、そういう枠組みに、保護から消費者支援へというふうに行政の枠組みが大きく変わったという意味で、大変大きなことだったというふうに思っております。

 その後、その消費者基本法に基づいてさまざまな行政改正等が行われましたし、そういう措置の一つとして消費者団体訴訟制度、これもまた日本では全く新しい制度が制定されるというふうな運びをしてくるわけですけれども、消費者基本法が目指したものという関係からいいますと、日本の行政のいわゆる縦割りの構造というのがあって、消費者基本法というのは、管轄している内閣府国民生活局の法律ではあるがその他の省庁にはいわば関係ないというふうな、そうはおっしゃらないのかもしれませんけれども、そういうような実態が現実としては存在していたということがあったと私どもとしては思っておりまして、今回、そうした縦割り行政ということについての見直しを図り、全省庁にまたがって消費者視点の行政のあり方を追求しようということでの御検討、そうした意味で、消費者行政一元化ということに向けてのこうした論議が大きく進んでいるということについて、大変歓迎いたします。

 それから、そんな意味では、ここまで論議をしてきたものが途中で立ちどまることなく、ぜひとも、いろいろな修正やよりよいものにしていくという努力はしていただきながら、早期に実現をし、平成二十一年度中には、遅くない時期に新しい行政の体制もスタートしていただきたいというふうに思っておるところでございます。

 そういう中で、特に目指しています新しい消費者行政の一元的なところが実質的にどれだけその機能を果たせるかというときに、現在、政府の案でいいますと、消費者政策委員会というふうなものが用意をされているようでございますけれども、この消費者政策委員会が、有効に国内の消費者の声を反映しながら、きちんとチェック機能を果たすことがどこまでできるようになり、かつ、運用されるかというふうなことがかぎを占めるのであろうと思っているところでありまして、そんな意味では、今後のいろいろな検討なり運用の中で、消費者政策委員会というのがきちんと仕事ができる体制の整備というのを図っていただきたいと思っております。

 その際、この政策委員会の事務局が、そういう意味では他の省庁との関係でも独立性を保ってということが必要だと思いますが、独立性の担保ということと同時に、今日の消費者問題でいいますと、食品の安全だとか製品の安全だとか、いわゆる安全性の問題というのは大きいわけですけれども、そうした問題の判断には科学的な評価というのが欠かせないという面も非常に多くなってきてございます。そんな意味では、そうした各分野の専門的な知見というのが、こうした消費者政策委員会の検討等にも有効に反映されるような条件の整備ということがあわせて行われることが非常に大切だと思います。

 同時に、一元的な消費者行政の部局ができたとしても、あらゆる消費者行政をすべてそこで行うということは不可能でありまして、かつ、現実の消費者問題というのは、各省庁でなされます産業育成等にかかわる施策の中で消費者に被害を及ぼすということもあるわけでございますから、そういう点では、各省庁の施策全体に常に消費者視点が貫かれるように、各省庁の中にも、行政の肥大化というのは防がなければなりませんけれども、消費者視点で各省の仕事に目配りをするようなセクションをきちんと配置するというふうなことも含めて御検討いただくことが必要なのではなかろうかと思っております。

 それから次に、先ほども申しましたが、消費者基本法のもとで、消費者団体訴訟制度というのが西暦二〇〇六年の年に消費者契約法を改正して日本で初めて導入されたわけでございます。

 実は、その消費者団体訴訟の担い手になろうということで、私ども日本生協連、それから社団法人の日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、略称NACSというふうに言っておられますけれども、その団体と財団法人の日本消費者協会、三つの団体をコアにして消費者機構日本というNPO法人をつくり、そこで適格団体の認証を受けようということで認証申請をし、この消費者機構日本という団体が国内では第一号で適格団体の認定をいただいたというふうなことで進めてきております。現在、既に全国で私ども消費者機構日本を含めまして七つの団体が適格認定を受けて、いろいろな団体訴訟制度を活用した仕事をしているということでございます。

 私自身も、実はこの消費者機構日本の理事長を仰せつかっておりまして、その仕事にも携わっておりますが、消費者機構日本というところだけでも今日までに既に四十四件、各種の事業者の方々に法律上問題のある約款の差しとめ等を求める申し入れの仕事をしております。四十四件の差しとめ申し入れを行って、実際に、裁判にまでは至らない、裁判前に事業者さんとのお話し合いで問題のある約款が是正をされて、これまででいいますと、四十四件中の二十一件で約款の是正等を裁判前にしていただくというふうなことになっております。

 もし法律上問題のある約款がそのまま継続されていれば、毎年消費者被害がずっと継続するということですけれども、そのような形で約款の是正措置をしていただいてきた結果、ごく粗っぽい推定数字ですけれども、これまで二十一件の是正の結果から推定すると、年間で八千万円ほどは消費者被害を未然防止することができたと言えるだろうというふうなことにもなっているということでございまして、そんな意味では、現在の団体訴訟制度が、約款の差しとめという範囲ではありますけれども、いろいろな意味で役割を果たしているということが言えるんだろうと思います。

 ただ、もう一つ、現在、日本の国内の団体訴訟制度の中には、損害賠償を求めることができないということになっておりまして、私どもの物の思い方からしますと、冒頭にも申しました消費者基本法に基づいて、次のステップで行政一元化ということをぜひ目指していただきたいと思いますが、そのことと並んで、消費者団体訴訟の中に損害賠償制度を導入するということが消費者基本法の理念をさらに大きく前進させる大きなテーマだというふうに思っております。

 そんな点では、現在、民主党の方からそうした制度の提案も出されておりまして、ある意味で大変歓迎するのですけれども、もう一方で、民主党の案などもいろいろ勉強させていただいているところでございますが、民主党で現在起案されている中身は、アメリカで行われていますクラスアクションというふうな制度を参考にしてつくられているように思われます。

 その制度ですと、消費者団体が一定の消費者被害について賠償を求める裁判を起こすわけですけれども、その際に、実際に消費者被害を浴びている消費者の方が、自分はその団体訴訟の範囲に入りたくないという人が除外することを申し出る、それが条件でして、その際に、除外の申し出をしないとすべてが団体訴訟の範囲に入ってしまう、そういう仕組みであります。

 そのため、このクラスアクションの仕組み、そういう仕組みを運用する際には、一人一人が持っている訴訟を行う権利、そういう権利が侵害されることのないような仕組みにしていくということが極めて重要。

 具体的に言いますと、その裁判で仮に団体の方が敗訴をしたとしますと、実際には除外する申し出をしなかった人も含めて敗訴になってしまう、損害賠償の請求の機会をその後失ってしまうおそれがあるということでありまして、そういうことをもたらすことのないような制度の仕組みを、いろいろな意味で検討された案になっていると思いますけれども、まだまだ深めて検討しなければならないところが多々あるのではなかろうかというふうに思ったり、それから、裁判所の裁量にゆだねられている部分が大変多い案になっていまして、そこらあたりも、かなり細かくさらに詰めていただく必要があるのではなかろうかという点も含まれております。

 そんな意味では、いろいろな意味で民主党さんのつくられておる損害賠償制度は、適格団体への配慮も大変たくさんいただいている法案だというふうに理解はしておりますが、詳細部分についてはさらに御検討いただく余地も幾つもあるのではないかというふうに思ったりしております。

 ぜひ、今回提案されていることをきっかけに、この損害賠償についての団体訴訟も早期に実現を目指すということで進めていっていただきたいと思っているということでございます。

 最後に、食品安全行政との絡みということで発言をさせていただきたいと思いますが、この食品安全行政というのも、これは西暦二〇〇三年の年に例のBSEの問題などあり、それからもう一方では、私ども含めて消費者団体の食品行政を大きく変えようという署名運動などもありというふうな結果だと思っておりますが、二〇〇三年の年に日本で初めて食品安全基本法という法律ができました。

 それからちょうど五年たつわけですけれども、その食品安全基本法のもとでリスク分析の仕組みというのが日本で初めて導入され、この五年間はその食品安全基本法のもとの仕組みが日本の中で定着してくる過程にあったというふうに私どもとしては思っております。この五年間の間に、それ以前とは比べ物にならないような残留農薬についての基準整備が行われましたし、それ以前には考えられないような食品安全にかかわるさまざまな行政措置がとられるときに、各地方で消費者、事業者を含む意見交換会が非常に数多く開かれるというふうに、大きな変化をしてきてはおります。

 ただ、しかし、そのことによって、日本の国内で食品の安全の仕組みがきちんと確立されたか、安心できる仕組みになったかというと、全くそうは言えない。

 食品安全基本法が目指した仕組みを本当の意味できちんと確立するには、食品安全委員会が現在よりももっと機能を強化する。農林水産省の消費・安全局などに比べても、人員の数としても非常に少ない食品安全委員会でありますし、農水省や厚労省には各種の食品安全にかかわる試験場だとか研究機関がございますが、食品安全委員会にはそういうものが一切ないというふうなことになっております。

 そんな意味では、食品安全委員会自体を強化する、それを強化しつつ消費者行政一元化ということで、全体の食品安全についても総合調整の機能を新しい一元化された行政のところに置こう、そのこと自体は大変結構なことで、ぜひその機能を一元化された行政のところで発揮いただく。

 とりわけ、リスクコミュニケーション。これは、消費者だけではありません、事業者を含め、メディアを含め、そうしたステークホルダーそれぞれがこの食品安全の問題について十分に意見交換を行う。仕組み上はその仕組みは取り入れられていますけれども、実態運用としてなかなかそれが効果的に運用できる状態にはまだ至っていないというのが現状だと思いますので、そんな意味では、新しい一元化した行政庁のもと、リスクコミュニケーションを、食品安全委員会、農水、厚労省を問わず、行政全体できちんと中身を充実したものにしていく、そういうリードをしていっていただくということが必要だろう。

 あわせて、食品安全の問題についても、冒頭申しました私どもが原因の一つになりました冷凍ギョーザの問題なども、ああした問題について事故情報が機敏に一元的に集約され、それに対して、しかるべき、各役所もそうですし、ある意味では民間事業者も含めて、機敏に対応できる、そういう情報の一元化というのは極めて重要なことだと思っておりまして、そういう面でも、新しい行政庁でぜひ大きな役割を果たしていただくような、そういうものにしていっていただきたいというふうに思っているところでございます。

 冒頭に当たっての私の方からの陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 次に、細川参考人にお願いいたします。

細川参考人 今、政府からは消費者庁法案、民主党の方からは消費者権利院法案が出ているということで、メーンは、器、形の違いというところが議論の中心になっていますけれども、私はちょっと視点を変えまして、形はちょっと横に置いておいて、今後の消費者行政が持つべき機能について、何が必要なのか、そういう点でお話をさせていただきたいと思います。

 これについても、いろいろ議論は今までさんざんされてきたところだと思いますので、私から見てその議論で抜け落ちている部分、そこら辺をピックアップして私の意見とさせていただきたいと思います。

 きょうは資料をつくっておりまして、初めに六枚のレジュメがございます。その後、隣の韓国が、日本の消費者行政の不備を把握しながらよりよいものをつくるという工夫をしてきたという歴史がありますので、「韓国の消費者政策の概要」という参考資料をつけております。その後に新聞記事が四枚ほどありますけれども、これは、私が今まで日本の消費者行政で問題だなと思うところを問題提起したものをちょっとピックアップしまして、こういうところに問題があるというのを議員の先生方に御理解いただければと思ってつけた資料でございます。

 それでは、資料に基づきましてお話しさせていただきます。

 まず、日本の消費者行政の現状ということで、これも語られていることですので簡単に御紹介したいと思いますけれども、やはり行政の役割としては、基本的には二つの方法があるということが言われてきました。一つは、強い立場にある企業に対して規制をかけるという、それを規制行政というふうにすれば、弱い立場にある消費者を手助けするということで、これを支援行政、この規制行政と支援行政という二元的な行政というのが日本の消費者行政の特徴だったわけですね。

 ただ、規制行政というのは、権限はあるけれども、どうも私どもから見ると理念がない。支援行政の方は、理念はあるけれども権限がないというような形で、ちょっと中途半端な形で進んできたんじゃないのかなというのが私の見解です。

 そして、規制行政の問題点としては、消費者の権益を守るということをメーンとした法律が十分でない、各省庁に消費者の権益を徹底的に守ろうとする意識がない、あと、縦割り行政の中で、新たな消費者問題に対応するのが不十分であるというような問題があります。包括的な権限を持っているのは公正取引委員会ですけれども、公正取引委員会も、消費者問題でいえば、景表法の運用による景品と表示の規制というところを中心に行ってきて、これも不十分だったということです。

 次に、支援行政の問題としては、まず日本は、行政庁というのは民事救済に行政権限は行使しないという原則がありますから、各省庁の消費者被害救済活動というのは皆無です。だからこそ、国民生活センターとか消費生活センターが支援行政としてそれを救済してきたわけですけれども、ただ、その救済も、当事者の合意を基本とした非公式なあっせんというような形でしか行ってこられなかったということで、これも私から見ると不十分なケースが多いということになります。また、消費者教育の重要性が叫ばれているんですけれども、学校教育を所管する文科省の理解不足、あるいは連携不足もあって、これもなかなか進んでいないという現状がございました。

 そして、民事訴訟、当然、消費者被害というのは民民の間で起こるわけですけれども、その民事救済の制度というものも、民事消費者法の整備がおくれてきているということで十分ではなかったということです。そして、それゆえに、事業者の不当利益を吐き出させてそれを消費者、被害者に還元するというような法制度もうまく機能していないということが言えるのではないかなと思います。

 このように、日本の消費者法制というのは、違法行為のやり得を許し、かつ被害者が十分に救済されていないという現状がありますので、私は、消費者行政の改革というのは、この問題の解決に寄与するものでなければならないというふうに思っております。

 今、消費者行政の考え方として、規制行政と支援行政という考え方があるとお話ししましたけれども、最近、これに加えて新たな考えが出てきました。それは、協働行政という考えと救済行政という考え方です。

 協働行政というのは、自主行動基準の制定を国とか政府が支援したり、あるいは事業者団体の自主規制を支援、あるいは民間ADRの支援というような形で、協働してよりよい社会をつくっていこう、そういう動きが一つです。

 もう一つは救済行政ということで、これは二〇〇七年、OECDの理事会勧告があるんですけれども、消費者保護の執行機関が消費者の被害救済のための損害賠償請求等を行える仕組みの整備というものを求めています。我が国には、こういう制度というのは、組織犯罪における被害回復給付金の制度があるだけで、ほかには皆無です。

 ただ、支援行政として国民生活センターとか消費生活センターが今まで活動してきたのに、なぜ救済行政という概念が出てきたかというところが重要でして、今までは、行政サービスとして非公式に事業者と消費者の仲介をするという程度のものだったんですけれども、もっと一歩踏み込んで、行政の責任において民事案件である消費者被害を救済するということがOECD勧告でも求められているということですね。これがいわゆる父権訴訟というもので、行政が、被害者、消費者にかわって民事裁判を起こして損害賠償を請求するというような制度であります。

 ただ、必ずしも政府だけがこういう役割を果たせるわけではありませんから、民主党御提案のような、公益的な消費者団体が損害賠償請求をできる、そういう仕組みもこの中にも考えられるのではないかなと思います。

 そうしたことで、私の提言というような形でまとめていますけれども、まず一つが、私は、消費者の権利と新組織の権利擁護義務の明確化というのがぜひとも必要だというふうに思っています。やはり理念というのは大事で、これが土台だと私は思うんですね。土台が何かあやふやだと、その上に建物を建てたって、それはいいものはできない。そういう意味で、消費者庁設置法の中に消費者の権利を守るということを入れるべきだという議論もここでなされていましたけれども、それよりも一つ前に、私は、消費者基本法の中の理念規定も不十分だというふうに思っています。かなり不十分です。

