衆議院

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第9号 平成21年7月10日(金曜日)

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平成二十一年七月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 新藤 義孝君 理事 中谷  元君

   理事 長島 昭久君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 佐藤 茂樹君

      赤池 誠章君    秋葉 賢也君

      新井 悦二君    猪口 邦子君

      浮島 敏男君    江渡 聡徳君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      木原  稔君    清水清一朗君

      鈴木 馨祐君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    葉梨 康弘君

      福岡 資麿君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    村田 吉隆君

      矢野 隆司君   山本ともひろ君

      吉田六左エ門君    大島  敦君

      川内 博史君    田嶋  要君

      田村 謙治君    伴野  豊君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      渡辺  周君    石井 啓一君

      冬柴 鐵三君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田 稔久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  山本 条太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 兼原 信克君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 福嶌 教輝君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 原  雅彦君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 井手 憲文君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     猪口 邦子君

  杉田 元司君     浮島 敏男君

  橋本  岳君     福岡 資麿君

  松浪健四郎君     清水清一朗君

  松本 洋平君     山本ともひろ君

  武正 公一君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     石原 宏高君

  浮島 敏男君     杉田 元司君

  清水清一朗君     松浪健四郎君

  福岡 資麿君     橋本  岳君

  山本ともひろ君    松本 洋平君

  田村 謙治君     武正 公一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官高田稔久君、内閣官房内閣参事官山本条太君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房審議官石川和秀君、外務省大臣官房参事官兼原信克君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、財務省大臣官房審議官原雅彦君、国土交通省政策統括官井手憲文君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君及び防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。民主党の長島昭久です。

 私は、この特措法は大変重要な法案だと思っております。政局は風雲急を告げておりますが、この委員会できちっと議論を進めながら、なるべく早急に結論を出していく必要がある、こう思っておりますので、きちっとした議論をぜひ皆さんと交わしていきたいと思います。

 時間がございませんので本題に入りたいと思いますが、まず、北朝鮮の一連の挑発行動がありました。四月五日に三千キロの射程を持つ大陸間弾道弾に匹敵するような長距離弾道ミサイルが発射され、そして、五十日後に今度は核実験、前回のような失敗ではなくて、今回はかなり大きな核実験だった、こういうことであります。

 まず、政府の現状認識をお伺いしたいと思います。これは外務大臣になろうかと思いますが、この北の一連の行動、挑発行動につきまして、政府としてどのように認識をしておられるか。我が国の平和と安全に対する重大な影響を与える問題であると私は認識をしておりますが、政府はどのような認識を持っておられますでしょうか、御答弁をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮が弾道ミサイルを発射したり、また核実験を行うということは、もう言うまでもありませんけれども、これはまず、我が国の安全に対する重大な脅威であります。そしてさらに、北東アジアまた国際社会の平和と安全を著しく害するものとして、断じて容認することはできません。

 七月四日の北朝鮮によります弾道ミサイルの発射の後、我が国は、直ちに北京の大使館ルートを通じまして北朝鮮に対して断固たる抗議を行いまして、遺憾の意を表明いたしました。また、米国及び韓国との間で協議を行いまして、今回の弾道ミサイルの発射は国連の安保理決議違反である、したがって容認はできないということ、さらに、北朝鮮に挑発行為をやめさせるためにも、安保理決議の一八七四号をしっかりと実施していく必要があるということ等で一致をしているところでございます。

 また、去る七日の朝には、国連安保理におきまして非公式協議が行われ、会合終了後、安保理の議長であります、これはウガンダでございますが、から、安保理事国は北朝鮮の弾道ミサイル発射を安保理決議違反並びに地域及び国際の安全に対する脅威として非難と深刻な懸念を表明する、そういう内容のプレス向け発言が行われました。

 我が国といたしましては、北朝鮮に挑発行為をやめさせるためにも、国際社会全体が、先般の核実験に関しまして採択されましたこの安保理決議の一八七四号、これに盛り込まれました武器禁輸、貨物検査、金融面での措置などを着実に実施し、同決議の実効性を高めていくということが重要であると考えておりまして、引き続いて、米国や韓国を初めとする関係諸国と緊密に連携をとって取り組んでいく考えでございます。

長島(昭)委員 現状認識をお伺いしたんですが、我が国の平和と安全に対する深刻な、つまり重大な影響を与えている事態である、そういう認識を示していただきましたが、これは大臣、いわゆる周辺事態とは違うんでしょうか。

中曽根国務大臣 北朝鮮のこの一連の行為、ミサイル発射、核実験、これは、北朝鮮は北朝鮮なりの言い分といいますか、そういうような発言がありますけれども、従来からの安保理決議に違反するものでありまして、国際社会として容認できないということで、我が国もこの安保理の決議に基づいて行動を起こすものでございます。

長島(昭)委員 周辺事態についてはなかなか一概に言うことはできないけれども、周辺事態法を成立させたときに、たしか、具体的な態様をあらかじめ示すことはできないけれども、以下のような例があるということで六つぐらい類型が示されたというふうに記憶しております。その第六類型について、事務方で結構ですから、御説明いただけますか。

 周辺事態は、第六類型はこう書いてあるんですよ。ある国の行動が国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為と決定され、その国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合であって、それが我が国の平和と安全に重大な影響を与える場合。

 大臣、国連安保理によって、決議一八七四でこう書いてありますね。北朝鮮の行為は、「国際の平和及び安全に対する明白な脅威が引き続き存在することを認定し、」こう書いてある。つまり、前段の、国連安保理によって平和に対する脅威と認定された。しかも、国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となっている。そして、先ほど私、冒頭に大臣に確認をさせていただきましたが、それが我が国の平和と安全に重大な影響を与える。これでも周辺事態にならないんでしょうか。

別所政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員がお話しになりましたように、第六類型についてはお読み上げいただいたとおりでございますけれども、私ども、周辺事態の認定については、まさに委員も御指摘のとおり、個々の事態ごとに異なるものである、具体的な態様についてあらかじめ決めてしまうということはできないという状況の中で、周辺事態に該当するか否かは、規模の問題、事態の態様、そういったことを判断しながら決めていくということでやっているわけでございまして、政府としては、今の時点で、今の状況が周辺事態に当たるというふうには考えておりません。

長島(昭)委員 では、周辺事態でないとすると、今の状況はどういう状況ですか。

別所政府参考人 今の事態は、特定の名前をつけて申し上げるということはないわけでございますけれども、まさに大臣から御説明したように、北朝鮮のこういう挑発行為が地域の平和と安全について影響を及ぼしている、そういう問題のあるゆゆしき事態であろうというふうに認識しております。

長島(昭)委員 つまり平時ということですか、確認させてください。

別所政府参考人 平時か戦時かとお問いになれば、戦時ではないというふうに認識しております。

長島(昭)委員 それでは、今の状態に加えて、どのような事態に立ち至ったら、これは周辺事態という認定をされるんでしょうか。

別所政府参考人 先ほども申しましたとおりに、個々の状況を踏まえて判断するしかないわけでございまして、今の時点でこれがあればということを明確に申し上げることはできないと思います。

長島(昭)委員 これは十年前に周辺事態法をつくったときにさんざん議論をして、六つの類型を政府が出して、先ほど私が読み上げたように、まさに今の事態はこの第六類型に寸分たがわず該当するような事態であるにもかかわらず、政府は周辺事態という認定を逡巡しているその決定的な理由は何でしょうか。

別所政府参考人 委員も御指摘のとおり、これはいろいろと御議論があったところでございます。

 まさに周辺事態とは、我が国の周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるという形で規定されているわけでございまして、その中で、私どもが、この今の現在の事態について、ほかの類型をごらんいただければわかるとおりでございますけれども、例えば類型一でございますれば、「我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合」ということがございますけれども、そのほかの類型からも、ごらんいただければわかると思いますけれども、そういうところを総合的に判断いたしまして、今の時点では周辺事態というふうには認定しない、そういうことでございます。

長島(昭)委員 私、理解できるんです、それは。政府がある種自制的な姿勢をとっていることは私も十分理解できます。つまり、日本だけが周辺事態だ、準有事だ、こう突出するわけにいかない。アメリカだって韓国だって国際社会と協調していかなきゃいけないわけですから、その辺のところは私も理解できるわけでありますが、この六つの類型、周辺事態は十年前ですから、ある種、議論がバーチャルというか、余りリアルな議論ではなかったように私は思うんです。

 もう一回後で、周辺事態にかかわる船舶検査活動法についても見直しをしていく必要があるのではないかという指摘をさせていただこうと思っていますけれども、やはりこういうことは体系的にもう一度見直してアップデートしていく必要がある、私はそういう気がいたします。その点だけ指摘をさせていただきたいと思います。

 そして、もう一点。三年前にも今回のような決議が出ております。決議一七一八。当時は安倍総理、麻生外務大臣、こういうコンビでありました。国連安保理を舞台にして、当時はたまたま非常任理事国で入っておりました、今回もそういうわけでありますけれども。アメリカとともに国連決議を主導した。当時盛んに、拘束力がある決議を出そう、北朝鮮に対してきちっとした圧力を加えるために、経済制裁の実施については拘束力がある決議をとらなければいけない、こう言われていました。

 当時の決議が手元にありますが、今回の一八七四のような、それほど拘束力のある決議ではなく、一応「貨物の検査」という言葉は出ているのですけれども、「要請される。」ということで、それも括弧の中に入って、貨物の検査を含む、決議の規定の要求を遵守するための協力行動をとることが要請される、こういう、ある種、少し緩目の決議内容であった。

 しかし、当時から、実は北朝鮮の行動パターンからいくと、このままで済まされない可能性があるし、我が国は決議の実施のための国内法が必要ではないかという議論を私はここでもさせていただきました。三年間、そういう議論もないまま、今回も日本はアメリカと一緒になって安保理決議を主導して厳しい決議をかち取ったわけです。振り返ってみたら、国内法は整備されていない、では、慌ててつくるという話になって、まさに内閣官房の方々は、昼夜を分かたず突貫工事でこの法律をつくられたというふうに仄聞しております。

 官房長官、三年前にもこういう要求があったにもかかわらず、三年間このような国内法の制定を見合わせてきた、あるいは先送りにしてきた、そのことについての判断の根拠は何だったんでしょうか。

河村国務大臣 御指摘のように、安保理決議がなされました平成十八年十月の一七一八号、これに基づいて、大量破壊兵器関連物資に加えて、いわゆる奢侈品二十四品目を特定して、北朝鮮に向けた輸出を禁止する措置を既にそのときやりました。

 さらに、この決議では、その大量破壊兵器関連物資等の不正な取引を阻止するために、すべての国連加盟国に対して、必要に応じて、自国の権限及び国内法令に従って、かつ、国際法に適合する範囲内で、貨物の検査を含む協力行動をとる、このことが要請されておりました。

 従来から、北朝鮮からの日本の国への入港あるいは北朝鮮に向けて出港する第三国籍船舶については、関係機関が協力をして、既存の法律の範囲内で立入検査等をやってきたわけであります。このような立入検査によって、安保理決議の一七一八号の趣旨に対応することは可能というふうに判断をされたものでありますから、特別の、特段の立法措置をしなかった、こういうことであります。

長島(昭)委員 では、その判断は適切だったと。国内法の整備に入らなかった判断は適切だった、そういう御答弁ですか。

河村国務大臣 これは、日本だけの判断というよりも、関係国の協議の上でこのような形でやろうということでやってきたわけでございます。

 あの当時に今のような形のものはできなかったかという議論はあると思いますけれども、あの時点ではそういう判断をして今日に至ったということであります。

長島(昭)委員 あのとき、アメリカが主導して、すわ、海上封鎖かというような、そんな過激な議論まであったけれども、結局アメリカも船舶検査をしないということで、言ってみれば、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、恐らく政府もこれで一件落着だということで対応をとらなかったんじゃないかと思いますが、これは怠慢であったということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、今回の特措法案ですけれども、平成十一年、これも今から十年前、いわゆる周辺事態法の議論のときでありますが、当時の内閣法制局長官、大森長官の答弁がございまして、こういう答弁なんですね。安保理決議に基づく船舶検査活動は、我が国の治安維持を目的として行われる警察活動ではなく、国連憲章第七章の安保理の権限のもとで行われる集団的安全保障措置の一環である、こういう御答弁があるんです。しかも、今回の特措法案、第一条の目的のどこを読んでも、我が国の治安維持という文言は一つも入っていないんですが、政府は、集団安全保障措置の一環ではなく、今回、あえて警察活動の一環という整理をされたというふうに伺っておりますが、その真意はどこにあるんでしょうか。

河村国務大臣 本法案におきます海上における検査その他の措置は、安保理決議第一八七四号の趣旨にかんがみまして、国連加盟国が武力の行使に及ぶことは想定しがたいという前提に立っております。でありますから、海上保安庁が国際法の許容する範囲内で、対象船舶に対して北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があることを要件にして、我が国の警察権の行使として実施する、こういうことにいたしておるところであります。

 今御指摘のようなお話、特に、周辺事態における船舶検査活動法に基づきます船舶検査活動につきましては、周辺事態に際して日米安全保障条約の効果的な運用に寄与することを目的といたしております。そして、これを自衛隊が実施する、こうなっておるわけでございますので、あのとき大森法制局長官が答弁されたときは、この活動がアメリカ軍による武力の行使をも念頭に置いた国連による集団的安全保障措置の一環であるということを述べられたわけでありまして、活動の前提が異なっている、こういうふうに考えておるところでありまして、今回のケースは法的性格が異なるということで対応できる、このように考えております。

長島(昭)委員 必ずしもすっきりした御答弁ではないと思うんです。この特措法案の第一条の後段、北朝鮮の一連の行為をめぐる国連安保理決議による当該禁止の措置の実効性を確保するため、それから、我が国を含む国際社会の平和と安全に対する脅威の除去に資することを目的とする、この二つの目的が掲げられておりますので、この書きぶりからいくと、やはり集団安全保障措置の一環としての位置づけ、そういう結論が出てくるのかなと私は今でも思っておりますが、ここは見解の相違ですから、またもう一回私は質疑に立たせていただく機会があれば、法制局の見解もただしていきたいというふうに思っておりますが、一応予告だけにとどめておきます。

 本題は、これから質問させていただく点なんですが、この特措法案の最大の疑問は、実は、十年前に制定をした周辺事態にかかわる船舶検査活動法との整合性の問題、この点を私はちょっときょうはお尋ねをしたいと思っていたんです。

 と申しますのも、恐らくこれから北朝鮮の挑発行動がエスカレートしてくる可能性があると思うんですね。そうなりますと、先ほど別所局長がお答えいただいたように、今は周辺事態ではないけれども場合によってはこれから周辺事態になっていく可能性があると。もちろんこれから、今回は要請という、大体の文言的には、国連安保理決議は、コール・アポンという要請だ、これからディサイドというより強い決議に仮に移行した場合には、今度は周辺事態下における船舶検査法の実施に移っていくことになるんだろうというふうに思うんですが、まずその認識は正しいかどうかお答えいただけますか。

