衆議院

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第7号 平成21年3月27日(金曜日)

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平成二十一年三月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 大野 松茂君 理事 岡下 信子君

   理事 岸田 文雄君 理事 七条  明君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 仙谷 由人君

   理事 園田 康博君 理事 大口 善徳君

      井澤 京子君    遠藤 宣彦君

      近江屋信広君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    佐藤  錬君

      平  将明君    玉沢徳一郎君

      土屋 正忠君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中森ふくよ君

      永岡 桂子君    並木 正芳君

      西本 勝子君    馬渡 龍治君

      宮腰 光寛君    矢野 隆司君

      泉  健太君    枝野 幸男君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      階   猛君    田島 一成君

      田名部匡代君    田端 正広君

      桝屋 敬悟君    塩川 鉄也君

      日森 文尋君    糸川 正晃君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   参考人

   (社団法人全国消費生活相談員協会理事長)    下谷内冨士子君

   参考人

   (新しい消費者行政を実現する連絡会代表世話人)

   (弁護士)        国府 泰道君

   衆議院調査局消費者問題に関する特別調査室長    島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     馬渡 龍治君

  吉井 英勝君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     永岡 桂子君

  塩川 鉄也君     吉井 英勝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 消費者庁設置法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第一号)

 消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百七十回国会閣法第二号)

 消費者安全法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第三号)

 消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出、衆法第八号)

 消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、社団法人全国消費生活相談員協会理事長下谷内冨士子君、新しい消費者行政を実現する連絡会代表世話人・弁護士国府泰道君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じております。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のために申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず下谷内参考人にお願いいたします。

下谷内参考人 おはようございます。全国消費生活相談員協会の下谷内でございます。

 私どもの団体は、全国の消費生活センター等で相談員をしております専門家の集団でございます。私どもは、消費者に目を向けた新しい官庁、省庁ができることを長年願っておりました。今回、このような機会が与えられまして、感謝と御礼を申し上げます。皆様方は今まで産業育成省庁に目を向けていらっしゃいましたが、消費者に向けた目を持っていただきましたことに本当に厚く厚く御礼申し上げます。

 当会では、昨年二月に会員の実態調査というものをさせていただきました。それと、私が昭和五十七年から相談員をしておりましたので、その経験を踏まえて、相談員というのは何をしているか、そして相談員は何を求めているかということをお話ししたいと思います。ただ、時間の限りがございますので、あとは質疑応答にさせていただくこともあるかと思います。

 本日お手元にお配りしてあるかと思いますが、きょうはこの五点についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、消費生活相談員の活動ということでお話をさせていただきます。

 当会の会員は、約二千名近く今在籍しております。それらの者のほとんどが消費生活センターや相談窓口で消費生活相談員として、日ごろ消費者からの苦情や被害の救済等に向けて活動いたしております。

 私どもの会は、一昨年、創立三十周年を迎えました。一九七七年、国民生活センターの養成講座を修了した先輩たちが、せっかく相談員を養成されても、みんなで力を合わせて新しい未来に向かって何かをせねばいけない、そして、自分たちの研修、資質の向上も含めて、消費者問題が多分困難な問題になるだろうということでこの会が結成されたと聞いております。一九八八年に社団法人として認可をされ、ますます社会的に責任の重い団体といたしまして、会員一同、日ごろ研さんと御相談に当たっております。

 相談員というのは、単に電話で相談を受けるだけではなく、被害の未然防止、もちろん被害の救済もございますが、未然防止、拡大防止につきまして、日ごろ、情報の発信基地として相談員一人一人が重く受けとめております。

 その間、昭和四十三年に制定されました消費者保護基本法から、平成十六年に改正されました消費者基本法では、消費者の権利と自立支援がうたわれ、大きな変革の一つであったと高く評価をいたしております。

 私は、昭和五十七年、国民生活センターの消費生活相談員養成講座を修了し、同年、相談員として地方の消費生活センターに勤務いたしました。当時は、まだ訪販法と言われておりまして、全く消費者関連法はなく、産業育成の中での業法で私どもは対応しておりました。なかなか消費者が被害に遭うということが御理解いただけなかったような状態でございます。

 そのときにありましたのは、クーリングオフということで事業者とやりとりをいたしました。やりとりといいましても、ほとんどけんか状態でございます。一度契約してクーリングオフをしました、なおかつすぐに契約を勧誘されましたのですが、新たな契約に関してクーリングオフの適用があるかどうかということで非常に大きな問題となった記憶がございます。

 そのときに、事業者の方、代表の方と、クーリングオフとは何ぞや、訪販法とは何ぞやということで大げんかをした記憶がございます。ただ、時間がございましたので、三日間かける時間も当時はございましたのですが、三日間かけて、事業者の方、いわゆる悪質商法と言われるところの方ですが、御理解を得まして、再契約のクーリングオフだということを認めていただきまして、被害の救済をいたしました。

 また、当時、豊田商事事件や海外先物取引などの財産絡みの相談が非常に多くありました。私が相談員になりましたときも、今までは商品のことについてや使用方法、選択方法について問い合わせがあったんですが、今後は多分契約問題が多くなるだろうと消費生活センターの職員さんからも言われまして、なるほど、今後はそういう契約問題が多くなるということがひしひしとわかりましたのは、この豊田商事事件やそれから開運商法によります財産、宗教問題が多くなってきたことは事実であります。

 現在では当たり前のように契約、取引について相談を受けておりますが、当時は、特に豊田商事事件や海外先物取引というのは高齢者の方、そして公務員の方も非常に多くございました。そのときに言われた言葉は、行政の担当職員が申しましたのには、将来資産の確保のためのものであるから消費者相談にはなじまない、したがって消費生活センター、行政は民事不介入としてそういうものは一切受け付けないというようなことをおっしゃられました。

 しかし、毎日相談を受けております相談員は、どこかおかしいのではないか、これはその人たちが、もちろんそれは将来のために、生きていくために資産を運用するということは考えられますが、何もそういう知識のない人たちがなぜ家屋敷まで売り払って、ほとんどお金が残っていない状態でもなぜこの人たちはしなければいけなかったのかということを相談員仲間がみんなで考えました。

 そのときに、これはだまされているということがわからないのではないかということで、ゆっくりと時間をかけて聞くということをいたしました。幸い公務員の方もいらっしゃいましたので、なぜ知識や情報がある方がこのような被害に遭われるのかということで、お話を時間をかけて伺いました。私は、大手の商事会社の部長さんという方の相談も受けました。御家族の方が、どうもお金の減りぐあいがおかしいということで調べましたところ、そのようなことがあったというわけです。

 そこで、相談員たちが、社会的な常識、当たり前の常識が、一般には、言葉としてはわかっているんですが、相談の現場ではなかなか難しい、行政の担当職員では難しいということで、ともかくやってみようと。私が勤務しておりましたセンターは、そこのところは割と寛容なところでもあったかと思いますので、相談員を信用していただいた所長さんがいらっしゃいました。そこで、まずやってみようということで相談員が立ち上がり、相談を受けました。そのうちに多くの自治体が同様な相談を受け始め、現在に続いているというので、都道府県や政令指定都市などに消費生活センターが設置され、市町村にまで設置されるようになったという経緯がございます。

 時間が余りないので、済みません。

 ただし、いろいろな相談がございますが、今すき間事案と言われておりますように、縦割り行政の中で、一つの事案につきまして解決がなかなか困難であります。例えば、食品表示に問題がありまして聞きますと、重量の問題ではJAS法、アレルギーは食品衛生法、また優良誤認は景表法といいまして、相談員が問い合わせいたしましても、それは所管が違うから指導はできないという一言のもとにはねつけられまして、被害の救済はなかなか困難でありました。

 今回このような審議がされますことに際して、前の福田総理大臣が、ある県の消費生活センターを御訪問されました折に、相談員さんに対して、何か困っていることはないかという御質問があったそうでございます。そこで、相談員は、縦割り行政の弊害を申し上げました。そして、消費者問題を所管する省庁はどこでしょうかという本当に単純な一言でございます、これが総理を動かして、消費者関連法を消費者庁にまとめる構想につながったというふうに伺っております。一人の相談員のこの声が、大きく世の中を変えていったのだと思っております。それが、毎日、日常の消費生活相談を受けている中で強く感じたものではないかと思います。

 二番目に、「消費生活センターなど相談窓口の設置義務」というのを書いてございます。

 私どもの協会では、平成十三年から全国で消費者問題出前講座というものを実施しております。北は北海道から南は沖縄まで、要請がございましたら、私どもの会員が講座に伺っております。

 その中で、私もある島に行きました。そのときに、そちらの方たちが、まず要請があった方は、よくわからないんだけれども、消費者被害というのはうちの島にはないと思うが、どういうことなのかちょっと話していただけませんかということで伺ったところでございます。

 そうしましたところ、そこは島でございますので、フェリーで荷物を行き来しているだけでございまして、一週間に一回それから月に一回ぐらい、フェリーでだあっと来て、ぱぱっとSF商法のような感じで商品を売りつけて、また帰っていく。でも、それは、その島の方たちにとっては、親切な人たちがわざわざ品物を運んでくれるという感覚でしかございませんでした。

 そこの中で、それではあなたが今お買いになられたものは本当に必要なものだったのでしょうか、もう一度考えてみましょうということでお話ししましたら、私たちというのは、隣の人も買ったから、親切な人たちから買ったものを大事にしまっておきましょうといって契約をしたのではないか、ひょっとしてだまされているのではないかということに、やっと少しお気づきになりました。

 それならば、自分たちが防衛しなければならないのは何だろうか。でも、窓口が、相談するところがないから、非常に困ったものだ。県まで電話をかけに行かなくてはいけない。また、来てくださいと言われましても、そちらまで高齢者の人たちが出かけるということはなかなか困難でございます。

 やはり、そういう実情から考えましても、全国千八百の市町村に、消費生活センターという名前でなくても構いません、消費生活相談窓口が設置されることを切に望むものであります。そのためには、相談員の配置、専門性を持った相談員並びに職員の配置、情報を収集できる、また発信できるPIO―NETの設置というものが必要ではないかと思っております。

 続いて、三、専門性の確立でございます。

 消費生活相談員は、五年でやっと一人前と言われております。この、やっと一人前になったということは、私の経験上からも、必死になって御相談を受けて五年が過ぎました。五年が過ぎたときに、ふと振り返りまして、ああ、とんでもない怖いことをやっているんだな、もう少ししっかり足元を見詰めて相談を受けなくてはいけない、そして情報を発信しなくてはいけないというふうに感じました。それからの五年間、十年、十五年というのは、仕事をやっておりまして、やはり専門家として長期の勤務状態としていただくことが、一つの問題、地域の住民の消費者の方への御相談がしっかりとできるのではないかと思っております。

 職員におきましても、一年目は何もわかりません、二年目は大変ですね、三年目は、ああ、もう異動ですからということで、さらっと抜けていかれます。相談員は、そういうことはできません。行政の職員としてある方は、やはり、一年目は大変ですねとかではなくて、御自分たちもそれぞれの立場で責任を持った専門性のある仕事をやっていただきたいと思います。

 私が相談員になりましたときに、私の隣に座っておりました主任の職員が、いつも引き出しの中に辞書、それから関連するものを、すべて新しく入れて持ってきました。すごいですねと私も感心しましたところ、行政の職員というのは、そこに座った瞬間、地元の人たちは専門家だとして尋ねてこられます、したがって、そんな生易しい仕事はできませんということをおっしゃられました。

 確かに、そういうことをおっしゃられる職員さんというのは、しっかりと相談員と連携し、行政に、上に対して物を言い、消費者相談について重要なかなめとして、私どもも気軽に相談できるような状態でございました。相談員の専門性はもちろん、職員の専門性につきましても十分御審議いただければよろしいのではないかと思っております。

 私どもが二月に調査いたしました雇用状況にしてみますと、半数以上の人が五年以上勤務しておりますが、一年から三年未満という勤務状態の人も二六・三%ございました。これらは、雇いどめの影響でこのようなことになっているのではないかと思います。

 一年や五年では、やはり相談というのはなかなか困難でございます。特に最近の相談におきましては、非常に社会的に深刻な問題がございます。そこのところを、やはり経験と見識、知識を持った相談員が座るべきなのではないだろうかと思います。また、それにあわせて、私どもの協会も相談員の資質の向上に努めていくよう努力いたしてまいります。

 相談員の人件費の増額、四番目でございます。

 待遇の改善、相談員の処遇の改善を今回のこの機会に多くの方々が議論していただきまして、本当に感謝にたえません。相談員は、仕事に見合った報酬をいただきたい、プライドだけでは仕事はできない。そういう低賃金でやっていますから、せっかく優秀な相談員の人材が入ってきましても、これでは生活ができないと言ってやめていく相談員もいます。優秀な人材確保のためにも、相談員の待遇の改善を求めたいと思います。

 今回、活性化基金というものがうたわれておりますが、それは相談員の人件費には充当されないということで、大きな問題になっております。

 しかしながら、総務大臣が、地方行政の自主財源の確保ということで、相談員の人件費を倍増するということを発表されました。私どもは、この地方交付税に対して、それぞれの首長さんの考え方によってなかなか困難ではございますが、しかしながら、相談員の人件費という形でしっかりと御答弁されておりますので、そこのところ、私どもも、それから皆様方も、ぜひ監視、そしてその十分な活用をお願いしたいと思っております。

 それから、最後に、「消費者庁の早期設置を期待する」と書きましたのですが、ともかく、消費者に目を向けた消費者寄りの省庁の設立を一日も早く望みます。政府案と衆法が出ておりますが、それぞれにいいところもあれば、多少考え直さなくてはいけないというところもあるかと思いますけれども、私どもは、一日も早い成立をお願いいたし、その上で改めて皆様方で御審議いただいて、よりよい法案になることを祈っております。そして、それが、消費者一人一人が、被害を救済し、安全で安心な生活を送れる、そして公平な被害の救済、さらには情報が提供されることを願ってやみません。そのためにも、一日も早い設置をよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 次に、国府参考人にお願いいたします。