 ここに書いておきましたけれども、第二条、理念という中に何か文言を押し込んだというような形で、そして、これこれこういうことが消費者の権利であると言われているからそれを尊重するという、ちょっと奥歯に物が挟まったような、直接的な表現ではないんですね。しかも、初めの二つの消費者の権利規定が「確保される中で、」というような形でくくられていて、この「中で、」というのは、もう実現されたということなのか、ちょっとここら辺の意味がよくわからないということですね。

 ちなみに、隣の韓国は、参考までにつけておりますけれども、これこれこれが消費者の権利だよとちゃんと明示して、そして、それに対して権利を守る義務が国家及び地方自治体にはあるんだということを明らかに書いているわけですね。こういうものこそ権利規定だと私は思いますので、余り消費者基本法の改正とかという議論はないですけれども、基本法ゆえの問題点ということもありますけれども、できたら基本法も含めて考えていただきたいというのが私の意見でございます。

 二番目に、消費者行政苦情というような概念を持っていただきたい。

 消費者苦情については議論されていますけれども、消費者行政に関する苦情というものが今までは無視をされてきたというふうに私は思っています。国民生活センターとか消費生活センターでの相談の分類は、問い合わせ、苦情、要望という形なんですね。それで、最後の要望というのは、聞きおくだけでほぼ無視してきたんですね。これこそ非常に重要な情報ではないかなというふうに思います。

 かつて、衆議院で平成目安箱という、通称ですけれども、それをつくっていろいろ苦情を受け付けていたんです。私もちょっと苦情を申し上げたことがあるんですけれども、この前、衆議院の事務局に電話したら、平成目安箱なんて知らないと言われてしまいまして、若い職員の方だったかもしれませんけれども、どうも今の決算行政監視委員会における行政苦情受け付け窓口だそうですけれども、こういうものを消費者の視点で制度化して、そういったものを生かすという仕組みづくりも必要じゃないかなと思います。

 まさに、そういった各省庁でのいろいろな消費者の視点からの問題点というのがあるわけでして、例えばの例で挙げています。これは新聞記事にもありますけれども、例えば、交通機関の運賃認可に際し、国交大臣の諮問に対して答申する運輸審議会というのがありますけれども、これは驚いたことに、利用者、消費者を利害関係人ではないというふうに言っているんですね。また、特定の路線の運賃認可においては、それは軽微な事案だからということで審議を省略してしまっている、こういうような問題もあります。

 あるいは、最近、美容整形等の自由診療トラブルというのは非常に多いんですね。ところが、民事の問題だからということで、厚生労働省は何ら対応しない。そもそも消費者問題というのは民事なんです。ところが、民事であるということで何にも対応しない、刑事処分を受けたらそれは何か行政処分はするけれどもというような、非常に冷たいというか、そういう状況だ。ぜひこういうものは改善されるべきだというふうに思います。

 三番目が、消費生活相談体制の整備ということで、昭和四十年に兵庫県立神戸生活科学センターができたのが消費生活センターの初めと言われています。ですから、四十年以上にわたり消費生活センターが日本の消費者政策の重要な拠点として一定の役割を果たしてきたわけですけれども、御承知のように、相談処理というのは、行政官ではない、ボランティアに近い主婦を中心とした相談員により非公式に行われてきたわけですね。その結果、解決事例も判例のように蓄積されず、しかも紛争解決基準のようなものも非常に乏しい。すべてが個別交渉という中で行われてきた。したがって、苦情処理要領だとか補償基準みたいなものも未整備のままであるということだと思います。

 一九七九年、消費者問題が起きたときに、一橋大学の宮沢教授は既にこういうことを言っています。私は、これは非常に重要な一文だと思ったので、書かせていただきました。

  論点の一核心は、消費者と事業者との一般関係を、社会的にどのように設計するのが合理的か、というにある。当事者間の個別交渉で、主張の強い一部の被害者だけに補償がなされたり、消費者の顔色をみながらの対応で、企業の負担がまちまちであったりするのでは、社会的不公平は放置されたままとなる。事業者と消費者の関係を、個別的交渉の不統一な形のままにおく代わりに、これに一般ルールの基盤を用意することが目指されなければならない

 一九七九年にこういうことを言われているわけです。まさにこれが消費者行政あるいは紛争解決の本当の基準、原理だと私は思いますけれども、なかなかそれにこたえる形に現状はなっていないということではないかなと思います。

 ちなみに、韓国では、大統領令による消費者紛争解決基準というものを設けまして、これによって、返金などのあっせん案の提示を韓国消費者院長名で行っております。あるいは英国の市民助言局という、市民のあらゆる相談を受け付ける、消費者問題も受け付ける部署がありますけれども、相談員が相談処理のために関連法規を検索できる電子情報システムを整備して、本当にこの専門家でない人も、相談に関係する法令とか条例がわかりやすく画面に出てくるというようなシステムをつくっているんですね。

 日本では、どうもこういう、相談員さんが中心にやっていて、そういった相談を支援するというような状況が乏しいということですね。相談員個人の資質や力量に頼り過ぎているということです。私は、消費者が、あるいは企業にとってもそうだと思うんです、どこのセンターのどの相談員さんが苦情を処理しても一定の水準、基準を満たした紛争解決を受けられるようにすべきだと思います。相談員さんの賃金改善、これは重要ですけれども、どうもそこばかりに何か焦点が行っていまして、相談処理手続の制度化とか体制の整備というものをこの際しっかりやるべきだなというふうに思っています。

 そこで、相談処理の十分の一原則という、これは私が何となく思うものですけれども、相談が一万件あると、何らかの相談処理、あっせんが必要なものはその十分の一ぐらいは本当はあるはずなんですね。そして、その中のまた十分の一ぐらいは、より公正な手続、調停などが必要なものが多分あるだろう。そして、その十分の一ぐらいは、やはり裁判に持ち込まなければ解決できないものが本来あるはずなんですけれども、どうもこういう形になっていない。何か無理やり終了させてしまったり、消費者があきらめてしまったりということが多いんですね。

 そういう意味でいうと、第一ステップ、この一万件は相談受け付け、これは相談員さんがやっていいだろう。それで第二ステップは、余りにも相談員さんがすべてやっていて、私は第二ステップは、簡便なものとより複雑なものがあると思いますので、ここはもう少し分けて制度的にやる必要があるだろう。初めの段階は相談員さん、だけれども、複雑だとか重大な案件については、相談員さんだけじゃなくて職員がやるとか、あるいはちゃんと消費生活センターの所長があっせん案を提示するとか、そういう制度として行うべきだと思います。

 ちなみに、埼玉県の話を聞きましたら、主任相談員、そういう制度をつくって今公募しているということでありますし、職員も、消費生活専門相談員の資格を取って、そういう勉強をするようにしたという話がございました。

 そして、第三ステップとして、苦情処理委員会などによる調停というものがなされる。それでもだめなものは訴訟になりますけれども、これは、実は消費者保護条例、自治体の条例では、訴訟支援ということで訴訟費用の貸し付けというような制度もあるんですけれども、ほとんど活用されていない。あるいは弁護士紹介をしたり、プロボノ方式という、ボランティアでやるようなそういったものだとか、あるいは裁判所で、行政が積極的に消費者を支援して、例えば証言する。これは、アメリカで裁判所の友、アミカスキュリエというものがありますけれども、積極的に行政も、そういった民事訴訟であっても支援するというようなことも必要ではないかなと思います。

 今出ました自治体の苦情処理委員会、これがほとんど機能しておりません。その理由としては、その開催が当事者の申し出によるものではなく、知事の申し出が開催要件になっているということと、予算措置も講じられていないからということです。ここら辺の整備が必要です。

 ちなみに、韓国消費者院では年間二千件の紛争調停をやっています。さらに、最近、集団紛争調停規定というのを設けて、一定期間告示して、同種事例の被害を持っている人は呼びかけて、それで集めて一括して相談処理する、そういう方式も持っています。

 五番目に、消費者教育とか啓発のための専門機関の整備というのが必要だと思います。

 今自民党でも、仮称消費者教育推進法ですか、その動きがあるのは承知していますけれども、ぜひこの消費者庁とあわせて、何か消費者庁の中に盛り込んでいただきたいと思いますし、文科省との連携が必要だったら、文科省の中に消費者教育課という課をつくらせるぐらい、そのぐらいのことはしていただきたいと思います。

 次に、消費者大学校の設立と書いてありますけれども、実は国民生活センターの研修部というのは、初めは消費者大学校構想から始まったんですね。だからあれだけの研修施設があるわけですけれども、自民党、民主党とも、一つの省庁ですべての消費者問題を所管することはできないということはどちらも考えていることだと思いますので、とすれば、各省庁でちゃんと、国民、消費者の視点で行政、施策をしてもらう必要があるわけですから、そういう教育機関としての消費者大学校なんというようなものを設立するというものもいいのではないかなと思います。その中で国家公務員研修、地方公務員研修、あるいは相談員の養成というようなこともやっていいんじゃないかなというふうに思います。

 七番目が、刑事消費者法の活用ということで、これも余り議論されておりませんけれども、やはり消費者被害を引き起こす事業者の行為には犯罪に該当するものが結構多いんですね。ところが、摘発が不十分ではないかなと思います。やはりそういった違法性をいち早く認識できるのは、消費生活センターとか主務官庁だと思います。

 刑事訴訟法では、公務員はその職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発をしなければならないという規定があるんですね。ところが、消費者行政がそういった告発をしたということはほとんど聞きません。こういった検察との連携というものも図る必要があるのではないかなというふうに思います。

 最後にですけれども、今まで、製造物責任法、消費者保護基本法の改正、消費者契約法の制定と改正等、消費者法の整備はかなり進んできたと思います。しかし、その内容については、消費者サイドから見れば不満がある内容でした。

 今回の消費者庁構想は、与党がそれを推し進めているということでは画期的でありますし、今までの関係者の努力に対しては私は非常に敬意を表しております。ただ、つくるなら庁じゃなくて省という話もございましたし、人員とか予算が一けた少ないと言う方もおられます。

 そうした中で、必ず出てくるのが、小さく産んで大きく育てるということですけれども、余り小さく産むと、どうも霞が関には天敵が多いので、食べられちゃうんじゃないかなという思いもありますので、せっかくつくるならもう少し頑丈な、丈夫な体のものをつくってもいいんじゃないかなと思います。

 消費者庁構想をベースに考えるにしても、私は今まで議論もお聞きしていましたけれども、消費者政策委員会の独立性とか優越性とか機動性ということが重要になると思います。あるいはほかの国のいろいろな組織を見ますと、例えば委員会とかをつくって合議制にしても、それでも消費者パネルとか消費者ボードという監査機関をつくるんですね。

 監査というのは非常に重要なんです。日本はそれが非常に弱い。だから、消費者庁とかをまた監査するような、そういう組織もつくってもいいんではないかなというふうに思います。

 少なくとも、消費者問題に携わる者としては、先送りだけはぜひ避けていただきたいというふうに思っておりますので、ぜひ考えを絞って、工夫していただいて、なるべくよりよいものを今国会で実現していただきたいと思います。

 以上、私の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

船田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西本勝子君。

西本委員 自由民主党の西本勝子です。

 午前中に続いて、お二人の参考人には貴重な御意見を述べていただきまして、本当にありがとうございます。品川参考人は、消費者運動にかかわった中から、消費者主体の社会について、また、細川参考人からは、消費者行政の研究者として、日本の今後の消費者行政はどうあるべきかの示唆を与えていただいたかと感じております。

 そこで、さらにお教えをいただきたいのですが、まず、新組織の設置に関してでございます。

 内閣提出の消費者庁設置法案を含む三法案は、食品偽装や輸入食品などで食の安全を脅かす事件が多発するなど、国民の不安や不信が広がる中で、国民の安全、安心を確保するという観点から、従来、関係各省庁の所管として分かれていた消費者保護法制を一元化することなどを目指して、消費者行政の核となる消費者庁の設置等を定めているものだと思っています。

 消費者基本法の理念に基づき消費者行政を積極的に見直すとき、その組織の位置づけは、消費者の視線で政策全般を監視し、消費者を主役とする政府のかじ取り役として行政を一元化する中で、内閣府の外局とすることが最善だと私は考えております。

 本来ならば、参考人の意見を先にお聞きしなければいけないのですが、私の所見を述べさせていただいて恐縮でございます。

 そこで、お二人の参考人にお伺いします。

 民主党は、消費者権利院として、内閣の各省庁から独立した組織、現行あるものでは人事院のような位置づけを打ち出しているのですが、政府の考えている、内閣総理大臣の強いリーダーシップのもと、行政全体で消費者本位の政策を立案できる新組織の位置づけをどのように考えているのか、お二人の御所見をお伺いしたいと思います。

品川参考人 内閣府の外局か、あるいはさらに飛び出して消費者権利院かということで御提案が出されております。

 私自身としては、その組織の位置づけについては、どちらがよいかというのは、正直に申しまして、よくわかりません。

 ただ、大切なことは、現在、各省庁がばらばらに、かつ、いわゆる産業育成省庁というところで、消費者視点というのが余りにも欠落したままの行政措置が大変多く行われるということがあって、それに対して、一元的に各省庁に対して勧告権を持ち、その勧告権が有効に機能する、司令塔としての役割をきちんと果たす、その意味を実現するにはどうすればいいかということが第一の目標だと思います。

 それから、組織の位置づけというものについては、どちらか一方でなければならないということは恐らくないのではなかろうか。現実問題としての日本の世の中での消費者問題を一歩一歩前進させていこうということが現実的だと思います。

 そういう点では、少なくとも、政府で出されている現在の案は、これまでの消費者行政の状況を一歩か二歩かさらに進めるものであることは確かではないかというふうに私としては思っておりまして、それをさらによくしていくということは必要でしょうが、何分にも、先送りすることなく今国会で成立させていただいて、西暦二〇〇九年度中には遅くない時期に実現していただく、そのことを第一の優先とお考えいただきたいものだというふうに思っております。

細川参考人 この消費者庁法案というのは、福田総理がぜひ必要だということでできたわけですね。私も消費者行政推進会議を実は傍聴しておりまして、福田総理の熱意、あるいは岸田元大臣あるいは野田大臣の熱意というのは、非常に私は感動したんですね。

 ですから、福田総理のような方が総理になって、消費者政策担当大臣が岸田さんとか野田さんをイメージするなら、これは機動的にうまくいくなと思いますけれども、総理というのは消費者問題だけで選ばれるわけでもないですし、消費者政策担当大臣が本当に情熱と能力のある人が選ばれるかというのはわからないというふうに考えた場合には、これは消費者権利院の方が、消費者問題に特化してそういう人たちが任命されるということなんですから、揺らぎがないんじゃないかなというふうに思います。ちょっとそんな感じを持っております。

西本委員 ありがとうございました。

 続きまして、またお二人にお伺いいたします。

 悪徳商法被害やコンニャクゼリーによる事故などの消費者被害の防止には、消費者自身への啓発や消費者教育の必要があると思うのですが、消費者教育の意義についてはどのようにお考えか。重要であると考える場合は、どこが主体となってどのような活動をすれば効果が上がるとお考えになるでしょうか。お願いいたします。

品川参考人 おっしゃるとおり、さまざまな消費者施策も、消費者基本法ができ、消費者契約法の改正なり特定商取引法の改正なり、割賦販売法の改正なりというのが積み重ねられておりまして、そんな点では、消費者の権利を明確にする法改正というのは、この五、六年の間にも大きく前進をしております。

 実際に、それでは法律上明記されている権利をきちんと行使できる消費者がどれだけ、同じような勢いでふえているかとなると、そこのところは不十分というふうなことがあって、法律にはきちんと書かれているけれども、それを行使し切れないで被害が引き続き多く存在するというふうなことがございます。そういう点では、まさに消費者教育ですし、それから消費者教育というのが単に座学として勉強するということだけでなしに、実際にそういう定められた権利を実行できる、行使できる消費者が多数育っていくということが必要です。