河村国務大臣 これは、御指摘の点、また周辺事態法を適用しなきゃいけない事態が来るという想定はあり得ると思いますけれども、今この法案を考える段階においてはそういうことを想定しておりません、前提としておりませんので、今そこまでのお答えをするということは差し控えさせていただきたいと思います。

長島(昭)委員 わかりました。ただ、事態がエスカレートしていけば我々の対応のレベルも引き上げなければならない、私はそういうことだろうというふうに思うんです。

 そこで、この十年前の法律と今回の特措法との間の整合性の問題ですが、三つポイントを指摘させていただきたいと思います。

 まず一つは、船長の承諾。特措法案によれば、三条第二項、船長の承諾をとることになっているんです、公海上あるいは領海内で船舶検査をする際には。従わなければ罰則つきの回航命令を下す、こういうことになっています。しかし、現行法の船舶検査活動法はすべて任意なんです。これは現行法の別表四のところに書いてあるんですが、船長に協力するように要請をしたりあるいは説得をしたり、こういうことなんですね、領海においても公海上においても。

 つまり、事態が切迫をしてきてこちら側も対応のレベルを上げなきゃならないんですが、上げなきゃならないはずの周辺事態下における船舶検査活動法の方が、ある意味で緩い規定になっているんです。これが第一点。

 それから、回航命令も、特措法の第六条で、これは十四条に罰則が書かれています。罰則をつけて、違反した場合には懲役刑を科す、こうなっています。それをつけての、間接強制としての回航命令なんです。ところが、今の船舶検査活動法はどうなっているかというと、これも要請なんです。任意なんです。船長が無視をすれば、そのまま見過ごすことにならざるを得ない、こういう状況ですね。これも私は整合性が問われると思います。

 それから第三点、武器使用基準、これが一番私は深刻だと思うんですが、本法案によると、この特措法案によると、武器使用の権限は、海上保安庁法二十条一項、それから警職法七条の準用です。

 つまり、船長の承諾を得る際に、回航命令をしてもそれを無視して逃走した場合、この逃走防止のために警告射撃もできる、威嚇射撃もできるんです。ところが、現行法の船舶検査活動法の第六条によると、この武器使用は自己保存、つまり正当防衛、緊急避難以外はできない。つまり、逃走した場合には、そのまま何もできないんです。

 これも私は整合性を問われる問題だと思いますが、これをまとめて三点、官房長官から御説明いただきたいと思います。

河村国務大臣 今回のこの法案は、安保理決議の一八七四号をいかに実効あらしめるかということのためにこの法案を提出させていただいておるわけでありまして、安保理決議に基づけば、船長の承諾、回航命令、これが必要であることは明らかでありますから、そのような法体系をとらせていただきました。

 今の船舶検査活動法との比較でおっしゃればそういう御指摘になろうと思いますが、まず前提が違っておるということであります。いわゆる周辺事態法ということを前提にいたしておりませんから、これは新たな特措法としてお出しをさせていただいておるということです。

 しかし、先ほど長島委員御指摘のように、あの十年前の議論と今日の状況と、これはアップデートする必要があるとおっしゃった。したがって、これはこれで、それは当然、現実的なものであるかどうかという議論はあり得ると私も思います。思いますが、今回のこの法案は、今御指摘、御説明いただきましたように、当然、公海、領海における検査は、これは船長の承諾を求めることと、それが得られない場合の回航の仕組み、そして、最終的に、洋上または回航先の港のいずれかの場所で検査を行う、また、その場合のいわゆる武器使用についてもきちっとした規定を持っておく、これは必要なことだというふうに考えております。

 いずれにしても、これは異なる状況を前提としての議論ということでありますので、やはり次元を変えなきゃいけませんので、その整合性云々ということは、今回のこの検査法においてはなじまないのではないか、このように思っております。

長島(昭)委員 今、官房長官、極めて誠実にお答えをいただいたと思います。私の問題意識もそこにあるんです。

 今回の法案の中身を見たときに、今我々が直面をしている事態よりもさらに深刻な事態になったときに、よりどころとなる周辺事態にかかわる船舶検査活動法の実施措置の中身が、少しレベルが不十分な嫌いがあると私は思っているんです。先ほど来お話をしているように、場合によっては一八七四よりもさらに厳しい決議が出てくる可能性があるんです。

 周辺事態法の議論のときに全くそのことが考慮されていなかったかというとそうではなくて、あの周辺事態の船舶検査活動法では、こう書いてあるわけです。国連決議または旗国の同意、こういう書き方になっているんですね、まず、我々が活動する際に。つまり、今回の決議は、たまたま国連決議の中に、旗国の同意をきちんと取りつけるようにということになっていましたからいいんですけれども、今度は、もう旗国の同意も何もへったくれもなく、検査をしろ、そういう決議が出る可能性があるわけです。

 そのことを念頭に置いて、周辺事態法の審議の際にはこういう形になっているんですね、加盟国の受忍義務が生ずるような国連決議。つまり、国連憲章二十五条で、国連決議に加盟国は従うように、こうなっていますから、つまり、それを義務づけるような、今回みたいな要請ではなくて、きちっと義務づけるような場合、しかも旗国の同意をとらないでやるような場合、こういう場合であっても対応できるような、そういう法案のつくり方に周辺事態にかかわる船舶検査活動法はなっているんです。

 なっているにもかかわらず、個々の検査活動に伴う行動については、先ほど私が三点申し上げたような、実は不十分な部分が残されているので、先ほど官房長官から非常に前向きな御答弁をいただきましたので、ぜひ、この法案はもちろん今国会できちんと上げなければいけませんが、それに引き続いて、三年前から、ずっとこの法案、本当はこの国内法を整備しなければならなかったのに、それを放置しておいたということを私指摘させていただきましたが、これから、北朝鮮の行動次第ではまた新たな事態に対応しなければならない、そういう状況が遠からず来るわけですから、その際に備えて、この周辺事態にかかわる船舶検査活動法ももう一度政府として見直していただきたいと思いますが、御答弁いただけますか。

河村国務大臣 今の御指摘の点は、またその時点で十分議論をする必要がある、今後の日本の安全を守るためにも必要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 なお、一部訂正させていただきたい。先ほど、私の答弁の中で、今回の安保理決議で船長の承諾が必要と申し上げたようでありますが、これは、安保理決議で船長の承諾が必要とはなっておりませんので、このことは訂正させていただきます。

長島(昭)委員 ありがとうございました。質疑を終わります。

深谷委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 貨物検査につきまして質問をさせていただきますが、まず、外務省の機密保持並びに文書管理について伺います。

 報道によりますと、核兵器を搭載した米国艦船につきまして日本への寄港や領海通過を認めるとした機密文書が存在をし、それを引き継ぎ、〇一年に廃棄をしたと元事務次官や政府高官が証言をしたというふうに報道されておりますが、この事実関係はいかがでありますか。

中曽根国務大臣 政府が従来から申し上げておりますとおり、いわゆる密約は存在せず、御指摘のような事実はございません。

 外務省におきましては、外交文書につきましては、関連する規則にのっとりまして適切に管理をされているところでございます。

中谷委員 元事務次官の話でありますが、ないものがあったと言い、また、ないものが、〇一年に破棄をしたということを言い、まことに外務省はみっともないと思っております。今の現役の人には罪はありませんが、職を終えた高官OB、これは余りにも身勝手というか無責任であり、また無節操で、職を終えた今なら話ができるのか。

 国の機密とか密約というのは現実の世界として必要なものでありまして、どの国も、国家機密もありますし、秘密協定や外交機密文書というものは存在をしております。一時的にせよ、国家の機密であったことが事実ならば、それは公務員として死ぬまで守っていかなければならないことであり、それが外務官僚の道であり、国にお仕えする人の姿であり、外交をつかさどる職員のルールだと思いますが、重ねて伺いますけれども、これを破棄したという事実はございませんでしょうか。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいましたけれども、外交とかいろいろな交渉において秘密というものはありますけれども、今回のこの件に関しまして、いわゆる密約は存在しておりません。

 したがいまして、報道は承知いたしておりますけれども、外交文書につきましては、外務省におきましては、先ほど申し上げましたけれども、規則にのっとって適切に管理をしているということでございます。

中谷委員 これは当時、米ソ冷戦のさなかでありまして、日本の国の安全保障、防衛にとっては、核の傘というのは必要な存在であります。

 つまり、抑止というのは、相手がこちらに害を与えるような行動に出るならば相手に重大な打撃を与える意思と能力を持つこと、これをあらかじめ相手に明示して、相手が有害な行動に出ることを思いとどまらせることでありまして、この抑止には三つのパターンがあります。AからBへの抑止と、AとBが均衡して、相互に確証破壊を行うことによって平和を保つ。そしてもう一つは、拡大抑止という抑止があって、力を持たないCがAにくっつくことによってCのかわりにAがBに対して抑止効果を与える。

 つまり、日本は非核国でありますので、持たない、つくらない、これはわかりますけれども、現実的には米国の核の傘によってずっと冷戦時代から日本の平和が保たれてきた、世界の、東アジアの平和も保たれてきた、こういう現実があります。

 今、中国、ロシアにおきましてはたくさんの核兵器を持ち、そしてたくさんのICBMのミサイルを保有しているという現実を考えますと、米国の核の傘や、核抑止また拡大抑止、こういうものが日本には必要であると考えますけれども、外務大臣は、日本の国の安全保障にとりまして、米国の核抑止の存在についていかなるお考えを持っておられますでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国の防衛は、まず我が国自身がしっかりとしたそういう体制をつくるということが大事であることは言うまでもありませんが、現在、御案内のとおり、日米安保条約のもとの日米同盟におきまして、米国の核抑止力を含むそういう抑止力というもので我が国の防衛も体制をとっているところであります。

 また、各国とも外交的な努力を通じてそのような事態が起こらないように日ごろから外交的な良好関係をつくっていくということが大事でありますが、御案内の、今委員がおっしゃいましたとおり、現在は米国の核抑止力のもとで我が国の安全を確保しているということでございます。

中谷委員 新聞報道でございますが、近々日米間で核抑止や拡大抑止、また米軍の日米の役割等につきまして協議を行うという報道がありますが、これは非常に好ましいことであると考えますけれども、この開催につきまして、事実がどうなのか、お伺いをいたします。

中曽根国務大臣 安全保障の問題につきましては、米国とも日ごろからさまざまな協議等も行っておりますが、今委員がおっしゃいましたような、そういうようなことにつきましては現時点ではございません。

中谷委員 これは、もう大いに議論すべき時代に入っていると思いますね。日本の安全保障を考えますと、米国の核抑止なくして安全保障、防衛は成り立たないというのは事実でありますが、まして、北朝鮮が核開発を続けて核を保有していくとなりますと、なおさら一層、この拡大抑止ということについて日米間で真剣にどうするかという議論が必要です。今、米ロで、核軍縮、核の弾頭を減らそうと議論をしておりますが、それだけで本当に東アジアはいいのか。その分、通常兵器や米国の核の位置づけをどうするかという技術的な内容の議論が必要でございますので、今後、日米間でこの点につきましてはよく話し合いをいただきたいと思います。

 そこで、今後のことにつきましてでありますが、日本には非核三原則があります。したがって、日本には核は持ち込まないということになっておりますが、この機密の約束で、現実としては、日本の領域、領海内の通過とか、また寄港におきましては、これは日本の安全保障上容認をすべきであるというふうに私は思っておりますし、密約ではなくて、国民の皆様方の合意のもとにそれを認める、それが日本の防衛につきましても必要なことであると思っています。

 官房長官にお伺いをいたしますが、国家として、そのような状況において、三原則に加えて、寄港もしくは通過を容認すべきだという考えについて、いかにお考えでございますでしょうか。

河村国務大臣 お答えいたします。

 今回のこのケースにちなんで、いわゆる非核三原則の関係で御指摘があったわけでありますが、アメリカの核兵器が我が国の防衛のために使用される可能性があるという事実そのものが、我が国に対する核攻撃あるいはその脅威を未然に防止する力になっている。このようなアメリカの核抑止力が働く上で、アメリカの核兵器が我が国の領域内に存在している必要はないんだという考え方に立っております。したがいまして、アメリカの核抑止力に依存することと非核三原則という考え方は矛盾するものではないと考えております。

 いわゆる事前協議の対象にこれは持ち込まれる場合にはなるわけでありますが、今、日本としては、いわゆる非核三原則は引き続き堅持していく考えでありますから、この核持ち込みの事前協議があるとすれば、政府としては一貫としてこれを拒否する、こういう立場でおるところであります。

中谷委員 それでは、一時的な日本への寄港とか、また領海内の通過、これにつきましてはいかがでございますか。

河村国務大臣 アメリカ軍がこのような形であるとすれば、事前協議の対象になるわけであります。したがいまして、このようなことについては、日本としてはこれを拒否するという立場、これは変更するつもりはございません。

中谷委員 国際情勢というのは大いに変化をしてきておりまして、冷戦は崩壊したものの、東アジアにはまだ北朝鮮という核保有を目指す国もあれば、ロシア、中国という何百、何千発の核兵器を持った国が隣にありまして、国家としてそれにどう対応するかという点につきましては、同盟国である米国の存在というものは大きいわけでありますので、もうそろそろ日本もこういうことを堂々と国民の皆さんとともに考え、そして政府がそれに対して答えを出してくるような時代になっていると私は思っております。

 続きまして、北朝鮮の核開発についてお伺いしますが、四月五日にテポドン、五月二十五日に核実験、七月四日にスカッド改良ミサイル七発連射、これは国連違反でありまして、各国ともに断固阻止、制裁しなければならないことでございます。

 五月二十五日の核実験直後、私と公明党の佐藤理事は米国に行きまして、国連の各国代表や米国政府の安全保障担当の高官に会いまして、強い決議と制裁を求めました。これによりまして、六月十二日に安保理によりまして、非軍事でありますが、国連憲章七章四十一条に基づきまして、最も強い表現で非難、貨物検査、新たな金融制裁などを盛り込みました決議一八七四が採択をされました。

 これにつきまして、外務大臣に伺いますが、どのようなことができるようになった決議であるのか、それを伺います。

中曽根国務大臣 今回の安保理の決議一八七四号におきましては、決議一七一八号で定められております北朝鮮に対する制裁措置に加えまして、具体的には今から申し上げますような措置が含まれております。

 一つは武器の輸出入につきまして、北朝鮮からのすべての武器輸出が禁止されるなど、禁止対象となる武器及び関連物資の範囲の大幅な拡大。それから二番目は貨物検査についてでございますが、自国領域内及び公海における検査の要請、また検査の詳細な手続及び検査の結果確認された禁止対象物資の押収、処分の義務。さらに金融面での措置につきまして、大量破壊兵器、運搬手段の開発に資するすべての資産の提供、移転の防止でございます。

 このように、安保理決議の一八七四号は、決議一七一八号と比べましてより強い内容となっておりますが、大事なことは、国際社会が協力をしてこれらの措置を着実に実施して、そして北朝鮮に対しまして、挑発行為はみずからに不利益をもたらすだけであるということをしっかりと示して、北朝鮮に行動を改めさせるということが重要である、そういうふうに考えております。

