衆議院

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第3号 平成25年10月30日(水曜日)

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平成二十五年十月三十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 泉原 保二君 理事 大塚 高司君

   理事 北村 誠吾君 理事 永岡 桂子君

   理事 原田 憲治君 理事 郡  和子君

   理事 重徳 和彦君 理事 古屋 範子君

      青山 周平君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    岩田 和親君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      大岡 敏孝君    鬼木  誠君

      金子 恵美君    菅野さちこ君

      小島 敏文君    小松  裕君

      國場幸之助君    斎藤 洋明君

      島田 佳和君    田畑  毅君

      田畑 裕明君    武井 俊輔君

      豊田真由子君    比嘉奈津美君

      福山  守君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    堀井  学君

      堀内 詔子君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    務台 俊介君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      泉  健太君    大西 健介君

      武正 公一君    中根 康浩君

      上西小百合君    河野 正美君

      東国原英夫君    國重  徹君

      浜地 雅一君    三谷 英弘君

      穀田 恵二君    青木  愛君

    …………………………………

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            森 まさこ君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   内閣府大臣政務官     福岡 資麿君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            長谷川 靖君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     山崎 史郎君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    川口 康裕君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    菅久 修一君

   参考人

   (一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長(共同代表))         河野 康子君

   参考人

   (弁護士)

   (前独立行政法人国民生活センター理事長)     野々山 宏君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部長) 阿部 泰久君

   参考人

   (適格消費者団体消費者支援機構関西理事・事務局長)            西島 秀向君

   衆議院調査局第三特別調査室長           清水  敦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     青山 周平君

  金子 恵美君     斎藤 洋明君

  武井 俊輔君     國場幸之助君

  堀内 詔子君     吉川  赳君

  宮崎 謙介君     小松  裕君

  務台 俊介君     大岡 敏孝君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     穴見 陽一君

  大岡 敏孝君     務台 俊介君

  小松  裕君     小田原 潔君

  國場幸之助君     福山  守君

  斎藤 洋明君     金子 恵美君

  吉川  赳君     菅野さちこ君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     宮崎 謙介君

  菅野さちこ君     堀内 詔子君

  福山  守君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     島田 佳和君

同日

 辞任         補欠選任

  島田 佳和君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第六〇号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長(共同代表)河野康子君、弁護士・前独立行政法人国民生活センター理事長野々山宏君、一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部長阿部泰久君、適格消費者団体消費者支援機構関西理事・事務局長西島秀向君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず河野参考人にお願いいたします。

河野参考人 おはようございます。一般社団法人全国消費者団体連絡会事務局長の河野康子でございます。

 本日は、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案の御審議に際しまして、意見を申し上げる機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 発言に当たりましては、お手元に簡単なレジュメを用意させていただきました。それに沿ってお話を申し上げます。

 私がここでお伝えするのは、全国消団連が事務局を務めております、この被害救済制度の早期制定に賛同いたします五十四団体の総意でございます。そういう形でお聞きいただければというふうに思っております。私たちは、この法制度が一日も早く成立し、泣き寝入りする消費者が少しでも減少する方向に進むことを心から願っております。

 レジュメの一つ目に書かせていただきましたのは、消費者から見たこの制度の必要性でございます。

 中途解約したのに授業料を返してくれない、悪質なキャッチセールスに遭ったなど、相変わらず消費者被害は続いております。消費者がこうしたトラブルに巻き込まれてしまった場合、個人で裁判を起こすことは、お金も時間もかかりますし、労力を考えると大変なことでございます。被害額が比較的少額で割に合わない、証拠を集めるのが大変などの理由で、消費者が自力で救済を得ることは現実的にはかなりハードルが高く、泣き寝入りしてしまう人が多いのが現状でございます。

 このような消費者トラブルに対して、被害の未然防止、拡大防止を図るために、二〇〇七年、国から認定されました適格消費者団体に差しとめ訴訟を起こす権利を認める制度が導入されております。これにより、事業者の不当行為、例えば不当契約条項の使用ですとか不当勧誘行為をやめさせることができるようになりました。同じ事業者による消費者被害の拡大防止や、マーケットの公正化に役立つようになったというふうに思っております。

 しかし、今の訴訟制度は、消費者被害の拡大防止には役立ちますけれども、既に被害に遭った人の救済にはつながっておりません。一人一人の消費者の被害を救済し、事業者が不当に得た利益を取り戻すには、今回ここで御審議いただいておりますこの訴訟制度が必要でございます。

 この制度案では、法律や消費生活の専門家が参加いたします適格消費者団体が第一段階目の訴訟を行うということで、相手方の事業者に法的な義務があることが認められてから訴訟に参加すればいい、個別に弁護士さんなど専門家を探す必要がなく、手続にかかる費用も相当低額になるということで、私たち消費者にとってみますと、非常にありがたい制度だというふうに思っております。

 二つ目にお伝えしたいことは、いわゆる濫訴のおそれはないということでございます。

 この間、経済団体の皆さんからは、日本版クラスアクションではないかなどと御懸念が示されています。消費者から見ると、非常に不本意だというふうに思っております。

 第二番目の項に書かせていただきましたように、訴訟主体は、国の厳しい監視下にある特定適格消費者団体に限定されております。既に差しとめ訴訟において経験と実績を積んでいる適格消費者団体が、さらに厳しい要件を満たして初めて訴訟を担う資格を得ることになっております。

 また、アメリカの制度で問題になっている拡大損害とか損失損害、それから慰謝料などは請求の対象にはなっておりません。さらに、訴訟に臨むには時間的、財政的にも大きな準備が必要でして、また、万が一敗訴したならば、実質的に大きな影響があります。そうしたことを考えますと、適格消費者団体が軽々しい試験的な訴訟を起こすとは考えられません。

 三つ目は、制度施行前事案の取り扱いについてでございます。

 施行前事案が本制度の適用外になったことは、被害者の実態をよく知っている消費者団体の私としましても、非常に残念だというふうに思っております。しかし、この制度案が閣議決定されるまでのさまざまなやりとりを見聞きしておりますと、まずは制度成立が最優先であろう、その認識でこの制度を捉えることが大事だというふうに現在は考えております。

 制度施行前の事案については、国民生活センターなどのADRを充実させることで被害回復が図られることを願っております。

 四番目としまして、この制度を本当に私たち消費者にとって役立つものにするためには、特定適格消費者団体への情報面、財政面への力強い支援をお願いしたいと思っております。

 情報面の支援としましては、より早く消費者被害を把握できる全国の消費生活センターや国民生活センターから特定適格消費者団体に対しまして端緒情報の提供が行われることが、共通原因による相当多数の被害の発生という要件を満たすためには効率的であるというふうに考えております。現在のPIO―NET情報については、事案の処理結果まで提供を受けられるようにすることが必要だというふうに考えております。

 財政面の支援としましては、特定適格消費者団体が立てかえることとなっております提訴時の弁護士の着手金、また、仮差し押さえを行う場合の担保、さらに、二段階目の通知、公告費用などにつきましては、できましたら無利子または低利子の公的な融資等を検討していただければというふうに思っております。

 また、こうした融資とは別に、特定適格消費者団体の活動そのものが公共の利益を担うものですから、改めまして公的な助成について御検討いただけると、とてもありがたいというふうに思っております。現在の適格消費者団体の運営は非常に厳しく、大きな志を支える何らかの仕組みが必要だというふうに考えております。

 制度案では施行まで三年の猶予がございますが、事業者、消費者双方への周知徹底など、十分な準備のもとでこの制度が機能することを心から願っております。

 この制度が早期成立し、正しく運用されることは、安全で安心な消費生活を送る第一歩だというふうに思います。今まで諦めていた消費者被害回復の救世主となる制度で、私たち消費者が長らく待ち望んでいたものでございます。

 全国都道府県で意見書の採択は、現在のところ、二十八都道府県と一区五市一町となっています。

 これまで、消費者団体を中心にしまして、この制度への理解と賛同をいただくために、わかりやすいパンフレットをつくりました。それから、その配布も行いました。あわせて、学習会、シンポジウムを各地で何度も何度も開催してまいりました。

 きのうも、今国会での成立を求める院内集会を開催したところでございます。全国から百五十名近くの支援者が集まりました。甲南大学の学生さんが来てくださって、みずからの経験から、この制度の必要性を訴えてもくださいました。

 きょう、この消費者特で御審議してくださっている国会議員の先生方にも多数御参加いただき、力強い応援の御挨拶をいただいております。党派を超えてこの制度の早期成立に御理解と御支援を約束してくださいましたことに、本当に心から感謝申し上げたいというふうに思っております。

 悪質な行為の排除等にもつながります。私たち消費者が安心して契約できる社会をつくるという意味では、事業者にとっての商売繁盛、消費者にとっての安心した購買につながる制度で、健全なマーケットの基礎を形成するものだというふうにこの制度のことを思っております。

 来年の四月には、消費税率引き上げが予定されております。私たち消費者の財布のひもはさらにかたくなって、何にお金を払うのか真剣に考えることになります。そういう厳しい時期に、悪意ある事業者から消費者を守ってくれるこの制度があれば、安心して消費行動を行うことができます。

 ぜひ、国会の場で十分な御審議をいただきまして、これまで不当な契約等によって被害を受けても泣き寝入りするしかなかった消費者にとって、新たなる希望を与えてくださいますこの制度の一日も早い成立を、私たち消費者一同、心から願っております。

 重ねて、今国会での成立をお願いいたしまして、私からの意見表明とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、野々山参考人にお願いいたします。

野々山参考人 座ったまま失礼させていただきます。

 弁護士の野々山でございます。

 本日は、意見を述べる機会を設けてくださり、まことにありがとうございます。

 私は、これまで弁護士として消費者問題に取り組んでまいりました。また、二〇一〇年からことしの七月までは、独立行政法人国民生活センターの理事長として、消費者行政を実施する立場から、消費者被害の予防、救済に携わってまいりました。本日は、このような私の経験から、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案、以下、新制度法案と呼ばせていただきますが、これについて意見を申し上げたいと思います。

 なお、私の発言のうち、意見にわたる部分は私見でありまして、私が現在もしくは過去に所属していた組織の意見ではありませんので、この点、御承知おきくださればと存じます。

 まず初めに申し上げたいことは、消費者被害を集団的に救済することを可能とする新しい制度が今まさに創設されようとしていることは、我が国の消費者問題に関する歴史において極めて画期的なことであって、私としても高く評価をしたいということであります。できるだけ早期の制度化をぜひお願いしたいというふうに考えております。

 私は、これまで弁護士の立場から数多くの消費者被害事件の救済に携わってきました。また、国民生活センターの理事長として、我が国の消費者被害の現状について体系的、網羅的に知見を得る機会を得てまいりました。この経験から申し上げたいことは、消費者被害は、私たちの日常の中で誰にでも起こり得ることであり、被害に遭った消費者が被害救済を現実に得ていくということは決してたやすいことではないということであります。

 国民生活センターが集約している消費者相談窓口に寄せられる相談は、年間約八十五万件弱であります。これらの相談の中には、被害救済が図られなければならないものも数多く含まれております。また、相談をしている消費者は、実際の被害のその一部であります。被害救済を必要とする多くのトラブルが日々起きていると感じております。

 一方で、被害に遭った消費者というものは十分な知識がありません。古くは豊田商事事件、また、英会話学校などの過大なキャンセル料条項事件や、最近の化粧品による白斑事件を見ても、報道等されるまで、消費者は自分が被害に遭っていることの認識すら持っていない場合が少なくありません。また、被害の認識を持っても、法的知識を持たないため、どのような請求ができるか、その場合、何が問題となるかについても知らない場合が多くあります。勇気を出して救済を求めようとしても、消費者被害に関する法的問題は、いずれも、難しい、新しい論点が数多くあります。裁判も長期化しがちであります。費用も労力も必要となります。

 被害に遭ってしまったという事実に対して、大変つらい思いをしている消費者は多くいます。しかし、消費者被害事件の規模の大小を問わず、多くの消費者が悔しい思いを抱えながらそのまま諦めてしまう姿を、私は多く見てまいりました。

 このような現状を考えますと、消費者被害救済のためには、消費者の負担をできるだけ軽減した集団的な救済の仕組みがどうしても必要であると考えております。

 かつて、二〇〇〇年の消費者契約法制定時の国会での議論、二〇〇六年の差しとめの消費者団体訴訟制度導入の国会での議論の中でも、集団的な救済制度の必要性は指摘されてまいりました。二〇〇六年、通常国会における国会審議において、この衆議院で、「適格消費者団体が損害賠償等を請求する制度について、」「その必要性等を検討すること。」という附帯決議が付されました。この議論につきまして、私は間近で傍聴していたわけでありますけれども、その参考人質疑で、適格消費者団体による損害賠償請求制度の是非が熱く議論されていたのを、きのうのように思い出されます。新しい制度が今まさに創設されようとしていることに、感慨深いものがあります。ぜひ、本国会で成立をしていただきたいというふうに考えております。

 さて、このような意義のある新制度法案ではありますが、この法案の内容を見てまいりますと、新制度を被害救済として実効化するためには、さらに検討、もしくは法案成立後の課題や一定の措置を講じることが必要な部分があるというふうに考えております。本日は、時間の関係もありますので、そのうち何点かについて、かいつまんで申し上げたいと存じます。

 まず一点目は、附則二条で経過措置として定められております施行前事案への適用制限であります。

 想定外の金銭支払い請求がされることとなり、事業者の予測可能性を害するということが理由の一つであります。しかしながら、事業活動の中で、避けるべきではありますが、過失や法的判断の誤りにより多数の顧客に対して損害を与えることがあり得ることは、多くの顧客を相手とする事業を行う事業者としては想定すべきことであります。また、そのような事態が生じたとすれば、可及的速やかに賠償するというのが誠実な事業者の態度というべきであります。

 最近、関西の有名ホテルにおける使用食材の誤表示の問題がありますが、このホテルは直ちに顧客に対して返金をすることを表明しました。事業者として当然の対応かと思っております。新制度は、このような事業者の自主的な被害救済を促す役割や、企業の公正な取引を促す予防的役割も果たすものと考えております。

 適用制限は、このような新制度の機能を限定するものであります。施行日が法案成立から三年以内となっており、相当先です。今後三年内にも重大な消費者被害は発生していくと考えられますが、それらに対して本制度による救済が全くされないことは残念だというふうに考えております。三年と言わず、できるだけ早く施行をしていただきたいと考えております。

 また、被害を受けた消費者の側から見ましても、同じ被害でありながら、契約の時期が施行日の前か後ろかの事情により、本制度による救済の対象となるかどうかが分かれるということとなります。このような区別には、合理的な理由はないというふうに考えております。この規定の問題点を御認識いただいて、本制度による救済対象から外れてしまう被害消費者に対して十分なサポートがなされるよう措置されるべきと強く考えております。

 この点につきまして、国民生活センターのADRを活用するなどして、施行前事案についても被害者の被害回復を図っていくことが期待されておりますが、そのためには、国民生活センターのADRの体制等を現在よりさらに充実させることが必要であると考えております。

 もう一つ重要なのは、施行後に出された第一段階の判決の周知であります。施行前の事案の消費者には、今のままでは施行後事案の被害者にされるような個別の通知はなされません。消費者が判決の存在を知り得なければ、ADRの活用もあり得ないわけであります。適用制限を設けるのであれば、適用制限の対象となる消費者に対する情報提供について、国または地方自治体など行政の費用と責任において積極的に行うべきと考えるところであります。

 次に、新制度が実際に機能するために直ちに検討されるべきなのは、特定適格消費者団体を支援する枠組みであります。

 言うまでもなく、本制度における特定適格消費者団体の役割は非常に重要なものがあります。第一段階の共通義務確認訴訟を提起するだけでなく、第二段階では対象消費者への通知、公告を行うとともに、対象消費者からの届け出を取りまとめて分配手続を行い、争いがある対象消費者についてはその争いをサポートしていかなければなりません。これらの作業に要するマンパワーと費用は相当なものとなることが想像できるところであります。

 しかし、現在の適格消費者団体は、私もこれに携わってまいりましたけれども、基本的には、これに携わるさまざまな関係者のボランティアによってその活動が支えられております。しかし、差しとめ請求と比較いたしまして格段に作業量の多くなる新制度は、このようなボランティアベースの活動では、一件や二件は何とかこなせるかもしれませんが、持続的に活動していくことは困難となる可能性があります。

 この点、新制度法案につきましては、第二段階で届け出た対象消費者から費用等の報酬を受け取ることが認められる点を除いて、特定適格消費者団体を費用面からサポートする枠組みはほとんどありません。その報酬にいたしましても、受け取れるのは第二段階で届け出た対象消費者からとなります。一方、通知、公告は、届け出をしてこない消費者を含めた全ての、全対象消費者に対して行わなければならず、届け出消費者からの報酬でその費用を賄い得るかどうかという問題もあります。

 このような状況で、特定適格消費者団体を支援する枠組みを検討することなく本制度を施行しても、せっかくつくった制度が活用されないということにもなりかねません。ですから、特に以下に申し上げる点を十分御検討いただきたいと考えております。

 一つ目は、今も申し上げた対象消費者に対する通知、公告費用の団体の負担の問題であります。

 対象が千人、一万人ともなれば、通信費だけでなく、その作業に要する人件費も大きな負担となります。本来、この通知、公告は、一段階目で事業者の責任が認められた後に行われる手続ですから、事業者の費用負担としてもおかしくはないわけであります。実際、我が国と同様の二段階型の集団的消費者被害回復制度法案が国会で審議中でありますフランスでは、通知、公告費用を事業者負担とすることが提案されておりまして、事業者側もこれには反対していないというふうに聞いております。

 このように、通知、公告費用について、本来は事業者負担であるべきと考えておりますが、団体の負担とするのであれば、特例的に安い郵送料で送付ができるように措置するとか、公告のために政府広報の枠を利用できるようにするなど、間接的に特定適格消費者団体の負担を軽減し得るような措置が検討されるべきであります。また、財政的な支援制度も検討されるべきと考えております。

 二つ目は、仮差し押さえの制度に対する必要な担保金の支援であります。

 新制度法案におきましては、包括的な仮差し押さえの仕組みが提案されていることは非常に評価できるものであります。特に、悪質業者に対しては、このような仮差し押さえが必要であるというふうに考えております。

 しかしながら、仮差し押さえの決定を得るために必要な担保金については、何らの支援措置も講じられておりません。本制度に基づく仮差し押さえの担保金は、被害総額を被保全債権額とすることから、現状の保全制度を前提とすると非常に高額なものになることが想定されます。このような担保金を特定適格消費者団体が用意しなければならないとすると、仮差し押さえの制度は、まさしく絵に描いた餅であります。

 担保金を一般より低額とする運用を促したり、政府による保証のシステムや法テラスによる立てかえの活用などの措置が検討されるべきかと考えております。

 三つ目には、特定適格消費者団体への情報面の支援も重要であります。

 具体的には、適格消費者団体が被害の端緒情報を得ることができるようにするために、PIO―NET端末を導入することを実現させることが必要かと思います。

 以上、三つにつきまして、本制度を実際に役立つものとしていくためには、検討や措置がどうしても必要な事項であります。ぜひとも直ちに御検討いただきたいと考えております。

 次に申し上げたいのは、本制度の課題として、将来の見直しにおいてぜひとも検討していただきたい点であります。時間の関係上、簡単に三つ申し上げます。

 一つは、既に述べました通知、公告費用を事業者負担とすることであります。

 二つ目は、本制度の対象となる事案の拡大であります。

 最近の化粧品の白斑問題の化粧品会社への請求は、本制度では、人身損害は対象外であること、また、直接の契約関係が必要となるということから、対象とはなりません。PL法など不法行為の特別法が外れていたり、慰謝料も除外され、拡大損害も対象外となるなど、対象となる事案は相当に限定されております。見直しの際には、ぜひとも対象事案を拡張する方向で検討いただきたいと思っております。

 三つ目は、二段階目における簡易確定決定に対する異議申し出の結果として通常訴訟手続に移行した場合における訴え提起手数料の差額納付の問題であります。

 法案では、事業者側が裁判所の簡易確定決定に対して異議を申し立てた場合であっても、特定適格消費者団体が差額を納付しなければならないことになっております。あくまで裁判が消費者側が請求をしている立場であるということに基づくものであるわけでありますが、既に双方の主張と一定の証拠に基づき簡易確定決定という判断が出ているわけでありますから、これに不服がある側に手数料を負担させるというのが妥当というべきであります。弊害も予想され、制度の運用状況を踏まえ、見直しの際にはぜひとも必要な検討をしていただきたいと思っております。

 最後に、本制度に対しては、濫訴を招き、事業活動に大きな萎縮効果を生じさせ、日本経済に悪影響を与えるとの批判もなされていると聞いておりますけれども、これまでに申し上げたとおり、本制度における特定適格消費者団体の負担は非常に重く、生半可な心構えで提訴できるような制度ではありません。しかも、むしろ事業者の公正な取引や自主的な被害救済を促すものでありまして、制度をより活用させるための知恵を絞らなければならないと考えております。

 以上、本法案の問題意識と課題について何点か述べさせていただきましたが、冒頭に申し上げましたとおり、消費者被害を集団的に救済することを可能とする本法案の意義は、我が国の消費者法制について画期的なものであります。一日も早く本法案が成立し、消費者被害救済のために役立つ日が来ることを心から願って、私の意見陳述を終わります。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、阿部参考人にお願いいたします。

阿部参考人 一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部長の阿部でございます。

 本日は、少額、多数の消費者の間に生じております財産的被害について迅速かつ効率的に対応すべき法律ができるということで、基本的には現在御審議いただいております法案を支持いたしますが、若干の注文があるということで、意見を述べさせていただいております。

 私の意見は、経団連におきます経済法規委員会並びにその下にございます消費者法部会での検討に基づくものでございますので、経団連の意見としてお聞き取り願えればと思います。

 最初に、ほかの参考人の方に比べまして、何か、私は何者だということで、このような場にふさわしいかどうかということが疑問かと思います。一言だけ申し上げておきます。

 私は、昭和五十五年、経団連の事務局に入りまして以来、一貫して経済法制を担当しております。民事訴訟法の大改正でございますとか、独占禁止法、景品表示法の改正も担当してまいりました。消費者保護関係につきましては、例えば消費者契約法、これは平成十二年創設のときも担当しておりましたし、差しとめ請求制度が入りました平成十九年改正のときも担当しておりました。

 私自身、平成十九年の一月からでございますが、第二十次国民生活審議会の臨時委員といたしまして、消費者政策部会消費者契約法評価検討委員会に参加して議論もさせていただいております。それなりの知見があるということで、意見を述べさせていただきます。

 お手元に、簡単なレジュメ二枚、それから、七団体の連名の意見書を差し上げております。これに基づいて意見を述べさせていただきたいと思います。

 初めに、今回の法案に至る経緯でございます。おおよそ五年かけて検討がされてきたと思うわけでありますが、それなりのプロセスを経て、きちんとした議論がされていたと評価したいと思います。

 最初にこの議論が始まりましたのは、まだ消費者庁、消費者委員会ができる前でありました平成二十年からでございますが、当時の内閣府国民生活局のもとで集団的消費者被害回復制度等に関する研究会が開かれております。ここは、このような制度のもとになります各国の法制の比較検討でありますとか、我が国にこのような制度をつくるときの論点を整理したものと考えておりますが、既にその段階でも、二段階訴訟制度ということで、フランスのいわゆるグループ訴権制度の提案あるいはブラジルのクラスアクション制度がここで示されておりました。まことに御慧眼であったと思います。

 その後、消費者庁及び消費者委員会の設立の後は、まず、平成二十一年からの消費者庁集団的消費者被害救済制度研究会で議論が進められております。ここに経済界からオブザーバーとして、パナソニックの坂田東京法務室室長が参加させていただいております。具体的には、二十二年八月の報告書で四案、ABCD案が示されたわけでありますが、その中のA案が今の仕組みに近いものかなと考えております。

 さらに、消費者委員会におきまして、平成二十二年十月から集団的消費者被害救済制度専門調査会が開かれております。ここには、経済界からはセブン&アイ・ホールディングスの法務部グループ法務シニアオフィサーの中村さんが参加させていただいております。

 その上で、二十三年八月の報告書の中で今の制度に近いものが示されたかなと思っております。さらに、二十三年十二月のいわゆる骨子案、それから二十四年八月の制度案と示されてきたわけでありますが、いずれの段階におきましても、パブリックコメントその他の手続によりまして、経済界としても十分に意見を述べさせていただいたと思います。

 その上ででございます。お手元の資料に沿って、まず、基本的な考え方として四点、それから、若干注文ということで三点を述べさせていただきたいと思います。

 最初に、基本的な考え方の一番目でございます。

 既存の民事訴訟制度では救済が困難な、少額かつ多数の人の間に生じている消費者被害について、迅速かつ効率的に救済する制度を設けることは重要である。

 私どもの経団連は、企業行動憲章というものを示しております。会員企業に行為準則として示しているわけでございますが、そこの中にも、消費者との関係を非常に重要視する文言がございます。さらには、具体的な憲章の一項目でございますが、「社会的に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する。」、消費者との関係が企業行動憲章の最初の項目だということでございます。このような制度をつくること自体については、私どもも積極的に賛意を表したいと思います。

 その上で、二段目でございます。

 法律案につきましては、二段階型の訴訟制度でございますとか、対象となります請求の範囲、訴訟追行主体等において、相当の工夫が見られていると理解しております。

 具体的には、二段階型訴訟制度につきましては、非常によく工夫された仕組みになってきたかなと思っておりますし、それから、対象となります請求の範囲でございます。

 法案第三条にございますが、「特定適格消費者団体は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって、消費者契約に関する次に掲げる請求に係るものについて、共通義務確認の訴えを提起することができる。」ということで、五項目並んでいるわけでございますが、その中で、四号の「瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求」、これは当然に必要かなと思うわけでありますが、その例で、後ほど若干問題点ありということで指摘させていただきたいと思っております。

 それから、この共通義務確認の訴訟の対象にならないものといたしまして、拡大損害でありますとか逸失利益、あるいは人身損害、慰謝料等が規定されていることもふさわしいと思っております。

 基本的な考え方の三番目でございます。

 そういう意味では非常に工夫された法律案だとは考えておりますが、しかしながら、民事訴訟制度に関する新たな特例の導入ということでございます。制度の設計や運用次第では濫訴の懸念があるということでございます。その結果、健全な事業活動が萎縮されるようなことになってはならないと思っております。

 お手元の資料の三枚目に、ことしの三月に出しました七団体の連名の意見書をつけております。私ども経団連のほか、日本商工会議所さん、あるいは経済同友会さんに加えまして、いわゆる海外企業家の団体、四団体もあわせまして、同じような意見だということで連名の意見書をつくったわけでございますが、ここの中でも示されておりますとおり、制度のやり方次第、運用の仕方次第では非常に懸念が残っているということでございます。

 ただ、この緊急提言がきっかけかどうかは存じませんが、今回、遡及適用がないということを法律案附則第二条で示されておりますのは、まことにありがたいと思っております。

 基本的な考え方の四番目でございます。

 手続の追行主体となります特定適格消費者団体によります訴訟追行業務に対して適正な監督を行い、濫訴を招来させることのないよう十分に配慮を願いたいということでございます。

 それで、二枚目でございますが、幾つかの懸念と注文でございます。

 まず最初に、一番目として、事業者が代金返還や修理、交換などの自主的な対応をしているにもかかわらず、訴えが行われるという懸念がございます。具体的には、事業者が法律に基づき、あるいは自主的にリコール制度等で対応しているにもかかわらず、それに応じず、損害が生じるのを待って訴訟を起こすということは非常に不合理であると思いますので、これができないような仕組みにしていただきたい。

 本来であれば、法律で何らかの担保を置いていただきたいわけでございますが、それが無理であるとしても、この法律成立後に恐らく特定適格消費者団体に対する監督指針、ガイドラインのようなものが示されると思いますが、その中で具体的に定義する。

 法案の中では、第七十五条の第二項に「特定適格消費者団体は、不当な目的でみだりに共通義務確認の訴えの提起その他の被害回復関係業務を実施してはならない。」とございますが、この「不当な目的でみだりに」の中身について、十分に、わかりやすく示していただければと思っております。

 それから、これに付随いたしまして、瑕疵担保責任でございます。

 法案の第三条第一項第四号の中に瑕疵担保責任が明記されております。このこと自体は否定いたしませんが、瑕疵担保責任の中に非常に範囲の広いものがございまして、例えば、製品のふぐあいが一定の割合で生じてしまう、電気・電子部品など、製品の歩どまりということもございますが、どのように努力しても、ごくわずかの割合ではふぐあいが生じてしまうことがございます。これは避けられないことかなと思っております。

 それが重要なものであれば確かにと思うわけでありますが、例えば、今、携帯とかスマホが非常に多機能になっておりまして、いろいろなアプリケーションがついているわけでございますが、ほとんどの方が使わないようなものについて、多少のふぐあいが生じることはあるとしても、これをもとに訴訟ということではないと思います。

 瑕疵担保につきましては、十分に慎重に御検討願えればと思っております。

 それから、二つ目でございます。

 実際に相当多数の消費者が被害の救済を求めていないにもかかわらず、特定適格消費者団体が訴えを起こされる懸念がございます。

 本来でありますと、相当多数ということで、実際に被害がありました消費者からの授権をもってこの訴訟を始めるべきだと考えておりますが、それは無理でも、例えば一定数、民事訴訟制度の中の大規模訴訟制度では原告百人を目安としておりますが、このようなものであれば訴訟が開始できるということを十分に担保していただきたいと思います。

 ここも、具体的には特定適格消費者団体に対する監督指針などに、この相当多数性について十分な規定を置いていただきたいと思います。

 三番目でございます。

 既に申し上げておりますが、多数に生じている消費者被害を効率的に救済するという制度の目的からは、共通性、支配性、多数性、いわゆる相当多数について、十分にガイドラインの中で規定していただきたいと思っております。

 何度も申し上げますが、相当数というのは、二人や三人、あるいは十数人ではないと思います。それなりの数であるということが必要かと思いますので、これは十分に運用の中でも考えていただければと思っております。

 以上が、レジュメの説明でございます。

 最後に一言つけ加えさせていただきますが、経団連としましても、消費者被害の救済のみならず、その根絶に向けて最大限の努力を図っていく所存でございます。

 それから、いわゆる詐欺商法のような悪徳な事案につきましては、今回の法律では余り効果的な対応はできないと思っております。目下、行政制裁のあり方でありますとか財産の差し押さえなどの検討もされておるようでございますが、さまざまな制度を合わせまして、消費者の権利利益を守れるような仕組みをつくっていくことが肝要かと思っております。

 これは非常に重要なことかと考えております。一つだけの仕組み、一つだけの法律で何かが全てできるということではなくて、さまざまな法律、制度、手法を組み合わせなければならないということをぜひとも御留意願いたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、西島参考人にお願いいたします。

西島参考人 私は、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者支援機構関西、以下略称としてケーシーズというふうに言いますが、その団体の理事・事務局長をしている西島といいます。

 本日は、このような意見表明の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 消費者支援機構関西は、関西の二府五県の消費者団体と消費生活相談員、司法書士、弁護士などの専門家が協力し、消費者団体による差しとめ請求訴訟制度ができた暁にはその制度の担い手になろうというふうに考え、二〇〇五年に設立した団体です。

 設立趣意書では「消費者支援機構関西は、消費者が安心して生活できる社会を実現するため、実効性ある消費者団体訴訟制度を実現し、訴権行使の担い手となっていきます。消費者支援機構関西は、日本や世界の諸団体と交流し、消費者団体訴訟制度を活用し、消費者被害の予防・拡大防止や救済に取り組みます。消費者支援機構関西は、広く、消費者を支援し、消費者の権利を具体的に実現していく諸活動に取り組みます。」とうたっています。

 二〇〇六年に、消費者被害の未然防止、拡大防止を進めるために消費者団体訴訟制度がつくられ、二〇〇七年に施行されました。ケーシーズも、法人格や活動実績などの要件を整え、二〇〇七年には、差しとめ請求訴訟を行える適格消費者団体として認定されました。

 まず、今審議されている法案について、最初に一言申し上げたいと思います。

 ケーシーズには、電話やメールでさまざまな消費者の声が寄せられます。非常にありがたいと思いますのは、自分が被害に遭って恥ずかしいという気持ちを乗り越えて、連絡してきていただくということです。その中で、悔しい思い、悲しい思いをした、同じ事業者がほかの人を同じような目に遭わせるのを何とかやめさせたいということで、ほかの人が同じ被害に遭わないようにと思って情報提供してくださる方もいらっしゃいます。

 昨日、院内集会で、消費者被害に遭った大学生の方が、お金を失ったということもさることながら、不当な被害に遭ったこと自体が悲しく、悔しいということを言われていました。そのような思いを持ちながら泣き寝入りをしている消費者が大勢います。

 そのため、本法案を議員の皆様が一丸となって今国会で成立させようと早期に審議入りしていただいたことに感謝申し上げます。その上で、同じような悲しい思い、悔しい思いをしつつ泣き寝入りをしている消費者の被害を一刻も早く、集団的に、実効的に回復できるよう、本法案を必ず今国会で成立させていただきますようお願い申し上げます。

 それでは、これまでのケーシーズの差しとめ請求訴訟に関する取り組み方について紹介させていただきます。

 差しとめ請求訴訟の検討を始める発端の多くは、消費者からの情報提供です。寄せられる情報には、こんな契約や勧誘方法は問題だと思うという情報提供や、実際に被害に遭った方からの相談であったりということです。それらの情報を月に一、二回開催されるケーシーズの検討委員会で検討し、事案として取り組むべきだと考えられた案件については、事案ごとに検討グループを編成します。

 検討グループでは、対象事案について調査検討を行い、契約内容や勧誘方法などに関する疑問点や違法と思われる点について、事業者に対する文書による問い合わせや申し入れの原案を作成します。検討グループで検討した申し入れの実施や文書の原案を検討委員会で検討した上で、理事会に提案します。理事会で承認された後、事業者に対して問い合わせや申し入れを行うという流れになっています。

 このように、事業者に対して対外的な活動を行う場合には、ケーシーズの中のさまざまなセクションで何度も検討を重ねます。そして、申し入れをしても何の反応もない場合や全く改善されないような場合には、差しとめ訴訟に進むということになります。

 これまでに四十五の検討グループを編成して、現在活動中なのは十二グループです。検討グループの構成員は、消費者団体のメンバー、消費生活相談員、司法書士、弁護士などで、活動中の検討グループの構成員として常に百名ぐらいになります。

 この申し入れ活動は適格消費者団体と認定される前から行っていますが、ケーシーズが適格消費者団体と認定される前は、何らかの対応をしていただける事業者は正直言って少なかったということです。認定後、ほとんどの事業者に対応いただいており、文書のやりとりだけでなく、面談して協議を行う場合も少なくありません。

 これまで申し入れまたは要請を行ったのは、五十四社に対し六十六件です。その大部分が協議などにより一定の改善を得ています。やむなく訴訟に至ったのは、六年間で六社に対する六件となっています。