国府参考人 おはようございます。

 きょうはこのような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 私は大阪の一弁護士なんですが、現場の弁護士として、きょうは冒頭に、少し私自身の体験も踏まえながら、平成元年に日本弁護士連合会が消費者庁の設立を提案したときのその当時の弁護士の状況について少しお話しさせていただきたいと思います。

 私は、昭和五十八年に弁護士登録をしました。そのころ、弁護士は、サラ金問題であったり、商品先物取引などの利殖型消費者被害であったり、また訪問販売型の被害など多数の相談を受け、私たちなりたての弁護士もそういった消費者被害事件に取り組んできたわけであります。

 悪質な事業者に対する憤り、それがその当時の私たちの弁護活動のエネルギーの源でした。相談者のために、毎日毎日、いろいろな訴訟をやったり交渉をやったりするわけですね。そんな中で消費者の被害金を回復するわけです。ところが、よくよく考えてみたら、私たちが取り返したお金というのは事業者がほかで消費者をだましてきたお金なんですね。そういう意味では、私たちは、幾ら頑張っても非常にむなしいといった思いで仕事をしていたわけです。しかし、目の前の被害者をほうっておくわけにいきませんから、やはり被害回復のための活動をするわけです。

 そんな中で、私たち弁護士も、もっと被害の根本的な解決、被害の根絶のために何をなすべきかというところから、立法的な解決も含めて、もっと別の解決の手段を考える、そんな中で、弁護士も立法活動の提案に入っていったわけであります。

 私は、昭和六十三年の訪問販売法改正がありましたが、それに至る昭和五十年代の終わりから六十年代初めにかけての法律改正運動にもかかわることになりました。その当時、大阪の弁護士や消費生活相談員、消費生活コンサルタントの皆さんと一緒に研究会をつくりまして、訪問取引規制法案という法律案を私たちなりにつくってみまして、それを持って通産省へ行ったり、国会議員の先生方のところへ回ったりして、訪問販売法の改正を訴えたわけであります。当時、訪問販売の規制強化を訴えました。

 私たち弁護士の仕事の場というのは裁判所です。当時、私たちは、行政の問題については余りかかわりがありませんでした。そんな中で消費者行政に関心を持つようになったのは、豊田商事事件だったと思います。高齢者を中心にした三万人もの被害者、一千億もの被害ですね。その当時としては前代未聞と言われた消費者被害事件だったわけです。国会で何度も豊田商事について質問がなされ、その当時、国は、豊田商事の実態を早くから知りながら、実は何らの規制もすることなく放置していたわけであります。私たちは、裁かれるべきは国の消費者行政であるという思いで、豊田商事の被害者とともに国家賠償請求訴訟にも立ち上がりました。

 この裁判の審理が深まっていく中で、国の実態が見えてきました。旧態依然たる縦割り行政という実態の中で、豊田商事はどの省庁にも権限がない、そういったすき間に落とされてしまっていたのであります。当時の消費者保護基本法の理念からいいましたら、内閣総理大臣を長とする消費者保護会議こそがそのすき間を防がなければならないということになっていたわけですね。ところが、消費者保護会議は、実際のところは、各省庁の事業計画を取りまとめるだけといういわゆるホチキス会議、そういう実態しかなかったと思います。

 多くの弁護士が私同様の体験、思いをする中で、消費者行政はこのままではだめだという思いの中で、平成元年に日本弁護士連合会は松江市で人権擁護大会を開きました。アメリカからラルフ・ネーダー氏も招いてシンポジウムを開催し、その大会の決議で消費者庁の設置を提案したものであります。豊田商事事件がすき間に落とされ、国が無策であったことへの憤りが、消費者庁の提案になったものだと私自身は理解しています。私もその実行委員会に一員として加わったこともあり、昨年、政府が消費者庁を提案されたことは、大変驚きであり、時代が変わったことに素直に感動いたしました。

 当時の日弁連の消費者庁の提案は、従来の産業育成と縦割りの行政組織ではなく、消費者被害の予防、救済を業務とする総合的な行政機関、これを設立したい、豊田商事のようなすき間を残さない行政機関の設立という位置づけだったと思います。

 縦割りの弊害を除くということでは、当時、政府は、内閣総理大臣を長とする消費者保護会議がその縦割りの弊害を是正できるんだという説明をしておりました。法律にも、消費者行政を総合的に推進するというふうに書かれていましたが、実際のところは、行政の総合的な推進はなかったと思います。推進がなかったわけです。私は、これは消費者保護会議に法律の執行権がなかったことが致命的だったのではないかと思っています。

 特定商取引法のように、販売方法の問題点を規制する法律は、産業別ではなくて、まさに消費者保護を任務とする行政機関が直接に執行権限を持って取り組むことが必要だったのではないかというふうに思いました。今回、政府提案の消費者庁は、そのような従来の欠陥を是正して、執行権限を持った行政機関をつくるという意味から、私は、多くの支持を得ているのではないかと思っております。

 従来の消費者保護会議については、今述べたような理由から、直接の執行権限を持つべきだと思っているわけですが、具体的にどういう執行権限を持つかは、いろいろ議論があるところだろうと思っています。政府案は、少なくとも、消費者との取引や表示に関する法律を消費者庁の所管にするということで、まずこれは第一歩だろうというふうにも私も思っております。

 その意味から、きょうは、政府案を基本にしつつ、必要な修正を図って、ぜひこの国会で消費者庁を創設していただきたいという思いから意見を申し述べたいと思っております。

 ただ、政府案には幾つかの問題点があるようにも思います。一つは、せっかく消費者庁を創設しようとすることになったのに、専管事項が少ない点、それから規模が小さい点であります。

 二十九の法令が移管されることになっておりますが、多くは共管となっております。共管にある他省庁との調整がうまくいかなければ、果たして消費者行政は身動きがとれるのでしょうか。

 また、規模の点でいえば、職員二百人で、予算が百八十億円もしくは九十億円とも聞いております。昨年、国土交通省の下にできた観光庁でさえ、私の記憶に間違いなければ、職員は二百人で、予算規模は一千億と聞いております。すべての省庁を横ぐしで刺す消費者庁が、国土交通省の下で観光という一産業部門を育成する観光庁よりも規模が小さいというのは納得いきません。消費者庁が規模の小さな二流官庁で終わったのでは、その措置要求すら他省庁から軽んぜられる、そういったことにならないか心配しています。

 昨年六月の閣議決定で消費者庁の提案をした際に、こう書かれていました。「新組織の創設は、」「明治以来の日本の政府機能の見直しを目指すものである。」と華々しくうたわれた割には、余りにも貧弱な体制であると思います。ぜひ一千億の予算規模を持った行政機関をつくっていただきたいというふうに思っております。

 政府案の第二の問題点については、消費者政策委員会が中途半端だという点であります。

 従来の国民生活審議会と同様に、単なる審議会で終わるのではないかといった疑問があります。もちろん、諮問に答えるだけの機関ではないというのが政府案になっているわけですが、私は、法執行や他省庁に対する措置要求をする、そういった権限を持った消費者庁に附属する合議制の委員会としては、もっと実行力のある、また実施する権限のある委員会といった性格づけをすべきじゃないかと思っています。

 日弁連の平成元年の提案では、消費者庁に対して消費者からの直接の措置申し出権や情報請求権を認めるべきだということが書かれておりますが、消費者からの措置申し出を受け付ける窓口として政策委員会を位置づけることができれば、もっと変わるのじゃないかな、単なる御意見承りますの審議会ではなくて、仕事をする委員会、そういったものとしてさま変わりしてほしいなと思っております。

 イギリスでは、スーパーコンプレインツという制度があると聞いております。皆様のお持ちの、特別調査室が配付しております参考資料の七十七ページのところに、私の事務所の同僚である村本武志弁護士の翻訳も紹介されておりますが、これによりますと、イギリスでは、公正取引委員会、OFTに対して、認定された消費者団体が直接苦情申し立てを行うことができる、そして、申し立てがされたら、それは放置されることなく、九十日以内にどう対応するのか回答されるというシステムになっております。

 実際、イギリスでは、訪問販売が市場で問題を生じているというスーパーコンプレインツが申し立てられて、OFTが調査を開始して不招請訪問販売の禁止などの立法提言を行っております。

 せめて政策委員会には、認定された消費者団体とこのような協働ができるようなシステムを構築しておくべきだと思っております。

 それから、仕事をする委員会という点では、例えば証券取引等監視委員会や運輸事故調査委員会などのように、委員が常勤であること、常勤の委員が事務局と一体となって仕事をするということが必要だろうと思います。そして、例えば、事故情報の分析の仕事をする、取引型の苦情についても分析をする、そして消費者庁が勧告をすべき事項について意見を出すという、いわば、行政職員だけではなくて外部から入った専門家も一緒になって働く、そういった委員会として機能してほしいなと思っております。

 次に、地方消費者行政の関係をどうするのかという点について意見を申し上げたいと思います。

 地方消費者行政が大事であるということについては、委員会の皆さん、御異存のないところだろうと思っておりますが、私は、皆さんに一つ押さえておいていただきたいと思っておりますのは、センターでは消費者被害を苦情処理という形で被害救済するだけではないわけです。単なるそういう行政サービスをやっているわけではないわけです。その苦情をもとにして、事業者に対する指導、処分をやる。さらには、新たに条例をつくったり、法律の提案をやったり、企画立案の基礎資料としてそういう苦情データを活用しているわけです。ですから、センターでの相談が事業者への指導、処分や企画立案にストレートに結びついていかなければならないという点です。この点で、ここでは三点取り上げてみたいと思います。地方消費者行政の強化という点です。

 まず、私は、第一点目としては、小規模な自治体では消費生活センターの設置は無理だろうなということを申し上げたいと思っています。

 私たちの会で相談員の皆さんといろいろ議論する中で、大体、人口一万人当たり年間百件の相談がある。これは今の現状。それから、相談員は、今の現状では一人当たり年間四百件ぐらいなら余裕を持ってできる。これは単純に計算すると、人口四万人当たり相談員一人が必要になるということですね。これは今の現状です。これは、消費者庁ができてもっと相談がふえたり、それから相談を事業者指導なんかにどんどん使っていくようになれば、もっと職員や相談員の人数は必要になります。そういう意味からいうと、民主党が言われているように、二万人に一人というのはほぼ適正な規模なのではないかなというふうにも思っています。

 次に、では、人口四万人の都市に相談員を一人置いたセンターを一つ設置すればいいのか、これはだめです。相談員は、やはり五人、十人という相談員が一つの場所で一緒に仕事をして、いろいろ専門性を磨きながら切磋琢磨してスキルアップを図っていかなければならない。そうすると、一定規模の市町村でなければ、そういうセンターを置くのは実際無理なわけですね。そういう意味では、政令指定都市であったり中核市に置くことはできます。しかし、それ以外の小規模市町村では無理です。

 では、広域組合という方法はどうか。しかし、これはなかなか市町村の意見の調整も難しいという中で、私は、端的に、京都府なんかがやられているように、府県が各地域にセンターを設置すれば足りるじゃないか、どうして市町村に押しつけるんだというふうに考えたいと思います。

 京都では、丹後地方、丹波地方、山城地方といったそれぞれの地域に京都府の出先機関である振興局があります。この振興局にセンターを設置しているわけですね。それは現実に機能しています。これは、日本海から瀬戸内海まで大きな地域を抱える兵庫県においてもそうです。

 消費者行政は自治事務だから苦情処理は市町村でやりなさいというのは、現実性を欠いている面があるわけです。その点を十分御検討いただきたいと思っています。建前上すべての市町村にセンターがあるというのは聞こえはいいけれども、現実性を欠くんだという点を御理解いただきたいと思います。

 他方、では大規模な都市は大丈夫なのかというと、今度、例えば大阪市にはセンターが一つしかない、ブランチが二つしかないという、大規模では逆にセンターが非常に少なくて遠い。そのために、来所相談が極端に少ないといった問題もあるようです。

 次に、第二点目には、相談というのはあっせん処理だけで足りるのではないと先ほど申し上げました。事業者指導にも結びつけなきゃならないというふうに申し上げました。その点で市町村には限界があるという点を申し上げたいと思います。

 私の配付資料の二枚目以下をごらんいただきたいのですが、ここには事業者指導の問題についてデータを書かせていただいておりますけれども、二枚目、三枚目を見ていただきますと、簡単に申し上げますと、消費生活センターが受けた相談で特定商取引法などの法令違反のある事案、これを被疑事案というふうに現場では呼んでいるようですが、これが全相談件数の二%ということです。これは相談員の皆さんの経験上そうです。大阪府内のセンターでは、大阪府に常に被疑事案を送付している市もありますが、多くの市では、忙しいものですから、被疑事案の送付はしていないようです。

 これを試算しますと、大阪府全体で相談件数が八万件、被疑事案がそうすると二%の一千六百件となります。ところが、実際に大阪府が指導、処分している案件というのはたった十六件、一千六百件の一%ですね。一千六百件の被疑事案がありながら、その一%しか指導、処分がなされていないというのが現状です。これは余りにも少ないと言わざるを得ません。

 その主たる原因は、人手が少ないので手が回らないということだと思います。配付資料の三枚目には、一番最後のところに、大阪府の職員が、これは一般職員が九人、非常勤は警察OBなども含めて三人、それから相談業務は関西消費者協会に委託して十二名という、職員九名の体制で、事業者指導から、苦情処理委員会の運営から、条例の執行から、いろいろな仕事もやっているわけですね。そういう問題があります。

 私は、それは予算措置で何とかなるんじゃないかと思っていますが、ここで、この制度上の問題について一点申し上げたいと思っています。

 苦情を受け付けるのが市町村で、処分権限のあるのが府県だという、このミスマッチ、これをどう考えるかですね。市のセンターでは、私の地元、例えば枚方市の消費生活センターで特定商取引法違反の被疑事案を見つけた、だから府のセンターにきちんと事業者指導をやってほしい、処分をやってほしいというふうに上げても、府はなかなか動いてくれない。だから、市の方ではいつも府に対して不満を持っているということになります。