中谷委員 当初はもっと強制力のある、義務を伴う強い決議を目指しておりまして、我々もそういった決議を求めていましたが、結果として、非常に非軍事のこのような決議になりましたが、なぜこうなったかというと、やはり中国の発言や考えが影響したというふうに思っております。

 この点につきまして大臣に伺いますが、中国は北朝鮮の核実験に対してどう考えているのか、また、日本から中国への働きかけなどはどのように行ってきたのか、今後中国は北朝鮮をどうするのか、これのお考え、見通しを伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 中国は、五月の北朝鮮によります核実験を大変強く非難しておりまして、北朝鮮によります核、ミサイル、大量破壊兵器の開発また拡散につきまして、我が国と同様の懸念をあらわしているところでございます。

 この北朝鮮の核実験を受けまして採択をされました安保理決議の一八七四号は、中国も含めた全会一致で安保理で採択されたものであります。中国側も、安保理の関連決議を真摯に実行していく旨、そのように表明をしていると承知をいたしております。

 中国の武大偉外交副部長が現在訪日中でありますけれども、昨日は齋木アジア大洋州局長と突っ込んだ意見交換も行いました。先般来の北朝鮮によります核実験やミサイル発射などの挑発行為というものは決して容認できないものであり、また、安保理決議をしっかりと実施していくということで一致をしたところでございます。

 もう言うまでもありませんが、この決議を実効性あるものにするためには、加盟各国がしっかりとこれを実行に移す、実施することが不可欠でありまして、我が国といたしましては、これが全会一致で採択された、そういう経緯も踏まえまして、引き続いて、中国を含めた関係国と緊密な連絡をとりながら、決議を実効あらしめるように、最大限取り組んでいきたいと思っております。

中谷委員 かなり中国も怒っているということですが、事実だと思います。

 中国に共産党の機関紙人民日報がありますが、その国際専門紙であります環球時報というのがありまして、そこには、もはや中国と北朝鮮は血で固めた友情は存在をしなくなった、北朝鮮は再び危険な遊びをするな、恩知らずであって、国際社会はいつまでもお遊びにつき合っている暇はないということと、また、一九九〇年から十年にわたったこの北朝鮮の無益な対抗外交、その結果、国内経済も極めて困難な状況に至って、軍の士気も低下しているということで、ミサイルや核兵器で米国に対抗したけれども結局は無益だったということで、中国の国民に北朝鮮の批判を呼びかけて、今後さらに圧力を加えようといたしております。

 そこで、外務大臣にかわりまして官房長官に伺わせていただきます。

 世界を見ましても、もう冷戦は終わっておりまして、ヨーロッパなどは経済統合、国家統合が進んでおりますが、東アジアは相変わらず冷戦構造が残っているということ、しかも北朝鮮は、帝国主義の米国、日本に断固立ち向かうという姿勢でありまして、まさに韓国も含めて敵対関係にあるわけであります。朝鮮戦争が終わっていないと言ってもいいんですが、北朝鮮のこの先軍政治とか瀬戸際外交、権力者の世襲、まさに国際社会がいろいろと努力しても全く成果がつかめない状況でございます。

 しかし、これでいいはずなくて、ヨーロッパに負けないような東アジアの経済圏というものは、日本が主導してつくっていかなければならないと思うんですね。その前例が、東南アジアのルックイーストという経済高度成長をもたらした。中国も非常に政治安定のもとに経済開放をもたらした。これはやはり日本の外交の勝利でありまして、日本はこれだけのことをなし遂げる経済力と、外務省を含め、外交パワー、構想力というのはあると思うんですね。ですから、この日本の力をぜひ北朝鮮に向けていただきたい。

 二〇〇二年九月に小泉さんが平壌を訪問して平壌宣言を出して、大体のメニューと最終目標図というものを決めているはずでございます。これには、核、ミサイル、拉致、経済支援、そして日朝国交正常化というもとにやってきたわけでありますが、拉致問題で非常にこれがとまってしまって、もう七年経過をいたしました。

 拉致なくして国交回復なしというのは原則としては理解いたしますが、ずっと制裁をしてきて全く前進してない。拉致問題も前へ進んでない。もうそろそろこのあり方も転換をして、結果的に拉致問題を解決するにはある程度の話し合いや協力、支援をやりながら前進させていくというのが私は日本の姿として必要ではないかなというふうに思っておりますが、そのためには、まず、首脳外交というか官邸主導の外交姿勢を示すことが必要でございます。

 北朝鮮に対して、日本の経済力、また日本の技術力、こういうものをもって国交回復に向けて話し合いを続けて、同時に、最も必要な拉致、核、ミサイル、これの前進を図るべきだと考えますけれども、今の官邸、また官房長官にその熱意と発想がおありであるのかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。

河村国務大臣 私は非常に重要な御指摘だというふうに思います。

 日朝関係、先ほど御指摘ありましたように、二〇〇二年の九月に、日朝両首脳による日朝平壌宣言がございます。これは、拉致問題を初めとする諸懸案を包括的に解決するんだということで、不幸な過去を清算して、そしてこれを国交正常化へ結びつけていく、この実現をする、この方針がある。この方針は、今もこの麻生内閣においても引き継いでおるわけでございます。

 昨年八月における日朝実務者会議においては、特に拉致問題に対してもかなり突っ込んだやりとりがあって、北朝鮮側が権限を与えられた調査委員会を立ち上げて調査を開始する、と同時に、日本側としても、人的往来、航空チャーター便の規制解除を行う、こういう表明がなされた。これに沿って行動する考え方も持っておるわけであります。

 圧力と対話という言い方をこれまでもしてきておりますけれども、北朝鮮みずからとったこのような行動に対しては厳しい制裁等もあるわけでありますが、日本としては、拉致問題もこれあり、一方ではこの現状を直視して、北朝鮮が国際社会の中で生きていく道、それは、今のような方法は決して得策ではない、国益につながらないものであるということを絶えず訴えておるわけでありまして、一方では対話の道も残しながら、交渉を今いたしておる段階でございます。

 そういう意味で、経済力を行使しながら、日本がこれまでとってきた路線というもの、これが正しいんだということを北朝鮮側がしっかり理解することが必要であると思います。

 と同時に、今、アジア地域は経済の成長センターでもございます。特に、日中韓の連携、日中韓の首脳会議というものも設置をされておるわけであります。その中でしっかりその方向をお互いに確認し合いながら、そして北朝鮮も、あの六カ国協議というものがございます、この中に一度戻って、まさに北朝鮮のこれからの発展は何をやるべきかということをしっかり議論をして、今の国際社会の中で間違った方向へ行っている北朝鮮をこの枠の中にしっかり取り戻して、そして北朝鮮と一緒に平和的な解決を図る、このことが日本にとっても大事なことだ、このように考えておるところであります。

中谷委員 北朝鮮をどう導いていくかというのは、私はかぎは日本にあると思います。

 というのは、アメリカはしょせん西洋に顔が向いていまして、イスラエルとか中東とかイランとか、そちらの方に関心があって、この極東においては、遠いところで、日本と関係する安全保障問題だなという程度の認識だと思うんですね。

 中国は中国で、国内にたくさんの民族がいますので、恐ろしくて手を出せません。

 その肝心の北朝鮮は、今、経済的に疲弊をして、この体制を守るために、生き残るためにどうしたらいいかということで、あの二〇〇二年は大決断で小泉さんと面会をし、平壌宣言をしたわけでありますが、予想に反して、拉致問題でもう一向に前へ進まなくなってしまって、現在に至っております。

 しかし、それを打開するのはやはり日本の経済力であり、また人力、外交力、これで打開の道は開くことができると思いますので、拉致問題ということで、マスコミとか世論から、妥協してはならないという非常に強い圧力があろうかと思いますけれども、やはり政治は、そういった圧力をはね返して、結果的によかったという結果をもたらさなければなりませんので、ぜひ方針の転換を図っていただいて、日朝間の交渉を再開すべく準備をしていただきたいと思いますが、最後にもう一度、官房長官のお考えを伺います。

河村国務大臣 御指摘の点、私どもも十分そのつもりでおるわけでありまして、やはりアジアの問題、アジアの国々としてどのように北朝鮮とともにやっていくかということは大事だと思いますし、特に日本は拉致問題を抱えております。この解決なくして国交正常化なしという基本線は当然でありますけれども、いかに日本がその門戸を開きながら、北朝鮮が平和的に発展をするということ、これをアジアの人たちは皆望んでおるわけでありますから、その方にいかに誘導するかということ、これはあらゆる情報もとりながら、あらゆる戦略を練ってやっていかなきゃいけない課題である、このように考えております。

中谷委員 ぜひそのことをお願いいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。

深谷委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうはこの特別措置法案の審議がいよいよ始まったということもございまして、まず私の方からは、これからの議論の交通整理ということも必要だと思いますので、なるべく大きなテーマにつきまして聞かせていただければありがたいと思っております。

 一つは、今回の北朝鮮特定貨物に対する貨物検査のための特別措置法案の法整備の必要性について、まず最初に政府の考え方を伺っておきたいと思うわけでございます。

 といいますのも、私ども与党の立場から、この法整備というのは当然必要だ、そのように考えて議論をしてまいりました。しかし、日本の中にはさまざまな考えの方もいらっしゃるわけでございます。

 例えば、きょう資料として三枚物で、一枚目に貨物検査関連部分の国連決議の資料をお配りしておりますけれども、国連決議一八七四号のほとんどは、要請する、コール・アポンだ、だから決定ではないので日本がわざわざ国内法を整備する必要はないというような、結果として北朝鮮を利するような、一言で言うと北朝鮮を喜ばせるような、そういう意見を言われる方も残念ながら日本国内には若干おられるわけであります。

 しかし、そうではなくて、後でまた理由をるる述べさせていただきたいと思いますが、この法案というのは必ず成立させなければいけない、そういう法整備の必要性というのは至極当然のことであると我々は考えているんですが、今回、閣法ということでございますので、政府として、今回の法案が必要だ、そのように考える理由をぜひ国民にわかりやすくお示しいただきたいと思います。

河村国務大臣 御指摘の点でございます国連安保理決議の一八七四号が、決議の一七一八号で定めました北朝鮮との間の輸出入禁止対象となる武器及び関連物資の範囲を拡大した上で、各加盟国に対しまして、これらの禁止物品を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報がある場合には当該貨物の検査、押収、処分等を行うことを要請、また決定もいたしておるところであります。

 現行法のもとでは、この法案に示しております北朝鮮特定貨物に該当する貨物についての検査それから提出、保管等の措置を行うことができないわけでありますから、今般、当該措置を可能とするべく立法措置を講ずるものでございます。

 政府としては、安保理決議の一八七四号に基づく措置を着実に実行することによってこの決議を実効あらしめる、このことが大事であると考えます。そして、日本を含む国際社会の平和及び安全に対する脅威の除去に資するということでこの法案を国会に出させていただいておる、こういうことであります。

佐藤(茂)委員 それで、この法案というのは、ともかく早期成立を図る、特に七月二十八日まで、会期末まで余り時間がありませんけれども、今通常国会で必ず成立を図るべきではないか、そのように私は考えております。

 その理由を幾つか述べさせていただきます。

 四つぐらいありまして、一つは、今、官房長官にも答えていただきましたけれども、国連安保理決議一八七四号に基づく国際社会の要請であるということでございます。

 二番目には、日米韓で緊密に連携してこの決議を主導してきたのは日本であります。私ども、先ほど中谷先生から御紹介いただきましたが、北朝鮮の核実験直後にニューヨークの国連本部に行かせていただいたときにも、高須大使を初め、国連代表団、日本の職員の皆さんが本当に一生懸命、この強い決議を決めるために働いておられた姿も目の当たりにしております。私どもが行ったことも少しは貢献したかなとは思っておりますけれども、そういうことからしまして、この決議を実効あらしめるような適切な対応を早急に行う、そういう責務が日本にはある、そのように考えているのが二番目の理由であります。

 三番目には、北朝鮮が核兵器とその運搬手段たる弾道ミサイル能力を増強させることは世界の平和と安全に対する脅威であるのはもちろんですけれども、とにかく、隣国である日本及び日本国民にとって当面の最大の脅威でありまして、その脅威を除去するための措置というのは当然早急にとらなければならない、そのように私どもは考えております。

 四番目に、技術的な話になりますが、安保理決議一八七四号の中に、本決議採択後三十日以内に制裁委員会が、輸出入、資産凍結、移動禁止対象リストを作成することになっております。これは、制裁委員会で作成できない場合には、さらに七日以内に安保理自身が作成する、そういうことになっているんですね。

 決議がニューヨーク時間で六月の十二日でございましたから、もう三十日というのは、間もなくその期限がやってきて、制裁委員会あるいは安保理自身で禁止物品が決まるわけであります。そのときに、日本は根拠法がないために貨物検査を実施できない、それでは国際社会の中では通用しない、済まされない問題ではないか、そのように私は考えているわけでございます。

 そういう理由からでも、周辺には政局のいろいろな雑音がありますけれども、しかし、日本の国益というものを考えましたときに、この通常国会で必ず成立を図る、そういう決意が私は必要ではないかと思いますが、主管大臣たる官房長官の決意を伺っておきたいと思います。

河村国務大臣 佐藤委員御指摘のように、この法案につきましては、北朝鮮の一連の行為というものが脅威、これは日本だけではなくて近隣の諸国にとっても許しがたいものでありますから、これは早急な対応がまず必要だということが第一点。

 それから、この一八七四号の決議は、対北朝鮮輸出入禁止措置を強化するという規定がございます。国連加盟国に対しても、この措置の厳格な履行確保を目的とした貨物検査実施を要請している、こういう背景もございます。

 また、この決議を採択するに当たっては、日本としてはその主導的役割を果たしてきた、こういうことであって、アメリカや韓国を初めとする国際社会と連携をとりながらこの決議の履行を確保する、これをしなきゃならぬ、こういうことでありますから、今御指摘もいただきましたとおりでありますし、このことを考えますと、ぜひ、与野党の方々の御理解もいただいて、この通常国会で成立を期していかなきゃいかぬ、このように考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひこの通常国会で成立を期していかなきゃいけない、そういう官房長官の御答弁をいただきました。我々も、そのために審議の中で努力をしてまいりたいと思っております。

 次にお聞きしたいのは、先ほど長島委員も少し触れられましたけれども、この法案の目的そして法案の性格というものを、やはりきょう最初の審議ですので、明確にしておくことが必要ではないか。

 本法の目的というのは、趣旨説明の中でもありましたし、法案の中にも書かれていますが、安保理決議の実効性をまず確保すること、もう一つは、我が国を含む国際社会の平和及び安全に対する脅威の除去に資することというのが書かれているわけでございます。その上で、今回この法案で決められた我が国が実施する貨物検査の措置について、どのような性格のものとして位置づけたのか、ぜひ政府の考え方をお伺いしたいと思うわけであります。