 実際にケーシーズが行った差しとめ請求訴訟の具体例を一つ紹介させていただきます。それは、消費者金融業者の不当な契約条項の使用差しとめを求めて提訴した事案です。

 その事業者の契約書には、期限前に消費者が完済する場合には、元金及び期限までの利息に加えて、残元金、残っている元金に対する一定の割合を違約金として徴収するという、早期完済違約金規定が設けられていました。

 そのような違約金規定は不当ではないかという相談を受け、二〇〇六年六月から約三十回の検討グループあるいは弁護団会議を行いました。二〇〇七年の十二月に事業者に対してお問い合わせの文書を送付、二〇〇八年二月に申し入れ文書を送付しました。

 そして、改善される様子がなかったということから、二〇〇八年の三月に消費者契約法四十一条一項に基づく事前請求書というものを送付しました。しかし、事業者からは何の連絡もありませんでした。そのため、二〇〇八年四月に地方裁判所に提訴をしたということです。

 二〇〇九年四月に、全国で初めて差しとめ請求が認められた判決が出ました。その後、二〇〇九年十月に、高等裁判所の段階で、やはり全国初の差しとめ請求が認められた判決がなされ、二〇一一年十一月に、最高裁が事業者側の上告受理申し立てを受理しないと決定を行いました。

 この事案では、相談を受けてから提訴まで約二年、提訴から判決が確定するまでに約三年半かかりました。

 裁判ではケーシーズの主張が認められ、その後、同種被害拡大には大きな役割を果たすことができましたが、ケーシーズの限られた人的、物的資源の多くを割かれたというのも事実です。そして、早期完済違約金規定は違法、不当であると認められたにもかかわらず、実際に払う必要のなかった違約金を支払った消費者の方たちの被害救済は、この裁判では図ることができませんでした。また、ほかの訴訟ですが、英会話学校に対する差しとめ請求訴訟では、裁判で和解が成立し、事業者は過去の同種被害者に対する返金を合意したにもかかわらず、実際には返金がなされませんでした。

 以上を踏まえ、今回御審議いただいている新制度について、お願いを四点申し上げさせていただきます。

 一点目ですが、冒頭に申し上げましたように、ケーシーズには、被害に遭って、消費者の方から、ほかの方が同じ被害に遭わないようにと思って情報提供してくださる方もいらっしゃいます。また、当然、自分の被害は何とかならないかともおっしゃる方も多いんです。被害救済の相談に対しても何とか力になりたいのですが、現在の制度では、今後の行為の差しとめだけで、これまでの被害回復には間接的にしか役立ちません。そのような説明をさせていただくと、中には、そしたらあんたらの団体は何のためにあるのと言われることもあります。

 差しとめ請求訴訟だけでは実効的な消費者の被害回復には限界がある、無力に等しいということを私たちはこれまで何度も感じてきました。被害に遭って悲しい思い、悔しい思いをしている消費者の声を聞きつつ、適格消費者団体である私たち自身も悲しい思い、悔しい思いをしてきました。

 ぜひ、今回の法案を成立させ、被害を受けた消費者の思い、そして、それらを何とかしたいと思っている我々適格消費者団体の思いを受けとめていただきたいと思います。

 二点目ですが、ケーシーズの年間予算は約一千四百五十万円です。その大部分は会員の会費によって賄われています。差しとめ請求関係事業のほかに、提言、救済支援、啓発、広報など、いずれも消費者被害の防止、救済に資するために使っているものです。

 検討グループの活動を含めた差しとめ請求関係事業として支出している費用は年間約二百八十万円ですが、検討グループの参加者には交通費のみを支給しており、日当、謝礼は一切支給していません。ほぼボランティアで支えられているということです。ケーシーズでは、事務局の人件費を除くボランティア部分について、会議参加や文書作成に日当や謝礼を支払ったとしたら幾らくらいかかるかという試算をしたことがありますが、年間約三千万円以上になります。

 ケーシーズは、適格消費者団体として比較的規模の大きな団体ですが、資金的には非常に脆弱です。新制度が同一被害を受けた消費者のうち一人でも多くの人の被害救済に役立てるためには、二度目の通知、公告制度の実効性が不可欠です。そのため、通知、公告には、特定適格消費者団体として特に気を使うところです。また、判決が確定するまでには相当の期間がかかると考えられることから、被害回復の実効性を確保するためには、仮差し押さえ手続を行うことも当然想定しています。

 新制度では、これらの通知、公告費用や仮差し押さえ手続を行った場合の担保金など、最初に特定適格消費者団体の持ち出しによる費用が高額になることが懸念されます。新制度を実際に継続して活用できるように、特定適格消費者団体に対する費用面、あるいは費用面をカバーできるような仕組みなどによる支援をお願いします。

 三点目ですが、ケーシーズでは、新制度を実際に提起した場合の手続などについてシミュレーションをしています。そうすると、特に二段階目の手続において、消費者に参加を募る段階や和解など、さまざまな場面で、特定適格消費者団体と消費者との間で何度も意思確認をする必要が生じることがわかります。その場合に、本当にケーシーズからの連絡であるのか、また、ケーシーズとしても、当該消費者本人の意思なのか疑義が生じると、連絡をとるだけで大変な苦労が生じます。

 ぜひとも、特定適格消費者団体と消費者との間の連絡をスムーズに行えるようなシステム、仕組みを構築していただきたいと思います。

 四点目ですが、ケーシーズでは、検討グループで対象事案の検討を行っていますが、今検討している事案と同種の相談件数がどれぐらいあるのか、相談件数の推移はどうなっているのか、増加傾向にあるのか、減少し始めているのかなどは、適時に知ることができません。新制度を活用して実際に集団的損害賠償請求訴訟を提起できる数は、おのずと限られてきます。適格消費者団体の限りある人的、物的資源を有効に活用するためには、同種事案の相談件数や件数の推移を臨機応変に知ることができれば大変有用です。

 確かに、現在でも、適格消費者団体はPIO―NETの情報を要請すれば取得することができますが、それは、具体的な事業者名に限定して要請しなければなりません。特定適格消費者団体がみずからPIO―NETにキーワードを入力して検索できることが必要です。そのため、新制度を担うに際しては、ぜひ特定適格消費者団体にPIO―NETを使えるようにしていただきたいと思います。

 今回の法案では、特定適格消費者団体の役員や職員などには法的な秘密保持義務が課せられています。PIO―NET情報を取得しても、情報漏えい等の問題が生じる心配はありません。

 以上、幾つかお願いを申し上げましたが、集団的消費者被害回復訴訟制度法案は、今泣き寝入りしている、あるいはさせられている消費者の被害を損害賠償しようという制度であり、消費者、消費者団体の長年成立を念願してきた制度です。ぜひとも今国会での成立を心からお願いして、私の意見陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。豊田真由子君。

豊田委員 おはようございます。自由民主党、豊田真由子でございます。

 参考人の先生方には、本日は、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 本日は、十五分という短い持ち時間の中でできるだけ多くの先生方の御意見を伺いたいと思っておりますので、御対応をよろしくお願いいたします。

 先ほど先生方の御意見を拝聴いたしておりまして、それぞれのお立場から、御経験に基づいて、この新制度への期待、要望、御懸念、さまざまあるのだということを改めて実感いたしまして、いずれにいたしましても、この集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の成立が極めて重要であるという思いを新たにいたしたところでございます。

 平成十四年に閣議決定された司法制度改革推進計画、また、十八年の消費者契約法一部改正法案に対する附帯決議、また、二十一年の消費者庁等設置法の附則第六項などでも触れられていた課題でありまして、この長きにわたって検討がされてきた新制度がようやく日の目を見るというときがやってまいりました。

 そこで、まずは河野参考人にお尋ねをしたいと思います。

 私も、この制度の導入は、消費者が安心して暮らせる社会を築くための大きな一歩だというふうに考えております。日本社会に悪徳商法や詐欺などがはびこるようなことのないように、新しい制度がしっかりと機能をしていくということが望ましいと考えておりますが、河野参考人はこれまでさまざまな消費者トラブルや消費者被害をごらんになってきたと思いますけれども、そうした御経験も踏まえ、振り返りつつ、この制度を導入する意義につきまして、改めましてお伺いをしたいと思います。

河野参考人 御質問ありがとうございます。

 日本には、裁判沙汰という言葉がございますよね。つまり、裁判を余り潔しとしないといいましょうか、何かあったときに争いを避ける、嫌うというのがやはり日本人の奥ゆかしさかなというふうに思っております。

 消費者もしっかり学ばなくてはいけない、契約に際してはそれなりに準備をしなくてはいけないということはございますけれども、今の社会の中で、いろいろ対価を支払う場面があります。今回のこの法案の目的にも書かれていますとおり、消費者と事業者の間には、情報の質と量、それから交渉力に物すごく格差がある。そのあたりが、本当に消費者被害の現場を見ておりますと感じるところでございます。このあたりの日本人の特質、それから、そもそも社会の間でそのような格差があるということ、その間を埋めてくれるのがこの制度だというふうに私自身は感じております。

豊田委員 ありがとうございます。

 まさに消費者のお立場からの切実かつ真摯なお声が、この新制度の導入に時間をかけてつながってきたのだということを認識いたしております。

 まさに河野参考人おっしゃるとおり、消費者と事業者との間には大きな情報や交渉力の格差があること、また、個々の消費者が個人で裁判を起こす場合には多大な時間や費用がかかることなどから、これまで泣き寝入りをされてきた多くの被害者がいらっしゃるというのが現状でございます。このような消費者の被害回復を図り、消費者が安心して経済活動を行うことができる市場を整備することは、経済の活性化という観点からも極めて重要な課題であり、本制度を一日でも早く導入することが望ましいというふうに考えております。

 一方で、多くの消費者の被害を一度に回復しようとする訴訟を、仮に、誰でも、どんな請求についても提起することができるということになれば、事業者に過大な負担をかけるということになってしまうものと思われます。

 そこで、事業者のお立場から、阿部参考人の御意見をお伺いいたしたいと思います。

 本制度では、手続追行の主体を特定適格消費者団体に限定しており、行政の監督が十分に行き届くように配慮をしております。また、対象となる請求や損害に限定を加えておりまして、御案内のとおり、拡大損害や人身損害、慰謝料などは対象となっておりません。このような措置を講じておるところではございますが、やはり一方で、実務上、事業活動を行う上での影響ということも懸念されるところでございます。

 本制度の導入が事業活動に及ぼす影響につきまして、具体的にどのような御懸念があり、また、それをできる限り抑えるための方策につきまして、改めましてお伺いをいたしたいと思います。

阿部参考人 ありがとうございます。

 二つ申し上げたいと思います。

 一つは、事業者と申しましても、私ども経団連の会員のような大きなところから中小零細、個人商店に至るまで、非常に幅がございます。特に、今回戸惑いがございますのは中小の方たちだと思いますが、そのような方たちにしっかりと、この制度の趣旨でありますとか目的、意義等について、まず説明をしていただく必要があるかと思っております。

 その上で、経済的にどのような混乱が生じるかということでございますが、例えば慶応大学の岩本先生のシミュレーション等がございますが、私どもはあのような数字にはくみいたしません。数字はいかようにもできるものでございますし、確かにこういう考え方はありますが、私どもは、経済に大きな影響を与える可能性はあるとは存じますが、すぐに何か成長の足を引っ張るようなことにはならないと思っております。

 以前、製造物責任制度ができましたときに同じような議論があったわけでありますが、結果的にはそれなりに穏やかに済んでおります。ただ、一つ懸念いたしますのは、今、訴訟の追行主体を特定適格消費者団体にということでございます。

 今の適格消費者団体、十一ございますが、非常に立派な方たちでございますし、信頼しているわけでございますが、この先、どのような団体がまさにこの適格消費者団体なり、あるいは特定適格消費者団体になっていくかわかりません。全国津々浦々にできるようなことを言っておられる方もおりますが、そこは十分に必要な範囲を絞って設立あるいは認可していただきたいと思います。

 以上であります。

豊田委員 おっしゃるとおり、消費者保護、消費者被害回復の実効性を高めますとともに、業者の方にとっても、ある程度訴訟の見通しが予測可能な制度とすることを目指していくということが必要であろうと思います。

 さて、ここで世界に目を向けますと、二〇〇〇年以降、欧州諸国を中心に、この集団的訴訟制度の検討、導入が進んでいると聞きます。また、二〇〇七年のOECD理事会勧告でも、この集団的訴訟制度の導入が提言されております。

 一言で集団的訴訟制度といっても、国ごとにさまざまな枠組みを採用しているわけでございますが、我が国の法律案では、フランスを初めとした他の幾つかの国と同様に二段階型の訴訟制度を採用しております。

 この点について、野々山参考人にお伺いをしたいと思います。

 この二段階型の訴訟制度は、これまでの民事訴訟にはない新しい制度であり、一段階目の手続では多数の消費者に共通する点を審理し、消費者は、その手続の結果が出て、ある程度裁判所の判断の見通しが立った段階で、二段階目の手続から参加できる仕組みとなっておりまして、これまで泣き寝入りを余儀なくされていた消費者から見ると、被害回復が容易になるのではないかというふうに考えますが、この二段階型の訴訟制度を導入することの意義につきまして、野々山参考人はどのようにお考えでしょうか。

野々山参考人 まず、訴訟で一番重要な争点というのは共通な形であって、難しい争点が各被害者共通にあるわけですね。それをまず先に解決をする、代表の適格消費者団体がまず先に解決するということで、意義があるというふうに思っております。

 その結果を見て、二段階目で各被害者がその手続に参加していくという形になっている。そういう点で、消費者に対して、非常に有利というか、被害回復が非常に図りやすい制度になっている、それに一番の意義があるというふうに考えております。

豊田委員 ありがとうございます。

 また、本制度では、特定適格消費者団体の行った一段階目の判決の効力が他の特定適格消費者団体にも及ぶこととなっておりますので、他の団体は、同一の事案については再度訴えを提起することができなくなっております。

 また、対象消費者の範囲に属する届け出消費者にも一段階目の判決の効力が及ぶこととなっておりますので、事業者の方にとっても、紛争の一回での解決を図ることができるということになるのではないかと思います。

 また、本制度におけます、手続の担い手である特定適格消費者団体でございますが、この特定適格消費者団体になることができるのは、適格消費者団体のうちでも一定の要件を満たしたものだけということになります。

 そこで、西島参考人にお伺いいたしますが、本制度の導入に向けて、特定適格消費者団体となるべく、適格消費者団体の皆様はどのような準備を今後なさっていく予定でしょうか。本制度の担い手となる意気込みとあわせまして、お聞かせをいただけましたら幸いです。

西島参考人 先ほど、私の意見陳述の中で御紹介しましたように、これまでの差しとめ請求訴訟の事案について、こういった新しい制度を適用した場合にどういうふうになるのかというようなシミュレーションを行っております。それとともに、私どももやはり、受けとめる体制等も検討していかなければいけないというようなことをやっておるというのが今の準備状況です。

豊田委員 また、そうした中で、それぞれの御意見の陳述の中にもありましたように、この制度については、こういう点を改善してほしい、こういう点が心配であるという点もあろうかと思います。

 やはり、消費者代表というところで、河野参考人にいま一度、私も、この制度がつくられただけで機能しない、件数が全然伸びないということがあってはならないと思っておりまして、一方で、さまざまなお立場の方への配慮も含めながら、この制度を円滑に遂行していくためのお知恵のようなもの、またさらに、実際の消費者の方のお悩みやお苦しみ、そういったことも踏まえましてのこの制度への期待、また要望をお聞かせ願えればというふうに思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 私も、とにかくこの制度がまず成立すること、その成立することが第一だというふうに思います。

 成立した暁には、やはり、私たち消費者にとって役立つものでなくてはいけないというふうに思っております。役立つためにはどうしたらいいか。やはり、訴訟を起こしてくださる、最初の、一段階目の、法律的知識を持っていらっしゃる特定適格消費者団体がきちんと機能するということが第一段階だと思います。

 さらにあわせて、こういった制度ができたんだということを、事業者の皆さん、それから私たち国民に丁寧にしっかりと情報提供していただきたいというふうに思っております。

 新しい制度ができても、例えば第二段階のところで公告がされたとしても、それを自分のことと思えない消費者もまだまだいるかというふうに察せられます。ですから、新しいこういう制度ができたんですよ、皆さん、泣き寝入りをしなくても済むんですよ、しっかり世の中に目を開いて暮らしましょうというふうな形で、国民に対してこの制度ができたことをしっかり知らせていただきたいというふうに思います。

 それから、やはり、適格消費者団体の皆様には非常に厳しい組織運営だと思いますので、そこのところを、消費者のためという本当に公益的な使命をきちんと果たしていただくために、財政的、それから情報的な援助をしていただきたいということ。それから、とにかくこの制度を進めていただいて、数年して、最初に設計したとおり、本当に私たち消費者が助けていただけているのかというところをしっかり見直していただいて、そのときに改めて、さまざま足りないところを足していただければというふうに思っております。

豊田委員 ありがとうございます。

 この新しい制度、泣き寝入りを余儀なくされていた消費者の方の被害回復を図りつつも、事業者にも与える影響を配慮して、バランスのとれた、堅実な、そして実効性のある制度として目指していかなければならないというふうに思います。

 本日、参考人の皆様方の御意見を伺いますと、それぞれのお立場からの御懸念がまだまだおありだということがよくわかりました。その御懸念をでき得る限り払拭し、この新たな制度が、安定した、そして信頼に足る制度として、また、必要に応じた見直しも含めまして、しっかりと社会に根づいていかなければならないとの思いを強くいたしました。

 消費者保護を実現し、消費者が安心して経済活動を行うことができるようにするとともに、事業者が事業活動を行いやすい環境を整備し、アベノミクスで元気を取り戻し始めた日本経済が、さらなる活性化を目指していくということが不可欠であろうと思います。

 私ども議員一同、これからも、現場の皆様方のお声を真摯に伺いながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。本日は、さまざまな御意見、また御答弁を賜りまして、まことにありがとうございました。

 これにて質問を終了いたします。ありがとうございました。

山本委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 きょうは、四名の参考人の皆様へ参考人質疑をさせていただきます。きょうは、御出席をいただき、それぞれ意見の開陳をいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。

 民主党は、平成二十一年三月、政府に先駆けて、平成十八年の附帯決議で示した国会の意思を、消費者団体訴訟法案として提出いたしました。

 その内容は、消費者が悪質な商法により被害に遭いながら泣き寝入りしている状況を解決するために、適格消費者団体による差しとめ請求権に加えて、事業者が違法に得た利益を事業者から剥奪し、消費者の被害を迅速に回復するため、消費者団体が消費者にかわって損害賠償請求を行う制度をつくるというものでした。

 成立には至りませんでしたが、消費者庁及び消費者委員会設置法の附則で今後の検討課題となり、民主党政権下においても本法案を検討してまいりました。

 きょう、この法案の、この間、さまざまな団体からのいろいろな御意見あるいはパブリックコメント、また、経済界からの濫訴への懸念なども含めて、お互いが寄り合いながら法律の成立に向けて歩んできたこと、そしてまた、まだまだ課題はあるけれども、この法律の速やかなる施行が必要であることを、それぞれ参考人の皆様から御意見を承ったというふうに拝察をしております。

 そういった中で、まず河野参考人にお伺いをしたいんです。

 本法案では見直しの期間が五年とされておりますが、先ほど御意見の中で、やはり、法律を施行した後に、法律を施行しながらさまざま足らざるところを補い、そしてまた改めるべきところなどもやっていくべきだという御意見がありますが、そうすると、例えばこの見直しの期間五年というのが若干長いのではないのかということ。よく国会の法律は三年での見直しというのが多いものですから、これについての御意見をまず伺いたいのが一点。

 それから、この法律の仕組みとして、二段階方式というのが特徴的でありますが、この二段階目の通知、公告をどういうふうに工夫したらいいのか。もちろん、財政支援なり、あるいは情報的な支援といったことが先ほどお話もありましたけれども、具体的に通知、公告をどういう形でやれば、より多くの方々が知るのか。ネットというお話もありますが、高齢者の方々がネットにどれだけアクセスしているのかというお話と、新聞広告ということがよく考えられますけれども、あれもかなりの高額に当たりますので、具体的にどう通知、公告したらいいのか。この二点について伺いたいと思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 二番目の方からお答えさせていただいてもよろしいでしょうか。

 二番目の方は、やはりここのところは、第一段階が終わってから第二段階の手続までに期間が非常に短くなっております。ですから、このところは、助けていただく消費者側も、本当にどういう手段が一番いいのかということで、いろいろお知恵をいただきたいと思うんですけれども、一番いいのは、事業者の方で持っていらっしゃる名簿ですとか、そういったものをしっかり開示していただいて、そこから確実に被害者に通知をしていただく、そのあたりが一番確実で確かな方法かなというふうには思っております。

 あと、消費者庁のホームページですとか、さまざま行政機関を通じてですとか、そういうふうな形になるとしても、ふだんの私たちの行動からしまして、行政の情報というのはやはり距離があるものでございます。

 ですから、一段階目から二段階目に関しましてはいろいろな方のお知恵をいただいて、本当に救われるべき人が一人でも多く第二段階のところに加われるようにということは私も思っているところですが、いい知恵というのは今のところはなかなか浮かびません。確実にということはお願いしたいところでございます。

 それから最初の御質問ですが、この法案は施行までに三年間という猶予期間が設けられていて、そこからさらに五年たって見直し、都合八年間先ということになります。できましたら、最初の三年間は事業者にとっても国民にとっても準備期間だというふうにおっしゃられればそうだというふうに考えまして、そこは丁寧な準備をしていただく。ただ、準備をしてスタートしましたら、もう少し短い期間で本当にこの制度がワークしているのかどうかということはきちんと検証していただいて、先ほど申し上げましたように、修正していただくところ、助けていただけるところは変えていただければというふうに考えるところでございます。

武正委員 ありがとうございます。

 野々山参考人に伺いたいと思います。

 もう今国民生活センターの理事長ではないものですから、先ほど、個人の意見、センターを代表しての御意見ではないということはお聞きをいたしましたが、やはり、これまで国民生活センターが、こうした消費者被害救済に当たって事前にそうした事件を感知して、そしてそれを啓発する大きな役割を果たしてきたというふうに認識をしております。過去、そうした事件が多数あったからでございます。

 また一方、一番最先端は消費者センター、都道府県、政令市、市町村の消費者センターが担っています。そして、消費者庁ができた折には、今度は重大事故については報告義務も消費者庁に課しておりますので、それまでの国民生活センターの役割と、消費者庁誕生後、若干変わってきたのも確かであります。

 ただしかし、こうした消費者問題の救済に当たって国民生活センターの役割というのは極めて重いと認識しておりますが、国民生活センターの理事長を経験されて、国民生活センターの抱えている課題あるいは改善すべき点、またどういった形が求められるのかについて御所見を伺いたいのが一つ。

 先ほど来、皆様からPIO―NETの情報を共有できないかというお話があります。私もPIO―NETを検索させていただいて、確かに今刷新のシミュレーションが行われていて、検索のあり方とか見直しが進んでいることは承知をしておりますが、個人情報との絡みでといったことで、多分PIO―NETの情報共有は難しいといったことがあるのかもしれませんが、名前が出ていなかったり、いろいろ工夫もされているわけですので、このPIO―NETの情報を、どうすればそういった個人情報などの懸念を除いて共有が可能なのか、これが二つ目。

 それから、三つ目が、同じく法施行前のことなんですけれども、ADRをやはり活用すべきだというお話も先ほど伺いました。ただ、ADRの実際に担当されている職員の方の数も実は大変少ないといったことも現場でお聞きをしております。マンパワーの不足、また、相談員の方々は非常勤なので再雇用が難しいところは改善が図られていますけれども、やはりかなりそうしたマンパワー的なものも限られているといった中で、先ほどとちょっと重なりますけれども、ADRがより活用されるためにはどういったことが必要なのか、お答えをいただければと思います。

野々山参考人 ありがとうございます。

 まず第一点の国民生活センターの課題ということでありますけれども、国民生活センターというのは、消費者問題の実践的な中心的機関として三つの機能を果たしているというふうに考えております。一つは、消費者行政の支援ということであります。先ほど申し上げた消費者問題の最前線である消費生活センターや消費生活本課、そういうところの支援。それからもう一つは、国民の皆さんに対する情報提供。そして三つ目には、国とか事業者の皆さんに対して要望をしていく、あるいは政策提言をしていくということであります。

 そういう中で、今課題としてあるのは、一つは、やはり地方支援についてしっかりやっていかなくちゃいけないという点でありまして、特に、今は国境を越えたさまざまな事件がありますので、これに対しての対応というのが一つ大きな重要な課題かというふうに思っております。

 それから、情報提供につきましては、情報提供をしていくには、情報を収集しなくちゃいけない、生の情報も必要だということで、直接的な情報をどうやって収集していくかということが、直接相談というものが今は廃止された中で、どうやってやっていくかというところが二つ目の重要な課題だというふうに思っております。

 それから三つ目には、要望、提言。これは、これからの国民生活センターのあり方では、消費者庁はできましたけれども、消費者庁に対して、現場からさまざまな問題点を吸収し、それを分析して、こういう政策とかいろいろなものを提言していく機能、これがこれから国民生活センターには重要な機能として果たさなくちゃならないものとして出てくるだろうというふうに考えております。これが課題ということであります。

 二つ目はPIO―NETの問題でありますけれども、PIO―NETは、そもそも個人情報は入っておりません。私どもが見るのは数字であるとか事案であるとかそういうものでありまして、基本的には個人情報は入っていないということであります。したがいまして、その点について、ただ、事業者名が出てくるというところが一つ御懸念のところだと思いますけれども、それについては、基本的には守秘義務等を課していく、これは自治体でもやっていることでありますので、守秘義務をきちんと課して対応していくというのが筋だというふうに思っております。

 それから、三つ目のADRでありますけれども、確かに今、ADRは年間に百五十件ほど受け付けておりまして、約七割、六割から七割の解決率を保っているわけでありますけれども、そのために一応のマンパワーを持っているわけでありますけれども、やはりぎりぎりであります。これから多数の事件を集団的な形でやっていくには、やはりこのスタッフの拡充等は不可欠だというふうに私は考えております。

武正委員 ありがとうございました。

 阿部参考人、西島参考人、お二人にお伺いをしたいんですが、この適格消費者団体、本法では特定という形になりますが、今十一団体あるわけです。私も埼玉の団体の方に伺いましたけれども、お話のように、やはりなかなか財政も厳しく、本当にボランティアで成り立っているということも痛感をいたしました。

 ただ、阿部参考人も、消費者と事業者、この相互の、ある面、信頼関係、そうしたインフラのようなものが本法によってつくられることは必要だという御認識だと思っております。濫訴の防止とか、それから団体がたくさんふえてしまうことは懸念があるといったことは先ほど伺いましたが、悪質業者を排除するためにも、この法律の必要性は御認識だというふうに思います。

 また、西島参考人も、先ほどケーシーズの運営がいかに厳しいかというお話もありました。埼玉の団体は、経済団体、県内で六団体もありまして、一団体は賛助会員になってくれたそうです。ですから、利益相反というお話がありますけれども、必ずしも、お互いに経済団体と特定適格消費者団体が何か協力をするということはあり得る話ではないかというふうに思うんですけれども、この点についての御認識、お二人に伺いたいと思います。

阿部参考人 まず、現在十一ございます適格消費者団体は、全て立派な方々だと思っております。そこに対して、企業、事業者から寄附などの経済的な支援をしていいかどうかということでありますが、私どもはする用意がございますので、あとは消費者団体の方たちがどのように御判断されるかだと思います。できるものなら寄附したいと思います。

西島参考人 私どもは、不法、不当な勧誘行為だとか契約条項、表示等を行っていることに関しては厳しく対応しようということで、差しとめ請求も辞さないということにしておりますけれども、きょうちょっと配付をさせていただきました資料でケーシーズニュースというのがお手元にあるかと思うんですが、一枚めくっていただいたところに双方向コミュニケーションシンポジウムというのを紹介しております。

 私ども、やはり、消費者の権利だとかそういったことをしっかり尊重していただける事業者の方とはしっかりコラボレーションできるのではないかなというふうに思っています。事業者と消費者の相互の双方向コミュニケーションが必要だということはこの間十分に認識してきたわけですけれども、それがなかなか実際どういう形でやったらいいのかわからないということがありまして、研究会というような場を設けまして、そこで事業者の方と消費者の方、実際にコミュニケーションの実践をしていただくというようなことを行っております。

 こういった活動も一方で行っているということを知っておいていただきたいということと、あと、私どもも、賛助会員として約五十ぐらいの事業者にも入っていただいている。ただ、その点で注意しますのは、先ほどおっしゃいましたように、利益相反のことだとかについては、しっかり定款や諸規定等で対応をしているということも付言させていただきます。

武正委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 日本維新の会の衆議院議員重徳和彦でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、本当にお忙しい中、ありがとうございました。

 私は、これから日本が高齢社会になっていく、高齢者がふえるということは、いわゆる生産年齢人口と言われる方々が相対的に減る、高齢者はいわば消費者、生産者じゃなく、もう完全に消費者の皆さんだという捉え方をすれば、まさに高齢社会というのは消費者社会だと言いかえることもできると思います。

 その際に、先ほど河野参考人がおっしゃったように、やはり情報量の格差が生産者側と消費者側で余りに違うというようなことからすると、単に裁判沙汰だから嫌だ、どうかなといって泣き寝入りするだけの社会を続けちゃいけない、こういう認識に立っております。その意味で、今回の法律をまず成立させることが第一だと、河野参考人が言われるとおりだと思っております。

 一方で、実際には、今回のこの法案の設計どおりにいくかどうか、やってみなきゃわからない、そういう部分があるのがこの法律だと思っております。

 例えば、今回、濫訴の防止という意味も含めてだと思いますが、対象外となる損害がいろいろと規定されております。いわゆる拡大損害、人身損害、慰謝料などが除外されているわけなんですけれども、例えて言えば、五千円の化粧品を使ってお肌の手入れをしていたらお肌のトラブルが起こってしまった、その場合に、訴訟を起こしても返ってくるのはその五千円分だけであって、実際には精神的な苦痛もあろうし、仕事で何かうまくいかなかったことがある、逸失利益、こういったこともあるでしょうけれども、そういうことは対象外であるというようなことだと思うんです。

 ここで河野参考人と阿部参考人にお伺いしたいんですが、要は、消費者側から見れば、浅く広く救われるかもしれないけれども、でもそこじゃないだろう、化粧品代が戻ってくればいいという問題じゃないんだという方はたくさん出てくると思います。

 一方で、企業側から見れば、一人当たり五千円で済めば、言い方はあれですけれども、まず丸くおさまればいいとは思うものの、しかし、寝た子を起こすような形になって、実際には私はそれだけの損害で済んでいるわけじゃないんだというようなことで、そこからいろいろなクレームだとか社会問題につながってくるとか、まあ、実際にやってみなきゃわからないことなんですけれども、このあたりの点につきまして、この法が施行された後をどのように予想、推測されておられるか、参考までにお聞かせください。

河野参考人 ありがとうございます。

 カネボウの美白化粧品の問題もありますし、今、関西の方で起こっているメニューの偽装の問題もございます。本当に、消費者は、自分で物を見抜く目というか、そのあたりがないと、いつ何どき、どのような消費者被害に遭うかわからないというふうな状況でいる中で、例えば、今、議員の御質問になりました、化粧品を購入しました、肌のトラブルがありました、その拡大の部分というか、精神的な部分をどうするのかということなんですけれども、私自身は、そのあたりは、商品を購入するというのは、そもそもはその商品を信用して対価を支払うというところがスタートだと思っています。

 つまり、最初から怪しいと思っていませんし、その商品と、それからそれを販売してくださっているというか、事業者の方を信用する。一番大事なのは、そこにあるのは、企業倫理と、それからそれに対する消費者の信頼感、それがまず第一であって、それが崩れたときにやはり訴訟になるというふうに私自身は考えます。

 ですから、事業者の側がしっかりと、自分たちの被害を生じてしまったことに対して真摯に向き合ってくだされば、それはそれで、私たち消費者としても、お互いそれを十分に理解して、次の社会のために、莫大な損害ですとか賠償ですとか、そういったところには至らないと思います。とにかく、最初の対応、そこのところで、やはり次に向けて、事業者の方は、消費者に対して、消費者と一緒に前に向かっていこう、それから、私たち消費者も、そのメーカーさんならメーカーさんを信用して先に行こう、そういうふうな素地があれば、大きな課題にはならないというふうに私自身は考えます。

 ただ、どうにも、拡大損害になりますとやはり認定も難しくなりますし、個々、特に、損害額確定まで時間がかかってしまうと、結局、十年も続く裁判とかになりまして、この制度が導入された本来の意味からは外れてくるというふうに感じますので、まずは、最低限のお互いの、補償というところでこの制度が進んでいってくれることを願っております。

阿部参考人 法案の第三条の第一項、第二項にそれぞれ規定されているわけでありますが、今回の訴訟制度はあくまでも民訴手続の特例でございまして、そういう意味では、まず第一段階の訴訟で事業者の有責性を確認した上で第二段階に進む。そのときに、第二段階は、ある意味、共通性、支配性と言っておられますけれども、同じような損害がわかりやすく生じている場合でなければ処理できないわけでありますので、そういう意味では、拡大被害でありますとか人身損害とか慰謝料は、訴訟制度としてこの仕組みにはなじみにくいかなと思っております。

 ただ、これだけは申し上げられると思います。化粧品の例が適当かどうかわかりませんけれども、第一段階の訴訟で事業者の責任を確認いたしますので、要は、メーカーが悪いということが確定しましたら、それに基づいてさまざまな別の手段が、訴訟も含めまして、とり得ると思います。

 そういう意味では、場合によっては、人身損害、あるいは慰謝料も含めて、別途の訴訟は十分提起できるわけでありますし、何といってもメーカーの責任をこの訴訟で認めておりますので、ここは非常に、その後のほかの手段も使いやすくなるものだと思います。

 以上です。

重徳委員 どうもありがとうございます。

 次に、ケーシーズの西島参考人にお伺いしたいんですが、きょういただいた資料で、拝見いたしますと、予算規模千四百四十八万円、八割が会費で賄っておられるということ一つとっても、これはかなり大変な運営なのだろうなと、逆に言うと、そうそうたる方々が、きちんとした方々が参加していなければ、なかなか、この適格消費者団体というものも、これまでも成り立ってこなかったのではなかろうかというふうに思われます。

 これから、集団訴訟のこの仕組みが施行されて、そうしますと、どこまで広がっていくか、これもまたやってみなきゃわからないんですが、それにしても、今までよりも期待されるところからすれば、その団体の数とか、スタッフの数とかいうのもふえてこなければ、なかなかこの仕組みは持続できないんじゃないか。まして損害賠償請求という訴訟になるわけですから、そういう意味でも専門家の数も相当必要だろう。

 この際に、ではお金だけの問題なのか、お金があれば幾らでも体制が拡充できるのかというと、よっぽどおいしい仕事だと思われるレベルにまでならない限り、やはりここは、社会正義の実現とか消費者の立場にきちんと立つ方々が、本当に身を粉にして働くような方々がどこまで登場するか、このあたりはもう肌感覚の話なんですけれども、今、阿部参考人も、今の十一団体は本当に信頼できる方々だとおっしゃいましたが、この後、よく懸念されるように、言葉は悪いんですが、悪質というか質の低いというか、そういう団体も出てき得るんじゃないかと思うんですが、このあたりはどのようにお考えでしょうか。推測の、予測の範囲で構いません。