 やはり、相談を受け付けるところと処分権限を発動するところが離れていてはいけないんじゃないかな。だとすると、市町村に処分権限をおろすのかという考え方が一つあります。ところが、これは例えば岡山県では権限移譲がやられて、倉敷市や岡山市にやられているようですが、全く機能していません。これもやはり人手がなくて無理ですね。そうすると、むしろやはり、先ほど言ったように、京都府のように、府県レベルで相談もやり、府県レベルで事業者の処分、指導もやる、これがいいんじゃないかなというふうに考えています。

 民主党の御提案の中には、相談員を国家公務員にするという御提案がございます。それから、地方消費者権利局に消費生活センターを設置するという提案です。今現在、市町村に生活センターが設置されているという現状の中では、地方自治と国の機関とが混在して非常にややこしい、現場で混乱をもたらすというふうな反対の意見が結構あって、私の仲間にもそういう意見を言う人が多いです。ただ、私は、相談を事業者指導や処分、それから企画立案にストレートにつないでいくためには、そのような方式があってもいいんじゃないかなというふうに考えております。これは、ある意味合理的なのかもしれないとも思っております。

 つまり、民主党の案というのは、現状を根本的に大変革するんだという立場に立てば、大いにあり得る考え方だと思っています。特に、センターの相談の約六割というのが特定商取引法絡みの相談なんですね。特定商取引法というのは、本来国が執行する法律です。国の執行するこの法律のほとんどが市町村のセンターでやられているという、このギャップというのかアンバランスというのか、そこをぜひ考えていただきたいと思います。

 次に、第三点目として、消費者行政は自治事務だというふうに言われながら、実際に国の事務の一部を担っているという、これは今特商法と申し上げた点もそうですし、それから、相談業務を、PIO―NETの入力作業をしながら国の被害情報収集の一端を担っているというのも、これもまた国の事務の一端を担っているわけですね。だったら、国がその人件費を負担するのが合理的なのではないでしょうか。

 特商法や景表法に基づく処分、指導は、国の委任を受けて、従来は機関委任事務として国の委任を受けていました、今も都道府県がやっていますが、こういった人件費は国が負担されたらいいわけです。ところが、そういった事務は地方の自治事務だから国はそういった職員の人件費を出せないと言う、非常におかしなことだろうと思っています。私は、やはり、そういった事務に、国から人件費の手当ても含めてなされるべきだろうというふうにも考えております。

 そのあたりのギャップを埋める議論としまして、例えば明治学院大学の圓山先生などは、特定商取引法に関する事務を地方自治法上の法定受託事務に指定して国が負担すべきだという議論もされていますし、さらに、圓山先生は、消費者行政は、消防、病院、警察に並ぶ、国民生活の安全、安心の拠点としてのナショナルミニマムを保障するシステムだ、だから地方任せではなくて、地方任せでは財政事情が厳しくて何もやれません、消防、警察、病院、教育などのように、国が事業指針を定め、担当者の基準も定めるべきだということであります。そういうことで考えていただきたいと思います。

 ちょっと時間がないようなのではしょりたいと思っておりますが、民主党の消費者権利院についても少し申し上げたいこともあったのですけれども、ちょっと時間を過ぎていますので、簡単に項目だけ申し上げますと、一つは、消費者権利局を置かれるにしても、ぜひ都道府県内に支所を充実していただきたい、消費者が来所相談可能なような規模を考えていただきたいと思っております。

 それから、もう一つは、都道府県が、今センターでは、宅建業課であったり貸金業課であったり保健所などとの連携をしながらやっていますが、その辺の連携がスムーズにいくのかどうかというあたりも御検討いただけたらなと思っております。

 そして、最後になりますが、当委員会で、政府提案の消費者庁と民主党提案の消費者権利院が、どちらがよいのか競い合って真剣に議論がなされております。このように、お互いがよりよい方向に向けて議論をされているということについて、私は、国会がすばらしい活動をされているということで本当に感動しております。

 ただ、お願いしたいのは、互いによりよいものを目指して競っているわけです。ベクトルが逆方向を向いているわけではないのですから、互いに補い合っていただいて、ぜひ今国会で消費者のための新しい行政機関をつくっていただくために取り組んでいただきたいと願っています。

 もう一つ申し上げておきたいのは、先ほど申し上げました豊田商事の国賠請求のときに、私は消費者保護会議の設立の趣旨を調べるために、当時の消費者保護基本法の立法当時の国会議事録を調べたことがあります。ところが、ほとんど議論がされていなくて、議事録に参考になることがありませんでした。あれは議員立法で全会一致だということもあって、余り議論がされていなかったのだと思います。

 やはり、今ここでやられているように、立法当時の皆さんの意見がきちっと議事録に残るということは大変大事なことだと思います。できましたら、この委員会において、多方面で多角的な検討、議論をしていただいて、後世に残る議論をしていただきたいなというふうにお願いして、私の意見陳述を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

船田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

船田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野隆司君。

矢野委員 おはようございます。自由民主党の矢野隆司でございます。

 全国消費生活相談員協会、先ほど伺いましたら三十年以上の歴史があるという、この消費者問題の最前線にいらっしゃる下谷内参考人、そしてマルチ商法や悪質な訪問販売事案等の弁護活動、被害救済の弁護活動に全力を注いでおられる国府参考人から、ただいまるる御意見をちょうだいいたしました。

 幾つかの注文つきながら、両参考人ともに消費者庁設置へのエールを送っていただいたのかなと受けとめながら、政府案を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初、下谷内参考人にお尋ねしたいのでございますが、今回の消費者庁の設置をめぐりましては、消費者主役の新行政組織実現全国会議、ユニカねっと、この代表幹事のお一人として、下谷内参考人はことしの一月に民主党の小沢一郎代表あてに要望書をお出しになっておられると思います。

 簡単にこの要望書の内容、思い、あるいは趣旨といったものを教えていただきたいと思います。

下谷内参考人 確かに私どもは、民主党さんが案を出されましたときに、私どもの思いということで意見を述べさせていただきました。それは、日ごろの相談活動の中で私どもが常に感じていることを申し上げたことでございます。

 先ほど申し上げましたように、全国の、消費生活センターという機能ではなくても構わない、小さなところにおきましては相談窓口をまず設置し、一人一人の声を聞いていただきたいという思いでお出しいたしました。

 実は、先ほどの話の中でも時間がなくてはしょってしまいましたが、日本海の中国地方の町で、県ではございません、町で、職員さんが一人しかいないところの方にお会いしました。その方は、まずお電話いただきましたときに、何をしたいかということで、僕は何もわからないんです、ただ、こういう窓口を設置し、消費者一人一人が直接役所に相談に来るということをまずやりたいんですということをおっしゃられました。それらも含めまして、私どもは意見書を提出したと考えております。

矢野委員 ありがとうございます。

 そこで、今回のこの政府案でございますが、いわゆる所管をする法律というものが二十九本一応ございます。今、民主党案との対比というか比較で申し上げれば、そもそも特定の法律を所管するかどうかということも議論の焦点の一つになっていると思うんですけれども、この点について両参考人から御意見、そしてこの二十九本という数ですが、これが少ないのかどうか、そういったものを踏まえて、お二人から御意見を伺いたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 二十九本の法律におきましては、確かにすき間事案というものが非常に多くありまして、業法の中でなかなか困難な、被害の救済ができないということはございました。その中でも、移管されるものと共管されるものに分かれておりまして、どこまで本当に消費者行政に目を向けたものができるのかと、多少の心配はいたしております。

 そして、その新しい省庁ができましたときに、そこが司令塔となりまして勧告権限を持つように、強い権能を持ったものをつくっていただければよろしいのではないかなと思っております。

国府参考人 私も、二十九本という本数そのものは決して少ないとは思っておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、多くが共管という形になっていますね。これは、先ほど申し上げた規模の点とも関連するんですが、職員の人数が少なくて手足がないという中で、法律を執行するにも手足がないものですから他省庁と共管せざるを得ないという状況なんですね。ですから、私は、二十九本の法律が消費者庁の専管になるように、やはり消費者庁にそれなりの手足を置いてほしい、それから地方にも消費者庁の組織を置いてもらいたい、そういうふうに思っております。

 それから、消費者庁は、これから設置された後に新たな法律づくりをしなきゃならない課題も持っていますね。例えば、従来、貸金業と割賦販売法という同じ消費者信用というものを扱いながらも、一つは販売に伴う信用だから経済産業省がやっていた、他方は金融庁が所管していた、これをやはり消費者庁では統一的な消費者信用法として一本化していく、そういった新たな法律をつくることも検討されているようですので、これから、不十分な法律については、消費者庁がスタートしていけば十分整理されていくのではないかというふうに思っております。

 その意味からいいますと、繰り返しになりますが、もっと体制を充実して、法律の執行をできるだけの体力をつけることがまずは大事かなというふうに思っております。

矢野委員 ただいま、その消費者庁の手足が大事だという御意見、国府参考人からいただきました。

 これも下谷内、国府両参考人にお尋ねしたいんですけれども、政府の消費者行政推進基本計画、ここにおいては、一元的な消費者相談窓口に共通の電話番号を設ける、加えて、生命身体にかかわる事故発生に緊急対応するため、三百六十五日二十四時間体制を構築すると書かれてあります。

 この点について、下谷内参考人が理事長をお務めになっておられる全国消費生活相談員協会では、若干異なる御意見をお持ちだというふうに聞いております。

 まず、その協会の方の御意見を、実情を交えて、理事長さんならではのお考えといいますか、現状をちょっと御披露いただき、その後、この問題について、国府参考人から、どういうお考えかということをお示しいただければと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 私どもの出しました意見書におきまして、今先生がおっしゃられました電話番号のことと、緊急、三百六十五日についてお答えしたいと思います。

 一元的な電話番号ではございますが、私どもといたしましては、地元の人たちが気軽に相談ができる、情報が収集できる、情報を提供したいということを考えますと、やはり高齢者もおりますので、地元の電話番号、局番は地元の番号の方が親しみやすいのではないかと思っております。地方の消費者行政をやっていらっしゃる方々も、できるだけ地元の方にお話を聞きたい、地元の、自分のところの住民が被害に遭うかどうかということを非常に心配していらっしゃいますので、まず局番までは地元の番号を使っていただいて、最後の四けたあたりにつきましては覚えやすいような番号を、例えば九九九というようなことを書いたかと思いますが、そのように考えております。あくまでも地域に住んでいる方を中心に考えました。

 それから、三百六十五日二十四時間にありましては、緊急性を求めることでこういうふうにされたと思っております。ただ、取引や表示、契約の問題に関しましては、緊急性をさほど要するものではないと思います。

 そういたしますと、緊急性とは何かと言いますと、身体生命にかかわるものではないか。その場合に、例えばシンドラー事故があった、だからといって消費生活センターに駆け込まれても、それは、事故をまずとめなくてはいけない、そして被害に遭われた方を病院に運ばなくてはいけないということが大事かと思います。そういう場合は、今も警察や、例えば中毒センターだとかそういうところがありますので、できればそういうところで三百六十五日二十四時間というものを受けていただきまして、消費生活センターは通常の業務の中で受けることがよろしいのではないかと思います。

 クーリングオフが過ぎてしまうのではないかという御心配もあるかと思いますけれども、そこのところにおきましては、クーリングオフを長くしていただくという方法もございますが、私どもの協会では土曜、日曜相談も受けておりますので、そういういろいろな活用の仕方があるのではないかなと思って、三百六十五日二十四時間につきましては一般相談から省かせていただきました。

国府参考人 私も今の下谷内参考人の御意見とほぼ一緒ですが、共通の電話番号にするというのが非常にわかりやすいということだとか、相談の受け付けを一元的にという議論がなされているようですけれども、聞こえはいいんですが、果たしてそれが適切なんだろうかというふうに思っています。

 というのは、入ってきた相談を一元的に集約して、きちっと分析して対応するというのは、これは大事なことです。ところが、相談窓口を消費生活センターに一本化するというのは、これは実は消費者にとっては不便なことで、消費者は何かあれば近くの駐在さんに行ったり、保健所に行ったり、いろいろなところへ行くわけですね。だから、消費者のための窓口は多方面に開いておって、しかし、そこが適切に消費者を誘導できるということが大事なんだろうと思っております。

 それから、電話番号の問題については、何か一つの電話番号をつくってコールセンター的なやり方を考えておられるとしたら、やはりこれもおかしいなと思っております。やはり、下谷内さんも言われたように、消費者は、自分の最寄りのセンターに相談ができて、それぞれの地域の実情に合った形で対応していただけることが大事だろうというふうに思っております。ですから、電話番号がわかりやすくなって、警察は一一〇番だとか消防は一一九番なんだというのと同じように、消費者被害は九九九がいいんだとかいうやり方は非常に親切なやり方かなと思います。

 それから、三百六十五日二十四時間というのも、非常に聞こえはいいんだけれども、現実問題としては難しいというふうに思っています。また、その必要性がどれだけ高いのかなと。それだったら、もっと、病院とか緊急性の高いところにそういった予算を振り向けることの方が適切な場面があるかもしれませんので、そういった必要性はさほど高くないように私自身は感じております。

 以上でございます。

矢野委員 恐らく三百六十五日二十四時間ということになりますと、本当に相談員の皆さん方の御苦労が今からでも想像できるのかな、なかなかこれは難しいだろうなと私個人は思っておりますけれども。

 そこで、この相談員の方々の処遇の問題ですね。恐らく下谷内参考人はいろいろ御意見がおありだろうと思いますが、きょうは余りおっしゃらなかったふうにも受けとめましたけれども、この委員会の審議を通じても一つの大きなテーマだと思っております。