 具体的にお尋ねいたしますと、先ほども議論がございました、国連安保理決議、国連憲章第四十一条の非軍事的措置に基づく要請にこたえる、一言で言うと集団安全保障措置の一環として行うそういう国際平和協力活動なのか、それとも周辺事態の一環として行う活動なのか、それとも自衛権の発動なのか、それとも我が国の管轄権の行使の一環として行う法執行活動として位置づけておられるのか、そこの最初の交通整理というのが非常に大事だと思います。

 この法案について、どういう考え方で政府はこの法案を、また貨物検査の措置というものを位置づけてつくられたのか、ぜひ政府の考え方をお示しいただきたいと思います。

河村国務大臣 この法案においては、今御指摘の貨物検査等でございますが、これは国際法上の許容する範囲の中で、対象船舶に対して、北朝鮮特定貨物を積載している、これがそれに当たるんだという相当な理由がある、これに基づいて我が国の警察権の行使をやるというのがこの法案の趣旨であります。

 そして、これによって国連決議、禁止措置の実効性を確保していこう、こういうことでございまして、これらの措置の実施は、国際法上は我が国に認められた執行管轄権を行使するものと位置づけられるものでありますから、旗国の同意がある場合によってこの執行権を行使することは可能であるという法案の趣旨になっておるわけでございます。

 繰り返し申し上げますが、我が国の警察権の行使という考え方に立ってこれを行う、これが主眼でございます。

佐藤(茂)委員 今、明確に官房長官からありました。我が国の警察権の行使をするんだ、そういう考え方でこの法案をつくられた、ここが基本ではないかというように私は思うわけであります。

 それで、与党の中でも大きな議論になりました論点の中で何点か、これから時間の許す限りお聞きをしてまいりたいと思います。

 今ありましたように、警察権の行使としてやる措置なんだということから考えまして、貨物検査等の実施主体に関してまず一つの大きな論点があるわけでございます。

 今お話がありましたように、警察権の行使としてこの貨物検査等をやるということでありますと、実施主体としては、やはり法執行活動ができる海上保安庁または税関が対応する、そういう今回の法案の原則というのはきちっと理解できるのではないかというように私は考えているわけでございます。特に海上での検査等で、海上保安庁がやるのか自衛隊がやるのかということも与党の中でさまざまに議論いたしました。しかし、海上での検査等の実施主体については、今回は海上保安庁で十分対応ができる、そのように私どもは考えているわけでございます。

 海賊対策のときには、きょうは金子国土交通大臣もいらっしゃいますし、岩崎海上保安庁長官もいらっしゃいますが、なぜソマリア沖に海上保安庁が行けないんだという野党から強い御批判も含めての御意見がいろいろ出されて、守りの答弁をされていた記憶が私もあるんです。しかし、今回は海上保安庁ができるというのは、私のお聞きしたところでも、例えば立入検査についても、昨年までの五年間でも毎年最低三万二千回以上立入検査を海上保安庁はされているんですね。特に昨年などは三万六千百六十隻数の立入検査を行っておられる。内訳でも、日本船舶は二万七千一隻、外国船舶は九千百五十九隻。

 そういう立入検査の実績、またノウハウ、能力、そういうものを考えても十分対応できると思いますし、さらに、その立入検査のために各国の言葉がきちっとできる、語学ができる、そういう職員も海上保安庁の中にはきちっと備えておられる、そういうことも伺っております。

 ですから、今回はソマリア沖の海賊対策とは違って、海上保安庁で警察権の行使としての貨物検査の任務というのは十分対応できるのではないか、私どもはそのように考えておりますが、まず海上保安庁の御見解を伺っておきたいと思います。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、私ども、外国船舶を含めまして多くの立入検査の実績がございます。

 それから、語学の点でございますけれども、韓国語百五十六名、その他の外国語も含めて全体で四百九十名、語学の能力を有する海上保安官を配置しております。

 今回の検査でございますけれども、商船に対する警察権の行使でありますから、海上保安庁が行ってきたこれまでの立入検査と大きく異なるものではないため、私どもで情報収集や分析、そうした面で関係省庁の協力を得ることは必要だろうと思っておりますけれども、そうしたことを踏まえながら適切に対応できると考えております。

佐藤(茂)委員 そこで、海上の検査についてですけれども、要は、海上保安庁と自衛隊の役割分担というものをどのように考えるのかということが非常に大事になってくると思うわけであります。今回の法案でも、第九条に、海上保安庁以外の自衛隊というのが初めて条文上出てくるわけであります。

 第九条というのは「関係行政機関の協力等」ということになっているわけですが、その第九条の二項で、「海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合において、」自衛隊は「海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」そういうようにあるわけでありますが、この「海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合」、これは具体的にどういう場合を想定されているのか、まず政府の考え方をお聞きしておきたいと思います。

河村国務大臣 公海上の外国船舶に対する検査等には旗国の同意が必要であります。また、軍艦等はこの法案における検査の対象から外れております。

 公海上において、検査等に自衛隊が出なきゃならぬということは基本的には想定されていないわけでありますが、しかし、「特別の事情がある場合」というケースでございますが、万が一の可能性として、捜査対象船舶から海上保安庁では対応ができないような激しい抵抗を受けるようなケース、これも全くないとは言い切れないわけであります。

 そういうことも考えて、本法第九条第二項においては、このような海上保安庁のみでは対応できないようなケースがあった場合、自衛隊は、自衛隊法等の既存の法律の定めるところに従って、海上警備行動などの所要の措置をとることができる、このようにしたものであります。

佐藤(茂)委員 今、官房長官から答弁いただきました、非常に激しい抵抗があったようなケース、いわゆる海上保安庁の装備ではなかなか対応が難しいというような、そういうときに自衛隊がきちっと出て警備等の対応をする、そういう考え方だということだと私も理解をいたしましたけれども、ただ、これについていろいろな見解がありまして、あるマスコミ、これは天下の毎日新聞の社説では、七月八日に、我々のそういうとらえ方とは逆のとらえ方をしている社説を載せておられます。

 例えばどういう内容を言われたかというと、「海自が対処する「特別の事情」とはどんな内容なのか。北朝鮮船舶が重武装している可能性が高い時を想定しているのであろうが、武装の実態を把握するのは容易でない。事実上、ほとんどのケースで海自が出動しなければならなくなるのではないか。」という、一言で言うと、武装の実態を把握するのが容易でないがゆえに、それを理由に特別の事情としてほとんどのケースで海自が出動しなければならなくなるのではないかという、我々の考えているのと逆の懸念を持たれている、そういう論調もここでは述べられているんですね。

 それほど頻繁に海上自衛隊が出動するというようなことを考えておられるのか、まず政府に確認をしておきたいと思います。

河村国務大臣 この法案では軍艦等は検査の対象になりません、あるいはまた軍艦に守られているような船舶、こういうものは対象になっておりませんので、そういう想定はないわけでありますけれども、しかし、万が一、そういうケースがあったときに対応し切れないということはやはり担保する必要があろうということでこの法案を置いておる、こういうことであります。

佐藤(茂)委員 だから、今官房長官がおっしゃられましたように、万が一ということを想定しての条文であるということでございます。

 ただ、そこで、きょうの審議ではっきりさせておかないといけないのは、そういう措置をとる場合の手順について、ぜひ政府の考え方をお聞かせ願いたいと思います。

 要は、そういう特別の事情があるとだれが判断するのかということですね。だれが判断した場合にこういう形で自衛隊が出動していただくことになるのか、あるいは、その判断の後、どのような手順または手続で自衛隊が海上における警備その他の所要の措置をとることになるのか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

河村国務大臣 このケースは、御案内のように海上警備行動をとることになるわけでございますから、その場合には、自衛隊法第八十二条に基づいて、防衛大臣は内閣総理大臣の承認を得て自衛隊の部隊に行動を命ずる、こういうことでありますから、当然、閣議決定も伴うものでございます。そこには海上保安庁を所管される国土交通大臣も出席をされ、そうした事態を想定しての要請があり得るということでございますから、そういう手続を経て海上警備行動に入っていく、こういうことになるわけであります。

佐藤(茂)委員 今、官房長官、答弁いただきました。海上警備行動に入ってそういう対応をしていくんだ、そういうことでございます。

 それで、防衛大臣、きょうお忙しい中来ていただいております。

 海上警備行動の中ではこういう表現になっていないんですけれども、今回の第九条の表現では、自衛隊は「海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」そういう規定になっているわけであります。これは具体的にどういう措置なのか、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御質問の九条二項におきます「海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」というのは、先ほど官房長官からも御答弁がございましたように、海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような特別の事情がある場合も全く排除されるものではないということでございますので、そのような場合に海上警備行動などの所要の措置をとるということを考えております。

 いずれにいたしましても、この規定というのは、自衛隊が既存の法律の範囲内で活動を行うということを規定したものでございまして、そういう意味で、政府一体として対応していくということでございます。

佐藤(茂)委員 それで、海上警備行動であるということで今明確にありましたけれども、資料二にも若干自衛隊法の関連するところをきょうは抜粋してまいりました。

 海上警備行動はどうなっているかというと、第八十二条「防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」こういうことでございまして、国会との関与の関係なのでございますが、今読みました八十二条についても、国会報告などの国会の関与は規定されておりません。

 また、その前にあえて第三条を書かせていただきましたけれども、海上警備行動というのは、自衛隊の法体系では、必要に応じ、公共の秩序に当たるものとする、そういう規定がありまして、二行目ですけれども、海上警備行動はこの「公共の秩序の維持に当たる」というのが体系的な自衛隊の法の中で決められた位置づけである。

 この公共の秩序の維持という活動では、幾つかあるんですけれども、治安出動などの一部の例外を除いては、国会の関与の規定というのは自衛隊法ではほとんどありません。

 ですから、今回の、今のこの条文、八十二条も読ませていただきましたけれども、海上警備行動であるならば、自衛隊が出動しても国会の承認や報告等の関与は必要ない、そのように私は考えておりますけれども、防衛大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。

浜田国務大臣 今、佐藤委員が御指摘のとおりでございます。

 今回の法律に関しましては、我々、設置法そして自衛隊法の既存の関係法律の範囲内で活動することを確認的に規定したものでございます。この規定によって、自衛隊に新たな任務や権限が付与されるものではございません。そしてまた、海上警備行動についても、本法案に基づき行うのではなくて、あくまでも自衛隊法八十二条に基づいて行うこととなりますので、よって、本法案に基づいて検査等の措置に関して万が一海上警備行動を命ずる場合があったとしても、国会の関与を改めて規定する必要があるとは考えておりません。

佐藤(茂)委員 自衛隊が海上警備行動、八十二条で、今回九条に関連して出ていった、そういう場合に、自衛隊はこの特別措置法で規定された、例えば第三条の検査、第四条の提出命令、第五条保管、また第六条回航命令等のこの一連の措置を行えることになるのかどうか、ここについても明らかにしておかなければいけないと思います。ぜひ政府の考え方をお示しいただきたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の件は、本法案に基づきまして海上保安庁が実施する検査、提出命令、保管、回航命令等の措置の関連でございますけれども、これはまさに今回の法案で新たに設けられている海上保安庁の権限でございますけれども、この権限は、自衛隊が行使し得る根拠となる規定というのはこの法案にはございませんので、自衛隊としては、こういった措置はこの法案に基づいてやるということはないということでございます。

佐藤(茂)委員 それでもう一つ、資料三枚目につけておりますが、今、自衛隊はこの法案に基づく措置はやらないんだということでございましたけれども、自衛隊は、別途海上警備行動が下令された場合には、海上保安庁法を準用して任務につくことになるんですね。海上保安庁法第十七条第一項及び第十八条に基づく、ここにいろいろ書いていますが、立入検査、停船、制止等を実施することができる、海上警備行動下令下でもそういうことになるわけです。

 この場合の第十七条第一項や第十八条に基づく立入検査と、今回のこの特措法の検査とはどのように違うのか、どのように考えておられるのか、政府の考えをお聞きしておきたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊法上の活動として行います海上警備行動は、自衛隊法の九十三条によりまして現行の海上保安庁法の諸規定を準用しておりますので、その意味で、海上における人命、財産の保護または治安の維持のため、立入検査というようなことで一定の権限を行使することは可能でございます。

 他方、本法案に基づきます検査というのは、現行法のもとでは、本法案で定める北朝鮮特定貨物に対して行うということでございますので、それは今回、海上保安庁は新たに権限として創設されるわけでございますけれども、この検査というものは、自衛隊に海上警備行動が命ぜられた場合であってもその適用関係はございませんので、自衛隊がこれを行うということはございません。

佐藤(茂)委員 もう一つ確認をしておきたいのは、海上警備行動で自衛隊が出動される場合の武器の使用でございますが、私の理解では、このときには警察官職務執行法第七条を準用することになりまして、例えば正当防衛、緊急避難等に当たる場合を除き、人に危害を与えてはならない、そういうルールが、この第九条に基づく出動がたとえ自衛隊にあったとしても、そういう制約が当然かかってくるというように理解をしておりますが、まず、そのことについても防衛省の見解を伺っておきたいと思います。

北村副大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、海上警備行動において自衛官が武器を使用する場合については、自衛隊法第九十三条一項において準用いたします警察官職務執行法第七条の規定において、正当防衛、緊急避難等に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならないとされております。当然、当該規定を遵守することになります。

 以上です。

佐藤(茂)委員 最後になりましたけれども、外務大臣、お戻りになりましたので、ちょっと大きな話で、最初に官房長官にもこの法整備の必要性をお聞きしたんですけれども、この国連決議一八七四号を国際社会が足並みをそろえて確実に完全履行していくということは当然必要である。

 特に北朝鮮に対しては、国際社会の結束した一層の包囲網づくりというのが私は欠かせないと思っているんですね。特に日本は、その中でも制裁の徹底ということを国際社会に向けて主導していく、そういう立場にあるのではないかというように考えております。そういうことを考えましたときに、まず、みずからの国内法の整備は欠かせない、そのように私は考えているんですが、外交的見地から、今回のこの法整備の必要性について、外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。

中曽根国務大臣 この法案は、現在あります外為法また関税法といいました、そういう現行法による措置と相まって、我が国が特別の措置として実施をする北朝鮮特定貨物の検査等について定めるものでございますが、北朝鮮に挑発行為をやめさせるためには、今回の安保理決議一八七四号に盛り込まれました貨物検査とか、あるいは武器禁輸、そして金融面での措置などを着実に実施するということ、そして、この実効性を高めていくということが重要であることはもう言うまでもございません。

 我が国といたしましては、国連の安保理に、ミサイル発射の後、安保理の開催を要求し、そしてこの安保理での協議を、委員が主導とおっしゃいましたけれども、積極的にこれにかかわってきたわけでありますが、同決議が全会一致で採択されたということ、そういう経緯を踏まえまして、今後も関係国と緊密に連携をしながら、この決議を実効あらしめるように取り組んでいく必要がある、そういうふうに思っておるところでございます。

佐藤(茂)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

深谷委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案の審議ということで、これまで同僚議員を初めとしていろいろな質問がございました。私も同じような質問を考えておったんですけれども、聞いておりますと、もう少し発展的に聞かなければいけないかなというところもありますので、御容赦いただきたいというふうに思います。