西島参考人 そうですね。私どもは、これからやはり体制等も当然補強していかないといけないというふうには考えます。ただ、先ほど言っておりましたように、当面のところでいいますと、制度が動いていくためには、情報だとか、あるいは資金面というのでいろいろな支援をいただきたいということがあります。

 ただ、もう一方ありますのは、実際にやっていく人たちというのはどういう人たちなのかということを御紹介しますと、やはりそれは、消費者問題、消費者被害を何とかしたいというような方が携わっておられるわけですから、そのあたりは、私は今のところは全く心配ないというふうに申し上げたいと思います。

 それから、どういう団体が出てくるのかみたいなことはおっしゃっておられますけれども、消費者被害を実際に回復したいというようなことであれば、そういう団体ということで、しっかり適格団体の要件もありますし、特定適格団体は、さらにそれに加えての要件というようなことでしっかり監督されますから、そういう意味では、私の今の知る範囲では問題がないのではないかなと。

 ただ、もしそういう団体が、もうけだけというようなことで出てくるのであれば、それにしっかり対応していかなければいけないというふうに考えます。

重徳委員 どうもありがとうございました。

 最後にもう一点。今、各企業におきましては、クレームとか苦情の処理という形でさまざまな取り組みが現に行われていると思います。クレームの処理というのは、本当に一件一件、迅速的確に対応するということは、逆に企業の信頼性とかクオリティーを高める、そういう面もあると思います。

 例えば、私自身も経験がありますが、自動販売機で買ったコーヒーが何か腐っていたというか非常に品質が悪かったことを苦情を言ったら、まとめて一ケース、逆に返してくれたとか。そのような対応をされると、むしろその企業のファンになったり。でも、これはいわば、その対価そのものを返してもらう以上のサービスを企業が個々にしているという見方もできるわけで、こういうことを集団的な訴訟に対して過剰なサービスをすることはできないわけであって、こういう意味ではなかなか、リコールというケースとかさまざまなケースがあると思うんです。

 これは阿部参考人にお聞きしたいんですが、こういった苦情処理の実情として、リコールなどの製品のふぐあいについての周知ですとか、あるいは周知をどのように、どのぐらいのコストをかけて、どういう手段でやっていることが、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、どんな事例があるのかということ。それから、補償している場合があれば、補償の範囲というのは本当にその商品の対価だけなのか、あるいはちょっとサービス精神で、あるいは的確なクレーム対応ということでやることも多いのか。そのあたり、みんな一緒じゃないでしょうけれども、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、何か事例のようなものを挙げていただくことができればと思います。

阿部参考人 例えばリコールでございますと、法的に求められるものがあれば、事業者が自主的に対応できるものもあるわけですが、非常に今各社悩んでおりますのは、顧客情報、ユーザー情報、お得意様リストでございますが、これを個人情報保護法の関係で持てなくなっている。昔であれば、誰が何を買ってどのように使っていただけるかというのは一番大事な情報でございますので、事業者それぞれ抱え込んでいたわけでありますが、何か個人情報保護法の解釈で、そういうことをしてはいけないと皆さん思っておりまして、私は違うと思いたいんですが、現実に、各社、ユーザーリストを泣く思いで廃棄した。

 今、一例でございますと、例えばある温風装置ですね、大手電機メーカーがつくりました温風装置についてリコールをかけたわけであります。多大な費用をかけて広告等を打ったわけでありますが、本来であれば、顧客リストが手元に残っていれば、一軒一軒それでお訪ねして済んだわけでありますが、そういうののユーザー情報というものが今非常に扱いにくくなっている。ここは、何かいい方策があれば、御検討願えればと思います。

 以上でございます。

重徳委員 どうもありがとうございました。大変参考になる御意見でございました。本当にありがとうございました。

 以上です。

山本委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様におかれましては、早朝から国会においでいただきまして、貴重な御意見を述べていただきました。心から感謝を申し上げます。

 まず初めに、河野参考人にお伺いをしてまいります。これまでも消費者被害に対して、その救済、あるいは本法律案に関しましても制定に向け積極的に活動を展開されたことに、心から感謝をしたいと思っております。

 この委員会の場で身内のことを申し上げて大変恐縮でございます。私も二十七歳の息子がおりまして、大学生のときに、英語を勉強しようと思うと。何と殊勝なことを言い出したのかと思いまして、本人も受講申し込みをして受講料を払った、その直後にその英会話学校が経営破綻をいたしまして、私もそのニュースを見ておりましたので、こんなタイミングでと思ったんですが、受講料を返還してもらえるようにしなさいとか消費者センターに行きなさいとか電話では言ったんですが、うちから離れて遠くにひとり暮らしをして大学に通っておりましたので、やはりそのままになってしまいました。少額でもありましたし、私も国会があり、なかなか一緒に行って行動するということもかなわなかったわけでございます。

 先ほども参考人の方がおっしゃっていましたけれども、余りそのことには触れてほしくないという空気がありまして、やはり嫌な思いをしたんだろうというふうに思います。これが社会というものだから、勉強になったでしょうと。授業料と思ったというような経験がございます。

 こうした多くの消費者被害、今は悪質商法とかインターネットによるトラブルなどもふえております。こうした消費者トラブルが後を絶たないわけなんですが、個々の消費者の立場から見た場合に、現行制度というのはやはり限界があるというふうにお感じになっていらっしゃると思います。そのようにも先ほどおっしゃっていました。どのような限界があるとお感じになっていらっしゃるか。また、現行制度の限界を踏まえて、個々の消費者の立場から、消費者の被害を集団的に回復する本制度の導入の必要性、消費者市場に与える影響性など、改めてお伺いをしたいと思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 現在は、先ほど申し上げましたように、二〇〇七年に、消費者トラブルに対しては被害の未然防止それから拡大防止を図るためということで差しとめ請求ができる状況になっています。ですから、自分は被害に遭っても、そういった例を使って次の被害者を生まないというところだけでございます。今、古屋先生がおっしゃってくださいましたお子様の例でいいますと、払ってしまったお金は返ってこないというのが現在の状況だというふうに思っております。

 なかなか、せっかく事業者側に非があるというふうに判決をかち取っても、そこに被害弁償という形が乗っておりませんので、本当にうれしさ半分というふうな状況だというふうに感じております。ぜひ新しい制度で、払った分はやはり戻す、不当に払ってしまった分は、拡大に返ってこなくても全然構わないんですけれども、その分は返していただけるということなので、新しい制度には大いに期待したいところでございます。

 それからもう一点は、今の先生の御質問なんですけれども、やはり日本では、なかなか実社会における法律の知識というのが学校教育の中で行われていないのではないかというふうに思います。

 法律の知識というのは、特定の学ぶ人たちにとって深く伝えられ、一般の社会で本当に必要な法学習というのがなされていないのか。ですから、少なくとも、ある段階では、きちんと契約について、対価を支払うとはどういうことなのかということについて、やはり今後、社会の中で学習する機会、教育する機会というのを見つけていただければというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。本当にそのとおりだと私も思います。

 次に、野々山参考人にお伺いをしてまいります。前国民生活センター理事長としてのお立場から、大変明快な御意見を頂戴したと思っております。

 本制度は、一段階目の手続を提起する際には、個々の消費者の授権を必要としないという仕組みになっているわけでございます。この点について、特定適格消費者団体がむやみに訴訟を提起して、事業者に悪影響が生じるのではないかという懸念の声がございます。

 そこで、本当にむやみやたらに訴訟が提起をされるのかどうか、そもそも、この特定適格消費者団体が、どのような事案で、どのような検討をして本制度に基づく訴訟を提起していくのか。現行の差しとめ請求訴訟における御経験も踏まえて御意見を伺いたいと思います。

野々山参考人 個々の消費者の授権をせずに第一段階をやるというのは、この制度の基本的な制度設計の根本だというふうに思っております。そういう形で、難しい問題について、まず全体の消費者の利益を代表する消費者団体の方で、しかも、内閣総理大臣から認定を受けた消費者団体の方で、ある意味公益のためにやっていくというのが一つのみそだというふうに思っております。それが濫訴になるのかというと、決してそうはならないというふうに考えております。

 先ほど西島参考人がるる説明をしたように、差しとめ請求、今回の回復制度よりもある意味簡単というんですか、手数のかからない制度でありましても、非常に手間がかかっております。十分な検討をしております。そういう中で、しかも、自主的な改善を求めて、その求めたものでどうしてもできなかったものに対して訴訟をしていくという形をとっております。

 これは今後も、この制度ができ上がりまして、さらに手数がかかる、手間がかかるということになれば、それはさらに慎重な検討をしていかざるを得ませんし、それから、自主的な対応をさらに求めていくということがまずされていくというふうに考えております。

 したがいまして、個々の授権を得ないこと、適格消費者団体が訴訟を、第一段階を担うことが濫訴につながるとは考えておりません。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 慎重な検討、自主的な検討が行われ、濫訴にはならないだろう、こういう御意見であったかというふうに思います。

 次に、阿部参考人にお伺いをしてまいります。

 本制度の導入に当たりましては、事業者の立場から、企業の経済活動に影響が与えられるのではないかというような御意見がございます。

 そこで、この法律案では、事業者の立場に配慮をして、訴訟追行主体を行政の監督の及ぶ特定適格消費者団体に限定をしています。訴訟の規模についてある程度見通しが立つように、対象となる請求権、損害の範囲を限定し、一段階目の判決の効力を他の団体にも及ぶようにするなど、さまざまな濫訴防止措置が施されていると認識をしております。

 事業者としてのお立場から、濫訴防止措置を設ける必要性について、さらに御意見を伺えればと思います。

阿部参考人 冒頭にも申し上げましたけれども、仕組み自体、非常によく練られたものだと考えております。その上で、例えばリコールと並行して訴訟が起こされるとか、あるいは瑕疵担保責任として非常にささいなものが取り上げられるというようなことがあり得るという懸念は持っております。

 そういう意味で、法案第七十五条第二項に、「特定適格消費者団体は、不当な目的でみだりに共通義務確認の訴えの提起その他の被害回復関係業務を実施してはならない。」と。この「不当な目的でみだりに」ということを具体的に何かというものは、やはりもう少し明らかにしていただければと思います。できれば法律で書いていただきたいと言いたいところなのでありますが、例えば政省令でありますとか、あるいは特定適格消費者団体に対する監督指針の中で、何がまさにこの第七十五条第二項で言っている不当、みだりなのかということは明らかにしていただきたいと思います。

 以上でございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、西島参考人にお伺いをしてまいります。

 これまでもさまざまな消費者被害に取り組んでこられた御経験を踏まえての、非常に具体的な御意見をいただきました。

 この適格消費者団体の活動の中で、現行制度のもとでは消費者被害の回復に限界がある。先ほども、非常に長い年月をおかけになった事例を紹介していただきました。適格消費者団体の活動の実情にも照らして、現行制度の限界、また、本制度を導入する必要についてどうお感じになっているか、また、実際どのような事例で現行制度の限界をお感じになったか、先ほども述べられましたけれども、具体例があれば、さらにお教えいただければと思います。

西島参考人 現行の制度の限界ということですが、これはやはり、もちろん、一番の限界というのは、未然防止、拡大防止のためにということで、将来にわたって、もうこういう勧誘だとか表示、契約上これは使ってはいけないという差しとめ請求訴訟ができて、それの判決がいただけるということになっております。ですから、そういった意味では、対象も、この間、制度が一番最初にスタートしたときは消費者契約法だけが対象でしたけれども、その後、景品表示法や特定商取引法にも広がってきて、ことしの六月十二日ですか、食品表示法にも関係してくるということになっておりますので、対象はだんだん広がってはおるんですが、それにしても、やはりまだまだ対象以外のものもあるだろうというふうなことがあります。

 それから、やはり、普通の消費者に、例えば適格消費者団体あるいは消費者団体訴訟制度というのは知っていますかというふうにもしお聞きになったら、はあというか、何か余り知りませんねという話になってくるというような状況。これはもちろん私どもも努力していかないといけないと思うんですが、制度をしっかり効果的に運用していくという意味で、国もしっかりその辺はさらに御努力を願いたいなというふうなことも考えております。

 ですから、新訴訟制度というのができましたら、被害回復というようなこともできますので、そこには消費者の方たちもやはり一定の期待をされるでしょうから、情報提供というようなことも、今は、ほかの人も同じ被害に遭わないようにということを考えた上でしかなかなか情報提供を得られないということが、私の被害を何とかしてほしいという方の情報も得られるという意味では、被害実態にかなり即した対応というのが今後もできていくのではないかなということを期待しておるところです。

古屋(範)委員 だんだん時間になってまいりました。

 もう一度、野々山参考人にお伺いをいたします。

 先ほども、この適格消費者団体、非常に財政的に厳しいという御意見でございました。もし公的な財政支援がなければ、永続的に団体がこの法律に基づいて活動していくということはやはりかなり難しいというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

野々山参考人 細々とやることはできるとは思いますけれども、この制度をワークさせるためにきちっとした活動をするには、やはり一定の財政的な支援が必要だというふうに思っております。諸外国ではそういう制度を持っている。このような制度そのものが公的なものだ、公益的なものだという認識のもとで財政支援を、こういうことをやっていく、こういう制度を動かして消費者団体にしている例もありますので、やはりそういうものは必要不可欠ではないかというふうに考えております。

古屋(範)委員 私たちも国会の立場から、この財政確保に関してはしっかりと要求をし、確保に努めてまいりたいと思います。

 次に、もう一度、河野参考人にお伺いいたします。

 これまでも御意見の中で、諸団体との連携、情報交換が必要であるという御意見を述べていらっしゃると思います。最後に、この必要性についてお伺いできればと思います。

河野参考人 諸団体というのは、もう一度諸団体というのを、消費者団体というふうに考えればよろしいでしょうか。

古屋(範)委員 済みません、時間になってしまって、少しはしょりました。

 自治体、各地の弁護士会、民間NPO、消費者団体と情報交換の連携が重要だという御意見を述べていらっしゃいました。団体間の連携についてお伺いします。

河野参考人 お答えします。

 やはり、本当に消費者問題というのは消費者だけでは解決ができません。ですから、特に消費生活センターですとかそれから行政の方、そのあたりでしっかりとこの制度のこと、それから消費者被害のことを理解していただいて、消費者自身も気軽にふだんの暮らしの中でいろいろな方に御相談できる、ちょっと不安に思ったときにはいろいろな方に声をかけられる、いろいろな入り口がたくさんある、適格消費者団体だけではとても、今十一ですから不安ですけれども、それがやはり日本の中でネットワークになるということで、さまざまな皆さんにこの制度を知っていただきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 貴重な意見、ありがとうございました。

山本委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘でございます。

 本日はお忙しいところをお越しいただきまして、そして本当に貴重なお話を伺うことができまして、ありがとうございます。

 それでは、さまざまな質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 私も十年間以上弁護士として仕事をしてまいりました。その中で、やはり消費者保護の重要性というものはもちろん理解をさせていただいておりますし、数多くの消費者の方々がいわゆるマルチというような悪質業者の歯牙にかかって本当に苦しんでいらっしゃる、詐欺的な商法というものに苦しんでいらっしゃるというものも、もちろんそういった姿も見てまいりました。

 しかしながら、一方で、インターネットの発達、そして、こういった現在の社会の複雑化というような中で、極めて多数の消費者を相手にいわゆるビジネスをされている、そういう事業者もふえているわけでございます。そういう意味で、困っている人がいるからといって、それで法律を進めて集団訴訟だ何だというふうな話をしていくと、やはり日本の経済というものが牽引されている一つのエンジンでもございますこういった企業の活動を必要以上に制約してしまうというような可能性もあるというところですので、そういった意味での検討というのもこの法案で行われているところだと思いますけれども、その点に関して、本日は経団連からお越しいただいております阿部参考人にもろもろお伺いさせていただきたい、このように考えております。

 先ほどいただいたこの「基本的な考え方」、そしてこの「法案の具体的懸念点と要望」というのは本当におっしゃるとおりだなというふうには考えておりますし、そういう意味で、この「具体的懸念点」の中にございます自分から代金返還や修理、交換という自主的な対応をしているというところにもかかわらず、訴えを提起されることがあり得るというような話はあります。しかしながら、もちろん、具体的にもう既に自主的な対応を進めているという場合もあるでしょうけれども、そういった方向で検討している、そして、そういったものに着手しようとしたというような段階でも、この訴訟が起きてしまうということについての懸念もあるところではないかと思いますけれども、その点、いかがお考えでしょうか。

阿部参考人 まさに、事業者はリコールを進めているにもかかわらず、それに応じず、損害が生じるのを待って訴訟を起こすようなことがあれば、これはもともとの趣旨とは違った濫用だと思っております。

 そのような訴訟は、まさに、不当に、みだりにに当たるということを明らかにしていきたいと思います。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 また、先ほどのいただいた御意見の中に、今の適格消費者団体については、非常に信頼に足りる、そういった団体であるというお話もいただきましたけれども、これは、今後もそのような団体であり続けるかどうかについては、必ずしもそうだというふうに言い切れないのではないか。

 これは、何を申し上げているかといいますと、もちろん、理事をされている方、何らかの方々の中身がそっくりそのまま入れかわってしまうということも、これは講学上の話かもしれませんけれども、あり得ることだろうというふうには考えておりますけれども、その点、いかがお考えでしょうか。

阿部参考人 まず、現在ございます十一の団体につきましては、非常に立派な方たちでございますので、その後を継がれる方も立派な方たちだと信じたいと思っております。

 ただ、ここはまさに監督指針等で厳重にチェックしていきたいということとともに、実は、適格消費者団体というのは、最初に制度をつくったときは、全国で二つか三つかと言われていたわけであります。その後、次第に数を増してまいりまして、今は十一でございます。さらに、一部には各県ごとに置くべきだという議論もございますが、私は、一つの考え方として、それなりの数があることは重要かと思いますが、今あるものの一つ一つの力を強くしていくことの方が、実は、実効的になるかなと思っております。今ある十一が、それぞれもっと力を蓄えられていくことが、ちっちゃいものがたくさんできるよりは、消費者救済という意味では意味があると思います。ただ、これは私の私見でございます。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 そして、この法案の中では、消費者契約というものがあります。この消費者契約というのは、具体的には、消費者と事業者の直接契約というものに限られているというふうな理解はされているところではございます。

 この消費者契約の中に、実は、例えば電機メーカーさんが販売されているような冷蔵庫ですとか電子レンジとか、そういったものの保証書というのがあるかと思うんですけれども、その保証書に書かれている内容は、これは保証契約だということで、事業者と消費者、直接それに契約関係が生じるというふうに考えられる余地もあるわけなんです。そういった形になると、実際の販売店と消費者というもの以上の広い事業者が対象になるというような懸念がまずあるというところではないかと思っておりますけれども、この点、いかがお考えでしょうか。

阿部参考人 まず、今回の法案を聞いてみますと、直接販売を行った事業者でありますから、家電製品であれば販売店が対象になるわけでありますが、その上で、損害賠償請求が実際に行きましたときには、販売店から当然メーカーに求償されます。そういう意味では、直接メーカーに損害賠償を求めるのと何が違うのかという気もいたしますが、この仕組みのたてつけとして、消費者契約ということになっておりますので、このような形でいいかなと思っております。

 それから、保証書が保証契約であるかというのは、まさに保証書そのものの内容を個別に考えないと、全てが保証契約だとは言い切れないと思います。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、必ずしも保証書が保証契約になるものではないというのは本当におっしゃるとおりだとは思いますけれども、そういった余地があるというようなところで懸念をお話しさせていただきました。

 また、先ほどの話の中で、遡及効についてのお話もあったかと思います。もちろん、この契約というのは、この法律が制定されてから三年後というふうな話になっておりまして、施行日の前に契約されたものについては基本的には対象外というふうになっているところではございますけれども、実は、施行日より前に契約が行われたものでも、その施行日の後に加害行為というものがされたものについては対象になるというようなたてつけになっております。

 ここで言う加害行為というのは、必ずしも積極的な作為というものに限りません。そうではなく、過去に何らかの法律関係、この場合でいうと、消費者契約というものがあったことを原因として一定の人間関係に入ったというような意味で安全配慮義務というものが生じる、それに対する義務違反がある。不作為によって生じた損害についても、その不作為というものが施行日以降というものだということで、契約締結自体が施行日の前であっても広くこの法案の対象になってしまう可能性もあるんだというような懸念があるというふうに考えているところでございます。

 それが、先ほど申し上げたとおり、販売店だけではなく、これは先ほどの解釈の点にもなると思うんですが、電機メーカーというところまで訴訟の対象になってしまう可能性があるというような懸念もあり得るところだと思いますけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

阿部参考人 まさに御指摘のような懸念はございます。

 ただ、遡及適用につきましては、今回の法律案附則第二条に書かれていることが法律的には精いっぱいかなと私も思っております。

 もう一つ、施行までに何年かけるかということでございますが、三年ぎりぎりまでとは申しませんけれども、これから法律案が成立した後に、例えば監督指針がどのようなものになるか、あるいは訴訟手続につきましては裁判所としてはどうなるか、そういうようなものが全てわかってから、またそれなりの余裕をいただきたいということでございます。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、どうしてこのような仮定の質問をさせていただいたかと申しますと、実は、この法案での請求の対象となっている債権というのは極めて限定をされているところでございまして、物とかサービスの対価というものに限られているんですけれども、今後、場合によっては、PLですとか、そういった拡大損害ですとか、そういった損害についてもこの法律の対象にしていこうというような検討が行われた場合には、今まで以上に遡及的な適用の範囲というものをシビアに考えていかないと、非常に重大な、思わぬところでの損害というものが起き得るというような話になってまいります。

 今は代金に限られるという意味では、リスクの大きさというのはわかっているところですけれども、例えば製造物責任というものを入れた段階で、何もしない、そして販売したのが施行日前だと。例えば、これが三年間たって施行されましたと。そして、五年後見直し、それは三年後見直しでもいいんですけれども、そうしたら、八年後、十年後というような段階で法律が改正されて、PLの製造物責任が対象になったという場合には、十年より前に契約されたものについて、売買されたものについて対応しなかったということについても問題が生じてき得るということになりますので、その影響というのは大きくなってしまうのではないかと思うんですけれども、この懸念についてはいかがお考えでしょうか。

阿部参考人 これからこの法律案が成立後どうなっていくか。附則の第三条に、施行後五年後の見直しということは記されているわけでありますが、少なくとも製造物責任につきましては、このような仕組みになじみにくいものだと思っております。拡大被害について、しかも無過失賠償責任を負うわけでありますので、これがこのような簡易な手続になじむものであるとは考えておりません。

 五年先、経団連がどのような考え方をしているか、今申し上げることはできないわけでありますが、現時点での判断からは、PL事故のようなものはもともと別の解決の手段をとるべきであると考えます。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 そういったものについてはこれから先もこの法案の対象とはなりにくいというようなお考えということで理解をさせていただきました。

 それでは、また別の質問をさせていただきます。

 今回の裁判、訴訟では、仮差し押さえというものができるという形になっておりますけれども、この仮差し押さえというものが広範囲に認められるということになりますと、事実上、営業にも大きな支障が生じてしまうという形になりかねないところではありますけれども、この仮差し押さえの対象となるものが広範囲に広がってしまうことについての懸念というのをお持ちであれば、お話しをいただきたいと思います。

阿部参考人 御指摘のとおりでございます。仮差し押さえの実行によりまして事業活動がその段階でできなくなってしまうようなことになってしまいますと、その後、損害賠償に応じようにも資力がなくなるということもあり得ます。必要な範囲で事業が継続できるようなことはぜひとも必要かと思います。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一点御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど、ちょうど、まさに不当表示といいますか誤表示といいますか、そこは立場によって違うんでしょうけれども、食事、レストランで出しているメニューが、ちょっと書き方が誇大だということで、返金対応をするというような話がまさに例として挙げられていたというところでございます。

 この点についてなんですけれども、今回の集団訴訟というものが広く認められていくというような形になりますと、裁判をすればもしかしたら勝てるかもしれないというような判断を企業がするということであっても、これが、裁判されやすくなるということになれば、それだったら返金をしておこうかな、とりあえずお金を渡しておこうかなというような、それはビジネスジャッジメントの世界だとは思うんですけれども、多数出てくるのではないかというような考え方もあるところだと思うんですね。

 例えば、具体的な名前を出してもあれなんですけれども、インターネットで事業をやっているような数多くの業者さん、数多くの会員、何百万人という会員からお金を薄く広くもらっている会社さんですとか、インターネット上でいろいろな商品を販売されているというようなところについては、そういった、とりあえずはお金を返しておかなければいけないというような事実上の圧力にもなりかねないという懸念もあるのではないかというふうに思うんです。

 その点について、もし御意見があればお話しいただきたいと思います。

阿部参考人 御指摘のとおりでございます。

 事業者としては、事を穏便に解決したいという意欲があるわけでございますが、中小零細事業者にはそのようなことが対応できません。

 ある意味、今回、ホテルの食品偽装につきまして、返金ということで対応されているようでありますが、本当に正しいやり方かどうか、私は疑問に思っております。むしろ、景品表示法の改正によりまして、課徴金制度のような形で対応した方が望ましい解決だとは思います。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 今、るる、さまざまなことをお伺いいたしましたけれども、基本的にはそういった懸念があるということであるわけでございます。

 そうはいいましても、阿部さんのお立場としては、この法案に対しては、制度としては賛成をされているという理解でよろしいでしょうか。

阿部参考人 できれば法律案の修正の期待をしたいわけでございますが、仮に法律案が変えられなくても、その後の対応を政省令、監督指針等でしっかりとお願いしたいと思います。

 以上でございます。

三谷委員 ありがとうございました。

 この法案については、非常にいろいろな、さまざまな考えというものがあり得るところではございます。最初に申し上げさせていただいたとおり、消費者の保護というようなことについては、本当にこれは重要なことだというふうに改めて強調させていただきたいと思っております。

 ただ、本日の質疑の中で、そういった懸念点についての質問というものをもう少ししておいた方がいいのかなというような思いもありましたので、いろいろるる御質問をさせていただきました。

 貴重な時間をいただきましてありがとうございました。

 これで質疑を終了させていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 四人の参考人に心から感謝を申し上げます。

 私ども共産党も、今国会でのこの法案の成立は必要と考えています。

 そこで、今回の法案をめぐって、今多くの方々から意見が出ましたけれども、濫訴が一つの焦点になっています。実は、修正案も、これを中心の一つとして出されることが取り沙汰されています。私は、さきの国会でも、そんなことはあり得ないと主張し、大切なのは消費者被害を回復することが主眼の法律だからということを主張してきたところです。

 そこで、まず、前独立行政法人国民生活センター理事長の野々山宏さんにお聞きしたいと思います。

 最高裁は、昭和六十三年の判決で、不当訴訟とされる厳しい基準を明示しています。濫訴、濫訴と心配し、濫訴防止指針なるものをつくると報道されていますが、特定適格消費者団体の提訴が、昭和六十三年の最高裁判決の基準に照らして問題のない場合でも、濫訴だ、不当訴訟だと言われることがあるとしたらどう思われるか、これが一つ。

 二つ目に、野々山さんは、経歴も、明示していますように弁護士ですから、よく御存じかと思いますが、今述べた、昭和六十三年の最高裁判決が不当訴訟の基準を厳しく設定した根拠、真意とは何であるか、このことについてお聞きします。

野々山参考人 第一点目は、あの六十三年の最高裁判決では、不当訴訟というのは、事実面、法律面で明らかに根拠を欠くような場合、それを認識している場合、あるいは認識すべきだったというような場合、そういう場合に限り、不当訴訟だというふうに考えられていると思います。

 やはり、そういうものでは確かに不当訴訟だと思いますけれども、今言われている濫訴というのは一体何なのか、それ自体、私ははっきりよくわかりません。今差しとめ請求でやっていることが濫訴だとおっしゃるなら、それは具体的に例を挙げて言っていただきたいというふうに思っておりますけれども、そういう根拠、こういう事実面、法律面で明らかに根拠を欠くようなものについて、訴訟すること以上に要件を緩和するようであれば、これは問題であるというふうに私は考えております。

 それから第二点目は、やはりこれは、最高裁がこの判決をしたのは、あれは憲法上の権利、いわゆる法的救済の最後のとりでが裁判所であるということであります。ですから、その裁判所で裁判を受ける権利というものは国民の最低限の権利だ、この紛争の消費者問題でも全く同じことだというふうに考えておりますので、その点を十分考慮して対応を考えていただきたいというふうに思っております。

穀田委員 私は、この点は極めて大事な点だと思うから質問したわけであります。

 そこで、次に、消費者支援機構関西の西島秀向さんに質問します。

 先ほど、皆さん方の差しどめ請求訴訟における検討グループで何度も検討しているということだとか、それから、限られた人的、物的資源を活用して差しどめ請求訴訟を実施しているということが陳述されました。そこで、今度の制度について、濫訴と言われるような訴訟を提起することができるかということについて、実体験を踏まえてお話しいただければ幸いであります。

西島参考人 今、野々山参考人がおっしゃいましたけれども、まず、何をもって濫訴と言われるのかということ自体が非常にわかりにくいというふうに受けとめております。これだけはわかっていただきたいということは、新訴訟制度は、消費者が実際にこうむった被害分、これを回復する、できるだけということでして、消費者が被害分以上にもうけるというわけではないというのが一点目。

 それから二点目に、消費者団体も二段階目の最後までいってようやく費用を賄えるというだけですので、多額の利益を得られるわけではないということになっております。

 それから三点目、ケーシーズ、先ほど御説明しましたように、限られた人的、物的資源ということなんですけれども、そういう条件にありますので、差しとめ請求訴訟と同じような検討を繰り返した上で、二段階目の手続の負担を考えるとさらに対象事案を絞り込まなければならないというふうに考えております。

 先ほど申し上げましたように、差しとめ請求では、この六年間で六件というのがケーシーズ、適格団体全体でいいましても、十一団体で制度開始から六年たって三十一件というような状況です。

 それから四点目に、そういう意味で、一部では濫訴というものが非常に抽象的に懸念されているようですが、やみくもに訴訟を起こすということ自体、当事者である私たちには想像できないというところであります。

 五点目、最後に、むしろ心配なのは、現実的な濫訴の心配などないのに、不必要な濫訴防止の基準なりガイドラインなりつくられて、私たちの活動が阻害されてしまうということです。どうか私たちの活動を萎縮させないようにしていただきたいなというふうに思っております。

穀田委員 その限定性とその逆の効果も含めてお話しいただきました。ありがとうございます。

 そこで、経団連の阿部泰久さんにお聞きします。

 PL法のときも、差しどめ請求訴訟のときも、今、西島さんからお話ありましたが、抽象的な濫訴のおそれということが声高に言われている例もありました。これまで日本国内で、消費者から事業者に対する訴えで、これは濫訴だと思われる例を一つか二つ挙げていただければ幸いです。

阿部参考人 ございません。

穀田委員 ないということがはっきりしたということであります。

 そこで、次に消費者団体連絡会の河野康子さんにお聞きします。

 先ごろ、訴訟制度についての御要請で、消費者、事業者双方の利益になりますと述べておられます。事業者にとって積極的な意味があるということも提起だと思うんですね。その点をもう少し詳しくお話しいただきたいのが一つ。

 二つ目に、修正の動きがあるということについては皆さんよく知っておられます。そこで、二つの動きがあります。一つは、制度の濫用等によって経済活動に悪影響を与えないようにするための方策ということで、濫用があたかもあるかのような形で防止策を提示する動きがあると。これについて。

 もう一つ、先ほどもお話ありましたように、訴えを提起するに当たって、一定の数の対象消費者からの授権を有するという考え方、私自身はこの法律の持っている趣旨と大きく反すると思うんです。

 三つになりましたけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

河野参考人 まず、一つ目なんですけれども、この制度ができますと、事業者それから消費者双方に利益になるというのは、先ほど申し上げましたように、やはり、消費者が安心して購買行動に移れる、契約を結べるという環境整備には、この新しい制度は非常に役に立つというふうに思っております。

 先ほどから、経済活動が萎縮という言葉を伺っておりますけれども、これまで、消費者が少額多数でこうむってきた被害というのは、この日本の経済活動が萎縮するというふうな言葉とは全くそぐわない形の、本当にささやかな状況だというふうに私自身は感じております。

 本来、事業者が法令に反した行為により消費者の利益を侵害しなければ、この制度というのはワークしないという大前提で私たちはこれを見ておりますので、そういった意味でいうと、この制度ができて、事業者の皆さんも、自分たちの顧客に対してこういうふうに向き合おうということで、しっかりと改めて皆さんの会社の中のさまざまなルール等を見直していただく、そのことでより健全なマーケットになるのではないかというふうに思っております。それが一点目です。

 二点目は、私も、今先生が御説明してくださいました修正案というのがどういう形なのか、よく存じ上げませんけれども、濫訴を防止するということが書き込まれようと書き込まれまいと、私は、濫訴は起こらないというか、起こりようがないというふうに思っております。

 ですから、たとえ濫訴防止の措置というのが書き込まれたとしても、特定適格消費者団体の認定、監督のガイドライン等、制度運用の適正さを確保するためのそういったものは、何らかの形で決められるというふうに思いますので、そこに特段書いていただいても書いていただかなくても、制度運用上の制限になるというふうには私自身は思えません。つまり、濫訴が起こりようがないというふうに考えております。

 それから三番目の、第一段階でやはり実際の被害者からの申し出がないと訴えられないという件なんですけれども、その点は、当然のことながら、最初から何度も申し上げていますように、私たちは、一人一人、消費者被害を受けたなと思っても、なかなか訴訟まで個人では行き着かないというのは先ほどから何度も何度も述べているとおりでございます。特定適格消費者団体の皆さんの方でさまざまな情報網、それから個々の消費者の訴え、そういったデータを集めてくださいまして、その中から、これはやはり救済に値する、そういうふうに見つけてくださったものに対して最初のところはやっていただくというのが、やはり一番、消費者にとってみますと、現行の法制度のことを考えましても、助けられる道ではないかというふうに考えております。

穀田委員 では、最後に西島参考人にお伺いします。

 今ありましたけれども、一定の数の対象消費者からの授権を有する、ちょっと違うんじゃないかと私は思っているんですけれどもね。あっちゃこっちゃ話はしているんだけれども、明確な答えが余りなかったので、すぱっと言っていただければいいです。

 それともう一つ、法に基づく今後の訴訟についてのシミュレーションをしているという陳述がございました。私は、意思確認だとか実際の局面での大変さが本当によくわかりました。そこで大変だからこそ、適格消費者団体の方々が、消費者の方々の泣き寝入りがないようにするという立場での御努力に敬意を表したいと思うんですね。

 私は、さきの国会でも質問したんですが、財政的支援というのは、公的な補助それから援助制度が必要だと主張していたわけですよね。そうすると、大体政府というのは、控除の話とか適当な話をして、適当な話と言ったらちょっと悪いけれども、はっきりしないということなんですけれども、私は、もう一歩踏み込む必要があると言っているんですよね。