 そこで、この相談員の処遇改善、先ほど五年でやっと一人前だなんというお話もございましたが、どのような方法、仕組み、そういうのはよりよいものがあるのかどうか、そのお考え、御意見というものをぜひお二人からお伺いしたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 私どもの相談員の処遇について御意見を求められました。先ほど、時間が、いっぱいしゃべりたかったものですから、はしょってしまいましたが、確かに、私どもの相談員の処遇は非常に劣悪な状態でございます。昨年調査いたしました結果によりましても、先ほど言いましたように、ともかく仕事に見合った報酬が得られない、優秀な人材が逃げていってしまうというところで、それではどうしたらいいのだろうかということを常日ごろ考えさせられました。

 やはり仕事に見合った報酬というのは、仕事の内容が、単に机に座って、はい、そうですかとコールセンターのような仕事をしているわけではございません。それぞれの御相談者の方の、どうかすると人生をも抱え込むようなことも間々あります。抱え込む必要はないんですが、そこまで相談員を信頼し、御相談なさっている方がいらっしゃいます。そのときに、ただおっしゃられたことだけを聞いて処理をするのであれば、非常に簡単ではございます。その方がどのような思いでここに来られたか、自分の目の前に座られたか、電話をかけられたか。私だったら、もし普通の消費者で被害に遭っても、なかなかそういうところに相談には行けません。その人たちが必死になってすがってこられたその思いを、相談員は受けとめなければいけないわけです。

 そのときに、私はよく申し上げるんですが、頭を四つぐらいに分割して、まず、この人は何を言いたいのだろうか、お話を聞く。そして、その中でこの人が求めているものは何だろうか。よくおっしゃられるのは、相談の中で、聞いてくれればいいとかとおっしゃることがあるんですが、じっと話を聞いてきますと、被害の回復を待っていらっしゃるとか、行政に対しての一言を申し上げたいとか、いろいろな思いが伝わってまいります。それを相談員は、一本の電話を受けながら頭の中を回転させているわけです。疲労こんぱいいたします。電話を置いた途端にまた次の御相談がかかってくるわけです。そうすると、頭を切りかえて仕事をしなければなりません。そのような激しい相談現場というのはどこにあるのだろうかなと私は常々考えております。

 そして、相談員たちもほとんどが専門職として認められていない。それで相談を受けるのが当たり前だと言われて、あげくの果てに、そんなに時間がかかるのであれば助言だけでいいじゃないかとか、行政側からもそのような声を聞いております。

 しかしながら、相談員は、ただコールセンターのように聞いて右へ流すというわけにはまいりません。相手がいることでございます。悪質事業者との対峙もございます。そのときに、どれだけの情報量を持っているか、知識を持っているか、経験があるかということが、非常にかなめになってくると思います。

 そういうことを考えまして、相談員の処遇につきましては、給与を倍増していただくということが総務大臣から出ておりますので、ぜひそこのところをお願いしたいと思います。

 実は、昨日の東京新聞にこのような投書が載っておりました。六十二歳の男性の方です。無職ということでありまして、高齢と言っては申しわけないです、私より若いんですけれども、多分、ほとんど何も御存じない方だったと思いますが、このようにおっしゃっています。

 消費者庁設置法案が審議入りした。肝心の相談員のお寒い状態が内閣府の調査でわかった。非常勤職員が九八%であり、その雇用形態は毎年更新が実態だということでございます。相談対応を一日六時間から八時間程度こなし、その六割の相談員が月十六日以上の勤務を行っており、精神的に相当に苦労している。にもかかわらず、平均年収は百六十五万円と極めて低く、九六%の人が退職金もない。

 交通費も出ないのが現状でございます。退職金など、夢の遠い話でございます。私が相談員をしておりましたときに、一つは割と高額なところでございましたのですが、交通費は全くありません。皆、手持ちでやっておりました。年金、健康保険を払いながら私も必死になって相談を受けた経験がございます。

 この方がおっしゃっておりますのには、「雇用保険と厚生年金の加入率が六割程度、と劣悪な雇用条件となっている。」ということでございます。「消費者主権で行政を行うなら、まず相談員の処遇改善が急務であろう。」ということをおっしゃっております。普通の人が、何も私どもの会とこの方は関係あるわけではございません。たまたま新聞にこのように投書をされたということでございますので、どのような方かは全くわかりません。

 ただ、消費者もこのように考えておりますので、ぜひ相談員の処遇につきまして改善をお願いしたいと思っております。

国府参考人 私は、相談員の処遇に関しては、勤務年限の問題について一言述べたいと思っています。

 私の地元の大阪市では、非常勤職員で任期が一年、二回更新されますから、三年たったらその時点で更新はしない。ということは一般公募ですね。それで、昔は、選考採用ということで一人の職員が十年、二十年と長く勤めていたのだけれども、今は三年が限度という扱いをやっているんです。

 考えていただきたいのは、相談員の皆さんは、法律の勉強であったり、それから食品衛生の勉強であったり、非常に専門性の高い勉強をしてやっています。しかも、事業者とのあっせんをやらなきゃならないということになると、非常に高いスキルが要求されてくるわけです。私ども弁護士の場合でも、三年ぐらいはまだ駆け出しですね。四、五年やってようやく一人前、十年やったら本当の一人前というふうなことからしますと、相談員の皆さんも、やはり四、五年はやらないと一人前にならないということだと思います。そうすると、実態としては、相談員の皆さんに五年、十年やっていただかないと実は困るんです。

 ところが、公務員法制上、非常勤だと、先ほど大阪の例で言ったように、三年でやめざるを得ないという、その制度がうまく実態にマッチングしていないという問題があります。

 多くの市町村の相談員というのは、地方公務員法の三条二項の一般職の非常勤職員であったり、それから、地方公務員法三条三項三号の特別職の非常勤職員であったり、いずれも非常勤職員として雇用期間が短いという問題があります。

 私は、相談員の皆さんを、非常勤ではなくて、常勤の職員として長期に仕事をしてもらうという道をやはり残すべきだと。センターの相談員の中には、いや、私は非常勤でいいと言う方ももちろんいらっしゃいます。ですから、そういう方は非常勤でいく。それから、そうでなくて、やはり長期雇用の一般職の常勤職員もいる、そういうもう少しフレキシブルな相談員採用のシステムというのが必要じゃないかなというふうに思っています。

矢野委員 いろいろとありがとうございました。

 国府参考人からは、先ほど、後世に残る審議をというお言葉もいただいておりますので、しっかり受けとめて、私のきょうの質問を終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 下谷内参考人、国府参考人、きょうは、お忙しいところありがとうございます。

 また、下谷内参考人は相談員を長年やられて、本当に一番よく実情をわかっておられます。きょうもしっかり聞いていきたいと思います。あるいは国府参考人も、この消費者問題について弁護士の活動を通して多角的に仕事をされているということで、しっかりお伺いしてまいりたいと思います。

 まず、国府参考人の御発言の中で、消費者庁は今、二百四名で予算を九十三億ということなんですが、それで、今回そのほかに補正予算で二百五十五億ということで、大体三百五十億ぐらいになります。観光庁は定員が百三名で予算が六十三億だと思うんですが、今、一千億で二百名ということであったんですけれども、この点はどういう計算をされたのか、ちょっと御確認だけしておきたいと思います。

国府参考人 先ほど、私の記憶間違いかもしれませんがという前置きをしておりましたので、私自身、自分で調べて正確な情報を持っているというのではなくて、観光庁の設立に頑張っておられた私の地元のある議員の方から、今度こんなすばらしい観光庁ができたんだというお話を伺った際に、二百人規模で一千億の予算規模だというふうにお伺いしたので、そのような対比で申し上げました。

 ですから、もし間違っておるようでしたら、訂正させていただきたいと思っております。

大口委員 それでは、まず下谷内参考人、今回、相談員のやはり処遇についてお話をしていただきました。これは、昨年の十一月の国民生活局の調査を見ておりますと非常にその実態がよくわかります。それで、直接これは国民生活局に送り返してもらうということで、本音が出ておるような感じがいたします。

 これを見ましても、先ほど下谷内参考人も紹介されましたように、非常勤が九八・五%、平均年収が百六十五万円、それから超過勤務手当なしが七九・三%ということであったり、あるいは雇いどめもある、また一年が契約期間であるということでございました。

 そして、いろいろな本音がここに書かれておりました。例えば、PIO―NETが陳腐化しているとか、モンスター市民がふえて大変だとか、相談員の育成には五年は必要だとか、あるいは相談員のレベルアップをするために他の職員との連携も大事であるとか、さまざまな本音が出ております。

 このアンケートによりますと、待遇についてかなり不満である方が二三・九%、不満であるという方が四八・四%、七二・三%の人が今の待遇に対してかなり不満あるいは不満である、こういうふうに回答されています。

 そして、その不満の原因として、給与水準、これが六四・二%、正職員との待遇差が四八・四%、昇給制度の不備、これは、昇給がないですから、何年やっても給与は変わらないということですので、これが四三・七%、相談業務への法的位置づけの不備が三八・三%、それで、研修の不備が三七・五%。こういうことで、不満が、やはり給与水準だけじゃなくて、正職員との待遇差とか昇給制度の不備、それから相談業務への法的位置づけの不備、研修の不備、こういうことが出ております。

 そこで、給与水準も、鳩山総務大臣は私の質問に対して、百五十万を三百万にこの基準財政需要額を倍増するということをおっしゃったわけでありますが、これについては、相談員の方が一番当事者でございますので、やはり、しっかりチェックをしていただくとともに、首長さんが本当に意識を持っていただく。この地方消費者行政というのは非常に大事だということを首長さんが本当に自覚していただかなきゃいけない。

 そういう点では、全国レベルの組織でございますので、やはりまた下谷内参考人の方からも発信をしていただきたいと思います。

 今このアンケートについてどう考えておられるのか、感じておられるのか、それから、同じく、国府参考人についてもこのアンケートについてのお考えをお伺いしたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 まず後ろからいきますと、総務大臣の人件費の増額につきまして、私どももありがたく、御質問していただきまして回答を引き出していただきましたことに感謝を申し上げます。

 私どもも、先ほども申し上げましたように、首長さんの考え方一つによりまして非常に左右される問題で、それは消費者にとってどのような影響を及ぼすかということを十分考えていかなくてはいけないと思っております。私どもも、先生がおっしゃられました、全国組織でございますので、できるだけ監視を続けてまいりたいと思いますし、また先生方もぜひ御監視をお願いしたいと思っております。

 もう一点は、先ほど国民生活局が調査されました資料をもとにお話をされました。実は、私が申し上げておりますのは、ほとんどが私どもで実態調査した報告書をもとにお話ししております。ただし、書いている者はほとんど同じでございますので、問題点はないかと思います。それを踏まえて御説明申し上げたいと思います。

 先生がおっしゃられましたように、モンスター消費者だとか、PIO―NETの陳腐化というのはPIO―NETの不備ということではないかと思います。

 これらにつきまして、確かに、今消費者に情報が中途半端に行っておりますので、消費者は権利の主張をされる方も時にはあるかと思います。それはほんの一部の御相談者のことでありまして、普通の御相談者、消費者というものは、真剣に自分がどうあるべきか、そして私はなぜこんな生活を送らなければならないのか、なぜこのような状況になったのかということをほかの御相談者の方は真剣に考えていらっしゃいます。

 確かに、いろいろな御相談者がお見えになりますので、時間をとってしまうこともあります。しかしながら、ひたすら聞くということもありますし、またそれは適度にこなさなければならない、相談員の重いところでもございます。それは、相談員だけでやれることではなくて、職員との連携が必要かと思います。そのためにも、職員の専門性ということを十分お願いしたいと思います。

 相談員の五年でということでございますが、確かに、先ほど国府参考人もおっしゃられましたように、雇いどめが非常に多くなってきております。それは、平成十六年の総務省の地方行政の非常勤職員等についてのが出ましたので、それに合わせて、地方行政は、相談員の首を切るためにはこれが手っ取り早いということで使われたものと考えております。

 しかしながら、国府先生もおっしゃられましたように、私もさきに申しましたように、相談員というのは一朝一夕でできるわけではございません。五年というのは、やっと相談員は五年で一人前かなというような状況で、実際に私も長年相談しておりましたときに、やはりこれは長期に相談を受け、長期になりますと、いろいろな法律も変わるから、だんだん年がいって困難ではないだろうかという御意見もございました。それは間違っております。たとえ、どんなに高齢になったとしても、その相談員は自分のために相談を受けているのではありません。地元の消費者がどのようにして安心、安全な生活ができるか、その一点にかかって、そのために研修を日夜励んでいるわけです。ほとんどの日当がその研修と交通費代に終わってしまうわというふうにおっしゃる方もあります。

 実は、私どもで、ある九州の地方で相談員がどうしてもいない、何とか一人派遣してもらえないだろうか、だれかを紹介していただけないだろうかということがございました。だけれども、資格を持っている者、そして地方には相談員がなかなかおりません。そのときに、七十を過ぎて、退職しておりました相談員だったんですが、ともかくこの人を使ってみてください、それでだめならば考えましょうということで送りました。

 確かに行政は、えっ、こんな年だからそれはだめです、新しい法律がいっぱいできているからというようにすごく抵抗されましたが、今おたくの相談窓口で人が必要である、そして、被害に遭われた方を救済するということをお考えならば、まず使ってみてください、その上で御判断していただきたいと。人を派遣するのに、人身売買でもないんですけれども、ともかく使ってみてください、そしてそれが不満であれば、何か問題があればおっしゃっていただきたいと申し上げましたところ、とてもすばらしい相談員を紹介していただいた、この人ならば大丈夫ですし、新しい相談員が入ったときに十分指導ができるということで、今現在もその方は相談員として働いております。

 それがまず一つの見本ではないだろうかなと思います。試験を受けて頭でっかちではなくて、やはりどのようにこの御相談者がここに来てくれたか、思いを真剣に受けとめているわけです。