 最初に、今回の貨物検査等の活動の法的な性格という点なんでありますけれども、これについて、長島同僚議員が大森内閣法制局長官の答弁も引き合いにし質問し、先ほど佐藤委員も質問をされたわけでありますけれども、聞いていてちょっと違和感を感じております。

 確かに、我が国の警察権を行使するものという、その性格を持っていることを私も否定するものではないんですけれども、これは同時に、大森長官等も述べているように、集団安全保障措置の一環でもあるという両面性を持っているんじゃないかという、そんな気がするんですけれども、どうでしょうか。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

河村国務大臣 今回の安保理決議一八七四号、これをいかに実効あらしめるかということで、今回の法案を提出させていただいております。

 この法案における検査その他の措置は、国際法の許容する範囲内で、対象船舶に北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当の理由があれば、これを要件にして、我が国の警察権を行使するというものでございます。

 これらの措置の実施は、国際法上は、我が国に認められた執行管理・管轄権を行使するものと位置づけられております。

 公海上の船舶については、国際法上、当該船舶の旗国が執行管理権を有するわけでありますが、旗国の同意がある場合には、その範囲内において、他国が当然、船舶に対して執行権、管轄権を行使することが可能である、こういうふうに位置づけられておる、私はこう思うわけでございまして、集団的自衛権の議論とは次元の違うものではないか、このように考えております。

平岡委員 今のは集団安全保障という言葉の間違いだと思うんですけれども、これはちょっと発展的に聞いているので、官房長官はまだそう詳しく聞いていないかもしれません。

 これは政府参考人でも結構でございますけれども、今回の措置というのが集団安全保障の一環ではないというふうに言い切れるんですか、それともそういう性格も持っているという両面性があるんですか。その点についてお答えいただきたい。

別所政府参考人 この法案の性格については、別途、内閣官房の方からお答えがあると思います。

 集団安全保障というところにかかわりがあるとすれば、この法案をつくる発端となります国連決議におきまして、それが国連憲章の第七章、第四十一条を踏まえたものである、そういうところがあるわけでございますが、他方、具体的な国内法としての性格づけということについては、先ほどから官房長官がお答えになっているところでございます。

平岡委員 これは法的性格を明確にしておかないと、先ほど来から、長島委員の方からもいろいろ、これからの立法のあり方の議論もありましたけれども、我が国がどういうふうな仕組みをつくっていくのかについて、私は、非常に大きな制約要因になるか、あるいは我々として自重する要因になるのか、そういう点が非常に含まれているような気がするんですね。いずれこれは明確にしていただきたいというふうには思っています。

 そこで、警察権の行使である、あるいは我が国の警察作用に属するものであるというふうに位置づけられているわけでありますけれども、そうであるならば、私、単純に考えれば、我が国の法令に照らして見て違法な行為であるならば、それをもってして我が国の警察権を行使するものが行動するということはあり得ると思うんですけれども、例えば第三国の船が公海上でいるというような場合に、決して、北朝鮮特定貨物をそこに持っていくこと自体は、我が国の法令に照らして見て何の違法性もないということですね。

 そうしたものが、なぜ警察権の作用というふうに言い得るのか、私は、公海上の外国船舶に対する貨物検査等活動を行う法的根拠というのが明確ではないんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。

河村国務大臣 御案内のように、安保理決議一八七四号は、この法案におきます北朝鮮特定貨物に該当する貨物の輸出入を禁止して、その禁止措置の実効性を確保するために、このような貨物の検査を要請している、公海上も含めて要請をしておりますから、そして、このような貨物が発見された場合の押収、処分も義務づけておる、こういうものであります。

 したがって、この法案による検査等の措置は、この安保理決議によって各国が北朝鮮との輸出入を行うことが禁じられた大量破壊兵器関連等の物資が対象であって、その禁止措置の実効性を確保する、それによって北朝鮮によるそれらの物資の輸出入を防止するということであり、また、国際社会、とりわけ近隣の日本にとっても、平和と安全に対する脅威の除去に資するということが根拠になっておるわけでありますから、これを担保する意味において、海上保安庁の持つ警察権を行使することによってこの実効性を確保する、こういう建前になっておるわけであります。

平岡委員 もし今の説明でいけば、我が国の警察権の作用に属するものであったとしても、必ずしも我が国の法令に照らして見て違法ということではなくても、国際秩序の中で何らかの、違法性というべきなのか妥当性がないというんですか、国際的な平和を乱すようなものであるならば我が国の警察権を及ぼすことができるというように理解していいということですね。この点はちょっと官房長官は難しいかもしれませんので、政府参考人の答弁で結構ですけれども。

高田政府参考人 先生がおっしゃいましたように、国内法上の違法行為ではないかもしれませんけれども、行政上の措置あるいは警察権の行使というものを国際法の許容する範囲でとるということにつきまして、措置の相手方に何らかの違法性がなければならないものであるというふうには考えておりません。

 それから、付言をいたしますと、国際法的に、その物を運搬する、そういうこと自体は、これは安保理決議において禁止をされているということでございます。

平岡委員 そこで、公海上にある第三国の艦船に対して、我が国が、我が国の警察権を行使することができる、この国際法的根拠というのは一体何なんですか。

 一応、法案の中では「旗国の同意」というように、これがあればできるんだ、そういう整理をされているようでありますけれども、旗国の同意があれば公海上の外国船舶に対しても貨物検査等の活動が認められるとする国際法上の根拠というのは、一体どんなものなんですか。

 これは私、事前に外務省等にも見解を求めたのでありますけれども、全くナシのつぶてということでございまして、ここで明確に外務大臣からお答えいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 一般国際法の解釈として、執行管轄権は基本的には自国の領海内に限り認められるということでありますけれども、公海においても、安保理決議に基づき要請がなされている場合や旗国の同意がある場合には、例外的に、その範囲内において他国船舶に対して執行管轄権を行使することは可能であります。

 安保理決議一八七四号においては、公海上での貨物検査は、その対象となる船舶の旗国の同意を得て行うこととされているということでございます。

平岡委員 そうであるならば、この法案、法律がなくても旗国の同意があれば今までどおり海上保安庁、先ほど官房長官も、海上保安庁はこれまで海上保安庁法に基づいて検査をやってきた、一七一八だったですか、決議に基づく検査というのをやってきたという答弁もありましたけれども、この法案がなくてもできる、旗国の同意があればこの法案がなくても第三国の公海上にある船についてもできる、こういう理解でいいんですね。

河村国務大臣 今回の安保理決議を実効あらしめるために、現行法では対応できない部分が出てきたからこの特措法をお出ししておるわけであります。

 この法案に言う、北朝鮮特定貨物に該当する貨物についての検査、提出、保管等の措置を行う、特にこの点については現行法では対応できません。そういう意味で、この措置を可能にすべく立法措置を講じておる、こういうことであります。

平岡委員 私が聞いているのはそういうことではなくて、今、海上保安庁ができる行為、これを公海上にある外国船舶についても及ぼすことができる、つまり、旗国の同意があればこの法案がなくてもできるという理解でいいんですねということを確認しているんです。これは海上保安庁長官でも結構です。

岩崎政府参考人 私ども、海上保安庁法で、立入検査、庁法十七条でございます。そのときに、「海上保安官は、その職務を行うため必要があるとき」云々あって立入検査ができる、こう書いております。

 今の先生の御質問でございますけれども、旗国の同意があればできるのかということでございますけれども、この「職務を行うため必要があるとき」というのは非常にふわっとした書き方になっておりますので、必ずしも、旗国の同意があればこうした北朝鮮の貨物、武器等について検査ができるかということについては、相当グレーな部分があるんだろうと思っております。やはり明確にきっちりと法律で権限を与えていただくことが重要だろう、このように思っております。

平岡委員 そうであるならば、もともと旗国の同意があればできるんだということ、そこの国際法上の根拠というのが非常にあいまいなんですね。我が国が勝手にそういうふうに考えているだけかもしれない。もしそれが明確であるならば、海上保安庁長官も明確に、今やっていることを公海上で外国船舶についてもできます、こう言えるはずですよ。それが言えないというのは、やはりここに何かまやかしがあると私は言わざるを得ないと思います。

 時間がないので、次へ行きます。

 自衛隊の問題ですけれども、先ほど佐藤委員の方からも、海上警備行動でこの法案に基づく貨物検査とか回航命令等が出せるのかということに対しては、これは出せないということはありました。では、現行法に基づいての貨物検査、これは海上警備行動で準用している海上保安庁法第十七条第一項というのがある。これについては、できないような答弁があったように思うんですけれども、そういう理解ですか。できないということでいいんですか。

浜田国務大臣 万が一、海上警備行動を命ぜられた自衛隊が、自衛隊法第九十三条によりまして準用される海上保安庁法の諸規定の準用によって、我々、人命、財産の保護または治安の維持のための対象船舶への立入検査などの措置を実施することは法律上可能でありますけれども、自衛隊が実際に立入検査まで行う必要があるか否かは、その時々の状況に応じて適宜適切に判断することになると考えております。

平岡委員 今、答弁していないですね。

 大臣、私が聞いているのは、船舶を停止させ、立ち入って検査をする、このことが、自衛隊の海上警備行動の中で、こういう北朝鮮特定貨物等を運んでいるというような貨物に対してできるのかということを聞いているんですよ。どうですか。

浜田国務大臣 我々は海上警備行動の中ではこれは認められていると思いますので、その都度その都度、今回、先生今ごっちゃにして、北朝鮮のお話と一般の、我々、法律で認められているものとあわせておっしゃっておりますけれども、我々の任務とすれば、この九十三条によって、海上保安庁法の規定によって準用できる、その規定によって我々は活動していくということであります。

平岡委員 ごっちゃにしているんじゃなくて、要するに、こういう北朝鮮特定貨物を運んでいる船がいるときに、特別の事情が必要だと書いてあるけれども、自衛隊が船舶を停止させ、そして貨物を検査することができるんですかということを聞いているんですよ。

 先ほどの答弁は、そもそもの八十二条の海上警備行動の要件に当たっていないからできないというような答弁をしていたんですよ、だれだったか知らないけれども。私はできないのかなというふうに思ったので確認したんですけれども、今、大臣の答弁は、それはできるんだと。北朝鮮特定貨物を……(浜田国務大臣「いや、言っていないよ」と呼ぶ)いや、できると。

 では、ちゃんと答弁して。私の質問に対してちゃんと答弁してくださいよ。

浜田国務大臣 できないのは、今回の法律は、我々は特別な場合があったのみに、海上保安庁の、できないということがわかった段階で海上警備行動を発令するかしないかというのが現状であって、今回の法律は、要するに、その船舶の検査を海上保安庁がもっと広範にできるような形をする権限を付与することになるわけですから、我々自衛隊がその際に立入検査とかということをやれるのは海上警備行動を発令したときのみでありますので、我々とすれば、それが、きょう、今先生がおっしゃったのは北朝鮮の船に対してというお話でありましたので、我々は、そうではなくて、一般的な海上警備行動においても、その点については、今回、不審船のときもそうでありましたように、とめられない場合もあるわけでございますし、立入検査ができるできないということは、これは海上保安庁法にのっとってやっているわけですから、その検査はできると言ったのみであります。

平岡委員 結局、自衛隊も立入検査ができるということですね。つまり、現行法でもかなりできる部分があり、そして場合によっては、これは特別な事情が、どういうふうに認定するかわかりませんけれども、自衛隊が直接そういう疑いのある船舶に対して行動することもあり得るということで、私はちょっと変だなとは思うんですけれども、政府はそういうふうに考えておられるということだけを確認させていただきたいというふうに思います。

浜田国務大臣 我々とすれば、今回の法律によって海自の権限が広くなるというふうには考えておりませんので、我々は与えられた既存の法律の中で対応していくということでありますので、その意味では、万々々々が一の場合の備えというふうに私どもはこの条文に関しては理解しているところであります。

平岡委員 ちょっと大臣だけじゃ心配なので、政府参考人、今の大臣の答弁でいいか、確認だけしてください。

浜田国務大臣 では、私に対する確認が、私が言っていることが信用できないということであるならば、それ以上でもそれ以下でもございませんので、先生がお聞きになるのは勝手でありますけれども、今の言葉は私に対する信頼を著しく傷つけることになりますので、御撤回いただきたいと思います。

平岡委員 私は、大臣が正確に私の質問を理解しているかどうか不安だったので、政府参考人に確認の意味で答弁を求めたんです。よろしくお願いします。(発言する者あり)

 それでは、大臣の発言に基づいて考えれば、要は、海上自衛隊も今回の国連決議に基づく立入検査は可能である、ただし、海上保安庁について、海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合にはこの国連決議に基づく立入検査ができるということでいいんですね。

浜田国務大臣 そもそも今回の法案に関しましては、先生、海賊の質問のときには、なぜ海保が出られないのかということを何回もお話しになっていたわけでありますので、今回は海上保安庁がメーンになって、今回の特措法によって権限が付与されるわけでありますので、海上保安庁がこれに当たるということがメーンであります。

 我々とすれば、先生が今我々に御指摘になっている、では、やれることがあるんですねと。法律的にはやれると書いてあるというふうに解釈をしております。

平岡委員 では、法律的にはやれると書いてあることを踏まえて、自衛隊の艦船はこの国連決議に基づく立入検査をやるという方針があるということでいいんですか。

浜田国務大臣 先ほど来何度もお答えをしておりますように、海上保安庁がこれに対処することになっておりますので、我々とすれば、万々々々が一の際には我々が対応するということが我々の考え方であると思っております。

平岡委員 万々々々々が一というような話で言われると、では、これは、私が思うのは、これから聞きますけれども、今回、海上保安庁あるいは自衛隊がどの海域で活動するのか、あるいはどこまでのことをするのか、このことが全く示されていない、こういう法律なんですね。

 ですから、あえてここで聞きます。

 まず、この法律に基づく海上保安庁の活動海域というのはどの範囲を考えているんですか。

金子国務大臣 本法に規定します検査というのは、我が国の警察権の行使という法的な性格を持っておりますので、貨物検査を実施する公海の範囲を法律上は限定しておりません。

 ただ、一方、本法案が北朝鮮の特定貨物の北朝鮮への出入りを防止するということを目的としておりますことと、国連安保理事会決議のもとに国際的に連携してやるということを総合的に勘案していけば、主として我が国の近海を中心に貨物の検査を行うということが想定されております。

 いずれにしましても、法律的には限定しておりませんけれども、近海に限られるものではなくて、個別具体的な事案に応じて適切に対処する必要があると思います。

平岡委員 海賊対処法のときにも、何で海上保安庁が行かないで自衛隊が行くのかというようなときに、遠いからとか、武器を持っていて、ロケットランチャーがあって危ないからとか、いろいろなことを言いましたね。

 防衛大臣、この法律に基づいて、あるいはこの法律の九条の第二項ですから基づいてというんじゃないかもしれませんけれども、この法律の規定を踏まえて、自衛隊法に基づく海上警備行動を一体どこまで展開させるつもりですか。

浜田国務大臣 本法案の第九条は、防衛省・自衛隊を含む関係行政機関が既存の法律の範囲内で協力等を行うことを規定しておりまして、自衛隊としては、防衛省設置法や自衛隊法等の関係法律に従って活動することとなっております。