 いろいろな制度はあるわけですから、その辺の、もうちょっと知恵を出す必要があるんじゃないかと思っているんですね。その知恵は何かございませんかということ。この二つだけ。

西島参考人 一点目につきましては、今の制度でも本当に濫訴は懸念されないというふうに私どもは思っておりますし、逆に、対象を絞り込み過ぎかなというふうに消費者の立場からは考えておりますので、さらに訴訟になる制限を設けるというようなことは全く必要がないというふうに考えております。

 それから、先ほど、シミュレーションをしているということについて御質問がありましたけれども、特に、二段階目の通知、これを個別の消費者に対して行うときに、一段階目で相当の年数が経過した場合に、例えば、消費者が死亡してしまったり相続が生じたような場合だとか、あるいは、対象の消費者が大学生であった場合、大学生のときに被害を受けたというような場合、その後、卒業して、全国ばらばらになって、就職してどこかに行かれたというようになったりというような場合を考えたりしておるんですけれども、そういった場合、メールアドレスが変わってしまったというようなことがあったり、あるいは、個別に住所を追いかけてその本人と意思確認を行うというようなことを考えると、非常に大変だというようなことがあります。

 そういう意味では、消費者庁なりが、民間企業でコンピューターシステムで顧客管理を行っておられるような、そういった方法だとか仕組みというのをこの制度でもつくっていただいて、そういったシステムを通して特定適格消費者団体と消費者がスムーズに本人確認だとか意思確認ができるようにしていただけると非常に助かると思いますし、被害救済に非常に資するのではないかなと思います。

穀田委員 ありがとうございました。

阿部参考人 委員長、答弁の補足をさせてください。

山本委員長 阿部さん。

阿部参考人 先ほど、端的にございませんと答えましたが、そのような訴訟が勝ったことはないという意味でございますので、提起自体はざらにあると思います。

穀田委員 要するに、勝訴はなかったということであります。ということは、あり得ないということを私は言っておきたいと思います。

山本委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。

 きょうは、参考人の皆様には、大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。

 私は、さまざま省庁はございますけれども、特に、この消費者庁が扱う法案につきましては、しっかりと消費者の立場あるいは生活者の立場に立ったものであってほしい、またそうあらねばならないと思っています。消費者庁の立ち上がった経緯を踏まえても、そう考えるわけであります。

 まずはこの制度をスタートする見込みとなっているわけでありますけれども、今後の残された検討課題について、先ほどの陳述の中でも御指摘ございましたけれども、改めて、この制度をより実効性のあるものにするための今後の検討課題を四名の参考人の皆様からそれぞれのお立場でお聞かせをいただければと思います。

河野参考人 ありがとうございます。

 まず第一は、制度をつくっていただくことでございますけれども、本当に制度がしっかりと消費者のためになるということで申し上げますと、まずは、その制度の訴訟を担ってくださる特定適格消費者団体への情報面、財政面での支援というのをお願いしたいと思います。

 さらに、特定適格消費者団体と申しましても、私自身は、やっと最近、その現状が、こういうふうなことをしてくださっている団体だというふうにわかっておりますけれども、ほかの消費者団体と混同してしまっていたり、国民の間にしっかりと、この特定適格消費者団体の認知度が上がっていないやもしれません。ですから、この制度ができました暁には、しっかり、こういうふうな形で、少数の被害が泣き寝入りせずに回復できる仕組みが国で整ったんだよということを、ぜひ広く国民に周知していただきたいというふうに思っています。

 その後は、しっかりと、制度の中のルールにのっとって、まず一つ目の事案が本当にこの法律が意図したように動いていくこと、そのことが、事業者の皆さんにとっても、それから私たち消費者にとっても、一つの大事な道しるべとなって、今後、よりよい市場が確保され、安心して暮らせる、購買行動といいましょうか、買い物ができる環境が整えばというふうに感じております。

野々山参考人 まず、施行まで、あるいは今回、遡及制限ということが起こったことに対しての対応というのが必要だというふうに思っております。

 それは、一つは国民生活センターのADRの拡充であります。それから、対象から外れる方に対する周知、広報をきちっとするということ、これがまず一点であります。

 それから二つ目には、実際に施行をされた後、この制度がワークしていく、いわゆる実効化していくためのものといたしまして、一つは、やはりこれも同じく、二段階目の皆さんに対してきちんと周知していく制度を具体的に設けていく。適格消費者団体が周知をするわけでありますけれども、それを補充する制度がやはり要るというふうに考えております。

 それからもう一つは、先ほど何回も出てきておりますけれども、主体である団体に対する支援であります。これは情報面、PIO―NET等の端末の設置等の情報面のもの、それから各自治体との連携があります。それからもう一つは費用面の問題。これは通知、公告制度の費用負担や仮差し押さえの担保金に対する是正策ですね。そういうものを拡充していくということが必要かというふうに思っています。

 それから次には、将来の見直しということですね。この制度の施行を見て検討することになるかと思いますけれども、一点は、やはり通知、公告費用というのは、もう結論が出ているもの、本来、事業者の皆さんが自主的にやるべきものを団体がやっていくというたてつけでありますので、その通知、公告費用は事業者の方が本来負担すべきだというふうに私は考えております。こういうことをもう一度検討していただきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、通知、公告をする際には、消費者の方の、被害者の方の住所、氏名がはっきりしていないとわからない、個別の通知ができないわけですね。それを把握しているのは事業者の皆さんであります。その情報公開の制度、これは今回の法律の中にあります。ありますが、もしそれを拒否した場合、嫌だと言った場合のサンクションが低過ぎるんですね。三十万円の過料だけであります。命令がありまして、それを、命令違反にしても三十万円の過料であります。三十万円の負担でそれを出さなくてよいというのは余りに低いサンクションではないかというふうに考えております。これも検討していただきたい。

 それから四つ目は、やはり対象事案の拡大であります。

 先ほども出ておりますけれども、現在、直接の当事者であり、しかも、いわゆる身体型のもの、あるいは拡大型のものについては対象ではない。いわゆる代金だけを売り主から請求できる、これだけしかできません。ですので、やはり対象範囲が狭いというふうに考えておりますので、そこを拡充することを考える必要があるということであります。

 あとは、意見陳述で述べましたけれども、簡易確定決定というものがありますが、それを裁判所がした。それに対して、一定、この金額を払ってください、払いなさいという決定をするわけでありますが、その異議を出したときに、事業者が異議を出しても、その費用、追加の訴訟費用は消費者団体あるいは消費者が負担しなくちゃいけないという制度設計になっております。これも改善すべきだ、将来的にはぜひ改善を検討していただきたいというふうに考えております。

 以上です。

阿部参考人 まず、野々山参考人御指摘の、法律案第二十八条の事業者の情報開示義務でございます。

 相手方、すなわち事業者は、対象消費者の氏名及び住所または連絡先が記載された文書を所持する場合においてとございますが、先ほど申しましたとおり、今、個人情報保護法の関係で、このような大事な情報を事業者は持ちにくい状況になっております。

 そういう意味では、個人情報保護法の改正になるのか、あるいは解釈を明らかにすることになるのかわかりませんが、事業者が当然このようなユーザー情報を保持できるということを明らかにしていただきたいと思います。

 その上で、検討事項として二点申し上げますが、一点は、法律成立後、施行までに政省令、あるいは監督指針、さらには最高裁判所規則がしっかりとつくられることを期待いたしております。特に、政省令、監督指針につきましては、パブリックコメント等を通じまして、事業者からも意見を述べさせていただきたいと思います。

 もう一つ、最初にも申し上げましたが、実は悪徳商法等に対しては、意外とこのような仕組みは無力でございます。むしろ行政制裁でありますとか財産の差し押さえ、あるいは刑事司法の積極的な活用等が必要でございます。本当に悪徳商法等を根絶するためには別の方策をもっと幅広く、しかもなるべく早急に検討していただきたいと思います。

 以上でございます。

西島参考人 まず、特定適格消費者団体に対するやはり情報面、費用面の支援というのが必要だろうというようなことです。

 情報面のところでは、先ほど申し上げましたように、PIO―NETの情報をしっかり得られるようにするということだとか、あるいは、費用面のところでは、仮差し押さえの担保の件だとか、あるいは通知、公告費用、これがどうしても前払いで特定適格消費者団体が負担というような形になっておりますので、こういったところをしっかり支援していただくということがこの制度をしっかり運用できるということになるのかと思います。

 また、もちろん、こういった制度がこのようにあります、それを使ってくださいというような、そういった周知というものがきちんとできていくというようなことが必要だろうというふうに考えます。

青木委員 大変参考になる御意見をいただいたと思っております。ありがとうございます。

 今のお話の中にもありましたが、やはりせっかくこうした制度をつくっても、国民が知らなければ本当に活用ができないわけでありまして、まず、この制度があるという周知、また、二段階目の通知、公告の部分で、これは実際、どうやって消費者、国民に伝えていくかという、具体的な何かアイデアがもしございましたらお教えいただけますでしょうか。

 補充的なものが必要だということではあるんですけれども、実際、具体的にどういったことが考えられるか。今の時点で、わかる範囲でもしお聞かせいただければ助かります。四名の参考人の皆様にお願いします。

河野参考人 一つは、時間がかかることではございますけれども、学校教育等を含めて、さまざまな教育現場で、消費者にはこういう権利があるんだということをしっかりと伝えていくことが大事だと思います。

 それから、行政の窓口、消費生活センター、そういったところで、まずは、国民というか消費者との間に立ってくださるその一番最前線のところで、この制度に関する理解を深めていただいて、もしかしたらこれで救われるかもしれないよというふうな形で伝えていただくこと。

 第二段階目のその公告に関しましては、先ほども御質問いただきましたけれども、本当にいい方法がないだろうかと。期間は短いですし、もしかしたら、救える方も、気づかないままに見逃されてしまうかもしれない。せっかく第一段階目で勝訴して第二段階目に進んだとしても、そこで見逃してしまうということは、そもそも制度上は非常に残念な結果になってしまいますので、そこは何とか、事業者の方の情報開示ですとかいろいろ含めまして、お知恵をいただければというふうに思っております。

 それで、先ほど、第一番目の質問でちょっと言い漏らしたことがございます。簡単にちょっとつけ加えさせてください。

 この制度はきちんと働いていただきたいというふうに思います。しかし、先ほど阿部参考人もおっしゃられていたように、救えないものもあると思います。それは本当に、悪徳なというか悪質な事業者から受けた損害というのはなかなか本制度では助けてもらえないというふうに思っておりますので、この制度の成立と同時並行的に、仮差し押さえでも対応困難な、本当に悪質な事業者による財産の隠匿ですとか散逸に対応するために、ぜひ、行政機関による財産保全策について具体的に検討していただきたい。というのは、この制度がワークし、さらに救えない人たちも助けるという意味でのセーフティーネットになってくれると思いますので、そこもお願いしたいと思っております。

野々山参考人 私は、最大の宣伝は、実際にこの制度が動くことだというふうに思っております。実際にこの制度によって消費者の何人かの方が利益を得た、そういうことがあって初めて周知がされていくだろうというふうに思います。その意味では、できるだけ早い施行というのが重要だというふうに考えております。

 ただ、それ以前にも、もちろんさまざまな周知方、広報はしなくちゃいけないと思います。これは、出前講座というものがありまして、各センター、それからあと国民生活センターも一部支援をしているわけでありますけれども、そういうものについて、そこで具体的に、起こり得る事例を挙げて、出前講座できちっと知らせていくということ。

 それと、先ほど河野参考人も申し上げたように、学校教育とかそういうところにうまく組み込んで、そのことを、まだ日はあるわけですから、その間にいろいろなところで知ってもらうということですね。やはり、身近な消費生活センターから発信をしてもらうということが重要じゃないかというふうに考えております。

 その際には、難しい話ではなくて、こういうふうになるんだという、実際の事件を使ったシミュレーションを設けて、そこでわかりやすく説明していくことが大事じゃないかなと。できれば、放送媒体等で例とかを出したり、あるいは何らかの番組でやってもらったら、それは一番いいことかなというふうに思っております。

阿部参考人 事業者に対する広報という立場から申し上げますが、特に中小企業等にどうやってこの仕組みを知らせるかにつきましては、やはり、中小企業団体、全国各地にございます商工会議所、商工会、その他の中小企業団体にまず知ってもらわなければならないと思います。それは、中小企業庁と消費者庁で御連携の上でぜひとも取り組んでいただきたいと思います。

 以上でございます。

西島参考人 私どもは、やはり、適格消費者団体としての立場から申し上げますと、これまでに、差しとめ訴訟に至るまでに既に一定の改善を得ているというのが例えば私どもで六十六件あるわけですから、こういった事例について、国民の方、もちろん事業者の方も含めて十分御理解いただくというようなことが一番実際的な周知ということになるのではないかなというふうに思っております。

青木委員 大変ありがとうございました。

 時間になりましたので終了いたしますが、大変貴重な御意見をいただきましたので、それを踏まえまして、また一人でも多くの被害者を救えるように頑張ってまいりますので、今後ともどうぞ御指導よろしくお願いいたします。

 大変ありがとうございました。

山本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百八十三回国会、内閣提出、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局総括審議官三井秀範君、金融庁総務企画局参事官長谷川靖君、消費者庁次長山崎史郎君、消費者庁審議官川口康裕君、消費者庁審議官菅久修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 さて、この法律案、御承知のとおり、さきの第百八十三回通常国会に提出をされまして、本委員会でも既に五時間四十分の審議をさせていただき、継続審議となり、きょうを迎えているというところでございます。各党各会派から法案の内容についての質疑も行われたものでございます。

 この法律は、平成二十一年六月の消費者庁の設置法の附則において定められております多数の消費者被害を救済する制度として、今般、法制化をされる運びとなっているものであります。長い年月の成果であります。さまざまな議論がさまざまな立場からされた成果として、今回の審議となっておるわけでございます。

 私は、今国会において本法案が速やかに成立をされることが最も我が国の国益に資するものだという理解をしておりまして、本日もその前提で質問をさせていただきたいと考えております。

 せっかく制度をつくって法律を施行していくわけでありますので、私は、このつくった制度が骨抜きになったりするようなことがないように、そして、今後も不断に見直しをした上で、しっかりと国民生活に寄与するような法律としてつくられ、運用されていくことが重要であると考えています。

 消費者被害の回復のために行われることが必要である、これは改めて言うまでもない、もちろんのことでありますが、優良な事業者、というよりも、普通に仕事をしている善良な事業者の事業の運営と我が国の経済活動、さまざまに地域で行われている経済活動が促進されるように、この制度が有効に機能しなければならない、そう思っています。

 本日は、どうしたらさらにしっかりと機能するような制度であり得るのかという観点で御質問させていただきます。

 まず、この法律の構造について、最近の事例をひもといて、簡潔に理解をして、確認をさせていただきたいと思います。

 株式会社カネボウ化粧品が製造、販売をした美白の化粧品、これによって肌がまだらに白くなるというような白斑被害が生じているという件がございます。この件は、同社が公表した資料の報告によりますと、現状、既に一万一千九百四十六名の方にこのような症状が確認されているということでございまして、多数の方が被害に遭われている多数消費者被害案件であると言えると思います。

 この消費者被害案件、私も弁護士の出身であります。大臣も弁護士の御出身でございまして、いわゆる、こういう案件が出ますと、我々の業界ではよく弁護団物なんというふうに言ったりするんですけれども、被害対策弁護団などを組織して対応したりすることがさまざまにございます。

 私も過去にも、そういう案件、少し古いものですと、例えば、お金を集めるKKC、経済革命倶楽部という事件があったり、オレンジ共済だとかココ山岡とかいろいろな事件があって、事務局長なんかを務めさせていただいたという経験もございます。

 各地で弁護団を組織して対応していく、まさに多数の消費者被害を救済するために、これまでさまざまに弁護士も、行政の皆さんを交えて活動がされてきたというところです。

 今回のカネボウの事件を前提に、今審議をされている訴訟制度はどういう扱いになるのかを確認したいと思います。

 例えば、百貨店の化粧品売り場で当該の商品を購入して被害に遭われたという方がたくさんいらっしゃる。この場合に、被害に遭われた方が、もちろん集団訴訟になるわけですが、誰に対してどういう被害回復ができるのか。共通義務の確認訴訟の相手方というのは、販売契約をした百貨店さんなのか、製造販売をした会社なのか、またさまざま原材料を提供した会社なのか、どういうものが内容として請求できるのか。釈迦に説法ではございますが、まずここを確認するところから始めさせていただきたいと思います。

 そして、今回審議をされているこの訴訟制度の意義、目的、こういうところにも御言及いただければと思っております。大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 百貨店で購入した場合には、本法律の三条三項に被告とする者が記載されておりますけれども、販売契約の相手方でございますので、百貨店が債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求の対象となり得るということになっておりまして、製造会社は対象となりません。

宮崎(政)委員 この法制度の中では、対象となるもの、つまり返還を求めるものとしては化粧品代金に相当する金額の返還だけに限られてくる、こういう理解でよろしいでしょうか。

森国務大臣 そのとおりでございます。それについては三条に書いてありますけれども、請求できないものが二項に書いてありまして、例えば代金以外の治療費でございますとか、治療に要した交通費、休業補償、慰謝料などは本制度の対象とはなりません。ただ、これは本制度によって対象とならないということであって、もちろん個別に請求をすることは可能であります。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 きょう午前中に参考人質疑もあったわけでございますが、その中で、実際に被害に遭われた人の回復の思いとの関連からすると、さまざまに意見のあるところでもあります。

 実は、この法律は附則第三条で、法施行五年経過した時点において、この法律の施行の状況について検討を加えて、必要があるときは所要の措置を講ずる、こういうようなたてつけになっております。

 そこで、この検討対象としての施行の状況というものはどういうことを想定しているのか。例えば、この請求の対象にどれだけがなるのかという意味での法三条の対象となる請求、こういうものも検討の対象であるとか、必要な措置の対象になり得るとか、この点についてはどのような検討がされておるんでしょうか。

川口政府参考人 お答えいたします。

 附則第三条でございますが、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」ということになっております。

 検討課題については大変広うございます。この法律は九十九条ございますけれども、全体について検討対象となり得るということでございまして、まさに施行後五年間の施行状況を幅広く踏まえまして検討課題を設定し、その検討課題についてじっくりと、しっかりと御議論いただくということでございます。

 なお、検討の枠組みとしては、消費者、事業者など、幅広い関係者の意見を反映できるようなものにしたいと考えております。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 請求の対象という意味でも、この制度、せっかくつくるわけでありますので、不断に検証、検討が必要だと私は思っております。

 次に、今度は訴訟追行をする主体という意味で、この法律が十分に活用されるのかという点での質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この主体でありますが、特定適格消費者団体であります。これは、平成十八年に消費者契約法が改正されて導入されました消費者団体訴訟制度に関連するところからひもといてお話をしたいと思っております。

 実は、特定のつく前の適格消費者団体、これが差しとめ請求権を行使するという十八年法改正で認められた差しとめ制度、これは十九年に施行されてから六年たつわけでありますが、実績は三十一件というところであります。多いか少ないか、これは意見の分かれるところかもしれませんが、私は少ないという評価をさせていただいております。さまざまに要因もあると思いますが、一つの原因になるのは、適格消費者団体の数が全国で十一団体である。例えば、東北地方、四国には適格消費者団体は存在しないわけでありまして、地域的な広がりという点でも欠いている。

 今回、訴訟制度の主体となる特定のついたこの特定適格消費者団体は、適格消費者団体が前提となっているわけであります。まず、その前提として、適格消費者団体をふやしていかないと、実は、本法で定める制度も、機能する主体が十分に確保できないということによって、消費者被害の救済に資さないということも懸念されるところであります。

 質問させていただきたいのは、この消費者被害回復を図るための適格消費者団体をふやすという趣旨の取り組みを政府としてされておられるのか。また、適格消費者団体の業務が推進できるような支援体制が現在とられているのか。これについて、政府の現在の取り組みの状況をお聞きしたいと思っております。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本法の手続追行主体につきましては、先生御指摘のとおり、適格消費者団体の中から新たな要件を満たすものを内閣総理大臣が認定するということでございます。

 適格消費者団体における差しとめ請求制度でございますが、平成十九年六月の消費者契約法施行により運用が開始され、それ以降、十一団体を政府として認定しているところでございます。しかしながら、適格消費者団体でございますが、東北、北陸及び四国にはただ一つもないという状況でございまして、いわゆる空白地域が存在している状況でございます。

 政府といたしましては、設立に関する支援といたしまして、消費者庁の二十五年度の予算におきまして、地方消費者行政活性化基金を活用した適格消費者団体設立促進事業を推進しているところでございます。現在七県で取り組みが行われているところでございます。

 こうした支援事業によりまして、各地で活動している適格消費者団体の卵のような団体、そういう団体がございますが、こういうものが適格消費者団体となっていき、空白地域が解消されるとともに、ひいては、本制度の前提になります、主体であります特定適格消費者団体の設立にもつながると考えておりますので、今後とも引き続き、このような支援の取り組みを促進してまいりたいと考えているところでございます。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 この適格消費者団体ができますと、今回の法案では、特定適格消費者団体が適格消費者団体と合併をすることによって、特定適格消費者団体としての主体をふやしていくということも念頭に置かれております。七十一条三項であります。

 やはり法が次のステップを考えているとなれば、その前提となるものもしっかりと今の制度の中でつくり上げていくことは必要ではないかと思っておりますので、今お答えがあったような形での取り組みもぜひ継続をしていただきたいと思います。

 少し飛ばしまして、次、法施行に向けての準備措置についてのお話をしたいと思います。

 本日の午前中の参考人質疑においても、事業者の皆さんの方から、本法案への懸念の声が聞かれております。新しい集団的な訴訟制度ができるということは、事業者の方からすれば法務リスクと言えると思います。訴訟に巻き込まれないようにするために、もちろん適切な業務運営をするわけでありますけれども、無用なリスクを抱えないようにしながら事業を進めていく、これは当然やらなければいけないことであります。

 懸念払拭という意味で、午前中、実は具体的なお話がありました。経団連の会員企業のような大企業ではなくて、我が国の企業の大部分を占める中小企業を念頭に、本法律の目的や意義などが周知されることが絶対的に必要なんだという指摘がございました。

 そこで、附則の第一条に、施行期日、これは公布の日から起算をして三年を超えない範囲で定めるとありますけれども、この期間において、政府において、事業者側の訴訟リスク懸念へ対応するために、特に中小零細の事業者の皆さんに対して、適切な業務遂行をしていただいて法務リスクを軽減するという意味で、いかなる対応策をこれからとっていこうとお考えであるのか、事業者の皆さんが懸念を持っておられるところでもありますので、今御検討のところを御説明いただければと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、民事訴訟法の特例ということでございまして、ほかの分野にもない新しい二段階型の仕組みを導入するということでございます。

 ですから、まず、この制度の仕組みの趣旨、目的、それから内容、これ自体を周知するということで、先ほど参考人からも御意見がございましたが、全国の事業者団体、特に中小企業の団体の皆様の御協力をいただきまして、消費者庁を中心に説明会を開催していきたいというふうに思っております。

 さらにその上で、本法のいわば手続法部分だけではなくて、本法の対象になる実体法、消費者契約法等の実体法につきましても、この際、既に施行されているものではございますが、しっかりと個々の事業者に点検していただくという意味で、その実体法の中身、どういうものが違法になるか、適法になるかということについてもしっかりと御説明をしていきたい、そういうことを考えている次第でございます。

宮崎(政)委員 こういう新しい制度ができますと、よく各地各地でシンポジウムみたいなものが開かれるんですけれども、実際、事業者の立場からしますと、このシンポジウムというのはそれほど周知の効果としてはないと思います。むしろ、膝を突き合わせるような形での説明が求められていると思います。商工会、商工会議所などを十分に活用していただきまして、それぞれの事業者さんが十分に理解が果たせるようにする。

 法務リスクとして勘案するところは、それぞれの事業者でずれてくると思うんですね。ですから、大きな会場でシンポを打つというよりも、既存のものであれば、やはり商工会のようなものをしっかりと活用していただいた施策の展開というところをぜひ念頭に置いていただきたいというふうに要望させていただきたいと思っております。

 先ほど指摘をさせていただきました平成二十一年六月の消費者庁の設置法の附則では、消費者庁関連三法の施行後三年を目途として、加害者の財産の隠匿または散逸の防止に関する制度が、今回の多数消費者被害救済制度と横並びで、制度の検討に加えて、必要な措置を講ずるものの対象となっております。実は、午前中の参考人質疑の中でもこの指摘がありました。こちらの方がなければ、実際のところは、財産が散逸してしまえば被害の回復はやはり図れないことになるんだ、過去の例においてもそういうことは何度も散見しているんだ、だからこちらは重要なんだという指摘がありました。

 この附則が示しているとおり、単に訴訟制度だけをつくったとしても、加害者のもとで財産が隠匿したり散逸したりしてしまえば、それが故意や悪意でなかったとしても、例えば事業者が事業再編をしたというような場合であったとしても、その関連で多数の被害が、事業再編とは別ですけれども、多数の消費者被害が発生しているというようなときに、結果として被害回復が図れないという事態も想定されるわけであります。

 ですから、私もかかわりました、大臣もかかわられておられましたが、実は、過去の消費者事件をやるときには、こういうことで、手をつけるときに、どうやって責任財産が散逸しないかということに最も傾注をしてから事件処理に入るというのは鉄則であったわけであります。だけれども、実際は、この責任財産を押さえるというのは非常に難しい、だからこそ法整備が必要になっているというわけであります。

 この加害者の財産の隠匿または散逸の防止に関する制度、本年、報告書が出たというところまでは見聞しておりますが、今後どうやって進捗をさせるおつもりであるのか、森大臣の御決意を伺いたいと思います。

森国務大臣 宮崎議員、私と同期の弁護士でございまして、先ほど、かかわっておられたKKCとかオレンジ共済とか、ココ山岡とかも私も一緒にやっていた事件ではございますけれども。

 これまでの消費者事件に関する御尽力に敬意を表しますけれども、その中の御経験から今出た質問だと思いますが、この責任財産のいち早い凍結というものが求められる中なんですが、これは平成二十五年六月十四日に取りまとめられました消費者の財産被害に係る行政手法研究会、こちらの報告書において、加害者の財産の隠匿または散逸の防止のための方策として、財産の保全・凍結命令制度、供託命令制度や、行政庁による破産手続開始申し立て制度などが検討されているところでございます。

 これについてはさまざまな視点からの御指摘もございますけれども、消費者庁では、こういう指摘を踏まえまして、関連する法制度のさらなる調査研究を行うなどして、検討を前向きに進めているところでございますので、引き続き、加害者の財産の隠匿または散逸の防止について制度を検討してまいります。

 訴訟制度だけできても、これがないと意味がないということではございませんで、やはりこの集団的訴訟制度ができれば、最初に消費者が、一消費者、一人だけだと、資産がない、情報がない、そういう中で、裁判をなかなか起こせない、泣き寝入りしてしまうというところは一歩進む。それから、第一段階の訴訟を特定適格消費者団体ができるというところで、今までよりは、私たち消費者弁護士が、一生懸命、被害者の相談を受けてから弁護団を結成してやるというその時間的なところが短縮をされますので、訴訟制度については意義があることでございます。

 このような中で、衆議院の消費者特委員会におきましていち早い審議入りをしていただいたことに、委員長初め、理事、委員の先生方に感謝を申し上げるとともに、迅速な成立をしていただきますように、お願いを申し上げる次第でございます。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 しっかりと生んで、元気のいい活動ができるような制度へと、この委員会での審議を通じて充実させたいと思っておる決意を述べまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 前回の通常国会に続きまして、今回も、この臨時国会、消費者問題特別委員会に所属をさせていただきました。皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 前回、通常国会で私も質疑に三十分立っておりまして、この法案というのはほぼ論点が出尽くしたかなという感がありました。しかし、六月に一度質問させていただいて、きょう久々にこの法案の審議ということで眺めてみますと、六月に私が思った以上に、この法案の必要性というものを感じております。また、きょうは参考人の皆様のお話を聞いても、やはり消費者被害というのはなかなか回復困難なんだな、この制度は必要だなということは感じております。

 しかし、先日、私も弁護士資格を有しておりまして、福岡に事務所がございます。ちょっと時間があるときに立ち寄りまして、最近どんな案件をやっているのか、所属している弁護士に聞きましたら、未公開株式の損害をやっていますと。九百万、会社の社長さんが投資をして、内容証明を送ったら、三十万返ってきた。その後、裁判をしようとしたら、訴状が届かずに、結局、逃げられている状態でございまして、先ほど御指摘ありましたけれども、やはり本当の意味での、悪徳商法を行ったり、悪徳な業者に対しての効果というものも考えていかなきゃいけないなというふうに経験したところでございます。

 ただ、この法案ができますと、やはり法案ができることによって、悪徳業者等へ対する抑止力というものは非常に強うございますし、実際、体力のある会社、また、全ての取引が不法ではなくて、一部の商品が欠陥があったとか不法な取引であった場合においては、相手方の、被告の会社が存在するわけでございますので、やはりこの必要性というのは感じております。

 ですので、消費者法ニュース等にも大賛成の立場から寄稿させていただきましたけれども、ただ、やはり聞いておりますと、濫訴の防止という点、そしてもう一つ、これは自民党の部会でも問題になったというふうに聞いておりますが、やはり弁護士費用、たくさんの費用を弁護士が取って、実際に被害回復に当たらないんじゃないか。これは我が公明党の部会でも出た論点でございます。

 ですので、もう一度、濫訴の防止、そして弁護士の費用、いわゆる実際の被害回復という点について御質問をいたしますけれども、やはりこれは、この濫訴、経済活動への影響となりますと、アメリカのクラスアクションというものがどうしても引き合いに出されてしまいます。

 アメリカでは、今現在、約二十兆円を超える、このクラスアクションによる、集団的訴訟による経済的損失が企業に出ている。日本でも、この法案ができますと、慶応大学の岩本教授が試算されておりますが、十兆円ぐらいの経済的損失が出るんじゃないかと言われております。

 そこで、改めて、このアメリカのクラスアクションと今回の本法案がどこが違うのかを、もう一度、整理という意味で明確にお伺いしたいと思っております。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろなところで違っておりますが、重立ったところを申し上げます。

 まず、本制度は、原告になることができる者、これを適格消費者団体の中から新たに内閣総理大臣が認定した特定適格消費者団体に限っております。これに対しまして、米国の制度では、所定の要件を満たす被害者であれば誰でも訴えを提起することができるという違いがございます。

 次に、本制度の対象でございます。

 本制度は、対象となる請求を消費者契約に関するものに限定いたしまして、損害賠償請求については、拡大損害、この中にはいわゆるPL、製造物責任等が入りますが、拡大損害、逸失利益、人身損害、慰謝料を除外しております。一定のものに限っているということでございます。これに対し、米国の制度では、対象事案が限定されていないため、消費者契約に限らず、また、製造物責任、拡大損害等も広く対象となるということでございます。

 さらに、アメリカにおいては、これは司法制度一般の問題でございますが、いわゆる懲罰的賠償制を採用しており、損害額を大きく超えた支払い請求が認められ得るため、特に製造物責任などにおいて損害賠償額が高額化するという点が指摘されております。

 最後でございますが、さらに本制度は、あくまで手続に加入した対象消費者のみに判決の効力が及ぶいわゆるオプトインを採用しておりますが、アメリカの制度では、当該手続からの除外を申し出ない限り判決の効力が有利にも不利にも及ぶとするオプトアウト型という違いがございます。

 以上のように、本制度は、アメリカの制度とは大きく異なるものとして設計したものでございます。

 以上でございます。

浜地委員 ありがとうございます。明確なお答えをいただきました。

 まず一番目の原告適格、いわゆる適格消費者団体しかできないということでございますので、そうなりますと、この適格消費者団体の厳格な認定、監督というのがやはり重要だろうと思っています。しかし、先ほど宮崎委員がお答えになりましたように、そうはいっても、ない地域もございますので、適切な適格消費者団体の育成ということ、ここがやはり肝であろうと思っております。

 拡大損害、いわゆる損害が金銭賠償だけに限られて拡大損害というものができないということでございますが、これは別訴でできるということでございますので、このあたりがいわゆる被害者の権利回復に制限をするというものではございませんので、こちらの方はやはりクラスアクションと違うというふうに認識をしております。

 それと、やはり懲罰賠償がないというところは非常によろしいかと思っています。やはり、懲罰を食らうということは、企業イメージにとって非常にダメージがあります。アメリカで見ていますと、やはり損害賠償の膨らむ範囲がこの懲罰賠償のところという指摘もございますので、これが今回入っていないということで、アメリカのような懸念がないというふうに私も受けとめております。

 だからこそ、しっかりこのガイドラインをつくられて、先ほどもお話がありましたが、この法案ができましたら、理解促進、周知徹底に邁進していただければ、そのように思っております。

 次の質問に移らせていただきますけれども、これは前回も私、ちょっと質問したんですが、これは第一段階と第二段階で分かれる手続ということで、民事訴訟法上、中間判決とかいう、一応、争いを一回とめて、争いの前提を確定するみたいなことはあるんですが、権利義務だけを第一段階でやり、その後損害を認定していくというこの二段階というのは、恐らく、日本の民事訴訟史上、初めての導入であろうかと思っております。

 そうなりますと、この第一段階での共通の権利義務、これが例えば、前回も質問しましたが、ある支店単位であればわかりやすいですが、この営業マンだけがそういう売り方をしていたとか説明義務があったとかというふうに、どの消費者を対象に損害賠償の義務があるのかということは、かなり難しいんじゃないかなというふうに私も実務の経験上感じております。

 これを裁判所にこういうやり方でやりなさいという指導をするのは、これはやはり行政が司法に介入することになりますので、実際に裁判所の運用としてここは大丈夫なのかなというところがございますが、対象消費者の範囲の確定、これは厳格に行えるのかどうか、ここについて御質問をさせていただきます。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 対象消費者の範囲でございますが、これにつきましては、一段階目の手続における訴えの訴状及び判決書に記載される。このほか、二段階目の手続において、簡易確定手続開始の決定書、簡易確定手続開始の官報公告、申し立て団体による通知、公告において記載される重要なものでございます。

 これらの記載につきましては、消費者にとってみずからが対象消費者となり得るかを知るために不可欠な情報でございますし、また、事業者にとっても、どの程度の金銭支払い義務を負うことになるか、訴えが提起された場合に、把握して、防御の指針を立てるために不可欠な情報でございます。

 このため、対象消費者の範囲につきましては、ある者が対象消費者に該当するかどうかの判断が可能となる程度に客観的に特定されることが必要であるというふうに考えておりまして、例で申し上げますと、学納金返還請求事件の事案について申し上げますと、対象消費者の範囲としては、平成二十四年三月一日から同月三十一日までに被告大学との間で在学契約を締結し、それに基づき金銭を支払った後、同日までに同契約の解除の意思表示をした者といった程度の記載によって特定されることが求められると理解しております。