 食品の安全についても、とかくテレビの報道でこれがよいとなると一斉にそちらに流れるというふうな、ともすればセンセーショナリズムに振り回されるような消費者の面というのもなきにしもあらずということがあって、そういう点では、さまざまな食品安全情報についてもきちんと理解して冷静に振る舞うというふうなことが必要だ、一方ではそういうことが非常に大切なことだというふうに思っております。

 おっしゃるように、そういう意味で、消費者教育、かつ座学だけでない消費者教育、昨年末に出されました国民生活白書などでも、消費者力という言葉が使われておりまして、実際にそうした消費者をたくさん育てていくことが必要というふうなことがうたわれております。

 教育というと、これまたすぐ文科省の仕事というふうにするのではなくて、学校教育もそうですけれども、成人教育ということの必要性も大変大きゅうございますから、消費者教育という問題も、新しい消費者行政一元化したところが文科省に対してもその他各省庁に対しても、消費者教育の面でもそれこそ司令塔的に、勧告権等を発揮して充実させるということが必要なのではないかというふうに思っております。

細川参考人 消費者教育というのは非常に重要で、だれに聞いても重要でないと言う人はいないんですけれども、それでもなかなかうまくいかないということがあります。

 一つには、学校において、消費者教育というのが基本的には家庭科でなされていますけれども、受験科目ではないということで、進学校ほどやはりそういった消費者教育はなされていない。私は、大学で十八歳から二十二歳の学生を教えていますので、そういった点で見て、非常に消費者教育が不十分だということは常々感じることです。

 ただ、非常に難しいと思いますのは、例えばこの前、振り込め詐欺防止キャンペーンが開かれていましたけれども、その中の事例で、振り込みしそうになった人に警官が声をかけて、それ、振り込め詐欺じゃないですかと声をかけたのに振り込んじゃったという人がいましたね。あれを見て、消費者教育というのは難しいなというふうに非常に思いました。

 私はいつも思うんですけれども、もう消費者が消費者一般として語られない時代だと思います。消費者が階層化しているというか、基本的には自己責任原則の社会で生きていける消費者と、やはりそうでない、情報弱者の消費者、お年寄りとかあるいは何か障害をお持ちの方、そういう人に本当にとにかく売りつけろなんという商法もありますから。

 消費者教育も、国民一般、消費者一般じゃなくて、もう少し、その人その人の置かれている立場に合わせたいろいろなカリキュラム、学校だけじゃなくて、社会教育、それも、文科省だとか内閣府だけでやられるんじゃなくて、やはり福祉の部門でその人に一番接している人ですね、一番近くにいる人で、必ずしも消費者の専門家じゃない人との協力体制によって、何か問題を早く発見するとか、そういうような方策というものが必要じゃないかなというふうに思っております。

西本委員 ありがとうございます。

 またお二人にお尋ねいたします。

 消費者庁として幾ら立派な新組織ができても、地方あるいは地域の現場で消費者本位の行政ができなければ何の意味もなさないのであり、消費者行政の強化充実のためには、どのようなお考えをお持ちなのか。私は、消費生活センターに配置される相談員の人材確保と資質の向上を図ることが必要と考えているのですが、このことについて、お二人の参考人は、どのような方策で臨めばいいとお考えですか。

 あわせて、地方の消費生活センターを地方の事務とするべきか、国に移すべきかについてもお教えください。

品川参考人 地方消費者行政の強化ということが消費者行政一元化と並んで極めて重要というのは、御質問のとおり、私も全く同感でございます。

 その際に、特に、消費者被害を防止する、あるいは被害を受けたときに権利の回復を図るというときに、まず第一番目に重要なのが、相談員の質であり、量であり、制度として相談しやすい条件整備を図っていくということだと思います。そういう点ではその点が大切だし、同時に、それを実現するには、相談員の方々の待遇をきちんと改善していくということなしにはできないということですから、その待遇改善のことを含めて、そのことの充実が必要だと思います。

 ただ、事の性格からしますと、消費者センターだとか、そういう地方における消費者行政そのものは、基本的には地方分権のもとで、地方行政の中で行われるということが必要だろうというふうに思います。そのことを通じて消費者センターの機能をきちんと充実させるということは、御質問のとおり、私も同感です。

 もう一つ、地方行政における消費者にかかわる問題ということでいいますと、ある種、国政の段階と同じようなことがございまして、地方行政にあっても、消費者問題は消費者部局だけの問題で、産業育成部局、土木にせよ農政にせよ商工行政にせよ、地方のそうした行政のところに消費者視点が貫かれているのかということでいうと、ある意味では国政段階以上に消費者視点というものが欠落している状況もありはしないのかというふうに思います。

 そういう点では、今回の法案審議の中でストレートにそうなるとは思いませんけれども、次のステップでは、各都道府県行政の中に現在構想されていますような一元的な消費者セクションをつくって、その消費者セクションが県行政全体の中で消費者視点を貫くように勧告権を持つ、県行政の中で消費者視点での司令塔的役割を果たす、そういうような部局が都道府県の中にもきちんとつくられていくというふうなことが、次のステップでは必要なのではなかろうかというふうに思っております。

細川参考人 先ほどの私の意見の中でも述べましたけれども、日本の消費生活センターの相談処理というのはほぼ相談員さんがやるという形になってしまって、これが私はそもそもちょっと違うんじゃないかなと思います。

 というのは、もともとは消費者相談というのは買い物相談的なものが多かったんですね。こういうふうに取引上の法的な問題というのは、豊田商事ぐらいからだと言われていまして、消費生活センターができ始めた昭和四十年ごろというのは主婦の買い物相談、例えば漬物の漬け方とか、冷蔵庫が自分のところはやっと買えるようになったんだけれどもどこの冷蔵庫がいいかとか、そういう生活の知恵というようなところの相談がほとんどだったから、地元のベテランの主婦の人、あるいは消費者団体の幹部の方にボランティア的に来ていただいて座っていただいて助言していただくところから始まったわけであって、それが余り制度改革しないで今までずっと来ちゃったからボランティアベースなんですよ。だから給料も余り払われないという、そこが今問題になっているわけです。

 そういう状況で来ていて、ただ、なぜそういう状況になるかというと、私の考えですけれども、これは行政に、民事不介入原則というものが頭の中にこびりついているからなんですね。だから、職員がやらないで、ボランティアの相談員さんが役場よりも遠い駅前のビルの何階かの消費生活センターというところで非公式に処理している。だから、センターがやっているんだけれども積極的に役所が関与しているんじゃないというような形で、非公式に紛争解決を図ってきたということなんですね。それが今の時代にそぐわなくなってきているというのが私の考えです。

 そういう意味で、先ほど私、救済行政という概念が出てきたというお話をしましたけれども、まさに、支援行政から一歩踏み込んで、積極的に行政がそこに関与していくという救済行政が必要だといったときに、ではどういう制度がいいのかとなるわけです。

 そうすると、自民党では、支援とかはするけれども自治体で、民主党では、公務員にして一律やった方がいいんじゃないか、その辺の対立というのは承知していますけれども、私もちょっと、それでどっちがいいという即断はできないです。

 ただ、ほかの国を見ると、国か自治体かという二元論じゃなくてもいいんじゃないかなと思うんですね。とにかく日本は、国とか自治体、県とかそういうものをはっきり決めますけれども、イギリスなんかだと非常に柔軟です。何か国と自治体の両方で雇われているような人たちが、アドバイザーとして、拠点もいろいろなところを移動しながら活躍しているような人がいるんですね。

 だから、国と自治体が共同して何かそういった地域ごとの組織をつくって行うとか、日本は、都道府県といっても大きなところと小さいところもありますので、もう少し協調して、方向性、みんなでもっとよりよいものをつくろうというところでは一致しているわけですから、何かぜひ工夫していただきたいなというふうに思います。

西本委員 ありがとうございました。

 それでは、品川参考人に被害者救済に関してお尋ねします。

 民主党案では、適格消費者団体を認定制から登録制に変えるとの内容ですが、このことに関してはどのようなお考えですか。

 また、消費者と事業者双方についてメリットある制度とするために、違法収益の剥奪のような制度を議論するに当たっては、どのような点に留意すべきであるか、お教えをいただきたいと思います。

品川参考人 消費者訴訟に当たっての適格団体について、現状の認定制か登録制かということでありますけれども、民主党の案で出されています登録制というのも、一方では登録を拒否することができるという仕組みも織り込まれておりまして、拒否できる事由を見させていただくと、かなりの部分、現行の認定制度と類似の拒否事由というのが示されておるというふうに私としては理解いたしまして、そんな点では、登録か認定かということはございますが、大きな項目でいうと余り大きな違いはないのではないかというふうに私としては思っております。

 ただ、一方で、現状の認定の仕組みが、大きい認定に当たっての要件項目はともあれ、それの実際運用は大変詳細にわたって、適格認定を得るために消費者団体が大変膨大な資料提供をしなければいけないとか、煩雑な手続をしなければならない実態にあることも事実でございまして、そういう点では、もう少しそこを軽減するということは、実態との関係では必要なのではないかというふうには思っております。

 ただ、実際に、この消費者団体訴訟制度、民事訴訟でいうと全く例外的な制度であって、被害当事者でない団体が訴権を持つという仕組みですから、そんな点では、社会的に十分信頼を得られる団体、そうしたものが運用できるという仕掛けは担保しておかないと、制度そのものが社会的信用性を失うというふうになってしまっては元も子もありませんので、いずれにしろ何らかのそうした条件は必要だというふうに思っております。

西本委員 ありがとうございました。

 最後です。細川参考人にお伺いします。

 今回の内閣提出法案では、取引、安全、表示関係の二十九の法律が消費者庁に移管、共管することとしているのですが、所管されなかった分野で対処が必要と思われるものがあればお示しください。

細川参考人 私は、政策というのは、消費者の視点から見ると三つに分けられると思っています。一つは、消費者のためにする政策、それだけに特化したもの。二つ目は、消費者のためにもする政策。三つ目は、消費者に影響する政策。

 消費者のためにする政策は、もう消費者庁に集めればいいんですね。一番最後の消費者に影響する政策というのは、これはほとんどなんですよ。逆に言うと、消費者に影響しない政策なんというのはないぐらいなんですね。

 一番問題なのは、消費者のためにもする政策、これも結構あって、それが消費者庁に移管したらいいかどうかという議論になっていて、これは非常に難しい部分で、今のお答えからいえば、すぐ私、これとこれというふうにはちょっと判断がつかないんですね。むしろ、消費者庁の規模とか、そういうところから二十九ぐらいになったんじゃないのかなというふうに私は思っています。

 しかも、共管とかそういうものも多いですので、幾つの法律を消費者庁に集約すればベストなのかというような単純な解答ではないですし、やはり私は、運用してみなければわからないということもいっぱいあると思うんですね。全然人員が足りないというようなこともある。人員をふやすなら所管する法律もふやせるとか、そういったいろいろな状況によってそういうものは変わってくるんじゃないかなというふうに思っております。

西本委員 ありがとうございました。

 お二人の参考人の御意見を聞いておりますと、よりよい消費者庁を実現するために、野党も与党もなく、いい消費者庁ができてくる可能性があるかもという気持ちになりましたので、私の意見を述べて終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、田端正広君。

田端委員 品川参考人そして細川参考人、きょうは大変ありがとうございます。大変貴重な御意見をいただきまして、心強く思っております。

 今までのお話をずっと伺っていて、我々が目指している方向と先生方がお考えいただいていることとそんな違いはない、むしろこういう大きく盛り上がっているこの機会にこそ、これはチャンスととらえて何としても実現させて、そして消費者各位の希望にこたえられるような、そういう仕組みをつくることが大事かなということを先ほど来痛切に感じているところでございます。

 それで、そういうことを前提にして、両参考人にいま一度、ここ一、二年の間に盛り上がってきた消費者庁という、我々は政府案を支持しておりますが、設置に対して、やはりこの機会を逃せばという思いでいるわけでありますが、そういった意味で、御感想をどうぞよろしくお願いしたいと思います。

品川参考人 今回の消費者庁の問題が論議に浮かび上がってくる、私自身は、その大前提としてもう一つ、消費者基本法の制定のときの話が思い浮かぶのです。

 消費者基本法制定のときには、日本生協連も加わっておりますけれども、全国消費者団体連絡会というふうなところでも、消費者保護基本法を変える改正案の試みの案などもつくって関係各位にいろいろ要請活動もしていたわけです。

 当初、消費者基本法の最初の自民党の案がまとめられ、それについて、与党案になるときに、さらにそれがいろいろ改善されて与党案としてまとめられ、かつ、それが国会に上程された後、民主党を中心とした野党の案なども含み込まれて、最終的には全会派一致で消費者基本法というのが成立したということだったというふうに思います。

 その際に、手前みそみたいな話ですけれども、消費者団体が取りまとめてつくって各方面に要請いたしました内容にそういう検討を経るに従ってだんだん近づいていくというふうなことで、最終的な消費者基本法ができ上がったということだったと思います。

 そういう点では、今回の消費者行政をどうするかというふうな問題も、どちらか絶対ということではない性格のものだと思いますから、せっかくこういうことで論議が進んできておりますので、ぜひとも各党一致するところをこの国会中に探り当てていただいて、現状より一歩でも二歩でも改善するものとして、ぜひとも実現していただきたいというふうに思っております。

細川参考人 この議論が出てくる前に、例えば独法改革の中で国民生活センター廃止とか整理という危機に瀕したわけですね。ところが、突然、福田総理が国民生活センターの相模原の事務所を訪問されて、そもそも一国の総理が一つの特殊法人、独立行政法人を訪問するなんということはめったにないということをお聞きしました。相模原だから半日かかって行かれたときに、ああ、これは何か変わったなというふうに、消費者問題に携わっている者はみんな感じたわけですね。

 そのとおり、消費者庁をつくるんだということを言われて、与党からこういった考えが出てくるというのは、本当に非常に我々は驚きだったわけですね。それで、自民党の中にも消費者族が生まれたというような形で、岸田委員初め野田議員、あるいは後藤田議員、森まさこ議員とか、積極的に活動されてこういうことになったということで、これは非常に画期的なことだと思います。

 そして、私が思うのは、大体、人権とかそういう問題というのは、やはりマイノリティーの問題が多いんですね。ところが、消費者問題というのはマジョリティー過ぎて何か大きな力にならない。だれもが重要だと言うけれども、すべての人の利益に拡散してしまって大きな声にならない。集団の何かに対する圧力が大きくなりますけれども、それぞれがみんな余り自分の不利益というものを感じないために今まで重要だと言われながらうまく進んでいなかったというようなものが、ようやくここで何か形を見るというふうになったということで、非常に感慨を持っていますし、逆に言うと、このチャンスを生かせないようだったら私は未来はないんじゃないかなというふうに思っています。

 本当にこれはぜひ実現していただきたいというのがすべての国民、消費者の願いですので、いろいろ工夫していただいて、ぜひ実現していただきたいというふうに思っております。

田端委員 本当に私たちの思いと全く同じ心意気で、本当にありがたいことだと感謝しております。

 そこで、品川参考人は、消費者団体の立場でもあって、消費者の側にも立ち、しかし、生協の専務理事ということで事業の立場にもある。事業主、事業家というんですか、事業を営む側にもある。両方兼ねておられるわけでありますが、そういう意味では、本当に消費行政あるいは消費者問題等々には全く両面からかかわっていただいているわけで、しかも、先ほど冒頭に、冷凍ギョーザの件でのお話もございました。

 そういった意味では、大変いろいろな意味で心も痛めながら、しかし、消費者の側にも立ち、そしてまた、よりいいものを国民、消費者に供給していこうという立場でもあり、本当に大きな役割を果たしていただいていると思います。

 その中で、私は、食の安全というのが、そういう意味では品川参考人も物すごく大きくかかわっておられると思いますが、先ほど来、食品安全基本法ということもお話があり、そういうことを今回、消費者庁で所管して、消費者庁がそれを運用していく、これはまた今までになかった改革でもあろうかと思います。