 したがいまして、雇いどめのようなものにつきましては、いろいろな相談員がおりますが、私どもとしてはできるだけ適切な相談員を配置していただければと思っております。

 他の職員との連携とか、不満があるかどうかということでございますが、やはり何度も申し上げますように、職員が真剣に取り組まないと、御相談というものは相談員一人だけではできません。ですから、ぜひ職員との連携を強く求めていきたいと思っております。

 給与が非常に低いということに関しましては、何度も申し上げておりますので、そこのところは先生があのような御答弁を引き出されたことに関しまして、非常に感謝と御礼を申し述べたいと思います。

 研修等におきましても、ほとんど自腹で行っております。今度、新しく活性化基金で、いろいろな形で研修ができるということをお考えいただいておるようでございますが、一人でも多くの消費者の被害を救済し、また情報を発信し、そして日本全体が安心、安全な生活を送れるためには、ぜひ御検討のほどをよろしくお願いしたいと思います。

国府参考人 今のアンケートの中に、研修が非常に不十分であるという御不満があったように今委員の御質問でも聞きましたが、私も多くの相談員の人たちと接していて、その点を感じます。

 相談員の人たちの中にも、非常によく勉強されて熱心に取り組まれて、弁護士顔負けぐらい法律をよく知っている方が大勢いらっしゃいます。しかし、その人たちの勉強というのは、ほとんど自費で、みずからがやっています。例えば、週末に相談員同士で研究会をやって、そこに弁護士を講師で招いて勉強会をやったり、すべて自費でやっているわけですね。

 今回、第二次補正予算で活性化基金がつくられて、研修に国のお金がどんどん使われていくというのは非常に歓迎しておりますが、そのときに、例えば国民生活センターへ行くための旅費であったり宿泊費であったり研修参加費というだけではなくて、相談員が研修に行っている日もやはり給料をちゃんともらえる、つまり、そういう手当てが必要だと思いますね。休みの日に研修するのではなくて、給料をもらっている勤務日に研修ができるということが必要だと思います。そういう措置を内閣府の方では工夫していただいているというふうには聞いておりますが、必ずそういう裏づけがなければだめだという点です。

 それから、どんどん法律が変わっていきますから、座学でいろいろ法律を勉強するということも必要です。そのためには、地方にいても、例えば国民生活センターからインターネットなんかで講習内容が送られてくる。今、弁護士も、全国でそれをライブ研修ということでやっていますが、そういった工夫もやっていただいて、新しい法律もそれで学んでいく。

 それも、やはり勤務時間内にそういう勉強をする時間が与えられなきゃならないと思います。そうでないと、みずから自発的に頑張る人はよく勉強するけれども、勉強しない人はいつまでたってもレベルは上がらないということでは困ります。

 もう一つは、そういった座学だけではなくて、事例研究会的な勉強が大事だというふうに言われております。大阪では、大阪府内の消費生活センターの相談員と大阪弁護士会とが月に一回、共同事例研究会というのをやりまして、そこにみんなが事例を持ち寄って、事例検討の形で紛争の解決の方策を議論しておるわけです。ただ、残念なことに、その事例研究会に出られるのが、各市町村、相談員一人ずつしか来られないわけですね。例えば私の地元の枚方市では、六人だったか八人だったかいる相談員が毎回一人しか来ない。そうすると、年に一回か二回しかそういう共同事例研究会にも参加できないという問題があります。

 そういった意味で、給料を支給しながら研修する機会を与えることによって、相談員全体のレベルアップを図っていくことが必要です。

 これはまだ、大阪は相談員の皆さんが有資格者ばかりで、非常に恵まれた地域での話です。ところが、地方に行けば、都道府県センターですら有資格者が余りいないというのも多くあるというふうに聞いています。その意味から考えると、相談員のための研修体制をどうつくるのかというのは非常に重要だし、急務だと思っています。

 それから、もう一点申し上げたいのは、そのように非常に研修をしてスキルを高めていった相談員が、一方では、官製ワーキングプアという言葉が去年あたりから言われ出しました。あれはたしか、自民党の消費者問題調査会に相談員の皆さんなんかも呼ばれて実態を御報告された際に、非常に劣悪な条件だという中で官製ワーキングプアという言葉が出てきたようですが、やはり私たちは、相談員の人たちにしっかり研修して高いスキルを求めていく、そのかわり、相談員の待遇もきちっと保障していくんだ、そういったものがこれからの相談員には求められていると思います。

 これまで、相談員制度が最初できたときのように、漬物の漬け方を先輩の主婦として教えるだけでよかった、その時代とはもはや違うんだということで、高いスキルとより高い待遇を保障する、そういった相談員の待遇制度であってほしいなというふうに思っています。

大口委員 消費者庁を設置する法案あるいは権利院を設置する法案が出ておるわけでありますが、これは与野党で合意に向けてやっていくわけで、何とか発足させていきたいと思います。そうなってきますと、やはり消費生活センターにさらに期待が高まるわけでありまして、そして窓口の一元化ということで、さらに、二十四時間三百六十五日という問題もいろいろ御提示ありましたけれども、そういう点では充実を図っていかなきゃいけない、こう思うわけです。

 そういう中で、民間委託あるいは指定管理者制度、こういう形でNPO等が、大阪もそうですが、消費生活センターに派遣する、こういう形態について下谷内参考人は疑問を呈しておられる。雇いどめ防止のためにこういう形をするようでありますけれども、これについてどうお考えなのか、簡潔にお二人からお話をお伺いしたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 私どもの意見書におきまして、ここの点につきましては、今おっしゃられましたように雇いどめがあるということで、反対意見を出させていただきました。

 確かに、私が勤務しておりました消費生活センターも、消費者協会に委託をいたしておりました。ただし、それは本課から一〇〇%予算がついておりまして、ほかから来るわけでも全くないというような状態でございましたので、消費生活センターを維持運営するためだけにつくられた消費者協会でございました。その場合でしたらば、民間委託といいながら運営がうまくできております。

 ただし、昨今の指定管理者制度の問題がありまして、なかなか困難なことであるかと思います。NPOだとか指定管理者制度になりますと、それは三年とか五年になったときに、改めてまた入札制度等が起きるわけでございます。

 ある行政では、雇いどめをなくすためにNPOをつくればいいじゃないかということで、NPOをつくったところもございます。しかしながら、根本的な運営に関しまして、三年とか五年で新たな問題が起きるということについては相談員も勉強不足であったかと思いますが、その辺のところにつきましては何ら手当てはされていないということになってまいります。

 したがいまして、できるだけ地方行政の中でしっかりと運営していただけるということが必要なのではないかと思います。それはやはり地元の消費者のためにという、この一言でございます。

国府参考人 私は、民間委託については問題があるというふうに考えております。

 先ほど申し上げましたように、相談を受けるというのは、紛争をあっせんで解決する、そういうサービス的な側面だけではなくて、やはり、事業者指導とか企画立案に結びつけるという、まさに公権力の作用に直接影響する、そのまず末端というかセンサー的な役割があるという点で、そういったものを民間に委託していいのかということで、否定的だというふうに申し上げたいと思います。

 私の地元の大阪府は、もう四、五年、これをやっておりますが、うまくいっているかのように言われておりますけれども、これは、民間委託はおかしいということをみんなが批判して、大阪府も、批判されている以上、きちっとやらないといかぬものだから今きちっとやれているだけで、民間委託というものがうまくやれるという本質を持ったものではないというふうに思っております。

 以上です。

大口委員 そういう中で、相談員の待遇をよくするために、国家公務員化ということを民主党さんも提案されているわけなんですが、こういう消費生活センターの中の相談員というのは、センサー機能といいますか、持っておられまして、今、事業者に対してもちゃんと指導をする、指導してもだめな場合は、それこそ、本庁の取り締まり部局と連携して、それで行政処分等をやる。静岡県の場合、結構それがうまくいっているんです。

 そういうことからいくと、身分が違うということについては、支障が出てくるんじゃないか、現場の混乱が出てくるんじゃないかということについて、下谷内参考人と国府参考人、もう時間も少なくなりましたので簡単にお願いしたいと思います。

下谷内参考人 国家公務員という案も出ておりますが、地方行政を充実させるために今回のこのようなことを考えられておりますし、やはり私は、何度も言っておりますように、そこに住んでいる消費者がどのように救済されるか、安心、安全な生活ができるか、この一点でございます。

 したがいまして、国家公務員というのはなじまないし、また、相談員の中で、私は国家公務員、あなたは非常勤職員だというように、二重行政になりかねません。やはり地元の行政の中で検討していただくということが一番必要なのではないかなと思っております。

国府参考人 私は、冒頭に申し上げたように、考え方としては国家公務員化はあり得るというふうに考えております。

 ただ、現場で今反対の意見があるのは、今の現状の中にそういったものを持ってくるという、現状を改善するという立場からすると、非常に異質なものが入ってくるという意味で反対があるんですが、これを根本的に、そういう相談業務を国の責任でやるんだというふうに考えて変えていくことができれば、それも一つの方策かと考えております。

大口委員 時間が終了しましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

船田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

船田委員長 速記を起こしてください。

 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 引き続きまして、きょうは下谷内参考人そして国府参考人御両名から、現場の御意見、あるいはまた今日までの大変御苦労な一面をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。私も、この消費者行政の問題に関して、今回、特別委員会が設置をされて、そしてそういったところに光が当たるというか、そういったところには私も本当に心から喜んでいる一人でございますし、またこれを契機に、国のあり方あるいは地方のあり方、そういったものをしっかりと考えていきたいなというふうに思っておりますので、ぜひまた御示唆をいただきたいと思っております。

 それでは、まず国府参考人から、もし御存じであればお伺いをしたいなと思っておるんです。

 この消費者行政、先ほど下谷内参考人からもいろいろお話がありましたが、身近なところで相談を受け、そしてそれが、苦情処理だけではなくて、救済そして解決にまで至っていくのが一番望ましい、私もそのように思っておる一人でございます。しかしながら、一方で、地方の現状からすると、これはもう皆さん御案内のとおりでありまして、財政的な裏づけがなかなか厳しいという形がございます。

 先ほど、来年度の予算の中で基準財政需要額を倍増するんだというところがあったわけでございますけれども、この中には実は、ひょっとしたらもう御案内のとおりかもしれませんが、これがつながって、そのまま相談員の皆さん方の待遇にそのまま直結する、あるいは給与面でこれが上乗せをされるということの確約がとれていないのではないかというのが、まず現状にあるわけでございます。

 そこで、国府参考人は大阪で弁護士をされておられるということで、たしか昨年、橋下知事が誕生してから、大阪府の現状は大変厳しい情勢にあるというところで、しかもその中で財政再建プログラムを行って一つ一つの事業の仕分けを行い、そして削減するところは削減しなきゃいけないんだ、大阪の府民の皆さん、我慢をしてくださいねというような話があったわけでございます。

 そのときの事業仕分けといたしまして、まず法令での実施が義務づけられているなど、いわば大阪府に裁量がないものはもういたし方ない、これはもう削減することはできないねという形に仕分けをされたというふうに理解をしておるわけでございます。一方、事業量を府の判断で決められるもの、すなわち府の裁量事項で、これを削減してもいいのではないかというところのいろいろな事業仕分けを行ったわけでございますが、その中で、この消費者行政にかかわる予算というものはどういう形になっていたか、もし御存じであればお聞かせをいただければなと思っております。

国府参考人 ちょっと手元に正確な資料はないんですが、基本的には人件費など一〇%削減が原則ですね。それで、啓発事業などについてはたしか五〇%程度削減ということで、大幅な削減をやられております。一〇%というのは一律ですよね。ですから、法的に、例えば先ほど言った法定受託事務のように、義務づけられていないものについてはやはり自由に切られてしまうという側面があったと思っています。

 それから、先ほど地方交付税の基準財政需要額ということをおっしゃったんですかね。僕も詳しくないんですが、聞くところによると、大体住民一人当たり五十円程度になるというふうに聞いたかと思うんですが、大阪の消費者団体連絡会が自治体、市町村の実態調査をやられた中で見ますと、住民一人当たりの消費者行政予算が五十円よりも多いところもあるんですが、例えばセンターの相談日を週一日とか週三日程度に限定しているところなどは、住民一人当たり二十円程度の消費者行政予算しか組まれていないということで、地方交付税の計算とは別に、現場では消費者行政は軽んじられる実態もあるんじゃないかというふうに思っております。

園田(康)委員 そうしますと、やはりこれは、地方のいわば事務という形になっている今の現状の、数値的な減少のあらわれではないかなというふうに思うわけでございます。

 今回、私どもも本当にいろいろ苦労しながら、いかに相談体制というものを底上げしていくか、しなければいけないんだ、しかも行政の今までのパラダイム転換を図っていくんだということからすると、私どもも、地方でできるものは本当に地方でやっていかなければいけない。そのための裏づけとなる財源をしっかりと国から地方に、権限移譲とともに財源移譲もしていかなければいけないんだ。今の財政的な流れからすると、この現状の中で無理無理省庁等々をつくってやろうとしても、残念ながら、まだ厳しい情勢に立たされてしまうんだというこの問題が残ってしまうというところがまず一点、大きな問題としては取り上げられるのではないかなというふうに思っております。

 そこで、下谷内参考人にお伺いをしたいと思っております。

 そうなりますと、相談員の資格とその権限、これが今はまだまだ不明確な状況に追いやられているのではないかというふうに思っております。

 先ほど下谷内参考人のいろいろなお話を伺わせていただく中で、あるいは書かれていらっしゃるものを拝見させていただきますと、まず消費生活センターには窓口の設置が必要であるねと。その窓口には消費生活相談員、それから担当職員、そしてPIO―NET、この配備がきちっとされていかなければいけない、この三点セットは必須なんだというお訴えをされておられます。

 そこで、一番かなめとなる相談員の資格でありますけれども、現在は、資格としては、消費生活専門相談員と消費生活アドバイザーそして消費生活コンサルタント、大体この三つに分かれるのかなというふうに思っておりますが、これがいかなる根拠に基づいて資格としてなっているものか、ちょっと教えていただければと思っております。