浜地委員 ありがとうございます。

 これは、実際に実務の運用が始まって、この特定が曖昧であったりとか、または厳格過ぎるという問題が起きるでしょうから、そのあたりはしっかりとまた検証が必要だとは思っておりますが、そうなると、実務の運用が始まって、まだ裁判所もなれていない段階で、この契約者全部じゃないよ、例えば対象消費者は本来狭いはずだといったときに、これは不服申し立ての方法というのはどの段階でできますでしょうか。もう一度確認のために聞いておきたいと思います。

川口政府参考人 一段階目で対象消費者を確定した判決というものが出た場合、これは、民事訴訟法に言うところの終局判決というふうに理解しております。終局判決ということになりますと、不服の利益を有する当事者は当然に上訴することができる。これは、民事訴訟法の例えば二百八十一条ですとか三百十一条によるものでございます。

 また、本制度では、一段階目の手続に係る上訴が係属している間は二段階目の手続は開始しないというふうにしているところでございまして、その先は進まない、まず上訴に係る手続を行うという制度を予定しております。

浜地委員 ありがとうございます。

 対象消費者の範囲、第一段階での共通の権利義務がある範囲について不服があればその段階で上訴をし、そうなると、手続が進まずにストップをして、もう一度やり直すことができるということでございますので、このあたりもやはり周知徹底の必要な部分であろうと思っております。

 次の質問に移らせていただきますが、これも前回質問させていただきましたが、訴訟費用の問題です。

 一般の民事訴訟では、一億円の請求をするには、訴状に張る印紙代は三十二万円でございます。しかし、本法案では、財産上の請求ではないもの、要は、第一段階の共通の権利義務ではそのようになっておりまして、実は一万三千円で済むということになってしまいます。ここはどうしても、やはり、私も実務をやっておって、実際に裁判を起こすかどうかというときに、弁護士費用のみならず、訴訟費用というところでやるかやらないかというのを決める方も多いわけですね。そうなりますと、非常にハードルが低いなと。かつ、第二段階に行きますと、要は、金額を確定する部分に行くと一人千円で済むということで、そういった意味では、非常に訴訟するハードルが低い。

 これは集団的訴訟として消費者被害のために必要なんだという必要性はわかるんですが、許容性の部分、なぜこういった解釈ができるのかということについて、もう一度ちょっと聞いておきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

川口政府参考人 一般的に、訴訟の目的の価額につきましては、訴訟における請求が全て認容された場合に原告に生ずる経済的利益であるというふうにされているところでございます。

 本制度、第一段階に当たります共通義務確認の訴えでございますが、これは事業者が対象消費者に対して金銭支払い義務を負うべきことを確認するというものにすぎないため、このため、原告である特定適格消費者団体に経済的利益が生ずるものではないということになるわけでございます。

 このため、訴訟の目的の価額に関する解釈上の疑義が生ずる余地のないよう、共通義務確認の訴えでは、「訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。」というふうにしたものでございます。

 なお、訴訟のハードルが低いということについては別途手当てをするという考え方でございまして、濫訴防止ということで、本制度では、手続追行主体や対象事案について限定を加えているほか、手続追行主体となる特定適格消費者団体に対し、制度の濫用を禁止する規定を設け、内閣総理大臣が行政監督を及ぼすなど、不適切な訴訟提起を防止する措置を何重にも講じているところでございます。そういうことで、別の場所で事業者の活動に不測の影響が生ずることのないよう制度設計をしたところでございます。

 以上でございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 今聞いておって、私は若干わかりましたが、多分なかなかわからない説明だった。要は、結局、被害者が原告じゃなくて、消費者適格団体が原告なので、そこにお金が入るわけじゃないからそれでいいんだということだと思うんですが、ここは経済界からも結構どうなんだという声が上がっておりますので、そういったお答えも含めて、わかりやすいように説明を今後徹底していただければまた理解も深まるんであろう、そのように思っております。

 ちょっと早いですが、最後の質問に入ります。

 弁護士費用の件について、最後、お話をさせていただきます。

 前回、森大臣に質問させていただいて、私が、たくさんの費用を弁護士が取って、実際に被害者のもとに戻る分が少ないと意味がないという話をして、例えば、法テラスという、一般的に言うと低い報酬での基準でやったらどうかと言いましたら、森大臣の実際の被害者救済の御経験から、法テラスぐらいもらえるんだったら喜んでやりますよというぐらいのことで、そんなことじゃなくて、本当に、被害者救済のためにはもっと安い弁護士費用でやられているんだという熱い思いを聞いて、私はもうそれ以上の質問ができずに、わかりましたということになったんですが、その後、どうでしょう。

 まだ法案はできておりません。実際に、弁護士費用、弁護士が取り過ぎだと、実際の被害者に戻らないという声があるのはいろいろなところでお聞きになっていると思いますが、まだ法案はできておりませんが、このガイドラインを作成されるということで聞いておりますが、その後、方向性として、大きな方向性で結構ですが、少し方向が出てきたのであれば、お答えできる範囲でお願いいたします。

森国務大臣 この特定適格消費者団体が弁護士に報酬を払うことになるわけですけれども、それは、実際問題として、団体が消費者から得た報酬費用から充てられるものになりますと考えられますから、これについてガイドラインをつくっていきますというふうにお答えをいたしました。そこで、弁護士報酬が高くなり過ぎるということ、これはもうとんでもないことでございますから、そうならないように、一定の上限を設けてまいりたいと思います。

 具体的にはどのような上限になるかというと、例えば、報酬または費用の基礎とすることができる費目を具体的に定めまして、その積算により算定をする方法とすること、さらに、消費者の人数や損害額、そして事件の規模等を勘案して、最終的に確保されるべき消費者の取り戻し分、これを、必ず確保する分というものを一定額以上とするということを定めていくということで、上限をしっかり決めていくということを考えております。

 いずれにせよ、このガイドラインについては、今後、消費者団体の関係者、そして事業者団体の関係者、学識経験者等により構成されます検討会において内容をしっかりと精査してまいり、パブリックコメント等も行った上で策定をしてまいりたいと思っております。

浜地委員 ありがとうございます。

 今大臣の方から、取り戻し分の割合というような言葉が新たに出たと思います。

 要は、弁護士費用というのは、取った分の何割、取った分の一割だったりしますので、大きい訴訟であればあるほど取り分が大きい、実際に手に入る金額が大きいということで、実際に実務をやっている立場からいうと、大きい訴訟が来ると少し体が締まるというか。ちょっとおかしいんですが。

 ただ、被害者救済となると、金額が少ないから取り分が少なくなる、ではやらないでおこうとなってしまうと、全く意味がございません。実際に、金額が大きいものだけをとりに行こうというと意味がございませんので、やはり、金額が大きくなる部分については、取り戻しの割合をぜひふやしていただくようなガイドラインをつくっていただいて、結局は、大きい訴訟だろうが、金額が大きかろうが小さかろうが、被害者の救済のためにしっかり弁護士が動くという制度にすることが大事だろうと思っておりますので、ぜひ意見を取り入れていただいて、ガイドラインをつくっていただければと思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 民主党の中根康浩でございます。

 集団的消費者被害回復訴訟制度を設けるこの法案、既に五時間四十分、きょうの分も合わせれば六時間以上、審議をされてきたというふうに聞いております。

 私自身は、この委員会に初めて所属をさせていただきますので、この経緯を十分把握していないというところがあるかもしれませんが、あくまでも私は、弁護士ではありませんで、一消費者、一生活者、この立場から質問をしてまいりたい、そんな思いでございます。

 論点は出尽くしたということも今前段の質問者からお話がありましたけれども、重なる部分もあろうかと思いますが、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

 まず、この委員会にかかわるのが初めてでございますので、消費者庁そのものについて少し言及を申し上げたいと思いますけれども、私が申し上げるまでもないわけなんですが、各省庁縦割りの消費者行政の仕組みを見直し、消費者政策の司令塔として平成二十一年にできた新しい組織であるわけであります。つまりは、最も今日的な課題に応えることが期待されている役所で、この四年間、少子高齢社会やあるいはIT社会、さまざま多様性や複雑性が増している社会の中において消費者問題に取り組まれてきたということは、大変御苦労が多かったことと思います。

 ただ、相変わらず消費者問題は、次から次へと続発をして、一層悪質化あるいは巧妙化しているわけであります。

 きょう、きのう、おととい、この数日間のあの例のにせメニュー問題でも、謝罪会見はしておりますけれども、率直にといいますか、被害者の方々に素直におわびをしている姿勢には見えない。さまざまな言葉を弄して、自分にはあたかも責任がないかのようなことでごまかそうとしておられるわけであります。

 こういったそれぞれの表にあらわれてくる事件にもわかるように、加害者側は、弱い立場の人をターゲットとして、信頼している、信用しているという、大変、何というか、まさに善意につけ込んでいる。あるいは、金銭的被害だけではなくて、この消費者問題というのは、時には、だまされた方が悪いというような風潮もまだまだなきにしもあらずでありますので、家族とかあるいは人間関係とかも損なったり、自分を責めたりということで、少額の被害であるような事件であったとしても、場合によっては最悪の事態、自死というか自殺というか、そういったようなことまで精神的に追い込まれてしまうというのが、この消費者問題の一つの注意しなければならないことだと思っております。

 こういった被害者を救う救世主として登場したのが消費者庁だということでありますが、しかしどうも、まだまだ、消費者庁ができてよかった、社会がよくなった、こういう国民の声は余り聞こえてこないというのが本当のところだと思います。私は、もっと消費者庁は大胆な動きをしてもらってもいいんじゃないか、もっととんがってもらってもいいんじゃないか、こんなふうに思います。

 なかなか、四年たっても消費者庁設置の成果の実感がないということなんですが、つい先日、東京新聞十月二十四日、阿南長官のインタビュー記事が掲載をして、たまたまこれを読ませていただいたんですけれども、ここに書いてあることを少し、阿南長官の御発言を読み上げますと、いろいろ御質問があって、「就任から一年二カ月。長官になって感じたことは。」という質問に対して、「大変でした。もともと省庁間の縦割り行政を解消するため、一元化して消費者庁をつくったはずなのに、縦割り行政が持ち込まれ、縦割りと闘っています。職員の出身母体は国土交通省や、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、そして地方自治体などさまざま。課同士の連携もうまくいかず、情報共有ができませんでした。改善されてきましたが、十分とはいえません」、このように、大変率直な御発言をされておられるわけでございます。

 これまでの消費者庁のあり方、国民からの期待に十分応え切れていないのではないかということ、そして、長官が御発言されておられるように、各省庁出身の職員さんの縦割り意識が解消されていない、払拭されていない。こういうことについて、大臣はどのようにお考えになっておられますか、御所見をお聞きしたいと思います。

森国務大臣 消費者庁設立から四年が経過をいたしました。

 実は、自民党から民主党に政権が移行するその直前に、ねじれ国会の中で消費者庁ができ上がりました。ねじれ国会の悪い点ばかりが指摘をされておりますが、党利党略にとらわれずに、ねじれた中でも消費者庁が与野党の協力の中で生まれたということ、私は評価をしております。

 そのときの初代の大臣が野田聖子大臣ですが、直後に民主党さんに移りまして、九人の大臣の方がおられ、そして私が第十一代の消費者大臣となります。

 その中で、今委員が御指摘の、出身母体がそれぞれの省庁であるということでございますが、私の代になって初めて、プロパーの職員も任用いたしました。

 さらに、今までは、弁護士さんや民間から登用していただくのは任期つきの職員ということで、何年かいていただくとまたお帰りいただくという制度をしておりました。それももちろん使っているんですが、弁護士さん二人、初めて、任期つきではなく常勤の職員として二名、先ほどの一名のプロパーとまた別途採用いたしまして、これは、消費者庁の人員は一名にせよと言われたところを、私、頑張って六名にふやしまして、少しずつですけれども努力をしております。

 そして、縦割りの問題についても、先ほど長官が改善をされてきましたということを述べられておりますが、まだまだ課題が多うございます。これについては、やはり消費者庁が最初に設立されたときの視点に立ち返って、省庁の横断的に、横串になる司令塔機能が発揮できる組織として運用していくということが大切なんだと思います。

 これまでは、さまざまな改正が、消費者安全法や特商法、食品表示法の制定、そして今法案となりますけれども、そのような中で、一つ一つ職員の方も消費者目線の意識を確認しながら前進をしてきたというふうに思っております。

 今後も、先生の御指摘を踏まえて、真に消費者目線に立った消費者行政のために、職員一同、頑張ってまいりたいと思います。

中根(康)委員 御努力をされておられる一定の成果があらわれているという森大臣の御発言でございました。

 例えば、けさも参考人の方から御意見を承りましたが、経団連の方は、やはり濫訴というものを必要以上に心配されておられるという印象を受けました。

 消費者庁の中には、経団連と関係の深い経済産業省の御出身の方もいらっしゃるということであろうと思いますが、そういったことが、この法律をつくるときに、何らかの出身母体の利益をあらわすような形で少しでも入り込んでくるというようなことがないように、場合によっては、ちょっと消費者庁はどうなっているかわかりませんが、もう消費者庁に行ったらもとの役所には帰らない、ノーリターンだというような覚悟を含めて、職務に当たっていただきたい。

 山崎次長も、この目線の中におりますが、またもとのところに戻りたいというお気持ちはいっときでも捨てていただいて、消費者庁にいる間は全力でこの職務に取り組んでいただくということは、当然、期待をさせていただきます。

 これまでの議論で、利害関係者間のさまざまな調整が行われたというふうに思いますけれども、私は、この法案を聞きまして、第一印象として、原告要件というもの、あるいは対象事案というもの、少し狭過ぎるというか厳格過ぎるというか、慎重過ぎるというような印象を持たせていただきました。

 新たな訴訟の担い手としての特定適格消費者団体の認定が、一々認定要件をここでは申し上げませんけれども、大変厳しいものになっている。十一ある適格消費者団体では不十分で、さらにハードルを設けて特定というものをつくった、改めて、その意図を伺いたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の適格消費者団体は、基本的に、消費者契約法等に違反する行為を差しとめるということでつくられたものでございます。

 新しい制度、御審議いただいております本制度でございますが、こちらでは、特定適格消費者団体が扱うのは被害回復関係業務ということで、性格の異なる業務を行っていただく必要があるということでございまして、適格消費者団体が扱う業務以外に、幾つかございます、授権をした者、個々の消費者の意思を確認する、金銭を消費者に配当する、対象消費者に通知、公告をする、それから、簡易確定手続、これは法律によってつくる制度でございますが、これを追行していくといった業務を実施する必要がございます。

 このため、これらの業務を安定的、継続的に遂行するに足るだけの体制及び経理的基礎が必要となるという考え方で、現行の差しとめをするだけの適格消費者団体に比べ、要件を加重したものでございます。

中根(康)委員 たびたび出てくる濫訴防止、濫訴の心配、懸念ということでございますけれども、これも相当議論をされてこられたことと思います。

 ただ、ただと言うと申しわけありませんけれども、消費者被害というのは、冒頭申し上げましたように、ある意味、最悪の事態さえもたらす場合があるわけでありますので、消費者庁としては、消費者庁というものができたという経緯からしても、余り濫訴というようなものを恐れずに、ある意味、もちろん濫訴というものはいけませんけれども、それぐらい、消費者あるいは被害者の方々が自分の失われた損害を回復するためにある制度に積極的に、あるいは身近に感じてもらう、積極的にかかわって利用して活用してもらうという姿勢が消費者庁にはあってもいいのかなというふうに私は思っております。

 現に、きょうの参考人の消費者団体の代表の方は、濫訴のおそれはないんだ、これだけ厳格に特定適格消費者団体が認定をされているということの中においては、濫訴のおそれはないんだということもおっしゃっておられるにもかかわらず、まだ何か濫訴、濫訴という言葉が飛び交っているような感じがいたします。濫訴ではいけませんけれども、しかし、積極的にこれを活用してもらうということに及び腰であってはいけないということは、私は申し上げておきたいと思います。

 濫訴というものを防止しながらも、泣き寝入りというものをなくすことができるようになっているはずでありますけれども、大臣として、この法案の中で、最もここが売りだ、ここを工夫したというところを挙げていただくとしたら、どこでございましょうか。

森国務大臣 濫訴のおそれがないように、しっかりと、委員御指摘のとおり、特定適格消費者団体の要件もきっちり定めておりますので、私も濫訴のおそれはないと思います。このことを多くの企業の皆様、経済界の皆様に御理解いただくように周知をしてまいりたいと思います。

 そして、先生がおっしゃった、泣き寝入りを防ぐ、これが本当に主目的でございますので、そのために、今、本制度で二段階型の訴訟制度を設けました。これを、OECDが各国に対して集団的な消費者被害の救済制度をつくれというふうに勧告をされて以来、日本とその他一カ国ぐらいしかまだつくっていないわけでございます。

 各国で制度がきちっとそろってまいりましたが、やはり最初につくった方はオプトアウト型で濫訴と指摘されておりますが、日本、そして今フランスも同様の法案を国会審議に出しておりますが、こちらが二段階型の、そしてオプトイン型の訴訟制度にしておりますので、加入しやすいとか、そういう消費者の被害回復に要する時間、費用、労力等を低減させて、被害回復の実効性を上げるものだというふうに思っております。

    〔委員長退席、大塚(高)委員長代理着席〕

中根(康)委員 新しい制度、この法案によっても、残念ながら、全ての被害が救済されるわけではないと思います。この法案で救い切れない、少人数であったり、個別の被害であったり、あるいは裁判で負けてしまった場合、こういったものを救済する仕組みとしてはどのようなものが用意されているか、お答えをいただきたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では救えないものということでございます。具体的には、相当多数という要件を満たさない、被害者が少数である場合、あるいは、個々個別性があり共通性がないなどの理由により本制度の対象とならない被害というのはございます。

 そうした場合、どのように救われるかという御質問でございますが、被害者みずからがまず個別に訴訟を起こす、これは弁護団の方がまとめていただくということもございますが、基本的にこの制度の枠外で訴訟を起こすということがまず考えられます。そのほか、国民生活センターその他、いわゆるADR、裁判外紛争解決手続がございます。こうしたものの利用をお願いするということがあります。それから、もう少し簡易なもの、身近なものといたしまして、今、全国七百二十四カ所に消費生活センターというものを設置しております。地方公共団体に設置していただいておるものでございますが、こうしたものを活用することによって救済を図っていただくということになります。

 消費者庁といたしましては、国民生活センターの裁判外紛争解決手続機能の充実、これに関する必要な措置、それから消費生活センターの一層の整備などをいたしまして、消費者の被害回復を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

中根(康)委員 今の御答弁を伺っても、消費生活センターの力をつけることがとても重要だということも改めて感じさせていただいているところでございます。

 請求対象の損害に、精神的苦痛への慰謝料やあるいは人身損害が入らないということになっております。これも濫訴防止の考え方の一環だということのようでございますが、先ほどの参考人の方々の御発言の中にもありましたが、被害の額がどうだとかということよりも、だまされてしまった悔しさ、あるいはだまされてしまった自分を責める気持ち、こういったものもやはり尊重しなければならないと思います。

 消費者被害は、先ほども申し上げましたように、弱みにつけ込む、あるいは善意につけ込むということからすれば、大変、ある意味、情状酌量の余地のない、悪質なものであるということだと思います。そういった意味では、私は、慰謝料とか人身損害も対象として検討してもよかったのではないかというふうにも思いますが、今回これが対象外とされていることについて御説明をお願いしたいと思います。

川口政府参考人 午前中の質疑におきまして経団連の参考人から御説明がございましたが、大変幅広い損害について当初検討いたしまして、関係各位の御議論の結果、現在の制度に落ちついたという経緯がございます。

 本制度でございますが、民事訴訟法の特例ということで二段階をとっていることに鑑みまして、訴えることのできる案件を絞っているところでございます。

 具体的には、二段階目の手続において、対象債権の存否、あるかどうか、それと内容を適切かつ迅速に判断することが困難ではない案件でなくてはいけないということ。それから、一段階目の手続の審理におきまして被告となります事業者が、二段階目の手続で争われる消費者の被害額についておおよその見通しを訴えられた段階で把握できる、把握できて十分な攻撃防御ができる案件。この係争利益がおおむね把握可能であるものということで、議論を理論的にも詰めていったところでございます。

 この結果、人身損害、慰謝料というものは対象にならないとしたところでございます。

 人身損害については、債務不履行、瑕疵、不法行為により生じた人体への被害の度合い、それから周囲の人、物の被害への波及といった点に関し、因果関係、損害の認定において個別性が高いということでございまして、二段階目に入りまして相当程度の審理が必要になるということでございます。類型的に支配性の要件を欠くものというふうに評価されたところでございます。

 また、慰謝料につきましても、主に生命、身体、自由、名誉の侵害の場合に認められるものでございますが、どれほどの額の慰謝料の支払いを求められることになるのか、これは第一段階で訴えられた時点であらかじめ想定するのが難しいという事情がございます。被告の事業者が係争利益をおおむね把握できるものということは言えないということでございます。

 こうした考え方のもとで、これらの損害については本制度の対象とならなかったものでございます。

 濫訴になりにくいという点は、これらを除いた結果、濫訴にもなりにくい内容になっているということでございます。

 以上でございます。

中根(康)委員 消費者庁という役所を新たに設置したという趣旨からすれば、個別の被害の額が金額的に算定しにくいものであっても、そこに踏み込んで被害者の救済を図ろう、そういう姿勢が見えなければ、消費者庁の存在意義がなくなってしまうのではないかというふうにも私は思います。

 余り周りに気兼ねをし過ぎて、角の取れた、丸い、この法案とは言いませんけれども、行政をしておられては、消費者庁はあってもなくても同じだということになりかねませんので、ここは、消費者目線、被害者目線ということであれば、これから、そういった精神的苦痛というようなものに対しても、十分被害者のお気持ちに応えられるような、消費者庁がそういう取り組みをしていただくということを期待していきたいと思います。

 被害を認識できても、多くの消費者は誰にも相談しないで諦めてしまう。誰にも相談していない消費者の多くは、相談しても仕方がないと思ったということです。

 私の手元に、きょうは配付はしておりませんけれども、消費者庁の消費生活に関する意識調査というものがあって、相談しても仕方がないと思う人が五三・六%。そのほかの理由も、結構、なるほどな、自分にも当てはまるなというようなことがありますね。どこに相談すればよいかわからなかった、九・四%。相談する適切な相手がいなかった。あるいは、恥ずかしいので誰にも言えなかった、これが結構、消費者問題の一つの特徴だと思うんですね、これが八%。それから、相談せず自分で解決しようとしたとか。それから、相談先としては、誰にも相談しないというところでありますので、相談先として、誰にも相談しないというのが三六・一%、家族や知人や同僚が二九・四%などなどと続いているわけであります。

 なぜ、相談しても仕方がないというふうに被害者は考えるのか、どのように消費者庁としてはここを捉えておられるか、御見解をお示しいただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、確かに、現在の状況を見ますと、いろいろな調査では、相談する件数がかなり低い面もございますし、かつ、相談しても仕方がないといいましょうか、まず自分で解決しよう、そういう方もいらっしゃるというふうに考えてございます。

 これは、ちゃんとした、私どもの相談体制がやはり一つ大きな危機になっていると考えてございます。消費者の誰もが、どこに住んでいても、身近で消費者問題について相談できる、こういう体制をしっかりつくり、さらにそれを周知していく、皆さんがわかっていただくようにするという努力が必要だと考えてございます。

 特に、相談体制でございますが、やはり地域における消費生活センターの整備がまだまだ十分でないという面もございますので、現在、地方公共団体に対しまして、地方消費者行政活性化基金、こういった形の財政的な支援も展開しているところでございます。これからもしっかり、そういった面での地方自治体に対する支援、これを強化してまいりたいと考えてございます。

 さらに、全国レベルでございますが、全国共通の電話番号での消費者ホットラインというものを今設置してございます。こういう形で、日常的な活動をしっかり強化してまいりたい、このように考えている次第でございます。

中根(康)委員 被害者が消費生活センター等に相談しないと、特定適格消費者団体は被害者の存在を認識できず、被害回復のための訴訟を起こすこともできません。被害者による相談を促すための取り組み、こういったものも今も説明があったのかもしれませんが、さらにその面からもお聞きしたいと思います。

 それから、特に知的障害をお持ちの方あるいは認知症の方、こういった病気や障害の方も被害に遭う。むしろ、こういった方々が遭う可能性があるわけでありますが、障害者や病気の方も問題なく相談できるような、どのような合理的配慮、これは権利条約の批准も間もなくでありますけれども、がなされているか、お尋ねをします。

福岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 中根委員には、これまで勉強会等でも御一緒させていただきましたが、障害福祉の推進に当たりましても、大変な牽引役を担っていただいておりますこと、心から敬意を表させていただきたいと思います。

 その上で、今の御指摘に関しましては、障害者であったり、認知症の方、高齢者の方のような、なかなか容易に情報を得ることができないような方々にどうやってリーチをしていくかというようなことのお尋ねだというふうに承知をしております。

 今回のこの制度におきましては、特定適格消費者団体に、知れている対象消費者に対して書面等によって個別に通知をするということとともに、相当な方法により公告する、公にしていくということも義務づけているところであります。

 あわせまして、消費者庁としましても、公表の義務にとどまらず、国民生活センター、全国の消費生活センター、法テラス等に一段階目の手続の結果等の必要な情報を提供したり、必要な相談体制、そういったものをしっかり整備していくようなことをお願いしていきたいというふうに思っています。

 また、地域におきましては、幅広い関係者が参画する見守りネットワークみたいなところがあったりするようなところもございますので、そういった組織を通じてこの情報の共有化を図っていく、そういったこともぜひ図っていきたいというふうに思っております。

中根(康)委員 障害者目線でお考えをいただく、共生社会の実現に大変御貢献のある福岡さんが政務官に御着任をされて、消費者庁は一つの大きな力を得たと私は今感じさせていただきました。

 次に、法案にある二段階目の消費者への通知、公告に関してお尋ねをいたします。

 共通義務確認訴訟の判決の内容が被害者の手元に通知されないと、被害を回復することはできない。これまで、個別通知に加えてインターネット等による公告を行うと答弁されておりますが、インターネットでは高齢者等には情報が届きにくいのではないかと考えております。また、判決内容の通知、公告に対して、障害者、高齢者、認知症の方、こういった方々にどのように配慮をされているか、先ほどと同じような質問、かぶるような質問にもなりますけれども、改めてお尋ねいたします。通知、公告に関して。

川口政府参考人 基本的な考え方は、先ほど政務官から御答弁申し上げたとおりでございますが、技術的、手続的なところで補足させていただきたいと思います。

 まず、この法律で義務づけておることでございますが、二段階目の手続が開始されたときには、団体に、消費者が授権するために必要な情報を、知れている対象消費者に対し、書面等により個別に通知するということにしております。また、相当な方法により公告をするということを団体に対して義務づけております。公告というのが、例えばインターネットであったり、知れている消費者に対する通知が、郵便であったり、電子メールであったりということになるわけでございます。

 消費者庁としての公表義務というのがあるわけでございますけれども、公表義務という、世の中に発表するというだけではなくて、実際に消費者は消費生活センターに相談に行くということがありますので、消費生活センター等にこの具体の第一段階目の判決が伝わるようにするということでございますし、今度は、消費生活センターから地域の見守りネットワークに情報を伝えるということで、見守りの方が高齢者や障害者に日々接していらっしゃいますので、消費生活センターと、直接消費者問題を専門にしていないけれども高齢者や障害者の見守りを担当している、こういう人たちの連携をしっかりつくっていく、そういう取り組みを、この法律の成立以後、さらにしっかり取り組んでいく、そういうことでございます。

 補足させていただきました。

中根(康)委員 ちょっと聞き取りにくかったんですけれども、インターネット等では届きにくいのではないかと質問を申し上げたわけなんですが、今の御答弁の中では、インターネット以外の何かツールというか手段というか、工夫とかというものが余り示されなかったような気がいたします。今後工夫していくという御答弁ではあったと思いますが、いかがですか。もう少し、いい答弁はないですか。

川口政府参考人 申し上げます。

 消費者庁には、第一段階の判決についての公表義務を課しております。公表義務の具体のやり方については、具体的に法律の中で書いておりませんが、消費者庁としては、まず消費生活センターにしっかり伝える、これをしたいと思っております。

 次に、先生御指摘の、高齢者、障害者の方に直接インターネット等で伝えることが難しいということがございますので、地域における、消費生活センターを中心とした地域の見守りネットワーク、これをしっかりつくっていく、各地でつくっていく、こういう取り組みを進めていきたいと思います。

 この両者相まちますと、消費者庁が消費生活センターに情報を伝え、地域には見守りネットワークができるということになりますと、第一段階の、こういう訴訟についてはこういうことでお金をもらえますよという情報が、具体的に地域の見守りの方に伝わります。そうすると、そこの気づきの方から具体的に高齢者、障害者の方にお話が通じるような仕組みができる、そういうことを考えておるということでございます。

中根(康)委員 見守りネットワークをつくるとおっしゃられましたが、これは消費者庁がつくるんですか。例えば、厚生労働省が地域包括ケアをつくろうとしてもなかなかうまく進んでいないわけなんですが、消費者庁が見守りネットワークを地域でつくるということですか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 地域における高齢者、さらに障害者に関しましても、当然、消費者庁以外の、厚生労働省でありますとか、さらにほかの関係省庁、関係ございます。地域レベルにおいて、そういう関係者が、まさに連携体制をつくろうということで今議論を進めてございまして、したがって、まさしく地域の、例えばヘルパーさんでありますとかケアマネさん、包括センターも一緒になって、お年寄り等について、むしろこちらからアウトリーチで出かけていくような、そういう見守りの体制をつくりたい、このように考えている次第でございます。

大塚(高)委員長代理 中根康浩君、質疑時間が過ぎておりますので、手短にお願いします。

中根(康)委員 確認をさせていただいたところ、その上で、見守りネットワークのようなものをつくっていくという御答弁をいただいたわけでございますので、それを実現していただきますように期待をさせていただきながら、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大塚(高)委員長代理 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 消費者庁の担当政務官をしてから、はや数年がたっておりまして、先ほども森大臣がお話しになられたように、大臣も数多くですが、その間の副大臣、政務官もかなり数多くであったろうと思います。でき得れば各省庁、組織としても、政務三役が安定をしているということは大事だというふうに思いますので、やはりそういったしっかりとした政権を、これは与野党問わずつくっていかなければならないなということを改めて感じるわけであります。

 ちょっと本論に入る前に、きょう福岡政務官も来られていますので。

 ちょうど私と同じ大臣政務官というお立場で、現在四名の大臣にお仕えになられていると伺っております。

 私の当時は、ちょっと非効率だなと思ったのは、消費者庁にも政務官室があり、そして内閣府本府にも政務官室があり、そして四号館にも政務官室があるみたいな、そういうところからスタートをしました。途中から、できるだけそれを使わないようにということも含めていろいろとやったわけですが、現在、消費者庁は政務三役のお部屋というのがどうなっておるか、教えてください。

福岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、泉政務官におかれましては、団塊ジュニア世代ということで同世代でもありますし、政務官としては先輩に当たられるということで、またいろいろお教えをいただきたいというふうに思います。

 その上で、今の御質問についてでございますが、私も、今四号館の方に内閣府の役職のものとしてのお部屋をいただいておるのと、もう一つ、金融庁も所管をさせていただいておりますので、そちらの方に政務官室をいただいているというのが現状でございまして、今おっしゃったように、消費者庁等には今私の部屋はないような状況で、そういう意味でいうと、まだ多いという御指摘はあるのかもしれませんが、大分そこのあたりの整理はされてきているのではないかなというふうに思っております。

泉委員 これを質問させていただいたのはというか、先ほど実は消費者庁の方にお話を聞いたら、前に政務官室だった部屋あるいは副大臣室だった部屋については、今も会議等々で活用させていただいていますということでありました。大臣は週の半分ほど消費者庁におられるけれども、その大臣のお部屋を政務三役なんかも使いながら運用していると。

 これは、政務三役の待遇の話をしたいのではなくて、言ってみれば、消費者庁が、多くの国民の期待を受けて、その結果、定員もどんどん、珍しくというか、各省庁に比べればふえてきているという状況があります。私がいたころというのは二百人前後ぐらいでしたけれども、先ほど話を聞いたら、二百八十人を超える状況にある。

 しかし、そんなにフロアが大幅にふえたという話も伺っておりませんし、役所の中で、仕事をする環境ということも大変重要だと思いますし、やはり期待する機能を発揮していただくためにも、そういった敷地の有効活用はしていかなきゃいけないので、現在、長官も含めて、とても狭い部屋でお仕事をされているというふうにも伺っております。

 内閣府本府の横にすばらしい建物が建って、今建設途中でありますが、消費者庁がそこに入れば一番いいなというふうに個人的には思っておりますが、どうやらそうでもないというふうに伺っておりますけれども。やはりそういった仕事の環境ということも考えて、政務三役も、ぜひ、役所がしっかりと仕事ができるように配慮していただきたいということを、まず冒頭に申し上げさせていただきたいと思います。

 私が、当初、消費者庁の政務官になったときも、まさにこの研究会が発足をしていくというような状況のときでありました。一歩一歩ですが、消費者の権利保護ですとか、そして、法令を遵守しながら安全で質のよい製品をつくる、そういう企業が評価されるような、そういう世の中を目指していきたいということで、この団体訴訟制度が今回整備されるということに心から敬意を表したいというふうに思います。

 これは決して、どちらか、事業者そして消費者を苦しめるというものではなくて、先ほどからお話があるように、ウイン・ウインの法案であるというふうに考えております。

 実は私も、先ほど、どなたかが被害に遭われたことがあるという話がありましたが、学生時代に釈然としない思いをしたことがあります。それは、京都に学生としてひとり暮らしを始めて、一年ほどたったときに、引っ越しをしようということで、ある不動産会社を訪ねたわけですね。幾つか物件を見せていただいて、当時、私は十九歳、そして、その物件の中から、これぐらいがいいかなと思って、ここがというふうに話をしたら、手付金が要ると言われました。手付金をお払いして、そしてその後また違う物件が見つかったので、ちょっとこれはやめて、ほかの物件にしたいんですけれどもと言ったら、手付金は返せませんというふうに言われて、未成年の契約ということも含めて、あるいは手付金がそもそも返ってこないのかということを含めて、非常に釈然としない思いをしたことを思い出します。

 たしか値段は四万七千円だったと記憶をしていますけれども、学生にとっては、ちょっと大変な負担のものでありました。仕送りもありませんでしたので、そういったことも思い出しながら、大変つらい思いをしていました。しかし、当時は、やはり学生であれば、消費生活センターがどこにあるかというのはなかなかわかりませんでしたし、自分が被害に遭ったのか、それとも自分が法律で何か知らないところがあるのか、これはなかなかわからないというふうに、多くの方が迷ってしまうというのが、やはり真実、現状ではないかなというふうに思います。

 そういった思いもしながら、こうして今消費者特で質問させていただいておりますので、やはり一人でも多くの被害者が救われればいいというふうに思っております。

 一方で、大臣がさまざま、一連、この法案を見てくるに当たって、大臣として、この少額多数の被害ということに思いをはせたときに、印象に残る事例というものがあればぜひ教えていただきたいと思います。