 そういう次元から、この消費者庁という新しい役割、そして情報を一元化し、司令塔として内閣の中で果たしていく、これについての御所見をお願いしたいと思います。

品川参考人 食品安全の問題ということにつきましては、本当に今、日本の国内で、生協でも事故を起こしましたけれども、生協だけでなく、さまざまな事業者がいわゆる偽装をいろいろなところでやっていることが発覚するということでありまして、食品そのものの安全性ということが一方にはありますが、ある意味では、そのこと以上に食品にかかわる事業者への信頼性というのが揺らいでいるというふうなことがあって、そういう点では、できるだけ早く食品そのものあるいは食品事業者への不信というのが払拭されるというのが、これは国民のためにもどうしても、大変重要だし、必要なことだというふうに思っております。

 もう一方で、偽装のような問題は、ある意味で事業者の姿勢をきちんと正すという仕組みが必要だということでございますが、食品の安全、安心の問題というのは、やはり科学的な評価を含む問題が多いわけですね。

 つい最近、新しくパブリックコメント等も求められている問題、クローン牛なんという問題がありますし、それに関係するということでいいますと、遺伝子組み換えというふうな、食品についての安全性ということもございます。

 BSEの問題も、最終の結論が出るというところにはまだいっておりませんし、農薬の残留だとか食品添加物なんということも、改めて、例えば中国品にメラミンなんというものが混入されるというふうな問題が起こってくるとか、いわゆる化学物質にまつわる安全性問題というのが食品安全ということについては非常に大きい部分を占めます。

 そういう点では、食品安全を確保するというときには、科学的評価を行う機関としての食品安全委員会、評価機関である食品安全委員会の科学的評価の機能を一方ではきちんと現在以上に充実させることというのが安全性を確保するという点では非常に重要な点として一つございます。

 同時に、食品安全委員会のあり方だとか、それから、食品安全委員会の評価に基づいて、農水省なり厚労省なりを中心として実際に行政執行を行う機関というのがあって、そういう意味では、それぞれがばらばらの機能を分担して担っているという関係でありますから、それらの関係機関に対して新しい行政組織が総合調整をきちんと行うこと。

 その総合調整のかぎは、冒頭にも申しましたが、リスクコミュニケーション。国民との意見交換、事業者との意見交換等リスクコミュニケーションの中身をどれだけ充実したものとして運用するか、それをキーとして使いながらの総合調整になるのではなかろうかというふうに思っております。その面で、新しい消費者行政組織が有効に働いていっていただくこと、それが働けるような条件整備をさらに図ることが必要だろうというふうに思っております。

田端委員 ありがとうございます。

 それでは、細川参考人にお尋ねしたいと思います。

 今もお話にございましたが、福田前総理が国民生活センターに行かれた。先生の古巣といいますか、そういった意味で、非常に政治が変わったという、大変身近な例でお話しいただきました。

 それで、細川参考人がいろいろ御提案いただいている中に、日本消費者院の構想といいますか提案もいただいているようであります。各国の消費者行政に大変精通されているという立場で、これは韓国をモデルにされているのかなという気もいたしました。

 ちょっとお尋ねしたいのは、例えばオンブズマンの仕組みだけで行っているような国というのはあるんだろうかな。そうじゃなくて、やはり行政が仕切るということ、先ほど先生のお話の中にも、規制行政、支援行政、それにプラス協働行政、救済行政ということがこれからは必要だということのお話がありました。だから、そういう意味では、そんなに考えは違っていないんじゃないかなというふうに思ったわけです。

 この消費者行政への新しい組織のあり方として、国際的な事例もあって、日本はどうあるべきかということで御提案なりまた御意見があれば、どうぞお願いしたいと思います。

細川参考人 先ほどお話ししましたように、消費者に関係しない政策を探すのが難しいぐらい、すべてのものは消費者にかかわってきているわけですから、それをどういう切り口で消費者の視点での行政というのをつくるかというのは、多分どこの国でも悩みだと思うんですね。

 しかも、消費者というだけじゃなくて、それ以外の部分もやっているようなところもあります。例えば、通産省的なところ、経済産業省的なところに消費者というような部門を張りつけているところもありますし、司法省、いわゆる法務省、人権とかということになれば法務省のところに張りつけているということもあるし、あるいは競争政策、日本でいえば公取、そういうところに、取引が中心になりますけれども、そういったものを張りつけているというようなところもある。あるいは、小さい国ですと家族省とか、ファミリー、家族問題、そういう家政とか家計とかというような中で消費者問題をとらえるということもあって、これはやはり、どういうところもいろいろな工夫をしているところだと思うんですね。

 ただ、一つ言えることは、本来の姿というのは、消費者庁とか消費者権利院というようなところだけが消費者のことを考えていて、ほかのところは考えなくていいということではないわけで、そこは共通の理解があると思いますけれども、徹頭徹尾本当に生活者とか消費者の視点で各省庁が政策を遂行しているのであれば、逆に言うと消費者庁だ何だというのは要らないはずなんですよ。だから、必要ということは、逆に各省庁というものがちょっと生活者とか消費者の視点を忘れて事業者の方を見てしまうというようなところで、そういう問題があるということだと思います。

 今回は、消費者庁とか権利院というような形はつくるとしても、いかに各省庁、すべての政策の中で、やはり国民、消費者のためにそれはあるんだという、だから、僕は、一番抜けているのは、公務員の意識改革とかそういった方策というものをどうするのかというところがちょっと抜けているような感じがしまして、そこで、私、勝手に、消費者大学校みたいなものをつくったらどうかという提案をしたということでございます。

田端委員 もう本当にそのとおりだと思います。

 そこで、私は、縦割りの弊害を乗り越え、情報の一元化をし、そしてまた司令塔的役割を果たす、こういうことを実際にやる大きな機関といいますか、言われているところの消費者政策委員会というものがどういう役割を果たすか、いかに独立性を担保し、そして、どれだけの専門的知見を集めてやれるかということが一つ大きなポイントだろうと思います。

 それからもう一つは、いろいろ今もお話がございましたように、消費生活センターとか国民生活センターという国民と身近に接する窓口になる機関、やはりここがそれなりの見識と、また対応ができる能力、そういうものを備えるということ、そして全国に、偏ったことにならないように、いろいろな形で、しかも二十四時間、そういうことができるかどうか。

 私は、ここが二つ大きなポイントではないかなと思っておりますが、両参考人から御意見をお伺いしたいと思います。

品川参考人 新しい一元化した消費者行政部局が機能するかどうかのかぎは消費者政策委員会にあるだろうという御指摘は、私も全く同感でございます。

 そういう意味では、消費者政策委員会がいろいろな意味でこの新しい行政組織全般に対して意見を具申するということが当然ありますけれども、それだけでなくて、各省庁の行政がどれだけ消費者視点で行われているか。逆に言うと、消費者視点で行われていないようなことがあるときに、消費者政策委員会がそういう他の省庁に対しても事情聴取ができたり、それから、物を申したり。物を申したときに、きちんと消費者政策委員会にその返事が返されるなり、そういうようなことがこの消費者政策委員会をめぐってきちんと整備される、これは法律上の問題もあるでしょうが、運用上の問題としても、そういうことを含めて整備されるということが必要だと思います。

 それからもう一つは、この委員会の事務局がきちんと独立性を持ってつくられるということが必要ですが、同時に、やはり今日の各種消費者問題というのは、各分野ごとにかなり専門性の高い諸問題が多いわけです。食品安全もしかり、製品安全もしかり、建築物の安全性というふうなこともしかり。

 科学者の判断、リスクの評価等をきちんと聞きながら、それとの関係でどう判断するかというふうなことが重要だということも多いですから、そういう点では、事務局だけですべてを構成するというふうにはなりませんけれども、事務局の周辺で、そういう専門的知見を必要なときにはきちんと得て、政策委員会の判断の素材として提供できるような仕組み、そういうものもあわせて整備することが必要だというふうに思います。

 それから、地方あるいは国民生活センターについても、それ自体も、例えば国民生活センターなども、ある意味ではセンターの運営の意思決定の中などにも現状以上に消費者参加等の仕組みももっと充実させながら、国民生活センター等が果たしている機能がより有効に果たせるようなものにしていくというふうなことも大変重要なことだろうというふうに思っております。

細川参考人 まず、私も、先ほど述べましたけれども、消費者政策委員会というのが消費者庁構想の中で非常に重要になると思います。

 ただ、ちょっとまだ制度設計で不足かなと思うのは、十五人以内の非常勤という形ですね。十五人ということを出されたということは、この前、野田大臣が答弁されたんでしょうか、その構成ですね。十五人ということは、多分、学者五名、消費者団体五名、事業者五名。大体審議会というのはそういうバランスをとりますから、そういうイメージだとすると、その中で本当に迅速に消費者の視点で何か意思決定というのができるのかな、そういう疑問を一つ持ちます。

 その点、民主党の消費者権利官の方は、そのことだけのための人を雇う、雇用するということですけれども、自民党の案ではそこら辺がどうかなという感じもします。

 非常勤で十五人の人を集めて、これは、私も審議会の委員をやったりして、もう官僚の方は御承知ですけれども、十五人いたら日程を決めるだけで大変で、一カ月に一回同じ日程が合うなんということだけで大変です。しかも、日本というのはそういうものは必ず非常勤でやってきて、結局、事務局にリーダーシップをとられてしまって、何か事務局が決めた路線を追随するような御用委員会になってしまうというようなことが非常に多いんですね。審議会行政というもののあり方ですね。

 どうも、消費者政策委員会が国生審の焼き直し的なイメージしか読んでしないので、これをもう少しちゃんと行えるというふうにしていかないと、無理してつくっても、逆につらくなるんじゃないかなという感じを持っております。

田端委員 消費生活センターとかそっちの方はいいですか。

細川参考人 議員言われたように、本当に国民生活センターとか消費生活センターというのは重要でして、消費者問題というのは全国津々浦々いろいろなところで発生するわけです。そして、消費者というのは、被害者であると同時に、重要なそういった情報のいわゆるセンサーなわけですね。そこの情報をしっかり受けとめて、それを集約するということをしないとだめだということです。

 今、一つ問題なのは、PIO―NETというのは非常に充実していて、年間百万件以上ある。だけれども、百万件以上入っていますと喜んでいても、何の意味もないわけですよ。かえって、入り過ぎるゆえに仕組みをつくらないと分析ができない、そういう問題も起きてくるわけですね。

 だから、情報を収集するのも重要だし、それをいかに分析して、そこから問題をいち早くキャッチするかという仕組みづくりというもの、そこら辺の流れ、そこが今後重要になると思っております。

田端委員 ありがとうございます。

 確かに、情報を集約するコンピューター施設も大事であって、私も、国民生活センターの二十年ほど前の古いあれを見て、これじゃだめだというので、ことしの新年度予算の中に新たに入れていただいて、新たな設備が近々入るかと思います。

 さて、最後に、品川参考人は消費者機構日本の理事長という大変大事な立場で、第一号の適格消費者団体ということでございますが、いろいろ御苦労もあろう、また、これからの使命も大きいと思いますが、いろいろなことが言われています。民主党の案もあります。しかし、私はまず、スタートしたばかりですから、ここはむしろ、この七つの団体が本当に機能していただくことが一番大事だという思いであります。

 そのためには、むしろ、財政的な面で、もう少し国が何らかの形でかかわるような形で支援する、それの方がより有効ではないのかな、こんな思いもするわけであります。数をふやすということよりも、今ある、限定された、しかし大事な七つの団体がいかに機能していくか、その仕組みをつくることの方が優先だという実感を持っているんですが、御意見をお伺いしたいと思います。

品川参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、団体訴訟制度というのを運用するには、一たん裁判になりますと、当然、弁護士費用から含めて訴訟にかかわる費用というのが必要になりますけれども、その前に、実際に問題のある約款等があるのではないか、違法な契約行為、勧誘等が行われているのではないかというふうなことが情報として寄せられるわけです。

 それでは、それが本当に法律上問題があるのかということを、当然その団体ではいろいろな調査を行い、例えば、こんな約款で契約を結ばれたという約款が一つ届けられるわけですけれども、その約款が現在も使われているのか、新しいものに変わっているのか等もまずわからないわけですね。

 ですから、最新のものを取り寄せ、それを十分に読み込んで問題点を発見する、それで分析した上で申し入れに持っていくまでに、一つの案件で何回となく会合を開き、申し入れの中身、法律的根拠を明確にする。それも、弁護士さんに任せるということではなくて、私ども消費者機構日本の場合には、消費者の相談員の方だとか等を中心にして、ボランティアの方々が一生懸命やっているわけですね。

 そのことだけでも会議を何回もやる、そのためのコストだけでも大変大きなコストが必要になるということでありますから、現状の制度を有効に運用するだけでも財政的には大変だというのがあり、例えばヨーロッパのように、こうした制度が社会的にももっと大きな役割を発揮していくためには、財政的な支援が急がれるというのは全く御指摘のとおり、私も同感でございます。

 同時に、そのことだけでなしに、民主党さんが提案なさっておられるような、差しとめ訴訟ということだけでなしに損害賠償ということについても早期に団体訴訟の中に含めていただくということは、これもまた大変重要なことだというふうに思っております。

田端委員 ありがとうございました。

船田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、岡下委員長代理着席〕

    〔岡下委員長代理退席、委員長着席〕

船田委員長 速記を起こしてください。

 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の二つの法案の提出者でもございます。いつも答弁席に座っておりますので、きょうは初めて質問をさせていただくのでうれしく思っておりますが、お二人の参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 まず、では品川参考人に、この消費者庁への期待は本当に、特に消費者団体の皆さん強くて、私も以前から、NHKにいたころから消費者問題にかかわっているので、これは長年の悲願だと思うんですけれども、今回の消費者庁の法案を見まして、やはり、先ほど細川参考人も三つに分けておっしゃっていただいたように、消費者問題のくくりというのは非常に難しいですよね。

 二十九の専門だと思われるものを抱えて、しかもそこが共管で、これまでのいろいろな省庁の成り立ちを見ますと、現在ある、業界の方を見ている古くからある省がたくさんあって、そこに新しい庁が一つできて、そこが言ったことが通るんだろうか。それが中でやることはやはり閣内不一致にもなると、何もできないということが、私どもが外へ置いた一つの理由なんですね。そう申し上げたら、何か、総理が上にいて、合意しない場合はやるという案になったんですけれども、今までも総理が一番上でという仕組みはいろいろあるけれども、どれもうまく機能していないように思うんですよ。

 ですから、期待はわかるんですが、小さく産んで大きく育てる、あるいは今は最低限これで仕方ないと思われるのかどうか、ちょっと伺いたいと思います。

品川参考人 新しい行政組織、消費者庁が例えばできたから、そのことだけで確実にどれだけよくなるかというのは、二〇〇%それでよしというふうにはならないだろうというふうに思います。

 現実に、一番下手をすれば、縦割りの、もう一つ新しい縦の一つができるだけということになりかねないという危惧も、それはないではないというふうに思っております。

 ただ、しかし現実には、その新しい消費者庁が法的には勧告権を持つというようなことがはっきり明記され、それが消費者政策委員会等にも報告をされというふうな法律上の担保措置自体は、現状との関係でいうと、例えば消費者基本法を管轄する内閣府国民生活局というものとの関係で比べますと、法的枠組みとしては格段に違う。一元的に内閣全体の消費者視点を貫かせるための装置は前進するということは確実だというふうに思っておりまして、それをいかに実効あらしめるものにしていくかというのは、さらに今後の国会での検討の中で整備されるなり、あるいは運用の中で積み重ねていくなり、政策委員会を中心にしながら国民全体の監視の目の中でそれを運用するなり、そういうことの積み重ねということしかないんだろうというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 私も以前からおつき合いしていますけれども、消費者団体の皆さんは、本当に善意で一生懸命でいらして、割と希望的に、物事を前に一歩、二歩とおっしゃるのは本当に着実でいいと思うんですけれども、これまで、例えばPL法ができて、それから十三年たってどれだけ活用されているかとか、あれもパラダイム転換と言われましたけれども、いろいろなことで、経験上、やはり一度産んでしまうとなかなか根本的には変わらない、政権がかわれば多少変わるかもしれませんけれども、そんなことも思います。