 自衛隊に主として期待される役割は、平素から実施している警戒監視活動で収集された情報を関係行政機関に提供することと認識しております。警戒監視活動については、防衛省設置法上、地理的な限定はございませんけれども、平素の艦艇や航空機による警戒監視活動は我が国周辺海域で実施することとしております。

 海上警備行動を命じた場合は、自衛隊の活動範囲は、任務を達成するために必要な限度で公海に及ぶものと理解をしております。

平岡委員 この前も北朝鮮の船がミャンマーに行こうとしているというようなのがあって、アメリカの軍艦がそれを追行したというのがありましたね。私は、自衛隊も、海上保安庁が対応できないというようなケースの場合にそんな活動をするんじゃないか、そういう不安も持っているんです。

 そういう意味で考えてみると、私は、海上自衛隊がこの国連決議に基づく活動をする可能性があるということであるならば、そういうことをする場合には、やはり国会の承認等、あるいは基本計画の策定というようなしっかりした枠組みをつくる必要があるというふうに思うんですけれども、これは官房長官に質問いたします。

河村国務大臣 本法案に規定する自衛隊の活動は既存の法令の定めるところにより実施されているものでありますし、また本法案によって新たな任務や権限を付与したものではございませんから、この法案で改めて国会の関与について規定する必要があるとは考えておりません。

平岡委員 先ほど来、この活動海域が本当に無限定だということで、その無限定の中で自衛隊の艦船も活動することが法律的にあり得るということでありますから、私は、本来もう少し制約的に物事を考えていくべきだというふうに思います。

 次に、時間がないのであれですけれども、我が国の法案は今策定中でありますけれども、ほかの諸外国の状況を聞いてみますと、これは外務省からいただいた資料ですけれども、アメリカにしても中国にしても韓国にしても、イギリス、フランス、ドイツ、インドネシアについても、この国連決議に基づく貨物検査等については、どうするかというのは検討中だというふうな状況になっているわけですね。

 一方、アメリカのシンクタンクの人の話を聞きますと、例えば、貨物検査をある港でやる場合には、国連のオブザーバーというようなものも立ち会わせてやることも考えているというような話も今聞くのでありますけれども、そういうような状況にある中で我が国だけがこの法案を出していくというのは、私は、ある意味ではちょっと拙速な部分があるんじゃないか、諸外国とかあるいは国連関係諸機関の動向を十分に踏まえるべきではないか、こんな気がします。

 さらに言うと、この法律案を見ますと、実は、本来国際的に協調しながらやっていかなければいけない部分が相当ある、あるいは事前に調整をするという意味で協議をしなければならないこともたくさんあるというふうに思うんですけれども、この法律の中には全くそうしたことが触れられていないと思うのであります。

 官房長官にお聞きしたいと思います。

 例えばですけれども、海上保安庁が貨物検査等活動を行うに当たっては、貨物検査等活動に相当する活動を行う他の国連加盟国と所要の協議を行うとともに、当該他の国連加盟国と協調して貨物検査等を行うものとするというような規定を追加して、それらの国際協調のもとで取り組んでいくんだ、我が国が独自にといいますか勝手に物事を進めるんじゃないんだ、そういうような修正をするということは考えられないんでしょうか。

河村国務大臣 この法案に基づく検査等の措置を実施するに当たりましては、対象船舶あるいは積載貨物に関する情報の交換を含め、必要に応じて各国と緊密に連携をしていく、これは当然のことであります。

 そういう意味で、当然そういうことをやるわけでありますが、御指摘のように規定をあえて設ける必要はない、このように考えております。

平岡委員 規定をあえて設ける必要はないというのは、私が先ほど申し上げたような中身の話について言えば当然のことであるということですね。

 そうだとするならば、九条の規定も当然のことというか、何か、今できることをそのまま書いたことだと言っている、一方では当然のことを書いているのに、どうして私が申し上げたような当然のことというのが規定されないんですか。

河村国務大臣 これは、国際法的な観点、また国連安保理の決議を実効あらしめるという国際法的な立場もございますが、我が国の警察権の行使について国連加盟国と協議することは必要でないわけであります、まず国内法的に。そして、他の国連加盟国と協調するというような規定を法律上置くことは、一般的にこれまでもなかったのではないかと私は思います。一方、国内の関係行政機関については当然協力する、これは規定が置かれておるわけでありますので、国内法のきちっとした整備、警察権の行使に当たって関係各国との協議、これは必要ないことであります。

 しかし、情報の交換は十分しなきゃなりませんし、特に特定貨物の情報はお互いの情報をとりませんとこの認定というのはなかなか難しい、こういう問題もありますから、当然これは、協議等はしっかりやる、こういうことになるわけであります。そのことをあえて規定にはしない、こういうことであります。

平岡委員 私、最初に、冒頭申し上げましたね。この貨物検査等の活動というのは、警察権の行使、警察作用に属するものであるとともに、集団安全保障活動の一環であるという面も持っているという、私は二面性があるんだろうと思うんです。そういう意味において、私は、国際協調して行っていくということの重要性というのは大変あるんだろうというふうに思うんです。

 そういう意味で、それを法律に書かないということについての考え方は、私は政府としてはいかがなものかということを指摘させていただいて、私の質問を終わります。

    ―――――――――――――

木村(勉)委員長代理 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、政府参考人として外務省大臣官房参事官福嶌教輝君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村(勉)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村(勉)委員長代理 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今回の法案は、自衛隊と憲法にかかわる重大な内容を持つものです。これを会期末のどたばたで提出して十分な議論もないまま強行しようというやり方は、到底容認できるものではありません。しかも、けさの理事会では、質疑も始まっていない段階で、十四日には締め総、採決をしてくれという、そんな提案が与党から出される。何の問題も明らかになっていない段階でこういうむちゃくちゃなやり方を強行する。どたばたですから、今、委員会も定足数ぎりぎりなんですよ。やろう、やろうという割には全く意欲が感じられないような、慌てて呼んだというのもいらっしゃるようでありますけれども、そういうやり方では到底受け入れがたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 そこで、浜田防衛大臣にお伺いをいたしますけれども、八日、九日、大臣に就任をして初めて沖縄を訪問されました。これまで、普通、防衛大臣が沖縄訪問というときには関係議員にあらかじめ日程も知らされていたんですが、今回、そういうこともないまま、突然の訪問でありました。九日は、政府・与党が今回の法案の本会議の趣旨説明聴取、これも提案していた日であるわけです。

 こういう時期をあえて選んで与那国島まで訪問しているわけですが、今回の沖縄訪問の目的、これはどういうことでしたか。

浜田国務大臣 今、先生、日にちの御指摘がございましたけれども、我々とすれば、この辺であればいろいろな意味で日程的に大丈夫かなということを思考してきたところでございます。

 今回の沖縄訪問、私が就任以来、沖縄の方にはぜひ伺わせていただきたいという思いがあったわけでありますが、日程がなかなか整わずにきょうの日を迎えてしまったということもございまして、きのう帰ってくるような形になったわけでございますけれども、当然、先生方からいつも御質問の中で、米軍再編事業の重要課題であります普天間飛行場の移設、返還に関する現状を把握することもございますし、その中でキャンプ・シュワブも視察をさせていただきたいということもございまして、仲井眞知事や関係市町村長の方々と意見交換をしたいという思いから、今回沖縄を訪問したところであります。

 そしてまた、国防上大変重要な地域でございます与那国島を視察したいと以前から思っておりましたので、この機会にあわせて訪問をさせていただいたということでございます。

赤嶺委員 米軍再編、キャンプ・シュワブであれば、むしろ防衛大臣としての国会とのかかわりで、機会でいえば、グアム協定の議論のとき、大事なときだったと私は思います。

 それで、浜田大臣は、六月の三十日に与那国町長と町議会議長らから与那国島への自衛隊誘致の要望を受けているわけですが、その一週間後には与那国町を訪問していらっしゃるわけですね。何でそんなに急いで行動することになったんですか。

浜田国務大臣 先生、それは逆でございまして、我々が先に日程を決めておりまして、私どもは、先にそういった日程がございますので、わざわざおいでいただかなくても我々の方が参りますのでというお話をしたんですが、ぜひともおいでになりたいということでしたので、私はお会いしたということでございます。

赤嶺委員 また、そうであれば、別の面が見えてくるわけですけれども。

 今回、与那国島には、自衛隊駐留に反対するという意見も強いわけです。大臣もそれは肌で感じられたはずであります。ですから、どんなことが起こっているかといいますと、町議会議長の大臣要請、実は、議会の手続を経ていなかった、公務でなかったということが報道され、本人も認めて、私的なものだった、こうなっているわけですね。やはり地元の住民の意見を二分するような問題ですから、こういう慌てた要請が行われる、反対の住民の意見も聞かず進められている。

 これは、頭越しに進めていくということになりはしませんか。

浜田国務大臣 我々とすれば、今先生が御指摘のように頭越しにこれを決めるとかなんとかという問題ではなくて、議会の方の印の話は我々とは全くかかわりのないことでございますし、当然、現大綱のもとでも島嶼防衛というものを書いてもございますし、その中で先島諸島というものに対する考え方というのもあわせて我々の課題としてはあったわけでございます。

 そういった意味合いにおいては、今回それに私が行くことによってそれを決めるとか決めないとかではなくて、我々のこれからの方向性を示す意味でも、検討を始めるために、私どもとすれば参考にするために伺ったということでございますので、これから島内の皆さん方の御意見も聞きながら進めていきますということを我々は思っているわけでございますので、先生、頭ごなしに物事を決めるとかそういったことは全く考えておりませんので、その点は御理解を賜りたいと思います。

赤嶺委員 頭ごなしにはやらないということなんですが、議長が議長の肩書で防衛大臣に会ってきて、戻ったら、いや、議長という公務ではありませんでしたというような、こんなずさんな要請が地元と防衛省との間に行われていることについて、やはりそれは問題だというぐあいに指摘しておかざるを得ないと思います。

 私は、大臣は、今もおっしゃったんですが、与那国島を訪問したことは島嶼部の防衛というものに対する意思表示だと殊さら強調しているわけですが、これはちょっと地元の感覚とまた違うと思うんです。自衛隊誘致を要請した外間町長自身は、日ごろ国防上の不安はない、自衛隊誘致の目的は経済的な理由だ、こう明言しておられるわけです。

 与那国島は、中国や台湾との交流で栄えてきた歴史を持つ国境の島であります。何でそういう島にわざわざ緊張を高めるような自衛隊の配備を行う必要があるんですか。

浜田国務大臣 ですから、そういったことも含めて我々勘案するために今回訪れて、果たしてそれを置くことがどうなのかということも含めながら、当然これは検討を始めるための第一歩として今回行かせていただいたことでもございますし、先生、今、経済的な御理由を申されましたけれども、そうではなく、それも確かにあるかもしれませんが、しかし、災害対処等々いろいろなことも町長さんはおっしゃっておりましたし、我々とすれば、そういった御意見を聞きながら今後のあり方を検討していくということであるということでございますので、よろしくお願いいたします。

赤嶺委員 去年の九月、議会で誘致決議しているその文章を読ませていただいたんですが、災害のサの字も出てこないんです。

 それで、災害というならば、向こうで災害防止に一番役立っていたのは、国土交通大臣、気象台の測候所なんです。測候所は廃止されたんです。家族もいて、台風銀座で台風接近に一番役立つ測候所は廃止して、地元がどう言うかは別にして、国が災害対策で自衛隊が行くといった場合に、これはちょっとやっていることが違うなという思いがしますよ。

 私は法案の質問もありますから……(浜田国務大臣「いや、答えさせてください」と呼ぶ)もういいです、大臣は。

木村(勉)委員長代理 浜田防衛大臣、答弁を求めます。

赤嶺委員 では、私の質問時間を延長させてください。

浜田国務大臣 先生、今、災害対処のサの字もということがございましたけれども、我々の方の紙にはこの災害対策のことがしっかり書いてございます。

 これは直接お会いをしたときにいただいたものでありますので、読ませていただきますけれども、「また与那国島の周辺海域は地震活発地帯であり今後三十年以内にマグニチュード七・八程度の規模の地震が発生する確率は三〇%との潜在的に大規模災害発生の危険性を内包している地域でもあります。」ということが書いてあるわけでございますので、それは今、先生がないと言われたから答えさせていただいただけでありますので、その点だけは言わせていただきたいと思います。

赤嶺委員 大臣、私がないと言ったのは去年の九月の議会決議なんですよ。議会決議と大臣のところに持ってきたものと、中身が違っているんです。違っているということさえあなたは気がつかないで、しかも、そのときに持ってきた議長は、公務ではなかった、こう言っているわけです。確かめてください。そんなのは事実関係ですから、すぐできますから。

浜田国務大臣 議会決議というものと、私は直近で陳情を受けたものを申し上げただけでありますので、先生が御指摘になったのは議会の去年の話であって、私は直接町長から言われたことを言っただけのことでありますので、それもチェックしないでというのはおかしくて、では、私が直接聞いたことを先生はチェックしていないわけですから、それは同じことじゃありませんか。ですから、ここでこういう論争をすること自体余り意味がないと私は思います。

赤嶺委員 ですから、災害が大事だと大臣が認識しているけれども、最初の誘致決議には災害のサの字も出ていなかったということなんですよ。しかし、議長が、公務で来たんじゃない、私的な要請で来たときに、町長らと一緒に災害というのが後で出てきた。しかし、災害というなら、測候所の廃止をなぜやったかということを私は政府に対して言いたい。

 ただ、与那国町は、今、国境の島としての再生計画というのを持っているんです。それは、国境交流事業として、台湾との観光共同圏、中国語圏をターゲットとする観光振興、国際交流を基調とした郷土の町の振興を図っているわけです。大臣も与那国に行ってそういうことを感じられたと思うわけですが、こんな島に自衛隊を配備したら、台湾や中国との軍事的緊張を高める。国際交流も台なしですよ。やはり国境の島に必要なものは軍事ではなく平和外交だ、自衛隊の駐留はそもそも与那国島を含めて南西諸島には必要がないということを強く申し上げておきたいと思います。

 そこで、ただ、防衛大臣初の沖縄訪問にしては、普天間飛行場の視察の日程が入っていないんですが、それはなぜですか。

浜田国務大臣 申しわけございません。今回、たまたま、そういう意味では時間が不足していたというのもございます。しかしながら、我々、委員会等々において、その実態というものは、社民党の先生方、そして赤嶺先生からも御指摘をいただいておるわけでございますし、私自身も、以前に、普天間、嘉手納等も行ったことがございます。

 そういう意味では、今後、今先生が御指摘のあったようなことは、私としても行きたかったわけでございますが、日程上無理だったということでございます。

赤嶺委員 やはり、基地の被害に苦しみ、負担にあえぎ、そういうところに、大臣が就任後初の沖縄訪問が自衛隊の配備計画、余りにも県民の基地負担の感情を理解していない行動だったと私はあえて申し上げておきたいと思います。