森国務大臣 泉元政務官の御尽力に敬意を表したいと思います。

 今、弁護士としての心に残る事案ということでございますが、それはたくさんあるんですが、実は私も個人的に同じような目に遭ったことがありまして、アメリカにこの消費者問題のために留学したときに、ゼロ歳の長女を連れて母子留学したんですけれども、夫の方は東京で弁護士の仕事がありまして、そのような外国人が、ゼロ歳の赤ちゃん連れでひょこひょこアパートを探しにきたということで、向こうはカモだと思ったのかもしれませんが、私はすかさずアメリカの少額訴訟裁判所に駆け込んで本人訴訟をしたんですけれども。

 やはり、社会的に立場の弱い方を狙って典型的にしていく、そういった悪質な消費者事件を防いでいくということが、そもそもこの法案の目的でもあり、消費者庁の仕事でもあると思います。

 私は、先ほど宮崎議員が言ったようなKKCや和牛商法、さまざまやりましたけれども、その中でも、ココ山岡事件というのは、弁護団で本も出しておりますけれども、そのとき、私は一年生弁護士で、徹夜して頑張ってやった、思い出深い事件でございます。

 特に、若い男性、二十代の男性をターゲットに絞って、後ほど判明しましたけれども、ちゃんと台本もあって、それに沿って、若い魅力的な女性の販売員が男性の顧客に対してセールスをしていくということで、百万円ほどのダイヤモンドの指輪などを、学生相手ですので、学生にローンを組ませて買わせていくということでしたけれども、全部集めた後にすぐ破産をしてしまいましたので、それがなかなか立証しにくい。そして、粉飾決算であったことなども、やはり民間の弁護士からすると、資料を集められないというようなさまざまな中で、全国に百人以上、弁護団をつくってやりましたけれども、やはり時間が多くかかります、泣き寝入りをした被害者もたくさんいたと思います。

 そういったことを少しでも解消して、いち早く、資力のない、そして弁護士を頼む当てもない、消費生活センターがどこにあるかもわからない、そういうような方々が救われるような訴訟制度になればよいなというふうに思っております。

泉委員 さらに中身の方に入っていきたいと思うわけです。

 これまでの議論を伺っておりまして、私は、適格消費者団体、これが今回、特定適格消費者団体というふうになるわけですが、政務官をしていたときから、この適格消費者団体の認定を受けるためには非常に多くの作業量、そして時間を要するということを伺ってまいりました。また、当時からも、やはり資金的、財政的基盤が脆弱であって、多くの方々の善意に頼っているという状況を常々伺ってきた覚えがあります。

 実は、こうして数年たって、改めてこの消費者特の議論を聞いていても、その状況は変わっていないなと。しかし、変わったことは、確実に適格消費者団体の業務がふえ、そして活躍の場がふえている。負担がふえているというふうに言ってもいいかもしれません。

 そういう状況がありますので、私は、特にこの適格消費者団体ということについていろいろと取り上げて質問したいなというふうに思います。

 まず、手続追行主体ということについてですが、ほかの方からも御質問ありましたけれども、今回は、適格消費者団体の中から、総理大臣の認定で、特定適格消費者団体のみが訴訟を行うというようなことになっております。しかし一方で、聞くところによると、海外なんかでは、例えば行政機関とかそういったところも訴訟を行えるように仕組みをつくっているというところもあるやに伺っております。

 私も少し調べてみますと、例えば東京の消費者被害救済委員会、東京都がつくっている委員会がございまして、歴史もかなり古くて、昭和のころからつくっているようです。こちらなんかは、ADR機能も持ちながら、長いことあっせんということも取り組んでおられますし、さらには、訴訟への補助、そういったことも取り組まれているということで、いわゆる差しとめ請求をやっているわけではありませんから、すぐにここが特定適格消費者団体と同じようになればいいということではなくて、もちろん、国民生活センターもそうかもしれません、このように、ある種、消費者保護という視点で、有識者も置いたり、あるいは行政の後ろ盾もあったり、そして訴訟能力、ADRの実績なんかもあるというような組織体というのは、私は、可能性としてはそのほかにも存在するのではないかなというふうに思っております。

 今回の法案については、これはこれでスタートとしてよいというふうに思っておりますが、そのほかの主体によるこういった訴訟を行えるような可能性、こういうことについていかがお考えか、お聞かせください。

    〔大塚(高)委員長代理退席、委員長着席〕

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本法につきましては、関係者が入りました幅広い長年の議論の結果、手続追行主体については特定適格消費者団体に限るというふうにしたところでございますが、この点につきましてはどのように考えるかということについては、まさに五年間の施行状況を踏まえまして、必要ならば検討課題として検討し、さらに検討するという仕組みにしたところでございます。

 東京都消費者被害救済委員会、御指摘がございましたが、ADRとして非常に地方の中でも歴史のあるところでございます。東京都消費者被害救済委員会につきましては、消費生活総合センター等の相談機関に寄せられた苦情、相談のうち、都民の消費生活に著しく影響を及ぼすおそれのある紛争等についてあっせんや調停を行う中立的な行政機関であるということでございます。

 ADRとしては非常に重要な機関でございますが、ただ、本制度でございますが、本制度は裁判手続の一方当事者となって手続を進めていくというものでございますので、当該委員会について言えば、そうしたものがこの原告にふさわしいかどうかについては、相当程度慎重な検討を要するものと考えているところでございます。

 以上でございます。

泉委員 確かに行政は中立的、しかし、消費者保護をするのもこれまた行政ということでありますので、行政のようなところが今後そういった主体になり得るのかということは、まさにこの五年の状況を踏まえて、検討はぜひともしていただきたいということを申し述べておきたいというふうに思います。

 続いて、簡易確定手続についてお伺いをしたいというふうに思います。

 消費者が被害を受けて、そして共通義務が確定をして、そういう中で一人一人の加入を促していく、参加を促していくわけですけれども、この中では、これまでも指摘をされているとおり、いわゆる通知、公告の行為、これが一義的に特定適格消費者団体にかかってきているというふうになっております。これは、やはりかなりきついなというふうに私も感じております。

 事業主の方は、ホームページなどで公表するあるいは顧客リストを提供するということが求められれば、それで義務を果たしたことになる。これも先ほど参考人の方から御指摘があったように、三十万の過料というのは、果たして申請の適切なリストが提供される、そういった動機づけになるかという指摘がありました。これはやはり大きな問題だと思います。ここはぜひ、これからもまた対応していただきたいということがまず一点です。

 そういった意味で、例えばですが、被害者が五万人であれば、これは単純計算の話ですが、郵送代を八十円、消費税が上がってちょっとふえるかもしれませんが、八十円とすると四百万円郵送代でかかるわけですね。NOVAは、全員が被害者かどうかわかりませんが、受講生は三十万人。何と、郵送代だけで二千四百万円負担をしなければならないということが想定をされます。本当にこれを特定適格消費者団体にさせるんですか。

 大臣、このNOVAのケースを見たときに、これは驚きませんか。二千四百万円を、ある種、善意で訴訟を起こした適格消費者団体が負担をしなければならない。うなずいていられるので、きっとこれは、実際に数字にしてみるとこういうことだということを御認識いただけたと思います。そういう意味では、やはり事業者が負担をすべきものではないのか。

 先ほどもお話がありましたように、リコール、自主的な取り組みであれば、当然事業者から顧客に対して郵送物を送り、そしてみずから取り組む。我々もそれが望ましいと思うけれども、そのリコールすらしない、あるいは顧客に対しておわびをしない、どちらかというと社会的にはいかがかと思われる方々については郵送代を負担しなくてもよい、そういう形になってしまっている。私はこれはおかしいのではないのかなというふうに思いますが、いかがお考えでしょうか。

川口政府参考人 通知、公告でございますが、これは二段階目の手続に消費者の加入を促すための準備行為でございますので、消費者が最終的にメリットを享受するものでございます。

 また、特定適格消費者団体は、消費者からその費用の支払いを受けることが認められるということから、これは七十六条に規定しておりまして、特定適格消費者団体がその費用を一時的に負担し、具体的に後で消費者から回収をするという仕組みをとっているところでございます。

 ただし、通知、公告に伴う団体の負担が過重とならないようには配慮はいたしておりまして、通知の方法として、具体的に後で内閣府令を定めるということを二十五条で書いてございますけれども、この中身の定め方においては、消費者団体の負担とならないようにということで、現在では、電子メールなどの電磁的方法を認め、また、公告の方法を、相当な方法として団体のウエブサイトに掲載するというようなことも認めるということで考えているところでございます。

 以上でございます。

泉委員 今、私は審議官のお言葉で一つだけちょっと気になるところは、メリットとおっしゃいましたね。ただ、これは被害の回復であって、それをメリットとおっしゃられるのは間違いではないかと思いますよ。そこは、損失を、しかも精神的な損失やその他損失は回復できない中で、実費だけを手元に戻せるかどうかという話をしているんであって、これはメリットでも何でもないですよ。そこは間違っちゃいけないと思います。

 その上で、今、いろいろ配慮はなされる、内閣府令の中でというふうにお話がありましたが、ぜひ検討していただきたいのは、二十七条ですか、事業者がホームページ等で公表するというのもありますけれども、正直言うと、これだけもう大海原のようなインターネットの社会において、そこがどの規模の企業かわかりませんが、ホームページで公表する、しかも、その公表の仕方も必ずトップページに載せなさいと言うのか、何回かクリックしないとわからないのかによっても随分違います。

 そういった意味では、私は一つぜひこれは真剣に検討していただきたいのは、やはり、そういった共通義務を負った事業者は会見を開いていただくということをルール化していいのではないかと思います。やはり報道機関というのは大変大きな力を持っておりますので、そういった事業者が会見を開くということであれば、それは報道に載るという可能性は十分あるわけでして、それはぜひともルールの中に入れていただけないだろうかということをお願いしたいなということがまず一点であります。

 そして、電子メールというお話がありましたが、事業者側が顧客リストを、あらかじめこういうことを想定して電子メールまで収集しているとは到底思えないんですね。インターネット企業であれば、IT関連の企業であれば電子メールは収集しているかもしれない。しかし、さまざまな製品を売っている、あるいはサービスを売っている会社が、わざわざ、住所、氏名以外の項目を収集しているかという可能性は、私は、それは余り期待していいものではないと思います。

 そういった意味では、書かれていれば何となく配慮しているように聞こえるかもしれませんが、私はこれではやはりまだまだ不十分で、消費者団体なんかからは、あるいは弁護士さんなんかからは、例えば、こういった公益性の高い郵送物については、郵送費の軽減ということを総務省なんかに相談をしながら考えていくことができないのかどうか。これもぜひ内部で検討していただきたいと思いますし、いわゆる無利子貸し付け的な、一時的にかなり多額の費用を要する可能性がありますので、そういったものができないかということの検討。

 さらには、これは以前から包括的に言われていることですが、やはり適格消費者団体そのものを支援する基金みたいなものを、私は公的助成の中からぜひともつくっていただきたい。

 あるいは、これは犯罪被害者の基金のときにもよく言われることですけれども、今後、こういった共通義務だとか仮差し押さえだとか、いろいろな形の中で結果的に被害を申し出なかった被害者がおられた場合には、さまざまなお金が場合によっては余ってくるケースというのもありますが、そういったものも基金に積み立てておけるように、そしてまた次の訴訟なんかに活用できるようにということもぜひ考えていただきたい。

 基金の話は、もう消費者庁発足当時からの長く続いている話でありますので、ぜひとも基金ということについても配慮をしていただきたいというふうに思います。

 そして、関連してですが、申し出期間、この申し出期間ということは最低一月以上ということになっておりますけれども、これもやはり、先ほどお話をしたように、なかなか全ての被害者、消費者に伝わらないケースがあると思います。

 どこかで期限は切らなければいけませんので、余りそれを長くしてくれということは難しいというふうに思っておりますが、共通義務が確認をできて、そして一人一人に対してお金が給付をされていくということになって、その段階で初めて、ああ、自分も対象者だったということがわかって、残念ながらこの二段階目の訴訟に乗らなかった方々がおられた場合に、やはり、ADRを活用して、少なくとも同様の結果を、恩恵を受けられるような状況にぜひとも持っていっていただきたい。そういうような仕組みをできる限り考えていただきたいということも、あわせてお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 続いて、団体の認定要件ということについて質問させていただきたいと思います。

 この団体の認定要件なんですが、先ほどお話ししたように、適格消費者団体そのものも私は非常に厳しい要件があるというふうに思っております。そういう中で、総理大臣の認定ですから、重たい認定でありますので、役所の方もいいかげんな認定というのは一切行っていないというふうに考えております。

 そういう中で、今回、特定適格消費者団体の認定要件を見ますと、差しとめ訴訟と書かれている部分が、新たに、損害を請求できる、訴訟の業務を適正に遂行できるための能力ということに変わっているのかなというふうに、被害回復関係業務ができるかどうかという観点で要件が課されているというふうに考えております。

 ちょっと気になったのは、適格消費者団体の認定を受けるためには、まずは、消費者の利益の擁護を図るための活動を目的として、相当期間、原則二年以上継続して適正に活動していることというのが要件ですね。特定適格消費者団体の認定を受ける場合にも、この相当期間というのは原則二年以上ということでよろしいでしょうか。

川口政府参考人 ただいまの数字でございますが、原則二年ということで具体的に定めているものではございません。ただ、適切な期間としてふさわしいものということで、現時点では抽象的なものということでございまして、やはり、更新の際は三年ということにしておりますけれども、三年間にわたり適切な業務を行えると見込まれるような実績を適格消費者団体の間に上げている、そういう期間として考えております。

 現時点で、数字としては確定しているものではございません。

泉委員 ある意味、階段式になっているわけですよね。一般の消費者団体があって、そこでしっかりと体制が整備されて、そして、相当期間たって適格消費者団体の認定が受けられる資格が出てくる。

 体制的には、業務を適正に遂行できる経理的基礎だとか人的体制、あるいは理事会、そういうものがあれば適格消費者団体になれるというふうに書いている。

 そう考えると、差しとめ請求の業務を行える消費者団体と、今回の被害回復関係業務を行える組織、それは、差しとめ請求関係業務を行えなければいわゆる被害回復関係業務を行えないというものではないんじゃないのかなというふうに思うんですね。要は、しっかりと両方の体制を同時に整備していく消費者団体があれば、そして一定の活動実績があれば、同時にこの二つの認定を出すことは可能なはずではないかというふうに思います。

 これまでは、適格消費者団体があって、そこがさらに特定という形で認定を受けようと思えば、どうしても階段状に上がっていかざるを得ないわけですが、今後という意味では、これは、消費者団体が両方の業務における体制をしっかりと整備して、一定期間がたてば、両方の資格を、同時に認定を受けることは不可能ではないはずだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

川口政府参考人 本制度は、民事訴訟法にも他の分野にもない制度であるということで、やはり、特定適格消費者団体は、しっかり新しい業務を担うことができ、かつ消費者のために公正かつ中立に働くことができるものということで議論されたところでございます。

 そうした際に、適格消費者団体としての実績、これは全く同じものではございませんけれども、適格消費者団体として相当期間にわたり継続して行う実績があるということが、この制度に対する信頼、それから、安定的、継続的にこの制度の担い手としてふさわしいだろうということで議論を深め、結論を出したというところでございまして、現時点では、相当期間にわたる適格消費者団体の実績というのは今後とも必要なものというふうに考えている次第でございます。

泉委員 ただ、総理大臣の認定を受ける適格消費者団体になるためには、それこそ消費者団体の模範として活動してこなければ適格消費者団体になれないわけですよね。そういう団体が、しかも、適格消費者団体の認定要件というのは、例えば差しとめ請求関係業務を適正に遂行するための体制を整備されていることだとか、あるいは、差しとめ請求関係業務を適正に遂行できる専門的な知識経験を有することだとか、経理的基礎を有することだとか、そういうことが書いてあるわけですよね。ということは、こちらも重たい資格ですよね、認定ですよね。そこになるためには、一般の消費者団体から上がれるわけですよね。

 差しとめの請求の方が、被害回復関係業務より軽いわけですか。そういう差があるということですか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 差しとめ業務は、現時点で事業者が行っている行為が消費者契約法等その他の一定の法律に照らして違法であるということで、将来にわたって行わないでほしい、差しとめるということで要件を定めたものでございますが、今度の特定適格認定といいますのは、違法であるということで、これはもちろん違法であるということだけではなくて、被害を回復するために個々の消費者との交渉を行っていく、事業者とも交渉を行っていくということが、二段階目に相当程度予定されているところでございますので、適格消費者団体の差しとめに比べて相当程度業務が付加されるというふうに思っているところでございます。

 どちらが重たいかということでございますが、新しい制度の第一段階目というのは差しとめの業務と似ているところがございます、重なっているところがございまして、第二段階のところが加わるということで、一層重たい要件を課す必要があるということでございます。

 このため、本制度の主体については、適格消費者団体の要件を満たすという認定だけではなくて、実際に差しとめ請求に係る訴訟を追行したり、裁判外の交渉のように改善を求めるということなどによりまして、差しとめ請求関係業務を相当期間にわたり継続して適正に行っている、実績を残している、これを要件として求めているところでございます。

泉委員 こうしてお話をさせていただいているのは、やはり一つ一つ認定をとっていくことというのは物すごい労力だ。そして、先ほどから言われているように、それをほぼボランティアで多くの方々が取り組んでいるということを、ぜひともやはり消費者庁は忘れずに、常々認識をしておいていただきたいということであります。

 できる限りそういった、もちろん実績ですとか業務の体制、これは監視をしなければいけませんが、しかし、特定適格消費者団体なり適格消費者団体が全国各地でワークできるような、そういう過度な負担を課さないような状況はぜひとも御検討いただきたいというふうに思います。

 時間もそろそろ迫ってまいりましたので、濫訴のことも私もやりたかったわけですけれども、先ほど参考人質疑の中で、経団連の方は、濫訴の事例はないと。しかし、更問いというかもう一つの問いの中では、濫訴で勝訴をした実績はないというふうに伺いましたけれども、消費者庁としては、濫訴というものが我が国の中でどんなものなのか、事例を挙げてください、どんな事例があるのかを教えてください。

川口政府参考人 具体的に、今これが濫訴ですという材料を持ち合わせておりませんけれども、濫訴に当たり得るものといたしましては、何らかの利益の見返りを得る目的や、相手方の社会的信用を低下させる目的、単なる嫌がらせが目的である場合など、およそ消費者の利益の擁護を図る目的がないにもかかわらず、不当な目的でみだりに訴訟を起こす、そういうものを七十五条第二項の「不当な目的でみだりに」ということで想定しているところでございまして、具体の訴訟においては勝ったり負けたりするということは、濫訴ということでは想定しておりません。

泉委員 改めて、それはないなということを感じながら、ぜひ、濫訴、濫訴という言葉の濫訴になっていやしないかということを申し伝えながら、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

山本委員長 次に、上西小百合君。

上西委員 日本維新の会、上西小百合でございます。

 このたびの法案に関して、私は去る六月十三日の当委員会でも質問の機会をいただき、私自身、一日も早く成立させるべき重要法案だと認識している旨を述べさせていただきました。その思いが高じて、会期末直前になってようやくこの法案が上程されたことに対して、大臣の意気込みが感じられないなどと大変失礼なことを申し、大臣からは、三権分立の憲法の規定をしっかり勉強するようにとのありがたいお言葉を頂戴いたしました。

 しかし、その一方で、議院内閣制も日本国憲法の定めるところであり、内閣のトップも衆議院議長の本籍も議運の委員長も所属は同じなのですから、急げば急げたのではないか、それぐらい重要な法案ではないですかということを私は強調したかったのだということを改めて申し述べさせていただき、本法案が廃案とならず、今こうして再び審議ができますことをうれしく思い、通告に従って質問をさせていただきます。

 国会が休会中、私は、実に多くの国民の皆様と親しくお話をさせていただくことができました。その中でも、不幸にも建物を火事で失われた方の御遺族にめぐり会いました。

 その方は、千葉県市原市で建設作業員の皆様が集まる宿舎のアパートが全焼した方の御遺族です。アパートの所有者は、車椅子生活の身体障害者です。奥さんは、日本語のたどたどしい外国人。長崎県に住む母親が危篤だとの連絡を受け、羽田空港でチェックインをした直後に、携帯電話へアパートが火事だとの連絡が入ったそうですが、そのまま帰省を敢行したようです。

 千葉県の県民共済へ長年加入し、保険料は滞ることなく銀行の口座から引き落とされていたにもかかわらず、県民共済代理人の弁護士は、普通、火事の連絡を受ければ引き返すはずだが、長崎旅行、旅行という表現を使用されています、長崎旅行を続けたのは、誰かに放火をお願いしたと推認されると主張し、その方は結局保険金の支払いが受けられぬまま、母親は亡くなり、失意のうちにその方も先日亡くなってしまった事案です。

 当然、この件に関しては、警察も放火などと嫌疑すらかけていません。しかし、資金の潤沢な大企業は、弁護士を立てて、一人の国民も救済できない状態をつくり出す、その現実をかいま見た気がいたしました。

 不幸が重なり、被災者側の顧問弁護士も急逝。途方に暮れた東京都区在住の御遺族が消費者庁に相談しましたところ、市原市の消費生活センターを紹介され、出向いたところ、市原市民の税金で運営されているので市原市民の相談しか受け付けられないと、東京都消費生活総合センターを紹介されました。そこに電話を入れたところ、お住まいの区でも同様の窓口があるからと、中央区の消費者センターを今度は紹介され、面談がかなわなかったとのことです。

 市町村や区の消費生活センターをあっせんし、みずからは住民の相談にも応じないのであれば、都道府県の消費生活センターなどの存在意義はないに等しいのではないか、そう思えてなりません。

 そして、都のセンターで伺った中央区のセンターの電話に何十回電話をかけても一向につながらず、同じ敷地内の区役所の代表電話から回してもらっても、呼び出し音はずっと鳴っているのに全くつながらず、結局、高齢者用の詐欺被害相談窓口に電話を回され、やっとその窓口で面談が実現いたしました。そして、出てきた相談員からは、そのような高度な専門的な御相談に応じられる経験も能力も私たちにはありません、弁護士に相談するのが一番ではないですかと言われて終わったというありさまです。さんざんたらい回しにした結論としては、余りにもお粗末な結果ではないでしょうか。

 結局、行政の場では何もできませんから、司法の場へ行きなさい、そういうことなのでしょうが、裁判ともなると、時間も費用も相当にかかる。それを回避するために行政に頼る国民に対して、このようなことでいいのでしょうか。このような状態でいいのでしょうか。

 今議題になっている二段階の集団訴訟に対する法案が成立した後にも、被害を受けた国民が一番に相談に行くのは、警察でも弁護士事務所でもなく、消費者センターや国民生活センターではないでしょうか。

 去る六月十三日の本委員会で、今議題になっている二段階訴訟などの制度、それの消費者への周知徹底方法として、消費者庁から、国民生活センターや消費生活センターを、消費者の認知度も高く、実際の被害者が相談する可能性が高いとして、弁護士会、司法書士会などと並列して挙げられ、消費者庁及び特定適格消費者団体と連携しつつ周知を徹底される、そういった旨の御答弁があったのも記憶に新しいところでございます。

 指揮命令下にないのは重々承知の上で、あえて、弁護士でもいらっしゃいます森大臣の御感想なり御所見などをお聞かせいただけますでしょうか。

森国務大臣 上西委員の御質問を聞いて、本当に怒りが込み上げてくるような思いがいたします。

 通告を受けまして、私も、事務方を呼びつけまして、どういうことであったのかということで問いただしましたところ、これは最初は、上西事務所から消費者庁の方に、どこの消費生活センターに行けばいいのかという御照会があったということで、そのとき、御自宅が市原市にあるということであって、御自宅が市原市と聞いて、市原市の消費生活センターを紹介しましたという事務方の説明だったんです。

 それで私は、事務方に、幾ら国会議員が自宅と言っているからといって、自宅といえば、普通、住所が市原市にありますよ。だけれども、今のお話を詳しく聞いたら、御遺族だ、つまり相続人だということで、お住まいは本当は東京都の中央区だったんです。ですから、幾ら国会議員の事務所から御自宅と聞いても、それはやはり、住所がどこかということをちゃんと聞いて、そして、最初にしかるべきところに相談者の皆様をお連れしないと、これはたらい回しになりますよ。これが基本なんです。

 しかし、悲しいことに、今、地方の消費者行政はこういう状態です。消費者庁ができたときに、地方消費者行政がないがしろにされている、そこで、国できちっとした消費者庁をつくって強化していきましょう、そういう目的でつくられました。

 なぜなら、地方自治体が消費生活センターは見ております。県の消費生活センターは県が見ております。国が見るんじゃないんです。しかし、県が必要な予算をそこに投じるかというと、一般予算の中では優先順位がほかのものに割かれていて、一番最後に行くか行かないか。そのような意識の低さなんです。そこで、弱い者が泣いているんです。

 ですので、消費者行政のような部分は国がしっかりと意識を持っていかないと、地方消費者行政が厚くなっていかない。厚くなっていった後は、地方消費者行政でしっかりと回っていっていただければいいので、最初に国がそこの意識づけ、そして力添えをしましょうという趣旨でありました。

 しかし、この四年間、それがしっかりと進んできたかといえば、そうではございません。

 そこで、私の代になりまして、地方消費者行政の活性化基金、これは今まで、地方が二分の一の裏負担があったんです。そこでまたやる気をなくしてしまうんです。私のところは、一定の金額は思い切って裏負担なしにいたしました。そこで地方にインセンティブを与えて、しっかりと行政に取り組んでいただこうということで、先ほど来出ております適格消費者団体の設立についても裏負担なしで御支援をいたしますとか、高齢者を初めとした社会的に弱い立場の方の被害回復についても取り組んでくださいということで、今展開をしております。

 さらに、先ほどの委員の御質問に出ました見守りネットワークでございますが、今まで消費者弁護士等が一つ一つ具体的な事例で取り組んで成功してきたこと、これを全国に横展開をするための見守りネットワークの設置について、今月、私の方で指示して会議を設けたところでございます。

 また、地域の消費生活センターの相談員の方の意識づけもございますが、委員もよく御存じのとおり、予算がない中で、相談員の方々も、ワーキングプアではないかと言われるぐらいの低いお給料で、残業もしながらやっている中で、電話が鳴り響いてもとれない、ほかの相談に乗っているということで、そこを基金を積み増しして、相談員の拡充、それから相談員の教育、これにも力を注いでまいりたいんですが、相談員の教育研修施設が仕分けで切られてしまいまして、今研修施設がない状態でございますので、私のところで、この研修施設を再度利用できるように今申し出ているところでございます。

上西委員 丁寧な御説明、ありがとうございました。

 今、その住民、住んでいるところ、しっかりと、正しいセンターに照会しに行かなければならないということでしたが、先ほどから何度か質問が出てきておりますが、一般国民の皆さんはどこに相談に行けばいいのか、それすらも本当にわからないというのが現状でございますので、大臣おっしゃっておりますとおり、しっかりと周知徹底を図っていただきたい、そのように思っております。

 また、先ほど申し上げたように、こういった状況に置かれた方々は、精神的にも大変不安な状態を長期間抱えることになります。真に適正、そして迅速な国民の救済、そういったことに国民生活センターそして消費生活センターの能力を活用されますよう御尽力をお願い申し上げまして、次に移らせていただきます。

 私は、火災保険に関する主務官庁は金融庁だと思い込んでおりました。しかし、いろいろ調べる中で、同じような火災保険一つをとっても、一般法が特別法を破る形で、カテゴリーにより、金融庁の手を離れているものが多いことを知りました。要するに、県民共済の許認可などを行う省庁は金融庁ではないようなのですが、その区分はどのようになっているのでしょうか。

 先ほどの事例のような保険会社の不条理を追及する場合、行政の相談窓口はあるのでしょうか。また、このような事例では、本当に相談窓口はどこにもないものなのか。それぞれにお答えをお願いします。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 まず、主務官庁について私の方から御説明申し上げます。

 金融庁が所管いたします保険業法におきましては、規制の対象となります保険業につきまして定義規定が置かれておりまして、その中で、保険業法以外の他の法律に基づき行われる保険については適用しない旨が定められております。

 そこで、委員御指摘の県民共済などの制度共済についてはどうかということでございますが、これについては、例えば県民共済については、消費生活協同組合法に基づき行われております。

 こういったように、他の法律に基づき制度共済は行われておりますことから、金融庁所管の保険業法の適用を受けずに、それぞれの根拠法に基づき、それぞれ所管の省庁が規制、監督をするといったたてつけになってございます。

上西委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと次に移らせていただきます。

 特定適格消費者団体は、現在十一ある適格消費者団体から内閣総理大臣が認定するわけでございますが、既存の公益法人やNPO法人の代表者や役員を調べてみると、副知事や会計検査院OBなど、功成り名を遂げたステータスの高い方が目立つように思います。そのような方々が名を連ねているのを見ますと、新たな公務員の天下り先になるのではないか、そういった懸念を抱かなくてはいられません。

 報酬はない例が多く、そして、あったとしても非常に報酬は低い、そういったお話も伺いますが、ブランド化されたその地位を売り物に次の地位を求めるなどの行為もないとは限らないように思います。そのあたりを消費者庁はどのようにお考えでしょうか。

 また、特定適格消費者団体に一度認定されて、三年の任期の間に、政権交代や総理大臣の交代があって認定が取り消されるようなことはないのでしょうか。位置づけをお願いいたします。

岡田副大臣 御質問にお答えをいたします。

 特定適格消費者団体が新たな公務員の天下り先になるおそれはないのかとのお尋ねかと思います。

 本法案により創設する新たな訴訟制度において、これまで泣き寝入りをしていた消費者の実効的な被害回復は、被害回復関係業務を担う特定適格消費者団体の業務遂行能力にかかっていることから、特定適格消費者団体は、たとえ厳しい財務状況にあっても、その重要な任務を担うに足る優秀な人材を取りそろえる必要があると考えます。

 したがって、特定適格消費者団体が、一定の肩書を有する退職公務員等を、その能力いかんにかかわらず、いわゆる天下り的に、高額の報酬をもって継続的に既定ポストに受け入れ、特定適格消費者団体に対する信頼、ひいては本制度に対する信頼を害するようなことがあってはならないと考えます。

 もう一つのお尋ねでありますが、特定適格消費者団体に一度認定されれば、その地位は、政権交代、総理大臣がかわっても半永久的に守られるものかというお尋ねかと思いますが、この特定適格消費者団体の認定については、特定適格消費者団体の業務の厳正な運営を確保し、国民の制度に対する信頼性を維持するため、その有効期間を三年とする更新制とし、三年ごとに内閣総理大臣が特定適格消費者団体の認定要件への適合性を改めて審査することとしております。

 また、特定適格消費者団体が法律で定める要件に該当しなくなった場合には、特定認定の取り消し等の措置を講ずることとなります。

 したがって、政権あるいは総理大臣が交代したとしても、この特定認定が失効するものではなく、また、当然にその地位が守られ続けるものではないと考えます。

 いずれにしても、政府としては、法律に基づき、認定、更新の審査や行政監督を適切に実施することとなると考えております。

上西委員 ありがとうございます。今の御説明で、政権交代等がありましても、特定適格消費者団体、そういったものの意義はしっかりと継続していただけるということで、安心をいたした次第でございます。

 それから、一つ戻るのですが、先ほど金融庁の方にお尋ねいたしました相談窓口の件ですが、まだちょっと御答弁をいただけていないようなので、もう一度お願いしてよろしいでしょうか。

三井政府参考人 まず、金融庁の所管いたします、例えば保険会社を初めとする金融機関が提供いたします金融サービスに係る相談窓口でございますが、こうしたものにつきまして、金融庁におきましては、金融サービス利用者相談室という部署を設けまして、利用者サービスの専門の知識を有する相談員を配置いたしまして、保険を含む金融サービス全般に関する利用者からの質問、相談、意見等に一元的に対応しているところでございます。

上西委員 何度も済みません。ありがとうございました。

 それでは、次に移ります。

 前回、前々回と、私は、さまざまな悪徳商法被害者をゼロにしたいという思いをこの場で述べてまいりました。その中でも、悪徳商法の一つとして、知人を勧誘することで商売が成り立つ、いわゆるネットワークビジネスの中には、マルチ商法、百歩譲っても、マルチまがい商法と呼ばれても仕方のない手口の商法は、若者や老人会の方が、ごくごく一部の利益を上げた方の成功例を夢見てメンバーになりながら、大多数が損をさせられ、おまけに、みずからも気づかないうちに加害者になっていることの多いゆゆしき商法です。

 しかし、被害者も、損をしても友人や親族からの話であるので問題視することが少なく、それがこのような商法を蔓延させる要因の一つでもございます。

 口コミビジネスの多くは、文句を言いたくても、加害者が友人、親族、あるいは先輩、後輩、サークル仲間など、ある意味では身内であるがために被害者も泣き寝入りするのが常でございました。

 今回の二段階訴訟で、悪を眠らせない姿勢が貫けるのではないかと大いに期待をいたしておりますが、第三条一項五号では、不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求も本法の請求対象である旨が規定され、債務の履行をする事業者にあわせて、勧誘する者、そしてさせる者も被告人適格がある旨が記載されています。

 このとき、親族を被告にしたくない、友情を壊したくないなどの思いが反映される余地はあるのでしょうか。被害者の意思に関係なく被告とされてしまうのでしょうか。また、原告になることを拒否できた場合、被害者、すなわち原告の数が訴訟要件を満たさない少数になってしまう場合もあり得るかと思いますが、このようなときはどのように対処されるのでしょうか。お答え願います。

岡田副大臣 お答えをいたします。

 本制度では、相当多数の消費者に被害が生じている等の要件を満たすものについて、特定適格消費者団体の判断により、一段階目の訴訟が提起されることになります。

 ネットワークビジネスにおいては、一人の勧誘者が多数の消費者に勧誘をしていることも考えられるところ、消費者被害が発生している場合、親族以外の方に回復されるべき被害を受けている方が存在していることもあり得るため、特定適格消費者団体による訴訟の提起が妨げられるべきものではないと考えます。

 なお、御指摘のような場合においては、被害者が二段階目の手続に加入しなければ、本制度によっては当該被害者から被告事業者に対する個別の請求が行われることはないと考えます。

 以上です。

上西委員 ありがとうございます。

 被害者が被害者の意思に関係なく原告とされてしまうことはないということなんですが、先ほども質問いたしましたが、原告の数が訴訟要件を満たさない少数になってしまった場合はどうなるんでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、第一段階で相当多数の被害者、対象消費者がいると見込まれること、これは第一段階の訴訟要件でございます。その段階におきまして、御指摘のような場合に、御本人に一つ一つ授権を受けるわけではございませんので、第一段階が始まらない、相当多数の人数が少なくなる、第一段階の訴訟要件を満たさない、そういうことはないわけでございます。

 ということで、第一段階の手続が始まりまして、第一段階の判決が出た上で、第二段階に入ります。第二段階に入った上で、具体的に授権をするという消費者は、これは個々の消費者の自由でございますので、授権したくない、原告となりたくない消費者は入らない。しかし、ネットワークビジネスということで、直接親族関係のない被害者もいらっしゃると思いますので、そういう方は入るということで、御本人の御希望により、入りたい人は入りますし、入りたくない人は入りたくはないということで、救済を受けられる、そういうことになるというふうに考えております。