 それで、細川参考人に伺いたいんですが、先ほど、どちらがいいというあれではないけれども、どちらかというと消費者権利院の方が機能しそうといううれしいお言葉をいただきました。私たちも決してここで破裂させたいとは思っていません。皆さんが望んでいらっしゃることの足を引っ張ろうなんてだれも思っていません。ただ、いろいろお聞きになっておわかりのように、基本的な哲学、理念が違うんですよね。ですから、足して二で割るということはできない。

 だから、どちらかをベースにして、それをベースに整理をして、もう一方をくっつけるということしかないかと思うんですが、もし何か工夫するお知恵があれば、ぜひ伺いたいと思います。

細川参考人 自民党でも、初めの議論のときは、消費者庁がいいのか委員会がいいのか、そういう議論はたしかあったと思いますね。あのとき僕は、何となく委員会が、こういった、権限を強力にして、しかも範囲が広いというようなところは、アメリカ型の独立行政委員会みたいなものがいいかなというイメージを持っていました。そのときに、自民党は、委員会じゃなくて庁の方をとった。その理由というのはちょっと私よく伺っていないですけれども。

 やはり消費者問題というのは迅速性というようなものも必要、透明性というようなものが必要ということになると、政府全体でやるというよりも、ある程度独立した権限があって、準司法的機能かつ準立法的機能を持つような形での、そういった行政というのが、これはアメリカのFTC、SEC、それから製品安全のCPSCというようなものですよね。民主党の案はまさにこの独立行政委員会的なものだけれども、それを執行部ではなくて、外して、勧告するような形で、それは政府にやらせるということなわけですよね。

 そういう意味でいうと、私、個人的には委員会型で、半分政府だけれども半分独立してやるみたいな形の方がいいのかなというような形を思っておりました。

 ただ、こういう状況になってきて、先ほど書きましたけれども、今自公政権でやっているわけですから、まずはやってみろという、それで私たちが政権を持ったときはとか、あるいはそれ見ろじゃないけれども、やってみた中でどんどん問題点を指摘して、そういうやり方だってあるのかなというふうにも思います。

 やってみなければわからないというようなこともいっぱいありますし、やはり器だけじゃないわけですよね。そこで実際に人間が動いて、そこでその理念をどう生かしてどう行動するかというところがすべてなわけだから、逆に権利院で、つくっていろいろ勧告は出したけれども、ことごとく無視されているというような状況にもしなってしまったら、これはまた逆に不要論みたいなものも出てくるという可能性だって出てくるわけですよね。だから、運用するのは人間、人なわけですから、やはりどこでそういった形の中に魂を入れるかというところが課題になる。

 ただ、少なくとも、どうも日本というのは、余り改革というものがなかなか進まなくて、とにかく遅いんですね。韓国なんかを見ていると、本当に、今問題はあるんだからまずやってみようよ、そういうマインドなんですよ。日本はとにかく調べ調べて、明治以来の慣習だとか学説がどうのこうのとかということで、結局やらないで済ませてしまうみたいな部分が非常に多くて、日本人の国民性として、こういうふうにボンと激突したときに、それをどう解決してよりいいものをつくるかというところは、多分日本人はちょっと不得意なのかもしれませんので、ぜひ知恵を絞っていただきたいと思います。

小宮山(洋)委員 さっきおっしゃった権利院の勧告は、期限を切って、従わない場合はそれを公表するとか、幾つかの装置はつけております。

 それで、もしも何かを一緒につくるとして、一つのかぎになるのはやはり地方の問題だと思うんですよ。お二人とも指摘されたように、この委員会でもずっと議論になっているように、格差が余りにもひどい。その中で、やはり、東京を、先ほどの武蔵野市などは非常に進んでいるわけです。それをベースに話されると困る。

 どうしてもここの議論は東京中心になってしまう嫌いがあるので、もちろん地方の方もいらっしゃると思いますけれども、地方では、この間も申し上げたように、本当に、相談でも、一週間に何日か、何時間だけしかできないとか、今の相談員の方たちは雇いどめに遭ったりとか、研修に行きたくても全然行けないとか、そういうことではやはり機能しないと思うので、ここは、政府が考えている、三年間は基金でやるけれども、その後交付税にしたら、それは地方の首長さんの裁量によって、小さくなるところ、大きくなるところ、出てくるに決まっているわけです。

 私たちは、そういう意味で、ちゃんと財政的に国がしっかりと見て、それで身分の安定と、それから研修などをして質を高めるということで、相当いろいろなことを検討した結果、これは当面の、今の現状では任期つきの国家公務員にするしかないというふうに考えたんですね。

 再三お答えしているように、もちろん力のあるところは自治体でいろいろやっていただいていい。ただ、これも、政権がかわって分権が進んでいけば非常に早くそれができるようになるかもしれないし、ならないかもしれない。これはやってみなければわからない。でも、ベースはやはり、全国津々浦々どこにいても同じように消費者の権利が守られる仕組み、そのためにはやはり地方の窓口の、そこで働く人たちをどうするかということだと思うんですが、それぞれどうお考えか、お二人に伺いたいと思います。

品川参考人 地方の相談体制を充実するために国の財政も発動させてその充実を図ろうという考え方は私も必要だというふうに思い、それは当面の三年間ということだけでなしに、その先を含めてどうするかという対策が必要だというふうに思います。

 そこはそう思いますということと、それから、それが直ちに国家公務員になるかということですが、地方で仕事をしている相談員の方が国家公務員、その監督をなさったり管理をするのは地方行政の中で各県の消費者セクションの地方公務員というふうな、地方公務員の身分と国家公務員の身分が錯綜するような構造がもし生じてしまうとしますと、いろいろな意味で、そういうことからくる管理上の問題とかが起こりはしないかというふうなことが、よくわかりませんけれども、国家公務員というお話を伺ったときに私などが危惧するところであります。だから国家公務員は反対だということを言うつもりもないのですけれども。

 国の財政として支援する仕組みとしては何らか必要であることは確かですので、国家公務員ということだけでなしに、ぜひ何らかの措置が検討される必要があろうというふうに思っております。

細川参考人 先ほどちょっとお話ししましたけれども、日本というのはいわゆるボトムアップ型で消費者行政というのは整備されてきたんですね。消費者問題に気づいたのは、国よりもむしろ地方というか、やはり住民の中でそういった問題に気づいて、兵庫県の神戸の生活科学センターができたのが昭和四十年代。だから、国民生活センターの方が後からできたわけですね。

 例えば、消費者の権利というようなものを理念規定の中に入れて、消費者保護基本法を改正して消費者基本法になりましたけれども、それよりも前に、消費生活条例の中に消費者の権利というのは、実定法上の権利じゃない、理念的な権利ですけれども、うたわれていたわけですね。地方がむしろ主導して国に呼びかけてきたというようなことがありますね。

 そういう点からすると、ここはちょっと小宮山先生と意見が違うんですけれども、やはり地方自治体のそういう創意工夫だとかいったものを生かしつつ、それを促進するような仕組みを国がつくって、そして共同してそういったものを盛り上げていくというような仕組みづくりが必要じゃないかなと思います。

 逆に、国が全部面倒見るというと、ああ、こちらは何もしないでいいんだなというふうにどうもなりがちで、手を引いちゃうというようなことが、僕はちょっとそこら辺をむしろ気にして、むしろそういうところはしっかりやらなければいけないんだという動機づけを与えるような形で、頑張ってアイデアを出して、今そうですよね、企画を出して、それならお金をつけますよというのは、これは私、一つ、合理的だなと思いますし、消費者庁がなかなかできない中で、一足早くそれをやったということは私は評価はしているんです。

 ただ、一つ思うのは、戦後のいろいろな政府の改革の中で、警察も自治警察、消防も自治、ところが、裁判所というのは国、あるいは公正取引委員会というのも国なわけですね。どうも、地方の自治体に、自分たちの圏域内の経済秩序は自分たちで守るんだという意識が非常に弱いんですよね。サービス行政的に相談の処理はするけれども、秩序の違反があったものに対して我々の手で何とかしようというものは希薄で、もし戦後、公正取引委員会みたいなものも各県の中にできていたら違うんじゃなかったかなと思いますけれども、ちょっとマインドの弱さもあるので、そういう意味で、国が、十年間ですか、任期つきの相談員さんを雇用するとかという、そういうお考えもちょっとわからないではない、そういう感じです。

小宮山(洋)委員 これは、私たちも、別に国家公務員がいいと思っているわけじゃないんです。ただ、今自治事務になっている中で、国がお金を出す方法はどんなに考えてもこれ以外なかったんですよ。ですから、これは与党の方からも、国がしっかりと財政的に津々浦々措置できる方法があるんなら言ってください。

 それはやはり、私たちだって、別に国が全部見るのがいいとは言っていません。それぞれ自治体がやるのがいいに決まっています。けれども、現在は、ここ何年間かで消費者行政にかけられる地方の予算が、これも再三出ているように、半分に減らされている。この現状がある中で、創意工夫しなさいと言ったって、これは無理です。だから、そういう意味で、先日、私が緊急避難的と言ったら、またこれもおしかりをいただいたんですけれども、思いとしては、なるべく、遠からず自治体がやるようにしたい。

 だけれども、大前提としての、全国どこでもサービスが受けられるようにするためには、今のところ、補助的にというか、当面の措置といったらいいんでしょうか、国がやらざるを得ないんじゃないかというのが私たちの意見だということで、これは本当にそのための処遇として国が見るということで、今までやっていた相談員さんが、急に国家公務員になったから威張ってしまって意思が疎通できないなんということとはちょっと違うんじゃないかなと思っています。

 それから、団体訴訟制度については、私どもだけが出しています。

 これは、当初、自民党の方でもお考えだったようですが、全く抜け落ちてしまっている。だから、これはぜひ必要だというふうに思っているんですが、品川さんは、その第一号の適格消費者団体として、消費者契約法のときにも、これは差しとめだけじゃなくて損害賠償もと私どもは言ってきたわけですけれども、現在、今ある適格消費者団体で担えるのかというような疑問がこの委員会でも出ています。それはそのときに、私どもは、私たちの権利官、オンブズパーソンがサポートすることによって司法がかむことによって可能だろうというような形をとっているんですけれども、今の適格消費者団体が担えるかどうかということと、今回は訴訟事務に関する国や地方公共団体の財政的支援ということも入れてあるんですが、やってごらんになって何が足りないと思われるか、そうした実態を伴ったお話を伺いたいと思います。

品川参考人 現在、適格消費者団体ということで、先ほども申しましたが、今日までのところは消費者契約法だけが対象ですので、消費者契約法に基づく、違法な約款等の修正を求めて事業者に申し入れをする。一件の申し入れをするだけでも、何回となく会合を開いて問題点を洗い出して、消費者契約法第九条のどこそこに、この契約の、この条文のここが当たるということを指摘して、最初の申し入れを事業者に対して行って、事業者からは、何らかの、何だかんだ、いろいろ言いわけがついて、それとやりとりをしてというふうなことをやっていく、そんな関係でございます。

 そんな意味では、現在の制度を運用する上で、一つは、先ほども申しましたけれども、何らかの財政的な支援を国からもぜひ、あるいは地方公共団体からもしていただくということが必要だというふうに思います。

 もう一つは、財政的支援ということだけでなしに、適格消費者団体に対しては、情報面で、地方行政なりあるいは国政なりが、そういう制度ですから、一般に公開するということとは違う位置づけを持たせて、いろいろな情報提供をいただくというふうな仕組みを整備するというようなことも極めて重要。

 私ども消費者機構日本の場合には、東京都との関係では、東京都の相談活動の中で相談の場に持ち寄られた、例えば具体的な約款そのものだとか関連する資料等を、事業者名は当然伏せてですけれども、消費者機構日本には提供いただくというふうなお約束をすることができております。いろいろな調査を私どもが独自にやるということだけではなくて、行政に存在しますそうした情報を活用させていただくというふうなこともあり、そんなことも仕事を進めていく上では大変助かっているという面がありますから、それは東京とという関係だけでなしに、全国的にもそういうことも必要だというふうに思っています。

小宮山(洋)委員 そういう意味では、私どもが出している消費者団体訴訟制度は、消費者権利院、オンブズパーソンの法案と、これはリンクをしているというか、ともに働けるようにしてあって、これも消費者権利院の方でサポートをして、情報がちゃんと手に入るようにということもやっています。

 先ほど品川参考人の方から、クラスアクションで、入りたくない人だけが手を挙げて、そうすると次の人が敗訴した場合にできないというお話がありました。それは確かにそうなんです。ですから、私たちも、将来は父権訴訟、父権訴訟という名前もどうかと思いますけれども、行政がやる訴訟、父権訴訟にしたいと思っているんです。ただ、これは今、立法上の壁が余りに多くて、それが多分与党の方で今回はお入れになれなかったことでもあると思うので、当面、私たちはクラスアクションを導入したいということで、将来は父権訴訟にすべきだと私どもも思っています。

 もう時間が大分少なくなりましたが、細川参考人の方から、韓国の消費者院を初めとする消費者政策、やはりいろいろな面でそうですけれども、この消費者の面でも韓国は日本を飛び越えていってしまったという感じも実感としてあるんですけれども、この政策から、今回議論しているこの消費者行政の一元化ということで学べる点がありましたら教えていただきたいと思います。

細川参考人 まず一つ言えることは、とにかくやってみようというマインドだということが非常に大きいですね。日本は、とにかく議論を尽くして、いろいろなところで問題があるから時期尚早だというような形ですよね。

 先ほどの、民主党が考えている団体訴訟はクラスアクション的だから、後から、敗訴になったら訴訟する権限がなくなっちゃうと。それはそうだけれども、そもそもなかなか訴訟できない現状があって、訴訟する人も少ない。なかなか一人で訴訟できないからそれをつくっているわけだから、そのときに、負けたときに訴訟できないなんというのは僕は当たり前の話で、そこで訴訟する権利を侵害されるからつくらないなんという理論は、僕は反対のための反対にしか見えないんですよ。訴訟ができない状況だから訴訟しやすくしようという制度なわけですから。そういうのはそういうものなんですよ、制度というのは。

 そういうふうに考えると、どうも日本というのは、何か、絶えず反対のためのいろいろな理論が緻密に出てきてしまってなかなかうまくいかない。韓国とか、むしろアメリカなんというのはもう実験場ですね。消費者政策だけじゃないと思いますけれども。例えばこの前のAIGの巨額ボーナスだって、後から法律つくっちゃって、何で遡及するのかよくわかりませんけれども、あんなに素早くやって回収するという、日本じゃ考えられないですよね。

 だから、もう少し、私は、行政だけではなくて、司法とか立法が自分の責任を果たしていただきたいと思うんです。お互いがうまくキャッチボールすることによってよりよい社会をつくる。行政に頼り過ぎていて、すぐ行政批判とかになってしまいますけれども、本当に必要なら法律をつくって、裁判所が、おかしいならおかしいと判断する、それで覆されたらまた新たな法律をつくる、そういうような形でのダイナミズムというのは必要じゃないかなというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 もう時間が大分なくなりましたけれども、私も、消費者教育の必要性ということは強く感じておりまして、私たちの法案では、第二条の所掌事務に入れておりますし、あとは、第三十条の権利官の権限として、消費者に対する啓発及び教育というのを入れております。政府案の方にはこの項目が全くないというようなことで、これは、入れることは恐らく異論はないんだろうと思うんですが。

 私も、NHKの解説委員のころから消費者問題をやっていまして、消費者教育が必要ということで、支援センターをつくるとかいろいろなことにかかわってまいりましたけれども、どうも大きく伸びてこない。確かに、私も今文部科学の責任者をしておりますが、文科省の方の動きが鈍いということを毎週怒っているような状態なんですけれども、これはやはり、今の教員の養成の問題もありますし、特に、すごく属人的に興味のある方がいろいろな小学校とか中学校でなさっているのを広めるために、それを表彰したりというのも支援センターでやってきたんですけれども、どうも非常に地味な歩み過ぎて間に合っていないということがあると思うんですね。アメリカなどは非常に、ロールプレーとかいろいろなことを取り入れてやっている。