下谷内参考人 底上げをするためには資格ということで、今、資格と権限移譲が必要なのではないかということをいただきました。ありがとうございます。

 窓口に相談員として今配置されている者たちは、資格は、先ほど先生がおっしゃられましたように、消費生活専門相談員、消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の者たち、それから日本消費者協会が付与しております消費生活コンサルタントというこの三つがございます。

 行政が、当初は国民生活センターの相談員養成講座を修了した者を優先的にとっていたところもありますが、資格という名前が出ましてからは、大体行政は隣の行政がそうなればうちもそういうふうにしましょうと簡単にお考えになっていますので、大体この三つが資格というふうに言われております。

 ただし、消費生活専門相談員というのは国民生活センターがしているものです。それから、アドバイザーというのは日本産業協会さんの試験でもってされております。この二つはいわゆる公的資格と言われているものでございます。所管が、専門相談員は国民生活センターですから内閣府になりますし、アドバイザーの方は経済産業省の所管でございます。

 もう一つの消費生活コンサルタントというのは、経済産業省の所管であります日本消費者協会が、試験を受けた者ではなく講座を受けた者に対して付与いたしている資格でございます。したがいまして、この資格につきましては民間のような感じでございますが、ただ、コンサルタントの方たちというのは、消費生活センター、相談員の最初の一歩を開かれてきたという思いはあるかと思います。この三つを今のところ資格として言っております。

 私どもとしては、今回、このような消費者行政が皆様方で御審議され、大きな問題となって地方行政も目を向け始めたことに対して、やはりこの資格をできれば一つにできるようなものはないだろうかなと考えております。ただ、所管庁がそんなふうになっておりますので、消費者庁になりましたときに、何かまたしていただけるのではないかなという思いでおります。

園田(康)委員 そうしますと、いわゆる縦割り行政ではありませんけれども、まだまだこの点も問題が残っているのではないかと。なおかつ、その公的資格、これを国家資格という位置づけの中で、きちっと相談員の皆様方の身分が法律上、法定的な形になる必要があるのではないかというふうに私は思っているわけでございますけれども、その点について、下谷内参考人、そして国府参考人からも御意見をちょうだいしたいと思います。

下谷内参考人 公的資格の一本化をしますと、国家資格というようなものも考えられるかと思います。

 ただし、今の現状の中におきましては、これから相談窓口を設置するところが地方には非常に多くございます。そのためには、相談員の養成は急務でございます。ただ試験を受ければいいというわけではございませんので、国家資格につきましても、今後の検討課題であるのではないかなと感じております。

国府参考人 国家資格にされることについては特段異存がないというか、むしろ、資格を統合して整理され、これからそういう職を目指す人たちが、そういう試験を通じて、どのレベルの勉強をすればそういう仕事につけるのかということの目標を定める意味で、国家資格にされるのがいいのかなというふうに思います。ちょっと不勉強でよくわからない分野ではありますが。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 今後、もしそういう形をつくっていくならば、国家資格の位置づけというものが私はあってしかるべきものではないかなというふうに思っておる。それだけ、この消費者行政を一回整理する必要があるのかなと。

 先ほど来、国府参考人からも、あるいは下谷内参考人からも、行政の職員とそれから相談員の間で権限にやはり格差があるように私は見受けられたというか聞かせていただいていたわけでございます。

 先ほど大口委員からもお話があった内閣府の国民生活局の生活相談員に関する調査、ここの自由意見のところで、要は、行政指導を行っている県の場合、職員がセンターに配置をされるわけでありますけれども、その職員とそれから相談員とでやはり権限が違う。すなわち、指導監督権限までは相談員には与えられておりませんし、また相談員のあっせんという業務もどのような法的な位置づけで与えられているのか、これもやはりまだ不明確なところがございます。

 結局、相談員の方々が悪徳、悪質な業者のところにあっせんしに行っても、相談員に何の資格があるんだというような形で追い返されてしまうことも何度かあるということは私も聞かせていただいたりしたわけでありますけれども、この点、相談員の職務権限というものがもう少し明確かつ、権限移譲というものがこの中まで入っていく必要があるのではないかなと。

 例えば、今の現状でいきますと、都道府県知事あるいは市町村の首長でもそうでありますけれども、先ほど国府参考人がおっしゃっていただいた指導の権限、あるいは業務停止命令のような行政処分、こういった権限は首長に与えられているわけでありますけれども、そこからまたセンター長に職員という形で与えられている。しかしながら、相談員にはこれが全くないわけでございますので、この辺も一回整理をしなければ、本当の意味で相談業務に当たって機動的に対応することはできないのではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、これは下谷内参考人と国府参考人、両方からお伺いをしたいと思います。

下谷内参考人 相談員の権限につきまして、相談員の中でもいろいろ意見が分かれているところでございます。今職員にどれだけ権限移譲が上からおろされているかというところであるかと思います。

 例えば、特商法などにおきましても、大臣から都道府県に権限が移譲されているものはたくさんございます。その場合に、やはり職員がどれだけ相談の中身を把握し、相談員と連携して初めてできるのではないかなということではないかと思います。したがいまして、また一方、すべての相談員にすべての権限を与えるということはなかなか困難なことではないかなと思います。したがいまして、そこのところは相談員と職員の連携が必要なのではないかなというふうに感じております。

国府参考人 私は、行政の一般の職員の方にも、消費生活センターに異動になったら、相談員資格を取るぐらいきちっと勉強してもらいたいというふうに思っております。

 大体、職員は三、四年に一遍交代するわけですね。そうすると、本当に消費生活センターへ腰かけにだけ来ているような職員もいるというふうに聞いております。

 その意味で、職員研修は大事だということで、今、消費者庁ができて、相談員の研修の充実というふうに言われておりますが、行政職員の研修も非常に大事だという点を強調しておきたいというふうに思います。

 消費者行政の特質をわからないまま他の一般の行政部門にいると、行政は中立なんだとか民事不介入なんだという言葉だけ覚えて、全く現場にそぐわないような対応をして、相談員の人たちから非常にひんしゅくを買っている一般行政職員もいるのが現実です。

 それから、三、四年で交代していくとなると、同じ職場に五年、十年おれない。そうすると、相談員だけじゃなしに一般職員も専門性を高めるとなると、例えば福祉関係の職員のように、幾つもの出先があったり幾つもの部署があるから、福祉の専門職なんだけれどもやはり異動はできるという体制が必要だと思いますね。

 先ほど消費生活センターに府県がブランチをつくるべきだと申し上げたこととも関連するんですが、幾つものブランチがあれば、消費者問題専門の一般行政職員が、三、四年の異動もやりながら、いろいろ経験を積んでいくことも可能じゃないかというふうに思います。

園田(康)委員 そうしますと、やはり、いわば地方の身近なところで相談体制を整えていく、将来的には本当にこれが一番望ましい形であるわけでございますので、そういった点でいけば、例えば、今回は政府から消費者庁というものの構想が出てきております、いわば各省庁の縦割りに対して横ぐしを入れていく、中核的なセンター機能を持たせていくんだということでありますけれども、これと同じことが都道府県あるいは各市町村でも言えるのではないかということだろうなというふうに思うわけであります。そうなっていくと、ミニ消費者庁ではありませんけれども、行政の中の各担当部局に分かれている縦割り的な考え方に横ぐしを通すという、いわば各都道府県でも行う可能性が出てくるのかなという形になって、これは、そのことを議論し始めると、とめどなくどんどん地方の中に入り込んでいく話ではないかな。

 そうなれば、では、やはり行政が中立だという概念を根本的に変えていくということであるならば、その外にきちっとセンター機能を持った相談体制ができる、あるいは、予算と権限、これが裏づけのあるものがあると一番いいのではないかな、そういう帰着になっていくものではないかなというふうに私は思っておるところでございますけれども、この点、国府参考人はいかがお考えでしょうか。

国府参考人 冒頭にも申し上げましたように、大きく展望し、大変革をして、もう一遍消費者行政を組み立て直すという観点に立てば、今委員がおっしゃったような考え方は大いにあり得ると思っております。

 こんなことでよろしいでしょうか。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そこで、今度は、先ほど国府参考人からお話をいただいた地方の相談体制で、都道府県が中核的な位置づけになっていくべきではないか、今の体制では市町村までセンターを配置するのは難しいという御意見がありました。

 ただ、さまざまな情報の一元的な運用あるいは集約を考えていくならば、窓口としては確かに各市町村にあった方がいいというふうに考えますし、また、今のPIO―NET端末でありますけれども、これもやはり各市町村ごとにあった方が私は望ましいと思いますし、また、そこに相談員の方々が配置をされるというか、いらっしゃるのがやはり望ましいのかなと。ただ、それをバックアップするのが、いわゆる県に置かれるような形のセンターというふうに私は理解をさせていただいたわけであります。

 そうなりますと、今度、今のPIO―NETの配置基準というものが、ここ三年で週四日以上の配置をする予定があればいいですよ、配置をしますよというようなことを今政府はおっしゃっておられるようでありますけれども、この四日以上の配置基準というのがよく私には理解ができないわけでございます。

 いずれにしても、そこにきちっとある形、PIO―NETが配置されているというのが望ましい事実、いつでもそこに相談員の方々が来て情報を仕入れるというような、今、いろいろなシステムの改良はしておりますけれども、それが可能になっていくというのが私は望ましい姿ではないかなというふうに思うわけであります。

 では、この辺は、下谷内参考人から御意見を伺わせていただきたいと思います。

下谷内参考人 PIO―NETの設置につきましては四日以上ということに対しまして、私どもとしては、地元の市町村にも設置していただきたいという、この三点セットをお願いしております。

 それは、必ずしもすべてのセンターが、相談窓口が今すぐ開設したときに、四日というのは非常に困難かと思います。相談員もおりませんし、職員もいらっしゃらないという状況であるかと思います。したがいまして、半日しか開いていないというところにはちょっと無理かとは思いますが、一日以上開設するのであれば、PIO―NETの情報が必要ではないかと思います。

 ただ、その情報というのは、精査されたものが入っているわけではございません。御相談者の方がおっしゃられたことがそのまま入っておりますので、管理等につきましてはきちんとしていただくことが必要かと思っております。

園田(康)委員 そしてまた、国府参考人でございますけれども、こういう現状があると私は少しお伺いをしたんです。

 例えば、都道府県のセンターがあって、そして市町村にセンターが設置されているというところで、相談者から都道府県に電話がかかってきました。その都道府県の職員が、あるいは相談員の方が、相談員なのかどうかはちょっとわかりませんけれども、あなたはどこの居住地ですかとその居住地を聞いたら、その方の当該の市町村にセンターが設置されていた。では、そちらで聞いてくださいね、そちらで相談をしてくださいというような、いわば丸投げ、あるいはたらい回し的な状況に遭ってしまったという形があるというふうに聞いておるわけでございます。

 そうなりますと、都道府県で、やはり広域的な相談体制を持ったところがきちっと受けるような形というのも一つなければならないのではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、その点をちょっと最後お伺いをさせていただいて、質問を終わりたいと思います。

国府参考人 大阪では、今言われたとおり、地元の市町村にセンターがあるところについては、大阪府は原則相談を受けないという建前をとっております。ですから、それは丸投げとか振っているというんじゃなくて、やはり、自治体がそれぞれの自分のところの予算で職員を配置して相談を受け付けているわけですから、他市町村であったりの相談を受けられないという形になりますね。

 府は、昔の消費者保護基本法時代の悪弊が残っていて、相談業務は府じゃなくて市町村が本来なんだという感覚があるものですから、同じ大阪府民なんだけれども、まず、市の窓口があいていたらそっちへ行ってくださいということでやられています。そういうことですね。

 それから、もう一つの問題は、大阪市なんかはセンターが一つしかなくて、これが市内の西の方にあります。市内の東の方の住民は、センターに行くのが遠いものですから、東大阪市へ行くという形になります。東大阪市のセンターでは、簡単なことであればアドバイスしてあげます、せっかく来られているんだから。だけれども、あっせんまで入らなくて、大変であれば、これは東大阪市の予算で大阪市民を救うわけにはいかないということで、申しわけないけれどもお断りをして、西の方にある大阪市のセンターへ行ってくれというふうに振っておられるのが実情のようです。

園田(康)委員 ありがとうございました。

船田委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 下谷内参考人、国府参考人、それぞれの貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 きょうは、地方消費者行政に関連して、お二方にそれぞれお尋ねしたいと思っております。

 最初に、お二方にお聞きしたいと思うんですが、地方消費者行政の予算そのものがこの間大幅に削減をされてきております。私がお話を聞いたところでも、啓発ですとか未然防止の予算がほとんどなくなってしまうような事態ですとか、また、消費者団体の補助金もどんどん削られていくという形、もちろん、新聞や本も買えないという形で、相談員の方のレベルアップにも支障を来すような事態にも至っているような、そういう予算削減というのはさまざまなひずみをつくり出しているわけです。

 その点で、お二方がお聞きになっていることで、こういう地方消費者行政の予算の削減によって現場にどのようなゆがみ、問題が生まれているのか、そのことについてお聞かせください。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 予算の削減というのは、行政の中において非常に問題が大きくなっております。今までは消費者行政というのは余り見向きもされておりませんでしたので、行政の中で予算を削減するときに一番にやり玉に上がったことは、私が長年相談しておりました中でも経験いたしております。

 職員を減らし、そして相談件数が多くなるにもかかわらず、給与、日当が全く上がらないというような形でございました。相談員も減らさなくちゃいけないとかというような形で、予算の削減はずっと続いておりました。きのう、きょうのことではありません。それは、環境だとか福祉の問題が持ち上がりましたときに、そちらの方へ予算を動かしますということをはっきりおっしゃられた上司の方もいらっしゃいました。確かにそのようなことだったろうと思います。