森国務大臣 一段階目の訴えを提起する際も、相当多数いるということが見込まれなければもちろん却下されますし、一段階目が立ちまして、それから二段階目に行った場合も、原告が集まらなくて多数にならなかった場合には訴訟自体が成立いたしません。

上西委員 訴訟が成立しないとなると、泣き寝入りする方も出てくるということなんですか。

森国務大臣 それがイコール泣き寝入りということにはならないと思います。この集団的被害訴訟制度にはなりませんということで、もちろん個々の訴訟はできますので。

 そういう意味で、ネットワークビジネスというのは昔から大変救済が難しい事件だと言われておりますけれども、この訴訟制度で原告が仮にそろわない場合には二段階目が成立しない場合もありますけれども、相当多数いればそれは成立いたしますので、今まで過去あったような、本当に何千人もいるような場合には、五十人、六十人ということでそろえばそれは裁判になるわけでございますので、一概にそれがイコール泣き寝入りということにはならないと思います。

上西委員 ありがとうございます。

 それでも、やはり裁判の費用、そういったものが多くかけられないということで、集まってしたいという消費者目線、そういったこともあると思いますので、ちょっと考えていかなければならないところもあるかなと思います。

 それでは、次に参ります。

 悪徳商法の多くは、客観的に見れば、このようなうさん臭い話を信じる人がいるのか、そういうふうに驚かれてしまうようなことも、そういった事案も多く、もうけをたくらんでいたとか、そのようなインチキな話に自分も乗っていたことを人に知られたくない、そういうふうに思われるような例が多分にあると思います。その思いから、被害に遭ったことをカミングアウトできず、静かにしている方も多い、これが現実でございます。

 それが、今回の法律により、名簿などで被害を受けていることが白日のもとにさらされ、そして、意に反して原告の一員となるようなことはないのでしょうか。プライバシーなどは保全されるのでしょうか。御説明をお願いします。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、対象消費者に対する個別通知の実効性を確保する観点から、簡易確定手続開始の申し立てをした特定適格消費者団体からの求めにより、事業者は、名簿などの文書を当該特定適格消費者団体に対しては開示するものとしているところでございます。これは二十八条第一項でございます。

 ただし、消費者の個人情報保護の観点から万全の施策をとっておりまして、具体的に申し上げますと、特定適格消費者団体に個人情報の取り扱いについて適切な管理をまず義務づけております。これは七十九条でございます。消費者の個人情報につきまして、当該消費者に通知するなどの業務以外での目的外利用、これを禁止しております。

 さらに、その上で、特定適格消費者団体が個人情報の取り扱いについて適切な管理を怠るような場合には、内閣総理大臣は、必要な措置をとるよう団体に対して改善命令を発するということにしておりまして、場合によっては、その特定認定自体を取り消すことができるというふうにしているところでございます。これは八十六条第一項四号ということで、個人情報保護について万全を期しているところでございます。

 また、重ねてでございますが、特定適格消費者団体には、被害回復関係業務に関して知り得た秘密につきまして守秘義務を課しております。これは八十条でございまして、この守秘義務に違反したという場合には、百万円以下の罰金に処せられるということにしているところでございます。これは九十四条二号ということでございます。

 したがいまして、委員御指摘の、消費者の意に反して、被害に遭ったこと等の事情が白日のもとにさらされる、公にされることはないということでございます。

 また、被害者は、二段階目の手続にみずから加入しなければ本制度の手続に加入することはございません。ですから、意に反して原告に引き込まれるということもない制度としております。

上西委員 ありがとうございます。

 被害者、国民の皆様のプライバシーをしっかり考えて運用してくださるということで、よろしくお願いしたいと思います。

 私は、本法案の早期成立を願い、そして、悪を眠らせず、善良なる消費者の泣き寝入りがなくなる日が近いことを祈って、重徳議員に引き継ぎさせていただきます。

 ありがとうございました。

森国務大臣 先ほどの答弁を修正させていただきます。

 ネットワークビジネスの御質問でございましたけれども、二段階目の手続で原告がいない場合、成立しないというふうに答弁いたしましたが、訂正をいたします。裁判は成立をいたしますけれども、原告がゼロの場合、手続が終結をいたします。

上西委員 わかりました。ありがとうございます。

山本委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 引き続きまして、日本維新の会、重徳和彦でございます。

 委員の皆様方、ずっといろいろな角度から御議論いただいておりますが、この法案は、本当に、私が見るに、これから実際に施行されてみなければどうなっていくのかわからない部分がありながらも、事業者の方々は、濫訴になるのではないかということを懸念し、また、消費者の皆さん方は、本当にどこまで救済されるんだろうか、どこまで実効性のある制度になるんだろうか、こういうことを気にしながら、心配されながら、今審議が進んでいると認識をしております。

 そういう中で、私、一つ、まず質問をしたいのが、附則の第二条でございます。

 これは経過措置ですね。どう書いてあるかといいますと、「この法律は、この法律の施行前に締結された消費者契約に関する請求に係る金銭の支払義務には、適用しない。」とあるわけです。つまり、施行前の契約には本法が遡及適用されないということですが、これはこれまでも御答弁いただいていると思いますが、確認をいたします。その理由は何でしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 附則第二条、経過措置に関するお尋ねでございます。

 本制度は、特定適格消費者団体が消費者にかわり訴訟手続を追行し、特定適格消費者団体による通知、裁判所による公告、事業者による公表、情報開示等を経て、可能な限り一回的解決を図ろうとするものでございます。

 本法施行前の事案につきまして本制度を適用するとした場合、事業者は、一時期に多数の消費者からまとまって金銭の支払いを求められることになり、事業者においては、あらかじめ支払いの準備がなされていない可能性が高いということ、それから、情報開示義務など本制度特有の新たな義務が課されることへの対応を余儀なくされることから、事業者の予測可能性が害される側面がございます。

 そこで、事業者が本制度の適用を予測できなかったものは本制度の対象としないということで、施行前の事案については本制度を適用しないということにしたところでございます。

重徳委員 今御答弁いただきましたように、事業者の予測可能性が害されるという言われ方をしましたけれども、一つの見方からすれば、もちろん、事業者の予測可能性、これを大事にするんだ、こういう見方がある一方で、本当に良心的な予測可能性を持っている事業者だけではないですから。

 そういう意味では、必ずしも、害されるというよりは、金額的に予測可能性を超えるというんですか、そういうニュートラルな捉え方の方がいいのではないかなと思いつつ、いずれにしても、資金を準備できていなかったら返すお金がないわけですから、そういう意味では、予測可能性を超えるようなことがあることが不都合であるというようなことだと思います。

 しかし、一つの筋道からすると、事業者の予測可能性を大切にするという、それはそれで今の御答弁はわかりますが、一方で、筋からいって、集団訴訟の制度があろうとなかろうと、やはり契約違反を起こしているような事実があるのであれば、事業者としてそれに対する賠償はしなきゃいけない場面というのはいずれにしてもあり得るということからすると、その数が多かろうと、その金額が大きかろうと、それはいっときに請求されて困っちゃう、こういう事実はあるにしても、予測可能性を超えるという理由だけで制度の適用外とするのが正しいのかどうかという議論はあるのではないかなという見方があると思います。

 まして、施行まで三年ありますので、一つの考え方としては、事業者側は、そういう集団訴訟の対象となることを予測しながら、適切に、いっときの支払いの準備もするとかという考え方もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

川口政府参考人 まず適用関係でございますが、仮に施行前の事案も対象となるといたしますと、現在、その時点で時効にかかっていないもの、十年間、二十年間、時効はいろいろございますが、それらが一時に、全て一度に請求されるということになります。その上で、実際の事業者の悪性というふうに考えますと、故意、過失を問うものもございますが、一方で、例えば約款で定められた解約違約金の金額、これはよく訴訟の対象になりますけれども、これは悪質な意図はないものの、客観的に、消費者契約法第九条第一号が定める、平均的な損害の額を超える場合というものもございます。

 このように、民事上の請求には事業者が故意にしたものでなくても成立する場合がございまして、不当といっても、悪質性の程度はさまざまなものがございます。しかも、事業者としては消費者契約に関して不当な行為をすることがないよう十分注意してきたとしても、結果として法令への適合が必ずしも十分でないという事情がございます。

 そういうことを考慮いたしまして、今回、施行前の事案については適用しないということとしたところでございます。

重徳委員 そういう意味では、中にはもちろん悪質なものもあるかもしれないけれども、そうでない、故意のない、でも、いろいろな、約款の関係、時効の関係で一時的に多額な金銭を求められる、こういうリスクから事業者を守る、こういうスタンスであると。これは政府提案の法案ですから、政府の立法意思としては、そういう意味で、事業者を守るというスタンスが今明確に申し述べられたというふうに理解をしたいと思います。

 その場合に、一つ、少しわかりにくいのが、同じ附則の二条の中に、不法行為に基づく損害賠償請求については、この法律の施行前に行われた加害行為に係る請求について適用しない、つまり、不法行為たる加害行為が、これも同じように、施行後のものだけが適用されて施行前の不法行為は適用になりませんよ、こういう規定があるわけです。

 そうしますと、例えば、英会話学校に七十万円を最初にまとめて三年分振り込みました、四十万円分しかまだ英会話学校に通っていないんだけれども、そこで契約を打ち切ったら、何か単価計算が上がって四万円しか返ってきませんでした、ちょっと数字を丸めて言うと、そういう事例があるわけなんです。

 契約そのものは法律の施行の前に締結されました、つまり七十万円を振り込みました、だけれども、解約をするのは施行後でしたというときに、今の前段の話で、契約の不履行という点を捉えれば、契約は、あくまで施行前に七十万円を払ったんだから、その後、契約の不履行があったとしても、債務不履行があったとしても、それは適用外ですよというふうな規定だと思いきや、しかし、過去の裁判例を見ても、七十万円は施行前に振り込みました、だけれども中途解約したのは施行後です、そのときにお金が返ってこなかった、これを施行後の不法行為と捉えて、あるいは、施行前からの不法行為だったんだけれども、施行日を超えてずっと不法行為、加害行為の状況が続いているとか、そういういろいろな解釈の仕方をもって、要は、施行日前の契約なんだけれども、不法行為は施行後だから今回の対象になりますというような解釈が行われ得るんじゃないか、こういう声もありますが、この点につきましてはいかがでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案の附則第二条は、事業者の予測可能性の観点から、施行前の事案、すなわち施行前に金銭の支払い原因が生じた事案について、本制度を適用しないということを明らかにしたものでございます。

 不法行為につきましては、契約の締結自体よりも加害行為が重要な原因となることから、加害行為を基準として適用関係を定めたものでございまして、施行前の事案について本制度の適用を制限するという基本的な考え方において、その他の場合と変わるところはございません。

 消費者契約が施行前に締結されたとしても、事業者が施行後に加害行為を行っている、不法行為上の加害行為と評価し得るものについては、その行為については、本制度を適用したとしても、それは形式的にも実質的にも遡及適用というものではないと考えておりまして、単なる債務不履行が継続しているというだけで、不法行為上の加害行為があったと言うことはできないと考えております。

重徳委員 それは、そういうふうに解釈、説明をされると、何となく説明できているようにも聞こえるんですけれども、実際には、いずれにしても、不法行為、加害行為が施行後に行われたとさえ裁判で判断されれば、あるいは弁護士さんが一生懸命それを主張して判決をかち取れば、施行日前の契約についてもやはり適用になるにはなるんだと思うんですね。

 ですから、事実上の遡及適用じゃないか、こういうふうに思われるんですが、そういうケースはあり得るということでよろしいでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 契約がなされている場合に不法行為がなされるというのは、通常は契約の締結過程において不法行為がなされるという場合だと思われます。

 ですから、普通の場合ですと加害行為が契約締結の前になることが多いのではないかというふうに考えておりますが、契約の段階で、加害行為が契約締結後、後になる場合というのは極めて限られるというふうに思っておりまして、例えば、契約締結後に意図的に代金を支払わせた事案として、例えば建築請負契約において、契約内容を履行することができない状態になったにもかかわらず、意図的に虚偽の説明をして追加の代金を支払わせるなどの行為については、加害行為として捉えるということが考えられるのではないかと考えております。

重徳委員 それは意図的な、非常に悪質な場合とかいろいろ、本当にケース・バイ・ケースということだと思います。それはいい例、悪い例、いろいろあると思いますし、それに基づいて個々の裁判でいろいろな認定が行われると思うんですが、私がここで申し上げたいのは、今のような疑義が生じるような条文になっていると思うんですね。

 ですから、不法行為であろうと加害行為であろうと何であろうと、とにかく施行日前に締結された契約については適用外なんだというふうに明記するなら明記した方がわかりやすいのではないか、このように思うんです。そうでないと、事実上、遡及を容認するケースがあるというようなことになるんじゃないか。あるいは、そうでなければこの条文に不備があるということじゃないかと思うんですが、これは法令の不備というふうになるケースがあるんでしょうか、それとも、事実上、遡及の適用を認めるという場合があるということになるんでしょうか。

川口政府参考人 本件は、事実上の遡及でもなく、法令の不備でもないというふうに考えております。

 具体的には、不法行為について、加害行為が例えば契約の締結に先行する場合がございます。そうした場合は、契約の締結が施行日以降であっても、加害行為が前であれば、不法行為としては本法の適用はないということになりますので、これにつきまして、どちらが不法行為において支払い原因として本質的かという法的な評価の問題であろうというふうに考えております。

 ですから、施行の前後で、施行前の事案において支払い原因が生じた、不法行為がなされた、加害行為がなされたというものは、契約が仮に施行日の後になされても適用はないというふうにしているところでございます。

重徳委員 ちょっとかみ合っていないような感じがするんですが。

 本当に、申し上げたいのは、さまざまなケース・バイ・ケースであって、いろいろな、本案につきましてというのは今事例として挙げたものについてということだと思うんですけれども、要は、最初に審議官がおっしゃったように、時効の関係で一度に請求が来る可能性があるとか、そういう意味で事業者の予測可能性を超える部分があるというふうなことが、つまり事業者の予測可能性を守るということなのであれば、それは契約が施行前の契約であれば、どういう理由であれ、その契約については適用外だよということをはっきりさせた方がいいんじゃないかというのが私が申し上げていることでございまして、そこがやはり曖昧になったり、裁判の内容によって認定されたりされなかったりというようなケースがあるんだとすれば、そこは立法の不備になるんじゃないか、こういうふうに申し上げているところなんですけれども。

森国務大臣 これはそもそも、重徳委員が冒頭おっしゃっていたとおり、筋論からいえば、通常、原則的には、新しい法律ができたときには、施行日以降に要件が整っていれば、契約日が前であっても適用されるんです。これまで、全ての法律がそうでありました。だから、これは遡及の問題でも何でもないんです。遡及というのは、施行日に要件もなく、施行よりも前に要件が整っていたものに対して新法が適用される、そういうのを遡及と申しますね。

 ですから、施行日以降に要件が整っていれば、これは通常、適用されるんです。適用されるんですけれども、今回の法律に限っては、施行日以降に要件が整っていても、契約が施行前であれば適用を制限しましょうと。筋論でいえば適用されるものを、適用をわざわざ制限しているんです。これは初めてだと思います、このようなことが行われるのは。

 それはなぜかといったら、この法律が、日本では初めての集団的な訴訟制度ということで、やはり、集団で一斉に行われた場合には、経済界の皆様が大変懸念なさっていたのは、悪質な業者ならば、もちろんこれは、先ほどの上西委員のようにびしびしやりますけれども、良質な業者が、予測していないような、故意でないような場合があった場合に、一斉に来た場合に、予測可能性がない、そういう行為に配慮をしてつくった特別の措置でございます。

 そのような中で、契約が施行よりも前の場合には適用されません。それはもう大原則です。

 しかし、不法行為の場合は、これはいつでも生じ得るものなんです。ですから、不法行為で構成する弁護士もいると思いますが、実際に、施行日の後に、新たな不法行為、これは、不法行為といえば、加害行為をしていなければいけませんので、これも故意でしていなければいけませんので、これが裁判上認定をされていたら、それはもちろん、不法行為による損害賠償請求は生じるんです。

 だから、これは不法行為があるということを被害者の方が立証するわけでございますので、業者の方がそれほど過大な負担を負うものではないと思いますし、不法行為についても、契約の場合には適用制限される、つまり、施行日より前にした方がいいんじゃないかというような御提案がございましたけれども、不法行為の場合には、常に契約が存在するとは限りません。契約がある事例もあるし、ない場合もありますね。不法行為だけで消費者被害者が被害を負う場合だってあるわけでございますので、そういう意味でいえば、要件の立て方として、不法行為の場合にも、契約が施行日よりも前にある場合には適用を制限するというのは書きようがないわけでございますし、先ほどのような趣旨からいっても、おかしなことになると思います。

 ですので、冒頭、委員がおっしゃったような、業者の皆様の予測可能性については最大限配慮されておりますし、法令の不備にもなっていないというふうに思っています。

重徳委員 こればかりやるつもりはないんですが、ともすると、施行日前の契約は全て適用外だというふうな単純な割り切りではなくて、そこは、不法行為といういろいろな形での裁判上の論争はあり得るということまではお認めになるということですよね。つまり、紋切り型に、施行日前に契約が締結されたものについては全部、どういう理由であれ全部適用外だとは限らないということですよね。それはもう筋論からしてもそうだというのは、そういうことだと解したんですが。

森国務大臣 個々の裁判によって、契約による債務不履行の損害賠償請求が立てられている場合には、問題とならないと思いますし、不法行為によって争われている場合には、不法行為の要件が問題になると思っております。

重徳委員 一応、共通理解にはなっていると私は思っておりますので、そのように理解させていただきます。

 それから、私、午前中に参考人の質疑の中で、対象となる請求、損害の範囲というものが、今回の場合、拡大損害だとか慰謝料とかそういうものには及ばないという非常に限定された仕組みになっているということを指摘いたしまして、それについて、各参考人、どう思われますか、こういう質問をさせていただきました。

 例を出して、例えば五千円の化粧品を買いましたと。それを買ったら、お肌のトラブルがあって、それは、心身、慰謝料とか、あるいは得べかりし利益を失った、ビジネスでも何か支障があった、そういうこともあるだろうけれども、取り戻せるのは、この法律上は五千円の化粧品代だよ、わかりやすく言えばそういうことだというふうに申し上げたわけなんです。

 しかし、これはいろいろなこれまでの議論の中でそのように請求の対象が限定されたということは私も理解いたしますが、そうはいっても、第一段階、第二段階で、その部分にしか、請求の範囲を限定しない限り、第二段階の訴訟で支障が出る、また何年もかかってしまうとは限らないわけでありまして、本来的には、この消費者の被害というものを、法律だとか、あるいは役所が網をかぶせて、よかれと思ってではありますけれども、網をかぶせていくのが正しいのかどうか、そういう問題は残ると思うんです。

 それで、この法案からは少し話が離れてしまうんですけれども、この消費者のトラブルというのは、常に世の中で、モグラたたきのように、たたいてもたたいても新しい商法が生まれてくるという状況の中で、実は、この間、きょう本当はお配りすればよかったんですが、新聞に、消費者委員会が八月六日に出しました建議についての記事がございました。

 これは新聞記事にわかりやすく書いてありますので、ちょっと御紹介しますと、例えば二酸化炭素の排出権、この投資に参加すれば必ずもうかるなどという悪質な投資勧誘のトラブルがありますねと。これに対して、消費者委員会が消費者庁に対して出しました建議の中では、これを特定商取引法の対象にすべきだという建議を行っております。現在の特商法には商品とサービスは規制対象となっている、全体的に適用対象になっているんですが、権利、今申し上げました排出権、二酸化炭素の排出権の取引の権利、こういう権利につきましては、政令で指定したもの、例えばゴルフの会員権とかそういう指定したものが幾つかあるんですけれども、限定的にあるんですが、これしか対象にならない。だから、新しい権利を売るようなビジネスについては特商法の対象にならない。これの法のすき間を狙うかのように権利関係のトラブルが増加した。これを踏まえて、消費者委員会は、そういう個別のどの権利については特商法の対象だよという指定をする方式というものを改めろ、指定権利制を廃止すべきだということをこの建議の中で言っているわけです。ですが、消費者庁は、悪質な権利業者は存在自体が許されないんだ、だから、この法律、特商法の規制に含めば存在を許すことになってしまう、だから法改正はできないんだ、こういうような説明をして、その意見が対立している、このような新聞記事になっております。

 これは、世にも珍しいかわかりません、私は余り見たことがないような建議になっているんですが、この建議の後ろの方に別紙一、二というふうにありまして、今申し上げましたような消費者委員会の指定権利制の廃止をすべきだというのが別紙一にありまして、それはなぜかということが論点として上がって、別紙二の方には、それに対する消費者庁としての反論が載っている。こういう非常にオープンな、普通は、審議会の答申なんかが出たら、その御意見を踏まえてしっかり検討しますというのが役所側の姿勢なんですが、消費者委員会からの建議に対して、いや、それはできないんだということを思い切り表で、平場でぶつかっているという珍しい内容になっているんです。

 私は、こういう表での議論というのはもっとどんどんやるべきだというふうに思っておりまして、知らない間に役所がそういう答申などに対して中身を握り潰すなんというよくある話に対しましては、こういう形でやるというのは、むしろすごくいいことなんじゃないかなというふうに評価をいたします。

 何が言いたいかといいますと、新しい消費者にまつわるビジネスやトラブルというものは、やはり役所が政令で指定し切れるものではないし、法律で枠をはめて全部守れるものではないと。ですから、できるだけ消費者庁、消費者行政というのは、どんなことが起こってもそこを捉え切れるというようなたてつけの規制なり仕組みにするべきじゃないかというのが私が申し上げたいことでございます。

 そういう意味で、この中で反論として消費者庁の意見は出ているんですが、改めまして、やはり一つ一つを政令で指定したものしか、商取引上の悪質なビジネスを規制するための仕組みの中に、そういうふうに規定できないというのはちょっといかがなものかということを、これを読みましても、客観的に見ても思いましたので、この建議に従って、指定権利を廃止するということを考えてみてはどうかと思うんですが、御見解をお聞かせください。

菅久政府参考人 お答え申し上げます。

 本件で議論の対象になりましたのは、いわゆる実態のない権利、架空のもの、これを対象とします詐欺的投資勧誘ということでございまして、そのような詐欺的投資勧誘による消費者被害、これに対して対応策を講じるべきということにつきましては、これは消費者庁としても強く認識しているところでございます。

 また、今既に御説明いただきましたとおり、昨今まさに問題になっております詐欺的投資勧誘、これは、あらかじめ仕組まれました集団的、組織的な詐欺による取引でございますので、その存在自体が許されるべきものではないというふうに考えております。

 一方、特定商取引法の目的は、訪問販売や通信販売といいました取引を公正にして、その流通等を適正かつ円滑にすることによって消費者の利益を保護するというものでございますので、その報道の中にもありますが、仮に、本来、存在自体が許されるべきものでない詐欺的投資勧誘を特定商取引法で規制するということになりますと、一定の行為規制にさえ従えば、そのような詐欺であっても存在自体が許されるという誤ったメッセージを発出することになるんじゃないかという懸念がございます。

 そのようないろいろ議論をさせていただいているわけでございますけれども、したがいまして、法制面、実行面、双方を見まして、御指摘のような指定権利制の廃止、特に今回の議論の対象が、架空の権利を対象にした詐欺的投資勧誘ということでございますので、そういったことについて特定商取引法の対象にするということについては、かなり慎重な検討が必要なんじゃないかというふうに考えているところでございます。

重徳委員 存在が許されるべきかどうかということを消費者庁が一々政令で定めるか定めないかというようなこと自体、もう本当に世の中の、自由競争の世界なんですから、次々と、それは悪質なビジネスのことなので、別にそれを称賛するつもりは全くありませんけれども、だけれども、これは存在するべきであって、これは存在が許されないなんという線引きは、恐らく役所でやっていくのはほとんど不可能ではなかろうかという前提に立ったこの建議だと思っておりますし、消費者の代表の方々も入った、そういう御意見ですので、やはり、今の議論は今回の集団訴訟と直接関係する話ではございませんが、しかしながら、これから今回のこの集団訴訟の法案は、施行するまでもいろいろと検討事項はありますし、施行してからもいろいろな想定外のことが恐らく起こってくると思うんです。

 ですから、そういうものに対して、できるだけ柔軟に、余り理屈で考えて、存在すべきかしないべきかなんというレベルじゃなくて、やはり消費者の方々が一番救われる方法を、役所の論理だとか法制的な問題ということをハードルにすることなく、できるだけ弾力的な法整備をしていくべきだということを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきたいと思っておりますが、一言あれば、よろしくお願いします。

森国務大臣 答弁の訂正を申し上げます。

 加害行為、故意によると申し上げましたけれども、故意または過失によるというふうに訂正します。

重徳委員 ありがとうございました。

山本委員長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘でございます。

 本日は、午前中そして午後、こうやって長時間にわたって審議をするというような形になっておりまして、ちょうど今、大臣が中座をされておりますので、ちょっと本法案の審議についての感想、これを述べさせていただきたいなというふうに思うんです。

 まさに、本日は午前中に参考人の質疑を行わせていただきまして、そして、本日、こうやって集中的な審議を行い、そして、あしたもまた、途中園遊会の中座を挟みますけれども、午前中そして午後という形で集中的に審議をする。本当に、国会というもの、これだけ詰め込んで、やればできるんだなということを改めて実感しているような次第ではございます。

 今回に関しては非常にタイトなスケジュールではございますけれども、各会派の方々がいろいろな形で協力をし合ってこの法案の成立に向けて全力を尽くされているという姿は、この法案の審議にかかわらせていただいている一員として本当に勉強になるなということを、まず改めて、あらかじめ感想として述べさせていただきたい、このように考えております。

 それでは、この審議の中身についてもちょっと触れさせていただきたいというふうに思います。

 今申し上げたとおり、午前中は参考人質疑というものがありまして、四つの団体、個人の方もいらっしゃいましたけれども、お越しをいただきました。その中で、私は経団連からいらっしゃった方に対してさまざまな質問をさせていただきました。その場でも申し上げたんですけれども、消費者保護というのは非常に大事なことである、さりとて、一方で、事業者のそういったビジネスの円滑な運営というものもまた同じように非常に重要なことであるというような観点から、そういうさまざまな角度の質問をさせていただいたんです。

 みんなの党と言うように、消費者だけではない、ビジネスサイドだけではない、それこそみんなの党ということを具現化していくために、本日、さまざまな質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 ちょうど今、大臣がお戻りですので、具体的な中身について質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 それでは、この法案の中身についてなんですけれども、今回、消費者の保護というような観点があるんですけれども、一方で、濫訴を防止しなければいけないというようなところも非常にこの制度設計の中で考えていらっしゃってきたというふうに思っておりますけれども、そこで言う濫訴というものは大臣の中でどのように定義をされているでしょうか。お答えいただければと思います。

森国務大臣 今、三谷委員から午前の参考人質疑のことについてさまざま御意見を伺いましたけれども、午前は、私、内閣委員会の方がございましたが、しっかりと事務方から参考人の皆様の御意見も伺っております。

 安倍内閣においては、成長戦略を実行していくと消費がふえ、新たな投資を誘発するという好循環を実現するためには、消費者の安全を確保するとともに、その不安を払拭し、健全で活気と厚みのある消費市場を構築することが不可欠と考えまして、また、この法案も提出させていただいているところでございます。

 御質問の、濫訴とは何かということに関しましては、本制度で、いわゆる濫訴と言われております事態が生じることがないような制度設計とするために、七十五条の第二項のところに、不当な目的でみだりに共通義務確認の訴えを提起すること、これを禁止しております。具体的にこれに当たり得るものといたしましては、何らかの利益の見返りを得る目的や相手方の社会的信用を低下させる目的、単なる嫌がらせ目的である場合など、およそ消費者の利益の擁護を図る目的がないといった場合であります。

 また、当該共通義務確認の訴えが不適法であるとして却下され、もしくは請求に理由がないとして棄却されることが明らかである場合、またはこれらが容易に見込まれる場合であるにもかかわらず、不当な目的であえて訴えを提起する場合が含まれるものと考えております。

 仮に、特定適格消費者団体が不当な目的でみだりに本制度を用いたと認められる場合には、改善命令を発することとし、場合によっては、特定認定の取り消しを講じることといたしております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今お話しいただいた濫訴の定義からいたしますと、そういう不当な、ビジネスを必要以上に妨げるような裁判というのはなかなか起きないんじゃないかというふうに考える向きもあるとは思うんです。

 ただ一方で、大臣も、ずっと弁護士としていろいろな事件をごらんいただいてきた中で、やはり新しい事案というのは、それまでずっと、裁判でいくと負ける、負け続けてきたけれども、裁判を続けることによって、どこか突破口があって、どこかのタイミングでそれが勝訴に転じていくというような話があるわけですよね。

 負けるかもしれない、それが明らかではなくても、そういった容易に負けるかもしれないというものでも、裁判を起こす意義というのがあるんだというふうに言ってしまえば、これは濫訴には当たらないのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

森国務大臣 済みません、もう一度御質問をお願いできますか。

三谷委員 ありがとうございます。

 濫訴というものを、敗訴する、本案に理由がないということが明らかな場合と、そういったことが容易に想定できる場合ということを先ほど答弁いただきましたけれども、やってみなきゃわからないと思って、負けるかもしれない、でも新しい判例をつくるためにこれは勝負に出るということは濫訴には当たらないのではないかと。これは負けるかもしれないと思っても、やる意義はあるんだと思うんですが、それは濫訴に当たるのでしょうか。

森国務大臣 それは、それだけであれば濫訴に当たらないと思いますが、先ほどの答弁で、負けるかもしれないということが明らかであり、それが容易に見込まれる場合であるにもかかわらず、不当な目的、ですから、先ほど前段で御指摘をいたしました、単なる嫌がらせ目的とか、相手方の社会的信用を低下させる目的の場合でございますので、新しい判例をつくろう、突破口をつくろうというような目的である場合には、不当な目的とは言えないと思います。それだけをとった場合には濫訴と言えないと思います。

三谷委員 講学上はすごい切り分けられるところだとは思うんです。

 ただ一方で、訴えてしまうということによって社会的な評価が低下することは目に見えているという場合だってあるわけですし、今の日本ですと、裁判をした、裁判の被告になったということだけで一定程度社会的な評価が下がってしまうというのが実情なんだと思うんですね。

 そういう場合に、社会的評価が低下してしまうということがわかった上で、それでも、負けるかもしれない、でも意義があると思って提訴するというような場合もあり得る。こういったものは、結局、不当な目的というものに関しては極めて主観的な要件でございまして、これを認定するというのは極めて困難ではないかというふうに考えております。

 何が言いたいかと申しますと、濫訴の防止、濫訴の防止というふうに口で言うのは簡単なんですけれども、ただ、実際の事案の解決というようなことを見てみますと、やはり、形式的にいろいろな要件を加重していくということによって、みだりに裁判が起きたりということを妨げていくというような方向をもっともっと模索してもいいのかなというふうに考えているんですけれども、その点、大臣はいかがお考えでしょうか。

森国務大臣 濫訴が起きないようにするあらゆる手だてを講じていくべきというふうに私も思いまして、本法案で、手続の追行主体も限定しました、対象事案も限定しました。これは、アメリカのクラスアクションなどと比較しますと、かなり限定を加えている、狭い入り口でございます。

 このような中で、消費者の皆様に被害があったときに特定適格消費者団体が訴訟を起こすわけでございますが、その手続はそれでもまだまだ大変というお声が寄せられておりますので、単に、相手の社会的信用を低下させるために一々訴訟を起こすということは、かなり考えにくい状況だとは思います。

 そして、企業の皆様も、そのようなところに至るまでの間に、消費者団体等からさまざまなお問い合わせもあるでしょうし、またお客様相談窓口等にも事案が来ると思います。そのような中で、やはり企業態度として、それは紛争の解決のために御努力をいただくということで、訴訟が提起された場合の社会的信用も低下をしないように、それをしっかりとした企業態度で吸収していくというか解消していく。

 もし万が一、訴訟を起こされても、うちの企業は全くそういった後ろ指を指されるようなことはしておりませんということで、逆に消費者の皆様から御信頼をいただけるような業務運営をしていただけますようにお願いをして、消費者の方にも企業の方にも最大限の配慮をした中で、世界的にも、OECDからも勧告をされて求められておりますこの訴訟制度の法案を提出いたしましたので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、今まさに大臣がおっしゃったように、裁判が起こされたとしても、企業のそういった態度で、うちは何も後ろめたいことはないというようなことを理解していただける、そういうような社会にしていかなければいけないんだろうなと。裁判を受ける権利もあれば、いつ起こされるかわからないという中で、裁判自体が起こされたことが悪だみたいな形になってしまうと、やはりどうしても企業の活動には必要以上の制約が生じてしまう。これは個人でも同じことだと思うんですけれども、そういったことなのかなというふうには考えておりますので、その点については非常に今理解をさせていただきました。

 最終的には、この法案は必要だろうなというふうには考えているんですけれども、そういう意味で、これがアリの一穴で物すごい決壊をしてしまうということにならないような、そういった慎重な審議、慎重な今後のガイドライン、附則みたいなものをつくっていただけるかどうかというような観点で、以下の質問をさせていただきたいというふうに考えております。

 続いて質問したいんですけれども、ここでいう特定適格団体につきましてなんですが、数というものが今十一を予定されているというふうに言われておりますけれども、本日午前中に参考人質疑の中で阿部参考人がおっしゃっていたのは、最初の予定よりもちょっと数がふえたなというようなことをおっしゃっておりました。

 これは、今後もこの団体の数をふやしていくというような予定はございますでしょうか。

川口政府参考人 適格消費者団体でございますが、本制度の特定適格消費者団体の一つ前の段階、差しとめをするという団体でございます。

 現在、十一でございますけれども、地域的に少し偏りがございまして、空白地域がございます。空白地域がありますと、どの団体も全国の消費者のために差しとめをするということでありますが、どうしても近くの消費者から情報が入りやすいという面がございますので、やはり空白地域であります東北ですとか北陸ですとか四国、そういったところにもできた方がいいのではないかという考え方で支援をしているところでございます。ただし、申請審査は厳格に行うという方針でございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 その最後の一言、申請についての審査は本当に厳格にやっていただきたいというふうにお願いを申し上げます。ただ単にアクセスが容易になればいいということではないというふうに考えておりますので、この点、御理解いただければというふうに思います。

 また、続きまして、これも事前の質問通告になかったことではございますけれども、本日の参考人質疑の中で出てきた話ですので、ちょっとお伺いしたいと思うんです。

 阿部さんからいただいた資料の「法案の具体的懸念点と要望」というものの一つ目のところに、事業者が代金返還や修理、交換などの自主的な対応をしているというような最中に裁判が起こされる可能性がある、これができないようになっていないというような懸念が示されているわけですけれども、この点について、できないというように変えていくというようなお考えはないでしょうか。

川口政府参考人 参考人質疑の中でも適格消費者団体の方からもお話がございましたが、基本的には、事業者が対応している場合は訴訟を起こさないというのが期待されるところでございます。