 そういうことで、今回、消費者のことに幸いにもスポットが当たっている機会に、子供たちのために、また社会教育もそうですけれども、消費者教育は、やはり現場の皆さんが学校に入って、社会教育の場に入ってやっていただく必要がある、そんなような仕組みも要るのではないかというふうに思っております。

 とにかく、よりよいものを、よりよいものというか、ぜひよいものをつくりたいと思っておりますので、またお知恵をいただければと思います。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 お二方には、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 早速質問させていただきます。

 最初に、品川参考人に、冒頭の意見陳述でもお話をされました、食の安全の問題について、一点お聞かせください。

 食品安全委員会の強化と消費者行政の一元化を指摘されました。それとともに、食の安全という国民生活に深くかかわる問題ですから、トータルな機能強化や体制強化を求められているのではないか。

 私どもは、この間、輸入食品の検査率が大変低くなっている、こういう問題についても、例えば五割にするような形で、そういった体制の強化なども必要ではないかということを求めてきているわけですけれども、食の安全、安心のために、全体としてどのような取り組みが今求められているのか。消費者組織としてお感じになっておられる点についてお聞かせください。

品川参考人 食品安全ということにつきましては、食品の安全性ということについて言う限り、輸入品が安全性の度合いが低い、国内ならば安全性が高いということは全くないというふうに私どもとしては思っております。輸入品にせよ、国内産品にせよ、きちんと原材料のところから、製造工程、かつ、最近の問題ですと、工場で生産された後、それが実際に流通の過程にどう乗って消費者の手に届くか、そこまで含めてきちんとした管理の体制がつくられるということが大前提でありまして、その管理体制を補強するものとしての検査というのがあるというふうに思っています。

 その管理体制にせよ、検査にせよ、いろいろな基準を国としては決める、その基準がきちんと守られるような仕組みをとっていくということだと思っています。そういう基準をつくり、体制を整備するという上で、先ほども申しましたけれども、食品の安全管理ということについては、科学的な評価と、それからそれを現実的に、効率的に運用することのできる仕組みづくりというのがトータルで整備される必要がある。

 そういう点でいうと、食品安全委員会という科学的評価の機能を担っているところは今以上に強化をされる必要があるというふうに思いますし、その安全委員会の出すリスク評価について、それがきちんと行われているかどうかを、新しい消費者行政、一元化した部局が、全体を見渡して必要な勧告を、これも、かつ機敏に行える仕掛けを整備する、それが必要なんだというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、細川参考人に伺います。

 消費者行政につきまして、先ほど消費者政策委員会につきまして、独立性、透明性、優越性、機動性が最重要だ、こういうお話もございました。また、その後の質問へのお答えの中でも、消費者行政を監査するという話もございました。この点で、民主党の消費者権利院というのもあるわけですけれども、消費者行政を監査するという上でどういう仕組みがふさわしいのか、どういう工夫が必要なのか、その点についてのお考えをお聞かせください。

細川参考人 今の消費者政策委員会は、十五人でやって、そこの中で、見識のある人がそこに立つということで、そこで独立性だとか専門性というようなものを確保しようということだと思いますけれども、逆に、十五人もいるとできないというような感じも私はするんですね。むしろ、三人ぐらいの合議制にする。

 だけれども、そうすると今度、民主的な運営が行われるかという視点があるから、そこで何か、例えば監察するような委員会をつくって、だから、執行部はなるべく小さくして、そのかわり、それを監視するところは消費者の視点で監視するというような、そういう方が私としてはいいんじゃないかなというイメージを持ってあんな案も示したわけですね。

 先ほどもちょっとお話ししましたけれども、とにかく日本というのは、法を執行する人が一番エリートというか花道だけれども、フランスというのは、監査、行政監査とかそちらの方に重きが置かれている、そんなことも言われています。どうも日本というのは、そういう監査というのは、形をつくっても非常に弱い。例えば自治体の監査委員会なんというのもOBか何かがやっていて、事務局も同じ職員で、結局なあなあになってしまって、重要ないろいろな問題が見抜けないというようなことがありますよね。だから、本当に、監査というのは、日本の国民性の中で弱いのかわかりませんけれども、そこを充実させるということが必要だと思います。

 実は、今までも総務省、総務庁の行政監察の中で、消費者行政が十年に一回か何か対象になってきました。例えば豊田商事とか、ああいうような事件の後とか、どういうふうになされたか。それはそれなりに、私はその中身を読みまして評価するものですけれども、だけれども、行政が行政を評価しているわけですよね。

 そこで、もう少し独立性があるようなところで、特に消費者問題というのは横断的なわけだから、やはり、私が先ほど言いましたように、形をつくるだけではうまくいかない、人が働いて初めてできる組織ですから、本当に人がうまく働いて消費者のためになっているのかというのを、監査というか検証するというような、それを踏まえてまたよりよいものをつくっていく。

 今どっちを選べばいいかという判断じゃなくて、今後そういうものを続けて、よりよい制度に変えていくような仕組みづくりというものも考えていいんじゃないかなというふうに思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、品川参考人に、消費者団体訴訟制度について何点か伺わせていただきます。

 適格消費者団体のこれまでの実績と評価につきまして、冒頭の陳述のところでも、四十四件の事業者への差しとめ申し入れ等を行い、うち二十一件では約款是正等が行われてきたという話でございます。

 その他の二十三件が今どんな状況になっているのかということについてお話しいただきたいのと、課題としては、もちろん、さらなる損害賠償の導入ということは要望されておられるわけですけれども、それ以外に、この間、実施をして実績も重ねてきた範囲についてですけれども、浮き彫りとなった課題といいますか、その点、お感じのところがありましたら御紹介いただけないでしょうか。

品川参考人 これまでに、四十四件申し入れをして、二十一件で約款是正いたしました。まだ、現在事業者とやりとりをしている最中というものがその他の中にはございますということが一つ。

 それから、今日までのところは、この団体訴訟制度が活用できるのが消費者契約法だけなわけですね。実際に消費者が、いろいろ問題があったり被害を受けたりするのは、特に特定商取引法にまつわる問題が数の上では非常に多いというふうなことがございます。この部分については訴権という対象になりませんので、明らかに法律上問題になる点については申し入れをしてやりとりをするのですが、背後に訴訟をする権利というのが存在していませんから、事業者の方は、頑張るところは頑張ってしまうということがあります。

 そのため、私ども民間の消費者団体だけでは決着がつけられないというときには、特定商取引法については、地方公共団体、都道府県が指導監督等を行うという仕掛けがございますので、途中まで事業者とやりとりをした上で、都道府県の方に、こういう事業者がいる、後をぜひやってくださいという申し入れをする、そんなことで私どもとしては決着をつけるというふうなケースもございます。

 ただ、これはもう私が言うまでもありませんが、ことしの秋からは特定商取引法についても対象になっていきますので、消費者団体としても活用し、決着をつけていくところまで持ち込むことは、これまで以上に条件としては整備されるだろうというふうに思っております。

 制度の問題ということでいいますと、先ほども申しましたが、現在、私どもに、いろいろ消費者から問題ではないかというふうに持ち込まれているケースはたくさんあるんです。ただ、それを、事務局の検討体制が不十分なために、ためておいたままになっているケースなんというのは現実には非常にたくさんあるんですね。そういう点では、事務局で検討する体制をもっと拡充すれば、拡充した分だけ問題解決に接近していくことがもっともっとできるという思いを大変強く日常的に持っております。そんな点では、広い事務局をつくれるような人的、財政的、あるいは人材の教育等を含め、それから情報、サービス等を含めて、そういう、適格団体が仕事をしやすい条件整備というのをいろいろな意味で整えていただくこと、そのことが、文字どおり、消費者の被害防止をより多くしていくためには必要というふうに痛切に思っております。

塩川委員 人的、財政的な支援、教育のお話がございました。財政支援についても工夫せなならぬというところはありますけれども、あわせて、情報提供の仕組みの話も先ほどのお話の中でございました。

 適格消費者団体としての情報の収集をどうするのかということで、改正消費者契約法の中での情報提供の規定などもあるというふうには承知をしているわけですけれども、この点で、さらなる改善措置を情報提供において図るとしたらどんなことが考えられるのかについてお聞かせください。

品川参考人 国の段階で情報提供としていただけるのは、国民生活センターに集められているPIO―NET情報について、事業者を特定するなり特定の事案ということで求めれば、適格団体がPIO―NETからの情報は得られるという仕組みは法的条件としても整えているのですけれども、何分にも、PIO―NETに集められている情報というのは一件について三行程度で、要点これだけという情報が多いわけですね。そういう点では、現在、PIO―NETに寄せられる情報自体がその限りですから、国民生活センターから寄せようと思っても、それ以上広い情報というのは寄せられる関係になっていないわけですね。

 そういう点では、PIO―NET情報ということだけでなしに、先ほども申しました、東京都で若干道を開いていただいているわけですけれども、各都道府県でもPIO―NET情報以上に豊富な情報を適格団体に提供するというふうな仕組みを、これは、都道府県ごとにやるというよりも、何らか国の段階でも、団体訴訟制度を支援するシステムというふうなことで整備をいずれ図っていただくことをぜひ期待したいと思っているところです。

塩川委員 団体訴訟でのさらなる請求権の拡大の問題ですけれども、損害賠償請求権の話もございました。また、差しとめ請求権についても、特商法なども新たに対象になるということで、例えば差しとめ請求権のさらなるほかの法律への導入ということについて、何らかお考えのことがございましたらお聞かせください。

品川参考人 約款だとか契約行為、それから広告宣伝等の差しとめの範囲というのは、先ほど申しました特定商取引法、それから、この四月から景表法、景品表示法についても対象になってきておりますので、第一弾、そうした差しとめ訴訟という範囲でいいますと、一定、その範囲までのところには来たかというふうに思っております。

 次のステップは損害賠償ということでございまして、それはクラスアクションも必要だというふうに思っておりますが、損害賠償となると、何分にも制度上の詳細部分の整備を図る必要がありますので、きちんとしたチェック、検討等を深める必要があろうというふうに思っております。

塩川委員 続けて、いわゆる父権訴訟のことですけれども、行政組織が被害者にかわって業者に損害賠償を求める訴訟を起こす権利、これは違法収益の没収とセットで重要だという指摘がございます。

 そこで、いわゆる父権訴訟について、適格消費者団体を運営されているお立場から、関係といいますか、そういうことについてお考えをお聞かせください。

品川参考人 行政が消費者にかわって行う父権訴訟という制度も、消費者被害を回復する、あるいは違法な収益を吐き出させるというふうな仕組みとしては大変重要で、そうした制度の検討も引き続きしていただきながら、ぜひ早期の実現をしていただく必要があろうと思いますが、父権訴訟か消費者団体訴訟かという、どちらか択一ということではない。そういう意味では、父権訴訟も必要ですが、適格団体の団体訴権としての損害賠償ということも、これもどうしても並行して実現する必要がある。特にこれからの時代、消費者団体自体がそうしたことについて、それを運用できるような力をつけていくこと自体も世の中にとっては必要でありますから、そういう点では、両方ともに実現していくことをぜひ目指していただきたいというふうに思っております。

塩川委員 それでは、細川参考人に、消費生活相談員の活動について少しお聞かせいただきたいんです。

 消費生活相談員のスタートが買い物の相談という話がございましたけれども、それが同時に、豊田商事事件を機に、取引の問題について多くの相談も寄せられるようになる。そういう点では、いわゆる家庭を担うような主婦の立場での相談から、さらに、より専門的な、高度な相談というのが組み合わされてくるということですし、また、そういった情報を集約もして対策を求めていく、そういったことも本来は求められているんだろうなと思うんですけれども、そうはいっても、現状の体制というのは非常に、待遇を含めて貧弱であるわけで、今後の方向性として、消費生活相談員のあり方というのはどうあるのが望ましいのかについてお考えをお聞かせください。

細川参考人 多分相談員さんの立場はあした、あしたも参考人聴取があって、全相協からのお話もあると思いますけれども、確かに今、ワーキングプアと言われるような形で、もう食べていけるような状況がなくて、個人にそういった負担がかかってきているということですよね。そうした中で、待遇改善というのは当然必要なことだと思います。

 ただ、すべての人がそうやって、食べていく、職業としての相談員を求めているのかどうかというのは、僕は少し意見を伺ってみた方がいいと思うんですね。

 というのは、消費生活センターでの相談というのは、法律関係、消費者問題の法的な解決のアドバイスだけと言っていないんですよ。今でも買い物相談だってオーケーだし、あるいは家族問題だってそうだし、生活全般の相談を受け付けますと言っている中で、だんだん消費者問題、法的な問題、取引、契約の問題が大きくなってきて、そこに対応ができていないというのは事実なんですけれども、それ以外の暮らしの知恵みたいなものだって一つの柱としている。

 まさに国民生活センターというその名が示しているように、消費者保護センターといわないで国民生活センターというというのは、国民生活全般のことを行うからそういう名前になっている。自治体の消費生活センターも、そういった相談も受けるわけですね。だから、僕は、ボランティア的な、ベテランの主婦的な発想での対応とか問題解決が必要な部分だってあるんじゃないかなというふうに思うんです。

 だから、逆に、余りにも待遇改善、食べていけるようにといって、年収何百万以上確保なんというと、逆にすごく、主婦層じゃない、頭でっかちの、もう勉強ばかりしている、それも勉強のための資格講座までできてしまって、予備校までできてしまって、あれに合格すれば食っていけるなんというような形になって、かえって今相談を苦労してやっている人がもし排除されるようなことになったら、これは本末転倒ですよね。

 ちょっとお答えにはなっていないと思いますけれども、やはりそういったところも含めて、消費生活相談の中身、あるいはそれの対応がどうあるべきかというのをもう少し広い視野で考えた方がいいんじゃないかなというふうに思っております。

塩川委員 現状は、実態として非常勤、それも日々雇用で、短期の雇用契約を更新するという形で、三年、五年で雇いどめという形態ですから、そういう意味では、積み上げた経験、知見が生かされていかないという仕組みになっているところについての見直しというのが大いに求められているんだ、現場の相談員の方の御意見を踏まえて、ぜひこの点についての改善策というのを図っていきたいと思っています。

 関連して、地方自治体での取り組みについて品川参考人に、先ほどのお話でも、都道府県における消費者行政の話がございました。私がお聞きしているところでも、産業部局が中心で、国以上に消費者の視点が欠落している。県の産業振興課の中に消費者保護係があるとか、組織上もそういう実態というのがございます。

 そういう点で、都道府県行政において、一元的な消費者セクションをつくって司令塔機能を発揮する必要があるというお話がございましたけれども、この消費者視点が欠落という地方行政の現状について、こういうのはやはり改めてほしいと率直にお感じの点がありましたらお聞かせいただきたいのと、あと、あわせて、やはりこの点でこの都道府県における消費者行政がすぐれているというお話などありましたら、具体的な例示としてお示しいただけないでしょうか。

品川参考人 申しわけありません。都道府県の具体的事例を直ちにと言われても、ちょっとすぐお答えしかねるので、失礼いたします。

塩川委員 その点で、細川参考人、いかがでしょうか。

細川参考人 一つは、自治体で消費者問題についての理解が足りないということで、一つの課を置くというようなところが少ない。何か県民生活課の中の消費生活係とか、そんなふうになってしまっている。そこの張りつきも、産業振興課みたいなところだったり県民生活課だったり、いろいろなところに張りついているということですね。消費者問題というのは、横断的に、本当に自治体の行政全部にかかわるところなんですけれども、一つの部局でやっているというようなものが現状なんですね。