 そこで、法案について聞きます。

 私たちは、今回の北朝鮮による核実験の強行に対して、いかなる核実験または弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求した国連安保理決議一七一八や、あるいは北朝鮮が一切の核兵器及び現在の核計画を放棄すると合意した六カ国協議共同声明に明確に違反する暴挙であり、世界で生まれている核兵器廃絶に向けた新たな動きに対する乱暴な挑戦であるということを厳しく抗議してまいりました。北朝鮮に対し、これ以上の核実験を厳に慎み、核兵器及び核兵器開発計画を放棄して六カ国協議に無条件で復帰するよう強く求めてきたところであります。

 先月、国連安保理決議一八七四が全会一致で採択され、北朝鮮に対し、国際社会が一致して、核実験と弾道ミサイル発射をこれ以上行わず、すべての核計画を放棄するよう求め、非軍事の制裁措置として武器禁輸などを決めたということは非常に重要であると認識しています。

 今回提出された法案は、安保理決議の実効性の確保が目的とされているわけですね。

 そこで、まず、安保理決議一八七四について聞きたいと思います。

 今回の決議について、何か貨物検査ばかりが強調されているように感じるんですが、決議のポイントをまとめた外務省のペーパーでも、武器の禁輸や貨物検査、金融面での措置など、六つの項目を挙げております。

 まず、外務大臣、今回の安保理決議一八七四の全体像について説明していただけますか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 安保理決議一八七四でございますけれども、既に先ほど委員も御指摘にございました二〇〇六年に決議されました一七一八号、そこで定められた北朝鮮に対する制裁措置に加えるということで、具体的に例えば以下のようなことが入っているわけでございます。

 まず第一に、武器の輸出入について、北朝鮮からのすべての武器輸出が禁止されるというようなことで、禁止対象となる武器及び関連物資の範囲が一七一八に比べて拡大されているわけでございます。

 第二に、貨物検査でございますけれども、自国領域内及び公海における検査の要請、あるいは、そのための手続、そして検査の結果、確認された物資、禁止対象物資の押収、処分を義務化するというようなことが入っております。

 また、金融面での措置につきましては、大量破壊兵器や運搬手段の開発に資するすべての資産の提供、移転の防止ということが含まれているところでございます。

 簡単でございますが、以上が大体の姿でございます。

赤嶺委員 要するに、今回の決議で決定というぐあいに義務づけられているのは、外務省のペーパーにもありますが、北朝鮮のすべての武器の輸出入の禁止、そして、禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給等の禁止、つまり、入港禁止が中心であります。

 この二つの義務が非常に核心的なものになっていると思うわけですけれども、この二つの義務について言うと、日本では、既にすべての北朝鮮船舶の入港を禁止し、武器どころか輸出入も全面禁止する措置をとっているわけです。既にこの二つの義務に関しては、我が国について言えば決議は一二〇%実施している、そういうことでいいですか。

別所政府参考人 先ほど来御議論がございましたとおりに、この決議をつくるに当たりまして、日本が主導的役割を果たしていくということをやったわけでございます。その中で、この安保理決議、全会一致で要請しているというところについても、やはり日本としては積極的にこたえていくべきであろうと思っているわけでございます。

 また、具体的に委員が御指摘のございました国連決議で義務となっているということにつきましては、私、先ほど答弁させていただいたところでございますけれども、検査の結果、確認された禁止対象物資の押収、処分、そういったことについても義務というふうになっているところでございます。

赤嶺委員 ですから、貨物検査の結果、禁輸した貨物があれば押収するというのも義務だと。それは、貨物検査という手続を経た上での義務ですね。しかし、すぐにやらなきゃいけない義務というのは私が言った二つの点で間違いないと思うんですが、この点について言えば我が国はやっている、そういう理解でいいですかということを聞いているわけです。

別所政府参考人 この決議につきましては、先ほど申しましたように、要請というところと義務というところがあるのはそのとおりでございます。

 義務につきましては、文言上義務となっているのは先ほどから御指摘しているとおりのところでございまして、日本につきまして言えば、日本が輸出入についてはすべて禁止しているということはそのとおりでございます。

 ただ、この安保理決議について申しますと、日本と北朝鮮という関係だけではなくて、北朝鮮が行う武器輸出、武器輸入、そういったものについても規制をかけるというところがございまして、それについて各国が、それを協力して差しとめていく、抑止していくということが要請されているわけでございまして、まさにその手段としての貨物検査ということでございます。

赤嶺委員 貨物検査がなぜ必要かということを今私は聞いているんじゃないんですよ。

 おわかりだと思うんですけれども、国連安保理決議には義務も要請もある。要請についてはこれから議論していきますから。その義務は、やはりすべての北朝鮮の武器の輸出入の禁止、そして禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給等の禁止、これについて言えば日本は実行しているということを聞いているんですが、実行していないんですか。

別所政府参考人 輸出入についてすべて禁止されているのはそのとおりでございます。また、燃料につきましては、北朝鮮船舶が日本に入ってこないという限りにおいて、実態上、そういうことがないということでございます。

赤嶺委員 それで、決議は、日本の領域内と公海上で、禁止物品を積載している疑いのある船舶の検査を要請しているわけです。

 しかし、その船舶検査について言っても、領域内について言うと、先ほどの入港禁止や全面禁輸によって、ほとんどカバーされているということではないですか。

高田政府参考人 我が国と北朝鮮との間での輸出入ということについては、そのとおりでございます。

赤嶺委員 ですから、貨物検査を要請はされているけれども、我が国の領域内には北朝鮮の船は入ってこない。したがって、要請はされても、貨物検査は既に必要がないほど徹底している、こういうことになるわけですね。何かあるんですか。

別所政府参考人 先ほども申しましたので、ちょっと繰り返しになりますけれども、この決議は日本と北朝鮮との間の輸出入だけについて言っているわけではございませんで、北朝鮮が、北朝鮮以外の国との貿易においてそういった物資について交易することについて、国際社会が一体として協力して取り締まろう、そういうことでございますので、日本の輸出入だけではございません。それから、船について申せば、日本の領域内を通過するものもございます。

 そういう意味で、必ずしも日本の港に入って輸出入に携わるものに限られるわけではございません。

赤嶺委員 いや、質問の趣旨をきちんととらえて答弁してください。あなた方が説明したこともずっと聞いていきますから。説明を急がなくて結構ですから。

 私が伺ったのは、領海内にも北朝鮮の船舶は入ってこないから船舶検査は必要ないですよねと言ったら、今、では、北朝鮮が第三国に頼んで日本の港湾施設、領海内に武器を積んで入ってくるということを考えられるんですか。今、日本で考えられるんですか。

別所政府参考人 私ども具体的にそういう情報を持っているわけではございません。

 また、先ほどからおっしゃっている、北朝鮮の船が日本に入港する、あるいは日本の領海を通航するという話がございましたけれども、まさに委員が御指摘になったとおり、第三国の船がそういったものを積んで日本の領海を通過するということもあり得ることとは思っております。

赤嶺委員 それは全くまれなケースですね。まれじゃないんですか、よくあることなんですか。どうですか。

別所政府参考人 残念ながら、具体的な状況について、私、今把握はしておりません。

赤嶺委員 具体的な状況を把握できない、つまり、義務は果たしている、領海内の船舶検査は必要がない状態に今なっている。残るは公海上ということになるわけです。

 公海上の船舶検査についてですが、公海上で船舶検査を行うような事態が想定されるのかという問題であります。

 今回、北朝鮮の貨物船カンナム号を米軍のイージス艦が追尾したことが大きく報道されました。公海上での船舶検査というのは今回のような事案を想定しているんですか。

高田政府参考人 まさに公海上でありますれば、そういう諸情報を合理的に判断して、まさに貨物が北朝鮮特定品を積載している、相当の理由があることを要件に、旗国の同意をとってやるということでございます。

赤嶺委員 それで、今回のカンナム号の場合に、旗国である北朝鮮に対して、アメリカは検査の同意を求めたんでしょうか。安保理決議では、旗国の協力が得られない場合に、詳細な報告を制裁委員会に速やかに提出することになっているわけですが、アメリカは提出したのでしょうか。

別所政府参考人 カンナム号の話につきましては、報道などで、アメリカの軍艦あるいは何らかの方法でアメリカがその状況を把握し、あるいは追跡していたということが言われているところでございますが、御質問の、具体的に船舶検査について申し入れをしたのか、あるいはその結果として何らかの報告がなされているかということについては、承知しておりません。報告については今のところ聞いておりません。

赤嶺委員 公海上の船舶検査については、カンナム号について言えば、具体的に掌握していないと。

 ただ、北朝鮮が同意を与えるはずがないわけですね。しかし、カンナム号は、各国の連携で、ミャンマーに行けず北朝鮮に戻ったわけです。ミャンマー外務省の局長がミャンマー駐在の北朝鮮大使を呼び、カンナム号が、武器類を含め、国連が禁止した物資を積んでいるならミャンマーのどの港にも入れないようにする、このように述べたことが報じられているわけですね。

 ですから、私は、わざわざ公海上で検査をしなくても、各国が連携をすれば武器の禁輸を実行できるということではないかと思いますが、時間が来ましたので、その続きはまた来週行いたいと思います。

    〔木村(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

深谷委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、会期も迫る中、そして政局状況もさまざまに報道される中で本委員会が開かれ、そして、朝からずっと各委員の御質疑を伺っておりましたが、各委員それぞれに御自身の意見を展開されて、また、河村官房長官の御答弁も誠意あるもので、その意味ではこの委員会というのは大変意味があると思いますが、私は、まず、事が非常に重大な事項を含んでおりますので、拙速に結論を得る以上のものをぜひ各参加の委員にはお願いしたいと思います。

 冒頭、この法案の必要性あるいは位置づけについては、長島委員から、あるいは平岡、赤嶺委員まで幅のある御議論があったと思いますが、そもそも、北東アジア地域における核の問題は、我が国にとっても、そして世界の核廃絶にとっても非常に重要なところに位置するわけです。

 その意味で、国連決議の千八百七十四というのは、この間の北朝鮮の相次ぐミサイル発射あるいは核実験に対しての国際社会の断固たる決意として、私はこれが中国も含めて成立しておるということを高く評価いたしますが、その一方で、このたびの立法が、例えばそれが警察権を前面に押し立てた、その意味では周辺事態法等々とは違うスキームであるということであってもなお懸念を持つ点があるわけです。

 と申しますのは、北朝鮮側の認識が、いわば、いまだ戦争は終わらない、休戦状態だということでずっとこの戦後を北朝鮮は生きてきているわけです。国際社会が制裁の強化やあるいは北朝鮮非難に向かえば向かうほど、それは当然なこととしても、北朝鮮側の暴発と申しますか、誤ったリアクションということも念頭に置いておかねばならないと思います。

 その点において、河村官房長官は先ほど、対話と圧力、圧力と対話と言ってもいいと思いますが、この対話という点においても、北朝鮮政策に対する一定程度の変更とまでおっしゃったかどうかはわかりませんが、考え方もいろいろに含みながらやっていかねばならないという御答弁でありました。果たして、この圧力と対話の対話の部分について、中谷委員が最後に御質問されたので確認の意味でもありますが、もう一度お願いいたします。

河村国務大臣 阿部委員御指摘のように、北朝鮮側は、採択された安保理決議に対しましても、今や核兵器の放棄など絶対あり得ない、こういう声明を出したり、特にまた、プルトニウムの兵器化とかウラン濃縮作業を行うことを声明したりしておりまして、制裁には報復で、対決には全面対決で断固向かうというような立場でございます。

 日本としては、この安保理決議にも明記されておりますけれども、国際社会の声に耳を傾けて、関連の安保理決議を遵守し、そして六者協議に復帰してもらう、そしてこれを完全実施することが北朝鮮自身の利益につながるんだということを言っておるわけであります。そういうことでありますが、北朝鮮が強硬路線をとってさらなる孤立を開く道ではなくて、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとること、このことを私もずっと求め続けてきておるところでございます。

 そういうことで、北朝鮮がこのような挑発行為をいたしておりますから、これをやめさせなきゃいかぬということもあって、国際社会全体が、安保理決議一八七四号に盛り込まれた、武器禁輸、貨物検査、金融面、こうした措置を着実にやっていく。そして同時に、その決議が実効性を高める必要があるということははっきりしているわけであります。しかし、北朝鮮の動向を注視しながら、特にアメリカ、韓国を初めとする関係国、これとの連携が私は非常にまた大事だというふうに考えております。

 そういう意味で、諸問題の解決には対話を通じて平和的にやる、このことがやはり大事だと思っております。そういう意味で、対話の扉を閉ざす考え方は持っておりません。しかし、引き続いて、対話とまたその決議の実効性を高める平和的な活動をとれという圧力、このバランスに意を用いながら、北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けて、六者協議議長国の中国との連携もとりながら最大の外交努力をしていく必要がある、このように考えております。

阿部(知)委員 私は、対話という面では、日本自身に課せられた役割と、それからもう一つ、北朝鮮が何より求めております米朝直接交渉という意味での対話の促進ということもあり得ることだと思います。

 まず、我が国自身にとって、この間ずっと、これは北朝鮮が繰り返しいろいろな事態を起こしますのでそうせざるを得ないということもこれあり、圧力政策をとってきたわけですが、一方で、例えば近年では、WFP等々の食糧支援も全体的に低迷しており、また、北朝鮮でも飢餓状況が広がっている等々の指摘が、これは韓国のNGOのいろいろな支援活動をやっておられる方からもせんだって私が伺うところでありました。

 今ある六カ国協議に北朝鮮がすぐ復帰することがないとしても、この六カ国という枠が極めて重要であり、また、その中で、例えば北朝鮮自身の国民が疲弊し果てないこと、本当に弱い者から亡くなっていったりするわけで、この人道支援という側面をどう日本として考えていくのか、これは、急遽で申しわけありませんが、外務大臣にお願いしたいと思います。

 ちなみに、私自身はどういうことを考えておるかといいますと、実は、北朝鮮には、在外被爆者として、日本で被爆されて北朝鮮国内に帰還されたというか、北朝鮮の人権団体の調べでは三百八十二人おられると。私は、核の悲惨を二度と再び繰り返さないためにも、現実にそのことをずっと一生背負って、それは、日本で被爆され北朝鮮に帰り、北朝鮮の今の非常に混乱した経済情勢のもとで一番弱者になっておると思います。

 そうしたことの取り組みが果たして政府、外務省の視野の中におありかどうかも伺いたいし、北朝鮮の中で飢えるのは子供たちですから、これは、為政者が何であれ、経済制裁の結果は必ず弱者にしわ寄せをする。私どもが次にここでの人間の安全保障も含めた平和の構築を考えるときに極めて重要なテーマになってくると思いますので、中曽根外務大臣にお願いいたします。

中曽根国務大臣 北朝鮮の国民、特に一般の市民が飢えとかそういうことで苦しんでいるということは、人道的観点から私たちも十分これに配慮する必要があると思いますが、現在の状況は、北朝鮮が国際社会の平和と安定を乱す、特に我が国を含む北東アジアに対する大変な脅威となっているわけでありまして、これは、我が国あるいは中国、韓国のみならず、国際社会が重大な懸念を有して安保理決議というものを採択したわけでありますから、まずそのような行為をやめてもらう、それがまず第一だと思います。