 今回、このように先生方それから国会等で御審議いただきましたおかげで、地方によりましては、来年度から相談員の人件費を上げるとか、啓発を削っていたのを復活させるというような話も伺っております。東京都もそのように伺っておりますので、一つ大きなところがそのような形でされますと、またほかの行政においても、この機会だから声を大にしてそこのところを主張できるのではないかなと。地方行政の担当の皆様方も、予算削減につきましては、この機会ですので、ぜひ頑張っていただければと思っております。

 ただ、やはり、先生がおっしゃられましたように、削減がありましたときに、まず職員を減らすということをされました。そういたしますと、専門的に一生懸命やろうという職員さんがなかなか少なくなってきているのは事実でございます。そういうものを毎日相談員が見ておりますと、相談員としては、ただプライドや意気込みだけで相談はしておりますが、職員がそのような状況であればということで、相談業務につきましても多少の影響は出てきたものではないかなと思っております。

 予算の削減というのは非常に大きな問題でございますが、この機会に、ぜひ、それぞれの自治体におかれましても、予算については慎重に御検討いただければと思っております。

国府参考人 私も相談員の皆さんから聞いている話程度しか知りませんが、例えば、活性化基金ができたらそのお金で一体何をすればいいのかという話をしたときに、非常につましい話題が出てくるんですね。

 例えば、デジカメがない、ICレコーダーがない。だから、消費者が次々販売で山ほど布団を買ったというんだけれどもそれを写真に撮ってくることもできない。だから、活性化基金ができたらぜひデジカメやICレコーダーを買いたいとか、それから、センターで何か相談を受けて事業者のことなんかを聞いたら、本当は今はもうパソコンで検索をして、どういう事業者かというのをすぐ調べられるんですが、相談員の人たちは、センターにパソコンがないものだから、インターネットにつながっていないものだから、自宅へ帰ってその作業をやったり、自前のパソコンでワープロ文書をつくったりというふうな、そういうちょっとした備品すらないという、非常につましい現実があると思います。

 それから、大阪府では、「消費者情報」という月刊雑誌をつくっておったんですが、橋下知事の削減というのもあって、これまでの大阪府の援助がどんどん細ってきて、廃刊の危機になっているというふうに聞いています。これは、一般も含めて全国でも四誌か五誌しかない、非常に少ない消費者向けの一般雑誌なんですね。それがもう廃刊の危機になっているというふうな話も聞いております。

塩川委員 地方の消費者行政は、国のレベルと同様に、産業優先で消費者は後回しではないのかという現場のお話なども伺ってまいりました。県の産業振興課のもとに消費者保護の担当があるような事態というのも現にあるということですし、相談員は情報収集だけしていればいいんだ、いわば相談、あっせんというのは、救済しなくてもいいと言わんばかりの対応というのが現場にもあるというようなお話も伺いました。

 そこで、お二方にお聞きしたいんですけれども、こういった商工優先、産業優先で消費者が後回しというような、特に都道府県レベルでの実情、そういうことについて、消費者の利益が守られないようなことが生まれている経験をされたことなどがございましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

下谷内参考人 先ほどの予算削減と関連いたしますが、消費者行政が後回しになったときに、予算の削減が非常に多くありました、先ほども申し上げましたように。

 都道府県の消費生活センターには、かつてはテスト室というものがございました。国民生活センターもテスト室を持っております。地方の出先や国の出先機関でも、食品やクリーニングなど、いろいろなところでのテストをしていることも確かにありました。

 各地の消費生活センターでは、専門の職員を配置し、テスト等を充実させ、それはすべて相談の中からきたもの、それから、地域の方々のために情報発信をしたいということで、テスト職員たちがそれこそ真剣に取り組んでまいったことでございます。

 予算削減がありましたときにまず切られましたのは、先ほど申し上げました、職員が切られたのと同じように、テストが非常に切られてしまいました。テスト職員をなくし、それから、お金のかかるテストはしないからということで、百円ショップで百円の商品を買ってきて、それをしこしことテストされていたところもございます。

 国民生活センターが「たしかな目」という本をつくっておりました。今は廃刊されまして統合され、「国民生活」という本になりましたのですが、その中で、各地の消費生活センターのテスト情報というものを載せておりました。しかしながら、テストの充実が叫ばれる中で、テスト機関がだんだんだんだん少なくなってまいりまして、そのうちに、そこに載せる情報すらもなくなってきたというのが現状であります。せっかくテストの施設が残っておるにもかかわらず全く動かされないということで、機械等につきましても放置されたような状態でございました。

 そのような中で、都道府県は必死になって考えてはいるんですが、やはり予算の削減ということは、そういうところにも影響を及ぼしております。

 したがいまして、何も相談の被害救済だけが問題ではなくて、そういうところの、消費者が日常の生活の中でどのように生活を、公平に、安心、安全に受けられるかということの情報の提供等につきましても、テスト機関が削減されておりますので、非常に困難になってきていることは事実でございます。それが都道府県の一つの状況でもあるのではないかと思います。

 それからまた、条例の中にいろいろなことが書かれております。例えば被害救済委員会だとか、いろいろなものが入っているのですが、予算の削減とあわせまして、非常に問題が取り上げにくい状態になっているかと伺っております。

 また、相談も、単純に助言だけでいいのではないかといいますと、なかなか被害救済には上がってこないというのが現状ではないかと思っております。

国府参考人 お答えになっているかどうかわかりませんが、一つは、あっせん率が非常に低くなっているという現状をどう見るかだと思います。ベテランの相談員の皆さんに聞きますと、昔は相談のうち一〇%ぐらいはあっせんしていたというんですね。ところが、今は、いろいろな統計を見ても、あっせん率が五%とか、ひどいところでは一、二%といった地域もあります。そのことは、やはり消費生活センターの現場に余裕がなくなっている、押し寄せてくる相談にとりあえず対応するのが精いっぱいで、あっせん解決できないという問題です。

 あっせんをしないということは、実は非常に大変な問題を持っているんですね。あっせんをやるということは、事業者にいろいろ資料を出させたり話をしたりするわけですから、事業者の実態が浮き彫りになってくるんですね。消費者の御家庭に行って実際の契約書を見せてもらったり、いろいろなことをやる中で浮き彫りになってきたら、実はこれは法律違反をやっているということが明らかになって、事業者規制まで行くべき案件、それが、あ、もうきょうはクーリングオフ内の八日間ですね、クーリングオフの通知をしておきなさいというその助言一本で終わると、その事業者の違法な行為を完全に見落としてしまっているということになります。ですから、忙しくて助言だけで終わってしまうことは、そういう事業者指導の機会、情報収集の機会も実は大きく失っている、そういう弊害が出ているかと思います。

 それから、もう一点だけよろしいでしょうか。

 苦情処理委員会の点ですが、私ども、昨年、苦情処理委員会の過去の全部のあっせん事例集を集めました。全部で百件に足りません。そのうち、東京都が三十五件ぐらいでしたかね、大阪府が六件ぐらいでした。ほとんどの府県がゼロかほんの数件。つまり、苦情処理委員会という制度が昭和五十年ごろにできてから、ほとんどの府県ではやられていない。こういう制度が形骸化している。大阪の六件も、消費者団体の皆さんがいろいろ府に働きかけて、事例を持ち込んだりして、ようやく六件、七件という数字になってきたわけで、言うならば、東京都以外はほぼ全滅に近い。これもやはり現場の消費者行政が余裕がないということのあらわれではないかと思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 関連して国府参考人に伺いますが、事業者指導の大阪府の例を紹介してのお話がございました。全相談件数のうち約二%が特定商取引法に明らかに抵触し、処分権限を発動すべきということで考えると、大阪府の場合には被疑事案の約一%しか指導、行政処分の対象となっていないのが現状だということです。なぜそうなのかというところで、先ほど体制上の問題もお話しされたんですけれども、やはり構造的にゆがみがあるという点も含めて、もう少し、リアルの実情といいますか、その点でお感じになっていることがございましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

国府参考人 法律違反の現状があるときに、その法律を執行する権限のある行政機関が本来は事業者指導をしたり行政処分するのが法律の建前ですよね。ところが、私の経験では、昭和六十三年の訪問販売法の改正当時もそうなんですが、訪問販売法違反の事例が世の中に山ほどあるにもかかわらず、当時、通産省が事業者への指示や行政処分をやった事例が皆無だったんですね。平成十三年になって行政改革があって、ようやく経済産業省が年間数件といった行政処分をやるようになり、都道府県のしりをたたいて、都道府県でも年間数件ずつが出てきたということで、従来、こういう行政処分権限というのは、いわゆる伝家の宝刀というか、抜かなくてもいいんだというふうな感覚で行政職員の方がおられたんじゃないかと思っております。

 大阪も最近、年間数件やるようになってきたのは、行政職員が経験がないから、そういう行政処分をようやらぬのですね。だから、警察のOBに来てもらったりして、いろいろ事実調査なんかをやるようになって、ようやく年間数件といえどもやれるようになってきた。

 静岡は、小さな県ではよくやっていたんですね。静岡なんかもやはり、お聞きすると、警察OBの力をかりて、そういう経験を踏まえてやる。

 だから、今、まだ過去経験ゼロという府県が半分近くありますが、やはり経験がなければ第一歩を踏み出せないと思います。

塩川委員 東京都などでも、警視庁との連携といいますか、そういうのがこういう相談の解決に当たっても実際にプラスになっているという話も聞くわけですけれども、いずれにしても、そういう体制の問題と同時に、まずは消費者の相談の窓口をしっかりと地域に確保するということが必要です。

 その点で、最初に国府参考人に伺いたいんですが、京都府の例で、府として、それぞれの地方に出先機関の振興局、そこにこの消費生活センターを設置しているということの話がございました。全国各地にもそういう例があるんだと思うんですが、この間、全体とすれば、市町村に押しつけるといいますか、市町村の仕事だという形で都道府県が手を引くような状況というのがあるわけですけれども、その際、京都の場合ですと、府と市町村との関係でその辺はどういうふうに調整しているのか、対応しているのか。その点について御存じでしたら教えていただきたいのと、やはり、消費者にしてみれば、なるべく窓口が多い方がいいわけで、どんな小さな町や村にも窓口があって、とにかく身近に駆け込んでいけるような、そういうことが必要なわけですけれども、そういう点で、この京都府の現状というのは必ずしもそうではないんだろうなと思うんですが、そういう点での窓口の設置のあり方について、京都の事例もされたのを踏まえて、お考えのところをまずお聞かせいただけないでしょうか。

国府参考人 京都の事情に詳しいわけじゃないですが、零細な、人口の少ない、財政規模も小さい市町村が多い中で、やはり都道府県が設置せざるを得ないという現実の必要性から、府によるセンターの設置という形になっているのだろうと思います。

 それから、先生おっしゃったように、窓口が多いにこしたことはない、零細な市町村もそういう対応をすべきだというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 そこで、例えば市民相談ということで、小さな町村の窓口でも相談を聞いて、アドバイスできることはその職員がやればいい。だけれども、事業者とのあっせんとか、ちょっと高度な問題になれば、都道府県がやっているセンターがあそこにあるから、これはもうあっせんに入っていっていただこうというふうに振り分けることもできるわけですので、私も、窓口がたくさんあって、それぞれが適切に役割を果たすということでシステムは構築していっていいんじゃないかと思っております。

塩川委員 この消費生活相談窓口の設置の問題で下谷内参考人にも伺いますが、要望としても、全国の市町村に窓口を設置すべきということは、市町村で設置をするということに限られないんだとは思うんですけれども、その辺で、今言いましたように、本来、国としてできることも当然あるでしょう。もちろん都道府県としての対応もあるわけで、身近に相談窓口をつくるということについては、市町村で設置をするということだけではないと受けとめているんですけれども、そのようなことでよろしいんでしょうか。

下谷内参考人 身近な窓口を設置するというのは、あくまでも消費者のためでございますので、市町村が設置することではないかと思います。

 ただし、それは都道府県が中核センターとしての役割を持っていただきまして、常に、都道府県との連携、そして、都道府県は国民生活センター、国との連携をしていただきまして、消費者行政が動くのではないかなと思っております。

 したがいまして、単に窓口で受けるというだけではなくて、私どもが三点セットと申し上げております専門相談員、専門の職員、PIO―NETの設置をいたしますと、最初に、ある地方の七十歳の相談員のことを話しましたが、十分にあっせん業務はできると考えております。

塩川委員 単純に役割分担ではなくて、国と都道府県と市町村と複合的に対応できるような、そういう仕組みが本来消費者にとってもプラスであると思いますので、そういう工夫というものを大いにしていくときではないかなと思っております。

 それと、消費生活相談員の方の待遇の問題でお聞きしたいんです。

 現状は、非常勤の特別職という形のものが多くて、日々雇用では雇いどめもあるというような状況であります。協会の調査におきましても、年収二百万円程度のいわゆる官製ワーキングプアという方が実際多数を占めるような実情にあるということでお話を伺っております。相談員協会は専門家の集団ですというお話が冒頭、下谷内参考人からもございました。そういう点でも、専門職として身分も確立をしていく、待遇も保障していくということが必要です。

 そこで、消費生活相談員の方の待遇の改善について、どのような改善が必要なのか、押さえるべきポイントは何なのか。この点では、国府参考人も常勤化ということのお話もされておられます。そういうことも含めて、消費生活相談員の方に対してどのような待遇改善が求められているのかについて、下谷内参考人、そして国府参考人、それぞれお聞かせいただけないでしょうか。

下谷内参考人 相談員の待遇の改善につきましては、今後ますます検討されるべきことではないかと思います。

 このように、現在の相談の窓口で受けております毎日の状態から考えますと、週五日間出るというのは非常に困難なことだろうと思います。その中でまた、研修もあり、いろいろな啓発事業もございます。それらをどう考えていくかということにつながっていくのではないかと思っております。ただ、週三日ぐらいではなかなか一つの相談の事案を処理するのは難しゅうございますので、四日から五日になるのではないかなというふうには考えております。