 だから、自民党の消費者庁案が出てきたときに、僕はミニ消費者庁が必要だというふうに思いました。国に消費者庁が必要ならば、自治体にだって消費者庁が必要なはずなんですよ。特に東京都みたいな巨大な、国として考えたって世界第何位ぐらいになる財政規模のところなわけですから。

 今、私も東京都の委員もやっていますけれども、何が問題かというと、消費者行政担当課というのはほかと並びなんです、ラインの中に入っているわけですね。だから、基本計画をつくろうなんといっても、結局並びだから、ほかの部、ほかの課からすると何か迷惑な話というか、こんなことを言っちゃちょっと失礼になりますけれども、余り真剣にやっているような感じがしなくて。それは、今までも、例えば経済企画庁、ホチキス官庁とやゆされていましたよね、各省庁が持ってきたデータをホチキスでとじるだけだという。

 やはりそれじゃだめなわけで、国もそうだし自治体も、もう少し、知事のスタッフ的なところで、全体を見渡せる、そこが何か指示を出せば全体が動く、そういう仕組みをつくらないとだめだし、消費者行政というのは本当に、狭い範囲でのものじゃないはずなので、そこら辺の仕組みづくりというのが必要じゃないかなというふうに思います。

塩川委員 消費者行政というのは別に二重行政が排除されるものではなくて、やはり国も地方もそれぞれ、都道府県の市町村でも行ってこそ本当の意味での消費者の権利保護が図られるんだという点での、体制、人的、財政的な支援ということが求められているんだと思うんです。

 そういう中で、今、都道府県の消費者行政についての財政がどんどん細る中で、県がやっているような商品テスト、こういうものについての体制がどんどんどんどんまた後退させられているというのがあります。これは国民生活センターの問題もあわせて問われてくるわけですけれども、やはり消費者のためのテストをしっかりやってくれるという機関がなければしっかりとした対応も担保されませんので、最後に細川参考人に、この商品テストの保障、こういうのはどうやるのが今求められているのか、お聞かせください。

細川参考人 一つ難しいのは、消費者用製品といっても、非常に範囲が広いわけですね。食品もそうですし、日用品もそうですし、あるいは自動車もそうですね。そういう意味でいうと、食品から自動車までというような形でうたっているのは国民生活センターだけなんですね。ほかの自治体は食品を中心にしてやっていて、それすら、今かなり貧弱になってきてしまっている。

 一つの理由として、結局は網羅できないというところが大きいと思うんです。余りにも範囲が広いので、それにこたえられないから、役割は終わったみたいな形にさせられてしまっているというのは非常に多いと思うんですね。

 その最たる例が比較テストです。もともと商品テストというのは、何か問題があるものについてテストするという、それもありましたけれども、比較テストをやって消費者の選択情報を提供しようということでやってきたわけですけれども、予算も人員もないから、国民生活センターだって、例えば冷蔵庫の比較テストを昔やっていたわけです。だけれども、年一回しかできない。消費者が本当に買いたいといったときに、そのテスト結果があるかというと、なかなかないわけですよ。冷蔵庫も大型化して、何百リットルとか、いろいろなものがある。車だって何種類もある。そうすると、年一回しかやれないといったときに、選択情報に資するような情報を出せるか。しかも、最近民間の雑誌がいろいろな情報を取り上げたりしているということで、役割は終えた論みたいなものが出てきて、どんどん削減されてしまっている。

 ですから、最近、そこでも、予算をつけていただいているのはやはり国民生活にかかわる重大な事故とか危険な商品、そういうものについてはやる意味があるということで、国では一定の理解をいただいていますけれども、自治体ではそこら辺が理解がなくて、どんどん廃止されて、私はある自治体の消費生活センターへ行きましたけれども、三階建ての立派な建物だけれども、三階は真っ暗なんですよ。なぜかというと、三階は商品テスト施設だから。もう職員もいないから電気を消しちゃっているというような状態で、私は、やはり商品テストというものも重要じゃないかなというふうに考えます。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 お二人の参考人、大変お疲れのところ、御苦労さまでございます。

 ちょっとこだわりがあるものですから、もう何度も質問が出ておりますが、消費者政策委員会について改めてお二人にお聞きをしたいと思っています。

 品川参考人も、独立性、これは担保しなきゃだめだ、同時に、科学的評価ができるような専門的知見を有しているものにしなければだめだ、こうおっしゃって、これがいわば消費者庁の一つの目玉であるということでした。細川参考人も、独立性、透明性、優越性、機動性、これをきっちり担保していかなければだめであるし、まさに消費者庁の帰趨を決するようなかぎなんだ、キーポイントなんだ、こうおっしゃっていて、私も全くそのとおりだと思うんです。

 問題は、権限の問題、この消費者政策委員会がどういう権限を持つのか、組織のあり方はどうなのかということが実は問われてもいいんではないかというふうに私ども思っていまして、その権限がどれだけ付与されているのか。

 例えば、今でいうと、一つだけ例を挙げれば、内閣総理大臣に意見を言うことができるんだと。無視されたらそれでおしまいということになるかもしれない、そうではない権限をこの消費者政策委員会に付与していくようなことが可能で、私たちはそう思っているんですね、そうすることによって、かなり消費者庁自体が変わるし、それから、後で触れたいと思いますが、いわば手足となって動く各省庁の担当部局などにもきっちりした指導性を発揮できるんじゃないかというふうに思っているんです。

 その辺の権限の問題と組織のあり方について、品川参考人と細川参考人に改めて御意見を伺いたいと思います。

品川参考人 私、先ほど申しましたように、一つは独立した事務局が必要だということですけれども、ここにそんなに膨大な事務局を抱えるということにならないこともはっきりしていると思うんですね。

 そういう点では、まさにこの委員会の権限として、各省庁に存在している専門的知見、そうしたものを直接質問する、直接答えが聞けるというふうなことを明確に位置づける。何らか意見具申を、総理大臣を介してというようなことも物によってはあるかもしれませんが、意見具申ができるということと、それにきちんと回答をしてもらえるというようなやりとりを、これは法的、制度的にきちんと明確にして、この委員会に専門的な知見なり科学的な知見なりを求めればちゃんと寄せられるという保障というふうなことを、事務局だけを厚くするということではなくて、各省庁との関係という中で整備する必要があるだろうというふうに思っております。

細川参考人 もし、今の法案の中での消費者政策委員会というものをより強力なものにして、むしろ執行権限みたいなものを付与すると、法的に言うと、多分これは庁じゃなくて独立行政委員会になっちゃう。だから、そこら辺で政府としてはそういう形にできないんでしょうか。ちょっとわかりませんけれども。

 まさに、大臣がいて、長官がいて、それが執行権の最高責任者であるという形だからこそ庁なわけで、それの付随的な御意見を言うという形で消費者政策委員会を置くという多分構造なんじゃないかなと思います。

 ですから、委員会の方をどんどん大きくすれば、じゃ、独立行政委員会方式の方がいいというふうになってしまうという議論になるのか、ちょっと私はわかりませんけれども、そこら辺がネックになってしまうのかなという感じがします。

 そういう意味からすると、消費者政策委員会というものを、むしろ監査的な機能という方に重きを置いて、例えば、一年間、消費者政策大臣あるいは消費者庁のもとで行ってきた政策、あるいはそれの指示に基づいて各省庁がやってきた行政について、本当に中立的な立場からそれを監査して監査報告をするというふうな形の方が、消費者庁という体制の中ではなじむのかなというような感じも今ちょっと持ちました。

日森委員 細川先生おっしゃっておられました、消費者行政監察院的なものであれば可能。ただ、その際も、かなり権限を持っていないと、先ほどおっしゃっていた自治体の監査委、私も、しばらく、二十年ほど自治体議員をやっていたものですからよくわかるんですが、今は行政監査までできるはずなのに、とても、権限なんかほとんど何もないというような状態があるので、ぜひここは、少し工夫をしながら権限の問題についても検討する必要があるんじゃないか、そんなことをちょっと考えておりますが、これはよろしいです。ありがとうございました。

 それから、規制行政が限界だというふうに細川先生はおっしゃっておりまして、法律の不備がある、やる気がない、それから、管轄がどこだかわからなかったり重複したりしているんだということがありまして、そういう意味では、やる気を出させるためには、消費者大学校みたいなところで、各省庁の行政官に、国民、消費者の視点での政策遂行の重要性を理解してもらうんだということをおっしゃっておりました。

 同時に、品川参考人の方は、各省庁の消費者専任セクション、こういうものをつくったらどうかというふうなことが提起をされておりまして、それはそれで、なかなかそうだと思うんですね。今は農水省の消費・安全局と経産省の、ちょっと名前忘れましたが、二つぐらいしか消費専門セクションみたいなのはないんですね。ほかのところは、そういう意味では、ほとんど産業育成政策だけに傾注してきたということだと思うんですが。

 こういう形で、少し動きの悪かった省庁全体を消費者の目線で仕事ができるように変えていくということは大変大きな意味があるし、そうすることによって、消費者庁自身の仕事ももう少し大きな視野でできるんじゃないかという気もするんですが、これについて、改めて御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。

品川参考人 御質問と同じように私も考えております。

 消費者セクションがあるかと各省庁に問うと、官房の中に消費者担当者がいるとかいうふうなことをほとんどの省庁がお答えになると思いますが、本格的に部局として位置づけておるというふうに私も理解しているのは、農水省の消費・安全局と経産省の消費経済部ですか、そういうふうなところです。

 かつ、一連のこの間の経過でも、例えばパロマの湯沸かし器というふうなことが大きく問題になったりしましたが、そのパロマの後に松下のホットプレートというふうな、ある種同じような事件が起こって、そのときの経産省の担当部局は、かなり徹底して回収の指揮をおとりになって、パロマのときとは比較にならないほど徹底した回収というのを指揮したりしているわけですね。だから、各省の中にそうしたセクションがきちんと、官房の中の一部分として担当を配置するだけでなくて、きちんと置くこと。

 例えて言いますと、例のエレベーターだとかジェットコースターだとかいうような、国土交通省にかかわるような、耐震偽装の問題なんかも結局そうだと思うんですけれども、建造物での消費者視点というのが必ずしも十分でないがゆえに起こってくる大事故なんというのもあって、国土交通省などの中にもそうした部局がきちんと位置づけられて、かつ、それが各省の各部局に対してきちんと物が言えるというふうな仕組みとして確立する必要があるだろうというふうに思っております。

 ただ、現実には、行政全体を肥大化させるということを避けなければということですから、各省庁の全体を肥大化させるということなしにそういう動きをはっきりさせ、新しくできる、一元化した、例えば消費者庁が各省庁に物を言うときは、そうした部局を通じて省全体に影響を及ぼすような、そんなことができないものかというふうに私としては思います。

細川参考人 各省の消費者の窓口というのは、考え方が二通りあって、そこの省庁の行政に対しての意見とかそういうようなものを聞く窓口があるかないかということでいうと、はっきり消費者窓口といっているところは、やはり農水省、経産省ぐらい。まあ、総務省も今通信とかそういうものはあると思いますけれども、そういうような感じですね。だから、そこにばらつきがある。

 もう一方で、消費者窓口が消費者の苦情の解決のための窓口という言い方をすると、これは皆無です。どこもありません。これは先ほど、私が初めに御説明しましたけれども、日本の行政というのは、基本的には民事の紛争案件には関与しないということを原則にしていますから、そういう意味でいうと、国民生活センター、消費生活センターというのはその原則の例外なんですね。

 だから、経済産業省に消費者相談室、農水省に消費者の窓というのがありまして、苦情があったらどうぞと言っていながら、いわゆるあっせんはしませんというふうになっているんですよ。金融庁もそうです。あくまでもアドバイスはします、あなたにこういう権利がありますよとか、あるいはこういうふうに言ってみたらどうですかというところまではするけれども、業者を呼んであっせんという形はしないというような形になっていて、日本の行政というのは非常に冷たいということですね。

 あと、公取なんかは本当にもっと消費者問題のことをやっていっていただきたいと思うんですけれども、公取は、消費者窓口というのがないんですよ。一応、景品表示監視室というところで、景表法違反行為の情報収集があるから受け付けているけれども、窓口という形でやっていないということで、非常にばらつきがあるというのが現状だと思います。

日森委員 どうもありがとうございました。

 実際に、消費者庁がしっかりと統一的に仕事をしていくという意味でも、これはかなり意味のあることだというふうに私も思っておりまして、ぜひ、大学校というのはできるかどうかわかりませんけれども、それぐらいの意気込みで、細川先生は意識変革と言いましたか、やっていかないと、消費者目線での行政というのはとてもできないし、パラダイム転換なんというのは夢のまた夢になってしまうんじゃないか、そんな思いがいたしました。

 ちょっと消費者団体の問題について。訴訟の問題その他はもうたくさん意見が出ましたので。

 細川先生の方で、韓国の例がありまして、何か消費者団体を組織する権利を明記されているというのがありました、この資料の中に。なるほど、そういう権利まで韓国の消費者院は保障しているんだ、なかなか大したものだというふうにちょっと思ったんですが。

 EUなんかでも、すべてじゃありませんけれども、一部の国々では、そうした消費者団体を育成し、同時に、行政と一緒にきちんと仕事をしてもらって、安心、安全の消費者行政を育成していくんだ、つくっていくんだという意味で、公的な支援を行ったりしているという話をちょっと聞きました。

 この問題について、韓国はどうなっているかわかりませんけれども、両参考人から、希望的な意見も含めてで結構なんですが、御意見をいただけたらありがたいと思います。

品川参考人 ヨーロッパ等の場合も、行政の支援策はかなりの額でも寄せられているというふうに思いますが、ただ、私の知る限りですけれども、日本などと違うところは、いわゆる消費者相談、きょうも何度も話題になっております消費者相談というふうな機能を、行政の委託というふうな形で民間の消費者団体に委託をして、そのことを含めて財政の支援がいろいろ行われて、その支援策が団体訴訟制度を運用するコストとしても生かされるというふうなところが多いと私としては理解しております。日本の今の仕組みだと、消費者相談を直ちに消費者団体にというふうに、この間の経過からだけではいきませんから、同じように一律にはいかないと思いますが、何らかの形で行政の支援が必要。

 とりわけ団体訴訟というふうな制度は、ある種公的な仕事そのものだと思うんですね。この団体訴訟というふうなものが活用されることによって、市場の透明化、公明性というのが確保されるということでありますから、そういう意味では、そういう位置づけをよりはっきりさせた上で、行政の支援策が必要と思っております。

細川参考人 やはり日本は、公と民というのを非常に分けるんですね。法律も、公法と私法というようなものが、違う法理で、違う目的で行われているんだという概念が非常に強い。

 ですから、例えば民事訴訟の公的な意義というのをほとんど認めないわけですね。だから、民事で、消費者が被害を受けて損害賠償請求ができるけれども、それと同時に、違法行為が明らかになったからそれを差しとめしたいといっても、その差しとめは認めない。なぜかというと、一回ひっかかったその人がもう一回ひっかかるわけないから差しとめする必要がない、そういう判断。

 だから、せっかく民事訴訟で悪質な行為がわかったんだから、それは差しとめればいいと私は思うんですけれども、それは個人の利益の話じゃないということで却下するというみたいに、やはり民事とか、あるいは民というものの社会的な意義、公的な意義というものを認めない傾向にありますよね。

 逆に言うと、行政だからといって本当に公的なことができるかわからないし、社保庁みたいな不祥事は幾らでもあるわけですよね。だから、行政だけが公益のことをできるわけじゃない。民にもそういうことはできる。だけれども、それは勝手にやりなさいよという。それで済めばいいですけれども、そうじゃないところに何らかのいわゆる支援をするのは、これは当たり前だと思います。

 例えば隣の韓国では、消費者団体に、今、多分日本円で一千万円ずつぐらいだと思いますけれども、支援していて、しかも自治体でまた支援している。だから、ソウル市に拠点を置く消費者団体は、国から一千万円もらってソウル市からも一千万円もらうというような形で、これは訴訟じゃなくて消費者運動、活動そのものに対してもそういう支援をしている、そういう制度もありますので、もう少し、ただ民だからお金は出せないんだというような発想じゃなくて、中身とか活動の公益性というものに応じて何かアシストするという方策は私はあっていいんじゃないかなというふうに思います。