 そして、六者会合という協議の場があるわけでございますから、一日も早くそこへ復帰して、ほかの五者と協議をしながら、どういうふうに解決をしていったらいいかということを、先ほどからお話がありますように、平和的にと申しますか、考えていくということが大事だと思っております。まず六者会合に復帰をするということではないかと思っております。

阿部(知)委員 そこは鶏が先か卵が先かになってくると思うんです。北朝鮮も、六者協議への復帰、もともと六者協議という枠は、アメリカとの関係を、北朝鮮がどのように交渉に引っ張り出せるかということにおいて値踏みをしているようなところもこれあり、極めて微妙な枠組み。しかしながら、私は、日本もこの六者協議ということを重要な今後に発展するものとして位置づけて取り組んでいただきたいと思うものであります。

 その間にも、北朝鮮の体制の崩壊がどのような形で起こるかは予測不能なところがあります。しかしながら、この地域に及ぼす影響というのが非常に大きいときに、今私どもを取り囲む脅威は、例えば感染症のようなものが本当にその地域の脅威になったりもしますし、とにかく、貧困や飢餓や、暮らしの条件を悪化させるということがいろいろ多面的な危機をまた生む。もちろん、核の危機は最大、私どもが断固としてこれをターゲットとしてやっていかねばならない国是でもあり世界への役割であると思いますが、例えば、五者で協議をする場合にも、こうした北朝鮮自身の疲弊状況ということも情報交換していただき、しかるべく対処をしていただきたい。

 と同時に、私は、拉致問題にあっても、先ほど官房長官の御答弁でありましたが、確かに、国家犯罪であると同時に、看過できない人道状況が長年ここに引き続いておるわけで、この点については、ぜひともまた、政府の対話と圧力の微妙な使い分けというか、両にらみしながらぜひ御尽力をいただきたいと思うわけです。

 引き続いて中曽根外務大臣に伺いますが、先ほどどなたかの委員との御質疑の中で、この問題は日本一国じゃなくて、アメリカや中国あるいは韓国、さまざまな諸外国との協調関係のもとに解決しなきゃならないし、安保理決議もそのようなものとして成り立っているわけですが、この間、米国が、オバマ新大統領が誕生され、どちらかというと、現実に国内の非常な経済状況の悪化や、あるいはイラク、アフガニスタン情勢、中東情勢でのアメリカのさまざまなこの間抱えた困難があって、北朝鮮、朝鮮半島政策について、だれを明確な窓口として、アメリカ自身の意思がどのように示されていくか。

 ここは、日本もやはり協調しながら、いろいろな交換をしながら臨まねばならないわけですが、現状で、アメリカ自身の朝鮮半島政策について、これまではいつも、危機の都度、例えばカーターが出てきたりパウエルが出てきたり、さまざまな、そのときそのときの大きな政治的な動きがあったと思います。

 ここについて、現オバマ大統領の政権下で、北朝鮮問題、朝鮮半島問題の窓口、あるいは日本がどのようにアメリカとの交渉を進めておられるのか、交渉といいますか協議、この点について中曽根外務大臣にもう一度お伺いいたします。

中曽根国務大臣 北朝鮮問題につきましては、オバマ政権も、当然のことだと思いますが、これは大変重く受けとめておるわけでありまして、過日も、スタインバーグ氏を中心とする方々が来日をし、また、韓国や中国を訪問して北朝鮮問題について意見交換をしておられるわけであります。そういう中で、対北朝鮮政策というようなものをオバマ政権としてもいろいろと検討されているのではないか、そういうふうに推測をしているところでございます。

 何よりも、今後の米国の北朝鮮に対する取り組み方が具体的にどういうことになるかということは私から予断することはできませんけれども、確実に申し上げられることは、現在の北朝鮮の核実験やミサイルの発射によって採択された安保理決議を各国がしっかりと実行するということでありまして、米国も、例えば私とヒラリー・クリントン国務長官との電話会談等におきましてもそのことが再三確認されて、そのためには一致協力してやっていこうということになっているわけでございます。

 それともう一つは、先ほど申し上げましたけれども、六者会合の枠組みというものを基本として、今後、復帰のために残りの五者がどうしたらいいかというようなことにつきましても、二国間、三国間、五者間で協議を行っていくということだと思っておりまして、米国自身が今後直接どうされるかということにつきましては、私が意見を申し上げる立場ではないと思っています。

阿部(知)委員 それはアメリカ自身の外交政策ですから、今大臣の御答弁のとおりですが、しかしながら、アメリカにとっての北朝鮮の核問題と我が国にとってのでは、やはり地理的要因も違いますし、それからまた、我が国は北朝鮮の核保有そのものも看過しない、許さないという強い立場で臨むわけですから、鋭意意見交換を進めていただいて、日中、日米、日韓、おっしゃったように、外交的な情報交換が非常に重要となってくると思うので、外務大臣には引き続いて御尽力をいただきたい。

 申しわけありません、もう一つ投げますので。

 私は、その際にも、日本自身が核軍縮にどう取り組んでいくかという、おのれの立場というか、おのれの姿が問われるように思うわけです。

 今、米ロで核弾頭の数を減らしていくような交渉がある中で、果たして、日本は現状、アメリカの核の傘の中におるわけです。拡大核抑止という中におるわけです。例えば、日本とオーストラリアが二〇〇八年に共同でのイニシアチブというものを発表したときにも、日本がアメリカの核の傘の中にいることの中で、果たして日本自身がアメリカの核軍縮をどう見ておるか、あるいは、日本における期待しているところのアメリカの核抑止は、日本としては、例えばどこかの国が日本に生物学兵器や化学兵器を使った場合ですら期待しているのではないかというような指摘が諸外国からなされるわけです。

 この点について、私は今二つお伺いいたしましたが、やはり世界の核軍縮の流れの中で日本自身が、もちろんおのれの安全保障もありますが、どういう意見表明をしていくのかということを、これは実は予算委員会で中曽根外務大臣に聞こうと思って、時間がなくて失礼を重ねた案件ですので、御答弁をお願いします。

中曽根国務大臣 まず、先ほどの御質問に関することをちょっとつけ加えさせていただきたいと思いますが、各国との協調が大変大事だ、そういうふうに委員がおっしゃいました。この決議の採択に当たって、中国、韓国、米国、ロシア等とは緊密な連絡をとってまいりましたし、その後も、例えば、現在中国の武大偉副外交部長も見えておりますし、また、過日は李明博大統領も来日されたりということで、大変緊密に連携をとりながらやっているということを一つ御報告させていただきたいと思います。

 それから、不拡散ということでございますが、大量破壊兵器などの不拡散体制を維持する、また強化するということは、何よりも我が国自身の安全保障という観点から非常に重要なことでございますし、また、これは国際社会の平和と安全のためにも重要なものでございますが、何よりも、我が国は唯一の被爆国でありますから、そういう意味では、一貫して国際的な核軍縮また不拡散を訴えて、また積極的な活動をすべきである、そういうふうに思っております。

 こういう観点から、四月の初めにオバマ大統領が核兵器のない世界という演説をされましたけれども、私も、世界的核軍縮のための十一の指標というものを世界に提案いたしました。また、G8の外相会合それからラクイラ・サミットでは、G8として、これは委員も御承知と思いますが、核兵器のない世界のための状況をつくるということについてコミットしたばかりでございます。

 我が国といたしましては、こうした世界的な核軍縮それから核不拡散に対する機運、この高まりというものを生かしながら、来年NPT運用検討会議が開かれるわけでありますけれども、これが成功するようにということで努力もしなければなりませんし、そして、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージというものを発信しながら、積極的な努力を継続していく、そういう考えでございます。

 なお、来年初めには、核軍縮、不拡散のための国際会議を我が国で開くということも提案をさせていただいているところであります。

 なお、この関連で、我が国が擁立いたしました天野之弥大使が次期IAEA事務局長に任命されましたことは、核軍縮それから不拡散、この分野における我が国の取り組みとか、また原子力の平和的利用のモデル国としての我が国の今までの実績に対する国際社会の高い評価、また大きな期待が示されたものであると理解をしておりまして、喜ばしく思っております。

 今後とも、引き続いてIAEAに積極的に貢献をしていく考えでございます。

阿部(知)委員 今御答弁いただいたことに関して、私の方から。

 確かに、IAEAの事務局長に天野さんが就任されたということは我が国にとっても誇りでありますし、積極的な核拡散防止に尽力していかなきゃいけない立場にさらに立った。一方で、我が国が大量のプルトニウムを持っておって、いつでも核武装といいますか、そうしたことができる状態であるということも、これは世界からの懸案事項である。我が国は、核被爆国であり、なおかつ現在大量のプルトニウムを持って、政治の意思がそれを行わせしめないということになっているんだと思います。

 一方、そうした状況にありながら、例えば、この間、やはり北朝鮮の脅威がこれあり、日本も核の寸どめ開発をすべきであるとか核をリースすべきであるとか、そういう論議も散見される状況もあります。ぜひ、今回天野さんが事務局長になられたということを重く見て、日本があらゆる場面で核拡散の防止のために最先頭に立つように御尽力をいただきたい。

 私が先ほど大臣に伺ったのは、元オーストラリアの外相であるところのエバンスさんが、日本の核抑止論が、先ほど私、簡単に申しましたが、相手国が生物学兵器や化学兵器を使った場合でも、逆に核で守られることを想定しているのではないか、こういう指摘をなさった場面がございますけれども、この点については、大臣は、日本としての表明は。

 アメリカの核抑止の中にいるというのは現実ですが、アメリカが核軍縮を進める中で、さまざまな、これから例えばこの地域で核保有国が核の先制不使用を宣言していったりすることも含めて、極めて今そうしたチャンスにあると私は思いますが、そのときにあっての日本自身の立場について、もう一度明確にしていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今オーストラリアのエバンス氏のことをお話しされましたけれども、もう委員も百も承知のごとく、我が国は非核三原則という基本的な考えでございますし、また、原子力平和利用、そういうものもありますし、NPTにも加盟をしておるということで、核の使用やあるいは保有等はもちろん行わないということになっておるわけでございまして、エバンス氏の発言について、私は詳細は承知しておりませんけれども、そのような御懸念は不要か、そういうふうに思っております。

 また、IAEAの事務局長になったということもありまして、先ほど申し上げましたように、今後核不拡散について、核軍縮等につきましても積極的にやっていかなければならないわけでありますが、今大変そういうような機運になっていると思います。先日も、米国とそれからロシアのSTART1の後継の話し合いが進んでおります。そういう意味で、この機会を逃がさず、さらにこの核不拡散、軍縮が進むように努力をしていきたいと思っております。

阿部(知)委員 私、これは質問通告してございませんでしたので、少し大臣の答弁が行き違っておると思いますが、エバンス氏の指摘は、私の理解するところは、先ほど申しましたように、核抑止論の中身が、普通は核抑止論というと、相手方の核の使用について、こちらが核を持つことで、あるいは核の傘の中にいることで抑止が働くという考え方ですが、これが、相手側が、生物学兵器や化学兵器というもの、これも非人道的な兵器ですし、そうしたことの使用に際しても、日本がアメリカの核の抑止を期待しているのではないかという指摘であると思います。きょうはここまでにとどめますので、次回、またこの件については御質問をいたしたいと思います。

 もう一つの私の指摘は、例えば、今核保有国であるアメリカと中国とロシアの三カ国が核の先制不使用をきっちりと約束し、特にこの地域の、今北朝鮮は核を保有する段階にありますが、韓国とか日本とか、もっと言えば北朝鮮が核を保有せぬ状態での、そうした核保有をしていない国へもちろん先制不使用も使用もしないというふうに協約を結べば、この地域が大変安定するということもあるわけです。

 そうなると、日本が、核抑止の考えを広げていく方向よりはこれを縮めていく方向と同時に、この地域での新たな核の使用をめぐる協定、協約をどのようにつくっていくかということも、先ほど申し上げました諸外国との情報の交換の中にビルトイン、組み入れていくべきだと私は思います。

 この核の先制不使用という点について、もう一度だけ御答弁をお願いいたします。

中曽根国務大臣 核の先制不使用については、特に最近いろいろなところでそのようなお話が出ておりますけれども、我が国を取り巻く現在の状況というものは、委員も御承知のとおり、北朝鮮の核実験やミサイル発射などによって大変緊迫した情勢と言ってもよろしいかと思います。

 そういう中で、先制不使用というものは、これの検証をするすべというものがないわけでありまして、そういう意味で、現在の我が国を取り巻く地域の安全保障環境を見ますと、私は、これにつきましては委員と違う考えを有しているということでございます。

阿部(知)委員 これも中途半端になりますが、やはり核保有国が率先して核軍縮に向かうことと核を先制使用しないということを明示していくことしか、逆に物事は進まないと私は思います。しかし、今、大臣が見解が違うという御答弁でしたので、これも引き続き質疑させていただきます。

 私は、残り時間がわずかですので、今回の法律について一つだけ質問をさせていただきます。

 午前中の各委員とのやりとりを聞いていて、果たしてこの法律の中に「自衛隊は、」で始まる一項は要るのだろうか。これがない場合とある場合の違いは何であるのか。これは恐縮ですが防衛大臣に伺いたい。

 なぜならば、自衛隊法八十二条に基づく海上警備行動として、万々々々が一海上保安庁がそこではやり切れないような事態の場合、出ていかれるとおっしゃいました。それは今の自衛隊法の中でも八十二条であることですし、この法律の中に明文化されたというか一項目設けられたのは、それは何であるか。お答えが何かあるようですが、浜田大臣はどうお考えであるか。それから、自衛隊法八十二条の中での自衛隊の海上警備行動とこの法文の中でうたわれるところとで何か具体的な違いがあるのか。この二点だけお願いいたします。

浜田国務大臣 先生御指摘の点で、では何が違うんだと言われると、いずれにしてもこれは海上警備行動でやるということになりますので、差はございません。そして、この法案ができたからといって、それで我々の権限が広がるわけでもございません。そしてまた、防衛大臣が判断してというところに大変皆さん御心配をいただいておるわけでございますけれども、我々とすればあくまでも、手続的にも、私に命令権はあるわけでありますけれども、内閣総理大臣を初めとする閣議でこれを決定することになるわけでありますので、その点については御心配をいただくことはないのかなというふうに思います。

 ですから、この法文が必要でないか必要であるかという点については、我々とすれば、当然、もしもの場合を考えたときにその押さえとしてそれがあるわけであります。しかしながら、それを基本的にすべて我々が出るということではなくて、海上保安庁の権能、権限というものをかなり今回広げて書こうとしているわけであります。そちらの方に私は重きが行っていると思いますので、我々とすれば、あくまでも押さえ的な考え方だと思っておるところであります。

阿部(知)委員 今のはちょっと御答弁に足りないと思います。なぜこれを明文化しておくのかということを、もう一度次の回に御質問させていただきます。

 終わります。ありがとうございます。

深谷委員長 次回は、来る十三日月曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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