 今現在、三日だったところが四日になるという十六日制というのが最近多く、来年度からとられるところも、徐々にでございますが多くなっておりますので、将来的にはそのような方向になるのではないかなというふうに思います。

国府参考人 私も、繰り返しになりますが、やはり三年程度で雇いどめというふうなことでは相談員の皆さんも力が入らないですね。三年たったらもう一遍一般公募でほかの人たちと一緒に試験を受けてうちのセンターに来てくださいというふうなことでは、頑張りがいがない。やはり、頑張って市民の方に喜んでもらえるというのが、どうも相談員の皆さんの喜びだというふうに聞いています。これは弁護士も一緒です。ですから、そういった、仕事に誇りを感じられるように、三年で首を切るなんという殺生な、そういうやり方は絶対に改められなければならないと思います。

 それからあと、給料の問題というのは私はよくわからないですが、やはり、専門職にふさわしい給料を払わないと、勉強をきちっとやるいい人が集まらないのは当然ですから、それはしかるべき措置を、従来事実上やってきたわけですが、これからは法律に基づく一つのシステムとしてやられることになるんだというふうに期待はしております。

塩川委員 最後に、下谷内参考人に、国民生活センターの機能強化の問題で、ぜひこういうことをやってもらいたいということで御要望がありましたら伺いたいんです。

 先ほど、商品テストの話もございました。そういう点で、県レベルのものがどんどん縮小していく、そういう意味でも国民生活センターとしての商品テストの役割というのは大きいわけで、地方公共団体レベルでもしっかりやってもらいたいということは当然要望していくわけですけれども、国センならではの取り組みということで、研修機能もございましょうし、全国の情報を収集した分析の機能もございましょう。消費生活相談員のお立場で、国民生活センターの機能の強化、こういうことをぜひということがございましたら、伺わせてください。

下谷内参考人 国民生活センターのあり方等につきましては、独法の改革のとき、行政改革のときに非常に大きな問題となりまして、予算の削減、それから商品テストの削減というようなものがうたわれました。

 私ども相談員は、当時やっておりましたテストというものは、やはり今後もそうなるはずなんですが、例えば自分に被害があって消費者がどこでテストを受けるかといったときに、なかなかありませんので、経済産業省の今のNITEだとか、いろいろなところがございました。そのときにいつも御相談者がおっしゃられるのは、消費者がきちんと、安心して、信頼の置けるテスト室がないだろうかということでございました。やはり、経済産業省とかいろいろなところにありますと、どうしても業者寄りではないか、結果も大体そのようになってまいります。

 したがいまして、御相談者の中からそういう声が出ておりましたので、私どもは、独法改革のときには、国民生活センターの強化、削減ではなくて強化を求めることを大きな声で言いました。そのおかげもあったかと思いますが、国民生活センターは持ち直しをしたということでございます。

 ただし、予算の削減というのは非常に多くあります。今回の二次補正におきましても、国民生活センターに予算はたくさんつきましたが、それは、ありがたいことに、相談員の養成とかセンターの設置とかということに使われて、私ども相談員としてはとてもうれしく思っております。

 しかしながら、国民生活センターの職員が非常に少ないわけですね。一人の職員が幾つもの事業を持っております。新たに、大学を卒業した若い人たちが、消費者行政だとか消費者問題に一生懸命になって、受験をされて入っていらっしゃいます。これはすばらしい人が来てくれたと思いますが、三年、四年、五年とたつうちに、当時持っておられました高い期待感、それから行動力というものがだんだん薄れていくように私どもは感じられます。それはやはり、職員の縮小も含めまして、一生懸命やろうという意気込みがそがれているのではないかなと思います。

 したがいまして、単に私どものような今回の活性化事業だけではなくて、国民生活センターにもう少し人員が配置されるように強く望みます。そうすることによって、それがひいては消費者のためにもなることだというふうに強く感じております。

塩川委員 ありがとうございました。

船田委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、参考人のお二方の先生、大変御苦労さまでございます。

 最初に、下谷内参考人にお伺いをしたいと思います。

 だまされていることに気がつかない島の話をされて、善良な方が多いということなんでしょうけれども、本当に全国に相談窓口があればもっとちゃんと対応できるのではないか、こういうふうにおっしゃっていました。

 そして一方で、これは先生がお書きになった論文です、読んだのは二〇〇三年の話だったものですから。年を追うごとに、消費生活センターなどに相談窓口があるぞということについては大変認知度は高まってきたけれども、一方では、その認知度の高まりに比例して利用度というのが伴っていないんだという報告がありました。ちょっと古いので、今はまた変わってきたのかもしれませんが。

 仮に、みんなが、七割以上の人が知っているけれども窓口を利用しないという現実が現在も続いているとすれば、それは一体どこに原因があったのか。もちろん人員の問題やいろいろな問題はあると思いますが、基本的にどうお考えになっているのかということについて、最初にお伺いをしたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 二〇〇三年のことでございますので、私もそういうことがあったなと今改めて、申しわけございません。

 確かに、消費生活センターという名前につきましては、なかなか一般の方にはわからなかったことでございます。平成十七年の埼玉県の高齢者の認知症のリフォーム問題とかそういう問題が上がったときに、消費生活センターがこのようなことをやってくれた、そういうところがあるんだということが知れ渡ったということでございます。

 ただし、書いておりますように、その利用度が少ないということに関しましては、なかなか、県まで行かなくてはいけないとか、どこにあるかがわからない、どこの窓口がやっているのかがわからないということでございます。すべてが消費生活センターという名前を使っていたわけではございません。地方におきましては、例えば商工観光課の中にあったり、土木課の方が兼任をしているというような状況もあります。そこに行って御自分が消費生活相談をするということ自体がなかなかわからなかった状況であります。

 今現在もそのようなものは続いているかと思います。まだまだ、ある県によりますと、ほとんどの市町村の中で、土木課だとか観光課の方が兼任されております。しかし、今回のことにありまして、都道府県におかれましても、積極的に窓口についてどうあるべきかということを検討されているように伺っております。

日森委員 ありがとうございました。

 関連して、国府先生、消費者庁が仮にできるとすると、都道府県、ここもやはり体質を変えていかなきゃいかぬという御趣旨の案がありました。私は全くそのとおりだと思いますし、それから、先ほど消費生活センター、小さな市町村が設置できなければ、都道府県が責任を持って一定のエリアの中にきちんと配置すべきだということなどを考えていくと、これは市町村もそうなんですが、とりわけ都道府県がこの消費者行政に対する姿勢を転換していかないと、これはなかなか地方で頑張るといっても難しいかなという思いがいたしました。

 そういう意味で、今先生おっしゃったように、商工労働課の中に消費があるなんということがまず何の矛盾もなく放置されているようなことがこれから続いていくとしたら、これは消費者庁をつくっても、なかなか国民の、消費者の権利を守っていくとか利益を守るなんということにつながっていかないんじゃないかという気がしないでもないんです。

 そういう意味で、若干お触れになっていますけれども、とりわけ都道府県、関連して市町村、組織も含めてどんなふうに転換を図っていくべきなのかということについてお話しいただけたらありがたいと思います。

国府参考人 都道府県の役割が重要なことを共通認識いただいて、ありがとうございます。

 都道府県の部局について、私も詳しくはないんですが、基本的には国にいろいろな省庁があるのに対応した形で都道府県の部局がつくられているという現状からすると、今回、消費者庁がつくられるということになれば、それに対応したものが部局として都道府県でも設置されていくようになるんじゃないかと思います。

 現在、例えば大阪府なんかでも、消費生活センターの所長が消費者行政のトップなんですが、これは課長クラスですね。ですから、せめてやはりセンターが一つの部局として、センターの長に部長クラスの人が来るような、そのような重きを置かれる組織がえというのは、政府が変われば都道府県も変わるんじゃないかというふうに期待をしております。

日森委員 ありがとうございました。仙谷先生、我々もその一翼を担わせていただければありがたいと思っております。

 それから、ちょっとこれは重複してしまうんですが、テストの話がありました。この間、弁護士の先生方と一緒に、貸金業法とか割賦販売法とかずっと法律を変えなきゃだめよということで、いろいろな集会に出たりやってきたんですが、その中で、やはり国民生活センターというのは、独法化されて予算が限られて、何やら地位がおとしめられようとしているけれども、これは逆だと。むしろそういう条件の中でここはもっと強化していかなければいけない、もちろん消費生活センターもそうなんですが、そういうことを思ったわけです。

 そういう意味で、現在の国民生活センター、独法化の中でかなり厳しい状況になっていて、我々も独法化するなというのがもともとの主張だったんです、多勢に無勢でそう決まってしまったのであれなんですが、現在の状況の中で、国民生活センターの位置づけと将来展望みたいなものについて、何かお考えがあったら、お二方にお聞きしたいと思います。

下谷内参考人 ありがとうございます。

 確かに、国センの問題につきましては、私どもも非常に強く感じております。国センをどのように強化するかというのは、まず予算をつけることと、職員を配置し、職員にも意気込みを持って働いてもらえるような待遇ということになるのではないかと思います。

 そして、国民生活センターは、情報を収集し発信するところの司令塔の役割も担うべきものだろうと思っています。そこで、国民生活センターがどのような処遇をするかということにかかって、都道府県もそれに合わせて動くというのは非常に多うございます。先ほどテストの話をしましたが、国民生活センターがテストを縮小するといったときに、都道府県も一緒に右へ倣えと、余りお考えにならないのではないかと思いますが、右へ倣えというような感じになってまいります。

 したがいまして、国民生活センターを強力な力を持った組織に仕立て上げていかないと、やはり今後の消費者行政も非常に暗いものになるのではないかなと思います。法律等の監視、司令塔であるのは別に消費者庁だとかあるいは新しい行政組織でいいんですが、実際に動いているところとしまして国民生活センターの力というものを私どもは非常に強く感じておりますので、ぜひ強化をしていただければと思っております。

国府参考人 私は、国民生活センターは、昭和四十年代に消費者保護基本法ができて、本来だったら消費者庁はその時期につくられなきゃならなかったのが、ああいう特殊法人という形で消費者行政の一部を担う組織ができたのではないかというふうに感じております。ですから、消費者庁ができれば、ここ三十年間国センがやってきた仕事のある部分は、本来行政機関がやるべきものとして消費者庁の方に吸収されるべきものが出てくるということだろうと思います。例えば市町村で苦情処理で情報が集まってくる、それを集約するのが国民生活センターという、直接行政機関ではない独法というところが集約する、これもちょっといびつだと僕はやはり思います。

 ですから、そういう歴史的経過があるからそういう状況になっているんだけれども、消費者庁ができることによって整理されていって、国民生活センターは、本来、商品テストをやったり、それに関する情報を国民に提供したりという、行政そのものではなくて行政の外にある機関でやってもいいような事柄をやるところにしていくという、そこの、消費者庁と国民生活センターとのすみ分けみたいなことが将来的には議論になっていくのではないかというふうに思います。

日森委員 ありがとうございました。

 実は専門性を持った相談員の問題とかいろいろ準備したんですが、皆さんお聞きになったので、重複して聞くわけにもいかないので、全部外します。

 それで、私の一番こだわっている消費者政策委員会についてお聞きをしたいと思います。

 私も、消費者庁の帰趨を決するといいますか、極めて重要な根幹の一つだというふうに認識をしているんです。

 これは機能の問題だと思いますが、消費事故などについての分析と原因究明みたいなものを、例えば運輸安全委員会のような、私も全くそういう気持ちはあるんですが、先ほど国府先生はそういう必要性を強調されて、それで消費者政策委員会がこれを掌握するという趣旨のことをおっしゃっておりました。それが政策委員会の仕事の一つでもあるんだということをおっしゃっておったんですが、そうすると消費者政策委員会が物すごくでかい話になっちゃうんじゃないかという気がするんですよ。その辺はどういうふうに整理されておられるのか、ちょっとお聞きをしておきたいと思いました。

国府参考人 情報の一元化ということが消費者庁のキーワードの一つとして言われているわけですが、私は、集まった情報をどんなふうに分析し生かしていくのかというところが、本当は一番大事な部分だと思うんですね。

 それをどういう形でやっていくのかということで、消費者庁の中には一つの課として情報を取り扱う課がつくられるようですが、何人かの職員の人たちが一つの課で情報を扱うだけでは、消費者情報という多様な情報に対応するのは不可能ではないかなというふうにやはり思います。建築の問題であったり食品衛生であったり健康の問題であったり、多種多様な情報を扱っていく、全産業分野に目配りをしていくだけの知識なり経験が必要だし、そういうふうな意味での情報分析をやれるところが必要だということになってくると、やはり外部の専門家なんかの力もかりながらやっていくのが必要だし、そういうところの受け皿として一つあり得るのはこの政策委員会じゃないかというふうに思ったわけであります。

 私は、鉄道事故調査委員会の設立運動なんかもやってきて思ったのは、やはり、鉄道の分野というのは、官僚の皆さんよりも鉄道会社の皆さんの方が、技術上の知識はもっと高度なもの、最先端のものをお持ちなんですね。ですから、そういう人たちの力を引っ張ってくる。従来は審議会なり諮問なりという形で専門家の力をかりていたんですが、それを常勤の職員として取り込んで、そういう人たちの力をフルに活用しながら、貴重な情報をきっちり分析し、政策の企画立案に生かしていただく、そういう機能を私としては期待したいと思っています。

日森委員 全く同感でございます。

 最後にもう一点だけ。私は三条委員会にすべきだという思いがあるんですが、先生はその一点について、いかがでしょうか。

国府参考人 三条委員会、八条委員会、いろいろ議論はあるようで、私もでき得れば先生おっしゃったように三条委員会というふうに思いますが、八条委員会でも、本当に今の非常勤というのをやめて常勤化すれば三条委員会に近いものになっていくんじゃないかというふうに思っております。

日森委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

船田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位には、御多用中のところ、まことにありがとうございました。また、貴重な御意見をいただきまして感謝をいたしております。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、来る三十日月曜日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十四分散会


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