日森委員 どうもありがとうございました。終わります。

船田委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 最後になりますけれども、御苦労さまでございます。

 この前も、本会議でエレベーターの事故について御質問をさせていただいたんですけれども、私からすると納得できるようなお答えをいただかなかったというふうに思っております。

 この事故、もう三年近くたっているんですけれども、国土交通省も原因について明確にしていませんし、警察庁も送致していない、ずっともうそのままの状況になっているんです。最終的には、昇降機等の事故対策委員会というのをつくって、重大事故発生時の警察との連携体制というのだけやって、その間にも、三年間の間にもいっぱいエレベーターの、さまざまな小さい、人身事故にならなくても起こっているというふうになっていますけれども、こういう、三年間たっても解決できないものに対してどう思われるのかというのと、消費者庁ができたらこういう問題がどういうふうに変わるのかというふうなことを、ひとつお二人の先生にお聞きをさせていただきたいと思います。

品川参考人 エレベーターの事故そのものについては私はそれほど詳しくございません。

 ただ、国土交通省にせよ、動きとして非常に緩慢な動きだというふうな、印象としては持っております。そういう意味では、例えばエレベーターの事故というふうなことについて、新しく消費者庁ができ、消費者政策委員会が機能するということになれば、より機敏な動きについて勧告をするとかいうふうな、外から物を言う構造というのは、現在には存在しない形でできてくるということは、ある種はっきりしているのではないかと思います。それが直ちにどうということを私としては言い切れませんけれども、少なくとも現状より前進させるということではなかろうかというふうに思っています。

細川参考人 今エレベーターのお話が出ましたけれども、ある評論家が言われていたのは、今、例えば高層ビルのエレベーターなんてすごい速さですね。本当に、あれはもう縦に走る列車と同じだという評価をしていて、それがほとんど検査とか、そういう体制がないのはおかしいということを言われていて、ああ、なるほどなと私は思いました。

 なぜかというと、公共交通機関という概念じゃないからだと思うんですよ。私物の建物についている建造物であって、公共交通機関じゃないから、ああいう、検査体制もない、基本的には持ち主、所有者の責任のところでやっているという形になっている。だから、法制度が現代社会に合っていないんだと僕は思うんです。

 エレベーターの設置を義務づけた法律がいつできたかも知りません、多分古いんでしょう。その時代なんて、エレベーターがある建物なんてほとんどなくて、のんびりゆらゆら動いていたぐらいの時代が、もう超高速になって、最近は、どこかが開発しているのは、ループになって何台もエレベーターが一つのところで走る、そういうエレベーターを開発しているそうです。今は上下だけですよね。一つのエレベーターで一つの箱しかないわけです。あれを、ループで上りと下りをつくっちゃって、何本も一緒に走らせる。これは、衝突するという事故の可能性があるのでなかなか実用化しないと言っていましたけれども、まさに交通機関という視点がないから、ああいうチェックだとかそういうところが甘いわけですよね。

 あるいは、前にジェットコースターの事故もありました。ジェットコースターも、私は驚きましたけれども、ジェットコースターのいわゆる点検義務があるのは地方の自治体だというんですね。あれも交通機関じゃない。なぜ交通機関じゃないかというと、乗ったところに戻ってくるから。移動しないから。ジェットコースターに乗って、またもとに戻ってくる、だから、移動させるためじゃない、単なる遊具だからということで、その点検も不十分だったということもあります。

 まさに、これはある意味では、官僚の責任というよりも、僕は、立法府ももう少ししっかりしてもらいたいと思いますけれども、既存の生活者、消費者の安全法制というものが現代社会の仕組みの中に合っていないからそういう問題が起きているんじゃないかなというふうに思います。

下地委員 先ほどお聞きをしますと、四十四の差しとめ請求があって、二十一が是正されたという話がありましたけれども、先ほどのエレベーターのようなものも適格消費者団体の方で原因究明をして、さまざまな調査をなされて、国土交通省の機関じゃなくても、法的な根拠がなくても、そういうふうなものを警察や国土交通省、担当の役所に提出をするというようなこともやった方がいいのではないかというふうに私は思うんですけれども、それに対していかがですか。

品川参考人 現在の団体訴訟の制度というのは、消費者契約法と、特定商取引法と景品表示法、後の二つはことしの春以降ということになります。いわば、消費者契約にまつわることについて法律上問題がある契約を差しとめるという範囲であります。エレベーターの事故のような話というのは契約についての差しとめということとは直接つながりませんので、現状の団体訴訟ということにはなじまないということ。

 それから、現実に、例えばエレベーターでなくても、PL法みたいな法律もあって、そうしたものも、今後、差しとめということにはなりませんけれども、損害賠償というようなことを入れるときに団体訴訟の対象にPL法の被害というふうなことを入れるということは、損害賠償ということでいえばあり得るというふうに思います。

 ただ、PL法にせよ、例えばエレベーターにせよ、先ほども出ているジェットコースターみたいなことにせよ、技術的にどこに問題があるかという技術的究明というふうなことがかなり必要で、そういう意味では、一民間の団体が、あるいは事業者だとしても、技術的な研究をするということは極めて困難なことで、やはり行政のところで、それらについては先進的な科学的知見等を動員しながら判定を下すということなしには、消費者団体に任せるというのではちょっと大き過ぎる話ではないかというふうに思っております。

細川参考人 たしか、先日までのここでの議論にも出てきたと思いますけれども、やはり原因究明する機関が必要だということですよね。法的な責任のために調べるというだけじゃなくて、やはり、未然にそういった生活上のトラブルを防ぐという点での原因究明の機関というものの整備が、これは私は必要だと思うんですね。

 ただ、例えば消費生活用製品だと、経産省系のNITE、製品基盤機構、ちょっと今詳しい名称を忘れましたけれども、多分、エレベーター所掌でもないからそこもやらない。この前、飛行機がひっくり返っちゃったのがありますけれども、ああいう交通機関だと国土交通省の調査委員会があるけれども、エレベーターとかみたいな建造物になってしまうと、そういう視点の原因究明というものの体制がないということだと思いますので、そういうのを、やはり包括的にそういった原因究明をする組織というものは確かになかなか消費者団体ということにはならないと思いますので、つくる必要がある。多分、国民生活センターも何もできないと思うんですよ、あのエレベーターを調べろと言っても。

 そういう意味では、先生おっしゃるように、ちょっとこれは抜け穴じゃないかなというふうに今感じています。

下地委員 人身事故が起こって、それでいて、またそういうことが起こる可能性があるというふうなことがあって、適格消費者団体としては、事業者もそうでありますけれども、行政に対しても物を言わなければいけないときがあるというのは必ずありますので、そういうときにどうするのかというのをこれから、賠償問題と同じで、賠償訴訟と一緒に考えていかなければいけないというふうに私は考えております。

 それで、二つ目にあります、適格消費者団体を取られて事業者に物を言うということと、その団体の法律の裏づけがない場合と、事業者の受けとめ方というのは相当違いますか。品川参考人にお願いしたい。

品川参考人 それは画然と違いがあります。

 私ども、消費者機構日本というのも、団体訴訟制度が法的に成立する前から組織をつくりまして、このことを想定しながらいろいろな角度での事業者への申し入れを行いましたが、当然のことながら、契約の当事者でもない、ある意味でどこの馬の骨ともわからない消費者団体が、この会社の契約のこの条文はおかしいよと言ってくるわけですね。

 ですから、どういう資格があって言ってくるんだというのが第一番の事業者側の反応。あんた方は弁護士かというのが次に聞いてくる言葉。それは常にそういうことで、私どもは、弁護士でもないが、今こういうことが国会では検討されていて、いずれ団体訴訟というのができるはずであるというふうな話を一生懸命説明しながらやりとりをするということでありましたが、法律が決まった途端に、そういうやりとりを事業者とやる必要が全くなくなりまして、適格消費者団体であるということを名乗って申し入れをすれば、大体において話し合いに応じていただける。

 先ほども申しましたけれども、現在までのところ、私どもは、裁判、提訴するまでに行っておりません。関西の方の適格団体には三、四件既に上程するケースを持っている適格団体もあるのですけれども、私ども消費者機構日本の場合には、いずれも、申し入れをする段階で、相手方の弁護士さんだったりが私どもの事務所に見えて、具体的な話し合いをして、裁判に行く前に是正していただけるということになっておりますので、裁判にはなっておりませんけれども、いろいろな意味で、未然防止の効果は法律によって支えられながら果たしてきているというふうに思っております。

下地委員 裁判に行く前に是正される、そのことは非常に効果であると。

 裁判になるというふうになった場合に、裁判になってきた場合に、適格者団体の方も、これは弁護士さんをお使いになって裁判をするというケースが出てくるんですか。

品川参考人 訴訟になる場合には、当然、弁護士に訴訟を担当していただいてお願いすることにしています。そういう意味では、当然、弁護士費用等も支払わなければなりませんし、そういう財政的保証もきちんと確保しなければならないということで、心構えとしてはしております。

下地委員 今、私は、裁判になるケースが数多く出てくると思うんですよ。今、品川参考人の方から訴訟にかかわる費用の問題というのが出てまいりましたけれども、先ほどこれ、ずっと見させていただきましたけれども、これはなかなか財政的に基盤をつくるのは難しいですよね。

 今これを見させていただきますと、埼玉消費者被害をなくす会という方からも五万円入っているというケースがありますし、それと、びっくりしたのが、残りは企業から入っているんですね。さまざまな、キューピーだとかニチレイとか、そういった企業から入っているんですけれども、適格消費者団体が、こういう訴える側の人からも寄附をもらう、訴えるはずであろう事業者からも寄附をもらうというようなことをやらざるを得ない。

 そして、やらざるを得ないけれども、これから訴訟になるとお金がかかるというふうになってくると、それでいて法的な裏づけを持たれることが効果があるとなってくると、何か頭の中が三つも四つも堂々めぐりするような感じなんですけれども、両方からお金をもらって、寄附をいただいて裁判するというのが果たして形としてはいいことなんだろうかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

品川参考人 御指摘のように、私ども消費者機構日本では賛助会員という制度を持っております。企業の方から一口年間十万円、最高は十口まで、ですから百万円までということで、賛助会員という制度をつくっておりまして、賛助会員については、団体の意思決定には全く加わらない、費用的賛助をするだけ、そういう定款規約で運営しているということでございます。

 企業からいわば献金を受ける意味ですけれども、先ほども申しましたが、消費者団体訴訟制度というのは、欧米などの場合には、公的な費用がかなり支えとして使われている、日本の場合にはそういうものが全くゼロということでございます。

 ところが、団体訴訟制度という制度の意味は、違法な契約だとか何だとかが現実に行われている例が非常に多くて、そのことが、市場自体の公明性なり透明性、あるいは、そういう意味では、広い意味での消費者の信頼性みたいなことを損なっているということを団体訴訟制度によって是正していく、市場の公明性というのを確保していく、そういう役割を広い意味では持つ制度だというふうに思っております。

 そういう意味を事業者の方にも御説明しながら、特定の事業者、どこそこの会社が私ども消費者機構日本のところに過大な影響力を持って、ここの会費がなくなると活動自体に支障が来るようなことでは、これは元も子もありませんから、そういう意味では、十口までという制限を設けつつ、意味合いとしてはそういう意味合いだからということを御説明して、御賛同いただき、御理解いただいたところに賛助会員ということで御支援いただいている、そんな関係でございます。

下地委員 細川先生はどうですか、今の答弁。

細川参考人 私も、正直申し上げて、そういうところが企業からの財政負担を受けているというのは好ましくないなとは思います。いざもし何かあったときに、それは別に影響ないといっても、当事者はそう思っていたって、外からはそういう目で見られるのは当然ですから、本来それはふさわしくない。

 ただ、一つあるのは、今、消費者支援基金という、企業から、コンプライアンス違反して、いわゆる不当利益吐き出しとよく言われますけれども、例えば不当表示、過失で不当表示してしまった、だけれども、一年前に不当表示の商品を買ったというようなことを証明できる消費者というのはなかなかいないですね。そうすると、それを被害者に返すといってもなかなかうまくいかない。そうすると、そういう支援基金みたいなところに寄附してもらって、それを間接的に消費者の利益のために役立てようという形での組織ができているわけで、消費者支援基金は、事実お金が出ていますね。何か審査して、年間百万円とか二百万円単位でお金を上げている。

 だから、やはり直接じゃなくて、そういうところが一つかんで、そういうところで公益のためということでお金を集めて、それをまたそこの判断で分配するという制度は私はいいのかな、そんな感じを持ちます。

下地委員 私もやはり、直接事業者から寄附をもらうというんじゃなくて、皆さんがやりやすいような環境をつくるということで、基金を創設して、国だとか都道府県だとか市町村が全体で基金をつくって置いておいて、そこから適格消費者団体に支援、財政の援助をする、そして、訴えられる可能性のある人からもお金をもらわないでしっかりと消費者行政ができるというようなことをやった方が私はいいのではないかなというふうに思っておりまして、そのことも将来は考えていく必要があるというふうに思っています。

 それでは、細川先生の方で、消費者大学をつくるというふうに先ほどお話がありましたけれども、小学校のときにはこういう教え方、中学校のときにはこういう教え方、高校になったらこういう教え方、大学になったらこういうやり方、結婚する前の女性や男性にはこうだとか、結婚したらこうだとかと、いっぱい、そこでその勉強の仕方が変わってくると思うんですけれども、そういうふうなものを具体的にやっていくとこの国のあり方も相当変わってくると思うんですけれども、体系的にできるような仕組みをお考えになったことはありませんか。

細川参考人 まず、私の考えている消費者大学校というのは、いわゆる行政職員の研修施設という意味での消費者大学校ですので、教育機関というイメージではありません。

 消費者教育が進まない理由として、非常に体系化しづらいというのがあるんですね。これはなぜかというと、絶えず変わっているんですよ。例えば日本史を教えるとか世界史を教えるというのはそんなに日夜変わらないですよね。学説が変わったり、そういう新しい発見があれば変わりますけれども、それプラス、現代史がプラスされていくだけですよね。ところが、消費者問題は、例えば携帯電話だって、十年前、二十年前こんなになかったし、しかも、消費者教育を設計する自分たちよりも、消費者教育を受ける側の方が詳しかったりするんですよ。大体、携帯なんて、子供に聞いたりとかでしょう。だから、この体系化、そういう非常に難しいところがある。

 しかも、それをどういうレベル、先生さっきお話があったように、小学校レベルで教えればいいのか、中学レベルで教えればいいのか、あるいは教えることは同じでも、教え方とか深みがまた違うのか、そういう部分があって、非常に消費者教育というのは体系化しづらい。

 ところが、御承知のように、学習指導要領なんて、十年に一回というような形でしか変わっていかない。だから、これも先ほどお話ししましたけれども、法の制度設計が現代社会についていかないんじゃないかなという感じがします。

 あと、もう一言言わせていただくと、大体消費者教育というのは家庭科が中心なんですけれども、家庭科で、そういった経済とか法律に詳しい人はいないんですよ。食物の専門家、被服の専門家。社会科もある程度やっています。では社会科が得意分野かというと、これもまた違うんですね。どうも日本の社会科の先生というのは、不思議なことに、日本史とか世界史の先生が多くて、いわゆる政治とか法律とか経済をやってきて先生になるという人が少ない。だから、教える側も非常に不得意というようなことがあって、なかなかうまく進まないということです。

 本当に消費者教育というのは大きい課題だと思いますので、引き続き、消費者問題特別委員会なのか文部行政の方になるか、共同になるかもしれませんけれども、ぜひこれは進めていただきたいと思っております。

下地委員 両先生には本当に勉強させていただいて、ありがとうございました。御苦労さまでした。

船田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用中のところお越しいただき、また貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十七日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時六分散会


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