 仮に、起こした場合ということでございますけれども、事業者が対応しておりますと、相当多数という要件自体が、第一段階の段階で満たさなくなるということが見込まれるわけでございまして、第一段階の口頭弁論終結時におきまして、相当多数ということが要件を満たさないということになれば、却下ということになるというふうに考えております。

 また、事業者の方が的確に対応しているにもかかわらず、ですから却下になることが明らかであるにもかかわらず、嫌がらせのために訴訟を起こすということが仮にあったといたしましたら、消費者庁の方でしっかり監督をしていくということになろうかと思います。

三谷委員 いや、それはそうじゃないと思うんですね。

 製品のリコールなりなんなりをしていくという場合も、例えば代金返還請求みたいな話が起きたときに、簡単に言うと、リコールしたって、一〇〇%それが回収に応じる、修理に応じるというような消費者ではないわけで、だからこそ、例えば、パナソニックさんが以前、こういった型式のものは危険だといって、ずっとCMを何カ月にもわたって打ち続けていた。それで、今、売った製品のうち何%回収できたかわからないですけれども、それが例えば、これはこの後、相当多数の意義にもちょっとかかわる話だとは思うんですけれども、五人、十人しか残っていないよというようなことではないんだろうと思うんですね。例えば、一万個、二万個売って、それは物すごい回収を頑張って一万八千個回収できました。それでも二千個残っているわけじゃないですか。相当多数の要件を満たさなくなるというような答弁は通らないと思うんですけれども、この点いかがお考えでしょうか。

川口政府参考人 申し上げましたのは、相当多数を満たさなくなる場合は却下されるということでございます。

 もう一方で、事業者の方が基本的に対応している場合、適格消費者団体の方の御説明がございましたが、事業者が対応すれば訴訟を起こす必要がないわけでございますので、対応がなされている、ただ時間が少しかかっているというような場合には、特定適格消費者団体の方から訴訟が起きることはないのではないかというふうに感じているところでございます。

 ただ、この不当な目的でみだりに起こすというところに当たるかどうかについては、いずれにせよ、ガイドライン等を定めまして、先生御指摘の点も十分踏まえまして、また、リコールの実態、この辺も経団連からもじっくり聞きまして、現場で混乱がないように、ガイドラインの策定過程でよく検討していきたいというふうに思っております。

三谷委員 ありがとうございます。

 もしかしたら、想定している事態というのが、大臣そして消費者庁さんと私とちょっと違っている、私が想定しているのは、もう少しぎすぎすした社会なんだろうなというふうには思うんですね。

 何かあっても、自主的に対応している場合には温かい目で見守ってくれるというようなことが期待される場合であれば、それはそれで構わないのかもしれないですけれども、これはこの先どういうふうな状況になっていくかわからないという中で、制度的な担保をしておいた方がいいんじゃないかというような観点での質問ということでございます。

 今、ガイドラインの中でそういったこともしっかりと書き込んでいただけるというような答弁をいただいたので、それでお願いできればというふうに考えております。

 実は、これに関連してもう一つあるんですよね。今回の例えば白斑のような問題ですとか、そういった問題が生じましたと。それは、体に対する被害はもちろん本法案の対象外ですけれども、例えば化粧品そのものの代金返還請求というような話になったときに、これは訴訟が起きた瞬間に我先にと訴えるというような話だってあり得るわけですよ。

 要は、何を言いたいかというと、こういう集団被害というものが発生した、これは、明らかになったときに、直ちに、次々に訴えが生じてしまうというようなことが起き得る。

 普通に考えれば、企業で少し検討して、自主的に回収するとか、そういったことでこれを解決するのが一番経済的にも合理的ではないかというふうに考えるわけですけれども、それがいきなりそういったことが明らかになった段階に、いろいろな団体さんが、今の団体さんがそうするとは言いません。しかしながら、今後、そういう団体さんの性格が何らかの理由で変わったときに、訴え始めるというようなこともあり得るんじゃないかというようなことを、何らか制度的な制約をしておいた方がいいのではないかというふうに考えているわけでございます。

 ちょっと順番が飛びますけれども、だからこそ、何かそういったものを防ぐように、本日の阿部参考人のこの中にもありますけれども、一定数の授権というものを各団体に求めた方がいいのではないかというような意見がございます。この点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

森国務大臣 一段階目の手続で授権が必要ではないかというような御質問の趣旨だと思いますけれども、本制度で一段階目の手続に消費者の授権を要しない制度設計としたのは、そもそもこの法案の立法趣旨にかかわるところですけれども、訴訟の帰趨が不明な段階では、消費者の方に必要な費用、時間及び労力がわからず、消費者が授権するのが困難であるためなんです。

 また、本制度では、特定適格消費者団体は、一段階目の訴えを提起したことについて相互に通知しなければならないこととしておりまして、他の団体は訴訟に参加することができますので、今言ったような濫訴のようなものが起きたときには、他の団体にも知られてしまいますので、団体同士の相互の牽制機能というものも見込まれるというふうに思っています。こうしたことによって、消費者保護の観点から、適切な訴訟追行をしようということを確保しようとしております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、授権の話について、大臣が、どういった、どれぐらいの方が対象になるかわからないというような答弁、趣旨の話も含まれておりましたけれども、それはそうではないというふうに思うんですね。

 これは、第六条の三項、四項において、対象消費者の数によって管轄が変わるというような規定がございます。なので、これは、そういう裁判を起こすという段階で、この事案だとどれぐらいの消費者がこの対象になるかというのは見込んだ上じゃないと裁判を起こせないというような形になっているわけじゃないですか。

 そうだとすると、仮に、どういった事案でもわからないですけれども、例えば販売する化粧品の数というものをあらかじめさまざまな形によって明らかにすれば、それが例えば過去に二十万個売れました、そうしたら、その中の一%で構わない、例えば、では二千人の授権を得れば裁判を起こしていいですよというような形にすれば、二つ効果があって、お試し訴訟みたいな、そういったものが起こせなくなるというような観点もあれば、そういった授権を得ている間に事業者の方が、これはちょっと集団訴訟が起きるかもしれないぞ、だったら自分で早く回収しておこうというふうに思うかもしれない。

 そういった積極的な効果もあるわけですから、この授権というものを、改めて、必要ではないかということについてお考えをいただきたいと思います。

森国務大臣 授権のときは、先ほど言ったのは、数ではなくて、そもそも何でこの集団的な訴訟制度が必要か、全世界的に言われてきたかと申しますと、一消費者は大変弱くて、資力もない、そして知識もない、情報もないということで、一旦消費者被害に陥った場合は、その回復が自分一人だけでは非常に困難であるというところから生まれた制度なんです。

 そこで、一段階目の訴訟について考えますと、この訴訟の帰趨が不明、つまり今後がどうなるかわからないという段階では、その消費者それぞれが、これからかかる訴訟費用、それから時間、労力というものがわからない段階で、なかなか授権自体も難しいということがあるわけです。それができるんだったら最初からやればいいわけですから、それができないので始めるのでありますから、第一段階目の手続においては授権を求めないというふうにしたわけでございます。

 しかし、翻って、悪質な業者が相手である場合にはそれでもいいでしょう。だけれども、良質な業者さんはさまざまな御懸念があると思います。ですので、本制度では主体を狭める、事案を狭める、そして手続追行主体となる特定適格消費者団体については、制度の濫用を禁止するために行政監督規定も設けまして、先ほど言ったような、余りいい言葉ではないと思いますが、お試し訴訟のようなことが起こらないよう制度設計をしておるということでございます。

三谷委員 この点については制度設計そのものの話になってきますので、現段階においてこれ以上というのは難しいのかなというふうに思っておりますけれども、もし今後の見直しというものがあり得るのであれば、それまで起きた事象等々を勘案して御検討いただければということをあらかじめお願いさせていただきます。

 次の問題に移らせていただきます。

 先ほど維新の会の重徳先生もこのテーマは質問されておりましたけれども、本法の遡及的な適用について若干お伺いしたいというふうに思います。

 附則二条の点なんですが、この附則二条の趣旨に関して、先ほど大臣は、予測可能性というものをしっかりと担保するんだというようなことをおっしゃっておりました。しかしながら、不法行為による請求権というものについて、果たして予測可能性というものは担保し切れているのかなというところに若干の疑念がございます。

 そもそも、これはちょっとわかりにくい規定なので教えていただきたいんですけれども、これは消費者契約についての法律なんだと思いますけれども、不法行為というのは契約を前提にしないものなので、契約があろうがなかろうが、ただ単に、その行為がある、それが不法行為であれば、損害が発生すれば不法行為が成立するわけですね。

 この消費者契約と不法行為との関係というのを教えていただけないでしょうか。

森国務大臣 例えば、契約締結上の過失のように、まだ契約は成立していないという段階で不法行為が成立する場合もございます。そのような場合を想定しております。

三谷委員 まさに今、契約締結上の過失または、例えば詐欺とか強迫とか、そういった形によって消費者契約が締結された場合というのも恐らく含むのではないかというふうに思うんですけれども、一般的には契約よりもそういった不法行為というように評価され得るものが前に来る場合が多いと思うんですね。

 では、これが後に来る場合というのはどういった場合があるか、教えていただければと思います。

川口政府参考人 先生御指摘のように、契約締結前に加害行為がある場合が多いということでございますが、契約締結時の後に加害行為が考えられる場合として二例申し上げます。

 一つは、建築請負契約の場合でございますが、建築請負契約において、契約内容を履行することができない状態になったにもかかわらず、意図的に虚偽の説明をして追加の代金を支払わせるなどの行為、これを加害行為として捉えるということが考えられます。これは実際に起きた事例もございます。

 また、別の場合でございますが、解約妨害の場合でございますが、契約締結後に解約妨害によって消費者を害した事案として、例えば、受講料が分割払いの予備校の受講契約につきまして、契約後に講義を担当中の有名講師が退社した、こういう事態に直面したところ、スケジュールの都合がつかないだけだなどと虚偽の説明をして、消費者が解約する、学生でございますが、解約する機会を失わせて契約残金を支払わせ続けたり、また、解約申し出に対して実際よりも高額の手数料を説明するなどして解約妨害をした事案などが考えられると思っております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今、二例挙げていただきましたけれども、これはいずれも、契約締結後に来る加害行為というのは故意によるそういったものだというふうな説明をされておりましたけれども、実はそれが故意なのかどうなのか、そういうところも絡むところではあるんですけれども、今回の附則二条というところで、防ぎ切れていないのではないかというような問題意識は重徳先生が先ほどおっしゃっておりましたけれども、施行日よりも前に契約があって施行日よりも後に加害行為があったというような場合ですということなんですが、先ほどの大臣の答弁を伺っていてちょっと一瞬ほくそ笑んだのですが、その後訂正されてしまったので残念なんですが、故意による加害行為、そういったものだけではなく、不作為によるものも含むんですよね。

 不作為によるものを含むというのは何を意味するかというと、注意義務違反なんですよ。漫然と何もしませんでしたということが、本来果たすべき義務を違反したということで不法行為を認められるということがあり得るわけで、契約の締結時点が施行日より前だから安心して何もしていなかったというようなときに、いやいやいや、あなたは何もしなかったじゃないか、それは安全配慮義務違反、注意義務違反、だから不作為によって不法行為が成立するんだ、だからそれは集団訴訟の対象になるんだというふうに言われる可能性があるんですけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

森国務大臣 三谷委員にほくそ笑まれてしまったんですが、故意だけではなく過失も含むんです。ただ、今の委員の御質問は、故意、過失の問題ではなくて、作為、不作為の問題でございますよね。

 それを分けて御答弁をいたしますと、不作為ですけれども、不法行為に基づく損害賠償請求について、加害行為が、ほとんど作為の方が多いとは思いますけれども、不作為のものもある場合があると思いますけれども、不作為のものというのは、当然の作為義務が前提とされるものであって、結果を回避するための作為義務に違反した場合に限られるというふうに思います。

三谷委員 まさにその作為義務違反というところ、通常の人間関係、通常の人的関係においては、作為義務というのは当然ながら生じないわけです。例えば、親子ですとか夫婦ですとか、そういった特定の人間関係であればそうでしょうし、同じ車に乗ったという場合もそうでしょう。

 ただ、それと同じように、何らかの原因によって作為義務が発生する。一つの要因として、消費者契約というのがこれに該当するわけですね。消費者契約を締結したからこそ、何かしなければいけないというような作為義務が発生する。これを漫然と、過失によって不作為をしてしまったという場合に、まさに懸念しているような事態が生じるのではないかというような質問なんですが、この点についていかがお考えでしょうか。

川口政府参考人 やや法解釈の一般論に属するところでございますが、私どもの理解でございますが、施行前に契約を締結していたものの、施行後に加害行為があるとして不法行為に基づく損害賠償を請求するには、不法行為の要件である加害行為が必要ということでありまして、単に債務不履行の状態であるだけでは足りず、不法行為と言えるだけの、社会通念に照らして著しく相当性を欠くことが必要であるというふうに考えております。

 ですから、大臣から御答弁申し上げたように、不作為にも加害行為があり得るということは一般的には認められているところでございますが、その不作為が不法行為になるだけの注意義務、安全配慮義務等の義務というのは、相当程度限られた場合にのみ発生するものではないかと理解をしております。

三谷委員 この点については、まさに、これは司法試験の勉強みたいになってきてしまうんですけれども、四百十五条に基づく善管注意義務違反というものと、七百九条における安全配慮義務というようなものの表裏なんですよね。だからこそ、四百十五条に基づく債務不履行というものが成立し得る、認め得るというような事案であれば、それは安全配慮義務というものの違反が認め得る場合というふうに言える可能性が、蓋然性が高いのではないかというような懸念があるわけなんです。

 この点について、もうこれ以上いろいろな答えは出てこないのだろうと思っているので、何でずっとこの点にこだわって聞いているかといいますと、この先の話があるのではないかということを懸念しているんです。

 今回の法案については、物の代金とかサービスの代金そのものについてなんですけれども、この対象が広がった場合、例えば、PL法、製造物責任法ですとか、その他、逸失利益、体に生じたもの、そういった損害について全部対象にしていきますよというようになった場合には、まさに、今、アリの一穴になってしまっているような、先に契約があって、その後、安全配慮義務違反があった場合というものによって、全く想定もしていなかった損害賠償請求というものが企業になされる可能性が高くなると思っているというところの懸念があるからなんです。

 この点は、ぜひとも、この内容について大幅にこれから変えるということは仮に難しいんだとしても、施行までしっかりと検討していただいて、施行後、運用状況を見ていただいて、どのようにこれを変えるべきなのかどうかということも大臣においていろいろ検討していただければということをお願いさせていただきます。

 次の質問に移らせていただきます。

 共通義務確認訴訟の被告適格について伺いたいと思います。

 この被告適格、この法律を見れば、事業者というふうになっておりまして、消費者契約というものを直接締結している相手方だというふうになっているわけですけれども、これは、一般的に考えれば、何か商品を売るということになった場合には、その商品を売った人と買った人、売買の当事者という形になると思います。

 しかしながら、例えば、電気製品とかですと、保証書というのがついているわけですよ。保証書がついているものを売った、これは、約款によってどことどこの間に契約が成立するのかというのは極めて難しいものだとは思いますけれども、もちろん、販売店の保証書というのもあるでしょうし、メーカーの保証書というのもあるんですよ。

 だとすると、メーカーの保証書に基づいて、こういうことは大丈夫ですと書いてあって何かがあった場合に、これは、当事者は、消費者とメーカー、販売店を飛ばしてメーカーというふうになる可能性があるように見えるんですけれども、この点、あるかないか、答えていただければと思います。

川口政府参考人 先生御指摘のような論点といいますのは、理論的には議論されているのは承知しておりますけれども、現在の運用上、メーカーと実際に売買契約のない消費者の間で保証をめぐって消費者契約が成立している、そういう実務にはなっていないというふうに承知しております。

三谷委員 それが現在の実務というところなので、それがまさに先ほど申し上げたような試験訴訟、お試し訴訟というふうに評価できるかは別として、勝てるかどうかわからないけれども、集団訴訟をメーカーに対して起こそうという動きにつながっていくのではないかという懸念を持っているということを御理解いただければというふうに思います。そこはまさにガイドライン等々、どういうところが被告としてなり得るのかということを明確にしていただきたいというふうに思います。

 そういう意味では、現時点では、ないと理解しているということでよろしいかどうか、これは一言だけお答えいただければと思います。

森国務大臣 メーカーに対しての訴訟はないと理解しております。

三谷委員 ありがとうございます。

 もう時間も限られておりますので、もう一つ伺いたいと思います。

 三条四項の点について伺いたいと思います。支配性の要件というふうに一般的に言われておりますけれども、共通義務確認の訴えというものには、共通性の要件、そして支配性の要件というのがあるんだというふうに言われております。

 共通して裁判を起こす、行わせるのが訴訟経済上、合理的かどうかというような観点なんだと思うんですけれども、要は、この共通義務以外に主要な争点があったらそれは個別でやってくださいね、この主要な争点を解決すれば事案は大体解決しますよ、そういう意味で支配性の要件というふうに言っているのではないかと思います。

 この支配性の要件がない場合に、裁判所というのは、要件を欠くわけですから、当然に却下ということになると思いますけれども、この法文を見ると、三条四項では、これは法文上「却下することができる。」というふうに書いてあるので、一応念のため、ここは、却下しなければいけない、つまり、裁判所において裁量がないんだということをお答えいただければというふうに思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することができるようにするとの観点から、個別具体的な事案の特徴から対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは、裁判所が訴えを却下することができる旨、規定しているところでございます。三条四項でございます。

 これは、三条四項の要件に該当するときは、裁判所は訴えを却下するという趣旨の規定であり、裁判所に裁量があるものではないと理解しているところでございます。

三谷委員 ありがとうございます。

 できれば、それをガイドライン等々に明記していただきたいと思います。

 それから、もう時間が限られているので、恐らく最後の一問になるかと思いますけれども、十条の読み方についてちょっとお伺いしたいんですね。

 この十条というのはどういうあれかといいますと、共通義務確認訴訟における和解の規定です。この十条においては、「義務の存否について、和解をすることができる。」というふうにあるんですけれども、この「義務の存否について、和解をする」というのは非常にわかりにくいんです。あるならあるということで、これははっきり言えば、事業者側からすれば認諾ということになるでしょうし、ないならないで、それは訴える側からすれば放棄という形になるんだと思うんですね。

 そういう意味で、ここで言う和解というのはどういうものなのか。一般的に和解というのは、お互い責任の所在というのはよくわからないし、そこを明記するのは余り得策ではない、でも、とりあえず相手方に何らかのお金を支払ってあげますよですとか、誰に、どこに責任があるかはわからないけれども、とりあえず謝罪文を出しますよ、そういったものが本当の意味で和解の妙味だと思うんですけれども、ここで言う、この十条ですと、そういった和解までできるのかどうか、お答えいただければと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 第十条において和解を認めているところでございますが、この十条の内容は、第一段階の判決とほぼ同様の内容ということを想定しているところでございまして、一般に行われている和解、例えば義務を認めず解決金を払うというような和解を考えますと、この一段階目の手続において、特定適格消費者団体は、対象消費者の権利を処分する権限は与えられていないというのがこの制度の特色でございます。

 そのため、仮に、義務を認めずに解決金を支払うというような和解をしたとしても、団体が対象消費者の権利を処分した部分について、対象消費者は拘束される根拠がございません。

 したがって、解決金を支払う内容の和解をする、その裏側で義務はない、そういうような内容の和解をすることはできないものと考えております。

三谷委員 ありがとうございます。

 今の話ですと、もうそれこそ本当に判決と同様ということですので、事実上の和解ではなく、放棄または認諾という形になってしまうんだと思うんですけれども、それでも、例えば、三つの訴訟、請求があるうちの一つは認めて、ほかの二つは認めないとか、そういったことができるというようなことなんだと思います。

 いずれにしても、この法案、進めていくことによって、非常にさまざまな、消費者の泣き寝入りというものを防ぐことができるというような積極的な側面は間違いなくございますので、そういう意味では、ぜひともこれを適切に運用していただければということをお願いさせていただきまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。午前中に引き続き、質疑時間をいただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 この制度を早くスタートさせるということがまず先決なんだというふうに思っています。地元のタウンミーティング等で質疑に立つ御報告をいたしましたところ、やはり特に高齢者の方々が大変関心を寄せていらっしゃいました。

 そしてまた、地元の消費者センターの方にもお電話で伺ってみましたところ、この新しい制度について、具体的な御意見ですとか御要望はまだございませんでしたけれども、今最も被害の多いのが健康食品の送りつけで、代引きあるいは現金の書留封筒を使ったりということで、一方的に商品が送りつけられるということで、記憶が曖昧、また判断力に乏しいと言っては失礼ですが、高齢者をターゲットにしたこういう被害が多数報告をされているということで、こういう被害についても、この集団訴訟の対象になろうかと思いますけれども、さまざまな立場から期待の声が寄せられているというところであります。

 大分もう議論も行われておりまして、生活の党といたしまして、この実効性について疑問を持つところを、もう一度確認また意見を申し述べさせていただき、午前中の参考人の皆様からの御意見も多少参考にしながら、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、適格消費者団体そして特定適格消費者団体の認定要件の見直しについてお伺いをさせていただきます。

 この特定適格消費者団体の認定要件は、差しとめ請求関係業務を相当期間にわたり継続して適正に行っていること、被害回復関係業務を適正に遂行するための体制及び業務規程が適切に整備されていること、執行決定機関として理事会が置かれていること、理事のうち一人以上が弁護士であること、被害回復関係業務を適正に遂行するに足りる経理的基礎を有することなどが挙げられています。そして、その特定認定の期間は、三年ごとの更新制となっています。

 現行の差しとめ請求制度に係る適格消費者団体と特定適格消費者団体の認定要件及びその有効期間について比較をいたしますと、確かに本制度にかかわる特定適格消費者団体の認定要件は大きく加重されたようには見えません。しかしながら、適格消費者団体が、差しとめ請求制度の運用開始後六年がたっておりますけれども、今十一団体しか認定されておらず、東北、北陸、四国には一つもないということを踏まえますと、まず、適格消費者団体の認定要件で、その時点でかなり負荷が大きいものになっているのではないかと考えます。

 午前中の参考人質疑の中で、西島参考人から現場の声を伺いました。適格消費者団体による差しとめ請求制度は、その手続に至るまで、現地の消費生活センター等への照会、また情報交換など調査を尽くし、その上で、相手方事業者との協議を行った後、事業者に対する責任の有無等を冷静、客観的に判断をし、差しとめ請求するか否かを決めるという、しかも、これだけの業務をほぼボランティアで行っているというお話でございました。

 そして、差しとめ請求の活動状況についても報告がございましたが、この六年間でたった六件ということでありました。全国十一団体でも三十一件というふうに伺っているところでございます。

 この間、大変な作業に加えて、長期にわたり、慎重な取り組みをしてきたという適格消費者団体の十分な実績の証明になるのではないかというふうにも捉えたところであります。

 ですので、この認定要件については、財政的支援をむしろ国が行って、それにあわせて賠償請求の事務作業ができるということであれば、要件として十分なのではないかと考えるところでございます。

 まずは特定の前提であります適格消費者団体の認定要件の緩和、そして更新期間の延長なども含めた見直しをぜひ検討する必要があるかと思います。加えては、更新の際の事務作業の軽減も必要ではないかと考えますが、御見解を伺わせていただきたいと存じます。

森国務大臣 本法案の特定適格消費者団体の前段階の適格消費者団体について御質問いただきましたけれども、これは消費者契約法の改正法、平成十九年六月に運用が開始をされました。

 現在、空白地域がございまして、それで、空白地域の解消に向けたアクションということで、私、大臣になりまして、消費者基金、地方消費者行政活性化基金の上積みの中で、裏負担なしの部分を、これはもう本当に努力をいたしましたけれども、それを獲得いたしまして、それによって適格消費者団体、空白地域につくってくださいということで、国が全面的に御支援を申し上げております。その結果、現在、七県で設置に向けた取り組みが行われております。

 こうした支援事業によって、各地で活動している消費者団体が適格消費者団体となって、空白地域が解消されていく、そして特定適格消費者団体の設立にもつながると考えております。

 また、こういった支援に、さらに地域の皆様のネットワークが大事でございますので、地域の消費者行政のためのネットワークづくりというのも、また別途、指示をしているところでございます。

 また、御指摘の見直しの点については、委員の御指摘もございますことから、検討もしてまいりたいと思います。

青木委員 基金の上積みの部分で今七県で検討中ということでございましたが、この基金の継続性についてもいろいろと心配な面もございますので、しっかりとした支援のもとで、より消費者に近い場所に適格消費者団体の設置をぜひお願いしたいというふうに思います。消費者にとっては何よりも安心感につながりますし、何といっても利便性の向上の観点からも必要だというふうに考えています。

 そして今、森大臣の方から、要件の緩和についてもお考えをいただけるという御答弁をいただきましたが、先ほどの西島参考人からのお話を伺いますと、本当に長きにわたって、ボランティアで長期にわたるこういう難しい案件に取り組んできたというお話を伺いますと、やはりぜひ現場の声に耳を傾けていただきたい、消費者庁として、また森大臣としてもぜひ現場の声をお聞き届けいただきたいということを重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、和解についてお伺いをさせていただきます。

 本制度において、和解は一段階目でも二段階目でもできるとされています。本制度のような集団訴訟におきましては、多数の訴訟当事者が関与することやさまざまな事案があり得ることからも、紛争の早期解決、訴訟労力、また費用の観点からも、特に一段階目での手続における和解がうまく機能すれば、事業者また消費者双方にとって有用なものではないかというふうにも考えるところでございます。

 そこで、事業者側が柔軟に和解に対応をしやすくするために、一段階目において共通義務の存否に関する和解のみとせず、事案によっては、例えば欠陥商品などの事案については、顧客への金銭支払いにかえて、修理ですとか部品交換ですとか、そうした提供をすることができるなど、内容の和解も可能となれば、事業者の和解へのインセンティブが働きやすくなるとも考えております。まず、それについての御見解を伺わせていただきたいと思います。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 この訴訟においては、第一段階において、個別の消費者から団体が授権されていないという事情がございます。そういたしますと、消費者の持っている権利について処分する権限を団体が持っていないということになりますので、御指摘のような修理、部品交換、これは特定の消費者との間ではできるわけでございますけれども、修理や部品交換をするということによって金銭の支払いは放棄するというような和解をすることが制度的にできないということになっておりますので、柔軟な和解というのは御指摘のとおりでございますが、御指摘のような和解はできないということでございます。

 できる和解について、どんなものかと申しますと、例えば学納金の訴訟がございましたが、授業料と入学金両方を、一旦納めたものは全額返してほしい、そういうことで訴えを提起した場合に、和解においては、授業料は返します、入学金は返しませんということで和解をいたします。そういうことを想定しているものでございます。

青木委員 この新制度の対象はそういうことでありますので、ただ、一段階目だからこそ早く処理をして負担を少なくする、そういう意義があるのかなというふうに思いまして、お尋ねをさせていただきました。

 この制度設計に向けての議論の中で、本法案施行後、運用状況を踏まえて和解の機運が高まれば、一段階目において個々の消費者に和解の手続に加入してもらう仕組みを整備し、一段階目において当該紛争の最終的な解決が認められるような見直しの検討も必要ではないかという御意見もあったというふうに伺っておりましたものですから伺わせていただきましたが、これについては何か御所見をいただけますでしょうか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 附則についております施行後五年後の見直しでございますが、これにつきましては、本法案全体につきまして施行の状況を見まして、検討対象になり得るということでございます。

 五年たちましたら、施行の状況を点検いたします。そういう中で、委員御指摘の論点も入り得るものだというふうに理解しております。

青木委員 ぜひ、また国民のいろいろな声もあろうかと思いますので、そうしたさまざまなお立場の声に耳を傾けながら、またよりよい形になればというふうに思っているところでございます。

 続いて、仮差し押さえ、財産保全の実効性についてお伺いをさせていただきます。

 特定適格消費者団体は、強制執行ができなくなるおそれがある場合は、一段階目の共通義務確認が提起さえできていれば、一段階目においても仮差し押さえ命令の申し立てができることになっています。

 消費者被害を救済する目的を達成するためには、悪質な事業者による財産の隠匿、散逸による財産保全等の方策を本訴訟制度とセットで提案されなければならないと考えます。その意味においては、本法案における特定適格消費者団体に仮差し押さえ命令の申し立てを認めている点は、まず高く評価できるところでございます。

 しかしながら、申し立てには対象債権の総額を明らかにする必要があるため、学納金返還訴訟のように入学者数が公表されている場合でない限り、特定適格消費者団体が調査し、収集した情報のみでは一応の額しか明示することができず、保全の実効性に疑問を感じるところでございます。

 保全確保の実効性の観点から、一段階目の共通義務確認の訴えが認められる可能性の範囲において保全できる額を認める方策を検討する必要があるのではないかと思いますが、その点についてのお考えをお聞かせください。

川口政府参考人 技術的な御質問でございますので、まず、制度について私から説明させていただきます。

 本制度における仮差し押さえ命令の申し立てにおきまして、特定適格消費者団体は、保全すべき権利について対象債権の総額を明らかにすれば足りる。これは現在の民事保全法の特則になります。これは五十六条第三項でございます。

 御質問は、具体的にそれをどのように明らかにするかということかと思います。

 対象債権の総額を明らかにするためには、事業者が作成し公表した契約者及び契約金額に関する資料、あるいは国民生活センターのPIO―NET情報、あるいは特定適格消費者団体がみずから収集した被害の発生状況に関する情報等を踏まえつつも、通常は、これは人数掛ける金額ということだと思いますが、届け出が見込まれる対象消費者が少なくとも何人は存在する、実際何人いるかというよりは、少なくとも何人は存在するかというところ。それから、一人当たりの債権額が何円であるか、平均でわかるか、少なくとも何円であるか。その辺は調査資料によると思いますが、この少なくとも何人存在しということがわかれば、それと一人当たりの債権額が何円である、この掛け算ということによって総額を明らかにするということが考えられます。

 実際にはその総額よりも多い人が届け出をする、授権をするということもあり得るわけでございますが、差し押さえで疎明すべき対象債権の総額については、今のような方式で特定をするということになろうかと思っております。

青木委員 まず仮差し押さえ命令の申し立てを認めているところは大きな第一歩だというふうに思いますが、それに向けての具体策がやはり必要かなというふうに感じているところであります。

 また、午前中の参考人質疑の中で、河野参考人から、仮差し押さえ、それだけでも不十分だというお話もございました。行政による財産保全を行うことをぜひ検討してほしいというお話がございましたが、それについては今どのような状況にあるか、また、今後の見通しについてお聞かせいただければと思います。

森国務大臣 仮差し押さえについて御質問ありましたけれども、私ども消費者弁護士が、仮差し押さえ、今まで、このような弁護団になるような事件をやっているときは、通常の原則に従って仮差し押さえをかけますから、一人一人全部疎明しなければならない。Aさん五十万、Bさん八十万、Cさん百万、それを足し合わせていかなければならないので本当に大変だったんですが、それを現在やっております。それが、今回は、総額で足りるとしたことで、一歩進んだということで御理解をいただければと思います。

 さらに、消費者団体から御要望のございます行政による手続でございますけれども、平成二十五年六月十四日に取りまとめられました、消費者庁の中でやっております、消費者の財産被害に係る行政手法研究会、この報告書におきまして、行政庁によるさまざまな手続、加害者の財産の隠匿または散逸の防止のための方策を検討されて、いろいろな方向からの御意見をいただいたところでございますので、この報告書を踏まえて、現在、消費者庁では、関連する法制度のさらなる調査研究を行うなどして検討を進めているところでございます。

青木委員 悪質な事業者による財産の隠匿、散逸、この悪質、ここの部分はしっかりと取り締まらなければならないと考えておりますので、ぜひ、また今後とも引き続きの取り組みをお願いしたいと存じます。

 最後の質問になります。

 通知、公告の費用についてお伺いをさせていただきます。

 この二段階目における被害、消費者の加入を促すための通知、公告の費用は、特定適格消費者団体が負担をすることになっています。これから、その財政的支援とあわせて情報の支援も必要だという参考人からの陳述もございました。

 それと、あわせて、野々山参考人から、この通知、公告にかかわる費用、特定適格消費者団体が負担をするということは、最終的には被害者である消費者が負担をするということになりまして、大変不合理であるというふうに私も考えます。野々山参考人からも指摘がございました。少なくとも、敗訴した相手事業者が、被害消費者にかかわる名簿等を基本にいたしまして、通知、公告費用を負担するということは当然のこととして検討されるべきではないかと考えます。この点について御所見をお伺いします。

福岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 心情的には、今おっしゃっている部分、理解できる部分はあるのですが、今おっしゃったように、この通知、公告費用の性質というものは、裁判手続のそのものの費用ではございませんで、裁判手続に加入するための準備行為に係る費用であるということ、また、通知、公告の方法については、特定のやり方が決められているわけではありませんで、団体がその一定の範囲の中でどういう公告のあり方をしていくかということをみずからの判断で適切に行っていくということにされておることから、その金額とかそういったものが一定額におさまるものではない、上限もないというふうに承知をしております。

 そういったこともありまして、事業者に負担をさせることを可能とするような仕組みにはしていないところでございます。

 ただ、一方で、今、委員おっしゃったように、その団体に対して過重な負担がかかるのではないかというような御指摘もございます。それに対しましては、まず、費用をなるべくかけないということで、電子メールなどの電磁的な方法を認めるというようなことであったり、また、事業者に対しても、公表義務とあわせて、どういった方がその対象の消費者であるかといった、氏名や住所などの情報開示義務を課すというようなこともしながら、なるべくそういった負担をかけないようにしていきたいというふうに思っています。

 その上で、やはり今おっしゃられましたように、必要な資金の確保等、どういった支援が必要かということについては、今後検討をしてまいりたいというふうに思っております。

青木委員 ただいま御答弁いただきましたけれども、原因がどこにあるのかというところでありまして、全く瑕疵のない消費者が今その負担をしているということは当然おかしいということは指摘をさせていただきたいと思います。全てではなくても、把握をしている範囲だけでも負担をしていただくという、そうした具体的な方針をつくっていく必要があるのではないかというふうに考えます。

 質問としてはこれで終了いたしますが、消費者庁は、消費者の視点から政策全般を監視する組織として、その実現を目指して発足をいたしております。ぜひ、森大臣におかれましては、消費者の立場に立って頑張っていただきたいというふうに思っておりまして、もしその辺の御決意をいただければありがたいなというふうに思いますが、一言。

森国務大臣 設立当初の理念に立ち戻って、消費者の安心、安全のために全力を尽くしてまいります。

青木委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 いろいろ議論を重ねてまいりましたけれども、一般の国民の皆様方が聞いていても、なかなかわかりにくいのではないかなというふうに思っています。まずは、この制度をスタートして、いろいろ具体例がさまざま出てくる中で、この制度が国民の中に、また消費者の中になじんでくるのかなというふうに考えているところでございます。

 あしたも質問時間をいただいておりますので、引き続きよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山本委員長 次回は、明三十一日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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